ゴールデンウィークです。5月1日と2日の2日間、有給を取って休みにしてしまえば9連休になる人もいるそうですね。9日間、仕事をしなくていいとしたら、何をしようかとウキウキするものなのでしょうけれど、何故でしょうか、思い返してみるとイベントごとは決まってひとりで過ごすことが多いです…。今年も例外ではなく、彼氏と一緒に旅行に行けるかも!?なんていうのは妄想の先のまた妄想。ええ、この前のデートも実らずに終わりました。ここはひとつ年齢の幅を広げないと未来はないぞと、思いっきり年下を狙ってみたのですが、年代を変えてみても私の恋のアンテナはやっぱりダメ男、クズ男にピピッとくるようになっているんですね。連休直前に「コイツはダメだ…(四十路の心の声)」と判断してしまったので、ゴールデンウィークもめでたくひとり、ゆるゆる仕事をしながら過ごしている古山エリーです。今宵もたわごとお付き合いくださいませ。2~3歳年下とつき合ったことはありますが、さすがに一回り以上となると躊躇してしまいます。しかし!マルグリット・デュラスの晩年の最後の恋人は38歳年下、「セックス・アンド・ザ・シティ」のサマンサとスミスは確か15~16歳差カップルだったので、つい私もー!(それがおこがましい…)と思い切ってみたんです。実際、仕事や趣味の話はまったく問題なく合う、合う。問題は、恋人を1人に絞れない人、恋人がいても「いいな」と思う女性が現れるとデートしちゃう、行くとこまでいっちゃう、恋愛に自由な人だったわけです(そういう人を狙いに行っているとしか思えない私の命中率…)。受け入れてつき合う選択肢もありますけどね、無理ですって。育てるって手もありますけどね、リスク高すぎですって。そんなときは、ラブストーリーを観ても泣ける感動系を観ても、すごーく冷めた目で観てしまうので…そうだ!爽快な気分にさせてくれる映画を観よう!と選んだのは『フリー・ファイヤー』です。銃の取り引きをするために集まったギャングとギャングが、ささいな言い争いをきっかけに銃撃戦を始めてしまうノンストップのアクション・コメディ。この人たちって…と、ただただ呆れてしまう、実にクレイジーな映画でした(そして実に面白い!)。感動した~!とはならないですが、おひとりさま女子のストレスを心地よく解消してくれる映画です。ちなみに紅一点のブリー・ラーソンをはじめ、キリアン・マーフィ、サム・ライリー、ジャック・レイナー、アーミー・ハマーなど、好きな俳優が揃っていたのも観ようと思った決め手。こういう映画を一緒に観る彼氏が欲しいーっ!というわけで、レッツ婚活、頑張れ四十路!今宵はここまで、また次回。(text:Elie Furuyama)(Elie Furuyama)■関連作品:フリー・ファイヤー 2017年4月29日より全国にて公開(C) Rook Films Freefire Ltd/The British Film Institute/Channel Four Television Corporation 2016
2017年05月06日現在放送中のドラマ「フランケンシュタインの恋」で元ヤンの“職人女子”室園美琴を演じているのが、2年前に「AKB48」を卒業、その後女優として活躍している川栄李奈だ。グループ卒業以降、女優として一気にブレイクした川栄さん。その“飛躍”の理由とは?「フランケンシュタインの恋」は120年もの間、人間界から遠ざかっていた綾野剛演じる“怪物”が、二階堂ふみ演じる津軽継実に出会い恋に落ちるが、怪物にはある秘密があり、それが怪物を苦しめていく…という物語。川栄さんは怪物が住み込みで働くことになる稲庭工務店の大工職人・室園美琴役で出演している。「AKB48」がブレイクを果たした2010年7月にグループ入り、同年11月に研究生公演でデビューした川栄さんは、2012年の「真夏のSounds good !」で初の選抜メンバー入り、ユニットデビューも果たしファンの間で次世代エース候補と目されるようになった。一般には「めちゃイケ」での“おバカキャラ”で注目を浴びた彼女だが、当時から“女優への思いを持っていた”という。2011年に「マジすか学園2」で女優デビューすると2014年には「セーラーゾンビ」でドラマ初主演を飾る。「AKB48」在籍時はグループ関連のドラマ出演が多かったが、同年秋には宮藤官九郎脚本、「関ジャニ∞」錦戸亮主演による「ごめんね青春!」に出演するなど単独での女優仕事もこなし、2015年夏のグループ卒業後は怒涛のごとく女優業にまい進することに。卒業後に主演した舞台「AZUMI 幕末編」が高評価を受け、連続テレビ小説「とと姉ちゃん」で高畑充希演じるヒロインが下宿する森田屋の一人娘・森田富江役に抜擢。「早子先生、結婚するって本当ですか?」や「死幣-DEATH CASH-」など連ドラへの出演が続くと、昨年秋には『デスノート Light up the NEW world』で渋谷にいる普通の少女ながらデスノートで無差別殺人を行う“史上最悪のデスノート所有者”青井さくらを演じるなど短期間の間に数多くの作品に出演。幅広い役柄をこなす“実力”が評価され女優として大躍進を遂げた。同じ「AKB48」メンバーから女優へと転身を遂げた代表格といえば前田敦子と大島優子が挙げられるが、いずれもグループ在籍時から単独での女優活動が多く、女優として地道な準備を進めてきた印象が強い一方で、彼女たちはグループが最も注目された時代のエース級メンバーでもあり「元AKB48」の“色”を強く残して女優への道を歩み出したのも事実。それに対し川栄さんは在籍時にはグループ関連作品出演が中心で、あくまでグループの活動の延長として女優業を行っている感があった一方、彼女を起用した監督や演出家がこぞって絶賛する演技に対する意識の高さや勘の鋭さと、「AKB48選抜総選挙」での最高順位が16位と、共に総選挙1位に輝いた前田さん、大島さんに比べると「AKB48」としての“色”が強くないこと。またバラエティで定着した“おバカキャラ”と女優としての演技力のギャップも意外性がある魅力になっており、元「AKB48」の肩書きと女優としての実力が良い形でバランスしているのが、彼女の強みとしていまの“躍進”の原動力になっていると言える。そんな彼女が本作「フランケンシュタインの恋」で演じている室園美琴は元ヤンでちょっと口が悪いが、柳楽優弥が扮する稲庭聖哉にひそかに思いを寄せているという役どころ。以前のインタビューでは「口の悪い役はよくやらせてもらう」と言いながらも、監督から「明るく」と指示を受け自分の中のイメージとの違いから難しさを感じていると語り、「自分の性格が明るくないので、テンションを高くするのが大変」だが「自分でOAを見て演技を改善できる」連続ドラマならではの利点を生かして本作に挑んでいると話していた川栄さん。4月30日オンエアの第2話放送終了後のTwitterでも「演技うまいもんなー」「元AKB48の中で一番、実は演技うまい?」「48グループで川栄の演技が一番すき」「川栄は意外と演技上手い」など、その演技力を評価する声が多数ツイートされており、“OAを見ての改善”が今後反映されていけばさらにその評価が上がることは想像に難くない。この秋には人気コミックの実写化作品『亜人』の公開や、来年には「ジャニーズWEST」小瀧望、黒島結菜らと共演する『プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~』が控える川栄さん。今後の彼女の成長ぶりに期待が高まる。(笠緒)
2017年05月06日唐沢寿明が演じるアツすぎる“昭和デカ”と、窪田正孝が演じる草食系“平成刑事”の凸凹コンビが文字どおりスクリーンで大暴れする『ラストコップTHE MOVIE』。ついに公開された本作と連動したスピンオフドラマ「another story of THE MOVIE」2作が、Huluで配信されている。GWの後半、本作をはじめ現在公開中の映画や、まもなく公開される人気シリーズの予習・復習として見ておきたい作品をピックアップ。また、大型連休といえば、前から気になっていたドラマシリーズをイッキ見して、その世界にひたれる絶好の機会。自宅に居ながらにして楽しめる配信作品を中心に、オススメをご紹介しよう。■最新作に備え人気シリーズをイッキ見!2015年に日テレ×Hulu共同製作のドラマとして誕生した「THE LAST COP/ラストコップ」。2人の刑事の名(迷)コンビぶりや豪快なアクション、笑って泣ける胸アツストーリーなどで人気を博し、配信ドラマから地上波ドラマを経て、その集大成となるべく映画化が実現した。30年の昏睡状態から目覚めた京極浩介(唐沢さん)は、刑事に現役復帰するも、平成生まれの現代っ子で自分の娘・鈴木結衣(佐々木希)と付き合っている若手刑事・望月亮太(窪田さん)とコンビを組むことになり、ハチャメチャながらも事件を解決していく。彼らのほか、和久井映見、竹内涼真、藤木直人、桜井日奈子、武田玲奈、伊藤沙莉、宮川一朗太、黒川智花、松尾諭、田山涼成、佐野史郎らの豪華競演も見逃せない。“伝説”といわれた生放送の地上波最終回も含め、これまでの全ドラマが配信されているので初見の人にもオススメ。また、映画のイッキ見なら、アイアンマンやキャプテン・アメリカなどのヒーローたちが同じ世界観を共有する、全世界累計興行収入1兆円超え(!)のマーベル作品はいかが?Huluにて期間限定で配信されているのは、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』をはじめ、『アントマン』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』など11作品。これらは「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」と呼ばれ、それぞれの作品は密接に関連し合っている。製作順に見るもよし、ヒーロー別に見るもよし。イッキ見してみると、ヒーローたちの性格や背景、関係性などがより明確になり、『シビル・ウォー』や『アベンジャーズ』などで共演する際の人間ドラマも楽しみの1つになる。最新作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』が連休あけ5月12日(金)より劇場公開、ベネディクト・カンバーバッチ主演『ドクター・ストレンジ』がデジタル先行配信中だが、彼らも今後“アベンジャーズ”の仲間入りを果たすだけに、チェックしておきたい。さらに、最新作『ワイルド・スピード ICE BREAK』が日本公開を迎え、週末3日間で興行収入8億超えというシリーズ最高の成績で大ヒットスタートを切った『ワイルド・スピード』シリーズにも注目。『ICE BREAK』は世界的にも大ヒットを爆走中で、全米では3週連続No.1、全世界興収では早くも10億ドル超え。これほどまでに右肩上がりに興収を伸ばし、人気と高評価を獲得していく超大作シリーズは本当に珍しい。しかも今回は、“ファミリー”の要であるヴィン・ディーゼルが“サイバーテロリスト”シャーリーズ・セロンの手に堕ち、ドウェイン・ジョンソン、ミシェル・ロドリゲスらと訣別!だが、前回登場したジェイソン・ステイサムや“新顔”スコット・イーストウッドが加わり、彼らの絆のみならず、アクションも空前絶後のスケールアップ。まだストリートを疾走していたころの第1作目『ワイルド・スピード』(2001年/みんな若い!)からシリーズをふり返ってみると、在りし日のポール・ウォーカーの活躍や、いまや『ワンダーウーマン』となったガル・ガドットらの姿も目にすることができる。同じく、前作超えのシリーズ歴代最高の大ヒットスタートとなったのが、「名探偵コナン」の劇場版最新作『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』。1997年公開の第1作目『名探偵コナン 時計仕掛けの摩天楼』から歴代の名作を、配信で楽しむことができる。最新作では久しぶりにコナンと平次がコンビを組むこともあり、Huluでは2人が組んだ過去のTVシリーズ回も。ちなみに、主題歌を歌う倉木麻衣の「名探偵コナン」主題歌メドレーライブも配信されている。劇場版といえば、Amazonプライム・ビデオでは『映画クレヨンしんちゃん』と『映画ドラえもん』のシリーズを配信中。「クレヨンしんちゃん」は、昨年の『映画クレヨンしんちゃん爆睡!ユメミーワールド大突撃』などの劇場版はもちろん、Amazonオリジナルの外伝シリーズも好評だ。近未来宇宙を舞台にした「クレヨンしんちゃん外伝 エイリアン vs. しんのすけ」、原作41巻の「フィギュアウォーズ」をバージョンアップした「クレヨンしんちゃん外伝おもちゃウォーズ」、最新のシーズン3「クレヨンしんちゃん外伝 家族連れ狼」と、非日常の世界観を描く外伝は休日にぴったりかも。■気になる海外ドラマのイッキ見こそ大型連休の醍醐味!?まずは、8年ぶりに帰ってきた「プリズン・ブレイク」のシーズン5が、dTVでCS「FOXチャンネル」の放送に合わせてリアルタイム配信中。また、シーズン1から4まで過去の全シーズンも一挙配信中だ。ハマった海外ドラマとして、「24 -TWENTY FOUR-」や「LOST」などと並んでよく名を上げられる本作だけに、楽しみにしていた人も多いはず。今回は、死んだと思われていたマイケル(ウェントワース・ミラー)が、実は中東イエメンの刑務所で生きているかもしれない…というところから物語が始まっている(各エピソードは配信開始日から20日間の限定配信なので御注意を)。また、5月病とはいかないまでも、新年度から1か月経ち、ちょっと疲れ気味…という人には、Netflixオリジナルドラマからご紹介。ファッションサイト「ナスティ・ギャル」のカリスマオーナーだったソフィア・アモルーソのベストセラー自伝を基にした“アメリカ版ビリギャル”「ガールボス」は、オシャレ女子にオススメ。ソフィアは学なし、職なし、金なし、でも自分を押し殺して誰かの下で働くなんてまっぴら、という女の子。自ら古着販売サイトを立ち上げ、さまざまな事態に巻き込まれながらも年商100億円超えのサイトオーナーとなっていく。主演のブリット・マーリングは、そんなソフィアのぶっ飛び半生を独創的なファッションも体現しながら好演。製作総指揮には、『ピッチ・パーフェクト』シリーズの脚本家ケイ・キャノンとソフィア本人、さらにシャーリーズ・セロンが名を連ねている。一方、『ロミオ+ジュリエット』『ムーラン・ルージュ』のバズ・ラーマン監督が描く「ゲットダウン」では、若きヒップホップグループ“ゲットダウンブラザーズ”のクールなパフォーマンスと、ヒロイン・マイリーンの圧倒的な歌声を楽しみたいところ。だが、ディスコクイーンとしてスターダムに押されていくマリーンとのすれ違いや、仲間との音楽活動と堅実な将来との間で葛藤を抱えていく主人公“ジーク”ことエゼキエルのように、若者たちの恋と友情、人生を見つめながらの成長にはほろ苦さも…。70年代後半のニューヨーク、ヒップホップの黎明期にタイムスリップしてみては?さらに、女性のお仕事ドラマとしては、1920年代のマドリード、当時最先端の職場だった国営電話会社を舞台に、境遇も性格も異なる4人の女性交換手が火花を散らす「ケーブルガールズ」も登場。現在のアメリカの若者たちを映し出す作品として、有名大学を舞台に“ダイバーシティ”に辛辣なツッコミをいれる「親愛なる白人様」、高校を舞台に生きづらさを抱える若者の姿を描くセレーナ・ゴメス製作総指揮「13の理由」なども、じっくりと観ることができそう。なお、マーベル×Netflixのドラマ「Marvel アイアン・フィスト」も要チェック。飛行機事故で行方不明になっていた大富豪ダニー・ランドが、炎を操る神秘の技“アイアン・フィスト(鋼鉄の拳)”を手に入れてNYに舞い戻り、奇怪な犯罪組織との壮絶なバトルを繰り広げていく。これまで、「デアデビル」2シーズンに「ジェシカ・ジョーンズ」「ルーク・ケイジ」と配信されてきたが、今夏には、彼らが一堂に会して最強ヴィラン(シガニー・ウィーバー!)に立ち向かっていく「Marvel ディフェンダーズ」が控えている。まさにNetflixドラマ版の“アベンジャーズ”といえる作品だけに、いまのうちに個性的なヒーローたちについて知っておきたいところだ。いずれも魅力的な映画・ドラマばかり。見たいものが多すぎて、結局、時間が足りなくなってしまいそう!?(text:Reiko Uehara)
2017年05月06日「劇場に2回、足を運んでもらう」――そんなディズニーの強い自信が感じられる。『美女と野獣』の日本語吹替版声優陣の顔ぶれのことだ。興行収入200億円、いや、社会現象となったあの『アナと雪の女王』超えのために、彼らの声が必要!そんな思いがひしひしと伝わってくる。そもそも、1月末の吹替キャストの発表の時点で、ディズニーの本気度が感じられた。会見なしのリリースのみによる発表でも、単なる記者会見でもなく、発表の場で、いきなり吹替キャスト11名による生歌を披露!収録はまだ始まってもいないにもかかわらず、圧巻のハーモニーで集まった報道陣を魅了した。正直、一般のファンの方々がいないことが申し訳ないくらいの凄まじいパフォーマンスだった。エマ・ワトソン演じるヒロイン、ベル役の昆夏美、野獣役の山崎育三郎をはじめ、岩崎宏美(ポット夫人)、村井國夫(ベルの父親・モーリス)、吉原光夫(ガストン)、藤井隆(ル・フウ)、成河(ルミエール)、小倉久寛(コグスワース)、濱田めぐみ(マダム・ド・ガルドローブ)、島田歌穂(プリュメット)、池田優斗(チップ)。間違いなく、洋画の日本語吹替キャストとして“史上最強”のメンバーである。普段、あまり舞台やミュージカルを観ない映画ファンは「え?誰?この人たち…」と思うかもしれない。「藤井隆って歌えるの?」と疑問を感じた人もいるかもしれない…。いやいやいや、いずれも演劇、ミュージカルの世界で知らぬ者のいない実力派の面々である。ひとりひとり、どれだけすごいか説明したいところだが、とてもスペースが足りない。なので、脇役の中でひとり、ぜひこの人の声に注目を!という人を挙げるなら、ルミエール役の成河(そんは)さん。ここ数年で「ショーシャンクの空に」、「100万回生きたねこ」、「グランドホテル」、「わたしは真悟」など次々と話題の舞台に出演。現在、上演中の劇団☆新感線の『髑髏城の七人』Season花でも凄まじい存在感を放っているが、演技力の高さに加え、声が美しい!この1月末の会見場で、普段は演劇・ミュージカルの専門誌で取材をしている知り合いの記者と顔を合わせたが、彼女の興奮した面持ちが忘れられない。会見には、映画を専門とする記者、エンタメを扱う新聞社の記者などに加え、普段、映画の取材にはあまり来ることがない、演劇・ミュージカル専門の報道陣も足を運んでいたのだが、吹替キャストのメンバーが書かれたリリースを手にしたその女性記者は「ちょっと!映画専門の人たちはみんな『ふーん』って感じの反応ですけど、このメンバー、ヤバいですよ!凄まじいですよ」と熱かった。ちなみに彼女は、ミュージカルを見たことがない知り合いに、山崎育三郎について説明するとき「元モー娘。のなっち(安倍なつみ)のダンナさんで、最近では『下町ロケット』とか月9の『突然ですが、明日結婚します』にも出てて…」と言わないとわかってもらえないことを嘆いていた。『アナと雪の女王』の神田沙也加と松たか子、『シンデレラ』の高畑充希&城田優に比べて、一般の知名度という点では確かに劣るかもしれない(といって、この2作の吹替キャストが知名度で選ばれたわけでは決してなく、彼らもまた素晴らしい歌唱力の持ち主である)。知名度が多少、低く、その点でプロモーション活動は苦労はあるかもしれないが、実力は折り紙付きのメンバーをキッチリと11名揃えて、口コミの評判の高さで映画館に何度も足を運んでもらう。その覚悟が表れたキャスト発表、そしてメンバーだった。日本人は世界でも有数の“字幕版好き”の国民。オリジナルの言語、俳優の発する声、言葉を尊重し、楽しみたいという思いが強いとも言われる。実際、本作に関しても、エマ・ワトソン、ダン・スティーブンス、ユアン・マクレガーらによるオリジナル版の評価もかなり高い。だが一方で、「普段は字幕で観る」という映画関係者から「本作に関しては、吹替版が本当に素晴らしい」という声が聞こえてくる。歌唱付きの本作の舞台挨拶の場で、吹替キャストの幾人かからも「普段は自分も字幕で観るのが多いけど、この映画は吹替版で観てほしい」という言葉が飛び出したが、絶対的な自信の表れだろう。本作は歌唱シーンばかりがフィーチャーされがちだが、各シーンの映像表現の豊かさも見どころ!それを逃さないためにも、映像に集中できる吹替版をおススメする声は多い。吹替版も観たい。とはいえオリジナルの歌唱も聴きたい…じゃあ、せっかくなので、両方…とディズニーの“策略”にまんまと乗せられて、興行収入は積み上がっていく。このメンバーの歌唱を映画館の音響で聴くことができるなら1,800円は安いもの。それだけの面々が揃っている。すでに先日より公開が始まり、金土日の3日間で13億7800万円超、95万人動員という『アナ雪』を超えるペースという、“予想通り”のロケットスタート。2017年の映画界最大の社会現象が始まった。(text:Naoki Kurozu)■関連作品:美女と野獣 (2017) 2017年4月21日より全国にて公開(C) 2016 Disney. All Rights Reserved.
2017年05月02日4月20日、銀座中央通り沿いに、新たに銀座エリア最大の商業施設「GINZA SIX(ギンザ シックス)」がオープンした。今回の【映画ではじめるデートプラン】は、いま最も旬なスポット「GINZA SIX」の館内で、カップルにおすすめのスポットをピックアップしてご紹介!GWの映画デートプランの参考にして。GWにおすすめの映画は、エマ・ワトソン主演で贈るディズニー作品の実写版『美女と野獣』。魔女の呪いによって野獣の姿に変えられてしまった美しい王子。その呪いを解くためには、魔法のバラの花びらがすべて散る前に、野獣が誰かを心から愛し、そして愛されなければならない──。そんな野獣の前に現れたのは、聡明で進歩的な考えを持つ美しい村の娘ベル。その出会いは、はたして奇跡を生むのか…?本作は、1991年のディズニーのアニメーションの完全実写化したもの。華やかなドレスを身にまとったベルと野獣が二人の舞踏会でダンスを踊るシーンは世界中の人を魅了して止まない名シーン。“真実の愛”とは何なのか。かけ離れた二人が紡ぐロマンスに、今よみがえる不朽の名作をご堪能あれ。華やかでゴージャスな気分に浸れる映画を観た後は、のんびり銀ぶらデートを楽しもう!ちなみに銀座で『美女と野獣』を観るなら、有楽町寄りの「TOHOシネマズ日劇」が最も近い。お出かけ前に上映時間をチェックをしてみて。銀座の新しいアイコンにふさわしい大規模複合施設「GINZA SIX」。まず驚くのが規格外のスケールだ。館内には241店舗ものブランドが出店し(その半数以上の121店舗が旗艦店、日本初12店舗、世界最大級4店舗、新業態65店舗、銀座初83店舗、日本最大級35店舗)、屋上には日本の四季が楽しめる4,000平方メートルもの屋上庭園「GINZA SIX ガーデン」、地下には日本の伝統芸能の拠点「観世能楽堂」を擁すほか、オフィスやツーリストサービスセンター、そしてパブリックアートなど、ワールドクラスクオリティの施設と設備が集積しているのだ。訪れるだけでゴージャスな雰囲気とその規模感に圧倒されてしまう「GINZA SIX」。一日で見てまわるのは難しいので、カップルにおすすめなスポットのみをピックアップ! まず6F「銀座 蔦屋書店」だ。銀座店では、「アートのある生活」を提案し、「アート」と「日本文化」を主題として、世界一のアートブック集積を目指すほか、江戸文化に光を当てて、東京カルチャーも発信していく。高さ6メートルの書架には、アーティな書籍がずらり並び、独立したギャラリースペースもあって、アート販売や重さ約40キロの「BIG BOOK」など珍しい作品もみられる。5月末までは、杉本博司氏、名和晃平氏、蜷川実花氏の作品が展示されているなど、飽きずに居られるので待ち合わせ場所としておすすめ。次は、ライフスタイル雑貨を扱う店舗が入っている4Fへ。おとなのための新しいPLAZA「#0107 PLAZA(オトナプラザ)」や「CIBONE」からスピンアウトした新たなショップ「CIBONE CASE」、デザイン会社「DRAFT」のプロダクトブランド「D-BROS」など、既存の店舗とは一線を画す新たなコンセプトや空間設計を展開するショップが揃っていてウィンドウショッピングするだけでも楽しいはず。「#0107 PLAZA」内には、「ベジタブルスペシャル」(1080円)や「ジンジャー・キャロットジュース」(870円)、「フルーツミクスチャー」(810円)などのコールドプレスジュースや「コーヒー」(430円~)、焼菓子などを提供するスタンドバーも併設されているので、ぜひ立ち寄ってみて。スタンドは、可愛いクマのキャラクターが目印。食事処としては、日本食を中心に「GINZA SIX」ならではのラグジュアリーな高級店が多いので、もう少しカジュアルにと考えるならば、あえてレストランには入らず、B2Fのグルメ&スイーツフロアで、弁当やパン、スイーツなどをテイクアウトして、晴れていれば屋上庭園で食べてもいいし、お持ち帰りして続きはお家デートを楽しんでみてもよいかも。お弁当といっても粒ぞろい。明治創業の老舗「荻野屋」のお弁当をはじめ、「Soup Stock Tokyo」などを手掛けるスマイルズの新業態で、素材にこだわった海苔弁専門店「刷毛じょうゆ 海苔弁山登り」の海苔弁、発酵熟成肉の専門店がNYスタイルのサラダと進化系サンドウィッチをコラボさせた世界初の新業態「meat&green 旬熟成」のデリ、ベーカリーには「Viennoiserie JEAN FRANCOIS」や「ル・ブーランジェ・ドゥ・モンジュ」など、ハイクラスなテイクアウトメニューが揃う。またショップで購入したボトルワインを、カフェ&バー スペースで飲める「ワインショップ・エノテカ」や、炊きたての土鍋ご飯と季節の料理をいただける「旬菜三山」など、いくつかの店舗ではイートインスペースを併設している店舗もある。東京初出店となる「辻利」では、銀座店だけの特別メニュー「辻利ソフト 濃い茶」をテイクアウトできるスタンドもあるので、甘党の彼氏彼女は併せてチェックを!『美女と野獣』は4月21日(金)より全国にて公開中。(text:Miwa Ogata)■関連作品:美女と野獣 (2017) 2017年4月21日より全国にて公開(C) 2016 Disney. All Rights Reserved.
2017年04月27日「こんにちは。ハンナよ。ハンナ・ベイカー。途中でテープを止めないでね。私の人生について話すから、じっくり聴いて。厳密には、“人生が終わった理由”なんだけど」。Netflixの新作ドラマ「13の理由」は、自らの人生を終わらせた女子高生ハンナ・ベイカーのこんなモノローグで始まります。3月31日の全世界同時配信と共に、この作品が頭から離れない人たちが続出。その1人として、「13の理由」をご紹介します。ハンナの生前の独白が録音されたカセットテープを受け取るのは、彼女に想いを寄せていた同級生のクレイ。テープの声は、自分が死に至った“13の理由”を語り始めます。A面にもB面にも声が吹き込まれたテープは全部で7本。テープの声は「このテープを聴くあなたも理由の1つよ」と言い、“13の理由”を1つ1つ明かしていきます。ジェイ・アッシャーのヤングアダルト小説をベースにした作品世界には、ハイスクール、女の子、男の子、恋、友情といった青春の象徴が確実に存在。しかしながら、「13の理由」はそれらが残酷な武器に変わる瞬間を冷静に見つめています。なぜ僕が理由の1つなのか?学園の尊大な人気者タイプでもなければ、人の死の原因になるはずもないクレイは、自転車に乗るときにヘルメットをきちんとかぶるような男の子。そのバイト仲間でもあったハンナは、生真面目で誠実な彼を「ヘルメットくん」と愛情たっぷりに呼ぶキュートな女の子。アカデミー賞作品賞受賞作『スポットライト 世紀のスクープ』のトム・マッカーシーが第1~2話の監督を務め、戸惑いと恐怖でテープを聴き進められないクレイに寄り添います。ハンナのいない現在とハンナのいた過去を交錯させながら、1歩ずつ“ハンナの真実”に近づくクレイは、まるでミステリーの主人公のよう。『スポットライト 世紀のスクープ』同様、マッカーシー監督が深刻な題材とスリルを真摯に融合させます。そんな中、自らの関わる事情に向き合うのと同時に、“13の理由”のすべてを知っていくのもクレイの大切な役目。彼が“ハンナの真実”を知っていく過程で、いじめや性的暴力など、ティーンエイジャーの抱える問題が浮き彫りになっていきます。このドラマの製作総指揮を務めるセレーナ・ゴメスは原作小説に出会った当初、1本の映画にすることを想定していましたが、全13話の連続ドラマに着地したのは大正解。“13の理由”が1話ずつ語られる構成の妙はもちろん、ハンナの命が少しずつ損なわれていったこと、結果とはたくさんの「あのとき」が重なって訪れるのだということを示すのに適した長さだからです。また、「13の理由」は音楽も秀逸で、たくさんの「あのとき」と様々な楽曲がリンク。ハミルトン・リーサウザー+ロスタムの「A 1000 Times」がハンナとクレイの運命の瞬間を包めば、決意するハンナのバックに流れるのはウルトラヴォックスの「Vienna」。ジョイ・ディヴィジョン、エリオット・スミスからセレーナによる「Only You」のカバーまで、クレイたちの「いま」の中でも音楽が意味を持ち、鑑賞後も頭の中で鳴り響く楽曲の数々がドラマの力を物語っています。「13の理由」に併せ、作品の意義についてスタッフやキャストが語るメイキング番組「13の理由 現代が抱える社会の闇を考える」もNetflixで配信。「現実を映し出し、人の助けになる作品を作りたかった」というセレーナのメッセージ共々、年齢や性別に関係なく、大勢の人たちの目に留まってほしいドラマです。(text:Hikaru Watanabe)
2017年04月23日2017年春ドラマが続々とスタート。皆さん、お気に入り作品は見つかりましたか?今回ドラマニアな筆者が注目したのは、迫力ある警察ドラマ2本です。テイストの異なる「CRISIS」と「小さな巨人」――本日はその魅力に迫ります。■出し惜しみのない全力投球見応えバッチリ「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」瞬きをする暇がないとはまさにこのこと。スタートダッシュとも言える濃厚なアクションシーンで始まる本作は、コロコロと坂を下るように、物語が加速してあっという間に60分が経ってしまいます。扱われるのは部署の特性上、どれも現代ならではの悲惨さを孕んだ凶悪事件ばかり。公安機動捜査隊特捜班のメンバー5人――小栗旬さん、西島秀俊さん、野間口徹さん、新木優子さん、田中哲司さんらも各々過去にダークなトラウマを抱えているようで…一見「ものすごく暗いドラマなのかな?」と受け取られがちなのですが、実際に作品を見終えてみると、妙な納得感と次週への興味が心に残るから不思議なんです。こだわりが強すぎて本来であれば絶対にハマらない、決して染まり合うことのない5人の刑事。彼らが事件解決という同じゴールを描いたとき、バラバラだったはずのピースがカチッとひとつにおさまる瞬間がとっても痛快!癖になる方も多いのではないでしょうか。加えて、所々に散りばめられている稲見刑事(小栗さん)の女癖の悪さや田丸刑事(西島さん)&同僚の妻・千種(石田ゆり子)の謎の関係など、恋愛要素もドラマを盛り上げる重大なポイント。出し惜しみすることなくとことん面白さを追究していく展開に、今後の期待が高まります。■リアルな人間関係に共感必須新感覚な警察ドラマ「小さな巨人」また警察ドラマの真骨頂とも言える、こちらの作品も忘れてはなりません。第1話にて、早くも大どんでん返しが巻き起こった「小さな巨人」です。従来の作品であれば、話ごとに何らかの重大事件が起こり、問題を解決する中で登場人物達も成長していくという展開が通常だったかと思うのですが…本作はまずその根本が違います。私たちにとって事件報道が非日常であったとしても、警視庁捜査一課長の香坂(長谷川博己)たちにとっては日常の出来事――彼らはみんな「いかに早く解決するか」が出世に関わる世界で生きている。だからこそ事件の内容がどんなものであれ、「手柄を自分のものにすることが重要」という、野心的な側面を持ち合わせていて当然なんですよね!本作では、そんな警察内部のリアルな人間関係を忠実に描き出しており、非常に新鮮な仕上がりとなっています。物語の中のヒエラルキー…その頂点に立つのが、香川照之さん演じるノンキャリアの叩き上げ捜査一課長です。彼の右腕として活躍していた・香坂(長谷川さん)でしたが、小さなミスに足元を救われ、所轄へ飛ばされてしまいました。それまで警視庁という肩書に守られていた全てを奪われた香坂――果たして、彼の強固たる信念は現場でも通用するのでしょうか。岡田将生さん、安田顕さんら実力派役者勢と繰り広げられる繊細な会話劇にも注目です。以上、いかがでしたか?まだまだ間に合いますので、是非チェックしてみてくださいませ。(text:Yuki Watanabe)
2017年04月23日『ゴースト・イン・ザ・シェル』の足を引っ張った“ホワイトウォッシュ”批判ってナニ?士郎正宗原作コミック「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」のハリウッド映画版『ゴースト・イン・ザ・シェル』が3月31日に全米で封切られた。デビュー週末の興行ランキングがスタジオの期待を大きく裏切って第3位だったことからハリウッド業界内では大きなニュースとして取り上げられた。公開されてまだ1か月足らずの本作だが、このままでいくと最終的に6,000万ドル(約65億円)の損失になる可能性があると業界筋は分析している。この映画の悪い予兆は、主役にスカーレット・ヨハンソンが抜擢された当初からあった。原作では日本人がヒロインなのにも関わらず、白人女優が起用されたことで、俗に言うところの「ホワイトウォッシュ」批判が持ち上がったのだ。いったい、「ホワイトウォッシュ」とは何か?去年2016年度のアカデミー賞候補が白人ばかりだったとき、関係者のみならず社会的にも「映画アカデミーは人種差別だ」という非難が巻き起こった。社会問題にまで発展したこの一件で、古きを守る映画アカデミーが遂に腰を上げ、会員の人種をもっと均等にするべく、新たな規約を設けるという異例の事態にまで発展した。その時期に流行ったのが「ホワイトウォッシュ」という言葉だ。ほかの人種をまじえず白人ばかりで彩られたイベントを軽蔑した造語で、文字通りWHITEとWASHを組合せ、「白で洗い流された」という意味合いである。ホワイトウォッシュという形容詞は、『ゴースト・イン・ザ・シェル』のキャスティングが発表された時点から、この映画に対して頻繁に使用されていた。アメリカ国内のアニメファン(結構な数の映画ライターも含む)は、ともすると日本人よりも日本を愛し、日本の美たるものに対しても日本人にはないレベルの敬意を抱いている人が多い。そんな彼らは日本人には程遠いスカーレットが「少佐」役に抜擢されたと聞き、「ヒロインは日本人のはずなのに白人女優にすげ替えるとは失礼の極み!」と怒り心頭したわけだ。Care2.comという署名サイトでは「少佐」役の変更を求める署名サイトが立ち上げられ、なんと100,000の署名が集まったという。製作スタジオのパラマウント・ピクチャーズ製作責任者が業界誌のインタビューで、日本アニメのファンの熱心さに敬意を払いながら製作を進めてきたと語っていた。彼らを味方に付けることがいかに映画のPR大切かは理解していたが、今回はうまくいかなかった、と。おそらくコアなアニメファンの心はスカーレットが少佐役に起用された時点で、すでに作品から離れ出していたに違いない。スカーレットの女優としての人気には全く問題はないが、悲しいことに彼女の人種がこの「少佐」というヒロインの役に合わないことが大問題だったのである。ファンはこの点をスタジオ側にわかってもらいたかったに違いない。なぜ“最高のアンドロイド”の容姿は、スカーレット・ヨハンソンでなければならなかったのか。現存の日本人系女優に候補が見つからなければ、新人を発掘することはできなかったのか。「スカヨハのほうが世界レベルでの客ウケがいいから」、と言われてしまえばそれまでだが、彼女をキャスティングしたことで作品自体が「ホワイトウォッシュ」などと揶揄されてしまうようでは本末転倒だろう。単一民族国家である日本に住んでいると人種問題に関して疎くなりがちだ。最近でこそ様々な国の人たちが都会に流れ込んできているようだが、人種のるつぼであるアメリカの比ではない。その証拠に日本は『ゴースト・イン・ザ・シェル』発祥の地で、主役の人種に対してもっと敏感であるはずが、スカーレットの抜擢に関して殆ど問題になっていない。それどころかウェルカム、と言った感じだ。この様子を見た日系アメリカ人たちは、日本人の「ホワイトウォッシュ」に対する無関心さは、「白人はカッコいい」という目線で育ってきた多くの日本人が持つ「白人コンプレックス」から派生しているに違いないと話す。これは事実なのだろうか?アメリカでは『ゴースト・イン・ザ・シェル』のホワイトウォッシュ問題について様々なニュースがオンラインに溢れたが、その中に何とも悲しくなるレポートがあった。本作の日本人関係者たちは、最初から主役に日本人女優を起用する考えがなかったというのである。母国のクリエイターたちが後押ししてくれないのでは日本人女優が少佐役を射留めるチャンスはゼロに等しかったに違いない。この話を聞いてムッとしたのは筆者だけだろうか。あろうことか日本人自身が自国のタレントたちをアシストせずにホワイトウォッシュを煽る立場に身を置いているとは、なんとも情けないことだ。ハリウッドのスタジオは少しでも損のリスクを軽減するため、世界的に人気のある俳優を使って客足を伸ばす、という安全パイを使いたがる。よって菊地凛子や栗山千明ではなく、スカヨハがキャスティングされてしまうわけだ。(筆者的には千明ちゃんをイチオシしていたのだが…)お客の側からして安全圏の作品ばかりを見せられていたら飽きてくる、という自然の摂理をスタジオは理解していないようだ。映画ファンはたまにはリスクを冒した作品を見たいのだ。今回の『ゴースト・イン・ザ・シェル』は、リスクを冒す絶好のマテリアルだったのに、ハリウッドは結局いつもの安全パイを使い、その結果、「ホワイトウォッシュ」と叩かれ、ご覧のとおりに興行収入低迷の憂き目にあった。ここ数年のあいだ、「AKIRA」にも映画化の話が持ち上がっているのだが、製作の方向性が二転三転しているらしく話しがまとまらないらしい。もしこの作品を実際に映画化するあかつきには、今回の『ゴースト・イン・ザ・シェル』実写化で学んだ教訓を活かしてくれることを願うばかりだ。(text:明美・トスト/Akemi Tosto)■関連作品:ゴースト・イン・ザ・シェル 2017年4月7日より全国にて公開(C) 2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
2017年04月22日名作アニメをディズニー自ら実写化する『美女と野獣』といえば、『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』と並ぶ2017年洋画シーンの最重要タイトルだ。それだけに出来ばえが気になるところだが、ご安心を。マジ、最高です!長編アニメーションとして史上初めて、アカデミー作品賞候補にもなったアニメ版『美女と野獣』から約25年。新たな命が吹き込まれた実写版は幕開けたその瞬間から、エンドクレジットが終わるまで、かけがえのない至福のときが流れ、2時間10分の上映時間は終始ウットリしっ放しだった。永遠に語り継がれるボールルームでの舞踏シーンをはじめ、ファンの願いすべてを見事に叶えた本作は、まさに“完璧な実写版”といって過言ではない。さらに胸を打つのは、単にアニメをなぞって実写化したのではなく、主人公ベルの聡明さに磨きをかけ、21世紀における理想的なヒロイン像を膨らませることで、「なぜ、ベルは野獣を愛するようになったのか?」という本作のテーマに、より強い説得力と深い共感を与えている点。ハーマイオニー役を卒業し、女優としては試行錯誤の連続だったエマ・ワトソンだが、ついにパブリックイメージの“呪い”が解けるキャリア最大の転機を迎えた。流麗な映像美、そこで躍動する新旧の名曲たち。ミュージカル映画としての魅力が、あふれているのは言うまでもなく、ビル・コンドン監督(『ドリームガールズ』)の起用は大正解だった。今年は『ラ・ラ・ランド』の国内興収が40億円を突破するなど、ミュージカル映画というジャンルそのものにも注目が集まるだけに、「アニメ版は見たことない」という人であっても、音楽と映像が織りなすゴージャスな世界観をたっぷりと堪能してほしい。「アニメを実写化する」とはこういうこと。『美女と野獣』を見終わると、きっとそう感じずにはいられないはず。それに比べると…って、これ以上は言いませんけど、本物のエンターテインメントを体感するという意味でも、やはりディズニー渾身の本作は、絶対に見逃すべきではない。今後も『ダンボ』『ピノキオ』『アラジン』『ムーラン』『ライオン・キング』などなど、ディズニー・アニメの実写化が目白押しだが、いまは期待しかありません!(text:Ryo Uchida)■関連作品:美女と野獣 (2017) 2017年4月21日より全国にて公開(C) 2016 Disney. All Rights Reserved.
2017年04月22日ハーイ、みなさん!今年も桜のシーズンを楽しめましたか。実は私も東京に滞在していたのですが、まだ桜で咲く前だったので、残念ながら満開の桜を見ることができませんでした(涙)。皆さんはもうご存じかしら。ディズニーの名作アニメを実写化した『美女と野獣』が、世界中ですごく大ヒットしていますね!いまの時点では、2017年最大の興行成績を記録していて、なんと世界興行成績は10億ドル超え!それにまだまだ数字を伸ばしています。主人公ベル役には、『ハリー・ポッター』シリーズの、イギリス人女優エマ・ワトソン。野獣役は「ダウントン・アビー」の、イギリス人俳優ダン・スティーヴンス。そしてエマ・トンプソン、ジョシュ・ギャッド、ユアン・マクレガー、ケヴィン・クラインなどの大スターも、カメオ出演しています。当初、ディズニーがアニメの傑作を実写化すると聞いたとき、私は好きになれるのかなと不安でした。でも完成した映画を観たいまは、大好きだと胸を張って言えるわ!それにね、私たちが生きているこのクレイジーな時代に合った、とても大切なメッセージも込められているの。エマ・ワトソンは、以前から女性の権利のために声をあげ、メディアの前でも堂々と発言していますよね。そのエマ・ワトソンが、新しく生まれ変わったこの『美女と野獣』のベルを通じて、たくさんの“ガールズパワー”を表現していたのは、とてもうれしかったわ。いま、世界中で、女性は平等の権利を得るために闘っているでしょ。映画やテレビ番組で、彼女たちをサポートする意思を示すことは、とても大事だと思っています。小さな女の子たちには、ただかわいいだけのお姫様ではなく、尊敬できる強いロールモデルが必要なの。物語自体は大きく変わっていませんが、ディズニーストアで売っている『美女と野獣』グッズに変化が見られました。たとえばTシャツに“本当の美しさは、あなたの内側にある”と書かれていたりね。エマ・ワトソンのような若い女優が、世界中の女性をリードしていってくれるといいなと思っています。どんな女性でもお姫様にもなれるし、平等な権利を得ることができると伝えてほしい。最近の世の中では、おかしなこともたくさん起きるけど、前向きで堂々とした女性を見るのはとても気持ちがいいですね。これからもっと、こういう映画が増えることを願っています!(text:Lisle Wilkerson)■関連作品:美女と野獣 (2017) 2017年4月21日より全国にて公開(C) 2016 Disney. All Rights Reserved.
2017年04月21日ファッション界の最大の祭典として、世界が注目する“メットガラ”。NYメトロポリタン美術館(MET)で、毎年5月の最初の月曜日に行われるこのイベントは、美術館の運営資金調達のため行われ、その高額にして限られた数しか用意されないインビテーションは本物のセレブの証ともされています。2015年は、同美術館の服飾部門の企画展「鏡の中の中国(China: Through The looking Glass)」のオープニングイベントとして開幕しました。その企画の裏側を8か月にわたって追った初のドキュメンタリーが『メットガラ ドレスをまとった美術館』。US版「VOGUE」の編集長で、メットの理事でもあるアナ・ウィンターとともに、伝説の一夜を実現させた立役者で、企画展のキュレーターであるアンドリュー・ボルトンさんにお話を伺う機会がありました!アートファンもファッショニスタも、大満足すること間違いなしです。――メトロポリタン美術館で服を展示することには、“ファッションは芸術のひとつか”という議論に、ひとつの方向性を示しているように感じます。アンドリューさんが、“ファッションはアートである”と確信できるきっかけとなった出来事(エピソード)があれば教えてください。それは特に無かったんです。僕は大学で文化人類学の文化理論を学んでいました。芸術であろうとファッションであろうと、そのプロセスに関わっていきたいという気持ちがあったので、それらの文化的な再解釈をどうやっていくかということに興味があったんです。僕にとっては、アートを生み出すことに対してヒエラルキーにこだわることはありません。絵画であろうと、彫刻であろうと、どちらが重要であるかということは自分にとって意味はないのです。私にとって重要なのは、ファッションはいま現在作られているという点ですね。その制作プロセスにとても興味を感じたわけです。そしてエッジを持っているし、民主主義的な性質も持っている。アーティスティックな制作物として定義づけるというのは、価格ではないと思いますし、どちらが優れているかということではないと思っています。――では、ファッションの魅力とは?ファッションというのは、トレンドによってどんどん変化していくことに魅了されますね。ファッションの持つパワーがトレンドによって左右される、それが魅力的なのです。――美術館とキュレーターへの憧れが、現在の仕事を目指すきっかけになったと思いますが、キュレーターとしてのアンドリューさんの使命とは何だと思いますか?いい質問ですね!我々の使命としては、展覧会をコンセプチュアルに挑戦的な形で作り出していくこと。人にそれを伝えながら、教育をしていくことだと思います。人々をインスパイアするということ、自分の趣向を持つこと、彼らにそうするように勧めていくこと。自分の解釈を行って、客観的なことだけではなく主観的に物事を判断して見ていくことを誘うということでしょうか。そのためのキュレーションして行っていくのが、私の使命だと思います。(text:June Makiguchi)■関連作品:メットガラドレスをまとった美術館 2017年4月15日よりBunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国にて公開(C) 2016 MB Productions,LLC
2017年04月12日4月21日公開の『美女と野獣』で野獣役を演じ、注目度急上昇中の英国俳優ダン・スティーヴンス。海外ドラマファンには「ダウントン・アビー」のマシューとしてもお馴染みの彼ですが、現在、彼の新作主演ドラマも話題沸騰中なのをご存じでしょうか?今年の2月から米ケーブル局FX、日本ではCSのFOXチャンネルで放送された「レギオン」は、映画『X-MEN』シリーズの世界からつながる新作ドラマ。映画の中ではジェームズ・マカヴォイらが演じていたミュータント、プロフェッサーXの息子を主人公にした物語です。その主人公デヴィッドを演じるのが、ダン・スティーヴンス。地上最強のテレパスと言われるプロフェッサーXの血を受け継ぐデヴィッドが、自身のルーツを巡る戦いへと身を投じていきます。プロフェッサーXとデヴィッドの間には何らかの事情があるようで、シリーズ冒頭のデヴィッドは自分がミュータントだと知りません。そのため、能力者ゆえの幻覚や幻聴に幼い頃から悩まされてきたデヴィッドは、精神病院への入退院を繰り返すことに。そんなデヴィッドに、本当の自分を理解する存在との出会いが訪れます。現実と虚構、過去と現在、能力の自覚と無自覚の狭間で揺れるデヴィッドの覚醒が物語の主軸にあるため、彼が手探りで真実に向かっていくのと同じように私たち視聴者も手探り!? つかみかけたと思ったらまた手から離れてしまうような、まさに翻弄してくるドラマになっています。『X-MEN』史上最も奇抜で挑戦的でもある「レギオン」を手掛けたのは、「FARGO/ファーゴ」のクリエイター、ノア・ホーリー。人を食ったようなおかしみとダークな味わい、そしてスタイリッシュさが混在する作品世界は、「レギオン」にも「FARGO/ファーゴ」にも共通するものと言えます。ウェス・アンダーソン好きはハマること間違いなしのカラフルな本編もさることながら、エンドクレジット画面まで「レギオン」はいちいちオシャレ。登場人物たちのファッションも、60~70年代のクラシックスタイルに未来的な要素が加えられていてとにかくかわいいです。そんな中、ダン・スティーヴンスの魅力が炸裂しているのは間違いないところで、能力に困惑する姿もキュートなら、一目惚れした女性ミュータント、シド(レイチェル・ケラー)とのロマンスもキュート。触れた相手と入れ替わる力を持つシドとは、プラトニックをキープせざるを得ず。とは言え、モジモジにはもう飽きた!と言わんばかりに、ミュータントらしい解決方法をちゃっかり見つける展開も面白いです。ちなみに、『美女と野獣』で歌声を披露しているダンですが、「レギオン」にもまさかの歌唱シーンが。しかも、『美女と野獣』が野獣仕様の歌声であるのに対し、こちらではダンの生声を堪能できます。ダン自身にとっても昨年の仕事面のハイライトはバンクーバーで4~5か月間かけて行われた「レギオン」の撮影(私生活でのハイライトは「3人目の子どもの誕生!」)だそうで、「作品と同じように、狂った撮影だった(笑)」とのこと。先頃シーズン2も決定した「レギオン」を、ぜひチェックしてみてください。(text:Hikaru Watanabe)
2017年04月10日この世にはわずかだが「優れた続編映画」が存在する。『ダークナイト』『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』といった名作をはじめ、『トイストーリー』や『スパイダーマン』の続編も成功例だ。そしてこの春、『T2 トレインスポッティング』がその仲間入りを果たした。同作は1996年に公開された青春映画『トレインスポッティング』の約20年ぶりとなる続編。ダニー・ボイル監督を筆頭に、脚本を手がけるジョン・ホッジ、主演のユアン・マクレガーらが再集結し、前作から20年後の新たなる群像劇を繰り広げる。その時点で、続編映画として他に類を見ない“奇跡”であり、リアルタイムで前作に触れたファンなら誰もが興奮と郷愁を同時に噛みしめ、「こんな完ぺきな続編ある?」とうなってしまうはずだ。主人公のレントンが、スパッド、サイモン(=シック・ボーイ)、ベグビーを出し抜き、麻薬取引で得た大金を持ち逃げしてから20年。彼らが故郷スコットランドのエディンバラで再会すれば、きな臭いトラブルが巻き起こるのは時間の問題だ。若かった20年前に比べて、見た目は老けても、中身がまったく成長していないという男の悲しい性(さが)。一方、奔放な女子高生だったダイアンが、いまや敏腕弁護士なのだから、女性は聡明でたくましい。前作で描かれたエピソードや登場人物、さらに実際のシーンが絶妙なポジションに配置され、ノスタルジーを刺激しながら(イギー・ポップの“Lust for Life”が流れる瞬間がシビれる!)、後悔してもしきれない過去/結局は閉塞したまま現在/いまだにお先真っ暗な未来という、中年だからこそ感じてしまう容赦ない時間の残酷さを突きつける本作。20年後を描いた20年ぶりの続編、という重みがあるからこそ成立するドラマ性が最大の武器だ。歳月の経過に思いをはせれば、前作が30週以上にわたりロングラン上映された渋谷のシネマライズが閉館し、“Lust for Life”をプロデュースしたデヴィッド・ボウイ、薬物を注射したレントンが奈落に沈むシーンで流れる“Perfect Day”のルー・リードもこの世を去った。かたや、ボイル監督は『スラムドッグ$ミリオネア』でアカデミー賞を制覇し、ユアンはジェダイ騎士としてライトセーバーを振り回したのだから、人生はわからないものである。(text:Ryo Uchida)■関連作品:T2 トレインスポッティング 2017年4月8日より丸の内ピカデリーほか全国にて公開
2017年04月08日5歳のときにインドで迷子になり、オーストラリアの里親のもとで育った青年が、25年後Google Earthを使って故郷を見つける――。そんな驚きの実話をもとに描かれる映画『LION/ライオン ~25年目のただいま~』。作品の公開に先駆けて、原作本『25年目の「ただいま」5歳で迷子になった僕と家族の物語』の執筆者にしてこの奇跡の主人公でもあるサルー・ブライアリー氏が来日したので、お話を伺ってきました。映画を観れば誰もが、こんなことが起こり得るのかと思うほど、数奇な人生を歩んできたサルー氏。壮絶な体験を経たとは思えないほど穏やかなたたずまいの人物です。「自分がどこから来たか、何者であるかということを知らずに生きる人生はとても辛いものです。かつての僕と同じ不安を抱えている人には、この本、そして映画が世に出ることで、自分にも長いトンネルから抜け出せる手段があるかもしれないと思ってもらえるといいなと感じたんです」。本を執筆した最大の理由について聞くと、こう話してくれた彼。壮絶すぎる過去を語ることは辛い出来事を思い出すこととイコールでもあるはずなのに、惜しみなく経験を共有してくれようとする寛容さに、まずは驚かされました。――あなたが迷子になったときと、いまでは世界を取り巻く状況がずいぶん変わっていますよね。あなたが使ったGoogle EarthやFACEBOOKの進化により、世界は以前より狭くなったようにも感じます。それでも、インドでは年間8万人もの子供たちが行方不明になっている。彼らを救うのは、人なのでしょうか、それともテクノロジーなのでしょうか。「僕が迷子になってから30年近くの時が流れました。テクノロジーは進化し、世界は小さく感じられるようになったかもしれません。子どもたちが路頭に迷い、貧困に苦しんでいる現状もより明らかになり、その事実に関心を抱く人も増えています。きっと、彼らを救うのは、人でもありテクノロジーでもあるのでしょう。誰かを助けたいと思う人の心がまず大切です。それと、どうやったら助けられるかという知恵、そしてその知恵を補う方法が必要となる。もし、Google EarthやFACEBOOKという新しいテクノロジーがなければ、僕だって帰路を見つけられなかった。僕の場合は、帰りたいという希望を持ち続けること、そして希望を実現する手段が意味を持ったんです。テクノロジーの進化は、あのときの僕と同じような境遇の子どもたちを救う可能性を確実に広げていると思いますね」――いま、あなたの人生は?「素晴らしいです!現在は映画や本の宣伝で世界を回っています。自分の過去を日々振り返り、25年間離ればなれだったインドの家族との関係を大切にしながら。25年前に一度閉じられてしまった関係が、4年前にやっと開き始めましたから」――迷子になり警察に保護されて養子となるまで、あなたは5歳の子どもには過酷すぎるサバイバル生活を強いられています。当時のことを、今はどんな風に振り返っているんですか?「あれはどうあっても忘れることのできない種類の経験です。そしてある意味では、とても大切な思い出なんです。心のとても近い場所にあると言うか。インドでの経験は、自分のアイディンティティを探すカギでもあるんです。つらい経験だからといって、あれをなかったものにしようとすれば、自分自身が損なわれてしまうと思っています」――自分が経験してきたことは自分の一部であるとは言っても、あの経験を本に記すことは精神的にとても大変ではなかったですか?「そうですね。もちろん、ひとり列車に閉じ込められてカルカッタにつき、そこで過ごした日々をふり返るのはとてもつらいことでした。でも、その一方で特別な経験でもあったんです。なぜなら、長いこと光を当ててこなかった部分を、オープンにしたわけですから、解放されたような気分でもあったんです。インドの家族と過ごした幼いころの日々を思い返すのも素晴らしい経験でした。すべての物事には、光と影があるものです」――本を書くことと、映画を観ることは、自分の過去をたどるという意味では同じ旅のようでもありますが、感情的には大きな違いがありましたか?「もちろん。映画はすべてがビジュアル化されていて、観ているだけで過去に引き戻されてしまいました。そして、当時の感情が鮮明によみがえってきました。ですから、冒頭からエンディングまで、目を向け続けるのはとてもつらいことでした。でも、こうも思ったんです。これが私の辿ってきた人生という旅なのは紛れもない事実だから、そんな運命を喜んで受け入れようと。なぜこうなったとか、どうして自分がとか、そういうことを考えるのはよそうと。世の中にはこういうことが起きてしまうもので、そこに答えはないんです。そこに意味を見出そうとすると苦しくなる。だから、こう思うようにしたんです。こんなことがあったにもかかわらず、僕はそこから抜け出して元気に生きている。素晴らしい家族がいて、この信じられない物語を語る幸運にも恵まれている。起きてしまった不幸を嘆くのではなく、いま起きている素晴らしいことを讃えようじゃないかってね」――驚くべき経験を経て、人生で最も大切に思うものは?「家族は僕にとっていつだって大事で、最優先されるべきものです。自分が幸せになるために必要な存在です。僕の人生はとてもシンプルなんです」――25年の経験が教えてくれたこととは?「自分の人生を生きたいなら、自分の心を従うということだということを学びました。世界は本当に神秘に満ちていると思います。つまり何が起きるかわからないんです。だから、人に従うのではなく、ほかの人がいいと言ったことをやるのではなく、芝生が青いからそこに行くのではなく、自分自身で判断することが大切だと思っています。自分自身が感じ、考え、夢見て、追及することでしかたどり着けない場所があるから。僕がGoogle Earthを使って故郷を探したときも、それは効果的なやり方じゃないとも言われたけれど、その意見に従っていたら、いまの僕はなかったわけです。これはシンプルなことですが、実行するのは難しいんですよね」――まさにそれが、あなたが辿りついた真理であり、あなたが実践している生き方でもあるんですね。「そうです。死ぬとき、“どんな人生だった、サルー?”と自問したとき、はっきりと自分の世界を築けたと答えられる人生を送りたいと願うばかりです」(text:June Makiguchi)■関連作品:LION/ライオン~25年目のただいま~ 2017年4月7日よりTOHOシネマズ みゆき座ほか全国にて公開(C) Long Way Home Holdings Pty Ltd and Screen Australia
2017年04月07日3月18日に東京国際フォーラムで開催された「トニー賞コンサート in TOKYO」。日本初のトニー賞公認ミュージカルコンサートを謳ったこの催しには、ケリー・オハラ、マシュー・モリソン、井上芳雄、濱田めぐみが出演。日米ミュージカルスター4人が様々なナンバーを披露しました。その素晴らしいコンサートの模様を丸ごとふり返りたいところですが、本コラムは“シネマカフェ的海外ドラマ”。やはりここは、みんな大好き「glee/グリー」のシュー先生ことマシュー・モリソンに注目していきたいと思います。コンサートを2日後に控えた3月16日、まずは4人揃って記者会見を実施。初来日のマシューはすでに奥様共々京都を観光し、日本を楽しんでいる様子でした。日本食も口に合ったようで、会見前にはお弁当を堪能したそう。「ミュージカルに対する僕の情熱を2日後の舞台で皆さんにお届けしたい」と語るマシューはケリーと共に、2人の初共演作「ライト・イン・ザ・ピアッツァ」からの1曲「Say It Somehow」を一足先に披露してくれました。会見の舞台上にもかかわらず瞬時に役と化し、作品の世界観を目の前に広げてくれた2人の美し過ぎる歌声に、本番への期待が高まったのは言うまでもありません!そして当日。結論を先に言ってしまいますと、会場に足を運んだ誰もが、そして生中継を観ていた誰もが素敵な時間を過ごせたのではないでしょうか。自分たちの出演作はもちろん、新旧の名作ミュージカルナンバーを次々と披露する4人にうっとり。共演作「南太平洋」の曲をケリーとマシューがそれぞれ歌えば、井上さんと濱田さんが「ミス・サイゴン」の曲で会場を魅了。ケリーがトニー賞ミュージカル主演女優賞に輝いた「王様と私」、マシューの「ファインディング・ネバーランド」など、近作からの歌曲披露ももちろんあり、舞台の感動がよみがえってくることもしばしばでした。そんな中、軽妙なトークでコンサートの進行役も担う(!)井上さんによると、「『glee/グリー』に出演したことで、自分の舞台を観に来てくれる客層に広がりができた」とマシュー自ら語っていたそう。その感謝の意からか、「glee/グリー」ファン熱狂の瞬間も何度かありました。ドラマの中ではリアーナの「Umbrella」とマッシュアップして歌われていた「Singing in the Rain」、シュー先生がカートのお父さんとフィンのお母さんの結婚パーティーで歌った「Sway」、そして「glee/グリー」と言えばコレ!「Don’t Stop Believin’」も披露。「Don’t Stop Believin’」にはマシューだけでなく、ケリー、井上さん、濱田さんも参加。ピョコピョコと飛び跳ねながらみんなで歌う姿が可愛らしかったです。さらに、アンコールではマシューとケリーによる「Over the Rainbow」も。「glee/グリー」のシーズン1最終話でシュー先生がグリー部のみんなに優しく歌いかけていたのと同じように、この日もマシューがウクレレを弾きながら柔らかな歌声を聴かせてくれました。「トニー賞コンサート in TOKYO」を観てから、何だか無性に「glee/グリー」が観たくなってしまった!という人も多いはず。シュー先生ことマシュー、そしてケリー、井上さん、濱田さん、素敵な夜をありがとうございました!(text:Hikaru Watanabe)
2017年04月05日海外の映画祭を訪れることは難しくても、日本各地で開催されている映画祭は、日帰り~1泊で行くことができますよね。今年の4月は「くまもと復興映画祭 powered by 菊池映画祭」(4/7~9)に行こうと思っています。熊本出身の行定勲監督がディレクターをつとめ、熊本にゆかりのある俳優や著名人を中心に「地方創生版チーム熊本」をかかげて開催している映画祭です。この映画祭に参加するのは3回目です。昨年、映画祭が開催された直後に熊本地震が起きたため、今年はどうなるのか…と心配していましたが、熊本パワーはすごいですね。前回よりも力強い映画祭として開催するのですから、行かないわけにはいかない。震災後、復興のために自分は何ができるのか、どんな応援ができるのか考えました。募金、ボランティア活動、ふるさと納税…いろいろな方法はありますが、その土地を訪れ、その土地の名産を食べ、その土地を観光する──それもひとつです。でも、復興支援だけで行くのではなく、癒される場所、また訪れたくなる場所、そういう想いがベースにあります。もちろん映画祭としても魅力的です。今回のオープニングは行定監督がオール熊本で撮影した『うつくしいひと』の続編『うつくしいひと サバ?』がプレミアム上映されます。場所は熊本城二の丸広場(※荒天時は熊本県立劇場)。地震によって熊本城は大きな被害を受け現在も修復中ですが、二の丸広場や加藤神社は見学でき、その周辺から天守閣を見ることができるそうです(熊本城ホームページ参照)。ちなみにこのプレミアム上映は無料!レッドカーペットもあります。行定監督をはじめ、佐藤健、高良健吾、米村亮太朗、中別府葵、石橋静河、ロイック・ガルニエ、中原丈雄、柴田隆浩(忘れらんねえよ)…豪華ゲストが参加予定です。過去2回この映画祭に参加してみての感想ですが、どの上映にもゲストトークがあり、そこでしか聞けない貴重な話が次から次へと飛び出し、ゲストや大勢の観客と一緒に過ごす時間は本当に楽しいものです。今年の「特集 妻夫木聡」では『ぼくたちの家族』『ジョゼと虎と魚たち』『春の雪』、特別上映は佐藤健主演の『世界から猫が消えたなら』、「高良健吾 企画」では『東京物語』が上映されます。どんな撮影秘話が聞けるのか、いまから楽しみでしかたありません!また、映画祭の楽しみといえば“夜”のイベント。映画の上映に加え、映画人たちがオフレコでエンドレスに語りあう「真夜中の映画祭」は雑誌やテレビ、ネットでは決して聞けないディープな話を聞けるイベント。今年も眠れない3日間となりそうです。そして、映画の合間に熊本の郷土料理をいただくのも楽しみ!あまりの美味しさに感動した馬刺しや馬肉料理、だご汁は必ず食べて帰ってこようと思っています。映画祭の前売りチケットはすでに完売していますが、当日券の発売も決まったようですし、何よりオープニング上映は無料です。しかも熊本はちょうど桜が満開!次の週末は映画を観に、ふらり熊本へ行きませんか。(text:Rie Shintani)(text:Rie Shintani)
2017年04月02日桜やチューリップなどの春の花々が咲き乱れる春。今月は、お花見を楽しむピクニックデートへ出かけよう!横浜で開催されている「第33回全国都市緑化よこはまフェア」(6月4日まで開催)と連動して、みなとみらい一帯で展開されている花と緑あふれる庭園スポットに注目。カップルで春の自然散策を楽しめるスポットをご紹介!今月ピックアップする映画は、3月18日(土)より全国にて公開中のアニメーション映画『ひるね姫~知らないワタシの物語~』だ。“家族のつながり”をテーマにした本作。岡山県倉敷市で父親と2人暮らしをしている森川ココネ(声:高畑充希)。「昼寝」を特技とするココネは、最近、同じ夢ばかり見るようになる。2020年、東京オリンピックの3日前。突然父モモタロー(声:江口洋介)が警察に逮捕され東京に連行される。無口で無愛想、自動車の改造にばかり明け暮れている父親が、悪事を働いたとはどうしても思えないココネは、父親逮捕の謎を自力で解決しようと、幼なじみの大学生・モリオ(声:満島真之介)を連れて東京に向かう決意。その途上、彼女はいつも自分が見ている夢にこそ、事態を解決する鍵があることに気づく。ココネは夢と現実をまたいだ不思議な旅に出る。その大きな冒険の末に見つけた、小さな真実とは…。「攻殻機動隊S.A.C.」シリーズ、「東のエデン」、「精霊の守り人」など人気アニメ作品を手掛けてきた神山健治監督が贈る極上のエンターテイメントを2人で楽しんで。横浜・みなとみらいエリアには、みなとみらい駅近くの横浜ワールドポーターズ内「イオンシネマみなとみらい」と、JR桜木町駅前のTOCみなとみらい内にある「横浜ブルク13」の2つの映画館がある。どちらもデート向きの場所にあるのでおすすめ。映画を観終わったら、みなとみらいエリアのほぼ中央の海側に位置する「横浜赤レンガ倉庫」へ向かおう。4月1日(土)~23日(日)までの間、イベント広場の1400平方メートルのスペースに、里山の風景を切り取ったかのようなナチュラルガーデンが出現!50本の中高木、ラナンキュラスやマーガレット、ラベンダーなど約50種7500株の草花が植栽され、まるで自然の中を散策しているような気分を味わえる春イベント「NAKANIwA(ナカニワ)~FLOWER GARDEN 15th anniversary~」が開かれる。カップルにおすすめの時間帯は18~24時のライトアップ時。幻想的でロマンチックなムードに浸れそう。「NAKANIwA」は4つのゾーンで構成されており、エントランス正面からの眺めはパーゴラ(木製の植物用棚)が額縁になって、美しい庭園が一幅の風景画のよう。ウッドデッキを海側へ進むと、高さ4メートル超の多翼型風車と草花が生い茂るカントリースタイルの庭が登場。風車をバックにした絶好のフォトスポットが用意されているのでカップルで訪れて春デートの記念にしよう。「横浜赤レンガ倉庫内」には、カジュアルダイニング「ビルズ」やライブレストラン「モーション・ブルー・ヨコハマ」、部屋のようにくつろげる和カフェ「チャノマ」、アップルパイ専門店「グラニースミス アップルパイ アンド コーヒー」など、ダイニングレストランやカフェバーも揃っているので、訪れる時間帯によってお店をチョイスを。人気店は事前に席の予約を忘れずに。その他、山下公園、グランモール公園、港の見える丘公園、象の鼻パーク、日本大通りまで、みなとみらいの各スポットでも同様に、花と緑にあふれる演出が展開されている。海風を感じて歩きながら、2人でお気に入りのフラワースポットを探してみるのも楽しそうだ。『ひるね姫~知らないワタシの物語~』は全国にて公開中。(text:Miwa Ogata)■関連作品:ひるね姫~知らないワタシの物語~ 2017年3月18日より全国にて公開(C) 2017 ひるね姫製作委員会
2017年03月30日冬クールが終わりを迎え、「次はどんな作品がやってくるのだろう?」「何を見ようかな~」と楽しみにしている方も多いはず。そこで今日は、ドラマニアな筆者が一足お先におすすめの作品をまとめてご紹介していきましょう。大きく分けると、事件ものVS恋愛ものという構図が見えてきました。さて、あなたはどっち派ですか?■ザ・刑事ものから、謎を解かない探偵まで――幅広いジャンルの“推理劇”に期待大!まずは今回も、王道の刑事ものがズラリ!火曜21時放送「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」では、小栗旬さんと西島秀俊さんが初共演を果たします。アクションシーンに定評のあるお2人が、映画『GO』や「SP」でお馴染みの作家・金城一紀氏とタッグを組むとあって、自ずと迫力ある戦闘シーンに期待が高まりますね~。公安機動捜査隊特捜班を舞台に、国家を揺るがす規格外の事件・巨悪に立ち向かう熱き男たちの背中を追っていきましょう。また豪華キャストと言えば、木曜21時枠に戻ってくるあの名作も忘れてはいけません。天海祐希さん主演「緊急取調室シーズン2」です。取調室という密室の戦場で行われる、銃も武器も持たない生身の人間同士の死闘。脇を固めるチームのメンバーには、田中哲司さん、でんでんさん、大杉漣さん、小日向文世さんと主役級の面々が再集結。犯人が心に抱える闇を、取調室という密室でマル裸にしていきます。そして今クールは「これまでに見たことがない」新感覚な刑事ものもオススメ!日曜21時放送「小さな巨人」では、ひとつひとつの事件を紐解くのではなく、警察官同士の――取り分け、警視庁と所轄の確執を克明に描いていくと言います。実力だけで周りの信頼を積んできた所轄の刑事を長谷川博己さんが。東京大学法学部を卒業したにも関わらず、なぜかノンキャリアと呼ばれる警視庁を選んだ若手警察官を岡田将生さんが演じます。スマートなお2人の化学反応がとても楽しみですね。さらに異例と思われるのが、“月9”30周年記念作品として登場する「貴族探偵」。これまでの常識を根本から覆し、主人公は探偵にも関わらず全く推理をしないという前代未聞の設定にビックリ!相葉雅紀さん演じる主人公は己のことを貴族と名乗り、探偵を趣味にしている謎の青年ということで…事件現場にやたらと顔を出すにも関わらず、謎解きをするのはあくまで彼を取り巻く召使たち。「推理などという雑事は、使用人に任せておけばいいんですよ」と、自分は事件関係者の女性と会話を楽しみ、遊びに興じている貴族役ということで、一体どんな展開になるのでしょうか。全く予想が付かず、ドキドキしますね!■笑いたい派?泣きたい派?選りすぐりの“恋愛指南”ドラマが続々登場一方でもちろん、話題になりそうな恋愛ドラマも数多く放送されます。土曜22時放送、亀梨和也さん主演「ボク、運命の人です。」なんていかがでしょうか。恋愛に失敗する度「そうか。運命の人は別にいるんだ」と自らを奮い立たせてきたみなさん!では、その相手は一体どこにいるのでしょう?本作では、そんな“運命”をなんとあの山下智久さんがキューピットならぬ神役となって、導いてくれるんですって。最悪の出会いから始まる人生最大の恋――日常に潜む小さな偶然を、運命に変える方法とは…?物語にちなみ、スペシャルユニット・亀と山Pが主題歌を奏でる点にも注目ですよ~。等身大ラブストーリーといえば、木曜22時放送「人は見た目が100パーセント」も面白そうですよね。今年注目の女芸人・ブルゾンちえみさんのドラマデビュー作としてもネットを賑わせている本作。主演の桐谷美玲さん、水川あさみさんらが演じるのは、女子力ゼロのリケジョ(=理系女子)。大久保ヒロミさんが手がける同名コミックを原作に、研究に没頭し過ぎて“女子力”や“美”に背を向けた人生を歩んできた現代女性のリアルな心情を描いていきます。まさしく、春にぴったりのラブコメディーと言えるかも!また同じく漫画原作でいうと、ちょっぴり切ない系のこちらもオススメです。火曜22時放送「あなたのことはそれほど」。女性から絶大な人気を誇る漫画家・いくえみ綾さんの作品が初めての連続ドラマ化決定!恋愛、結婚…そして不倫。それぞれがそれぞれのやり方で大切なものを守ろうとする男女のもどかしい姿に人間の狡さや弱さが描かれる大人のいびつなラブストーリーを、波瑠さん×東出昌大さん×仲里依紗さん×鈴木伸之さんが演じます。そして最後はコレ。日曜22時枠「フランケンシュタインの恋」も切なそう…タイトルや代表カットを見るだけで伝わってきますよね(涙)。綾野剛さんが演じるのは、人間に恋をした怪物。彼の、年の差100歳の切ない想いを追っていきます。人間ではない彼が恋を知り友情を知り、愛を知った先にある結末は如何に…?二階堂ふみさん、柳楽優弥さん、柄本明さんら実力派キャストが脇を固めるとあって、見ごたえのある作品になりそうです。以上、いかがでしたか?民放ゴールデンタイムのドラマ、初回放送は4月11日(火)の「CRISIS」。お見逃しなく。(text:Yuki Watanabe)
2017年03月29日お洒落カフェよりも近所の餃子屋のほうが居心地よくなりつつある古山エリーです。こんばんは、今宵もたわごとお付き合いくださいませ。年齢に逆らっても仕方ない、シワやたるみを愛せてこそ大人の女──なんて捨てゼリフが似合うのはフランスの大女優ぐらいで、一般ピープルは何としても阻止したいものです。先日、同い年の美容部員の友人(同じく四十路まっしぐら)とギョーザを食べながら盛り上がったのは、地下鉄の窓ガラスに映った自分の顔のほうれい線とたるみを見てゾッとしたことでした。車内は当たり前ですが上からライトが当たるので、トンネルの暗さによって恐ろしいほどシワが浮き上がって見える!プチホラー体験でした。そして教えてもらったのは、POLAのリンクルショット メディカル セラム。さっそく真似っこして買っちゃいました。効果が現れるのは2~3か月先だそうですが、日本で唯一シワを改善する薬用化粧品ということで、ものすごーく期待しています。年齢と化粧品にかかるお金は比例していく事実を改めて痛感しました(美容手当があったらいいのに)。地下鉄の窓ガラスに映るシワとたるみはプチホラーでしたが、先週末に観たイタリア映画『おとなの事情』はプチなんかじゃ済まされない恐怖が描かれたブラックコメディでした。友人の家に集まった7人の男女の会話がメインのシチュエーションドラマで、その中心となるのが携帯を使ったゲームです。それぞれの携帯やスマートフォンにかかってきた電話はスピーカーにして出る、届いたメッセージは声に出して読み上げる。隠し事がひとつもなければ楽勝のゲームですが、大人たるもの恋人やパートナーにひとつやふたつ秘密はある、だから怖い…。ゲームを始めてしまった7人の携帯とスマホに次から次へと疑わしい電話がかかってくる、メールが届く、どんどん秘密が暴かれていく。なんと恐ろしい!好きな人の携帯をチェックしたい気持ちは分かりますが、そこにあるのは知らなくていいことばかり。だから絶対にチェックしないと思っていました。しかし!この映画を観て、あの結末を観て、知らずにいることは本当に幸せなのか?知ることによって選択できる未来もあるんじゃないか?完全にこの映画の罠にハマってしまいました(なんて単純な女)。そんな心配をする前に、携帯をチェックしたくなる相手をまず探せよっと自分に喝を入れつつ(いったい何度目?)、そういえば映画のなかで美味しそうな料理とワインが食卓に並んでいたなぁと調べてみたら、イタリアのワイン、イエルマンのレッド・エンジェルというワインでした。ENOTECAで買えるようなので、これも真似っこして飲んでみようと思います(もちろんひとり酒)。今宵はここまで、また次回。(text:Elie Furuyama)(Elie Furuyama)■関連作品:おとなの事情 2017年3月18日より新宿シネマカリテほか全国にて順次公開(C) Medusa Film 2015
2017年03月27日幅広いジャンルから作品が顔を揃え、視聴者からも「久しぶりにハマった」「目が離せない、面白い作品が多かった」と高評価が並んだ2017年冬クール。本日は、毎クール全作品を視聴しているドラマニアな筆者が選ぶ“勝手にベスト3”をお届けしていきましょう。名作続出!歴史に残るクールと言えそうです。■第1位:先の読めない展開に“みぞみぞ”深層心理に迫るドラマ「カルテット」今回は文句無しにこの作品が第1位ですね。久しぶりに「来週まで待てない!早く火曜日になれ~」というみぞみぞした感覚を味あわせてくれたドラマ「カルテット」。いままで数多くの連続ドラマを視聴してきましたが、ラブ×ミステリー×コメディーの3要素を、これほど絶妙なバランスで脚本に組み込んだ作品はほかに見たことがありません。そのせいか、ネット上では放送を終える度、やや過剰ともいえる深読み合戦が後を絶たない異例の展開となりました。本作の魅力を具体的に挙げるとするならば、やはり第一に坂元裕二氏の紡ぐ“台詞”の共感性でしょう。それもただ「わかる」「あるある」という一般的なものではなく、「言われてみればそんな気がしてきた」「実は私も常々おなじ考えを持っていた」という深層心理に呼びかけるものが多く、視聴者はみな無意識のうちにカルテットの一員のような気持ちで、物語の食卓に座っている気になってしまうのです。「本当はから揚げにレモンをかけたくない人だっている」「カクレクマノミをニモと呼ぶことに違和感を覚えている人だっているんだ」という日常の一例をフックに、「良かれと思ってしている行動が、もしかしたら人を傷つけているかもしれないよ?」「呼称にばかり縛られていると、ものの本質を見過ごす惨事に繋がってしまうんじゃないかな?」と警鐘を鳴らす遠回しな優しい指南要素が、現代視聴者の心を鷲掴みにしてのではないかと思います。個人的には、吉岡里帆さんが演じた“見た目からはわからないズブズブの悪女”役に何か賞をあげたいです(笑)。目が笑ってないという違和感を出すのには、相当苦労されたんじゃないでしょうかね。また加えて、最後の最後まで期待を裏切らず「パセリ、センキュー」などの流行語を生みだしてくれた「カルテット」。どこを切っても面白い、歴史と記憶に残るドラマと言えるでしょう。■第2位:簡単な人生なんてアリエナイ“努力”二文字が心に沁みる「下剋上受験」続く第2位は「下剋上受験」です。1クールを通して、中学受験だけをこれだけ丁寧に扱う作品は大変珍しい。しかしながら、人生において受験という戦い――それに伴う努力がいかに尾を引いていくのかという等身大でリアルなテーマを、ドキュメンタリータッチで描き切った本作。学びの多い、非常に見応えのあるドラマでしたね!中でもクセになるのが、阿部サダヲさん演じる主人公・桜井信一(最終学歴が中卒であることに悩む父親役)を取り囲む心優しい人々の存在。どんなことがあっても、絶大な信頼関係で彼を応援する家族、そして幼馴染の中卒仲間たち。「学歴なんて関係ない。いまのオレたちだって、十分に幸せじゃないか」と諭すみんなに対し、信一は苦肉の表情で「わかってる。だけど…娘にだけは、もっと広い世界を見せてやりたいんだ」と、秘めてきた心の内を語ります。みんなの期待を一身に背負い、受験を志す桜井親子。しかし、彼らを待ち受けていたのは、“広い世界にいるにも関わらず、悩みを抱えている人々”でした。「頭のイイ奴らはいいよな。最初から高い壁の向こうにいるんだから」心のどこかで自分のことをそう卑下していた信一ですが、娘と二人三脚で挑んだ受験勉強をきっかけに、中学受験経験者であるかつてのクラスメイト、同僚、学校の先生――これまで順風満帆に映っていた彼らもまた、並々ならぬ努力の上に生きる苦労人だということに気がつくのです。敬遠していた相手の気持ちを実感として受け入れることができたとき、人は大きく成長します。本作に登場する全ての人たちが、そうした成長を遂げ、人生をこれまでとは少し違った前向きな角度で捉えることができるようになりました。人生は思い通りにはいかないものだけど、ふり返れば必ず誰か、大切な人がそばにいる…じんわりと温かみが広がる、ハートフルな一作となっていますよ。■第3位:笑えるだけだと思ってない?実はチクリと胸に刺さる「スーパーサラリーマン左江内氏」そして第3位は、声をこぼして大笑いさせてもらったこちらの作品!「スーパーサラリーマン左江内氏」です。「勇者ヨシヒコ」シリーズでお馴染みの福田雄一さんが脚本・演出を手掛けたことでも話題の本作。安定した笑いのセンス!かつ時折見られる真面目な部分の甘辛バランスが最高なんですよね~。会社では万年係長と囁かれ、自宅では鬼嫁に顎であしらわれる毎日――さらにはスーパーマン役を仰せつかりてんてこ舞いの左江内。最終回ではその小さなミスから、幼い子どもを危険に晒してしまうという事態に発展してしまい、「もう無理!スーパーマンの仕事なんて責任を持てない。仕事も家庭も、全ての責任から逃れたい」と日頃の鬱憤を爆発させてしまいます。そこで先代スーパーマンが気を効かせて、彼の全ての責任を奪ってあげるのですが…さて、どうしたことでしょう。何の縛りも無くなった左江内は、それまで味わったことのない空虚を感じるのです。彼のように目先の苦労に心捕らわれ、つい「全て投げ出してしまいたい」と思った経験、あなたにもありませんか?“責任”って、確かにあったらあったで辛いことも多いですが、無ければ無いでつまらないものなのかもしれない…多少の重みがあってこその人生なのかもしれないと、目からウロコが落ちる瞬間がありました。もちろん、左江内スーパーマンの飛行シーンが謎に猫背(もしかしたら、この飛び方の方がリアルなのかも!?)であったり、ムロツヨシさん演じる地元刑事、怪し過ぎる男・佐藤二朗さんのアドリブに出演者が明らかに失笑しているシーンなど、コントのような面白さも多数散りばめられているので、安心してください!ちょっぴりブルーな気持ちになってしまったとき、スッキリ晴れやかな気持ちにさせてくれるおすすめのドラマです。以上、いかがでしたか?次回は4月クールのイチオシ作品をまとめてご紹介致します。お楽しみに~。(text:Yuki Watanabe)
2017年03月23日2017年洋画の主役は、やっぱり大人気のミュージカル?大ヒット中のアニメ?いえいえ、今年は“宇宙版『タイタニック』”と呼ばれる作品や、人気俳優と注目監督が組んだアカデミー賞受賞作、カルト的人気を誇る名作の実写化、そして大ヒットシリーズの最新作まで、実は見逃せないSF映画が目白押し。女子も見逃せないチェックポイントとともに、オススメ作品を紹介する。■『パッセンジャー』3月25日公開:『タイタニック』的極限ラブストーリー!主演を務めるのは、ジェニファー・ローレンスとクリス・プラットという日本でも高い人気を誇る2人。20××年、新たな移住地を目指し、地球を後にした超豪華宇宙船。冬眠装置で120年間眠りながら到着を待つ乗客のうち、エコノミークラスの乗客でエンジニアのジムと、ファーストクラスの乗客で2世作家のオーロラという2人だけが、なぜか90年も早く目覚めてしまう。宇宙船は自動モードで、乗組員たちも眠りについている。果てしない宇宙にたった2人きりの男女が、恋に落ちることは必然!宇宙服を脱ぐことすらもどかしいキスシーンをはじめ、“お互いしかいない”という状況下での恋愛は激しく燃え上がるも、やはりひと筋縄ではいかない。極限状況だからこそ葛藤を抱える、2人の愛の行方には要注目。また、クリス・プラットが、素顔の“気のいい兄ちゃん”とはまるで違う(?)シャイで素朴な二枚目役に徹しているのは、見逃せない。■『ゴースト・イン・ザ・シェル』4月7日公開:名作実写化に豪華キャストが手応え!“SFの金字塔”といわれ、押井守監督による劇場アニメをはじめ多くの派生作品を生み出してきた士郎正宗の「攻殻機動隊」が、満を持してハリウッド実写化。しかも、主人公・草薙素子に当たる少佐役をスカーレット・ヨハンソン、上司の荒巻大輔をビートたけしが演じるなど、キャストも豪華。吹き替え版の声優陣にも、田中敦子や大塚明夫、山寺宏一らが再集結しており、ファンの期待値は上がる一方。先日のスカヨハら来日キャスト陣によるワールドプレミアも、盛り上がりを見せていた本作。原作・アニメファンの人も、「実はよく知らない」という人も、ネオン輝く近未来のアジアを思わせながら、どこか違う空気感を放つ異世界の中で、美しき肢体のスカヨハから繰り出される圧倒的アクションは、見逃せない。■『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』5月12日公開:マーベルの“宇宙”担当!地球で“仲違い”してしまったアイアンマンやキャプテン・アメリカたち「アベンジャーズ」を尻目に、銀河を救う超個性的なヤツらが再集結。とはいえ、永遠の思春期リーダー、スターロードことピーター・クイル、セクシーなツンデレ暗殺者のガモーラ、荒くれ者だがド天然のドラックス、凶暴な毒舌アライグマのロケット、そして身長25cm最終兵“木”ベビー・グルートたちは、「正義なんてくそ食らえ!」とノリ重視であるため、トラブル(と笑い)がいつも絶えない。今回は、アライグマのロケットとベビー・グルートの凸凹コンビが萌えキャラとして注目を集める一方、チーム内で恋愛も!?ガモーラ(ゾーイ・ソルダナ)に秘かに思いを寄せるピーター(クリス・プラット)が、その恋を叶えることができるのかも見逃せない。■『メッセージ』5月19日公開:アカデミー賞8部門ノミネート、音響編集賞受賞!巨大な“ばかうけ”似(?)の宇宙船が、地球に降り立つビジュアルでもおなじみの本作。宇宙からやってきた謎の知的生命体との意志の疎通を任されるのは、娘を亡くした言語学者のルイーズ。彼女は、“彼ら”が触手から水墨のような液体を吐き出して円形を描き、コミュニケーションを図っていることを突き止める。演じるのは、賞レース常連の実力派エイミー・アダムスだ。『プリズナーズ』『ボーダーライン』などを手がけ、リドリー・スコットが再び放つ『ブレードランナー 2049』、さらにデヴィッド・リンチ監督による1984年の名作『砂の惑星』のリブート版も任されたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督がメガホンをとり、映像化不可能といわれた傑作短編を見事に映像化。こうしたSF作品が感動ドラマとして認められ、賞レースで高い評価を得るのは珍しいこと。謎の知的生命体が人類に向けて送るメッセージとは何なのかは、見逃せない。■『エイリアン:コヴェナント』9月公開:巨匠リドリー・スコットが原点回帰“SFの金字塔”と冠される作品の1つ『エイリアン』(’79)で、その名を世界に知らしめたリドリー・スコットが、自ら監督を務める本作も公開が待ち遠しい。シガニー・ウィーバーが演じた闘うヒロインの代名詞、リプリーを彷彿とさせる主人公ダニエルズを、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』のティナ役で世界的に知名度をあげたキャサリン・ウォーターストンが演じる。また、前作となる『プロメテウス』に引き続き、“アンドロイド”役としてマイケル・ファスベンダーが続投していることも見逃せない。■『ブレードランナー 2049』10月27日公開:ハリソン・フォード×ライアン・ゴズリングリドリー・スコットが製作総指揮、『メッセージ』のドゥニ・ヴィルヌーブが監督という最強タッグで、いまも絶大な支持を集める名作の続編を描く。舞台となるのは、オリジナルで描かれた2019年から30年後の2049年。人間とは見分けのつかない人造人間“レプリカント”の暴挙を阻止する捜査官、“ブレードランナー”のリック・デッカードをハリソン・フォードが再演!そして、30年間行方不明となっていたデッカードを探す新人捜査官“K”として、現在『ラ・ラ・ランド』が大ヒット中、いま最もノッている俳優の1人ライアン・ゴズリングが登場。この2人が新旧“ブレードランナー”として師匠と弟子のような関係を見せてくれるのか、見逃せない。■『猿の惑星:大戦記(グレート・ウォー)』秋公開:猿vs人類の大戦争が始まる!?パフォーマンス・キャプチャーなど最新のVFX技術を駆使して、リブートを見事に実現させた『猿の惑星』の最終章も、今秋に公開が控えている。“本物”の猿は1頭も登場していないという驚異の映像とエモーショナルな展開が人々を魅了した『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』、コミュニティを築き始めた猿と、それらを失われた人類たちとの対立が激化する『猿の惑星:新世紀(ライジング)』をへて、今回はついに猿vs人間の大戦が勃発か!? 引き続き主人公シーザーを演じるのは、パフォーマンス・キャプチャーの第一人者アンディ・サーキス。オリジナル作品で描かれた、“砂に埋もれる自由の女神像”の世界がやはり訪れてしまうのか、見逃せない。さらに、2015年に公開され特大ヒットとなった『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の続編で、レイやカイロ・レン、ルーク・スカイウォーカーやレイア姫たちが再び登場する『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』も、12月15日に待ち受けている。宇宙や近未来を舞台に、現在の常識を超えた極限的な事態や、謎に満ちた生命体、アンドロイドとの対峙を通じて描かれるのは、いずれも、とても身近な人生の試練だったり、友愛や相互理解の大切さだったりする。想像あふれる世界にいったん身を委ねることで、改めて“いま”を見つめ直すことができるのが、SFの醍醐味なのだ。(text:cinemacafe.net)■関連作品:パッセンジャー 2017年3月24日より全国にて公開メッセージ 2017年5月19日よりTOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国にて公開ゴースト・イン・ザ・シェル 2017年4月7日より全国にて公開(C) 2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
2017年03月20日先のアメリカ大統領選で、ドナルド・トランプとヒラリー・クリントンの戦いが、色濃く刻んでしまった米社会の“分断”。もともと存在していたものが、選挙をきっかけに露呈したに過ぎないとは思いますが、この映画を観ると、この国が辿ってきた人種にまつわる歴史の一端がよくわかります。映画『ラビング愛という名前のふたり』は、1967年、米国の結婚に関する法律を変えたある夫婦の真実の物語。バージニア州に暮らす勤勉なレンガ職人のリチャードとその妻ミルドレッドは、つつましくも幸せに暮らしていました。ところがある日、逮捕されてしまいます。罪状は、異人種間の結婚。夫は白人、妻は黒人。2人が愛し合い、その末に結ばれたことが罪として告発されたのです。なぜなら1958年当時のバージニアでは、それが理不尽にも認められていなかったから。2人は結婚を認めてくれるワシントンD.C.に赴いて宣誓をしたものの、結婚生活すら故郷で送ることは許されず、罪人となってしまったのです。25年間、一緒に故郷に戻ることを許さないという判決により、家族や友人と離ればなれになってしまう2人。映画では、その2人による静かなる戦いと、1967年にやっと法改正という勝利を勝ち取るまでを描いています。驚くべきは、2人が声高に権利を叫ぶ活動家だったわけではなく、控えめで物静かな一市民だということ。知識も欲もないために、人権を侵害されたり、利用されたりしそうになりながらも、彼らはどんなときでも互いを“愛し抜く”という姿勢だけで、人間として最も基本的な権利のひとつを勝ち取りました。まさに、“Loving”という名にふさわしい2人なのです。控えめで物静かというラビング夫妻の様子はその生活ぶり、特に服装からも見て取れます。メディアのインタビューを受けるときも、記者会見に臨むときも、着飾ったりせず、いつもの自分たちらしさを失いません。それは、簡素だけれど、清潔感に満ちていて誠実な人柄がにじみ出る服装。人間は、どうしても自分をよく見せようと思いがちですが、その姿からは、彼らが望むものが、名声でも周囲からの尊敬でもなく、ただ単に愛する者たちとの穏やかな暮らしであることがよくわかるのです。ラビング夫妻の訴えをきっかけに、1967年6月12日に最高裁判所は、すべての異人種間結婚禁止法が違憲であるとの判決を下しました。いまではこの日が、“Loving Day”という記念日になっているそうですが、夫に先立たれた後も、妻のミルドレッドは英雄視されることを嫌って静かに暮らしていたとか。社会のためでなく、使命感でもなく、ただ愛する人と一緒にいたい、そんな世にも純粋な愛が源だからこそ、戦い抜けたのかもしれませんね。あんなことも、こんなこともある世界ですが、やはり偉大な愛をもってすれば、世の中なんとかなるのではないか、そんな希望を感じさせてくれる作品です。(text:June Makiguchi)■関連作品:マギーズ・プラン-幸せのあとしまつ- 2017年1月21日より全国にて公開(C) 2015 Lily Harding Pictures, LLC All Rights Reserved. (C) on Pack, Hall Monitor Inc.ラビング愛という名前のふたり 2017年3月3日よりTOHOシネマズ、シャンテほか全国にて公開(C) 2016 Big Beach, LLC. All Rights Reserved.
2017年03月11日すっかりご無沙汰しておりました、古山エリーです。先日、有楽町の駅前をフラフラしていたところ、何やらイケメンたちがバラを配っているじゃありませんか!Amazonプライム・ビデオで配信中の恋愛リアリティ番組「バチェラー・ジャパン」のキャンペーンだったのですが、ちゃっかりイケメンからバラをいただいて帰ってきました。やっぱり女性は花をもらうと嬉しいものですね。特に赤いバラは女度を上げてくれるような“気がして”、うっとりした日々を送っております。そんな今宵もたわごとお付き合いくださいませ。今年こそ(何度目の今年ですか?)真剣に婚活をしようとそこそこ活動しているのですが、年齢のせいにはしたくないと思いつつも、四十路を過ぎると諦めがまあ早いこと!この前も、いついつデートしましょう!と日にちを決めたものの、当日になっても連絡が来ず「今日、でしたよね?」と確認のメールをしたところ、どうやら私が彼からのメールに返信をしていなかった(止めていた)ので、デートはナシだと思ったそうです。要は、彼→私→彼→私…というように、彼のなかではメールは交互にやりとりするものであって、自分の送ったメールに返信がないから、その前に決めていたデートの約束もなかったことになっていた模様(もはや他人事…)。何ですか、そのルール?面倒くさッ!心の声にしたがって、ええ、始まりもしないその恋はソッコー打ち切りです。落ち込む以前、ぜんぜん以前、恋の入口にすら立てない私は恋愛末期です…。というわけでここはひとつ、人生は素晴らしいんだ!人生はキラキラ輝いているんだ!生きる喜びを感じたい!と選んだ映画は『素晴らしきかな、人生』。映画を観終わった後、世界がワントーン明るく映るほどステキな映画でした(男を見る目はないけど、映画を見る目はあるんです。何自慢?)。物語は、ある悲しい出来事によって人生を諦めどん底の日々を送っている主人公・ハワード(ウィル・スミス)が、同僚や友人たちのユニークな助けによって悲しみを受け止め、もう一度人生と向きあおうとする物語。何がステキかって、ハワードの前に現れて助言をする3人のキャラクターたちの描き方。舞台はニューヨークの街中、めちゃくちゃリアルな現実世界であるのに、もしかしたら…というファンタジーの描き方がステキすぎました。今回ももちろん“おひとり様”の鑑賞でしたが、こういう映画を好きな人とデートで観たいなぁと、先日のデート諦め事件を反省し、次に活かすべく絶賛婚活中です。もうひとつ。この映画にはドミノが印象的に使われていて、そのドミノにすら「頑張れよ、四十路!」と元気をもらった気がしています。誤って倒してしまっても、途中からであっても、一から何度でもやり直せる──ドミノからそんなメッセージを勝手に受け取りました。何はともあれ、いい映画です。今宵はここまで、また次回。(text:Elie Furuyama)(Elie Furuyama)
2017年03月09日『ムーンライト』の作品賞“逆転”受賞で幕を閉じた今年のアカデミー賞授賞式。ジミー・キンメルの絶好調トークが楽しく、感動の瞬間も満載だった授賞式には、海外ドラマでも活躍する面々が多数出席していました。いくつか例を挙げますと、「殺人を無罪にする方法」のヴィオラ・デイヴィスが『Fences』(原題)で助演女優賞を受賞、「ハウス・オブ・カード 野望の階段」や「Marvel ルーク・ケイジ」のマハーシャラ・アリが『ムーンライト』で助演男優賞を受賞。受賞者以外にも、「Empire成功の代償」のクッキーことタラジ・P・ヘンソンは作品賞候補作『Hidden Figures』(原題)のキャストとして授賞式に参加し、アルベルタ・フェレッティの美しいドレス姿が注目の的に。「プリーチャー」のルース・ネッガは『ラビング 愛という名前のふたり』で主演女優賞にノミネートされており、鮮やかな赤の「ヴァレンティノ(Valentino)」で視線を独り占めしていました。そんな中、視覚効果賞のプレゼンターとして登場し、「エルメネジルド・ゼニア(Ermenegildo Zegna)」のタキシード姿で最旬スターのオーラを放っていたのが「ナイト・オブ・キリング 失われた記憶」のリズ・アーメッド。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の元帝国軍パイロット、ボーディー役も記憶に新しい彼が、同作の共演者フェリシティ・ジョーンズと共にオスカー像を手渡しました。ちなみに、アカデミー賞の前哨戦にあたるゴールデン・グローブ賞では、「ナイト・オブ・キリング 失われた記憶」で彼自身がテレビ部門の男優賞候補となっています。その「ナイト・オブ・キリング 失われた記憶」は、昨年の夏に全米で放送されたHBOのミニシリーズ。『ドラゴン・タトゥーの女』の脚本家スティーヴン・ザイリアンと『チャイルド44森に消えた子供たち』の脚本家リチャード・プライスが製作総指揮&脚本を、ザイリアンと『博士と彼女のセオリー』のジェームズ・マーシュが監督を務めています。また、本作はベン・ウィショー主演の英国ドラマ「Criminal Justice」(原題)のリメイクでもあり、2013年に急逝したジェームズ・ガンドルフィーニが出演するはずだったドラマとしても知られています。物語の始まりは、NYに暮らすパキスタン系の大学生ナズ(アーメッド)が、初対面の女性アンドレアと一夜を共にするところから。しかし、目を覚ました彼の横にはアンドレアの死体があり、ナズは殺人容疑で逮捕されてしまいます。アンドレアを殺したのは誰なのか?ナズは無罪を勝ち取ることができるのか?これらのクエスチョンを掲げ、物語が進んでいく中、同時多発テロ以降から今も続くイスラム移民への偏見、拘置先となる刑務所のシビアな現実、敵とも味方ともなり得る司法制度の罠が浮き彫りになっていきます。じわりじわりとナズを蝕んでいく現実と、それでもどこか侵しがたい純粋さを固持しているようにも見える、そう信じたいと思わせられるナズの空気は、すべてを見透かすような瞳のリズ・アーメッドならでは。真面目で無垢なナズが逮捕され、刑務所に拘置され、目の前の現実に染まらざるを得ない展開にぞっとさせられながらも、一縷の美しさを感じられる作品に仕上がっています。そんなリズ・アーメッドの演技に感激したレナ・ダナムが、自身のドラマ「GIRLS/ガールズ」に出演してもらおうと奮闘したのもいまや有名な話(その結果、めでたく最終シーズンに出演)。今後も、リズ・アーメッドからますます目が離せません!(text:Hikaru Watanabe)
2017年03月08日前代未聞のハプニングで幕を閉じた第89回アカデミー賞から約1週間。ミスが起きた経緯の説明や“真犯人”の特定も済み、騒動はひとまず収束した。わずか“2分半”の間、作品賞に輝いた『ラ・ラ・ランド』だが、絶好のタイミングで封切られた日本で大ヒット中だ。2月24日に全国約260館で公開された『ラ・ラ・ランド』は、前評判の高さやそれに付随するパブリシティの大量露出によって、映画興行ランキングで初登場第1位を獲得(興行通信社発表)。公開7日目の3月2日(木)時点で、早くも興収10億円を突破し、今年封切りの映画で最速の記録を樹立した。長編アニメを中心に、家族連れ向けの映画が増える春休みにおいて、「大人が観たいミュージカル」としてまだまだ数字を伸ばしそうだ。そんな『ラ・ラ・ランド』の追い風になっているのが、例の作品賞読み間違い事件である。授賞式当日~翌日にかけて、普段ならオスカー関連のニュースをさらっと流すだけの報道系番組がこぞって“世紀の珍事”をオンエア。また、作品賞が訂正された後の『ラ・ラ・ランド』チームの“神対応”にも称賛の声があがった。もし、間違えられた作品が『ラ・ラ・ランド』じゃなかったら…。そう考えると、不幸中の幸いだったと言うほかない。(『ハクソー・リッジ』のメル・ギブソン、『Fences』(原題)のデンゼル・ワシントンあたりなら、ブチぎれそう)そして見事、真の作品賞に輝いた『ムーンライト』の注目度も急上昇中だ。日本での上映が約1か月繰り上げられ、公開日は3月31日(金)に決定。公開規模も拡大される。劇中には「あの夜のことを、今でも、ずっと覚えている」というセリフがあり、宣伝コピーに起用されているが、あの授賞式の夜(現地時間)のことは間違いなく、ずっと記憶に残るはず。天国と地獄と揶揄される両作品だが、読み間違い事件の宣伝効果はバツグンだった。(text:Ryo Uchida)■関連作品:ラ・ラ・ランド 2017年2月24日よりTOHOシネマズ みゆき座ほか全国にて公開(C) 2016 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
2017年03月06日アカデミー賞授賞式の生放送で作品賞が謝って発表されてしまったというハプニングは、世界中を駆け巡り今年のアカデミー賞ニュースは受賞者や作品が残した功績についてではなく、授賞式でのとんでもないミステイクに焦点が当たることになってしまった。なぜこのようなミスが起きてしまったのか?とにかく、アカデミー賞というのはいまも昔も仰々しいのが売りである。大統領就任式でも行いような綿密さで計画され実行されている。アカデミー関係者は、候補者からアシスタントに至るまでルールを逸脱すれば相手が誰であれ容赦無くアカデミーの輪から外される。例えば今年はアカデミー録音部門候補者の中に、自分がノミネートされたことを同僚に挨拶したことでアカデミーの自己宣伝禁止法に触れるとされノミネーションを取り消された候補者が出るという事態があった。この厳重体制はアカデミーの投票周りについては尚更である。世界的に有名な会計監査事務所であるPwC(プライスウォーターハウスクーパー社)が、投票管理の一切を任されており受賞者がプレゼンターに読み上げるその瞬間までを管理しているのだが、米国大統領選挙もここまでやってくれればロシアにハッキングされることもないのでは、などと素人考えで思ってしまうほどの厳戒態勢を敷いている。数年前、投票がオンラインになる前は、特定の日にPwCのアカデミー賞担当責任者2人がビバリーヒルズのアカデミー本部にやって来て、投票用紙がアカデミーの会員数分きちんとあるかどうかスタッフたちに1通ずつ数えさせたあと、担当者2人が自ら郵便配達のトラックまで運び、郵便屋さんに責任を託す「投票用紙を送り出す日」という特別な日が設けられていた。いまでもアカデミー会員が記入した(インプットした)投票は、PcW社の厳重な警備下で集計され、受賞者が記載されたカードと賞の部門名の入った特別デザインの封筒は同じものが2通ずつ用意される。1通ずつ別々のブリーフケースに納められ、PcWアカデミー賞担当責任者2人のみが知っているコンビネーションロックが掛けられる。このあと2人は別々の車で別々のルートを通って会場ドルビーシアターへと向かう。万が一責任者のひとりに何かが起きても、受賞結果の入ったブリーフケースが必ず現場に到達するようにである。シアターに着くと2人の責任者はそれぞれがプレゼンターに渡す受賞者カードの入った封筒を持って舞台袖二方に分かれる。これはどちらの舞台袖からプレゼンターが出ることになっても、直前にきちんと封筒を渡せるように、という配慮から。だが今年の授賞式ではこの最新の配慮が裏目に出てしまったようで、予備として責任者の手元に残っていた「主演女優賞」の受賞者カードを、誤ってプレゼンターのウォーレン・ビーティーに渡してしまったようだ。だがウォーレンの手元を写した写真を見ると、彼の持つ封筒にはかなり大きく「主演女優賞」と記されている。実際に受賞者を読み上げるとき、異常に長い間合いを取ったウォーレンは、カードが妙だということに薄々気がついていたに違いない。そのときにひとことステージマネージャーにでも誰にでも合図をしていたらここまで大事になっていなかったのではないか。まあ後悔先に立たずと言ったところである。以前、ナショナル・ジオグラフィック・チャンネルで「Seconds from Disaster」という大事故を検証するシリーズ番組があった。タイトルを訳せば「惨事までの数秒間」というわけだが、大きなアクシデントは様々な要因が絡み合って起きる、というのがその番組の焦点だった。今回のアカデミーの一件は、人命に関わるものではないにせよ「Seconds from Disaster」を思い出させるところがある。アカデミー賞では、長年にわたって受賞者カードの入った封筒をハンドルする会計監査の老舗であるPwC(プライスウォーターハウスクーパー)社の企業信用問題などもあるため、業界内での“封筒取り違え事件”のインパクトはその連鎖反応を考えると、結構大変な出来事と言えるだろう。この記事の執筆真っ最中に、授賞式で「作品賞」を発表した俳優ウォーレン・ビーティーに、間違った封筒を手渡した“犯人”が判明した。アカデミー賞の投票周りを一切仕切っているPwC社からの代表男女2人の内ひとりであるブライアン・カリナン氏がそのひと。「カリナン氏が謝ってプレゼンターのビーティー氏に間違った封筒を手渡してしまった」とPwC社が発表した。おまけにどうやらカリナン氏は、封筒渡しの直前までツイートをやっていたということで、この緊張感に欠ける態度に対してはPwC共々非難の的になるのではないかと見られる。いくらコンピューターで制御しようが、何人護衛を立てようがひとりの人間の気の緩みで全ての努力が水の泡になるという、いい教訓といえよう。(text:明美・トスト/Akemi Tosto)
2017年03月03日親しい誰かが亡くなったとき、泣くのは当たり前。涙が出ないから冷たい人。たぶん多くの人にとって、それが普通の考えでしょう。涙と悲しみはワンセットだと。でも、人間の感情はそれほど単純ではないはず。映画『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』は、車の事故で同乗していた妻を突然に失ったデイヴィスをめぐる物語です。一風変わっているのはこれが、そんな不幸を前にして、悲嘆にくれる男の話ではなく、一滴も涙を流せずにいる男の話だというところ。泣けない自分を分析するうち、デイヴィスは自分が妻を本当に愛していたのかとか、自分はどこか変なのかとか、戸惑いを覚えるのです。涙を見せない彼を心配していた周囲もやがて、訝しがるようになります。そんな彼に義父は「心の修理も車の修理も同じこと。まずは細部まで点検し、組み立てなおせばいい」といいます。それをきっかけに、デイヴィスは周囲にある、あらゆるものを破壊しはじめました。その行動は、人々の目に奇異に映ります。心配し続けてくれた義理の両親も彼の行き過ぎた行動についていけなくなります。義父が与えてくれた恵まれた環境も失うことになった彼は、いったどこへ行くのか。それが本作の核心です。彼の姿を見ていて感じたのは、悲しみの種類はひとつではないということ。同じ悲劇に直面しても、そこから生まれる感情をひとまとめにすることなど、できないのだということです。ならば、悲しみから再生する道筋だって、悲しみの数だけあるはず。彼が辿る再生の旅は、あまりにも常識はずれかもしれません。でも、喪失の痛手がどんな風に表出しようとも決してジャッジすることなく、デイヴィスの心に寄り添っている本作だからこそ、なんとか悼みを乗り越えていく人間の剥き出しの姿がとても切なくあぶりだされていくのです。人間は強い。そして、どんなに不条理に満ちていても、人生には歩み続ける価値があると、ちょっと奇妙なやり方ではありますのが、この作品は優しく教えてくれているのです。妻が突然事故で亡くなったのに、涙を流せない男といえば、昨年公開された邦画『永い言い訳』の主人公もそうでした。同時発生的に生まれたこの2作だけで、こんな夫が多発中などと決めつけることはできませんが、それにしても不思議な偶然。主人公のタイプも、妻との関係性もそれぞれでしたから、二人を関連づけることはできませんが、もしかしたら、本能から遠ざかりすぎた現代社会で生きるうち、人は“実感”というものを抱くことが少々難しくなっていることの表れなのかもしれません。でも、そんな中でも喪失をきっかけに、懸命に自分と向き合おうとする男たち。彼らのように、うまく自分の中にある悲しみを見つけられない人にも(それは自分かもしれないけれど)、優しく寄り添える誰かがそばにいてほしいなと願うばかりです。(text:June Makiguchi)■関連作品:雨の日は会えない、晴れた日は君を想う 2017年2月18日より新宿シネマカリテほか全国にて公開(C) 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation, Demolition Movie, LLC and TSG Entertainment Finance LLC. All Rights Reserved.
2017年03月01日ホワイトデーにお花見に、恋人たちにうってつけのイベントが満載のこの季節。映画デートのプランには、春の訪れを感じさせるスポットを選んでみてはいかが?今回は新宿にフィーチャーし、おすすめの立ち寄りスポットをご紹介!今月の映画は、ライアン・ゴズリングとエマ・ストーンのミュージカル・エンターテインメント『ラ・ラ・ランド』。夢を叶えたい人々が集まる街、ロサンゼルス。映画スタジオの中のカフェで働くミア(エマ・ストーン)は、女優を目指していたが、何度オーディションを受けても落ちてばかり。そんなある日、ミアは場末の店で、セブことセバスチャン(ライアン・ゴズリング)のピアノ演奏に魅せられる。やがて2人は恋に落ち、互いの夢を応援し合うように。しかし、セバスチャンが自分の夢を叶えるためあれに店の資金作りのために加入したバンドが成功したことから、2人の心はすれ違いはじめ…。劇中の歌やダンスだけでなく、ライアンのピアノも、吹き替えなしで披露されているところも本作の見どころ。才能ある男女が恋に落ちる話題のラブストーリーを二人で鑑賞して、恋愛ムードを盛り上げて!新宿では、TOHOシネマズ新宿で本作が鑑賞できる。デートは、新宿駅からスタートして東口エリアを中心にプランしてみてはいかが?待ち合わせは、カフェやファッション雑貨のお店などが集まる新宿駅直結の複合施設「NEWoMan」が便利。3月1日(水)にはお米に焦点をあてたライフスタイルショップ「AKOMEYA TOKYO NEWoMan新宿店」が新たにグランドオープンし、賑やかなオープニングイベントも展開される予定。そのほか、NEWoMan新宿店のみの限定商品やNEWoMan×AKOMEYAによるコラボ限定商品など、厳選されたいろいろなお米、食品、雑貨などのこだわりの商品が展開されていて、見ていて飽きない。ライフコスメティックブランド「ロクシタン」の新宿店で常設展示している体験型デジタルアート「デジタル プロヴァンス シアター」では、2月10日(金)から期間限定で人気フレグランス「チェリーブロッサム」シリーズの誕生10周年を記念した特別演出を展開。「ロクシタンで、夢みるサクラ」をテーマにチェリーブロッサム(サクラ)仕様に一新。360度広がる壁に春のプロファンスの風景が広がり、チェリーの香りが漂う空間で、スペシャルなスイーツ「チェリーショコラ ブリュレコーン」(3月31日まで販売。500円)を二人で楽しもう。ディナーは、2月28日(火)グランドオープンの新しいカジュアルワンバーなどいかが? 「ワインホールグラマー新宿」は、15種全品500円で楽しめる手作りの「本格ピッツア」と世界各国から集めた70種類のカジュアルワインを楽しめるピッツア&ワインの店。定番の「マルゲリータ」から「牛ほほ肉の煮込み&チーズ」「海老×いくら」などの変わり種まで揃う本格ピッツアのほか、牛ステーキや牛ハラミ、BBQバックリブなどの肉料理、アヒージョなど、ワインのおつまみに合う多彩なメニューがラインナップ。賑やかなワインバーで映画の感想を語り合って楽しい時間を過ごして。『ラ・ラ・ランド』はTOHOシネマズ みゆき座ほか全国にて公開中。(text:Miwa Ogata)■関連作品:ラ・ラ・ランド 2017年2月24日よりTOHOシネマズ みゆき座ほか全国にて公開(C) 2016 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
2017年02月28日果たして『ラ・ラ・ランド』は何部門受賞するか?第89回アカデミー賞を前に、持ち上がる話題といえばこの1点だけだった。それだけに同作が作品賞を逃す波乱の結果(というより、前代未聞のハプニング)は映画ファンや業界関係者を大いに驚かせた。ただ、まず言わなければならないのは、大逆転を果たした『ムーンライト』が作品賞の栄冠に値する完成度を誇っているという点。貧困エリアで育った黒人少年の成長を描いた本作は、「自分とは何者なのか?」とアイデンティティを模索する姿が美しい映像と繊細な心理描写で描かれており、テーマそのものが文化や宗教を超えて非常に普遍的。観客によって、感情移入するキャラクターの視点も変わるため、不思議な余韻を味わえる一作だ。6部門を受賞した『ラ・ラ・ランド』、3冠達成の『ムーンライト』に続き、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』が主演男優賞&脚本賞、『ハクソー・リッジ』が編集賞&録音賞でそれぞれ2部門に輝いた。一方、『Fences』(原題)は助演女優賞を獲得するも、大本命と目されていた主演男優賞を逃したデンゼル・ワシントンが、目を真っ赤にし、悔しがる表情が印象に残る。応援していた『メッセージ』は音響編集賞のみの受賞で、少々残念である。後出しジャンケンのようで心苦しいが、冷静に受賞者リストを見返すと、非常にバランスが取れており、大混戦だった昨年以上に今年のノミネーションが多様性に富んでいたとわかる。『ラ・ラ・ランド』の独走を止めたのも、この多様性にほかならず、アカデミー会員が個々の作品の芸術性と革新性に、真摯に向き合った結果なのではないだろうか。さまざまな批判に対し、安易な決着をせず、オスカーなりの“本気”を見せる姿勢に、好感を抱く。司会のジミー・キンメルによる絶妙なトランプいじりのおかげで、セレモニー全体は当初の予想に反して、政治色は弱めだ。授賞式の幕開けは、ジャスティン・ティンバーレイクによる華やかなライブパフォーマンス。さまざまな人種のダンサー、ミュージシャンが客席を一体化させた熱狂は、いまのアメリカの目指すべき方向を示している。ツアー客へのどっきりや、俳優本人に悪口ツイッターを読ませるなど、基本的には楽しい演出が多かった。もちろん、明確な反トランプ発言もあった。例えば、アニメ賞のプレゼンターを務めたメキシコ出身の俳優ガエル・ガルシア・ベルナルは、「メキシコ人として、移民労働者として、そして人間として、国境の壁に反対です」と明言。その直後に、アメリカの長きにわたる繁栄を支える多様性を描いた『ズートピア』が「長編アニメーション映画賞」に輝くと、共同メガホンをとったリッチ・ムーア監督は、「寛容さは、他者への恐怖より力強い」とスピーチした。また、トランプ大統領が署名した7か国の市民入国を一時的に禁止する大統領令に抗議し、外国語映画賞候補になったイラン映画『セールスマン』のアスガル・ファルハーディー監督、主演のタラネ・アリシュスティは授賞式出席を辞退。ファルハーディー監督は『別離』に続き、見事2度目の外国語映画賞に輝いたが、代理として米在住のイラン人女性がオスカー像を受け取り、「偏見を壊すのが映画の役目」と監督からのメッセージを代読した。(text:Ryo Uchida)
2017年02月28日第89回アカデミー賞は前代未聞、空前絶後(笑)のハプニングで幕を閉じた。作品に輝いたのは大本命『ラ・ラ・ランド』ではなく、対抗馬の『ムーンライト』。夢を追う尊さを描いた『ラ・ラ・ランド』にとって、受賞の喜びはまさに“夢の瞬間”でしかなかった。まずは本年度のアカデミー賞をけん引した両雄の受賞結果をまとめておこう。『ムーンライト』は作品賞、脚色賞、助演男優賞(マハーシャラ・アリ)の3部門で栄冠。一方、史上最多タイとなる13部門14ノミネートに挙がっていた『ラ・ラ・ランド』は、監督賞(デイミアン・チャゼル)、主演女優賞(エマ・ストーン)、撮影賞、美術賞、作曲賞、歌曲賞の合計6部門に輝き、本年度の最多部門受賞を果たした。■ブラッド・ピットの制作会社がまた作品賞!受賞発表後、早速話題になっているのが本作を製作した「プランBエンターテインメント」の快挙だ。映画ファンにはおなじみだが、あのブラッド・ピットが所有する映画制作会社で、過去に『ディパーテッド』(マーティン・スコセッシ監督)、『それでも夜は明ける』(スティーヴ・マックイーン監督)がアカデミー賞作品賞に輝く実績を誇っているのだ。「脚本がとんでもなく素晴らしく、構成は特筆すべきエレガントさとシンプルさがあった」と語るのは、共同社長でプロデューサーを務めるジェレミー・クライナー。決して派手な要素はないが、バリー・ジェンキンス監督の独特なビジュアル感覚と、手がけた脚本の繊細な心理描写を見抜き、映画化を実現させた功績は非常に大きい。■“白すぎるオスカー”への反省は?アカデミー賞といえば近年、白人俳優ばかりがノミネートされる“白すぎるオスカー”と批判されており、本年度はその対策にも注目が集まった。結果として、演技賞候補20人のうち、アフリカ系の俳優が6人名前を連ねることになった。そんな流れのなかで、ジェンキンス監督がアフリカ系監督で初の監督賞を受賞し、作品賞は『ラ・ラ・ランド』に…という予想を立てていたが、結果はその逆。先述した『それでも夜は明ける』も作品賞、助演女優賞、脚色賞の3部門と似た受賞結果になっている点を見ると、批判への配慮というよりは、純粋に作品が評価されたと捉えるべきだろう。■若き才能にチャンス与えるハリウッド『ムーンライト』のメガホンをとったジェンキンス監督は現在37歳で、本作は長編2作目。また、史上最年少で監督賞に輝いたチャゼル監督は現在32歳で『ラ・ラ・ランド』が長編3作目である。両監督に共通するのは野心と革新性、そして実験精神だ。彼らの躍進はハリウッドの人材の豊富さに加えて、その才能にチャンスを与える業界の懐の深さを象徴している。一方、本年度はオスカーの常連であるクリント・イーストウッド監督の『ハドソン川の奇跡』、マーティン・スコセッシ監督の『沈黙-サイレンス-』がともに技術系の部門での1ノミネートに留まっており(受賞はせず)、ベテランに厳しい結果になっている。(text:Ryo Uchida)
2017年02月27日