発達支援施設とは?発達が気になるお子さんや、障害のあるお子さんを、ご家庭の中だけでサポートすることは容易なことではありません。そういった子どもたちのためにあるのが「児童発達支援」や「放課後等デイサービス」などの発達支援施設です!児童福祉法では、障害児通所支援と呼ばれ、全国各地にある施設に直接通うことで、必要なサポートを受けることができます。原則的に、小学生未満の未就学の子どもが通うことができるのが児童発達支援、小学生~高校生の就学児童が通うことができるのが放課後デイサービスです。児童発達支援では、小学校就学前の子どもを主に対象とし、支援を受けることができる施設です。日常生活の自立支援や機能訓練を行ったり、保育園や幼稚園のように遊びや学びの場を提供したりといった、多様な支援を目的としています。サービス・利用方法・費用・手続きの流れについては、以下の記事に詳しくまとめられています。放課後等デイサービスとは、障害のある就学児童(小学生・中学生・高校生)が学校の授業終了後や長期休暇中に通うことのできる施設です。放課後等デイサービスでは、生活力向上のためのさまざまなプログラムが行われています。トランポリン、楽器の演奏、パソコン教室、社会科見学、造形など習い事に近い活動を行っている施設もあれば、専門的な療育を受けることができる施設もあります。サービス・利用方法・費用・手続きの流れについては、以下の記事に詳しくまとめられています。どんな支援が受けられるの?児童発達支援や放課後等デイサービスにはさまざまなタイプがありますが、一部の施設では療育的なアプローチによる支援を受けられることもあります。ソーシャルスキルトレーニングをはじめ、さまざまな独自の療育プログラムが組まれている場合もあり、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など専門資格を保有しているスタッフがいる施設もあります。また、障害のある子どもにとって、児童発達支援や放課後等デイサービスは、家庭・学校(園)につぐ3つ目の居場所となります。子どもにあった施設を選ぶことができれば、親子ともども充実した時間を過ごすことができるはずです。発達支援施設を選ぶときのポイントは?お住まいの地域にどんな施設があるかは、保健センター、子育て支援センター、児童発達支援事業所、発達障害者支援センターや、市町村の窓口で確認することができることもあります。これらの窓口で、子どもの特性にあった施設について相談してみることも有効です。公共の相談窓口以外に、インターネット上で施設を探すこともできます。LITALICO発達ナビの「施設情報」では、全国の児童発達支援施設や放課後等デイサービスを、合わせて約15,000施設掲載しています。それぞれの施設の受け入れ状況や、サポートの内容も詳しくまとめられています。また、各施設のスタッフが自分たちで更新している写真付きのブログや、実際の利用者さんからの口コミ情報も合わせて見ることができます。さらに、発達ナビ上から24時間いつでも、空き状況の確認や教室見学などの問い合わせをすることが可能です。利用にかかる費用は?児童発達支援と放課後等デイサービスは障害児給付費の対象となるサービスです。通所受給者証を取得することで国と自治体から利用料の9割が給付され、1割の自己負担でサービスを受けることができます。生活保護受給世帯・市町村民税非課税世帯: 0円市町村民税課税世帯(年間所得がおおむね890万円以下の世帯): 4,600円上記以外(年間所得がおおむね890万円以上の世帯): 37,200円このほかにおやつ代などの食費や教材費などの実費が必要になる場合もあります。また、自治体により独自の助成制度があります。児童発達支援の利用にかかる費用について、詳しくはこちらのコラムの「児童発達支援施設の利用方法」の章にまとめられています。生活保護受給世帯・市町村民税非課税世帯: 0円市町村民税課税世帯(前年度の年間所得がおおむね890万円以下の世帯): 4,600円上記以外(前年度の年間所得がおおむね890万円以上の世帯): 37,200円原則一割負担ですが、前年度の年間所得によっては負担額が0円であったり、1割以上である場合もあります。施設によってはおやつ代や制作物の材料代などがかかるところがあります。これらに加え、自治体により独自の助成制度がある場合もあるので、行政の窓口に問い合わせてみましょう。放課後等デイサービスの利用にかかる費用について、詳しくはこちらのコラムの「放課後等デイサービスの利用方法」の章にまとめられています。施設の利用方法は?発達支援施設に通うためには「通所受給者証」が必要になります。通所受給者証はお住まいの市区町村の福祉担当窓口・障害児相談支援事業所などに申請を行うとで取得することができます。この通所受給者証があることで、自己負担1割でサービスを受けることができるのです。障害者手帳がなくても、通所受給者証があれば、「児童発達支援」や「放課後等デイサービス」を利用できます。詳しい取得法や、申請の方法はこちらを参考にしてください。その他にも受けられるサービスはあるの?また、児童発達支援や放課後等デイサービス以外にも、受けられる支援があります。受けられる支援の詳細や申請方法はこちらにまとめられています。療育手帳・障害者手帳とは?障害者手帳とは、障害のある人が取得することができる手帳です。障害者手帳を取得することで、障害の種類や程度に応じてさまざまな福祉サービスを受けることができます。身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳などの種類があります。まとめサービス・支援は多岐にわたるため、すべてを把握できず戸惑うこともあるかと思います。そんなときは、早めに相談することで、一歩ずつ疑問を解決してゆきましょう。保健センター、子育て支援センター、児童発達支援事業所、発達障害者支援センターや、市町村の窓口に相談することで、次のステップが見えてくるかもしれません。また、児童発達支援事業所や放課後等デイサービスなどのスタッフも相談に乗ってくれるはずです。一人で抱え込まず、相談できる相手を見つけ、適切な支援につなげていくことが大切です。
2017年08月29日私はアスペルガー症候群、ADHDと診断された、26歳男性です。以前、正社員の登用見込みで採用された企業で、発達障害であることをカミングアウトし、退職せざるを得ない状況に追い込まれる経験をしました。今回このコラムを書いたのは、その企業を批判するためではありません。発達障害のある人自らが、現在の社会の現状や、自分たちを守る法律や制度について知ってほしいと思ったことが執筆の動機です。自分の経験がすこしでも役に立てば幸いです。問題なく過ごしてきた学生時代、仕事を始めて問題が表面化出典 : 私は大学までの学生生活で、表面上のコミュニケーションや、日常生活、勉強という面では、これといった支障はなく、毎日を過ごしてきました。自分が発達障害であることにも気づいていませんでした。しかし、社会人になってから対人関係の困り事などが表出したのです。例えば、空気が読めない発言によって商談の雰囲気が悪くなってしまったことや、声の大きさやトーンをTPOに応じて変更することが難しいために、ちょっとしたぼやきが部署内の全員に聞こえてしまうことがありました。学校生活では、対人関係に多少問題があっても、テストで問題のない点数をとっていれば、目をつむってもらえます。ですが、社会人となるとそうもいきません。行く先々で、「常識がない」「もう少し場をわきまえろ」と言われてしまったのです。そうするうちに私は、就職後半年足らずで転職することをくり返してきました。コミュニケーションスキルの低さから「正社員としての基本的なスキルに欠ける」ということを言われ、辞めざるを得なくなってしまうのです。表面的なコミュニケーションスキルという点では問題がないので、面接は突破出来ても、継続的に働くということが難しいと感じていました。確定診断はまだ。そんな状況で向かった採用面接出典 : 人間関係のつまずきや解雇の原因が、自身の発達障害にあるのではないかと考えていた私は精神科を受診し、発達障害の疑いがあるということを主治医から告げられます。しかしこのときは「疑いがある」と告げられたレベル。確実な診断に必要な検査は数ヶ月先まで予約で埋まっており確定診断は下っていない状態でした。そんな状況で私はある小売店の採用面接に応募します。任される仕事は主に接客。採用面接では聞かれない限り、不利になることは話す必要が無いと考え、発達障害の可能性があるということには触れませんでした。そして面接の結果は採用。まずは6ヶ月の試用期間となり、社会保険付きのフリーターのような形で働くことになったのです。職場で生じた困りごとと気づき出典 : 職場での仕事は多岐に渡りましたが、耳から聞いたことを忘れやすい特性や、聴覚過敏から引き起こされる困り事が特に辛く私にのしかかりました。たとえば、こんなことがありました。1. 業務の指示、シフトの交代、口頭で交わされた指示や約束等を忘れやすい。そのため、シフトを変更して、来なくていい日に会社に行き、「あれ?今日は休みだったよね?」という会話になってしまうことがありました。2. 業務の指示が長かったり、一度にされたりすると理解が追いつかなくなってしまう。その会社には、面倒見の良い先輩が多く、丁寧に説明してくださることが多かったのですが、耳から聞いたことを理解すること、長い話を要約することが苦手だったので、理解が追い付かなくなってしまう場面が多くありました。3. BGMなどの雑音がある場所で、電話などの声が正しく聞き取れない。また、私は切り替えやマルチタスクが苦手です。電話がかかってきたときには、電話に出るモードに切り替えなければいけないのですが、人よりも切り替えに時間がかかります。加えて、聴覚過敏があるため、BGMやマイクやスピーカーを使ったイベントなどが近くであると、部署名や社名を聞き取りづらい感じることが多々ありました。4. 一つの仕事に没頭しやすく、周りを見ることが苦手。アスペルガー症候群である私は、細部に注視しやすく、全体が見ることが難しくなる特徴があります。上司から進捗状況を尋ねられるまで、報告をしなかったこともありましたし、他人の迷惑を顧みず勝手に仕事を進めることもありました。譲れない自分のこだわりのために、他人と摩擦が起きてしまうことも少なくはありませんでした。仕事は仕事という考え方ができなかったのです。5. 突然のスケジュール変更などに弱く、探し物がいつもの場所にないと、イライラしやすい。いつもと変わったこと、配置が換わったりするだけで頭の中がパニックになります。こうした予想外のハプニングに対してどうしていいかわからずパニックになり、それが怒りとして感じられるというステップを踏んでいるのです。逆に、できるとわかったこともあります。一般的にアスペルガー症候群を抱える人には、接客業は向かないと言われることもあります。しかし、私の場合、質疑応答のパターンがある程度定まっており、マニュアルがしっかりしていれさえすれば、さほど不自由なく対応できました。その点、今回の職につく前の事務職では、上司の考えていることを察しながら働くことが多く、困難さを感じていました。そういった働き方が苦手だと感じたため、あえて接客業を選んだ経緯があります。また私にとって、見知らぬ人と短時間雑談をするのは、そんなに難しいことではありません。むしろ、何時間も何週間も誰かと一緒にいる方が難しいのです。社会性の弱さが露呈する瞬間が必ずあり、障害を隠し通すことができなくなるからです。上司に障害があることを、上司に伝えることになった理由ときっかけ出典 : 発達障害の心理検査が近づいてきた日、自分が大きなミスをしてしまった事に気付きます。それは、確定診断のために必要な心理検査の日に休みの希望を入れることを忘れてしまったことでした。そのため、上司に「大事な検査があって、この日はどうしても出社する事ができません」と伝える必要性ができてしまったのです。どうするか悩みましたが、「私は自分が発達障害だと思っていて、半年前から心理検査の予約をしていた」ということを正直に話しました。そして結果として診断日にお休みをもらうことができたのです。適当な言い訳をせず、あえて正直に伝えた理由は、シフトの休み希望などの締め切り自体を忘れることが、1回や2回ではなかったことが関係しています。障害特性による困り事が、そのときから既に仕事にも支障を与えていました。このことから、どうせなら正直に伝えてしまおうと思い、事実をありのままに話したのです。判明した診断名は......?出典 : こうして、発達検査を受けた私には、確定診断が下ることなりました。診断名はアスペルガー症候群と、ADHD。言語性IQは平均以上であるが、処理能力、場面の推察力、ワーキングメモリーのいずれも平均より大きく劣るという結果でした。主治医は比喩として、メモリーが極端に少なく処理速度も速くはないパソコンに例えて説明してくれました。25年間、自分が普通だと思って生きてきた私にとって、自身が発達障害であると突然突きつけられた事実は想像以上に重いものでした。「どうして、もっと早く教えてくれなかったんだ」と両親に対して憤りをぶつけてしまうほど、信じたくない気持ちでいっぱいだったのです。「まさか自分が障害者だなんて...」出典 : 診断を受け止めることができなかった当時の私は、思わず母親に詰めよります。「どうしてくれんだ!?アンタが出来損ないに産んでくれたせいで、俺の人生は台無しだッ!!」家の外にまで聞こえるような怒声で母親を罵った事を今でも覚えています。「出来損ない」を突き付けられたような感覚。健常者と比べて能力が欠けているという感覚は自分を苦しめました。他人と比べては、自分に足りないものを見つけネガティブの思考に陥る。そういうループを繰り返していたのです。この頃を振り返ると、仕事が上手く行かない、余暇を楽しむ余裕がない事から生じた怒りだったと思います。また日頃から見ていたSNSも原因のひとつだったのではないかと考えています。仕事で自分なりの居場所を見つけていたり、結婚という次のライフステージを選ぶ人が、同じ大学を卒業した同期から早くも出ていたりする中で、自分だけが社会の中で居場所を見つけることが出来ず、置いていかれている気がしていたからです。そのような言葉にすることが難しい孤独感や焦燥感が私を追い詰めました。また診断が下ってから主治医の勧めでストラテラを服用し始めたのですが、私の実感ではこれといった効き目の実感がなく、喉の渇き、食欲減退、イライラ感、中途覚醒などの副作用に悩まされます。このときは思うように治療が上手く行かない苛立ちを両親にぶつけることも少なくありませんでした。また、後から知ったことですが、ストラテラには、気分変化や不安、攻撃性を引き出すなどの副作用が出る場合があるそうです。その副作用が苛立ちや、すぐに怒鳴ってしまうことに影響していたかもしれません。結局、私の場合、副作用が強く出てしまったため、続ける事が困難だと判断され、現在は服用を中断することになりました。周囲にカミングアウトするか否か。悩んだ末に出した結論は?出典 : 確定診断を受けたものの、発達障害を職場に本格的にカミングアウトするかどうかは非常に悩みました。休み希望を出す段階で、上司に発達障害かもしれないと告げていたとはいえ、同僚や部内に対してカミングアウトすることはわけが違います。しかし一方で、障害特性による困りごとのため、仕事そのものや職場の人間関係に支障があり「もう隠し通すのは限界だな」という自覚もありました。悩みぬいた私は、試用期間にカミングアウトすることが人事面でのリスクであると知りつつも、「結局は受け入れてくれるだろう」という思いで、カミングアウトをすることを決意したのです。カミングアウトをすると決めた、私が取った行動とは?出典 : 発達障害をカミングアウトすると決めた私は、発達障害のことを全く知らない人でも分かるような説明を考え抜きました。その際に発達ナビのカミングアウトの記事を参考にし、自身の特性と、その障害に対して具体的にどうして欲しいかを簡潔に書いたナビゲーション・ブックを用意しました。ナビゲーションブックには、下記の3点を記入しました。1.アスペルガー症候群まとめアスペルガー症候群とはどのような症状なのか、障害を知らない人にもわかるようにまとめました。2.アスペルガー症候群具体例身体的な特徴や、作業面での特徴などをまとめ、どのようなことが自分の中で起こっているかを説明しました。3.自分が抱えている症状と、その対策そして、自分の困りごとに対する対処法と、その配慮を場面ごとにまとめました。ADD女性の指南書とも言われる『片付けられない女たち』サリ・ソルデン著もカミングアウトする際、参考にしました。片づけられない女たちこの本は、障害の当事者の方に、ぜひ読んでほしいと考えているのですが、障害を抱えたまま、どう自分を受け入れ前向きに生きて行くのかが書かれています。特に参考になったのは、騒がしい場所での仕事は苦手なことを明らかにし、落ち着いた環境で効率化を図ることや業務量を減らす代わりに、丁寧な仕事をすることなどです。さらに、障害があるから配慮してもらって当然という姿勢ではなく、自分で工夫できることは自分でする。自分に出来ないことだけ配慮してもらうというトレードオフを本書では提案しており、カミングアウトをどう行うかの道しるべとなりました。また、ナビゲーションブック作成の際には、下記の発達ナビのコラムを参考にして、私の障害特性を分かりやすく説明することを意識しました。職場でのカミングアウト、そして......出典 : カミングアウトをする順番は、影響する範囲などを考え、上司→人事→部署内の同僚のように進めていきました。Upload By ツーちゃんこうして事前にナビゲーションブックを用意して、自分がどのような障害があり、それに対してどうような配慮を望んでいるかをハッキリさせたことで働きやすくなった一面もありました。引き継ぎの際に、同僚が紙を使って視覚的に説明してくれるようになったり、イレギュラーが生じたときには、それをきちんと説明してくれるようになったのです。しかし、中には良く思わない人もいました。障害があり能力が劣る人と同じ給与で働くことに抵抗があり、良く思わない人も少なくなかったのでしょう。障害があることを、噂話のネタに使われてしまい、公開する予定の範囲が当初の想定以上に広がってしまったということがありました。どんな情報をどこまでに公開するかは、カミングアウトを考えるときに、最も慎重に考えなければならない問題の一つだと思います。発達障害は、脳の特性でもあります。この職場で健常者と共に働くということは、自身の特性を言わば矯正して生活をすることに他ならないものでした。カミングアウト1ヶ月後の、実質的な退職勧奨出典 : カミングアウトからちょうど1ヶ月後のことです。その会社では、直属の上司と定期的に仕事での悩みや日々の業務の改善点などについて、1対1で話し合う定期的なミーティングがありました。その日は半年間の試用期間を振り返る日の予定の日でした。いつもは温和な雰囲気のミーティングが、そのときばかりは暗い雰囲気だった事を覚えています。空気を読むことが苦手ではありますが、重苦しい人事考査を何回か経験していたため、その空気感には覚えがありました。人事が慎重を期して、書記として議事録を取っており、直属の上司が社内規定を読み上げ始めたので、不安は確信に変わりました。そして案の定上司から言われたのは、5ヶ月の間、君を見てきたけれども、正社員としてのスキルに欠けるといった趣旨の言葉でした。仕事を続けるために、突きつけられた条件とは?出典 : そして私には雇用継続に新たな条件を突き付けられます。試用期間を1ヶ月間延長しさらに人事部が示した条件を飲む。その条件とは、ナビゲーションブックに書いた、障害特性上難しいと書いたことをできるようにすること。それが達成できない場合は、引き続き雇用する事は出来ないというものでした。さらに、今の部署の仕事を完璧にこなし、他の部署のサポートにも回れるようにする。そして、その仕事ぶりが直属の上司と人事部の代表者から見て、条件を達成したと判断されたときにに改めて正社員としての採用を決定するという内容だったのです。「それが出来ない場合は、今月末で退職することに同意をしてください」いうなれば、特性を克服するか、辞めるか、どちらかを選ぶことを迫られたのです。このとき、つまりは辞めろと言われているのだと悟り、退職書類ににサインをしました。ナビゲーションブックが、このような形で使われるなんて...本当に悔しくてたまりませんでした。こんなことがあっていいのか。これは、障害者差別ではないのか?そう思った私は、法律相談なども赴き、専門家から知見を集めることにしたのです。退職してから知った、発達障害者を取り巻く現状と法律出典 : このような出来事は、法律用語で退職勧奨と呼ばれ、強制的に退職を迫った場合には法律に違反するそうです。これは、訴訟も視野に入れて法律を調べていたときにわかりました。私が知る限りで発達障害者を守る法律は3つあります。1.障害者雇用促進法2.障害者差別解消法3.発達障害者支援法障害者雇用促進法では、36条に障害者差別の禁止が規定されています。障害者の雇用の促進等に関する法律それに拠れば、「事業主は障害者である労働者に対して、配慮することが必要」という旨が書かれています。しかし、合理的配慮の提供は義務付けられているものの、障害者雇用促進法に違反していても罰則は無いという法律の抜け道が用意されています。現在、発達障害のある人は、手帳を持っていなくても医師の診断書などで障害があることが分かっていれば、上記の法律の対象者にはなります。しかし現状、発達障害者は、障害者であると定義されていながら、手帳を持っていない場合、法定雇用率にカウントされません。つまり、手帳を持っていない発達障害者は、単に法定雇用率をクリアしようとする企業によっては、雇用するメリットがない人材と言えてしまうのです。この退職勧奨があった当時、私は、精神障害者手帳を取得していませんでした。訴訟も視野に入れたが、証拠が無かった......出典 : 私は法律にはついては、何も知らなかったので法テラスという場所の無料法律相談を利用しました。法テラスとは経済的な困難を抱えている人が不利益を被ることがないように設けられており、通常弁護士に相談すると1時間4000円程度かかるところを、無料で相談することが出来ます。そこで相談をすることで、法的な自分の状況がのみ込めてきました。退職のきっかけとなった面談時、会社側は人事部の社員を書記につけていましたが、私にはそこでどのような会話があったかを証明する証拠がありませんでした。訴えを起こそうにも、強制的に退職を迫られたという証拠が自分の側になく、会社側に都合の良い解釈が出来る証拠がたくさん残っていたのです。また、退職届けを自ら書いてしまったことが痛手となりました。一度、退職することに同意をしてしまうと、会社側としては、労働者から退職したいとの申し出があり、会社としては、それを受理したまでという主張が通ってしまいます。また私は、今回、会社の所在地を管轄する労働基準監督署にも行きましたが、労働基準監督署は、労働基準法に違反するかどうかをチェックする公的機関のため、相手にしてもらえませんでした。やきもきしている私に弁護士が勧めてくれたのが、労働局の個別労働紛争解決の制度を利用することでした。労働局の調停(個別労働紛争解決制度)とは?出典 : 労働局の個別労働紛争解決の手段として、あっせんと、調停の2つがあります。どちらも無料で活用できる紛争解決の手段です。今回、利用したのは後者の調停です。調停は障害者差別により不利益が生じたと主張する労働者と、会社間の紛争を解決するために行われます。労働相談における紛争調整委員会によるあっせん | 福岡労働局調停は、民事裁判とは性格が異なります。労働者と会社の双方から言い分を訊き、1日で審理が終わります。所要時間は申し出から平均で3ヶ月と、一般的な裁判と比べると短期間で済ませることが出来ます。そして労働者自らが無料で申請することが出来る制度です。また障害者自身が申請書を1人で書きあげることが難しい場合は、代理人が当事者の承諾を得て申請することも出来ます。調停が成立した場合、そこでの決定は民事裁判と同等の効力を持ちます。しかし、裁判のように参加の法的な拘束力がありません。自由参加だということです。また調停は、非公開で行われます。つまり調停の過程や結果については公表してはならないのです。私も調停の申し出を行いましたが、その結果をここに書くことはできません。退職してからというものの......出典 : 僕にとって、辛かったのは「自分が発達障害であるという事実」と会社が自主退職をするように暗に示してきたことの2つがほぼ同時期に起こったことでした。まさに泣きっ面に蜂のような状況。そのため退職してからは、気分が落ち込み、やり場のない怒りや苦しみを両親にぶつける日々が続きました。うつ病とまではいかないものの、抑うつ状態にもなり、心身ともに辛い日々となったのです。また、私はアスペルガー症候群の症状がADHDよりも強く出ており、視覚優位なタイプでもあります。そのため、目で見て、モノを考えるタイプであると同時に、目で見てモノを思い出すタイプでもあります。その企業のコーポレートカラーや、上司の名前、その企業の商品など、色々な刺激を見たり、聞いたりすることで頻繁にフラッシュバックが起こりました。フラッシュバックの辛さを言葉で説明することは難しいのですが、まるで、その場にいるときと同じように、その当時の感情を思い出してしまうのです。また、切り替えが苦手で、マルチタスクが苦手なため、怒りを感じたときはそのことしか考えられなくなり、感情に長く翻弄されてしまうのです。悔しくて堪らなかった。見かねた父が私に掛けてくれた言葉出典 : 上述したように私は、退職してからずっとその企業の行ったことが許せませんでした。やがて、証拠がなく裁判をして白黒をつけたいと考えるようになった私に、父がかけてくれた一言があります。「過去に囚われて、苦しむお前を見たくない。俺が見たいのは、お前の笑顔だ。嬉しそうに笑うお前を取り戻して欲しい。ただ、笑ってくれていれば、それでいいんだ。仮に裁判をしても、思うような結果は得られない。お前も分かっているはずだ、証拠が無いと。つらいことは忘れられなくても仕方がない。それでも視点を変えれば、見えてくるモノも自ずと変わってくる。早くお前に笑顔が戻ればいいなと思っている」この言葉を聞いたとき、感動して涙が出たことを今もちゃんと覚えています。そしてこの父の言葉が一つのきっかけとなり、前を向いて歩きだす機会になりました。自分を責め続けていた私を救った言葉とは?出典 : 父の言葉だけでなく、カウンセラーの方がかけてくれた言葉にも救われることになります。辛い過去を忘れることができずにいるとき、カウンセラーの方が、こう声をかけてくれました。「許さなくてもいい、許せない自分がいてもいい。」このたった一言が怒りに苛まれる心を楽にしてくれました。日々感じていた怒りの感情の認知を、カウンセリングなどで丁寧に取り除くことに時間をかけ、今現在は怒りの感情に支配されることもなく落ち着いて過ごすことができるようになりました。自分の生い立ちを振り返って出典 : 今振り返ってみると、私は、障害のことを10年くらい前に分かっていたら良かったなぁと考えています。今現在26歳なので、中学生とか高校生くらいのときにあたるでしょうか?たとえ、自分に障害があることを知らなくても、人と上手くなじめない感覚や、ほかの人と自分は何かが違うという違和感を幼い頃から感じながら生きています。だから、自分自身に発達障害があるともっと早く知っていれば、その違和感にも納得することができたし、障害特性を理解して、自分に合った道を選ぶこともできたはずです。また、障害の受容に関しては、信頼できる第三者の大人の存在がとても重要だと考えています。障害を受け入れることが出来なかった頃、両親の声はなかなか届かなかったからです。私の場合は、カウンセラーの方だったのですが、小学生や中学生のお子さんであれば、小学校の先生などが信頼できる大人にあたるでしょうか。そうした関係づくりが後々役に立つのではないかと思いました。私の経験から皆さんに伝えたいこと出典 : これまでのことを振り返ると、職場にはカミングアウトしないことも選択肢の一つだと思います。また個人的な見解ですが、私のように途中でカミングアウトをした場合、周囲からは後出しジャンケンをしたような目で見られます。また入社前に障害の有無を伝えていない場合、障害により生じた人間関係の不和はカミングアウトをしたからといって埋まらないような気がするのです。私は、今現在、この反省を活かし障害者雇用で配慮を得られる企業を探しています。私が使用しているナビゲーションブックを公開します。企業へのカミングアウトを考えている方は、参考にしてみてください。この記事が一人でも読者の皆さんの参考になれば、これほど嬉しいことはありません。Upload By ツーちゃん
2017年08月28日10月13日(金)に東京・サントリーホールにて「独奏35周年メモリアル・コンサート あしたの太鼓打ちへ」のステージに立つ林英哲。太鼓奏者としての新たな門出を迎えるにあたって、林はソロ活動を開始した1982年当時を振り返り、その足跡を懐かしく紹介しつつ、ピアニストの新垣隆をゲストに迎えて行う今回のコンサートについて語った。【チケット情報はこちら】創設に携わった「鼓童」をはじめ、アンサンブルでの演奏が一般的だった当時の和太鼓。前例のなかった独奏にひとり立ち向かった過去を、林は「チャレンジのしがいがあると思いました」と力強く振り返る。和太鼓を伝統工芸の世界になぞらえ、「古来の技術を活用ながら、現代社会に受け入れられる新作をつくるのと一緒。和太鼓を使って、新しい音楽も可能だということを示してみたかった」とも。たったひとりで2時間近く観客を魅了し続けるには、大音量で打ち鳴らす必要があったのでは? という問いかけには、手のひらを広げた。激しい練習の勲章をイメージさせる“マメ”が見当たらない。感心の言葉を伝えると、林は笑って「手抜きを覚えただけ」と謙遜。「若い時はパワフルさを見せないと、観客の方がついてこないような気がして。でも今は演奏の幅が広がったことでペース配分がうまくいき、無駄な力を使わずに済むようになりました」と柔らかな手のひらの秘密を明かした。ソロプレイヤーとしての新たな試みは、演奏技術やスタイルだけではなかった。和太鼓の演奏に、動きやパフォーマンス、照明デザイン(海藤春樹)といった、全体としての“魅せる” 舞台の要素を加えたのもそのひとつ。特に「打ち手の全身を見せる、というのは僕が特化してやったこと」と紹介する。やがて林の思いに共鳴する若手ユニット「英哲風雲の会」を率いることになり、演出・振付・作曲を手がけるように。今では国境や音楽ジャンルの垣根を超えた活躍を果たし、その功績を認められ、今年3月には松尾芸能賞の大賞にも選ばれた。今回のコンサートについて、林は「僕がひとりでやる曲と、ゲストを迎えて演奏する曲、若手(英哲風雲の会)を交えた曲の3種類を聞いていただく会にしようと思っています」とその構想を語る。ゲストの新垣とは、2016年にNBAバレエ団の新作プログラムに採用された『死と乙女』を披露。英哲風雲の会メンバーとは、林が現代音楽に取り組むきっかけとなった、石井眞木作曲の「モノクローム」を演奏する。ラストは林が作曲した『七星』を披露する。「全員で“これぞ太鼓!”って曲をやります。響きの良いサントリーホールの中で、他で体験できないような音の体験をしていただけたら」と語り、インタビューの時間を結んだ。チケット発売中。またコンサート会場では、25年前、未来の太鼓打ちに向けての“英哲メソッド”を記した名著『あしたの太鼓打ちへ』の増補新装版(自筆画や秘蔵写真、この25年間のエッセイや書き下ろし原稿も収録)も先行販売される。取材・文:岡山朋代
2017年08月22日NHK「あさイチ」シリーズ発達障害“ほかの子と違う?”子育ての悩みNHKが1年を通してさまざまな番組で、発達障害の多様な姿を伝えていく「発達障害プロジェクト」7/24(月)にも「あさイチ」で特集が放送されました。今回のテーマは、「“ほかの子と違う?”子育ての悩み」朝の番組で、発達障害のある子どもの子育てを取り扱ったことから、特に保護者の方々の視聴・感想が多かった様子です。発達ナビ編集部でもTwitterで番組の内容を実況し、視聴していた方々の感想もまとめました。以下の、Twitter「モーメント」機能によるまとめをご覧ください。「あさイチ」シリーズ発達障害“ほかの子と違う?”子育ての悩みワガママと発達障害の境界線は…?番組で投げかけられた問いと、視聴者の声今回の番組では、発達障害のある小学生の子どもが二人いるご家庭が取材されました。小学6年生の女の子が、学校から帰って来た場面。直前までお友達とおしゃべりしていた内容が心に残って、なかなか気持ちや行動の切り替えをすることができない、結果、宿題を始めるまでに50分もかかったという様子が映されます。お子さんの発達に違和感を感じたのは3歳児の頃。癇癪が激しく周囲に相談したが、その時は周囲から「大丈夫だよ」と言われるだけで、お母さんはギャップに苦しんだそうです。その後4歳児になったとき病院を受診、発達障害と診断されました。お子さんが「宿題をなかなかやろうとしない」「学校に行きたがらない」といった状況や悩み自体は、子育てしているご家庭なら大抵、一度は直面することかもしれません。ですが、発達障害のあるお子さんの場合、気持ちや行動の切り替えの難しさ、困りごとが起こる頻度や程度には大きな差があり、なかなか簡単には困りごとは解消されません。番組で映されるお子さんとお母さんのやり取りから、診断されてから今に至るまでの日々、積み重ねて来た工夫や理解、お子さんの成長の足跡も感じられます。それでもやはり、思うようにいかなくて、パニックや癇癪を起こしてしまうこともある。同じく発達障害のあるお子さんを育てる保護者の方や、ご自身も幼少期に似たような状態になっていたと語る、成人の発達障害当事者の方など、視聴者の方々から共感の声が寄せられていました。一方、スタジオゲストの方からは、「これが単なるワガママなのか、発達障害によるものなのか、わからない」という意見も出てきました。ワガママと障害はどう違うのか。そんな疑問に対して、Twitter上でも視聴者のさまざまな声が寄せられます。番組中でも、一見して誰にでも起こるような困りごとでも、発達障害の場合は、生活に支障がでるぐらい、程度や頻度が大きいという説明がなされていました。ですが、程度や頻度は違えど、起こっている症状や困りごと自体は、どんな子どもにも見られうるものであるゆえに、周囲の人からすると一見してその違いはわかりにくいのでしょう。どこまでがワガママで、どこからが障害なのか…発達障害が身近でない人からそのような疑問が呈されること自体は、無理もないことかもしれません。また、性質や程度の違うさまざまな凸凹のある人々が、連続体(スペクトラム)のように存在していると言われる発達障害それ自体の特性からも、明確な線引きをすることは非常に難しいと言えます。目に見えにくい、わかりにくい障害としての発達障害の性質を示すようなエピソードだったように思います。こうしたジレンマに対して、具体的にはどのように対処すれば良いのか。番組のゲストコメンテーターとして出演された、鳥取大学大学院の井上雅彦教授のコメントがヒントとなります。わがままと障害の線引きはどこかと線引きすることは、厳密には難しい。それよりも大切なのは、周りがどういう風に対応して工夫すれば本人が頑張れるようになるのか、という観点だと井上先生は語ります。線引きをすること自体を目的としても、議論にキリをつけることは難しいですが、その子が何に困っていて、周囲の人たちには何ができるのかと、個別具体的な対応・行動をベースに考えることができれば、発達障害かどうかに関わらず、どんな子どもにとっても有効な困りごと解決のアプローチが見つけられるはずです。番組の後半には、下のような声も寄せられました。どんな状況であれ、お子さんも、親御さんも、それぞれのありのままを受け止めて認めて合うことを願う声です。あさイチ出演、古山さんより保護者の方々へのメッセージ最後に、今回の番組のVTRに出演された古山さんからのメッセージをご紹介します。番組終了後、発達ナビ編集部宛にご連絡をいただき、いま、子育てに頑張っている保護者の方々へ伝えたい思いを語ってくださいました。Upload By 発達ナビ編集部「7月24日のあさイチで取り上げて受けていただいた、古山です観ていただいた皆様、本当に本当にありがとうございます井上先生はじめ、スタジオの皆様が沢山協力して下さり、短い時間でしたが、濃い内容になっていたと思います放送後も沢山の反響をいただき驚いています発達障害の子育てをしているママの沢山の方が涙を流しながら共感してくださったメッセージをいただき、勇気を出して良かったと思っています我が子の姿をさらけ出すことに抵抗がなかったわけではありませんその中で取材を受けた理由は、育児に悩んでいるママに伝えたい想いがあったからです毎日毎日、育児に行き詰まり悩んでいるかもしれません発達障害の子育ては育児上級者コースを受講しちゃったと私は捉えていますだから、もう、毎日100点は目指さないでください今日が20点だった日も落ち込んだり自分を責めたりしないで20点だったなら次の日60点以上を目指せばいい一週間で平均60点取れたら、花マルだから、40点が続いたらお休みの日に80点目指せばいいんですそれだって、1人で頑張らないで家族総出でかき集めたっていいんですあ、失敗した、言いすぎたって時は、素直に謝っちゃえばいいんですママが悪かったです、言い直すからさっきの言葉、消しゴムで消して欲しいっていま、悩んでいるママたち毎日、育児に奮闘していると一人で闘っている気持ちになるかもしれません誰にもカミングアウト出来ず誰にも共感してもらえず苦しくて寂しくて辛い毎日を過ごしているかもしれません私もそんな風な光の見えないトンネルの中にいた経験がありますでも少し勇気を出して周りを見てみてくださいあなたには必ず味方がいるはずですあなたは毎日毎日、子供に向き合い悩みながら色々なことを選択していることでしょうもしかしたら世間一般的には間違いかもしれない選択をしていることもあるかもしれません私自身が、子供達に学校以外の場所に行かせることを決めたように…でもあなたが真剣に子供達の幸せを想いながら出した選択ならたとえ、間違いかもしれない選択だとしてもあなたの決めたことなら応援してくれる人がいるはずです私にとっての実母のように味方がいればたとえ一緒に生活していなくても頑張れるチカラになります勇気を出してみてくださいまたもしも味方がみつからなくても覚えていてくださいあなたが真剣に子供達と向き合い孤独と闘いながら子育てしているとき同じ空の下で私も同じように過ごしていますあなたが今日も上手く対応してやれなかったと子供達の寝顔を見ながら涙しているとき同じ空の下で私も同じように涙していますあなたが真剣に子供達の幸せを想いながら頑張っているなら私はあなたの味方ですあなたは一人ではありませんつらいときくるしいとき良かったら私を思い出してくださいあなたとお子様達の幸せを心から願っています」
2017年08月07日先日、NHK 「あさイチ」 で「発達障害の子育て」についての特集が放送された。番組に出演した古山さん一家は、小6の長女と小3の長男が共に発達障害と診断されている。元気にあいさつしてリポーターを出迎える2人の姿は、障害があるとは思えないほどだが、3日間生活に密着しているうちに、「あれ?」と思うことが見えてくる。古山家のお母さんは、子どもとのコミュニケーションに、言葉ではなく筆談でそっと気持ちを伝えたり、タイマーを使って時間をわかりやすく提示するなど、随所に工夫を凝らしていた。また、お母さんは「長女の子育てに悩んだ末、4歳の時に1人で決めて1人で病院に行った」「旦那は診断を受け入れられず、障害者のレッテルを張ったのは私なのか? と悩んだ」とのこと。それから6年、今も整理できない気持ちを抱えながら、夫婦で手探りの子育てが続いているという。じつは筆者にも、8歳になる娘(定型発達)と4歳の息子(自閉症スペクトラム)がいる。決して感情的にならず、子どもの気持ちを受け止めて待つという古山家のお母さんの姿は、とても学ぶところが多かった。■子どもが発達障害と診断。その時、夫は……?しかし、今回の番組を見ていて私が一番気になったのは、子どもでもお母さんでもない。それは、お父さんの存在だ。当事者として出てくるのはほとんどがお母さんで、お母さんの話を通してからも、お父さんの存在があまり見えてこなかったのが気にかかった。個人的には「夫婦や家庭内の葛藤をもっと掘り下げて聞きたい!」と感じた。今回は放送時間の都合上、残念ながら「お父さんの存在」にはあまりフォーカスされていなかったようだ。次回以降のNHK「あさイチ」特集を含む、 NHK「発達障害」プロジェクト で、このテーマが深堀りされることを期待したい。「お父さんの存在」という問題。じつはこれ、療育ママの間では、よく聞く話である。「夫が子どもの障害を認めてくれない」「旦那が『就学先は絶対普通級』と言っている」「旦那が、幼稚園での発表会の様子を見てショックを受けちゃった…」などなど。他に、義理両親や自分の両親から理解してもらえないという話も時々聞く。「義理母に、あなたがちゃんと躾ければなおると言われた」「母親に、『あなたは甘やかしすぎ。このままじゃわがままな子になる』と注意された」などなど。こういう発言にはイラッとくるけれど、百歩譲って、祖父母世代に発達障害の理解は難しいのかもしれない。自分たちが子育てしていた頃には、きっと聞いたことのない話だろう。でも、同居していたらちょっとキツイ問題だけど、別々に住んでいるならうまくわかすこともできるし、子育てにそれほど強い影響もないはずだ。だが、夫の場合はそうはいかない。夫がきちんと向き合ってくれなければ、お母さんのストレスは2倍、いや数倍にも膨れ上がる。日々の小さなことまでフォローする必要はないと思うが、「ここぞ!」という時には、真剣に向き合ってほしい。意見が衝突することもあるかもしれないが、いざという時に一緒に本気で問題に取り組んでくれる同士(夫)がいると感じられれば、それは、お母さんにとって何よりも大きな心の支えになるはずだ。 ■他の子と比べすぎるお母さんと、比べすぎないお父さんまた、一般的に、子育てはお母さんが主役になることが多いので、同世代の友達と関わることも増えるが、お父さんは集団でのわが子の姿を見る機会がほとんどない。なので、年相応の発達状態を把握しにくく、「男の子なんてこんなもんじゃない?」とか「俺も子どもの頃そうだったよ」などと問題を見逃しがちな面がある。でも、これって悪い面もある反面、意外と良い面もあると思うのだ。わが家の場合は、私が他の子と比べてばかりいて、「普通」であることに縛られ、ふさぎ込んでしまっていた時期があった。だが、夫は、他の子と比べることは一切しなかった。「他の子と同じである必要はまったくない」、「比べることには何の意味もない。もし比べるなら、『他の子と』じゃなく『過去の息子と』」「『普通』の定義って何?」と、落ち込んでいる私を容赦なく詰めて(励まして?)くれたものだ。そんな夫に、「あなたは他の子のことを全然知らないからそんなに呑気なの!」と噛みついたこともあった。だが、文句を言いつつも、わが子のことだけをしっかり考えるという夫のブレない姿勢は、どこかで、とても心強い支えになっていたのだ。また、夫と私では子どもについての見方も全然違ったので、多面的に話し合えることもありがたいことだった。お父さんというポジションは、お母さんより、子育てを冷静かつ客観的に見られる位置にいると思う。お父さんには、ぜひそういう強みも活かしてほしいのだ。■「わがまま」と障害の線引きは?最後に、番組を見ていて、もう一つ気になったことがある。「わがまま」と障害の線引きは? ということだ。番組に出演した古山家のお父さんも、「どこまでが発達障害の特性なのか個性なのか切り分けが難しい」と葛藤していたし、スタジオの出演者たちもそのことについては判断つかないようだった。このことは、私も、よく健常児のママから聞かれるのだが、私も答えがわからずに困っている。専門家の井上雅彦さんも、「(線引きは)厳密には難しい」と言っていたので、かなり悩ましいテーマなのだろう。ただ、重要なのは、障害との線引きにこだわることではなく、「どう工夫すれば(生きにくさを感じている)子どもたちの努力が報われるか?周りがどう対応するか?ということの方に目を向けるべき」(井上雅彦さんコメント)とのこと。そう、私たちの目的は、子どもをカテゴリ分けしたり、レッテルを張ることではない。困っている子どもたちが、いかに生きやすくなるかを考えぬくことなのだ。まちとこ出版社N【発達障害についての記事一覧】▼大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)▼「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年08月01日7月24日(月)、NHK 「あさイチ」 では、子どもの発達障害についての特集が放送される。「あさイチ」からの事前情報によると、「これまで番組に寄せられたメールやファックスの中でも特に多かった、発達障害の子どもを持つ親の悩みに徹底的に向き合う」とのこと。じつは筆者にも、8歳になる娘(定型発達)と4歳の息子(自閉症スペクトラム)がいる。5月の NHKスペシャルの放送 から、ぜひ次回は、発達障害の子どもや子育て中の親にフォーカスした企画を! と思っていたので放送が楽しみだ。■当事者が語る、発達障害の子育てのリアル今回の放送では、3人(うち2人が発達障害)の子育て真っ最中の家庭を訪問し、発達障害の子育ての大変さや、それに対してどう向き合い、対応しているのかを伺っていくのだそう。子どもが診断された時の気持ちや、夫や祖父母、周囲の反応、子どもの将来への不安など、様々な角度から、当事者たちに発達障害の子育てをリアルに語ってもらうそうだ。さらに、番組では、ペアレントメンターなどの親を支援する仕組みなど、当事者の親に役立つ情報も紹介する予定だという。■娘とは桁違いの大変さだった、息子の子育て筆者のケースをお話しよう。定型発達児(娘)と発達障害児(息子)の両者を育ててみて思ったが、その子育ての大変さは、まさに桁違いだった。もちろん娘だって、成長の過程では、当然大変なこともあった。イライラして頭が沸騰しそうになったことだって、多々ある。でも、娘の怒りや泣きのツボはだいたい理解できたし、コミュニケーションもしっかり通じたので、私の理解の範囲内で対処することができた。ところが、息子の場合はまったく違った。指示が通らない。言葉の説明を理解してくれない。急に走り出したと思ったら、今度はテコでも動かないなど、動きが読めない。保育園ではイベント事が大の苦手で、隙あらば逃走。歯磨きやお医者さんの診察では毎回大暴れ…。何より困ったのは、コミュニケーションが通じないこと。変な言い方だが、言語も思考も違う異星人を相手にしているようで、本当にお手上げ状態であった(4歳過ぎた今では、ずいぶんマシになってくれたが)。■3歳で確定。「だから大変って言ったじゃん!」周囲に相談しても、「男の子なんてそんなもの」「上が女の子で楽だったんだよ~」などと言われ、なかなか理解してもらえなかった。だから、3歳で息子が自閉症スペクトラムと診断された時は、もちろんショックではあったが、同時に、「だから大変って言ったじゃん!」と、周囲にちょっと毒づきたいような気持ちも生まれた。今思うと、周囲は私が思い詰めないように、気を使ってくれていただけだろうに…。不健康な考え方に陥っていた当時は、ひねくれたとらえ方しかできなかった。 ■周囲にガードを張っていのは、私の方?息子は1歳半検診から疑いをかけられていたので、宙ぶらりんの期間が長かった分、私にとって診断は、腹をくくる良いきっかけになった。その頃には、この障害についてしっかり勉強して、一生向き合っていこう! という覚悟もできた。また、さまざまな専門書を読んで勉強するうちに、息子の特徴や対処法が少しずつわかるようになり、突飛な行動にも笑えるような余裕も出てきた。周囲にも、息子のことを説明しやすくなった。仲の良い園ママにはすでに話していたが、診断がおりるまでは、息子のことをクラス全体にどう説明したらいいのかわからなかった。保護者会で息子のことを説明した時はちょっと緊張したが、幸い、クラスのママたちからの理解も得られ、温かい言葉もかけてもらった。私の方も、長年抱えた秘密(?)をやっと言えたような気がしてとてもスッキリした。それまでは、保育園のイベントで息子が突飛な行動をするたびに、「他のお母さんにどう思われてるんだろう…」とビクビクしたり。お迎え時、他の子がお母さんと楽しそうにおしゃべりする姿を見るのが辛くて、園から逃げるように帰ったり。そんな日々の連続だった。だが、今にして思うと、周囲に対して変にガードを張っていたのは私の方で、私は、勝手に傷ついていただけだったのかもしれない。■自分の物差しだけに縛られない。意識して視野を広げることこうして振り返ってみると、一番辛かったのは、息子のことを周囲に話せず、ひとりで抱え込んでいた時期だった。そんな状況を変えてくれたのは、オープンにしたことと、やはり人との関わりであった。家族や両祖父母、療育の先生、取材で会った方々、そして、同じ悩みを持つお母さん仲間と繋がれたことはとても大きかった。発達障害の子育ては、子どもに手がかかる分、心も生活も余裕をなくし、周囲が見えにくくなってしまう。自分の偏った考えだけに浸食されて、それがすべてのように感じてしまいがちだ。でも、自分の物差しだけがすべて、なんてことは決してない。物事は、捉えようによって、どうにでも変わるし、世の中には変わった人(?)がいっぱいいて、いろんな考え方がある。発達障害の子育て中は、特に、自分とは違った考えを持つ人に会ったり、新しい考え方を学んだり、自分の視野を広げるという気持ちを、常に意識してもち続けた方が良いと思うのだ。今回の特集に関して、担当ディレクターからは「外からは『見えにくい障害』と言われる発達障害の子育ての苦労や、当事者のリアルな姿や声を伝えることで、少しでも誤解を解いていきたい」という、力強いメッセージをいただいた。また何か新しい発見があるかもしれないと、私も放送を心待ちにしている。・NHK「あさイチ」 シリーズ発達障害 「“ほかの子と違う?”子育ての悩み」 2017年7月24日(月)放送予定 ※内容は変更になる場合があります文:まちとこ出版社N【発達障害についての連載一覧】大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年07月21日「知的障害者施設」とはどんな施設?受けられる支援・サービスはどんなものがあるの?出典 : 知的障害のある人を対象とした施設を指す言葉として、「知的障害者施設」という一般名詞がしばしば使われていますが、実は現在、法律や制度上では「知的障害者施設」という公的施設は存在しません。そのため「知的障害者施設」と聞いて、思い浮かべるイメージは人によってばらつきがあります。障害者施設は大きく「通所支援」と「入所支援」の2つに分けられます。前者は、施設に通いながら支援やサービスを受ける施設と、後者は、施設への一定期間の滞在が必要な施設です。また、一つの施設で複数の施設の機能を兼ねている場合もあります。この記事では、知的障害のある方が利用できる施設にはどんなものがあるのか、それぞれの施設で受けられる支援やサービスをご紹介します。まずは、国で障害者に対する支援を定めている法律とのつながりをご紹介します。「障害者総合支援法」の前身である「障害者自立支援法」の施行により、福祉サービスの内容や名称が変わりました。それまでは、障害の種類(身体障害、知的障害、精神障害)ごとに行われていた福祉サービスがひとつの福祉サービスに統一されたのです。現在では、知的障害のある方のみのための施設というものがあるわけではなく、障害者総合支援法で定められている「障害者」の方々のための施設とサービスが運用されています。これらの法律の改正により障害者施設の名称も変更になりましたが、以前からの名称を変更せずに「知的障害者」を施設名に使用している場合もあります。それぞれの施設で受けられるサービスの内容は、障害者総合支援法によって決められています。福祉サービスの詳細や手続きについては以下の記事をご覧ください。また、18歳未満の障害者児童を対象にした支援は児童福祉法によって定められています。児童福祉法では、障害のある子どもたちの健やかな発育を支えるためにさまざまな支援が定められています。どのような施設でどのような福祉サービスが受けられるのか、具体的にご紹介します。子どもを対象とする知的障害者施設出典 : ・児童発達支援センター/児童発達支援事業所主に未就学の障害のある子どもの発達や生活自立などを支援します。ソーシャルスキルトレーニングなどの療育を行う施設や、保育園や幼稚園のように遊びや学びの場としての機能のある施設もあります。お住まいの自治体によっても異なりますが、施設を利用できる条件に障害者手帳の有無は関係ない場合もあります。・放課後等デイサービス放課後等デイサービスとは、児童福祉法の中で定められている障害児通所支援のひとつです。種類は以下の2種類があります。小学生から高校生の就学児童が基本的な対象ですが、支援が継続して必要だと認められた場合は、20歳まで利用することができます。1.学習塾タイプ・・・学習面での支援を中心に行っている事業所もあります。2.預かりタイプ・・・学童保育のように、放課後の子どもに安心して楽しく過ごせる居場所を提供します。最近では、学習支援だけではなく、日常生活で必要になるソーシャルスキルなどを教える施設も増えてきました。放課後等デイサービスの中でも、実際に提供しているサービス内容に差がある場合もあります。お子さんが実際に通うかどうかを検討する際には、ぜひ一緒に施設に足を運んで、子どもの特性に合う施設かどうかを検討しましょう。さまざまな理由で保護が必要な障害児や、日常生活に関する障害児を対象に生活支援を行う施設が障害児入所施設です。知的障害に限らず、身体障害・精神障害・発達障害のある児童が対象になっています。さらに、この対象児童に手帳の有無は関係なく、児童相談所、医師等により療育の必要性が認められた児童が対象になります。障害者児入所施設には、医療型と福祉型の2種類があります。福祉型の施設では、保護、日常生活の指導、知識技能の付与に関する支援が受けることができ、医療型になるとそれらに、医師による治療が加わります。障害児支援について | 厚生労働省障害児入所支援 | 厚生労働省大人を対象とする知的障害者施設出典 : 大人を対象としている知的障害者施設で受けられる支援やサービスは大きく分けて2つです。1つ目は、食事や生活も含め自立した日常生活を送るために必要な訓練をうけることができる「訓練等給付」です。2つ目は施設に入所した際に主に夜間などに日常生活に関する支援や緊急の対応が必要になった場合に対応してもらえる「介護給付」があります。上記の2つの障害者福祉サービスのほかに、市町村にて障害者の方々の生活を支援・サポートを行う事業として、「地域生活支援事業」があります。この事業によって運営されている施設もあり、施設の名称や種類はさまざまです。いくつかのお支援やサービスを同じ施設は多機能型事業所と呼ばれています。施設名称から支援やサービスを判断することは難しいので、現在、自分に必要な支援やサービスを知ることが施設選びには重要になります。参考:厚生労働省サービスの体系・自立訓練(1)生活訓練障害者支援施設もしくは障害福祉サービス事業所などと呼ばれる施設で受けられる支援になります。入所施設を退所された方や、特別支援学校を卒業した方、継続した通所によって生活能力の向上のための支援が必要な方が対象になります。働くための第一歩をこのサービスで受けることが多いようです。簡単な作業やソーシャルスキルの練習などがあります。さらには、「自分らしい生活」を考えるためにヨガやダンスなどのプログラムを提供している施設もあります。自分にあった施設を選ぶことで、本人の自立につながるよりよい支援を受けることにつながります。(2)機能訓練知的障害と身体障害を合併している場合、リハビリなどの支援を受けることができます。それらの理学療法を含みながら本人の自立訓練を行うときには、この機能訓練を利用します。自宅で受けられる訪問サービスもあるので自身の症状にあわせてサービスを選ぶことができます。・地域活動支援センター職業訓練と地域との交流をメインとした施設がこの地域活動センターです。芸術品の作成などの文化的な創造活動などを行っている施設も多くあります。先ほど紹介した自立訓練や下記で紹介する就労支援を目的としているわけでなく、あくまでも相談支援やコミュニケーション活動を目的とした施設になります。・通所型生活介護自宅から通い、日中の入浴・排せつ・食事などの介護といった必要な日常生活上の支援や、創作的活動・生産活動の機会の提供のほか、身体機能や生活能力の向上のために必要な援助を行います。安定した生活を送るため、常時介護などの支援が必要な方を対象としており、障害支援区分が区分3以上(年齢が50歳以上の場合は、障害支援区分が区分2以上)に該当する場合利用できます。・日中一時支援普段、支援やサポートをしている方が何らかの理由で介助を行えなくなった場合に、一時的に預かってくれる支援があります。日中の時間を対象に行っているサービスです。年齢制限もなく、18歳以上でも利用することができます。詳しい受け入れ先の施設に関しては各市町村の窓口にお問い合わせください。参考:厚生労働省地域活動支援センターの概要参考:日中一時支援事業と児童デイサービス|厚生労働省・宿泊型自立訓練宿泊型自立訓練事業所は、障害者総合支援法に定められた自立訓練(生活訓練)の対象者のうち、日中、一般就労やほかの障害福祉サービスを利用している人を対象に、夜間の居住場所を提供します。この中には同じ敷地内の日中活動サービスを利用している人も含まれます。地域での自立した生活を目標に、食事や家事等の日常生活能力を向上するための訓練や、 日常生活に関する相談支援などを受けることができます。日中のサービスと併用すれば、昼夜を通して、自立に必要なさまざまなサポートを受けることができます。利用者ごとに、標準利用期間が決められていて、原則2年間(長期入院者等の場合は3年間)とされています。お住まいの市町村で利用者の現状に合わせて、施設の利用継続が可能かどうかが決められるので更新が必要になります。詳しくはお住まいの市町村の障害者福祉課などの窓口にお問い合わせください。・共同生活援助(グループホーム)日常生活に関する支援や訓練ではなく、入浴・食事などの介護や家事をしてもらいながら生活していく施設としてグループホームがあります。日中は地域の生活介護事業所を利用したり就労したりしながら、主に夜間の生活介護を受け、グループホームで暮らす人が多いようです。宿泊型自立訓練事業所と同じように、お住まいの市町村の障害者福祉課などの窓口にお問い合わせください。・施設入所支援主に夜間の生活介護の支援を行います。暮らしの場の提供、入浴、排せつ、食事、着替えなどの介助、食事の提供、生活等に関する相談、助言、健康管理などを行います。障害者総合支援法では日中の生活介護と別のサービスですが、同じ施設で生活介護、自立訓練または就労移行支援の対象者に対し、日中活動とあわせて、一体的に夜間のサービスを行う事業所が多いようです。・短期入所日中一時支援では日中のみでしたが、短期入所の場合は夜間でも必要な支援や介護を受けることができます。介護者の休息にもなる一面もあるので、様々な事情を踏まえた上で一度短期入所を利用することも可能です。参考:地域相談支援(地域移行支援・地域定着支援)の利用者数実績等 | 厚生労働省知的障害の方が受けられる仕事に関する支援には、本人の特性を生かすために職場に近い環境で自立訓練などを行ったり、職場を見つけ働き始めてからも周りの方からの理解を得るための支援が含まれています。就労支援の対象者は障害のある65歳未満の方で、就労を希望されている方になります。「障害者総合支援法」における就労支援は大きく分けて就労継続と就労移行の2つがあります。働くために必要な知識や能力を養ったり職場体験を行うのが就労移行支援です。就労移行支援を利用したけれども就労に繋がらなかった場合は、就労継続支援サービスを利用することによって、福祉事業所で仕事をすることができます。・就労移行支援事業所就労移行支援の利用者は、就労移行支援事業所に通所してサービスを利用します。そこでは、スタッフとともに個別の支援計画を作成し、働くために必要な知識・能力を身につけるトレーニングや、その人に合った職場探しのサポート、就労後の職場定着までのアフターケアなどを受けることができます。詳しくは以下の記事をご参照ください。・就労継続支援A型/B型事業就労継続支援A型とは支援を受けながら、施設と利用者で雇用契約を福祉作業所と結び働くことを指します。就労継続支援B型は、就労移行支援や就労継続支援A型の利用経験をした上で、年齢や体力の面で雇用が困難な方を対象としたサービスです。施設との雇用契約は結びませんが、生産性にこだわらず自分のペースで働くことができます。サービスの体系|厚生労働省それぞれの「知的障害者施設」に関する申請方法出典 : すべての施設において、市区町村に申請を行うことが必要です。受けたい支援に関する相談や申請に関する相談などを行える窓口として「障害者相談支援センター」が設置されている市区町村もあります。相談者の悩みに応じて支援計画を考えてもらうこともできるので、一人で悩まずに専門家に相談しましょう。障害者児対象の施設は以下の記事をご参照ください。その他の施設は障害者福祉サービスに含まれますので以下の記事をご参照ください。それぞれの「知的障害者施設」にかかる費用出典 : これまで紹介してきた施設は一定の金額を負担すれば、すべての必要な支援を受けることができます。年収によって負担する額は決められています。グループホームなどの特定の施設を利用する場合には負担額が変更になる場合もあるので、自身が利用したい施設とサービスにかかる費用をそれぞれの市町村の窓口で確認することをおすすめします。障害者の利用者負担|厚生労働省障害者福祉:障害児の利用者負担|厚生労働省まとめ出典 : 法律の改正によって変更された施設の名称が、世間一般には浸透していないことも多く、施設の名前から利用できるサービスを想像することが難しいこともあります。子どもの成長に合わせて、利用できる施設も変わりますし、必要になるサービスも変わっていきます。本人に必要な支援は医師からの診断などで知ることができますが、必要な支援を正しく行ってくれる施設を見つけることも重要になります。施設を見つける際には、本人がどんな支援やサービスを必要としているかを考え、お住まいの自治体の福祉担当窓口で受けられる支援・サービスを確認することをおすすめします。支援・サービスごとに施設がまとめられている場合が多いので探す手間が省けることもあるかと思います。実際に必要な支援を受けられる施設を探し、利用するまでの道のりは大変なときもあるかもしれません。周りの方や市町村の窓口にも相談しながらよりよい支援を見つけることにつなげていただければと思います。
2017年07月13日「正しい発達障害理解」を追求しつづける当事者たちの戦いUpload By 宇樹義子ここ数年、世間での発達障害についての認知は高まりつづけているように感じる。今年に入るとついにNHKが1年がかりの発達障害特集を開始し、当事者界隈はたいそうざわついた。NHKは「とにかく当事者の声を届けたい」という熱意を前面に出していたので、私も本気になった。特に第1弾のNHKスペシャル生放送時には、ブログで事前の情報記事を用意し、当日はTwitterで実況。後日、感想をやはりブログでまとめた。そもそもテレビが苦手な私が、仕事そっちのけでかじりつくようにテレビを見つめ、仲間といっしょに、放送される内容の正誤やニュアンスについてTwitterで意見する。「えっ? 正しくは『自閉症スペクトラム』だよねえ?」「これは誤解を招くからやめてほしいなあ…」「取り上げられた人たちばかりが当事者なわけではない。もっとこういうケースにもフォーカスを!」タイムライン上をいつ終わるともしれず流れ続ける、「もっと完璧な、正しい発達障害理解を!」という叫び。よく考えたらあたりまえだけど、発達障害者についてであろうがなかろうが、私が100%満足できる番組なんて世の中に存在するわけないんだし、仲間たちにとってもそれはそうだったと思う。私自身も皆も、どこか「どこでやめたらいいのか」「こうする代わりにどうしたらいいのか」をつかめずに困っているようにも思えた。「敵」と戦った日々と、「敵」と手をつなぐまでの日々Upload By 宇樹義子そこからの私は、いま振り返ってもずいぶん必死だったと思う。テレビやネットの発達障害特集の内容に誤りがあれば指摘し、親や当事者の不安につけ込むニセ医学を批判し、成人発達障害当事者の生きづらさを理解してくれない社会にブログで警鐘を鳴らし…そうやって毎日、戦っていた。「自分と同じような思いをする人たちを一人でも減らしたい」。先に述べた思いの通り、これまで発信してきたこと自体は後悔していない。だけど、そうして戦いつづけている間、いつもどこか虚しさのようなものを感じていた。…いまここで告白すると、この記事を書かせてもらっているLITALICO(りたりこ)も大嫌いだった。過去に、LITALICOが運営する就労移行支援「LITALICOワークス」を利用したことがある。結論としては、当時の私が納得できる支援は受けられず、私の心には大きな傷が残った。ここ「LITALICO発達ナビ」でも、サイト立ち上げ当初にライターに立候補したものの断られたことがある。保護者向けのコンテンツが多く、私たち成人発達障害当事者が無視されているような気がして、悔しかった。それで私はますます、LITALICOに負けるものかと、たったひとりでの「戦い」に必死になった。「絶対に発達ナビよりもいいコンテンツを作ってやる。彼らが見捨てた成人当事者の益となるコンテンツを」… そんな気持ちを原動力に猛然と仕事した。だけどそのうち、そんなやりかたも限界だと思った。きっかけは、NHKの発達障害特集だ。Upload By 宇樹義子私が必死にNHKの番組を実況しているとき、当然発達ナビも大きなリソースを注いで実況していた。今や発達ナビは、世間の発達障害者へのイメージを左右するような影響力と、それを実現できる経済的人的資源を持ったメディアに成長していた。発信するコンテンツも、大人の発達障害者をもカバーするようになってきており、質も日々上がってきている。私がずっと望んできた、発達障害者が一般の人たちに広く理解される大きなチャンス。私がこの期に及んで発達ナビに対してそっぽを向き続けるなんて、バカバカしいし不自然じゃないか。もうこんなことはやめよう…ある夜突然、発達ナビの編集長の鈴木さんに連絡をとった。そしていま、こうしてここで書いている。たったひとりで「発達障害者代表」の看板を背負う必要なんてない以上は、「いち成人発達障害当事者としての宇樹義子」のごくごく個人的な物語だ。けれど、私と同じように、自分が「マイノリティ」であることへの意識が大きくなりすぎて、かえって自分を追い詰めたり、苦しめたりしている発達障害当事者は少なくないんじゃないかと思う。だからこそ伝えたい。仮にあなたが発達障害当事者であったとしても、たったひとりで当事者全体を「代表」して戦う必要なんてないんだ、と。社会の発達障害への関心が高まったことはいいことなんだと思う。誰もが生きやすい社会のために当事者として声を上げること、誤った情報に対して批判を加えていくことにも、ある程度の範囲内であれば大きな意味がある。けれど、最近までの私がそうだったように、自分自身がその狂乱に飲み込まれ、もしかすると手をつなぐことができるかもしれなかった人たちを「敵」として、24時間戦闘状態に陥ってしまっては本末転倒だ。Upload By 宇樹義子誰かが何かの属性の看板を背負い、「お前はここが違うから仲間じゃない」「お前にわかってもらえるはずがない」などと声を枯らして叫びつづけることは、皮肉にもコミュニティをバラバラにしていってしまうことがある。なぜって私たちは、何かの属性を持つ者たちである前に、バラバラな違った個人の集まりだから。戦闘的になって違った属性を指摘しつづけていったら、最後には誰も残らなくなってしまう。たまねぎの「皮」を剥き続けたら最後には消えてしまうのと同じだ。言葉づかいの丁寧さの問題じゃない。発信に向かうときの心の態度の問題だ。私はこの点で、長いこと間違ったことをしていた、と思う。言葉は丁寧なものの、私は間違いなく「看板を背負って戦っていた」からだ。私がこよなく尊敬する精神科医・臨床心理士であり、日本におけるPTSD治療の第一人者である白川美也子先生の本がある。この本ではまず、トラウマを抱えた人は「3つのF」と呼ばれる症状を示すようになると説明される。・Fight(戦う)・Flight(逃げる)・Freeze(固まる)Fight(戦う)の項ではこんな説明がされている。私は上のくだりを読んだとき、ああ、これは私と仲間たちにそっくりだと思い、ひとしきり涙が止められなかった。そして、そのあとに出てくるこんなメッセージに、とても楽になった。やがて自分の苦しさをそっちのけにして、同じような被害に遭う人をなくすため、果敢に立ち上がり、戦い始めます。その戦いによって自分の身近にいる人を暴力や虐待から守ることができたとしても、世界にはたくさんの傷ついた女性や子どもたちがいて苦しんでいることに気づきます。戦いには終わりがありません。大切なことは、被害者にも加害者にも、そしてそれを傍観する人にもならない、三角形の3つの角の真ん中にしっかりと立つことなんだよ回復の過程において、あなたが誰かに過去のトラウマ体験を語ることだけが、誰かを救うメッセージになるのではありません。それを生き延びたあなたの身体の動きや声や、あなたの創る詩や奏でる音楽や描く絵が、人に何かを伝えます。あなたが生きているだけで本当に十分なのです。私たち発達障害者は、生きてきた中でたぶん、人よりも少し多くの傷を抱えてきた。だから、つい戦いに身を投じてしまうこともある。もちろん、それは本当に切実な情熱と願いのこもった行動だ。だけど、もしそれがつらいとか、虚しいとか、疲れたとか思う瞬間があるのなら… ときどき、ゴールがあまりに遠く感じられたり、ますますゴールから遠ざかっていくような気がするのなら…私は、あなたは、重たい戦士の鎧を脱いでもいいはずだ。Upload By 宇樹義子そして、どこかに傷を抱え、それをなんとか乗りこなしている「ひとりの人間」として、もっと自由に、軽やかに生きたとき、きっといつか、私やあなたが、そして仲間たちが願った「ゴール」が近づいてくるんだと思う。
2017年07月10日学習障害(LD)とは?主な症状と3つの種類出典 : 学習障害とは、全般的な知的発達に遅れがないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力のうちいずれかまたは複数のものの習得・使用に著しい困難を示す発達障害のことです。英語ではLearning Disabilityと呼ばれ、LDと略されることも多いです。文部科学省は、学習障害を以下のように定義しています。基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。学習障害は、基本的には知的発達に遅れが見られない発達障害であるため、知的障害とは全く別の障害となります。また、医学的な学習障害の診断基準と、文部科学省が定める学習障害の定義の間には、若干の違いがあります。ここでは、文部科学省の定義に近い、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)とアメリカ精神医学会の『DSM-Ⅳ-TR』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第4版テキスト改訂版)での3つの分類に従って、学習障害の特徴を解説します。なお、アメリカ精神医学会の新しい診断基準である『DSM-5』では、これら3つの分類はすべて限局性学習症/限局性学習障害という診断名に統合されています。こちらは後ほど詳しく説明します。学習障害の種類は主に■読字障害(ディスレクシア)・・・読みの困難■書字表出障害(ディスグラフィア)・・・書きの困難■算数障害(ディスカリキュリア)・・・算数、推論の困難の3つに分類されます。苦手分野以外の知的能力に問題が見られないことが多いため、学習障害は発達障害の中でも判断が難しい種類の障害でもあります。読み書きや計算能力は、ほとんどの子どもが就学前には学んでいません。そのため、本格的な学習に入るまで判断が難しく、障害に気づかないことも少なくありません。中にはその人の学習困難が発達障害によるものではなく単なる苦手分野だと判断され、大人になるまで気づかれないことも多くあります。学習障害の人は「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」という5つの能力の全てに必ず困難があるというわけではなく、一部の能力だけに困難がある場合が多いです。読む能力はあっても書くのが苦手、他の教科は問題ないのに数学だけは理解ができないなど、ある特定分野に偏りが見られます。また、同じ「読む」ことの障害でも、ひらがなは問題なくても漢字が苦手など、その状態はさまざまです。一方、読字と書字の障害など、複数が併せて現れる場合も多く見られます。種類別の学習障害の特徴出典 : 学習障害で大きく分類される「読字障害」「書字障害」「算数障害」の3つの学習障害の特徴を紹介していきます。それぞれの学習障害の人に見られる主な特徴を紹介しますが、学習障害の特徴は人それぞれであり、同じ障害に分類されていても、その中の全ての特徴があてはまるわけではありません。また、他の発達障害がある人は、その特徴が合わさって出ることもあります。Upload By 発達障害のキホン読む能力に困難がある読字障害は、学習障害と診断された人の中で一番多く見られる症状であり、別名でディスレクシア(dyslexia)と呼びます。欧米では約10~20%の人がこの症状があると言われています。ディスレクシアは、ギリシャ語で「読むのが困難」という意味です。読字障害があると、結果として文字を書くことにも困難を感じる場合が多いため、読み書き障害と呼ばれることもあります。読字障害の人の中には「見た文字を音にするのが苦手」という症状があります。その原因は、情報を伝達し処理する脳の機能がスムーズに働いていないことだと考えられています。文字の見え方にも特徴があり、文字がぼやける、黒いかたまりになっている、逆さまに見える、図形に見えるなど違った見え方になってしまい、認知の仕方が異なります。また音韻認識が弱く、ひらがなやカタカナのひとつずつは理解していても、漢字(単語)になると理解できなくなってしまうこともあります。漢字の音読みと訓読みの使い分けができなかったり、単語や文節の途中で区切った読み方をするなど、変わった読み方をしてしまいます。【読字障害の特徴】・形態の似た字である「わ」と「ね」、「シ」と「ツ」などを理解できない・小さい文字「っ」「ゃ」「ょ」を認識できない・文章を読んでいると、どこを読んでいるのかわからなくなる・飛ばし読み、適当読みをするなど文章をスムーズに読めず、読み方に特徴がある・音声にするなど耳から情報は理解しやすい場合が多いなど英語圏ではディスレクシアの発現率は10%から20%といわれているが、日本ではディスレクシア単独の調査がない。(障害保健福祉研究情報システム) By 発達障害のキホン「文字が書けない」「書いてある文字を写せない」などの書く能力に困難がある学習障害を書字障害・ディスグラフィア(dysgraphia)と呼びます。文字が読めるのにもかかわらず書けない場合も書字障害に分類されます。書字障害の人は、自分では文字を正確に書いているつもりなのに鏡文字になってしまうなど、文字を書くという動作が苦手です。原因としては、脳内で身体に指示を出し手を動かすという伝達機能がうまくいっていないからだという説が有力です。そのため、文字が書けなかったり、文字を書く速度が遅くなってしまうのです。【書字障害の特徴】・鏡文字や雰囲気で「勝手文字」を書く・誤字脱字や書き順の間違いが多い・黒板やプリントの字が書き写せない、時間がかかる・漢字が苦手で、覚えられない・文字の形や大きさがバラバラになったり、マス目からはみ出したりするなどUpload By 発達障害のキホン数字や数式の扱いや、考えて答えにたどり着く推論が苦手な学習障害を算数障害・ディスカリキュリア(dyscalculia)と呼びます。数字に関する能力にのみ障害がある人が多いため、算数の学習を始めてから発見される場合がほとんどです。「1」「2」「3」などの基本的な数字や、「x」「+」などの計算式で使う記号を認識することに困難をもっています。算数障害の人は数字そのものの概念、規則性、推論が必要な図形の領域を認識するのが難しいです。また、視覚認知の機能が弱く、数字を揃えて書く、バランスを考える、文字間の距離感を取るなどが苦手です。そのため、筆算を書く際に桁がずれることも多くなります。【算数障害の特徴】・簡単な数字、記号を理解しにくい・繰り上げ、繰り下げができない・数の大きい、小さいがよく分からない・文章問題が苦手、理解できない・図形やグラフが苦手、理解できないなど年齢別に見た学習障害の症状の現れ方出典 : 学習障害は、本格的な学習に入る小学生頃まで判断が難しい障害です。子どもの成長速度は人それぞれ。「なかなか歩かない」「全然しゃべらない」といった子どもの行動の一つ一つは気になりますが、ただ成長がゆっくりである可能性もあります。学習障害の人の中にはADHDや自閉症などの他の発達障害の合併症状を持っている人も多く、その場合は、乳幼児期に特徴があらわれる場合もありますが、合併が無い場合は、この時期にはっきりと判断をするのは難しいと言えます。ある程度知能が育ち、行動に特徴が現れやすい学習を始める小学生頃にならないと、学習障害とは判断しにくいのです。特に乳児期は学習障害の特徴は見分けにくいといえます。他の発達障害の特徴として、抱っこされるのを嫌がる、視線を合わせない、言葉を真似する行為が見られないなどの症状がみられるなど、他の発達障害の症状を目安にし、学習障害の確実な診断は学習を始める年齢以降にするしかありません。以下では年齢別に見られる学習障害の特徴を紹介します。幼児期の目安もあくまで他の発達障害を合併している場合です。出典 : 就学前なので学習障害の特徴はまだ現れにくいですが、この頃から子どもは言葉を話し始めたり、学習を始めます。少しずつ学習障害の子の多くが持つ特徴が見えてきます。【幼児の学習障害の特徴】・言葉、文字を覚えるのが遅い・折り紙が折れない、ボタンがとめられないなど手先が不器用・身体の使い方がぎこちないなど出典 : 小学生になると本格的に学習が始まります。勉強において特定の科目が苦手な場合や読み書きに困難がある場合、学習障害の可能性があります。同年代の子どもと比べて学習の習得が著しく遅い場合、学校の先生や専門機関で相談してみることをおすすめします。ここからは就学期に入るため、「読字障害」、「書字障害」、「算数障害」ごとに特徴を分けて書いていきます。【小学生の学習障害の特徴】・授業を真面目に聞いていても勉強が苦手、ついていけないなど■読字障害・ひらがな・漢字が読めない・たどり読み・推測読みになってしまう・行を飛ばして読んでしまう・文章を読むのを嫌がるなど■書字障害・うまく文字を書くことができない(線を抜かしたり、鏡文字を書いてしまう)・板書ができない、時間がかかる・行やマス目からのはみ出しが大きい・文字を書くのを嫌がるなど■算数障害・数が数えられない、とばして数えてしまう・時計が読めない、時間が分からない・計算ができない・筆算をするときに数字がずれて間違えてしまう・計算を嫌がるなど出典 : 中高生になるとはっきりと学習能力の偏りが見えてきます。何かの能力が極端に低い場合には、単なるなまけや得意・不得意だとは判断せず、学習障害である可能性も考えましょう。英語の学習が始まると、国語にはあまり不自由しなかった子どもも、英単語の読み書きなどに極端に困難さを感じる場合もあります。【中高生の学習障害の特徴】■読字障害・小学生で習うような漢字であっても読めない場合がある・英語の単語が読めないなど■書字障害・卒業作文などの長い文章がかけない・英単語が書けないなど■算数障害・計算はできるが、文章題が解けない・図形関連の問題が解けないなどこれらの特徴も、発達障害の合併症として現れることもあります。出典 : 最近では、大人になってから学習障害だと診断される人も少なくありません。もし大人になってから様々な学習困難に直面したら、学生時代や子どもの頃を振り返ってみて、学習障害と疑われる特徴があった場合には、一度、発達障害者支援センターなど、専門機関に相談しましょう。また、学習障害以外の発達障害との合併症を持っている可能性も考えられます。早めに診断を受けに行きましょう。【成人の学習障害の特徴】・上司の注意を聞いてもうまく理解できず同じ失敗をする・電話で聞きながらメモを取れない・話がうまくまとめられず企画案を作成できない・集団で指示されるのが苦手で会議で辛い思いをする・レポートが書けない・お釣りの計算や金銭管理ができないなど学習障害の特徴チェックUpload By 発達障害のキホン学習障害を早期発見することで子どものやる気の低下、自信喪失などの二次障害を避けることができます。参考までに「読字障害」「書字障害」「算数障害」ごとの特徴を以下に記載します。特徴が当てはまるかチェックをしてみてください。チェックする大切なポイントは「年齢に見合った動きができているか」です。年齢相応の習得の度合いと比較してチェックしましょう。また、これはあくまで学習障害の可能性があるかどうかという参考程度のチェックリストであることに注意してください。多く当てはまる場合は、診断を受けてみることをおすすめします。診断は子育て支援センターなどの専門機関の窓口に相談した上、専門医師によるものを受けてください。■読字障害□漢字の訓読みと音読みを使い分けるのを苦手とするように見受けられる。□単語の単位をつかむのを苦手とする。一文字ずつ読んでしまい、まとまりのない読み方をすることが多い。□文字や行を飛ばして読むことが多い。□特殊音節(拗音・長音・促音)であらわされる文字を発音できない。■書字障害□漢字を書く際に、鏡文字を書くことが多い。□文字を書く際に、余分に線や点を書いてしまうことが多い。□年相応の漢字を書くことができないことが多い。□間違った助詞を使ってしまうことが多い。□文字の大きさや形がバラバラ・マス目からはみ出る。■読字・書字障害の合併(読み書き障害)□上記の読字・書字障害のチェック項目に当てはまるものが多い□ひらがなの読み書きを苦手とする。例えば「ね」「れ」「わ」が一緒に見えてしまうように見受けられる。□カタカナの読み書きを苦手とする。例えば「ソ」「ン」、「シ」「ツ」が一緒に見えてしまうように見受けられる。□特殊音節(拗音・長音・促音)の読み書きを苦手とすることが多い。■算数障害□数を覚えるのに時間がかかることが多い。□数の大小の概念を理解できていないように見受けられる。□九九を習得している年齢なのにも関わらず、九九を覚えられていない。九九を暗記しても計算に応用できない。□繰り上がり繰り下がりの筆算ができないことが多い。学習障害の診断方法・基準出典 : 医療機関での診断は、アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)や、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)による診断基準に基づいて診断されます。医療機関では脳の異常はないか、知的な部分に障害がないか、困難な能力に偏りがないかを調べます。『DSM-5』の1つ古いバージョンである『DSM-IV-TR』では学習障害は「読字障害」「書字表出障害」「算数障害」の3つに分類され診断されていました。最新版である『DSM-5』では、すべて「限局性学習症・限局性学習障害」とひとくくりにされ診断されます。以下が『DSM-5』の診断基準です。A.学習や学業的技能の使用に困難があり、その困難を対象とした介入が提供されているにもかかわらず、以下の症状の少なくとも1つが存在し、少なくとも6ヶ月間持続していることで明らかになる:(1)不的確または速度が遅く、努力を要する読字(例:単語を間違ってまたゆっくりとためらいがちに音読する、しばしば言葉を当てずっぽうに言う、言葉を発音することの困難さをもつ)(2)読んでいるものの意味を理解することの困難さ(例:文章を正確に読む場合があるが、読んでいるもののつながり、関係、意味するもの、またはより深い意味を理解していないかもしれない)(3)綴字の困難さ(例:母音や子因を付け加えたり、入れ忘れたり、置き換えたりするかもしれない)(4)書字表出の困難さ(例:文章の中で複数の文法または句読点の間違いをする、段落のまとめ方が下手、思考の書字表出に明確さがない)(5)数字の概念、数値、または計算を習得することの困難さ(例:数字、その大小、および関係の理解に乏しい、1桁の足し算を行うのに同級生がやるように数字的事実を思い浮かべるのではなく指を折って数える、算術計算の途中で迷ってしまい方法を変更するかもしれない)(6) 数学的推論の困難さ(例:定量的問題を解くために、数学的概念、数学的事実、または数学的方法を適用することが非常に困難である)B.欠陥のある学業的技能は、その人の暦年齢に期待されるよりも、著明にかつ定量的に低く、学業または職業遂行能力、または日常生活活動に意味のある障害を引き起こしており、個別施行の標準化された到達尺度および総合的な臨床消化で確認されている。17歳以上の人においては、確認された学習困難の経歴は標準化された評価の代わりにしてよいかもしれない。C.学習困難は学齢期に始まるが、欠陥のある学業的技能に対する要求が、その人の限られた能力を超えるまでは完全には明らかにはならないかもしれない(例:時間制限のある試験、厳しい締め切り期間内に長く複雑な報告書を読んだり書いたりすること、過度に思い学業的負荷)。D.学習困難は知的能力障害群、非矯正視力または聴力、他の精神または精神疾患、心理社会的逆境、学業的指導に用いる言語の習熟度不足、または不適切な教育的指導によってはうまく説明されない。これらの判断基準をもとに心理専門家など複数の専門家が慎重に判断してくれます。この診断が出た上で、以下の基準から「読字障害」「書字障害」「算数障害」のうち、どれが強いかが特定されます。315.00(F81.0) 読字の障害を伴う:読字の正確さ読字の速度または流暢性読解力315.2(F81.81) 書字表出の障害を伴う:綴字の困難さ文法と句読点の正確さ書字表出の明確さまたは構成力315.1(F81.2) 算数の障害を伴う:数の感覚数学的事実の記憶計算の正確さまたは流暢性数学的数理の正確さ診断の流れは、医療機関などによっても異なりますが、まずは問診で現在の症状や困りごと、赤ちゃんの時から今までの生育・養育歴、既往症や家族歴などを調べていきます。脳波検査、頭部のCT、MRIなどでてんかんや脳の器質的な病気といった異常がないかを検査します。そして知能検査や認知能力検査などの心理検査を行います。知能検査では「WISC-Ⅳ」が代表的です。「WISC-Ⅳ」では本人のもつIQ水準をチェックし、言語理解、知覚推理などを検査します。(3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月の幼児の場合は「WPPSI」、5歳から16歳11ヶ月の子どもは「WISC」、16歳以上の成人の場合は「WAIS」という知的検査を受けることによって検査結果がでます。)認知能力検査では日常生活や学校で習得できた知識や情報を認知的に処理する能力を調べ、認知処理能力と習得度を比較できる「KABC-Ⅱ」などを行います。これら様々な情報を元に、総合的に学習障害であるかを判断するのです。また、こうした過程でADHDや高機能広汎性発達障害などが合併していないかも確認します。学習障害の疑いを感じたらどうすればいい?Upload By 発達障害のキホン学習障害は専門家でさえも判断するのが難しい障害です。そのため、チェック項目で当てはまる症状が多いからと言って個人で決めつけず、まずは専門家に相談をしてみましょう。就学児であれば担任の先生に相談してみても構いません。学校へ相談すると学校での生活の様子などを配慮し、それらを考慮した専門家を紹介してくれます。また、障害だとわかりにくいため、周りから理解も得られず、本人がつらい思いをしていることも多いと言えます。できるだけ早期に、小さい頃から学習障害に対する教育方法や療育などの対処法を始めると、その後の発育に大きな違いがみられます。はじめの一歩を踏み出すのには勇気がいるかと思いますが、一歩を踏み出すことによって色々な悩みが軽減されます。学習障害ではないと診断された場合でも、困難を乗り越えるための様々なアドバイスをしてもらえることが多いので、一度相談してみることをおすすめします。診断を受ける前に、まずは専門期間で相談を出典 : 発達障害なのかな、と疑問を持った場合、いきなり専門の医療機関に行くのは難しいので、まずは身近な専門機関の相談窓口で相談するようにしましょう。発達障害の疑いがある場合には専門医を紹介してくれます。子どもか大人かによって、行くべき専門機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所・発達障害者支援センターなど【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所など知能検査や発達検査は児童相談所などで無料で受けられる場合もありますし、障害について相談することも可能です。その他、発達障害者支援センターで障害についての相談ができます。自宅の近くに相談機関が場合には、電話での相談にものってくれることもあります。以下は小児神経学会が発表している、発達障害診療医師の名簿です。この他にも、児童精神科医師や診断のできる小児科医師もいます。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」まとめ出典 : 学習障害は軽度、重度によって発見時期が異なります。さらに、軽度な場合は本人や周りが気づかずに成長する場合も少なくはありません。知能には問題がなく、学習面である「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」といったある特定の能力の困難を「苦手な分野」と判断されてしまうため、発見しづらい障害なのです。また、学習障害の症状は人それぞれです。学習障害のある人の中でも文章を構成するのが得意な人もいれば、算数が得意な人もいます。学習障害の早期発見は子どもの健やかな未来を創り上げます。そのためにもお子さんのサインを見逃さず、成長過程を優しく見守っていきましょう。
2017年07月08日●EXILE・AKIRAさんに学んだ現場での心意気世の中には様々なイケメンが存在するが、頼りがいのある”兄系イケメン”が集合する、女子にとっては夢のようなシチュエーションを映画化したのが、6月30日(金)から公開された映画『兄に愛されすぎて困ってます』。いまやヒロインとして引っ張りだこの女優・土屋太鳳演じる橘せとかが、血のつながっていないヤンキー系ツンデレお兄・はるか(片寄涼太)、初恋の相手のセレブ系ののしり王子・芹川高嶺(千葉雄大)、ホスト系スウィートBOY・美丘千秋(草川拓弥)、ヘタレ系塩顔男子・芹川国光(杉野遥亮)に囲まれる。胸キュンシチュエーションにあふれたハイテンションな展開でありながら、”血のつながっていない兄と妹”という葛藤のある切ない恋愛模様も軸となっている同作。妹に思いを寄せながら、妹の幸せを願う兄・はるかを演じた片寄は、ふだんはGENERATIONSとして活躍するアーティストでもあるが、どのような気持ちで演じていたのか。○グループでは俯瞰で見ているタイプ――普段はアーティストとして活躍をされている片寄さんですが、今回の話を聞いた時はどのように思われましたか?自分はお芝居の経験もほとんどなかったので、作品にお声がけいただけて、ありがたいと思いましたし、自分でいいのかな、という気持ちもありました。――少女漫画原作ということで、かなり胸キュンな感じが、普段の雰囲気ともまた違ったのかと思いましたが。挑戦として、いい経験になるとすごく思いました。ただ少女漫画をあまり読む機会もなかったので、原作を読ませていただいた時は刺激的だったし、やっぱり女の子ってこういうのを読んできているんだな、と思いました。でもそこに抵抗があったわけではなく、自然と楽しみました。――今回”お兄ちゃん”がたくさん出てきますが、誰が自分に1番近いと思いますか?GENERATIONSで活動している時の自分は、グループを俯瞰で見ている感じが、高嶺さんに近い気がします。まあまあ真面目な方なので、気を使わなきゃ、バランスを取らなきゃと思ってしまうタイプですね。でも本来の自分は、はるかの生き方やピュアさに憧れますし、ああいう風になれたらいいなと思っています。――逆に、自分のお兄ちゃんだな、と思う人はいますか? ふだんの先輩でも。ドラマ『GTO』で一緒になったAKIRAさん(EXILE)です。『GTO』のときに、僕は10代だったんですが、現場での佇まいや、周りの方々への気遣いについて、AKIRAさんの背中を見て学ばせてもらいましたし、自然とAKIRAさんのような男性像に憧れを抱いていました。今回『兄こま』はすごいチャンスをいただいたと思いますし、現場に入る時もAKIRAさんから学んだことを意識しました。単純に真似しようということではなく、心遣いや誠意の見せ方といったところです。先輩方ともまた違う色の作品だったので、自分にできる形で作品に取り組んで、今の自分だからこそできる精一杯を出そうと思っていました。――『兄こま』にはまった人が、もっと片寄さんを知りたいとしたら、どういう姿を見てほしいと思いますか?GENERATIONSのライブや、アーティストとしての自分を見てもらえると、また全然違うと思います。僕自身はアーティストとしての自分を知りすぎているので、『兄こま』を見た時に自分の姿が全然違って見えて、知らない自分の表情を発見できたんです。だから、逆に『兄こま』を見て知ってくださった方が、ライブに来て新しい発見をしていただけたらいいなと思いました。――ご自身でも発見があったんですね。たとえば、どんな表情だったのでしょうか。お風呂場で後ろからせとかを抱きしめるシーンは、「俺ってこんな表情してたんだなあ」と思いました。「ガチだな」って(笑)。せとかを送り出す瞬間も、客観的に「お兄、せつねえな」と思ったりとか。そうやって客観的に見られる自分がいたのは大きかったですね。アーティストとしてやっている時は、どうしても自分自身が出ているので、役として自分ではない自分を見ることができたのは、新発見でした。●お風呂場でのシーンは、わけがわからなくなるくらい熱く○千葉雄大に「さすが」――やっぱり印象的だったのは、お風呂場でせとかを後ろから抱きしめるシーンだったんですが、撮影ではどのような雰囲気でしたか?一番苦労しました。監督もこだわられていて、「もっともっと熱く行って欲しい」と言われたのを覚えています。兄のはずのはるかが男を出してしまうという、想いが溢れるシーンだったので、自分もわけがわからなくなりそうなくらい熱く行かなきゃと、必死でした。――緊張はされましたか?緊張は、ちょっとあったのかもしれないですね。なかったつもりだったんですけど、よくよく思い返してみると、ちょっとした照れの壁があって、それを越えていくまで、見定められたのかもしれない。――他に印象的だったシーンはありますか? 自分のシーンでも、他の方のシーンでも。自分ではないのですが、夏祭りで高嶺さんとせとかがデートするシーンは、恥ずかしくて見られなかったですね。キスシーンの撮影を見ることも、今までなかったので……。――人のキスをまじまじと見ることって、なかなかないですよね。ないですよ! しかも何テイクもやるので。「おお、おお!」って感じです(笑)。――千葉さんは、慣れていそうな雰囲気でしたか?わからないですが、多少はあるのかな……でも、これはあまり千葉さんが経験したことないだろうと思ったのは、ドラマ版での女医さんとのキスですね。あれは結構大人なキスだったので(笑)。監督がけっこうカットをかけなくて、かなり長く感じたんですよ。現場でも「長いでしょ!」と話題になっていました(笑)。――片寄さん自身も、今後役者としてそういう機会があったら。もう、思いっきりファンの子を嫉妬させたいですね! 嫌われない程度に(笑)。――千葉さんについて、こんなところがさすがだな、と思ったところはありますか?千葉さんはさすがだらけでした。ホン読みの段階から、千葉さんは一言一言でスタッフの方達を笑わせていくというか。僕はその1カ月前くらいからリハーサルをさせてもらって、ちょっとだけ「お兄ってこんな感じだな」とわかってきたところだったんですが、読み合わせで千葉さんに圧倒されました。現場でも千葉さんのキャラ作りや表現の仕方に刺激をいただきました。――それは演技なのか、現場での振る舞いなのか。両方ですね。周りの方を笑わせるとか、自分がこういうキャラでいると場が盛り上がるというのをわかってる方なので「すげえな、この人」と思いながら。そこはお芝居にも直結しているんだなというのを学ばせていただきました。○妹として見られた土屋太鳳――一方、土屋さんの印象はいかがでしたか?今すごく活躍しているし、初めて会った時もすごく真面目で礼儀正しくて、カチッと完璧な子なのかな、と思っていたんです。でも、撮影に入ると天然な部分やお茶目な部分もたくさん見られたので、良かったかな(笑)。そういう抜けている部分もあったので、妹っぽく見ることができたと思います。――例えばどんなところが抜けている部分だったんでしょうか。基本的に、食に対してすごく愛情が深くてですね(笑)。特に、お肉には目がない子なので、料理シーンなどで撮影現場にごはんがある時は、スタッフの声も僕の声も耳に入らないくらいとぼけていましたね。「アボカドがある! 終わったら食べていいですか!」って、まだ始まってないだろ! みたいな(笑)。そういうところがかわいらしかったですね。――それでは、改めて映画でこういうところに注目してほしいという点を教えてください。自分が今までに見たことのない自分が、散りばめられているので、そこはすごく注目していただけたらいいなと思います。監督からも、カッコよくいてほしいという一つのテーマがあって、自分なりのかっこよさや男として憧れる美学も、はるかに少し詰め込めた気がします。かっこいいやつなんで、ぜひぜひはるかのかっこよさを楽しんでいただけたらと思います。
2017年07月01日「今回の本で、三女の亜子が発達障がいとともに生まれたことを初めて書きました。私は美宇という日本一の卓球女子を育てた母親と言われますが、同時に障がい者の娘を育てた母親です。どちらも同じ子育てなんです。そのことを伝えたいと思いました」 そう語るのは、ドイツで開催された卓球世界選手権女子個人で48年ぶりの銅メダルに輝いた平野美宇選手(17)の母・真理子さん(48)。 山梨県甲府市郊外で卓球教室「平野卓研」を営む真理子さん。娘の応援に赴いたドイツのホテルで、新著『美宇は、みう。』(健康ジャーナル社)の原稿を書き綴った。その中で、三女の亜子さん(12)が発達障がいだと初告白したのだ。 「亜子は対人関係が希薄で思ったことをそのまま素直に行動に移しますから、幼児期は『先生のお話を聞きましょう』と言われても、嫌なのですぐに向こうに行ってダラーっとしてしまう。無理に引き戻しても逆効果。ゆっくり諭すように話して、時間をかけてやらせました」 真理子さんが美宇選手の遠征に付き添って家を空けるのが寂しくて泣いていた亜子さんは、6歳で「亜子も卓球やりたい」と言い出したそう。 「本人が『やる』と言うならママの私も徹底して付き合おうと。美宇もたまに実家に戻ったときは、卓球で亜子の相手をしてくれます。亜子にとって日本代表の姉は“雲の上”の存在。美宇から『亜子、こういう風に返すんだよ』とレッスンをしてもらうと、『美宇ちゃんが教えてくれたよ!』って大はしゃぎ。『ショートバウンドで打ち返したら相手に勝てるよ』と教えると、ひたむきに一生懸命練習していました。執着心は相当なものなんです」 3姉妹でいちばん最後に卓球を始めた亜子さんは、瞬く間に頭角を現した。昨年には小学生日本代表として海外に派遣されるまでに。「あの亜子がここまでねえ」と真理子さん自身も驚いたという。 「大体ひとりでできるようになりましたが、頬にケチャップがついていても平気とか、気になることもあります。少しずつゆっくり、ですね。美宇の目標は3年後(東京五輪)。そこで金メダルを狙っています。姉妹3人、みんながんばっているのが自慢です!」 卓球一家の子育てママはそううれしそうにほほえんだ。
2017年06月30日大好きな彼は、よく言えば寡黙な人、悪くいえばコミュ障。見つめ合うだけでも満足だけど、できれば普通に会話したい。私ばかりしゃべっていても疲れてしまう。話題が何もないとか、私のこと何も訊いてこないとか、もしかして私のこと、そんなに好きじゃないのかなぁ・・・・・・。そんな会話の苦手(下手)な彼と上手にコミュニケーションを図るには、どうしたらいいのでしょうか。■■LINEやチャットを活用し、文字で会話しよう「話すこと」と「書くこと」は別物です。相手の言葉に対し、瞬時に自分の意思を言葉に置き換えて話す「会話」は苦手でも、「言葉を選ぶ」というワンクッションが入る「文字」ならば、饒舌に伝えることができる人は多いのです。文字なら会話が成立しやすいならば、極力電話は利用せず、すべての連絡をLINEやメッセンジャーだけにしてあげましょう。LINEなら、スタンプを多用して「文字すら必要ない」コミュニケーションを。もちろん返事が遅くても、催促するのはタブーです。じっくり待ちの姿勢で。コミュ障の彼でもうまく自分を出せるツールにしぼって、できるだけ返事がしやすいよう、質問するときは回答の選択肢を添えるなど、文字の会話にも工夫が必要。コミュ障の人は自己主張が弱いのではなく、あれこれ考えすぎて、思うことを相手に伝えるプロセス(言葉選びや伝えるテンポ)やタイミング(今言うべきかの判断)を図るのが苦手なだけなのです。■■LINE無精な彼には、写メをおねだりコミュ障な人の中には、そもそも思うことや伝えたいことを「言葉」に表すのが苦手という人もいます。そんな彼ならば、LINEでの文字のやりとりも面倒になってしまうかもしれません。言語を扱う左脳がうまく使えなくても、絵や写真などビジュアルで表現する右脳ならうまく使えるという人は少なくありません。彼の得意な表現方法でコミュニケーションを図ってみれば、意外な才能を発見できるかも。お手軽なのは、写メを使ったやりとり。まずはあなたのほうから、インスタにアップするようなつもりで、彼に見て欲しい写真を定期的に送ってみましょう。返事はあってもなくても気にせず、毎日1通、日記のように近況を写真で知らせるのです。あなたからの写メに慣れた頃、真似して送ってくれば作戦成功。写真のほうが文字よりも楽だと感じる彼ならば、ふたりだけの大切なコミュニケーション手段になるでしょう。■■いっそデート中もスマホで会話するチャットなら話せるくせに、面と向かっての会話だとうまく話せないのは、コミュ障の人にありがちなこと。だったら会っている時間も、スマホのチャットで会話すればいいのではないでしょうか。カフェで向かい合い、無言のまま互いにスマホを見てニヤニヤしている光景は不気味ですが、他人の目なんか気にする必要はありません。周りに聞かれないチャットなら、堂々と内緒話もできますよ(笑)■■恋人だからできる、スキンシップによるコミュニケーション上に挙げた3項目は、いずれも言葉によるコミュニケーションの改善案ですが、恋人同士ならば、非言語コミュニケーションも積極的に取り入れたいもの。アイコンタクトや表情から相手の気持ちを読み取れるようになるには時間が必要ですが、手を繋ぐ、肩を抱く、髪を撫でる、ハグするなどのボディタッチはすぐにでも実行可能。恋人だからこそ許されるスキンシップで、あなたの「好き」をいっぱい伝えましょう。楽しい気持ちだけでなく、つねったりすることで怒りを伝えたり、表情で悲しみを伝えたり、言葉を使わず意思を伝える方法はたくさんあります。あなたのほうから率先してやれば、彼も「無理にしゃべらなくてもいいのか」と安心し、もっと心を開いてくれるでしょう。もちろんエッチも大事なコミュニケーション。受け身にならず、感じさせるような愛撫で愛を伝えて。■まとめ人間以外の動物にとっては、非言語コミュニケーションが中心。言葉を使えるばかりに、人は言葉に頼りがちですが、仕草や態度や表情などにも感情は表れています。言葉以外の愛情表現を意識するようになれば、もっと彼のことがわかるようになるはず。他の誰よりも彼の理解者になれれば、彼にとってかけがえのない存在になれますよ!(島田佳奈/ライター)(ハウコレ編集部)
2017年06月14日6月7日に処分保留で釈放された田中聖(こうき・31)。5月24日の逮捕以降、過去の薬物疑惑や奔放な性生活ばかりが報じられているが、ここにきて意外な一面が飛び込んできた。田中と幼少期からの付き合いがある友人はこう語る。 「聖がやっていたバーに車椅子の客が来ることになりました。聖はわざわざ机や椅子を動かして、店のレイアウトを変えてまで、車椅子を入れやすいようにした。しかも“いいこと”をしているというふうではなく、そうすることが当たり前といった感じにやるんです。そういう面もある奴なんです」 2013年に田中は東京・西麻布にバーをオープンさせたが、これが決定打となりジャニーズ事務所から契約を解除された。このバーのVIPルームで田中が薬物を使用したり、女性と性行為をしていたという報道もあった。 「事務所を辞めたとき、『忙しくてできなかったことがたくさんあったから、これからは自分がしたいと思うことをやりたい。障がい者の支援イベントや福祉の仕事に興味があるんだ』と言っていました。実際に、最近も障がい者施設のボランティアに参加していたはずです」(前出・友人) これを一概に田中の気まぐれとは言い切れない。10年前の2007年、田中が障がい者の自立支援施設へボランティアに行っていたことが「週刊女性」で報じられている。まだKAT‐TUNの一員だった田中は完全なプライベートで施設を訪れ、生歌を披露したり、施設で販売していたTシャツなどのデザインまでしたという。 「クスリをやっていた時期があるのは知っていますが、もう止めたものだと思っていました。だから、今回の逮捕には驚きました。あのときに語っていたことを思い出して、もう一度出直してほしい」(前出・友人) ジキルとハイドのように二面性を持つ田中。どちらの顔が本物なのだろうか。
2017年06月14日現在「Kiss」(講談社)にて連載中の有賀リエの漫画「パーフェクトワールド」が映画化決定。「EXILE/三代目J Soul Brothers」のメンバーとして絶大な人気を誇る岩田剛典と、『湯を沸かすほどの熱い愛』で様々な映画賞を受賞した若手実力派女優・杉咲花が初顔合わせ、W主演で純愛ストーリーに挑戦することが分かった。インテリアデザイン会社に就職した川奈つぐみは、設計事務所との飲み会で高校の先輩であり初恋の人・鮎川樹と再会する。樹にときめきを覚えるつぐみだったが、彼は事故で車イスに乗る障がい者になっていた。「先輩との恋愛はムリ」最初はそう思うつぐみだったが、昔と変わらずまっすぐな彼にどんどん惹かれていき、あの頃閉ざした感情が止められないほど溢れてくる。「私は――先輩が好きなんだ、いまでも」。樹もまた、全身でぶつかってくるつぐみの、素直で優しく思いやりのある性格に惹かれていくが、彼は「自分は誰かを幸せにすることができない」と思い込み、女性と付き合うことを諦めていた。それを知ったつぐみは樹のことを諦めようとするが、どうしても諦めきれないでいた。2人は、全てのハードルを乗り越え、幸せなパーフェクトワールドにたどり着くことができるのか?2人が迎える結末とは――。原作は、2014年から現在も連載中の“障がいのある恋”というテーマを描いた同名漫画。車イス生活になった初恋の人との再会を軸に、仕事、生きること、そして恋する気持ちを障がいという難しいテーマで扱いながら、ストレートに伝える純愛ストーリー。20代女性を中心高い支持を集めている。さらに、国内のみならず海外にも広がり、フランスの老舗漫画雑誌「Animeland」にて編集部セレクション/一般投票共に2016年ベスト少女漫画も受賞している。この度、映画化にあたり、突然の事故で下半身に障がいを持ち、車イス生活になってしまった建築士の主人公・鮎川樹役を演じるのは、「砂の塔~知りすぎた隣人」や『HiGH&LOW THE MOVIE』シリーズなどで役者としても活動の幅を広げる岩田さん。『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』に続く2作目の主演となる岩田さんは、「漫画原作のキャラクターかつ身体に障がいをもった役柄ということで、どちらも自分にとっては初めて経験させて頂く役どころになります。この作品のテーマでもある大切な人と障がいと共に生きていくという難しいテーマをより身近に感じて頂けるよう、真摯に向き合い、丁寧に演じたいと思います」とコメント。また、初恋の先輩である樹を一途に思い、悩み、もがきながらも一緒に前を向いて生きていこうとするOL・川奈つぐみ役を、連続テレビ小説「とと姉ちゃん」や『湯を沸かすほどの熱い愛』『無限の住人』など話題作に出演し、声優を務める『メアリと魔女の花』の公開が控える杉咲さん。本作で初主演となる杉咲さんは、「樹とつぐみが想い合うように、スタッフ・キャストの皆様と儚くて優しい時間を現場で過ごすことができるよう、頑張っていきたいと思います」と意気込み、「原作の魅力を肉体を使って表現させていただく中で、足し算や引き算が必要になることはきっとあると思うのですが、この作品を皆様の元へまっすぐお届けできるよう、映画だからこそ表現できる強さのような魅力があると信じて、自分にできることを考え、この作品に身を委ねていきたいです」と話している。そして原作者の有賀氏は、「漫画作品の実写化には色んな意見がありますが、本作はありがたいことに『実写化して欲しい』『した方がいい』と言っていただけることが多く、今回それが実現することとなり本当に嬉しく思います」と心境を話し、「主演は岩田剛典さん、杉咲花さんという力強いお2人に決まりわくわくしています。2人の恋にときめいたり、そして見終わった後はテーマの部分を身近に感じてもらえるような、そんな映画になればいいなと思っています」とメッセージを寄せた。監督を務めるのは、『流れ星が消えないうちに』の柴山健次。脚本は『ラムネ』「グッドモーニング・コール」の鹿目けい子が担当。なお、現在撮影中の本作は、7月中旬にクランクアップ予定となっている。『パーフェクトワールド』は2018年、全国にて公開予定。(cinemacafe.net)
2017年06月10日神経発達症とは?出典 : 神経発達症(neurodevelopmental disorder)は、情動・学習能力・自己コントロール・記憶といった様々な知的活動に影響する、脳機能の障害です。この言葉は、米国精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)に採用されたことで、広く知られるようになりました。『DSM-5』の日本語版では、正式には「神経発達症群/神経発達障害群(neurodevelopmental disorders)」という形で使われています。「神経発達症」と「神経発達障害」が併記されている歴史的経緯については、「DSM-5」の記事をご覧ください。以下、この記事では「神経発達症」で統一します。神経発達症には、いくつかの障害が含まれます。『DSM-5』では、以下のような障害がまとめて神経発達症と呼ばれています。・知的能力障害群(知的障害)・コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群(吃音など)・自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害・注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害・限局性学習症/限局性学習障害(ディスレクシアなど、いわゆる「学習障害」)・運動症群/運動障害群(発達性協調運動障害、チックなど)・他の神経発達症群/他の神経発達障害群どうして、これらの障害がすべて「神経発達症」という一つの障害にまとめられるのでしょうか。それは、これらの障害は別々のものではなく、神経の発達阻害という共通の原因を持つ連続的な障害なのだという考え方に基づいています。「神経発達症」という言葉は、そうした連続的な障害の全体を指すための言葉です。近年、この考え方が広まりつつあります。神経発達症と発達障害は、どう違うの?出典 : これまで、自閉症スペクトラム障害・学習障害・ADHDをはじめとするいくつかの障害の総称として「発達障害」という言葉が使われてきました。発達障害という言葉も、神経発達症と同じように、いくつかの障害を統一的に理解するための言葉です。それでは、神経発達症はこれまでの発達障害と何が違うのでしょうか。結論から言えば、「神経発達症」は「発達障害」よりも広い範囲を指す言葉だと言ってよいでしょう。日本での「発達障害」の定義として、「発達障害者支援法」の中で使われている定義がよく知られています。それによると、発達障害とは「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」です。発達障害者支援法(2004年)|文部科学省「政令で定めるもの」とは、ここでリストアップされたもの以外の「心理的発達の障害並びに行動及び情緒の障害」です。発達障害者支援法施行規則(2007年) |厚生労働省「発達障害」という言葉の範囲は、それほどはっきりと決まっているわけではありません。実際には、リストアップされなかった障害も、必要に応じて「発達障害」に含められてきました。こうした多くの障害を、発生原因に注目してグループ化しなおすために持ち出されたのが「神経発達症」という言葉です。神経発達症の原因は?出典 : 障害と神経発達を関連付ける見方そのものは、『DSM-5』(2013年)で初めて現れたわけではありません。精神医学の中では、一部の障害が中枢神経系の発達阻害に関連しているという仮説が以前から持たれており、研究が進められてきました。近年とりわけ注目されているのは、神経発達症と染色体との関連です。たとえば、“Handbook of Neurodevelopmental and Genetic Disorders in Children”(編集部訳題『児童期の神経発達症・遺伝子疾患ハンドブック』)(初版1999年)では、個々の障害(自閉症やターナー症候群など、約20件)について、それぞれ神経の発達阻害をもたらす遺伝学的性質に関する研究がまとめられています。 Goldstein and Cecil R. Reynolds, eds., Handbook of Neurodevelopmental and Genetic Disorders in Children (New York: Guilford, 1999).こうした研究に関連して、昨年、大阪大学が発表したプレスリリースが話題になりました。この研究では、ある染色体の重複が多動に関連するということを、マウスを用いた実験で示すことに成功しました。もちろんこの研究は、神経発達症全体の原因を完全に明らかにするものではありません。しかし、原因の一部を明らかにする研究を積み重ねることによって、原因全体の解明に一歩ずつ近づいているということは確かです。 Fujitani, S. Zhang, R. Fujiki, Y. Fujihara, and T. Yamashita, ’A chromosome 16p13.11 microduplication causes hyperactivity through dysregulation of miR-484/protocadherin-19 signaling’, Molecular Psychiatry 22 (2017): 364–74.神経発達障害群の染色体重複による発症の機序を解明|RESOU Research at Osaka Universityところで、障害の原因を遺伝学的なものに求める立場は、歴史的にずっと中心的だったわけではありません。過去には、「子どもの発達障害は、親の育て方が悪いせいだ」という立場が主流だった時期もありました。自閉症研究のパイオニアであるレオ・カナーも、はじめは自閉症の原因が母親の育て方にあると考えていました。すなわち、母親が子どもに愛情を十分に注げなかったとき、子どもの情緒的発達に悪影響が出て自閉症になる、という見方でした。この考え方は「冷蔵庫マザー」と言う象徴的な言葉とともに広まりました。 Kanner, ‘Autistic Disturbances of Affective Contact’, Nervous Child 2 (1943): 217–50.「冷蔵庫マザー」論は、およそ1970年代までは一世を風靡していました。このことにより、自閉症の親たちは長く批判され責められてきました。しかし、その後はこの見方は多くの専門家によって否定され、またカナー自身もこの見方を自ら放棄しました。そして、自閉症をはじめとする障害の原因は、親子の情緒的関係にあるのではなく、子どもの神経発達のありかた(さらには、その発達を方向づける遺伝学的性質)にあるのではないかという考えが広まり、現在の研究につながっています。DSM-5でも、おおむねこの考え方が採用されています。実際の診断・臨床の場面における神経発達症出典 : 実際の診断では、「自閉症スペクトラム障害」や「限局性学習障害」といった言葉が使われていて、「神経発達症」よりも細かい診断がなされます。これは、「神経発達症」という言葉でいくつかの障害をまとめるという考え方がまだ新しく、今まで使われてきた言葉が浸透しているためであると思われます。しかし、2013年に『DSM-5』が発表されてから数年が経ち、「神経発達症」という言葉も徐々に広まりつつあります。これから先は、診断の中で「神経発達症」が使われていくかもしれません。古荘純一、磯崎祐介『神経発達症(発達障害)と思春期・青年期――「受容と共感」から「傾聴と共有」へ』明石書店、2014年。もともと、『DSM-5』は精神科医の診断マニュアルとして使われています。また、精神科医が実際に使うことを通して問題点を発見し、改訂することによって、精神医学の発展が目指されています。「神経発達症」のような言葉を使って障害をグループ分けすることには、精神医学を単なる精神科医の「カン」ではない体系的なものにする上で大きな意味があります。いくつかの障害に共通点があることがわかれば、それに対するアプローチを考えるにあたって大きなヒントになります。たとえば、自閉症スペクトラム障害は本人のやる気の問題なのか、それとも親の育て方の問題なのか、はたまた染色体の状態に関係しているのか――これがわかれば、障害のある子どもに対して周囲が何をできるのか、あるいは何をできないのかを知ることができます。神経発達症は治るの?出典 : 神経発達症には、根本的な治療法はありません。近年の研究によって、神経の発達阻害を引き起こす因子がいくつか特定されつつあります。しかし、これは神経発達症の原因の一部がわかるにすぎません。また、研究のレベルでわかったことが臨床の現場に応用されるまでには、さらに多くの研究が必要になります。「治す」ことは難しいですが、症状や困難を軽くすることはできます。その具体例として、ここでは3つの例を挙げます。1.環境調整本人の能力や特性に合わせて、接し方・環境・ルール・課題を変えることができれば、障害のある子どもが感じる困難は軽くなります。これまでも行われてきた「合理的配慮」は、神経発達症のある子どもにももちろん有効でしょう。「神経発達症」には様々な障害が含まれていますので、合理的配慮を考える上では、一人ひとりの特性に合わせるということが一層重要になります。2.療育とトレーニング本人の特性に合わせてトレーニングを行い、子どもが認知や行動についての能力を習得できれば、社会生活において感じる困難が軽減されます。この療育についても、今まで行なわれてきたものが同じく有効でしょう。3.薬物療法神経発達症に関連するいくつかの症状は、投薬によって症状を抑えることができます。重要なことは、投薬によって神経発達症そのものを治療できるわけではなく、症状を緩和することと、症状によって生じる不利益を避けることを狙っているということです。投薬による症状緩和についても、これまでと同じように、主治医の先生によく相談することをおすすめします。ここまで見てわかるように、神経発達症に対する向き合い方は、基本的にこれまでの発達障害と大きく変わりません。変わったのは、精神科医が使う診断マニュアル(DSM-5)で使われる名称にすぎません。神経発達症という名前がつくことそれ自体で、障害のある子どもたちの症状が変わったり、困りごとが軽くなったり重くなったりするわけではありません。このことは、神経発達症について考える上で、非常に重要な点です。おわりに出典 : 「神経発達症」という耳慣れない言葉に戸惑っている方は、少なくないでしょう。たとえば、お子さんに自閉症スペクトラム障害があって、そのお子さんの障害を説明するとき、「自閉症スペクトラム障害」「発達障害」「神経発達症」をどのように使い分ければ良いのでしょうか?重要なことは、障害の名前が変わっても、子どもたちの症状や困りごとまで変わるわけではないということです。とりわけ、発達障害は一人ひとり症状が少しずつ違うということが、これまで知られてきました。神経発達症という言葉が登場しても、そのことは同じです。一人ひとりの特性と能力に合わせたサポートが求められます。精神医学はまさに発展の途上にあり、今後も多くの言葉が新たに広まることが予想されます。その新しい専門用語は、実際のサポートにあまり関係ない場合もあれば、サポートのあり方を大きく変える場合もあるでしょう。簡単ではありませんが、こうした見極めが大切です。
2017年05月30日先週末(2017年5月21日)、NHKスペシャルで発達障害の特集が放送された。( NHKスペシャル「発達障害 ~解明される未知の世界~」 )番組内では、最新の脳科学研究や当事者への聞き取りにより、発達障害の人にはどんな風に世界が見えているのかを映像化したり、発達障害の人がどんな悩みを抱えているか、ひとつひとつの事例を丁寧に紹介。発達障害でない人にとっても、とてもわかりやすい形で解説していた。筆者は発達障害の子を持つ親として放送を楽しみにしていたが、期待を裏切ることのない、とても良い内容だったと思う。当事者の親として私なりの感想をまとめてみた。■やっぱり映像の力はすごい!まず、「おぉ!」と思ったのは、発達障害当事者の視点を再現した映像力だ。発達障害は外見からはわかりにくい障害だ。それゆえ、よく「我慢が足りない」「わがまま」などと言われ、なかなか理解してもらえないことも多い。だが、今回の番組の映像化により、一般の人にとっても発達障害の人が見ている世界がどんなものかわかり、ずいぶんと認識が変わったのではないだろうか。■もしかして、あれが息子の見ている世界なの…?私自身も、大きな発見があった。自閉症スペクトラムでADHDの傾向もありと言われている筆者の4歳の息子は、集団に向けた一斉指示が入りにくい傾向がある。確かに同世代と比べると、言葉の理解度は低いところもある。だが、決して言葉の意味が分からないというわけでもない。その証拠に、療育などで先生が目の前で1対1で説明すれば、指示に従うことができる。番組では、教室でいろいろなものが気になってしまい黒板に集中できない女の子の例や、カフェの雑踏の中で相手の話がうまく聞き取れない女性の例などが紹介されていたが、あれが息子が見ている世界なのかもしれない……と考えさせられた。今、保育園のクラスで集まる時、息子はたいてい後ろではじっこの方に配置されている(おそらく、もう一人の先生がフォローに入りやすいという配慮でこの場所になったのだと思う)。もちろん先生方がいろいろ考えた上での場所であり、それもありがたいのだが、先生が遠くなると先生の声はますます聞きとりにくくなってしまうし、注意も向けにくくなってしまう。番組を見て、例えば、集まりの時は思い切って席を先生のど真ん前に配置したら、注意力が変わってくる可能性もあるのでは? などと、息子をとりまく環境について、改めて見直すきっかけをもらった気がした。「この子には無理」「この子はやる気がない」ではなく、子どもの状態に合わせて環境を変えてあげれば、解決できることがもっとあるかもしれない。そして、息子ももっと今より楽しい生活が送れるようになるかもしれない。■みんなが楽になれる配慮は、障害にかかわらず真似したいまた、番組にはモデルの栗原類さんをはじめ、発達障害と診断された当事者たちが出演していた。みな、なんらかコミュニケーションに苦手を抱えており、スタジオのセットをより心地よい環境に変えたり、ずっと相手の目を見ないで話してもOKというルールを作ったり、ぬいぐるみを抱っこして気持ちを落ち着かせるという工夫もされていた。これ、発達障害にかかわらず、もっと広げてもいいのでは?だって、程度の差こそあれ、健常の人だってコミュニケーションで苦手なことを抱えていると思うのだ。健常の人だって、思った以上にコミュニケーションで必死に気をつかって戦っていると思うのだ。■どこからが個性で、どこからが障害?自閉症スペクトラムのスペクトラムとは、連続体のことだ。よく、虹に例えられる。虹は微妙に色が変わっていくが、その境界線ははっきりせず、基本的には連続している。 「今(番組で)見てきたような特徴は、どんな人でも多かれ少なかれありますよね。問題は、それがどのくらい程度が大きいのかということと、一番重要なのは、それによって自分やまわりの人にどれくらい生活に支障があるかということだと思うのです。逆に言うと、本人に特徴が強くても、まわりが全面的に受け入れてくれるような生活環境ならばあまり苦痛にならない場合もあるんです。(中略)本人と環境との関係というのが大きいですよね」出典: (NHKスペシャル「発達障害 ~解明される未知の世界~」番組出演者・本田秀夫医師のコメントより) このことは、以前取材した放課後デイを経営されている(株)アイム代表の佐藤典雅さんの「発達障害の子育ても健常児の子育ても、本質的には何ら変わりはない」や「普通って何だろう?」という話に通じるところがあった。 参考:【連載】大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界 出演者たちも、「発達障害というものでひとくくりにしないでほしいこと。一人一人の特徴は違うということ」を繰り返し伝えていたように思う。発達障害に目を向けるということは、一人一人の特性にきちんと目を向けるということ。それはすべての人へとっての、生きやすい環境作りにつながるのではないだろうか?■「社会の役にたつから認めるっていうのは、ちょっと違う気がする」今回の番組では、自分のことをきちんと話せるような高機能な人たちを中心に、発達障害が紹介されたように思う。後半では、発達障害の人の能力に注目した就労支援の話にまで展開した。もちろん、その取り組み自体はとても素晴らしいことだと思う。だが、今回はあまり紹介されなかったが、発達障害の中にはどんなにがんばっても就労が困難な人たちもいるのに…と、ちょっとモヤッとしたところで、有働由美子アナウンサーのこのひと言。「(発達障害の)能力が注目されると、能力があって社会の役にたつから認めるっていうのがあって、それもまた違うのかな…?と思って」ちょっとめでたしめでたしで終わりそうな流れの中、こういう意見をしっかりはさんでくれる有働さんのコメント、個人的にとてもうれしかった。NHKが1年かけて取り組んでいくという「発達障害プロジェクト」、今後はぜひ、自己表現がまだうまくできない子どもや、知的障害を伴う発達障害、コミュニケーションをとることが難しいような重度の自閉症の世界なども、取り上げてほしいと思っている。そして、司会はぜひ有働由美子アナウンサーとイノッチのコンビに続けてほしいと願っている。文:まちとこ出版社N 【発達障害についての連載一覧】大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年05月26日人口の9割が「定型発達症候群」!?NHKが発達障害プロジェクトをスタート「およそ20年前に、アメリカの研究所が残した報告から、全人口の9割以上がある深刻な症状にあることが判明しました。」Upload By 発達ナビニュースとあるニュース番組で、キャスターが紹介した「衝撃のレポート」以下のチェック項目に一つでも当てはまったら、人間関係に深刻な問題を引き起こしかねない、「定型発達症候群」の可能性があるというのです。・暇な時はなるべく誰かと一緒に過ごしたい・集団の和を乱す人を許せない・社会の慣習にはまず従うべきだ・はっきりと本音を言うことが苦手・必要なら平気でウソをつけるUpload By 発達ナビニュース…実はこれは、NHKが制作した架空のニュース動画なんです。NHKが2017年5月から1年をかけて展開する、「発達障害プロジェクト」のページ上で公開されています。Upload By 発達ナビニュース「発達障害プロジェクト」「定型発達症候群」という言葉にびっくりした人もいるかもしれませんが、これは、医学上の病名でも、公式に定められた障害の名前でもありません。1998年、発達障害のひとつASD(自閉スペクトラム症)と診断された海外の一般女性が、ASDに関するさまざまな報道への皮肉の意味で「創作」した言葉が発端であると言われています(諸説あり)。「定型発達」とは、発達障害と対比して、心身の発達が「定型(平均的)」という意味で、「発達障害ではない人」をさす言葉として用いられます。つまり「定型発達症候群」とは、発達障害の人から、いわゆる「普通の人」を見た視点です。でも、「普通」ってそもそもなんでしょうか?全人口の大半の人が定型的(平均的)に感じているから「フツウ」?それじゃあ、違った感じ方をしている人は「フツウ」ではないの?そんな問題提起の意味も込めて、冒頭の架空のニュース動画はつくられました。NHKの発達障害プロジェクトでは、これまで当たり前に考えられてきた「普通」の概念にとらわれず、発達障害のある人々の感じ方・考え方を様々な角度から紹介していくことで、発達障害のあるなしに関わらず、一人ひとりの多様な感じ方や生き方への理解の促進をめざしていきます。NHKスペシャル、あさイチ、ハートネットTVをはじめ、番組横断で、継続的に発達障害を取り上げていくことが今回のプロジェクトの特徴です。知ってるようで知らない発達障害のこと、みんなの投稿で“トリセツ”をつくろうUpload By 発達ナビニュース生まれつきの脳機能の発達のアンバランスさ・凸凹(でこぼこ)によって、社会生活に困難が発生する発達障害。「なんとなくは知っているけど、結局どういうことかわからない」「漠然としたイメージはあるけど、何に困っているのかわからない」という方も少なくないのではないでしょうか。プロジェクトページでは、「この際、はっきり知っておきませんか?」という呼びかけと共に、発達障害の定義や特徴、困りごとなどが、イラスト付きでわかりやすく紹介されています。コンテンツ監修は、LITALICO発達ナビの監修も務める、鳥取大学大学院の井上雅彦教授です。また、「みんなで作る発達障害の“トリセツ”」と題したコーナーでは、日常生活の様々な場面での困りごとや対応策を、発達障害の当事者やその家族、学校や職場などの周囲の人々の投稿を通して集め、公開していく企画もスタート。「生活・暮らし」「対人関係」「学校・職場」と、大きく3つのカテゴリーの中で、様々なテーマに対するみなさんの投稿を募集しています。サイトオープン時の2017年5月16日現在では、事前に集めた投稿の中から「聴覚過敏」に関するエピソードを18件公開しています。以下のリンクの投稿フォームから、それぞれのテーマに対する体験談を随時投稿することができます。Upload By 発達ナビニュースみんなで作る発達障害の"トリセツ"投稿フォーム5/21(日)21:00から「NHKスペシャル」で生放送特集!Upload By 発達ナビニューススペシャル, 「発達障害 ~解明される未知の世界~ (仮)」ウェブ上のプロジェクトページと連動して、NHKの様々な番組で、継続的・多角的に発達障害について取り上げていくのが、今回のプロジェクトの特徴。テレビ特集の第1弾は、NHKスペシャル「発達障害 ~解明される未知の世界~ (仮)」。初回放送は、2017年5月21日(日) 午後9時00分~9時59分です。これまで、主に社会性やコミュニケーションに問題がある障害として知られてきた発達障害ですが、最新の脳科学研究や当事者への聞き取りにより、生まれつき、独特の「世界の見え方・聞こえ方」をしているケースが多いことがわかってきました。多くの人にとっては何でもない日常空間が、耐えられないほどまぶしく見えたり、小さな物音が大音量に聞こえてパニックになったり…NHKスペシャルでは、こうした発達障害当事者の方々の独特の感覚・認知や、それによって生じる生きづらさを映像を通して再現し、「目に見えにくい」障害の実態を伝えることに挑戦します。番組中では、大阪大学と東京大学が共同研究・開発した「自閉症知覚シミュレータ」も登場。発達ナビでは、当事者やご家族の方をお招きしての体験会兼取材・撮影に協力しました。今回のNHKスペシャルの最大の特徴は、生放送・リアルタイムで視聴者からのコメントを紹介しながら展開していくこと。たとえ同じ診断名でも、一人一人の特性や感じ方は、本当に様々です。十把一絡げに「発達障害」をまとめてしまうのではなく、一人一人の多様な暮らしぶりや思いを紹介していくことこそが、発達障害への理解・関心を広げていく上で大切だという趣旨からの企画だそうです。ご自分の経験について伝えたい思いやご経験、発達障害に対する疑問や悩みがある方は、ぜひ以下のメールフォームからご投稿ください。スペシャル, 発達障害特集メール投稿フォームUpload By 発達ナビニュース 「発達障害プロジェクト」また、NHKスペシャルの生放送終了直後から、「発達障害プロジェクト」ページ上でライブストリーミングが始まり、番組のアフタートークが催されるようです。ここでは、生放送中に紹介し切れなかった視聴者からの投稿を追加で紹介していくとのこと。あなたの投稿も紹介されるかも…!?発達ナビTwitterでNHKスペシャル&アフタートークを実況中継!発達ナビ編集部では、5/21(日)21:00からのNHKスペシャル及びアフタートークを実況中継予定!Twitterをご利用の方は、ハッシュタグ #NHKスペシャル #発達障害 でぜひ感想をご投稿ください。番組前の予習に、発達ナビの関連記事はこちら!プレスルーム: 5月21日(日)放送 NHKスペシャル「発達障害~解明される未知の世界~」の制作にLITALICOが協力しました。
2017年05月17日コーヒーの産地として名高い中米ニカラグア共和国。広い国土に湖や火山、ジャングルなど豊かな自然に恵まれているが、一方で「中南米最貧国」でもある。この地域に世界中の誰もが使える「共通言語」で、人々を笑顔にさせるカフェがあるのだとか。言葉を交わさないカフェスペイン語で「笑顔のカフェ」という意味を持つ「Café de las Sonrisas」がそのカフェだ。かつてスペインの植民地で、公用語がスペイン語のニカラグア共和国。しかし、このカフェでは客と店員が言葉をかわすことは一切ない。なぜならここで働くスタッフはウェイターから料理人まで全員が難聴であり、いわゆる「障がい者」だからだ。Photo by Café de las Sonrisasニカラグア共和国では2003年の時点で10人に1人が何らかの障がいを持っているのに対し、多くの企業では従業員数50名に対し2人の障がい者を雇うというニカラグアの法定基準が守られておらず、障がい者の失業率が約99%にも上るという。Photo by Café de las Sonrisasこの現状を打破するべくスペイン人のアントニオ・ピエトロ氏がNPO「Centro Social Tio Antonio」を立ち上げ、その事業の一環として5年前に「Café de las Sonrisas」をオープンしたのだ。Photo by Café de las Sonrisasオーダーはメニューの指差し方式だが、カフェ店内の壁に飾られた絵による様々なフレーズの手話を実践することによってスタッフとの会話が可能となり、障がい者と健常者だけでなく言語の垣根をも超えた繋がりを持つことができるのだ。アントニオ氏は「企業が障がい者を雇うことと、障がい者自身が働くことへ恐れを払拭するための手本になることがこのカフェの目的である」と話している。(参照:米HUFFINGTONPOST)Photo by Café de las Sonrisasクロネコヤマトが始めた「パン屋」地球の裏側、中米ニカラグアではこの「笑顔のカフェ」の他に若者や失業者のための職業訓練所としての手製ハンモックストアなどCentro Social Tio Antonioの元、障がい者の労働支援の輪が広がっている。しかし、実は日本でも障がい者と健常者との間にある距離をぐっと縮める素敵なパン屋さんが存在する。「障がいのある人もない人も、共に働き、共に生きていく社会」。このノーマライゼーションの理念を掲げる「焼き立てのおいしいパンのお店」スワンベーカリーだ。現在、直営店4店、フランチャイズ店23店、合計27店が全国展開し、日本の障がい者雇用の新たな形を作った株式会社スワンの藤野さんに障がいを持つ人が働くこと、障がいを持つ人と共に働くことについて話を伺った。Photo by スワンベーカリー「クロネコヤマトの宅急便」でおなじみのヤマト運輸株式会社代表取締役、会長を経てヤマト福祉財団の理事長となった故・小倉昌男氏が設立した、株式会社スワン。当時、障がい者が働く共同作業所では月給が1万円にも満たないことを知り、自立するにはほど遠い現状に疑問を持った小倉氏。そこで、長年経営者として培ってきた経験を生かし、障がい者雇用に対する意識改革を図るため、障がい者による「作品つくり」ではなく、一般の消費者を対象として売れる「商品作り」を目指したセミナーを1996年から全国各地で開催した。この過程の中で障がい者に対して月給10万円以上を支払うことを実践する事業を開始することを決め、障がい者雇用の場を作り、障がい者の自立と社会参加を応援し、働く喜びと幸せを感じられる社会を実現するために設立したのがスワンベーカリーである。Photo by スワンベーカリー従業員95名の内、知的障がい者34名、精神障がい者6名と約半数の従業員が障がい者であるが、健常者も障がい者も共に働く仲間として、お客様が喜んでいただけるような商品作り、接客をしていくことに重点を置いている。また、スワンで働く健常者は障がい者と働くにあたって特別な訓練などはしておらず、ほとんどの社員が入社して初めて障がい者と働くことを経験する。さらに、スワンは福祉施設ではなく、あくまで「焼き立てのおいしいパンのお店」であるということが前提。働いている障がい者は、それなりに就労出来る能力があり、指示されたことは理解ができる人たちであるため、障がい者の従業員を特別扱いすることなく同じ働く仲間として日々接しているそうだ。「障がいがある人と働く」ということに関して、生産性が落ちることは避けられない。しかし、「障がい者を雇う=何から何まで面倒を見なければいけない」という一般的なイメージとは異なり、出来ない部分を健常者が少しだけフォローをしてあげれば普通に働ける障がい者はたくさんいるというのが事実。また、障がいを持つ従業員のフォローをすることも、健常者である社員の仕事の一つだと話している。さらに、障がいを持つ人がスワンで働き、与えられたポジションをやりこなすことで責任感と自信が生まれ、自分で働いて得た給料で今まで出来なかった習い事に行ったり、特に女性は見た目を気にするようになり、大きな変化が現れるという。スワンではこれまでに350名以上の障がい者の、経済的に自立、仕事を通しての社会参加に貢献をしている。完璧な人などいないのに、「障がい者」を差別する日本社会電車の中やレストランで障がいのある人を見かけた時、無意識に目を逸らしてしまう人は少なくないはず。そこで、1つ思い出してみてほしい。あなたは幼い時、同じような状況の中で大人から「ああいう人をジロジロ見てはいけない」と言われた経験はないだろうか。そう、その幼い頃に刷り込まれたイメージこそが「障がい者=触れてはいけない」という社会のタブーを作り、無意識の差別を生んでいるのだ。しかし、グラナダのカフェやスワンベーカリーの関係者の人々が口を揃えて主張しているのは、「障がいがあること以外は私たちと同じ社会の一員である」ということ。そして、「できないこと」ではなく「できること」に目を向け、それを最大限に活かせるような環境を作りを重要視すること。視力が悪い、膝や腰が弱い、お腹をよく壊すなど、私たちは誰しも完璧な人間ではないからこそ、「人と人との繋がりが暖かいものになる」ということを忘れてはいけないのではないだろうか。Text by Chisato Tanabe ーBe inspired!
2017年05月12日私って発達障害?気づいたのは42歳の時でした。出典 : 子どもの発達障害の場合、まず親や周りが気づいて、子ども自身は何の検査をされているのかわからないまま、診断を受けることが多いと思います。診断を聞くのも受け入れるのもまず親で、そこからタイミングを図って告知するというのがよく見られる流れではないでしょうか。それに比べて大人の場合は、仕事や日常生活で「なんだか変だな。どうしてうまくいかないのだろう?ひょっとして『私って発達障害?』」と疑ったうえで、自分の意志で検査を受けることが多いと思います。私は娘がアスペルガー症候群と診断されてから2年後、42歳の時にコンビニでのバイト中にパニックを起こしたのがきっかけで、発達診断を受けることになりました。しかし、その結果を受け止め、自身のことを理解するまでの道のりは、決して平坦なものではありませんでした。9年の付き合いの主治医の診断は・・・出典 : 当時の主治医は、それまで9年にわたって私を診察してきてくれた精神科の先生でした。でも、その主治医は発達検査の結果を見て「うーん、ヨーコさんが発達障害とは思えないんだけどなぁ」と言うだけでした。このままじゃらちが明かないと思った私は、同じ病院内にいる娘の主治医に事情を話して、検査結果を見てもらいました。ざっと目を通した先生は「ああ、アスペルガー症候群ですね」と言いました。その後、私の特性も説明してくれてとても納得したのですが、それを主治医に伝えても「そうかなぁ?」とまだ納得できない様子。私の主治医の先生は発達障害には詳しくない様子で、長い付き合いの間でも先生の口から「発達障害」という言葉を聞いたことがありませんでした。だから、今まで長い間見てきて私の様子から「発達障害とは思えない」と言ったのではないかと思っています。私はあきらめずに先生やカウンセラーに「こんな困りごとがあってずっと苦しかった」、「娘が診断を受けたときの説明がそのまま私に当てはまる」と訴え続けました。そして「精神障害者手帳を取りたい」と先生にお願いしたのです。その時出してもらった診断書を見ると「広汎性発達障害」という診断名が記載されていました。こうして私は診断書を得るところまでこぎ着けることができました。しかし私は、ちゃんとした診断の上で広汎性発達障害と言われたのか疑問を抱くことになりました。それは診断が出たとはいえ、発達障害に詳しくない先生からの診断であることと、半ば無理やり勝ち取った診断のように感じられたからです。私が「ちゃんとした診断」を求めたわけ出典 : ひとまず診断を受けた私は、仕事を辞め、障害者福祉を受けながら暮らしていく道を選ぶことにしました。そんなときに、相談支援員から気になる話を聞きました。ある病院に発達障害に詳しい医師がいて、その病院で発達検査を受けたら、ものすごく詳細な所見をもらえて、説明の時も自分の特性や向いている職業まで教えてくれるらしいというのです。私はその"完璧"とも言える診断にひどく心惹かれました。「広汎性発達障害」の診断は出ていたものの、改めて発達障害に詳しい医師にきちんと診てほしいと思っていたからです。それは、「あなたはこういう人ですよ」という自分に関する説明書が欲しかったからでもあります。それまでの人生は謎だらけでした。どうしてみんなのように友達と打ち解けて遊ぶことができるのか、どうして他の人は分からないことは適当にしておいたまま勉強していい成績をとれるのか。社会に出てからは、なぜ他の人は会社の方針に溶け込んで洗脳されたようにふるまえるのか、なぜ自分はみんなと同じように仕事ができないのか、なぜミスばかり繰り返してしまうのか…。私はなぜ、他の人と同じようにできないのかと何度何度も悩んだのです。ずっと苦しかった。ずっとさみしかった。その診断があれば、今までの謎が解けてこれからの人生が開けるかもしれないと思ったのです。そして、期待に満ちあふれてその病院に転院することしたのです。「こんなことまで聞かれるの!?」驚きながらも、その専門性に感動!出典 : その病院は今までとは違うところばかりでした。事前に渡される問診票では、ハイハイした月齢や喋りだした月齢など乳幼児期の様子も事細かく聞いてきます。「人の臭いや物の臭い、ものの見え方や感触や音に極端な興味を持つことが、これまでにありましたか?」など、0歳から5歳くらいまでの成育歴の質問が多いので、親に見せて聞きながら回答を書きこみました。病院に問診票を持っていくと、それを見ながら「何か好きな素材や逆にこれは受け付けないというものはありましたか?」「学校では得意・苦手な教科は何でしたか?」「忘れ物は多かったですか?」「臭いや光、味に敏感ですか?」「仲の良い友達はいますか」など次々と追加の質問を受けました。その答えを聞いた先生は納得したように頷き「今ついている診断で間違いないでしょう。それに加えて注意欠陥障害もあるでしょうね」と言われました。この診察に私は感銘を受けました。というのは、質問は自閉症の子どもに特有の症状について的確に尋ねられており、追加の質問でも問診の答えを確かめるように進めてゆくことが分かり、先生の専門性の高さに感心したからです。ただ正式な発達検査を受けることはできませんでした。これは発達検査に使われるWAIS-Ⅲは、一度受けたら次は2年間は空けなければいけない決まりがあるためです。療育手帳取得挑戦の際にすでにWAIS-Ⅲを受けたことがあった私は、この2年間のインターバルが経過していなかったのです。それでもなお、憧れの診断にこだわる私に、ソーシャルワーカーはこう言いました。「とことん気になる、知りたがるというのは、生きづらさにつながるアスペルガーの特性からきてると思う。憧れの診断書が手に入らなかったら次に何が欲しいの?」その問いは、私が医療に何を求めているのかを問うものでした。自分の説明書はやっぱり欲しいけれど、2年待たなければならないのはどうしようもない。その現実をこの問いで突きつけられたのです。このとき初めて前を向いて、いま困っていることを何とかしてもらうことが大事だと思うことができました。その上で私の答えは「今の心のしんどさをやわらげてほしい。発達障害であるという視点から二次障害の精神症状やうつの治療もしっかりしてほしい」でした。こうして、先生の専門性を信じてその病院に通い続けることを決めました。自分の特徴を知ることで、今までの謎が解けてゆくように出典 : 今は二次障害である精神症状やうつの治療を受けつつ、自分の困りごとの原因は何なのか、先生の解説で謎が解けていっている感じです。そして生きづらさの解消のため、それまで飲んでいた薬は大幅に見直され、ADHDの治療薬のストラテラを服用することに。新しい主治医を始め、ソーシャルワーカーなど理解ある人に関わってもらっているおかげで、自分の特性が生活や仕事のどんなところに影響を与えているのが理解することができるようになってきたのです。自身の弱点や、疲れ切ってキレてしまう前の予兆なども分かるようになり、意識して自分をコントロールすることできるようになったと感じています。診断を生かしていくために出典 : 発達障害の診断を受けたら、具体的な自分の特性をじっくりと説明してもらうことをお勧めします。そうすることで、今までの生きづらさの理由が氷解し、自分の特徴をしっかりと理解することができるはずです。その上で、医療や福祉の支援を受けて理解者・支援者を増やし、困っているときは助けてもらうことができれば、自分の直面した困難にくじけてしまうことも防げるはずです。繰り返しになりますが大切なのは、診断を受けっぱなしで終りではなく、自分の特徴を知り、より自分をコントロールできるようになることです。診断を受け、なにが自分の生きづらさを作っているのか。自分で工夫できるところはあるのか。どんなサポートを受けたらいいのか。それを知ることが、生きづらさの解消につながるのではないでしょうか。
2017年04月28日【オレ様リーマンの非ジョーシキ恋愛入門139】約半年間、爆速でフッたりフラれたりを繰り返した必死すぎる婚活経験を生かして、なぜか上から目線で本音の恋愛論を語ります。ちなみに普段は、どこにでもいそうなただのアラサーリーマン。婚活している女性と話すとよく出てくるのが、コミュニケーションに問題がある、要するにコミュ障な男性の話だ。例えば、自分からは全く話さない。仕方なく女性から、「休みの日は何をしてるんですか?」とか聞いても、「何もしてません」などと返されてしまい、話が全く盛り上がらない。というか、盛り上げようという意識を感じない。なのにデートが終わると、「今日すごい楽しかったです!」とやたらテンションが高いLINEが送られてくる。ワケがわからないので返信しないと、「何で返信くれないんですか?」「非常識じゃないですか?」とキレる。そういう男性が出会いの場にはある一定の確率でいるようだ。なんなんだろうね、いったい?■女性がコミュ障になる理由今さらっと「なんなんだろうね」とつぶやいたことが、コミュ障な男性を理解するヒントである。ところで、コミュ障な女性というのもオレはいると思っている。ただし、男性のそれとは質が違う。女性であれば、社交辞令的な、いわば表面上の会話は普通にできる。だが、少し話すとわかる。「この女、コミュ障だな」と。延々自慢をしたり、逆に自虐的なことばかり言い続けたりし始めるからだ。女性の場合、女性特有の文化とでもいうか、だれとでも社交辞令的な会話はする。テキトーに会話も合わせる。たとえ、相手のことが嫌いであってもだ。だから、とりあえず表面上、気を遣うぐらいはできるようになるのだろう。だが、周りが合わせてくれる分、自分の話に問題があることに気づけない。そういう流れで、コミュ障な女性が生まれてしまうのだろうと思っている。■では男性の場合はどうか?さっきオレが「なんなんだろうね」と書いたのは、変な男とはほとんど話したことがないからである。暗い、空気が読めない、突然キレる…そんなヤツと関わると面倒くさいので、できるだけ話さないようにしている。それが女性とは違う、男性の文化である。嫌いな男とは関わらないし、関わらなくてもそれほど問題はない。また、男性のほうが一人で黙々とパソコンに向かっているような仕事も多い。人と話すのが苦手だと、話しかけられることもなくなる。さらには、人と話さなくていい仕事を選ぶ。つまりコミュ障な男とは、ほとんど他人と話すことがないヤツなのだ。話すことがないので、自分から話題を振らないし、気も遣えないし、空気も読めないし、自分勝手にキレるのだろう。■会ったら切るこのコラムを読んでいる人の多くは、恋愛だとか結婚だとかに興味がある女性だろう。もしあなたが頑張って出会いを作ったら、残念ながらコミュ障な男ともある一定の確率で出会ってしまう。そんなときはどうするか?切ろう。すぐに切ろう。連絡先を聞かれてその場で断るのは難しいかもしれないが、返信は一切しなくていい。どんなにしつこくされても、泣き落としにかかられても、返しても問題なさそうな内容であっても全てムシでいい。そのうち、「携帯が壊れたのだろう」とでも思って勝手に諦める。コミュ障な男に中途半端に情を見せた結果、大変なことになってしまう女性もいるのでご注意を。ライタープロフィールオレ様リーマン「32歳で結婚する人に出会う」と占い師に言われたことをきっかけに、婚活と名の付くものは片っ端からやってみて、約半年で運命の女性と出会うことができたアラサーリーマン。膨大な婚活経験を生かして、本音の恋愛論を語ります。オレ様リーマンの婚活方法をまとめた『オレ様婚活術』、kindleにて発売中!『オレ様婚活術: まだ簡単に結婚できると思ってんの?』
2017年04月18日「発達障害啓発週間」(4月2日~8日)にあわせ、発達ナビでアンケートを実施厚生労働省が定める「発達障害啓発週間」(4月2日~8日)にあわせ、LITALICO発達ナビでは発達障害に関する意識調査を実施しました。ご協力してくださった皆様どうもありがとうございました。この記事では、調査結果の一部を抜粋しお伝えします。<調査対象について>「LITALICO発達ナビ」会員へのメールから、アンケートフォームにて回答いただいた発達障害当事者:101名、発達障害の子どもをもつ保護者:788名の回答を集計しました。(調査期間:2017年3月7日~3月15日)※調査結果の構成割合は四捨五入をしているため、合計が100 にならない場合があります。発達障害児の子育てで困り感を感じている保護者は約8割お子様の発達障害の特性と思われることによって、保護者であるあなたご自身は、どの程度日常生活で困っていますか?という質問に対して、「とても困っている/やや困っている」と答えた保護者は80.7%、「全く困っていない/あまり困っていない」と答えた保護者は19.3%と、日常生活に困りを感じている保護者は8割を超えました。Upload By 発達ナビニュースどういったことに困りを感じているかに関しては、「障害の特性ゆえの言動が周囲から理解されず、しつけをしていないといつも白い目を向けられ精神的に追い詰められる場面が多い(ASD・6~12歳の親)」「他人について行く、母子分離が難しい、訓練会やセンターでも体操や手遊びを嫌がる(ASD・3~5歳の親)」「本人の生きづらさを変える手助けをしてやりたいが、その方法がわからない。気持ちが不安定になり荒れているのを見ても、寄り添って落ち着くのを待つしかできなくて苦しい。(ASD・13歳以上の親)」「将来が心配。毎日息子が朝ブツブツ文句を言って大変。何でも決めつける。こだわりが強すぎて疲れる。(ADHD・6~12歳の親)」「指示が入りにくいため、同じ事を何度も伝えなくてはいけないが、上手く伝わらない。思い立つと行動してしまうため迷子になることが多い。(ASD・6~12歳の親)」などといった意見があげられました。発達障害の診断を受けると楽になる?苦しくなる?お子様が発達障害と診断・告知された後の心境に、どのような変化がありましたか?という質問に対しては、「とても楽な気持ちになった」が12.1%、「やや楽な気持ちになった」が32.9%、「特に変化はなかった」が11.5%、「やや苦しい気持ちになった」が21.1%、「とても苦しい気持ちになった」が22.5%と、楽な気持ちになった親御さんは計44.9%、苦しい気持ちになった親御さんが43.5%とほぼ同数になりました。Upload By 発達ナビニュース楽な気持ちになった理由としては、「子どもの行動の理由がわかったから(ASD・13歳以上の親)」「今後の子育てをどのように進めていけばよいかがわかったから(ASD・3~5歳の親)」「自身の育て方に問題があったのではないことがわかったから(ASD・6~12歳の親)」などが挙げられました。苦しい気持ちになった理由としては、「もっと早く診断されていればよかったと思ったから(ADHD・13歳以上)」「子どもの将来が心配になったから(ASD・3~5歳)」などが挙げられました。周囲の無理解を感じる理由は…お子様の発達障害の特性について、周囲の人たちから理解されていると思いますか?という質問に対しては、「理解されている」が50.7%、「理解されていない」が49.3%と、ほぼ同数となりました。Upload By 発達ナビニュースどういうときに理解されていないと感じるかに対しては、「見た目がふつうに見られるから(ADHD・6~12歳の親)」「厳しく躾ければやれるようになると思われている(ASD・6~12歳の親)」「本人の困り感が見た目には分かりにくく、助けてもらえない。(ASD・6~12歳の親)」「勉強もでき、多動もないため一見なんともなく見えるため、親が気にしすぎだと考えられがち。(ADHD・6~12歳の親)」「見た目は普通なので、親が甘やかしているからワガママなだけなんじゃないかと思われる。(ASD・3~5歳の親)」などといった意見が挙げられました。発達障害のある子どもの保護者は、世間の発達障害に対するイメージをどう思ってる?発達障害に対する世間のイメージと実態にギャップを感じることはありますか?という質問に対しては、「ギャップを感じる」は80.8%、「ギャップを感じない」は19.2%と、約8割の保護者がギャップを感じているという結果になりました。Upload By 発達ナビニュースどのようなことにギャップを感じるかに関しては、「発達障害と診断されたらお先真っ暗と思っている方が多いけど、そんなことない!わかることでできるフォローがある!(ASD・3~5歳)」「考えるプロセスや、行動というアウトプットが異なるのでなく、そもそも感じ方というインプットの段階が異なっており、しつけや訓練でどうなるものでもないこと(ASD・6~12歳の親)」「1つの診断名でもいろんなタイプの人がいることを知らない人が多いなぁと思うし、自分も息子のことだけをみて発達障害を理解してはいけないなぁと自戒の念も含め思う。(ASD・6~12歳の親)」「発達障害そのものを知らない人が多いと思う。もっと重くてコミュニケーションがとれないような障害と思われているように思う。(ASD・6~12歳の親)」「発達障害は天才だと思われているせいで、親の育て方で変わると思われているところ(ASD・13歳以上)」などといった意見が挙げられました。さらなる調査結果はプレスリリースにてその他の回答に関してはLITALICOのプレスリリースに記載しています。発達障害の当事者・発達障害児の保護者へ意識調査を実施 過半数の当事者・保護者が「発達障害」に対する社会の理解は「進んでいない」と回答LITALICO発達ナビでは今後も発達の気になるお子さんや親御さん、当事者のさまざまなご意見やご経験を参考にしながら、よりよいサービスづくりと世の中に対する情報発信を続けていきます。今後ともLITALICO発達ナビをよろしくお願いします。
2017年04月07日「できること」を増やしたい!発達障害のある子どもを持つ親心出典 : 自分の子どもが発達障害だと診断を受けたならば…。「発達障害児でもできること」「発達障害児の発達を促すこと」を血眼になって探すのが、親心なのかもしれません。私もその1人でした。発達障害児を育てていると、どうしても出来ない部分ばかりが目についてしまいます。「協調運動ができない」「手先が不器用」「跳び箱やマット運動ができない」「字をマスの中におさまるように書けない」「きちんとした姿勢を維持できない」…他の子どもと並べては、「うちの子だけこんなこともできない…」と落ち込む日々が続いていました。「出来ることを褒めてあげて」と育児本には当たり前のように書いてあります。けれども、保育参観やちょっとした行事で「できない息子」を目の当たりにするたびに、「一体どこを褒めればいいんだろう…」という気持ちにすらなります。そんなとき、インターネットには心ひかれる文言が出典 : そんなどん底の気分になりながらも、「なんとか息子のできることを増やしたい」と思いネットを検索してみます。すると、キラキラときらめく言葉たちが並んでいるのです。「発達障害児向け○○!」「○○は発達障害児の発達を促してくれます!」「○○をすれば、発達障害は治る!!」こんな煌めくような魅力的な言葉たちが、私の親心をがっちり掴んでしまいました。「発達障害向け」の文言をみると居ても立っても居られなくなり、私はすぐに申し込みのメールを書き始めていました。それがどんな内容の習い事や塾であっても、息子に意思を確認することはありませんでした。これが原因で、私がしてしまった失敗を2つ、ご紹介します。出典 : ネットでの検索に取りつかれていたころ…私が一番に心惹かれてしまったのは、「発達障害を治す能力開発塾」でした。この「発達障害を治す」という触れ込みに惹かれてしまうのは私だけではなかったようで、中には新幹線や飛行機に乗って相談に訪れる人も後を絶たないそうです。ところが相談に伺ってみると、その塾の目標は「子どもを支援級に入れないこと」でした。私は当時、まだ小学校就学後のことまで考えてはいませんでした。その目標が果たして本当に適切かどうか、まだ分かっていなかったのです。その塾が何を目指しているのか、発達障害児がどう育っていくことを望んでいるのかという点について意見が合致しない場合は、私は入塾はやめたほうがいいと思いました。結果的に、入塾はお断りしました。「発達障害児向け」「発達障害が治る」という文言だけに飛びついてしまい、実態をきちんと把握していなかった失敗例です。出典 : 他にも、「これは発達障害児の発達に良い」「前頭前野の発達を促す」という言葉に、私は飛びついてしまいました。そんな私を突き動かしたのが、「乗馬は発達障害の発達に良い」「カヌーは発達障害児の発達に良い」という情報でした。私は息子を連れて、発達障害児を対象とした乗馬教室とカヌー教室に出かけました。その教室では他に参加する子どもたちもみんな同じように特性がある子どもたちだったため、息子だけが浮いてしまうこともないだろう…という期待もありました。ところが…。感覚が過敏な息子は、馬の臭いと大きさと肌触りにパニックです。泣いて泣いて暴れて暴れて、止まらなくなってしまいました。そんな息子を横目に、他のお子さんたちは悠々と馬に乗っています。カヌーはカヌーで、救命胴衣の感触にパニックになり大泣き。さらに、前日雨が降って川岸がぬかるんでいたのが嫌だったようで、足に泥がつくたびに大泣き。ここまで来て、こんなに息子を泣かせて、自分はいったい何がやりたかったんだろう…。私は帰りの車でため息しか出ませんでした。この教室以後、息子は馬が怖くなってしまい、今でも馬に近づけません。大切なのは、「発達障害児向け」ではなく「息子向け」だった出典 : 数え切れないほどの失敗を繰り返して、私が学んだのは、大切なのは「発達障害児向け」ではなく「息子向け」のものを選ぶことだということでした。いくら「発達障害児向け」と銘打ってあっても、息子に合った環境整備がされているとは限りません。いくらそのアクティビティ自体が発達障害児の発達に良いとしても、息子は盛大なパニックを起こし、それが失敗体験になってしまいました。逆に、発達障害児対象のアクティビティでなかったとしても、息子に合った環境整備がきちんとできていれば、息子は楽しくこなすことができます。成功体験につながることもあるでしょう。「発達障害児向け」「発達障害児の発達に良い」というのは、あくまでも理論的な話です。脳回路の話などが出てくると、どうしても飛びついてしまうのが親心。でも、理論と実践は違うのです。適切な環境整備と子どもに「やりたい」という気持ちが少しでもあれば、それが一番「その子の発達に良い」ことなのだということを忘れてはいけないのだと思います。
2017年03月30日私が「障害」という漢字表記を使う理由出典 : 最近ではいろいろなメディアや個人の意向によって「しょうがい」という単語の表記が様々です。スタンダードに「障害」であったり、または「害」の字に抵抗があるとのことで「障がい」または「障碍」と表記されたり…。「障がい」や「障碍」を使う方は特に、それぞれに思いや考え、配慮が詰まっているのだと感じます。ちなみにこの発達ナビが「障害」と表記するのにはこんな理由があるそうです。障害児の表記について当ホームページでは、「障がい児」を「障害児」と表記しています。「障がい児」という表記の場合、音声ブラウザやスクリーン・リーダー等で読み上げる際、「さわりがいじ」と読み上げられてしまう場合がございます。そのため、「障害児」という表記で統一をしています。私は基本的に「障害」という表記を使います。それには、一応こんな理由があります。・「障がい」という書き方がなんだかビジュアル的にアンバランスで「がい」だけ妙に目立つから・「障害」は当事者にあるものではなく、当事者と社会の間にあると感じるから。つまり障害の「害」が当事者を指すとは考えていないから。・ちょこっと文字を書き換えるだけで「障害」という単語のイヤな雰囲気からは逃れられない、そして単語の一部を変えることでは結局何も変わらないから。特に私が強く思うのは3つ目の理由です。「障害」であろうが「障がい」であろうが「障碍」であろうが、「しょうがい」という言葉にはなんだかネガティブな響きがするように私は感じてしまいます。その原因はなんなのでしょうか。「障害」という言葉そのものに、ネガティブな響きがあるのはなぜだろう出典 : なんとなくいやな響きがする理由の一つとして多くあげられるのが、やはり「害」という漢字の影響力でしょう。だからこそ、「害という字を使わないで」という意見が生まれているのだと思います。しかし私はそれだけではない気がしています。結局は、「障害」という言葉に対してついてしまったイメージが問題なのではないでしょうか。歴史的にも障害者は排除され、隔離されてきた事実があります。「障害」または「障害者」という言葉にネガティブな物事がひも付けられてきたからこそ、この「障害」という言葉を敬遠したくなる気持ちが生まれるのではないかなあ、と感じています。そう考えると、これからも「障害」「障害者」という言葉やイメージはやはりネガティブなままなのでは?と思ってしまいます。いくら表記を変えたところで、言葉そのものに対するイメージを覆すことは難しいでしょう。だったら、言葉そのものを変えちゃおう!出典 : そこで私は、「表記をちょこっと変えるのではなく、『障害』という言葉自体変えちゃったらいいんじゃない!?」と考えました。若い方はご存知無いかもしれませんが、今「認知症」と呼ばれている病気は以前「痴呆症」と言われていました。「障害」よりもよっぽど差別的な言葉だと個人的に感じていた「痴呆」という単語。私と同じように考えていた世の中の流れとともに、「認知症」へと変化しました。だったら、「障害」も他の言葉になるんじゃない?世の中の流れで変えちゃえばいいんじゃない?では、どんな言葉がいいでしょうか。ちょっと考えてみました。■外国の「スペシャルニーズ」から頂いて「特要」?■状態を表す言葉として「大変者」「困難者」?…でもこの決めつけ方は良くないなぁ。■「ちょっと(Chotto)違う(Chigau)ところが(Tokoroga)あります(Arimasu)」で「CCTA」?…私ごときの語彙力ではまったく浮かばないものです。発達障害に関して言えば、「発達凸凹」という書き方をされる方もいらっしゃいます。発達に凸凹があるということで起きる困り感を表しているのかと思います。ただ私にとってみれば、子ども達の凸凹から生まれる社会的な困難さは凸凹とかそんな可愛いレベルじゃありません。「発達ロックだし発達パンクというか発達デスメタルだよ!」なんて感じる日々です。無意味な議論かもしれない。それでも、考え続ける必要があると思うから出典 : すっかり取り留めもないことを書いてしまいましたが…。私はこの議論が無意味だとわかっていても、終わりがないことだとわかっていても、「障害」という言葉やこの言葉の持つイメージで傷つく人がいるのであれば、考え続ける必要はあるのではと思っています。もしもこの障害という言葉に変わる言葉があるとしたら、皆さんはどんな言葉だと思いますか?
2017年03月29日意思決定の力で変身!!Upload By 荒木まち子Upload By 荒木まち子まるで別人!別人28号モード今回のカルタの「別人28号」は、成人した自閉症の娘さんを持つ先輩お母さんであるTさんの言葉です。「苦手なことでも自分の意思が入っている時“自分で決めたこと”は頑張れるのよね。まるで別人のようにテキパキ動けたり早足で歩けたり^^私は『別人28号』って呼んでるの。」Tさんの娘さんの意思決定エピソード出典 : さんの娘さんにはこだわりや癇癪、視覚の過敏があり、トイレの黒や赤のピクトグラムが特に苦手でした。将来トイレに入れないのは困ると考えたTさんが、娘さんが中学生の時に外出先でトイレにチャレンジしたところ、娘さんは恐怖で「絶叫&大暴れ」だったそうです。その後はピクトマークの無いトイレを調べたり、長時間の外出を控えたりしていたそうですが、ある時、どうしても我慢できなかった娘さんは自らトイレに行くことを決め、下を向き震えながらもトイレに向かったそうです。足早に戻った後、緊張から解放され深いため息をつく娘さんの姿を見た時、Tさんは「こんなに嫌な事でも、自分の決めたことは頑張れるんだな」と思ったそうです。いくら意思決定が大切だからといっても…出典 : いくら本人の意思が大切、といっても・うちの子はまだ小さいから意思表示ができない・子どもの意思ばかり優先していたら生活のリズムが乱れてしまう・我儘な子になってしまいそうと心配される方もいらっしゃるかもしれません。その場合は絵カード、写真などを使っていくつかの選択肢を示し、本人に選ばせると良いと思います。最初はうまくいかないかもしれませんが、お子さんに分かりやすい方法を探して繰り返し試していくうちに身についていくはずです。「自分の要求を表現する手段を知ること」「自分で選ぶこと」「選んだことが実現すること」を理解すると癇癪やパニックはぐっと減るはずです。意思を表現する手段を身に付けることの大切さ出典 : 子ども自身が1.自分の気持ちを表現する(親以外の第三者に伝える)手段2.自分の意思が認められることによる自己肯定感3.自分で決めた事に対する自己責任感を身に付けることは、進路を決める時や自我が芽生える思春期、親亡き後にどう暮らしていくかを決める時にとても大切になってきます。親や支援者主体ではなく、本人の意思を尊重した支援こそが当事者にとっての一番の幸せだからです。ちなみに発達障害の我が子(高校2年)は現在1と2に苦戦中です。早期発見・早期療育が大切だと思う理由のひとつ早期発見・早期療育したからといって自閉症や発達障害が治るわけではありません。しかし、早くから子どもの特性を理解することで、その子に合った「意思表示の手段」を探すことができます。また支援者(理解者)と繋がることで、子どもが安心できる環境を小さいうちから作ることもできます。早期発見・早期療育は、本人が望む支援=「意思決定支援」の為にも欠かせないものだと思います。
2017年03月06日知的障害・自閉症のある人の自傷行動とは出典 : 「自傷行動(自傷行為)」とは、自分で自分を傷つける行動のことです。自分を傷つける行動にはさまざまなケースや要因がありますが、知的障害のある人や、自閉症で知的障害のある人に見られることもあります。この記事では、知的障害や自閉症に関連して起きる自傷行動(以下自傷行動とする)について解説します。知的障害や自閉症に関連して起きる自傷行動は、年齢や特性によってさまざまな行動がみられ、それぞれの場合で原因や対処法が異なります。特によく見られるのはのは、下記のような行動です。・頭を床や壁にぶつける・頭や顔を手でたたく、ひっかく・自分の手をかむ・髪の毛やまゆ毛を抜く・体をかきむしるなどまた自傷行動とまでは言わないまでも「自分の爪を噛んで食べてしまう」こともあります。これらは、思春期以降にみられることのあるリストカットや根性焼き、自殺企図から自分を傷つける行為などのいわゆる「自傷行為」とは意味合いが異なり、原因や対処法も変わってきます。自傷行動の背景にある3つの要因出典 : 知的障害のある人や自閉症の人が自傷行動を起こしてしまう理由は、一人ひとり違うためそれぞれで観察し、把握する必要がありますが、その子どもの刺激に対する過敏さ/鈍麻さ、コミュニケーションの困難さ、そして余暇の過ごし方が乏しいこと(時間の過ごし方が分からない)などが背景にある場合が多いようです。なぜ自傷行動につながっていくのか、それぞれ見ていきましょう。自傷行動を起こす背景の一つに、周囲に気持ちを伝えることが困難ということがあります。気持ちの伝え方を覚えるスピードは一人ひとりに個人差があります。知的障害や自閉症のある人は、言語やコミュニケーションの発達に遅れが認められる場合もあり、発話が困難であったり、身振り手振りでうまく伝えるのが苦手であることで、その伝わらないもどかしさのため、またはその意志や要求を伝えるための手段としてしまうため、自傷行動を含む困った行動を起こしやすくなると言われています。感覚過敏/感覚鈍麻といわれる刺激を感じる感覚の偏りも、自傷行動が起こりやすくなる要因となります。仮に同じ環境であっても、ある人はそこにいて何も感じなくても、別の人はその環境から受ける刺激に強い不快を感じている、ということがありえます。例えば感覚が人一倍敏感だと、日常生活を送る上で強い刺激を受けやすくなってしまいます。周りの物音が大きく聞こえたり、光(太陽やテレビ画面など)が眩しく見えたりするなどにより、疲れたり、不快やイライラを感じやすくなります。逆に感覚が鈍いと、普段の刺激に物足りなさを感じてしまったり、自傷行動の痛みを感じにくくなってしまったりしている可能性があります。やることがなくなった時、暇のつぶし方がわからないことで手持ち無沙汰になってしまう場合があります。自閉症の場合は興味の範囲が狭かったり限定されていたりして、余った時間をどう過ごすかという手段が乏しいことも自傷行動の要因になりえます。なぜ自傷行動をしてしまうの?出典 : この章では知的障害や自閉症のある人の自傷行動の主な原因例を示しますが、このほかにもさまざまな原因があり一人ひとり異なります。そのため個別の評価(アセスメント)と対応が重要です。周囲の人と支障なくコミュニケーションできる子どもであれば、苦痛や拒否、要求などを適切に表現して伝え、助けを求めることができるでしょう。しかし、言葉が出にくかったり、対人関係が苦手な子どもの場合は、泣き叫んだり、暴れたり、周囲からすると困った行動を通してしかコミュニケーションする方法がありません。・注目を引きたい、かまってほしい(注目)・何か物が欲しい、活動をやりたい(要求)・活動をやめたい、場所を避けたい等、いやだという気持ちを伝えたい(拒否)などを伝えたいがために、他の困った行動と同様にコミュニケーションの手段として自傷行動をしている可能性があります。つまり「自分を傷つける」ことによって結果的に要求を叶えたり、嫌なことしなくてすんだりといった経験によってコミュニケーションの手段として自傷行動が習慣化してしまっていることが考えられます。例えば子どもが手持無沙汰のときに、自傷行動をすると母親が駆けつけて抱きしめてくれた(手持無沙汰な状況が解消してかまってもらえた)など、親にとってはやめさせようとしてしたことが、子どもにとっては「自傷行動のごほうび」になっていることもあるのです。自傷行動はそれぞれの子どもの状況において別々の原因がありますが、こうした経験が重なることで、その子の場合、自傷行動がかまってほしいときに行うコミュニケーション行動として学習され、定着してしまっている可能性があります。特に感覚過敏/鈍麻の傾向がある人だと、様々な刺激によって不快を感じやすくなると言われています。自傷行動から生まれる痛みによる刺激は、先に感じていた別の不快な刺激を紛らわせる働きがあるのではないかという仮説もあります。感覚が鈍い子どもの場合や自閉症のある人で興味の範囲が狭いひとの場合、余暇が乏しく手持無沙汰になりがちです。例えば感覚あそびとして、なんでも触って回る、コップの水をうつしかえる、絶えず人や洋服を触っているなどの行動が見られることがあります。それがつめをかんだり、髪の毛を引っ張って抜いたり、腕をかんだりといった自傷行動としてあらわれることもあるのです。刺激を求めて起こす自傷行動は、特に子どもが手持ち無沙汰になっている状況で起こりがちだと言われています。何もすることがない環境、あるいは何をしたらいいのかがわからない環境(余暇の過ごし方が乏しい)で、自傷行動によって引き起こされる強い感覚刺激で暇を潰してしまうということがあると言われています。自傷行動を引き起こす原因は他にも存在しています。・楽しくなって過剰に興奮してしまった……自傷行動は遊びが「楽しすぎる」のような、テンションが上がり過ぎたりポジティブな感情の高まったりした場合にそれが引き金になることもあります。・パニックや発作などの衝動で……パニックや癇癪(かんしゃく)を起しているときに、自制できない衝動的な行為として、自分を傷つけてしまうことがあります。中には、てんかんに起因しているものもあります。「てんかん」といえば、倒れこんでしまうなどの大発作がイメージされやすいですが、てんかん発作には精神的に影響するものもあります。発作により神経細胞が興奮し、パニックになり自傷行動につながる場合があります。てんかんに起因する自傷行動の場合、「点滅する光」や「騒音」などが引き金となりえます。自傷行動を防ぐための3つのステップ出典 : 本人は望んで自傷行動を選んでいるわけではなく、今のところ「他に方法がない」ためにしかたなくやってしまう場合が多いです。周囲に求められることは、子どもが自傷行動をしなくてすむよう、環境を用意したりそれに代わるスキルを学習することです。自傷行動は、してしまう原因も対処法も、子ども一人ひとりのケースによって異なります。そのため、その子がなぜ自傷行動に至るのかを考え、その子に合った自傷行動を防ぐための方法を見つけることが重要なのです。今回は、その方法を3つのステップで紹介します。一人ひとりの子どもの自傷行動の原因を調べるためにはいつ・どこで・だれと・どのような状況で、子どもがどんな自傷行動を起こすのか、その結果として子どもにとってどんな状況が生じているのかを観察することが大切です。着目するのは「状況」「行動」「結果」の3つです。それぞれを紙などに記録し、行動の前後の状況を把握します。・状況……いつ・どこで・だれと・どんな状況だったか(子どもが自傷行動を起こす前に何が起きたか/起きていたか)・行動……どのような自傷行動を起こしたか・結果……自傷行動を起こした結果、状況はどのようになったか例(回避・拒否)・状況……食事中、お母さんが嫌いな食べ物を口に入れた・行動……頭をテーブルに打ち付けた・結果……食べなくて済んだこの例では、「食べたくない」という拒否を伝えるための自傷行動であることがわかります。自傷行動を起こしている理由を推測することで、対応が考えられるようになります。このように、まずはその自傷行動が起きた状況を把握し、記録することが最初のステップです。リンク先に、記入するのに便利な行動観察シートがあるので、活用するとよいでしょう。行動観察シート|井上研究室(鳥取大学井上雅彦教授)ホームページ最初のステップで、自傷行動につながった状況を把握したら、自傷行動をしなくてすむにはどうしたらいいか、考えます。先ほどの、嫌いな物を食べたくなくて自傷行動をしてしまう場合について考えてみましょう。◇自傷行為が起きない工夫・環境調整をする・少し食べたら好きな物を食べられるようにする・お母さんも一緒に同じものを食べる・無理強いはしない・好きなテレビを観ながら食べていいことにする・小さく切る・どうしても食べられないものは出さない◇どうしたらいいか、望ましい行動を教える自傷行動が起きないように工夫する一方で、自傷行動の代わりとなる適切な行動やスキルを教えることも重要です。例えば、拒否の伝え方を教え、食べたくないときテーブルに頭を打ち付けるのではなく、するべき適切なコミュニケーション行動に置き換えます。例えば・「いやだ」のサインを教える・絵カードで拒否を教える・「“いらない”って言おうね」などと、自分の意思を伝えるための言葉を教えるこのように、子ども本人にとってできるだけ負担や我慢することが少ない方法を、家庭でたくさん考えてみましょう。ステップ2で考えた中から家庭で実施しやすい方法を選んで、やった結果どうだったか記録をとりながら一定期間やってみます。家庭でプランを実施する際はその目的を家族や周囲に説明し、共有することが大切です。毎回対応が変わったり人によって対応が変わらないようにします。例えば、頭を床に打ち付けて「母親以外の人だったら要望が通った」ということになると、その行動は繰り返されてしまいます。家族もその周囲も、子どもに対して一貫した対応を心がけましょう。子どもが自傷行動ではない方法でうまく過ごすことができたら、すぐに褒めてあげましょう。「トークンエコノミー」と言われるシールやポイントを使って褒めるのもおすすめです。わかりやすく褒めることで子ども自身がうまくできたことを実感しやすくなり、望ましい行動を増やすことにつながります。考えた計画を実施しても、すぐさま効果が現れないこともあります。一定期間やってみてもうまくいかなかった場合は工夫やプランを見直したり、望ましい行動のレベルを達成しやすいものに下げたりして、もう一度実践してみましょう。自傷行動の原因別対処法出典 : 自傷行動をしなくて済む工夫としては具体的にどのようなものがあるでしょうか。自傷行動が起きなくて済むように環境調整や工夫をするほか、自傷行動をしなくて済むスキルや自傷行動の代わりとなる行動を子どもに教えることも効果があります。以下に自傷行動の原因別に、子どもが取り組みやすい行動、そして自傷行動を防ぐツールを紹介します。◇コミュニケーションスキルをつける注目を引きたい、要望・拒否を伝えたいという時に自傷行動が起きている場合、気持ちを伝えるための別のコミュニケーション手段を使えるよう促します。言葉で気持ちを伝えるのが難しい場合、絵カードやコミュニケーション支援アプリを使って視覚的に気持ちを伝える方法を教えるとよいでしょう。「今、自分は○○という気持ちなんだ」ということが周囲に伝わるだけでも、子どもは楽になることが多いようです。「困ったら相談する」ことを教えることも効果的です。「『困った』って言うんだよ」など、具体的なセリフで教えるとよい場合があります。、iPad用・障害のある人に便利なアプリ一覧 | 東京都障害者IT地域支援センター◇嫌な刺激を避け落ち着く方法を教える感覚過敏が自傷行動につながっている場合、その刺激を避けるスキルを教えるとよいでしょう。イヤーマフやフードをかぶって刺激を遮断したり、別の部屋に行く、その場所に行かないなどの対処法を教えます。人が嫌な音などを出す場合、「やめて」などというコミュニケーションスキルを教えてもよいでしょう。いやな刺激がシャットダウンできる環境があるとよいでしょう。子どもそれぞれにとって落ち着ける方法を考えましょう。また、不安になったときに、落ち着き方を知っていると、子ども一人でも対応しやすくなります。以下に落ち着くための方法の例を挙げます。方法は向き不向きがあるため、子どもと一緒にどんな方法が一番安心できるか考えることができればなおよいでしょう。・子どもが好きな匂い袋を嗅ぐ・つぶやくと落ち着く言葉を覚える(魔法のことば等)・(家庭/園の場合)特定の落ち着く場所を決め、不安になったときに行くようにする・布団や毛布にくるまる◆手持無沙汰のときにできる余暇スキルを教える自傷行動の刺激が子どもにとってプラスに働いている場合、無理やり自傷行動をやめさせることは効果的ではありません。禁止するのではなく、自傷行動とは別の刺激を得られるおもちゃを与える、あるいは不安を感じたときに落ち着く方法を教えることで自傷行動を防ぎます。抱き枕やストレスリリーサーと呼ばれる握るおもちゃ、噛むおもちゃなどもありますので、試してみるとよいでしょう。参考:カラープラスチックパイプ参考:ストレスリリーサー子どもは何もすることがないと不安になったり、イライラしやすくなったりします。その為、「余暇をどう過ごすか」は子どもの生活の質に大きく影響します。時間が空いたときには何をして遊びたいかについて、子どもと一緒に話し合ったり、選択肢を提示することも大切でしょう。・パズル・ぬり絵やホワイトボードでのお絵かき・DVDみる・ゲームなど自傷行動が起きた、その場ではどう対応すればよい?出典 : 自傷行動が起きるタイミングは、予測できるものばかりではありません。子どもが自傷行動を起こした時にどのように接するべきか前もって知っておくことで、焦らずに対応しやすくなります。自傷行動が起きた時は、まずはケガなどをしないように安全を確保します。頭を床や壁にぶつけるなどの自傷行動の場合、クッションや枕を子どもと物の間に挟みケガを防ぐ措置を取りましょう。事前の工夫としても周りに危険な物をおかないようにするなどの配慮をしておくとよいでしょう。自傷行動は感情の高まりがきっかけとなっていることが多いため、なるべく早く止めるためには、子どもの気持ちを落ち着かせることが鍵となってきます。過剰に大きな声で叱ったり、子どもが痛く感じてしまうほど体を押さえつけて止めると感情を更に刺激してしまいます。また、自傷行動をしている最中に、それを止めるためにやさしい言葉をかけたり、抱きしめたり、おやつを上げたりして要求をとおすことは、子どもに「自傷行動をするといいことがある」と思わせてしまうので逆効果です。ここは冷静に、けがなどをしないように安全を確保した上で、先に用意した本人が落ち着けるグッズやリラックスできる場所に誘導し、自傷行動が止まるまで待ちましょう。自傷行動が止まり、子どもが完全に冷静さを取り戻したタイミングで落ち着けたことをしっかり褒めるようにしましょう。「別の部屋に行って落ち着けたね」「我慢できて偉かったね」などと褒めてあげることで子どもは安心感を抱き、更には「自傷行動をやめた方がいいことがあるんだ」と感じやすくなり、予防にもつながります。参考書籍:「発達障害の子をサポートする 「気になる子」の保育実例集」(池田書店, 2015)参考書籍:「ケース別気になる子の保育サポート実例集」(ナツメ社,2014)悩んだら早めに専門家に相談を出典 : 子どもが自傷行動をしている場合、保護者が一人で、しかも継続して解決することは簡単ではありません。また「自傷行動を予測し、予防の方法を考える」ことには、専門性が求められる場合があります。特にプランを見直しながら継続するのは負担が大きいので、専門家と連携しながら取り組むとよいでしょう。また、子どもが自傷行動をしていると、ショックをうけ悩む保護者の方も少なくないようです。もし、いま子どもとの関わり方や自傷行動への対応に一人で悩まれているのでしたら、なるべく早く相談できる味方を見つけることをおすすめします。以下に自傷行動を相談することができる子育ての相談先を紹介します。◇児童発達支援事業所児童発達支援事業所とはいわゆる放課後デイサービスや、療育プログラムなどを実施している施設を指します。事業所にもよりますが、保育士を始め、言語聴覚士や理学療法士、 作業療法士など療育の専門家が発達支援を受けられます。利用までにはお住まいの自治体の福祉担当窓口への申請が必要となりますが「通所受給者証」を取得すると低い自己負担額で利用できます。地域の児童発達支援センターでは相談事業も行っていて、保護者からの相談にものってくれます。◇発達障害者支援センター発達障害の当事者、及びその周囲の関係者(保護者や教師など)を支援する機関です。大人の発達障害や、その関係者の支援が充実している施設ですが、基本的に年齢に関わりなく相談できる場所です。子どもの問題行動について、機能分析の知識がある発達支援の専門家も紹介してもらえる場合もあります。◇医療機関自傷行動によるダメージが身体的、精神的にダメージが大きい場合や、解決に緊急性が求められる場合は医療機関への相談も選択肢の一つです。医療機関に相談する場合、「発達外来」や「小児神経科、「児童精神科」が専門となります。まずはかかりつけの小児科に相談してもよいでしょう。一人ひとりに合わせた工夫で自傷行動をなくしていきましょう出典 : 子どもの自傷行動は、その行動自体が保護者にとって強い不安を生むことに加え、「愛情不足」や、「甘やかしすぎ」が原因ではないかという偏見が重なってしまう場合もあります。自傷行動にどのように対応していけばいいかという点については、個別に考えていく必要があります。専門家のなかでも多少対応方法が分かれているかもしれません。自傷行動の原因は子どもの特性や環境によって異なり、それに応じた対応が必要になるからです。解決に向けては子どもの様子をしっかり観察し、自傷行動をしなくてよいように工夫していくことが重要です。一人で抱えこまず、専門家に相談しながら保護者と子どもが安心できる体制を作っていけるよう努めていきましょう。参考文献:井上 雅彦 /著『家庭で無理なく対応できる 困った行動Q&A: 自閉症の子どものためのABA基本プログラム4 』(学研教育出版 ,2015)参考:頭打ち行為の理解と対応を考える | 北海道こども心療内科氏家医院)参考記事:The functions of deliberate self-injury: A review of the evidence参考文献:発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉かけ(講談社,2013)
2017年02月28日発達検査の結果はいつも「測定不能」の次男。出典 : 我が家のもうすぐ年長になる次男は、これまでに受けた発達検査で一度もまともに取り組むことができず、結果はすべて「検査不可」「測定不能」の状態です。「積み木を積んで」の指示がわからず、「丸描いて」の意味もわからず、そもそもテストをしているということすら認識していない様子でした。検査員の方が「この数字がそのまま彼を現しているとは決して言えないけれど…」と前置きをしたうえで、「知的レベルは1歳に満たないというのが測定の結果です」と私に告げるのも毎度のこと。そりゃそうです、一問も答えられていないのですから。それでも次男が検査の場所に(ときには大泣きしながらも)がんばって居られたことが立派だと思うばかりで、「検査結果がこうだから、なんとかして数値を上げなきゃ」というように思うことは、私にはありませんでした。「ありのままで成長してくれれば」その願いの裏で、どこか感じていた”諦め”出典 : 我が家の長男も発達障害の診断を受けていますが、ナイーブ・センシティブな長男とは打って変わって次男は生まれてこのかたずっと大らか。同じような特性を持っていてもこうも違うものかと、「特性」「個性」「性格」の違いをまざまざと見せつけられる毎日です。次男は散歩している犬を見かければ寄って行き、公園では木々が風でそよぐ様を見てずっと笑っているような、自然が好きでおっとりとした男の子です。「検査の数値がどうであろうと、君は君の感性で、君の早さで大きくなればいいよ」そう思っていました。でももしかしたら私は次男のことを「ありのままで」という美辞麗句の裏で、「こちらが必死で働きかけても仕方ない、できない子」だと思っていたのかもしれません。知的レベル1歳未満の次男が、iPadでつくったもの。それは…そんなわけで、私は次男は今のありのままの感性を生かして、将来は動物に関わる場所で仕事をしてはどうか。自然が大好きだから、どこか遠い島でのんびり暮らすのもいいのかも。なんてことを勝手に考えていました。しかし、驚きの事態が起こります。次男には、「動画を見るくらいにしか使えないだろう」と思いつつiPadを渡していました。なにやらそのiPadに夢中になっている次男。人気ゲームの「マインクラフト」で遊んでいます。その手元を見てみると…Upload By OKASURFERえ?Upload By OKASURFERえ!??3次元では積み木を指示通りに積めなかった次男は、2次元の世界で積み木らしきものを積み上げて、なにやら建造物やオブジェを作っていました…。私にはもうよくわからない「回路」たるものまで出来上がっているそうで…。「うそでしょ?これ誰が作ったの??」本当に本当に申し訳ないのですが、疑ってしまいました。だって「知的レベルは1歳に満たない」と言われた子がこのような物を、しかも誰にも教わらずに作れるなんて想像できるでしょうか?数値だけでは分からない、次男の本当の姿出典 : 「たくさん話しかけて」「絵本を読んで」「テレビは見せないで」「もっと愛情を注いで」世の中一般的に子育てでするべきといわれていることですが、周りからこんな言葉をかけられるたび虚しい思いをしてきました。だって何をやっても彼は1歳未満のままじゃないか。積み木は積めないし、円も描けない。ですが、この一件で頭を強く打たれた思いをしました。3次元の積み木を積むこと、紙に鉛筆で円を描くこと、それによって導き出された数値を追いかけるのはやめよう、と。次男の可能性は、これまでの尺度では計り知れない出典 : さて、次男のことを「自然や動物が大好きな男の子」とだけ認識していた私ですが、どうやらそれだけではなかったようです。もしかしたらこれまで「できない子」とされてきた人たちが今の時代を生きていたら、昔にはなかったツールを経て「できる」ことがもっともっと見つけられたかもしれない。可能性はもはや既存のルートだけに落ちているわけではないのかもしれない。そう思うと、「知的レベル1歳未満」の次男を見てワクワクすら覚える日々です。私自身は発達検査の方法やそれを行うことに対して反対ではありません。ただ、その結果を見て「成長のために絵本を読ませるといい」「テレビを見せるのはよくない」「iPadなんて育児放棄だ」と言いたくなる方もいるかもしれません。それでも、これまでの尺度で私の子どもを測らないでほしい。既存の「健全な子どものあるべき姿」にとらわれず、「2次元では積み木積めますが、何か?」と胸を張れる世の中になってほしい、と願うばかりです。
2017年02月28日知的障害者向けの療育手帳、発達障害の私は取得できないの?出典 : 現在、発達障害者のためだけの独自の手帳制度はありません。発達障害者のための法律は、2005年にやっと「発達障害者支援法」が施行されました。ですが手帳制度は定められていません。そのため、知的障害者に発行される療育手帳か、精神障害者保健福祉手帳がその代わりになっているというのが実情です。少し、療育手帳と精神障害者保健福祉手帳の制度について調べてみました。療育手帳は、1960年に施行された「知的障害者福祉法」には記述がなかったのです。1973年9月に当時の厚生省が出した通知「療育手帳制度について」に基づいて、各都道府県知事(政令指定都市の長)が知的障害と判定した人に発行するようになりました。それ以前にも独自に療育手帳を発行していた自治体もあったそうですが、1973年までは国の法律に基づいた制度ではなかったのですね。精神障害者保健福祉手帳は、1995年(平成7年)に改正された精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)に基づいて、各都道府県知事(政令指定都市の長)が発行しています。私は、「発達障害で、実際にかなり生活や仕事で困難を感じているのになぜ療育手帳を取ることができないのか?」という疑問を抱いていました。療育手帳では受けられても、精神障害者保健福祉手帳では受けられないサービスもありますし(特に交通関係のサービスは療育手帳の方が手厚いです)。そして「それなら実際に取得のチャレンジをしてみよう」と決心したのです。大人になってから療育手帳を取るには、どんな手続きが必要?出典 : 大人になってから療育手帳を取るためには、まず市役所等の障害福祉課に申し込む必要があります。申し込んでからしばらくして日時を指定されて、市役所の職員から成育歴や現在の生活の状況などの聞き取りが 約1時間ありました。そして、「取れてB2(一番軽度)ですね。また都道府県の指定機関で検査を受けてもらうので、日時が決まったら連絡します」と言われました。役所での聞き取りから約1カ月後、都道府県の指定機関から連絡がありました。そのときに「子どもの頃のことを聞かせてほしいのでご両親に同行してもらってください」と言われました。父はもう亡くなっているので母にお願いしました。けっこうな歳なので申し訳なかったですが。しかも「そんな昔のこと覚えてない」って言われますし。けっこう不安な気持ちになりました。ちなみに親が高齢で足を運べない場合は、電話での聞き取りになるそうです。親がいない場合はどうなるんでしょうね…?検査を受けた結果は、手帳の取得は…出典 : 検査の流れは、午前中に2時間かけて私はWAIS-Ⅲを受け、その間に母は別の部屋でチェックシートに回答し、それを心理士さんが見ながら追加で質問をいろいろと受けるというものでした。WAIS-Ⅲは途中で休憩をはさみながらも2時間少々で終わりました。心理士さんはとても手慣れていて、検査のベテランという印象でしたね。お昼過ぎに母と合流し、20分間待って母と私を担当した心理士さんたちによる結果の見通しと所見の説明がありました。結果から言うと、「療育手帳の支給はできません」でした。理由はわたしのIQが100を超えていたこと、成育歴に特に問題もなく、大学に進学したことがトドメになったようです。療育手帳の審査ではふたつのことを見るそうです。1.検査でIQを計る2.成育歴で、18歳までに知的障害の状態であったかどうかどちらでもダメだったわけですね。心理士さんにズバリと聞いてみました。「私みたいな知的に問題のない発達障害の人が検査に来ることってよくあるんですか?」すると「はい、けっこう多いケースです。やはり手帳を取っていただくことはできませんが」と答えてくれました。この日も何組もの親子が検査を受けに来ていました。検査を受けに来る人はとても多く、忙しい状態が続いているそうです。WAIS-Ⅲの所見も簡単ではありましたが、説明してくれました。もう少し詳しい所見がきけるのかと思っていましたが、分析する時間もほとんどなかったでしょうし仕方がないのかなと感じました。最後に、精神障害者保健福祉手帳で受けられるサービスについての案内がありました。発達障害に関する啓発パンフレットも、親子に1セットずつくれました。WAIS-Ⅲの結果レポートは、頼めば切手代だけで自宅まで郵送してもらえました。私は医師に提出するためにお願いしました。判定基準は都道府県によって異なります出典 : 療育手帳の判定基準は都道府県によってかなり異なります。甥が発達障がいのため、療育手帳の交付申請をしたが、知能指数が基準の75より1高い76であるという理由で却下された。社会生活に適応できないのに、手帳が交付されないことに納得できない。知能指数が高い発達障がい者も療育手帳の交付を受けられるようにしてほしい。私が住む県では、知能指数が高い自閉症などの発達障がい者には、交付基準に該当しないとして交付されないが、他の県や政令市では交付されている例があると聞いた。療育手帳の交付に当たっては、全国の発達障がい者が平等に手帳の交付が受けられるよう、交付基準を統一してほしい。どこに住んでいるのかによって、判定基準が大きく異なるというのは制度として大きな問題があると思いました。必要な人が手帳を取れる世の中に出典 : 今回の経験で感じたのは、「発達障害の生きづらさはIQで測れるものではないのに、どうして『実生活でどれだけ困難を感じているか』ということを考慮してくれないのだろう」というむなしさでした。そして、療育手帳の基準の地域差が公的文書で問題になっているのに、事務的に振り分けられることの理不尽さを感じました。大人の発達障害は今までほとんど理解されることはありませんでした。少しずつ社会も変わろうとはしていますが、現実としては「努力してもできない」「なまけているのではない」ということも理解されず、SOSを出したくてもうまく福祉につながれない人が多いと思うのです。発達障害が社会的に認知されるためにも、そして発達障害のために生きづらい人が顔をあげてイキイキと生きていくためにも、手帳を必要とする人には公正にスムーズに手帳が手に入る世の中になってほしいと思います。そして、発達障害者のための手帳ができることを心より願っています。
2017年02月24日発達障害があると「生きづらい」?出典 : 歳の発達障害の息子を育てていると、ごく当たり前のように「この子が生きづらくないように」と考えている自分がいます。「生きづらさ」という言葉は、発達障害児を育てていると頻繁に見聞きするものではないでしょうか。大人になっても「生きづらさ」を感じている人は沢山います。発達障害でなくても「生きづらさ」を感じている人は沢山います。でもやはり、発達障害の息子を見ていると、私はいつも「この子は生きづらいだろう」と感じてしまうのです。そして、「どうやったらこの子の生きづらさが取り除けるだろう」とそればかり考えています。では一体、発達障害児の「生きづらさ」って何なのでしょうか。発達障害特有の困難さは、支援で克服できることも増えてきた出典 : 息子には発達障害児特有の様々な困難があります。言葉の使い方が変わっているのでお友達に不思議がられたり、お友達の輪に入るのが好きではなかったり、聴覚や触覚が過敏だったり、運動が苦手だったり、手が不器用だったり…。これらの困難のために、息子は集団の中で様々な苦労をしているようですが、それは息子が自己肯定感を落とす直接的な原因になっていないようなのです。今は、支援方法がかなり確立されています。運動が苦手だったり、手先が不器用だったりしても、先生方や私たち親の工夫次第で結構頑張れてしまうようです。例えば息子は運動会で足が遅いことをずっと気に病んでいましたが、今は発達障害児専門のスポーツ支援の本などが結構出ています。先生方はそれに基づいて、息子に走り方の指導をしてくださいました。おかげで、運動が苦手なことで息子がひどく落ち込むようなことはありません。また、気にして見ていると、発達障害児向けの学習支援グッズなども沢山発売されています。私はそのようなグッズを探して購入したり、自分で作ってみたりしました。ですから、息子が手先の不器用さでひどく生きづらさを感じているようなことはありませんでした。また、私も幼稚園の先生も決して息子に友達の輪に入ることを強制しませんでした。周りが「この子はこういう子だ」と淡々としていれば、本人はそれほど気に病まないのです。運動や手先の不器用さなどについては支援で克服できることは結構多く、それが即息子の「生きづらさ」に繋がるわけではないように思いました。では何が「生きづらさ」につながっているのだろう。私が息子を見ていて気付いたこと出典 : けれども、どんなに支援をして息子の困難を取り除いても、私はやっぱり「この子は生きづらいだろうなあ」と感じてしまう瞬間があるのです。それは何かといえば、息子の「認知のズレ」です。例えば、息子とのやり取りで以下のようなことが毎日のように起こります。・誰かが息子の言ったことが可愛くて笑った。→「僕のことをバカにして笑っただろう」と激怒orパニック。・何かについて「ダメだよ」と注意された。→ 「この人は僕を嫌っている」と激怒。・何かの問題が難しくて解くことができなかった。→「僕はどうしようもないバカなんだ」と落ち込んで立ち直れない。・先生に「これはいけないよ」と注意される→「僕はいつも先生に叱られているダメな奴だ」と思う。・誰かが息子をからかう。→「みんなが自分を嫌っている」と落ち込む。このように、息子には認知のズレがあり、物事を過度に一般化したり、そうかと思えば突然自責の念にかられたりするところがあります。また、物事を白黒極端に捉える傾向もあり、「え?どうしてそんな風に考えちゃうの??」ということが頻繁にあります。その思考を助長するのが、相手に否定語で何か言われたり、ちょっと笑われたりということなのです。「認知のズレ」は支援することが難しい。私が息子に接するときに心がけていること出典 : 息子の生きづらさの根本的な原因について考えたとき、この「認知のズレ」が大きいのではないかと思うのです。そして、こういった認知のズレは、支援することがとても難しいです。手の不器用さや学習上の困難などは、支援グッズを使いながらなんとか解決の糸口を見つけ出すことができました。けれども、「認知のズレ」だけは、長い時間かけて手探りで修正していくしかないのです。支援グッズを使うでもなく、支援方法が確立しているでもない。私たち親ができることは、ただただ失敗したり落ち込んだりしている子どもに辛抱強く語りかけていくことだけです。だからこそ、認知のズレは親にとっても子ども本人にとっても「生きづらさ」へとつながっていくのかもしれません。けれども、だからこそ、発達障害の子には、なるべく大きな失敗をしないように環境調整をすることに意味があるのだと思います。私は息子の生きづらさを知ったうえで、人間関係や学習などで大きな失敗をさせない、挫折をさせない、本人が乗り越えられるハードルをうまく設定しながら成功体験を増やすことに集中しています。なかには、それは過保護だという人もいます。けれども、認知にズレがあるからこそ、ひとたび大きな挫折でボッキリと折れてしまうと、それを立て直すのに大変な労力がいるのです。また息子の場合、大きな失敗をすることで、他者への不要な憎しみや恨みが長いこと心に残ります。大きな失敗や挫折の体験は、発達障害の子どもの生きる糧にはなりづらいと私は思います。私は失敗を乗り越えさせることに力を振り絞ることよりも、成功体験を積ませることに力を使っていきたいです。発達障害の子どもにとって、小さな成功体験の積み重ねが心の体力になっていきます。心の体力があれば、多少の認知のズレがあっても、自分で態勢を立て直すことができるはずです。認知のズレそのものを修正するために躍起になるよりも、小さな成功体験を増やしていくことに重点を置いていくほうが、親も前向きに取り組むことができるのではないでしょうか。生きづらさは、心の体力で克服できるものだと私は信じています。
2017年02月23日東京・表参道のEYE OF GYREにて、3月9日から4月2日まで、知的または精神に障がいのある芸術作家たちの選りすぐりの作品を集めた展覧会「アールブリュット?アウトサイダーアート?それとも? -そこにある価値-」が開催される。作品の多くが知的障がい者施設で制作される日本のアール・ブリュット=生の芸術(=英語ではアウトサイダーアート)。明るく豊かな色彩感覚と自由で伸びやかな表現が特徴の日本のアール・ブリュットは、近年脚光を浴び始めている。今回は、アートディレクションにエンライトメント(Enlightenment)、作家のポートレートには写真家若木信吾を迎え、専門家によって全国より厳選された25名もの現役作家の選りすぐりの作品が展示される。エネルギッシュでユーモラスな、そして時に型破りな作品が展示され、販売される展覧会となっている。参加作家は、やまなみ工房よりEmi、井上優、岡元俊雄、川邊絋子、田中睦美、宮下幸士、studioCOOCAより伊藤太郎、岩本義夫、松本倫子、YELLOWより上田匡志、平野喜靖、工房集より栗田英ニ、西川泰弘など。【展覧会情報】「アールブリュット?アウトサイダーアート?それとも? -そこにある価値-」会場:EYE OF GYRE住所:東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE3階会期:3月9日~4月2日時間:11:00~20:00
2017年02月21日・ 【第1回】発達障害の子育てに「療育」よりも大切なこと ・ 【第2回】発達障害の子どもが、充実した人生を送るために必要なこと ・ 【第3回】発達障害の子育てを「辛い、苦しい」と感じたら のつづきです。「発達障害」をもっと理解するために必要なことを、『療育なんかいらない!』の著者であり、独自の理論で放課後デイサービスを展開する「アイム」の佐藤典雅さんにインタビュー。今回は、「発達障害の子育てを楽しむコツ」についてお話を伺った。佐藤典雅(さとう・のりまさ)さん川崎市で発達障害の子どもをサポートする放課後デイサービス「アインシュタイン放課後」「エジソン放課後」を運営している、(株)アイムの代表。自身の自閉症の息子さんの療育のために、息子さんが4歳の時に渡米して、ロサンゼルスで9年間過ごす。前職は、ヤフー・ジャパンのマーケティング、東京ガールズコレクションとキットソンのプロデューサーという異色の経歴の持ち主。福祉という範囲を超えた目線で、自身の息子さんの成長を見守りながら、発達障害児が社会で幸せに生きるための道を広げる挑戦をしている。著書: 『療育なんかいらない!』 (佐藤典雅・著/小学館 ¥1,296 税込)※放課後デイサービス(= 放課後デイ):6~18歳までの障害のある子どもが放課後や学校休業日に利用できる、就学時向けの福祉サービスのこと。■子どもの障害は親のせいではありません―― この連載もいよいよ最終回。いろいろ伺ってきましたが、ずばり、佐藤さんが思う発達障害の子育てを楽しむコツって何でしょうか?佐藤典雅さん(以下、佐藤さん): まず、親自身がハッピーであること、充実した楽しい人生を送ることです。人が他人を幸せにするのは無理。幸せって自分が作り出す状態だから。状態である以上、自分で作り出すしかないんですよ。―― 子どもの障害に対して、親は自分の人生すべてを捧げるべきという風潮がありますよね。そういう中、親は自分のことを優先しにくいのかもしれませんね。佐藤さん: でも、親が療育に必死になって、「子どもには充実した人生を送ってほしい」ってボロボロな状態になっていたら、それを見た子どもがうれしいわけがないよね? こんなの、子どもにとっては重荷でしかない。―― 自分を犠牲にしてまでがんばってしまうのは、もしかしたらお母さんは「自分に責任があったのでは?」と感じてしまうからかもしれません。「妊娠中に無理したのが良くなかったのかな?」とか「早くから預けて働いたのがいけなかったのかな?」とか、いろいろ考えて自分を責めてしまうのかもしれません(※)。※もちろん発達障害の原因にそんな根拠はありません。佐藤さん: 子どもの障害は親のせいではありませんよ。僕は、それぞれの人にはそれぞれの生まれ持った宿命と人生があるのだと思っています。そして、その子どもが自分の人生の使命をまっとうできるようにサポートするのが親の役割。後は、親自身が自分の人生を楽しむのが、親の仕事だと思っています。―― 障害者の親って他の保護者より制限があるように思えるのですが、人生を楽しむことってできるのでしょうか?佐藤さん: 大切なのは、子どもに障害があろうがなかろうが、いかに、自分が今の状態を楽しめるか? なんですよ。お母さんが自分の人生を謳歌していれば、子どももその姿を見ていて楽しくなるでしょう。もちろん、普通の子育てより大変なことは多いですよ。でも、地獄で幸せになれない人は、天国にいっても絶対幸せになれませんから!―― どういう意味でしょうか?佐藤さん: 地獄で「暑い、暑い」って言ってる人は、天国に行けったら、絶対「暇だ~、なんかつまんない~」とか言い出すから。―― おもしろい考えですね(笑)。また、お母さんが生き生きとするためには、お父さんの存在も欠かせませんよね?佐藤さん: もちろんです。でも、残念ながら、うちの放課後デイに親子が面談にやってくる時、夫婦そろって来られるのは一割以下。平日の昼間、お父さんは仕事だから仕方がないにしても、お母さんの話からお父さんの存在が見えない家庭が多いのです。―― 療育センターなんかでも、付き添いはお母さんばっかりですものね。佐藤さん: 父親がちゃんと関わってくれないと、母親のストレスは2倍になります。日々の小さいことまでフォローする必要はないのかもしれないけど、重要なことには決断を下し、時々、お母さんの頭の中を整理してあげてほしいと思います。それに、話を聞いていると、お父さんの意見は結構合理的で的を得ているんですよ。なので、お母さんたちも、もう少し素直にお父さんの意見を聞いてあげてほしいと思います。■先輩お母さんとつながろう。人脈をどんどん広げよう―― 旦那が一緒になって考えてくれる、それだけでお母さんは十分心強いと思います。あと、私が心強かったのは、同じ悩みを持つお母さん仲間とのつながりです。佐藤さん: ただ、療育センターでは同じ年頃の子どもを持つ親同士でしか接点がないよね? 特に、就学前は一番不安な時期だし、子どもの先の姿が想像できない。だから、同世代だけで集まると不安を交換しあって、不安だけが増幅してしまうという難点もあります。―― 確かに。いつも同じメンバーで、ぐるぐると同じ話になってしまいがちなところもありましたね。佐藤さん: 一番有効なのは、発達障害をもつ未就学児のお母さんは、同じ発達障害を持つ中学生の親から話を聞くこと。すでにいろいろ経験してきたお母さんたちは、いろいろな情報を持っているので役立つアドバイスをくれます。わが子の将来のイメージもつかみやすいので、お母さんもあんまりパニックにならないですむ。違う世代とつながりを持つことをおすすめします。―― でも、なかなか違う世代とつながる機会がないのですが……。佐藤さん: うちの放課後デイに遊びにいらっしゃい! いろんな先輩お母さんがいるから。みんな仲が良くて、よくバーベキューやクリスマスパーティーしたり、頻繁に交流会をしていますよ!ただ、おもしろいんだけど、うちのお母さんたちが集まっても、みんな誰も子どもの話をしないんですよ。子どもそっちのけで、爆笑トークで盛り上がってるの(笑)。でも、これこそが健全な姿だと思うわけ。―― みなさん、佐藤さん同様、笑い飛ばす力を持っているんですね!佐藤さん: 発達障害の子育てをする親は、特に、開かれた視点で物事をみつめなおす必要があります。療育に通うのに夢中になっていると、気づいたら、接するのは療育センターの先生か学校の先生かママ友だけになってしまいますよ。意識的に努力して、開かれたマインドをもっておかないと。―― 人脈もどんどん広げるべきなんですね。佐藤さん: 例えば、子どもが興味のある業種に人脈を作って、その企業にインターンできるようにするとか、どうでしょう? うちの長女は将来ゲームクリエイターになりたいと言っているので、僕はプロが使うAdobeのフォトショップを覚えさせたり、夏休みは友達の会社でインターンさせたりしています。もちろん、中学生だからたいしたことはできないんだけど、興味ある業界で普段接することのない大人と過ごすことができるのは刺激的でしょう。それができたのは、僕に人脈があったから。―― なるほど! 子どもの興味があることにつながる人脈力か……。佐藤さん: 世の中にはいろんな人います。いろんな人と会って話して、どんどん外の世界に出て行ってほしい。自分の親とか同じ学校とか、同じマンションとか、同じ世帯年収とか、そういう狭い世界だけでみて、こうあるべきだと決めつけないでほしい。臨機応変に考えられるように、いろいろな情報収集をしてほしいと思います。 ■運命を受け入れることも、大切―― ところで、ここの子どもたちはとても自由に寛いでいますね(取材中の様子を見ながら)。図鑑に没頭している子もいれば、ボール遊びをしている子もいるし、寝ている子もいれば、カラオケで熱唱している子もいる(笑)。佐藤さん: 僕は、自分の放課後デイを「川崎のNASA」と呼んでいます。なぜなら、発達障害の子は宇宙人みたいなものだから。僕の役割は地球側の外交官みたいなもので、彼らの地球滞在が充実したものとなるように努めること。そして、いつか彼らが宇宙船に乗って地上に降りてきた時に、「あの時はありがとう」と言ってくれればいいな、と妄想しています(笑)。―― その妄想、素敵です(笑)。佐藤さん: 発達障害はガンダムのニュータイプみたいなもんで、既成概念の外にいる子どもたちなのだから、親の方も子どもに常識を求めるのはナンセンス。期待すればするほどドツボにはまるだけ。そしてもっというと、親自身も「こうあるべき」「こう育つべき」っていう規制概念の呪縛から出る必要があります。―― そう考えると、発達障害の子どもたちは、親に、子育てで忘れがちな、とても大切なことを教えてくれているのかもしれませんね……。佐藤さん: ちょっと話それるけど、みんなよく「結婚して幸せになりたい」とか言うじゃない? でも、結婚したって離婚する人もいるし、結婚は幸せを保証するものじゃない。「結婚すれば老後がさみしくない」っていう人もいるけど、うちのお祖母ちゃんはお祖父ちゃんが早く死んじゃったから、30年間ひとりだったわけ。結婚はさみしくない老後も保証しない。つまり、人生は何が起こるかわからない。だから、一生懸命人生の方程式を作ったって無駄なんですよ。―― では、どこを目指したらいいのでしょうか?佐藤さん: 死ぬときに本人が充実した人生だったと納得して死ねるか、そこしかないと思うんです。だから、子どもに障害があっても、お母さんは自分の人生を思いっきり生きるべきなんですよ! ―― 「やりたいことがあったなら、とりあえずやっておけ!」と?佐藤さん:そう。そして、運命というのか宿命というのかわからないけど、ある程度、受け入れることも重要だと思っています。自分にそういうカードがまわってきたということは、巡り合わせだと。―― 佐藤さんがまったくの異業種から福祉の世界に入ったのも、運命なのですね。佐藤さん: 福祉が大嫌いだった僕が、今福祉の世界で仕事をしているのも、きっと何か理由があるから(笑)。だとしたら、グダグダ文句言ってないでしっかりやりきろう、と。今目の前のことをやりきらないと、次のステージは見えてきません。それに、僕は一生福祉の世界で生きていくつもりはないので、せめて「他の福祉施設よりも結果を出してから辞めてやる!」と思っています(笑)。長時間にわたり、自身の熱い思いをしゃべり倒してくれた、佐藤さん。時に、厳しい指摘もあったが、ユーモアたっぷりの話しぶりで、発達障害の子育ての凝り固まった偏見や閉塞感を気持ちよくブチ壊し、勇気を与えてくれた。そして、著者は何より、佐藤さんのポジティブな姿勢と、常に息子さんの幸せな人生を考え、全力で取り組んでいる行動力に深い感銘を受けた。「この子なりの楽しい生き方ってなんだろう?」「この子が充実した人生を送るために、親として何ができるだろうか?」発達障害の子育てで、本当に親が悩むべきところは、そこにあるはずだ(もちろん、普通の子育てだって変わらない)。そして、大切なことは「子育てを楽しむ」ということを、常に忘れないでいたい。取材・文・撮影/まちとこ出版社 【大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界】 全4回・ 【第1回】発達障害の子育てに「療育」よりも大切なこと ・ 【第2回】発達障害の子どもが、充実した人生を送るために必要なこと ・ 【第3回】発達障害の子育てを「辛い、苦しい」と感じたら ・ 【第4回】発達障害の子育てを楽しむコツ
2017年02月18日