2016年もいよいよ佳境に突入。この冬は、身も心も凍るような怖い愛憎劇が、SNSを中心に大きな話題を集めています。誰しもが一度は抱いたことのある…小さな嫉妬。今クールでは取り分け、女性達のソレが大きな波紋となり、物語を思わぬ方向へと導いていきます。今日は、中でも注目の2作品をピックアップしてご紹介!切なくて痛い“女心あるある”が満載ですよ~。■目を背けることのできない、現実“本当の絆”が試されるドラマ「砂の塔~知りすぎた隣人」「有り得ないとは言い切れない、妙なリアルさが怖い」と、SNSを賑わせている話題のドラマ「砂の塔~知りすぎた隣人」。高層階と低層階の格差、季節イベント毎に起きる幹事問題や不倫疑惑など…都会の高層マンションに暮らすママ友達のマウンティングエピソードの数々は、まさに現代社会における“あるある”と言えるのかも!? 「ママ友社会で上手くいかないと、子どもに友達ができなくなるわよ」物語冒頭で何気なく囁かれたその台詞が、象徴的に響く作品となっています。加えて本作の後半では、上記のような表面化した嫉妬以上に、水面下で着々と蓄積されていた“見えない嫉妬”に潜む罠が描かれていきます。菅野美穂さん演じる主人公・高野亜紀が、唯一頼れる相手だと思っていた隣人・佐々木弓子(松嶋菜々子)。彼女の、女としての嫉妬…そして裏切り――。その小さな綻びが、親愛なる夫そして息子との信頼関係をも揺るがす事態へと繋がっていく様は、見ていて思わず冷たい感覚が背筋を伝うので要注意!普段自分が何気なく発している言動が、もしかしたら、誰かの心を深く傷つけているかもしれない…?物語はまだまだ、二転三転しそうな気配がありますので、あなたも見えない恐怖の連載に巻き込まないよう、心してご覧くださいませ。■ドロッドロ過ぎる“嫉妬心”憎しみで団結する「黒い十人の女」またもうひとつ、深夜枠ながら「まさに2016年不倫ネタの集大成」として注目を集めている作品があります。本日1日(木)最終話を迎えるバカリズムさん脚本ドラマ「黒い十人の女」です。本作は、1961年に市川崑監督が独特の世界観で描いた同名映画のリメイク。船越英一郎さん演じるドラマプロデューサー・風松吉が、妻と9人の愛人――会社の受付嬢から、担当ドラマのスタッフ、出演女優とそのマネージャー、同僚の妻など――と摩訶不思議な恋愛を繰り広げるラブサスペンスとなっています。「砂の塔」と比べるとかなりソフトタッチではありますが(笑)、それでも“女の嫉妬”の怖さを描いている点は同じ。最初は「彼が一番愛しているのは私」「私の方が彼のことをよくわかっている」と、お互いにライバル心むき出しだった愛人達。しかしながら、いざ男から「別れよう」と切り出された途端、女性達は一致団結して風を殺そうと画策し始めるのです。悪いのは9股をかけている男なのだから、彼を消してしまえば全てが解決するはず…。愛憎感情の積み重なりにより、冷静な判断ができなくなっている辺りが、非常にリアルな女心と言えるのではないでしょうか。最終回が一体どんな結末を迎えるのか、とても楽しみですね!さらにこれまでの放送では、嫉妬のあまり、飲んでいたカフェオレを、カルーア・ミルクを、さらには飲み屋で中華丼を頭から掛け合うという女対決が見物でした!バカリズムさんのことですから、きっとラストにその回収が行われるはず(笑)是非、ご注目あれ~。以上、いかがでしたか?いずれの作品も、若干“人間不信”になりそうなテーマですが、あくまでフィクションですのでご安心を。いよいよラストスパートに入る秋ドラマ。最後までとくとお楽しみください。(text:Yuki Watanabe)
2016年12月01日大人になってからよく見るようになったもののなかに、旅、世界遺産、秘境、絶景…などの番組がある。たとえば「世界の車窓から」とか「世界の街道をゆく」「世界遺産」などを見ては、小さな画面を通じてではあるけれど、見たことのない景色や街並みに思いを馳せて、いつか行ってみたいという夢が生まれる。もちろん映画のなかにも“行ってみたい場所”はたくさんあって、どんどん増えていく。最近観た映画でいうと『世界の果てまでヒャッハー!』の舞台Itacaré(イタカレ)もそのひとつだ。フランス映画に登場するバカンス先でぱっと思い浮かぶのは、プロヴァンスとかコート・ダジュールなどの地中海エリア。しかし今回はフランスから大西洋を渡り──ブラジルのイタカレへ!サーフィンの大会が行われるなどサーファーにとっては知られているビーチで、最近は高級リゾート地としても注目されている場所だ。主人公のフランクは恋人のソニアと友人たちと一緒に、彼女の父親が経営しているイタカレのリゾートホテルへ。バカンス中に彼女の父親に挨拶をして、その流れでプロポーズしよう!と計画していた──はずだったのだけれど、なぜかリゾート地の奥にあるジャングルに迷い込んでしまう、アドベンチャーな旅になってしまう。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』的な撮影方法で描かれるストーリー展開や『ハングオーバー!』的なコメディ感が何とも面白い。そんな舞台となった、ジャングルありビーチありリゾートホテルありのイタカレにはどうやって行くのか?羽田空港→(パリorトロントorフランクフルト空港経由)→サンパウロ空港→イリェウス空港→車・船で約1時間半!片道30~50時間かかってしまう遠方だ。でも、世界中からセレブリティたちが訪れるということはそれだけ魅力的だってこと。なかなか長期休暇の取りにくい日本社会ではあるけれど、いつかフランスみたいに2か月近く休みが取れるとしたら、イタカレに行ってみたいなぁと憧れのバカンス先にプラスしたものの、片道30~50時間ってかなり遠い…。(text:Rie Shintani)(text:Rie Shintani)
2016年11月30日世界中に魔法をかけた映画『ハリー・ポッター』シリーズ完結から5年。同じ魔法の世界を舞台に、原作者であるJ.K.ローリング自ら脚本を書きあげた新シリーズが始動した。『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』。ハリポタ新章の幕開けを告げる極上の一作だ。すでにご存じかと思うが、本作について簡単に説明すると、映画の主人公は魔法動物学者のニュート・スキャマンダー。実際に発売もされたホグワーツ魔法魔術学校の指定教科書「幻の動物とその生息地」の編纂者でもある彼が、滞在先のニューヨークで、魔法のトランクに詰め込んでいた魔法動物たちをうっかり逃がしてしまう。折しも現地では、原因不明の地割れや建物の崩壊が続発し、アメリカ合衆国魔法議会に緊張が走っていた…。すでに5部作として製作されることが決定しており、その第1弾となる本作はいわばイントロダクション。それだけに、登場キャラクターや世界観の説明に費やされる時間も短くないが、『ハリポタ』後半の4タイトルも手がけたデヴィッド・イェーツ監督は、格調高い映像美にユーモアを散りばめた見事な演出力を発揮し、映画の前半だけでも数々の名場面を生み出している。魔法動物が次々と登場するトランクの内部シーンが特に素晴らしい。また、アメリカ大統領選がもたらした社会の分断が、奇しくも映画には色濃く描かれている。ニューヨークが舞台になっている分、余計にそんなことを感じさせた。「魔法使いの存在は絶対に知られてはならない」という掟のもと、騒動が発端となり、魔法使いとノー・マジ(普通の人間)が共存する世界は不穏な空気に包まれ、掟に反し「いまこそ魔法使いは表舞台に立つべきだ」と主張する魔法使いが台頭し、魔法界の内部にも亀裂が生じるのだ。スピンオフでも、前日譚でもない。『ハリポタ』シリーズの良さはキープしつつ、新鮮な驚きと感動に満ちあふれた『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』が、決して好調ではなかった2016年の実写洋画を盛り上げる起爆剤になることを期待したい。『ハリポタ』ファンを満足させるのはもちろんだが、いわゆる原作ものではないので、劇場に足を運ぶハードルは高くないはず。オブリビエイト(忘却)できない冒険が、ここから始まる。『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』は11月23日(水・祝)より全国にて公開。(text:Ryo Uchida)
2016年11月19日こんばんは。年末に近づくと街も人も慌ただしくなりますが、その流れに乗れず、地下鉄で「チッ」と言われてしまうトロい女、古山エリーです。今宵もたわごとお付き合いくださいませ。気づけば11月も半ば。ハロウィンが終わった途端にクリスマスツリーやイルミネーションの点灯式、街が輝き出す季節です。美しいものを見ると気持ちも美しくなる(気がする)ので、キラキラの景色を見るのは好きですが、休日はできるだけ人混みに行かないよう引きこもっています。恋人たちの季節というだけあって(誰がつけたの?)カップルだらけですから…。いいんですよ、愛し合っている者同士がいちゃいちゃするのは、いいんです。でも、信号待ちしているだけで、目の前の“決して若くない”カップルが、見つめ合って、頭ポンポンして、おでこをくっつけて…ここあなたたちのお部屋じゃないんですけど?と言いたくなるようないちゃつきをですね、至近距離で見てしまうとですね、けっこうキツい(キモいに近い)んです。まあ、半分というか、ほとんどやっかみですけど。毎年恒例になりつつありますが、この時季のおひとりさまって何処に行っても寂しさを感じてしまうんです。この前も、映画『ティファニーニューヨーク五番街の秘密』を観て、銀座のティファニーに入って心を潤わせようかなぁと思ったら、わかっていたけれどカップルだらけで引き返したり、ご近所に美味しいイタリアンを見つけたので行ってみたら(もちろんひとりで)、どれもこれも夜メニューは2~3人前ばかりで困ったり、ひとり身の寂しさを痛感。いま放送中の石原さとみちゃん主演のドラマ「地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子」のように、我が家の1階がおでん屋さんだったらいいのに…と、温かさを求めています。そんなときは、めっきり寒くなった最近は、お気に入りの一保堂茶舗のほうじ茶で心も体もほっこり。もう、毎日何回お湯を沸かすのっていうくらいお湯を沸かしていますし、お風呂の時間もこの上なくしあわせ。ただ、同じ四十路の友人と話していて「私たちキケンね…」と注意しあったのが、お風呂を沸かしたときの反応です。以前は「ピピピッ♪」という音だけだったんですが、いまのお家は「あと5分でお風呂が沸きます」とか「お風呂が沸きました」と、丁寧なアナウンスが流れる。で、そのたびに「はーい」とか「ありがとう」と機械のアナウンスに返事をしてしまっている。「それってやばいよね?」と友人に話したら、「私も…」ということで、お互い気をつけようねとなったわけです。同じ湯を沸かすにしても、映画『湯を沸かすほどの熱い愛』は、ものすごく素晴らしかったというのに…。こじつけのように映画ネタを入れ込んでしまいましたが、この映画、本当に本当に素晴らしかったです。宮沢りえさんの演じるおかあちゃんの愛が、もう深くって、深いなんて簡単な言葉では足りないくらい深くって。人を愛するってこういうことなんだと、涙が止まりませんでした(嗚咽級の涙)。厳しさの先にある愛であったり、何があっても包み込んでくれる愛であったり、そして最後の最後に用意された愛の形に、そうきますか…と、脱帽、感動。オリジナル脚本という意味でも、先の読めないストーリーに引き込まれました。いやー、素晴らしかったです。温かい涙を流したい方、おすすめです!と、今宵はここまで。また次回。(text:Elie Furuyama)(Elie Furuyama)
2016年11月15日高視聴率で話題のドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」。「私、失敗しないので」の名セリフでもお馴染み、孤高の“天才”フリーランス外科医・大門未知子のほかにも、今クールは“天才”という異名を持つ主人公が多く登場しています。今日は、そんな“天才”主人公達の知られざる葛藤を徹底追跡!一見恵まれた才のように思われがちですが…本当のところ、どうなのでしょうか。物語の裏に秘められた、彼らの苦悩に迫っていきましょう。■才あるがゆえに、警戒される沙羅駆彼が唯一「人間らしさ」を取り戻す瞬間とは?“天才”と聞いてまず先に浮かぶのが、このドラマ!「IQ246~華麗なる事件簿~」です。番組のPRで、主演の織田裕二さんが「IQ246の超遺伝頭脳を持つ人間って、一体どんななのか。演じる上で懸命に考えた」と仰っていましたが、今回の主人公・法門寺沙羅駆は、“天才”の時限がスゴ過ぎて…最早理解の域を超えています(笑)。「あ~、暇だ暇だ。どこかに私が解くに値する事件はないものか」を口癖に、自らが解くに値する美しい事件を求め、日々街を練り歩く沙羅駆。犯人が現場に残した僅かな痕跡(音や香りなど細部に渡り検証)をヒントに見事警察を出し抜き、痛快に事件を解決へと導いていく様が、見ていて非常にスカッとします!まさに、日曜の夜に最適な作品と言えますよね~。しかしながら一方で、その才は世の脅威としても捉えられ、法門寺家は代々国の警護の下、鎌倉から出ることを封じられてきました。生まれ持った知性を「不必要なものである」と制され育ってきた沙羅駆の苦悩。それは、彼が時折見せる…まるで赤子のような表情から見てとることができるでしょう。ザ・凡人の代表として登場する、法門寺家の警護を任された警察官・和藤奏子(土屋太鳳)。彼女は毎話、沙羅駆の単純明快なイタズラに騙され眠らされてしまいます。「どうしてこう、バカなのか…」ため息をつく沙羅駆ですが、彼女の安らかな寝顔を眺める瞬間こそ、彼が唯一人間らしく笑っているような気がしてなりません。迫りくる黒幕の魔の手――“天才”VS“天才”の勝負の行方は、きっとこの人間らしさが鍵になるのではないでしょうか。■“天才”脳神経外科医が見る幻覚の正体周りの期待と比例して、苦悩は高まっていく…同じく、“天才”の葛藤が描かれている作品がもう一つ…「メディカルチーム レディ・ダ・ヴィンチの診断」です。吉田羊さん演じる主人公・橘志帆は、どんな難しい手術も成功させるゴッドハンドの持ち主で、海外でも名高い“天才”脳神経外科医。ある日、オペ中に幻覚を見たことから医師を辞めようと決意するのですが…恩師の説得により、解析診断部の診断医として医療に携わり続けることになります。普段は「手術はしません」の一点張り。飄々と毎日を過ごしていますが、「患者さんを救いたい」という正義感が強く、時に型破りな方法で診断を推し進めることも。ほかの人には決してマネできない“天才”的な技術があるだけに…オペ台に立てないことを、本当は誰よりも悔んでいるだろう志帆の苦悩が、視聴していてとても切なくなりますね。ドラマの後半戦ではいよいよ、志帆が度々目撃している幻覚の正体が明らかに!多くの人の命を救えるはずの才。にも関わらず、彼女がメスを置かなくてはならない衝撃の理由とは?“天才”といえど一人の人間です。周りから期待されればされるほど、幻覚を見る回数が増えてしまう志帆の心の裏側に着目してご覧くださいませ。■“努力”の上にこそ成り立つ三ツ星有無を言わさぬ“天才”の迫力がココにある!そして最後がこちら!「ハマり役だなぁ…」と、しみじみ楽しませて頂いている「Chef~三ツ星の給食~」です。これまでにも同枠にて、刑事やミュージカル女優など幅広い“天才”役をこなしてきた天海祐希さん。完全オリジナル脚本ということで、アドリブなのかわからなくなるノリノリな感じが溜まりませんね(笑)。主人公となるのは、三ツ星レストランの天才女性シェフ・星野光子。男性社会ともいわれる厳しい料理の世界で勝ち抜いてきた彼女は、自分の料理に絶対の自信を持ち、「自分の料理を残す客など世界に存在しない」と思っています。しかしある日、店のオーナーとトラブルを起こしクビになった光子は、オーナーの徹底した邪魔に合い、給食作りという場でしか料理の腕を振るえない状況に。ほかの二作品と違い、「私は“天才”なのよ!文句ある?」という徹底したスタンスの主人公。最初は周りから疎まれていたのですが…面白いのは、彼女がその台詞を言うに値する“努力”を惜しまないという点です。普通なら高飛車な態度についイラッとしてしまいがちなのに、光子は料理に関して一切「手を抜く」ということをしないから、見ていて清々しい気持ちになるんです!生まれ持った才ではなく、“努力”で勝ち取った“天才”。であれば、彼女のように鼻高々になる権利はあるだろうと腑に落ちてしまう三ツ星マジックを、とくとお楽しみあれ~。以上、いかがでしたか?様々な形の“天才”像。是非、お気に入りの一作を見つけてみてくださいね!(text:Yuki Watanabe)
2016年11月14日仕事や勉強に疲れたときにふと思うのは「癒されたい」…旅行やもふもふ動物も良いけれど、テレビの前に座ってドラマに登場する“年下男子”キャラで癒しチャージするのはいかが?今期放送のドラマから、ついつい癒されてしまう“年下男子”をまとめてみた。◆「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」菅田将暉今期のドラマの“年下男子”特集に取り上げないわけにはいかないのは、いま話題作に引っ張りだこの菅田将暉が演じる折原幸人。校閲部に所属する河野悦子(石原さとみ)が一目惚れする彼は23歳の大学生。「是永是之」という名の作家である顔も持っているが、悦子の憧れでもあるファッション編集部に所属する高校時代の後輩・森尾登代子(本田翼)に発掘され、モデルとしても活躍している。悦子のことを“えっちゃん”と呼び、いつも悦子をメロメロにさせている個性派イケメンだ。ひょんなことから幸人は森尾の家に居候させてもらうことになるのだが、そこでも胸キュンシーンは満載。仕事で疲れてしまい、遅い時間に起きた休日にはごはんを作ってくれたり、悩みを聞いて共感してくれたり…ストレスを与えない絶妙な距離感と、ふわふわした空気感が魅力的。一見、だらしなさそうと感じる人もいるかもしれないが、菅田さん演じる幸人は守りたくなる、支えたくなる“年下男子”だ。◆「逃げるは恥だが役に立つ」成田凌
2016年11月14日今年の東京国際映画祭でオープニング上映されたのは、『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』。その主演女優であるメリル・ストリープが記者会見を開き、「スティーブン・フリアーズ監督やヒュー・グラント、サイモン・ヘルバーグはみんな仕事で忙しく、私だけ暇だったので来日できて嬉しいです」とユーモアたっぷりに挨拶していたのは記憶に新しいところ。大女優が口にした「サイモン・ヘルバーグ」の名前に、思わずジ~ンとした海外ドラマファンも多いのではないでしょうか。そこで、今回は“メリル・ストリープとの共演記念”を勝手に掲げ、サイモン・ヘルバーグをご紹介。もう、「サイモン・ヘルバーグって誰?」とは言わせません!ギョロリと大きな目と困り気味の眉がクセになるサイモン・ヘルバーグの代表作は、もちろん「ビッグバン★セオリーギークなボクらの恋愛法則」。2007年にCBSネットワークで始まり、現在も高視聴率を記録し続けている大ヒットドラマで、彼はメインキャストの1人を務めています。ドラマの内容を簡単に説明しますと、「ビッグバン★セオリー」はカリフォルニア工科大学に勤める学者男子たちの物語。頭脳明晰で、SF映画やアメコミをこよなく愛するオタクで、恋愛下手な4人の男子が、アパートの向かいの部屋に住む女優志望のペニーらも交えて不器用な青春模様を繰り広げます。その中でサイモンが演じるのは、応用物理学者のハワード・ウォロウィッツ。他の3人同様とても頭がいいのに、1人だけ博士号を持っていないせいで馬鹿にされがちなハワードは、いわゆるキモいタイプである上に、お母さんと一緒に暮らすマザコンでもあります。ただし、ドラマが始まって早10シーズン。さすがにハワードも大人の男の階段を上るわけで、お似合いの素敵な女の子とちゃっかり巡り合うばかりか、あるときは仕事で宇宙に行ったりも。そんなハワードの成長と変わらない魅力を、サイモンが愛嬌たっぷりに表現しています。作品自体の人気もあり、フォーブス誌が発表する“米ドラマ俳優の高額所得者ランキング”で、年間推定所得2,250万ドルのサイモンは第3位にランクイン。ちなみに、同ランキングの第1、2、4位は、サイモンと共に学者男子を演じる共演仲間たちです。一方、『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』には、ピアニストのコズメ役で登場。実在した音痴の歌姫フローレンス(メリル・ストリープ)を、優しく穏やかな伴奏で支えるキャラクターを演じています。しかも、このコズメは第2の主人公とも言える役どころ。観客の目となって天真爛漫なフローレンスの奮闘を見つめながら、絶妙なユーモアと抜群の存在感を放っています。さらに、コズメのピアノ演奏シーンは、すべてサイモン自身によるもの!「ビッグバン★セオリー」の中でいつも馬鹿にされているせいか(?)、ギャラの高額な有名俳優であることも含めて彼のすごさをついつい忘れてしまいがちですが、実はとても才能豊かなサイモン。メリル・ストリープも、「彼はコミカルな演技も素晴らしいのに、難しいピアノ曲も弾きこなすのよ。まさに天才ね」と絶賛しています。『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』は12月1日に日本公開、「ビッグバン★セオリー」はシーズン10が全米で絶賛放送中。シーズン10は現在も撮影期間中ですから、これで「サイモン・ヘルバーグは仕事で忙しい」の理由がおわかりいただけたことでしょう。大女優も認めるサイモン・ヘルバーグの名を、ぜひ覚えておいてください!(text:Hikaru Watanabe)
2016年11月09日『ダ・ヴィンチ・コード』『天使と悪魔』、そしてシリーズ3作目となる『インフェルノ』――世界遺産や世界的観光名所を舞台に、主人公であるハーバード大学の宗教象徴学者ロバート・ラングドン(トム・ハンクス)が謎を解いていくこのミステリーシリーズは、観たあとに映画をなぞるような、芸術に触れる旅をしたくなります。1作目の『ダ・ヴィンチ・コード』のときは定番ですがパリのルーヴル美術館に行きたくなり、ラングドンが宿泊していたホテル・リッツ・パリに泊まってみたくなり、映画で知ったスコットランドのエジンバラにあるロスリン礼拝堂にも興味が湧きました。2作目の『天使と悪魔』は、サンタ・マリア・デル・ポポロ教会、ナヴォーナ広場、サンタンジェロ城、サン・ピエトロ大聖堂、パンテオン…とにかくローマ観光をしたくなります(※バチカンや教会内部はセットで撮影)。ローマは『天使と悪魔』だけでなく、往年の名作『ローマの休日』をはじめ数多くの作品のロケ地になっているので、ふらっと街を歩くだけで、ここも!あそこも!と映画のワンシーンに出逢える、夢のような街です。3作目となる『インフェルノ』もやっぱり旅心をくすぐる映画でした。全体の70%がロケーション撮影で、そのロケ地は――フィレンツェ、ヴェネツィア、イスタンブール、ブダペスト。今回も魅力的!70%ロケ撮影ということで挙げるとキリがないですが、現地ツアーにどんなものがあるのか調べていて、これは!と参加したくなったのは、フィレンツェにあるヴェッキオ宮殿の館内ガイドツアー。隠し扉や秘密の通路を見学するツアーです。なぜか数日の記憶を失っているラングドンが、自分のポケットに入っていた小さなカプセルに記されたメッセージを解読し、医師のシエナ(フェリシティ・ジョーンズ)と一緒にヴェッキオ宮殿へ。手がかりとなる絵画を探して宮殿の五百人広間にたどり着くシーンがありますが、何者かに追われている2人は隠し扉や秘密の通路、屋根裏を通って追っ手から逃げます。その“雰囲気”を味わえるツアーがあるんですね。次にイタリアに行くときはこのツアーに参加してみたいと思います。現在、ヴェッキオ宮殿のほとんどは博物館として公開され、1872年からは市役所としての役割も果たしているそうです。『インフェルノ』のキーワードは、詩人のダンテ。彼の叙事詩「神曲」の<地獄篇(インフェルノ)>をモチーフにボッティチェリが描いた「地獄の見取り図」が、物語の始まりです。ダンテのデスマスクが展示されているのもヴェッキオ宮殿ですが、撮影はブダペストの民族博物館で行われました。そしてブダペストと言えばドナウ川!ドナウ川沿岸の街並や景観も世界遺産ですから、優雅なドナウ川クルーズもいいなぁと旅の計画は膨らむばかりです。(text:Rie Shintani)(text:Rie Shintani)
2016年11月07日「こちらのイベントの模様はLINE LIVEにて生で配信されています」――。ここ最近、記者会見や舞台挨拶などに足を運んだ際に、現場でたびたび耳にする言葉である。実は、このLINE LIVEを活用した映画プロモーションが、いま急速に活発化している。『シン・ゴジラ』、『君の名は。』など、事前には予想しえなかったメガヒット作品が立て続けに誕生した今年の日本映画界だが、その裏でもLINE LIVEの生配信での盛り上がりに始まり、TwitterなどのSNSでの拡散、そしてトレンドワード入りという、WEB上の“正のスパイラル”とも言うべき新たな潮流が生まれようとしている。LINE LIVEは、LINEユーザーであれば、誰でも使用可能なアプリでスマホなどでの動画の生配信&視聴ができる。動画の生配信という点では「ニコニコ生放送」などの既存のサービスよりも遅れて開始されたサービス。スタート当初は人気アーティストやお笑い芸人のライブや、人気スポーツ選手の試合前の様子やプライベートの模様などを生配信することで、多くの視聴者を獲得していたが、最近では映画のプロモーションでも活用され、大いに注目を集めている。例えば、これまでの怪獣映画の客層とは全く異なる層を掘り起こし、この夏、大ヒットを記録した『シン・ゴジラ』は、このLINE LIVEを効果的に活用。映画の公開を前に『みんなで観よう「新世紀エヴァンゲリオン」』と銘打って、公開日をまたぐスケジュールで7週連続で「新世紀エヴァンゲリオン」全26話を配信し、『ゴジラ』以前に、ネットとの親和性の高い「エヴァ」ファン、そして、庵野秀明ファンを取り込んだ。全7週で視聴者数は470万9,857人(※1週当たり平均約67万人)を数え、9万7,000を超えるコメントを集めたが、注目すべきはその中身。7月29日に映画が公開を迎えたが、7週連続企画の中で、映画が公開された4週目以降、作品に関するポジティブな評価の声が急増した。そして、驚くべきは、公開後のイベント!庵野監督とは大阪芸術大学の同級生である漫画家・島本和彦のTwitterでの発言をきっかけに、上映中の声出しやコスプレOKの「発声可能上映会が開催されたが、このイベントを【ネタバレ注意】謎の『シン・ゴジラ』発声可能上映後を直撃取材と銘打って追いかけ、LINE LIVEを実施した。公開中の映画に関して、ネタバレを前提として広くネットで配信するという試み自体、異例だが、あえて“ネタバレ注意”と入れることで、当然ながら話の内容はよりディープ&高熱量となり、翌日以降のリピート視聴へとつなげていった。またLINE LIVEで生配信されることで、Twitterでの拡散が起こり、トレンドワード入りするという流れが出来上がり、この動きは、別の作品でも実践されていくことになる。今年最大のヒット作となり、公開から9週連続で興行収入ランキングトップを走り続けている『君の名は。』も、新海誠監督の過去の作品を絡めつつ、LINE LIVEを活用し、ネット上での支持を拡大させていった。同作は8月末の公開よりも2か月近くも前の7月7日に一気にTwitter数を増やしたが、この日は同作の完成披露試写会が開催されており、その模様はLINE LIVEで配信されており、舞台挨拶後には新海監督の前作『言の葉の庭』を配信し66万人を超える視聴者と2万ものコメントを集めた。さらに公開後、約2週間の9月10日のタイミングで、大ヒット御礼として新海監督が視聴者からの質問に生で答えるという番組が配信され、視聴者数は80万人、コメントは5万件を越え、視聴者とのエンゲージメントを意味するハート数は1,000万を突破した。『シン・ゴジラ』『君の名は。』の両作に共通する特性と言われているのが、見た後で、誰かと感想を共有したり、語り合いたくなるということ。その意味でネットが最適のメディアであるのはもちろんだが、公開後のタイミングで“ネタバレ”を前提に「みんなで」「生で」見て語り合うという行動が、単なる個々のSNSでの発信以上の熱量を生み出すことになり、拡散、トレンド入りという流れを作ったと言えるだろう。なお、先日、映画化の情報が解禁となった『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』においても、制作発表記者会見の模様がLINE LIVEで生配信され、大いにネットをにぎわせた(※平日水曜日の午後1時台の会見で、視聴者数は約44万、コメント数は約8千)。ちなみに、この実写化の情報は、実際に会見で発表されるまで、報道陣にも完全に伏せられており、つまり、会見場に足を運んだ報道陣とLINE LIVEの視聴者は、全く同時にこの情報を知ったということ。ここまでの例はレアなケースであると言えるが、とはいえ今後も舞台挨拶や会見のLIVE LIVEでの生配信が増加することは間違いない。なお、最近の『何者』、『溺れるナイフ』といった番組では、視聴者の声を受けて、スマホならではの距離感の近い映像を視聴者に届けるという意図で、スマホを横に倒すのではなく、“縦型”での配信を実施。『君の名は。』の三葉の声を演じた上白石萌音は、アーティストとして初のカヴァーアルバム「chouchou」の発売を記念したLINE LIVEを実施し、ほぼ1人で行った番組では生歌を披露すると共に、視聴者とのコメントを通じたコミュニケーションをも行ない、大きな反響を呼んだ。情報を集め、記事やニュースにまとめ発信する、WEBを含めた既存のマスメディアにとって、イベントの頭から終わりまでが無料で生中継されるというのは脅威でもある。一方で、些細なことが“炎上”の火種となりうるこのネット時代、全ての発言が、編集されることなく、生で配信されてしまうというのは、参加する俳優陣、アーティストにとっても一定のリスクを背負うことになりそうだが…。いずれにせよ、口コミがヒットの卵である現代において、LINE LIVEが新たな潮流を作りつつあり、今後も注目を集めそうだ。(text:Naoki Kurozu)
2016年11月06日どんな決断であれ、それがポジティブな意志の表れであれば、自分と意見が違っていたとしても支持したいなと常に思っています。それが、誰もが笑顔になれるものであれば喜んで…というところですが、いつもそうとは限らないかもしれません。例えば、尊厳死というように。映画『92歳のパリジェンヌ』は、老いゆく自分の将来をどう締めくくるかを自らの意志で決め、実行していく女性マドレーヌの物語。「2か月後の10月17日に私は逝くことにしました」。家族の前でそう宣言し、動揺したり、怒ったり、泣いたりする娘や息子に、理解を求めるのです。マドレーヌのモデルとなっているのは、フランスの元首相リオネル・ジョスパンの母親ミレイユ。劇中、母を説得し翻意させようとする家族たちの中で、母の意志の強さに心動かされ、その決断を尊重し、手を差し伸べ、遺された時間を共に過ごす娘が登場しますが、実在のミレイユにも良き理解者である娘がいました。それが、映画の原作となった小説「最期の教え」(青土社刊)を、自らの体験を元に執筆したノエル・シャトレ。「愛する人を失うと誰もが何かしらの後悔をする。でも愛する人と過ごすことによって、愛する人を受け入れることによって、後悔しないようになることに気付いた。この映画を観てくれる人に、後悔しないように生きようと伝えたかったの」と話しています。死にまつわる決断を受け入れるということは、近しい人間ほど難しいはず。ミレイユが助産婦として活躍し、86歳でアフリカまで出産の手助けに訪れるほど生命力に溢れ、かつては「女性の産む権利、産まない権利」のために活動していたことを考えると、彼女が賢く、慈愛に満ちた強い心の持ち主だということがわかります。そんな生き様を見ていればこそ、娘は母の決断が熟慮された末に最期まで自分らしく美しく生きるためのものなのだと理解できたのかもしれません。ミレイユの決断が、決して不幸ゆえのことではないことは、本作が驚くほど笑いと輝きに満ちたものであることからもよくわかります。だからこそ娘は、愛するということが互いを尊重し慈しみ合い、その人の考えやその人の決断も受け入れることなのだということにも気づけたのでしょう。“パリジェンヌ”という言葉から、“おしゃれなパリの女性”を連想する方も多いと思います。でも、タイトルに使われた理由はそれだけではないはず。パリジェンヌたちは、スタイリッシュなファッションやライフスタイルを象徴する人々ですが、その根底には自分らしさを貫く意志の強さが感じられます。時代や流行に、意味もなく流されず、選び取るモノ、コトは、彼女たちの人生経験や価値観の表出。だから人生で最も大きなこの決断は、その人そのもの。ならば、それがポジティブな姿勢から生まれた場合に限ると強調させていただきつつ、受け止めるのも愛なのかもしれないと思うのです。価値観はひとつではないだけに、マドレーヌの選択や家族の態度に対して抱く感想は人それぞれでしょう。難しい議題だけに正解などあるはずもなく、自分なりの答えも見つかりませんが、自分が何らかの理由で難しい決断を下したとき、寄り添ってくれる理解者がいてくれたら嬉しいということだけは、誰にとっても同じと言えるのかもしれません。(text:June Makiguchi)
2016年11月03日映画にせよ、海外ドラマにせよ、素晴らしい作品に出会ったときの幸福感は何物にも代えがたいもの。この瞬間があるからこそ、私たちは新作を観続ける…とも言えます。そんな中、2016年で最も幸せな瞬間をもたらしてくれた作品に出会ってしまいました!『クィーン』の脚本家ピーター・モーガンと『リトル・ダンサー』のスティーヴン・ダルドリー監督によるNetflixオリジナルドラマ「ザ・クラウン」が、その作品です。実はシネマカフェ内で「ザ・クラウン」の特集されているため、このコラムで取り上げるまでもないのですが、それでもあえて語らずにはいられない!そう思わせてくれたのが、「ザ・クラウン」です。改めて紹介しますと、主人公は現在のイギリス女王エリザベス2世。長きにわたって絶大な影響力を持つエリザベス女王がまだ英国君主になる前、エジンバラ公フィリップと結婚するところから物語が始まります。一言で言えば“イギリス王室を描いたロイヤルドラマ”ですが、単なる伝記ドラマでもなければ、フィクションが過ぎる興味本位の内容でもなし。イギリスの顔として生きることを余儀なくされながら、娘として、姉として、妻として、母として人生の悲喜こもごもを味わっていくエリザベスの姿が、ドラマティックかつ静謐なタッチで綴られていきます。製作総指揮を務めるほか、第1~2話の監督を務めて作品世界を導いているのはスティーヴン・ダルドリーですが、彼の映画もしくは舞台の1本分がまるまる詰まっているかのような、密度の濃いシリーズ冒頭。「愛の記憶はさえずりとともに」のフィリップ・マーティンや『キンキー・ブーツ』のジュリアン・ジャロルドらに演出のバトンが渡っても、作品世界が損なわれることはありません。監督の1人であるジュリアン・ジャロルドは今年公開された『ロイヤル・ナイト英国王女の秘密の外出』も手掛けていますが、あちらの作品では女王になる前のエリザベス王女と妹のマーガレット王女がお忍びでロンドンの街へ。「ザ・クラウン」でも、エリザベスとマーガレットの姉妹関係が描かれます。女王の立場を真摯に受け止め、優等生であろうとするエリザベスと、自由奔放さがチャーミングなマーガレット。姉として、妹として、また女王として、女王ではない者として、2人が抱く複雑な心情は、マーガレットの“禁断の恋”を巡って浮き彫りになっていきます。さらに、エリザベスと夫フィリップの関係にも物語は切り込んでいて、妻を支える道を選びながらも空虚さを覚え始めるフィリップと、妻であると同時に女王でなくてはならないエリザベスの夫婦生活も気になるところ。夫フィリップを演じているのは「ドクター・フー」のマット・スミスですが、髪をブロンドにした長身の彼は、エリザベスが結婚を強く望んだのも頷けるほど素敵。優しく、笑わせてくれる夫ではあるものの、やや拗ねがちで危ういところもあるフィリップに対し、妻エリザベスは何を思うのか…。エリザベス役のクレア・フォイとマット・スミスの組み合わせも非常に魅力的で、2人がたどる道にドキドキさせられてしまいます。また、クレア・フォイとマット・スミスに限らず、キャスト陣の素晴らしさも作品を語る上では欠かせません。英国首相チャーチル役のジョン・リスゴー、マーガレット役のヴァネッサ・カービーら、できれば全員の名前を挙げて絶賛したいところ。作品クオリティの高さはもはや当たり前となって久しいドラマ界ではありますが、「ザ・クラウン」はまさに事件レベルのハイクオリティ。シーズン1全10話をぜひ堪能してみてください。(text:Hikaru Watanabe)
2016年11月01日何ともインチキくさい男。それが、映画『永い言い訳』の主人公、衣笠幸夫の印象でした。外見はなかなかカッコイイ人気作家。メディアにも登場しているので、髪形も服装も自分に似合ったスタイルを選んでいるのだけれど、冒頭から妻・夏子に話をする様子はどこか湿気を含んでくどく、内容は自分のことばかりでかなり自意識過剰。自己愛が強すぎて、妻を突然のバス事故で失っても、涙ひとつ流せない男です。一緒に亡くなった妻の親友・大宮ゆきの家族や、ほかの遺族たちのように、心からの怒りや悲しみを感じることができずにいる自分にやや戸惑いも覚えているのです。しかも、文章を仕事にしているにもかかわらず、発する言葉がことごとく軽い。演じる本木雅弘は、そこそこ素敵なのに薄っぺらさがにじみ出るダメ男を実に見事に表現していて、「自己愛が強くて、主張ばかりえらそうな、こういう人っているよね」というところを上手くついています。そんな彼が、ゆきの遺族と交流を始めることから徐々に変化していきます。熊のようないかつい風貌なのに中身はピュア、感情を隠さないおそろしく優しいゆきの夫、かしこすぎて本音を親に言えない長男、そして何にも物おじしない幼い妹。ひょんなことから、幸夫はこの大宮家の2人の子どもの面倒を見ることになり、これまでの薄っぺらい自分では子どもには通用しないことを悟っていくのです。さらに、子ともたちと打ち解けるにしたがい、慕われ頼りにされる喜びを手に入れ、大宮家と過ごすことに生き甲斐を感じ始めます。大宮一家と幸夫は、まるで失ったものを補い合うかのように、疑似家族さながらに日々を共に過ごしていくわけです。その過程で彼に生じた変化と言えば、自己中心だった男が、いつしか献身的に3人の世話をし、料理を作ったり、進学の相談に乗ったりするように。そんな彼には外見の変化も現れます。髪は長く伸び、服装は以前よりカジュアルでリラックスした雰囲気に。肩の力は抜け、表情は活き活きとしてくるのです。これは、庇護する対象を見つけ、自己だけに向けられていた愛情が外にも向けられるようになったことから来る変化なのかもしれません。感情のバランスが取れて来たとでも言いましょうか。話は変わりますが、以前、ファッション業界で活躍する素敵な女性たちと話をしていたときのこと。どんな男性がタイプかという話題になると、彼女たちは口を揃えて、「決めすぎていない人」と言ったのです。実は、出版業界でファッション誌を担当する美しき女性たちからも、同じことを聞きました。キメキメの人は、必要以上に自己愛が強そうで、パートナーには向かないかも、ということで。かく言う筆者も激しく賛同。もちろん、とびきりおしゃれでも人間的に素敵だってたくさんいることでしょう。でも、おしゃれな男性が多い業界で働く彼女たちがあえてそう言うのは、偽物のいい男も多いということ。薄い土台の上にいくら装飾を施したとしても本体の薄さは隠せないし、それどころかむしろ目立ってしまうということを経験から知っているのかも。それが、あえて「おしゃれすぎる男はいや」という言葉となって出てきたというわけです。さらに彼女たちは、「Tシャツとデニムで、素敵にみえる人がいい」ときっぱり。実は、いい男っぷりを滲みだせるこちらの方がハードルは高かったりするのです。外見を気にしすぎる男性と出会ったとき、もしそこに中身が伴っていない場合、「外見よりも気にすべきことがあるだろう!」と、強く突っ込みたくなる女性は少なくないわけです。これは、女性にも言えること。外見を気にしないのは社会人として問題ですが、要するに大事なのはバランスなのでしょう。以前の幸夫はバランスが著しく崩れた男で、“人から自分はどう見えるか”が最も大切という印象でした。そんな彼が、自分以外に大切にしたい存在と出会い、誰かと生きることを意識していく過程がとても丁寧に描かれているのが本作。彼がそれに気づいたとき、さらに超えるべき壁も出現し、そこでまだまだ処理しきれなかった肥大化した自己愛が顔を出すのですが、大切な誰かを見つけると言うことは、その誰かの選択やそこから生まれる変化をも受け入れることだと気づく様子は、切なくも美しい。そして、誰かを大切にしたいという気持ちは決して誰にも奪うことができない宝物だと気づいたとき、妻への思いを噛みしめることができ、彼は本当の意味でのいい男になれるのです。これは、亡き妻が生きた人生が、遺された夫を救う物語。ラブストーリーでもあり、男の成長物語でもある。最後に見せる幸夫の表情がとても素敵な作品です。(text:June Makiguchi)
2016年10月25日出張でもない、家族や友人たちとの賑やかな旅行でもない、ただゆっくり過ごす旅に出るとしたら、何を持って行くのか、何を持っていきたいか──を考えるのが好きだ。現実的には、日本でも海外でもスマホやタブレットは必須、スマホさえあれば旅はどうにでもなる気がする。けれど、旅に出たいなぁと思うときはゆっくりしたいときであって、できることならスマホやタブレットは使わないにこしたことはない。旅の供は本がいい。いつか「読みたい」と思っている本はたくさんあっても、そのためだけの時間を作ることはなかなか難しかったりする。だからこそ旅にはそういう本を持っていきたい。旅に持っていきたい本リストに新たに加わったのが、映画『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』の原作「名編集者パーキンズ」だ。映画は、コリン・ファース、ジュード・ロウ、ニコール・キッドマン、ローラ・リニー、ドミニク・ウェスト…豪華なキャストはもちろん魅力的で、世界的ベストセラーはどうやって作られたのか、という内容も興味深かった。少し前に公開された『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』は、『ローマの休日』をはじめ有名な映画脚本がどうやって生まれたのか、名脚本家ダルトン・トランボについての物語でそれはそれで面白かったが、今回の映画は名作家と名編集者の物語──。編集者のパーキンズと作家トマス・ウルフ、2人の出会いに始まり、ベストセラー「天使よ故郷を見よ」「時と川の」がどうやって世に送り出されたのかが描かれる。現代のようにパソコンやコピー機のない時代に膨大な原稿を推敲していく作業はどんなに大変だっただろう…とか、本の背景に隠された歴史を目にすることも面白かったし、2人の絆が深まっていく姿も感動的だった。また、個人的に大好きな映画『華麗なるギャツビー』(F・スコット・フィッツジェラルド著)の原作を世に送り出した人物がパーキンズであることを知ったことも大きな収穫。映画のなかにはフィッツジェラルドやヘミングウェイも登場し、彼らとパーキンズの関係も描かれる。この映画は作家と編集者の物語ではあるが、そこには情熱を持って仕事と向きあうことはどういうことなのか、何かを犠牲にする覚悟や大切な人との向き合い方など、大人に必要な人生のヒントも詰まっている。とはいってもやはり物語としては地味…だろう。けれど1冊の本の背景にあるドラマチックな物語を知っていると知っていないとでは、1冊を読み終えたときの感動は全然違うはず。1泊でもいい、小さな旅でもいい、次の旅にはこの映画の原作「名編集者パーキンズ」、そしてトマス・ウルフの著「天使よ故郷を見よ」「時と川の」も連れていきたい。(text:Rie Shintani)(text:Rie Shintani)
2016年10月18日現地時間の9月18日に開催された、テレビ界最大の祭典とも言えるエミー賞授賞式。前回に続き、授賞式の素敵モーメントをふり返りつつ、オススメドラマを紹介していきます。授賞式中、最も存在感を放っていた作品の1つが、リミテッドシリーズ部門作品賞に輝いた「アメリカン・クライム・ストーリー/O・J・シンプソン事件」。このドラマはタイトル通り、1994年のO・J・シンプソン事件を題材にしたもの。アメフトの元スター選手O・J・シンプソンが元妻とその友人を殺害した罪に問われ、全米が注目する“世紀の裁判”が展開していきます。「アメリカン・クライム・ストーリー」自体はシーズンごとに異なる事件を取り上げるアンソロジーとなっており、その第1弾にあたるのが「O・J・シンプソン事件」。製作総指揮は「glee/グリー」のライアン・マーフィーです。作品賞以外にも、裁判で思わぬ苦戦を強いられる検察官マーシャ・クラーク役のサラ・ポールソンが主演女優賞、弁護団の代表となる敏腕弁護士ジョニー・コクラン役のコートニー・B・ヴァンスが主演男優賞、マーシャと共に裁判を担当する検察官クリス・ダーデン役のスターリング・K・ブラウンが助演男優賞を受賞。業界内の人気も非常に高いようで、三者の受賞ではそれぞれスタンディング・オベーションが起きました。そんな中、「アーミー・ワイフ」などでも知られるスターリング・K・ブラウンは受賞スピーチで、ジェイ・Zが妻ビヨンセのことを歌った「Public Service Announcement」の歌詞を引用しながら愛妻に感謝。それに続けと言わんばかりにコートニー・B・ヴァンスも同歌詞をもじって妻アンジェラ・バセットに感謝。さらには、「SHERLOCK/シャーロック忌まわしき花嫁」でテレビムービー部門作品賞を受賞したスティーヴン・モファットや「Last Week Tonight with John Oliver」でバラエティトーク部門を制したジョン・オリバーも同歌詞を引き合いに出したり、引用してみようとしたりする…という楽しい現象が起きました。受賞スピーチにおけるちょっとしたブームを作ってしまったことからも、「アメリカン・クライム・ストーリー/O・J・シンプソン事件」の勢いが感じられます。そして、最後にやはりドラマシリーズ部門作品賞の瞬間を上げないわけにはいきません。「ゲーム・オブ・スローンズ」の2年連続受賞は、授賞式の最後を飾るのに相応しい結果でした。新たなシーズンを迎えるたびに“シリーズ史上最高のシーズン”を生み出している「ゲーム・オブ・スローンズ」ですから、昨年の受賞に続き今年も受賞するのは必然。…と言いたいところですが、不遇の時期が長かったため油断はできませんでしたよね。ただし、過去の「マッドメン」や「モダン・ファミリー」のように、一度受賞できたらその後延々と受賞できてしまうのもエミー賞の傾向の1つ。「ゲーム・オブ・スローンズ」も残すところあと2シーズン、最終章までの連続受賞もあり得る?かもしれません。また、監督賞と脚本賞にも輝いた「ゲーム・オブ・スローンズ」ですが、どちらも対象になったエピソードは第9話「Battle of the Bastards」。ウェスタロス大陸北部奪還の重要な戦いが繰り広げられる第9話は、アクション史劇の映画1本をまるまる観ているかのような迫力!受賞も納得の傑作エピソードとして、ドラマ史に残っていくと思います。(text:Hikaru Watanabe)
2016年10月15日最近、国内出張が続いたこともあって、いかに身軽に動けるのか試行錯誤しています(プライベートは独り身なので“超”身軽ですが…)。日帰りは問題なくても女子たる者、泊まりとなるとあれこれ持っていくモノが多く、自然と鞄は大きくなってしまうものです。出張のときは少し小さめのキャリーバッグを使っていますが、一泊だと大きすぎるのでボストンバッグを探し中。でも、なかなか自分が求めているものに巡り逢わず、探しに行っては運命を感じてしまう別のモノと出会ってしまい、予定外の出費のくり返し。恋愛においてもそんなふうに運命的な出会いがないかなーなんて、相変わらず夢見る(イタすぎる)四十路、古山エリーです。今宵もたわごとおつき合いくださいませ。ボストンバックはまだ探し中ですが、荷物を少し軽くする方法は見つけました。ライターという職業柄、荷物のなかで一番重たいのがパソコンです。なんとかならないかなーと思いついたがのが、以前使っていたことのあるデジタルメモ「pomera」。サイズも重さもパソコンの半分以下で原稿を書くだけならこれで十分!pomera復活です。ネットは繋がらないですが、書いた原稿はQRコードを使ってスマホで読み込んでメール送信できるので、1~2泊の出張はこのスタイルでいけます。身軽な出張について調べていると、きまって旅についての記事が目に止まり(ブライダルの記事は“もちろん”スッ飛ばします!)、旅行に行きたいなぁ、行くなら何処にしようかなぁ…と、旅の計画が始まってしまうことも。そんなときに『白い帽子の女』を観てしまったので、映画の舞台になっている南フランスのマルタ島に行きたくて仕方なくなっています(行くとしたら、まあ当然ひとり旅でしょうけれど…)。マルタ島への興味が膨らんでいるだけでなく、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリー・ピットの演じる夫婦を通して男と女についても考えました(一体、どれだけ考えるの?)。結婚生活は経験していないので妄想止まりですが…(その妄想がコワイんだって!)。この映画はアンジーが監督・脚本・製作・出演。夫であるブラピは主演・製作。『Mr.& Mrs.スミス』以来10年ぶりの共演ということもあり、公私ともに支え合っている理想の夫婦だなぁ~なんてうっとりしていた矢先、なんと!離婚発表のニュースが飛び込んできた。もうびっくりでした。映画と彼らのプライベートは別モノではありますが、どんなに愛していても伝わらないこともあって、すれ違うこともあって、変わらない愛もあれば変わってしまう愛もあるのだと、なんだか映画と彼らのプライベートがごちゃまぜに…。ある意味、忘れられない1本になりました。物語は、とある理由で結婚生活がうまく行かなくなった小説家のローランドとその妻のヴァネッサがマルタ島を訪れ、そこで隣に宿泊している新婚夫婦と知り合い、気持ちが変化していく過程を丁寧に描いたラブストーリーです。観る人によってはローランドのことを勝手な男だと思うかもしれない、ヴァネッサの言動に苛つくかもしれない。でも、そういう人間くささを美しいマルタ島を舞台に映し出していることに、何故かとても惹かれたのです。愛について考えたいと思っている方、おすすめです。今宵はこの辺で。また次回。(text:Elie Furuyama)(Elie Furuyama)
2016年10月07日今年も、海外ドラマファンならずとも気になるテレビ界最大の祭典、エミー賞授賞式が開催されました。受賞予想をしながら結果の答え合わせをするのも楽しみ方の1つですが、数々のノミネート作品の中から気になるものをチェックするのも楽しいところ。そこで、今回は授賞式の素敵モーメントをふり返りつつ、オススメドラマを紹介していきます。まずは、スザンネ・ビアがリミテッドシリーズ/TVムービー部門の監督賞を受賞した「ナイト・マネジャー」。このときのプレゼンターは何と「ナイト・マネジャー」の主演俳優トム・ヒドルストンで、受賞結果を開封した瞬間、思わず「フフッ」と笑みを漏らしてしまったトム・ヒドルストンが猛烈にカッコよかったですね。壇上に駆け上がってきたスザンネ・ビアと目いっぱいハグし合う姿も感動的でした。その「ナイト・マネジャー」はジョン・ル・カレのスパイ小説をドラマ化したもの。トム扮する主人公ジョナサン・パインがある復讐心を胸に、悪名高い武器ディーラー、リチャード・ローパーのもとに潜入します。主演男優賞候補のトムと助演男優賞候補のローパー役ヒュー・ローリーは共に受賞を逃しましたが、2人の息詰まる攻防はドラマ最大の見どころ。深遠なテーマをドラマティックに紡ぐスザンネ・ビアらしい作品にもなっています。ちなみに、ヒュー・ローリーは「Dr.HOUSE」時代も6度ノミネートされていますが未だ無冠。そろそろ、名優の功績をきっちり称えてほしい気もします。名優の功績をきっちり称えてほしい一方、前途有望な若手を評価してほしい気持ちも芽生えるのがエミー賞。その点、今年は大満足の結果もありました。ドラマシリーズ部門の主演男女優賞で、「MR.ROBOT/ミスター・ロボット」のラミ・マレックと「オーファン・ブラック暴走遺伝子」のタチアナ・マズラニーがそれぞれ初受賞。どちらかと言えば、若手や新作ドラマなどフレッシュなものをいち早く評価するのはゴールデン・グローブ賞の印象ですが、ラミもタチアナも先にエミー賞ウィナーになったのは嬉しいサプライズ。2人とも、予期せぬ受賞を素直に驚いている姿が印象的でした。「MR.ROBOT/ミスター・ロボット」は、サイバーセキュリティ会社で働く天才プログラマーのエリオットが、謎めいたハッカー集団の大企業壊滅計画に加わるサスペンスドラマ。現在はシーズン2までの全米放送が終わったばかりで、シーズン3にも期待が高まります。一方、「オーファン・ブラック暴走遺伝子」は、シングルマザーで前科者のヒロイン、サラが、自分とそっくりの人物を目撃したことから壮絶な運命に巻き込まれていくSFスリラー。来年放送のシーズン5で、シリーズの完結が予定されています。今回取り上げた「ナイト・マネジャー」「MR.ROBOT/ミスター・ロボット」「オーファン・ブラック暴走遺伝子」は、どれもチェックしていただきたいオススメ作品!次回も、エミー賞の素敵モーメントをふり返ります。(text:Hikaru Watanabe)
2016年10月06日マイク・マイヤーズといえば、米人気コメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」で大活躍していた1980年代から、映画『ウェインズ・ワールド』『オースティン・パワーズ』で私を大いに笑わせてくれた人。コメディアンとして知られていますが、脚本家でもプロデューサーでもあり、映画俳優でも才能豊かなエンターテイナーです。そんな彼がドキュメンタリーを撮ったということで、注目せずにはいられなかった私。笑いのツボを知り尽くしたマイクだけに、面白くないはずはない!ということで、本当に笑えたドキュメンタリー映画が登場。『スーパーメンチ -時代をプロデュースした男!-』です。主役は、アメリカのエンタメ界を陰で動かしてきた男、天才的プロデューサーのシェップ・ゴードン。1968年に偶然チェックインしたホテルにいたジャニス・ジョプリンやジミ・ヘンドリックスらと仲良くなり、「マネージャーでもやってみれば?」程度のノリで彼らに紹介されたのが売れる前のアリス・クーパー。こちらもノリで、「じゃあマネージメントやって!」的な話から始まり、43年もの付き合いが続いているのです。「一緒にお金持ちになろう」「音楽をやるなら真剣にやろう」と本気(透明のビニールスーツで歌うなど)を次々に実行し、やがてアリスをスターダムにのし上げたシェップ。こんな調子で、ブロンディやルーサー・ヴァンドロス、ラクエル・ウェルチらのマネージメントも行い、彼らと共に人生を歩んでいる業界の伝説的超有名人なのです。70年代には映画界にも進出し、『デュエリスト/決闘者』『蜘蛛女のキス』『ベティ・ブルー』など映画もプロデュース。その後、デニーロとトライベッカ・グリルをオープンさせ、レストランビジネスでも大きな成功を収めています。“エンタメ界を陰で動かしてきた”なんて聞けば、かなり悪者っぽく響きますが、そんなことはありません。彼が凄いのは、先見の明や湧き出るようなアイディア、目を見張るような業績だけではなく、その仕事哲学。「仕事よりも人としての付き合いが大事」。この信念を貫き、どんな人も裏切ることなく、手のひらを返すこともせず、誠実に人と向き合い大切にしてきた結果が成功につながった人なのです。それを証明する代表的なエピソードもあります。かつてシェフたちには働いても働いてもお金にならない時代がありました。彼らが過小評価されていることに胸を痛めたシェップが考案したのが、料理人たちをブランド化すること。才能が正当に評価され、稼げるシステムをと産みだされたのが、“カリスマシェフ”という文化でした。「生涯をかけて人を有名にしてきた」と話すシェップ。同じ有名になるにしても、彼のように情に厚いパートナーと一緒なら、きっと心も満たされるはず。何と心優しいシェップは、有名な友人たちが人目を気にせずプライベートを愉しめるようにと、ホスピタリティを学ぶため有名シェフに弟子入りし、料理のスキルを身に付けました。彼の家は“OPEN DOOR POLICY”が貫かれています。スターたちは、落ち込んだ時にいつでも彼を訪ね、好きなだけ滞在していくことができるのです。生き馬の目を抜くとも称されるエンタメ業界で生きるセレブたちには、信頼できる人が少ないのかもしれません。そんな中、常に腕を広げて待っていてくれる友人は、オアシスのような存在なのでしょう。「仕事をするうえで大事なのは思いやりだ」とシェップ。ある人はいいます、「僕の知る成功者はみんな悲惨だった。でも彼と知り合って、成功して幸せな人生を送る人もいると知ったんだ」と。きっと彼の幸せは、彼の人柄が生み出したもの。でも、人柄の良い人物が必ずしも幸せになれるとは限らないのがこの世界。だからこそ、この貴重でハッピーな半生が、ある種の理想的な生き様として紹介される意義がある、と言えるでしょう。シェップは、悪知恵やいたずら心、直感でエンタメ界の常識を覆してきた人。事件を起こし、ニュースを生み、時代をつくりあげてきたけれど、何よりも誠実であり続けたことが成功の秘訣なのだと、本作を観れば一目瞭然。それは、仕事でも、プライベートでも。だから友人たちは彼をsuper mensch=“超いい人”と呼ぶのです。彼のために、満面の笑顔で本作に登場したスターはアリスをはじめ、マイケル・ダグラス、シルベスター・スタローン、ウィリー・ネルソン、スティーブン・タイラー、そしてダライ・ラマまで数知れず。彼らが語るエピソードには、思わず涙腺が緩んでしまう種類のものも。そう、超いい人は、人々に笑いだけでなく、感動も運んできてくれるのです。監督のマイクも、『ウェインズ・ワールド』でアリス・クーパーの楽曲を使用するための交渉でシェップと知り合い(同作にはアリスも登場していて、ウェインたちに神と崇められるシーンがあります)、以来22年もの長きに渡り親交を深める友。悪友らしいやり方で、ちょっとヤバめのおイたネタも盛り込みつつ、マズい話は笑い飛ばし、いい話は最高に盛り上げて、軽快にエンタメ界のオモシロ神話を白日の下に晒していくのです。音楽好きでもそうでなくても、かなり笑えて、なおかつ人生における大切なものについて真剣に考えさられるドキュメンタリー。秘蔵映像、プライベート画像が盛りだくさんなので、1960年代~現在までのグラマラスなファッションの変遷も、臨場感たっぷりに楽しめます。いやはや、世の中にはとことん豪快な人がいるもの。「世界は広い!」と感じさせてくれるとともに、なんだか無性に明日からの日々を頑張りたくなる、不思議なパワーを持った作品。素晴らしき出会いに感謝したくなる映画なので、大好きな友人を誘って観るのもお勧めですよ。(text:June Makiguchi)
2016年10月05日2016年も残すところ、あと3か月となりました!今年もついにラストクールに突入です。秋ドラマの注目はやっぱりシリーズものの復活でしょうか。皆さん、ピックアップはお済みですか?まだ迷っているという方は是非この「ドラマニア」を参考に、視聴選びにお役立てくださいませ。■出版社、レストラン、病院――平日夜10時は、様々な舞台で女性が大活躍!毎クール女性人気の高い水曜10時枠に、石原さとみさんが登場します。今回はこの「地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子」が、民放ゴールデンドラマスタートの合図となりますよ。出版社・校閲部を舞台に、石原さん演じるファッション誌志望の河野悦子が大奮闘!視聴することで、普段何気なく使っている言葉の使い間違いを勉強する良い機会になるかもしれませんね。加えて、悦子が一目ぼれする謎の大学生作家役に、いまをトキメク菅田将暉さんが。2人の恋路はまさに、文学界ならでは!?独特の展開に着目してご覧あれ~。また、カッコイイ女性の代名詞ともいえるあの方も、大人気木曜10時枠で主演を務めます。ドラマ「Chef~三ツ星の給食~」で天海祐希さんが演じるのは、三ツ星レストランの天才女性シェフ・星野光子。ひょんなことから学校給食の世界に足を踏み入れ、栄養・経費・味覚の違いなど多くの壁にぶつかりながらも、最高の学校給食を作るために奮闘する姿を描く痛快エンターテインメント。これまで様々な職種に挑んできた天海さんですが、 意外にもシェフ役は初挑戦なんですって!調理シーンでは一体どんな腕前を見せてくれるのか、楽しみですね。コメディタッチのやり取りに期待高まる、遠藤憲一さんとの掛け合いにもご注目を。そして最後に、吉田羊さん演じる女性医師のチームが原因不明の病の解明に立ち向かう医療ミステリー「メディカルチームレディ・ダ・ヴィンチの診断」の放送は火曜10時です。個性的かつ優秀な女性医師チームのメンバーとして、相武紗季さん、吉岡里帆さん、「たんぽぽ」の白鳥久美子さん、滝沢沙織さん、笛木優子さん、伊藤蘭さんら多様な顔ぶれが出演。まるで女子校のような職場は未知の世界…?「チーム・バチスタシリーズ」の制作チームが再結成するということで、本格的な医療シーンを是非、お見逃しなく。■高視聴率ドラマが続々リターン9時枠は“痛快さ”が視聴者を惹きつける!?さて一方では今クール、大人気シリーズの復活も目立っていますね。高視聴率でお馴染みの「ドクターX~外科医・大門未知子~」(木曜9時)は、米倉涼子さんが主演を務める人気シリーズの連続ドラマ第4弾。医学界のしがらみを嫌い、派遣医師として活動する天才外科医・大門未知子が、「私、失敗しないので」という決め台詞を従え医療界の古き伝統を滅多切り!新キャストとして、ベテラン女優・泉ピン子さんの登場にドキドキ…!?“シリーズ史上最も危険で、最強の敵”を演じ火花を散らすそうなので、異色のコラボに注目が集まります。また同じくテレビ朝日から、こちらも大人気シリーズの新作がリターン。水曜9時枠の「相棒season15」も忘れてはなりません!前作では、反町隆史さん扮する法務省のキャリア官僚・冠城亘がシリーズ史上初の警察官ではない相棒となり、明晰な頭脳とコミカルな一面を披露して水谷豊さん演じる右京と新鮮なコンビネーションを見せてくれました。果たして今回は一体どんな形でタッグを組むのか…初回放送は必見です。復活と言えばもうひとつ、土曜9時枠の「THE LAST COP/ラストコップ」も面白さという点で負けていません。唐沢寿明さん×窪田正孝さんという豪華タッグは、スペシャル放送の時から一目置かれていましたよね~。日本テレビと動画配信サービス・Huluが手掛けたアクションエンターテインメントがついに、連続ドラマとなり復活!パワーアップした痛快アクションシーンをはじめ、新キャストとして名を連ねる豪華男性陣――竹内涼真さん、藤木直人さん、小日向文世さんの役どころに注目が集まります。いずれも後味がすっきり爽快感溢れる作品ばかりですので、ご家族揃ってご覧になってはいかがでしょうか。■秋クール日曜対決は、事件モノほっこりVS超本格派…勝つのはどっち?そして最後がこちら!毎度ウェブニュースを賑わせてくれる、日曜ドラマ対決についても少し触れておきましょう。フジテレビが届けるのは、玉木宏さん演じるキャリアの警察署長が悪を成敗する“平成版・遠山の金さん”「キャリア~掟破りの警察署長~」。キャリア上がりの警察署長・遠山金志郎は気になることがあると自ら街に出て事件を解決してしまう、マイペースな主人公。本作の見どころは一話完結のコミカルな展開にあるということで、日曜の夜にピッタリな一作と言えるかも…?事件解決後、遠山が身分を明かすお約束のシーンに、スタッフのこだわりが詰まっているそうなので、要チェック!一方、TBSが手掛けるは、織田裕二さんがIQ246の超遺伝頭脳で難事件を解決していく「IQ246~華麗なる事件簿~」です。役どころは貴族の末裔、学問・知識を追求してきた法門寺家の89代目当主・沙羅駆ということで非常に異色な背景設定。沙羅駆の護衛を突然任される刑事役に土屋太鳳さん、法門寺家に仕える執事役にディーン・フジオカさん、変わり者の法医学専門医監察医役に中谷美紀さんと、脇を固める個性的な面々との摩訶不思議な化学反応をお楽しみくださいませ。ドラマの視聴は、何と言っても初回と最終回が肝心です!お気に入りの一作を見つけ、秋の夜長を存分に楽しんでみてはいかがでしょうか。(text:Yuki Watanabe)
2016年10月05日スタジオジブリ最新作『レッドタートル ある島の物語』の原作・脚本・監督はマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット。馴染みのない名前だと思いますが、2001年の米アカデミー賞短編アニメーション映画賞をはじめ、多くの賞に輝いている8分半の短編『岸辺のふたり』の監督で、彼の初の長編アニメーション映画がこの『レッドタートル』です。もともと『岸辺のふたり』の世界感や絵のタッチが好きだったこともあり、『レッドタートル』は楽しみにしていた1本でした。しかも今回は81分の長編!『岸辺のふたり』はセリフがなかったこともあり、この新作にセリフはあるのかないのか、タイトルにある“赤いカメ”のどんな物語なのか、興味は膨らむ一方でした。…で、セリフは──『岸辺のふたり』と同様にありません。制作当初、少しだけあったそうですが、スタジオジブリの高畑勲監督の「ぜんぶ削った方がいい」というアドバイスを受け、ナシになったのだとか。物語はとてもシンプルです。旅の途中、荒れ狂う海に放りだされた1人の男が無人島にたどり着き、赤いカメと出会い、そして1人の女と出会う。出会った2人がどう生きていくのかが描かれます。セリフがないということは当然、男と女の行動と彼らを取り巻く状況から物語を把握しなくてはならなくて。ある意味、想像力を試される映画でもあります。男が何を考えているのか、どうしたいのか。女の行動の背景にはどんな心情が込められているのか。きっとこうだな、ああだなと探りながら、男と女と一緒に“心の旅”をしているようでもあって、面白い。ただ、世界感に入り込むコツが少しだけ必要かもしれません。というのは、人気漫画やベストセラー小説の映画化のように映画を観る前にある程度どんな話なのかを知っていたり、作品について説明してもらうことに慣れてしまっていると、この手の作品は戸惑うかもしれない…。でも、セリフがないからこそ男と女が何を考えているのか知りたくて作品に入り込むことができる、美しい映像に集中することができる。実はとても贅沢な映画、心で感じる映画。セリフと説明に“頼らない”、自分で“考える”という意識があれば、すうっと『レッドタートル』の世界に入り込めるのではないかと。無人島にたどり着いた男がどう生きていくのか、旅の先にある人生の物語であり、同時に誰かを好きになることに理由などないことを問いかける、愛についての物語でもあります。見方によっては「人魚姫」の一部をモチーフにしているとも捉えられます(人魚姫を思い出したら、若き日のトム・ハンクス主演の『スプラッシュ』も思い出しました!)。言葉の違い、国の違い、宗教の違い…大なり小なり恋にはさまざまな壁がありますが、好きになったから一緒にいたい、愛してしまったから一緒に生きていきたい──『レッドタートル』で描かれる男と女の物語はとてもシンプルでとても深い。解釈は人それぞれですが、冒頭、赤いカメが男の行く手を何度も邪魔する理由を考えただけで、胸キュンでした。私のなかでは、ものすごくロマンチックな恋愛映画として刻まれています。(text:Rie Shintani)(text:Rie Shintani)
2016年10月03日累計売上9,000万部を記録する荒木飛呂彦氏の人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の実写映画化が正式発表された。タイトルは『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第1章』。三池崇史監督がメガホンをとり、原作生誕30周年を迎える2017年夏に公開される予定だ。情報解禁直後からネットを中心に大きな盛り上がりを見せる大型企画だが、何より話題を集めているのが東宝株式会社(以下東宝)とワーナーブラザースジャパン合同会社(以下ワーナー)が初タッグを組み、共同製作・配給という形で実写邦画を始動させたこと。東宝といえば『シン・ゴジラ』『君の名は。』の大ヒットでこの夏の映画界を席巻した邦画界の雄。洋画配給の老舗であるワーナーは近年、実写邦画の分野でも存在感を発揮している。以下、9月28日(水)に都内で行われた企画発表記者会に出席したTBSの平野隆プロデューサー、東宝の市川南取締役、ワーナーの高橋雅美社長兼日本代表、三池監督のコメント抜粋から『ジョジョ』実写化の勝算を見出したい。そもそも大手配給会社である東宝とワーナーがタッグを組む理由は?「配給力がある東宝さんに配給をお願いし、さらに洋画も邦画も配給するワーナーさんのお手伝いをいただき、共同配給という形をとれないか交渉を重ねた」とふり返る平野氏。これに対し、市川氏は「常にヒット作には新しい試みがある。共同配給と聞いて面白いなと思った。ぜひ2017年ナンバー1ヒット作に育てたい」、高橋氏は「新しい1ページを開き、世界に打って出る作品にしたい」と強い意気込みを示した。具体的にはTBSと東宝が映画を共同製作し、東宝が劇場営業、ワーナーが宣伝をそれぞれ担当する“役割分担”がなされており、会見で市川氏は「ワーナーさんがこれまで手がけた洋画宣伝のダイナミックな手法を邦画に移植できれば面白い。東宝としてはTOHOシネマズを有する(営業面での)強みがあり、両社が最大限の力を発揮できれば」と語っている。宣伝展開に関しては、東宝も国内随一の多角的なノウハウを誇るが、それでもワーナーとの配給を含めた提携で、海外展開を進めやすくなるメリットがある。タイトルの“第1章”が示す通り、壮大なスケールを誇る「ジョジョ」第4部すべての映像化が構想されており「第4部を完結させるだけでも、あと数本は必要」(市川氏)。となれば、国内での興行だけでは燃料不足=世界配給が不可欠。また、ワーナーが現在放送中のテレビアニメを製作している点から、実写映画との相乗効果も期待される。果たして、実写版『ジョジョ』は日本映画界における新たな歴史の幕開けとなりうるか?当然気になるのは「どんな作品に仕上がるか?」であり、勝算の有無もここが大きなカギになる。近年、人気コミックを実写映画化しても、打率は決して高くないし、さらに“続編ありき”の興行はビッグヒットが生まれにくい状況だ。最も重要な脚本に関しては「長い年月をかけて企画を開発し、荒木先生ともその都度キャッチボールをし、思いやアドバイスをいただきながら完成に至った」(市川氏)といい、少なくとも原作を尊重した内容になっている様子(現時点で脚本家の名前は明らかにされず)。一方、大役を担った三池監督は「オファーをいただき3日間眠れなかった」と思わず本音も。それでも「日本映画を一回リセットさせるくらいのビッグタイトル。完成後に『この先、何を撮ればいいのか』と思える作品にしなければいけない」と覚悟を決めた。持ち前のケレン味が「ジョジョ」の世界観にマッチするかは未知数だ。(text:Ryo Uchida)
2016年10月02日今年、ジェレミー・アイアンズの活躍が目を引きます。なぜ今?とも思うのですが、彼の芸達者ぶりを考えれば、理由はどうあれ映画ファンには嬉しい限り。しかも、『ハイ・ライズ』『栄光のランナー/1936ベルリン』『奇蹟がくれた数式』など話題作ばかり。なかでも、最もロマンティックとも思える作品が『ある天文学者の恋文』。『ニュー・シネマ・パラダイス』で知られる名匠ジュゼッペ・トルナトーレ監督の最新作で、急逝したある天文学者が恋人に遺した謎にまつわるミステリアスなラブ・ストーリーです。これまで、ちょっと個性的だったり、エキセントリックだったり、ひと癖ある役柄を多く演じてきた彼が、ここのところ、穏やかな役を多く演じていることに興味津々という方も少なくないでしょう。今回も愛に満ち溢れた穏やかな男性を好演しています。そこで、多忙なジェレミーをやっとのことで捕まえて、役についてたずねてみました。愛のカタチは人それぞれ。表現の仕方もひとそれぞれです。個人的には、「愛してる」とか、さも“これが私の愛の証だ”などとこれみよがしに示されるのは苦手なのですが、そんな私でも、こんな愛情表現もあるのだな、こんなに愛されるって女冥利に尽きるなと、しみじみ感じさせられたのが『ある天文学者の恋文』。内容は、タイトルそのまま。ある高名な天文学者であるエドワードが、道ならぬ愛を貫く相手エイミーに、自らが死んだ後も恋文を送り続けるお話。でも、その恋文が一風変わっているのです。かつて恋文と言えば、紙に直筆で書かれたもののみだったわけですが、今では、パソコンでしたためられて紙に印刷されたものだったり、E-mailで送られてくる文書だったり、メッセージアプリで送られてくるものだったり。恋文も時代とともに姿をかえているわけです。本作は大人のラブ・ストーリーではありますが、時代を感じるコミュニケーションや恋文が登場しています。最初にこのプロジェクトについて聞いたとき、エドの計画について「とても興味をそそられた」と話すジェレミー。「僕が映画を選ぶ基準は話が僕にとって興味深いかどうかだ。そしてその役が前にやったことのない役かどうか。僕の選択は僕の興味を反映しているかもしれないし、年が経つにつれてその興味は変わっていくと思うな」。個性的な役も多く演じていますが、ここのところ、柔らかさと穏やかさのある役が続いている印象。それは、彼の興味の移り変わりが表出しているというわけなのです。ということは、役をみれば、彼の心情が読み取れると言えるのかもしれません。そんな彼がエドのように、愛するものに遺したいものとは。「幸せな思い出。僕が彼らを愛したという変えがたい事実だね」。あくまでも物質的なものではなく、いつまでも色あせない想いというものが、一番の宝物なのですね。本作で亡きエドワードがエイミーに恋文を送り続ける際、時代性を色濃く反映するかのように、現代的なツールが大活躍します。かつては言葉のみだった愛の告白が、紙という大発明によりラブレターとなり、電話、メール、オンライン通話などと、手法の選択肢を広げていったことを考えると、世の中の進化も実感。そこには、愛するという感情は変わらなくても、時代によって表現方法や届ける手段は変わっても、そこに乗せられる感情は、古代から変わることが無いという監督の熱い想いが込められているようにも思えるのです。「エドは今できる方法でコミュニケーションをとっている。それが彼に与えられた唯一の手段だったんだ。この映画はコミュニケーションとは何か、それが、僕が生まれてから現在に至るまでの間にどのように変化したかについての映画でもあると思うよ」。今、この時代だからできる愛の告白。今という時代が、この作品のロマンチシズムを大いに盛り上げ、この物語を作り上げているといっても過言ではありません。名匠が描く、壮大なラブ・ミステリー。大事なあの人と、ぜひご一緒に。(text:June Makiguchi)
2016年09月25日アカデミー主演男優賞に2度輝く名優トム・ハンクスが、クリント・イーストウッド監督と初タッグを組んだ話題作『ハドソン川の奇跡』を引っさげ、3年ぶりに来日を果たした。「クリントとの仕事は素晴らしいの一言」とふり返るトムの“仕事を選ぶ基準”とは?「ハリウッドにはいまも昔もたくさんの脚本が存在するんだ。ありがたいことに僕のもとにも、数多くの脚本が届くけど、大切にしているのはやはり作品のテーマ性。そこに映画化すべき価値があるかどうかが重要だね。俳優として新たな発見があれば、なおうれしいよ。最近はベストセラーの映画化も多いけど、小説として優れていても、映画に向いていないものもある。具体的な判断基準というよりは、俳優としての“直感”を大切にしているよ」。そう語るトムの主演最新作『ハドソン川の奇跡』は2009年、ニューヨークで実際に起こった旅客機の不時着水を題材にしたサスペンスフルな人間ドラマ。トム演じるベテラン機長が、文字通り“直感”で乗員乗客155人全員の命を救い、全米はもとより世界中から英雄視される一方で、国家運輸安全委員会は「理論上、近くの空港に緊急着陸できたはず」という数値データを突きつける。機長の判断は、乗客を危険にさらす無謀な賭けだったのか?「機長として完ぺきな判断をしたはずが、犯罪者扱いされてしまう。わずか208秒間の出来事で、数十年のキャリアを失いかねない事態に巻き込まれた主人公の苦悩たるや、想像を絶するよ。それだけに演じがいもあるし、いわばテクノロジーと人間の“戦い”というべき現代的なテーマも興味深かった。例えば、あの日トラブルに見舞われた旅客機が自動運転だったら?99%自動化できたとしても、経験に裏打ちされた1%の決断が必要だと思うね」テーマ性もさることながら、アメリカ映画界の宝であるイーストウッド監督との仕事を断る理由はない。実際、予定していた長期休暇を返上し、本作に取り組んだというから、その思い入れの強さは格別だ。「現場では本番前のテストや、くどくどした説明は一切なし。まさに直感的に『さあ、始めよう』って感じで、カメラが回る。だから時間が浪費されることもないし、俳優はエネルギーと集中力のすべてを演技に注げるんだ。驚くべき現場だよ」(text:Ryo Uchida)
2016年09月24日段々と涼しくなり、夏ドラマも最終回の時期を迎えました。恋愛、仕事、家族、刑事もの…幅広いジャンルが顔を揃えた2016年7月クール。今日はその締めくくりとして、毎期全ての放送枠をチェックしているドラマニアな筆者が選んだ「勝手にベスト3」をご紹介していきましょう。■第1位:仕事人間だって恋がしたい!独特な命令口調が病みつきになる「家売るオンナ」今クール、1時間経つのが圧倒的に早く感じたこの作品。北川景子さん演じる主人公・サンチーこと三軒家万智は、「私に売れない家はない」という口癖の通り、どんな物件でもとにかく売って売って売りまくる敏腕不動産屋。部下の白洲美加(イモトアヤコ)に「GO!」と命令する姿は、如何にも“仕事のできるオンナ”というオーラ満載でとにかく格好良かったですね。原色を基調とした営業スタイル=ファッションコーディネートにも「お洒落」「真似したい」という呟きが数多く寄せられていました。本作では何より、「家を売る」という普段あまり馴染みのない仕事にスポットを当てている点が非常に面白かった!生きるうえで必要不可欠な、衣食住。中でも「住む家があること」はついつい当たり前になりがちですが…決してそんなことはなく、実は収入の半分以上を費やすその物件にこそ、もっときちんとこだわりを持つ必要があるのかもしれないと改めて痛感させられます。一軒一軒、屋根の下には血と汗と涙の滲んだ努力が存在するのだということを改めて知ることのできる深~い作品と言えるでしょう。加えて脚本が大石静さんの作品ということで、さり気なく随所に散りばめられた恋愛模様も光っていましたね。ハートの強い主人公が世に切り込んでいく定番の構図とはちょっと違う。サンチーが心の奥底で密かに「どうして私には人の心がわからないのか」「なぜ結婚できないのだろうか」と首を傾げているシーンが所々登場するため、見ていて不思議と胸がチクリ痛むのが大石作品のマジック。そんな彼女の葛藤に気づき、自然と好意を寄せる後輩・庭野(工藤阿須加)。さらには、女性不審なはずの上司・屋代(仲村トオル)とも一気に心の距離が縮まり…!? リアルな社内恋愛描写に、無性に惹きこまれました。物語の終わりは、まだ続きそうな余韻を残していましたので、続編に期待したいと思います。■第2位:恋に泥沼は付きもの!?ロス泣き続出の「せいせいするほど、愛してる」続く第2位には、古典的と言えば古典的!なぜか続きが見たくなってしまう、王道の不倫ドラマをセレクト。「いくらなんでも、不運が続き過ぎ」「現実にはここまでの泥沼、有り得ないでしょう」というツッコミも、原作が人気漫画なので俄然許せてしまうこの作品。木南晴夏さん演じる妻が空港で連呼した「この泥棒猫!」という台詞、めちゃくちゃ怖かったですね~(笑)絡み合う複雑な愛情――主人公・栗原美亜を演じる武井咲さん×副社長・三好海里を演じる滝沢秀明さんの禁断の恋ももちろんハラハラだったのですが…今クール最も世の女性たちのハートを鷲掴みにしたのは、本作に登場し後半からものすごい勢いで話題を集めたジミー チュウ広報の宮様こと宮沢綾(中村蒼)ではないでしょうか。美亜に恋心を寄せ、海里とは一味違うストレートな戦法で「俺にしておけ」「幸せにする」と猛アプローチ。見た目も心もイケメンの関西弁ボーイ・宮様の愛の告白に、テレビの前で悶絶した女性も多いはず!ほんの少しタイミングがズレてしまっただけで、恋愛って絶妙にすれ違ってしまいますよね。まさにその切なさの極みに立っていたのが、今作では彼なのかもしれません。また「せい愛」の魅力は、昨今流行を見せる不倫ドラマには無い“クスッと笑ってしまう”そのカジュアルさにも潜んでいます。本作を見ていた方なら恐らく誰もがベストオブシーンとして挙げるであろう、エアギターシーン。会社ではポーカーフェイスを貫いている海里がストレス発散のため、自宅で行っているこの激しいダンスがなんと最愛の彼女に見つかってしまった!あんぐりと大きく口を開き、かける言葉を失ってしまった美亜の表情は必見です。実際の恋愛って、そういう「えっ!?彼のそんな所はちょっと嫌かも」なんて部分も含めての“好き”じゃないですか。そんなリアルのさじ加減がちょうど良いバランスで非現実の中に溶け込んでいるので、自分なりの共感ポイントを探してみるとより楽しく視聴できますよ~。結末にも含みがあったので、是非、秘められた意味をとことん追究してみては?■第3位:怒涛の最終回…思わず二度見したくなる「そして、誰もいなくなった」最後がこちら。藤原竜也さんの絶叫、相変わらず迫力がすごかったですね~!ミステリー小説の巨匠、アガサ・クリスティの同名小説を彷彿とさせる「そして、誰もいなくなった」です。初回放送前の告知CMの時点から番組では「この中に犯人がいます」と登場人物の顔を羅列していたため、視聴者の中で犯人探しが大流行。放送が終わる度、SNS上で「なぜ彼女はこう言ったのか」「彼のこの行動が怪しい」と様々な憶測が飛び交っていました。まさに、推理ドラマの醍醐味と言えるでしょう。物語としては、これまでの作品であまり見たことがない「出てくる人、全員が怪しい」という展開がとにかく斬新で。ミステリー作品って大抵、「最初怪しくない人ほど、後から怪しくなってくる」みたいなロジックがあるじゃないですか。でも本作ではとにかく全員、行動が不審なんですよね(笑)。段々自分が疑い深い人間なんじゃないかと錯覚し始めるほど…。にも関わらず、そんな登場人物たちが遠慮なくどんどん失踪したり命を落としたりして“いなくなっていく”ので、無駄なことに気を取られている暇もなく、まるでジェットコースターに乗っているかの如く目まぐるしいストーリー展開に追いつくのがやっとでした。話ごとの区切りも、謎の電話が鳴ったり殴られて意識を失ったりと絶妙なシーンで終わるため、まんまと最後まで継続視聴してしまった人も少なくないのでは?結末からふり返ってみると、犯人に結びつくヒントが1話から細かく散りばめられていたことに気がつくので、時間を置いてもう一度見返してみることをオススメします。ボイスチェンジャーの声もよ~く聴くとヒントになりますので、要チェック!以上、いかがでしたか?秋の気配がすぐそこまで来ています。10月クールは一体どんな作品が放送されるのでしょうか。気になるラインナップは次回記事でご紹介致しますよ~!お楽しみに。(text:Yuki Watanabe)
2016年09月24日ついに『ワンダーウーマン』の日本公開が、2017年夏に決まった。初登場した『バットマン vs スーパーマンジャスティスの誕生』では世紀の2大ヒーローを向こうに回し(?)、華麗に、クールかつセクシーに闘う姿で絶大な支持を獲得したガル・ガドット演じるワンダーウーマン。もちろん、この秋にも、同じくDCコミックスの実写映画化『スーサイド・スクワッド』で、マーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインや、日本人女優の福原かれん演じるカタナなどが話題をさらっている。そんな、いま最も“バズっている”(=拡散されている)女性キャラたちに迫った。■アメコミは“スーパーヒロイン”の時代へ!?最強の女性たちに注目まずは、DCコミックスのスーパーヴィラン(超悪役)たちが世界を救う“はめになる”『スーサイド・スクワッド』のハーレイ・クインだ。予告編映像などが解禁されるたび、そのクレイジーでポップなルックスや、ぶっ飛んだ小悪魔的言動、バットを振り回しハイヒールで見せる超絶アクションで、“悪カワ”ヒロインとして話題を独占。同作が全米で“バズった”理由の1つは、彼女の存在によるところが大きい。ハーレイ・クインは、最凶ヴィラン・ジョーカーのことがとにかく大好き、バトル中でも彼からのメールはチェックしちゃう恋愛依存症ガール。しかも、もともとは彼を診ていた犯罪者専門の精神科医なのだから、どんな経緯が2人にあったのかは大いに気になるところ…。道化と狂気が共存する、(おそらく)壮絶な過去を抱えた“悪カワ”ヒロインを、見事に演じ切ったマーゴット自身の魅力も相まって、ファンはなおも増殖中!また、同作では、妖刀を操る女サムライ・カタナ(福原さん)のクールな闘いぶりや、非情なまでに悪役たちをこき使うアマンダ・ウォラー(ヴィオラ・デイヴィス)、カギを握る邪悪な魔女エンチャントレス(カーラ・デルヴィーニュ)と、“アクの強い”女性キャラクターたちが続々登場するのも見逃せない。一方、マーベル作品でのヒロインも忘れてはならない。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』でアイアンマン側についたブラック・ウィドウ(スカーレット・ヨハンソン)、キャプテン・アメリカ側のスカーレット・ウィッチ(エリザベス・オルセン)がよく知られているが、今回はTVシリーズ「マーベル エージェント・カーター」のペギー・カーター(ヘイリー・アトウェル)に注目。ペギー・カーターといえば、キャプテン・アメリカと恋に落ちたエージェントで、S.H.I.E.L.D.(国際平和維持組織)の創設メンバーとして『アントマン』などの映画にもちらりと出演してきた。第二次世界大戦直後、S.H.I.E.L.D.前身の秘密諜報機関SSRに所属していたが、当時は完全な男性社会。同僚は彼女をキャプテン・アメリカの元・世話役で、お茶くみ&雑用要員としか思っていない。しかし、そんな彼女にある極秘任務を依頼するのが、アイアンマン/トニー・スタークの父、ハワードだ。アイアンマンの人工知能のモデルになったスターク家の執事ジャーヴィスも協力するが、このペギーのめちゃくちゃ強いこと!時にはキャプテンを想って人知れず涙する一面もありつつ、カッコいいヒロインの先駆者的な存在となっている。残念ながら、ドラマはシーズン2で打ち切りとなってしまったが、継続を望むファンからは署名運動が起こったほど。また、同じくTVシリーズの「エージェント・オブ・シールド」でも、“メイ姐さん”こと謎多き最強エージェント・メイや、元ハッカーのスカイ、ブロンド美女バーバラ・モースなど、強い女性たちが大活躍を見せている。■世界を救う、アツいハートとク-ルな頭脳の“オタク系女子”!実はこの夏、邦画洋画合わせて3DでNo.1の人気となったのが、『ゴーストバスターズ』だ。スクリーンから映像が飛び出るだけでなく、“ハミ出る” 3Dが好評で、同作を3Dで観た人は4割以上に及ぶ。主人公となったのは、超常現象を研究していた過去がばれ、大学を首になったエリン(クリステン・ウィグ)、エリンの旧友で研究ひと筋のアビー(メリッサ・マッカーシー)と、その研究パートナーの発明家ホルツマン(ケイト・マッキノン)の3人の学者に、地下鉄で働いていたNY歴史オタクのパティ(レスリー・ジョーンズ)という女性たち。彼女たちが最新鋭の武器を駆使し、ニューヨークで暴れ回るゴーストたちを一掃する!のだが、主要キャストを全員女性でリブートさせたことやキャストのレスリーに対する非道な差別も話題となってしまった。だが、彼女たちのアツい友情と信念は、そんなものをやすやすと吹き飛ばしていく。高校時代、ゴーストを信じていたことからいじめにあっていたエリンは、本来の自分を“隠してきた”が、アビーと再会し、リアルなゴーストにも遭遇して改めて開眼する。さらに注目なのは、普段はやることなすことが奇抜な、武器開発担当のホルツマン。エリンに何かとちょっかいを出すところもおもしろく、クライマックスで、二丁拳銃型プロトン・ガンをひと舐めし、次々とゴーストを倒していく姿には惚れる人が続出中。彼女が作りだした武器を、みんなで試すときのワチャワチャ感もたまらない。もちろん、日本の理系女子だって負けてない。観客動員420万人突破、興収60億超えの『シン・ゴジラ』では、市川実日子が演じる環境省・自然環境局野生生物課長補佐、尾頭ヒロミが大人気だ。矢口(長谷川博己)や志村(高良健吾)、安田(高橋一生)ら、注目男子ぞろいの「巨大不明生物特設災害対策本部」、通称「巨災対」において、このバリバリ理系女子は自身の見解を冷静沈着に、超早口でまくしたてる。そもそも、海に出現したゴジラが「上陸する可能性は捨てきれない」、巨大なゴジラのエネルギー源を最初に言い当てたのは彼女。さすがのひと言しかないが、終始、ノーメイクで仏頂面(に見える)尾頭が、すべて終息したときに初めて見せる微笑みには、余計にキュンとなってしまう。また、石原さとみ演じる米国大統領特使カヨコ・アン・パタースンも、圧倒的なシーン・スティーラー(シーン泥棒)だ。自身の野望のため?保身のため?と思わせておきながら、祖母が生まれた国への愛を示してくれる姿には、グッと来た人も多いことだろう。ほかにも、年末には『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のジン・アーソ(フェリシティ・ジョーンズ)、『バイオハザード:ファイナル』のアリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)なども控える今年。いずれも基本的に、オタク気質で偏屈だったり、恋愛依存症だったり、アウトローだったり、ストイック過ぎたりと、ひと筋縄ではいかないヒロインたちばかり。しかし、やると決めたら有言実行で、世界を軽やかに救っていく姿に、ときめかずにはいられない。(text:cinemacafe.net)
2016年09月19日本日、「Sho-Comi」(小学館)にて連載中の少女コミック「兄に愛されすぎて困ってます」の実写映画化が発表された。主演に土屋太鳳、共演には映画初出演となる「GENERATIONS from EXILE TRIBE」・ボーカルの片寄涼太、そして先日最終話を迎えた連続ドラマ「家売るオンナ」でも活躍していたばかりの千葉雄大。千葉さんといえば、甘~いルックスと映画やドラマで演じてきた“王子様”キャラが人気を博し、女子の心に温もりを与えてくれる男子・通称“ヌクメン”とも呼ばれるように。今回は、そんな活躍のめまぐるしい千葉さんのこれまでの出演作や役柄をふり返りながら、千葉さんの魅力をまとめてみた。◆かわいさもカッコ良さも!ギャップが魅力のキャラクターたちモデルとしての活動後、2010年「天装戦隊ゴセイジャー」で主役に抜擢。その後はアニメ化もされたヒット漫画を原作としたドラマ「桜蘭高校ホスト部」に出演し、うさぎのぬいぐるみといつも一緒のかわいらしい男の子、通称“ハニー”の埴之塚光邦を演じる。原作の設定では身長148cm(!)、可愛いものや甘いものが大好きで、ホスト部の生徒に抱きつくなどいわゆる“あざとい”キャラクターなのだが、過去に空手部の主将だったという武道の腕前の持ち主でもある。喧嘩ともなればそのパワーを見せつけるという、なんともギャップのある愛されキャラだった。2014年には少女コミックが原作の映画『アオハライド』で、本田翼演じるヒロインに思いを寄せる菊池冬馬を演じる。この冬馬の原作のビジュアルがまさに千葉さんにそっくりで、配役が決定した際には原作ファンも「納得!」と太鼓判を押していたほど。やさしく少しシャイな面もありながら、ここぞ!という時には強引に唇を奪うという男らしさが魅力的な人物だった。さらに、映画『黒崎くんの言いなりになんてならない』では、ドSな“黒悪魔”な中島健人に対し“白王子”の千葉さんがヒロイン・小松菜奈をめぐる三角関係に。ヒロインを取り合って熱い男の闘い(?)も見せる、甘く優しいだけではない姿に全国の女子を胸キュンさせていたことだろう。◆本人は拒む“ヌクメン”の称号だが…これらの甘くスイートな王子キャラが人気を博し、数ある○○系男子に“ヌクメン”という新たなジャンルを作った千葉さん。バラエティ番組などでは「僕はそんなつもりはないです…」と拒みながらも、頼まれると可愛いポーズを連発してくれるサービス精神も含めて、視聴者の心を“ぬくぬく”させてきたが、2016年7月期連続ドラマ「家売るオンナ」で演じたのは、ただの優しい王子様ではない、新たな千葉さんの魅力を感じさせたキャラクターだった。◆天使から小悪魔へ!?「家売るオンナ」で話題となった足立くん北川景子演じる主人公の三軒家万智を筆頭に、濃い人物たちがあつまった不動産屋。その中でも千葉さん演じる足立聡というキャラクターはいままで千葉さんが演じてきた王子キャラを、より現実的にそしてコミカルに仕上げた人物だったように感じる。男女問わず“王子スマイル”で人の懐に入りこんでは売り上げをつくる敏腕営業マン。しかしその笑顔の裏には“悪魔”のような腹黒さがあるのがこの足立のあじ!言い寄ってくる女性社員には甘い言葉を掛けつつも顔を歪ませて断固拒否。恋愛に踏み込めないでいる後輩には「そんなこともできないの?」とオラオラ発言…と、可愛い顔の裏にある黒い本性が「性格最悪なのに可愛い!」「許せちゃう」と、すっかり虜になってしまう声が続出した。仕事のために自分の可愛さを武器にする小悪魔的なキャラクターが「いるいる!」と思わせてしまうような現実みも持たせ、過去の少女マンガ的王子様キャラから脱した新たな千葉さんのハマリ役だったと言える。◆可愛さ封印?スイート“ドS”キャラに注目!そんな千葉さんが、『黒崎くんの言いなりになんてならない』製作スタッフが手がける映画『兄に愛されすぎて困ってます』の出演が決定。土屋太鳳演じる全くモテない女子高生・橘せとかの初恋の相手で憧れの存在であり、超毒舌なセレブ研修医・芹川高嶺役を演じる。お分かりの通り、「家売るオンナ」足立にも通じる甘いマスクの“ののしり王子”キャラ!これには“足立ロス”の女子には朗報なのではないだろうか!昨今、“胸キュン”青春映画をにぎわす「ドS」キャラだが、千葉さんの「ドS」キャラは新鮮!まさに甘さに混ざる塩辛さがクセになってしまうかのようなそんな千葉さんの魅力は、視聴者の心に温もりを与えるどころか熱くさせてくれるだろう。(text:cinemacafe.net)
2016年09月19日先日放送を終えたドラマ「はじめまして、愛しています。」は、尾野真千子と江口洋介が夫婦役で初共演し、“特別養子縁組”制度をテーマに家族を描いた。オリジナル脚本を担当したのは、社会現象にもなった「家政婦のミタ」の遊川和彦氏。ドラマは児童虐待など現代の問題も含みながら、血縁だけではない家族の姿を映し出し、ラストの壮絶な展開は視聴者を釘付けにした。そして、いま映画界にも、さまざまなカタチのユニークな家族が続々と登場している。まずは、『ワンダーウーマン』さながら(?)の力強い女性・母性を体現している『湯を沸かすほどの熱い愛』(10月29日公開)の宮沢りえ。彼女が演じた銭湯「幸野湯」の“お母ちゃん”双葉は、ある日突然、自分の余命が残りわずかという宣告を受ける。しかし、この“お母ちゃん”の熱量はむしろ一段と高まり、学校でいじめられている娘・安澄(杉咲花)のために、観る者が若干引いてしまうほどの荒療治を見せたり、初めて出会ったヒッチハイカーの青年・拓海(松坂桃李)の心をあっという間に開かせたりもする。一貫しているのは、“その後”も家族が幸せに暮らせるよう、それぞれに大きな愛を遺していること。その一方で、1年前、ふいに姿を消した「幸野湯」の主人・一浩(オダギリジョー)は、そんな双葉に探し出され、家に連れ戻されても、何とも頼りない。しかも、「妹」と見知らぬ女の子・鮎子(伊東蒼)を連れてきたり…。それでも、最後には“お父ちゃん”が一念発起する姿を目にすることができる!?はず。また、橋本愛と宮崎あおいが娘・母役を演じる『バースデーカード』(10月22日公開)では、橋本さん演じる紀子と、父・宗一郎(ユースケ・サンタマリア)、弟・正男(須賀健太)が遺された家族に。宮崎さん演じる母・芳恵は、紀子が10歳のときに亡くなって以来、毎年バースデーカードを通して娘の成長を導いてきた。だが、紀子はあるとき、そんな母の想いを窮屈に感じるようになってしまう。やがて、バースデーカードから、“いまを生きる”ための太陽のような母の愛の集大成を受け取るときがやってくる。キーポイントとなるのは、芳恵を看病しながら支え続けた夫であり、不器用ながらも子どもたちを育ててきた父親の存在や、再会した紀子の初恋の人・立石(中村蒼)の存在。そして、クイズ番組「アタック25」への挑戦なのだ。とはいえ、妻に先立たれた男でありながら、本木雅弘演じる『永い言い訳』(10月14日公開)の主人公、人気作家・津村啓こと衣笠幸夫の“言い訳”はずいぶんと厄介。不倫相手(黒木華)との密会中に知らされた妻・夏子(深津絵里)の突然の死。親友と出かけた旅先でのことだった。親友の遺された家族、夫の大宮陽一(竹原ピストル)は悲しみに暮れ、小学生の長男が幼い妹の面倒を見ている。幸夫は、この兄妹の世話を買って出る。テレビにも出て、ちやほやされていたタレント作家は、団地住まいの大宮家へ通い、いつしか主夫のようになって一家に溶け込む。この不思議な“疑似家族”が、お互いの悲しみをいやしてくれるように見えたが、そうは簡単にいかないのがミソ。幸夫が乗り越えていく試練、大宮家が乗り越えていく試練がまた胸を打つ。しかし、恋人と同棲する家に突然、父親が押しかけてきてしまったら、それは困りもの。『お父さんと伊藤さん』(10月8日公開)では、34歳の彩(上野樹里)と20歳年上の彼氏の伊藤さん(リリー・フランキー)の同棲先に、74歳の父(藤竜也)が転がり込み、奇妙な同居生活が始まる。頑固なお父さんは何かと小言が多く、とんかつのソースの味1つで言い争いに。そんな3人が狭いアパートで共同生活をする様子はおかしくもありながら、少しずつ涙腺を刺激。また、彩も嫉妬するほどの友情をお父さんと築き、彩の心を救っていく、“ザ・マイペース”の伊藤さんが何だか頼もしく見えてくるから不思議だ。同居人といえば、『ぼくのおじさん』(11月3日公開)の主人公(松田龍平)は、小学生の甥っ子・雪男から「ぼくの家で一番役立たずの居候」といわれる始末。大学の臨時講師で週1で哲学を教えているだけの“自称・哲学者”のおじさんは、万年床でゴロゴロしては漫画を読み、義理の姉(雪男の母)に叱られてばかり。そんな不可思議な存在のおじさんを、雪男は「自分のまわりにいる大人について」の作文のテーマに選ぶが、なんとそのおじさんが恋に落ち、一路ハワイへ!まるで子どもみたいな困ったおじさんと、しっかり者の少年のハワイでの珍道中はどうなることか、要注目!さらに、『ボクの妻と結婚してください。』(11月5日公開)では、末期がんの放送作家・三村修治(織田裕二)が、妻(吉田羊)や息子の“その後”の幸せのために、なんと自ら妻の結婚相手を探すという奇想天外な“企画”を立ち上げ、動き出す。『彼らが本気で編むときは、』(2017年2月公開)では、トランスジェンダーの女性リンコ(生田斗真)とその恋人マキオ(桐谷健太)、マキオの姪っ子で孤独を抱えた少女トモとの3人の共同生活を描いていく。彼らが織りなす家族の姿は、平穏な毎日では忘れがちな大切な気持ちを、厳しくも優しく思い出させてくれる。家族に重大な“何か”が起こる前に、日ごろからその思いを素直に伝えてみては?(text:cinemacafe.net)
2016年09月18日この夏の映画業界は興行成績の面ではもちろん、話題性においても『シン・ゴジラ』と『君の名は。』が圧倒的な強さを見せた。当初は『ファインディング・ドリー』と『ONE PIECE FILM GOLD』の金メダル争いを予想していたが、いまとなってはまったくの的外れだった。予想は的外れに終わったが、東宝が優れた企画力と宣伝力を発揮し、この夏巻き起こした2大旋風は、続編ものに頼りがちだった映画業界にゴジラ級、そして1000年ぶりの彗星並みの強烈なインパクトを残した。もちろん『シン・ゴジラ』は「ゴジラ」シリーズの最新作ではあるが、作品の成り立ちが非常に個性的であり、「ゴジラを見たことない」ファン層の取り込みに成功した点で、オリジナル性の勝利。『君の名は。』旋風は、もはや説明不要だ。SNSを通じた口コミも、大ヒットの要因になっており、今年で言えば『ズートピア』にも同じ現象が起こった。もちろん、映画業界もその重要性は承知しており、プロモーションの段階で「SNS発信力の強い10代~20代前半の女性にアピールすべし」と各社が躍起になっている。合言葉は「とにかく、バズりたい!」。確かに公開前は、仕掛けが功を奏し“バズる”こともあるが、いざ駄作だとわかれば、その反動たるや恐ろしいものがある。そして、こじつけだとしても『ズートピア』『シン・ゴジラ』『君の名は。』には、「音読するとタイトルが5文字」という共通点があり、人から人に伝わる文字通りの“口コミ”を検証する上で、見逃せない。職場や学校、電車のなかや街中で…。5文字のタイトルは、現代人の耳にスーッと入る語感の良さがあるのだろうか?同時にネットニュースの見出しの文字数を考えると、「最大でも題名は5文字」という意識が働きつつあるかもしれない。今後公開される映画のなかでは、『デスノート』(正式タイトル『デスノート Light up the NEW world』)、『ローグ・ワン』(正式タイトル『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』)に注目。もしどちらも大ヒットを記録すれば、「タイトル5文字=ヒットする」説が認めてもらえるかも?『ファンタビ』(正式『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』)も文字数をカウントすると5文字なので、こちらのヒットにも期待したい!(text:Ryo Uchida)
2016年09月17日ハーイ、みなさん!今年の夏ももう終わりですね。お気に入りのサマームービーはありましたか?私のお気に入りは、アニメ映画の『ペット』です!みなさんはご覧になりました?日本では7月に公開されたんですよね。実は『ペット』は、すでに世界興行成績7億6700万ドルを超えているんです。ディズニーアニメ以外のアニメ作品では、至上最高の数字なんですよ!すごいでしょ!!アニメーションもボイスキャストも、すごーくよかったと思います。ストーリーは、ほんのちょっとアニメの名作『トイストーリー』に似てるんだけど、それでも大好きな作品です。映画に登場するネコの“クロエ”が、うちのネコと似てるの!ボイスキャストはAリストのトップスターばかりです。デューク役のエリック・ストーンストリートは、大ヒットテレビドラマの「モダン・ファミリー」で人気。マックス役のルイ・C・Kはアメリカで超人気のコメディアンだし、スノーボール役のケヴィン・ハートも今アメリカでも最もアツいコメディアンなのよ。だからもしまだ『ペット』を見ていないという人がいたら、私は自信を持ってオススメするわ!大人も子どもも楽しめる作品です。ところで、“Aリストのスター”と“大ヒットテレビドラマ”といえば?そう!エミー賞です!テレビ界最大の祭典がすぐ目の前まで迫っています。今年のエミー賞授賞式は、9月18日。私のイチオシ作品も、今年はノミネートされているんですよ。もちろん世界中にファンがたくさんいる「ゲーム・オブ・スローンズ」が、複数のトロフィーを手にするのは間違いないですけどね。シーズン6もめちゃくちゃ面白かったですよね!最多ノミネート(23部門!)も納得でした。2番目にたくさんノミネートされた作品は、HBO製作の「アメリカン・クライム・ストーリー/O・J・シンプソン事件」(22部門!)。こちらの作品はリミテッドシリーズ部門なのですが、ミニシリーズとしては史上最高に完成度の高い作品だと思います。それからイギリスの人気ドラマ「ダウントン・アビー」や、「ハウス・オブ・カード 野望の階段」、「HOMELAND」、「モダン・ファミリー」、「Veep」のような常連候補も。でもね、私がとてもうれしかったのは、今年初めてノミネートされた「ジ・アメリカンズ」!いま私はこの「ジ・アメリカンズ」と「UnReal」にハマってるの!「UnReal」もとてもエッジーな作品で、毎回驚かされます。また、初ノミネートといえば、「MR. ROBOT ミスター・ロボット」も。いまドラマ界はとてもアツくて、どれも面白いんです。でも個人的には「ジ・アメリカンズ」が受賞できるように願っています!今年のホストとは、人気トーク番組のホスト、ジミー・キンメル。彼なら間違いなく楽しい授賞式になるはずだわ。テレビ界最大のイベントまであと数日。みなさんは準備はいいですか?そして最後に、私のもう1つのお気に入りサマームービーのお話をしますね。新海誠監督の素晴らしいアニメ作品です。新海監督は7月に開催された、アメリカ最大のアニメコンベンション“Anime Expo 2016”で、『君の名は。(英語タイトルYour Name)』のワールドプレミアを開催しました。私はとても幸運なことに、MCと通訳をさせていただきました!約3500名収容できる会場が満員で、新海監督を舞台上にお呼びすると、スタンディングオベーションが起こりました。監督は少しお話されたんですが、映画はこのワールドプレミアの数日前に完成したばかりだということと、世界のファンに見てもらえてうれしいとおっしゃっていましたよ。それで私の感想はというと…。素晴らしかったです!本当に素敵な作品でした。ストーリーもワンダフルだし、アニメーションは魔法みたい。音楽も物語を際立たせていて、とにかくすべてが完璧でした。映画が終わる頃には、会場に“ドライアイ”の人は一人もいなかったわ(私も含めてね!)。ストーリーも、映画全編にちりばめられたユーモアも、とっても気に入りました。『君の名は。』はいま日本で公開中だと聞いています。日本の人、全員に見てほしいわ。絶対に見る価値があります!私はアカデミー賞アニメ部門にノミネートされると信じています。そうなの。そう思えるほど、素晴らしい作品だったんです!(text:cinemacafe.net)
2016年09月12日バディ。それは相棒、仲間、2人組――。2016年、パッと思いつくバディといえば、日本でも大ヒットした『ズートピア』のジュディ&ニックだろう。“小さくて可愛らしい”(?)ウサギ初の警察官と、“ずる賢い”(?)キツネの詐欺師がふとしたことからコンビを組み、ズートピアで続出する失踪事件に立ち向かった。本来なら“天敵”にあたる、草食動物と肉食動物、被捕食者と捕食者による正反対のコンビは、誤解はあったものの、お互いを思いやりながらそれぞれの持ち味を発揮して大活躍。その名コンビぶりに魅了される人が続出し、「ニクジュディ」や「ジュディニク」といった愛称でも親しまれている。そんな2人に続け!とばかりに、この秋からも、正反対の凸凹コンビが活躍するバディムービーやバディドラマが続々登場。それぞれの魅力に迫った。まず、水谷豊扮する杉下右京と、反町隆史扮する元官僚の4代目“相棒”・冠城亘のコンビで、ドラマ「相棒season15」がスタートする今秋。やはりバディといったら、刑事モノだ。朝ドラ「とと姉ちゃん」ではヒロイン・高畑充希と組んでいる唐沢寿明と、「臨床犯罪学者 火村英生の推理」では斎藤工とのコンビが人気だった窪田正孝が、“肉食系&草食系”刑事を演じる「THE LAST COP/ラストコップ」が同じく10月から連続ドラマとしてスタート。昨年、地上波にてスペシャルドラマを放送し、動画配信サービス「Hulu」にて全7話を配信する、という新しいスタイルでも話題を呼んだ。30年ぶりに昏睡状態から冷めた“80年代”で時が止まった熱血刑事・京極浩介と、デジタル世代の現代っ子刑事・望月亮太の凸凹コンビは、さらにパワーアップ。過去にスーツアクターの経験もある唐沢さんと、『HiGH&LOW』でも魅せた窪田さんによる生身の本格アクションは、今回も度肝を抜きそうだ。また、京極の元妻・加奈子(和久井映見)は、かつての京極の後輩で現在は上司の鈴木(宮川一朗太)と再婚しており、父親らしいことを何一つできなかった娘・結衣(佐々木希)は亮太と交際中という、家族ドラマの部分も見逃せない。連ドラの前に3週連続で放送される「THE LAST COP/ラストコップ-episode0(ゼロ)-」では、新キャストも明らかにされるというから楽しみ。さらに、ドラマに引き続いてスクリーンに登場する『ディアスポリス -DIRTY YELLOW BOYS-』では、松田翔太と浜野謙太の凸凹コンビぶりが早くも話題に。兄・龍平とはまた違った魅力で、映画・ドラマなどに幅広く活躍する松田さん。auの人気CMの“桃ちゃん”こと桃太郎役でもお馴染みだ。一方、ミュージシャンとしても知られる“ハマケン”こと浜野さんも、NHK Eテレや「仮面ライダードライブ」のレギュラーに続いて、「とと姉ちゃん」、月9「好きな人がいること」に出演し、すっかりお茶の間の顔に。実写化不可能と称された伝説の漫画の映像化で、長年主演を熱望していた松田さんだけに、ひょうひょうとしながらも色気を放ち、複数の言語を操る“裏トーキョー”の警察署長・久保塚は実にハマリ役。浜野さん演じる、元エリートの“整形後”の姿・鈴木との息もぴったりで、舞台挨拶などからも伺えるイチャイチャぶり(?)には要注目。また、より身近な凸凹バディといえば、漫才コンビだ。映画『エミアビのはじまりとはじまり』では、人気絶頂のさなか、若手漫才コンビ「エミアビ」のツッコミ担当・“三枚目キャラ”の海野(前野朋哉)が突然の自動車事故で亡くなり、相方のボケ担当・“自称モテキャラ”の実道(森岡龍)は途方にくれる。しかも海野の車に同乗していたのは、恩人でもある先輩芸人・黒沢(新井浩文)の妹。マネージャーの夏海(黒木華)もふくめ、遺された者たちはそれぞれの再生を模索する。森岡さんといえば、渡辺謙作監督が脚本を務め日本アカデミー賞に輝いた『舟を編む』や、ドラマ「天皇の料理番」『彼岸島デラックス』などに出演、美大の卒業制作として長編作品を監督したこともある注目俳優だ。また、au CMの一寸法師としてもお馴染みの前野さんも、『桐島、部活やめるってよ』『秘密 THE TOP SECRET』など出演作多数、彼もまた学生時代から自ら監督を務めている。何かと共通点も、共演作も多い2人は、本作で本格的な漫才に挑戦!「エミアビ」として実際にM-1グランプリ2016にも参戦し、1回戦を突破した。“相方”とは、まさに魂の片割れ。「俺、海野がいないとダメなんです」とまで話す実道は、再び世間を笑わせることができるのだろうか…?このほか、来たる2017年も、横山裕(関ジャニ∞)が口だけは達者な建設コンサルタント、佐々木蔵之介がイケイケやくざという凸凹コンビを演じる、黒川博行の直木賞受賞作の映画化『破門ふたりのヤクビョーガミ』が1月に公開。関西出身の佐々木さん&横山さんによる丁々発止の掛け合いを、大阪出身の小林聖太郎監督がどう魅せてくれるのか、乞うご期待。そして、「相棒」は2クールにおよぶ連続ドラマに続いて、『相棒-劇場版IV-』が公開される。先日は、北九州市で約3,000人のエキストラが参加し、300m近くの通りを12時間も封鎖するという、シリーズ史上最大規模のロケが話題となっており、こちらも期待が高まる。海外作品でも、『ジャングル・ブック』の少年モーグリの対照的な“父親代わり”黒ヒョウのバギーラ&クマのバルー、『ゴーストバスターズ』で絆を深めた“ゴースト女子”のエリン&アビーをはじめ、好奇心旺盛な少女&やさしい巨人の名コンビ『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』、国も身分も超えた2人の天才を描く『奇蹟がくれた数式』、敏腕編集者と無名作家による『ベストセラー編集者パーキンズに捧ぐ』など、個性豊かなバディたちによる心揺さぶるヒューマン・ドラマが続々。これからも、アツい感動を届けてくれそうだ。(text:cinemacafe.net)
2016年09月12日「クリミナル・マインド」のDr.スペンサー・リード役でおなじみ、マシュー・グレイ・ギュブラーのインタビューを前回に続いてお届け。後編では、演出にも携わる“監督マシュー”の視点で語っていただきます。シーズン5を皮切りに、1シーズン1~2話の割合でエピソード監督を務めているマシュー。「子どもの頃から一番なりたかったのが監督」というマシューだけに、リードを演じるのと同じくらい、演出を楽しんでいるようです。「『クリミナル・マインド』の監督って、すごくやりやすいんだ。僕が監督志望なのを知っているから、キャストたちも協力的。僕はキャストたちのことをよく知っているし、彼らも僕をよく知っているから演技について話し合うのも上手くいくんだ。それに、僕が監督をするときは最高の彼らをカメラに収めたいと思って臨んでいるから、なかなかの出来だと思うよ(笑)」。マシューがこれまで演出してきたエピソードの中で、最も気に入っているのはシーズン8第10話「人形遣い」だそう。拉致された人たちが人間マリオネットにされてしまう「人形遣い」は、奇怪でホラー色の強いエピソードでした。「脚本家たちは僕の好みを熟知しているから、奇妙でクレイジーな物語を振ってくるんだ。面白いけど失敗するかもしれないエピソードができたとき、“よし、マシューに監督させよう!”となるんだろうね(笑)。そもそも、僕たちキャストはいろいろな決定の場にかかわらせてもらっているし、脚本家たちともすごく仲がいい。こうして監督するようになる前から、プロデューサーや脚本家たちの一部だったとも言えるんじゃないかな」。「僕は物語を語りたい。俳優としても語れるけど、監督の場合はよりパーソナルな視点で語ることができるし、カメラを向ける側にいると居心地がいいんだ」とも話すマシュー。敬愛する監督は、大林宣彦をはじめ、アルフレッド・ヒッチコック、コーエン兄弟、ジョン・ウォーターズ、トッド・ソロンズ、デヴィッド・リンチ、ウェス・アンダーソン、ヴィンセント・ギャロなどなど、「全員の名前を挙げるのは無理!」というほどたくさんいるそう。ちなみに、やはりマシューが監督したシーズン8第20話「錬金術」は、大林監督が70年代に手掛けた『HOUSE ハウス』に影響を受けているとのことです。では、マシュー監督の目に、今いる日本はどう映っている?最後に聞いてみました。「日本と僕の住むアメリカでは、光(日の光)が違うと思う。だから、すべての色がちょっと違って見えるんだ。それがすごく印象的。今日みたいな雨空も美しいね(※インタビュー当日はあいにくの雨でした)。僕は雨も大好きなんだ」。「クリミナル・マインド11 FBI行動分析課」は9月6日(火)よりWOWOWプライムにて放送中(第1話無料放送)。(text:Hikaru Watanabe)■関連作品:クリミナル・マインド/FBI vs.異常犯罪 [海外TVドラマ](C) ABC Studios and CBS Studios, Inc.クリミナル・マインド/FBI特命捜査班レッドセル [海外TVドラマ]
2016年09月11日