最近、海外文学で話題に上ることが多い、ジェンダーというテーマ。『anan』の「Book」ページでいつも魅力的な本を紹介してくれる瀧井朝世さんと三浦天紗子さんが現代のジェンダーについて気づきを与えてくれる作品をガイド!違和感の言語化が知りたいという思いに。三浦:ここ2~3年、ジェンダーやフェミニズムという切り口が注目されるようになりましたよね。瀧井:確かにそうだけど、海外文学でそういう作品が急に増えたというより、日本で紹介される機会が増えてきた印象です。三浦:むしろそっちですね。瀧井:MeToo運動が日本でも浸透したのが大きいと思います。韓国では、女性を無差別に狙った江南(カンナム)駅殺人事件が2016年にありましたよね。それを機に韓国の女性たちが立ち上がり、一大ムーブメントのなかで生まれたのが、『82年生まれ、キム・ジヨン』。韓国の女の人が、家族のなかでさえもこんなに虐げられているのかと愕然としました。三浦:優秀でも、夫の実家に行くと嫁としてしか扱われない感じとか、かなり露骨でしたね。瀧井:受験や就活での差別もそうだけど、日本人が身近に感じられる問題が多くて、女性の人生カタログになってるんですよね。三浦:著者は、放送作家として社会派番組を長年担当してきた人。取材してきたことを淡々と出しているような文体だから、読者は自分を投影しやすかったのかも。同じ韓国の『娘について』は女性問題全般の話で、60代のお母さんが語り手なんです。娘は大学院を卒業したのに、仕事が不安定。介護職に就いている母は、グローバルな活動家だった認知症の高齢女性を世話しているんですけど、周囲は雑に扱うのを見て、女性としての行く末にものすごく危機感を抱くんです。作者は1983年生まれなので、普通は娘視点で書くのではないかと思いますよね。ところが、母視点で書いているのが実に新鮮です。女が母や祖母の世代から受けてきたいろんな迫害が、彼女のなかにも染み込んでいるんだなと感じました。瀧井:たとえばセクハラとかマウンティングって言葉がなかった頃は、もやもやしてもうまく言えなかったし、ひと昔前はストーカーの被害に遭っても「そんなに愛されてよかったね」で片付けられていた。そういう現象が言葉にされることによって、理不尽に思っていいのだと気づき、もっと積極的に知りたいっていうのが、今の流れなのかもしれませんね。三浦:ジェンダー小説と銘打っていなくても、男女間の問題を描いた作品は日本にも以前からありますよね。柚木麻子さんや山内マリコさんなどの小説はまさにそう。瀧井:村田沙耶香さんや松田青子さんも、ジェンダー問題にとても敏感です。『問題だらけの女性たち』は、松田さんが海外の書店で見つけて自ら翻訳した絵本なのですが、19世紀の女性たちがどう見られていたか、皮肉たっぷりに書いています。たとえば女性の脳はスポンジみたいな素材だったとかビックリな内容で、しかも錚々たる偉人男性が女性差別的な発言をしているんです。だけどそれを切々と訴えるのではなく、ユーモラスにかわいらしく表現しているところに、しなやかさを感じます。意識のアップデートが新しい世界を広げる。瀧井:世界中にある同じような問題を知るという意味で、最近の注目作は『三つ編み』です。インドとイタリアとカナダの3人の女性の物語なのですが、途中で読むのがつらくなるくらい過酷で…。三浦:イタリアの女性は家業で人毛のカツラを作っていて、カナダの女性は弁護士で、がんになって髪を失ってしまう。インドの女性は不可触民で財産がないから、自分の髪しか神様に奉納できるものがない。3人の人生が女性の象徴である髪で結び合わされていくのがよかった。職場でパワハラに遭うカナダの女性が、日本人の境遇と一番近いかもしれない。個人的にはカナダってフェアネスが浸透している国という印象が強かったので、この描かれ方は意外でした。瀧井:欧米の国々はもっと平等という意識が強いと思いがちだけど、小説や映画を通して改めて気づくことって結構ありますよね。三浦:『ノーラ・ウェブスター』は、’70年代のアイルランドが舞台。夫に先立たれて復職するしかない専業主婦が、何も期待されていない社会の空気のなかで自覚的に生きることを目指すわけです。ジェンダー小説っていうのは結局、女性が自己選択していく小説なのかなと思いました。要は女性を取り巻く社会の差別や偏見って、濃いか薄いかの違いはあるけれども、いつの時代も世界中に存在する。そのなかで主人公たちが何を選び、どうやって生きるのかを決意する小説だといえるのかも。瀧井:ジェンダーを扱った作品はたくさんあるから、カテゴライズすることがはたしてよいのかって思いも正直あります。普及していくためのアプローチも大事だろうし。そういう意味でいいなと思ったのが、『サイモンvs人類平等化計画』。ゲイの男の子がカミングアウトするか悩むYA文学なのですが、10代の子が読むものとしてこういう小説が翻訳されるのは、とてもいいこと。もちろん、大人が読んでも面白いですよ。三浦:今、ジェンダー小説というムーブメントがあるというより、連綿と書かれてきた歴史はあって、むしろ受け取る側の意識が変わってきたことで花開いたことが、実は一番大きいのかもしれない。瀧井:本はいつの時代に、どう読まれるかで変わってくるものだから。読む側も意識をアップデートしていくことが大切ですよね。『82年生まれ、キム・ジヨン』著:チョ・ナムジュ訳:斎藤真理子1500円(筑摩書房)ある日突然、母親や友人の人格が憑依したかのように話し始めたキム・ジヨン。なぜ彼女にそんな症状が現れたのか。誕生から学生時代、受験、就職、結婚、育児…その人生を振り返るなかで、読者は女性の人生に立ちはだかる困難や差別を目の当たりにする。圧倒的な共感と反発が、今日のジェンダー観を浮き彫りにした問題作。『問題だらけの女性たち』著:ジャッキー・フレミング訳:松田青子1200円(河出書房新社)女性の脳は男性より小さい、深く考える女性の生殖器はダメになる…。19世紀ヴィクトリア朝の“トンデモ女性観”を、イギリスらしい皮肉とユーモアで綴った絵本。ルソー、ダーウィン、ピカソ、クーベルタンなど偉人が続々登場するのも二重の驚き。「問題」が暴かれるほど、不思議と女性がたくましくスマートに見えてくる。『三つ編み』著:レティシア・コロンバニ訳:齋藤可津子1600円(早川書房)インド、イタリア、カナダ。3つの国で生きる年齢も境遇も異なる女性が、自らの運命と戦う物語。因習が根強く残る場所にも、一見男女平等と思える場所にも存在する差別に打ちのめされるが、それでも前を向く女性たちに拍手を送りたくなる。フランス本国で100万部を突破し、著者自身の脚本・監督による映画化も進んでいる。『ノーラ・ウェブスター』著:コルム・トビーン訳:栩木伸明2400円(新潮クレスト・ブックス)46歳にして夫に先立たれた専業主婦ノーラが、子どもたちを育てるために20年ぶりに事務員として復職。同僚から嫌がらせを受け、子どもたちとぶつかり合いながらも、自分の足で人生を歩くことの喜びを知る3年間を描く。『ブルックリン』でも知られるアイルランドを代表する作家が、自身の母の姿を投影した自伝的小説。『サイモンvs人類平等化計画』著:ベッキー・アルバータリ訳:三辺律子1800円(STAMP BOOKS)サイモンはアメリカに暮らすゲイの高校生。同級生にゲイであることがバレてしまい、周囲にカミングアウトするべきか、なぜゲイだけがわざわざカミングアウトしなければいけないのか思い悩む。ネットで知り合った「ブルー」との進展も気になる、青春&恋愛小説。『Love, サイモン 17歳の告白』として映画化されている。『娘について』著:キム・ヘジン訳:古川綾子1900円(となりの国のものがたり/亜紀書房)夫と死別し、老人介護施設で働く母の家に、30代半ばの娘が同性のパートナーと転がり込んでくる。娘がレズビアンであることを受け入れがたい母、ありのままの自分を認めてほしい娘。ぎくしゃくした共同生活に起こる、いくつかの事件と変化。LGBT、母娘の関係、女性と仕事、老い、貧困などさまざまなテーマを内包している。たきい・あさよライター。著書に『偏愛読書トライアングル』など。辻村深月×今日マチ子、桜庭一樹×嶽まいこなど注目のコンビが続く「恋の絵本」シリーズの編集も担当。みうら・あさこライター、ブックカウンセラー。書評、インタビューを担当するほか、女性の健康などをテーマに執筆。著書に『震災離婚』『そろそろ産まなきゃ』など。※『anan』2019年7月10日号より。写真・中島慶子取材、文・兵藤育子(by anan編集部)
2019年07月06日安倍晋三首相(64)が7月3日、日本記者クラブ主催の党首討論会に登場。挙手で回答する質問に返答した直後「印象操作だ」という趣旨の発言をした。Twitterでは「印象操作」がトレンド入りするほどの話題となり、「どこが印象操作なのか」と疑問の声が上がっている。今回の党首討論会には安倍首相のほかに公明党・山口那津男氏(66)や立憲民主党・枝野幸男氏(55)など7名の党首が参加した。そのなかで登壇者が質問に“イエスかノーか”を挙手で示す場面があった。安倍首相は「原発の新増設を認めない」「選択的夫婦別姓を認める」の2項目で7名中ただ1人、手を挙げなかった。また「LGBTなど性的少数者への法的権利を認める」という問いについて、挙手しないのは安倍首相と山口氏の2人だけだった。すると「単純化してショーみたいにするの、やめたほうがいいですよ」と安倍首相は話し、さらにこう持論を展開した。「政策的な議論をちゃんとしないとですね、イエスかノーかということでは政治はないですから。いまの段階で答えられなくてもただちにノーではないんですから。印象操作するのはやめたほうがいいと思いますよ」すると記者団は、こう返した。「でも安倍さんはこれまでも説明されてきたわけでしょ?説明もなしにただ手を挙げろっていったわけじゃありませんから。難しい問題を簡単に賛成反対とはなかなかいかないと、わかったじゃないですか」記者団のいうように、これまでも安倍首相は自身の考えを説明してきた。12年12月に出演したTBSの番組で「新たにつくっていく原発は、40年前の古い、事故を起こした東京電力福島第1原発とは全然違う」ために「原発の新増設」について意欲的であると示した。さらに13年5月の参議院・予算委員会では電力の安定供給などを理由に挙げ「(新増設は)ある程度時間をかけて、腰を据えて検討していく必要か゛ある」とも発言。しかし16年1月と18年1月の衆議院本会議では「現時点では想定しておりません」と慎重な姿勢も見せている。「選択的夫婦別姓」については先月30日のネット党首討論で「夫婦別姓の問題ではなくて、しっかりと経済を成長させ、みんなが活躍できる社会を作っていくことではないか」「いわば経済成長とは関わりがないというふうに考えています」と発言し、話題を呼んだばかりだ。また「LGBTなど性的少数者への法的権利」について例えば同性婚に関することでいうと、安倍首相は15年2月の参議院・本会議で「現行憲法の下では、同性カップルの婚姻の成立を認めることは想定されていない」と発言している。16年6月に自民党が制作した政策パンフレットにも憲法24条の観点から「同性婚容認は相容れません」と記されており、同パンフレットは杉田水脈議員(52)の「生産性」発言が話題になった18年8月にも自民党の公式サイトに再掲載された。党首討論会の直後、立憲民主党・蓮舫氏(51)はTwitterを更新。首相の「印象操作」発言について《これは印象操作ではなくて、公開された場でのシンプルな質問への挙手》と苦言を呈している。さらにTwitterでは「どこが印象操作なのか」と安倍首相の発言を疑問視する声が上がっている。《この流れからなんで「印象操作」になるの? 挙手をしない理由をわかりやすく説明すればいいだけの話じゃないの?》《意見に自信がないのか、恥ずかしいと思っているのか。印象操作だなんだって、なんか卑屈だな》《印象操作も何も、事実やん。この人がpmでいる限り日本語までおかしくなる。こんなんでいいの?》
2019年07月04日自分の性が突如、変わってしまう。そんな究極の変化に向き合う主人公の心理をていねいに追っていく日暮キノコさんの『個人差ありマス』。とにかく先が気になるコミックだ。「こうした性転換モノは10代のラブコメ的な世界ではあるけれど、30代既婚の社会人が主人公のは見たことないぞ、好きなエロも織り込めるぞ、と気づきました(笑)。せっかくの週刊誌連載なので、頭で難しく考える前にやってみようと」100均チェーンの商品企画部で働く磯森晶と、2歳年上の妻・苑子は、結婚5年目ですでにどこか冷めた関係。それを寂しく思っていた晶は、ある晩、九死に一生を得る。同時に世界でもめずらしい〈異性化体質〉であることが判明。苑子のサポートで、化粧や下着など不慣れな「女性の日常」を始めるが、晶自身は、女ふたりで再出発することとなった結婚生活にも心が揺れていて…。ところが2巻では、さらに仰天の出来事が!夫婦という共同体に、セックスや子作りなど性の問題が、ますます複雑に立ちはだかる。ちなみに、LGBTをめぐる空気は実社会でも変わりつつあるものの、なおデリケートな問題。だが本書では、とても温かく描かれている。「性的マイノリティについて問題提起しようと始めたわけではなく、あくまでエンタメとして楽しんでもらえれば。理解があっても当事者の気持ちを完全に体現することはできないので、LGBTの方々と実際にお話しさせていただき、どういう表現なら失礼に当たらないかなど腐心しています。前向きな物語にしていきたいと思っています」その取材や、描くことを通してなお強くなった思いがある。「私自身、可愛い女の子とお食事して楽しくお話ししたいな、という気持ちもあるんですね。名前が付くほどの感情ではないけれど、男や女である前に『ひとりの人間じゃん』と思うし惹かれる相手に性別って関係ない。性別でくくって話されると逆に『一緒くたにしないで』と反発したくなることもあります。それくらい性は多種多様だし、個人差あります、なんじゃないかと思うんです」『個人差ありマス※』2脳出血から奇跡的に生還した32歳の磯森晶は、体が〈異性化〉してしまったことにとまどう。そのとき妻で作家の苑子は…。『モーニング』で連載中。講談社610円※マスはに斜線ひぐらし・きのこ神奈川県出身。別冊フレンド新人まんが大賞の佳作を受賞し、2005年にデビュー。少女誌で活躍した後、青年誌での初連載『喰う寝るふたり 住むふたり』が話題に。※『anan』2019年6月5日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年06月01日杉田水脈議員(52)が5月27日、中川翔子(34)のツイートに同意し持論を展開。しかしネットでは非難の声が上がっている。中川は24日Twitterに《言葉には、きっと言霊があるから、悪口って言ったら自分にトゲがささる、返ってくると思う》と投稿し、《ストレスが溜まったとしても、悪口を書く裏アカウントは絶対作らないほうがいい 誰かも自分も傷つく》 とつづった。さらに《だったら、褒めるためだけのアカウントを作ったほうが 好きの循環で楽しいし嬉しいが返ってくると思う》とつづった。すると杉田氏は27日、中川のツイートを引用し《このしょこたんのツィートにあるように悪口を言うためだけに作ったアカウントからの酷いコメントが中にはあります》と投稿。さらに、こう語った。《私が嫌いなのであれば、見なくていいので、ご自分が応援する方にエールを送ってあげてほしいです。嫌いな相手をわざわざフォローして汚いコメントを書くより、綺麗でポジティブな言葉を使って好きな政治家を応援する方がご自身も気持ちいいでしょうし。日本語は言霊。本当に思います》杉田氏は続けて、《もちろん公人なので、批判も含め、しっかり受け止めなければならないと思っています》とつづっている。杉田氏といえば昨年発刊された「新潮45」8月号のなかで、LGBTについて「生産性がない」として税金の使い方に関する持論を展開。そのことから自民党本部前を筆頭に各地でデモが発生し、同誌が休刊となるなどの大きな動きになった。杉田氏は同年10月、自身の発言について「人権を否定する思いもなく差別することも全く無い」と釈明。しかし彼女の発言に対して疑問視する声はいまだ後を絶たず、4月に参加した応援演説では「帰れコール」が聴衆から起こるなどして会場は一時パニック状態になった。またTwitterでは「日本語は言霊」発言に非難の声が上がっている。《生産性寄稿には、子どもを産むかどうかで税投入の是非を問うかのようなことを書いてるわけで、同性愛者だけでなく子どもが持ちたくても持てない人への差別寄稿であり、日本語は言霊というならあなたはその差別寄稿によって滅ぶ以外ない》《人の人生を 「生産性」で語る人間が発する言葉に 言霊が宿るわけがない》《「ゲイは生産性がない」は言霊的に綺麗?》さらに中川は「言葉には言霊がある」としているが、杉田氏は「日本語は言霊」とつづっているためにこんな声が。《杉田水脈、しょこたん「言葉には言霊がある」というツイートからあっという間に「日本語は言霊」にもっていってしまうの流石だな》《どの言語も言霊あり得るのに、日本語は言霊って、言霊の意味もわかってないんじゃあ》
2019年05月30日「実に面白い」の名セリフを生み出した「ガリレオ」シリーズで、俳優としても評価を高めた福山雅治が、4月にスタートした日曜劇場「集団左遷!!」では衝撃ともいえる激変ぶりを見せている。第1話が放送されると「福山雅治の顔芸フルスロットル」「顔芸フルで頑張る福山氏は新鮮」とSNSが湧く事態に。また、「白衣の戦士!」で“元ヤンの新米ナース”という役柄に挑み、連続ドラマ初主演を果たしているのは8等身モデルで女優の中条あやみ。“元ヤン”らしく(?)メンチを切り、コロコロと表情が変わる中条さんもかつてない姿!さらに、古田新太演じるゲイで女装家の高校教師が繰り広げる学園エンターテインメントドラマ「俺のスカート、どこ行った?」は、芸達者な古田さんを筆頭にジャニーズ期待の若手や個性派俳優が集結する中、表情筋をフル活用している人が…!!今期ドラマを盛り上げる顔芸フルスロットル作品に迫った。福山雅治が顔芸&全力疾走、土下座まで!小説「新装版 銀行支店長」「集団左遷」(ともに江波戸哲夫)を原作にした本作。これまで「半沢直樹」「下町ロケット」「陸王」といったヒットドラマを多数生み出してきた日曜劇場だが、福山さんは同枠初出演にして初主演、TBSのドラマ出演にいたっては1998年の「めぐり逢い」以来、実に21年ぶり。さらに、NHK大河ドラマ「龍馬伝」で岩崎弥太郎を演じた香川照之と9年ぶりの共演とあって、幅広い層からの注目を集め、4月21日放送の初回スペシャルでは平均視聴率13.8%、瞬間最高視聴率15.3%を記録した(ビデオリサーチ調べ・関東地区)。演じるのは、50歳を目前にして廃店が決まっている三友銀行蒲田支店の支店長に赴任した片岡洋。バンカーの役も初めてながら、クールで論理的な“湯川先生”とは至極対照的な、感情が顔に出てしまうエネルギッシュで熱い男。情に厚く、それ故に脆さや弱さも覗かせる、新境地に臨んでいる。第1話から、「皆さんは頑張らなくていい」と廃店候補の支店長たちに言い渡す、腹に一物ありそうな常務・横山(三上博史)のやり方に納得できず、土下座までして蒲田支店を立て直すと啖呵を切ったものの、その後、大口融資が決まりそうになるたびに本部から横やりが入り、蒲田支店は再三ピンチを迎えることに。「支店長、事件です!」刑事ドラマ好きな片岡もこりごりするほど、本部スパイ騒動や地面師詐欺などトラブルが起きっぱなし。そのたびに片岡は熱血刑事ばりに、全力疾走で現場へと繰り出していく。目をむき、八の字眉となり、真摯にトラブルに対処していく片岡。これほどまでに「頑張る」を連呼する男を福山さんが演じることは確かに新鮮。だが、こうした“熱さ”は日曜劇場の醍醐味であり、演出・脚本は「ROOKIES」の平川雄一朗&いずみ吉紘コンビとくれば、納得だろう。一方、香川さんが演じるのは蒲田支店の副支店長・真山徹。どんなピンチのさなかにもきっちり“定時で帰る”、一見掴みどころがない男。だが、第3話で福山さん演じる片岡の無謀ともいえる頑張りが蒲田支店存続のためとわかると、片岡がタジタジになるほど冷静かつ論理的に状況を見極め、頼もしい味方となっていく。この点も従来のイメージとは真逆だが、片岡にほだされ、額のしわが次第に緩んでいく香川さん演じる真山の様子も必見だ。2人とも妻(八木亜希子、西田尚美)思いという共通点もある。そのほかの行員も揃いも揃って個性的な人物ばかりだが、神木隆之介演じる、飲み会には“極力参加しない”イマドキの若手行員・滝川晃司はすっかり蒲田支店に馴染み、第5話に続いて第6話でも勇ましいタックルを披露!井之脇海演じる、マジメだがドジな平正樹も変幻自在の頼りなさげな八の字眉がキリッとすることも増えてきた。そして先日の第6話では、廃店を阻止すべく一丸となって突き進んできた蒲田支店の面々に、ついにジャッジが下った。福山さんが言う「“上手くない頑張り方”に不思議な愛おしさを感じました」の言葉のとおり、不器用でも銀行員としての矜持がみなぎる彼らの面構えは、すでに愛おしくてたまらない。第7話あらすじ蒲田支店の廃店により、本部の融資部へ異動した片岡(福山雅治)。落ち着く間もなく、全国展開する総合百貨店・マルハシホールディングスのダニエル・バックCEOが会社資金102億円を私的流用した疑いで東京地検特捜部に逮捕される、という衝撃的なニュースが飛び込んでくる。金融庁の立ち入り検査を控えて大わらわの中、横山専務(三上博史)がマルハシ再建の緊急プランを提案。それは、ダニエルの解任及び米王手ウィルマンズとの合併解消、そして丸橋雄一郎会長(本田博太郎)を再び社長に就任させるというものだった。だがそんな折、日本橋支店の副支店長に就任した真山(香川照之)のもとに「ダニエルは丸橋会長にはめられた」という告発メールが届く。果たしてメールは事実なのか。片岡は上司である融資担当の隅田常務(別所哲也)に相談し、自ら調査に乗り出そうとするが…。中条あやみ、カメラ目線の顔芸がキュートすぎ!明るく元気で天真爛漫だが、失敗ばかりの型破りな“元ヤン”新米ナース・立花はるかを中条さん、結婚退職を目指して婚活するも、岐路に立たされる34歳の“がけっぷち”ナース・三原夏美を水川あさみが演じるオリジナルの痛快コメディ「白衣の戦士!」。病院という命の現場で患者たちと向き合い、日々奮闘する彼女たちナースは、確かに白衣の天使というより“戦士”そのものだ。フェミニンで可憐なイメージのある中条さんが、白目をむき出し、大声を張り上げ、かつてない顔芸で、ドジッ子だが思いやりに溢れた新人ナースを熱演。失敗したら素直に謝るが、褒められればすぐにデレ顔で有頂天に。“元ヤン”だけに納得できない理不尽さを目の当たりにし、カチンとくればキレる!そんなときにはなぜかカメラ目線で本音が炸裂、患者にも先輩ナースたちにもいえない思いの丈のあれこれをこちらに訴えかけてくるのが楽しい。怒り顔も、得意顔も、これまでに見たことのない表情豊かな中条さんには魅了されっぱなし。ナースあるあるが話題の“ヘイヘイナース”を、プライベートでも仲良しという後輩ヤンキー・七海役の富田望生と披露する動画もキュート。また、先輩ナースを演じる水川さんも負けてない。はるかの指導係であることからイライラが尽きない上、バツイチ師長・本城(沢村一樹)と婚活中に知り合った商社マン・里中(田中幸太朗)との恋に揺れ、多彩な表情を見せている。病棟のナースステーションにも小瀧望(ジャニーズWEST)演じる爽やかで優秀なナース・斎藤光をはじめ、片瀬那奈、鈴木紗理奈、さらに外科医役の安田顕とひとクセあるキャラがずらり。コメディテイストではあるものの、そこは命の現場。元看護師で末期がんの女性・加奈(財前直見)が登場する第3話などは目頭が熱くなるシーンも。第3話といえば、小瀧さん演じる斎藤との“事故チュー未遂”以来、彼を意識するようになったはるか。前回第6話ではなんと2人のキスシーンが!「大事な話がある」と斎藤を呼び出し、勇気を出して「あたしのことどう思ってんの?」と聞くが、鈍い斎藤はピントの外れた答えばかり。しびれを切らしたように、はるかからキスをしてしまう!中条さんは「最終回に向けて、はるかと斎藤の関係がここからどうなっていくのか、私も楽しみです」と期待を込めて明かしているが…。第7話あらすじ斎藤(小瀧望)に告白するつもりが、酔った勢いでキスしてしまったはるか(中条あやみ)。だが、キスをした記憶がないはるかに、斎藤はドギマギするばかり。斎藤の様子が普段と違うことに気づいたはるかは、自分が“何かした”のではないかと探ろうとする。そんな中、小学生の社会科見学が四季総合病院にやってきて、はるかと夏美(水川あさみ)が案内を担当することに。ひときわやんちゃな男の子・佑輔(五十嵐陽向)に手を焼くが、その佑輔は同僚の貴子(鈴木紗理奈)の一人息子だった!しかも、貴子の母・昌子(大島蓉子)が階段から落ちて入院したことから、はるかは佑輔を一晩預かることになる。佑輔の世話をしていくうちに、女手一つで仕事と子育てを両立させている貴子の苦労を知るはるか。その夜、夏美もやってきて思いがけず恋バナトークに花が咲くが…。古田新太の“おつかレインボー”が流行語になる!?“ダイバーシティ宣言”を掲げた私立・豪林館学園高校に赴任する、ゲイで女装家、52歳の国語教師・原田のぶおが、歯に衣着せぬ“原田節”とハンパない行動力で、現在の教育現場と教室で本音を隠す生徒たちに大切なことを伝えていく新感覚の学園ドラマ。女装は「慣れてます」という古田さんが、破天荒だが、人間味あふれるニュータイプの先生を体現する。頻繁にずれるおかっぱのカツラに、つけまつげまでバッチリメイクの原田のぶおは、かつてはゲイバーを経営していたが校長(いとうせいこう)の誘いで教師になったとか。その辺りの詳しいいきさつは、いまのところ謎に包まれている。第1話では赴任早々、ゲイや女装家の区別もつかず、見た目を笑う生徒たちに「他人をばかにして笑うほうがブス」「その決めつけがお前を大人になってから苦しめる」などと一喝し、「LGBTとは?」の授業までも。“おつかれさま”とLGBTの象徴である“レインボー”を組み合わせた「おつかレインボー」が挨拶代わり。生徒たちのために奮闘するあまり、「スカート汚れちゃったじゃないのよ」と身なりを気にするところも愛らしい。生徒を叱るときにはドスを利かせた声で、細い目がいっそう細くなってマジギレする一方、生徒が少しでも成長を見せれば「いいんじゃない」とニコニコ。職業体験の第4話では、まさかの土下座もしてみせた。また、永瀬廉(King & Prince)や道枝駿佑・長尾謙杜(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)らネクスト注目株の生徒たちはもちろんのこと、職員室の教師陣も超個性的。物理の古賀先生(荒川良々)、体育の庄司先生(大倉孝二)、英語の広田先生(シソンヌ・じろう)らクセがすごい面々の中にあって、最も視聴者に近い目線から原田のぶおの言動を見守り、その“授業”に翻弄されまくっているのが、桐山漣演じる2年3組の副担任の田中先生。ドラマ「デイジー・ラック」や『L・DK』『曇天に笑う』、最新映画『貞子』などのクールで物憂げなイメージが台無しとも思えるほど、桐山さんの困り顔やシュン顔のリアクションは見もの。気になっている養護教諭・佐川先生(大西礼芳)の指輪に気づくと、「カレ氏ですか?」と声が思わず裏返ってしまう始末。ヘタレで、胃薬が手放せないようなシーンもあり、田中先生の自己変革ものぶおが後押しするのか?そして、教師2年目にして心がやさぐれた白石麻衣演じる里見先生は、第6話では親に反論できないまま見合いし、結婚式当日を迎えてしまうことに。のぶおがひと肌脱ぐ…のではなく、なぜか自らもウエディング姿となって里見先生の背中を押した。のぶおに出会ったことで変わっていく彼女からも目が離せない。「おじさんの女装家がズケズケ言うのを見てゲラゲラ笑うと言うドラマになれば、若い人たちも楽しめるドラマになるんじゃないか」とドラマ開始時に語っていた古田さんだが、父親(板尾創路)との不和を抱える永瀬さん演じる明智を除いて、2年3組の生徒たちはのぶおを慕うようになっている。明智vsのぶおにも、ひと波乱が待ち受けていそうだ。第7話あらすじ明智(永瀬廉)が退学届を提出した。寺尾校長(いとうせいこう)、長井(松下奈緒)、原田(古田新太)は明智と話し合うが、辞めたい理由を尋ねても明智は答えない。長井は明智の父・純一(板尾創路)を訪ねる。純一は長井に、明智が自分に借金をしており、働いて返して貰うために明智には学校を辞めさせると言い放つ。原田に頼まれ東条(道枝駿佑)、若林(長尾謙杜)たちは、アルバイト先に明智を迎えに行き、指定された場所へ向かうが…。銀行で、病院で、学校で、それぞれ繰り広げられるコミカルだけどアツい! 顔芸合戦の後半戦に注目だ。(text:Reiko Uehara)
2019年05月29日●浦沢直樹・東村アキコとの縁NHK連続テレビ小説『まんぷく』で、萬平(長谷川博己)の秘書役・望月綾を演じ、注目を集める女優・玄理。5月3日に公開を迎えた映画『薔薇とチューリップ』では韓国のアイドルグループ・2PMのジュノの相手役、現在放送中のNHKドラマ10『ミストレス~女たちの秘密~』(毎週金22:00~)ではビジネスウーマンを器用に演じ分けている。ジュノ演じるカリスマ画家ネロ・パークを献身的に支えるマネージャー・ミョンアと、佐藤隆太演じる悟史との夫婦生活がぎくしゃくしていく冴子。2作は両極端の役柄ではあるが、そこには玄理ならではの職業観が通底していた。○■ジュノのお姫様抱っこシーン秘話――ジュノさんにとっては、邦画初主演となる『薔薇とチューリップ』。日本語もお上手な方なんですよね。スタッフさんが全員日本人だったので日常会話は日本語で話されていて、私とお話しする時は韓国語が多かったです。韓国では連ドラの主演をたくさんやられて演技経験も豊富な方なので、とてもやりやすい雰囲気を作ってくださいました。――俳優として最も印象に残っていることは何ですか?これまでずっと日本で仕事をしてきて、韓国の俳優さんと接する機会があまりなかったせいかもしれませんが、ジュノさんがお風呂に入るシーンで恥ずかしそうにされていて。それがすごく新鮮というか、きっとファンの方々にとっても魅力的な部分でもあるんだろうなと感じました。現場でそこまで深いお話はできなかったのですが、役柄にとってもそれが良かったと思っています。――この映画の中で個人的に一番好きなのが、ジュノさんが玄理さんを「お姫様抱っこ」するシーン。役柄の感情がとても表れていたのですが、どのようなやりとりがあって成立したシーンだったのでしょうか?先程の話とつながるかもしれませんが、ジュノさんが私をお姫様抱っこした時に私の足元にはカメラがあって。短いタイトなスカートだったので、すごく心配してくださったんです。後で編集してもらえるので私は気にしてなかったんですが(笑)、抱きかかえる向きを変えたり、そういう気遣いをしてくださったこともすごく新鮮でした。アーティストだけでなく、俳優としても経験豊富な方なので、そのような対応力を兼ね備えていらっしゃるのだと思います。――また、それが役柄としての関係性にも活きてきそうですね。そうですね。役の距離感を縮めるきっかけにもなりました。――共演者一人ひとりにそのような気付きがあるんですか?私は、現場の空気が良いとそれが映像にも現れると思っています。ジュノさんがとにかくお忙しくて、スケジュールはかなりタイトでしたが、スタッフさんの団結力がすごくて。現場ではいろいろなハプニングが起こるのですが、監督がすごく穏やかな方なので自然と乗り切ることもできて、撮影から1年以上経っていますが、スタッフさんとは今でもご飯に行く間柄です。――東村アキコさんが、大ファンであるジュノさんのために描き下ろしたマンガが原作になっているそうですね。東村さんと会う機会はありましたか?現場に来てくださったので、そこでお話させていただきました。以前、『相棒』で漫画家の役をやらせていただいた時に浦沢直樹さんに指導していただいたのですが、当時浦沢さんのマネージャーさんが東村さんも担当されていて。そんなご縁もあって、マネージャーさんと一緒にいろいろなお話をさせていただきました。――役柄のヒントも原作から?原作となったのは完成したマンガというよりも、ラフがあって、そこから脚本を書き起こしたものです。それを読ませていただいて、スタイリストさんやヘアメイクさんもすばらしい方々だったので、「ミョンアってこんな感じだよね」と話し合いながらキャラクターを作り上げていきました。スケジュールがタイトだったのですが、監督とも相談させていただいたり。東村さんも現場で「うわー! ミョンアだ!」とすごく喜んでくださったので安心しました。――そうした作り上げたキャラクターを韓国語で演じるとなると、難しい部分もありそうですね。全編韓国語でお芝居するのは、今回が初めてです。ネイティブぐらい話せるとはいえ、知らない単語や言い慣れない言葉があったりして、ジュノさんは日本語を、私は韓国語でお互い分からない部分を確かめ合いました。いつか全編韓国語の役はやると思っていましたが、デビューしてから10年経っているので、「ようやく」という感じです。実際にやってみると、主人公の相手役、しかもジュノさんですから独特のプレッシャーがあって。やり切った達成感と、これからの自信につながりました。●全編韓国語の初演技と恩師の言葉――玄理さんは韓国の演技学校に通っていたことがあって、韓国語の演技はそこで相当鍛えられたそうですね。実際にやってみて、ギャップはありましたか?日本語ほど、セリフがスムーズには入ってこない。日本語の方が母国語で、日常使っている言語なのでそういう苦労はありました。でも、すごく楽しかった。アメリカの作品のオーディションでもそうだったのですが、何かが不自由な方がやりがいがあるというか。ルーティーンにならない感じが、すごく楽しいんです。――「不自由さ」を自分の中に引き込む。玄理さんの核の部分のような気がします。演技学校時代、韓国語はそこまで得意じゃなかったので、「不自由」が演技の出発点でした。先生から当時言われて覚えているのが、「発音は完璧じゃない。でも、セリフからその情景が誰よりも頭に浮かぶ」と。「単語1つ1つの意味を調べてるでしょ?」と聞かれて、確かにそのとおりでした。単語の意味が分からないから、それぞれ調べて、単語の意味を認識しながらセリフを言ってたんです。「それが大事だと気づくことができた」とまで言われたのは、たぶん先生が褒め上手だったからなんですけど(笑)。そういう不自由さから始めたので、2倍頑張らないといけない状況が楽しいのかもしれません。――どのような役でもそうやって向き合っているんですか?分からないことがあったら必ず調べています。この前、何かで読んだのですが、そこには「何事も準備が9割」と書いてありました。芝居もそうなのかなと思っていて、でも準備にあたる「役作り」をしなくてもすばらしい演技をされる俳優さんもたくさんいて。役作りは、「自分に言い訳ができないくらい準備をした」ということだと思っています。あとは、その場で頑張るしかない。役作りをしたことを思い返しながらお芝居をするわけではありませんが、「これだけやったから大丈夫」と自分が安心したいだけなのかもしれません(笑)。――そこには正解も不正解もなく、各々のやり方というわけですね。そうだと思います。私は準備は絶対します。役に選んでいただいて、そこに至るまでにはいろいろな方が関わっているので。○■「準備が9割」を心掛けている理由――役者同士でこういうことを話すことはありますか?あまりしないかもしれません。でも、『ミストレス』に出演するにあたって、全10話の連続ドラマでここまでメインをやらせていただくのはほとんど初めてで。映画は役を引き受けた段階で台本が完成しているので、どういう結末に向けて物語が展開していくのかを理解した上で現場に入ることができます。でも、ドラマは撮影が始まる時には1話か2話ぐらいまでしか用意されていないことも多くて。ざっくりとした結末は聞かされていても、例えばそこに至るまでに登場人物がどのような選択をしていくのかでパーソナリティが見えると思うんです。そこについては周りでドラマによく出る友達にたくさん聞きました(笑)。――どのような情報が得られましたか?事前にプロデューサーや監督に聞いたり、自分の中で「きっとこういうことだろう」と決めてやっていたり。その上で予想外の展開になった時は、「そういう選択もあるのか」とポジティブに受け入れるそうです。確かに、違和感があって立ち止まっていても、撮影は進んでいきますからね。終盤にきて、深く考え込まずに「きっとこうなる」と受け入れることにも慣れてきました。――現場の雰囲気がとても良いそうですね。長谷川(京子)さん、水野(美紀)さん、大政(絢)さん、みなさんとても気さくな方々なんです! 女子会のシーンは1話につき1回ぐらいしかないのですが、撮影で全員が揃う日はウキウキしながら現場に入っています。撮影の合間の会話が楽しすぎて、思い出し笑いしたり(笑)。――ドラマはネタが渋滞しているのではと心配になるくらい、4人に様々な出来事が降り 掛かってきます。1人の話で連ドラ1本できそうですよね。長谷川さんがサスペンス、水野さんは最初はホッコリ、大政さんはLGBT、私はオフィスラブや夫婦問題と、見どころが詰まったドラマです。事前にBBC版を観て監督と打ち合わせをしてから台本をいただいているので、1度の裏切りによってそれが愛ではなくなるのかとか、すごく考えることが多くて……。――玄理さん演じる冴子は、夫・悟史(佐藤隆太)から子どもが欲しいと求められるも、仕事を優先したい冴子とすれ違いに。そして、冴子は一度、過ちを犯してしまいます。裏切られた側からすると、それは愛ではないのかもしれない。でも、冴子はずっと悟史のことを大好きで。このような問題に対して、それぞれのカップル、夫婦によっていろいろな答えがあると思います。別れる男女が大多数だと思うんですけど、別れないことが本当の愛かと言われると、そうでもないような気も……正解は1つじゃないと思いますが、台本を読みながら冴子と向き合っているんですけど、未だに答えは見つかっていません。――今回のドラマが、深く考えるきっかけになったんですね。「裏切り」についてすごく考えるきっかけになりました。自分がちゃんとしているというつもりは全くないのですが、男性や友達との付き合いでも自分が原因で裏切ることはなかった。「しくじり」みたいなことをわりと避けてきたタイプなので、こんな事態になったら自分はどうなるんだろうかと。誰しも、可能性はゼロではない。1つ嘘をつくと、雪だるま式になるから、嘘がない状態でいられるように心掛けないといけないですよね(笑)。――そこを第三者視点でのぞくことができるのも、ドラマの醍醐味ですね。そうですね。やっぱり、ドラマの魅力の1つは「他人事」であること。思う存分、楽しんでいただきたいです。――『薔薇とチューリップ』では、「才能とは」「“好き”だけでは仕事は成立しない」などがテーマとなっていて、昔に比べて最近では、「好きなこと」「やりたいこと」をそのまま仕事にしている人も増えているような気がします。玄理さんは、今年はNHK連続テレビ小説『まんぷく』に出演するなど、大きな仕事もありました。あらためて、「才能」と「好きなこと」についてどう感じますか?自分に才能があるか、全然分かりませんが……褒めてもらえると心底うれしいんです(笑)。ただ、やればやるほどすごい芝居をする人がいすぎて、いつも「これでいいのかな」と自問自答しながらやっています。「準備が9割」を心掛けているのも、後悔をしたくないから。結局は、「もっとできた」と思ってしまうんですけど、期待してくれた方々にも後悔はさせたくない。そうやって悩みながらも続けられるのは、演技をすることが好きだからなんだと思います。■プロフィール玄理1986年12月18日生まれ。東京都出身。中学校時代にイギリスに短期留学。青山学院大学在学中に、韓国延世大学に留学し、映像演技を専攻。日本語、英語、韓国語のトライリンガル。2014年公開の主演映画『水の声を聞く』で、第29回高崎映画祭最優秀新進女優賞を受 賞。2017年ソウルドラマアワードでアジアスタープライズを受賞した。これまで『駆込み 女と駆け出し男』(15)、『天国まではまだ遠い』(16)、『後妻業の妻』(16)、『リップヴァンウィンクルの花嫁』(16)、『こどもつかい』(17)、『パーフェクトワールド』(18)などの映画、『フリーター、家を買う。』(フジ系・10)、『八重の桜』(NHK・13)、『相棒 Season14』(テレ朝系・15)、『精霊の守り人 シーズン2』(NHK・17)、『きみはペット』(フジ系・17)、『ウツボカズラの夢』(フジ系・18)、『女子的生活』(NHK・18)、『まんぷく』(NHK・19)などドラマに出演。NHKドラマ10『ミストレス~女たちの秘密~』(毎週金曜22:00~)放送中、野口照夫監督『薔薇とチューリップ』公開中。
2019年05月24日東京地方裁判所103号法廷にて2019年4月15日、私は珍しい体験をしました。東京地方裁判所の103号法廷という大法廷で、裁判官と満員の傍聴人の前で、子育て体験の話をしたのです。なんでそんなエライことになったのか?それは「結婚の自由をすべての人に」訴訟、いわゆる同性婚訴訟の原告の一人になったからです。2019年2月から始まった “同性カップルでは結婚ができないので困っています” と訴える裁判で、札幌、東京、名古屋、大阪の4ヵ所で、13組の同性カップルが一斉提訴をしたのです。私と麻ちゃんはそのうちの1組。ニュースでご覧になった方も、いらっしゃるかもしれません。しかし本当に、私の人生の訳のわからなさも、これでいよいよ極まれり。自分でもびっくりしています。引っ込み思案で、子どもの頃は先生に指されると、それだけで飛び上がるような小心者だったのに、なぜ私は東京地方裁判所の大法廷などという、およそ人生で縁のないハズだった場所で、話をしているのでしょう……。というわけで、事の次第を説明するには、訴訟よりずっとずっと前にさかのぼることになります。すべての始まりは、麻ちゃんの何気ない一言でした。本気じゃないよね事の起こりは9年前。麻ちゃんと結婚式をした数日後。2年がかりで作り上げ、大好きな人たちに見守られて行った結婚式の後、幸せな余韻にまだまだ夢見心地だった時のことです。「私たち、結婚式したんだね」なんて、うっとりする私を麻ちゃんがじっと見つめていました。そして、お揃いの真新しい結婚指輪の光る手を取って、こう言ったのです。「いつか裁判しようね♡」「愛しているよ」とか「幸せだよ」とか、そういうフレーズがくるはずでした。そこに突然ぶっこまれた “裁判” というワード。裁判?裁判って今言いました?えっ、聞き違いじゃないよね?裁判って、えーと、裁判?ラブラブウフフな雰囲気になる予定が、いきなりの過激ワードでフリーズです。固まった私を見て、麻ちゃんはニコニコと続けました。「ほら、だって私たち、同性カップルだから結婚できないじゃん?だから、いつかアメリカみたいな裁判を起こそうよ!ね!」“ね!”って、キラキラした目で言われたけれど、“えっ、これ、まさか本気じゃないよね!”。頼む、本気にならないで!そんな私の胸の内を知ってか知らずか、麻ちゃんはそれからも度々「裁判」とつぶやいては、私をドキドキさせました。そんな私たちの元に、ある大きなニュースが飛び込んできたのです。2012~13年の「GID・法律上も父になりたい裁判」です。GID=性同一性障害のお父さん(FTM:Female to male、生まれた時は女性として性別を割り当てられたが、性自認が男性である人)が、奥さんが産んだ子との間に父子関係が認められなかったために起こした裁判でした。嫡出推定という不思議な法律ちょっと本筋からは外れるのですが、この裁判の概要をご説明します。ややこしいのですが、ついてきていただけるとうれしいです。結婚している夫婦が不妊治療でAID(非配偶者間人工授精。つまり夫ではない人に精子提供をしてもらうこと)をした場合、生まれた子どもは夫婦の嫡出子(結婚している夫婦の間に生まれた子)という扱いになります。これは民法772条の規定(嫡出推定)によるもので、結婚している妻が妊娠した場合、実は夫以外の男性との子どもであっても、結婚している夫婦の間に産まれた子という扱いになるのです。みなさん、知っていました?現代からすると、ちょっと不思議な感じですよね? 実はこれ、民法772条の元となる規定が作られたのが明治時代で、DNA検査が想定されていなかったため、「実のところ他の男の子どもかもしれないけど、結婚している以上、その夫婦の子どもってことにしよう!その方が子どものために良いよね!」ということでできたものなのだそうです。そこでこの裁判です。このFTMの方は、戸籍を女性から男性に変更して、女性と結婚していました。しかし精子はないため、AIDで子どもを持ったのですが、戸籍上も結婚が成立している夫婦だったにもかかわらず、その子どもは嫡出子にならなかったのです。というのも、そのFTMのお父さんの戸籍に、女性から男性へ性別を変更したことがわかるような記載があるため、生殖能力はなく子どもを持てないことが明らかである以上、嫡出推定に当たらない、とされたのです。一審、二審、共にFTMのお父さんの請求は退けられたのですが、最高裁で一転。生まれた赤ん坊は、この夫婦の嫡出子である、という決定が出たのです!つまり、最高裁は“血縁関係のない子どもであっても、夫婦の間に生まれた子は嫡出子になるというのが原則である。それはFTMであっても例外ではない”という決定を下したのです。このドラマティックな裁判は、意外なところに飛び火しました。そうです、裁判、裁判と思い出したように時折つぶやいていた麻ちゃんの、裁判トリガーをガッツリ引いてしまったのです。時期尚早という言葉の意味最高裁の決定が出た後の祝勝会には、私たちも参加し、大いに盛り上がりました。FTMのお父さんのご一家に加えて、この裁判を戦った弁護士の先生方も来られていたのですが、麻ちゃんは弁護士の先生を完全にロックオン。「同性カップルだって結婚がしたいのだ、と訴える裁判はしないのか」と、にじり寄っているではありませんか!弁護士の先生の返事は、「時期尚早」というものでした。2013年当時は、まだまだ今のようなLGBTブームもなく、“LGBT”というと「何それ、サンドイッチ?(それはBLTだ!)」なんて言われていた頃。「もう少し世の中での認知が広がらないと……」という判断だったのです。「よかった、これで諦めてくれるだろう」と、私は思ったのですが甘かった。実は麻ちゃん、この時「イケる!」と思ったそうです。相変わらず意思の疎通がからっきし出来ていない私たち。麻ちゃんは、「“時期尚早” ということは、逆に “時機がくれば、やれる” ということだな!」と思ったのです。さすが、麻ちゃん。一度食いついたら離れないスッポンのような女!それから6年。色々なタイミングが重なったとはいえ、まさか自分たちが本当に裁判に関わることになるとは。人生、何が起こるかわかりません。Composition:Yoshiyuki Shimazu
2019年05月16日俳優、声優として活躍する三ツ矢雄二が、新たに“LGBT THEATER”を立ち上げ。第1弾として『MOTHERS AND SONS―母と息子―』を、7月26日(金)から、東京・サンシャイン劇場で上演する。そこで演出も手がける三ツ矢と、主演の原田美枝子に話を聞いた。【チケット情報はこちら】自らゲイであることを公言し、LGBTの活動にも協力している三ツ矢。その中で自分は何が出来るかを考えた結果、行き着いたのがLGBT THEATERだったと言う。「自分が出来ることって、やっぱり芝居しかないんですよね。ブロードウェイにはいいゲイの戯曲がいっぱいあるし、じゃあそれをやろうと。1本目をこれにしたのは、ゲイが笑いに走るものではなく、ちゃんとしたドラマをやりたいと思ったから。僕自身、とても感動した作品であり、LGBTの現状を知ってもらうためにもいい題材だと思ったんです」物語は、年の離れたキャル(大塚明夫)とウィル(小野健斗)という同性婚カップルのもと、キャルの元恋人アンドレの母親キャサリン(原田美枝子)が訪ねて来るところから始まる。キャルたちの間にはバド(阿部カノン・中村琉葦Wキャスト)という子供もおり、理想的な家庭を築いている一方、キャサリンは夫に先立たれ、息子のアンドレもエイズで亡くしている。原田が演じるのは、そんな複雑な感情を秘めたキャサリンだ。「親にとって1番の不幸って、子供が先に死ぬことだと思うんです。それこそキャサリンも身を切られるほどの想いだったろうと。そういう悲しみが怒りになり、孤独になり、さらにはエイズや同性愛に責任転嫁していってしまう。ただキャルもウィルも子供を育てるということにおいては、キャサリンと同じく、母性を理解し始めているんですよね。そのあたりの構成が、非常によくできた戯曲だと思います」原田のキャスティングについて三ツ矢は、「見た目はとてもたおやかで儚げですが、1本体幹に根性が座っている(笑)。それがキャサリンという女性にぴったりだと思ったんです」と全幅の信頼を寄せる。また原田も「“いいお母さん”というのが日本の母親役では主流ですが、これまで生きてきて思うのは、女の人ってもっといろんな面があって面白いということ。だから今、こういう母親役をやれるのはとても楽しみです」と期待に胸を膨らませる。最後に三ツ矢はこう言う。「LGBT THEATERをライフワークにしたい」と。さらに「回を重ねていくことで、LGBTだってなにも変わりはない。普通だよと。で、LGBTって言葉自体がなくなってしまうのが1番の理想だと思います」と展望を語る。そのための大きな一歩、ぜひ劇場で見届けたい。取材・文:野上瑠美子
2019年05月10日フレディ・マーキュリーに大きな影響を与え、“ゲイカルチャー界のウォルト・ディズニー”と呼ばれたゲイアートの先駆者の波乱の半生を描いた映画『トム・オブ・フィンランド』の日本公開が決定した。本作で描かれるのは、まだ同性愛が厳しく罰せられていた第二次世界大戦後のフィンランドを舞台に、身内にも隠れて自らの本能的な欲望をドローイングとして表現し続けていたトウコ・ラークソネン。本名から海外でも覚えやすい「トム」と名乗り、描いた絵がアメリカの雑誌で表紙を飾ったことをきっかけに、その名がアンダーグラウンドからアートの表舞台へと一気に知れ渡り、栄光を手にするまでの波乱に満ちた半生を描いている。監督は、ニコラス・ホルトが主演を務める、『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』3部作の原作者J・R・R・トールキンの伝記映画『TOLKIEN』(原題)の公開が控えるドメ・カルコスキ。フィンランドで最も成功した映画監督といわれており、本作は昨年度米アカデミー賞外国語映画賞のフィンランド代表作品にも選ばれている。日本でも、“漫画のアカデミー賞”といわれるアイズナー賞を受賞し、NHKでドラマ化もされた田亀源五郎原作「弟の夫」や、昨年度テレビドラマで高視聴率をたたき出し映画化もされる「おっさんずラブ」、男性カップルの日々の食卓を描いた、よしながふみ原作の大人気マンガを西島秀俊&内野聖陽のW主演でドラマ化し早くも話題沸騰中の「きのう何食べた?」、そして大倉忠義と成田凌の共演で2020年の公開を控える漫画「窮鼠はチーズの夢を見る」実写化など、近年、同性カップルをテーマにした作品が大きな注目を集めているさなか。“ゲイカルチャー界のウォルト・ディズニー”とも呼ばれ、「クイーン」のフレディ・マーキュリーをはじめ、アンディ・ウォーホル、ロバート・メイプルソープ、デイヴィッド・ホックニー、ジャン=ポール・ゴルチエ、トム・フォードといった数多のアーティストたちに影響を与えたトム・オブ・フィンランド。LGBTに対しての軽蔑や無理解と闘った芸術家が、何十年もの苦難の末につかみ取った愛と栄光の物語に、期待していて。『トム・オブ・フィンランド』は8月2日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2019年04月22日NHKよるドラ第2弾、『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』で初主演に抜擢された金子大地さん。原作は小説『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』。僕と純の共通点は人を好きになるところ。「原作を読んだとき、LGBTの世界観や価値観、悩みなどに深く切り込んだ内容だったので題材も役どころも難しい、というのが第一印象。でも、だからこそやりがいがあるんじゃないかな、とも思いました」金子さんが演じるのは、同性愛者であることを周囲に隠して暮らす、18歳の高校生・安藤純。腐女子の同級生・三浦紗枝(藤野涼子)がある日、書店でボーイズラブの漫画を購入するところに遭遇し、二人は少しずつ接近していくという物語だ。「いつもお芝居をするときは、役作りというよりもその役と自分を繋げるような、しっくりくるラインを見つける作業から入るんです。そのために共通点を探したりするんですが、僕と純が確実に通じ合えるのは“人を好きになる”ということ。相手が異性なのか同性なのかでもちろん違うと思いますが、僕としては、人を好きになるという根本的な気持ちは変わらない。一方で、動物の世界ではオス同士の性行為が多いと聞いて、本能的にそういうことが起こるのであれば、じゃあ世間で言われている“普通”とか、自分が思っている“普通”って何?という疑問は大きくなるばかり。考えるほど、わからなくなっちゃいますけどね」まず世の中のマイノリティの人たちの心に響いてほしい、と金子さん。「だけど重い気持ちではなく“うっかり”気楽に見てほしいです(笑)」『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』ゲイであることを隠して生活する純だが、“異性を愛し、子供を作って家庭を築く”という“普通の幸せ”にも憧れる同級生の腐女子・三浦さんと交際を始めるが…。4月20日(土)スタート、NHK総合23:30~23:59(全8回)。かねこ・だいち1996年9月26日生まれ、北海道出身の俳優。ドラマ『おっさんずラブ』などの話題作に出演。出演映画『劇場版 おっさんずラブ』が8月23日公開、『殺さない彼と死なない彼女』が秋公開予定。※『anan』2019年4月24日号より。写真・小笠原真紀インタビュー、文・若山あや(by anan編集部)
2019年04月20日アイスウォッチ(Ice-Watch)から数量限定の腕時計「アイスチェンジ - レインボー」が、2019年4月27日(土)より全国のアイスウォッチストアにて発売。また、4月12日(金)よりアイスウォッチ公式オンラインストアにて先行発売する。「アイスチェンジ - レインボー」は、ホワイトのベルトにレインボーの文字盤を配したデザイン。大きさは40mmのミディアムサイズで、ジェンダーレスで着用可能だ。なお、このモデルは、年齢や性別、文化の枠を超え、たくさんの人に届けたいというブランドの想いから誕生したモデル。文字盤には、LGBTのシンボルカラーである6色の虹、通称“プライドカラー”が配されている。【詳細】アイスチェンジ – レインボー発売日:2019年4月27日(土)販売店舗:全国のアイスウォッチストア※4月28日(日)、29日(月・祝)に東京・代々木公園にて開催される国内最大級のLGBTイベント「東京レインボープライド2019」でも発売先行発売:2019年4月12日(金)よりアイスウォッチ公式オンラインストアにて先行発売価格:12,000円+税【問い合わせ先】アイスウォッチ 原宿住所:東京都渋谷区神宮前4-26-5-1FTEL:03-6804-6932
2019年04月13日イベントプロデューサーとして活躍している小橋賢児が4日、都内で行われた「東京2020 NIPPON フェスティバル」組織委員会主催事業に関する記者会見に出席した。世界の注目が日本・東京に集まる2020年4月から9月にかけて開催される東京2020大会の公式文化プログラム「東京2020 NIPPON フェスティバル」。この日の会見では、東京2020組織委員会主催の4事業が発表された。小橋氏は、パラリンピック開幕直前期に実施される「共生社会の実現」をテーマにしたプログラムのクリエイティブディレクターに就任。同プログラムでは、障害のある人やLGBTを含めた多様な人々が参画し、街中でさまざまなアートやパフォーマンス活動などを開催し、個性を認め合う「ダイバーシティ&インクルージョン」の新しい文化創造事業を展開する。会見では、「僕自身、日本に生まれ日本で育ったんですけど、27歳まで俳優をやっていて、俳優を休業してアメリカに行って世界中を回ったときに、多様な生き方や考え、いろんな文化に触れて、自分という枠を超えて世界の中から日本を見たときに、もっと世界は広いし、知れば知るほど自分の本当にアイデンティティを知るということを実体験で知りました」と自身の体験を紹介。続けて、「日本に戻って来たときに、日本は良くも悪くも人を重んじて、人を気にするという同調圧力の中で生きてきた日本人の中で、多様性=ダイバーシティはなかな現実的に起きてないというのを目の当たりにした」と海外と日本の差に言及し、「オリンピックという、日本が世界とつながって、日本人も世界を意識し、世界が日本を見るという、このタイミングにダイバーシティに向けた肌感を作れるイベントの機会に恵まれたことは僕にとって意味があるのかなと思いました」と感慨深げに語った。さらに、「僕自身、身内に障害を持っている人がいます。子供のときから芸能界もそうですけど、いろんな世界でいろんな人たちと出会って、何か息苦しさを感じていた」と打ち明け、「日本の和は調和の和だと思っている。本来日本は、いろんなものを取り入れられる調和の和の心を持っている民族だと思う」と熱弁。「このイベントを通じてさまざまな生き方の人と出会って、相手を知って自分を知る、そしてこの2020年をきっかけに本当の意味でのダイバーシティ&インクルージョンという肌感が生まれるイベントにしたいと思います」と意気込みを語った。そのほかの3事業は、2020年4月、オリンピック開幕直前期、2020年5月~7月にそれぞれ開催。2020年4月にはキックオフイベントとして、「大会に向けた祝祭感」をテーマに、歌舞伎俳優の市川海老蔵とオペラ歌手のプラシド・ドミンゴのコラボレーションステージを開催する。オリンピック開幕直前期は、「参加と交流」をテーマに、日本文化を通じてさまざまな人々が交流する場・イベントを創出。2020年5月~7月にかけては、「東北復興」をテーマに、東北各県や東北絆まつりと連携し、東北各地・東京を舞台とした文化プログラムを展開する。会見には小橋のほか、東京2020組織委員会副事務総長の古宮正章氏、東京2020組織委員会文化・教育委員長の青柳正規氏、小橋と同じく「東京2020 NIPPON フェスティバル」組織委員会主催事業のクリエイティブディレクターに就任した箭内道彦氏、東京2020オリンピック・パラリンピックの大会エンブレムの制作者で「東京2020 NIPPON フェスティバル」のマークも手掛けた野老朝雄氏が登壇。そして、東京2020組織委員会文化・教育委員会委員であるSHELLYが司会を務めた。
2019年04月04日世界の注目が日本・東京に集まる2020年4月から9月にかけて開催される東京2020大会の公式文化プログラム「東京2020 NIPPON フェスティバル」の記者会見が4日、都内で行われ、東京2020組織委員会主催の4事業が発表された。キックオフイベントとして歌舞伎俳優の市川海老蔵とオペラ歌手のプラシド・ドミンゴのコラボレーションステージが開催される。このコラボステージは、「大会に向けた祝祭感」をテーマに、キックオフイベントとして2020年4月に開催。東西を代表する無形文化遺産・舞台芸術(歌舞伎とオペラ)の融合による世界初の舞台となり、日本を代表する歌舞伎俳優の市川海老蔵と、オペラ界のマエストロであり世界的アーティストであるプラシド・ドミンゴとのコラボレーションステージが、同プログラムの中心となる。発表会では海老蔵とドミンゴのコメントが紹介され、海老蔵は「以前より、2020年はスポーツの祭典であると同時に、日本の文化を世界に届けることができる大きなチャンスであると考えておりましたので、このような素晴らしい舞台に出演させていただけることを心より光栄に思っています。何よりも、今回は世界的オペラ歌手であるプラシド・ドミンゴ氏と共に、歌舞伎とオペラの融合という新しい作品作りへ挑戦することとなり、身の引き締まる思いでおります」と心境を明かし、「一見まるで異なる歌舞伎とオペラという舞台芸術ですが、歴史的背景やその成り立ちには多くの類似点を有しており、私自身もどのような作品を生み出すことができるのか、大変楽しみにしております。2020年4月の特別な公演、何卒ご期待ください」とメッセージを送った。ドミンゴも「私のこれまでの長い舞台経験が、歌舞伎のパフォーマンスとして新たな実を結ぶ日が来ようとは、私自身、想像もしていませんでした。今回の歌舞伎の新作公演は、東京2020オリンピック・パラリンピック開催を記念する特別な文化イベントであり、そこに出演することは私にとっての誇りであり、また栄誉でもあります」と喜びを表現。「歌舞伎界の若きスター、海老蔵との共演が今から楽しみですし、私は彼から歌舞伎の所作を基礎から学ぶことになるでしょう。私はその文化的背景を含めて、昔から日本のことが好きでした。日本人が芸術や美学との間に築き上げてきた独自のきずなに対して、私は常に賞嘆の思いを禁じ得ませんでした。ですから、一夜かぎりのことであっても、そうした日本文化の一部となることは私にとっての名誉なのです」と日本への思いを明かした。そのほかの3事業は、オリンピック開幕直前期、パラリンピック開幕直前期、2020年5月~7月にそれぞれ開催。オリンピック開幕直前期は、「参加と交流」をテーマに、日本文化を通じてさまざまな人々が交流する場・イベントを創出する。パラリンピック開幕直前期は、「共生社会の実現」をテーマに、障害のある人やLGBTを含めた多様な人々が参画し、街中でさまざまなアートやパフォーマンス活動などを開催。2020年5月~7月にかけては、「東北復興」をテーマに、東北各県や東北絆まつりと連携し、東北各地・東京を舞台とした文化プログラムを展開する。なお、「共生社会の実現」プログラムは小橋賢児氏、「東北復興」プログラムは箭内道彦氏がクリエイティブディレクターを務める。また、「東京2020 NIPPON フェスティバル」のキャッチフレーズも発表され、「Blooming of Culture 文化は、出会いから花開く。」に決定。さまざまな人と人の出会いから生み出される新たな文化と感動を、フェスティバルらしい華やかな言葉で祝祭とともに表現した。会見には、東京2020組織委員会副事務総長の古宮正章氏、東京2020組織委員会文化・教育委員長の青柳正規氏、「東京2020 NIPPON フェスティバル」組織委員会主催事業のクリエイティブディレクターに就任した小橋賢児氏と箭内道彦氏、東京2020オリンピック・パラリンピックの大会エンブレムの制作者で「東京2020 NIPPON フェスティバル」のマークも手掛けた野老朝雄氏が登壇。そして、東京2020組織委員会文化・教育委員会委員であるSHELLYが司会を務めた。
2019年04月04日子育てと運営の両立ここしばらく、私も麻ちゃんも慌ただしい毎日を過ごしていました。ニュースなどでご覧になった方もおられると思うのですが、「結婚の自由をすべての人に」訴訟、いわゆる「同性婚訴訟」の原告の一人になったため、その準備に追われていました。その話も追って書くつもりですが、今回は「にじいろかぞく、のはじまり」第5回目で、これで一段落となります。もう少しだけ、お付き合いください。思いがけなく参加することになったアメリカ研修旅行で、すでになんとなく形ができてきていた「にじいろかぞく」の未来のあるべき姿を目にして、私のなかで「やろう!」という気持ちが、これまでになく高まっていました。イベントに集まってくれる仲間たちから、「私は、にじいろかぞくの一員だと思っているよ!」なんて言ってもらって、「ちゃんとした会にしなきゃ」と思うと同時に「本当にできるのか?」という不安もありました。子育てをして、仕事もして、家事もして。それだけで日常は恐ろしくめまぐるしく、常に走っているような状態です。子どもに食事を出したら、自分は台所で立ったまま食べる、という生活が長らく続いていましたし、食洗機と無洗米は常備(それは今もですが……)。ご飯を炊けなかった日のスペシャルメニューはやきそば。そんな有り様です。さらに3人の子どもの学校行事の把握に提出書類の作成、などなど、などなど、細かいことは山積み(見落とすことも度々……)。この状況で「にじいろかぞく」をちゃんとした会にするには、仲間の助けが必要でした。ノンケさんの彼女に気付かされたことアメリカ研修旅行に行く少し前、私は麻ちゃんと、ある選挙ボランティアに参加しました。漫画家でゲイである歌川たいじさん(彼の原作で映画化された『母さんがどんなに僕を嫌いでも』は、涙なしには見られませんでした。機会があれば是非ご覧ください!)が選挙に出られると聞き、「それはお手伝いをしなければ!」ということになったのです。歌川さん、こと歌さんは、私たちの心の師匠、Taqさんの店「タックスノット」で知り合い、私たちにとってTaqさん同様、同性のパートナーと “ふうふ” として長年暮らす、大好きな先輩でもありました。歌さんの選挙ボランティアメンバーは、約半分がLGBTの当事者で、残り半分がノンケさん。LGBTであろうがなかろうが気にしない雰囲気が居心地よく、チラシ配りの後に、みんなでご飯を食べに行くことも度々ありました。そんななか、仲良くなった女性がいました。彼女は夫と二人暮らしのノンケさん。しっかり者で、細かいことにもよく気がつき、ボランティアメンバーの中でも頼りにされる存在でした。年が近いこともあって、すっかり打ち解けて友達になった彼女が、歌さんのボランティアが終わった時に「にじいろかぞくにも行ってみたいな」と言ってくれたのです。彼女は本当に「にじいろかぞく」に遊びに来てくれて、あっという間に会になくてはならない人になりました。彼女のおかげで、会では交流ピクニックだけでなく、さまざまな勉強会も開催できるようになりました。会を支えるということは、実に地道な、細々した作業の積み重ねなのです。その点、彼女は本当に “よくできる人” なので、私も会のメンバーも、すっかり彼女をアテにするようになっていました。ところがある時から、彼女はなんだか元気がない様子が続きました。「心配事でもあるのだろうか?もしかしたら会のやり方が気に入らないのだろうか?」と、オロオロしながら訊いてみるのですが、なんとも歯切れが悪い。「どうしたんだろう?」と首をかしげる私たちを前に、彼女は理由を口にしたがりません。お酒を飲ませて「さぁ話して!」と迫ってようやく聞き出した理由に、私たちはびっくりしました。「あのね、私、やっぱり遠慮しちゃうところがあるんだよね。ほら、だって私だけがノンケじゃない……?」そうなのです。世間では私たちがマイノリティ。普段は大勢のノンケさんに囲まれて、自分たちのことは話しにくい。だからこそ自由に自分たちの家族や、ジェンダーやセクシャリティのことも、率直に話せる場を作りたいと「にじいろかぞく」をやっていたのですが、会ではノンケさんである彼女がマイノリティ。逆転しているのです!私やLGBT当事者のメンバーは、自由に家族やパートナーのことを話していたし、時にはセクシャリティに関わるジョークも言っていましたが、ノンケさんの彼女にしたら戸惑うことが多かったのだと、その時初めて知りました。それを彼女は「ノンケ中心の世の中で、普段は自由に話せないのだろうから。こういう話がしたくてみんな集まっているのだろうから」と、黙っていてくれたのです。そのことに、私たちは強い衝撃を受けました。いつも自分たちがマイノリティだと思い込んでいたけれど、それは違う。状況が変われば、自分たちがマジョリティになることもあるのだと気がついたのです。それは大きな衝撃でした。いつもは配慮 “される側” である私たちが、配慮 “する側” に立たなければいけなかったのです。いつも、ノンケさんに対して「なんでもかんでもノンケ前提だと思わないでくださーい」なんて思っていたけれど、「にじいろかぞく」の中では逆なのです。私たちがノンケさんもいることに配慮し、「なんでもかんでもLGBT前提だと思わないでくださーい」と言われる可能性を考えながら、話をしなければいけなかったのです!これは彼女に話してもらって、初めて見えてきたことでした。だからといってすぐ完璧に対応できたのか、というと、そう簡単な話でもありません。それから何度も、私たちは彼女の気持ちを傷つけてきたと思います。でも、それは自分たちにとって大きな気づきでもありました。ノンケさんを相手に「どうせ、話しても分かってもらえないだろうなー」と思うこともあったけれど、自分たちも分かっていないことに、気付かされたのですから……。それじゃあ困るんですよ、私たちが!ノンケさんの彼女だけでなく、「にじいろかぞく」には、すでに全国から多様な人たちが集まり始めていました。ある時、生まれたての赤ん坊を連れたご夫婦がやってこられました。「私たちはここにいてもいいですか?」と遠慮がちなお母さんの話を聞くと、「私たちは結婚していて、子どもは私たち“ふうふ”の子です。でも私はレズビアンで、パートナーはトランスジェンダーで、男性として生まれましたが、自分を男性と女性の混在だと言っています。こんな私たちでも、仲間に入れてもらえますか?」。レズビアンでありながら「結婚」という道を選んだ彼女にとって、パートナーは女性でもあるのに、世間からは当然のように「パパ」と「ママ」の「家族」として扱われる違和感。その家族の形も戸惑いも、私の想像していなかったものでした。また、あるイベントで元気いっぱいの女性に話しかけられました。彼女はあっけらかんと、自分は3人の子どもがいるレズビアンだと言うのです。しかも選択的シングル。はじめの子は当時結婚していた夫との間に生み、2番目の子は離婚後にその夫に協力してもらって人工授精で生み、さらに3番目の子は精子バンクを通して生んだというのです!固定観念に縛られがちな私は、“子どもを育てるには、つがわないと”みたいなところがあるのですが、自分の人生をどう生きて、どう子どもを育てるかは、それぞれで決めていくことなんだ、と彼女から教えてもらいました。シングルファーザーとして、子どもを育てているゲイの男性との出会いもありました。それから、代理母で子どもを授かったゲイカップルの友だちもできました。彼らは日本人とスウェーデン人のカップルで、現在、同性結婚が可能なスウェーデンで子どもを育てています(スウェーデンでは子育てをするゲイカップルが、さして珍しくないと聞いて、またびっくり)。ジェンダーもセクシャリティも関係なく、つがったりつがわなかったりも自分に合うように選びながら、育児を真ん中に置いて話せる場として「にじいろかぞく」をやっていきたい。人が集まり、ようやく形になってきて、このまま頑張りたい……と思っていた矢先、2016年、私に乳がんが見つかりました。この話は以前に書いていますが、抗がん剤治療に、片胸の全摘手術と1年半は仕事も休業し、ほとんど寝付いていました。手術が終わって半年。そろそろ「にじいろかぞく」のこともやらなくては、と思っていた時に、ずっと会を支えてくれていたメンバーから、声が上がりました。「ボランティアをやって、って小野ちゃんは言いにくいのかもしれないけど、私たちやるから。小野ちゃんが倒れたら会が終わり、じゃ困る。きちんとした会にしてほしい」。特に、LGBTであることを表に出しづらい地方のメンバーから、強い声があがりました。そこで正式に運営メンバーになってくれた6人とともに体制を整え直し、「にじいろかぞく」は会員制の任意団体として、新たなスタートを切ったのです。そして今は、子どもを産んだ経験を持つトランスジェンダーの男性が運営メンバーに加わり、さらに新しい視点を与えてくれています。毎年、会員の入れ替わりがありながら、2019年は子育てをするLGBTを中心に、セクシャリティもジェンダーもさまざまな60人強が参加してくれています。やっていることは、ほぼ育児サークルと一緒ですが、多種多様な家族が、寝転がる赤ちゃんを一緒にあやしながら喋っている様子を見るたび、「自分みたいな家族なんてどこにもいないんだ」と思っていたあの頃、夢見ていた未来のなかにいるな、と感じています。Composition:Yoshiyuki Shimazu
2019年04月02日草木が芽吹く、暖かで心地良い季節がやってきました。いよいよ春ドラマのスタートです。今期は平成最後の――そして新年号「令和」への架け橋となる最初のクール。一体どんな作品が顔を揃えているのでしょうか。今日は、毎クール全ての作品をチェックしているドラマニアな筆者おすすめのドラマをピックアップしてご紹介して参ります。平成の名作が“復活”豪華絢爛な顔ぶれが一堂に会す2012年、竹内結子さん×西島秀俊さんら豪華キャストで放送された「ストロベリーナイト」シリーズがチームを再構成。二階堂ふみさん×亀梨和也さんのダブル主演で木曜10時枠「ストロベリーナイト・サーガ」として新たに生まれ変わります。二階堂さん演じるのは、ノンキャリアでありながら27歳という若さで警部補に昇任した警視庁捜査一課殺人犯捜査第十係主任・姫川玲子。飛躍した思考と直感、行動力を武器に、亀梨さん演じる寡黙で謹厳実直な刑事・菊田と難事件解決に迫っていきます。練りに練られたミステリー展開は、手に汗握ること間違い無し!さらに姫川の天敵で癖のある刑事・勝俣役に江口洋介さんの出演も決定。新生「ストローベリー」チームの豪華演技バトルに期待が高まります。また再登場と言えば、昨年映画化されたことでも話題の「パーフェクトワールド」が、松坂桃李さん×山本美月さんのタッグで火曜9時枠に登場します。大学時代の事故で脊髄を損傷し車椅子生活を送ることになった主人公・樹(松坂さん)が、高校時代の同級生・つぐみ(山本さん)と運命の再会を果たし、心を通わせ合っていく物語。若者に人気の恋愛コミックが原作ということもあって、連ドラでの純粋なラブストーリー初挑戦となる松坂さんのイケメンぶり――胸キュン&胸アツ展開に注目が集まっています。樹の恋敵役には、朝ドラ出演で脚光を浴びている瀬戸康史さんが決定しています。医療ものからLGBTまでズラリ! “漫画原作”も続々実写化さらに、春クール注目の漫画原作ドラマを掘り下げてご紹介していきましょう。横幕智裕さん作・モリタイシさん画の人気コミック「ラジエーションハウス ~放射線科の診断レポート~」が平成最後の月9枠に登場です。窪田正孝さんが演じるのは、X線撮影などで病変を写し出す放射線技師。具体的に手術や処方を施すことはしませんが、天才的な知能と持ち、病の写真家として患者の視えない病を診つけ出す縁の下のヒーローとして大活躍。併せて、月9ならではの恋愛要素――幼なじみで同科医の甘春杏(本田翼)とのラブ展開にも注目です。医療ものと言えば、ミステリードラマ「インハンド」も金曜10時枠で放送決定。朱戸アオさん作の同名コミックを元に、山下智久さん主演でファン待望の実写化!主人公・紐倉(山下さん)は、寄生虫を専門とする天才科学者という役どころ。巨大温室を研究所兼自宅とし、様々な動物たちと暮らしています。彼の右手に黒いロボットハンドのような義手を装着されていて…。「プロポーズ大作戦」以来11年ぶりという、濱田岳さん演じる救急医との最強タッグも見どころになりそうです。そしてもうひとつ、話題の実写化として忘れてはならないのが、ドラマ24枠に登場する「きのう何食べた?」でしょう。よしながふみさん原作の大ヒット漫画をついに映像化。男性カップルの食卓を通して浮かび上がる、人生の機微――ほろ苦くてあたたかな二人の生活は、見る者の心をほっこりさせてくれるはず!弁護士・史朗役を西島秀俊さんが、美容師・賢二役を内野聖陽さんが演じるという超豪華キャスティングが実現。この春、SNSを賑わせることの必須の話題作と言えるでしょう。時代を切り取る“オリジナル”作品も、際立つ存在に――「独身貴族」「結婚できない男」など、これまでにも様々な名称がついてきたドラマ界における未婚男性の存在。そこで2019年新たに命名されたのが、AK(=あえて結婚しない)男子です。彼らが満を持して、ドラマ「東京独身男子」に登場します。人並み以上の容姿を持ち、スペックも高く、気の合う仲間とつるみながら独身ライフを謳歌してきた鼻高々な男たち。しかしながら、ある出来事を境に結婚を猛烈に意識することになり…。いざ結婚を意識し始めると、なかなかうまくいかないという予想外の事態に陥っていきます。演じるのは、高橋一生さん×斎藤工さん×滝藤賢一さんら三者三様の魅力を持つダンディが魅力の俳優勢。新年号にふさわしい、最先端の結婚エンターテインメントのスタートです。以上、いかがでしたか?あなたのお気に入りの一作を是非、探してみてくださいね。(text:Yuki Watanabe)
2019年04月01日先週から中国で『ボヘミアン・ラプソディ』の公開が始まった。検閲により、ラミ・マレック演じるフレディ・マーキュリーのセクシャリティが表現されたシーンがカットされているという。時間にして2分~3分ほどではあるが、クイーンのファンのペン・ヤンツィさんが「AP通信」に語ったところによれば「カットシーンは映画の内容に大きく影響している」とのこと。カットされたのは、フレディが恋人メアリーに自分のセクシャリティについてカミングアウトするシーン、フレディとポール・プレンター(アレン・リーチ)のキスシーン、「I Want To Break Free」のMVの撮影で女装しているシーンなど。ペンさんは昨年10月、イギリスを旅行していたときに現地で『ボヘミアン・ラプソディ』を鑑賞。いたく感動し、このたび母国の中国でも公開になったということで再び映画館に足を運んだ。LGBTの活動家でもあるというペンさんは、検閲版『ボヘミアン・ラプソディ』を観てガッカリしたそうだ。「この映画は、フレディの自分さがしの物語だと思うんです。彼のセクシャリティは自分が何者かということを知るための大事な部分なのに…」。鑑賞前にネットでフレディの伝記を読んで予習したというスー・レイさんは、「アメリカやイギリスのドラマの影響もあって、いまはすごくオープンな時代。カットは必要なかった。みんな、(カットしなくても)理解し、受け入れたと思う」と語っている。(Hiromi Kaku)■関連作品:ボヘミアン・ラプソディ 2018年11月9日より全国にて公開© 2018 Twentieth Century Fox
2019年03月28日千葉雄大が30歳になった。3月9日の誕生日当日には自身のインスタグラムに、花束を抱え、クシャッとしたウインク姿の写真をアップ。ファンからは祝福の声とともに、「こんなに可愛い30歳はいない」「あざと可愛い三十路最高」といったコメントが続々と寄せられている。確かに千葉雄大はカワイイ。いや、“あざとカワイイ”。かつては、その柔和な雰囲気から“ヌクメン”(ぬくもり系男子)の代表格と呼ばれたほどだが、2016年放送の「家売るオンナ」あたりから毒舌のドS王子もハマるようになった。そして現在放送中の続編「家売るオンナの逆襲」では、千葉さん演じるテーコー不動産の営業マン・足立聡は恋をしている。しかも、お相手は松田翔太演じるフリーランスの不動産屋・留守堂謙治。これまで“人たらし”な魅力全開で数々の家を売りまくってきた“足立王子”が、新たに登場した同性の同業者の天才に恋してしまった。毎回、北川景子演じる三軒家万智が様々な事情を抱えた人たちにぴったりの家を売ってきた今作だが、LGBTの家探しの問題にも切り込んだ上、“らしくない”戸惑いや嫉妬を見せる足立の恋の行方も注目の的となっている。昨秋に公開された映画『スマホを落としただけなのに』やドラマ「高嶺の花」などでも新境地を次々と見せつけている千葉さん。「挑戦することを忘れずに攻めて参ります」という30歳の決意は、すでに実行されつつあるようだ。戦隊レッドから王子に!ヘタレキャラもお手のもの1989年生まれ、宮城県出身。近年では“奇跡のアラサー”といわれていた千葉さん。モデルとして活動後、2010年にスーパー戦隊シリーズ「天装戦隊ゴセイジャー」のアラタ/ゴセイレッド役に抜擢されて俳優デビュー。20歳を過ぎてから「桜蘭高校ホスト部」や『アオハライド』『黒崎くんの言いなりになんてならない』などで相次いで高校生を演じるも、違和感がなく、人気少女コミックの“王子キャラ”を確立。その一方で、主演ドラマ「白戸修の事件簿」や「きょうは会社休みます。」、初主演映画『Mr.マックスマン』などでのヘタレぶりから、中川大志&吉沢亮と“3バカトリオ”を演じた「水球ヤンキース」や朝ドラ「わろてんか」ではしっかり者など多彩な魅力も打ち出しており、菅田将暉や竹内涼真(仮面ライダー)、志尊淳や鈴木勝大(スーパー戦隊レッド)ら特撮出身者が多かった『帝一の國』も記憶に新しい。阿部サダヲや瑛太ら個性派たちを取りまとめる役どころを演じた時代劇コメディ『殿、利息でござる!』(16)では第40回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した。教師役は3度も演じており、ドラマ「オトナ女子」では生徒の母親と年の差恋愛に落ちる中学教師、映画『暗黒女子』では全校生徒の憧れの的・飯豊まりえと男女の関係になる先生に、『帝一の國』で先輩・後輩として共演した志尊さん主演映画『走れ!T校バスケット部』ではイケメン教師として友情出演した。“足立王子”が男性に恋してキャラ変!?新たな魅力にヌクメンといわれていた“癒やし系”のイメージを一変させた作品のひとつが「家売るオンナ」。2017年にはドラマスペシャル「帰ってきた家売るオンナ」も制作されるほど大人気となった本ドラマでは、“王子スマイル”で人の懐にするりと入りこみ家を売る一方、三軒家万智の出現で時には毒舌も吐く“足立王子”が新たなハマリ役となった。そんな千葉さん演じる足立が、今回なんと自分を超えるほどの(?)超イケメン&営業力を持つ留守堂に惹かれていくことに。あのイケメンキャラはどこへやら、ドジッ子の留守堂に萌えまくり、メロメロになる足立こと千葉さんの姿は視聴者の心をとらえて離さない。第2話で松田さん演じる留守堂に顎クイされると、乙女のようなキラキラ瞳になり思わず鼻血…。それを留守堂が指でふいてやるという展開には、Twitterのタイムラインも熱くなった。以降、メールを送る際もドキドキ、留守堂が「バンビみたいで可愛い」と言っていたと聞けば、喜びを噛みしめた絶妙な表情をしてみせる。「ケンジ」「サトシ」の名前呼びに歓喜していると、「お似合いですね」とゲイカップルと間違えられたことも。やがて留守堂の正体は万智の小学校時代の同級生・三瓶良雄であり、彼は万智を思っていることが判明。第8話で「黙ってるのも苦しいくらい愛してる」とついに告白を果たすも、あえなく撃沈。口では“卒業”と言い、庭野(工藤阿須加)とカラオケで弾けながらごまかしていたが、まだまだ心は留守堂にある様子。そんな叶わぬ恋に一喜一憂する足立王子は、千葉さんのいう挑戦の証にほかならない。最終回となる3月13日(水)放送の第10話では、留守堂が万智たちの前から姿を消して1年後が描かれる。新宿営業所は外資系ライバル会社・リッチブラスト不動産の急成長により、存続の危機に。万智は庭野や足立と調査に乗り出すが、客を装って偵察に向かった足立が出会ったのは、AIに万智のノウハウをたたき込み、副社長に上り詰めた留守堂!彼の万智への愛は憎しみへと変わっており…という展開となっている。CMでも活躍!新入社員に見える30歳!?「URであーる」でお馴染みの吉岡里帆が出演するCM「UR賃貸住宅」では、なんと千葉さんは吉岡さん(26歳)の後輩となる新入社員役で出演!“先輩”の吉岡さんから「URであーる」の発声レッスンを受けている。「時効警察」シリーズの奇才・三木聡監督による映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』でも共演していた2人。千葉さんは、“声帯ドーピング”を行うロックスター・シン(阿部サダヲ)をサポートするレコード会社の担当者・坂口役を演じた。長いものには巻かれる情けないキャラではあったが、実は自身の魅力を利用した“裏の顔”も…。同作の完成披露試写会では“もしドーピングできるなら?”という質問に「『an・an』のセックス特集をやらせていただける機会がありましたら、表紙で筋肉ドーピングをやりたいなと…。下半身もドーピング…って、すみません」と下ネタになる始末。「ご縁がないなと思っているので、なおさら(笑)。もし、機会があれば」と、ちゃっかりラブコールも送るところはさすがだ。また、吉岡さんが出演する日清「どん兵衛」のパロディ版のような「ラ王」CMでは、湯気の先に吉岡さんのような可愛いどんギツネではなく、カズレーザー演じる「全粒粉の妖精」が現れたことで不満そうな千葉さん。意外と食べっぷりは男らしく、Sっ気みなぎる表情にも要注目。そして「レノアハピネス ユニセックス」のCMでは沢尻エリカと姉弟役に。ベーグルを仲良く半分こしたり、映画を見て号泣してみたり、“可愛くて爽やかな”千葉さんを久々に(?)堪能できる。昨年9月の公開以来、388万回以上の再生回数を誇る。「高嶺の花」ピュアな芳根京子を手玉に!?このほか近作で特筆すべきは、これまで演じたことのないダークさと弱さを見せた2018年7月期の石原さとみ×峯田和伸のドラマ「高嶺の花」だろう。華道界に新風を巻き起こす新興流派を率いるイケメン華道家で、ブラックスーツに片耳にはピアスという出で立ちのクールな野心家・宇都宮龍一役を好演した。月島もも(石原さん)ばかりか、ピュアで無垢な妹なな(芳根京子)、果ては継母(戸田菜穂)までも手玉にとる“クズ男”ぶり!これまでの毒舌キャラやドS王子は足元にも及ばないほどだった。『スマホを落としただけなのに』彼がいたから犯人に近づいた『貞子』『リング』などを手掛けるJホラーの巨匠・中田秀夫監督による本作は、恋人(田中圭)がスマートフォンを落としたことをきっかけに、主人公・稲葉麻美(北川さん)の周りで不可解な出来事が相次ぎ、思いもよらない大事件に巻き込まれていくという現代の日常生活に潜む“恐怖”を描いた。千葉さんが演じた黒髪の女性連続殺人事件を追う刑事・加賀谷がいなければ、真犯人にたどり着けなかった、と言っていい。怪演で見る者を震撼させた成田凌と、表裏一体となるような役柄を担った。お仕事ドラマの傑作!「プリティが多すぎる」「家売るオンナ」などでは物語をかき回し、スパイスを与えるバイプレイヤーの役割を担ってきた千葉さんが主演を務めた深夜ドラマで、カンヌでワールドプレミアされた。エリート編集者・新見佳孝が出版社のお堅い文芸部から原宿系ファッション誌へと異動。全く畑の違う“Kawaii”の世界観を理解すべく、悪戦苦闘しながら次第に原宿系になじんでいく(?)姿を熱演した。「家売るオンナの逆襲」の床嶋役・長井短が雑誌の人気モデル・キヨラとして、同・第7話にゲスト出演した佐津川愛美が編集部の同僚役で出演している。時折王子っぽい優しさも覗かせ、キュンキュンさせたかと思えば、毒舌は相変わらず。元祖“カワイイ”系俳優が幾多の壁にぶつかりながらも、愛を持って“Kawaii”に向き合っていく様は必見で、“人気雑誌の編集”の裏側を描いたお仕事ドラマとしても秀逸。また、1月に放送された「世界ふしぎ発見!」ではミステリーハンターとして自身の念願だったというエジプトを初訪問。そのときの興奮を再び噛みしめるようにSNSを更新していた千葉さん。4月13日には昨年発売した写真集「横顔」に続き、2年連続となる「彩り」も発売決定。20代最後の姿を、ニューヨークで撮り下ろしたという。なお、待機作としては『殿、利息でござる!』で組んだ中村義洋監督の最新作で、堤真一と「ナインティナイン」岡村隆史による『決算!忠臣蔵』(冬公開)がある。「2度目の中村組。大変うれしかったです。ファンとしても公開がすごくたのしみです。みなさまもおたのしみに」と期待を煽るコメントをブログにアップ。1シーンだけの出演というが「大好きなあの方とも共演できて、むふふな気持ちでした」とのコメントを公式サイトに寄せており、またも期待値を超える姿を見せてくれそうだ。(text:Reiko Uehara)■関連作品:スマホを落としただけなのに 2018年11月2日より全国にて公開Ⓒ2018映画「スマホを落としただけなのに」製作委員会決算!忠臣蔵 2019年冬、全国にて公開予定(C)2019「決算!忠臣蔵」製作委員会
2019年03月13日ロンドンを舞台に、まっすぐな男性ふたりの恋の行方は!? 林翔太(ジャニーズJr.)と松岡充が“愛”をめぐるミュージカル『ソーホー・シンダーズ』が3月9日(土)から21日(木・祝)まで、東京・よみうり大手町ホールで上演される。その後大阪、金沢、愛知、神奈川をめぐる予定だ。【チケット情報はこちら】演出家の元吉庸泰は、松岡演じるジェイムズを「充さんらしいジェイムズがナチュラルにできあがってきてますね」と全肯定する。主人公ロビー役の林については、「すごくいいキャスティングです。29歳にもなってこんなに純粋だなんて」と、まっすぐにジェイムズを想うロビーにぴったりの配役だと太鼓判をおす。男性ふたりの恋物語。「この作品を上演するのに、LGBTについて、表現活動をしていく者が避けてしまうと、デコレーションケーキの表面だけを飾り付けているだけになってしまう」と松岡は誠実に作品に向き合う。「性別も年齢も国籍も階級も、全部を越えて、人が人を愛することはすごく尊く、純粋で。相手への思いやりが自分に返ってきて、元気になれたり。そんな相互関係が築けることが人間として素晴らしい事なのでは、というのもテーマなんじゃないかな」今作は、明るくハッピーだ。しかしそこにある社会問題はLGBTだけではない。演出の元吉は、主人公ロビーについてこう説明する。「ストリートに住んでいるロビーは、被差別地域の人達。それがわからないと、お客さんは“なぜロビーは欲しいものをハッキリと言うのか”が理解できなくなってしまう。シンプルな芯の上にたくさんのものがくっついている作品なので、かなりセンシティブに創っていかないと」と強い意志を、柔らかく語った。ロビーとジェイムズの愛。そして、性別と階級の溝。それらをきちんと描くには丁寧な役づくりが重要だ。稽古場では、俳優と相談しながら作っていく元吉は「充さんとの現場はすごく楽しい!」と言う。「「こういうのどう?」ってジャストアイデアを出してくださるんです。やっぱり見せる事に関して超一流ですよね。毎回ハッとさせられます。刺激的な稽古場です」。松岡も「(アイデアを出すと)元吉さんは「もしかしたらそこにカケラがあるかも」と考えてくれる」と信頼を寄せている。情熱的な楽曲に導かれ、登場人物たちがそれぞれの信念を胸にまっすぐ生きようとする。松岡の演じるジェイムズもまた『誠実であること』をなにより求めている。「誰の生き方も真理だし、答えがない。だからこそ、切ない。こんなに登場人物が少ないのに、かなりの確率で誰かに共感できる作品だと思います」チケットは現在発売中。取材・文河野桃子
2019年03月05日3週間のお休みください人生で初めてアメリカ大使館を訪問し、面接を受けた私。アメリカ国務省が主催するIVLPなる研修プログラムなど、「どうせ通ることないや」と思っていたら、3週間後にまさかの「小野さんに決定しました」の連絡がありました。この頃、アメリカはオバマ政権で、LGBTが政策トピックだったこともあり、後押しされたのでしょう。さぁ、ここからが大変です。なにしろ、私は会社勤めのサラリーマン。世間的には働くシングルマザーというステータス。3週間も仕事を休むなど、普通はありえません。会社が了承してくれなければ、アメリカには行けません。当時勤めていた会社には、麻ちゃんとの結婚式の前にバレて(いや、自爆して#25 手さぐりのウエディング その2)いたので、カミングアウトは必要ないものの、いきなり「仕事を3週間も休ませてください」と言うのは、なかなか勇気が必要です。たまたま、昼休みに一緒になった上司に、切り出しました。「あのー、すいません。今度3週間ほど、仕事を休ませてもらえたらなー、と思ってるんですけど……」「は?どうかしたの?なに?病気かなにか?」「いや、全然元気なんですけど。どうやら、アメリカにLGBTのことについて勉強に行かせてもらえることになりそうで」「アメリカ!?なんだそりゃ?何しに行くんだ?っていうか、それは会社を辞めて留学するってことか?」「いや、そうでもなくて、ですね。えー。なんかですね、アメリカの国務省主催の研修に、推薦してもらっていたみたいで、実はこのあいだ、お休みいただいた時に、アメリカ大使館に面接を受けに行ってきたんですよ。そしたら、なんか通っちゃったみたいで」上司の目がまん丸になっています。無理もありません。私も上司も超庶民。近所のコンビニに、昼ごはんを買いに行こうとしている道すがら。海外なんて縁のない私たちには “国務省” も “アメリカ大使館” もパワーワード過ぎます。しばしの沈黙の後、上司が言いました。「お前……、なに言ってんの?」上司も驚いたと思うのですが、私の方がもっと驚いているわけで “人生、こんなびっくり体験があるもんだ” と思いつつ、上司にこうして話して、ようやく “あぁ、これ現実なんだ” と実感が少しずつ湧いてきました。そして、ありがたいことに「こんなこと一生に1回あるかないかだ、行ってきな!」と、上司や同僚たちは、私を送り出してくれたのです。それから出発までの半年は、大使館に呼び出されて説明を受けたり、訪問したいNPOや企業について調べたり、読んでみたい本のリストを作ったりとバタバタ。子どもが生まれてからこのかた、家を2日続けて空けたことがない私が、3週間も家を空ける。そのことに、私はとても緊張したのですが、オトコマエの麻ちゃんは「任せとけ!」と余裕の様子。小学校の高学年になっていた子どもたちも、「わー、アメリカ!お土産買ってきて!」と無邪気なもので、私は胸をなでおろしたのでした。とうとうアメリカへ旅立つ日がやってきました。旅の仲間は、2人の元国会議員と、日本のLGBT界を牽引するNPOの代表で、一流企業で働くエリートゲイ男性。そんな錚々たる方々に混じって、こんなおばちゃんが参加していることに、我ながら “なんで?” と思いましたが、ココは腹を決めるしかありません。離婚以来、期限が切れたままだったパスポートを更新し、真新しいスーツケースに荷物を詰めて、生まれて初めての3週間の研修の旅に、さぁ出発です。I have a dream!最初に着いたのは、ワシントンD.C.。折しも、キング牧師の「I have a dream」のスピーチが、ここワシントンD.C.で行われてから、ちょうど50年のタイミングで、街のあちこちで祭典の準備が進んでいました。思えば、50年前の黒人の権利が、今のようなものではなかったことと、LGBTのそれが重なります。英語の教科書で読んだスピーチから、まだわずか50年しか経っていないことに驚きつつ、まずは座学をみっちり受け、翌日の朝早くから視察が始まりました。視察1日目に訪れたのは、さまざまなLGBTキャンペーンを行っている有名なNPO。案内されたオフィスには、若い人が多く、活気に溢れていました。今でも日本では、LGBTをテーマにした大きなNPOはありません。私がアメリカに行った2013年当時、日本でLGBTに関わる仕事をしているのは、よほどの覚悟と志がある人のみ。それも、輝かしいキャリアをなげうって挑んでいるケースしか見たことがありませんでした。それがこのNPOでは、多くの当事者が自分のセクシャリティを隠さず、それどころか、それを生かして堂々と働いていました。私はもう、ただただ驚くばかりでした。「当事者以外のスタッフはいますか?」という私たちからの質問に、それまで控えめにしていた女性スタッフが、「このNPOには、さまざまな立場の人が働いています。私の場合は、私の母が結婚後に、自分がレズビアンだと気づいて、レズビアンとして生きるようになったんです。そんな母を応援したくて、このNPOに入りました」と言うのです。キレイな金髪を揺らしながら話してくれた彼女に、私は衝撃を受けました。「子どもが、親のセクシャリティを応援する?」「しかも、そのためにLGBTのNPOで働いている!?」そんな話、日本で聞いたこともありません。まだまだ日本では、「LGBTの人が子育てなんかしたら、子どもに悪い影響があるんじゃないの?」なんて心配をされていましたから、この目の前の若い女性の明るくて堂々とした姿に、心底驚いたのです。同時に、日本で子育てをしているLGBTファミリーの仲間の顔が、頭に浮かびました。彼女がLGBTの親について話す、こんな様子を伝えたら、どれだけ励まされるだろう。国が違っても、こんな風に明るくまっすぐに、親のことを応援したいと言う子どもがいることを、仲間に伝えたいと思いました。彼女に、自分も離婚をして、同性のパートナーと子育てをしていること。3人の子どもたちのことを話し、「仲間に、あなたのことを伝えたい」と拙い英語で必死に伝えたところ、メッセージ動画を撮らせてくれました。「セクシャリティがどうであるか?よりも、家族が愛し合い、思いやりを持ち合うことが大切」というメッセージを、生き生きと話してくれる彼女を見て、心が震えました。それは長い間、心の中で密かに、だけど熱烈に、望んでいた言葉でした。そんなメッセージを笑顔で話してくれる “LGBTファミリーの子ども” が、急に目の前に現れたのです。想像できないことにイメージを与えるその後も、衝撃は続きました。視察3日目には、どうしても行きたいとリクエストしていた、全米でも有名なLGBTファミリーのNPOへ。当時はボストンとワシントンD.C.に事務所を持ち、300万人のLGBTファミリーが参加しているNPOです。300万人ですよ。ものすごい数です。折しも、このNPOでは18回目となる「Family week」なるLGBTファミリーの一大イベントの準備をしている真っ最中。ビーチでのファミリー・ピクニックやキャンプ・ファイアー、親のためのテーマ・セッションなど、さまざまなイベントを1週間泊まりがけで体験できると聞き、ただただ圧倒されるばかりでした。ちょうどこの年のゴールデン・ウィークに、「にじいろかぞく」ではLGBTファミリーのピクニックを開催していました。青空の下で、さまざまなLGBTファミリーが語り合う様子を見て泣きそうになっていたのですが、自分たちのやっていることが、まだまだ本当にささやかであることを思い知らされました。ニューヨークでは、ニューヨーク州上院議員を務めるゲイの方のオフィスにお邪魔し、映画監督の夫と一緒に、2歳になる愛娘を育てている話を聞きました。また、乗り合わせた飛行機のキャビンアテンダントの男性からは、「今週、パートナーの男性と、養子を取る手続きに行くんだ」なんて話を聞かせてもらったりしました。研修では、都会だけでなく保守的な田舎にも行きます。オハイオでは、自分の連れ子2人と、同性パートナーの連れ子2人を育てているレズビアン・ファミリーに会いました。最も保守的だったオクラホマ州では、まだまだ根強くLGBTへの差別が残っているようでしたが、一方で地域に根付いたLGBTセンター(LGBTに関する情報センター)がありました。私がとても感動したのは、そのセンターにキッズルームがあったことです。カラフルな色のおもちゃや絵本が並ぶ部屋から、日常をともにする家族としてのLGBTの姿を感じることができたからです。怒涛のように過ぎていった3週間の研修。ワシントンD.C.からはじまって、ボルチモア、ニューヨーク、オハイオ、オクラホマ、最後はポートランド。おまけに数日、元議員の方と2人でサンフランシスコに立ち寄ることもできました。もちろんいい話ばかりではありません。アメリカのLGBTをめぐる課題なども、たくさん見聞きしてきました(このことについては、機会を見つけてお話ししたいと思います)。でも、これまで見たこともなかったLGBTファミリーのロールモデルを、現実に、目の当たりにさせてもらったことは貴重な経験でした。これまで“見たこともないから、想像できない”と思っていたことに、イメージが持てるようになったのです。日本の、それも狭い範囲でしか生活してこなかった私にとって、この旅はまさに人生のターニングポイント。“これでもか!” というほどの情報をもらい、私のテンションはメーターを振り切っていました。帰国してすぐに、子どもを産んだばかりのレズビアンの友人の家に押しかけ、アメリカで見聞きしたことを語りました。「にじいろかぞく」のメンバーも集まって、レズビアン・ファミリーに育てられた娘さんのメッセージビデオを見て、みんな半泣きになりながら、大いに盛り上がりました。「にじいろかぞく」には多くの仲間が集うようになっていましたが、その一方でボランティアを強要するようなことは避けたいと、私は積極的に“会”として組織化しようとしていませんでした。でも、この日のメッセージビデオが、気持ちを後押ししてくれました。「いつか、自分たちみたいな家族で育った子どもたちが“親のセクシャリティなんて、なんでもないことだ”って言ってくれたらいいよね」。頷きあう私たちに、一人が言いました。「私たちはさ、みんな『にじいろかぞく』の、もう一員だと思ってるからさ!」こうして「にじいろかぞく」は、さらに一歩前へ進むことになるのです。(つづく)Composition:Yoshiyuki Shimazu
2019年03月02日本年度のオスカーノミネーション4作品をオールナイトで鑑賞する「WOWOW×OSCARS特別試写会」が2月23日(土)、TOHOシネマズ六本木ヒルズにて行われ、映画通の石田純一がオスカー予想に興じた。レッドカーペット・レポーター、すみれさんのコメントは…世界最高峰の映画の祭典「第91回アカデミー賞授賞式」が、いよいよ2月25日(日本時間)8時半より開催される。WOWOWでは、アメリカ・ロサンゼルスのドルビー・シアターより独占生中継予定で、案内役はジョン・カビラと高島彩、レッドカーペット・レポーターは、石田さんの娘であるすみれが務める。すみれさんが2年連続でレッドカーペット・レポーターとなったことについて、石田さんは照れながら、「彼女は『ブラックパンサー』の受賞を見たい、と楽しみにはしていましたね」と興奮を伝えた。石田さん熱弁「感動といろいろな想いを共有できる」今年は作品賞ノミネートの8作品中3作品が黒人差別について語っており、さらには4作品がLGBTについても取り上げている。こうしたダイバーシティが内包されている作品群について、石田さんも「もしかしたら初の黒人最優秀監督賞でスパイク・リーが受賞とか! ちょっと前からマイノリティ系に優しいというか、世界の人種問題を改めて憂慮して作った、社会派ではないけど、そういう部分も感じるような映画が多いです」とうなずきながら語る。すでにノミネート作品を鑑賞している様子の石田さんは、さらに、「今年はリアルに撮っているやつが多い。興行的に成功している映像体験が多いけど、リアルなロードムービー含めて、力がある。感動といろいろな想いを共有できると思います」と、ノミネート作品の特徴ならびに、良さを熱弁。さらに、本年は司会が不在という式典になる。石田さんは、「司会がいないからね、どんな式典になるかもワクワクする!受賞のコメントも含めて、司会がいなくて、どんな番組(になるか)、生で体験できるのも楽しみだと思います」と、待ちきれない様子で観客に同調を求めていた。「生中継!第91回アカデミー賞授賞式」は2月25日(月)8時半よりWOWOWで放送。(cinamacafe.net)
2019年02月23日ロサンゼルス生まれのメイクアップブランド「NYX Professional Makeup」(ニックス プロフェッショナル メイクアップ)は、2019年3~6月にかけて120SKU以上もの新製品を発売。今シーズンのトレンドを体現する、カラフルで大胆なメイクアップが毎月登場します。多数の製品を一同にお披露目するイベントには、YouTubeチャンネル登録数50万人超のメイクアップアーティスト兼ドラァグクイーン・モデルの“Miss Fame”が特別来日し、春のParty Makeをテーマにしたメイクデモンストレーションを行いました。「NYX Professional Makeup Spring Edition」※金額はすべて税抜き表記。編集部調べです。CANDY SLICK(キャンディー スリック)2019年3月7日(木)新発売出典:byBirthカラフルで甘いキャンディーのようなポップでかわいいコレクション。キャンディースリックグローウィーリップカラー全11色/800円出典:byBirthみずみずしいツヤ感を叶えるお手頃価格のリップ。ヌードカラーからレッド、バーガンディー、そしてブルーまで、カラフルなラインナップ。スイートストロベリーの香りとキャンディーのような可愛いパッケージにも注目。パウダーパフリッピーリップクリームA新7色/1,500円出典:byBirth大人気のぽんぽんリップに、今年らしいパープルカラーを含む7色が仲間入り。CAN’T STOP WON’T STOP(キャントストップ ウォントストップ)2019年4月4日(木)新発売出典:byBirth人気の「キャントストップ ウォントストップ」から、コンシーラーやパウダーが新登場。キャントストップウォントストップコントゥアーコンシーラー全24色/900円出典:byBirth24色の豊富なカラーバリエーションで、コンシーラーとしてのみでなく、ハイライター・コントゥアリングとしても使えるマルチコンシーラー。既存のプライマー、リキッドファンデーション、新商品のパウダーとの重ねづけで完璧なベースメイクに仕上げることはもちろん、本コンシーラーとパウダーのみで軽やかなメイクアップを楽しむのもおすすめ。その他ラインナップキャントストップウォントストップフルカバレッジパウダーファンデーション全24色/2,000円キャントストップウォントストップセッティングパウダー全6色/1,500円キャントストップウォントストップファンデーションブラシ2,600円GLITTER GOALS(グリッター ゴールズ)2019年4月25日(木)新発売出典:byBirth今シーズン注目のグリッターが美しいコレクション。グリッターゴールズリキッドリップスティック全7色/1,400円出典:byBirth塗布後に唇をすり合わせることで、グリッターが浮かぶ不思議なルージュ。一見派手に見えるカラーもグリッターにより抜け感が生まれ、一気に肌へと馴染みます。オレンジやピンクなどの使いやすいカラーから、ブルーやシルバーなどエッジの効いたカラーまで、多彩な表情を叶えます。その他ラインナップグリッターゴールズリキッドアイライナー全4色/1,200円フォイルプレイピグメントパレット全2色/2,400円ディスイズエブリシングリップスクラブ1,000円※2019年4月4日(木)発売ディスイズエブリシングリップオイルA全4色/1,000円※2019年4月4日(木)発売OFF TPOPIC(オフトロピック)2019年5月23日(木)新発売出典:byBirthバカンスで見た熱帯魚や鮮やかな花、夕焼けのようにカラフルなコレクション。オフトロピックシャドウパレット全2色/2,900円出典:byBirthトロピカルカラーで構成された夏を楽しむパレット。派手に見えるカラーたちも色をブレンドすると、メタリック、マット、サテン、3つの質感が合わさり、肌なじみが良くなるから不思議。第一印象よりもずっと使いやすいパレットです。 その他ラインナップアビットジェリージェルイルミネイター全3色/1,600円ボーントゥーグローイルミネイティングパウダー全4色/1,500円フェイスアンドボディーブラシ2,600円ラインアンドロードツーインワンリッピー全5色/1,200円オフトロピックプロライナー全9色/900円※期間限定発売。なくなり次第終了です。ハリウッドセレブリティから支持される“Miss Fame”デモンストレーション「春のParty Make」出典:byBirth新製品発表会後半には、YouTubeチャンネル登録数50万人超のメイクアップアーティスト兼ドラァグクイーン・モデルの“Miss Fame”による特別なメイクデモンストレーションを実施。「オフトロピックシャドウパレット」と「オフトロピックプロライナー」のオレンジを使用した夕日のようなアイメイクと、「アビットジェリージェルイルミネイター」を使用したツヤやかな肌が美しいメイクアップで会場を魅了しました。“Miss Fame”が行ったようなパーティメイクはもちろんのこと、日常生活でも使用できる優秀なコスメがお手頃な価格で手に入る「NYX Professional Makeup」。2019年の上半期は、肌とポイントメイクをカラフル&グリッターで彩り、印象的なメイクアップに仕上げましょう。Miss Fame(KurtisDam)メイクアップアーティスト兼モデル。Prada,Versace,Tommy Hilfigerなどの名だたるファッションブランドでメイクアップアーティストとしての経験を経て、ハリウッドなどのセレブリティをクライアントとして持つ。2015年には、「RuPaul’s Drag Race Season7」に出演。テレビに映る彼女の美しさが評判となり、ドラァグクイーンでは初となる、US版 Vogueで特集記事が掲載される。OUT Magazineでは、「LGBT Personalities of the year」の100人に選ばれる。その他、CBS、PIX11などのTVや、Cosmopolitan、The Huffington Postなどに出演。※RuPaul’s Drag Raceとはアメリカで放映されているリアリティ番組。ドラァグ クイーンが登場し、さまざまなお題に挑戦する。日本では「NETFLIX」で視聴可能。「NYX Professional Makeup」(ニックス プロフェッショナル メイクアップ)出典:byBirth世界中のメイクアップアーティストやメイクアップジャンキーたちに、よりクリエイティブに自分を表現でき、手頃な価格で手に入れられる究極のツールを届けたい、という想いから1999年ロサンゼルスで誕生しました。約2,000点※に及ぶ製品ラインナップを取り揃え、メイクアップアーティストから一般ユーザーまで、多様なお客様に好まれる製品を世界70ヶ国以上にお届けしています。※US 実績
2019年02月23日相手の気持ちや状況を理解することは、人と付き合う上でとても大切なこと。今回は、さまざまな境遇のママたちのコメントを紹介。そこから見えてくる思いを、あなたならどのように受け止めますか?ダイバーシティー=多様性、変化する家族の姿近頃よく聞く「ダイバーシティー」という言葉。直訳すると「多様性」という意味で、日本では会社における女性活用など、人材活用に関して使われることが多いようです。でも、ふとまわりを見まわしてみると、いろいろな家族の形があると思いませんか?専業主婦のママに専業主夫のパパ、共働き家庭や外国人のパパやママ、シングルマザー、障害を持つ子どものいる家庭など…。家族のありかたは千差万別です。子どもたちが育つこれからの世界では、きっともっと多様になっていくはず。今こそ、家族のありかたや付き合い方について、考えてみませんか。こういう時はどうすればいいの?幼稚園での出会いを、大切にしたいと思っているママはきっと多いはず。でも、こんなときはどう対応すればいいの?● なんでいつもパパがお迎えに来ているんだろう?と思っていたら、専業主夫のパパでした。どう話し掛けたらよいのか分からず、いまだにぎこちない接し方になっています。(岐阜県・年中ママ)● 離婚したらしく、苗字が変わった親子がいます。わが子に「どうして〇〇くんは名前が変わったの?」と聞かれ、何と答えたものか困りました。本人に聞くわけにもいかないし…。(埼玉県・年長ママ)● 日本語を話せない外国人のママ。子どもたちはどんどん仲良くなるけれど、親同士は会話も盛り上がらず…。どう声を掛けたらいいか、迷ってしまいます。(神奈川県・年少ママ)● シングルマザーの幼稚園のママ友。ランチ会に誘っても、忙しいからとたいてい断られてしまいます。かといって、誘わないと仲間外れにしているようで…。(埼玉県・年中ママ)● 障害を持つお子さんのママとの会話は気を使います。話は聞けても当事者の気持ちにはなれないので、“普通” という言葉は使わないようにしています。(神奈川県・年長ママ)こんなことがありましたいろいろな人がいるのは分かっているけれど、相手の発言や態度に悩むこともあります。そんなママの気持ち、聞かせて!● 私がシングルマザーだと知らずに、目の前で母子家庭の悪口を言う人がたくさんいます。そのせいで幼稚園では誰にも打ち明けられず、友達すら一人も作れません。(神奈川県・年中ママ)● 「なんでこんなこともできないの?」という無言の視線が一番つらいです。直接言ってもらえれば、説明することもできるのに。(大阪府・年長ママ)● パパが外国人で、子どももすぐにそれと分かる外見です。そのせいか、ほかのママたちにチヤホヤされてしまい…。子どもによくないな、と少し困ります。(大阪府・年少ママ)● わが子に向かって、「普通に見えるのにね」と言われた。今でも怒りがこみ上げるし、悲しいです。(兵庫県・年長ママ)● 言葉の遅い息子に対し、お友達が心無い言葉を掛けていたのに、その子のママは知らんぷり。子どもは仕方ないと思いますが、親御さんからは何か一言あってもいいのに…。(福岡県・年少ママ)“違う=合わない”は思い込みかも、どんな家族の形もアリ!大切なのは向き合う姿勢自分とは違う境遇の人に出会うと、どう付き合っていくか戸惑うことってありますよね。でも、〝違うから合わない〞わけではありません。自身もひとり親で息子を育てつつ、さまざまな形の家族に出会ってきた大塚玲子さんに、話を聞きました。お話を聞いたのは:大塚玲子さんおおつか・れいこ/ライター・編集者。主なテーマは「いろんな形の家族」と「PTA・学校」。ひとり親家庭や再婚家庭、里親家庭、LGBT 家族、などの取材を通し、家族の形が「なんでもアリ」の社会にするため、「定形外かぞく(家族のダイバーシティ)」を主宰する。著書は『オトナ婚です、わたしたち』『PTA をけっこうラクにたのしくする本』など。共著に『子どもの人権をまもるために』など「こうあるべき」は本当?その気持ちを疑おう幼稚園などで出会うたくさんの親子。その中には、自分とは育ってきた環境や家族構成、置かれている状況が違う人もたくさんいます。仲良くなりたいと思いつつも、実際に自分と違う境遇の人に会うと、戸惑ってしまうこともありますよね。知らないから、分からない。分からないから、付き合うことをためらってしまうこともあるかもしれません。事情を抱えた当人にしてみても、「話した方がいいのか、どこまで話せばいいのか」と悩んで周囲に打ち明けることができず、理解が得られないこともあるでしょう。そんなときは、「どんな形の家族でもいい。なんでもアリだと思ってもらいたいです。どんな家族でも上下はない、という気持ちを持ってほしい」と、大塚さんは話します。例えば、「大黒柱は男性であるべきで、働かないなんて有り得ない」と考えていれば、専業主夫の人に対してつい否定的な目で見てしまうかもしれません。でも、「こうあるべき、こうじゃなきゃおかしい」という前提が間違っていることもある、そのことに気付いてほしいと言います。子どもに恥じない大人であれ読者のコメントに、「子どもの友達の心無い言葉に傷付いた」というものがありました。反対に、「子どもたちは大人同士の付き合いに関係なく、仲良くなった」というものも。子どもたちは、良くも悪くも親の影響を大きく受けるものです。ママやパパの態度や言葉が正しいものと思い、それを自分もまねしようとします。親である大人たちは、わが子に「こう育ってほしい」「こういう行動はしてほしくない」と思うその姿勢を見せていくことが、大事なのだと思います。大塚さんは、「事情のある側も、できる範囲で伝えていったほうがいい」と考えているそう。全てを話さずに「何か事情がある」とにおわす、ゆるいカミングアウトをする程度でも、「踏み込んでほしくないことへの線引きもできるし、相手も付き合いやすくなると思いますよ」。相手を理解しようと努力し、誠実に向き合うことは、どんな人間関係だって大切なことですよね。「自分とは違うから」と最初から背を向けてしまわずに、まずは声を掛けてみることから始めてみませんか。うれしかった、助かった!ママたちの気持ち相手に対する気遣いや、理解しようとする態度は、どんな人間関係にも大事なこと。それをきちんと見せることが、関係を育む第一歩かもしれません。● シングルマザーになってから「何かあったら手伝うよ」とはよく言ってもらいますが、実際はなかなか頼りづらいです。そんなとき、「これやるよ!」と具体的に言ってもらえたのはかなりうれしかったです。(東京都・年少ママ)● 落ちつきのなさが気になる息子がいます。ママ友がとても理解のある人たちで、「少し預かろうか?」「子どもだけで泊まりに来ていいよ」など、親切に声を掛けてもらえて安心しました。(京都府・年中ママ)● 娘に発達障害があることを知った上で、仲良くしてくれるお友達とそのママたち。気さくに声を掛けてくれたり、幼稚園でこんなことをしていたよ、などうれしい情報をくれて、本当に感謝しています。(埼玉県・年長ママ)● 夫が外国人なのですが、その出身国について幼稚園の子どもたちが興味を持ってくれて、とてもうれしかったです。(埼玉県・年少ママ)illustrationSHIBATA Keiko
2019年02月07日昨日(現地時間)、「ブリティッシュLGBTアワード」のノミネーションが発表された。このアワードは、過去12か月においてLGBT+であっても、そうでなくても、彼らの権利向上のために貢献した人を表彰する賞。受賞カテゴリーはLGBT+のセレブ、ミュージシャン、インフルエンサー、ジャーナリストなど10部門が設けられ、それぞれ10人の候補者が選出。公式サイトからの一般投票でトップが決定する。日本からも投票可能。中でも注目は、2017年にウィリアム王子が受賞したこともある「Celebrity Straight Ally」(ストレートのセレブでLGBT+の支持者)賞。イビサ島でゲイの友人の結婚式を執り行い、LGBT+のために「死ぬまで闘う」宣言をしているベネディクト・カンバーバッチ、主演作『ボヘミアン・ラプソディ』で「ストレートがフレディを演じるなんて!」となじられても、「フレディのバイセクシャルであった面をもっと取り入れたい」と強く立ち向かったラミ・マレック、『君の名前で僕を呼んで』でゲイのティーンエイジャーを演じたティモシー・シャラメ、中国開催のコンサートでレインボーカラーの旗を振っていたファンが警察につまみ出され、涙したというエピソードがあるデュア・リパらがノミネートされている。授賞式は5月17日に開催される。(Hiromi Kaku)
2019年02月06日『ゲイだけど質問ある?』の著者・鈴掛真さんにお話を伺いました。歌人の著者が明るく丁寧に回答、LGBTがぐっと身近になる一冊。「なんで男なのに男を好きになるの?」「ゲイの友情と恋愛の境目はどこ?」「ゲイの息子を持つ親として大切なことは?」……ぶしつけな質問の数々に、明るく分かりやすく回答する話題の書、『ゲイだけど質問ある?』。著者は歌人としても活動する鈴掛真さん。「いつもは硬めの文章を書くんですけれど、普段本を読まない人にも手にとってもらいたくて、あえて軽い文体で書きました」もともとは2年半ほど前からWEBの2つの媒体で連載していたもの。「それまで短歌の中で同性愛をさりげなく表現することはありましたが、そろそろしっかり書いてもいいという社会の風潮を感じたんです。同性愛者と話してみたいけれど身近にいない人に向けて書きましたが、自分がゲイであることに悩んでいる子にも、こんなふうにオープンにできる人間もいるんだよと伝えたかった。本来、アンタッチャブルなものではなく明るく話せるものなんだ、ということを表現できた気がします」“絶対に手の届かないあの星にあなたと同じ名前を付けた”などぐっとくる短歌も多数掲載、昔の片思いを振り返ったりSexy Zoneについて熱く語ったり、胸襟を開いていて親しみがもてる。「同性愛者でもいろんな考えの人がいるので、僕がゲイを代表して書いているわけでないです。これは“僕みたいなゲイもいるんですよ”という本だと思ってもらえたら」時には、知人から「何のためにそんなこと書いているの」と冷たく言われたこともあるという。「やはり、これまで差別に対して頑張ってきた人がいて今があるのだから、自分も何か未来を作るきっかけを生み出せたら、と思いました」また、連載中に気づいたことも。「“ゲイは女の気持ちが分かる”と言われるなど、男性を好きになる男性はフェミニンだという固定観念ってありますよね。僕自身も自分は中性的だと思っていたんです。でも連載中に女性編集者に『鈴掛さんってすごく“男”ですよね』と言われて、はっとしました。同性愛のことに限らず、周りの影響で自分自身にも暗示をかけていることっていろいろあるんでしょうね」先入観を解かすこの一冊から、あなたの中で始まることがきっとある。鈴掛真『ゲイだけど質問ある?』同性愛者であることをオープンにしている歌人の著者が、さまざまな素朴な質問に丁寧に回答する入門書。恋心の滲む短歌の数々も魅力的。講談社1500円すずかけ・しん歌人。1986年生まれ。大学時代から短歌を始め、広告会社でコピーライターとして3年勤務ののち、本格的に作家活動を開始。著書に『好きと言えたらよかったのに。』ほか。※『anan』2019年2月6日号より。写真・土佐麻理子(鈴掛さん)中島慶子(本)インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2019年02月02日思いがけない心の支え妊活をするレズビアン女性と出会い、とても強い衝撃を受けた私。動揺もしましたが、彼女との出会いから “子どもを持ちたい” と願うレズビアン女性について知るようになりました。よく一言で “レズビアンマザー” と括られますが、我が家のようなステップファミリーもあれば、カップルで子どもを迎える、(ノンケカップルで言うところの)初婚ファミリーもあります。このようにタイプが異なると、悩みも違うし、お互いのことを知らないものです。私がレズビアン女性の妊活の大変さについて、何も知らなかったように、血の繋がらない娘を育てる戸惑いを、彼女に共感してもらうのは難しいことなのです。自分と同じような家族を探したくて始めた「にじいろかぞく」ですが、そこに集まってきてくれるLGBTの家族というものが多様すぎて、自分と同じような家族になかなか出会わないのです。これにはちょっと焦っていました。そんな焦りを抱えていたのは、「にじいろかぞく」が想像よりもずっと肯定的な雰囲気で受け止めてもらえて、ホッとしていた時期でもありました。今から8年ほど前のことですが、世間のLGBTへの偏見は今よりもずっと色濃く、それに比例するようにLGBTコミュニティの内部でも、LGBTの人が子育てをすることに、戸惑いの空気が漂っていたのです。だから「子育てをするLGBTの集まり」なんていったら、バッシングを受けるんじゃないか?とドキドキしながらスタートしたのです。例えば、妊活をしていたレズビアン女性も、妊娠をとても喜んでくれた人がいた一方で、仲間内のレズビアン女性から「子どもが生まれたら、大人ばかりの場に子どもを連れて来てほしくない」と言われたそうです。その空気は、私もヒシヒシと感じていました。LGBTのイベントは、子どもを連れていけるような雰囲気ではなさそうだったし、子どもがいるなんて言ったら、ギョッとされたり、子どもは大丈夫なの?と心配されたり、さらには「前に男性と結婚してたのね」なんて冷たい反応もされたものです。世の中の偏見が減ると同時に、LGBTコミュニティ内に漂う緊張感も緩和されてきたように思います。こういうことって地続きなんですね。特に「にじいろかぞく」を歓迎してくれたのは、若い世代でした。「将来、自分は畳の上で死ぬことはない。誰にも看取られず、一人でのたれ死ぬ将来しか思い描けない」と、泣きながら打ち明けてくれた大学生に、「私、同性のパートナーと子育てをしてるんだよね」と言った時の、あの驚いた顔。今でも忘れられません。「子育てをするなんてこと、あるんですか!」と喜ぶその大学生に、これまで出会ったいろんな家族のこと、自分の家族のことを話せて、とてもうれしかったのです。自分たちのような家族の存在を、若い人が喜んでくれている。それは思いがけない支えになりました。さらには、ちょっとしたイベントや大学の授業で、同性カップルで子育てをしている様子を聞かせてほしいと、声を掛けていただくようになりました。最初は、本当に信じられませんでしたよ。一人ぼっちで作っていたホームページにも、連絡してくれる方が一人増え、二人増え、少しずつ仲間が増えていきました。妊活していた、例のレズビアンの友人にも子どもが生まれ、LGBTファミリーはもちろん、子どもを持ちたいと思っている若いカップルも遊びに来てくれるようになりました。そうすると「みんなで交流したい!」という声があがるようになりました。私はもともと下戸で、新宿2丁目にもなかなか縁がありませんでした。子どもがいて夜に出かけづらいので「できれば昼間、子どもを連れて集まれるようなことをしたい!」という、小さな野望を抱いていました。「子連れで楽しめて、みんなが気軽に交流できて……、そうだ!ピクニックがいい!」。このピクニックには、すっかり仲良くなった、前述の大学生も仲間たちと参加して、子どもたちの遊び相手になってくれました。そんな交流は、いつの間にか新聞の取材を受けるようにまでなっていました。徐々に会の“ような”形にはなり始めたものの、「会にしたい」とは長く言い出すことができませんでした。みんな子育てや妊活に忙しいし、なんといってもボランティアなわけです。「そんな面倒なこと、嫌だろうなぁ」と思って言い出せないまま、何かイベントをする時は手伝ってくれる仲間が、なんとなく固定化していきました。アメリカ(大使館)への道そんな頃でした。私が同性パートナーと子育てをしていることを知るゲイの友人と、くだらない話をしていたところ、彼がふと思い出したように「ねぇ、小野ちゃん。アメリカに研修に行くなんてどうよ?」と言ったのです。さして本気そうでもなかったし、子育てをするようになってから、私の狭い行動範囲はますます狭くなって、本当に半径数キロ以内で生活していました。海外どころか東京を出ることだってほとんどなくなっていて、アメリカに行くなど、あまりにも非現実的な話。だから「またぁ、夢を語ろう的なやつ?」と、気にも留めませんでした。それから数ヵ月後。その彼から「こないだ話した、アメリカの話。あれ、いけそう?」という連絡が来たのです。「ん?アメリカ?」と、すっかり忘れていた私に「ほら、こないだ話したじゃない。アメリカに研修に行く話!覚えてないの!? あの話に推薦しといたから、面接を受けてきて!」。へ?となる私に、彼は驚くべきことを言いました。なんと、アメリカの国務省が主催するIVLP(International Visitor Leadership Program)という研修プログラムに私を推薦したから、アメリカ大使館に行って面接を受けてこい、と言うのです!な、なんかえらいことになってる!?アメリカ大使館!?大使館なんて入ったこともないのに、しかも面接!?英語かな?英語だよね、大使館だもんね……。私の英語って、ディス・イズ・ア・ペン レベルなんだけど、面接受けられるの?っていうか、研修ってなに!?なんで私みたいなオバちゃんに、そんな大きすぎる話が!?っていうか、子どもは?仕事は?目を白黒させていると、間もなくアメリカ大使館の担当者から、面接の案内メールが届きました。覚悟を決めるしかありません。物々しい警備のアメリカ大使館に、一人で向かうことになりました。当日は、ものすごく厳しいセキュリティチェックで、アメリカ大使館の中に入るまでが、まず大変。アメリカ大使館に入るために横断歩道を渡るのでさえ、複数いる警備員に呼び止められるのです。「どちらに行かれますか?」、「どなたとお約束ですか?」といった具合。たかが数メートルの道を渡るのも大騒ぎ。横断歩道を渡ったら、今度は入り口のチェックでまた足止め。受付を通った後は、IDもケータイも全部預けなければなりません。大使館の中はもうアメリカそのもの。その雰囲気にがっつり飲み込まれました。職員に案内されて、部屋で待っていると、アメリカ人男性と日本人女性が現れました。堂々とした二人の様子に、こちらの緊張はピークです。まずは二人から、詳しい説明がありました。このIVLPというのは、アメリカ国務省が主催する、社会人向けの研修プログラムで、およそ3週間にわたり、アメリカ国内の企業やNPOを訪問し、視察するものだということ。研修テーマは多岐にわたり、私たちのチーム(どうやら複数の人間で視察に行くようでした)はHuman Rights、つまり“人権”がテーマであることも説明されました。あまりに珍しい状況に、緊張はピークであるものの、そもそもなぜ私なんかが呼ばれているのか全然分かりません。ただ、こんなところで面接を受けられているだけでも棚からぼた餅。通るはずもない面接だと思えば「まぁ、そんなに緊張することもないな」という気持ちが湧いてきました。こんな体験も、そうそうすることはないし、「ここは率直に話すまで」と思い、自分の家族のこと、LGBTファミリーについて思うこと、アメリカに行ったら知りたいことを話しました。一人でホームページを作っていた頃は、日本ではなかなか知ることのできないLGBTファミリーの情報に飢え、読めない英語を辞書を片手に、なんとか探しているような状態でした。アメリカに行けるようなチャンスがあるなら、LGBTファミリーについて聞きたいこと、知りたいことは山ほどあります。インターネットで見つけたLGBTファミリーの団体のこと。LGBTファミリーを扱った絵本が、いろいろあるらしいこと。さらには日本では入手できない、レズビアンのステップファミリーについての指南書があるらしいこと。LGBTファミリーのサマーキャンプがあるらしいこと。など、など、など。最後に、思い切ってこんな質問をしてみました。「なぜ、私のような専門家でもない普通の人間に、こんな面接のチャンスをくれたのか?」。すると、こう答えられたのです。「アメリカは今、同性婚で揺れています。この同性婚の問題は、家族の問題そのものです。ですから日本のLGBTファミリーの方に、今のアメリカの運動の様子を見てもらえたらと思って」。全米で同性婚が認められるようになったのが2015年6月のこと。その2年ほど前のことでした。(つづく)Composition:Yoshiyuki Shimazu
2019年02月02日12人の未成年たちが廃病院で集団自殺を確実に実行すべく奮闘する問題作『十二人の死にたい子どもたち』(原作:冲方丁 監督:堤幸彦 以下『シニコド』)が公開中。集団自殺を誰かが阻止しようとする物語はよくあるが、この話には、死にたい人しかいない。放っておけば、すぐにそろってジ・エンドのところ、なぜかメンバーがひとり多く、13人いたうえに、その13人めはすでに死んでいた。ルールに沿ってないことに不安や不信を抱いた12人が13人めの死の謎を探っていくと、思いがけないことが待ち受けている……。いわゆる予想の斜め上をいく展開の映画で、その魅力のひとつに、十二人が新鋭ぞろいということがある。新田真剣佑、北村匠海、黒島結菜、杉咲花、高杉真宙、竹内愛紗、橋本環奈、萩原利久、坂東龍汰、渕野右登、古川琴音、吉川愛(50 音順)U25俳優の選りすぐりで構成された座組による瑞々しい芝居が心を震わせる。生と死に引き裂かれる若者の叫びに満ちた2時間強。そのなかのひとり、北村匠海はノブオ役。12人は皆、死にたいと思いつめているだけあって、見た目や言動にちょっとワケあり感が漂うが、そのなかで最もそつなく見える人物だ。だからこそあやしいともいえるのがこの手の物語のお約束だが、はたしてノブオは?○イケメン3人のメガネの奥にはノブオは逼迫した状況でも余裕の笑みをいつも浮かべているが、この映画には、微笑み男子がふたりいるところがポイント。高杉真宙演じるサトシと、ノブオである。若き俳優の演技バトルを見どころのひとつにしている『シニコド』において、このサトシとノブオの笑顔対決も見逃せない。ちなみに、シンジロウ役の新田真剣佑も入れて三つ巴の眼鏡対決もある。なぜかイケメンと言われる3人が全員、眼鏡。3人の個性が出た眼鏡を見比べつつ、その奥の瞳の繊細な感情もしっかり見たい。眼鏡もいろいろ、笑顔もいろいろ。ノブオとサトシの笑顔はまるで違う。高杉は最初、サトシを笑わない人物かと思っていたら、堤監督に笑うように指示されて、集いのリーダーとしてミステリアスな微笑みを終始浮かべている。対してノブオは安心感をもたらす微笑み担当。基本、12人が集まって喧々諤々話し合ったり、廃病院をうろついたりする場面が多いのだが、初めて顔を合わせた者同士、本心を隠し、相手のことを探りあう。そんな中で、ノブオはつねに穏やかな微笑みを浮かべている。とりわけ、ある人物のその笑顔に対するリアクションに注目。現場で堤監督がこのリアクションを足していた。なにもかもうまくできそうに見えるのに、この人はなぜ死にたいのだろうかと気になる。丸メガネに、麻のジャケット、身につけているものはいまふうのもので、おしゃれに気を使っている設定のノブオを、北村匠海はじつにさらりとやっているように見える。私は映画のオフィシャルライターで現場に入って、コメントももらったのだが、質問に対する回答がすらすらとよどみない。パンフレットでは、堤監督と誕生日が同じで共感するところがある(大意)と言っていた。ものの見方のことを言っていたようだが、インタビューで、どんな質問にも間を空けず、すらすらと答える反応の良さが、堤監督に少し似ている気がした。○ネタバレのない演技北村匠海は主に、青春ものの映画やドラマで活躍している。ブレイクのきっかけは、初主演作『君の膵臓をたべたい』(17)。病気の少女を想う少年の揺れる心を描く作品をみごとに演じることは、若手演技派の登竜門となる。さらにこの映画には、大きなドンデン返しがあるので、そのときの演技もすごく大事。そのへんもうまいこと演じていたと思う。とかく脚本を最後まで読んで展開がわかっているうえでの演技だから、図らずとも先を計算して演じてしまう、要するに、自らネタバレしている感じ(私は振られます。私が犯人です。私が最後に死にます、など)が大なり小なりありがちだ。でも、北村匠海にはそれがないように見える。つねに、いま、ここ、のような、いい意味のラフさがある。テレビドラマ『隣の家族は青く見える』(18)では、ゲイの役を演じた。昨今、LGBTの役を社会的背景なども学んだうえでしっかり演じると、演技派として認められるという傾向がある。北村が演じた役は、パートナーは性的指向を隠したいが、当人はオープン。その違いでふたりが悩み苦しむ。基本、あっけらかんとして、欲望に正直な人物を、北村は魅力的に演じて、人気を博した。このときも、ゲイだからといってなにかを変えて演じるのではなく、あくまで自然体なところが良かった。プレスシートによると堤幸彦監督は北村匠海のことを、「イケメンの顔の内側に硬い信念や、独特のリズムがあっておもしろい」と評価しているから、きっと俳優として人として、ちゃんと考えているのだろうけれど、それを、他者に押し付けない柔らかさがある。自意識で自分と他人の境界線という輪郭を描かないような俳優。『シニコド』でも、監督のある意味無茶振りにも、淡々と応えていた。リアルな人生、先が見えないもの。いつなんどき何が起こるかわからない。北村匠海の演じる役は、先の見えない道に立っている感じが見る者をひきつけて止まない。役の先は見えないが、当人の未来は大物になる予感が……。■著者プロフィール木俣冬文筆業。『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中。ドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書『挑戦者たちトップアクターズ・ルポルタージュ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』、ノベライズ『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』 など。5月29日発売の蜷川幸雄『身体的物語論』を企画、構成した。
2019年01月31日北川景子(32)主演の連続テレビドラマ『家売るオンナの逆襲』(日本テレビ系)第3話が1月23日水曜夜10時に放送された。平均視聴率は11.4%と2桁をキープしている。テーコー不動産に勤める、天才的不動産屋・三軒家万智(北川景子)は、「私に売れない家はない」と家を売るために手段を選ばない。どんなワケあり客であっても万智は今日も家を売りまくる。何かと邪魔してくるフリーランスの不動産屋・留守堂謙治(松田翔太・33)が、万智の路上生活の過去を知っていた。そのことに驚きを隠せない屋代(仲村トオル・53)と庭野(工藤阿須加・27)、白洲美加(イモトアヤコ・33)。留守堂に全員が振り回されている感があるが、万智自身はあまり興味がない様子。ただ、そろそろ気になり始めるころか。そんななか、テーコー不動産新宿営業所では現地販売ウィークが開催された。売りにくい3つの物件を売ることに。そのうちの1軒、庭野が売った客がゲイであったことからLGBTが話題になる。そして残り2軒ともレズビアンのカップル、トランスジェンダーの夫がいる家族に売ることになる。トランスジェンダーの夫を持つ木村真奈美(佐藤仁美・39)が、家を探しにやってくる。中学生の娘のため必死に父親であろうとする夫・剛史(池田鉄洋・48)だが、“男性を演じること”に精神的限界を迎えていた。そんな夫を不憫に思いながらも、娘のことを考えると受け入れることができない妻。しかし万智は夫婦2人が抱える問題に本音でぶつかり合うようセッティングし、娘も巻き込む。そして紹介した家は剛史の心が自由になる場所であり、新しい形の家族として助け合って生きるのに最適なものだった。いっぽう足立(千葉雄大・29)が担当していたレズビアンのカップルだが、紹介した1軒目のマンションは売主が差別的で売却を拒否される。すると毎度のことながら、万智が担当を横取りしようとする。やられっぱなしの足立は留守堂に助けを求める。そしてみごと、家を売ることに成功した。今回は”LGBT”、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーというセクシャルマイノリティーをテーマとしたものだった。差別や偏見がなくならないなかで悩み、模索しながら生きている人たちと向き合う万智たち。「人の気持ちなぞ理解できなくて当然だ。理解し合えると思うことこそ傲慢である」という万智の哲学。しかし気持ちを完全に理解することはできなくても、苦しさや生きづらさは分かり合うことができる。そのうえで助け合って生きていくべきだと彼女は考える。皮肉なことに、留守堂も万智と同じ考えだった。人の気持ちなんてわからない。また考え方や価値観など、いくら愛し合う2人であっても理解しあって歩み寄ろうなんて傲慢だと。万智と留守堂は、“ライバル”か“理解者”なのかはっきりしないまま終わった。だが最後に、留守堂が「僕、“三軒家万智研究家”だから」という意味深な発言を残していた。センシティブな話題だけに視聴者の反応が気になるところだが、SNS上では《LGBTの説明で性的思考と性自認の区別も付けているし、性自認を決めたくない人のトランスジェンダーゲイについても言及している》《LGBTをめぐる名言に視聴者感動》など話題になっている。またイケメンの松田翔太と千葉雄大のからみも、ファンにはたまらないようだ。次回は、団塊vsゆとり世代の家探し。定年を間近に控えた山路功夫(佐野史郎・63)から資金援助するという娘夫婦相談される。価値観のまったく違う2つの世代が納得する家を見つけることができるのか。
2019年01月24日北川景子が“家を売りまくる”主人公を演じている「家売るオンナの逆襲」。その第3話が1月23日に放送され、LGBTをテーマにした内容に共感する声が数多く寄せられているほか、沢井美優がゲスト出演。北川さんとの“セーラー戦士再共演”にも注目が集まっている。本作は北川さんが家を売って売って売りまくる伝説の不動産屋・三軒家万智役で主演。万智の“ライバル”となる謎のフリー不動産屋・留守堂謙治に松田翔太。テーコー不動産の課長で万智の上司であり夫でもある屋代大に仲村トオル。留守堂に“恋する”テーコー不動産のエリート営業マン・足立に千葉雄大。万智の部下で熱血営業マン・庭野に工藤阿須加。そのほか鈴木裕樹、梶原善、イモトアヤコ、臼田あさ美、草川拓弥、長井短らが出演。※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。万智の勤務する新宿営業所では難易度の高い物件を実地販売することに。そのうち1軒がゲイの男性に売れたことからLGBTのことが話題に上がる。一方、足立が内見案内をしていた物件では、客のみどり(沢井さん)と智代(芳野友美)がレズビアンだと知った売主が販売を拒否してしまう。別の物件を探す足立に万智が割って入りストレスを抱えた足立は留守堂を頼る。庭野は夫と娘の3人で住む家を探している木村真奈美(佐藤仁美)を担当することに。真奈美の話を聞いた万智はなぜか会社帰りの真奈美の夫・剛史(池田鉄洋)を尾行する。なぜか自宅と違う方向に向かう剛史、実は剛史も自分の性別に違和感を感じながらも男性として生きてきたトランスジェンダーだった…というのが今回のストーリー。真奈美は夫が“女性”であることを知りながら娘の前では父親として振る舞って欲しいと願っていたが、娘はすでに気付いていて一家は新たな家族としての一歩を踏み出す。そしてみどりと智代には留守堂が家を売る…という結末だった。LGBTをメインに据えた今回のエピソードに対し、放送後「ちゃんと触れているのが嬉しい」「学校の友達とかこれで知ってくれたら嬉しいな」「今日の家売るオンナ共感ポイントがすごい」「私はこういうの好きだから見ててすごく楽しい」など好意的な反応が続々と寄せられる。またゲスト出演した沢井さんと万智役の北川さんは、かつて実写版「セーラームーン」でセーラームーン役(沢井さん)、セーラーマーズ役(北川さん)で共演、今でも交友関係が続く間柄。かつての“戦友”の再共演に「実写セーラームーンとマーズか!」「実写ムーンと実写マーズの共演はやっぱ胸熱」「ドラマ版セーラームーン役の沢井美優とマーズ役の北川景子の共演だ~!!感慨深い~~」などの声が殺到している。(笠緒)
2019年01月24日北川景子(32)主演の連続テレビドラマ『家売るオンナの逆襲』(日本テレビ系)第2話が1月16日に放送され、平均視聴率は12.9%(ビデオリサーチ調べ)を記録。初回から0.02ポイントアップした。伝説の天才的不動産屋・三軒家万智(北川景子)とその夫・屋代課長(仲村トオル・53)が、元職場であるテーコー不動産に戻ってきた。復帰早々爆売りモード全開の万智によって、事務所は久々の緊張感に包まれる。気まぐれな高齢のひとり客・神子巴(泉ピン子・71)の家探しに翻弄される庭野(工藤阿須加・27)。残業で終電を逃したため、初めてネットカフェで一夜を過ごすことになる。いっぽう寂しがる屋代の気持ちをよそに、連日ネットカフェで宿泊する万智。ネットカフェは、家を売るには格好の場所だからだ。そんなとき事務所を訪れた神子の鼻歌から、神子があるネットカフェの住民であることを知る。万智は「担当していた庭野に代わって自分が家を売る」と宣言。しかし神子は、美人で完璧な万智が気に食わない様子で煙たがる。またもや終電を逃した庭野は前回と同じネットカフェに泊まることになるが、そこに万智が。そしてそのネットカフェは、神子が住まいとしているところでもあった。同じくネットカフェで営業している噂の切れ者不動産屋・留守堂(松田翔太・33)も連泊していて、全員が鉢合わせる。家を持たないネットカフェ住人を哀れだという庭野に対して、留守堂は「価値観が多様化していて、ライフスタイルも様々だ。ここで住んでいる人々を哀れむのは間違っているよ」と説く。その考えに、預金はたくさんあるものの孤独死が怖くて一人暮らしできない神子は心を動かされる。しかし留守堂の見解に否定的だった万智は、ネットカフェを自腹で購入。閉店して追い出し、神子に家を売ろうとする。万智は「ネットカフェ住人は頑張ることをから逃げている甘ったれな人間だ」と説く。これに対して神子は「違うね。今日頑張れなかった人間も明日は来ちゃうんだよ。人生続くんだ。だから人間は苦しいんだ。必死で頑張ったってできないやつはできないんだよ。世の中には吹き溜まりだって必要なんだよ」と反論する。しかし、厳しくもある万智の真意は別にあった。神子に“吹き溜まりの殿堂という家”を作るため、神子にこのネットカフェの買い取りを提案したのだ。ネットカフェで暮らすことは全面的に否定すべきではない。自分の部屋や家に価値を見出さない人がいるということも事実だ。しかし万智は現実から逃げて甘んじていても未来はない。頑張れる日が来るまでの救いの場所を提供することによって、神子自身も生きる力になるのではないかと考えたのだろう。そして結局、万智は神子に家を売ることに成功した。留守堂よりも一歩進んで考えることのできる万智の魅力は、今回も見事に描かれた。軽快なテンポで展開していくドラマの中に、生き方という重いテーマを盛り込むことができるのはさすがというべきだ。いっぽう比較対象として登場する留守堂の立ち位置が気になるところ。万智にとって“宿命のライバル”なのか、それとも“心暖かき理解と友情”なのか……。ホームレスをしていた万智の過去を知っている留守堂は、いったい何者なのか。次回は“LGBTの人たちが満足する家を紹介できるか”がテーマになるという。そして留守堂に心を寄せる足立聡(千葉雄大・29)の恋の行方は?楽しみに待ちたい。
2019年01月17日自民党・平沢勝栄衆院議員(73)が1月3日、「同性婚が増えると国はつぶれる」という趣旨の発言をしたと各メディアが報じた。そんななか、ロバート・キャンベル(62)のツイートが注目を集めている。各メディアによると平沢議員は同日、山梨県内で開かれた集会に参加。少子化問題について言及していた際「LGBTで同性婚で男と男、女と女の結婚。もちろんいいんですよ」と前置きをし、「ただ、この人たちばっかりになったら国はつぶれちゃうんですよ」と発言したという。さらに各メディアによると「同性婚パートナーシップ証明書」などを出している渋谷区や世田谷区については、「先進区だとか自慢しているが、私にはその考え方はよくわからない」と語ったという。「平沢議員は『LGBTの同性婚が増えることで国が潰れる』と言っていますが、その根拠はどこにあるのでしょうか。少子化は貧困や雇用の問題といった、社会における様々な理由が重なって生じているもの。むしろ海外では、同性婚を認めた地域の出生率が上がったとの報告もあるくらいです。今回の発言は、ただ多様性を否定しているだけにしか聞こえないのですが……」(マスコミ関係者)そんななかキャンベルは4日、Twitterを更新。平沢議員の発言に関する記事を引用し、こう投稿した。「平沢さん、少しは勉強してくださいよ」キャンベルのツイートは現在4,300回以上のリツイート、さらに9,700回以上の「いいね」がされている。また《ほんの少し勉強すれば わかることだと思うのですが……》《「みんな違ってみんないい」と子どもたちに言っておきながら、大きくなるにつれてみんな一緒であることを強要するの、おかしいですよね》とキャンベルさんを支持する声が上がっている。キャンベルさんは昨年、自民党の杉田水脈議員(51)の“LGBTは生産性がない”という新潮45への寄稿を機に、自身がゲイであると明かした。「杉田議員が取り沙汰にされた際、『多様性の尊重は政府与党の方針でもある』と安倍首相はコメントしていました。しかしまたもや、自民党議員による失言。キャンベルさんは文学者という職業ですし、“学習しない無知”に対してなおさら呆れているのではないでしょうか」(テレビ局関係者)各メディアによると平沢議員は5日、今回の発言について取材に対応。「LGBTの方の権利を守るのは当然だと思っている。存在を否定する意図は全くない」と説明したという。しかしTwitterでは《存在を否定する意図は全くない、と述べててもLGBTの方を邪魔者扱いしてるんじゃない!》《「国がつぶれる」とまで言っておきながら、よくもヌケヌケと》と指摘する声が続々と上がっている。平成も終わる間近、日本はどこに向かうのか――。
2019年01月06日