言語教育情報学修士・TOEIC990点・TESOL(英語教育の国際資格)をもつ田畑翔子さんに、大学入学共通テストに向けての対策や効率的な練習法についてお話を伺うシリーズの第3回めをお届けします。第2回では、大学入学共通テストに向けた正しい英語リーディング対策と練習法についてお話しいただきました。最終回である今回は、大学入学共通テストに効果的な英語リスニング対策と練習法を探ります。2021年度大学入学共通テスト(英語リスニング)の概要2021年度大学入学共通テスト(英語リスニング)の試験時間は、前年度までと変わらず解答時間30分を含む60分。平均点は56.16点と、前年度(57.56点、100点満点換算)と比べ微減しました。2021年度の問題形式と配点は次のとおりです。第1問A短い発話の聞き取り(内容一致問題):各4点×4問=16点第1問B短い発話の聞き取り(イラスト選択問題):各3点×3問=9点第2問 短い対話の聞き取り(イラスト選択問題):各4点×4問=16点第3問 短い対話の聞き取り(質問解答選択問題):各3点×6問=18点第4問A長い発話の聞き取り(図表完成問題):4点×1問+各1点×4問=8点第4問B複数の発話の聞き取り(内容一致問題):4点×1問=4点第5問 講義の聞き取り(図表完成問題・内容一致問題):3点×1問+各2点×2問+各4点×2問=15点第6問A対話の聞き取り(内容一致問題):各3点×2問=6点第6問B対話の聞き取り(意見選択問題・図表選択問題):各4点×2問=8点 2021年度大学入学共通テスト(英語リスニング)の問題はこちら、答えはこちら、音源はこちら、スクリプトはこちらからアクセスしてください。2021年度共通テスト(英語リーディング)の難易度と、特に注目すべき問題は何か、田畑さんに解説いただきました。2021年度大学入学共通テスト(英語リスニング)の難易度と特に注目すべき問題ーー共通テスト(英語リスニング)は、1回しか音声が流れない問題や、アメリカ英語以外の多様な英語を聞き取る問題が出題され、旧センター試験と比べて難易度が上がったように思えますが、田畑さんはどのようにお考えでしょうか。田畑さん:やはり難易度は格段に上がった印象がありますね。読み上げスピード自体は、140-160wpmと、これまでのセンター試験とさほど変わりはありません。ですが、これまですべて2回読まれていたものが、配点でいうと59%相当、マーク数でいうと70%相当が1回のみの読み上げになりました。この影響は大きいと思います。これまでであれば、1回めですべて聞き取れなかったとしても、2回めで聞き落としたところのみに特に注意を払って聞く、という方略が可能だったのに、それができなくなるわけですからね。しかも、講義形式のものや、複数人がディスカッションを繰り広げるようなまとまった長さのものも、1度で理解できなければなりません。当然すべての内容を記憶しておくというのはなかなか難しいので、こういった問題については、すばやくメモをとりながら聞く必要があります。「なんとかギリギリ聞き取れる」というレベルだと、聞きながら同時に別の作業を行なう、というのはかなり脳内での処理にかかる負担が大きくなります。少なくとも、英語音声の9割程度は余裕をもって聞き取り、理解できるというレベルにもっていけないと、高得点は難しくなるでしょう。ーー共通テスト(英語リスニング)で特に注目すべき問題はありますか。田畑さん:第1問〜第6問のうち、第3問〜第6問が1回読み上げの問題となりました。第3問は、会話を聞いて、その内容についての問いに対し、正しい選択肢を選ぶというものです。センター試験でも似たような問題は出題されていましたし、1回読みであっても、基本的には会話の内容にだけ集中していれば、あとから選択肢を見て正しいものを選ぶことはそこまで難しくありません。ですが、第4問〜第6問については、1回しか聞けないうえに、表やグラフなどの資料と英文を照らし合わせたり、適切にメモをとりながら聞いたり、全体の流れから話者の伝えたい要点を判断したりと、同時に複数のことを行なう必要がある問題ばかりです。ただ「聞いて理解する」以上のスキルが求められるわけですね。大学入学共通テスト(英語リスニング)に必要な対策とはーー共通テストのリスニング対策は、旧センター試験のリスニング対策と同じような解き方のテクニックが通用すると思いますか。田畑さん:こういった共通テストの問題に対応するために、たとえば問題を先に読む、とかメモのとり方はこういうふうにしよう、といった解き方のテクニックのようなことを調べて、身につけようとされる方も多いかもしれません。もちろん、こういった問題形式への慣れというものも、ある程度は必要になってきますので、対策としては間違っていません。ただ、そもそも英語を「余裕をもって聞き取り、かつすばやく理解できる」というスキル部分を早い段階からトレーニングしておかないと、こういったテクニックも有効に活用することは難しいものです。人間の脳内には、ワーキングメモリとよばれる脳の作業容量が存在しており、一度に処理できる情報には限りがあると言われています。リスニングをするときの脳内では、ざっくり分けると「音声知覚」→「理解」という処理が行なわれています。この2ステップがスムーズに進めば、話全体の内容理解ができる、ということです。「音声知覚」というのは、音声を聞き取って、知覚するステップ。単語が認識できるような状態で、音がキャッチできている、ということです。それができれば、自分の長期記憶にある知識と照らし合わせて、単語の意味を特定したり、文法知識を用いて構文を理解したり、文脈や背景知識も活用して話の全体像を理解したりできるわけです。ちなみに母語であれば、この最初のステップである音声知覚というのは限りなく自動化され、無意識に処理できており、ワーキングメモリを消費する割合は通常低く抑えられます。それに対して外国語となると、音声知覚自体に大きな負荷がかかりがちです。「音声がただの呪文のように聞こえてそもそも単語が認識できない」、「個々の単語は聞き取れたのに、理解が追いつかない」、「その場では理解までできたのに、話が終わったあとには内容を忘れている」などといった場合には、程度の差はあれど「音声知覚」に脳内のリソースが多く使われて「理解」の処理や内容を覚えておくことに回す余裕がなくなっている可能性があります。そのような状態で、メモをとったり、複数の情報から判断したりといったことを並行して行なうのは至難の業です。ですから、まずはそれぞれのプロセスをいかに自動化するか、ということがポイントです。解き方のテクニックはそのあとですね。ーーリスニングスキルを効率よく身につけるためにはどのようにするとよいでしょうか。田畑さん:やはりそのためにはトレーニングが重要です。言語を運用するというのは、運動技能に似たところがありますから、一定の知識を身につけたあとは、繰り返しの練習によって知識をうまく運用できるスキルにしていく必要があります。先ほども申し上げたとおり、リスニングスキルを鍛えるには、ふたつの要素を意識するとよいです。耳から入った音声が英語のどの音か聞き分けるスキル(音声知覚)と、聞き取った英語の意味を理解するスキル(理解)ですね。音声知覚が弱点になっている場合には、正しい英語の音声知識をインプットし、瞬時に聞き取れるスキルを身につけていく必要があります。これはたとえば、「音声で聞いただけだと聞き取れないのに、同じ英文を文字で読むと意味がちゃんとわかる」(=語彙の意味や文法の知識は定着している)というような人が当てはまります。対して、短い英文であれば英語の音は聞き取れて、理解もできるものの、まとまった長い話になると内容の理解が追いつかない、という課題をもつ受験生は「理解」の処理を効率化する必要があります。これには、前回ご説明したリーディングスピードを上げるためのトレーニングが有効ですし、さらに理解の処理スピードを早めるために、もっと負荷をかけたトレーニングを行なうことも可能です。「音声知覚」と「理解」には効果的な鍛え方があります。これから「音声知覚」と「理解」の正しい鍛え方をご紹介しましょう。大学入学共通テスト(英語リスニング)対策になる「音声知覚」の正しい鍛え方共通テスト(英語リスニング)において、「音声知覚」を効率的に鍛えるステップは以下のとおり。単語の発音練習音声変化のルール学習ディクテーション・発音練習オーバーラッピングプロソディー・シャドーイング 順を追って、田畑さんに解説していただきました。単語の発音練習ーー単語の発音練習で意識すべきことはなんでしょうか。田畑さん:脳内で音と意味を正確に結びつけられるまで、音声を聞きながら、単語を繰り返し発音練習することです。語彙力の鍛え方の箇所でお話ししたとおり、個々の単語の正確な発音というのは、リスニングの土台となる必須知識です。音声変化のルール学習ーー「音声変化」とはなんでしょうか。田畑さん:「音声変化」とは、ネイティブが自然に話すときに、もともとの単語の発音が変化する現象のことです。話し言葉では、言いやすさの面で、一部の音が脱落したり、弱くなったり、つなげて発音されたりといったことが起こりやすくなります。共通テストのリスニングにおいても、自然な音声変化がたびたび登場します。個々の単語の発音を正しく覚えていたとしても、音声変化のせいで聞き取れない、ということは多々あります。ネイティブが実際に発音しているのが、自分の想定している音と違うわけですから、聞き取れなくて当たり前ですよね。音声変化にはじつは一定のルールが存在するのですが、体系的に習うことは少ないので、知らない人が多いようです。音声変化のルールを身につけ、無意識に音声変化を再現できるようになれば、細部まで聞き取りやすくなりますよ。ディクテーション・発音練習ーー「ディクテーション」はどのようなトレーニングでしょうか。田畑さん:「ディクテーション」は、聞いた英語を紙に書き取るトレーニングです。この活動の利点は、自分が聞き取れない箇所がどこかを特定できることです。すべて書き出したうえで、スクリプトと照らし合わせて答え合わせをすれば、「単語を知らなくて聞き取れなかった」のか、「音声変化のせいで聞き取れなかった」のか、など自分の弱点を把握することができます。ただし、答え合わせをしただけで終わらせていてはもったいないです!自分の弱点を克服するために、書き取れなかった箇所を中心に、よく音声を聞き直してみて、自分でも正しく発音できるように練習まで行ないましょう。オーバーラッピングーー「オーバーラッピング」はどのようなトレーニングでしょうか。田畑さん:「オーバーラッピング」は、流れてくる英語の音声に始めから終わりまで、ピッタリ重ねて英文を読み上げるトレーニングです。音声変化まで自分で再現できていないと、ネイティブと同じタイミングで発音し終わることができないので、音声変化を定着させるために効果的です。先ほどのディクテーションのあとに、聞き取れない箇所を中心に行なうと特に効果的ですね。また、次に説明するシャドーイングの前段階として行なっても効果があります。オーバーラッピングはスクリプトを見ながら行ないましょう。プロソディー・シャドーイングーー「プロソディー・シャドーイング」はどのようなトレーニングでしょうか。田畑さん:流れてきた音声に続いて、1、2語遅れでまねして発音していくのがシャドーイングです。そのうち、特に「音声」だけを意識して行なうシャドーイングが、「プロソディー・シャドーイング」です。英文の内容まで思い浮かべようとするとかなり高負荷になってしまうので、最初のうちは「音声」をなるべく正確に再現することのみに意識を払うようにしてください。最初は英文を見ながらでもかまいませんが、最終的には何も見ずにシャドーイングができるように繰り返しトレーニングを行ないましょう。これによって音声知覚を効率的に鍛えることができます。大学入学共通テスト(英語リスニング)対策になる「理解」の正しい鍛え方ーー英語の音の聞き分けはできるものの、聞いた英文の内容理解が追いつかないという受験生の場合、どのように対策させるべきでしょうか。田畑さん:そもそも、リーディングスピードが遅い状態であれば、リスニング時の理解のスピードは上がっていきませんので、まずは前回ご説明したチャンクリーディングがきちんと身についている必要があります。そのうえでさらに有効なのは、「音声」「内容」両方を意識して行なう「コンテンツ・シャドーイング」です。スクリプトを見ずに「プロソディー・シャドーイング」ができたら、音声だけでなく、内容もイメージしながらシャドーイングしてみましょう。「コンテンツ・シャドーイング」を繰り返すことで、聞き取った英語の意味処理が徐々にすばやく、正確にでき、共通テストに対応できる英語のリスニングスキルが身につけられるでしょう。大学入学共通テスト(英語リスニング)対策におすすめの参考書・問題集ーーリスニングの学習におすすめの参考書や問題集は何かありますか。田畑さん:音声変化の学習であれば、『5つの音声変化がわかれば英語はみるみる聞き取れる』(マイナビ出版)がおすすめです。ドリル形式で、ディクテーションや発音練習を効果的な順序で行ないながら、10日間で音声変化の基本が身につきます。参考書ではありませんが、スタディーハッカーが制作した無料のアプリ『Listening Hacker』(iOS/Android)もおすすめです。こちらは塾などでも導入いただいている実績があり、高校生でもゲーム感覚で音声変化について学習してもらえます。シャドーイングを行なう場合は、英文の内容がきちんと理解できているものを使用することがポイントです。ですので、自分の英語力よりもやさしめのレベルの素材を使って始めるのがよいでしょう。『キクタン リーディング』(アルク)のシリーズなら、中学程度から大学受験までレベル別にそろっていますし、本文にはスラッシュが入っていてチャンクを意識しやすいので、おすすめです。大学入学共通テスト(英語リスニング)の必須スキルを効率よく鍛えるには共通テスト(英語リスニング)はセンター試験よりもレベルアップした対策が必要です。ただ英文を聞き流したり、問題演習したりするだけでは非効率的なのです。共通テストで必要なのは、勉強というよりはむしろ、リスニングスキルを鍛える「トレーニング」。今回ご紹介したトレーニングはリスニングスキルを鍛えるのに効果的ですが、お子さんが自力でできるかどうか不安という方もいるかもしれません。そこで、共通テストに必要なリスニングのトレーニングを提供してくれる場が、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」から生まれた「ENGLISH COMPANY大学受験部」!「ENGLISH COMPANY大学受験部」では正しいトレーニングを通して、共通テストに必要な受験生の「リスニングスキル」を効率よく伸ばすことができます。「ENGLISH COMPANY大学受験部」は、ただリスニングスキルを伸ばすだけではありません。英語教育の専門家が、受験生に合ったリスニングの課題を発見する「課題発見」を、毎回のトレーニングで実施します。なぜなら、英語の音の聞き取りに苦戦するのか、英語の音はわかるものの内容理解が追いつかないのか、あるいはそもそも単語・文法の知識が足りないのかによって、異なるアプローチをしなくてはならないためです。受験生が抱えるリスニングの課題を直接的に解決するトレーニングを続けさせることで、共通テストに必要なリスニングスキルを身につけさせられます。田畑さんは、「ENGLISH COMPANY大学受験部」でリスニング対策を行なうメリットを以下のように述べました。田畑さん:やはり専門家による高精度な弱点診断が受けられること、そしてそれに対する適切な解決策を教えてもらえることです。シャドーイングひとつをとっても、個々の弱点に応じて効果的な取り組み方、意識すべきことなどは異なりますからね。また、日々トレーニングを継続していくなかで、みなさんどんどんできることが増えていきますから、その時々で「いま優先的に取り組むべきこと」というのも微妙に移り変わっていきます。それを専属のトレーナーが日々チェックして、適切な負荷をかけたメニューを考えているので、短期間で大きな成果を上げることが可能になっています。「ENGLISH COMPANY大学受験部」で、共通テストに必要な受験生の「リスニングスキル」を最短距離で伸ばしませんか。***大学入学共通テスト(英語)でこれから求められる対策と、効率的な練習法を3回にわたってお届けしました。スキルを効率よく伸ばしていく練習法を継続させることで、お子さんが自信をもって共通テストに臨むことができるはずです。受験生の課題に合った科学的トレーニングで、共通テスト攻略の最短ルートを通っていきませんか。■ 大学入学共通テスト(英語)対策について インタビュー一覧第1回:大学入学共通テスト(英語)で新たに必要な対策とは第2回:共通テスト(英語)に必要なリーディング対策と効果的な練習法第3回:共通テスト(英語)に必要なリスニング対策と効果的な練習法【プロフィール】田畑翔子(たばた・しょうこ)京都府出身。米国留学を経て、立命館大学言語教育情報研究科にて英語教育を専門に研究。言語教育情報学修士・TESOL(英語教育の国際資格)を保持。株式会社スタディーハッカー常務取締役、コンテンツ戦略企画部 部長(参考)独立行政法人大学入試センター|令和3年度大学入学共通テスト実施結果の概要
2021年06月11日言語教育情報学修士でTOEIC990点・TESOL(英語教育の国際資格)をもつ田畑翔子さんに、大学入学共通テストに向けての対策や効果的な練習法についてお話を伺うシリーズの第2回めをお届けします。第1回では、共通テスト(英語)の変更点と、今後受験生に求められるテスト対策についてお話しいただきました。第2回は、大学入学共通テストに向けた正しい英語リーディング対策と練習法を探ります。2021年度大学入学共通テスト(英語リーディング)の概要2021年度大学入学共通テスト(英語リーディング)の試験時間は、前年度までと変わらず80分。平均点は58.80点と、前年度(58.15点、100点満点換算)と比べ微増しました。2021年度の問題形式と配点は次のとおりです。第1問Aショートメッセージの読み取り:各2点×2問=4点第1問Bウェブサイトの読み取り:各2点×3問=6点第2問A点数表とコメントの読み取り:各2点×5問=10点第2問BEメールの読み取り:各2点×5問=10点第3問Aウェブサイトの読み取り:各3点×2問=6点第3問Bニュースレターの読み取り:各3点×3問=9点第4問 複数のEメールと時刻表、棒グラフの読み取り:各2点×2問+各3点×4問=16点第5問 プレゼンテーションのスライドの穴埋め:各3点×5問=15点第6問 説明文2題の読み取り:各3点×8問=24点 2021年度大学入学共通テスト(英語リーディング)の問題はこちらから、答えはこちらからアクセスしてください。2021年度共通テスト(英語リーディング)の難易度と、特に注目すべき問題は何か、田畑さんに解説いただきました。共通テスト(英語リーディング)の難易度と特に注目すべき問題ーー共通テストでは、すべてが長文読解問題になりましたね。語数が大幅に増えて、全体の難易度が上がっている印象を受けましたが、田畑さんは全体の難易度に関して、どのようにお考えでしょうか。田畑さん:英文自体を見れば、使用されている語彙や、文の複雑さなどについて、センター試験と比べて特段難易度が上がっているということはなさそうです。大手予備校の分析などを見ても、センターよりむしろ英文自体の難易度は下がっているのでは、というような意見もあります。扱われているトピックも、ごく日常的な内容や、学校生活などに関することが多く、これまでのセンター試験の内容から大きく変わったという印象は受けませんでした。何か特別な背景知識などがなくても、高校生なら容易に状況が想像できるようなものばかりです。問題については、発音・アクセント問題、文法問題、語句整序問題がなくなり、直接的に文法や語法の細かい知識が問われなくなったという点が大きな変更です。それをふまえても、問題全体の難易度が上がったということはないと思います。ただ、語数が1,000語以上増えたにもかかわらず、解答時間はこれまでと同じ80分であるということが、受験生にとってはかなりの影響があると思います。読むのが遅くて、時間配分に苦戦するということも多くなりそうです。ーー2021年度共通テスト(英語リーディング)で特に注目すべき問題はなんでしょうか。田畑さん:まずは、「意見」と「事実」を見極めて選ぶ問題です。共通テスト前の試行調査でも出題されましたね。こうした問題の場合、主観を表す助動詞の使い方などを、正しく理解しておく必要があります。ただ、基本的な文法が身についていて、正確な読みができていれば、さほど難しい問題ではないでしょう。次は、複数の情報源から内容を読み取って、正確に理解する必要がある問題ですね。ふたつのメールを読んで理解するとか、表やグラフ、メモを参照しながら必要な情報を探すといった問題が、全体を通して増えた印象があります。こちらはやはり、大量の英文をすばやく読み取るスキルが重要です。リーディングスピードが遅く、読むのに大変な負担がかかっている状態だと、その場では正確に読み取れても、複数の情報にあたっているあいだに、前に読んだ情報を忘れていってしまったり、うまく全体像がつかめなかったりする、ということが起こりやすくなります。以上が、2021年度共通テスト(英語リーディング)で特に注目すべき問題です。共通テスト(英語リーディング)に必要な対策とはーー共通テスト(英語リーディング)はセンター試験と問題形式が大きく異なるため、必要な対策も変わっていきそうですね。具体的にどのような対策が今後必要になっていくのでしょうか。田畑さん:すべてが読解問題になったうえに、全体の語数が1,000語以上も増えたので、大量の英文をいかにすばやく正確に理解し、必要な情報をつかみとるか、ということが重要になります。英文を正確に読むために、文法や語彙の知識をしっかり身につけていくということは引き続き重要ですが、すばやく運用できる「スキル」にその知識を変えていくことがより重要になってきます。つまり、リーディングスピードを上げるトレーニングが必要だということです。ーーどうしたらリーディングスピードを上げられるのでしょうか。田畑さん:リーディングスピードを上げる前提として、そもそも英語を正確に読めるようにするためには、基礎的な語彙、文法知識が欠かせません。正確に英文が読めないと感じている場合には、初めに中学、高校基礎レベルの語彙や文法知識を身につけましょう。基本的な英文をある程度読めるようになったら、それを土台として、今度はすばやく読めるようになることを目指していくとよいですね。じつは、リーディングスピードを上げるための正しい学習法があります。これから説明するやり方に沿って学習していくと、共通テストに活用できる英語のリーディングスピードが身につきますよ。共通テスト(英語リーディング)対策になる語彙力の正しい鍛え方ここでは、共通テスト(英語リーディング)対策に有効な語彙力の正しい鍛え方について、お話を伺いました。語彙を効率的に覚えるコツーー語彙がなかなか覚えられないという受験生は多いと思いますが、語彙を効率的に覚えるコツはありますか。田畑さん:大学受験向けの英単語帳を使って覚えていくのがおすすめです。語彙は、文章のなかで文脈とあわせて理解したほうが記憶に定着しやすい、とも言われますが、それだとかなりの分量の英文を読まないといけませんし、時間もかかってしまいます。ですので、英文になるべく多く触れるということをしながらも、やはり単語帳を使った学習を並行するほうが効率的です。脳の記憶のメカニズムを意識した方法で語彙を覚えると、ふたつの効果があります。ひとつは、「テスト効果」。これは、記憶は「テストをすることによって定着する」という効果を指します。テストをすることそれ自体に学習効果があるという研究結果が出ているんですね。単語を覚える際に、ただ英単語と日本語訳を目で追っているだけでは、なかなか定着しません。日本語訳のほうを隠して、英単語を見たときに「どんな意味だったかな?」と思い出そうとする。このように、記憶から引き出そうとすることによって、記憶はより強固なものになっていきます。もうひとつは「遅延効果」。これは、覚えたい情報に再び出会うまでの期間を空けることで、その後覚えておける期間を伸ばすことができる、という効果です。たとえば、毎日単語を一定数覚えていこうとするとき、「1日10語」などで設定すると、遅延効果が働きにくくなってしまいます。一度に覚える数を50語くらいに設定して、50語から成るリストを、最初から最後まで繰り返すようにする。そうすると、1番目の単語を初めて目にしたあと、それを再び目にするまでに、50語を覚えるぶんの時間が空きます。このインターバルのあいだに、記憶が薄れていき、その状態で再度記憶から取り出すことで、より長期間覚えていられるようになるわけです。その日は、これを5回程度繰り返してください。そして翌日、新しい単語に取り組む前に、前日に覚えたリストを1周だけ復習する。今度は3日後に復習する、次は1週間後といった感じで、徐々に復習までの間隔を伸ばしていくとよいでしょう。あとは、正しい発音も覚えて発音できるようにしないと、リスニングやスピーキングに支障が出てしまいます。ですから、必ず音声を聞きながら、自分でも発音して覚えるようにしましょう。英単語学習におすすめの参考書・問題集ーー英単語の学習におすすめの参考書や問題集は何かありますか。田畑さん:受験用のメジャーな単語帳であれば、だいたいどれも扱っている語彙は似通っているので、自分の現状のレベルに合ったものを選べばどれでも問題ないと思います。できれば音声にアクセスしやすいものを選ぶほうがいいです。単語帳に関しては何を選ぶかというより、どう使うかのほうが、学習の効率を高めるのには重要ですね。おそらく高校生なら、学校で指定されて使っている単語帳がすでにある人が多いと思いますので、それを使って、先ほど話したような効率的な方法で覚えていくことが重要です。ただ、中学校レベルの単語から不安な人は、そのレベルから再度始めたほうがいいですね。『夢をかなえる英単語 新ユメタン0 中学修了~高校基礎レベル』(アルク)なんかは、中学レベルの単語から、高校基礎レベルくらいまでの単語が含まれているので、よいかと思います。スマートフォン用のアプリケーションもあるので、気軽に学習できます。共通テスト(英語リーディング)対策になる文法知識の正しい身につけ方共通テスト(英語リーディング)対策として必要になるのが、基礎的な文法知識。文法の学習と聞くと、数多くのルールや文法用語を丸暗記するイメージがあるかもしれませんが、もっと効率的な身につけ方があります。それは、「認知文法」→「パターンプラクティス」というステップ。どういうことなのか、詳しくお話を伺いました。認知文法ーー「認知文法」とはなんでしょうか。田畑さん:「認知文法」とは、認知言語学という学問をベースした、文法のとらえ方のことです。「ネイティブが世界をどういうふうに認知し、切り取り、どのように言語に反映させているか」というアプローチで英文法をとらえるので、訳に頼らず英語のままのイメージで、英文法を理解できるようになります。日本語に訳す手間を減らせば、リーディングスピードも上がりやすくなりますよね。たとえば「be + to 動詞の原形」という構文について考えてみましょう。The president is to visit New York tomorrow.(大統領は明日ニューヨークを訪れる予定だ)のような文ですね。従来の英文法だと、これは「be to 構文」などと呼ばれ、「確定した予定」「運命」「可能」「意志」「義務・命令」の5種類の用法があり、それぞれ日本語訳とセットで暗記するという覚え方が一般的なようです。一方、認知文法では、形が同じものは、核となる共通の意味が存在するととらえます。認知文法だと、「to 動詞の原形」のコアイメージ(核となる意味)は、「〜するということに向かっている状態」、つまり未完了で、いまからその行為に向かっていくというイメージがあります。このイメージを理解することで、5種類の意味をバラバラに理解・暗記するのと比べて、よりスムーズに英文法を理解しやすくなるのです。パターンプラクティスーーたしかにイメージで理解することで、英文法が理解しやすくなりますね。田畑さん:そうですね。文法表現をイメージで理解できたら、次に行なうのが「パターンプラクティス」というトレーニングです。パターンプラクティスでは、身につけたい文法を使用した例文を部分的に変化させて瞬時に組み立てていきます。現在進行形の場合だと、“I am playing soccer now.” → “He is playing soccer now.” となるように、主語や時制などを変化させて、瞬時に英文が口から出てくるように練習します。そうすると、英文を見て瞬時に意味をつかむリーディングの土台づくりが可能です。英文法学習におすすめの参考書・問題集ーー英文法の学習におすすめの参考書や問題集は何かありますか。田畑さん:認知文法的な文法のとらえ方を学習するなら、『一億人の英文法』(ナガセ)などがよいでしょうか。パターンプラクティスを自習で行なうなら、『ポンポン話すための瞬間英作文 パターン・プラクティス』(ベレ出版)がおすすめです。共通テスト(英語リーディング)対策になる長文読解の正しい学習の仕方共通テスト対策(英語リーディング)に必要なのは、英文を読むスピードを上げること。そのためには、以下の3つのトレーニングが有効です。チャンクリーディングサイトトランスレーション音読 それぞれのトレーニングの概要や効果について、田畑さんにお話を伺いました。チャンクリーディングーー「チャンクリーディング」とはどのようなトレーニングですか。田畑さん:英文を意味のかたまり(チャンク)ごとに改行したものを読んでいくトレーニングを指します。基礎的な文法、語彙がわかっていても、読むのが遅くなる一番の原因は、英文に最後まで目を通してから訳し上げていく「返り読み」です。チャンクリーディングをすることで、複雑な文でも返り読みせず、頭から瞬時に理解できるようになっていきます。サイトトランスレーションーー「サイトトランスレーション」とはどのようなトレーニングですか。田畑さん:プロの通訳者も実践している、チャンクごとに瞬時に日本語で訳を言っていくトレーニングです。一文全体の訳ではなく、意味の切れ目であるチャンクごとに訳を言っていくということがポイントですね。みなさんは、きれいな訳をすることを目的にする必要はありません。あくまでも頭から理解する癖をつけるためのトレーニングですので、チャンクごとに意味がきちんととらえられていればOKです。これは次の「音読」につなげるためのトレーニングでもあります。知らない単語や、理解が不足している文法がないか、チャンクごとにチェックしていきましょう。音読ーー音読にはどのような効果がありますか。田畑さん:最も効果を発揮するのは、リーディングスピード向上です。チャンクごとに意味をイメージしながら繰り返し音読していくことで、英文を頭から瞬時に理解できるようになります。黙読するとき、私たちは脳内で音読していると言われています。目で見た文字を脳内で音声情報にいったん置き換え、音声化された情報を脳内の「辞書」と照合して意味を引き出しているのです。文字を実際に音に変換する音読を行なうことで、音声情報の置き換えに必要な脳内資源が減り、余った脳内資源を文章の「理解」に使えるため、書かれた英文の内容をスムーズに理解できるようになります。よって、正しく音読することで、リーディングスピードを効率よく上げられるのです。リーディングにおすすめの参考書・問題集ーーリーディングの学習におすすめの参考書や問題集は何かありますか。田畑さん:あらかじめチャンクごとに英文が改行までされているような教材はあまり多くないのですが、英文にスラッシュが入れられている教材は、かなりあります。そういったものを用いるとよいでしょう。かつ、音声がついているものを選んでください。あとは、自分のレベルにあったものを選ぶことですね。初見で概要もつかめないようなレベルのものは避けましょう。8〜9割は内容がわかり、少しだけ知らない表現などが含まれている、という程度が適切です。『キクタン リーディング』(アルク)のシリーズは、英文にスラッシュが入っており、レベルごとにいくつかテキストがあるので、おすすめです。共通テスト(英語リーディング)の必須スキルを効率よく鍛えるにはこれまで見てきたとおり、共通テスト(英語リーディング)はセンター試験と求められる能力が異なります。やみくもに単語や文法を丸暗記したり、問題演習したりするだけでは非効率的なのです。共通テストで必要なのは、勉強というよりはむしろ、リーディングスピードを鍛える「トレーニング」。今回ご紹介したトレーニングは、リーディングスピードを鍛えるのに効果的ですが、正しく継続して実践しないと期待通りの効果は得られません。そこで、共通テストに必要なリーディングのトレーニングを提供してくれる場が、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」から生まれた「ENGLISH COMPANY大学受験部」!「ENGLISH COMPANY大学受験部」では正しいトレーニングを通して、共通テストに必要な受験生の「リーディングスピード」を効率よく伸ばすことができます。「ENGLISH COMPANY大学受験部」は、ただリーディングスピードを伸ばすだけではありません。英語教育の専門家が、受験生に合ったリーディングの課題を発見する「課題発見」を、毎回のトレーニングで実施します。お子さんが抱えるリーディングの課題を直接的に解決するトレーニングを続けさせることで、共通テストに必要なリーディングスピードを身につけさせることが可能です。田畑さんは、「ENGLISH COMPANY大学受験部」でリーディング対策を行なうメリットを以下のように述べました。田畑さん:「リーディングがうまくできない」という現象も、その原因は人によって異なります。ENGLISH COMPANYのパーソナルトレーナーは言語習得のプロです。マンツーマンでみなさんの弱点を細かく分析し、あなたのいまの英語力において、どこが優先的に解決すべき部分なのかを特定し、それを解決するための効率的なトレーニングメニューを提案することができます。つまり、無駄の少ない学習を提案できるので、みなさんが同じ自習時間をかけても、その効果が何倍にも上がるということです。受験生のみなさんは他の教科の勉強にも時間を割く必要がありますよね。ですから、英語については極力短時間でスキルアップさせられるよう、みなさんの努力を最大限の効果に結びつけるお手伝いができると思います。「ENGLISH COMPANY大学受験部」で、受験生に必要な共通テスト(英語)の「リーディングスピード」を最短距離で伸ばしませんか。***共通テスト(英語リーディング)に必要なリーディングスピードは、受験生の課題に合った正しいトレーニングを継続することで、効率よく向上させられます。最終回である第3回は、共通テスト対策に向けた英語リスニングの正しい練習法をご紹介します。■ 大学入学共通テスト(英語)対策について インタビュー一覧第1回:大学入学共通テスト(英語)で新たに必要な対策とは第2回:共通テスト(英語)に必要なリーディング対策と効果的な練習法第3回:共通テスト(英語)に必要なリスニング対策と効果的な練習法(※近日公開)【プロフィール】田畑翔子(たばた・しょうこ)京都府出身。米国留学を経て、立命館大学言語教育情報研究科にて英語教育を専門に研究。言語教育情報学修士・TESOL(英語教育の国際資格)を保持。株式会社スタディーハッカー常務取締役、コンテンツ戦略企画部 部長(参考)独立行政法人大学入試センター|令和3年度大学入学共通テスト実施結果の概要
2021年06月04日2021年1月、大学入試センター試験に代わる新たな入学試験、大学入学共通テストが実施されました。英語の問題形式はセンター試験と大きく変わり、単語や文法の知識の詰め込みや丸暗記といった付け焼き刃の勉強は、もはや通用しません。また、ご自身が大学受験で学んできたテクニックを、そのまま子どもの受験勉強で応用できるとも限らないのです。将来、我が子が大学受験をする歳になったら、今後受験するであろう共通テストで、どのような入試対策をさせればよいかわからない、と不安になるかもしれませんね。そこで今回は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を運営する株式会社スタディーハッカー常務取締役で、言語教育情報学修士・TOEIC990点・TESOL(英語教育の国際資格)をもつ田畑翔子さんに、大学入学共通テストで必要な対策や、効率的な練習法についてお話を伺いました。田畑さんは、難関大・医学部専門予備校「烏丸学び舎」「学び舎東京」の教務部長として、数々の難関大合格者を輩出してきた実績があります。共通テストに関して誰もが気になる質問にズバッと答えてくれました。インタビューの様子を全3回にわたってお届けします。第1回のテーマは、大学入学共通テスト(英語)の変更点と、今後受験生に求められるテスト対策です。2021年度大学入学共通テスト(英語)の変更点まずは、2021年度大学入学共通テスト(英語)が旧センター試験とどう異なるのか見ていきましょう。配点旧センター試験の配点は、リーディング200点・リスニング50点。2021年度大学入学共通テストでは、リーディング100点・リスニング100点に配点が変更されました。リスニングの配点比率が高くなり、リスニング対策もおろそかにできなくなったと言えます。リーディング2021年度大学入学共通テストのリーディングは、すべてが読解問題。発音やアクセント、文法、語句整序問題の単独出題が廃止されました。旧センター試験で日本語だった指示文は、すべて英語に変更。各問題で何が求められているか、英語でしっかり理解できるスキルが受験生に求められます。リーディングの総語数は、前年のセンター試験から約1,000語以上増加(約4,200語→約5,500語)。試験時間は80分と変わらないため、英文をより速く読めるスキルが要求されます。また、SNS、ホームページ、プレゼンテーションといった、実践的なコミュニケーションを意識した場面設定が目立ちました。さらに、文章だけでなく図表やグラフなども多く含まれ、複数の情報の整理や比較ができるスキルも必要です。2021年度共通テスト(英語リーディング)の平均点は100点中58.80点で、前年(58.15点、100点満点換算)より微増という結果でした。リスニング2021年度大学入学共通テストのリスニングは、設問数が25問から37問に増加。問題ごとに2度英語の音声が流れた旧センター試験と異なり、共通テストでは1度しか音声が流れない問題が出題されました。2021年度では大問6問のうち、第3問から第6問が1度しか音声が流れない問題でしたが、試験を運営する大学入試センターによると、今後は全問が1度読みになる可能性があるとのことです。また、アメリカ英語やイギリス英語など多様な英語の聞き取りが必要になりました。さらに共通テストでは、複数人(2021年度は4人)の意見をまとめる問題が出題され、誰が何を述べているかを整理できるスキルが求められます。英文の聞き取りだけでなく、図表やグラフの情報と、聞き取った英文を照合して解答する問題も出題されました。2021年度共通テスト(英語リスニング)の平均点は100点中56.16点で、前年(57.56点、100点満点換算)より微減という結果です。このように、2021年度大学入学共通テストは旧センター試験と形式が大きく変わっています。今後は、共通テストに向けた別の対策が必要。ここからは、大学入学共通テスト(英語)の対策に関する、田畑さんとのインタビューの様子を見ていきましょう。今後の大学入学共通テスト(英語)に向けた対策とはリーディング——2021年度大学入学共通テストは旧センター試験と比べて、語数が大幅に増えましたね。語数の大幅な増加には、出題者のどのような意図があると思いますか。田畑さん:やはり、より実用的な英語のスキルが求められているのではないでしょうか。これは今年に始まったことでなく、センター試験においても年々、語数は増加傾向にありました。多くの情報を正確かつすばやく読み取り、必要な情報を得るという、実世界での英語運用能力がより意識されている結果なのではないかと思います。——リーディングでは文法や発音、語句整序問題が単独で出題されることがなくなりました。はたして文法対策は不要になったのでしょうか。田畑さん:発音・アクセント問題はなくなりましたが、そのぶんリスニングの配点が増えていますので、音声面の知識は今後もより重要になってくると思います。あとは文法や語法の問題が直接的に問われなくなったことで、「文法知識はもうそんなに必要ないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。必要な情報を正しく理解するためには、文法知識は重要です。たとえば、今回の共通テストでは過去完了が用いられた英文を正しく理解できないと、時系列が正しく把握できず、正答できないというような問題も出題されていました。過去完了などの時制の区別が苦手な受験生は結構多いですよね。あとは、「事実と主観的な意見を区別する」というような問題もいくつか出されていましたが、これを見分けるためには、助動詞の意味や使い方を正しく理解しておく必要があります。共通テストでも、文法の知識は求められていると言えると思います。——共通テストはすべてが読解問題になり、英文をより速く読むためのスキルが求められるようになりました。おおよそどれくらいのリーディングスピードが必要になるでしょうか。田畑さん:参考までに、ネイティブの黙読は平均300wpm(※1)程度と言われています。また、GTEC(※2)によりますと、日本人の高校生の読解スピードは平均で75wpmだそうです。まだ新たな共通テストを対象にした研究は多く見当たらないのですが、2001年から2007年のセンター試験を解答するために必要なwpmが、131wpmから188wpmという研究結果や、余裕をもってセンター試験を解き終わるための読解スピードとして120wpmが必要、という意見もあります。センター試験より語数が増えている共通テストの場合は、なおさらスピードが求められそうですね。また、共通テストのリスニングの読み上げスピードは、150wpm以上になっている部分もあるので、150wpmくらいを目指したいところでしょう。日本人の高校生の平均読解スピードから考えると、スピードアップがかなり必要です。英語を日本語に訳すことができる、といったようなスキルではなく、なるべく英語のまま情報をすばやく理解する、というスキルが求められます。※1wpm:1分間に読める単語数のこと。words per minuteの略。※2GTEC:株式会社ベネッセコーポレーションが実施している中高生対象の英語4技能検定。——分野としては、SNSやプレゼンテーションなど実践的なコミュニケーションを意識した問題が目立ちました。どういった対策が求められるでしょうか。田畑さん:多少問題の形式に変化はありますが、扱われるトピックや英語の表現については、センター試験と大きく変わるものではないので、これまでと同じく、基本的な語彙を増やし、文法を身につけること、そしてそういった知識をすばやく運用できるレベルにまでトレーニングをしておくことが重要だと思います。リスニング——センター試験では、すべて2度英文が読まれたリスニング。共通テストでは、半数以上の問題の英文が1度しか読まれなくなりました。1度読みの問題が出題されるようになったのは、なぜだと思いますか。田畑さん:もともと、共通テストの英語試験は大学入試改革における英語入試の4技能化の流れのなかで、完全に民間試験に置き換わるまでの移行措置でつくられたという経緯があると思います(結局民間試験の導入は立ち消えになりましたが)。英検も準2級からはすべて1回読みですし、TOEICもそうですし、民間試験のより実用的な運用に近づけたのではないか、と推測しています。——共通テストではアメリカ英語やイギリス英語など、さまざまな英語が登場しました。多様な英語のアクセントを聞き取るためには、どのような対策が必要でしょうか。田畑さん:まずは、アメリカ英語の発音を聞き取れるようにするところからスタートするのがよいでしょう。これまで、日本の学校教育で取り入れられてきた英語の多くはアメリカ英語ですし、英検などもそうですよね。ですので、聞き馴染みがある人が多いでしょうし、教材も学校の教科書(音声つきのもの)含め豊富にアクセスできるのではないでしょうか。実際の共通テストでも、イギリス英語や日本人英語などの英語が混ざってはいたものの、大半はアメリカ英語の発音でした。学習方法としては、音声つきの教材を使って、正しい発音でリピートしたり、シャドーイングをしたりすることです。あとは、ディクテーションという聞き取った英語を書き取るトレーニングも有効です。書き出すことで、自分がどういったところが聞き取れないのかをあぶり出すことができ、学習が効率化できます。もちろん、どこが聞き取れていないか、答え合わせをするだけで終えてしまっては意味がありません。聞こえなかった部分をスクリプトで確認したら、音声を聞き直し、正しい発音をインプットしましょう。自分でも正しく言えるようになるまで発音練習を繰り返すことで、聞き取れる音が増えていきます。このようにしてまずはリスニング力の素地をつくったうえで、イギリス英語など他の英語へ慣れる練習も行なっていけばよいと思います。——共通テストでは発話内容がそのまま答えに直結する問題が減りましたね。内容を聞き取るだけでなく、話者の意図や状況までを読み取る力も必要になりましたが、こうした力はどのように対策すると身につくでしょうか。田畑さん:もちろん、意図や状況を読み取るためには細かい英語の表現やニュアンスを理解できないといけませんし、そのための語彙や文法知識は必須です。ただ、そういった知識があるだけでは、実際のリスニングテストにおいて余裕をもって解答できないということが、往々にして起こります。これは、リスニングスキルをいかに自動化(※3)するか、ということに尽きるかと思います。リスニングをする際の脳内の処理プロセスを考えてみましょう。まず、耳から音声情報が入ってきますね。その後、脳内では「音声知覚」という処理が行なわれます。簡単に言うと音声を認識して、そこから単語を割り出せるということです。このあと、「理解」の処理に移ります。ここでは文法の知識や、語彙の意味の知識、背景知識など、自分がもっている知識と照らし合わせて内容を理解したり、文脈を把握したりします。この「音声知覚」→「理解」の処理がスムーズにいかないとリスニングがうまくいきません。英語が母語ではない私たちは、最初の「音声知覚」の部分でつまづいたり、かろうじて聞き取れたとしてもそこで脳のワーキングメモリの多くを消費したりしてしまう、ということが起こります。そうなると、その後ろの「理解」の処理に回す余力がなくなり、内容の把握が追いつかなくなる、ということが起こるのですね。瞬時に話者の意図や状況までを読み取るためには、いかに最初の音声知覚の負荷を下げ、自動化していくかということが鍵になってきます。※3自動化:頭のなかで考えなくてもすぐにできる状態のこと。大学入学共通テスト(英語)の点数を効率よく上げるには出題形式が大きく変わった大学入学共通テスト(英語)。これからは、共通テストに向けた早めの対策が必要になっていきます。点数を上げる最も効率的な手段は、受験生が英語のどの部分に課題を抱えているかを知ること。なおかつ、課題解決のための「正しいトレーニング」を継続することが重要です。英語教育の専門家による「課題発見」と、受験生の課題に応じた「正しいトレーニング」を提供する場所が、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」より誕生します。その名も「ENGLISH COMPANY大学受験部」!大学受験マーケット初の「短期集中×コーチング」スクールとして、効率のよい共通テスト(英語)のスコアアップに貢献します。——「ENGLISH COMPANY大学受験部」を新設することになった背景を教えてください。田畑さん:スタディーハッカーはもともと大学受験予備校として創業しています。2010年の創業当初から、大学入試はより実用的なスキルをはかるものになっていくと考え、指導法やカリキュラムを構築し、実際にたくさんの生徒の英語力を短期間で大幅に上げ、受験での実績も上げてきました。ですので、そもそも大学受験予備校で培ってきたノウハウがあります。また、2015年には「ENGLISH COMPANY」という社会人向けの英語のパーソナルトレーニングサービスを立ち上げ、これまでにおよそ14,000名の方にご受講いただいています。ここでメソッドをさらにブラッシュアップさせ、さらに個々の受講生の弱点を把握するためのアセスメントの精度やコーチングのスキルを高めてきました。この経験を活かし、さらに多くの受講生に、ぜひ私たちの科学的なトレーニングの効果を実感してもらいたい、という思いで、「ENGLISH COMPANY大学受験部」を新設しました。また、英語教育や第二言語習得研究を大学・大学院で研究してきた者や、高校などで大学受験指導の経験がある者など、専門性が高い人材が格段に増えていることも大きな強みであると考えています。コンテンツ開発や実際の指導にも、そういった人材が活躍してくれています。——「ENGLISH COMPANY大学受験部」が目指すゴールはなんでしょうか。田畑さん:私たちスタディーハッカーの理念はStudy Smart.「合理的にスマートに学ぶ」ということです。英語学習を、より科学的・合理的に行なうことで、時短になり、そのぶん他の教科の学習に割く時間を増やすことができます。みなさんの努力を無駄にしないために、受験までの貴重な時間を有効に使うために、Study Smartの考え方を実践してもらいたい。そしてそれが、その先の学びの助けになればと思っています。「ENGLISH COMPANY大学受験部」の詳細は、こちらをクリックしてみてください。「ENGLISH COMPANY大学受験部」で、大学入学共通テストに必要な英語のスキルを効率よく上げるヒントが見つかるはずです。***今後の大学入学共通テスト(英語)では、リーディングスピードとリスニングスキルの向上が必要だとわかりました。次の第2回では、共通テストに向けたリーディングの効率的な練習法についてご紹介します。【プロフィール】田畑翔子(たばた・しょうこ)京都府出身。米国留学を経て、立命館大学言語教育情報研究科にて英語教育を専門に研究。言語教育情報学修士・TESOL(英語教育の国際資格)を保持。株式会社スタディーハッカー常務取締役、コンテンツ戦略企画部 部長(参考)高校生新聞オンライン|【早わかりQ&A】大学入学共通テストはセンター試験から何が変わる?独立行政法人大学入試センター|令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針
2021年05月28日“自分らしい人生を描くライフプラン”実践するコンサルタント2名をご紹介Upload By LITALICOライフ(写真・左)大手教育関連企業に入社後、会社の経営に従事しつつ、地域に根付いたサービス提供を推進。中学から大学までの入試全般から、普段の学習方法や不登校等々多くのご相談を経験。現在は、進路選択から習い事へのアドバイスや教育費の備え方など広く相談を実施している。(写真・右)中学時代にいじめに遭ったこと・障害のある家族がいることから「人と人/人と環境の境目にある壁をこわすこと」を軸にする。当事者の家族であることから、家族の心のケアや障害年金、また「よくわかる高校受験」勉強会の開発者でもあり、入試全般、不登校問題の相談経験も豊富。LITALICOライフの面談はどのようなことをする?LITALICOライフ編集部(以下、ーーー):お二人は、発達障害・特性のある子のご家庭と日々ライフプラン面談をしています。面談ではどのようなことをするのでしょうか?加藤晋太郎さん(以下、加藤):ご家庭の多くは、子どもや家族の将来について「もっと良くなりたい」という気持ちがあります。そのお手伝いです。髙橋基さん(以下、髙橋):発達特性のある子は、進路や自立後の情報が手に入りにくいですよね。我々は情報を持っているので、整理しながら「どうありたいか」「どうすればそれが実現できるか」を一緒に考えます。よくある相談内容は?意外に多い「何からすればいいのかわからない」Upload By LITALICOライフーーご家庭からはどのようなご相談が多いですか?加藤:「行ける高校はあるか」「将来就けそうな仕事はあるか」など…ご家庭によってさまざまです。「何から考えたらいいかわからない」という方も意外に多いですね。髙橋:多いですね。ーー「相談内容がわからない」ケースもあるのですね。加藤:「何かを変えたい」と思いながらも、整理する時間が日常でとれないのだと思います。髙橋:面談は、そういった保護者さま自身の幸せや「実現したいこと」を再認識していく場でもあります。自分の願いを見つけるコツは「普通」「他の人と同じに」を一度忘れることーー保護者さま自身の「実現したいこと」は、どのように整理・再認識していくのでしょうか?加藤:例えば子どもの進路や趣味探しであれば、保護者さまは、子どもの特性や性格をよく知っています。それらを言葉にして整理していくだけでも、「実はこれが向いているかも」「一度挑戦してもいいかも」と見えてくることがよくあります。髙橋:保護者さま自身のことであれば、例えば「どうやったらうちの子は大学に行けますか」という質問もよく受けます。加藤:受けますね。髙橋:その場合、「なぜ大学に行って欲しいのか」「保護者さまにとって大学とは何か」と会話していくと、中には「やっぱり価値のあるものだから行って欲しい」という方もいれば、「よく考えたら行かなくてもいい」という方もいます。ーー会話していくなかで、考えが変わることがあるんですね!加藤:変わることもありますし、自分でも気づいていなかった価値観が見つかることがありますよ。髙橋:「わたし、こんなこと思っていたんですね」って言われますよね。加藤:「普通にしなきゃ」「他の人と同じにしなきゃ」と感じることがあると思いますが、世の中変化しています。例えば、コロナによってオンラインの活用など、学びのかたちも変わってきていますよね。最終的には自分たちの「こうしたい」という気持ちが大切だと思います。進路選択や相続。一般的に「良い」と言われていることも、詳しく知ると…?Upload By LITALICOライフ髙橋:「情報を正しく知る」のは重要ですよね。加藤:重要ですね。例えば「通信制高校が良いらしい」という情報があったとして…髙橋:卒業率や大学進学率、実際のカリキュラムなどを見てみると、相性の良い子と悪い子がいます。ーー通信制高校は今、注目されていますよね。子どもによって相性があるのでしょうか?加藤:はい。授業の受け方や、同世代とのコミュニケーションは独特な部分があります。「良い」と言われていても、合うかどうかはお子さま次第です。髙橋:面談で、人生にまつわる先の話をしていくと、相続の話にもよくなりますよね。ーー相続というと、親なきあとのお金のことでしょうか。お金持ちのご家庭が気にされそうですね。髙橋:お金のあるなしは、あまり関係ないかもしれません。人の別れは、避けては通れないものですから。加藤:保護者の方は「今」がとても忙しいので、考える機会がない方が多いと思います。面談では、将来や、保護者の方の家族の話になることもあります。すると「意外に時間がない」「突然のことで困る事態は避けたい」という気持ちになる方は少なくないですね。ーー相続というと専門的な印象がありますが、そういったことも相談できるんですね!髙橋:そこが私たちの強みです。現実的な家族関係やお金の問題をクリアしたうえで、「実現したい」ことに向き合いたいですからね。加藤:相続に関しても「子どもにお金を託しても管理できないから遺さないほうがいい」という意見もあります。でも、遺し方はいろいろあります。他の人に託したり、月々一定額届くようにしたり、一部の金額だけ渡したり。髙橋:その子が一人っ子ではない場合は、きょうだいのことも大事ですね。ーー将来のこと、きょうだいのこと、自分の親やお金のこと…。いろいろなことを繋げて相談できるんですね。加藤:相続や法律についても私たちは情報があるので、保護者さまは「どうありたいか」集中して考えられると思います。面談は「自分の意志で人生を描きたいと感じられる」「保護者さま自身の幸せを考える」場Upload By LITALICOライフーー最後に、保護者さまにとって面談がどういう場であってほしいか、教えてください。髙橋:保護者さまは、子どものことをすごくよく考えていらっしゃいます。だからこそ、あえて「今はあなた自身の幸せを考える場です」とお伝えしています。守りたいことや起きてほしくないことを整理して、自分たちにとっての形を追求することを、私は手伝いたいです。加藤:人生の時間は有限だと、私自身よく感じます。これからの数十年を俯瞰すると、自分ができることには物理的に限りがあります。生きているなかで何をしたいのかは、人や家庭によってさまざまです。「自分の意志で人生を描きたい」と感じられる、価値のある場にしたいと思っています。ーーありがとうございました。加藤晋太郎さんのプロフィール・無料勉強会はこちら髙橋基さんのプロフィール・無料勉強会はこちらLITALICOライフでは、発達障害のある子のご家庭と日々、「進路」や「将来」といったライフプラン(人生設計)について相談・面談をしています。14以上のテーマの無料勉強会を開催していますので、気になる方は参加してみてください。勉強会のあとに、個別の無料面談を希望することができます。LITALICOライフは、誰もが「自分らしい人生」を歩んでいけるよう、さまざまな興味・課題に合わせた情報提供や個別相談を通じて、そのひとりに合わせたライフプランニング(人生設計)をサポートしています。無料勉強会では、就学準備、地域ごとの進路情報、通級、支援級、グレーゾーンの子、不登校の子、親なきあと、私立中学受験まで、幅広く家族のための情報提供をしています。
2021年04月29日発達障害・感覚過敏のある子は、電車通学のハードルが高過ぎる件出典 : こんにちは。『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』他、著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。今回のコラムは、通学電車にまつわるお話を…。発達障害&グレーゾーンの子や、感覚過敏のある子は、電車通学…特に満員電車での負担がとても大きいでしょう。なぜなら、・感覚過敏のある子の身体接触等の苦手さ問題・ADHDのある子のうっかり忘れ問題・ASDのある子の予測不能な事態でのパニック問題…などがあるために、ハードルが特に高いのです。これらの問題は、決して大げさではなくて、せっかく受験で希望の学校に合格しても、「通学電車の負担が大きすぎて、不登校になったり、自主退学や転校を考える生徒さんもいる」と聞くほど。(実はうちのパパも若いころ、電車通勤の負担から大企業を辞めて、研究の道に入り直した人なのです)ですから、うちの長男・次男の中学受験では、最初の学校選びの段階で本人と相談しながら、例えどんなに素晴らしい学校でも、通学に1時間以上かかる学校や、複雑な乗り換えや混雑路線を使わざるを得ない学校などは、予め志望校リストから除外してしまいました。そして無事、長男・次男共に、ドア・ツー・ドアで1時間以内・乗り換え1回の私立中高一貫校に入学できたものの、小学校を卒業したばかりの当時若干12歳で、満員電車での通学に挑まなくてはなりませんでした。そこで、うちで親子で行ってきたさまざまな工夫や対策など、通学電車にまつわる諸問題の乗り越え方を、新型コロナの影響下での通学状況の変化も踏まえつつ、ご紹介していきますね。電車の使い方と身体接触に徐々に慣らす!出典 : うちでは、まず、「電車自体に慣れる」ところから、スタート。それまで、うちは地方在住なので普段の移動は車か自転車中心で、電車は年に1度の祖父母宅への新幹線での帰省程度でしたから。そこで、小学生の受験勉強時代から、学校見学や体験授業参加の際には、「実際の通学ルート」を使うことに。そして、本人用の交通系ICカードをつくり、券売機でのチャージの仕方、基本的なマナーなど、”いろはのい”から時間をかけて教えました。基本に慣れたら、次は、時間の余裕があるときに、トラブル時などを想定して、ワザと降車駅を乗り越してみたり、途中駅でトイレを借りたり、別の路線で遠回りして帰ってみたりも…。この際、「こういう時、どうすればいいと思う?」などの声かけで、なるべく本人が自分で判断できるようにして、それでも難しいときには、「駅員さんに聞いてみようか」「この場合は、こうすればいいんだよ」など、具体的に”困ったときには、どうすればいいか”を教えました。こうして、受験シーズンくらいには、電車にかなり慣れたので、「今日は〇太郎についていくから、かあちゃんを〇〇中学まで連れてって」と、(多少間違っても)なるべく手出し口出しせずに、見守るようにしました。出典 : そして、最後の難関、朝の通学時間帯の満員電車!志望校の合格後、長男と試しに朝のラッシュ時に一緒に電車に乗ると、今までとは別次元の混雑ぶり。身体接触が苦手な長男は「人が多すぎて、乗換駅で降りられない!!」「押されてどこにも掴まれない…」「いろんな匂いでキモチワルイ」とパニック寸前の涙目に。やはり、かなりハードルが高かったようです。そこで、本人と作戦会議をし、「満員電車よりも早起きのほうがマシ!」という結論に…。学校に門が開く時刻を聞き、朝は一番乗りで登校することにしました。ピーク時よりはかなりマシですが、それでも結構混んでいるので、入学後の最初の一週間ほどは、私も一緒に電車に乗って、「今日は一駅手前まで」「今日は乗換駅まで」と、様子を見ながら日毎に付き添う距離を短くしていき、最後は最寄り駅から見送るだけに。つまり、うちでは、親は「ステップを踏んで徐々に慣らし、だんだんと手を離す」ことで、子は「それでも無理なことは、人に相談し、できる工夫する」ことで、なんとかしました。ちなみに、3年後の今では、長男も混雑に慣れ、登校時間もずるずると遅くなってきましたが、「コロナのことで、ピーク時も多少人が減ってる気がする」とのこと(確かに、近隣地域ではマイカー・自転車通勤も増えています)。マスク着用の上、車内の換気もされているので、匂いへの負担も減ったよう。また、学校側も感染が拡大している時期は、オンライン授業や分散登校など、柔軟に対応してくれるので、潔癖で心配性の次男もホッとしている様子です。うっかり忘れの自覚と、持ち物の工夫と習慣化Upload By 楽々かあさん身体接触の次に懸念されたのは、うっかり屋の長男の電車での「忘れ物・落とし物」と、降車駅での「乗り過ごし」問題です。そこで、長男の通学用のリュックは、図のようになりました。元々、「よくなくすものには、ヒモをつける!」が、うちの忘れ物対策の鉄則。特に、定期とスマホと財布と家の鍵などの大事なモノは、フックのついたスプリング式のコード(通称「びょんびょん」。100円ショップのキーホルダーコーナー等で入手可能)をまとめ買いし、それぞれつけるように習慣化(※フックがかからない箇所は、カラビナやリング、バッグのタグなどと組み合わせる)。たったこれだけで、長男は今までスマホも定期も、一度も落としたことはありません(「びょんびょん」だらけで、年頃の子には少々カッコ悪いかもしれませんが、背に腹は変えられません!)また、今では長男も"自分はよく忘れる"自覚があるので、電車を降りるときには、座っていた座席を目視したり、制服やリュックのポケットなどを手触りで毎回ポンポンと確認したりする習慣をつけているのだそう。出典 : そして、「乗り過ごし」対策も、あまりに当たり前のようですが、長男自身が「自分で、気をつける!」ことで、対処しました。ここで大事なのは「どうすれば、気をつけられるか」を、具体的に考えることです。長男は、"自分がかなりうっかりしている"ことも十分自覚しているので、例えば、通学中にスマホで好きなサイトや動画を見ていると、つい、目的地の駅で降り忘れてしまうことをよ〜く知っています(実際、何度かやらかしました)。そこで、シンプルですが、学校の最寄り駅の数駅手前の大きな駅で、人が沢山乗り降りするので、「その駅になったら、スマホをやめて、アナウンスを聞く」ように習慣化しているそうです(これだと、視覚・聴覚を使っていても気づくとのこと)。スマホの乗り換え案内系のアプリにも、位置情報から降車駅が近づいたら通知やバイブレーション機能で知らせてくれるものもあるので、長男と似たようなお子さんは、自分が気づきやすく習慣化しやすい方法を見つけるといいでしょう。また、親の私のほうは、最初のころは位置情報アプリなどを使って、学校に無事到着したり、設定した範囲から長男が出たら通知が届くようにしたりもしました。ここでの大事なポイントは、自分(我が子)の特徴を自覚して工夫し、それを「習慣化する」ことだと思います。不測の事態には、事前知識と「こうすれば、大丈夫」という対処法!出典 : そして、「いつもと違うこと」「予測不能なこと」が苦手な子は、"電車が予定通り動かない”ことなどに遭遇すると、強い不安やストレスを感じたり、場合によってはパニックに陥ることもあるでしょう。でも、ご存知のように、電車の運行は、事故や故障などの他、急なゲリラ豪雨や、大雪、台風、地震などの気象条件や自然災害などによっても、突然止まったり、ダイヤが乱れたりすることがあります。うちではまず、「電車には、こういう可能性もある」と、予め、一緒に電車に乗っているときや、テレビのニュースなどを見ながら話し、さまざまなケースを”知識として”教えました。事前知識が少しでもあれば、実際にアクシデントが起こったときの衝撃がかなり違いますから。そして、前出の「通学リュック図」にあるように…・財布の中に非常用の千円札と保険証のコピー、自宅の連絡先・サバイバルセット(応急手当、ビニール袋、非常用トイレ、他)・晴雨兼用折りたたみ傘・頓服薬(頭痛・腹痛用など)…などを、常時入れっぱなしで「もしも」に備えています。それに加えて、特に役立った"不測の事態"への対策は、長男自身による「防災訓練」でした。出典 : 実は長男は、小さなころから「地震怖すぎる」等と、自然災害に対する恐怖心が人一倍強かったことで、逆に知識が豊富になり、日頃から防災意識が高く、何かと災害対策を実践するようになりました。その一環で、中1のあるときに、地震などで帰宅困難になったときを想定して、「おれ、1回、学校から家まで歩いて帰ってみる!」と言いだし、午前授業だけの日の帰りに、3時間ほどかけて徒歩帰宅しました(以来、年1度くらい、徒歩帰宅しています)。これで、「もし電車が止まっても、歩いて帰ればいい」と実感でき、かなり安心できたようです。そして実際に、この経験が大活躍しました。昨年の春のコロナ休校明けに、次男がようやく中学初登校できた日のこと。なんと、帰りの電車が、突然のトラブルで急に全線ストップしてしまいました。学校の最寄駅付近で、周囲が大混乱の中、合流して私に電話をかけてきた長男と次男によれば、「タクシー乗り場はすでに長蛇の列で無理そう」とのこと。でも、私が「もうすぐ長女が小学校から帰ってくるから、スグには車で迎えに行けない」と伝えると、「じゃあ、歩いて帰るか、〇次郎!おれ、道分かるから、大丈夫〜」と、長男は慌てず騒がず、次男と一緒に歩き出しました(乗換駅から復旧していたので、そこから通常ルートで帰宅)。やがて、「ただいま〜」と、ぐったり次男と共に、ケロリとした顔で無事帰宅した長男を見て、「あの〇太郎が、随分パニックに強くなったなあ」と、私は彼の成長を頼もしく感じました(ちなみに、現在は「痴漢冤罪怖すぎる」と、ネットで誤解されない対処法を検索しまくっています)。予測不能な事態も、事前の知識と、「こうすれば、大丈夫」という対処法が分かっていれば、案外落ち着ける場合も多いのではないでしょうか。多様な通勤通学方法の普及で、下がるハードルも…出典 : 現在、新型コロナウイルスによる影響が長期化する中で、発達障害&グレーゾーンや、感覚過敏のあるお子さんは特に、学校・日常生活の中での負担や不安・ストレスを感じる場面も多いことでしょう。その一方で、テレワークやオンライン授業の推進、通勤通学時間の分散化、マイカー通勤や徒歩・自転車通学の増加などによって、多様な通勤・通学方法が社会全体で模索される中で、高かった電車通学のハードルが多少下がってきた部分もあるように思います。これを機に、多様な子どもたちの通学の負担が少しでも減って、本来の学校生活に集中できるように願っています。大場美鈴(著),『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』あさ出版, 2020.6.27
2021年04月20日4月といえば・・・入学式。入学式といえば、いつも思い出すことがあります。それは、中学の入学式当日の話。私は、中学生になることが小学生のころからとても楽しみでした。■中学の入学式当日にウキウキしていたら、いたずら好きな男子に…!? 当時、私の住んでいた地区では、二つの小学校が、一つの中学に集まるため、人間関係も新しくなります。入学式当日も、新しい友だちができることが楽しみで、ウキウキしていました。式が終わった後、新しい教室に入り、先生が来るまでの時間、同じ小学校出身の子たちと、ベランダで話していると、同じ小学校出身の男子に、ベランダのカギを閉められてしまいました。その男子は、いたずら好きで、私はこの子がとても嫌いでした。人の嫌がることをして、ニヤニヤする姿を見ていると、私の中で怒りがこみ上げ、私は唯一、開いていた窓から教室の中へ入り、その男子に、やめるようにいいました。すると、その男子は、「うるせぇ!」といい、つかみかかってきました。その瞬間、私の正義感のようなものに火がつきました。中学一年生だと、身長は女子より男子の方が小さく、その男子も私より小さかったため、私は「勝てる!」と思いました。(若気の至りです…) ■入学早々“ブラックリスト入り”と言われてしまうことに!私もつかみかかり、最後はお互いの髪を引っ張り合う格闘になりました。結局、チャイムが鳴り、先生が入ってきたところで、止められました。先生から、入学早々ブラックリスト入りと言われてしまい、ふと周りを見ると、ドン引きしているクラスメイト。私は、「やってしまった…」と、とても後悔しました。新しい友だち関係を築こうにも、第一印象は最悪です。その上、先生にも目をつけられる始末。最悪な中学生活のスタートとなりました。その後、女友だちはたくさんできましたが、男子からはしばらくの間、「男とマジ喧嘩しておそろしい女」と、ウワサされました。もしかしたら、当時の同級生は、この出来事を覚えていないかもしれませんが、私にとっては、忘れられない入学式。今では、笑い話ですけどね(笑)
2021年04月01日「子どもに集中力がなくて困っている」「授業参観で、うちの子だけキョロキョロしていた」など、お子さまの集中力が気になっている親御さんは少なくないでしょう。首都圏トップクラスの難関校合格率を誇る進学塾VAMOS代表・富永雄輔氏も、「いまの子どもたちの集中力は、かつての子どもより低下している」と指摘しています。では、どうすれば子どもの集中力を高めることができるのか。今回は、集中力と体力の関係性を考えてみましょう。現代っ子に集中力がないのは運動不足だから!?どうやら、現代の子どもたちの集中力が低下しているのは事実なようです。子ども発達学が専門の医学博士・春日晃章氏(岐阜大学教授)によると、授業中にボーっとしてしまう子や、勉強に身が入っていない様子の子が、昔と比べて増えているとのこと。なぜ現代っ子の集中力が落ちてきているのか――春日氏は、集中力と体力の関係性に注目しています。春日氏が行なった調査では、「運動遊びやスポーツ遊びをたくさんして、体力を高めている子ほど集中力が高い」ことがわかりました。机の前にじっと座ってひたすら勉強するよりも、運動遊びをしたほうが集中力が養われるらしいのです。しかし残念ながら、スポーツ庁が発表した令和元年度の「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」によると、子どもたちの体力は前年度よりも低下しています。特に小学生男子にいたっては平成20年度から続く調査のなかでも過去最低の数値でした。春日氏の言うように、体力と集中力に相関関係があるのであれば、現代の子どもたちの集中力が低下しているのも仕方のないことなのかもしれません。体力がある子どもは、集中力も高かった!『子どもを勉強好きにする20の方法』著者であり、塾講師として3,000人以上を指導をしてきた、教育・受験指導専門家の西村創氏も、中学受験で最後に伸びる子の特徴として「体力があること」を挙げています。勉強だけに専念してきた子は、長丁場の授業に耐えられずぐったりしてしまうのに、スポーツやキッズダンスなどで体を鍛えてきた子たちは、桁違いの集中力を長時間発揮するのだそう。次に科学的なデータを見てみましょう。ノーベル賞決定機関「カロリンスカ研究所」で研究を重ねた精神科医、アンダース・ハンセン氏の著書『一流の頭脳』によると、以下のことがわかっているようです。アメリカの小学生250名(3年生、5年生)を対象にした調査では、「体力のある生徒たちは、学業においても優れている」ことが判明した。しかも、体力的に優れていればいるほど、算数と読解の試験の得点が高かった。アメリカ・ネブラスカ州で行なわれた10000名に近い子どもたちへの調査でも、「体力的に優れた子どもは、体力のない子どもより、算数や英語の試験の得点が高かった」という結果が出た。また試験内容が難しくなるにつれ、体力的に優れた子どもとそうでない子どもの点数の差は開き、体力のある子どもが大差で上回った。 このふたつの研究結果は、「集中力と体力」ではなく「得点と体力」の関係を検証しています。しかしハンセン氏は著書のなかで、記憶力と集中力が向上することによって学習内容の定着率が上がると述べているので、「体力がある子の集中力は高い」と言えるのではないでしょうか。運動後30分~3時間は「超集中状態」に入りやすい「体力がある子の集中力は高い」ということは、体力のないうちの子は「集中力がない&テストの点数も悪いまま」ではないか!そう絶望したのは、筆者だけではないはずです。でもご安心ください。『脳を鍛えるには運動しかない!』著者でハーバード大学医学部准教授のジョン・J・レイティ氏は、集中力は運動で高めることが可能だと断言しています。なんと、思考力や集中力は、運動後に飛躍的に高まるらしいのです。ではなぜ運動後に集中力が高まるのか――それは、運動によって脳内の集中物質であるドーパミンの分泌量が増えるから。運動を終えた数分後に(ドーパミンの)分泌量が上がり、数時間はその状態が続く。そのため運動後には感覚が研ぎ澄まされ、集中力が高まり、心が穏やかになる。頭のなかがすっきりして、物事に難なく集中できるようになる。(引用元:アンダース・ハンセン 著, 御舩由美子 訳(2018),『一流の頭脳』, サンマーク出版.)※()内の説明は編集部が施したちなみに運動後の集中力について、ハンセン氏は「効果は1時間から数時間続いたのち、少しずつ薄れていく」としており、メンタリストのDaiGo氏は「運動後の30分~3時間は超集中状態に入りやすい」と話しています。どちらにしても、運動が集中力を高めることについては間違いないでしょう。しかもハンセン氏によると、運動は集中力だけでなく、注意力や記憶力、決断力など、ほぼすべての認知機能を高めるのだそう。子どもだけでなく、われわれ大人も勉強や仕事の前に運動を取り入れなければいけないという気持ちになりますね。集中力を上げる、3つの運動最後に集中力を上げるための運動を3つご紹介しましょう。ドーパミンの分泌を促すには、心拍数を上げる有酸素運動が効果的です。最初は苦しいかもしれませんが、運動を定期的に数ヶ月続けることで効果が出てきます。なぜならば、脳は徐々にドーパミンの量を増やしていくからです。頑張って運動を続けることで、集中できる時間もどんどん長くなりますよ。【ジョギング】5分間10代の子どもたちが12分間ジョギングしたところ、「集中力の高い状態が1時間近く続き、読解力が向上した」との調査結果があります。しかし、運動に慣れていないお子さまの場合、12分のジョギングというのはハードルが高いかもしれません。最初は、5分程度のジョギングから始めてみて、徐々に時間を伸ばしていきましょう。「たった4分の運動を一度するだけでも集中力が改善され、10歳の子どもが気を散らすことなく物事に取り組めた」という報告もありますので、5分間のジョギングで十分に効果はあるはずです。【縄跳び】4分間ジョギングに並ぶ有酸素運動といえば「縄跳び」。集中力を高めるポイントは「心拍数を増やすこと」なので、お子さまが得意な跳び方であれば、前跳びでも二重跳びでもどんな跳び方でもかまいません。ですが、苦しいからと息が切れる前にやめてしまうのはNG。体への負荷が大きいほどドーパミンの分泌量が増えるので、お子さんの様子を見ながら、「あと〇回だけ跳んでみよう」などの声かけをしてあげてください。引っかかってしまっても気にせずに、4分間は跳び続けましょう。お父さんお母さんも、ぜひお子さまとご一緒に!【だるまさんがころんだ】前出のレイティ氏の理論をもとにした運動プログラム「boks(ボックス)」の「だるまさんがころんだ」は、参加した全員が自然に全力を出せる運動です。遊び方は以下のとおり。「だるまさんがころんだ」と鬼が言っているあいだに、鬼に向かって全力疾走「だるまさんがころんだ」と鬼が言い終わる前に、床に伏せる。鬼が振り向いたときに、床に伏せている状態であればセーフ「だるまさんがころんだ」と鬼が言っているあいだに、さっと起き上がって全力疾走「だるまさんがころんだ」と鬼が言い終わる前に、床に伏せる鬼にタッチできたら勝ち。動いてしまったり、床に伏せられなかったりした場合は、スタート地点から再スタート1~5を繰り返す このちょっと変わった「だるまさんがころんだ」の運動量はかなりのもの。芝生のある公園や家のなかなどで遊んでみてくださいね。そしてもうひとつ、重要なことをお伝えします。それは、できれば「朝」に運動をするのが望ましいということ。もちろん、夕方や夜に運動をしても集中力は高まるでしょう。しかし、脳が最もフレッシュなのは朝です。諸説ありますが「朝の1時間は夜の3時間に匹敵する」と言われているのをご存じですか?そのゴールデンタイムに運動をしたら……お子さまの集中力は飛躍的に高まるかもしれませんよ!***「運動は集中力の改善にすぐれた効き目を発揮する、副作用のまったくない薬だ」とハンセン氏。その言葉を信じて、筆者も土曜日午前中に縄跳びを4分、日曜日の朝に10分のジョギングをしてみました。感想としては、スピードを自分でコントロールできるジョギングよりも、縄跳びのほうがつらかったです。しかし両日とも、疲れてソファに沈み込むことはありませんでした。集中力が上がったかどうかは不明ですが、頭がすっきりして、たまりにたまった家事がはかどったことは事実です。毎日の運動はなかなか難しいので、週に数回でも5~10分の運動を続けてみようと思います。ハンセン氏も「すぐに集中力が改善されなかったからといって、諦めてはいけない」と言っていますからね。(参考)アンダース・ハンセン 著, 御舩由美子 訳(2018),『一流の頭脳』, サンマーク出版.STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「ゲームや漫画は禁止!」が、子どもの“集中力の育ち”を阻害する理由岐阜大学|運動遊びは子どもの集中力を向上させる!スポーツ庁|令和元年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果allabout|中学受験で「最後に伸びる子」と「成績が上がらない子」の違いとは?プレジデントオンライン|脳細胞が増える運動「3つの条件」まいにちdoda|メンタリストDaiGoが解き明かす「超集中力」! 没頭状態を作り出せれば人生は劇的に変わる東洋経済オンライン|子どもの学力と体力の知られざる深い関係西薗一也 監修, 竜田麻衣 イラスト(2015),『うんどうの絵本 なわとび』, あかね書房.
2021年04月01日今はサッカー部でレギュラーだけど、小学校の時はサブだったので親の方が力をいれてしまい過干渉だったからか、年齢の割に幼い息子。14歳まで家族と一緒の部屋で寝ていた。思春期だけど反抗もなく学校のこともよく話してくれる素直で真面目な子。自分で考えて試行錯誤してほしいけど、受験の年に失敗している時間はないと悩む。心配性で過干渉な母にアドバイスが欲しい、とのご相談をいただきました。思春期を迎えたサッカー少年へどう接するか、今から思案している保護者の方も少なくないですよね。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、15年以上の取材で得た知見をもとにアドバイスを送ります。一つの参考にしてください。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<強豪チームに誘われたものの移籍をためらう息子の背中を押したい問題<サッカーママからのご相談>サカイクの対象年齢は小学生の子の保護者なので、対象年齢外ですみません。過保護かもしれませんが中学生の息子についてご相談させてください。息子は今中2(14歳)です。小学2年生からサッカーを始めて中学でもサッカーを続けています。部活ではレギュラーになり楽しくサッカーをしていますが小学校の時はサブでしたので、何とか息子の活躍する姿を見たくて親の方が力を入れてしまいました。今から考えると過干渉な親だったと思いますし、もっと楽しく自由にしてあげれば良かったと感じています。中学からはサッカーについても宿題や勉強についても一切口出しせず、本人に任せましたが、入学初めての定期テストは壊滅的で、私は夜も眠れないほどショックでした。それ以来、勉強についてはアドバイスしたり一緒に勉強したり、塾にも行っていますがなかなか成績はあがりません。その息子は、14歳の誕生日まで自室を持ちたがらず、寝るのもみんなで一緒で、勉強もダイニングテーブルでしていました。来年は受験なので、自立を願い自室で勉強してほしいと思い、無理やり冬休みに部屋を作りました。嬉しそうな様子に安心しましたが、私が部屋に行くと「来なくていい!」と強く言われてしまいました。少し寂しい気持ちもありましたが、まぁそう来るだろうなと予想してたので、その場を去り食事の用意をしてると、しばらくして「さっきは強い言い方してごめん」と言って来たので私も「今度からは勝手に入らないで声をかけるね」と言い、お母さんたちはあなたが勉強しているのか何をしているかは分からないけど、自分の行動には自分で責任をとってねと言いました。ただ、3年生になるまでは勉強については時々確認するよと言ったら、素直に分かったと言いました。思春期ですが、激しい反抗も今はありません。学校の事もよく話してくれるし、基本的に真面目で優しい性格です。今までは何もかも視野に入り把握出来てたことが出来なくなるのは当たり前の事ですが、勉強については心配でなりません。成績は下から数えた方が早いくらいで、勉強している割に結果に出てこないので、やり方を見直して計画した通りにやってほしいのですが、それをこれからどのように言っていけばいいのか悩んでいます。あまり言いすぎてはいけないし、でもキチンとやっているのか確認したいのです。出来る事なら、自分で考えて試行錯誤して勉強に取り組んでもらいたいのですが、もうすぐ3年生になるこの時期に、失敗している時間がないと焦っている私がいます。子どもの力を信じて見守る事が良いことは分かっていますがそこが難しい。サッカーに関しては口出しはしていないのですが、勉強となると人生に関わるという思いも強くて......。心配性で過干渉の親だと自覚しています。もっと強い母親になりたいです。こんな私にアドバス頂けたらありがたいです。サッカーの事ではなく子育ての悩みになってしまいましたが よろしくお願いします。<島沢さんのアドバイス>ご相談のメールをいただきありがとうございます。お母さんが冒頭に「サカイクの対象年齢は小学生の子の保護者なので、対象年齢外ですみません」と書かれているのを見て、私はサカイクが小学生年代の保護者に向けて配信しているメディアであることを思い出しました(笑)。でも、そんなことは気にしないでください。中学生のサッカー少年を持つ親御さんの悩みを知ることは、小学生のお母さんやお父さんにもためになるはずです。サッカーしかやらず、勉強や他の経験をしないことの弊害は小さくありません。逆にお礼を言いたいくらいです。■親が鉄を打てるのは中1まで。あとは本人に任せて見守りましょう結論から言うと、息子さんに任せましょう。「勉強のこともサッカーのことも、君に任せるよ。わからないことがあって相談したい時や、欲しい情報があったり、お母さんがサポートできることがあったら頼ってね」そんなふうに伝えて、あとは黙って見守ってください。時折「調子はどう?」と表情を見てあげれば十分です。なぜなら、学習習慣や段取り力がついていない中学生のお子さんに対して、親御さんが寄り添ったり、勉強方法を教えることがある程度可能なのは中学1年生までだと私は考えています。これと類似したことを、私が取材した中学教師や塾の講師の方がおっしゃっていたからです。いうなれば「鉄は熱いうちに打て。ただし、親が鉄を打てるのは中1まで」。■思春期は感情が揺れたり一気に自我が芽生える時期なぜ中1までか。それは、本格的な反抗期が始まるからです。13~14歳である中学2年生にもなれば、ほとんどの子どもが思春期真っ只中。ホルモンの関係で、感情が揺れたり、一気に自意識が芽生えて他者の目を気にするようにもなります。そう考えると、息子さんにお母さんが深くコミットするのは、申し訳ないのですがもう手遅れです。すでに中学2年生であり、高校受験を迎える3年生はすぐそこです。お母さんのおっしゃる通り、早く何とかしなくてはいけません。■「正論はAだとわかっているけれど、本音はB」という考え方を変えましょうまず、お母さんご自身が、今ある「思考癖」を変えましょう。ご相談文を読むと「正論はAだと私はわかっているけれど、私の本音はBです」というパターンの記述が多く見受けられます。(A)今までは何もかも視野に入り把握出来ていたことが出来なくなるのは当たり前の事ですが、(B)勉強については心配でなりません。(A)あまり言いすぎてはいけないし、(B)でもキチンとやっているのか確認したいのです。(A)出来る事なら、自分で考えて試行錯誤して勉強に取り組んでもらいたいのですが、(B)もうすぐ3年生になるこの時期に、失敗している時間がないと焦っている私がいます。(A)子どもの力を信じて見守る事が良いことは分かっていますが(B)そこが難しい。(A)サッカーに関しては口出しはしていないのですが、(B)勉強となると人生に関わるという思いも強くて......。前述した(A)と(B)をもう少し具体的に言い表すと、こうなります。(A)子どものためにこんなふうにふるまえばいいと私は理解している。(B)でも、実際の私はこうです。これは以前の私も含めて、多くの親御さんが子育てするなかで、通る道かもしれません。こうしたほうがいいとわかっているけどできない。お母さんはきっと、時折(A)の態度を見せたかと思えば、(B)になったりしています。ところが、子どもには、お母さんができない(B)の部分しか見えていません。例えば、「自分の行動には自分で責任をとってねと言いました」とありますが、「ただ、3年生になるまでは勉強については時々確認するよ」と告げています。自分で責任を持てと言いながら、確認するという。監視するのなら、監視側にも責任は生じますよね。子どもの性質によっては「どっちやねん?」と親に突っ込めますが、息子さんは違うようです。■親から離れるのが不安なのかも。その不安をもたらしているのは......「思春期ですが、激しい反抗も今はありません。学校の事もよく話してくれるし、基本的に真面目で優しい性格です」と書かれているように、とても"いい子"のようです。ただし、何のストレスもなく心からそうしているのかはわかりません。例えば、「14歳の誕生日まで自室を持ちたがらず、寝るのもみんなで一緒」との記述があります。14歳であれば、夢精があったり、さまざまな第二次性徴が現れるはずです。それでも「自分の部屋が欲しい」と言わなかったのは、どうしてなのか。もしかしたら、親から離れるのが不安なのかもしれません。そして、その不安をもたらしているのは、お母さんの(A)(B)の相反する態度かもしれない。子どもに対し二つの相反する価値観を提示するのは、心理的な「ダブルバインド(二重拘束)」と言います。AとB両方に引っ張られて、息子さんはとても不安な状態にあるのではないでしょうか?■叱ったりするのではなく、サポートする姿勢を見せること(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)加えて、私はお母さんの、この一言に注目しています。「今から考えると過干渉な親だったと思いますし、もっと楽しく自由にしてあげれば良かったと感じています」そこで、「中学からはサッカーについても宿題や勉強についても一切口出しせず、本人に任せた」ところが、入学初めての定期テストは壊滅的で、お母さんは夜も眠れないほどショックを受けた、とあります。ということは、ずっと過干渉で育ててきているので、自分で考えて段取りをつけて学ぶ方法を身につけたり、自ら考える力を養う機会を奪われてきたのではないでしょうか。こういったピンチのとき、お母さんひとりで「何とかしよう」と思ってはいけません。早々に白旗を掲げ、周囲に助けを求めるべきです。まず、パートナー、つまり息子さんのお父さんがいるのなら、彼にも一緒に考えてもらいましょう。ただし、叱ったり、恫喝してはいけません。こういう場合、お母さんがお父さんに「ちゃんと勉強するようにパパからも言ってよ」と、なぜか"お願い"するケースが多いのですが、お父さんが突然「ちゃんとやれ」みたいな怒り口調で接してしまうと、火に油を注ぐことになりかねません。息子さんからすれば「僕のこと、どれくらい知ってるの?」と不快に感じるかもしれません。日ごろお父さんがあまり子育てにコミットしていないご家庭ほど、気を付けなくてはいけません。ご両親は一緒に「見守っているよ」と話せばそれでOK。中学校の担任の先生や、塾の先生に相談して、一緒に見守ってもらいましょう。一緒にサポートしてくれる仲間を増やすことが重要です。お母さんが変われば、息子さんもいい方向へ必ず向かっていきますよ。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2021年03月10日もうすぐ中学生になるので11人制の準備をさせたいけど、8人制とはコートの大きさも異なるので、どうしても中盤がぽっかり空いたり、自分でスペースを見つけることが出来ない子どもたち。11人制の動きを教えるにはどうしたらいい?とご相談をいただきました。実はこの時期よくある質問なのだそう。みなさんのチームではどうしていますか?これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんがアドバイスを送ります。参考にしてみてください。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<サッカー初めての子たちに楽しく基礎を教えるメニューが知りたい<お父さんコーチからの質問>こんにちは。小6の子たちを担当しています。11人制への移行段階での指導についてご相談です。私が指導しているのは地域の少年団で、ほとんどの子が同じ中学で部活に進みます。サッカーを続ける子は中学に入ると11人制になるわけで、今のうちから準備をさせたいと思っているのですが、やはり8人制とは勝手が違うのでなかなかうまくいきません。どうしても中盤にスペースができてしまったり、ボールの受けどころなど自分でスペースを見つけることや、スペースを作る動きが難しいようです。11人制のプレーを理解させるためのおすすめの指導などはありますか。<池上さんのアドバイス>ご相談、ありがとうございます。まず最初に申し上げておきたいことがあります。8人制から11人制というように、人数が増えるとサッカーの理解が変わるわけではありません。幅と深さを理解して相手を崩していく、もしくは守る。そこは同じです。■8人制のうちから理解させてほしいこと攻撃にしても、守備にしても、コートのサイズが大きくなれば、動く距離は変わります。パスの長さも変わる。当然のことです。ただ、その成り立ちをきちんとわかっていれば、あとは距離に対応するだけのことです。逆に言えば、8人制のところでちゃんと理解させなくてはいけませんよ、ということです。例えばドイツは、11人の前に9人制でプレーさせます。コートの大きさも、縦はペナルティエリアのライン前まで両方のゴールを出し、サイド(横)も狭くします。コートは11人制とそんなには変わらないうえに、9から11と2人しか増えないので、やるべきことはほぼ変わりません。パスもちゃんとつながります。9人制の前は7人なので、そこも同じようにスムーズです。■味方同士の距離感を保つようにトレーニングする一方の日本では、少年サッカーの8人制が大人のコートの半分サイズになります。大人コートで2面とれて、ゴールも小さいわけです。ところが、11人制になると、コートのサイズが倍になる。練習の中で成り立ちを理解しプレーしてきたのなら問題ないのですが、クローズドスキルが多くなってしまうような練習が多かったのなら、なかなかうまくいかないかもしれません。そうならないためには、8人制で味方同士の距離感を保つようトレーニングする必要があります。例えば、守備。サッカーの世界でいう「アコーディオン」のように、味方との距離が長くなったり、短くなったりするのはよくありません。選手間の距離が伸びるとスペースができて、そこを相手に使われてしまいます。つまり、コンパクトにポジションを取る。これを少年の間に身につけてもらわなくてはいけません。逆に、攻撃では広がって、スペースを生むことが需要です。幅と深さを理解させてあげることです。攻撃では広がって、ボールを奪われたら広がらずにコンパクトに守る。これを8人制でも伝えていきます。■今のやり方は中学に行く前の「塾」のようなもの。先取授業する必要なしただ、いただいたご相談では、もっと大きな問題があるような気がします。11人制に備える練習が、中学に行く前の塾のように見えるのです。そもそも、子どもたちの成長は時間がかかるし、個々でその速度も異なります。大人はそこを理解したうえで、子どもが自由に自分から様々なものを学び取っていく環境を用意するのが最も重要な役割です。どう考えたほうがいいと思う?などと、常に問いかける。例えば試合で、スペースが生まれてしまい、そこを使われて失点したり、ゲームを支配される。そんな体験はすべきです。そのような失敗をしなければ、自分でどうしたらいいかを考える経験ができません。すべて一から十まで教え込んで、成功させるばかりでは、彼らが知らないことがでてきたときに、どうしたらいいかを考える力を養えません。転ばぬ先の杖を立てては、足腰が鍛えられないのです。まずは、6年生ならば、8人制のサイズの幅と深さのトレーニングをやってください。賢くサッカーをする仕組みを理解することが重要です。例えば左サイドにボールが動いたら、相手も警戒する。そうなれば、右に大きなスペースが開く可能性がある。そういう理解を6年生はできるようにしてください。狭いところから広いところに出て行く。守る側もそれが常識で狭い側はタイトに寄せる。広いスペースの選手はぴったりはつかず、間合いを開けておく。そうすれば、サイドチェンジされても、スライドして広くカバーできます。次のステージで困らないように、とご相談者様は考えておられるようですが、次のステージでやるべきことを前もってマスターする必要はありません。今の学年でやるべきことがちゃんとして入れば問題ないのです。■大人が形ばかり追いかけると、選手たちの自分で解決する力が育たない私がジェフの中学生をみたとき、中1は小学生のサッカーしかできなくて当たり前だと話しました。入ったらすぐに2年と試合をします。ジェフに受かった子はみんな小学生時代はエース級の選手なので意気揚々と臨みますが、5分で3点取られたりしました。ここで初めて「中学生のサッカーは小学生と違うよ。これからうまくなろう」と話すのです。ペップ・グアルディオラ(イングランドマンチェスターシティの監督)が2017-18のマンチェスターシティーで成功させた「5レーン理論」という方法があります。縦に5つのレーン、横に3つのゾーンを分けて説明しています。これはチーム戦術としてみんなが理解して、それぞれがこうしよう、ああしようと考えながらプレーするひとつのベースとなる考え方です。これをやったら上手くなるわけではありません。それなのに、日本の指導者には、言葉ばかりにとらわれてしまいがちです。大人が形ばかり追いかけると、選手たちに自分で解決する力が育ちません。基本的な指針はあっても、違う解決法を選手が取るかもしれない。それはそれでいいのです。選手がその時にやったことが、その選手の「正解」だと受け取ってください。それなのに、日本ではコーチが「さっき言ったでしょ」と自分の考えや見方、とらえ方を押し付けてしまう傾向があります。あくまでも、選手が選択したことが「そのときの答え」なのだ、トレーニングは選手を自立させるためにある、ということを覚えておいてください。池上正さんの指導を動画で見る>>■中学に備えて5号球を使うのもリスクがある(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)この季節、6年生のコーチの方々に「もうすぐ11人制になりますが、なにかやったほうがいいですかね?」とよく尋ねられます。「ちゃんと育てておけば、8人が11人になろうが問題ないですよ」と私は答えます。加えて、この時期、6年生の練習や試合でいきなり5号球を使い出す指導者がいます。これもいいとは思いません。日本はオスグッドになる子が多いです。無理させず、中学生になったら蹴ればいいんだよと伝えましょう。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2021年02月12日高校生のころから生理不順で生理痛がひどくなり、大学生のころには生理不順が悪化、産後には生理前のイライラが増すなど、生理には苦労させられている私。ただ、生理前のイライラについては、夫のおかげで少しラクに過ごせています。 大学受験を控え、徐々にひどくなった生理痛高校生のころ、大学受験を控えてストレスが増えたためか、生理痛がかなりひどくなっていきました。生理不順でもあったので生理開始日を予想しづらく、また鎮痛薬なども常備していませんでした。 私の場合、生理初日のなり始めが一番痛みがひどく、授業中に生理痛がひどくなったときは大変で……。先生にも言い出せないし、薬も飲めないし、そのまま耐えながら授業を受け、休憩時間になると、保健室に行くというのが生理初日のパターン。保健室では、痛みがおさまるまで、温かくして寝かせてもらっていました。 就職を控え、生理不順が悪化その後、大学生になり就職を控えた秋ごろ、今度は生理不順がひどくなりました。なんと50日周期になったのです。これには自分でもびっくりして産婦人科へ。そこで漢方を処方してもらったのですが、服用後には毎回腹痛がおき、下痢をしてしまうようになりました。 主治医に相談したところ、「漢方が体に合ってなかったみたいだね」と別の漢方を処方してもらい、ようやく体調が回復。そのおかげか、35~40日周期で生理がくるようになり、無事に就職もできました。 就職してからも生理痛には悩まされていましたが、生理痛がひどいときには生理休暇を取得。おかげで、体を休めることができ、痛みから回復できていました。 出産後、生理痛は軽くなったけれど、イライラが…そして、結婚し、出産。生理痛とは高校生からの付き合いですが、その様子は少しずつ変わってきました。というのも、1人目の出産後から生理痛がウソのように軽くなり、今では鎮痛剤を飲むことが減ってきました。生理痛がまったくないというほどではありませんが、以前のように「寝ていないとしんどい」ということはなくなっています。 生理痛が軽くなった一方、生理1週間くらい前からはイライラすることが増え、食べる量が増えたり、家族にあたってしまったりしています。ただ、これは10年以上の付き合いになる夫がとても理解してくれているので、とても助かっています。やつあたりをしても許してくれたり、家事をしてくれたり、「生理前だからしんどいんだよ。休みなよ」と言ってくれたり……。夫がそう言ってくれると、なんとなく落ち着いて、ほっとします。 高校生のころの生理痛については、授業を休むとはなかなか言い出しにくかったのですが、もう少し休んで体をいたわってもよかったかなと今更ながらに思っています。 監修/助産師REIKO----------文/砂田智子さん
2021年01月29日勉強が得意ではないいっちゃんと得意なタケル1歳の頃から絵を描き、歌をつくってきたいっちゃん…。いわゆる「お勉強」はあまり好きではありません。Upload By 寺島ヒロUpload By 寺島ヒロ対してタケルは小学校では「ハカセ」と呼ばれていたようなタイプ。Upload By 寺島ヒロ小さい頃からなんでも記憶するのが得意で、中高生向けのビジネスプランの大会やゲーム大会でも良い成績を残してきました。テストの結果などでいい成績を残すことは、進学を考えるうえで大変重要。実際、タケルは1年の1/3以上遅刻をしていましたが、テストの点数でカバーして大学の推薦を出してもらえたこともあるのです。体調不良や粗大運動の困難さえも「理屈を勉強して、対処すればなんとかなる!」と力技で乗り切ってきたタケル。そんなタケルにとって、いっちゃんは大変頼りなく、心配な妹のようです。Upload By 寺島ヒロUpload By 寺島ヒロ睡眠障害がふたりの勉強時間を阻む!しかし…睡眠障害もあるいっちゃん、お兄ちゃんとなかなか時間が合いません。お兄ちゃんも決して暇ではないので、自分のもろもろの用事を済ませてからいっちゃんに声をかけるのですが、そのときにいっちゃんが暇とは限らないわけです。普段のいっちゃんは、すごい集中力で何かつくっているか、寝ているかのどちらか。ちょうどいいタイミングで声をかけるのは大変です。Upload By 寺島ヒロUpload By 寺島ヒロUpload By 寺島ヒロUpload By 寺島ヒロそれはともかく...。全速力で走って倒れるような毎日ですが、充実した生活を送るいっちゃんを見ていると「学校の勉強は大事!今やっていることをすぐにやめて、お兄ちゃんと勉強しなさい。」と言いにくいんですよね。絵を描いている時や音楽の打ち込み(最近『GarageBand』を使うようになりました)をしているときには、普段全く人の顔色を見ないお兄ちゃんも話しかけることをためらいます。それほどの集中力なのです。寝ているときにはたまに起こそうと努力していますが…起こそうとして起きるならそもそもこんな苦労はしないのです。どうにもできないなら活かせない?いっちゃんのそんな状況を見て、「そこまで好きなら、例えば絵や音楽を専門にする学校に行けばいいのでは?」と言ってくださる方もいます。しかし、どんな学校であろうと基本的には登校せねばなりません。それに、いわゆる「芸術系の学校」は朝から晩まで絵を描いたり、歌を歌っているイメージがありますが、実際のところは普通教科にプラスして実技があるという感じです。実習などに時間を取られる分、リベラルアーツな科目の時間は凝縮されており、1回休むと大きく点数を削られます。私も芸術系の学校出身なのですが、私の行っていた学校は授業を2回休むとアウト、1年分の単位が出ませんでした。私も睡眠障害があったので、しばしば朝の授業に間に合わず、留年もしています。単位取得の難しさを考えると積極的に勧める気にはなれないというのが正直なところ。では、どうするか…?実のところ、まだこれといった結論は出ていません。ただ、どんなところでもいいから入れそうな高校に在籍し、18歳にこだわって高卒の資格を取得することを目指すのは、なんとなくいっちゃんには合わないような気がします。元々中学校からはみ出しているので、いれものを用意すればそれに合うように収まるということもないでしょう。オンライン授業やリモートワークが急速に普及したこの一年で、「何がなんでも朝起きて登校、出勤すべし!」という圧力を、以前に比べて明らかに感じなくなってきました。来年ではないかもしれませんが、登校をせずに高校で学べる日も遠からずくるかもしれません。そう考えると無理に中学を卒業したらすぐ次の学校へ入れる必要も、もしかしたらないのかも…と思えてきました。のんびり…とは、さすがにいきませんが、社会情勢も見ながら、いっちゃんが納得する道を焦らず探っていけたらと思う今日この頃です。Upload By 寺島ヒロ焦らない焦らない。これも親修行…。
2020年12月31日子どもが勉強を嫌がるのには理由がある?一緒に目的を整理する勉強を補ってくれる塾ですが、発達障害のある子の場合、自分に合った学習環境・方法を見つけにくいことがあります。まずは何のために塾に通うのか、整理してみるのも一つです。以下は、発達障害の子どもがいるご家庭が塾に通う目的の一例です。・授業に遅れているので、その遅れを取り戻したい・本人に合った勉強方法がわからないので、それを見つけたい・家で集中がなかなかできないので、勉強する習慣を身につけたい・受験の対策をしたい子どもが勉強をしたがらないのは、もしかすると勉強が嫌なだけではないかもしれません。学校で教わった方法がどうしてもしっくりこない、学校ではみんなができているのに自分だけ理解ができず自信を失ってしまった、勉強をする必要がさっぱりわからない、鉛筆の触感が合わない、誘惑が多く集中できない、など嫌だと思う理由があるかもしれません。勉強を嫌がっている場合は、まずは勉強の何が嫌なのか聞いてみても良いかもしれません。20~50名の大人数クラスから、個別指導、家庭教師。どんな学習スタイルが合う?Upload By LITALICOライフ塾によっても学習スタイルはさまざまです。独自の取り組みをしている塾もあるため、あくまでも目安にはなりますが、子どもに合いそうな学習スタイルを考えるときの参考にしてみてください。■集団授業(大人数)1クラス20~50名で、主な目的は受験です。受験合格に必要なペース配分がわかりやすく、周囲と刺激を受け合う・影響を与え合うことができます。■集団授業(小人数)1クラス4~20名で、受験や学校の授業の補習が主な目的です。大人数のクラスに比べると指導に関する個別相談がしやすく、勉強のフォローが手厚いこともあります。■個別指導生徒は1~3人で、個別に対応してくれます。主な目的は受験や学校の授業の補習です。時間割やカリキュラムをオーダーメイドできることもあり、周りのペースを気にすることもありません。合理的配慮は集団に比べれば頼みやすくなりますが、実際の対応は担当スタッフによりさまざまです。■家庭教師主な目的は受験や学校の授業の補習です。家にまで来てくれるため、外出や送迎の必要がありません。合理的配慮を頼みやすく、教師を選べることもあります。■発達支援系発達障害への専門知識を持ったスタッフが対応してくれる可能性が高いです。目的も本人に合った勉強方法を探す、ソーシャルスキルの獲得など、特性への配慮があります。これらはあくまでも一例です。子どもによっても環境や方法には相性があります。実際には、見学や体験をすることで総合的に判断することが大切です。交通手段や週何回通うかも大事さいごに、現実的な交通手段や、週何回行くかといった頻度によっても、塾の選び方は変わります。例えば保護者による送り迎えが必要かどうかです。必要な場合は、保護者もさまざまな予定があるなか、送り迎えの時間を調整する必要があります。保護者の車などで遠くまで通える場合は、立地はそこまで気にしなくても良いかもしれませんが、子どもが一人で徒歩や自転車で通う場合は、家の近くが安心です。定期的に通う場合は、通いやすさも大切です。子どもだけではなく、保護者にとっても無理をしない選択が大切です。監修:髙橋 基(株式会社LITALICOライフライフコンサルタント。元・学習塾の教室長、1000人以上の受験指導経験あり)“うちの子”に合った学習環境の探し方は?ここまで、塾に通う目的や学習スタイルについてご紹介しました。塾だけではなく学校選びについても、現実的な交通手段や相性、教育費などが関わってきます。何を目的に、どんな環境づくりをしていくのか、考えるのは簡単なことではありません。LITALICOライフでは、子どもの特性や保護者の想いに合わせた学校の選び方を、最新の事例をまじえながら勉強会でお伝えしています。勉強会参加後に希望を出すと、後日、個別で相談をすることもできます。家族にとってどのような選択が良いのか、相談経験豊富なスタッフに話しながら一緒に整理していくことができますので、ぜひ勉強会参加後に相談を希望してみてください。私立中学受験の情報や塾選び、いま準備しておきたいことが勉強会でわかる!Upload By LITALICOライフLITALICOライフの保護者さま向け勉強会「中学受験という選択」は、発達障害のある子に合った私立中学やかかる費用について知ることができる勉強会です。進学先が公立中学でいいのか迷っていたり、既に私立受験をすると決めている方にとって、今知りたい情報から将来に繋がる情報まで、ギュっとまとめてお話ししています。【中学受験のこんな情報がわかる!】・中学校の選択肢・私立中学の特長・中学受験のスケジュール・志望校の選び方・塾活用のポイント・私立中学の学費や塾代、ほか受験にかかる費用など一番大切なことは、子どもにとって合う環境を見つけることです。中学受験・塾選びはその一つです。2020年12月現在は「東京版」「神奈川版」となっていますが、全国から参加・相談を希望することができます。【高校受験】が気になる方は…⇒『よくわかる「高校受験」』LITALICOライフは、お子さまとご家族が「自分らしい人生」を歩んでいくために障害分野とファイナンス、その両方の専門家としてライフイベントやライフプランの見直しを相談できるパートナーです。社会資源やサービス・お金の知識といった幅広い内容を身につけることができる勉強会や、専門領域をもつコンサルタントとの個別面談・プランニングを提供しています。ぜひ皆さまにご活用いただきたいと思っています。
2020年12月25日私はこれまで27日周期で生理がきていました。だいたいアプリで管理している通りの日にちにきてくれるので、事前準備もできています。しかし、実は今まで2週間の間隔で、1カ月に2回生理がきたことがあるんです……。 楽勝!と思っていた大学受験で…高校3年生の、受験を控えている時期のこと。私は指定校推薦での受験に決めていたので、面接やテストなどストレスを感じることなく受験を終えられるはずでした。しかし、合否が出る1週間前……私の下着は真っ赤に染まっていました。 「生理は2週間前に終わったばかりなのに……」。そう、予定日より1週間も早く生理が来てしまったのです。 幸い、その日は家にいたので着替えをし、ナプキンをつけてゆっくり過ごしたのですが、腹部の痛み、腰の重み、倦怠感、眠気が私を襲い、最悪な1日でした。 母から教えられた生理のことそんな私の状態を見て、母がひと言「受験のストレスで、生理がきちゃったんだと思うよ」と教えてくれたのです。 合格はほぼ確実な指定校推薦という受験方法ですが、私のなかでは「万が一何か取り返しのつかないことをしたら、推薦取り消しになるかもしれない」という不安とプレッシャーがあったのでしょう。私はこのとき、ストレスで生理の周期が乱れてしまうことがあることを知りました。 結果としては、私は無事に合格。受験を終え、春から大学生になることが決まりました。しかし、大学入学直後、私はまた月に2回の生理を体験するのです。 初めてのひとり暮らしで再び私は、大学入学を機に、ひとり暮らしを始めました。念願だったひとり暮らしが始まり、自由気ままな生活を謳歌していたある日、生理がきたのです。実は、前の生理は2週間前に終わったばかり。私は大学受験のときを思い出しました。 ひとり暮らしが楽しみでしたが、それ以上に「初めて親元を離れ、ひとりで生活をする」ということに、どこか不安を感じていたのでしょう。また、大学という新しい環境にもまだ慣れていなかったのです。私は昔から悩み事などがなくストレスを感じにくい性格だと思っていましたが、生理が月に2回くることを通して自分の知らなかった一面を知ることができました。 生理周期が安定していた私でも、ストレスやプレッシャーで簡単に乱れてしまいました。ストレスなどが原因の場合は一時的なことが多かったです。1カ月に2回生理がきたときはとても驚きましたが、ゆっくり体を休めるようにしました。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に受診・相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 監修/助産師REIKO 著者:佐藤里桜
2020年12月16日元日本代表のキャプテン長谷部誠選手の出身校、藤枝東高校は、高いレベルで勉強とサッカーを両立している学校としても知られています。県内トップクラスの進学校がどのようにして文武両道を行っているのか、同校出身の小林公平監督にお話を伺いました。選手自身が映像を編集してプレー分析も行うなど、自分たちで課題改善を行う取り組みなども伺ったのでご覧ください。(取材、文:本川悦子)藤枝東高校サッカー部の部員たち。練習後にチームメイトと談笑する姿■選手自身が映像を編集してプレー分析も名門・藤枝東がオンラインミーティングやサッカーノートのアプリを駆使して選手との意思疎通を図ってきたというのは前編でお伝えしました。彼らはそれ以外にもテクノロジーを使った活動を積極的に行っています。その1つが練習・試合の動画分析です。選手数人が公式戦や練習試合、紅白戦を撮影し、編集したものを共有ファイルにアップ。それを全員が帰宅途中や帰宅後に映像確認し、感想をサッカーノート(アプリ)に書いたり、ミーティングで議論し合ってフィードバックする形を取っているのです。今年から使っているソフトでは、個人のシュートシーンやゴールシーン、被ゴールシーンに特化した映像編集ができるほか、セットプレー時の好守も確認が可能です。さらには時間帯ごとのパス・シュート数などのデータも出てくるので、チーム全体が自分たちの課題や収穫を明確に捉えられます。こうした科学的アプローチの有効性を小林公平監督も実感しているといいます。「現場で見ている感覚と後から映像で振り返る感覚は全然違います。実際にプレーしていた選手も自分の一挙手一投足を映像で客観視すれば、何が課題でどう改善すればいいのかハッキリします。試合前に対戦相手の映像分析をするチームはよくありますけど、日常的に映像を使って可視化する作業に慣れておけば、将来的にそういう仕事に携わることも可能だと思います。ツエーゲン金沢入りが内定している稲葉楽選手もJクラブの練習に参加した時『藤枝東ではプロ同等の分析やスカウティングをしていることが分かって大きな自信になった』と話していました。藤枝東は社会のリーダーになるべき人材を育てている部分も大きいので、これからも可能な限り多くの情報を入手して、有効活用していくように、選手たちには働きかけていきたいと考えています」■加圧トレーニングの定期計測でフィジカル管理データ管理という意味では、2018年から取り入れている加圧トレーニングの定期的計測を行い、練習や試合に生かしています。今年のコロナ禍で3か月間活動休止になったこともあり、選手たちの太もも周りの筋肉が落ち、体脂肪率が増えてしまったといいます。そこで再び加圧トレーニングに注力し、フィジカル強化を図って、最大の目標である高校サッカー選手権に備えているのです。「6月時点ではそこまで数字的な変化は見られなかったのですが、夏場になって計測したら平均4~5㎝ダウンという状況が鮮明になりました。『これは大変だ』と危機感を抱き、意識的に取り組みました。日本ユース年代のSランクである高円宮杯プレミアリーグ参加チームと我々の一番の差はやはりフィジカル。僕が藤枝東の監督に就任した6年前も技術・戦術面の違いはほとんど感じませんでしたが、身長体重を筆頭に当たりの強さや激しさ、走力の部分が劣っていると痛感させられたんです。その差を縮めるべく、サッカーノートのアプリを導入したり、管理栄養士さんに食育の話をしてもらったりとさまざまな試みをスタートしましたが、短時間で筋量を増やせる加圧はかなり効果がありました。10月に計測したところようやくコロナ前の状態に戻った印象ですが、継続しないと意味がない。選手も自覚を持って取り組んでくれています」■高2まで目立った選手でなかった長谷部誠が急激に伸びたキッカケ小林監督が自ら行動を起こす重要性を繰り返し強調するのも、1学年上の長谷部誠選手(フランクフルト)という偉大な存在を目の当たりにしているから。長谷部選手は高2まではそこまで目立った選手ではなかったものの、高2の終わりに静岡県選抜に選ばれ、高いレベルに目覚めてからはグングンと成長していったそうです。練習から100%でやるように意識も変わり、意欲的にサッカーと向き合うようになって、浦和レッズ入りというチャンスをつかみました。2008年にドイツに渡り、日本代表に定着し、8年間もキャプテンを務めるといった飛躍的成長には小林監督も驚きを禁じ得なかったといいます。「高校生は何らかのきっかけをつかめば長谷部さんのようになれる可能性を秘めている」と今も自らに言い聞かせているのです。「県選抜に入ってからの長谷部さんは『自分は十分やれる』という自信と手ごたえをつかんだのか目の色が変わっていきました。浦和入りした後、長谷部さんのいるサテライトと練習試合をしたことがあるのですが、もう手が付けられないレベルになっていた。『17~19歳の2年間でここまで変わるのか』と本当にビックリしましたね。当時は服部(康雄=静岡県サッカー協会副会長)先生が指導されていましたけど、サッカーの楽しさを面白さを追求する姿勢を重んじていましたし、主体性や自主性も大事にしていました。そういう環境だったから長谷部さんは伸び伸びとやれたし、自分で気付いて成長できたんだと思います。僕自身も『ここでもう1回サッカーをやりたい』と感じたのが指導者になったきっかけです。そういう藤枝東の文化を引き継ぎ、発展させていくことが自分の大きな仕事。入ってくる選手も『長谷部さんみたいになりたい』という子が年々増えています。つねに誠実で多くの人に愛されるのが長谷部さん。今の選手にも『愛される選手になりなさい』とことあるごとに声をかけています」このように藤枝東は人間的成長を促しながら、かつてのような高校トップを目指しています。同じ高体連で2019年プレミアリーグ王者の青森山田高校らとはまだまだ実力差があると小林監督は感じているそうですが、藤枝東らしく文武両道を貫き、自主性や自立心を生かしながら進化を遂げていければ理想的。そうなるように今後も高いレベルに突き進んでいくつもりです。小林公平(こばやし・こうへい)藤枝東高校出身。高校時代は県を代表する左サイドバックで、全国総体準Vや国体制覇などに貢献。国士舘大卒業後、藤枝東高非常勤講師、湖西高監督を経て2015年に藤枝東高校サッカー部監督に就任。
2020年11月09日みんなはどうしてる?進路を考えるときに読みたいコラムをまとめました小学校への入学や、中学校・高校への進学は、お子さんの学びや生活に関しての大きな決断をするタイミングですよね。就学相談や進路指導など相談できる機会はあっても、わが子にとってどのような選択がよいのか、どう判断したらよいのか...悩みも多いかと思います。発達ナビユーザーに行った「どんなコラムが読みたい?読みたいテーマを教えて」アンケートでも、「進路選び」についてのコラムが読みたいとの声を多くいただきました。そこで、連載ライターによる「進路」に関するコラムをまとめてご紹介します。Upload By 発達ナビ編集部【小学校】特別支援学校?通常学級・特別支援学級・通級指導?就学先をどう決めた?面談や見学を通して、どんな環境がわが子に合うのかをじっくり検討したウチノコ家。むっくん本人の気持ちも確認して、決定した就学先は...複数の小学校を見学して、クラスの人数や雰囲気などを見ながら、わが子に合う環境をイメージ。希望を提出したのは、年長の9月でした。先輩ママや家族、主治医の意見も参考に、通常学級に入学したSAKURAさん家のあーさん。最初は順調だったけれど、学習面も友達関係も少しずつ課題が見えてきて...本人にとってよりよい環境をなんども検討し、2年生からは「特別支援学級」に転籍することに。【中学校】より子どもにあった環境を考えたい。私立受験も選択肢?娘が5年生のときに考え始めた進路。小学校では通常学級に在籍しているけれど、中学校は?特別支援学級、通級指導教室、私立中学など、選択肢にあがった先をそれぞれ見学することに。小学校時代から高等部進学に至るまで、全7話の連載。まずは第1話から読んでみてください。小学校では周囲と馴染めず、いじめも経験した宇樹さん。私立中学に進学すると取り巻く環境が一変して...6年生になってから私立中学を受験することに決めた、スガカズ家の長男。どの学校がいいか、メリットとデメリットを整理しながら親子二人三脚で学校選びをしていきました。【高等学校】子どもの気持ちも尊重して選びたい、中学卒業後の進路さまざまな選択肢を検討した上で、通常学級に入学した荒木家の娘は、中学2年生で特別支援学級に転籍することに。高校選びも早くから動き出していたけれど、中学生活を経て気づいた大切なことは...受験勉強になかなか身が入らなかった中学3年生のリュウ太くんが、「行きたい学校があるから」とパンフレットを持ってきたのは『専修学校』でした。不登校の娘が、パンフレットをみて「見学に行きたい」と言った通信制高校の技能連携校。見学に行き、付設するフリースクールに週に1回通い始めて...
2020年11月08日サッカーを思いきり楽しんでほしいけど、勉強も疎かにしてほしくない。親御さんたちの本音ですよね。元日本代表のキャプテン長谷部誠選手や中山雅史選手の母校で、サッカー強豪校であり、県内でもトップクラスの進学校、藤枝東高校ではどのように文武両道を実現しているか、小林公平監督にお話を伺いました。セレッソ大阪のU-15出身で、卒業後はプロ入りが決まっている稲葉楽選手からも、どのように毎日サッカーと勉強に取り組んでいるか聞いたのでご覧ください。(取材、文:本川悦子)藤枝東高校サッカー部の部員たち。この日はテスト明けで1週間ぶりの部活ということもあり、練習後もグラウンドで会話を楽しんでいました■長谷部誠選手らを生んだ文武両道の名門新型コロナウイルス感染拡大で開催が不安視されていた第99回全国高校サッカー選手権大会が、12月31日から1月11日に予定通り実施されることが決まりました。全国の高校サッカー部員にとって非常に明るいニュースと言えるでしょう。サッカー王国・静岡の名門・藤枝東高校もその朗報を受け、11月の決勝トーナメントに挑みました。J2・ツエーゲン金沢入りが決まっている3年生のDF稲葉楽選手も「今年は夏の高校総体がなくなり、全国大会は冬の選手権だけなので、何とか県大会で勝って本大会に行きたいです」と力を込めていました。残念ながら1日の東海大翔洋戦で0-2と黒星を喫し、全国行きは叶いませんでしたが、彼らは精一杯戦い抜いたことでしょう。過去4度の選手権優勝を誇り、中山雅史選手(アスルクラロ沼津)や長谷部誠選手(フランクフルト)ら数々の日本代表選手を輩出した同校は文武両道の名門として知られています。2020年度の偏差値は66と静岡県でトップ5に入っており、100人近いサッカー部員たちも勉強とサッカーを両立させています。セレッソ大阪U‐15出身の稲葉楽選手も「入学時点では成績が学年でも下の方だったけど、練習が終わって家に帰ってから必ず勉強をすることを日課にしたら目に見えて上がりました。周りも頭のいい子ばかりだし、『何事も自分から率先してやろう』という自立心が自然と養われたのがよかったと思います」とチーム全員の学習意識の高さを強調していました。■選手たちの精神的な不安を取り除くためにオンラインを活用藤枝東OBで長谷部選手の1学年下、大井健太郎選手(ジュビロ磐田)と同期に当たる小林公平監督も選手たちの自主性を尊重しています。「最後の選手権まで部活動を続けてほしい」という指揮官の思いに応えて、例年であれば、トップチームの選手は全員残り、Bチームの選手が早めに引退するのが常でした。しかしコロナ禍の今年はトップチームから引退者が出たといいます。「2月末に全国一斉休校となってから、僕らは3か月間活動を休止しました。まず感染しないことを第一に考えましたが、いつ再開できるのか、どの大会が行われるのか全く分かりませんでした。そういう中で受験を重視する選手が出るのは仕方ないという思いもありました。そんな中でも体力面をキープし、マイナスを最低限にとどめるための工夫は凝らしました。まず運動生理学やトレーニング理論を学んでもらおうと週1回のズームミーティングを始めました。加えて、管理栄養士による食事管理のミーティングを1回、トレーナーのリモートトレーニングを1回と合計週3回はオンラインで交流を持てるようにしたんです。選手たちは学校に来られず、練習もできなくて精神的な不安感を感じていました。私も精神科医の先生に相談しましたが、『オンラインでもいいからつながりを持てるようにした方がいい』とアドバイスを受け、実行に移しました」小林監督からのアクションに呼応するように、選手たちも絆を深める活動を率先して始めました。その1つが動画を使ったリレー。各自の目標を、動画を通じて伝えあったり、リフティングリレーをするなど、今どきの高校生らしい試みを始めたのです。4人1組でラインビデオを使ったリモートトレーニング動画を投稿するといった取り組みもありました。仲間が懸命に追い込んでいるのを見れば、「自分もやらなければいけない」という意識になるもの。そうやって選手個々が向上心を持ち続けて苦しい3か月間を乗り切ったのだといいます。■もっと選手を信じていい、選手たちは十分やれる「教師の自分にとっても、これだけ長期間の空白期間は初めてで、選手以上に不安感は強かったと思います。そこで自分もJFAのフィジカルトレーニングメニューを配信していただけるように旧知の先生にお願いしたり、指導者同士のオンライン交流会に参加したりしました。そこで感じたのは『もっと選手を信じていい』ということ。僕らが直接的に行動を起こせる機会が少なくなる中、彼らに自主的かつ主体的に行動してもらう場が増え、十分やれるなという手ごたえを感じたんです。3年生のレギュラーの選手が引退を決断したのは残念ですが、藤枝東としては進路も非常に重要だと考えています。我々としては高1の段階で希望を出してもらっていますが、スポーツ推薦や指定校推薦で関東大学1部や関西1部の大学には毎年選手がお世話になっていますし、一般受験で国公立やMARCH以上の大学に進む子も多い。そのあたりを基準にして文武両道にチャレンジしています。コロナを経てそういう意識を高めてくれる選手が増えたのは、前向きな点だと思っています」■サッカーノートを通して選手の内面を良く知ることができる藤枝東では小林監督就任2年目の2015年からアプリのサッカーノートを導入していますが、それも選手の自立心の高さを実感する一助になったようです。朝晩の体温・体調管理はもちろんのこと、選手が不安に感じていること、サッカーと学業を両立する上での懸念材料などを書いてもらい、毎日提出してもらうことで、彼らの内面に深く切り込むことができたといいます。「アプリだと休校期間も共有でき、選手とコミュニケーションを定期的に取れたので、非常に有難かったですね。6月の活動再開後は往復の電車や移動途中などに記入し、送ってもらっていますが、時間の有効活動という観点から見ても助かります。サッカーノートの中には、疲労度を1~10段階で判定し、選手自身に申告してもらう項目があるのですが、それも強度の高い練習を取り入れるに当たって有効です。選手権予選などの大きな大会前は追い込みたいという一方でケガも防がなければいけません。一番いい落としどころを探るうえでも役立っています。こうやって要所要所で数値を取り入れながら可視化できるデータを蓄積していけば、いずれは藤枝東サッカー部の大きな財産になる。そんな期待も抱いています」この記事が掲載される「サカイク」は、小学生向けなのでアプリではなく紙のノートですが、子どもたちがたくさん書けるようになる工夫を施したサッカーノートを販売しています。編集スタッフの依頼で小林監督にその内容を見ていただくと、「なるほど、これは書きやすいですね」と回答いただきました。サカイクサッカーノートの内容を見ていただきました小学生年代で、特にサッカーを始めたばかりでサッカーノートを上手く書けない子のために、いくつかの質問を用意して、書くのが苦手な子どもたちも自分の考えをたくさん書けるようになる工夫が施されているのですが、ページごとの設問を見て「ただ自由に書くのではなく、設問があることで思考力をつけるベースになりそうですね」「うちの選手たちにも聞いてみたい設問ですね」など高く評価してくれました。もともとITを駆使できる小林監督ですが、今回のコロナ禍を通して、利用できるテクノロジーを最大限生かしながら、強い藤枝東を築き上げていくことの重要性を再認識したようです。ご自身がITが好き、というのもあるそうですが「社会に出て重要なビジネスシーンで活躍する生徒も多く輩出する学校なので、最先端の情報に触れさせたいという思いもあるのです」と語ってくれた小林監督。彼らには文武両道の名門ならではのやり方で高校サッカー界に新風を吹かせてほしいものです。(後編に続く)小林公平(こばやし・こうへい)藤枝東高校出身。高校時代は県を代表する左サイドバックで、全国総体準Vや国体制覇などに貢献。国士舘大卒業後、藤枝東高非常勤講師、湖西高監督を経て2015年に藤枝東高校サッカー部監督に就任。
2020年11月02日高校生のころ、生理中だった私は、突然、寒気やめまいに襲われたことがありました。でも、よく思い返してみると、症状が起きたときには共通することがあったのです。 受験勉強で、寝不足のなか、生理がやってきた高校生のときのことです。受験勉強が始まり、私は寝不足が続いていました。 ある生理2日目、梅雨の時期で朝からなんとなくだるい1日。その日は、塾に行き、冷房が効いた部屋で勉強していたのですが、だんだんと寒気と目まい、腹痛がしてきました。 突然、目まいが! しゃがみこんでしまった私今までにこんな症状が起こったことはなく、どうしたらよいのかわからなくなり、とりあえず塾の先生に伝えに行こうとしました。しかし、その途中で目まいがし、気づけば階段途中でしゃがみ込んでしまった私。 そこに先生が偶然通りかかり、休憩室へ移動させてくれました。そして、温かい飲み物を入れてくれたので、それをいただき、休憩室で休ませてもらうこと数時間……。ようやく症状が落ち着きました。 その日は、母に迎えにきてもらい、家で休むと体調が回復しました。 大学生になり、再び同じような症状が…その次の年のことです。大学生になった年の梅雨には、「生理」「慣れない環境への緊張」「疲れ」「バイトや部活での寝不足」「冷房での冷え」などが重なり、また同じような症状になりました。 それでふと気づいたのは、私は「生理」「梅雨の時期」「寝不足」「体が冷える」ということが重なると、決まって同じような症状が出るようだ、ということ。私の場合は、生理が毎回重かったり、つらかったりというわけではなく、体調の環境、精神状態などが悪いと生理症状が重くなるようなのです。 そのことがわかってからは、これらの症状が重ならないように気を付け、梅雨の時期は特に上着を持つ、体を冷やさないように心がけるなどで、体調を整えるようにしたため、外出先で動けなくなるほど苦しむことはなくなりました。ただ、毎年梅雨の時期の生理は重くなる傾向はあり、生理になったら体を冷やさず、無理せずよく休むようにしています。 また、私の場合は、腰やおなかに携帯用カイロを当てるとラクになるようです。意識してみると、いろいろと気づきがあります。自分の身は自分で守り、気づかう大切さを知りました。 監修/助産師REIKO---------文/村中会真さん
2020年10月29日ミドルエイジの先輩たちが「自分らしい生き方」に至るまでーー綾屋紗月さん東京大学先端科学技術研究センターで、特任講師として発達障害の当事者研究(※)や、当事者研究の研究などを行っている綾屋紗月さん。幼い頃から家庭や学校で違和感を抱いていましたが、そこにASD(自閉症スペクトラム)の特性が関係していると知ったのは大人になってからだと言います。自分の身体や他人との「つながれなさ」を感じていた綾屋さんが、自分を理解し、社会とつながっていくまでのプロセスをお話しいただきました。当事者研究とは:一人ひとりが自分自身の困りごとや生きづらさについて研究者となり、周囲の仲間たちと語り合うなかで困りごとへの理解を深めることや、よりよい付き合い方を探していく営みのこと。綾屋紗月さんが主宰する、発達障害当事者による当事者研究活動「おとえもじて」をはじめ、さまざまなテーマ・共通点ごとに当事者研究コミュニティがある。子ども同士の「暗黙のルール」がわからなかった――綾屋さんは、発達障害のある人を中心に当事者研究を行う会「おとえもじて」の発起人で、ご自身も大人になってからASDの診断を受けていますよね。幼少期はどのように過ごされていましたか?綾屋紗月さん(以下、綾屋):3〜4歳の頃、家では、「なんでこんなに自分の思っていることが両親に伝わらないのだろう」「どうしてわたし、いつも泣いているのかな」と感じていました。父に怒られたわたしは悔しくて泣くのですが、後から「あのとき、あなたはこういうつもりだったんだよね」と通訳のように言葉にしてきて。「わかってるんだったら、なんでさっきあんな風に怒ったんだよ」と腹が立って、余計に泣いてしまうようなこともありました(笑)。母はわたしが何を考えているのかが本当にわからなかったようで、「この子も大きくなれば、自分のことを自分で説明できるようになって、生きやすくなるだろう」と思いながら育てていたらしいです。それでもどうにか家庭の中ではやっていけたのですが、幼稚園に入ってからは、子どもたちの間にあるルールや、今何が起きているのかがよくわからなくて。ちょっと怯えながら様子を見ているような状態でした。Upload By 姫野桂――集団の「暗黙のルール」のようなものの難しさを、幼稚園ですでに感じ取っていたんですね。綾屋:他の子たちが遊んでいる輪に、わたしが「入れて」と言ったら「ダメ」と言われるけど、他の子が言うと「いいよ」と言われる。他方で、何も言わなくても自然と一緒に遊び始める子もいて。どうしたらあんな風に加われるのかがわかりませんでした。先生の指示に従うのも難しかったですね。手順が明確でない説明がだらだらと続くと、まず何から始めればいいのか、具体的な行動が把握できないし、そもそも園内では音がすごく反響しているようにわたしには聞こえていたので、聞き取るのがとても難しくて。わからないから質問をすると、「さっき言ったでしょ」「ちゃんと聞いていなさい!」と怒られてしまいました。――ちゃんと聞いていたにもかかわらず、そのように怒られてしまうのはつらいですね……。小学生になって、変化はありましたか?綾屋:小学校に入って過ごす校舎が変わっても、音がワンワンと反響して聞き取りづらいのは続きました。人との関わり方については、成長するにつれてだんだんわかるようになるだろうと予想していたので、ますますわからなくなったのにはちょっと驚きましたね。「もしかすると、いじめだったのかな?」と思うようなこともあったのですが、嫌なことをされたら反撃したりもしていたので、ある意味ではやり過ごせていました。集団のルールのようなものがあるらしいことや、自分がそのルールを理解していないので仲間はずれにされているようだ、ということは感じていましたが、わたし以外にもいろいろな人が順に仲間はずれの対象になるのが見えていたので、そんなに気にすることでもないのかなとも思っていましたね。――綾屋さんはその後、中学受験をして私立の女子校に進学されたんですよね。綾屋:はい、中高大一貫でエスカレーター式の私立女子校に入りました。いじめのようなものをさほど気にしていなかったとはいえ、「自分には友達ができないなぁ」ということを気にしてはいたんですよ。そんなときに、親が「勉強ができる子たちのところに行けば、お友達ができるかもしれないよ」と中学受験の話をしてきたので、そんなものかなあと信じて近くの私立を受験し、進学しました。「自分は一体どうなっているんだろう」という疑問――中学に入って、人との関係に変化はありましたか?綾屋:わからなさは、むしろ増しましたね。小学校の頃とは違い、やり返したら大変なことになりそうだと感じたので、攻撃されないようになるべく無難に動くようにしていましたが、孤立していました。今になって振り返れば、周囲の環境にも原因があったのだと考えることができますが、当時は「人とうまく関われないのは、自分のせいなんじゃないか」と自分を責める気持ちにもなりました。人間関係に向かう以前に、「自分は一体何者なんだろう」というような感覚があったんですよ。ものの見え方や聞こえ方、たくさんの人の中にいるとすぐに具合が悪くなってしまうこと。そういった他の人との「ズレ」に、一つひとつ気づいては驚いていました。自分の身体との付き合い方もわかりませんでしたし……。自分のことも、自分を取り巻く社会のことも混沌としていて意味付けができない。檻の中に閉じ込められているような窮屈で息苦しい感覚でしたね。それは30歳を超えて、仲間とつながるまで続きました。Upload By 姫野桂――学生時代からさまざまな症状があったようですが、「心療内科を受診してみよう」といった話は持ち上がらなかったのですよね?綾屋:親から言われたことはなかったですね。「心療内科」ができたのはわたしが成人してからですし、当時は「発達障害」という言葉もメジャーではありませんでした。そもそも父方の家系には強烈な特性をもつ人がたくさんいて、むしろわたしはマイルドなほうだったんですよ(笑)。だから、親も単に「神経質な子」ぐらいに捉えていて、病院に行くなんて考えつきませんでした。ただ、わたし個人としては、「この原因不明の心身の具合の悪さを抱えて、社会で働くことに耐えられるわけがない」と就職をあきらめていたので、大学を卒業する頃、覚悟を決めて精神科を受診しました。しかし「あなたは大丈夫ですよ」という言葉と、体に合わない大量の薬を処方され、「医者でもわたしの困難を見つけてくれないのだ」と思い、それ以上、医者に期待するのをやめました。ASDという「物語」を通じて、これまでの記憶が整理された――綾屋さんは大人になってから発達障害の診断を受けたとのことですが、そのきっかけを教えてください。綾屋:書店で見かけて手に取った本の中に「自分によく似た体験が載っている!」というものがあって、それがASD当事者の書いた本だったんです。それまでも心理学などの専門書は読んできましたが、そこには当事者の視点から見たことは書かれていませんでした。専門家が使っている言葉が具体的にどんな体験を指し示しているのかピンと来なくて、自分のことを書かれているという意識も持っていませんでした。「コミュニケーション障害と言ったって、別に親との日常会話は成立しているしなぁ」などと思っていたんですよ。でも、その本に書かれている具体的な経験には、自分と重なる部分が多かった。ASDの診断を取ることで人とつながれるようになるのなら、自分にも診断がほしいと思い、31歳のときに医療機関を受診しました。ASDと診断されたときは、特にうれしくはありませんでしたが、少しホッとしたような感じでした。――診断を受けたことで、何か変化はありましたか?綾屋:記憶に時間軸ができました。それまでは、わたしの記憶は瞬間ごとの写真を平面にぶちまけたように散らばっている状態だったんです。それが、自分の中にASDという「物語」を得たことによって、「ああ、幼稚園のときはこういう理由で大変だったんだ」という風に意味付けができるようになりました。ばらばらだった記憶が一直線に並び、今の自分にしゅーんとたどり着いていくような感覚でした。そのときに過去から現在へ続く「時間」というものがわたしの中にできたのだなと思っています。とはいえ、学生時代に同級生にされたことなど、まだ自分の中で疑問が残っていて意味付けができていないものは、今でも整理されておらず、時々バーンと写真のように頭に浮かぶことはあります。――一部ではあるものの、幼少期からの「わからなさ」が、少し解消されたのでしょうか。周囲には、診断について話されましたか?綾屋:親や当時の夫、つながりの残っていた高校・大学時代の同級生には言いました。親は「それで何が変わるの?」という感じで、ピンと来ていませんでしたね。夫はその後離れていきましたが、今から振り返れば、そもそもお互いにいろいろなことを共有できていなかったんだなと思います。親戚には親から話が伝わり、わたしの研究活動も知っているので、困りごとを抱えている子どもたちの相談を受けることはありました。いとことは「わたしたちの特性って、ただの家系だよね」「『ちょっと変わった子』ぐらいだったのに、社会的にマッチしてないことになっちゃったね」みたいな感じで話しますね。Upload By 姫野桂――現在も、感覚過敏の症状はあるのですよね。何か対策されていることはありますか?綾屋:人がいるところに行きたくても、無理だなと思ったら早めに引き返すとか、耳栓をするとか。具合が悪くなってきたら、とりあえずその場で15分ぐらい寝て、帰宅するだけの力を回復させる、などはしています。あともう一歩行きたいというときに、自分のキャパシティを踏まえて「いやいや」と撤退することが増えましたね。「実際はそんなにいいものじゃないよ」と言われても、ワイワイ楽しんでいるところを見ると惹かれるんですよ。先日も学生街の駅付近で盛り上がっている人たちを見かけて、面白そうにしているなあと近くに寄ってみたら、思ったよりもドロドロした感じであまり楽しくなさそうで。「遠くから見ると楽しそうでも、近くではこんな感じなのかあ」となんだかしょんぼりして帰ったり(笑)。わたしは「セクシャルよりソーシャルが好物です」と表現しているのですが、触れるだけで痛い感覚過敏の特性も影響しているのか、恋愛などのセクシャルな関係への欲望よりも人の輪に入っていくというソーシャルなことへの欲望が強いんです。今は、適度な社会的なつながりを仕事を通じて得られているので、それがすごく幸せですね。(後編に続く)「自分は一体何者なんだろう」と、ずっと違和感や疑問を抱いて生きてきたという綾屋さん。自分の経験に意味付けをし、記憶を整理することができたのは、同じASD当事者の物語との出会いがきっかけでした。インタビュー後編では、綾屋さんが取り組む「当事者研究」について、そして、研究を続ける中で出会った仲間たちとのつながりについてお話しいただきます。取材・文:姫野桂編集:鈴木悠平・佐藤はるか撮影:鈴木江実子
2020年10月28日お嬢様向けの進学校を受験小学校は地元の公立に通っていた私。成績が良く、家が裕福なために嫉妬を買うだけでなく、運動が苦手だったり、言動が突飛だったりする…… 良くも悪くも目立つため、周囲とまったくなじめませんでした。児童からはいじめを、教師からは虐待を受けるうち、高学年になる頃には二次障害を発症していました。周囲が中学の進学をどうするかと考え始めた頃。しつこいいじめを受け、特性上体力的にもきつい中で毎日登校するだけで精一杯だったのもあってボーッとしていて、私はなんとなく「自分も地元の中学に行くんだろうな」と思っていました。そんなあるとき、地元の公立中学に通う兄が、涙ながらに両親に直訴します。「義子を私立に入れてやってくれ!」地元の公立中学は荒れていて、ひどいいじめも横行している。義子がそんなところに行けばいじめ殺されるか、いじめを苦に自殺するかのどちらかだ、と兄は言うのです。いじめの内容とはたとえば、女子生徒の長いスカートを全部めくり上げて裾を頭の上で結ぶというもの。当然下着は丸見えで、一人で体勢を立て直すこともままなりません。このいじめは、頭の上で結ばれたスカートが巾着袋を絞ったように見えるため「きんちゃく」と呼ばれていたそうです。「義子を私立に入れてやってくれ」 …公立中学生だった兄が、両親に涙の直訴兄の涙ながらの訴えに両親は深刻な表情になり、「それでは義子に合いそうなお嬢様向けの進学校を探そう」ということになりました。私は子ども向けのスーツを着せられ、母に連れられていくつもの学校を見学してまわりました。両親も兄もみな自分のために動いてくれていたのに、当時の私は自分の障害に自覚もありませんし、どこか他人事のように感じていました。「みんながそう言うなら、まあ私は私立に行くのだろうな。疲れるなあ、面倒くさいなあ」ぐらいの感じでした……。結局私の進路は、推薦で中高一貫のお嬢様向け進学校に決まりました。塾には作文対策などのために半年ほど通っただけです。内申もペーパーテストも良かったため、おそらくかなりの好成績での入学でした。当時感じた、「似た属性の人たち」で集まることの大事さ私は徐々に、「似た属性の人たちで集まることって大事なんだなあ」と感じるようになりました。みなある程度以上裕福な家の子なので、私の家が多少裕福だからといって目立つことも妬まれることもありません。最終的に東大などの最難関大学を目指す子が集まっているその進学校では、勉強ができることがいわゆるスクールカーストを上げます。私はここに移ったことで、本人は変わっていないのにスクールカーストが最下位から最上位に上がったのです。基本的にみんなどちらかというと運動が不得意だし、運動ができることがスクールカースト上重視されないので、体育でバカにされることもありません。小学校のときのように休み時間に運動を強制されることもなく、本を読んでいればむしろ熱心で立派だとされました。コミュニケーション障害からくる言動の突飛さから、気づくと数人のグループから敬遠されていたり(私抜きでこっそり休みの日に遊びに行っていたりする)、数人のグループから軽くコソコソと噂話されるようなことはありましたが、いじめと言えるほどのことは起きませんでした。それどころか、何やら様子がおかしいと思っていると、「宇樹を複数の子で奪い合いをしていた」ということも起きました。近くで見ていた子によると、「宇樹は成績がいいだけじゃなくて何事にも一家言持ってるし、独特なところがあって面白いから、近くで見ていたいんでしょ」とのことでした。いずれにしろみな上品で、誰かに嫉妬したり誰かの足を引っ張ったりということよりも自分のやるべきことに集中しようというタイプだったので、学校全体としてあまり深刻な人間関係トラブルは起きませんでした。初めて経験する、「呼吸がしやすい」世界小学部から高等部まであるその学校。入学式のときに小学部の子たちがみんなきっちりとした立ち居振る舞いで式典をこなしていたことに両親は心底驚き、希望に包まれたそうです。ボーッとしていた私も、入ってすぐに、何やら空気が違うことに気づきました。みんなおっとりと、かつきちんとしている。「呼吸がしやすい」感じがしました。「みんなレベルが高いから、そのうち少しぐらい成績が落ちるだろう」と言われていた私でしたが、定期試験では学年上位を取りつづけました。いじめられるかもとビクビクしていると、周囲の子たちがまっすぐに「すごい!」と尊敬の眼差しで見るので、狐につままれたような気持ちになりました。「この3位の宇樹義子って私の友達なんだよ!」他のクラスの子に自慢する子。「いつも上位とってる宇樹義子ってどの子?」と他のクラスから見にくる子。「ここでは、『勉強ができることはいいこと』なのだな」と気づきました。ああ、幸せだなあ、と思いました。片道2時間近くの通学は体力的につらかったけれど、確かに私立に来てよかったと思ったのです。のちに、自分が恵まれていたことを知るボーッとしたまま中高の良い環境を享受しただいぶ後になって、私は自分がとても恵まれていたことに気づきます。20代後半で学習塾講師のアルバイトをしたとき、公立の中高では自分が中学高校の頃にしてきてもらったような指導をしてくれていないことを知りました。国語の分野でいえば、私は中高で、評論文用語集の暗記、百人一首や文学史年表の暗記などを授業に組み込んでやらされていました。それが当時はすごく嫌でしたが、私が出会った公立の学校に通う子は、そういう副教材や試験対策が世の中に存在すること自体も知らなかったのです。私は、進学校の成績優秀な生徒として、「東大京大・早慶上智のどこに入るか」みたいな価値観を当たり前としていました。そして、過労で倒れたりしながら必死に受験勉強に打ち込んで、難関私大に進学…… そうした生き方が、私の少女時代の過ごし方の唯一最善の答えだったとは、今は思いません。詳細は過去記事に書いています。ただ、中高の時期に一度は「楽に呼吸できる」環境に属させてもらえたことで、私は文字通り生き延びられたとは思っています。教養的な面でも大きなアドバンテージをもらいました。あのままうっかり公立中学に行き、自分に合わない環境を強いられていたとしたら、私は兄の言うとおりに死んでいたかもしれません。兄とはその後関係性がとても悪くなってしまいましたが、私を私立に進学させるよう両親に進言してくれた点について、私は兄に深く感謝をしています。当時、妹の将来のために思いつめて泣いたほどの彼が、長男として、また(当時発覚していなかったものの)発達障害児のきょうだい児として背負っていたものの大きさ、そのことにまったく思いが至らず他人事のように思っていた自分のことを思うと、今更ながら申し訳なくて胸が苦しくなります。本人の「楽」と「利」だけを考えてこれを読んでくださっている方は、お子さんに診断が出ているとか、ご自身が子どもの立場かといったあたりだと思います。中学への進学を考える時点で発達障害がわかっているというのは、私の世代から見れば大きなアドバンテージです。世の中にはいろいろな意見があります。「社会の多様性を学ばせるために学校は公立に行かせるべき」「男女が混じっているのが自然な社会の状態なんだから共学に行かせるべき」という意見もある。いっぽう、「いまだ男性優位に作られている世の中では、教育を受ける間だけでもジェンダーロールに邪魔されない環境で生きるため、女の子は女子校に行ったほうがいい」「個性の強い子には、その子の個性を伸ばすために個性の強い私立に行ったほうがいい」という意見もある。また、最近知ったところによると、関東の大都市圏での公立・私立のイメージと、地方での公立・私立のイメージは逆だったりもするようです。私にはたまたま、関東圏の私立中高一貫女子校が合っていましたが、どういった学校が合うかはその子によって本当にさまざまです。私はASDだったのもあって、こうした規律が厳しくて「勉強=善!」みたいな環境が楽に感じましたが、ADHD特性の強い子や、LDがあって苦手教科の多い子にはそうとうに窮屈だったろうなとも思います。今はフリースクールなどの選択肢も増えてきています。保護者の方々にはぜひ、世間の常識にも、私の体験談にも左右されることなく、本人にとってもっとも楽で利になる環境のために、情報を集めていってほしいと私は願っています。
2020年10月16日新型コロナウイルスの流行により、これまでの日常が一変しました。まだまだ完全な収束は見えず、この先どんな未来が訪れるのか、想像もしにくいですよね。今回は、コロナ後の世界で親としてどんな不安があるか聞いたアンケートを元に、考えてみたいと思います。■進学や就職への影響を懸念する人の割合は?アンケートでは、コロナ後の世界で親として不安なことについて聞きました。その結果、「進学、就職への影響」と答えた人が57.8%となり、最も多い約6割を占めました。続いて、「子どもの対人関係」と答えた人が17.8%となり、二番目に多い結果になりました。Q.コロナ後の世界で親として不安なことは?進学、就職への影響 57.8%子どもの対人関係 17.8%特にない 12.7%その他 11.7%■「どうしてこんな時に…」進学就職への不安約6割の人が不安を感じているのが、進学や就職への影響でした。具体的な不安の声をご紹介します。「中3の息子、部活も大会がなくなったので、そのまま引退。中2の終わりに『お子さんの内申書には書くことがありません。ボランティアでもしてください』と二者面談で担任に言われ、コロナで緊急事態宣言。ボランティアなんて受け入れなし。受験も通常ではいかないとニュースを見るたび、不安の毎日で涙がでてくる」(埼玉県 40代女性)「2人の受験生を抱えていますが、遅れた分の授業と今からやらなければならない授業。スピードが早すぎて混乱する生徒続出。塾もオンライン、学校もYouTube配信。無事に志望校に行けるのか心配」(青森県 30代女性)「高3の我が子。2月あたりから将来の夢の方向転換をし、そのために急いでオープンキャンパスの日程調整をしていた矢先、どんどん中止に。公立なので、私立並みの教職員のサポートがなく、オンラインの塾でなんとか対策しています」(神奈川県 30代女性)コロナ禍に受験を控えている子どものいる親から寄せられたのは、進学への不安の声です。休校中の学業の遅れや、部活や行事が中止によって、例年どおりの進学方法がとれなくなった人もいるようで、子どもたちの不安はどれだけ大きいだろうと、胸が痛くなります。さらに、就職にまつわる不安も多く寄せられていました。「今後コロナの影響で就職先があるか心配です。高三の娘が就職を考えていましたが、さらに2年専門学校に進学する事にしました」(岩手県 50代女性)「大学1年生ですが、今から就職先の心配があります。景気低迷はこの先しばらくは続くでしょうし、ちょっと前まで売り手市場と言われてきただけにキツいです」(神奈川県 50代女性)「高3の息子は専門学校希望でしたが、大学希望に変更したいそうです。専門学校の2年だと、コロナの影響が残っていると思うからだそうです」(東京都 50代女性)「息子が高校三年生で就職活動をしていますが、この前面談で先生から『今年の就職は難しいと思ってください』と言われました。頑張って学校も休まずに登校して来たのに、どうしてこんな大事な時期にコロナが蔓延(まんえん)してしまったのか…」(千葉県 40代女性)人生の大きな分岐点でもある就職活動においても、感染症の影響が大きいことがよくわかります。親としては子どもの行く末はどうしても気になるもの。なかでも「就職をやめて専門学校に行くことにした」とか、「専門学校に行く予定を大学に変えた」など、大切な時期に進路を見直すという苦渋の決断をした親子もいました。■「勉強詰め込んで頑張れ」は学力が心配い…さらに、進学や就職のタイミングではないものの、学習の遅れや学校行事の中止について不安を抱える人たちからも多く意見が寄せられていました。「コロナ禍で在学中の学生さんは、例年と比べると授業時間的にできない、知らない事が多い方が当たり前だと思います。それを『休みを短縮して勉強を詰め込んで頑張れ』はあまりに酷だと思います」(東京都 30代女性)「学校からはプリントの課題が出されるだけなので、学力が心配です。私は自営業で朝から遅いと夜の11時くらいまで会社にいたりするため、毎日みてあげられない。子どもを事務所に連れて来て勉強したりしていますが、毎日となるとなかなか厳しいのが現状です」(神奈川県 40代女性)「学習面での遅れが不安です。 地域により学校の始まるタイミングがバラバラで、このまま受験となった場合に遅れを取り戻すために学校での指導のピッチが早いので、大切なところに重点を置いての指導ができていないと感じます」(千葉県 40代男性)そのほかにも、「休校分を取り戻すために、すごいスピードの授業で、これを機に勉強嫌いになりそうで心配」という声も寄せられていました。筆者の子どもも小2ですが、休校中の遅れを取り戻すため、授業で習うスピードは以前に増して速くなっているように感じます。毎日新しい漢字が出題されてテストがあるため、宿題をしながら「もうやだよ」と泣きそうになっていたことも。休校後の学習における子どもたちのストレスの大きさを感じます。さらに、学校の行事が中止になったことによる子どもたちへの影響を心配する声も。「運動会に修学旅行、文化祭など、学校でしか体験できないことです。楽しい思い出だけでなく、友だちと協力して何かを成し遂げるための過程で、努力する大変さや楽しさを学ぶ事ができないのは、成長過程において非常に残念です」(愛媛県 40代女性)「小6の子がいます。小学校生活が最後の年にコロナでいろいろなイベントが中止になりつつあり、もし延期した運動会が中止になったり、一大イベントの修学旅行や林間学校などまでなくなってしまったらと思うと、親としても不安でしかありません。たくさん楽しい思い出を作ってもらいたいのに」(神奈川県 30代女性)「幼稚園の年長さんです。卒園アルバムの写真も全員がそろわないのでなかなか撮れずだったり、各季節ごとのイベントもできなかったり、経験できたはずのことができないことが不憫(ふびん)です。今は、運動会、遠足が中止になるのかどうなのかってところです。親としては、開催してほしい。でもコロナは怖い。複雑な心境で思い出作りができるのか心配」(福島県 40代女性)今年は、多くの学校行事が中止になったり規模を縮小して行われています。幼稚園や保育園、そして学校で、子どもたちにとって大切な学びや経験の機会が失われていると考えると、なんとかならないものかともどかしい思いを抱える人も多いのではないでしょうか。■「友だちと手をつないではいけない」が小学校…!?アンケートで17.8%の人は「対人関係が不安」だと答えていました。どのような実情があるのでしょうか。「保育園から小学生へと変わる年代で、日常がすべて新しいことの連続のなかで友だちができるのかが心配です」(神奈川県 40代男性)「小学校に入学した娘、『友だちと手をつないではいけません』『向かい合って近距離で話してはいけません』『給食時間は私語禁止』。これが学校というものだと理解している様子」(奈良県 30代女性)「小学生の子どもは外で友達と遊ぶことが多くなりました。うちに呼びたいと子どもがいいますが、お友だちの親御さんがどう考えているかと思うと気軽にいいよと言ってあげられない。どうしたらいいんだろう。大人でも難しいです」(北海道 40代女性)そのほかにも、「先生は消毒ばっかりで、子どもは子どもでマスクをして話もあまりできない。お互いを守るためだから、頑張らないといけないと思うけど、現実はけっこう大変」というコメントも寄せられていました。感染予防のため、ソーシャルディスタンスの確保や給食時間の対面禁止など、子どもたちの日常生活でも、直接触れ合う場面は大幅に減っています。そうした距離を保ちながら、対人関係をうまく築くことの難しさを訴える声が聞かれました。■「外に出るのを嫌がる…」登校拒否が心配そのほかにも、さまざまな不安の声が集まっていました。「ネット依存が心配。第二波で休校になれば、また学習タブレットやパソコンなどの電子媒体がますます主流になるだろうし、これから必要ではあるけれど、不安です」(神奈川県 40代女性)「勉強面も気にかかりますが、体の事ですかね、一番は。何カ月もの臨時休校から明けてすぐに元の学校生活に戻す。自分の息子だけかもしれませんが、体がついていけず時々熱を出す」(北海道 40代女性)「家にいれば安心だと記憶されてしまった。外に出る事が嫌になり、学校に行きたくないと言うことがあります。このまま登校拒否にならないよう親として頑張りたいです」(神奈川県 50代女性)「学校や習い事が休みになると、『このままずっとナシでいい』と言うように。自粛って便利な言葉だなと感じています。面倒なことは、コロナが落ち着いたらって言えば勝ちですから」(東京都 30代女性)「少しの風邪症状で学校を欠席しなくてはいけなくなる。まだ低学年で1人で留守番できないので、在宅ワークができない仕事をしている身としてはかなり痛い」(愛媛県 30代女性)今現在だけではなく、今回の感染症は落ち着いた後も、その影響が子どもたちに大きく残ってしまうのではないかと、心配を抱えている親もいるようです。■子どもたちに「生きる力」を身につけさせるにはコロナ後の世界への心配が尽きない今、どういった心持ちで私たちはいればいいのでしょうか。コメントの中にもそのヒントがたくさんあったので、ご紹介したいと思います。▼生きる力や心の強さを身につけて「コロナの前でも後でも関係なく、心の強さを持って生きてほしいです。顔のないネット社会に産まれたからこその強さを」(神奈川県 30代男性)「今のこの状況をどうチャンスに変えていけるかを、自分でも家族でもよく考えて、少しでもポジティブに考えられればいいなと思っています。前を見て、明るくまっすぐに生きてほしい。親としてはそれだけです」(神奈川県 40代女性)「コロナのためだけではなく、世の中は大きく変わるでしょう。そしてどのように変化するのかは誰にも予測できません。子どもには世の中に柔軟に対応していけるように、優しくしぶとく生きる力をつけてあげたいです」(石川県 50代男性)▼どんな時でも親は見守るのみ「コロナ関係なしに、子どもの進学や対人関係の心配はつきないので、特別コロナだからと心配な訳ではないし、心配してもしょうがない! 我が子を信じるしかない。元気に独り立ちできるように見守るのみ」(神奈川県 30代女性)「自分たちはいつかはいなくなるのですから、生き抜く力を身に付けてもらわなくてはいけないので、口を出さず、見守る事もあります。でも、必ず子どもたちには言います。『どうしても解決できない時は、いくらでも力になるから言いなさい』と」(愛媛県 40代女性)▼子どもたちの可能性を信じよう「高3の息子、周りの大人から見るとさまざまなことが中止になり、かわいそうだと言われますが、本人いわく『全然かわいそうじゃない、だってこれがぼくたちの高校生活だから』と。たくましく育ってほしいです」(神奈川県 50代女性)「今回の事で感じたのは、子どもの適応能力の素晴らしさです。それなりに勉強し、少し体を動かし、たくさん遊んでお手伝いもし、今与えられた状況を子どもたちなりに一生懸命受け止めてました。私が子どもの頃には経験しなかった事だけど、こんな貴重な経験はなかなかできない! 今を乗り切り成長してほしい」(奈良県 40代女性)どのコメントも思わずうなずいてしまうようなものばかりでした。感染症の収束はまだまだ終わりが見えませんが、そんな中でも今できることをやろうという前向きな親子の姿が見えてきて、自分たちも頑張ろうと、エールをもらえたように思います。最後に、こんな声も寄せられていました。「当たり前だと思っていた日々が当たり前ではなく、ありがたい幸せな日々だったとつくづく思います。災害も多かったここ数年。子どもたちの元気な姿を見て暮らせる日々は、それだけで幸せなんだと思うようにしています」(神奈川県 40代女性)いま現在、我慢しなくてはいけないことが多い日々が続いています。しかし、コメントにもあるように、「日常ははけっして当たり前ではなく、幸せな日々なんだ」という実感は、きっと誰もが抱いていることと思います。新しい生活様式の元、これまでできていたことができなくなったり、生活に変化が訪れて、戸惑いがあるのも事実ですよね。ただ、どんな日常でも家族が健康に笑顔で過ごせる日々というのは、けっして当たり前ではなく、貴重なものなのだと気づかされた人も多いことでしょう。これからの世界はまだまだ想像もつかず、不安を抱いている人も多いとは思います。ただどんな時代に合っても未来が不透明なのは変わらないこと。困難な時代に合っても、前を見ようとする人々も多く、打ち克とうと努力している人たちも多くいます。親としても子どもたちのタフな精神に励まされた人もいるでしょう。だからまずは子どもの力を信じて、大切に過ごしていければいいなと思います。Q.コロナ後の世界で親として不安なことは?アンケート回答数:4144件 ウーマンエキサイト×まちcomi調べ
2020年10月13日「3年生くらいまでは勉強面で心配することなんてなかったのに……」「高学年になった途端に授業についていけなくなったみたい……」このように、それまで優秀だと思っていたわが子が、学年が上がるにつれて成績が落ち込んでしまうケースはよくあるといいます。今回は、高学年で成績が伸びなくなる原因と改善策について解説していきましょう。優秀だった子が高学年で急に伸び悩むのはなぜ?小学校4年生くらいまでは成績が優秀で、家庭学習もしっかりできていたのに、高学年になって急に伸び悩んだり、勉強面での悩みが出てきたりするケースがよく見られます。『5歳から始める最高の中学受験』(青春出版社)の著者で教育専門家の小川大介さんも、長年の経験から「さまざまな家庭の教育相談を受けてきたが、『高学年になってから成績が伸びなくなった』という相談が非常に多い」と述べています。当然ですが、高学年になると学習内容自体が難しくなり、抽象的な概念を理解して読み解かなければならない問題も増えてくるでしょう。3年生くらいまでは「なんとなく」で解けていた問題が、4年生以降ではしっかりと理解できていなければ正解できないような学習内容へとシフトしていきます。だからといって、全員が伸び悩むわけではありません。むしろ、それまでは特に勉強面で目立っていなかったのに、学年が上がるにつれて、めきめき成績アップするような子もいます。「高学年から伸び悩む子」と「高学年から伸びる子」、その違いについてひもといていきましょう。高学年で成績が伸びなくなる子の共通点高学年で成績が伸びなくなる子には、いくつかの共通点があります。それには、親の関わり方が少なからず影響しているようです。■習い事でスケジュールがぎっしり!前出の小川さんは、「小さい頃からたくさんの習い事をさせている家庭では、小学4年生ごろから成績が伸び悩むケースが多い」と指摘します。月曜は学習塾、火曜は水泳教室、水曜はサッカー、木曜は……と休みなく習い事をさせていませんか?小川さんによると、「こういう子はみんな、低学年まではいい成績を取り続ける」のだそう。しかし4、5年生あたりから、一生懸命勉強しているのになぜか成績が伸びにくくなるといいます。■好奇心を育む経験が不足している小川さんは、高学年で伸び悩む子と学年が上がるにつれてぐんぐん伸びる子との違いについて、「小さいときにどれだけ夢中になれる体験をしてきたかどうか」であると述べています。学びの根っこにあるのは “好奇心” 。楽しくて夢中になれるものに対する「もっと知りたい」と学習意欲をかき立てられるような経験が、その後の勉強への向き合い方に深く通じるのです。■親に言われるから勉強していただけ学習習慣を身につけるには、自らの意志で勉強しているのだという意識が不可欠です。千葉大学教育学部附属小学校の松尾英明先生は、「誰かに命令されて嫌々やるのは習慣ではない」と話します。それまで親の言うことに従順だった子どもが、高学年になり自我を主張し始めると、「親に言われたから勉強するなんていや」と反抗するようになるケースも。■なんのために勉強するのかを理解していない上で述べたように、「親に命令されたから勉強する」という意識を持ち続けると、高学年になって物事を深く考えるようになり「そもそも、なんで勉強しなきゃいけないの?」「なんの役に立つの?」「これって意味あるの?」と自問自答するように。勉強の目的が「よい成績をとるため」でストップしていると、その先の未来を思い描けなくなります。その結果、勉強する意欲がみるみる低下していくのです。「高学年にぐんぐん伸びる子」になるために学年が上がるにつれてぐんぐん伸びる子は、幼いうちから “伸びる素地” を育んでいます。それは、親のちょっとした声かけや接し方、休日の過ごし方といった日常生活で育めるものばかり。ぜひ参考にしてみてください。■夢中で遊ばせる!小川さんは「子どもは楽しくて夢中になれるものに対しては、学びのセンサーが全開になる」と話します。好奇心が刺激されたものに興味をもち、それを知りたいと行動に移すことで、身をもって勉強への取り組み方を学べます。その際に親が心がけるのは、「夢中になっている子を否定したり邪魔したりせずに温かく見守る」こと。小川さんによると、「親の愛情を感じながら好きなことをして遊ぶというのは、なによりの安心感と幸福感をもたらす」そうです。さらに、幼少期に「たっぷり遊んだ」「納得がいくまでやり遂げた」という経験をした子は、ここぞというときにものすごい集中力を発揮するといいます。■振り返りの時間を大切に習い事でスケジュールを埋め尽くしてしまう弊害として、「振り返りの時間がなくなる」ことが挙げられます。なにかを学んだら、それを振り返り、反復することで吸収できます。つまり、習い事でもなんでも「やりっぱなし」は意味がないのです。毎日のように習い事に通い、家でのんびりする時間がなくなってしまうと、大事な振り返りの時間が失われてしまうでしょう。時間の使い方にもっと余裕をもたせれば、学んだことをより効率的に吸収できるというメリットもあります。■積極的にお手伝いをさせよう!高学年でも伸び続ける子にするために、小川さんは「日常のあらゆるシーンを学びの場にする」ことをすすめています。その代表的なものが “お手伝い” です。料理、洗濯、掃除、買い物……お手伝いには学べることがたくさんあるそう。特に買い物は計算力を高め、料理は段取り力を高めるので、ぜひ積極的に手伝わせましょう。小川さんは「勉強ができる子はたいてい段取り上手」と断言しています。高学年で重要となる “勉強のスケジュール管理” ができるようになるには、家事を手伝いながら段取り習慣を身につけるのがおすすめ。親子の絆も深まります。■勉強したくなる環境をつくる前出の松尾先生は、「『勉強しなさい』と親はひとことも言っていないのに、きちんと勉強する子は一定数いる」と述べており、その親の共通点として、「子どもが勉強するようにうまくリードしていること」を挙げています。具体的には、博物館や科学館に連れて行ったり、普段の親子の会話のなかに、うまく勉強の要素を取り入れたりしているそう。たとえば、子どもが学校で習ってきたことをクイズにするといいでしょう。「難しいけどできるかな?」と子どもの興味ややる気をくすぐり、日常会話のなかに自然に学びの要素を取り入れることで、日々の暮らしと勉強がより密接につながります。***高学年からも積極的に勉強に取り組めるように、幼いうちから「知らないことを知るのは楽しい!」という経験をたくさんさせましょう。どんな小さな子にも、知識欲や学習意欲は備わっています。親のちょっとした声かけや接し方で、子どもの「学びたい気持ち」はぐんぐん育まれますよ。(参考)プレジデントオンライン|「教育熱心な親の子」が4年生で潰れる根本原因東洋経済オンライン|中学受験「高学年で伸び悩む子」の典型パターンプレジデントオンライン|自ら机に向かう子の親が欠かさない習慣STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「勉強しなさい」といい続けたら将来どうなる!?子どもの才能を摘まないためにーー
2020年10月09日「国語が得意な子」と聞くと、みなさんは「きっと読書が好きなのね」と考えるでしょう。たしかに、読書量と国語力はある程度比例します。しかし、なかには “読書が好きなのに国語が苦手な子” もいるのです。今回は、「読書好き」なのに「国語が苦手」な原因と解決策について解説していきます。意外と多い!? 「読書好きなのに国語が苦手な子」大前提として、たくさんの本を読むことで、語彙が増えたり読解力が鍛えられたり感受性が豊かになったりと、数えきれないほどのメリットがあります。その延長線上で、「国語が得意になる」と考える人がいても不思議ではありません。しかし、ただの趣味や娯楽として読書を楽しんでいるだけでは、国語のテスト問題をスムーズに解くコツはつかめません。小・中学生向けの教材研究や学習指導を行なう平山入試研究所の小泉浩明所長は、「国語のテスト問題はあくまでも論理的に考える必要があるので、読書好きな子どもでもテストの点数が悪いことがある」と指摘します。小泉所長によると、「文章を自由に解釈してよい読書と違って、テスト問題では自分勝手な解釈はできない。登場人物の心情をたずねる問題でも、文脈や心情表現を根拠に考えることを求められる」のだそう。さらには、テストでは文章を読みながら「問われているのはこのことかな?」と内容を推測しながら進めていく必要があります。問いや問題文のなかに根拠を見つけ出し、正解までの道筋をたどることができる能力こそが、国語のテスト問題の理解度につながるのです。「読書が好き」なのに「国語が苦手」な原因は?読書が好きで普段からよく本を読んでいるにもかかわらず、「国語が苦手」なのはなぜでしょう。いくつかの原因が考えられます。■原因1:ナナメ読みする癖がついている「読書が好きな子のなかには、ストーリーを追うことが楽しくて “ナナメ読み” をしている子も多い。そういう読み方では、国語の成績は上がらない」と話すのは、中学受験専門塾「アテナ進学ゼミ」の設立者・宮本毅さん。それには “親のほめ方” も大きく影響しているそう。読書をしている子どもが「もう読み終わったよ!」と報告してきたら、どのような言葉をかけますか?おそらく、ほとんどの親は「もう読んだの?すごいね!」とほめてしまうのではないでしょうか。宮本さんは「このほめ方こそが、子どもの国語力を低下させている」と指摘します。ほめられると子どもは嬉しくなり、「もっと早く読んでお母さんを喜ばせよう!」と早読みするようになります。その結果、文字を一字一句きちんと読み込まずに、どんどんナナメ読みへと走るようになるのです。国語のテストでは精読する力が求められるため、ナナメ読みの癖は弊害にしかなりません。■原因2:読むジャンルが偏っている教育評論家の石田勝紀さんは、「これまで3,500人以上の小中高生を直接指導してきたなかで、『読書好きでも国語ができる子とできない子の違い』について、ある特徴が見られる」と話します。それは、好んで読んでいるジャンルが「小説・物語系」か「説明文・論説系」か、という違いです。石田さんによると、読書好きで国語が苦手という子は、小説や物語ばかりを好んで読む傾向があり、読書好きかつ国語が得意という子は説明文・論説系を読んでいるそう。物語系と論説系では、文章構造が根本的に異なります。つまり、読んでいるときの “思考のプロセス” がまるで違うのです。物語・小説系の基本的な文章構造は、時系列に沿っていることが多く、登場人物たちになんらかの出来事が起こり、心情が変化する様子を描写しています。一方で、説明文・論説系は基本的に「序文・本論・結論」という構造で成り立っており、論理的展開が明確です。論理的思考力が備わっていないと、国語のテスト問題を読み解くのは困難でしょう。■原因3:論理力が身につかない読み方をしている国語のテストでは、論理的思考に基づいた読解力が必要不可欠です。先ほど述べたように、物語の世界に浸って情緒を育んだり、ストーリーを追いながら感情の起伏を楽しんだりする読書と、論理力を駆使しながら読み解く読書は別物であると考えていいでしょう。『論理力は小学6年間の国語で強くなる』(かんき出版)の著者・小川大介さんは、「国語のテスト問題では、素材文(問題を解くために与えられた文章)を読んでいない人でも『ああ、なるほどね』と理解・納得できる答えを求めている」と話します。【問題例】「気がすすまないがしぶしぶ一緒に行った」とありますが、それはどういうことですか? 【考え方】「登場人物に起こった出来事」+「それまでの事情に基づくその人物の受け止め方」+「その結果生まれる感情」をうまく取り入れながら、素材文を読んでいない人にも理解してもらえるような答えを考える。 【解答例】たけしは母親とけんかをしたばかりなので顔も見たくなかったが、祖父のお願いを断ることができずに仕方がなく母親とともに出かけた。 小川さんは、「国語における物語文の読解は、客観的理解を軸に置きながら、答えを見つけていくもの」だと述べています。論理力がある子というのは、文章を読んでいる自分以外に「世の中の一般の人の物事のとらえ方や知識」も意識できるのだそう。一方で、読書が好きで表現力も豊かなのに、テストで高得点がとれない子は、自分だけの世界に陥っている傾向が強いといいます。つまり、設問に答えているつもりでも、実際は自分の感じたことをただ述べているだけに過ぎないのです。親子の会話が国語力アップにつながる最後に、「読書が好きだけど国語が苦手な子」が「読書が好きで国語が得意」になるためにはどうしたらいいか、いくつかご提案します。■早読み禁止!1冊をじっくり読み込む訓練を前出の宮本さんは、ナナメ読みの癖がついてしまったのなら、精読力をつける工夫をすべきだと述べています。先ほど述べたように、「早く読めたこと」ばかりを評価してほめてしまうと、子どもは「お母さんにほめられるために、適当でいいからパパッとやっちゃおう」と勘違いするそう。宮本さんは、「10冊の本をナナメ読みするくらいなら、1冊の本をじっくり何度も読み込んだほうがいい」とアドバイスしています。■読書の前に “親子の会話” で語彙を増やす国語が得意な子の共通点のひとつとして、宮本さんは「親子でよく会話をしている」ことを挙げています。もちろん読書は語彙を増やすには最適な手段ですが、言葉の意味が曖昧なままたくさんの本を読ませても結局理解できないでしょう。親はたくさんの本を与えるよりも、たくさんの言葉を投げかけてあげるべきなのです。その際に気をつけるのは、「子ども扱いせずに、大人と同じように難しい言葉を交えながら会話する」こと。それにより、子どもはたくさんの言葉を吸収することができます。■読後は論理的思考力を鍛えるアウトプットを親子で本の感想を語り合う機会をつくるのもおすすめです。ただ「おもしろかった」だけではなく、どんな場面のどんなところに心が動かされたのか、深い部分まで詳しく語り合いましょう。また、「主人公は○○したけど、僕だったら△△すると思う」など、自分に置き換えてみるのも、物語への深い理解と考察につながります。***「読書が好きなら、当然国語も得意なのでは?」と思われがちですが、実際には「読書好き」イコール「国語が得意」とはならないようです。国語を得意にするためには、家庭でのちょっとした努力と、本への向き合い方を少し見直す必要があるでしょう。(参考)ベネッセ 教育情報サイト|読書好きなのに国語テストが苦手なのはなせ?専門家が解説ベネッセ 教育情報サイト|読書好きなのに問題文だと思考停止の小4男子に、受験の専門家がアドバイス中学受験ナビ|今一度立ち止まって中学受験を考える|読書が好きなのに、国語の成績が伸びないのはなぜ?東洋経済オンライン|読書好きな人がなぜか「国語が苦手」な真の理由日経DUAL|読書好きなのに国語で高得点を取れない子の弱点
2020年09月20日近年、数値で測れる学力などの「認知能力」だけでなく、「非認知能力」の重要性が話題となっていますね。「非認知能力」とは伝達力・想像力・発想力・協調性など生きる力に直結する力のこと。その中でも、想像力や伝達力を鍛えるのにぴったりな遊びが「お話作り」です。わが家の子どもたちの想像力と表現力がグンとアップしたと感じる取り組みを紹介します。お話作りゲーム知ってる?想像力を鍛える脳トレ遊びお話作りゲームというのは、題材を元に自分でお話を作る遊びです。遊び方は、・絵カードを見てお話を想像する・「いつ・どこで・誰が・何をした」の4つの言葉をランダムで並べて文章を作るというもの。準備するものも少なく、家だけでなくお出かけ先でも家族みんなで楽しめます。小学校受験対策にも!絵カードを使ったお話作り小学校受験で出題されることもある「お話作り」。例えば「並んでいる4つの絵を見てお話を考えましょう」という問題が出題されます。試験と考えると堅苦しいですが、実はとっても楽しい遊びなんです。お話作りは、自由な発想の中に生きる子どもたちには得意なことかもしれません。【用意するもの】・写真やイラストなどお話作りの題材となるもの自宅にあるものでもOKですが、お話作り用のカードが市販されています。それを用意すると簡単に始められますよ。【遊び方】まずは1枚の絵から、自由にお話を作ってもらいます。おそらく最初は絵の説明になってしまうでしょう。その時は登場人物の感情や情景について、深掘りする質問を投げかけてみます。例えばこの絵を見て、子どもが「動物たちが集まってパーティーをしている」と言った場合。「なんのパーティーなんだろう?」「誰が主役なのかな?」「飾りつけは誰がしたのかな?」など、カードにある要素について質問します。そうすると単調な説明に肉づけがされ、お話らしくなっていきます。このやりとりを繰り返していくと、だんだんとストーリーを構成できるようになるのです。次は、複数枚のイラストを使ってみましょう。複数の題材があると、起承転結のあるストーリーが作りやすくなります。こちらも最初は状況説明になりがちなので、深掘り質問をしていきましょう。そうすると子どもの頭の中に隠れていた豊かな発想が次々と表れます。カードを時系列順に並べるミッションも加えると、よりレベルアップした遊びになります。おかしな文章で大爆笑!紙とペンだけでできるお話遊び私が小学校時代に担任の先生との遊びでとても思い出に残っているものがあります。まず、「いつ・どこで・誰が・何をした」この4つの言葉を自由に考え、紙に書きます。シャッフルして、ひとつずつ紙を引いていくと…あら不思議。それはそれは面白おかしい文章ができあがるのです。例えば、わが家ではこんな文章ができました。【用意したカード】・いつ:「ママの誕生日に」「クリスマスに」「地球最後の日に」「大晦日に」・どこで:「オーストラリアで」「動物園で」「幼稚園で」「デパートで」・誰が:「僕が」「仮面ライダーが」「じぃじが」「小島よしおが」・何をした:「おならした」「逆立ちした」「爪を切った」「オッパッピーした」【完成した文章】「地球最後の日に幼稚園でじぃじがオッパッピーした」完全にハチャメチャゃな文章になりましたが、息子は大笑い。意味がわかる文章が完成すれば大成功、そうでなくても大爆笑できるので盛り上がります。これは選択肢が多ければ多いほど面白くなるゲームです。たくさん題材を用意するか大人数で遊ぶと盛り上がります。パーティーでの余興遊びとしてもおすすめです。人に伝える文章構成の基本「5W1H」。ベースとなる「When・Where・Who・What」について楽しく学べます!知らない言葉が出てきたら、チャンス到来!お話作りゲームをすると、今子どもがもっている語彙力や文章力がよくわかります。日本語は豊かな言語で、ひとつの意味でも複数の表現法がありますよね。幼いうちは語彙数が少なく単調な表現になりがち。お話作りをすることで、表現力アップにも繋がります。もし題材の中で知らない言葉が出てきたら、チャンス到来!図鑑や辞書を使って一緒に調べてみましょう。「百聞は一見に如かず」の言葉通り、ただ教えるより自分で調べる方が深くインプットされます。わが家では知らないことが出てきたらすぐに調べるようにしています。知りたかった情報以外も得られることがあり、学びが広がりますよ。わが家で愛用中!お話作りにおすすめの知育玩具わが家で実際に使用しているお話作り用の知育玩具を紹介します。【100てんキッズ お話づくり絵カード】写真右幼児教室のこぐま会が監修している絵カードセットです。4枚のカードで構成されるお話が12話分入っています。それぞれのカードの裏面には例文が書かれているので、読みの練習もできます。カード1枚でも、4枚でも遊べます。お話作りのスターターキットとも言えるでしょう。【イーブー (eeBoo) テルミー・ア・ストーリー 森の動物たち】写真左動物たちが主人公でイラストがとてもかわいい絵カードです。様々な場面のカードが36枚入っています。「1枚の絵を見て、お話を考える遊び」「1枚のカードから始め、カードを加えていきお話を発展させる遊び」「1人ずつ順番にカードを引きお話をつなげていく遊び」と、シンプルですが多様な遊びができます。【ローリーズ・ストーリー・キューブス】写真中央さまざまなモチーフが描かれたサイコロが9つ入っています。好きな数のサイコロを振り、出ためのイラストを元にお話を作りあげる遊びです。情景が描かれた絵カードと違い、イラストはたったひとつ。そこからストーリーを考えるので、非常に想像力が鍛えられます。コンパクトサイズなので、おでかけのお供にぴったりです<文・写真:ライター秋音ゆう>
2020年09月15日\チェック!/うちの子どうしたら勉強してくれる?こんな場合はオンライン学習が合うかもUpload By LITALICOライフUpload By LITALICOライフUpload By LITALICOライフ「学校の勉強に集中できない」「マイペースすぎて学校を窮屈に感じている」というお悩み。LITALICOライフの勉強会や個別面談でも、よく耳にします。Upload By LITALICOライフオンライン学習ってどんな学習スタイル?過去の学年の学び直しもできる2019年、文科省は「GIGAスクール構想」を打ち出しました。タブレットやインターネットを使い、それぞれのお子さまに最適な学習スタイルを実現させる構想です。オンライン学習の良い点は、自分のペースで進められること。そのため、苦手な科目を重点的に学んだり、好きな科目を先取りして学ぶこともできます。大人数で同じペースで進めることが苦手なお子さまも、主体的に取り組める良さがあります。Upload By LITALICOライフUpload By LITALICOライフ通学するスタイルのオンライン学習もある!「オンライン学習」というと、どんなものを思い浮かべますか?学校から帰ってきた放課後、自宅でタブレットなどで学習する…というイメージもあるかもしれません。実は今、授業そのものがオンライン化しているものもあります。高校の選択肢では「通信制高校」はずいぶん認知されてきましたが、中学でも一部出てきました。家で一人でもくもくと机に向かうスタイルのものもあります。一斉指示が通りにくかったり、周りがガヤガヤしていると集中できない、というお子さまには良いかもしれません。先生やお友だちと関わるタイプだと、スクールに通学し、自習室で自分のペースで進めるスタイル、家で、ビデオ会議を用いて朝礼やグループワークをするスタイルなどもあります。Upload By LITALICOライフUpload By LITALICOライフUpload By LITALICOライフオンライン学習はあくまでも選択肢の一つ。他の選択肢や、お子さまに合った環境の整理は、無料勉強会でお伝えしていますもちろん、オンライン学習は、あくまでも選択肢の一つです。学習方法や合うと感じる環境は、お子さまによってそれぞれです。Upload By LITALICOライフLITALICOライフでは、保護者さまに向けた無料勉強会を開催中です。オンラインでの開催なので、ご自宅からご参加いただけます。「グレーゾーン向け 個性を伸ばす「中学・高校受験」発達に特性のある子にあった個性を伸ばす進路の選択肢勉強会」では、STEAM教育やものづくりの特色がある学校、海外留学についてなど、多様な学びの環境についてもお話します。「個別でより具体的に話したい」という場合は、勉強会参加後に希望すると、個別面談で進路や教育費など幅広い話をすることもできます。Upload By LITALICOライフ「不登校の支援と将来への準備」がテーマの勉強会は、不登校だけではなく、“お子さまが学校を行き渋っている”“不登校ではないけれどさまざまな選択肢を知りたい”、という方にもおすすめです。義務教育以降の高校進学の選択肢として、通信制・サポート校や高等専修学校、チャレンジスクールなどについてもお話します。Upload By LITALICOライフどの勉強会でも、チャットで質問できる機能や個別面談の案内をしています。少し興味がある、という方はお気軽にご参加ください。LITALICOライフでは、幼児教育や中学・高校受験、キャリア支援など、さまざまな専門領域をもつコンサルタントが、年間2,000以上のご家庭へ勉強会や個別面談を行っています。これらの知識やノウハウを基に、より多くのご家庭の困りごとや将来への不安を、少しでも「安心」に変えていけるような情報をお届けするメルマガを配信しています。想定配信内容・発達障害のある子にあった進路や自立に関するヒントやイベント情報・発達障害のある子の特性や個性を活かす手立てやお役立ち情報・読者からの子育てのお悩みQ&AなどUpload By LITALICOライフLITALICOライフはお子さまとご家族が「自分らしい人生」を歩んでいくために障害分野とファイナンス、その両方の専門家としてライフイベントやライフプランの見直しを相談できるパートナーです。社会資源やサービス・お金の知識といった幅広い内容を身につけることができる勉強会や、専門領域をもつコンサルタントとの個別面談・プランニングを提供しています。Upload By LITALICOライフ
2020年09月13日帯同するコーチによって下の学年の起用機会、頻度が変わるチーム。積極的に起用してくれるコーチばかりなら経験を積めるけど、起用してくれないコーチの帯同が続くと試合に出られない。これが続くと、試合に出られる学年と出してもらえない学年の子たちで技術にもモチベーションにも差がつく。小学生年代なら均等に出場機会を与えてくれてもいいのでは?と悩むお母さんからのご相談です。出場機会の問題にモヤモヤしたり悩んでいる保護者の方も多いですよね。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、取材で得た知見をもとにアドバイスを授けますので参考にしてください。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<試合多すぎ!なのに上手な子ばかりが延々試合に出続ける不条理を何とかしてほしい問題<サッカーママからのご相談>こんにちは。息子(11歳)のチームの指導者についてご意見を聞かせて下さい。チームには10人以上コーチがいるのですが、監督がいません。コーチは、卒業生のお父さんや、在籍中の子の父親などのボランティアコーチです。子どもたちの人数が多くないので2学年で試合に行くことが多いのですが、下の学年の選手起用機会、頻度が試合に帯同するコーチによって違います。積極的に下の学年を起用するコーチだと、上の学年の試合でも必ず一度は出場させてもらえたりしますが、そうでない方だと、上の学年の試合ではベンチにいるだけ。練習試合でも、数分の出場のみ......ということもあり、試合当日のコーチが誰になるかによって考え方が変わる為、不公平が生じています。それが在籍中何年も続くとたくさん試合経験をした子(学年)と、そうでもない子(学年)に分かれてしまうのです。下の学年の起用に積極的なコーチが担当する学年の子たちはいつも楽しそうですし、たくさん試合経験を積めて上手くなっていますが、そうでないコーチが担当する学年の子たち(息子含む)は、モチベーションが上がらないようで淡々としていますし、出場機会の多い子たちに比べると上手くないです。機会の不公平さに、親の方も何だかモヤモヤした気持ちを抱えてしまいます。監督をたてない方針は構わないのですが、コーチたち全員のまとまった方針がないので育成の面で矛盾が生じていると思っています。まだ小学生なので、出場機会は均等にしてくれてもいいのでは。と感じているのですが、このような状態でも親は黙ってみているべきでしょうか。<島沢さんのアドバイス>ご相談のメールをいただき、ありがとうございます。毎回ご相談のメールだけでは判断が難しいものですが、今回は特に難解な事案ではあります。下の学年の選手を起用する機会や頻度が試合に帯同するコーチによって違っていて、試合当日のコーチが誰になるかによって変わる――という理解を私はしました。そうすると、下の学年の選手もたくさん出場させる人と、そうでない人が入れ代わり立ち代わり現れるわけで、均(なら)せば均等ではないかと感じます。違うのでしょうか。■黙って見守ることがマストではない。何をどう伝えるかがポイントいただいたご相談文だと、息子さんは現在「下の学年」ですね。そして、コーチは息子さんら下の学年を試合に出さないということですね。しかし、その方は今度は息子さんが「上の学年」になったときは、息子さんたちを出場させるということになります。例えば2年間くらいのスパンで言えば、試合の出場時間は同じになりそうな気もします。もちろん、このやり方がいいとは言いません。「小学生なので、出場機会は均等にしてくれてもいいのではと感じている」というお母様のご意見、もっともです。そして、親が黙ってみているべきか?という質問については、黙って見守ることがマストだとは私は思いません。このお母さんのケースでは、誰に対し、何を、どのように伝えるかが課題だと思います。クラブ(もしくは少年団)側が、例えば「みんなで作る、みんなのクラブ」をモットーにして、「みんなで意見を出し合っていいクラブにしましょう」と呼びかけているようであれば、意見はしやすい。しかし、息子さんが所属するクラブは、そんな感じでもなさそうです。では、どうするか。■一人で悩まず同じ意見を持つ保護者を集めようまずは、仲間を作りましょう。同じように、子どもたち全員に試合の出場機会を与えてほしいと考えている保護者を集めるのです。ひとつの要望として「こんなふうに考えてほしい」と話をまとめることが先決です。息子さん個人のことでとどまらないよう、チームの課題として考えてもらわなくてはいけません。次に、クラブの代表の方に要望を伝えましょう。監督は置かない慣習のようですが、ひとつの任意の集団なので一番上に立つ代表格の方はいらっしゃるかと思います。徒党を組むというイメージではなく、あくまでもひとり一人の子どもが楽しくサッカーをするために考えてほしいと伝えるのです。この連載の前回(91)で、『上手な子ばかりが延々試合に出続ける不条理を何とかしてほしい問題』を書いています。お母さんと同じように、子どもが試合に出られない不条理を訴えられています。私はこの記事の文中、「日本の少年サッカーの全員出場させない悪しき慣習には、四つのマイナス面がある」と書き、それを説明しました。サカイクのサイトからこの部分をコピーして渡してもよいかと思います。その際、絶対に感情的になってはいけません。まずは、日ごろボランティアでコーチを務めてくださることに感謝の意を伝え、できれば笑顔で主旨を伝えます。その際、当方の記事以外に、サカイクなどで報じられている他クラブや少年団の実践例や、池上正コーチの本なども添えて渡してもよいかと思います。そのように苦心されても、代表の方やコーチの方々からまったく話を受け付けず「クラブのことはクラブに任せて」と言われる可能性は高いでしょう。そもそも、日本サッカー協会のキッズ指導や、ライセンス取得の際に「試合に全員出場させる」ことは規定化されていません。ルールもなく、罰則もないので、コーチたちは技術が秀でた子どもの出場時間が長くなる傾向があります。したがって、全員を出場させるメリットや、逆に全員をプレーさせないリスクが伝えられていません。このため、多くのクラブにおいて、個人の育成やサッカーの普及、チームの底上げよりも、一つ一つの試合を勝つことにベクトルが向いているのが実情です。でも、だからといって、お子さんを他のクラブに移籍させるとか、サッカーをやめさせたりしないでください。■中学に入るまではなるべく楽しめるようにサポートしてあげること(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)11歳なのですでに上級生です。サッカーを遊びだととらえて、息子さんが中学生になるまでなるべく楽しめるようサポートしてあげてください。ゲーム形式の練習をたくさん行うスクールに通うことも一考です。国内でも海外でも、好きなチームの試合を親子でオンラインやテレビで一緒に観てもいいでしょう。試合に出られないことが、ダメだ、情けない。試合に出られないから上達しない。そんなネガティブな事柄を発信しないほうがいいです。試合に出られず一番残念なのも、焦っているのも息子さん本人です。子どもは親が思っている以上に、いろんなことを感じているし考えてもいます。試合以外の練習でサッカーを楽しむ。ミニゲームや紅白戦を目いっぱい楽しむ。そんな姿がお母さんはとても誇らしい。そんなことを伝えましょう。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2020年08月19日新型コロナウイルスの影響で、私たち家族の住む東京都でもおよそ2か月もの間、子どもたちは学校へ通うことができませんでした。特に、新1年生は学校生活が始まる前に休校になってしまったので、授業の遅れに不安を抱える保護者も多いのではないでしょうか。そこで、今回は現在高学年になる私の娘が、小学校1年生の夏休みにやっておいてよかったと感じる学習についてお話します。夏休み、漢字検定と算数検定を目標にしてみよう!私の娘が通う小学校では、先日保護者会が行われ、担任の先生からは、「1学期の学習範囲はほぼ終わったものの、休校で登校日数が少なく、駆け足で進んでしまった感があります」とお話がありました。また、逆に低学年などは、進度が遅く学習すべき単元が終えられなかった学級もあるかもしれません。親としては、わが子が1学期の授業内容をきちんと理解できているのか、覚えているのか不安になりますよね。算数は、わからないまま放っておくと苦手意識がついてしまうかもしれないし、漢字も1学期の範囲を覚えきれていないのに、新学期どんどん新しい漢字が出てくるのも負担になります。そこで、おすすめしたいのが、夏休みにスタートする算数検定と漢字検定の勉強です。検定を受けることで苦手意識が薄くなった娘は1年生の時に漢字検定と算数検定の両方を受験しており、その後も何回か漢字検定を受けています。検定後は、いつも母子ともども「やってよかった!」と強く感じています。初めて検定を受けた1年生の時。夏休みから少しずつ勉強し、10月に算数検定を受験し、11級に合格できました。当時は、算数の宿題にはとても時間がかかっていたのですが、その後は「算数はおもしろい!」と言うようになりました。また、漢字検定も、1年生の2月に10級を受験しました。結果は、漢字が苦手だったにも関わらず満点合格でした。どちらの検定も、受けた後に娘の勉強に対する苦手意識が薄くなっているのが感じられました。どちらの検定も対策しやすいのが◎漢字検定は、低学年の場合は試験範囲になる文字数も少なく、1年生に該当する10級では合格率が95%を超えることも。算数検定は、公式サイトで過去問をみることができます。1年生に該当する11級は、計算問題以外は、一見パズルのように見えるので、子どももそれほど抵抗なく問題に取り組めると思います。つまり、どちらの検定も、子どもの学年に該当する級を受ける場合、子ども自身も比較的勉強しやすく、親も教えやすいのです。結果的に、高得点を狙うこともできるかもしれません。継続は力なり!検定を利用して自信を養おう子どもに勉強させ続けるのは、とても根気がいります。しかし、算数検定や漢字検定対策を夏休みから無理のない範囲で少しづつ続けておけば、2学期に「夏休みの間がんばった!」という自信につながると思います。実際に検定を受けてみたら、子どもにも目に見えてわかりやすい成果がでるかもしれません。そこでもし高得点が取れたら、さらに自信になるし、また、残念ながら結果が出なかったり、得点が低かったとしても、目標に向かって頑張れたことはよい経験になると思います。新型コロナウイルスが流行している現在、状況によっては中止になるおそれもありますが、現時点ではどちらの検定も10月に試験日が設定されています。夏休みから漢字検定や算数検定を受けられるよう準備しておくことで、2学期に自信を持って臨めると思います。■日本漢字能力検定■日本数学検定協会(幼児・小学生)<文・写真:ライターeurope>
2020年08月08日監督が片っ端からカップ戦に申し込む。空いた休日も練習試合を入れたり試合が多すぎ。それなのに監督やコーチの子、うまい子しか試合に出さない。しかも、家族と過ごすことを前提として設けられている「家庭の日」はスポ少などもお休みの日とされているのに、それも無視。考えを改めてほしいけど、指導者に意見するなんて何事だという空気もあって言いにくいし、ほかに移籍するチームもない。どうすればいい?身も心も疲労困憊。というお母さんからのご質問です。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、取材で得た知見をもとにアドバイスを授けますので参考にしてください。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<コーチの差別的な対応があってサッカーをやめてしまった問題<サッカーママからのご相談>小学5年生の息子がスポーツ少年団に所属していますが、試合が多すぎて困っています。地域のリーグ戦に加え、他チームが主宰するカップ戦に監督が片っ端から申し込み、かろうじて空いていた日も自チームでカップ戦を主宰したり、急遽練習試合をいれたりするので土日がほぼ全て潰れます。地域では毎月第三日曜を「家庭の日」としてスポ少の活動を原則禁止していますが、監督は全く無視です。試合数が多い分、チームのいろんな子が起用される機会があればまだ良いのですが、監督やコーチの子と一部の上手な子ばかりが延々と出場し、そうでない子は最後の数分しか出られません。指導者に物申せば、ますます息子の出場時間が減らされるのが怖くて言えません。都会ではきちんと話し合いができるのかもしれませんが、私の地域では監督が偉い立場で、親が口を出すなんて何事だ、という古い価値観があります。移籍も考えましたが田舎のため他に行くチームがありません。せめて日曜日だけでも休ませて欲しいと思っております。私は平日フルタイムで働いており、土日はスポ少の手伝いで身も心も疲労困憊なのですが、世のサッカー少年の親はみんなこんな大変な思いをされているのですか。無理かもしれませんが、監督に何とかわかっていただくための伝え方などはあるのでしょうか。よろしくお願いいたします。<島沢さんのアドバイス>ご相談のメールをいただき、ありがとうございます。お母さんの「全員出場させてもらえない」という悩みは、少年サッカーが抱える大きな問題です。公式戦だと固定メンバーになりがちな問題は残しているものの、練習試合は平等にプレーさせるコーチは増えてきています。ところが、このご相談でお母さんは「試合数が多い分、チームのいろんな子が起用される機会があればまだ良いが、監督やコーチの子と一部の上手な子ばかりが延々と出場し、そうでない子は最後の数分しか出られない」と書かれています。ということは、練習試合でも「最後の数分だけ」なのかもしれませんね。サッカーはもちろん、スポーツは試合が一番楽しいに決まっています。しかも、お住まいが地方のほうで、通えるチームがそこしかない、という八方ふさがりな状態です。お母さんのやり切れない思いが伝わり、こちらまで胸が苦しくなってきました。■出場機会の偏りには四つのマイナスがある日本の少年サッカーの、全員出場させない悪しき慣習には、四つのマイナス面があると私は考えます。ひとつは、チーム力の底上げができないことです。上手な子だけが延々試合に出続ければ、出られない子のスキルは上がりません。対人スポーツのサッカーは力が匹敵した相手とプレーすることで成長していくのに、チーム内で実力がくっきり分かれてしまうと、拮抗した場面が生まれません。そうなると、やりがいがあってなおかつ楽しいサッカーからほど遠いものになってしまいます。ふたつめは、小学生は成長とともに体格も運動能力も変わることを、指導者が考えていないことです。そこを加味せず、勝つために低学年のころから足が速い子、体が大きい子ばかり起用すると、あとで伸びてきた選手が経験を積めません。逆に、ずっと試合に出続ける子どもは、一日に何試合もプレーしなくてはいけないので、全力でプレーしなくなります。つまり、走れない選手に育ってしまう。そして、なおかつ、活動過多で、足の甲を疲労骨折する、膝を壊すといった故障を抱えるリスクが上がります。三つめは、人権の問題です。コーチは子どもがサッカーを楽しむという人権を侵害してはいけません。ところが「補欠になったなら、その悔しさをぶつけろ」などと、謎の論理を振りかざします。そんな「俺についてこい」型の指導が根強い日本は、選手よりコーチの意見が強い。そこを緩和するため、以前は「アスリートファースト」などと言われました。この言葉は、スポーツ先進国の欧米では使われません。当然の概念だからです。近頃は日本では「アスリート・センタード・コーチング」と言われるようになりました。文字通り、選手が主役。主従関係が強いままでは、選手は主体的に動けません。主体的に動けないところに、未来につながる本当の意味の成長はありません。四つめのマイナス面は、全員出場をさせる文化でなければ、スポーツは勝利至上主義が過熱してしまいます。そのリスクをとっくの昔に理解しているドイツやフランスと言った欧州のサッカー強豪国は、過熱させないよう配慮して育成してきました。ノックアウト方式のトーナメント大会が少なくリーグ戦文化が根付いていたり、全国大会が実施されないのはそのためです。ブラジルでは、数十年前に全国大会を数年続けたら、ファンタジスタと呼ばれるような面白い選手が輩出されなくなりました。そこで全国大会を廃止したら、ようやくロナウドらが出てきたそうです。■全員試合に出すべき、という考えをまだ理解していない指導者も少なくないそんなこともあって、最近は子どもを全員出場させる指導者は増えつつあります。私が行動を共にしてきた少年サッカーコーチの池上正さんはいま、全国を回って「コロナをきっかけに少年サッカーを変えよう」と環境改善に地道に取り組まれています。と、ここまでご説明したように、少年サッカーは全員試合に出るべきです。お母さんの要望はなんら間違ってはいません。ただ、一方で、そのように考えて実践する指導者は非常に少ないうえに、その指導者たちを育成するコーチングデベロッパーの方々や、都道府県、区市町村のサッカー協会のトップの方もこのことを理解していない方は残念ながら少なくありません。サッカー少年の保護者向けのサイトはほかにもありますが、そのひとつにこんな文章を見つけました。「いつかは誰もが控えになる。そういう可能性があるということを知り、保護者が先に悲観しないのも大事です。保護者の悲観は子どもに移ります。控えで居続けることさえ、全然珍しくないことです。泰然と『時期』を待ってあげてください」これは間違っています。メディアでさえ、新たな価値観に気づいている人は少ないのが実情なのです。■自分一人の力で解決しようとせず、区市町村のサッカー協会にも相談をお住まいの関係上、今の所属先以外でサッカーをする環境はないようです。非常に難しいケースですが、以下にアドバイスをさせてください。まず、「監督に何とかわかっていただくための伝え方はあるか」との質問ですが、これはお母さんだけの力では無理だと思います。例えば、ほかのお母さんと同じ考えの保護者に、上記の私がお伝えしたリスクを説明し、一緒にお願いしに行くことも一案ですが、非常にハードルが高いでしょう。したがって、区市町村のサッカー協会に相談してみてはいかがでしょうか。サカイクの悩み相談をしたらこう言われた、と説明してもいいかと思います。「家庭の日」が定められているにかかわらず、休養を子どもに与えていない点も改善を訴えてはいかがでしょうか。区市町村のサッカー協会は、そのような役目を担っています。ただし、匿名だとスルーされるので、実名で話しつつ監督本人には名前を明かさないことを約束してもらってください。■中学以降も視野に入れ、お子さんに確認してほしいこと(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)そして、最後になりますが、子どもの意思を確認してください。5年生の今の状態で、満足しているのかどうか。サッカーが楽しいのかどうか。そのうえで、お母さんが「せめて日曜日だけでも休んでほしい」と思っていることなど、伝えてみましょう。中学生でどのスポーツをするかも話しながら、続ける、辞める、ほかのことをする。サッカーは週末の試合だけ休んで、他のスポーツもやる。いくつかの選択肢の中から答えを出してください。理不尽なことを子どものうちから我慢するのもいい経験だ、などとはまったく思いません。理不尽を感じなくなるほうが不幸です。ただ、そのなかで親子で寄り添った時間は大きな宝物になると思います。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2020年08月05日お子さんが1人生まれたご家庭では、もう1人子どもを考えるケースもあると思います。実際のご相談でも、「経済的に2人目はいつ産むといいですか?」とご質問をいただくこともあります。 子育てのしやすさや体調、お仕事の状況などから、適切な年齢差もそれぞれあると思います。今回は、マネープランの観点から1歳差~5歳差までの年齢差の主なメリット・デメリットをお伝えします。 1歳差の主なメリット・デメリットメリット①受験などの行事が重複しない②育児用品や衣料品を2人目に使いやすい③市区町村からの就園奨励補助金が加算されやすい④きょうだいが、同じ幼稚園・保育園の場合、割引を受けられる可能性がある デメリット受験などの行事が2年連続になり、学用品の購入や入試の費用も連続する 2歳差のおもなメリット・デメリットメリット①市区町村からの就園奨励補助金が加算されやすい②きょうだいと同じ幼稚園・保育園の場合、割引を受けられる可能性がある デメリット受験などの行事は重複しないが、上の子の受験時期と下の子の入学時期(例:中学3年と中学1年)が重なる 3歳差のおもなメリット・デメリットメリット①市区町村からの就園奨励補助金が加算されやすい②きょうだいが同じ幼稚園・保育園の場合、割引を受けられる可能性がある デメリット受験などの行事が重複する(例:高校3年と中学3年)ため、学費等の負担が集中しやすい 4~5歳差のおもなメリット・デメリットメリット幼稚園3年間や大学4年間の時期が重複しない デメリット①教育費を支払う期間が長くなる②育児用品や衣料品を買い替えることが多い いずれのケースにしても、かかる費用に大きな差ができるというよりは、子育て期間は短くなるものの、教育費を重複して支払う期間がある状況と、子育て期間は長いものの教育費を分散させる状況のどちらがいいかを決めることになります。 実際にお子さんが生まれてから社会人になるまでの20年~25年程度の収支について表にまとめると、どの時期に多くのお金がかかるかわかりやすくなります。そのため、2人目のお子さんを考えられている場合には、表をまとめて家計全般や教育費の推移を把握するといいでしょう。 監修者・著者:ファイナンシャルプランナー 大野高志1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®(日本FP協会認定)。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。予備校チューター、地方公務員、金融機関勤務を経て2011年に独立。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用等 多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。
2020年07月14日大人も子どもも楽しめる謎解き問題を数多く編み出し、今や謎解き王子として、「今夜はナゾトレ」(フジテレビ)や「おはスタ」(テレビ東京系列)などで大活躍中の松丸亮吾さん。現在は都内で一人暮らしをしていますが、大学3年生までは千葉県の実家で暮らしていたそう。そんな松丸さんに、思い出深い実家での数々のエピソードについてお話を伺いました。■ 4人兄弟の末っ子は、損な役回り!?実は4人兄弟の末っ子という松丸さん(抱っこされているのが松丸さん)。男の子4人兄弟だと遊びはもっぱらゲームだったそう。末っ子なだけあって、いつも兄たちに負かされてばかりの日々が続きます。「昔『スマッシュブラザーズ』っていうゲームがあって、敵を場外に追い出す格闘ゲームなんですけど、100戦中99戦くらいは僕が最初に追い出されて、そこからずっとゲームが終わるまで待つ、みたいな。そんなのが続いたら全然楽しくないんで、ポンって兄弟に手を出しちゃうじゃないですか。そうすると親が来て、殴るのはよくないって僕が注意されるっていう。超いじめられて、損な役回りですよ(笑)」■ 大学受験の時もLDKのダイニングテーブルで勉強東京大学で謎解きサークルの代表をつとめていた松丸さん。日本最難関の大学に入学するために、どのような環境で勉強していたのでしょうか?「家のスペース的に子ども1人にひと部屋は難しくて、自分だけの部屋はなかったです。次兄と僕でひとつの部屋を使っていました。でもその部屋では勉強せず、大学受験の時もLDKのダイニングテーブルで勉強してましたね」キッチンからリビングが見渡せる間取りだったため、両親も安心して家事が行えるよう、自然とリビング学習が定着したそうです。兄弟の誕生日にみんなでケーキを囲んで。6人家族の食卓はいつも大賑わい。食事や勉強はいつもこのテーブルで。■ リビングの壁には、けんかの際に開けてしまった穴が!写真は松丸さんの実家リビングの一角。「今思うとリビングで過ごす時間がかなり長かったですね。家族と話す時間も長かったし、ひとりになるってことが小さいときからあまりなかったです」リビングはテレビ番組の取り合いや、ゲームの勝敗にまつわるいざこざなどでいつもけんかの発生地に。そのため、テレビが置かれているリビングの一角の壁には、けんかの際に開けてしまった穴がいまだにそのまま残っているとか。■ 念願の子ども部屋を手に入れた頃には必要なくなっていたこちらは松丸さんの実家の間取り図。子どものころは自分だけの子ども部屋が欲しくてたまらなかったという松丸さん。兄弟の成長とともに、独立して一人暮らしをする兄弟もでてきたため、やっと松丸さんの自由に使える部屋が手に入るときがきました。「そのころにはもう必要なくなってしまっていて(笑)。大学のサークルで使った備品などの保存室みたいになっちゃいました」。実家を離れ一人暮らしを始めた現在でも、子ども部屋には荷物が山積みされて物置と化しているそうです。松丸亮吾さん謎解きクリエイター。東京大学に入学後、謎解き制作サークルの代表をつとめ、現在は自身が設立した謎解き制作会社RIDDLERの代表取締役を務める。謎解きブームの仕掛け人で、多くのメディアで活躍。シリーズ累計135万部の「東大ナゾトレ」の最新刊『東大ナゾトレSEASONⅡ 第3巻』(扶桑社刊)が好評発売中。※情報は「リライフプラス vol.37」掲載時のものです。
2020年07月12日発達凸凹長男、私立中学へ!いよいよ通学開始したけれど発達障害がある長男は、小6から受験勉強をはじめ、この春私立中学に入学しました。今回は発達凸凹中学受験シリーズ、最終話。中学入学後の生活とは…?中1の壁その1「通学の壁」Upload By スガカズ自宅から中学校までの通学経路はバス→電車(2回乗り換え)→徒歩で、1時間ほど。バスや電車は予想外の事が起こりやすいので、私は1ヶ月間付き添い、二人で電車の乗り降りする場所のルールを決めながら、少しずつ付き添う距離を縮めていきました。付き添い中に電車の遅延を経験しました。遅延すると電車が一気に混むので、付き添える時に「満員電車」を経験してもらうことにしました。※この時東京の感染者数は今ほど多くはありませんでした。Upload By スガカズ通学鞄を持ったまま体を支える手段がなく揺られること十数分。体の小さい長男にとって非常に辛い時間だったようです。電車を降りるころにはクタクタでした。「今度から遅延があったら、急行ではなく各駅停車に乗る」というルールにして、学校にもその旨を伝えました。ちなみに乗り換えが少なく遅延が少ない別ルートも試してみましたが、30分早く出ないといけませんし、乗り過ごしそうだし、他社線と間違えそうな条件だと感じたため、断念しました。現在はバス停までは付き添い、その後は一人で登校しています。先日電車が混み具合が悪くなったそうで、休憩してから登校(遅刻)したのだそうです。通学中こまめに水分補給をするようにしてからは大丈夫らしいのですが、また同じようなことが起こると思うので都度模索していこうと思います。中1の壁その2「学校生活の壁」Upload By スガカズ通ってみて痛感したのは、課題のスケジュール管理が難しいという事です。授業によって提出日が違ってくるので、見通しをつけることが苦手な長男は、かなり困惑していました。家庭でチャートを作ってみようと思い、担任の先生に相談すると、先生が「同じように把握しきれない子もいそうなので」との事でクラス共通のチェックシートを作っていただけました。その他にも一つひとつの行動が慎重だったり、過集中なので周囲より行動が遅れがちになります。先日は上履きの靴紐結びに時間がかかってしまい授業に遅れたそうなので、休日の間に蝶々結びや、解けにくい結び方を改めて練習しました。壁だけではなく、成長を感じることもUpload By スガカズ通い始めて思いもよらないことがありました。小学校までは服薬をしていましたが、本人が「もうお薬を飲まないでも自分の力で頑張れる」と言いだしたのです。服薬については、医師の判断を伺うことに。家庭や学校での様子を伝えた上で、「本人の意思を尊重しよう」という結論になりました。まだ服薬をやめてから1ヵ月半しか経っていませんが、本人や担任の先生から聞く限り、明らかな困り事はないようです。Upload By スガカズクラスには似たタイプの子が数人いるようで、少しずつ友達ができてきたようです。休日に会って遊ぶことは今のところ無いですが、オンラインゲーム上で会話しながら遊んでいます。長男は小学校まで、自分の考えが見えづらく、率先した意見が聞ける機会は少ない子でした。ですが、本番直前に志望校を決めたり、実際中学校に通い出してから集団に溶け込もうとしていたり、今回のように自分で物事を決めていく様子に、母親としては非常に驚いています。本人と母親(私)の希望から始まった今回の私立中学受験。行動を促したり環境を整えるのは親の役目だと思い、試行錯誤する日々でしたが、そんな中で長男は自分の力で物事を考え、意思決定をするようになりました。まだ、見通しが付かない故の発言も多いですが、こういった経験は人生できっと生かされていくだろうと感じました。まだ中学校生活が始まったばかりで、本人はやる気に満ちあふれていますが、失敗もして落ち込むこともあるだろうと思います。ですが、その時その時の本人の意思を大事にしつつ、引き続き見守っていこうと思います。
2020年07月09日あり子のワーママ奮闘記
PUKUTY(プクティ)只今育児奮闘中!
たんこんちは ボロボロゆかい