アイドルから女優に転身し、時には役に体当たりで挑みながら、お芝居の実績を積んでいる前田敦子さん。アイドル時代と同様、現在もオファーは途切れない。私生活では結婚、そして出産とハッピーな報告が続き、相変わらず注目の人だ。そんな前田さんが、初めて母親役を務めた主演映画『葬式の名人』が公開される。「樋口(尚文)監督から出演のオファーを受けた時、達筆すぎて読めないぐらいの情熱的なお手紙をいただきました(笑)。監督には数年前から映画のことについていろいろ教えてもらっていて、その“映画オタク”ぶりから、一緒にお仕事したら楽しいだろうなぁと思って、ぜひやらせてくださいってお返事しました」舞台は大阪府茨木市。前田さんが演じるのは、小学生の息子を一人で育てている雪子。ある日、高校時代の同級生だった吉田(白洲迅)が突然死んでしまうところから物語は始まる。同じ野球部で、吉田とバッテリーを組んでいた豊川(高良健吾)が葬儀屋と喧嘩したことで、彼らは母校で吉田のお通夜を行うはめに。なぜか消えた棺を捜して野球部の部室にたどり着いた雪子と同級生たちは、棺とともに一夜を明かすことになるが、いつの間にか寝てしまう。「目を覚ますと、有馬稲子さん演じる“見知らぬ女性”がいて、そのあたりから突然ファンタジー要素が濃くなってくる感じがすごく楽しくて、好きなシーンです。カメラの長回しで撮るシーンが山ほどあって撮影中は苦労したんですが、第三者からの目線のように撮っていたことを後から知って、そのうえで完成作品を観た時に納得。映画オタクの人たちが作った作品を、私も素直に面白い!と思えたことがうれしくて、興奮しました。すべての辻褄が合って、キレイに成立させる必要はない。映画ってこれでいいんだよな、映画らしいな、って腑に落ちて、すごく気持ちよかった。いい作品に関わることができて幸せだと思いました」25歳の時、一人の女性として考える時期があり、自ら初めて1か月の休暇をもらったという前田さん。「結局何もすることがなくて暇で、すぐにお仕事がしたくなった。それで、小さな役でも何でもいいからお芝居がしたいって事務所にお願いして。その結果、今年公開の出演映画は5本にもなりました。休暇は、何にも囚われずにその時もらった役をやるというスタイルは性に合っているかもしれない、と思えた、いいきっかけでした。私もオタクなのかも(笑)。これからも、映画らしい作品にどんどん関わっていきたいです」『葬式の名人』高校時代の同級生・吉田の訃報が届き、集まった友人たち。熱血漢の豊川が、最後に吉田を母校に連れていきたいと提案し、みんなで棺を担いで母校へ向かうが…。出演/前田敦子、高良健吾ほか9月20日より全国公開。©2018“The Master of Funerals” Film partnersまえだ・あつこ1991年7月10日生まれ、千葉県出身。AKB48の中心メンバーとして活躍し、2012年に卒業。今年は『コンフィデンスマンJP ‐ロマンス編‐』『旅のおわり世界のはじまり』含め5本の出演映画が公開。※『anan』2019年9月18日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・Ayaka.kヘア&メイク・熊谷美奈子インタビュー、文・若山あや(by anan編集部)
2019年09月11日「台本を読むと、そういや長塚、こんなこと書いてたなって懐かしくなって、楽しなってくるんですよ」と山内圭哉さん。NHK連続テレビ小説『あさが来た』やドラマ『獣になれない私たち』など、近年、映像作品に活躍の場を広げている。その戯曲とは、「30代の頃、しょっちゅう一緒に芝居を作っていた」長塚圭史さんが13年前に書いた『アジアの女』。大災害で壊滅した町に住み続ける兄妹と、彼らを取り巻く人々を描いた物語だ。「演劇の醍醐味がふんだんにある作品。稽古で生まれるものを大事にしたい」「3.11よりも前にこれを書いていたと思うと、すごい想像力ですよね。ただ、今回の演出家は吉田鋼太郎さんやし、長塚の顔を浮かべずに鋼太郎さんの稽古場で生まれるもんを大事にしたいと思てるんです」その吉田さんとも、10数年前に長塚さんを介して知り合った仲だ。「長塚に紹介されてお会いした数年後、飲み屋で偶然一緒になった時に、『余計なことせんでも舞台で食べていけるから舞台をやれ』って言ってくださって視界が開けたんです。そうやって、いつも自分の人生の重要なところに鋼太郎さんがいる。初めて共演した時には、本読みの段階から常に120%でくる鋼太郎さんと毎日対峙して稽古してるうち、自分の芝居が上手(うま)なってるのがわかって震えました。俳優としても演出家としても信頼されるのは、そういうとこなんちゃうかと思います」主演は石原さとみさん。その印象は、「自分のやりたいことがはっきりしていて、理想をちゃんと持った芯の強い人」。なんと今作の企画には石原さん自身も参加したとか。「人間って、どんなに悲しくても面白いことに遭遇したら笑いたなる。長塚の戯曲には、そういうことがふんだんに書かれているんです。でもそれは、稽古場で時間を過ごさないと見つけられないもの。それこそが演劇の醍醐味でもあるんで、一緒に見つけていけたらと思てます」『アジアの女』大災害で壊滅した町で、半壊の家に住み続けている兄(山内)と妹(石原)。そんななか、元編集者の兄を訪ねて、作家(吉田)がやってくる。彼は「自分に物語を書かせろ」と迫ってくるが…。9月6日(金)~29日(日)渋谷・Bunkamura シアターコクーン作/長塚圭史演出/吉田鋼太郎出演/石原さとみ、山内圭哉、矢本悠馬、水口早香、吉田鋼太郎S席9800円(税込み)当日券ありホリプロチケットセンター TEL:03・3490・4949やまうち・たかや1971年10月31日生まれ。大阪府出身。劇団新感線など人気劇団の舞台に数多く客演するほか、近年は映像作品にも数多く出演。出演映画『引っ越し大名!』が公開中。※『anan』2019年9月11日号より。写真・土佐麻理子インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2019年09月08日高校時代からの大親友、菅田将暉さん&仲野太賀さんが、映画『タロウのバカ』で共演。演じた役のように、焦燥感に駆り立てられた10代の頃や、二人だから知る素顔を伺いました。――大親友で知られる二人です。菅田:昨日も邦画を一緒に観に行きましたよ。仲野:その後は、将暉の家でガールズトーク(笑)。菅田:お茶会ね(笑)。――共演した映画『タロウのバカ』は、主演のYOSHIさんが16歳の新人ということで、二人はどう接しましたか?菅田:二人で決めたわけではないですけど、現場で相手をするのが太賀で、プライベートは僕って感じでしたね。仲野:僕は何もしてないです。2日目からYOSHIにNG出したんで(笑)。いや、彼はめちゃくちゃ人懐っこくて、こっちの領域にぐいぐい入ってくるんですよ。僕も自分のことでいっぱいいっぱいだったんで、「将暉、任せた!」と(笑)。もちろん、四六時中NGなわけじゃないですよ。僕が疲れてる時は将暉が、将暉が疲れてる時は僕が彼と遊んでました。菅田:一緒に走るとか。仲野:叫ぶとか。菅田:大森(立嗣)監督の作品を観たことないって言うから『光』を3人で観たり。YOSHIと同じくらいの子が出ているから、自分がスクリーンに出るってこういうことなんだって認識してくれたいい時間だった。仲野:2時間後には「日本映画楽しい!」って興奮してた。菅田:僕と太賀が、本番前にかかる「よーい!」の声で、スイッチ入れてギア上げるために、咳払いしたり軽くジャンプしたりするでしょ。ある日、YOSHIが肩回しながら「ゴホゴホッ」って始めたのが面白かった。仲野:YOSHIの中で“作為”が始まったよね。菅田:演じようという“作為”。仲野:YOSHIが入ったことによって、僕ら二人の結束も強まった気がする。菅田:次世代への責任感で結束したよね。あえて広げた話をすると、まともな大人にははみ出して見えるけど、自分の生き様を持ったYOSHIをどう受け入れるかが、日本エンタメ界の未来に直結している気がした。仲野:はみ出してる部分をまとめちゃうのが大人のやるべきことなのか、もっと行っちゃえと背中を押すべきなのか。いっぱい話したよね。菅田:そう。作品で描かれてる、何に対して焦ってるかもわからない感覚って、今でも少なからず残ってるんだけど、YOSHIを見てたら、僕は慣れちゃったとこがあるって痛烈に感じた。仲野:確かに、視界に映るものすべてに対して「ウ~ッ…」ってなるあの感じはどんどん薄まってる。でも、今思えば、あの頃に抱えていたやり場のない気持ちだったり、将暉への嫉妬なりが、自分の表現に繋がってるのかなとは思う。満たされていたら、役者として何かを体現したいとはならなかっただろうし。――仲野さんから見て、菅田さん演ずる柔道の道で挫折し自暴自棄になるエージと菅田さんご本人に共通点を感じましたか?仲野:基本的には別人だと思いますが、エージの“狂気”は温厚な将暉から出てきた、確かな感情だと思います。そういう一面を隠し持っているのかも(笑)。菅田:めちゃくちゃトンガってるヤツじゃん!恥ずかしい!――援助交際中の女の子への想いに苦しむスギオと、演じた仲野さんの共通点は?菅田:悩むと深いところまで潜っていくところ。太賀は、ぐるぐる試行錯誤するとこがある。仲野:さすが。よく見てる。菅田:なんか上からだな(笑)。僕は何も考えないから、太賀とはちょうどいいバランス。仲野:僕と将暉には、半径1メートルの世界があって、周りが思っている以上の友達関係。将暉の変遷を10年見てきたけど、外に向かって多くの人に将暉の歌が届いて、みんなと共有できることが喜びなんだよね。手放しに嬉しくて、気づいたら、「さよならエレジー」や「まちがいさがし」を鼻歌で歌ってる。菅田:音楽を教えてくれたのも太賀だし、ずっと一番近くで見てきてくれたからね。仲野:この気持ち、読者の方々に上手く伝わるかなあ…。『タロウのバカ』戸籍のない主人公タロウと仲間の高校生、エージとスギオ。それぞれに悩みを抱える3人は、偶然ピストルを手に入れたことから、過酷な現実に向き合うことになる。大森立嗣監督作。9/6よりテアトル新宿ほか全国公開。すだ・まさき(1枚目写真上)1993年2月21日生まれ、大阪府出身。11月、舞台『カリギュラ』に主演。アルバム『LOVE』の初回限定短編DVDで初監督、主演に仲野太賀を起用。ブルゾン¥58,000(オールド パーク/HEMT PR TEL:03・6721・0882)パンツ¥29,000(ダイリク/シック TEL:03・5464・9321)その他はスタイリスト私物なかの・たいが(1枚目写真下)1993年2月7日生まれ、東京都出身。雑誌『CUT』で菅田将暉との連載を継続中。来年の公開待機作に『静かな雨』『僕の好きな女の子』など。ジャケット¥42,000パンツ¥32,000(共にフィグベル/プロッド TEL:03・6427・8345)ベスト¥93,000(ナマチェコ/エムエイティティINFO@THE‐MATT.COM)その他はスタイリスト私物※『anan』2019年8月28日号より。写真・森山将人(TRIVAL)スタイリスト・伊藤省吾(菅田さん)石井 大(仲野さん)ヘア&メイク・AZUMA(M‐rep by MONDO‐artist/菅田さん)高橋将氣(仲野さん)インタビュー、文・小泉咲子(by anan編集部)
2019年08月24日高校時代に年上ばかりの地元劇団で演劇を学び、上京後は、親の反対を押し切って大学を中退してまで俳優への道を模索し続けた磯村勇斗さん。その夢を叶えたいま、彼の思うこととは。自分の夢はもっと上。いまはまだその途中です。朝ドラ『ひよっこ』での優しく爽やかな好青年から一転、ドラマ『今日から俺は!!』では、目つきが悪く非道な不良高校生を演じ、そのギャップに驚いた人も多かったはず。最近では、『きのう何食べた?』で演じた、マッチョな彼氏を振り回す小悪魔“ジルベール”役も話題に。作品ごとに違う顔を見せる磯村勇斗さん。次回作は、なんと初のミュージカル。舞台『プレイハウス』で演じるのは、幼少期からモテまくってきたカリスマホスト。――まずは、目前に控える初のミュージカルについて伺えますか。磯村:自分がミュージカルをやるイメージがなかったので驚きましたけれど、ひとつ挑戦の場所だなと思っています。作・演出の根本宗子さんとは今回が初ですが、何を考えているか読めない、独自の世界観を持っていらっしゃるように感じます。隙を探られているような、見透かされているような…。――歌はお好きだったんですか。磯村:全然。好きでもないし、嫌いでもなくて。友達とカラオケに行くことはありますが、人前で歌うということはしてこなかったので、どういうことになるのか、いまはまったくわからない状態です。――今回演じる役が、モテてモテて仕方ない男だそうですけど…。磯村:僕が根本さんに幼稚園の頃のモテエピソードを話したので、そこから繋がっているのかもしれません。僕のモテ期のピークが幼稚園時代で、園の女の子を全員並ばせてキスしてたっていう(笑)。いまじゃ味わえないような、まさにホスト状態ですよね。――きっと「そんなことないです」とおっしゃられると思うのですが、幼稚園がピークと言いつつ、ずっとモテ人生でしたよね。磯村:そんなことないです(笑)。小学生の時に、イケメンの男の子がいて、その子と張り合っていた記憶はあります。誰々と誰々は、くんのことが好きだけど、あの子は俺のことが好きだから、俺の方がひとり多いな、とか考えたりして。小5~6くらいの頃ですけど。――中高の頃は?磯村:その時期はバスケットに夢中になっていたんで…。でもまあ、中学生の頃は、試合があると他校の女子から黄色い声援はもらっていました。ただ、中高になると、幼稚園や小学校の頃のモテとは感覚が変わってて、ちょっと照れもあったりして。気になる子がいても、自分からオラオラ行けるような感じではなかったので、どうやって話しかけようかとか、連絡先を交換するのにも躊躇したりして。――でも、磯村さんの存在は、他校にまで轟いていたんですね。磯村:そうですね…すみません(笑)。――俳優を目指したのは、そういったことも理由に?磯村:それはなかったですね。僕、モテるから俳優になろうっていう気持ちはまったくなくて。中学の時に友達同士で映画を作ったことがすごく楽しくて、純粋に俳優って面白いな、もっとやってみたいなって思って。その時はまだ軽い気持ちでしたけど。――でも、そこから俳優への夢を諦めることなく切り拓いていったわけです。ここまで順風満帆ではなかったのに、その夢を持ち続けてこられたのはなぜなんでしょう。磯村:なんでしょうね…。デビューして5年になりますが、それより前… 10何年ずっと思い続けていたわけです。この世界を見てみたい気持ちと、もちろん有名になりたいというのもあったと思います。マイケル・ジャクソンのライブ映像を見た時に、あれだけの影響を与えられる人にどうしたらなれるんだろうって思ったのは覚えています。もともと、こうと決めたら、とことんやらないと気が済まないっていうところはありましたけど熱しやすくて冷めやすい。でも、この俳優だけは、冷めることなく突き通してきたんですよね。――いまその夢が叶えられている状況をどう思っていらっしゃいます?やったー、みたいな…。磯村:やったーっていうのはないですね。当時の自分が見ていた夢はもっと上のすごいところにあって、いまはまだその途中なので、まだまだがんばらなきゃなっていう。この仕事にはゴールがないし、正解もないんです。この仕事を続けている限り、その状況は変わらないし、やり続けなきゃいけないですし。もちろん、作品が撮り終わって、放送を見て解放感に満たされるみたいなことはありますけど。――ここまで本当に役の振り幅が大きいですよね。磯村:どんな役でも挑戦したいっていう気持ちなんです。――とくにやっていて面白かった役はありますか?磯村:どの役も、役作りしている間が面白いし楽しいですね。だから、そういう意味でいうと、役作りが必要な役ほどやり甲斐を感じているのかもしれません。――これまでに役作りが難しかった役はありますか?磯村:ジルベールに関しては、同性愛者の役が初めてだったので、その感覚がどういうものか、調べたり、人から聞いたりして、結構勉強しましたね。あと、『今日から俺は!!』では、極悪な人物ってどういう人なんだろうって思って、そういう資料を結構漁ってました。――映画やドラマを参考にされることが多いんですか?磯村:作品も好きですけれど、どちらかというとリアルを知りたくて、役作りに関しては、本とか新聞とか、映像でもインタビューとかドキュメンタリーを見るようにしています。実際に、どういう表情で、どういうしゃべり方をするのか、そこに興味があるんです。――役作りは、普段からそうやってされているんですか。磯村:役にもよりますけれど、自分にないものはインプットするしかないなって思って。それは高校…じゃないな…小劇場をあちこち回っていた時に見つけた方法です。主演舞台PARCOプロデュース2019『プレイハウス』は、8月25日(日)~9月1日(日)東京芸術劇場 プレイハウスで上演。作・演出は根本宗子さん。磯村さんと主演を務めるのは、異色アイドルグループ・GANG PARADE。磯村さんにとっても根本さんにとっても今作が初のミュージカルに。パルコステージ TEL:03・3477・5858いそむら・はやと1992年9月11日生まれ。静岡県出身。2015年に『仮面ライダーゴースト』で注目され、‘17年の朝の連続テレビ小説『ひよっこ』のヒデ役で人気に。近作に、ドラマ『今日から俺は!!』『きのう何食べた?』など。現在、出演ドラマ『サ道』(テレビ東京)、『TWO WEEKS』(カンテレ・フジテレビ系)が放送中。シャツ¥32,000(フランク&アイリーン/サザビーリーグ TEL:03・5412・1937)パンツ¥14,800サンダル¥18,000(共にアバハウス/アバハウス 原宿 TEL:03・5466・5700)※『anan』2019年8月28日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・齋藤良介ヘア&メイク・佐藤友勝インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2019年08月24日新海誠監督の大ヒット作『君の名は。』で、主人公の瀧を演じた神木隆之介さん。新海映画をこよなく愛する神木さんが、愛情溢れる解説を披露してくれました!取材現場に現れた神木隆之介さんの傍らには、小さなノートが。「大好きな新海作品について語るので、昨日の夜、いろいろ観直して予習してきたんです(笑)」と言う神木さんは、自他ともに認める筋金入りの“新海誠マニア”。魅力を語り始めると、とにかく言葉が止まりません!「最初に監督の作品を観たのは高校生のときです。レンタルビデオ店に並んでいたパッケージの美しさに惹かれ、『秒速5センチメートル』を借りたのですが、始まって数秒で、なんだこの世界観は!!とノックダウンされました。こんな美しく描かれた世界にもっと浸りたい…と思い、そのときに観られる新海作品を一気に観ました」入り口は絵の美しさでしたが、観続けていくうちに、セリフの内容や言い回しのリアリティ、人間を描く深さ、そして日常音の美しさなど、魅力を発見してはますますハマっていったそう。「僕が思うに新海監督は、きっと心にずっと空洞があって、そこを埋めるための何かをずっと探しているのかな、と思います。その、どこか満たされていない状況は寂しくて切なくて儚いのですが、そこに監督が憧れているロマンがあるような気が…。『ほしのこえ』からずっと、一貫してその雰囲気を感じますね」ここでは、お話に出てきた『秒速5センチメートル』、『ほしのこえ』、そして主人公を演じた『君の名は。』の見どころを神木さんが熱く解説。神木さんの溢れる愛を汲み取りながら、お楽しみください!『ほしのこえ』(2002年)2046年、同じ中学で同じ部活に所属する、同級生のミカコとノボル。淡い恋心を感じていた二人だったが、中3の夏、ミカコは国連軍の選抜メンバーに選ばれ、宇宙に旅立つ。高校に進学したノボルは、遠く離れたミカコと携帯メールで通信をするのだが、ミカコが太陽系の深淵に向かうに従い、メールのやりとりにかかる時間が、数日、数週間、そして年単位…と開いていく。「宇宙と地上に引き裂かれる恋人の話です。監督の第1作ですが、後の作品に脈々と引き継がれていく、新海さんの核みたいなものが描かれている作品だと思う。宇宙にいるミカコとノボルの間には、想像もできないほど遠い距離があって、メールがどんどん届かなくなっていくわけですが、強く思えば思うほど、二人は遠く離れていくんです。すごく切ない、悲しい恋物語。繊細で儚くて、でもだからこそとても美しい。実はこの作品も、登場人物と天気が大きく関わっていて、彼らの心情で雨が降ったり、入道雲が発生したりするんです。『天気の子』にも通じますよね。監督の描きたいものにブレがないんだなと、観返して改めて思いました」『ほしのこえ』第1作は、監督、脚本、演出、作画、美術、編集のほとんどを一人で手がけた完全個人制作アニメ。オリジナル版はノボルの声を新海監督が務めている。ミニシアター1館での公開ながら、1か月で約3500人の観客動員が。声の出演/武藤寿美、鈴木千尋25分DVDサービスプライス版¥2,286(発売:コミックス・ウェーブ・フィルム)©新海誠/コミックス・ウェーブ・フィルム『秒速5センチメートル』(2007年)東京に住む小学生のタカキとアカリはお互いに想い合う仲。しかし卒業後、アカリが栃木へ引っ越して二人は離れ離れに。さらに中学生になったタカキは鹿児島に転校が決まる。遠くに引っ越す前にアカリに会おうと決め、大雪の中タカキは栃木に向かう。時は過ぎ、種子島で高校生活を送るタカキは、同級生からの想いを知りつつ、遠くにある何かを見つめていた。後日、東京で社会人になり、タカキは仕事に追われて疲弊する中で、忘れかけていた一人の女性のことを思い出す。「物語は〈桜花抄〉〈コスモナウト〉〈秒速5センチメートル〉の3章から成り立っていて、僕は最終章が一番好きです。タカキはアカリの面影を求め、彼女に似た女性と付き合うんですが、過去を思い出にできず、関係は破綻します。その、タカキのダメな感じが、だらしない生活ぶりから強く伝わってきて、特に部屋の中で空き缶が転がるシーンの音と描写がとにかく秀逸。何かを追い求めているんだけれど、それが何なのかわからない。タカキのその感覚は、僕にも重なるところがある。最終章の彼の言動を見るたびに、なんとも言えない気持ちになります」『秒速5センチメートル』題意は、作中でアカリが「桜の花びらが舞い落ちる速度」と言う。惹かれ合っていた男女の時間と距離による変化を、3章の連作で描く。海外でも、アジアパシフィック映画祭の最優秀アニメ賞など、映画賞を受賞。声の出演/水橋研二、近藤好美、尾上綾華1時間13分DVD通常版¥3,800(発売:コミックス・ウェーブ・フィルム)©新海誠/コミックス・ウェーブ・フィルム『君の名は。』(2016年)1000年ぶりとなる彗星の来訪を控えた日本。東京に住む男子高生の瀧はある日、山奥の田舎に住む女子高生・三葉になる夢を見た。一方、三葉は瀧になる夢を見た。二人とも「変な夢」と思うが、この妙にリアルな夢は繰り返される。抜け落ちた記憶、不思議な時間感覚…。「もしかして、入れ替わってる?!」と気がつく二人。奇妙と思いつつも二人なりのやり方で協力し合い、瀧と三葉は打ち解けていくのだが…。「それまでの作品と比べると、とにかくテンポが速いです。それからコメディシーンがあるのも、過去の新海作品にはない新しい側面かも。コメディ要素を盛り込みながら展開の速い作品ですが、登場人物の心情をしっかり丁寧に描いているところはさすがです。観てほしいところは…やっぱり二人が入れ替わっているシーンかな。瀧くんの中に三葉が入っている場面は、僕はちょっと内股で演じていましたし、三葉を演じた(上白石)萌音ちゃんは、逆にガニ股になっていたのを覚えています。最先端のCG技術を使った映像がとにかく美しく、RADWIMPSの音楽と一体化したときのエンタメ感は、本当に素晴らしい」『君の名は。』日本における邦画の興行収入第2位という大ヒット作。世界100以上の国と地域で公開され、世界興行収入が日本映画として歴代1位になった。RADWIMPSが映画音楽を担当したことも話題に。声の出演/神木隆之介、上白石萌音、長澤まさみ1時間47分DVDスタンダード・エディション¥3,800(発売、販売:東宝)©2016「君の名は。」製作委員会かみき・りゅうのすけ1993年生まれ、埼玉県出身。俳優として、また声の出演でも数多くの作品に参加。公開待機作に、『屍人荘の殺人』(今年12月公開)、『Last Letter』(’20年公開)が。※『anan』2019年8月7日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)取材、文・河野友紀(by anan編集部)
2019年08月14日新海誠監督の最新作・映画『天気の子』において、ピュアでまっすぐな主人公・森嶋帆高(ほだか)とヒロイン・天野陽菜(ひな)を演じた2人組、醍醐虎汰朗さん&森七菜さんの対談をお届けします。――オーディションで役を掴んだそうですが、オーディションではどんなことをしたのですか?醍醐:1次審査は、自分の声をスマホのボイスメモに録って、それを送りました。森:そのあと、2次審査はスタジオに呼んでいただいて、絵コンテに合わせてセリフを言うんですが、アニメってとにかくテンポが速くて、それが想像以上だったんです。新海さんがお相手をしてくださったんですけれど、ものすごく難しかったです。醍醐:3次審査のとき、七菜ちゃんと一緒に声を入れたんですけれど、すごく掛け合いが気持ちよかったんです。しかも、なんていうのかな、うまいというよりも…、素敵な感じだった(笑)。森:なにそれー(笑)。醍醐:褒めてるんだって!(笑)終わったあとマネージャーさんに、「陽菜役はきっと七菜ちゃんだと思います」って話してたんです。森:実は私も3次で醍醐くんと共演したときに、演技の間合いとか、テンポが心地よくて、相性いいなって感じてました(笑)。もしこの役をやるなら、相手は醍醐くんがいいなと思ってた(笑)。醍醐くんが帆高を演じるのを聞いてると、“あ、これが帆高だ”って感じがしたんです。うまく説明できないけど、そんな気がした(笑)。――新海監督の作品は、監督が吹き込んだセリフが入ったV(ビデオ)コンテがあるわけですが、まずそれを聞いて、役作りをするんですか?醍醐:はい。実際に演技したものを見本にできるのでわかりやすくて、ありがたいお手本というか、道標でした。でも同時に、監督の演技がすごすぎて、これを超えていかなきゃいけないのかっていうプレッシャーもありましたね。森:私も監督が吹き込んだセリフをずーっと聞いていたので、初めて自分の声を聞いたとき、「え、こんなの陽菜の声じゃない!新海さんの声のほうがしっくりくる、どうしよう…」って落ち込みました。でも、初めてのアフレコで、技術的にはまだまだだけど、気持ちの部分だけでも監督の演技を追い越したいって思って、1か月頑張ったのを覚えています。――声だけで演技をするのは初めてだったと思いますが、やってみて、どうでした?醍醐:難しかったし、でもおもしろかった。その2つはセットなんだな、と思いました。森:うんうん。醍醐:例えば、走っているときのシーンは、普通の演技だったら実際に走りながら演じるわけですが、アフレコは、マイクの前で息遣いだけでそれを表現しなきゃいけない。どう演じたらいいのか僕はわからなかったので、とりあえずスタジオの周りをぐるっと一周走って、本当に息切れした状態でアフレコしてみたり、かなりいろんなチャレンジをさせてもらいました。演技をしながら、わからないことを一つ一つ勉強させてもらうのが、とても楽しかったです。森:私が難しかったのは、“顔”の演技をしているのは映像に描かれた陽菜で、私はその陽菜の気持ちに完全に寄り添って演技をしなければいけないこと。声に自分の感情を全て乗せるっていうことが、頭ではわかっているんだけど、なかなかできなくて…。でもあるとき、思い切って全ての気持ちを乗せてみたら、やっとリミッターが外れて。自分の表現の幅が広がった気がして、そこからより楽しくなったのを覚えています。――アンアンを読んでいるのは主に二人より少し年上の世代なんですが、最後に、そんなお姉さんたちに見どころを教えてください!森:えー!?お姉さんたちに!?えーと、もし私が社会人だったら、仕事のあとにレイトショーで観に行ったら気持ちよくなれる映画だと思うので、観終わったあとぜひおうちでアロマキャンドルをたいて、余韻に浸ってほしいです!はい、次、醍醐くん!醍醐:えーと…、観終わったあと、愛についてとか、好きな人についてとても考えたくなる映画だと思います(照れ笑い)。あ、あと、風景と音楽のコラボは本当に素晴らしいので、爽快感を味わいに、ぜひ劇場に行ってください!!もり・なな2001年生まれ、大分県出身。’17年に女優デビュー。公開待機作に『最初の晩餐』『地獄少女』(共に11月)、岩井俊二監督映画『Last Letter』(’20年)など。だいご・こたろう2000年生まれ、東京都出身。’17年から映画、ドラマ、舞台で活躍。舞台『弱虫ペダル』で主演に抜擢され、話題に。今秋には演劇『ハイキュー!!』に出演予定。『天気の子』家出少年の帆高と、天気を操り、晴れにできる不思議な能力を持つ少女・陽菜が、東京の歌舞伎町で出会う。天気の調和が狂っていく時代の中で、運命に翻弄される少年と少女が生き方を“選択”する、切なく美しい愛の物語。全国東宝系で公開中。©2019「天気の子」製作委員会※『anan』2019年8月7日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)スタイリスト・井上 亮(BVC/醍醐さん)申谷弘美(森さん)ヘア&メイク・大泉直人(醍醐さん)佐藤 寛(森さん)(by anan編集部)
2019年08月04日今、注目の女の子を紹介する『anan』で連載中の「イットガール」。今回は女優の祷キララさんです。「めっちゃ早口のバリバリの大阪人。名前は本名です!」とご本人。その素顔に迫りました。人生をかけて芝居に向き合う、映画界で注目の新鋭女優。わずか9歳でスクリーンデビューを果たし、女優として生きる決意したのは17歳の頃。「あるオーディションを受けた時、瞳の動きなど本当に些細なことで、シーンの空気が変わるのだと実感。その奥深さに惹かれ、人生をかけてお芝居をやりたいと思うようになりました」。今夏はヨーロッパ企画の作品に出演。「舞台は観客と演者が一緒に作る感覚があって面白い。初舞台を経験した時、お客さんの拍手を聞きながら“ああもう、どうなってもいいや!”と思うくらい幸せでした。今回も楽しみです」頑張った日はご褒美に銭湯へ。最近水風呂に入れるようになり、サウナ水の温冷浴にハマっています。中学校の部活以来!フルートが再燃。この間友達と音楽スタジオを借りて吹いたら、めっちゃ楽しかった稽古場に住み着くかわいい子!ごはんは受け取るけど、撫でられたくはないみたい。心開いてほしい(笑)。いのり・きらら2000年生まれ。8月3日より上演のヨーロッパ企画第39回公演『ギョエー! 旧校舎の77不思議』に出演。主演映画『左様なら』が9月6日よりUPLINK吉祥寺ほかで公開。※『anan』2019年8月7日号より。写真・土佐麻理子文・間宮寧子(by anan編集部)
2019年08月02日ふくだももこ監督『おいしい家族』に出演する松本穂香さんに、映画の見どころ、撮影秘話についてお聞きしました!「映画の主演は初めてで、私でいいの?という気持ちはありつつも、脚本を読んだらとても面白くて。この作品に出られるっていうのが、すごく嬉しかったんです」舞台はとある島。松本穂香さん演じる橙花が久々に帰省すると、「母になる」と宣言した父が待っていた。そんな意表を突く始まりながら、最後には心温まる物語。その指揮をとったのが、新進気鋭のふくだももこ監督だ。監督は、松本さんのことを“妹みたい”と話すほど、意気投合した模様。「新鮮でした。20代の監督はいても、お会いするのは男性が多くて。年齢が近い女性監督とはお会いするきっかけがなかったので。ふくだ監督はストレートに物事を伝えてくれるから、私も素直に応えられました。でも、お姉ちゃん感はないかな(笑)。いい意味で抜けていて、姉よりいとこですね」とはいえ、親交が深まったのは映画の完成後。撮影中は適度な距離感があり、それは演じた橙花という役に没頭していたから。「ツンツンした役柄もあり、私が現場に一番馴染んでなかった。正直、監督とコミュニケーションをとった記憶もなくて(笑)。毎回、役に必死になってしまうんです」撮影中は、ドラマの役作りも並行して行っていた。それほど役に没頭するなら、さぞ大変だと思いきや、当の本人は涼しい顔。「作品によって場所も人も違いますし、衣装やメイクも違うから、自然とそうせざるを得ないんです。自分で役を切り替えるというより、周りのみなさんに作ってもらっている感じが強いですね」監督のアドリブにも全力で対応。それは、「純粋に面白いものが好きだから」とも。「やらない手はありません。面白いと思うことには乗っかっていきたいんです。でも最近コント番組に出演させていただいて、人を笑わせることが一番難しいと気づいて。前は舐めてかかってたんだなって(笑)。難しいからこそ好きでもあるんですけどね」この松本さんの言葉のように、“好きなことには正直でいてもいい”。この映画には、そんなメッセージが込められている。「私は、好きなことは好きと言える性格。でも、もし好きな人の嫌いなことが好きだったら…。大きな声で言えるかはわからないけど(笑)、好きと言うことは間違ったことではないと思うんです。好きなことに一生懸命でいることは素晴らしいことだと、改めてこの作品が気づかせてくれました」『おいしい家族』夫と別居中の橙花が、母の三回忌で故郷の島に戻ると、亡き母の服を着て出迎える父・青治(板尾創路)の姿が。最初は受け入れられない橙花だったが…。好きなものを今まで以上に大切にしたくなる作品。監督・脚本/ふくだももこ出演/松本穂香、板尾創路、浜野謙太ほか9月20日より全国公開。©2019「おいしい家族」製作委員会まつもと・ほのか1997年2月5日生まれ、大阪府出身。連続テレビ小説『ひよっこ』で注目を集め、その後続々とドラマやCMに出演。映画『わたしは光をにぎっている』が年内公開予定。ワンピース¥34,000(Y.M.Walts/MARVIN&SONS TEL:03・6276・9433)バレッタ¥7,000(NORTH WORKS/UTS PR TEL:03・6427・1030)その他はスタイリスト私物※『anan』2019年8月7日号より。写真・杉江拓哉(TRON)スタイリスト・李 靖華ヘア&メイク・尾口佳奈(KOHL)取材、文・野村紀沙枝(by anan編集部)
2019年08月01日彼はいったい、いつ休んでいるのだろうか…そう思わずにはいられないほど、人気作に立て続けに出演している中村倫也さん。ただ、ここまでの道のりは決して平坦ではなく、悩み続けた日々も。足踏み状態から前進するための、中村さん流の突破口の見つけ方。中村倫也さんの快進撃が止まらない。昨年のNHK連続テレビ小説『半分、青い。』で演じた、ゆるふわ男子・マアくんで幅広い女性の心を捉え、昨年のYahoo!検索大賞を俳優部門で受賞。今年に入ってからも、主演した舞台『クラッシャー女中』のチケットが即完売。オーディションで選ばれ吹き替えを担当した映画『アラジン』は、観客動員記録を伸ばし続けている。しかし、以前のインタビューでは、自ら「デビューして10年くらいは売れなかった」と語っていたりも。そんな中村さんが思うブレイクスルーポイントとはどこだったのだろう。「自分のなかで、ここだって言えるような具体的なものはないんです。ただ、もともと頭でっかちなタイプで、20代前半の頃は悩んでは立ち止まり、悩んでは立ち止まりを繰り返していました。考えて考えて結論を出して動いてみるんだけどダメで、また考えてって。堂々巡りでしたね」当時のそんな中村さんを受け止めてくれていたのは、古田新太さんや堤真一さんといった、舞台や映像など、さまざまな現場を渡り歩いてきた実力派の先輩俳優たち。「相談というより、『聞いてくださいよ~』っていう会話の流れで、その時にあれこれ思っていることを一方的に投げていた感じです。僕が実際にそうなんですけれど、後輩とかから『相談があるんです』ってストレートに来られた場合、スーパー真面目に聞かなきゃいけなくなるじゃないですか。たとえば先輩方に聞いてもらって、向こうから『アホか』っていう反応が返ってくれば、この感覚はアホなのかって気づけるんですけれど、真剣に相談されたら、きっとそうは返せないですよね。先輩たちからはよく、『そんなことは、まだ考えなくっていいんだよ』って言われてましたね」具体的にどんな話を?と尋ねると「日本の少子化とか、政治経済とか」と、いったんはぐらかしてから、少し間を置いて、「表現者としての感覚の話ですよ。しょうもないんで、具体的には言わないですけれど…(笑)」と。中村さんの前に立ちはだかる大きな壁となっていたのは、プライドと自意識。その突破口は、「自分の才能のなさを認めること」だった。「自分には他の人とは違う何かがあるはずだって、子供っぽい思いと馬鹿な野心と夢を持っていたんです。でも、いくらやっても全然注目されないわけですから、自分でも薄々は気づくんです。自分が本当に“持っている人”だとしたら、最初っから周りが放っておかなかったってことは。でも、認めるのが怖くて、そんなはずはないって必死に思い込もうとしていたんですよね。だって、認めたら身にまとっている鎧がなくなって、裸の自分が晒されてしまうから。でも、認めないと先に進めないんだって20代後半に気づいてからは、ダメな自分とちゃんと向き合って呑み込んで、咀嚼して栄養にしていまがあるんです」何でもないことのように、さらりとした口調で語るけれど、その心境に至るまでの過程では、回り道もしながら苦しんだよう。「しばらくは、自分から目を背けるために、飲み会とかに行っていたんです。でも、いつまでもこうしていても意味がないし、きっちりと落とし前をつけないことには前に進めないって肚を決めて、目の前に机をガンッて置いて、自分と対話する時間を設けたんです。それこそ、1週間くらいはろくに外にも出ずに、暗い部屋にずっと籠もって自分と向き合っていた気がします。すごく体力がいる作業だったし、鎧を脱ぎ捨てた姿に馴染むまでには、しばらくぎこちなさもありましたけれど、楽にはなりましたよね」そこからは、どんな仕事に対しても、これまでのキャリアや実績に驕ることも寄りかかることもなく、毎回、真っさらな姿勢で臨むようにしてきた。自分の心構えが変わると、自然と周りから向けられる視線も変化してきたそう。「僕が幼稚園の時に友達と砂の山を作って遊んでいたら、その友達のお兄ちゃんが来て、『もっと大きい山を作ろうよ』って、僕らが作った砂の山を足で踏んだんです。なんでそんなことするんだろうって思ったけれど、小さな山を一回踏んで、広い土台を作って、その上に砂を積んでいったら、すごく大きな山ができた。それと似てる気がするんですよね。若い頃にいろいろ試行錯誤をしながら積んだ山を、一回踏んで潰して、再スタートじゃないけれど、そこからまた積み直している感じ。もしかしたら、またどこかで一回踏み潰さなきゃいけない時期がくるのかもしれませんけど(笑)」なかむら・ともや1986年12月24日生まれ。東京都出身。出演しているドラマ『凪(なぎ)のお暇(いとま)』は、毎週金曜夜10時から、TBS系にて放送中。中村さんは、主人公・凪(黒木華さん)の謎の隣人・安良城ゴンを演じている。ブルゾン¥32,000シャツ¥25,000パンツ¥29,000(以上CULLNI/Sian PR TEL:03・6662・5525)その他はスタイリスト私物※『anan』2019年7月31日号より。写真・樽木優美子(TRON)スタイリスト・戸倉祥仁(holy.)ヘア&メイク・Emiy取材、文・望月リサ(by anan編集部)
2019年07月28日ドラマ『3年A組―今から皆さんは、人質です―』で、教師と内通していた出席番号1番の生徒を演じ、人気上昇中の萩原利久さん。今夏、アーデンの森を舞台に、青年と前公爵の娘の恋愛模様を描いたシェイクスピアの恋愛喜劇『お気に召すまま』に挑む。シェイクスピア作品というと、やはり難解?「自分の中になかったものを表現したい欲が出てます」「僕も、“シェイクスピア=難しい”という固定観念を持っていたひとりでした。実際、聞き慣れない言葉もあって、簡単ではありません。でも、描かれている感情や欲はとてもシンプル。今回の翻訳では隠語もあって、いろんな解釈ができます。でもこれが正解ということはないので、感じたままを受け入れてもらえたら」演じるのは、羊飼いの娘に猛烈にアタックする羊飼いシルヴィアス。「これ以上ないくらい、欲望むきだし!僕が現代の日本であそこまで欲望のまま動いたら、絶対に嫌われてしまいます(笑)」満島ひかりさん、坂口健太郎さんと豪華なキャストにも注目が集まる本作品。その誰しもが稽古場では「可能性を探し続けている」そう。「僕以外の皆さんからは、初日からアイデアがポンポン出てくるんです。そうした刺激的な場にいると、自分の中になかったものを表現してみたい欲が出ますね。そしてすごく自由。失敗が怖くなくなったことがすごくありがたいです」20歳を迎えて、お酒を嗜むようになった萩原さん。特に酌み交わしてみたい共演者は?「(満島)真之介さん。二人ともNBAが好きだから、一回ぐいっと深いところまで話したい。僕、興味あることに対しては絶対に負けたくないんで、自分より知識があったらものすごく悔しいだろうな(笑)」はぎわら・りく1999年2月28日生まれ、埼玉県出身。’08年デビュー。’15年、『イノセント15』で映画初主演。『帝一の國』などにも出演。映画『アイネクライネナハトムジーク』が9月20日公開予定。『お気に召すまま』オーランドはロザリンドと恋に落ちるが、兄オリバーに命を狙われアーデンの森に逃げる。そこでは人間のあらゆる欲望がうごめいていた。7月30日(火)~8月18日(日)※追加公演も決定東京芸術劇場プレイハウス演出/熊林弘高出演/満島ひかり、坂口健太郎ほかS席8500円*税込み東京芸術劇場 TEL:0570・010・296※『anan』2019年7月31日号より。写真・小笠原真紀インタビュー、文・小泉咲子(by anan編集部)
2019年07月26日芸能生活20周年を迎えたベッキーさん。さまざまな経験を経てきた中で、いくつもの壁を乗り越え、今日の彼女はより輝いて見える。自身の感情との向き合い方や、支えになる言葉など、突破口を開くカギを語ってくれました。「昔は、悩んでいる時間は無駄、足踏みでしかないから前進あるのみ!って思って生きていたんです。せっかちなところもあったし、だからとにかく前へ、前へ。でも元々そういう性格だったのかと言われると、実はそうでもなく。“ポジティブ癖”をつけるべく、一生懸命トレーニングをしていたんじゃないかと今は思います」14歳でデビューし、今年35歳になったベッキーさん。数か月、仕事を休んだことをきっかけに、そこからマインドが大きく変わったと言います。「ドン底に落ちたと思いましたが、そこで何かのせいにはしたくなかった。私はまだやりたいこともあるし、何よりこの仕事が好きなんです。でも私がいくらその気持ちを叫んだところで、“鬱陶しいよ、その熱い気持ち…”って言われてしまう状況だったのも事実で。でもそのとき、色んな人に言われた言葉がとても大きな支えになりました。“待ってるからね”とか、“あなたはきっと大丈夫”とか。なかでも、そのとき(笑福亭)鶴瓶さんが電話でおっしゃってくれた、“これからはていねいに生きなさい”という言葉は、今でも私の心の支えであり、宝物です」ベッキーさんが考える“ていねい”とは、相手の気持ちを大切に、心を込めて接すること。「自分中心ではなく、相手が求めているものは何かをもっと深く考え、バラエティでも芝居の仕事でも、真心を込めてやらなければならないと、心を改めました」そんな気持ちのなか、’17年11月、放送作家の鈴木おさむさんが手がける舞台に出演。この経験が、彼女の中で大きなターニングポイントになったそう。「12年ぶりくらいに、舞台で主演をやらせていただいたんですが、私はここで、芝居というものとの向き合い方はもちろん、“魂を込めて演技をする”ということを学ばせてもらいました。本番直前におさむさんに客席に呼ばれて、“たぶんセリフじゃなくて、ベッキーの魂を通した言葉をみんなは待ってるんだと思うよ”と言われたんです。その芝居は、役の設定もセリフも、当時の私にはキツいものがあったんですが、そこで魂を込めてセリフを言うことの大切さを改めて知ることができた。鶴瓶さんの言葉と、おさむさんとの仕事。あの頃の私にとっては、その2つが突破口を開く大きなカギになりました。ここ数年は、私にとって一つ一つの仕事が今まで以上に勝負なので、その言葉を胸に、心を込めて仕事に向き合うようにしています」ベッキータレント、女優。1984年生まれ、神奈川県出身。バラエティ番組やドラマ、映画などで活躍中。来年公開予定の三池崇史監督映画『初恋』に、マフィアの彼女役で出演。今年の年末には個展を開催予定。ワンピース¥69,000(サヤカ デイヴィス/ショールーム セッション TEL:03・5464・9975)ピアス¥68,000(アグメス/ザストアバイシー代官山店 TEL:03・5459・6392)サンダルはスタイリスト私物※『anan』2019年7月31日号より。写真・的場 亮スタイリスト・仮屋薗寛子ヘア&メイク・秋鹿裕子(W)(by anan編集部)
2019年07月24日キネカ大森先付ショートムービー『もぎりさん』で主演を務める片桐はいりさんに、お話を聞きました。映画館に行くのがもっと楽しくなる、チャーミングなショートムービー。本編が始まる前に流れる、1編約2分の、キネカ大森先付ショートムービー『もぎりさん』。映画館を舞台に、スタッフと観客の珍エピソードやら妄想やらを盛り込んでおり、片桐はいりさんは、主役の映画館スタッフ・藻霧さんを演じている。「お通し感覚?というか、『映画館に来てみたら偶然こんなん観られて面白いね』と思ってもらえたらいいなという気持ちで作ったんです」キネカ大森は、片桐さんの地元にある映画館で、ときどきチケットのもぎりを買って出るほど縁の深い場所。昨年、改装するにあたり、昭和の面影残る姿を映像に残そうと本企画が立ち上がった。第1弾は大九明子、菊地健雄がメガホンをとり、鈴木太一、瀬田なつき両監督による続編の『もぎりさん session2』が公開されたばかり。「私としては、このシリーズをある程度の尺にして、『もぎりさん』を持って全国の映画館を回りたいという野望があるんです(笑)」キネカで片桐さんが時々もぎりをしていると聞き、様々な映画館から、“もぎり依頼”が来ていた。「でも、さすがにもぎりだけじゃ、お客さん集められないでしょ(笑)。いまやほとんどのシネコンではチケットをもぎらないことも多いので、なかなか理解してもらえないけど、もぎりも一つのパフォーマンス。バナナの叩き売りくらいのものだと思いたいんですよ。もぎる動作自体も快感なんです。開映前の火打ち石じゃないですけど、『いい映画ご覧ください!楽しんできてください!』みたいな念をいつも込めているんですよ」面白かった映画を薦めあったり、映画の感想を二言三言語るくらいのコミュニケーションが、映画館スタッフと観客の間にあったら、という思いもある。「いまやそんなこと求められてないのかもしれないけど、せめて小さな映画館くらいはね。終映後、劇場の客席を掃除していると、その空気の匂いで、その映画が良いかどうか、なんとなーくわかるんです(笑)。面白い映画は気が爽やかに抜ける感じがある。ハコ(劇場)全体で感じられる、映画館でしか味わえない空気って絶対にあると思うんです」『もぎりさん session2』映画館の魅力満載。1編約2分の先付ショートムービー。監督・脚本/鈴木太一(第7~9話)、瀬田なつき(第10~12話)出演/片桐はいり、佐津川愛美、川瀬陽太ほかキネカ大森にて上映中。テアトル系劇場で順次公開。©東京テアトルかたぎり・はいり1963年生まれ、東京都出身。俳優。20代のころに銀座の映画館でもぎりのアルバイトをしていた。7月20日~8月12日、本多劇場にて、舞台『二度目の夏』に出演。地方公演あり。※『anan』2019年7月24日号より。写真・小笠原真紀インタビュー、文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2019年07月19日演技はもちろん、その指先、佇まい、表情など、その全てで私たちを魅了し続ける豊川悦司さん。昨年台湾で撮影した映画がもうすぐ公開予定。現在57歳、大人の男の魅力をご堪能あれ。老後は台湾で暮らすのもいいかなって。そのくらい素敵な場所でした。昨年、NHKの連続テレビ小説で、男性の天才少女マンガ家という役を演じ、独特の存在感を放った豊川悦司さん。‘90年代に恋愛ドラマに出ていた豊川さんを見ていた大人世代はもちろん、20代女子の間でも「何このかっこいい大人の男!!」と大いに話題になりました。そんな豊川さんが、今月公開の映画『パラダイス・ネクスト』で、罪を背負い台湾に逃げたヤクザを演じています。あのロマンティックな秋風先生がヤクザ!?舞台は台湾!?ということで、お話を聞いてきました。――もうひとりの主演である妻夫木聡さんと半野喜弘監督、そしてカメラマン以外、俳優もスタッフもすべて台湾人という環境で撮影された映画と伺っています。まずこの映画の出演依頼が来たときは、何を思われましたか?豊川:いつもと違う環境で仕事をするということは、僕は結構好きなほうなんです。なので、すごくやってみたいな、と思いました。あと、妻夫木くん…僕はブッキーって呼んでるんですが(笑)、ブッキーと一緒に芝居をするのも久しぶりで、しかもここまでガッツリやるのは初めてだったんです。彼と一緒に台湾で1か月映画を撮るっていうことに、惹かれましたね。――台湾という場所に馴染みはありましたか?豊川:映画祭で2度、撮影で1度行ったことがあるだけで、いずれもショートステイだったんです。今回みたいに長く行くのは初めてで。――刺激的な場所でした?豊川:刺激的でもありましたが、でも、それよりも居心地が良かったほうが大きいかな。とても気持ちのいい1か月を過ごせたんです。なんか、将来老後をここで暮らしてもいいかなって思うくらい、台湾が好きになりましたよ。日本ではないんだけれども、外国なんだけれど、なんかこう、とても近くて、懐かしい感じがするというか…。経験したことはないけれど、昔の日本ってこういう感じだったのかな、と思うことが多かったです。あと、食べ物の好みが合う。ご飯文化だというところでまず嬉しい。僕はパンよりご飯党なので(笑)。味付けも日本に近いし、野菜もちゃんと出てくるし。そして僕の好物である肉料理もおいしい。ホントにいいところでした。――9割台湾人という環境でのお仕事だったと思うのですが、言葉が通じないことのストレスはなかったのでしょうか?豊川:それがね、結構気持ちよかったんです。確かに、自分の母国語ではない言葉で現場が動いていくんですが、言葉が分からないからこそ余分な情報が耳に入らないので、意外と集中できる環境なんですよ。例えばスタッフ同士が揉めていても、何言ってるか分からないから、気にならない(笑)。あと、ありがたいことに台湾のスタッフは僕の名前は知ってはいてくれたけれども、情報量が少ないから、僕のことをフラットに見てくれている感じがあって。それも居心地が良かった。なんでしょう、デビューしたての頃みたいな気持ちになりました。良い芝居をすると、僕を見る目が変わっていく、あの感じ。名前ではなく、結果で判断してくれる感じが、良かったです。――妻夫木さんとの共演は、いかがでしたか?豊川:彼はねぇ、大変だったと思いますよ(笑)。僕が演じた“島”という役は口数が少ない男だったので、佇まいとか表情での芝居が多く、言葉が通じない環境でも、比較的やりやすかったと思う。一方ブッキーが演った“牧野”は、ずーっと日本語で演じなきゃいけない役だったから、すごく難しかったと思う。でも彼はすごくバランス感覚に長けた人で、芝居の上では孤独だったかもしれないけれど、それ以外の場所では台湾人のスタッフとすぐ仲良くなれるような人懐っこさも持っているんです。なんていうのかな、多面的で、球のような男。見ていて飽きないし、一緒にいて気持ちがいい。僕が女の人だったら、付き合ってると思います(笑)。そのくらい魅力的な男です。――1か月ご一緒となると、飲みに行くこともあったのでは?豊川:ええ、ほぼ毎日(笑)。――めっちゃ仲良しじゃないですか!!では、何かとっておきの仲良しエピソードを…。豊川:えー!?あるかなぁ…。あ、1回一緒に台湾マッサージに行ったんですよ。撮影が休みの日に。「豊川さん、すごい体が楽になるところがありますよ」ってブッキーが言うから、「じゃあ連れてって」って。――お二人で?もしや同じ部屋ですか?ベッドを並べて!?豊川:もちろん(笑)。で、行ったんだけど、背中に役のために入れ墨を描いてたことをすっかり忘れてて、オイルマッサージだったんだけど、マッサージしてくれた人の手と僕の背中がオイルと絵の具でぐちゃぐちゃになってしまって…(笑)。それで、その人が怒りだして、僕だけ途中で切り上げられちゃったんです。それでロビーみたいなところに降りたら、従業員の人が僕の顔を見てみんなクスクス笑っててさ。たぶん、見栄っ張りで描いてるんだと思われたんでしょうね。“豊川さん、すいません、オイルにしちゃって”“いや、俺も忘れてて”とか言いながら、二人で帰りました。散々な経験でしたけど、あれはおもしろかったな。翌日描き直しになっちゃったので、メイクさんにはホント迷惑をかけましたが(苦笑)。とよかわ・えつし大阪府出身。『3-4X10 月』『12人の優しい日本人』などの映画で注目された後、『Love Letter』『NIGHT HEAD』『愛していると言ってくれ』『愛の流刑地』『犯人に告ぐ』、数々の映画賞を受賞した『今度は愛妻家』『必死剣 鳥刺し』など話題作に出演。NHK連続テレビ小説『半分、青い。』(‘18年)の秋風羽織役も記憶に新しい。※『anan』2019年7月24日号より。写真・田村昌裕(FREAKS)スタイリスト・荻野玲子取材、文・風間裕美子(by anan編集部)
2019年07月18日取材前日に今回の舞台『美しく青く』の共演者である大倉孝二さんと飲みに行った話をしてくれた大東駿介さん。「そこで最終的にたどり着いた話が、『やっぱり舞台好きっすわ』ってことだったんです」と快活な笑顔を見せる。汚いものを見ているから、空の青さに感動するんです。「映像は作品として残っていく楽しみがありますけれど、舞台はその日その瞬間に得たものが残らないからこそ面白くて尊い気がするんです。良くも悪くも、自分自身…緊張も瞬間の熱もぶざまさも、すべてが見えてしまう。でも、それも含めた僕がそこにいて、お客さんと交感し合っている気分になれるのが好きです」その大東さんが出演するのは、映画『葛城事件』など、思い通りにいかない社会や自分自身の卑小さを前にもがき、のたうち回りながら必死に生きる人々の姿を描いてきた赤堀雅秋さんによる舞台『美しく青く』。「赤堀さんって、人間の醜さや恥ずかしい部分、情けないところも置いてけぼりにせず、ちゃんと受け入れた上で、人間の尊さを描いている気がするんです。たとえば、木に角が刺さって動けない鹿が救出されるニュースに感動しているすぐそばで、野生の鹿が撃たれてジビエ料理になっていたりするわけですよね。そういうことから目をそらさない、痛みを伴っている感じがあるんです」これが初の赤堀作品への出演。「取り繕ったりすればすぐに見破られてしまう…自分の恥を晒すくらいむき出しの状態でないと立ってはいけない感じが、いまの稽古場にあるんです。千秋楽まで、楽をせず、つねに自分のなかに鮮度の高い感情を保っていられたら」作品について語り始めると次々と言葉が溢れ、徐々に熱を帯びてゆく。「いつも作品に入る前になると、自分の脳が作品に向けて整理されていく感覚があるんです。テレビのニュースも日々の出来事も、いまは自然と赤堀さんのフィルターがかかって入ってくるから、どこか沸々としていて健康的じゃない感じ(笑)。ただ、いろんな汚いものが見えてしまうからこそ、目の前の何でもない幸せや空の青さに感動したりできるんですよ。それこそ僕が赤堀さんの作品を好きな理由なんだと思います」だいとう・しゅんすけ1986年3月13日生まれ。大阪府出身。放送中の大河ドラマ『いだてん』(NHK)に出演。来年、ベルリン国際映画祭で高く評価された出演映画『37Seconds』が公開。『美しく青く』自警団のリーダーである青木保(向井理)は、認知症の母の介護に追われる妻・直子(田中麗奈)をよそに、猿たちの駆除に奔走する日々をおくっていた。しかし住人のなかには不毛な戦いに諦めの色も見えて…。7月11日(木)~28日(日)Bunkamuraシアターコクーン作・演出/赤堀雅秋出演/向井理、田中麗奈、大倉孝二、大東駿介、横山由依、駒木根隆介、森優作、福田転球、赤堀雅秋、銀粉蝶、秋山菜津子、平田満S席1万円A席8000円コクーンシート5000円U25(25歳以下当日引換券)3500円(すべて税込み)大阪公演ありBunkamura TEL:03・3477・3244(10:00~19:00)※『anan』2019年7月17日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・服部昌孝ヘア&メイク・SHUTAROインタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2019年07月16日菅田将暉さんが、昨年リリースした『PLAY』に続き、アルバム『LOVE』をリリースする。多忙な日々を送る実力派俳優でありながら一体いつの間に!?と感じるほどの素晴らしい作品だ。熱気のこもった歌声と歌詞を隅々まで味わい尽くすと、しばらく動けなくなるほど心に響く重みのあるアルバムでもある。「音楽活動は、そもそも万人受けするつもりはなくて、こうやってアンアンに取材してもらえるとも全く思っていなかったんです。俳優としての菅田将暉は見てほしいけど、音楽に関してはあんまりライトを当てんでくれ、という気持ち(笑)。でも、ファーストアルバムの制作がすごく楽しかったので、ちゃんと人に聴いてもらうことを意識せな、と思ったのが、この『LOVE』ですね」前作に引き続き米津玄師や秋田ひろむ(amazarashi)、石崎ひゅーい、柴田隆浩(忘れらんねえよ)とのコラボ曲のほか、今作で初めてあいみょん、志磨遼平(ドレスコーズ)の提供曲も収録。オファーも、菅田さん自身がしたそうだ。「楽曲を依頼した方々は、かっこいいな、面白いなと僕が単純に好きな人たちでもあり、ちゃんと“会話ができる”人たち。同じ目線で遊びながら楽しくモノ作りがしたかった。そんなありがたい存在が自分の近くにいたことは幸運だと思います」コラボ曲は菅田さんと作り手との間の、たわいない会話から生まれていったという。その後、セッションしながらサウンド面も一緒に作り上げていくというプロセスを経た曲も多い。とくにデュエット曲を一緒に作った、あいみょんさんとのコラボ曲「キスだけで feat. あいみょん」は、女性にはとりわけ沁みる名曲だと感じた。女性パートを菅田さん、男性パートをあいみょんさんが歌っているのもすごく心に響くのだ。「彼女(あいみょんさん)は感性がすごく面白いし、関西人同士なのでスピード感が合って、ツッコんでもらえる快感があるんです。僕がバーッと喋ってたことを、ちょっと待って、と携帯にメモりだしたら、もうこれしかないというほどの曲ができてきた。紡ぐ力というか、プロフェッショナルな力を感じましたね」今作には、音源化されていなかった石崎ひゅーい作の「クローバー」が収録されるとともに、この曲を原案にしたショートフィルムを菅田さんの初監督で制作。『LOVE』はシンガーとしてだけでなく、映像作品や、CDカバーのデザインディレクションなど、菅田さんのさまざまな才能を楽しめるアルバムになった。「いろいろなことをやらせてもらいましたが、僕はとにかくモノを作っている過程が楽しくて大好きなんです。すべては友人たちとの遊びがベース、というと生意気に聞こえるかもしれないけど、遊びを思いつくのが得意なんすよ、思い出を無理やり作るというか(笑)。発想との戦いです、誰が面白いものを考えられるか、という。それを仕事にできて、作品にしてもらえるのは幸せなことだと思っています」2nd Album『LOVE』【完全生産限定盤CD+大判フォトブック】アルバム制作風景を収めた写真集付き。¥5,000【初回生産限定盤CD+DVD】DVDにはジャケット撮影も手がけた太賀主演のショートフィルムを収録。¥3,611【通常盤CD】¥2,963(Sony Music Labels)すだ・まさき1993年2月21日生まれ、大阪府出身。俳優として多方面で活躍しながら音楽活動も行い、『さよならエレジー』など数々のヒット曲を放つ。8月から東名阪福でZeppツアーを開催。※『anan』2019年7月17日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)スタイリスト・猪塚慶太ヘア&メイク・AZUMA(M‐rep by MONDO‐artist)取材、文・北條尚子(by anan編集部)
2019年07月14日主人公のコウタは、中学時代に親友とともに“天の川の女神=あーちゃん”として崇めていた女の子・千日(ちか)に偶然再会し恋をする。奇しくもその日は親友の命日。舞い上がるも、不器用な彼は彼女の連絡先を聞けぬまま、年に1度同じ日に同じ場所で会うことを約束する。銀杏BOYZの楽曲をモチーフにした映画『いちごの唄』は、青春時代のきらめきと喜び、痛々しさと切なさとがギュッと詰まった作品だ。コウタを演じた古舘佑太郎さんは、「撮影中は、とにかくコウタにならなきゃってことに必死でした」と語る。「撮影前の監督とのリハでは、何度繰り返しても役が掴めなくて、コウタと絶交しかけたくらい。でも、あーちゃん役の石橋(静河)さんと本読みをした時、パッと抜ける瞬間があったんです。それまでは、コウタとして、どういうトーンでしゃべるかを脳で考えていたのが、石橋さんと合わせた時、自然と石橋さんに対して言いたい言葉を投げかけていて。それが気づいたらコウタになっていたんです。僕自身、銀杏BOYZが好きだったのもあって、いろんなことを意識して考えすぎていたんですけれど、彼女に対して思ったこと、思った気持ち、言葉でやれば、それが正解なんだなって」そんなふうに生まれた作品だからなのか、コウタの不器用で冴えないけれどひたむきでピュアな優しさ、あーちゃんの陰を感じさせながらも清廉な雰囲気が強く心に残る。「僕と石橋さん、撮影の間に一回も打ち合わせをしてなくて、カメラが回っていないところでも役の関係性とほぼ一緒だったんです。だからこの間、街で目にしたポスターに石橋さんがいて、あーちゃん以外の石橋さんもいるんだよなって思って、不思議な感覚になりました」あがり症で緊張しい、それがコウタと古舘さんの共通項。ミュージシャンとしても活躍しているが、「ライブの時は、緊張を払いのけようとしてテンションが上がるのを利用してやっているんです」と笑う。「お芝居では緊張しちゃうんでよくないんですが、今回に関してだけ言えば、そういう部分をうまく役に使えたのかもしれません(笑)」『いちごの唄』中学時代に憧れた千日(石橋)に東京で再会したコウタ(古舘)。以降、ふたりは年に1度だけ会っていたが…。監督/菅原伸太郎原作/岡田惠和、峯田和伸脚本/岡田惠和音楽/銀杏BOYZ全国公開中。©2019「いちごの唄」製作委員会ふるたち・ゆうたろう1991年4月5日生まれ。東京都出身。ロックバンド「2」のメンバーとして活動する傍ら、俳優としても活躍。近作にドラマ『ひよっこ』や映画『ナラタージュ』がある。※『anan』2019年7月17日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・古川順一ヘア&メイク・川島享子(共にFACTORY1994)インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2019年07月12日今、注目の女の子を紹介する『anan』で連載中の「イットガール」。今回はモデル、女優の茅島みずきさんです。全力で踊るダンスが話題。「ポカリスエット」CMのヒロイン。CMでは、170cmの長身を活かしたダイナミックな動きと強い眼差しが印象的。「ダンスで感情を表現するのに苦労しました。普段はあまり思っていることを外に出すタイプじゃないので。でも頭で考えるのをやめたら、本番は思い切り踊れました」。元々プロゴルファー志望で腕前はかなりのもの。「全国大会でいい結果が出ず落ち込んでいる時、母の勧めでオーディションを受けたのが芸能界に入ったきっかけ。モデルと女優、両方で活躍するのが今の目標。歌が好きなので、歌うお仕事もやってみたい!」疲れている時の最高の癒しです。あまり人懐こくないけど、たまに寄ってくるのがかわいくて。名前はクロ。小説にハマっています。特に恋愛モノが好き。地元・長崎からの移動時は読書を。これは木戸ここなさんの小説。ヘアピン集めが最近のマイブーム。雑貨屋さんや洋服屋さんに行くと必ずチェック。つい買ってしまいます。かやしま・みずき2004年生まれ。2017年に新人発掘オーディションでグランプリ獲得。資生堂「Japanese Beauty」に出演中。「第28回東京ガールズコレクション2019 A/W」に出演。※『anan』2019年7月10日号より。写真・土佐麻理子文・間宮寧子(by anan編集部)
2019年07月09日昨年11月、乃木坂46を卒業した若月佑美さん。この夏、イタリア古典劇『恋のヴェネチア狂騒曲』で、卒業後初の舞台に挑む。18世紀のヴェネチアで繰り広げられる、すれ違いだらけの恋模様を描くこの作品。主演のムロツヨシさんをはじめ、堤真一さん、吉田羊さん…という超豪華キャストも大きな話題に。「古典も翻訳物も初で緊張していたんですが、さらにキャストの顔ぶれにびっくり。稽古場では、皆さんのプロフェッショナルな姿勢に刺激を受けています。個性的な登場人物揃いですが、特に謎を秘めた美女・ベアトリーチェを演じる吉田羊さんはすごい。場面ごとの切り替えがお見事で…本当にしびれます!」演出を手掛けるのは“コメディの奇才”福田雄一さん。18世紀の古典戯曲も福田さんの手にかかれば、極上のエンターテインメントに!?「スピード感抜群のドタバタ展開、演者の個性を生かした演出は、各俳優さんの持ち味をよく知る福田さんならでは。現代の人が観ても素直に楽しめると思います。一方で、原作の世界も大切にされているので、演劇通にも納得していただけるはず」若月さんが演じるのは、賀来賢人さん演じる青年・シルヴィオと恋仲の令嬢・クラリーチェ。「マジメ人間の私は、天真爛漫なお嬢様役に苦戦中ですが、そこは乃木坂46の曲を聴いてアイドル時代を思い出しながら(笑)。特に私が最後に参加した曲『帰り道は遠回りしたくなる』はよく聴きます。最後まで全力で輝こうとしていたあの時のキラキラを思い出して臨みます!」その甲斐あってか稽古は順調、大先輩方とも和気あいあい。「私が隅っこで静かにしていると『おい若月、しゃべってねーぞ!』とすかさず座長のムロさんからのツッコミが(笑)。ムロさんのリーダーシップと堤さんが繰り出すジョークに心がほぐれて毎日頑張れています。卒業して半年、乃木坂46が恋しくなることもあるけど、後輩メンバーたちのためにも、私がここで頑張らなきゃなって」笑いあふれるこの舞台を「ぜひ若い人にも観てほしい」と若月さん。「ネットでなんでも観られる時代にこそ劇場の空気、生のお芝居の熱量を知ってほしい。そして、すごい方々の中にうっかり飛び込んでしまった私を見て『若月もなんだか頑張ってるし、私も頑張ろう』と励みにしてもらえたらうれしいな(笑)」『恋のヴェネチア狂騒曲』お調子者の召使いトゥルファルディーノ(ムロツヨシ)を中心に起こる、恋人たちの大騒動。18世紀イタリアの戯曲『2人の主人に仕えた召使』が福田雄一版として復活。7月5日(金)~28日(日)初台・新国立劇場中劇場作/カルロ・ゴルドーニ上演台本・演出/福田雄一出演/ムロツヨシ、堤真一、吉田羊、賀来賢人、若月佑美、池谷のぶえ、野間口徹、粕谷吉洋、大津尋葵、春海四方、高橋克実、浅野和之SS席1万2000円S席1万円A席8000円B席6000円*すべて税込み当日券あり。シス・カンパニー TEL:03・5423・5906(月~金曜11時~19時)わかつき・ゆみ1994年6月27日生まれ、静岡県出身。乃木坂46一期生として多くの作品に選抜メンバーとして参加し、昨年11月に卒業。豊富な演劇経験を生かして卒業後もドラマなどで活躍。特技のデザインアートでは、二科展7年連続入選の腕前。※『anan』2019年7月10日号より。写真・小笠原真紀インタビュー、文・大澤千穂(by anan編集部)
2019年07月08日盲目だった少年・ホタルの目が7時間だけ見えるように。それと同時に、目が見えていた人々の視力が失われ、町には正体不明の敵が襲来。母親と乗り込んだ電車で、ホタルは緑色の少女・ビビと出会う。そんな奇想天外でポップでダークな絵本『ビビを見た!』が舞台になる。ダークな伝説的絵本が舞台に。「生々しく演じられたらと思います」「このお話をいただいてから本を読んだのですが、怖くてしばらく呆然としてしまいました。物語の中にいろんなメタファーが使われていて、時代を問わず、社会への警告を発している作品だなと思いました」石橋静河さんにとって、演出の松井周さんとはこれが初の顔合わせ。「何かを最初から決めつけられるのでなく、まずは感じて自由に考えていく余白をもらっている気がします。松井さんから言われているのは『生々しくいてほしい』ということ。この物語にはビビや、ワカオと呼ばれる巨人が登場します。そういう役って、現実からかけ離れた存在だからこそ“フリ”で演じてしまいがちですが、それはしないでくれという意味だと考えています。役の感覚を自分の深いところまでいったん落とし込んだところで、作品の持っているファンタジーの軽さも入れていこうとされているのかなと思うんです」松井さんは、世の中の歪みや人間の奇妙さを、様々な実験的手法を用いて舞台にする演出家だ。石橋さんはビビを演じることになるが、一筋縄ではいかない予感。それでも「演じられて、すっごく嬉しい」そう。「だって、人間じゃない緑色の、触角が生えた、羽の破れた5歳くらいの女の子、ですよ。こんな役ができるのは、なかなかない機会。ただ、ビビを生々しい気持ちでやろうとすればするほど、残酷な役だなって思うんです。彼女のその残酷さを、ちゃんと受け止めて演じられたら」飾ることも力むこともなく作品の中に佇む。そんな石橋さんの自然な演技に魅せられる人は多い。「私の場合、まだ自分の手札がそれしかないというだけです。もともと嘘が下手で、演じる時に何ができるかといったら、役の気持ちを理解して寄り添うことだけ。今回、共演にいろんなキャリアの方がいるので、稽古場で様々な演技のアプローチの仕方を盗めたらと思っています」いしばし・しずか1994年7月8日生まれ。東京都出身。ヒロインを務めた映画『いちごの唄』が7月5日公開。その後も、『楽園』『ばるぼら』『37Seconds』と出演映画の公開が相次ぐ。『ビビを見た!』 7時間だけ目が見えるようになった盲目の少年・ホタル(岡山)は、盲目になった母を連れ、正体不明の敵から逃れて乗り込んだ電車で、緑色の少女・ビビ(石橋)と出会う。7月4日(木)~15日(月)KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ原作/大海赫上演台本、演出/松井周出演/岡山天音、石橋静河、樹里咲穂、久ヶ沢徹、瑛蓮、師岡広明ほか前売り5300円、当日5800円(7/4、5、8、10は前売り4800円、当日5300円)ほか*すべて税込みチケットかながわ TEL:0570・015・415(10:00~18:00)※『anan』2019年7月3日号より。写真・小笠原真紀インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2019年07月02日もはや当たり前になった、親が子どもに作る“キャラ弁”。人気のキャラクターやかわいい動物などが描かれたお弁当に、子どもたちも大喜び…が一般的な印象ですが、世の中には“子どもが嫌がるお弁当”を作る母親もいる!これは、反抗期の娘への仕返し弁当を綴ったエッセイ『今日も嫌がらせ弁当』を原作とした映画。篠原涼子さんは、高校生で反抗期真っ盛りの娘(芳根京子)に、高校卒業までの毎日、娘が嫌がる“嫌がらせ弁当”を作り続けるシングルマザーのかおりを演じています。「最初にエッセイを見せてもらったんですが、表紙が“貞子”を描いたお弁当だったんです。で、“なんなんだろう、この本は”って(笑)。読んでいくと、お弁当のルックスがおもしろいのはもちろん、嫌がらせのためのお弁当だというところに衝撃を受けまして。でも出演を決めた一番大きなきっかけは、うちの長男の一言なんです。このエッセイを家に置いておいたらどうやら読んだらしく、“ママ、こういうのやってよ”って(笑)。正直、貞子にもならなきゃいけないし(編集部注:劇中で篠原さんは、貞子のコスプレをしています)、と悩んでいたのですが、それで、やろうと思いました」篠原さん演じる持丸かおりは、2人の娘を持つシングルマザー。長女は独立しており、高校1年の次女と一緒に暮らしています。しかしその娘が反抗期真っ盛り。口も利かなければ目も合わせないし、母親が目の前にいるのに「学校に車で送って」とLINEしてくる始末。そんな娘にカチンときたかおりは、クールに決めている娘に、超かわいい赤ずきんちゃんのキャラ弁を作る嫌がらせをします。娘もその挑戦を受けて立ち、「残すのは負けるみたいでイヤ」と、その後も毎日嫌がらせ弁当を完食するのですが…。「エッセイの著者である、本物のかおりさんにもお会いしました。ご本人はあまり口数が多いほうではないもの静かな方なのですが、映画は2時間という限られた時間だということと、多少シリアスな展開もある作品なので、私は“明るく頑張っているお母さん”というイメージで、かおりさんを演じました。本物のかおりさんは本当に素敵な人で、そんなに話をしなくても子どもの思っていることをちゃんと把握している、そんなお母さん。嫌がらせ弁当を作ってもらっていた娘さんにもお会いしたのですが、“自分もそういう親になりたい”とおっしゃっていて。良い親子だなって思いました」舞台は八丈島。美しい自然に囲まれた島で紡がれる物語は、世代を超えて胸に響くはず。「テーマは親子愛ですが、キャラ弁を作る様子は、日々お弁当を作る働く女子にも楽しいし、役立つのではと思います。あと、とにかく編集がおもしろい(笑)。愉快なCGが出てきたり、意外な演出があるので、ほんわか笑えると思います。息子はまだ観てないんですが、彼もきっと笑ってくれるんじゃないかな」『今日も嫌がらせ弁当』八丈島に暮らすシングルマザーのかおり(篠原)は、反抗期の娘・双葉(芳根)に「態度を改めるまで“嫌がらせ弁当”を作る」と宣言するのだが…。他に松井玲奈、佐藤寛太、佐藤隆太らが出演。6月28日より全国公開。©2019「今日も嫌がらせ弁当」製作委員会しのはら・りょうこ女優。1973年生まれ、群馬県出身。’90年にデビューし、歌手、女優としてドラマや映画、舞台で活躍。2018年の日本アカデミー賞優秀主演女優賞、優秀助演女優賞をW受賞した。※『anan』2019年7月3日号より。写真・岡本 俊(まきうらオフィス)スタイリスト・宮澤敬子ヘア&メイク・岡野瑞恵(by anan編集部)
2019年07月01日10歳の時、雑誌のオーディションでグランプリを受賞し、華々しいデビューを飾った山田杏奈さん。人を惹きつけて離さない強烈な目力が武器。「オーディションに応募したのはグランプリの景品目当て(笑)。もともと引っ込み思案なので、人前に出て何かをすることも得意ではなかったんです。でも、少しずつお芝居の仕事をさせていただく中で、普段言いたくても言えないことがお芝居の中だと言える面白さに魅力を感じて。今はこのお仕事が天職だと思うくらい楽しいです!」残虐な描写が多く、トラウマ漫画として名高い漫画『ミスミソウ』の実写映画では、約1000人の中からオーディションで主役に大抜擢。その強烈な目力で復讐に狂う春花を演じきった。「もともと好きで読んでいた作品だったので、この役は絶対に私がやりたいと思いました。周りの人からも“よくこれを初主演でやったね”と言っていただくことが多くて。これだけインパクトが強いものを初主演でできたことは嬉しかったですし、普通だったら経験できない人生を生きられる楽しさを、改めて感じた作品でもありました」近日公開の映画『五億円のじんせい』では、1人2役という難役に挑戦。「撮影期間は2~3日しかなかったんですけど、とにかく2人の女性をまったく違う人間に見せたくて。自分なりにいろいろ考えた結果、主人公と違ってずっと出ているわけではないので、声のトーンとか喋り方とか、わかりやすい部分を意識して演じました」そんな山田さんが目指す女優像は?「この役はあなたにやってもらいたい、と思われるような役者になることです。私がやったからこそ、魅力的な役になったと思っていただきたいですし、オファーをいただけたら、監督が思い描くイメージをより濃いものにして返したい。それは助演でも同じ。どんな役であっても、作品の中で与えられた役割を100%果たしていきたいです」Q 特技は?裁縫。古着をよく着るんですけど、サイズ直しも自分でできます。ただ縫うことに没頭できるので、現実逃避したい時に。Q 好きな作品は?大きな影響を受けたのは行定勲監督の映画『GO』。これを観て「私もかっこよく生きたい!」と思うようになったんです。Q 休日の過ごし方は?Netflix三昧です。『ウォーキング・デッド』が好きだったんですけど、全部見終わって楽しみがなくなっちゃいました。Q 今ハマっていることは?散歩。運動として始めたんですけど、今日も一日外に出ないで終わっちゃった~という罪悪感がなくなりました(笑)。やまだ・あんな2001年1月8日生まれ、埼玉県出身。7月20日公開の映画『五億円のじんせい』では、物語のキーパーソンとなる橘明日香役で出演。ワンピース ¥37,000(ミュゼドランス/ランス TEL:03・6416・9714)靴¥38,000(セレナテラ/ホール TEL:03・6419・7732)バングル¥18,000(プティローブノアー TEL:03・6662・5436)2ストーンイヤリング¥26,000(シモン TEL:03・6455・3467)※『anan』2019年7月3日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・武久真理江ヘア&メイク・安海督曜取材、文・菅野綾子(by anan編集部)
2019年06月29日男性でありながら英国淑女の装いに身を包み、ベビーシッター業に勤しむギンを描いた大和和紀さんの漫画『ベビーシッター・ギン!』が、連載開始から22年、初の実写ドラマ化。子育てトラブルを我流で解決するギンを演じるのは、大野拓朗さん。「実は、僕がデビューしたての時、当時のマネージャーが『ベビーシッター・ギン!』を拓朗でやりたい、と言って企画書を書いていたんです。なので漫画を初めて読んだのは9年前ですが、“なんて素敵な作品なんだろう”とずっと思い続けていました。夢や愛が詰まっていながら、社会問題も反映されていて。そして今このタイミングで、ギンさんを演じられることが決まって、“運命だな”と本当に思いました」演じるうえで大切にしているのが、ギンが持つ女性らしさ。「ギンさん自身は、中性的なキャラクターというか、性を超越した存在なので、自分に担えるのだろうかって不安はありました。“女装している男性”ではなくて、“女性”に見えなきゃいけないので。でも初めてこの衣装に袖を通した時、ギンさんとして生きられるかもしれない、と思えて。衣装やヘアメイクの力を借りて、一気に背中を押してもらえましたね。あと喋り方や声質も、男性と女性では結構違うので、家で何度も練習しました。ちょっと前の方で喋るというか、鼻にかけて喋るというか…。口の中で何が行われているかは、わからないんですけど(笑)」大野さん自身も、子供が大好き。「ずっと子育てに興味があったので、ギンさんには共感しまくりです。夜中に子供を連れ回している親とかを見ると、“何してるんだよ、こんな時間に。ちゃんと寝かせろよ”とかついつい思っちゃいますね(笑)。ただ実際に子育てをされている方々は、大変なこともたくさんあると思うんです。ちょっと疲れてしまった時も、このドラマを見たら我が子を抱きしめたくなる、そんなドラマになるように頑張ります!」『ベビーシッター・ギン!』6月30日(日)22:00からNHK BSプレミアムにて放送スタート(全10回)。ギンの妹・美々子役としてゆりやんレトリィバァさん、家族に仕える執事として竜雷太さんも出演。曲と振り付けが毎回変わるミュージカルシーンにも注目。おおの・たくろう1988年生まれ、東京都出身。代表作に映画『猫忍』や朝ドラ『わろてんか』、大河ドラマ『西郷どん』、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』などがある。※『anan』2019年7月3日号より。写真・土佐麻理子(by anan編集部)
2019年06月28日惹きつける演技力、キラリと光る独特の存在感。いま気になってしょうがない俳優の一人が山田祐樹さんです。「男女問わず愛される人の代表」と伝えると、人懐っこい笑顔を浮かべ、机の下で小さくガッツポーズする山田さん。心掛けているのは、血の通ったコミュニケーションで、「見た目で判断する人はすごく苦手」とキッパリ。「だから、僕はめちゃくちゃ知ろうとします。心理カウンセラーになりたかったくらい心理学に興味があるし、人が好き。だから、知りたい。バーで会った知らない人にも話し掛けますよ。普通の人を普通に演じられる域に到達したいし、人の気持ちをわからないと俳優はできないですしね。台本を読んで『こんなことあり得ない』と言ったら、それで終わっちゃうんで、受け止める力だけは、絶対にないとダメだなって。そもそもあり得ないことなんてないと思うんですよ。僕は、見えないものも信じてます。って今、すげえカッコいいこと言ってますね(笑)」そう茶化すけど、熱を帯びた言葉には嘘がなく、自分が好感を抱く「正直にモノを言う人」を山田さんがそのまま体現している。「人間なんで、いい顔することもありますけど、その時は『いい顔してます』って言います(笑)」素直な山田さんを、仲間やスタッフも愛さずにはいられない!「不思議ですけど、吉沢亮くんや福士蒼汰くんが『その役は山田がいい』と言ってくれたり、是枝監督も『みんなが君をいいって言うから』と『万引き家族』のオーディションに呼んでくれたり。僕は何もしてないんです。今があるのは全部、みんなのおかげです」【対談インタビュー】山田裕貴さん×フォトグラファー・金 玖美さん金:今回、山田さんの“静と動”を見せたいと思っていました。山田:撮影前にそのテーマを聞いてたら、違うふうになってたかも。でも、知らずに自然と導いてもらえたおかげで、自由にできて楽しかったです。金:「跳んでください」とお願いしたら、思い切りジャンプしてくれて!撮影を楽しんでくれてるのが伝わってきました。山田:手を伸ばしてるこの一枚(下の写真)、特に好きです。金:嬉しい!山田さんは、こちらの要望を咀嚼してご自分の動きにしてくださいましたね。山田:キメキメでポーズするのが一番苦手なんです。カッコつけてキマるアイドルさんとは違うんで(笑)。金:キメもカッコいいですよ。山田:(照れて小声で)ありがとうございます。そうだとしたら、衣装さんやメイクさんがいてくれるからですね。普段の姿はほんとヤバい…。金:キメカットの前後にもかわいらしい表情がたくさんありました。撮影中、笑顔は苦手と言ってましたよね。山田:そうなんです。今日は自然と笑えたんですけど、映画の舞台挨拶のキメショットとして「笑ってください」と言われると、今からこの作品を広めなきゃいけない真剣な場なのにって思っちゃう。でも、それじゃ心が狭いと思う自分もいるんです。結果、大笑いします!金:(笑)。よく“カメレオン俳優”と評されてますよね。山田:そう言ってもらいます。でも、もともと俳優はいろんな役をやるじゃないですか。だから、みんなカメレオン俳優なんですよ。金:“静”の撮影では、表情がセクシーでした。山田さんは色気と愛嬌が同居していますね。山田:前に、『センセイ君主』という映画に出てくる雑誌の表紙で『アンアン』のパロディさせてもらったんですよ。高橋一生さんが表紙の号の。今回はホンモノのということで、頑張って“anan sexy”を表現してみました(笑)。金:(笑)。私、撮影してるとすぐ話しちゃうんですけど、しゃべらないほうがやりやすいですか?山田:いえいえ!その人がそのままでいてくれるのが、一番嬉しいです。金:なんて素敵な言葉!でも次はお互い無言で撮る、というのもおもしろそう。山田:いいですね。ぜひ、またお願いします!やまだ・ゆうき1990年9月18日生まれ、愛知県出身。『なつぞら』『特捜9 season2』に出演中。映画『HiGH&LOW THE WORST』は10/4、主演舞台『終わりのない』は10/29スタート。デニムジャケット¥80,000パンツ¥28,000(共にKURO/KURO GINZA TEL:03・6274・6257)柄シャツ¥14,500(EEL Products/EEL Products Nakameguro TEL:03・6303・0284)その他はスタイリスト私物きん・くみ1972年生まれ。’04年、渡英。今年、15年撮り続けたイギリスの人々と情景をまとめた写真集『EXIT』を発表。現在、東京を拠点に、ファッションやポートレートを中心に活躍中。※『anan』2019年6月26日号より。写真・金 玖美スタイリスト・川久保はるかヘア&メイク・小林純子取材、文・小泉咲子(by anan編集部)
2019年06月22日朝ドラ『なつぞら』で、ヒロインの幸せを願う照男役で脚光を浴びる俳優・清原翔さん。「最近、居酒屋の店員さんから、おしぼり出しながら『朝ドラ見てますよ』と声掛けてもらって、知ってくれてる人が増えている実感はあります。嬉しいですね」朝ドラの現場では、愛されキャラの先輩との出会いもあったそう。「岡田将生さんから、愛嬌がにじみ出てましたね。ずっと手を嗅いでるんですよ。毎朝、ぬか床をかき混ぜてて、匂いが残ってるから嗅いでしまうって(笑)。影響されて、令和一発目の買い物としてぬか床を調べたんですけど、選びきれなかったんで、岡田さんからアドバイスもらってからにします」もちろんご本人も愛されキャラ。清原さんから漂う“彼氏感”に惹かれる女性が続出中!「浮世離れした感じがないから、みなさんに身近に感じてもらえるんじゃないかと思います。映画で共演した神宮寺(勇太)は、“国民的彼氏”ですよねえ。僕もなれるものならなりたい、かな(笑)」役者として大きく飛躍しようとする今、相反する思いが交錯する。「強みがないのが僕の強みだと思ってて。役者としては、色がないほうがいいと思う一方で、清原翔といえばコレというものが一個、欲しくもあるんです。いろんな役をやらせてもらった先に、代表作に巡り合えたらいいですね。やってみたい役ですか?女性誌の企画で彼氏役をかなりやってきたので、映像でも彼氏感のある役を演じてみたいですね」【対談インタビュー】清原 翔さん×フォトグラファー・樽木優美子さん樽木:今回がはじめましてですよね。『MEN’S NON‐NO』を見てクールな印象は持ってたんですけど、今日は互いをよく知らない者同士、“探り探り感”が出てもいいかなって。清原:モデルとしての撮影なら、服がカッコよく写っていればいいじゃないですか。それがある種の逃げ道にもなるんですけど、今回のようなパーソナルな撮影はすごく照れくさいですね。まだ慣れなくて。どういう顔をしたらいいのかわからないんです。樽木:自然体で佇んでらっしゃって、とても素敵でした。清原:ありがとうございます。いいのか悪いのかわからないですけど、カメラの前では何も考えてませんでしたね。「お任せします!」という心境で臨みました。普段からよく「何考えてるかわからない」って言われるんですけど、実際、何も考えてないんです(笑)。樽木:(笑)。特に惹かれたパーツは喉ですね。思わず寄りのカットを撮りたくなりました。清原:ファッション誌じゃないと、こんなにもカメラが近づくのかと(笑)。樽木:あまりにも魅力的だったので。遠目で見るとフェミニンなんだけど、喉に近づくと、急に男らしさが出ますよね。清原:喉仏がすごく出てて、ゴツゴツしてるから。樽木:そう!その喉仏から出てくる低音ボイスを誌面から流せないのが本当に残念(笑)。切れ長な口も素敵なので、お花を合わせたくなったんですよね。色っぽいんだけど、けっしてバラではなくて。ユリなら、憂いのある可憐さが清原さんと合いそうだと思って選びました。清原:普段、花と一緒に撮られることはないから、どう写ってるのかまったく想像がつかなかったですけど、少し見せてもらったらオシャレでした。樽木:清原さんご自身がナチュラルだから、お花を持っても全然いやらしくならない。笑顔もクールな表情とのギャップがあって、すごくよかった。清原:笑顔はコンプレックスだったんです。笑うと目がなくなるし、頬にシワが寄るんで…。樽木:すごくチャーミングな笑顔なのに!清原:こうして褒めてもらうことが増えて、受け入れ態勢が整ってきました(笑)。今日は、樽木さんにお任せして、変にカッコつけることもなかったので、写真には“僕”がそのまま写ってるんじゃないかって思います。きよはら・しょう1993年2月2日生まれ、神奈川県出身。明治大学理工学部4年生時に、『MEN’S NON‐NO』専属モデルに。今年5月、『清原翔Visual Book in「なつぞら」』を発表。シャツ¥21,000(KAIKO/STUDIO FABWORK TEL:03・6438・9575)タンクトップ¥12,000(O project)シューズ¥18,000(Nelson) 共にTHREE TEL:03・5431・3832パンツ¥35,000(Marvine Pontiak/OVERRIVER TEL:03・6434・9496)たるき・ゆみこ1980年生まれ、東京都出身。TRON所属。伊藤彰紀氏に師事したのち、’09年に独立。雑誌や広告、カタログで活躍中。人気アイドルのDVDパッケージなども担当。※『anan』2019年6月26日号より。写真・樽木優美子(TRON)スタイリスト・李 靖華ヘア&メイク・NOBUKIYO取材、文・小泉咲子(by anan編集部)
2019年06月22日映画『劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』にて、すれ違う親子という照れ臭い関係を見事に演じた、俳優の坂口健太郎さんと吉田鋼太郎さん。映画初共演ながら、お互いに惚れ合ってしまったという、興味津々のおとなの関係に迫ります。――お二人が人との関わりや関係性を築く上で最も大事にしていることは何でしょうか。吉田:芝居も一緒だけど、まず人の話を否定せずに最後までちゃんと聞くことかな。それを呑み込んだ上で自分の意見を言うこと。いつも気をつけてますね。坂口:この前初めて鋼太郎さんと飲みに行ったんですが、その時もまず僕の話を聞いてくれました。吉田:年とってくると価値観が固まってきちゃうから、頭ごなしに自分の意見だけを言いがちなんだよね。僕も本当は、頑固がひどいの。物分かりよさそうなふりしてるだけで(笑)。坂口:僕の場合は、これちょっと違うかもしれないけど、家族や身近な人には肌に触れるようにしてます。年をとるにつれて、そういう機会ってなくなってくるんですよね。だから僕、母親に会ったら絶対にハグするんです。吉田:それなかなかできることじゃないよ。お母さんうれしいだろうねぇ。坂口:まあもう慣れてる感じですけどね。だから今98歳のおばあちゃんに会っても、腕をさすったりして。そういう肌の触れ合いはすごく大事だと思っています。吉田:健太郎って、優しくていいところだらけだよ。坂口:いや、僕だってダークサイド持ってますよ(笑)。吉田:うん、そんな気もするけどね、あはは(笑)。でも人間ダークな部分はみんな持ってるから。坂口:今度鋼太郎さんともうちょっとじっくりお酒飲んで、黒い部分を徐々に出していきたいと思います。まず白からグレーになって、そこから黒くなるっていうのをお見せしたい(笑)。吉田:とかいって、そんなに大したことないと思うな(笑)。坂口:そういう鋼太郎さんこそ魅力だらけですよ。不思議なんだけど、話をしているだけで好きになるんです。そうそう、公園のシーンを撮影する日に、鋼太郎さんが飼っているワンちゃんを連れてきたことがあったんですが、ワンちゃんとわしゃわしゃ戯れてる時の顔が、見たことないぐらいすごくかわいくて。そうかと思えば、お芝居に入ると途端に男前になる。その“カワイイカッコイイ”感じが、男性にも女性にもモテるんでしょうね。吉田:あの公園のシーンね。それで思い出したけど、普段ふわっとしてる健太郎もスタートかかるといきなりすごい集中力なんだよね。俺は俺は、って前に出るようなタイプじゃない人間にそれ見せられちゃうと、何だこのギャップは!って思うし、俺が女性だったら惚れちゃうかもしれない。坂口:ギャップってモテますよね。吉田:あと、仕事もやりたいことも本気で取り組んでいて、しかもそれをひけらかしたりアピールしない人はモテる。本気で取り組んでると、悩みや挫折、希望もたくさん知ってて、会話がスムーズだし面白いの。坂口:なるほど~。鋼太郎さんともっと飲みたいです。吉田:じゃあ、俺たちもっと深く付き合おう。それで一回決裂してまたゲームで絆を深めて、な!坂口:あははは(笑)。さかぐち・けんたろう1991年7月11日生まれ。数々のドラマや映画などで活躍。映画『今夜、ロマンス劇場で』、ドラマ『シグナル 長期未解決事件捜査班』『イノセンス 冤罪弁護士』などで主演を果たす注目俳優。よしだ・こうたろう1959年1月14日生まれ。舞台『オセロー』や『ヘンリー四世』などで主演を務めるほか、数多くの名作に出演。出演映画『劇場版おっさんずラブ~LOVE or DEAD~』が8月23日公開予定。坂口さん・シャツ¥28,000(gourmet jeans/SKOOL Twitter:@komazawa_skool)その他はスタイリスト私物吉田さん・シャツ¥46,000パンツ¥48,000(共にISSEY MIYAKE MEN TEL:03・5454・1705)時計は本人私物サンダルはスタイリスト私物『劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』いつしか、会話もなくなった息子のアキオと父親の暁。再び親子の絆を深めようと、アキオは正体を隠し、暁をオンラインゲームに誘う。ゲーム内で戦士となった2人の関係性はいかに…。出演/坂口健太郎、吉田鋼太郎ほか。6月21日公開。※『anan』2019年6月26日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・檜垣健太郎(little friends/坂口さん)尾関寛子(吉田さん)ヘア&メイク・CHIKA KIMURA(tsujimanagement/坂口さん)吉田美幸(吉田さん)インタビュー、文・若山あや(by anan編集部)
2019年06月20日人気若手俳優・坂口健太郎さんと、実力派ベテラン俳優・吉田鋼太郎さん。お芝居の世界からのラブコールが絶えず、モテまくっている二人が、映画『劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』で共演!いつの日か、口も利かずにすれ違うようになってしまった父子のコミュニケーションを取り戻すべく、オンラインゲームを始める二人。仲間として戦ううちに忘れかけていた親子の絆を取り戻すという、実話に基づいたハートウォーミングな物語だ。――映画初共演ですね。最初に会った時の印象を聞かせてください。吉田:別撮りだったけど同じCMに出たことがあったから、全くの初でもない感覚はあったよね。坂口:そうですね。ただ、がっつり共演させていただくのは初めてですね。鋼太郎さんっていろんな役をやられているから、どういう方なのかさっぱり想像がつかなくて。この作品では寡黙な父親と息子という関係性だったから、もし現場で鋼太郎さんが役のように全然喋らなかったらどうしようかな、って思っていたんです。でも、クランクインからすごく心地の良い空間を作ってくださって。そのおかげで力を入れすぎることもなく、なあなあになることもなく、いい雰囲気でいられました。吉田:健太郎が何でも受け入れるニュートラルな感じだったから、俺も自然体でいられたんだろうね。「鋼太郎さんのあの芝居観ました、すっごい好きです」みたいに前のめりじゃなかったから(笑)。最初、健太郎って捉えどころのない人だったの。男っぽいのか草食系なのか、明るいのか暗いのか、強いか弱いか全然わからなくて。でもそういう意味で、いろんな役になれるに違いないと思っていました。――坂口さんが演じた息子のアキオはごく一般的な青年で、あんなふうに“普通”を演じきるのはすごいと思いました。坂口:会社員の経験がないから、探りながらでしたけど、あまり作り込むことはしなかったかもしれませんね。でも“普通”って本当に難しかったと思います。吉田:そう、“普通”を演技でやってるからすごいよね。構えないナチュラルな芝居って難しいんだよ。なかなかできないぞ。坂口:うれしいです。吉田:物語の最初のほうに、ゲームの友達申請のやり方を聞きに、父親の暁がアキオの部屋に入っていくシーンがあるんだけど、アキオが慌ててパソコンを片付けて体裁整えて「何?お父さん」みたいな芝居があったのね。確か5秒ぐらいかな、初めて間近に見た坂口健太郎の芝居だったんだけど、それがめっちゃうまいの。5秒の中の動きが、あたかも計算され尽くしたように見えるわけ。水が上から下に流れるようにスムーズに見事にやってのけて、なんだこいつって思ったんだよね。坂口:(照れながら)いやいや…。――お二人が特に好きなシーンは、それぞれどこですか?吉田:何気ないシーンばかりなんですが、アキオが買ってきたゲームを暁が恐る恐るやり始める時に、アキオがそれをのぞいて、少しニコッてするところ。そこの健太郎の顔がすごい好き。坂口:僕は、アキオが受験勉強している時にお父さんがお茶漬けを持ってきてくれる回想シーン。吉田:あのシーン、いいよね。父親と息子の関係性が見えて、俺も好き。坂口:お芝居していても泣ける気持ちになったし、自分の父親のことをちょっと思い出しました。――父親と息子の関係って、女性からするとあまり想像がつかないんですよね。よく照れ臭いとか聞きますが、そういうもんですか?吉田:照れ臭いっていうのはあるね。「お父さん」って呼んでいたのに、思春期になったある時から、「お父さん」の一言が言えなくなるんだよね。坂口:あれ、なぜでしょうね。僕もそうでした。でも、大学生になってお酒が飲めるようになってからはむちゃくちゃ仲良くなって。親父とは身長と体重が一緒だったから、よく二人で買い物に行ったし洋服も着まわしたりしてました。吉田:へぇ~そうなの。坂口:毎年1月2日は横田基地に、親父の運転で二人でピザを食いに行くっていう約束もあって。吉田:あははは(笑)、ピザなんだ。でも俺もほぼ同じかな。父とはよく一緒に飲みに行ってたんだけど、仲良くなったのはやっぱり俺がお酒飲めるようになってから。お酒ってひとつのきっかけかもね。――父親と息子の複雑な関係を修復すべく、オンラインゲームでコミュニケーションを図るというのは現代ならではだと思います。共感できますか?坂口:このご時世「ゲームばっかりやっててさ」とか言われがちだけど、僕はもともとオンラインゲームが好きで、今でもやるんです。最近はインターネットで世界中の人と繋がることができるし、顔はわからないかもしれないけどひとつのコミュニケーションツールになるかな、と。それを父親と息子の関係の再構築に使うなんて、すごくステキな使い方だと思う。吉田:これ実話をもとにしてるんだもんな、すごいよな。俺らの子供時代はテレビゲームなんてなかったから、未知の世界ですよ。でも、共感はできる。人と話すのって大変で、だから昔から人の目を見て話せ、なんてことまで言われるわけで。でもゲームやスマホが世の中に出てきて、それで仲良くなれるなら、画期的だしどんどんやれば?と思うけど。ただ、じゃあ俺が奥さんと一緒にやれって言われたら、照れ臭くてできないけどね。坂口:だからアキオのお父さんにゲーム買ってあげるっていう勇気、すごいですよね。吉田:いい息子だよね。さかぐち・けんたろう1991年7月11日生まれ。数々のドラマや映画などで活躍。映画『今夜、ロマンス劇場で』、ドラマ『シグナル 長期未解決事件捜査班』『イノセンス 冤罪弁護士』などで主演を果たす注目俳優。よしだ・こうたろう1959年1月14日生まれ。舞台『オセロー』や『ヘンリー四世』などで主演を務めるほか、数多くの名作に出演。出演映画『劇場版おっさんずラブ~LOVE or DEAD~』が8月23日公開予定。坂口さん・シャツ¥28,000(gourmet jeans/SKOOL Twitter:@komazawa_skool)その他はスタイリスト私物吉田さん・シャツ¥46,000パンツ¥48,000(共にISSEY MIYAKE MEN TEL:03・5454・1705)時計は本人私物サンダルはスタイリスト私物『劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』いつしか、会話もなくなった息子のアキオと父親の暁。再び親子の絆を深めようと、アキオは正体を隠し、暁をオンラインゲームに誘う。ゲーム内で戦士となった2人の関係性はいかに…。出演/坂口健太郎、吉田鋼太郎ほか。6月21日公開。※『anan』2019年6月26日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・檜垣健太郎(little friends/坂口さん)尾関寛子(吉田さん)ヘア&メイク・CHIKA KIMURA(tsujimanagement/坂口さん)吉田美幸(吉田さん)インタビュー、文・若山あや(by anan編集部)
2019年06月20日教師と生徒の関係を描き続けてきた作家・重松清氏の“最も泣ける作品”ともいわれる「泣くな赤鬼」が映画化された。日に焼けた赤い顔と鬼のような熱血指導から“赤鬼先生”と呼ばれていた野球部監督の小渕(堤真一)が、ある日再会したのは、かつての教え子。野球の素質がありながら、堪え性のない性格ゆえに挫折し、高校を中退してしまったゴルゴという愛称の斎藤(柳楽優弥)だった。「役をいただいていても、初めてその作品を読む時は、なるべく一読者として読むようにするのが僕の最近のテーマなんです。というのも、これが僕の演じる役なんだと思いながら読むと全然面白くないし、最初は純粋に物語を楽しみたいから。この作品も、まずは役を気にせずに原作を読んだ時、生徒と教師という関係性や人との絆などにすごく感動して、一気に読み切りました。僕も器用に立ち回れるタイプじゃないから、そりゃ拗ねるよね、学校だってやめるよねって、ゴルゴの気持ちに共感できるところがたくさんあったりもして。青春時代って毎日がキラキラしているイメージがあるけど、そのキラキラの中には、意外と残酷な部分も多くて、大人や周りから正しいことだけで論破されると、逃げたくなることもあるんですよね。本当に逃げてしまったゴルゴはあまりにも正直すぎると思うけど、でも、それもよくわかるんです」大人になり、結婚して家庭を築いていたゴルゴだったが、ガンを患い、余命半年を宣告される。死に向かうゴルゴと、野球への情熱が衰えてしまっていた小渕。止まっていた二人の関係性が動きだし、やり残したことや何か大きな穴を埋め合うように互いに思いを馳せる姿にも、自身が重なるという。「先生と生徒ではないけれど、師弟関係みたいなものは、僕にもありますよ。蜷川(幸雄)さんや是枝(裕和)さんもそうだし、俳優なら柄本明さんとか。自分の子供を見ていても思うけど、よく、親も子供と一緒に成長するって言うように、先生も生徒も、師匠も弟子も、お互いに相乗効果で成長しているだろうし、どちらか一方だけが学んでいるわけじゃないと思うんですよね。なんて、僕が是枝さんや柄本さんに言えるわけもないんだけど(笑)」13歳の時に主演した、映画『誰も知らない』で俳優デビューし、史上最年少でカンヌ国際映画祭の男優賞を受賞。多感な時期を、厳しい大人の社会で過ごしてきた柳楽さん。くじけそうになったことは何度もあったという。「辛い時に支えてくれたのは家族と、やっぱり芝居でした。若いころから芝居にはちゃんと軸を持っていたし、そんな芝居に対して、いかに全力で臨めるかを常に考えて生きてきましたから。もうすぐ30代になるけど、役に活きるような考え方が身についてきて、10代のころのいい経験も悪い経験も、ひとつの引き出しになっているなって思えるんですよね。それから、当時からレベルの高い俳優になりたいって思ってきたけど、レベルの高さって自分で決めることじゃない。見てくれる人たちが決めることなんですよね。『よかったよ』って言ってもらえるように、これからも僕はさらに多くの経験を積んで、芝居をやり続けていきたい、そう思っています」『泣くな赤鬼』小渕が再会したのは、野球を挫折し高校中退したかつての教え子、ゴルゴ。厳しさでしか向き合えなかった後悔を抱え、彼のために何ができるのか…。監督/兼重淳出演/堤真一、柳楽優弥ほか6月14日より全国公開。©2019「泣くな赤鬼」製作委員会やぎら・ゆうや1990年3月26日生まれ。2004年に公開された映画『誰も知らない』で俳優デビュー。カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞し、一躍有名になる。6月21日公開予定の映画『ザ・ファブル』にも出演。シャツ¥36,000パンツ¥42,000(共にオールドジョー/オールドジョー フラッグシップストア TEL:03・5738・7292)その他はスタイリスト私物※『anan』2019年6月19日号より。写真・内山めぐみスタイリスト・池田尚輝ヘア&メイク・佐鳥麻子インタビュー、文・若山あや(by anan編集部)
2019年06月12日今、注目の女の子を紹介する『anan』で連載中の「イットガール」。今回は女優、モデルの新田湖子さんです。お芝居をしているときは、シャイな自分を忘れられる時間。次世代スターを探す「金の卵発掘オーディション」を機に3年前にデビュー。「モデルに憧れ、初めて受けたオーディションでした。周りの子がダンスや歌を披露する中、私がやったのは唯一の特技、長い舌を鼻につけること(笑)。審査員の方は苦笑い。まさかの受賞でした」。CMや舞台出演経験を重ね、今は芝居に夢中。「元々内気で人見知りだけど、演技となると違う自分になれるのが面白い。目標は同じ事務所の菜々緒さん。ワルな女とか、個性的な役を思い切り演じられる女優になりたいんです」“おしゃピク”を楽しみましたレースの布を敷いて、花を飾って。見た目重視の“映え”ピクニックです。カフェに行くとテンションUP!カフェ巡りが趣味。やっぱりかわいくて映える空間に惹かれます。おばあちゃんに教わり油絵を描きました。おばあちゃんが絵描きなんです。これはいとこの犬をモチーフにしました。にった・ここ2002年生まれ。2016年「第1回金の卵発掘オーディション」でDMM.yell賞受賞。ウェブマガジン「日刊Ranzuki」専属モデルを経て女優、モデルとして活躍。※『anan』2019年6月5日号より。写真・土佐麻理子文・間宮寧子(by anan編集部)
2019年06月04日映画好きも演劇好きも楽しめる、傑作舞台『キネマと恋人』に出演する妻夫木聡さんにお話を伺いました!映画を心の支えに生きるハルコ(緒川たまき)の前に、ある日、映画の中の登場人物が飛び出してきて――。ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)さんが敬愛するウディ・アレンの監督映画『カイロの紫のバラ』をモチーフにした舞台『キネマと恋人』。’16年に初演され、数々の演劇賞を受賞した傑作が、当時のキャスト、スタッフのまま再演に。「前回は稽古と台本があがるのが同時進行だったので、台本を渡されたらすぐ覚えて稽古するっていう状態(笑)。しかもその合間に映画の部分の撮影もあって。めちゃくちゃ大変でしたけど、めちゃくちゃ楽しかったんです。その時から、みんなで再演も旅公演もやりたいねと話していただけに、実現できて嬉しいです」妻夫木聡さんが扮するのは、芝居にこだわりを持つ売れない俳優の高木高助と、彼が演じる時代劇映画の人物で、気っ風のいい間坂寅蔵。「寅蔵は悪いところが何ひとつないキャラクターで赤子のような無垢さがある。高助は、スターになりたい思いもあるけれど、それ以上に芝居を愛している。ふたりとも違う意味で純粋さが大事な役。ただ、寅蔵の決め台詞『まさかまさかの間坂寅蔵』に関しては、どう言うかすごく悩みました。ちょっと滑稽に見えたらいいなと思っていたんですが」実際、初演は、画面から寅蔵が出ていって右往左往する映画関係者のドタバタと、寅蔵と高助から好意を寄せられるハルコとの恋が重なり、コミカルで甘く、軽妙だけどビターな上質のコメディの仕上がりに。「台本が、それだけで十分に面白いので、なるべく余計なことはしないように心がけていた」と話す。「KERAさんは、まずは僕らの中で生まれるものを待って、それを尊重しながら軌道修正してくださる演出家。振付の小野寺修二さんを交えて、どの角度でどう動いたらいいか、映像とどう合わせていくかを全員で話し合ったり。一緒に作っている感覚でした。今回、劇場が大きくなるのでテクニカルな面で変わることもあるだろうし、前回をなぞって狙った芝居をすると面白くない気もするので、初演はいったん忘れて新しく作ろうかなと思っています」映像でも活躍する妻夫木さんにとって、舞台は「夢みたいな場所」。「本番が終わったら終わりじゃないですか。実際に舞台に立っていたはずなのに、この現実は本当にあったのかなって感覚になることがあって、舞台のその儚さがたまらなく好きなんです。観客の時も同じで、自分の記憶の中だけに残るから、時間を経ていくうちに作品が自分だけのものになっていくんですよ。物語がそれぞれの人の中で成長する。それがね、僕は素晴らしいなって思うんです」『キネマと恋人』昭和11年、東京から1年も2年も遅れて映画が上演される小さな港町。ハルコ(緒川)がいつものように映画を観ていると、銀幕から寅蔵(妻夫木)が話しかけてきて…。6月8日(土)~23日(日)三軒茶屋・世田谷パブリックシアター台本・演出/ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演/妻夫木聡、緒川たまき、ともさかりえほかS席7800円A席4800円(共に税込み)ほか当日券あり。世田谷パブリックシアターチケットセンター TEL:03・5432・1515(10:00~19:00)北九州、兵庫、名古屋、盛岡、新潟公演あり。撮影:西村裕介つまぶき・さとし1980年12月13日生まれ。福岡県出身。日台合作で製作された主演映画『パラダイス・ネクスト』が7月27日に、出演映画『決算!忠臣蔵』は11月22日に公開を控えている。※『anan』2019年6月5日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・片貝 俊ヘア&メイク・勇見勝彦(THYMON Inc.)インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2019年05月31日「男女間のすれ違いから起こるトラブルって、永遠のテーマですよね。しかもその舞台が結婚式ということで話題が尽きない作品です」快活な口調でそう話すのは、ミュージカル『刀剣乱舞』やドラマ『崖っぷちホテル!』などで注目を集める佐伯大地さん。映画『女の機嫌の直し方』で演じたのは、新婦や母親の機嫌を損ね右往左往する新郎・悠。披露宴では、ほかにも男女間のさまざまなトラブルが多数発生。それを男性脳と女性脳の違いを分析した脳科学の見地から解決していく物語。「悠が、新婦に『全部君の好きにしていいよ』って言う場面があって、僕も同じ状況になったらきっと言いそうなんです。でも、女性側からすると“全然わかってない”んだそう。こっちは相手を思いやって言っているのに。こうやって男と女はすれ違うんだなって(笑)。でも、この映画を観たら、異性への向き合い方が変わってくる気がするんです。たとえ何か問題が起こったとしても、男性って、あるいは女性って、こういう考え方をしちゃうもんなんだって思えたら、少し大目にみられたりとか」今作は、沖縄国際映画祭で最優秀作品に贈られる観客賞も受賞。「男と女は、なかなかわかり合えずに揉めるけれど、違うからこそ惹かれ合う。ラストに早見(あかり)さんが言うセリフがあるんですが、それがすごく好きなんです。なるほどなって思わされましたし」現在28歳。結婚願望はと尋ねると「あります!」と前向きな言葉が。「うちの父が、マウンテンバイクとかスノボとか、小さい頃から連れていってくれる人だったんで、僕も若く動けるうちに、父みたいになりたいなって思うんです。そのためにも、まずはこの仕事で家族を支えられるだけのものを確立しないと、ですけれど」活動の場が増えるに従い、あらためて演技の奥深さに気づき、ワークショップなどに積極的に通っている。「俳優って、脚本を具現化する仕事で、どんな状況でも、あるかもしれない、と思わせるのが役割。例えば殺人犯の役だとして、そこに何でもない日常があれば、観る人が自分を役に重ね合わせるかもしれない。でも、そういうシーンって繊細な表現が必要で難しい。そこをリアルに見せられるようになりたいですね」『女の機嫌の直し方』原案/黒川伊保子監督/有田駿介脚本/蛭田直美脚本協力/横澤夏子出演/早見あかり、平岡祐太、松井玲奈、佐伯大地ほか6月15日(土)より全国順次公開。©2019「女の機嫌の直し方」製作委員会さえき・だいち1990年7月19日生まれ。東京都出身。ミュージカル『刀剣乱舞』岩融役で注目を集める。近作にドラマ『約束のステージ~時を駆けるふたりの歌~』など。シャツ¥22,000(エンハーモニック タヴァーン/スタジオ・ファブワーク TEL:03・6438・9575)パンツ¥32,000(ウィーウィル/ウィーウィル ギンザ TEL:03・6264・4447)シューズ¥65,000(パラブーツ/パラブーツ青山店 TEL:03・5766・6688)※『anan』2019年5月29日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・藤長祥平ヘア&メイク・石川尋美インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2019年05月28日