三越伊勢丹のプライベートブランド・ナンバートゥエンティワン(NUMBER TWENTY-ONE)とアーティストの鹿児島睦のコラボレーションシリーズより、ポーター(PORTER)をコラボレーターに迎えたシリーズ第3弾が登場。9月14日より伊勢丹限定で販売されている。今回のコラボレーションでは、リュック(3万5,000円)、ヘルメットバッグM(3万円)、ヘルメットバッグS(2万5,000円)といったポーターの3種類のバッグに、鹿児島睦が特別に描き下ろした3種類の絵柄をプリント。ファイブフラワーズ(グレーの裏地に仕様)、ゼブンシスターズ、トリトハナの3種類の絵柄が、バッグの表面や裏地にそれぞれ施された。取り扱いは、伊勢丹新宿本店本館1階のハンドバッグ/プロモーション、伊勢丹オンラインストアとなっている。
2016年09月14日Huluオリジナルドラマとして独占配信する渡辺麻友と宮脇咲良W主演「CROW’S BLOOD」。本作の挿入歌に、「AKB48」の「BLACK FLOWER」が起用されることがこのほど決定した。ある日、黒い血を流す奇妙な転校生が学園にやって来た。彼女の周りでは次々と奇怪な事件が発生。黒い血の感染が広がっていく…。なぜ、彼女の血は黒いのか?一体、何者なのか?クラスメイトの女子高生が“黒い謎”に迫るホラーサスペンス。本作は「秋元康×ハリウッド×AKB48」、日米共同製作によるもので製作総指揮を務めるのは、映画『ソウ』シリーズ「2」「3」「4」で監督(2では脚本も)を務めたダーレン・リン・バウズマン。ハリウッドならではのスケールとクオリティーが高い独特の映像世界に、「AKB48」のトップメンバーたちが全身全霊を傾けて挑戦する。そんなキャストには、W主演を務める渡辺さんと宮脇さんのほか、柏木由紀、入山杏奈、木崎ゆりあ、向井地美音、横山由依、松井珠理奈らお馴染みメンバーが集結している。そして、今回挿入歌に決定した楽曲は、8月31日(水)にリリースされる48枚目のシングル「LOVE TRIP/しあわせを分けなさい」の劇場盤に収録。「AKB48」総合プロデューサー・ 秋元康が、ドラマのテイストに合わせて歌詞を書き下ろしており、いままでの「AKB48」の楽曲とは雰囲気が異なっているようだ。また、渡辺さんと宮脇さん始め、本ドラマに出演する「AKB48」グループのメンバーが一堂に会し、ボーカルを担当する。この画期的な本楽曲のベースとなったのは、「アメリカのどこかで歌い継がれたような民謡調で、幼い頃の原体験を思い出したような曲」というコンセプト。“恐怖の物語”を巻き起こす、黒い血を流す奇妙な女子高生・戸川真希(宮脇さん)がアメリカのミネソタから転校してきたという設定にもつながっているのだ。そんな楽曲「BLACK FLOWER」が流れる本作のPR映像は、7月末より番組公式ウェブサイトや「Hulu」のSNSで配信される予定。「CROW’S BLOOD」は7月23日(土)よりHuluにて配信開始(全6話)。(cinemacafe.net)
2016年07月16日渡辺麻友&宮脇咲良がW主演を務め、「AKB48」総合プロデューサー・秋元康と『ソウ』シリーズ監督がタッグを組む、「Hulu」オリジナルの日米共同製作ドラマ「CROW’S BLOOD」。このほど、さらなる追加キャストとなる「AKB48」の柏木由紀、入山杏奈、木崎ゆりあ、加藤玲奈、向井地美音、横山由依、「SKE48」松井珠理奈といった豪華な顔ぶれが明らかになった。ある日、黒い血を流す奇妙な転校生が国際ドリー女学園にやってきた。彼女の周りでは次々に奇怪な事件が発生。黒い血の感染が広がっていく…。なぜ、彼女の血は黒いのか?彼女はいったい、何者なのか? クラスメイトの女子高生が“黒い謎”に迫っていく。現代日本を舞台に、“愛”と“血”と“謎”が複雑に絡みあった、怪しげな世界観の物語が動き出す…。注目映画・ドラマ・アニメのみならず、日本最速で独占配信する「Huluプレミア」や、人気番組の見逃し配信、音楽のライブ配信などを行うオンライン配信サービス「Hulu」。そのうち、独自制作を行う「Huluオリジナル」の1つとして、日米共同製作のかつてないホラーサスペンスドラマとなるのが本作だ。企画・原作は秋元康、製作総指揮を務めるのは、映画『ソウ』シリーズで世界中を驚愕させたダーレン・リン・バウズマン。ハリウッドの鬼才が生み出すスケールとハイクオリティの映像世界に、「AKB48」のトップメンバーたちが全身全霊をかけて挑戦する。今回、渡辺さん演じる主人公の優しく快活な女子高生・磯崎薫、宮脇さん演じる謎めいた転校生・戸川真希に続き、明らかになった追加出演メンバーは7名。柏木さんは、学校一の人気者・宇津井麻衣役。グループのリーダーで、美しくも意地悪な性格を持ち、自分の立場を危うくする者は徹底的に攻撃する。真希に対しても敵対するが、実は彼女は虚栄を張っており、本当は優しい母思いの娘で、病気の母を思い、心を痛めているという役どころだ。入山さんは、同じく学園のクラスメイト・野尻葵役。真面目だと思われているが、実は少し問題を抱えた女の子。読書家で学業も優秀だが、年上の彼氏と隠れて付き合っていたり、みんなが知らない一面を持っている。決して悪い女の子ではなく、真の自分の姿でない、周りの期待に合わせたキャラを演じている。また、木崎さんは、色々なうわさやゴシップに首を突っ込んで調べては、周りの興味を引くことが好きなクラスメイト・谷中ヒカリ役。ゴシップ好きな理由としては、周りの友達を心から気にしているからこそ何でも知りたいと思ってしまう。手先が不器用で、言動も荒く、何でも笑いに変えようとする女の子。加藤さんが演じるのは、精神的にグループの中で一番大人な女の子・淀川圭子役。運動神経抜群で頭も良く、周りのいざこざに対してはあまり首を突っ込まない。決してお高くとまっているわけでも、周りを見下しているわけでもなく、ただ関心がないのだ。そして向井地さんが演じるのは、グループの中で一番幼く、“もろい”キャラ・片山奈美役。ほかの子たちの冗談が分からなかったり、自分自身が変なことを言っている自覚がないなど、天然ボケな一面も。場の空気を読まない発言で、グループのメンバーから引かれることもあるが、本人は気づいていない。さらに、横山さんと松井さんは、学園の不良・古郡千沙役と松村しのぶ役に。千沙はいつも、しのぶとつるんでおり、頭が良く2人が起こす悪事は全部彼女のアイデア。「平凡」ということに耐えられず、あえてまっとうな道を外れている。社会に対して歪んだ考え方を持っており、ドライでダークなユーモアを持っている。千沙とはまるで双子の姉妹のような関係のしのぶは、千沙よりも攻撃的で、感情的に行動し、怒りをコントロールすることができない。「自分にはちゃんとした将来なんてない」と思っており、その心の痛みを暴力で紛らわせている。それぞれ、かつてないキャラクターに挑む彼女たち。顔も心も“モンスター”になってしまう(!?)変貌ぶりは衝撃度100%。ハリウッド級ドラマ製作×日本を代表するトップアイドルのコラボに、引き続き注目していて。「CROW’S BLOOD」は7月23日(土)よりHuluにて配信開始(全6話)。(text:cinemacafe.net)
2016年06月15日AKB48の渡辺麻友とHKT48の宮脇咲良がダブル主演を務める、動画配信サービス・Huluのオリジナルドラマ『CROW’S BLOOD』(7月23日配信開始、全6話)に、AKB48から柏木由紀、入山杏奈、木崎ゆりあ、加藤玲奈、向井地美音、横山由依、SKE48の松井珠理奈が出演することが15日、明らかになった。このドラマは、女学園で次々と起きる不可解な事件を描く、"愛"と"血"と"謎"が複雑に絡み合うホラーサスペンス。渡辺演じる磯崎薫と、宮脇演じる戸川真希と同じ高校に通う生徒役として、AKB48グループの中でも演技力に定評のあるメンバーが出演することになった。柏木が演じるのは、学校一の人気者で美しいが意地悪な性格を持つ宇津井麻衣。入山は成績優秀だが皆が知らない一面を持つ野尻葵、木崎はゴシップ好きな谷中ヒカリ、加藤は一番大人な淀川圭子、向井地は逆に一番幼い片山奈美、そして、横山と松井は学校の不良で双子の姉妹のような関係の古郡千沙と松村しのぶを、ぞれぞれ演じる。今回はAKB48グループ総合プロデューサー秋元康氏の企画・原作で、ハリウッド映画『ソウ』シリーズで監督を務めたダーレン・リン・バウズマン氏が製作総指揮を担当。メイクや衣装、劇中で飛び交う過激なセリフで、いつもとは違うメンバーたちの姿が見どころとなっている。
2016年06月15日「AKB48」の渡辺麻友と「HKT48」の宮脇咲良が、Huluで配信される日米共同製作のオリジナル連続ドラマで、『ソウ2』の監督のダーレン・リン・バウズマン製作総指揮による「CROW’S BLOOD(クロウズ ブラッド)」にW主演することが決定!揃って会見に臨んだ。秋元康が企画・原作を務める本作。再生医療の目覚ましい進歩に伴う、命の再生という神の領域に人間が踏み込むことは許されるのか?タブーと言えるテーマに切り込みつつ、物語は学園を舞台に相次いで起こる不可解な事件を軸に、ホラーサスペンスとして展開する。渡辺さんが演じる主人公の薫は優しく快活な女子高生。渡辺さんは世界的ヒットシリーズを手掛けてきたバウズマンについて「ハリウッドの監督の作品に参加する機会など全くなかったので、緊張と不安でいっぱいだったんですが、気さくに話してくださりフランクで優しいです!お人柄が一瞬で伝わってきて安心しました」とニッコリ。宮脇さんは「このドラマに対する熱意を感じて、『ダレンに付いて行こう!』と思いました。(日本の)チョコパイが気に入ったみたいで(笑)、すごく楽しい現場になっています」と笑顔で明かす。演じる真希は、謎めいた転校生。「『本当に宮脇咲良?』と思われるくらい、(普段と)180度違う役」ということで「女優としての私を見てほしいです」と自信を覗かせた。ダレンの下で、日米共同製作の作品に主演ということで、この作品をきっかけにハリウッドにはばたく可能性も!渡辺さんはそんな声について「夢のまた夢のお話です」と前置きしつつも「もしかしたら、こういうことが起こりうるビッグチャンスだと思ってます。いろんな方に注目されるよう、ふさわしいお芝居をしたいと思いますし、いつかそうなれたら」と未来に思いを馳せる。宮脇さんも「Huluのドラマからハリウッド女優が誕生した!となるように頑張りたい。英語がペラペラになるように勉強したいです」と意欲を覗かせる。そんな2人をバウズマンも絶賛。プロの女優ではなく、アイドル主演ということで「正直、不安はあった」というが「現場で2人を見て、彼女たちは単にアイドルではなく女優だと気づきました。コンサートやミュージックビデオで見る限りはかわいいアイドルですが、現場に入るとオーラが変わるんです」と太鼓判を押す。2人に加えて、AKBグループのトップメンバーも出演しているが、宮脇さんは劇中で共演メンバーとのキスシーンも!「メンバーをコンプリートするんじゃないかってくらい、みんなとキスしてます!テストのときからガンガン、キスして困らせてます」と楽しそうに笑っていた。撮影のさなかということで、この会見にも2人は衣裳の制服姿で登場!宮脇さんは、“先輩”渡辺さんについて「22歳で制服が似合うのはすごい!」と語り、一方の渡辺さんは宮脇さんについて「現場では咲良ではなく真希として入り込んでてすごいです。後輩と感じさせないし、撮影じゃないときも怖さを感じます」と互いに称え合っていた。「CROW’S BLOOD」は7月末よりHuluにて全6話で配信開始予定。(text:cinemacafe.net)
2016年05月19日三越伊勢丹のプライベートブランドであるナンバートゥエンティワン(NUMBER TWENTY-ONE)は、4月6日、図案家で陶芸家の鹿児島睦(かごしま まこと)とコラボレーションしたハンドバッグを伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店各1階ハンドバッグ売場で発売する。同コラボレーションのために、鹿児島は3柄のオリジナル柄を製作。「セブンシスターズ」、「鳥と花」(マルチ柄)、「ファイブフラワーズ」、「鳥と花」(イエロー柄)の4種類が用意された。コラボレーション第1弾となる今回は、日本でも有数のプリント技術を有するセーレン社のヴィスコテックス技術が使用され、筆のタッチまで繊細に出るプリントで同氏の世界観がバッグに表現された。
2016年03月26日伊勢丹新宿店では3月2日から8日まで、本館5階リビングフロアのリモデル1周年を記念して、鹿児島睦とイイホシユミコの二大陶芸家によるコラボレーション企画「春の色」を実施し、三越伊勢丹限定の陶器を発売する。今回、新たに制作されたアイテムでは、非対称に形成されたベース型の器に、「魚」「鳥」「花」などのモチーフが描かれたおり、鹿児島が図案と技法を、イイホシが造形デザインを担当。釉薬やカラーのセレクトは共同で考案され、有田の陶工職人達によって作陶された。また、会期中二人の作家によるデザイン・モチーフが施された、プロダクトも登場。愛らしい動物や植物のイラストがプリントされた鹿児島のポスター(2,500円)、久留米絣クッション(4,000円)、モビール(6,000円)や、シンプルで温もりある作品として絶大な支持を得るイイホシの陶器では、プレート(4,000円)ボウル(5,000円)などがラインアップ。更に、鹿児島のモチーフが表現された、バルセロナ発祥のポップなキャンディ「パパブブレ」とコラボレーションした限定商品も発売される。
2016年03月01日○ゲスの呪いと2次創作秘書による金銭授受を巡る騒動で、大臣を辞任した甘利氏。これにより影響がでるかもしれないのが「2次創作」の世界です。既存の漫画作品やゲームをベースに作られた作品を指し、ぶっちゃけていえば「パクリ」です。しかし、著者も出版社も、その多くを黙認してきました。理由は、「2次創作」からプロになった作家が多く、何よりオリジナル作品への敬意を出発点としているからです。甘利さんが主導していた「TPP」では、被害者の訴えによる「親告罪」だった著作権が、捜査機関が摘発できる「非親告罪」になるとされていました。いったんは親告罪のままとされていますが、締結までに「2次創作」が摘発対象になる可能性は捨てきれません。TPPの最大相手国である米国は、浦安のテーマパークに代表される著作権ビジネスの権化です。タフネゴシエーターと鳴らし、大臣時代「非親告罪化を制約なしに認めることはない」と国会で答弁している甘利さんならともかく、後任の大臣では、交渉力・調整力に不安しか見つかりません。そもそも日本人は伝統的に、パクリに寛容な文化です。「トランジスタラジオ」や「自動車」の例を引くまでもなく、模倣する能力に長けており、「猿まね」と揶揄されながらも世界有数の経済大国に登り詰めました。ただし国内における「パクリ」には作法があり、これを間違えると、わずか数日で120万人のフォロワーが消失することもあります。○やらかした語り部お洒落な言葉や格言、雰囲気のある写真をツイートしていたあるアカウントは、120万人を越える若者にフォローされていました。しかし、何度も「パクツイ」が噂される疑惑のアカウント。「パクツイ」とは「パクリ・ツイート」の略で、他人のつぶやきや、写真、イラストを無断無許可で投稿する行為で、侮蔑的意味合いが含まれます。とはいえ、SNSのアカウント画像に使用される、アニメや漫画、タレント写真のほぼ100%が無許可で、「パクリ」が常態化しているのがネットの世界です。批判されながらも放置されていました。そんなアカウントの「中の人」が、ネット媒体の取材を受け、批判に対して「つくる側の人間だから、常に批判される立場にいるんだろうなと思う」と答えたことで大炎上。「お前が言うな」「パクツイのくせに」と。名言や格言をまとめ、方向を与えて「作品」にするという手法はあります。これも「つくる」と言えなくもないのですが、何しろこのアカウント、引用元を明記しないこともあり、他人の作品に別の解説を重ねてみたりと、オリジナルへの敬意が感じられない「パクリ0.2」だったのです。このインタビューの公開後、秒単位で百人規模のフォロワーが減っていき、追い詰められたのか、スパム報告によるものなのか、アカウントは停止され、その瞬間に120万人のフォロワーが失われました。○日本人のパクリとは学ぶという言葉は「真似る」が変化したものとされ、書道はお手本の模写からはじまり、空手などの武道も「型」の反復練習を基本とします。日本人が培ってきた学習プログラムには、反復という「パクリ」が備わっているのかもしれません。しかし、日本人が日本人たる理由は、安直な「パクリ」で終わらせず、より良いものへと工夫を凝らすところにあります。工業製品はもちろん、最も日本人による「パクリ」を象徴するのが「ラーメン」です。「支那そば」「中華そば」と呼ばれるように、元は中国の食べ物を日本で改良を重ねた結果、発祥の中国に「日式拉面」として逆輸入されています。また、ポルトガル語であった「天ぷら」は、いまや日本料理として世界に羽ばたいています。一方で日本人は、ラーメンが中国で生まれ、天ぷらがポルトガルから輸入された言葉であるという記憶を受け継ぎ、語り継いできました。昭和時代に、卒業式の定番ソングだった「蛍の光」「仰げば尊し」も外国に起源があることを、多くの日本人が知っており、前者は朝ドラ「マッサン」で英語の歌詞の劇中歌となっていました。日本人におけるパクリとは、オリジナルへの「敬意」を前提にしており、これは2次創作における概念と志を共にしています。○それは特殊なことで先のアカウントが炎上したのは、「敬意」の決定的な不足であり、パクツイした他人の言葉を、自分が生み出したかのように語り、なおかつ火元となったインタビューで紹介された「例え話」も、別の人のパクリ疑惑があるのですから重症でしょう。この騒動で思い出したのがお隣の韓国。かの国ではさまざまな「オリジナル」が生み出されているようで、韓国語で「我々」を意味する「ウリ」と重ねて「ウリジナル」と呼ばれています。例えば「剣道」や「柔道」も韓国発祥と主張し、それは民間の与太話ではなく、韓国最大の剣道団体が主張しています。さらにウィキペディアによれば「折り紙」も、かけ声の「わっしょい」もやはり半島生まれ。さらに「ガンダム」といえば架空のロボット全般を指すと、韓国の裁判所が判決を下したといいます。それどころか最近では「日本語」も、韓国発祥と主張する大学教授までも現れています。なお、韓国鉄鋼大手の「ポスコ」が、技術をパクッたと中国企業を訴えたら、もともと日本の新日鉄住金の技術をパクったものと白状し、ポスコは日本側に和解金を支払うハメになりました。だからどうしたという訳ではありませんが、そういう騒動があったとだけ添えておきましょう。○エンタープライズ1.0への箴言日本ではオリジナルへのリスペクトのないパクリはダメ宮脇 睦(みやわき あつし)プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に「Web2.0が殺すもの」「楽天市場がなくなる日」(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」
2016年02月04日○社会問題を製造中人気俳優夫婦の部屋探しの様子を、接客にあたった不動産会社社員がツイートし、騒動となりました。会社サイドが関係各位に謝罪したものの、ツイートした社員の名前や素性、顔写真がネット上で晒されます。本人がネット上に公開していた個人情報に過ぎないのですが、あるワイドショーはこれを「ネットリンチ」と定義して、社会問題化をたくらんでいるようです。「ネットリンチ」は元々、ネット上に誹謗中傷やデマを拡散する行為であり、その対象はクラスメイトや同僚と限られた交際範囲の話でした。語弊を怖れずに言えば、昭和時代から変わらぬ「イジメ」の舞台が、ネットに移っただけです。これが拡大解釈されて、容疑者の個人情報拡散や、いわゆる「炎上」までもが、ネットイジメに含まれようとしています。私はこの流れを危惧しています。もちろん、根拠を示さぬ誹謗中傷や、理由なき個人情報の拡散、執拗に相手をつきまとう批判など、その行為を良いとは言いませんが、「ネットリンチ」の危険性を声高に叫ぶ人々に「怪しさ」しか感じないのは私だけでしょうか?○立場が変われば生まれや育ちだけを論拠に、人を批判することは許されません。それは「差別」そのものであり、いわゆる「ヘイトスピーチ」なるものが存在するのであれば、これを指すのでしょう。しかし、その人の発言や行動への批判はあって然るべきであり、批判者の表現や言論の自由も確保されるべきものだと思います。個人的には、批判にこそ「品位」を求めたいと願うものですが、「ネットリンチ」を叫ぶ人の中には、正当な批判や表現すらも「ネットリンチ」に含めようとしている人がいるのです。ネットでそこそこ有名人だった某氏は、ネット上で痛烈に他人を批判し、攻撃対象のブログを炎上させたことなど数えきれません。別名アカウントで、複数の人間を演じ、燃え上がらせたことも少なくないという噂もあります。その彼が何かの拍子でテレビに出演するようになり、その露出とともに著作物が売れ出すと、その批判の刃は自分に戻ってきます。俗に言う「有名罪」の類ですが、批判される側に回った途端、自分への攻撃を「ネットリンチ」と定義して被害者面を始めたのです。○エスタブリッシュメントの傲慢ある政治家がブログ内で、陳情者の個人情報を晒したとして炎上した事件がありました。舌鋒するどく批判を煽ったのは、某大手新聞社のG記者。この政治家がコスプレを披露するなどで、ネット上の有名人だったことも手伝い、鮮やかに燃え上がってしまった炎上は「ヤフーニュース」を飾りました。G記者はこの陳情者と幼なじみであり、条例にも反対の立場でした。つまり、私利私欲のために政治家のブログを炎上させたとも言える話で、これはすなわち「ネットリンチ」と呼べるのではないのでしょうか。それではどんな個人情報を晒したのか。陳情者は、すでに故人とはいえ有力政治家の孫を名乗った上で、議会で審議中の条例に反対するように電話で依頼していたのです。陳情を受けた政治家は、故人と同じ党ということもあり、自己申告の素性が本当だったと仮定し、「先生(政治家)なら、自分の信念をもとに行動するはず。私も同じです」と戒めます。そしてこの電話でのやり取りをブログで紹介したら「個人情報を晒した」と批判を始めたのがG記者だったのです。冷静に考えてみると「ちょっと待ちなさい」という話でしょう。大物政治家の名前を出すということは、その名前の影響力に期待しているということです。故人の名前で現役の政治家を動かせるなら、一部の「エスタブリッシュメント=政治家一族」の電話一本で条例が左右される、つまりは民主主義の根幹が揺らぐ重大事といえるのです。○颯爽と逃げ出す炎上の火勢がピークに達するころ、G記者の「煽り」がピタリと止まります。一連の騒動をヤフーニュースで知った新聞社の上司から「これ、政治家一族による利益誘導だよね」と問われたからです。政治家サイドがコメント欄の削除対応で"鎮火"を試みると、G記者には信者から「逃げた」とご注進。しかし、すべてを無視して彼は逃げきったのです。G記者もまた、いわゆる「セレブ」に属する家庭の出身であり、上司は苦虫を噛みしめたように「あいつら自分の利益には敏感なんだよね」と吐き捨てました。他人をリンチにかけておいて、自らに被害が及ぶとなると、脱兎の如く逃げ出す様は「ネットリンチ0.2」でしょう。「ネットリンチ」と声高にさけぶ人らとG記者が重なって見えて仕方ありません。冒頭の事例でも「リンチ」の対象となったのは、芸能人の個人情報を晒した不動産会社の社員です。法治国家である我が国では、民間人による「私的報復」を認めておらず、ネット民による「裁き」を応援するつもりはありません。しかし、現在の警察は刑法犯でなければ動いてはくれず、民事であれば被害者がわざわざ裁判を起こさなければなりません。つまり、もっとも批判すべきは「ネットリンチ」ではなく「法的整備の遅れ」なのです。何より、「リンチ」を常態化しているテレビに、ネットリンチを責める資格はありません。あの国民的アイドルグループの生謝罪という名の「公開処刑」もそうですが、人気タレントと売り出し中のミュージシャンの、不倫関係において交わされたとおぼしき会話という「個人情報」まで、公共の電波に乗せ拡散するのは、テレビメディアによる「リンチ」でしょう。ゲスな二人の不倫劇には先週も触れた通り呆れるばかりですが、仮に「不貞」を公序良俗の視点から批判するのであれば、隠し子が常態化している梨園を深掘りしないのは不公平すぎます。○エンタープライズ1.0への箴言ネットリンチと批判は別もの宮脇 睦(みやわき あつし)プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に「Web2.0が殺すもの」「楽天市場がなくなる日」(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」
2016年01月28日○フィンテックふたたび今年に入り、より注目が高まっている「フィンテック」。日経平均株価の暴落をよそに、関連銘柄は爆騰し、すでに株価が10倍となる"テンバーガー"な銘柄もありました。フィンテックとは、"金融"と"テクノロジー"をかけた新語ながら、昨年指摘したように、定義は曖昧で実体はありません。とりわけ日本版のフィンテックへの過剰な期待には、不安がつきまといます。なぜなら、日本はすでにフィンテックの最先端を走っているからです。米国「スクエア」社がスマホに機器を取り付けるだけで、カード決済ができるサービスで急成長し、それをひっさげ鳴り物入りで日本上陸を果たしました。しかし、日本にはすでに「おサイフケータイ」や「パスモ」などの電子マネーが十分に普及しており、急に現金が必要となっても、全国津々浦々にまで整備されたコンビニ店内も含めた「ATM網」が完備されている「フィンテック先進国」です。特に「決済」というアプローチにおいての成長余地が乏しいのです。そして何より、日本における「フィンテック」との関係性に、日本のIT業界の本質的な問題があるのです。○浮世絵の末路算盤が電卓となり、パソコンの普及でExcelや会計ソフトが用いられ、ATMを挙げるまでもなく、金融と情報技術は不可分のものです。わざわざ「フィンテック」という命名は屋上屋を架すようなものですが、ここに「フィンテック」の本質があります。それは「eビジネス」や「Web2.0」、直近では「IoT」や「インダストリー4.0」などと同じく、すでにあるものを、わざわざ再定義(あるいは命名)することで、ビジネスの主導権を握るビジネスモデルとなっています。これは欧米人の得意技であり、盲目的に信仰するのが日本人なのです。「Web2.0」のときも、参加者が創りあげる「CGM」を礼賛し、日本のWeb業界人もこれを崇めていました。しかし、何のことはない「2ちゃんねる」のことで、これを模して生まれた海外のサイトすらある状況。Web2.0が提唱された時点で、日本はすでにトップランナーだったのです。ひとことで言えば「舶来信仰」。舶来製品を有り難がり、国内にすでにあるものを卑下するか無視する風土があります。フィンテックにもそのまま当てはまり、「浮世絵」を軽んじ、輸出用茶器の「緩衝材」にした江戸末期の日本から成長していないのかも知れません。○日本は関所ばかりさらに、金融庁に設けられた首相の諮問機関である「金融審議会」におけるフィンテックへの提言は、決済システムにばかり比重が置かれています。「フィンテック」により、出入り口を支配することで、金の流れを把握できると信じているのでしょうが、何のことはないお金の「関所」。箱根の関所で「入り鉄砲に出女」を監視した江戸時代と同じ発想です。これは役所だけを責める話ではありません。いわゆる「ITバブル」へと向かうネット勃興期、ITビジネスの主流はISP(プロバイダ)と通信回線、ポータルサイト(玄関サイト)などのインターネットの出入り口、つまりは関所ばかりだったのです。対する米国は、「eビジネス」や「Web2.0」のようなブームを仕掛けるビジネスモデルだけではなく、「バナー広告」によりネット上で収益を上げ、有償だった閲覧ソフトを無料にすることでシェアを奪い、市場を支配し、新しいビジネスモデルを生み出し続けています。ビジネスモデルとは、まったく新しい仕組みを創造するというより、すでにあるものを組み合わせて生み出されるものです。「看板」をネット上に置き換えたのが「バナー広告」で、無料配布からシェア拡大につなげるアプローチは、剃り刃交換の「ジレット」に遡ることができます。そして日本人にとって、ビジネスモデルの構築そのものは決して苦手ではありません。○天才の流儀今、大人気の朝ドラ『あさが来た』の主題歌を歌う「AKB48」。俗に「AKB商法」と揶揄される、握手券や投票権という「おまけ」でCDやDVDを購入させる構造は、何のことはないシールを競って集めた「ビックリマンチョコ」や、同封のカードを求めた「プロ野球カード」と同じです。そこに時間単位で女性と話が出来る「キャバクラ」の仕組みを、「握手会」として導入したことにより、完成したのが「AKB商法」。ダウンロードで音楽ソフトを入手する時代に、ミリオンレベルで物販する「ビジネスモデル」です。天才とは、その人だけに見える新事実を、見ることのできる人ではない。誰もが見ていながらも重要性に気がつかなかった旧事実に、気づく人のことであるとは、塩野七生氏の「ローマ人の物語ハンニバル戦記」において、アレキサンダー大王の戦術紹介の引用です。フィンテックにおける技術はもちろん、サービスにおいても日本は世界のトップランナーです。日本のIT業界の本質的な問題とは、日本国内にすでにある旧事実(技術)をないがしろにする「ビジネスモデル0.2」にあります。○エンタープライズ1.0への箴言日本版フィンテックにビジネスモデルがなし宮脇 睦(みやわき あつし)プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に「Web2.0が殺すもの」「楽天市場がなくなる日」(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」
2016年01月21日○浜の砂子は尽きぬともあけましておめでとうございます。今年も本欄にお付き合いいただければ幸いです。Windows 95より数えて21年を経た、現在になっても「ネット」への誤解は多く、さらにはその専門家を名乗る人々が、企業の進化を妨げている事例は枚挙にいとまがないわけです。それは事業規模の大小を問わず、今年もネタが尽きる気配はありません。そこで2016年の第1回は直球の「ネット専門家0.2」に成長を阻害されたケースを紹介します。家族を除けば、「昭和」から奉公する老齢社員だけの、小さな服飾業「N」。「ユニクロ」に代表されるSAP業者の台頭、またそのビジネスモデルでもある、海外生産によるコストダウンの波に直面し、事業廃止も視野にはいるほど追い詰められていました。苦境を脱するために「ネット」に活路を求め、Webサイトをリニューアルし、繁華街に大型の「Webサイトの広告(看板広告)」を出稿しました。○ネットの専門家の正体「広告=看板」とは昭和時代の発想です。看板を見てサイトをアクセスするお客など微々たるもの。そこで知人を頼りに「ネットの専門家」を探します。その彼のアドバイスもまた「広告」でした。こちらは検索結果に連動して表示される「リスティング広告」を提案します。目の付け所だけは間違っていなかったということです。しかし、結論は大失敗。十数万円の広告費を使って、上がった売り上げは数千円、ポロシャツ一枚ほどのものです。リスティング広告のチョイスそのものは間違いではありませんが、成功のカギは「売り上げが見込めるキーワード」の選定にありました。つまりNがここで必要としたのは「ネットに詳しいだけの専門家」ではなく、「マーケティング」や「広告(販促)」の専門家だったのです。企業におけるネットへの誤解の最たる例といっても良いでしょう。一般的に「ネットの専門家」とは、あくまで「ネット」に詳しいだけで、ビジネスやマーケティングのプロを意味しないのです。さらに、「ネット」と一口にいっても、通信技術についてのプロフェッショナルと、ネットワーク効果の経済学的研究者では、得意とするフィールドが異なり、ブログなどでビジネスを語っていても、「ググる」で集めた「コピペ文学」レベルの人物が多いのが実情です。つまり、そもそも論でミスマッチな「専門家0.2」が、ネット界隈には掃いて捨てるほどいて、彼らが各所で365日、誤解を量産しています。○振り向けばテレビ埼玉ネットの専門家は、事業規模の大小を問わず企業を振り回します。最後発でネット局(中継局)も少なく、低予算と揶揄される「テレビ東京(テレ東)」は、永らく視聴率最下位が指定席でした。そこから生まれた、テレビ業界の慣用句が、「振り向けばテレ東」です。テレ東に追いつかれるほどの低い視聴率という意味です。しかし今やテレ東は人気番組を連発。その「姿」に振り向くことが増えた某キー局の不振のひとつは「専門家0.2」にあります。民放キー局は、週に一回程度、自局の放送内容を検証する番組を放送しています。テレ東の背中を見つめる某局が、年末に4人の専門家を集めて、一年を振り返っていました。それぞれの肩書きは元新聞記者の大学教授、ジャーナリスト、ネットの専門家、雑誌編集者。番組を仕切るのは同局アナウンサー2人。映像作家、脚本家、放送作家はそこにいません。つまり「テレビ(コンテンツ)」の専門家は、そこに1人もおらず、客である視聴者すらいません。制作者という仲間と、客(視聴者)の声にも耳を貸さず、専門外の専門家の意見に耳をかたむけているようでは、テレビ東京どころか、関東ローカルの「テレビ埼玉」の背中を眺める日も近いことでしょう。○轍がひとつに重なる不思議「部外者だから客観的な意見を言える」という反論があるかもしれませんが、その主張は"部外者が業界に通じる専門家"である前提においてのみ成立します。元新聞記者やジャーナリストは、隣接する業界ではありますが、それは同じ商店街にいるからと、魚屋が売る刺身について、隣の八百屋が批評するようなものであり、リアルな街角なら殴り合いになるほど無礼な話です。さらに「ネットの専門家」は、昨年のテレビ報道をこう解説していました。「テレビがネット情報を無批判に報道していた」彼については「ネットの専門家」にも疑問符がつきます。何故なら、昨年浮き彫りになったのは、連載でも繰り返し指摘したように、テレビを筆頭とした既存メディアにおける「報道しない自由」だからです。「サノケン騒動」や「ぱよちん事件」のように、ネットで話題が沸騰していても、都合の悪い事件をテレビは報道せず、ネット情報の選別=検閲が強化されたのが昨年です。これを、知らないのなら「ネットの専門家」に値せず、そのアドバイスなど何をか言わんや。それを裏付けるのが、彼のその局への出演と視聴率の関係性です。彼がその局に出演を始めた時期と、同局の凋落は見事に重なり、レギュラー出演した番組はことごとく打ち切り、今も出演する番組は低空飛行ばかりが目立っています。と、今年も高飛車に世相と企業を切っていくと宣言しつつも、今年は366日ありました。お詫びして訂正する年始めです。○エンタープライズ1.0への箴言ネットの専門家には、それぞれ専門分野がある宮脇 睦(みやわき あつし)プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に「Web2.0が殺すもの」「楽天市場がなくなる日」(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」
2016年01月07日○酒に酔ってのことならば新潟日報の支局長を務めていた報道部長が、Twitterの匿名アカウントから、ある弁護士へ暴言、中傷を繰り返していたところ、相手の弁護士の方が一枚上手で、やり取りの中から実名を特定し、公表しました。これに焦った報道部長は「酒に酔った上でのことで、仕事のストレスも加わり」と説明し、上長を連れだって訪問して謝罪しました。当該弁護士が謝罪を受け入れ「手打ち」になるはずが、新潟日報に「数百件の抗議」が寄せられました。(略)このブス!お前の赤ん坊は豚のえさにするんだから…。で、お前とダンナが、その豚を喜んで○のな。そりゃ美味しいよ。お前の子ども○った豚だもん!(略)エゲツナイので自主規制しておりますが、こうしたツイートが数多く確認されているのですから「数百件の抗議」が届くのも当然ながら、NHK「NEWS WEB」のサイトでは「過去にも問題のある書き込み」とだけ紹介していました。テレビメディアは、ローカル局の数社が報じただけで、大手は沈黙を守っています。しかし、この騒動の背景を辿ると、看過できない社会の病理が浮かび上がります。○いくらなんでもそれは役職を解かれ「元部長」となり、無給の「無期限懲戒休職処分」との処分が下されましたが、一般常識に照らせば、経営者側と解釈される「部長」への処分としては軽過ぎます。また、新潟日報に関係する著名人らが、擁護するかのコメントを発していることから「会社ぐるみ」という批判がネット上で吹き荒れております。元部長は、政治家の実名を挙げて「慰安婦」だとか、「死ね」「奇形遺伝子」などの暴言が並び、「○県人は人間のくずで女はみんな売春婦」と、繰り返していたのです。酔いが理由だとするなら、正常な判断能力を欠く「重度のアル中」。これが一般企業なら、多くのマスコミはスクラムを組み、会社としての任命責任、管理責任を問うたことでしょう。あるいは「人間性」を暴くことは、事件の背景を知る手がかりになる、という建前から、記者やレポーターは現地に飛び、取材と称して元部長の自宅近隣住民に騒動を触れ回り、「そんな人には見えなかった」と肩を落とす親族のコメントを取り付け、報じるのがいつものマスコミのやり方です。ところがテレビは報じず、NHKのような大人しい表現でお茶を濁しています。○つながる一本の糸社会の木鐸たる「報道機関の幹部」という肩書きを脇に置けば、元部長の暴言だけでは「ニュースバリュー(報道する価値)」は弱いかも知れません。限られた紙面、放送時間のなかで、どのニュースを取りあげるかは「ニュースバリュー」で決められます。しかし、「ネットで検索」する程度の情報から見えてくる元部長の背景には、看過できない危険性が潜んでいるのです。以前に触れた「ぱよぱよちーん騒動」。セキュリティ会社の要職にあった人物が、その立場と人脈を駆使し、個人情報を集めて晒していたのではないかと疑われました。セキュリティ会社の説明が不十分なため、いまだ疑惑は晴れていませんが、この人物も匿名アカウントから、思想的に対立するユーザーや政治家に対して、暴言や脅迫同然の発言を繰り返していました。そして同じ時期に同様の事例が、立て続けに発覚。大学生協の幹部や、ご母堂が日本共産党系の地方議会議員のデザイナーらが、やはり思想の異なる相手に対して、匿名の闇から執拗に攻撃を繰り返していたことが、実名と共に明らかとなります。そして元部長。この4人をつなぐ一本の糸は、左派系のある団体。思想信条はそれぞれ自由ながら、一つの団体の複数の構成員が、Twitter上とはいえ、同じような反社会的な活動をしていたのなら、「報道する価値」があると考えるのはあの事件の記憶です。○ニュースバリューを求めるなら対立するものには文字通りの牙をむき、独自の(屁)理屈で、社会を混乱させた「オウム真理教(現アレフ)」。犯罪予告や殺人教唆といった反社会的行為において、両者を重ねてしまうのは、私の事務所から徒歩圏内に、オウムの本部があるからかもしれません。しかし、「お前の赤ん坊は豚のえさ」という発言が代表するように、実名が特定された4名に通底する尋常ならざる精神性は、報道を通じて一般市民に警戒を呼びかける必要があると考えます。さらに、4人の年令は57才、55才、53才、42才。左派系の団体が、騒動と無関係だとしても、酸いも甘いもかみ分け、相応に社会的立場をもっていた「大人」が、匿名の闇から誹謗中傷や脅迫、「死ね」を繰り返していたのです。これは「社会的病理」そのものです。これに「ニュースバリュー」がないと判断したなら「ニュースバリュー0.2」。「社会問題」を追う資格などありません。もっとも、報道されないことに対して、ネットでは「当然」とする声が多数。それはマスコミな内部には左派が多く、「左派に都合の悪いニュースは報道しない」というもの。「報道しない自由」とも呼ばれます。その真偽を確かめる術を持ちませんが、安保法制を巡る抗議集会で「安倍、叩ききってやる」と襲撃予告をした左派色の明らかな大学教授の映像は、いまだに大手テレビメディアで目にしません。○エンタープライズ1.0への箴言恣意的に見える「ニュースバリュー」の判断がメディア不信を絶賛増幅中宮脇 睦(みやわき あつし)プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に「Web2.0が殺すもの」「楽天市場がなくなる日」(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」
2015年12月08日○懐かしい若者らこの夏以降、あちらこちらで「SEALDs(シールズ)とは何者か?」と尋ねられました。安保法制を巡る報道で、「SNSで集まった若者の代表」という紹介のされ方から、Webの専門家としての解説を求められたのです。筆者は「懐かしい若者ですよ」と答えていました。その心は「恐れを知らない世間知らずな若者」であり、70年代安保における学生デモと同じだからです。そして、同世代の若者の代表などではないと注釈を加えたうえで、その理由を「SNSで集まっている」からと説明しています。現代的なコミュニケーションツールである「SNS」。これを介して集まった若者が「70年代安保」と同じ。この理解には「SNS」に対する0.2な誤解を解く必要があります。○アラブの春がもたらしたもの圧政に苦しむ中東諸国で、SNSによりつながった国民が、独裁政権を打倒したとされる「アラブの春」。まるでSNSが政権を打倒したかに喧伝されたことが誤解の出発点です。アラブ諸国におけるSNSとは、携帯電話やスマホとの組み合わせにより誕生した、低コストの通信インフラに過ぎません。だから、民主化を求める市民も、混乱を望む連中も使っています。さらに国内では、東日本大震災以後顕著となった「脱原発デモ」において、SNSにより多くの人が集まったことを「動員の革命」と高く評価する人がいました。そのとき「アラブの春」に重ねる主張が目立ったのは、脱原発を「正義」と演出する狙いがあったのでしょう。これが誤解を強化しました。しかし、SNSに「民主化」や「正義」というオプションは搭載されていません。むしろその「動員」を促すSNSの特性が、「アラブの春」以後の中東世界で、IS(イスラム国)の台頭を許し、日本で70年代安保の喧噪を、現代に復活させたといえます。○アイラブ異邦人父親が創業した会社を継いだK社長ですが、もうすぐ50の声を聞く彼が今、もっともハマっているのがSNSです。当たり前の話ですが、SNSを利用するのは若者だけではありません。K社長は、顧客や取引先とネット上で「交流」することにより、ビジネスチャンスを拡大すると豪語していました。SNS上での「接点」が、ビジネスに有利に働くという目論見です。そして投稿すれば即座に、経営者仲間が「いいね!」をクリックし、一緒に飲みに行くほど親しい取引先がコメントを寄せます。この距離の近さに狙いは的中したとのめり込み、オフラインにおける日々の交流の一つ一つですら、SNSにアップロードするようになります。ところがK氏にビジネスチャンスが巡ってくることはありませんでした。なぜなら、彼が積極的に交流しているのは、外国人パブを心から愛する「仲間」ばかりだからです。当初は色んなテーマでSNSに投稿をしていましたが、反応が良かったのが外国人パブ探訪。多くの「いいね!」が寄せられます。そして類は友を呼び、パブに特化したコミュニティが完成するまでに時間はかかりません。新しくできたお店や、入店したばかりの女性タレント、その誕生日プレゼントについて投稿していて、ビジネスに繋がるわけがありません。むしろ、外国人パブに特別な思い入れを持たない社員は、K社長と距離を置き始めているのですが、そう指摘する「仲間」はいません。みな、同じ穴のなんとやらだからです。○そもそもネットは?SNSは「同好の士」を集めやすい特性があります。K社長の周囲に、外国人パブマニアが集まるのも、SNSにおいて「脱原発」のコミュニティが大きくなるのも、構造的にはまったく同じです。そこには正義も悪もありません。「好きか嫌い」があるだけです。そもそも論に立ち戻れば、インターネットは興味の対象に傾斜し耽溺しやすい媒体です。ネットサーフィンにしても「ググる(検索)」にしても、興味を持ったから行う行為で、Twitterにおけるフォローや、Facebookにおける友だちも同じです。つまり、インターネットそのものが、興味や思想、好き嫌いにおいて「偏る構造」になっているのです。そこから「SEALDs」が、SNSを介して集まったのなら、まずは「特定の考えに共感した若者たち」と分析すべきなのです。それを、「正義」や「民主化」、あるいは「若者の代表」とする主張は、「インターネットの性質」を知らない0.2です。残念ながら、Webの専門家を名乗る著名人にも、こうした残念な意見が散見されます。なお、バラエティ番組で「SEALDs」について問われた、現役女子高校生タレントは「ひいちゃう(発言要旨)」と答えています。それがリアルの「若者の声」でしょう。70年安保当時でも、熱心に「活動」していたのは「学生」であり、当時の大学進学率は20%前後。集団就職した若者を指す「金の卵」に代表されるように、額に汗して働いていた「若者」の方が多数派で、当時の勤労青年曰く「学生運動なんざ、ヒマと余裕がある学生の遊びだよ」とのことです。○エンタープライズ1.0への箴言SNSは情報の偏りを加速させる宮脇 睦(みやわき あつし)プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に「Web2.0が殺すもの」「楽天市場がなくなる日」(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」
2015年11月19日○笑えないジョーク風邪の特効薬が開発されない理由は「製薬会社が儲からなくなるからだ」という冗談がありますが、シオノギ製薬は24時間でインフルエンザが完治する特効薬を開発したと発表しました。厚生労働省によれば、インフルエンザが関連した年間死亡者数は世界で約25~50万人、日本で約1万人と推計されております。一日も早く市販されることを願っております。同様に「コンピュータウィルスがなくならない理由は、セキュリティ会社がウィルスを開発しているからだ」というブラックジョークが存在します。ところが、それを地でいくような"事件"がWeb界隈で発生していました。ある漫画家が、自身のFacebookに投稿したイラスト作品、それが炎上しました。作品をブラックユーモアととるか、中傷と受け取るかは、価値観により分かれるところですが、意見対立の構図は、フランスの「シャルリー・エブド襲撃事件」に似ています。そして否定派の急先鋒として、立ち上がったのがS氏です。○Facebookの規定違反S氏は「はたく」と題し、イラストに「いいね!」をクリックしたユーザーの、居住地・出身校・勤務先をリスト化して公開すると予告し実行、その数は数百人に達しました。「はたく」とは、関西弁における殴るの意味で、その目的を文脈から推測するに「いいね!」をクリックしたユーザーに、ある種のレッテルを貼る狙いのようです。この行為はFacebookが定める「サービス規約」の、「3 安全に利用するために」の「2.利用者は他の人のコンテンツまたは情報を収集することを禁止します」に抵触します。しかし、これだけなら「事件」と呼ぶことはありません。利用規程からの逸脱は、限度を超えればFacebookに対する「業務妨害罪」に触れる可能性もありますが、その判断はFacebookがくだすもの。また、Facebook上に公開されている個人情報を、執拗に拾い出す粘着性には呆れても、これだけならひとつの「表現」と強弁することも不可能ではありません。なお、リスト化されたユーザーが、レッテルを貼られた行為に対して「名誉毀損」で訴える可能性も残されますが、ここでは触れずにおきます。○泥棒の警備会社しかし、S氏がサイバーセキュリティ会社の主要メンバーで、さらにセキュリティー向上を啓蒙する業界団体の要職を務めていたとなれば事情が変わってきます。さらに過去のツイートでは、以下のように敵対する人物を攻撃すると宣言していました。携帯からなら一発で(お前の居場所を)特定できる。パソコンからダミーを経由しても追い込みかけるよ。セキュリティ業界の総力を挙げるからな(発言要約)つまり、その経験と地位を用いて攻撃すると語っていたのです。これはつまるところ、「警備会社の役員が、警備の実務で培った技術と機材、人脈を駆使して泥棒に入る」と宣言するようなもの。さらに、先のツイートには、相手の子供への襲撃も匂わせるのですから卑劣で、こちらについては、ほぼ犯罪といえるでしょう。本稿ではイニシャルを用いているS氏ですが、ネット上では個人名や経歴、勤務先も特定されています。反政府色の強いアカウント名で、過去のツイートその他で「個人情報」を自ら拡散していました。S氏は勤務していたセキュリティ会社で、採用面接も担当していたと、こちらも自ら公開しています。さらに「取引」に関しての「さじ加減」まで語っていることから、S氏の「情報」への心構えが透けて見えます。○本当の「事件」とは騒動発覚後、会社は「本人の申し出により退職」とWebサイト上で発表しました。懲戒処分がないということは、S氏の行為に問題は無かったという判断ですが、処分自体は会社の判断であり、外野がとやかく言うことではありません。しかし、この騒動と前後して、総務省の閣僚の一人が「セキュリティーのインプット」のためと同社を訪問しています。総務省といえば、いま話題の「マイナンバー」の所管官庁です。自身のスキルと業界の人脈を濫用し、個人情報を晒すような人物が勤務し、それを容認する企業への訪問。総務省に確認すると、この企業とマイナンバーの繋がりは皆無とのことでしたが、マイナンバーへの不安が募るなか、あまりにも不用意な行動です。なぜなら、セキュリティの要は「人」。どれだけ堅牢なセキュリティを構築しても、内側からカギを開ければ崩壊することは、古代ギリシャの「トロイ」以来の教訓で、現代にも通じることを証明したのは「日本年金機構」の情報漏えい問題です。わずかな不安も排除すべきではないでしょうか。そして「事件」とは、この会社の製品を「防衛省」が購入していること。同社は製品について、S氏の関与を否定していますが「セキュリティ業界の総力」を動員でき、セキュリティ突破を公言している人物であり、反政府色が強いのはアカウント名だけではなく、発言も行動も繰り返しているその筋ではちょっとした有名人。そんな人物が関与している製品に、サイバーセキュリティを任せる防衛省とは笑えないジョーク、すなわち「事件」です。米国をはじめ、海外では怪しいという"疑い"の段階で使用を控えるのが普通です。○エンタープライズ1.0への箴言サイバーセキュリティの要諦は「人」宮脇 睦(みやわき あつし)プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に「Web2.0が殺すもの」「楽天市場がなくなる日」(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」
2015年11月12日○ホームセンターでは売られていない支持層と呼ばれる固い地盤にまで、基礎となる"くい"が届いていなかったことにより、建物が傾斜した横浜市の「マンション傾斜問題」。くい打ち作業を行う際に、「状況を記録するためのプリンタの電源を入れ忘れたうえに、記録紙がドロで汚れ、それに加えて雨に濡れたことで、担当者は他のデータをコピペして作業報告書を偽装した。だから誰も気がつかなかった」と、販売した業者が説明を行いました。しかし、プリンタの電源を入れ忘れていたなら、そもそも記録紙がないはずですし、専門家によれば一般的に、雨の日はくい打ち作業を行わないとのこと。何より、この手の"くい"はホームセンターで販売されておらず、地質調査を行ったうえで"くい"の長さが決まるはず。つまり、くい打ち業者の一存で、長さは決められないはずだ……。と、首をかしげていたら、建設を担当した会社がテレビ局の取材に対し、ボーリング調査に不備があったことを認めたうえで、「下請けが"くい"を打った段階で固い地盤に届かなかったというデータを出してくれれば、追加で"くい"を打てた。そうすれば、問題は起きなかった」と言い訳していました。しかし、「下請けが発注主のミスを暴くことなどできない」という話は、10年前のあの事件から言われていたことです。○経歴詐称は日常茶飯事昨年、事業を整理したとあるスマホゲームの制作会社のI元社長は「ちゃんとした報告書を上げてくれていれば」と嘆き節が止まりません。元社長の言葉を借りれば、部下の杜撰な「偽装された報告書」により、会社がつぶれたのです。スマホゲームの業界は、勝者と敗者の二極化が進んでいます。新規参入が相次ぎ、飽和状態となったことに加えて、思いつきレベルの企画が横行しているからです。I社長の会社の企画も、正直「思いつき」のレベルでした。その証拠に、プロジェクトがスタートを切ってから、経験者を雇い入れる「泥縄」ぶりです。そしてこの経験者が曲者でした。雄弁に語った豊富な経験と実績が自称に過ぎなかったのです。経験者が上げる報告書は順調そのもので、I社長はそれを見る度に、捕獲していないタヌキの皮を数えていましたが、自称の経験でゲームを作れるわけがありません。プロジェクトは破綻し、事業整理にまで追い込まれて以来、I元社長は先の嘆きを繰り返し言い続けています。もっとも経歴詐称など、どの業界でもあること。ましてや四半世紀来の人手不足を抱えるプログラムの現場では、経歴詐称は日常茶飯事で、プログラムを組んだことがない「自称プログラマー」など、はいて捨てるほどいます。だから、採用時に見抜けなかったのは致し方ないとしても、「順調な報告書」を丸飲みしたI社長のほうにこそ問題があります。○本当の構造問題とは自称経験者や、傾斜マンションにおけるくい打ちの担当者を擁護するわけではありませんが、報告書を鵜呑みにするだけなら管理者も社長も不要の「進捗0.2」だということです。すべての作業には「歩留まり」が存在します。「歩留まり」とは、ミスや不良の発生確率のこと。ヒューマンエラーに機械の故障など、トラブルの理由は無限にあり、プログラム開発はもちろん、ボーリング調査に不備が発生する確率だってゼロにはなりません。だからこそ、トラブルのない報告書など、疑ってかからなければならないのです。先述のI元社長は、経歴を詐称した自称経験者ばかりを責めますが、どう見積もっても1年はかかる作業を半年のスケジュールで設定し、異論を許さなかった戦犯は社長自身です。かけ声ばかりが大きく、社員のミスは執拗に叱責する人物で「物言えぬ空気」があったと、事業整理前に逃げ出した社員が語っていました。建築業界でも同様の話を耳にしたのは10年たっても記憶に新しいあの事件です。○10年たっても変わらないならあの「ヒューザー」などによる構造計算書偽造問題の当時、かなり現場に近い関係者から聞いた話です。「鉄筋の数が少ないことは、現場の者なら誰でも気がつく。しかし、それを意見具申すると、次の仕事がなくなる。だから黙っている」この話を裏付ける問題が、昨年南青山で発覚した「欠陥億ション」です。排水や配管を設置するための穴がないことが発覚し、建て替えとなりました。ミスは誰にでもあることですが、そのミスをミスとして報告できない構造が建設業界にあるのであれば、それこそが最大の「構造欠陥」と言えるでしょう。今回の問題の全容解明にはまだ時間がかかりそうで、「自分たちの住むマンションは大丈夫か」と不安になっている皆様へ、贈る言葉があります。「10年持てば大丈夫」この言葉は、建築も手がける不動産会社の執行役員の言葉です。横浜の当該マンションが完成したのは2007年で、住民が手すりのズレに気がついたのは2014年で、7年後です。基礎に問題がある場合、建物の重みで10年以内に沈み込みや傾きがでるとのことで、それを過ぎた建物なら、基礎に関して言えば今日明日に沈むことはないと。だから不備があっても良いということでは、もちろんありませんが、気休め程度になればと添えておきます。○エンタープライズ1.0への箴言報告を鵜呑みにするだけなら管理者はいらない宮脇 睦(みやわき あつし)プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に「Web2.0が殺すもの」「楽天市場がなくなる日」(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」
2015年10月30日○加速する英語化シルバーウィーク空けの週刊文春に「英語が出来ないサラリーマンは本当に出世できないのか?」と題した記事が掲載されていました。トヨタ自動車は係長昇格の条件にTOEIC600点を掲げ、国内企業の英語化の流れが加速していると続けます。カルロス・ゴーン率いる日産自動車はともかく、ホンダまでも2020年を目標に英語を社内公用語化すると発表し、ブリヂストンは2年前から準備を始めているようです。記事では「英語化の流れは不可避」と事例を紹介する一方で、英語ができなくても現場を知る、いわゆる「叩き上げ」がいなくなることにも触れています。元ソニー、というより、破綻した「ライブドア」の敗戦処理を務めた平松 庚三氏(現小僧com株式会社代表)は、中卒程度の英語力でも、内容に中身があれば大丈夫と、ソニー創業者の一人、盛田 昭夫氏の「ジャングリッシュ」な英語力を例に説明します。確かに、英語化を進めるブリヂストンと関係の深い元首相の鳩山 由紀夫氏は留学経験からか、英語でスピーチもできます。しかし、首相時代にオバマ米国大統領とのワーキングディナーでの意見交換の結果「ルーピー(バカ)」と揶揄されたことを思い出す方も多いでしょう。なお、中学1年生で英語に挫折した私ですが、今では「社長」です。何故なら、自分で会社を作ったので。○ダンバーの解釈伝統工芸を扱う狭い業界の例ですが、ここでは仮に「着物」の業界としましょう。S社長は、いわゆるインバウンド消費に乗り遅れまいと、訪日外国人向けのサイトの「英語化」を目論みます。「ビジットジャパン」「クールジャパン」と政府が騒いでいますが、S社長の店がある場末の街角にまでやってくる外国人は、伝統工芸品より100円ショップを好みます。だからこそ、Webサイトの英語化によって観光客に足を運ばせる狙いです。彼は業者を呼んで見積もりを取ります。業者は一通り話を聞いた後、こう質問します。「身内に英語が堪能な方はいますか?」翻訳家に発注すれば、それなりの「英語」には仕上げてくれます。体裁を整えるだけなら、グーグルなどを使った機械翻訳でもできます。問題は、できあがった「英語」が英語圏のお客に伝わるかであり、それを確認する人物が、社員や家族にいるかという問いかけです。「Damper(ダンパー)」とはネットの英和辞典「weblio」によれば、「勢いをくじくもの」ですが、ピアノは「消音装置」、バイオリンでは「弱音器」、自動車では「ショックアブソーバー」と英英翻訳されているのはご愛敬としても、適切な翻訳がなされているかを確認できるのは、その業界と英語に詳しい人物だということです。○イエスしかない答えこうした事情を考慮せず、文字情報だけを「英語化」するWeb制作業者は実在します。それでは「英語化0.2」になるので、皆さんもご注意ください。そもそもWebサイトにおいて、魅力的なコンテンツがあれば、英語化は必ずしも必要ではありません。客の立場になればわかることで、内容がスカスカの母国語で綴られたサイトと、現地語ながらみっちりと情報が詰まったコンテンツなら、どちらにアクセスしたいでしょうか?しかも、機械翻訳を使うことで大体の意味は理解できます。グーグル翻訳には、南アフリカのズールー族の言葉まであり、和訳ができるなら、その反対もできることでしょう。なお試してみましたが、ズールー語への翻訳結果の正しさは、私には確認できませんでした。英語化の議論において、しばしば問われる「英語はできた方が良いのか?」という質問。これが間違っています。英語ができないことのデメリットはあっても、できることによるデメリットは考えにくく、つまり「イエス」しか答えがないのです。その一方で、英語を用いて何をするのか、何を語るのかの議論は置き去りにされます。○楽天とSBの狙いビジネスシーンにおいては、英語を使い、何を成すかが大切であるはず。にも関わらず、テストの点数が出世の条件になるとは実に日本的な「手段の目的化」です。これも「英語化0.2」でしょう。英語化といえば、その先陣を切った楽天やソフトバンク。しかし、三木谷氏と孫正義氏を重ねてみると、英語化による目指す地平が見えてきます。楽天の「Kobo」、ソフトバンクによる「スプリント」を挙げるまでもなく、ご両人とも「企業買収」が大好きで、買収した企業名を並べるだけで字数が尽きるほどです。つまり、海外との取引ではなく、海外でのお買い物のための英語化。なるほどこれは分かりやすい。何故なら、中学1年レベルにも満たない私の英語力でも「ディスカウントプリーズ」の重要性は分かるからです。○エンタープライズ1.0への箴言英語化は目的ではなく手段宮脇 睦(みやわき あつし)プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に「Web2.0が殺すもの」「楽天市場がなくなる日」(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」
2015年10月01日○人工知能という鉱脈ソフトバンクが発売したロボット「ペッパー」。ユーザーの感情を理解するという触れ込みに、「そんなものは存在しない」と指摘をするのはKDDI総研のリサーチフェロー小林 雅一氏。ネットメディアの連載で、ペッパーを「チャットボット」と分類します。問いかけた内容に応じて返事をする「ボット」のようなものだというのです。ソフトバンク VS KDDIの代理戦争かと邪推の一つもしたくなりますが、「感情」の定義には哲学的なテーゼが残され、私は小林説を支持します。一方で、テレビ東京の子供向け番組「おはスタ645」で、お笑いトリオ「ロバート」と上手に絡むペッパーの実力も評価しています。それぞれ「AI(人工知能)」への解釈や、期待度の違いといっても良いでしょう。人と同等以上の知能を求めるのか、擬似的で良いとするのかです。AI研究における世界の主流は前者で、「ディープラーニング」により研究は加速しています。しかし今、日本の「AI業界」に暗雲が垂れ込めています。○中国に持って行かれる自動運転や介護ロボ、より便利なスマホOSなど、AIへの期待は、多くの産業で高まっています。AIの研究は古く、コンピュータが開発された当初からスタートしていました。当時のアプローチは、あらかじめ「考え方」を与えておくか、ボットのように多くの「解答例」を用意するものでした。これらは良くも悪くも、人間の想像の枠内に収まり、「知能」と呼べるかという議論もありました。「ディープラーニング」はまったく別の発想です。語弊を怖れずにひと言で説明するなら、コンピュータ自身が「考え方」を見つけ出すというアプローチです。認識方法や評価基準といった「考え方」そのものを見つけ出すので、より人間に近づく可能性どころか、平成57年(2045年)には、人工知能は人間の知能を越えると囁かれております。そして現時点のAI研究において、日本は世界に劣っている訳ではありません。特許の数では米国に負けても、コンピュータ開発におけるノウハウがあり、それを支える人材がいるからです。ただし、現時点です。○東ロボくんまでが9月18日の日経新聞2面に見つけた見出しです。中国も「東大合格ロボ」開発デッサンの狂ったドラえもんが確認される「石景山遊園地」のように、中国得意のコピー商品かと思いきや、「東大合格ロボ」の開発を手がける教授 新井 紀子氏に誘いがあり、中国との連携を決めたというのです。2011年より開発が始まった「東ロボくん(愛称)」は、大学入試センター試験の合格を、AIが目指すというもので、発表当時は失笑が漏れるほど荒唐無稽と思われたプロジェクトでした。これが今では8割の私大で合格可能性が80%に越えるまでに成長しています。そして中国との連携。日経新聞は理由の一つに「お金」を挙げます。新井教授が勤める国立情報学研究所から、割り当てられる研究予算は年間数千万円であるのに対し、中国側の予算は30億円で桁が二つ違います。○お詫びと訂正当初、「国立情報学研究所」を「国立情報科学研究所」と誤記していました。また、「中国側の(新井氏らへの)オファーは30億円」としていましたが、ただしくは中国の研究開発費の予算が30億円の誤りでした。お詫びして訂正します。文部科学省も手をこまねいている訳ではなく、来年度予算の概算要求でAI研究計画を打ち出し、100億円を投じて研究施設を整備すると記事は続けますが、読了後、ある社長を思い出します。○第二、第三のありまぁすWeb制作の新規事業を立ち上げようとした運送会社のI社長。まず、手がけたのは、新規事業用の部屋の増設。「箱を作れば、中身はあとからついてくる」という発想は、トラックを買えば仕事が入り、仕事を請けてから勉強を始めても、どうにかなったバブル期に創業したI社長の経営哲学。社内でWeb制作ができる人物は、営業マンとして中途入社してきた新人のただひとり。面接で語った趣味の「Web制作」に白羽の矢を立てたのです。素人同然だという抗弁も「勉強すれば良い」で却下されます。いわば「研究員」のような立場ながら、営業マンとしての仕事は免除されません。営業マンとしての業務と両立させるため、「研究員」は寝る間も惜しみますが、営業マンは「裁量労働制」の契約のため、残業や早朝、休日出勤への割増賃金が支払われることはありません。そしてなんとか一人前のWeb制作者になったとき、研究員はそっと辞表を置いて会社を去りました。より良いオファーがあったからです。彼は言います。「場を与えられたことには感謝している。しかし、技術は自分の努力で身につけた」社内に技術は残されず、増設された部屋は物置となります。文科省の取り組みに同じ影を見つけます。予算要求にある「AI研究の拠点」とは、埼玉県和光市の「理化学研究所」。あの「ありまぁす」といった女性のためだけに、ピンクに塗られた研究室を用意したあの「理研」です。騒動を経てもなお、日本最高水準の研究機関ではあります。しかし、「2位じゃダメなんでしょうか?」と蓮舫氏が問うたスーパーコンピュータ「京」も理研の施設内にあり、AIの研究に高機能のコンピュータは不可欠。のはずなんですが、「京」があるのは神戸市の理研「計算科学研究機構」。果たして100億円は研究のためだけに使われるのでしょうか。「ハコモノ0.2」「適材適所 0.2」の匂いがします。先の研究員は、当時をこう締めくくりました。「誰も助けてくれなかったし、理解もしていなかった。そして結果だけを求められた」○エンタープライズ1.0への箴言まず、箱物という発想がダメ宮脇 睦(みやわき あつし)プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に「Web2.0が殺すもの」「楽天市場がなくなる日」(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」
2015年09月24日○少数派のための政策来月より「マイナンバー」の通知が始まります。国民一人ひとりに12桁の番号が割り振られ、来年の1月からは社会保障、税、災害対策の行政手続に用いられ、具体的には「児童手当」「年金」「保険契約」、そして「源泉徴収」への記載が求められます。その目的は「所得の捕捉」。内閣府にあるマイナンバーの解説で、第1番目にあげています。しかし、8割を超える日本人はサラリーマンで、「源泉徴収」によりガッチリ所得を把握されています。残る2割にも満たない自営業者の所得を捕捉するために「マイナンバー」を導入するなら、その経済合理性が見えてきません。赤字決算の自営事業者は少なくなく、黒字になれば税務署方面から担当者がスキップしてやってきて、「見解の相違」を理由に、さらなる税負担を求められるという都市伝説もあり「課税逃れ」は困難、というのが自営業者としての率直な感想だからです。そしてなにより「IT」に携わるものとして、マイナンバーは「穴のあいたザル」です。○ナンバーそもそもの問題個人向けのマイナンバーは12桁の数字ですが、番号の妥当性を確認する「チェックデジット」が含まれるので、実際には11桁となります。単純に1千億通りで、1億2千万人の日本人なら、833回の総入れ替えに対応できる計算ですが、逆に言えば833分1で、利用されているマイナンバーを引き当てることができます。この確率は、いまのコンピュータにとっては一瞬未満で計算できます。各種ネットサービスで「パスワード」を設定する際、英数字での組み合わせを推奨されるのは、小文字だけでも26種のアルファベットが加わることで、飛躍的に組み合わせが増大し、特定を困難にさせるため、そもそも「数字だけ」の識別番号とは、コンピュータが貧弱だった20世紀の発想なのです。欧州諸国で導入が進められている「IBANコード」と呼ばれる、国際的な銀行口座番号は、最大34桁の数字とアルファベットになっています。最大とするのは、先頭の5桁は国別番号と、チェックデジットに割り当てられ、それ以降の29桁は自由に設定できるからです。これにより天文学級の組み合わせが生まれます。○セキュリティとの関連性数字のみのクレジットカード番号も旧世代の遺物です。しかし、すでに普及しており全面改定は困難。そこで日頃、数千円単位の買い物しかしないユーザーが、十数万円の商品を決済には「本人確認」するといった、運用時に監視することで、不正利用を最小限に止める努力を行っています。「マイナンバー」からこうした取り組みは聞こえてきません。それどころか「テスト」の話しすらもありません。完璧と自負しても穴があるのがプログラムでありシステムです。この最小化のために「テスト」を繰り返します。かつての「住基ネット」でも、実証事件に名乗りを上げた自治体によるテストが実施されました。「ランニングテスト」とも呼ばれ、全体のシステムを稼働させる前に問題点を見つけると同時に、オペレーションを確立する狙いもあります。はてさて、マイナンバー稼働テストはどこかの自治体でやっているのでしょうか。それとも全国一斉に導入するのでしょうか。この可能性について、システム系のプログラム開発を行うベテランプログラマーに尋ねると「自殺行為」と吐き捨てます。私の意見も同じです。つまり「マイナンバー0.2」なのです。何より、現代のセキュリティは突破される前提で対策を講じなければなりませんが、こちらの対策も一切聞こえてきません。○そもそも論での課題さらに不気味なことがあります。クレジットカード会社が不正防止に励む理由は、金銭の損失は当然ながら、信用失墜は企業にとって致命傷となるからです。年金機構へのサイバー攻撃により、来年から予定されていたマイナンバーへの接続が延期されます。ずさんな管理体制が問題とは言え、責任の所在が明らかだったから延期が決定されたのです。一方で、マイナンバーに不正アクセスや、運用におけるトラブルが起こったとき、いったいどこの省庁が担当するのでしょうか。マイナンバー法が走り出したときの「概要案」によると、所管は以下のようになっています。マイナンバー法の所管は内閣府とする。個人番号の通知等及び番号カードの所管は総務省とし、法人番号の通知等の所管は国税庁とする。情報連携基盤の所管は内閣府及び総務省の共管とする。「法」は内閣府ですが、「カード」の所管は総務省で、情報連携基盤が内閣府と総務省。さらに、マイナンバーを説明する内閣府のサイトには、総務省、厚生労働省、消費者庁、財務省、文部科学省、農林水産省、国土交通省へのリンクが貼られています。まるで「たらい回し」の予防線です。さらに、この「概要案」が提出されたのは、平成23年(2011年)12月16日。民主党政権の野田内閣です。自公連立政権でトラブルが発生しても、制度への批判を民主党がしようものなら、伝家の宝刀「ブーメラン」が彼らを襲うことでしょう。結果、痛み分けとなり議論は自然消滅。そして誰も責任を取らずに、情報漏洩の犠牲にだけ晒される国民。この想像が、やたらリアルに思えるのはなぜでしょう。○エンタープライズ1.0への箴言マイナンバーは穴だらけのザル宮脇 睦(みやわき あつし)プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に「Web2.0が殺すもの」「楽天市場がなくなる日」(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」
2015年09月17日○脚光を浴びる鬼女佐野 研二郎氏による東京五輪のエンブレムを巡る騒動。騒動に終止符を打ったのが、釈明会見で紹介されたエンブレムの「展開例(使用例)」。記者会見からわずかな時間で、これに使用された羽田空港の写真が、外国人女性のブログからの無断借用だと、ネットユーザーが突き止めます。そして、このネットの「捜査力」への警戒を、テレビや新聞がかき立てます。中でもテレビメディアは、抜群の捜査力を誇るネットユーザーを「鬼女」と紹介し怖れています。その鬼女の捜索能力により、何でも「模倣だ」「パクリだ」とされてしまうと、新たなエンブレム策定も含めた創作活動に悪影響がでるのではないかと不安を煽るのです。「鬼女」とは「2ちゃんねる」の「既婚女性板」の略称から転じた言葉で、「鬼」には若者言葉における「スゴイ」という意味と、本音のみがあるがままに飛び交う「女子トーク」が展開される掲示板を見た、男性側からの率直な女性への評価も含まれていると言われています。果たして鬼女は創作活動を破壊する悪鬼なのでしょうか。○コンビニ土下座事件"鬼女"で有名な話の1つに、2年前の「しまむら土下座事件」があります。加害者の個人情報を特定したのは鬼女でした。自動車のボンネットに映り込んだ映像から、その撮影場所を特定したこともあります。とある朝の情報番組では、鬼女の特徴を「会社員に比べて時間があり、ニートと比較し行動力を持ち、学生よりもお金を持っている」とします。しかし、この全ての特徴を持ち合わせている「主婦」は極めて少数派。主婦の多くはそれなりに忙しいものです。子どもがいれば習い事の送り迎えに、PTAがらみの呼び出しは多く、特売品を求めて東奔西走し、掃除に洗濯、食事の用意を担う。その合間には自分へのご褒美を与えることも忘れない主婦を、よくも「ヒマ」だと言えたものです。朝のワイドショーのターゲットは「主婦」。なるほど、同番組の視聴率が振るわないわけです。○鬼女のネットワーク恐るべき捜査能力を可能にするのは、主婦の「ネットワーク」と「フットワーク」です。といっても、それぞれ普通の主婦が持ち合わせているレベルのものですが、子供を介した「ママ友ネットワーク」は会社員と違い、社会の階層や業種に縛られません。さらに、アラフォーやアラフィフになっても「ジャニーズ事務所」のタレントを追い掛ける「ジャニ友」のつながりは全国に拡がります。昔の勤務先、学生時代の友人、知人にアクセスすれば、わずかながらも某かの情報を拾えることでしょう。フットワークとは、セール品を求めて隣町まで自転車を飛ばし、ママ友が集まるファミレスに足を運ぶ程度のこと。それでもネットで話題になっている「現場」が近所なら、少し道草を食うだけで取材は可能。そして主婦は、北海道から九州、沖縄どころか、世界中に存在します。一人の主婦が集められる情報は微々たるものといっても良いでしょう。それが「掲示板」に集約され、情報が精査されることで核心に近づいていきます。つまり「鬼女」とは、いわゆる「Web2.0」が喧伝された当時の言葉でいう「集合知」。ネットの健全な成功例と評価すべきでしょう。○話しをすり替えるメディア鬼女への脅威論とは、論理のすり替えです。当該エンブレムはともかく、その他のデザインにパクリがなければ、早晩収束したことでしょう。ところが、笑ってしまうほど簡単に、パクリが次々と発覚したのです。羽田空港の写真は、「ピンタレスト」という画像共有サービスで、いまも容易に見つかる程度のもの。さしたる捜査能力など必要のない「鬼女0.2」です。今回のネットユーザーの動きを、佐野氏への「個人攻撃」とし、「イジメ」と評する評論家まで現れました。しかし、ネット上に拡散された佐野氏と、選考委員らの「関係」は深く、「グル」と見なすことはやぶさかではありません(※佐野氏らは根拠のない関係図として否定しています)。この関係図には、佐野氏の出身である大手広告代理店の影もちらつきます。大手広告代理店と権力、そしてテレビ局が「ずぶずぶの関係」とは、「邪推」が多く混じっているとはいえ、ネット界隈では"常識"として捉えられています。佐野氏は、か弱き一市民への攻撃ではなく、既得権益の代表者と見られていたのです。また、五輪組織委員会は公益財団で、そこには血税が投じられており、森喜朗元総理大臣など相応の人物も関与していながら、エンブレム騒動では前面にでてこず、つまりは「権力への批判」という側面もあったのです。これは本来、テレビも含めたメディアの仕事です。しかし、なぜだか佐野氏への擁護が目についたのは、先の「邪推」を下敷きとするからでしょうか。先の番組は「主婦はヒマ人」とし「鬼女は怖い」というミスリードを目論みます。繰り返しになりますが、主婦はそれほどヒマではありません。こうした「マスコミの嘘」が、真実を求める主婦をネットに走らせます。そして、持ち寄った知識や情報が集積された「集合知」の果てに「鬼女」が生まれました。仮にマスコミが鬼女を怖れるなら、正しい報道をすることこそ、最善の予防策ではありますが、無理でしょうね。○エンタープライズ1.0への箴言鬼女はそんなにヒマじゃない普通の主婦宮脇 睦(みやわき あつし)プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に「Web2.0が殺すもの」「楽天市場がなくなる日」(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」
2015年09月10日○テレビコンテンツはまだ終わったわけではない先週末に放映された27時間テレビ。そのポスターがネット界隈で、わずかながらに話題になっていました。特撮ヒーロー風の扮装をした、司会を務めるナインティナイン岡村隆史の横に、「テレビの時代はもう終わり?」と、添えられたキャッチコピーに対して「テレビではなくフジテレビがな」とつっこまれていたのです。総力をかける番組に対して「わずかながら」にしか、話題にならないところに、今のフジテレビの置かれた状況が見て取れます。しかし、このキャッチコピーはある面で的を射ています。その結論は「ネットの普及」にありますが、YouTubeやSNSに視聴者が奪われているというステレオタイプの、「テレビオワコン説(オワコン=終わったコンテンツ)」ではありません。日本の「テレビコンテンツ」が、そもそも「0.2」だったということです。つまり「1.0」に進化することができれば、まだまだ「テレビの時代」が続く可能性もあると見ています。○ネットを嘆くNHK明らかに部屋の中から「テレビの音」がしているので、NHKの集金人は、少し強気に視聴料の支払いを迫ります。すると片言の日本語で「ワタシ中国人。それにテレビじゃない。ヨウク、ネット動画ネ」と反論されます。「ヨウク」とは中国の動画共有サイトで、著作権などがアレな国柄らしく、いまでも「あまちゃん」の全話を中国語字幕付きで視聴することができるなど、日本の地上波放送も数多く無料で配信されています。つまりNHK受信料の要件であるテレビ=受像器がなくても「テレビドラマ」を見ることができるのです。NHKの集金人は溜息をつき扉を閉めたと言います。テレビの時代の終焉は、こうした無断複製された違法動画のネット拡散が理由ではありません。凋落が叫ばれるフジテレビでさえ256億円もの粗利を計上しているのですから、これによるテレビ局の利益侵害は、それほど深刻なダメージはないでしょう。それよりもはるかに深刻なのが「信用失墜」です。衆議院を通過した安保法制を巡り、あるニュース番組では「反対する若者の声」を報じていました。ところが「普通の若者」と紹介された幾人かは、いわゆる「活動家」でした。ある女性など、破壊活動も辞さないと断言しています。思想的な偏りがある活動家は「普通の若者」ではありません。彼らの名前を「ネットで検索」するだけで「活動」はすぐに見つかります。思想的背景を紹介した上で、発言させる分には問題ありませんが、「一般人」としての紹介は、彼らの政治活動を応援する目的か、取材不足のどちらかで、いずれにせよ「ニュース」の名に値しません。○フローからストックへとある有名キャスターはNHKの討論番組で、対立する意見を「仮定の話はいかんよ」とたしなめますが、自説を開陳する場面では「仮の話し」を繰り返します。生放送や1回限りのオンエアなら、堂々と大きな声で発言する姿に説得力を見つける視聴者もいることでしょう。しかし、保存されたネット動画により、発言の矛盾は、いつでも確認できるようになりました。テレビとは、放送と同時に消えていく「フロー」のコンテンツでした。一回限りの上演を前提とし、視聴率獲得を至上命題となるにつれ、論理的整合性よりもインパクトが求められ、証拠集めの「裏とり」もそこそこにニュース番組が作られるようになります。端的に言えば「その場限り」で、やりたい放題していたのが「テレビコンテンツ」です。ネットの普及は、テレビコンテンツをフローから「ストック」に変えました。そしてお手盛り報道や、自己矛盾だらけの「論客(コメンテーター)」の正体があきらかになりつつあります。ある場面では白を黒とし、次の瞬間にそれを赤と呼ぶようでは信頼などされるわけがありません。つまり、テレビコンテンツとは「0.2」だったことが明らかとなったことが、「テレビの時代の終わりのはじまり」です。○テラスハウスの数字はもっと簡単に言えば「嘘まみれ」だったのです。映画化までされた「テラスハウス」ですが、地上波放送時の実際の視聴率はふるわなかったと告白したのは同局の『新週刊フジテレビ批評』です。土曜日早朝の番組で、視聴者の少ない番組ながら、みずからの「お手盛り」を白状していました。同じくフジテレビ、というより冒頭で紹介した27時間テレビでは、ポスターの主である岡村隆史が「ライザップ」でシェイプアップを目指すという企画が進行しています。その「ライザップ」のイメージキャラクターを務める、SMAPの香取慎吾が応援に駆けつけ、岡村に食事制限の厳しさを伝えます。穀物類は厳しく制限され、サラダにのった「コーン」まで禁止だと教える姿はライザップの伝道師です。その放送から1ヶ月もしないフジテレビでは「お米2升を食べ尽くす」という企画で、ライザップ香取に白米と呼ばれる糖質を執拗に摂取させていました。当事者ではないとはいえ、チグハグ感は否めず、局としての整合性が疑われる「コンテンツ0.2」を体現しているといえるでしょう。○エンタープライズ1.0への箴言ちゃんと作られたテレビ番組は、いまでも面白い宮脇 睦(みやわき あつし)プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に「Web2.0が殺すもの」「楽天市場がなくなる日」(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」
2015年07月30日○自治体に忍び寄るブームお役所仕事というと「遅い」「融通が利かない」といったイメージがありますが、近頃のお役所は「ブーム」に何でも飛びつきます。その最たるものは「ゆるキャラ」。雨後の筍というより、防波堤のフナムシのように、多くの自治体で「ゆるキャラ」が量産されています。私が暮らす東京都足立区には、犬のダルメシアンを模した「エラビ→(エラビーと発音)」と呼ばれる"ゆるキャラ"がいます。キャッチコピーは「すてないで!せんきょけん」とありましたが、今年の5月に実施された統一地方選挙の投票率は前回より下がっています。効果の検証もせずに量産される「ゆるキャラ」とは、作ることが目的化しているようでなりません。そしていま、静かに自治体を席巻する「ブーム」が、スマホ向けの「アプリ」です。多くの自治体で"開発"しているのが「ゴミ出しアプリ」。スマホのGPS機能を利用して、地域のゴミ出し日を教えてくれるアプリです。わざわざ「明日は可燃ゴミの日です」と通知をしてくれる機能まで搭載され、「親切」という評価もありますが、もっとも多い感想は「そんなアプリあるの?」という使い勝手以前の問題です。○そもそも論の矛盾同じく量産されているのが「防災アプリ」。臨海部を擁する東京都港区の「港区防災アプリ」は、津波浸水時のイメージ画像を見ることができるなど、地域の特性にあわせた工夫をしています。ただ、このアプリをわざわざインストールする人は、日頃から防災意識が高いわけで、アプリをインストールしない人への啓発こそ、自治体に求められる仕事の気がしてなりません。先の「ゴミ出しアプリ」にしても、新しく転居してきた住民の利用が想定されいるものの、今時のマンションはそれぞれ敷地内に、日時を選ばないゴミ置き場を設置しています。また、数件単位の宅地分譲であっても居住者専用のゴミ出しスペースを確保するため、現状を考慮すると需要はあまり強くないように感じます。ゴミや防災は自治体にとって重要な仕事ですから、まだ良しとします。ある果実で有名な自治体は、その果実を育てるアプリを提供しています。俗に「農ゲー(農業ゲーム)」と呼ばれるもので、特産品への理解と、自治体への観光誘致を狙っています。しかし、育てるのは特産品の果実だけ。刺激の少ない展開に「単調な繰り返し、飽きた」とはユーザーの声です。○ときめきの先に何もない百歩譲って特産品も見逃しましょう。ただし、そのアプリがゲーム以外に提供するコンテンツは、観光地の動画や公式ブログなどの「ホームページ」で事足ります。しかしながら、わざわざアプリを開発したことで余計な税金を使っているとしても、私はその自治体の住民ではないので文句を言う筋合いはありません。何より、「特産品の農ゲーなぞ遙かにマシ」と思わせてくれるのが、「ときめきGG(仮称)」という自治体の名前を冠した「恋愛シミュレーションゲーム」の存在です。少女漫画というかBL風の3人の「イケメン」と、観光地をデートしていくというストーリー仕立て。開いた口を閉じ、頭を冷やして見ると、税金を使ってゲームを提供するのはそもそも「民業圧迫」です。それでもアプリが愛され、使われ続けているのなら、千歩譲って見逃すこともやぶさかではありません。しかし、その自治体の公式サイトトップページには、果実も恋愛も見つかりません。まるで「なかったこと」のようであり、これはこの2つの自治体に限ったことではありません。○Aだちんの末路必要性や費用対効果、その後の検証作業などを一切無視して量産され続ける「アプリ」に見つけるのは「ゆるキャラ」の影です。「ふなっしー」や「ねば~る君」の活躍に、明日の我が身を重ねるのか、「選挙だ」「祭りだ」とイベントが行われるたびに量産されます。しかし、「くまモン」も含めた、彼らの背後には「プロ」がいて、それ故の成功だという分析の形跡を「エラビ→」からは見つけることが出来ません。これはアプリも同じで、プロが鎬(しのぎ)を削るアプリの世界に、自治体職員の思いつきレベル「アプリ0.2」、すなわち「ゆるアプリ」を投入するのは税金の無駄遣いです。我が町、足立区は「ゆるキャラ天国」。区は開き直って「あだちキャラクター人気投票」をWeb上で開催するも、約70万区民ながら、投票総数がわずか581件。首位の176票と2位の99票はともかく、以下52票、42票、38票とはほぼ誤差の範囲で、「エラビ→」は22票で8位。選挙の度に、自治体発行の印刷物その他に刷り込まれながら、ここまでの低い人気は「キャラクター」というより「記号」です。さすがの足立区も間違いに気がついたのか、この2月から「Aだちん(仮)」なるゆるキャラが「リストラ」されました。足立区の新規事業の一環として採用され、区役所に連なる準公共団体の支援を受けて鳴り物入りで登場したものの、犬の「ちん」をモチーフにした造形は、足立区に縁もゆかりもなく、自治体の名前に「ん」をひっつけただけの駄洒落の産物。リストラは夕刊ながら日経新聞の一面(2015年4月4日号)で報じられ、そこでは「地元人気は高いが」とありますが、このキャラに親しみを感じている区民に、私は出会ったことがありません。乱発される「ゆるアプリ」の未来を「Aだちん」に見つけます。○エンタープライズ1.0への箴言「アプリ」なくとも情報提供はできる宮脇 睦(みやわき あつし)プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に「Web2.0が殺すもの」「楽天市場がなくなる日」(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」
2015年07月02日○山里亮太のクズ論先月末の5月30日(土)、東京ドーム近くの研修センターで「クズ養成講座」なるイベントが開催されました。午前10時30分より始まった講座は「パチンコ・スロット」にはじまり、「麻雀」「競馬」「友人からのお金の借り方」「酒・タバコ」の順番で5限までの長丁場。講師は「プロ雀士にもなれない本物のクズ」が担当するとのことで受講料は3400円。プレスリリースが流されたときは、ネット界隈の一部で話題になっていましたが、見出し先行のいわゆる「ネタ」として消えていました。これを先週発売の「週刊新潮」がモノクロのグラビアページで取り上げます。ネット用語でいう「釣られ」てしまったのでしょう。実際、この手の「ネタ」を好むネット媒体でも、取材し、報告していたのはわずかです。とあるお笑いタレントさんは、「クズ養成講座」を取り上げたラジオ番組で「お金払ってまで学びたい人はクズじゃない」と指摘します。その通りです。ただし、発案者には「クズ」の匂いが漂います。クズとはいわば「社会人0.2」。クズの生態を知っておくことは、健全な市民生活を過ごす上で、役に立つかも知れません。立たない方が幸せですが。○パチプロという生き方発案者は主催した企業の社員で、「パチンコ・スロット」の講師も担当していました。公然と他人を「クズ」呼ばわりすることに、一握の良心が痛みますが、「本物のクズ」を自称しているのですから、クズとはむしろ「称号」にあたると解釈して筆を進めます。この講座をレポートしたネット媒体は、「パチンコ・スロットをやるなら、"なりわい"になることを目標にして欲しい」とする講師の言葉を紹介します。本物のクズは目標などもちません。妄想を吐けども、目標を持たないからクズでいられるのです。そもそも"なりわい"とは、それで生計を立てるプロを指しますが、現代において、パチンコ・パチスロだけの収益だけで生活する「パチプロ(スロプロ)」になるのは不可能です。「攻略法」が存在した90年代ならいざ知らず、完全確率になった現在、勝敗を分けるのは「運」だけだからです。別のネット媒体の報告によると、講師自ら「運」だと認めております。自分にできないことでも、他人に対しては上から目線で講釈を垂れることができるのがクズです。経験を通じて身につけた、私の「クズセンサー」が警告音を発します。○講座には3つの欠陥クズは「プロ」になれません。パチプロで、パチンコライターの草分け的存在の故・田山 幸憲氏は、パチンコ台の釘の傾きを記憶し、日々の調整による「流れ」から「ホールの意図」を見抜くことで、勝率を高めようとしていました。勤勉さに記憶力、想像力を用いた勝負の世界がそこにあります。どんな世界でも「プロ」となり、「プロ」であり続けるためには努力が求められるのです。かつて筆者は「パチプロ」の端くれをしていたことがあります。そしてパチプロより、会社員の方が何百倍も不真面目にしていても、お金が貰えると気がつき、社会復帰したのはいまから20年以上前の話です。講座には構造的に3つの致命的欠陥があります。ひとつはお笑いタレントが指摘した「学び」で、ふたつ目が「友人からのお金の借り方」という講座のあるところ。しかも講座の中で、"借りたら感謝(週刊新潮)"と心得まで説いています。この講師は、不良に憧れる学級委員のように、クズに憧れる善良な市民ではないでしょうか。ならば「クズ0.2」です。先のラジオ番組で共演していた別のお笑い芸人は「親や嫁の金を盗んで博打に使うのがクズ」と持論を展開。クズとは、他人の財布の中身を、自分のものと考えます。この視点で見ると、先日少し触れた「上場ゴール」は、合法的なクズといえます。○クズの真骨頂株式上場とは、企業を成長させる為に必要な資金を、市場から集める方法です。ところが、「上場」で個人的な利益を得ることだけを目標=ゴールにしている企業の存在が噂されています。株式市場への重大な背信行為ではありますが、「出資」された金に返済義務はありません。いわゆる合法的な「借りパク」です。ちなみに「騙される方が悪い」と考えるのも「クズ」の特徴です。才能あるクズの存在が見え隠れしながらも、「クズ養成講座」が間違っている3つめの理由は、講義の順番にあります。この内容で、クズを養成するならこうなるからです。友人からのお金の借り方酒・タバコ競馬、パチンコ・スロット(同率)麻雀まず、友人(正しくは自分以外の誰か)から金を借り(不許可賃借も含む)、タバコを買い、酒をあおり、これを「景気づけ」と呼びます。パチンコ店前で競馬新聞を広げて「開店待ち」。いまはスマホで馬券を購入でき、ホールで打ちながら競馬に参戦できます。パチンコ店の営業が終わってからは酒を飲みながらの麻雀タイム。酔いが回って打ち筋が乱れても、気にするようでは立派なクズにはなれません。ハードスケジュールに映るかも知れませんが、これをすべて「惰性」で行えるのが「クズ」です。この手の人物と接点を持っても、メリットはまずありません。迅速に縁を切ることをオススメします。最後になりましたが、"なりわい"に必須となるパチンコ・スロットでの換金行為はもちろん、メーカーから出荷された後の、パチンコ台の釘調整は厳密な法解釈において違法行為と指摘しておきます。○エンタープライズ1.0への箴言借りパクできる株式市場……もとい、クズになるのは意外にむずかしい宮脇 睦(みやわき あつし)プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に「Web2.0が殺すもの」「楽天市場がなくなる日」(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」
2015年06月12日○連想買いの株高日本年金機構が、サイバー攻撃にあい125万件の個人情報が流出していたと6月1日に謝罪会見を開きました。ウイルスに感染したパソコンを経由して、不正アクセスが行われていたというのです。機構の発表によれば、添付ファイルの開封による感染というよくあるパターン。事件を報じた産経新聞は、前身の社保庁時代の「年金履歴のぞき見事件」と異なり、被害者の側面があると紹介しますが、次々と明らかになる事実からは「重過失」の疑いが浮かびます。情報流出が発表された翌日の東京株式市場。ラック、FFRIなど、セキュリティ関連会社の株は、買い気配のまましばらく値が付かずにいました。事件により、セキュリティ対策の需要が高まり、好業績に繋がるという思惑買いと見られます。しかし、ソフトやハードを強化するというテクノロジーからのアプローチだけでは再発防止は夢のまた夢の「セキュリティ0.2」です。○約40台の感染ウイルス感染が発覚したのが5月8日。官公庁へのサイバー攻撃を監視している「内閣サイバーセキュリティセンター」が、不審な通信を見つけ同機構に通報し、当該パソコンを外部ネットワークから遮断します。この迅速な対応だけは、極めて優秀と評価できます。ところが不思議な事実が明らかとなっていきます。添付ファイルをクリックした職員は、5月8日だけでなく、18日にも現れたというのです。この情報だけ見るならば、感染したパソコンは2台のはず。しかし、全国紙Aでは十数台、ほかの全国紙に至っては「約40台のパソコンが不正なアクセスを受けたとみられる」と伝えているのです。パソコンのウィルスはUSB端末やネットワークを介して拡がります。マスコミ各社の報道を総合すると、感染発覚により外部ネットワークから切り離したパソコンを、内部ネットワークに繋いでいた疑いが強まります。ノートパソコンの「無線LAN(Wi-Fi)」をオフにしただけで、通信ケーブルは接続したままだったということでしょうか。これではインフルエンザを発症した社員を、帰宅させずに事務所内で働かせ続けるようなもの。感染拡大は言わずもがなです。○大半はヒューマンエラー個人情報の書き込まれたファイルは、パスワードを設定しなければならないという内規がありました。パスワードをかけておけば、仮に個人情報が流出したとしても、容易に中身が見られることはありません。万が一の情報流出時に、被害を最小限に食い止めるためのルールで、情報管理からみて妥当な対策です。ところが、流出した個人情報の44%にあたる、55万件が未設定でした。鍵をかけていない金庫は、かさばる戸棚に過ぎません。被害を決定づけたのは、従来は堅牢な基幹システム内にあった個人情報を「ファイル共有サーバ」に移したことです。朝日新聞が「パソコン」と表現していることから、パソコンの「ファイル共有機能」かも知れませんが果たす役割は同じです。感染したパソコンは、ここにあった情報を見つけ、外部に送信していたのです。つまり、ここに情報を置いておかなければ、そもそも論として流出する情報はなかったのです。二重三重の人間によるミスと、管理の不徹底という「ヒューマンエラー」の前には、どんな堅牢なセキュリティ対策も「0.2」に成り下がります。○習っていないから知らないまた、発表前に「2ちゃんねる」では内部情報と見られる書き込みが見つかっています。旧社保庁の事件からも、日本年金機構という組織に根ざす、情報を取り扱う事業者としての危機意識の欠如は論外のレベルですが、大なり小なり、どの企業も内包する現代的な課題です。ソフトやハードを強化するだけでは再発防止は不可能です。機構の対応のまずさは特筆に値するとしても、問題の本質は「ヒューマンエラー」にあるからです。早急であり恒久的な対策としては、教育、指導、訓練といった「人」への投資で、これを疎かにしている企業は少なくありません。どれだけ堅牢なセキュリティを施したとしても、身内が無邪気に壁に穴をあけているようでは、防ぐことなどできません。あるいは窓口にやってきたテロリストを応接室に通し、正体が明らかになった後も、行動の自由を許していたとすれば、例え吉田沙保里さんが扮する「安心戦隊ALSOK」でも平和を守ることは出来ません。セキュリティソフトが脆弱だった20世紀、ウイルス被害は珍しいものではなく、某ラジオパーソナリティは買ったばかりのパソコンが感染していたことを繰り返しネタにしています。ところが堅牢なセキュリティシステムが普及するに従い、個人レベルでの危機感は薄れてきます。さらにスマホの普及で、若者世代を中心に、パソコン離れ、電子メール離れが進んだことにより、むしろ危機は増大しているように感じます。○エンタープライズ1.0への箴言不正アクセス対策で欠けている「教育」という視点宮脇 睦(みやわき あつし)プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に「Web2.0が殺すもの」「楽天市場がなくなる日」(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」
2015年06月04日○ネットで脱法を宣言東京浅草の三社祭で「ドローン」を飛ばそうとしたとして、15歳の少年が威力業務妨害で逮捕されました。「補導」ではなく「逮捕」に、少年の悪質性が滲みます。全国的なニュースとなった「善光寺」でのドローン墜落事件も、この少年による「犯行」で、今月14日には国会近くの区立公園からドローンを「飛ばそう」として警察に補導されており、そのすべてを「ネット配信」していました。警察官が近づき注意をしても屁理屈をこね従わず、自宅に戻されてからも執拗な警察批判を配信し続け、そんな息子を嘆く母の言葉に「これからも法律を破る(発言要旨)」と、カメラの前でほぼ全裸で宣言していたのが15才の容疑者N。いわば「常習犯」です。三社祭では、主催者側の「ドローンの自粛」の呼びかけにも、「撮影禁止とは言っていない」と屁理屈をこね、ネット上で「犯行予告」をしていました。ドローンには墜落のリスクがあることは、容疑者自身が「善光寺」で証明したことです。容疑者を野放しにし、三社祭に足を運んだ観光客の頭の上に落下したら、警察批判が巻き起こる……というよりも「容疑者保護」のための逮捕だったとは深読みしすぎでしょうか。○追い詰められた少年犯罪の動機は「お金」です。Nは追い詰められていました。ネット配信で収益を得る方法は「広告」と「スポンサー」。前者は映像と共に表示される広告がクリックされたときに得られ、後者は直接映像提供者に支払われます。あまり知られていませんが、動画投稿の「ユーチューバー」や、ブログ執筆の「ブロガー」の生活は、大口の「スポンサー」が支えているケースが少なくありません。Nが飛ばしていたドローンは、15万円はすると見られ、中学を卒業したばかりの「ニート」が入手できた理由を、より過激な映像を望む「スポンサー」の資金だと「週刊文春」が紹介します。犯行を広言するNへの資金提供は「共犯」として罪に問われる可能性もあると、大澤孝征弁護士がテレビ番組で指摘します。これが理由でしょうか。Nの信者を名乗る成人男性が「パソコン購入資金を提供した」と出頭します。「ドローン」ではなく「パソコン」への資金提供で、罪の免除を狙っているのでしょうが、類は友を呼ぶという言葉が浮かんで消えません。Nの配信する違法・脱法映像は、動画配信サービス各社の内規に触れ、次々と「BAN」と呼ばれる放送禁止措置がとられていきました。コンプライアンスが叫ばれる昨今、違法性が疑われる動画の寿命は短く、つまりは「稼ぐ場所」をなくしつつあったのです。そこで「三社祭」での「犯行予告&実況中継」で一発逆転を狙ったのでしょう。○公園の撮影は2万円国会近くの公園で「犯行準備中」に警察官に囲まれたときも、「公園内に撮影禁止と書いていない」と、主張していました。三社祭が「撮影禁止」と掲げなかったのは、観光地でもある「浅草」で、祭りはもちろん、観光客の私的な撮影を禁ずることなどできないからです。それはNがドローンを飛ばして、自由に撮影して良い理由にはなりません。なぜなら、Nの「ネット配信」とは収入目的で、それは「営利活動」です。所有地以外での「営利目的の撮影」には、地権者や管理者の許可が必要となるからです。撮影に許可が要る理由を、占有される場所の安全確認のためだと、Nがドローンを飛ばそうとした公園を管理する自治体は説明します。その費用として1時間当たり2万円弱の費用が必要だと公式サイトに掲載されています。公園内に記載は無くとも、公式サイトには明記されており、正規の手続きをとっていないNが、営利目的で撮影する資格も権利もない「配信0.2」です。公道なら所管する警察署、公園なら自治体ですし、私有地なら所有者か管理者の許可が求められます。ただし、場所や遊具を占有しない、私的な撮影なら許可は不要です。○三社祭のヒーロー先のテレビ番組では、少年への逮捕を「やりすぎ」と批判めいて語る女性コメンテーターもいましたが、逮捕はNを保護するためかもしれません。場所は浅草。そこは下町。祭りとなれば、血が沸き立つのが「やんちゃ」な人たちで、地元客分プロアマ問わずに集結し、良くも悪くも祭りを盛り上げます。そこにネットでは顔も声も公開しているNが、ドローン片手にやってきたならば、鴨が葱ではなく、ハエがハエ叩きを背負って飛んでくるようなもの。懲役を別荘と呼ぶ人たちはともかく、「三社祭をドローンから守った」となれば地元浅草のヒーローで、そのときNの得意とする屁理屈などは、小指ひとつとして彼の身を守ってはくれません。警察としては「祭りを楽しむ浅草っ子」を犯罪者にしないための「緊急逮捕」だった。というのが私の見立てです。○エンタープライズ1.0への箴言営利目的の撮影は「許可」がいる宮脇 睦(みやわき あつし)プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に「Web2.0が殺すもの」「楽天市場がなくなる日」(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」
2015年05月28日○寛大なるムスリムチュニジアで博物館がテロリストに襲撃され、邦人にも犠牲者がでました。イエメンでも多くの犠牲者がでるテロが起きました。頻発するテロ行為に「宗教戦争」と指摘する声もありますが、いうまでもなく大半のイスラム教徒は平和を望み、世俗と宗教に折り合いをつけています。ある中東出身のムスリム(イスラム教徒)は、禁忌である豚肉を、同じく禁忌のアルコール入りビールで流しこみ「美味い」と白い歯を見せていたものです。本音と建て前を上手に使い分ける「寛大さ」がある、というのが私のイスラム教へのイメージです。一方、ダーイシュ(テロ集団イスラム国の蔑称)は寛大さの対極にある「原理主義」を標榜していますが、厳格に教義を守るという意味の「原理主義者」からも、異論が出るほど独自の解釈が目立ち、狂信を意味する「カルト」に分類する方が正しいでしょう。日本でカルトといって真っ先に思い出すのは「オウム真理教」です。後継教団は「アレフ」に改名し、一部は「光の輪」に分派しましたが、公安の発表によればどちらも実体は「オウム真理教」とのことです。地下鉄サリン事件から20年が経過しましたが、私の住む足立区には、オウム関連施設が数カ所あり、オウムは過去の話しではありません。それどころか、カルトとSNSの親和性は高く、ネットの普及がオウムの動きを活発にし、ダーイシュを助けています。○SNSとはなにかSNSの大半は、趣味や嗜好をプロフィールとして公開することを推奨しています。年齢や性別、出身校を求めるものもあり、投稿に不平や不満を見つけることは珍しくありません。こうした情報からカルト集団が「カモ(ターゲット)」を探すのは容易です。不平や不満とは心が満たされていないことの告白であり、個人情報を公開しているのはセキュリティ意識の低さと同時に、自己顕示欲の強さを意味します。この手のタイプは「認められる(自己承認)」ことに飢えており、ひと言、誉めてあげるだけで信頼を得ることが可能です。また、年齢や性別から心身の不調や、不安を言い当てることは造作のないことです。騙す技術を工夫するより、騙しやすいカモを探すのが詐欺の基本で、SNSとはいわば「騙されやすさのスペック(基本性能)」を公開しているようなものなのです。真偽は定かではありませんが、SNSで、ダーイシュへの興味を語った学生に、「リクルーター(採用担当)」らしきものから接触があったとも報じられています。○宗教にはまる理由さらにオウムに限ったことではありませんが、「宗教」をやっている人は、みな「良い人」に感じさせるものです。私もある「道場」に誘われ、新興宗教に片足を突っ込んだことがあります。未成年も終わりを告げるころ、世間はバブル経済に熱狂しつつも、誰もが漠然とした不安を抱えていました。オウムの拡大期と重なりますが別の新興宗教です。そして両足をいれる直前に、ある人から忠告されました。「宗教をやっている人は、みな良い人。良いことをやっていると信じているのだから当然」ムッとしました。自分に親切な人を悪くいわれたと反発したのです。これは「内集団バイアス」と呼ばれ、カルト集団からの脱退を難しくさせる理由のひとつです。所属する(関係する)集団と自己の同一化で、反対するものの存在により、自分の意志で関係性をより強めてしまうのです。しかし、勧誘する側が親切なのは当然で、住宅展示場の接客担当が至れり尽くせりの接待をするのと同じです。忠告者は言いました。「本当の信仰とは求める人に開くもので、勧誘するものではない」ちなみにこの忠告者は、別の新興宗教の教祖的立場にありましたが、確かに今に至るまで一度も勧誘されたことはありません。○東京拘置所のヘリポートオウムが殺人を「ポワ」と呼び、功徳に数え、ダーイシュが殺人を正当化するように、カルト集団の教義は一般人の理解を超え、冷静さを取り戻せば脱会や脱走がはじまります。組織の求心力となるのは、教祖よりも「新人」の存在です。善と悪という二元論もカルトの特徴で、一般社会が悪(間違っている)だから、善なるカルト側に人が来るという論理です。それが信仰への疑念を払拭させます。つまり勧誘し続けないと組織が崩壊する「宗教0.2」です。だから、勧誘=リクルートに熱心なのです。カルトのリクルートにSNSは利用されます。繰り返しになりますが、それは「スペック」が公開されているからです。不用意なプライバシーの公開と、見知らぬ「良い人」には警戒が必要です。我が町足立区や、その周辺にオウム関連施設が多いのは、「教祖奪還」のためだという噂を耳にしたことがあります。一連の事件の首謀者である、教祖麻原 彰晃(あさはらしょうこう)こと、松本智津夫(まつもとちづお)死刑囚が東京拘置所にいるからです。施設は自動車で30分以内の距離にあり、なかなか信憑性のある話しですが、松本は「空中浮遊」できると広言していました。教祖の言葉を信じるなら、むしろ必要なのは「ヘリポート」でしょう。その点、拘置所の対策は万全です。松本の逮捕から2年後に始まった大規模改築工事では、まず「ヘリポート」が新設されたのです。それを我々、地元の住民は、松本が空中浮遊で脱走したときの対策……と冗談にしていました。ちなみに東京拘置所の所在地は「葛飾区」ですが。○エンタープライズ1.0への箴言SNSとは騙されやすさのスペック(基本性能)宮脇 睦(みやわき あつし)プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に「Web2.0が殺すもの」「楽天市場がなくなる日」(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」
2015年03月26日伊勢丹新宿店では3月4日、5階リビングフロアと6階ベビー子供フロアがグランドオープンする。それに伴い、5階ウエストパークにて鹿児島睦の個展「“装飾”展―花と鳥―」が開催される。同氏は独特のタッチと図案構成で、動物や植物をモチーフとする作品を生み出す陶芸家。陶器だけでなくファブリックや版画などの製作も行っており、これまでにアメリカやイギリスなどでも個展を開催している。同展ではそんな鹿児島の作品の中から、ポット型のアートピースをはじめ、花や鳥をモチーフとしたアートオブジェや壁面オブジェのウォールレリーフなど、希少な限定アイテムがラインアップされる。さらに、優雅に翼を広げる鳥の姿を波佐見焼で表した“壁の鳥”のオブジェの先行販売も行う。全3型のバリエーションで、色もホワイト、ブラック、イエロー、ブルーなど全11色。同氏は「“壁の鳥”は陶芸を始めてすぐから作り始めた。波佐見の名工の方々とプロダクト化することができ、とても嬉しい」とコメントしている。同氏は15年春から子供服ブランド「ファミリア」とコラボレートし、自身がデザインしたオリジナルファブリックを用いたベビー用のカバーオールやクッションカバー、バッグ、ポーチなどのアイテムを提供してきた。同展ではそれらの作品の中から、大小の花をモチーフにしたファブリックパネルが展示される。
2015年02月19日○必ずくる未来衆議院選挙の結果を知らずに執筆しておりますが、自民党が300議席を越えるのではないかと報じられています。日頃、論調や支持政党が異なる新聞社が、同じ結果であることから自民党の有利は間違いないことでしょう。ただし、有利な情報は候補者や支持者に気の緩みをもたらし、判官贔屓も相まって中間派を離反させることもある……と、結果の出た選挙に語ることではありませんね。いずれの結果にせよ「インフレ」が到来するのは間違いありません。日銀は2%のインフレ目標を掲げ、自公政権は「デフレ脱却」を目指しています。仮に他の政党が政権を握ったとしても、当面は政策を踏襲すると考える理由は、彼らに代替となる具体的な経済政策がないからです。また、万が一「日本共産党」が政権を握ったとすれば「消費税は廃止」され、弱者救済にお金がばらまかれることでしょう。インフレとは相対的にお金の価値が下がる状態を意味します。市中にお金がだぶつけば、お金の価値が下がるのは自明。やはり「インフレ」になるのです。その「インフレ」において、「デフレ」でのやり方は「0.2」となります。○デフレの販促デフレの始まりを3%から5%へ消費増税が上がった1997年とすれば、すでに17年も続いたことになります。現在30才の人にとっては、中学生に上がった頃からモノの値段が下がり続けてきたのです。「デフレ」しか知らない社会人も増えています。デフレ経済を体現していたのが「牛丼」です。20世紀において「牛丼」といえば「吉野家」でした。BSE騒動で牛丼が発売中止になると店には長い行列ができて、通販用レトルトの牛丼の具はプレミアム価格で転売されたものです。牛丼市場に「低価格」で殴り込みをかけたのが「松屋」であり「すき家」です。並盛りは300円以下が当たり前の時代に突入しますが、その「300円市場」に「290円」の中華そばで参戦したラーメンチェーン「幸楽苑」があります。同等の商品なら「価格差」に適う差別化はありません。「価格政策」はデフレ化における最重要戦術なのです。○期間限定の罠健康食品通販のS社長。公式ツイッターフォロワー向けに期間限定で「7割引きセール」を開催しました。健康食品の多くは粗利率がとても高く、S社長の商品は7割引きでも多少の利益が確保できます。この企画がスマッシュヒットを飛ばしたため、セールを継続。2回目のセールは、初回に及びませんでしたが、期間を月末まで延長し、売上を確保するころには翌月がやってきて、セールの再延長を繰り返していれば、いつしか半年が過ぎていました。そして以前の価格に戻したところ、売上がゼロに近づき……。もはや7割引きが「定価」になってしまった「期間限定0.2」です。期間限定と銘打っていても、セールが続けば「定価」になります。牛丼の値下げ競争も、松屋が300店舗出店記念に並盛りを390円から290円に値下げしたことが始まりで、評判が良かったとして「定価」になりました。しかし、冷静に考えれば、「値下げ」の「評判が良い」のは当たり前です。最悪の失敗例は「マクドナルド」です。松屋が値下げしたのと同じ時期、「平日半額」と銘打ち、130円のハンバーガーを65円にすることにより、客層の拡大を目指す狙いは当たりました。しかし、月曜日から金曜日までが「平日」であれば1週間の大半は「半額」となり、それはすなわち「定価」です。すると本来の定価は倍の値段となります。つまり限定する期間を間違えたため、「休日倍額」というネガティブキャンペーンになっていたのです。○借金を減らすのは簡単S社長の「期間限定価格」も「デフレ」であれば間違いではありませんでした。インフレの最中では、原材料費とともに人件費も高騰します。この流れの中で「値下げ」は経営悪化を招くだけだからです。すでに外食産業は「インフレ」に舵を切っています。「吉野家」は2年前から特売を止めており、「すき家」も並盛りを値上げ。幸楽苑は来春を目処に最低価格500円台を目指すと報じられ、苦戦が続くマクドナルドも、高級化路線にチャレンジしています。時代は確実に変化しており、デフレ時代の常識は通用しなくなりつつあります。それは国家経営においても同じです。繰り返しになりますが、インフレとは相対的にお金の価値が下がる状態を意味します。つまり年率2%のインフレが実現すれば、毎年「借入額」という「負のお金」の価値も2%減ります。つまり「借金が減る」ということです。国の借金を1000兆円とすれば、この2%は20兆円です。為政者にとって、インフレは何かと都合が良いのです。実績はともかく、歴代政権が「脱デフレ」を目指した理由です。そして個人にも「住宅ローン」が目減りするという恩恵が待っています。実は「借金も財産のうち」という俗諺は、インフレだった昭和時代に生まれたものです。余談ながら、いまだ「デフレ」のまっただ中にいるのが「ミスタードーナツ」。隔週ぐらいの割合で提供される「100円ドーナッツ」が定価になりつつあります。○エンタープライズ1.0への箴言インフレ時代にデフレの方法は通じない宮脇 睦(みやわき あつし)プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に『Web2.0が殺すもの』『楽天市場がなくなる日』(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」
2014年12月16日解散前の国会で「うちわ」が話題となった、直後に起こった「オタク論争」をご存知でしょうか。海外に日本文化を知らしめ、輸出と観光客の誘致を狙う「クールジャパン政策」の一環として「Tokyo OtakuMode(東京オタクモード)」へ官民共同ファンド「クールジャパン機構」が15億円へ出資したことが野党に追及されました。「東京オタクモード」が販売していた女性キャラクターの「フィギュア」が「半裸」だったからです。これに三谷英弘衆院議員が反論します。彼は政界屈指のフィギュア好きとして知られ、「オタクビジネスにはこういった可能性があることを理解してほしい」と訴えます(「東スポWEB」より)。確かにオタクとエロは隣接し境界は曖昧です。ちなみに選挙期間中、政治関連の記述は曖昧にするものですが「ネット選挙」も解禁になったことですので「実名」で記しております。実はこの論争、「コンテンツとは何か」を考える上で、とても重要な議論です。そして多くの会社のホームページがつまらない=0.2な理由もここにあります。○新線開発によるマイナス首都圏郊外の地元に根ざして40年の自動車修理工場K。自動車が移動手段の花形だったのは今は昔。少子化によるドライバー人口の減少に、マイカー離れときて、この夏のガソリン価格の高騰は、真綿で首を絞めるように経営を圧迫しています。その「地元」を南北に縦断する新線が開通したのは3年前。まだまだ不便な片田舎。地元の人間の主要な「足」はマイカーですが、新線に伴う地域開発で、昔なじみのお客が引っ越していきます。安い地代から物流業の拠点が多く、自動車修理工場にとっては好立地でしたが、新駅効果で住宅需要が高まり、地価が底上げしたことで移転していったのです。そしてWebサイトに活路を見いだす……と、追い込まれてからWebに取り組むこの発想が、そもそも0.2なのですが、今回ここは見逃します。○多くの企業が錯覚しているすでにWebサイトは開設していたので、正確にはリニューアル。内容を刷新して反転攻勢を目論みます。複数の業者から見積もりを取ったところ、最高値は300万円で、最安値は60万円でした。最高値の業者は、プロによる写真撮影が売りで、最安値はサイト全体の練り直しを提案します。5倍の価格差に頭を抱えながらも、出した結論は最高値でのリニューアルです。果たして新しく取り直された写真は美しく、まるでグラビア誌のような仕上がりとなりました。アイコンは刷新され、スマホやタブレット端末にも対応した「レスポンシブル(Web)デザイン」。それでもお客は増えません。なぜなら「コンテンツ」が同じだからです。写真はコンテンツを構成する要素のひとつですが、サイトを訪問するお客の求める「コンテンツ」とは「メリット」です。つまり、その自動車修理工場を利用する「メリット」が何かを伝えるのが「コンテンツ」であって、つなぎ姿の工員による作業風景など、刺身のつまより役立たずです。多くの企業が錯覚している「コンテンツ0.2」です。旧サイトは「会社案内」に過ぎず、これを見ての来店が「偶然」の範囲を超えることはないでしょう。練り直しを提案した「最安値」の業者のほうが「コンテンツ」を理解していたといえます。一方「最高値」の業者は「ビジネス」が上手かったと言えます。素人が評価できるのは「見た目」と「数字(価格)」だからです。○エロモード問題旧サイトを彩った素人写真と、最新のデジタル機材で撮影された画像の違いは、文字通り「一目瞭然」です。そして「価格」とは、それを受け入れた人にとっては「価値」そのもので、評価から価格に納得するのではなく、価格を社会的評価と錯覚するのです。高い、すなわち良いと。最高値の業者がもっとも得意としたのは「自社の売り込み」でした。冒頭の「オタク」を巡る議論も構造は同じです。「東京オタクモード」は、日本のオタクカルチャーを海外に紹介し「Facebook」で集めた多くの「いいね!」で注目されるようになりました。この「数字」を、霞ヶ関のお役人が評価したのでしょう。しかし「いいね!」は「いいね!」に過ぎません。ビジネスの指標でもなければ、コンテンツの秀逸さを示すものでもありません。ましてや、「日本代表」の証明になどなりません。「クールジャパン政策」とは日本の魅力を海外に発信することで、輸出を増やし、観光客を誘致することにあります。そもそも「オタク」がこれに値するかに疑問が残ります。オタクとは専門性を追究する人々で、それは「一般」からは遠く、「マス=大衆」を対象としなければ経済的メリットも期待できません。さらに語弊を怖れずにいえば、世界中の「変わり者」を集める政策は是か非か。そもそも「美少女」や「萌え」と冠が付いていても、半裸のデザインを「エロ」と見るのがグローバルスタンダード。「オタク」の拡散により「エロ大国日本」という世界的評価を得ることは「国益」に適うのか。国会で問うべきはそこにあり、「うちわ」や「フィギュア」ではありません。○エンタープライズ1.0への箴言評価に値しない「数値」がある宮脇 睦(みやわきあつし)プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に『Web2.0が殺すもの』『楽天市場がなくなる日』(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」
2014年12月02日○日本代表という病2002年の日韓大会において、日本の初戦を埼玉スタジアムで観戦する幸運に恵まれました。その試合中、対戦相手の「ベルギー国」を憎む気持ちを抱く自分に気がつきます。ワールドカップを「代理戦争」と呼ぶのは過言ではないことを体感したものです。今夜、今年最後となる、サッカー日本代表の国際親善試合が行われます。「ブラジル大会」で「惨敗」したのは今年の6月のことですが、私は大会前に予選敗退すると見ていました。有料の壮行会で黄色い声援を受けた選手は花束片手に「ニヤニヤ」し、マスコミは本田圭佑選手の「批判は試合が終わってから」発言を、批判もせずに楽勝ムードを煽っていたからです。そしてなにより「ザックジャパン」でも「日本代表病」が克服されていませんでした。得点力不足でも、実力不足ではなく「日本人らしさ」です。その「日本代表病」は、会社組織を蝕むこともあります。ちなみに、先の「代理戦争」の終戦後、ベルギーサポーターへの敵意は敬意へと変わっていました。ほぼ日本人で埋め尽くされた異国のスタジアムで、自らの代表を応援しつづける「勇気」へのリスペクトです。○すぐに看過される人々Jリーグがスタートし、ドーハの悲劇を経由してフランスでのワールドカップに出場し、4年後の日韓大会では決勝トーナメントに駒を進め、ドイツ大会三戦全敗後、当時の中心選手 中田英寿氏が「自分探し」に旅立つなど、サッカーが注目集めるごとに、経営論や自己啓発書が登場し、今年の大会前は長谷部誠選手の「折れない心」がなにかと話題になりました。広告代理店のI社長も看過された一人。ある日の会議、幹部社員にレポートが配られます。I社長による「サッカー型経営論」と題されています。I社長は創業メンバーの一人で、創業期の苦労から始まるレポートは、随所に「自慢話」が散りばめられているのはご愛敬。巧みに出世争いをしていたライバルに触れないところに、小さな器の人間性が溢れ、I社長とこのライバルは、人の手柄を横取りすることで有名だったという香ばしい話しは、古参社員の証言です。○サッカー型経営論とは経営論に踏み込みます。個人の奮闘が業績を左右するのが「ゴルフ型」、創業期の会社が小さい時代はこれでも良いが、規模が大きくなると個人依存というマイナスが強くなる。次に明確に役割分担された「野球型」。効率化が図られ、企業が成長することもできるメリットの反面、縦割りというセグメント化を生み出すデメリットがある。そして我が社が、これから目指すのは「サッカー型経営」である。ゴールキーパーが敵陣に乗り込み、攻撃参加することもあるような、ポジションに囚われない自由な組織を目指す。というもの。どこかで聞いたことがあるような気もしますが、人の手柄を横取りする名人にとっては、経営論のコピペなどお手のものなのでしょう。しかし、すでに「日本代表的サッカー型経営」になっていることに、I社長は気がついていません。「日本代表病」の症例のひとつ「司令塔中毒」という依存症に罹っているのです。メールも含めた伝達事項は、すべて社長に届くようになっています。それは、部長や課長であっても、社長の「裁可」を待たなければなにひとつ決められない「社風」だからです。外形的には「社長の独裁」ですが、中間管理職を含めた社員としても、「決定責任」から逃れられる社風に甘えています。つまりI社長という「司令塔」へ依存しており、これでは、ポジションが「自由化」されても意味のない「サッカー型0.2」です。責任を負わない自由など、画に描いた餅よりも役立たずです。○病の構造そして我らが日本代表。かつては「ナカタ」、いまは「ホンダ」に一旦ボールを預ける「社風」のため、攻撃のテンポが遅れます。ちなみに大昔は「カズ」でした。「起点」を公約にしている日本代表を、世界の強豪国が見逃してくれるわけがありません。しかし、それよりも深刻な「日本代表病」が「奥ゆかしさ」です。ゴール前にボールを持ち込んでも、「どうぞ」とばかりに横へ後へとパスを回し始めます。敵陣でいかんなく発揮される「奥ゆかしさ」は、日本代表特有の奇病で、代が替わっても繰り返し発病しています。この奇病の克服こそが、アギーレ監督に課せられた使命かも知れません。さらに不安要素はあります。「惨敗」して帰国した選手を拍手で迎えたサポーターの存在です。フランス大会で全敗し、日本代表選手が帰国した空港で、城彰二選手にはペットボトルの水が掛けられました。強かった期待の裏返しです。行為は誉められたものではなくても、このとき日本代表は必ず強くなると確信したものです。勝利には歓喜で応え、敗北は怒声で迎えるのがサッカーにおける世界標準だからです。トップレベルのチームが「勝利に貪欲」になる理由のひとつです。○エンタープライズ1.0への箴言「独裁と恭順は共依存」宮脇 睦(みやわきあつし)プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に『Web2.0が殺すもの』『楽天市場がなくなる日』(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」
2014年11月18日○会議に生まれる無駄見かけ上の便利さ、あるいは便利という思いこみが無駄を生み出し、生産性を押し下げていることがあります。特に「会議」において「ネット以前」の数倍の無駄が生まれていることは、あまり気づかれることはありません。自民党の「IT戦略特命委員会」は、出席者にタブレット端末を配布し、会議資料は画面上で閲覧する形に切り替えたと日経新聞が報じていました。紙の無駄遣いが減るという視点でまとめられた記事の中で、平井卓也衆院議員は「外部に公表できない資料の管理も徹底できる」と強調します。たしかに情報管理しやすいのはデジタルデータの利点です。しかし、デジタルデータは物理的制約を受けず、ひとたび流出すれば1秒もせずウクライナの首都キエフにまで情報は拡散されます。また、ページを前後して見比べるのに不向きで、面積はタブレット端末のディスプレイに限定されます。外出の多いビジネスマンに取っては、タブレットがもつ省スペースや携帯性のメリットは大きくても、社内や国会内という限定された空間では、特筆すべきものではありません。ちなみに「紙の無駄」とは「経済誌」らしからぬ0.2な視点です。○Dropboxで情報共有その会社では数年前まで「紙」ベースで会議が行われていました。事前に作られた「レジメ」が配布され、それに従い、持ち回りの議長が進行します。といっても中小企業のご多分に漏れず、実際には社長が仕切るのですが。次第にレジメが電子化されていきます。その始まりは「ホームページ」の打ち合わせで、実際の画面を見た方が、わかりやすいという社長のひと言で、会議室にパソコンが持ち込まれました。次の会議では「補足資料」としてノートパソコンが持ち込まれ、やはり画面を提示しながらの報告が行われます。次第にノートパソコンの「持ち込み比率」が高まり、1年もせずに全員が会議に持参するようになりました。無線LANの導入により、「配線」がいらなくなったことも理由の1つです。いまではパワポで作成されたレジメは「Dropbox」で共有され、紙の出番はありません。最新情報をリアルタイムに反映させることもでき、会議は格段の進化をしたかに見えますが、実は会議で決定される案件数が激減していることには気がついていません。○キャプチャーで充分なのにデジタルデータになったことにより、レジメが冗長になったことが原因です。かつては数ページ以内にまとめられていたパワポの資料が、十数ページを超えることは珍しくなくなりました。「紙」ではページ数の増加は印刷枚数と正比例し、ホッチキスとの格闘が待っていました。ところがデジタルデータに「かさばり」はありません。手間は「コピペ」だけです。そして念のためにと、過去のレジメが再掲され、参考資料までが全文掲載されます。端的に言えば「要点」が絞られなくなったのです。また、参考程度のサイト紹介も、わざわざ「リンク」が貼られ、会議の場で参加者全員が「クリック」してサイトを読み込みます。わずか数十秒でも、参加者全員分を合算すれば膨大な時間を「ロス」しているのです。参考程度なら「キャプチャー画像」で充分ということに誰も気づきません。そして紙がデジタルになっても、ページを追いながらの説明は変わらず、レジメの増加分に正比例し時間が消費されます。その結果、「話し合い」の時間が減り、会議での処理案件が減った「デジタルデータ0.2」です。積み残した議案は、「コピペ」で繰り越される悪循環です。○紙の利便性とは石原慎太郎衆院議員が都知事時代、資料はA4かB4の1枚にまとめろと指示を出していたといいます。山のように積まれた報告書に呆れ、枚数の多さは考えがまとまっていない証拠だとルール化します。事例を集めただけの「データ」と、トップが判断する要点だけに絞られた「情報(インテリジェンス)」の違いといっても良いでしょう。そしてこの発想に立てば、紙かタブレットか、ノートパソコンかという議論がナンセンスであることに気がつきます。どの「道具」を使うかではなく、何を「決定」するのが会議の目的だからです。そして要点を絞り込んだ資料ならば「紙の無駄」は自ずと解消します。なにより国会に求められるのは「経費削減」ではありません。日経新聞の「紙の無駄」という視点を「0.2」とする理由です。湯水の如く政治にお金が使われたとしても、それを上回るメリットが国民に提供されるのなら、不満を述べる国民はいません。つまりは「紙の無駄」とは、政治に求める結果と、その過程の手段を混同した視点なのです。そもそも論で言えば、会議資料とは事前に配布しておくもの。ネットという距離と時間を選ばない情報伝達手段があるのですから、会議が決定した時点で「Dropbox」などに資料をいれておき、それぞれの空き時間に「読了」を終え、雁首そろえばすぐに話し合いができるよう準備して挑むのが合理的な会議の方法です。皆でレジメを「黙読」する姿は、小学校の「国語の時間」と同じです。○エンタープライズ1.0への箴言「デジタルデータは冗長になりがち」宮脇 睦(みやわきあつし)プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に『Web2.0が殺すもの』『楽天市場がなくなる日』(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」
2014年11月11日