(画像はニュースリリースより)ダイエットはまず続けることが大事!株式会社学研パブリッシングとITベンチャーの株式会社ネオレックスは、iPhone向けダイエットアプリ『ゆるレコダイエット』を5月20日より配信開始した。App Storeにて無料でダウンロード可能だ。アプリの使い方は簡単。ただ今日のダイエットへの取り組み方を自分自身で評価し、○や×などをつけるだけ。体重の記録や目標設定も、面倒ならしなくてOK。今日は階段を頑張って上ったなら○、つい甘い物を食べてしまったなら×など、毎日の状態を記していくことで、ダイエットがうまくいかない原因が分かってきそうだ。個性的なサポートキャラクターも登場し、毎日のダイエットのヒントをくれたり、励ましの言葉をかけてくれたりする。記録が増えればキャラクターの姿やセリフもさらに変化。SNSに投稿すれば仲間と交流でき、ダイエットを持続するモチベーションに。大手出版社とIT企業がタッグを組んで開発学研パブリッシングが発行するヘルシー&ビューティー紙「月刊フィッテ」では、「体も心も、かろやかに!」をコンセプトにさまざまな健康&美容情報を発信。「カーヴィーダンス」や「骨盤枕」シリーズなどの大ヒットを生み出した。株式会社ネオレックスは世界89ヶ国においてダウンロードされているiPhoneアプリ「MyStats」を手がける。毎日の活動を記録して自分自身の分析が行えるもので、ビジネスパーソンや受験生、アスリートなど自己実現を目指す人に利用されている。【参考】・学研パブリッシングニュースリリース・ゆるレコダイエットApp Store
2014年05月24日東京大学(東大)は5月22日、従来の不確定原理に基づく量子暗号方式とはまったく異なる動作原理に基づく量子暗号方式を考案し、従来は必要とされていた通信路の雑音量を監視せずにセキュリティを確保できることを証明したと発表した。同成果は同大大学院工学系研究科の小芦雅斗教授、理化学研究所の佐々木寿彦特別研究員(当時、東大大学院工学系研究科 特任研究員)、国立情報学研究所の山本喜久教授らによるもの。詳細は5月22日付の英科学誌「Nature」に掲載された。量子暗号は量子力学の性質を利用することで、盗聴者の計算能力や技術レベルに依存しない強固なセキュリティを実現できる通信技術。通信におけるセキュリティは、ハイゼンベルクの不確定性原理により、微弱な光パルスに載った信号を盗聴者が盗み見る行為そのものが信号が変化させてしまい、通信路の雑音量が増加するように見えることから、その雑音量を監視することで担保されていた。しかし、この動作原理では、使用している通信路が本来持っていた雑音も盗聴者が引き起こしたと仮定させてしまい、効率の低下を招いてしまい、ビット誤り率が15%程度になると、まったく情報を送れなくなるという課題があった。また、通信路をある程度の数の検査を実施する必要があり、数百ビットの秘匿通信をする場合でも、監視のために最低限百万ビット以上の通信量が必要となるという課題もあった。今回考案された方式は、レーザー光源からの微弱光パルスの列に、デジタル光通信でも使用されている差動位相変調方式でビット値の情報を載せて送信。受信者は、遅延回路を含んだ干渉計を用いてパルスをランダムにずらして重ね、光子検出によりビット値を読み出すというもので、具体的には、受信者が光子を受信すると、重ねた2つのパルスを位相が同じだったのか違っていたかの判断できるようになるため、それをビット値とし、その光子検出パラメータを送信者に報告。送信者は、その情報と、自らが与えた位相変調の記録から、受信者が決定したビット値を判断することで、1ビットの情報が送られたこととなる。もし盗聴者が通信路に介入して光子検出を行い、パルス対の位相の相違を知ったとしても、受信者が偶然、盗聴者が知ったパルスのずれを偶然選ぶことが無い限り、盗聴者が、知ることができた位相の相違を用いて送受信者がビット値を決めることはない。また、盗聴者が光子検出を行うタイミングを遅らせ、受信者がパルス対を送信者に連絡するタイミングで、先に保存していたパルス幅を測定する場合、パルス列そのものをずらすことはできるが、どこに波束が収縮するかは、量子力学の持つ不確実性によりランダムに選ばれるため、ほぼ合致することはないという。実際の研究では、こうした単純な盗聴法のみならず、物理的に可能なあらゆる盗聴法に対するセキュリティを証明できたと研究グループでは説明している。なお研究グループでは、従来方式に比べると、既存のレーザー光源と干渉計の組み合わせで実現できるため、システムを簡素化が図れるほか、監視に関わる手間の省略や雑音が大きな通信路でも秘匿通信が可能になるとしており、今後、この新たな動作原理の理解を深めていくことで、1984年に発表された現在の量子暗号方式に代わる新たな暗号方式として活用が期待できるとするほか、暗号以外のさまざまな分野での発展も期待することができるとコメントしている。
2014年05月22日理化学研究所(理研)と東京理科大学は5月16日、ダニ抗原などのアレルゲンで誘導される喘(ぜん)息が、アレルギーを起こす白血球「好塩基球」から産生される「インターロイキン(IL)-4)」を介した「2型自然リンパ球(NH(ナチュラルヘルパー)細胞)」との共同作業によって起こるという新しいメカニズムを明らかにしたと共同で発表した。成果は、理研 統合生命医科学研究センター サイトカイン制御研究チームの久保允人チームリーダー(東理大 生命科学研究所 分子病態学研究部門教授兼任)、東理大 総合研究機構 戦略的環境次世代健康科学研究基盤センターの本村泰隆研究員らの共同研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、日本時間5月16日付けで米科学誌「Immunity」オンライン版に掲載された。アレルギー反応は、発生メカニズムによって5つのタイプに分類されており、「免疫グロブリンE(IgE)抗体」によって引き起こされるものを「I型アレルギー」と呼び、気管支喘息や花粉症、アレルギー性鼻炎などがその代表例だ。IgE抗体は「肥満細胞(マスト細胞)」や好塩基球が持つ受容体に結合することで、アレルゲン特異的にアレルギー反応を起こす。好塩基球は白血球の中でも、塩基性色素により暗紫色に染まる大型の好塩基性顆粒を持つものを指すが、白血球全体の0.5%以下しか存在しないため、長い間その機能や生物学的特性は謎のままだった。近年、アレルギーはIgE抗体を介したマスト細胞や免疫細胞の1つであるT細胞による反応系が存在しなくても起きることがわかってきている。このような抗原特異的な反応とは無縁なアレルギーには、好塩基球や免疫システムの最前線で働く新しいタイプのリンパ球「自然リンパ球」が関与している可能性が示され、注目されているところだ。アレルギーを強く誘導するアレルゲンとして働くことが知られているタンパク質分解酵素「システインプロテアーゼ」は、ダニ抗原やパイナップル由来のなどに含まれるタンパク質分解酵素であり、気道などに過剰に侵入した際、気道上皮を壊すことによって、アレルギーを誘導する「IL-33」を気道内に放出する。そして、放出されたIL-33が直接自然リンパ球の1つNH細胞に働き、喘息を引き起こすという仕組みだ。しかし、喘息の発症に関わる好塩基球の働きなど、詳細なメカニズムはわかっていなかった。研究チームは、マウス生体内で起こるアレルギー反応における好塩基球の役割を解析するため、好塩基球を持たない細胞特異的欠損マウス「Bas-TRECK」と、好塩基球由来のIL-4だけを欠く遺伝子改変マウスが実験に用いられた。通常、システインプロテアーゼ(ここでは、パイナップル由来の「パパイン」が利用された)を点鼻投与すると、3日以内に肺に炎症の原因となる白血球の1種である「好酸球」が大量に集まり、粘液「ムチン」の産生が誘導されて喘息症状が現れるという具合だ。しかし、Bas-TRECKマウスにパパインを投与しても喘息症状が現れず、肺への好酸球の集積やムチンの産生も顕著に抑制されたのである。同様の喘息症状の抑制は、好塩基球由来のIL-4だけを欠くマウスにおいても認められた。これらから、好塩基球から産生されるIL-4の重要性が示されたのである。喘息における肺への好酸球の集積は肺に存在するNH細胞から産生されるケモカイン「CCL11」、ムチンの産生はNH細胞から産生される「IL-5」や「IL-13」などによるものだ(画像1)。そこでまず、好酸球の集積やムチンの産生過程におけるIL-4の役割が調べられた。その結果、好塩基球からIL-4が産生されないと、NH細胞からCCL11やIL-5、IL-13の産生が抑制されると共に、炎症に関わるさまざまな遺伝子の発現が抑制されることが判明したのである(画像2)。また、Bas-TRECKマウスに野生型マウス由来の好塩基球を移入したところ、喘息症状の抑制が解かれて症状が現れた。一方、同マウスにIL-4を産生できない好塩基球を移入したところ、喘息症状は現れなかった。これらの結果から、NH細胞の活性化には好塩基球から産生されるIL-4が必要であり、システインプロテアーゼで誘導される喘息は、好塩基球から産生されるIL-4を介した好塩基球とNH細胞の共同作業が必要であることが明らかになったのである。現代社会で、アレルギーは日常生活に支障をきたすほどの影響があり、生活環境を見直す必要が生じるなど、非常に大きな社会問題を引き起こしているが、T細胞やIgE抗体を必要としないアレルギーや、システインプロテアーゼなどのタンパク質分解酵素がアレルゲンとして喘息を引き起こす能力を持つことなどアレルギーの実態が解明されつつもある。今回の成果により、システインプロテアーゼによって引き起こされる喘息の発症メカニズムに好塩基球やNH細胞など新しい免疫細胞の関与が明らかになった形だ。また、同時にアレルギー反応にもさまざまな側面があることが示された。今後、これら細胞を標的とした新しい視点からのアレルギー治療法の開発や、さまざまなアレルギーの原因や症状に適合した治療法の構築が期待できるとしている。
2014年05月16日学研パブリッシングはこのほど、DIY専門誌『ドゥーパ!』創刊100号記念特大号を発売した。○手ぬぐいなど5大付録も同誌は「週末DIY・手作りライフマガジン」として、DIYや日曜大工についての記事を中心に展開している。今回の特集は「自分で作る! おいしい庭カフェ」。5大付録として、「DIY資材百科ハンドブック」「ドゥーパ! 特製手ぬぐい」「太陽光発電システム設置マニュアル」「17年の軌跡を振り返る思い出グラフティ」「庭カフェスツール実用! 大図面」が付いている。価格は1,099円。
2014年05月12日京都大学、岐阜大学、科学技術振興機構(JST)は5月5日、疾病の指標(バイオマーカー)となる複雑な生体分子を識別して溶けるゲル状物質「反応性超分子ヒドロゲル」の開発に成功したと共同で発表した。成果は、京大大学院 工学研究科の浜地格 教授、岐阜大 工学部 化学・生命工学科の池田将 准教授(前・京大大学院 工学研究科助教)らの共同研究チームによるもの。研究はJST課題達成型基礎研究の一環として行われ、詳細な内容は現地時間5月4日付けで英科学誌「Nature Chemistry」オンライン速報版に掲載された。水を媒体とするヒドロゲルはその生体適合性の高さから、診断材料、薬物放出担体、細胞培養基材など、さまざまな医療応用が期待される魅力的な材料とされている。ヒドロゲルが特定の分子の存在やその量を識別して溶けたり、再度固まったりできれば、高度な機能を持つ新しい医療材料の開発につながると期待されているところだ。しかし、これまでに開発されたヒドロゲルが識別できる分子は、構造が単純なものに限定されていた。また、識別の対象となる標的分子ごとに新たなゲル化剤の設計と開発が求められ、その都度多大な労力を必要としているという大きな課題もあったのである。さらに、複数の標的分子が同時に存在するかどうかを見分けるヒドロゲルの開発に関しては、その設計指針さえなかったという具合だ。そこで研究チームは今回、小分子化合物が自律的に構造を作り出す「自己組織化」現象によってナノサイズ(1nm=100万分の1mm)の構造体を開発。そして、その機能化に取り組んだ。特に、水中でナノサイズの極細繊維(ナノファイバー)となり、それらが絡み合うことでヒドロゲル(超分子ヒドロゲル)を形成する小分子化合物(ゲル化剤)の高機能化を進展させ、非常に低濃度でゲル化する化合物の開発に成功してきたのである。今回、それらの知見を基に、酸化反応あるいは還元反応によって溶けるという特徴を持った「反応性超分子ヒドロゲル」の「BPmoc-F3」と「NPmoc-F2」が開発された(画像1~5)。BPmoc-F3に関して確認された特徴の1つが、活性酸素種(ROS)の中で過酸化水素を選択的に見分けて溶けるというものだ(画像6)。過酸化水素は、各種「オキシダーゼ(酸化酵素)」がその基質を酸化する時に生成することが知られている。そこで、BPmoc-F3が形成するヒドロゲルにさまざまなオキシダーゼを埋め込んだところ、内包したオキシダーゼの基質をヒドロゲルに添加した時にのみゲルが溶けることが見出されたのである(画像7)。例えば、「グルコースオキシダーゼ(GOx)」を内包させたヒドロゲルは、糖尿病のバイオマーカーである「グルコース(ブドウ糖)」のみに応答して溶け(画像7の1列目)、「サルコシンオキシダーゼ(SOx)」を内包させたヒドロゲルは、前立腺がんのバイオマーカーである「サルコシン」のみに応答して溶ける(画像7の2列目)ことが実証された。この結果は、ヒドロゲルの中でオキシダーゼが十分にその活性を保持し、基質を酸化する際生成した過酸化水素がヒドロゲルを溶かしているということを意味しているとする(画像8)。つまり、1種類のゲル化剤が形成するヒドロゲルに酵素を選んで混合するだけで、グルコース、サルコシン、痛風のバイオマーカーの「尿酸」、コリンなど、さまざまな生体分子に応答して溶けるヒドロゲルが作製できることになるというわけだ。このように多様な生体分子を見分けることのできるヒドロゲルはほかに類を見ないという。さらに、ヒト血漿を用いた実験では、高血糖症に対応する濃度のグルコースが存在する時だけ溶けるヒドロゲルも作製可能であることが実証されており(画像9)、今後、診断材料の開発などの医療応用に幅広い貢献が期待できるとしている。還元反応によって溶けるヒドロゲルを形成するNPmoc-F2については、「フラビンモノヌクレオチド(FMN)」を補因子とし、ニトロ基を還元する「ニトロ還元酵素(NR)」を内包させておくことで、「還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)」の存在を選択的に見分けることが明らかにされた(画像10)。NADHは、「NAD依存性酵素」が基質を酸化する際に「酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)」から再生されることが知られている。そこで研究チームは、NAD依存性酵素の1つである「乳酸脱水素酵素(LDH)」とNAD+とNRを、NPmoc-F2が形成するヒドロゲルに同時に内包させた。すると、乳酸を添加した時にヒドロゲルが溶けることが見出されたのである(画像11)。この結果は、ゲルの中で乳酸がLDHによって酸化され、その際NAD+から再生されたNADHがゲル化剤と反応し、ヒドロゲルを溶かしていることを示しているという(画像12)。ちなみに乳酸はがん組織周辺で濃度が上昇することが知られている。さらに、上記の2種類のゲル化剤および数種類の酵素を混合したヒドロゲルは、それぞれが識別する生体分子が同時に存在する時のみに溶けることも実証したという。すなわち、グルコースのみ、あるいは、NADHのみでは溶けず、グルコースとNADHが両方存在する時においてのみ溶ける自律応答型のヒドロゲルの開発に成功したというわけだ(画像13・14)。また、そのヒドロゲルに蛍光色素を修飾した抗体(IgG)を閉じ込めておくと、グルコースとNADHが両方存在する時においてのみ抗体を放出することも確認された(画像15・16)。今回開発されたヒドロゲルは、水とゲル化剤と酵素を混ぜるだけで簡単に作製することが可能な点が大きな長所だ。さらに抗体のようなバイオ医薬品をそのヒドロゲルの中に閉じ込めておき、バイオマーカーの存在を識別し放出させることも可能である。このように、化学反応の特異性を組み込んだ小分子化合物からボトムアッププロセスで作成したナノファイバーからなるヒドロゲルと酵素反応を組み合わせる手法は広く一般化することが可能であり、診断材料、薬物放出材料、再生医療用細胞培養基材など、さまざまな医療材料に「これまでにない自律的に考えて応答するという新たな機能」を付与できると期待されるとしている。
2014年05月08日(画像はプレスリリースより)HA4メンテナンスウォーター創薬ベンチャー企業の株式会社糖質科学研究所は、「HA4」と名付けられた新素材と、伊豆の温泉水を主成分とした「HA4メンテナンス・ウォーター」を発売します。「HA4メンテナンス・ウォーター」は「化粧水」ではなく「お肌をメンテナンスする水」。主成分となる新素材の「HA4」は、糖質科学研究所が研究した特殊なヒアルロン酸。その分子量は、驚くことに、一般的なヒアルロン酸の約1/10万。最低分子量に近いため、肌への浸透力が高いのです。また、使用されている水は伊豆・修善寺の温泉水(FENE)。「FENE」はメタケイ酸を多く含んでおり、日本有数のミネラル分保有量の多い温泉水です。おすすめ使用方法「HA4メンテナンス・ウォーター」は、メイクを落とした後の使用がおすすめ。心も体も癒やす温泉水の本領発揮ですね。防腐剤も植物性のものを使用しており、敏感肌の方、乾燥肌の方にも安心して使用していただけます。「HA4メンテナンス・ウォーター」は150mlで1944円(税込)。オリゴヴィータ・ショップで購入できます。【参考サイト】▼@Press「化粧水ではない新しいスキンケ”水”」▼オリゴヴィータ・ショップ
2014年04月30日理化学研究所(理研)は4月25日、脳波の1種である「高周波ガンマ波」が脳の海馬-「嗅内皮質」間で同期することが、動物が空間的な「ワーキングメモリ(作業記憶)」を正しく読み出し、実行するために重要な役割を果たしていることを発見したと発表した。成果は、理研 脳科学総合研究センター RIKEN-MIT神経回路遺伝学研究センター利根川進研究室の山本純研究員、同・ジャンヒャップ・スー研究員、同・竹内大吾研究員、同・利根川進センター長らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、日本時間4月25日付けで米科学雑誌「Cell」オンライン版に掲載され、印刷版5月8日号にも掲載される。ヒトの脳は、日々の生活において、さまざまな事柄を目的に応じて一時的に覚え、その記憶が必要となった時に呼び出して実行に移す能力を備えており、それがワーキングメモリと呼ばれる機能だ。例えば、通行人に聞いた道順にそって目的地にたどり着く、あるいは電話帳から一時的に番号を覚えてそれをダイヤルする、といった日々の課題に欠かせない能力である(一般的には短期記憶と同義語的に使われることもあるが、厳密には異なる)。しかし、こんな誰でも当たり前に日常的に使用している機能ですら、実はその脳内メカニズムはまだ解明されていない。記憶を司る部位である海馬周辺の神経回路が空間的なワーキングメモリに不可欠であることはこれまでの研究によって示されているが、どのようなメカニズムで記憶が保持され、必要な時に呼び出されているのか詳細はわかっていなかったのである。さらにワーキングメモリを実行する時に、ヒトは起こした行動が正しいか間違っているかをモニターし、必要があれば行動を修正する能力を持つ。そうした行動はこれまで「気付」や「意識」、さらには心理学用語の「メタ認知」などで説明が試みられてきた(メタ認知とは「認知の認知」ともいわれ、自己の認知活動(記憶、思考、情動、知覚など)を客観的にとらえ評価して制御すること)。こうしたメタ認知の能力に関する記述はギリシャの哲学者アリストテレスの時代まで遡るが、本格的に脳機能として議論され始めたのは1970年代のことで、それから約40年の月日が経過しているが、その神経科学的なメカニズムについての研究は、これまたあまり進んでいない。その原因の1つとされているのが、意識やメタ認知に関する能力はヒト特有の機能と考えられているからだ。つまり、実験モデル動物のマウスなどの小動物では、この能力に関する決定的な証拠がまだ示されておらず、マウスなどを用いた実験ができないからである。ワーキングメモリを含む高次の脳機能は、これまで特にガンマ波と呼ばれる30~100Hzの脳波パターンとの関連が示唆されてきた。しかし、ガンマ波領域はほかの脳波領域に比べて周波数帯域の定義があいまいで、これもまた詳しい機能が知られていない脳波領域だという。ところが近年、ガンマ波領域に高域・低域の2種類の帯域が存在することがラットを使った実験で示され、多くの研究者がその機能分担について議論するようになってきた。研究チームは、記憶中枢としての海馬-嗅内皮質間の電気生理的な神経活動を調べる目的で研究を進めていたが、その過程で偶然、マウスが「おっと、これは間違い!(Oops!)」というように自己の間違いを修正するような行動を取ることを確認。そこでこの現象に着目して詳細な解析に取り組むことにしたというわけだ。なお、嗅内皮質は海馬の情報の入出力部位に位置しており、大脳皮質の一部で側頭葉の内側下部に位置する。また今回の研究では、大脳皮質嗅内野の第III層から直接海馬CA1領域に投射する繊維が着目されており、CA1領域にとって古典的な複数のシナプスを介した投射(すなわち大脳皮質嗅内野第II層→歯状回→第3アンモン角→第1アンモン角→大脳皮質嗅内野第V層)とは対照的な入力だ(今回の遺伝子改変や光遺伝学手法で操作されたのはこの直接投射回路)。研究チームは、最新の電気生理学的手法および光遺伝学的手法を、脳の特定の神経回路だけをブロックした遺伝子改変マウスへ適用して、空間的ワーキングメモリを呼び出す時に海馬と嗅内皮質間での情報処理がどのように行われるかを調べたのである。マウスのような小動物モデルでは、T型迷路を用いた空間ワーキングメモリ課題によって、ワーキングメモリの評価が行われる(画像1)。この課題では、マウスはまずT字型の迷路の分岐したどちらか一方だけのアームに置かれたエサをもらうサンプル試行が行われる(画像1左)。その後、サンプル試行でエサの置かれたアームとは反対側のアームにエサが置かれてテスト試行が行われる(画像1右)。このようなサンプル試行とテスト試行を組み合わせた課題が何回も繰り返される。マウスは初めの内、テスト試行中にその前のサンプル試行でエサをもらったアームを探そうとして不正解する。しかし、学習が進むとその反対側のアームにエサがあるというルールを理解し、正解するようになる。つまり、テスト試行中、マウスはサンプル試行で訪れたアームを一時的に記憶し、その記憶をもとに反対側のアームを選ぶ作業を実行しなければエサにありつけない。野生型のマウスでは、T型迷路を用いた空間ワーキングメモリ課題において、迷路の分岐にさしかかる直前に、海馬-嗅内皮質間における「局所電場電位」の内、高周波ガンマ領域における「位相同期性」(画像2)が著しく高くなることが発見された(画像3)。局所電場電位とは、深部脳内に挿入された電極の周辺から計測する集合電位。電極の種類や脳内の部位にもよるとされるが、電極の数100μm近傍のシナプス後電流の空間的総和を反映しているという。また振動現象は「振幅」と「位相」の独立した成分に分けて議論されるが、位相同期性は2点間の位相差を観測し、その位相がどの程度そろっているのかを解析する手法である。この同期性はテスト試行において高く、さらにテスト試行で正解した場合に顕著である一方、不正解の場合にはほとんど確認されなかったという。また、この神経回路がブロックされた遺伝子改変マウスではT型迷路でのパフォーマンスが悪いことが示されていたが、このマウスにおける高周波ガンマ波の活動は非常に低いことが確認された。このことから、高周波ガンマ領域における位相同期性は空間記憶を正しく呼び出すことに関与すると考えられるとする。低周波ガンマ領域やシータ領域の脳波については、こうした変化は見られなかった。なおシータ波は、動物が動き出すと主に海馬や大脳皮質嗅内野で6~12Hzの顕著な定在波として出現し、ガンマ波とシータ波は位相的に密接に結合することが示されている。またT型迷路の分岐点において、マウスが一瞬不正解を選んだ直後にその間違いに気付き行き先を修正する、いわゆるお手つきのようなケース(おっと、これは間違い!ケース:oops case)も注目された。その解析が行われた結果、海馬-嗅内皮質間の高周波ガンマ波の位相同期性が高くなるのは正解した時のように迷路の分岐の直前ではなく、分岐を通り過ぎた後の間違いを訂正する直前に観測され、時間的にも空間的にもシフトしていることが確認されたのである(画像4)。画像4が自己訂正試行中の神経活動のグラフだ。テスト試行で、マウスが自分の間違いに気付き、進行方向を変更して最終的に正解したようなケースである。T型迷路の分岐を過ぎて、間違ったアームに侵入し、「おっと、これは間違い」と気付いた時に高域ガンマ波の位相同期性が高くなっている(赤い矢頭で示されている部分だ)。T分岐で高域ガンマ波の位相同期性が高くなる正解試行の例と比べると、位相同期性の高くなる時間と場所がシフトしていることがわかる。さらに、海馬-嗅内皮質間の高周波ガンマ波の位相同期性が空間的ワーキングメモリの正しい呼び出しのために必要であるのかどうかをより直接的に調べるために、「光遺伝学的手法」を用いて嗅内皮質第三層から海馬CA1領域への入力の神経活動を、T迷路の分岐の直前の期間に特異的に抑制するという方法も取られた。すると、マウスの記憶テストの正解率が著しく低下すると共に、海馬-嗅内皮間の高周波ガンマ波の位相同期性が低下することが判明したのである。光遺伝学的手法とは、ウイルスによる導入や遺伝子操作によって光に反応するイオンチャネルやポンプを人工的に神経細胞に発現させ、光で神経活動を制御する手法のことをいう。今回の研究では「eArchT」という過分極を引き起こす抑制性の「プロトンポンプ(水素イオンチャネル)」が「投射繊維」に限定的に発現させられており、そこにレーザー光を照射することで入力繊維の活動を高時間分解能で抑制するという方法が用いられている。以上の結果から、海馬-嗅内皮質間における高周波ガンマ波の位相同期性が記憶の意識的な呼び出しにおいて重要な役割を果たすことがわかったというわけだ。また、お手つきして自己修正をする時に見られた位相同期が修正直前に時空間的にシフトする現象は、単なるマウスの「オペラント学習」などでは説明がつかず、マウスのような小動物にも意識あるいはメタ認知といった能力が存在することを示していると考えられるという。なおオペラント学習とは、1つの行動を取った結果により、その行動を取る頻度が変化するような学習。例えば、マウスがレバーを押すとエサがもらえることを自発的に覚えるような学習のことだ。今回の研究では、マウスの遺伝子改変技術、覚醒下の行動解析、複数領野の多点同時記録技術そして最新の光遺伝学技術を融合させた世界最先端といえる技術を用いて、今まで実験的に検証が困難であった、意識やメタ認知といった現象の脳内メカニズムの解明を試み、非常に興味深い実験結果が得られたとした。今後は、高周波ガンマ波の位相同期性が海馬-嗅内皮質間以外の、ワーキングメモリに関与する領野にも共通して見られる現象なのか、その検証が待たれるという。今回の研究では、主に海馬と嗅内皮質における神経細胞集団のガンマ波領域の電気的振動現象と集合的神経活動を中心に解析が行われた。今後は、さらに踏み込んで単一細胞レベルの電気的活動を調べる必要があると、続ける。また、ガンマ波が観測される時に、シータ波が基本波として観測されることが報告されていることから、それらの周波数帯域との結合性が、脳の高次機能に果たしている役割を調べることも、重要な課題の1つになるとした。ワーキングメモリは、日常会話をスムーズに行うなどといった、ヒトの生活の中の高次精神機能に直結しており、その研究はヒトの精神活動のメカニズムを解明するという大きな課題の1つだとする。また、アルツハイマー病を初めとする認知症やADHDなどの発達障害においても、ワーキングメモリの障害が指摘されているところだ。遺伝子改変マウスや光遺伝学的手法に電気生理学的手法を組み合わせた方法で神経活動のダイナミクスを解き明かしていくことは、疾患における記憶障害のメカニズム解明につながると期待できるとしている。
2014年04月25日京都大学(京大)は、米ペンシルバニア州立大学、米ドレクセル大学との共同研究により、「NaRTiO4」(Rは希土類元素)の組成を持つ一連の層状構造のペロブスカイト酸化物が従来とは異なるメカニズムで圧電性を示すことを、実験と理論計算の手法を併用して明らかにしたと発表した。成果は、京大 工学研究科の赤松寛文 日本学術振興会特別研究員(現・ペンシルバニア州立大学、日本学術振興会海外特別研究員)、同・藤田晃司 准教授、同・修士課程学生の久家俊洋 氏、同・田中勝久教授、同・田中功教授、同・学祭融合教育研究推進センターの東後篤史 特定准教授、,ペンシルバニア州立大のVenkatraman Gopalan教授、同・Long-Qing Chen教授、ドレイクセル大のJames M. Rondinelli准教授らの国際共同研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、4月29日付けで米物理学会発行の学術雑誌「Physical Review Letters」電子版に掲載される予定だ。圧電材料は力が加えられると電圧が発生し、逆に電圧が加えられると材料が変形するという特性を持つ。そのため、圧電材料は機械的エネルギーと電気的エネルギーの相互変換に用いられており、外部から与えられた振動を電気信号に変換して出力する「圧電センサ」や、圧電体の微小変位を電気的に制御する「圧電体アクチュエータ」として実用化済みだ。その用途は、半導体露光装置の極微動用ステージや走査型トンネル顕微鏡の探針駆動機構などの精密な位置制御を必要とする産業機器から、携帯電話、インクジェットプリンター、デジタルカメラといった身近な電子機器まで、多岐にわたっている。実用的な圧電材料の多くは、組成式が「ABO3」で表される「ペロブスカイト型構造」を持つ「強誘電体」だ(AとBは元素の略号ではなく、ここに多様な組成式が入る)。ペロブスカイト型構造をした酸化物(ペロブスカイト酸化物)は、ABO3の組成式で表され、頂点共有したBO6酸素8面体の3次元ネットワークの空隙に「Aサイト原子」が充填された構造を持つ。AサイトとBサイトで構成元素の幅広い組み合わせが許容されるため、多彩な電子物性が発現することが知られている。また、強誘電体は誘電分極を持ち、電圧を印加することにより誘電分極の向き変えることができる物質で、結晶構造に中心対称性がないため圧電効果を示す。ペロブスカイト酸化物の代表例としては、「チタン酸バリウム(BaTiO3)」、「チタン酸鉛(PbTiO3)」、「チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)」などが挙げられる。そのようなペロブスカイト酸化物強誘電体では、チタンと酸素の共有結合性や鉛の非共有電子対といった特定の元素に特有の性質のため結晶構造に中心対称性の破れが生じ、これが強誘電性・圧電性をもたらす。このような性質を持つ元素は限られるため、ペロブスカイト酸化物の中で中心対称性を持たない化合物は5%程度に留まっている。しかし最近になって、共有結合や非共有電子対の存在といった元素の性質にそれほど強く依存しないメカニズムによって、結晶構造の中心対称性が破れることが理論計算により提案された。このメカニズムでは、層状ペロブスカイトにおいて、ある種のBO6酸素8面体ネットワークの回転体パターンが中心対称性を破るというものである。ほとんどのペロブスカイト酸化物が酸素8面体回転を示すことから、このメカニズムに基づけば強誘電体・圧電体の開発において特定の元素に制限されない物質設計が可能となるというわけだ。ただし実際には、このタイプの強誘電体・圧電体はほとんど知られておらず、特に酸素8面体回転が起こると同時に結晶構造の中心対称性が破れることを実験的に検証した例は皆無だったのである。そこで研究チームは今回、NaRTiO4の組成を持つ一連の層状ペロブスカイト酸化物に注目し、その従来とは異なる中心対称性を持たないメカニズムによって圧電性を示すことを、理化学研究所が所有しJASRIが運用する大型放射光施設SPring-8の粉末結晶構造解析ビームライン「BL02B2」を用いたX線回折測定、「光第二高調波発生測定」、「ピエゾ応答力顕微鏡観察」、ならびに「第一原理計算」により明らかにした。今回の研究における層状ペロブスカイト酸化物とは、ペロブスカイト層ABO3と岩塩層AOが交互に重なった層状構造を持ち、通常は「ルドルスデン-ポッパー相」と呼ばれている。また光第二高調波発生とは、中心対称性を持たない物質に周波数ωの光を容赦した際に、周波数2ωの光=第二高調波が生じる現象のことだ(この時に同時に「直流電場(光整流)」も生じる)。そしてピエゾ応答力顕微鏡観察とは、プローブとサンプル接地面の間に電圧をかけながら走査し、圧電(ピエゾ)応答をマッピングする顕微鏡のことである。さらに第一原理計算とは、実験により得られるパラメータを用いないことを第一原理といい、量子力学に基づいて物質のエネルギーや構造を計算する手法のことをいう。今回の研究では、密度汎関数法が用いられた。それに加えて、第一原理で得られた力定数から「フォノンバンド計算」が実施され、構造の動力学的安定性の評価や安定構造の探索が行われている。これらの酸化物はこれまで、中心対称性を持ち、圧電性を示さない構造を採ると報告されていたが、今回の研究において、実際にはこれらの酸化物が報告とは異なる酸素8面体回転パターンを示し、その回転パターンの「微妙な違い」が中心対称性を破り、圧電性を生むことを突き止めたのである(画像1・2)。実験的にも、多結晶体の放射光X線回折の測定による構造解析から、中心対称性のない構造が妥当であることが明らかとなり、さらに光第二高調波発生(画像3)とピエゾ応答の観察(画像4)から、非中心対称性が確認されたという具合だ。放射光X線回折パターンと光第二高調波発生の温度依存性の測定から(画像3・5~7)、ある温度以下で酸素8面体回転が起こり、それと同時に中心対称性が破れることも確認された。これは、酸素8面体回転が中心対称性の破れの起源であり、圧電性をもたらすことを示しているという。従来のペロブスカイト強誘電体において中心対称性の破れをもたらす特定の元素に特有の構造歪みとは対照的に、酸素8面体回転は、ペロブスカイト関連化合物において最もありふれた構造の歪みだ。そのため今回の成果は、圧電体あるいは強誘電体の新しい物質設計指針を与えるだけでなく、非鉛圧電体材料を使ったデバイス応用にも大きな波及効果をもたらすと期待されるとした。なお、現状では圧電体としての性能が低いことから、研究チームは今後、巨大な圧電応答を示す物質系の開拓を行う予定としている。
2014年04月25日(画像はプレスリリースより)一生太らないコツ教えます創刊25周年目を迎える株式会社学研パブリッシングより発売されているFYTTE(フィッテ)。6月号の巻頭特集は「絶対に太らない一生のコツ」。食べ方のみならず、「ゆがみをとって自然燃焼ボディに!」「寝るだけでダイエットになる7つのルール」「生活動作UPでラクラクやせる」等、一生続けられる苦のない「やせ習慣」に迫る。表紙、巻頭インタビューは、結婚・出産を経てもなお、美しいボディにさらに磨きがかかっているSHIHOさん。なんと、今年モデル生活20周年を迎えるという彼女に、スペシャルインタビューとして、これまでの心とからだの変化などを振り返りながら、ずっとキレイでいる秘訣について聞いている。人気のやせ食材紹介も!やせ食材としても優秀だった、話題の万能調味料「塩レモン」をつかったやせレシピ。また、食物繊維豊富な「粉寒天」でやせるコツなど、人気のやせ食材を紹介。また「あべこべ体操」でラクにやせるからだをつくるための、朝昼晩のプログラムも掲載。ダイエット日記付き!6月号のとじこみ付録となるのは「ほめダイエット日記」。書くだけでも心身共にスッキリするメソッド、是非お試しを。また、各社イチオシの機能性ウェアをとりそろえた「美人ランコーデ術」、激闘を終えた浅田真央さんの連載も!特別定価:本体590円(税込)。全国書店またはコンビニエンスストアにて販売。【参考リンク】▼ 株式会社 学研パブリッシングプレスリリース/PR TIMES▼FYTTE.web URL
2014年04月24日トムソン・ロイターは日本時間4月15日に、研究コミュニティに高いインパクトを持つ論文(高被引用論文)に注目することで、日本の研究機関の存在感を俯瞰する1つの指標とすることを目的とし、2014年より高被引用論文数による日本の研究機関ランキングを発表することにし、国内研究機関のトップ20のほか、国別の国際ランキングで日本が5位以内に入っている分野における国内研究機関のトップ10、そして全22分野における日本の国際ランキングなどを発表した。今回の分析には、学術論文の引用動向データを提供する統計データベース「InCites Essential Science Indicators(ESI)」が使用された。データ対象期間は、2003年1月1日~2013年10月31日(データ取得時のESI情報に準拠)だ。学術文献・引用索引データベース「Web of ScienceR Core Collection」の収録レコードを基に、論文の被引用数から、世界のトップ1パーセントにランクされる研究者と研究機関の情報がそれぞれ収録されている。収録データの更新は2カ月ごとだ。また今回のランキングは、「Web of Science Core Collection」に収録されているデータの内、article、review、proceeding paper(ジャーナル収録分)のみを対象とし、分母として算出された。meeting abstractなどは入れられていないため、今回のランキングにおける高被引用論文の割合を基に各研究機関の総論文数を計算することはできないようになっている。さらにESIでは、共著者の所属機関をすべて網羅し包括的に収録する形だ。そのため、第1著者、責任著者、ほかの著者の区別なく、日本の研究機関が著者所属機関に含まれる高被引用論文の総計が順位に反映される形となっている。加えて、「高被引用論文(Highly Cited Papers)」の定義についてだが、ESIの22の研究分野において被引用数が上位1%の論文とされている。引用は分野によって動向が異なること、一般的に論文発表から時間を経るほど多くなることが踏まえられており、各年・分野別の高被引用論文が特定され、集計されている。○国内研究機関の総合トップ20(機関名/高被引用論文数/高被引用論文数の割合。*マークは、組織名を名寄せした集計値)東京大学/1219/1.53%科学技術振興機構/771/ 2.41%京都大学/710/1.21%大阪大学/613/1.28%理化学研究所/523/2.25%東北大学/457/0.98%産業技術総合研究所/354/1.25%名古屋大学/340/1.11%東京工業大学/315/1.17%筑波大学/246/1.25%九州大学/241/0.76%物質・材料研究機構/222/1.59%広島大学/200/1.15%北海道大学/193/0.61%岡山大学/175/1.18%神戸大学/148/1.09%早稲田大学/147/1.41%自然科学研究機構*/146/1.20%高エネルギー加速器研究機構/132/2.12%慶應義塾大学/125. 0.79%○総合国別トップ5米国ドイツ英国中国日本以下は、分野別トップ10。日本の研究機関が著者所属機関に含まれる高被引用論文の総計が世界順位で5位以内の分野、化学、免疫学、材料科学、生物学・生化学の4分野をピックアップ。ESIでは22の分野を設けているが、全22分野の日本のランキングは、最後に掲載した。なお、ノーベル賞受賞者を複数輩出し、日本が得意と見える物理学分野は世界6位となっている。○化学/CHEMISTRY(世界4位) (機関名/高被引用論文数/高被引用論文数の割合。*マークは、組織名を名寄せした集計値)科学技術振興機構/181/2.36%東京大学/155/1.86%京都大学/139/1.51%大阪大学/128/1.67%産業技術総合研究所/89/1.24%東北大学/57/0.89%物質・材料研究機構/54/2.09%東京工業大学/46/0.68%名古屋大学/43/1.06%九州大学/39/0.78%北海道大学/39/0.89%○化学分野国別トップ5米国中国ドイツ日本英国○材料科学(世界4位) (機関名/高被引用論文数/高被引用論文数の割合)物質・材料研究機構/92/1.94%科学技術振興機構/84/4.16%東北大学/60/0.94%東京大学/55/1.63%産業技術総合研究所/52/1.22%京都大学/36/1.23%大阪大学/32/0.79%東京工業大学/24/0.85%理化学研究所/16/3.25%九州大学/13/0.63%山形大学/13/4.74%○材料科学分野国別トップ5米国中国ドイツ日本英国○免疫学(世界4位) (機関名/高被引用論文数/高被引用論文数の割合)大阪大学/70/5.74%科学技術振興機構/55/8.33%東京大学/36/2.65%京都大学/33/4.07%理化学研究所/26/3.93%九州大学/12/2.19%東北大学/9/1.78%国立感染症研究所/6/0.66%兵庫医科大学/6/3.92%東京医科歯科大学/4/0.96%北海道大学/4/0.73%千葉大学/4/1.03%東京都臨床医学総合研究所/4/2.88%名古屋大学/4/1.44%○免疫分野国別トップ5米国英国ドイツ日本フランス○生物学・生化学(世界5位) (機関名/高被引用論文数/高被引用論文数の割合。*マークは、組織名を名寄せした集計値)東京大学/68/1.04%科学技術振興機構/67/1.94%京都大学/52/1.07%理化学研究所/39/1.26%大阪大学/38/0.85%九州大学/18/0.66%産業技術総合研究所/17/0.88%慶應義塾大学/15/1.24%北海道大学/12/0.44%名古屋大学/12/0.51%情報・システム研究機構*/12/4.51%○生物学・生化学分野国別トップ5米国英国ドイツカナダ日本なお、全22分野における日本の順位は以下の通り。残念ながら最高は4位で、3位以上はない。また、経済・ビジネス、精神医学・心理学、社会科学などは20位以下とあまり得意としていない分野であることがわかる。しかし、世界にはおおよそ200の国家や地域があり、それを考えれば、これだけの分野でベスト10以内も多く、資源もなければ国土もあまり広くない日本が奮闘しているという見方も可能だろう。○全22分野における日本の国際ランキング宇宙科学(SPACE SCIENCE)/8化学(CHEMISTRY)/4環境・生態学(ENVIRONMENT ECOLOGY)/17経済・ビジネス(ECONOMICS & BUSINESS)/22工学(ENGINEERING)/11コンピューター科学(COMPUTER SCIENCE)/14材料科学(MATERIALS SCIENCE)/4社会科学(SOCIAL SCIENCES、GENERAL)/21植物・動物学(PLANT & ANIMAL SCIENCE)/6神経科学・行動学(NEUROSCIENCE & BEHAVIOR)/10数学(MATHEMATICS)/13精神医学・心理学(PSYCHIATRY PSYCHOLOGY)/20生物学・生化学(BIOLOGY & BIOCHEMISTRY)/5地球科学(GEOSCIENCES)/8農科学(AGRICULTURAL SCIENCES)/14微生物学(MICROBIOLOGY)/10複合領域(MULTIDISCIPLINARY)/11物理学(PHYSICS)/6分子生物学・遺伝学(MOLECULAR BIOLOGY & GENETICS)/6免疫学(IMMUNOLOGY)/4薬物学・毒物学(PHARMACOLOGY & TOXICOLOGY)/6臨床医学(CLINICAL MEDICINE)/13研究の国際化や競争の激化に伴い、大学・研究機関における研究評価のニーズは年々高まりをみせており、多角的な研究力分析には、論文数、被引用数など従来の絶対的指標と共に、高被引用論文を初めとする相対的指標の併用が求められるようになってきているという。また相対的指標を見ることで、国・研究機関・研究者個人が、特定の集合体の中でどのくらいの位置にいるか、ベンチマークと比較してどうかなど、各自のポジションを客観的に把握し、機関の現状分析や戦略策定に活用することができるとする。高被引用論文を多く輩出する研究機関は、その分野で関心を集める傾向があり、今回のランキングは、世界的な学問・研究に対する影響力など、研究機関の世界の位置を示唆する1つの有力な指標となるとした。
2014年04月17日山口大学、東京大学、愛媛大学の3者は4月2日、レアアースのランタンを主成分に持つ2種類の新鉱物を三重県伊勢市矢持町の山中から発見して「ランタンフェリ赤坂石/Ferriakasakaite-(La)」と「ランタンフェリアンドロス石/Ferriandrosite-(La)」と命名し、国際鉱物学連合(International Mineralogical Association:IMA)の新鉱物・命名・分類委員会(Commission on New Minerals, Nomenclature and Classification)により新種として2014年2月3日に承認されたことを共同で発表した。成果は、山口大大学院 理工学研究科の永嶌真理子 准教授、東大 物性研究所の浜根大輔 技術職員、愛媛大大学院 理工学研究科の皆川鉄雄 教授、同・博士前期課程の冨田宣光氏、鉱物研究家の稲葉幸郎氏らの研究チームによるもの。なおランタンフェリ赤坂石は、島根大学の著名な鉱物学者である赤坂正秀教授にちなんでいる。レアアースやレアメタルは、現代のハイテク産業を支える重要な資源として注目されているのが、自然界でどのように分布するのか、どのような鉱物に含まれるのか、鉱物の結晶構造のどの部分に存在するのかなど、まだまだわかっていない点が多い。レアアースやレアメタルの産出というと、中国などの諸外国のイメージが強いが、実は日本にもそれらを産出する可能性のある地質が存在する。それが、永嶌准教授らも注目している「秩父帯」だ。秩父帯はかつての海洋底堆積物が弱い変成を受けたのちに今は地表に上がってきた地質(付加体)で、近年話題となっている南鳥島近海の海底で発見されたレアアースやレアメタルを含む泥の数億年後の姿に相当するという。具体的に秩父帯でどのようなレアアースやレアメタルを含む鉱物が発見されているかというと、2013年に永嶌准教授らが「ランタンバナジウム褐簾石/Vanadoallanite-(La)」を、さらに濱根技術職員らが「伊勢鉱/Iseite」を発見している。それら契機となって、さらなるレアアース・レアメタル鉱物探索が秩父帯で続けられているというわけだ。そうした秩父帯の1つとして知られているのが三重県伊勢市矢持町の山中で、ここには小規模な鉄マンガン鉱床が存在している。研究チームは今回、この鉄マンガン鉱床を詳細に調査。その結果、冒頭で述べたレアアースの新種鉱物が2種類発見されたのである。そして、その2種類の化学組成と結晶構造の分析を詳細に行い、どちらも新種であることが判明、それを受けてIMAへの申請がなされ、新鉱物であることが正式に承認されたというわけだ。今回の発見を含め、この鉄マンガン鉱床から見出された新鉱物は合計して4種となった(画像1)。いずれもこれまで他地域からの報告はなく、現在のところ、伊勢市矢持町の鉄マンガン鉱床こそがこれらの鉱物の世界唯一の産地であるといえる。今回のランタンフェリ赤坂石とランタンフェリアンドロス石は、2013年に発見されたランタンバナジウム褐簾石の近縁種で、いずれも「緑簾石」グループの化学組成と結晶構造を持つ。いずれの種も画像2に見られるような褐色~黒色の柱状結晶で産するため、外見からは区別することは不可能だ。含まれる元素の種類によってその鉱物名は変化する。緑簾石グループは非常に複雑な化学組成と結晶構造を持つ。画像3が、ランタンフェリ赤坂石・ランタンフェリアンドロス石の結晶構造図だ。結晶構造は「単位格子」と呼ばれる最小ユニットが3次元的に繰り返すことで形成されるが(画像3中の黒枠が単位格子を示す)、緑簾石グループはその単位格子の中に8種類の陽イオンが分布する場所(=席)があり、その内5種類(緑簾石グループでは、A1、A2、M1、M2、M3席と呼ばれる)で、それぞれの大きさや特徴に合わせて多様な種類の元素が分布する。主にこの5つの席に卓越する陽イオンの種類と組み合わせによって鉱物名が決定される仕組みだ。今回発見した2種類の新鉱物はレアアースであるランタンを主成分としていることは冒頭で述べた通りで、共通点としてM1、M2、M3席にそれぞれ鉄、アルミニウム、マンガンを持つ。ただしA1席は異なり、カルシウムが多く入る種とマンガンが多く入る種の2種類があったのである(画像4)。カルシウムの場合はランタンフェリ赤坂石、マンガンの場合はランタンフェリアンドロス石となる。このような元素の組み合わせが緑簾石グループに存在することを証明した例は今回が初めてということで、両者は新種の鉱物として承認されたというわけだ。今回のランタンフェリ赤坂石・ランタンフェリアンドロス石の発見によって、伊勢市山中の鉄マンガン鉱床からは合計4種のレアアース・レアメタルを主成分とする新鉱物が見出されたことになる。次世代の資源供給源として注目されている海洋底の泥、その数億年後の姿に相当するものがこの鉄マンガン鉱床であり、発見された4種の新鉱物は過去と未来をつなぐ情報を持っているはずだという。研究チームは今後、生成条件などの詳細を明らかにしていくことを考えているとしている。
2014年04月02日理化学研究所(理研)とリコー、東北大学の3者は4月1日、分離照射電子線ホログラフィを改良し、微小な絶縁体試料が帯電する様子を詳細に解析できるようにしたことで、高精細かつ省エネルギーのプリンタ開発において鍵となる、トナー粒子とキャリア粒子間の電位分布の解析に成功したと発表した。同成果は、同所 創発物性科学研究センター 創発現象観測技術研究チームの進藤大輔チームリーダー(東北大学 多元物質科学研究所 教授)、谷垣俊明研究員、赤瀬善太郎客員研究員(東北大学 多元物質科学研究所 助教)、村上恭和客員研究員(東北大学 多元物質科学研究所 准教授)、リコー 研究開発本部の川瀬広光研究主担らによるもの。詳細は、米国の科学雑誌「Applied Physics Letters」オンライン版に掲載された。静電気の力を利用して画像形成を行うレーザプリンタは、常に高画質化や省エネルギー化が求められているが、実現するためには、画像品質を左右するトナー粒子とキャリア粒子間の静電相互作用を解明する必要がある。その有効な手法の1つが、電磁場の可視化と同時に、局所箇所の電位を精度良く計測できる電子線ホログラフィである。しかし、試料の内部だけでなく、外部にも無視できない強さの電磁場が存在する場合には、電子線ホログラフィの実験で必要な参照波が大きく歪んでしまい高精度な計測ができない。また、トナー粒子とキャリア粒子は絶縁体のため、電子線が試料に照射されると試料自身が帯電し本来の電位分布解析を妨げる、という問題もあった。そこで今回、研究グループでは、電子線バイプリズムで電子波を分け、一方が観察領域を、もう一方が試料から離れた参照領域を通過するようにした分離照射電子線ホログラフィ、および電子顕微鏡の照射部にマスクを設置して試料を電子波から隠す技術を開発した。電荷を帯びた試料には、トナー粒子が正の電荷を帯びた正帯電型と負の電荷を帯びた負帯電型の2つがある。この2つのモデル試料を、開発した分離照射法で比較解析したところ、どちらの試料も局所的な電位分布を持つことが分かった。また、トナー粒子とキャリア粒子の接触箇所での電荷のやり取りによる電位分布と、その電場により誘発される分極を示す電位分布の解析にも成功したという。今後、この成果を応用した高精細かつ省エネルギーのレーザプリンタの開発が期待できる。また、同技術は、他の材料や電子デバイスにおける高精度電磁場計測にも活用が期待できるとコメントしている。
2014年04月01日理化学研究所(理研)とカネカは3月29日、植物の中でも樹木の細胞壁に多く含まれる高分子量の芳香族化合物「リグニン」の分解物を微生物に与えることで、バイオプラスチックの1種で、多くの微生物がエネルギー貯蔵物質として体内に蓄えるポリエステルである「ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)」の合成に成功したと共同で発表した。成果は、理研 環境資源科学研究センター バイオマス工学連携部門 酵素研究チームの富澤哲特別研究員、同・沼田圭司チームリーダと、カネカ GP事業開発部の松本圭司将来技術グループリーダーらの共同研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、日本時間3月29日付けで米化学会発行の科学誌「ACS Sustainable Chemistry & Engineering」オンライン版に掲載され、後ほど印刷版にも掲載される予定だ。環境循環型社会へと転換を図るためにには化石資源を代替できる技術をあらゆる分野で早急に確立する必要があるが、太陽電池をはじめとする各種代替えエネルギー生産技術が実用化されているエネルギー分野に比べ、材料分野は石油由来プラスチックの代替材料がいまだ確立されておらず、立ち後れた状況となっている。しかし、研究開発そのものが進んでいないわけではなく、バイオプラスチックは代替材料の有力候補の1つとして注目されているのはご存じの通りだ。そうした製品化されたバイオプラスチックの1つが、「ポリ乳酸」である。生物由来の資源(バイオマス)を主原料とするバイオプラスチックは、これまで、大気中の二酸化炭素の量を総体的には増加させない「カーボンニュートラル」という観点が強調されてきたが、実用化に向けていくつかの課題があった。その1つが、食料系バイオマスを原料としてバイオプラスチックを生産することによる食糧問題の悪化だ。その問題は、食料生産と競合しない非可食かつ未利用のバイオマスを原料とすれば回避できる。リグニンは未利用の植物性バイオマスとして知られており、樹木の細胞壁に多く存在し、芳香族化合物からなる高分子量化合物だ。リグニンの構成成分である「p-クマル酸」、「カフェ酸」、「フェルラ酸」、「シナピン酸」などの「リグニン誘導体」(これらがネットワークを形成することでリグニンが形成される)は「スフィンゴモナス」属や「シュードモナス」属の微生物細胞内で「芳香族カルボン酸」を経て、「ピルビン酸」や「オキサロ酢酸」、「コハク酸」に変換されることが知られている。さらに、ピルビン酸から誘導される「アセチル-コエンザイムA」は、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)の前駆体の1つだ。これは、微生物を利用してリグニン誘導体を原料としたPHAの生産が理論上可能であることを示唆しているという。今回の研究では未利用バイオマスの代表格であるリグニンを原料とし、PHAというバイオプラスチックを微生物合成することが目標とされた。研究チームは、まずPHAを効率よく合成する微生物を探すため、11種類の微生物を前述した4種類のリグニン誘導体と、芳香族カルボン酸(「バニリン酸」、「4-ヒドロキシ安息香酸(4-HBA)」、「2,5-ジヒドロキシ安息香酸(2,5-DHBA)」、「3,4-ジヒドロキシ安息香酸(3,4-DHBA)」、「シリンガ酸」、「3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸(3,4,5-THBA)」)が単一炭素源として含まれる無機塩培地で培養し、それぞれの微生物の増殖の評価が行われた。その結果、芳香族カルボン酸の1つである4-HBAの存在下でPHAの生産株として有名な「ラルストニア・ユートロファH16」(R.ユートロファ H16)が比較的良好な増殖を示したのである。続いて、R.ユートロファ H16のPHA合成能力を検討するために、その増殖、PHAの蓄積量、および合成されたPHAの化学構造の解析が実施された。R.ユートロファ H16の培養方法は、最初から無機塩培地で培養する1段階培養、およびR.ユートロファ H16を成長しやすい富栄養培地で増殖させた後に、無機塩培地へ培地を変え培養する2段階培養の2種類で行われた形だその結果、R.ユートロファ H16の乾燥菌重量は0.69g/Lであり、PHAを63wt%蓄積することが判明(画像1~3)。2段階培養では、2,5-DHBAと3,4-DHBAを炭素源とした場合にPHAの蓄積が確認でき、PHA蓄積率は26wt%と13wt%だった。精製後に得られたPHAは、糖や植物油を原料として合成したPHAに比べ、分子量がやや低いものの、フィルムなどのプラスチック製品として利用可能な物性が示されたのである。得られた結果を代謝経路と併せて考察した結果(画像4)、R.ユートロファ H16では、リグニン誘導体から芳香族カルボン酸に変換する経路(画像4注の赤点線矢印)がリグニン誘導体をPHAへと変換する際のボトルネックであることが明らかとなり、代謝経路を改変することにより、PHAの生産性をさらに改善できることが示されたという。今後は、未利用バイオマスであるリグニンを、バイオプラスチックの生産という形だけでなく、幅広いバイオリファイナリー技術と融合することにより、幅広い物質生産へと利用することが求められるとする。また、リグニンは植物から得られるバイオマス資源の中で、唯一芳香族を有する化合物であり、有効利用が期待されているとした。また今回の研究では、リグニンが有する芳香環を開環することで利用しているが、開環反応を経由せず芳香族化合物として利用することが望まれるという。一方で、リグニンの分解物を利用するのではなく、非常に高分子量のリグニンを分解すると共に物質生産を行う新しいタイプの微生物も必要になるとした。研究チームは今後、リグニン分解とバイオプラスチックの合成を同時に進める新たな微生物反応系の構築を目指すとしている。
2014年04月01日(画像はプレスリリースより)持田香織が表紙に登場する「フィッテ」5月号の内容は?月刊の女性誌「フィッテ」(FYTTE)は、人気の持田香織を、月刊フィッテ 5月号の表紙に起用した。フィッテは株式会社 学研パブリッシングが管理している。デビュー当時から水泳を継続している彼女の、美しい魅力的な脚が印象的だ。「体を整える」ことが、彼女のボディ コントロール方法だという。またフィッテ 5月号には、2014年 FYTTE ダイエット&ヘルス大賞や、ダイエットに活用できる、最善のやせアイテムなどをチェックできる巻頭特集がある。またとじこみ第1付録には、おいしい作りおきの、サラダ ダイエット レシピ ブックがついており、さらにとじこみ第2付録では、モデルや女医、女優など総勢25人が実施している、美の秘密について知ることができる。そのほか、やせ体質になる為の、耳をひっぱるダイエットや、ダイエットが楽しくラクになる、メンタル トレーニングなどの特集がある。さらに、やせる為に役立つ最新のウォーキング テクなど、充実した内容となっている。月刊「フィッテ」(FYTTE)について1989年に創立された。健康やダイエット、また美容をモチーフとする、今年で創立25周年目になる月刊の女性誌だ。主に健康運動の指導士や、管理栄養士の指導による、正しいダイエットの方法を伝えることを大事にすることで、読者からの高い評価を得ている。また読者モデルによる、参加型の方法も評価を得ている理由のひとつだ。【参考リンク】▼株式会社 学研パブリッシング プレスリリース (PR TIMES)▼月刊「フィッテ」(FYTTE)WEB
2014年03月28日既に売り切れ状態とも言われている、ノーカロリーの魔法のような甘味料「希少糖」をご存じですか。お肌の糖化や脂肪合成を防ぐ効果があり、美肌やダイエット、飲みすぎた肝臓にも嬉しい、話題の甘味料の詳細を見ていきましょう。■1.希少糖とは?希少糖は、香川大学が合成に成功した自然界の素材で作られたノーカロリーの甘味料。もともと希少糖は自然界に極わずかしか存在しない非常に貴重な糖で、今まで大量生産して商品化するのは困難と言われていた幻の糖でした。しかし、30年に及ぶ香川大学の研究により、「イズモリング」という酵素反応が発見されて「D-プシコース」という希少糖の1種なら大量生産できることがわかり、商品化されるようになりました。希少糖は、一般的な砂糖と違いカロリーはゼロ。血糖値が上昇してしまう可能性もゼロに等しいそう!■2.希少糖だとなぜ太らない?「D-プシコース」という希少糖は、自然界に存在する「でんぷん」のブドウ糖や果糖から酵素反応して生産されるものです。1g0.39kcalとほぼノーカロリーの上、ほとんどの体内器官(血管、腸、肝臓、すい臓、消化管)で血糖値の上昇を抑えます。特に肝臓のグリコーゲン生成と蓄積を促すので、食後高血糖を防いでくれるそう。飲みすぎた後の肝臓も安心な上、お肌の糖化や脂質が蓄積されやすくなるのもストップできますね。■3.ニキビや飲みすぎた時にも効果あり他の低カロリー甘味料は、低GIであったり、ミネラルが多かったりといったメリットはありましたが、小腸でブドウ糖が蓄積されたり、果糖が肝臓の脂質蓄積になったりと、気になる要素が残っていました。しかし希少糖なら摂取すると内臓脂肪が減るというデータもあるので、そういった心配も無用だとか。希少糖はご飯やパン、アルコールなどからも取れる糖分が体に吸収されるのを阻止して、そのまま体外へ排出してくれる働きもあるそう!ダイエットだけでなく、ニキビやテカリ予防にもなる女子に嬉しい甘味料が登場しましたね。■4.どこで買える?シロップタイプのものが香川大学との共同開発で商品化され、一部のスーパーや百貨店、通販などで買えるようになりましたし、いろいろな食品メーカーからも希少糖入りの飲料やスイーツが続々登場するようですよ! 大手スーパーの冷凍スイーツシリーズにも希少糖入りのスイーツが登場しているそう。■おわりにまだ若いからスイーツ三昧でも大丈夫!と思っていると、いつか取り返しのつかないことに。でも美肌のためにスイーツを我慢しなくても良い時代に期待したいですね。今年ブレイクしそうな甘味料「希少糖」、要チェックです。(丸田みわ子/ハウコレ)【参考】※レアシュガースウィート-松谷化学工業株式会社※希少糖D-プシコースによる動脈硬化・肥満の防止-香川大学研究シーズカタログ※ダイエットの味方!?“夢の○○糖” -NHKあさいち・FYTTE2014年3月号学研
2014年03月11日東京大学は2月28日、農業生物資源研究所(生物研)との共同研究により、ヤギにおいて本来性腺活動が停止している非繁殖期のメスが、オスまたはオスの匂いを感じることで排卵と発情が誘起される強力な性腺刺激現象「オス効果」に着目し、メスヤギにおける脳の生殖制御中枢の活動をリアルタイムで観測することが可能な新たに開発した「バイオアッセイ」を用いて、オスヤギの頭部より放出される多くの物質の中から生殖制御中枢に促進的に作用するフェロモンとして、「4-ethyloctanal(4-エチルオクタナール)」という新奇の揮発性化合物を同定したと発表した。成果は、東大大学院 農学生命科学研究科 応用動物科学専攻 博士課程3年の村田健氏(当時)、同・武内ゆかり准教授、同・森裕司教授、同・農学生命科学研究科 応用生命化学専攻の渡邉秀典教授、生物研 動物科学研究領域 動物生産生理機能研究ユニットの岡村裕昭ユニット長らの共同研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、2月27日付けで「Current Biology」に掲載された。動物のコミュニケーション手段として嗅覚は重要な働きをしており、フェロモンは特に同種間のコミュニケーションに利用される物質だ。ほ乳類フェロモンは、攻撃行動や性行動などを誘起するなどの行動を制御する「リリーサーフェロモン」と、メスの性成熟を早めたり発情を誘起したりするなどの生理的変化を誘起する「プライマーフェロモン」に分類される。リリーサーフェロモンについては、攻撃行動や性行動などを誘起する物質が、マウス、ゾウ、ブタなどで同定済みだ。一方で、プライマーフェロモンによる現象はマウスにおいてよく知られており、メスの性成熟を早める効果、発情を誘起する効果などがある。従来、プライマーフェロモンの同定に関する報告もあったが、近年になって実験に再現性のないことが指摘されており、いまだに確実なプライマーフェロモンの分子同定については成功例がなく、作用機構についてもほとんどわかっていない。このようにほ乳類におけるプライマーフェロモンの同定は非常に難しいのだが、その大きな原因は適切な「バイオアッセイ方法」が確立されていなかったことにあるという。オス効果フェロモンは、オスヤギの被毛に付着しており、特に頭頚部で産生される揮発性物質であることを、研究チームはこれまでに明らかにしていた。この知見を利用し、研究チームはオスヤギの頭部に吸着剤を封入した自作の帽子をかぶせることで、揮発性成分を捕集。そして分析したところ、特徴的な化合物として「エチル基側鎖」のついた「アルデヒド」や「ケトン」が検出されたというわけだ。なお、これらの物質は精巣除去により「テストステロン」が産生されない去勢オスヤギからは検出されなかったという。ちなみにオス効果では、メスがオスの匂いを嗅いだ時に、生殖機能の最上位中枢である「視床下部」(視床下部間脳の一部であり、交感神経・副交感神経機能および内分泌機能を統括的に調節する脳領域)より放出される「性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH:Gonadotropin Releasing Hormone)」のパルス状分泌が促進されることが示唆されていた。なお、GnRHはすべての脊椎動物において生殖活動を制御する重要な神経ホルモンで、ほ乳類ではパルス状に視床下部から下垂体へと神経分泌され、このパルス状のリズムを駆動する脳領域が「GnRHパルスジェネレーター」と呼ばれている。研究チームはこの脳領域の神経活動を電気生理学的に記録することで、GnRHパルスジェネレーターの活動をリアルタイムで観測するシステムを構築し、メスヤギに嗅がせた物質のフェロモン活性を判定するバイオアッセイに適用したというわけだこうした特徴的な化合物を人工的に合成し、前述したバイオアッセイにより活性のある成分を絞り込んでいったところ、最終的に4-エチルオクタナールという化合物に活性が確認された。4-エチルオクタナールは自然界では初めて見つかった物質である。また、オスヤギから見つかったほかの化合物と混ぜ合わせた場合、4-エチルオクタナール単独よりも強い活性を示す傾向が見られたことから、ほかの成分と協調してより強い活性を生じることも示唆されたという。今回の研究ではフェロモンによってメスの排卵や発情といった生殖機能の出発点となる神経群が活性化することを示したが、今後はフィールド研究によって、実際に非繁殖期にあるメスヤギの排卵や発情の誘起を確認していくことを考えているという。オスヤギの被毛はメスヒツジにもオス効果を示すことが知られており、今回の研究で同定された4-エチルオクタナールはヒツジにも作用する可能性がある。今後は今回の研究の成果を発展させてウシやブタなど、日本国内ではオスとメスを別々に飼育せざるをえない管理上の制約が繁殖障害の一因となっている主要な家畜種を対象とした研究にも取り組み、それぞれのオス効果フェロモンを同定してその実用化を目指していく予定とした。また、ヤギにおいて4-エチルオクタナールが作用する脳部位と作用機序をより詳細に解析することで、ほ乳類に共通するメスの生殖機能促進機構を明らかにできる可能性が高まるという。こうした研究は、前述した家畜の繁殖制御のみならず、ヒトを含めたほ乳類全体の生殖機能障害の新たな治療方法の開発にもつながることが期待されるとしている。
2014年03月04日産業技術総合研究所(産総研)は2月17日、和光純薬工業 試薬事業部 試薬開発本部 ライフサイエンス研究所との共同研究により、移植用細胞に残存する未分化のヒトiPS細胞やヒトES細胞を、通常は廃棄する細胞培養液を用いて簡便に検出する技術を開発したと発表した。成果は、産総研 幹細胞工学研究センター 糖鎖レクチン工学研究チームの舘野浩章 主任研究員、同・平林淳 首席研究員兼研究チーム長、同・器官発生研究チームの小沼泰子 主任研究員、同・伊藤弓弦 研究チーム長らの共同研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、現地時間2月12日付けで英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。ヒトiPS/ES細胞は、いろいろな細胞に分化できる「多能性」と、分裂して自分と同じ性質の細胞を増やせる「自己複製能」を持つ。その2つの能力により、再生医療のための細胞材料として大きな期待が寄せられているところだ。ただし、ヒトiPS/ES細胞を用いた再生医療には大きな解決すべき課題もある。ヒトiPS/ES細胞から分化させることにより調製した移植用の細胞に、ヒトiPS/ES細胞が残存していると、それらが腫瘍を形成する危険性があるのだ。よって、患者の危険性を最小限にするためには、実際に移植治療を行う前に、移植用細胞にヒトiPS/ES細胞がどの程度残存しているかを品質検査することは必須だ。そのため、移植用細胞に残存するヒトiPS/ES細胞数を計測する技術の開発が求められていたのである。これまでのところ、「フローサイトメトリー法」や「qRT-PCR(Quantitative Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction:逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)法」などの技術があるが、それぞれに問題があった。フローサイトメトリー法は、溶液中に懸濁させた細胞の散乱光や蛍光を1個ずつ高速で測定する方法で、大量の細胞の性質を解析する際によく用いられる一般的手法である。もう1つのqRT-PCR法は、RNAを鋳型に逆転写を行い、生成されたcDNAをPCR法で増幅して、DNAの定量を行う方法で、調べたい遺伝子の量を定量的に解析する一般的手法だ。しかしこれらの従来技術では、せっかく作った移植用細胞の一部を破壊して検査に使用する必要があった。このような問題点を解決するために、細胞自体を用いずに、移植用細胞にわずかに混入するヒトiPS/ES細胞を簡便に検出する新たな技術の開発が求められていたのである。そうした要求の中で進められた今回の研究において見出されたのが、ヒトiPS/ES細胞に特徴的な「O型糖鎖」を持つ「ポドカリキシン(H3+ポドカリキシン)」が、さまざまな種類のヒトiPS/ES細胞から培養液中に分泌されているという点だ。なお糖鎖とは、単糖がつながることによりできた一群の化合物のことだが、糖同士だけでなく、タンパク質や脂質などとも複合体を形成し多様な分子を形成するのが特徴である。すべての細胞表面を高濃度に覆い、その構造は由来する生物、組織、細胞により異なることから「細胞の顔」とも呼ばれ、細胞や疾患を判別するためのマーカー(疾患診断や細胞同定のための指標)として有効だ。細胞と細胞の情報伝達を仲介することにより、さまざまな生命現象に関与することでも知られている。またO型糖鎖は糖タンパク質の糖鎖の内で、タンパク質の「セリン」または「スレオニン残基」に結合している糖鎖のことをいう。そしてポドカリキシンは、高度にO型糖鎖などで糖鎖修飾されているのが特徴の膜タンパク質の1種だ。ヒトiPS/ES細胞に発現するポドカリキシンは、ヒトiPS/ES細胞に特異的に存在する「Hタイプ3」というO型糖鎖を持っている。このポドカリキシンは腎臓などほかの組織にも存在するが、ヒトiPS/ES細胞に特徴的なH3+ポドカリキシンは、これまでの研究では通常の体細胞からは分泌されていないことがわかっている。つまり、培養液中のH3+ポドカリキシンを調べることで、細胞自体を使わずにヒトiPS/ES細胞を検出できるというわけだ(画像1)。通常、タンパク質は特有のアミノ酸配列を認識する抗体を用いて検出することが多いが、ポドカリキシンは多量のO型糖鎖で覆われた巨大な「ムチン」様タンパク質であるために、抗体を用いることはできなかった。そこで、H3+ポドカリキシンに多く存在する特徴的な糖鎖構造に着目し、そのO型糖鎖を認識する「レクチン」を2種類用いて検出する新しい「サンドイッチアッセイ」系による検出システムが考案されたのである(画像2)。なおムチンとは、動物の上皮細胞などから分泌される粘性物質のことだ。高度に糖鎖修飾された糖タンパク質であり、高い保水性と粘性を持つ。そしてレクチンとは、糖鎖に結合するタンパク質の総称で、ヒトからウイルスまですべての生物に存在する。糖鎖に結合することにより、さまざまな生命現象に深く関与していることが明らかになってきた。またサンドイッチアッセイとは、ある特定の分子を2種類の検出分子でサンドイッチ(挟み込む)することにより検出する方法の総称だ。2種類の抗体を検出分子として用いる抗体-抗体サンドイッチアッセイが一般的であり、疾患を診断する際によく用いられる。今回開発された検出システムの詳細な方法は以下の通りだ。H3+ポドカリキシンを認識する「rBC2LCN」を判別試薬として固定化した反応容器を準備する。なお、rBC2LCNとは、グラム陰性菌「Burkholderia cenocepacia」由来のレクチン「BC2L-C」のN末端ドメインの組み換えタンパク質のことだ。未分化なiPS/ES細胞と反応するものの、分化した体細胞とはまったく反応しないため、未分化なヒトiPS細胞を検出するための検出試薬として有効である。1滴(50μL)の細胞培養液を反応容器に入れ1時間反応させてH3+ポドカリキシンを吸着させる。洗浄して細胞培養液を除いた後、rBC2LCNとは別のO型糖鎖を認識する酵素標識「rABA」を、反応容器に吸着したH3+ポドカリキシンと1時間反応させる。rABAは、キノコ「Agaricus bisporus」由来レクチン「ABA」の組み換えタンパク質に酵素「ペルオキシダーゼ」を標識したもの。基質を加えると濃い青色を呈する。酵素標識rABAを発色させ、その発色強度を測定して、H3+ポドカリキシン量を決定する。H3+ポドカリキシン量から、H3+ポドカリキシンを分泌したヒトiPS/ES細胞数を算出する。今回開発された検出システムのポイントは、第1にrBC2LCNを判別試薬として用いてヒトiPS/ES細胞から分泌されるH3+ポドカリキシンだけを選択的に反応容器に吸着させること、そして、第2に1分子のH3+ポドカリキシン上に100個以上あると予測される構造のO型糖鎖を認識するrABAを検出試薬とすることで、1分子のH3+ポドカリキシンに多くの酵素を付着させて高感度検出を実現したことの2点点だ。すなわち2種類のレクチンを用いることで、選択性と高感度を両立させたのである。今回の検出システムを用いると、多数の検体を3時間以下という迅速さで検査することが可能だという。また、10mLの培養液で1000万個の細胞を培養している場合、5000個(0.05%)以上のヒトiPS/ES細胞の検出ができるとした。移植用細胞中のヒトiPS/ES細胞の混入率を測定できるため、ヒトiPS/ES細胞を用いた再生医療の安全性評価法として期待できるとしている。今後は、今回の技術を実際の再生医療に用いるヒトiPS/ES細胞由来の移植用細胞の安全性評価に利用し、ヒトiPS/ES細胞を用いた再生医療の促進に貢献していくという。また今回の技術の感度と定量性をさらに向上させると共に臨床検査機器を開発し、再生医療分野に広く普及させていく予定としている。
2014年02月18日京都大学は1月30日、すい臓の「ランゲルハンス島(すい島)」において、血糖値を下げる効果のある唯一のホルモンである「インスリン」分泌における重要因子である細胞内ATP(アデノシン三リン酸)濃度と、カルシウムイオン濃度の動態を同時に可視化することに成功し、インスリンを分泌する細胞は血糖値(血中ブドウ糖濃度)の変化に伴った細胞内ATP濃度の変化を鋭敏に感知することにより、インスリン分泌を制御していることSを明らかにしたと発表した。成果は、京大 白眉センターの今村博臣特定准教授、同・大学院 生命科学研究科の垣塚彰 教授、同・大学院 医学研究科の稲垣暢也 教授らの共同研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、1月24日付けで米生化学・分子生物学会の学術誌「The Journal of Biological Chemistry」に掲載された。食事後に血糖値が上がると、ランゲルハンス島の大部分を占めるβ細胞がそれを感知してインスリンを分泌し、肝臓や筋肉などに作用し、これらの組織において血中のグルコースの取り込みを促進し、結果として血糖値を下げる。β細胞からのインスリン分泌がうまく行かなくなると糖尿病となるため、インスリン分泌の仕組みを理解することは糖尿病の予防や治療を考える上でとても重要だ。これまでの研究によって、ブドウ糖が細胞内で分解された時に作られるATPがインスリン分泌の直接の引き金である細胞内カルシウムイオン濃度を制御する重要因子であると予想されていた。しかし、実際にATP濃度がβ細胞内でどのように変化するのか、そしてカルシウムイオン濃度の複雑なパターンの形成に関与しているかは不明だったのである。今村特定准教授らは、以前に開発していたATP濃度に応答して蛍光色が変化するバイオセンサをマウスより単離したすい島の細胞内に導入して蛍光顕微鏡でイメージングすることにより、生きたすい島細胞内のATP濃度の変化をリアルタイムに追跡する方法を確立した。また、同じ細胞に蛍光のカルシウム指示薬を導入することによって、インスリン分泌の直接の引き金である、すい島細胞内カルシウムイオン濃度も同時に測定。この測定系を用いて、さまざまな条件ですい島細胞内のATP濃度とカルシウムイオン濃度が変化する様子が調べられた。その結果、ブドウ糖濃度が上昇することによって急速に細胞内ATP濃度の上昇が引き起こされることが実際に確かめられ、このATP濃度の上昇が初期のカルシウムイオンの濃度上昇に必要かつ十分であることも実験的に示されたのである。一方で、ブドウ糖刺激後しばらくしてから生じるカルシウムイオン濃度の振動期においては、ATP濃度の明瞭な振動は起こらず、ATPが高い濃度で保たれていることがカルシウム振動の維持に必要であることを示す新たな知見が得られたという。糖尿病になることで、すい島細胞内におけるATPとカルシウムイオンの動態がどのように変化するかを詳細に調べることによって、糖尿病が発症する仕組みの解明や新たな治療戦略につながると期待されるとした。
2014年02月06日京都大学は1月20日、Tリンパ球活性化により起こるダイナミックな酸性糖「シアル酸」を含む「糖鎖」の変化は、シアル酸結合タンパク質を介した免疫細胞同士の結合に変化をもたらす仕組みであること、つまり免疫系における細胞結合のための分子スイッチとなることを明らかにしたと発表した。成果は、京大 医学研究科の竹松弘 准教授、同・大学 生命科学研究科の内藤裕子 助教(当時)らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、2013年12月2日付けで「Journal of Biological Chemistry」電子版に掲載された。糖といえばグルコースを代表とする地球上の生命のエネルギー源であるが、生体は、糖を使ってポリマーを形成し、エネルギー源以外の機能も糖に付与している。最も代表的な例がグルコースのポリマーだ。そのポリマーにおける結合様式が変わると、栄養源となるデンプンと同様の組成で、セルロース繊維を構成するというわけだ。細胞の表面は糖鎖で覆われているが、その糖鎖の末端を占めるのがシアル酸だ。「カルボキシル基」を持つ酸性の単糖の1種。分子としては「ノイラミン酸骨格」を持つ。細胞はこのシアル酸を介してほかの細胞や分子との認識を行っており、このシアル酸を介した分子間の認識(結合)がさまざまな細胞の機能に重要な役割を果たすことが知られている。またシアル酸はその末端での局在から、インフルエンザウイルスといった病原体の標的となることも多い。免疫系のリンパ球もこのような分子間認識を介して制御されていることが考えられるが、リンパ球が活性化すると、複数あるシアル酸の分子種の内、主要な分子種が「N-グリコリル(N-グリコリルノイラミン酸)型」から「N-アセチル(N-アセチルノイラミン酸)型」へと変換されることが報告されていた(画像1)。シアル酸分子内に複数存在するヒドロキシル基(水酸基)が修飾され、C5位に着目すると、これらの分子種がわかる。つまり、T細胞は活性化されてもシアル酸は持ち続けるが、その種類を変化させるというわけだ。細胞表面の糖鎖は「第3の生命鎖」、「細胞の顔」などとも称され、異なる細胞は異なる糖鎖を発現することが広く知られているが、その一方で、これら糖鎖の違いがどのような認識分子により認識されるのかなど、その分子機構については未知な部分が多く、生命科学分野におけるフォロンティア領域であるとも考えられるという。そこで、今回、活性化したTリンパ球におけるシアル酸分子種の変化に注目し、その免疫応答における意義の解明が試みられたのである。まず研究チームは免疫応答において中心的な役割を果たすTリンパ球に着目し、マウス活性化Tリンパ球においてシアル酸分子種の変化を起こすメカニズムから調べることにした。その結果解明したのが、Tリンパ球はN-アセチル型からN-グリコリル型を作る酵素「CMAH」の遺伝子発現を抑制しているという事実だ。また、シアル酸分子種の変化はシアル酸結合タンパク質である「シグレックファミリーレクチン」からの認識を変化させることも判明。シグレックファミリーはシアル酸の修飾や、結合様式の違いを認識でき、細胞内でのシグナル伝達経路を制御することのできる分子群であると考えられる。その一方で、細胞と細胞の結合を媒介する細胞接着分子としても働く。そして活性化Tリンパ球はBリンパ球上の分子「CD22」からの認識を逃れると共に、同じく免疫細胞のマクロファージ上のレクチン「シアロアドヘジン」との結合性を上昇させていたのである。N-グリコリル型を作れないCMAH遺伝子欠損マウスを用いてTリンパ球の活性化を調べると、CMAH欠損マウスではTリンパ球の活性化が亢進していることが確認された。つまり、N-グリコリル型のシアル酸は活性化を抑制するが、Tリンパ球の活性化はN-グリコリル型のシアル酸の発現を抑制しており、シアル酸とTリンパ球活性化の関係を考えると、両者はポジティブフィードバックの関係にあったのである(画像2)。また、N-グリコリル型の抑制が起こっていない活性化前のTリンパ球では、活性型モデルBリンパ球とのCD22を介した結合が亢進しており、抗原非特異的なTリンパ球とBリンパ球の結合を起こすことがわかった。Bリンパ球が活性化する場であり、Tリンパ球が認識する抗原特異的にBリンパ球の活性化を助ける「胚中心」において、活性化リンパ球におけるシアル酸分子種の制御は、本来、応答する抗原を介して結合するべきリンパ球同士の認識を可能にしていることが明らかとなったのである(画像3)。よって、今回新たに作成されたN-グリコリル型を抑制できないCMAH遺伝子トランスジェニックマウスでは、マクロファージとの結合が抑制されることで、細胞障害性Tリンパ球の活性化が亢進することが示唆された。今回の研究結果から、マウス免疫系は抗原を介したリンパ球間の結合を可能とするため、発現するシアル酸分子種をうまく制御していることが考えられるとした。これらシアル酸を含む糖鎖は細胞の外側に存在するため、免疫系におけるシアル酸とシアル酸結合タンパク質との結合を人為的に制御することで、リンパ球が結合する細胞を制御できることが考えられ、これを介して、免疫応答を人為的に制御できる可能性が考えられるとした。ヒトではCMAH遺伝子が欠損しており、N-グリコリル型のシアル酸を生合成できないと共に、ヒトは上述のシアル酸分子種を介したリンパ球の活性化を制御できないとする。このCMAH遺伝子欠損はチンパンジーとの分岐後に起こったもので、ヒトに特徴的な性質だ。その事実から、今後は、CHAH遺伝子欠損マウスをよりヒトの状態を反映できるモデルマウスとしてとらえ、ヒトの免疫制御に結びつける研究を行っていく予定とした。
2014年02月04日(画像は学研パブリッシング プレスリリースより)冬太りを解消するなら!フィッテ3月号年末年始に増加してしまった体重が戻らない……と青ざめていませんか。1月も下旬に入り、そろそろ本腰をいれてダイエットを始めたい頃合いです。2014年1月23日、学研パブリッシングは、「冬太り即やせ」を特集したフィッテ3月号を同日(1月23日)より発売すると発表しました。「2週間で脱・冬太り」をテーマに、「立つだけ」「寝るだけ」「呼吸するだけ」で簡単にやせることができる方法を特集しています。IMALUも女芸人も実際にタレントのIMARUさんや、女芸人4人が同誌のダイエット方法に挑戦したところ、確かな効果が得られたということです。また、話題の「希少糖」や「ひとり鍋」ダイエットなど、冬太りの解消に役立つ情報が満載です。そして、同誌の表紙を飾るのはSHIHOさん!2年振りのカバーガールとは思えない、美ボディを披露してくれています。即ペタ腹!特別付録も見逃せない特別付録の「骨盤&仙骨クロスベルト」も見逃せません。骨盤を全方位から締めて整えてくれるというこの付録は、骨盤が正しい位置に戻ることで即ペタ腹が実現できます。今すぐ効果を感じたい人にはうってつけのベルトです。キレイになりたいと思ったときが始め時!フィッテ3月号を片手に、美しいプロポーションを手に入れてみませんか。【参考リンク】▼学研パブリッシング プレスリリース▼FYTTE HP内最新号
2014年01月25日生理学研究所(NIPS)と中央大学は、赤ちゃんがヒトの白目と黒目のコントラストを手掛かりに顔を認識する能力は、生後5~6カ月ころに発達すること、ならびに白目と黒目というヒト特有の顔は、乳児の脳の右半球で処理されている可能性があることを発表した。同成果は、中央大学研究開発機構の山口真美教授、市川寛子機構助教、生理学研究所の柿木隆介教授らによるもの。詳細は、欧州の認知神経科学の専門誌「Neuropsychologia」に掲載された。「ブレア錯視(Tony Blair illusion)」は、良く知られたヒトの顔であっても、白目と黒目の明暗関係を反転させた目にすると誰の顔かわかりにくくなったり、奇妙な印象を与えたりするといったもので、同研究の発表者であるAnstis氏は、「子供を怖がらせるバンパイアのよう」と形容している。今回の研究は、この奇妙さを感じるのはいつごろかを探る目的で実施されたもので、生後5~6カ月の乳児に、白目と黒目のコントラストを保った正常の目と、白と黒を反転させた目をもつ顔のそれぞれのときにおける脳活動の計測を近赤外分光法(NIRS)を用いて行った。その結果、正常な目の顔を見ているときは脳活動が上昇したが、白黒反転目では脳活動が上昇しないことが確認されたほか、正常な目を見ているとき、脳の右後側頭部が強く活動していることが確認されたという。研究グループはこれらの結果について、生後5カ月以降になると乳児はヒト特有の白目・黒目をもつ顔だけを「顔」として認識し、その処理を脳の右半球で行っていることを示唆するものだと説明。今回の成果が、赤ちゃんの脳内でヒト特有の目に反応する神経基盤の解明につながるものとなることが期待できるとしている。
2013年11月29日(画像は学研パブリッシング プレスリリースより)ますます美ボディ!釈由美子綺麗で美しいプロボーション、そしていつも新しいことに挑戦する釈由美子さん。最近発刊された「釈ボディ」では、人生発の「手ブラ」を披露し、話題を集めています。そんな釈さんを表紙に起用したFYTTE(フィッテ)1月号が人気です。同誌では、年齢とともにますます美しくなる彼女のプロポーションに迫ります。彼女の美と健康についての考え方、ありのままを受け入れられるようになってきた心境など、彼女の素の魅力が満載です。特集は、人生を変えたダイエット!今回の目玉特集は、ダイエット。どの雑誌でも特集が組まれるダイエットですが、FYTTEのそれは一味違います。12人のダイエット成功者の平均マイナス体重は、なんと20キロ!何をしてそんなにやせることができたのか?人生を変えたダイエット方法が次々と明らかにされます。ウレシイとじ込み保存版また、とじ込みの「代謝美人をつくる温活ブック」は必見。これから寒くなって代謝が落ちやすいシーズンをむかえます。体を温めるノウハウをしっかり学べる保存版です。さらには、秋元才加さん、安めぐみさんら有名タレントさんのスタイルキープ法も公開されています。何かと脂肪のつきやすいシーズンですが、FYTTEを片手に美ボディにトライしてみてはいかがでしょう。【参考リンク】▼学研パブリッシング プレスリリース
2013年11月27日生理学研究所(NIPS)は11月13日、国内の自己免疫性神経疾患患者が有する自己抗体を体系的に同定して測定した結果、「LGI1自己抗体」を高値で有する患者はほぼすべて「辺縁系脳炎」と診断されていたことが判明し、LGI1自己抗体は神経細胞が特異的に発現する分泌タンパク質で転換関連分子のLGI1とその受容体「ADAM22」との結合を阻害し、シナプス伝達の中核を成す「AMPA受容体」機能を減弱させること、先天的にLGI1遺伝子を欠損させたてんかんモデルマウスにおいても海馬領域においてAMPA受容体量が減弱していることがわかったと発表した。成果は、NIPS 生理学研究所 生体膜研究部門の深田正紀教授らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、11月13日付けで米神経科学誌「Journal of Neuroscience」に掲載された。辺縁系脳炎は亜急性に近時記憶障害や痙攣、見当識障害を来す重篤な脳疾患であり、原因としてウイルス感染や細菌感染、腫瘍随伴、自己免疫などが知られている。自己免疫性脳炎は、主に成人に発症し、国内患者は推定で年間約700人だ。自己免疫性脳炎は、何らかの原因で自身の神経細胞が有するタンパク質に対する自己抗体が生じるために、自身の神経細胞の機能が障害されて発症してしまう。しかし、自己抗体と標的タンパク質の「自己抗原」の全容がいまだに不明であり、診断が困難な疾患だ。今回の研究では、国内の145名の辺縁系脳炎を含む自己免疫性神経疾患の患者血清の網羅的な解析が行われ、既知の自己抗体に加え、別の6種類のタンパク質に対する新規自己抗体が発見された(画像1)。さらに、各患者血清中のこれら自己抗体価の体系的な測定が行われた結果、であるLGI1に対する自己抗体価と辺縁系脳炎発症との間に極めて高い相関があることが見出されたのである(画像2)。LGI1はその変異がある種の「遺伝性側頭葉てんかん」を引き起こすことから研究者の注目を集めている。研究チームのこれまでの研究により、LGI1が「ADAM22受容体」を介してシナプス伝達を制御すること、そしてLGI1欠損マウスではシナプス伝達異常により、生後2~3週間で致死性てんかんを必発することは確認されていた。一方、ごく最近になって、海外の研究者らが辺縁系脳炎患者血清中に、抗LGI1自己抗体が存在することを報告。しかし、LGI1自己抗体がほかのさまざまな自己抗体と比較してどれほど強く自己免疫性辺縁系脳炎の発症と関連するのか、そしてLGI1自己抗体がどのようにして痙攣発作や記憶障害といった臨床症状を引き起こすかは不明だったのである。そうした状況において今回の研究では、国内における自己免疫性神経疾患患者の血清の網羅的な解析が行われ、LGI1自己抗体を高値かつ単独で有するほぼすべての患者が辺縁系脳炎と診断されていたことが見出された。さらに、LGI1自己抗体がLGI1とその受容体であるADAM22との結合を阻害することにより、脳内の興奮性シナプス伝達の大部分を担うAMPA受容体機能を低下させることを突き止めた(画像4)。なお画像4は、LGI1自己抗体はLGI1とADAM22/23との結合を阻害することを表した模式図だ。通常、LGI1はシナプス間隙でADAM22、ADAM23と結合し、AMPA型グルタミン酸受容体を精緻にコントロールしている。一方、LGI1の機能が自己抗体により後天的に阻害されると、シナプスにおけるAMPA型グルタミン酸受容体機能が低下し、無秩序なシナプス伝達が生じてしまう。つまり、LGI1自己抗体によるAMPA受容体機能制御が破綻した結果、痙攣発作を伴うてんかん病態や記憶障害が生じてしまうことが推測されたというわけだ。今回の研究により、LGI1とADAM22の結合はヒトの脳が安定な興奮状態を維持するのに必要不可欠なシステムであることが判明した。よって、LGI1とADAM22はこれまでのイオンチャネルを標的とした抗てんかん薬と異なる新たな抗てんかん薬のターゲットとして期待されるという。今回、研究チームが開発したMultiplex ELISA検査法(画像2)は患者血清中のさまざまな自己抗体の量を同時に測定することができ、辺縁系脳炎の確定診断、および治療効果の判定に実用可能と考えられるとする。同検査法により、個々の患者はしばしば複数の自己抗体を有することが明らかになった。このことから、自己抗体の組み合わせによって患者固有の臨床症状が形成されることが強く示唆されるという。また、LGI1自己抗体による辺縁系脳炎は免疫療法により自己抗体量を低下させることができれば治療可能なので、迅速な診断により早期の治療と良好な予後が期待できるとしている。さらに、90%以上の患者で記憶障害を示す辺縁系脳炎の病態がLGI1とADAM22の結合障害に起因するシナプス伝達異常であることが判明したことから、今後は、記憶や学習過程におけるLGI1の役割の解明が期待されるという。LGI1とADAM22との結合を修飾する化合物は、シナプス伝達の機能を変化させるような新たな薬剤の候補となることが期待されるとしている。
2013年11月13日東京大学(東大)は11月6日、液体の水の水素結合が作り出すネットワーク構造は「ミクロ不均一モデル」であることを裏付けることに成功したと発表した。同成果は、東大物性研究所附属極限コヒーレント光科学研究センター 軌道放射物性研究施設・東京大学放射光連携研究機構 准教授の原田慈久氏、同 丹羽秀治 特任研究員、理化学研究所放射光科学総合研究センターの德島高 技師、同 堀川裕加 基礎科学特別研究員、東大物性研究所附属極限コヒーレント光科学研究センター 軌道放射物性研究施設・東京大学放射光連携研究機構 教授で理研放射光科学総合研究センター チームリーダーの辛埴氏、および広島大学、高輝度光科学研究センター(JASRI)、アイスランド大学、ストックホルム大学、SLAC国立加速器研究所らによるもの。詳細は「Physical Review Letters」に掲載された。水分子(H2O)が持つ、同様な構造の分子と比べた時の沸点、融点の高さ、あるいは固体が液体より密度が小さいなどの独特な性質は、水分子を引き付ける水素結合により説明されるが、水素結合が作り出すネットワーク構造については良くわかっておらず諸説入り乱れており、中でも歪んだ水素結合で水全体がつながっているとする「連続体モデル」と、異なる水素結合の状態の混合であるとする「ミクロ不均一(混合物)モデル」が有力とされてきたが、どちらのモデルがより的確に液体の水の水素結合を表したものであるかは明らかになっていなかった。今回、研究グループは、大型放射光施設SPring-8の東京大学放射光アウトステーションビームラインBL07LSUおよび理研ビームライン物理科学III BL17SUを利用して、水素結合の切れた水分子のみを選択して観測する手法を用いることで、この謎の解明に挑んだ。水分子(H2O)は酸素原子(O)と2つの水素原子(H)で構成され、1分子あたり合計4つの水素結合を形成することができ、その結合の特性が複雑かつ多様な性質の根源となっていると考えられている。例えば氷の場合は、水素結合がしっかりと結びつき水分子をきれいに整列させているが、液体の場合は、水分子同士がさまざまな距離、角度で隣接し、場合によっては水分子同士を結び付けている水素結合の紐が切れたものもある。すでに研究グループは、これまでの研究から、液体の水の中に水素結合に違いのある2成分の構造が存在するというモデルを提唱し、「氷によく似た微細構造」が1nm程度の大きさを持つミクロ不均一構造を持っていることを報告してきていた。今回の研究では、高分解能の軟X線吸収・発光分光を用いて、軟X線照射によって起こる水分子の振動を精密に観測。水分子の振動は、通常の赤外吸収分光やラマン散乱分光でも観測することができるが、軟X線では照射する光のエネルギーを選ぶことによって特定の水素結合環境にある水分子を選ぶことができ、液体の水の酸素の軟X線吸収スペクトルには、特徴的なピークが確認された。水のミクロ不均一モデルでは、このピークが水素結合のつながっていない水分子に由来すると考えてきたが、その実験的な証拠が掴めていなかったことから、さらにそのピークに照射する軟X線のエネルギーをあわせることで、水素結合がつながっていない水分子を選択し、軟X線発光スペクトルに現れる水分子の振動エネルギーを観測する実験を実施。入射した光のエネルギーを原点にとって表示した軟X線励起の振動スペクトルから、最も低いエネルギーの振動を、既存の振動分光手法で得られる振動エネルギーと比較したところ、はっきりとした違いを確認することに成功。これにより孤立した水分子のOH伸縮振動エネルギーに近く、ピークAで選択された水分子は確かに水素結合が切断されていることが示され、この結果から、水の中に水素結合様式の異なる状態が共存するというミクロ不均一モデルが裏付けられたこととなった。さらに研究グループは、水素結合がつながっていない水分子を選択して観測できるという特徴を活かし、通常の水素で構成される水素結合と重水素(D)で構成される水素結合の違いを調べることを目的に、HとD(重水素)を1つずつ持つHDOの振動スペクトルの測定を実施。H2O(軽水)とHDO、D2O(重水)の振動スペクトルを比べたところ、もしH2OとD2Oで水素結合のしやすさが一緒であれば、HDOの振動スペクトルはH2OとD2Oの1:1の和で表されるはずであったが、実際にはH2Oの寄与が大きく、水素結合がつながっていないHDO水分子は、OH側、つまり通常の水素で構成される水素結合の方がつながっていない確率が高いことが判明したという。これは通常の水素で構成される水素結合の紐が、重水素で構成される水素結合の紐よりも切れている確率が高いことを示唆するもので、研究グループでは、H2OとD2Oを比較すると、H2Oの方が融点や沸点がD2Oに比べて低いことが一般に良く知られているが、今回の結果を用いることで、この水の物理化学的性質をよく説明することができるようになるとしている。なお、研究グループでは今回用いられた軟X線励起による実験手法を活用していくことで、水素結合が重要な役割を果たしている種々の化学反応や触媒反応、生体中の水の研究が進展することが期待されるとコメントしている。
2013年11月13日理化学研究所(理研)は11月12日、米・サンフォード・バーナム医学研究所などとの共同研究により、哺乳動物の細胞でタンパク質と糖鎖との結合(糖鎖修飾)に使われる「ドリコールオリゴ糖」において、低グルコース環境下で「ピロフォスファターゼ」によって未成熟型ドリコールオリゴ糖だけが分解されることを発見したと発表した。成果は、理研 グローバル研究クラスタ 理研-マックスプランク連携研究センター 糖鎖代謝学研究チームの鈴木匡チームリーダー、同・原田陽一郎特別研究員、同・糖鎖認識研究チームの安形高志チームリーダー(現・台湾・中央研究院所属副研究員)同・疾患糖鎖研究チームの谷口直之グループディレクター、サンフォード・バーナム医学研究所のHudson H. Freeze教授らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、11月11日付けで米科学雑誌「米科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載された。糖鎖は、グルコース(ブドウ糖)などの単糖が複数個連なってできており、タンパク質や脂質などの生体分子に結合して性質を変化させたり、機能を付加したりして、生体分子の品質管理や細胞内輸送、細胞間コミュニケーションなどの重要な役割を担う。糖鎖が生体分子に結合することを「糖鎖修飾」と呼び、糖鎖と生体分子の修飾の組み合わせは多数存在する。中でもドリコールオリゴ糖は、糖鎖の種類の中でも最も一般的な「アスパラギン(N)結合型糖鎖修飾」の前駆体として用いられている物質だ。正確には、ドリコールオリゴ糖はN型糖鎖修飾の際、糖鎖の供与体基質となるのである。画像1にある通りに3つの構造ユニットから構成され、(1)糖鎖が(2)ピロリン酸を介して(3)ドリコールと呼ばれる「ポリプレノール」上に構築されている形だ。また糖鎖修飾は、細胞小器官の1つである「小胞体」の内腔で行われる。糖鎖は、小胞体内腔の膜上にあるドリコール脂質上に単糖が複数積み重なって構築され、非成熟型から成熟型ドリコールオリゴ糖が合成されるのだ(画像1)。この際、単糖は、「GDP-マンノース」、「UDP-グルコース」、「UDP-N-アセチルグルコサミン」などの「糖ヌクレオチド」によってドリコール脂質へ運ばれる。複数の段階を経て合成された成熟型ドリコールオリゴ糖は、小胞体膜に存在する「オリゴ糖転移酵素」によってひとまとめに特定のタンパク質に結合する仕組みだ。画像1が、小胞体におけるドリコールオリゴ糖の生合成経路を表した模式図だ。ドリコールオリゴ糖の生合成は小胞体膜上で起こる。まず、小胞体膜の細胞質表面で、「ドリコールピロリン酸」上に2つの「N-アセチルグルコサミン」と5つの「マンノース」が順次構築される。このドリコールオリゴ糖中間体が小胞体膜の内腔側へ転移されたあと、4つのマンノースと3つのグルコースがさらに付加され、成熟型ドリコールオリゴ糖が合成されるというわけだ。そして成熟型ドリコールオリゴ糖は、オリゴ糖転移酵素の触媒作用によってタンパク質の特定のアスパラギン残基(N)に転移されるのである。これまでの研究から、ドリコールオリゴ糖の合成に関与する酵素の遺伝子に変異が起こると、「I型先天性糖鎖合成異常症(CDG-I)」が引き起こされることがわかっていた。CDG-I患者の線維芽細胞では、ドリコールオリゴ糖の成熟が滞るため成熟型ドリコールオリゴ糖が減少し、それによって多くのタンパク質において糖鎖修飾の効率が低下するため、全身性の重篤な症状が現れてしまう。近年、CDG-I患者の細胞において未成熟型ドリコールオリゴ糖が、ピロフォスファターゼによって分解され、リン酸化糖鎖へと代謝されることが明らかになってきたが、その生理機能はまったくわかっていない。なおピロフォスファターゼとは、「ピロリン酸(P-P)」の間を加水分解する酵素の総称である。これまでに、ドリコールオリゴ糖のピロリン酸に作用するピロフォスファターゼの酵素活性の存在が報告されているが、このピロフォスファターゼをつくる遺伝子はまだ同定されていない。一方、さまざまな哺乳動物由来の細胞において、細胞へのグルコースの供給量によってドリコールオリゴ糖の成熟度合いが変化することが知られていた。生命活動の維持に必要な十分量のグルコースがある環境では成熟型ドリコールオリゴ糖が合成され、速やかに糖鎖修飾に用いられる。しかし、グルコースが少ない環境(低グルコース環境)では、成熟型ドリコールオリゴ糖の合成が滞り、糖鎖修飾の効率が著しく低下することが知られていたが、この詳細なメカニズムは不明だった。そこで研究チームは今回、低グルコース環境におけるドリコールオリゴ糖の合成のメカニズムを明らかにするため、生化学的な手法を用いて検証を実施。まず、マウス胎児由来の線維芽細胞を、生命活動の維持に必要な正常な量のグルコース環境と低グルコース環境に置いた時に合成されるドリコールオリゴ糖の定量が行われた。その結果、正常なグルコース環境では、予想通り成熟型ドリコールオリゴ糖が合成されるのに対し、低グルコース環境では成熟型ドリコールオリゴ糖の合成量が著しく減少することが確認されたのである。次に、低グルコース環境で成熟型ドリコールオリゴ糖の合成量が減少するメカニズムを明らかにするため、過去の知見からピロフォスファターゼとの関係性が注目された。そこで、ピロフォスファターゼの分解によってできるリン酸化糖鎖の検出と定量を実施。その結果、低グルコース環境の時だけ、未成熟型ドリコールオリゴ糖の分解反応が起こり、リン酸化糖鎖が顕著に蓄積することが判明したのである。続いて、低グルコース環境だけでピロフォスファターゼによる未成熟型ドリコールオリゴ糖の分解反応が起こるのか、そのメカニズムが検証された。ドリコールオリゴ糖の合成には糖ヌクレオチドによる単糖の供給が必須だ。これまでの研究から、グルコースの量によって糖ヌクレオチドの合成が制御されることが確かめられている。そこで、低グルコース環境における糖ヌクレオチドを定量した結果、糖ヌクレオチドの1つであるGDP-マンノースの量が劇的に減少していることが確認されたというわけだ。さらに、未成熟型ドリコールオリゴ糖の分解反応が、グルコースではなく、GDP-マンノースの減少によって誘導されるかどうかの検証も行われた。通常、GDP-マンノースは、グルコースから主に合成されるが、マンノースからの合成経路もある。そこで、グルコースからGDP-マンノースが合成される経路に必須な「MPI(マンノース6リン酸イソメラーゼ)」を欠失した細胞が用いられた。なおMPIとは、解糖系の中間代謝産物である「フルクトース6リン酸」と「マンノース6リン酸」の相互変換を触媒する酵素だ。マンノース6リン酸は、糖ヌクレオチドの1つであるGDP-マンノースの生合成に必須である。このため、MPIはグルコースを炭素源としたGDP-マンノースの生合成経路において不可欠というわけだ。このMPIを欠損した細胞の培地内のグルコース濃度を変化させずにマンノースだけを取り除くと、GDP-マンノースの合成経路を遮断することが可能だ。その結果、リン酸化糖鎖の蓄積が観察できたのである。以上の結果から、低グルコース環境ではGDP-マンノースの合成が減り、それによって成熟型ドリコールオリゴ糖の構築が停止し、生じた未成熟型ドリコールオリゴ糖がピロフォスファターゼによって速やかに分解されることが判明したというわけだ。それを図式化したのが画像2で、低グルコース環境下での糖ヌクレオチド、ドリコールオリゴ糖、リン酸化糖鎖の量的推移を表している。マウス胎児由来の線維芽細胞が低グルコース環境に晒されると、GDP-マンノースの合成量が減少。これに伴って、ドリコールオリゴ糖の成熟が滞り、成熟型ドリコールオリゴ糖が減少し、未成熟型ドリコールオリゴ糖が合成される。合成された未成熟型ドリコールオリゴ糖は、ピロフォスファターゼによって速やかに分解され、リン酸化糖鎖へと代謝されていくというわけだ。今回の研究によって、ドリコールオリゴ糖の品質管理機構が存在し、未成熟型ドリコールオリゴ糖の異常な蓄積を防いでいることが示唆された。この機構は不完全な構造の糖鎖がタンパク質に結合することを防ぐのに必要と考えられるという。この反応に関わるフォスファターゼ遺伝子の異常はCDG-Iと同様の症状を引き起こすと考えられる。ピロフォスファターゼの遺伝子はまだ同定されていないが、将来この遺伝子が同定されれば、ドリコールオリゴ糖の品質管理機構の詳細が明らかにすることが期待できるとした。
2013年11月13日京都大学は10月23日、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて遮蔽物体を見ている際の人間の脳活動を計測し、ヒトの大脳皮質後頭葉に位置する初期の視覚野である「第1・2次視覚野(V1/V2)」において、遮蔽されて欠損した視覚像がまるで絵を描くように補完されて、物体の全体像が再構成されていることを明らかにし(画像1)、さらにこのV1の補完に関わる活動は、観察者が事前に見ていた物体の形を反映して、補完が必要でないと判断される場合には生じないことも明らかにしたと発表した。成果は、京大 人間・環境学研究科の山本洋紀 助教、同・江島義道名誉教授、同・大学 医学研究科の福山秀直教授、脳情報通信融合研究センターの番浩志 研究員(元・人間・環境学研究科所属)、花川隆 国立精神・神経医療研究センター 脳病態統合イメージングセンター 分子イメージング研究部部長(元・医学研究科助教)らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、10月12日付けで米神経科学誌「The Journal of Neuroscience」に掲載された。視覚系は、視対象を単独で処理するのではなく、空間的・時間的に近接する周辺の視覚情報との文脈、関係性も踏まえて、それらを統合的に解釈する柔軟な処理メカニズムを実装している。「見る」とは、決して網膜から入力された光の情報を受動的にありのままに見るということではなく、より能動的な処理過程であるという。この視覚の能動的な処理過程を示す端的な例として、「遮蔽問題」が挙げられる。ヒトが目にする外界は、無数の物体が重なり合って構成されている。よって、個々の物体に目を向けた時、多くの場合、物体の一部は前面の物体によって遮蔽されていて、その全体像を見られないことが多い。それにも関わらず、ヒトは隠れて見えない部分をいとも簡単に補完し、個々の物体の全体像を即座に把握することが可能だ。この補完は、被遮蔽部に明確な知覚を伴わず生じる(その部位が明るく見えたり、色が変わったりはしない)ため、「明確なモダリティの知覚を伴わない補完」という意味で、「アモーダル補完」と名付けられている。このヒトにとって当然のこの遮蔽問題を計算で解くことは実は難しく、ロボットに視覚を持たせるコンピュータ・ビジョンなどの実現に向けて解決しなければならない大きな課題の1つのだ。このアモーダル補完は、複雑で断片的な光景から個々の視対象の全体像を知覚するために、視覚系が実装しなければならない重要な機能の1つで、心理学・神経科学・マシンビジョンの分野で長い研究の歴史がある。最近の脳イメージング技術の発展により、大脳皮質腹側(下側)および外側に位置する高次の視覚野で、主に物体の同定(見ている物体が何であるか)に関わる領野であるヒトの脳の「高次物体処理領野(LOC:Lateral Occipital Complex)」(第4次視覚野の前方に位置し、間の物体知覚や顔認知などに中心的な役割を担う領野であると考えられている)では、すでに遮蔽問題が解決されて物体の全体像が表現されていることがわかっていたが、LOCに至る過程、脳のどこでどのように遮蔽問題が解決されているかは明らかではなかった。今回の研究チームでは、fMRIで取得したデータに解析技術「位相符号化法(Phase-encoded method)」を適用することで、遮蔽物の下を運動する物体が引き起こす脳活動を空間的・時間的に正確に可視化することに成功した。位相符号化法は、視覚研究で多く用いられているfMRIデータ解析手法の1つで、V1やV2などの初期視覚野の「レチノトピー(網膜部位再現性)表象」(画像2)を利用して、視野内で視対象が運動することによって生じる脳活動をうまく可視化する技術だ。同手法では、まず視野内で視対象を周期的に運動(回転、拡大など)させ、その運動を観察中の被験者の脳活動をfMRI法で計測する。次に、得られたfMRI時系列データにフーリエ解析を適用して刺激の運動周期との対応を調べることで、ある脳部位がレチノトピー表象を有するかどうか、もし有するなら視野のどの位置を表現しているかを明確に同定することが可能だ。通常、この解析技術は複数の視覚野の位置と境界を同定するために用いられるが、今回の研究ではこの手法が応用され、遮蔽された物体の補完に関わる脳活動を空間的・時間的に正確に取得することに成功している。またレチノトピーとは、初期視覚野の視野における表象の様子のことをいう。視野のある1点と、視覚皮質表面上のある1点は1対1の対応関係を持ち、脳内で視野がスクリーンのようにトポグラフィックに表象されている。レチノトピーとは、その表象のことをいう。なお、レチノトピー表象は、初期の視覚野V1、V2で顕著で、高次の視覚野へ至るにつれて個々の神経細胞における受容野サイズの増大と共に不明確になる。しかし、最近の研究ではかなり高次の視覚領野までレチノトピー表象が保持されていることが明らかになりつつあり、網膜部位再現性は、脳内視覚情報処理の重要な基本単位であると考えられているという。なお網膜からの光信号は最初にV1に投射されて、傾きや線分など、単純な視覚特徴が抽出されると考えられており、そこで抽出された情報はV2に送られ、さらに工事の視覚野へと順番に処理が進んで物体認知が行われる仕組みだが、より高次の視覚野からのフィードバック回路も確認されているため、単純に初期の視覚野が低次の領野というわけではない。位相符号化法を用いて、(1)物体の全体像が見える場合、(2)その一部が遮蔽された場合、(3)遮蔽ではなく物体が分断された場合の3つの条件のレチノトピックな脳活動が比較された結果、(2)の遮蔽された場合に対して、V1・V2において、遮蔽物の下であたかもそこに物体が見えているかのように、見えない部分を描くかのような明確な脳活動が生じていることが発見された。また、この応答は(3)のように物体が分断された場合には生じないことも確認されている。さらに、観察者が事前に得ていた物体の全体像に対する知識によって補完活動が変化することも判明した。画像3が、ヒト第1次視覚野および第2次視覚野で観察された、遮蔽された物体の補完に関わる脳活動。色がついている部位でレチノトピックな応答が生じていることを示しているという。黒線で囲まれた領域は、遮蔽物をレチノトピックに表象する部位で、条件2(遮蔽)、条件3(分断)のどちらも、この部位では視対象の回転運動は見えない。それにも関わらず、遮蔽条件ではあたかも遮蔽物の下を回転する視対象を描くように脳活動が生じていることが見てとれる。人間の目は一般的にカメラのようにみなされているが、今回の研究結果は人間の視覚システムが単に外界を映像として映し出すだけではなく、外界に対する「解釈」を加えた、より高次の処理を行っていることを示しているという。また今回の結果により、視覚皮質の活動は、見えている物体に対してのみ生じるのではなく、見えなくてもその存在を感じるだけで生じることが確認された。ヒトが複雑な光景から即座に安定して物体を認識できるのは、この脳の処理の早い段階での補完によるものと考えられるとしている。また今回明らかになった脳の補完の仕組みを応用することで、従来よりも高精度に「遮蔽問題」を解決する新しいコンピュータ・ビジョン技術の開発が期待されるという。さらに、高次脳機能障害の1つで、複数の物体が重なり合って呈示された際に、個々の物体が認識できなくなる症例が報告されているが、そうした障害の新たな治療法開発へと繋がるかも知れないとする。研究チームは今後、今回の研究で明らかになった初期視覚野の補完に関わる応答と、より高次の物体処理領野での応答がどのような関係なのかを調べ、人間の物体認知機能のさらなる解明を進めると共に、コンピュータ・ビジョンへの適用など、応用面での研究を進めていく予定だ。
2013年10月29日京都大学は10月18日、体細胞からiPS細胞へと初期化する過程で、RNAを切り貼りする「スプライシングパターン」も初期化されることを明らかにしたと発表した。 成果は、京大 iPS細胞研究所(CiRA)/生命科学研究科大学院生の太田翔氏、同・生命科学研究科の西田栄介教授(科学技術振興機構 CREST)、同・CiRA所長の山中伸弥教授(物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)、グラッドストーン研究所)、同・CiRA/iCeMSの山本拓也助教、らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、米国東部時間10月17日付けで米科学誌「Cell Reports」のオンライン版に掲載された。 一般的な真核生物のDNAから転写されたメッセンジャーRNA(mRNA)前駆体には、「イントロン」と呼ばれる直接タンパク質のアミノ酸配列に関わらない領域がある。このイントロンを除き、残った「エクソン」と呼ばれる領域からなるmRNAが作られる過程はスプライシングと呼ばれる。 そして、1つの遺伝子から複数のタンパク質を作る仕組みの1つが「選択的スプライシング」だ。同じDNAを参照していても、必要とするエクソンと必要としないイントロンの領域が異なることで設計図として変化し、複数種類のタンパク質を作れるのである。この仕組みによりタンパク質の種類は豊富になり、より複雑で柔軟性のある仕組みを作ることができるというわけだ。 また、多能性と無限増殖性を持った細胞であるES細胞では、同細胞に特徴的なスプライシングが行われていることが報告されている。分化した細胞にはそれぞれ特徴的なスプライシングのパターンがあり、各細胞に固有の機能や特性を生み出しており、細胞を特徴付ける大きな要因であるのだ。 しかしその一方で、スプライシングの仕組みには、パターンを間違える可能性という危険性があるのはいうまでもない。スプライシングパターンを誤ると、当然のことながら間違えたタンパク質ができてしまったり、そもそもタンパク質そのものができなかったりすることもある。よって、スプライシングパターンが変わってしまうことで生じる疾患も多数報告されているというわけだ。 分化した細胞に、俗に「山中因子」と呼ばれる4つの初期化因子(「Oct3/4」、「Sox2」、「Klf4」、「c-Myc」)を導入するとiPS細胞への初期化が行われるが、その過程でスプライシングパターンも変化しているのかどうかは明らかにはされていなかった。もし、スプライシングパターンが変化しなければ、同じiPS細胞であっても由来細胞によって大きく性質の異なるiPS細胞になる可能性が考えられるというわけだ。そこで研究チームは、大規模遺伝子解析の技術を用いて体細胞とiPS/ES細胞のスプライシングパターンを解析することにしたのである。 初期化前後でのスプライシングの違いについて調べるために、線維芽細胞、ES細胞、線維芽細胞から樹立したiPS細胞それぞれのmRNA配列の解析が実施された。すると、線維芽細胞のスプライシングパターンがiPS/ES細胞に特徴的なスプライシングパターンへと変わったことがわかった(画像1)。選択的スプライシングにはさまざまなタイプがあるが、ここでは「スキップド・エクソン」(A-B-CとA-Cという2つの選択、エクソンBを飛ばすかどうか)についての解析が行われた。画像1のスプライシングパターンの解析結果では、線維芽細胞(MEF)から作製したiPS細胞は、MEFとは大きく異なり、ES細胞と似たスプライシングパターンを示したのである。 特徴的なスプライシングパターンを決めているメカニズムは、RNAに結合するタンパク質が制御していると考えられるという。そこでRNA結合タンパク質の中から、特にiPS/ES細胞で特異的に働いているタンパク質を作る遺伝子92種が選ばれ、それらの遺伝子がRNA干渉法により1つ1つ働かないようにされた結果、9種類のRNA結合タンパク質がスプライシングパターンに影響を与えることが判明したのである。 これらのタンパク質が働かないようにした結果、2種類のタンパク質「U2af1」と「Srsf3」がそれぞれ働かない場合に、iPS細胞ができる効率は低下することが確認された(画像2)。画像2はU2af1およびSrsf3を働かなくした細胞での初期化がわかるiPS細胞のコロニー(左)とシャーレ上のを占める面積を表したバーグラフ。 画像2中のAPは、アルカリフォスファターゼ(iPS細胞へと初期化されたことを確認する指標)。U2af1およびSrsf3の働きを阻害した場合には、iPS細胞のコロニー(紫色の点)の数が減少し(左)、シャーレ上を占める面積も減った(右)。shNCは、コントロール(遺伝子の働きに影響を与えないRNA)、shU2af1はU2af1を作れないようにするRNA、shSrsf3はSrsf3を作れないようにするRNA。#1、#2、#3はそれぞれ同じ内容で実験が行われた。 以上のことから、体細胞が初期化される際にU2af1とSrsf3がRNAスプライシングに影響を与えることによって、重要な役割を果たしていることが明らかとなったのである。 今回の研究では、選択的スプライシングについてゲノム全体で解析を行い、細胞が初期化される過程でスプライシングパターンやスプライシングを制御するメカニズムが変化していることが解明された。また、選択的なスプライシングの制御が細胞を初期化するメカニズムの一翼を担っており、多能性に重要な働きをしていることを示唆しているという。この成果から、iPS細胞はES細胞などと同様に多能性を持つスプライシングパターンへと体細胞のパターンから変化していることが明らかになった形だ。今回の成果を応用することで、iPS細胞の品質評価やiPS細胞作製時の効率や時間の改善などにも利用できる可能性が考えられるとしている。
2013年10月21日「美容番長」待望の美容本!「Popteen」や「Popsister」「LARME」「EDGE STYLE」など人気ファッション雑誌での活動のほか、ガールズコレクション、Girls Award等への出演等で知られる人気ファッションモデルの菅野結以。近年は、コスメブランドやアクセサリーブランド、WEBセレクトショップなどのプロデューサー業に力を注いでいる。そんな“美”に関心の高い菅野が、3日、自身初の美容本となる「菅野結以美全集」(学研教育出版)の発売を記念し、東京都内でイベントを開催した。これまでにもスタイルブックなどの著書がある菅野だが、美容本は初めて。モデル仲間のあいだでも“美容番長”として知られる彼女だけに、その美の秘訣が詰め込まれた1冊は、女子必読といえるだろう。カルチャーや言葉も含め、自身の思う“美”を凝縮して表現こだわりの強い菅野らしく、ありがちな美容本にはしたくなかったそうで、ヘアメイクやスキンケア、日ごろのボディケアメンテナンスについてももちろんたっぷり収録しているが、それだけではなく、気になるカルチャーや心に響いた言葉など、彼女自身が思う“美”をギュッと1冊にまとめたという。そうした多角的な“美”こそ、彼女の魅力を支えているものなのだろう。自ら描いた水彩のイラストやメッセージ入りとなっているところも特徴。あふれる想いをしっかりと表現している。最近は、漢方も試しているという彼女。“ラクしてキレイ”が流行な昨今だが、彼女は、やはり日々努力して得られるもの、内側からキレイになってこそ体現されるものを、“美しさである”ととらえているようだ。この日のイベントでは、集まった400人のファンとの握手会も。ひとりひとりの声にも耳を傾け、交流を図っていた。【参考リンク】▼菅野結以オフィシャルブログ▼学研出版サイト「菅野結以美全集」元の記事を読む
2013年08月05日(画像は、株式会社学研パブリッシング プレスリリースより引用)大人女子の悩み最近やせにくくなった…最近やせにくくなった…、と悩んでいませんか?年齢とともに新陳代謝が落ちてしまうので、食事制限だけでは、やせにくくなってきているのです。だからといって、エステやサロンに頻繁に通うのも、金銭的に辛いですよね。自宅で手軽に、お金をかけずになんとかダイエットできないものか。そんな大人女子に朗報です!2013年7月23日、株式会社学研パブリッシングは、同社が出版する「FYTTE 9月号」で、「オトナの真実(リアル)ダイエット!」を特集すると発表しました。ゆうこりんからアドバイス!30歳以降はこうやせる!「FYTTE 」は、ダイエット、美容、健康をテーマにした女性の味方の月刊誌。専門家のアドバイスを中心にした、正しいダイエット記事は、読者から高い評価を得ています。9月号には、ゆうこりんが表紙で登場しています。出産を経験し、今年30歳をむかえるゆうこりん。出産や年齢を感じさせない見事なスタイルを披露しています。また、出産後のカラダのケア方法について、彼女からのアドバイスも掲載されています。その他、気になる記事が目白押しです。FYTTE 9月号は盛りだくさん!・女優の三浦理恵子さん、モデルの仁香さんら、「30歳からやせた人」の秘密・本当のカラダ年齢、ズバリ当てちゃうチェックテストで若美ボディに!・ヨーグルト×大麦が効く!腹ペタさんになるための「幸せ美腸生活BOOK」(株式会社学研パブリッシング プレスリリースより引用)肌の露出が増えて、ボディラインが気になる夏。FYTTE 9月号をバイブルにして、目指せ大人美BODY!【参考】▼株式会社学研パブリッシング プレスリリースその紫外線対策、意味がない!?ギラギラ太陽の季節を乗り切り、秋の肌に差をつけるスキンケアとは?(7月21日)恋のから騒ぎに「白黒はっきりつける」男性必殺アイテムとは?(6月29日)元の記事を読む
2013年07月26日最近では、女性誌に毎号豪華な付録が付いていて、それで読者を引きつけています。付録はうれしいものですね。特に子供のころは雑誌の付録にわくわくしませんでしたか? 子供のころ、どんな雑誌の付録がうれしかったかを聞いてみました。調査期間:2012/12/26~2013/1/8アンケート対象:マイナビニュース会員有効回答数 1,000件(ウェブログイン式)■子供のころ、うれしかった雑誌の付録は!?「うれしかった雑誌の付録は?」という質問への回答を、多い順にランキングすると以下のようになりました。●第1位シール/シールセット72人回答者は平均年齢27.5歳の人でした。付いていた雑誌名では『なかよし』『りぼん』『コロコロコミック』が多く挙がりました。●第2位レターセット35人回答者は平均年齢29.8歳の人でした。最も多く挙がった雑誌名は『りぼん』でした。当時の女子がいかに支持していたかわかりますね。●第3位実験セット18人試験管などが同梱(どうこん)されていた実験セットが3位に入りました。回答者の平均年齢は34.6歳。学研の『科学』、また小学館の学習雑誌『小学○年生』に付録として付いていたそうです。●第4位顕微鏡セット15人回答者の平均年齢は37.8歳でした。学研の『科学』や『少年チャレンジ』に付録として付いていたそうです。●第5位ポーチ12人回答者の平均年齢は26.9歳でした。挙がった雑誌名は『なかよし』『りぼん』が同数で最多でした。この両誌は女の子の喜ぶものを付録に付けるのがうまい雑誌ですね。そのほかに挙がった「うれしかった雑誌の付録」をご紹介します。■ソノシート10人29~63歳の人から回答がありましたが、今の子供たちには「ソノシート」という言葉が分からないでしょうね。レコードプレーヤーがもう家庭にはないでしょうし。■セーラームーン関連グッズ10人24~30歳の女性からの回答が多かったのがこれです。皆さんセーラームーンにハマった世代なのでしょう。●セーラームーンのハートの鏡みたいなもので、日光を当てると三日月が反射するってやつ。(東京都/女性/27歳)こんな凝った付録があったんですねえ。●セーラームーンが描いてあれば何でもうれしかった。(福岡県/女性/29歳)という意見もあるほどで、当時の人気がうかがえます。■迷路ペーパークラフトのボールを転がして進む迷路。(東京都/男性/25歳)これは珍しい付録なのでは!?■アリの巣観察セット今思えば気持ち悪い付録だったとは思う。(千葉県/女性/29歳)学研の『科学』に付いていたのを筆者も覚えています。今では、この観察キットをネットで購入することができますね。■コインを入れると、コインの大きさによって、入る場所が変わる貯金箱のようなもの。(三重県/女性/24歳)雑誌名は記載されていませんでしたが、付いていたのが学研の雑誌だそうです。■紙のケーキクリスマス時期の雑誌に付いていた紙の付録。組み立てると1ピースのケーキができて、すべて作って合わせるとホールケーキになる。(大阪府/女性/34歳)12月号にはクリスマスに関連した付録が多かったです! 懐かしいですね。このようにいろんな付録が挙がりました。あなたは子供のころ、どんな付録がうれしかったですか?(高橋モータース@dcp)
2013年03月02日