今年4月、手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞した山下和美さん。受賞作『ランド』は、忌まわしい因習に縛られた村で生まれた双子の少女の成長と、〈この世〉と〈あの世〉の真実を描いた大作だ。足かけ6年にも及んだその連載と並行して、実は山下さんは大変なプロジェクトを遂行していた。美しい洋館を保存せよ。行政まで巻き込んだプロジェクトの行方は。「数寄屋造りの家を建て、『数寄です!』シリーズも描いているので、家のことになると燃えると思われているふしがあるのですが、本人としては、本当にたまたま、家とも人ともそういう巡り合わせになってしまったという感じですね(笑)」山下さんがひと目惚れした、由緒ある古い洋館「旧尾崎邸」。ある日、水色の美しいその建物が売却され、取り壊されるかもしれないと知る。居ても立ってもいられなくなった山下さんは、山下さんの自邸を設計した建築家・蔵田徹也さんと、館の保存に向けて、動き始めるのだ。『世田谷イチ古い洋館の家主になる』は、その一部始終を追っていくコミックエッセイ。「『こんなすばらしい建物を壊してなんで安っぽいものを建てるの?』という憤慨は、みなさんもよく思ったりされると思います。壊してその後が良くなった例は見たことがないですからね。ただ、このケースでは、蔵田さんをはじめ、たくさんのアドバイザーが実際に動き、助言してくださり、また館や周辺の権利者さんやご近所のみなさんにもご協力いただけたのが大きかったです」保存活動のために、TwitterなどのSNSを駆使するなど手腕も鮮やか。何よりすばらしいのは、山下さんは保存したい側に立ちながら、とてもフェアに事態を見ていることだ。こうした歴史的建造物をめぐっては、存続させることだけに価値を置き、取り壊そうとする側を一方的に悪者扱いしがち。だが、山下さんは不動産業者の言い分も、ビジネスとしての立場も、尊重して描く。「〈土地全体含めてあなたたちが買って維持できるんですか〉と言われたときは怖かったですね。無鉄砲なことをしているのではないかと。けれど、区も理解を示してくれたり、保存を望む人たちの声もあります。この先もきちんと維持していくのは簡単ではありませんが、多くの人にとって有益な状態になるよう、このプロジェクト自体が良きお手本になるといいなと思っています」1巻ではまだプロジェクトは動きだしたばかりだが、土地面積200坪、提示額3億円の洋館だ。本当に保存できるのか、続きが待ち遠しい。山下和美『世田谷イチ古い洋館の家主になる』1世田谷区豪徳寺に建つ「旧尾崎邸」は憲政の神様と呼ばれた尾崎行雄ゆかりの洋館。保存のためのクラウドファンディングも成功。2巻は2022年1月に刊行予定。集英社968円©山下和美/集英社やました・かずみマンガ家。北海道出身。著書に『天才柳沢教授の生活』『不思議な少年』(共に講談社)など。『モーニング』で「ツイステッド・シスターズ」を連載中。※『anan』2021年9月8日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年09月06日好きだから嫌い、嫌いだけど好き。女子高生たちの三つ巴の愛憎劇を描く、しおやてるこさんのコミック『変と乱』。「高校時代、クラスの派閥争いに巻き込まれたり、急にハブられたり、マウント合戦がすごくて、ネタはとにかくたくさんありました」爽やかな青春モノを主に描いてきたしおやてるこさんが、「画力と表現力が上がった今なら描けるかも」と満を持して挑んだのが、これまでとは真逆のベクトルといえる、女子高生たちの愛憎物語。卒業まで3か月を切った高校3年生の冬、大学の推薦入学を勝ち取った涼子は、自分をさんざん振り回してきた莉子に対して、これ以上仲良しごっこは続けられないと勇気を出して言い放つ。「私自身も、莉子みたいなわがままな子に振り回されたことがあって。ほかの子と仲良くするとキレられたりするのを理不尽に感じて、こんなふうに決別宣言をしたんです」一方、涼子と同じく推薦合格組の絵美は莉子の幼馴染みで、「地味子」と呼ばれいじめられている。絵美はなぜか莉子に対して異様に執着していて、それを知った涼子は絵美と結託して莉子をカースト最上位から引きずり下ろそうとする。そこで絶大な効果を発揮するのが、絵美が握っている莉子にまつわるある秘密だ。「人間は誰しも表に出さない部分があると思うんですけど、秘密ってすごく魅力的じゃないですか。莉子はとんでもない秘密を抱えていたほうが絶対に面白いと思って、一番黒い感情を入れ込みました。とはいえ単に胸くそ悪い話で終わらないよう、悪い側に回る人間にも、そうなってしまう原因が何かしらあるっていうベースの部分をきちんと描こうと思いました。それはキャラクターに対する私の情でもあるんですけどね」莉子をちょっと懲らしめてやりたいくらいの気持ちで絵美と共謀した涼子は、ふたりの抱える闇の深さを目の当たりにしてひるむものの、後悔先に立たず。しおやさんも3人の感情に任せるままに描いたという怒涛の展開は、怖いもの見たさでページをめくる手が止まらなくなる。「私を振り回した子も自分勝手だったけど、何かもっと別の言葉をかけてあげたり、救えるような突破口があったんじゃないかなって、大人になってからふと考えるんです。その辺りの感情は涼子に投影しているのですが、この結末を描けたことで自分の気持ちも吹っ切れた部分はあります。いずれにせよ、今の自分が表現できる毒という意味では、最大瞬間風速を叩き出せたと思います!」『変と乱』優等生で正義感のある涼子、クラスで中心的存在の莉子、地味で存在感の薄い絵美。卒業間際、それまで保っていたバランスを失った3人が向かう先は。少年画報社825円©しおやてるこ/少年画報社しおやてるこマンガ家、イラストレーター。主な作品に『アタシのセンパイ』『アオとハル』など。小学生の娘&近所で保護した黒猫のお母さんをしつつマンガを描く日々。※『anan』2021年9月1日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2021年08月29日マーベルが新型コロナウイルスのワクチン接種促進キャンペーンとして、特別な「アベンジャーズ」のコミックをリリースした。マーベルは、ニューヨークのヘルスケアネットワーク「SOMOS Community Care」とタッグを組み、黒人、ラテン系の人々、アジア人に対してワクチン接種を促進する3か月間の公共広告キャンペーンを展開。キャンペーンサイト「somosvaccinations.com」で「アベンジャーズ」のコミックを公開している。コミックに登場するのは、アイアンマン、キャプテン・マーベル、ハルク、ブラックパンサー、ブラック・ウィドウの5人のヒーローたち。ヴィランのモードックが手下を連れてワクチン接種会場に現れ、大暴れしようとするところにアベンジャーズたちが駆け付け戦う。わずか4ページであるものの、「ワクチン接種の大切さ」が説かれている。「SOMOS」の共同設立者のヘンリー・R・ムニョス氏は、「回復への道は、有色人種の移民コミュニティにも開かれています。彼らはパンデミックの影響を大きく受け、ワクチン接種の導入では不公平さやデマが広がったことで取り残されてしまいました。マーベル・エンターテインメントと団結し、『SOMOS Community Care』の医師たちが信頼できる声を寄せることで、(ワクチン接種の必要性の)認識を深めてもらえます。これはとても大きなことです」と語っている。(Hiromi Kaku)■関連作品:ブラックパンサー 2018年3月1日より全国にて公開© Marvel Studios 2017 MARVEL-JAPAN.JP/blackpantherキャプテン・マーベル 2019年3月15日より全国にて公開ⒸMarvel Studios 2018ブラック・ウィドウ 2021年7月8日より映画館 & 7月9日よりディズニープラス プレミア アクセス公開© Marvel Studios 2020
2021年08月26日水と墨、爪楊枝や割り箸を使って描く独特の技法で、繊細なマンガ世界を創り上げている森泉岳土さん。最新作の『アスリープ』は、かつて首都だった大きな都市が舞台だ。すっかり荒廃してしまったビル群の合間をさまよう、ひとりの女性チタルを追って、物語は進む。滅亡しかかった都市と人間が夢見る、一筋の未来を、無二の筆致で描く。「僕は描きたいものがずっと頭の中に堆積していて、そのつど引っ張り出してくる感じ。実は『アスリープ』に取りかかる前に、ネームなどもほぼできていた別の幻想譚がありました。けれど途中で感覚的に『このタイミングではないな』と気づき、一から考え直して生まれたのがチタルや彼女が出会うルオでした。コロナ禍に対する僕なりのリアクションを出さなくては、と思ったのです」ただ、東京を記録したいという気持ちは、幻想譚を考えていたときから強かったそう。「実際、東京をあちこち歩き回って資料にする写真を撮っていたくらいなので。そのイメージが本作にかなり紛れ込んでいますね」物語はシンプルだ。チタルが語る言葉も多くない。にもかかわらず、コマの一つ一つが多弁に、起こりうるかもしれない未来を語ってくる。「託されたものを受け取って次へつないでいく、ということができたら、ひとの生き方の一つとしてすばらしいものではないかと」ラストに用意されたそんな小さな希望を、読者もきっと受け取るはず。ちなみに、森泉さんがマンガを描くときにもっとも意識しているのは、絵が生み出すリズムだという。「文章のコマ、絵だけで文字を抜くコマ、セリフが出てくるコマ…そういう僕なりのリズムですよね。『手を叩く、叩く、休む』とお遊戯するみたいに、フキダシの位置まで気にして、納得できるリズムを作っていく。僕の中では、フキダシが右の位置にあるか左にあるかで、印象は違います。だから、フキダシを3mmずらして『ここだ!』とか(笑)。それくらい繊細な話なんですね」紫に銀を混ぜた特殊な色みを使った2色刷り。そこに墨の濃淡や、物語が進むにつれフキダシの色が抜けていくというアイデアが加わっている。一コマ一コマが、いつまでも眺めていたくなるアートだ。「いま、鉛筆だけで描く新しい手法に取りかかっているんです」森泉さんはどこまで進化してしまうのだろう。ずっと追いかけたい。『アスリープ』フランス文学者・中条省平氏の解説も作品世界を深く味わうガイドに。現在はドストエフスキーなど文学作品のコミカライズを執筆中。青土社1980円©MORIIZUMI Takehito 2021もりいずみ・たけひとマンガ家。1975年、東京都生まれ。著書に『セリー』(KADOKAWA)、『爪のようなもの・最後のフェリー その他の短篇』(小学館)。※『anan』2021年8月25日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年08月24日20年を超えるキャリアの真ん中辺りで描いた『うみべの女の子』が映画化。今なお愛される作品を入り口に、淡々と、確かな口調で語ってくれた、漫画家・浅野いにおの現在地。人との距離感が変わった今、漫画も僕自身ももっと距離を縮めていかないと。――『うみべの女の子』と連載中の『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(以下『デデデデ』)は作風がまったく違いますが、とはいえ浅野さんの作品は、若いファンがどの時期もいるイメージがあります。浅野:『うみべの女の子』の連載中に東日本大震災があって、『デデデデ』はそのあとに描かれたものですが、明らかに自分のなかで視点が変わったんですよね。個人にフォーカスする物語っていうよりは、もうちょっと社会全体を見る感じになったというか。『デデデデ』は、そもそも今の人たちがネットやSNSの情報を、ひとつの常識というか真実としている世界観で生きているから、今までみたいに自分が体験したことを漫画に反映させるのではなく、僕自身もネットから得た情報だけで描いてみようとしているんです。だからキャラクターの内面を深掘りしようとは思っていない。みんなが楽しそうに振る舞っている、表面的な世界のなかだけで漫画を描くのが、『デデデデ』のコンセプトなんです。――そうやって違う描き方をした『デデデデ』が、1月に小学館漫画賞一般向け部門を受賞されたわけですが、それまで賞とは無縁だったというのも意外でした。浅野:実験的な作品が評価されたのは嬉しいですけど、そろそろ次の作品のことを考えなければいけないので。今度はもっと得意なものを描きたいなとも思っています。コロナの影響などで人との距離感が変わったことによって、『うみべの女の子』を描いていたときくらいにあえて他人との距離を縮めていくようなことを、漫画だけじゃなく僕自身もしなきゃいけないのかなと思ったりするんです。なかなか難しいですけどね。それを実践しようとすると、不倫することになるんで(笑)。――そこまでしないと、ですか?浅野:実感したいんですよね。でもたいしたことじゃなくてもいいんですよ。現実で起きた出来事が1あったら、それで10個くらい漫画が描けるんですけど、とにかく今は何もないから。生活自体は自由気ままに送っているし、もともと人と会わなくても平気なタイプではあるんですけど、それにしても波風がまったく立たない(笑)。アシスタントとリモートで1日1時間くらいしゃべってはいるんですけど、僕も含めて、みんなどんどん感情を失ってる気がする(笑)。これはまずいなって気はしてます。自分のいびつな円グラフをもう少し丸に近づけたい。――YouTubeの作画配信なども、何かしら新しいことを求めて始めたのでしょうか?浅野:大学の同級生が、ゲーム実況で人気の人になっているのが羨ましくて。ただ結果的に、これが自分にとってコミュニケーションのひとつとして補完されているところはあります。SNSとかも僕はいつも後乗りなんですけど、これに関しては、せめて漫画家の中では先取りしとこうかなっていう思いもありました。今後、例えば主人公がYouTuberってこともあるだろうから、感覚だけは知っておこうと思って。――漫画に生かせると思えば、いろんなことに挑戦できそうですね。浅野:仮に私生活でトラブルがあったとしても、最悪漫画のネタにすればいいと開き直れるというか。――そうなんですね。ところで、昔からレゴがお好きだそうですが、今もやってますか?浅野:たまにやってますよ。まだ開けてない箱が50個ぐらいありますけど(笑)。漫画もレゴも、ものを組み立てている感覚があって、それって子どものときからの根源的な快感なんですよね。自分で何かを組み立てるのが楽しくて、それをさらに人に見てもらえればなおよしっていう。昨日も動画の編集をずっとやってたんですけど、まったく一緒。ほんと僕は、これだけで生きてるなって思いますよ。――『デデデデ』のほうは、いよいよ佳境ですか?浅野:そうですね。次の連載をどうするかも、今ずっと考えてます。連載が終わってから次の連載まで、1年くらい休む人もいるんですけど、僕は最長で半年しか休んだことがないんです。だから、次はしっかり休んでもいいかなって思うんですけど、何もなくなるのが怖いから性格的に難しいかも。――もし長い休みを取るとしたら、何をやりたいですか?浅野:大学生の頃からずっと連載をしてきたので、しっかり勉強したことがないんですよね。こないだ忘れたことを復習しようと思って、数学の参考書を読み返して、久しぶりにルートが何だったのかを思い出しました(笑)。とにかく20年間、漫画に必要なことだけで生きてきたので、無駄はなかったけど、欠けてるものが多すぎる。自分の円グラフがあまりにもいびつな形をしてるんで、もうちょっと丸に近づけたいんですよね。映画『うみべの女の子』は、8月20日(金)から新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで公開。小梅役の石川瑠華さん、磯辺役の青木柚さんの、原作から抜け出てきたような存在感を、浅野さんも絶賛。監督・脚本はウエダアツシさん。人けの少ない海辺の小さな町を舞台に、セックスから始まる男女の、不安定な心と体の距離を描く。あさの・いにお1980年9月22日生まれ、茨城県出身。主な作品に『素晴らしい世界』『ソラニン』『おやすみプンプン』『うみべの女の子』など。『週刊ビッグコミックスピリッツ』にて「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」を連載中。画業20周年記念企画「浅野いにおの世界展~Ctrl+T2~」は10月6日までバーチャル展覧会として開催中。※『anan』2021年8月25日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2021年08月24日10年前だから描けた――。映画化された『うみべの女の子』について、浅野いにおさんはこう語ります。一見どこにでもいそうな中学生の小梅と、彼女のことが好きな同級生・磯辺の心と体がアンバランスで、身勝手な恋愛を描いた物語。気になるその発言の真意とは。30歳くらいのときが作家として一番冴えていたと思います。――『うみべの女の子』は’09年~’13年の連載作品ですが、こうして時間が経ってから映画化されるのはどんな気持ちでしょう。浅野:僕の漫画のなかで一番好きだと言ってくれる人が結構多くて、世代が変わっても読み継がれている印象がありました。なので僕としては、あまり過去の作品という意識がなかったんですよね。――最初の構想では、中学生のウブな恋愛模様をじっくり描いてみようと思っていたそうですが。浅野:自分が漫画を描くときは、物語やキャラクターを考える以前に、コンセプトを重要視するんです。それで最初は掲載誌の雰囲気や、担当編集が女性だったことなどを鑑みて、“中学生のいじらしい恋愛から始まり、最終的にセックスをする部分をしっかり描くこと”をコンセプトにしようと思って。実際に1話目を描きだしたら、僕自身がすごく退屈になっちゃって、出会って好きになっていく過程なんてとてもじゃないけど描いていられなかった(笑)。それで改めてネームを描き直したら、すでにセックスをしたあとのシーンから始まったんです。予定とずいぶん変わっちゃったけど、もともと結末だったセックスを最初にもってきたのであれば、恋愛の逆再生みたいな物語にしてみようっていうことになりました。――中学生のセックスは、今だと余計に大胆なテーマといえますが、どんな表現を意識しましたか?浅野:当時は漫画でも性的な表現を自主規制する雰囲気が漂ってきた頃で、しっかり描くのだったら今が最後のタイミングかなという思いがありました。設定上は高校生でも成立したんでしょうけど、出来上がりを見ると、やっぱり中学生だからこそのメンタリティで物語が動いているんですよね。――たしかに、中二病的な感じが効いてます。映画はストーリーはもちろん、キャラクターの雰囲気も原作に忠実だと思いました。浅野:一番の見せ場といえる、台風のシーンの再現度はほぼ完璧でした。文化祭の看板が飛ぶ角度まで一緒だったからすごいなって(笑)。――はっぴいえんどの「風をあつめて」が印象的に使われていますが、原作もページをめくりながら音楽が聞こえてきそうですよね。浅野:あのシーンは実際の曲のテンポと、コマに描かれているシーンが同期するように描いたんです。映像も、自分が想像した通りの出来上がりになっていましたね。――自作が映像化されたことで、改めて気づいたことなどは?浅野:これを描いたのは30歳前後で、まだ10代を思い出せるくらいの年齢だったこともあり、磯辺のキャラクターに自分の要素や当時感じていたことが入っていたんですよね。そういう意味では、すごく血の通った漫画だと思います。今の自分は物事をもっと俯瞰するようになったというか、自分ってものが作品の中に出てこなくなったので、そのぶん描きやすくはあるんです。あざとい言い方ですけど、ニーズに合わせるようなコントロールもできてしまう。それに対して30歳くらいのときは、作家として一番冴えてる時期というか、自分の才能を発揮できていたので、今では描けないニュアンスがあるし、描いている人間のイライラが伝わってくるんですよね。意識的にやろうとしてもできるもんじゃないし、嘘だとバレてしまうので、いい時期の漫画だなと思います。――今はもっと職人的というか、狙ってできるような感じですか?浅野:そうですね、技術で描けることも多いので。当時の自分は、デビューして10年くらいしか経ってなくて、評価も定まっていない状態だったので、悩みみたいな普遍的な部分を読者と共有して、物語を作ることができたんです。だけど20年漫画を描いていると、生活自体もそうだし、考えていることもいわゆる普通の人とはちょっと違ってきちゃうんですよね。だからストーリーに関しては特に、昔と比べて熱みたいなものがこもらない。そのぶん今、重きを置いているのは、ビジュアルの研究ですね。いろんな描き方やツールを試してみるようなことを、この10年間ずっとやってきましたし、そのほうが精神的にも非常に安定しています。というのも物語って、作家じゃなくても容易に想像できるものなので、物語が自分の想定した流れから外れると不満を言う人が少なからずいるんですよね。だけど、絵に関しては描けない人は描けないから、文句を言われないくらい手の込んだ絵を描いてやろうって思ってるんです。だから最近はそういうところに甘んじて、批判されないようなやり方で漫画を描く癖がついちゃったんですけど、これを続けるわけにもいかないので。何かしらまた、読者との接点を探さないといけないとは思ってます。映画『うみべの女の子』は、8月20日(金)から新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで公開。小梅役の石川瑠華さん、磯辺役の青木柚さんの、原作から抜け出てきたような存在感を、浅野さんも絶賛。監督・脚本はウエダアツシさん。人けの少ない海辺の小さな町を舞台に、セックスから始まる男女の、不安定な心と体の距離を描く。あさの・いにお1980年9月22日生まれ、茨城県出身。主な作品に『素晴らしい世界』『ソラニン』『おやすみプンプン』『うみべの女の子』など。『週刊ビッグコミックスピリッツ』にて「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」を連載中。画業20周年記念企画「浅野いにおの世界展~Ctrl+T2~」は10月6日までバーチャル展覧会として開催中。※『anan』2021年8月25日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2021年08月23日自意識が渦巻く教室で、主人公になりたかった私たちへ。谷口菜津子さんによるコミック『教室の片隅で青春がはじまる』をご紹介します。「ラジオが好きで“学校あるある”を投稿するコーナーを聴いていたんですけど、痛々しい記憶が多いんですよね。恥ずかしい思い出でしかないんだけど、みんなと共有することで微笑ましくなったり、楽しい記憶になるのがいいなと思って。私も読む人が、過去の失敗や恥ずかしい記憶を優しく思い出せるマンガを描きたくなって、自意識が暴走していた高校時代の教室を舞台にしました」谷口菜津子さんの『教室の片隅で青春がはじまる』は、同じ教室で机を並べる女子高生のオムニバス。彼女たちはみな自分を特別視し、小説にしたらベストセラーになるような人生を送りたいと願い、信じてもいるけれど、それが難しいことも心のどこかでわかっている。たとえば有名になりたい吉田まりもは、ユーチューバーデビューをしても空回り。おまけに周りと合わせることができず、いつも浮いている。「私も浮いていた時期があったんですよね。いま思うと、あれはクスクス笑いじゃんみたいな(笑)。ほかにも周りで浮いていた人の気持ちを想像して、笑われがちだけどだんだん目が離せなくなってしまうようなキャラクターにしてみました」まりもの人生初の友達となるネルは、宇宙からの留学生。自分の星ではまったくモテず、地球だったら特別になれると信じてやって来たが、結局マスコット扱いされてしまう。「飼い猫が巨大化して、人間の恋人が欲しいと思ったらどうなるんだろう、と想像してできたキャラです」ほかに登場するのは、オタクであることを隠している美少女のニカ、SNSの裏アカで完璧な女子高生を演じるめぐみ、宇宙人と地球人のハーフでどちらにも属し切れないサイリ、存在価値を男で見出し、自分を空っぽだと感じるマイ。彼女たちは理想と現実の乖離に悩みながら、やがて自分らしさを見つけていく。「他人にはっきり教えてもらって変わるのではなく、他人と接することで変わるきっかけが見えたり、気づけるようにしたかったんです。実際今の自分がいるのは、いろんな出会いの積み重ねによるものだから、その一部を描きたいと思いました」恥ずかしい以外の何物でもなかったはずの過去の記憶が、大人になった自分を形作る、かけがえのない思い出へと変わることもあるのだ。「最後はとにかくみんな幸せになってくれ、と思いながら描きました。当時の私に対しても、やっぱり幸せになってほしかったんですよね」今よりずっと不器用で、窮屈だったあの頃の友や自分を、優しく抱きしめたくなるような作品だ。『教室の片隅で青春がはじまる』女子高生の自意識と友情をそれぞれの視点で描くオムニバス。「自分が思い込んでいたマンガの描き方を捨てて、自由帳的に描いた」という絵も必見!KADOKAWA924円©谷口菜津子/KADOKAWAたにぐち・なつこマンガ家。著書に『レトルト以上・ごちそう未満! スキマ飯』『彼女と彼氏の明るい未来』など。イラストも数多く手がける。※『anan』2021年8月11日‐18日合併号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2021年08月12日やっとの思いで子どもの寝かしつけに成功した矢先に、「ピンポーン」とチャイムを鳴らして帰宅する。夕食を作り終えた時間帯に「今日ご飯いらない」とメールをしてくる。そんな夫の無神経な言動に腹が立ったことはありませんか? あったとしても大抵の場合、グッと我慢してその場をやり過ごすことが多いかもしれません。コミック『離婚まで100日のプリン』の主人公プリ子は、夫の自己中な言動に悩まされただけでなく、DV気質や不倫が発覚し、離婚を決意。専業主婦でありながら100日で離婚を成立させました。フィクションでありながら、モラハラ夫にめげず、着々と離婚準備を進める姿には、「続きが気になる!」「私も泣き寝入りしないで頑張る!」といったメッセージも多数寄せられました。 自立へと向かう痛快ストーリーの中には、モラハラ夫の典型例や自分らしさを取り戻すための言葉など参考になるシーンも。その一部をご紹介します。■はじまりはよくある産後クライシス初めての子育てに追われる専業主婦のプリ子。慣れないことも多く、オムツ替えに授乳に寝かしつけに休む暇もありません。しかし、夫のプリ彦は育児への関心が低いため、妻の苦労など知るよしもなし…。悪気のない言動でプリ子を傷つけていきます。妊娠・出産という心身ともに大きな変化を経て母親になる女性と比べ、子どもが生まれても変わらず仕事を続けていく男性は、なかなか親になりきれないというのはよく聞く話。しかし、少しでも相手に思いやりの気持ちがあれば、このような言葉は出てこないはず…。■典型的なモラハラ夫の行動とは?付き合っているときは、プリ彦がこんなモラハラ夫になると想像できなかったと嘆くプリ子。それもそのはず、外ズラがいいというのはモラハラ夫の典型的パターンのよう。■歩み寄りの道を探るが閉ざされ…「気持ちを伝えてこなかった自分にも非があるかも」と、意を決してプリ彦との話し合いを試みるプリ子。しかし、「めんどくせー!」と一蹴された揚げ句、ゴミ箱をけって壁に穴をあける始末。もしかしたら理解してくれるかもという淡い期待も無残に消えていきます。そして、決定的になったのが、夫の不倫。気づいたきっかけは夫のスーツのポケットから出てきたピアスというあるあるパターンですが、そこから不倫という現実に目を背けず、証拠を押さえようと策を講じるプリ子の執念がすごかった!■辛くてもプリ子を突き動かしたもの決定的な証拠を押さえて吹っ切れたプリ子は、離婚、そして自立への道を模索します。ときにお金のことが心配で眠れなくなったときには、今あるもので乗り切ろうと必死に堪えたり…。仕事探しや離婚準備でてんてこ舞いになったときは、プリ美を一時預かりで見てもらい、1人時間を作って自分を取り戻したり…。モラハラ夫に苦しんだり、離婚の経験がなくても、毎日家事に育児に必死のママなら「その気持ちわかる」と共感できるシーンがいっぱい。いつの間にかプリ子を応援したくなります。そうして、我が子・プリ美をパワーに変えて、くじけそうになりながらもプリ子は少しずつ前進していきます。■自分らしさを取り戻すための離婚印象的だったのは、離婚経験者の友人・グ美の「離婚はただの卒業」という言葉。プリ美に感じていた罪悪感を手放し、これからの人生を前向きに歩むきっかけになります。子どもが生まれるといつの間にか“子どものために…”と自分を犠牲にしてしまうことも少なくありません。プリ子のストーリーは、自分を取り戻すきっかけがたくさん詰まっています。専業主婦のプリ子がどうやって離婚・自立への道を歩んだのか、詳しい軌跡はウーマンエキサイトに掲載されています。夫・プリ彦の不倫のその後も必見です。
2021年08月05日読者を煙に巻くナンセンスな笑いを、きれいめタッチで描く、新感覚漫画。白湯白かばんさんによる『まれなひと』。漫画家でマルチクリエイター、ジョンソンともゆきさんのアドバイスもあり、Twitterアカウント(@sayushirokaban)を作って投稿し、ユニット漫画家として産声を上げた白湯白かばんさん。「初めての投稿は2020年2月29日、うるう年のうるう日でした。その日にしたのは原作担当の僕が“うるう”という言葉に変に思い入れがあるせいで、他意はありません」そこから瞬く間に人気を博し、いまやフォロワー数4万3000人。初単行本が『まれなひと』だ。基本は、2~4コマのギャグ漫画。お笑い好きだというふたりのセンスで落とす。だが、通ってきたお笑いや笑いのツボは若干違うそう。原作担当さんは元ラーメンズの小林賢太郎さんや街裏ぴんくさん、絵担当さんはカナメストーンやオズワルドのファン。「白湯白かばんとしては、みんながうっすら思っているようなツボを突いて描きたいと思っているんですね。ですが、絵担当さんと『それじゃ伝わらないよ』『え、これはあるあるでしょ』と、“あるあるネタ”の感覚のズレを感じることもあり、打ち合わせでいちいち揉めてます(笑)。ただ、僕はやや自分のセンスに偏りがち。絵担当さんにうまくセーブしてもらっています」創作する上でこだわっているのは、わかりやすさだ。「絵担当さん曰く『セリフとそれを言っている人の造型を乖離させないこと』。1コマでも、どんなキャラクターなのかがきちんと伝わるように意識しています」本書には、ストーリー仕立ての短編漫画が2編収録されているが、とりわけラストに置かれた「なるひと」は、ナンセンスなのにちょっぴり切なくなるステキな物語だ。「僕は10代のころ引きこもりでした。そのころの自分の体験を、“話し相手になってくれる種から生まれた小さな人”と交流するというメルヘンに改編して描いてみようかなと思ったのがこの作品です。会話の内容は、僕が普段からメモしていた『面白いけど相づちもうまく打てないような他愛のない会話』をふんだんに入れています」ネタのメモはガラケーに書き込む習慣で、もう10年分のデータが溜まっているそうだ。そんな中で実際に漫画にできるのは3~4割。渾身&精鋭の味わいをどうぞ。白湯白かばん『まれなひと』Twitterで予想を超えてバズったのはP.68の「女教師だと思わせてくる人」、原作担当さんのお気に入りはP.53とP.165だそう。ぜひ本書でチェックを。KADOKAWA770円「子供だった」より©白湯白かばん/KADOKAWAさゆしろ・かばん原作担当は男性、絵担当は女性のユニット漫画家。Webメディア「オモコロ」で「うつつっ娘」を連載中。※『anan』2021年8月4日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年08月01日高齢の大家さんとのかけがえのない日々をマンガにした「大家さんと僕」のシリーズに笑って泣いて…。矢部太郎さんの次回作を心待ちにしていた読者は多かったはず。今度は、自身の子ども時代にフォーカス。『ぼくのお父さん』では、父である絵本作家のやべみつのりさんと自分や家族の思い出を綴った。「父のことを描くのが照れくさいとかはなかったんですよね。最初から、いわゆるいい話を描くつもりがなくて、わりと俯瞰で、批評的に描くつもりだったので。連載中、お父さんにも『もっとダメに描いた方がいいよ』とアドバイスをもらったんです」何でも絵に描く父の様子、つくし採りや夏休みの思い出、父が始めた畑のこと、父と友だちと一緒に挑戦した土器作り…。ユーモアとペーソスの絶妙なバランスが、矢部さんのマンガならではの柔らかなタッチと相まって、見入ってしまう。「今回、僕自身の記憶だけで描いたのではないんですね。『たろうノート』という父による僕の成長記録がもとなんです。セリフなどほぼそのままのものもあって、原案ですよね。大家さんの話を聞いてそれを今度は僕から見た形で素直に描く。あのときのやり方と同じです」たとえば、矢部さんの描くお父さんは優しいけれど少し頼りない。流れるプールに浸かりながら〈僕は流されない〉と踏ん張っていたり、迷子になってしまって子どもの矢部さんに探されたりしている。「父のふるまいは少し変わってはいるかもしれませんが、“天然”というのはしっくりこなくて。いま思えばですけど、どの行動も、父自身が率先して選択した暮らし方、生き方なんだろうなと思うんです」インタビューの際にはさまざまなお宝も拝見。お父さんが当時描いていた数々の日記やノート、誕生日プレゼントにもらった父特製のおもちゃ、矢部さんが読み札、お父さんが絵札を描いた共同制作のかるた、矢部さん責任編集の「たろうしんぶん」…。矢部さんが初めてひとりで自作した紙芝居もあった。「裏に〈きょうりょく・やべみつのり〉とか〈(この紙を)抜きながら〉とか書いてある。ちゃんとプロ仕様なんです(笑)」豊かなクリエイティビティは、少なからずお父さんから受け継いでいるのだろう。いつかお父さんのように、絵本も描いてみたいそうだ。「父は子どものお絵かき教室などもやっていたんですが、子どもに教えるというより、子どもから教わりたいという意識が強かった気がします。孫の、つまり僕の姪の絵を見ても『すごい!』とベタ褒めです。プリミティブなものにとても敬意を持っているというか。土器が好きなのも、そんなところがあるのかな」男の子だって泣いていい。大人だって間違うこともある。既存の価値観に安易に乗っからないでいいと、お父さんは背中で伝えていたのではないかと思う。「僕も、親や先生や大人が、正解を知っているとか、正解を子どもに教える立場だということには疑問がありますね。そんなふうに考えてしまうところは、父に影響されているかもしれませんね」矢部太郎『ぼくのお父さん』よりスケッチ×小さなメモ。『たろうノート』の一部。お父さんが描き続けた矢部さんやお姉さんの成長記録は合わせて40冊くらいあるという。「僕を描いたのは3冊。姉のが圧倒的に多くて38冊。でも僕の話も出てきますから。会社に行かない父のことは、友だちの家と違うなとは思っていました。でも、絵を描いたり何か作ったりしていつも遊んでくれる父といるのは楽しかったです」『ぼくのお父さん』一風変わったお父さんを囲んで、大変なこともあるけれど、いつも愛情に包まれていた少年時代の矢部さんと、家族のお話。こんな毎日、実はかなりうらやましいかも。全編オールカラー。新潮社1265円やべ・たろう芸人、マンガ家。1977年生まれ。’97年「カラテカ」を結成。初めて描いたマンガ『大家さんと僕』はシリーズ累計120万部、手塚治虫文化賞短編賞を受賞。舞台やドラマ、映画など、俳優としても活躍。※『anan』2021年7月28日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年07月26日ポジティブなワードを口に出して自分を「褒める」「癒す」「励ます」ことは、腸活にも有効。それを習慣化することでポジティブ脳にチェンジできるそう。ポジティブ脳の秘訣は“ユーモア”と“妄想”。ということで、今回は漫画家・浜谷みおさんによるイケメンキャラが特別出演。彼らの胸キュンなセリフを、自分への“褒め活”トレーニングに使ってみて!※セリフのに自分の名前を入れて読んでみよう!半年もあれば誰でもポジティブ脳に変われる。人間は、本能的にネガティブになりやすいという。ところがこのネガティブ思考は、脳と腸が頻繁に情報交換を行っている“脳腸相関”によって腸に悪影響を与えてしまう。これを改善する方法は、あるのだろうか。「ネガティブ思考はただのクセ。脳は意外と単純なので、考え方を少し変えるだけで半年もあればポジティブな思考にシフトできます。たとえば最初は心では思っていないことでも口にしてみて。また、楽しいことや嬉しいことがなくても笑顔を作るだけで、セロトニンの分泌が促されます。つまり“ユーモア”と“妄想”があれば、脳はいつでも幸せを感じて腸の調子も整うのです」(脳腸セラピスト・桜華純子さん)自分自身でポジティブな言葉を口にすることも腸活の一環。下記のイケメンキャラたちの囁きから、「自分を褒める言葉」を楽しく学んでみよう!前向きに一日を始めるために自分にかけるとよい言葉「おはよう。ちゃんと起きて偉いね。あぁ、なんでそんなに可愛いの?と一緒で、最高の一日になりそう」朝一でセロトニンを全開にする自分への「ありがとう」。「ありがとう」は、口にすると最強のポジティブワードになるという。「今日も元気に起きられた、自分への感謝の言葉として『おはよう、私』や『目覚められたことに、ありがとう!』がおすすめです。日中は忙しくて、つい自分をねぎらうことを忘れがちなので、ここで一度セロトニンを分泌して、幸せ気分でスタートを切りましょう。家なら誰かに聞かれる心配もないので、口にするとより効果的です。さらに、『今日も素敵な一日にするぞ!』など、ざっくりでOKなので、その日一日の目標を立てて、宣言するのもいいでしょう」(桜華さん)怒りがわいた時、自分にかけるとよい言葉「めちゃくちゃ怒ってるけど…本当は悲しいんだろ。よしよし、傷ついたよな。俺が、受け止めてやるから。もう大丈夫だよ」根底にある悲しみを受け止めてセルフハグをする!一度怒りを覚えてしまうと、なかなか気分を変えられずにしばらく引きずってしまうことも。そんな時こそ、ポジティブに自分を愛し、癒してあげて。「怒りの本質は悲しみです。うわべの怒りだけに感情を振り回されずに、根底にある悲しみを救い出し、自分を受け止めること。『悲しかったね、傷ついたね』と自分を慰めて、『もう大丈夫だよ』という言葉によってセルフハグをしてあげると回復も早いでしょう。このように怒りや悲しみから目を背けずに、自分で癒していくことで、徐々にイライラに支配されたり乱されたりすることがなくなります」気分が落ち込んだ時、自分にかけるとよい言葉「は本当に頑張り屋さんだな。え?私なんか他の人より仕事できない?ばーろー!んなわけねぇだろ、俺が証言する、お前なら絶対大丈夫だ」普段から自分を俯瞰し、実況中継するクセをつけること。いつも全力の“頑張り屋さん”は、ちょっとでもミスをしたり、うまくいかないことがあると「もっとできたのに」「こんなはずじゃなかった」と落ち込みがち。「頑張り屋さんこそ、自分を主観的にではなく俯瞰的に捉えることが大事。そのために、普段から他人を見ているかのように『今わたし急な無茶ぶりに耐えて、作り笑顔してますよ』など、自分の状態を実況中継するクセをつけて。そのうえで『大丈夫だよ、今日はゆっくり休もうね』と自分をいたわってあげるのが有効。俯瞰することで人から『大丈夫』と励まされている感覚にもなれます」漠然とした不安が襲ってきた時、自分にかけるとよい言葉「…元気ないですね?先輩のことなら何でもお見通しです。こーんなイケメンで優しい彼氏がいるのに(照)、不安にならないでくださいよ」不安要素と解決策を明確にし「私は幸せ」であることを認識する。不安というものは、かなりのクセモノ。その理由は“漠然とした不安”だから。「最初に説明したように、人間は本能的にネガティブ脳を優先してしまうため、不安を感じると、どんどん悪い方向へ考えてしまいます。そこで、不安の原因を自分に問いかけ、自分でどうにかなることなのか、どうにもならないことなのかを明確にすることで、解決策が見えてくるでしょう。また、『私は今のままで十分幸せ』と、自分がすでに幸せであることをいつも認識しておくと、心が安定し、ちょっとしたことで感情がぶれなくなります」緊張した時、自分にかけるとよい言葉「プレゼン緊張してる?ねぇ、二人だけの秘密にしてほしいんだけど、僕未来が見える特殊能力があるんだ。30分後、さんはライバルに圧勝してるよ」深呼吸でリラックスしながら、成功した姿をイメージすること。緊張する理由もまた、失敗したらどうしよう…などといったネガティブ要素を脳が生み出すことから。「プレゼンの前にまずは深呼吸して、プレゼンに成功して“やったー!”と笑っている姿をイメージしてみて。言葉にする時は、『プレゼンがうまくいきますように』ではなく、『プレゼンがうまくいきました!』とか『提案したプランがクライアントから褒められた!』など、うまくいったように過去形にすると、緊張がワクワクに変わるはず。ちなみに私は感情が入りすぎて、未来の成功をイメージして大号泣してしまうこともあるほど(笑)」夜、よく眠るために自分にかけるとよい言葉「良い日曜だったね。え、一日中お菓子食べてダラダラしてただけ?いつも忙しいんだから、たまにはよくない?ちゃんと休めて偉い、偉い」一日の終わりは“褒め活”で締めくくることで快眠&腸活に!一日の最後に自分を褒めてセロトニンの分泌を促すことで、幸せを感じながら眠りにつくことができる。ベッドの中でも自分への“褒め活”を忘れずに。「寝る前に、一日を振り返る人は多いかもしれません。でもそこで、今日あった嫌なことや反省点などを思い出してしまうと、たちまち不安や悲しみへ一直線…。そこで、大の字に寝て深呼吸し、リラックス状態を作ること。体がリラックスを感じると、ネガティブ脳にはなりにくいのです。そのうえで、『食べすぎちゃったけど1週間のご褒美!お疲れ私』などと自分を褒めてあげましょう」桜華純子さん脳腸セラピスト、美容家。各媒体で女性の腸と心のケアのアドバイスを発信している。また高齢者施設・児童養護施設、障がい児・小児がん患者へ向けたボランティア活動の取り組みも。浜谷みおさん漫画家。2008年に集英社主催新人漫画賞「金のティアラ大賞」で銅賞を受賞して漫画家デビュー。’19年、『やまとは恋のまほろば』でananマンガ大賞を受賞。※『anan』2021年7月28日号より。取材、文・若山あや(by anan編集部)
2021年07月24日「私が学生のとき、同級生に家族構成を聞いたら『7人きょうだいなの……、恥ずかしい!』と言われたエピソードが元になっています。全然恥ずかしくないのに、かわいくて」。上下巻同時に発売された雁須磨子さんの『ロジックツリー』に登場する大瀬良(おおせら)家は、その同級生よりもさらに多い8人きょうだいだ。近くて遠い家族だから、信頼できるし、嘘もつける。27歳の双子の男女を筆頭に、早々に家を出たマイペースな次男、いつもイライラしている三男、主人公でしっかり者の次女・螢(けい)、一心同体のような双子の弟、おしゃまな10歳の末っ子という構成。プライバシーもなければ、親からの過度なプレッシャーもなく、家庭内は常にワチャワチャ。そんななか、螢はできるだけ人や自分に正直に生きたいと思っているが、顔を合わせれば悪態をついてくる気の荒い1歳上の兄が、あろうことか螢の同級生と付き合っていることが発覚。「きょうだい間では嫌なヤツでも、外面は意外とよかったりするような、家ならではの社会性のなさを描けたらいいなと思いました。家族って遠慮がないようであるというか、友達に対してのほうが本音を言えたり、何でも見せられたりする。そういう意味でも不思議な関係性ですよね」一方で双子の弟、則(のり)と平(たいら)はいつもふたりで何かを企んでいて、周りからもやや気味悪がられている。「双子の話をずっと描いてみたかったんです。8人のなかに双子が2組いるのですが、一卵性双生児の則と平は記憶を共有したり、お互いに似せて同一人物になろうとする。長男長女は二卵性双生児で顔も性格も違うんですけど、双子というとっかかりができてしまった人たち。いろいろ描けて満足しました(笑)」螢は家族のごたごたに巻き込まれながら、尊敬する次兄の同級生だったイケメン編集者の柚木にあれこれ相談をしたり、父の義理の祖母と妹が暮らす豪邸に“避難”したり。大瀬良家の外の大人たちと接することで、自分の中にはなかったような感情を理解するようにもなっていく。「たいていの人は、見せたい自分と本当の自分の間にズレがあるものだけど、螢ちゃんにはそれがわかっていなかったのだと思います。といってもわかりやすい起承転結があるわけではなく、螢ちゃんはまだ“途中の人”。最初の想像とは違う展開になりましたが、終わりが近づくほど描くのが楽しくなっていました」近くて遠い家族だからこそ、いろんなことがわかってしまう面倒くささと愛おしさが、数々のエピソードから浮き彫りに。そして後半、螢の恋のゆくえにも乞うご期待!雁 須磨子『ロジックツリー』上・下8人きょうだいの5番目で苦労性の螢は、彼らに振り回されたり、編集者の柚木のことが気になったり。螢の成長と大瀬良家の個性的な面々の悩みを描いた物語。新書館各759円©雁 須磨子/新書館かり・すまこマンガ家。1994年デビュー。BLから青年誌、女性誌まで幅広く活躍。『あした死ぬには、』(既刊3巻)を「Ohta Web Comic」で連載中。※『anan』2021年7月21日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2021年07月19日血縁や社会的役割を超えた関係性“シン家族もの”。ライターの小川知子さんがナビゲートします。従来の家族制度に縛られない、“ゆるやかな結合”近年、家族という概念を揺るがす関係性を描いたエンタメ作品が増えていると、小川知子さんは語る。「安らげる関係であるはずだった家族が、夫婦だから、親だからといった固定観念によって息苦しさが生まれ、関係が行き詰まってしまった事例が、現実に多く存在します。しかし、与えられた社会的役割を一度解放してみたら、うまくいく場合も。また、戸籍上他人であっても血縁でなくても、支え合う自立した個々同士が、ゆるやかな形で集まった共同体を家族として捉えるという流れもあります。そんな既存の制約にとらわれず、多様な家族のあり方を描いた作品に、長い人生を自分らしく生きていくためのヒントがあるはず」元夫たちとの距離感が絶妙。バツ3女性の日常を描く。ドラマ:『大豆田とわ子と三人の元夫』3度の離婚歴があるヒロインを中心に、さまざまな結びつきを示した、今年の傑作。「結婚も離婚もハッピーエンドに関与していない。自分で選んだからこそ、その先に見えてくる景色もある。常識や契約に縛られない関係性のあり方が描かれています」。DVD‐BOX 2万5740円 11/5発売発売元:カンテレ販売元:TCエンタテインメント©2021カンテレ支え合って生きていく、女性ふたりの共同生活。エッセイ:『女ふたり、暮らしています。』シングルでも結婚でもない、女性ふたりと猫4匹の暮らしを描いた韓国のエッセイ。「性格は違っても、自立していて、気も合うから、一緒に暮らすことで自由と心強さを手にできた。まさに理想の生活と関係性」。キム・ハナ、ファン・ソヌ著CCCメディアハウス1650円ワンオペ女性が大黒柱妻に。社会のあり方を問い直す。漫画:『大黒柱妻の日常 共働きワンオペ妻が、夫と役割交替してみたら?』夫と役割交替をし、妻が大黒柱として働いてみたら、昭和のお父さんに!?「社会構造が役割を作っていて、我々もそれに結構とらわれている気がします。双方の立場を知る上で、役割を交替することの重要性を感じた」。田房永子著エムディエヌコーポレーション1320円実父が出演し、話題に!実体験を基にした家族の話。舞台:ゆうめい『姿』脚本・演出を手掛ける池田亮さんの体験と、親族への取材に基づいて描かれた2019年の舞台で、今年5月に再演。「壊れかけた家族でも、足りなかったものを後から埋めていくことで、また新たな家族のカタチを作ることができると思える作品」。次回作『娘』は12月に公演予定。小川知子さん映画宣伝・配給会社、『ecocolo』編集部を経て、フリーに。現在は『GINZA』『花椿』などで執筆。※『anan』2021年7月21日号より。(by anan編集部)
2021年07月18日物語の中にはいつも、ほんの少しうらやましい、そんな友達関係が描かれている。いがみ合ったり、慰め合ったり。心に染み入る友情をご堪能あれ。年齢も性格も関係ない。女ともだちは自由だ!女同士の関係を印象的に描いた作品を3人の女性が薦めてくれた。自身も女性の友情を描いた作品を執筆しているマンガ家のオカヤイヅミさんが選んだのは、「それぞれが勝手なことをしているけれど、互いを認め合う、その上で成り立っている友情を描いた作品。そういった作品を読むと、“私もそこに居ていい”と言われているような気がするからでしょうか」マンガライターの門倉紫麻さんは、“素敵な女ともだち”の存在が、作品にとってとても重要だと語る。「恋愛がテーマであっても、素敵な女ともだちとの場面で一番泣いたりする。物語をぐっと魅力的にする存在です」モデル・俳優の髙橋佳子さんは主人公に感情移入して読んでしまうそうで、「主人公が友達に優しくされているくだりを読むと、自分もそうされたような気がして、癒されます(笑)。自分の周りにもこういう人、いる!と思いながら読むのも楽しいですよ」自分の話をしたい、それで成り立つ友情も。「美しい絵柄で、思春期の苦しさや自分の価値の不安定さ、考えすぎるときの気持ちが描かれていて、読んでいると胃がキュッとなります。私が好きなのは、宇宙人のネルと自意識過剰なまりもが、同じ場所にいるのに別のことを考えている場面。“自分の話をしたい”ことで成り立つ友情を肯定してくれて、嬉しくなります」(オカヤさん)『教室の片隅で青春がはじまる』谷口菜津子主人公になりたいがゆえにいつも空回りしてしまう女子高生・まりもと、クラスメイトの宇宙人・ネルを中心に描かれる、窮屈だけど愛しい高校生の青春オムニバスストーリー。¥924(KADOKAWA)©谷口菜津子/KADOKAWAなんと20年以上続く二人の友情…。「“全部知ってる・知られてる”からこその安心感がありつつ、相手の生活を尊重してベッタリではないのがいい。“キツいことも言う。でもいざというときは助ける”という関係性は、私を含む読者の『女ともだち観』に多大な影響を与えていると思います。ずっと見てきたのでもはや二人が自分の友人のような感覚に!」(門倉さん)『後ハッピーマニア』安野モヨコ幸せを求め続ける女・重田加代子のアグレッシブな迷走人生を描く。’95年より連載された『ハッピー・マニア』の続編で、シゲタは45歳、友人のフクちゃんは50歳に。1~2巻¥990~1,012(祥伝社)『後ハッピーマニア1』©安野モヨコ/Cork投げやりを超えた先に、本当の友情がある…?「5番目の話に出てくる、メキシコ行きの飛行機で偶然知り合った青学女子と早稲女が、旅の終盤、互いのダメ出しをする悪口合戦のシーンが大好き。知り合ったばかりゆえの投げやりさと情熱が、動物的ですばらしい。そこまで感情を高められるって、実はものすごく相手にシンパシーを感じている関係性なんだろうな、と思います」(髙橋さん)『早稲女、女、男』柚木麻子早稲田大学に通う女子、通称“早稲女”を、立教や日本女子大、学習院、青学、慶應に通う女子たちの目線で描いた短編小説集。女子小説の名手である、柚木麻子の真骨頂!¥660(祥伝社文庫)オカヤイヅミさんマンガ家、イラストレーター。最新作『白木蓮はきれいに散らない』(小学館)では、’63年生まれの女性3人の“しんどい現実”の物語を描き、話題に。門倉紫麻さんかどくら・しまマンガライター。Amazonのマンガ担当エディターを経て現職。雑誌などで、マンガ家へのインタビューを行う。また、イベントへの登壇なども。髙橋佳子さんたかはし・かこモデル、俳優。本誌をはじめ雑誌、広告等で活躍。筒井康隆の本を愛読する読書家で、自身のインスタグラムでは読書記録も綴っている。※『anan』2021年7月21日号より。(by anan編集部)
2021年07月17日もともと公私ともに親交のあった吉沢亮さん、山田裕貴さんが、満を持して映画『東京リベンジャーズ』で親友役として共演。のびのびと、付かず離れずなおふたりの関係は、ある種兄弟のようで…?初共演は’17年のドラマ『トモダチゲーム』。しかしそれ以前から互いに親近感を抱いていたというふたり。映画『東京リベンジャーズ』では圧倒的なカリスマ性で不良高校生たちを統率するマイキーを吉沢亮さんが、そしてその片腕であり親友でもあるドラケンを山田裕貴さんが演じている。山田裕貴:『トモダチゲーム』の共演1日目で、亮がマネージャーさんに「山田くんでよかった」と言ってくれてたと風の噂で聞いたんだけど…。それを知る前から、僕も「相手が吉沢くんで、とてもやりやすかった」って話してたんだ。吉沢亮:それ、聞いた気がする。山田:クランクインして初日に物語の肝になるシーンを撮影して、テンション感とかがすごく合うな~っと思って。吉沢:その前から人間性がいいのは知ってたんだけど、実際に一緒に芝居してすごい安心できたし、いい役者さん見つけたなって嬉しかった。山田:それで今回、マイキーとドラケンをやれるのは嬉しいよね。じつは今回の原作漫画、映画化を知る前に亮にお薦めされたんだけど。吉沢:そうだった?山田:映画化することを知っていたのかもしれないけど、読んでてマイキーは亮だなと思ってた。もし自分がやるならと考えたとき、やれるかわかんないけど好きなのはドラケンかなと。吉沢:僕は映画の話をいただいてから読んだんだけど、最初、マイキーは自分じゃないほうがいい気がして受けるか迷っていたんだよね。そのときにドラケン役は山田くんで考えているというのを聞いて、もしそれが実現するならやりたいなって思って、こっちからちょっとアプローチを(笑)。山田:ということは、僕が出られているのは亮のおかげだ。吉沢:いやいや。僕じゃなくてもオファーは行ってたよ。山田:現場ではお互いに「めっちゃマイキーじゃん」「めっちゃドラケンだよ」って励まし合ってたよね。タケミっち(北村匠海)も含めて、実写化でプレッシャーがとくに大きい役だったと思うから。吉沢:そうそう(笑)。でも、山田くんが予想以上にドラケンだった。僕の役が結構暴れん坊で、肩にかけてる学ランを落としたりするんだけど、何も言わずにドラケンが拾ってくれたりして。山田:ドラケンとしてそこにいると、自然とマイキーのだから拾わなきゃってなるんだよね。きっとアイツは拾わねぇだろうしな、って。吉沢:お互いそういう話をしていたわけじゃないし、拾ってくれとも思ってなかったけど。どこかでドラケンなら拾ってくれるんだろうなっていうのはあった気がする。山田:僕らだけじゃなく、タケミっちもアッくん(磯村勇人)もほかのキャストも、みんながいい作品にするために自分の役割を果たそうとする人たちばっかりの現場だったな。そのバランスがとても心地よかったし、いいセッションができたと思う。でもたぶん、もうちょっと若いときにこの作品でこの役を任されてたら、こんなふうにはできなかっただろうなとも思うんだよね。みんなすごくいい俳優でいい芝居するじゃん。それを観たらたぶん変に意識して、空回りしちゃってたかもって思っちゃう。吉沢:確かにそれ、あるかも。いまでこそ同世代の俳優の活躍を素直にすごいって見られるけど、20歳前後の頃はめちゃくちゃジェラってたから。山田:俺も本当にそうだった。いまは完全にリスペクトの気持ちで見られるけど…。吉沢:横でドラケンにいい芝居されて焦ってただろうな~。山田:それこそ亮のことは、戦隊とライダーをやってた時期が一緒だったのもあったから。当時から知ってたし観てたし。僕が映画で『ストロボ・エッジ』やった頃に亮の映画『アオハライド』があって、めっちゃ意識してた。この人、いい芝居するなって。吉沢:あったね。俺は逆に、『ストロボ~』を観て、クソッいい芝居すんなって思ってたけどね(笑)。山田:そのとき、同世代の俳優みんなに嫉妬してたのが、亮の芝居を観たとき、素直にいいなと思っちゃった。吉沢:その後、『トモダチ~』で共演するより前に、一回一緒に飲んでるんだよね。山田:俳優何人かと監督がいる場に僕が後から呼ばれて…。吉沢:なぜかその場のノリで、僕らがキスする流れが(笑)。山田:『トモダチ~』の作中でもあったけど、じつはあれが初めてじゃないです。吉沢:(笑)。でも『トモダチ~』で共演したときから今も山田くんの印象は変わらないな。芝居に対して熱量があって優しくて。でもどっか冷めてるところがあるんだよ。山田:そう。亮は唯一僕のそういう冷めているところを見抜いた人なんだよね。吉沢:ギャップもあるんだと思う。イメージ的に熱い人っていうのがあるから、そこを期待していると、案外踏み込んできてくれなくて。山田:もともとは陰の人なので、俺がそこまで踏み込んでいいのかなってことを気にしちゃうの。だからじつは、僕が誘うより亮が僕を誘う回数のほうが多かったりする。吉沢:そうなんだよ。山田:(笑)。「ふたりの関係性に名前をつけるなら?」ってことなんだけど…?吉沢:ん~なんだろう。山田:一回、感動の再会をしている生き別れていた兄弟、という感じかな。お互いを思い合ってるし、わかり合ってもいるけれど、それぞれがそれぞれの道を行ってる。吉沢:いいね、それ。『東京リベンジャーズ』『週刊少年マガジン』で連載中の人気マンガが原作。負け犬人生を送る主人公・タケミチ(北村匠海)が、タイムリープにより自らの過去にリベンジしていく。監督は英勉。現在公開中。よしざわ・りょう(写真・右)1994年2月1日生まれ、東京都出身。NHK 大河ドラマ『青天を衝け』主演。映画『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールドヒーローズ ミッション』に声の出演。やまだ・ゆうき(写真・左)1990年9月18日生まれ、愛知県出身。放送中のドラマ『ハコヅメ~たたかう!交番女子』(日テレ系)に出演。待機作に映画『燃えよ剣』『ハザードランプ』など。吉沢さん・シャツ¥40,700(LITTLEBIG TEL:03・6427・6875)その他はスタイリスト私物山田さん・コート¥86,900シャツ¥42,900パンツ¥53,900(以上クラス/ウィリー)シューズ¥40,700(コントレ アリー TEL:050・5218・3859)ブレスレット¥28,600リング、小指¥8,800中指¥16,500(以上トゥエンティー エイティー/ヘムト PR TEL:03・6721・0882)ネックレスはスタイリスト私物※『anan』2021年7月21日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)スタイリスト・荒木大輔(吉沢さん)森田晃嘉(山田さん)ヘア&メイク・小林正憲(SHIMA/吉沢さん)小林純子(山田さん)取材、文・望月リサ(by anan編集部)
2021年07月15日誰しも一度は経験する恋人との初めてのセックス。始まるまでのドキドキを覚えている人も多いのでは?そんな初情事にフォーカスしたドラマ『初情事まであと1時間』が始まります。儚く、愛おしい初セックスを4人の監督でカラフルに描く。マンガ『初情事まであと1時間』がドラマとして実写化される。二人の初めての時間を60分前から辿っていくストーリーだが、その監督陣がすごい!『恋人たち』の橋口亮輔監督や『愛の渦』の三浦大輔監督、『勝手にふるえてろ』の大九明子監督、昨年のピンク映画ベストテン監督賞を受賞した谷口恒平監督が、各話ごとにメガホンをとる。その制作の裏側についてプロデューサーの木之内安代さんと大杉真美さんに聞いた。「原作マンガを読んだ時、実写化するともっともっと面白くなると思ったんです。二人の初めてセックスという愛おしいものを本気で描くとどうなるのか、まずお声かけしたのが橋口監督でした。そこで橋口監督と、各話をお任せする監督を決めていきました。一番気持ちが揺れ動く時間を様々な監督の視点から描くと、よりカラフルになるなと。ストーリーは原作の中から監督に選んでもらったんです」(木之内さん)「各話ごとにテンションもガラッと変わります。吹っ切れたコメディもあれば、涙ぐんでしまうようなしっとりとしたものも。現場では、ベッドインする時には男性と女性のどちらを上にするのかなど色々な試行錯誤をしながら丁寧に作っていきました。自分の初情事と重ねながら、楽しく見られるドラマだと思います」(大杉さん)大九明子監督にインタビューマイナス思考な女の子がセックスのために奮闘する60分。『勝手にふるえてろ』や『私をくいとめて』で、どこか一癖ある女性像を描いてきた大九明子監督だが、セックスを終着点とした人間模様を描くのは珍しい。「私が担当した7話の主人公は、ものすごく不幸体質。男性といい感じになるに従って、不運な出来事が身の回りで起こっていく。最終的には避難をしないといけないほどの嵐に見舞われて…。でもそれって、私がこれまで描いてきた女性像とも遠くないと思うんです。そんな不幸体質なカップルが、目の前の苦難を乗り越えてセックスにたどり着くって面白おかしいじゃないですか(笑)。短編だし、徹底的にコメディに振り切りました。原作にはない部分も加えました」大九監督は3話・7話・10話を手がける。未発表の出演俳優にも期待が高まる。ドラマ“初情事まであと1時間”甘くて、尊い時間を覗き見している気分に。『初情事まであと1時間』監督ごとに異なる初情事までのアプローチは必見。大九監督が“絶対に別れないカップル”という二人は第3話に登場する。1話30分で全12話。7月22日にMBSほかドラマ特区で放送開始。TVer & MBS動画イズム&GYAO!見逃し配信あり。TELASA、J:COMオンデマンドほかでは地上波未放送分の9~12話も配信される。©「初情事まであと1時間」製作委員会『初情事まであと1時間』様々なカップルたちの初めての情事までの1時間を描いたオムニバス恋愛コメディ。本当にありそうな高校生の二人から、勇者と魔法使いのようなファンタジーな組み合わせまで幅広い二人組が登場する。全3巻が好評発売中。ノッツ/KADOKAWA/各660円※『anan』2021年7月14日号より。(by anan編集部)
2021年07月13日『野田ともうします。』『幸子、生きてます』など、地味系女子の日常を独特のギャグセンスで描くフィクションもいいけれど、『中年女子画報』のような体験エッセイでも高い人気を博す柘植文さん。本書『ひとりぶらりごはん』は後者に属し、柘植さんならではの目線でリポートする「旅と食」の風景が楽しい一冊だ。いつだって「旅とごはん」は最高だ。真似したくなる、行きたくなる!「ひとりごはんの何がいいかといえば、それこそひとりなので、なんでも自由にできること。行きたいとこに行って、食べたいものを選んで。『やっぱりこっちがいいや』と、そのときどきの気分でなんでも変えられるのが楽しいですね」取材やヤボ用ついでに、あるいはふらりと出かけた先で、著者が食べるものは、松本市で馬刺し、名古屋市で味噌煮込みうどんなど、各地の名物も多い。だが、函館ですき焼きランチ、仙台で餃子のように、「なんとなくいま食べたいもの」だったり、「お店を探してうろうろしているうちに適当に入ったお店」だったり。ゆるい冒険が、むしろ味。「札幌でジンギスカン、盛岡でわんこそば…、ひとりで囲みづらい名物もあるので、そこはがんばらないです(笑)。お店も、わりとマンガの中でもうろうろ探していますが、自分なりにひとりでも入りやすそうなところを選んでいます。カウンターがあるのはひとり客歓迎の一つの基準。テーブルしかない店だと、盛りが多すぎて失敗したことも」また、柘植さんが求める味のこだわりに共感する人も多いだろう。たとえば「ハムカツ」は薄いのが好み。「もともと安っぽいものだし、そこが魅力だと思うんですね。ハムを厚くして高級感を出されても、とまどってしまう。昭和感まんまの味を求めている人間もいるとわかってほしいですね。一方で、『マンガは面白いけれど、自分とは食の好みが全然合わない』というレビューを見かけたことがあります。それはそれで、味覚って人それぞれというのが実感できて面白いなあと」グルメマンガの楽しみでもある料理の“扉絵”にも注目。モノクロなのにめちゃくちゃ美味しそう!「撮ってきた写真をトレースして描いています。案外、ご飯と麺類が難しいです。味の感想やそのとき感じたことなどは、忘れないようにいろいろメモします」それが書き文字部分のユーモラスなツッコミに活かされている。「だんだん丸くなって、だいぶ毒は抜けてきました(笑)」グルメ旅欲を刺激される一冊だ。『ひとりぶらりごはん』食欲をそそる各地の名物やB級グルメが満載。コミック28編とミニコラム4編を収録。コンビニコミックス『ひとりごはん』(隔月刊)で連載中。少年画報社913円©柘植文/少年画報社※『anan』2021年7月14日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年07月10日第1回「ウーマンエキサイトコミック大賞」の募集を終え、ついに結果発表! 編集部による厳正なる審査の結果選ばれた、コミック部門・ストーリー部門の受賞作品を紹介します。コミック部門・金賞(賞金10万円)「慣らし保育が教えてくれたこと」/転勤族ママぽんさん ウーマンエキサイト編集部コメント:人見知りだった娘さんの慣らし保育が、スムーズに進んだ理由…。そこには、過去の慣らし保育で苦しい経験をした3歳の息子さんの存在が。つい目の前のことに精一杯になりすぎて見落としがちな「大切なこと」に、主人公のママが気づく展開に編集部一同、涙、涙…。 まさに今回のコミック大賞がテーマに掲げていた「人生が愛おしくなるコミック」作品でした。作品に込められた想いが、日々の小さな幸せに気づく機会を与えてくれます。表情豊かなお子さんたちの、ほっこりかわいらしいイラストにも癒されること間違いなしです! 作品を読む! ・銀賞(賞金5万円)「"育児の疲れを増幅させているモノ"の正体に気がついた。」/冷え田やっこさん ウーマンエキサイト編集部コメント:作品に込められた「すべてのお母さん方、自分にやさしくあれ!」の一言は、まさにウーマンエキサイトが読者の皆さんに発信していきたいメッセージのひとつ。自分と対話する描写もコミックだからこそなせる技を巧みに使われていてお見事! おもわず「あるある、そういうとき!」と頷いてしまう、納得感のある展開でした。冷え田やっこさんのように「ママなんだからこうしなくちゃ」と自分で自分を追い詰めてしまう読者のみなさんに、この作品を読んでいただきたいと思いました。 作品を読む! ・銅賞(賞金3万円)「ダンナおとぎ話」/わじおさん ウーマンエキサイト編集部コメント:すぐに寝てしまうパートナーを「眠りヒゲ」と皮肉りつつ、実はご自身も朝が弱い「朝起きレンジャー」であると自虐し、最後は幸せな結末へと締めくくる展開に脱帽! 夫婦関係をおとぎ話の登場人物に例えるギャグセンスの高さにおもわずクスッと笑ってしまいます。ママに余裕がないとついパパへの不満も多くなってしまいがち。しかし、完璧なパートナーなんてなかなかいないはず。一緒に過ごしてくれていることに感謝し、いいところも見つけあえる関係性でいられたら…そんなことを気づかせてくれる作品です。 作品を読む! ストーリー部門ストーリー部門は当初「金賞」のみ発表予定でしたが、素敵な作品が数多く集まったため「特別賞」を2枠設け、全部で3作品の発表となりました!受賞した3作品は、後日ウーマンエキサイトにてコミック化されますので、お楽しみに!・金賞(賞金5万円)「育休明けの家事分担はお早めに」/せりママさん<あらすじ>2人の未就学児を持つ主人公。働きながらワンオペ育児をうまくこなそうと努力した結果、ストレスで倒れてしまう。結果的に夫が苦労することになり…。ウーマンエキサイト編集部コメント:主人公がワンオペ育児に奮闘する姿は身につまされるものがあり、働くママの苦悩が具体的に描かれていて、ついコミック化したくなるストーリーでした。3話では夫との家事分担のコツなども盛り込まれていて、日常の参考にもなる作品です。 作品を読む!(PDFファイルが開きます) ・特別賞(賞金3万円)「ロジハラ夫」/ツキノ マコトさん<あらすじ>何かと理屈っぽく、正論を振りかざす「ロジハラ夫」に辟易していた妻。しかしあるとき、娘からの一言で夫はタジタジに…。ウーマンエキサイト編集部コメント:夫をギャフンと言わせた娘の一言にあっぱれ! 起承転結の流れとテンポも良く、具体的なセリフや主人公の感情も描かれていて物語が想起しやすいこともポイントとなりました。夫への愚痴だけで終わらせるのではなく、夫がきちんと成敗されつつ反省した描写まで描かれていて、読後にスカッとする作品でした。 作品を読む!(PDFファイルが開きます) ・特別賞(賞金3万円)「娘が転校先で馴染めなくて」/ゴウルドさん<あらすじ>夫の転勤で転校した小2の娘が、友だち作りに失敗。心配症ですぐに感情的になってしまう主人公と、フォローが上手な夫が試行錯誤をする。ウーマンエキサイト編集部コメント:すぐに怒って行動してしまうママと冷静なパパの対比が面白い! つい主人公の主観で進んでしまいそうなテーマであるにもかかわらず、夫と話し合い、自分の悪いところはすぐに反省する主人公ママに好感が持てます。子どものトラブルを夫婦で見守る姿勢も素敵で、対処の仕方についても勉強になります。 作品を読む!(PDFファイルが開きます) 受賞作品の発表は以上となります。6名のみなさま、この度はおめでとうございます。そして、作品を応募してくださったみなさま、誠にありがとうございました!今後、第2回「コミック大賞」も開催予定です。ぜひウーマンエキサイトのサイトを随時チェックしてくださいね。
2021年07月09日第1回「ウーマンエキサイトコミック大賞」の募集を終え、ついに結果発表! 編集部による厳正なる審査の結果選ばれた、コミック部門・ストーリー部門の受賞作品を紹介します。コミック部門・金賞 「慣らし保育が教えてくれたこと」 /転勤族ママぽんさん・銀賞 「"育児の疲れを増幅させているモノ"の正体に気がついた。」 /冷え田やっこさん・銅賞 「ダンナおとぎ話」 /わじおさんストーリー部門・金賞「育休明けの家事分担はお早めに」/せりママさん・特別賞「ロジハラ夫」/ツキノ マコトさん・特別賞「娘が転校先で馴染めなくて」/ゴウルドさん※ストーリー部門は後日ウーマンエキサイトにてコミック化されます。お楽しみに!今回は、コミック部門「銅賞」に選ばれた、わじおさん「ダンナおとぎ話」を紹介します。わじおさん、銅賞受賞おめでとうございます! 他の受賞作品を読む!
2021年07月09日1989年に発表されて以来、多くの人に愛されてきた北村薫さんのミステリー小説「円紫さんと私」シリーズ。物語の語り手である文学部の大学生〈私〉と、落語家の春桜亭円紫(しゅんおうていえんし)による鮮やかな謎解きを楽しめるのだが、その第1作『空飛ぶ馬』が、タナカミホさんの手でマンガとして新たに生まれ変わった。日常こそ不可解でスリリング。マンガで蘇る記念碑的ミステリー。「担当編集さんと新連載の相談をしていて、原作ものだったら日常系のミステリーが私の作風に合うのでは、と提案してくださったのがこの作品でした。読んでみたら30年も前の作品とは思えないほど、今と通じるような心理描写が素晴らしくて。心理だけでなく情景も、光と影の印象的なシーンが絵として浮かび、ぜひマンガにしてみたいと思いました」本作を「日常系ミステリー」と称しているのは、推理小説でありながら人が一切死なないから。日常のふとした場面で違和感を覚えたり、疑問に思ったこと、もっと言えば多くの人は不思議に思ったとしても「まあいっか」と流してしまいそうなことから物語が立ち上がってくる。たとえば、まったく知らない人や出来事を夢で見てしまう「織部の霊」、喫茶店で紅茶に砂糖を入れ続ける女性たちを目撃する「砂糖合戦」、幼稚園の園庭に設置された木馬が一晩だけ消えてしまう「空飛ぶ馬」など。謎を探ることで〈私〉は時に、見たくない現実とも向き合うことに。「20歳手前の〈私〉ちゃんが、謎解きを通して成長していく過程を一話ずつ丁寧に描きたいと思いました。自分も身に覚えがあるのですが、10代の頃って大人は“ちゃんとした人”というイメージがあるじゃないですか。だけど利己的だったり自分を守るのに必死だったりして、現実的な姿が見えてくると、こんなもんかと思ってしまう。〈私〉ちゃんの場合は大人に対する失望が、女性性の嫌悪として表れるのです」原作ファンが多いだけでもプレッシャーだろうが、シリーズの装画を一貫して手がけてきたのは、多くのマンガ家にとっても憧れの存在といえる高野文子さん。そんななかでタナカさんは、円紫さんと〈私〉が生き生きと動く、美しくもどこか切ない深淵な世界観を創り上げている。「小説とマンガでは構成の文脈が違うので、マンガ用に再構築していかないと読者が飽きてしまうのでは、という意識がありました。原作にある複合的なテーマの見せ方は難しかったですが、マンガ流の構成を考えていくところにオリジナリティを出せる楽しさがありました。『マンガが面白かったから、原作を読んでみよう』と言っていただけると、すごく嬉しいですね」原作 北村 薫、漫画 タナカミホ『空飛ぶ馬』本格推理小説であり、女性が大人になっていく成長を描いた青春物語でもある、北村薫のデビュー作をマンガ化。日常の光と影を捉え、静かな感動へと導く5編。リイド社990円タナカミホ/リイド社タナカミホマンガ家。講談社『ITAN』にて第5回スーパーキャラクターコミック大賞、優秀賞を受賞してデビュー。『いないボクは蛍町にいる』(全2巻)発売中。※『anan』2021年7月7日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2021年07月04日全身全霊で愛したいだけ!体当たり、血まみれの自分探し。板垣巴留さんによる、コミック『ボタボタ』とは?満面の笑みで鼻血が“ボタボタ”と流れている、インパクト大のカバー。氷刈真子(ひがりまこ)は汚いものに触れると鼻血が出る特異体質の持ち主。汚いものといってもいろいろだが、彼女自身は欲しているのに叶わないのが男女の営み、つまりセックスだ。「真子のセリフにもあるのですが、みんな『セックスしてません』みたいな澄ました顔をしながら、実はしている。異常と思える半面、大切ともいえるその価値について描きたくて、こういう体質にしてみました」普通に人を愛し、愛されたいと願う真子は、徹底した衛生管理のなされた食品容器工場の同僚や、反対に彼女が最も汚いものだと思っているお金を扱う銀行員など、受け入れてくれそうな男を見つけたら猪突猛進。美人でルックスは申し分ないので、男たちは喜々として応じるのだが、いよいよという段になると鼻血が盛大に噴き出し玉砕してしまう。「拒否反応を鼻血にしたのは、画面を派手にしたかったから(笑)。潔癖症の真子がどんな汚さに挑戦していくのか、大喜利みたいな感覚で男性のキャラクターを考えていきました。鼻血を出すシーンは見せ場でもあるので、能力バトルの必殺技じゃないですけど、『くらえ!』というイメージで勢いよく描きました」そもそもなぜ真子がこんな体質になってしまったのか。その原因が家族、特に母親との関係にあることも少しずつ見えてくる。「母親という存在に興味があるんです。娘は母親の反応に少なからず囚われてしまうものだし、母親自身にも母としての顔と、ひとりの女性としての顔がマーブル模様で出てくるもの。そのいびつさに惹かれます」ヒット作『BEASTARS』では動物のキャラクターを通して、人間社会に渦巻くさまざまな欲望を浮き彫りにした板垣巴留さん。血まみれになって愛を乞う真子は、実に動物的だったりもする。「たしかに人間を描いても動物っぽいとは言われます(笑)。普通ではない現象が起きたとき、本能的にどうするかを重視してキャラを描いているところがあるので、口や目などの誇張のしかたは動物でも人間でもあまり変わらないかも。ただ今回は短期集中連載だったので、思いきりの良さを発揮できた気がします。エロとホラーはいいコンビといわれるだけあって、裸の真子が血まみれで動いているだけで私の好きな絵になる。描くのが楽しかったです!」真子は、本当に愛する人と結ばれることができるのか……。裸一貫、体当たりの自分探しが清々しい。『ボタボタ』汚いものに触れると鼻血が止まらない特異体質ゆえに、セックスができない氷刈真子の愛とトラウマにまつわる物語。短編「白ヒゲとボイン」も収録。日本文芸社770円©板垣巴留・日本文芸社いたがき・ぱるマンガ家。2016年デビュー。『BEASTARS』(全22巻)はアニメ化も。そのほかに自伝的エッセイ漫画『パルノグラフィティ』など。※『anan』2021年6月30日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2021年06月27日日本唯一の国立総合芸術大学で、東大以上の難関ともいわれる、東京藝術大学。その受験で3度振り落とされながら、諦めず挑んだあららぎ菜名さんの実体験を綴った『東京藝大ものがたり』は、ひたむきかつ壮絶なコミックエッセイだ。頑張る人たちの背中を押す、リアルが詰まった藝大受験マンガ。「藝大の美術学部は浪人経験者が多いのですが、現役合格者のほうがスポットを当てられがちなんですよね。浪人をするとメンタル的にもきつく、私の場合は一時期、絵を描けなくなったりもしたのですが、そういう姿こそ知ってほしいと思ったんです」あららぎさんが受験したデザイン科は、センター試験(当時)を突破すると、デッサンのほか色彩構成、立体構成という3つの実技試験が待っている。ひとつの試験が6~7時間と異様に長く、技術だけでなく気力・体力勝負なのだが、それぞれの試験で求められることや、勉強方法などをわかりやすく解説していく。「もっと早くに知っておけば、何度も浪人せずに合格できたかもしれない、と気づいたことを盛り込みました。というのも、マンガに出てくる私の父がまさにそうなのですが、美術家肌の人って教え方が感覚的で、わかりにくかったりするので」そんな父は、藝大を現役合格した陶芸家。自由かつ楽しそうにものづくりをしている姿を幼い頃から見てきたことで、あららぎさんは藝大を目指すように。子育てに関しても非常に自由かつおおらかで、自分は予備校へ行かずに藝大に入れたからと、学費の援助は一切なし。よってあららぎさんはバイトで予備校の学費を稼ぎながら、時折、父に教えを請い、過酷な浪人生活を送ることになる。「バイトをしないで浪人できるなら、そのほうがよかったけれども、自分で学費を稼いででも藝大に行きたいと思えるかどうかが大事だったんでしょうね。そういう意味でやれるところまでやったので、どんな結果でも私は納得できたと思います」とはいえライバルが合格していく焦りや、描いても描いても上達している気がしないもどかしさ、多浪のトラウマなど、苦しい日々を思い出して何度も筆が止まったそう。「あの経験を乗り越えた今は、何が来ても大丈夫と思えます。ものづくりは本当にハードで、自分を追い込まなければできないところがある。そのためのベースの部分を、ずっと鍛えていたんだなって気がつきました。父はこの本を買って、いろんな人に配ってくれたそうです」『東京藝大ものがたり』noteで連載され話題を呼んだ「東京藝術大学受験ものがたり」を改題してコミック化。夢をつかもうともがき苦しむ姿は、美術に詳しくなくても胸を打つはず。飛鳥新社1200円©あららぎ菜名/飛鳥新社あららぎ・ななマンガ家、イラストレーター、UI・UXデザイナー。本作は「cakesクリエイターコンテスト2020」入選作。著作に『抑死者』。※『anan』2021年6月23日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2021年06月22日傷つき傷つけ合ってしまう人々をオムニバス形式で優しく描いた漫画『スナック キズツキ』が話題に。登場人物に共感し、読むと心が癒されるこの物語に込めたメッセージを、作者の益田ミリさんに聞きました。小さな傷を癒す絆創膏のような場所。今年発売された益田ミリさんの描き下ろし漫画『スナック キズツキ』。日々ホコリのように、心の中に降り積もってしまう苛立ちやモヤモヤを抱えた人々を丁寧に描き、ささくれだった心を包み込んでくれると話題。その癒しの秘密について、益田さんに聞いた。「スナックキズツキとは、傷ついた人しかたどり着けないスナックです。心が傷ついたといっても、失恋のような大きな傷もあれば、何気ない会話の中で思いがけず傷ついてしまうこともあります。相手に悪気はないとわかっていても、小さな傷がじくじくと痛む。そんなとき、誰もがふいに怖くなるんじゃないでしょうか。自分も知らぬ間に誰かを傷つけているかもしれないと。傷ついたり傷つけたり。そんな不安定な日常の中で、ふらりと立ち寄れるスナックを描いてみたいと思いました。問題が解決するわけではなくても、絆創膏のような役目になればいいなぁと」益田さんの作品は、見ないふりをしている感情に寄り添って風通しをよくしてくれるが、スナックキズツキもそんな“場所”となっている。そして、年齢も立場もさまざまな人がやってくる。「日常の中でどんなことに傷ついているだろう?と考えて、『軽く扱われた』と感じるときが多いんじゃないかなと思ったんです。登場人物のひとりにコールセンターで働くナカタさんという女性がいます。彼女は彼氏と居酒屋で食事をしているとき、いつも自分ばかり質問していると気づきます。『今日は忙しかったの?』くらい聞いてくれてもいいじゃないかと思う。そしてアダチさんという販売員の女性もまた、お客さんに偉そうにされたり、同僚にいいとこ取りをされたり、いつも自分が損をしていると感じてしまう。気にしなければいいと思っても、そうもいかないのが人間。軽く扱われて傷つくエピソードから、さまざまな登場人物が思い浮かびました」また、ここはスナックなのにお酒を置いていないのもユニーク。「作中の会社員の男性サトちゃんは、お酒が飲めない体質です。なので話を聞いてほしいと思うような夜でも、同僚と飲みに行くこともできません。私自身もスナックに行った経験って数えるほどなんです。お酒が強くないというのもありますが、なかなかひとりで行きにくい場所です。前を通ったとき『この中はどうなっているのかな?』とよく想像し、カラオケなんかが聞こえてくると『ああ、今この中で嫌なことを忘れて歌っている人がいるのかもなぁ、よかったなぁ』と安堵する気持ちがありました。スナックにかねてから憧れがあったのかもしれません」私たちの周りにも存在するスナックキズツキ。スナックキズツキのママは淡々としていて、一見するとぶっきらぼう。だけどその距離感が、傷ついた人に心地よかったりもする。「友達に愚痴を聞いてもらいたいときってありますよね。だけどときには聞いてもらったことで、かえって傷口が広がることもあります。ママは、傷ついてやってきたお客に何も聞きません。けれども人って案外『ちゃんと聞いているよ』という姿勢だけでうれしいものじゃないかなと思ったんです」あれこれ質問しない代わりに、歌わせたり踊らせたり。お客さんはママの誘導に最初こそ戸惑うものの、さまざまなアクションに乗せられて気持ちを吐露し、思いのほかすっきりして店を後にする。「湯船の中ででたらめな歌を歌うことってないですか?私はあります(笑)。適当に節をつけて『あ~ほんと~疲れちゃったな~』みたいな。スナックキズツキに来店する人たちも、つかの間そういう素の自分になってほしかったんです。スナックキズツキは傷ついた者しかたどり着けない。ということは、ママもまた傷を負ってたどり着いたひとり。だからこそ傷ついた人に寄り添えるんだと思います。店で出すホットココアも、牛乳で練り、とても丁寧に作ります。丁寧に作ったものを受け取った人は、自分が丁寧に扱われていると感じ、安心するんじゃないかなと描きながら思いました」スナックキズツキを訪れたからといって問題が解決するわけではない。でも傷つけ合う連鎖にいた登場人物たちが、お礼の電話をかけたり、家族のためにココアを淹れてみたり。来店後に、足取りが軽くなって、誰かを気にかけられるようになる様子が描かれているのも、読者の心を明るくする。「ひとつの傷が癒えても、また新しい傷はできるもの。登場人物たちも元の場所に戻っていくので、傷つけ合うことからは逃れられないかもしれません。ただ、スナックキズツキという“手すり”が彼らにはできた。何かあればまたここに来よう、と思える場所があるのはよいものです。現実の私たちにとっての手すりは、スナックキズツキのような“場所”に限らず、本を読んだり、映画や芝居を観たり。そういうものすべてなんだと思います」自分ならどうしてほしい?その視点が優しさを生む。コロナ禍で外出や出会いが制限される中、心にじわじわダメージを受けている人も多い今、益田さん自身はどう心を整えているのか。「初めての経験で戸惑う日々ですが、私は最近、海外旅行記をよく読んでいます。読書をしている間、心の中だけはのびのびと自由でいられて。先日、小林聡美さんの『キウィおこぼれ留学記』を読んで寝たら、ニュージーランドに行く夢を見ました。飛行機代もいらない海外旅行ができました(笑)」危うい日常の中で人とのコミュニケーションで大切なことは、自分ならどうしてほしいかを考えること、と益田さんは言う。「悩み事を相談されるとアドバイスをしたくなりますが、自分に置き換えてみれば、ただ聞いてほしいだけということもあります。とにかくまずは聞く。そうできたらいいなぁと思います。『気持ちを聞いてくれた』。それだけでも元気が出るものだと思うので」癒しのポイント1アルコールなしで「お疲れさん」と言ってくれる。スナックはお酒を飲む場所というイメージが強いが、ここはアルコール類は一切なし。「そうすることで、お酒が飲めない人でもふらりと寄れる場所になればいいなと考えました。傷ついた若い女性も、高校生のお母さんも、あるいは高校生だって来店できます。傷つくことに性別や年齢は関係ないので、いろんな登場人物を描こうと思いました」癒しのポイント2自然と吐露できる心地よさ。「なぜ今こんなことを!?」と思うようなアクションを通して、来店者は素の状態に。「そのためにはママも素でいることが重要で、お客と一緒に歌ったり、踊ったりするときにも躊躇してはいけないと思いました。『あなたのことを私は絶対に笑ったりしない』という強いメッセージが必要ではないかと」癒しのポイント3前の物語で傷つけた側の人が次の物語で傷ついた主人公に。惣菜屋でクレームを言ったカホは、販売員のアダチさんを傷つけた人として登場するが、その後、息子に言われたひと言で傷ついた主人公としても再び登場する。「傷つかず、傷つけずになんて仙人のようには、なかなか生きられないもの。ただ自分が傷ついたときに、自分も誰かを傷つけているかも、と思うことはできるかもしれません」『スナック キズツキ』都会の路地裏にあるらしい、傷ついた者しかたどり着くことのできないスナックが舞台のオムニバス。共感が心の救いになる、7年ぶりの描き下ろし漫画。小社刊1430円ますだ・みりイラストレーター。本誌連載中の『僕の姉ちゃん』(小社刊)はシリーズ第4巻まで発売中。近著に『沢村さん家のたのしいおしゃべり』(文藝春秋)など著書多数。※『anan』2021年6月23日号より。写真・中島慶子イラスト・益田ミリ取材、文・兵藤育子(by anan編集部)
2021年06月19日エミリア・クラークが、コミック作家デビューすることが分かった。「Variety」誌が報じた。ロンドンで育ったエミリアは幼い頃、地元のコミックショップに「女性お断り!」という雰囲気を感じており、いつも兄のおさがりのコミックを読んでいたという。22歳のときに自身の代表作となった「ゲーム・オブ・スローンズ」をひっさげ、初めて「コミコン」に参加したときは、「ほとんど全員が男性であることにびっくりしました」とも。「でもその後、業界の風向きは変わり、#MeToo運動が始まりました。それは注意を引かれることであり、私もそういう視線でコミュニティーを見るようになりました」と時代の変化についても語っている。そうして、「自分の視点によるコミックを作りたい」と思うようになったエミリアは、“全員女性”のクリエイティブチームを結成。「M.O.M:Mother of Madness」(原題)を7月に発売することになった。DCコミックスやマーベル・コミックスを手掛けてきたマルゲリート・ベネットとともに物語を考え、作画はレイラ・レイズが担当している。同作の主人公は、シングルマザーでスーパーヒーローのマヤ。女性は生理期間に落ち込みがちだがエミリアはそれを逆手に取り、マヤを生理期間にすごい力を発揮するスーパーヒーローとして描いたという。全体的には『デッドプール』のようなアクションと「Fleabag フリーバッグ」みたいなコメディだといい、「マヤは腋毛でスパイダーマンみたいにぶら下がったりできるんです」とのこと。(Hiromi Kaku)
2021年06月09日いまや空前の“もふもふ”ブームといえるが、もふもふにデレデレしているのは現代人だけではない。山村東さんの『猫奥』は、江戸城大奥で猫に萌える女性たちのコメディだ。「江戸時代が好きなのですが、大奥の知識に関してはほとんどなく、ドラマで描かれるようなドロドロしたイメージしかなかったんです。それで何冊か本を読んでみたら、大奥に勤めていた20代後半の女性が、このまま仕事を続けるか、退職して大奥を出て結婚するかで悩み、占い師に相談したという記録があるらしく。それって現代の感覚に似ているなあ、と親近感が湧きました」主人公は、ドラマなどでもおなじみの人物といえる、大奥を取り仕切る御年寄(おとしより)の滝山。本当は猫が大好きなのに生真面目な性格かつ、眉間にしわを寄せた険しい表情がデフォルトであるため、いつの間にか周りからは猫嫌いだと誤解されている。ほかの女中たちが猫にかまけて、キャッキャしているのを鋭い目つきで見つめながら、心の中はうらやましさでいっぱい。そんな滝山が人目を忍んで翻弄されているのが、上司である姉小路(あねがこうじ)の飼い猫で、ふてぶてしさが味わい深い、吉野ちゃん。「大奥は今でいう社宅みたいに、同じ職場の人が一緒に暮らしていた場所。猫はいろんな部屋を自由に行き来していたんじゃないかなと、想像を膨らませました。吉野ちゃんは、滝山が敵わない相手にしないといけないので、人を人とも思っていないようなマイペースな猫になりました。だけどまあ、猫をかわいいと思う人は、その時点で猫には敵わないものですけどね(笑)。そういう敵わなさを出せたらと思っています」猫を2匹飼っている山村さんもまた、“敵わない側”のひとり。吉野ちゃんやほかの猫たちのちょっとしたしぐさや佇まいなど、猫好きのツボを心得ているところはさすが。そして猫だけでなく、大奥の人間模様も見どころ。滝山と真逆なタイプで派手好きな同僚の花町や、滝山が素性を隠して文通する、吉野ちゃん専属のお世話係である美登(みと)など、従来の嫉妬が渦巻くようなイメージとは、少々異なる女の園がそこにはある。「限られた空間に2000人近くの女性がいたのだから、つらいことばかりではなく、女子校みたいな楽しさもそれなりにあったのではないでしょうか。大奥について知らなかった私が面白いと思ったことや驚きを、素直に落とし込んでいきたいです」2巻では、滝山が猫好きであることを察する人物も登場。猫と大奥、なんともクセになる組み合わせだ。『猫奥』2猫好きだと誰にも言えぬまま吉野ちゃんを密かに愛でる滝山に、ついに味方が!?本作で連載デビューする前の作品「こまとちび」も収録。こちらにも猫!講談社715円©山村東/講談社やまむら・はるマンガ家。2018年「フク」で第6回THE GATE大賞を受賞。その後『モーニング』に読み切り「こまとちび」「おのぼり侍」を掲載。※『anan』2021年6月2日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2021年05月31日映画『キャラクター』の原案者・長崎尚志さんに聞く作品が生まれるとき。心を掴む魅力的なストーリーやキャラクターは、どんなふうに生み出されるのか。稀代のストーリーテラーが明かす、創作の秘密を明かします。浦沢直樹さんとの大ヒット漫画『MASTERキートン』や『20世紀少年』をはじめ、漫画や映画の原作を数多く手がけてきた長崎尚志さん。その長崎さんが原案・脚本を担当したのが、映画『キャラクター』だ。企画から完成まで約10年。書き上げたシナリオはゆうに20稿あるという。まさに渾身の一作だ。「映画化を待たされ続けたので、ずっと疑心暗鬼でした。本当に映画になるんだと喜んだのは、撮影がクランクインしたと聞いたときでしたね(笑)」『キャラクター』は、相対するふたりの青年の運命が、衝撃的な形で交錯する物語だ。冴えない漫画家アシスタントの山城圭吾は、一家4人の殺人事件に遭遇、犯人の顔も目撃してしまう。そしてその犯人をモデルに冷酷な殺人鬼“ダガー”が犯行を繰り返すサスペンス漫画『34(さんじゅうし)』を描き、一躍人気を獲得。一方で、刑事の清田俊介は、連続して起きた惨殺事件が漫画の内容と酷似していることに気づき、捜査していく。そんなある日、山城の前に現れた青年は両角と名乗り、「『34』で描かれた事件を再現しておきました」と告げる。「才能がいまひとつの漫画家が、人間離れした殺人鬼と出会ってしまったら、どんな行動を取るか。もともとのアイデアはそれでした。ただ僕の場合はキャラクター作りも『こういう設定で、こういうシーンで、自分ならどう行動するだろう』というのが軸になるんです。そんな中で、登場人物たちがどう化学変化を起こしていくかが肝だと思います。実際、そうした論理からしか、物語は生まれないと思っています」長崎さんは、キャリアを通して、山城のような漫画家志望の青年をごまんと見てきた。「僕自身もそうなんですが、漫画界は、煮え切らないヤツの集まりです(笑)。漫画家や漫画編集者、あるいは漫画家になりたいとあがいているような人は、『そんな自分はどこかダメなんじゃないか』と思いながら生きている。気が弱くて、そのくせ、わずかしかない長所に強烈な自信を持っている。そういう偏った人間が多いですよね。一方、両角のような超人的な殺人鬼というのは、人類の歴史にときどき現れ、恐怖が入り交じった中で語り継がれています。そういった知識や情報は、その人物造型の参考にはしますが、結局は、自分自身と照らし合わせながら肉付けしていく感じです」さまざまなアイデアをうまく化学変化させたい。執筆の仕事は基本的にはひとり作業だ。しかし映画の場合は、監督やプロデューサー、俳優との共同作業になってくる。そうした過程において、どんなところに悩むのだろうか。「この映画の場合は、永井聡監督が『こう変えていいか』などマメに聞いてくれたので、原案者としては、物語をより理解してもらえるよう書き換えたところもあります。表現者同士、解釈が多少ずれるのはしょうがないし、そこが面白いとも思っていますね。漫画と違って、僕の担当者は面白いアイデアを出す人も多かったし、映画は特に、いろんな部品が合わさって変化していく分、発見もありました。たとえば両角のキャラクターは、僕の中ではもっと大柄な男のイメージだったんです。最初に浮かんだのは、『ヒッチャー』という古い映画で怪物的殺人鬼を演じていたルトガー・ハウアーみたいな。だから圧倒的に殺人者が強くて漫画家は弱い、そんな感じでストーリーを作っていたので、SEKAI NO OWARIのFukaseさんがあの役を引き受けるなんて予想もしていなかったんです。ただ、MVなどいろいろな映像を見ていると、表情が多彩でちょっとヤバい顔もする人なんだとわかった。そこから、彼を思い浮かべて当て書きしました」もともと映画化が動き始めるまでに、作品をめぐるやりとりを、関係者の間で無限に繰り返してきたという。「勝手にいじられたりするのがイヤなたちなので、この脚本は『こうしたら満足か?』と挑戦状を叩きつける気持ちで先回りして変えていきました。山城と夏美という恋人との関係も、結婚していたりしていなかったり版ごとにいろいろです。ひとつの話を変奏していくことは、僕にとってはそう大変でもないんですね。つらそうなふりはしますけど(笑)」ちなみに、発売中の『キャラクター』のノベライズ版もコミカライズ版も、映画とは違う結末に仕上げたという驚異のストーリーテラー。「特に小説版では、山城、両角、清田という3人の視点が入れ替わりながら、映画では語られなかった背景や動機なども全部明かしています。山城はどういう理由で漫画家を目指したのかや、両角はどういう家庭で育ったのか、清田はなぜこの事件を執拗に追うのか。そういった部分がわかると、映画もより楽しんでもらえるのではないかと思います」自分を楽しませることを忘れちゃいけない。ところで、長崎さんにとって、作品を書くモチベーションが上がるのはどんなキャラクターなのだろう。「僕自身は、いじいじした弱虫が変貌していくのが好みなんです。その対抗で、すべてにおいてすごい能力や魅力を備えた超然とした人にも憧れる。そうした二人が相まみえる物語がいちばん好きで、これまで作ってきた作品もそういうのが多いです。もともとエンタメは作るも見るも、人がどう言おうが、自分が面白いと思うことがいちばん大事じゃないかなと思います」コロナ禍になって、エンタメの可能性はむしろ広がった部分もある、と長崎さんは言う。「僕が若いころの読者やマニアは、読むモノも観るモノも当たって砕けろというか、評判なんか気にせずに自分で選んでいき、いいも悪いも自分でジャッジしていました。しかし、それがいつからか、グルメにしてもエンタメにしてもガイドブックの言うなりになっている人が増えた気がしていました。外出自粛期間などの影響なのか、時間がある分、自分の感性で探し出して見始めてくれてるんですよね。それは面白い現象だなと思っています」ながさき・たかし作家、マンガ原作者・編集者。マンガ雑誌編集長を経て2001年に独立。原作者としてはリチャード・ウー名義でも活躍。「醍醐真司シリーズ」など小説も手がけ、好評発売中のノベライズ版『キャラクター』も発表。『キャラクター』画力はあるが、悪人が描けずにくすぶる漫画家アシスタント・山城(菅田)は、殺人現場に遭遇し、殺人鬼・両角(Fukase)を目撃する。両角をキャラクターにした漫画で、山城は人気漫画家となるが、作品と酷似した殺人事件が次々と起こり…。6月11日公開。※『anan』2021年6月2日号より。写真・内田絋倫(The VOICE)取材、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年05月27日亡き祖母から受け継いだ大切な着物を着てお出かけするのを休日の楽しみにしている、野々村もも。『恋せよキモノ乙女』は、ももが着る着物のコーディネートが毎回可愛いと話題のコミックだ。その著者が、普段から着物に親しんでいるという山崎零さん。描く着物はどんなふうに決めているのだろう。「読者から『こんなコーディネートをしてみたい』と思ってもらえるようなものを目指して、物語や春夏秋冬、出かける場所のことも意識して選んでいます。自分でも好きで着ていたとはいえ、実際に着物のマンガを描かないかと編集さんから提案されたときは、うれしさ半分、緊張もしていました。袖部分の形状やシワの寄り方、着たときの柄の合わせなど、いわゆる玄人の人が読んでも違和感がないようにと、いまでも調べたり勉強したりしながらです。ただ、もともと日本画からマンガの世界に入ったので、着物の柄の花鳥風月などを描くのはとても楽しいです」ももがお出かけする先にも、わくわくさせられる。京都の老舗喫茶店や大阪の歴史ある図書館など関西エリアから、7巻より舞台は東京へ。「物語の出発点は、男性が普段のぞけない女の子のお支度を描く、でした。なので、どこへ行くかなどを考えるようになったのは連載が決まってからです。関西編では、他府県の方が見てもすぐわかるような有名な観光名所ではなく、関西の人が見ても『あそこいいよね』『よくわかってるね』と盛り上がってくれそうな絶妙なセンを狙いました。東京編でも踏襲していきます」本書はまた、恋にも仕事にも一生懸命なももの成長マンガでもある。「会社の受付嬢から転職し、現在は着物屋『猫の目』のスタッフとして、さらに着物の魅力にのめりこんでいるところです。着物業界は格式張っている印象もありますが、『私もこんなところで働いてみたい』と憧れてもらえるような、ときめき要素を大切にしていきたいです。店長で先輩のリンコちゃんとも、お互いがお互いを知って高め合えるような関係性として描いていきたいですね」恋愛は、ももの想い人である椎名さんとの関係が、紆余曲折がありつつ進行中。7巻からは「ももが大阪、椎名さんが東京」と遠距離状態に。「ロマンスに関しては私自身がドライでちょっとズレている部分もあるので(笑)、周囲に取材しまくってエピソードに活かしています」7巻のラストでは、控えめだった椎名さんも意外な一面を発揮。恋の行方はますます楽しみだ。やまざき・ぜろマンガ家、日本画家。京都精華大学芸術学部日本画コース卒。同人活動を経て2013年商業誌デビュー。本作を「くらげバンチ」で連載中。『恋せよキモノ乙女』7各話の最後に、着物スタイリスト・コバヤシクミさんによる柄やコーディネート、歴史などの解説がついていて、着物初心者でも楽しめる。8巻は今秋刊行予定。新潮社704円©山崎零/新潮社※『anan』2021年5月19日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年05月15日16年にわたる連載がついに完結した、よしながふみさんの『大奥』。江戸城に男女逆転の大奥が生まれた3代将軍・徳川家光の時代から、江戸幕府の終焉まで、史実をモチーフにしながらまったく見たことのない物語が全19巻で繰り広げられた。ついに完結!大奥という場所が私たちに見せてくれたこと。「マンガは難しいメディアで、買っていただかないと続きを描くことができないのですが、3~4巻の時点でここから10年はかかるとわかり、読者の方々に申し訳ないなと思っていました。将軍を女の人がやっても、男の人がやってもうまくいくわけではないというのを長々と描き、苦しんできたことに対するひとつの答えがラストでようやく出るので、辿り着けて本当によかったです」男女が逆転する構想自体を思いついたのは、マンガ家になる以前。壮大すぎて実現には至っていなかったが、もともと’83年のドラマ『大奥』が好きだったのに加え、’03年にもドラマがヒットしたことで「男女逆転」と「大奥」が結びついたそう。「だけど歴史ものだし、絶対に大変になることはわかっていたので、ほかの先生に描いてもらったらどうでしょう、と担当編集さんに提案したんです。私は1円もいらないのでって(笑)。自分が読みたいものと描くのが楽なものは違うんですよね」完結して改めて気になるのは、200年を優に超える時間の流れを物語にするにあたり、最初にどの程度の青写真があったのかということ。「大まかな流れや、赤面疱瘡(あかづらほうそう)が蔓延して解明されていく時代背景も決めていましたが、人間模様の細かいところはライブ感でした。たとえば5代・綱吉は生類憐みの令を出す人だから、あまりいい将軍ではなかったんだろうなっていう程度のイメージしかなくて。さらっと終わらせるつもりだったのですが、描き始めたら面白くなって長くなりました。史実をガイドに、どうしてこんなことをしたんだろうと遡って人物像を考えていくのは、楽しい作業でした」多くの将軍にとって重責となるのが、世継ぎを作ること。愛する人とは子宝に恵まれない家光や、子どもを亡くして人生が狂う綱吉、反対に子だくさんゆえに幕府の財政を逼迫させ、人を信じられなくなる家斉。「血を繋いでいくシステムは、性別関係なく悲しさがつきまとうものなのだと思います。一方で、家茂と和宮のように女の子同士で心を通わせる名前のつかないような関係や、赤面疱瘡を解明しようとするチーム男子も予想以上にブロマンスっぽくていい感じに。描く前は大奥の話だから男の人がたくさん出てくるのかなと漠然と思っていましたが、将軍と老中の女性同士の関係が意外と熱くなりました」連載中に映画化・ドラマ化され、キャラクターについて俳優と議論をしたり、演技のアプローチを目の当たりしたことで、登場人物それぞれの人生をより深く考えるようになったという、よしながさん。読者としては、全編通した映像作品を見てみたいという欲も……。「1年くらいのドラマでは、尺が足りなそう(笑)。ひとりのキャラクターが20~30年タームで年齢を重ねていく感じも、マンガ表現ならではの楽しさだと思って、自覚的に描きました。製作コストもかけた時間も、マンガだからこそ実現できた物語なのかなと思います」至極ごもっとも。未読の人は今こそ通読するチャンス。ため息の漏れるフィナーレを堪能してください!『大奥』19ついに江戸城を明け渡す最終巻。大奥では何が起こる?雑誌掲載時のイラスト集のほか、対談などを収録した「公式ビジュアルファンブック」がセットになった特装版も。白泉社748円(通常版)/1980円(特装版)©よしながふみ/白泉社よしなが ふみマンガ家。代表作は『西洋骨董洋菓子店』『愛すべき娘たち』など。『きのう何食べた?』は『モーニング』で連載14年目!劇場版が今年公開予定。※『anan』2021年5月5日-12日合併号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2021年05月11日1年間の公開延期を経て、現在絶賛上映中の劇場版『名探偵コナン 緋色の弾丸』。物語の中心となる“赤井一家”赤井秀一のもう一つの姿である沖矢昴を演じる置鮎龍太郎さんにインタビューしました。出来上がった作品を観て、改めて、昴くんの活躍に感動しました(笑)。沖矢 昴 as 置鮎龍太郎さん――今回、赤井秀一と、そして沖矢昴が重要な役どころになると聞いたときの感想を聞かせてください。最初は、「またまたご冗談を~。赤井さんがメインでも、『純黒の悪夢(ナイトメア)』みたいに昴くんの出番はない映画があったことを、僕は知ってますよ~!」と思っていたのですが。シナリオを読み、収録台本を受け取り、そこでやっと信じられました(笑)。今年になって出来上がった作品を拝見しまして、改めて、昴くん、めっちゃ活躍してたんだと感動しました。――沖矢昴をどういうキャラクターだと理解され、役作りをされていますか?正体が明かされる前は、ミステリアスな雰囲気にひたすら重点を置いて、演技をしていました。中身が赤井さんだと明らかになった後は、探偵団の子供たちの前で見せる普段とのギャップや、素をさらしてもいいコナンくんとの会話など、出番の度に、やれることが確実に増えてきている気はしますね。――沖矢さんのカッコよさ、魅力的に感じているところがあれば教えてください!やはり、“中身が赤井秀一である”ところになるのでしょうか?蘭役の山崎和佳奈さんと私だけは、“沖矢昴の姿をしたまったくの別人がいる、あるいはいた”という説を提唱しているんです。何かまだ明かされていない謎があるのでは…と思っています。――別の顔がある(しかもその顔を演じるのは別のキャストさん)キャラを演じるのは、難しいですか?こんなに堂々と先輩のお芝居を盗んで皆さんの前で披露する役は、正直、精神的疲労が過ぎます(笑)。少しでも池田秀一さん演じる赤井秀一のニュアンスが出せるように必死ですが、楽しんでもやれているので、多少は成長した…いや、まだまだ修業中です。そういえば試写を観ながら、今回の劇場版に関して「いつもよりかなり(赤井要素を)マシマシで」と収録序盤にオーダーを受けたことを思い出したのですが、どう見えるかは、皆さんに判断を仰ぎたいところです。――待ち望んでいるファンへ、メッセージを!お客様はもちろんですが、演者をはじめ関係者も、いつ公開できるんだろう?と、当初は不安だったに違いありませんから、僕も公開は素直に嬉しいです。先んじて劇場公開された『緋色の不在証明』や、配信やTVでの緋色シリーズの放送などで、きっと皆さん予習復習万端だと思います。1年間の想いと努力を、劇場でぜひ昇華させてくださいませ!おきあゆ・りょうたろう声優、ナレーター。出演作に『テニスの王子様』手塚国光、『地獄先生ぬ~べ~』鵺野鳴介、『スラムダンク』三井寿など。『名探偵コナン 緋色の弾丸』4年に一度の祭典〈WSG〉が開かれる東京。開会式にはリニアの開通も。スポンサーを集めたパーティで企業のトップが相次いで拉致される。コナンの推理により、15年前米国で起きた拉致事件との関連性が浮かび上がり…。原作/青山剛昌監督/永岡智佳脚本/櫻井武晴音楽/大野克夫主題歌/「永遠の不在証明」東京事変©2020 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会※『anan』2021年5月5日-12日合併号より。作画監督・須藤昌朋レイアウト・山本泰一郎原画・かわむらあきお仕上げ・藤原優実背景・福島孝喜(石垣プロダクション)(by anan編集部)
2021年05月01日全国のコナンファン、そして赤井秀一ファンの皆さま、お待たせしました!1年間の公開延期を経て、現在絶賛上映中の劇場版『名探偵コナン 緋色の弾丸』。物語の中心となる、赤井秀一をはじめとした“赤井一家”より、赤井秀一役の池田秀一さんからスペシャルメッセージが到着しました!作画とセリフで描かれる赤井の魅力。僕は流れに乗って、演じるだけです。赤井秀一 as 池田秀一さん――今回の映画で赤井さんが重要な役どころになる、と聞いたときの感想は?安室が大活躍している昨今、やっと出番が来たかと思いました(笑)。しかも蓋を開けてみると、赤井一家総結集とのこと。赤井家を代表して御礼申し上げます。このところ右肩上がりの“劇場版コナン”の勢いを止めてはならぬと、身の引き締まる思いでした。――赤井秀一は誰もが恐れる頭脳とフィジカルの持ち主です。そんなスーパーな役を演じるにあたり、いつもどのような意識をしていますか?特別な意識は持ちません。セリフが、映像が、もう赤井を描き出してくれていますから…。特に今回は丁寧に描かれていてとても感謝しています。流れに乗ればいい。それが基本です。――赤井さんは沖矢昴というペルソナを持っているわけですが、演じる上でそこはどう考えていますか?これもあまり意識していません。沖矢の人格は置鮎(龍太郎)さんにお任せしています。甘えっ放し。僕はその変化を楽しませていただいてます。「了解!」してもらえますか…?――普段のTVシリーズやこれまでの映画などを含め、同じシーンに登場することが少ないファミリーの皆さんとの掛け合いはいかがでしたか?それぞれキャストの皆さんとは別の作品や番組を通して知っているわけで、それなりにまぁ仲は良い方でしょう。しかし「ファミリー」ということに関しては、若干違和感をおぼえます。その、少したどたどしい感じが、今のところちょうどいいのかなと思っています。――コナンくんとの息の合った掛け合いやバディ感にもワクワクしました。収録はいかがでしたか?コナンとの距離感がテーマでした。相手の顔も見えないスマホ越しの会話の中にも漂う二人の信頼感、近くにいるというだけで、安心しなさんな!ってね。そういう意味でも、今回もとても勉強になりました。高山みなみさんとは、スタジオでもそういう距離感を心がけています。――待ち望んでいる方々へ、メッセージを!本当にお待たせしました。待つ身は辛いと申しますが、待たせる方も結構不安なものなんですねぇ…。そんな中、『緋色の不在証明』という副産物を作ることができたのは救いでした。ここまでお待たせした皆さんの期待に沿うことができるのか…。あとは天命を待つのみ!!スタッフ・キャストの想いがはるか彼方まで届きますよう、深く願う次第です!!いけだ・しゅういち声優、ナレーター。代表作に、『機動戦士ガンダム』のシャア・アズナブル、『ONE PIECE』のシャンクスなどがある。『名探偵コナン 緋色の弾丸』4年に一度の祭典〈WSG〉が開かれる東京。開会式にはリニアの開通も。スポンサーを集めたパーティで企業のトップが相次いで拉致される。コナンの推理により、15年前米国で起きた拉致事件との関連性が浮かび上がり…。原作/青山剛昌監督/永岡智佳脚本/櫻井武晴音楽/大野克夫主題歌/「永遠の不在証明」東京事変©2020 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会※『anan』2021年5月5日-12日合併号より。作画監督・須藤昌朋レイアウト・山本泰一郎原画・かわむらあきお仕上げ・藤原優実背景・福島孝喜(石垣プロダクション)(by anan編集部)
2021年04月30日