昨年末に新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』での好演が話題を呼んだ歌舞伎界の新鋭・尾上右近(27)。「新しい年もチャレンジングな1年にしたい」という言葉どおり、次に挑戦するのは、現代劇。’17年放送のNHKドラマ『この声をきみに』のスピンオフ舞台『この声をきみに〜もう一つの物語』(大阪公演/3月6〜8日、サンケイホールブリーゼにて。東京公演/3月12〜22日、俳優座劇場にて)だ。「型が決まっている歌舞伎はセリフをほぼ観客に向かってしゃべるけれど、現代劇は相手と向き合う。歌舞伎では感じられない、会話の重要性と難しさを実感しました」(右近・以下同)今作は、ある朗読教室に集まり、声で心を開放していく人たちの交わりを描く心温まる大人のラブストーリーだ。専門外のジャンルにも果敢に挑む姿が頼もしい。祖父と父は六代目・七代目清元延寿太夫。清元という古典音楽の宗家に生まれた右近が、歌舞伎役者を志したのは、3歳のときだった。「おばあちゃんの家に行ったときに、映画監督の小津安二郎さんが父方のひいおじいさん(六代目尾上菊五郎)の『春興鏡獅子』を撮った映画を見たんです。で、歌舞伎の魅力に取りつかれて、『あの役になりたい!』と。あの日の様子をすごく鮮明に覚えていますね。部屋に西日が差していて……あれは僕のなかに残っているいちばん古い記憶です」「女性自身」2020年2月11日号 掲載
2020年02月03日アンドリュー・ロイド=ウェバーの名作ミュージカル『サンセット大通り』。今春、日本で3度目の上演が決定し、その開幕を前にキャストの安蘭けい、平方元基をゲストに招いた、スペシャルトークショーが実施された。【チケット情報はこちら】約200名のファンが集う中、ジョー・ギリス役の平方が『Sunset Boulevard』を歌いながら登場。その切なく力強い歌声に、客席からは思わずため息が漏れる。そして今度はノーマ・デズモンド役の安蘭が、往年の大女優らしい、煌びやかな衣裳を身にまとって登場。「お待たせしました。私がノーマです。とうこ(※安蘭の愛称)じゃありません」と、愛嬌たっぷりにファンへと声をかける。司会者からまず「作品に臨む心境」を聞かれた安蘭は、「前回は元基とペアだったんですけど、今回は松下優也くんが相手になるので、また違うものになりそうです」と答えると、すかさず平方が「最初それを聞いた時、ノーマの気持ちになって嫉妬に狂いそうだった!」と告白。「このふたりの並びも今日で最後かも…」との司会者の言葉に、安蘭も「ね、最後ですよね」と追い打ちをかける。すると平方が「えっ、今日は僕を傷つける会なの?」と返し、会場はドッと笑いに包まれた。「お互いから見たノーマ、ジョーの魅力は?」というファンからの質問には、「とうこさんの無理をしていない姿というか、女優として楽しんでいる姿がすごくノーマと重なって。かわいらしいラストとかもすごく好きでした」と平方。一方の安蘭は、「前回私は2度目、元基は初めてでしたけど、“僕はこう思うんだ”っていうものを新たにたくさん持ち込んでくれて。稽古がすごく楽しかったですし、そうやって役をつくっていく元基のスタンスが、本当に素敵だと思いました」と絶賛する。そんな安蘭の言葉に平方は、「ちゃんと覚えておかないと!2度と褒めてもらえないかもしれないから」と照れ笑いを浮かべた。その後、「これであなたもサンセット大通り博士!?超マニアッククイズ」や、ふたりのサイン入りグッズなどが当たる抽選会も実施。なかなかないファンとの交流に、ふたりとも終始笑顔だった。さらに今度は安蘭が『As If We Never Said Good Bye』で、美しくドラマチックな歌声を披露。本番への期待が大いに高まる中、「全身全霊で丁寧に頑張っていきたいと思います」と平方が、「気持ちを新たに、素敵な『サンセット大通り』をつくり上げたいです」と安蘭が抱負を述べ、約1時間に及ぶイベントは幕を閉じた。公演は3月14日(土)から29日(日)まで、東京国際フォーラム ホールCにて。チケットは発売中。取材・文:野上瑠美子
2020年01月29日2010年にこの世を去った不世出の名女優、高峰秀子の出演作を上映する特集「没後10年 高峰秀子が愛した12本の映画 ~名女優自ら選んだ、名匠たちとの仕事~」が東京・池袋の新文芸坐で開催されている。高峰秀子は1924年に生まれ、子役として映画界に入り、小津安二郎、山本嘉次郎、成瀬巳喜男、木下惠介、そして私生活では夫婦になった松山善三ら多くの監督の作品に出演。レコードも大ヒットを記録し、エッセイを書けば大ヒット。日本映画史に名を残す人気・実力を共にそなえたトップスターとして現在もファンを増やしている。高峰秀子は生前に自身の出演作の中から“自薦”として13作品を選び、それについて語る本を2010年に出版しており、今回の特集ではその中から上映がかなった12作品を新文芸坐の大スクリーンで上映する。上映されるのは、3年をかけて撮影された感動作『馬』や、公開時に驚異的なヒットを記録した『二十四の瞳』、名作中の名作『浮雲』、松山善三監督の第一作『名もなく貧しく美しく』など。『春の戯れ』はブルーレイで、『雁』は16ミリで上映されるが、その他の作品はすべて35ミリ・プリントで上映される。「没後10年 高峰秀子が愛した12本の映画 ~名女優自ら選んだ、名匠たちとの仕事~」1月22日(水)まで新文芸坐で開催中『馬』『春の戯れ』『雁』『二十四の瞳』『浮雲』『張込み』『無法松の一生』『女が階段を上る時』『名もなく貧しく美しく』『山河あり』『放浪記』『恍惚の人』
2020年01月13日『Shall we ダンス?』(96)や『それでもボクはやってない』(07)で知られる周防正行監督が、『舞妓はレディ』以来5年ぶりとなるオリジナル作品に挑んだ。成田凌が初主演を務める『カツベン!』は、今から100年前に映画が「活動写真」と称されていた時代、無声映画の上映中にその内容を解説しながら登場人物の声色までを演じる「活動弁士」にスポットを当てている。これまで数々のオリジナル作品を手掛けてきた周防監督は、なぜ本作を通して「活動弁士」に注目することになったのか。そこには日本古来より受け継がれている「語り」の文化が関係していた。漫画や小説をもとに実写化される「原作モノ」が全盛の中、オリジナル映画に果敢に挑んだ人々を取材する連載「オリジナル映画の担い手たち」。第11回は、周防正行監督にとって映画化の動機となっている「驚き」を掘り下げる。○■「珍プレー」「神田松之丞」にも通底する“語り”文化――片島章三さんの脚本を読んだことが、映画化のきっかけになったそうですね。『舞妓はレディ』の撮影現場で片島さんから「読んでみてください」と脚本を渡されたのがきっかけです。たぶん、僕の意見を聞きたかっただけだと思いますが(笑)。僕も、片島さんが撮るものとして、「これは面白いね」と感想を伝えて。それからしばらくしてプロデューサーから監督をお願いされたので、「片島さんさえ良ければ」を条件に受けることになりました。自分以外が書いた(脚)本で、初めて「撮りたい」と思った本でした。――これまでそういう機会はなかったのでしょうか?ありましたよ。「この本で監督してくれませんか?」ということが何度かありましたが、なぜか撮りたいという気持ちになれなかったんですよね。「周防は自分で書かないと撮らない」と思われてる節があるみたいですが、全然そんなことないんですよ。「本が面白ければ撮る」がポリシーです。――「面白い」というのは、感覚的なものなんですか?僕自身の「驚き」です。その驚きを世界中の人に伝えたいかどうか。僕の映画で、共通しているのは「驚き」がスタートです。『変態家族 兄貴の嫁さん』(84)は、小津安二郎という人への「驚き」。ワンカットだけで「これって小津さん?」と分かるような映画監督は、世界中でも稀です。ファンとして「何なんだこれは」という驚きがずっとあったので、小津さんについての映画を撮ろうと思いました。大好きな小津さんに対する驚きが始まりです。『ファンシイダンス』(89)は、昨日まで渋谷のセンター街で遊んでいたような若者が禅寺の修行で入山するという現実が実際にあるんだという「驚き」。山に入った若者たちの目は、センター街にいるた若者の目とは違うんですよね。岡野玲子さんの漫画が原作なんですが、それまでのお坊さんのイメージが変わった作品でした。『シコふんじゃった。』(92)は、その日初めて廻しを締めた大学生が、いきなり国技館の土俵に上がるという「驚き」。初めて見た学生相撲の大会で、小手投げをされまいと頑張っている学生がいました。土俵に上がるのは初めての子でしたが、なんと骨折してしまって! 土俵下にいた関係者が「あっ、折れたな……」とつぶやいたんですよ。「なんだこの世界は!」「強豪校ではない学生たちは、こういう相撲を取ってたのか!」という驚きがありました。『Shall we ダンス?』(96)は、本当に映画の主人公のように駅からふと見上げた雑居ビルの窓に「ダンス教室 見学自由」と書いてあって。「そういえば、雑居ビルのダンス教室ってよく見るよなぁ。だけど、そこに通っている人を一人も知らない」と気づいたんです。そんな世間話をしていた時、東宝の方が「一度、東宝ダンスホールに見に来ませんか?」と誘ってくださって。仕事帰りのサラリーマンと思しき人がそそくさと更衣室に消えて出てくると、ピンと背筋を伸ばして、まるで外国人のように女性をエスコートしながら優雅に踊り始めるんです。取材をすると、あのダンス教室の向こうには、ボールルームダンスの聖地、イギリスのブラックプールがあるんだと知り、驚きました。刑事裁判がテーマの『それでもボクはやってない』(07)は、「刑事裁判ってこんなことになっているのか」「嘘だろ?」という衝撃。証拠は全部見ることはできないとか、もう驚きの連続でした。たぶんみんなも知らないことだろうから、映画にしてみんなに知ってほしいという思いがありました。――今回は、活動弁士に驚かれたわけですね。片島さんの本を読んで、僕は活動弁士を無視していたことに気づきました。学生の頃にサイレント映画をよく観ていたんですが、サイレント映画は「サイレント」で観るのが正しい観方だと思っていました。サイレントで観ない限り、その監督の意図は分からないと。以来、活動弁士や生演奏の存在を無視して生きてきました。でも、片島さんの本を読んで、はたと気づくわけです。明治、大正、昭和を通して、サイレント映画をサイレントのまま観ていた人はこの世にいなかった。洋画でいえば、例えばアメリカには音楽の生演奏があったので、やっぱりサイレントではないんですよね。日本ではそこに活動弁士の語りが入る。当時の日本の映画監督は、生演奏や誰がやるか分からない語りを想定して撮っていたという事実に気づかされました。活動弁士を知らなければ、日本映画を観てきたとは言えないのではないか。日本映画の初期、サイレント映画時代を支えたのは間違いなく活動弁士でした。ちなみに、黒澤明監督のお兄さんも活動弁士です。ポール・アンドラさんの著書(『黒澤明の羅生門 :フィルムに籠めた告白と鎮魂』)には、黒澤監督が活動弁士であるお兄さんの影響を受けたことが書かれています。小津安二郎も溝口健二も、どの活動弁士に語られるか分からないことを踏まえて撮っていたんです。稲垣浩監督は当初、「監督になってみると、活動弁士がこれほど邪魔な存在だと思わなかった」と言っていたそうですが、トーキー(発声映画)の時代になると、自分が書くセリフがどれほど活動弁士から影響を受けているかを痛感したそうです。初期の日本映画の監督はそれぞれ違った形で活動弁士に影響を受けたので、それが後の日本映画のスタイルにも大きな影響を与えたのではないか。それがこの映画を撮ってみて、あらためて分かりました。ヨーロッパやアメリカでも、最初の頃はスクリーンの前に人が立って、映画の説明をしていた時期があったそうです。でも職業として確立することなく、字幕と音楽だけで上映されるようになりますが、日本はトーキー全盛になるまで活動弁士がいて発展していきました。世界でも本当に珍しい映画史です。「物語」という言葉からも分かるように、日本人は語りでストーリーを楽しむ人種とも言えると思います。――最近では、講談師の神田松之丞さんや応援上映などが人気なのも、こうした日本人の感性に響いているからでしょうか?日本の「語り芸」の文化を強く感じます。例えば、これは活動弁士ではなくて「語り芸文化」の影響だと思いますが、古舘伊知郎さんのプロレス実況はまさに現代の活動弁士。それから、みのもんたさんの『珍プレー好プレー』のアテレコも。浄瑠璃、能や歌舞伎も「語り」によって人々に受け入れられてきたところがあります。『平家物語』を語る琵琶法師。講談、落語、浪曲、紙芝居……全部「語り」なんですよね。日本にはそうした豊かな「語りの文化」があって、それが活動弁士を生み出した。声色弁士という仕事もあって、スクリーンの横に複数人立って登場人物のキャラクターに合わせて声を演じていました。それはまさにアニメーションのアテレコ。今の声優さんの人気は、実は日本特有の語りの文化の影響を強く受けているからかもしれません。脈々と受け継がれている語りの文化が、今は神田松之丞さんに光が当たっています。そう考えると、日本の語りの文化が腑に落ちるというか。この映画は、語りについての作品なんです。――今回の『カツベン!』は、前作『舞妓はレディ』(14)後にすぐ製作に入ったのでしょうか?いえ。『舞妓はレディ』の後に2年間、別企画の準備を進めていたのですが、流れてしまいました。準備期間は作品やテーマによって違いますが、『Shall we ダンス?』は1年、『それでもボクはやってない』は多くの取材が必要だったので3年ほどかかりました。今回は、活動弁士の語りで映画を観た経験が少なかったので、とにかく活弁付きの無声映画作品を観ることから始めました。○■原作は映画の出来を保証するものではない――周防監督は本作含め、数多くのオリジナル作品を手掛けてこられました。オリジナル作品とは、監督にとってどういう位置付けですか?なるべく、「オリジナルで作りたい」という思いはあります。原作モノがあまりにも多いのは、お金を出しやすいからでしょうか。出資者側の事情もよく分かるんですよ。僕が一般劇場用映画で最初に撮った『ファンシイダンス』は原作漫画がありました。出資者は、どんな映画になるのか、原作があると予測しやすいわけです。「こういうものができるんだ」と想像がつく。『シコふんじゃった。』はオリジナルだったんですが、立教大学はどんな映画になるか不安があったのか、キャンパスを貸してくれませんでした。出資者の判断や撮影許可が取りやすいのが、原作モノの大きなメリットです。でも、そうなると原作モノしかこの世になくなってしまいます。だからこそ、オリジナルを作れる人は、積極的に作るべきです。漫画家は、「漫画として面白いものを」という発想のもと描いています。原作モノは、どんな映画になるのかある程度想像できるので、一定の安心材料にはなりますが、映画の出来を保証するものではありません。だから、オリジナルにお金を出すのも、原作モノにお金を出すのも実は同じなんです。そう思ってもらいたいから、オリジナルで撮れる人……つまり、それだけの説得力を持っている監督はできるだけオリジナルで撮ってほしいと思っています。――監督もその一人ですね。まぁ、今回はお金を出してくれましたからね(笑)。『それでもボクはやってない』なんて、『Shall we ダンス?』があったから撮らせてくれたと思うんですよ。脚本渡してるのに、「とはいえ、監督だからどこかで笑わせてくれるんだろう」とOKする方もいたみたいで。全然、そんなことないんですけど(笑)。シナリオはこうですと伝わっているはずなのに、みんな僕の過去作品にとらわれてしまう。――ということは、『Shall we ダンス?』までが大変だったということですか。そうですね。『シコふんじゃった。』や『Shall we ダンス?』の企画を通す時、「誰がこんなの観るの?」と散々言われましたからね。『シコふんじゃった。』なんて、スタッフも口にするのが恥ずかしそうでしたし(笑)。ある人からは、「ウンコふんじゃった? そんなの受けられない」と断られたこともありました。『Shall we ダンス?』がヒットしたおかげで、その後の話しは通しやすくなりましたよ。出資する側は、何かしらの保険が欲しいんですよね。■プロフィール周防正行1956年10月29日生まれ。東京都出身。1989年、本木雅弘主演の『ファンシイダンス』で一般映画監督デビュー。本木との再タッグとなる1992年公開『シコふんじゃった。』では、第16回日本アカデミー賞最優秀作品賞をはじめ、数々の映画賞を受賞し、1996年公開の『Shall we ダンス?』では、第20回日本アカデミー賞13部門を独占。その後も、『それでもボクはやってない』(07)、『ダンシング・チャップリン』(11)、『終の信託』(12)、『舞妓はレディ』(14)などの話題作を手掛けている。
2019年12月21日造形作家の岡﨑乾二郎(1955年生まれ)のこれまでの作品をたどるだけでなく、最新作や近年の活動も紹介する展覧会『岡﨑乾二郎 視覚のカイソウ』が、豊田市美術館で11月23日(土)から2020年2月24日(月・祝)まで開催されている。レリーフ〈あかさかみつけ〉シリーズを発表した初個展以降、岡﨑乾二郎はジャンルや素材を超えた作品制作と発表を続けている。同時に岡﨑は、修景保存活動や教育活動、キュレーションや多分野をまたがる批評なども行ってきた。こうした一つに留まらない彼の活動を、豊田市美術館のほぼ全館である5室の空間を使い、約200点の作品で紹介する。会場には、絵画、彫刻、レリーフ、さらにはテキスタイル作品、タイル、ドローイング、ポンチ絵など、これまで制作した作品や新作が並び、岡﨑の多面的な活動をうかがい知ることができるだろう。「この世界は決して一元的なものではなく、たがいに相容れない固有性をもったばらばらな複数の世界から成る」という彼らしさを感じられる。さらに、岡﨑の著書『ルネサンス-経験の条件』で、明晰な分析を行った「ブランカッチ礼拝堂壁画」を、AR(拡張現実)の技術を用いて再現する。壁画と同じように、岡﨑の絵画やレリーフ自体が、さまざまな色や形からつくられていることが分かる。これほどまでに幅広いジャンルの作品を発表する作家は、他にはいないだろう。展覧会タイトルのカイソウは、いくつも意味を持つ。見るという行為にはカイソウ(回想)も含まれている。さらに展示室という空間のカイソウ(階層)、過去の作品から新作までという時間というカイソウ(階層)が混ざる。鑑賞者の感覚が絶えず刷新される展覧会である。【関連リンク】豊田市美術館( )《まだ早いが遅くなる》1986年綿布、絹大原美術館蔵《テウミンとたみをとむらってバツサイとつみをきりしは》2000年セラミック東京国立近代美術館蔵《ポンチ絵》2014年色鉛筆、紙個人蔵《タメになるってどういう意味?/狐の才気》2018年アクリル、カンヴァスBBar collection《Physiognomy》 2016年 インク、紙株式会社タグチプロジェクツ蔵
2019年11月28日今、ママたちが注目している100均グッズを紹介する「#べビカレ100均部」企画。今回は100円ショップが大好きな3児ママ、せっちゃんさん(@100yenshoplove)に、ダイソーの激安バスタオル「ふんわり吸水バスタオル」について教えてもらいました。購入当初と1カ月後の使用感をレポートします! ダイソーの激安バスタオル、その使用感は? ダイソーの「ふんわり吸水バスタオル」は500円商品。パイル地に世界三大綿「新疆綿(しんきょうめん)」が使われており、なめらかな肌触りが特長のバスタオルとして販売されています。 せっちゃんさんはバスタオルの買い替えを機に、この激安バスタオルに初挑戦! ニトリやカインズホームよりも安く、店頭で触る限りは意外と良さそうだったことからとりあえず4枚購入したそうです。 大きさは一般的なバスタオルに多い60cm×120cmサイズ。ホテルのタオルのような厚みのあるタイプではなく、ちょっと薄手。ただペラペラした感じではなく、しなやかな手触りだそうです。 購入後2回ほど洗濯すると、厚みも増してふわふわに! 実際に使用してみた感想としては「吸水性も問題なく、薄手タイプなので乾きも早くて文句なし!」とのこと。 せっちゃんさん自身、ダイソーの中では高額な500円商品を買うことに悩んだそうですが、満足度はかなり高かったよう。吸水性、肌触り、乾きの速さともに合格ラインとのことでした! 激安バスタオルを1カ月使用してみた結果… 質感や機能性に問題ないとなると、気になるのは耐久性ですよね。せっちゃんさんが実際に1カ月使ってみた正直な感想を教えてくれました! いくつかよかったところ、イマイチだったところがあったようです。 よかったところ◎ せっちゃんさんが1カ月使ってみて「よかった!」と感じたところは3つ! 1.厚すぎず薄すぎずの適度な厚みで使いやすく、乾きが早い2.ちょうどいい厚みだから、お風呂上がりに体に巻きやすい3.肌触りがやわらかくてふっくらしている 購入当初からお気に入りだった“ちょっと薄め”の良さが使い続けたときにも響いてきたようです。また、洗濯を重ねるごとにふっくらしてきた点もグッド! イマイチだったところ× 一方で「ちょっとイマイチ……」と感じた点も3つあったようです。 1.タオルの端の縫製が雑な気がして、長く使っているとほつれそう2.洗濯するにつれて糸がほつれてきた部分もあった3.吸水性はごくごく普通だった(新疆綿と聞いてもう少し期待していたそう) 糸のほつれは「普段の使い方やガス乾燥機に数回かけたことが原因かも?」とのことですが、 4枚中2枚に見られたんだとか。吸水性は合格ラインだったものの、驚くほどの吸水性ではないと感じたそうです。 良し悪しはありながらも、せっちゃんさんの結論は「年に1回ペースで買い替えるコスパ重視派ならアリ!」でした! 最も重要視している「乾きの良さ」をクリアしつつ、1枚500円というお値段がやはり魅力的とのことでした。買い替えを想定すると、手に入りやすいダイソー商品という点も◎。次回の買い替えは、汚れの目立たないグレーをチョイスする予定なのだそうです。 500円と激安なダイソーのバスタオル。人によって触り心地や厚みなどの好みもありますが、十分レギュラーバスタオルとして活躍してくれそうですね! ちなみに200円商品のバスタオルもあったそうですが、せっちゃんさんは売り場で見て500円商品に即決したそう。ダイソーで見つけたときはぜひ見比べてみてくださいね! せっちゃんさんのInstagramには、ほかにも便利な100均グッズがたくさん紹介されています。こちらもぜひチェックしてみてください♪ ※本記事の内容は公開時に確認した情報のため、商品によっては変更となっている場合があります。 この投稿をInstagramで見る ⋆*せっちゃん*⋆さん(@100yenshoplove)がシェアした投稿 - 2019年10月月2日午前4時56分PDT ベビーカレンダーでは家事や収納、ファッションなど、ママたちの暮らしに寄り添った【ライフスタイル記事】を強化配信中! 毎日がもっと楽しく、ラクになりますように。 取材協力/せっちゃんさん(@100yenshoplove)
2019年10月10日イランの少女更生施設を舞台に、強盗、殺人、薬物、売春といった罪を犯した少女たちに迫り、第66回ベルリン国際映画祭アムネスティ国際映画賞を受賞したドキュメンタリー映画『少女は夜明けに夢をみる』から、予告編が解禁となった。イランを代表するドキュメンタリー作家で、小津安二郎、アッバス・キアロスタミ、ロベール・ブレッソンの作品群から映画を学んだというメヘルダード・オスコウイ監督が、撮影許可に7年もの歳月をかけて完成させた本作。予告編では更生施設で過ごす、ときに無邪気な少女たちの姿とともに、彼女たちが犯した罪についてのインタビューカットが連なっていく。世界30か国以上の映画祭で上映され、多くの賞を受賞した本作には、世界中の少女たちが経験し、抱えている本源的な“痛み”が描かれている。少女たちはなぜ罪を犯さなければならなかったのか?家族に裏切られ、社会に絶望してもなお、家族の愛を求め、社会で生きていかざるをえない少女たち。「見えない存在(インビジブルピープル)」として疎外されてきた少女たちとオスコウイ監督が築き上げた強固な信頼関係と親密な時間から生まれたドキュメンタリーとなっている。あらすじ雪が黒い土や建物を覆う、クリスマス前の少女更生施設。雪が降り積もり、無邪気に雪合戦に興じる、あどけない少女たち。その表情は、ここが高い塀に囲まれ、厳重な管理下におかれた更生施設であることを感じさせないほど瑞々しい。やがて少女たちが施設に入ることになった背景が、彼女たち自身の言葉によって、解き明かされていく。むごい虐待に耐えかねて父親を殺してしまった少女。叔父の性的虐待からのがれて、家出をし、生きるために犯罪を繰り返す少女。幼くして母となり、その夫に強要され、ドラッグの売人となった少女…。義父や叔父による性的虐待にさいなまれ、あるいはクスリよって崩壊した家庭は、少女たちにとって安息の場所ではありえない。ストリートにも家庭にも自らの居場所がない少女たち。その心の嗚咽が問いかける。少女たちの罪の深さと、人間の罪深さとを――。『少女は夜明けに夢をみる』は11月2日(土)より岩波ホールほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2019年09月28日東京国立近代美術館の展覧会「ピーター・ドイグ展」が、2020年6月12日(金)より日時指定制で再開。会期は10月11日(日)まで延長された。ピーター・ドイグ、日本初個展「ピーター・ドイグ展」は、イギリスの現代アーティスト、ピーター・ドイグの初期作から最新作まで、約70点の作品を紹介しながら、その制作手法に迫る展覧会。日本では初の個展となる。ピーター・ドイグは、ロマンティックかつミステリアスな風景を描く画家として知られ、ロンドンのテート、パリ市立近代美術館、エジンバラのスコットランド国立美術館、ウィーンの分離派会館といった世界有数の美術館で個展を開催してきた。同世代、後続世代のアーティストに多大な影響を与えていることから、過去の巨匠になぞらえて、しばしば「画家の中の画家」と評されている。本展にも出品予定の代表作《のまれる》は、オークションにて、2015年当時の約30億円相当で落札された。想像力や記憶を刺激する絵画ピーター・ドイグは、ゴッホやゴーギャンなどの近代画家の作品の構図やモチーフ、映画のワンシーン、写真、自らが暮らしたカナダやトリニダード・トバゴの風景、記憶といったさまざまな要素から作品を構築。多様なイメージから成るピーター・ドイグの作品は見る者の想像力や記憶を刺激し、いつかどこかで見たことがあるように感じられるのが特徴だ。会場には、日本のニセコのスキー場を描いた《スキージャケット》や小津安二郎の映画『東京物語』を念頭に置いて描かれた《ラペイルーズの壁》、幅3メートルを超える大型作品などの、貴重な作品が集結。映画『13日の金曜日』のワンシーンから発想した「カヌー」モチーフの絵画も登場する。一連の作品からは、人々の想像力をかきたてる、豊かな世界観を体感することができる。映画上映会「スタジオフィルムクラブ」の直筆ポスターまた、ピーター・ドイグがトリニダード・トバゴ出身の友人のアーティスト、チェ・ラブレスと2003年から始めた映画の上映会「スタジオフィルムクラブ」も紹介。近隣住人に上映会を周知するために掲出された、ポスターのドローイングが展示される。「スタジオフィルムクラブ」では、名画座やミニシアターから着想を得た、過去の名作映画などを上映。上映が終わると作品について話し合ったり、音楽ライブへと展開したりと、ある種の文化サロンのようなコミュニティが形成されていく。【詳細】展覧会「ピーター・ドイグ展」会期:2020年2月26日(水)~10月11日(日)〈日時指定制〉※2020年2月29日(土)から臨時休館していたが、6月12日(金)より再開※当初は2020年2月26日(水)~6月14日(日)の会期を予定していたが、変更しての開催開館時間:10:00~17:00(入館は閉館30分前まで)※当面のあいだ、金曜・土曜の夜間開館は実施しない休館日:月曜日(8月10日(月)、9月21日(月)は開館)、8月11日(火)、9月23日(水)会場:東京国立近代美術館 1階 企画展ギャラリー住所:東京都千代田区北の丸公園3-1観覧料:一般 1,700円、大学生 1,100円、高校生 600円※価格はいずれも税込※中学生以下および障がい者手帳持参者とその付添者1名は無料※公式サイトより日時指定チケットを購入(6月10日(水)10:00から)※すでにチケットを購入している場合、あるいは観覧料無料対象の場合、開館時間中に原則いつでも入場可能だが、混雑状況に応じて待つ場合あり※チケットの払い戻しおよび来館に際しての注意事項は、公式サイトを確認のこと※本展の観覧料で入館当日に限り、「MOMATコレクション」(4F~2F、所蔵品ギャラリー)、およびコレクションによる小企画「北脇昇:一粒の種に宇宙を視る」(2F、ギャラリー4)も観覧可※予定は変更となる場合あり【問い合わせ先】TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
2019年08月31日《ドイツの監督ドリスデリエさん一行皆茅ヶ崎館に想いがあって――しかし保存は至難です――ひたすら願うばかりです》そんな文章の横ではユーモラスな自画像が頭を下げていた。「1年前に樹木さんが、このサインを書いてくれたのですが、一言一言がオツというか味がありますよね」懐かしそうにそう語るのは神奈川県の老舗旅館『茅ヶ崎館』四代目女将・森治子さん(81)。女優・樹木希林さん(享年75)が逝去してから、もうすぐ1年になる。8月16日から映画『命みじかし、恋せよ乙女』が公開されているが、これは希林さんの“遺作”でもある。希林さんが演じたのは、人生を見失ったドイツ人青年を受け入れ、再起を促す旅館の女将。茅ヶ崎館で撮影に臨んだのは、亡くなる2カ月前の昨年7月だった。女将・森さんが希林さんの“最後の演技”について語ってくれた。「この旅館までは、運転手さんが車で連れてきてくださったそうです。樹木さんは杖を使っていましたが、入口の階段も、ご自分で上がってきました。私が手を差し出したのですが、『大丈夫です』と、おっしゃって……」がんで闘病中の希林さんが、この映画に出演した理由の一つが、茅ヶ崎館でロケが行われる予定があったからだという。この旅館は希林さんにとって思い出の場所でもあったからだ。「小津安二郎監督の遺作となった『秋刀魚の味』(’62年公開)は、監督の定宿でもあった茅ヶ崎館で撮影も行われました。映画には希林さんが付き人をしていた故・杉村春子さんも出演しており、希林さんは50年以上前にも訪れていたのです」(映画関係者)森さんは初めて会った希林さんの人柄にたちまち惹かれたという。「大女優なのに、本当に自然体というか、“あれをしてほしい、これをしてほしい”といった注文も全然ない方でした。(和室に)組み立て式の簡易ベッドを運び入れましたが、特に『布団を厚くしてほしい』といったこともおっしゃいませんでした。食事についてお伺いすると、『おそばか、そうめんなら』とのことでしたので、おそばをゆでて差し上げました。あと、ちょうど桃があったので、お召し上がりになりましたね」ひょうひょうとしていた希林さんだったが、撮影は過酷だった。猛暑日で気温は40度を超えていた。しかし撮影スタッフが“静かなシーンを撮りたいから”と、台所の冷房どころか冷蔵庫のスイッチも切ってしまい、室温はなんと50度近くにもなったというのだ。「女将役の樹木さんが、おにぎりを握るシーンでした。私たちも横から拝見していたのですが、何度も何度もNGが出て、もう気の毒なほどでした」全身をがんにむしばまれていた彼女にとって、想像を絶する負担だったと思われるが……。「樹木さんは、“疲れたからちょっと休ませて”なんてこともいっさい言いませんでした。とにかくOKが出るまで、延々とおにぎりを握り続けていたのです」希林さんは、茅ヶ崎館の今後のことまで心配してくれたという。「きっと体のあちこちが痛かったのだと思いますが愚痴一つ言わず、それどころか、この旅館のことまで心配してくださったのです。茅ヶ崎にも、昔は多くの旅館や別荘が立っていました。しかし、みんな売りに出されてしまい、マンションなどになってしまったのです。うちも周囲の方々は、『建物を残してください』と言ってくださるのですが、こういう古い旅館を維持していくのは、本当に大変なことなのです。樹木さんはそういった事情も理解してくださっていました。サインで書いてくださった《保存は至難です――ひたすら願うばかりです》という言葉には、温かな気持ちがこもっていると感じました」『年齢を重ねることは素敵なこと』と、語っていた希林さん。歴史を経た旅館と、自らを重ね合わせていたのかもしれない。
2019年08月23日日本映画界が世界に誇る名女優のひとりといえば、昨年惜しまれつつこの世を去った樹木希林さん。映画と人々の心のなかで生き続ける樹木さんが、女優人生の最後に選んだ作品がいよいよ公開を迎えます。それは……。感動に満ちた『命みじかし、恋せよ乙女』!【映画、ときどき私】 vol. 251ドイツのミュンヘンで、仕事も家族も生きる希望さえも失っていたカール。酒に溺れ、どん底だった彼のもとに突然ユウと名乗る風変りな日本人の女性が現れる。彼女と過ごすうちに、カールは人生を見つめ直しはじめ、新たな一歩を踏み出そうとしていた。ところがその矢先、ユウが忽然と姿を消してしまう。そこで、カールはユウを探すため、彼女の故郷である神奈川県の茅ケ崎へと降り立つことに。たどり着いた旅館で年老いた女将と出会い、カールは知られざる真実を知ることとなるのだった……。本作は、樹木さんにとっては遺作であり、世界デビューを果たしたかけがえのない1本。今回は、現場での様子を誰よりも知るこちらの方にお話を伺ってきました。監督・脚本を務めたドーリス・デリエ監督!ドイツでもっとも成功した女性監督のひとりとして名前があがるデリエ監督。これまで日本を舞台にした映画を5作品も制作するなど、日本を愛してやまない監督が本作を通して伝えたいメッセージや樹木さんとの思い出について語ってくれました。―まずは、心に傷を負った人物が再生するという題材を取り上げようと思ったのはなぜですか?監督今回は、主人公のカールが自分のアイデンティティをいかに見つけていくかというストーリー。彼はマッチョというわけでも、女っぽい部分があるというわけでもないので、その間にあるアイデンティティを模索している間に、自分の“形”を探していくという物語にしました。―日本に関する作品を撮り続けるだけでなく、監督はこの30数年の間に、30回以上も日本を訪れているそうですが、日本に興味を持つようになったきっかけはありますか?監督まだ映画学校に通っていたとき、小津安二郎監督の作品を授業で見させられていたんですが、当時はまだ20歳くらいだったので、正直に言うと家族の話はつまらないと思っていました。というのもそのくらいの年齢のときは、家族という題材にはなかなか興味を持つことができないものですよね。なので、若いときはどちらかというと、アクションがあってテンポが早い黒澤明監督のほうが好きでした。ただ、母親になってから改めて小津作品を観てみたら、家族がテーマだからこそ、すごく心に響いたんです。そんなふうに、映画を通じて自然と日本への興味を持つようになったのかなと思います。―では、日本の文化から影響を受けたことなどがあれば教えてください。監督この作品で言うなら、日本の「幽霊」をテーマとして入れたこと。西洋の考え方だとあの世とこの世がはっきりとわけられていますが、日本の文化ではその境目があいまいなところがありますよね?現代においては「机は机だし、人は人」といった具合に全部がわけて考えられていますが、世界というのは、本当はお互いに影響し合っていて、すべてのものは繋がっているんだと私は思っています。樹木さんの生き方から学びたいと思ったことは?―監督にとって、樹木さんは長年憧れていた存在でもあったそうですが、一緒にお仕事をされてみて、学んだことはありましたか?監督「私が彼女から学んだこと」と言うのはおこがましいので、「私が彼女から学びたいと思っていること」にしますが、まずは仕事に対する深い献身ぶりと役者として物語を綴っていこうとする思い。あとは、超がつくほどのプロフェッショナルイズム。そして、本当に謙虚な姿勢です。たとえば、アメリカの女優さんのなかには、10人のマネージャーと10人のアシスタント、さらに10人のメイクを引き連れてきたり、食べ物をリクエストしてきたりする人もいますが、樹木さんはそのどれもまったくありませんでした。私たちが「何か特別な食事をご用意しましょうか?」と何度たずねても一切なく、逆に「何を食べているの?私もそれを食べるわ」とおっしゃるほどだったのです。樹木さんはスーパースターなので、いろいろと心の準備をしていましたが、何も要求されることなく、スタッフとキャストに家族の一員が加わったくらいの感覚でした。そんなふうに、何も求めないところや謙虚なところは、尊敬していると同時に学びたいと思っています。―樹木さんが多くの人から尊敬されている理由がわかるようなエピソードですね。そのほかにも、印象に残っている樹木さんの思い出はありますか?監督あとは、すごくいろいろな物がクリアに見えていらっしゃる方だと思いました。病気についてもそうですが、病状についてもオープンで、自分の命が短いということも理解されているようでした。この痛みを抱え、歳を重ねた肉体こそが自分の体であり、アイデンティティだと。だから、「病気に縛られる必要はないんだ」「自由に私自身でいるんだ」という感じでいらっしゃるところもステキだなと思いました。もちろん、痛みを抱えていらっしゃるのは見ていてわかりましたが、それについて何も言わずにいるところも彼女の素晴らしさ。あと、樹木さんといえば、やはり独特のユーモアの持ち主ですよね。多くの人が経験している苦しみを描いている―確かに、樹木さんのユーモアのセンスは魅力のひとつだと思います。また、劇中ではカールが本当の自分へと解放されていく姿も印象的ですが、周囲の期待に応えようとがんばるあまり、自分を見失っていく男性が多いのも事実。今回、そういう男性を主人公に描こうと思った理由は何ですか?監督ユウが重ね着しているさまざまなタイプの服を徐々に脱いでいくシーンで表しているように、女性は服装を変えるだけでもいろいろな女性像になることができますが、それに比べると男性は多くのことが限定されがち。それがこの作品の最初の問いかけになりました。劇中で、カールはサラリーマンという役割を当てられても、家族思いの父親の役割を当てられても居心地が悪くなってしまいますが、その理由は自分で見つけた道ではなく、周りに与えられているものだから。それゆえに、カールは周りから求められる役割が本当の自分とは違うことに苦しみ、不幸せに感じてしまうのですが、こういった気持ちは彼だけではなく、多くの人が経験していることなのではないでしょうか。―そんなふうに、周りから与えられる理想と現実に悩んだ経験は、誰にでもあると思います。監督もそういった葛藤を味わったことがありますか?監督もちろん、私にもそういう経験がありますが、それは34歳で母親になったとき。私の人生のなかでも一番変化したときでもあり、その変化が怖いと思っていた時期でした。というのも、それまでの私はスタッフのなかに女性ひとりでいるような一匹狼タイプ。現場から現場へと移り、世界中の好きなところに行っては自分の好きなことをしていました。それが母親になることによって、「この先の自分はどうなってしまうのか?」と悩むようになったのです。なかでも一番怖かったのは、社会が「映画監督であり作家である自分」と「母であり妻である自分」そのどちらかしか選ばせてくれないのではないかと思ったとき。つまり、これをきっかけに仕事ができなくなる可能性があったらどうしようかと考えてしまったのです。社会が決めた役割をよしとしないことも必要―その恐怖はどのようにして乗り越えていったのでしょうか?同じ悩みを抱えている女性たちに向けて対処法があれば教えてください。監督私の場合、当時は友達がよく居候したりしていたこともあったので、子どももそのうちのひとりだと思えばいいんだと考えるようにしました。そんなふうに「誰かと共同生活するだけ」と思えるようになったことで、そんなに怖くないなと感じるようになったと思います。つまり、社会が「こうあるべき」と決めている役割をよしとするのではなく、ときにはそう思わないことも必要だということです。哀しくもあり、美しくもあるのが人生!人生で繰り返される出会いの喜びや別れの悲しみ、そして理想と現実との葛藤。それでも、人は生きている限り、幸せにならなければならないと感じるはずです。誰の背中も優しく押してくれる樹木さんの心揺さぶるメッセージから、“人生を愛するヒント”を受け取ってみては?心に触れる予告編はこちら!作品情報『命みじかし、恋せよ乙女』8 月 16 日(金)より、 TOHO シネマズ シャンテ他にて全国順次公開配給:ギャガ©2019 OLGA FILM GMBH, ROLIZE GMBH & CO. KG
2019年08月15日恒例となった美輪明宏の秋のコンサート。今年は『美輪明宏の世界~愛の話とシャンソンと~』と題して開催される。シャンソンの名曲の数々に、そしておしゃべりに、何を込めるのか。美輪の思いをたっぷり聞いた。【チケット情報はこちら】「私のコンサートに来られたお客様は、よく、“映画を何本も観たような気持ちになる”とおっしゃいます。なかでもシャンソンは、いろんな人生のドラマが歌われていますから、そこから生きることを楽しむ方法を学べたりもするんです。たとえば恋愛に関しても、尽くして尽くして裏切られるという歌が多いのですが、そんな歌を聴けば、失恋してつらい思いをしてらっしゃる方も、きっと歌のヒロインのようにいい女になったつもりで生きていけるでしょうし(笑)、お仲間がいるとホッとして、ひとりでひがんだり妬んだり嫉んだりしなくてすむと思うんです」。そんなふうにシャンソンが描く世界は私たちの人生に励ましや安らぎを与えるのだと、詞の魅力を語る美輪。さらには、そのドラマチックで詩的な詞を乗せるメロディの美しさも格別だと言う。「デジタル化が進んだ今の人工的な音と違って、メロディに色彩があるんです。歌い手たちも豊潤な声で歌っていました。そういった美しい叙情にぜひ触れてほしいんです」。そこには、「芸術こそが今の荒れた世の中を落ち着かせてくれると思うんです」という美輪の強い信念がある。かつてシャンソン歌手として「銀巴里」で歌っていた頃には、文化人が集い芸術を語り合う時間があった。「フランス映画やドイツ映画も人気で、日本映画も小津安二郎監督や成瀬巳喜男監督の叙情的な素敵な作品がたくさんありました。もしかしたら今の若い方には、却ってレトロなものが新しく感じられるかもしれませんし、スマホやゲームから離れてそうした芸術に触れることで豊かな情操が育まれると思います。ですから、シャンソンもそんな芸術のひとつとして復活させたいと思い、今回のコンサートはオールシャンソンでいくことにしたんです」。朝ドラ『花子とアン』や紅白歌合戦で話題になった美輪の訳詞による『愛の讃歌』も歌われる。『バラ色の人生』『枯葉』といった珠玉の名曲は原曲のままフランス語で。曲の合間の語りには、歌にまつわる話はもちろん、少しでも幸せな世の中になるようにという美輪の愛があふれることだろう。美輪明宏が届けてくれるものは、やはり特別である。公演は9月7日 (土)から東京・東京芸術劇場 プレイハウスにて。チケット好評発売中。取材・文:大内弓子
2019年08月09日おとな向け週末映画ガイド今週のオススメは『グッド・ヴァイブレーションズ』『トム・オブ・フィンランド』『あなたの名前を呼べたなら』『風をつかまえた少年』。特集上映では「京マチ子追悼映画祭」に注目!ぴあ編集部 坂口英明19/8/2(金)イラストレーション:高松啓二今週公開の作品は15本。このうち、全国300スクリーン規模で拡大上映されるのは『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』の2本、あとはミニシアターなど小規模での公開とライブビューイングです。その中から、おとなの映画ファンにオススメしたい作品をご紹介します。世界は矛盾と理不尽なことで満ち満ちているけれど、あながち捨てたもんじゃないな、と思える4本です。『グッド・ヴァイブレーションズ』右か左か、バーで政治論争をしていた頃はよかったが、プロテスタントかカトリックか、の争いとなり、やがて店から客が消え、銃弾飛び交う内戦が始まった。そんな北アイルランドの1970年代が舞台です。「戦争の前は、街のホールでストーンズを観た。ディランもジミヘンもフーもアニマルズもキンクスも観た。ベルファストに来たアーティストは全部観た。だけど、いつしか誰も来なくなった」と嘆くひとりの音楽好きが、こんな時こそと思い立ち、テロの標的となってしまった"爆弾横町”と呼ばれる荒れ果てた街の一角に、「グッド・ヴァイブレーションズ」という名のレコード店を開きました。彼はそれがきっかけで地元のパンクバンドにのめり込み、北のパンクのゴッドファーザーとロンドンの雑誌にとりあげられるまでになります。バンドのテレビ出演、戦火の中のツアー敢行、損得は二の次で駆け抜けるのです。そういう実話の映画化です。アイルランド紛争が解決したのはそれから20年くらい後の1998年。その間、主人公のテリーさんは決して大成功を収めませんし、バンドも大スターにはなりません。お店も何度も開閉を繰り返します。でもいいじゃないか、この元気。逆境の中でも夢を追う主人公の、愛すべきキャラと簡単にはメゲない持続する志が素晴らしい映画です。ピーター・バラカンさんがぴあアプリ版の連載で、この映画のことを書いています。ピーターさんいわく、彼は「今もまだ店を細々とやっているんじゃないかな」。『トム・オブ・フィンランド』ハードゲイを描いて、世界で有名になったフィンランドのイラストレーター、トウコ・ラークソネンの半生。あのヴィレッジ・ピープルのようなコスチュームの男たち、どこかで見たことのある絵です。第2次大戦後のフィンランド、同性愛は法律で固く禁じられていました。ラークソネンは、戦争から復員したあと、CMのイラストを描く本業のかたわら、深夜、鍵をかけた自室で、密かにそんな絵を描き続けます。やがて、それがアンダーグラウンドの世界に出回り、アメリカにまで輸出されることに。アメリカの雑誌編集者がつけた名前が「トム・オブ・フィンランド」。彼はゲイの世界のアイコンになるのです。フィンランドで同性愛が合法化されたのは1971年。ムーミンについで、2014年にフィンランド郵便が「トム・オブ・フィンランド」の記念切手を発行しました。しかもこの切手、同国郵便史上最高の売上を記録したそうです。ムーミンで有名な国は、いまやLGBTに理解のある国でもあるのです。ラークソネン没後23年のことでした。『あなたの名前を呼べたなら』インド映画です。ただ少し趣がちがって、歌や踊りのエンタテインメントではありません。上映時間も99分と短い。テーマは、主人とメイドの恋、というインドでは現代でも考えにくいタブーにふれたものです。舞台はムンバイ。新婚家庭のメイドに雇われた農村出身の未亡人ラトナが主人公です。雇い主は建築会社の御曹司アシュヴィン。アメリカ帰りのぼんぼんです。新婚のはずが、結婚直前に破談、一人暮らしとなってしまいます。彼の食事を始め、身の回りのケアは住み込みのメイド、ラトナの仕事となります。こうなると、ふたりが接近しても不自然でないのですが、インドではこれは絶対にありえないことなのだそうです。結婚4カ月で夫に死別したあとも、村の風習により婚家に縛られ、自由が利かない暮らし。そこから逃げ出し、都会でメイドをしながら、ファッションデザイナーになる夢にチャレンジしているラトナ。そのひたむきな姿に、アシュヴィンは次第にひかれていき……。原題は『Sir』、ご主人さまと訳されます。日本語タイトルとあわせてみると、ラトナの心の叫びを汲み取ったなんとも見事な題名です。『風をつかまえた少年』これも実話を基にした映画。イギリスとマラウイの合作です。マラウイはアフリカ南部の小さな内陸国。2001年、この国を洪水とそれに続いて干ばつが襲います。零細な農業を営む主人公ウィリアム少年の家族も、その日の食事に困る生活で、入ったばかりの中学校の学費が払えません。しかし、退学させられてもなお、学びたい一心で、図書室に潜り込み理科の勉強を続けます。彼が熱中したのは発電の仕組み。今の貧困を変えられるのではないかと感じたからです。そして、父の唯一の移動手段である自転車を分解して利用すれば、風力発電でポンプをまわし、井戸の水を田畑に導くことができると思いつきます。それを奇想天外としか思えなかった父も、家族の説得と彼の情熱に動かされ、子供を信じ、自転車を手放す決意をし……。主人公のモデルになった少年は、その後奨学金を得て大学へ進み、アメリカに留学、現在は本国に戻って活躍しています。『TIME』誌の「世界を変える30人」に選ばれたことも。ぴあアプリ版の連載「池上彰の映画で世界がわかる」で池上さんがこの映画をとりあげ、「人はなぜ勉強をする必要があるのか。その答えがある」と紹介しています。特集上映では。「京マチ子追悼映画祭」(YEBISU GARDEN CINEMA)8/2〜15)「京マチ子追悼映画祭」(YEBISU GARDEN CINEMA)8/2〜15昭和の名女優、京マチ子さんの追悼特集上映です。今春、大規模な京マチ子映画祭が開かれ、彼女にスポットライトが当たっていました。そこに入ってきた訃報です。5月12日のことです。映画ファンにとっては衝撃でした。今回は「追悼」の2文字を新たに加え、代表作11本が上映されます。京マチ子は「国際グランプリ女優」とよばれました。戦後まもなく、1950年製作の『羅生門』がヴェネチア映画祭金獅子賞と米アカデミー賞名誉賞を受賞。以降『雨月物語』でヴェネチア映画祭銀獅子賞、『地獄門』でカンヌ映画祭グランプリと米アカデミー賞名誉賞、出演作が相次いで国際映画祭で賞を受けます。今回は、黒澤明監督『羅生門』、溝口健二『雨月物語』『赤線地帯』、小津安二郎『浮草』が4Kデジタル復元版、衣笠貞之助『地獄門』がデジタル復元版での上映。他に、春の回顧作品には入っていなかった市川崑監督の『穴』が上映されます。それにしてもすごい監督陣。すべて日本映画史に残る作品です。この機会に大スクリーンでどうぞ。
2019年08月02日おとな向け週末映画ガイド今週のオススメは『ゴールデン・リバー』と『Girl/ガール』。野村芳太郎監督回顧、伊藤雄之助&西村晃の名脇役対決などの特集上映も好企画が並びました。ぴあ編集部 坂口英明19/7/5(金)伊藤さとり(dpia-app://pilotDetail?pilotageId=93a38c60-dfa2-48cd-af06-83c2857e4101)真魚八重子(dpia-app://pilotDetail?pilotageId=3565dab2-1ca9-4d27-b5bf-0792183f25a7)高松啓二(dpia-app://pilotDetail?pilotageId=17c89031-2956-4e72-b8a8-45553e3c6697)春日太一(dpia-app://pilotDetail?pilotageId=564cc792-5c0d-4e1d-9a06-ffd654b8f928)『ゴールデン・リバー』は昨年のヴェネチア映画祭の銀獅子賞(監督賞)を受賞していますが、ベルギー映画の『Girl/ガール』は、今年のカンヌ映画祭カメラドール(新人監督賞)受賞とこちらも評価の高い作品です。15歳の主人公ララはトランスジェンダーで、バレリーナを目指しています。この映画はもちろん、その少女の物語なのですが、映画で重要な役どころは父親。少女を取り巻く医療スタッフなど、ベルギーは日本では考えられないほど、理解のある環境ではあるのですが、やはりいじめや、差別はある。その中で「女性になることを急ぐ必要はない。パパだって時間をかけて男になった。焦っちゃダメだ」と暖かく見守る父、そんな家族の映画でもあります。この作品も、渡辺祥子、伊藤さとり、水上賢治、杉本穂高の4人の水先案内人の方々がオススメです。この映画の水先案内渡辺祥子(dpia-app://pilotDetail?pilotageId=dbc05f7b-0538-4572-80f7-00b4eed0a036)伊藤さとり(dpia-app://pilotDetail?pilotageId=ba11039c-a3f7-4258-969b-a9a3d2762c37)水上賢治(dpia-app://pilotDetail?pilotageId=ced68815-35ad-4bf2-af22-977f8986b98b)杉本穂高(dpia-app://pilotDetail?pilotageId=3520c557-722b-4539-9ff1-f689c079b04b)今週は名画座の特集上映に注目すべき企画が3つもあります。「生誕100年記念 映画監督 野村芳太郎」(神保町シアター)7/6〜19 植草信和(dpia-app://pilotDetail?pilotageId=2dc649d8-0919-4888-9dce-b2976a9a7a55)「名脇役列伝IV 伊藤雄之助生誕百年記念 怪優対決 伊藤雄之助vs西村晃」(シネマヴェーラ渋谷) 7/6〜26お人好しか、はたまた曲者か、馬面の怪優伊藤雄之助と、のちに水戸黄門に変身したが、映画では気が弱そうで実は悪人とか、暗躍する敵役が多いこれまた怪優の西村晃という名脇役二人に注目した特集。伊藤雄之助は『現代インチキ物語 騙し屋』の詐欺師や、『にっぽん泥棒物語』などの刑事役、『一等女房と三等亭主』では風采のあがらないサラリーマン…、どの映画も実は強い印象を残す脇役だ。西村晃は『ある脅迫』『散歩する霊柩車』のこれぞ小心者、『北陸代理戦争』で雪の中に首だけだして埋められ、リンチされる伝説のシーンも見ものです。「キネマ旬報創刊100年記念 キネ旬ベストワンからたどる昭和・戦後映画史」(新文芸坐)7/7〜17キャプションの内容を記載映画雑誌『キネマ旬報』が今年、創刊100年を迎えるのを記念した特集。この雑誌の看板企画であるキネ旬ベストテンの、ベストワン作品を集めて、昭和・戦後日本映画史を振り返ろうという企画です。小津安二郎『晩春』『麦秋』の2本立てから、山田洋次『幸福の黄色いハンカチ』と深作欣二『蒲田行進曲』までの20本。組み合わせも興味深い、いかにも新・文芸坐らしいプログラムです。映画の上映ではありませんが、映画ファンにとって見逃せない展覧会が始まりました。「高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの」(東京国立近代美術館) 7/2〜10/6よくこんな資料が残っていたと驚きます。台本、絵コンテ、セル画、演出メモなど。デビュー作『太陽の王子 ホルスの大冒険』では、登場人物の出番とドラマの「テンションチャート」を組み合わせたグラフや、制作の遅延を恐れた会社とのやりとり、いわば「一筆を入れた」書類まで。入り口近くに「ぼくらのかぐや姫」企画ノート、という企画書が展示されています。東映動画時代、内田吐夢監督でかぐや姫を映画化する話があり、自分なりのプランをまとめたもの。遺作『かぐや姫の物語』とループで繋がる高畑勲の原点というわけです。高畑さんは自分で絵を描く訳ではない、アニメの演出のプロです。作品に込めた思いをスタッフに伝えるために使われた様々な表現物で、高畑さんの世界をうかがえるまたとない展覧会です。『アルプスの少女ハイジ』のコーナーでは、ハイジの住む家と大自然のジオラマも設置されています。背景美術用に描かれた風景画の素晴らしさも見もの。関係したスタッフのコメントも入った音声ガイドは借りた方が良いです。
2019年07月05日昨年9月惜しまれつつ亡くなった樹木希林さんの世界デビュー作にして、女優として最後の出演作となったドイツ映画『Cherry Blossoms and Demons』(英題)の日本公開が、8月に決定した。■ストーリードイツ・ミュンヘンで1人暮らしをする男性カール。酒に溺れた彼は、仕事を失い、妻は幼い娘を連れ家を出てしまった。孤独に苦しみ、泥酔の末に「モノノケ」を見るようになるカール。そんなある日、彼の元を日本人女性のユウが訪れる。ユウは10年前に東京を訪れていたカールの父親ルディと親交があり、いまは亡きルディの墓と生前の家を見に来たのだと言う。しぶしぶ彼女に付き合うカールは、次第にユウに惹かれていく。2人は人生を見つめなおすため、ユウの祖母に会いに日本へと向かうが――。■小津安二郎や是枝裕和、そして樹木希林さん自身も縁ある旅館でロケ主演を務めるのは、ドイツ人俳優ゴロ・オイラーと日本人ダンサーの入月絢。この2人が、人生を取り戻すために共に旅をする物語で、樹木さんは2人が訪れる茅ヶ崎館の女将役を演じている。本作は、2018年4月にドイツで撮影がスタートし、7月6日~16日に日本での撮影を敢行。日本パートのロケは、主に神奈川県茅ケ崎市に実在する「茅ヶ崎館」で行われた。もともとは、茅ヶ崎館が1950年代に小津安二郎監督が滞在し、脚本を書いた宿であり、近年では是枝裕和監督も執筆のために宿泊する場所だと知った本作のドーリス・デリエ監督が、彼女の前作『フクシマ・モナムール』(16/桃井かおり出演)のジャパンプレミア上映後に宿泊。高齢の女将に、かつて小津監督が滞在した部屋を案内してもらった際に、本作のインスピレーションを得たという。樹木さんも茅ヶ崎館とは縁があり、訪れたのは小津監督の遺作となった『秋刀魚の味』(62)の撮影時に、女優・杉村春子の付き人として現場に参加して以来のこと。当時、樹木さんが小津監督と一緒に過ごしたまさにその部屋で、今回の撮影は行われた。また、本作のラストには、樹木さんが庭を眺めながら「ゴンドラの唄」を歌うシーンがある。「ゴンドラの唄」といえば、黒澤明監督の『生きる』(52)にも登場する有名な歌で、「いのち短し恋せよ乙女 朱き唇褪せぬ間に 熱き血潮の冷えぬ間に明日の月日はないものを」と歌うこのシーンが、本作撮影から2か月後、9月15日に亡くなった樹木さんの女優としての最後の映画出演シーンとなった。■ドイツ人監督からコメント到着「心温かく、オープンで、非常に情に厚い存在」愛、喪失、家族、生きることの美しさと残酷さを描いた本作において、この樹木さんの歌は、まるで彼女が私たちに遺してくれた最後のメッセージのようだったと、デリエ監督は思いを寄せる。「私は長年にわたり日本が誇る名女優・樹木希林の演技に魅了されてきました」という監督は、「『歩いても 歩いても』から始まる是枝裕和監督の作品群や、河瀬直美監督の『あん』などの彼女の演技がとても好きです。今回の役に関しては、彼女以外に考えられませんでしたので、彼女が今回の役を受けてくださった時には、深く深く光栄だと思いました。また本作で、最後の演技を見ることは、哀しくもあり、同時にとても美しさに満ちた体験となりました。本作中での樹木希林は、心温かく、オープンで、非常に情に厚い存在であり、それゆえに観客は彼女にぐっと心を掴まれ、強烈な感動を感じるのです」とコメント。さらにデリエ監督の『HANAMI』『フクシマ・モナムール』に出演し、本作でも主演を務める入月さんもまた、「今作中で忘れる事ができないのは言うまでもなく樹木希林さんの存在です。作中での存在感は勿論ですが、惜しくも遺作となってしまった事実、また日本へ紹介される大きな架け橋となって下さったこと、撮影中私達に残して下さったかけがえの無い体験や時間を思うと、感無量で言葉に詰まります。人への愛情、生きること、死ぬこと。人生という旅を深い深い部分で体験させられる映画です」とコメントを寄せている。映画『Cherry Blossoms and Demons』(英題)は8月、TOHOシネマズ シャンテほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:Cherry Blossoms and Demons(英題) 2019年8月、TOHOシネマズ シャンテほか全国にて順次公開予定©Constantin Film Verleih GmbH/ Mathias Bothor
2019年03月19日「このごろ、60代で亡くなった人をやたら思うんですよ。小津安二郎先生とか手塚治虫さんとかね。いつぽっくり逝ってもおかしくない年齢になったんだな……。目の前の仕事を大事にしよう。じっくりかみしめながら一生懸命に、と思っています」そう語るのは、『愛しあってるかい!』など人気作に出演し、’90年代のトレンディドラマの火付け役を担った俳優の陣内孝則(60)。昨年、還暦を迎えた。3月に再演されるミュージカル『プリシラ』(3月9~30日/東京・日生劇場にて)は、陽気な3人のドラァグクイーン(女装家)たちが、ショーに出演するためオーストラリア大陸の砂漠を旅する物語。出会いやトラブルを経て、明るく生きているが、それぞれに心には悩みや問題を抱えている。「僕の役、バーナデットは性転換していて、ほかの2人とも世代が離れているんです。だから、どこか取り残された感がある。体はしなやかに動かないし感覚も違うし。半面、誇り高い。苦労して時代と闘って生きてきたんだね」(陣内・以下同)演出は宮本亜門。宮本は、陣内が初めて出演した舞台『リトルショップ・オブ・ホラーズ』(’84年)で振付を担当したという縁がある。「亜門さんはね、僕をキャスティングするわりには歌を評価してくれてないのかな。『できるだけ歌わないで。歌詞をセリフにしちゃっていいから』って。これ、演出家がうまく歌えない役者によく言うことなの(笑)」度肝を抜くど派手なメークや衣装が似合うよう、去年の夏から体重を10キロ落としたそうだ。「カットフルーツでファスティング(断食)的にね。この作品、22回もの衣装替えが大変!衣装といえば、ユナクくんなんか乳首が見えただけで客席のファンはキャ~!となるから、ついアドリブで『乳首を出せばいいというものじゃないのよ』とか言っちゃったりして。それがまたウケてしまって(笑)」どうやらこの調子でキュートなアドリブの嵐を巻き起こすようだ。「セリフをかむと『じゃ、もう1回言うわよ』って。失敗しても笑ってごまかしちゃう(笑)」そんな本作から見えてきたものは……。「女装すると解放されるんですよ。タガが外れて大胆になって、言いたいことをズケズケ言えるようになる。“こうあらねばならない”という縛りがなくなるんですよね。でも、自分は女性らしくあろうとするほどベースは男性的でないと。男と女は表裏一体だと感じます」
2019年02月25日誰もが一度は経験してみたいものといえば、身を焦がすような命懸けの恋。そこでご紹介するのは、時代や周りに流されることなく自分を貫いた実在の女性を描いた話題作『金子文子と朴烈(パクヨル)』です。今回は、主人公の金子文子を演じたこちらのかたにお話を伺ってきました。それは……。写真・大内香織(チェ・ヒソ)韓国で注目を集めている女優チェ・ヒソさん!【映画、ときどき私】 vol. 213チェ・ヒソさんは本作の熱演が高く評価され、“韓国のアカデミー賞” といわれる大鐘映画祭では新人女優賞と主演女優賞をW受賞。そのほかにもいくつもの賞に輝き、一躍人気女優のひとりとなりました。そんななか、この役を演じるうえで学んだことや “第二の故郷” である日本への思いを語ってもらいました。韓国人と日本人には一番観て欲しい―本作は1923年の東京を舞台に金子文子と朝鮮人アナキストの朴烈との出会いが中心に描かれていますが、日本での公開に対してはどのような心境ですか?チェさん私がこの作品を一番観て欲しいと思っていたのは、韓国人と日本人だったので、公開が決まったときは本当にうれしかったです。国境を越え、同志として愛し合い、戦った人たちが100年近くも前にいたということは韓国でも日本でもあまり知られていないと思うので、ぜひご覧いただきたいです。―チェさんは小学校2年生から5年間日本に住んでいたことがあり、もともと日本語は得意だということですが、とはいえ今回は特殊なセリフもあり、難しかったのではないでしょうか?チェさんそうですね。普段とは違う日本語で演技をするというのは、やはり大変なことではありました。でも、撮影前に資料などを全部読んだので、そのおかげでレベルは上がったと思います。特に裁判記録とかは本当に難しくて、1枚読むのに2時間かかるほどでした。―では、チェさんから見た文子の魅力を教えてください。チェさん脚本ができる前にイ・ジュンイク監督から文子の手記を読んで欲しいと言われました。読み始めたら、最後まで一気に読んでしまったくらい、とにかく力強い内容。でも、それ以上に20歳という若さでこんなにも自主的に自分の人生を生きようとした女性がいたというのは、本当にすごいことだと感じました。「文子はアジアでは初めてのフェミニストじゃないかな」と監督も言っていましたが、とにかく素晴らしい女性なので、私の人生における観点にもかなり影響を与えていると思います。実際、「自分の主張を曲げてはいけないんだ」と思うようになりました。文子を演じる前の私と演じたあとの私とでは、まったく違う人間になったと感じています。―同じ女性として共感する部分もありましたか?チェさん彼女の主張のなかでも素晴らしいのは、男性も女性も区別をしないで、人間は人間であり、誰もが平等な権利を享受すべきだということ。若い女性でそういう考えを持てることは本当にすごいことですよね。私も自己主張は強いほうだとは思いますが、彼女のように自立して生きていきたいと思ったので、共感以上に学ぶことが多かったです。難しい役を演じ切って自信になった―では、役作りをするうえでこだわった点があれば、教えてください。チェさん文子は一見かなりタフな女性に見られがちですが、明るくて無邪気な一面もあったと思われたので、そういう部分をいかに表情やしぐさで出せるかという点を監督と相談しながら、いろいろと試していきました。ただ強い女性を演じるのではなく、表面的な部分と内面的な部分のバランスをどのように表現すればいいのか、すごく悩んだところですね。―この作品ではさまざまな賞を獲得し、女優としてのキャリアにおいても大きな作品になったと思いますが、演じるうえで影響を与えたことは?チェさんこれまで、最初から最後まで物語を主導するような役というのはあまりなく、こんなにも主体性が強い役どころもなかったので非常に難しかったです。でも、それをやり切ったことで、いまではすごく自信にはなったと思います。―今回は日本人の女性を演じるのもチャレンジだったと思いますが、日本人の女性の印象を教えてください。チェさんまず、日本人の女性は、文子みたいに大声は出さないですよね(笑)。いつもとてもやさしくて、行儀がよくて、姿勢がいいという印象があります。よく日本の映画を観ていますが、文子みたいに叫んだり、悪い言葉を口にしたりするようなキャラクターはめずらしいと思います。―日本の作品もよくご覧になりますか?チェさん私は安藤サクラさんが大好きで作品を全部観ています。安藤さんは固定概念にとらわれない日本人女性を演じていらっしゃっているので、韓国でも人気が高い女優さんなんです。あとは、是枝裕和監督の作品もすべて映画館で観ていますし、小津安二郎監督のようなクラシックな作品も好きですね。日本にはほかにも素晴らしい監督さんや俳優さんがとても多いので、いつかみなさんとお仕事してみたいというのがこれからの夢のひとつです。文子と自分の恋愛観で違うところとは?―本作は歴史的な事実を描いただけの作品ではなく、文子と朴烈とのラブストーリーでもあると思いますが、彼らの恋愛をどう感じましたか?チェさんとても若い2人ですが、とても成熟した愛。ただのひと目惚れから始まったように見えますが、牢獄のなかでもお互いに信頼し合い、最後まで一緒に戦い続けるので、男女としても、同志としても非常にステキな愛の姿だと感じました。この作品は歴史的人物のヒーローの映画でもありますが、第一にラブストーリーでもあるので、特に女性のみなさんはより共感していただけると思います。なかでも、文子が「彼の欠点を全部超えて彼を愛する」という言葉を大勢の人の前で言うところは実際に文子が裁判所で語った部分ですが、すごくステキな場面だと思いました。―ご自身の恋愛観と比べるといかがですか?チェさん実は、私は自分から告白したことがないんです。というのも、自信がないのと、傷つくのが怖くて勇気がでないんですよね。そういう意味では、積極的な文子とは全然違いますね(笑)。―文子は朴烈の書いた詩を読んだ瞬間に恋に落ちますが、そういう経験はありますか?チェさん実は私も文章や詩を書くのが好きなので、詩を読んでひと目惚れするというのはすごいなと思うと同時に共感もしました。私も外見で好きになっても内面的に通じ合えないと長く続かないんですよね。とはいえ、私の人生で文子みたいなことは起きていませんが……(笑)。―では、男性を見るときに大切にしていることは?チェさんまずは信頼できる人かどうかですね。それはお互いの約束を守れるかということだけでなく、仕事関係や周囲の人々にとっても信頼できる人と思われることが一番大事なところだと思いますし、あとは共通点のある人がいいですね。たとえば、映画やスポーツが全然好きじゃない人とは合わないかなと思うので。―やっぱり好きなものを共有できるのはいいですよね。チェさんそうですね。あと一番重要なのは、好きな食べ物や味の好みが同じこと。東京に来る時はいつも美味しいお店をネット検索しているくらいなんですよ。日本は懐かしくて、親しみを感じる国―日本食もお好きなんですね。ちなみに、日本にはどのくらいの頻度で来られていますか?チェさん大学に入ってからも、バイトで稼いだお金で東京、大阪、京都を訪れたり、母と一緒に福岡の温泉にも行ったりしたので、数えきれないくらい来ていますね。最低でも1年に1回、多いときは2~3回は遊びにきているんですよ。―そんなに日本に来てくださるのはうれしいことですが、どんなところが好きですか?チェさん幼いころに住んでいたこともあり、日本語を聞いたり、日本語の看板を見たり、食事の匂いをかいだりするとすごく懐かしい気持ちになるんです。そういったものに惹かれて日本に来ているところはありますが、私にとって日本は親しみを感じる国だと思います。―それでは最後に、同世代の女性読者へ向けてメッセージをお願いします。チェさん韓国でも「女の子はこういうことを言うべきだ」とか、「こういう服を着るべきだ」といった「女性だったら〇〇すべき」みたいな考え方がいまだにあります。でも、文子を見てもらえばわかるように、彼女は誰の言葉にも振り回されることなく、自分の意志で自分の人生を作っていった人。なので、彼女のことを知ったら、「私ももっと自分で決めて行動しなきゃ」と思うきっかけになるはずです。それだけでなく、とても明るくて魅力的なキャラクターでもあるので、ぜひみなさんにこの作品をご覧になっていただきたいと思います。インタビューを終えてみて……。日本の雑誌のなかでもananはお気に入りで、日本に来る前にはいつも韓国で読んでトレンドをチェックしているというチェ・ヒソさん。とにかく日本語が堪能で驚きでしたが、勉強家な一面はぜひ見習いたいところです。知的な雰囲気がありつつも、親しみやすいチャーミングな笑顔がステキなチェさんが、日本の作品にも出演されるのを楽しみにしたいと思います。自分にしか生きられない人生がある!何かと人の目を気にしたり、周囲に流されたりしがちな現代ではあるものの、本当に自分が求めているものは、自分にしか決められないもの。激動の時代のなかでも、最後まで自分を貫いた金子文子の生き様は、女性の持つ強さを教えてくれるはずです。ストーリー1923年、社会主義者たちが集う東京のおでん屋で働く金子文子は、ある日「犬ころ」という詩に心を奪われ、作者である朝鮮人アナキストの朴烈に出会う。ふたりはすぐに同志として、恋人として生きることを決めるのだった。ところが、そのあとに関東大震災が日本列島を襲い、過酷な運命が文子と朴烈の前に立ちはだかることに……。胸が熱くなる予告編はこちら!作品情報『金子文子と朴烈』2月16日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開配給:太秦©2017, CINEWORLD & MEGABOX JOONGANG PLUS M , ALL RIGHTS RESERVED
2019年02月15日串田和美が演出を手掛け、安蘭けいが出演するベルトルト・ブレヒトの喜劇『マン イスト マン』が1月26日に開幕した。【チケット情報はこちら】物語は、英軍隊の機関銃隊のおバカな4人組が寺院で賽銭泥棒をはたらき、ひとりが逃げ遅れてしまうことから始まる。鬼軍曹にひとり足りないことがバレないよう何とかしたい3人は、酒屋のおかみにキュウリを運ばされるお人よしの男に助けを頼み――。人間とは何か。笑いとユーモアの中でアイデンティティをめぐるストーリーだ。S席はテーブルがあって料理付き、A席も座席で飲食ができる“キャバレーシアター”。客席には振るとパチパチ拍手音が鳴る“パタパタ”が配られ、開演までコック姿のキャストたちが“ブーイング笛”を販売。上演中に拍手もブーイングもできるカジュアルな雰囲気だ。安蘭と串田が登場して挨拶すると、物語はスタート。作品は“S席の料理を作ったコックたちによるお芝居”として始まり、登場人物の名前も料理にちなんだ名前に変更されている。客席からは舞台袖も丸見え。コック達が次のシーンの準備をしているのも、舞台上の芝居を見てブーイング笛を鳴らしている(!)のも見え、「難解」と言われるブレヒト作品への構えが自然と取り払われていく。出演者は、おかみベグビック役の安蘭、鬼軍曹役の串田、そしてコックとして物語の登場人物を演じる武居卓や小椋毅、海老澤健次らオーディションで選ばれた12人のメンバー。前半ではコックたちの場面と『マン イスト マン』の物語を行き来しながら彼らが案内役として客席を引っ張るが、S席の観客が食事を終えた頃には物語は一直線に進み始める。劇中には歌やダンスがちりばめられ、『リトル・ナイト・ミュージック』(2018年4~5月)ぶりとなる安蘭の歌や、串田のクラリネット演奏も見どころ。音楽・ピアノ演奏を担当する元ボ・ガンボスのDr.kyOnによる歌にも注目だ。ここでしか体験できないものがたくさん詰まった本作。ブレヒト作品に初挑戦したい人にもオススメしたい。KAAT 神奈川芸術劇場とまつもと市民芸術館による初の共同プロデュース作品『マンイストマン』は、2月3日(日)まで神奈川・KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオで上演中。その後、2月8日(金)から13日(水)まで長野・信毎メディアガーデン1Fホールにて上演。取材・文:中川實穗
2019年01月28日「すでにさまざまなところで、東京五輪に向けたドラマが始まっています。それを見つめることが、この仕事の醍醐味。時間の許す限り、各地に足を運んで撮影したい」2020年東京五輪公式映画の監督に選ばれた河瀬直美さん(49・※瀬は旧字体)は、10月23日の就任記者会見で、こう抱負を述べた。とことんリアリティを追求する。それが河瀬さんの作風だ。ドキュメンタリー作品だけでなく、劇映画でもその姿勢は徹底している。河瀬さんは、カンヌに愛された監督でもある。’97年、『萌の朱雀』で、カンヌ国際映画祭カメラ・ドール(新人監督賞)を、史上最年少の27歳で受賞。’07年には『殯の森』でグランプリ(審査員特別大賞)、’09年は、映画祭に貢献した監督に贈られる「黄金の馬車賞」、’17年の『光』は、エキュメニカル審査員賞を受賞している。’69年5月30日、奈良市で生まれた河瀬さんは、母親の愛を知らずに育った。「私が母のおなかにいるころ、両親は別居し、生後1歳のときに離婚が成立。私は、母方の祖父の姉夫婦に当たる養父母に預けられ、彼らに育てられました」養父母の愛を一身に受けて育った河瀬さんにとって、実母は「たまに遊びに来る人」「参観日と運動会だけ来る人」だった。とはいえ、高学年にもなれば、自分の家庭環境が特殊だということに気づく。中2で養父が亡くなると、寂しさも手伝って、心が不安定になりがちだった。「当時の中学では、生徒が荒れていて、窓ガラスが割れたりしていました。私も悪い子たちと遊んだり、校則を破ったり(笑)」そんな彼女を心配した先生が勧めてくれたのが、バスケ部だ。長身の彼女は当時で身長164センチ。河瀬さんはバスケに夢中になった。「シュートを入れたときの高揚感。それに、チームでつながることの大切さを教わりました」誰かと、何かとつながることが、生きていくためのよりどころだった。バスケが彼女を救ってくれた。高校時代、県代表として国体に出場した最後の試合でのこと。河瀬さんは突然、湧き上がった思いに翻弄された。「時間が止められない。そう思ったら、えもいわれぬ涙が出てきたんです」河瀬さんは直感の人だ。バスケでの大学の推薦や実業団への誘いもあったが、この一瞬の思いから、全く別の道を模索し始める。「私は現役にこだわった。バスケは、引退後の人生のほうが長い。だったら、生涯現役でいられることを目指したくなりました」当初は建築に興味を持ったが、大学進学は「贅沢なこと」と思った。一刻も早く卒業し、養母を養わねばと、大阪写真専門学校(現ビジュアルアーツ専門学校)に入学。「でも、映画監督の名前すら知らなくてね。『タランティーノって誰?』やったし、小津安二郎もずっと『しょうづ・あんじろう』って読んでたんですよ、私(苦笑)」映画に関する基礎知識は皆無。それが、逆に既成の枠を破る作家性へとつながっていく。授業で8ミリ映写機を扱ったとき、衝撃が走った。「撮ったものが、後で再現できる。これってタイムマシンだ!バスケでは止められなかった時間が映画なら永遠にここにとどめられる。世界を美しい方向に再構築できるんだ!」映画は、河瀬さんの最強の武器になった。専門学校卒業後、一度は制作会社に就職したが、講師として母校に戻り、映画製作を始めている。「『自分にしか撮れないもの』。それが何かをずっと考えていて、出てきた答えが会ったことのない『父親捜し』でした。私は映画を撮るために、父を捜したんです(苦笑)」河瀬さんは、記憶すらない父の足跡をたどる旅に出た。カメラを回し、父に関する証言を取材して歩き、ついには実の父親と再会する。それがドキュメンタリー『につつまれて』(’92年)になった。作品は評価され、周囲の目が一気に変わった。映画監督・河瀬直美の誕生だ。「この作品を完成させたことで、映画を死ぬまで続けようと決心できました」’96年、専門学校を退職し、奈良に事務所「組画」を設立。翌年には、奈良・西吉野の自然をバックに撮った『萌の朱雀』で、カンヌで一躍、時の人となった。最初の結婚は’97年。夫は『萌の朱雀』のプロデューサーを務めた人だったが、しだいに夫との間に心のすれ違いが生じていき、結婚生活は3年足らずで破綻した。’04年、当時のパートナーとのあいだに、光祈(※祈の字体は、示へんに斤)くんが誕生。畳の部屋で、映画スタッフなど、仲間たちに囲まれながらの自宅出産だった。90歳の養母が生まれたての息子の手を握ってほほ笑んでいる姿を見て幸せだった。「出産は『命』を分けるということなのだ」と実感していた。ある夜のこと、オムツ替えや授乳でてんてこ舞いしながら、夜泣きする子どもを抱いて、河瀬さんはオルゴールを鳴らした。すると、大泣きしていた光祈くんが泣きやんで、ニコッと笑った。強い衝撃が河瀬さんを襲った。「生まれて間もない命が、言葉を持つ以前に投げかけてくれたメッセージ。『つながってる』と、思いました。そのとき初めて、私がずっと求めてきた『つながる』がここにあると思えたんです」すやすや眠る光祈くんを見つめて、河瀬さんはそっとつぶやいた。「私のところに来てくれて、本当にありがとう」。光祈くんが2歳になるまで、河瀬さんは育児中心の生活に専念する。「子育てを通して、逆にすごく世の中が見えた。町や公園、自然のなかを子どもと歩いて回ります。そこにはいろんなものが存在し、生きている。生を営んでいるんです。この感覚をこそ表現の世界に昇華できるといいなと」河瀬さんのなかに、生きる力と創作への活力がほとばしった。光祈くん誕生の映像は、その後、『垂乳女』(’06年)で描かれ、フランスではテレビ放送もされた。命と命のつながりを描くドキュメンタリー作品として昇華させたのだ。育休を終え、現場に復帰したころには、90代になった養母の認知症が進み始めていた。河瀬さんは夜明け前に起床。養母と長男をデイサービスと保育園に送り届けてから9~17時のあいだに撮影や執筆にいそしんだ。「可能なときは仕事場にも子どもを連れていき、スタッフにオムツを替えてもらったり、みんなに育ててもらいました。認知症の養母をデイサービスのシーンの出演者にして、現場に連れていくなど工夫をしたりもしました。2歳と92歳を抱えていると、いつ何が起こるかわからない。それでも創作意欲は湧き上がってくる。できる限りの介護サービスと第三者の手を借りながら、創り続けました」認知症患者と看護師の交流を描いて、カンヌでグランプリを取った『殯の森』(’07年)は、その時期の作品だ。仲間を増やし、仲間とつながることで、子育てと介護に追われながらも、チームワークで、撮影に集中できる環境を作っていった。つかず離れずの交流があった実母は、このころから疎遠になり、連絡を取り合うこともなくなった。実父は、再会したときすでに新しい家族がいて、’00年ごろ、他界したことだけ知らされていた。頼れる肉親はどこにもいない状況で、河瀬さんを支えてくれたのは、映画の仲間たちだ。「だから、河瀬組のスタッフも、自分の会社『組画』のメンバーも、私にとっては家族なんです」養母は’12年2月10日、97歳で他界。大往生だった。いまはパートナーと息子の3人で暮らしている。「家族の形は血のつながりだけで語れるものでないことは自身の生い立ちを通して実感しています。いまのパートナーは学生時代からの知り合いで、なんでも言い合えて支え合える。それがかけがえのない“つながり”であり、家族にあるべきものだと思うんです。子どもの学校行事や、節目節目に一緒にいてくれるのもありがたいですね」河瀬さんは常につながりを求めて生き、映像で表現してきた。人と自然、人と人、命と命――。そのつながりこそが、彼女の生きる力の源泉だ。「東京五輪の公式映画の監督という仕事は、私の使命です。スポーツに育てられた人間が、スポーツに帰ってきた。つながっていたんだという幸福な思いが、私にはあります。スポーツを通して人々がつながり合う祭典の記録映画をこの世に残す。これは、映画の神様が私に与えてくれた使命なんです」
2019年01月09日第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された、アジアを代表する名匠ホン・サンス監督の最新作『それから』。主演をつとめるキム・ミニは、R18指定作品『お嬢さん』(パク・チャヌク監督)の妖しくミステリアスなお嬢さん役の大胆な演技で国際的に評価を高めた。現在ではホン・サンスの新たなるミューズとして、2015年の『正しい日 間違えた日』以降、4作品で主演を務めている。そんな彼女が監督のすごさを語るインタビューが、シネマカフェに到着した。いま世界から最も熱い視線を注がれる名監督×名女優コンビキム・ミニとホン・サンス監督の初タッグ作『正しい日 間違えた日』はロカルノ国際映画祭グランプリを受賞、続く『夜の浜辺でひとり』では韓国俳優史上初となるベルリン国際映画祭女優賞に輝く快挙を達成。また、『クレアのカメラ』ではフランスの大女優イザベル・ユペールとの共演を果たしており、いまキム・ミニには世界中から熱い視線が送られている。ホン・サンスとの4度目のタッグとなる最新作『それから』は、妻に浮気を疑われ、窮地に立たされている社長ボンワン(クォン・ヘヒョ)と、彼が経営する出版社に勤めることになったアルム(キム・ミニ)が織りなすヒューマンドラマ。出勤初日早々、社長の妻が会社を訪れ、アルムを夫の不倫相手と決めつけ騒ぎ立てる。同じ日の夜、彼女の前任者であり、社長の愛人であった女がひょっこり戻ってきたことで、事態は思わぬ方向へ…。カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、かつてロベルト・ロッセリーニとイングリット・バーグマン、ジャン=リュック・ゴダールとアンナ・カリーナ、小津安二郎と原節子といった名監督と名女優のコンビが生み出してきた名作に連なる作品として喝采を浴びた。キム・ミニ「本当に面白い」、予測不能の撮影を明かすキム・ミニは、「この映画は前作『夜の浜辺でひとり』とは全く違います。『それから』でのわたしは、ストーリーから一歩引いた観察者の役割です。一番はじめにストーリーを聞かされたとき、私の演じるアルムはそんなに重要な人物じゃなさそう、これって本当に主役といえるのかしら、と思いました」と言う。「ホン・サンス監督はシナリオをちゃんと書きません。ストーリーを聞かされてもこれから話がどう変わってゆくか予測もつかないし、そもそも監督にだって分かっていないんです。主役なのか、そうでないのかってことすら結局分からない。実は、アルムという人物にもっと重要性を持たせようと監督が決めたのは撮影がある程度進んでからなんです。彼がすごいのはそういうところなんですね」と明かすキム・ミニ。「最後のシーンでアルムが会社に戻って、ボンワン社長とのとあるやりとりですべてがひっくりかえる、まさにどんでん返しです。最後になって過去と現在が同時に立ち現われてくる。こういうところが本当に面白いんですよ」。シナリオを書かないホン・サンス監督と “あうん”の呼吸ホン・サンス監督が『それから』を撮るきっかけとなったのは、“家に帰りたくない男”の存在を知ったことから。昨今、日本でもまっすぐ家に帰らない“フラリーマン”が話題となっているが、本作の舞台に使った極小出版社の主人が「家から逃れるため」に早朝4時半に事務所に出勤し、深夜まで帰らない、という生活に監督が衝撃を受けたことからスタートしているという。監督といえば、場所と俳優だけ決めて、撮影する日の朝までシナリオを書かないことで有名。とはいえ、主演女優としてこの物語の真実を知っていたのか、それとも最後の瞬間まで、監督は主演女優にも映画の全容を隠していたのか、気になるところ。すると、キム・ミニからは「わたしが彼に質問しても決してはっきりと答えてくれません。いつも『どうなるかよく分からないな』と返ってくるだけ。彼自身が知らない以上、わたしが知っているわけはありません」と超然とした回答が…。毎朝、監督からはその日の撮影分のシナリオを渡されて、シーンについて少し話すだけで撮影に入るそうだが、『それから』にはワンシーン・ワンカットで撮られた長回しのシーンも多々。とくに、キム・ミニ演じるアルムとクォン・ヘヒョ演じるボンワン社長が、信仰や人生観について語り合う場面の撮影には苦労をしたらしい。「あの日、シナリオを受け取ったのは朝の10時。約5分間のワンシーン・ワンカットになる予定でした」とキム・ミニ。「陽が差している時間は限られていたので、結局そのシーンは2テイクしか撮れませんでした。私は監督に、演技に満足いかないのでもう一度やらせてほしいと頼んだのですが、『いや、これでいい』と言われました。翌日もう1回チャンスをくれることもあるのですが、このシーンに関してはダメでした。結局その2つのテイクのうち最初のものが選ばれました」と明かしている。本作の見どころ、たった2テイク!ワンカット長回しシーンの裏側は…しかし、この場面は、まさかそんな即興的に撮られたとは思えないほど完成度の高いワンシーンであり、『それから』の大きな見どころの1つともなっている。実生活でも恋人同士であることを公言しているキム・ミニとホン・サンス監督のこと、プライベートな会話が基になっているのではと邪推してしまうが…、キム・ミニは「こんな会話を交わしたことなど全くありません」ときっぱり。では、どうして、ごく自然な会話劇となったのか、その答えは監督の演出にあったようだ。「朝の10時にシナリオを渡されて『じゃあこのシーンについてちょっと話をしよう』ということになりました。日常の会話で話すような事柄ではないですから、当然覚えるのに相当苦労しました。信仰や神について監督はたっぷり1時間くらいかけて自分の考えを説明してくれました。内容を理解していないとセリフだって覚えられないですから」。これまでも優れたタッグ作を世に送りだしてきた2人だが、こうしたホン・サンス監督の丁寧な演出の積み重ねで、キム・ミニとの信頼関係は確固たるものとなったのだろう。公私にわたるミューズのキム・ミニを得た恋愛映画の名手は、最新作『それから』では人間ドラマの名手へと昇華したとの評価が高まっている。本作は、まさに監督と女優の幸せなコラボレーションから生まれた名作といえそうだ。『それから』は6月9日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:それから(2018) 2018年6月9日よりヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて順次公開© 2017 JEONWONSA FILM CO. ALL RIGHTS RESERVED.
2018年06月04日最近、“現役バリバリ”で活躍している80歳以上の女性が目立ちます。「人生100年時代」ともいわれる今、年を重ねるほどに輝く秘訣は何なのか。素敵な大先輩の言葉に、大きなヒントがありました。“生涯現役”を実現するための50代の過ごし方ーー。 「私の50代は、離婚騒動のまっ最中。相手ともめて4年もたっていたので、心がめげて生きる望みも失っていた私は、いつ、どうやって死んでしまおうか、そんなことばかり考えていたんです」 そう語るのは、女優・有馬稲子さん。宝塚から映画界に進み、小津安二郎、今井正ら名匠の作品に出演。舞台女優としても活躍し、近年は朗読劇で新境地を披露する有馬さんだが、「いちばん激動だった時代は50代のときかもしれない」と当時を振り返る。 2度目の結婚生活は安定した家庭を築こうと、仕事をセーブした時期もあったが、幸せは続かず、夫の事業が傾くと、夫婦の間に軋みが生じた。 「男らしい人だと思っていましたが、仕事がうまくいかずにお酒に溺れ、ついには酒乱になってしまって。私が家にいないというだけで機嫌が悪くなり、暴言を浴びせられる毎日は暗澹たるものでした」(有馬さん・以下同) そんなときに運命の仕事が舞い込む。各地をさすらう盲目の瞽女(ごぜ)を描いた舞台『はなれ瞽女おりん』は、その後、有馬さんのライフワークとなっていく。 「それまでの女優としての評価に、自分のなかで納得がいっておらず、『代表作がほしい』と思っていたときに巡り合った名作。この作品にすがってみようかと思ったんです」 それでも、最初に名演出家・木村光一氏から依頼があったときには迷いもあったという有馬さん。 「『瞽女の役ですから三味線を弾くことになるんですよね?』と言ったら木村さんは『そうです』と。『断ったらどうなさるの?』と尋ねたら、『女優さんはいくらでもいますから、君じゃなくたって』と。そのひと言に刺激されて引き受けたんです」 ほぼ初心者だった三味線の猛稽古を開始すると、集中しすぎて、時に近隣から苦情が来るほどだった。のちに60代で運転免許を取得するなど、新たなチャレンジをいとわない有馬さんだが、それもこの経験から来る自信ゆえだ。 結局、’80年4月に始まった舞台『はなれ瞽女おりん』は、’04年までの24年間に684回を上演し、名実ともに有馬さんの代表作となった。 「この役をいただいた勲章でしょうね。膝が悲鳴を上げなければもっとおりんさんを続けられたのにと思います」 さらにこのころは、ほかにも多くの舞台出演をこなす超多忙な日々。それほどまでにがむしゃらに働いたのは、夫の保証人として背負った借金を返済するためでもあった。離婚の話し合いは5年に及び、莫大な借金を有馬さんが肩代わりすることでついに成立。返済のため田園調布の邸宅を手放すなど、私生活は大変だったというが、それでも舞台には一度として穴をあけることはなかったという。 「代役は立てていないのですから。あるとき生ガキに当たってひどい腹痛になったときも1日2回公演の舞台に出ました。死にそうでしたが、それくらいで台詞をとちったりはしません」 かつて刺激を受けた「女優はいくらでもいる」という言葉。それに対し、結果を出すことで「代役はいない」ということを証明した50代。その自信と誇りを胸に、いまも精力的に仕事をこなす有馬さんは、毎日6,000歩を歩くなど、体力作りに余念がない。 「出番がある限り休めないし、健康でいなければならない。それもこの仕事が好きだから続けられるのです」
2018年05月21日「トイレでもお風呂でも、つねに台本を読んでいますね。再発見や蓄えのためにジャンルを問わず読書も。『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』や『こころ』『行人』はいつも結局は再トライしても途中で投げ出しますけど」 そう語るのは、舞台『シラノ・ド・ベルジュラック』で主演を務める吉田鋼太郎(59)。今回、フランス古典の名作に挑む。 本作は不憫な三角関係を描く純愛物語。剣豪で詩人のシラノは、美人のロクサーヌに思いを寄せるも、醜い容姿を気にして告白できない。一方、彼女は誠実な美男子・クリスチャンに恋心を抱く。彼も彼女に気持ちが動くが、口下手で進展しない。そこで、シラノは彼に代わってロクサーヌに愛の詩を贈ることに……。 男たちの心をつかむ美しいロクサーヌ役は、黒木瞳。吉田自ら推薦した。 「黒木さんは大好きな女優さんで、映画『嘘を愛する女』では、同じシーンには出ていないんですけど、今治市のロケを見に行きました。そして、もう1人僕が推薦した演出家の鈴木裕美さん。彼女は微に入り細に入り演出がわかりやすいんですよ。体を鍛えて節制して、立ち回りとせりふ、役者に要求される2つの要素を見事にやり遂げなければと思います」 ’16年に亡くなった蜷川幸雄演出の舞台『ムサシ』の上海公演を成功のうちに終え、休む暇なく本作の稽古に入った吉田。オフの日はどのように過ごしているのだろう。 「レンタルビデオ店に出向くことなく、Netflixで黒澤明監督や小津安二郎監督の映画を見ています。最近は韓国映画も面白い。『ヒマラヤ地上8,000メートルの絆』には気合入ってましたよ」 そんな彼も、来年で60歳に。今年は50代最後の年だ。 「来年は還暦ですよ。休ませてくれぇ、もうおじいちゃんなんだから(笑)。健康のために生後9カ月の犬の散歩を朝晩の日課にしているんです」 “鋼”に似合わず弱気な発言なのだった。
2018年05月21日シンプルで質のいいものと向き合い続けてきた〔無印良品〕。そのブックセレクト〔MUJIBOOKS〕から、新たに文庫本シリーズが発売されました。〔無印良品〕らしく、インテリアにも馴染むシンプルなデザインの文庫本たちは、いったいどのようなコンセプトや特徴を持っているのでしょう?「ずっといい言葉と。」『茨木のり子』(著者:茨木のり子発行元:株式会社良品計画価格:税抜500円)〔無印良品〕が展開する〔MUJIBOOKS〕は、「ずっといい言葉と」をコンセプトに掲げた本のセレクトショップ。創業以来、モノ本来のすがたを、「素」となる少しの言葉で伝えてきた〔無印良品〕。今回誕生した〔MUJIBOOKS〕の文庫本たちには、そんな〔無印良品〕が古今東西の書物から集めた「素の言葉」「ずっといい言葉」が詰まっています。「人と物」をつなぐ本たち左から順に、●『柳 宗悦』(著者:柳 宗悦発行元:株式会社良品計画価格:税抜500円)●『花森安治』(著者:花森安治発行元:株式会社良品計画価格:税抜500円)●『小津安二郎』(著者:小津安二郎発行元:株式会社良品計画価格:税抜500円)〔MUJIBOOKS〕の文庫本では、職業のジャンルを問わず「くらしを見つめた文筆家」を取り上げ、複数の短編や写真などを集めて1人1冊の仕立てに編集しています。2018年2月現在、発行されている文庫本は全6冊(『人と物1〜6』)。「人と物」第一弾では「くらしを考える仕事、三者三様」をコンセプトに、『柳宗悦』『花森安治』『小津安二郎』の3タイトルが登場。いずれも、美術評論家、雑誌編集長、映画監督と、それぞれの立場から「くらし」を見つめた人物です。左から順に、●『佐野洋子』(著者:佐野洋子発行元:株式会社良品計画価格:税抜500円)●『茨木のり子』(著者:茨木のり子発行元:株式会社良品計画価格:税抜500円)●『米原万里』(著者:米原万里発行元:株式会社良品計画価格:税抜500円)第二弾は「くらしを味わう言葉、三者三様」がコンセプト。絵とことば、詩やエッセイ、翻訳された言葉など、さまざまな形で言葉と向き合った『佐野洋子』『茨木のり子』『米原万里』の3タイトルとなっています。シンプルなデザイン中には文章だけでなく、本人の写真や系譜、原稿の写真なども数多く掲載されています。〔MUJIBOOKS〕の文庫本は、〔無印良品〕らしいシンプルでおしゃれなデザインが特徴。クリーム色の表紙と、クラフト紙のような素材の帯がやさしい印象です。読み終わったら、インテリアとして飾ることもできます。本棚の中はもちろん、机の上、飾り棚の上など、いろんな場所になじんでくれそうです。〔MUJI BOOKS〕で、本のある毎日を。コンセプトやデザインなど、さまざまな箇所に〔無印良品〕らしさが散りばめられた〔MUJIBOOKS〕の文庫本。読書好きの方も、普段あまり本を読まないという方も、ぜひ一冊手に取ってみてはいかがでしょうか?あなたの暮らしを豊かにしてくれるような、「ずっといい言葉」と出会えるかもしれません。女子にとにかく優しい! 無印良品のアトレ恵比寿西館を徹底リサーチ
2018年03月05日100均のインテリア向けアイテムには、かわいいもの、おしゃれなものも多く出ていますが、「安見えする」「みんなが持っている」なんて理由から、敬遠してしまう方もいますよね。そんな方には、100均アイテムにひと手間かけて、安見えしないオリジナルインテリアを作ってみることをおすすめします。今回は、DIYやお部屋のレイアウトの写真投稿アプリ「Room Clip(ルームクリップ)」で1000人を超えるフォロワーをお持ちのnaopyiさんの、100均DIYで安見えしないインテリアとそのコツをご紹介します。黒板と転写シールで「ほっこりカフェ風」に
2018年01月15日女優・安蘭けいのソロ・コンサート『安蘭けい ドラマティック・コンサート GOLDEN AGE』が12月19日(火)、昼夜2公演限りで新国立劇場 中劇場にて上演される。昨年、渋谷オーチャードホールで開催され、好評を博したコンサートの第2弾だ。「自分の好きな曲を歌って、それを聴いてもらえる喜びは格別。そんな贅沢な時間です」と語る安蘭に、今年を締めくくるコンサートへの思いを聞いた。安蘭けい ドラマティック・コンサート GOLDEN AGE チケット情報「昨年はたった一回きりだったので、やり切った感はありましたけれど、それ以上にもっとやりたい!という思いが沸き上がってきて。今年は昼と夜で2回できるから嬉しいです。やっぱり前回できなかったものに挑戦したいという欲が出てきますよね」昨年は、“愛の讃歌”の副題のもとにシャンソン&ミュージカル・ナンバーで彩られた舞台だったが、今年の“GOLDEN AGE”はすなわちジャズ・エイジと呼ばれた1920~30年代のジャズをフィーチャー。安蘭がビリー・ホリディに扮した2014年の一人芝居『レディ・デイ』からの楽曲「Strange Fruit(奇妙な果実)」など、ジャズ・ナンバーに挑む第1幕とミュージカル・ナンバーを揃えた第2幕で構成される。「ジャズは、演出の原田諒先生が提案してくれました。敷居が高くて手を出しにくいと感じていた世界だけど、いつか歌ってみたいと思っていたので、いい機会だなと。この挑戦を乗り越えれば、きっと得るものは大きいと思うんです」この楽しき挑戦にゲストとして伴走してくれるのは、日本ミュージカル界を支える頼もしい実力派、石川禅と田代万里生のふたりだ。「歌に関しては絶対的な信頼を置いているおふたりです。禅さんと万里生くんがいてくれるからこの曲を選べた、というナンバーをデュエットしますし、3人で歌うのもすごく楽しみ。なかなか聴き応えがあると思いますよ」ミュージカル・ナンバーのリストの中で気になるのは『ジキル&ハイド』からの名曲「時が来た」である。男性主人公が壮大に歌い上げるこの楽曲をどう表現するのか、注目せずにいられない。「最初は禅さん、万里生くんと3人で歌うのはどうかと提案されたんですが、私がひとりで歌いたいと言っちゃった(笑)。以前、姿月あさとさんが歌っているのを聴いて、とても歌い甲斐がありそうだなと思ったんですよね。そして私の“持ち歌”といった感のある楽曲の数々も歌いたいと思います」役を脱ぎ、安蘭けい本人として思い入れのある楽曲に向かう。ファンにとっても贅沢このうえない時間となるのは間違いない。「好きな歌をたくさん歌える幸せに浸って、すごく楽しんでいる私の姿を観に来てください(笑)。お客様にもその幸せが届けばいいなと思っています」『安蘭けい ドラマティック・コンサート GOLDEN AGE』は12月19日(火)、新国立劇場 中劇場にて。チケットは現在発売中。取材・文上野紀子
2017年12月11日2016年、石丸幹二主演、ヒロインに安蘭けいを迎え、ガブリエル・バリー潤色・演出の新バージョンとして世界初演されたミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』が今秋、早くも再演される。フランク・ワイルドホーン作曲による愛と勇気の冒険活劇は1997年にブロードゥエイで初演。2008年には小池修一郎演出により宝塚歌劇で初演され、安蘭は当時星組男役トップスターとして主演を務めている。ガブリエル・バリーはこのことを尊重し、本作の初演では彼女のために“見せ場”が設けられたほど。安蘭に再演への思いを聞いた。ミュージカル「スカーレット・ピンパーネル」チケット情報1789年、フランス革命勃発。元貴族らが次々と処刑される恐怖政治が続くなか、イギリス貴族のパーシー(石丸幹二)はフランスの有名女優だった妻マルグリット(安蘭けい)に内緒で仲間と「ピンパーネル団」を結成、無実の人々を救うため暗躍する。フランス政府特命全権大使ショーヴラン(石井一孝)は“元同志”で恋人でもあったマルグリットにピンパーネル団の素性を探って欲しいと囁くのだが……。マルグリット唯一の肉親で最愛の弟アルマン(松下洸平)を巻き込みながら、疑心と愛憎渦巻く物語がスリリングに展開する。夫と元恋人の間で揺れ動く三角関係が肝の話かと思いきや、安蘭マルグリットの見解は少し違うよう。「活動家でもあったマルグリットは信念のある強い女性。ショーヴランに対しては今も昔も同志以上の想いはなかったと思います。一方、パーシーとは出会って6週間のスピード婚だったので一目惚れだったのかな。女性としての気持ちが芽生え、初恋のように弱い部分が出てしまう。また、原作にはパーシーが英国一のお金持ちであったため、セレブ生活に憧れたマルグリットが打算的に結婚したことも描かれていて、なるほどなと。マルグリットも普通の女性なんだなと思ったら、面白く演じられそうだと思いました」初演の際、演出のガブリエルは安蘭が宝塚版初演でパーシーを演じたことを尊重し、「ファンの期待に応えたい」と急遽、マルグリットに歌と立ち回りの場面が追加されたと明かす。「(宝塚版パーシーの劇中歌)『ひとかけらの勇気』は歌詞を変えて数フレーズのみでしたが、私の声であのメロディを聴けてゾワゾワした、と喜びの声も頂きました。終盤の立ち回りはまさかの二刀流!あまりに強くて場面を少し削ったほど。マルグリットの役柄に必要な要素かも悩みましたが、最後はファンサービスの意味も込めて戦い切りました(笑)」。再演では石丸さち子が演出に加わり、ピンパーネル団の顔ぶれも一新される。「繊細に役を深めつつ、石丸(幹二)さんとも相談しながらパワーアップした内容でお届けしたい。前回チケットが入手できなかった方も大勢いらしたので、この機会にぜひご覧頂ければと思います」大阪公演は11月13日(月)から15日(水)まで梅田芸術劇場メインホールにて、東京公演は11月20日(月)から12月5日(火)までTBS赤坂ACTシアターにて上演。チケットは発売中。取材・文:石橋法子
2017年10月10日菅田将暉は「使命感」という言葉でこの305分の映画を世に送り出す意味を語った。大人気の胸キュン恋愛漫画を原作にした、時代の空気に乗って作られたような映画ではない。いや、確かに寺山修司の原作小説に若者は熱狂した。ただし、50年以上も前のことだが…。新宿の街を這いつくばるように生きる、2人の男の姿が前後篇あわせて305分でつづられる。現代の邦画としては規格外。誰に頼まれたわけでもなく、作り手たちのただ「形にしたい」という熱い欲求によって作られた映画。いや、そんな流行りや空気と逆流する作品ほど、時代を色濃く反映するものなのかもしれない。ヤン・イクチュンは、監督、プロデューサーら作り手たち、そして菅田さんの思いを受け止め、異国の現場で躍動した。詩人、劇作家、エッセイストに映画監督、評論家と多彩な活躍で半世紀前の日本のカルチャーアイコンとして絶大な支持を集めた寺山の唯一の長編小説を映画化した『あゝ、荒野』。舞台を東京五輪後の2021年に置き換え、少年院あがりの新次と、吃音と赤面対人恐怖症に悩む床屋の青年・“バリカン”こと建二が新宿の街で孤独を抱え、もがき、葛藤しながら生きていくさまを描き出す。新次とバリカンは、とあるきっかけから共にボクシングに熱中していく。ジムでの練習、プロテスト、そしてデビューと常にボクシングが物語の中心にあるが、菅田さんにとっても、新次を演じる上で、ボクシングの存在が軸となったという。「撮影に入る前から半年ほどトレーニングをさせてもらったんですが、それはすごくデカかったですね。撮影でもクライマックスの試合のシーンは後半のほうで、グラデーションもつけやすかったし、撮影しながらもずっとトレーニングをして、体を鍛えるというのがベースにあった。体に常に緊張感があったし、たくさん食べて、動かないといけない。シャドーボクシングをするシーンでも、もう何時間、シャドーやってんだってくらいずっとやってて、自然とたぎってくるものがありました。ウエイトトレーニングでも(重量が)上がると嬉しくなるんですよ。よく鏡を見ながら筋肉を育てるって聞きますけど、そういう気持ちになったし(笑)、(筋肉が増えることが)モチベーションにもなり『もっと!もっと!』という高ぶりを大事にしていました」。ヤンさんは、ボクシングに加え、吃音交じりの日本語の会話、ハサミを持って散髪の手さばきなど「宿題が山積みで、大変でした(苦笑)」とふり返りつつ、それでも何よりも重視していたのは、そうした細かいテクニックではなく「バリカンとして映画の中に存在するということだった」と語る。「日本語に始まり、体作りにボクシングのテクニック、ハサミを持つ手さばきなど本当にたくさん、準備しないといけませんでした。でも、大事にしたことをひとつ挙げるなら、やはりバリカンとして存在すること。映画を通して新次との感情の触れ合いがありますが、目に見えるイメージだけでなく、表面上は描写されない隠れた気持ちの触れ合いもとても大切でした」。そんなヤンさんとの現場の中で、菅田さんが驚いたと語るのが、劇中でバリカンが描く新次の絵。実はこれらの絵の全てをヤンさん自らが描いているという。「見たままを描いているだけなのかもしれませんが、すごく単純なようで難しいですよね。絵って物事を捉える力、それを表に出して表現する力が必要。あぁ、この人は本当に“作る”人なんだなと、芸術的な感性に感動しました。ヤンさんのタッチがすごくバリカンらしいんです。細いペンで何本も陰影を重ねて作り上げていき、柔らかい表情の中にも新次の陰や闇、母親に捨てられた過去を持つ彼の暗い目が出ていて。(絵を見て)自分はバリカンの目から見て、こういう風に見えているんだということに安心しました」。ヤンさんは菅田さんの表情を捉えようと「ストーカーでした(笑)」と語るほど、菅田さんの表情や動きを追いかけていたという。そんな彼が、羨望さえ感じたというのは、菅田さんの意外な(?)現場での立ち居振る舞いだった…。「普通、人前でズボンを脱ぐとなったらためらいますよね?でも菅田さんは、何のためらいもなくパンツ一丁になってボクシングをしてて、うらやましかったですね(笑)。この人は全てを投げ出せる人なんだなと。新次も人前で何かをすることを気にしない男。でも私の場合、ヤン・イクチュンとしてもバリカンとしても、それをためらわずにできるかというとできない性質(たち)なんですね(苦笑)。人前で、照れたり慎重になってしまう…。菅田さんは、そういう人の視線から解放されていて、うらやましく思っていました」。菅田さんにとっては『二重生活』に続いての岸善幸監督の現場。テストをほとんどせず、役者が自由に動き回るのを手持ちのカメラが追いかけていくというのが岸組のスタイルであり、菅田さんは「ライブ感」という言葉で表現する。「僕も同じこと何回も器用にできるタイプじゃないけど、ヤンさんも本番で全然違うことをしてくる。そこで生まれるものもあるし、笑いも起きる。撮影をふり返って、パッと思い出されるのはそういうシーンなんですよね。2人でシャワー浴びてるだけのシーンだったったり、夜中に起きてボクシングが始まるシーンとかもそう。そこでも僕はパンイチですけど(笑)。それこそ僕が、今回の撮影で勝手に望み、求めていたことでもあったと思います。そういう日々、そういう瞬間にこそ、新次とバリカンになれるから」。繰り返しになるが前後篇合わせて305分。原作は約50年前の小説。なかなか諸手を上げて「ぜひ作りましょう」となる作品でもなければ「大ヒット間違いなし!」などと簡単に言える作品ではない。それでも、菅田さんもヤンさんも喜々としてこの作品に身を投じた。この作品が持つ現代へのメッセージ。現代の若者をも揺り動かす普遍性とはどんなところにあるのだろうか?ヤンさんは、50年前とは比ぶべくもないほど技術が進歩し、あらゆることが簡単で便利になった“いま”こそ、この映画が意味を持つと語る。「私が監督・主演した『息もできない』はもう10年も前の作品ですけど、いまでも日本のみなさんからもいろんなリアクションをいただきます。黒澤明や小津安二郎といった監督の作品も、いまなお多くの人が共感を覚えますよね?いま、私たちは新しいものに疲れているところあるんじゃないでしょうか?文明が発達し、なんでも自動でやってくれて、手を使って何かをする世界じゃなくなっていますが、この作品は身体を使っています。エレベーターやエスカレーターではなく、しっかりと自分の足で歩いてたどり着いたとき、目の前にある扉は、自動ドアじゃなく、手を使って開けなくてはいけない。そういう“生態系”が描かれています。いま、人々がそういうものを恋しく思い始めているのかなと思います。物事がシンプルになればなるほど、楽しさはなくなっていきます。手で何かをする楽しさを人々が取り戻そうとしているのだと思います。自分の力を使ってしっかりと生きている人たちの物語に共感してほしいですね」。菅田さんは、ヤンさんの“生態系”という言葉に深くうなずき、続ける。「もしかしたら、そういう“生態系”が崩れたり、人とのつながりが薄くなっていることにすら気づいてない人もいるかもしれないし、僕も、この世界に入るまではそうでした。いまは、お芝居をする中で時代をさかのぼったり、いろんなこと知ることができています。だからこそ、どこかで“使命感”を持っているんだと思います。僕自身、人と人がぶつかったときじゃないと生まれない何か――熱や美しい瞬間に本当に感動したんです。いまは、なかなかそういうものを目の当たりにする機会自体が少ないですよね。だからこの映画がひとつのきっかけ、奮起する瞬間になってくれたら嬉しいです」。(text:Naoki Kurozu/photo:You Ishii)
2017年10月05日LIMIAのCMにご出演いただいた安めぐみさん。連載2回目では、タレントとしてはもちろん、妻として母としても活躍している安さんのスペシャルインタビューをお届けします。今回は、建てられてからもうすぐ2年になるというご自宅についてお話くださいました。ご主人の東貴博さんのセンス満載という噂のご自宅ですが、さて住み心地やいかに?ご自宅のインテリアは、ご主人こだわりのゴールド使いがポイントに——ご自宅について教えてください。インテリアはどのような感じですか?安めぐみさん(以下、安さん):我が家は、主人の好みがちょっと強いインテリアなのですが(笑)。ポイントにゴールドが使われていたり、シャンデリアがあったり、キラキラしていたりと“王子様系”でしょうか……。——(一同笑)プリンステイスト!でも、ゴールド使いはトレンドでもありますよね。安さん:玄関を入ってすぐ目の前がゴールドの壁なんです。ゴールド自体は運気があがる色ですよね。ただ、私としてはピカピカしすぎかなって……(笑)。インテリア好きの主人にはこだわりがあるようで、ドアは淡いトーンなのに、ドアノブだけ金になっていたりします。お気に入りはリビングの白いソファとキッズソファ——安さんは、どのようなインテリアがお好きですか?安さん:基本、白が好きです。白をベースにした、やさしいナチュラルな感じがいいですね。我が家の外観は真っ白なので、主人的にはそこに私の好みを取り入れてくれているのかも?インテリアに関しては、好きな人の好きなものなので、まぁいいかなと(笑)。——あまり気にしない安さんとこだわりのある東さん。バランスがいいと言えるかもしれませんね。ご自宅で、安さんのお気に入りスペースはどちらですか?安さん:そうですね。リビングのソファは白で、私の好きなクッションを置かせてもらっているのでくつろげる場所です。あと、娘用のキッズソファがあるのですが、産まれる前に主人と一緒に購入したんです。娘がいつか座ることを想像しながら選んだもので、娘もとても気に入ってくれているので、私も大好きなものの一つです。——キッチンはいかがでしょうか。安さん:キッチンは私のテリトリーで、白を基調としたシンプルな空間。リビングを見渡せるようになっています。私が使いやすいようにしてくれたので、とても気に入っています。——ご自宅のインテリアに関して、大切にしているポイントはありますか?安さん:私自身はシンプルが好きですし、スッキリするように気をつけています。主人好みのテイストの強いものもありますし(笑)、バランスを考えて、ゴテゴテとならないように。——今、こんなインテリアにしたいなと想像しているスペースはありますか?安さん:娘の成長にあわせて子ども部屋をかわいくしていきたいですね。今、娘は同じ寝室に寝ているのですが、実は壁紙が薄ムラサキで。さらに小さく王冠柄が入っているんです。——王冠!まさに王子系ですね(笑)。それは輸入壁紙なのか、東さんがどこで入手されたのかが気になります。安さん:私としては、なんでムラサキに王冠?と不思議で(笑)。子ども部屋は娘の好みも取り入れながらかわいらしくしたいですね。でも、主人にも考えがあるかもしれないので相談しながら作っていければと思います。第3回目は、ご自宅の整理整頓について。子育て中のママ、誰しもが悩むあの収納問題について、リアルに語っていただきます。(つづく)【安めぐみ(やすめぐみ)】1981年12月22日生まれ。東京都出身。2011年にお笑い芸人の東貴博さんと結婚。2015年3月、第一子となる女児を出産。タレント・女優・ナレーターとして幅広く活躍中。ペットはうさぎ。最新情報はオフィシャルブログでチェック!●Photographer:KenichiSugimori●Stylist:NatsukoKawabe(KiKiinc.)●HairandMake-up:AKICO●Director:ShunsukeNakagawa(CROSSRING)●Casting:HiroSuzuki(Hybiscus)●Editor:AyaKanaizumi,YukiFujishima(LIMIA)【特集・安めぐみさん】LIMIA(リミア)のCMに出演中。撮影の裏話を聞かせてください!
2017年10月01日日本を代表する女優であり、また、作家としても多くのエッセイや小説を発表している岸惠子。昨年と一昨年は、小説『わりなき恋』を自ら脚色した朗読劇であでやかな姿を見せつけた彼女が、2017年は『スペシャルトークショー夢のあとさき』と題したツアーで全国を回る。公演では貴重な秘蔵写真とエピソードトークで改めて岸の半生が語られるほか、未来へ向けた彼女自身の想いも発信してゆく予定だ。内容について、岸に聞いた。岸惠子 スペシャルトークショー チケット情報映画『君の名は』(1953年)で国民的な女優となった岸は、1956年の日仏合作映画への出演がきっかけで、映画監督イヴ・シァンピと結婚、24歳で渡仏する。その後は離婚を経験しながらも、小津安二郎や市川崑ら名匠の映画に出演を重ね、1980年代に入るとパリの日常を綴った『巴里の空はあかね雲』、中東と南アフリカでの取材経験をもとにした『ベラルーシの林檎』など作家としても活動を開始。2013年には69歳のドキュメンタリー作家の女性と、大企業に勤める58歳の男性との関係を描いた『わりなき恋』を発表、大きな話題を集めた。「どういう内容にしようかと考え始めたら、今このトークショーをやっておくことは、確かに意味のあることかもしれないと思いました」と岸。「横浜大空襲を経験したのは12歳なんですが、家の周りが焦土と化したあのにおいは、今でも鮮明に記憶に残っているほど。そんな具体的なお話も含めて、戦争を知らない世代に伝えられることがあるかもしれないということがひとつ。それに映画の現場での思い出はもちろん、渡仏生活やイスラエルでの取材など、この世代の日本人としては珍しい経験を積んできたという気持ちもあります。私もウソの“芸能ニュース”には苦労しましたし(笑)、そろそろ自分のことを自分の言葉でお伝えするのもいいかなと思って」と岸は話す。一方で、日本人とヨーロッパ人との文化的差異も、常に岸の心を占めてきたテーマだ。「日本人って、人がいいんです。繊細で優しいということなんですけど、ヨーロッパ人から見れば、外交や政治に関して“どうしてそうなるの”と思うこともしばしば」と岸は言う。「ただその性質は私の中にもあるもので、今の“岸惠子”はパリで鍛えられたからこそ出来上がったもの。困難や苦労もいろいろありますが、どうせなら単なる苦労話にはしたくないですね。トークショーでは面白おかしくお話しするつもりですので、気軽に楽しんでいただければ」と話す岸。シリアスな話題も軽やかな筆致で読者を魅了するのが岸の著書の魅力。今回も同様に、お楽しみが満載のステージとなりそうだ。8月9日(水)東京・なかのZERO 大ホール公演を皮切りに全国を巡演。取材・文佐藤さくら
2017年05月24日「ラーメン二郎」が関西初上陸。2017年4月2日(日)、京都・一乗寺に関西1号店をオープンする。ラーメン二郎の人気のワケ東京・三田に本店を構えるごく普通のラーメン屋だったはずの「ラーメン二郎」が、その名を轟かせた理由。それは大迫力のボリュームと不思議と病み付きになる豚骨ベース醤油味のスープだろう。小サイズでも、一般的なラーメンの特盛かそれ以上の量感。そして大サイズに至っては普通のラーメン大盛りの2杯相当の麺・具材が盛られている。豚肉や豚骨にキャベツの芯やニンニクなどを混ぜ、じっくり煮込んで作られるスープは、脂肪分が多く、素材のうま味が濃縮されている。店舗によって、背油をスープと煮込んで白濁させた「乳化系スープ」と濁りの少ない「非乳化系スープ」の2種類に分かれる。また、さすがに食べきれないという人は麺少なめ・麺半分などが調節できる。さらに、アブラ少な目、味薄目、麺かためなどの注文、上に盛られる肉や野菜などのトッピングの量も増減可能。味噌味・塩味、つけ麺や汁なし、生卵や生姜などの有料トッピングなどのメニューも取り扱っている。オープン場所はラーメン激戦区、京都・一乗寺ラーメン二郎 京都店がオープンするのは京都・一乗寺。言わずと知れたラーメンの激戦区だ。「麺屋 極鶏」「天天有」など名店がひしめくその場所に、ラーメン二郎が満を持して参戦する。初日は限定100食、早い者勝ち!オープン初日は整理券配布にて、限定100食を提供する。詳細については今後、公式ツイッターで発表されるとのこと。オープンまで目が離せなさそうだ。【店舗詳細】ラーメン二郎 京都店オープン日時:2017年4月2日(日) 10:00~住所:京都府京都市左京区一乗寺里ノ前町4
2017年02月10日「京都国際映画祭2016」のプログラム発表会見が、9月6日(火)によしもと祇園花月にて行なわれた。司会には「ブラックマヨネーズ」とKBS京都のアナウンサーが務めた。今回で3回目を迎える「京都国際映画祭」は、「京都映画祭」から引き継いだ伝統と志を胸に、“映画もアートもその他も全部”をテーマとした映画祭だ。今年は10月13日(木)から16日(日)の期間で開催。「京都上ル上ル」というキャッチコピーを掲げるという今回は、世界遺産・元離宮二条城でオープニングセレモニーが実施されることも発表された。ここでは本映画祭の参加上映作品、アート作品やアート展示、各プログラムの見どころの紹介などが行われるようだ。「映画部門」の紹介では、オープニングプレミア上映として三船敏郎の波乱万丈な人生と映画作品、そのサムライ精神に迫ったドキュメンタリー映画『MIFUNE:THE LAST SAMURAI』を上映されることが明らかに。また、「ドキュメンタリー」では、佐村河内守氏を取り上げ話題になった映画『FAKE』など、数々のドキュメンタリー作品を手がける森達也監督のドキュメンタリー作品を上映する「森達也特集」が開催。そして、「サイレント映画」では『街の灯』など名作・傑作を上映する「チャンプリン特集」、「ショート・コメディ傑作選」、「おもちゃ映画傑作選」、「小津安二郎」という、多彩な4つのプログラムで展開。これまで放送局と吉本興業で数多くの映画を共同制作してきた「TV DIRECTOR‘S MOVIE」では、ゲストの登壇と共にプレミア上映を実施そのほか盛りだくさんな内容となっているという。ここでゲストとして、木村祐一が登壇。話題をさらった映画「ワレワレハワラワレタイ」の映画監督を務めた木村さんは「吉本所属芸人107組に3年強かけてインタビューを行い、そのなかから何組かを抜粋して上映するというので、インタビューを担当しました。前回も10組、上映させてもらいましたが、今回は一部編集を加え、新しいメンバーの上映もあります。仁鶴師匠からチュートリアルまで、テレビでは語られることのない、笑いに関しての悲喜こもごもを、100~120分のインタビューを編集して上演します。ゲストを呼んでトークショーも行います」と紹介した。本映画祭では、2つの大きな顕彰事業「三船敏郎賞」「牧野省三賞」を始め、映画部門、アート部門、さらに各種のイベント部門と盛りだくさん。日本映画の発展に寄与した映画人に贈られる賞「牧野省三賞」はオープニングセレモニーで、2014年には役所広司も受賞した、国際的な影響を持つ俳優に贈られる「三船敏郎賞」はクロージングセレモニーにて発表される。「京都国際映画祭2016」は10月13日(木)~16日(日)よしもと祇園花月ほかにて開催。(cinemacafe.net)
2016年09月07日