全米ドラマ視聴率No.1、「NCIS ~ネイビー犯罪捜査班」のスピンオフとして、海に面した華やかな大都市ロサンゼルスを舞台に、潜入捜査のプロ、G・カレンと元海軍特殊部隊サム・ハンナの2人の活躍を1話完結で描く潜入犯罪捜査物語「NCIS: LA ~極秘潜入捜査班~」(以下「NCIS:LA」)が、現在Dlifeにて毎週水曜21時から放送中だ。カレンを演じるのは、1992年『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』で名優アル・パチーノと共演を果たし、ゴールデングローブ賞最優秀助演男優賞にノミネートされた実力派俳優クリス・オドネル、そしてハンナを演じるのは、2度のグラミー賞受賞歴を持つLL・クール・J。今回、日本語吹き替え版でG・カレンを演じる声優・森川智之が、自身の役どころや、収録の様子などをたっぷり語ったインタビューが到着した。クリス・オドネルとLL・クール・Jという2大スターの共演が話題の本作。劇中では2人が映画並みのアクションを繰り広げたり、決して正体を知られないために2人が見事な変装術や潜入術を見せるシーンが必見だが、緊迫した場面でのジョークを交えた軽快な掛け合いも本作の魅力のひとつ。森川さんも「僕が演じるカレンや大川さん演じるハンナやもちろんほかのメンバーとの、会話劇が凄いんです。その会話のキャッチボールを楽しんでもらえたらと思います」と見どころを語った。また、煌めく観光地ロスが舞台なだけに、LA支部もリゾート仕立て!マリンスポーツやバーなどで南国気分を味わいながら、事件が起きればド迫力&スリル満点のドンパチが勃発す!「外にでるとLAという舞台もあいまって、非常に派手なロケーションで、ドンパチを繰り広げる、内と外でこの2つを楽しめるドラマです」と、本作の欲張りポイントも明かした。森川さん演じるクリス・オドネルが映画『バットマン・フォーエバー』でも魅せたアクション・スターっぷりを披露すれば、5年連続グラミー賞授賞式で司会を務めるなどマルチな才能を誇るヒップ・ホップ・アーティストのLL・クール・Jは、『チャーリーズ・エンジェル』『S.W.A.T.』など多作品に出演してきた役者としての実力を発揮。ドラマの中では、なりすましキングのカレンが毎度ヤバくなったところで、ハンナが必ず助けに現れる。正反対なのに、不思議と成り立つ“コンビ愛”を見事に表現しているが、そんな相方・ハンナの日本語吹き替えを務めるのは声優・大川透だ。「僕と大川さんとでバディを組んでいるので、そこを楽しんでほしいです!」と“吹き替え版”での楽しみ方をお勧めする森川さん。さらに、自身の役柄を「カレンは一見クールガイなんですが、女性ならまさにほっとけないキャラんです。実は孤児で『母をたずねて三千里』じゃないですが、自分探しをしているんです。子どもっぽいところもあって、強がってしまうところは、たまらない萌えポイントですよね」と分析し、「それを側で支える大川さんの声…たまらないですよね(笑)」と“バディもの”ならではの胸キュンポイントを女性ファンへ向けてアピールした。そして、そんな2人をバックアップするチームの面々にも個性豊かで頼もしいキャラクターが揃う。彼らと現場捜査を共にするケンジー・ブライ、情報担当のエリック・ビールとネイト・ゲッツらが、LA支部長のヘティ・ラングの下、チームみんなで団結力して事件を解決していく。日本語吹き替え声優陣もチームとして団結しているようで、アフレコ現場もわきあいあいとしているのだとか。「みんな『NCIS:LA』を楽しみながら収録しています。『ケンジー・ブライって絶対モテないよね』とか、『このヘティって怖いよね』とか、それぞれのキャラクターにツッコミをいれながら。チームの分析官ネイトも面白いですよね。『この事件は○○だ』って分析するんですが、現場で捜査しているカレンとしては『知ってるよ!』というようなタイミングで。台本にセリフがないのに、思わずツッコミをいれそうになりました」。森川さんといえば、アニメ「金田一少年の事件簿」(明智健悟)、「ONE PIECE」(はっちゃん/エネル)など数多くのアニメ作品をはじめ、『ラストサムライ』『ミッション:インポッシブル』シリーズのトム・クルーズや、『マトリックス』シリーズのキアヌ・リーブス、『スター・ウォーズ』エピソード1&2&3のユアン・マクレガーなど…誰もが一度は聞いたことがある洋画大作の吹き替えを歴任。最近ではディズニー最新作『ズートピア』できつねのニック役を演じ、大きな話題に。人気、実力ともに兼ね備えたベテラン声優のひとりだが、約30年に渡る経歴をふり返り「実はこれだけキャリアがあるのに、あまり長寿番組に出会ったことがなくて…」と明かす。「この仕事を始めるときに、長くやっていける海外ドラマシリーズにいつか出会いたいと思っていました」「もともと海外ドラマ、特に刑事モノが大好きだったんです。小さい頃に、下條アトムさん(「刑事スタスキー&ハッチ」など)の真似をしたりしていました」「昔のアニメは大体1年くらい、短くても半年はやっていたのですが、いまは1クールが多く、出会ってすぐ最終回みたいなこともあるので、やっと役を自分のものにできたって言うときに最終回を迎えるのはさびしいですよ」「『NCIS:LA』は、アメリカでも人気のドラマなので、ぼくもカレンと一緒に成長して演じていけたらなと思っています」。本作との長い付き合いを熱望する森川さん。実際に、本国ではシーズン7までが放送されており、さらなる続編も製作される予定だとか。これまで数々の名作に出演した森川さんが、さらなる高みを目指し熱演する本作をぜひチェックしたい。(text:cinemacafe.net)
2016年06月13日女優の宮沢りえが土曜オリジナルドラマ「連続ドラマWグーグーだって猫である2 -good good the fortune cat-」に主演。少女漫画界の巨星・大島弓子による自伝的コミックエッセイをドラマ化し、好評を博した前作に続き、主人公の人気漫画家・小島麻子を演じている。東京・吉祥寺の井の頭公園を臨む自宅兼仕事場で、飼い猫2匹と暮らす麻子の日常と、彼女を取り巻く人間模様を描くハートウォーミングな本作。宮沢さんは「どの作品もそうですが、『グーグー』は特に記憶に残る現場。楽しく演技し、心に栄養がたまるような体験でした。(モデルとなる)大島先生といえば、ずば抜けた才能を思った“天才”ですから、プレッシャーもありますが、もう1度麻子さんを演じられ、とてもうれしい」と笑顔で語る。「麻子さんは漫画家として、創作のエネルギーを発揮する分、普段の日常もどこか振り切れている。同一人物とは思えないほど“幅”があり、女優にとって醍醐味ですね。例えば、鳥の鳴き声に耳を傾けるシーンはとても穏やかに見えますが、その一方でいつか書く漫画の素材として音をストックしている麻子さんがいて…。それを演技で表現できたら、とても面白いだろうし、『いい作品をつくりたい』という思いは、役者にも共通していますから」常人の発想を超えた行動に出るのも、天才・麻子さんならでは。前作ではそんな彼女によって、編集者の大森(長塚圭史)、アシスタントのミナミ(黒木華)らが振り回される姿がコミカルに描かれた。「普段は乗らない電車で、どこかに行ってしまったりね。好奇心があふれている点は、私に似ているかもしれません。自覚はないですけど、友だちからは『何をしでかすかわからないから、ドキドキする』なんて、言われるし(笑)」と宮沢さん。待望のパート2でも、麻子さんのマイペースぶりは健在!ただ、同時に今回は彼女自身が周りの人々に振り回される姿が「前作との違いであり、大きな見どころ」だという。新たなキャストに名を連ねるのは、前田敦子、西田尚美、イッセー尾形ら個性豊かな面々。「すでに前作からのチームワークが出来上がっている分、新しく『グーグー』の現場に飛び込む皆さんには緊張しないでほしかったので、私から積極的に話しかけたりしましたね」2度目の共演となる前田さんは、漫画家としての独立を考えるミナミの後任として、麻子の前に現れるアシスタントの飯田を演じている。「柔軟性があり、勉強熱心で映画や演劇に対する“貪欲さ”も持っている。どんな役柄も楽しめる健やかさも感じますね。何者にもなれる可能性を秘めていると思う」(宮沢さん)。現場では「このドラマに関しては『撮られていることを忘れて、画面に収まろうなんて思わなくていいよ』って昔、自分が尊敬する演出家に言われた宝物の言葉を伝えました」とふり返る。その助言の裏には、前作に続きメガホンをとる犬童一心監督に対する全幅の信頼がある。「監督ご本人が大島先生のことが大好きで、リスペクトしている。その監督が受け止めてくれるからこそ、私はカメラの前で自然にいられるし、指先まで集中して麻子さんでいられた」。犬童監督には本シリーズを「寅さん(『男はつらいよ』)みたいにする」という野望(!?)もあるそうで、宮沢さんも「確かに無限の可能性があると思う」と強い期待を示した。カメラマン:小暮徹スタイリスト:安野ともこ(コラソン)ヘア&メーク:千吉良恵子(cheek one)ネイリスト:三浦加納子(スリーピース)(text:Ryo Uchida)
2016年06月13日「白鳥麗子でございます!」といえば、昭和世代には懐かしの名作として胸を熱くする方も多いだろう。世間知らずの超お嬢さま・白鳥麗子と、庶民の秋本哲也との波乱万丈の恋模様を描いた漫画で、発行部数はゆうに1,700万部を超えた。このたび、20年のときを経て新たにドラマとしてカムバックし、さらには劇場版『白鳥麗子でございます! THE MOVIE』として6月11日(土)よりスクリーンでお目見えになる。秋本哲也役には初代に萩原聖人、2代目に松岡俊介と時代を彩る色男が務めてきたが、3代目として白羽の矢が立ったのが、男性グループ「BOYS AND MEN」、通称“ボイメン”のリーダー・水野勝。ボイメン聖地の名古屋では、現在レギュラーが14本(!)という売れっ子ぶりで、2016年は映画『復讐したい』の主演に続き本作が2作目の公開と、全国区へのブレイクに大手をかけている。水野さん本人は「俺はイケメン“風”なだけなんで」と、いたって謙虚にほほ笑むも、ひとたび芝居のことになると表情を引き締め、作品と役に対する滾る思いをのぞかせた。好評のうちに放送を終了したドラマ版「白鳥麗子でございます!」では、哲也が河北麻友子演じる麗子さまに振り回され、終始フラフラするという、やや情けない男にも映った。そんな哲也について、水野さんは「いやあ、男としてはダメだと思いますよ」と一蹴するも、劇場版ではそんな哲也の成長が見られると話す。「ドラマ版から客観的に哲也を見ていて、『一途にいけよ!』と思っていましたが、劇場版ではだいぶ変わっているので、『ようやく哲也わかったか!』ってうれしくなりました」。哲也の成長した行動のあらわれのひとつとして、とにかく「走る」という動きの演技が挙げられるだろう。麗子を追いかけ、救い、守るためにダッシュをする姿が精悍で清々しい。「確かに、今回走るシーンがたくさんありました。全部麗子さんのために走っているんですよね。麗子のために行動がとれるようになった哲也は、素敵になったなと思いました。愛する人のためだったら、人って何でもできると思うんです」。…となると、水野さんも愛する人のためなら猪突猛進タイプ?「僕は恋愛モードの本気スイッチが入りづらいタイプで、自分で分析すると、熱しにくく冷めにくいんです。スイッチが入ると長いので、実は過去に6年間以上片思いしていたこともあるくらいで(笑)。好きになってしまえば熱いほうかもしれないですね」と、表情をゆるめた。ちなみに、麗子さんタイプは「…苦手(笑)」だそう。水野さんはスカウトされ、芸能界にデビューしてから無我夢中に走り続けてきた。舞台、ラジオ、雑誌、テレビと様々な媒体で活動してきたが、自分の原点は「芝居です」ときっぱり言い切る。「いまグループでいろいろ活動させていただいていますが、僕の核となっているものは演技なので、そこだけは譲ってはいけないと思っているんです」。役者としてのこだわりを聞けば、「人としても役者としても嘘はつきたくないんです。映画やドラマはフィクションかもしれませんが、本気で演じている嘘と、何となく演じている嘘は違うので、嘘だけはつかないように作品と役に向き合っているつもりです」と、熱を帯びて答えた。作品の観方や受け取り方は千差万別だからこそ、全力で今の自分ができるものを届けたいと、さらに水野さんは言葉を重ねた。「観客には100%のものを見せることは当たり前なので、100%のものを見せるつもりでいつも臨んでいます。でも、演技という仕事自体に100点はないので、永遠に勉強していくお仕事だと思っています」。ますますの飛躍に、期待がかかる。(photo / text:Kyoko Akayama)
2016年06月10日D.O.(EXO)が映画初主演を努め、『建築学概論』や『私のオオカミ少年』に続く初恋純愛ストーリーとして注目を集める『純情』。このほど、6月11日(土)に迫った日本公開を前に、独占インタビューが到着した。アジアを中心に世界的な注目を浴びる次世代グループ「EXO」。その中でメインボーカルをつとめるD.O.といえば、ドラマ「大丈夫、愛だ」での名演が話題となり、その後も映画『明日へ』、ドラマ「君を憶えてる」など次々に出演、20代の男性俳優として高い評価を受けているひとりだ。1991年夏、ある港町を舞台に描かれる、甘酸っぱくも切ない少年少女の初恋物語を描く本作で彼が演じたのは、幼なじみに一途に想いを寄せる純朴な主人公ボムシル。ヒロインのスオク役には、最高視聴率46.1%を記録したドラマ「太陽を抱く月」で見事、名子役から演技派女優として転身を遂げた、こちらも次世代の最注目女優キム・ソヒョン。その夏、生まれつき足が不自由な彼女のために常に隣に寄り添い、島で育った仲間たちと楽しい日々を過ごすボムシル。そんな中、スオクが主治医であるヨンイルに心を寄せていることを知ったボムシルは、嫉妬と苛立ちから、ある真実を告げ、スオクを傷つけてしまう。眩しいくらい純粋なドキドキの毎日、気持ちをうまく伝えられない初恋のもどかしさと、泣けるほどに熱くて真っ直ぐな仲間たちとの友情は、誰もが共感し、涙なしでは見られない青春純愛ストーリーとなっている。そんな本作で演じたボンシルと自分とは似ている部分はあるのか、D.O.に尋ねてみると、「ボムシルは隣で見てて、とてももどかしい子です。僕との共通点でいうと、男らしいところは似ていますね。ボムシルの恥ずかしがり屋だったり、照れくさいところは似ていないと思います」ときっぱり。予告編にも登場していた、「一生 俺が守る」というセリフが、最も印象に残っているというD.O.。「女性に『一生守ってやる』と言うのはとても難しいことだと思います。また、この映画の核となるセリフでもあると思うので、一番印象に残っています」と語り、“男らしい”一面を覗かせる。劇中には、足の不自由なスオクを何度もおんぶするシーンが登場し、“ビニキス”といわれたビニール傘を通しての初々しいキスシーンも話題を呼んだが、自身の一番お気に入りのシーンは、「堅い固い絆で結ばれていた友だち同士の友情が、あることをきっかけに一瞬で壊れてしまうという場面ですね」と明かす。「そのシーンでの僕の出番は多くありませんが、友だち役を演じた方々の演技がとてもリアルで素晴らしくて、心にぐっと刺さりました。映像もとてもキレイだったので、一番印象に残っています」。固い絆で結ばれた幼なじみの仲間の中で、スオクに一途に想いを寄せる役柄だが、ではD.O.にとって、初恋とは?「僕が考える初恋…まだはっきりとは分かりませんね。でも、僕の考える初恋の意味は、一番幸せで、一番温かい、そんな感情が感じられるのが初恋だと思います」。自身の初恋は、「たしか高校3年生のときだったと思います。そのときがすごく温かくて、幸せでした。もちろん幸せだと感じる時間はほかにも沢山ありますが、異性に対して幸せを感じたのは、このときだったと思います」と明かし、思いを馳せた。本作での初恋の相手役キム・スヒョンについては、「ソヒョンさんは幼いころから子役として活動していたのと、僕より6歳年下なので、幼い印象がありました。でも、撮影が始まっていろいろ話しているうちに、思いやりがあったり、同年代の人に比べて思慮深かったり、大人びている部分が多いと思いました。なので、撮影のときにも現場の雰囲気も良かったし、相性も良かったと思います」と、初共演をふり返る。仲良くなるために、毎日、手を繋いで過ごしていたそうだが…!?「はい。手を繋いだのは撮影初日でしたが、おかしいですよね。初めて会った人と手をつなぐのは。撮影前に繋いでいて、アクションという監督のサインがあると手を離して演技して、カットと言われたら、また繋いで、ずっとそんな感じでした」とD.O.。「とてもぎこちなかったし、冷や汗をかきました。でも、最初の初々しいシーンの撮影にはとても効果があったと思います。ぎこちなさだったり、照れくさだったり、初々しさが必要なシーンだったので、その感情をつくるのにとても役に立ちました」。微笑ましくも、俳優として確実に力をつけていることを伺わせるエピソードだが、自身でも、「いつも1つの作品が終わるたびに成長したなと思います。自分では気づかなかったことも、ほかの俳優の演技を見て学ぶことも多いです」と語る。「僕が尊敬していて、好きな先輩方は大勢います。チョ・インソンさん、イ・ビョンホンさん…海外にもとても多いです。先輩方を目標に、より素晴らしい俳優になれるよう努力しています」と言う彼は、「僕はチャンスさえあれば、本当に全てのキャラクター、作品に挑戦してみたいです。いま考えているのは、これまでやったことのない真逆のキャラクター、例えば悪役。本当に悪い奴をうまく演じてみたいです」と、演じることに貪欲さを見せている。最後に日本のファンに向け、「いよいよ映画『純情』が日本で公開されるんですね。とても嬉しいです。韓国で撮った映画が日本で公開されて、日本のファンの方々、日本の皆さんに僕の作品を見てもらえると思うと、とても幸せです。映画を見ていただいて、温かい気持ちで帰っていただけたなら、嬉しいです」と、メッセージを贈るD.O.。彼の俳優としての成長の1歩を、本作でも確かめてみてほしい。『純情』は6月11日(土)よりTOHOシネマズ新宿ほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2016年06月10日スリリングにスピーディに展開するクライム・サスペンスかと思いきや、拝金主義を風刺し、勝者と弱者の格差を増幅させる社会問題にまで鋭く切り込んだ『マネーモンスター』。ジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツという2大スターの競演も話題だが、娯楽性と知性派ストーリー、エモーショナルな人間ドラマが見事に融合した良質なハリウッド映画としても注目を集めている。監督は、名女優としても知られるジョディ・フォスター。8年ぶりの来日を果たし、作品に込めたフィルムメーカーとしての想いをシネマカフェに語ってくれた。取材部屋に入ると、ブルーのパンツスーツに身を包んだフォスター監督が、「ジョディよ、よろしく」とにこやかな笑顔とともに手を差し出して迎えてくれる。子役としてデビューを果たしてから50年以上、ショービジネスの第一戦で活躍し続けているトップスターだが、とても気さくだ。立ったままのスタッフに、「あそこにも椅子があるから座ったら」と気配りも見せる。いざインタビューという段になると、するりとパンプスを脱ぎ、カウチに胡坐をかいて、リラックスした表情を見せてくれた。まず、最初に脚本を見せたのが主役を演じたジョージ・クルーニーだったという話からスタート。「役にぴったりだと思ったの。観客はジョージが演じるリー・ゲイツに最初に出会った時、きっと彼を好きになれない。エゴが強いし、惰性で生きているし、酒グセも悪いし、人への思いやりがない。自分を見失っている状態の人だから。番組をジャックされると、臆病な反応を見せるしね。でも、観客は段々と彼の状況を理解していくの。いくら有名なTVパーソナリティでも、人生で失敗しているから自己評価が低いんだなと。ところが、それが事件をきっかけに変化していくの。ある意味、彼は映画の最後でふたたび人間である自分を取り戻すことができる。だからこそ、最初は嫌われるかもしれないけれど、変化し、観客を引きつけ続ける、そんな役者が必要だったの」。ジョージがTVパーソナリティとして番組の頭で滑稽なダンスを披露するのだが、それは彼のアイディアだったそう。「今回はジョージがダンスしたいと言ってくれたのが嬉しかった。何しろ、100%コミットしてくれて、自ら笑いものになるぐらいのショーマンシップを見せてくれたことが、映画のためにもなったの。ただ、常にアドリブを取り入れるかどうかは、映画の種類によるわね。プロットがはっきりしていて、セリフが多いと脚本がしっかり詳細まで書き込まれているから、アドリブ自体取り入れにくいし。でも、監督として私自身は、役者のアイディアを頼りにしているところがあるから、こういう提案は大好きよ」。共演には、ジョージとの相性が良いジュリア・ロバーツだ。「彼女は“AMAZING JULIA ROBERTS”なの!彼女以外にこの役は考えられないぐらい素晴らしいの。ジュリアのキャスティングが決まってから、より役を掘り下げることができ、よりヒロイックなキャラクターにすることができたわ。もともと、2人が演じたキャラクターは強い絆で結ばれている必要があったの。劇中では、実際に一緒に登場するのは冒頭と終りだけ。撮影でも2人が同じ現場で演技をしたのは2日ほどなの。とてもバーチャルな共演だったから、強いケミストリーがなければいけなかったの。だから、2人から生まれるマジックが必要だったのよ」。大スターである2人が共演しているというだけでなく、幅広い観客が楽しめる良質な社会派娯楽作であるこの作品は、最近ではハリウッドであまり見られなくなったジャンルの映画とも言える。「そうね。こういうタイプの映画は、もうあまりハリウッドで作られなくなったわね。それは、スタジオが商業的な戦略としてシリーズもの、スーパーヒーローものを多く作っているから。今後はもっと観られなくなるかもしれないわ。でも、インテリジェントでチャレンジングでユニーク、オリジナルな映画を観たい観客が多くいると信じているの。作品を作るとき、観客がそれを観るのが大きいスクリーンか、アイフォーンか、ケーブルかなんて気にしない。私は映画を観てもらえればいいと思っているの。『マネー・モンスター』は一般向けのペースの速いスリラーでもあるけれど、キャラクターの心理描写も丁寧にしたし、意味深い作品だと思うわ。観客に観たいと思ってもらえれば嬉しいけれど」。本作のモチーフであるお金というものは、人の本性、価値観を如実に見せるものだとつくづく感じられる。社会的成功者として、映画監督として、お金の価値というものをどう感じている?「今回登場する男性キャラクターは、みな自分の人間としての価値を見いだせずに葛藤しているの。いまの文化では、自分の価値をはかるときに、ものさしとしてお金や知名度を意味深いものとして使っているところがあるわよね。ジョージ演じたリーに関しては、少なくとも冒頭ではそう。確かにお金にはそういう側面はあると思う。アメリカや日本のような先進国で生きていると、自分がどんな人間であるか見えにくくなる。そのときに、最初に自分が勝者なのか敗者なのかをお金や地位、名誉で測りたくなる気持ちは分かるわ。でも私にしてみれば、いままでいろいろな人とふれあってきた経験というものが最も人の価値として重んじられるべきだと思うの。それは、金銭的な財産や仕事、ましてや賞などで測れるものではないわ」。ショービズ界といえば、知名度やギャランティで重要度が測られがちな世界。そこで人生におけるほぼすべての時間を生きてきた監督が、いったい健全な価値観をどのように育んできたのだろう。「どうかしら。とにかく、やりたかったことは昔から変わらないの。映画を作るということよ。映画を作るアーティストとして生きることで、地に足を付けていられる。私の場合、小さいときから公の目にさらされる立場だったから、なるべくリアルでありたいと思ったし、リアルであることに目が向くのかもしれないわね。子どもとして、自分の実人生を奪われそうになることが多かっただけに、自分が大切にするもの、矜持の持ち方を自然に身に付けたのかもしれない。これは仕事、これは私の人生というふうに、わけて考えることでそういう感覚を保っているのかもしれないわ」。先日、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェイムにも名前を刻んだ監督。名実ともに、ハリウッドスターとして映画史に名を刻んだわけだ。今後は、女優業との割合はどのようになっていくのか。「いまは、監督業に専念したいの。27歳で初長編を撮って、それから4本の映画を作ったけれど、決して数としては多くない。もちろん、その間も休んでいたわけではないし、役者としてのキャリアも積んだし、2人の子育てもしているから、とても満足している。でも、監督をするなら100%コミットしなければいけないの。企画と出会って、“さあ、今だ”というタイミングが来たときに、チャンスを逃がしたくない。ただ、これまで50年以上も演技をしてきた自分にとって、演技をすることはほかと比較することはできないぐらい素晴らしいことだから、止めることはないわ」。監督業にますますの意欲を見せるジョディ・フォスター監督。小さい頃から慣れ親しんできた日本文化が大好きだと話し、いつかこの独特な文化を作品に反映させられたらと考えているとか。その“いつか”も心待ちにしつつ、今後のジョディ・フォスターの活躍に注目したい。(text:June Makiguchi/photo:Kyoko Akayama)
2016年06月08日主演の綾瀬はるかに「本当の姉弟みたいだね」と言われたという。実生活では水原希子は二人姉妹の姉であり、間宮祥太朗はひとりっ子。その2人が映画『高台家の人々』において、斎藤工を“長男”に持ち、ある特殊な能力が備わった高台家の長女&次男をなんともいい感じに体現している。原作は、ドラマ化もされた「ごくせん」や「デカワンコ」でも知られる森本梢子の人気漫画。イギリス人の祖母から遺伝した「他人の心の中を読める」というテレパス能力を持った高台家の御曹司・光正と“妄想力”豊かなOL・木絵の恋を描き出す。2人が演じたのは、光正の弟妹で、同じくテレパス能力を備えた茂子と和正。茂子は美人で一見、気が強そうだが、知りたくもない他人の心が読めてしまうゆえ、少し臆病なところがある。水原さんはそんな茂子への共感を口にする。「私もそうだし、年頃の女の子なら誰もがわかると思います。ひとの考えてることが聞こえてきて、しかも恋なんてしてたらすごく複雑ですよね。恋愛になると、この能力、いい方向で生かされないので(苦笑)。演じながら、寂しくなるようなシーンも多かったし、茂子の気持ちを素直に理解し、演じました」。一方、和正はこの能力ゆえにか、はたまた末っ子だからなのか、ひねくれた性格に…。間宮さんは「小学生の男子ですよ」と笑う。「気持ちはわかりますけどね(笑)。僕も、小学生のころなんかはそんな感じで、好きな子に対して「ブス!」とか言ってましたよ。好きだから話したいんだけど、何て話しかけたらいいのかわかんないから(笑)。和正を演じる上で、一番大切にしたのは、弟っぽさ。生意気なんだけど、そこには周りへの甘えがあるんですよね。家族の中における弟らしさを見ている人に感じてもらえるように意識しました」。冒頭でも触れたが、水原さんは実生活では妹ひとりを持つ姉。今回、斎藤工を兄に、そして間宮さんを弟に持っての感想は?「ラクでした(笑)!男の人と一緒だと、気を遣わなくていいというか。決して、うちの妹もめんどくさいタイプではないので楽ではあるんですが。私自身、普段からサバサバした性格なので、男の人の中に混じったとき、素のままでいられた感じでした」。ひとりっ子の間宮さんも、兄と姉がいる環境を楽しんだよう。「兄弟がいるって楽しいなって思いましたね。今回特に、長男は少し歳が離れてるので落ち着いてますけど、茂子と和正の関係は憎まれ口を叩き合ったりして、ちょっと子どもっぽい部分もあって。兄弟がいる日常ってこんな感じなのかなと疑似体験させてもらいました」。逆に普段、自分がひとりっ子だなと感じる瞬間は?「そうですね…、わりと何でも自分で決めちゃうところですかね?物心ついたころから、習い事にしろ進学にせよ、やりたいことは自分で決めてやってきたし、そうやって自分で決める意志は強いのかもしれないですね」。映画の中に登場する、木絵の頭の中の様々な妄想がユーモラスかつキュートだが、2人は妄想癖は…?「します!」と即答したのは水原さん。「音楽が好きなので、音楽を聴きながら街中を歩いていて、よく頭の中でミュージックビデオを作ってます。あと、ブリトニー・スピアーズの『Toxic』という曲のMVが、飛行機が舞台なんですけど、飛行機に乗るとやりたくなっちゃいますね(笑)」間宮さんは「妄想女子、いいじゃないですか」と笑いつつ、自身は「僕はあんまりしないですよ」とのことだが…。「状況によってですね。道を歩いてて、強面の人が向こうからやってきたら『挟まれたな…』とか想像して、こっちの路地に入ればひとがいるとか、あの角を曲がってやり過ごして…とイメージしたり(笑)」。いやいや、それは十分、妄想男子です!ちなみに、相手に自分の考えを読まれてしまうのと、逆に相手の思考が読めるのとではどちらを選ぶ?映画を観ると、相手の心がわかってしまうのもラクじゃないな、と思ってしまうが…。水原さんはこれも「読みます!読まれたくない!ヤバい(笑)!困る!」と即答。間宮さんは、しばし思案の末に「読まれる方がいいかな?」と語る。「例えば、いまこうやって取材を受けてて、インタビュアーの方の『こいつの話なんて、別に聞きたくないな』なんて声が聞こえてきたら嫌ですから(苦笑)。読まれる方がまだいいですね」。では最後の質問。もし本当にテレパス能力を持っていたら、劇中の光正のように、その事実をきちんと愛する人に伝えるか否か?これは2人声をそろえて「言わない!」と回答。「問題起きちゃいます(笑)」と水原さんが言えば、間宮さんも「無理無理。よくないことしか想像できない(笑)」とのこと。テレパス能力はなくとも、この取材を通して2人の心の内側が見えてきた…かも?(photo / text:Naoki Kurozu)
2016年06月06日夢かなわず去って行く者たちの哀しみ、彼らにむけた惜別の思い。林遣都は又吉直樹が生み出した2015年最大のベストセラー「火花」からそんなメッセージを受け取ったという。「でも、だからと言って人生は終わらない。まだまだ通過点。そんな希望も感じました」と自らに言い聞かせるように語る。波岡一喜もまた、ここで描かれる幾人もの人々の人生を自らに重ね合わせて「僕の30代は『火花』」というくらいに強い思いをこの作品に抱いたという。出版不況のさなか、250万部超というモンスター級の大ヒットとなった、又吉直樹の芥川賞受賞小説を全10話、総計530分の重厚な人間ドラマとして映像化した「火花」。いよいよ動画配信サービス「Netflix」にて世界190か国へ全10話一挙に同時ストリーミング開始となった。売れないお笑い芸人・徳永(林さん)と、彼がある営業先で出会い、その強烈なインパクトに魅了され師と仰ぐようになった先輩芸人の神谷(波岡さん)。彼らが浮き沈みを体験しつつ、夢を追い、挫折し、それでも歩みを進めていく約10年の歳月をつづる。林さんは滋賀県出身、波岡さんは大阪出身。共に関西から夢を背負って上京してきた身であり、お笑い芸人と俳優という違いはあれども、徳永と波岡の姿はまぎれもなく自分たちそのものだった。林さんは言う。「東京に夢と目標を持って出てきて、うまいこと行かずに苦しんで、でも小さな喜びもいっぱいあって…。自分自身の日常に近いと思える部分がたくさんあって、脚本を読んで『この役はやりたい!』って強く感じました。これまでも、よくサエないナイーヴな青年を演じてきたけど(笑)、徳永は本物のナイーヴ!僕も自分はナイーヴと思ってるから『本物を見せてやる』って(笑)」。10代半ばでいきなり映画『バッテリー』で主演に抜擢され俳優デビューし、その後も次々と話題作に出演している25歳。世間から見れば陽の当たる道を歩き続けているように見えるが…。その陰で時に挫折を味わい、葛藤を抱えながら歩んできた。「よくそう(挫折したことがないと)言われますが、そんなことないです。心の底から悔しい思いをした時期もあったし、理想としているものができなかったり、行き詰まって、全てを捨てて『やめたい』って思ったこともありますよ。徳永は、それでもどこかで自分の考えてることやセンス、才能をきっと誰かが見てくれていると思ってて、それが受け入れられたらきっとブレイクできるはずと思ってる。悔しい思いをしながらふつふつと秘めている思いがあるけど、でも、それをうまく出せない葛藤、もどかしさもあって、そういう部分をうまく表現できたらという思いがありました」。波岡さんは脚本になる前に、事務所の社長から「波岡のイメージにすごく近い」と言われて原作を手渡されたという。「共通点は確かにいっぱいありました。まず、思ったことをすぐ言ってしまうところとか(笑)。あとで『言わなきゃよかった』って思うんだけど、我慢ができない(苦笑)。もろい部分も含めて似てるなと感じました」とふり返る。そして、役を勝ち取り、実際に演じる中で、神谷に背中を押された部分も。「自分が面白いと思ったことを貫いてるんですよね、神谷は。どうしても長くやっていく中で、自分を信じることを見失いがちになるし、神谷の行く末を見ても、それが必ず正しいとは限らないんですけど(笑)、それでも、自分を信じてやってるヤツってかっこいいんですよ」。波岡さん自身、まさしく自分を信じ、時に体を張り、コツコツとキャリアを積み重ねてきた俳優であると言えそうだが…。「そのつもりでしたけど、まだまだ結果がついてきてないですからね。旅の途中です。自分はホームランを狙うようなバッターじゃない。ずっとバントヒットを重ねて得点を積み重ねてきたけど、それがぶれてしまうこともある。『このままでいいのかな?』とか『やめようかな』と思ったこともある。でも神谷を演じて改めて、もっと自分を信じていいのかなと思いました。初めて出た『パッチギ!』という映画は、僕にとってバントヒットのつもりがフワフワとボールが上がって、なぜかホームランになっちゃった作品でしたけど、この『火花』ももしかしたらそんな作品になるんじゃないのかな?と期待してます(笑)!」徳永にとって、神谷との出会いが、その後の人生に大きな影響を与えることになるが、林さんも波岡さんも、本作の総監督であり、第1話、第9話、最終第10話の演出を務めている廣木隆一監督との出会いについて「衝撃だった」と口を揃える。林さんは、本読みの段階から、台本を見ずに俳優の生のやり取りだけを注視する廣木演出のすごさをこう語る。「監督が台本を見てないってことは、(シーンの)終わりがないんです。セリフが終わっても『カット』が掛からない内に僕らが勝手に芝居を終わらせるわけにいかないので。役になり切ってないと通用しない!間がもたなくて思い付きで小手先でやったらすぐ見抜かれて『足すねぇ…』と言われて(苦笑)。ただ、愛にあふれている監督で、ちゃんと役に向き合い、その人物になってやっていれば、必ずいい作品になる、必ず人の心を動かせるという演出をしてもらいました。若い人がみんな、廣木さんとやりたがる理由がよくわかりました」。波岡さんは「テストから何十回とやって『何がダメなんだ?』と思うんだけど、答えはくれないんです(笑)。現場はいい意味でピリッとしてました」と充実感を漂わせた。徳永と神谷の関係性という点でも、林さんと波岡さんは適役と言えるのかもしれない。2人が出会ったのは、林さんがデビューしてまだ間もないころに主演した映画『ラブファイト』の現場。波岡さんは「遣都が10代のころからずっと知ってるし、先輩後輩って関係も(神谷と徳永に)遠からず…です」とうなずく。林さんも、“リアル火花”とも言える2人の関係性を明かしてくれた。「僕自身、影響されやすい時期に波岡さんにビシッと言われた経験もあります。徳永がネタに悩んで妥協したり、違う道に進もうとして、神谷が正しい道に引き戻すというシーンもありますが、それに近いやり取りが波岡さんとの間にありましたよ」。いまだから、そして、この2人だからこそのドラマが、きっと多くの人々の心に、自分自身の物語として突き刺さるはずだ。(photo / text:Naoki Kurozu)
2016年06月03日「こんな恋がしたい!」と、女性の恋愛モードを上げてくれる映画がまたひとつ生まれた。「EXILE」、「三代目J Soul Brothers」のメンバーとしてだけでなく、映画『クローズEXPLODE』『HiGH&LOW THE MOVIE』など俳優としても活躍する岩田剛典。舞台・映画・ドラマ、若手俳優のなかでも演技派として注目され、現在は朝ドラ「とと姉ちゃん」のヒロインとしても活躍の高畑充希。実力と勢いのある2人がW主演するラブストーリー『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』だ。「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか。噛みません、しつけのできた良い子です。」──岩田さんの演じる樹のこのひと言をきっかけに、樹とさやかの同居生活はスタートする。ファンタジックな出会いから始まる分、2人の空気感は「できるだけリアリティを持たせたかった」と高畑さんは言う。「撮影に入る前にさやかをどう演じるのかいろいろ考えてはいたんですが、最終的には“2人の空気感”が大切なのかなと思って。お話自体が少しファンタジックなところもあるので、その分、空気感はリアリティが大切だと思いました。ほとんど2人しか出てこない物語。とにかく心の距離を縮めようというのはありましたね。岩田さんとは初共演なので、最初は身構えてしまいましたけど、いざ現場に入ってみると自然と仲良くなれました」。いろいろな話をして空気感を作っていったそうだ。話の入口は“食”。2人とも食べることが好きで「共通の話題から徐々に会話を膨らませていきました」と語るのは岩田さん。「撮影が始まったばかりの頃は、好きなご飯屋さんの話とか、あのお店のあのメニューが美味しかったとか、おすすめだから今度行ってみてとか、食にまつわる情報交換をしていました」。映画と同じ、食が2人の距離を縮めっていった。そして、出会いのセリフについては、岩田さん本人も「すごいセリフですよね(笑)」と、今でこそ苦笑いするが、高畑さんいわく「岩田さんはカメラが回る前に『コレ、どうやって言えばいいんだ…』と悩みつつも、いざカメラが回るとごく自然に成立させていました。すごいなぁと思いましたし、とても魅力的な樹でしたね」と明かす。現実的にはそんなセリフ言わないだろう…というような、小説や映画のなかでこそ成立するものを現実的にアリにする。しかも目の前のさやか役の高畑さんはもちろん、スクリーン越しの観客もキュンとさせなくてはならない。樹を演じるにあたって岩田さんが大切にしたのは「樹になりきること」だった。簡単に聞こえるけれど、あのキャラクターに“なりきる”ことはなかなかどうして難しい。「樹を魅力的に映し出せたかどうかは観てくださる方の捉え方次第ではあるんですが、魅力的でありたい、それは大切にしていました。樹はキメゼリフの多いキャラクター。少女漫画に出てくる白馬に乗った王子様じゃないけど、それに近いキャラクターです。この物語はさやか目線で物語がすすんでいくので、樹としてさやかの目に魅力的に映り続けなければならない。そうしないと物語が成立しない。なので、とにかく魅力的なキャラクターになるために樹になりきることを大切にして演じていました」。岩田さんの役づくりについて、高畑さんも証言する。「岩田さんはカメラが回っていないところでも樹に徹してくれて。本当に優しいんです。さやかのことを最優先に考えてくれて大切に接してくれるので、何ていうのかな…ふわっと包んでもらっていたような、あったかい感覚でした。岩田さんが先に撮影を終えたときとかも『この後も撮影頑張ってね』って満面の笑みを残していってくれるんですよ」。きっと、もともと岩田さんが持っている優しさが樹というフィルターを通してさらに魅力的になったのだろう。そんな岩田さんや高畑さんの魅力が撮影現場にも広がり、高畑さんは「こたつみたいに温かい現場だった」と懐かしそうに話す。初共演ながらも樹とさやかを“ベストカップル”として映画に刻み込んだ岩田さんと高畑さん。樹とさやかがお互いの気持ちを確かめ合うシーン、「引き金二回目…知らないからな」のシーンはこの映画の代表的な胸キュンシーンだが、演じる側として一番照れたのは「意外と“引き金”とかのシーンではないんですよね…」と高畑さん。「手をつなぐシーンがいくつかあって──私が一番照れたのは川を渡る、渡り終わって手を離すっていう何気ないシーンですが、監督がすごくこだわっていた所で。さやかとしても私としても、恥ずかしいから早く手を離したいと思っているのに、監督は『そこ、もう少し粘って!』と(笑)」。岩田さんもそのシーンが同じく一番照れたそうで「撮影の序盤だったこともあると思うんです。撮影初日から仲良くはなったけれど、まだ照れがあったから、そう感じたのかもしれない。だから引き金のシーンとか2人で料理をするシーンとか、周りが『恥ずかしかったんじゃない?』と思うシーンは、照れることなく撮影しています(笑)」。ストーリーの進行と撮影がある程度リンクしていたからこその芝居でもある。ちなみに、樹が姿を消してさやかが泣くシーンは、岩田さんがクランクアップした後に撮影したのだそう。この映画の魅力は「誰かと一緒に暮らすことで生まれるしあわせ」だと2人は口を揃える。高畑さんは「恋したい、結婚したいと思いますよね。特に朝ご飯のシーンはいいなぁって、朝日の入る部屋で、2人対面して朝ご飯を食べる。それだけで今日も一日がんばろうって思えます」。岩田さんも「2人で一緒に料理を作って食卓を囲むとか、お弁当っていいなとか、おかえりやただいまという会話があるとか、当たり前の幸せを改めて感じさせてくれる映画です」。【岩田剛典】ヘアメイク:槌田美希(DIFINO akasaka)スタイリスト:ジャンボ(SPEED WHEELS)【高畑充希】ヘアメイク:市岡愛(PEACE MONKEY)スタイリスト:大石裕介(DerGLANZ)(text:Rie Shintani/photo:Nahoko Suzuki)
2016年06月02日代表作は俳優にとって、一つのステータス。その反面、そこで演じた役柄は強烈なイメージとして付きまとい、足かせとなる場合がある。20代で得た当たり役「のだめカンタービレ」は、俳優・玉木宏(36)にとって“諸刃の剣”だった。だが、玉木さんはその剣を器用に握りしめて10年ほど歩んだ結果、記録的視聴率の朝ドラ「あさが来た」に出会う。ところが当の本人は、その成功にも安住しない。「ここで満足したら成長は止まる。違うことに進まなければいけない。過去に自分が作り上げてきたものを壊していく作業をしていきたい」とストイックだ。しかし厳しい言葉とは裏腹に、表情は至って穏やか。その理由は“30”という数字にあった。「のだめ」ブーム真っただ中の20代、すべての環境がガラッと変わった。「様々な仕事が同時進行的に重なった時期。体は休みたがっているけれど、頭に入れていかなければいけない状態で、ジャンジャン新しい仕事も入ってきて、追いつかないけれど追いつくしかない。正直『うわー!』となったこともあります」。ブレイクの裏には知られざる苦悩があった。しかも2000年代は、玉木さんと同年代の若手俳優が乱立した“若手戦国時代”。「同年代のライバルが多く、我先に!と少ないパイの取り合い。20代は焦りばかりでした」とふり返る。心境の変化は30代突入を期に訪れる。「30」という年齢を分水嶺として、玉木さんと並走していた同年代の俳優たちが、それぞれの道を歩み出した。俳優を辞める者もいれば、自らのポジションを確立する者も…。玉木さん自身、30歳を起点に俳優を辞めていた可能性もあったという。それを引き留めたのは、この仕事が持つ“答えなき答えを追求する”面白さだった。「芝居には明確な答えがない分、奥が深い。これが数学のように単純明快に一つの答えが出てしまうような仕事だったら、僕自身もすぐに辞めていたかもしれない」。焦りは薄まった。しかしその分、俳優としての自分を客観的に見つめることが増えた。“答えなき答えを追求する”面白さは、実は迷宮と表裏一体。30代後半になると、難しさを感じることも多くなった。「幼少期に思い描いていた夢のステージにいまの自分がいるかというと、そうは思えない。テレビや映画に出演させていただいているけれど、出たら終わりの世界ではない。演技をして結果を残さなければいけないし、責任も生まれる。煌びやかに見える一方で、経験すればするほど難しさも増える。大袈裟かもしれないけれど、アスリートの世界に近いものがある」と笑う。その迷宮を抜け出す答えはまだ見えないが、前進するしかないことだけは分かる。「仕事を自分で選り好みしていないからこそ、これまでも色々なものに触れられて、吸収してきた。30代はこれから迎える40代、50代の基盤になるもの。20代以上に大事な時期。朝ドラの好調はとても嬉しいけれど、ここで満足してしまったら、成長は止まる。過去に自分が作り上げてきたものを壊していく作業をしていきたい」と後退は厳禁だ。プライベート面の充実も、これまで以上に視野に入れている。「朝ドラでは父親役をやって、おじいちゃんにまでなったけれど、父親を演じるときは、自分自身父親である方が芝居に説得力が生まれるはず。朝ドラのように、家族皆が隠し事なく様々な話をして、最期は家族全員に看取られるという姿には憧れます。そういった経験は、実際に家庭を持たなければ実感できないことですから」といつかの未来に思いを馳せる。新たな境地に立った玉木さんが「いまの年齢だからこそ、演じさせていただくことに意味がある」と思いを込めるのは、6月4日(土)公開の主演映画『探偵ミタライの事件簿 星籠(せいろ)の海』。IQ300超の天才脳科学者の御手洗潔役で「衣装合わせでは僕の意見を尊重してもらえました。外出時の衣裳は黒では重い気がしたので、御手洗潔のキャラクター性を壊さないように、ビビットなカラーは外してアースカラーを取り入れた」とこだわった。原作者・島田荘司もそのトレースぶりを絶賛。玉木さんは「和泉聖治監督も島田荘司さんも信頼してくれるからこそ、それがプレッシャーにもなった。でもお二人が喜んでくれるので、それを信じて演じ切ろうと思った」と控えめだが、作品を躍進させる原動力は“座長・玉木”の存在にあることは間違いない。(text/photo:Hayato Ishii)
2016年06月01日アカデミー賞女優のシャーリーズ・セロンが“邪悪な女王”ラヴェンナとして、グリム童話の名作「白雪姫」の世界で悪のパワーを発揮するアクション・アドベンチャーの続編『スノーホワイト/氷の王国』。シリーズ最新作にはシャーリーズやハンターのエリック役のクリス・ヘムズワースのほか、新たにエミリー・ブラント、ジェシカ・チャステインといった人気女優が参戦したことでも話題に。今回、本作のアジア・プレミアを開催したシンガポールで、クリスとハンターのサラ役を演じたジェシカにインタビューを実施。華麗なるアクションシーン撮影やクリスが3大女優たちのイジメに遭っていた(!?)秘話について聞いた。エミリー・ブラント演じる“氷の女王”フレイヤも加わって邪悪な姉妹が魔法の鏡で世界を手に入れようとする陰謀を、ハンターのエリックとサラが鏡を破壊することで阻止しようとする続編のストーリー。エリック役を続投したクリスは、「前作とは違うことをトライしてみたかった」と本作への期待感を持っていたことを明かす。「もちろん前作もファンだけれど、作品世界の中でもっと楽しみたかった。今回は以前ほどダークになりすぎないテイストで、冒険心と好奇心が膨らみながらもドラマもしっかりある。そういうバランスがいい世界が組み合わさった中でのキャラクターだったので、とても楽しみにしていたよ」。エリックの幼なじみで同じくハンターであるサラ役のジェシカは、「ほかとは違ったおとぎ話になるって楽しみにしていたわ」と本作の魅力を明かす。「いわゆる囚われの、救いを待っているお姫さまの役柄ではなくて、女戦士の役柄なのよね。こういったおとぎ話のキャラクターとしては、すごく現実的な作りだったと思うわ。お互いのキャラクターをすごく補完し合うようなキャラクターだったと思ったから、それも含めて楽しみにしていたの」。ハンターという役柄だけに、激しいアクションも魅力のひとつ。荒々しく斧を振り回すシーンもあれば、鳥のように華麗に宙を舞うなど、「物語のタイミングによって違ってくる」と多彩なバリエーションがあることをクリスは説明する。「最初は必死だよ。戦いの中で生死がかかっているからね。そこには苦悩もある。一方で、サラに見せびらかすような戦い方をする場面もある。そう、クジャクが羽を広げるように。彼女の気を引くためにね(笑)」。ジェシカも、「何種類もあるの」とうなずく。「彼はいい印象を与えたいのよ。ウィンクをしているような戦いっぷりもあるわ。でも、そんな彼の腹に一発キメるのがあたしよ(笑)」。ちなみにクリス以外のメインキャストが、シャーリーズ・セロン、エミリー・ブラント、ジェシカ・チャステインという大女優陣!ゆえにオフキャメラのところでクリスが3人の女優のイジメに遭っていたというネタも上がっているが、「受けるべきからかいを受けただけで、彼が被害者ヅラをしているだけ(笑)」と噂を完全否定するジェシカ。その上、「クリスのほうこそやりすぎなの」とジェシカが畳み掛けると、「おいおい、ウソだよ!僕をイジメるのは止めてくれ(笑)!」と応戦するクリス。屈強な戦士を演じておきながら、「僕のハートは傷ついていたからね!」と外見とは裏腹なか弱い発言でジェシカの笑いを誘う。最後に『スノーホワイト/氷の王国』は、「とにかく楽しみながら観てほしいけれど、愛はすべてを克服する作品なの」と本作が提示するメッセージをジェシカが代弁。それを聞いたクリスも「そうだね」とうなずいて、こう補足する。「愛!そのとおりりだし、子どもへの愛、妻や夫、恋人、パートーナーへの愛、そういう愛というものは、人生を前に進める推進力になるから、そういう部分を感じてほしいな。この映画を観た後、自分にとっての愛は何だとか、自分には戦う準備があるのかどうか考えてくれたらすごくうれしいよ」。(text:cinemacafe.net)
2016年05月30日「自由になれる瞬間があるんですよね」――。森田剛は静かに、ポツリとつぶやくようにそう語った。こちらが投げかけた質問の内容は「いま、どんなところに役者という仕事、役を演じることに対する楽しさを感じているのか?」というもの。脚本に書かれている他人の人生を生きる。そこには当然、セリフだけでなく動きなども含め、約束事や縛りが存在する。そうした状況で“自由”を体感するというのは逆説的である。「そうなんですよね(笑)。特に舞台となると、立ち位置とか決まってることが多いんですけど…その中で、いろんなものを解放して自由になる感覚があるんです。それが楽しい」。ここ数年、V6での活動に加え、役者として舞台での経験を地道に積み重ねてきた森田さん。2010年の『人間失格』以来の映画出演となった『ヒメアノ~ル』では、自身と同じ森田という名の、連続殺人鬼の役を演じ、恐ろしいまでの存在感を放っている。今年度の映画賞レース…いや、日本の映画史にも名を刻むであろう稀有なる凶器の男をどのような思いで演じたのか?演じることで自由の翼を手に入れる男の胸の内に迫る。原作は「行け!稲中卓球部」で知られる人気漫画家・古谷実の“問題作”。清掃会社で働く青年・岡田(濱田岳)は、ひょんなきっかけで高校の同級生だった森田と再会する。岡田の知る森田は、高校で壮絶なイジメを受けていたが、いまでは欲望のままに人を殺める快楽殺人者となっており、あることがきっかけでその狂気が再び暴走し始め…。映画は、ごく平凡な青年・岡田の不器用な恋愛模様と殺人者・森田の凶行という2つの物語が展開し、徐々に絡み合っていく。自身が出演していないパートも含め、完成した作品を見て森田さんは「2つの両極端な世界が森田の色に徐々に染まっていく過程はすごくドキドキしたし、気持ち悪さを感じました」と明かす。森田が醸し出すこの気持ち悪さとは何なのか?決して『ダークナイト』のジョーカーのような、見た目からして“いかにも”な悪役ではない。「殺人鬼役だけど強烈なキャラでもないし、どこにでもいそうなヤツなんですよね。でもそういう“普通”の男に普通の人々が染まっていく…それがすごく怖いなと思います」。演じる上で意識したのは、まさに「いかにも『僕、殺人鬼やってます』という感じを出さないこと」だった。「監督(吉田恵輔)から言われたのが『人間、何考えてるかわかんないし、さっき考えていたことも忘れちゃうくらい、集中力なんて長続きしない。さっきまで人を殺してた人間が、普通に飯を食べていたりする』ということ。アパートで人を殺すシーンがあっても、それをなるべく引きずらないように、後ろに控えてる撮影のことなども考えずに、その瞬間を生きることに集中しました。通常であれば、その人物に起きたひとつの出来事は、その後に何かしら影響していくものだけど、この役に関してはなるべく影響されないように気をつけましたし、それは初めての経験で難しかったです」。近年、主戦としていた舞台では「金閣寺」、「祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹~」、「鉈切り丸」、「夜中に犬に起こった奇妙な事件」、「ブエノスアイレス午前零時」と様々な葛藤や苦悩、欲望を胸に抱えた主人公を見事に体現してきた。およそ6年もの間、映画から遠ざかっていたことについて、特に理由はないとしつつ「舞台でお芝居を勉強したいという気持ちはずっとあって、それをいつか映像の世界でチャレンジできたらと思ってました」とも。「これ!」と具体的にハッキリと、舞台での経験が今回の森田役に活かされたかを説明することはできないかもしれないが、その佇まいや向き合う過程の中に刻み込まれているはずだ。「蜷川(幸雄)さんの舞台で、首吊り自殺をした人間と会話をするシーンがあったんです。蜷川さんはその時『ハエが見える』って言うんですよ(笑)。『頭の中をハエが通って、それを振り払いながら会話をするんだ』って。森田を演じている時、なぜかそのことを思い出しましたね。こういう役に関しては、これまでも多かったので免疫はついてました(笑)」。とはいえ、殺人者を演じていく中で、自分なりに気持ちをコントロールすることも必要だった。ロケではこんな工夫も。「空き時間にペットショップに行って気持ちを落ち着かせるのが毎日のリズムになってました。最初は平気だと思ってたんですよ。でもひとり殺して、2人殺して…3人目、4人目を殺すシーンを撮影したくらいからだんだん重い気持ちになってきて。何かないか?と考えて、ペットショップは必ずどこかにあるので、事前にロケ地の近くのお店を探しておいて、動物たちを見て、また現場に戻るという。さっきも言ってた、シーンごとに忘れるという意味でもちょうどよかったです。『ちょっと重たいなぁ』という時は行ってました」。現場の雰囲気や共演者との関係性は?「現場は普通でした。ただ、やはりバカ騒ぎはできないし、(共演者と)一緒に並んで座っていても、黙る時間、集中する時間は多かったですが、監督の人柄もあって明るい現場でしたよ。そこでも、なるべくひとりの世界にグーッと入り込み過ぎないようにはしてました。なるべく人と目を合わせて…だんだん、合わせたくなくなっちゃうんですよ(苦笑)。どうしても下を向きたくなっちゃって」。ためらいも葛藤も、「なぜ殺すのか?」という理由もなく他人の命を奪っていく森田。行動原理が全く理解できないが、森田さんは「わからないことをやる方が楽しい」とも。いや、そもそも、世間の目からしたら、ジャニーズアイドルが、映画で連続快楽殺人者を演じるということ自体、大きなニュースだが、そこにためらいや、自身のイメージに対する心配などはなかったのだろうか?「それは全くなかったです。むしろ、こういう取材でそうやって聞かれることが多くて、だんだんそう思えてきたくらいで(笑)。語弊があるかもしれないけど、舞台をやっていても、正直、お客さんがどう思うか?という部分はあまり興味がないんですよね。ある意味、無責任に自分たちや演出家が『これが面白い』と思えるものをやれればという気持ちです。だから今回の映画に関しても、原作のファンの方に対しても『映画はこうなりました』と自信をもって言えます」。ジャニーズの俳優の中でも異彩を放つ37歳。「お芝居がどんどん好きになっていくし、楽しいなって思います。それは20代のころはあまり感じなかったことですね」。40代、さらに先とどんな姿を見せてくれるのか?その時、森田剛はどんな自由を手にしているのだろうか――?(text:Naoki Kurozu)
2016年05月30日累計550万部突破の大ヒット少女コミックを映画化した『オオカミ少女と黒王子』。彼氏いない歴=年齢の高1のヒロイン・エリカと、彼女に請われるまま彼氏のふりをするイケメンの同級生・恭也の嘘から始まる本気の恋を描くラブ・コメディ作で、実は素顔はドS な“黒王子”こと恭也の親友、日比谷健を演じているのが横浜流星だ。恭也の中学時代からの親友で、父親が経営するカフェの手伝いもする健について「とにかく明るくて、恭也が唯一心を開ける相手です」と言う横浜さん。「エリカちゃんから悩みを打ち明けられれば、全力で聞いて答えを出してあげる。自分のことよりも人のことをちゃんと思える、すごく素敵な子だなと僕は思いました」。健との共通点として、「みなさんもそうだと思いますけど」と前置きしながら、「友達をすごく大事にしています」とまず1つ。「僕、結構友達から相談を受けることが多くて、自分なりに考えて答えたりしているんですけど、そういうところはちょっと似ているのかな、と思いながら演じていました」。中学生から芸能界の仕事を始めていた横浜さんには、同級生たちは頼れるおにいさん的なイメージがあるのかも?「どうでしょう?中学校の時はやんちゃな感じだったので、全然そんなことなかったんですけど、高校に入ってから仕事も真剣に始めて、そういうのもあって、頼ってくれたりしているのかな。自分は全然心当たりはないんですけど。でも、嬉しいですよね、頼られるのは」。同世代のキャストが大半を占める撮影現場の雰囲気は「締めるところは締めて、でも撮影合間にはくだけるというか。すごく切り替えがうまくいっていると思いました」と言う。エリカ役の二階堂ふみ、恭也役の山崎賢人とはこれが初共演だ。「お2人ともすごく優しくて、気を遣ってくださいました。賢人君は事務所の先輩なんですが、本当に話しやすくて。僕はちょっと人見知りなので、自分から話せなかったんですけど、向こうから話しかけてくれて、すごく助けてもらいました」劇中では対等に平然と向き合う恭也と健だが、主演2人よりも2歳下の横浜さんは「緊張してました、かなり」と苦笑い。「そこは反省なんですけど、緊張しちゃって」とつぶやく表情に真面目な性格がうかがえる。本作の監督は『ストロボ・エッジ』の廣木隆一。「監督には感謝の気持ちでいっぱいです」と横浜さんは撮影時をふり返る。「現場に入るとメイク前に一緒に本読みをしてくださるんです。そこからお芝居をいろいろ付けてもらって、何から何まで1つ1つ丁寧に教えてくださって。本当に感謝の気持ちでいっぱいです」。具体例として1つ挙げてくれた。「健ってすごく明るいのですが、僕は事前に漫画やアニメを見て、身ぶり手振りが多かったので、そういう仕草をつけてみたいと思っていたんです。でも、それを自然にやることができなくて。それを見た監督から『そんな仕草をする人って現実にいないでしょ』と言われて…。普通に、現実にその人がいると思って演じてほしいと言われて、その通りだと納得しました」。TVの「烈車戦隊トッキュウジャー」シリーズに出演後、舞台に出演していた横浜さん。「舞台ですから、少し大げさというか、ナチュラルよりもオーバーなリアクションを求められることが多かったので。でも台詞を言うにしても『健は明るくてアツい、いいヤツなんだから、台詞までアツく言っちゃうと暑苦しくなっちゃうから、サラッと言った方がカッコいい』と言ってもらって。本当にその通りなんですよね。廣木さんに言われなければ、そのままやっていたと思うので、今このタイミングで廣木さんと出会って、すごくよかった、ありがたかったと思います。自分の中で“これはこうだから”と決めつけていた部分があったんですが、それを1回全部壊されて。だからこそ、新しく1から教えていただくことができました。今後も活かしていかなくちゃ、と思っています」それにしても、エリカと恭也の関係はフィクションとはいえ、かなり特殊。横浜さんも「僕自身、現実的に考えると、あり得ないなと思っちゃいますよね」と本音をポツリ。「自分がもしそう頼まれても嫌ですし…。嫌というか、むしろ『どうしたの?なんで?』と話を聞いてあげたくなります」というのも、相談を受けやすい横浜さんらしい。昨年高校を卒業した彼は、現代高校生の恋愛事情について聞いてみると…。「たとえばカップルが1組いて、そのどちらかと仲のいい彼氏のいない女の子がいて、ダブルデートをしたいがために誰でもいいから彼氏を作る、みたいな話を聞くことがあって。ほんとに好きじゃないでしょ?ただダブルデートして、リア充な自分を見せびらかしたいだけでしょ?ほんとに相手のことを好きなのか?って。それこそ本編にも出てきますけど、『恋愛している自分のことが好きなんだろ』と思います」。自身の高校時代については「空手もやっていたので、友達を優先していて。恋愛以外は充実していました」と笑う。「女の子と話したくないわけじゃないんですけど、恥ずかしいだけで、すごく冷たくしていました。素直になれない自分がいました(笑)。でも、やっぱり制服を着て放課後デートして…みたいな、キラキラした青春時代を過ごしたかったなと。今になって思います(笑)」そんな思いは本編を見た感想にもつながる。「女性が胸キュンするようなシーンもたくさんありますが、自分もこんな学園生活を過ごしたかったな~と思いました。それくらいキラキラしていて。キャラクターが本当にそれぞれ魅力的なところもすごく素敵でした。原作を知ってる方はもちろん知らない方にも楽しんでいただけるんじゃないかと思いました」今年も映画や舞台の予定が続々決定している。「今後は映像作品も舞台も全力でがんばりたいと思っています。役を通して自分と違う人生を歩めるのは魅力的です。役者をやることによって得られることがたくさんあるので」と目を輝かせて語る横浜さん。活躍の場が広がっていくことは間違いない。(text:Yuki Tominaga/photo:Nahoko Suzuki)
2016年05月26日生活総合雑誌「暮しの手帖」(暮しの手帖社)を創刊した大橋鎭子と花森安治の軌跡をモチーフに、4月から始まったNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」。10歳のころに父親を病気で亡くした後、家族を守るため「とと(=お父さん)」になると宣言した三姉妹の長女・小橋常子を高畑充希が演じている。父親の死後、母親と三姉妹の4人家族となった小橋家は、静岡・浜松から東京に移り住んだが、その小橋家にふらりとやってきてはすぐに去っていく一風変わった人物がいる。亡くなった父親の弟・小橋鉄郎(三姉妹にとっては叔父)で、演じるのは向井理。「ゲゲゲの女房」(2010年上半期)以来6年ぶりの朝ドラ出演となった向井さんが、「とと姉ちゃん」に参加して感じた朝ドラの「進化」と、ヒロインに抜擢された高畑さんへの期待を語った。鉄郎は生まじめだった兄とは違って、定職に就かず、一獲千金を夢見て、砂金、うなぎの養殖、カブトムシの販売など、あちこちに手を出しては失敗ばかりしている風来坊。小橋家のいる場所に突然やってきては、引っかき回して去っていく。三姉妹からは「定職に就いて下さい!」と説教されてしまうという人物だ。そんな鉄郎を演じていて、向井さんは、「思い返すと、あまりやったことがない役なので新鮮です。明るい役なので気楽にやれますね。嫌われないようにやらなければならないと思いますけど、どこか『面倒くさいな』と思われるような調子のいい役です。こっちも調子が良くなるので、楽しいです」と心境を明かす。ヒロイン役の高畑さんについては、「すごくまじめな方ですね。出来上がっている感じがしますので、僕が何かを言うことはありませんが、本当にしっかりしています」と絶賛。一方では、「高畑さんはブレないから、ブレさせるのが大変です」とも。イタズラ心を持ちながら役に挑む向井さんは、高畑さんを“ブレさせる”ためにアドリブを行うこともあるそうで、「高畑さんをドキッとさせたいなと思って、顔が近づいたときに、本番だけウインクをしたことがあります。高畑さんは、固まっていましたけど(笑)。でも、それがキュートでした」と撮影現場での一幕を回想し、「お芝居もしっかりしています。ただ、あたふたしなければいけないときがあります。NGになってもいいので、肩の力を抜いてやってもらいたいなというときに、僕みたいなキャラクターがいると便利なのかなと思います」。朝ドラに出演するのは、ヒロインの夫である村井茂(水木しげる)役を演じた「ゲゲゲの女房」以来6年ぶりとなる向井さん。「とと姉ちゃん」に参加して、朝ドラが「進化している」と感じたそうだ。「とと姉ちゃん」は「ゲゲゲの女房」と同様に「派手さと言うよりは、台本の良さを繋いでいく作品」とするも、ドラマとしての総合的なクオリティという観点では「いままでとは計量が違う作品だなと思います」と驚きを明かした。「技術的なものやテクニックだけではなく、カメラの性能だったり、色々なもののクオリティがどんどん上がっているなと思います。現場で見ていて分からないことを、オンエアされたものを見て発見することもあるので、オンエアがとても楽しみです」。劇中では、浜松時代に、闘病中のため家族で花見に行くことができず残念がっていた父親を励ますため、常子たちが花が散った桜の木に、布で作った花びらを満開に取り付けた場面があった。向井さんは、「布で作った桜の木を撮ったり、ああいうのはいままではなかったな」と感慨深そうに思い返していた。風来坊とはいえ、父親を失った小橋家にとっては唯一の男の親類となった鉄郎。行動力はあるものの一本気で生まじめな面もある常子では想像すらできないことを、さらりと口にしたりもする。そんな鉄郎が今後、小橋家とどう係わり、常子にどんな影響を与えていくのか。向井さんが演じる鉄郎にも注目したい。(竹内みちまろ)
2016年05月24日ダイアナ・ガバルドンのベストセラー小説を原作に、18世紀のスコットランドにタイムスリップしたヒロイン、クレアの数奇な運命を描く「アウトランダー」。今秋Blu-ray&DVDのリリースも予定されている同作のシーズン2突入を記念し、クレアと恋に落ちるスコットランド戦士ジェイミーを演じるサム・ヒューアンが来日した。来日に合わせて開催されたファンイベントには、熱心な視聴者(特に女性!)の応募が殺到。演じる役柄共々、サム・ヒューアンは人気スターの仲間入りを果たした。何せサム演じるジェイミーは、好奇心旺盛で、肉体もたくましいスコットランド戦士。そんなジェイミーを演じるサム自身からも、役柄に通ずる魅力が感じられる。「ジェイミーは良くも悪くもアクティブだから、やたら戦いに巻き込まれるんだ(笑)。でも、彼のそういった面が僕は嫌いじゃないし、演じるのが楽しい。スタントもほとんど自分でこなしているよ。馬に乗り、剣を持って戦うのは大変だけれど、いい気分だね。僕自身、体を動かすのは大好き。ここのところ少し怠けた生活を送っているから、撮影中に僕を鍛えてくれたパーソナルトレーナーには怒られちゃうだろうけどね(笑)」。ジェイミーが、そしてサムが世の女性たちを夢中にさせるのは、もちろんアクティブな面からだけではない。劇中では、未来から来たクレアと18世紀を生きるジェイミーのロマンスが展開。未来の女性だけに進歩的で、知恵があり、意志も強固なクレアもさることながら、そんな彼女に偏見を抱かず、やがて秘密を知ってなお愛し抜くジェイミーが魅力的だ。「ジェイミーはありのままのクレアを受け入れる器の大きい男。未来から来たことを告白され、不思議な状況を理解し切ることはできなくても、彼はクレアを信頼し、受け入れるんだ。シーズン1の前半で、ジェイミーは彼女が何か秘密を抱えていると気づきつつも、彼自身が秘密を抱えていることもあり、訳ありな者同士として互いを尊重し合う。そんな彼らを運命の2人と言っていいかどうかは分からないけど、僕は運命の瞬間というものを意識して演じたかった。怪我をして、手当てをしてもらい、パッと目が覚めてクレアと目が合ったとき、彼女こそが運命の相手だとジェイミーは思ったのだと思う」。また、「ジェイミーのクレアに対する愛は高潔なもの」とも。2人の愛の軌跡に言及する。「僕たちの生きる現代に、彼らのような無条件の愛があるかどうかは分からない。でも、理想に思う人は多いんじゃないかな。僕自身もそんな風に人を愛せたらいいなと思う。シーズン1でも、シーズン2でも、ジェイミーとクレアの前には様々な壁が立ちはだかる。いろいろなトラブルに巻き込まれ、いろいろな衝突が起こるんだ。けれど、2人は互いを無条件に愛しているから、試練を乗り越えてより強固な関係を築いていく。どんなに邪魔が入ろうとね。それってある意味、むしろモダンな関係と言えるんじゃないかな」。「どんなに邪魔が入ろうと」。この一言で、シーズン1のクライマックスを思い起こした番組ファンは多いはず。イングランド軍の冷酷な将校であり、ジェイミーに異様な執着を見せる男・ランダルが、クレアとジェイミーの前に立ちはだかっていた。「ジェイミーとランダルの関係は、意志の戦いとも言える。ジェイミーは強固な意志を持つ男だから、ランダルに屈したりはしないんだ。そのせいで、ランダルは自分の思い通りにできないジェイミーに固執する。彼は人を支配して操るのが好きだからね。シーズン1のクライマックスでは、そんな2人の関係が顕著になる。ジェイミーを支えているのがクレアへの愛だと知り、ランダルは彼の中のクレア像を壊そうとするんだ。でも、体を支配することはできても、心を支配することはできない。本当に壮大なバトルだと思うよ」。さらに、ジェイミーとクレアの愛を揺るがすのは、ランダルだけではない。クレアが元いた世界で愛情を育んでいた夫であり、実はランダルの子孫にあたるフランクの存在も、クレアの心を引き裂く。「よくできたストーリーだよね。僕たちのドラマは原作以上に、クレアがジェイミーを愛するように、夫であるフランクを愛していたのだとしっかり描いている。だからこそ、クレアはジェイミーへの愛とフランクへの愛の狭間でものすごい葛藤を抱えるんだ。実を言うと、シーズン2の第1話は、これまでジェイミーを応援してくれていた人も、フランクを応援したくなる内容になっている。困ったことにね(笑)」。話の及んだシーズン2は、「よりスケールの大きい、緊迫した展開になる」とのこと。ジェイミーを演じ始めてから、すでに2シーズン。サム自身を取り巻く状況も激変した。「2000年に演劇学校を卒業して以来、僕はずっと俳優として活動してきたのだけど、だからこそ俳優という仕事の不安定さも感じているんだ。どんなに素晴らしい作品に巡り合えても、それが永遠に続くわけじゃないからね。『アウトランダー』のような作品に出演できて、こうして東京に招いてもらえるのが毎年続けばいいけど、そういうわけにもいかないだろうし(笑)。だから、僕はどんな仕事をするときも、初心に返ることを忘れないようにしている。そして、自分自身に関して学ぶ機会だと捉えるようにしている。そうすることで、恵まれた立場にある自分と適度な距離を保つことができていると思うんだ」。では、ジェイミーをあと何シーズン演じ続けたい?最後にこう尋ねると、地に足のついた彼らしい答えが返ってきた。「ジェイミーという男がどんな変化を遂げていくのか。それはもちろん原作を読めば分かることだけど、シーズン1と2だけを比べてみても彼は随分と変わった。だから、この先のジェイミー、そして自分が2~3年後、どうなるのかすごく楽しみなんだ。誰かに肩を叩かれて番組が終わるような状況は嫌だし、人気のあるうちに終わるのが理想だとは思うけど、できるだけ長く、変わりゆくジェイミーを演じ続けたいな」。(text:Hikaru Watanabe/photo:Nahoko Suzuki)
2016年05月22日『海街diary』の脚本執筆のさなかの2013年の夏、是枝裕和監督は以前から温めてきた、団地を題材にした脚本の第一稿を書き上げた。執筆の時点で、団地にひとりで暮らす老いた母として、樹木希林をイメージしていたという。2人が初めて作品を共にしたのはお盆に両親の家で顔を揃えた家族の姿を描いた『歩いても 歩いても』(’08)。その後も『奇跡』、『そして父になる』、『海街diary』において、主人公たちの祖母、義母、大叔母という立場で、出演シーンは多くないが絶妙な存在感を見せてきた。『歩いても 歩いても』は、いしだあゆみのヒット曲「ブルー・ライト・ヨコハマ」の一節を用いたタイトルだが、今回の最新作につけられた『海よりもまだ深く』というタイトルもまた昭和歌謡の名曲でテレサ・テンの「別れの予感」の歌詞に由来しており、阿部寛が息子役を演じているという点も同様!作家崩れで探偵として暮らすダメ中年の良多とそんな息子をそれでも愛する母、良多に愛想をつかし彼の元を去った元妻と妻に引き取られた息子の4人が、台風の一夜をひとつ屋根の下で過ごすことになるが…。約8年の歳月の中で是枝監督はどのように変化し、5本もの作品を共にした樹木さんは何を感じたのか――?――脚本の執筆段階で樹木さんをイメージしていたそうですが、ここで描かれる団地に住まう母親には、是枝監督ご自身の亡きお母さまが反映されているのでしょうか?是枝監督:似てる部分はあります。ただ、『歩いても 歩いても』のときもそうだったけど、「僕の母親を演じてほしい」とお願いしたわけじゃなく、あくまでキャラクターとして別人格で作られてます。僕の母のいろんなところ――すごく“世間”であるところや“毒”である部分になっていただいてるのは間違いないですね。――樹木さんは、是枝作品における“母親像”について、どのようにお感じですか?樹木:私も監督の母親として捉えているわけじゃなくて、女の人、母親であれば誰もが持っているであろう、かわいらしさとちょっと意地悪なところ、そういうのを含めて「母親になるとああなるんだろうな」と感じるところはあります。――映画の中では、真木よう子さんが演じた良多の元妻を例に「いまの母親」について少し批判的な部分もありますが…樹木:女の人の生活力が上がるのは素晴らしいことだけど、その分、自由になるので、昔の「食べていけないので我慢する」ということの良い部分まで捨てているんだなとは感じますね。自分の意思通りに進むことで、逆に女の人が持つ忍耐強さが磨かれないままに終わってしまうところもある。それを含め、女性の地位が向上するというのは、良いことであり、一方で損している部分もあるのかもしれませんね。是枝監督:ただ、映画はそれが正しいとか間違っているとかジャッジするわけじゃなくて、そういう育ち方をしてきた老いた母親は、おそらくいまの若い母親たちをそう見ているんだろうという描き方をしています。――監督が最初に本作を構想したのは2001年とかなり早い時期だったそうですが…是枝監督:「団地を撮りたい」と考えたのはそれくらいですね。――『歩いても 歩いても』以降、『奇跡』『そして父になる』『海街diary』とほぼ一貫して“家族”の物語を紡いでいますが、2001年に頭に浮かんだ団地の物語をいまこのタイミングで形にしたのは…是枝監督:この作品のノートを作り始めたのが2009年で『歩いても 歩いても』の公開のすぐ後なの。その段階で(キャストは)阿部さんと樹木さんだったんだけど、実際に、きちんと物語になったのは撮影の1年前くらい。その間に、僕も阿部さんも父親になったというのが、一番大きいと思います。『歩いても 歩いても』は息子から見た親の話で、原田芳雄さんが演じる父が生きてたけど、そこに父親から見た息子という視点を加えたのは、やはり僕が父親になったからでしょう。――『歩いても 歩いても』以降のご自身の各作品の影響、テーマの連続性という部分はありますか?是枝監督:ほかの作品との関連付けは観る側がすることで、自分の中で、別の作品を引き継いだりというのはあまりないんですよね。テーマや関連性は意識してというより、自然に出てくるんですよね。樹木:時代背景とか、あとは誰が映画製作にお金出してくれてってところで作る順番が変わったりもするからね。結果的にこうなったというもんなのよ。是枝監督:そう(笑)。ただ、『海街diary』の脚本と並行してこの作品も書いていたので、向こうは原作があり、僕がそこにどうコミットするかという作業だったし、あっちは背筋を伸ばして生きようとする人たちの物語だから、自分の中のバランス感覚として、こっちは背中を丸めた人たちの話をやりたいというのはあった気がします。樹木:あっちは憧れの美人女優がいっぱいいて背筋が伸びたっていう夢の映画作りで、こっちは(現実の世界に)密着した映画作りなの(笑)。――樹木さんは、作品ごとに監督を見ていて変化は感じますか?樹木:それは感じないけど、ただ、監督にも失敗作ってあるわけですよ。本人は「全部が代表作」とか言うかもしれないけど。是枝監督:言ってませんよ(笑)!樹木:私は「この作品はちょっと…」なんて文句を言うんですけど、ただ、そうは言っても、その都度、人間を見る目というのは成熟してるなと感じますね。上から目線ではなく、(登場人物たちの目線にまで)下がって一緒に生活しているというか。一緒に物を作っているという感覚が魅力的ですよね。――役者に対する接し方に関しては…樹木:それは最初から変わらず平等です。子どもだろうが、何十年やっている役者だろうが、態度が豹変することもない。それは人間として基本的なことだけど、そうじゃない監督、現場って多いから。そういう意味で信用が置けるんです。ただね、時々、私のような何十年もやってるに人間に遠慮がちなことがあるから、もっとズバっと言ってくれていいわね。この顔立ちじゃ、いくらいばっても偉そうになんて見えませんから。もっと大胆にね。是枝監督:なるべく子どもにも、橋爪(功)さんにも、希林さんにも同じように接したいと思ってるけど、それは希林さんがまさにそうですからね。誰にでも同じなんです。樹木:子どもと本気でケンカしてるから!是枝監督:全然、遠慮しないですから。かっこいいんです、それが。それがかっこいい大人なんだって、希林さんを見てると思います。――『歩いても 歩いても』と同じように昭和歌謡が出てきますが、最初の構想の段階から歌ありきで?それとも物語が先だったのでしょうか?是枝監督:歌ですね。樹木:好きなんですって、あの曲(テレサ・テン「別れの予感」)。私は初めて聞いたんだけど、なかなか覚えられなくて(苦笑)是枝監督:どこかのタイミングで、映画の中で一曲かけるってことを決めたんです。そことは全然関係ない、探偵のシーンから書き始めたんだけど、どうやってテレサ・テンにたどり着くのか?自分でも楽しみにしながら書いてました。樹木:へぇ、そんな書き方するのね?――監督の中で、そもそも昭和歌謡が好きというのが大きいんですね。ちなみに一番お好きな曲は?是枝監督:沢田研二かな(笑)?樹木:「壁ぎわに寝がえりうって背中できいている」って是枝監督:そう、やっぱり「勝手にしやがれ」ですかね。子どもの頃に見てかっこいいなって。かっこよかったんですよ、あの頃の沢田研二やショーケン(萩原健一)。子ども心に「色っぽいな」ってわかったんだよね。※余談だが、向田邦子脚本のTVドラマ「寺内貫太郎一家」で樹木さん演じる祖母が沢田研二の大ファンという設定で、壁のポスターに向かって「ジュリー!」と叫ぶ名シーンが!――ではあの当時のTVドラマなども?是枝監督:「前略おふくろ様」、「傷だらけの天使」(どちらも萩原健一主演)で育ってるからね。原点だね。――本作の中には、何気なく発せられるセリフに深い含蓄があります。子どもが口にする「フォアボールを狙ってる」や「パパはなりたいものになれた?」といった言葉にドキッとさせられたりします。脚本段階で樹木さんにあて書きしたということですが、樹木さんに「これを言ってほしい」という思いで書いたセリフなどはありますか?是枝監督:セリフありきではなく、書いていくうちに出てくるんですよね。だから最初から「このセリフを言ってほしい」というのはなかったかな…?ただ「みんながなりたかった大人になれるわけじゃない」というのは、阿部さんがどこかで言うと決めてました。でも、ジーンと来るような感じで言いたくないので、笑っちゃうようなシチュエーションでと決めてました。――あえて、あのひどいシチュエーションで…(笑)?樹木:それはね、そういうもんなの。いいセリフほどそうなのよ!是枝監督:あのセリフは、よくない状況で言わないと。樹木:「さあ、いいセリフを言うぞ!」ってわかってて言うのは…高倉健にしかできないわよ!是枝監督:あの状況はひどいでしょ?ひどいからいいんだよね。阿部さんが言った後、隣にいる池松(壮亮)が吹いちゃう(笑)。「お前がそれ言うか?」って感じで。あのシーン以外でも、希林さんが良いセリフを言った後で「私、いまいいこと言ったでしょ?」と言う。そこは崩さないと、本当にいいこと言ったと思っちゃうから。自分でいいことを言った後に崩すのが、あのお母さんの品なんだよね。樹木:品なのよ、そこは。余談だけど「寺内貫太郎一家」で(自身が演じた)ばあさんが、食べてる最中にグシュっとやったり、汚いことするの。でもそれをその中にいる人間が「きたねーな、ばあちゃん!」って言う。そう言わせないと、作品自体が下品になっちゃうのよ。中の人間に言わせて解決する。それが日常生活のシーンの鉄則なの。是枝監督:面白いですね。――逆に、監督ご自身が書いたセリフなのに、樹木さんが現場で発することで、イメージを超えたものになったシーンなどはありますか?樹木:それはないわよ。やっぱり台本の段階でしっかりと…是枝監督:ありますよ(笑)!孫が「宝くじが当たったら、またみんなで一緒に暮らしたい」と言うところ。書くときはサラッと書いたけど、お芝居でそのひと言が出てきたら、自分で書いたセリフなのに、ウッときたんだよね。樹木:へぇ…。是枝監督:それは、希林さんもそうなのか…あの映画の中のおばあちゃんもウッときてるんだよね。「こんな風にセリフが立つのか!」と思いました。孫はどこかでそれを信じたくて、でもおばあちゃんはそんなこと起きないってわかってる。でも、そのズレを孫に気づかせちゃいけないと思ってて、そうやって互いに間接的に思いやっている様子がすごくよかった。樹木:あれは孫のいる女優じゃなきゃできなかったかもしれないわね…。是枝監督:ああいうこと、あるんでしょうね。そんなに深く考えていない孫のひと言にグッときちゃうことが。――阿部さんが演じた良多は、これまでの是枝監督の作品の中でも、類を見ないほどのダメ男として突出しているように思います。監督の中でいつも以上に踏み込んだという意識は?是枝監督:ギリギリまで攻めてみようかと。樹木:ただ、私は「あそこまで」と特別なものとは感じなかったわね。もっとすごい人を周りでいっぱい見てきたし…。是枝監督:いろんなことを時代のせいにして、背中を丸めながら生きてる男。――ただ、そこまで特別な悪い男という思いは…是枝監督:なかったかな…。ひとつひとつの行動を撮りだすと、息子としても、父親としても、夫としても弟としてもダメなんだけど…。――子どもへのプレゼントを無理やり値切ろうとしたり…結構、サイテーですが…(苦笑)是枝監督:でもね、そこまではやるよ、きっと(笑)。樹木:誰でもそういうところ、持ってますよ。是枝監督:高校生から金をゆすろうとするのが、行為としては一番最低かもしれないけど…。無理やり値切ろうとするというのは、人間の“小ささ”としてはあるかな。樹木:ありますよ。――「悪さ」ではなく「小ささ」?是枝監督:そう、人間の小ささ!樹木:自分を見つめていけば、ある種の状況に置かれたら出てくるものですよ、みんな。是枝監督:でもね、そこは確かに難しいところでもあった。自分ならどこまで可能か?「あるな、これくらいは」と思えるのはどこまでか?すごく微妙なところで、女の人が見てどこまで許せて、どこから「ナシ」なのか?いや、そもそも「ナシ」なのはいけないのか?――せめぎあいが…是枝監督:阿部さんもそこは苦労してやってました。真木さんに触れるシーンで、最初脚本には「足首に触る」ってあったんです。阿部さんは「足首かぁ…」ってずっと言ってて「おれの体の大きさで、小柄な真木さんの足首に触るってどう見えるのかな?」って。考えた末に、ひざのあたりにスッと行ったんです。それが笑えるんだけど、足首だったらまた芝居が違ってたかもしれない。そこはすごく考えて、自分の役のキャラクター、大きさ、おかしみとか…ギリギリまで攻めたり、やめたりして面白かったです。――最後に「団地」について監督なりの想いを聞かせてください。是枝監督:どちらの想いもあるんですよね。「なりたいものになれなかった」哀感もあるし、でも、そこで20年を暮らして、団地は原風景でもあるから、無機質なものでは決してない。いろんな情感、表情、陰影があって、それをきちんと愛をもって撮りたかったんです。樹木:最初はね、団地に当選するってすごくラッキーだったわけですよ、当時。NHKのニュースになるくらい。団地に住むのが憧れの的だった時期もあったんですから。是枝監督:良い悪いってジャッジじゃないんですよね。小3の9月に引っ越してきて、台風が来て、家族で喜んだの(笑)。「今年はどんな大きいのが来ても、鉄筋コンクリートだから大丈夫だ」って。翌朝、台風が去って、外に出た時、すごくキレイだったんだよね。そういう読後感のある映画にしたかったんです。あそこであの母親は死んでいくんだろうし、息子があそこに戻ってくることはないだろうけど、それでも台風がやってきて、翌朝の芝生がキレイで…そういう映画がいいなって。(photo / text:Naoki Kurozu)
2016年05月20日「聡明」という言葉がぴったりの19歳。だからと言って背伸びしている様子は微塵もなく、至って等身大。前日に行われた来日記者会見で「フクロウカフェに行きたい!」と目を輝かせていた姿からも、一夜明けて希望を叶えたいま、「ネットで見たイメージとはちょっと違って…。フクロウたちが紐につながれていてちょっと哀しかったかも」と率直に語る姿からも、ありのままの彼女が感じられる。そんなメイジー・ウィリアムズの出演する「ゲーム・オブ・スローンズ」が、いよいよ第六章に突入する。覇権争いの一角を担うスターク家の次女にして、過酷な運命に晒されるアリア・スタークを演じ始めて6年目を迎えるわけだ。「アリアはシーズンごとに成長するキャラクターだから、12歳でオーディションを受けたときのアリアといまのアリアは違う。私にとっても、彼女の変化を演じるのが何よりも楽しいの。子役が大人の俳優に脱皮するのは難しいと言われがちだけど、その点、私はアリアと共に成長してきた。可愛いだけじゃ終わらない役に出会えて、私は恵まれているわ」。しかも、「成長する」と容易に言うのが躊躇われるほどアリアを取り巻く状況は厳しく、その中で「成長せざるを得ない」と言った方が正しい。「守ってあげたくなるって、みんながそう言ってくれるわ(笑)」と照れた笑顔を見せるのも納得。王家の勝ち気な少女がいまや父と母を亡くし、残された家族とも離れ離れになりながら孤独な旅を続けている。「アリアが大変な出来事に直面するときほど、“私ならどうするかな?”“どんな気持ちになるかな?”と考える。自分の中の感情を引き出しながら、アリアの状況に身を置くの。私の役作りは、とにかく脚本に集中するところから始まる。何せドラマに関わり始めたのが12歳だったから、そのときは原作を読むには早過ぎる年齢だったのよね。両親に止められたの。描写も生々しいし、分厚いし(笑)。でも、ドラマと原作はちょっと違うから、それでよかったと思ってる。原作はいつかドラマが終わったときに読もうかな」。父や母の敵討ちを志す中、第五章のラストで視力を失ってしまったアリア。彼女にとって、第六章はさらに過酷なシーズンとなるそうだ。「これからのアリアがどう戦い、どう生きていくのか?彼女は初めて誰かに頼らないと生きていけなくなるの。次第に視力を失ったのであれば、ある程度の心構えはできると思うけど、急に見えなくなったものだから、どうしたらいいか分からなくなってしまう。アリアは独立心が強いし、人を信じていないから、誰かに頼るのは屈辱的でしょうね。心身共にボロボロになった彼女が、強さを取り戻せるのかが大きな課題になると思うわ」。いまや、シリーズは“続きが最も気になるドラマ”へと成長。制作側は関係者に厳しい緘口令を敷いており、もちろんメイジーも先々の展開を口外することはできない。「言いたいけど言えないから、フラストレーションはすごくたまるわね。でも、それ以外にもちょっと不満があるの。1年前のこの時期は、誰もが第五章のことを知りたがったわ。でも、いまはみんな観終わっているから、第五章について誰も聞いてくれない。私は第五章の話もみんなとしたいのに(笑)!」。なるほど。では、第五章の中で最も誰かに教えたかった展開は?こう尋ねてみると、「間違いなく、ジョン・スノウのことね!」という返事がすぐさま返ってきた。アリアの腹違いの兄にあたるジョン・スノウにも、第五章のラストで悲劇が訪れる。「あのエピソードのときは、ママが先に脚本を読んだの。それで、“もう最後まで読んだ?”と聞いてきたから、すぐに私も読んで…ショックを受けたわ。誰かにすごく言いたくなった。でも、私の友達の中には番組を全然観ていない子もいるから、その子たちに話して聞かせたりはしている。話された方は何のことだかよく分からないから、それでいいの。私の気も楽になるしね。さすがにジョンのことは言ってないけど(笑)」。ジョン・スノウに限らず、シリーズを通して数々の悲劇に見舞われてきたスターク家の面々。受難の日々が続く中、メイジーはどんな気持ちで本編を観ているのだろうか。「キャトリン(母)とロブ(兄)の最期は、分かってはいたけどショックだった。観ていてとても哀しかったし、心が張り裂けるかと思ったわ。その点、自分も撮影に参加したシーンの場合はショックが和らぐの。ネッド・スターク(父)の処刑シーンは血糊や偽物の生首を用意する準備段階も知っていたから、“ああ、うまい編集だな”くらいの気持ちだった。実際のオンエアを観るときは、撮影が終わってから随分経っているし」。そんなスターク家の運命は、シビアな現実を描いた「ゲーム・オブ・スローンズ」のテーマにも直結している。善人だからと言って幸せになれるとは限らず、悪人だからと言って天罰が下るわけでもない。ファンタジーでありながらも、厳しい手触りがリアルだ。「これはずっと言い続けてきたことなのだけど、番組の人気の理由は、別世界に行った気分にさせながらも、実は現実を描いているからだと思う。要するに、視聴者の知性の上に成り立っているドラマなの。現実に起きる問題や社会に即したテーマを扱っているからこそ、視聴者を惹きつけるのよね。だからこそ、私自身もよく考えるわ。“もし、この世界に自分がいたら?”とね。たぶん、私もアリアと同じ生き方を選ぶんじゃないかな。旅に出るの。権力争いに関わることなく、自分の冒険をしたい。自分のリストを持ってね」。アリアはいつか家族と再会し、幸せになれるだろうか?「それが理想よね」と最後の問いに頷きつつも、作品テーマとの真摯な向き合い方を改めて垣間見せる。「彼女なりの幸せを達成することができれば、私はそれでいいと思う。すべきことのリストをすべて成し遂げたとき、アリアは幸せを感じられるんじゃないかな」。(text:Hikaru Watanabe/photo:Nahoko Suzuki)■関連作品:ゲーム・オブ・スローンズ[海外TVドラマ](C) 2012 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.
2016年05月19日声優・浪川大輔が「萩原さんは、馴染みやすさが凄い!これまでずっと一緒に収録してきたんじゃないかと思うくらい」と、その信頼の程を明かせば、「僕は、声の仕事をしょっちゅうできる環境では無いのですが、浪川さんとは、なんか縁があるんですよね」とこれまでの共演をふり返り、繋がりの強さを感じさせる俳優・萩原聖人。声優と俳優という、普段活躍するフィールドこそ異なれど、根っこには同じ“役者”としての熱量を抱え、認め合う2人の男たちが、同じ“守りし者”でありながら、守る者の違い故に交差する男たちを演じたのが『牙狼<GARO>-DIVINE FLAME-』だ。日本を代表するクリエイター・雨宮慶太が生み出したヒーロー「牙狼<GARO>」。2005年の誕生から10周年を迎える記念作品として誕生した本作は、シリーズ初のアニメ作品として2014年秋から放送された「牙狼<GARO>-炎の刻印-」から4年後の物語が描かれる。主人公は、黄金騎士ガロの称号を受け継いだレオン。彼は、ヴァリアンテ王国王子アルフォンソと共に、父・ヘルマンがヒメナとの間に残した子ども・ロベルトを次代の騎士として育てていた。そんな折、レオンたちに隣国バゼリアに巣食う“最も美しい”と言われているホラーの討伐指令が下る。時を同じくしてロベルトが何者かに誘拐されてしまう。必死に追走するレオン。だが、敵に阻まれ窮地に陥ってしまい――。本シリーズ初参加の荻原さんは、「もともと僕は、ヒーロー作品や変身ものが大好きで、ずっと子どもの頃から憧れていたんです。男の子はやっぱり変身願望があって、何かを守りたいみたいな気持ちは、幼心に思い続けていた。でも、変身しようと思ってもできませんし(苦笑)。ですから、あくまで役ですけど、“守りし者”を表現させていただけるというのは非常に光栄に思います」と出演を喜ぶ。主人公のレオンを演じる浪川さんは、アニメ収録時から劇場版の話を聞いていたそうで、「スタッフさんから『本作は気合いが入っている』ということも、ずっとプレッシャーのように聞いていた」という。制作陣の“気合い”の表れは収録スタイルからも感じたそう。アニメ収録では、声優陣が全員揃った状態ではなく、個別で収録する“抜き”と言われる手法が存在する。今作では、萩原さんをはじめ声優陣一堂で収録ができたそうで、「バトルシーンがあり、人間味溢れる話でもあるので、掛け合いが一緒にできたのは良かった」と心境を語った。萩原さんも「一緒にいるから生まれるニュアンスは絶対にある」と話し「確かに、全員が常に揃うのは難しいことですけど、今回は極力そういう形が取れた。だからこそ生まれたコミュニケーションもあって、僕はすごく楽しかった」「でもそれぞれがプロなので、(一緒に収録しないからと言って)何か大きな変化が出るかと言われれば、比べられないので分からないですが…やはり生身の声を聴くのは大事なことだと思う。その意味は、本作にちゃんと出てるんじゃないかな」。収録の仕上がりに自信を覗かせる萩原さんが演じるのは、新キャラクターであるダリオ・モントーヤ/黒曜騎士ゼム。物語の舞台となるバゼリア国の姫・サラを守る者で、レオンの窮地を救いに突如現れる。しかし、彼は敵か?味方か?その正体は謎のままだ。ただ、守りたい者や強い愛情を持った人物であり、その想いが発端で物語は大きな展開を見せるのだが…。「ダリオは激情型です!」と考察する浪川さん。劇中で、ダリオが姫・サラを守るためにとった行動の数々を挙げ「重いです!絶対重い!『お前やりすぎじゃないか』って、友だちだったら確実に止めます」と正直な感想を告白。すると、萩原さんは「僕は理解できますよ。理屈じゃないです」と一刀両断。「人が唯一コントロールできない感情が、“好きになること”と“嫌いになること”なんです。好きになるのも、嫌いになるのにも、理由なんかない!それを、世の中は理屈や間違った偽善、正義感とかでとやかく言いますが…そんなの、どうだって良いんですよ!」「でも(登場人物)全員がそうだと思う。大切なモノを守るのは、理屈じゃないんじゃないかな。理屈があるものは、その理由がなくなれば守れなくなりますから」と、ダリオへの“男”としての熱き共感をほとばしらせた。逆に、萩原さんは、浪川さん演じるレオンにどんな思いを抱くのか?「一度、大切な人を守れなかった経験がある。それを受け入れたレオンは、とても大人だし、とても前向き」。それ受けた浪川さんも「レオンの“変化”って凄く分かりづらいんです。とても。表面に出ないタイプなので。でも、諦めたり苦い経験を積んで、確実に変わってる」と、アニメシリーズを経てきたからこそ味わえる、彼の“変化”に言及した。さらに、その“変化”について、劇場版でこだわったことがあるという。「表には出ないけど、にじみ出る変化した部分を、出し過ぎないようにしようと。パッと見、伝わらないけども、実は愛情深いなって想ってもらえるようにしたいなって」「ただクールで、カッコつけで、強くて…だけではない。優しさや本当に守りたいという気持ちが、にじみ出るように伝わってくる。そういうニュアンスを出したかった。女性にも『敢えて言わずに我慢している』男のカッコ良さを感じてもらえたら嬉しい」。表現は違えど、根っこには同じく熱く、純粋な愛情を抱えた“守りし者”たち――。彼らが戦う理由、そして彼らを奮い立たせるのは、いつもそこに守りたい相手がいるからだろう。本シリーズは、特撮・アクション作品としての人気が高く、“守る側”に注目が集まりがちだが、本作ではドラマチックなストーリーの中に、“守られる側”の物語や女性キャラクターたちの心情が綴られ、観客は様々な目線から感情移入することができる。萩原さんは「そういう意味では、今回は『守られる者』たちが見たら、いろいろ感じるものがある作品になってるんじゃないでしょうか。ただのアクションバトル作品ではない。いろんな感情に投げかけてくるものがある」と見どころを述懐。さらに「劇中に登場する女性キャラクターや、『守られる者』たちの立ち位置に、もし、ご自身がなったとき…守ってくれる人に何をされたら嬉しいのか?」と、女性が見ても楽しめる目線を提案した。また浪川さんも、本作にはこれまでのイメージとは違う魅力が込められていることに触れ「レオンが、スタイリッシュに格好良く守るのではなく、生身のまま、がむしゃらに守るシーンがあるんです。本当に守りたい者が目の前にあるとき、必至になって何が何でも守ろうとする。守り方は下手くそなんですけど、這いつくばってでも守るという覚悟で戦う。それが心を打つなって思いますし、声を入れたときもそれくらいの覚悟でやりました。それが伝わるといいなと思います。ぜひ『守られて下さい』」と胸熱メッセージを送った。(text:cinemacafe.net)
2016年05月19日瀬々敬久、黒沢清、石井裕也など名だたる映画監督の下で助監督を務めた菊地健雄が、晴れて長編監督デビューを果たした『ディアーディアー』。このほど、ブルーレイ・DVDが発売になり、本作の主演・中村ゆりがインタビューに応じた。借金苦の兄、虚言癖の弟、依存症の妹――幻の“シカ”をめぐる三兄妹の軌跡を描いたヒューマン・コメディーで、観る人によって感動の種類が違ってくるだろう快作について想いを聞いた。ある山あいの長閑な町にはかつて、“リョウモウシカ”という幻のシカがいたとされ、そのシカを発見したという三兄妹は一躍、時の人となる。しかし、ほどなく目撃は虚偽とされ、三兄妹はうそつきというレッテルを貼られてしまう。二十数年後、別々の人生を送っていた三人だったが、父の危篤がきっかけで久々に再会。シカ事件で人生が狂ったと思っている三人はまた、山の中へと入っていく――。“リョウモウシカ”という幻のシカに振り回され、思うように人生を操縦できないダメな人間たちのドラマ。ファンタジックな世界観ではあるが、脚本の印象について中村さんはこう明かす。「鹿がモチーフになっているという意味ではファンタジックなストーリーですが、キャラクターの個々の掘り下げ方が家族の関係性を含めて丁寧だったので、最近では出会うことも少なくなったテイストの素敵な物語だと思いました」。主要登場人物は、中村さん演じる末娘の顕子をはじめ、老朽化した工場と莫大な借金を背負う長男の冨士夫(桐生コウジ)と、シカ事件で精神を病み、病院で暮らす次男の義夫(斉藤陽一郎)。およそハッピーな人生を送っているとは言い難いが、人間味がある三兄妹ではある。「自分自身も含めて、立派な大人になれたと実感できている人なんて少ないような気がして、そういう意味でこの映画って、全然皆ダメでどうしようもないけれど(笑)、そこに人間の愛しさがある気がします。そういう映画になればいいなと思いながら、撮影していましたね」。中村さん演じる末娘の顕子も実に人間臭く、リアリティーの強い女性だ。駆け落ちの果てに酒浸りの生活を送っていて、シカ事件を機に町を捨て、同時に何かも失ってしまったような感もある。顕子を演じるにあたって中村さん自らの提案が反映されたシーンの一つが、ラブシーンだった。「ラブシーンは男性の場合、遠慮がちになることがありますが、私があれくらいやりたいって言ったんです(笑)」。「結局、顕子は文句を言っているようで、ブツブツは言っているけれど、実際はあまり弱音を吐いていないんです。でも、彼女がアルコールに走っていることは、拠り所であることは間違いない。ぐでんぐでんに酔うことは弱さであり、流されて欲情するような人間らしさを作りたかったんです」。それが奏功して顕子が本音を言うシーンとして、彼女の人間性を一段階掘り下げることに成功している。そしてどこか、愛おしくも映る。「意外と、周りに甘えているんですよ。でもそれは、男性目線ですよね。私はあまり関わりたくない。(笑)ただ、顕子は、知能的な悪い人じゃないんです。立派な人でもないですが」。そして、鹿。“リョウモウシカ”という得体の知れない存在。もちろんこれは何かの象徴ではあるが、その正体は「観る人が決めること」と中村さんは語る。「観ている人が決めていいと思うんです。お父さんの象徴とか神の使いとか、いろいろな意見を伺って、私もびっくりしました。私の解釈としては、過去から何かのせいにして成長できていない、ただのダメな大人の象徴みたいなもの(笑)。何かのせいにして生きてきた大人たちの物語なので、私はそういう風に受け取っていますね」。確かに、シカのせいにして生きていれば楽なのだ。「そうなんですよね。でも、周りからしたら『何それ?』と思われることでも、意外と本人にしてはこだわってしまって、そこから抜けられないこともあるでしょう。だから、そういう象徴なのかなって思いました。観る人それぞれ、いろいろな意見があって面白いです。人が生きるって、頑張っていないと続かないことなんですよね。恵まれていても貧しくても、それぞれが何かを抱えているものじゃないですか。だから、こんなどうしようもない人達でも映画の主人公として描かれていいと思うんです」。この映画、出てくる人皆、聖人君主は一人もいない。ボンクラとまではいかないまでも、そういう人間のおかしみ哀しみなどを観ていると、自分も含めて優しく認めてあげたい想いが自然とあふれてくる。「この映画に出てくる人たちはダメな大人なんですけど、オフビートのなかでクスッと笑える瞬間もあると思うので、そういうところも楽しんでもらえればいいなって思います」。ヘアメイク・衣装クレジットニット¥27,000(JOHN SMEDLEY)パンツ¥23,760(muller of yoshiokubo)スタイリング:阪上秀平ヘアメイク:藤田響子(text/photo:Takashi Tokita)
2016年05月18日世界中の女性を虜にし、日本でも社会現象を巻き起こしたドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」(以下「SATC」)の主人公、キャリー・ブラッドショー。NYという特別な街でキャリアを築く彼女は、やはり学生時代から普通とは違う、特別な経験や考え方をもっていたのだろうか?「自分の10代をみているようで顔を覆いたくなるエピソードばかりなんです」と、あくまで高校生のキャリーは普通の女の子であり、自身も共感を覚えたと語るのは、サラ・ジェシカ・パーカー演じる主人公キャリーの青春時代をテーマにしたドラマ「マンハッタンに恋をして ~キャリーの日記~2」で、キャリーの声を担当する声優・沢城みゆき。1980年代のNYを舞台に、平凡な女子高生が、お洒落と恋愛が命の“キャリー・ブラッドショー”になるまでを描いた本作。「SATC」の大人になったキャリーは、コラムニストの枠に留まらず、自身の書籍を出版するなど作家としての地位を確立する“働く女性”だが、若き日のキャリーを演じる沢城さんも、アニメ「ルパン三世」シリーズの峰不二子役をはじめアニメや海外ドラマ・洋画の吹き替えで声優として大活躍する働く女性だ。そんな沢城さんが、イマドキの“働き女子”も思わず共感する本ドラマの魅力を語った。NYでインターンをすることになったキャリーは、ファッションの世界に足を踏み入れ、なにもかもが刺激的なマンハッタンで、大人な都会の女性へと成長していく。現在、BSテレビ局・Dlifeにて、毎週月曜日21時より放送中のシーズン2では、失恋のショックからキャリーは居場所を求め、仕事にパーティーにさらにNYのシティライフを満喫!果たしてキャリーはセバスチャンとヨリを戻すのか?それとも、NYの洗練された大人の男性と新たな恋が生まれるのか?また、高校卒業を控え、卒業後の進路はどうするのか…キャリーの人生の選択から目が離せない。沢城さんは「主人公ということもあり、シーズン1の後半からシーズン2にかけては、物語の中のことなのに、まるで自分の人生におきたことのように感じながら演じていました」とふり返る。意外にも、キャリアにおいてこれほど長く海外ドラマで1つ役を演じたことが初めてだそうで、キャリーと“一体化”して声を吹き込んだ熱量が伺える。また、「キャリーはとびっきり可愛いくて、ファッションも華やかだし、マンハッタンでの派手な生活も描かれますが、一転、私も含め、視聴者の皆様も共感できるところばかりだと思います。10代ならではの恥ずかしい思い出…例えば、夜、時たまポエマーになっちゃったりすることとか、元彼のものが捨てられなかったりすることとか、やれた気になっていたこと自体が子どもっぽかったりしたこととか(笑)自分の10代をみているようで」と、自身のエピソードを交えながら、普通の女の子ならではのキャリーの魅力を語った。“等身大”の女の子・キャリーは、劇中で高校卒業を控え将来について悩む。その姿をみた沢城さんは「“何をして生きていくか”は“誰と生きていくか”と直結なんだ」と学んだという。「職種を選ぶことが将来を決める、生き方を決めることだと思っていたのですが、逆で、“どう生きていくか”を決めると“一緒に生きていく人たち”、ひいては携わる仕事が決まっていく。恋愛面でも仕事面でも、キャリーの心境の変化によって、相手や環境が様変わっていくだなと思いました」。将来売れっ子のコラムニストになるキャリー、そして沢城さんも声優という普通とはちょっと違う職種で働く女性のひとりだ。2人のような特殊な職種に関わらず、結婚や出産を考えたときに「仕事をどうしよう…」と思い悩む現代の働く女性たちも少なくないはず。そんなときは、キャリーや沢城さんが体感したように、「いまの環境に捉われず、“どう生きていくか”」を考えることで、貴女らしいワーキングスタイルがみえてくるかもしれない。最後に、沢城さんは等身大の働く女性としてメッセージを送った。「新学期や初めての就職を経験したことがある方なら、どなたでも感情移入できるのではないかと思っています。ファッションの華やかさが目を引きますが、等身大のティーンエイジャーのドラマです。親との関係に悩み、友だちのことに右往左往して、自分の恋の行末がどうなるかは誰も知らない…という時代は、多くの方が経験してきたものではないでしょうか。なにより!このドラマの凄いところは、女性にとっては、観るだけでちょっと可愛いスカートをはきたくなったりするところです(笑)お見逃しなく!」。(text:cinemacafe.net)
2016年05月18日「続編でコケるっていうパターンは映画界の“あるある”ですよね(笑)?でも、それを恐れて続編を作らないなんてのはナンセンス。そして、それを乗り越えた者だけが、三部作に手を伸ばせるんだと思います」。『HK/変態仮面』の続編への強い思い、そしてその先にある三部作構想について語ったその言葉は、同時に、鈴木亮平という俳優の生き方そのものを表しているように思える。心優しき青年・狂介が、女性のパンティを被ることでヒーロー“変態仮面”に変身し悪を成敗する――。90年代に「週刊少年ジャンプ」(集英社刊)に連載され、カルト的な人気を誇った漫画が、鈴木さん主演で映画化されたのが2013年。わずか12館での公開から始まるも、話題が話題を呼び、興行収入2億円というヒットを記録した。あれから3年、待望の続編となる『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』が公開となる。この3年で、鈴木さんを取り巻く環境は激変した。NHK連続テレビ小説「花子とアン」、ドラマ「天皇の料理番」(TBS)など、次々と話題の作品に出演して存在感を見せつけ、押しも押されもせぬ人気俳優としての地位を確立した。それは、ファンにとっては嬉しいことであったが、彼が人気を得れば得るほど、こんな思いが頭をよぎったのも確かだ。「もう鈴木亮平は“変態”という言葉が付く、パンティを頭にかぶるヒーローなんて演じられないのではないか?」。だが、それは全くの杞憂だった。続編制作は、彼自身が熱望し続けてきたものであり、その思いがぶれることも一度としてなかった。「そこに迷いはなかったですね。もともと、自分たちがやりたくてやっている作品。役者として人気を得るためとかではなく、純粋に作りたくて始めたものであり、僕の状況がどう変わっても、その気持ちは変わらなかったです」。興行的な意味での成功だけでなく、『HK/変態仮面』は鈴木さんに、俳優としていくつもの大切なものをもたらした。「まずひとつは、どんなにくだらない作品でも、全力でぶつかればみんなが認めてくれるということ。自分の中での作品に向き合う姿勢というものが『HK/変態仮面』との出会いで決まったなと思います。あの時は肉体作りから入って1年以上かけて準備しましたが、そこまで自分の全てを賭けてやらなきゃ、世の中は動かせないんだと。いま、自分が置かれた状況であの時と同じ時間をかけることは難しいかもしれませんが、たとえ短い時間の中でもギリギリまでできる限りの準備をして臨む――それはあの作品で学んで、これからも常に変わらないだろうと思います」。迷いは一切なかったが、続編に臨むにあたってプレッシャーはあった。「前作を超える作品にしなくてはいけない!」。それは鈴木さんのみならず、共演者、スタッフが現場で共有していた思いだった。「現場に入ると前作に輪をかけてストイックな雰囲気でしたね。『続編だと浮かれていたら、失敗するぞ!』と。正直、前回は実質的な意味でのクランクインが公開の約1か月前で『これ、ホントに終了するのか?』『公開できるのか?』という次元のありえない過酷さだったので(苦笑)、その意味で今回、予算やスケジュールなど、多少なりとも改善された部分は大きかったんですが、なんだかそれが、すごく贅沢をしてるような気持になって逆に焦りましたね。よく考えたら“普通”になっただけなんですけど『いやいや、甘えちゃダメだ!もっと厳しく自分を追い詰めないと』と、もはや狂介としてではなく、素でMになってるという…(笑)」。現在33歳。世代で言えば、小栗旬、山田孝之、藤原竜也といった、現在の日本映画で多くの主演を張る面々が並ぶが、鈴木さんもその一角を占めていることは間違いない。強い輝きを放つ同世代の存在について「すごく刺激をもらうことが多いし、いろんなタイプがいて、それぞれに自分に厳しくやってきて、その人にしかないものを持っている。ライバルとして一緒にやれるというのは恵まれている」と語る一方で、意外にもこんな思いも…。「年齢で言うと彼らと同じ世代ではあるんですが、僕自身はデビューが23歳と遅かったですし、それ以前から、彼らが売れているのを見てきたので、圧倒的に“後輩”のような感覚が強いんですよね(苦笑)。だから、タメ口で話しつつも、いまだに『旬くん』と呼んでるし、どこかでライバル心だけでなく、コンプレックスに近い感覚を持っているのかな…?綾野剛は同じように30代近くになっていろんな作品に出るようになって、同じ軌跡を歩んできた部分もあり“同世代”って感覚は強いんですけどね(笑)」。もちろん、だからといって俳優として遠慮や気後れなどはない。23歳でデビューした頃、10年後にこれだけ知名度を上げ、様々な作品に引っ張りだこになっていることを予測していたか?そう尋ねるとハッキリとこう言い切る。「正直、ビハインドですね。いま自分がいるポジションというのは、当時の自分が思い描いていた30代に全く届いてない。3分の1くらいですね。まあ、もともとの理想がどんだけ高過ぎるんだ!って話ですけど…(笑)」。冗談めかしつつも、まぎれもない本音である。そして、デビュー当時から持っている高い高い理想を降ろしたことも一度もない。その上で、こう続ける。「ただ、焦りもないんですよね。うん、焦りがなくなったことが自分の中で、20代と比べて一番大きく変わったところなのかな?やっぱり、20代の間は焦ってました。それがなくなったのは『これ!』というひとつのきっかけがあるわけじゃないんですけど、少しずつ自信がついてきたのかな…と思います。この世界、自分が努力した分しか返ってこないし、逆に努力して、懸命に積み重ねた分はしっかりと結実していることも実感してます。その手応えの中で、自分なりのペースがあるということもわかったんですよね。だから、焦ったり、無理に抗うのではなく、ひとつひとつ着実にやっていけば、それは僕が最初に思い描いていた時期とは違うかもしれないけど、いつか必ず行きたい場所にたどり着けるって」。まずはこの続編の成功。「そうすれば、その先が見えてくると思います!」(photo / text:Naoki Kurozu)
2016年05月17日妻を亡くし、ひとり娘と2人きりで暮らす高校教師が、ひょんなことから教え子の女子高生と3人でごはんを作って食べることに。だけど、3人とも料理はまるでできなくて…。料理をして大切な人たちと一緒にごはんを食べる――そんな、一見ありふれた日常を情感豊かな筆致で描き出し人気沸騰中の雨隠ギド・原作の漫画「甘々と稲妻」。「good!アフタヌーン」(講談社)にて連載中、現在発売中の単行本6巻で既に累計発行部数100万部を突破する人気作が、この夏、ファン待望のアニメ化を果たす。美味しい料理の数々と、胸打つヒューマンストーリーが観る者の心をぐっと掴む本作を、声優陣は如何に表現しようとしているのか。メインキャスト3人へのインタビューで、本放送の期待がぐっと高まるエピソードが明らかになった。妻を亡くしひとり娘の成長を愛おしく見つめる父親であり、高校教師の犬塚公平を演じるのは、TVアニメ「おそ松さん」松野カラ松役や、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』でキャプテン・アメリカ役の吹き替えを担当するなど、コミカルな役柄から好青年、兄貴肌まで幅広い人物を演じ分ける実力派・中村悠一。今回演じる公平という人物について「日中、高校で先生として高校生たちと向き合い、家に帰ったらより幼い自分の子どもといろんなやりとりをする…日々日々すり減らしながら生きてるんじゃないかな」と、“自分だったら”と置き換えて思いを巡らせたという。そして「元々、そんな快活な人ではない」と分析された彼が、物語の主人公として行動を起こす理由を「全部つむぎなんですよね」と話す中村さん。公平の愛娘であり、食べることが大好きな、のびのびと成長する元気な女の子、それがつむぎだ。演じるのは、現在小学生にして4歳の頃より子役として活躍し、ドラマ「図書館戦争 BOOK OF MEMORIES」などにも出演した遠藤璃菜。「つむぎちゃんは、凄く元気な女の子で、食いしん坊な子で、お母さんが亡くなってからお父さんに少し気を使っている子です。(似ているところは)美味しいものが好きなところで、食いしん坊なところです」。少し照れながら、でも一所懸命にこちらの質問に答える姿がとても印象的な彼女。中村さんは、“つむぎはこの物語を動かしていく重要なキャラクター”と評し、故に「彼女にも求められているもの=“ハードル”を、僕は『そこまで求めちゃうんだ』と感じた。無茶言ってんな、って」。そして「遠藤さんが、あれやこれや大人から言われ、乗り越えていくさまっていうのは、見ていて涙を禁じ得ないですよね」と遠藤さんに温かい眼差しを向ける。同じように優しい眼差しと笑顔、そして尊敬を込めて遠藤さんに接していたのが、TVアニメ「赤髪の白雪姫」白雪役をはじめ、少女から大人の女性までその透き通った声で演じ、さらにアーティストとしても活躍する早見沙織。早見さん演じる飯田小鳥は、公平の教える高校の生徒で、料理研究家の娘ながら料理はまったくできず、“3人での食事”の発案者でもある。劇中では、つむぎを優しく見守る良き姉のような描写があるが、現場でも“姉”のような存在感で、“よだれを垂らす音”というアニメ独特の表現に苦戦していた遠藤さんに「早見さんがずっと見本をみせていた」と、中村さんが明かした。「でも私がやるのと、璃菜ちゃんがやるのでは全然違います!すごく魅力的です!実際には(放送で)確認していただきたいです!とても可愛くなってるので!」と力説する早見さん。さらに「(遠藤さんが)マイクの前で喋ってると、心を揺さぶられるというか…『つむぎちゃんってこういう子なんだな』と、原作だけでは読み取れていなかったことや、気づかなかったことを、女優さんとしてのお芝居で全部教えていただける」と大絶賛。“先輩風”を吹かすのではなく、本当の“姉”のようににこやかに語らっていた。また、つむぎの何気ない日常のワンシーンに自身の思い出を重ねて“キュン”としたそうで、「家族と食事、という普遍的で、誰が読んでも思い出が1つは思い付く題材というのが、すごく素敵です」と本作の魅力についてコメント。その奥深さに「自分が、いまの年齢で読む・見るのと、もっともっと年を重ねてから、もう一度読む・見るのとでは、全然味わいが違ってくるんだろうな」とも話した。これまで、共演作も多数ある中村さんと早見さんに互いの印象を聞いてみた。「『きっとこんな雰囲気だろう』とすぐに声が再生できた」と、息がぴったり合っていることを伺わせたのは早見さん談。加えて、“座長”として現場の空気を和やかにしている中村さんの姿を、敬意の念いっぱいに述懐した。一方の中村さんは「僕が想定しているものよりも、上をきてくださる女優さんなので…あ、これはおべっかです(笑)。でも、刺激を受けられる役者さんと、特にこういう心情的な作品でご一緒できるというのはありがたいですし、“これから”1クールという短い期間ではありますが、このお二方とできるのが楽しみです」と期待を口にした。実は、この日までに行われた収録は、第1話のみ。まさに“これから”3人で物語を作っていくところだった。だが、彼らからは既に、登場人物たちと似た“空気感”が漂っていた。とある質問で、難しい単語が出たとき。「言葉の意味はね…」と分かりやすく噛み砕いて教える早見さん。それを聞いて、その場で学び吸収し、必至で応える遠藤さん。それを見て「その答え、100点満点だよ!」と褒める中村さん。こんなインタビュー中の何気ないやり取りは、まるで公平たちそのもの。温かく和やかで、それでいて同じ“演者”としてリスペクトし合う気持ちを持った彼らは、「子どもだから、先生だから、女性だから――」という垣根なく一緒に手と手を取り合い料理し、絆を深めていく公平たちのようだった。そう!既に下ごしらえは準備万端!中村さん早見さん、そして遠藤さんが作り出す、おいしいトライアングルホームドラマが、きっとあなたを夢中にさせることだろう。(text:cinemacafe.net)
2016年05月16日武道にひたむきなヒロインをめぐり、クール系、癒し系、肉食系、やんちゃ系と個性豊かな4人のハンサム武道男子が織りなす青春ラブコメディ「ときめき 旋風ガール」。4人の中でも、クールで寡黙、厳しくも優しいトップ選手ルオバイを演じ、一躍人気スターの仲間入りを果たしたヤン・ヤンのインタビューが到着した。運動神経抜群の女子高生バイツァオ(フー・ビンチン)は、国民的競技“元武道”のスター選手だった養父シャンナンに憧れ、名門道場・松柏館に入門。真面目で厳しいトップ選手ルオバイ(ヤン・ヤン)のもと練習に励み、徐々に武道の才能を開花させていく。一方、いつも優しく見守ってくれる館長の息子の医学生チューユエン(バイ・ジンティン)の優しさには、ついドキドキしてしまうバイツァオ。しかし、“オレ様”キャラの世界チャンピオン、ティンハオ(チェン・シャン)も猛アプローチを仕掛けてくる。さらに、ルオバイもバイツァオに特別な感情を抱き始めて…。日本でも高い人気を得た、「泡沫(うたかた)の夏」の小説家ミン・シャオシーによる「旋風少女」(原題)が原作となる本作。本国では放送開始から終了まで、同時間帯視聴率1位を記録し、親しみやすいストーリーとフレッシュな美男美女の共演は10代の若年層を中心に爆発的な反響を呼び、シーズン2の製作(2016年夏放送予定)も決定している。そんな本作で主演を務めるのは、2008年にドラマ「紅楼夢~愛の宴~」で注目を集め、このルオバイ役で大ブレイクしたヤン・ヤン。ヒロイン・バイツァオに元武道を厳しく指導しながらも、献身的に支えるクール系武道男子を好演しており、日本でも注目度急上昇中。今回DVDがリリースされ、本作を日本のファンに見てもらえることについて、「すごく嬉しいです」というヤン・ヤン。「“元武道”という架空のスポーツは、実はテコンドーを参考にしたもので、日本で発祥した空手道ともゆかりがあります。それに女性視聴者が好きなラブストーリー、温かい友情の物語もたくさん描かれていますので、日本のファンに気に入っていただけたら嬉しいです」と初々しくコメント。さらに、撮影中の苦労話や共演者とのエピソードなどを、ファンに向けてたっぷりと語ってくれた。■本作に出演したきっかけは?まず小説と脚本を読んでみると、とても面白くエネルギッシュなストーリーだと感じました。さらにルオバイというキャラクターの内に秘めた意思の強さがとてもすばらしいと思ったからです。■演じたルオバイはどんな人物?ルオバイは元武道の才能に恵まれているというわけではありませんでした。ところが道場の中心だった親友が去ってしまったため、道場を支えるという責任を担うことになり、厳しく近寄りがたい人物に変わっていったのです。のちに彼は、バイツァオの才能を認め、バイツァオの強さに惹かれていきます。そしてそのプロセスを通じて、少しずつ温かい感情を取り戻していくのです。とても魅力的な人物ですね。■撮影前に準備したことは?アクションシーンがとても多いので、身体能力の高さが必要とされていました。幸い僕はダンスを専攻していたので体の柔軟性には自信がありましたが、それをパワーと結びつけるためには訓練が必要でした。撮影前に参考にした作品はありません。ルオバイという役を理解し演じるにあたって、ほかのキャラクターの影響を受けたくなかったからです。■演じた役のキャラクターで共感できるところ、逆に共感できないところは?まず、ルオバイの責任感が強いところ、そして感情を内に秘め、黙って行動するところは僕にとてもよく似ています。でもルオバイの性格は極端すぎますね。僕自身はルオバイよりももう少し明るいですよ(笑)。■撮影で大変だったこと、苦労したことは?とにかく暑かったですね。(撮影地の)長沙の夏はとても蒸し暑いのですが、この作品は音声を現場で収録していたのでエアコンをつけることができませんでした。毎日分厚い道着を着てアクションシーンを撮りながら、汗をだらだらと流していました。でも、一番大変だったのは僕ではなく、メイクさんたちでしょう。ずっと僕たちのメイクを直し続けなければならなかったのですから。■武術アクションはどうだった?僕自身にはダンスの基礎があったので、アクションシーンの動きはそれほど難しく感じませんでした。でも撮影中は役になりきっているので、ケガは避けられませんでした。病気になって床に倒れるシーンがあったのですが、「ドン」と音がするほどの勢いで倒れてしまい、あとで見てみると膝が真っ青になっていました。■バイツァオ役のフー・ビンチン、ティンハオ役のチェン・シャンなど若手俳優たちとの共演は?この作品のキャストはみんなとても若かったので、とてもリラックスして付き合えました。撮影がないときは集まってバスケをしに行ったり、食事に行ったりしましたよ。■共演者との印象的なエピソードは?最初にマスコミが撮影現場へ取材に入ったとき、ルオバイとバイツァオの関係について僕が説明しました。ストーリー序盤のルオバイはバイツァオに対してつらい稽古を課しているけれども、彼の感情は“父親の愛”にも似た厳しく深いものだと。すると、みんなが僕のことを「ルオバイパパ」と呼ぶようになったんです。バイツァオとのシーンを撮影するときは、冗談で「娘」と呼んだりしましたよ(笑)。■一番の見どころは?美形キャストが出ていることは言うまでもありません(笑)。このドラマはとても明るく前向きな作品で、登場人物の誰もが自分の夢に向かって努力をしています。若い人たちがこのドラマを見れば優しい気持ちになれますし、家族愛も友情も恋もどれもが大切なものだと感じることができます。最後に、いま本作に注目している日本のドラマファンに、「日本の皆さんにとても感謝しています。『ときめき 旋風ガール』をたくさんの人に応援してもらえることを願っています。いつか日本に行き、皆さんにお目にかかれるのを楽しみにしています」と、温かいメッセージを寄せてくれたヤン・ヤン。彼が演じたルオバイが、ふとした瞬間に見せる内に秘めたアツいハートや優しさは、胸キュンポイントとなりそうだ。(text:cinemacafe.net)
2016年05月15日世界中の誰もが知っているグリム童話の名作「白雪姫」に大胆なアレンジの数々を加え、全世界で大ヒットを記録したアクション超大作『スノーホワイト』(’12)の続編、『スノーホワイト/氷の王国』が5月27日(金)に日本でも公開になる。格段にスケールアップを遂げた続編は見逃せない展開が満載だが、とりわけ前作で滅ぼされたはずの“邪悪な女王”ラヴェンナが復活を遂げていることも話題に。彼女のご帰還を受け、ラヴェンナ演じるアカデミー賞女優のシャーリーズ・セロンもスクリーンに再登場!圧倒的な美貌と邪悪な力で観客を魅了したラヴェンナについて、そして子どもたちと過ごすプライベートについて、本作のアジア・プレミアを開催したシンガポールでシャーリーズにインタビューした。「鏡よ、鏡。この世で一番美しいいのは誰?」という名セリフに、“邪悪な女王”ラヴェンナとして、新たな魅力とパワーを注入したシャーリーズ。前作で白雪姫“スノーホワイト”(クリステン・スチュワート)とハンターのエリック(クリス・ヘムズワース)の手によって滅ぼされたはずが、ラヴェンナには強力な魔力を誇る“氷の女王”フレイヤ(エミリー・ブラント)という妹がいたことを人々は知らなかった。そして、導かれるようにラヴェンナも復活を遂げ、最強の邪悪な姉妹が圧倒的パワーで世界を恐怖に陥れようとする。ラヴェンナは、“邪悪な女王”と言っているだけあって、キャラクターとしては悪役だ。しかも飽きっぽい性格と公言しているシャーリーズにとって、同じ役柄を続投することもめずらしいこと。言わばネガティブな役柄を再度演じるということは、そうとう気に入っているに違いないが、「わたし自身は、このキャラクターのことをネガティブだと思っていないの」と本人は語る。「ラヴェンナはすごく地に足がついている女性で、人間らしい面もあると思うの。人はいろいろなレベルで、いろいろな要素を全部持っているものだと思うから。だからただ彼女を悪い人間だとは思わないし、さまざまな状況によって、あのような状態になってしまったの。だから邪悪というより、すごく悲しいキャラクターなのよね」。ちなみに今回復活したラヴェンナは黄金に輝く中、パワーアップした美貌と魔力を容赦なく使い、圧倒的な強度を誇っている。美しくてゴージャスだが、彼女のこどもたちに怖がられることはない?この点、「子どもたちにはちゃんと説明をしているのよ。ママは何かになっているふりをしているだけって」とシャーリーズは説明する。「子どもたちはなんとなく、分かるみたいね。だからわたしがいろいろとやっていても、子どもたちは全然怖がったりしないのよ。でもエミリーとわたしのシーンで、一瞬エミリーに向かってきついことを言ったときに、「ママ、スパイシーだね!」って言っていたわね。それぐらいかな(笑)」。そして、ラヴェンナのようなキャラクターを演じることは、「女優としてもっとも満足度を感じる瞬間でもあるの」と想いを明かす。「どうしても欠陥を持っている女性のキャラクターや、白黒はっきりしない矛盾していることをする女性のキャラクターに惹かれるわ。以前は男性がそういうキャラクターを演じることが多くて女性が演じる作品は少なかったと思うけれど、最近は傾向も変わっているように思うの。そういう役柄を掘り下げているときって、俳優としてもっとも満足感を感じる瞬間でもあって、ラヴェンナもそうだったわ」。(text:Takashi Tokita)
2016年05月15日『エディット・ピアフ~愛の賛歌~』で第80回アカデミー賞主演女優賞に輝き、その後も、カンヌ常連のダルデンヌ兄弟監督作『サンドラの週末』で2度目のアカデミー賞ノミネートを受けたマリオン・コティヤール。彼女は、フランス人でありながらも「いつかマクベス夫人を演じる日が来る」と信じていたという。ウィリアム・シェイクスピア没後400年にあたる2016年、荘厳なロケーションのもと、スクリーンに蘇る『マクベス』。これまで、黒澤明や手塚治虫、そして先日亡くなった蜷川幸雄など、日本の有名クリエイターにも多大な影響を与え続けてきた至高の名作で、王座をめぐり野心に取り憑かれたマクベスの妻“レディ・マクベス”を演じたコティヤールは、自らの願いを叶えた。2011年のアカデミー賞で作品賞などを獲得した『英国王のスピーチ』のスタッフと、CMやミュージック・ビデオで活躍し、デビュー作『スノータウン』(’11・劇場未公開)が世界的に注目を集めたオーストラリア出身の気鋭ジャスティン・カーゼル監督が贈る本作。劇中、戦地で3人の魔女と出くわしたマクベスは、やがてコーダーの領主となって出世し、スコットランド王になるだろうと告げられる。それを知った夫人は、マクベスの領地インヴァネスにやってくるダンカン王(デヴィッド・シューリス)を暗殺しようと謀略するのだ。「演技クラスの学生だったときに『マクベス』を観たわ」と、コティヤールはふり返りながら語る。「いつかはマクベス夫人を演じる日が来てほしいと思っていた。来ると信じていたの。でも正直なところ、それは舞台だと思っていたの。しかもフランス語で。だから、この映画とこのチームでオファーを受けたとき、この上なく素晴らしいチャンスだと思った。シェイクスピアの言葉で、“英語”でマクベス夫人を演じることができるなんて素晴らしいチャンスだわ。思いがけなかったけれど、いまだと思った。やらなくてはならなかったの」と明かす。しかも、マクベスを演じるのは、彼女が長い間称賛してきた演技派マイケル・ファスベンダーだ。「マイケルは素晴らしい俳優だわ。俳優として、彼が役作りをしたり映画を組み立てたりするときの秘密の部分を見ることができて、とてもラッキーだったと思う。それに彼は、正真正銘、クリエイティブな人なの。彼はキャラクターの魂を理解する。『マクベス』にもたらしたものは常に真実味があって並外れていた。彼が提示するものに毎日、本当に驚かされたけれど、素晴らしい経験だったわ」。確かに、マクベスが次第に狂気を帯びていくさまには震撼する。夫に王を暗殺させ、野望を叶えて王妃となった夫人とは裏腹に、マクベスは知勇を兼ね備えた親友バンクォー(パティ・コンシダイン)の存在を恐れていた。魔女は、バンクォーの息子フリーアンスが“未来”の王になるという予言もしていたのだ。マクベスは刺客を放ち、親友の命は奪うものの、息子フリーアンスは取り逃がしてしまう。その夜の晩餐会でバンクォーの不気味な幻影を目の当たりにしたマクベスは、錯乱状態に陥っていく。そんなマクベスの常軌を逸した振る舞いは、かつてダンカン王の暗殺をそそのかした夫人の目にさえ、狂気の沙汰に映った。絶望した夫人は、みるみるうちに衰弱して息絶える――。「この映画は、人間の魂を理解し、それを共有することを描いていると思う。シェイクスピアがしたようにね」とコティヤールは言う。「私たちは何者なのか、恐怖や怒りや挫折にどう折り合いをつけるのか、そして暗闇への扉はどうしたら開くのか、それを見事に映し出しているのよ」。人間の欲望や野心、恐怖や怒りなどを内包する『マクベス』は、大きなやりがいがあったとともに、大変でもあったことを彼女自身も認めている。「この映画を作るのは楽しかった。とても楽しめたけれど、同時に辛くもあったわ。それは、あれほど暗い人物と一緒に生きなくてはならなかったからなの」。スコットランドやイングランドのロケ地で、毎日撮影が終わると、彼女はこのキャラクターを忘れるように努力していたという。「それが一番難しかった。毎日誰かと一緒に過ごしていると、内面的に影響を受けてしまうから。私は“メソッド俳優”ではないから、その日の撮影が終われば、自分自身に戻る。でも、何か違うものを抱えてしまうの。それに気づき、それを必要としない人たちに撒き散らさないようにしなくてはならなかったわ」。とはいえ、シェイクスピアの文章を話すのは、「光栄だった」と彼女は言う。「それは、音楽家がモーツアルトを演奏しているときに、偉大なものや達人に触れているような感覚だと思う。彼が書いたセリフを言うことができて幸運だと感じたわ。あの特別なリズムは、まるで心臓の鼓動みたいなの。あるいはパンチみたいなもの。それが愛を、人間に対するシェイクスピアの理解すべてを、そして彼のビジョンや詩を象徴している。とても幸運だったわ」。コティヤールが予言を叶える形で演じた、シェイクスピアが生んだ“悲劇の夫人”は、自らの罪にもかかわらず、愛した夫の狂気に耐えかね、絶望の中に堕ちていった。彼女やファスベンダーが体現したものは、誰もが心の中に抱えかねないものだ。そんな“運命共同体”の夫婦を見事に演じてみせた2人は、カーゼル監督の最新作となる人気ゲームの映画化『Assassin’s Creed』(原題)でも、再びタッグを組む。『マクベス』は全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)
2016年05月14日『世界から猫が消えたなら』の主人公を、佐藤健が演じたなら…。同名のベストセラー小説の著者である一方、映画プロデューサーとしても活躍する川村元気が、自身の小説の主人公と佐藤さんを重ね合わせたのは『バクマン。』の時だという。昨年公開された『バクマン。』で、両者はプロデューサーと主演俳優の関係にあった。「佐藤健という俳優は、画面の全体を見ながらお芝居をするようなところがある。動物的な俳優が多い中、客観的な視点を持っていて、世界を立体的に見ているんですよね。それが『世界から猫が消えたなら』の主人公に似ているなと思っていました」。その主人公、「僕」は愛猫と暮らす郵便配達員。彼の名が、劇中で明かされることはない。そこにも、佐藤さんを主演に望んだ理由が関係しているそうだ。「いい意味で、だんだん透明になってくる俳優。もちろん間違いなく佐藤健がそこにいるわけなんですが、それなのに物語にすっと溶けこんでいき、観客が自分を重ね合わせられる存在になってくれるんです」。「主人公に名前がないのは、演じる上ですごく重要なことだと考えていました」と、佐藤さん。物語の中心には「僕」、さらには別れた「彼女」が存在する。「例えば、彼らがタカシくんとユミちゃんだとしますよね。でも、タカシくんとユミちゃんのラブストーリーを見て感動するのではなく、『僕』と『彼女』を通し、観ている人自身の人生を思い起こす映画になったらいいなという思いがありました。分かりやすく言うと、みんながすんなり観られる。色で言うと、透明。そうイメージし、『僕』という人を作っていきました」。そんな「僕」が脳腫瘍を患い、余命を宣告される冒頭。ショックを受ける彼の前に“悪魔”が現れ、「大切なもの1つと引き換えに、1日の命をやろう」と囁く。「僕」と同じ姿形をした悪魔を演じるにあたり、佐藤さんは「それはもう、長く険しい道のり(笑)」を歩んだそうだ。「悪魔をどう演じるのが正解か、なかなか見つけられなくて。クランクインの前に2日間ほど、『僕』と悪魔が話すシーンのリハーサルをしました。“もう少し普通に”とか、“嫌な奴っぽさをなくして”とか、監督と話し合いながら調整していきました」。こうして「僕」と悪魔を演じ分けた佐藤さんだが、川村さんは「今回の彼は1人2役と言わず、1人3役をこなしたようなもの。『僕』の芝居と悪魔の芝居とモノローグの芝居があって、大変だったでしょうね」とも。「僕」の心情が切々と語られていくモノローグも、作品に欠かせない要素だ。「長い手紙という設定上、原作は1人称の文章になっています。映画の方も、モノローグを多用していることで物語に対する親近感がより増しました」。「どの作品の時も、モノローグは超重要視しています」と佐藤さんも明かす。「大抵はアフレコで録るのですが、その日はほかに仕事を入れないようにしてもらっています。軽い気持ちではできない作業なので…と言いつつ、『天皇の料理番』のアフレコ後に、この作品のアフレコの予定が入ったことがあったんです。しかも、『天皇~』の方は妻を罵倒するシーンで。“お前みたいな女なんか、こっちからごめんだ~!”みたいな(笑)。だから、声がガラガラになってしまい、その節はご迷惑をおかけしました」。そんなハプニングはあったにせよ、「心をこめてやりました」と語る佐藤さんの言葉に納得。淡々としているようでいて、その一言一言がやるせない「僕」のモノローグが胸にぐっと迫ってくる。実は、この感動にも理由があるようだ。「“倍音”ってご存じですか?」と佐藤さんが解説し始める。「単純に言うと、人が耳にした時に心地のいい周波数というものがあるそうなんです。その周波数で話す人が一般に“いい声”とされているのですが、『僕』のモノローグでは倍音を感覚的に意識しました。どの役でもそれをやると違ってきちゃうから、逆に外さないといけない時もあるのですが」。「テクニカルですよね(笑)」と隣で脱帽する川村さん。「俳優ってエモーショナルな仕事ですけど、テクニカルな仕事でもあるんです」と続ける。「それを今回の作品で一番感じたのが、海辺のクライマックス。役なのか、佐藤健自身なのか、よく分からなくなったんです。フィクションにドキュメンタリーが急に入ってきた感じがして。でも、それってテクニカルなものがしっかりしているからこそ、生み出されたエモーショナルな感動でもあると思うんです」。クライマックスに至るまでの間、「僕」は大切なものを1つずつ差し出し、その分生き永らえていく。しかし、ものが消えることで、ものを通じて知り合った大切な人たちとの関係も消失。映画ならではの恐ろしく切ない設定に、川村さんが触れる。「小説の場合、“何かが消える”って観念的でいいと思うんです。読者が頭の中で世界を作ってくれるから。でも、映画はもっと具体的なメディア。電話が消えたことで、間違い電話をきっかけに出会った『彼女』との関係が消えたように、実際に描くことでより切迫感が出ました。もがれている感じがしましたね。映画的な発明をしてくれた監督たちに感謝しています」。演じた佐藤さんも、「ものすごくショックでした」とふり返る。「撮影が始まってからも議論したんです。ものが消えて、記憶はどこまで消えるんですか?相手は忘れるけど、『僕』は覚えているんですか?って。何日もかけて熟考し、監督や僕の中で答えを統一しました。人との関係も消えるなんて、怖いし、哀しいことですよね。大事な人たちに自分のことを忘れられた瞬間を演じた時は、何だか本当に苦しい気持ちになりました」。結局、大切なものは人とのつながりを生み、逆に言えば、つながりを生むからこそ大切なものとなる。それを踏まえ、佐藤さんに聞いてみた。今、消えてしまうと困るものは?「その答えって時期によって変わるんだろうけど…。でも、やっぱり映画かな。映画が消えたら、今ここにいる人もみんないなくなっちゃうし」。(photo : Nahoko Suzuki / text : Hikaru Watanabe)
2016年05月14日国内外で絶大な支持を集め続ける園子温監督が、自身の独立プロダクション=シオンプロダクションの第一作目として撮り上げた野心作『ひそひそ星』が、晴れて公開になる。妻・神楽坂恵を主演に迎えた同作は、自身が20代のときに書き留めたオリジナルの物語の映像化で、人間たちに届け物をするために宇宙を旅するアンドロイドの女性が主人公だ。「奥さんを使う作品は、今回で最後(笑)」と照れる園監督、そして神楽坂恵、いまの想いを尋ねた。園監督が“むきだし”の作家性をぶつけた本作は、構想25年を経て完成したモノクロームのSF作品。「第40回トロント国際映画祭」でワールドプレミアが行なわれ、過去の監督作とは異なる趣のミニマルSFの誕生と歓待を受け、「NETPAC賞」を受賞。シネフィルとしても知られる俳優の斎藤工、岩井俊二など各界の著名人が絶賛を惜しまない注目の一作だ。シオンプロダクションの第一作目という記念作だけに、伴侶である神楽坂さんが主演を務め、その門出を祝い、決意を表明することはごく自然なことだと素人は思うが、「神楽坂を出すと、少しは照れるんですよ(笑)。普通の女優さんにお願いした方がいい」と園監督。しかし、ある想いがあって神楽坂さんに決めたそうだ。「そういう個人的な感情みたいなことを越えて、神楽坂じゃないとダメでした。毎回毎回、最後と言っていますが、今回こそ本当に最後かなという感じです」。一方の神楽坂さんは、「最初は事務作業などの裏方で携わっていたんです。途中から出ることになって驚いて(笑)」と経緯を明かす。「シオンプロは少人数なので、運営もしながら撮影に入りました。撮影の準備をしながら、クラインクインの前日は振込をしていましたね(笑)」と自主映画ならではの苦労エピソードも。神楽坂さん演じる主人公・鈴木洋子“マシンナンバー722”は、アンドロイドの女性だ。昭和風のレトロフューチャーな宇宙船レンタルナンバーZに乗りこみ、広大な宇宙空間を果てしなく旅する。それは、彼女がいくつもの寂しい星に降り立っては、人間たち一人一人にかけがいのないものを届けるため。すでに滅びゆく絶滅種と認定されている、人間たちのために届けるのだ。なるほど確かに、神楽坂さんが演じる姿を観ていてしっくりくる。なぜなら園監督の身内が演じることで、観客へ映画そのものを届けていることになるから。「実際、何人かの女優さんが手をあげていたけれど、自主映画でセールスポイントを求めてもおかしな話なんです。どこかの映画会社の仕事なら、ともかくですが、この映画の芸術性としては好きなものを撮ることなわけだから、ドライな関係の人が一人でもいると嫌じゃないですか。簡単に言っちゃうと、好きな人で撮るということなんです(笑)。それは恥ずかしいことでもあるので、それを乗り越えていく必要もあったわけです」と園監督。こうしてお金目的でなく始まった映画『ひそひそ星』の撮影は、東日本大震災の傷跡が残る福島県の富岡町・南相馬・浪江町などでロケを敢行。記憶と時間、距離への焦燥などを“ひそひそ”と声のトーンを落とした特異なセリフ回しで描く撮影は、未だ仮設住宅で生活する地元の人々たちなどの協力を得て完遂した。園監督にとって、『希望の国』に続くモチーフではあるものの、「そこに政治的なメッセージは一切ないですよ」と想いを明かす。「福島の風景の映画にしたかったんです。けれども『希望の国』の後、どうしていいかわからなかった。やがて自分のプロダクションの第一作目というときに、これがあるぞと。でも、第一作目にしては実験的すぎるけれども、逆にいろいろと今しかないんですよね。色気を出したエンタメ映画を撮る案などもあったけれど(笑)、これで良かったです。本当に。ロケ地など次に行ったときに、なかったりしますよ。きれいな更地になっていて、何もないの。そういう意味でもメモリアル、記録のためにも撮っておいて良かったと思います」。こうして完成した『ひそひそ星』は、園監督の新たな一面を観ることになるという絶賛意見が飛び交うが、大型の商業映画から先鋭的なインディペンデント作品まで縦横無尽にスクリーンを駆け回る園監督が<本当に描きたかったテーマの作品>となった様相を呈していて、興行収入を第一に考えない作家性と実験性が炸裂した内容は、必見と言えそうだ。ちなみに神楽坂さんの起用は、どうして今回で最後なのか?ご本人も、「最後にしようと何度も思っているみたいですが、私は何度も登場していますよね(笑)」と不思議がる。この点について園監督は「ただ、恥ずかしいということですね(笑)」とうつむくばかりだが、これが本当に最後の作品となると、それはそれで大変なことに!シオンプロダクションの第一作目の『ひそひそ星』は、園子温監督ファンにとって見逃し厳禁の一本だ。(text/photo:Takashi Tokita)
2016年05月11日4月から好調なスタートを切ったNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」。生活総合雑誌『暮しの手帖』(暮しの手帖社)を創刊した大橋鎭子と花森安治の軌跡をモチーフにして、三姉妹の長女・小橋常子(高畑)が家族を守るため、「とと(=お父さん)」になることを目指す物語だ。両親と三姉妹からなる小橋家は、静岡・浜松で仲良く暮らしていたが、常子が10歳の時に父親の竹蔵(西島秀俊)が結核のため亡くなった。東京へ移り住み、紆余曲折の末、仕出し屋「森田屋」に一家で下宿することになった。その森田屋の一人娘・森田富江を演じるのが、2015年夏にAKB48を卒業し、女優として活躍する川栄李奈。朝ドラ初出演となり注目を集めている川栄さんが、スタジオでの収録後、朝ドラに抜擢された心境と、女優としての目標を語った。役柄の富江は、「森田屋」に来たばかりの常子に辛く当たる。役作りには苦労しているようで、「『富江ちゃんはクールな子です』と言われていたのですが、クール過ぎてしまって。『クールなんだけど優しい子です』と言われました」とふり返った。一方、「森田屋」は賑やかな家族で、「森田屋」の人々を演じる秋野暢子、ピエール瀧、平岩紙、浜野謙太らと過ごす撮影現場は笑いに満ちている。「ピエール瀧さんが本当に面白い方です。衣装からお腹がちょっと見えているのですが、撮影の合間にも、お腹を出して遊んでいます(笑)」と表情をほころばせた。主演の高畑さんについては、「お芝居が上手ですし、表現力が豊かだし、こういうしゃべり方があるのだと学んでいます」と現場での様子を紹介。「でも、ちょっとおじさんぽいと言いますか(笑)ふんわりした感じなのかなと思っていたのですが、空き時間にイカを食べていたりします。『あっ、イカを食べるんだ!』と思いました(笑)」とも。そんな川栄さんは、AKB48にいたころから女優への思いを持っていたそうだ。「朝ドラは自分の目標でもあったので、夢がかなったと言いますか、朝ドラに出られて嬉しいです」と笑顔。「共演者の方々が経験抱負で、お芝居がすばらしいです。人柄は本当に面白いし、学ぶところがたくさんあります」と目を輝かせた。女優としての将来的な目標の話題では、「30歳や40歳になっても、活躍できるような女優さんになりたいなと思います。幅広く色々な役を経験して、『あの子、色んな役ができるよね』と言われるような女優さんになりたいです」と抱負を言葉にした。すでに、人気コミック「DEATHNOTE」の実写映画化シリーズ最新作『デスノート2016』(2016年秋全国公開予定)にて、無差別殺人を繰り返す青井さくら役を演じることが発表されているが、ホラー映画も好きと言い、「ちょっとグロい映画が好きなので(笑)犯人とか、“こいつ、やばいのではないか?”という役もやりたいです」と軽やかに答えた。劇中で、ヒロインの常子は、父親が亡くなった後、家族の前で「ととになります」と宣言し、母親(木村多江)から、父親が何気ない暮らしの中の一瞬、一瞬を大事にしていたことを教えられた。忙しい毎日を送る川栄さんだが、「自身にとっての日常の中にある幸せ」を尋ねられると、「普通に家に帰って、テレビを見て、お風呂に入って、寝ることが幸せです。家に帰ると、何も考えずにボーっとしているのですが、そのときが、すごく幸せです」と笑顔を見せた。(竹内みちまろ)
2016年05月10日横山秀夫のベストセラー小説を2部作で映画化する『64-ロクヨン-』(瀬々敬久監督)。主演を務める佐藤浩市が警務部の広報官・三上義信を、共演の三浦友和が元上司で刑事部捜査一課長である松岡勝俊を演じ、骨太なヒューマンドラマにさらなる深みを与えている。原作は「半落ち」「クライマーズ・ハイ」など、組織ドラマの名手として知られる横山氏の集大成の呼び声高い同名小説で、NHKでドラマ化されたことも。たった1週間で終わった昭和64年に起きた少女誘拐殺人事件(通称ロクヨン)の時効が近づく平成14年、当時を模倣した事件が発生。元敏腕刑事で、現在は警務部広報室広報官を務める三上が、記者クラブやキャリア上司との攻防、刑事部と警務部の対立に巻き込まれながら、真実を追う。「警察は日本で一番大きな組織でありながら、その実態があまり知られていない。でも、広報官の目線から、社会人なら一度は経験する組織内の対立や衝突を描いているので、誰もが感情移入できる。そこが横山さんらしい」(佐藤さん)、「横山さんの作品はほとんど読んでいますが、『64-ロクヨン-』が一番好きですね。うまく言葉にできないですけど、自分に波長が合うんです。松岡は組織の中でも、微妙な立ち位置で演じがいがある」(三浦さん)意外にも1983年に放送されたドラマ「みんな大好き!」、故相米慎二監督の『あ、春』、自動車メーカーのCMなど、共演回数はさほど多くはない。それでも「口幅ったいですけど、いい意味で老けないし、久々にご一緒できるので楽しみは格別。心強さも感じました」(佐藤さん)、「いま、映画界で佐藤浩市と共演した俳優はたくさんいるし、僕もそのひとり。相性も良いし、一緒だと心地いいですよ」(三浦さん)と互いを意識し、尊敬しあう関係だ。そんなベテラン俳優が火花を散らす共演シーンが『64-ロクヨン-後編』で堪能できる。かつて三上と松岡は部下上司として、ロクヨン事件の捜査にあたった関係性。その後、広報官になった三上が捜査一課から敵視されるなか、松岡は気にかけている。再び誘拐事件が起こると、三上はトイレで待ち伏せし松岡に接触。被害者家族の実名を教えてほしいと迫るのだ。豪華キャストが集結する本作だが、二人の演技合戦は最大級の見せ場となっている。重厚感あふれる原作を、2部作で映画化するのも本作の大きなチャレンジ。結末も原作とは異なっている。佐藤さんは「プレッシャーもある」と認めつつ、「ドラマとは違うアプローチが必要だし、原作よりも一歩踏み込んだラストにしなければ、前後編にする意義が薄れてしまう。それは瀬々監督をはじめ、現場のスタッフや僕も含めた総意でした。ファンの皆さんはいろいろご意見あると思いますが、僕自身は納得しています」と強い覚悟を示す。三浦さんは「結末だけじゃなく、映画全体としてもオリジナルな要素は必要だと思います。もちろん賛否はあるかもしれないけど、原作を読んだ方、ドラマを見た人にも期待してもらいたいですね」と静かな口調で自信をみなぎらせる。コミック原作やアニメが幅を利かせる日本映画界にあって、世代を超えた実力派俳優が顔を揃え、圧倒的な存在感を放つ『64-ロクヨン-前編/後編』。見る映画がないと嘆く大人への挑戦状といえる作品に仕上がった。(photo:Nahoko Suzuki / text:Ryo Uchida)
2016年05月09日人気漫画家・福満しげゆきの代表作「生活【完全版】」を、東出昌大、窪田正孝、小松菜奈、片岡鶴太郎という豪華メンバーで実写映画化した『ヒーローマニア-生活-』。特殊能力ナシ、超人的肉体ナシ!どこにでもいそうな市井の人々が小さな悪を成敗しながら世直しをしていくアクション・エンターテインメントで、日本版『キック・アス』(’10)との声もかかる期待の一作だ。今回ヘタレの主人公を演じた東出と下着泥棒を繰り返すニートを演じた窪田にインタビュー。およそ自身と共通点がない役柄を通して見えたヒーロー像とは――?東出さん演じる中津秀利は元サラリーマンで、世間をうがった目で見ているフリーターだ。基本的にヘタレのダメ男で、東出さん自身も過去に自分が演じた爽やかな好青年や硬派な印象のキャラクターとの差を意識して演じたという。「履歴書の賞罰欄を書いては修正テープで消すという所が中津と最初に監督がおっしゃっていて、消したい過去がある、やり直したい過去があるけれど、そこを自分自身で認めきれないでいるんです。修正テープというずぼらな感じも人間として未発達な点です。本当に行きづまっていて、自分がどう変わっていいかわからないけれど、鬱屈している人物だなと思いながら演じていましたね」。一方、窪田さん演じる土志田誠は、「僕は下着泥棒です。そこがファースト・インパクトですよね。大事に演じました(笑)」本人が言うように下着泥棒を繰り返すニートの若者。彼は身体能力に長けていて中津との出会いを経て、小さな社会悪を退治する自警団を結成して、持ち前の武術スキルを駆使して寡黙に悪を裁いていくキャラクターだ。「中津さんとの出会いでひとりから仲間意識を持って、仲間っていいなあという意識に変わっていく。土志田にはマニアックな部分とストイックな部分があって、それが皆のための力になっていく、そういう風に見えればいいなと感じながら演じていました」とキャラクターを述懐する。ヘタレダメ男に下着泥棒ニート。もちろん、「まったく共通点はないですね(笑)」(窪田さん)と自身と役柄には差があるものの、中津と土志田がゆっくりと成長していく過程のお芝居を経て、自分自身の“若かった”時代を思い出したこともあったと、東出さんは言う。「この映画のタイトルの“生活”じゃないけれど、自分の生活や将来に対して、または人間関係がうまくいかないことを人のせいにしていた時期はありました。『あいつ、気に食わねえ』とか、結局そういうことって自分と似ているところがあったりするからで、自分だけが正解だと思っているからなんです。だから、中津を演じる上で監督と話し合っている時に、『ああいうモラトリアムな時期って誰にでもあるよね』って、とても共感した覚えがあります」。「結局、それって自分から逃げているだけなんですよね」と、窪田さんも続ける。「いまでもどこかで妥協しているところあると思うし、最終的には皆、自分自身との戦いだと思うんです。頑張ったことでも、何かしでかしてしまったことでも結局は後で返ってくるもの。だから、向けられた課題は果たしていかないといけないなと、常日頃思っています」。『ヒーローマニア-生活-』はヒーローと言ってはいるものの、子どもの頃にあこがれたいわゆるスーパーヒーローは登場しない。でも中津や土志田たちの活躍を観ていると、真の意味でのヒーローについてじっくりと考えてしまう。東出さんは言う。「大人になったいま、ウルトラマンや仮面ライダーになりたい願望はもうないけれど、普通の生活の中でいい人になりたい、細やかなことができる大人になりたいと思う。それがヒーローのような気がしています。中津も最後の最後で、少しだけ変わるんです。これが、たったそれだけのこと?ですが、それこそが大事だと思うんです。そこが届くといいなと思っています」。【東出昌大】ヘアメイク:勇見勝彦(THYMON Inc.)スタイリスト:檜垣健太郎(little friends)【窪田正孝】ヘアメイク:糟谷美紀スタイリスト:大石裕介 (DerGLANZ)(text/photo:Takashi Tokita)
2016年05月06日『アベンジャーズ』シリーズをはじめ、日夜拡大を続けるマーベル・スタジオの最新作『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』がついに完成。ヒーロー映画の新基準として、“シビレル”傑作となった本作の製作総指揮を務めるネイト・ムーアが来日し、取材に応じた。「テーマは友情だ」と断言するムーア氏。映画はマーベルが誇る2大ヒーロー、アイアンマンとキャプテン・アメリカが「正義のあり方」をめぐり対立し、互いに最強チームを結成。ともに世界平和を守り続け、堅い友情で結ばれた彼らだからこそ、両者の衝突には苦悩と葛藤がにじみ出ている。ヒーロー対決は近年、映画界のトレンドだが、本作はキャラクター描写に深みがあり、現代社会が向き合うべきテーマにも踏み込むドラマ性が魅力だ。ブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフ(スカーレット・ヨハンソン)、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』での活躍も記憶に新しいスカーレット・ウィッチことワンダ・マキシモフ(エリザベス・オルセン)ら、ヒロインの存在感にも目を見張るものがある。キャプテン・アメリカと親密な関係にあるシャロン・カーター(エミリー・ヴァンキャンプ)もサスペンスフルな展開に大きな影響を与えており、見逃せない存在だ。ムーア氏は「女性のキャラクターを重視しているのは確かだね」と認めた上で、「前作(『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』)でキャプテン・アメリカとの距離が近づいたナターシャだが、今回はアイアンマンことトニー・スターク側につくんだ。彼女は理性的なキャラクターだから、その決断は両者のパワーバランスに大きな影響を及ぼすことになる」と語る。もちろん、世界最高のスパイとして高度な戦闘力と妖艶さは健在である。「一方、スカーレット・ウィッチは成長過程にあるキャラクターだ。彼女は任務中にミスを犯し、尊い人命を奪ってしまった。アベンジャーズの“監視”を求める世論をさらに後押しする結果にもなり、ほかのヒーローが経験したことがない痛みを味わうんだ。その分、ヒーローとして戦う意味を考えさせる存在になっている。シャロン・カーターもアクションヒロインとしてより成熟した。キャプテン・アメリカとの関係性も気になるところだね」。本作では最強ヒーロー軍団に、アントマン、ブラックパンサーらが初参戦。そして、世界中が注目する中、あのスパイダーマンがついに登場し新風を吹き込んでいる。演じるのはイギリス出身の新星、19歳のトム・ホランドだ。今回の“お披露目”を経て、2017年夏に公開される『SPIDER-MAN: Homecoming』(原題:スパイダーマン ホームカミング)で新たなシリーズが紡がれる。スパイダーマンが放つ“糸”は、物語にどう“絡む”のか?「スパイダーマンことピーター・パーカーは特殊能力に目覚めたばかりで、街の小さな悪と戦うに留まっている。そんな彼をトニー・スタークがスカウトするんだ。自分のパワーを証明する絶好のチャンスだから、断る理由はないよね。それにほかのキャラクターと違って“しがらみ”とは無縁だから、いい意味で任務を楽しんでいて、軽妙な立ち位置だといえるね」。その言葉通り、未熟ながら初々しい活躍ぶりでファンの期待に120%応えている。ちなみに(ディズニーではなく)ソニー・ピクチャーズが製作する『SPIDER-MAN: Homecoming』にはロバート・ダウニー・Jr演じるアイアンマン/トニー・スタークの出演が決定しており、今後マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)との融合が進んでいく予定だ。「過去のスパイダーマン映画に比べて、よりMCU色が強くなるはずだ。と言ってもルールを押し付けたりせず、クリエーターの自由な発想を尊重するつもりだよ」。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』は全国にて公開中。(photo / text:Ryo Uchida)
2016年05月03日兄の連れてきた婚約者は…
いきすぎた自然派ママがこわい
義父母がシンドイんです!