【音楽通信】第62回目に登場するのは、結成15年を迎えたアコースティックバンド「OAU(オーエーユー)」のフロントマン、TOSHI-LOWさん!【音楽通信】vol.62BRAHMANもOAUも、もう1回はやりたくないTOSHI-LOWさんは、1995年に結成された日本が誇るライブバンドでもある、ハードコアパンクバンド「BRAHMAN(ブラフマン)」のボーカリストとして、そのカリスマ性で多くのロックファンから支持されています。2005年には、TOSHI-LOWさん(Vo, A.G)、KOHKIさん(A.G)、MAKOTOさん(Cb)、RONZIさん(Dr)からなるBRAHMANの全メンバー4人に、ヴァイオリニストでフロントマンも務めるMARTINさん(Vo, Violin, A.G)とパーカッショニストのKAKUEIさん(Perc)の2人を加えた6人からなる、アコースティックバンド「OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND」を結成(その後の名称は「OAU(オーエーユー)」)。そんなOAUが、2020年12月9日にオールタイムベストアルバム『Re:New Acoustic Life』をリリースされるということで、バンドを代表してフロントマンのTOSHI-LOWさんに、お話をうかがいました。ーー1995年にBRAHMANを結成されてから今年で25年となりますが、これまでを振り返るといかがでしょうか。あっという間でしたね。でも、BRAHMANを最初から「もう1回やれ」と言われたら、絶対イヤですね(笑)。ーーそれはなぜですか?苦しい思い出しかないから。ただ、BRAHMANを続けてきたことに対してのご褒美として、いい思い出もたくさんもらっているので、それはありがたいです。でも、もう1回はしたくない。ーーその一方で、2005年にはOAUを結成されて、今年で15年となります。OAUも「もう1回やれ」と言われたらイヤですが(笑)、15年経ちましたね。いまの時代は、けっこうアコースティック音楽の理解が深い。自分ではジャンルで隔てたことはなく、ロックの人がアコースティックを歌ってもいいと思うし、弾き語りをやってもいいと思うし。でも、15年前はそうじゃなかった。「なんでロックの世界の人がアコースティックをやるのか、よくわからない」ということや「やるべきじゃないんじゃない?」という意見も多かったんです。それに加えて、自分たちもうまく演奏ができていないということもあって、苦しいこともありましたね。アルバムは「サラッと聴いても何か心に残ったら」ーー2020年12月9日に、オールタイムベストアルバム『Re:New Acoustic Life』をリリースされます。タイアップ曲やライブでの人気曲など、15年間のさまざまな楽曲が収録されていますが、もともとリリースのご予定があったのですか。予定はありました。コロナ禍になってもずっと、最低限の人数でレコーディングしていたんですが、スタジオにキャンセルが相次いで他の方が入らないので、予定より早くできちゃいました(笑)。だからコロナの影響も悪いことばかりじゃなく、作業がしやすい面もありました。ーー1曲目「世界の地図」は、NHK『みんなのうた』2020年6、7月の曲ですね。この曲はどんなお気持ちで書かれましたか。これは『みんなのうた』のために曲を書き下ろしました。コロナ禍の前に作った曲ですが、歌っている内容は、いま実際に起きていることにもつながってしまったところもあるので、説得力のある曲にはなっていると思っています。ーー映画『新聞記者』(2019年公開)主題歌「Where have you gone」、ドラマ『きのう何食べた?』(テレビ東京系 2019年放送)のオープニング曲「帰り道」など、映画ファンやテレビ視聴者といった、より多くの人に曲が届く機会もありましたね。どれもお話をいただいてから提供した曲ですが、“何食べ”は、作って出したら「テンポ感が違う」と言われて。次の日はもう業界の方向けの試写会があって、そこから「1日で作らなきゃいけない」となって、試写会用の1分間のところのみですが1日で作りました。ーー1日で曲作りができるものなのですか、すごいお話です。いや、本来は作れないですね(笑)。でもなぜか作れるときもある。この曲は、深く考えなかったからこそ素直にあふれでるメロディと、素朴なんだけどある意味、人によっては深くとらえてもらえるような歌詞が書けて。どれも偶然の産物なんです。そうなってくると、タイアップものというのは、すごくおもしろいなと思いました。先ほどお話しした「世界の地図」ではお子さんが聴くとか、“何食べ”では男性同士のカップルの方が聴くとか、さまざまな層の方が聴くということは、悪くないなと。いままではどうしても、自分に近いところから出るものしかなかったから。ーー『新聞記者』の主題歌「Where have you gone」も、映画をイメージしたのですか。当初そういうことではなく曲を作っていたんですが、その頃からすでに映画のお話があって、ちょうどいいんじゃないかと。映画にすり寄るわけではなく、自然と曲がはまっていくので、映画のエンディングにはふさわしかったんじゃないかと思っています。ーーこの曲は(ELLEGARDEN、the HIATUS、MONOEYES、the LOW-ATUSのギターボーカルとして活動中の)細美武士さんがゲストコーラスで参加されていますね。はい。MARTINが「こういうコーラスがほしい」と言ってきたキーが、俺が全然出ないキーなので、「高い曲が歌えるいい声の人は誰だ?」という話になりました。そこで「これは細美武士しかいない」となって、連絡したら「すぐやる」と言ってくれて。そういったコーラスも含めてひとつの楽曲なので、よかったですね。ーータイアップ曲だと、音楽ファンの方以外のお茶の間の方からも反応があったのでは。そうですね、反響は大きかったんじゃないかな。いままでライブに来る方はバンドファン、音楽ファンの方が多かったのが、明らかにテレビや映画を観てからいらっしゃったような方も増えました。しかもそれが、性別も年齢もバラバラ。ちっちゃいお子さんもいるし、おじいさんもいるし、OLさんもいるので、とてもいいことだと思っています。ーー17曲目「最後のニュース」のみオリジナル曲ではなく、井上陽水さんのカバー曲を収録されていますね。10月に放送された音楽番組『The Covers』(NHK BSプレミアム)で、OAUさんが披露されていました。番組でカバーさせてもらったことがきっかけですね。これは30年前の歌なんですが、いまのことをすごく当てている歌というか、予言のような歌です。井上陽水のように優れた音楽家の方は預言者でもあるというか、いま一番響く歌なのではないかなと。歌は、自分の歌だけではなくて、歌を誰かが引き継ぐことによって、自分の歌を違う人が歌ってくれたらうれしいと思うんですよね。時代が移り変わっても、歌はそのまま引き継がれていく。「最後のニュース」は、そんな歌い続けられることに値する歌だと思いますね。ーーもともとこの曲を聴かれていたんですか。これが新曲だった当時に聴いていたんです。報道番組『筑紫哲也NEWS23』(1989年〜2008年 TBS系列)の初代エンディングテーマでした。そのときはまだ自分がガキだったので、「おじさんがなんか言ってるなあ」っていう感じでしか観てなかったんですよね。でも、そうやって子どもなりに社会現象を見ようとしていたんじゃないかなと。ーーTOSHI-LOWさんが歌うこの曲を聴いて、『The Cover』司会の池田エライザさんが感涙され、同じ司会のリリー・フランキーさんに「番組で初めて泣いたんじゃない?」と声をかけられていた場面も印象的でした。最初はウソ泣きかと思ったんですよね(笑)。でも、エライザが「自分でもびっくりした」と言っていて、歌を聴いていたら「泣いてしまった」と。だから、インパクトがある曲なんだろうなと思いますし、そんなふうに思ってもらえることを自分たちがやれたんだったら、とても曲にもバンドにもいいことですし、うれしかったです。ーーやはりTOSHI-LOWさんの本物の歌の力に、エライザさんが感動したのだと思います。エライザは、自分でも感情にならない部分を話していたから、だから涙が出たのかなと。音楽をやっていて、望んでいることって、そういうことなのかもしれない。なんか「うまいですよね」と褒められたいわけじゃなく、説明できないけれど、心にドンッ! と深く刺さったり、「なんなんだろう、この気分」「涙が出てしまった」というのは、すごい話で。逆に、「イヤな歌です」という反応でもいいんですが、そういう何か、心にひっかかるものがやれたんだったら、音楽家としてとてもうれしいこと。それがべつに自分たちの作った曲じゃなくてもいいんですよね。ーーでは、いまのOAUを表現しているという、今回のアルバムで唯一の新曲となる16曲目「Change」はどのように生まれた曲でしょうか。今年、コロナ禍になってから作りました。「BALMUDA The Speaker」というライトが光るスピーカーとコラボの話があって、暗闇のなかの灯りをイメージしています。コロナ禍では何かが変わっていくんだけれども、変わった先に絶望ばかりじゃなくて、希望の光が見えるような意味合いの曲になればいいなあと思って作りました。ーーボリュームのあるアルバムですが、どんなふうに聴き手に届いてほしいでしょうか。どんなかたちでもいいので、サラッと聴いてほしいですね。それでも、何か心にひっかかるものがあるんじゃないかな。というのも、ものすごく「このジャンル」というように偏らない音楽性なので、聴きやすいと思います。普段はCDを買ってまでは曲を聴かないけれど、たとえば「テレビで流れている曲が好き」といった方も含めて、すべて音楽ファンだと思っているので、OAUはそういう人たちに聴いてもらえればいいなと思っているから。OAUのことも「なんだっけ? 英語の短いあのバンド」のように(笑)、名前を覚えていなくても、なんか鼻歌みたいな感じでも、心に残ってくれたらいいなと思っています。そういうなかで、「帰り道」はとくにいろいろな方に歌ってもらえているから、そういう存在でありたいですね。「心を開いて、おもしろく生きていきたい」ーー本日は東京都渋谷区にある幡ヶ谷で取材させていただいており、私自身も11年住んでいたことがあるのですが、TOSHI-LOWさんにとって幡ヶ谷はなじみのある場所なんですよね。いまもご飯を食べるなら、幡ヶ谷ですね。昨日も、子どもを連れて、幡ヶ谷にご飯を食べに来ました。このあたりは便利なんですよね。渋谷の田舎というか。気取っていないし、お店も庶民的なところばかりです。ーー普段のご趣味といえば、おうちでは何をされていますか。普段は体を動かしています。格闘技をしているので、蹴ったり殴ったり締め上げたりする練習ですね(笑)。ジムに行くこともありますし、家で鍛えたりも。子どもも、上の子は中3で下の子は小2という男ふたりですが、一緒に格闘技をしています。ーー東日本大震災の復興支援活動を行うNPO法人「幡ヶ谷再生大学 復興再生部」の代表も務めていらっしゃいますね。私は阪神・淡路大震災を経験した後に大阪から上京しまして、震災の大変さや影響を思うことがあります。TOSHI-LOWさんは震災がご自身にとって、大きな影響があったのでしょうか。阪神・淡路大震災のときは何もしなかったんですが、自分のなかで何かひっかかりがありました。何もしなかったからこそ、ボランティアをする人を偽善だと思っていたし、そういうときにできた歌をどちらかというと否定的に見ていたんです。でも、いざ東日本大震災のときに自分がボランティアをやったときに、以前の自分が思っていたようなことを人から言われました。でも、とてもその気持ちもわかるんです。過去は変えられないですが、未来は選べるわけですから、自分が「じゃあどっち側に行きたいか」と思ったら、偽善だ売名だと言われようが、大変な人に寄り添う活動がしたいと思って、いまでも復興支援の活動を続けさせてもらっています。今後もまだ何かあるかもしれない。「どうやったら未来によりよく生きられるか」と考えています。それは、お金を稼ぎたいとか、ラクをしたいわけじゃなく、「自分がどれだけ充実感を持って生きられるか」ということ。自分らしく生きるために、活動の場や活動の仲間というものを自分で作り上げるベースに、幡ヶ谷という街があります。ーーバンドも長く活動されていると、見えてくることもあるのでしょうか。長くやると、黒歴史みたいなものも変えられるんですよね。もし途中でバンドをやめていたら、最初の拙い音楽で失敗して終わっていたところも、長く続ければ「そっか、15年前にあんな失敗があったから、いまはこうしてみんなで仲良くやれるんだな」となる。「変わることができる」ことが、続けてよかったと感じるひとつです。だから、もしも「やらなきゃよかった」という失敗をした人がいたとしても、「続けていけばそれが変わるかもしれないよ」と伝えたいですね。過去は変えられないわけじゃない。以前の悔しい気持ちを書き直せるという感覚。ーーところで、TOSHI-LOWさんが息子さんへ作り続けたお弁当を紹介された書籍「鬼弁〜強面パンクロッカーの弁当奮闘記〜」が、4度の重版を記録して、さらに「中学生編」を追加して11月に発売されました。TOSHI-LOWさんがまさかお弁当エッセイを発売するとは当初驚いたロックファンは多いと思います。望んでいたことじゃないんですが、まさかです。出版のオファーをされてからも、3年間ぐらい渋っていたし、本を出そうと思っていなかったんですよ。ーーご自身でも、もともとお料理されていたんですか。していましたね、基本的に何でもできます(笑)。料理だけじゃなく、雑誌『クロワッサン』(マガジンハウス刊)も買って、生活の参考にしていたりしますよ(笑)。ーーおうちでは、奥さま(女優のりょうさん)もお料理されますよね。りょうちゃんも、もちろんやります。いまは舞台『両国花錦闘士』に入っているので、そういうときの食事は朝も夜も自分が担当して作っています。子どもも、気を遣ってなんですが、「おいしい」と言ってくれて。まあ、俺のほうが料理がうまいと思い込んで作っています(笑)。ーーTOSHI-LOWさんもりょうさんもご活躍されていると、なかなか食事の支度も大変だと思うのですが、普段は交代でされているのですか。りょうちゃんはけっこう家が好きなので、家にいるときはもちろん家事は何でもやってくれるんです。夫婦それぞれのバランスがあっていいですし、家庭はひとつひとつ違っていていいと思うので、たまたまうちはこういう感じですね。子どもたちが大人になったときに、「うちの親こうだったなあ」と、笑い話になればいいだけの話で、おもしろい家庭なんじゃないですかね。ーーすてきなご家庭のお話をありがとうございます。主題歌のお話もそうでしたが、「鬼弁」でも、音楽ファン以外のママ層の方などからも支持を集めたのではないですか。支持があるかはわからないですが(笑)、「鬼弁」を見てから来てくれても全然いいですよね。この本のサイン会があったんですが、俺の本を読んで、「コレしか知らないけど来ました!」という方もいたんですよ。俺が歌っていることはまったく関係なく。なんだろうと思いつつ(笑)、でも、それでいいかなと思います。ーーいろいろな方に、TOSHI-LOWさんの活動が届くのはいいことですよね。そうですね、以前はそういうことを否定して生きてきたんですが、もうそうじゃないなって。何かのきっかけでしか、どうせ出会えないし、それがドラマの主題歌でも、弁当の話でもいい。これからも音楽人生はもちろん、いろいろな人生が続いていくわけだから、できるだけオープンにさまざまな方と話したり交流したりしていきたいですね。ーー以前は否定していたことを肯定できるようになったというのは、そんなふうに意識が変わったきっかけは何だったのでしょうか。意識が変わったきっかけは、震災です。とくに印象に残っているのは、被災地に行ったときに、おじさんがギターを渡してきて「なんか歌ってよ」と言ってきたんですが、俺そんなんじゃないからと「いいです」と断ったら、残念そうな顔になって……。それを見て、「そんなちっぽけなプライドなんか要らなかった」とつくづく思ったから。ーーバンドのお話に戻りますと、2021年にはツアーもありますが、有観客ですか。もちろん。そのときの規制にあわせて、開催するかたちになりますね。OAUは、音楽的にもあまり密を生み出さないですし、ノリノリで大きい声で騒ぐというのも少ないです。これがBRAHMANだったら、無理ですね(笑)。今回はOAUだったから良かった。OAUだから、やれることもあります。ーーでは最後に、今後の抱負をお聞かせください。今後のことは、コロナ次第じゃないですか。ただ、いろいろなことをやってみたいですけどね。前はまさか自分の本が出るとは思わなかったんですが、いまも本のお話をいただいています。どっちにしろ、すごくいいものはできないので、なんでも中途半端だし(笑)。でも、やっぱり自分なりに出せることのおもしろさもあると思っているので、おもしろく生きていたいですよね。おもしろく生きていくためには、自分で心を閉ざしていてもダメだし。心を開いて、新しいものを求めて、生きていかなきゃと。でもコロナ禍になって思ったのは、成長しなきゃいけないと思い続けるのは、みんな疲れるじゃないですか、ずっと頑張らなきゃいけないなんて。だから、「いいんじゃない? 自分のペースで」って最近、思いますね。取材後記刹那的なBRAHMAN、そして温もりのあるOAUと、一見まったく別のものに思える音楽が共存して良い変化を遂げているのも、TOSHI-LOWさんをはじめとしたメンバーのみなさんの思いがあるからこそ。バンドシーンのみならず、さまざまなフィールドでもご活躍されているTOSHI-LOWさんの姿は、前を向く力強さを放っていました。そんなTOSHI-LOWさんのバンド、OAUのアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・大内香織取材、文・かわむらあみりOAUPROFILE1974年、茨城県出身。1995年、ハードコアパンクバンドのBRAHMANをTOSHI-LOW(Vo, A.G)、KOHKI(A.G)、MAKOTO(Cb)、RONZI(Dr)の4人で結成。1996年、初のミニアルバム『Grope Our Way』をリリースし、1999年にメジャーデビュー。TOSHI-LOW は、2003年に女優のりょうと結婚。2006年から発足し、現在は東日本大震災の復興支援活動を行うNPO(特定非営利活動)法人「幡ヶ谷再生大学 復興再生部」の代表としても活動。また、“鬼”の愛称で知られながらも、息子へ作り続けたお弁当を紹介した書籍『鬼弁〜強面パンクロッカーの弁当奮闘記〜』(ぴあ)が好評発売中。OAUは、2005年結成。BRAHMANの全メンバー4人に、ヴァイオリニストでフロントマンも務めるMARTIN(Vo, Violin, A.G)とパーカッショニストのKAKUEI(Perc)の2人を加えた6人からなる、アコースティックバンド。欧米をはじめとしたトラッドやルーツミュージックを巧みに織り込んだ有機的な音楽性に、繊細さとダイナミズムとを併せ持ったパフォーマンスで多くのオーディエンスを魅了。国内最大級のフェスをはじめ海外でもライブを重ねるほか、2010年からは、すべてのアーティストがアコースティック限定の編成で出演するキャンプフェス「New Acoustic Camp」のオーガナイザーを務めている。2020年12月9日、オールタイムベストアルバム『Re:New Acoustic Life』をリリース。2021年1月9日からはリリースの全国ツアー「OAU TOUR 2021 -Re:New Acoustic Life-」を開催。InformationNew Release『Re:New Acoustic Life』(収録曲)01.世界の地図02.Thank You03.New Tale04.夢の跡05.Dissonant Melody06.朝焼けの歌07.Making Time08.帰り道09.Where have you gone10.all the way11.Memories12.Pilgrimage〜聖地巡礼〜13.The Rain14.Black and Blue Morning15.Freight Train16.Change17.最後のニュース2020年12月9日発売(通常盤)TFCC-86746(CD)¥3,000(税別)(初回生産限定盤)TFCC-86745(CD+DVD)¥3,800(税別)(完全生産限定盤)TFCC-86744(CD + DVD + リニューライフセット)¥6,800(税別)[特典]OAU結成15周年記念かまわぬ特製「ご縁をつなげる」てぬぐいセット ※OAU×七宝(赤) / OAU×あられ(紺)鬼オリジナルお弁当レシピBOOK『oniben』
2020年12月08日【音楽通信】第61回目に登場するのは、ミュージカルはもちろん、ドラマやラジオなど多岐にわたり大活躍中のアーティスト、山崎育三郎さん!【音楽通信】vol.61『エール』の佐藤久志役は自分自身にも重なる役2007年に『レ・ミゼラブル』のマリウス役に抜擢され、その後も数々の名作に出演している山崎育三郎さん。2015年にはドラマ『下町ロケット』(TBS系)で一躍脚光を浴び、2020年のNHK連続テレビ小説『エール』(NHK総合 3〜11月放送)では、窪田正孝さん演じる主人公・古山裕一の幼なじみ、佐藤久志役として出演。ほかにもミュージカルはもちろん、ドラマや映画、吹き替え、ラジオなど、さまざまなフィールドで活躍しています。アーティストとしては、2018年7月にオリジナルアルバム『I LAND』をリリース。そんな山崎さんが、2020年12月2日に、ニューシングル「君に伝えたいこと」をリリースされるということで、お話をうかがいました。ーー12歳のときにミュージカルでデビューされましたが、小さい頃からミュージカルや音楽にふれる環境だったのですか。子どもの頃から、家族でよくミュージカルを観に行く機会がありました。その頃の僕は、ものすごくシャイで人前が苦手だったのですが、そのことを母が心配していたんです。お気に入りのミュージカルの主題歌を僕が歌っていると、その歌声を聴いた母が「音程もしっかりしているしきれいな声だな」と、「このまま音楽をやらせるといいんじゃないか」となって、小学校3年生のときに、近所の音楽教室に通うようになりました。小学校3年生から歌を歌い始めて、当時はミュージカルや童謡などを歌っていたんですが、歌っているときはとても開放的になれました。学校でも、先生から「育三郎くんは歌が上手らしいね。みんなの前でこれ歌ってみて」と言われて、本当はシャイなんですが、歌うときだけは自信を持ってできたんですよね。そうやって少しずつ、歌うことが特別なことになっていきました。あるとき、音楽教室の方から「オーディションがあるからチャレンジしてみない?」と言われて、オーディションを受けたら合格したのがきっかけで、ミュージカル俳優としてデビューすることにつながっていきましたね。ーー子どもの頃に、舞台のどこに魅力を感じたのでしょうか。もともと人見知りだったけれど、舞台では役を通して歌を歌ったり踊ったりして自分を表現することでより開放的になれる瞬間があって“自分らしくいられる場所”だと感じられたことが、魅力だったんだと思います。歌と同時に、小学校から野球もやっていて、舞台は野球と同じような“チーム戦”というか。ひとつの作品をチーム全体で挑んでいく感覚が、子どもながらにすごく好きだったことを覚えていますね。楽しかった思い出があります。ーー“ミュージカル界のプリンス”と名高い山崎さんですが、『エール』では、窪田正孝さん演じる主人公の幼なじみで、歌手になって歌声を披露する佐藤久志役を演じていますね。今回の役は、ご自身とも重なる部分はあるのでしょうか。佐藤久志という役は、子どもの頃にお母さんとの別れがあってすごく傷ついているときに、森山直太朗さん演じる恩師・藤堂清晴先生と出会い、「君には歌がある」という励ましの言葉をもらったことによって、また一歩踏み出せる自信が持てるようになったんです。そんな歌によって自分に自信を持てたというところは、とても自分自身にも重なりますね。久志は音大でクラシックを歌ったりピアノを弾いたりするのですが、そういった青春時代を僕自身も過ごしていたので、その面でも重なる部分があって、楽しんでやらせていただきました。ト書きに「ウインクをする」など、台本にいろいろと書いてあって、なのでキザなお芝居は僕のアドリブでやっているわけではないんです。台本を見たときに「何を求められているだろう?」と考えて、前半はとくにコミカルに楽しんで振り切ったほうがいいと思ってやってみました。久志は後半、挫折してボロボロになって家族まで巻き込んでしまって、戦争時代には戦時歌謡を歌った自分のことを思うところがあり、いろいろなことが重なった状態になっていきます。きっと、もともと彼は繊細なものを持っていて、それを隠すように明るく振る舞うところがあると思うんですよ。華やかに見える人ほど、ひとりのときはすごく悩んだり、考え込んでしまうところがあると思うんです。ひとつの役で「プリンスだ」と言われてキラキラしたり、面白いコミカルなお芝居をしてみたり、あそこまでボロボロになって髭を生やして泥臭くなって、そして最終的に復活するんですが、ここまで振り幅のある役をやらせてもらうことはなかなかありません。これまでは、たとえばプリンスだったら、キラキラしたまま、終わることが多かったから。シングルの2曲は全然違うものとして聴いてほしいーー2020年12月2日に、ニューシングル「君に伝えたいこと」をリリースされましたが、森山直太朗さんが作詞作曲されていますね。きっかけはなんだったのでしょうか。以前、直太朗さんに、僕のラジオ番組のゲストに来ていただいたことがあって。その際、ギターを持ってきてくださっていたので、直太朗さんの「さくら」を一緒に歌ったんです。初めて一緒に合わせたのに、すごくいいハーモニーが作れて、直太朗さんもそのときのことをよく覚えてくださっていました。今回『エール』で共演したときに、いろいろなお話をする機会が撮影の合間にあって、メイク室で直太朗さんに「育三郎くんはオリジナル曲は歌わないの? 機会があったら曲を書いてみたいな」と言ってくださって。僕も「直太朗さんに書いていただけるならぜひ書いていただきたいです」という話から、とんとん拍子に話が本格的になっていった感じですね。ーー山崎さんから曲についてのリクエストはなさいましたか。いえ、まずは直太朗さんが僕をイメージした曲を待ちました。それこそ今回のこの曲だけではなくて、実は一気に10曲ほど書いてきてくれたんですよ。直太朗さんは「育三郎くんのことを思っていたら、どんどん楽曲が浮かぶんだ」なんて言ってくださって。次から次へと曲を仕上げてくださって聴かせていただくなかで、この楽曲が一番自分に響いたので、リリースすることにしました。ーーしっとりと聴かせるバラードで、ピアノの音色も印象的です。以前、直太朗さんの劇場公演『森の人』(2005年)の書籍の編集を担当させていただいたのですが、その劇場公演ではピアノを紺野紗衣さんが担当されていて、今回「君に伝えたいこと」でも紺野さんがピアノで参加されています。今回組まれてみて、いかがでしたか。実は紺野さんは、僕が12歳のときに初めて主演をやらせてもらったときのミュージカルの音楽監督助手だったんですよ。20数年前から彼女と出会っていて、僕にとっては、お姉ちゃんのような存在。ピアノの技術もお人柄もすてきな方で、当時からかわいがっていただいていて。最後に稽古場でお別れするときも、子役のみんなで、寄せ書きもして、彼女に歌をプレゼントしたんですよ。印象的な出会いでした。でも今回はそことは関係なく、直太朗さんと楽曲の話をしたときに、ピアノをどの方に弾いていただくかとなった際、お互いに「紺野さんがいいね」と名前が出たんです。僕が彼女と20数年前に出会った直後くらいに、直太朗さんも出会っていて。偶然が重なって弾いていただくことになって、もちろんピアノは間違いないですし、子どもの頃からの付き合いもあるので、あうんの呼吸じゃないですけども、ふたりきりで一発録りしたレコーディングもうまくいきました。そして今回、僕がこの曲を選んだ理由はもうひとつあります。僕はミュージカルで育ってミュージカルの世界で生きてきたので、自分自身ではなく、役として、作品のなかでの表現をずっとやってきたんですね。でも、もっと「等身大な自分の楽曲を歌ってみたい」という思いもあったんです。今回はミュージカルで歌っているときとはまったく違う歌い方で、山崎育三郎としての歌声で「自分の思いを届けたい」と、チャレンジさせていただきました。ーーいまのリアルな山崎さんが詰まっている曲ともいえるのですね。そうですね。レコーディングの頃、『エール』でちょうど直太朗さん演じる藤堂先生が戦争で亡くなるエピソードがあり、歌詞の内容については藤堂先生から久志へのエピソードだととらえてグッときながら歌ったことを覚えています。僕もここまで生きるなかでいろいろな別れがあったり、学生時代に祖父母と3人で暮らしていた時期もあったりして、おじいちゃんおばあちゃんへの思いが重なったり。聴く人にとっても、自分の大切な人を思い浮かべて聴いてほしいという思いをこめて、より自分の心で歌えるような楽曲としてとらえました。あえて歌詞も、どの方の思い出にも寄り添えるように、言葉選びは意識しています。ーーカップリング曲は、佐藤久志として『エール』でも歌われていた古関裕而さん作曲の(劇中では古山裕一作曲の)「栄冠は君に輝く」です。劇中では、一升瓶をラッパ飲みしていた久志が立ち直って、伝統ある甲子園球場で同曲を歌唱するシーンはジンときました。あのシーンはどのような思いで歌っていらっしゃいましたか。あの瞬間は、『エール』の久志としてみんなへの感謝の気持ちをこめて、さらに全国の学生のみなさんやいろいろな人たちにエールを届けたいと思って、この歌を歌っていました。僕は小学校から高校まで野球をやっていて、甲子園というものが子どもの頃からの夢の舞台なんです。この曲は高校野球の歌ですから、子どもの頃から当たり前に聴いていた楽曲だったんですが、今年はコロナの影響で甲子園で開催する予定だった全国高等学校野球選手権大会が100年の歴史のなかで初めて中止になってしまいました。学生にとっては甲子園がすべてだったわけじゃないですか、全国の高校球児たちの悔しい思いもすごくわかるんです。それとは別に、古関さんの母校の福島県立福島商業高等学校の吹奏楽部のみなさんとコラボをする企画がNHKさんであって、コンサートをする予定もあったんですが、それもコロナの影響でなくなってしまいました。でも、企画がなくなっても、子どもたちが自発的に「山崎さんに送ろう」と、この曲をリモートで演奏して僕に送ってくださったんです。そのことにすごく感動して、「みんなとの演奏を形にしたい」と思ったとき、ちょうど「君に伝えたいこと」のシングルリリースを考えていたので、ここに収録しようと。そしてコーラスは、福島大学付属小学校の合唱部のみなさんなんですよ。直太朗さんもコーラスに参加しています。この曲は古関さんの母校の高校と、小学校のみんなに参加してもらってできた楽曲なんです。だからこれは、カップリングというよりも、特別な思いのある曲なんです。「君に伝えたいこと」も朝ドラをやっていたからできた楽曲ですが、「栄冠は君に輝く」は今年だからこそ生まれた楽曲で、この2曲は全然違うものとして聴いていただきたいですね。ーー『エール』のオフィシャルサイトで、主演の窪田さんとのオフショットも公開されていました。撮影の合間は、基本的には窪田くんもそうですが、みんなリラックスしていますね。本番までは、甲子園のシーンを撮る合間もふたりでキャッチボールしていました。本番になって「栄冠は君に輝く」を歌っていたシーンは、視聴者のみなさんには、久志がボロボロになってからやがて最終的に、あの歌のシーンになっていく流れだったじゃないですか。でも、実際は、あの「栄冠は君に輝く」を歌うシーンから撮影したんですよ。ドラマでは物語の順番通りに撮影しないことはよくあるんです。そこが一番のプレッシャーでしたね。台本を読み込んで「こういうことがあって、こういう感情で歌うだろうな」と自分で自分を追い込んでいったんです。そんななか、先ほどお話させていただいたような思いで歌わせていただいて、こみあげてくる思いがありました。誰もいない、無観客の球場のピッチャーマウンドにひとりで立ったときに、なんとも言えない気持ちになったんですよね。本当だったらここに、たくさんのお客さまがいて、野球も行われていたんだろうなと思ったり。僕もコロナの影響で、ミュージカル『エリザベート』が全公演中止になって、通常では考えられないことが起こった年。芝居を超える瞬間が自分のなかにあったので、いろいろな思いであのシーンに挑んでいけた。最終的には、ちゃんとお芝居がつながっていたので、良かったなと思いました。この瞬間を必死に生きると未来につながっていくーーオフの日はどのように過ごしていらっしゃいますか。実は、オフがまず、ほぼないんです。時間があったら分厚い台本や歌を覚えたり、どういうパフォーマンスをするかを考える時間になっていて、やることがいっぱい(笑)。あとは家族と過ごすだけですね。ずっとこんな感じで過ごしていて、基本的に仕事の現場に行くときは、もう全部できあがった状態にしています。ーー息抜きはされないのでしょうか。これが不思議なんですがしないんです。どこか仕事を仕事とも思っていないというか、どれも好きでやっているので、好きなことが息抜きでもあり、仕事でもあり。だから、毎日24時間ずっと仕事なんです。きっと、これを仕事と思ったらできないですね、好きでやっているから。どうやったらお客さまに喜んでいただけるかだけをずっと考えているんですが、それって、すごくワクワクするじゃないですか、学生の文化祭の前のような気持ち(笑)。それに近いんですよ。ずっとそんな感じで、なるべく楽しみながら、自由な心でいられるように意識して生活していますね。ーー11月には「山崎育三郎 THIS IS IKU 日本武道館」 が開催されましたね。これは僕のラジオ番組から生まれたコラボ企画のショーで、今年で3年目になります。僕自身がドラマ、映画、声優、バラエティ、コンサート、歌手とさまざまな仕事をしているなかでのいろいろな出会いが僕を成長させてくれています。「ジャンルを超えたい」といつも思っていて、僕はヒュー・ジャックマンさんが大好きなんですが、彼はブロードウェイの舞台に立ち、映画ではハリウッドスターでもあり、司会もやって、コンサートもやってCDも出しているんです。彼は自分がパフォーマンスできる場所ならどこへ行こうが表現できる人だからこそ、そこで求められている。それと一緒で、もうジャンルで区切る時代ではない気がしていて、ジャンルを超えたエンターテインメントを作りたいという思いがあって、毎年自分が出会った人たちとの、ここでしか見られないショーというのを作らせていただいています。これだけジャンルがバラバラな人たちと出会う機会があるのは、ミュージカル俳優をやりながら、いろいろな活動をさせてもらっている自分だからこそ、できていることだと思っています。ーー最後に、今後の抱負をお聞かせください。基本的に、明日が来ると思っていないんです。いまこの瞬間、何ができるか以外、何もできないと思っていて。たとえば今年、誰もコロナ禍になるとは思っていなかったわけじゃないですか。ですから、先を見るよりは、どれだけ与えられたこの瞬間を必死に生きるか、それが結果未来につながっていくだけだと思っています。目の前にあることに必死に挑むだけで、それが知らない間に、自分でも想像していなかった未来につながっていくから。数年前の自分にとっても、いまのように朝ドラに出て、武道館のステージに立つなんてことをやっているかといったら、そんなことは全然想像していませんでした。でもそれは、これまでの積み重ねでしかなくて、抱負と言ったら、「どれだけ目の前のことに集中して、本気でできるか」ということですね。あとはコロナの影響で、ミュージカルも公演中止になるなど、お客さまが客席にいない空間をたくさん経験しました。目の前にお客さまがいて、舞台に立てることが当たり前じゃないとすごく実感しています。僕たちの仕事は、お客さまがチケットを手にして、時間を作って、観に来てくださるということで成立しているので、あらためて応援してくださる方や劇場などに足を運んでくださる方々への感謝の気持ちはより強くなっています。また、お客さまがいる前で、パフォーマンスができる状態が戻ってくることを祈っていますね。取材後記先日放送を終えた『エール』では、全国のお茶の間へ楽しい時間を届けてくれた山崎育三郎さん。ミュージカルにドラマにラジオ、そして音楽活動と忙しいなかでも、自由な心でジャンルレスにご活躍される山崎さんからは、元気をもらえる人たちも多いのではないでしょうか。そんな山崎さんのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・宮﨑健太郎取材、文・かわむらあみり山崎育三郎PROFILE1986年1月18日、東京都出身。2007年、ミュージカル『レ・ミゼラブル』マリウス役に抜擢され、その後も数々の名作に出演。2015年、ドラマ『下町ロケット』(TBS系)で一躍脚光を浴び、以降もドラマや映画、吹き替え、ラジオではニッポン放送『山崎育三郎のI AM 1936』(毎週土曜 午後9時30分)のパーソナリティも担当するなど、さまざまなフィールドで活躍中。アーティストとしては、2018年7月にオリジナルアルバム『I LAND』をリリース。2020年3月より放送中のNHK連続テレビ小説『エール』(NHK総合 3月〜11月放送)に、佐藤久志役として出演。12月2日、ニューシングル「君に伝えたいこと」をリリース。InformationNew Release「君に伝えたいこと」(収録曲)01.君に伝えたいこと02.栄冠は君に輝く03.君に伝えたいこと [Instrumental]04.栄冠は君に輝く[Instrumental]2020年12月2日発売(通常盤)UPCH-5975(CD)¥1,200(税別)(初回盤)UPCH-7570(CD+DVD)¥1,700(税別)
2020年12月05日【音楽通信】第60回目は、嵐、Perfume、End of the World、[Alexandros]、ビッケブランカ、Vaundy、マカロニえんぴつといった豪華7組が登場した、音楽ストリーミングサービス「Spotify」が初開催したオンラインライブイベント「Spotify presents Tokyo Super Hits Live 2020」のレポートをお届けします!【音楽通信】vol.60マカロニえんぴつ11月26日に「Spotify」が初開催したオンラインライブイベント「Spotify presents Tokyo Super Hits Live 2020」は、国内外から支持されるスターから次世代のアーティストまで、総勢7組がそろった。国内をはじめとする世界 12 の国と地域へ生配信され、世界中の音楽ファンがイベントを堪能。それぞれライブパフォーマンスと交互にトークコーナーが設けられ、ファンにとってはうれしい構成であった。スタートすると、MCのハリー杉山と三原勇希が登場し、世界に配信していることもあり、英語と日本語をまじえたトークを展開。トップバッターに登場したのは、メンバー全員が音大出身のロックバンド、マカロニえんぴつ。軽快なキーボードの音色にクローズアップされたバンドサウンドは、センチメンタルな思いを乗せてはじける。続いてはドラマチックなナンバー「恋人ごっこ」を演奏し、ボーカル&ギターのはっとりは「短い間だけど、画面を通して出会えたみなさん、会えてよかったです」とMC。最後に、「ハロー、絶望」という歌詞が印象的な「ヤングアダルト」でジューシーなサウンドを響かせた。その後、Spothifyがバックアップする現役大学生アーティスト、Vaundyのトークコーナーへ。追って、ステージを終えたマカロニえんぴつも加わり、賑やかなクロストークで場を和ませた。ビッケブランカライブアクトには、シンガーソングライターのビッケブランカが登場。真っ暗なステージにひずむギターが鳴り響き、折り重なるバンドサウンドで疾走感あふれるダークナンバー「Black Rover」を披露。続いては、グルーヴィーながらメロディアスな「Shekebon!」、フレンチポップでいてダンサブルであり、SpotifyのTV CM曲でもあった「Ca Va?」を繰り広げた。MCのハリーいわく「虹色に輝くようなステージ」と称していた通りのライブ。また、時折ビッケブランカが流暢な英語でMCをしていたのも印象的だった。その後、SEKAI NO OWARIがグローバル展開を目的とする新プロジェクト、End of the Worldのトークコーナーへ。7年以上の月日をかけて完成した、ライブ翌日発売のEnd of the Worldとしてのデビューアルバム『Chameleon』について紹介した。Vaundyライブアクトでは、20歳の大学生でもあり、作詞、作曲、アレンジ、アートワークのデザインや映像のセルフプロデュースも自身で手がけるマルチアーティスト、Vaundyが登場。トークコーナーで見せた等身大の表情とは打って変わり、白いパーカーのフードをかぶってクールなラップを繰り出す「不可幸力」からスタート。曲調が一気に変化するナンバーだが、トークのときとまったく違うVaundyのキャラクターといい、ギャップがすごい。「こんばんは、Vaundyです。すごく緊張してます」と話し、シティポップ風の「東京フラッシュ」、キャッチーな「怪獣の花唄」を届けた。その後、ビッケブランカがトークコーナーへ。ユーモアをまじえながら、軽妙なトークで盛り上がる。自身の秘密を初告白し、MC陣と3人で急きょスマホで記念撮影。その写真をツイートして、視聴者からの感想を呼びかけた。[Alexandros]ライブアクトでは、デビュー10周年を迎え、幅広い層に支持されているロックバンド[Alexandros]が登場。SE「Burger Queen」を途中から生演奏でプレイし、分厚いギターサウンドを鳴らす2曲目「Kick&Spin」へ。続いて、ハードでソリッドな「Beast」、爽快なナンバー「風になって」を披露した。シリア育ちのボーカルの川上洋平は、英語と日本語を使い分けて歌うが、MCではほぼ英語で、ギターの白井眞輝は中国語でMCするなど、グローバルにアピールした。その後、ステージを終えた[Alexandros]がトークコーナーへ。川上は「楽しかったー!」と笑顔。来年予定されているベストアルバムや10周年のアニバーサリーライブについての抱負を述べた。End of the Worldライブアクトでは、End of the Worldが登場。1曲目は、青いライトに包まれてポップに歌う「Dropout Boulevard」。続いて、Saoriがピアノでしっとりと聴かせる「Birthday」、幻想的なナンバー「Gone」を披露。そしてリーダーでギターのNakajinが、英語と日本語でMCし、最後は一転、カラフルな光を浴びながらダンサブルな「Rollerskates」で締めくくった。いずれも、トークコーナーで話していたアルバム『Chameleon』収録曲ということで、ファンにとってはたまらない新曲ぞろいのセットリストであった。その後、Perfumeがトークコーナーへ。結成20周年、デビュー15周年だった2020年を振り返り、プライベートに迫る12個の質問をするなど、紅一点のPerfumeのチャーミングな笑顔が場を明るくしていた。Perfumeトークに続いて、Perfumeがライブアクトに登場。カンフーダンスがコンセプトの「FLASH」からスタート。3人が踊るたび、ラベンダーとモーブピンクの衣装がひらひらと舞い、なんとも華やか。そして弾むテクノポップに乗せて展開される「再生」、「いくよー!」の掛け声も力強く、タイトルをリフレインするキュートなナンバー「チョコレイト・ディスコ」を披露し、楽しいライブ空間へと誘った。最後に、あ~ちゃんが「このあとは楽しみしていた嵐さんです! みんなで観ましょう〜!」と、トリを務める嵐にバトンをつなぎ、視聴者へと呼びかけた。嵐トークコーナーとライブアクトのラストを飾るのは、国民的アイドルグループ、嵐。2020年いっぱいで活動を休止することが決まっているなかでのイベントでもあり、嵐にとっては多数のアーティストが出演するオンラインイベントには初参加でもあるため、貴重なステージだ。まずはトークコーナーからスタート。赤を基調とした真紅やワインレッドのスーツに身を包み登場した5人。偶然にもイベント当日の11月26日が、リーダーである大野智の40歳の誕生日ということで、釣りが大好きな大野のために魚の形のケーキがサプライズプレゼントされた。「40歳になりました。ケガとかしないように頑張ります」と大野がコメントし、お祝いの声と拍手が贈られる。松本潤は「生配信中にみんなからメッセージをもらおう」と発案。「#HBDSatoshiのハッシュタグでみんな、大野さんにメッセージ送ってよ!」と呼びかけ、瞬時に世界中の視聴者からのメッセージが届いていることをMCのハリーがスマートフォンを確認しながら報告した。相葉雅紀への視聴者からの質問では「今年を表す漢字一文字を教えてください」とのメッセージに、「全集中」と発表。最後に、海外の視聴者からの質問で「海外のファンへのメッセージが聞けたら」というお願いには、松本が感謝と、12月31日に開催する生配信ライブについて、英語でコメントした。ライブアクトでは、東京・渋谷の街を彷彿とさせるバーチャルシティで、嵐にとって初のデジタルシングルであり、世界トップクラスのDJ、R3HABが手がけた「Turning Up」からスタート。続いて、青くシックな夜景が映し出されるなかで、世界的アーティストのブルーノ・マーズが楽曲制作とプロデュースを手がけた「Whenever You Call」、Sam Hollanderプロデュースのチアフルな「Party Starters」を披露し、キラキラ光る紙吹雪が舞うなかライブは幕を閉じた。ラストには、MCのふたりも嵐のステージに駆けつけ、嵐に寄せられたたくさんのメッセージがLEDスクリーンに映し出された。二宮和也は「こういうイベントに出させていただくのも初めてだし、Spotifyで我々もお世話になったので一緒にイベントを作れてうれしかった」、櫻井翔は「我々にとって新しいプラットフォーム、生配信ということで、いろいろな国の方々にも観ていただける最高の時間を過ごさせていただきました!」とコメント。世界中の音楽リスナーに、日本のアーティストによる、日本の音楽シーンのいまを伝える最良の夜だった。取材後記トップスターの嵐さんから、ビッケブランカさんやVaundyさんといった気鋭のアーティストまで、豪華で多彩な組み合わせにワクワクしたファンの方も多かったのではないでしょうか。お気に入りの音楽を新たに発見できる機会にもなったかもしれない、今回のオンラインイベントは、世界中の音楽リスナーにとって有意義な一夜だったに違いありません。登場された7組のアーティストのみなさん、楽しい夜をありがとうございました!写真・THINGS. 取材、文・かわむらあみりセットリストマカロニえんぴつ01.ブルーベリー・ナイツ02.恋人ごっこ03.ヤングアダルトビッケブランカ01.Black Rover02.Shekebon!03.Ca Va?Vaundy01.不可幸力02.東京フラッシュ03.怪獣の花唄[Alexandros]01.Burger Queen02.Kick&Spin03.Beast04.風になってEnd of the World01.Dropout Boulevard02.Birthday03.Gone04.RollerskatesPerfume01.FLASH02.再生03.チョコレイト・ディスコ嵐01.Turning Up02.Whenever You Call03.Party StartersInformation
2020年11月29日【音楽通信】第59回目に登場するのは、豪華な4人のプロデューサーを迎えた“等身大の大人のポップ・アルバム”を発表される、女優・歌手の小西真奈美さん!【音楽通信】vol.59スゴ腕ラッパー陣からオススメされ曲作りを開始女優として数々のドラマや映画、CMでご活躍されている、小西真奈美さん。美しく凛とした印象のある小西さんの音楽活動は、2008年に映画『Sweet Rain 死神の精度』の主題歌「Sunny Day」を劇中の役名「藤木一恵」名義で発表したことが始まり。8年後の2016年には、舞台『KREVAの新しい音楽劇「最高はひとつじゃない 2016 SAKURA」』において、初めてラップに挑戦。さらに、KREVAさんのシングル曲のカバー「トランキライザー」を初めてご自身として「小西真奈美」名義でリリースし、iTunesのHIPHOPチャートで1位を獲得。インディーズでのリリースを経て、2018 年に全曲作詞作曲を手がけたメジャー 1stアルバム『Here We Go』を発表されました。そんな小西さんが、2020年11月25日に、亀田誠治さん、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文さん、KIRINJIの堀込高樹さん、Kan Sanoさんをプロデュースに迎えたニューアルバム『Cure』をリリースされるということで、お話をうかがいました。ーーまずは小西さんが学生時代などによく聴いていたアーティストから教えてください。学生時代はJ-POPを聴くことが多かったです。THE BLUE HEARTSやZARDといった、その時代に流行っているものを聴いていました。ーー小西さんご自身の音楽活動としては、2008年にご出演された映画『Sweet Rain 死神の精度』の主題歌「Sunny Day」を劇中の役名「藤木一恵」名義でリリースされたのが最初ですね。このときはどのようなお気持ちで歌っていらっしゃいましたか。最初から、歌を歌う役だというお話をいただいていたので、それも踏まえて役の延長で歌っていましたね。ただ、歌うのは大変だと思いました。お芝居は自分で脚本は書いていないですが、自分の体を通して役を具現化していくということが、ある程度経験などで自分の中に入っています。反対に、歌の場合は、役だけれども自分の声で歌う、でも自分で歌詞を書いていないものに思い入れを込めてと言われても、役の思い入れなのか自分の気持ちなのか。自分の思い入れと言っても、自分で歌詞も書いていないですし……音楽に関しての引き出しのなさに愕然として、どうしたらいいのやらと(笑)。そのときは音楽のディレクターさんのディレクションに従って、やっていく感じでした。ーーその後、2016年に舞台「KREVAの新しい音楽劇『最高はひとつじゃない 2016 SAKURA』」で初めてラップに挑戦されましたね。KREVAさんの曲「トランキライザー」をカバー配信してiTunesのHIPHOPチャートで1位を獲得されています。当時は、トリビュートアルバムの発売が決まっていて「何か歌いたい曲はありますか」とお話をいただいたのですが、あまり制作期間がなくて、せっかく曲を作っていただいても自分のなかで消化できないまま歌うのは書いていただく方にも申し訳ないからどうしようかと悩んでいました。それならば、自分が好きな曲をカバーするといいなと思ったんです。事務所の先輩でもあるKREVAさんの「トランキライザー」は、よく口ずさんでいましたし、リスペクトもしているので、この曲を提案したら採用されました。ーー2018年には、ご自身で作詞・作曲を手がけ、KREVAさんがサウンドプロデュースしたアルバム『Here We Go』で、本格的に歌手デビューされましたね。やはり2016年のKREVAさんの舞台でラップに挑戦されたことが、現在につながっているのでしょうか。KREVAさんと2016年に舞台でご一緒したときに、RHYMESTERのMummy-Dさんと、AKLOさんが出ていらして、歌の練習の日があったんです。そのときに、Mummy-DさんとAKLOさんは先に練習が終わっていたのですが、私の番まで待っていらして、「何されているのですか?」とたずねたら、「聴きたいから」と言われて「えー!」と(笑)。ラッパーといえば名前があがるこの3人が待っていて、私のラップを聴いているわけですよ。終わった後に、みなさんが「真奈美ちゃんのラップは良いから、自分でも曲を作ったほうがいいよ」と言ってくださって。単純なので、褒められたら「やってみようかな」と思って(笑)、自分でも曲作りを始めました。ニューアルバムは「すごく新しくて面白い」ーー2020年11月25日に、ニューアルバム『Cure』をリリースされます。今回は、亀田誠治さん、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文さん、KIRINJIの堀込高樹さん、Kan Sanoさんをプロデュースに迎えているのですね。はい。「ひとりのプロデューサーにつき、カバー曲とオリジナル曲の2曲を収録して、4人の方とアルバムを作りませんか」とお話をいただいて。私の音楽活動でのインディーズ時代が2017年にありまして、そのときに亀田さんとKREVAさんにも曲を作っていただきました。そんなふうにひとりのプロデューサーにひとつの作品を作っていただいたことはあったのですが、同時に複数のプロデューサーがいて洋楽のカバー曲もあるとなると、ご提案いただかなかったら自分では思いつかなかったので、今作は「すごく新しくて面白いな」と思い、チャレンジしてみようと思いました。ーープロデューサーさんはご自身のご希望で選ばれたのですか。亀田さんと後藤さんは、私から提案しました。亀田さんはインディーズ時代にご一緒して、人としてもプロデューサーとしても、とても素晴らしい方でしたので、「またぜひご一緒したいです」とお話ししました。後藤さんは、私がアジカンの大ファンでよくライブに行っていたのですが、一度もお会いしたことがなく。その後、私がラジオ番組をやっていたときに後藤さんがゲストで来てくださったことがあって、そのとき「私も音楽をやっているんですよ」と、CDをお渡しして。「いつか音楽でご一緒したいです」というお話をしていたのですが、今回オファーを差し上げたところ引き受けてくださいました。堀込さんとKan Sanoさんに関しては、レコード会社のスタッフさんが薦めてくださって、、すてきな方だなと思ったのでぜひと。ーー亀田さんは以前もご一緒されていますし、今回も制作しやすかったですか。亀田さんには3年ほど前に初めてお会いしたのですが、そのときは私、音楽に関しては、ほぼ素人の状態でした。いまもすごく技術があるわけでも音楽的な知識があるわけでもないですが、当時はもっとなくて。なのに、「この曲はこういう感じで」と思いを伝えることに対して、ものすごくキラキラした目でまっすぐに向き合ってくださいました。プリプロという、レコーディングに向けて音を選んだりする作っていく作業があるのですが、そのときに「本当にかっこいい! イェイ!」と、盛り上がりながら作品を作っていらして(笑)。亀田さんは情熱と紳士的なものを併せ持っていらして、全部できあがったあとも、「知識や経験は関係ないから、真奈美ちゃんのなかから湧き出るのを作ってください」と言っていただけたので、それで今回も「ぜひご一緒しましょうね」と。3年後にお会いしても、そのときの情熱はまったく薄れていなくて、あれだけ経験も技術も知識もある方なのに上から目線にもならず、相変わらず作った私の意志を尊重しようとしてくださって、今回もありがたい時間でしたね。ーーカバー曲についてですが、亀田さんがプロデュースされた椎名林檎さんの「ギブス」が選曲されていますね。実は「ギプス」が発売されたときにすぐCDを買って、すごく好きで聴いていました。そのブックレットのクレジットを見ていたときに、初めて亀田さんのお名前に出会ったんですよ。亀田さんにもそのお話をして、「ギブスが大好き」と伝えたら、「僕も好きです」と。だから、亀田さんにカバーのプロデュースをお願いするなら、絶対「ギブス」だと思っていました。2000年に「ギブス」が発売されてから20年経って、その間、この曲のカバーのプロデュースを依頼されたこともあったそうですが、今回「真奈美ちゃんだからいいかなと思って」と、オリジナル以降初めてプロデュースをしてくださることがわかって、感激しました。ーーオリジナル曲も、4人のプロデューサーのみなさんの個性が出ていると感じましたが、後藤さんとはどのような制作状況でしたか。後藤さんは、ソロ活動時のバンドのみなさんと一緒にやりたいということで、プリプロから私も参加しました。後藤さんが前に出て仕切るというよりも、私がやりやすいように後藤さんはうしろでサポートしてくださいました。レコーディングは初日から、全員の追い込み方が作品を作る者同士の空気感でいっぱいでしたね。バンドのみなさんと休憩中にお話ししていて、メンバーの方から「俺たち、テレビで見ている人と作ってるんだよね、よく考えたら(笑)」と言われて。でも私は、「私もみなさんのライブに行ってましたよ」という話をフラットにしたりと、みなさんが仲間として受け入れてくださったことが、すごく楽しかったです。ーー後藤さんの担当曲「Endless Summer」は、後藤さんもコーラスで参加されていますよね。「ちょっとここ、低い声がほしいよね」という話をしていて、最初私が低い声でやってみたのですが、無理があるなと。声を機械的に低くすることもできますが、せっかく生のバンドで演奏しているのだから、男性の声で歌ったほうがいんじゃないかということで、後藤さんが歌うことになりました。ーーアルバムのオリジナル曲については、ご自身で作詞作曲を手掛けていらっしゃいますが、今回はプロデューサーの方のカラーも考慮して曲作りをされたんでしょうか。はい。亀田さんは、プロデュースしていただくことを想定して書き下ろしました。後藤さんだけ共作なのですが、後藤さんが大元を作っていらして、歌詞を私が一緒に作る形でした。Kan Sanoさんと堀込さんはオンライン上でのやり取りのみだったのですが、おふたりの曲を聴いて、好きな雰囲気のものを作ってオファーしました。ーー1曲目「Cure」はSEのような、ドラマの幕開けのような短い曲ですが、笑い声などが聴こえてあたたかみを感じます。アルバムのタイトル曲でもありますね。もともとは、この曲を入れずに全8曲でリリースする予定でした。でも、アルバムタイトルを考えたときに、今回は4人の方がいてどれかの曲にフォーカスしてタイトルをつける方向ではないなと思ったので、別にタイトルがいるなといろいろ考えました。純粋に、自分にとって「音楽ってなんだろう」と考え、それをタイトルにできたらと。私にとって音楽は、子どもの頃からなくてはならない存在で、いつも心を助けられたり悩んだり迷ったりしたときに生きるヒントをもらったりするものです。心も体も、もしも何か薬が必要な状態だったとしても、音楽を聴けば元気になるというところがあって、私にとって音楽はある種の“治療薬”のようなもの。いま世の中がコロナ禍で、塞ぎ込みがちな時代でもありますが、遠くに行かなくても音楽はいつでも聴けるので、もしこのアルバムが聴いてくださる方にとって“Cure(治す、癒す)的”なものになればいいなと、このタイトルをつけました。音楽もCure的な効果がありますが、大好きな人たちに会って笑い合うのも同様の効果があると思って。アルバムがいきなり曲から始まるよりも、小西真奈美の人となりにちょっとだけ触れていただいてから本編になるほうが、聴いてくださる方とちょっとだけ距離が近くなるんじゃないかと思いました。それで、友達やいろいろな人たちの声を録らせてもらって、編集して収録しました。音楽で“楽しみの循環”ができたらいいなーーアルバムは『Cure』ですが、小西さんにとって、普段の生活のなかでのCureはなんですか。自然です。大自然のなかにいるのも素敵ですが、たとえその場所に行かなくても、朝焼けも夕焼けも、月でも星でも木々が揺れる音でもいいですし、何かに目を向けて感じようと思うとそのあたりにいっぱい自然を感じることができるんですよね。力強くて、やさしい。自粛期間でも、散歩はOKだったので、あらためてこの期間には自然の力を実感しました。ーーいまハマっているものはありますか。以前からですが、ずっとバレエをやっています。とくに自粛期間中はまったくバレエのレッスンに行けなかったので、いまは踊れたり運動できたりすることがすごく楽しいです。ときどき、しんどいなと思うこともあっても、行くとやっぱり「体を動かすことは素晴らしい!」と思います。ーー女優としてもご活躍されている小西さんですが、普段から美容面や健康管理で気をつけていらっしゃることは。まず早寝早起きが、絶対にいいですね。私たちの仕事はロケで朝早いことも多いので、早寝早起きにすると、それに慣れるんです。それに、午後10時から深夜2時が肌と体に良いゴールデンタイムだと聞いて。寝ている間に、体や肌を修復するのが10時から2時らしいんですよ。先輩の女優さんが、10時から2時まで寝て、起きてまた仕事して、また寝ると、細切れはどうなんだろうと思いつつそれでも肌が良くなったと聞いて、実践し始めたら健康状態も良いですね。朝日を浴びるのもすごく良くて、逆に言うとそのサイクルが狂って撮影が夜中までなどになると、たった3日間ずれただけで、4日目はお肌がぐったりしてダイレクトに影響があるんですよ。あとは朝起きて、水か白湯を飲んで、窓を開けて外の空気を吸うということを大事にしています。暑い夏だけじゃなく、雨の日も、いまは海外に行けませんがたとえ海外に行っても、寒い冬でも、地方に行っても、どんなときでもやっていますね。ーーそれはやってみたいと思います。私も早寝できるようになるまで、1年ぐらいかかりました。1、2か月で30分ずつ寝る時間を早くして、徐々に体を慣れさせるといいかもしれませんね。ーーでは最後に、今後の音楽活動の抱負を教えてください。音楽を作れば作るほど、出会えば出会うほど、どんどんやりたいことやアイデアが出てきて、すごく楽しいです。あと20年ぐらい続けられたら、私は還暦になる頃です。みなさんだいたい20周年ツアーというと、20歳前後でデビューされてから、いまの私ぐらいの年齢で20周年になりますよね。でも、還暦になってそういうことするのも面白いなと思っています。いまは会えないですが、いずれ私の音楽を聴いてくださるみなさんに会える時期が来たら、「この人の曲をもっと聴きたいな」と思ってもらえるようなライブをやりたい。そして、次はアルバムをまた楽しみにしてもらいたいというのが理想です。そんな“楽しみの循環”みたいなものができたらいいですね。取材後記女優として、歌手として、ご活躍されている小西真奈美さん。その美しい佇まいは誰もが知るところですが、繊細で透き通るような歌声が堪能できるニューアルバムは、4人のプロデューサーの方の色とりどりの楽曲がぎっしり詰まっていますよ。そんな小西さんのアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・大内香織取材、文・かわむらあみり小西真奈美PROFILE1978年10月27日生まれ。女優・歌手。1998年、つかこうへい演出の舞台『寝盗られ宗介』でデビュー。女優として数々のドラマ、映画、CMに出演中。歌手としては、 2016年、舞台『KREVAの新しい音楽劇「最高はひとつじゃない 2016 SAKURA」』にて初めてラップに挑戦。KREVAのシングル曲のカバー「トラキイザー」を初めて本人名義でリリース。同曲はiTunesのHIPHOPチャートで1位を獲得。2017年、インディーズでEP「I miss you」と、亀田誠治プロデュースのシングル「君とクリスマス」「クリスマプレゼント」をリリース。2018年、ビクターより全曲自身で作詞作曲を行ったメジャー 1stアルバム『Here We Go』を発表。2020年11月25日、ニューアルバム『Cure』をリリースする。InformationNew Release『Cure』(収録曲)01. Cure02. 君とはもう逢えなくても (Produced by 亀田誠治)03. ギブス (Produced by 亀田誠治)04. Endless Summer (Produced by 後藤正文)05. Ain’t Nobody Know (Produced by 後藤正文)06. アンリーシュ (Sound Produced by 堀込高樹)07. Lost Stars (Sound Produced by 堀込高樹)08. Again (Produced by Kan Sano)09. Don’t be afraid (Produced by Kan Sano)2020年11月25日発売*CD収録内容は全形態共通。(通常盤)UCCJ-2183(SHM-CD)¥3,080(税込)(初回限定盤)UCCJ-9225(SHM-CD+DVD)*ボーナスDVDにはMusic Video2曲を収録。01.「君とはもう逢えなくても」(Music Video)02.「君とはもう逢えなくても」(Music Videoメイキング+インタビュー)¥3,850(税込)
2020年11月20日【音楽通信】第58回目に登場するのは、エレファントカシマシでの30年を超えるキャリアにして初挑戦、ひとりの歌い手としてカバーアルバムを発表する、宮本浩次さん!【音楽通信】vol.58幼少時代は家族の影響で歌が大好きになるロックシーンを代表する存在として異彩を放ち続けるエレファントカシマシのボーカル、宮本浩次さん。2018年、シンガーとして椎名林檎さん、東京スカパラダイスオーケストラさんの作品に参加。2019年にソロ活動をスタートしました。2020年3月には、1stソロアルバム『宮本、独歩。』を発表。その後、世界中がコロナ禍となるなかで、宮本さんは歌が大好きだった少年時代に親しんでいた楽曲を弾き語り、カバーする作業を行なっていたといいます。そこで録りためた弾き語り音源から精選された12曲が、2020年11月18日に、初のカバーアルバム『ROMANCE』としてリリースされるということで、宮本さんにお話をうかがいました。ーー今回、少年時代に親しんでいた歌をカバーされたアルバムをリリースされるということで、あらためて幼い頃に聴いたり歌ったりしていた音楽から教えてください。母親がすごく歌が好きだったものですから、 私が幼稚園の頃、母がよく歌っていたのを覚えています。私は1966年生まれなので、たとえば梓みちよさんの「こんにちは赤ちゃん」(1963年発表)や、ピンキー&キラーズの「恋の季節」(1968年発表)など昭和の名曲が多かったですね。家族が歌が好きだったから、自然と耳にする機会があって、まだ幼稚園の頃ですから、どういう人が歌っているのか知らないままに、自分でも「恋の季節」はよく歌っていましたね。とにかく歌うことが大好きだったんです。ーー宮本さんは合唱団にも入っていらっしゃったんですよね。小学生のときに、NHK東京児童合唱団に入っていました。NHKの音楽番組『みんなのうた』など、テレビ番組もたくさん出演しました。ーーその後時を重ねて、1988年に結成されたエレファントカシマシはデビュー30周年を超え、今年の3月にはソロアーティストの宮本浩次さんとして、初のソロアルバム『宮本、独歩。』をリリースされました。はい、自分の名前を冠した『宮本、独歩。』というソロアルバムを出しました。ーー「バンドのボーカル」としての宮本さんと「ソロアーティスト」としての宮本さんとは、やはりスタンスが違うものでしょうか。エレファントカシマシというバンドは、12歳で彼らと出会って、中学校の友人同士で組んだバンドです。そこで始めてRCサクセションというロックにも出会って。小学校から中学校にあがって、10代20代といろいろな変化が自分の歴史の中にあるなかで、新しい仲間に出会うというのは、ある種、大人への第一歩といえますよね。そういったときにRCサクセションやザ・ローリング・ストーンズ、レッド・ツェッペリンといった洋楽を聴いたり、坂本龍一さん、細野晴臣さん、高橋幸宏さんのイエローマジックオーケストラ(YMO)3人組の世界的なテクノユニットがあって、そいういう音楽にも出会いました。でも、歌謡曲が好きだという思いも変わらずあって。童謡を歌う少年からスタートして、エレファントカシマシというものになっていった自分と、一方で宮本浩次としての自分がいて。バンドの宮本浩次は、「エレファントカシマシの宮本浩次」なんですよ。そこでも30年、40年の歴史があるんです。一方で、歌の好きな宮本浩次という54歳のひとりの人間がいて、それはエレファントカシマシとは別の顔。人って、いろんな顔があると思う。友達と一緒のときの顔、恋人と一緒にいるときの顔、電車で他人と一緒にいるときの顔。自分の場合は、大きく分けて、ふたつの柱があるというのかな。エレファントカシマシよりも、歌の好きな自分のほうが古い歴史がある。だから、宮本浩次が好きな歌手、好きな歌を歌うソロ活動と、エレファントカシマシでのバンドとしての立場というのは、外から見るぶんには同じ歌手というふうに見えるかもしれないけれども、自分の中ではまったく違うものなんです。「宮本浩次を表現する」カバーアルバムーー2020年11月18日に、初のカバーアルバム『ROMANCE』をリリースされます。コロナ禍の影響を受けている緊急事態宣言の期間中に、毎日弾き語りでカバーしていたそうですね。実は収録曲の「あなた」(1973年年発表)、「恋人がサンタクロース」(1980年発表)は、すでに昨年レコーディングが終わっていました。以前からカバーを出そうとは決めていたんですが、今年に入って緊急事態宣言があり、自粛生活の中で「人に会わなくてもできることってなんだろう」と考えて「曲を録ろう」と、1日1曲カバーしていったんです。コロナ禍で自粛があるなかでも、古い自分の懐かしい曲と向き合えたことは幸いなことでしたね。エレファントカシマシになってから、音楽の勉強として聴いたレッド・ツェッペリンといったロックではなく、沢田研二さんやもんた&ブラザーズ、クリスタルキング、松田聖子さんは本当にかわいくて素敵だなという、子どものときに素直に感じたこと、幼少時からのルーツ音楽があって。それを「いつかやりたい!」というのが夢だったんです。ソロをやるというのは、「宮本浩次を表現したい」という意味と同じなんですね。ーー聴かせていただいて、宮本さんの歌の力がストレートに心に届き、歌声に感動しました。今回、女心を歌うというのは、自分のなかで封印していた部分というか、いろいろな面があって。もちろん男性にも聴いてほしいんですが、女性の歌なのでとくに女性に聴いてほしいと思っていて。女性の方にそう言っていただけてうれしいです、ありがとうございます。ーー録りためていた弾き語りの音源から、今回の12曲に絞るのは難しかったのではありませんか。レコード会社のみんなと会議をしたときに、まずエレファントカシマシのデビューが1988年だから、それより前のものにしようとなって。そして宮本浩次が生まれたのが1966年。バンド活動を始める以前、そして自分が生まれたあと、という期間の歌ということを原則として考えました。66年から88年までの間の22年間のもの。そうしないといい曲がいっぱいあるので、みんなに募って、友人やレコード会社やいろんな人とたくさん曲を聴いて。最終的には、88年より前の70年代の幼少期の曲も入れて、エレファントカシマシになる前の曲、小学校ぐらいまでの曲が中心に。選曲はどの歌も素晴らしい歌で、自分が慣れ親しんだものが中心になりましたね。だからそんなに選曲は難しくなかった。カバーした曲のなかには、「北の宿から」(1975年発表)という都はるみさんの演歌の名曲もありましたし、細川たかしさんの歌など、子どもの頃は演歌も好きだったから入っていたんですよね。ほかにも、泉谷しげるさんの歌やガロの「学生街の喫茶店」(1972年発表)も歌いましたし。本当にいい歌ばかりだったんですが、だんだん好きな歌っていうものになってきちゃったんです。ある種の女性の好みというか、独特の視点があると思うんですが、歌声がよく響く歌を選んだ気がしますね。ーー「赤いスイートピー」「白いパラソル」と、松田聖子さんの曲だけ2曲ありますね。そうですね(笑)。実は、中島みゆきさんの曲も、ご自身が歌われているものと作詞作曲されているものと3曲ぐらいあったんですが、最終的に1曲に絞って。聖子さんは、松本隆さんの歌詞と、聖子さんのマッチングの素晴らしさがあって、大好きなんです。ーーとくに「赤いスイートピー」はお好きな歌なんですよね。思い出の曲なんですよ。「赤いスイートピー」は、デートをしている大人の曲で、初デートという印象がすごくあって。昔、何していいからわからないから、ひたすら歩くだけというデートをしたことがあった。そういう思い出が、聖子さんの歌声でシーンが浮かぶんです。青春のきらめきを感じる曲で、すごく好きですね。ーー宮本さんのカバーされた曲を通して、たとえば中島みゆきさんの「化粧」という曲など初めて知った曲もあって、こんないい曲があったということを教えられた気がしました。私も「化粧」はまともに聴いたのは今回が初めて。曲、歌詞、歌と、原曲も本当に素晴らしい歌ですよね。中島みゆきさんの歌い方のすごさに虜になっちゃうくらい。中島さんの名曲を自分なりにどうやって歌おうかと何度も聴いて、号泣しつつ、歌詞の主人公に自分がなってしまいながら情景が電撃的に目の前に浮かんだし、女性の主人公にものすごく共感しました。ーー小林武史さんがアルバムのプロデュースをされています。小林さんとは、20年前ぐらいにバンドのアルバムや『宮本、独歩。』を作ったときに収録曲の「冬の花」「ハレルヤ」というふたつのドラマの主題歌も一緒に作っていて。2018年後半から小林さんと作業する時間が多く、2019年10月の時点で、自分のソロアルバムのあとに、カバーアルバムを出すからという話は小林さんにしていて。そういう流れの中で、20曲ぐらいまでを選んで、歌を聴いてもらいました。「アレンジ上がったよ」と小林さんから連絡があって、行ったらもう曲が選ばれて、曲順まで決まっていたんです。「赤いスイートピー」の1曲は、音楽プロデューサーの蔦谷好位置さんにアレンジをお願いしたんですが、もともと3、4月に予定していた『宮本、独歩。』のツアーのメンバーに蔦谷さんがいたんです。すでに「赤いスイートピー」はツアーのリハーサルとしてやっていたり、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)でも一緒にこの曲を演奏していたりしたから、この曲はお願いしました。アルバムのなかでも、モダンな面白いアレンジで彩りを添えていると思います。「コンサートを絶対成功させたい」ーー自粛期間に音楽活動以外で、おうちではどのように過ごしていたのでしょうか。まさに「何をやろうか」と考えて、カバーしながら並行して、日課として、インスタグラムをやっていましたね。自分のなかで生活リズムを作りたいという気持ちがあって、発表できるかわからないけれどカバーをやるというのと、インスタグラムで写真日記という名前をつけて日記にしてアップしていると、見る人もいるかなと。カバーをやってからインスタグラムをやるという生活サイクルにしていて、夜遅くまで、7、8時間かかっちゃったりもしてね。写真も、どうやって自撮りをうまく撮るのか、いろいろな角度を試して、けっこうプレッシャーでした(笑)。でも面白がりながら、緊張しながらも、写真をいっぱい撮って。どの角度でどの光で撮るといいかを考えるのが日課。本当に人に会わなかったから、一方的なコミュニケーションじゃないけれども、自分のインスタグラムを見てほしいなと。手書きで書いたものを出したりと、すごく力を込めてやりましたね。みんなに楽しんでもらえたかな。あとは、ビールを飲むのが楽しかったですね。そんなにお酒は強くないんですが、夜はビールを飲みながら、映画を観るのが楽しみでした。だから日課として、カバーをして、インスタグラムあげて、ビールを飲む(笑)。そして映画。衛星放送などで流れている、70年代前後の映画とかね。オードリー・ヘプバーンの『シャレード』という映画はすごく面白かったです。相当リラックスできました。ーーでは最後になりますが、今後の抱負をお聞かせください。コンサートを絶対成功させたいです。エレファントカシマシは毎年、日比谷の野音でコンサートを開催しているんですけれども、今年は31年目を10月4日にやって、それはとても充実していたんです。自分で言っちゃうのもなんですが、魅力的なバンドなんですよ、エレファントカシマシ。だから、このソロ活動も行いながらソロのコンサートをまずやって、バンドのコンサートとも両立させたいですね。取材後記エレファントカシマシのフロントマンとして、日本のロックシーンを牽引してきた宮本浩次さん。ソロとしてのカバーアルバム『ROMANCE』では、昭和の名曲の数々を宮本さんの魂のこもった歌声でカバーされていて、その熱量のすごさは圧巻です。どこか少年のようなピュアさを感じさせる宮本さん、取材時も真摯にご対応くださいました。そんな宮本さんのカバーアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・北尾渉取材、文・かわむらあみり宮本浩次PROFILE1966年生まれ。日本を代表するロックバンド、エレファント カシマシのボーカル&ギター。1981年、エレファント カシマシ結成。1986年、現在のエレファント カシマシとなる。1988年、THE ELEPHANT KASHIMASHIのボーカル&ギターとしてデビュー。以後、バンドで22枚のアルバム、1枚のミニアルバム、50枚のシングルを発表。2017年、30周年イヤーを迎え、NHK『紅白歌合戦』に初出場。2018年、シンガーとして椎名林檎、東京スカパラダイスオーケストラの作品に参加。2019年、ソロ活動開始。2020年3月、1stソロアルバム『宮本、独歩。』発売。6月、配信ライブ「2020 612 宮本浩次バースデイコンサート at 作業場「宮本、独歩。」ひきがたり」敢行。11月18日、初のカバーアルバム『ROMANCE』を発表する。InformationNew Release『ROMANCE』(収録曲)01. あなた02. 異邦人03. 二人でお酒を04. 化粧05. ロマンス06. 赤いスイートピー07. 木綿のハンカチーフ-ROMANCE mix-08. 喝采09. ジョニィへの伝言10. 白いパラソル11. 恋人がサンタクロース12. First Love2020年11月18日発売(通常盤)UMCK-1676(CD)¥3,000(税別)(初回限定盤)UMCK-7089/90(CD+CD)¥3,500(税別)*28Pブックレット(歌詞・クレジットを含む)、スリーブケース仕様。[初回限定盤 ボーナスCD収録曲]「宮本浩次弾き語りデモ at 作業場」01. September02. 思秋期03. 私は泣いています04. あばよ05. 二人でお酒を06. 翼をください
2020年11月16日【音楽通信】第57回目に登場するのは、“JAPANESE R&E(リズム&演歌)”をテーマにロックを鳴らし、昨年バンド結成35周年を超えた怒髪天のフロントマン・増子直純さん!写真・北尾渉 取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol. 57ザ・ビートルズを弟と一緒にずっと聴いていた1984年に、ボーカル&ギターの増子直純さんを中心に札幌で結成されたロックバンド、怒髪天。その後メンバーチェンジなどの期間を経て、1988年より増子さんとギターの上原子友康さん、ベースの清水泰次さん、ドラムの坂詰克彦さんという、現在のメンバーで本格的な活動を始めました。1991年には、アルバム『怒髪天』でメジャーデビュー。“JAPANESE R&E(リズム&演歌)”をテーマに、オリジナルのロックンロールを鳴らし、2019年には結成35周年を迎え、アニバーサリーイヤーを駆け抜けました。そんな怒髪天が、11月11日にニューアルバム『ヘヴィ・メンタル・アティテュード』をリリースされるということで、バンドを代表して、増子直純さんにお話をうかがいました。ーーそもそも増子さんは少年時代、どんな音楽を聴いていらっしゃいましたか。母親がザ・ビートルズが好きで、家では毎日曲がかかっていたから、弟(ロックバンド・DMBQのボーカル&ギターの増子真二)と一緒にずっと聴いていて。本来はものすごく深いけれど、一聴したときにはポップだしわかりやすい。あとは歌謡曲かな。われわれは『ザ・ベストテン』(1978〜1989年放送のTBS系列の音楽番組)世代。小学校から観ていたけど、あの頃の歌謡曲って、作詞も作曲も職業作家が本気で作ってるから、日本の音楽の最先端の曲を当時のアイドルで実験してたんだよね。ーー10年以上前にインタビューさせていただいた際、増子さんが高校を卒業後に自衛隊に入隊されたお話も印象的でした。地元の北海道にいた高校生の頃、素行が悪くてね。高校もほぼ行ってなかったし、勉強したくないから大学も行きたくないし。パンクバンドやってたから眉毛もないし、髪はモヒカンだし、就職もできるわけない。高校卒業後は、バイトしながらバンドをやろうと思ってたら、おやじに「半年だけ自衛隊で研修すれば、千歳の空港で働きながらバンドもやれるぞ」って。「まじか! さすが親父は俺のこと考えてるな」と思ったけど、だまされたね(笑)。ーー自衛隊では音楽も聴けないのでしょうか。そんなことはないよ。ただ、外出できないのと、体力的にきついから音楽を聴く余裕がなくなるというのはあるね。ーー高校時代に怒髪天を組まれた後、自衛隊に入られて、戻ってきてまたバンドを再開されたんですよね。そう、自衛隊はすぐにでも辞めたかったけど、未成年だと親のハンコがないと辞められないからね。逃げたら連れ戻されて外出できないし、1か月に1日しかない外出日を取り上げられたらたまらんから、2年弱ぐらいかな。18歳で入隊して、20歳になるまで我慢して、すぐ辞めた。ーーそれから怒髪天を続け、2019年は結成35周年でしたよね。おめでとうございます。いえいえ、こんなにバンドをやっているとはね。ニューアルバムは「かなりカオスな感じ」ーー2020年11月11日に、ニューアルバム『ヘヴィ・メンタル・アティテュード』をリリースされます。今回は、かなりカオスな感じのアルバムだね。2011年の東日本大震災のときから、音楽に対する向き合い方って、俺に限らずみんな変わったと思うのよ。それでいまはコロナ禍。結局、自分がいままでやってきたことが封印されてしまったというか、必殺技といえるライブもできない状態になって。人を集めるためにこれまでやってきたわけで、それができない。震災のときは被災地を「なんともない俺たちが支える」という気持ちで音楽ができたけど、いまは世界中が閉塞してて、気持ちも重い。じゃあどうするか、こういうときに自分が聴きたいのはなにかなと思って、作ったアルバムだね。ーー現在のコロナ禍に対してのお気持ちが、歌詞には綴られていますね。そうね。なんでもそうだけど、あらゆる問題に直面したときに1回俯瞰で見てみる、でっかいスケールで自分を見てみると、解決策が見えてくる。「まあ、なんとかなるか」と思えるようなものを作りたいなと。言いたいことを伝えるときに、伝えたいことがシリアスであるほど、ユーモアって大事。ユーモアがないと伝わりづらいというか、そのシニカルな笑いがあるのがパンクロックだから。そういう部分も歌詞に入れつつ、聴いて「楽しいな」と思えるものがいまの自分にはほしいかなと思ったんだよね。ーー収録曲の3曲目「孤独のエール」はとても励まされる楽曲ですし、6曲目「や・め・と・き・な」や8曲目「ヘイ!Mr.ジョーク」といったユーモアのある楽曲もあって、バラエティに富んだ内容になっていますね。どれもライブを前提とした曲なんだよね。作ったときはライブが出来ないときだったから、ステージでやったら楽しいだろうなという曲を作った。ーーコロナ禍の最中に生まれたアルバムですが、もともとアルバムは出そうと思われていたんですか。そうだね。日記と同じで、そのときに思うことを歌詞にしていくんで。「孤独のエール」に関してはずっと思い続けていることをストレートに言えたね。俺は世に蔓延する、がんばれソングを聴いて、よしがんばるぞと思ったことが1回もないからね(笑)。「お前に何がわかるんだよ」と思うから。だから、自分発信で「がんばれ、俺」なんだよ。人に言われてがんばれるやつは、最初からがんばれるから。自分で自分を鼓舞していくしかない。これはひとつの答えであり、あきらめでもあるよね、自分でやるしかないんだっていう。ーー「H.M.A.」は、アルバムタイトルの『ヘヴィ・メンタル・アティテュード』の略なのですか。そう、この時代ね、鋼の心が必要だから。今後のことも見えない今、世界中に必要なのは、ヘヴィ・メンタル・アティテュードだと思うんだよね。何がきても大丈夫という、鋼の心の精神。それは強い心ということじゃないんだよね。言いたいのは「でかい心」なのよ。強くなくても、俯瞰で見る、人類規模や宇宙規模で自分を見るというか。「まあ、たいしたことねっか」と思える精神力。いま音楽に何ができるかって考えたら、ほぼ何もできないようなもんだけど、音楽なんてラーメンで言ったらコショウみたいなもんでさ、なくても困らないけどあるといい。人生のなかで、そういうスパイスみたいなもんだから、音楽は。全部ひっくるめて楽しく、楽に考えたほうがいいのになって俺は思うんだよね。ーージャケット写真は、顔が入っているんですね。これは4人の顔のコラージュ。むかって右上が俺かな、左がベースのシミ(清水泰次)、鼻がドラムの坂さん(坂詰克彦)かな。口がギターの友康(上原子友康)なんじゃないかな。最初にこのジャケを見たときは、「これは誰?」って笑ったよね。ーー11月からは全国トークツアーを実施されますし、2021年には東名阪の「新春ツアー」が控えていますね。12月には京都と長野で恒例ライブ、1月には大阪、名古屋、東京だね。キャパはだいぶ少ないけど、とにかく今はやれる範囲で無理せず楽しみたいね。「健康で、1日でも長くバンドが続けられるように」ーー音楽以外の増子さんのご活動ですと、2016年に宮藤官九郎さんが作・演出された、ロックオペラ『サンバイザー兄弟』で、永山瑛太さんとダブル主演で初舞台に立ちましたね。前からクドカン(宮藤官九郎さん)とは仲良いから、「舞台やるとき出してね、チョイ役で」って言ってたんだけど、ある日「決まりましたー!」と連絡が来て。そしたら「ダブル主演で、もうひとりは瑛太くん」だって聞いて、「ダメだって、ほんとチョイ役でいいんだから」ってすぐ電話したもんね(笑)! 「すげえセリフあるじゃん」って言ったら「大丈夫です」って(笑)。1か月半ぐらい稽古期間があるから、だいたいどんな俳優さんでもできるようになるっていうことで、「絶対だな?」「絶対大丈夫です」というやりとりがあって、じゃあやるかと(笑)。ーー永山瑛太さんからはお芝居のアドバイスはあったのですか。いや、何を聞いても「兄貴、全然できてますよ」って言うから「ウソだろ!?」って(笑)。でも、細かいところを聞くと「それはこうやったほうがいいと思います」と返してくれる。たとえば相手としゃべるときに完全に横を向かずに斜めぐらいに体を向ける、目線もどうするかは聞くと教えてくれる。あとやっぱり、一緒に芝居した俳優たちは、びっくりするぐらいセリフを覚えるのが早いね!最初、本読みで台本を読むんだけど、結局一番最後まで本を持ってるのは俺だった。いまバンドをやっていて、音楽に関してダメ出しされることはほぼない。OKラインは自分のなかにあって、俺という人間を最大増幅させるのがバンドだから。でも舞台は、俺ではなく役になるわけだから「これこうですか?」とやってみて「違う」となると、その加減も難しい。俳優の友達や芝居をやっている人に聞いても、自分のOKラインと作品なり監督のOKラインが違う時が結構あるんだって。役者“あるある”なんだろうね。舞台は稽古の期間が長いし会話だから、意外と時間が長い作品でも、やりとりがあって覚えやすい。でもドラマは稽古がないから、現場に行って、演出家さんに「こんな感じでお願いします」と言われて、すぐやるからね。たとえば「悠然と階段を降りてください」と言われても、悠然と階段を降りたことないから難しいよね(笑)。ーー近年では、2019年のNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺〜』、2020年はNEWSの増田貴久さん主演の連続ドラマ『レンタルなんもしない人』(テレビ東京系4〜9月)第1話にゲスト出演されましたね。すごいんだよ、増田さん。ドラマでは普段ぼんやりした人の役だから、芝居に入るとNEWSじゃなくなくなる。すげえなって。芝居が上手なんだね。ーーそういえば関ジャニ∞さんや、ももいろクローバーZさんといったアイドルの方に楽曲提供されたこともありました。楽曲提供っておもしろくて、自分たちが絶対に手が届かないところに、球が届くからね。関ジャニ∞のシングル曲「あおっぱな」(2012年発表)を提供したときに、東京ドームのライブを観に行ったけど、俺たちが作った曲を5万人が歌ってたもんね。本当にうれしかったね。それを観たときに「曲は間違ってないんだな」って。じゃあ演者の問題かって(笑)。役者仕事に関しては、いまも11月18日から始まる、山口紗弥加さん主演の連続ドラマ『38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記』(テレビ東京系 深夜0時58分)の収録をしていて。主人公がよく行くバーのマスター役なんだけどね。音楽で怒られることがないから、芝居ではすごく学びが多いよね。ほぼ初心者で入って勉強させてもらうということが多々あるから。ーーそんなお芝居の経験がまた、音楽に還元されたり?あるね。やってみて思ったのは、やっぱり、バンドは演じちゃいけない。リアルじゃないとね。そこがすごく大事で、芝居とはまったく真逆。けっこうみんな演じがちで、このバンドのこのキャラクターを演じてるなってわかるとスッと興醒めしちゃうよね。それはエンターテインメントとは別の話だから。ーー最後に、今後の抱負をお聞かせください。今年はいろいろあったからね。でも、都なり国のガイドラインのさらに内側を守るくらいの慎重さをもって「やっていいよ」と言われていることはやっていくよ。ツアーも決まってるしね。あとは、何しろ「健康で、1日でも長くバンドが続けられるように」ということのみ!取材後記さまざまなアーティストやミュージシャンからも慕われている、増子さんをはじめとする、ロックバンドの怒髪天のみなさん。増子さんの生きざまはそのままロックンロールを体現されていて多くの人たちから支持されるのも納得です! バンド活動はもとより、俳優業などでもご活躍中の増子さんが放つ、怒髪天のニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。怒髪天 PROFILE1984年に札幌で結成。増子直純(Vo)、上原子友康(G)、清水泰次(B)、坂詰克彦(Dr)からなる4人組ロックバンド。 “JAPANESE R&E(リズム&演歌)”を旗印に、オリジナルのロックンロールを鳴らす。2014年1月、日本武道館ワンマン公演を敢行し、満員御礼におさめる。2019年、バンド結成35周年を迎え、ミュージシャン、演歌歌手、俳優など怒髪天と親交のある総勢220名が参加した怒髪天トリビュート『オトナノススメ〜35th 愛されSP〜』をリリース。アニバーサリーイヤーを駆け抜けた。2020年、11月11日にニューアルバム『ヘヴィ・メンタル・アティテュード』をリリース。11月7日から29日まで「怒髪天 爆音上映会&トークTOUR 2020 “4人いてライブせんのか~い!”」を実施。12月11日、「ライブ&ドキュメント 怒髪天 必要至急特別公演キャプテン野音2020 〜1/2の神話(キャパ)〜」DVD発売。2021年、1月9日に大阪BIG CAT、 1月10日に名古屋ボトムライン、 1月17日に東京神田明神ホールと、新春ツアーを開催する。InformationNew Release『ヘヴィ・メンタル・アティテュード』(収録曲)01. SADAMETIC 20/2002. 駄反抗王03. 孤独のエール04. ポポポ!05. スキモノマニア06. や・め・と・き・な07. 憎まれっ子のブーガルー08. ヘイ!Mr.ジョーク09. タイムリッチマン10. H.M.A.2020年11月11日発売(通常盤)TECI-1709(CD)¥3,000(税別)(初回限定盤)TECI-1708(CD+DVD)¥4,000(税別)[DVD内容]2020年7月26日に京都磔磔で行われた配信ライブ「怒髪天 delivery 響都ノ宴“カラダ立ち入り禁止。第一回、タマシイ限定ライブ。カモン!俺達界隈(魂のみ)。”」のライブ映像全曲分を再編集して収録。(DVD収録曲)01. 酒燃料爆進曲 02. 欠けたパーツの唄 03. HONKAI 04. セイノワ 05. ポポポ! 06. ロクでナシ 07. 北風に吠えろ! 08. せかいをてきに… 09. GREAT NUMBER 10. NINKYO-BEAT 11. スキモノマニア 12. シン・ジダイ 13. クソったれのテーマ 14. ド真ん中節 15. 孤独のエール 16. 喰うために働いて生きるために唄え! 17. 歩きつづけるかぎり 18. オトナノススメ 19. 雪割り桜
2020年11月07日【音楽通信】第56回目に登場するのは、23歳にして初めてのウエディングソングを手がけた、沖縄発の新世代ラッパー、Rude-α(ルードアルファ)さん!写真・黒川ひろみ 取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol. 56ORANGE RANGEの曲で初めて音楽を認識した高校1年のときからストリートダンスを始めた、Rude-αさん。高校2年のときには、近所の公園でフリースタイルを仕掛けられたことをきっかけにラップを始め、翌年には「第6回全国高校生ラップ選手権」に出場して準優勝しました。2018年には、沖縄から東京へと上京後、初のEP『20』(Nijyu)をリリースし、iTunesヒップホップアルバムチャートで初登場1位を獲得。その後、初の海外ライブを敢行し、2019年にはAbemaTVの人気恋愛リアリティ番組『オオカミちゃんには騙されない』に出演し、ティーンエイジャーの間で大きな注目を集め話題に。2020年3月には、1stアルバム『23』をリリースするなど、その後もコンスタントに作品を発表し、そのたびにファンを魅了。現在Instagram 13.8万人、Twitter 11万人を超えるほどの人気者です。そんなRude-αさんが、11月4日に、ニューシングル「マリーミー」を配信リリースされるということで、お話をうかがいました。ーー幼少時にどんな音楽を聴いていたのでしょうか。音楽を意識しだした出来事はあったのですか。普通に幼少時は童謡を聴いて育ちましたね。成長していくなかで、物心がついて初めて“音楽”というものを認識したのは、ORANGE RANGEの曲です。母親が車でORANGE RANGEの曲をかけていて、自然と耳にする機会があったから、いい曲だなって。メジャーデビューしているアーティストの音楽を聴いたのも、ORANGE RANGEが最初だと思います。ーーRude-αさんは沖縄ご出身ですし、同郷のORANGE RANGEさんの曲をよく聴いていたのですね。はい、曲を聴いたり、ライブを観に行ったりしていました。ーーではストリートダンスを始められたのはどのような経緯でしょうか。地元の街を歩いていると、いろいろな人が鏡の前でダンスの練習をやっていて、それを見て僕もやりたいなって。ダンスをしている人に「ダンスを教えてください、得意じゃないですか」とお願いして、その人からダンスを教えてもらったのが始めたきっかけですね。ーー翌年には「第6回全国高校生ラップ選手権」で準優勝されていますが、努力されたのですね。いえいえ、努力というよりも、当時はそれしかやることがなかったし、夢中になれるものがなかったから、好きでやっていただけなんです。だから、いまでも練習をしていたとは思っていません。「ラップ選手権」もたまたまやっていると知って、受けてみたら、受かっちゃってという感じなんですよ。ーー天性のものがあるのですね。新世代ラッパーとして注目されているRude-αさんですが、影響を受けたラッパーの方はいるのでしょうか。KDTという地元のラッパーにフリースタイルを仕掛けられたことから、ラップを始めることになったんです。だからそういう意味では、一番影響を受けたのは彼かもしれないですね。ライバルではなく、いまの自分を作ってくれた人、先輩のような存在です。ーー沖縄から東京へと上京後、インディーズでのiTunesヒップホップアルバムチャートで初登場1位を獲得した後も快進撃を遂げていますが、デビューされてから現在までの1年半、これまでに印象に残ったことは。デビューしたこと自体も印象深いんですが、昨年の7月にリリースした「LIFE」という曲で、TVアニメ『Dr.STONE』(TOKYO MXほか 2019年放送)のエンディングテーマをやらせていただいたんです。このアニメは、『週刊少年ジャンプ』(集英社)でいまも連載中の作品がアニメ化して放送されていたんですが、この曲を担当することで海外の方も僕の歌を聴いてくれて、すごく反応してくれました。もちろん言葉も違いますし、まさか日本以外の方にまで反響があるとは思っていなくて、その国に行ったことがなくても、海を超えてそういう人たちの日常のなかに自分の音楽が鳴っているなんて。これは音楽をやっていないと、なかなかできない経験だと実感しました。ほかにもいろいろな発見があるんですが、毎日の出来事が、明日の自分を作ってくれているという感じがしますね。ーー音楽以外では、デビュー後にAbemaTVの恋愛リアリティー番組『オオカミちゃんには騙されない』に出演されましたが、歌とはまた違う環境はいかがでしたか。番組出演は歌うこととは全然違うものなんですが、人生1回しかないですし、人間いつかは死ぬから、こういった経験もいいんじゃないかなと出演しました。僕のように音楽をやっている人間が出ると、「そういうの出るんだ」と思う方も少なからずいたんですが、僕は雑音が気にならないんです。出演したおかげで、いままで思っていなかったことにも気づけましたし、いい夏だったなと思っていますね。ーーまたそれがご自身の曲作りにも良い影響があったり?そうですね。その経験をもとに作った歌もありますし、さまざまな友達もできましたし、恋愛をするということ以上に、出演していろいろなものをもらえた機会だったなと思います。年老いていく美しさも愛する初のウエディングソングーー2020年11月4日に、しっとりと聴かせるラブバラードのシングル「マリーミー」を配信リリースされます。今回は初のウエディングソングを手がけられましたね。この曲は、現在放送中の連続ドラマ『マリーミー!』(テレビ朝日系 毎週土曜深夜2:30、ABCテレビ 毎週日曜午後11:25)の主題歌のお話をいただいてから、作りました。ドラマの台本や原作の漫画を読ませていただいたりして、歌詞を書いていきましたね。ーーこういったラブソングでは、曲を作るときは、いつもご自身の体験から作られるのでしょうか。いつもはメロディから決めていくんですが、実体験はないですね。けっこう恋愛の曲を作っているんですが、たいした恋愛をしたことがないので、想像だったり、本を読んだり、日常で誰かが言っていた何気ない会話からインスパイアされて歌詞を書いたりしていますね。ーー「マリーミー」の「シワの増えた顔も 白く染まる髪の毛も全部 隣で見たい 愛しさを知った」というリリックに驚いたのですが、クラシカルな表現といいますかロマンチックな内容は、23歳のRude-αさんの結婚観も歌詞に反映されていますか。まだ結婚は身近ではないですよね?いや、地元の友達はすでに結婚していますし、沖縄では結婚が早い風習があるので、みんなすぐ結婚して、すぐ子どもを産みます(笑)。沖縄へ帰ると、おばあちゃんに「あんた早く結婚しなさい!」って言われるんですよ、「結婚しないと物事の分別がつかない!」とけっこう言われるんです。でも、東京で早く結婚しようとすると「早くない?」って、結婚しても30歳ぐらいじゃないですか。僕は内心、焦っていますけどね。23歳って、母親が僕を産んだ年齢なんですよ。それを考えたら、いま僕はまだ結婚していないから、そろそろお見合いしようかなと思います(笑)。ーー早い結婚もいいと思います(笑)。結婚していないやつがこんな歌詞を書いていますが、たとえば、いまのきれいな相手が好きだらかといった気持ちではなく、だんだんと年老いていくことやうれしいこと、それにいろいろな悲しいこととか、そういったすべてのことを一緒に背負っていくのが、僕は一番いい。年老いていく美しさがあると思って、こういう歌詞を書いたんです。ーーでは理想の家庭像はありますか。息子は野放しにして、娘は彼女みたいに育てたい(笑)。男の子は人に迷惑をかけなければ、好きなことをやったらいいと思っていて、でも女の子は……。渋谷とか歩いていると、たまに酔いつぶれている女の子とかがいたり、いつか「留学したい」とか言われたりして、どこかでチャラい男とかに当たってしまわないかといまから気が気ではないですね(笑)。ーーいいお父さんになりそうです(笑)。ちなみに、ドラマの『マリーミー!』にもカメオ出演されていましたが、現場の様子はいかがでしたか。カメオ出演って、何なのかもよくわからなかったんですが、当日現場に行ったらスタッフの方が「客役のRude-αさん入りまーす!」と言われて。そのときに初めて客の役だと知って、台本もそのときに渡されたものを見て、セリフも“お好きにお答えください”としか書かれていなくて。監督に「どうしたらいいですか?」と聞いたら、「いつもの感じで」と言われて、それをそのままドラマで実践したんですよ。ドラマ初演技とか言われるんですが、演技と言ってもいいのか戸惑います。ーー主演は、雑誌『Seventeen』(集英社)の専属モデルでもある、久間田琳加さんですが、一緒のシーンにご出演されていましたが何かお話しされましたか。久間田さんに「曲が好きで、よく聴いてるんです」と言われたんですが、むしろ「聴かないでください」って言って(笑)。ーーなぜですか(笑)!?久間田さん、めちゃくちゃかわいかったんですよ! でもプライベートでは絶対会いたくない、ドラマの現場にあんなにかわいい人がいるんだったら、緊張してしまうのでもう行きたくないなと思いました! 遠くから見ていたいですね。ーーでは、久間田さんの相手役の瀬戸利樹さんは、主題歌のことは何かおっしゃっていましたか。瀬戸さんは「ドラマにぴったりな曲だね」とか、いろいろと感想を話してくれました。瀬戸さんと久間田さんには、僕のグッズなどを渡したんですが、おふたりとも喜んでくれて、良かったなと思いましたね。ーー今後も機会があれば、演技のほうも?ないですね(笑)。新しい可能性を見せちゃうと、事務所に依頼が届いて仕事が増えていくので、音楽だけでいいです。「ピースな感じで」人の悩みを吹き飛ばす存在になるーー現在、コロナ禍ではありますが、どんなふうにおうちで過ごしていますか。以前の自粛期間は、お店に行くことはなかったですが、その頃からけっこう散歩はしていましたね。僕、友達と4人でシェアハウスで暮らしているんです。最近は、朝起きてから、友達と4人で近所の弁当屋で弁当を買って公園で食べて、日中の予定が何もないときは公園でピアノの練習をして。夜は銭湯から帰った後に、公園でみんなとビールやチューハイを飲んだり。雨の日でも公園へ行って、雨を見ています。子ども用の雨宿りする場所があって、そこに誰もいないときは、雨宿りしながらピアノの練習をして、あとは鳩を見ていますね。「雨の日は鳩がどこにいるのかな?」と考えていたら、雨の日も鳩って濡れながら外にそのままいるんですよね、そういう発見が楽しいです。ーー今回の新曲のタイトルは「マリーミー」ですが、Rude-αさんの理想の女性像は。一番は、思いやりのある人がいいです。受け入れてもらうことを考えるよりも、まず相手を受け入れる人。愛されるより先に、自分から愛するということをわかっている人がいいですね。僕と同い年の女友達もいますが、自分に合うタイプの女の人は同世代よりも、もっと年上かも。心が広くて、ふたりで会話していると、自分の悩みなんてちっぽけに思えるような人というと、おばあちゃんですね。おばあちゃんとは、一緒にいるだけで、安心感を得られるというか。おばあちゃん以外では、そんな女の人には、まだ会ったことがないですけどね(笑)。ーーちなみにラブソングを書かれるときは、そういった理想の女性を思い描いて書かれたりするんですか。いやもう、わがままな女性たちを書いています(笑)。ラブソング書くときは、女性だったり、男性だったり、いろいろな人にその心情があてはまるように書いていますね。ーーでは最後に、今後の抱負をお聞かせください。ずっと公言していることは「武道館でワンマンライブやります!」ということで、一番はそれです。いまはこういう時期ですし、予定していたものがいろいろと止まってしまうことがあるなかで最近思ったのは、世の中で売れる売れないとか、メジャーやアンダーグラウンドとかは関係がないなと。一番大事なことは、人の気持ちを動かせる、悩んでいる人がいるときに、僕を見たら笑えるというような、人の悩みを吹き飛ばせるアーティストになれたらいいなと思っているんです。さっきお話しした理想の女性像もリンクしていますが、安心感を得られるような存在がいい。これからも、ピースな感じでいきたいですね。取材後記新世代ラッパーとしてさらに人気急上昇中のRude-αさん。沖縄の風を感じるパーソナリティはとてもあたたかく、和やかに、取材させていただくことができました。23歳にして手がけた初のウエディングソングには、等身大のRude-αさんの想いがこめられています。そんなRude-αさんのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。Rude-α PROFILE1997年2月8日、沖縄県沖縄市出身。高校1年のときからストリートダンスを始め、各種ダンスバトルやイベントに出演。高校2年のとき、近所の公園でフリースタイルを仕掛けられたことをきっかけにラップを始める。翌年、「第6回全国高校生ラップ選手権」に出場し、準優勝。東京上京後、2017年からはバンド編成でのライブ活動をスタート。2018年2月、東京上京後初のEP『20』(Nijyu)をリリースし、iTunesヒップホップアルバムチャートで初登場1位を獲得。3月にはアメリカ・オースティンで行われている音楽フェスSXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト) 、そして全米7都市を廻るSXSWジャパンツアーに参加し、初の海外ライブを敢行。2019年5月、メジャーデビューEP『22』(Nijyuni)をリリース。先行配信シングル「wonder」が、ストリーミング400万回、MV視聴250万回を突破。さらに7月からはAbemaTVの人気恋愛リアリティ番組『オオカミちゃんには騙されない』に出演し、独特なキャラクターがティーンエイジャーの間で大きな注目を集め話題に。番組出演をきっかけに、わずか3か月の間でSNSフォロワーが激増。現在Instagram 13.8万人、Twitter 11万人を超えるフォロワーを持つ。2019年9月23日(水)、デジタルシングル「It’s only love」をリリース。本人直筆のリリックビデオが話題を呼び、MV本編公開前にも関わらずYouTubeを中心に35万回を再生。MV本編公開後には、わずか4か月でYouTube345万回再生、ストリーミングでは600万回再生を超え、いまだロングヒットとなり、自身最大のヒット曲となった。2020年3月、1stアルバム『23』をリリース。8月、自身初の書下ろしエッセイ「何者でもない僕たちに光を」(KADOKAWA)発売。11月4日、ニューシングル「マリーミー」を配信リリース。InformationNew Release「マリーミー」ABCテレビ ドラマL『マリーミー!』主題歌(収録曲)01.マリーミー02.マリーミー instrumental2020年11月4日配信リリース
2020年11月05日【音楽通信】第55回目に登場するのは、社会現象となっている『鬼滅の刃』のヒロイン・竈門禰豆子(かまどねずこ)役などの人気声優としても知られ、アーティストとしても活躍している、鬼頭明里(きとうあかり)さん!写真・黒川ひろみ 取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol.55声優になって以来いまは「未知の領域にいる」2014年に声優デビューした鬼頭明里さんは、一世を風靡している『鬼滅の刃』の竈門禰豆子役、『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』近江彼方役、『Re:ステージ! ドリームデイズ』月坂紗由役など、数多くの話題作に出演している、人気声優です。とくに『鬼滅の刃』の禰豆子役は、子どもから大人まで、アニメファン以外の層からも圧倒的な人気を博し、国内外でそのキャラクターに魅了される人が続々。アーティストとしては、2019年10月にシングル「Swinging Heart」でデビューを果たし、2020年6月リリースの1stアルバム『STYLE』はヒットチャート7位を獲得。9月から10月まで開催された東名阪での1st ライブツアー「Colorful Closet」は大成功で幕を閉じました。そんな鬼頭さんが、10月28日に、3rdシングル「キミのとなりで」をリリースされるということで、お話をうかがいました。ーーまずは、鬼頭さんの音楽的なルーツから振り返らせていただきます。小さい頃はどんな曲を聴いていましたか。小さい頃から、アニメがずっと好きだったので、曲といえばアニメソングばかり聴いていましたね。お父さんはオタクだったんですが、お母さんはそうでもなく、TUBEさんなどそのときどきに流行っていた曲を聴いていて、私も一緒に聴くことがありました。小学生になると、近所のカラオケ店にものすごく通いつめて、アニメソングをよく歌っていましたね(笑)。親の車でおばあちゃんの家に行くときも、車の中で曲を流して、カラオケ大会のようにずっと歌っていました。ーーそんななかで、声優を目指すようになられたきっかけは。家ではケーブルテレビがつながっていて、アニメを視聴できるチャンネルがあって、80年代、90年代のアニメをずっと観ていて「やっぱりアニメが好きだな」と実感していました。中学生の頃になると、声優さんのいろいろなアニメのラジオ番組を聴き始めて、「アニメについて話している声優さんって、すごく楽しそうな人たちだな、これがお仕事だと楽しそう」と思ったことが、声優さんになりたいと思ったきっかけですね。でも、声優さんになるためにはどうすればいいか調べてみたら、とりあえずは上京しないと無理だということがわかって、その夢をしばらく諦めていました。ーーでは実際に2014年に声優デビューされましたが、どうやって夢をつかんだのですか。高校を卒業する前の進路を決めるタイミングで、一度は諦めていた声優さんになろうと決断したんですが、そう思う前までは、イラストレーターになろうと思ってずっと絵を描いていたり。地元の愛知のことも好きだったので、愛知の大学に通うことを考えていました。でも、それは親のお金で大学に通わせてもらえるなら行こうというぐらいの気持ちで、いざ親に大学の話をすると「お金ないよ」と言われて(笑)。「自分で奨学金を借りて、行きたいなら行きなさい」と親に言われ、「自分で借りてまで大学に行かなくていいな」と思って、じゃあ何をしようかなと。そこで、一度は諦めた声優さんになりたいと思って、行動したんです。今度は地元にこだわらないで、自分でお金を貯めて、声優養成所に通うために上京して、本格的に声優さんを目指すようになってからテレビアニメでデビューすることができました。ーー社会現象となっているアニメ『鬼滅の刃』のヒロイン・竈門禰豆子役として声を担当されていますが、鬼と人間との感情で揺れ動く禰豆子の葛藤が画面からも伝わり、物語にも大いに感動しました。役作りはいかがでしたか。作品にもよるのですが、声をあてるときに、棒人間みたいなものしかない状態のときもありますし、カラーのときも線画のときもあるんです。でも、“鬼滅”の場合は、線画でしたがしっかりと表情が描いてありました。その映像を見て、台本からも禰豆子の心情を読み取って、そして原作も読んで、「こんな表情をしているからこうかな」と、想像しながらやっていましたね。ーーまわりの方からの反響も大きかったのではないですか。これまで声優になってからも、常に「売れるぞ!」「ビッグになるぞ!」という気持ちではいたんですが、いまはそこを飛び越えて、「未知の領域にいる」と思うところにいて(笑)。まさか自分がここまでいろいろなお仕事をさせてもらえるようになって、アーティスト活動もさせていただけるようになると思っていなかったので、毎日未知の世界が広がっています(笑)。いろいろと楽しくお仕事させていただいて、すごくありがたいですね。私の目標のひとつに、親戚や家族など「まわりの人たちに恩返しがしたい」「自慢できる友達、娘、親戚になりたいな」という思いがあって。いまはまわりの親戚や家族もすごく喜んでくれているので、とてもうれしいですね。ーーさまざまなキャラクターで声を務めていらっしゃいますが、鬼頭さんのなかでも、禰豆子役は少し違う存在なんでしょうか。そうですね。私の地元の友人はあまりアニメを観ないんですが、そんな人たちでも「“鬼滅”すごいね」と言ってくれるようになりましたし、おじいちゃんもそうです。いままでアニメに出ていると言っても「ほうほう、よくわからんけどがんばっとるね」という感じだったのですが(笑)、『鬼滅の刃』のことはおじいちゃんのまわりのお友達からも「明里ちゃん、すごいね」と言ってくれるらしくて、「明里ちゃん、がんばっとるんですね」とようやく認識してくれました。だから、禰豆子はだいぶ、特別な存在なんじゃないかと思います。『安達としまむら』のOPテーマ&EDテーマを歌唱ーー2020年10月28日に、さわやかでドラマチックな3rdシングル「キミのとなりで」をリリースされます。表題曲は10月8日からスタートしたテレビアニメ『安達としまむら』(TBS系 深夜1時58分)のエンディングテーマで、同アニメの主人公・安達の声も鬼頭さんがご担当されていますが、オープニングテーマは“安達としまむら”が歌う「君に会えた日」なのですね。エンディングテーマとなっている今回の新曲は私名義のもので、鬼頭明里として、アーティストとして歌わせていただいています。オープニングテーマについては、アニメの“安達としまむら”として、キャラクターソングとして歌わせていただいていて、安達というキャラクターになりきって歌っていますね。キャラクターソングは、キャラクター目線で歌っている感じなんですけども、アーティストとして歌わせていただいている曲に関しては、作品や物語自体を俯瞰して見ているというか。なので、今回はふたつの視点から、オープニングとエンディングを歌わせていただいていて、作品への理解が深まった気がします。ーー「キミのとなりで」には、ロックテイストの2曲目「Dive to World」、ファンクな感じもある3曲目「トウメイナユメ」も収録されています。今回、3曲ともさわやかな感じの曲なので、どの曲もあんまり考えすぎずに歌うようにしてみました。ーー2019年10月から、アーティスト活動をこれまで1年間されてきましたが、いまはどのようなお気持ちでしょうか。役者として歌ったり踊ったりしているときは、キャラクターの気持ちだったり、キャラクターを表現したりという感じがあるんです。でも、アーティストとしては、自分を表現する、自分自身であるというところで、そこがすごく難しかったですね。自分を出すことが苦手ということもあって役者になったので、アーティスト活動は自分を出さなきゃいけない、自分を表現しなければいけないとなったときに「自分とはなんなんだろう?」とすごく考えました。ーー今年6月には1stアルバム『STYLE』も発表されて、ご自身の曲数が増えていくなかでも、自分とはなにかという葛藤もありながら、歌われていたのでしょうか。はい、曲が増えていくなかでもありましたね。いまだに、自分とはなにかが見つかっていないんですが、私は飽き性だし、いろいろなことをしたいタイプなので、これからも“新しい自分を見つけていく”気持ちでやっていけたらなと思っています。ーー9月から10月には初ライブツアーも行われましたが、実際にステージに立たれて、手応えのほどはいかがですか。初めてのライブでしたし、このコロナ禍というのもあって、ものすごく緊張しました。お客さまも声援を送れないので声を出せなかったり、マスクとフェイスシールドをしてもらったり、席もソーシャルディスタンスとなっていたり。いろいろな制限があるなかで、楽しんでもらえるんだろうかと不安もあったんですが、そんななかでも拍手してくださって、「すごく楽しかったです」と言って帰ってもらえたりしたので、すごく安心しましたし、ライブができて良かったと思いました。ーー大阪公演では、LiSAさんが歌うテレビアニメ『鬼滅の刃』のオープニングテーマ「紅蓮華(ぐれんげ)」のカバーを披露されたそうですね。各公演で毎回違うキャラクターソングや私が出演したアニメの主題歌のカバーを歌わせていただきました。アーティストとしての自分の曲よりも、カバー曲のほうが、前々からカラオケで歌い慣れている曲なので、今回のライブでバンド編成になったときもすんなり歌えたかもしれません(笑)。ーー声優の方は、「声」がとても重要なものですし、アーティスト活動でも歌われることが多くなりますが、普段ノドのケアはされていますか。昔からノドが強くて、たとえば加湿器をたくようなこともしていないですね。朝もとくになにもしていないんです。ノドを甘やかさないで、強くするというか(笑)。ーーやはり声のお仕事は“天職”かもしれないですね。そうですね、昔から声を出すのは好きだったので、お仕事はすごく楽しいです。今後はおとなっぽい曲やコラボもやってみたいーーオフの日はどのように過ごしていますか。人が好きなので、誰かと話すことも好きで、おやすみの日などは友達とどこかへ遊びに行くことが多いですね。カラオケへ行ったり、おしゃれなカフェで写真を撮ったり。スマホでインスタ映えしそうな写真を撮るのが好きで、以前はよくカフェに行っていました。コロナ禍ですし、最近はなかなか外出できませんが、友達とは「ご飯に行きたいね」と連絡はしていますね。ーースキンケアやコスメなどでは、お気に入りのものはありますか。最近お気に入りなのは、ランコムの「ジェニフィック アドバンスト N」という美容液です。すごくいいらしいと耳にしていて、実際に自分でも使い始めたら、本当に肌の調子が良くなりました。いま5本目ぐらいですが、ずっとリピートしていますね。友達や知り合いにも、この美容液をプレゼントするぐらい、気に入っています。もともと気に入ったものをずっと使い続けるタイプなのですが、コスメだとディオールのクッションファンデーションもいま6個目になりましたし、気に入ると同じものをずっと使っていますね。ーーちなみに、細身なのでダイエットなどはされないですよね。めちゃめちゃしています(笑)! 昨年末ぐらいはすごく太っていて、そこからダイエットを頑張っているんですよ。でもやっぱり時間がないと痩せられないから、追い詰められて、いまはお金の力で痩せようかなと思っています(笑)。エステとか、トレーニングギアのシックスパッドを買ったり。あとは食事ですね。現場などでお弁当が出ても、おかずは全部食べますが、ごはんの量を減らして、炭水化物を減らすとか。ニンテンドースイッチのエクササイズゲーム『Fit Boxing』をやることも。リズムに乗ってパンチするんですが、10分ぐらいやるだけでも、けっこう汗だくになるんです。ーーでは最後に、アーティストとしての今後の抱負をお聞かせください。いままでロックな曲やさわやかな曲を歌わせていただくことが多かったので、今後機会があれば、大人っぽい、カフェでゆったり聴けるような曲やブラスバンドのパレードのような曲も歌ってみたいなと思いますね。あとは、同時期にすごく仲良い役者の友達もアーティストデビューしていて、和氣あず未さんという声優なんですが、その子といつか一緒にコラボレーションして歌ってみたいですね。一緒のステージにも立ってみたいなと思います。取材後記声優として、ソロアーティストとして、大活躍されている鬼頭明里さん。クールビューティな鬼頭さんは、撮影中もインタビュー中も、凛とした瞳が輝いて、取材陣を魅了。筆者が心から感銘を受けた『鬼滅の刃』の竈門禰豆子役では、おじいちゃんからも認識されたというお話に、母のような気持ちでほっこりさせていただきました。声優だけでなく、アーティストとしても、きっと多くの人たちの心を灯してくれるはずです。そんな鬼頭さんのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。鬼頭明里 PROFILE10月16日、愛知県生まれ。趣味は、絵を描くこと、歌うこと。2014年より声優として活動。テレビアニメ『タイムボカン 逆襲の三悪人』にてヒロイン、カレン役を務める。他にも『鬼滅の刃』竈門禰豆子役、『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』近江彼方役、『Re:ステージ! ドリームデイズ』月坂紗由役、など多くの話題作に出演している。2019年10月16日にシングル「Swinging Heart」でアーティストデビュー。収録曲の「dear my distance」はテレビアニメ『超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!』、2020年2月リリースの2ndシングル「Desire Again」収録曲「Tiny Light」はテレビアニメ『地縛少年花子くん』のエンディングテーマを担当。6月リリースの1stアルバム『STYLE』はオリコン週間ランキング7位を獲得。9月から10月まで東名阪での1st ライブツアー「Colorful Closet」を開催。10月28日、3rdシングル「キミのとなりで」をリリース。「ニュータイプアニメアワード2018-2019」声優賞(女性)では、1位を獲得。レギュラーラジオ番組、文化放送『超!A&G+』では『鬼頭明里のSmiley pop』(毎週水曜日19:30~20:00)を放送中。InformationNew Release「キミのとなりで」(収録曲)01. キミのとなりで02. Dive to World03. トウメイナユメ04. キミのとなりで (Instrumental)05. Dive to World (Instrumental)06. トウメイナユメ(Instrumental)2020年10月7日発売*全形態同収録曲。(通常盤)PCCG-01941(CD)¥1,300(税別)(初回限定盤)PCCG-01939(CD+BD+ブックレット)¥2,000(税別)(アニメ盤)PCCG-01940(CD)¥1,300(税別)New Release「君に会えた日」安達としまむら(CV:鬼頭明里と伊藤美来)(収録曲)01. 君に会えた日02. メリーゴーランド03. 君に会えた日 -TV size ver.-04. メリーゴーランド -Glocken Ver.-05. 君に会えた日 -instrumental-06. メリーゴーランド -instrumental-2020年10月28日発売(通常盤)PCCG.01929¥1,300(税別)ヘアメイク・Yuu.
2020年10月27日【音楽通信】第54回目に登場するのは、NMB48を卒業して2年経ち、シンガーソングライターとしてさらに飛躍を遂げようとしている、山本彩さん!写真・黒川ひろみ 取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol.54いろいろな音楽を作ることができてすごく楽しいグループ在籍中の2016年から、シンガーソングライターとして活動してきた山本彩さん。全国のライブハウスツアーを実施するなど、エネルギッシュに活動を展開。2019年4月には移籍第1弾シングル「イチリンソウ」を発表し、12月には全曲作詞作曲を手がけた3rdアルバム『α』が、オリコンウィークリー5位を記録しました。そんな山本さんが、2020年10月28日に4thシングル「ゼロ ユニバース」をリリースするということで、お話をうかがいました。ーーまず、山本さんの音楽の源となったものからお聞かせください。幼い頃や思春期の頃に好きだったり影響を受けたりしたアーティストの方はいますか。小さいときは家族の影響でロックを聴くことが多かったですね。そのなかでも、アヴリル・ラヴィーンを聴いたことがきっかけで、自分でも歌い始めたり、ギターを弾くようになったりしました。だから自分で作詞作曲しているいまがあるのも、もとはアヴリルさんのおかげかもしれません。あとELLEGARDENさんも好きですね。ーーロックがお好きなのですね。はい、バンドものが好きでした。“ロック好き”が染みついているので、ルーツはそこかなと思います。ーーでは現在、目標としているアーティストの方はいますか。椎名林檎さん、宇多田ヒカルさんですね。独自の世界観と曲作りをされていて、本当にこの人にしか作れない曲ばかりだと思います。そんな曲を書かれているという意味でも、個性として素晴らしいことだと思いますし、作詞作曲、さらに編曲までご自身でされている方々なので。私はまだ編曲はお願いしていたりするので、編曲、アレンジなどまで自分でできるようになったら、またさらに物作りの幅が広がるのかなと。そういう意味で、理想の方々です。ーー2018年にグループを卒業されてから、2020年の現在までで約2年となりますが、あらためておひとりで音楽活動をされての心境は。まずジャンルにとらわれずに、いろいろな音楽を作ることができる現在は、すごく楽しいです。やりたいことができるということは、そのぶん、多くの方にも携わっていただいているということなので、本当にいい環境に置かせていただいていると思いますね。いまも不安がなくはないんですが、2年前ほどではなくて。純粋に、自分がやりたいことをそのまま曲にできたり、ライブができたりするのが、すごく幸せだなと感じています。全曲の作詞作曲&大型タイアップ付きシングルーー2020年10月28日に、4枚目となるシングル「ゼロ ユニバース」が発売されます。全作詞作曲を手がけられたそうですが、まず表題曲から、どのような思いがこめられているのか教えてください。「ゼロ ユニバース」は、現在放送中のドラマ24『あのコの夢を見たんです。』(テレビ東京系 毎週金曜深夜0時12分ほか)の主題歌ということで、ドラマの台本を読ませていただいて、そこから書かせていただいたんです。ドラマの主人公が、日々のいやなことがあったときに逃げ道のように妄想するんですが、それが安らぎになっていて。妄想が自分にとって、安らぎとなるほどの存在になっているということが、このお話のキーなのかなと思いました。妄想するなかで自分のやりたいことを思いのままに繰り広げていって、それが現実の世界でも、妄想しているようなことができたらいいなぁという思いでこの曲を作らせていただいています。ーードラマの原作となったのは、南海キャンディーズの山里亮太さんの短編小説ですが、曲作りについて山里さんから何かリクエストはあったのでしょうか。それはなかったですね。山里さんと直接やりとりすることがなかったので、こちらで一生懸命、「こういう気持ちだろう」「こうなったらいいな」と考えながら、作りました。ーー主演は、仲野太賀さんですね。仲野さんは、ドラマで山里さんの役をされていますね。この曲は、爽やかな妄想のなかだったり、夢のなかにいたりするような、浮遊感のある曲。ドラマのなかで仲野さんが、妄想から現実に戻るとか、現実に戻ったらまたいやなことがあるという心の葛藤も、歌詞に描いています。ーー歌詞の最後には、「もう一度新しい自分と会うために ここから出て行くよ」とありますが、これは妄想から抜け出すということでしょうか。そうです! 妄想から抜け出して、妄想の世界だけでなく、現実の世界でも「なりたい自分になっていくよ」という意味をこめています。ーー2曲目「愛なんていらない」は、どのようなシチュエーションで生まれた曲ですか。これはモスバーガーさんのCM曲なのですが、コンセプトが“自立したひとりの女性にも気軽に食べてもらえる、よしがんばるぞ! という気持ちになってもらえるように”というイメージだったんです。そのテーマを汲み取りながら、自分も一応自立している女性として、等身大の27歳の女性の曲が書けたらと思いながら作りました。ーーレコーディングの際はいかがでしたか。「愛なんていらない」で描いている女性は、仕事や大切なものに打ち込んでいるという状態で、強がりな面もあるけれど、タイトル通りに「愛なんていらない」という思いで歌っていましたね。けっこう素直な気持ちで歌えたかなと思います。ーー通常盤に収録されている3曲目「against」は、どのように生まれた曲でしょうか。これは日本生命さんで、「ニッセイ青春エールプロジェクト」と掲げて、いろいろなエピソードやキーワードを募集していたんです。コロナ禍でできるはずのことができない、会えるはずなのに会えないというようなさまざまな悔しさを抱えている人がたくさんいるので、そんなみなさんの感情を言葉にして送ってもらって、それをもとにして私が歌詞を書いています。ここまでの2曲とはまったく違う、アッパーな疾走感のある曲。みなさんに元気を届けられたらいいなぁと思って作りました。ーー今年はコロナ禍の影響で、2月からの全国ツアーツアー「山本彩 LIVE TOUR 2020〜α〜」が中止となったそうですね。ただ、8月28日にそのツアーファイナル公演として無観客有料配信ライブを行いましたが、いかがでしたか。無観客での生配信ライブは、お客さんを入れるライブとはまた違った緊張感がありました。ライブハウスで配信ライブを行ったのですが、ライブハウスのステージも半年ぶりだったので、けっこう忘れてしまっていることや勘を取り戻すのに大変だったこともあったり。でも、歌うにつれて「やっぱりライブっていいなぁ」と実感しましたね。ーー今後も配信ライブはお考えになっていますか。たとえみなさんと一緒にライブ会場にいることはできなくても、それ以外の方法でできることは何かあると思っていて。だから、配信ライブもそうですが、そのときどきに何ができるのかを探しながら、やっていけたらと考えています。「音楽で何かできたら」という気持ちを忘れないーー山本さんはコロナ禍での「おうち時間」をどのように過ごしていますか。以前の自粛期間は、ほぼ家にいました(笑)。部屋を片付けまくったり、ずっとやっていなかった自炊をしたり。おうち時間は、音楽や映画のサブスクリプションをひたすらやることにも、ハマりましたね(笑)。時間があるので、いままでだったら観ることのできなかった「鋼の錬金術師」などの以前放送されていたアニメや長編作を観ていたことも。そういう意味では、自分にインプットする時間が増えましたね。ーー自炊もされているそうですが、得意料理は。まだ得意料理と言い切れるほど作っているわけではないですが、生姜焼きやホイル焼きなどですね。最近は、以前よりも自炊の時間は減りましたが(笑)。意外と台所には立っていて、数日間かけて食べられるスープを作り置きすることもあります。ーーおうちから外出するのも難しい時期ですが、お友達とはどのように過ごしていますか。地元の高校の友達に電話をするなど、常に連絡をとっていますね。芸能界の友達だとグループの後輩と連絡をとることもありますが、卒業してからは先輩後輩というより、友達という関係になり、そこがいい変化だなと感じています。ーーでは美容面などで気をつけていることは。若いときはけっこう思春期の肌荒れに悩まされたので、治すのに必死でした。だから、美容やスキンケアには、お金をケチらんとこうと決めて(笑)。それからは、お肌にいいものをなるべく使うようにしていて、自分に合ったものだったら高くても買うようにしています。ーー夜は早く就寝するとお肌にいいようですよね。曲を制作しているときは徹夜することもあって、夜型になってしまうので、夜は寝ないこともあるんですが、制作期間以外のぐっすり眠れる時期に12時間とか寝ています(笑)。だから、プラマイゼロかなという感じですね。ーー物作りに没頭されるのですね。それは楽しい時間なのでしょうか。いや、しんどいですね、眠くなるときもありますし。締め切りギリギリのときは焦ってプレッシャーにもなるので、大変だなとは思います。でも、曲が完成して、みなさんに聴いてもらえたときには、本当に達成感があるので、しんどいことも別にいいかなと思っていますね。ーーお話は変わりますが、山本さんが思う魅力的な人物像は。男女ともに、誠実な人です。人を思いやる心、人をないがしろにしない気持ちのある人だったら、いいなぁと思います。男性のタイプとしては、ゴリラみたいな人が好きなんです(笑)。ーーゴリラ!? というとワイルドな感じでしょうか(笑)。ワイルドで、筋肉も好きなんですが、全体的に男くさ〜い感じが好きなんですよ。お父さんがそんな感じで、野性っぽいというか。お父さんみたいな人がいいです(笑)。ーーお父さんはきっととてもうれしいと思います(笑)。では最後に、コロナ禍で活動しづらい時期だとは思いますが、今後のヴィジョンを教えてください。これからも1曲、1曲をしっかりと作っていきたいです。そして、もしライブが普通のかたちでできない状況が続くとしても、いろいろなかたちでやっていけたらと思いますし、また少しずつフェスやイベントが決まったりしているので、そういう機会も大事にしていきたい。やっぱり「音楽で何かできたらいいな」と思っているので、その気持ちを忘れずに、これからも活動していきたいと思います。取材後記キラキラとした大きな瞳に吸い込まれそうになるほど、キュートな印象の山本彩さん。大阪でのイベント出演が続々決定しているということで、有観客ライブで山本さんの歌声が聴ける関西のファンの方はとてもうれしいでしょうし、配信ライブでも、CDからでも、元気づけられる方は多いはずです。地元の大阪を盛り上げて、さらに全国に元気を届けてくれる山本さんがリリースするニューシングルをまずはチェックしてみてくださいね。山本彩 PROFILE1993年7月14日、大阪府生まれ。2010年に発足したNMB48に1期生として8年間キャプテンを務め、中心メンバーとして活動。2016年、自身の目標であったシンガーソングライターとしての活動を始動させ、10月にデビューアルバム『Rainbow』をリリース。2018年10月、大阪の万博記念公園東の広場で卒業コンサート『SAYAKA SONIC ~さやか、ささやか、さよなら、さやか~』を開催。NMB48史上最大規模、約3万人を動員した初の野外コンサートとなった。11月4日、この日の卒業公演をもってNMB48を卒業。2019年、2月からライブハウスツアー「I’m ready」を24会場27公演開催。4月にユニバーサル ミュージック移籍第1弾シングル「イチリンソウ」をリリース。8月、ラジオのレギュラー番組となるCROSS FM『山本彩 カケル』の放送開始。2ndシングル「棘」、3rdシングル「追憶の光」を発表。12月、全曲作詞作曲を行った3rdアルバム『α』をリリースしオリコンウィークリー5位を記録した。2020年2月より、全国ホールツアーの開催を予定していたがコロナ禍の影響により中止。8月28日にファイナル公演として配信ライブを行う。10月28日、4thシングル「ゼロ ユニバース」をリリースする。InformationNew Release「タイトル」(収録曲)01. ゼロ ユニバース02. 愛なんていらない03. against04. ゼロ ユニバース(Instrumental)05. 愛なんていらない(Instrumental)06. against(Instrumental)2020年10月28日発売(通常盤)UMCK-5694(CD only)¥1,200(税別)(初回限定盤)UMCK-7084(CD+DVD)¥1,800(税別)[DVD内容]・表題曲ミュージックビデオ、・メイキングムービー(レコーディング、アーティスト写真+ジャケット写真撮影、ミュージックビデオ撮影の様子)(FC限定版)PDCS-1916(CD+DVD+特典スマホ専用 VRグラス&オンデマンド視聴券+Photo Book)¥7,800(税別)[DVD内容]・バースデーイベント「Sayaka Yamamoto Celebration 2020」番外編映像・バースデーイベント「Sayaka Yamamoto Celebration 2020」ドキュメントムービー[特典スマホ専用VRグラス&オンデマンド視聴券]・バースデーイベント「Sayaka Yamamoto Celebration 2020」ライブ映像※動画配信期間:2020年10月27日(火)~2021年10月27日(水)[Photo Book]・バースデーイベント「Sayaka Yamamoto Celebration 2020」撮り下ろし豪華フォトブック(54ページ)
2020年10月26日【音楽通信】第53回目に登場するのは、女優として、歌手として、いつの時代もわたしたちを魅了してやまない、原田知世さん!写真・北尾渉 取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol.5320代の半ばから音楽は本当に楽しいと知った1983年、オーディションで5万7,000人の中から選ばれ、大林宣彦監督の映画『時をかける少女』の主演として、鮮烈なスクリーンデビューを果たした、原田知世さん。映画はもちろんのこと、近年はNHK連続テレビ小説『半分、青い。』(2018年)、異例の2クール放送となった『あなたの番です』(日本テレビ系 2019年)といったドラマなどでも数々の話題作にご出演されているのは、みなさんご存知ですよね。原田さんは、いつの時代も圧倒的な存在感と、あふれる透明感で、わたしたちを魅了し続けています。また、原田さんは歌手としても、デビュー当時からコンスタントにアルバムを発表。1990年以降は、ムーンライダーズの鈴木慶一さん、スウェーデンの音楽プロデューサー、トーレ・ヨハンソンさんを迎えてのアルバム制作、それに伴うオール・スウェディッシュ・メンバーとの国内ツアーなどで、新たなリスナーを獲得。近年はプロデューサーに伊藤ゴローさんを迎えて、オリジナルやカバーなど充実したソロ・アルバムを発表しているほか、高橋幸宏さんたちと結成したバンド「pupa (ピューパ)」にも在籍しています。そんな原田さんが、2020年10月14日に、ラブソング・カバーアルバム第3弾『恋愛小説3~You & Me』をリリースされるということで、お話をうかがいました。ーー以前のことから少し振り返らせていただきます。原田さんが幼い頃や思春期の頃に影響を受けた歌手の方はいらっしゃいましたか。私が子どものときは歌番組が全盛で、子どもたちはみんな歌番組を楽しみにして観ていましたし、本当にいい曲がたくさん生まれたいい時代でした。そのなかでも印象に残っている歌手の方というと、久保田早紀さんですね。アルバムも、レコード盤をずっと聴いていて、久保田さんの歌の世界やその歌声が好きで、いまも影響を受けている気がします。ーー1982年、映画『時をかける少女』初主演としてスクリーンデビューされ、主題歌もご自身で歌っていらっしゃいますね。当時はどのようなお気持ちで歌っていましたか。私は14歳で、映画のオーディションでこの世界に入り、『時をかける少女』で映画デビューさせていただきましたが、実は当時はそこまで「女優さんになりたい」「歌手になりたい」という夢があったわけではなかったんです。だからこそ、いただいた作品をただ一生懸命演じたり、歌ったりしていました。当初は女優の仕事のほうがメインでしたから、会社としても作品のイメージに合わせた曲を歌うというかたちでした。歌番組にも、女優として出演して、映画のプロモーションで歌うという意味合いのほうが強かったんですね。それから、だんだん大人になってきて、ある時期から、女優の仕事と歌手の仕事を切り離して考えるようになりました。歌の仕事は、女優のように役ではなくて、「そのときどきの自分の姿をそのまま投影できるものにしていきたい」と思うようになったんです。そのあたりから、歌うことへの意識が変わりました。いろいろなプロデューサーの方との素敵な出会いもありまして、いま振り返れば、その世代ごとの自分の足跡が、音楽というかたちで残せてきたかなと思いますね。役を毎回いただくという女優のお仕事だけできていたら、ここまで長くはやってこれなかったのかもしれない。女優、歌手というふたつのお仕事がバランスよく続いてきたなかで、いい出会いがあったから、これだけ長く続けてこられました。ーー歌うことへの意識が切り替わったのは、いつ頃だったのですか。20代の半ばぐらいに、鈴木慶一さんにプロデュースしていただいたときです。より音作りの面白さ、自分自身を表現する場として、音楽というのは本当に楽しいということを知ったあたりから、変わったと思います。1970年代から90年代の名曲を中心にしたカバー集ーー2020年10月14日に、ラブソングのカバーアルバム第3弾『恋愛小説3〜You&Me』をリリースされます。第1弾は洋楽カバー、第2弾はご自身の少女時代をテーマに、そして今回の第3弾はどんな作品になっていますか。今回は、1970年代から90年代のソングライターの方の名曲を中心に選んでいます。そして新しい試みとしては、4人の素晴らしいアーティストの方に参加していただき、デュエットで歌わせていただきました。ーーリードトラックの、大滝詠一さん、佐野元春さん、杉真理さんによるユニット「ナイアガラ・トライアングル」の「A面で恋をして」のカバーは、アルバムのオープニングとしてもふさわしい爽快なナンバーですね。この曲は、子どもの時代に聴いていて、確かCMソングだったと思いますが、ラジオから流れてきてほんとにワクワクした思い出があります。当時から大好きで。「いつかカバーできたらいいな」と思っていた曲でした。でもあまりにも名曲で、すべてが計算されて作られているので、歌うのに一番苦労したかもしれません。この曲を私なりに歌うためにどうしたらいいだろうと、すごく考えました。ーーそんなご苦労されているように感じさせない心地よさは、素晴らしいです。ありがとうございます(笑)。ーーやっぱり演技力も、歌う力につながっているんですよね。この「恋愛小説」シリーズは、1曲1曲を短編の恋愛小説のような感じで、ひとつずつ演じていくように歌うというのが、全体のテーマです。自分のオリジナルを作るよりも、“演じる”ということをとても大事にしています。ーー弾けるようなアップテンポのピアノやサビの希望に満ちた歌声が響く8曲目「ping-pong」は、2018年発表の原田さんのアルバム『L’Heure Bleue (ルール・ブルー)』収録曲ですね。今回は作詞を提供された土岐麻子さんとデュエットされています。この曲は土岐さんが物語を書いてくださったわけですが、土岐さんの歌も声も世界観も大好きなんです。「デュエット」というと、だいたいは男女の組み合わせが浮かびますが、今回、女性ともコラボレーションしたいと思って、大貫妙子さん、土岐さんのおふたりにお願いしました。もともとオリジナルは私ひとりで歌っていますが、デュエットをしたことでより豊かになった気がします。土岐さんの声も入り、女性同士のエネルギーを感じてもらえる作品になったのではと思います。ーー9曲目「ユー・メイ・ドリーム」は、シーナ&ロケッツの名曲ですね。今回、原田さんのスウィートなボーカルで、シーナさんのロックボーカルとはまた違う、まったく新しい「ユー・メイ・ドリーム」になっています。この曲は、全体の曲目が出揃ってきたときに、「少しポップな曲をもう少し増やしたい」と思って、私から提案しました。意外性のあるものにチャレンジするというのも、カバーの楽しみですから。ただ、そう言ってみたもののどうやって歌おうかとけっこう悩みました。英語のセリフの部分があるのですが、とくにそこをどういう感じにしたらいいのかなと。もちろん演じきってやる案もありましたが、「もっとみずみずしさがほしいな」と、私の姪っ子(10代)に英語のセリフの部分だけやってもらいました。すると、キラキラとした甘酸っぱい雰囲気があって、頼んでよかったなと思いました。ーー原田さんではなく、姪っ子さんの声だとは気づきませんでした(笑)。少し声の加工をしているせいかもしれないですが、私はうしろのコーラスにまわっているんですよ(笑)。もともとの声質が似ているんですよね。だから今回、ほかの曲のコーラスもいろいろやってもらいました(笑)。ーーほかにも、細野晴臣さんとのデュエット曲で、おしゃれで軽妙な6曲目「ア・ドゥードリン・ソング」が味わい深いです。あの曲は、参考音源を聴いたときに細野さんの歌っていらっしゃる声が聴こえたぐらい、ぴったりだなと。ただ、あとは自分が世界観にうまくのって、細野さんと楽しく歌えて、小粋な部分が出せればいいなと思いました。細野さんとは別々の場所でレコーディングしたのですが、あんなに息がぴったりな感じに仕上がって、想像以上に素晴らしい歌をいただいて、大満足ですね。ーー4曲目「二人の果て」では、小山田圭吾さんともデュエットされています。これこそ本当に、演じるような世界観の曲。でも、あまりにも歌で演じすぎるのもよくないと思って、むしろ淡々と歌いたいなと思ったときに、小山田さんの声が浮かびました。これも大貫妙子さんが詞を書いていますが、アルバムのなかでは彩りの曲になったと思います。ーーカメラのシャッター音のような音が何度か入っていますが。あの「カシャッカシャッ」という音は、プロデューサーのゴローさんのアイデアです。車で聴いていると、「あれっ?」とついシャッター音に振り向いてしまいます(笑)。ーー2曲目「ベジタブル」では大貫さんともデュエットされていて、土岐さんとはまったく違うテイストになっていますね。この曲も、当時化粧品のCMで流れていて、とても印象的でした。大貫さんの曲のなかでも、大好きな曲で「いつか歌いたいな」と思っていた曲です。ーー今回のアルバムリリース後は、ライブのご予定などありますか。通常はアルバムを作ってしばらくして、みなさんがアルバムを聴き込んでくださった時期を見計らってライブをやっているのですが、いまはこういう時期なのでいまのところはありません。ただ、今回のアルバムの「You&Me」というサブタイトルは、デュエットをやっているということもあって、「あなたと私で歌う」という意味がひとつ。そして、しばらくはファンの方に直接歌を届けることができないので、みなさんに向けての「あなた」、そして「私」ということで、「またお会いできる日を楽しみにしています」という気持ちをこめて付けました。今後も作品を大切に作って音楽の足跡にしたいーー音楽活動以外では、2019年にドラマ『あなたの番です』に田中圭さんとW主演され、多くの視聴者を惹きつけましたね。お話をいただいたときに、2クールのドラマというのは昔はあったものの、現在は新しい試みとして大作だと聞きました。しかも、ヒロインが1クール目で亡くなるというお話を聞いて、すごく面白いなと思ったんです。そして秋元康さんが企画されているということで、プロットも読ませていただいたら、止まらなくって、なんて計算されて良くできた話なんだろうと。この段階で引き込まれていくということは、視聴者の方も物語にはまっていくのかなと思いましたし、連ドラは久しぶりでしたが、「これは絶対やりたい」と思えたんです。想像以上の反響をいただいた作品だったので、こんなところでこういう出会いがあるとは自分自身も驚きましたし、いいタイミングで出会えた作品でした。ーー田中圭さんは、どのような印象でしたか。圭さんは、本当に、まっすぐな嘘のない人ですね。最初はシャイなところがあって、人見知りなところがあるそうなんです。だから、撮影中はそんなにゆっくりお話しする機会もなかったのですが、そばで見ていると、いい人なのかわかりましたし、信頼できる方だと感じていました。撮影が終わったぐらいから、すごく仲が良くなって、いまも圭さんが何かに出ていると、菜奈ちゃんのような気持ちで見守っています(笑)。家族のような親しみを感じますね。ーー視聴者側としては、菜奈ちゃんが亡くなって切なかったので、いまのお話はすごくほっこりします(笑)。素敵な方ですよ、大好きです。圭さん、お元気かな(笑)?ーーお話は変わりますが、今年に入ってから自粛期間などもありましたが、「おうち時間」をどのように過ごしていますか。今回のアルバムの準備期間と、コロナ禍が重なって、結果として、家で歌の練習をたくさんしました。当初の予定よりレコーディングが少し遅れることになったのですが、すでに曲は上がっていたので、ゴローさんからデモ音源を送っていただいて。自宅でそれを聴きながらiPhoneに歌を録音して、ゴローさんに送り返してという作業をしました。ただ、曲によっては、エコー感、リバーヴがないと歌うさじ加減がはかれない曲も何曲かあるので、「いいリバーヴだなあ」と思って、お風呂場で歌ってみたりもしました(笑)。録音している途中で、部屋に家族が入ってきて、「あと少しで歌い終わったのに」と、また最初から歌ったり。もともとあまり外に出るほうではないので、家にいることも全然苦ではなくて。コロナ禍に入る前から、カリグラフィーを習い始めていたのですが、レッスンにも行けなくなったので、家でひたすらペンを持って書いていたり、甥っ子や姪っ子とゲームをしたり。ーー原田さんがゲームをされる想像がつかないです(笑)。普段は全然やらないのですが、思い立って、姪っ子たちが生まれる前の昔のゲームを「一緒にやってみたら楽しいかな?」と思って、昔に買っていてしまいこんでいたチェスを出してきてやりました。振り返ると、きっと、いい思い出がそこにもできたかなという時間になりましたね。ーー普段、美容面で気をつけていらっしゃることはありますか。摩擦がよくないと聞いて、最近、できるだけコットンを使わずに、肌をやさしく洗ってあげようと心がけています。お仕事のないときは、肌を休ませたいので、お化粧はあまりしないで過ごしますし、お仕事のときはクレンジングをきっちりします。そういえば、足のマッサージ器を買ってみました。足がむくみやすいので、電動で足がきゅーっとマッサージされるものです(笑)。あとは、食事はバランスよく食べていますね。ーーでは今後のご予定ですが、2020年10月9日から公開中の映画『星の子』では、芦田愛菜さんの母親役でご出演されていますね。あの作品は今回のアルバムの制作に入る前に、昨年末から今年の年始にかけて撮影しました。『星の子』は愛菜ちゃん演じる主人公ちひろの成長の物語であり、家族の物語でもあります。原作もすごく面白いですし、「信じるってなんだろう?」「家族の愛ってなんだろう?」と、観終わったあとにすごく考えさせられる作品ですね。私と永瀬正敏さんは新興宗教に入ってしまう両親役で、ずっと緑のジャージを夫婦お揃いで着て、おしぼりを頭にのせているという、いままでにないユニークなキャラクターでした。難しい役どころでしたが、自分と違う部分が多いほど演じる楽しさもありました。ーー最後に、今後の女優としてのご活動や、シンガーとしての音楽活動の豊富を教えてください。女優の仕事に関しては、いい作品とこれから出会っていくのがすごく楽しみですし、いつどんな作品に出会えてもすんなりとそこに入れるように、常に心身ともにいい状態を保っておこうと思っています。音楽に関しては、プロデューサーのゴローさんはじめスタッフの方たち、ずっと同じ素晴らしいメンバーの方たちとともに積み重ねてきたこの10年ほどのものがあるので、今作を作っていてあらためて、物を作っていくことの大切さや素晴らしさをとても感じました。今後も自分のペースで作品をひとつずつ大切に作って、そのときに感じたことを全部出せるように、そしてそれがいつか音楽での自分の足跡になっていけたらいいですね。取材後記取材現場に可憐な花が咲いたような、ただそこにいらっしゃるだけでハッとしてしまうほどの魅力を放っていらっしゃった、原田知世さん。筆者は小学生のときから映画を拝見し、『あなたの番です』の菜奈ちゃんAIもダウンロードしていますが、原田さんの歌声にも魅了されました。みなさんも、きっと新しい原田さんを発見するかもしれません。そんな原田さんのラブソングカバー集を、まずはチェックしてみてくださいね。原田知世 PROFILE長崎県生まれ。1983年、オーディションで5万7,000人の中から選ばれ、映画『時をかける少女』の主演でスクリーンデビュー。近年は映画『サヨナラCOLOR』(2005年)、『紙屋悦子の青春』(2006年)、『しあわせのパン』(2011年)、『あいあい傘』(2018年)、NHK連続テレビ小説『おひさま』(2011年)や、NHKドラマ10『紙の月』(2014年)、NHK特集ドラマ『途中下車』(2014年)、CBCドラマ『三つの月』(2015年)、WOWOW連続ドラマW『海に降る』(2015年)、NHKドラマ10『運命に、似た恋』(2016年)、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』(2018年)、WOWOW連続ドラマW「不発弾 ~ブラックマネーを操る男~」(2018年)など、数々の話題作に出演。歌手としてもデビュー当時からコンスタントにアルバムを発表。1990年以降は、鈴木慶一、トーレ・ヨハンソンを迎えてのアルバム制作、それに伴うオール・スウェディッシュ・メンバーとの国内ツアーなどで、新たなリスナーを獲得。近年はプロデューサーに伊藤ゴローを迎え、オリジナルやカバーなど充実したソロ・アルバムをコンスタントに発表しているほか、高橋幸宏らと結成したバンドpupa (ピューパ)にも在籍している。2019年は女優として、4月・7月期日曜ドラマ『あなたの番です』(日本テレビ系 2019年)で、田中圭とW主演を務め話題となった。そのほか、ドキュメンタリー番組等のナレーションを担当するなど幅広く活動。2020年10月14日、『恋愛小説3~You & Me』をリリースする。InformationNew Release『恋愛小説3~You & Me』(収録曲)01. A面で恋をして(ナイアガラ・トライアングル 1981年)02. ベジタブル duet with 大貫妙子(大貫妙子 1985年)03. 小麦色のマーメイド(松田聖子 1982年)04. 二人の果て duet with 小山田圭吾 (坂本龍一 1994 年)05. 新しいシャツ (大貫妙子 1980年)06. A Doodlin’ Song duet with 細野晴臣(ジャッキー・クーパー 1958年)07. 花咲く旅路(原由子 1991年)08. ping-pong duet with 土岐麻子(原田知世 2018年)09. ユー・メイ・ドリーム(シーナ&ロケッツ 1979年)10. あなたから遠くへ(金延幸子 1972年)*( )内はオリジナルアーティストと発表年。2020年10月14日発売*CD収録内容は全形態共通。(通常盤)UCCJ-2182(CD)¥3,300(税別)(初回限定盤)*初回限定盤のみボーナストラック「Winter Lullaby」あり。*初回限定盤のみミュージックビデオ2曲収録。「A面で恋をして」「A Doodlin’ Song」UCCJ-9224(CD+DVD)¥4,070 (税込)ヘアメイク&スタイリング・藤川智美(Figue)イヤリング ¥6,600(税込) 「UN CINQ -vintage & handwork-」UN CINQ -vintage & handwork 東京都目黒上目黒1-15-12 03-6277-5014
2020年10月12日【音楽通信】第52回目に登場するのは、80年代に数々のヒット曲を放ち「日本一忙しいアイドル」と呼ばれ、2020年にデビュー35周年を迎えた、浅香唯さん!写真・大内香織 取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol.52“浅香唯”として伝えなきゃいけない何かがある1985年6月に、シングル「夏少女」で歌手デビューした、浅香唯さん。翌年には、連続ドラマ『スケバン刑事III少女忍法帖伝奇』で、主役の三代目「麻宮サキ」役でブレイクし、「虹のDreamer」「C-Girl」「セシル」「TRUE LOVE」などがヒットチャート1位を獲得し続けました。その後もトップアイドルとして精力的に活動を続けていましたが、1993年、充電期間に突入。1997年、4年半振りのシングル「Ring Ring Ring」をリリースし、タレント、女優としての活動も再開されました。そんな浅香さんが、2020年6月にデビュー35周年を迎え、9月23日に『YUI ASAKA 35th Anniversary〜君がずっと見ている〜』をリリースされたということで、お話をうかがいました。ーー今年35周年ということで、以前のことから少しお話をお聞かせください。1985年にデビューされましたが、当時のことは覚えていらっしゃいますか。デビューのときのことは、鮮明に覚えていますね。最近のことのほうが意外と忘れます(笑)。デビュー後『スケバン刑事』に出演するまでは、いい曲に恵まれても、なかなか認知してもらえなかったんです。だから、ドラマ出演後の忙しさがすごくうれしくて、ありがたくて。当時は大変でしたが、そのぶん毎日が充実していて、よかったですね。ーーそもそもご自身にとって「歌うこと」はお好きでしたか。鼻歌は好きなんですよ。ただ、子どものときから学芸会や発表会でも、人前に出ることが苦手でしたね。子どもの頃を思うと、いま人前に出るお仕事をしていることが不思議ですが、たとえばステージに立ってドキドキしているときに「ほら、やっぱり苦手じゃん」と再認識することもあるんです。でも、なんだかんだいって30数年このお仕事をやっているというのは、きっと“言葉にできないかえがたい何か”があるんだろうなと。私は“浅香唯”として、伝えなきゃいけない何かがあるんだろうなと感じています。そう思いながらの35年を振り返ると、あっという間でした。35周年記念BOXは観て楽しんでもらえるアルバムーー2020年9月23日に、デビュー35周年記念BOX『YUI ASAKA 35th Anniversary 〜君がずっと見ている』がリリースされました。4枚組BOXになっていて、Blu-rayと3枚のCD、35周年スペシャル・ブックレット付きと豪華です。記念の節目ごとに何か発売しているのですが、この35周年記念BOXは、これまでのなかでも一番歴史が詰まっていますね。今回は、けっこう映像に力を入れていただいているので、「聴いてくださいね」と思うのと同じくらい「観てくださいね」と言いたくなるくらい、観て楽しんでもらえるアルバムになっています。ーーDISC2の1989年の大阪公演のライブCDでは、弾けるような歌声で、MCのときも声援が飛び交い、ライブの臨場感にあふれている内容です。MCで「20歳になる4か月前」と話していらっしゃる19歳のときの公演ですね。そうです。この頃は、もうすぐ「大人になっちゃうんだ」と、ある意味がっかりしている時期でしたね(笑)。どちらかというと私は「大人になりたくない」と思って10代を過ごしてきたので、「20歳までしか子どもの時代はないのになあ」と思っていた、とまどいの時期に行った公演でした。ーーDISC3の1993年の休業前となったクラブチッタ川崎での記念ライブのCDでは、艶やかな歌声を響かせています。休業された当時の心境は。この記念ライブの後に休業しましたが、結果、4年半お休みしたんですね。実はそんなに長くお休みするつもりはなかったんですが、体力的にも精神的にも「いったん止まらないと私自身が壊れちゃう」と思ったんです。お休みするにしても、事務所に在籍してレコード会社に残りながら休業に入るのが大人の考え方なのかもしれないんですが、私はいったん全部リセットしました。ファンのみなさんには申し訳ない気持ちでしたが、すぐ復帰するからという気持ちのほうが強かったんです。ーートップアイドルとして多忙を極めていらっしゃったので、お休み前は大変なこともあったのでは。経験したことのないことがたくさんありました。休業時、23歳なのに、信じられないことに公共料金を支払うということも知らなかったんです。全部事務所の方がやってくださっていましたし、電話料金ひとつとっても「え? 電話料金って払わないと止められちゃうんだ!」と(笑)。銀行でのお金のおろし方も知らないし、「23歳でこれか」と愕然としたくらい、世の中のことを知りませんでした。お休みしてからはとまどいの毎日でしたが、電車にもバスにも乗りましたし、八百屋さんや魚屋さんとか、そういうところにも行きたかったので買い物に出かけたり。そういう小さなことなんですが、ひとつずつ実際に行動していくことが、楽しかったです。ーーその後、1997年にYUI「Ring Ring Ring」でシングルを発表され、音楽活動も復帰されましたね。休業後、活動しようと思ったときに、どんなふうに私がみなさんの前に現れるのがベストかと考えて、自分が一番歌いたい歌や表現しやすいことで出ていきたいと思いました。自分で曲を作ったり、詞を書いたり、自分でデモテープを作って、レコード会社に行ってからがスタートだなと思っていたんです。だから、その作業をしているうちに、どんどん月日が流れていきました。本当に、いろいろなレコード会社を自分でまわらせてもらったんですよ。ーーご自身の力でチャレンジされてきたのですね。はい。チャレンジといえば、会う前にアポイントをとることも知らなかったんです。レコード会社に行くと「アポをとらないと入れない」と言われて、「アポってなんだろう?」って。それまでは私が知らなくていい世界を全部スタッフの方がやってくださっていたんだなと初めて気づいたこともありましたし、だからこそ自分でやらせていただいてからは、周りの方々への感謝の気持ちがより強くなりましたし、こうやって復帰させていただいてからはよりいっそう深くなりましたね。23歳から27歳という、お休みしていた4年半は、私にとっては長いようで、必要だった時間ですね。ーーDISC4には、軽やかで爽快な35周年記念の5年ぶりの新曲「LIGHT A SHINE 〜月はずっと見ている」が収録されていますね。作詞作曲とアレンジを手がけていただいたSUNNYさんから、第一案としてこの曲があがってきて初めて聴いた瞬間に、新しい自分が見えた気がしました。懐かしくもあって、これまでの自分にはなかったものが生まれそうな予感のする曲だったので「ぜひこれでいかせてください」と、一発OKしたんです。ーーでは、ここをこう直してほしいというリクエストもとくになく?全然なかったですね。作っていただく前に、SUNNYさんにお会いして、いろいろと希望を多少お伝えしていたんです。それを全部汲んでくださって、さらに過去の私の作品をものすごくたくさん聴いてくださって、ちゃんと“浅香唯”という私のキャラクターを忘れずに作ってくださったと感じました。ーーSUNNYさんは、Mr.Childrenさんやウカスカジーさんでもサポートメンバーとして活動されていますし、レミオロメンの神宮司治さんがドラムを担当されているなど、音楽界でご活躍の方々がリモートレコーディングされていますね。コロナ禍で全員が同じスタジオに集まることができなかったので、作業的には大変だったみたいですが、歌入れのレコーディングのときには、みなさん集まってくださいました。歌入れも「まだまだ全然歌える!」と思っていたんですが、SUNNYさんは何度も歌わせると申し訳ないと思っていたらしくて、ほどほどでOKに(笑)。あとはライブのときに自分らしさをプラスしていけばいいかなと思っています。ーーこうして今回新曲も入っていますが、過去映像もたくさん収録されていて、Blu-ray内容のミュージックビデオ集やライブ映像集にしても、80年代という時代の勢いのようなものも感じました。あの頃は気持ちもイケイケで、ライブ映像やライブ音源を聴くと、「若いな!」って私自身感じています(笑)。80年代は、みんな希望に満ちあふれて“イキイキきらきら”していたいい時代だったなと。ただ、あのときは良かったねと懐かしむのではなくて、その映像を見ることによって、みなさんのなかで忘れていた何かを呼び起こしてくれるものだとうれしいです。いつもライブをやるときに、過去の映像や音源を振り返って選曲するのですが、そこで新しいエネルギーをもらえることが続いているので、そういうもののアイテムのひとつになったらと。80年代の“イキイキきらきら”を心の中で生んでもらえたらいいな。ーーBlu-ray収録の『ONLY YUI』のなかで、「共働きで鍵っ子だけど母は手料理も食べさせてくれたし、尊敬できるし、絶対そういう母親になりたい」と語る場面も。実際にご家族を持たれ母となられましたが、お母さまのようになっていますか。うちの娘は「私はママがママでいてくれて、いつも良かったと思っている」と言ってくれるので、その言葉を信じていますね。私の母親のようになっているかは、娘に聞かないとわからないですが、でも私がこういう仕事をしていてお友達のお母さんとはちょっと違う仕事なので、それをどんなふうに受け止めているのかなあと、肩身の狭い思いしてないかなと気にしてはいます。結婚して、子育てしながら家事してみると、信じられないくらい大変で、あらためて母親はすごかったんだと。私の場合、「今日は大変だからご飯食べに行こう」「何か買って帰ろうか」となるんですが、うちの母親はそれがほとんどなかったんですよ。100パーセント手作り料理で、忙しくてもちょっとだけご飯の時間が遅くなるとか、夜遅くに次の日のご飯の支度をしていたりとか。子どものときはそれが普通だと思っていましたが、そうじゃなかった。だから、母親のことは、全然超えられてはいませんね(笑)。私の母親とは比べられないですが、それなりに私も負けじと、子どもに寂しさはみじんも感じさせたくないという思いがあって。私の母親もすごく忙しかったんですが、その寂しさを埋めてそれ以上のものをくれる人だったので、そんなふうに私もできていたらいいなと思いますね。何かに縛られずにずっと冒険していきたいーー今回、新曲はライザップとコラボレーションされて4か月間で体重-8.8kg、体脂肪-9.6%、ウエスト-13.3cmを達成されましたね。ライザップでトレーニングする様子が、新曲のミュージックビデオにおさめられている斬新な企画です。そうですね(笑)。いま私は“50歳”なのですが、この年齢が私のなかではすごく大きくて、ライザップさんでダイエットに挑戦したんです。40代後半から、私自身のなかで納得できる自分になれているのかなと考えることがあって。50歳というと“大人のかっこいい女性”というイメージがあったのですが、これから人生はまだ長いですし、このタイミングでちょうどライザップさんと縁があって、勇気を振り絞ってやってみようかなと(笑)。ボディメイクに限らず、いろいろなことに対して一歩踏み出せない人たちもいるなかで、私の場合はこの歳だからとダイエットを諦めずにやってみた経験を通じて、新しいことにチャレンジする楽しさを伝えたいと思いました。いままで守りに入りたがる私だったんですが、その殻を自分で破ってみたいなと。長かった髪も数十年ぶりに短く切って、初めてデビュー当時ぐらいの短さにもしてみたり。すべてを新しい自分にしたかったんです。ーー新しい、50代ですね。いま、子どもが大きくなって、ちょっと手が離れた時期というのも大きいかなと思います。50歳のいま「女性って楽しいんだ」と、あらためて思うことがたくさんありますね。ーーおうち時間や普段の生活はどんなふうに過ごしていますか?いまだにジムに通わせてもらっていて、筋トレをやっているんです。ボディビルダーを目指すわけではありませんが(笑)、筋トレの時間は大事。どれだけ短い時間の中で自分に向き合えるか、勝てるかという勝負をしている時間というのがあって、「よし! 今日は自分に負けなかった」「勝った!」という精神的なところで、すごく自分自身と向き合える時間が持てるから。その気持ちがおうちのなかでも、ずっと続いている感じはあるんです。体調によって、「ああ、皿洗いか」「洗濯物か」と家事をすることが大変になるときもあったんですが、それをトレーニングの一環として受け入れられるようになっている自分がいて、全然気持ちが変わったなあと。家事も楽しくできるようになってきました。ーー確かゲームがお好きでしたね。家族みんなゲームが好きなんですよ。いまは前の生活に戻りつつあって、なかなかゲームをする時間がとりづらいのですが、自粛期間中は家族でゲームざんまいの日がありました。『ゼルダの伝説』というゲームでみんなで冒険をして、1回終わっているんですが「もう1回ゼロからやろう!」と盛り上がって。実際にはどこにも出かけられなかったのですが、私たちはゲームのなかで暑いところ、寒いところ、どこかに旅をしていたので、家族で世界一周旅行に行った気分になりました(笑)。コロナ禍は大変ですが、そのなかでも見つけられた小さな幸せもあったなと、ゲームを通して感じられましたね。ーーきっと美人の娘さんなのでは。私が木登りをしていた頃のやんちゃな時期にそっくりなんです。おとなしいところもあるのですが、そこは主人に似ていますね。13歳になったので、私よりも精神的に成長しているなと、教えられることが日々多いです。ーーコロナ禍ではありますが、今後ライブのご予定はありますか。現時点で生ライブは厳しいですし、せっかくホヤホヤでできた新曲をみなさんライブで聴くことを楽しみにしてくださっているのが、ちょっとのびてしまうのは寂しい気もしますが、そのぶんワクワクが続くと思っていてもらえたら。新曲はコール&レスポンスで、みんなで歌えるようにということも意識して作ってもらったので、いつか絶対ライブで聴いていただきたいですね。ーーソロではもちろんですが、『スケバン刑事』で共演されていた大西結花さん、中村由真さんと“風間三姉妹”としてもライブのご予定は。一昨年、“風間三姉妹”としての公演が実現したので、現時点では予定はないですが、いつの日かもしかしたらやることはゼロではないですね。ーーでは最後に、今後の抱負を教えてください。私は若いときから、あえて夢を持たずに来て、未来はどんな自分になっていくのかが楽しみで、こんなふうになりたいというビジョンを持たずにきたんですよ。いきあたりばったりみたいなことが本当に好きで、「どうなるかわからないな」と思いながら生きてきたので、これからもそれは変わらないかなと思うんです。でも、50歳を機に、新しいことにチャレンジさせてもらって、年齢に縛られないで生きることはすごく素敵だなと思いました。「50歳らしくない」とか、「年相応」という言葉が好きではなく、それこそ「年相応ってどういうこと!?」って(笑)。勝手に、その人が作った年齢層であって、「いろいろな人がいていいじゃん!」と思うんです。これからも、何かに縛られずに、ずっと冒険していきたいです。取材後記トップアイドルとしてご活躍されてきた浅香唯さん。大人になっても新しいことにチャレンジしていく姿には、ポジティブなパワーがあふれていて、わたしたちもとても元気づけられますよね。「C-Girl」や「セシル」などのヒット曲の数々は筆者も当時からよく聴かせていただいたり、振り付けも踊ってみたりして、いま聴いてもワクワクしてしまいます。そんな浅香唯さんのデビュー35周年記念ボックスをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。浅香唯 PROFILE1969年12月4日、宮崎県生まれ。1985年6月21日、“フェニックスから来た少女”というキャッチフレーズで、シングル「夏少女」で歌手デビュー。1986年、フジテレビ系連続ドラマ『スケバン刑事III少女忍法帖伝奇』で、主役の麻宮サキ役でブレイクを果たす。その後、「虹のDreamer」、「C-Girl」(化粧品CMソング)、「セシル」、「TRUE LOVE」(主演映画『YAWARA!』挿入歌)と4曲ものヒットチャート1位を連発。“日本一忙しいアイドル”と呼ばれた。2020年6月、デビュー35周年を迎え、9月23日に『YUI ASAKA 35th Anniversary〜君がずっと見ている〜【4枚組BOX:Blu-ray+3CD+35周年スペシャル・ブックレット】』をリリース。現在は、ドラマ、バラエティ、舞台と幅広く活躍する。InformationNew Release『YUI ASAKA 35th Anniversary〜君がずっと見ている〜』【4枚組BOX:Blu-ray+3CD+35周年スペシャル・ブックレット】(収録内容)≪DISC1/Blu-ray≫下記5作品&特典映像を初Blu-ray化一挙収録(約178分)。(1)『ONLY YUI』 (1987年作品/約40分)*全14曲収録(2)『Candid Girl – 浅香唯 IN AUSTRALIA』 (1988年作品/約39分)*全10曲収録。(3)『Fun!Fan!Fun! Yuiグラフィティ』 (1989年作品/約19分) *全6曲収録。(4)『ロックンロール・サーカス’89 浅香唯スパークリング・ライブ』 (1989年作品/約52分)*全12曲収録(5.1chサラウンド音声も収録)。(5)『Self Control』 (1990年作品/約23分)*全4曲収録。【特典映像】雪印とってもゼリー’90 CM MAKING『YUI ASAKA in 7days Girl』(1990年作品/約5分)≪DISC2/CD≫【ライブCD】廃盤のレア・ライブを初復刻『1989.8.23 Yui Asaka Special Live in Osaka』(1993年作品)*全17曲収録。≪DISC3/CD≫【ライブCD】廃盤のレア・ライブを初復刻『ANNIVERSARY 2824』(1993年作品) *全14曲収録。≪DISC4/CD≫35周年記念新曲+未発表ライブ音源5曲収録のスペシャル紙ジャケットCD【35周年記念新曲】「LIGHT A SHINE ~ 月はずっと見ている」【Special Present(未発表ライヴ音源)】02.愛の元気主義 03.トライアル 04.GOAL 5.DREAM POWER 6.Don’t You Know?*M2&3:『1989.8.23 Yui Asaka Special Live in Osaka』《未発表ライヴ音源》*M4~6:『ANNIVERSARY 2824』(1993.3.14クラブチッタ川崎)《未発表ライヴ音源》≪35周年スペシャルブックレット(44ページ)の内容≫01.浅香唯本人セレクトの未公開含む写真で綴るスペシャルフォト集02.浅香唯35周年10,000字ライナーノーツ03.浅香唯×山本竜夫 対談(ハミングバード時代の制作ディレクター)04.35周年新曲プロデューサー:SUNNYインタビュー2020年9月23日発売WPZL-90201/4¥13,000(税別)
2020年10月11日【音楽通信】第51回目に登場するのは、世界66か国をひとりで旅して各地でLIVEを行い、世界の音楽と文化を体感してきた、シンガーソングライターのナオト・インティライミさん!取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol. 51もともと歌うこともサッカーをすることも好き世界66か国をひとりで旅して各地でLIVEを行い、世界の音楽と文化を体感してきたナオト・インティライミさん。自らのソロ活動のほか、コーラス&ギターとして Mr.Childrenのツアーサポートメンバーに抜擢され、2010年4月にシングル「カーニバる?」でメジャーデビュー。シングル「タカラモノ ~この声がなくなるまで~」「今のキミを忘れない」は100万ダウンロードを超え、2012年リリースの3rdアルバム『風歌キャラバン』は1位を獲得しNHK紅白歌合戦に初出場するなど、以降も数々のヒット曲を世に送り出し、ナゴヤドームなど大会場でのライブも大成功をおさめ、2019年には「Naoto」名義で世界デビューも果たしました。また、役者としても「コノウドリ」などに出演。南米インカの言葉で「太陽の祭り」の意味を持つ「インティ ライミ」という名前の通り、明るくポジティブな印象のあるナオトさん。2020年10月7日に、EP『オモワクドオリ』をリリースされたということで、お話をうかがいました。ーー音楽活動をされる以前のことから少しお話をお聞かせください。ナオトさんは、かつて柏レイソルのジュニアユースチームに所属されていたことがありましたが、サッカーから音楽へと、意識が切り替わったきっかけはなんだったのでしょうか。もともとサッカーも、歌うことも、どちらも好きだったんです。音楽でいえば、中学2年生のときから自分で曲を作っていたんですが、そのときも将来の夢はずっとサッカー選手でしたし、実際にサッカー中心の生活をしていました。でもそんなある日、高校1年生の春に、「音楽で飯を食っていこう」と決断をしたんです。サッカーがつまらなくなったわけではなくて、音楽への情熱が、それよりも勝り始めたというところですね。だから、まだサッカーへの思いは成仏できていなくて、いまも趣味とはいえない域でプレイするときもあって、やっぱり試合になると負けられないと思いますね。ーーナオトさんは以前、Mr.Childrenさんのサポートミュージシャンとしても活動されていたときがありましたが、ボーカルの桜井和寿さんもサッカーがお好きですよね。そうですね。もちろん桜井さんともサッカーをすることがありますし、いろいろな方と交流していますね。そしてこの数年間は、(ブラジル発のサッカーの一種で砂浜で行う)ビーチサッカーの日本代表を本気で目指していた時期もありました。今後も時間が許しさえすれば練習したいですし、心のどこかで、ずっと日本代表を目指す気持ちを持ち続けると思います。ーーすごいですね。ナオトさんは世界66か国の音楽の旅をされていたこともありましたし、いまも音楽活動をしながらビーチサッカーを本気でやっているそのバイタリティの原動力はどこからきているのでしょうか。なんでしょうかね……やっぱり、好奇心でしょうね。幼い頃から、好奇心旺盛な少年で、親を振り回していました(笑)。ーーナオト・インティライミさんとしては、2020年が10周年というメモリアルイヤーですね。はい、いままで、とんでもないことが起きた10年だと思っています。音楽活動でしたかったことがたくさんあって、ありがたくも携わってくださった多くの方々がいました。振り返ると、すべてのみなさまと作り上げてきた大きな足跡がありますよね。EPは1年作ってきた曲たちの「福袋」ーー2020年10月7日に、初のEP『オモワクドオリ』をリリースされましたが、ご自身ではどのような作品になりましたか。この1年作ってきた曲たちの「福袋」といった感じでしょうか。いまの自分の音をおさめました。ーーアルバムのタイトル曲でもあるファンキーな1曲目「オモワクドオリ」は“つきあっている男女の痴話喧嘩を3分間にまとめた歌”だそうですが、それは体験談ですか。もう生涯のなかでしてきたすべての喧嘩がモチーフになっています(笑)。何か他のところからアイデアを持ってくるのではないですね。恋愛経験は豊富なほうではないんですが、とくに多感な時期だった学生時代など、恋愛においての感情はたくさん持っている気がするんです。ーーそういったこれまでの実体験から曲作りをされているのですね。そうですね。想像ではなかなか書けないので、基本的には自分の体験をもとに曲作りをしています。ーー「オモワクドオリ」はバーチャル背景を利用した“ZOOMミュージックビデオ”もあって、拝見していて面白かったです。とんねるずの木梨憲武さんもご出演されていますね。木梨さんには、急遽、撮影の前日にお電話させていただいて、翌日に会いに行ってというようなスパンで撮らせていただきました。スペシャルゲストとして登場していただきましたが、本当にありがたい、兄貴の優しさですね。この数年間、普段から、仲良くしていただいております。ミュージックビデオは、コロナ禍というこの状況下で面白いことをやろうということで、最初から「こんなときだからこその映像を作りたいね」とみんなで話していて、今回完成しました。ーー3曲目「スタートライン」は、子どもの声のコーラスも入っていて、元気になれる明るい曲ですね。ピアノバージョンとインストも収録されていてアルバムの中でも存在感があります。「スタートライン」は、NHK『みんなのうた』(8-9月の歌)に抜擢していただいた歌で、そういう意味ではひとつ、アーティストとしての夢が叶いました。いままで、1stアルバムのときから、「この曲が『みんなのうた』になったらいいな」と思って作っていた曲もあって。たとえば輪投げの歌があったり、バルーンの歌があったり、これまでにも子ども向けの曲はたくさん作ってきましたね。ーーそれは子どもたちにメッセージを発信したいという気持ちが強くあるのですね。子どもが大好きですし、日本でもアフリカの奥地の民族の村に行っても、どこに行っても子どもたちとずっと遊んでいます。日本でも数年間、「ドリームキッズプロジェクト」といって、サッカーと踊りを全国でしていくというような“スポーツと音楽でカラダもココロも強くなろう”をコンセプトに、スポーツと音楽を通じて子どもたちの夢を応援するプロジェクトをやっているんです。僕らは先にいなくなってしまいますから、子どもたちに思いを伝えていきたいなと思っていますね。ーー他にライブではおなじみの「Ballooooon!!」のRemixバージョンも収録されています。この曲は、ワークアウト系YouTuberの「たけまり」こと竹脇まりなさんとのコラボレーションなんです。「何か一緒にできないかな」という話をしていて、「Ballooooon!!」のRemixバージョンを作って、その音源でたけまりさんが自分のYouTubeチャンネルで踊ってくれた動画が、あっという間にものすごい数の人たちに広まって。たけまりさんのYouTubeチャンネルを観てワークアウトしている知り合いからも、そこで僕の曲だと気づいて「一緒にやってるんだね」と連絡がくるぐらい、反響がありました。とくにステイホーム期間は外出できなかったので、家でワークアウトして鍛えながら、みなさん「Ballooooon!!」と接触してくれたみたいですね。こんなふうに新しいコラボのかたちを見出せました。いまSNSで活躍している方はすごい力を持っているんですよね。そういう過程を経て、自分でも今回のコロナ禍で、SNSをいろいろ試してみました。SNSをきっかけにいつかライブにも来てほしいーーお話は変わりますが、宝塚歌劇団雪組トップスター、望海風斗(のぞみふうと)さんに、ナオトさんが特別に書き下ろした楽曲「夢をあつめて」が望海さんの初コンサートで初披露されて話題となりましたね。この曲は、望海さんからお話をいただいたんですよね。宝塚を退団される際、「ソロとしての曲、ポップミュージックを作りたい」というお話をされていたときに、僕の名前があがったということで、本当にありがたいお話です。まさかそんなところからオファーをいただけるなんて、曲を聴いて知っていてくださったことは、うれしいですね。ーーさまざまなかたちで、ナオトさんの曲が多くの人たちのもとに届くといいですね。ではコロナ禍の現在、おうちではどのようにお過ごしですか。毎日必死でTikTokをあげていますね(笑)。この25年間、ほぼライブをやってきた人生だったので、何か自分の発表の場、表現の場を作れないかと探していたんです。TikTokを始める前までは、自分はSNSには疎いほうだったので、コロナ禍でライブもできない状況となり、どうしたらいいのか絶望的な感覚で悶々としていたんですよね。そんななか、インスタグラムやYouTube、TwitterといったSNSに強い方やSNS世代の方々がどんどん発信されていて、置き去りになっているような焦りがありました。自粛期間の最初の1か月半ぐらいは、焦りの気持ちが強かったんですが、でもさすがにそのままではいけないと。その頃、TikTokで医療従事者の方々にエールを送るチャリティ生配信ライブという企画があって、それをきっかけにTikTokを深く知る機会ができました。それまではTikTokというと、若い世代が元気に踊っているイメージしかなかったんですが、いろいろと知っていくと、すごくユーモアのある投稿が多かったり、まだ世間には知られていないけれど若い世代の素敵な曲や歌がざくざく眠っていたり。「これは面白いぞ」とやり始めたら、年甲斐もなく毎日投稿して、どんどんその魅力にハマっていきました。いまも投稿するときには、緊張しながら投稿ボタンを押して、頑張っています(笑)。そうやって、SNSでも僕の音楽を知ってもらえるきっかけが増えてくれたらと思いますし、自分自身でも多くのいい出会いがあります。ーーでは最後に、今後の抱負を教えてください。いままでナオト・インティライミのことを知らない人、存在は知っているけれど歌や曲をちゃんと聴いたことがないという方には、TikTokをきっかけに知っていただくという、コロナ禍の現在はSNSでのきっかけ作りも大事だと考えています。今回、ミュージックビデオをZOOMで全部撮ったという初めての試みもありましたが、SNSからなど何かのきっかけで音楽を聴いていただくこともうれしいです。いずれコロナ禍が開け始めて、ゆくゆくはちゃんとしたライブができるようになったら、そのときはみなさんにぜひ遊びに来ていただけたらなと思います。取材後記有観客ライブの開催が難しい現在、SNSであらたな音楽活動を展開されているナオト・インティライミさん。今年はデビュー10周年のアニバーサリーイヤーを迎える予定をコロナの影響で2021年に、まるっと1年延期することを発表しました。来年にさまざまな企画を実施される予定のようですので、楽しみにしていたいですよね。そんなナオトさんのEPをまずはチェックしてみてくださいね。ナオト・インティライミ PROFILE8月15日三重県生まれ、千葉県育ち。名前の「インティ ライミ」とは南米インカの言葉で「太陽の祭り」の意味。世界66カ国をひとりで渡り歩き、各地でLIVEを行い、世界の音楽と文化を体感。自らのソロ活動の他、コーラス&ギターとして Mr.Childrenツアーサポートメンバーに抜擢され、知名度を上げていく。2010年にメジャーデビュー。「タカラモノ ~この声がなくなるまで~」「今のキミを忘れない」では100万ダウンロードを超えるヒット。2012年リリースの3rdアルバム『風歌キャラバン』は自身初となるオリコン・ウィークリーチャート1位を獲得。同年にはNHK紅白歌合戦に初出場を果たす。年末には自身初となる大阪、京セラドームのLIVEで4万人の観客と共に大成功のうちに収める。2016年リリースのシングル「Overflows〜言葉にできなくて〜」は配信開始と共に主要配信9サイト・18部門で1位を獲得し、iTunes・レコチョク・歌ネットなどでは週間ランキング1位を獲得。2017年もう一度自分の原点に戻るための旅に出ると宣言し、世界19か国の旅を経て7月10日のスペシャルLIVE「ナオトの日」にて完全復活。2018年、「全国47都道府県弾き語りツアー」、約3年ぶりのドーム公演もナゴヤドームを開催。俳優活動としては、TBSドラマ「コウノドリ」などにも出演を果たした。2019年、世界三大レーベルのうちのひとつである「ユニバーサルミュージック ラテン」から「Naoto」名義で世界デビューした。2020年、予定していたデビュー10周年企画「10周年!アニバーサリーおまっとぅりYEAR」を2021年に、まるっと1年延期することを発表。10月7日、EP『オモワクドオリ』をリリース。InformationNew Release『オモワクドオリ』(収録曲)01.オモワクドオリ02.Invitation03.スタートライン04.Sunset Lovers05.きっかけはキッカケで06.Ballooooon!!(Remix ver.)07.スタートライン(Piano ver.)08.オモワクドオリ(Instrumental)09.Invitation(Instrumental)10.スタートライン(Instrumental)2020年10月7日発売*収録曲は全タイプ共通。(通常盤)UMCK-1667 (CD)¥2,200(税別)(初回限定ファンクラブ盤)PROS-1918 (CD+DVD)¥3,300(税別)
2020年10月08日【音楽通信】第50回目に登場するのは、日本語で鳴らすエモーショナルなサウンドが世代を超えて支持されているロックバンド、ASIAN KUNG-FU GENERATION(アジアン・カンフー・ジェネレーション)!取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol.50アジカンはひとつの人格みたいなもの写真左から、山田貴洋(B、Vo)、喜多建介(G、Vo)、後藤正文(Vo、G)、伊地知潔(Dr)。1996年、大学時代に後藤正文さん、喜多建介さん、山田貴洋さん、伊地知潔さんにより、通称“アジカン”ことASIAN KUNG-FU GENERATIONを結成。2003年には、インディーズ時代に発表したミニアルバム『崩壊アンプリファー』のリイシューでメジャーデビューしました。同年から、ライブハウスの新宿LOFTでフェス「NANO-MUGEN FES.」を立ち上げ、2004年からは海外アーティストも加わり、日本武道館、横浜アリーナと会場の規模を拡大し、その他たくさんのステージでも多くのロックファンを魅了し続けています。そんなアジカンが、2020年10月7日、両A面シングル「ダイアローグ / 触れたい 確かめたい」をリリースするということで、バンドを代表してボーカル&ギターの後藤正文さんにお話をうかがいました。ーー後藤さんの音楽的なルーツから知りたいのですが、初めて買ったCDから教えていただけますか。中学1年生ぐらいのときに、THE BLUE HEARTSのCDを初めて買いました。それまではテレビや親の影響から音楽を聴くことのほうが多かったんです。でもそれ以前、小学生の頃だと、少年隊や光GENJIが好きでしたね。ーーそれは意外ですね。少年隊と光GENJIは、子ども心に、「曲がいい!」と思っていたんです。ーーすでに小学生の頃から、曲の良さを聴き分けることを無意識のうちにしていたんですね。だと思います。調べたら、光GENJIはCHAGE and ASKAさんだったり、少年隊は筒美京平さんだったり、名だたる作家の方が曲を担当していて。当時は小学生ながら、何か他とは違って聴こえたんですよね。ーーでは実際に、ご自身で曲を作ろうと思われたきっかけはなんだったんでしょうか。中学生の頃にUNICORNに憧れて、(ボーカル&ギターの)奥田民生さんがすごく好きで、民生さんの影響でギターを買って弾いてみたんですが、難しかったんです。UNICORNは、非常に複雑な音楽なんですよね。だから、指が痛くてギターをすぐやめて、そのあとだいぶ時間が進んで高校を卒業したあとに、イギリスの音楽に憧れるようになって。(イギリスのロックバンドの)オアシスに憧れてギターを再び買いに行って、そこからですね、自分で曲を作ろう、音楽をやろうと思ったのは。ーー人の作った音楽よりも、やはり自分の曲のほうが気持ちが入るものですか。そうですね。最初の頃、オアシスのコピーを自分で部屋でやってみたんですが、どうやっても彼らみたいにカッコよくできないんですよ。本人が歌うのがいちばんかっこいいなと思って。バンドを組むんだったら、自分で曲を作りたいなって、楽器を買ったときに思いました。コピーしても、本人たちを超えられないから。いまは人が作った曲でも、気持ちを込めることができますが、若い頃は「自分が作ったものこそが、感情移入できるものだ」と信じていました。アジカンのフロントマン、後藤正文(Vo、G)。Gotch名義でソロ活動も。ーー1996年にASIAN KUNG-FU GENERATIONを結成されて、2021年には結成25周年を迎えます。結成時から現在まで、アジカンはどのように変化されましたか。振り返るとあっという間でしたが、さまざまな時期を経て、いまがあるという感じがします。若い頃はエゴが強い時期もありましたが、アーティストとしてやりたいことがあるなかで、大人になってくると協調性が生まれてくるというか(笑)。とくに僕はフロントマンで、いろいろとワガママを通すことも多かった。そのあたりは、歳を取りながら、上手にメンバーが傷つかないやり方を覚えてきましたね。ーーそんななかで、後藤さん主催のインディーズレーベル「only in dreams」を立ち上げ、今年3月には後藤さんがGotch名義で活動されているシングル「Nothing But Love」も発表されましたね。バンドとソロとでは、ご自身のなかでどのようなスタンスの違いがありますか。バンドは、ASIAN KUNG-FU GENERATIONという、ひとつの人格みたいなものがあると思っていて。バンドの回路というか、仕組みに曲を通すと、どうしてもASIAN KUNG-FU GENERATIONの音になってしまうんです。25年もやっているので、強烈な個性というのがあって、どうやったってバンドの音になる。そこでできること、できないこと。やってしまうと増幅されることと、スポイルされることとの両方があります。なので、そのバランスを考えると、僕もいい大人なのでこれだけ生きていると、また別の新しい仲間にも巡り会うこともあって。世の中にはいろいろと魅力的なミュージシャンがいるので、そういう人たちとも音楽を作っていきたいという気持ちも出てくるんです。だから、僕のなかでは「ソロはバンドと器の違うもの」として、分かれているんですよね。ーーたとえばファンの方からすると、バンドとソロとでは反応が違いますか。聴かれ方としては、ゼロがふたつぐらい違いますね。アジカンが100万回聴かれるとしたら、僕のソロは1万回ぐらいしか聴かれないぐらい差があります。端的に、海外まで音楽が届いているのかという背景もあると思うんですけれども。ファンの人としては、僕のソロが売れると、僕が「アジカンを辞めるんじゃないかな」という思いがあるのかもと言う人もいて、素直に応援できない気持ちもわからなくはないですよね。ソロが原因でバンドをやめはしないですが、僕の好きなバンドのフロントマンがソロに熱中すると、「バンドもやってくれよ」って思う気持ちはわかるんです。(イギリスのロックバンドの)レディオヘッドのフロントマンのトム・ヨークしかり。(アメリカのロックバンドの)ウィーザーのリヴァース・クオモしかり。そういうのは昔からあるので、あまり気にはしていないです。憧れの地、ロンドンでレコーディングした新曲ーー10月7日に、両A面シングル「ダイアローグ / 触れたい 確かめたい」をリリースされますが、ロンドンでレコーディングされたのですね。ロンドンの中心部にあるスタジオを借りることができました。ちょうどヨーロッパツアーを行なっていて、ロンドン公演とパリ公演の間の2日間で、レコーディングしたんです。それまで、アメリカではニューヨークやシカゴ、ロサンゼルスでレコーディングしたことはあったんですが、ロンドンではなかなかスタジオに入る機会がなくて。ロンドンは、僕らの世代にとっては、憧れの地。とくに90年代のイギリスのロックはとてもかっこよかったので、そういうものに憧れたからこそいまがある。この歳になって、やっとスタジオに入ることができました。ロンドンでレコーディングするために、今回のシングルの曲は日本で作って、ある程度整理してから行ったんです。ーー日本で録るのとロンドンで録るのとでは、やはり気分は違いましたか。はい、これはanan読者には全然引っかからない話なんですが(笑)、電圧が高いという良さがあって。電圧なんか知るかよという話だと思うんですが、電気のエネルギー、電圧がロンドンはすごく大きいんです(笑)。240ボルトぐらいあって、日本は100ボルトなので、ロンドンだと機械もいきいきと動くというわけですね(笑)。ーーなるほどです(笑)。あとは歴史的な街でもありますから、スタジオで働く人だったり、スタジオの文化だったり、名残だったり、いまも続いているんですが伝統が染みついている。僕たちも作業すると、その伝統に触れられるというか。すてきな機材だったり、働き方だったり含め、他のメンバーも、自分たちの好きな音楽が生まれた街ということでテンションも上がるでしょうし、音がいいということで喜ぶメンバーも。街並みもすてきですからね、見たこともない、住んだこともない場所で、気分が違いますよね。ーー「触れたい 確かめたい」は、羊文学の塩塚モエカさんがゲストボーカルで参加しています。後藤さんと塩塚さんが掛け合う歌声が絶妙ですが、もともとゲストボーカルを呼ぶ前提で曲作りをされていたのですか。作っている段階から、デュエットになったらいいなというイメージはありました。ゲストボーカルは、いろいろなバンドの音を聴きながら考えていて。雰囲気的にも、イメージ的にも、羊文学もかっこいいバンドなので合うんじゃないかなと、彼女を選びました。ーー実際、デュエットされていかがでしたか。歌は上手でしたね、何テイクも歌わなくて大丈夫というか。若い人たちは、僕らの世代よりも、やっぱり上手ですね。ーー配信では、両A面の2曲のみとなり、CDでは3曲目「ネクスト」が収録されています。後藤さんが作詞を、ベースの山田さんが作曲をご担当し、リモート環境下で制作されたそうですね。コロナの自粛期間中に、初めてリモートで作ったんです。他のメンバーは3人で練習していたみたいですが、その場でアレンジして、コロナ禍で会えなくなってそれぞれが家で自分のパートを録音して、僕のもとに送ってもらいました。僕は自分のプライベートスタジオを持っているので、そこでミックス、最後まで作業ができるので、仕上げます。ーー今後リモートで制作することは増えていくんでしょうか。どうなんでしょうかねえ。でも基本的に、ヒップホップのミュージシャンやダンスミュージックの場合、自宅に近い作業スペースで完結するようにできているんですよね。ロックバンドだけ、どうしてもドラムを家で録ると大変なことになるので、スタジオで録るというだけの話なんです(笑)。ただ、ドラムって、それをよく録るためだけにわざわざロンドンに行くんですよ。なので、そこは文化として、僕らが守りたい気持ちがあります。ASIAN KUNG-FU GENERATIONとしては、リモートが向いているバンドだとはあんまり思わないから。ーーコロナ禍というと、恒例のライブツアーシリーズ「酔杯」が、約5年ぶりに今年5月から「酔杯2 ~The Song of Apple~」として開催予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、10月からの開催に延期になりましたね。今年は、ツアーもフェスもなかなか厳しい。みんな中止や延期になったり、大変です。配信ライブもいいのですが、観客の前で演奏する喜びのほうが強いですね。いちばんはやっぱり、コロナの問題が解決して、徐々にコンサートの現場が元どおりになっていくことを願うしかないです。ーー今回も中村佑介さんのイラストで描かれたジャケットのアートワークもすてきです。完全生産限定盤には、ジャケットのイラストTシャツが付いていますね。コロナの影響で、今年はリリースする作品自体も減っていますし、レコードショップは人が来ない状況が続いているなかで、何か売るものがないと困ると思うんですよね。みんなこれまではツアーをすることと、音源を売ることが連動していた時代なので、ツアーが延期になると僕らも4月からのリリースを見送ってこの10月になっていて、同じようなことをいろいろな現場でやっていると思うんです。だから、最初は配信だけにしようかと思っていたんですが、でもレコードショップやCDショップに売る物があるというのは、いまのこういう状況だと意味があると思ったんです。どうせ音源を出すなら、僕らはいろいろなことを考えて、今回のようなかたちでリリースしました。すてきな音楽を作れるような人間になりたいーーコロナ禍の現在、後藤さんはおうちでどのようにお過ごしですか。外食もできなくなって、買い物ぐらいしか行けなくなりました。家では、自粛期間はとくに自炊にハマりましたね。よく釜飯を焚いていました。うちのドラムで料理研究家の(伊地知)潔のように上手にとはいかないですが、外食ばっかりだとどうしようもないので、自炊していましたね。ーーでは音楽活動以外での、ご趣味は。音楽以外、ほとんど無趣味なんですが、読書はしますね。好きな作家はたくさんいますが、古川日出男さんは全作持っていますし、町田康さんも好きです。でもコロナのなかで、柴崎友香さんの新刊『百年と一日』(筑摩書房)は技術的な面で飛び抜けてすごいなと、驚いてしまいましたね。ものすごい小説でした。あとは、せっかく休みがいっぱいできたから映画を観に行きたかったんですが、映画館もやっていなくて。常日頃、映画館に行けないんですよ、2時間ほど拘束されるというのが難しいから。音楽を聴きながら映画を観れないし、音楽を作りながら映画を観れないじゃないですか。僕らの仕事って、拘束されると、耳も目もふさがってしまう仕事ですし、夜中も考えごとをすることもあって。だから映画館に行くなら、そのとき調べていちばんいいと思える映画を観るという感じですね。ーーでは最後に、今後の抱負を教えてください。独立した、かっこいい大人になっていきたいですね。たとえば、YMOのお三方は集まってもすごいですが、それぞれに素晴らしいじゃないですか。そういうお手本があるので、アジカンとしても頑張りたいですし、アジカンを離れてもひとりのミュージシャンとして、すてきな音楽を作れるような人間になりたいと思っています。取材後記ASIAN KUNG-FU GENERATIONのフロントマンとして、ソロアーティストとして、インディーズレーベルの主宰者としてなど、多彩な顔を持つ後藤正文さん。デビュー当時からアジカンのライブを拝見していますが、後藤さんが放つ世界観はこれからも多くのロックファンを惹きつけていくはずです。そんな後藤さんをはじめとする、アジカンのみなさんのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。ASIAN KUNG-FU GENERATION PROFILE1996年、大学時代にバンド結成。後藤正文(Vo、G)、喜多建介(G、Vo)、山田貴洋(B、Vo)、伊地知潔(Dr)による4人組ロックバンド。2003年、インディーズ時代に発表したミニアルバム『崩壊アンプリファー』のリイシューでメジャーデビュー。同年、新宿LOFTより「NANO-MUGEN FES.」を立ち上げ、2004年からは海外アーティストも加わり、日本武道館、横浜アリーナと会場の規模を拡大。2016年、バンド結成20周年イヤーを迎え、自信最大のヒット作「ソルファ」の再レコーディング盤をリリースするなど話題を集めた。2018年、ベストアルバム第2弾となる『BEST HIT AKG 2(2012-2018)』および、Official Bootlegと位置づけた裏ベストといえる2枚のアルバム『HONE』盤と『IMO』盤をリリースし、6月からは全22公演の全国ツアーを開催。12月、オリジナルアルバム『ホームタウン』をリリース。2020年8月、『NANA-IRO ELECTRIC TOUR 2019』を発売。10月7日、両A面シングル「ダイアローグ / 触れたい 確かめたい」をリリースする。InformationNew Release「ダイアローグ / 触れたい 確かめたい」(収録曲)01. ダイアローグ02. 触れたい 確かめたい03. ネクスト2020年10月7日発売*配信は2曲目まで収録。3曲目はCDのみ収録。(通常盤)KSCL-3264(CD)¥1,200(税別)(完全生産限定盤A)KSCL-3260 〜 KSCL-3261(CD+Tシャツ)¥3,500(税別)(完全生産限定盤B)KSCL-3262 〜 KSCL-3263(CD+Tシャツ)¥3,500(税別)
2020年10月07日「ムーミン」をモチーフにしたドリンクスタンド「ムーミンスタンド」から、秋限定ドリンクが登場。「むらさき芋プリンミルク」&「えびすカボチャミルク」が、2020年9月18日(金)より期間限定発売される。「ムーミンスタンド」の秋限定ドリンクは、ハロウィンを思わせる鮮やかなビジュアルが特徴の2種類。「むらさき芋プリンミルク」は、沖縄県産のむらさき芋ペーストを使用したこっくり甘いドリンクと、とろりとしたカスタードプリンの二層から成るドリンク。口にふくむとむらさき芋ドリンクとプリンが混ざり合い、“むらさき芋プリン”のような味わいを楽しむことができる。「えびすカボチャミルク」は、北海道産えびすカボチャペースト入りのミルクに、チョコレートソースを添えたドリンク。濃厚なチョコレートの味わいが、かぼちゃの素朴な風味を引きたててくれる。どちらのドリンクにも、もっちりキャラメル味の“ニョロニョロのたね”をトッピング。また「ニョロニョロ」をモチーフにしたストローも付いてくる。【詳細】「ムーミンスタンド」秋限定ドリンク提供期間:2020年9月18日(金)~販売店舗:ムーミンスタンド コピス吉祥寺店、ランドマークプラザ店、サンシャインシティ店、浅草店、名古屋mozoワンダーシティ店、イオンモール岡崎店、土岐プレミアム・アウトレット店、天王寺ミオ店、神戸ハーバーランドumie店、イオンモール広島府中店、キャナルシティ博多店・むらさき芋プリンミルク(COLD) Rサイズ 667円+税・Lサイズ 787円+税・えびすカボチャミルク(COLD) Rサイズ 556円+税・Lサイズ 676円+税※ニョロニョロストローが付属。
2020年09月14日【音楽通信】第49回目は、ロックバンドのL’Arc~en~Ciel(ラルク アン シエル)、そしてロックユニットのVAMPS(ヴァンプス)のボーカリストでもある、HYDE さんのソロライヴのレポートをお届けします!取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol.49アコースティックアレンジで新たに魅了カリスマボーカリストのHYDEが、9月5日に、Zepp Haneda(TOKYO)でワンマンライヴ「HYDE LIVE 2020 Jekyll & Hyde」の初日公演を開催した。9月5日、6日、7日の前半3日間を「Acoustic Day」、9月11日、12日の後半2日間を「Rock Day」と題して、合計5日間の有観客かつ配信の両方で参加できる公演だ。今回、ライヴ配信プラットフォーム「SHOWROOM」より、生配信された。コロナ禍において、ライヴの中止や延期を余儀なくされるアーティストは苦悩し、ファンも楽しみが遠のく状況にあるなか、配信ライヴを実行するのは簡単なことではないのかもしれない。そんななか、HYDEは有観客での配信ライヴを決断した。ライヴ会場では、新型コロナウイルス感染拡大防止策を徹底し、観客数は座席使用時の収容人数の50%以下、さらに東京都に在住のファンクラブ会員のみ。公演前日には、HYDEが自身のツイッターでPCR検査の結果を「スタッフ含め142人全員陰性で明日からライヴします」と万全の体制を報告していた。開演時刻を知らせる数字がスクリーンに浮かび、ソーシャルディスタンスを保って座席に座るマスク姿の観客が配信画面に映し出されている。やがてステージの幕が開き、黒いフードをかぶったHYDEとバンドメンバーが登場。HYDEは、唇からはみ出す真っ赤なルージュに金髪姿、バンドメンバーはそれぞれが仮面をつけている。退廃した街を背に、2019年6月にリリースされたHYDEの最新ソロアルバム『ANTI』の1曲目「WHO’S GONNA SAVE US」から、ライヴはスタート。HYDEは最初のMCで、「こんな形で再会するとは思わなかったけど、会えてよかった」と語りかける。「困った世の中になったよね。よく頑張ったよね、みんなね。元気そうで」と、コロナ禍で不自由さを感じているであろうファンに、優しい眼差しを向けるたび、会場からは拍手が起こる。『ANTI』からのナンバーを中心に、HYDE feat. YOSHIKI名義の「ZIPANG (Japanese Version)」、今年3月にリリースしたニューシングル「BELIEVING IN MYSELF」など、新旧織り交ぜたソロ名義の楽曲を披露。また、L’Arc~en~CielやVAMPSの曲、自身が作詞作曲とプロデュースをして中島美嘉に提供した「KISS OF DEATH」やニルヴァーナのカバー曲「Rape Me」を歌うなど、多彩なセットリストとなった。アコースティックアレンジされた数々の楽曲は「まさかこの曲がこんなふうになるとは」「アコースティックのほうも好き!」と、配信画面上に次々と絶賛のコメントが入力され、新たな息吹を吹き込まれて、また別の名曲が誕生していた。クオリティの高いアコースティックバージョンの楽曲は、観客や視聴者に、驚きとときめきを与えたようだ。終盤、「久しぶりにみんなに会って感情が高ぶっている」と話すHYDEは、歌いながら涙を流す場面もあった。有観客で生配信ライヴを行えたこと、目の前に待ってくれていたファンがいること、歌える喜び、音楽活動の未来……さまざまなことを乗り越えてきたこの日をひしひしと実感しているようだった。美しいその涙は、観る者すべてをさらに虜にし、HYDEの歌声は心の奥深くまで響いていく。そして、この特別な空間がもうすぐ終わるという時間が迫ってきたが、ここで予定にはなかった楽曲を1曲、サプライズで演奏。みんなの気持ちがひとつになり、喜びと感動に包まれた。MCでは「この半年は家にいました。スーパーに行くのが楽しみだった」と、コロナ禍における過ごし方を話し、さらに、実は以前まで配信ライヴに興味が持てなかったことを告白。しかし、音楽番組『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)つながりで配信ライヴに出演した際、その考えは一変する。HYDEの前にファン200人が映るLEDスクリーンが置かれて、まるで「目の前にいるような感覚がして、感動した」と言う。「みんな僕を盛り上げてくれて、すごくいじらしくてね、コロッと気持ちが変わって」と、今回の公演を実現するまでの心情を吐露していた。全17曲を歌い上げ、幸せそうな笑顔を見せたHYDE。「ありがとうございました」と言い、ステージをおりるときに、HYDEが観客と視聴者に贈ったたくさんの投げキッスは、配信画面に舞うハートマークとともに心のなかを熱くさせた。このライヴが成功したことは、エンターテインメント業界の未来へつながる大事な一歩へとなっていくだろう。取材後記さまざまなことを考慮し、コロナ禍においての有観客&生配信ライヴを5日間行う、HYDEさん。並々ならぬ決意のもと実施されたライヴは、HYDEさんの音楽やファンのみなさん、エンタメに関わる人たちへの愛情にあふれていました。そんなHYDEさんが作り上げていく音楽の世界をこれからも楽しみにしていたいと思います。セットリスト01.WHO’S GONNA SAVE US02.AFTER LIGHT03.UNDERWORLD04.HORIZON05.OUT06.Rape Me ※Nirvana Cover07.MAD QUALIA (Japanese Version)08.ANOTHER MOMENT09.ZIPANG (Japanese Version)10.SET IN STONE11.LION12.BELIEVING IN MYSELF13.KISS OF DEATH14.I’m so happy15.EVANESCENT16.EVERGREEN17.ORDINARY WORLDInformation
2020年09月09日【音楽通信】第48回目に登場するのは、音楽シーンのみならず、さまざまなメディアでご活躍中のDAIGOさんがボーカルの3人組ロックバンド、BREAKERZ(ブレイカーズ)!取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol. 48ボーカルとダブルギターの編成で面白いことができる写真左から、AKIHIDE(G)、DAIGO(Vo)、SHINPEI(G)。2003年7月から「DAIGOSTARDUST」としてソロ活動していたDAIGOさんが、2006年にSHINPEIさんと、2007年にAKIHIDEさんと出会い、6月にバンドを結成。7月にはアルバム『BREAKERZ』でメジャーデビューした、ロックバンド「BREAKERZ」。そんなBREAKERZが、2020年9月9日に、21枚目となる両A面シングル「BARABARA / LOVE STAGE」をリリースされるということで、ボーカルのDAIGOさん、ギターのAKIHIDEさん、SHINPEIさんのメンバー全員に、お話をうかがいました。ーーまず、みなさんの音楽的なルーツや影響を受けたアーティストから、お話をお聞かせください。DAIGO 僕が初めて買ったCDは、アニメーション映画『魔女の宅急便』の「サントラ音楽集」でした。ロックを好きになったのは、15歳のときです。氷室京介さんがボーカルをしていたロックバンド、BOØWYの音楽を聴いて、からだに稲妻が走り抜けるような衝撃を受け、ロックに目覚めました。それからはGLAY、L’Arc-en-Ciel、LUNA SEA、THE YELLOW MONKEYなどのバンドの音楽に浸りましたね。その後に洋楽も好きになって、デヴィッド・ボウイにめちゃくちゃハマりました。AKIHIDE テレビの音楽番組でX JAPANのパフォーマンスを観て、ロックに目覚めました。そこからビジュアル系のバンドにハマり、その人たちのルーツである洋楽を追求していくようになりましたね。SHINPEI 90年代のJ-POPを聴いて育ちました。そのなかでも、B’zやWANDS、T-BOLAN、DEENなどのビーイングに所属しているアーティストが大好きで、よく聴いていたんです。いまでも自分の音楽ルーツとなっています。ーー2007年にBREAKERZを結成された際、この3人でご活動すると決めた当時の心境を教えてください。DAIGO SHINPEIは、あまりにもロックをやるには普通だったから、実は第一印象があまり良いとは言えなかったんです。しかし、一緒に作業をしているうちに、音楽への情熱を感じて、どんどん曲を作ってストックしていきました。そしていざレコーディングをする時期が見えてきて、誘っていたベース担当が、参加しないことになったんです。僕とSHINPEIの2人だと「バンドとして寂しいかもしれない」と考えていたときに、10年来の仲のAKIHIDEさんが当時組んでいたバンドがちょうど解散したので、一緒にバンドをしようと即、誘いました。そしてAKIHIDEさんも加わることになり、そこからBREAKERZが始まったんです。ボーカル、ギター、ギターという変わった編成ですが、何か面白いことができそうな気がしていました。AKIHIDE 当時、プロミュージシャンになる夢を諦めかけていたんですが、DAIGOくんから一緒に「バンドをやってみませんか?」と熱い言葉をかけてもらって「バンドドリームを見る最後のバンド」にしようと思って加入したんです。SHINPEI DAIGOさんと出会ったのは15年近く前になるのですが、そのときからすでに、彼にはフロントマンとして完成された風格がありました。AKIHIDEさんにも同じような印象があって、初めて出会ったときから、孤高のギタリストというオーラを感じていました。「この2人とバンドを始めたら、すごいものが生まれそうだ!」という期待で、胸がいっぱいになりましたね。あれから13年経ったいまでも、同じメンバーと音楽作りができているのは、本当にうれしいことです。ーー2009年に念願の日本武道館単独公演を実施されて以降、4年連続で開催されました。2020年の5月から、その武道館4公演のライブ映像と、ミュージックビデオ35曲をYouTubeでフルサイズ公開されましたね。DAIGO 誰しもが、新型コロナウイルスの影響によって、家にいる時間が増えました。そんな家にいる時間を少しでも楽しんでもらえたらと思い、ライブ映像などを公開しました。僕たちの歴史を感じてほしいですし、何より、前向きな何かを感じてほしかったからです。SHINPEI BREAKERZの持ち味をもっとも表現できるのは、ライブの空間ではと自負しています。コロナ問題によって、いままでのように会場で生のライブを共有できないのは残念ですが、いまだからできることを考えて、YouTubeでのライブ映像フル公開を企画しました。BREAKERZの魅力を感じてもらえる作品ばかりなので、ぜひ大音量で楽しんでほしいと思います。でも、夜はご近所迷惑かもしれないので、イヤホンをつけて楽しんでくださいね(笑)。BREAKERZ史上、もっとも狂気的な曲の誕生ーー2020年9月9日には、21枚目となる両A面シングル「BARABARA / LOVE STAGE」をリリースされます。「BARABARA」は、映画『妖怪人間ベラ』(2020年9月11日公開予定)の主題歌となっている、ミステリアスなナンバーですね。妖しくも切なげなギターリフも印象的です。DAIGO 「BARABARA」は、人間に傷つけられ裏切られ、苦しんできた『妖怪人間ベラ』たちの思いにシンクロして、歌詞を書き上げました。人の愚かさを歌った曲でもあります。BREAKERZ史上、もっとも狂気的な曲の誕生でした。AKIHIDE 心の奥に秘めた狂気をイントロのフレーズで描いて、劇中でみんなが狂って爆発してゆく情景を激しいビートとギターで表現しました。誰もが持っている秘めたる思いや、そこからあふれ出るエナジーをこの曲で感じていただけたらと思います。SHINPEI 事前に映画の試作版を観てから、曲作りに臨みました。楽曲候補はいくつかあったのですが、そのなかでもこの曲は、デモの時点ですでに存在感がすごかったです。BREAKERZらしいロックサウンドと、映画の世界観が見事にマッチしました。CDジャケットやミュージックビデオには、『妖怪人間ベラ』にも印象的に登場するグリーンカラーにインスパイアされた要素が入っているので、ぜひ映画とともに、この楽曲を楽しんでもらいたいです。ーー楽曲の途中に「人間になんてなりたくない」とセリフが入ったり、アニメ『妖怪人間ベム』(昭和43〜44年放送)のオープニング曲のフレーズが聴こえる部分もあります。AKIHIDE 『妖怪人間ベラ』という映画が、アニメ『妖怪人間ベム』を受け継いだ新たな形ということで、当時のアニメのフレーズも交えて過去へのリスペクトを込めつつも、いまのBREAKERZのソリッドでダークなサウンドで新たな形を表現してみました。ーー「LOVE STAGE」は、DAIGOさんのお姉さんである漫画家・影木栄貴さんの同名BL原作コミックの実写映画『LOVE STAGE!!』の主題歌です。原作にも登場する、BREAKERZをモチーフにした3人組ロックバンド「CRUSHERZ」の「瀬名聖湖役」として、2014年の同作のアニメ放送に続いて、今回の実写映画でも、DAIGOさんは特別出演されていますね。DAIGO はい。主題歌を担当することや出演することについては、とにかくいつもまず姉からの直電で頼まれるので、そこで話はほぼついてしまいますね。参加できることに関しては、シンプルに、うれしく思います。姉の作品が漫画からアニメになり、そしてついに実写化。どこまで表現していくのか、僕も楽しみにしています(笑)。ーー両A面となる2曲目「LOVE STAGE」は、明るくてアッパーなナンバーです。途中、BREAKERZさんのお名前をコールする箇所があり、3曲目に収録された同曲“CRUSHERZ Version”では、「CRUSHERZ」の役名でコールされるなど、遊び心にあふれていますね。SHINPEI 『LOVE STAGE!!』は、映画化する前から読んでいた作品なので、今回のタイアップは本当にうれしかったです。恋愛にはいろいろな形があって、自分が心から求めているなら、時には誰の目も気にせずに突き進んでほしい! という、明るく前向きな気持ちを歌詞にも楽曲のメロディにも込めました。間奏は、アイドルライブでよく見られる、MIXコールをモチーフにしてみました。早くこの曲をライブで演奏して、ファンのみなさんに、僕たちの名前を叫んでもらいたいです!ーー完全受注生産販売だったシングルの「13周年記念 Special Deluxe Edition for TEAM BREAKERZ」バージョンには、2ndアルバム収録曲からの新録となった、ストリングスも美しい楽曲「Day Soldier〜Acoustic Version〜」が収録されています。AKIHIDE 10年以上も前の曲ですね。リリース当時はロックなアレンジでしたが、バンドも月日を重ねて少しは大人な音も奏でることができるようになってきたので、いまだからできる大人っぽいBREAKERZを感じてもらえたらと思います。15周年を達成し笑顔の種になる活動をしていくーー現在、世界的にコロナ禍となっておりますが、みなさんは「おうち時間」をどのように過ごしていますか。現在ハマっているものは。DAIGO いまは映画やドラマを観たり、曲を作ったり、料理をしたりと、さまざまなことを楽しんでいます。いまハマっているのは、朝、ミキサーでフレッシュジュースを作ることですね。AKIHIDE いまだからこそできる「配信ライブ」を自分のスタジオから、自分で配信することにハマっています。配信に必要な機材をいろいろと手に入れて、勉強しながら楽しんでいます。SHINPEI 家事が大好きなので、ある意味「おうち時間」は自分にとってうれしい時間。手作り料理、部屋の模様替え、普段掃除しない換気回りや水回りの大掃除、小物の整理整頓など、いろいろなことを楽しんでいます。以前、整理収納アドバイザーや掃除能力検定など、たくさん取った資格が、こんなときに役立つとは思いませんでした。ーー現在は、新しい生活様式で暮らす日々となりましたが、以前はメンバー3人でどこかへおでかけになることはありましたか。みなさんそれぞれに日課とされていることなどもあれば、教えてください。DAIGO メンバー3人だけで外出することはなかなかないですが、記念日には集まったりすることもありましたね。僕は毎朝8時に、わが家の愛猫ジルちゃんに、ご飯をあげます。かわいくて癒されまくっていますね。AKIHIDE 僕が日課にしているのは、1日終わりのビールです。これがないと、1日が終わった気がしません。SHINPEI もともとプライベートでメンバーと遊ぶ機会はあまりなかったのですが、そのぶん、レコーディング中はさまざまなところへ食事をしに行ったり、ツアー中は朝まで飲み明かしたりしていました。CDリリースやライブツアーの傍らには、たくさんの楽しい打ち上げの思い出があります。最近の日課は、家での筋トレに、より力を入れています。いままでベッドを置いていたスペースに、筋トレ用のマシーンを導入したので、ジムのようなトレーニングもバッチリできるんです。そのかわり、布団の肩身が狭くなっています……(笑)。ーーそれでは、BREAKERZさんの今後の抱負をお願いします。DAIGO BREAKERZとしては、とにかく15周年を無事に達成したい。そう思っています。いまはライブも中止が相次ぎ悔しい思いがありますが、ライブができる日も少しずつ近づいていると信じて、万全を期して、自衛しながらみなさんも毎日を過ごしていきましょう! これからもよろしくお願いします!AKIHIDE 聴いてくれるみなさんにとって、どんなときでも笑顔の種になるような活動を、そして曲をお届けし続けたいと思います。SHINPEI バンドとしてのキャリアが長くなればなるほど、継続していくことの重要さが増していると感じています。ミュージシャンとしてやれることといえば、「良い曲を作って、良いライブを披露する」ことに尽きると思うので、今後もより良い楽曲作りを続けていきたい。ライブの表現方法はインターネットやCGを活用した世界がもっと主流になっていくと思うので、人間だけが与えられる感動と、デジタルの力がくれる新たな世界をうまく共有させていきたいですね。取材後記テレビなどで見せる穏やかな印象のDAIGOさんがボーカリストとなり、ダブルギターのAKIHIDEさん、SHINPEIさんとともに、ロックサウンドを奏でているBREAKERZ。今回、三者三様の音楽への熱い想いを知ることができました。そんなBREAKERZのみなさんのニューシングルをまずはチェックしてみてくださいね。BREAKERZ PROFILEDAIGO(Vo)、AKIHIDE(G)、SHINPEI(G)からなる3人組ロックバンド。2003年7月から「DAIGOSTARDUST」としてソロ活動されていたDAIGOが、2006年にSHINPEIと、2007年にAKIHIDEと出会い、6月にBREAKERZを結成して7月にアルバム『BREAKERZ』でメジャーデビュー。以降、コンスタントに楽曲をリリースしライブ活動を展開。2009年には、日本武道館での単独公演を開催し、2012年まで4年連続公演を行う。2013年から、メンバーそれぞれでのソロ活動もスタート。以来、バンドとソロを並行して活動を行う。2020年9月9日、21枚目となるシングル「BARABARA / LOVE STAGE」をリリース。9月26日(土)17時から、初のオンラインライブ「BREAKERZ ONLINE LIVE 2020 -ONE NIGHT LOVE STAGE-」の開催も決定(ライブ配信サービス「PIA LIVE STREAM」にて配信)。BREAKERZ初の無観客生配信ライブは、新曲「BARABARA / LOVE STAGE」を引っさげ、久しぶりのバンドセットで、タイトル通りの“一夜限り”の愛に溢れたステージを披露する。InformationNew Release「BARABARA / LOVE STAGE」(収録曲)01. BARABARA02. LOVE STAGE03. LOVE STAGE 〜CRUSHERZ Version〜2020年9月9日発売(通常盤)¥1,320(税込)ZACL-6052*CD Only。*裏表紙は蔵王大志さんによるオリジナル描き下ろしイラスト仕様。*封入特典は豪華特典プレゼント応募シリアルナンバー。
2020年09月09日【音楽通信】第47回目に登場するのは、歌手としてはもちろん、声優やタレントとしても幅広いジャンルで活躍されている、中川翔子さん!取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol.47子どもの頃からの夢はアニメソングを歌うこと2006年7月、シングル「Brilliant Dream」でCDデビューした、「しょこたん」こと中川翔子さん。歌手としてNHK紅白歌合戦にも出場するなど、コンスタントに楽曲をリリースするなか、ディズニーアニメ『塔の上のラプンツェル』の主人公ラプンツェルの日本語吹替版ボイスキャストを務め、NHK連続テレビ小説『まれ』では女優デビューするなど、多岐にわたりご活躍されています。そんな中川さんが、2020年9月9日に、ニューシングル「フレフレ」をリリースされるということで、お話をうかがいました。ーー今日は『ananweb』の音楽インタビューとなります。『anan』さんでは、以前表紙巻頭でグラビアページに出させていただいて(2012年4月27日発売のNo.1805)すごく反響があって、人生の勲章になったと、ずっと感謝しております。ーーとても美しいグラビアでしたよね。今回は音楽活動について、中川さんの音楽的なルーツからお話をお聞かせください。音楽のルーツでいうと、幼い頃に母が働いていて夜はあまり家にいなかったこともあって、祖母とふたりで過ごしていた時間に、祖母の大好きなシャンソンを毎日童謡がわりに聴いていました。それとは別に、昭和歌謡も好きな子でしたね。寝る前に、NHKの深夜放送のラジオ番組『ラジオ深夜便』が流れていた影響で、昭和歌謡が好きになって、ちょっと渋い子だったかもしれないです(笑)。中学生のときは、学校生活がうまくいかず、スクールカーストになじめなかった頃、家に帰っていつも絵を描いていたんです。そんなときに救ってくれたのが、アニメソングでした。だから、アニソンと昭和歌謡の話は、ずっとしゃべっていられるぐらい大好きなんです。大人になってからも「アニメソングを歌う」という大きな夢が、自分の人生の真ん中にあります。シャンソンは自分のディナーショーで歌って、夢を叶えることができました。大人になってからは、ジャズに興味を持っています。ーー松田聖子さんもお好きでしたね。はい、高校生のとき、聖子さんしか聴いていない時期がありました。80年代の聖子さんが大好きなんですが、世代的にまわりの友達はギャルだったので、ギャルの友達から浜崎あゆみさんのCDを借りて、そのかわりに聖子ちゃんのCDを貸すという感じで、ハマってもらえたらうれしくて。聖子さんの曲は、松本隆さんの歌詞がすばらしいので、歌詞の世界を妄想してイメージイラストを勝手に描いたりしていました。とくに聖子さんの83年、84年ごろの歌唱が好きでまねして研究して、ずっと家で歌ってきたので、それがいま役に立つ経験値として、未来に繋がりましたね。ーー中川さんの歌唱力は折り紙付きですが、多彩なご活動をされるなかで「歌うこと」については、ご自身でどのように感じていらっしゃいますか。絵を描くことと歌うことは、空気のように自然とやってきたことですね。何にもせずに、何にも聴かずにという、無の時間が無理なんです。だから、歌うことはずっと大好き。ですが、まさか自分が歌を歌ったり、コンサートをしたりするようになるとは、夢にも思っていませんでした。初めてのコンサートのときは、ステージが始まる前に、「むりむり! 私なんてただのひきこもりなのに!」と、号泣したことも。「アニメソングを歌いたい」という一番の夢が叶ってから、「生きていてよかった」という気持ちをライブやコンサートからいただきました。いまはコロナ禍の影響で、ライブが尊いものになっている状況ですよね。でもやっぱり歌は、人と人とを出会わせてくれるから、素晴らしいもの。私のライブがきっかけで付き合って、結婚したという方が数え切れないほどいらっしゃるんです。そしてアニメソングは、海外でも、日本語のままで通じますよね。たとえばアメリカやフランス、中国、香港といろいろな国や地域でアニメフェスが開催されています。昨年は韓国のアニメフェスに出演させてもらったのですが、アニメソングが好きという気持ちは世界共通なので、初めましての場所でも「空色デイズ」という曲を歌うと日本語でみんなが合唱してくれて、泣けちゃいましたね。アニメソングは魔法のパスポートだと思います。30代となったいまは、「子どもたちにアニメソングを届けたい」という内容に、夢がスライドしました。自分の人生を振り返ると、本当に好きなものって、思春期や10代のときに出会ったものから変わらないと思うんです。それは大人になってからも自分を助けてくれているから、いまの子どもたちもそうなるのではと。私の歌が、子どもたちの思い出のどこかの一瞬でいてくれたらいいな。新曲は優しい楽曲の「心の応援歌」ーー2020年9月9日に、アニメ『ハクション大魔王2020』(日本テレビ系 毎週土曜午後5:30)のエンディングテーマとして話題のニューシングル「フレフレ」をリリースされます。キラキラとしたかわいいナンバーですね。アニメのエンディングテーマというものが、もともとすごく好きなんです。「今週が終わっちゃったー! でもまた、明日から学校が始まるなあ」という、ふとした瞬間は、誰しも記憶のなかに“名前のない思い出”として残っていくんじゃないのかなと。次のシングルは応援歌がいいなと思っていて、今回は「フレフレ」というタイトルがいいなと、メロディを聴く前から考えていました。本当だったら、今年は東京オリンピックやパラリンピックが行われているはずだったんですよね。たとえばいまインターネットでは誹謗中傷が問題視されがちですが、本当はどこにいても離れていても、好きなことで繋がり合えたり、「あなたいいね」「あなたも素敵だね」と言い合えるというのは、ネットがない頃はできなかったこと。オリンピックだけではなく、誰かを応援するのはすごくいいことだし、それを無理せずゆるく応援できる世界だったら素晴らしいので、「フレフレ」はそんな心の応援歌にさせていただきました。ーー「フレフレ」は、SNS総フォロワー500万人超えの“ねお”さんが振付を担当していますね。SNSで大人気のねおちゃんは、令和の若者を象徴する存在で、きっと子どもたちが憧れるキラキラしたものを持っている方だろうと思い、オファーしたら快諾してくださって。振付もとってもかわいくて、まねしやすいんですよ。歌詞にある「ハートで祈ってる」という部分は、『ハクション大魔王2020』に出てくるアクビちゃんぽい振りなんです。優しい楽曲ですが、ダンスはポップなので、すごく元気になれるんじゃないかなと思いますね。みなさんが踊るフレフレダンスをTikTokで募集したら、かわいい女の子たちがたくさん動画を送ってくれて、いまはインターネットが意味を持ついい時代になってきたと思うんです。離れていても笑顔で繋がれることが、「フレフレ」を通じて見えてきてくれたらうれしいですね。ーーわが家でも私と娘で「フレフレダンス」を踊っています。うれしいです。私と同じ世代の人たちはもう結婚してお子さんがいらっしゃって、子どもの頃に見つけたワクワクキラキラは心のなかに宝石として残っているので、それを次の世代の子どもたちに届けたい。アニメだけじゃなく、ダンスも親子で一緒に楽しめるのは、昔よりも共有しやすい時代になった気がします。テレビで流れないところの歌詞もすごく好きなんですが、私の原点回帰と言いますか、子どもの頃から憧れていたアニソンを歌う先輩方の優しい歌声を目指して歌っているので、いつか本編でこの部分も含めてフルサイズで楽曲が流れるかもしれないので、アニメのほうもご覧いただければと思います。ーーカップリング曲の「フライングヒューマノイド 2020Ver.」は、2010年にリリースされたシングルの2020年版なのですね。はい。10年前は、10年後も生きているとか、楽しくやっているということは想像できなかったので、「十年先の未来が見える魔法があったらな…」という歌詞の気持ちはぼんやりとしか思っていませんでした。でも、10年経ってみると本当にあっという間で、光の中のトンネルをばっと走って来たような感じ。だから続けてこられたことが、いかに尊くて大変でありがたいことかを非常に感じますね。10年前というと、私は24、5歳。けっこう暗かった10代を乗り越えて、一番無敵感があったころですね(笑)。anan世代の方も、20代になってから、ますますやりたいこととやれることとが広がっていく時期だと思うんです。10年先のことを意識しながら何かをしたり、10年前のことを抱きしめたりしながら、これからも一瞬一瞬を大事にしたい。こうやって歌を続けてこられているのも、聴いてくださる人だったり、出会ってくださったりした方々のおかげなので、心から感謝しています。ーーこの曲は、BiSHなどを手がける松隈ケンタさんの作品ですね。10年ぶりにお会いしましたが、松隈さんは売れっ子さんなのでお話を受けてくださってびっくりですが「懐かしいね」とお話ししていました。私もこんなに歌い続けてこられたことはうれしいですが、まだ歌っていることを知らない方にも届くように、これからもすべての活動が、歌う瞬間に報われるようにがんばりたいと思っています。ただ、自粛期間のなかではお仕事がすべてなくなったんですが、人生終わりかなと落ち込みそうになったときに、でも何かやっていないと無理だと思って、YouTubeを始めました。そこでゲーム実況をしてみたら、日本のいろいろな都道府県、そしてロックダウン中の海外、イギリスやアメリカや香港といったさまざまな国から実況に参加してくれた方がいて。離れていてもこうして繋がれるし、いつか本当に会えたらいいなという夢もできましたし、落ち込んでいるからこそ、見えた世界がありましたね。ずっと子どもたちに歌を届けていきたいーーいま自粛は解除されましたが、活発には活動できない時期です。中川さんは「おうち時間」をどのように過ごしていますか。もともと家での趣味が主なので、いろいろやっています。今回は新しい文房具に挑戦しました。海外のアーティストさんが色鉛筆でものすごくリアルな絵を仕上げていく動画が大好きで、その人が使っている高い色鉛筆を買って、自分でも練習してみたんです。あと映画を観たり、アニメを観たり、絵を描いたり。夜中にシュークリームを焼くとか、なかなかやらなかった料理に挑戦するのも楽しくて。いまは舞台の稽古をしたり、YouTubeの撮影も室内でできちゃうので、忙しい(笑)。ステイホームののんびりの時間でも、いろいろなことが発見できました。うちには猫もいっぱいいて、猫と一緒の時間を過ごしているので、おうち時間は全然苦じゃないですね。ーー中川さんは愛猫家ですが、猫の魅力はなんでしょうか。いま猫を9匹飼っていて、YouTubeでも猫の紹介動画を撮っていますが、みんな違って、みんなかわいいんですよ。全部雑種で、捨て猫や保護猫なのですが、みんな無償の愛をくれます。家族であり、兄弟であり、子どものようであり、親のようであり。猫がいない世界は考えられない。猫は、私が落ち込んだときにわかってくれるんです。一緒に腕のなかで寝るのが大好きな猫がいて、ステイホーム期間もずっと一緒に寝てくれたおかげで、落ち込まずに済みました。その期間に発見したのが、保護猫カフェから連れてきた、すごくビビりで地味な猫のみかんが、私に会いたいがために立ち上がってドアノブを開けるという特技を身につけたことです。びっくりして動画も撮ったんですが、すると、情報番組から、みかんにオファーが来て(笑)。テレビの仕事がなくなっていたときに、みかんのおかげでテレビの仕事がキター!と(笑)。猫の個性はそんな感じで、それぞれ違いますね。ーー私もいずれ保護猫を飼おうと思っています。かわいいですよ、保護猫。できれば多くの猫が救われる世界になってほしいといつも思うので、BEAMSさんと共同プロデュースしてコラボレーションした『mmts(マミタス)』というブランドをずっとやらせてもらっているんですが、その売上の一部を動物保護団体へ寄付させていただいたり、個人的にもキャットフードを保護施設へ支援させていただいております。雑種、おすすめですよ。ーー続いては、お気に入りのメイクのことも教えてください。いまは、マスクでメイクが落ちないものを誰か発明してくれたらなと思いますね。でも、アイシャドウやアイメイクで遊んだりできるかな。お気に入りのブランドは、ルナソルです。5色入っていて、アイブロウも、ノーズシャドウとアイラインも描けるものがあるので、とりあえずカバンにこれだけ入れておけば、なんとかなります。あとチョコレートの香りがするシャドウもあって、締め色がすごく目をしっかり見せてくれるので、マストアイテムですね。ーーちなみに、おこもり期間に愛が深まるカップルも多いようですが、中川さんが魅力的だと思う男性とは。私はやっぱり、根が真面目な人がいいですね。仕事をコツコツとやり遂げる、仕事が好きというのも大事だし。私は絵を描くのが好き、ゲームが好きという趣味はありますが、それを否定しない人だったら、すごくうれしいですね。でも、同じ趣味であってほしいまでは思わないんですが、同じだと一緒にできるから。あと、猫が好きな人! これだけは譲れないですね。あとはもう、収入などはどうでもいいや、働いていればいいですね(笑)。ーー声優をされているラプンツェルのアニメも観させていただいておりますが、今年の冬は、劇場版のポケモン映画の声優もご担当されますよね。私自身、落ち込んだらラプンツェルを見ると元気が出るので、大好きなんです。なるべく長くラプンツェルを演じられるように、声と健康を守ろうと思いますね。ポケモンの映画は2007年からずっと参加させていただいていて、昨年は主題歌も担当させていただいていて、今回また声優で復活できるなんて。子どもたちが笑顔になれる時間になったらいいなと思っています。ーー歌手活動においての今後の豊富を教えてください。壮大な夢としては、かっこいい熟女になったときに、ステージでかっこよくシャンソンを歌いこなせるシャンソン歌手になりたいんです。そう思うと、年齢を重ねることも楽しみ。たとえばシャンソン歌手のみなさんは、スパンコールの派手なドレスを着ているイメージなのですが、それはきっと年齢を重ねていくからこそ似合うはず。歌詞の説得力が、レベルが上がっていく(年を重ねていく)ことで増していくと思っていているので、私が憧れたレジェンド歌手のみなさんのように、ずっと歌い続けられる人になりたい。そして、コロナが収束したときに、いつか海外でも歌えたらいいなと。あと子どもたちに歌を届けていきたい気持ちは、ずっと変わらないんです。これからも健康で、なるべく長くアニメソングを歌い続けたいですね。取材後記抜群の歌唱力で、子どもから大人まで、国内外問わず歌を届けてくれる、中川翔子さん。「アニメソングは魔法のパスポート」だとお話しされていましたが、これからも私たちに、元気になれる歌声を聴かせてくれることでしょう。そんな中川さんがリリースするニューシングルをまずはチェックしてみてくださいね。中川翔子 PROFILE1985年5月5日、東京都出身。歌手・タレント・声優・女優・イラストレーターなど、活動は多岐に渡り、多数のバラエティ番組にも出演中。数々の人気アニメ・ゲーム等の主題歌を担当し、2019年12月には5年ぶりとなるフルアルバム『RGB 〜True Color〜』を発売。文化人としての活動も行っており、2019年夏には、自身の経験を元に書籍『「死ぬんじゃねーぞ!!」いじめられている君はゼッタイ悪くない』を出版。以降は多数の講演会等に登壇し、多様化するいじめ問題に取り組んでいる。この他に、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた「マスコット審査会」委員を務め、聖火ランナーを務めることも決まっていた。2025年開催の万博に向けた「万博誘致スペシャルサポーター」としても活動している。最近ではYouTubeチャンネル『中川翔子の「ヲ」』を開設し、イラスト動画やゲーム実況の動画が話題となっている。InformationNew Release「フレフレ」(収録曲)01.フレフレ02.フライングヒューマノイド 2020 Ver.03.フレフレ -Anime edit-04.フレフレ -Instrumental-05.フライングヒューマノイド 2020 Ver. -Instrumental-2020年9月9日発売*CD収録曲は通常盤・初回限定盤共通。(通常盤)SRCL-11543¥1,182(税込)*CD only。(完全生産限定盤)SRCL-11540〜11542¥4,527(税別)DVD内容:1「フレフレ」Music Video、2 TVアニメ「ハクション大魔王2020」エンディング映像(ノンクレジットver.)*CD+DVD+Tシャツ。*完全盤封入グッズ:中川翔子とBEAMSが共同プロデュースする「mmts(マミタス)」 の中川翔子描き下ろし“アクビちゃん”イラストTシャツ(全3種のうちランダム1種封入)。
2020年09月02日【音楽通信】第46回目に登場するのは、インパクトのある歌詞と耳に残る楽曲、コミカルな要素を感じさせるパフォーマンスも人気のゴールデンボンバーのボーカル、鬼龍院翔さん!取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol.46バンドに憧れて、インディーズで活動する道を選択“ヴィジュアル系エアーバンド”ゴールデンボンバーの鬼龍院翔さんは、バンドの全楽曲の作詞作曲やライブの演出なども手掛けるうえ、ソロ活動や他アーティストへの楽曲提供なども行う多彩なボーカリストです。2004年に鬼龍院さんとギターの喜矢武豊さんを中心にバンドを結成されてから、インパクトのある歌詞や耳に残る楽曲、鬼龍院さん以外は楽器を弾かずに披露するパフォーマンスなどで注目を集め、さらにシングル「女々しくて」で大ブレイク。以降も数々の楽曲を世に送り出し、近年では時代の変化を絶妙にブレンドしたシングル「令和」や、アルバム『もう紅白に出してくれない』なども、話題を呼びました。そんな鬼龍院さんが、2020年8月30日に、ファンクラブの方からのリクエスト上位曲のみで制作されたカバーCD『うたってきりりんぱ』をソロでリリースされるということで、お話をうかがいました。ーー過去の音楽活動から少し振り返ります。19歳のとき、喜矢武さんと前身バンドを結成され、2007年にはベースの歌広場淳さん、2009年にはドラムの樽美酒研二さんが加入されて以来、ゴールデンボンバーは大活躍されている印象です。バンド活動の手応えを感じたのは、いつ頃でしたか。手応えを感じたのは、ギターの喜矢武しかいなかった2007年頃ですね。それまではわかりづらかったライブでのネタの振り方を芸人の知り合いから「わかりやすくやったほうがいいよ」と助言されて、やってみたらお客さんが受けて、「自分たちのやり方を見つけた」と思ったんです。そこから自分のやりたいことがはっきりわかって進んでいくんですが、歌広場が入ったり、ドラムの人がサポートメンバーだったのがいまの樽美酒に変わったりして。でも、メンバーが変わったからといって、モチベーションに差はありませんでしたね。ーー楽曲もライブも手掛ける鬼龍院さんなので、ソロで活動していくお考えはなかったのですか。考えなかったです。いまは時代が変わってきたかもしれないですが、当時は“ソロシンガー”より“バンド”に憧れを抱きやすい時代だったんですよね。同じ実力のあるアーティストがいたとして、それが“ソロシンガー”と“バンド”だったら「バンドに憧れるはずだ、世の中そういうもんだろう」と決めつけていました。僕はバンドが良かったので、誰かしらメンバーがいてほしいと思っていたんですよね。ーーゴールデンボンバーは、メジャーレーベルの数あるオファーを断り、現在もインディーズで活動されている理由は。駆け出しの頃はメジャーデビューしてもいいかなと思っていたんですが、いまの事務所さんにお世話になるようになって、そこはインディーズでCDも出せるんですよね。ちょうど時代がメジャーデビューにうまみがあまりないのではと思われ始めた頃に、メジャーレーベル7社から一気にオファーがきたんですが、社長にも「どうしたらいいですかね」と話をしました。社長は、「メジャーレーベルに行くと関わるスタッフが増えるから、稼ぎは減る。でもうちとは違うルートの宣伝がある気がする。でもインターネットでも宣伝はよかったりもするし、いまの給料に並ぶには、君たちがEXILEぐらい人気者にならないとダメ。だから結局、給料が1/10ぐらいになると思ったほうがいい」と言われて。「じゃあ、しなくていいですよね」と(笑)。でも一番いやだったのは、メジャーに行くとやれることも減るかもしれないから。過激なパフォーマンスができる機会が減ってしまうと、僕もそうですがメンバーはもっと困る。飛び道具、いろいろな変なこと、過激なことをやって、やっと居場所があるのに。それができないとなると、彼らの居場所がなくなるわけです。メンバーにも「メジャーデビューの話、断ったよ」と事後報告したら、「ふーん、そうなんだ」と言っていました。ーー2009年に発売された「女々しくて」が年月をかけて2012年に大ヒットし、同年からNHK紅白歌合戦に4年連続出場されましたが、当時の心境は。曲が流行っているのは素直にうれしかったんですが、それと同時に、生活がものすごく不便になったんです。ブレイクするとそのぶん注目されるので、プライバシーの侵害や中傷も一気に増えて、いやなことだらけでした。振り返ると、敏感すぎたかなといまは思いますが、当時はちょっと参っていましたね。あと、ヒットすることで「一発屋って言われるんじゃないか」「もっといいヒット曲を作らなきゃ」と考えながら作曲をしていましたが、「女々しくてを超えない⋯⋯」とずっと思っていて。全然、安心できませんでした。新作は「かしこまって聴いてほしくない」ーー2020年8月30日に、ファンの方からのリクエストによって選曲された、鬼龍院さんのソロカバーCD『うたってきりりんぱ』をリリースされます。このタイトルの意味から教えてください。タイトルは、聴く人の姿勢を決めるじゃないですか。今回、リクエストされた曲をカバーして歌うので、かしこまって聴いてほしくなかったんです。ここでたとえば、鬼龍院翔のカバーCDが英語の大文字でカッコよく、『VOICE』とかだったら、なんか肩に力が入りそうで(笑)。検索していたら、子ども向け番組の『うたってオドロンパ』(1995年から2006年まで放送されていたNHKの子ども向け音楽番組)という文字を見つけて、それをもじりました。『うたってきりりんぱ』という、このひらがなの感じがちょうどいいかなと。ーー選曲については、いかがでしたか。リクエストされた選曲については、ファンの方に募る前から「僕の感情で選びません」と、「ランキング上位のものから、許可が出たものからカバーしていきます」と説明していたんです。結果として、決定された選曲を見て、失礼かもしれませんが「ベタだなー」と思いましたね(笑)。たとえば、僕もファンである、中島みゆきさんの名曲「糸」が今回選ばれました。中島さんのファンからしたら、「糸」はもうメディアでいっぱい使われているからもういいよ、というテンションになってしまうぐらいのメガヒット曲なんですよね。この曲ももちろんいい曲ですが、もっとほかにもいい曲あるよって。ゴールデンボンバーのファンがよく「女々しくて」以外もいい曲あるよって言う感覚に似ているんですが(笑)。だから、ファンの方からしたら「糸」を選ばれると、ベタだな〜と(笑)。ーーほかにも、鬼龍院さんが中学生の頃からお好きだったヴィジュアル系バンド・MALICE MIZERの元ボーカルでもあり、現在は親交が深いGACKTさんの曲「Vanilla」も選曲されています。カバーするのは、緊張したのでは。確かに「Vanilla」だけは、「この機会に歌っていいんだろうか?」と思いました。でも、リクエストで上位に入ったのに歌わないのはファンへの嘘になるので、上位に入って許可がおりたからには、やらないという選択肢はありませんでした。今回のアルバムは制作期間が短いんですが、この曲については「もっと時間をかけてじっくりやりたかった」という気持ちが強いですね。僕はもともと物心ついたときから、GACKTさんのボーカルをまねて生きてきたんですよ。でも、近年はGACKTさんの歌声をまねできなくなってきていて。それはたぶん、GACKTさんのまねをして歌を歌ってきた期間よりも、自分の歌を歌って活動してきた期間が長くなってきたことが、原因だと思うんです。以前のGACKTさんの歌声のモノマネが得意だと自負していたときなら「うまく似せなきゃ」と思ったはずですが、つい先日レコーディングしたときも「自分らしくカバーさせてもらおう」という気持ちで歌えたので、いい意味で、いまは気負わずカバーできるタイミングだったと思います。ーーPRINCESS PRINCESSさんの「M」や西城秀樹さんの「傷だらけのローラ」があるかと思えば、King Gnuさんの「白日」、Official髭男dismさんの「Pretender」など、新旧の楽曲が揃いましたね。これは単純に、ファンクラブ会員の方の年齢の振り幅が広いということですね。選曲するには、ひとり一票しか入れられないようになっていました。でもたぶん、King Gnuさんの「白日」に投票した人は、PRINCESS PRINCESSさんの「M」に投票しようか迷わなかったと思うんですよね。僕らがライブハウスだけで活動していたときよりも、テレビなどに出させていただくようになってからは、幅広い年齢層の方に知ってもらえるようになりました。ーーバンドの曲はいつも全作詞作曲を手掛けていらっしゃいますが、カバーとなると、また心持ちは違いますか。そうですね。僕も作詞作曲している身からして、作詞した方や作曲した方も聴くかもしれないと思って、変なアレンジはせずに歌います。とくにメロディのアレンジはしないんです、していいのは作曲した人だけだと思うから、忠実に歌わなきゃなと。敬意も込めて、なるべくだいそれたことはしないようにしています。ただ、歌声の暑苦しさはどうにもなりません(笑)。「健康に気をつけて、定期的にライブ活動したい」ーーお話は変わりますが、鬼龍院さんは中学時代から音楽とお笑いが好きで、吉本興業の養成所であるNSC東京に在籍していた時期があったそうですね。高校を卒業してから、NSCに行きました。10歳ぐらいのときに、母さんがテレビに出ている芸人さんを観ながら「この人たち、しゃべっているだけでお金がもらえていいわね」と言っていて、「じゃあ、お笑いっていい職業だな」と思い始めたのがきっかけです。根本的に、人を笑わせたり、ふざけたりするのも好きで、「お笑い芸人になりたい」と思ったんですね。お笑いブームで『ボキャブラ天国』(1992年から99年にフジテレビ系列で放送されていたお笑い番組)が流行っていて、お笑い芸人が輝かしいスターのように描かれていて。そして、思春期は音楽を好きになるわけなんですが、「自分はキャーキャー言われるような人間ではない、だからミュージシャンなんてバカ言っちゃいけないよ」という自己評価だったので、音楽も好きだったんですが、その道はないと思っていました。ーーお笑い芸人の、しずるの池田一真さんとコンビを組まれていたとか。組んでいましたね。ただ、僕が芸人をしていた期間が、NSCにいた1年間だけの活動なんです。やることといえば、ネタ作りをして、ネタ見せの授業のときにネタ見せをして。だから、在学中の人が出るステージに出たぐらいで、お客さんの前でネタをしたことは1度もないんですよ。ーーネタはどちらが書かれていたんですか。どっちもなんですよ、それがよくなかったんじゃないかと思うんです(笑)。いまもメアドぐらいは知っていますが、連絡しないですね。池田くんはかなり変わった人なので、コンビを組んでいたと聞いたほかの芸人の方に「よくあの人と組んでいたね」と驚かれます(笑)。ーーところで、今年予定されていた全国ツアーが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、2021年に変更されましたね。先の予定が立てづらい状況ですが、鬼龍院さん個人として、バンドとして、今後の抱負があればお聞かせください。僕自身の抱負は、「メンバーよりも明るい人間になる」ということですね(笑)。ゴールデンボンバーとしては、「普通にライブをすること」それだけで、十分です。いま、億万長者になりてー! とか言っていたら、いやじゃないですか(笑)。ステージに立つみんなが「普通にライブさせてください」って思っていると思うんです。もう世界の望みですね。それを成し遂げるためには、健康であることも大事。全然運動もしていませんが、心身ともに健康を保っていれば、いつか必ずライブはできますので。いまの目標は「健康に気をつけること」、長期的な目標としては「定期的にライブ活動をすること」につきますね。取材後記ゴールデンボンバーのフロントマンとして、ソロアーティストとして、音楽活動はもとより、バラエティ番組など多岐にわたり活躍されている鬼龍院翔さん。お話しさせていただいていると、ジャンルレスにさまざまなシーンに対応できるのも、頭の回転がはやい方だからだと実感。そんな鬼龍院さんのカバーアルバムは、聴けば聴くほど歌唱力の高さに驚かされましたし、とても楽しくなりました。みなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。鬼龍院翔 PROFILE1984年6月20日、東京都浅草生まれ。鬼龍院翔(Vo)、喜矢武(きゃん)豊(G)、歌広場淳(B)、樽美酒研二(Dr)の4人からなるヴィジュアル系エアーバンド・ゴールデンボンバーの全楽曲の作詞作曲を手掛ける。ギター、ベース、ドラム、ピアノ、バイオリンなど一通りの楽器は演奏でき、ライブの演出なども担当。ソロ活動や他アーティストへの楽曲提供なども行っている。愛称は「キリショー」「キリちゃん」など。ゴールデンボンバーは、2004年、鬼龍院と喜矢武豊を中心に結成。略称は「金爆(きんばく)」。インパクトのある歌詞や耳に残る楽曲、鬼龍院以外は楽器を弾かずに披露するパフォーマンスなどで注目を集める。2009年に発売されたシングル「女々しくて」が年月をかけて2012年に大ヒット。同年からNHK紅白歌合戦に4年連続出場。2013年にはカラオケランキング51週連続1位獲得。2014年、第56回日本レコード大賞作曲賞受賞。2019年4月1日発表の新元号に合わせ、「新元号ソング」をどこよりも早く制作、発表、発売すべく、制作の模様を生配信。同年4月よりゴールデンボンバー全国ツアーを開催し、11月には、沖ノ島という無人島で無観客ライブを行い、その様子を全国へ生配信した。12月、アルバム『もう紅白に出してくれない』をリリース。2020年、3月から7月まで予定していた全国ツアー2020「楽器を弾いたらサヨウナラ」 を2021年に延期し、開催予定。8月30日、鬼龍院翔のリクエストカバーCD『うたってきりりんぱ』をリリース。InformationNew Release『うたってきりりんぱ』(収録曲)01. サウダージ(ポルノグラフィティ)02. Vanilla(GACKT)03. 楓(スピッツ)04. 糸(中島みゆき)05. 白日(King Gnu)06. Pretender(Official髭男dism)07. 妄想日記(シド)08. 最後の雨(中西保志)09. M(PRINCESS PRINCESS)10. 傷だらけのローラ(西城秀樹)2020年8月30日発売(CDのみ)¥1,818(税別)EAZZ-5025*通販限定発売。なくなり次第終了。
2020年08月25日【音楽通信】第45回目に登場するのは、さまざまなメディアから「ブレイク必至」と話題の期待のニューカマー、大阪発の5人組ロックバンド、Novelbright(ノーベルブライト)!写真・大内香織 取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol.45路上ライブ映像がSNSでバズり人気急上昇写真左から、ねぎ(Dr)、竹中雄大(Vo)、沖聡次郎(G)、圭吾(B)、山田海斗(G)。2013年にオリジナルメンバーで結成。2019年1月に現体制となり、大阪を拠点としていた5人組ロックバンド、Novelbright。同年7月に行った路上ライブの模様が「上手すぎる」「路上でやってる場合じゃない」とSNSや口コミで拡散されバズを繰り返し、瞬く間に全国区へとその名を広めました。なんでも“人が集まりすぎる”ゆえに路上ライブを卒業した後も、各種ストリーミングチャートではロングヒットを記録。さまざまなメディアでも“2020年ブレイクするニューカマー”として注目を集めています。2020年8月17日には、なんと大阪城ホールから「バーチャルブライトSPECIAL at 大阪城ホール〜バンド史上最強の発表あります無料です〜」と題した、無料配信ライブを開催。メジャーデビューとなるデジタルシングル「Sunny drop」をリリースされたということで、竹中雄大さん(Vo)、沖聡次郎さん(G)、山田海斗さん(G)、圭吾さん(B)、ねぎさん(Dr)のメンバー全員に、お話をうかがいました。ーー2013年にバンドを結成され、2019年に現体制となったそうですね。そもそものバンド結成のきっかけは。竹中雄大(以下、雄大) 僕が高校生のときにONE OK ROCKのコピーバンドをやっていたのですが、直に反応してくれるライブが楽しくて、ちやほやされたい気持ちもあって、自分自身でも本気でバンド活動をしたいと思ったんです。もともと歌うことがすごく好きで「これを仕事にしたい」と高校3年生のときに強く思って、Novelbrightを結成しました。17歳だった2013年9月に活動を始めて、当初は地元の仲間4人でバンドをやっていたんです。地道に3、4年は活動をしていて、2016年の夏頃にメンバーが抜けて、11月にギターの海斗くんと聡ちゃん(聡次郎)と、ドラムのねぎの3人が加入しました。そこから前のベースと5人でバンド活動を続けて、2018年12月にベースが抜けて、2019年1月に圭吾が加入して、いまに至ります。竹中雄大(Vo)。作詞作曲も担当。「小学校6年生のとき、口笛の世界大会をテレビで観た後、出場して2度優勝しました」ーーではメンバーのみなさんの音楽的なルーツはどのような感じでしょうか。雄大 みんなそれぞれバックボーンは違って、根底にあるルーツはばらばらですね。圭吾 そう、全然違います。沖聡次郎(以下、聡次郎) 僕はアメリカのミュージシャンで、グラミー賞も受賞している、スティーヴ・ヴァイがルーツです。海外のヘビーメタルが好きで、そういうバンドのギターヒーローに憧れていました。ねぎ 僕は雄大くんと一緒で、コピーバンドをしたことがきっかけで、バンドを好きになりました。それまではGReeeeNなどJ-POPが好きで、バンドを始めてからはONE OK ROCK、UVERworldなどを好きになりましたね。雄大 僕が音楽を始めようと思ったきっかけは、ゆずです。ゆずが好きで、アコースティックギターも弾き始めました。バンドを始めたきっかけはONE OK ROCKなので、一番の音楽的なルーツというと、ゆずとONE OK ROCK。あとは日頃から、洋楽アーティストの音楽もよく聴いてきています。沖聡次郎(G)。作曲も担当。ゲームやアニメが好き。「新作ゲームはすべて試し、いまは『モンスターハンター』にハマり中」山田海斗(以下、海斗) 僕はテレビでB’zを観て「こんなカッコいい人になりたい!」と思って、音楽を始めました。圭吾 僕はナイトメアとthe GazettEという、ヴィジュアル系がルーツです。バンドの音楽を聴きはじめたのも、ヴィジュアル系が初めてでした。あとは、ずっと昔からUVERworldが好きですね。ーー雄大さんは、もともと歌うことが得意だったのですか。雄大 中学生のときは3日に1回ぐらいはカラオケに行っていました(笑)。友達と行くと「うまい、うまい」と言われるのがうれしかったんです。メンバーもそうですが、僕は歌が、みんなは楽器が、年々うまくなっていっているかなと。声質は昔からそんなに大きくは変わってないですね。自分で得意だと言うのは難しいですが(笑)。聡次郎 小さいときから、まわりの人に「うまい」って言われてきたっていうことやな(笑)。雄大 まあまあまあ、そうやな(笑)。圭吾(B)。もとは天然パーマという圭吾さん。「毎日髪をブロッキングして束を作りながらアイロンしないとアフロになります(笑)」ーー2019年7月に開催された「どチクショー路上ライブTOUR」の模様を圭吾さんがSNSに投稿し、おおいに話題となりました。圭吾 バズりましたね(笑)。僕はそもそも別のバンドをやっていて、Novelbrightとは対バンもして友達ではありましたが、Novelbrightに入る前からこのバンドのことが好きで、当時から「もっとNovelbrightを広めたい!」と思っていたんですよ。まだメンバーではないときも、バンドの動画を撮ってSNSにアップして「いいね」を稼ごうと活動していたくらい(笑)。あわよくば拡散されてヒットしないかなと思っていて、その後メンバーとして加入してからも、以前と同じようにNovelbrightのことを知ってもらいたくて動画を投稿していたら、すごく話題になったんです。聡次郎 圭吾が加入する前も、バンドでSNSはやっていたんですが、そこまで戦略的にはやっていなかったんです。「どうやったらお客さんに広まっていって効果的なのか」ということを切れ者の圭吾が考えてやったら、すぐに拡散されて、「いいね」のような数字が、日に日に10倍、100倍と増えていって。雄大 広がるのは早かったよね。圭吾はお客さん目線で僕たちのことをずっと見てくれていたので、友達ではありますが「客観的にみたらこうしたらいいんじゃない」というポイントをメンバーのなかで一番わかっています。バンドのことをSNSで宣伝することにおいて、圭吾はいいところに着目したと思いますね(と言い終わるやいなや、圭吾さんに向けて、拍手を送る雄大さん)。海斗、聡次郎、ねぎ (笑顔で圭吾さんを見て、拍手)圭吾 ありがとうございます!山田海斗(G)。作曲も担当。「ファッションに興味があり、見た目が変わったものや人が選ばないものが好き」ーー2020年8月17日に「大阪城ホール」で無料生配信ライブを開催されました。まず、大阪城ホールを貸し切ることがスゴイことですね。雄大 そうですね〜! いままでだったら、大阪城ホールでライブをする人はスゴいと僕も思っていたんですが、僕らの場合は、大人の協力のおかげです(笑)。ーー大阪を拠点に活動されてきたので、いつかは大阪城ホールでライブをと考えていたのですか。圭吾 僕ら地元を大事にしているんです。だから、ドームならどこでもいいのか、東京ドームなのか、横浜アリーナになるのかというと、それは違って京セラドームで。やっぱり関西から制覇したいから、まず大阪城ホールでライブをするというこだわりは、メンバー全員持っていました。雄大 僕たち、路上ライブをずっとやってきていました。その路上ライブを卒業した場所が、大阪城公園なんですよ。聡次郎 大阪城公園の路上でライブをしながら、「次はあっち側でライブをするぞ!」と、大阪城ホールを見ながらMCをしていたんです。雄大 だから、大阪城ホールでライブがしたかったですし、今回は無観客ですが来年はお客さんで会場を満員にするという、意思表示でもあります。この大阪城ホールでメジャーデビューを発表したのですが、デビューを発表することは人生で一度きりじゃないですか。いまはコロナの影響でライブができない日が続いていて、お客さんと直に会えないはがゆい日々が続いていているなかで、何か人とは違うことをして、みなさんを元気づけたい。大阪城ホールを貸し切って、無料生配信ライブを行い、デビューを発表することは“規格外”だから、こういう面白いことをやろうとメンバー全員で話していました。ねぎ(Dr)。「メンバーは年も近いので常に共通の話をしています。家ではハンドパンという楽器にハマっています」ーーメジャーデビューされましたが、心境に変化はありましたか。ねぎ 「やったー!」という感じです(笑)。雄大 僕はメジャーデビューしても、インディーズのときとそんなに気持ちは変わらなくて、ただ、箔が付くかなと。聡次郎 僕たち、全然誰にも知られていなかった1年前と、いまの差が激しいんです。雄大 ドンキホーテでお米のパックを買って、納豆と一緒に食べたりしていましたから(笑)。圭吾 ツアーでも、安い宿の一室にみんなで泊まって、自分たちで運転しているハイエースが壊れて、押しながら移動したことも(笑)。そのときと比べると、デビューすることで僕たちのことを手伝ってくれるスタッフの人たちがどんどん増えてきて、Novebrightに関わるチームが結束してきました。だから、音楽面というよりも、そういったまわりのサポート環境面で、デビューをしたという実感がありますね。雄大 それは確かに僕も思います。メジャーデビュー曲はバンドの代名詞になる作品ーー8月17日には、メジャーデビュー第1弾となるデジタルシングル「Sunny drop」をリリースされました。雄大さんのファルセットが響く爽快なアップチューンですね。雄大 聴いていただいてありがとうございます。曲については、どれも全部どのタイミングでリリースしても大事なんですが、やっぱり、ここ一番というときに出す曲というのもあって。今回、メジャーデビューの最初の曲となると、すごく大事じゃないですか。いろいろな曲があって、さまざまなテーマの歌を歌っているんですが、まずは「Novelbrightといえばこんな曲」という、バンドの代名詞になる作品でデビューしたい気持ちがあって。この「Sunny drop」は、僕たちがいまできることをしっかりと詰め込んだ、自分らしさ全開の曲になっています。ーー雄大さんが作詞、雄大さんと聡次郎さんの共作で作曲されていますが、曲作りについてはいつもどのように行なっているのですか。雄大 ギターの聡ちゃんと海斗くんがそれぞれ、トラックを作るんですね。そのメロディがない音源をある程度完成形に近いものにして提出してもらい、そこに僕がメロディをつけて、アレンジを話し合ってまとめ、さらに歌詞を書いたりもします。ーー今回、亀田誠治さんが編曲を担当されていますね。雄大 聡ちゃんが作った曲に、僕がメロディと歌詞を付けたものを亀田さんがブラッシュアップして、アレンジをしてくださったんです。海斗 できる限りのアレンジを自分たちでしてから、そこに亀田さんが魔法をかけてくれて、すごく輝いた曲になりました。曲のストーリーが良い方向に動いた感じがします。聡次郎 僕らが思いつかないアレンジを亀田さんがしてくださって、曲がすごく良くなりました。「日本を代表するアーティストになりたい」ーー「Sunny drop」では“笑う君が愛しい”という歌詞が出てきますが、実際にみなさんが愛しく思う、魅力的な女性のタイプを教えてください。聡次郎 一番大事だと思うのは、言葉遣いです。容姿がいいのも魅力的ですが、それよりも、TPOに合わせてきれいな言葉遣いのできる女性が一番だと思いますね。ねぎ 僕の場合、何かに向かってひたむきに努力している女性は「いいな」と思いますね。僕らも夢に向かって突き進んでいるので、同じように頑張っている女性が魅力的です。雄大 僕は、気遣いができる女性がいいですね。圭吾 たとえば?雄大 ファミレスに行ったら、すすんで水を持ってきてくれる子とか。圭吾 それは男が持っていこう(笑)。雄大 そうか、でも焼肉を食べに行っても、焼いてくれる子がいいな(笑)。圭吾 それも男がやろう(笑)。海斗 僕は女性らしい人がいいですね。男の子っぽくない感じ。だから、自分のことをかわいいとわかっていてアピールするような“ぶりっ子”の女性も好きなんです。圭吾 僕は精神年齢がだいぶ低いので、そのレベルで同じ時間を過ごせる女性が魅力的だと思いますね。僕がアホなことをしていたら、「アホやな」って思われるよりは、一緒にアホなことができるほうがいいんです。ーーお話しいただいて、ありがとうございます。では最後に、Novelbrightとしての今後の抱負を教えてください。雄大 今年はメジャーデビューしましたが、コロナ禍でライブができなくて活動しにくい状況のなかでも、僕たちなりのやり方で日々模索し続けて、こういうご時世だからこそできること、やれることをまずはしっかりやっていきたいです。夢は果てしなく大きいので、ここ数年で日本を代表するアーティストになりたいと思っていて、大きいキャパのアリーナツアーやドームツアーをやりたいですね。そして将来的には、すごく先の話ですが、おじいちゃんになっても、みんなで仲良く楽しくバンド活動ができていたらいいなと思っています。取材後記令和時代にフィットした目覚ましい活躍で、大阪から全国へと飛躍する、Novelbright。フレッシュな感性をきらめかせながら、取材時にはメンバー5人の仲の良さが垣間見える和気あいあいとした様子を見せてくださいました。そんなNovelbrightのみなさんのデビューシングルをまずはチェックしてみてくださいね。Novelbright PROFILE竹中雄大(Vo)、沖聡次郎(G)、山田海斗(G)、圭吾(B)、ねぎ(Dr)からなる大阪出身の5人組ロックバンド。2013年にオリジナルメンバーで結成後、2019年1月に現体制で活動スタート。同年7月に開催した「どチクショー路上ライブTOUR」がSNSや口コミで拡散され、瞬く間に全国区へとその名を広める。路上ライブ卒業後も各種ストリーミングチャートでロングヒットを続け、インディーズアーティスト史上初のレコード協会に「ストリーミング認定」されるなど、大躍進。さまざまなメディアで「2020年ブレイク必至」と注目を集めている。2020年8月17日に、大阪城ホールから「バーチャルブライトSPECIAL at 大阪城ホール〜バンド史上最強の発表あります無料です〜」と題した、無料配信ライブを開催し、メジャーデビューとなるデジタルシングル「Sunny drop」をリリース。InformationNew Release「Sunny drop」2020年8月17日配信¥255ヘアメイク・又吉桃花 (superbly inc.)、スタイリスト・MIDORI竹中雄大 シャツ¥50,000 Tシャツ¥14,000 パンツ¥64,000 (共にキディル/サカス ピーアールTEL:03・6447・2762) ネックレス¥99,000(シンゴクズノ/シアン PR TEL:03・6662・5525) リング¥15,000(キュイエール アン 925/シャポリエ クールTEL:06・6202・3730) シューズ 本人私物、山田海斗 オールインワン¥80,000(リベルム/エスティーム プレスTEL:03・5428・0928) シャツ スタイリスト私物 シューズ 本人私物、圭吾 シューズ 本人私物 その他 スタイリスト私物、ねぎ シャツ¥34,000(メアグラーティア/シアン PR TEL:03・6662・5525) パンツ¥27,000 シューズ¥35,000(共にクルニ/シアン PR TEL:03・6662・5525) ニット スタイリスト私物 リング 本人私物、沖総次郎 シャツ¥42,000 パンツ¥34,000(セブンバイセブン/サカス ピーアールTEL:03・6447・2762) ハット¥26,000(メゾンバース/シアン PR TEL:03・6662・5525) リング¥77,000(シンゴクズノ/シアン PR TEL:03・6662・5525) Tシャツ スタイリスト私物 その他 本人私物
2020年08月18日【音楽通信】第44回目に登場するのは、数多くのアニメ作品やナレーションなどに出演する人気声優でありながら、ソロシンガーとしても大活躍中の下野紘さん!取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol.44デビュー当時はうれしさ以上の緊張とプレッシャー2001年に声優デビューした下野紘さんは、『進撃の巨人』のコニー・スプリンガー役や『鬼滅の刃』の我妻善逸役ほか、アニメを中心にゲームや吹き替え、ナレーション、ラジオなどに数多く出演し、実写映画で初主演を務めるなど、多彩な活動を展開。今後も出演作が目白押しの人気声優です。2016年には、声優デビュー15周年を記念したソロシンガープロジェクトを始動し、1stシングル「リアル -REAL-」でアーティストデビュー。そんな下野さんが、2020年8月19日に、1stフルアルバム『WE GO!』をリリースされるということで、お話をうかがいました。ーーまずは、少し前のことからお聞きします。下野さんが影響を受けた作品やそもそも声優を目指されたきっかけを教えてください。コメディSFアニメ『無責任艦長タイラー』(1993年)を観ていて、主人公のジャスティ・ウエキ・タイラーのような「おおらかでいつもニコニコしている大人になりたい」と思うようになりました。この作品が、声優という仕事を意識するきっかけですね。もともとアニメやゲーム、声優さんが好きだったこともあり、声優さんのラジオやCDドラマを聴いて、「なんて楽しそうな仕事なんだろう」と思い、この仕事を目指すようになりました。ーーその後、2001年にゲーム『リリーのアトリエ〜ザールブルグの錬金術士3〜』で声優デビューされて、翌年にはテレビアニメ『ラーゼフォン』の主役に抜擢されました。声優デビューという、夢が現実になっていかがでしたか。もちろんうれしかったです! 『ラーゼフォン』に関しては、オーディションで受からなければ声優をやめようと本気で考えていたので、大喜びしましたが、そのあとは緊張の連続でした。自分なりに「声優事務所に所属して、少しずつ仕事をもらうようになって、いつかはアニメで主役を……」と計画していたので、当時は主役を務めるうれしさ以上に、緊張とプレッシャーでいっぱいいっぱいだった気がします。ーーそんなデビュー後から現在、そして今後も大活躍の下野さんですが、昨今ではアニメファン以外も巻き込み一世を風靡している『鬼滅の刃』の我妻善逸役での反響について、どのように感じましたか。また、善逸役をされているときに心がけていらっしゃったことは。ありがたいですし、うれしいのですが、たじたじしてしまいますね(笑)。『鬼滅の刃』がこんなにも大きな反響があると思っていなかったので、僕自身、ビックリしています! 基本的には、ほかのアニメでも、どのキャラクターのときも変わらず、そのキャラクターの持つ感情や状況を大切にしています。ただ、善逸の場合は、表情と動きが豊かすぎるので、そのあたりはとくに気をつけているところもあるかもしれませんね。感慨深いフルアルバムはよりいっそう楽しい作品ーー2016年からは、声優デビュー15周年として「下野紘ソロプロジェクト」と題してアーティスト活動もスタートされました。2020年8月19日には、1stフルアルバム『WE GO!』をリリースされます。今回のアルバムにこめた思いをお聞かせください。アーティスト活動を始めた当初の目標が、フルアルバムを出すことだったので、感慨深いものはありますね、やっと出せたなと。そして今回はいままで以上に「みんなとライブで盛り上がりたい」という思いを込めて作らせていただいたので、いままでよりいっそう、楽しいアルバムになっていると思います。ーー収録曲から、いくつかおうかがいさせてください。3曲目「WE GO! –On Your Mark」はタイトル曲でもありますが、前山田健一さん作詞作曲のアッパーチューンですね。今回、初のフルアルバムということで、僕の憧れのアーティスト、もしくは縁のあるアーティストの方に楽曲を作ってもらうのはどうだろうという話になったんです。相談の結果、ヒャダインこと前山田くんに、表題曲である「WE GO! –On Your Mark」を作ってもらうことになりました。ギターロックとポップサウンドが融合した、“アーティスト下野紘”としては、いままで以上に前向きな楽曲になっていると思います。ーー4曲目「リアル-REAL2020-(Re-Recording)」は、2016年3月リリースのデビューシングルを“2020年バージョン”にされての新録とのことですが、デビューのときと現在とで、歌ってみての心境の変化などありますか。デビューシングルだったからこそ、如実に違いがわかりますね。楽曲に対する向き合い方や感情のバランスなど……。以前シングルでリリースしたときは、ガムシャラにしか歌えなかった「リアル-REAL-」を、いまは少し俯瞰で捉えることができるようになったので、ある種、成長できたなと思っています。ーー9曲目「ONE CHANCE」は下野さんとRUCCAさんの共作詞で、憂いを帯びた痛快なサウンドですが、どのような気持ちを歌詞に込めていますか。こちらは、2ndシングルとして出させてもらった楽曲ですね。1stシングル「リアル-REAL-」の続きといいますか、繋がりがある楽曲で、殻を破り、自分を信じて突き進んでいけ! という思いを表現した「リアル-REAL-」から一転。この「ONE CHANCE」では、その先でたとえつまずき、何度倒れようともチャンスは必ずある、あがけるだけあがけ! という思いで作った楽曲です。ーー10曲目「アトサキ」は、別れた恋人を思うミディアムテンポのバラードですね。下野さんが作詞を、高橋諒さんと共作曲されていますが、これは実体験でしょうか。曲作りのときは、何を参考にして作っていますか。また、歌うときは曲の世界にどう入っていかれますか。フルアルバムということで、せっかくなら自分で作詞作曲した楽曲を入れたいという思いから、高橋さんにご協力いただき、作らせていただきました。実体験ではないですが、2人が出会ってから別れまで、そしていまがあり、この先がある。この時間軸をひとつの線に見立てて未来を見据えた、前向きな大人の恋愛ソングを作らせていただきました。失恋の曲ではありますが、彼女に対する前向きな思いを歌った楽曲です。ーー今回のアルバムコンセプトは“MODS”ということで、ロンドンでトラックダウンをされ、撮影されたジャケットやミュージックビデオをご覧になっていかがですか。また、ロンドンでのエピソードがあれば教えてください。楽曲も、ミュージックビデオも、素敵な仕上がりでしたね。ジャケット撮影やミュージックビデオ撮影をロンドンでやっただけでもスゴいことなのに、まさかトラックダウンもやらせていただけるとは、ただただ感動ばかりでした。なので、話したいことは山ほどあります。弾丸撮影旅行ではありましたが、修学旅行のように、みんなでワイワイ楽しみながらの3泊5日のロンドンでした!いつかライブでみなさんと一緒に盛り上がりたいーー現在、全世界的にコロナ禍となっておりますが、下野さんは「おうち時間」をどのように過ごしていますか。いまハマっているものは。自粛期間は、ちょこちょことひとりでやる仕事もあったので、長期間家にいるというわけではなかったのですが、それでも料理や部屋の片付け、積んでいたゲームなどをやっていましたね。とくに料理をしていた影響で、鳥ササミを調理しては食べていましたし、積んでいたゲームもクリアできて、いまは『ファイナルファンタジーV』などの懐かしいゲームをやったりしています。ーー下野さんは、8年連続で“ベストカラアゲニスト”を受賞された「唐揚げ」や、大泉洋さんらが出演しているHTB北海道テレビのバラエティ番組『水曜どうでしょう』がお好きということで、どのくらいお好きなのでしょう。大泉さんらと実際に交流はありますか。どのくらいと聞かれると困りますが、どちらもかなり好きなほうではないでしょうか。唐揚げは、僕のファンのみなさんなら好物だということはご存知でしょうし、『水曜どうでしょう』に関しては、ラジオなどのフリートークのしゃべり方や、ロケ収録などにとても影響を受けていて、真似していたぐらい好きなんです。出演者の大泉さんや鈴井貴之さんにお会いしたことはありませんが、ディレクターでありながら出演もしている藤村忠寿さんや嬉野雅道さんとは、仕事や飲みなどでご一緒させていただきました!ーーお好きなものということでいえば、下野さんが素敵だなと思う女性も教えてください。メガネをかけている女性は、素敵ですよね。昔から、かなりのメガネ好きなんです(笑)。あとは、まわりに気配りや気遣いをしつつも、自分の意見をちゃんと持ちつつ、ハッキリと言える女性。まわりに目を向けるだけでもなく、自分だけに関心を持つわけでもなく、だけど芯はしっかりしているという女性は、本当に素敵ですね。ーー下野さんの声優としての、そしてアーティストとしての、今後の抱負をお聞かせください。いまは「ライブでみなさんと一緒に盛り上がりたい」というのが、アーティストとしての抱負です。声優としては、もっといろいろなことに挑戦させていただきつつ、またみなさんとイベントで会えたらうれしいですね。どんなかたちであれ、みんなで大盛り上がりできる日が来ることを、いまから楽しみにしています!取材後記アニメはもちろん、ナレーションや吹き替えなど、さまざまなかたちで私たちの耳に心地よい声を届けてくれる、下野紘さん。昨今の作品ですと、わが家では『鬼滅の刃』などを子どもと一緒に楽しませていただいています。そんな下野さんがソロシンガーとして発表される、アーティストとしての1stフルアルバムをまずはチェックしてみてくださいね。下野 紘 PROFILE4月21日、東京都生まれ。声優としては、2001年、ゲーム『リリーのアトリエ〜ザールブルグの錬金術士3〜』のテオ・モーンマイヤー役でデビュー。2002年、テレビアニメ『ラーゼフォン』の神名綾人役で初主演を果たす。以降、『うたのプリンスさまっ』シリーズの来栖翔役、『進撃の巨人』のコニー・スプリンガー役、『鬼滅の刃』の我妻善逸役ほか、アニメを中心に、ゲームや吹き替え、ナレーション、ラジオなどに数多く出演し、実写映画『クロノス・ジョウンターの伝説』(2019年)で初主演を務めるなど、多彩な活動を展開。今後も数々の作品が決定している。歌手としては、2016年、声優デビュー15周年を記念したソロシンガープロジェクトを始動。1stシングル「リアル -REAL-」で歌手デビュー。これまでに限定シングルを含めた5枚のシングル、1枚のミニアルバム、3枚の映像作品を発表。2020年8月19日、1stアルバム『WE GO!』をリリースする。InformationNew Release『WE GO!』(収録曲)01. Departure02. Survive03. WE GO! -On Your Mark-04. リアル-REAL2020-(Re-Recording)05. Running High06. Because You Are07. Viva The Life08. Change+ing(Album Version)09. ONE CHANCE10. アトサキ11. I’m Home12. Soul Flag2020年8月19日発売*CD収録曲は通常盤・初回限定盤・きゃにめ限定盤共通。(通常盤)PCCG.01873¥3,000(税別)*CD ONLY。封入:特製ブックレット。(初回限定盤)PCCG.01872¥4,000(税別)*CD+DVD。仕様:三方背BOX、特製ブックレット、フォトブック付。*映像特典:「WE GO! -On Your Mark-」MV、「WE GO! -On Your Mark- 」MVメイキング ショートバージョン。(きゃにめ限定盤)SCCG.00046¥4,500(税別)*CD+DVD。仕様:三方背BOX、特製ブックレット、フォトブック付 。*映像特典:「WE GO! -On Your Mark-」MV、「WE GO! -On Your Mark-」MVスペシャルメイキング。
2020年08月17日【音楽通信】第43回目は、日本を代表するシンガーソングライター、山下達郎さんの初めてのライブ映像配信のレポートをお届けします!写真・濵田志野(京都『拾得』)、菊地英二(氣志團万博2017) 取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol.43ライブ配信は京都のアコースティックセットからこれまで数々の名曲を生み出してきた、日本を代表するシンガーソングライターの山下達郎が、7月30日に『TATSURO YAMASHITA SUPER STREAMING』と題したライブ映像を、高音質の動画配信サービス『MUSIC/SLASH』のこけら落としとして配信した。ロックバンドのシュガー・ベイブとしてデビューした1975年以降、1976年12月のソロ活動からも、2012年に劇場公開されて伝説となった『山下達郎シアター・ライヴ PERFORMANCE 1984-2012』以外、これまでに山下の映像作品が発売されたことはない。今回のライブ映像の配信は、山下にとって、キャリア初の試みとなった。また、ファンにとっても“動く山下達郎”を自宅で視聴できることは、画期的な出来事。コロナ禍で先の見えない状況を過ごす人々が多いなか、山下のツアーも延期や中止となり、今回のライブ映像配信で元気づけられた人は多いだろう。ライブは、2018年3月17日に行われた、京都のライブハウス『拾得』の映像からスタート。ボーカルとアコースティックギターを務める山下と、ベースの伊藤広規、キーボードの難波弘之の3人編成。ファンにとってはおなじみのこの3人による、アコースティックセットでの演奏だ。1曲目は、1991年に発売された楽曲「ターナーの汽罐車」から。まっすぐに聴き手の胸に届く、揺るぎないボーカルの力は、会場のみならず、視聴している画面の前のオーディエンスをも撃ち抜いていく。続き、1982年発表で同名ドラマの主題歌でもある「あまく危険な香り」をしっとりと聴かせ、2010年発表で下を向く気持ちをそっと励ましてくれるバラード「希望という名の光」、小気味良いサウンドで軽やかなボーカルを聴かせるカバー曲「WHAT’S GOING ON」などを披露した。氣志團万博での圧巻のステージ&34年前の映像もそして、2017年9月17日に千葉県の袖ケ浦海浜公園で開催されたロックフェスティバル “氣志團万博2017”のライブ映像では、なんと山下が登場した40分のステージをノーカットで配信した。まずは会場に「山下達郎 紹介VTR」が流れ、主催者である氣志團の綾小路翔が、山下のことを「日本の音楽を変えた人」と話し、「神すぎて」と絶賛する映像が大型モニターに映し出される。そう紹介された山下の登場をいまかいまかと待つオーディエンスの前にバンドメンバーが現れ、大歓声のなか、最後に山下が登場。場内を見渡しながら、「山下達郎です、よろしく!」と、きりりとした表情で挨拶し、おおいに沸き立つ。1曲目は、山下が作曲を担当し、近藤真彦に提供した1982年の楽曲「ハイティーン・ブギ」。きっと会場にいた誰もが予想外だった選曲からスタートし、同じく1982年の爽快でグルーヴィンな「SPARKLE」では、卓越したギターカッティングも披露。さらに、1997年にKinKi Kidsのデビュー曲として作曲した「硝子の少年」を艶やかに歌い、続く1992年のアップテンポな「アトムの子」では、間奏で「アンパンマンのマーチ」のフレーズを挟みながら熱唱。そんな山下のバックコーラスに目をやると、妻の竹内まりやが参戦している。大型モニターにも竹内の姿が映し出され、盛り上がるオーディエンス。その後、山下が作曲しアン・ルイスに提供した1979年の「恋のブギ・ウギ・トレイン」で、山下はまたもや神業ともいえるギターカッティングほか、圧巻のパフォーマンスを見せる。この曲までは竹内もバックコーラスを務めて夫婦の絆を垣間見せた後、出演者全員で手を繋ぎ、客席へとお辞儀。最後は、山下がハンドマイクで1991年の「さよなら夏の日」を歌い、ステージ上を動きながら、すべての人たちの心へその澄んだ歌声を染み渡らせた。ここまででも十分貴重なライブ映像なのだが、ここからはまさかの1986年のお宝映像を配信。真っ赤なシャツにネクタイ、ジーンズ姿の山下が2曲を披露。何よりも驚いたのは、34年前のライブ映像だというのに、山下のキーも声量もスタイルもいまもまったく色褪せず、変わらない力強さがあるということ。たとえ何年経っても、山下が人々の心を惹きつけて離さない理由がわかった、なんとも贅沢な夜だった。取材後記心に響く数々の名曲を生み出している山下達郎さん。ストイックにご自身の音楽の道を突き進み、時代が移り変わろうとも、けっしてブレないその姿勢、たゆまぬ努力、そして並外れた才能に脱帽するばかりです。表現者として、これからもきっとわたしたちに素敵な音楽を届けてくれるでしょう。山下さんの貴重なライブ映像を堪能させていただきました。セットリストOPENING京都のライブハウス「拾得」より(2018年3月17日のライブ映像)01.ターナーの汽罐車02.あまく危険な香り03.砂の女04.希望という名の光05.SINCE I FEEL FOR YOU06.WHAT’S GOING ON氣志團万博2017より(2017年9月17日のライブ映像)07.ハイティーン・ブギ08.SPARKLE09.BOMBER10.硝子の少年11.アトムの子12.恋のブギ・ウギ・トレイン13.さよなら夏の日「PERFORMANCE 1986」ツアー郡山市民文化センターより(1986年10月9日のライブ映像)14.SO MUCH IN LOVE中野サンプラザホールより(1986年7月31日のライブ映像)15.プラスティック・ラブCLOSING(THAT’S MY DESIRE)Information
2020年07月31日【音楽通信】第42回目は、男女混合パフォーマンスグループ「AAA(トリプル・エー)」のメインボーカル、宇野実彩子さんの初“オンライン誕生日ライブ”のレポートをお届けします!取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol. 42趣向を凝らしたトーク&ライブで構成された生配信「AAA」の宇野実彩子が、自身の34歳の誕生日となる7月16日に、誕生日ライブ「“MISAKO UNO “ birthday party & live session ~いくつになっても離れていてもお祝いしてほしいの~」を動画配信プラットフォーム「OPENREC.tv」より、生配信した。午後9時からは表題と同じ「“MISAKO UNO” birthday party & live session ~いくつになっても離れていてもお祝いしてほしいの~”」をトーク&ライブで、午後11時前からは「2部」を「“MISAKO UNO” after party ~だってまだ足りないの~」と題して、ゲストを交えながらのトークを配信。1部がスタートすると、華やかなバルーンやカラフルなクッションがレイアウトされ、ゆったりとしたソファに座りながら進行できるように設定された部屋に、ドレスアップした宇野が登場した。配信ライブならではといえる、ファンからの「おめでとう」メッセージがコメント欄に盛んに飛び交って、すぐさまお祝いムードは満点に。宇野は「私の初のオンライン誕生日パーティに参加してくれて、本当にありがとうございます!」と、ファンに感謝を述べる。本来なら、ツアーの東京公演の予定だったこの日。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、全公演が開催自粛で延期となっていたところに、今回の誕生日ライブ配信が決定し、宇野もファンも喜びもひとしおの様子。トークを行うなか、“宇野ちゃんからのバースデープレゼント”という、3つの報告があった。1つめは、「ソロとしてのオフィシャルサロンを開始しまーす!」と発表された、『MISAKO UNO Inc.』の創立。2つめは、「YouTubeチャンネルを開設しまーす!」と、『MISAKO UNO OFFICIAL』の開設を公表。3つめは、延期になっていた全公演の代替公演となるホールツアーを2021年1月29日(金)の東京公演を皮切りに、全15公演予定していることを公表した。そんなうれしい報告に沸くファンたち。続く“宇野ちゃん! お願いこれやって”という、事前にやってほしいことを募ったという企画コーナーへと進んでいくと、全力でリクエストに応える宇野の姿に盛り上がる。すると、クローシュがのせられたテーブルが運ばれ、蓋を開けると、赤いボタンが。恐る恐るボタンを押すと、幼い女の子からのメッセージが流れる。宇野いわく、前から「大きくなったらみーちゃん(宇野)のために働いてあげるから、ずっと一緒に暮らして」とお願いされている、姪っ子の声だった。サプライズに喜ぶ宇野だが、ひとつ困ったこととして「結婚しないで」と言われているそうで、「結婚はさせてくれ!」と頼む場面も。この後、ライブコーナーに移るため、準備に入る宇野。その間、視聴者には、配信直前の新曲「Stand UP!」のミュージックビデオが公開された。さらに、オリジナルの「Stand UP! Tシャツ」の作り方動画も紹介。「新しいかたちでみなさんとつながれてうれしい」続いては、待望のライブコーナーへ。「みなさん、お待たせしましたー!」と、黒のベアトップとパンツスタイルに髪をアップにして、バンドメンバーと一緒に、アコースティックギターを抱えて現れた宇野。「すごく“ドキンちゃん”です! 心臓がどっかいっちゃった」と、生配信でのライブセッションに少々緊張気味のなか、ライブがスタート。1曲目は、カントリー調の「マイフレンド」を披露。歌い終わると、途中で歌詞を忘れ即興で作詞して歌ったという裏話を話しながらも、「こうやってまた新しいかたちで、みなさんと繋がっていられるのは、うれしいですね」としみじみ。「3月、4月、5月といろいろな気持ちになりました」と、ひとりで苦しかった時間を超えて、この日を迎えたことの幸せを実感しているようだった。2曲目は、ソロで歌うのは初めてだという、AAAの曲から「Love」。ラップも歌いながらも、ミディアムバラードでしっとりと聴かせる。歌い終わるとファンのコメントを確認し、「改めていい曲!」というメッセージに同意し、「練習していて何回も泣きそうになった」と告白。次はガラリと雰囲気を変え、「ここからはあったまりたい! クラップしたい」と煽る。3曲目はAAAの曲から、「Day by day」をのびやかな高音で、軽やかに歌唱。「とびきりの誕生日になりました!」と感謝し、「集まっていただいているので、未発表の新曲を持ってきました!」と、4曲目「きみとぼく」を歌い、ライブコーナーを締め括った。古坂大魔王との絶妙なクロストークも披露2部では、1部のトーク終わりで紹介していたオリジナル「Stand UP! Tシャツ」と、白のチュールスカート姿で現れた宇野。ここからはアフターパーティということで、宇野が18歳のときから知り合いだという、古坂大魔王が特別ゲストとして登場。お笑い芸人、アーティスト、クリエーターなどマルチに活躍する古坂だけあって、鋭いトークがビシバシ飛ぶなかに、笑いのエッセンスが随所にちりばめられる。古坂は、バカラのクリスタルで作られた、折り紙の動物モチーフのオーナメントを宇野にプレゼント。本当は「10万円分の生肉か、コレか迷った」と激白し、笑いを誘った。軽快にクロストークが進むなか、実は宇野が33歳最後の日に、財布をなくして大騒動だったことを話す。最終的には、冷蔵庫の野菜室に、リンゴと一緒にうっかり財布を入れていたという仰天エピソードを披露し、意外な一面をのぞかせた。そして宇野の誕生日翌日となる7月17日に、47歳の誕生日を迎えるという、古坂。宇野からも古坂に、カシウエアのペアスリッパをプレゼントする。続いては、「幸せだと感じる瞬間は?」「うちの家族自慢」など、トークテーマに沿って、続々とふたりのエピソードを紹介していく。笑いを交えて話す古坂に、容赦なくツッコンでいく宇野。長年の信頼関係があるふたりだからか、その掛け合いを観ていると、ほっこりした気分になった。生配信もあと5分を切るというところで、クローシュがのせられたテーブルが運ばれ、蓋を開けると、プリンが。古坂の誕生日を祝った後、駆け足でオンラインライブを振り返る。時計が深夜0時を過ぎ、また何かやろうと意見が合致するふたり。最後に「みなさん、こんな時間まで本当に、本日はありがとうございました! 34歳の宇野実彩子も、よろしくお願いします!」と、初のオンライン誕生日ライブを笑顔で終えたのだった。取材後記アーティストとしてはもちろん、メイクやファッション、スタイルまで支持の厚い、宇野実彩子さん。その力強いボーカルで私たちの心を響かせたり、古坂さんとのやりとりで見せたようなコミカルさでほのぼのとした気持ちにさせてくれたりと、色とりどりの魅力を発揮しています。34歳からの宇野さんのご活躍も目が離せませんね。セットリスト01.マイフレンド02.Love03.Day by day04.きみとぼくInformation
2020年07月21日【音楽通信】第41回目に登場するのは、センセーショナルなアイドルグループを輩出している音楽事務所WACKから放たれた、個性あふれる5人組アイドルグループ・GO TO THE BEDS(ゴートゥーザベッツ)!写真・角戸菜摘 取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol. 41GANG PARADEからGO TO THE BEDSへ写真左からユイ・ガ・ドクソン、キャン・GP・マイカ。“アイドル”というカテゴリーで勝負しながらも、ロックやパンクの要素も強い楽曲や強烈なパフォーマンスで人々を釘付けにするグループが多数在籍し、人気の高いBiSHなども所属する音楽事務所、WACK。そこからまた、新しいグループ「GO TO THE BEDS」が誕生しました。もとは2014年に結成された「プラニメ」が前身ユニットで、その後改名やメンバーの増減を経て「GANG PARADE」というグループに昇華。その後順調に活動をしていましたが、2020年3月、事務所代表でプロデューサーの渡辺淳之介さんが、WACKのなかで最もキャリアの長いグループ「GANG PARADE」を「GO TO THE BEDS」と「PARADISES」という、コンセプトの違う2つのグループにわけました。GO TO THE BEDSは、ヤママチミキさん、ユメノユアさん、キャン・GP・マイカさん、ココ・パーティン・ココさん、ユイ・ガ・ドクソンさんの5人で構成されたアイドルグループで、4月にはPARADISESとのスプリットアルバム『G/P』をリリース。そんなGO TO THE BEDSが、7月22日に1stフルアルバム『GO TO THE BEDS』をリリースするということで、グループからキャン・GP・マイカさん、ユイ・ガ・ドクソンさんのおふたりに登場していただき、お話をうかがいました。キャン・GP・マイカ。10月6日生まれ。2016年10月2日にGANG PARADEに加入。ーーまずはおひとりずつ、自己紹介をお願いします。キャン・GP・マイカ(以下、マイカ)グループの振り付けを担当しています。美容やダイエットについて調べたり実践したりすることが大好きで、最近はスムージー作りにハマっています。ユイ・ガ・ドクソン(以下、ドクソン)好きなものはラーメンで、ラーメンを早く食べることが得意なんです。最近は自転車に乗ることにハマっています。ユイ・ガ・ドクソン。10月21日生まれ。2016年10月6日にGANG PARADEに加入。ーーマイカさんとドクソンさんは、2016年にGANG PARADEに加入しています。2020年の現在はGO TO THE BEDSとなったおふたりですが、精神的支柱だったメンバー、カミヤサキさんが5月に脱退されてどう思われましたか。マイカ 私にとって、サキちゃんは、生みの親のような存在だったんです。サキちゃんがいなかったらこのグループにも入っていなかったので、やめると聞いて最初はびっくりしましたし、焦りもありました。でも、巣立った子どものような気分で「もっと強くなろう」と、あらためて思いましたね。ドクソン サキちゃんはグループの始まりの人だから、祖先のような感じだと思っていたので、脱退はびっくりしました。ーーそんななかで、GO TO THE BEDSとして活動していくことについては、どう感じましたか。ドクソン 正直なところ、思いがけないことでしたね。マイカ びっくりしましたが、クビじゃなくてよかったと思いました(笑)。まだ頑張れる場所があるというのが、救いでしたね。気持ちの切り替えはけっこう早かったです。ドクソン サキちゃんがいなくなって悲しい気持ちもありましたが、これからのグループに対してのワクワクもあったので、それぞれの気持ちが心のなかに同居していました。まさに、カオス。まるで頭の中に“小宇宙”ができる感じでした。マイカ しょう……焼酎?ドクソン 焼酎じゃないわ! 小宇宙(笑)!!アルバムは“This is GO TO THE BEDS”を体現ーー2020年7月22日に、1枚目となるフルアルバム『GO TO THE BEDS』をリリースされます。グループ名を冠したタイトルを含め、アルバムにこめた思いを教えてください。マイカ アルバム1枚を通して、力強いメッセージ性があると思います。今回、メンバーが作詞させてもらっている曲も多くて、いままで以上に自分たちの心の中をさらけ出しているかも。社長の渡辺さんが書いてくださった歌詞もあって、いまの自分たちに響くものが詰まっています。いままでいろんなことがありましたが「こんなところで止まっていられない!」という、強い気持ちがこもっているんです。ドクソン このアルバムは“This is GO TO THE BEDS”を体現した1枚なので、タイトルにもそれが表れているんです。ーー4曲目の「GO TO THE BEDS is my life」はみなさんで作詞されていて、決意表明のような曲だと感じました。ドクソン そうですね。「これが、私たちです」というメッセージをとくにこの曲にはこめています。ーーマイカさんは8曲目「Where are you?」の歌詞を書かれています。どこかセンチメンタルな印象のあるナンバーですね。マイカ 以前1度作詞を採用されて以来、かなり久しぶりにこの曲で、自分の作詞を採用されました。もともと恋愛映画やドラマを観るのが大好きで、動画配信サービスで観ていた「愛の不時着」という悲恋の物語に着想を得て、想像しながら歌詞を書いたんです。まだ自分のなかの引き出しが少ないので、作詞するときに読書するといいとまわりに言われることもあるんですが、本を読むと眠くなってしまうので(笑)。自分の好きなものから取り入れようと思いました。ーー実際に歌ってみて、どうでしたか。マイカ 歌っていても、気持ちが入りましたね。メンバーはサビの部分が大好きだと言ってくれて、うれしかったです。この歌詞は、自分の恋愛に置き換えてもらったり、恋愛じゃなくても身近にいる大切な人を想ったり、人それぞれの気持ちに合わせて聴いてもらえたらいいなと。ーードクソンさんは6曲目「SCREWY DANCER」の歌詞のほか、サウンドプロデューサーの松隈ケンタさんと10曲目「ROOM」の歌詞を共作されています。とがった印象の6曲目と柔らかい印象の10曲目と、サウンド的にも対照的ですがご自身ではこの2曲の印象はいかがですか。ドクソン 「SCREWY DANCER」は、もともと音楽がすごくかっこよくて、聴いたときに初めて頭のなかに映画のように映像が流れたので、それを歌詞にしました。歌詞の世界観については、救いがないんです(笑)。生きづらい世界だけど、逃げてもいいんじゃないかって、睨みながら生きるという曲になっています。「ROOM」は、もともと松隈さんが書いた歌詞で曲ができていて、それを聴いたときに、すごく良くて。そこに自分の言葉を足して作詞してみました。このアルバム全体に共通しているテーマで、最初はすごく苦しんでいるのですが、そのなかで希望を見つけて、それでも生きていくというイメージ。曲によってカラーは違うのですが、とくにこの「ROOM」はそういう、苦しいけれど、未来は楽しみでもあるという気持ちで書きました。ーー睨むというと、先行配信されていたアルバムの収録曲「I don’t say sentiment」のミュージックビデオを拝見すると、けっこうダークでパンキッシュな印象でした。ドクソン そうですね、地獄のような燃え盛る炎のなかで撮影した、ダークな世界観です。マイカ ミュージックビデオでは頭のネジが3、4本はずれた感じで、振り切ってパフォーマンスしています(笑)。久しぶりに広い場所で動きましたね。まるで演出のように雨が降ってきて、とても気持ちよく撮影できました。ーー今回の撮影でも着ていらっしゃるお衣装は、アーティスト写真では卒塔婆と一緒に写っていますが、どのようなコンセプトなのでしょうか。マイカ 墓場から出てくるという、ゾンビ林のような感じで……。ドクソン ゾンビ林って、何(笑)!?マイカ ゾンビがたくさんいるような林(笑)。卒塔婆には「呉音遠座別怒(GO TO THE BEDS)」と書いてあったり、骨がモチーフになっていたりしていて、全部がダーク。墓から這い上がってくるというイメージがあって、復活を試みている人という感じで、それはグループのスタンスにも、全部にリンクしています。ドクソン 「早く墓に入れよ!」という状況ですが、「意地でも入らない!」と(笑)。“意地”というテーマがありますね。「知らないわけない」と言われる存在になりたいーーいまは自粛や制限が解除されたものの、新しい生活様式で行動する時期となりましたが、普段はおふたりで出かけることはありましたか。ドクソン ふたりではあんまりないかな。マイカ このふたりに、メンバーのココ・パーティン・ココが入って、3人で行動することが多かったですね。ドクソン 3人でご飯を食べたりします。マイカ この3人は事務所に入った時期がほぼ同じという同期メンバーなので、一緒にいることが多いんです。ドクソン メンバー全員でいることも多いですよ。自粛期間中は外出しないので、みんなでZOOMで話したりしています。ーーZOOMではどんなお話をされるんですか。マイカ 会っていないと、「今日は何時に起きて、何を食べた」というくだらない話から会話が始まるので、すごく話が長くなるんです(笑)。最初はグループのことについて話をしたくてZOOMをつなぐんですが、2、3時間は世間話をしてしまって、本題になかなか入れない。ドクソン 「これを話そう」と思っていたことを話し終える頃には、すでに3時間ぐらい経っているんです(笑)。ーーみなさんの仲の良い様子が伝わってきますね。ところで、おふたりはメイクやダイエットなどで気をつけていることはありますか。マイカ 朝は白湯を飲んでいますね。お風呂に入るときは、浴室にルームスプレーをシュッとしてから、いい匂いに包まれながらお湯に浸かることもあります。ドクソン お湯に浸かりながらお茶を飲んでるよね?マイカ ハーブティーを飲んでる。ほかには自粛期間にヨガマットを買ったので、おうちで筋トレもしています。ライブができるようになったときに、体力がついていないとよくないので、おうちで鍛えて、体を絞っているんです。メイクは、大好きな田中みな実さんが使っているものを自分でも使ったり、バズっているものを一通り買ったりしていますね。ーー田中みな実さんの好きなところは。マイカ あざとくてかわいいところ(笑)。ずっとかわいいんですが、“いまが一番かわいい”んです。ずっとかわいいを更新しているところは、女性として見習いたいですね。だって、「前のほうがかわいかったよね」とは言われたくないから、常に「いまが一番かわいいよね」と言われたくて(笑)。ーードクソンさんはラーメンがお好きですが、ダイエットなど美容面で気にしていることは。マイカ 本当、太らないよね?ドクソン うん。でも、すごく食べるので、運動するように意識はしています。自粛が明けてからは、たまにランニングをすることも。以前はダイエットしていた時期もあって、やるとなったらとことんこだわってやる、ストイックな生活でした。ただ、ダイエットするとやせはしますが、疲れるというか。だから、いまはそれほど気にしません。食べたいものを食べてのびのび生活するほうが幸せ。そのほうが太らない気がします。美容面では、あまり気にしたことがないですね。普段は化粧を落とさないことが多くて、でもそのおかげで、肌が鍛えられています。あえて負担をかけて、基礎力を上げているんです(笑)。体のほうも、ジャンクフードばっかり食べていますが、病気も一切しないですし。ーーきっと代謝がすごくいいのかもしれませんね。ドクソン そうなんですかね。体に悪いことをして悪いものを食べて、基礎力をあげることに成功しました(笑)。グループのなかで私が1番健康だと思います。ーーでは、おふたりが 1番好きな人、憧れの人を教えてください。マイカ ひとりだけとなると、1番は土屋アンナさんですね。小学生のときに「東京ガールズコレクション」にモデルとして出演されているアンナさんを見て、ビビビときたんです。そこからアンナさんのことを調べていったら、モデルも演技も歌もされているオールマイティな活動や生き方に感銘を受けて。もともと幼稚園のときからアイドルになりたいとは思っていたんですが、アンナさんの存在が、本格的に芸能の世界でがんばりたいと思うようになったきっかけだったから。ドクソン ひとりに絞るのは難しいですが、筋肉少女帯の大槻ケンヂさんですかね。ほかにもいる好きなアーティストの人たちにも共通しているんですが、何もなかったところから何かを生み出している方が好きなんです。大槻ケンヂさんはそれをいくつも成し遂げていらっしゃいますし、ライブにもよく行っていたんですが、すごく楽しい。MCも多くて、それも全部面白くて、楽しい。もう尊敬するところしかないです。ーー筋少のライブからご自身のパフォーマンスに影響を受けているところはありますか。ドクソン コール&レスポンスの楽しさをお客さんとして味わったのは、大きいですね。ライブではお決まりの、これを言ったらこう返すという、お客さんとのふれあい。ライブに行っても、最初はよくわからなくて聴いているだけだったのが、回を重ねるごとにコール&レスポンスが自然とできるようになって、人の気持ちをうれしくさせることができるのは、すごいと思います。ーーでは、GO TO THE BEDSさんとしての今後の目標を教えてください。マイカ 私たちは、ライブがカッコいいグループになりたいと思っています。そして、いままで活動してきたことを着実に超えていきたいです。「GO TO THE BEDSが好きだったらカッコいい」という、そういう流行り方をしてほしい。「GO TO THE BEDS、知らないわけないよね」とみなさんに言われるくらいの存在になりたいですね(笑)。ドクソン 「I don’t say sentiment」のミュージックビデオでもそうだったんですが、あの設定では起きたら地獄で、地獄を抜けた先もまた地獄だったという世界なんですが、最近そのことを考えていて。ミュージックビデオに限らず、どんなに幸せそうに見える人でも、それぞれの尺度でたぶん誰でも何かしらの地獄を感じることがあるんじゃないかと。そんな地獄を乗り越えるためのささやかな存在になれるよう、これからも活動していければと思っています。取材後記個性の違うキャン・GP・マイカさん、ユイ・ガ・ドクソンさんのおふたりに、自粛は解除されましたがさまざまなことに配慮しながら、取材させていただきました。時折見せる無邪気な表情がキュートなおふたりのいる、GO TO THE BEDSさんの1stアルバムをまずはチェックしてみてくださいね。GO TO THE BEDS PROFILEヤママチミキ、ユメノユア、キャン・GP・マイカ、ココ・パーティン・ココ、ユイ・ガ・ドクソンの5人からなるアイドルグループ。2020年3月、所属する音楽事務所WACKが主催する所属アーティストエキシビジョン「WACK EXHiBiTiON」で、事務所代表の渡辺淳之介より「GANG PARADE」を「GO TO THE BEDS」と「PARADISES」の2つのグループにわけた形での結成がアナウンスされた。4月1日、PARADISESとのスプリットアルバム『G/P』をリリース。7月22日、1stフルアルバム『GO TO THE BEDS』をリリース。InformationNew Release『GO TO THE BEDS』(収録曲)01.行かなくちゃ?02. I don′t say sentiment03. Don′t go to the bed04. GO TO THE BEDS is my life05. パッパラパー06. SCREWY DANCER07. MISSING08. Where are you?09. EGOIST10. ROOM11. GROOVE12. VILLAIN2020年7月22日発売WPCL-132223000円(税別)
2020年07月17日【音楽通信】第40回目に登場するのは、愛にあふれるパワフルなボーカルで、いつも聴き手をハッピーにさせてくれる、AIさん!取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol. 40毎日を精一杯過ごしていたら20年経っていた2000年11月にシングル「Cry,just Cry」でデビューされてから、20周年イヤーを迎えている、シンガーソングライターのAIさん。アメリカで生まれ、鹿児島で育ったAIさんは、そのワールドワイドな感性と確かな実力で、国境をボーダレスに飛び越えて大活躍。また、「Story」「ハピネス」「みんながみんな英雄」などの大ヒット曲を世に送り出し、これまでに3度のNHK紅白歌合戦出場、第59回日本レコード大賞・優秀作品賞を受賞するなど、AIさんの歌声は私たちの心に着実に届いています。そんなAIさんが、2020年7月8日に、アニバーサリーミニアルバム『IT’S ALL ME –Vol.1』をリリースされるということで、お話をうかがいました。ーーデビュー20周年ですが、これまでを振り返ってみていかがですか。この20年はいろいろなことがありました。デビューした頃は自信に満ちあふれていたのですが、なかなか売れなかったり、ライブにお客さんが来てくれなかったりといったところから、ちょっとずつやってきた感じがあります。ーー徐々にアーティスト活動に手応えを感じたのはどのようなときでしょうか。ライブにお客さんが来てくれるようになって、そこから手紙をいただけるようになったときですね。「え! 私に手紙をくれるの!? これがファンレターだ!」と、すごくびっくりしました(笑)。でも、とてもうれしかったですね。ライブのあとに待っていてくれる人もいて、「サインください」と言ってくれて。私、サインないけどなあと思いながら署名して(笑)。なつかしいです。最近は、普通にライブをさせてもらえるようになって、すごくありがたいと思っています。自分としてはこの20年間、毎日をなんとか過ごすので精一杯。それを繰り返していたら、気づくと20年も経っていたという感じですね。ーーこの20年のなかで、安室奈美恵さんやEXILE ATSUSHIさん、The Jacksons、チャカ・カーン、最近では長渕剛さんといったそうそうたる面々とコラボレーションされていますね。いろいろな方がいらっしゃいますが、コラボレーションするたびに、勉強になっています。みなさんに共通しているのは、「自分が本当にリスペクトしている人たち」ということですね。もしその人の曲が趣味じゃなかったら、コラボしていません。自分ではなく、コラボしてきたまわりの人たちがすごい人たちなので、それによって活かされてきた気がするんです。世界中の人々が仲良くなるよう、音楽でつなぎたいーー2020年7月8日に、豪華タイアップ曲や海外アーティストのフィーチャリング曲を収録した、アニバーサリーミニアルバム『IT’S ALL ME –Vol.1』をリリースされます。どのような思いを込めたアルバムですか。もともとこのアルバムを作るときに、東京オリンピックの開催予定があって、世界各国から日本にさまざまな人が来ると思っていました。万が一、外国の方が私の曲を聴いたときでも「ウェルカム!」という気持ちが強くて、世界平和を目指して「人々が仲良くしてほしい、人と人を音楽でつなぎたい」というメッセージを込めて作ったんです。国同士でけんかしたり、トップ同士が争っていたりしますが、私たちは仲悪くなりたくないじゃないですか。アルバムだと、3曲目「kokoro feat.jenn Morel,Joelii」はドミニカ出身の女性ラッパーと、5曲目「You Never Know feat.MJ116」は台湾のヒップホップグループといった海外のアーティストとコラボしていますが、それぞれいろいろなことがあっても、私たちは仲良くなれる。世界に向けて、アジア人でも、白人でも、黒人でも、ヒスパニックでも関係なく、「言葉がわかりあわなくても、心で、音で、通じ合える」と思っていて。こういう曲は、これからもずっと作っていきたいですね。ーー6曲目「僕らを待つ場所」は、映画『AI崩壊』(2020年公開)の主題歌となったバラードです。“AI”崩壊なのに“AI”が歌うというのは、最初はギャグなのかな、どうしようかなと(笑)。映画は人工知能の話でしたが、主題歌は逆に人間味のある音楽にしたいと思いました。ミュージックビデオでも、いつもは感動を避けるのですが、この曲に関しては「泣きたいんです」と監督に言って、ドキュメントのように仕上がりました。レコーディングでもこの曲は感情的になって泣いてしまったので、その感動をみなさんにも味わってほしいなと。泣いてすっきりすることもありますし、そういう曲も必要だと思ったんです。ーー1曲目の「ギフト」は、2020年4月24日に配信された新しい曲ですね。もともとテレビ番組(TBSテレビ『王様のブランチ』のテーマソング)で流れることが決まっていたんですが、テレビはひとりで観ている人もいれば、夫婦で観ている人も、怒っている人も、幸せな人もいろんな人が観ますよね。だから、どんな人が観て、この曲を聴いても、気持ちがすっきりするものにしようと意識して作った曲です。ーーイラストレーターのChocomooさんが手がけた「ギフト」のリリックビデオもあたたかい感じがしました。Chocomooは最高なんですよ。彼女の絵で、パソコン同士がつながっていて、握手をしているイメージのものがあるんですが、コロナ禍で活動を自粛していたり制限していたりするいまの状況にぴったりだと思いましたね。ーー今回、『IT’S ALL ME』の“–Vol.1”ということですが、今後も続くのですね。ほかにもいい曲がいっぱいあるので1枚には収まらないのと、少しメッセージが違ったところもあるので、続いていく感じもいいんじゃないかと。“–Vol.1”も1曲ごとに大事に作っているので、曲数は少ないのですが、そのぶん曲をちゃんと聴いてほしいというメッセージもあります。なるべくポジティブなものを発信したいーーAIさんを拝見していると、こちらまで元気になれるようなパワーやあたたかさを感じます。ご自身では、いつも前向きにいようと心がけていらっしゃるのですか。お客さんや聴いてくれる人の前といった、外に発信するものは、なるべくポジティブなものにしようと意識しています。暗い気持ちは、家族や近い存在の人の前で出せばいいから。もしも外に自分の暗いテンションを出していっても、みんなからしたら関係ないことですよね。大変なのはみんなも一緒なので、メッセージなども前向きなものを心がけています。ーー活動自粛や制限は解除されましたが、現在、AIさんはおうちでどのように過ごしていますか。自粛、制限があったときは、買い物もひとりで行っていましたし、子どもが小さいので一緒に連れていって何かあってはいけないので、外に出ませんでしたね。感染しないようにということもありますが、もしも感染していて気づかずに私や夫が外に出て、たとえばテレビのお仕事で共演者にうつしてしまうようなことがあってもいけないから、いろいろと考えて過ごしています。自粛が解除されてからは、久しぶりに子どもと一緒に公園に遊びに行きました。ーーおうち時間が長くなって、興味を持ち始めたことはありますか。料理をどれだけ楽に作るかですね(笑)。もともと料理をすることが好きで、食材を切るのがストレス発散になるんです。どれだけ正確に野菜が切れるか、どれとどれを混ぜたら、どんな味になるかというゲームみたいだなと(笑)。料理をしているときは自分の時間になるので、楽しいですね。あとはやっぱり、子育てですね。コロナ禍になる以前は、仕事で外出する機会も多く、集中して子育てできないところがあって、自分を正したいと思っていました。いまは1日の流れを見ながら、自分の性格も研究しながら、子どもと過ごしています。以前はベビーシッターさんもいたし、一緒に外出するときは関係者の方に抱っこしてもらったりも。いまのように24時間、何か月も子どもと一緒ということはなかなかなかったので、とてもうれしいですね。ーーそのお気持ちわかります! ところでAIさんはおしゃれなイメージがありますが、普段はメイクなどどうされていますか。普段は全然メイクしないんですよ。この髪の毛も自分で染めました。いまの時期は、美容室に行くのもまだ控えようと思って、とりあえず自分でなんでもやろうと思っているんです。今回のミニアルバムのジャケ写も、全部自分でやりました。服だけ、スタイリストの方に持ってきてもらって着替えて、メイクも自分でして、準備して、撮影現場もカメラマンと私だけだったんです。ーージャケ写でAIさんが抱えているものは何ですか。“煙”なんです。下からワッと煙が出たときに写真を撮って、後から色をつけました。アートディレクターのとんだ林蘭さんからのアイデアです。パッと見たときに何かを抱きしめているイメージでインパクトがあるなと。自分だったら子どもがいるので抱きしめている感じもありますし、それぞれの人にとっての“大事なもの”を抱きしめるというイメージですね。ーー今後の状況にもよるとは思いますが、11月からは全国ツアーの予定がありますね。ツアーはやりたいですけどね、これがどうなるかはわからなくて。もしツアーができるとしたら、20周年ということで昔の曲もやって、ベストツアーのようにしたいです。いまライブハウスだと透明のカーテンで区切っていたりしますが、ホールツアーだとどうやって安全性を保つか。安心して来てもらえるようにして、楽しんでもらいたい。もし開催できたら、感動して大号泣しそうですね(笑)。取材後記AIさんの力強い歌声と笑顔は、私たちを元気にさせてくれるパワーがあります。今回は、Zoomでインタビューさせていただきましたが、ひとつずつ丁寧にご対応してくださいました。アーティストとして、女性として、ママとして、誰もが応援したくなる魅力いっぱいのAIさんのニューミニアルバムを、まずはチェックしてみてくださいね。AI PROFILEアメリカ合衆国ロサンゼルス生まれ。鹿児島県鹿児島市育ち。ゴスペルクワイアーで鍛えた本格的な歌唱力、L.Aアートスクールで学んだダンスのセンス、完璧な英語、バイリンガルでラップもこなせるストリート感覚を持つ。アンダーグラウンドからオーバーグラウンドまで指示を得ている。2000年11月、シングル「Cry,just Cry」でデビュー。2005年5月にリリースしたシングル「Story」が大ヒット。2009年9月、1stベストアルバム『BEST A.I.』はオリコンチャート1位を獲得し、名実ともにトップアーティストの座を確立する。その後も「ハピネス」、「みんながみんな英雄」などの大ヒット曲を世に送り出す。これまでに3度のNHK紅白歌合戦出場、第59回日本レコード大賞・優秀作品賞を受賞。自身の生い立ち、バックボーンである“和”と“洋”の両極を掲げ奏でるのは、予定調和の聴き心地いい楽曲ではなく、新鮮な驚きと純粋な感動を与えるサウンド・メイキング。2019年11月、デビュー20周年イヤーを迎え、20周年記念ベストアルバム『感謝!!!!! – Thank you for 20 years NEW &BEST -』を発表。2020年1月、シングル「僕らを待つ場所」、6月9日に「長渕剛 feat. AI『しゃくなげ色の空』」を配信リリース。7月8日、アニバーサリーミニアルバム『IT’S ALL ME –Vol.1-』を発売。9月から10月に予定していた7公演は中止・延期とし、11月3日から2021年3月14日まで、「AI 20周年記念全国ツアー」を開催予定。InformationNew Release『IT’S ALL ME – Vol.1』(収録曲)01. ギフト02. GOOD AS GOLD03. Kokoro feat. Jenn Morel, Joelii04. Summer Magic – Japanese Version05. You Never Know feat. MJ11606. 僕らを待つ場所2020年7月8日発売*CD収録内容は通常盤・初回限定盤共通(通常盤)UPCH- 20554¥1,600(税別)(初回限定盤)UPCH- 29369(CD+DVD)¥2,000(税別)*初回限定特典ボーナスDVD付き。シングル曲MV+メッセージ&スペシャルメドレー映像。【初回限定盤特典DVD】1.「Summer Magic」Music Video 2.「You Never Know feat. MJ116」Music Video 3.「僕らを待つ場所」Music Video 4.「ギフト」 Lyric Video (feat. Chocomoo)5.AI’s メッセージ&スペシャルメドレー (Stay Home Version)。
2020年07月08日【音楽通信】第39回目に登場するのは、同世代の女性から支持されている、ポップスの王道を走り続ける次世代シンガー、杏沙子(あさこ)さん!取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol.39母の大好きな松田聖子さんの歌が音楽の原点2016年に初めてオリジナル曲「道」を発表し、インディーズ時代からYouTubeで公開しているミュージックビデオの総再生回数が現在1000万回を超え、とくに女性からの人気が高い杏沙子さん。2018年にメジャーデビューしてからも、その共感を呼ぶ歌詞やポップネスな楽曲が注目を集めています。そんな杏沙子さんが、2020年7月8日に2ndアルバム『ノーメイク、ストーリー』をリリースされるということで、お話をうかがいました。ーー2016年から音楽活動をスタートされましたが、音楽の道を選んだきっかけは。鳥取県出身なのですが、鳥取は車社会で、どこへ行くにも車移動でした。その車の中で出会った音楽が、いまのわたしの音楽の原点になっています。母の大好きな松田聖子さんの曲はとくに車の中でよくかかっていて、聖子さんの歌を聴きながら、幼心に「この人はいくつ声を持っているんだろう?」と興味を持ち、「自分もこんなふうに歌いたい」と思ったんです。だから、聖子さんが、音楽の道を進むきっかけとなったアーティストです。家族みんな歌うことが好きだったので、車の中はいつもカラオケボックス状態で、毎日、毎日歌っていましたね。小学生の頃から、歌手になりたいと思っていました。ーーその後、実際に音楽活動をスタートされて、インディーズ時代からYouTubeで公開しているミュージックビデオの総再生回数は現在、1000万回を超えています。なかでも「アップルティー」という曲は再生回数750万回を超えていますが、とくに中高生の女性から支持されているそうですね。「アップルティー」は2作目のミュージックビデオなんですが、当時インディーズ活動をしていた私は、かき集めたバイト代で学校を借りて、友達にノーギャラでエキストラの学生役を頼んで……と、半分遊び感覚でそのミュージックビデオを制作したんです。その結果、まさかこんなにたくさんの方に見てもらえるとは、思ってもいませんでした。とくに中高生に見てもらえているというのは、この曲の歌詞やメロディに詰め込んだ“青春”と、リアルな友達と遊び感覚で作ったからこそ撮ることができた本物の“青春”がばっちりハマって伝わったからかなぁと思います。本物って、理由なく伝わるものなんでしょうね。みんなで制服を着て、みんなでダンスを踊ったあの撮影は、音楽活動と切り離しても、特別な思い出です。ーー2018年7月に、ミニアルバム『花火の魔法』でメジャーデビューされました。もともとデビューを目指していたのですか。デビュー前と後で心境の違いは。メジャーデビューが決まった時は、もちろんうれしかったんですが、背筋が伸びる思いのほうが強かったです。「ちゃんとしなきゃ」というか。良くも悪くも真面目な性格なので、それこそ「アップルティー」のときみたいに、もう遊び感覚じゃいけないなと(笑)。デビュー前後の気持ちの違いは、自分の音楽に、より向き合うようになったことですね。“杏沙子の音楽”ってなんだろう、私は何を歌うべきなんだろうって。自分ではデビュー前後で何かを変えるつもりはなかったし、変わったつもりもなかったのですが、いま考えると、けっこう肩に力が入りすぎていたかもしれない。最近、やっと力が抜けてきた気がします。新作は“すっぴんの気持ち”を歌った物語が満載ーー2020年7月8日に、2ndアルバム『ノーメイク、ストーリー』をリリースされます。どんな思いがこめられたアルバムでしょうか。また、タイトルの意味は。タイトルを日本語にすると「すっぴん」の「物語」です。隠しておきたい感情や、言えなかった言葉、恥ずかしい気持ち、情けない自分。そんな“すっぴんの気持ち”を歌った物語がたっぷり詰まったアルバムです。これまで映画や小説のようにフィクションの物語を歌にすることが好きだったのですが、最近はエッセイのような、よりリアルな温度のあるノンフィクションの物語を歌いたいと思うようになってきました。その温度が高いほど、ひとりよがりな歌になってしまうんじゃないかと以前は思っていたんですが、意外とそうではなく、より「誰かの歌」にもなり得るんだと、気づく瞬間があったんです。今回、思い切ってノーメイクなストーリーを書いたので、「あなたの」ノーメイクなストーリーが1曲でも見つかるとうれしいです。ーー収録曲「見る目ないなぁ」は6月10日から先行配信されていますね。終わりを告げた恋へのやりきれなさが伝わるが曲ですが、実体験なのでしょうか。ミュージックビデオでは、コンビニの袋をぶらさげてお酒を飲みながらトボトボと帰る背中が悲しく印象的でした。はい、実体験をもとにして書いた曲です。この曲が生まれたのはけっこう前のことなのですが、書いた当時はあまりにぶっちゃけた内容すぎるので、自分の中でお蔵入りさせていました(笑)。でも、先ほど言ったように歌いたい、書きたいものが変わってきて、ずっと忘れられずにいたこの曲を引っ張り出してきて、完成させました。とにかくこの曲に合わせたリアルなミュージックビデオにしたくて、「コンビニから家に帰る」というだけのごくシンプルな設定にしました。撮影は、リアル感を出すために、できるだけ何も考えずにたくさん歩いたんです。表情を最後の最後まで見せない演出なんですが、それは「私の物語であると同時に、誰かの物語になったら」という願いを込めて、意図的に顔が見えないように撮影しました。ーー収録曲「クレンジング」の歌詞に出てくる「コーラル色のリップ」や「ラメ入りアイシャドウ」など、こちらにもパッと映像が浮かび、好きな人に会うときにおしゃれしたい恋する女性の姿が伝わってきます。歌詞を書かれる際、情景なども意識しているのですか。「クレンジング」も実体験をもとにしているので、見た景色、感じた気持ちをそのまま言葉に変換する感覚で作りました。実体験ではない曲も、基本的には、情景が浮かぶ言葉、色を感じる言葉を意識して書いているんです。私の音楽のルーツである松田聖子さんの楽曲の、多くの作詞を手掛けていた松本隆さんの書く歌詞が大好きで、松本さんの言葉が見せてくれる情景や色に、すごく影響を受けています。ーーほぼすべての作詞と作曲を杏沙子さんご自身で手がけていらっしゃいますが、ひとつの曲を完成させるまでに心がけていることは。直感です。なんだかよくわからないけれど、直感的に心が動いた言葉や表現は、すぐにメモするようにしています。その直感が起爆剤になって曲を書き始めるので、最初の「ビビッ!」と来るものがないとワクワクが持続せず、だいたい途中で書くのをやめてしまうことが多くて(笑)。直感を掘り下げて、広げて曲にしていくので、書き切った頃には心が動いた理由がわかるので、答え合わせみたいで面白いんです。ーー収録曲「ファーストフライト」は、特別な曲だそうですね。今回の『ノーメイク、ストーリー』のような、自分の中にある本物の気持ちをテーマにしたアルバムの、先駆けのような曲です。女の子がパイロットを目指すドラマL『ランウェイ24』(テレビ朝日系=ABCテレビ制作、2019年放送)の主題歌のお話をいただいたことがきっかけで作った曲です。夢を追うからこそ感じる不安や焦りの感情、道なき道を進む孤独感が、ドラマの主人公とパイロットという職種が自分と完全にリンクして、思い切って自分の中にある負の感情を曲にぶつけてみたんです。自分のために書いたようなこの曲が、誰かのテーマソングに、お守りのような曲になっている声を聞いて、「自分の本物をさらけ出すことが、自分が歌う意味になるのかもしれない」と気づかされた特別な曲。自分で書いた言葉に自分が救われるという経験をしたのも、この曲が初めてでした。ダイヤの原石みたいな“本当”を見つけていきたいーー目標としているアーティストの方はいらっしゃいますか。何度かお話に出ておりましたが、松田聖子さんは別格なのでしょうか。歌う、という点では、やはり小さい頃から聴いている松田聖子さんに、いまも変わらず憧れています。聖子さんのように、曲ごとに声を変え、時にはその曲の主人公になりきる、文字通りいろいろな声色でいろいろな色を見せられる歌い手を目指し続けます。書く、という点では、松本隆さん。言葉でも、色を見せられるソングライターを目指し続けたいですね。ーーところで、美容面において、好きなコスメや普段のお化粧、ファッションなどを教えてください。メイクもファッションも大好きなんです。美容面は、自粛期間中にずっとほしかった美顔ローラーを奮発して買って、毎日コロコロしています(笑)。あと、作曲がはかどるお風呂タイムも、欠かせません。最近、“艶肌メイク”の気分になっているので、ハイライトにハマっていますね。どこにどう入れたらナチュラルに透明感が出るのか、日々研究中。ファッションは、透け感のある服に、少し個性的なゴールドやシルバー、ガラスのアクセサリーを合わせるのが、いまのマイブームです。ーーでは現在、ご興味のあることはなんですか。おうち時間が増えたので、リラックスできるおうちを目指して“おうち革命”を起こしました(笑)。寝る前のルーティンに、アロマディフューザーで部屋を好きな香りでいっぱいにして、好きな音楽を聴く時間が加わりました。興味があるのは、香りですね。いま、4種類のアロマオイルが家にあるのですが、毎日、選ぶ香りが変わるんですよ。昨日は癒されていた香りが、今日はなんだか甘ったるく感じたり。面白いので、香りオタクになってみたいです(笑)。ーーシンガーソングライターとしての今後の抱負を教えてください。歌いたいこと、書きたいことが、日々変わっていっているのを感じているので、素直にそれに従っていきたいなと思っています。普段の生活も、曲を書くときも歌うときも、いまはできるだけ自分に正直でいたい気分。それで、自分でも気づかなかったダイヤの原石みたいな“本当”を見つけていきたいですね。それをもっともっとたくさんの人と、音源やライブで共有していけたらうれしいです。取材後記ナチュラルでチャーミングな印象の杏沙子さんの歌は、女性なら誰しもが「わかる!」とうなずいてしまう、色とりどりのストーリーに満ちています。これからももっとたくさんの人たちに、杏沙子さんの歌が届いてくのでしょう。そんな杏沙子さんのニューアルバムをまずはチェックしてみてくださいね。杏沙子 PROFILE1994年4月4日、鳥取県生まれ。2016年、初のオリジナル曲「道」を発表し、本格的に音楽活動をスタート。YouTubeに公開した曲「アップルティー」は女子中高生を中心に注目を浴び、後にJTBのCMソングにも起用される。2018年7月、1stミニアルバム『花火の魔法』にてメジャーデビュー。2019年には、「ケチャップチャップ」が『NHKみんなのうた』に抜擢される。同年夏、初のドラマ主題歌(ABCテレビ「ランウェイ24」)に「ファーストフライト」を書き下ろす。2020年1月、配信限定シングル「こっちがいい」をリリース(JSBC SNOW TOWN 2019CM曲)。7月8日、2nd フルアルバム『ノーメイク、ストーリー』をリリース。新曲「ジェットコースター」がNHK-FMの「ミュージックライン」6・7月度のエンディングテーマに決定。InformationNew Release『ノーメイク、ストーリー』(収録曲)01. Look At Me!!02.こっちがいい03.変身04.クレンジング05.見る目ないなぁ06.outro07.交点08.東京一時停止ボタン09.ジェットコースター10.ファーストフライト2020年7月8日発売*CD収録曲は通常盤・初回限定盤共通。(通常盤)VICL-65383¥3000(税別)*CD収録内容は全形態共通(初回限定盤)VIZL-1772¥4000(税別)*特殊パッケージ、2CD。〈初回限定盤 LIVE CD収録曲〉ワンマンライブ「あさこまとめ2019 ~まとめません~」2019.12.8 Veats Shibuya公演01.ファーストフライト 02.青春という名の季節 03.Look At Me!! 04.真っ赤なコート~toi toi toi 05.見る目ないなぁ 06.道 07.花火の魔法 08.あなたのことが好きだなんて言えないんです。 09.こっちがいい
2020年07月06日【音楽通信】第38回目に登場するのは、ソロデビュー15周年を超えて、さらに前進し続けるヒップホップ界のカリスマ、KREVAさん!写真・角戸菜摘 取材、文・かわむらあみり ヘアメイク・結城藍【音楽通信】vol.38ソロデビューしてからの15年は楽しくやってきた2019年にソロデビュー15周年を迎えたKREVAさん。昨年は9カ月連続リリース、『成長の記録~全曲バンドで録り直し~』『AFTERMIXTAPE』と2枚のアルバムを発売、日本武道館でのワンマンライブに加え、横浜アリーナでの<908 FESTIVAL 2019>開催、「KREVA CONCERT TOUR 2019-2020『敵がいない国』」のライブハウスツアーを実施するなど、精力的な活動を展開されました。そんなKREVAさんが、2020年6月24日にニュー・シングル「素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI」をリリースされるということで、お話をうかがいました。ーーまずソロデビューされてからの15年を振り返ると、どのような日々でしたか。この15年の変化を広い意味で言うと、テクノロジーの面で、だいぶん変わってきた気はしますね。CDもどんどんストリーミングに変わってきて、曲を作る機材も変わってきました。パソコンの変化ともいえますね。ーーKREVAさんは、常に何かに挑戦していらっしゃるようなイメージがあります。そうですねえ。楽しいですよ、進んでいくテクノロジーについていくというのは。たとえば、ロボット掃除機って、最初出たときに「いらない」って思ったんですが、いまは性能も上がってきて「あると便利だな、ないと困るな」という感じになってきている。音楽でもロボット掃除機的な、便利なものがたくさん出てきて、それもどんどん使いやすくなって、自分のような完全独学でやっている身としては、助かっています。その面白みで、音楽を続けていられますね。お米を炊く以外に、料理もできる炊飯器を買うと、とりあえず一発目にパエリアいっとこうか、みたいな(笑)。そしてまた、パエリアから違う料理にいってみようとする感じ。この道具があるから、この音楽を作ろう、という考え方も増えました。ーー15年はあっという間でしたか。振り返り方、切り取り方にもよるんですが、シンプルに年月だけを言うと「おお、もうそんな?」という感じもするし。ただ、やってきたことを振り返ると「なっげぇ!」って、なってくると思うんですけどね(笑)。楽しくやってきました。ーー今年、2月から6月まで開催予定だった「KREVA CONCERT TOUR 2019-2020『敵がいない国』」のホール&アリーナツアーを新型コロナウイルス感染拡大防止のため、はやい段階で無期限延期とされました。2月には無観客ライブをYouTubeで配信されていましたね。「敵がいない国」というタイトルを掲げたツアーだったことが、無期限延期する決断がはやかった理由です。「敵がいない国」というのはファンタジーで、ライブのMCでも、「敵がいない国ってないじゃん、でもあるじゃん」って伝えていて。「ここにいる人たちだけでも、敵がいない国を作ろうって全員が思えば、そうなるよね」って、ファンタジーで作り上げていく世界だったんです。でもそのファンタジーを上回る、全世界が敵の見えない状態になるなんて、想像だにしない現実がやってきてしまったから。本番同様のリハーサルであるゲネプロもやってみたんですが、何をやってもハマんないというか。自分が考えていたすじ道のことも全然響かなくなって、「やめましょう」と言いました。ーーすごいご決断でしたね。いまとなればね。あのときはやったほうがいいのかなという気持ちも少しはありました。みんなが不安な気持ちで来ても、俺が楽しめていれば、「楽しもうか」という気にもなれたかもしれないですが、こっちもみんなも迷っている状態で「敵がいない国」はありえなかったです。新曲はこの3年で1番好きなメロディとトラックーー本来は「敵がいない国」ホール&アリーナツアーで披露されるために書き下ろされた新曲「素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI」が6月24日に発売されます。KREVAさんが見出されたシンガー・SONOMIさんとの楽曲ですね。「敵がいない国」のツアーに、SONOMIを呼んでいたんです。2006年に出した『愛・自分博』というアルバムに入っている「涙止まれよ feat. SONOMI」という曲をこのツアーで歌いたくて。当時から、ふたりでひとつの声になっている感じがあるんです。今年のホール&アリーナツアーは無期限延期になりましたが、昨年12月には「敵がいない国」のライブハウスツアーがあったので、そこでSONOMIと一緒に歌ってみたんです。どちらもベストな声が出る高さの曲じゃないんですが、大きくもない、小さくもない声で、ほどよく歌うふたりの気持ち良さがあって。これはやっぱりすごいなと思って、そんな曲がもう1曲できたらと考えていたんです。この曲は、自分がこの3年ぐらいで作ったなかで1番好きなメロディ、トラックです。ーー『愛・自分博』のときの「KREVA TOUR 2006 愛・自分博〜国民的行事〜」のツアーファイナルとなった日本武道館ライブに、私も行かせていただきましたが、当時からSONOMIさんは堂々とされていた印象です。SONOMIは、何年一緒にいるかわからないですが、妹みたいな感じなんです。自分の声の成分のなかに、SONOMIの声の成分も聴こえてくるというか(笑)。科学的に調べたら、同じ成分が出てくる気がして、以前から響き合うところがありました。ーーSONOMIさんの一番の良さはどこですか。なんかずっと垢抜けない感じかな(笑)。ただ、キャリアも長いんで、SONOMIが出演しているイベントでは“姉さん”という捉えられ方をしていて、俺からすると「お前が!?」と(笑)。「敵がいない国」でも、SONOMIは“国民の妹”というキャラクターで出演していたんですが、俺からすると、“永遠の妹”。視点が人とちょっと違う感じがあって、そこが面白いんです。音楽的な面では、グッとくるポイントがすごく似ていると思います。そこはすごく大事。「これ泣ける!」と言ったときに、「はっ?」って言われると困るんですが、そこはお互いに同じことをキャッチできていると思います。ーー「素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI」のKREVAさんのラップ部分で、「自分で終わらせるのは無し 必ず生きる いつかは笑えるかな これもかすり傷って」という歌詞がありますが、とても深い言葉だと感じました。うちの事務所の社長と20年前ぐらいから、「とりあえず死ぬのは無しにしよう」って、ずっと言っているんです。ヤバいものとか、エグいものとか、いろいろあるとしても、自分で人生を終わらせるのはとにかく無しにしようというのは、よく言っていたんですよ。あと「敵がいない国」のライブハウスツアーのときに、ファンクラブの方と直接会う企画の“ミート&グリート”をやったんです。各公演5人ぐらいの方とお話をしたんですが、「よくそんなにつらいことがあって堪えられたな」という経験をしている方がいて。そういう方が、俺の音楽を聴いて「がんばろうって思えた」と言ってくれるんですよ。俺なんて、9対1ぐらいで嫌なことばっかりなんですが、このレベルで「もうやだ」と言っている場合じゃないなって。そこで、その歌詞が出てきました。ーー今回、楽曲からアートワークまですべてKREVAさんご自身が手がけた完全セルフプロデュース作品ということですが、ジャケット写真には幼少期のKREVAさんの写真を使用されたそうですね。このジャケ写は“棚から牡丹餅”的な感じなんです。昔から趣味のようにやってきた、コラージュで作っています。今回のツアーに向けて、ファンじゃない人も含めて来てもらえるようにとYouTubeを始めてみて、自分で動画の編集もやって、できるようになってきたんですよ。そうやって動画編集ソフトを使えるようになったら、デジタル的にコラージュができると思って、やってみたらこうなりました(笑)。この写真は、うちの父親が写真好きで、3歳ぐらいのときに撮ってくれたものです。母親はなんでもとっておくタイプで、たとえば俺が子どものときに使っていたマグカップをまだ家で使っているみたいなのが、いっぱいあって(笑)。そのなかで、とっておいていた写真のひとつをジャケ写にコラージュしました。それとバンドメンバーに、「ヴィンテージの楽器の写真を撮って送ってくれたら、コラージュするよ」と言っていたんです。(ホールツアーの)バンドメンバーの田中義人さんのギターとか、ベースの大神田智彦くんとか。神ちゃんは1960年代後半の楽器を持っていて、「いい音するんだよね」って、楽器をずっと使い続けられるのはいいなと。一発目に、ドラムの白根(佳尚)から、ヴィンテージシンバルの写真が送られてきて、そのシンバルの写真がまるで“年輪”みたいだなと。シンバルにもともと「15」という数字も入っていて、最初俺は気づいてなくて、メンバーから「ちょうど15周年だね」と言われて、今回のジャケ写にぴったりだと思いました。未開拓の領域に踏み込むと、いい時を重ねられるーーお話はかわりますが、KREVAさんは活動自粛制限期間はどのように過ごしていましたか。また、自粛が解除された現在はどのように過ごしていますか。自粛期間は、とにかく家にいましたね。1週間、外出しないことも多かったです。以前は、ちょっと買い物に行くだけでもひとりで行っていましたが、いまは子どもを連れていくこともできるようになりましたね。ーーおうちではどんなふうに過ごしていたんですか。最初のうちは断捨離をしていたんですが、途中から捨てるものもなくなってきて、家で曲を作っていました。ただ、それを自分のスタジオで聴いてみたら、集中できていない感じがして、あまりよくない出来でしたね。ーー新曲でも「素敵な時を重ねましょう」とおっしゃっていますが、一般的に年を重ねることに肯定的な方は多くない印象もあります。どうすれば、素敵な年を重ねられると思いますか。たとえばリモートワークをしていると、前進している感じがあまりないかもしれないですよね。さっきの曲を作った話もそうですが、曲を作ってトラックが1個増えたはずなのに、なんか前進した気がしない。それを超えていくには、スキルアップしていくのが大事なのかなと思いました。未開拓の領域にちょっとでも踏み込んでみると、いい時を重ねられるんじゃないかな。この曲のジャケ写も、やってみて「デジタルでできるんだ、コラージュ!」と思って。いままでできなかったことができたという意味で、“ゼロから1”は、“1から2”よりも、前進した感じが強いじゃないですか。だから、まったくしたことがなかったジャンルの料理をするとか、釣りなのか、ランニングなのか、手を出したことがなかったやつを一歩進んでやってみると、充実感がハンパないです。心がふさぎ込んでいると、だんだん心も体も衰えていく気がします。ーーそれは若くても、年を重ねても、関係なくそうかもしれないですね。そうなんですよ。俺は50歳から、字がうまくなるって決めているんですよ(笑)。無限のスキルアップの可能性がある、何歳からでも、字をうまくすることはできるじゃないですか。手が震えてきたことからの“達筆風”とかも(笑)。可能な領域に残されています。ーーでは、そうやって前進していくことで、魅力的な女性になっていくと。やっぱり、いろいろなことに挑戦している人は、魅力的だと思いますね。あとは自分が熱中して取り組んでいることで、前進感が得られるなら、それも魅力になると思います。心と実績とを得ていくことが大事なんじゃないかと思います。ーー今年の11月6日公開予定の、V6の井ノ原快彦さん、なにわ男子/関西ジャニーズJr.の道枝駿佑さんらの映画『461個のおべんとう』にご出演されていますね。劇中では、井ノ原さん、やついいちろうさんと「Ten 4 The Suns」というバンド仲間として、KREVAさんはMC担当の古市栄太役を務めていらっしゃいますが、撮影はもう終わられたんですか。もう終わりました。撮影中は、イノッチ(井ノ原さん)と、やっつん(やついさん)と、ずーっと3人でしゃべっていましたね(笑)。ーー音楽のお話ですか。いや、くだらないことから、何から何まで(笑)。ライブシーンがあったんですが、ステージに出てからも、3人ともずっとしゃべっていました。観客役のエキストラのみなさんを盛り上げるために、俺も、イノッチも、やっつんもずっと黙らないから(笑)。本番では使われないシーンなんですが、3人でずっとしゃべり続けたことによって、お芝居ではなく本当にライブ感が生まれたので、良かったと思いますし、楽しかったです。正直、映画に出たという感覚はない(笑)。ーーそれはミュージシャンの役だからでしょうか。そうですね。それに、自然でいるほうがいいなと思って。映画ではラップもしていますし、ミュージシャン役だったんで、より自分らしく、自分のまんま出ている感じですね。ーー井ノ原さんの息子役の道枝さんとは、お話しされましたか。話しましたね……話したと思うけど、振り返ると、イノッチとやっつんとずっとしゃべっていた記憶しか(笑)。兼重淳監督も、現場に緊張感を走らせるタイプの方じゃないので、みなさんにもよくしていただきました。ーーでは最後に、いまはなかなか予定も立てづらい時期ではありますが、今後のご予定は。いまはもう、何にも考えてないですね。いままでもそうだったんですが、ある時期から、「こうしたい、ああしたい」という目標がだいぶんなくなってきて。よりいっそう、ひとつずつ全力でやっていこうかなと思いました。次の曲を出したら、「これが最後」くらいの気持ちでやろうかなと。でもね、求めているものは、さらっとしたものを出したい。最後だと思って、「全身全霊をかけてやりました!」というものが誰かから来たら、俺からすると重い気がするので(笑)。そこらへんの塩梅をよく読みながら、今後もやっていけたらと思います。取材後記日本のヒップホップシーンを牽引し続けているKREVAさんは、常に挑戦し、私たちに新しい驚きと喜びをもたらしてくれる稀有な存在です。折しも自粛制限は解除された時期でしたが、さまざまなことに配慮をしながらの取材となりました。そんななか、快く取材に応じてくださったKREVAさんは、シングル発売日と同日の6月24日に、無観客有料生配信ライブ、KREVA Streaming Live『(マルイチ)』を急きょ開催されます。ぜひライブもチェックしてみてくださいね。KREVA PROFILE国民的人気を誇るヒップホップアーティスト。ヒップホップの殿堂『B-BOY PARK』のMCバトルで3年連続日本一の栄冠に輝く実績を持ち、現在に至るまでその記録は未だに塗り替えられていない。2004年9月08日(クレバの日)に、シングル「音色」でソロメジャーデビュー。2006年2月リリースの2ndアルバム『愛・自分博』は、ヒップホップソロアーティストとして史上初のオリコンチャート初登場1位を獲得。リリースされる楽曲は常にチャート上位にランクイン。9月08日は「クレバの日」と日本記念日協会に正式認定される。2019年、1月から9月08日(クレバの日)まで9ヵ月連続リリースを敢行し、ニューベストアルバム『成長の記録~全曲バンドで録り直し~』と8枚目のオリジナルアルバム『AFTERMIXTAPE』の2枚の作品をリリース。さらには、日本武道館ワンマンライブとKREVA主催の“音楽の祭り”「908 FESTIVAL 2019」横浜アリーナ公演を開催。12 月、「KREVA CONCERT TOUR 2019-2020『敵がいない国』」ライブハウスツアーを実施。2020年2月から6月のホールツアー&アリーナ公演は、新型コロナウイルス感染拡大抑止のため、全公演の無期限延期を決定。6月24日、シングル「素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI」を発売。同日、無観客有料生配信ライブ、KREVA Streaming Live『』を開催する。11月6日にはTOKYO No.1 SOUL SETの渡辺俊美さんによるエッセイ「461個の弁当は、 親父と息子の男の約束。」(マガジンハウス刊)原作の映画『461 個のおべんとう』が公開予定。常に新しいことへ挑み続ける、日本の音楽界最重要人物のひとり。InformationNew Release『素敵な時を重ねましょう feat.SONOMI』(収録曲)01.素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI02.素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI (Inst.)2020年6月24日発売NCS-970¥908(税別)※紙ジャケット仕様。※KREVAオフィシャルオンラインショップのみでの数量限定販売。
2020年06月22日フランク・オーシャンをはじめとする、現在の音楽シーンをリードする豪華アーティストによる31の名曲が彩る『WAVES/ウェイブス』。音楽を愛するトレイ・エドワード・シュルツ監督は、音楽が重要な意味を持つ物語として『ブギーナイツ』や『グッドフェローズ』などに影響を受けたと話している。これまで音楽が印象的な作品はたくさんあり、その中でも「音楽」と「青春」を組み合わせた作品は、一生に一度は観ておくべき名作揃い。今回は、選び抜かれた豪華楽曲がひとつの物語を紡ぎだし、曲や歌詞が登場人物の心の声を伝える青春音楽映画5選をお届け。未来を選べ!90年代最高の大ヒット青春映画『トレインスポッティング』(1996年)『スラムドッグ$ミリオネア』『イエスタデイ』などの監督ダニー・ボイルが、アーヴィン・ウェルシュの小説を映画化した青春ドラマ。ドラッグ中毒の主人公と仲間たちの希望の見えないハチャメチャな日々を、スタイリッシュな映像で活写する。いまや大スターとなった若き日のユアン・マクレガーが主演を務め、海外ドラマ「エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY」のジョニー・リー・ミラーらが共演。イギリスをはじめ、世界中が熱狂したポップな感性に魅了される。主な使用楽曲「ラスト・フォー・ライフ」「ナイトクラビング」イギー・ポップ、「ディープ・ブルー・デイ」ブライアン・イーノ、「トレインスポッティング」プライマル・スクリーム、「銀河のアトミック」スリーパー、「テンプテーション」ニュー・オーダー、「シング」ブラー、「パーフェクト・デイ」ルー・リード、「マイル・エンド」パルプ、「2:1」エラスティカ、「ボーン・スリッピー」アンダーワールド、「クローゼット・ロマンティック」デーモン・アルバーンアメリカのポップカルチャーの裏側を描いた傑作『ブギーナイツ』(1997年)『マグノリア』『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』『ザ・マスター』『ファントム・スレッド』と、アカデミー賞作品を多数手掛けるポール・トーマス・アンダーソン監督作品。70年代後半のアメリカで、ポルノ業界に革命を起こそうとした映画制作者たちの大所帯をめぐる、波乱に満ちた舞台裏ストーリー。レオナルド・ディカプリオが降板した主演はマーク・ウォールバーグが務めた。ゴールデングローブ賞助演男優賞(バート・レイノルズ)を受賞したほか、アカデミー賞では助演男優賞(バート・レイノルズ)、助演女優賞(ジュリアン・ムーア)、脚本賞(ポール・トーマス・アンダーソン)がそれぞれノミネートされた。主な使用楽曲「ベスト・オブ・マイ・ラブ」エモーションズ、「フライ・ロビン・フライ」シルバー・コンベンション、「ジャングル・フィーバー」チャカチャス、「心の扉をあけよう」メラニー、「ママ・トールド・ミー」スリー・ドッグ・ナイト、「愛に狂って」エルヴィン・ビショップ、「黒い夜」マーヴィン・ゲイ、「神のみぞ知る」ザ・ビーチ・ボーイズ、「ロックバルーンは99」ネーナ、「オーロラの救世主」エレクトリック・ライト・オーケストラ爽快!感涙!80年代を席巻した大ヒット曲の数々『シング・ストリート 未来へのうた』(2016年)『はじまりのうた』『ONCE ダブリンの街角で』のジョン・カーニー監督の半自伝的作品で、1980年代のアイルランド・ダブリンを舞台に、好きな女の子を振り向かせるためにバンドを組んだ少年の恋と友情を、1980年代ブリティッシュサウンドに乗せて描いた青春ドラマ。カーニー監督の音楽人生の原点とも言えるストーリーを、「ザ・キュアー」「デュラン・デュラン」「ザ・クラッシュ」「ザ・ジャム」など当時のヒット曲が彩る。主題歌を「マルーン5」のアダム・レヴィーンが担当していることも話題となった。主な使用楽曲「ステイ・クリーン」モーターヘッド、「リオ」デュラン・デュラン、「悪意という名の街」ザ・ジャム、「インビトゥイーン・デイズ」ザ・キュアー、「マンイーター」ダリル・ホール&ジョン・オーツ、「ステッピン・アウト」ジョー・ジャクソン、「ポップ・ミューヂック」M、「ゴー・ナウ」アダム・レヴィーン音楽と映像がシンクロする爽快アクション!『ベイビー・ドライバー』(2017年)『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ俺たちスーパーポリスメン!』などで知られるエドガー・ライト監督が、音楽にのりながら驚異の運転テクニックを発揮する若きドライバーの活躍を描いたオリジナル作品。主人公ベイビーを『きっと、星のせいじゃない。』で注目されたアンセル・エルゴートが、ヒロインとなるデボラを『シンデレラ』のリリー・ジェームズが演じるほか、ケビン・スペイシー、ジェイミー・フォックスといった実力派ベテラン俳優も共演。第90回アカデミー賞において3部門(音響編集賞、録音賞、編集賞)でノミネートされた。主な使用楽曲「Bellbottoms」ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン、「Neat Neat Neat」ダムド、「Easy (Single Version)」コモドアーズ、「Early in the Morning」アレクシス・コーナー、「When Something Is Wrong with My Baby」サム&デイヴ、「Intermission」ブラー、「Radar Love (1973 single edit)」ゴールデン・イヤリング、「Brighton Rock」クイーン、「Baby Driver」サイモン&ガーファンクルミュージカルを超えたプレイリスト・ムービー『WAVES/ウェイブス』新進気鋭のスタジオ「A24」が放つ、超豪華アーティストによる31曲が物語を彩る<プレイリスト・ムービ>。ある夜を境に、幸せな日常を失った兄と妹。傷ついた若者たちが、再び愛を信じて生きる希望の物語。スクリーンいっぱいに躍動するサウンド、息を呑むほど美しい色彩と独創的なカメラワーク、登場人物の心情を疑似体験するストーリーテリングは、かつてない映画体験をもたらし、映画の持つ無限の可能性を感じさせる。豪華31曲のプレイリスト「FLORIDADA」「LOCH RAVEN (LIVE)」「BLUISH」アニマル・コレクティヴ「BE ABOVE IT」 「BE ABOVE IT -EROL ALKAN REWORK」「BE ABOVE IT ー LIVE」テーム・インパラ「MITSUBISHI SONY」「SIDEWAYS」「FLORIDA」「RUSHES」「RUSHES (BASS GUITAR LAYER)」「SEIGFRIED」 フランク・オーシャン「WHAT A DIFFERENCE A DAY MAKES」ダイナ・ワシントン「La Linda Luna」 ケルヴィン・ハリソン・Jr「LVL」 エイサップ・ロッキー「AMERICA」 ザ・シューズ「BACKSEAT FREESTYLE」 ケンドリック・ラマー「IFHY」 タイラー・ザ・クリエイター feat. ファレル・ウィリアムス「FOCUS」 H.E.R.「LOVE IS A LOSING GAME」 エイミー・ワインハウス「SURF SOLAR」 ファック・ボタンズ「U RITE」「U-RITE (LOUIS FUTON REMIX)」 THEY.「I AM A GOD」 カニエ・ウェスト「GHOST!」 キッド・カディ「MOONLIGHT SERENADE」 グレン・ミラー・オーケストラ「THE STARS IN HIS HEAD(DARK LIGHTS REMIX)」 コリン・ステットソン「HOW GREAT」 チャンス・ザ・ラッパー「PRETTY LITTLE BIRDS」 SZA feat. アイザイア・ラシャド「TRUE LOVE WAITS」 レディオヘッド「SOUND & COLOR」 アラバマ・シェイクス『WAVES/ウェイブス』は7月10日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ベイビー・ドライバー 2017年8月19日より新宿バルト9ほか全国にて公開トレインスポッティング 1996年、公開WAVES/ウェイブス 2020年7月10日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開©2019 A24 Distribution, LLC. All rights reserved.
2020年06月15日音楽をこよなく愛する、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。【音楽通信】第37回目に登場するのは、新海誠監督作『天気の子』の音楽を担当していたRADWIMPSに、ボーカリストとして抜擢され話題を呼んだのも記憶に新しい、歌手で女優の三浦透子さん!「2代目なっちゃん」から『天気の子』ボーカリストへ【音楽通信】vol. 372002年の5歳のときに、清涼飲料水『なっちゃん』のCMで女優デビューした、三浦透子さん。2020年は『ロマンスドール』や『架空OL日記』などの映画に出演するなど、これまでに数々の映画やドラマで活躍しています。歌手としては、大ヒットした新海誠監督作『天気の子』(2019年)の音楽を担当していたRADWIMPSにボーカリストとして大抜擢されました。「役者の歌声というよりも世界そのものの響きのような、個人の感情を少しだけ越えたような何かを、まっすぐに運んできてくれる声」(新海監督)、「どんな天気をも晴れにしてしまうような圧倒的で不思議な力を持つ」(RADWIMPS 野田洋次郎)と称されて、その歌声にも注目が集まっています。そんな三浦さんが、2020年5月27日に1stミニアルバム『ASTERISK』をリリースされるということで、お話をうかがいました。ーー5歳のときに『なっちゃん』のCMに出演され、2代目なっちゃんに抜擢された当時のことは覚えていますか。また、もともと女優を目指していたのでしょうか。当時のことは、ひどく現場で迷惑をかけたということだけはしっかり覚えています。とにかく調子乗りで大人の言うことを聞かない子どもだったので、まわりのみなさんは本当に苦労したと思います。もともと私も家族も芸能界に興味があったわけではなく、習い事で通っていたダンススクールの友達と一緒に、ふらっとオーディションに参加しました。CMが決まった後も、母親は、「思い出作りになれば良いかな」くらいの気持ちだったと聞いています。ですから、ここまで続ける仕事になるとは、そのときはまったく思っていませんでした。ーー結果として、5歳から現在まで女優としてご活躍されていますが、目標とする俳優さんや憧れの作品、監督はいますか。目標というのとは少し違いますが、田中絹代さん、京マチ子さん、乙羽信子さんはとても好きな俳優です。相米慎二監督の『台風クラブ』(1985年)、ツァイ・ミンリャン監督の『青春神話』(1992年)は初期の映画体験だというのもありますが、私にとって特別な作品です。ーーでは、歌手活動を始めたきっかけを教えてください。タナダユキ監督と役者としてCMの撮影をご一緒したときに、ワンフレーズだけ歌うシーンがありました。その際、「声が良い」とおっしゃっていただいて以降、タナダ監督のCMや映画の音楽の仕事をさせていただくようになったのがきっかけです。ーー映画『天気の子』(2019年)のボーカリストとして、主題歌「祝祭 feat.三浦透子」と「グランドエスケープ feat.三浦透子」で大抜擢されました。ご自身の歌声が、新海誠監督とRADWIMPSの野田洋次郎さんを唸らせたことやおふたりの印象を教えてください。もともと「歌の仕事をしっかりやりたい」という気持ちが心のどこかにはあったので、新海さんと野田さんの反応は素直にうれしかったです。ボーカリストとして新しいチャレンジをすることに対して、とにかく楽しみな気持ちが一番でした。新海さんは、私がお会いしたときは特に忙しい時期だったと思いますが、いつお会いしてもとても穏やか。常にリスペクトを感じる丁寧な言葉でお話ししてくださるのが印象的です。野田さんは、妥協せず、私に対してもプロフェッショナルとして接してくださいました。おふたりとも、それぞれの分野の先頭を走っている方々ですが、どなたにも変わらない姿勢がとても素敵です。——2019年は『ミュージックステーション』や『第70回NHK紅白歌合戦』などにRADWIMPSさんと共に初出演されましたが、歌番組はいかがでしたか。歌の現場と、お芝居の現場との違いや心境の違いは。2019年は本当にいろいろな景色を見させていただきました。本当に想像していなかった出来事ばかりで、心の整理をする時間がなかったのが逆に良かったと、いまでは思います。どのステージもただただ楽しかったな、という印象が強いです。ただ、こういう流れは、いずれ落ちつくものだという認識もしっかりありました。CM『なっちゃん』のときと同じですね。『天気の子』で体験させてもらったことは、ある意味、一番華やかなところ。これから自分で歩いていくときには、歌もお芝居も一歩ずつ、丁寧にやりたいという思いが強いです。歌とお芝居の細かな違いはたくさん感じますが、一貫した“自分がやる”ということをいまは意識しています。新作は本格的に音楽と向き合うけじめの作品ーー5月27日に1stミニアルバム『ASTERISK』をリリースされます。2017年にカバーアルバムをリリースされてから、今回が初めてのオリジナルアルバムとなりますね。はい、今回のリリースは素直にとてもうれしいです。自分名義でのオリジナル作品というのは、やはりいままでとは感覚が全然違いますね。私にとっては、本格的にこれから音楽と向き合っていこうという、けじめの作品でもあります。最初の一歩なので、みなさんからどんな反応が返ってくるのか、とても楽しみです。ーー収録曲の、映画『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』(近日公開予定)の主題歌「uzu」は、まるで子守唄のようにも聴こえるやさしい歌ですね。歌詞のない歌ですが、心がけたことはありますか。作曲をした森山直太朗さんとは曲について話し合うことはあったのでしょうか。ムヒカさんの物語や言葉から、観る側が受け取る感情はさまざまだと思います。エンドロールは、そういう映画の余韻を邪魔しない、言葉を反芻し、自分と向き合うような時間になればいいなと思いました。歌詞のない歌になったのは、田部井一真監督や直太朗さん、みんなのそういう思いから。直太朗さんが、「寝起きみたいな感じがいいな」とおっしゃっていたので、“歌う”というよりは、声を“鳴らす”というようなイメージで歌いました。レコーディングでは、メロディ以外の決まりは何もなくて、とにかく自由。直太朗さんの人柄も相まって、のびのびとリラックスして純粋に音楽を楽しめる贅沢な時間でした。このアルバムの中で最初にレコーディングをしたのが「uzu」でしたが、これが最初でとても良かったです。ーー収録曲「ブルーハワイ」は曽我部恵一さんが作曲した曲です。曽我部さんのバンド、サニーデイ・サービスはもともとよく聴いていたそうですが、今回は三浦さんのオリジナル楽曲を歌われてみていかがでしたか。2017年にリリースしたカバーアルバムの際にも、サニーデイ・サービスの楽曲「東京」を歌わせていただきました。今回はその流れでまた、オリジナル作品でも楽曲を提供していただけるというのは、とても感慨深いです。曽我部さんはふわふわ漂っているような不思議な存在感の方で、お話ししていてすごく楽しかったです。その反面、曽我部さんの頭の中ははかり知れなくて、いったいどんな曲になるのだろうと、まったく予想ができませんでした。いただいた曲は、まるで自分が見透かされているかのようで驚きました。心にすっと落ちてくる歌詞とメロディで、一番自然に歌うことができたんです。ーー収録曲「FISHANDCHIPS」は、赤い公園の津野米咲さんが担当された曲ですが、ラップや和洋折衷のようなサウンドなど、おもしろい楽曲だと感じました。今回は、今までとは違ったアプローチで声を聴かせたいというのが、アルバムのテーマとして最初にありました。「FISHANDCHIPS」はまさにそのコンセプトにあった曲だと思います。これまで歌ってきたオーガニックな楽曲とは違って、音数もたくさん、これでもかというくらい盛り込んで、遊び尽くしてもらいました。そのなかで、私の声をどうたたせるか。私もたくさん声で遊んで、ニュアンスもいろいろ試しながら歌いました。今までは、どれだけ削ぎ落として歌えるかということをテーマに歌ってきたので、とても楽しいチャレンジでした。中毒性があって、個人的にも一番よくリピートしているかもしれません。ーーそのほか、映画『天気の子』のRADWIMPS「愛にできることはまだあるかい」のカバーや、スカート・澤部渡さんが作曲した「波がたった」など、多彩な楽曲が詰まったアルバムです。今回、7組のアーティストが制作に参加されていますね。7アーティストのみなさんは、私の希望でお願いさせていただいた方がほとんどで、本当にとても光栄です。何よりも今回、一番大事にしたのは“7つのカラーで声を見せる”こと。ただ私がご一緒したいという理由だけで選ぶと偏りが出て難しかったので、そのバランスは慎重に考えました。それぞれのアーティストさんとしっかりコミュニケーションを取るところからはじめて、参加できるところはオケ録りもなるべく見学させていただきました。曲が違えば、毎レコーディング、課題も違います。曲数は少ないですが、とても濃密なレコーディング期間でした。ーー『ASTERISK』というタイトルに込めた思いと、実際に完成して聴かれた印象を教えてください。記号の「*(アスタリスク)」は、掛け算記号としても使われますが、その“掛け算”という意味合いが今回のアルバムにとてもしっくりきたので、このタイトルにしました。良いコラボレーションというのは、やはり私が受け身になりきってしまうと成立しない。もらった歌を歌う、というところから一歩先に進んで、“関わる”という意思表示でもあります。また、「アスタリスク」には、ギリシャ語で「小さな星」という意味があると、後から調べて知りました。星や光のイメージも、今回のアルバムビジュアルとも合っていて、良いタイトルになったかなと思っています。7曲すべて本当に違った曲なので、聴き応えもある反面、アルバムを通して聞いても30分かからないという、気軽さが気に入っています。変わることと、変わらないこと、そのどちらも大事ーー女優、歌手としてご活躍の三浦さんですが、普段から美容面などで気をつけていることは。私は中学の頃と高校の頃の2回、ひどい肌荒れに悩んだことがあります。こればっかりは、この方法が一番と言い切れないのが難しいところですが、私の場合は朝の洗顔をやめたことが一番効果がありました。自分の肌の特徴を理解することが大事だと思っています。ーーよく聴くアーティストや楽曲はありますか。人生で一番聴いたのは、NUMBER GIRL。私の青春のバンドです。最近はエレクトロやジャズなどインストを聴くことが多くなりました。あとは、大貫妙子さん、吉田美奈子さんなどの70〜80年代の日本の音楽も聴いています。いまはたくさん時間もあるし、音楽の活動を始めたという意味でも、いろいろと吸収する必要がある時期だと思うので、周りの信頼できる人から、さまざまな音楽を教わっています。ーーいま興味のあることはなんですか。建築に興味があります。はじめはただ建物を見るのが好きなだけでしたが、ル・コルビュジエ(モダニズム建築の礎を築いた20世紀を代表する建築家)の「住宅は住むための機械である」という言葉に惹かれて、それ以来、その建物が建てられた背景や建築家の持つ哲学にも興味を持つようになりました。昨年、ロシア・アヴァンギャルド建築のお話の舞台に出演したこともあって、その分野を勉強したのも影響しています。駒場東大前にある日本民藝館も、はじめは建物が好きで通い始めましたが、いまは民藝品や民藝の考え方にも興味を持つようになりました。ものづくりの裏側にあるものに興味があるのかもしれません。ーー現在、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、世界的に活動自粛制限がありますが、三浦さんはどんなふうにおうちで過ごされていますか。こういう時期は、特別なことはしないで、いつも通りを心がけています。つい何かやらなくてはと意識しすぎてしまいますが、変わることと、変わらないこと、そのどちらも私は大事だと思っているんです。いま時間が与えられたと思って、しっかり自分と向き合い、考える時間にしたいです。取材後記女優として活躍しながらも、歌手としても存在感を発揮されている三浦透子さん。その透明感のある心地よい歌声は、新海監督や野田さんではなくとも、魅了されてしまうに違いありません。そんな三浦さんがリリースされるミニアルバムをまずはチェックしてみてくださいね。三浦透子 PROFILE1996年10月20日、北海道生まれ。女優としては、2002年、サントリー『なっちゃん』のCMでデビュー。 その後、映画、ドラマなどで本格的に女優としての活動を開始。近年は2018年、映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』でヒロインを務め、2020年、映画『ロマンスドール』や映画『架空OL日記』などにも出演。歌手としては、2017年、90年代の名曲をアコースティックカバーした企画アルバム『かくしてわたしは、透明からはじめることにした』でCDデビュー。2019年、新海誠監督最新作『天気の子』の音楽を担当していたRADWIMPSにボーカリストとして大抜擢され、その歌声にも注目が集まる。2020年5月27日、1stミニアルバム『ASTERISK』をリリース。InformationNew Release『ASTERISK』(収録曲)01.uzu02.愛にできることはまだあるかい03.蜜蜂04.おちつけ05.波がたった06.ブルーハワイ07. FISHANDCHIPS2020年5月27日発売(初回仕様)UPCH-29362¥2,000(税別)※初回仕様出荷終了次第、同価格の通常仕様(UPCH-20542)に切り替わります。
2020年05月15日音楽をこよなく愛する、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。【音楽通信】第36回目に登場するのは、モデルやラジオDJとしても活躍されている、シンガーの安田レイさん!「元気ロケッツ」から、ソロシンガーへ【音楽通信】vol. 36アメリカで生まれ、3歳で日本ヘ来た、安田レイさん。13歳のときに、音楽ユニット、元気ロケッツに参加。その後、2013年にシングル「Best of My Love」でソロシンガーとしてデビューしました。2015年には「第57回輝く!日本レコード大賞」新人賞を受賞し、その後もドラマやアニメ主題歌、CMタイアップ曲など話題の楽曲を次々と発表し、2020年3月には3rdアルバム『Re:I』をリリース。今回、5月27日にニューシングル「through the dark」をリリースされるということで、お話をうかがいました。ーー3歳でアメリカから日本へいらしたのち、シンガーを志した経緯を教えてください。アメリカのノースカロライナ州で生まれ、お父さんの仕事で3歳のときに日本に来ました。小学校はインターナショナルスクールに通いましたが、それ以外の幼稚園や中学、高校は日本の学校へ行きました。そんな学生生活のなかで出会ったいろいろなジャンルの音楽やアーティストに影響を受け、小さい頃からずっと音楽に興味があったんです。とくにシンガーになりたいと思った一番のきっかけは、宇多田ヒカルさんの曲「First Love」との出会いでした。そのとき、私はまだ小学1年生で、恋愛の歌詞の意味なんて何ひとつわかりませんでしたが、宇多田さんの歌の表情やサウンドが他の人にはない個性的なヒカリに感じて、一目惚れした記憶があります。ですから、宇多田さんは、いまでも雲の上の存在です。ーー13歳で音楽ユニット、元気ロケッツに参加され、その後ソロ活動されたきっかけは。それぞれどのような心境だったのでしょうか。元気ロケッツと出会っていなかったら、いま私はどんなふうに生きていたんだろうと、たまにふと考えてしまいます。歌以外にできることが何も浮かばないんですよね。小学校6年生のときに、元気ロケッツのオーディション会場で、緊張して顔を真っ赤にしながら歌った“チビレイ”に感謝です(笑)!それまでボイストレーニングにも行ったことがなかったですし、人前で歌うのはカラオケくらいでしたし、受かる自信はありませんでした。会場には自信に満ちてキラキラしている洗練された美しい人ばかりで……。私はランドセルを背負ってましたし、ソバカスだらけでしたし、まわりには大人しかいないし、「あぁ、どうしよう、怖い」と思いました(笑)。それなのに、こんな私を選んでくださって、感謝しかないです。元気ロケッツで学んだいろいろなことが、いまの安田レイのベースになっていると思います。右も左もわからないただの小学生に、さまざまなことを教えてくださったプロデューサーの玉井健二さん含め、チームのみんなに感謝です! We LOVE GENKI ROCKETS!ーー2013年からソロシンガーとしてご活躍され、2020年3月には、ドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』のオープニング曲「Sunny」や、ドラマ『モトカレマニア』オープニングテーマ「アシンメトリー」などを含む3rdアルバム『Re:I』をリリースされましたね。さまざまな作品を通して、みなさんが安田レイの音楽に出会ってくれていると思うんです。今回のアルバムもそうなのですが、その一つひとつのタイミングは、本当に奇跡。日本には、世界には、たくさんの素晴らしい音楽が存在していて、生きているなかで全部聴くことは不可能なので、この出会いに「感謝! 乾杯! ありがとう!」という想いをどの作品にもぶつけています。ですが、一番伝えたいのは、今年の7月でデビュー7周年を迎える目前で、何かいい意味でみんなの中の「安田レイ」というイメージを壊したいというエネルギーがあって。これは昨年からすごく強くなって、ちょっといい子ちゃんな自分のイメージを壊して、「こんな私もいるんだよ、知ってほしいな」というところから制作が始まりました。もちろん、その想いを受け入れてもらえなかったらどうしよう、こんなの安田レイじゃないと思われるかもしれないという覚悟でアルバムを作りました。でも、ずっと同じ場所で前にも後ろにも動けずにいるのがイヤで、トライした結果、やってよかったです。たまには心の信号無視はしていいものですよ、みなさん。気持ちがいいです(笑)。誰かへこのエールが届いていたらうれしいです。光と闇、遠距離恋愛がテーマの新曲ーー5月11日に先行配信した、14枚目のシングル「through the dark」を5月27日にCDとしてもリリースされますね。“光と闇”をテーマに表現されたそうですが、歌詞にはどのような思いを託されましたか。光と闇が大きなテーマですが、実は遠距離恋愛というテーマでもあるんです。遠くにいる大切な人へのストレートな気持ちを歌詞にしてみました。「会えない時間が私を少し迷わせる」という歌詞があるんですが、こういうことって、実際にもありますよね。好きな人に会えないことによって、余計なことを考えてしまい、自分の正直な気持ちが見えなくなるあの恋愛の謎めいた感情を歌詞にしてみました。でも、実はすごく会いたくて、触れたくて、その人がもしいま苦しんでいたら、闇のなかであっても救い出したい、この僅かな光ででも、照らして見つけて、抱きしめたい。そんな想いを歌詞に込めています。ーー今作は、ゲーム発のテレビアニメ『白猫プロジェクト ZERO CHRONICLE』(TOKYO MXほか 月曜 22:30)のエンディングテーマにもなっていますね。はい。アニメも毎週の楽しみになっています。この「through the dark」は、ヒロインのアイリス目線の楽曲なので、私は自然とアイリスを応援してしまいますね(笑)。とにかく心がピュアで美しいアイリスは目の保養にもなりますし、こんなエンジェルのような心を持ちたいと思いながら、毎回TVの向こう側にいるアイリスを応援しています。ものすごいプレッシャーと戦いながら、世界の平和を守るアイリスはカッコ良すぎます!ーー「through the dark」は生命力を感じる楽曲ですが、曲の第一印象や歌唱の面で気をつけた点はありますか。今回初めてご一緒したプロデューサーのJeff Miyaharaさんが作る、繊細さのなかにある、心のなかの叫びのようなサウンドに初めて触れたとき、ゾクゾクしました。レコーディングのときは、ディレクションが面白くて新鮮。なかでも一番印象に残っているのは、「5歳のレイちゃんならどう歌う? ヴォーカルテクニックとか全部忘れて、もっと素直になって、うまく歌わないで」と言われたこと。いままでそんなディレクションをされたことがなかったので、最初は少し戸惑いましたが、だんだんとその意図を読み解くことができた気がしました。この曲のピュアなメッセージは、この歌い方が正解だったんだと思います。ーーでは、カップリング曲の「true colors」には、どのような思いがありますか。この曲は、鳥かごのなかに閉じ込められた鳥というのがテーマなんです。本当は見たい世界があって、広げる羽があるのに、そこから抜け出せない。これは職場の人だったり、親だったり、恋人だったり、そういう近くにいる人が自由にしてくれないというフラストレーションを歌詞で表現しています。私はそんなコントロールが大っ嫌いです。実はこの歌詞は何年か前に書いていたメモから生まれたんですが、そのときの悩みが、まさかこうやって曲になるとは!ーーそうだったのですね。この「true colors」の編曲者には、元気ロケッツでも組まれていた玉井健ニさんの名前があります。玉井さんが携わっている楽曲と、そうではない楽曲ですと、心境の面で違いはありますか。小学校6年生の頃から玉井さんと一緒に制作しているので、確かに阿吽の呼吸みたいなものはあると思います。いまだに、私が27歳だという事実を玉井さんは疑いますしね(笑)。玉井さんのなかでは、出会った12歳の頃の私でストップしているみたいです。ですが、初めましての方とモノ作りをするのも刺激的で楽しいです。みんなやり方が十人十色で面白いです! 結果、音楽を通して出会ったみんなが大好きです!ーー今回のジャケット写真では、通常盤は安田さんが白い服を着て白い球とともに、初回生産限定盤では黒い服を着て黒い球とともに写っていますがコンセプトは。今回、光と闇がテーマなので、「光の私」「闇の私」をテーマにしてみました。光は闇を、闇は光を、求め、共存していく。そんなことを思いながら撮影していました。光だけの世界も、闇だけの世界もなくて、きっとどちらもお互いを求めていると思うんです。共存するからこそ、グラデーションが生まれ、お互いが存在する。大切な人の光も闇も、私は知りたいですしね。ーーところで、ラジオパーソナリティとしてもご活躍ですが、歌うことと話すことでの意識の違いはありますか。まず、歌うときと話すときの声が全然違うと言われますね。しゃべるときはかなり素でやらせていただいています(笑)。歌うときは、その楽曲の世界観、キャラクター、歌詞のメッセージなどが楽曲によって違うので、声も自然と変わってきますね。マイルールは“できることを無理せずにやる”ーー容姿端麗な安田さんですが、普段から美容で気をつけていることはありますか。“できることを無理せずにやる”がマイルールです(笑)。あとは長風呂をして汗をかいています。湯船に浸かりながら動画配信サービスを観ていると、1時間なんてあっという間。長いときは2時間近く入っているんですよ。たっぷりと水分を摂りながら、たまに足湯にチェンジしながら入るのがオススメです。無理は絶対続かないので。ーー食事やダイエットはどうされていますか。おすすめの健康法があれば教えてください。フルーツや野菜を多く摂っていますね、最近は味噌にハマっていて、毎日お味噌汁を飲んでいます。お味噌汁の具材は、冷蔵庫に残っている野菜を適当に入れるだけで、パパッとできるので大好き。健康にも美容にも発酵食品はいいので、お味噌料理を極めたいです。いつかマイ味噌も作ってみたいですね。ーー好きなアーティストはいますか。好きなアーティストはたくさんいます。最近注目しているのは、藤井風さんです。こんなに若いのに、この色気と、可愛さと、センス! 「ずるーい!」と言いながらも釘付けになっている私です(笑)。藤井さんはピアノの技術もすごくて、欠点が何も見当たらない。たぶん、あっという間にスーパースターになると思います。ーー安田さんがいま興味のあることは。最近は古着のTシャツ集めにハマっています。仕事で全国をお邪魔した際に、その地域の古着屋さんに行くのがいつも楽しみなんです。ハーレーTとか、タイダイTとか、あとは男子には全くウケないだろうちょっと変わったモチーフのTシャツとか(笑)。Tシャツは夏だけではなく、冬はレイヤードして使えるので、何枚あっても困らないんです。ーー現在、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、世界的に活動自粛制限がありますが、安田さんはどんなふうにおうちで過ごされていますか。洋服のDIYにハマっています! 「ブリーチタイダイ」といって、漂白剤でタイダイの模様を作るDIYなんですが、もう着ないと思っていた服が生まれ変わるんですよ。作り方をインスタにアップしているので、見てみてください。すごく簡単にできるので、ぜひやってみてくださいね。取材後記2020年7月で、デビュー7周年を迎える、クールビューティな安田レイさん。モデルとして、ラジオDJとして、シンガーとして、これからもさらにご活躍されるはずです。音楽への愛情にあふれる安田さんがリリースされるニューシングルをまずはチェックしてみてくださいね。安田レイ PROFILE1993年4月15日、アメリカのノースカロライナ州生まれ。3歳で日本ヘ。10歳の頃、母親が聴いていた宇多田ヒカルに衝撃を受けてシンガーを志す。13歳で音楽ユニット、元気ロケッツに参加。2013年7月、シングル「Best of My Love」でソロシンガーとしてデビュー。その後も、ドラマやアニメ主題歌、CMタイアップ曲など、話題の楽曲を次々とリリース。2015年11月にリリースしたシングル「あしたいろ」がTBS系ドラマ『結婚式の前日に』主題歌として共感を呼び、その年の活躍が認められ、「第57回輝く!日本レコード大賞」新人賞を受賞。配信シーンでの活躍が顕著で、これまでにリリースした1stアルバム『Will』2ndアルバム『PRISM』はともにiTunesでJ-POP1位、総合2位を獲得。2020年3月、3rdアルバム『Re:I』をリリース。5月11日に先行配信したシングル「through the dark」を5月27日にCDとしてもリリース。JFN38局放送 TOKYO FM『JA全農 COUNTDOWN JAPAN』、JFN系列『CITY GIRLS MUSIC』ではラジオDJとして、ファッション分野ではモデルとしても活動し、さらなる活躍が期待されている。InformationNew Release「through the dark」01.through the dark02.true colors03.through the dark -Instrumental-04.true colors -Instrumental-2020年5月27日発売*通常盤と初回盤の収録曲は共通(通常盤)SECL-2577(CD)¥1,200(税込)(初回生産限定盤)SECL-2575(CD+DVD)*DVDは「through the dark」Music Video。¥1,800(税込)(期間生産限定盤)*収録曲は3曲目「through the dark -アニメサイズ-」以外は共通。SECL-2578(CD+Blu-ray Disc)*アニメ絵柄描き下ろしデジパック仕様。*Blu-ray DiscにはTVアニメ『白猫プロジェクト ZERO CHRONICLE』ノンクレジットエンディング映像を収録。¥1,500(税込)
2020年05月14日音楽をこよなく愛する、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。【音楽通信】第35回は「番外編」! 現在、活動自粛期間で“Stay Home”を続けるみなさんの力になりたいと、EXILEのパフォーマーであり、俳優でもあるAKIRAさんから『ananweb』をご覧のみなさんだけにお送りする動画とスペシャルメッセージが届きました。 ぜひチェックしてくださいね!!内田紘倫(The VOICE) スタイリスト・jumbo(speedwheels) ヘア&メイク・MAKOTO(juice & juicy)僕ら一人ひとりが与えられた使命を全うしたい【音楽通信】vol. 35「番外編-AKIRAさんスペシャルメッセージ」新型コロナウイルス感染拡大防止のため、現在は世界的に活動自粛制限がなされていますが、ananwebをご覧のみなさんはどんな毎日を過ごしているでしょうか。いつもは音楽記事をお届けしている「音楽通信」ですが、普段とは違う日常生活を送り“Stay Home”を続けるみなさんに、今回は特別編として、AKIRAさんから動画とスペシャルメッセージが届きました!いまAKIRAさんが思うこと、どんなおうち時間を過ごしているのか、そしてEXILEのことまで、さまざまなことをうかがいました。AKIRAさんのメッセージに込められたエールを受け取ってくださいね。ーー「LDH PERFECT YEAR」にあたる今年ですが、活動自粛のためライブは延期または中止となりましたね。ご来場されるみなさまの健康と安全を最優先に考えたうえでの判断ではありますが、「LDH PERFECT YEAR 2020」を楽しみにしていただいた多くのファンのみなさまには、大変申し訳なく残念な気持ちでいっぱいです。LDH独自に専門家の方々で構成した「LDH新型コロナウイルス感染症対策専門家チーム」による対策会議を開催し、さまざまな状況を検討した結果、想定以上に当面はライブの開催が困難であるとの判断に至りました。ですが、このまま中止、延期とするだけではなく、この新型コロナウイルス感染症が終息した際には、明るい未来へ向けてみんなが一緒に歩んでいけるようにとメンバー、スタッフと、日々熟考しています。ライブが開催できない期間においては、いましかできないことにも積極的に取り組み、自宅でも楽しんでいただけるようなLDHらしいエンタテインメントを作れないかと、連日、メンバーやスタッフでアイデアを出し合い、みなさまに楽しんでいただきたいとの想いでいろいろな準備もしています。ーー休校になったり、職場へ出社せずにリモートワークになったり、外出できない人々がたくさんいるなかで、おすすめの家での過ごし方はありますか。普段、僕は日本にいるときも海外への移動があるときも、ライブやイベントなど地方に飛んでばかりで、とにかく外出が多いんです。家で過ごす時間や自分の時間が少なく、アウトプットばかりしてきたので、むしろいまはこの期間を活用しています。インターネットやSNS、読書や映画などから、さまざまな知識や情報をインプットして、自分自身の成長につなげて生活していますね。ーー予定していたスケジュールが変更になるなど、外出できないストレスを抱えている方もいるかもしれませんが、いま一番心がけることは何だと思われますか。また、AKIRAさんが現在心がけていらっしゃることは何でしょうか。まずは、さまざまな葛藤や恐怖、プレッシャーと隣り合わせのなか、新型コロナウイルスと最前線で戦ってくださっている世界中のドクター、医療関係のみなさまに、感謝の気持ちを持って生活するように心がけています。大変な状況下ではありますが、そんなみなさまのおかげで僕らの生活が保たれて、世界中がなんとか持ち堪え、終息に向かうことができていると思いますので。世界各国で最前線で戦ってくださってるみなさまも、早く安全な私生活を取り戻していただけるよう、まずは、僕ら一人ひとりがいま与えられている使命をしっかり全うして、一刻も早い終息を願っています。もしオンライン飲みをするならファンのみなさんと乾杯したいーーEXILEのメンバーのみなさんも、いまはどのように過ごしていらっしゃるのでしょうか。EXILE TRIBEメンバーの世代を超えて、定期的に情報共有会議やビジョン会議をリモート会議や各自それぞれで話し合ったりしています。先日は、GENERATIONSの数原龍友からもいろいろなアイデアの共有や相談の連絡がきました。とにかくみんなで一丸となって、新たなエンタテインメントを考えています。ーー自宅にこもる人が多いなか、オンライン飲み会をする人もいるようです。AKIRAさんはリモートで、メンバーのみなさんやご友人と盛り上がることはありますか。飲酒はいまの時期は控えていますが、もし、オンライン飲みをするなら、たくさんのファンのみなさんと乾杯してみたいですね(笑)。さすがに、何万人という方々とは、レモンサワー乾杯をしたことがないので(笑)。ーー想像しただけで楽しそうですね(笑)。そんな明るいイメージをずっと保てるといいのですが、もしこのまま自粛期間が長引いて落ち込んでしまうときがあったら、どうやって前向きさを取り戻せばよいでしょうか。落ち込んだときは、自分より大変な思いをしている人が、この世界にどれだけいるのだろうと、イメージしてください。現代の僕らは、きっといろいろな意味で恵まれすぎなのではないかとも思います。もちろん個人差もありますし、そう思えない方々もいらっしゃることは重々承知ではありますが。世界各地では、生まれたときから家も家族もなく、ごはんもろくに食べられず、必死で生きている子どもたちがいます。学びも社会に出ることもできず、必死に生きることだけに日々を過ごしている子どもたちもいます。自分のまわりに存在するどんな小さなことにもすべてに感謝の気持ちを持って向き合えば、きっと、自然と笑顔や幸せを感じでいけるのではないかと。そして次第に、自分の悩みも少しは癒えるのではと思うんです。地球規模で考えて「自分の悩みなんてこんなに小さいではないか!」と思えば、少しは気が楽になるかもしれませんね。僕はそうやって、乗り越えてきました。あと“ピンチはチャンス”ではないですが、ネガティブな状況下だからこそ見えてくる発想やアイデアを見出すように心がけ、さらにプラス思考に持っていき、さらなるビジョンやプランを立てていきます。思い通りにいかないことは当たり前だと思って、常に芯は持ちながら柔軟に対応、変化していける自分作りが大事。“人生日替わり弁当”です、当たり前はない。だからこそ、変わりゆくその日、その日の流れに順応しながら“日替わり弁当”を楽しんでいく。そういう生き方のほうが、ネガティブ思考にならず常にワクワクしていられます。嫌いなことも許し、受け入れ、克服していくことが大事ではないでしょうか。世界を明るくする気持ちと意識で過ごしてほしいーーAKIRAさんのご自宅での過ごし方を教えてください。いまは生活リズムを改める良いチャンスかなとも思うので、朝8時に起きて、自宅でできるトレーニングをし、しっかり朝昼晩、自炊して健康的な生活を心がけています。いま、アスリートや世界のアーティストたちもたくさん、トレーニング方法をアップしてくださっているので、参考にすることも。僕は、日頃からEXILE専属トレーナーとしてお世話になっている『コアパフォーマンスジムPCP』の吉田輝幸さんのメニューをこなしているんです。女性の方にも簡単にできる内容もありますので、YouTubeなどでチェックしてみてくださいね。ーーいずれ活動自粛制限が解除されたら、AKIRAさんはまず何がしたいですか。LIVEです!ーーLIVEも楽しみですが、自宅でもEXILEのみなさんの音楽を聴いて勇気づけられる方はたくさんいると思います。今後もSNSなどから、近況報告を届けてくださるのでしょうか。自社メディアを充実させていけるよう、メンバー、スタッフと面白い企画を練っている最中です。いまはYouTubeやSNSなど含めて、みなさんと離れていても自分たちのエンタテインメントを共有できるツールがたくさんありますよね。離れていてもワクワクしていただけるような企画や、ゆくゆくは家からでも体感できるLIVEシステムや音楽配信システムが充実していくとよいなとも考えています。ーーAKIRAさんの今後の活動のご予定は。「LDH PERFECT YEAR 2020」の再開に向けて、準備をしています。先行きは不透明ではありますが、この事態が落ち着きLIVEができる環境になったら、まずは「EXILE THE SECOND PERFECT LIVE」をリスタートできることを願っています。今回の「EXILE THE SECOND」のLIVEは、集大成であり、新たな幕開けともなるべく、進化したLIVEスタイルをお届けできると確信しているんです。以前は、EXILE TRIBE全体として「LDH PERFECT YEAR 2020」の4つのシーズン「IGNITION(1月〜3月)」「IMAGINATION(4月〜6月)」「INFINITY(7月〜10月)」「BEYOND THE BORDER(11月〜12月)」を計画していました。ですが、新型コロナウイルス感染拡大防止による現状の開催期間延長に伴って、ファイナルシーズンとして新たに「RISING SUN〜TO THE WORLD〜(2021年1月〜3月)」をテーマに、開催することを決定しました。「RISING SUN〜TO THE WORLD〜」は、東日本大震災の復興へ向けて「日本を元気に」という想いを込めてEXILE が作った楽曲「Rising Sun」が根本のテーマにあって。東日本大震災とはいままた状況が違いますが、私たちが経験したことがないこの状況を克服し、また新たな未来へと力強く歩んでいこうという希望と願いを表現しています。そして「Rising Sun」にはEXILEがいつも大切にしてきた想いが込められています。かつてない挑戦への絶対に負けないという不屈の精神と、困難を乗り越え次の時代を切り拓いていく力。これまで歩んできたEXILEの精神そのものでもあり、いまでは、EXILE TRIBE、LDH全体に受け継がれている精神でもあります。LDHのエンタテインメントで「日本を元気に」というテーマを掲げ、LDHアーティスト、スタッフ一丸となって、お待ちいただいているみなさまが一人でも多く笑顔になっていただけるように、LOVE、DREAM、HAPPINESSあふれるエンタテインメントをお届けしていきたいと決意を新たにしていますので、ご期待いただき、楽しみにお待ちいただけたらと思います。ーー最後に、ananwebの読者のみなさんにメッセージをお願いします。ananwebをご覧のみなさん、僕のインタビューを読んでくださり、ありがとうございました!現在は大変な状況下ですが、読者のみなさま、そしてみなさまのご家族や身内の方が安全で健康な日々でありますよう、心から願っています。新型コロナウイルスはとても怖いです。どうか、一人ひとりが正しい知識と危機管理意識を持って、日々を生活していただければと思います。手洗い、うがいを徹底して、不要不急な外出は控えて、不確かな情報をうのみにしないようにしましょう。今日、私たちができることをそれぞれの場所で徹底し、こんな時代だからこそ、一致団結し終息に向かっていけたらと思います。暗いニュースばかりの世の中なので、どうかみなさまご自身が世界を明るくしていく気持ちと意識で、日々を過ごしてくださいね。取材後記AKIRAさんの真心がまっすぐに伝わってくる動画とメッセージ。かつてない状況にいるわたしたちですが、AKIRAさんのあたたかい言葉は、「前を向こう」という勇気をくれます。励ましの言葉をくださったAKIRAさん、本当にありがとうございました!AKIRA PROFILE1981年8月23日生まれ、静岡県出身。EXILE、EXILE THE SECONDのパフォーマー、俳優。EXILEの中心核としてグループを牽引し、パフォーマーとしての活動に加え、数々の映画、ドラマ、舞台、声優などさまざまな分野で活躍。2009年、長編映画初主演作『ちゃんと伝える』では日本映画批評家大賞新人賞を受賞。2010年、中国公開のアンドリュー・ラウ監督作品『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』でアジア映画デビュー。2017年、マーティン・スコセッシ監督のハリウッド作品『沈黙‐サイレンス‐』に出演。2018年、三船敏郎の生涯を描いたドキュメンタリー映画『MIFUNE:THE LAST SAMURAI』日本版ではナレーターを務め、2019年、童謡100周年を記念して作られた映画『この道』では大森南朋とダブル主演を果たす。また、アーティスト、役者として活躍するなか、2017年からはアジア人初となるRalph Laurenアンバサダーに就任し、2018年と2019年の2年連続で最高峰ラインPurple Labelの広告イメージモデル契約を結ぶなど、世界に活躍の場を広げている。2020年、小泉堯史監督作品『峠 最後のサムライ』の9月25日公開が控えている。Information
2020年05月13日