長男、進級のストレスが爆発!?新年度の始まりは、担任やクラスの顔ぶれも大きく変わるため親は不安が大きくなりますね。幸いわが家の自閉症の長男は嫌がらず学校に通っています。けれど新しい環境に慣れないためでしょうか。家で癇癪を起こすことが多くなってきたのです。理由はどれも些細なことで、食卓に出したご飯が少し熱かっただけで茶碗をひっくり返したり、学校に着ていくお気に入りの洋服がなかったりすると大声で泣きわめいたりするのです。Upload By シュウママ朝の支度中に頻繁に起こるので、やはり今は学校に行くことが長男にとってストレスになっているのかなと想像できます。ある日、そんな状態の長男と接するのに限界が来ました。私は思わず怒鳴ってしまい、もう何もかも投げ出したくなっていまったのです。Upload By シュウママ「シュウが自閉症じゃなければ良かった?」という問いそんな様子を双子の次男がじっと見ていました。身支度を終えた次男は私の傍に歩み寄り、「お母さん大変だね」と静かに話しかけてきました。そして…Upload By シュウママ突然の質問になんと答えていいか分からず、言葉に詰まってしまいました。「自閉症はシュウの個性だよ、自閉症じゃなければいいなんて思ったことないよ」ーそう答えれば子どもたちを傷つけることはないのでしょう。ですが、この時は気持ちに余裕がなく、「そうだね。やっぱり自閉症じゃない方がよかったかな」と思わず本音が…。「でも可愛いからね。何とか頑張れるよ」と続けました。次男がかけてくれた言葉私の言葉を聞いた次男は、少し考えてこう言いました。「でもねオイラこう思うんだ。シュウみたいな病気の子どもはさ、お母さんを選んで生まれてくるんだよ」Upload By シュウママその言葉を聞いた瞬間、私は目頭が熱くなりました。きょうだい児として育まれていた優しさ心の余裕をなくしてしまったことに対して、いろいろな思いが巡りました。「でもお母さんイライラして怒鳴ったりするよ。シュウは失敗したと思ってるんじゃないかなあ」。次男は「うーん。それはあるかもしれないけど…」とまた考え込みます。(そこは否定して欲しかった!)けれど、すぐに「名案を思いついたぞ」という表情をして「まあ、お母さん荷が重いよね。だったら…」Upload By シュウママ「シュウの世話手伝ってやるから頑張れ~」と言い残し、ランドセルを背負って玄関へと走っていきました。次男もまだ4年生。まだ子どもと思っていてもしっかりと大人に近づいているんですね。もしかしたらそれは長男に手がかかるゆえに味わってきた、きょうだい児としての寂しさが次男の成長を後押ししているのかもしれません。それでも、障害のある長男だけでなく、母を思いやる優しさも育まれていたことに気づき、たくましくなった次男の後姿を見送りました。Upload By シュウママ
2018年04月28日入学や進学など、年度切り替えのこの時期は、障害があるなしに関係なく、親がナーバスになる時期。でも、発達障害のある子を持つ親にとっては、さらに頭を悩ませる時期なのではないでしょうか?通常学級、通級、支援級、支援学校…わが子が安心して楽しく通える環境はどこなのか? 親は、就学問題に長い時間と労力を費やし、時には夫婦で揉め心をすり減らしながら、やっとの思いでわが子にベストと思える居場所を決めます。でも、そんな親の努力をすべてひっくり返すような、無理解な担任の先生に当たってしまったり…。そんな思い悩むことが多いこの時期、再びNHK総合テレビで発達障害をテーマにした特番 「超実践!発達障害 困りごととのつきあい方」 が放送がされます。番組では、寄せられた約4000通の体験談から「感覚過敏」「忘れ物・片付けが苦手」「読み書き計算が苦手」「コミュニケーション」という代表的な4つのテーマを取り上げ、発達障害の当事者はもちろん、家族やその周囲がすぐに実践できる「対処法」「周囲への助けの求め方」などをできるだけ具体的に伝えていく。さらに、「困りごと」「周囲の無理解」からどうやって人生を好転させたのか、その転機をとなった方法や出会いを描くほか、栗原類さんをはじめ一般の発達障害当事者8人をスタジオに招き、一人ひとり微妙に異なる困りごとに対する対処法をトーク。「どうすれば困りごとに対処できるか」「どうすれば人生楽しくなるか」「発達障害の人とそうでない人が共存するにはどうすればいい?」などを生放送で話し合う。■「発達障害」に対する社会の認知は高まってきたけれど…ここ数年で、発達障害に対する社会の認知は高まって、園や学校ではずいぶんと理解が進んだように思います。でも、当事者や家族の目線から見ると、依然としてサポート体制が不十分で必要な配慮が受けられなかったり、相談したはずの困り事が放置されたままだったり、個々人の対応はまちまちだったり……まだまだ難しいと感じることが多いのが現実です。今回の特番担当プロデューサーからも、「これまで発達障害については何度も放送してきましたが、無関心層へのリーチはまだまだだと感じています。しかし、そうした層に届かない限り当事者の困り事は解決しないため、繰り返しを恐れず伝えたいとも思っています」とメッセージをいただきました。これ、まさに、その通りだと思うのです(冒頭でお話した、すべてをひっくり返すような無理解な先生がいることもしかり)。でも、みなさん、日々自分の生活でいっぱいいっぱい…。当事者や家族でない限り、「大変そうだけどよくわからない」とか「障害を言い訳にしてない?」などとスルーされてしまうのも仕方ないことなのかもしれません。■自分が生きやすくなるためには「相手のことを知る」が一番の近道そんな私も、息子が自閉症スペクトラムと診断されるまでは、「大変そうだけど、結局よくわからない」の人でした。障害について理解する前は、「親子でがんばればなんとかなる!」などと、ワケのわからぬ根性論で発達障害を改善しようとしていた時期もありました。そして、息子に無理強いをさせては、それが自分に跳ね返って、ますます自分自身がイライラしてしまう、そんな悪循環に陥っていました。結局、無理解は相手だけでなく、まわりまわって自分自身をも辛い状況に追い込んでしまうのです。私は、息子を通して、「基本的に人(子ども)を変えることはできない」という当たり前のことを改めて思い知りました。相手(子ども)に自分の価値観を強いることは、トラブルと双方のストレスのもと。喜びや苦しみは現実と期待とのギャップで生まれ、相手(子ども)にできないことを求める行為は、結果、自分に対するストレスを生むことになります。■「発達障害の人のため」ではなく、「自分自身のため」にちょっと変な言い方かもしれませんが、今回の放送、「発達障害の人がより生きやすくなるために」というような道徳的な視点よりは、むしろ、「自分自身がより生きやすくなるために」という自分視点で見た方が、より幅広い方々に響くのかもしれません。発達障害は、今や40人学級で2~3人の割合でいると言われているほど。子どものクラスメイト、親戚、会社、ママ友仲間にも、障害とまではいかなくても、グレーな方を含めれば「もしかして…?」と思われる方も少なくないでしょう。もはや避けては通れない問題です。「なんであの人は、いつもあんな嫌な言い方をするんだろう?」とか「どうしていくら説明しても、あの人には話が通じないんだろう?」など、あなたが苦手に思っている人との、上手な付き合い方のヒントが得られるかもしれません。また、番組で語られる、コミュニケーションが苦手な方や生きにくさを感じている方が、自身の人生を好転させるために編み出したノウハウには、私たちの生き方にも参考になるところがあるのではないでしょうか?今回、私は、息子のためではなく、自分のためという視点で、番組を見たいと思っています。文:まちとこ出版社N【NHK 発達障害プロジェクト】超実践! 発達障害 困りごととのつきあい方放送日時:2018年4月30日(月・祝)午前8:15~9:59 NHK総合テレビMC:中山秀征さん、近江友里恵アナウンサーゲスト:栗原類さん(「あさイチ」で自分が発達障害であることを告白)ほか、発達障害のご本人(一般の方)8人と専門家
2018年04月28日赤ちゃんと目が合わない…出典 : 赤ちゃんは人の目を好んで見つめると言われています。赤ちゃんを抱っこしている時や授乳をしている時、パパ・ママが赤ちゃんを見つめていると、赤ちゃんもパパ・ママを見つめ返してくれる時があります。ですが、赤ちゃんと目が合わない、目をそらされてしまうことに悩んでいるパパ・ママもいるといいます。赤ちゃんと目が合わないと、赤ちゃんとのコミュニケーションが取れている気がしなくて辛いと感じることも少なくありません。また、目の病気があるのかも?目が合わないことが特徴の一つと言われている、自閉症スペクトラム障害かも?など不安に思う方も多いのではないでしょうか。以下から、赤ちゃんと目が合わない原因や赤ちゃんの視力発達のメカニズム、目が合わないことと疾患や自閉症スペクトラム障害との関係性について詳しく説明していきます。赤ちゃんと目が合わないのはなぜ?出典 : 赤ちゃんと目が合わない時、その原因としてどんなことが考えられるのでしょうか。育児本やウェブサイトで調べてみると、ついつい「目の疾患」「自閉症スペクトラム障害」という言葉が目についてしまうかもしれません。でも、赤ちゃんと目が合わない原因の大半は、そこまで心配しなくてよいものだったり、成長の過程であったりするものです。例えば、次のような原因があります。まずはそれらに当てはまる様子はないか、赤ちゃんの様子をよく見てみましょう。赤ちゃんにとって身の回りの物はすべて新鮮であり、興味や関心の対象です。大好きなパパ・ママがそばであやしてくれていても、他に何か気になるものを見つけると、そちらへ興味の対象が移ってしまうこともあります。生まれたばかりの赤ちゃんとはいえ、一人ひとり個性があり、性格も異なります。じっと凝視されるのが少し苦手な赤ちゃん、好奇心が強く、目新しいものにきょろきょろと視線を移す赤ちゃんなどさまざまです。育児書など子育てに関する情報から「赤ちゃんは一定の月齢になるとパパ・ママと目を合わせるようになるはずだ」などと思い込んでしまうと、自分の赤ちゃんにそのような様子が見られない場合、途端に不安になってしまいがちです。赤ちゃん自身の育ちのペースや個性を受け入れ、見守っていくという姿勢が大切です。水野 克已/著『笑顔で子育てあんしん赤ちゃんナビ―6か月(はじめ)よければすべてよし! 』2013年/メディカ出版公益財団法人母子衛生研究会赤ちゃん&子育てインフォ赤ちゃんは自分のことをあやしてくれる人の表情や声にとても敏感です。生まれつき視覚や聴覚からの刺激に敏感な赤ちゃんもいます。急に近づいたり、顔を近づけたり、大きな声で話しかけると顔を背けてしまうかもしれません。目が合わせにくいからと焦って目を合わせようとすると、赤ちゃんもその不安やストレスを敏感に感じ取るかもしれません。赤ちゃんをあやす時、自分がどのような表情をしているか確認することが、赤ちゃんと目が合わない原因を探り当てるヒントになるかもしれません。赤ちゃんと目が合わない時、ここまでで紹介したことが原因となっていることが多数ですが、もしかしたら次のようなことが原因である可能性もあります。目の病気の発症や視力の異常が見られる赤ちゃんは、視線が定まらなかったりきょろきょろしたりする様子が多く見られます。赤ちゃんによく現れる目に関する異常には、斜視・眼振・弱視などが挙げられます。これらの詳しい症状や治療方法に関しては「目が合わない赤ちゃんと目の病気の関係って?」の章で解説します。発達障害の一つである自閉症スペクトラム障害には、「人とのコミュニケーションが苦手・困難」「こだわりの強さ・感覚のかたよりがある」という特徴があります。自閉症スペクトラム障害の症状には視線が合いにくいことも挙げられていることから、目が合わない赤ちゃんに対して自閉症スペクトラム障害かも?と不安になるパパ・ママもいるでしょう。赤ちゃんと目が合わないということだけで自閉症スペクトラム障害であると診断されることはなく、さまざまな視点からの検査・観察から総合的に判断されます。ですが、自閉症スペクトラム障害と診断がつく年齢(3~5歳頃が多いとされています)の子どもが赤ちゃんの時、「目が合わなかったな…」と感じるパパ・ママは少なくないようです。目が合わない赤ちゃんと自閉症スペクトラム障害の関係性に関して詳しく知りたい方は、「目が合わない赤ちゃんと自閉症スペクトラム障害との関係って?」の章をご覧ください。赤ちゃんの視力発達のメカニズム出典 : 赤ちゃんは生まれた直後からものがはっきり見えているわけではありません。生まれてから1歳までの間、どのように視力が発達していくのかについて説明します。生まれてすぐの赤ちゃんの視力は、明るいか暗いかが分かる程度と言われています。生後1ヶ月ごろで視力は0.01~0.03くらいで、人や物の輪郭がぼんやり捉えられたり、はっきりとした色は認識できたりします。生後2ヶ月では、お母さん・おもちゃなどの動きを目で追う「追視」が見られるようになります。生後3ヶ月過ぎから生後6ヶ月頃は急激に視力発達する時期です。生後3ヶ月では人や物をじっと見つめることが増えたり、瞬きが上手にできるようになったりします。生後6ヶ月時点での平均的な視力は約0.1まで上昇します。生後6ヶ月になると、見えないところから声をかけるとその方向に目を向けるなど、視覚と聴覚が連動するようになってきます。また、追視も上下左右と細かくできたり、動くものに対しても目で追いかけたりできるようになります。小児の遠視 -弱視、斜視との関連-|沖縄県医師会医師会報生後7ヶ月を過ぎていくと、奥行や距離感も見て捉えられるようになっていきます。1歳にもなると視力は0.2ほどまで伸び、より細かいものも捉えることが可能になります。それゆえに探索活動が活発になり、行動の幅も広がっていきます。立体視の発達、可塑性、個人差解説-空間視の発達山口 真美乳幼児健康診査の手引改訂第5版新潟県福祉保健部新潟県医師会生後1ヶ月から1歳6ヶ月頃にかけては、特に視覚の発達が盛んな時期とされています。視力の発達自体は6歳から8歳くらいまでに成人と同じレベルに達します。視力が発達するこの時期に、両目で人や物をしっかりと見ているかどうかはもちろん、何か異変に気づいたらすぐに対応することが重要です。厚生労働省母子手帳省令様式厚生労働省母子手帳任意様式目が合わない赤ちゃんと目の病気の関係って?出典 : 先ほど、赤ちゃんと目が合わない場合、目の病気や視力の異常の可能性もあると説明しました。赤ちゃんの目や視力の問題について、詳しく解説します。◇斜視斜視とは、片目は正面を向いていても、もう片方の目が内側・外側・上側・下側など違う方向を見てしまっている状態を指します。斜視は子どもの約2%に見られる小児眼科の代表的な病気で、眼鏡などの矯正器具で治るものもあれば、手術による治療が必要なものもあります。片方だけ目が合うのに、もう片方は違う方向を向いていることが多く見られると、斜視の可能性があります。斜視のまま放っておいてしまうと、違う方向を向いている目の視力が育たないため、斜視かも?と思ったら早めに小児眼科を受診することが大切です。日本眼科学会子供の斜視公益財団法人日本眼科医会子どもの弱視・斜視-6.斜視の原因◇眼振(がんしん)眼振とは、知らず知らずのうちに目が動いてしまう疾患です。眼球の動きの特徴としては、動き方に規則性がある・周期性がある・本人が意図しているわけではないという3つがあります。原因として先天的な眼振をはじめ、脳や神経の異常で起こるものなど後天的なものがあります。赤ちゃんが注視・追視する様子が見られず、きょろきょろしていたり、不自然に頭を傾けていたりしていたら、注意する必要があります。◇弱視弱視とは、先ほど紹介した視力の発達する期間に、目をうまく使えなかったために視力が悪い状態のまま発達が止まってしまうことを言います。強い遠視や乱視が両目に見られる場合や、片目だけに遠視や乱視、斜視があるために視力が発達しない場合に弱視は起こりやすいと言われています。弱視は早期に適切な治療や矯正(眼鏡着用など)をすることによって、治る可能性は高まります。頻繁に目を細めている、目つきに違和感があるなどわかりやすいサインが見られることもありますが、特に目立った症状が見られないこともあります。乳幼児健診の際に気になる点がないか専門家に診てもらうとよいでしょう。3歳になったら受けられる3歳児眼科検診を受診するのもおすすめです。社団法人日本眼科医会3歳児眼科健診のすすめ紹介したような目に関する病気を赤ちゃんが発症している場合、次のような特徴が見られることがあります。・瞳が白や黄緑色に見えることがある・目が揺れることがある・追視が見られない・片目だけ上下左右に寄っていることがある・片目を順番にふさいでみると、一方の目だけ嫌がったり、顔を背けたりするなど目の健康を調べるチェックシートパパ・ママは赤ちゃんと目が合わないな?と思ったら、それまでよりいっそう赤ちゃんの目や目の動きを観察し、何か異常がないか見てみることが大切です。目が合わない赤ちゃんと自閉症スペクトラム障害との関係って?出典 : この章では、目が合わない赤ちゃんと自閉症スペクトラム障害がどのような関係にあるのかについて詳しく紹介します。自閉症スペクトラム障害は、主に「人とのコミュニケーションが苦手・困難」「こだわりの強さ・感覚のかたよりがある」という特性があります。診断基準によっては自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害などの診断名で呼ばれている場合もあります。自閉症スペクトラム障害の診断がつくのはだいたい3~5歳と言われています。このくらいの年齢になると、以下のような自閉症スペクトラム障害の特徴が目立ちやすくなります。◇周囲にあまり興味を持たない傾向がある例えば、生活の中で次のような様子が見られます。・視線を合わせようとしない・他の子どもに興味をもたない・名前を呼んでも振り返らない・指さしをして興味を伝えることをしないなど◇コミュニケーションを取るのが困難以下のように、会話や人と関わることが難しいと感じていることがあります。・言葉の遅れや、オウム返しが見られる(知的障害を伴う場合)・一方的に言いたいことだけを言ってしまう・質問に対してうまく答えられない・ごっこ遊びなど、集団での遊びにあまり興味を示さないなど◇強いこだわりを持つ日常生活での強いこだわりとは、例えばこのようなことを指します。・興味を持つことに対して、同じ質問を何度もする・ものごとの手順が変わると混乱してしまう・視覚・触覚・聴覚・味覚・嗅覚に対して過敏、鈍麻があるなど自閉症スペクトラム障害の診断がつく年齢では、このような特徴がいくつか見られるようになります。注意しなければならないのは、単に「赤ちゃんと目が合わない」ということだけで自閉症スペクトラム障害ということではないということです。自閉症スペクトラム障害の診断が出ている子どものパパ・ママが、その子どもが赤ちゃんだった時を振り返ってみて「そういえばあまり目が合わなかったな…」と思い起こすことはあるようです。ですが、自閉症スペクトラム障害はそれだけで判断されるものではなく、子どもの気になる様子と診断基準を照らし合わせ、総合的に判断されます。また、生後すぐに自閉症スペクトラム障害をはじめ発達障害の診断がつくことはありません。パパ・ママが自閉症スペクトラム障害の診断を求めても、赤ちゃんに対しては経過観察のような措置が多く取られることに、心配や不安の気持ちを抱くのも無理はありません。目が合わない赤ちゃんに対しては、「それだけで自閉症スペクトラム障害であるとは言えない」「赤ちゃんの時点で自閉症スペクトラム障害であると明確に診断できる場合は少ない」という2点をまず押さえましょう。そのうえで、それでも不安が残る場合や、目が合わないということに加えて他にも気になる様子が見られる場合は、かかりつけの小児科や近くの保健センター、子育て支援センターなどでその旨を詳しく相談することをおすすめします。一度専門家に赤ちゃんがどのような様子か話してみるだけでも不安や困りごとが解消されることがありますし、自閉症スペクトラム障害に関する、より詳しい情報も得られることもあります。赤ちゃんと目が合わなくて不安…そんな時に考えたいこと出典 : 赤ちゃんと目が合わないと、「赤ちゃんは自分のことをパパ・ママだとわかっているのだろうか」「赤ちゃんに好かれてないのだろうか」「発達が遅れているのだろうか」「病気や発達障害の予兆なのだろうか」など、さまざまな不安を感じることもあると思います。そんな時、パパ・ママが心がけたいことや考えたいことをご紹介します。生まれたばかりの赤ちゃんは、授乳などからどうしてもママの方が赤ちゃんに関わることが多くなると思います。そのため、赤ちゃんと目が合わないという不安を、つい一人で抱え込んでしまうことがあります。子育てに関する不安を感じた時こそ、同じ子どもの親であるパパにも悩みや不安を共有・相談するようにしましょう。またパパは、「気にしすぎだよ」「大丈夫だよ」と安易に言うのではなく、ママの子育てに関する不安感や心細さに寄り添ってあげることが大切です。また、子育ての先輩である自分の母親に相談するのも1つの手段と言えます。大切なのは、子育ての不安を一人で抱え込みすぎないことです。先ほど子育ての先輩である自分の母親に相談してみることをアドバイスの一つとして挙げましたが、そうはいっても子育てへの価値観が違ったり、母親の時代の子育て方針を押しつけられたりした、という経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。やはり知りたいのはリアルな子育て情報や、現時点の医学などからわかっている子どもの発達に関する情報ですよね。そのような情報を知るには、自分の赤ちゃんと同じくらいの月齢・年齢の赤ちゃんを育てているパパ・ママと交流することが有効かもしれません。地域の子育て支援センターは、赤ちゃんだけでなくパパ・ママの交流も目的とされています。そのような施設でさまざまなパパ・ママと交流し、それぞれの子育て体験談を聞くことで「子育てに悩んでいるのは私だけじゃない」「先輩パパ・ママはこのように悩みを乗り越えたんだ」など、参考になる意見やアドバイスが得られることもあります。また、子育てや子どもの発達に関して不安に感じた際に気軽に相談できる専門家を1人でも知っておくと心強いです。先ほど紹介した地域の子育て支援センターをはじめ、保健センター、またかかりつけの小児科医など、子育てや子どもの発達に関して相談することができる機関や専門家はたくさんあります。きちんとした専門家からの指導を受けることで、より安心感を得ることができたり、不安が軽減されたりするでしょう。その他に、子育てに関する電話相談サービスを行っている自治体もあるので、直接対面で相談することに抵抗がある方は、電話にて専門家に相談してみてはいかがでしょうか。東京都福祉保健局子育て支援情報一覧とうきょう子育てスイッチ-子育てに関する電話相談まとめ出典 : 赤ちゃんと目が合わない場合、赤ちゃんならではの周囲への興味や性格、あやしているパパ・ママの表情など、さまざまな要因が考えられます。また、目が合わないということだけで判断はできないものの、目の病気や自閉症スペクトラム障害であるという可能性もあります。赤ちゃんと目が合わなくて不安、と感じているということは、それだけパパ・ママが赤ちゃんのことを細かく観察し、見守ることができている証拠です。パパ・ママは日々子どもと丁寧に向き合っていることへの自信をもちつつ、子育てに関する悩みや不安を相談できる場を設けるなどして、ママ1人で抱え込んだり、パパ・ママ間だけで不安を溜めたりすることがないようにしましょう。
2018年04月24日ついつい後回しにしてしまうこと、ありませんか?出典 : やらなければいけないことはわかっているのに、ついつい他のことに手を取られて後回しになってしまうこと、ありませんか?私にとっては「お風呂掃除」がその最たる例でした。やり始めれば15分で終わることなのに「服が濡れるから後にしよう、子どもに呼ばれたから先にそっちを片付けよう…」などと理由をつけ、結局入浴直前になってから、ようやくお風呂を洗う…。そんな自分をそのまま受け入れることができるのなら、それはそれでいいと思います。しかし、私は「どうして15分で済むことがきちんとできないのか?」と自分を責めてしまうのです。そうして翌日からはさっさとやってしまおうと思うのですが、結局、後回しになってしまって後悔を繰り返してはうんざり。なんとかしないといけないなと思っていた時、SNSで「エネルギーがたくさんある午前中にやるべき事をやってしまえばよい」という情報を目にしました。「1日のエネルギー量」という視点を持っていなかった私には、それはとても新鮮なアイデアだったのです。エネルギーの使い方と充電方法を考える出典 : 発達障害の特性からイライラがたまり殻に閉じこもりがちな子ども達にとっても、これは有益な情報です。2人は普通の生活を送るだけで激しく消耗してしまいます。どんな風に自分のエネルギーを配分をしたらいいのかや、自分なりの充電の仕方を把握できたら、もっと過ごしやすくなるはず!そこで、早速子どもたちにこの新しい考え方を伝えることにしました。「今日、すごくいい情報を知ったの!あのね、1日のうちでエネルギーが満タンになっているのっていつだと思う?」(母)「元気がいっぱいあるってこと?」(息子)「やっぱり朝かな?」(娘)「そうだよね!寝た後だから体も元気になってるし、心もリセットされてエネルギーが満ち溢れてる感じがするよね。そのエネルギーがあるうちに、ちょっと頑張らないといけないことをやってしまうと、そんなにしんどくないんだって!」「じゃあ、今『なりたい自分になるために努力する時間』を午前中にしてるのはいいことなんだね?」以前、こちらのコラムに書いたとおり、わが家では午前中を『なりたい自分になるために努力する時間』という位置づけにして、ピアノの練習をしたり勉強をしたりしているのです。「うんうん!そうなのよ!それでね、ママはいつもお風呂掃除を後回しにしちゃう自分が嫌だなぁと思っていたの。これからはエネルギーが満タンになってる午前中に終わらせることに決めたよ。頑張るから応援してね」「じゃあ、その間に私たちは目標に向かってしっかり頑張るよ~!」自分一人だけではなく、家族がそれぞれ努力していることを感じられると、頑張ろう!という気持ちが大きくなるから不思議です。「でもね、そうやって頑張っていくと、どうなると思う?」「う~ん、エネルギーが減ってしんどくなっていく。だって夕方はいつも疲れてイライラするもん」「いいところに気づいたね。エネルギーって勝手に湧いて出てくるものじゃないから、きちんと充電しておかないと動けなくなっちゃうんだよ。車はガソリンが切れたら走れないし、ゲームは電池がなくなったら遊べないし、人間はエネルギーがなくなったら笑えなくなったり、攻撃的になったりしちゃうよね。どうすればいいと思う?」私の問いかけに娘と息子は相談しながら一生懸命考えます。「ちゃんと充電すればいいんでしょ?」「でも人はどうやって充電すればいいの?コンセントついてないよ」「そうじゃなくて、ママに抱っこしてもらったら元気がでるでしょ?そういうこと」「ああ、そういうことね!じゃあ、ママにいっぱい抱っこしてもらう」「私もいっぱい抱っこしてもらう~!!」相談した結果、2人の答えは出たようですが、これにはちょっとした問題点があります。「必要な時はいつでも抱っこしてあげるよ。でもよく考えてみて。それだとママがいない時とかしんどい時に充電できないことになっちゃうよ?」「ええっ!」 「じゃあどうすればいいの?」「あのね。まずエネルギーを満タンにするには、“心と体”2つの充電が必要なの。この2つは、基本的には自分自身で充電する必要があるの。誰かに充電させてもらうっていうことは、その人のエネルギーを分けてもらうってことでしょ?ステキなことだけど、いつもそれだと今度は分けてあげる人がしんどくなっちゃうからね」「そっかぁ、そうなのか」「でも自分でできるかな?」理解はしてくれましたが、少し不安そうな2人。そこで、こんな提案をしてみました。「例えば、お姉ちゃんは本を読むのがすごく好きだよね?本を読んでると疲れる?」「ううん!全然!むしろワクワクして、いつまでも読んでられる!」「ほら、今すごく目がキラキラして楽しそうでしょ?そう思えるものとやっているときに、心は自然に満たされて、それが次に何かをするためのエネルギーになっていくんだよ」「それだったら簡単!僕はフィギュアで遊んだりユーチューブを見たりすればいいんだ!」こうして、わが家では、午前は『なりたい自分になるために努力する時間』、午後は習い事などに取り組み、夕食以降は『心の充電をするために自分で自分を喜ばせてあげる時間』、『次の日の自分のために夜更かしせずにしっかり寝て体を元気にしてげる時間』にあてるという過ごし方を取り入れることになったのです。明日の笑顔を少しでも増やせるように出典 : 午前中は「さあ、頑張るよ!」とお互いに発破をかける分、夜は「さあ、自分で自分を喜ばせてあげようね~!」と、なんだか楽しい言葉が家の中に響くようになりました。これまで、私や娘に依存して過ごしがちだった息子が 「あれをやってみよう」「これで遊ぶことにする」と自分で決めて一人で過ごせる時間が増えてきました。これはとても大きな変化です。おかげで私も月に1本程度ですが、ここ10年ほど遠ざかっていた映画鑑賞ができるようになってきました。午前中にお風呂掃除を終えられる確率もかなり上がってきました。今までは「家事が残っているのに楽しいことをするのは後ろめたい」という考えに縛られていました。ですが、「きちんと自分を喜ばせて充電してあげなければ明日を元気に過ごせない」と考えを改めることで、堂々と充電作業に向かえるようになりました。「自分で自分を満足させる」というのはとても大切なことなのに、日々の忙しさに翻弄されてすっかり忘れてしまっていました。発達障害のある子どもとしっかり向き合って育てていくためには、膨大なエネルギーが必要です。心も体も疲弊している人も多いのではないでしょうか。なかなか難しいかもしれませんが、1日のエネルギーの使い方や充電の仕方を考えてみてください。1日5分だけでも自分自身を満足させてあげることができれば、明日はいつもより1分多く笑顔でいられる時間が増えるかもしれません。私も自分にそう言い聞かせて、今の暮らしの中で自分を喜ばせる方法を模索していきたいと思います。
2018年04月17日息子の子育てに疲れていたときに舞い込んだ「被験者募集」出典 : 今から数年前、私は息子の子育てにとても疲れを感じていました。自閉症スペクトラム障害のある息子は、感情のコントロールが苦手なうえに、カーッとくると自分の気持ちを上手に伝えることができなかったからです。一度スイッチが入って泣きわめき始めると、もう私にはどうすることもできませんでした。何をどうしたら良いのか、あてもなく、ただただ疲れていた私のもとに、ある大学の心理学研究室から「被験者募集」のお知らせが舞い込んだのでした。そのお知らせには、「セカンドステップ」というタイトルが書かれていました。当時の私は、このプログラムについて全く聞いたことがありませんでした。「問題行動のあるお子様とその親御さんが対象」と書いてあったので、「ペアレントトレーニングの一種かな。親の声かけのレクチャーかな?」と思った程度です。何はともあれ、そのときの状況を打開したくて、藁をも掴む気持ちで被験者として息子と一緒に申し込んだのでした。アメリカ発「セカンドステップ」Upload By 林真紀こうして、私と息子は「被験者」として、月に一度のペースで大学の研究室に通うようになりました。通い始めてすぐ、私は「セカンドステップ」がペアレントトレーニングやカウンセリングとは別物であることに気付きました。セカンドステップとは絵、写真、人形劇のパペット、音楽等を使って、子どもにソーシャルスキルを学ばせるプログラムです。レッスンは25回ほどあり、指導者が毎回決まったレッスンを行います。ソーシャルスキルとは、具体的には「怒りへの対処(アンガーマネジメント)」「衝動性のコントロール」「共感」といったものです。息子が受けているセカンドステップの教材は、「相互の理解」「問題の解決」「怒りの扱い」の3つの柱から構成されています。(最新の教材では、「学びのスキル」「共感」「情動の扱い」「問題の解決」となったそうです)息子は現在、10回目のレッスンを終えたところです。レッスンでは、怒った子どもの写真を見せられて、「この子はどんな気持ちかな?」「怒っている」「どうして怒っているって分かる?どこを見ればいいかな」「眉毛が上がって…眉間に皺が寄って、口が下に下がっている」「〇〇君はどんなとき怒った気持ちになるかな?」「お友達にうるさいって言われたとき」「怒ったとき、身体はどんな感じになるかな?」「頭がカーッと痛くなって…手がブルブルして…殴りたいって思う!」というようなやり取りが行われます。このように、写真を分析したり、人形劇等を行うことによって、息子は顔の表情、気持ちがわかるようになり、そのときに自分や他人に起こる変化について、冷静に感じ取ることができるようになります。息子は今は感情について分析するレッスンを受けていますが、この後、「どうすれば怒った気持ちが落ち着くか」ということについてのワークも準備されているようです。セカンドステップは校内暴力が多発した1980年代のアメリカで、こどものための委員会(Committee for Children)が開発した教育プログラムです。この教育プログラムの実践により、問題行動のあった児童の攻撃的な態度がおさまり、人間関係にも改善が見られたと言います。アメリカのセカンドステップは、未就学児向け・小学生低学年向け・高学年向け・中学生向け、及びその保護者向けのプログラムが準備されているそうです。日本の教育機関でも出典 : 日本でもこの教育プログラムの効果に着目し、教材を翻訳し、教育機関に導入したNPO団体があります。「NPO法人 日本こどものための委員会」です。この委員会は、2001年4月に設立され、現在は「セカンドステップ」の普及活動を中心に行っています。本場アメリカでセカンドステップを開発したNPO法人であるCommittee for Childrenから、日本国内で普及活動を行う権利を唯一認められた団体だそうです。法人 日本こどものための委員会現在日本でも、東京都品川区の公立小学校をはじめ、保育園や児童養護施設、児童相談所、少年院でも導入されているそうです。わが家の息子は、月に一度セカンドステップに通うようになって一年になります。プログラムを受け始めてから、自分の感情についてきちんと理解し、大人に助けを求めたり、自分の気持ちを説明することがとても上手になりました。パニックになったり、キレてしまったりするときは、ほとんどが自分にわきおこる「何か(感情)」を理解できていないときです。「あ、僕は今怒っている」「手がブルブルしている。口が渇いている。涙も出てきた。」「こういうときはどうしたらいいんだっけ…?」息子は自分がコントロールを失いかけたとき、こんな風に自分自身と冷静に対話することができるようになったと言います。それは、セカンドステップで学んだことです。「怒っちゃダメ」「キレるのは恥ずかしいことだよ」そんな言葉では、子どもが自分自身をコントロールすることは難しいのかもしれません。自分の気持ちを一歩引いて眺めてみる、あるいは相手の気持ちになって考えてみる、そうすることで、自分の気持ちと上手につき合っていくことができるのかもしれません。息子のセカンドステップのレッスンはまだまだ続きます。今後も、息子の変化に期待です。
2018年04月16日療育入園初日。椅子から脱走し走り回る長男3歳当時、自閉症の長男は一日中走りまわっているような子どもでした。多動の特性も強いゆえ、仕方のないことだと思うのですが、母親の私も追いかけるのに一苦労。公園に連れていくと立ち止まったり座ったりすることもなくひたすら駆け回ります。Upload By シュウママ既に療育の通所支援に通うことが決まっていたので、まあ訓練で多動はおさまってくれるだろう…と思っていたのですがそれは甘かった!療育施設の入園日、何度座らせようとしても椅子からおりて脱走する長男を見ながら目の前が真っ暗になりました。Upload By シュウママ他にも座れずに泣いている子もいます。けれど長男ほど活発に動き回る子はいなかったのです。「1か月で座れるようになりますよ!」先生の言葉に半信半疑だったけど…現実をつきつけられたような気がして「この子が椅子に座れる日が来るんでしょうか」思わず尋ねると先生は笑顔で答えてくださいました。Upload By シュウママ「みんなそうです。大丈夫ですよ」優しい先生の言葉にうなずきながらもそう簡単にいくのだろうか――不安が募りました。少しずつ少しずつ。変化があらわれてきた長男それから長男は毎日療育施設に通いました。私は週に2回ある親子通園日に長男の様子を見ることができるのですが、「あの多動がおさまるはずがない…」とやはり半信半疑でした。けれど先生方の日々の取り組みはまさに目から鱗だったのです。その療育施設では手を洗って牛乳を飲み、椅子に座ってみんなで手遊び歌を行うのが日課になっています。はじめ長男は牛乳を泣いて嫌がり、吐き出したりコップを倒したりしていました。けれど先生は牛乳が嫌ならお茶にしようかという妥協は一切なく、他の子と同じ牛乳を飲ませていました。「一口だけでも飲むんだよ」と先生はスプーン1さじから始め、1さじ飲めたら次の日は2さじという風に量を増やしていきました。Upload By シュウママその間、飲み終わった子ども達は自分の椅子を並べて先生と手遊び歌をしています。そうすると不思議なもので自分も遅れを取りたくない、みんなと一緒に手遊びしたい!という意識が芽生えてきたのでしょうか――長男は徐々に牛乳を飲める量が増えていき、最後には一人で全部飲み干し、自分で椅子を持って手遊びに参加できるようになったのです。Upload By シュウママ大切なのは妥協しないことそして長男は、教室以外の大きなホールでお誕生日会をする時でもきちんと座って待つことができるようになったのです。「あの子がちゃんと椅子に座って待てるようになるなんて…」と私は先生に言いました。すると先生は「園では基本みんなと同じものを食べ、同じ行動をするよう促します。そうするとね…」先生はくすりと笑って言いました。Upload By シュウママそして「ご家庭でも、お母さんが子ども用に別におかずを作ったりするのは控えたほうがいいんです。家族みんな同じものを食べるほうが楽しいし、苦手なものも食べられるようになるんですよ」とアドバイスしてくださいました。そういえば療育の給食の時間、子ども達は「シュウちゃんにんじん食べられたね~」とおしゃべりしながら食事していました。お友達が食べられたなら自分も食べれるかもしれない、と感じながらお互いを育てあうのかなと感じました。療育施設ではたくさんのことを教えてもらったのですが、子どもの自主性は重んじても妥協はしないという姿勢や向き合い方も、教えて頂いた大切なことでした。
2018年03月28日世界自閉症啓発デーってなに?出典 : 「世界自閉症啓発デー」は、2007年12月18日に開かれた国連総会で、カタール王国王妃から提案され、決議されました。毎年4月2日は世界中で自閉症の啓発活動が各地で行われます。日本でも世界自閉症啓発デーの4月2日から8日までを発達障害啓発週間として、シンポジウムの開催やランドマークのブルーライトアップなどが実施されています。世界自閉症啓発デーは、自閉症に関する理解を深め、身近に考えることで、すべての人が過ごしやすい世界を実現していくための日です。世界自閉症啓発デー 日本実行委員会公式サイト自閉症とは出典 : 自閉症は先天的な発達障害の一つで、育児の方法や環境など後天的な原因で生じるものでもありません。対人関係の障害、コミュニケーションや言葉の発達の遅れ、行動や興味の偏りといった特徴が発達段階で現れると言われています。具体的には、他の人の気持ちを理解することや、言葉を適切に使うこと、予定外の変化などが苦手な傾向があります。自分の感じたままに話したり、行動したりすることがあります。外見からはわかりにくく、真面目に取り組んでいても、誤解や偏見を受けることもあります。大人のなかでも、自閉症であるのにそのことに気づけずにいる場合もあります。そのため、必要な支援を受けられず、自閉症の二次障害であるうつや不安障害などの精神疾患にかかる人もいます。一方で、自閉症のある人たちは関心のあることにまっすぐに取組むことが得意であることが多いです。鋭い感覚を生かせたり、記憶力が抜群な人もいます。そういった長所を得意な分野で生かして活躍している人もいます。自閉症についての理解や支援が十分に広まることで、自閉症のある人がより住みやすい環境で生活することができるようになるでしょう。全国でイベント開催。自閉症をもっと知ろう!Upload By 発達ナビニュース2018年の世界自閉症啓発デーに合わせて企画された各地の注目イベントを紹介します。自閉症のある人だけでなく、誰もが自分らしく暮らせる社会とは?あなたも自閉症啓発デーに合わせて実施されるイベントに参加して、一緒に考えてみませんか?Upload By 発達ナビニュース今年のテーマは 「知りたい、知らせたい 発達障害のこと ~こども、若者、スポーツ、アートの視点から~」。「安心してください!地域のみなさん」、「やりたいんだ!アート・スポーツ・ミュージック」 、「知ってほしい!街の中の味方」という題材でシンポジウムが開かれます。【日時】4月7日(土) 10:00~16:20【会場】全社協・灘尾ホール(新霞が関ビル内)【参加】要事前申し込み(定員250名)世界自閉症啓発デー2018出典 : 歌やダンスのパフォーマンスがステージで繰り広げられ、自閉症や発達障害を体感するブースなども設けられます。また、4月2日はSNSのタイムラインをブルーで埋め尽くそうと、「#WB2018」「#MAZEKOZE」のハッシュタグつきで写真の投稿も呼びかけています。イベントにはぜひ青い物を身につけて参加を!【日時】4月2日14:00〜18:30【会場】東京タワー広場 特設ステージ一般社団法人 Get in touch出典 : 月5日から4月13日まで各所で続々と関連イベントを開催。メインとなる4月1日、2日も多数の会場で「青いものづくり」「LD・ADHD等の擬似体験プログラム」といった参加型の企画されていたり、「自閉症啓発デー・アート展」が開幕します。主な会場ごとのイベントはこちら。五稜郭タワー・アトリウム【日時】4月1日(日)13:00【内容】開会式&オープニングセレモニー、「Blueの音楽祭」棒二森屋店【日時】4月1日(日)10:00〜16:00【内容】LD・ADHD等の擬似体験プログラム、「ハッピー」こどもイベントサークル、歌声ライブ&あおいろライブ函館市芸術ホール【日時】4月2日〜7日(月)10:00〜19:00【内容】第5回自閉症啓発デー・アート展、発達相談、羊毛フェルトで作る「地球玉」(2日のみ、14:00〜17:00)世界自閉症啓発デーin HAKODATE 2018出典 : 寸劇や疑似体験をはじめ、キャラバン隊公演や障害のある方々などによるバンド演奏とダンス、ミニコンサートなど。【日時】4月7日 (土)11:00〜17:00【場所】Qiball(きぼーる)1階アトリウム第10回世界自閉症啓発デーinちば~みんな大切な仲間です~自閉症の当事者であり、少年画家として活躍する濱口さんと交流できる小学生以上を対象としたワークショップです。濱口さんのインスタレーションとともに参加者も自由に絵を描きながら、絵で表現することを一緒に楽しみます。【日時】4月8日(土)10:00~11:30、14:00~15:30【場所】海老名市立中央図書館【参加】3月24日から参加券を海老名市立中央図書館で配布。(各定員10人)少年画家 濱口瑛士の世界自閉症啓発デーの4月1日から8日までの「発達障害啓発週間」スペシャルイベントとして企画された、発達障害のあるミュージシャンによるコンサートです。手作り楽器で「キミダケノオト」を奏でて、気持ちを音に乗せて表現する楽しさも体験できます。【日時】4月8日(土)10:15~11:30【場所】三茶しゃれなあどホール【参加】要事前申し込み大人1,000円/小学生以下無料キミダケノオトでフリーセッション!そらコンサートこのほかにも、全国各地で自閉症の啓発に関する活動が展開されています。各自閉症協会や自治体ごとの一覧も公開されているので、みなさんのお住まいの地域ではどんな活動があるのか、ぜひチェックしてみてください。世界自閉症啓発デー 全国都道府県市の自閉症協会の取り組み計画世界自閉症啓発デー2018自治体等啓発取り組み一覧世界自閉症啓発デー2018自治体等啓発取り組み一覧(教育関係)世界を包む青い光。「ライト・イット・アップ・ブルー」出典 : 世界自閉症啓発デーに合わせて、世界中のランドマークや名所旧跡を青色でライトアップするライト・イット・アップ・ブルー(Light It Up Blue)が、近年日本でも広がりをみせています。青色は「癒し」や「希望」をあらわすとして、世界自閉症啓発デーのシンボルカラーになっています。自閉症はわかりにくい障害と言われ、障害を知らない人から誤解を受けたり、うまくいかないことに直面することもあります。そんな自閉症の人の存在を多くの人に気づいてほしいという願いから始まったのがこの青いライトアップなのです。ニューヨークに本拠地のある世界最大の自閉症支援団体「Autism Speaks」が2010年にはじめて以来、日本でも各関係団体や賛同する施設でライトアップが広がり、定着しつつあります。点灯式にあわせてイベントも実施するなど、各地でさまざまな取り組み行われています。誰でも気軽に足をは込めるライトアップ。おすすめの会場を紹介します!画像は過去のものです。実際とは異なる場合があります。【日時】2018年4月2日(月)18:15〜22:00【場所】東京タワー屋外特設ステージ世界自閉症啓発デー2018出典 : 大阪の象徴である通天閣もブルーに!大阪府内では、ほかにも大阪城天守閣や天保山大観覧車も青色に染まります。【日時】4月2日(月)日没から23:00まで(天保山大観覧車は22時まで)「世界自閉症啓発デー」(4月2日)のブルーライトアップ及び発達障がいに係る啓発活動を実施します出典 : 長野県の茅野市民館では、ライトアップだけでなく、日中イベントも企画されています。自閉症をはじめ、発達障害の当事者や関係者のメッセージの展示。誰でも参加できるダンボールと絵の具を使ったアートワークショップもあります。点灯式は4月1日18:00から行われます。【日時】4月1日(日)、2日(月)アートワークショップ「みんなでつくろう 光る!まぜこぜドーム」【日時】4月1日(日)13:00~15:00【会場】茅野市民館 ロビー、他【参加】要問合わせ It Up Blue ちの 2018 ~ひろがれ!青い光がつなげるこころ~出典 : ココウォークでは2014年からこの運動に賛同して参加しています。長崎県ではほかにも、女神大橋、稲佐山、ハウステンボス、大村市周辺施設がライトアップされます。【日時】4月2日(月)~4月8日(土)長崎県こども家庭課4月2日は、世界自閉症啓発デー今年のライトアップは全国100ヶ所余りで行われる予定です。幻想的な青に染められた夜の街を歩いて、自閉症について考えてみませんか?世界自閉症啓発デー2018ライトアップ施設一覧世界自閉症啓発デー2018ライトアップイベント詳細一覧まとめ出典 : 近年、発達障害への社会の関心が高まりつつありますが、誰もが暮らしやすい社会を実現するに正しい理解の広がりがもっと必要です。自閉症のある人はコミュニケーションをとるのが苦手であったり、こだわりがあったり、いつもと違うことが苦手であったりといった特性があります。外見からはわかりにくいため、いまだに「心を閉ざしている」「親の育て方のせい」などといった誤解を受けることもあります。しかし、周りの人が自閉症について理解し、接し方や環境調整といった工夫をすることで、自閉症のある人やその家族が抱える困りごとは減らすことができるのです。イベント会場に足を運べない人も、当日は青い服やアイテムを身に付けてみてはどうでしょうか。青いものを写真に撮ってSNSに投稿することで、同じように自閉症について考えている仲間とつながることもできるかもしれません。世界中の人が自閉症について考える4月2日の「世界自閉症啓発デー」を通じて、あなたも自閉症の人が安心して暮らせる社会への一歩を踏み出しませんか?取材協力:一般社団法人日本自閉症協会
2018年03月28日発達障害であることに気づかなかった私。失敗を重ね、二次障害に苦しむことに…出典 : 女の子の発達障害は、「気づかれにくい」と評されることがあります。男の子の発達障害にくらべて、特性があっても目立ちにくく、多動や他害などの問題行動が出ることも少ないことから、周りの人から障害があることに気づかれにくいようなのです。かくいう私も、息子(自閉症スペクトラム障害・ADHD)の診断からほどなくして、自分自身もADHDだと診断をされました。ですが、「実は私も発達障害で」と周囲に話しても、「嘘だ~!全然普通じゃん」「え~?普通にコミュニケーションできてるよ?」と言われることがほとんどなのです。はじめから、いわゆる「普通に」コミュニケーションができていたわけではありません。長い間、二次障害(うつ病やパニック障害)に悩まされてきました。カウンセリングや投薬にかけた期間は10年以上です。最近になってようやく、周囲から見ても違和感のないコミュニケーションがとれるようになってきました。ですが、今でも3人以上の人が集まる場ではうまく会話ができません。余計なことを言ってしまって、相手を怒らせてしまうこともあります。大量の「失敗経験」を経て、今の私があるのです。「おしゃべりが止まらない」と指摘され続けた、幼少の頃の私出典 : 息子の発達障害に気づいたきっかけは、「多動」の症状が強かったからです。息子は、少しもジッとすることができませんでした。いついかなるときも子どもから目を離すことができず、一日中追いかけまわしていなければなりません。私は心も体もぐったりと疲れ切ってしまいました。そして「息子には発達障害があるのかもしれない」と思ったのです。息子が診断されたとき、母親である自分自身の発達障害を疑い始めました。これまでどうしてもうまくいかなかった部分、特に人間関係などでのトラブルの背景に、障害があるのではないかと思ったからです。早速、実家に帰って、自分の幼少期の記録がないかを探しました。母子手帳や母親がつけていた育児日記、通知表などを読んでみました。読んでみると、息子の特性とは明らかに違うのですが、判で押したように同じ言葉が書かれていました。「一日中喋っている。朝起きてから夜寝るまで、一人で喋り続けている。やはり女の子は言葉が発達しているのであろう。一日話し相手をしているので、とても大変」(2歳/母の育児日記より)「授業中のお喋りがなかなかなおせない。先生の話を最後まで聞かず、勝手に回答を言ってしまう。給食の時間中もお喋りが止まらず、食が進まない。食事量が少ないのが心配」(小学3年生/通知表より)どの資料を見ても書かれているのです…「お喋りが止まらない」と。息子のように多動や癇癪などがあったという話は聞いたことがありません。勉強も遅れていませんでした。けれども「人の話を聞かないで喋り続ける。おしゃべりが止まらない」ということが、通知表でも一貫して指摘されていたのです。「自分勝手な子」と非難され、自己肯定感は地に落ちていった「おしゃべりが止まらない」ことが本格的に日常に支障をきたすようになってきたのは、小学校高学年になってからです。他の女の子たちがガールズトークをし始める時期。女の子たちのひそひそ秘密話の中に乗り込んでいって、自分の話したい話ばかりをする私は、次第にクラスメイトたちから嫌われていきました。そして、小学校6年生のとき、担任の先生が私にこう言ったのです…「人の話を聞かずに、自分のしたい話ばっかりする。あなたみたいな人をね、自分勝手って言うんです」この言葉を、私はその後の人生で人間関係がうまくいかなくなるたびに、思い出すことになります。さらに困ったことに、私は授業中も黙っていられないという困った行動がありました。「あ、先生、私それわかるわ。それってこうやってこうやって解くんでしょ?」と、先生の言葉を遮って話をしてしまっていたのです。この行動については、担任から親に連絡が入りました。「お嬢さん、授業中にものすごく知ったかぶりするんです…。困ります」自分勝手に知ったかぶり…これを聞いて、私の自己肯定感はどんどん低くなっていきました。「自分の何がいけないのだろう。自分の何が人をムカつかせているんだろう。誰か教えて欲しい。どうしたらいいのかわからない」そんなことを考えていたのを、今でも思い出します。Upload By 林真紀自分のどこが悪いのかわからない!大人への恐怖感は増すばかり…出典 : 年生の最後の通知表。忘れもしません。私にとって決定打となる言葉が書いてありました。「人間関係のトラブルが多すぎます」この評価を見て、母は激しく怒りました。「情けない!こんなこと6年生で書かれる子がどこにいるのよ!」。今となれば、母が怒る気持ちも理解できます。自分の子どもがトラブルメーカーだなんて書かれたら、絶望してもおかしくありません。でもまだ6年生だった私は、なぜ自分が人間関係につまづくのか、まったくわかりませんでした。私は、どうしたらいいのか、何をしたらいいのか検討もつかないまま、ただただ「大人が怖い」「先生はみんな私を悪く思うんだ」という恐怖を抱えたまま小学校を卒業することになります。中学に入っても「大人が怖い」という気持ちは消すことができず、先生の前に出ると口が利けなくなるという症状に苦しみました。どうしたらいい?身近な大人は、解決策を一緒に考えほしいADHDの女の子は、幼少期は「おしゃべりが止まらない」という特性ばかりが目立つことも多いようです。それゆえに発達障害とは気づかれず、本人の態度の問題にされがちと言います。けれども発達障害のある子は、自分のどこが悪いのか、どうすればいいのか、答えが見えない場合も多いと思います。子どもにとって「なぜこうなるのかわからない」というのは、大きなストレスを感じる状態となります。さらに私の場合は、白か黒かでしか考えられない0−100思考が強かったため、なぜだかわからない問題については、すべて「自分が悪い」か「相手が悪い」という考えに行き着いてしまっていました。その結果、強い自己否定感と他者への攻撃性が生まれ、ますます人間関係がうまくいかなくなる悪循環に陥りました。「人の話を聞かずにしゃべり続けたら、相手は嫌な気持ちになる。だから人間関係がうまくいかない。人の話を聞くにはどうしたらいいかな?」「授業中は手をあげて、先生に名前を呼ばれてから話すというルールがあるんだよ」ということを、信頼できる大人が共に考えてくれていたら、私はここまで苦しまなかったかもしれません。私の幼少期の経験から言えるのは、次の2つのことです。ネガティブな評価をネガティブなままに放置しておかないこと。そして大人が共に解決法を考える。子どもに寄り添い、一緒に考えることで、子どもの生きにくさはきっと少しずつ解消されていくのではないかと考えています。
2018年02月27日次男が大熱!全く兆候に気づかなかったけれど冬休みが終わったばかりの頃、学校から帰ってきた次男(定型発達)がランドセルを玄関に投げてそのまま仰向けに倒れこみました。真っ赤な顔をしているので驚いて額に手を当てるとすごい熱!「なんで先生に言って早退しなかったの!」と聞くと「我慢しちゃった…」とのこと。すぐ病院に連れて行くと、インフルエンザではなかったものの気管支が炎症を起こしており翌日にも熱はひかず学校を休みました。Upload By シュウママ幸い大事には至りませんでしたが…朝はいつもと変わらず元気だったのにどうしたんだろう。私は次男の様子から、その後体調が崩れるなんて、思ってもいませんでした。自閉症の長男の場合。体調が悪くなる前に教えてくれる、ある「におい」それから2週間後のことです。朝、長男を起こそうとしたとき、いつもと違う、ふっと何か匂う感じがしました。うまく伝えられないのですが、いつもの長男の体臭とは違う、汗のようなカビのような不思議な匂いです。Upload By シュウママとっさに「これ、熱が出る前兆かも!」と思いました。長男は体調を崩す前、いつも体臭が変わるのです。注意して見ていると、朝ごはんはよく食べるものの、いつもより食べるスピードが遅い。鼻水も咳も熱もないけど、いつもより目に力がない。普段とどこか様子が違っていました。Upload By シュウママ念のため学校を休ませると、やはり夕方から急に熱が上がり始め翌朝まで下がりませんでした。こちらも病院に連れていくと、風邪という診断でほっとしたのですが…ふと思ったんです。そういえば…どうして私は次男の体調には気付かなかったのに長男の異変だけ察知することができるのだろうかと。なぜ長男の異変だけには気付くのか。それはある習慣があったから思い当たったのは一つの小さな習慣でした。長男が夜寝る前と朝起きた時、私はいつも必ずぎゅっと抱っこしてくんくんとにおいを嗅いでいました。Upload By シュウママ双子の息子たちは9歳です。普通嗅ぎませんよね。でもなぜそれをするのかというと、長男が7歳まで言葉を話せなかったということが大きな理由です。話せないなら私が感じ取るしかない。実際毎日抱っこしているといつもと違うときに気が付くことがあります。あれ、何か不純物の匂いがするなあって(笑)言葉で説明できないから、無意識に五感を駆使できるようになったのかも定型発達の次男は、体の調子の悪さを言葉に出して訴えることができます。けれど自閉症の長男は違います。最近ではパパ、ママ、電車など見たものをそのまま伝えることはできるようになっていますが、それでもまだ暑いとか寒いとか、お腹が痛い頭が痛いといった、感覚的なものを伝えることは、まだ難しい。Upload By シュウママそのため私は体調の良し悪しを、長男の表情や仕草、顔色、果ては匂い…ほんの小さな「いつもと違う」異変から推し量るしか術がなかったのです。たぶん、無意識に五感全部を使って子どもを守ろうとする本能が働いていたのかもしれません。発達障害のある子どもを育てることは大変なこともあります。けれど子どものほんのわずかの変化に誰よりも敏感に気付くことができるようになっている、と感じる瞬間があるかもしれません。それは、親子の毎日の小さな積み重ねにも気付かせてくれました。そしてそれは、子どもにとってお母さんが一番安心して身を委ねられる場所である証なのかもしれない。そんな風に感じるのです。
2018年02月26日意外と身近?拡張現実(AR)とは出典 : 発達障害のある子どもたちの療育シーンを覗いてみると、いろいろな遊びやゲームを活用していることが分かります。わが家の息子の療育でも、半分はお勉強感覚、半分はゲーム感覚というプログラムがよく見受けられました。課題に遊びやゲームを取り入れることによって、子どものモチベーションがアップすることはなじみのある話だと思います。さて海外では、発達障害の子どもたちの療育において、「課題をゲーム化」することに加え、 拡張現実(AR:Augmented Reality) の技術を使ってソーシャルスキルトレーニングを行うことのできるメガネが開発されました。拡張現実(AR)と言っても、ピンとこない方もいるかもしれません。拡張現実とは、私たちが実際に見えている世界に、さまざまな画像や映像を重ねて表示する技術などを指す言葉としてよく用いられます。身近な例では、最近流行した「ポケモンGO」があります。スマートフォンの先に見えている現実の景色の中に、ポケモンのキャラクターなどが重なって表示され、あたかも私たちが生きている世界の中にキャラクターたちが存在しているかのように見えます。さて、拡張現実(AR)を使ったメガネで、どうやって療育を行うのでしょうか。スマートグラスによるソーシャルスキルトレーニング出典 : このような拡張現実の世界を見せてくれる特殊なメガネを「スマートグラス」と言います。通常のメガネのレンズにあたる部分には透明なティスプレイがあり、現実の世界に重ねて、表示される内容を見ることができます。このスマートグラスを、自閉症スペクトラムの子ども向けの支援に使うことを見出したのがアメリカのBrain Power社とAffectiva社です。 SUPPORT (訳:自閉症者の支援)この取り組みで使われたのは"Google Glass"(グーグルグラス)と呼ばれるスマートグラスです。グーグルグラスは検索エンジンとしても有名な Google社が開発したものの、一般向けへの販売は2年以上前に終了していました。このまま幻の機械になってしまうかと思われたグーグルグラスでしたが、この製品の開発によって療育用の機器として再び注目を集めています。グーグルグラスによる療育は、発達障害のある子どものソーシャルスキルトレーニングに使われているようです。下の動画が、その様子になります。スマートグラスにはカメラも内蔵されており、メガネの先にいる人間の顔やジェスチャーなどをリアルタイムに認識することができます。実際のソーシャルスキルトレーニングでは、次のようなことを行っているようです。目の前にお母さんが座っています。お母さんは笑っています。それを見て、メガネの中に映し出されたアニメーションの顔を使った「表情当てクイズ」に回答します。お母さんが笑っている顔を見て、「ハッピー」のアニメーションを選ぶことができたら、目の前に「正解!」と出てきます。こうして、ゲーム感覚で、目の前の人の表情を学ぶことができます。また、スマートグラスを使って、相手と視線を合わせる訓練もできるようです。目の前にいるお母さんや療育者の目を見た瞬間に、目の前に拍手をするアニメーションが出てきたりして、何かしらの「ご褒美」が表示されるようになっています。スマートグラスの活用はスタンフォード大学でも同じような取り組みはアメリカのスタンフォード大学でも行われており、そこでも同じくグーグルグラスが用いられているようです。スマオートフォンアプリとも連動し、トレーニングの成果などを分析して、次のアクションの検討に役立てることも可能です。臨床研究も進められており、利便性と効果の両軸から、在宅での療育の可能性について日夜研究されているようです。Upload By 林真紀Upload By 林真紀Upload By 林真紀"Autism Glass Project" (訳:自閉症児用メガネプロジェクト)「ゲーム感覚」であることの重要性出典 : このように、海外ではAR技術が自閉症スペクトラムの人のソーシャルスキルトレーニングに活用されていることが分かりました。自閉症スペクトラムの人にとって、人と目を合わせたり、人の表情を適切に読み取ったりすることはとてもハードルの高いことで、このようなことを「訓練」として無理やり行うことは苦痛になってしまうでしょう。しかし、今回紹介したようなスマートグラスを用いて、ゲーム感覚でトレーニングを行うことによって、苦痛ではなく、楽しくソーシャルスキルを学び、訓練をすることができます。今後こういった技術が一般化していけば、療育も新しい進化を遂げるような予感がしています。「訓練」ではなく、苦痛なく、楽しく。そんなソーシャルスキルトレーニングを行うことのできる技術の先駆けとして用いられたこのAR技術・スマートグラス。これからの療育をどう変えるか、目が離せませんね。
2018年01月27日筆者の息子が発達障害の疑いをかけられた時、ネットにかじりついて情報収集する中で、たどり着いたのがABAという療法でした。ABAとは、アメリカの心理学者スキナーが創始した学問体系のことで、日本語では「応用行動分析学」と呼ばれます。人の行動の原因を内部(心)ではなく、人を取り巻く環境に求める考え方で、自閉症など発達障害の子どもに非常に有効なアプローチ法とされています。最近では、このABAを取り入れた療育療法が非常に多くなっています。でも、専門書を読んである程度の考え方は理解したものの、「具体的にどう子どもに接したらいいのか?」はわからずに困っていました。そんな中、とても役立ったのが、shizuさんの著書「発達障害の子どもを伸ばす 魔法の言葉かけ」(講談社)でした。発達に遅れがある子どもへの具体的なアプローチ方法が書かれており、日々の生活の中で、子どもとの関わり方にたくさんのヒントを得ることができました。しかも、その考え方は、発達障害だけでなく上の子(定型発達)の子育てにも同じように役立ったのです。著者のshizuさんの息子さんも、3歳の時に自閉症スペクトラムと診断されており、ちりばめられたご自身の体験エピソードには、とても重なるところがありました。「私だけじゃない」「やればできるかもしれない」ととても励まされたのです。そんなshizuさんに、「ABAを利用して発達障害の子どもを伸ばすにはどうしたらいいのか?」をテーマにお話をうかがいました。■3年間できなかった滑り台、ABAでたった30分で滑れるようになっちゃった!?――ABAは素人が専門書を読んで理解するにはなかなか難しい学問ですが、わかりやすく言うと、shizuさんはABAをどういうものだとお考えですか?「私は、ABAは親子の関係を笑顔に導く1つの学習方法だと思っています。子どもが生きやすく生きるために、「できないこと」を「できた」に導きやすくする有効な働きかけだと思います」――具体的には、どんな手法なのでしょうか?「ABAの醍醐味のひとつに、スモールステップというものがあります。これは、ひとつの課題をできるだけ細かいステップに分け、1回の目標達成レベルを低くして、そのステップを一つ一つ達成しながら成功体験を重ねていくというもの。それが子どもの自信となって大きな課題達成につながるというわけです。この手法で取り組んでいくと、まるで魔法みたいに、全然できなかったことがコロッとできるようになっちゃったりするんですよ」――著書の題名も「魔法の言葉かけ」ですものね。実際に、魔法のような出来事はありましたか?「私が関わった子で、滑り台がまったくできない子がいました。3歳の時に滑り台でひどい尻もちをついてしまって、以来3年間、滑り台を断固拒否していたんです。でも、身体的な原因ではないし、私はその子の様子を見ていてできる可能性は十分あると思い、スモールステップで取り組んでみました。そしたら、たった30分足らずで滑れるようになったんですよ!」――3年間できなかったことが30分で!? 具体的にはどうやったのですか?「目標値を滑り台の下の方から、70センチくらいに設定し、ちょっとずつ登って滑ることを繰り返しました。その都度「すごい! ここまでこられたね!」とほめて、だんだんと目標値を高くしました。下の方から登れば、手を離すだけでスーッと滑りますよね? だから少しずつ滑り台の感覚を楽しめると思ったのです。私も後ろからついて子どもの恐怖心を和らげました」――なるほど。逆から少しずつ滑らせて、恐怖心を取り除くというワケですね。「滑り台の上まで登れたお子さんを見て、ご両親は本当にうれしそうで、何度もほめていらっしゃいました。そしたら、その子はすごくうれしくなって、1つできたことから自信がどんどん広がったんです。大きく揺れることを拒否していたブランコも大きく揺らして乗れるようになり、ジャングルジムも2段目までが精いっぱいだったのに、一番上まで登れるようになったんです。これ、全部その日のうちにできるようになったんですよ。その後、市内の滑り台めぐりをして、児童デイサービスでの散歩の時間にも『滑り台のある公園はありますか』とリクエストしたそうです。それまで、その子はあまり自分のやりたいことを積極的に言うタイプじゃなかったそうで、ご両親は積極性が出てきたこともとても喜んでいました」――自分ができたことはもちろん、お父さんとお母さんにほめられたことが、ものすごくうれしかったんでしょうね。「子どもにとって、親のほめ言葉は何よりのご褒美です。どんなささいなことでも、できたことに対していっぱいほめてあげてほしいです」――スモールステップを成功させるコツはあるのですか?「まず、親が『できる』と信じること。子どもは親が思っていることを敏感に察知するので、信じて『できるオーラ』を送ることが大事です。だからと言って、親のエゴで『この歳で滑り台ができないなんて恥ずかしい』とか『みんなができるんだから』というのは違いますよね。それは、親が子どもを思い通りにコントロールしたいと思っているだけ。そうではなくて、滑り台って本来、子どもにとってとても楽しいモノ。その楽しさを味わえたらいいよね、というイメージをふくらませてほしいです」――親のエゴを押し付けるのは違う、ということですね。「言葉かけも大事です。親目線で『やってごらんなさい』と言うのではなく、子どもと同じ目線になって『ちょっとやってみようよ! 〇〇ちゃんならきっとできると思うな』という感じで。NHKの歌のお兄さんやお姉さんみたいに、思わず子どもの気分が乗っちゃうようなノリやテンションで盛り上げるのもコツですね」――子どもがチャレンジに不安を感じたら?「子どもが不安を感じていたら、まずは、不安に寄り添ってあげることが大切。いったんはスルーして、気分が戻ってきたら『ちょっとだけやってみる?』とうながしてみてはどうでしょうか? 時間を空けるとスルッとできちゃうこともあるので、1回であきらめずに何回かはトライしてほしいですね」――でも、もしそれでもダメだとしたら…?「たとえ滑り台の一番上まで登れなかったとしても、『ここまでできたんだね! すごいね!』と、必ず成功体験で終わりにしてあげることが大事です。『あとちょっとだったのに!』という捨てセリフは厳禁。どんなにわずかでも、自分で踏み出せてそこまでできたということを、まずは認めてあげてください。また、ちょっと難しそうだったら、子どもの苦手な動作を背後から補助するような形で、親が少しだけ手助けしてあげることも有効です」――他にうまくいかない課題に取り組むときに心がけた方がいいことはありますか?「子どもの興味あることに寄り添って、課題の設定を工夫することも大切だと思います。例えば、こんなお子さんがいました。その子は平仮名を覚えるのが苦手で、カードで『あ』『い』『う』…と教えても、上の空で全然頭に入らない。そこで、その子が大好きな戦隊モノを利用することにしました。戦隊キャラの写真と名前(平仮名)をゲーム感覚で一致させて、その子の興味を引き出す仕掛けを作り、平仮名を読む行為自体が楽しくなる方法で取り組んだのです。そうしたら、その子はどんどん平仮名を覚えて、後にお母さんから『文章も読めるようになりました!』と報告がありました」――「教える」というより、その子の「興味を引き出す」仕掛けを作る。そして、それが楽しいと思えれば、後は、自らどんどん吸収してくれるというわけですね。親もそんな子どもの成長がうれしい。子どもも笑顔&親も笑顔、親子の関係を笑顔にする、まさにウィン・ウィンの方法ですね。 ■ABAを行ううえで、親が気を付けるべきこと――スモールステップがとても有効なやり方だということはよくわかりました。では、課題を少しずつクリアしていけば、何でもできるようになるのでしょうか?「いいえ。一点注意しなければいけないのは、何でもかんでもスモールステップで繰り返しやれば身に付くわけではないということです。滑り台の例のように、ちょっとした勇気やきっかけ作りでクリアできそうな課題はスモールステップが有効です。でも、平仮名の読み書き、算数など、さまざまな工夫をしてもどうしてもうまくいかない場合、もしかしたら学習障害が絡んでいる場合もあるかもしれません。その場合は、『これは生まれ持った特性なのでは?』と考えを切り替えることも大切です。そのことも頭にとめておいてほしいです(文字の読み書きにはビジョントレーニングが有効な場合もあります)」――ほかに、ABAを行ううえで気をつけておくべきことはありますか?「よく、家で机に座って子どもにガッツリABAの課題をやらせる、という話も聞くのですが、体を動かすことや外に出て五感を生かすことも大切にしてほしいと思います。五感を働かせることは、視機能、脳機能を伸ばすのにも大切だと思いますよ。あと、ABAはちょっと間違えると、『指示して動かす』ということに終始しがちな危険性があるので、子どもに選択させることを常に意識してほしいと思います。例えば、どんなに障害が重いお子さんであっても、食べ物の好き嫌いはあるはずです。『はい、お菓子よ』とあげるだけではなくて、『どっちが食べたい?』と選ばせる。選ぶというのは楽しみでもあるので、どんなにささいなことでも自分の意思で選ぶという体験を重ねてほしいと思います」■客観的視点が大事! ABAは親子の笑顔を引き出すアプローチ――最近では、ABAの認知度が高くなって、家で実践している方も多くなってきたようです。でも逆に、それがうまくいかないと、自分と子どもの努力不足だと追い詰められてしまう方もいるようですが…。「確かに、向き不向きがあるかもしれません。そんな時は、そもそもABAは子どもの笑顔を引き出すアプローチということを思い出してください。そこを外れて『なんでできないの?』『どうしてあなたはいつもこうなの?』というふうになってしまったら本末転倒ですよね…」――私もそんな時期がありました(苦笑)。つい「あなたのためなのよ!」と力が入ってしまって…(苦笑)。「私もそうだったのでよくわかりますよ。でも、お母さんが『これができないと困る』と思って一生懸命やっていても、子どもは全然困っていなかったりするんですよね(笑)。困っているのは、子どもじゃなくて、実はお母さんの方。お母さんが、他人からどう見られるかを気にしてやっていることの方が多い気がします。そんな時は、ちょっと立ち止まって『今の私って人の目を気にしてる?』と自分のことを客観的にみることが大事です」――確かに(苦笑)。当時は、「普通に近づけたい」という私のエゴが、常に頭のどこかにあったように思います。「私も息子が自閉症と診断された当初は、とにかく『普通に近づけたい』と夢中になっていた時期がありました。でも、その結果、課題をなかなかクリアしない息子を追いつめ、見事に失敗しましたけどね(苦笑)。普通にこだわったり、周囲からどう思われるかにとらわれると、子どもの悪いところ・できないところばかりが目についてしまい、悪循環に陥っちゃうんですよ」――そういう時って、もはや自分のことが見えなくなっているはず(汗)。自分のヤバさに気づくサインはありますか?「常に子どもが教えてくれるはずです。子どもに笑顔があるかどうかです。子どもに笑顔がなかったら、きっとその時、お母さんにも笑顔がないと思いますよ。お互いに笑顔がないのなら、家庭でのABA(療育)はいったんお休みしましょう」――いろいろお話をうかがっていると、もちろんABAは子どもの力を伸ばす可能性に満ちているけれど、それ以前に、お母さんの心の健康の方が大事という気がしてきました。「そう。子どもうんぬんよりも、まずはお母さんが自分自身を大切にすることが何より大事。だって、同じことが起こっても、自分に余裕がある時は『あらま~』って笑えるけど、余裕がない時だと『何やってんのよ!』って怒っちゃったりするでしょう? 物事をどう受け取るかはすべて自分次第なんですよ。借りられる手は全部借りて、まずは、お母さん自身の心を満たすことを考えましょう。子どもが見たいのは親の笑顔ですから。あと、何もかも完璧を求めすぎず、『まぁ、いいか』というゆるい心を持つことも大事です」――確かに、発達障害の子育てで「ゆるさ」は大切ですね。発達障害児のお母さん(私?)って、常に、子どもの将来の心配をするのが癖のようになっちゃっているのですが、ここらへんはどうしたら?「みなさんが不安に感じているのは、まだ、実際には起きてない予期不安ですよね? だとしたら、起きてない不安を延々と考えて苦しむのはムダじゃないですか?まずは、不安を感じているという自分の気持ちを『~って思っちゃうんだね。わかるよ』と認めて受けとめ、『また出てきたあ! 私って本当に悲劇のヒロイン好きだわ~』って笑い飛ばしちゃうのもひとつの方法です。思考癖に気づくことが大切です」――先のことは誰にもわからないはずですものね。「もう、『なんか知らないけど、この子はきっと大丈夫!』と決めてしまいましょう(笑)。先のわからないことはプラスに考えた方が楽しいし、それに、人はみな、決めてから行動を起こすでしょう? だったら、『大きくなった子どもの笑顔を思い浮かべ、今、サポートできることは?』と応援団として行動を起こすのです。それでも不安に押しつぶされそうになった時は、どうか、この言葉を思い出してみてください。それは、『今の子どもの姿がすべてではない』ということ。これは、私がお守り代わりに心にとめている言葉です。親が信じて、コツコツ働きかけていれば、きっとうれしい成長があります。今の姿だけを見て将来を悲観せず、子どもの可能性を信じて、楽しく働きかけていきましょう!」「今の子どもの姿がすべてではない」――著書を読んで以来、私がずっと心にとめている言葉です。shizuさんのこの言葉は、いろいろな局面で私の心を楽にしてくれました。子どもの可能性を信じてコツコツ働き続けることの大切さ、そしてそれ以上に、子どもと自分が笑顔でいることの大切さを、改めて感じた取材でした。参考図書: 発達障害の子どもを伸ばす 魔法の言葉かけ 著者 shizu/監修 平岩 幹男11万部13刷のロングセラー。手を洗うときの言葉かけ、食事をしながらの言葉かけ、いっしょに料理をするときの言葉かけ、散歩のときの言葉かけ、遊びながらの言葉かけ―ABA(応用行動分析)を利用した「言葉かけ」をすれば、楽しみながら家庭で子どもの力を伸ばせることを紹介した一冊。shizu プロフィール自閉症療育アドバイザー。講演会などで、日常生活の中で子どもの力を伸ばす楽しい関わりや言葉かけを紹介。家族に笑顔を増やすため、親が心掛けたい子どもへの気持ちの持ち方も伝えている。無料メール講座『発達障害の子と楽しく生活する7つのコツ』配信中。講演会の詳細はブログ参照。ブログ: 「発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉」 取材・文 まちとこ出版社N
2018年01月07日自閉症スペクトラム障害の「困難」出典 : 発達障害の1つ、自閉症スペクトラム障害。物事への興味関心やコミュニケーションに関する特異性が強い障害だと言われていますが、実際には一人ひとりが異なる多様な困難に直面し、その困り度合いや表出のしかたもそれぞれ異なります。我が家の7歳の息子は自閉症スペクトラム障害の診断を受けており、好きなことばかりを喋り続けてしまったり、トミカを延々と等間隔で並べ続けてたりしていました。また、少しの乱れも許さず、ちょっとでも間隔がずれてしまったりすると、癇癪(かんしゃく)を起こしていたものです。最近はこのような癇癪は起こさないように自分でコントロールできるようになりましたが、好きなことに対するこだわりの強さはいまだ健在です。これらは自閉症スペクトラム障害の「社会的コミュニケーションの困難さ」や「こだわりの強さ」に起因するのでしょう。そんななか、今年の11月に、なぜこの2つの特徴が発生するかについての研究結果が、日本国内から発表されたのです。リズム同期実験/最新の脳波技術による研究とは出典 : 以前まで、「社会的コミュニケーションの困難さ」と「こだわりの強さ」は、これまでは、それぞれ別のメカニズムから生じていると考えられていました。けれども、最新の脳科学の研究によって、これら2つの特徴が同じメカニズムから生じている可能性があるという見解が示されたのです。研究結果を発表したのは、京都大学、筑波大学、理化学研究所、帝塚山学院大学による共同研究チーム。この研究は、英国の科学誌「Scientific Reports」にもオンライン公開されました。自閉スペクトラム症者のコミュニケーション障害に関する新たな視点 -最新の脳波技術を用いた科学的根拠による理解の促進-| 京都大学 theta activation during motor synchronization in autism (訳:自閉症者のリズム同期課題時の前頭シータ波の活動)この研究は、自閉症スペクトラム障害の当事者が参加し「リズム同期」の課題を行うことで、自閉スペクトラム障害の特徴を明らかにしようとするものです。ここで言うリズム同期とは、タイミングをあわせて音を鳴らしていくようなもので、二者でリズムが一定になるように、交互に音のなるスイッチ(キーボード)を押す実験です。自閉症スペクトラム障害の参加者がキーボードを押すと音が鳴り、続けて相手(PCプログラムもしくは定型発達の参加者)がキーボードを押すと別の音が鳴ります。PCプログラムが相手をする場合は、一定の間隔で音を出すパターン、急に間隔が変わるパターンなどを使用して、それらがどれだけ同期しているか調べるのです。またこの実験中は脳波も測定し、どのような脳波が発されているかも記録していきます。そして自閉症スペクトラム障害の参加者と定型発達の参加者の同期実験の結果を比較してみると、次のようなことがわかりました。・リズムが一定のPCプログラムが相手だと、自閉症スペクトラム障害の参加者と定型発達の参加者で、同期の特徴に差はない。・人および音の間隔が一定ではないPCプログラムが相手だと、定型発達の参加者に比べて自閉症スペクトラム障害の参加者では、同期量が少ない。この同期量の少なさは、主に自閉症スペクトラム障害のこだわり傾向の強さと関係があるつまり、自閉症スペクトラム障害の人たちが、一定ではないリズムへの適応に困難さを抱えていることが示唆されてます。自閉スペクトラム症者のコミュニケーション障害に関する新たな視点 ~最新の脳波技術を用いた科学的根拠による理解の促進~また、この同期実験で、参加していた自閉症スペクトラム障害の人たちの脳波データを解析したところ、定型発達の人たちの脳波と較べて、下記のような特徴があったそうです。・リズム同期において、自閉症スペクトラム障害の人たちにのみ前頭シータ波が増加する(=脳に負荷がかかっている)・自閉症スペクトラム障害者の前頭シータ波は、リズム同期の相手が人であってもPCであっても増加することが分かった前頭シータ波とは認知負荷がかかっていることを示す脳波であり、驚いたことに自閉症スペクトラム障害の人たちは「相手とリズムを合わせる」ということだけでも、脳に負荷がかかっていることが分かったのです。これらのことから、研究報告では次のように記述されています。上記の結果から、自閉スペクトラム症者では、単純なコミュニケーションに含まれる他者のイレギュラーなリズムに適応することに負荷がかかっていること、しかもこれにはこだわり傾向が関係していることが、実験と臨床の両面から発見されました。また、この考え方により、「コミュニケーションの困難さ」と「こだわり傾向」の強さは、他人のリズムに合わせることの難しさから起因するものとして統合的に説明できると、研究では示唆されています。自閉症スペクトラム障害の子どもの毎日を想像してみる出典 : このことを知ってから私は、息子がくたびれて帰ってきて、家に帰って不機嫌だったりすることも、私は少し優しい気持ちで眺めることができるようになりました。大勢の誰かにとっては「ただリズムを合わせるだけのこと」が、脳に大きな負担をかけていること。さらにそれが変則的なリズムであればあるほどストレスが大きい。良く考えてみれば、人とのコミュニケーションは変則的なことだらけです。相手の話に頷くタイミング一つとっても、「一定ではないリズム」です。さらにこれに、相手の話を聞いて適切な答えを言ったり、笑ったりといった「超変則的なリズム」が加わるのです。自閉症スペクトラム障害のある人たちにとって、「一定ではないリズム」の集合である対人コミュニケーションが、いかに難易度の高いことであるかが、より想像しやしすくなりました。学校生活や社会生活は「リズムを合わせる」ことだらけです。他者の行動に合わせて1日行動すると、恐らく自閉症スペクトラム障害の人たちの脳には大きな負荷がかかっているのでしょう。言うなれば、毎日が大荒れの大航海。そう思うと、家に帰ってきた息子を、まずは褒めてあげたくなるのです。
2017年12月22日おしゃべりできるようになって癇癪がおさまってきた長男に安堵自閉症の長男は7歳まで話すことができませんでした。思いをうまく伝えられないためでしょうか。長男は癇癪をおこして床に頭を打ち付けたり、絵本を破ったりといった行為を繰り返していました。そんな長男も、7歳の誕生日を過ぎたころから単語が出始めました。簡単なやり取りができるようになってくると癇癪が少しずつ減っていったのです。Upload By シュウママ今年の4月、特別支援学校の3年生に進級した頃まで長男の機嫌の良さは続いていました。大きくなったんだなと落ち着いた長男の姿を見ながら私はホッとしていました。せっかく落ち着いていたのに、再び不安定になった長男ところが夏休みが終わったころのことです。家での長男の様子が変わっていったのです。突然「あ~!」と鼓膜が破れるほどの大声を出したり、手当たり次第に物を投げつけたり…明らかに気持ちが不安定になっているのが分かります。Upload By シュウママ「大きな声を出さないで!」なだめてもすかしても長男は叫びやみません。いったい何が原因なのか…私はわけがわからず不安と苛立ちが募っていきました。長男が通う病院の主治医の先生に相談して漢方薬を試してみたりしましたが、叫ぶ、投げるといった行動に変化は見られませんでした。学校でも大声を出していた!?でも順応性の高い長男に限って…ちょうどその頃長男の学校で個別面談がありました。長男のクラスは担任の先生が二人いるのですが、一人の先生が産休に入られたというお話がありました。「学校でも大声をあげることがありますね。その声に驚いた他のお子さんも耳を塞いでしまうんです」先生は言葉を選びながら言いにくそうに話されました。Upload By シュウママ「また落ち着いてくれるといいんですが」先生は申し訳なさそうにぺこりと頭を下げられました。やはり学校でも…思わずため息がでました。けれど長男は今まで、クラスメイトや担任が代わったからといって態度や行動に大きな変化はありませんでした。自閉症という診断にも関わらず、人が好きで順応性がある方でした。先生がいなくなってショックだからといって大声で叫ぶことに繋がるだろうか?そもそも、先生がいなくなったからといって大声で叫ぶほどショックを受けるなんてことがあるのだろうか?長男の気持ちがわからないまま、私は学校を後にしました。秋の終わり頃。大声が減り、すこしずつ元に戻った長男それからしばらくの間は大声に悩まされていたのですが、少しずつ秋が深まっていくにつれ長男の大声を出す回数が減っていったのです。Upload By シュウママ徐々に徐々に落ちついていく長男を見ながら不思議に思いました。どうして元に戻ったのか…私は主治医の先生に再度相談してみました。何が原因だったのか?主治医の先生に相談してみたら…「担任が代わることで情緒不安定になることがあるでしょうか?」私がそう訊ねると先生は大きくうなずきます。「ありますね」というお返事でした。「でも今までは、進級してクラスメイトや担任が代わってもすぐ慣れていたんですよ。家での様子も普通でしたし…」私がそう言うと先生は穏やかな笑顔で言いました。Upload By シュウママ「今回は急に担任の先生が代わられたんですよね?たぶんシュウちゃんは環境の変化についていけずに苦しかったんでしょう。今はやっと慣れてきたんじゃないかな」先生はそう言うと椅子に腰掛けた長男を見ながら、よかったねと言って頭をなでてくださいました。子どもはいろんな形でSOSを出している帰り際、先生はこんな話をされました。「自閉症はね。100人いれば100通り症状が違います。進学や進級、環境が変わった瞬間泣いて登校拒否になるお子さんもいます。シュウくんのように叫んだり物を投げたりして別の形で発散する子もいる。でもみんな心のバランスを取ろうと一生懸命なんですよ」Upload By シュウママその話を聞いてはっとしました。私自身、長男はどこでもすぐ馴染む子だから大丈夫だと安易に考えていたからです。でもそれは、表に見えないだけで長男は長男なりに必死に頑張っていたんじゃないか、あれは長男のSOSだったんじゃないか――気付いてやれなかったことを申し訳なく思いました。何より、担任の先生がいなくなって淋しい思いをしていないだろうか――そう長男を心配することもなかった自分に腹が立ちました。もちろん気付いてやったからといってどうしようもないことだけれど、せめて子どものサインを見逃さず寄り添ってあげられる親でありたい、そんな風に思いました。Upload By シュウママ
2017年12月15日どうして真似しないんだろう?双子の長男と次男の大きな違い難病のあった長男は、赤ちゃんの頃から周囲の問いかけに対して反応が薄い子でした。反対に双子の次男は1歳の頃には、私や夫が手を叩けば「はくしゅ!」と言って真似をし、近所の方が「バイバーイ」と手を振れば笑顔で手を振り返す子どもでした。どうして長男は反応してくれないんだろう…。焦燥感に駆られて私が目の前で手を振ってみても、長男はガラス玉のような瞳で私を見つめるだけです。Upload By シュウママその瞳からは一切の感情が読み取れず、私はこの子には周りの風景が見えてないんじゃないかと不安になりました。けれど目の検査をしても異常はありません。1歳半を過ぎた頃、この子には何か障害があるのではないか…そんな恐れが徐々に芽生えてきた時期でした。自閉症と診断された長男。納得したものの…その後、長男には2歳で自閉症という診断が下りました。やはり…という思いが強くあり、今まで疑問に思っていた行動の一つひとつに納得がいきました。主治医の先生は「お母さんの真似をしないのは、まだ周囲への関心が薄いからだと思います。でもそれはずっとじゃない。徐々に変わっていきますよ」と力強く言ってくださいました。「本当にそんな日がくるでしょうか」さらに問いかける私に向かうと先生は「大丈夫。シュウくんにはまだ受け皿がない状態なんです」Upload By シュウママと笑顔で言ってくださいました。その言葉を聞いて、焦っちゃいけない。長男の成長を信じて待つしかないんだ――ほんの少しだけ心が軽くなりました。待ちに待った初めてのバイバイ。その後3歳になった長男は療育施設への通園が始まりました。通って数ヶ月たった頃のことです。通園する長男のバスに向けて、バイバイと手を振る私に長男は手を振り返してくれたのです。嬉しくなった私は何度もバイバイしました。すると長男は表情こそありませんでしたがもう一度手を振ってくれました。その手を見るうち、私はあることに気づきました。通常バイバイするときは相手に手のひらを向けますが、長男のバイバイは手の甲を私に向けていたのです。Upload By シュウママ口を真一文字に結んだまま手の甲を向けて振り続ける長男の姿はみんなと違っていて、驚いた私は一瞬、バイバイしていた手を下ろしてしまいました。もしかして「逆さバイバイ」…?社会性の欠落という文字を見て落ち込む私家に帰った私はさっそく長男の不思議なバイバイについてパソコンで検索しました。すると「逆さバイバイ」=「相手と立場を置き換えて行動することが難しいため、相手が手のひらを自分にむけると自分も手のひらを自分に向けてバイバイしてしまう」という文字が画面に映し出されます。Upload By シュウママ「逆さバイバイ」…まさにさっき見た長男の仕草でした。思わずため息がもれました。子どもならバイバイという日常の動作を簡単に身に付けることができると思っていたのに、長男にとってはバイバイを真似することもこんなに大変なのか…そう思ったからです。服を着るのも靴下をはくのも、どれだけ目の前でやってみせてもできなかったのは、こういうことだったのかと目の前の現実をつきつけられた気がしたのです。双子の次男と先生の言葉から気づいた長男流の成長その日、私は暗い気持ちのまま療育施設から帰ってきた長男のカバンを開けました。すると連絡帳に「今日はシュウちゃんバイバイできたそうですね。バスの先生が教えてくれました。初めてのバイバイおめでとう!」と担任の先生が書いてくれていました。Upload By シュウママそれを読んではっとしました。長男が初めてバイバイしたんじゃないか。逆さまだっていいじゃないか。ちゃんと成長してるじゃないか…!私は長男に「バイバイできたね。すごいね」と頭を撫でてやりました。すると再び長男は私に向けてバイバイと手を振りました。その目にはどうだ!という得意げな光がありました。意思の見えないガラス玉の瞳はどこにもありませんでした。この子の感情は育ってきている、ゆっくりゆっくりだけど…そのことに気が付くと涙がこぼれそうになりました。すると後ろから次男の声がしました。「わあ、シュウちゃんのバイバイは逆さまだね。“シュウちゃんバイバイ”だね!」その声は明るく弾んでいます。Upload By シュウママみんなと同じじゃなくていいんだよ。それがシュウちゃん流なんだから――先生と次男のかけてくれた言葉が暗く沈んでいた私の心に灯りをともしてくれたのです。この瞬間、他人と比較することなく長男の小さな成長を丸ごと喜べる親でありたい、そう強く思いました。
2017年11月30日発達障害については「悩んでない」—いい悪いじゃなく、そうやって生まれたからインタビューの中でも、この「LITALICO発達ナビ」の連載コラムの中でも、鈴木さんが繰り返し語られていたのは、自分が発達障害であることで「悩むことはない」ということ。鈴木希望さん(以下、鈴木): 私だって日々の生活で悩むことはありますけど、それは、「誰だって生きていれば悩みの一つや二つある」ぐらいの普通なことであって、特別に発達障害“だから”悩むとか、発達障害“そのもの”について悩むことはもう無いんです。発達障害がある人間として生まれて「良かった」とは言わないけれど、「障害じゃなくて個性だよ」とか「大変なのに頑張ってるね」と、周囲に変に気を遣われるのもなんだか違和感があるし…良いも悪いもない、これが“基本設定”って感じです。もちろん、感覚過敏や相貌失認など、発達特性の凸凹によって“困る”ことはある。でも、原因がわかっていれば対処のしようがあるし、特性は変わらないのだから、その上でどう生きていくか考えるだけ…と、鈴木さんはあっけらかんとした口調で語ります。算数障害はあっても、大人になった今は電卓を使いこなせば計算には困らない。音や光、匂いに対する過敏性があるけど、自覚していればなるべく苦手な刺激を避けることができるし、どうしても苦手な環境で過ごさなければいけないときは、早めに休憩を入れるようにする…「これは特性なのか」「この場合はこういう対処をすればいいのか」と、自分の思考や言動のパターンと発達障害の特性を照らし合わせながら分析し、対処を考える行為には、ある種の“面白さ”も覚えるとのこと。日頃から自分の特性をよく観察し、受け止めているからこそ、他人に対しても比較的フラットに自分の発達障害のことを話せるそうです。鈴木: 先日、ネットを通してつながった、共通の趣味のある友人たちと集まったんですが、「こういう特性があって、初対面の人とは目を合わせにくいんだけど…」と説明すると、「あぁそうなんだ」って向こうもあまり特別視することなく受け止めてくれたんです。そういうときはすごく楽な気持ちになりますね「痛いところがあったら早く治せるように、薬を家に置いておくのと同じだね」—自分以上に発達障害をあっさりと受け止めた息子について今でこそ「発達障害で悩むことはない」と語る鈴木さんですが、学生の頃や働き出してばかりの頃など、医師の診断を受ける前には、やはり思い悩んだ時期があったそうです。こんなに人付き合いや仕事でつまづくのは、自分の性格が悪いのか、それとも努力が足りないのか…何が原因なのかも、修正の方法もわからず、「自分のことを理解できない生きづらさ」に苦しんでいたあの頃。「分からないまま悩み続ける」ことがどれだけ辛いかを痛いほど知っているからこそ、同じ発達障害の診断を受けた息子さんに対しては、早いうちから告知をしたそうです。すると…鈴木: 本人に告知してみたら、私の予想以上にあっさり受け止めたんですよ。「あんた、発達障害ってのがあるらしいよ」「ふーん、そうなんだ!」ぐらいのリアクションで…おまけに、お医者さんのところに連れていくことに対しても「痛いところがあったら早く治せるように、薬を家に置いておくのと一緒だね」なんて一人で納得する始末で…笑わが子ながらいい例えをするなぁって感心しましたよ。息子さんにとっての発達障害診断と通院は、いざという時のために救急箱を用意しておくぐらいの感覚…鈴木さんより早いうちから発達障害の告知を受け止めた息子さんは、母親であり、同じ診断を持つ鈴木さんも驚くほどに、自分の特性を自分の一部として受け入れ、成長していっているようです。「なんとかなるし、なんとかするしかない」合言葉を胸に、“同志”として共に生きるそんな鈴木さんの息子さんは、現在小学校二年生(2017年度時点)。マイペースに過ごしながらも、同級生の間で独特のポジションを確立し、みんなに愛されているのだとか。鈴木: 鬼ごっことか、自分が好きな遊びだったら集団遊びにもアクティブに参加するんですけど、いつもそういうわけではなくて、興味がないときは集団の輪の外からニヤニヤ笑いながら一人で眺めてるらしいんです。でも、集団に参加しないからといって仲間はずれにされてるってわけでもなくて、「ハルくん(息子さんの愛称)はそういうもんだから」と、クラスメイトからも“そういう立ち位置”として普通に認知されてるみたいなんですね(笑)面白いのが、先生曰く、そんなハルでも体調崩して休むと「クラスの均衡が崩れる」らしいんですね。ニヤニヤして遠くから眺めてるだけなのに、それがクラスの調和を保つピースの一つとして、自然に溶け込んでいる。あと、他人に興味がなくて一人でいるわけではなく、なんだかんだ周りのことはよく見ていて、誰かが困っていたら一番に駆けつけるらしいんです。私が心配するまでもなく、しっかりやってるんだなぁ…と。出典 : 同じ診断を受けた鈴木さんと息子のハルくん。自分の幼少期と比べて、似ているところもあれば全く違うところもある。そして、凸凹がありながらも彼は彼でたくましく学校の中で成長している。そんな息子さんの様子を眺めながら、「いずれ困るときもやってくるだろう」と予想する鈴木さん。鈴木: 今は本人も自覚していないけど、学年が上がったり環境が変われば、困り感が出て来ることもあると思います。私の予想では、4年生ぐらい。だから、親としてはある程度の心の準備はしているんですけど、正直、それほど心配していないんです。だって、彼の人生を生きるのは彼であって、私じゃないから。あまり心配しすぎるのも彼に失礼かなって。「まぁ困ったことがあれば話してくれよ、一緒に考えようぜ」ぐらいのスタンスでいます。親子と言っても、自分と息子は他人だから、それぞれの人生を歩んでいく。親としてサポートはするつもりでいるけど、彼自身が道を切り開く邪魔をしてはいけない。そんな考えを取材中繰り返し語ってくれた鈴木さん。「なんとかなるし、なんとかするしかない」それが、鈴木家の合言葉だそうです。発達障害による困りごとがゼロになるわけではない。自分がそうであったように、これからのわが子の人生にも色々あるだろう。だけどきっと、彼なら「なんとかする」と信じている。日々成長していく小さな“同志”を横目に、鈴木希望さんも、自分の人生を歩んでいきます。
2017年11月19日自分のコピーと言われるぐらい、そっくりな息子の子育て親子そろって自閉症スペクトラム障害の診断を受けた希望さん親子。自分にもお子さんにも発達障害がある育児は、さぞかし大変だろうと思いきや、「ほとんど困らなかったです」という鈴木さん。鈴木希望さん(以下、鈴木):息子がはじめての子なのですが、子育てにはほとんど困りませんでした。凸凹は大きいですが、父母が「希望のコピーのようだ」というぐらいにお互いの特性が似ているので、こんなもんだと思っていました。実家のご両親をはじめ、鈴木さんをよく知る新潟の人たちは、息子さんの特性も自然と受け入れてくれたそうです。むしろ、「希望(のぞみ)と同じなのに、これがどうして“障害”なの?」と言われるぐらい偏見がなく、わざわざ発達障害のことを説明する方が難しかったとのこと。「診断を受けて楽になった」―障害も含めて個性を認識することで対策ができる一口に自閉症スペクトラムといっても、一人ひとりの特性や困難はさまざまですが、鈴木さんと息子さんの間には共通点も多く、理解や対処が比較的容易だったとのこと。鈴木: 子育てに困りはしなかったと言いましたが、特定の場面や刺激への苦手さは当然あります。息子は音への感覚過敏があって、特定の周波数の音に反応するようです。たとえば、ここの繁華街は平気なのに、別の駅の繁華街に行くとダメ、という感じですね。でも、私も音や光り、臭いへの感覚過敏があるので、そんなこともあるかと落ち着いて対処できます。出典 : 鈴木: 環境の変化にも弱くて、新潟の実家に引っ越した直後は、ほとんど寝なくなり、ずっと泣き叫んでいました。以前、実家のガスコンロを新調した時も「前のがいい」と言ってパニックになってしまって。環境の変化に対するストレスが大きいみたいなんですが、それも自分に似ているから理解できます。そんな息子さんは、保育園に入っての集団生活でもマイペースで、一人で黙々と好きなことをして遊んでいることが多かったそうです。ですが、お友達との関わりのなかで大きなトラブルもなく、周囲からも人気者だったとのこと。特性ゆえの苦手な場面には対処しつつ、過剰に心配したり問題視したりすることなく、息子さんをのびのびと育てている様子の鈴木さん。鈴木: 私は、診断を受けて楽になったんです。障害は個性の一つだとも言われますが、その個性もキチンと認識しないと遠因や対策はわかりません。困り感が消えるわけではないので、診断されてわかったことをベースに、環境を変えていきました。息子に関しても同じで、「この子の困り感をどうしたら人に伝えられるだろう」と考えながら、園や学校の先生とやり取りしました。いろいろ考えた末、通常学級に入れることに決めました。通級教室のある学校が遠かったので、通い続けるのは息子もしんどいだろうと通級を断念。入学する学校の支援学級は全体的に学業の進行がゆっくりだったので、息子は物足りなさを感じる可能性がある…そんな風にそれぞれの特徴や息子との相性を検討した上で決めました。通常学級にいるなかでも、感覚過敏ほか特性由来の問題について配慮を受けられるようにと、先生方に相談しています。後悔だけはしてほしくないから、息子には全部自分で決めさせる自分とそっくりの特性がたくさんある息子さんについて、「“子育て”していると思ったことはない。息子は“同志”みたいなものだから」と語る鈴木さん。息子を一人の人間として大切にしているからこそ、園や学校での行動は全て本人の決定に任せているそうです。たとえば、聴覚過敏のある息子さんにとって、にぎやかな園の行事への参加は大きなハードルです。そんな時も鈴木さんは、「みんなも出てるんだから」と参加を強制することもせず、「出なくて良いよ」と促すこともせず、息子さん自身に考えさせるのです。鈴木: すべて本人の意思に任せるんです。事前に、「出たらどんな良いことがあって、どんなこと嫌なことが起こるのかを考えて、全部自分で決めてね」と伝えています。その途中で話も聞くし、アドバイスはするけど、“指示”は絶対にしません。鈴木: 息子は、一度決めたら変えてはいけないんだと思いこんでしまう傾向があるので、最初に「出る」と言ったことを後から変えることに抵抗があったり、変えたことでまた悩んだりもするんですが、そうしたプロセスも含めて全部、息子に決めさせるようにしています。子どもには酷だとは思います。でも、母や周囲の期待に応えようとして自分を押さえるようなことはしてほしくないんです。だから私は、息子が自分で考えて決めたことは、絶対に否定しません。失敗することもあるけど、自分が決めたことなら納得ができるし、そこから学んでいけるから。「私には、親という意識があまりないんです」と語る鈴木さん。自分とそっくりの特性がある息子さんだからこそ、困難をよく理解した上で環境を整え、本人の意思や主体性が育つようなかかわり方をするのが希望さん流の子育てなのでしょうね。第3回は、ご自身の過去の経験や、息子さんとの関わりを踏まえて、いま発達障害について思うことを語っていただきます。
2017年11月18日言葉と数字、得意・不得意の大きなギャップ現在もライターという、言葉を扱う仕事をされている鈴木さんですが、幼少期の頃から文字や言葉への親しみが強く、学校でも国語・英語といった教科が大の得意だったそうです。鈴木希望さん(以下、鈴木): 好きな遊びが、国語辞典の「あ」からの内容を黙々とノートに書き写すこと。私には、文字や言語へのこだわりがあるんだと思います。反面、算数・数学は大の苦手でした。おそらく算数障害なのでしょう。1桁の計算もすぐに間違ってしまうぐらい、数字や計算記号そのものを認識しにくい認知特性があるんです。小学校低学年の頃は、周囲との差はあまり大きくありませんでしたが、小学校高学年、中学、高校と計算問題の難易度が高くなるにつれ、得意科目との差が大きく目立つようになっていきました。当時は自身の発達障害についての認識もなく、「なんでこんなに間違うんだろう」、「勉強不足に違いない」と思いながら必死に算数・数学の勉強に勤しんでいたとのこと。鈴木: 曖昧さのない“理数系”の世界が大好きで、数学の勉強自体はすごく楽しんでやっていたんですよ。それなのに学校では、国語・英語が99点で数学は3点みたいなテスト結果が返ってきて、「好きこそものの上手なれ」の反対というか、叶わぬ片思いみたいでひどいですよね(笑)「同じ」ことが当たり前だなんて、どうして思えるんだろう…他人との考え方の違いに苦しんだ学校生活学校生活では、他にもクラスメイトとのコミュニケーションや集団行動に難しさを抱えていたという鈴木さん。みんなと同じことを同じタイミングで行うことが強く求められる学校生活に、疑問や苦痛を感じながら過ごしていたそうです。鈴木: 自分が感じたり考えたりすることが、本当に他の人もそうかという確信が持てないんです。だから、「こう言われたらこの人は嫌だろうな」とか、「他の人も自分と同じように思っているだろう」といった感覚がわからない。結果、みんなから「冷たい」「直しなさい」って責められてしまうんです。小学校の人間関係、特に女子の中では、友だちと共感できないことでトラブルになりやすいじゃないですか。相手を否定するつもりはなくても、自分はそれが好きじゃないと言っただけで「否定された!」と捉えられます。特に、小学校3~6年生頃の風当たりがきつくて、当時は辛かったですね。自閉症スペクトラム(ASD)特性のある人は、よく「他人の感情を読むのが苦手」「コミュニケーションが苦手」などと説明されますが、鈴木さんとしては、「相手の気持ちがわからないのではなくて、頭に浮かぶ選択肢が多すぎて対応が絞れない」という方が、自身の感覚に近いとのこと。出典 : なんとなくその場の空気で共有されている“多数派の感覚”が当たり前だとは思えない。自分と他人は違う感じ方をしているかもしれない。だから、自分は自分で思ったことを率直に言う。そうやって素直に行動しただけなのに、“共感”することを前提とした人間関係の中では「冷たい」という評価を受けてしまう…学校の人間関係特有の息苦しさが、鈴木さんを追い詰めていきました。小学校5年生のときには、てんかんを発症。中学生になってからの環境の変化もあいまって体調を崩してしまい、心身ともに不安定な状態のなか、学校にもあまり行けなくなってしまいます。その後受験した私立高校は、自由な校風で過ごしやすく、小・中学校時代とは打って変わって順調な日々を送ることができたそうです。しかし、病気がちで出席日数が足りず、3年生に上がるときに留年してしまいます。クラス担任との相談の結果、「あなたは、自分のペースで勉強して、大検(大学入学資格検定)を取って大学に行った方が良いと思う」とアドバイスを受け、高校は中退することを決意。ここから現在に至るまで、鈴木さんはさまざまな仕事を経験していきます。高校を中退し、働くなかで広がった世界。そして…鈴木さんが最初に始めたのは、レコード屋さんでのアルバイト。まだ若く、はじめて就業を経験する鈴木さんに対しても、周囲の人たちは優しくサポートをしてくれました。働くことはとにかく「楽しかった」という鈴木さん。レコード屋さんで22歳まで働いた後も、飲食店、派遣での営業事務、編集プロダクションなど、さまざまな職業を経験します。自身の特性の凸凹もあり、相性の良い仕事とそうでない仕事の差が激しかったと振り返ります。鈴木: 在庫のチェックみたいな、黙々と集中できる反復作業はすごく得意で、楽しかったですね。逆に、派遣の営業事務で担当した経理の仕事は厳しかったですね。入力ミスを立て続けに起こし、叱られてばかりでした。自身の特性と相性の悪い仕事に就いても、当時の鈴木さんは「自分の努力が足りないせいだ」と思い、無理をしながら必死に働いていたそうです。結果、疲労やストレスから体調を崩し、ドクターストップがかかるまでになったことも。一方で、これまでの学校生活と違い、多様な個性が「当たり前」に受け入れられる環境にも出会うことができました。鈴木: インド料理店での仕事はよかったですね。インド人は個性豊かな人が多くて、日本で長く暮らしていても、常識や文化が違います。インド人スタッフも日本人スタッフも、お互いの個性を受け入れられる人ばかりで、環境に恵まれていました。当時はまだ診断も受けていませんでしたが、私の特性も個性として自然に受け入れてくれました。高校を中退し、先生に勧められた大検を取ることも結局はしませんでしたが、鈴木さんは「働く」ことを通して、少しずつ自分の世界を広げていきます。現在のお仕事は、フリーランスのライター業です。雑誌やカタログ、企業や自治体の広報誌など、さまざまな媒体からの依頼に応じたライティング業務を請け負っています。幼少期から親しんできた言葉や文章の世界での仕事、また、黙々と情報を「調べてまとめる」という作業が自身の特性に合っていることもあり、クライアントの期待に応える文章を書き上がることに、やりがいや達成感を感じるとのことです。鈴木: 書く仕事といっても、私は”自己表現”をしたいという欲求はあまり無いんですよ。ライターというのは、コラムニストや作家と違って、表現者というよりは職人的なお仕事です。依頼してくれたクライアントがどんなものを期待しているかを理解して、その期待や要望をすべて満たせる文章を、カチッと合わせてつくる…それが出来たときにはすごくスッキリするというか、やって良かったなって思います。幼少期には、みんなと同じ行動や“共感”を強く求められる環境の中で苦しんだものの、社会に出て働く中で、自分を含めてさまざまな個性を持った人たちとの関わりを増やしていった鈴木さん。多様な人や企業の思いに触れ、それを文章として形にするライターのお仕事は、鈴木さんにとっての“天職”なのかもしれません。そんな鈴木さんが「同志」と語る息子さんとの日々、鈴木さんが考える子育て観をお聞きします。
2017年11月17日発達障害のある子どもの歯科治療の大変さは世界共通!?出典 : 発達障害のある子どもを歯医者さんへ連れてゆくのは並大抵のことではない…そんな声を聞くことも珍しくありません。私の息子(自閉症スペクトラム障害・ADHD診断済)も、あちこちドクターショッピングを重ねましたが、長いこと歯科治療への恐怖が克服できませんでした。触覚過敏で口の周りや顎を触られる苦痛に耐えられなかったり、味覚過敏でフッ素の味にすら吐き気がしてしまったりします。さらに聴覚過敏の息子にとって、歯医者さんが使う器具の音は耐えがたいものだったのです。長い間、親子ともども泣きたいような思いをしましたが、我が家の場合は、障害児専門歯科に行きついたことで、ようやく静かに治療が受けられるようになりました。それまでは、歯科に連れていくたびに大暴れし、大声で叫び、抵抗の限りを尽くしてきた息子。最後には疲れ果てて汗びっしょりになった歯医者さんから「君みたいな子は初めてだよ!!」と怒られてきたのです。息子は歯科治療に行くたびに、帰りの車で泣いていました。みんなに迷惑をかけているのは分かっていたけれど、自分ではどうやってもコントロールができなかったのです。そんなとき、ある海外ニュースが私の目に飛び込んできました。そのニュースの見出しにある写真が私の目を奪います。なんてことでしょう、歯科治療を受けている男の子の足の上に、大きなラブラドールレトリバーが座っているのです!自閉症のディエゴくんと介助犬のズッカ海外には、自閉症児向けに訓練された介助犬がいることは、以前発達ナビの記事でも取り上げました。それだけでも海外移住したくなってしまうほど羨ましかった私ですが、なんと南米チリには、自閉症児の歯科治療に特化した介助犬を養成・派遣している団体まであるというのです。そのことを私に教えてくれた記事がこちら。(英語の記事です) Chile, Dogs Help Kids with Autism on Their Dentist Visits (南米チリー自閉症児の歯科治療に介助犬を活用)今回のニュースで取り上げられたのは、自閉症児のディエゴ・ロサレスくん(9歳)と、介助犬のラブラドールレトリーバー「ズッカ」です。自閉症児にとって歯科治療は強い恐怖を喚起させるものです。眼前に煌々と照らされたライトや、治療器具から発せられる音に、パニックになってしまう自閉症児もいます。ときには治療に鎮静麻酔が必要な場合もあるのです。息子が通っている障害児専門歯科でも、パニックが強いお子さんには全身麻酔が施されます。ディエゴくんも例に漏れず歯科治療に対する恐怖心が非常に強く、4歳の頃は治療をする歯科医の手を噛み続けて抵抗したと言います。ところが、記事の中で紹介されていたこちらの動画を見てみてください。ディエゴくん、とっても楽しそうです。歯科治療も落ち着いて受けており、麻酔の注射を前にしても、動じていません。全ては、介助犬ズッカのおかげです。ディエゴくんはズッカを膝の上に乗せながら治療をするようになってから、歯科医の手を噛んだり、叫んで抵抗したりすることがなくなりました。この日もディエゴくんは歯を抜くという難易度の高い治療をしたようですが、歯を抜かれた後もずっとズッカのことを穏やかに撫で続け、抜いた歯をケースに入れてもらって、ご機嫌に治療を終えたようでした。専門の訓練を受けた犬たちの活躍ズッカを含め、ディエゴ君が通う大学病院付属の歯科に介助犬を派遣しているのは、「フント・ア・ティ(Junto a Ti:あなたのそばで)」というNPO団体です。こちらの動画を見て頂くと分かるように、子どもたちは犬を優しくなでながら、穏やかに治療を受けている様子がわかります。こうした犬達には、子どもの叫び声だけではなく、治療器具の音などに耐え、さらに子どもが耳や毛を引っ張ったとしても、ジッと動かずにいる忍耐力が必要となるそうです。日本でも取り入れて欲しい!歯科治療の介助犬出典 : 歯科治療の介助犬について調べると、アメリカなどでは歯科クリニックに介助犬を常駐させているようなところもあることがわかりました。また、アメリカでは、大きな事件などが起きて多数の犠牲者が出た場合などでも、NPO団体がセラピードッグを病院に派遣する場合があるようです。このような介助犬に関する取組みは、海外のほうが進んでいることが見て取れます。今回のように、介助犬の助けによって歯科治療がスムーズになるのであれば、自閉症の子どもにとっても、その親にとっても、もちろん治療をする歯科医師にとっても、こんなに幸せなことはありません。日本ではまだまだ歯科治療に介助犬を同伴するというのは難しいと思いますが、こんな海外の事例があるということが少しでも広まっていけばいいなと願っています。
2017年10月21日先月、NHK総合テレビで 「深夜の保護者会/発達障害 子育ての悩みSP」 をはじめ、Eテレ「ハートネットTV」では 「自閉症アバターの世界1・2」 、NHK「あさイチ」では 「シリーズ発達障害/どう乗り越える? コミュニケーションの困りごと」 など、続々と発達障害特集が放送された。どれも見ごたえのある内容だったが、4歳の自閉症スペクトラムの息子を持つわが身としては、やはりリアル世代である「深夜の保護者会」が一番興味深かった。話し合いにのぼったテーマは、「周囲へカミングアウトはするべきか?」「カミングアウトするとしたら、どう説明したらよいのか?」「夫や子どもの本音は?」「ありのままのわが子を受け入れるには?」など。どれも、まさに発達障害の子育てをしている親の悩み、ど真ん中の内容だったと思う。現役ママの葛藤は、私には痛いほど伝わってきて、ちょっとホロッとしてしまうほどだったし、すでにさまざまなことを乗り越えてきた先輩ママたちが、試行錯誤の上生み出した、わが子との向き合い方はとても参考になった。■わが子を嫌いになる、自分が辛いそして、現役ママの苦しい胸の内を聞いて、改めて発達障害を持つわが子の「ありのままを受け入れる」ことの難しさを思い知った。「彼らを大好きなのに、大嫌いになる時がある自分が辛い」(番組に寄せられたファックスのコメント)「比べるものではないと重々わかっているけど、どうしても下の子と比べてしまう。下の子はできが良くて、かわいくてギュッって抱きしめられるけど、上の子にはできない…。できない上の子を受け入れられない」(番組に参加した現役ママのコメント) NHK総合テレビ「深夜の保護者会/発達障害 子育ての悩みSP」より そんなママたちの悲痛な叫びに、胸が締め付けられた。■本当に、子どものこと受け入れてる?ありのままのわが子を受け入れる――それは発達障害の子育てのスタート地点のように思えるのだが、実は、親にとっては、それが一番難しいことのような気がする。私自身も、「私は周囲にもカミングアウトしてるし、もう受け入れているから大丈夫!」と、すっかり達観したつもりでいたのに、自分でもビックリするほど些細な事で傷ついてしまうことがある。そんな時は、「実は、心のどっかでは息子のことを受け入れられてないのかも…?」と心が揺れる。ブレない自分でいたい。…なのに、なかなかなりきれない! それが自分でも、すごく歯がゆくて悔しいのだ。■子どもが笑ってくれる、そのために何ができるか?これに対して、先輩ママたちや尾木ママの意見は…「試行錯誤する、という作業がすごく大事。私たちも最初はどうしたらいいのかわからない状態で、いろいろ試して、今がある。のちのちつながっていくことだから、あきらめないで少しずつでも進んでいってほしい」「高望みせずに、『一個できたらすごい!』を積み重ねていけばいい。とにかく今できることを褒めて。『褒めるは認めること』って言葉に置き換えてもいい。良いところを褒めるのではなく、できていることを認めればいい。それが丸ごとの発達障害と付き合っていく姿勢につながっていくはず」「発達障害は、息子の世界と私たち世界の交わるところにある、『壁』みたいなもの。でも、その壁は環境や周囲の考え方、関わり方で低くもなる。息子の世界も尊重しつつ、私たち側もお互い気持ちよく過ごせるエリアが広がるように、私たち側が変わっていかなければならない」 NHK総合テレビ「深夜の保護者会/発達障害 子育ての悩みSP」より 様々なアドバイスが飛び交ったが、なかでも印象に残ったのは、先輩ママの次の言葉だった。「よっちゃん(息子さんの名前)に笑ってほしい。そのために自分がどうしたらいいか? それを考えれば自ずと変わってくる。それを変えただけ」私は、障害(発達障害に限らず)を持つ子どもの親というのは、何か高尚な考え方ができるような、立派なママにならなければならないような気がしていた。でも、そうではなくて、この先輩ママが言うような、子どもの毎日の笑顔の積み重ねの先に、いつの間にか生まれてくるような、もっと自然な感情なのかもしれない。そう思うと、私はまだまだ肩の力が入ってしまっているようで、まだまだだなぁ~と苦笑してしまった。■障害は敵ではないまた、当事者である子どもの発言にも考えさせられた。「悪いのはこの子ではなく、障害のせい」と、子どもと障害を別々に考えるということで気持ちが楽になったというお母さんに対してお子さんの考えは違った。「僕は、そういう考え方はやめてほしい。障害は敵ではない。生まれてしまった以上しょうがない。しょうがないから向き合う。うまく付き合っていけたら気持ちは楽になる」 NHK総合テレビ「深夜の保護者会/発達障害 子育ての悩みSP」より この2人のやり取りを見て、発達障害の子育てを描いたコミックエッセイ『母親やめてもいいですか』に書かれていた、自閉症当事者によって書かれた「私たちのことを嘆かないで」という詩の一節のことを思い出した。自閉症は人を閉じ込める殻ではありません中に普通の子どもが隠れているわけではないのです自閉症は私が私であること、そのもの私という人格から切り離すことはできません「うちの子が自閉症でなければよかった」「この子の自閉症がよくなりますように」その嘆き、その祈りは、私にはこう聞こえます。「自閉症ではない別の子がよかった」両親が語りかける夢や希望に、私たち自閉症者は思い知るのです彼らの一番の願いは、私の人格が消えてなくなり、もっと愛せる別の子が私の顔だけ引き継いでくれることなのだと… 『母親やめてもいいですか』(山口かこ・文/文春文庫)より引用 ■何を持って「息子」なのだろう?障害を持つ子どもの親であれば、誰しも、わが子の障害がなおることを願ったことが、一度はあると思う。私自身も、息子が自閉症スペクトラムと診断された当初は何度となく、この障害を息子から取り除きたいと願った。一生治らないものだと知った時は、夜中パソコンの前で号泣した。でも、1年経った今は、こう思うのだ。例えば、息子がいきなりおしゃべりで明るい社交的な子になったとしたら…? それはそれでうれしい面もあるのかもしれないけど、果たしてそれは息子なんだろうか? と。改めて、「何を持って息子なのだろう?」と考えると、思い浮かぶのは、なぜか、やっかいで面倒なエピソードばかり(笑)。むしろ、そのやっかいなところこそが、息子が息子であるための大切な要素なのかもしれない、と。最近ではそう思うのだ。最後に、先輩ママたち全員が、声をそろえていたことがある。それは、「まずは、お母さんが元気なことが基本。自分を犠牲にしちゃダメ。お母さん自身の人生も大事にしてほしい」ということ。子どもに笑顔でいてほしいなら、そのためには、まずはお母さん自身が笑顔でいることこそが大切なのだ。まちとこ出版社N NHK 発達障害プロジェクト 【発達障害についての記事一覧】▼大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)▼「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年10月12日双子の兄弟が就学年齢に。長男は特別支援学校、次男は通常学校への入学が決定重度自閉症の長男は、比較的早い段階で特別支援学校への入学が決まっていました。そして我が家は双子であるため、同時に通常学校へ入学する次男の学校手続もしなければなりませんでした。忙しい日々でしたが、10月に長男の就学通知書が届いた時にはなんだか肩の荷がおりてほっとした気持ちになったものです。入学前の準備。支援学校のカバンはランドセル?それとも?Upload By シュウママそして11月も過ぎたころ、はっと気が付いたのは長男が学校に持っていくカバンのこと。次男はもちろんランドセルのつもりでしたが、長男はランドセルが必要だろうか――入学説明書にはこのカバンで!という明確な記載がなかったので、私は支援学校に問い合わせてみました。電話で丁寧に答えて下さった女性の返事は「特に規定はありませんよ」というものでした。Upload By シュウママこの言葉を聞いた私は、じゃあリュックでいいかな…と思い大きめの新しいリュックサックを長男のために、次男には同じ頃、ランドセルを購入しました。次男のランドセルをじっと見ていた長男に、母として想うことピカピカのランドセルを見て次男は嬉しそうでした。色は黒、ふち取りは赤、何日も前から次男が選んで注文しておいたものでした。入学式の前から次男はランドセルを背負い鏡を見て満足そうにしていました。そんな次男の姿を療育から帰ってきた長男がじっと見つめていました。Upload By シュウママ次男がランドセルを床に置いて遊びに行ってしまうと、長男はランドセルにそろりそろりと手を伸ばしました。どうしたのかな?と見ていると、長男はランドセルの肩ベルトに腕を通して背負おうとしました。けれど不器用で筋力のない長男は、うまく手が通せなかったのかごろりと前のめりになり床であごをごんっ!と打ち、大きな声で泣き出しました。Upload By シュウママ私は驚いて長男のあごをさすってやりました。もちろん長男は痛くて泣いているのでしょう。でもこの泣き声がまるで「僕もランドセル背負いたかった!」という長男の叫び声に聞こえてきました。私はランドセルにするか、リュックにするか、ほとんど逡巡せずに決めたことに対して申し訳ない気持ちになりました。当時、まだ言葉で意思の疎通ができなかった長男に、どちらかを選択させるという考えが私にはなかったのです。ごめんね…と私は長男に謝りました。Upload By シュウママ長男が入学。そこで目にしたのは…そしてひと月が過ぎ長男は支援学校に入学しました。ほどなく父兄の懇談会が長男の教室で行われました。私は同じクラスのお母さん達に挨拶しながら、何気なくロッカーに目をやりました。すると長男のリュックの入ったロッカーの隣りに、横長の形をしたランドセルがあることに気がつきました。Upload By シュウママ「横に長いランドセルってあるんですね」私はランドセルの子のお母さんに聞いてみました。障害児を育てる親に寄り添うランドセルがあったするとそのお母さんは微笑んで言いました。Upload By シュウママお子さんは足が悪いため、車椅子に取り付けやすいベルトがついていることと、沢山荷物が入るということが横型ランドセルを選んだ理由だそうです。最近は障害のある子ども用のランドセルも充実しており、多機能でいろんな色が選べるんだというお話でした。「何よりランドセルを背負った姿が見たかったから・・」お子さんを優しい目で見つめながら言われた気持ちが、私にはよく分かりました。障害のあるお子さんをお持ちなら親は何度も選択を強いられます。そしてそれはとても辛い選択です。普通学校の支援級ならランドセルが必要、でも支援学校なら必要ない――それもその一つです。けれど障害があっても背負えるランドセルもある。それは苦しみを少しだけ軽減してくれ、親心に寄り添ってくれる素敵なランドセルだなと、私もほわっと温かい気持ちになるお話でした。
2017年10月12日自閉症のある子どもとのストレス…「家事手伝い」をさせたら減らせた?出典 : 自閉症のある息子は現在、特別支援学校高等部1年生で、療育手帳のB2判定を受けています。幼少期は超多動で本当に大変でしたが、小学校高学年ぐらいから、イタズラや行方不明などの問題行動はだいぶ減り、おしゃべりもできるようになってきました。すると今度は「どうでもいい内容の長時間マシンガントーク」に、私は始終イライラして悩まされることになりました。放課後等デイサービスなどの利用で息子から離れる時間を作っても、ひとりの時間は一瞬で終わってしまうような感覚でした。息子は友達と遊びに行くことがほぼないので、総じて家の中で一緒にいる時間が長くなります。息子はDVDやゲームもしていましたが、そればかりしているのを見ると、私は「これでいいのだろうか…」と、将来が心配になりました。「家の中で一緒にいても、息子から離れる時間がほしい。自立に欠かせない”家事”を毎日させたら、それが叶うかもしれない…」と思い、息子に家事を教え始めました。実際、トイレ掃除などの家事を息子がしている間は、息子のマシンガントークから解放されました。精神的にも楽になっただけでなく、家の中もキレイになり、私は本当に楽になりました。息子には将来、家族から自立してほしい気持ちがあります。そのためには、「障害のある本人が家事スキルを上げること、また本人が自主的に家事をする習慣付け」が必要となります。それには、多少、親の工夫と根気も必要ですが、結果的に家族全員が、どんどん楽になっていく方法があるのです。我が家流「パパ・ママの気持ちをもっと楽にさせる!?ストレスの少ない子どもの家事手伝い」の一例をご紹介します。先ずはゴミ出しから出典 : お手伝いの最初は「ゴミ出し」などの簡単なお手伝いでした。息子は、簡単なお手伝いであれば、手順表を必要としないでやることができます。彼は素直に自分の役割として、今も習慣的にやってくれます。【食】たべるのが好き!子どもの料理教室へ息子は食べることが大好きです。それで近所の子ども料理教室に通っていました。最初の半年は付き添いましたが、先生に「息子の教え方のコツ」を教えてから、1人で月1回通っていました(小4~中3まで通いました)。配慮としてお願いしていたことは、1週間前に料理のレシピをFAXしてもらうことです。そして、ネットでその料理を検索して「何を作るのか、小口切りとはどう切るのか」など、画像等で事前に予習をしてから行きます。おかげで問題なく長年通えて、簡単な料理ならできるようになりました。Upload By 阪神間のアッキー小5の頃からは、手間の多いお手伝いもしてほしくて【食器洗いの手順表と食洗機の食器の入れ方】を作りました。今では食器洗いも食洗機の使い方も上手になり、休日は時々やってくれます。「掃除機、トイレ掃除などの手順表」も作り、今ではほぼ任せられます。手順表は、透明の「硬質カードケース」などに入れ、ラミネートはしません。後から息子の様子を見て、いくらでも修正することがありますので、すぐに書き込めるようにするためです。お手伝いトークンと予定表で「お金」も管理、金銭感覚も少しずつUpload By 阪神間のアッキー小3頃から息子はお手伝いも板に付いてきました。金銭感覚も身につけ生活力をあげてほしい気持ちから、お手伝いの料金として「リアルなお金」もちょっとずつ登場させています。これも自立を視野に入れた取り組みのひとつです。【お手伝いトークンと2週間の予定表】が一緒になった表をExcelで作り、本人が毎晩お金シールを表に貼って、私は2週間ごとにお給料をまとめて払っています。シールを貼ってモチベーションを上げながら、取り組ませました。お金の計算も筆算で自分でやっていて、その時に、両替の練習もしています(最初は妹も一緒にやっていましたが、今は息子のみやっています)。Upload By 阪神間のアッキーそして、小5の1月から息子用の【市販カレンダー】に移行しました。よりシンプルになっています。お金は大事に使い、中3から「お小遣い帳」を付け始め、将来海外旅行に行く事を目標に、旅行資金を貯めています。ちなみに息子のお小遣いは「お年玉+お手伝いのお給料」だけです。お手伝い1回で10~30円もらえます。だいたい毎月、2000円ぐらいのお給料になります。16歳の今でもお金がもらえるのを励みに自発的に続いて習慣化しています。わかりやすい貯金箱お金が貯まっていくのが日常的に見えるように【半透明の貯金箱(銭別銀行とりだし君 ブルー)】を小3からずっと使っています。必要なお金が出しやすく、やはり中身が見える方がモチベーションが上がるようです。(お札は彼の引き出しの財布に入っています)【住】粘着ローラーの掃除の工夫Upload By 阪神間のアッキー小5から、リビングのセンターラグの掃除を、粘着ローラーで息子にさせてみました。スタートがわからなければ、ぐるぐる真ん中あたりを掃除していて、いっこうに進みませんでした。そこで、たて線のたくさん入ったセンターラグを探して購入しました。「このはしっこがスタート」と決めて、まっすぐ進み、突き当りで横の3列のすじに進みます。そうすることで、最後まで無駄な動きも少なく粘着ローラー掃除ができるようになりました。【視覚的な工夫】今日のお手伝い ホワイトボードUpload By 阪神間のアッキー小5くらいから、できるお手伝いが増えてくると、息子は汚れが気になる所を選んで、自発的に掃除をする時も増えました。そこで「階段・廊下掃除は週1回」など決め事を作り、本人が予定をたてやすいように、【今日のお手伝いホワイトボード(A4)】も作りました。表面のよくする家事のマグネットシートは、1日5枚まで貼れます。(たくさん貼りすぎて疲れて家事がイヤになるのを、物理的に防ぎます)チェック✔ や開始時間、合計金額も息子が書き込めるようにしました。裏面は20枚以上の「お手伝いマグネットシート」が「メッシュケース(A6)」にストックされています。裏面には「お手伝い一覧」もあり、「掃除とその他の家事」を下地色で分類しています。何のお手伝いをするか息子と相談するため、お互いが選びやすいです。Upload By 阪神間のアッキーごみ出しなどのすぐ終わる(マグネットシートに無い)他のお手伝いも多いので、数えやすいように他に【平日・休日のお手伝いチェック✔表(1回10円)】も紙で作りました。彼はそれも毎晩「今日したお手伝い」にまとめてチェック✔を入れて「ホワイトボードとチェック表」両方の合計金額を合算し、カレンダーにお金シールを貼ります。子どもに家事をしてもらうポイント出典 : ここでは、私が息子に家事手伝いをしてもらう上で意識していたことや、決めていたマイルールをご紹介します。・私は、息子がお手伝いをしてくれたら、すぐ「ありがとう!」と笑顔で喜んで、できるだけ言うようにしています。お子さんがお手伝いをしてくれたら、以下の3つの「受け取る言葉」どれかをすぐ言うようにしましょう。「ありがとう」「うれしい」「助かる」特に、簡単なお手伝いをしてもらう最初の頃は、私は大げさに喜んでこの3つの言葉をよく言っていました。・お手伝いで失敗があっても、物覚えが悪くても、私は息子を叱りません。手順表を作り、わかりやすいマークを付けたり工夫して「どうしたら良いのか」を具体的に教え続けます。・できたら「そう!それでいい、OK!上手にできてるよ。」などと言って、息子に「このやり方でいいんだ」と自信をもってもらいました。・息子のできる家事は少しずつ増やしていきました。例えば息子が浴槽掃除が一人でできるようになります。私は風呂場まで見に行き「すご~い!ツルツルだね~。私よりも掃除上手だね!この調子で排水溝の髪の毛取りもしてくれるかな?そうしたら10円アップだよ。」とほめながら彼のやる気を促し、できる家事を増やしていきます。・息子のやる家事が多すぎて家事嫌いにならないように、例えば「洗濯物干し・取り込み」は男物だけ分担してもらうなど、家事量を調整しています。・「早く!」も最初から要求すれば、負担になります。手順と早くできる具体的な方法を教え続けて、完全に「トイレ掃除」などマスターしてから、目標時間を相談し本人に決めさせ、(キッチンタイマーなどで)早くする練習を始めます。・「やりなさい」と命令されると、誰でもやりたくなくなってしまうのが、人間の心理です。「ちょっと○○してくれない?」と子どもができる簡単なことをお願いをしてみることから、お手伝いを始める方が良いと思います。・いきなり「今から草むしりしてくれない?」など急に頼むのはやめましょう。特に自閉症の人は急な予定変更ばかりだと、辛くなります。「土曜日の午前中にお願い」など、早めに本人に伝えた方が、本人の心の準備とやる気につながります。・完璧を目指さず、息子が疲れているようなら休ませます。「自立のために家事をたくさんやらせなくちゃ!」と、毎日お手伝いボードを持って母が子どもの帰りを待ち構えるのは、やめた方がいいです。(自閉症児は疲れて帰宅することが多いですから)また、多くの自閉症児は真面目で疲れやすいので「今はしんどくて無理です」などの断り方も教えます。息子とわたしたちの未来のために出典 : 息子が小学生の頃は、はっきり言って、家事を教え続けるのはとても面倒でした。でも「息子と一緒に家事ができたらいいな~♪ 息子の自立に役立つし、家の中もキレイになるし、一石二鳥!」と思い続けていました。子育てで、こういうことをしていると私が言うと「お金がもらえなくては動かない人になるのでは?」と心配する保護者もいます。でも、うちの場合は全然そんなことはありません。「はさみ取って、窓閉めて~。」など周囲のお願いは、息子は(お金に関係なく)よく動いてくれます。「周りの人達の苦労やお金の価値もわかり、金銭管理もしてほしい。家事ができる息子は(将来の就労先や、グループホームなどでも)きっと周りの人たちの役に立つ、助けられる人になる」と思うのです。私は息子の頑張りをいつも気分よくほめているし、息子に感謝の言葉をよく言っています。それで息子からも「ありがとうございます。よろしくお願いします。」の言葉が自然と増えました。確かに療育手帳B1以上でないと、多くの家事はできないかもしれません。でも、お子さんにゴミ出しなど、簡単なこと一つだけでもやらせて下さい。それが習慣化するだけで、母は気持ち的にとても楽になるでしょう。うちの息子は幼少期、超多動児でした。私は希望もなくうつ病になったりで大変でした。しかし自閉症児は真面目で几帳面な子が多く、息子は掃除をし続けていると、どんどん長所が「キレイ好き」に変わっていきました。一般的に多動児の方が家事能力など、伸びやすいようです。多動児は「動いている方が楽な人たち」が多いので、今は「多動はプレゼント」だと思えるようになりました。※私の「発達障がい児には 家事をさせよう!」のブログには(上記の詳細記事以外にも)お手伝い記事などをたくさん掲載しています。『発達障がい児には 家事をさせよう!』
2017年10月08日子どもが「やればいいんでしょ!」とふて腐れてしまうことありませんか?出典 : 我が家では電車で習い事に通う事が多いので、「外出前のトイレ・支度をする時間」「家を出る時間」「電車の時間」の3つを紙に書いて子どもたちに提示することにしています。発達障害のある小学1年生の息子と小学4年生の娘が、出発の時間に合わせて行動できるように行う、我が家の習慣です。ある日、子どもたちが玄関先で支度を整えているのを確認し、「靴を履いておいてね」と伝えて私はその場を離れました。しばらくして聞こえてきたのは、リビングでの話声とピアノの音。慌てて様子を見に行ってみると、玄関には荷物が放り出され、子どもたちはリビングで遊んでいます。「何をしているの!?出かける時間は伝えてあるでしょ?」「ちょっとピアノが弾きたくなっただけ」「今本を読んでいるからちょっと待って」と一向に慌てる様子がありません。こんなこともあろうかと、いつも余裕を見て一本前の電車を利用しているので遅刻することはありません。とはいえ、「わかったよ、行けばいいんでしょ」とふて腐れてしぶしぶ靴を履く子どもたちを見ていると、私も怒りを抑えきれず声を荒げてしまいます。結果、何とも言えぬ重い雰囲気のまま駅までの道のりを進むことになりました。案の定、駅に着いたのは乗る予定だった電車が出発した後。次の電車まで少し時間があったので、落ち着いて話をすることにしました。子どもたちに伝えたこと「ママはどうして怒ったと思う?」「出発する時間なのに遊んでたから?」「靴を履いてって言われたのに、本を読んでたから?」娘と息子が答えます。この言葉から、出発前に準備をせず別のことをしていたことはいけないことと理解はしているようです。私は続けます。「そうだね、その行動は確かにおかしいよね。でもママが一番引っかかっているのは、違うところなの。この習い事をしたいって言ったのはあなたたちで、絶対にやめたくないんだよね?」「そうそう!絶対にやめたくない!」「だってすごく楽しいもん!やめろって言われたらイヤ!」子どもたちは習いごとに行きたくないわけではないのです。むしろ、「行きたい!」という意思を持っています。それでも、自分から率先して準備をして家を出ることはできないようなのです。自分たちの意思を行動でも示してほしい。私はこう続けました。「そうだよね。ママはそんなあなたたちのために、時間とお金を使って応援しているの。だから『行けばいいんでしょ!?』っていう態度をとられたら、『ママのために行ってもらうんじゃないんだけど』ってカチンときちゃうの」「う~ん・・・」「確かにママのためじゃなくて、私たちのためにママが協力してくれてるのよね・・・・・・」「やりたいことができるのはすごくステキなことだけど、練習も努力も必要だし、面倒な時もあるよね。でもそこを誰かに委ねてしまったら『やらされてる』感じがして、いつか嫌になっちゃうよ。自分たちの人生は自分たちのもの。ママはあなたたちの一番の応援団。そこを間違えずにいこうね。」「だからママ、いっぱい応援してね」「わかった!これから面倒くさいって思った時は、ママにその気持ちをぶつけるんじゃなくて、やりたいのは自分だって確認することにする」毎日を「自分でデザインする」という意識を持ってもらうために出典 : こうして話し合いは終了しましたが、この「ママにやらされている感」は、習い事に向かう時だけの問題ではなく、普段の生活すべてにおいて子どもたちと衝突する材料になっていたのです。「一日は24時間しかないんだよ!やるべきことを後回しにしていたら、1日が終わっちゃうよ!」と何度声をかけても「後でやるから大丈夫だって!」と平気な顔をし、結局夜になると焦って半泣きになる子どもたち。子どもたち自ら1日の過ごし方を上手に選択してゆく方法はないかと、手帳を使ったり、やることリストを作ったりしていたのですが、先を見越して行動するのが苦手な子どもたちには、なかなかしっくりときませんでした。よい機会でしたので、今回は月間スケジュール用のホワイトボードを購入し、子どもたちが自分たちで1日の過ごし方をデザインできるように工夫してみることにしたのです。Upload By GreenDaysそのままのホワイトボードは1日~31日までの日付が書いてあります。これを1日の予定表として使用するため、日付の部分を時間に読み変えます。25~31日の日付を隠して、24時間の予定表の完成です!100円均一のお店で買ってきたマグネットシートを、予定表の幅と後で貼るマスキングテープの幅を考慮して15mm幅にカットしたら、くるりとマスキングテープを巻きます。突発的な予定はマスキングテープの上から直接油性ペンで記入し、予定が終了すればまたテープを貼り直して新しい予定を書くことができます。毎日の生活で必ず行うこと、お勉強の内容、習い事は、マスキングテープの色をわけ透明のテプラでシールを作成して貼り付けました。また、習いごとのマグネットには、家を出る時間と電車の時刻も記入しておきます。これで毎回紙に書かなくても、子どもたちが自分で予定を確認することができます。毎朝、自分が今日1日をどんな風に過ごすのかを、マグネットを移動させながら決めていきます。これが案外子どもたちは楽しいようで、ああでもないこうでもないと、自分の1日を想像しながら予定を埋めていきます。「ママ、この時間に勉強を見てほしいんだけど大丈夫?」「この時間にピアノをしたいけど、お姉ちゃんもこの時間?じゃあどうしようかな?」「ねえ、夜8時から一緒に映画を観ない?それなら夕食までに全部終わらせておこうよ!」今までは自分以外の行動にあまり注意を払っていなかった子どもたちでしたが、家族が共通で利用するものは予定がぶつからないように、家族の協力が必要ときはあらかじめお願いできるようになってきました。そして、自分で決めた時間通りに行動することで、「ママにやらされている感」はほぼゼロになり、私のストレスもずいぶんと減りました。なにより子ども自身がすんなりと次の行動に移れるようになってきたのです。自分の世界を壊された!邪魔された!と感じさせないために出典 : 発達障害のある子どもの中には、自分の世界に没頭している時間に安らぎを覚え、その世界に誰かが介入してくると「邪魔をされた」「大切な時間を壊された」と感じてしまう場合もあります。私の子どもたちも、読書やぬいぐるみ遊び、マインクラフトなどに没頭し、予定の時間を告げるととても不機嫌になることが多くありました。頭では分かっていても、反射的に「邪魔をされた!」と感じてふて腐れていたのだと思います。自分で自分の1日をデザインするようになってから、子どもたちのその反応はかなり少なくなったものの、なくなったわけではなく、私が声掛けをすると時々「あ~~~、もうっ!」などと声を上げることがあります。もちろん、時計はすぐ見られる場所に置いてあるのですが、なにかに没頭してしまうと自分で時計を確認するというのは、自閉症スペクトラム障害のある子どもたちにとっては、とても難しいことのようです。そこで、30分ごとに鳴いてくれる鳩時計をスケジュールボードの隣に設置しました。鳩時計は家族で一緒に選んだものなので、子どもたちは鳩が鳴くのをとても楽しみにしています。音につられて鳩を見ると、自然に時間を確認することができます。そうすれば「誰かに邪魔をされた!世界を壊された!」と感じることはなく、「あ、もうそんな時間か。予定を確認しよう」という流れができて、とてもよい方法だったと思います。今は小学生の子どもたちも、大きくなるにつれ、親の知らない世界に足を踏み入れることが増えてくるでしょう。大学生になったり、アルバイトをしたり、就職をしたり…どんな道に進むか想像もつきませんが、自分でスケジュールを組み立ててこなしていく力というのは、どこに行っても必要になってくると思います。そのときになってから焦るのではなく、今のうちからそれぞれの特性にあった方法を模索し、試行錯誤を繰り返して「こうすればタスクをこなせる」という自信を持つことができれば、社会に出るときの大きな足掛かりになるかもしれません。我が家の場合は、学校に行かずに家で過ごしていますので24時間単位でスケジュールを管理できるようにしましたが、他にも学校から帰宅した後の時間の過ごし方、休日の過ごし方など、目的に合わせた活用方法がありそうです。時間や予定を目に見える形にすることで、子どもは自分で自分の毎日をデザインしやすくなります。そうすることで、家族みんなが穏やかに過ごせる時間が増えるといいですね。
2017年09月10日サヴァン症候群とは出典 : サヴァン症候群とは、自閉症スペクトラムやアスペルガー症候群などの発達障害や知的障害があり、かつなにか突出した能力を持っている状態を指す用語です。一口にサヴァン症候群といっても、その特徴や症状、能力の発達や困りごとの様相はさまざまです。1つ目は有能サヴァンと呼ばれるケースです。その人の知的発達レベルから想定される以上の能力を、ある分野で示します。“突出”という言葉から、人より優れた能力を持っているように思われますが、ここで言う突出とは、他人と比較して優れているという意味ではありません。世間全体で見たときにはそれほど突出した能力ではない状態であっても、自分自身の全般的な知的発達レベルに比べて、ある能力に関してのみ突出して高い能力を持っている場合、サヴァン症候群であると言えます。2つ目に天才サヴァンというものがあります。これは有能サヴァンと同様に、能力がアンバランスになっていますが、有能サヴァンとは異なり、この突出した能力は世間全体で見ても優れていると言えるレベルにあるケースです。天才サヴァンは珍しく、世界全体で見ても発見された人数は100人にも満たないと言われています。出典:石坂好樹/著者『自閉症とサヴァンな人たち自閉症にみられるさまざまな現象に関する考察』(星和書店・2014)p63サヴァン症候群というと、映画「レインマン」で描かれたキム・ピークさんや2014年に放送された中居正広さん主演の「ATARU」というドラマの主人公のようになにか特殊な能力を持っていると思われがちです。しかし、サヴァン症候群だからといって必ずしも映画に取り上げられるような特殊な能力があるわけではありません。「特殊な能力」というよりは、能力に凸凹があるという特性を持っているのがサヴァン症候群だと言えます。サヴァン症候群は自閉症と深く関わりがあると考えられています。サヴァン症候群の人には、なんらかの発達障害・知的障害がありますが、とりわけ自閉症のある人の割合が高いのです。自閉症の人のうち約10人に1人がサヴァン症候群だと言われています。それに対してその他の発達障害・知的障害がある場合でサヴァン症候群に該当する人は、約1400人に1人だと考えられています。またもう一つ特徴的なのは、母集団である自閉症のある人に男性が多いため、男性のほうが女性に比べて約4~6倍多くいることです。※2013年以降、自閉症より自閉症スペクトラムという言葉が一般的になりつつありますが、参考資料や参考にした論文がそれ以前に書かれたものもあるため、この記事では自閉症という表記にしています。出典:Savant Syndrome 2013ーMyths and Realities|Wisconsin Medical Societyサヴァン症候群の能力出典 : サヴァン症候群の人は、実際にはどのような分野で高い能力があるのでしょうか。ここでは、今までに見つかっているサヴァン症候群の突出した能力の中で、主なものをいくつか紹介します。記憶に優れた人の場合、1度読んだ本の内容や、アメリカ全土の都市と道路を覚えているなど、非常に優れた記憶力を発揮することがあります。細かい描写に優れていることが特徴的で、一見したところ写真と見間違えるような精度の絵を描くことがあります。絶対音感があったり、楽曲の記憶力が高いことがあります。音楽の分野で秀でたサヴァン症候群の人の中には、一度聞いただけの曲を完全に再現して演奏することができる人もいます。3桁の整数の3乗のような難しい計算を暗算するように、難解な計算をすばやくできるだけではありません。例えば「1981年の4月1日は何曜日?」と聞かれた際に、計算によって「水曜日」と答えることができます。このカレンダー計算は、比較的多くのサヴァン症候群の人に見られる能力です。時計を見ずに正確な時間がわかったり、なんの道具も使わずに正確な距離を答えたりする例がいくつか報告されています。目で見た光景をまるで写真を撮ったかのように脳で記憶したり、母国語でない言語の会話を聞いただけで正確に再現したりすることができる場合もあります。天才サヴァンの人は、上にあげたような分野で常軌を逸した能力を1つあるいは複数、発揮することがあります。ただし一言でサヴァン症候群といっても、様々な方がいます。サヴァン症候群だからといって、常人離れした能力を持っているのではないかと誤解されることが、当事者にとって生きづらさにつながることも心にとめておきましょう。サヴァン症候群の著名人出典 : サヴァン症候群の人の中には、突出した才能がある人(天才サヴァン症候群)がいることを紹介しました。そのような人が、それぞれの分野で活躍して名を残していることは珍しくありません。また、映画やドラマ、書籍などでサヴァン症候群が取り上げられていることもあります。この章では天才サヴァン症候群のある著名な人を何人かご紹介します。山下清は日本の著名な画家です。テレビドラマ「裸の大将放浪記」の主人公の「裸の大将」のモデルとして聞いたことのあるかもいるかもしれません。彼は放浪の旅の道中での情景を脳内で記憶しておくことができました。放浪の旅を終えると、旅の情景を思い出しながら張り絵として描くような生活をしていたと考えられています。情景を記憶しておける優れた記憶力や彼の行動の特徴などから、サヴァン症候群ではないかと考えられています。しかし、彼は幼少期から絵画の才能を発揮したわけではありません。知的能力が周囲よりやや低かったとされています。また周囲からいじめられ、その反撃をしたことから大人たちに凶暴な子どもだとみなされることもあったようです。彼は、知的発達の遅れた子どものための養護施設、八幡学園に入ることになります。学園では、日記、描画、貼り絵を日課にするように指導されました。この指導が彼の才能が開花させたと言えるでしょう。その後、彼は学園内での生活にあき、放浪の旅に出ていくことになります。参考書籍:石坂好樹/著者『自閉症とサヴァンな人たち自閉症にみられるさまざまな現象に関する考察』(星和書店・2014)1988年にアカデミー賞を受賞した映画『レインマン』のダスティン・ホフマン演じるレイモンド・バビットのモデルになったアメリカ人です。この映画は、サヴァン症候群という言葉が世間に広がるきっかけになりました。彼には、過去に読んだ9,000冊の本の内容を正確に覚えているという驚くべき記憶力があります。しかしその一方で、重度な発達障害があったり、脳梁欠損などの中枢神経系での異常がみられたりといったことが報告されています。脳梁欠損というのは、右脳と左脳をつないでいる繊維の束が一部あるいは全部が生まれつきない状態のことをいいます。現在、脳梁欠損は「神経細胞移動異常症」として指定難病に登録されています。参考:神経細胞移動異常症(指定難病138)|難病情報センター彼はイギリス出身であり、天才的な数学的能力・記憶力をもっています。彼は自閉症ですが、その症状は軽く日常生活でほとんど支障がでない程度だとされています。また、数字が風景のように見える共感覚の持ち主でもあります。著書の『ぼくには数字が風景に見える』はベストセラーになり、日本でも出版されました。彼は2004年3月14日に5時間9分かけて、円周率を22,514桁暗唱しました。円周率をただ数字の羅列として覚えるのではなく、数字を見たときに思い浮かぶ形や質感の違いから数字を覚えていると話しています。また、自身のウェブサイト「optimnem」で外国語学習プログラムを展開するなど、言語の分野においても優れた才能を発揮しています。参考:About the author|DanielTammet.net参考:optimnem FOREIGN LANGUAGE COURSESサヴァン症候群のメカニズム出典 : 能力がアンバランスになってしまうサヴァン症候群ですが、どうしてこのようなことが起こるのでしょうか。なんらかの後天的な要因で、サヴァン症候群になることもありますが、後天性のサヴァン症候群はサヴァン症候群全体の1割程度のため、ここでは先天性のサヴァン症候群のメカニズムを詳しく説明します。出典:Darold A. Treffert 「The Savant Registry:A Preliminary Report」サヴァン症候群のメカニズムはいまだに解明されていませんが、これまでいくつかの仮説が提示されてきました。仮説には次のようなものがあります。1つ目の仮説は、サヴァン症候群で示される突出した能力は、反復した訓練によって得られたにすぎないというものです。現在では、この仮説はおそらく正しくないだろうといわれています。例えば、複雑な計算をすばやく解くサヴァン症候群の人がいたとします。このとき、彼の計算方法とサヴァン症候群でない人の計算方法はまったく異なることが多いです。また、脳の血流を調べてみると、サヴァンとサヴァンでない人では、そもそも血流が増える場所が異なっていることがわかりました。これらのことから、反復した訓練だけで説明することは難しいと考えられています。2つ目の仮説は、脳の右半球(いわゆる右脳)が発達しているためにサヴァン症候群が生じるというものです。サヴァン症候群で示される突出した能力は、右半球と関連が深いとされています。しかしその一方で、実際にサヴァン症候群の人の脳を調べてみると左半球(いわゆる左脳)に異常がある可能性がみられます。なぜサヴァン症候群は右半球と関わりが深いはずなのに、左半球に異常が見られるのでしょうか。ヒトにはどこかの機能が低下したり失ったりしたときには、他の機能を向上させるような働きがあります。例えば、目が見えない人は、他の人に比べて聴覚や触覚などの感覚が鋭くなるとされています。この働きによって、左半球に異常があるために、結果として右半球が活発になったのではないかと考えられます。3つ目の仮説は、サヴァン症候群でも、自閉症児と同様に部分的な情報処理に特化しているのではないかという考えです。自閉症児によくみられる特徴のひとつとして、全体をとらえることは苦手であっても細かいところを調べることは得意というものがあります。このことから、一部の人は「自閉症児は全体的な情報処理を犠牲にして部分的な情報処理に特化しているのではないか」と考えています。この考え方をサヴァン症候群にもあてはめられるではないかというのが3つ目の仮説です。ここでは3つの仮説を紹介しましたが、どれも科学的に証明されているわけではありません。あくまで仮説にすぎず、ここにあげた仮説以外の他のメカニズムでサヴァン症候群が生じている可能性もあります。参考:高畑圭輔加藤元一郎「発達障害とサヴァン」BRAIN MEDICALサヴァン症候群のある人の困りごと出典 : サヴァン症候群のある人には、ベースになんらかの発達障害や知的障害があるため、それらの障害特有の日常生活上の困りごとが生じやすいと言えます。そのほかにもサヴァン症候群の困りごととして、映画やドラマなどによって世間で偏ったイメージ(多くが天才サヴァン症候群)が広がっているために誤解されてしまうことが挙げられます。大ヒットした映画『レインマン』の主人公レイモンド・バビットは類い稀な能力を持っていましたが、自閉症でもあり、日常生活を送るときに多くの困りごとがありました。また『レインマン』以外の映画や書籍でも、サヴァン症候群といえば特殊な人物として描かれていることが多いです。しかしサヴァン症候群には多くの例があり、必ずしも特殊で傑出した能力があるわけではありません。周りに「サヴァン症候群だからきっとなにか特別な能力があるのだろう」と天才サヴァン症候群であることを期待され、有能サヴァン症候群の人が追いつめられてしまうこともあります。また、天才サヴァン症候群であるダニエル・タメットは次のように述べています。きわめて稀で卓越した能力が備わっていたため、サヴァンの人々は怖れられたり、誤解されたり、さらに悲しいことに利用されたりもしてきた。これは非常に痛ましいことだ。ぼく自身の経験からも言えることだけれど、高機能自閉症のサヴァンは、人間の複雑な感情を理解できるし、意味ある社会貢献もできる。サヴァンの能力は人間の創造的な脳が生み出したものであり、無味乾燥で機械的な処理が生み出したものではない。サヴァン症候群は多様性に富んでいることを理解し、世間で天才と呼ばれる人であっても、一人の人間であるという、一見あたりまえのことを忘れないようにすることが大切なのかもしれません。サヴァン症候群の診断・相談先は?出典 : 自閉症のある人の10人に1人、他の発達障害・知的障害のある人の1400人に1人がサヴァン症候群だという報告がありますが、実際にサヴァン症候群だと診断されている人はそれほど多くはありません。というのも、現在、サヴァン症候群は、国際的に広く使われている診断マニュアルである、アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)や世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)などでは明確な診断カテゴリーとして確立していないからです。そのため現在では、医学的な診断名としてサヴァン症候群を用いることは一般的ではなく、正式な診断名としては併存しているなんらかの発達障害・知的障害で診断されることが多いです。「もしかしてサヴァン症候群かも」と感じたとしても特に本人が困っていなければ問題ありませんが、日常生活の中でなにか困っていることがあれば、次のような専門機関で相談してみるといいでしょう。サヴァン症候群の疑いがあるのが子どもか大人かで相談する機関が変わってくるので注意が必要です。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所・発達障害者支援センターなど【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所などサヴァン症候群のある子どもの能力の伸ばし方出典 : サヴァン症候群のように能力にアンバランスが見られる子どもには、どのような支援や教育が必要なのでしょうか。また、能力を伸ばすことでどういった効果が見られるのでしょうか。子どもの能力を伸ばすためには、まず子どもが得意な能力に気づく必要があります。普段から、子どものことをよく観察しておくことが大切です。子どもの能力がアンバランスであることに気付いた時には、アンバランスであることを否定するのではなく認めることも必要になってきます。子どもの能力を正しく把握して、認識したら次のように支援していくといいでしょう。・子どもが社会に参加することを踏まえて、どのような支援が必要なのか考える。・子どもの優れた能力を発揮できるような役割を与えることで、活躍することができるようにする。・子どもの作品や活躍を多くの人に見てもらい、子どもが褒められる経験を増やす。・できるだけ具体的で適切なアドバイスや評価をたくさんする。・必要があれば、専門家がアドバイスをしたり、指導を行ったりする。出典:有路憲一関口あさか「サヴァン症候群の実態調査とその実践的価値」子どもの能力を伸ばすことの効果は、単に絵がうまくなったり、計算が速くなったりするというだけでは収まりません。子どもが優れた能力を発揮できるようにすることで、子どもの自己肯定感が向上されます。それによって、日常生活や学習上での困難が回復・改善されることがあります。子どもの能力を伸ばすことの効果は次の5つにまとめることができます。・元々優れていた能力そのものがより向上して、オリジナリティの高い能力になる。・今までの困難が回復・改善されて、「できなかったこと」が「できる」ようになる。・支援や教育をできるだけ高い頻度で行うことで、子どもの変化を細かく追うことができ、それぞれのタイミングでより適切な支援や教育をすることができる。・支援や教育を行う時に、子どもが他のだれかと関わることが必要とされるため、コミュニケーションの能力を向上させることができる。・将来に生かせる能力を育てることができる。出典:有路憲一関口あさか「サヴァン症候群の実態調査とその実践的価値」子どもの能力を伸ばしていくことでさまざまな効果を得ることができます。子どもの能力を伸ばす時には、その子どものできないところ、苦手なところばかりに目を向けるのではなく、優れているところに目を向けるようにするといいでしょう。まとめ出典 : サヴァン症候群は、テレビや映画の影響もあり、天才あるいは奇人のようなイメージと結びつくことが多いです。しかし、それらはあくまで症候群の一例にすぎず、実際にはもっとさまざまな人がいます。サヴァン症候群の偏ったイメージを人に押し付けてしまうことで誤解されたり、過剰な期待を持たれて追いこまれてしまうサヴァン症候群の人もいます。そのようなことを防ぐために、サヴァン症候群のことを正しく理解したり、勝手に判断しないように気をつけたりしましょう。また、この記事内でサヴァン症候群の人に見られやすい能力を紹介しましたが、あくまでそういう傾向があるという話にすぎません。そのため子どもを普段からよく観察して、それぞれの子どもの得意分野、苦手分野を理解し、できるだけ子どもの得意分野を伸ばしていけるようにしていくことが大切です。
2017年09月05日今、何をしていたのかを覚えておけない息子出典 : わが家には自閉症スペクトラムと診断された小学1年生の息子と小学4年生の娘がいます。息子は不注意優勢型ADHDの特性が強く、娘はアスペルガーの特性が強いという特徴があります。さて、先日息子の勉強を見ていたときのことです。文字を書き間違え、「あ!間違えちゃったから、えーっとどうしよう...。そうだ!消しゴムで消せばいいんだった!」と言いながら、息子が筆箱から消しゴムを取り出しました。今までは文字を書き間違えるだけで「ママ、どうしたらいいの?」と半泣きで助けを求めていた息子。そんな息子も自分で解決策を見つけられるようになったんだなと、私は微笑ましく見守っていたのです。ところが、消しゴムを手に取った息子はそれをじっくりと眺めた後、何を思ったか紙のカバーをはずしました。そして匂いを嗅いで満足げにうなずいたかと思うと、今度はカバーを消しゴムに装着し、ゆっくりと筆箱に戻したのです。えっ!?間違えた文字を消すんじゃなかったの!?という衝撃と共に観察を続けていると、息子は間違えた文字には見向きもせず、何事もなかったかのように、続きのマスに文字を書き出しました。驚きを隠せぬまま「いやいやいやいや、何のために消しゴムを出したの?」と息子にたずねてみると…「え?消しゴム?う~ん、そうだった!文字を消そうと思ったんだった・・・でももう続きを書いちゃったし、まあいいや!ね?」と朗らかな回答で押し切られてしまいました。結局消しゴムが本来の目的で使われることはなかったのです。これは、お姉ちゃんである娘とは正反対。文字を一つ書き間違えただけで激怒し、自分を罵る娘の姿を見てきた私にとって、対照的な息子の朗らかさは少し微笑ましかったりもします。しかし「今どんな目的で何をしていたのかを覚えていられない」という特性は、今もこの先も息子の人生に大きな影響を与えていくことになるのだろうなと不安な気持ちに駆られます。過去の出来事がフラッシュバックし忘れられずに苦しむ娘出典 : 一方、アスペルガー傾向の強い娘は、過去の出来事を忘れることができずに悩んでいます。何年も前に〇〇君に押されたことが許せない、あの時〇〇と言い返せば良かった、できなかった自分が許せない、など、数年前の出来事であっても、さも今目の前でその出来事が繰り返されているように感じてしまうのです。そして、その記憶が頭をよぎった途端に激高し、再び傷つき恥をかき、怒りを噴出させるのです。これは同じような特性を持つ私自身も長年苦しめられてきました。今でも30年以上前の記憶に縛られ、思いだすたびに「どうして忘れられないんだろう」「忘れることができればどれほど楽だろう」と苦しい気持ちにさいなまれていました。そんな特性を持つ娘と私とは正反対の息子。しかし、息子の「覚えられない」という特性もまた、日常生活のさまざまな場面でトラブルを生んでしまい、彼を苦しめる要素になるかも知れないなと感じています。正反対の娘と息子。2人を見ていて思うこと出典 : 息子は、忘れ物を取りにいったはずなのに気がつけばピアノを弾いていたり、ズボンを半分はいたまま本を読んでいたりすることがあります。さらには、喋っている間に自分が何を話そうとしていたのかを忘れることもあります。周囲の人には「大丈夫!そんなこと、普通の人でもあるよ!」と言われることも多いのですが、不注意優勢型ADHDの特性が優位な息子の場合は、朝起きてから夜眠るまでずっと、これが続いているのです。息子を観察していると、彼の世界では過去や未来というものがあまり認識されておらず、「今目の前にあるものが世界のすべて」という捉え方をしていることに原因があるような気がします。先程の消しゴムの例でいうと、「文字を間違えた」ことは「消しゴムを取りだす」という動作を行ったことですでに過去のものとなり、今現在の彼の世界にあるのは「手に持った消しゴム」だけなのです。それを眺めているうちに「カバーを外したい」「匂いを嗅ぎたい」「カバーをつけたい」という欲求が次々と湧き出て、それをこなして行くことで世界は進んでいきます。やがて「手に持った消しゴム」への興味はなくなり、筆箱に戻したところでノートと鉛筆に気づくと「何かを書かなくては」と焦り手を動かし始めます。しかしそのときにはすでに「文字を間違えた」という過去はきれいさっぱりと彼の世界から消えているのです。「今、目の前にあるものが世界のすべて」という捉え方をする息子と、「過去が現在進行形で繰り返される」娘。タイプの異なる二人を育てていると、同じ自閉症スペクトラムという診断がおりていても、表出する特性はこうも違うものなのかと驚かされることがとても多くあります。娘に効果のあった工夫のしかたが、息子では混乱の原因になってしまうことも珍しくありません。兄弟といえど、一人ひとりの様子をよく観察しながら、その子に合ったサポートの方法を考えることの重要性をひしひしと感じます。子どもたちが自分の特性を理解できるように出典 : いずれ子どもたちが自分の力で歩き出すときに、どんなことが必要になるでしょうか。身の回りのことを自分でできるようになっておくこと、お金の使い方を知ること、他人とのコミュニケーションの取り方を身につけておくこと。いろいろあると思いますが、私は「自分の特性を理解し、工夫する術を知っている」ということがとても重要だと考えています。私自身も長い間、他人も自分と同じような感じ方・捉え方をしていると当然のように思っていました。そして、自分は他人より能力が低いために、人と同じように振るまえない出来損ないの人間だと思っていました。でも、子どもたちが発達障害と診断されて学んでいくうちに、情報の認知の仕方も処理のしかたも人それぞれで、同じやり方で同じ結果が残せなくても、それは自分がダメな人間だからではないと知ったのです。自分がどんなタイプで物事をどう処理しているのかを知る、苦手を工夫で補えることを知る、というのは、自分を否定せずに生きていくうえでとても大切なことだと思うのです。そんな思いから、私は普段から子どもたちとそれぞれの特性についてお話しをすることにしています。「お姉ちゃんは過去のことが忘れられなくて苦しんでるんだよ。でも、いつも細かいことをたくさん覚えていてくれて、すごく助かっちゃうよ!頼りになるよね!」「弟は覚えられなくていつも面白いことになっちゃうよね~!困ることも多いけど、気分をケロッと切り替えられるからそこはとってもいいところだよね!」こうすることで、娘が辛い過去を思い出してるときに息子が頭をなでてあげたり、息子が今何をすべきかを忘れた時は、娘がさりげなくヒントを出してあげたり、お互いに助け合うことができるようになってきました。ダメなところを否定するのではなく、苦手な部分はさり気なくサポートをし合える。家族でそれができるようになれば、今度は親しいお友だちや親戚と手を差し伸べあう。そんな風に子どもたちの世界が広がって行ってくれればいいなと思います。皆様のご家庭でも、お父さん、お母さん、お子さま、おじいちゃん、おばあちゃん。それぞれどんなタイプで、どんなおもしろい面やちょっと困った面があるのか話し合ってみませんか?自分を知る、身近な家族を知ることが、子どもたちの世界が広がる第一歩になるといいですね。
2017年09月03日「○○が苦手です」では、発達障害の実情が上手く伝わらないこともある出典 : 発達障害のある子のことを説明する際、よく耳にするセリフに「うちの子は○○が苦手です」というものがありますよね。私も、療育センターでそのように説明することをすすめられていたこともあり、最初は長男の障害名ではなく「〇〇が苦手なのよ」と特性だけを伝えるようにしていました。障害名を言って偏見を持たれるよりは、具体的な得意不得意を話した方が伝わりやすいだろう…そう思っていたからです。実際に、そのように伝える方がコミュニケーションが円滑にいく場合もあるでしょう。ですが、私が直面した現実は真逆だったのです。帰ってきた言葉の多くは「苦手ってことは頑張ったらできるんでしょう?」「甘やかしすぎじゃない?」「しつけの仕方が悪いんじゃない?」といった、息子や私の”がんばり”不足を原因とするかのような反応でした。「トツカさんって、ほんと過保護よねー」知らないところでそんな風に言われることもあり、当時はひどく落ち込みました。しかし、今思えばこちらの伝え方のせいで余計な誤解を招いていたのだと感じます。確かに、「うちの子は○○が苦手です」と突然言われても、それがどの程度苦手かを想像することは難しいですよね。「うちの子だって大変なのに、この人は何を甘えているの?」そう思うのは自然なことだと思います。それが定型発達の世界なのです。こうしたことがあってからは、私はあえて先に「うちの子は自閉症という障害を持っています」と伝えた後に、「障害の特性から○○が苦手なため、ご理解いただけると助かります」というように伝えるようにしました。もちろん「障害があるから迷惑をかけても許してね」という意味ではありません。「本人も家族も努力をしていますが、それでも難しいことが多々あります。そのためご迷惑をおかけすることがあるかと思うので、もし気になったことがあれば遠慮せずお知らせください」という意味です。何かあれば常に対応するという姿勢を示しておくことで、理解し合うための土台作りができることに気がついたのです。発達障害がある子たちにとって“苦手”という感情は生きるか死ぬかのレベルであることも多いです。しかし、ただ“苦手”と伝えるだけでは、その困難の大きさを判断できないのも無理はないですよね。そのために、少しでも相手が抵抗なく受け入れられるようにこちらができる工夫。それが「障害名から伝える」ということではないかと感じました。「障害名を伝える=偏見を持たれる」とは限らない出典 : 障害名を伝えることに関して、多くの保護者の方が悩む問題があります。「障害名を伝えることで障害名が一人歩きして偏見を持たれないだろうか…」ということです。私の結論を言うと、それは違います。悲しい話ですが、発達障害に対して偏見を持っている方は特性に対しても偏見を持っていることが多いため、障害名を伝えても伝えなくても大きく変わらないのです。「子どもが○○をするのは親のしつけのせい」すでにそう思っている方にとって、障害名は重要ではありません。むしろ障害名や詳しい特性を伝えることで「障害があるからそのような行動をすることもある」ということを知ってもらえ、逆に偏見がなくなることの方が多かったのです。そのため、障害名を伝えることでプラスになることはあってもマイナスになることはありませんでした。あえて障害名を伝えることで良い意味で変化が!出典 : とはいえ、実際に障害名を伝えるとなると「お友だちができなくなるのではないか」「偏見を持たれないか」など、どうしてもマイナスのことを考えてしまいがちですよね。ですが、先にお話しました通り、実際はプラスになることも多いのです。なぜならば「正しい知識を伝えられる」からです。恥ずかしながら、私自身も、わが子が自閉症だと知る以前は「自閉症=喋らない障害」だと思っていました。実際はそんな子もいればそうでない子もいますよね。しかし、以前の自分のように誤って認識している方は大勢いらっしゃいます。そのため意図せず傷つけたり傷つけられたりということが起こってしますのです。けっして悪意があるわけではありません。ただ、知らないだけなのです。障害名を伝えた後、そんな方たちによく聞かれることがあります。「自閉症って○○な障害だよね?でも、息子くんはそんな風には見えないよ?」それぞれがイメージしている“自閉症”とギャップがあるのでしょうね。障害のカミングアウトを機にこうした質問をされることが増え、その度に説明をするようになりました。大人が正しい知識を持つことで、子どもにも間接的に障害がある子との関わり方を伝えることができます。逆にこちらは年相応の成長や遊びを教えてもらえ、お互いに知らない情報を知ることができるのです。言わなければ伝わらず歩み寄ることができなかったであろう関係も、こちらから一歩踏み出すことで世界が大きく広がり、この先必要な社会とのつながりを作ることができるのではないでしょうか。また、学校でもある程度オープンでいることで、学級内での配慮が円滑に行えると聞いたことがあります。高学年になると、それまで漠然とゆるされてきた発達障害の子を見て「あの子だけ特別扱いされてずるい!」と感じる子が増えてきます。大人でも理由を聞かされず一人だけ特別に配慮されている状態を快く思うことは難しいですよね?それと同じなのです。なぜその子には配慮が必要なのか、それをある程度示してあげることで、クラスメイトにとっても良い効果があると感じました。伝え方を工夫して否定し合わない関係作りを出典 : 現在長男は特別支援学級と普通学級を行き来しています。特別支援学級に通っている子どもたちは、必ずしも障害の確定診断がある子どもばかりではありません。長男に発達障害があることを知っている親御さんもいれば知らない親御さんもいます。子どもたちも同様です。そのような状況ですが、障害名が足かせになっていると感じる経験をしたことはありません。多くの方は定型発達の子と同様、本人の性格や人間性を見て判断してくれていると私は感じています。見えない障害をカミングアウトすることが正解かどうかはわかりません。しかし、私自身は少なくとも不正解ではないと思っています。障害の有無を問わず、すべての人たちが理解し合って生きることは難しいことです。しかし完全に理解することはできなくても、伝え方一つで否定し合わない関係が築けると思うのです。そんな関係を築いていくことが、将来社会で共存することにつながるのではないでしょうか。障害の種類・子どもの性格・周りの環境などで伝え方は変わってきますが、あえて障害名を伝えるという選択もあるということを知ってもらえたらと思います。
2017年08月14日些細な失敗で「死んでしまいたい」と口走る息子出典 : 先日、自閉症スペクトラムの診断が下りている息子と並んで歯磨きをしていた時のことです。私の真似をして舌磨きをする息子に、「力を入れ過ぎると、舌にある味蕾(みらい)っていう細胞が傷ついて、味がわからなくなったりするかもしれないんだって。だから気をつけてそっとやるんだよ」と声をかけました。「えっ、味がわからなくなるかもしれないの?」と言いながら息子は静かにキッチンへと消え、その直後に娘の「やめてよっ!」という怒鳴り声と、夫が息子を叱る声が聞こえてきました。どうやら、娘が氷を入れて飲もうと準備していたコップの水を、息子が勝手に飲んでしまったようなのです。パニックを起こし、「だって!!!味がわからなくなってたら困ると思って!!!早く確かめなきゃ、味が、味がぁぁぁ!!!」と泣き叫ぶ息子。息子の行動には、どんな気持ちが潜んでいたのでしょうか。一旦キッチンから寝室へ息子を移して気持ちを落ち着かせた後、息子とじっくり話をすることにしました。「いったい、どんな気持ちだったの?」「お姉ちゃんなんか、殴ってやりたいと思った」私にはその怒りの根底には別の気持ちが潜んでいることが感じ取れました。「どうしてそう思ったの?」「だって味が分からなくなったら大変なのに怒るから」どうやら、味が分からなくなるって言われたことを必要以上に真に受け、怖くなってしまったようです。そのため、いてもたってもいられず、娘の用意した水をとっさに飲んでしまったということのようです。「そうか、味が分からなくなったらどうしようと思って怖かったのね。でも、あなたにそんな事情があるってお姉ちゃんもパパも知らないから、突然やって来てお水を飲まれたらやっぱり怒っちゃうよね。先にきちんと事情を話していたら、きっと『早くこれを飲んで確かめてごらん?』って言ってくれてたと思うよ」しかし、その言葉を受けめることはできなかったようで、「もう、僕は、なんてバカなんだ!僕なんて死んでしまえばいい!」と叫んで、息子はまた泣き出してしまいました。終わってしまえば、ささいな間違いなのに出典 : いつもは温厚な性格の息子が、他人を恨んだり、自分自身を傷つける言動をする回数が、ここのところ増えてきたのが気になっていました。いい機会なので、ゆっくり息子と向き合い、失敗の受け止め方について話してみることにしたのです。「朝起きてから夜眠るまで、人はいろんな選択をして、いろんな行動をとっているから、大人でも子どもでも絶対に間違っちゃうことがあるの。何万という行動や選択のうち、たった一つを間違えたからといって絶望したり他人を恨んだりしなくていいんだよ。誰だって間違うの。ママも毎日たくさん間違ってるよ」「間違ったって気がついたときはね、単純に『あ、間違った!』って思えばいいんだよ。そうして周りを見回して、誰かに迷惑をかけたり辛い思いをさせてしまったと思った時は、きちんとごめんなさいの気持ちを伝えよう。たった一つ間違えたからって、誰もあなたを否定したりしないよ。みんなが大切にしている君を、君自身が粗末に扱わないでほしいの」そんな話をして「確かにママも間違ってるね。うっかりさんだもんね」と息子が少し落ち着いた頃に、夫が息子に謝りに来ました。「いつもは『これ飲んでもいい?』と声をかけて了解を得てから飲んでいる君が、どうしてあんな行動を取ったのか、事情も聴かずに怒って悪かった。きちんと君の意見を聞くべきだった。ごめんな」「パパが謝った!」と驚きを隠せない息子に、ようやく笑顔が戻りました。「あ、間違った!」と思ったときには素直にその気持ちを伝えるという良いお手本を見せてもらって、息子もようやく娘に「勝手に飲んでしまってごめんね」と伝えることができました。2年後、3年後の成長を見すえて今が踏ん張りどころ出典 : ここ最近、怒りや悲しみを表現することが増えてきた息子。でもそれは成長の証でもあるので嬉しくも思います。しかし、自分の気持ちや衝動を制御していくことは、自然に何かを学ぶということが難しい息子にとって大きな課題となってゆくはずです。ここからは丁寧にひとつひとつ状況や感情を整理しながら息子と向き合っていく必要があると感じています。我が家ではこれまでも、怒りを抑えることができないアスペルガーの娘と、どうすれば自身が楽になるのか話し合うことを続けてきました。そして2年の月日が流れ、娘は同一人物とは思えないほどの変化を遂げることができたのです。とはいえ、決して平たんな道ではないあの作業をまた繰り返していくのか・・・と思うと少し気が遠くなったりもしますが、おそらくここが踏ん張りどころです。息子が自分自身の気持ちの変化をきちんととらえ、自分も周囲も楽しく過ごすことができるように、私は子どもをよく観察し時間をかけて子どもの気持ちを聞き出し工夫を重ねていくことが必要なのでしょう。その子どもに寄り添いともに歩いていく時間が、きっと子どもたちを安定させてくれると信じて、私は今日も子どもたちと向き合っています。発達障害のある子供にとっては決して生きやすいとは言えない世界。いつか子ども自身がその世界を上手く泳いで行けるように、一緒にステキな泳ぎ方を見つけられるといいですね。出典 :
2017年08月06日先日、NHK 「あさイチ」 で「発達障害の子育て」についての特集が放送された。番組に出演した古山さん一家は、小6の長女と小3の長男が共に発達障害と診断されている。元気にあいさつしてリポーターを出迎える2人の姿は、障害があるとは思えないほどだが、3日間生活に密着しているうちに、「あれ?」と思うことが見えてくる。古山家のお母さんは、子どもとのコミュニケーションに、言葉ではなく筆談でそっと気持ちを伝えたり、タイマーを使って時間をわかりやすく提示するなど、随所に工夫を凝らしていた。また、お母さんは「長女の子育てに悩んだ末、4歳の時に1人で決めて1人で病院に行った」「旦那は診断を受け入れられず、障害者のレッテルを張ったのは私なのか? と悩んだ」とのこと。それから6年、今も整理できない気持ちを抱えながら、夫婦で手探りの子育てが続いているという。じつは筆者にも、8歳になる娘(定型発達)と4歳の息子(自閉症スペクトラム)がいる。決して感情的にならず、子どもの気持ちを受け止めて待つという古山家のお母さんの姿は、とても学ぶところが多かった。■子どもが発達障害と診断。その時、夫は……?しかし、今回の番組を見ていて私が一番気になったのは、子どもでもお母さんでもない。それは、お父さんの存在だ。当事者として出てくるのはほとんどがお母さんで、お母さんの話を通してからも、お父さんの存在があまり見えてこなかったのが気にかかった。個人的には「夫婦や家庭内の葛藤をもっと掘り下げて聞きたい!」と感じた。今回は放送時間の都合上、残念ながら「お父さんの存在」にはあまりフォーカスされていなかったようだ。次回以降のNHK「あさイチ」特集を含む、 NHK「発達障害」プロジェクト で、このテーマが深堀りされることを期待したい。「お父さんの存在」という問題。じつはこれ、療育ママの間では、よく聞く話である。「夫が子どもの障害を認めてくれない」「旦那が『就学先は絶対普通級』と言っている」「旦那が、幼稚園での発表会の様子を見てショックを受けちゃった…」などなど。他に、義理両親や自分の両親から理解してもらえないという話も時々聞く。「義理母に、あなたがちゃんと躾ければなおると言われた」「母親に、『あなたは甘やかしすぎ。このままじゃわがままな子になる』と注意された」などなど。こういう発言にはイラッとくるけれど、百歩譲って、祖父母世代に発達障害の理解は難しいのかもしれない。自分たちが子育てしていた頃には、きっと聞いたことのない話だろう。でも、同居していたらちょっとキツイ問題だけど、別々に住んでいるならうまくわかすこともできるし、子育てにそれほど強い影響もないはずだ。だが、夫の場合はそうはいかない。夫がきちんと向き合ってくれなければ、お母さんのストレスは2倍、いや数倍にも膨れ上がる。日々の小さなことまでフォローする必要はないと思うが、「ここぞ!」という時には、真剣に向き合ってほしい。意見が衝突することもあるかもしれないが、いざという時に一緒に本気で問題に取り組んでくれる同士(夫)がいると感じられれば、それは、お母さんにとって何よりも大きな心の支えになるはずだ。 ■他の子と比べすぎるお母さんと、比べすぎないお父さんまた、一般的に、子育てはお母さんが主役になることが多いので、同世代の友達と関わることも増えるが、お父さんは集団でのわが子の姿を見る機会がほとんどない。なので、年相応の発達状態を把握しにくく、「男の子なんてこんなもんじゃない?」とか「俺も子どもの頃そうだったよ」などと問題を見逃しがちな面がある。でも、これって悪い面もある反面、意外と良い面もあると思うのだ。わが家の場合は、私が他の子と比べてばかりいて、「普通」であることに縛られ、ふさぎ込んでしまっていた時期があった。だが、夫は、他の子と比べることは一切しなかった。「他の子と同じである必要はまったくない」、「比べることには何の意味もない。もし比べるなら、『他の子と』じゃなく『過去の息子と』」「『普通』の定義って何?」と、落ち込んでいる私を容赦なく詰めて(励まして?)くれたものだ。そんな夫に、「あなたは他の子のことを全然知らないからそんなに呑気なの!」と噛みついたこともあった。だが、文句を言いつつも、わが子のことだけをしっかり考えるという夫のブレない姿勢は、どこかで、とても心強い支えになっていたのだ。また、夫と私では子どもについての見方も全然違ったので、多面的に話し合えることもありがたいことだった。お父さんというポジションは、お母さんより、子育てを冷静かつ客観的に見られる位置にいると思う。お父さんには、ぜひそういう強みも活かしてほしいのだ。■「わがまま」と障害の線引きは?最後に、番組を見ていて、もう一つ気になったことがある。「わがまま」と障害の線引きは? ということだ。番組に出演した古山家のお父さんも、「どこまでが発達障害の特性なのか個性なのか切り分けが難しい」と葛藤していたし、スタジオの出演者たちもそのことについては判断つかないようだった。このことは、私も、よく健常児のママから聞かれるのだが、私も答えがわからずに困っている。専門家の井上雅彦さんも、「(線引きは)厳密には難しい」と言っていたので、かなり悩ましいテーマなのだろう。ただ、重要なのは、障害との線引きにこだわることではなく、「どう工夫すれば(生きにくさを感じている)子どもたちの努力が報われるか?周りがどう対応するか?ということの方に目を向けるべき」(井上雅彦さんコメント)とのこと。そう、私たちの目的は、子どもをカテゴリ分けしたり、レッテルを張ることではない。困っている子どもたちが、いかに生きやすくなるかを考えぬくことなのだ。まちとこ出版社N【発達障害についての記事一覧】▼大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)▼「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年08月01日つないだ手を振りほどかれる。泣いて駄々をこねる。長男と一緒に歩くのが辛い…自閉症の長男は幼い頃からこだわりが強かったため、外に連れ出すのが困難でした。車や電車といった乗り物は大好きなのですが、徒歩で出かけると、決まって座り込んで泣き出すのです。歩くのが疲れた、行きたい方向と違っていた――おそらくそういった理由だったと思います。つないでいた手を振りほどき、地べたに座って「あー!」と叫ぶ長男…。Upload By シュウママ自閉症という診断が下る前だったこともあり、私は泣きわめく長男が理解できませんでした。次第に散歩するときは長男をベビーカーに乗せ、定型発達の双子の次男とお喋りしながら一緒に歩くようになりました。ベビーカーに乗れなくなってからはできるだけ歩かなくていいように、タクシーを使うようになりました。Upload By シュウママ長男に対して申し訳ないとは思ったのですが、いつも座りこまれてはどこにも行けません。正直、パニックになる長男の姿を見るのは辛く、恥ずかしくもあったのです。タクシーがつかまらない!不安だけど一緒に歩こうかそれから何年か経った日のことです。長男は8歳になっていました。持病があるため定期的に病院に通っているのですが、通院日に困ったことが起きたのです。いつも病院へは電車で行き、最寄りの駅まではタクシーを利用しているのですが、その日はタクシーが一向につかまりません。また座りこんで泣くのではないか――不安を覚えながらも、仕方なく私は長男と駅まで20分の道のりを一緒に歩くことにしました。Upload By シュウママあれ、長男の様子が前と全然違う…?外に出た途端、長男は自分の小さな手を私の手に絡めてきました。そしてぎゅうっと握りしめたのです。小さい頃、どんなに手をつなごうとしても振り払っていたのがうそのように、長男は自分から手を握りスタスタと歩いていきました。時折下から私の顔を仰ぎ見てはにこにこと笑顔を向けます。一緒に歩いていることが楽しくて仕方ないことがその表情からよくわかり、私も温かい気持ちになりました。Upload By シュウママ突然立ち止まった長男が口にした言葉はそうして手をつないでしばらく歩いていたのですが、突然長男がぴたりと立ち止まりました。そして私に向かって大きな声で言ったのです。Upload By シュウママ驚きました。長男が魚という言葉を知っていただけでなく、一生懸命私に伝えようとしたことに。それからも長男は何か見るたびに、見た物をどんどん口にしていきました。「ケーキ!」「ねこ!」「アジサイ!」長男の顔には、発見を一緒に共有しようとする喜びがあふれていました。もう、私の手を振り払って泣き叫んだ幼い頃の姿はどこにもありません。ゆっくり、ゆっくり。5年後に次男と同じ場所にたどりついたんだね単語を口にする長男を見ながら、ふっとある記憶が蘇りました。それは定型発達の双子の次男が、ものの名前を覚えたての頃、ちょうど3歳頃でしょうか――同じように見た物を片っ端から私に教えてくれていた5年ほど前のことです。Upload By シュウママ看板に書かれた文字を読み上げ、道端に咲いた花を見て、名前を教えてくれた次男。四季の移り変わりを感じながら次男と散歩していた頃の記憶。ああ、この子はあの頃の次男に追いついたんだ――言葉でやりとりできないし、一緒に歩いてたってきっと楽しくなんてないだろう、きっとまたつないだ手を払いのけるんだ――私が長男に対して、そう思い込んでいた長い長い間、彼の心はちゃんと成長していたのです。そして5年前、次男が立っていた地点に、長男も今ようやくたどりついたのです。Upload By シュウママそのことが涙が出るほど嬉しくて、私はしゃがみこんで、小さな長男の頭をしばらく撫で続けていました。
2017年07月27日自閉症ってどんな障害なの?出典 : 自閉症(Autism)は先天的な発達障害のひとつで、社会性と対人関係の障害、コミュニケーションや言葉の発達の遅れ、行動や興味の偏りの3つの特性が発達段階で現れるといわれています。詳しくは下記のリンクをご覧ください。ドラマで見る自閉症―自閉症の登場人物が物語を動かしていく出典 : この記事では日本のドラマ5作品と、海外のドラマ3作品をご紹介します。自閉症の主人公が活躍するものから、自閉症の登場人物が物語に大きくかかわる作品までさまざまです。様々な視点で描かれる自閉症がある人を取り巻く姿を見ることで、新たな発見があることでしょう。自閉症をテーマにどのような物語が展開するのでしょうか?ドラマのあらすじと見どころを紹介していきます。日本で制作されたドラマ5作品出典 : 【あらすじ】主人公は、31歳の自閉症の青年・大竹輝明(草なぎ剛)。周囲の無理解のため仕事が長続きせず、弁当屋の仕事も辞めたばかりでした。そんな、仕事を転々とする生活の中で、幼馴染の都古(香里奈)のすすめで動物園の飼育員をはじめることになります。職場で出会う人々や、周りの家族に支えられながら一歩ずつ成長していくのですが…。【見どころ】このドラマが放送される際には、草なぎ剛が、知的障害・自閉症がある青年の役に挑むということで、大きな話題を呼びました。高い演技力によって、主人公の心情が深く描かれています。仕事や結婚、自立など、青年期の障害者が直面する問題がリアルに取り上げられ、考えさせられる作品です。【作品情報】(スタッフ)脚 本: 橋部敦子音 楽: 本間勇輔主題歌: SMAP「ありがとう」(ビクターエンタテインメント)演 出: 星 護 河野圭太 三宅喜重アソシエイト・プロデューサー: 石原 隆プロデューサー: 重松圭一 岩田祐二制 作: 関西テレビ 共同テレビ【あらすじ】彰太郎(二宮和也)は福祉施設に通う自閉症の青年です。母親の晴江 (田中美佐子) は、体を丈夫に、そして少しでも夢中になれることを見つけさせようと、彰太郎が小さい頃から山登りに連れて行き、身体を鍛えさせていました。そして、とうとう彰太郎のランナーとしての並外れた能力を発見します。息子が無心に走る姿に希望を持ち、粘り強くマラソンの練習をさせます。そんな中、元駅伝選手の洋二(松岡昌宏)に出会い、コーチになってほしいとお願いしますが…。【見どころ】ドラマ『マラソン』は、自閉症という障害がありながらマラソンに挑戦した韓国の青年・ヒョンジンくんの実話をもとにした作品です。この作品は、原作の手記に自閉症を取り巻く日本の状況を織り込み、さらに舞台を日本に移し変えて制作されています。純粋でひたむきな彰太郎がマラソンへの挑戦を通して、周りの人を巻き込みながら変えていく姿を描く感動ドラマにご注目ください。【作品情報】(スタッフ)原 作 :『走れ、ヒョンジン!』 (ランダムハウス講談社) パク・ミギョン著、蓮池薫訳脚 本 : 寺田敏雄音 楽 : 笠松泰洋企画・プロデューサー : 山崎恆成プロデューサー・演出 : 吉田 健後 援 :(社団法人) 日本自閉症協会自閉症 (発達障害) 監修 … 辻井正次 (中京大学社会学部教授)制 作 … TBSテレビ製 作 … TBS【あらすじ】不審な事故死を捜査することになった蛯名舞子(栗山千明)は、事件現場でチョコザイ(中居正広)と名乗る謎の男に出会います。チョコザイが残した謎の言葉が事件解決のヒントになることに気づき、事件の捜査は進んでいきます。果たして、チョコザイの正体とは…?事件の裏に隠された秘密が徐々に明らかになる展開に注目です。【見どころ】サヴァン症候群で、かつ天才サヴァンであるチョコザイ=アタルの特殊な能力が、迷宮入りしかけた難事件を解決に導いていきます。警察が気づかない犯罪事件に関する微細な証拠を発見し、アタルがつぶやくキーワード。その単語をヒントに、周りの個性的な刑事達が動き出します。次第に明らかになるアタルの素性、随所にちりばめられた小ネタの数々に目が離せない!新感覚のミステリーエンターテイメントをお楽しみください。【作品情報】(スタッフ)脚本:櫻井武晴演出:木村ひさし 吉田 健 韓 哲プロデューサー:植田博樹 韓 哲主題歌:「自由へ道連れ」椎名林檎(EMIミュージック・ジャパン)音楽:河野 伸 ノ・ヒョンウ製作著作:TBS【あらすじ】高機能自閉症のある女性、雨宮繭子(ともさかりえ)と、恋人を亡くしたトラウマから精神科医を辞め、予備校講師となった狭山慎一(上川隆也)との恋愛を描いています。狭山は、目の前で恋人を事故死させた責任からPTSD(心的外傷後ストレス障害)になり、現在の職に移りました。繭子と出会うことで徐々に閉ざした心を開き始めます。人の感情を読み取るのが苦手な繭子と狭山とはすれ違いつつ惹かれあうように…繭子は人を好きになる気持ちを知り、様々な困難に直面しながらも歩きだします。【見どころ】高機能自閉症の女性の恋と自立を描いて、話題を呼びました。人の感情をうまく理解できないシーンや、自分の気持ちを表現しづらいことへの悩み、突然のパニックも綿密に描くことで、主人公の悩みを映し出しながらピュアで切ない恋物語になっています。狭山への思いをきっかけに、社会で生きていきたいと願い、仕事を探したり人との接し方を学んだり、成長する繭子の姿にも心を打たれます。【作品情報】(スタッフ)脚本:武田百合子 原田菜緒子プロデューサー:山崎恆成演出:吉田健 大岡進 内田誠音楽:千住明主題歌:『Love Again~永遠の世界』shela(avex trax)発売元:TBS【あらすじ】普通の母親である東幸子(篠原涼子)は息子の光(斎藤隆成)の子育てに悩んでいます。目を離したすきにどこかに行ってしまう、人に抱きかかえられたりするのをとても嫌がる…。ほかの子どもと違う光の姿を不安に思う幸子ですが、夫の雅人(山口達也)は仕事の忙しさから相談にも乗ってくれません。ついに、光は発達検査を受け、自閉症との診断を受けます。家族の無理解のため、光の自閉症は母親の育て方のせい、と責められる幸子でしたが、七月小学校の特殊学級の里緒先生のある言葉をきっかけに、前向きに光と向き合うことを決意します。【見どころ】2004年4月より日本テレビにて放映された、自閉症のある息子と母親の成長の記録を綴ったTVドラマです。自閉症児をテーマにした戸部けいこのマンガ原作をもとに、ひとりの母親が、自閉症という障害を背負って生まれてきた息子とともに、自分の人生と家族を見つめ直し前向きに生きることを決意していく姿が描かれています。自閉症のある子どもに特有の症状と、それゆえに起こる日常生活上の困難や、家族の葛藤はなかなか表現が難しいテーマです。さらには、周囲の人たちの偏見と理解、児童福祉サービスや学校での特別支援の様子なども含めて、綿密な取材によってリアルに描かれたことが反響を呼びました。人気マンガ原作のドラマ版をぜひお楽しみください。【作品情報】(スタッフ)チーフプロデューサー: 梅原幹プロデューサー: 櫨山裕子/内山雅博演出: 佐藤東弥/佐久間紀佳原案: 戸部けいこ脚本: 水橋文美江医事監修: 内山登起夫音楽: 溝口肇海外で制作されたドラマ3作品出典 : 今回は、韓国とアメリカで制作されたドラマをご紹介します。日本のドラマで描かれる自閉症との違いはあるのでしょうか。国ごとの取り上げられ方の違い、お国柄に注目してみるのも面白いですね。【あらすじ】主人公はサヴァン症候群でかつ、人並み外れた天才的暗記能力と空間認識能力をもつ”天才サヴァン”にカテゴライズされる青年、パク・シオン。幼い頃に出会った医師チェ・ウソクに医師としての能力を見こまれ、医師を目指します。しかし、その病歴が問題視されたシオンは国家試験で不合格処分となります。なんとか医師になりたいシオンは、ウソクが病院院長を務めるソンウォン大学病院へ。医師として認めてもらうため、シオンは奮闘します。【見どころ】韓国でも「大人のための童話のよう」と賞賛されたドラマでした。医療現場を忠実に描いたメディカルドラマであることはもちろん、そこでのヒューマンドラマやとてもピュアなラブストーリーも楽しむことができ、心温まるおすすめのドラマです。ぜひご覧ください。【作品情報】(スタッフ)脚本:パク・ジェボム「神のクイズ シーズン1~3」演出:キ・ミンス「烏鵲橋[オジャッキョ]の兄弟たち」「グッバイ・ソロ」【あらすじ】元ジャーナリストでシングル・ファーザーのマーティン・ボームは、自閉症の息子ジェイクと意思疎通を図るために奮闘を始めます。しかし、ジェイクは決して口を開かず、ほとんど感情を表に出そうとはしません。さらに、学校などから突然姿を消してしまうことも頻繁に起きてしまいます。そんなある日、ジェイクに特別な能力があるらしいと、マーティンは気付きます。数字を通して過去・現在・未来、そして世界各地の人々の繋がりを知覚する能力から、ジェイクはマーティンに数字を見せます。そのメッセージの謎を解きながら、マーティンは人助けをするようになっていくのですが…。【見どころ】海外ドラマならではの、世界各地を舞台にしたスケール感のあるストーリーから目が離せないこの作品。ストーリーの中で、日本の「東日本大震災」を取り上げたりと、予想外な物語の展開をドキドキしながら見ることができます。ドラマティックなストーリーから緊迫した逃走劇まで、飽きることなく楽しめます。【作品情報】(スタッフ)製作総指揮:ティム・クリング,キーファー・サザーランド,ピーター・チャーニン,キャサリン・ポープ,キャロル・バービー,フランシス・ローレンス,スーザン・バイメル監督:フランシス・ローレンス,イアン・トイントン,スティーヴン・ウィリアムズ,タッカー・ゲイツ,ミラン・チェイロフ,グウィネス・ホーダー=ペイトン,アダム・ケイン,マイケル・ワックスマン,ロブ・フレスコ,ジョン・カサー,ネルソン・マコーミック,グレッグ・ビーマ脚本:キャロル・バービー,メリンダ・シュー・テイラー,クリス・レヴィンソン,ロバート・レヴィーン,ティム・クリング,ザック・クレイリー字幕翻訳:小野郁子吹替翻訳:古瀬由紀子/髙山美香【あらすじ】主人公ウィル・グレアムは、自閉症スペクトラムがあり、かつ珍しい特性があります。あらゆる犯人に共感し、その動機や犯行当時の感情を再現できる「純粋な共感」という能力を持っているのです。その資質を買われてFBIアカデミーの講師を務めています。FBI行動分析課の長ジャック・クロフォードは、ミネソタ州で発生した若い女性ばかりを狙う連続殺人事件の捜査のため、ウィルの特殊な能力に着目します。しかし彼の精神状態を危惧するFBI顧問のアラーナはウィルの起用に反対します。クロフォードは高名な精神科医ハンニバル・レクターに協力を求めます。殺人事件の捜査にも立ち会うようになったレクターは、次第に本性を現し始め…【見どころ】このドラマの中で描かれるハンニバル・レクターのキャラクターは大きな反響を呼んでいます。人食い殺人鬼という過激なキャラクターは苦手に思う方も多いかもしれませんが、サスペンスホラーが好きな人には人気のドラマになっています。自閉症スペクトラムのある主人公ウィル・グレアムと、ハンニバル・レクターの関係にも注目です。これまでの自閉症の人物が登場する作品とは一線を画すものと言えるでしょう。【作品情報】(スタッフ)原作者: トマス・ハリス製作総指揮: ブライアン・フラー,ジェシー・アレクサンダー,マーサ・デ・ラウレンティス,デヴィッド・スレイド,クリス・ブランカート,シドニー・デュマ,クリストフ・ランデ,ケイティ・オコンネル,エリーサ・ロス監督: デヴィッド・スレイド,マイケル・ライマー,ピーター・メダク,ジェームズ・フォリー, ティム・ハンター,ギレルモ・ナヴァロ,ジョン・ダール脚本: ブライアン・フラー,ジム・デンジャー・グレイ,デヴィッド・フューリー,クリス・ブランカート,ジェニファー・シュヒュール,スコット・ニマーフロ,カイ・ユー・ウー,ジェシー・アレクサンダー,スティーヴ・ライトフット,アンドリュー・ブラック製作総指揮/脚本 ブライアン・フラーまとめ出典 : この記事では、自閉症のある人物が登場するドラマをご紹介しました。一度は聞いたことがあるような作品から、有名なあの人が演じている隠れた名作まで、気になる作品を見つけていただけたなら幸いです。「自閉症」と聞くと、特定のイメージが先行しがちです。今回、ご紹介したドラマの中で「自閉症」がどのように描かれていて、周囲の人々はどのように認識しているのかに着目してみると、「自閉症があるひと」のスペクトラムな広がりに、新たな発見があるかもしれません。自閉症のある当事者と直接関わりのある方はもちろん、周囲の方々が抱く悩みなど、問題意識の方向性が自分とは違った視点に触れることのできる良い機会になるかもしれません。また、海外ドラマで取り扱われる「自閉症」のイメージは、ひと味違った自閉症の一面を伝えてくれるはずです。普段、海外ドラマを見ない方も今回の機会を通して、チャレンジしてみてはいかがでしょうか?
2017年07月25日7月24日(月)、NHK 「あさイチ」 では、子どもの発達障害についての特集が放送される。「あさイチ」からの事前情報によると、「これまで番組に寄せられたメールやファックスの中でも特に多かった、発達障害の子どもを持つ親の悩みに徹底的に向き合う」とのこと。じつは筆者にも、8歳になる娘(定型発達)と4歳の息子(自閉症スペクトラム)がいる。5月の NHKスペシャルの放送 から、ぜひ次回は、発達障害の子どもや子育て中の親にフォーカスした企画を! と思っていたので放送が楽しみだ。■当事者が語る、発達障害の子育てのリアル今回の放送では、3人(うち2人が発達障害)の子育て真っ最中の家庭を訪問し、発達障害の子育ての大変さや、それに対してどう向き合い、対応しているのかを伺っていくのだそう。子どもが診断された時の気持ちや、夫や祖父母、周囲の反応、子どもの将来への不安など、様々な角度から、当事者たちに発達障害の子育てをリアルに語ってもらうそうだ。さらに、番組では、ペアレントメンターなどの親を支援する仕組みなど、当事者の親に役立つ情報も紹介する予定だという。■娘とは桁違いの大変さだった、息子の子育て筆者のケースをお話しよう。定型発達児(娘)と発達障害児(息子)の両者を育ててみて思ったが、その子育ての大変さは、まさに桁違いだった。もちろん娘だって、成長の過程では、当然大変なこともあった。イライラして頭が沸騰しそうになったことだって、多々ある。でも、娘の怒りや泣きのツボはだいたい理解できたし、コミュニケーションもしっかり通じたので、私の理解の範囲内で対処することができた。ところが、息子の場合はまったく違った。指示が通らない。言葉の説明を理解してくれない。急に走り出したと思ったら、今度はテコでも動かないなど、動きが読めない。保育園ではイベント事が大の苦手で、隙あらば逃走。歯磨きやお医者さんの診察では毎回大暴れ…。何より困ったのは、コミュニケーションが通じないこと。変な言い方だが、言語も思考も違う異星人を相手にしているようで、本当にお手上げ状態であった(4歳過ぎた今では、ずいぶんマシになってくれたが)。■3歳で確定。「だから大変って言ったじゃん!」周囲に相談しても、「男の子なんてそんなもの」「上が女の子で楽だったんだよ~」などと言われ、なかなか理解してもらえなかった。だから、3歳で息子が自閉症スペクトラムと診断された時は、もちろんショックではあったが、同時に、「だから大変って言ったじゃん!」と、周囲にちょっと毒づきたいような気持ちも生まれた。今思うと、周囲は私が思い詰めないように、気を使ってくれていただけだろうに…。不健康な考え方に陥っていた当時は、ひねくれたとらえ方しかできなかった。 ■周囲にガードを張っていのは、私の方?息子は1歳半検診から疑いをかけられていたので、宙ぶらりんの期間が長かった分、私にとって診断は、腹をくくる良いきっかけになった。その頃には、この障害についてしっかり勉強して、一生向き合っていこう! という覚悟もできた。また、さまざまな専門書を読んで勉強するうちに、息子の特徴や対処法が少しずつわかるようになり、突飛な行動にも笑えるような余裕も出てきた。周囲にも、息子のことを説明しやすくなった。仲の良い園ママにはすでに話していたが、診断がおりるまでは、息子のことをクラス全体にどう説明したらいいのかわからなかった。保護者会で息子のことを説明した時はちょっと緊張したが、幸い、クラスのママたちからの理解も得られ、温かい言葉もかけてもらった。私の方も、長年抱えた秘密(?)をやっと言えたような気がしてとてもスッキリした。それまでは、保育園のイベントで息子が突飛な行動をするたびに、「他のお母さんにどう思われてるんだろう…」とビクビクしたり。お迎え時、他の子がお母さんと楽しそうにおしゃべりする姿を見るのが辛くて、園から逃げるように帰ったり。そんな日々の連続だった。だが、今にして思うと、周囲に対して変にガードを張っていたのは私の方で、私は、勝手に傷ついていただけだったのかもしれない。■自分の物差しだけに縛られない。意識して視野を広げることこうして振り返ってみると、一番辛かったのは、息子のことを周囲に話せず、ひとりで抱え込んでいた時期だった。そんな状況を変えてくれたのは、オープンにしたことと、やはり人との関わりであった。家族や両祖父母、療育の先生、取材で会った方々、そして、同じ悩みを持つお母さん仲間と繋がれたことはとても大きかった。発達障害の子育ては、子どもに手がかかる分、心も生活も余裕をなくし、周囲が見えにくくなってしまう。自分の偏った考えだけに浸食されて、それがすべてのように感じてしまいがちだ。でも、自分の物差しだけがすべて、なんてことは決してない。物事は、捉えようによって、どうにでも変わるし、世の中には変わった人(?)がいっぱいいて、いろんな考え方がある。発達障害の子育て中は、特に、自分とは違った考えを持つ人に会ったり、新しい考え方を学んだり、自分の視野を広げるという気持ちを、常に意識してもち続けた方が良いと思うのだ。今回の特集に関して、担当ディレクターからは「外からは『見えにくい障害』と言われる発達障害の子育ての苦労や、当事者のリアルな姿や声を伝えることで、少しでも誤解を解いていきたい」という、力強いメッセージをいただいた。また何か新しい発見があるかもしれないと、私も放送を心待ちにしている。・NHK「あさイチ」 シリーズ発達障害 「“ほかの子と違う?”子育ての悩み」 2017年7月24日(月)放送予定 ※内容は変更になる場合があります文:まちとこ出版社N【発達障害についての連載一覧】大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年07月21日