いわゆる知能指数と呼ばれる「IQ」という言葉は誰でも知っていますが、それに対して、「EQ」というものがあります。これは「Emotional Intelligence Quotient」の略で、日本語では「心の知能指数」と訳される概念のこと。このEQの重要性を提唱し、『子どもの未来が輝く「EQ力」』(プレジデント社)を上梓したEQWELチャイルドアカデミーの主席研究員・浦谷裕樹先生に、あらためてEQとはどんなものかを教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/榎本壮三(インタビューカットのみ)幼児教育の有無でその後の人生に現れた大きなちがいかつては社会で活躍して幸せであるためには、IQが大切だとされていました。でも、どんなにIQが高くて高学歴を手にしていても社会で活躍していない人、ハッピーではない人も少なくなかった。本当に重要なものはIQではないのではないか?――。そんな疑問を持つ人たちが現れたわけです。2000年にノーベル経済学賞を受賞した、シカゴ大学のジェームズ・ヘックマンという経済学博士もその疑問を持ったひとり。博士は、米国ミシガン州の貧困地域で、2年間の幼児教育を受ける60名のグループと、そうではない60名のグループを追跡調査しました。その幼児教育とは、幼稚園に通いながら、先生が週に1回の家庭訪問をするというもの。家庭訪問では、子どもへの接し方などについて親御さんに事こまかくアドバイスをしました。すると、幼児教育を受けたグループは、そうではないグループに比べて、将来的に学力、学歴、年収、持ち家率が高くて、生活保護受給率、犯罪率が低いという結果が出た。ほんの2年間の幼児教育によってその後の人生に大きな差が現れたことで、幼児教育の重要性に注目が集まることとなったのです。幼児教育によってもたらされたちがいこそ「EQ」そこで、みなさんも関心が高まると思います。幼児教育によって、子どもたちにどんな変化が起きたのか、と。ジェームズ・ヘックマン博士の研究では、幼児教育によってたしかにIQも上がったこともわかりました。ただ、それは一時的なものに過ぎなかった。幼児教育が終わったそのあと、両グループとも同じ教育を受けはじめると、8歳の時点ではIQにはほとんど差がなくなったのです。そして、両グループに大きなちがいが出たものこそ、EQだったのです。EQとは、一般的になりつつある言葉だと「非認知能力」と呼ばれるものにあたります。知能テストで測定できるIQに対して、これといった測定法がない「心の力」です。具体的には、自己肯定感、忍耐力、協調性、やり抜く力、自制心、共感力、リーダーシップ、誠実さ、創造性、コミュニケーション能力など、さまざまな要素があります。ひっくるめていえば、「人間力」といっていいでしょう。そして、これらの力が高いほど学力が高くなることもわかりました。ある研究によって、IQが高いからといってEQが高くなるとは限らないが、EQが高ければIQはさらに高くなるということがわかったのです。ただ、そんなことは研究するまでもなく想像できますよね。自己肯定感が高くて、忍耐力ややり抜く力、自制心があれば、勉強だってできるようになる。学力をはじめ、人間としてのさまざまな力を伸ばしていく「土台」にあたるのがEQなのです。「EQ」への注目度が高まっている背景いま、このEQ、非認知能力が日本でも大きな注目を集めるようになってきました。書店の教育関連書籍のコーナーに行くと、「非認知能力」という言葉はいくらでも見つけることができます。それには、幼児教育ブームも大きな要因となっているでしょう。いまや、幼児教育は「する・しない」ではなく、「するのがあたりまえ」「どんな幼児教育をするか」というところに移ってきています。そこで、EQ、非認知能力を伸ばす教育というものが注目されているわけです。また、2020年からはじまる教育改革もEQが注目を集めることとなった要因のひとつでしょう。新たな学習指導要領では、学力の3要素として、幼児の場合は「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」、そして「学びに向かう力・人間性」を掲げています。3つ目の要素である「学びに向かう力・人間性」は、新たな大学入学共通テストの出題指針としては「主体性・多様性・協働性」という表現になっています。これら3つ目の要素は、結局のところ、EQといっていいものでしょう。さらにEQの注目度が高まっている背景としては、時代の潮流というものも大きいように感じます。かつての大学入試は「富士山型」といえました。日本なら東大、世界ならオックスフォード大やハーバード大というひとつの「頂点」に向かうことが最良とされてきたのです。でも、現在は、「頂点」がいくつもある「八ヶ岳型」に変わりつつあるといえるでしょう。大学側は「うちの大学ではこういうことを教えるから、こういう学生がほしい」とそれぞれ異なる特徴を打ち出す。受験生も「こういうことを学びたいからこの大学に行きたい」と考える。価値観が多様化し、大学側、受験生側の双方が「マッチング」を重視するようになってきたのです。そこで、「自分はなにをしたいのか」「どんな能力を伸ばしていくべきなのか」といったことがわからなければ自分に合った大学を見つけることができず、その先の人生を充実させることも難しくなるでしょう。そして、そういった自分を見つめる力、自分を客観視する力もEQに含まれるものなのです。『子どもの未来が輝く「EQ力」』浦谷裕樹 著/プレジデント社(2018)■ EQWELチャイルドアカデミー・浦谷裕樹先生 インタビュー一覧第1回:幼児教育ブームのなかで今注目の「EQ、非認知能力」って何のこと?第2回:「頭の力」には「心の力」こそ必要。EQが高いと優秀な子に育つ納得の理由(※近日公開)第3回:父親流の「厳しい愛情」が子どものEQを伸ばす。人間性と学力を高める親のかかわり方(※近日公開)第4回:お説教は「○分以内」で。子どものEQを高める“叱り方の正解”とは(※近日公開)【プロフィール】浦谷裕樹(うらたに・ひろき)1972年7月31日生まれ、東京都出身。EQWELチャイルドアカデミー・新未来教育科学研究所主席研究員。工学博士、理学博士。京都大学理学部卒業、京都大学大学院理学研究科修士課程修了。高校時代に「人間の可能性はどこまで伸ばせるのか」との問いを抱き、学生時代より古今東西の能力アップ法を研究開始。現在は「楽しく、わかりやすく、ためになる」をモットーに全国で講演活動中。とくに参加型のトレーニングやワークを盛り込んだセミナーを得意とする。著書に『メンタルウェルネストレーニングのすすめ』(エコー出版)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年04月03日日々、子どもをたっぷりと遊ばせていますか?最近の調査や研究から、“幼児期に遊んだ経験” が「賢い子」「あと伸びする子」「学びに向かう力の強い子」につながることがわかってきました。子どもはみんな遊びが大好きですから、これを大いに利用しない手はありません。でも、いったいそれはなぜ?遊びだったら何でもいいの?そんな疑問が湧いてきますよね。詳しくご紹介していきましょう。「遊びこむ経験」が学びに向かう力となるベネッセ教育総合研究所が、全国の幼稚園・保育園・認定こども園などに通う年長児をもつ保護者2266人に行なった調査(2016年)によると、園で「遊びこむ経験」を多くしている方が、「学びに向かう力」が強い傾向がみられました。ここでいう、「遊びこむ経験」とは、自由に好きな遊びをする・好きなことや得意なことを活かして遊ぶ・遊びに自分なりの工夫を加える・挑戦的な活動に取り組むなどを指しています。そういった遊びをたくさんしている子どもは、「いろいろなことに自信を持って取り組める」「新しいことに好奇心を持てる」など、今まさに重要視されている「学びに向かう力」が高いのです。さらに、「協同的な活動」が多ければ多いほど、文字・数・思考のスキルも高いという結果も出ています。これは、友だちとの遊びややりとりを通し、自然とそういったスキルを身につけられている、ということを指しています。また、中学受験のプロとして知られ、ウェブサイト「中学受験情報局『かしこい塾の使い方』」主任相談員の小川大介氏も次のように指摘しています。「幼いときになにかに熱中した経験」があるかどうか――。これが後伸びする子どもとそうでない子どものちがいだとわたしは考えています。後伸びする子どもは、エネルギーにあふれています。体力だけでなく、好奇心や自分の世界を深めていく心のエネルギーも強い。そのエネルギーを生み出すのは、幼いときに好きなことを好きなだけやった経験です。(引用元:Study Hackerこどもまなびラボ|“後伸び”する子としない子の違い。成長後に学力が急伸する幼少期の過ごし方)楽しいからずっとやっていたい、もっと上手にやってみたいという様子で子どもが夢中で遊んでいるとき、心身は学びを受け入れやすい状態になっているのだそう。そういうときは親が特別に何かを与えなくても、子ども自身が学び、発見をしているのだと言います。そして、そういった経験をたっぷりと持つ子は、中学受験をはじめ、その後の人生において自分の能力や才能を発揮していくのだと。子どもにとって「遊び」がとても重要だということがよくわかりますよね。きっと私たちの想像以上に、子どもは「遊び」を通して多くのものを得ているのでしょう。こんな遊びが、脳を刺激&活性化する遊びといっても、さまざまありますよね。ここでは、教育の専門家や脳医学者が勧める、子どもの脳の発達やスキルにより効果的な遊びをご紹介しましょう。ぜひ親子で楽しんでみてくださいね。【ごっこ遊び】ノーベル賞受賞者やマッカーサー財団の「天才賞」受賞者を調査した結果、幼児期に「ごっこ遊び」をたくさんしていた人が多いこともわかっています。おままごとやヒーローごっこなど、子どもが大好きな「ごっこ遊び」は、相手の立場になって考える思考力や、言語力、コミュニケーション能力を伸ばしてくれます。また、子どもが「目標を立て、計画し、タスクを継続し、注意散漫にならない」ためのスキル(=脳の実行機能)の発達も促すと言われています。<こうすれば、より効果的!>お店屋さんごっこなどの場合、「身体に良いお菓子はありますか?」というように、子どもの思考をちょっと刺激する質問をしてみましょう。【図鑑を見る】子どもの脳の発達や科学的な子育てについて研究している脳医学者の瀧 靖之氏は、「あと伸びする子は、幼い頃から図鑑が好きでよく見ていた子が多い」と言います。図鑑は、文字のほかに写真やイラストが載っているので、言語、図形、空間を一度に認識し、それが脳の活性化につながるのです。図鑑は基本的に自然科学がテーマなので、理系の世界に自然と興味を持つこともできます。「動物」「昆虫」「植物」「地球」「人体」など、図鑑にはさまざまなテーマがあるので、ぜひお子さんの興味のあるテーマから取り入れてみましょう。さらに、図鑑で見た花や虫の本物を外で実際に見るのもより効果的。リアル(本物)とバーチャル(図鑑)を体験することで子どもの好奇心はさらに刺激され、学びも深まります。<こうすれば、より効果的!>「どうして雲ができるか知ってる?」と、親がちょっと難しいクイズを出します。子どもなりに十分に考えたタイミングを見計らってから、「答えはね……」と言いながら、一緒に図鑑を見ましょう。【日常生活の中でたくさんの言葉に触れる】語彙が豊かになれば、思考力も鍛えられることが調査などで明らかになりました。語彙のほか、ひらがな・カタカナ・漢字などを定着させるのにぴったりなのがこの方法。■新聞や広告などから習った漢字を1日1個見つける→見つけた言葉が子どもの知らない熟語などの場合は、その意味も一緒に調べましょう!■買い物の際は買い物メモを書く→習ったばかりのカタカナや漢字などをたくさん書かせたり、子どもがあまり親しみのない食材をメモに書かせ、実際にスーパーで子どもに見つけてもらったりするのも効果的です。■車や電車などで移動中に看板や広告を読む→文字を読む以外に、特定の文字がつくものを街中で探すゲームも面白いですよ。■アナグラム(言葉のつづりの順番を変えて別の語や文をつくる遊び)を楽しむ→自分や家族、友達の名前でアナグラムしてみましょう。例えば、「れいぞうこ」なら、「ぞう」「こい」「これ」などの言葉を作ることができます。これらの遊びは、机に向かってドリルに取り組むのが退屈な低学年でも楽しめます。また、移動中や入浴中などいつでもどこでも遊べるので、忙しいご家庭でも比較的取り入れやすいのではないでしょうか。ぜひ親子で一緒に楽しんでみてくださいね。文/鈴木里映(参考)トレーシー・カチロー(2016),『最高の子育てベスト55』,ダイヤモンド社瀧靖之(2016),『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える賢い子に育てる究極のコツ』,文響社船津徹(2017),『世界標準の子育て』,ダイヤモンド社ベネッセ 教育情報サイト|語彙力につながる「言葉遊び」ベネッセ教育総合研究所|園での経験と幼児の成長に関する調査日経DUAL|頭のいい子に育てないなら、幼少期はとことん遊ばせてStudy Hackerこどもまなび☆ラボ|“後伸び”する子としない子の違い。成長後に学力が急伸する幼少期の過ごし方
2019年04月02日子どもの頃、クラスに「運動も勉強も両方できる、万能型の同級生」が何人かいたという記憶はありませんか?それもそのはず、子どもの学力と運動能力には、相関関係があるといわれているのです。今回は、運動能力と学力の関係や、それらをアップさせるための方法について紹介しましょう。「運動能力」と「学力」には相関関係があるスウェーデンのブンケフロという町の小学校で、毎日体育の授業をするクラスと、週2回体育の授業をするクラスを設けて、運動能力と学力の相関関係についての研究が行なわれました。その結果、毎日体育の授業を行ったクラスは、体育が週2回のクラスに比べて、算数、国語、英語の成績が良かったことがわかったのです。アメリカでも同様の研究が行なわれましたが、やはり同じような結果が出ました。心肺機能・筋力・敏捷性が高い子どもたちは、算数と読解のテストで高得点を獲得。そして、体力的に優れているほど、得点が高くなったそうです。なお、日本でも、文部科学省による小中学校の全国都道府県学力テストの結果と体力・運動能力の調査結果を照らし合わせたところ、「運動ができる子どもは勉強もできる」傾向があることがわかっています。やはり「運動」と「勉強」には相関関係があるとみて間違いないようです。文武両道な子どもの特徴3つまた勉強も運動も得意な子どもには、以下のような特徴がみられることが多いといわれています。【特徴1:よく歩いている】フィンランドの調査によると、毎日たくさん歩く子どもは、ストレスに対する抵抗力が高くなり、勉強や宿題を最後までやり通すことが苦にならないといわれています。そのため、毎日の徒歩通学やウォーキングは、子どもの学力向上にも良い影響があるのです。【特徴2:朝食をとる習慣がある】文部科学省の調査によると、朝食をとっている子どもほど、テストの点数が高くなるといわれています。また、農林水産省の調査でも、毎日朝食を食べる子どもは体力合計点が高いとされています。勉強や運動で能力を発揮するためには、そのエネルギーとなる朝食が欠かせないといえるでしょう。【特徴3:何度も繰り返し学べる】例えば、漢字の読み書きや計算方法を覚えることと、ボールの投げ方を覚えることは、一見まったく違う分野に見えます。しかし、いずれも何度も繰り返すことで、脳から神経に「こうすれば、この漢字が書ける」「こうすれば、ボールがまっすぐ投げられる」という電気信号が発信されるという仕組みになっているのです。そのため、繰り返して学ぶことができれば、運動能力と学力ともに伸ばすことにつながります。「運動能力」「学力」をともに伸ばすための方法運動能力と学力をともに伸ばすためには、以下のような取り組みが効果的です。■心拍数が増える有酸素運動をする脳の記憶中枢として働く海馬や、情報伝達を担うケーブルの集合体である白質は、運動によって刺激を受けることで成長することがわかっています。また、身体を動かした直後は集中力が高くなることも立証されています。記憶力と情報伝達能力、集中力を向上させるためには、心拍数が1分間で最大150回まで上がるような有酸素運動が効果的。具体的には、なわとびやボール遊び、かけっこなどに取り組んでみましょう。■“ちょこっと運動” を取り入れる前述したように、身体を動かすと、その後集中力がアップします。そのため、子どもが宿題などをしているときに集中力が途切れてきたと感じたら、宿題はいったん中断して身体を動かしましょう。数分でできるラジオ体操などを取り入れるのもおすすめです。合間に運動を挟んで集中力を高めることで、集中すべき場面とそうでない場面の切り替えがうまくできるようになることも期待できます。■集団で行なうスポーツに挑戦させるサッカーや野球、バレーボール、バスケットボールなど、集団で行なうスポーツでは、それぞれの考えを持つチームメンバーの中で自分の意見を主張したり、他のメンバーの意見を理解したり、自分よりもレベルの高いメンバーにライバル心を燃やしたりといった、さまざまな場面があります。こうした経験は、子どもの思考力や共感力、社会性の向上にもつながります。また、「みんなで協力してひとつの目標に向き合い、悲しみや喜びを分かち合う」「熱中できるものがある」という経験は、子どもにとって一生の思い出にもなります。***現代の子どもは、交通手段の発達や公園などの減少などにより、身体を動かす機会が限られています。そのため、意識的にスポーツなどを取り入れる必要があります。親子でスポーツを楽しみ、学力・体力の向上につなげましょう。文/田口るい(参考)農林水産省|1 子供の基本的な生活習慣の状況東洋経済オンライン|子どもの学力と体力の知られざる深い関係学研キッズネット|子どもが伸びる家庭の10の習慣第6回スポーツができる子は勉強もできる!?プレジデントオンライン|なぜ頭のいい人は「運動」が好きなのかベネッセ 教育情報サイト|学力も体力も生活習慣が左右!?ベネッセ ウィメンズパーク|第1回 子供の成長と運動の関係 – スポーツキッズの体と心を応援!
2019年04月01日お弁当を持ってお出かけするのにぴったりのシーズンがやってきましたね。ぜひこの春は、「お子さんと一緒に手作りしたおにぎり」を持ってピクニックに行きませんか?いつものお出かけも、自分で作ったおにぎりがあるだけで格別なものになります。その上、おにぎり作りはお子さんの「お料理してみたい!」という意欲を満たすのにも最適なのですよ。「おにぎり」で“親子料理デビュー”をこれをお読みの親御さんは、お子さんと一緒に料理をしたことはありますか?子どもから「お手伝いしたい!」と言ってくれるのはいいけれど、親としては正直面倒くさかったり、一人でやったほうが早かったりするので、つい「今度時間があるときにね」と言ってしまうケースは多いと思います。東京ガス都市生活研究所が2014年に発表したレポートによると、子どもと一緒に料理をしている母親の割合とその実施頻度は、月1日以下が6割以上。しかし一方で、「親と一緒に料理がしたい」子どもは約9割にものぼったのだそう。ほとんどの家庭では、月に1日すらも子どもと一緒に料理をすることがないにもかかわらず、実は子どもは親と料理をしたがっている……という、なんとも切ない事情が明らかになったのです。こどもまなび☆ラボの記事『五感が鍛えられるだけじゃない!集中力や思考力も高まるメリットだらけの「親子料理」』でも紹介されているとおり、親子で一緒に料理をすることには、子どもの五感を刺激する、好奇心を伸ばす、親子のコミュニケーションを促すなど、たくさんのメリットがあります。そんな料理の効果を我が子にもたらしたいと考える親御さんにおすすめなのが、「おにぎり作り」です。管理栄養士の川口由美子さんは、親子料理のポイントについて次のように解説しています。親子で一緒にお料理するときは、子供が「自分で作った!」と満足感が得られる料理を作るのがおすすめです。やっぱり子供は「焼く」、「成形する」、「盛り付ける」というメインの作業が大好き! そのやる気を損ねないようにしてあげたいですね。(引用元:All About|子供も作れる!親子で作る年齢別オススメ料理5選)太字は引用にあたり施したごはんを手で成形するおにぎり作りは、まさに親子料理にぴったり。川口さんによれば、3歳ぐらいになればじゅうぶんおにぎり作りを楽しめるそう。熱の取れたご飯をラップに包んで、好きな具を入れて、あとは丸めるだけで、簡単におにぎりが作れてしまいます。おにぎり作りは、“親子料理デビュー”に最適だ、というわけなのです。おにぎりでお弁当作りにも挑戦!おにぎりと言えば、お弁当の定番。特に春は、お花見にピクニック、遠足、運動会など、お弁当を持ってお出かけする機会が増える季節です。この時期だからこそ、お子さんと一緒に作ったおにぎりを持って、お出かけしてみてはいかがでしょうか?ここである取り組みを紹介します。それは、全国約2,000校もの小中学校で行なわれている「弁当の日」というもの。「弁当の日」の実施校では、子どもは「自分だけ」あるいは「親子で」作った弁当を学校に持っていきます。調理だけでなく食材の買い出しや献立まで、子どもが担うケースもあるのだそう。この取り組みの狙いは、子どもが自分のお弁当づくりに関わることを通じて“学び”を得ること。その“学び”とは、親への感謝の気持ちを抱く、食べ物の好き嫌いがなくなる、食材についての知識を得る、といったものです。(「弁当の日」について、詳しくは『お弁当作りには学びがつまっている!「生きる力」を育てる「弁当の日」ルール』をお読みください)こうした、小中学校で注目されているお弁当作りの効果は、まだ学校に通っていない小さな子どもでも得ることができるはず。その手段として最適なのが「おにぎり作り」です。おにぎりを作ってそれをお弁当にするだけなら、未就学児にもできますし、親御さんも気負わなくて済むでしょう。それに、自分で作ったおにぎりを持ってお出かけするとなれば、子どもは間違いなくテンションが上がります。想像しただけで、子どもの喜ぶ顔が目に浮かんできますね。おにぎりが作りたくなる&食べたくなる絵本のご紹介親子で作るおにぎりの良さをお分かりいただけたことと思います。ただ、親御さんがおにぎり作りに躍起になっても、お子さんにその気がなければ仕方がありませんよね。そこで、読めば必ずおにぎりが作りたくなる&食べたくなる絵本をご紹介します。『おにぎりに はいりたいやつ よっといで』岡田よしたか・作この絵本の作者、岡田よしたかさんによるお話の特徴は、何と言っても、関西弁を話す食べ物が主人公であるということ。今まで手掛けた絵本にも、ちくわやうどん、こんぶなどの食べ物たちが登場しています。ノリが良く、大人も子どももつい笑ってしまうようなユーモラスな作風が魅力の岡田さんが、今回最新作となる『おにぎりに はいりたいやつ よっといで』を発表しました。【あらすじ】おさらのうえで、おにぎりたちが話しています。「ぼくら、ぐ、いれてもらってないねんなあ」「ぐ、ほしいな。みんなでさがしにいこか」――。おにぎりたちは具になってくれる食材を求め、旅に出ることにしました。おにぎりたちは、どんな具に出会うことができたのでしょうか……?読後、おにぎりが食べたくなる楽しい絵本。読者参加型の遊び心溢れる構成にも注目です。鮭に昆布、ツナマヨ、タラコ。具たちが、いっせいにおにぎりの胸に飛び込んでいきます。具とごはんが一体となって、おにぎりが完成!【編集者コメント】岡田さんに、おにぎりというスタンダードな食べ物を主役にして絵本を描いてもらったらどうなるんだろう……。そんな思いから始まった企画です。岡田さんが描くおにぎりには顔はありませんが、それぞれいろんな形ののりをまとっているので、それが個性的な髪形のように見えて、親近感がわきます。おにぎりたちがどうやって具たちに出会うのかは、ぜひ読んで確かめてみてください。また、読者が参加できるページもありますので、お楽しみに。編集者としては、絵本を閉じたとき、みなさんが一体どのおにぎりを食べたくなるんだろう……、と想像するだけで、わくわくしています。***親子で一緒に作ったおにぎりが、きっとみなさんの日常を彩ってくれるはずです。ぜひ今度のお休みは、お子さんと一緒におにぎり作りをしてみてはいかがでしょうか。(参考)東京ガス|都市生活レポート「親子料理の意識と実態2014」を発行All About|子供も作れる!親子で作る年齢別オススメ料理5選StudyHackerこどもまなび☆ラボ|五感が鍛えられるだけじゃない!集中力や思考力も高まるメリットだらけの「親子料理」StudyHackerこどもまなび☆ラボ|お弁当作りには学びがつまっている!「生きる力」を育てる「弁当の日」ルール
2019年04月01日乾いた砂の“サラサラ”、水に濡れた砂の“ドロドロ”などの感触を楽しむことで、子どもの発達にさまざまなメリットを与えてくれる「砂遊び」。せっかくですから、親子一緒に楽しんでみませんか?■参照コラム記事はこちら↓メリットだらけの「砂遊び」!集中力も運動能力も高められる砂場は“最強の遊び場”だった
2019年03月31日年長組のお子さんをお持ちのママパパは、小学校入学に向けての準備もほぼ完了しているのではないでしょうか。この時期、保育園・幼稚園とは異なる環境に不安に思っているお子さんも少なくないでしょう。最終回となる今回は、「ママパパやお子さんに必要な心構え」について、子育て本の著者であり講演家の立石美津子さんにうかがいました。お話をうかがったのは…立石美津子(たていし・みつこ)さん聖心女子大卒。幼稚園・小学校・特別支援学校教諭免許を取得後、20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。『一人でできる子が育つテキトー母さんのすすめ』『はずれ先生にあたったとき読む本』『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』など著書多数。『発達障害に生まれて(ノンフィクション)』のモデルでもある。オフィシャルブログ ■小学校では「自分からSOSを発信」できる子に―― 前回 、 前々回 のお話では、入学前までに身につけておくべき日常習慣や学習習慣についてうかがいました。最終回となる今回は、総論として、ママパパやお子さんに必要な心構えについてお聞かせください。立石美津子さん(以下、立石さん):これまで2回にわたり、細かなアドバイスをしてきましたが、今回はもう少し掘り下げてお話ししたいと思います。以前お伝えしたとおり、読み書きできることも、時計が読めることももちろん大事ですが、それらの大前提として、まず困った時に「SOS」が出せるようにしておくことが大切になってきます。――保育園・幼稚園生活でも困ったことがあれば先生が助けてくれますが、それとは別なのでしょうか?立石さん:そうですね。保育園・幼稚園時代は、先生方がひとり一人を手厚く見てくれていましたので、子どもたちは何かあっても不自由なく園生活を送ることできていたでしょう。しかし、小学校になると状況は変わります。基本1クラス35人前後です。この人数を担任がひとりで見ながら、同時に授業も進めていくわけです。つまり、ひとり一人に目が行き届かなくなることもあるのです。そうなると、保育園・幼稚園時代のようにモジモジ、メソメソしているだけでは相手には伝わりづらくなります。例えば、トイレに行きたくなったら「先生、トイレに行ってもいいですか?」と言えることが大切。また、授業でわからないことがあったら「わかりません」と言える勇気も必要です。■親がやってはいけないこと1:手や口を出しすぎない――多くのお母さん方が「うちの子は大丈夫かしら?」と心配になってしまいそうですね。立石さん:仕方ありません。これまで保育園・幼稚園では先生方が何かあったら声をかけてくれていたので当然ですよ。ただし、4月からは違うのだと割り切り、まずはお母さんが意識して、「困ったことがあったら助けを求める」「できないことはできる人にやってもらう」という姿勢を、お子さんに身につけさせることが、学校生活を健やかに過ごすうえでポイントになってきます。――では具体的に、どんなことをすればよいのでしょう?立石さん:日常生活において、お母さん方が「ヘリコプターペアレント」にならないように注意することです。これはどういうことかと言いますと、お子さんが自ら要求する前に「のどがかわいたかな?」と水を用意したり、「トイレに行けば?」とうながしたり、ヘリコプターのように旋回して手を差しのべるのを控えるのです。お子さんが困る前にお母さんがアクションを起こしてばかりいると、外で発信しづらい子になってしまいます。もちろん低学年のうちはまだまだ幼いので、戸惑うこともたくさんあると思います。多少時間がかかってもいいですから、家庭でも外でも、どんな状況でもSOSを出せる術を身につけさせてください。■親がやってはいけないこと2:「小学生なんだから」はNGワード!――なるべく自分で判断させ、できないこと・助けてほしいときは発信できるような積極性を身につけさせるといいのですね。立石さん:はい、そうです。ただ、ここで一つ注意点があります。保育園・幼稚園とは異なる知的な環境に進級するからといって、「もう小学生になるんだから、ひとりでやらないとダメよ」と、いきなり突き放すことは絶対に避けてください。「小学生になるのだから、自分ひとりでやり遂げなさい」「小学生になるのだから、弱音をはいてはいけないよ」「小学生になるのだから、人にぜったい迷惑をかけてはいけない」4月からは小学生ですが、まだまだ幼い子どもです。こんな厳しいフレーズをかけられたら、大人だってプレッシャーを感じてしまいますよね。まして純粋な子どもには、このような言葉はストレス以外の何ものでもありません。あくまでも、「困ったこと・助けてほしい時は誰かにお願いする」ことを前提に、自ら考え、行動できる子になるように、お母さん方も普段かける言葉や行動を意識してみましょう。3回にわたり、入学前までに身につけておくべきこと・やってはいけないことをお伝えしてきました。小学校入学と聞くと、何か特別なものを準備しなければと、焦る気持ちが漠然とあるかと思いますが、じつは日常生活を見直し、少し視点を変えて、意識して行動すればよいのです。いよいよ来月は小学一年生。胸を張って入学式をお迎えください!取材・文/長谷部美佐
2019年03月30日ある程度の一般常識やルールがある子どもの学校生活や日常生活とちがい、各家庭の経済状況や教育方針が大きく影響するために正解がない「おこづかい」。お金が絡むものだけに、ママ友、パパ友にも相談しづらいものかもしれません。そこでアドバイスをしてくれたのは、マネー教育の第一人者である横浜国立大学名誉教授の西村隆男先生。先生が提唱するマネー教育「おこづかいプログラム」の基本を教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)おこづかいが「責任意識」も育てるキャッシュレス決済の急激な普及により現金そのものが見えにくくなっているいま、学校でのマネー教育も十分ではないとなると、まずは家庭でお金の扱い方を教える必要があります。そのためにわたしが提唱しているのが、おこづかいを有効に使ったマネー教育「おこづかいプログラム」です。その特徴は大きくふたつ。ひとつは「子どもは家の仕事をして、その対価として親がおこづかいを与える」ということ。大人であれば当然のことですが、なんの仕事もしないでお金を得られるなんてことはありません。子どものうちから、お金は放っておいても誰かが与えてくれたり、地道に働くことなしに簡単に手に入ったりするものではないと教えます。お手伝いの内容はどんなことでも構いません。玄関にある家族の靴をそろえるということでも、自分の部屋は自分で掃除するということでもいいでしょう。でも、自らが引き受けた仕事の「責任」を果たさなければ、おこづかいを手に入れることはできません。ここで重要なのは、お金は労働の対価だということだけでなく、それらを体験・体感することで、「約束を守ることの重要性」や「責任意識」を理解することです。幼い子どもに「責任を与える」というと、「早すぎる」と思う親御さんもいるかもしれませんが、そんなことはないのです。わたしが監修した、『子どもにおこづかいをあげよう!』(主婦の友社)という本の読者から手紙をもらったことがあります。その本の内容は、わたしが提唱するマネー教育「おこづかいプログラム」の実践法を解説したものでした。手紙によると、その読者は3歳のお子さんにトイレ掃除の仕事を与えたそうです。すると、その子はトイレ掃除が大好きになっちゃった(笑)。もう「トイレは僕の場所だ!」「トイレ掃除は僕の仕事だ!」といわんばかりだというのです。単純に掃除が楽しくなったということもあるかもしれませんが、3歳の子どもにも少なからず責任意識が芽生えたと見ることもできますよね。「おこづかい契約書」をつくることの意義「おこづかいプログラム」のふたつ目の特徴は、「親子で『会議』を開いて両者合意のうえでおこづかいのルールを決め、『おこづかい契約書』を作成する」ということ。ここで、「おこづかい契約書」の一例を紹介しておきましょう。【おこづかい契約書一例】おこづかいのルールには、子どもがするべき家の仕事、おこづかいの金額はもちろん、例のようにボーナスを得るための特別な仕事やその金額を盛り込んでもいいかもしれません。また、使いみちや貯金額についてのルール、1回の買い物で使ってもいい金額、1年ごとのおこづかいの上昇金額、「おこづかいの金額アップを希望するなら交渉ができる」といった文言を盛り込んでもいいでしょう。いずれにせよ、「○年生だからおこづかいはいくら」というふうに、親が一方的に決めないことが大切です。子どもを「大人扱い」するわけです。お父さんやお母さんの仕事の話に出てくる「会議」に参加して、おこづかいのルールを「交渉」して、普段は使わない言葉で書かれている「契約書」というものをつくる。これだけで、子どもからすれば一気に大人になった気分になるでしょう。そして、それらの取り組みは、自己肯定感を育むことにもなる。自己肯定感というものは、達成感を得たり、自分が社会で役立っている、自分の存在を他人が認めてくれることを実感したりすることで高まっていくものです。親が自分を大人扱いしてくれる――。大好きなお父さんとお母さんが自分の存在を認めてくれるわけですから、子どもが自信を持たないわけがありません。しかも、せっかく契約書をつくるのなら、面白おかしく楽しんでやってほしい。たとえば、普通紙じゃなくてちょっと高価ないい紙にするとか、サインには万年筆を使うとか、まるで条約の合意文書をつくるように楽しんではどうでしょうか。子どもはきっと、「よし、やるぞ!」ともっともっとやる気を出してくれるにちがいありません。興味を示すものだからこそお金を遠ざけないおこづかいのルールを契約書にして残すことには、他にも意味があります。それは、親子それぞれの「抑制装置」として働く点です。子どもの立ち場からすれば、おこづかいが足りなくなることもあるはずです。でも、大人と同じようにきちんと交渉して金額を決めた。その契約書は自分の机の大事なものを入れる引き出しに入っている――。そうすると、「我慢しなきゃ」と思うことにもなるはずです。一方、親とすれば、子どものお金の使い方にはつい口を出したくなるものですよね。でも、それが親子で決めたルールの範囲内のものであったらどうですか?子どもにとって理不尽な口出しをすることもなくなるのではないでしょうか。おこづかいの使いみちについていうと、それこそ家庭それぞれのルールになるでしょう。わたしなどは、「着色料が入ったお菓子は買っちゃ駄目」といわれて育った世代(笑)。ただ、アレルギーの問題などが絡むならともかく、あまり縛りすぎることはおすすめしません。というのも、「失敗から学ぶ」こともすごく重要だからです。ときには、「美味しそう!」と思って買ったお菓子が、食べてみたら思った味とは全然ちがった、まずかったという経験をすることもあるでしょう。コンビニでお菓子を買った後に親とスーパーに行ったら、同じお菓子がずっと安く売っていたことに気づくとかね。そういう失敗経験で学習することによって、子どもはお金を使うにも慎重になり、かしこい消費者に育っていくのです。子どもというのは、本当に幼い頃から、「お金って不思議なものだな」と、お金に興味を示すものです。一緒に買い物に行った親が、お金というものを払ってほしいものを手に入れる。そういう場面に日常生活のなかで否応なく触れるため、子どもはお金に強い興味を示すようになる。だからこそ、お金から子どもを遠ざけるのではなく、お金がどういうものか、お金をどう扱えばいいのか、きちんと教えてあげることが大切なのです。『子どもにおこづかいをあげよう!』藍ひろ子 著・西村隆男 監修/主婦の友社(2014)■ 横浜国立大学名誉教授・西村隆男先生 インタビュー一覧第1回:「子どもにお金はまだ早い」ではなぜダメなのか。マネー教育不足はこんなにも危険だ第2回:遅れが著しい日本の「マネー教育」。日本の子どもは“社会のなかで自立”できるのか?第3回:「会議・交渉・契約書」で自己肯定感が育つ。子どもをぐんと伸ばす“おこづかい”のあげ方【プロフィール】西村隆男(にしむら・たかお)1951年生まれ、東京都出身。横浜国立大学名誉教授。経済学博士。高校教諭を経て、横浜国立大学教育学部で25年教壇に立つ。研究テーマは金融教育、消費者教育、パーソナルファイナンス(家計財務管理)など。金融広報中央委員会委員、金融経済教育推進会議委員、前日本消費者教育学会会長。著書に『消費者教育学の地平』(慶應義塾大学出版会)、『社会人なら知っておきたい金融リテラシー』(祥伝社)、『子どもとマスターする46の金の知識』(合同出版)など。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月30日もうすぐ入学式。4月から小学生になる年長組のお子さんも、心待ちにしているのではないでしょうか。一方のお母さんはいかがでしょう。小学校で我が子があせらず授業が受けられるように、入学前までに身につけるべきこと・やってはいけないことの中から、学習面について子育て本の著者であり講演家の立石美津子さんにうかがいました。お話をうかがったのは…立石美津子(たていし・みつこ)さん聖心女子大卒。幼稚園・小学校・特別支援学校教諭免許を取得後、20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。『一人でできる子が育つテキトー母さんのすすめ』『はずれ先生にあたったとき読む本』『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』など著書多数。『発達障害に生まれて(ノンフィクション)』のモデルでもある。オフィシャルブログ ■入学前にやっておくといい学習その1:まずは5分間、机に向かう―― 前回 は、入学前までに身につけておくべき日常習慣についてお話でうかがいました。2回目となる今回は、学習面についてお聞かせください。立石美津子さん(以下、立石さん):まずお母さん方に質問です。「お子さんは45分間、イスに座っていられますか?」保育園・幼稚園がのびのび方針の自由保育で、紙芝居の時間も園庭で遊ぶことを許されていたり、家庭でイスに座る習慣がなかったら…今から意識したほうがいいかもしれませんね。小学校に上がったら、朝8時から下校時刻の午後2時頃まで、45分刻みの授業が始まります。これまでイスにじっと座っている経験が少なかったお子さんの場合、これは結構キツイことだと思います。集中して先生の話を聞けるようになるためにも、今から家庭で机に向かう習慣をつけてください。家庭学習の目安は、「10分×学年」と言われています。1年生なら10分、2年生なら20分、3年生は30分が机に向かう時間の目安です。まだ入学前ですので、まずは5分間机に向かってみてはいかがでしょう。机に向かう習慣がつけば、今後、学校で出される宿題も机に向かって抵抗なくできるようになります。余談になりますが、私は仕事で保育園・幼稚園を訪れる機会が多く、毎年3月になると年長組のお子さんたちに「小学校に早く行きたい人は?」と質問します。すると、みんな一斉に「は〜い」と手をあげます。続けて「何をしに学校に行くの?」とたずねると、「お勉強しに行くの〜」と元気よく答えが返ってきます。つまりみんな、早く学校に行って勉強したいと思っているんですね。言いかえれば、いまが勉強を始めるベストなタイミングなのです。「勉強は学校に行ってから」なんて思わないで、1日5分、食卓でもよいので絵を描く、絵本をながめるなどの習慣をつけてみましょう。■入学前にやっておくといい学習その2:日常生活に「数字」を取り入れる>――卒園後、小学校の入学式までは数日間ありますので、こうした習慣をつけるのにはぴったりの時期ですね。ちなみに、入学前にある程度、勉強を始めておいた方がよいのでしょうか?立石さん:ひとつ言えるのが、人は知っているからこそ集中できる、ということ。大人でもほとんど知識のない外国の歴史の授業を外国語で受けてもチンプンカンプンですよね。「早く授業終わらないかなあ…」と退屈してしまいますよね。逆に、知識のある授業、興味のある授業だったら熱心に先生の話を聞きます。子どもも同じです。事実、私も以前、小学校低学年の子どもたちの指導をしていましたが、算数の授業を楽しんでいるのは、算数が得意な子。国語の場合も同様でした。せっかく期待を胸に入学した小学校なのに、授業が始まったら「自分だけできない…」と劣等感を持ってしまっては可哀想です。そういった意味でも、文字や数の体験は、ある程度あったほうが子どものためにもよいでしょう。――そうなんですね! でも入学式まであと少し。これから知識をたたき込むには時間が足りない気がします。立石さん:よく計算ドリルを必死にやらせている親御さんがいますが、計算ができても体験がないと算数の力にはなりません。普段の生活で数にどれだけ触れてきたか、“経験”が重要になってくるのです。――具体的には、どんな経験が必要なのですか?立石さん:例えばここにラムネが5粒あったとします。「きょうだいで分けて食べてね」と言えば、どちらか3個、どちらかが2個になります。子どもの側からしたら、同じ数にならず不公平に感じるかもしれませんが、じつはこれ、奇数・偶数の概念を体験しているんです。「5÷2=2あまり1」の算数の勉強をしていることにもつながります。買い物に行ってお金の概念を学ぶ。体重計に乗って「○グラム増えたね〜」なんて会話もいいでしょう。いくら計算問題を早く解けても、こうした経験がない子は、文章問題になるとつまづいてしまうことがよくあります。日常の会話を通して数を学ぶのですから、忙しいお母さんでも意識すればいつでもできるはずです。ドリルを購入する前に、我が子に実体験をどんどん積ませましょう。■入学前にやっておくといい学習その3:まずは「文字を読む」ことから始めましょう――確かに、私たちの身の回りには数があふれていますね。視点を変えれば、いくらでも算数の勉強ができそうです。では、学習の基本である読み書きはいかがでしょうか。立石さん:できれば入学するまでに、ひらがなに触れる経験を積ませておきましょう。保育園・幼稚園と違い、小学校の下駄箱には子どもの名前が貼ってあります。入学式当日、教室には「にゅうがくおめでとう」のお祝いの文字も書いてあります。入学前の事前説明会ではとくに「勉強しておくように」とは言われなかったかもしれませんが、実際にはクラスの約8割の子どもが文字の読み書きができる状態で入学してくるようです。そのため、授業も大多数に合わせて読み書きできるのを前提で進んでいきます。――読み書きが苦手な子には、まず何をさせるべきでしょうか?立石さん:いきなり文字を書く練習をする必要はありません。まずは読めるようになりましょう。というのも読めない文字をわからないまま書いているのは、絵を写しているのと同じだから。“書く”ために“読む”経験をたくさん積むように。絵本や商店街の看板、チラシ、身の回りにある文字を親子で読む。ゲーム感覚で楽しむのもよいでしょう。また、ある程度読めるようになり、書くことに興味を持ち始めたら、鉛筆の正しい持ち方や文字の正しい書き方(筆順)を家庭で教えてあげてください。小学校でも教えてくれますが、一人ひとりをていねいに指導するには限度があります。学校にすべてをお任せするのではなく、家庭でフォローする心持ちが、子どもの勉強意欲にもつながります。ピカピカのランドセルに新しい筆箱。待ちに待った学校生活を充実させるためには、ある程度の素地を作っておく必要があるのですね。親子で楽しみながら、さっそく日常生活で実践してみてはいかがでしょう。最終回となる 第3回 では、「ママパパやお子さんに必要な心構えについて」についてうかがいました。取材・文/長谷部美佐
2019年03月29日近年、子どもを取り巻くお金の環境が大きく変わったことで、学校教育でも間もなく「お金の教育」がはじまります。日本はようやく国としてマネー教育に本腰を入れることになったのです。では、海外のマネー教育とはどんなものなのでしょうか。マネー教育の第一人者である横浜国立大学名誉教授の西村隆男先生にお話を聞きました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)いまの日本にもマネー教育はあるが……間もなく実施される新学習指導要領による公教育には、いわゆるマネー教育が組み込まれることになりました。とはいえ、現在も学校においてマネー教育がまったくされていないわけではありません。ひとつは日本銀行が組織している金融広報中央委員会によるもの。金融広報中央委員会のかつての名称は貯蓄増強中央委員会。もともとは、戦後間もない頃に、国民に貯蓄を奨励し、お金を財政と企業融資に使って日本の産業拡大を図るための組織でした。「貯蓄は美徳だ」と国民を教育していたわけです。現在も傘下の組織が各都道府県にあります。主な活動は、小学校、中学校、高校向けのマネー教育の教材をつくること。それから、金融・金銭教育研究校を指定して、「かしこい消費者になり、かしこい買い物をする」という教育をおこなっています。子どもの頃に通っていた学校が、「子ども銀行」の活動をしていたという方もいるかもしれません。それも金融広報中央委員会によるマネー教育の一環です。もうひとつは最近のものです。2012年に消費者教育推進法という法律が制定されました。これは、自分のためだけではなく、「世のなかのためにもいい買い物をしよう」という教育をおこなうための法律です。「世のなかのためのいい買い物」とは、たとえば持続可能な社会をつくるために環境にいいものを買う、あるいは人権のことも考えてフェアトレード商品を買うといったものですね。この法律により、現行の学習指導要領でも家庭科や社会科の学習内容に「消費者教育」という名称でマネー教育が盛り込まれています。たとえば、小学3年生なら、社会科の勉強として商店街や小売店のお金の流れやそこで働く人の視点を学ぶ。これも広い意味ではマネー教育といえます。欧米の教育は「生き方教育」とはいえ、授業時間全体からすれば日本のマネー教育はごく限られたものです。では、海外のマネー教育はどうなのかというと、特に欧米では日本よりもはるかに進んでいるといっていいでしょう。そのちがいは、教育そのもののとらえ方によるところが大きいと感じています。日本の中央集権的な教育の目的は、健全な勤労者を育てて経済のパイを大きくしようとするもの。いわばエリート養成のための「知識注入型教育」が中心です。一方、もともと子どもに自立心や権利意識を持たせることを重視する欧米の教育は「生き方教育」といえます。そのため、特に北欧の教育では、手に職を持たせるという意味もあってか、「ものづくり」を重視する。それどころか、小学4年生になると自分で仕事をつくって生活していくための「起業家精神」を教える授業もあるほどです。そういう教育ですから、当然、マネー教育にも力を入れています。スウェーデンでは子どもたちに生活設計をさせる授業があります。収入がいくらで家賃がいくらで、毎月いくら貯金できるとか、利息が○%だから年末には預金がいくらになるというふうに生活設計をさせる。しかも、面白いことにこれが算数の授業なのです。フィンランドでは図工の時間に広告をつくるという授業を視察しました。図工の授業とはいえ、ただのアートでは終わりません。子どもたちは「これなら商品が売れるだろう」と考えた文言を広告に入れる。売り手がどのように買い手を誘導しようするのか、マーケティング戦略を学ぶわけです。さらに、今度は消費者サイドに立ってそういう戦略に乗せられないための方法を学んでいました。求められる「実生活に根ざした教育」アメリカのマネー教育もわたしのなかでは強く印象に残っています。わたしがアメリカでマネー教育の視察をしたのは1987年頃。少し古い話になりますが、逆にいえばアメリカでは少なくとも30年以上も前から積極的にマネー教育がおこなわれていたということになる。さて、肝心の授業内容です。当時のアメリカは小切手社会でした。すると、小学生が小切手を切る授業を受けていたのです。子どもが「$100」と小切手に書いたら、先生は「それじゃ、駄目だ」という。ただ「$100」と書いたのでは、線を書き足されて「$400」にされるかもしれないし、0をふたつ加えて「$10000」に書き換えられるかもしれませんよね。不正防止のために「$100と書いたら、その下に『one hundred dollars』と書きなさい」と指導するのです。完全に実用的な内容でした。また、高校生になると、中古車ディーラーで車を買うシミュレーションをおこなう授業もありました。走行距離や事故歴、燃費など、車を買うときになにをチェックするべきかを教える。それこそかしこい消費者になるための教育をしているわけです。これは「コンシューマーエコノミクス(消費者経済学)」という教科の授業でした。独立教科でマネー教育をするアメリカ、さまざまな教科で横断的にマネー教育をするヨーロッパというちがいはありますが、学校でリアル経済を教える点では共通しています。そうして、子どもを社会のなかで自立した人間に育てることこそが教育だという思考があるのでしょう。二次関数や因数分解、微分積分を学んで数学の面白さに目覚めた子どもが数学者やエンジニアを目指す――そんな教育もたしかに大事なものでしょう。でも、日本の教育にももっと実生活に直結する内容が必要とされているのかもしれません。『子どもにおこづかいをあげよう!』藍ひろ子 著・西村隆男 監修/主婦の友社(2014)■ 横浜国立大学名誉教授・西村隆男先生 インタビュー一覧第1回:「子どもにお金はまだ早い」ではなぜダメなのか。マネー教育不足はこんなにも危険だ第2回:遅れが著しい日本の「マネー教育」。日本の子どもは“社会のなかで自立”できるのか?第3回:「会議・交渉・契約書」で自己肯定感が育つ。子どもをぐんと伸ばす“おこづかい”のあげ方(※近日公開)【プロフィール】西村隆男(にしむら・たかお)1951年生まれ、東京都出身。横浜国立大学名誉教授。経済学博士。高校教諭を経て、横浜国立大学教育学部で25年教壇に立つ。研究テーマは金融教育、消費者教育、パーソナルファイナンス(家計財務管理)など。金融広報中央委員会委員、金融経済教育推進会議委員、前日本消費者教育学会会長。著書に『消費者教育学の地平』(慶應義塾大学出版会)、『社会人なら知っておきたい金融リテラシー』(祥伝社)、『子どもとマスターする46の金の知識』(合同出版)など。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月29日もうすぐ4月。年長組さんもいよいよ小学生の仲間入り。今からソワソワしているお子さんも多いのではないでしょうか? 一方の親御さんはいかがでしょう。今回は、入学前に身につけておくべきこと・やってはいけない日常習慣について、子育て本の著者であり講演家の立石美津子さんにお話をうかがいました。お話をうかがったのは…立石美津子(たていし・みつこ)さん聖心女子大卒。幼稚園・小学校・特別支援学校教諭免許を取得後、20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。『一人でできる子が育つテキトー母さんのすすめ』『はずれ先生にあたったとき読む本』『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』など著書多数。『発達障害に生まれて(ノンフィクション)』のモデルでもある。オフィシャルブログ ■小学校という未知の世界「子どももママも不安がいっぱい」――立石さんは学習塾の経営をはじめ、保育園・幼稚園での講演活動、教育本の執筆など、長年にわたり教育の現場で活躍されていますね。立石美津子さん(以下、立石さん):おかげさまで、さまざまなお子さんやその親御さんと関わらせていただいています。子どもたちはみんなエネルギーにあふれていて、お母さん方も子育てや教育に熱心に取り組んでいられる方が多く、私の方も教わることがたくさんあります。その一方で、周囲に情報がありすぎるせいなのか、どのように我が子を育てていけばいいのか、漠然と不安を抱えている母さんが多いのも事実です。さまざまな心配事の中でも、小学校入学前までに何を身につけさせておくべきなのか、質問を受けることがよくあります。とくにワーキングママは子育てと仕事の両立で手一杯になりがちで、「気づいたらあと数カ月で保育園・幼稚園を卒園だった!」と、入学前に焦ってしまうことがあるようです。確かに、保育園・幼稚園では保護者と先生方が密にコミュニケーションをとり、子どもの成長を一緒に見守っていくので、親御さんも安心です。しかし、小学校に上がったら集団生活を送りつつ、同時に勉強も始まります。「友だちができなかったらどうしよう」「授業についていけなかったらどうしよう」と、お母さん方が不安になるのも無理ありませんよね。――保育園・幼稚園での生活と、小学校での生活はまったく別物なのですね。環境がガラリと変わることで子どもたちも戸惑ってしまいそうです。立石さん:その通り。3月31日までは“幼児”だったのが、4月の入学以降は“小学生”扱いされ、それまでは下の名前で「○○くん、〇〇ちゃん」と呼ばれていたのが、「○○さん」と苗字で呼ばれるようにもなります。まだまだ幼児の延長なのに。つまり、一番ストレスを感じるのがお子さんたちなのです。だからこそ、入学前までにある程度自分で考え、行動できるように習慣づけておく必要があるのです。小学校入学まであと少し。働いているお母さん方は「そんな余裕はない!」となげいてしまうかもしれませんが安心して。保育園・幼稚園卒園後からでも大丈夫。小学校が始まる前までの数週間を使って、ぜひ日常で下記の習慣を心がけてみてください。■入学前にできるといい生活習慣その1:時計を読めるようにする立石さん:保育園・幼稚園では先生が「今のうちにトイレに行ってらっしゃい」などと優しく声をかけてくれますが、小学校ではほとんど指示してくれません。チャイムは鳴りますが、基本的には自分で時計を見て、判断しなくてはいけません。時計が読めれば、「あと5分で授業が始まるから、今のうちにトイレに行っておこう」と余裕をもって行動できるようになります。学校生活を楽しむためにも、入学前までに「何時何分」くらいは読めるようにしておきましょう。時計を読める=時刻を言えること、ではありません。時間の経過を理解することです。ですからデジタル時計ではなく、文字盤に数字が書いてあり、針のある時計を用意してください。時計を用意しておしまい、ではありません。日常生活でお子さんにかける言葉を変えるのがポイントです。「早く○○しなさい」と連呼していたところを、時計を組み入れた会話に変えるのがコツです。「早く起きなさい」→「おはよう。もう6時だから起きようね」「早く準備しなさい」→「あと10分で8時だね。それまでに準備を済ませてね」「早く食べなさい」→「7時30分までに食べ終えてね」時計がわかるようになると、お母さんも楽になります。「あれしなさい」「これしなさい」と指示しなくても、子どもたちは時計を見ながら自分で行動するようになりますから。自ら時間管理ができるようになることは、自立のために必要なこと。そういった意味では、入学前に目覚まし時計をプレゼントしてあげて、自分で起きる習慣を身につけさせるのもおすすめです。■入学前にできるといい生活習慣その2:持ち物管理を自分でさせる立石さん:保育園・幼稚園の持ち物は誰が用意していますか? 働いていると朝はとくにあわただしいので、ついお母さんが用意してしまいがち。でも、4月からは時間割を見て、自分で用意しなくてはならなくなります。明日から、保育園・幼稚園の準備は自分でする練習をさせてみましょう。戸惑ったら少し手伝ってあげればいいのです。今から自分のものを管理する習慣をつけておけば、小学生になっても抵抗なく準備できるようになるはずです。また、日常でも食べたら食器は下げる、遊んだおもちゃは元あった場所に戻すなど、片づけの習慣をつけておくのもおすすめ。完璧でなくてもOKです。このような習慣を通して、身の回りのものの整理整頓・持ち物管理ができるようになっていくのです。また入学後、万一忘れ物をしても届けるのは控えるようにしましょう。例えば、我が子が筆箱を忘れたとします。「筆箱を忘れてプリントが書けない」 ↓「先生や友だちに借りなくてはいけない」そんなピンチを経験することで「忘れ物に気をつける」「困ったことがあったら周りに声をかける」といった自立の心が芽生えるのです。人生で起こる困難を除雪車のようにどかしていくスノープラウペアレンツ(=除雪車ママ)にならないように! 子どもは失敗から学び、成長していくのです。■入学前にできるといい生活習慣その3:お昼寝の習慣をなくしておこう立石さん:小学校では朝8時から15時くらいまで授業があります。給食を食べた後、保育園時代のお昼寝の名残で眠気が襲ってくると…午後の授業が持ちません。日中、集中して授業を受けるためにも、お昼寝の習慣は早めになくすのが得策です。保育園によっては年長組でもお昼寝の時間を設けているところがありますので、そのような場合は、入学準備に向けて「うちの子は30分で起こしてください」とお願いしてみるのがいいでしょう。また、幼稚園に通っている子も、帰宅後にお昼寝の習慣がある場合はなるべく寝かせないようにして、その分早めに夕食をとり、夜8時くらいには寝かしつけるのがベストです。これは週末も同じです。「明日はお休みだから夜遅くまで遊んでOKだよ」としてしまうと、結局、月曜の朝に起きるのがつらくなり、生活リズムが崩れてしまいます。土日祝日でも平日と同じ時刻に起きて、寝る習慣を崩さないのが理想です。保育園・幼稚園は“上げ膳・据え膳”で先生方が子どもの様子を細かく見てくれますが、4月からは小学生。親も子どもも甘えてはいられません!まずは基本となる日常の習慣を見直してみるのが、小学校生活に慣れるための第一歩なのかもしれません。さっそく実践してみましょう。続く 第2回 では、「学習面で入学前に身につけておきたいこと」についてうかがいました。取材・文/長谷部美佐
2019年03月28日うさぎの大人気キャラクターのひとつ、ミッフィー。その愛すべき “うさこちゃん” を生み出したのは、オランダのグラフィックデザイナーであり絵本作家でもあるディック・ブルーナです。こどもから大人までを魅了し続ける絵本の数々には、彼のこだわりと深い想いが詰まっています。可愛いだけではない、子どもたちにたくさんの気づきをくれるディック・ブルーナの世界をご紹介します。ディック・ブルーナってどんな人?ブルーナは1927年にオランダ、ユトレヒトで生まれ、両親の豊かな愛に恵まれて育ちました。子どもの頃から絵を描くことが大好きで、父親が出版社経営だったこともあり常に本に囲まれた環境のなか、レンブラントやゴッホの画集に特に衝撃を受けたそうです。第二次世界大戦中に疎開した際は生活が大変ながらも、思う存分絵を描くことに没頭、充実した日々を過ごしました。父親の会社経営は継ぎませんでしたが、その出版社で年間100冊以上の装丁や宣伝用ポスターのデザインをこなすなど、グラフィックデザイナーとして成功を納めます。26歳で初めてのオリジナル絵本を出版。2017年に89歳で亡くなるまで120冊以上の絵本を自身のアトリエで全てひとりで描き続けました。ブルーナのこだわり「シンプルであること」ブルーナのいちばんのこだわりは、「シンプルであること」。それはフランスの画家マティスから大きな影響を受けたどり着いた、揺るぎない彼のこだわりなのです。「子どもたちには、いろいろ知ってもらいたいし、多くのものを感じてもらいたい」けれど、押しつけるのは好きではないし、教えるという視点に立つことも嫌います。なぜなら、「子どもたちが自分のイマジネーションを使って、自然に吸収していくのがいちばんの学び方だと思うから」(引用:講談社編集(2018),『ディック・ブルーナのすべて 改訂版』, 講談社.)そして、絵本に現れる彼のこだわりが次の3つです。【線は手描き】ブルーナは定規などを使わず手描きにこだわりました。そこには「絵本を通じて温かい気持ちを届けたい」という創作の原点が込められています。手描きならではの少し “震える線” はブルーナの “心臓の鼓動”、そして彼の個性なのです。【厳選ブルーナカラーで表現する世界】色には特にこだわりがありました。白と黒以外に使う色は6色のみ。茶色とグレーは動物を描くために必要に迫られて加えた2色で、思い入れがあるのは「赤」「黄」「青」「緑」の4色です。それぞれ独自の色味を作り上げるまでに2年も費やしたのだそう。絵本の中では、ミッフィーの気持ちを表したり、場所の使い分けに活用されています。赤:ブルーナの赤はオレンジ寄りの穏やかな色味。嬉しい、幸せな気持ちを表現する色として多用され、ミッフィーも大好きな色です。黄:親しみやすさや温かさを表しています。家の中の場面にもよく使われています。「赤と緑があたたかいのは、黄色が入っているから」とブルーナにとっても特別な色だったようです。緑:ブルーナ曰く「伝えたいことを伝えるために必要な色」。屋外の場面でよく使われます。青:怖さ、寒さ、悲しさ、不安を描くときに使われています。どれも主張の強い色ながら、お互いを引き立てあい、優しく馴染むカラーバランスで、色を見ただけでミッフィーの絵本だとわかるオリジナリティがあります。色の意味を教えなくても、きっと子どもたちはその色から多くを感じ取ることでしょう。【12場面構成】ブルーナの絵本は基本的に12場面で描かれています。それは “子どもの集中力の限界は10分” なので、その間に読みきれるようにという配慮なのです。ミッフィーが教えてくれることブルーナが生み出したミッフィーは、庭にいた小さな白うさぎのお話を息子さんにしたことから始まりました。それが今や世界50カ国以上で出版され、今でも世界中の人たちに愛され続けています。ギリギリまでシンプルに仕立てたイラストに込められた想いはミッフィーを通して子どもたちに語りかけられます。何気ない日常がテーマ家族で海に出かけてあまりに楽しくて遊び疲れてしまう、お気に入りのぬいぐるみをなくして悲しくなってしまう、家族にお誕生日をお祝いしてもらって嬉しかった、など誰でも体験する日常が描かれているので、自分とリンクして物語に共感できます。全てがハッピーエンド僕の作る絵本はみな、ハッピーエンドになるんです。なぜなら読み終えたときに心に残るあたたかさこそ、小さな子どもたちを強くするに違いないからです。(引用:講談社編集(2018),『ディック・ブルーナのすべて 改訂版』, 講談社.)ブルーナはたとえお話の中で悲しいことが起こっても、「物事には常に先があり、どんなときにも人生には続きがある」ということを子どもたちに伝えたかったのです。ハッピーエンドは「辛いことがあっても希望を忘れないで」というブルーナのメッセージでもあるのです。キャラクターは常に正面を向いているちょっと不自然に思える場面でもミッフィーはいつも正面を向いています。それは、嬉しいときも悲しいときも子どもたちとまっすぐ向き合っていたいというブルーナの深い愛が込められています。子どもたちは、ミッフィーを通してイマジネーションを羽ばたかせ、いろいろなまなびを自然に感じとります。そして大人になってもそのあたたかな感情が心の片隅に残るからこそ、彼の絵本は長い間愛され続けているのでしょうね。ディック・ブルーナ絵本、厳選3冊日本で出版された63冊の中からお子さまにオススメの3冊をご紹介します。『うさこちゃんのだいすきなおばあちゃん』(福音館書店)ディック・ブルーナ/文・絵松岡享子/訳絵本としてはチャレンジングな ”身近な人の死” をテーマにしています。大好きなおばあちゃんがある日亡くなってしまい、葬儀や家族が悲しむ様子が静かに語られます。その後、うさこちゃんはおばあちゃんが好きだったお花を持ってお墓参りに行き、おばあちゃんに話しかけます。最後はほっこりとした気持ちでお話は終わります。“死” を子どもに教えることはとても難しいですが、悲しい事実を率直に伝え、その後のあり方を示すことで、子どもたちは自然に少しずつ “人間の一生” を受け入れていくのでしょう。こんな悲しいテーマをシンプルに描いても、読み終わった後に温かな感情を残すブルーナはやはり素晴らしいと思わずにはいられません。『うさこちゃんびじゅつかんへいく』(福音館書店)ディック・ブルーナ/文・絵松岡享子/訳子どもの美術館デビューのとき読むのにぴったりの1冊です。うさこちゃんが抽象画や彫刻などいろいろなアートを見て素直な感想をいうのですが、知識より何より、「自分が感じて楽しむことが大切」というブルーナの想いが伝わってきます。はじめての美術館鑑賞後、うさこちゃんは「大きくなったら画家になるの」と言いましたが、子どもそれぞれの感想が楽しみですね。『うさこちゃんのゆめ』(福音館書店)ディック・ブルーナ/作文章のない、イラストのみの絵本です。うさこちゃんと、うさこちゃんそっくりな茶色のうさぎさんが雲にのって遊んでいるような場面のみが綴られていて、子どもたちの想像力を発揮するのにぴったり!一緒にストーリーを考えて楽しんでみてください。ディック・ブルーナ作品に会いにいこう!折しも、2019年4月20日からベルナール・ビュフェ美術館(静岡県長泉町クレマチスの丘)で「美術館に行こう!ディック・ブルーナに学ぶモダンアートの楽しみ方」が開催されます。『うさこちゃん、びじゅつかんへいく』の内容に沿って、ベルナール・ビュフェの作品を見られるような趣向が凝らされていて、ブルーナの制作方法を体験できるコーナーもあるようで、楽しそうですね。施設内には「ビュフェこども美術館」も併設されているので、お子さん連れでも安心して楽しめます。自然とアートに触れにぜひ足を運ばれてみてはいかがでしょうか。<ベルナール・ビュフェ美術館>「美術館に行こう!ディック・ブルーナに学ぶモダンアートの楽しみ方」会期:2019年4月20日(土)〜9月29日(日)開館時間:入館は閉館の30分前まで1・11・12月 10:00〜16:302・3・9・10月 10:00〜17:004・5・6・7・8月 10:00〜18:00休館日:水曜日(祝日の場合はその翌日)・年末年始入館料:大人 1000円(900円)/高・大学生 500円(400円)/中学生以下 無料※学生の方は学生証等をご提示ください※障害者手帳ご持参の方は半額になります※( )内は20名様以上の団体割引料金です☆7月10日はベルナール・ビュフェの生誕記念日につき無料でご入館いただけます(参考)講談社編集(2018),『ディック・ブルーナのすべて 改訂版』, 講談社.ディック・ブルーナ文・絵/松岡享子訳(2008), 『うさこちゃんのだいすきなおばあちゃん』,福音館書店.ディック・ブルーナ文・絵/松岡享子訳(2008), 『うさこちゃん、びじゅつかんへいく』,福音館書店.ディック・ブルーナ作(2010), 『うさこちゃんのゆめ』,福音館書店.福音館書店|うさこちゃんdickbruna.jp 日本のミッフィー情報サイトウィキペディア|ディック・ブルーナNHK|2017年4月26日(水)“ミッフィー”に魅せられてベルナール・ビュフェ美術館
2019年03月28日日本という国で育つ子どもたちが、学校教育を受けはじめるのは誰もが小学生になってから。でも、生きていくうえで欠かせない「お金の教育」に関しては、はじまる時期もその内容も各家庭の方針によってまちまちです。正解がないだけに、マネー教育に関して悩んでいるという親御さんも少なくないでしょう。アドバイスをしてくれたのは、マネー教育の第一人者である横浜国立大学名誉教授の西村隆男先生です。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)ようやく動きはじめた日本のマネー教育これまでの日本には「マネー教育」というものは存在しなかったというと、やや語弊があるかもしれませんが、あたらずといえども遠からずという状況でした。それは、日本人の国民性によるものでしょう。古くは日本ではお金は不浄のものと考えられ、家庭の話題に上げない、子どもは口を出すべきではないものとされてきました。お金に対してそういう感覚を持たされ育てられたのがいまの親世代です。ところが、ここ数十年でお金をめぐる状況は一変しました。最近ではキャッシュレス決済が急激に拡大しています。小学生でもスマホを手にしているいま、塾に行くにも「Suica」「ICOCA」などの電子マネーを使って電車に乗る。コンビニでちょっとしたお菓子や飲み物を買うにも電子マネーで支払う。子どもが使うお金を親がコントロールするためです。また、わたしのような60代くらいの世代だと、クレジットカードにはまだ若干の抵抗感があるもの。つい「借金」と考え、罪悪感があるわけです。でも、いまの親世代にとって、クレジットカードはひとつの決済ツールに過ぎません。借金だとは考えず、スーパーで500円の買い物をするにもクレジットカードを使います。こうして、子どもだけではなく、親世代にも現金が見えにくくなっているのです。もちろん、利便性という点ではほんの20年あまりの間に飛躍的に進化したと見ることができるでしょう。でも、まともにマネー教育を受けてこなかった世代が親になっているわけですから、その利便性の裏には子どもに対する大きな危険も潜んでいます。かつては「金融商品」なんて言葉は存在しませんでした。「株取引をしている」などというと、ギャンブル的な意味合いをもってさげすまれるような印象すら持たれたものです。ところが、ネット証券が広まって「金融商品」という言葉が一般的になり、最近では仮想通貨なんてものも出てきた。「マネーゲーム」という言葉も使われるほどです。それこそ、現金が見えにくくなっている時代に育った子どもがゲーム感覚でマネーゲームに走るようになったらどうするのか――。こうしてようやく日本でも、国策としてマネー教育を進めていこうとする動きが出てきたわけです。マネー教育開始は早ければ早いほどいいしかも、子どもたちがお金をめぐる問題に巻き込まれる危険性はこれからさらに拡大することも考えられます。その要因は成年年齢の引き下げです。明治時代から約120年にもわたって20歳だった成年年齢は、2022年4月から18歳に引き下げられます。18歳になれば高校生であっても自由に契約をすることができる、クレジットカードをつくることもできる時代になるのです。それを受けて、新しい学習指導要領は、高校卒業までに子どもたちに契約意識を持たせる内容になっています。ただ、新学習指導要領に基づく教育がはじまるのは小学校で2020年から。中学校では2021年、高校では2022年からです。高校を卒業してすぐに成人となる2019年度の高校1年生からは前倒しでその教育かおこなわれることになっていますが、それでもやはり遅すぎるように感じるのです。マネー教育をはじめるのは早ければ早いほうがいい――。それがわたしの考えです。それこそ、小学校でマネー教育がはじまる前から家庭ではじめておくべきでしょう。ものの価値もわからない、自分で買い物をした経験もないのに、小学校で売買契約の基礎を教えるといっても難しいというものです。しかも、幼い子どもにマネー教育をするにも現金を使うべきですね。実際に小銭を持って、10円玉10個が100円玉と交換できるものだということを感じたり、あるいは自分で買い物をして支払う金額を間違ったりする経験によって、お金がどういうものかを実感できるようになるからです。実体験としてお金を使ってみないとわからないこともあるはずです。学校でマネー教育をはじめるといっても、教室でシミュレーションするのではピンとこないこともあるでしょう。「魚が切り身のかたちで泳いでいると思っている子どもがいる」という笑い話がありますが、マネー教育も内容次第ではそれに近いことも起こり得るはずです。マネー教育不足が引き起こすさまざまな問題仮にマネー教育をまったく受けないまま大人になると、さまざまな問題に見舞われることが考えられます。何枚もクレジットカードをつくって多重債務を抱えて破産するというのもそのひとつかもしれません。また、現在、大きな問題として取り上げられるのが「奨学金破産」です。連帯保証人になっていた親が病気になるなどして、親が破産するというケースも見られます。まして少子高齢化がますます進むこれからは、老後の生活をイメージして個人でも年金をつくらないといけない時代になる。いま、大企業で必ず導入しているのが確定拠出年金です。個人型だろうと企業型だろうと、その企業に就職すれば必ず加入することになる。大学を卒業した途端に資産運用について選択を迫られることになるのです。どの投資信託にするのか、元本保証の預金にするのか、それとも別の選択肢にするのか……。それぞれがどういうものか理解できなければ、自分の将来を自分で決められないことになってしまいます。あるいは、振り込め詐欺の片棒を担ぐようなことにもなりかねません。「簡単に稼げる」といった犯罪の誘いに乗ってしまうのは、地道に稼いだお金を有効に使うとか、ある程度節約した生活をして計画的にお金をためるといった長期スパンでお金のことを考える姿勢が身についていないからです。公教育でマネー教育がはじまるのはこれから。その教育に臨む姿勢をつくってあげるのは家庭に他なりません。そのために大切だとわたしが考えているのが、「お手伝いの対価としておこづかいをあげる」ということ。責任を持って手伝いという自分の仕事(役割分担)をしてはじめてお金を得る。その経験を幼い頃からさせるのです。「まだ子どもだから」とお金に関する話を子どもに対してシャットアウトしてはいけません。むしろ、子どもだからこそ、きちんと導いてお金に触れさせてあげるべきです。そうでないとお金に対する正しい意識が育たず、将来、自立できない人間になってしまうことを親御さんには意識してほしいと思います。『子どもにおこづかいをあげよう!』藍ひろ子 著・西村隆男 監修/主婦の友社(2014)■ 横浜国立大学名誉教授・西村隆男先生 インタビュー一覧第1回:「子どもにお金はまだ早い」ではなぜダメなのか。マネー教育不足はこんなにも危険だ第2回:遅れが著しい日本の「マネー教育」。日本の子どもは“社会のなかで自立”できるのか?(※近日公開)第3回:「会議・交渉・契約書」で自己肯定感が育つ。子どもをぐんと伸ばす“おこづかい”のあげ方(※近日公開)【プロフィール】西村隆男(にしむら・たかお)1951年生まれ、東京都出身。横浜国立大学名誉教授。経済学博士。高校教諭を経て、横浜国立大学教育学部で25年教壇に立つ。研究テーマは金融教育、消費者教育、パーソナルファイナンス(家計財務管理)など。金融広報中央委員会委員、金融経済教育推進会議委員、前日本消費者教育学会会長。著書に『消費者教育学の地平』(慶應義塾大学出版会)、『社会人なら知っておきたい金融リテラシー』(祥伝社)、『子どもとマスターする46の金の知識』(合同出版)など。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月28日最近、「自己肯定感」という言葉をよく目にしませんか?育児や教育に関するWebサイトや雑誌、書籍などにもたびたび取り上げられており、注目度の高さがうかがえます。そんななか、日本人の自己肯定感は諸外国に比べて「低い」と言われ続けています。その要因のひとつとして挙げられるのが、親の言葉です。いったい、どんな言葉が子どもの自己肯定感を下げ、どんな影響をもたらしてしまうのでしょうか。この記事では、子どもの自己肯定感を下げることの危険性と、親子関係との関連性、そして親が気をつけるべき「NGワード」についてご紹介します。自己肯定感が低い子どもは生きづらい自己肯定感とは、文字どおり自分を肯定的に捉える感覚を表す言葉です。自己肯定感の高い子どもは、自分の能力を信じたり、存在価値を認めたりすることができます。逆に、自己肯定感の低い子どもは、自分の能力に自信が持てなかったり、存在価値が見出せなかったりします。その結果、下記のような状態に陥る可能性が高くなると指摘されています。1. 暴力行為がある2. モチベーションが低い3. 友達関係が上手くいかない4. 過敏に反応する5. 自分で判断できない6. 授業の理解度が低い7. 学校をよく欠席する8. 学校をよく遅刻する(自尊感情や自己肯定感に関する研究報告書平成22年3月慶應義塾大学調べ)(引用元:NPOカタリバ|【自己肯定感】低い理由と対策)これらは、自分で自分を苦しめてしまいかねない行動です。例えば、「1. 暴力行為がある」「3. 友達関係が上手くいかない」ことから友だちづくりにつまずき、「7. 学校をよく欠席する」「8. 学校をよく遅刻する」ことからますます周囲に馴染めなくなる、といったことが考えられます。あるいは、「2. モチベーションが低い」「6. 授業の理解度が低い」ことから学ぶこと自体を諦めてしまうということも。では、こうした自己肯定感の低い子どもが成長すると、どんな大人になるのでしょうか。ビジネスニュースサイト「東洋経済オンライン」の「『自己肯定感』が低い人に現れる“残念な症状”」という記事には、自己肯定感が低いときに現れる症状として、下記3つを挙げています。■「不安」が先に立ち、人からの感謝の言葉を受け止められない■ 忠告されたときに「怒り」が湧き上がる■「恐れ」から、失敗をしたときつい言い訳をしてしまうこれらに共通するのは、マイナス感情です。マイナス感情にとらわれ、他人からの感謝や忠告を素直に聞き入れることができず、自分に言い訳ばかりしてしまう——そんな大人になってしまったら、自分の成長を止めてしまうばかりか、周囲から孤立してしまうかもしれません。ここまでの内容を読まれた親御さんは、「自分の子どもには、自己肯定感の高い大人になってほしい」と感じられるかと思います。しかしながら、そういう親御さんでも、子どもの自己肯定感を下げる張本人になってしまう可能性が十分にあるということをご存知でしょうか。自己肯定感が低いのは親のせい!?東京都教職員研修センターの指導資料「子供の自尊感情や自己肯定感を高めるためのQ&A」では、家庭での生活習慣と自己肯定感には関連があることが明らかにされています。特に、保護者に理解され、認めてもらえていると認識している子どもほど、自己肯定感が高い傾向にあるそうです。また、当サイトの「新・子育て習慣に!子どもの自己肯定感が向上する『ほめ写プロジェクト』」という記事には、「家族で過ごす時間が多いほど、親に理解してもらえているという“安心感”を得やすく、『自分は大切な存在』という意識が高まる」と書かれています。一方で、匿名で投稿できる掲示板サイトや個人のブログには、親との関係性が原因で自己肯定感が低くなったと公言する書き込みが複数存在します。例えば、女性向け掲示板「発言小町」への下記の投稿には、「私も」と手を挙げるレスポンスが目立ちました。私は親に褒められたことがありません。頑張っても頑張っても、いつもその位当たり前だ、もっと頑張れと言われ、認められる事はなかったです。忙しいからと話を聴いてくれることもなかった。私の母は愚痴と自慢話と世間体ばかり。(中略)私のような育ちをされた方で、大人になってから、自力で自己肯定感を獲得された方っていらっしゃいますか? 大人になってからでは無理なのでしょうか?(引用元:YOMIURI ONLINE|大人になってから自己肯定感を持つには?)このような実情から、親のせいで自己肯定感が下がったと考える人は少なくないということがわかります。では、どうすればこうした事態を防げるのでしょうか。ついつい言ってしまっているかも!?3つの「NGワード」親が子どもの自己肯定感を下げてしまう原因のひとつが、日常的に投げかけている “言葉” です。親が何気なく伝えた言葉が、子どもの自信ややる気を奪ってしまうことがあります。ここでは、特に気をつけるべきNGワードを3つご紹介します。1. 他人と比べるワード「○○ちゃんはできるのに」「同じマンションの○○ちゃんは、もう縄跳びが跳べるんですって」「お兄ちゃんのときは、こんなに忘れ物しなかったのに」など、子どもを友だちや兄弟姉妹と比較する言葉はNGです。言われた子どもは、自分が他人より劣っていると思い込んでしまいます。そして、その思い込みが自己肯定感を下げてしまうのです。他人との差を理解させることより、本人の変化や成長を共に喜ぶことのほうが大事。「昨日より縄跳び上手に回せるようになったね」「先月より忘れ物減ったね」など、過去の本人と比較してあげるほうが、自己肯定感を上げることにつなげやすいでしょう。2. 子どもを急かすワード「急ぎなさい」忙しいとき、つい言ってしまいがちなのが、「ほら、お迎えが来るんだから急いで」「早く宿題やっちゃいなさい」など、子どもを急かす言葉です。これらは、子どものペースを否定し、自己肯定感を下げることにつながります。とはいえ、時間や期日は守らせなくてはなりません。「8時にお迎えが来るから、それまでに準備しようね」「宿題はいつまでに提出すればいいの? 間に合いそう?」など、具体的な時間を伝えることで、自分で考えて行動するよう促すのがベストです。3. 条件付きの褒めワード「○○だから~~」子どもをほめるとき、「いつもお利口さんだから大好きよ」「こんなにお勉強ができてえらいね」など、条件付きで褒めてはいませんか?実は、この褒め方は、自己肯定感を高めるという意味ではNGといわれています。なぜなら、言われた子どもは、その条件を満たさなければ認めてもらえないと感じてしまうからです。子どもをほめるときは、「○○だから大好きよ」「○○だからえらいね」ではなく、「大好きよ」「えらいね」とシンプルに伝えましょう。○○に入っていた部分は、「いつもお利口さんにしてくれてありがとう」「お勉強頑張っているね」と、別でほめてあげればいいのです。***大切なのは、子ども自身が自分の能力を信じたり、存在価値を認めたりできるようにすることです。NGワードを気にしすぎて、親子の会話が減ってしまうのもよくありません。頭の隅にNGワードをメモして気をつけながらも、親子でたくさんしゃべってくださいね。その楽しい時間こそが、子どもの自己肯定感を高めてくれるのですから!(参考)NPOカタリバ|【自己肯定感】低い理由と対策東洋経済オンライン|「自己肯定感」が低い人に現れる“残念な症状”東京都教職員研修センター|子供の自尊感情や自己肯定感を高めるためのQ&AStudy Hackerこどもまなびラボ|新・子育て習慣に!子どもの自己肯定感が向上する「ほめ写プロジェクト」YOMIURI ONLINE|大人になってから自己肯定感を持つには?All About暮らし|子供の自己肯定感を低くする親のNG言動5つと改善法MAG2NEWS|自己肯定感の高い子は親からどのような声掛けをされているのか?
2019年03月27日公園で遊具を使う順番が守れない、お店でおもちゃが欲しいと駄々をこねる——そんな我が子の行動を見ると、「我慢が足りないのでは?」と心配になるでしょう。「我慢する力」とは「自制心」とも言い換えられますね。この自制心は将来の学力や社会的成功に影響するといわれています。であれば、幼少期のうちにしっかり身につけさせておきたいものです。今回は、「我慢する力」の必要性と、不足する原因を明らかにしたうえで、子どもの自制心を養うコツについてお話しします。子どもの自制心を問う「マシュマロ実験」。学力との関係性は?読者のみなさんは、「マシュマロ実験」をご存知でしょうか。この実験は、子ども時代の自制心と、将来の社会的成果の関連性を調査するため、1970年にアメリカのスタンフォード大学で実施されました。実験方法は次のとおりです。職員の子どもたちが通う、学内の付属幼稚園の4歳の子ども186人が実験に参加した。被験者である子どもは、気が散るようなものが何もない机と椅子だけの部屋に通され、椅子に座るよう言われる。机の上には皿があり、マシュマロが一個載っている。実験者は「私はちょっと用がある。それはキミにあげるけど、私が戻ってくるまで15分の間食べるのを我慢してたら、マシュマロをもうひとつあげる。私がいない間にそれを食べたら、ふたつ目はなしだよ」と言って部屋を出ていく。(引用元:ウィキペディア|マシュマロ実験)おいしそうなマシュマロを目の前にした子どもたちは、あえて目を伏せたり、自分の髪に触れたりして、自分の欲求と戦っていたそうです。しかし、最後まで我慢し続け、見事2つ目のマシュマロを獲得した子どもは、全体のわずか3分の1ほどだったといいます。注目すべきは、その後1988年に行われた追跡調査です。最初の調査が実施されたとき4歳だった被験者たちは、このとき20代になっています。この追跡調査では、マシュマロを食べなかった被験者グループにいたメンバーが、その後の人生で周囲から優秀と評価されていること、大学進学適性試験(SAT)の点数がマシュマロを食べたグループのメンバーより210点も高いことが認められたそうです。また、最初の調査実施時の自制心の有無が、そのまま持続していることも明らかにされました。そして、実験から40年後に実施された脳神経を調べる調査でも、「マシュマロを食べなかった子ども」は大人になってからも、感情的刺激による衝動に影響されにくいという結果が出ました。つまり、幼少期に身につけた「我慢する力」は、学力向上につながること、大人になっても活かされ続けることがわかったのです。我慢ができない子どもは“親の愛”を試してる!?とはいえ、マシュマロ実験でも大半の被験者が2つ目のマシュマロに辿り着けなかったように、「我慢する力」が備わっている子どもは少数派です。多くの子どもは、なぜ我慢できないのでしょうか。その原因のひとつとして考えられるのは、「我慢しなくてはならない理由がわからない」「我慢する必要がないと感じている」といったことです。マシュマロ実験の例で言えば、被験者である子ども自身が実験自体のルールを理解できていなかったり、「より多くのマシュマロが食べたい」という欲求より「より早くマシュマロが食べたい」という欲求のほうが強かったりするのかもしれません。一方で、「愛情不足のサイン」という説もあります。例えば、わざと親に「◯◯して」と駄々をこねたり、「待って」と言われても走り出したりする行動——これらは、親に注目して欲しいから、もしくは、親の愛情を試したくてやっている可能性があります。いずれにしても、子どもに「我慢する力」を身につけさせたいなら、日頃から愛情をもって接し、なぜ我慢しなくてはならないかを根気強く説明してあげる必要がありそうです。「我慢する力」を育てるには、成長に合わせた声かけをでは、子どもの「我慢する力」を育てるために、親はどんな態度で、どんな言葉をかけてあげればいいのでしょうか。子どもの成長段階別に考えていきましょう。【3歳】大人の言うことをわかっているような、わかっていないような、微妙な時期です。それでも、我慢が必要な場面では、なぜ必要なのか丁寧に説明してあげましょう。特に、危険を伴う場面では、親が毅然とした態度で、しっかり言い聞かせなくてはなりません。このとき、忘れてはならないのが、子どもの言い分にも耳を傾けること。この頃の子どもは、自我が芽生え、反抗することも多くなります。その気持ちを汲み取ってあげることが必要です。子どもの気持ちを理解したうえで、親としての気持ちや考えを話してあげましょう。<例>シチュエーション:公園で子どもが「もっと遊びたい」と泣いたときおすすめの声かけ:「公園楽しいから、もっと遊びたいよね。でもね、これから暗くなって寒くなるよ。〇〇ちゃんが風邪引いちゃったら、お母さん悲しいな」【4〜5歳】4歳を過ぎると、基本的な生活習慣が確立されてきます。社会にルールや決まりごとがあることを理解できるのも、この時期です。また、自分と他者の違いに気づき、少しずつ周りの人の気持ちや状況もわかるようになってきます。自分の行動が周囲にどう影響するか、わかりやすく伝えてあげるといいでしょう。<例>シチュエーション:病院の待合室で子どもが騒いだときおすすめの声がけ:「ここには、病気で頭が痛い人や、お熱のある人がたくさんいるんだよ。〇〇ちゃんがうるさくすると、その人たちがもっと辛くなっちゃうから、静かにしていようね」【6〜7歳】小学校に上がると、先生や友人たちと人間関係を構築し、社交性が身についてきます。また、行動範囲も広がり、心身ともに成長する時期でもあります。物事の因果関係を理解し、「今これをやると、後でどうなるか」という未来をイメージできるようになっているはずです。この時期に、子どもに我慢することを教えるコツは、その我慢の先にどんな“よいこと”があるのか丁寧に説明することです。そして、その“よいこと”を子ども自身にイメージさせ、未来の目標や楽しみを作らせます。<例>シチュエーション:「もっとお菓子を食べたい」と子どもが駄々をこねたときおすすめの声がけ:「今これ以上食べたら、お菓子なくなっちゃうよ。我慢すれば、明日もまたおいしく食べられるから、楽しみにしていてね」【8歳以上】8歳頃から、子どもは親に口答えするようになります。そのため、頭ごなしに叱ったり、我慢を押しつけたりすると、逆効果になることもあるでしょう。目指すは、子ども自身が判断し、セルフコントロールできるようになることです。子どもが自分の意思で我慢できるよう、意識を高めるような言動を心がけましょう。例えば、実際に子どもが何かを我慢できたとき、「よく我慢できたね」と、褒めてあげましょう。褒められたことの喜びは、自然と次の我慢につながります。大切なのは、親が子どもを抑圧するのではなく、信じて寄り添ってあげること。そこから生まれる信頼関係と安心感のなかで、子どもの我慢する力は育っていきます。***「うちの子には我慢が足りない」と嘆く前に、我慢が必要なシーンで、親子でどんな会話があったか思い出してみましょう。成長段階に応じた、適切な声がけができていたでしょうか?子どもの将来を左右する可能性のある「我慢する力」。親子で寄り添いながら、一緒に高められたら、それが一生ものの大切なプレゼントになるかもしれません。(参考)ウィキペディア|マシュマロ実験PNAS|Behavioral and neural correlates of delay of gratification 40 years laterAll About暮らし|我慢ができない、待てない子供を変えるしつけのコツ5PHPのびのび子育て 2017年9月号,PHP研究所PHPのびのび子育て 2018年8月号,PHP研究所
2019年03月26日運動系の習い事やスポーツチームの練習に行く子どもに持たせるお弁当。その大事な役割は、午後からの練習の活力源になることです。お弁当というと、あれもこれもいろいろ入れなきゃ……と思いがちですが、スポーツジュニアのためのお弁当のルールは意外にもシンプル。「ご飯+メインのおかず1品+サブのおかず1品」があれば、じゅうぶんなのです。「ジュニアのためのスポーツごはん」最終回のテーマは、「パワーチャージ弁当」。子どもが午後の練習に全力で臨めるよう、栄養をぎっしり詰め込みましょう!たっぷりのご飯と豚肉でパワー供給!『疲労回復トントン弁当』たんぱく質やビタミンB1が豊富な豚肉は疲労回復に効果的で、スポーツジュニアにうってつけの食材です。ご飯に枝豆を混ぜれば、たんぱく質がさらに強化できます。■ 材料(1人分)【枝豆ご飯】ご飯……茶碗大盛り1杯(180g)枝豆(冷凍)……20粒赤じそふりかけ……小さじ1~2【豚肉のごま玉みそ焼き】豚ヒレ肉(7~8mm厚さに切る)……100g玉ねぎ(薄切り)……1/4個(A)すりごま……大さじ1(A)みそ……大さじ1 1/2(A)みりん……大さじ1 1/2サラダ油……大さじ1/2キャベツ(せん切り)……1/2枚■ 作り方(1)【枝豆ご飯を作る】ご飯に枝豆と赤じそふりかけを混ぜ、弁当箱に詰める。(2)【豚肉のごま玉みそ焼きを作る】ボウルに玉ねぎ、(A)を入れ、混ぜ合わせる。(3)フライパンにサラダ油をひき、豚肉の両面を中火で焼く。こんがり焼けたら(2)を加え、汁気がなくなるまで炒める。(4)(1)にキャベツ、(3)を詰める。【栄養士より:ここがポイント!】・混ぜご飯にする手間を省きたいときは、白いご飯を詰めて上に枝豆とふりかけをパラパラと散らせば時短になりますよ。・季節によっては保冷剤を入れて、傷まない工夫も忘れずに。保冷剤がわりに凍らせた果汁100%ジュースを入れれば、栄養補給もできます。***「お弁当=面倒くさい」と考える親御さんは多いのではないでしょうか?ですが、ご飯にメイン1品とサブ1品を入れるだけでいいのなら、ずいぶんと楽になりますよね。持たせたお弁当が空っぽになって帰ってきたら、それはきっと「午後も頑張れたよ!」の証。お子さんの心と体が強くなるよう、栄養満点のお弁当を通してぜひ見守ってあげましょう。■ 『かんたん! おいしい!ジュニアのためのスポーツごはん栄養満点パワーチャージレシピ』株式会社 明治(監修)/2017年、金の星社■ この書籍の監修者インタビューを掲載しています試合当日の朝食には「炭水化物をたっぷり」。スポーツ栄養学にもとづいたメニューとは?不足しがちな「たんぱく質」と「カルシウム」、朝ごはんに取り入れるコツ
2019年03月26日ベストセラー書籍 『お母さん! 学校では防犯もSEXも避妊も教えてくれませんよ!』 の著者、のじまなみさんにインタビュー。性教育アドバイザーでもあるのじまさんは「セックスを伝えることは最大の防犯になる」と断言しています。最大のタブーを親子間で共有することは、後々のコミュニケーションにも役立つはず。子育ては長期間に及ぶものなので、リスク管理は欠かせません。第二回目の記事では「具体的な性教育の仕方」をお伝えしましたが、なかなかハードルは高いけれど、それでもトライするメリットが多大にあるということはおわかりいただけたのではないでしょうか。そして今回は、「性教育によってもたらされるもの」についてです。のじまなみ さん性教育アドバイザー。「とにかく明るい性教育【パンツの教室】協会」理事長。防衛医科大学高等看護学校卒業後、看護師として泌尿器科に勤務。自身にも三人の娘がおり「子供達が危険な性の情報に簡単にアクセスできる世界にいる」ことに危機感を抱き、2016年「とにかく明るい性教育【パンツの教室】アカデミー」を設立し、その後協会を立ち上げ、国内外のお母さんたちに性教育を伝えるべく、日々飛び回っている。 とにかく明るい性教育 パンツの教室協会 のじまなみ ブログ ■性教育は最大の防犯教育である「セックスは素晴らしいもの。でも不用意な妊娠を防ぐためには、避妊の方法も同時に伝えなければいけません」とのじまさん。男女関係なく、性被害は起こりますが、妊娠については、男の子側と女の子側と受けるダメージは違ってきます。前回の記事でもお伝えしましたが、なぜ不用意にセックスをしてはいけないのか、若いうちに妊娠するとどうなるのか、と言うことも含めて包み隠さず話すことが大切です。セックスに対して興味を持つのはごく当たり前のこと。「興味本位ではなくて、セックスの先に伝えたいことを考えるといいと思います。性教育は子どもの笑顔と未来を守るものであり、恥ずかしいことではない、とお母さんが自身に言い聞かせながら、やってみてください」のじまさんによると、性教育を受けている子はセックスの初体験の年齢が上がるというデータもあるそうです。聞けば聞くほどに重要性を持つ性教育ですが、ここで素朴な疑問をもう1つ、のじまさんにお聞きしました。―― これまではお母さんが行うことを基本としてお話が進んできましたが、では、お父さんは性教育にどのように関わってもらえばよいのでしょうか?「ここまでお話ししてきたことからもお分かりいただけるように、性教育は“待ったなし”です。私自身は父親に性教育を受けましたが、基本的にはお母さんが取り組んだほうが良いと思っています。なぜなら、それが一番の近道だからです。繰り返しますが、性教育は“待ったなし”です。いつ我が子が性トラブルに巻き込まれるか分からないのです。 これまで私は4,000人のお母さんに性教育の手ほどきをしてきましたが、親からきちんと性の話を受けたことがあるのはたった4人、つまり全体の0.1%です。お父さんはそれ以上に性教育を受けてきていません。今のお父さんたちは『いずれ知るだろう』というスタンスで、内心子どもを心配していても言えることがない。お母さん自身が、性教育のハードルを乗り越えることに加えて、お父さんの意識まで変えようとするのは、正直言ってなかなかしんどいです。つまり“時間がかかるの”です。まずはお母さんから性教育をはじめれば、自然と家庭内で性教育に対する前向きな意識が育っていくでしょう。もちろん、お父さんが積極的に性教育に関わるのに越したことはありません。でも、最初は“参加してくれたらラッキー”くらいに構えているとよいかもしれませんね」なるほどの意見! 過剰に期待せずに、でんと構えてもらい、夫婦として基本的な考えを合致しておけば、子どもも安心ですね。ちなみに、すでに独自で性教育している方で、今回お聞きしたお話のようにできていなかったと言う方もいらっしゃると思いますが「心配はありません」と、のじまさん。「マイナスの性教育をしてしまった場合は、2倍の性教育をして肯定してあげることです。何しろ自己肯定感を育てることが大切です」自己肯定感を育むということは、子育てにおいては肝となるべきこと。「性」だけを切り抜かず、子育て全体の中のひとつとして捉えて見てはどうでしょうか。■性トラブルは身近にゴロゴロ転がっている!性教育については、ちょっと怖い話も伺いました。「これまでは知らない人からの危険を回避する、というお話でしたが、実は知っている人からの性トラブルも多いという現実があります」。これはなかなかに怖い話。身近な人間からの性トラブルは、子ども自身、母親に話すことを躊躇してしまいそうですが、日頃からなんでも話せる関係性を作っておけば回避できそう。子どもにとって、味方なのだ、ということを常に伝えておくことで安心させるといいのかもしれません。また、ネットが発達した最近では、ライン婚やSNS婚なども増えてきているのだそう。人と人との可能性、出会いも広がりましたが、気軽に人間関係も繋がれるということは、リスクもその分強まったことにもなります。危険はあちこちに転がっているということ。決してそれは、他人事ではないのです。母親として未然にトラブルを防ぐこと。性教育は必須の教育なのだということがわかるでしょう。■アイデンティティーの強要社会性教育の話の延長で、のじまさんが現代の「子育て」の変化について実感していることも話してくれました。「ここまでは子どもへの話でしたが、デジタル時代になって生きづらくなったのは大人も同じ。SNSが広がったことで、得られる情報は増えたけれど、余計な情報も知ることになりました。そのことによって、人は無理やり『アイデンティティ』を持たないといけなくなった。それは子育て中のお母さんにとってマイナスになることもあります」支持されるのは、“素敵なお母さん”。おしゃれなファッションをして、スタイリッシュな家具に囲まれ、家事も上手で、教育にも熱心。比べてはいけない、と思いつつ自分と比べてしまうのが人間の心理というもの。このような必要性が問われる情報が、母親自身の自己肯定感をも奪ってしまう、とのじまさんは指摘しています。筆者も育児と仕事の両立で悩んで挫折した経験があるのですが、その頃はまだそんなにSNSを使ってない時代でした。あの時にSNSがあったらと思うと正直、ゾッとすることもあります。「気にしない」「私は私!」と強い自分を持つこと。そのままの自分を認めてあげること。子どもを大切にできるのは、自分を大切にすることができるお母さんなのではないでしょうか。そういう意味でも、性教育から「自己肯定感」を育むことは、お母さんにとっても得るものはとても大きい。■お母さん同士で共感する時代へ!性について、セックス、生理、命が生まれること。今回ののじまさんのお話は、どれをとっても心を掴まれる事柄ばかり。堂々と性教育していきたいものです。確かに、性教育をすぐにしようと思っても、いくつものハードルがあり、なかなか手がけられないというお母さんもいるかもしれません。日々、性教育の他にたくさんやらなければならないことがあり、なんでもお母さんへ負担がのしかかってしまっている現実はありますが、こういう時こそ、お母さん同士で繋がり、必要なことをシェアしてみてはどうでしょうか。タブーなことからは見て見ぬ振りをして、踏み込まなかった時代から、タブーを打ち破り、共感しあう時代へ。今こそ、お母さんの意識改革の時なのかもしれません。
2019年03月25日子どもの身体の成長は、親にとって非常に気がかりですよね。お友だちと比べて背が低い、痩せている・太っているなど、細かいことを気にして不安になってしまうこともあるでしょう。でもその中で、「足の成長」について深く考えている保護者の方はあまり多くありません。足や足指の使い方、歩き方、靴の選び方など、正しい知識を身につけていないと、成長過程だけに限らず、大人になってからもさまざまな身体の不調の原因になってしまいます。今回は、成長期の今だからこそ正しい「足の知識」と「靴選び」について、親子で一緒に学んでいきましょう。今の子どもたちは“足力”が低下している!?昔の子どもと比較して、今の子どもの足は大きく変わっていっているといいます。その理由として、子どもを取り巻く環境の変化から自分の足で歩く機会が減っていること、そして「正しい靴を履いていない」ということが挙げられます。結果、現代の子どもたちは、知らぬ間にさまざまな足のトラブルを抱えているそう。足の健康科学の権威である桜美林大学特任教授の阿久根英昭先生は、子どもたちの“足力の低下”について警鐘を鳴らしています。最近の子どもたちは、屋外では靴、室内では靴下と、ほぼ1日中履き物を履いています。そのため、足の指をしっかりと開くことができなくなっているのです。(中略)『すべての足の指が開く子ども』はわずか11.3パーセント、『一部開く』は49.1パーセント、『すべて開かない』が39.6パーセントという調査結果もあります。(引用元:いこーよ|子どもの足のトラブル急増中!健康的な足作りとは?)足力の低下は、足の指で大きく地面を蹴る力がなくなっていることに起因しています。足の指を閉じたり開いたり曲げたりする機能が低下すると、バランスよく立つことが難しくなります。それだけではなく、身体全体にも大きな影響を及ぼす足力の低下は、小さな子どもを持つ親にとって見過ごすことができない問題なのです。姿勢の悪さも疲れやすさも原因は“足”にあった!子どもの足のトラブルとしてとくに問題視されているのが、「外反母趾」「浮き指」「偏平足」です。■外反母趾原因:足に合わない靴を履いている。状態:親指が付け根から曲がっている状態。身体に及ぼす影響:悪化すると親指の付け根が外側に飛び出し、激しく痛む。ヘルニアや顎関節症、頭痛、腰痛、ひざの痛みなどにつながることもある。■浮き指原因:足に合わない靴を履いている。状態:指が地面に着地しておらず足圧反応がない状態。身体に及ぼす影響:まっすぐ走れない、すぐに転倒するなどの問題が起こりやすくなる。姿勢に影響する場合も。■偏平足原因:環境の変化・歩く機会の減少など。状態:土踏まずがない状態。身体に及ぼす影響:バランスが取りにくく転倒しやすくなる。また痛みや疲れが多く出る場合も。足のクリニック表参道の桑原靖院長は、「疲れやすい」「姿勢が悪い」「走るのが極端に遅い」などの問題点が気になるようなら、まず足を観察するべきだと述べています。偏平足である場合、単純に土踏まずの有無が問題というよりも、足がねじれた状態で歩行していることが問題であり、その状態が続くと体のバランスが崩れ、足の筋肉や関節などに大きな負担がかかります。土踏まずがないと、効率よく蹴り返して歩くことができません。その結果、同じ距離を歩いたり走ったりしても、他の人に比べて大量のエネルギーを消費するため疲れやすくなるのです。また、重心がかかと寄りになってしまった結果、前後のバランスを整えるために首を前に突き出すことで“猫背”になります。猫背姿勢は筋肉の疲労を増大させるので、長く立っていられません。まずは足の指を使い、バランスを整えながら背筋を伸ばし姿勢を正しましょう。歩くときも、足の指を使ってしっかりと蹴り出すことを意識してください。足底にある筋肉や腱は、すべての足の指につながっていますから、丈夫で健常的な足づくりのためには、足の指を鍛錬することが大切なのです。(引用元:同上)足の指で踏ん張ることができないとすぐに転んで怪我をしやすくなります。これを機に、お子さんのバランス感覚や立ち姿勢を見直してみませんか?正しい靴のサイズの測り方を知っていますか?子どもたちに人気のスニーカー『瞬足(しゅんそく)』シリーズを生み出したアキレスでは、子どもの足の発育をサポートするために『足育(そくいく)』という理念を掲げてさまざまな活動を行なっています。アキレスでは、子どもの健やかな成長のためにはヨチヨチ歩きの時期からの「足」づくりが何よりも重要だと考えています。「人間が持つ足本来の機能を取り戻し、足の正しい育成を促すこと」、これこそが足を育てる=足育(そくいく)というアキレス独自の理念です。(引用元:アキレス足育相談室|よくある質問)「成長過程の子どもの足には極力負担をかけないことが大切」としているアキレスは、できるだけ裸足に近い感覚で歩くことを理想としています。「瞬足足育シリーズ」は、長年培ったアキレス独自の子どもの靴の設計基準・思想に、順天堂大学柳谷准教授のスポーツバイオメカニクス理論を融合させたシューズとして誕生し、今では全国の小学生から絶大な支持を得ています。ただしどんなに機能が優れていても、足に合わない靴では意味がありません。アキレスの公式サイトでは、正しい靴選びについて次のように解説しています。まずはかかとをしっかりと床につけて、かかとから一番長い指の先までを測ります。正しく測った足のサイズに「捨て寸(つま先余裕)」をプラスしたサイズの靴を選べば、靴の中で足のずれなどが起こりにくくなるそうです。参考までに「捨て寸」の目安をお伝えします。本来の足のサイズ:10.5~12.0cm捨て寸のサイズ:6mm前後本来の足のサイズ:12.0~15.0cm捨て寸のサイズ:7mm前後本来の足のサイズ:15.0~18.0cm捨て寸のサイズ:9mm前後本来の足のサイズ:18.0~24.0cm捨て寸のサイズ:10mm前後靴選びをする際には、「捨て寸」を忘れずに!半年に1度は足のサイズチェックを!最近では、大人顔負けのおしゃれなデザインの靴も比較的安価で手に入ることから、ファッションに合わせて選ぶ親御さんも増えています。また「どうせすぐにキツくなるから」と、あえて少し大きめサイズの靴を選ぶこともあるのではないでしょうか。しかしそれでは、歩くたびに足が前にずれてしまい、歩きにくいだけではなく足の発達にも悪影響を及ぼしてしまうのです。まずは親御さんが「足に合わない靴を履くことによるデメリット」を理解し、正しい靴選びの知識を身につけることが大切です。子どもは靴が足に合わなくても、なかなか痛みを訴えません。まだ足が柔らかいので、合わない靴でも履きこなしてしまうことが多いのです。(中略)子どもは全身の体が柔らかく、補正能力も強いため、もし足に弱点があっても、他の部位で補うことができます。そんな子どもが、もし足が痛いと訴えたら、相当悪くなっていると受け止めてあげてください。(引用元:時事メディカル|第12回 子どもの足トラブル、大人が気をつけて~自分で痛みを訴えることはまれです~)子どもは自分の不快感を言語化する能力が未熟です。だからこそ、親が気にかけてあげる必要があるのです。子どもの足は1年で1センチ伸びるので、できれば半年に一度はサイズのチェックをしましょう。足指を鍛えるおすすめの遊び全国で足育講演活動を行なっている「足と靴の専門家」山田宏大氏は、足で「グー・チョキ・パー」の『足じゃんけん』をすることで、足指が鍛えられると力説しています。最初はなかなか開いたり閉じたりできなくても、毎日続けるうちに次第に動かせるようになるとのこと。すると、浮き指だった足指がまっすぐに伸び、地面にしっかりと接地できるようになるのです。その結果姿勢がよくなり、身体が疲れにくくなったり、かけっこが速くなったりする効果も期待できるそう。ほかにも、縄跳びや雑巾がけ、平均台や砂山を登る遊びなども、バランスを取りながら足指が鍛えられるのでおすすめです。また山田氏は、浮き指になりやすい要因として「爪の切りすぎ」にも言及しています。爪を切りすぎてしまう深爪は、足指に力が入らなくなり、姿勢や走力やジャンプ力にも影響を及ぼすため、適度な長さを意識して切るようにしましょう。***アキレスでは、百貨店などで「足型測定会」を開催したり、首都圏の小学校で足の健康に関する出前講座を実施したりするなど、積極的な足育普及活動を行っています。子どもの健やかな成長のためにも、家族で足育について学んでみませんか?(参考)いこーよ|子どもの足のトラブル急増中!健康的な足作りとは?アキレス公式サイト|瞬足 足育シリーズアキレス足育相談室|よくある質問時事メディカル|第12回 子どもの足トラブル、大人が気をつけて~自分で痛みを訴えることはまれです~足育先生|気づかないうちに子どもの足に様々な症状が隠れていたら…③「浮き指」編
2019年03月25日性教育アドバイザーで、 「お母さん! 学校では防犯もSEXも避妊も教えてくれませんよ!」 の著者であるのじまなみさんに、「性教育」についてお話を伺いながらご紹介する連載の2回目です。前回は日本の性教育の実態を伺い、なぜ性教育が必要なのか、その危険性について述べました。今回は、具体的な性教育の実践法についてご紹介したいと思います。のじまなみ さん性教育アドバイザー。「とにかく明るい性教育【パンツの教室】協会」理事長。防衛医科大学高等看護学校卒業後、看護師として泌尿器科に勤務。自身にも三人の娘がおり「子供達が危険な性の情報に簡単にアクセスできる世界にいる」ことに危機感を抱き、2016年「とにかく明るい性教育【パンツの教室】アカデミー」を設立し、その後協会を立ち上げ、国内外のお母さんたちに性教育を伝えるべく、日々飛び回っている。 とにかく明るい性教育 パンツの教室協会 のじまなみ ブログ ■性教育は、子どもの「自己肯定感」を育むために必要まずは前回触れた、のじまさんによる性教育の3つのメリットについてお話ししていきましょう。1、自己肯定感が高まり、自分も人も愛せる人間になる2、性犯罪の被害者・加害者にならない3、低年齢の性体験・妊娠・中絶のリスクを回避できる1、自己肯定感が高まり、自分も人も愛せる人間になる1 についてですが、日本の子どもは、世界有数の先進国であるのにも関わらず、自己肯定感が低いと問題視されています。深刻なのは、10代の死因のトップが自殺であること。背景にあるのがこの自己肯定感の欠如だ、とのじまさんは指摘しています。「性教育を通じて、あなたは奇跡が重なって生まれてきたのだ、ということを伝えると、子どもは『愛情』を受けとり、エネルギーにしていくことができます。そして、子どもの自己肯定感を育むことで、親子間のコミュニケーションがスムーズになり、深い絆で結ばれるようになります」2、性犯罪の被害者・加害者にならない2 の性犯罪については、筆者が 「SEIJUKU」 (セイジュク)という性教育ワークショップを始めた理由とも重なっています。社会のトラブルの根幹にあるのは性問題。そのことから身を守るには、きちんと性について知ることが親子で必要だと考え、興味のある方同士でセッションを始めたのですが、この中でよく話題に上るのがいつ自分の子どもが加害者に、被害者になるかわからないという不安についてです。「まだまだ子どもだから」と思っているうちに、子どもはどんどん外からの情報を得て、親が感知できない知識を増やし、危険な領域に入っていきます。善悪を見極められるようになるまで、大人が正しい知識を持ってストップをかけなければいけません。「覚えておきたいのは、性犯罪の被害者は女の子だという思い込み。実は被害者の4割は男の子だという事実です。男の子を好む小児性愛者は一定数おり、とても陰湿です。性犯罪にあった子の精神ダメージは計り知れません。お母さんが積極的に防犯に関わり、女の子も男の子も性犯罪から、身を守る方法を教えてあげてください」3、低年齢の性体験・妊娠・中絶のリスクを回避できる3 の不用意な妊娠については、誰もが避けたい大きな関心事ではないでしょうか。ただ、ここで重要なのはセックスを語らずに性教育はできないということ、とのじまさん。「セックスについては常に説明できるように準備しておく必要があります。そして、今どうしてセックスをしてはいけないのか、デメリットとメリットをお母さんの口から伝えることが重要です。思春期のセックスへの興味本位による行為を防ぐためにも、きちんとした知識を、明確に伝えてください」■性教育は、何歳の時に、何から始めるか3大メリットについては子育てにおいてとても重要であることはご理解いただけたと思います。早速始めいところですが、気になるのが性教育をスタートする年齢です。のじまさん曰く性教育をスタートさせるのに適しているのは「3歳」だというから驚き。「私は、子どもたちが、まだうんこ、おっぱい、ちんちん、が大好きな年齢である3歳から10歳の下ネタ全盛期の時に行うべきだと考えています」性を本格的に意識しないうちに始めるというところがポイント。のじまさんによると、精神分析学の創始者として知られるフロイトが研究した発達段階から考えても3歳から10歳は性教育の適齢期に当てはまると言います。「フロイトの説では、母乳などから栄養を得ることが快感の『口唇期』をへて、幼児はトイレトレーニングがうまくいくようになる『肛門期』に移ります。そして、幼稚園から小学校入学前くらいになる『男根期』を迎え、男の子と女の子の体の違いに気づく。男の子が自分のおちんちんを触ったり、興味を示す頃ですね。この子どもが自分の体に興味を持った時にこそ、声をかけましょう」ここで、のじまさんにある疑問をぶつけてみました。―― 家族構成や、兄弟の有無、一番めか二番目か、そして気になる男の子と女の子では、性教育の仕方は変えたほうがいいのでしょうか?「男の子と、女の子でも基本的には同じことを話します。男の子の体と女の子の体の違いをお互いに知らないと、相手のこともいたわれませんし、自分の身も守れません」男女の違いで大きいのはちんちんとおっぱいなど、体のつくりが違うこと。そして、外せないのが生理のことでしょう。お母さんの中には、異性である男の子に生理の話をするのを躊躇してしまう、という方もいると思います。けれど、生理があって初めて子どもができるのです。そのことを知らずに、ナプキンを持っている女の子をからかうようになっては、お互いに傷ついてしまい、生理が『悪者』として捉えかねません」「よく性教育のデメリットを気にされるお母さんもいらっしゃいますが、性教育を知らない子ほど、外で大人をからかったり、他人との距離を測りかねて、土足で踏み込んだりします。パーソナルゾーンに入ってしまうのは知らないからです。女の子には毎月の生理を楽しみにさせられるのはお母さんの力です。男の子には、毎月生理が女の子にはあり、いたわるように教えてあげる。お互いのことをきちんと理解できれば、やさしい子どもたちに、そしてなんでも話せる親子関係を築くことができますよ」■性教育の伝え方にも順番がある!性教育は、男女の体の違いから、同じことを男の子にも女の子にも始める、ということはお分かりになったと思います。その後は、どんな順序で伝えていけばいいのか、のじまさんに伺ってみました。「まずは体の違いそして次に命の話、最後に防犯の話。この順序ですね。命の話というのは『赤ちゃんはどうやってできるか』というセックスの話です。最初はわからないことも多いと思いますが、話をしているうちに、ちゃんとそれぞれが繋がるようになり、自分で理解できるようになります」性教育を実践するには、まずはお母さんがペニスやセックス、膣といった言葉を恥ずかしがらずに言える必要があります。そのほかに、男の子のマスターベーションや精通についてもお母さん自身が理解していなければいけません。生理や精通を迎えるということは、体の成長の証でとても喜ばしいこと。とはいえ、あれこれ一気には伝えられませんから、焦らず少しずつ伝えていってみてください。「体の話の時に、ぜひ伝えていただきたいのが体にはプライベートな大切な場所・水着ゾーンがあるということです。人には見せても、触らせてもいけない大事な場所があるということを具体的に説明することで、身を守る基準を教えることができます。もし突然身の危険が迫っても、子ども自身がはっきりと『NO』と断ることができるように教育することが大切です。見知らぬ人だけでなく、友達同士でも水着ゾーンに対しては踏み込んではいけないということも教えてください」ちなみに私が娘二人に性教育を始めたのはお風呂の時間です。とっても大事なところである『おまた』を洗おうというデリケートゾーンコスメを使うところから始めました。私はついついお風呂にこだわって話していましたが、「お風呂でももちろんよいと思いますが、場所やシーンは特にこだわらず、日常的に話ができるようになると、性教育のハードルも下がると思いますよ」とのじまさん。ご飯を食べている時や、くつろいでいる時など、さりげない日常に挟み込むことができるようになれば、お母さんの方もよし、やるぞ! と構えなくて済むようになりそう。また、のじまさんは繰り返し伝えることが重要だと言います。「いろんなパターンで、やるなら徹底的に行うことです。1度で済む話ではないので、繰り返し行い、子どもの中で繋がるように話していくことが大事です」性教育をしていくイメージ、少しは浮かんだでしょうか。難しく考えることはなく、わかりやすく少しずつ、長い時間をかけて伝えるということだと思います。そして、この性教育というのは、現代社会を生きるお母さんにとっても実は大きな意味のあることなのです。このことについては、次の3回目で詳しく述べたいと思います。
2019年03月24日先日、実に興味深い本が発売されました。それは 「お母さん! 学校では防犯もSEXも避妊も教えてくれませんよ!」 というショッキングなタイトル。これは、父親から性教育を受け、パンツの教室協会理事として日々奔走していらっしゃるのじまなみさん著書による性教育の本です。これが今、売れに売れているのだそう。表立っては「悩んでいる」とは言えない。けれど、この本を手に取る人がたくさんいると言うことは、つまり、のじまさんが投げかけたこの言葉、この不安要素は、子育て中のママの核の部分に刺さった、ということではないでしょうか。のじまなみ さん性教育アドバイザー。「とにかく明るい性教育【パンツの教室】協会」理事長。防衛医科大学高等看護学校卒業後、看護師として泌尿器科に勤務。自身にも三人の娘がおり「子供達が危険な性の情報に簡単にアクセスできる世界にいる」ことに危機感を抱き、2016年「とにかく明るい性教育【パンツの教室】アカデミー」を設立し、その後協会を立ち上げ、国内外のお母さんたちに性教育を伝えるべく、日々飛び回っている。 とにかく明るい性教育 パンツの教室協会 のじまなみ ブログ ■「性教育」は子どもたちを危険から守る手段情報氾濫時代。私たちは今、インターネットを通して、あらゆる情報に常に囲まれ、監視し、されながら日常を過ごしています。これはここ10年くらいのこと。スマホやパソコン、タブレット、ゲーム機などは、もはや現代人には欠かせない生活必需品です。でも、ここからどんどん「性」に対しての情報は発信されています。こんなに身近に「性」に対するモノやコトが手に入ってしまうのは、じつはとても怖いこと。特に、子育て中のママたちにとって、これは驚異以外の何者でもありません。一方で、私たちはその「リスク対策」をきちんと取れているでしょうか? そのために今、必要なのは、これまで“なあなあ” にされてきた「性教育」という教育です。これが、親自身にとっても子どもたちにとっても「危険から守る手段」になるのです。子育ての一般常識が30年前とは全く違うように、性教育もまた、新たなステージにきています。■「まだ早い」は「もう遅い」! 性教育は何歳から?筆者は、小さい頃から二人の娘に性教育をし始め、数年前から性教育ワークショップ「SEIJUKU」と言うグループを主宰しています。性教育に関心が高いママたち同士で、性教育についての情報をシェアする活動を行なっているのですが、そのセッションでも、それぞれのママが非常に不安を抱えていることが浮き彫りになっています。ママ自身が受けてきた性教育もバラバラ、性教育の指針がなく、どうやって伝えてよいのかわからない、迷っている人がとても多いという現状は、思ったよりも深刻なのでは? と感じています。ちなみに、のじまさんの話によると、ユネスコが2009年に発表した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」では「性教育の開始年齢」が設定されており、なんと5歳だといいます。そして、のじまさんが行なっているパンツの教室では、「3歳から10歳の間に行うべし!」と伝えています。この年齢を聞いて、みなさんはどう思いますか?そんな世界の指針を尻目に、日本の性教育の現状といえば、全く進んでいない、と言ってよいでしょう。1990年に入りHIV問題が起きた時に、慌てて性教育を推進する動きが始まりましたが、すぐにバッシングが起こって、それ以降は後退する一方。政府も統一した指針は示さず、学校によって応対もバラバラ。熱心に性教育しようとする先生がいれば、それが問題視されると言うネガティブな方向へ進んでしまう。人の前では性教育の話はしてはいけない、それは学校でも同じ。タブー視されているのが「性教育」なのです。「日本でまだまだの性教育事情。なのに、その一方で日本は『性産業先進国』と、なんとも恥ずかしい汚名をいただいています。世界のポルノの6割は日本で生産されており、コンビニでは子どもの目線の高さに堂々とHな本が置いてあります。活発になったインターネットは、子どもと誤った性の情報を簡単につなぎ、子どもが性の対象になった事件を伝えるニュースは、毎日のように聞こえてきます。ママたちも一度はヒヤッとした経験があるのではないでしょうか?」と、のじまさんは警鐘を鳴らします。■「うちの子に限って」が起こり得るスマホやタブレット、ゲームは子育て中のママにとってはありがたいツールです。働きながら子育てをして家事も担って、そして最近では受験する子も増えています。何もかもがママたちの肩にのしかかってきて負担が大きい今の社会で、『ちょっと子どもに動画を見てもらってひと休みする』ことをダメだとは言えないでしょう。しかし、ここに恐ろしいリスクが潜んでいると言うことも自覚しなければいけません。のじまさんによると、2歳でもYouTubeからアダルトサイトに飛んでHな動画を目にしてしまった、と相談してくるケースはたくさんあるといいます。わずか2歳。「まだまだ赤ちゃんだから」と、うかうかしてはいられません。「それだけではありません。自分の裸の動画を撮って相手に送る、と言ったトラブルも多数報告されています。もちろん、撮りたくなるような仕掛けをされているので、子どもにはなんの罪もありません。子どもは面白いからやってしまう。そこにどんな危険があるか知らないから、そうしてしまうだけ。気をつけることができるのは、身近なお母さんしかいないんです」これらはなぜ起こってしまうのか?「交通ルールと同じです。教わっていないから。誰かがストップをかけて、イエス、ノーの判断を教えなければならないのに、教えられる大人が少ないんです」学校で教えられる性教育は20年前から何も進んでいないと言われています。また、教える内容も学校によってバラバラだし、4年生の保健体育では時間数も少なく、肝心なことは教えてくれません。そう、そもそも“母親が性教育について何も知らない状況では、何も始まらない”ということなのです。「性教育にはメリットしかありません!」とのじまさんは力強く断言します。その3大メリットは以下の3つ。1、自己肯定感が高まり、自分も人も愛せる人間になる2、性犯罪の被害者・加害者にならない3、低年齢の性体験・妊娠・中絶のリスクを回避できる子育てに悩むすべての女性が、どきっとさせられる事ばかりです。この3つを読むだけでも、性教育の必要性を感じていただけたのではないでしょうか。詳しくは2回目の記事で「では、性教育を具体的にどう行なっていくべきか」を含め、詳しく触れます。
2019年03月24日勉強や習い事、お手伝いなどのさまざまな場面で、「子どものやる気がない」「どうしたらやる気を出してくれるのだろう?」と思い悩んだことのある親御さんは多いのではないでしょうか。事前に約束をしたり、繰り返し言い聞かせたりしても一向にやる気を出さない子どもに対して、つい頭ごなしに怒鳴ってしまうこともあるかもしれません。しかし、子どものやる気を引き出すのは、コツさえつかめば大人のやる気を引き出すよりもスムーズです。今回は、子どもと大人のやる気メカニズムの違いや、子どものやる気を引き出すポイントについて解説していきます。子どもの「やる気」を引き出しやすい理由本来、子どもはやる気に満ちあふれています。子どもは大人に比べ、さまざまな事柄に対して経験値が浅いため、日々の生活の中で新しい発見や感動につながることが非常に多いのです。例えば「昨日よりも長い距離を歩けた」という経験は、子どもにとって大きな喜びになります。大人にとっては記憶にも残らないような出来事でも、子どもにとっては印象的で大きな意味を持つ変化であり、成功体験なのです。こうした経験は、脳の奥にある大脳基底核の一部で運動の開始・持続・コントロールなどにかかわる線条体を活性化させ、子どものやる気を大きく引き出します。一方、大人の場合は、これまでの人生経験や知識から、物事に対して現実的になりやすい傾向があります。そのため、子どものように生活におけるさまざまな変化を楽しんだり、刺激を受けたりすることが少なくなるのです。また、大人になるにつれて過程よりも結果を重視される機会が多くなります。よって、経験や行動と快感を結びつけてやる気を呼び起こす線条体への刺激が少なくなり、大人は子どもに比べてやる気を引き出すのが難しいともいえます。やる気が起こる要因は2種類あるけれど……やる気が起こる要因は、心理学的に「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」の2種類に分けられます。どちらも “やる気のもと” ですが、どうやらやる気を出すための引き金が違うようです。それぞれについて説明しましょう。【外発的動機づけ】環境や状況、人や結果といった、外的要因からやる気を起こすこと。例えば、エアコンやフリードリンクといった快適な環境が用意されている、締め切りや試験が明日に迫っている、怖い上司や先生に監視されている、結果を出せば給料アップやご褒美が約束されているなどの理由があって仕事や勉強のやる気が出たというのは、外発的動機づけによるものです。【内発的動機づけ】ある物事の変化や発見、学びや成長から喜びを得て、自分自身でやる気を起こすこと。外発的動機づけとは違い、メリットや報酬など関係なく「これがしたい」という気持ちから、何らかの行動を起こします。内発的動機づけをきっかけとした活動は、外発的動機づけがきっかけになっている場合に比べて、本人が充実感を覚えやすく、持続性があるといわれています。では、子どもたちの「やる気」を出させるためには、どちらの動機づけを利用すればいいのでしょう?人間はやらなければならないことに対し外発的動機づけを用いると、その持続性が下がってしまうということがわかっています。逆に、内発的動機づけを用いたときは、その行動が続きやすくなるのだそう。やらなければいけないことを「勉強」とした場合、つまり、以下のようになります。■内発的動機づけを用いる→勉強が続く!■外発的動機づけを用いる→勉強が続かない……子どものやる気を引き出し継続させるには、内発的動機づけを用いた方が良いでしょう。内発的動機づけで地頭が良くなる!?内発的動機づけによる子どものやる気を引き出すためには、以下の声かけが有効です。■結果ではなく過程を褒める大人になると、物事を結果だけで判断しがちです。そのため、子どもをつい「できたのか、できなかったのか」だけで見てしまうこともあるでしょう。内発的動機づけには、結果よりも過程を楽しむことが重要なので、子どもを褒める際には結果だけでなく過程にも着目してみましょう。例えば、テストで100点が取れなくても、前回より1点でも上がっていたら、そのことをしっかり褒めます。かけっこで勝てなかったとしても「毎日公園で練習を頑張ったもんね。前より速くなったていたよ!」など、以前に比べて成長したことや頑張れば結果が変わることの楽しさや喜びを伝えると、子どものやる気につながります。■子どもが興味を持ったことを肯定する子どもは、自分が興味を持ったことを親が肯定してくれると、自分自身が肯定されたようなうれしい気持ちになります。子どもが何かに興味を持っているということは、すでにそれに対するやる気が芽生えている証拠であり、親がそれを肯定的に捉えることで、やる気がどんどん引き起こされるのです。「ダンゴムシがこんなところにいるなんて、よくわかったね。別の場所も探してみようよ」など、子どもが「もっと知りたい」と思うような声かけをしてみましょう。子どものころの「興味を追究する経験」は、地頭も鍛えられますし、その後の学習姿勢にもかかわってきます。夢中になって図鑑を読むうちに語彙も増え、読めない漢字が読めるようになっているかもしれませんよ。***子どもは、やる気次第でびっくりするほどの成長をみせることもあります。子どもならではの伸びしろを無駄にしないよう、親は子どもの興味ややる気を伸ばすためのサポートを心がけましょう。文/田口るい(参考)coFFee doctors|変化に気づく子ども、結果にこだわる大人~子どものやる気を伸ばすには?~東洋経済オンライン|子どもの「やりたくない」をやる気にする秘訣東洋経済オンライン|子どものやる気に”着火”させる2つの方法ホウドウキョク|子どもの“やる気”はどう作る? 自主性を引き出すための“声かけ&質問”を学ぼうベネッセ教育情報サイト|「原因追究」が子どものやる気を奪う?[やる気を引き出すコーチング]プレジデントオンライン|脳を騙して「4倍働いて2倍遊ぶ」方法Study Hacker|やる気が続かない?学習を持続できる『自己効力感』の高め方Study Hackerこどもまなび☆ラボ|知的好奇心がぐんぐん伸びる!東大生の多くが経験している「ハマり体験」とは
2019年03月24日親であれば、自分の子どもには「いい子」に育ってほしいと考えています。でも、「いい子」とは果たしてどんな子どもでしょうか?一般的には「学校の先生の話をきちんと聞けて、勉強ができる子」といえるかもしれません。ただ、その典型的な「いい子像」に縛られる必要はないと、子どもの自主性・自立性を引き出す独自の授業で注目を集める東京学芸大学附属世田谷小学校教諭の沼田晶弘先生は語ります。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)「いまやるべきこと」にしっかり取り組ませる勉強ができる「いい子」になってほしい――。親として当然の願いですよね。そのため、上の学年でやる予定の学習内容を事前に学ぶ「先取り学習」にこだわる親御さんも数多くいます。「学力を上げるには先取り学習が効果的だ」というような話はよく耳にしますし、学習塾や教材業者の多くもそううたっていますから、子どもに先取り学習をさせて「安心したい」という気持ちが親に生まれることも、先取り学習を助長させる一因となっていると思います。でも、だからといって、「いまやるべきこと」がしっかりできていないのに、親が焦って子どもに先取り学習をさせることにはなんの意味もありません。そもそも、学校のカリキュラムは、段階を踏んで子どもを成長できるようにつくられているものなのですから。もちろん、個の能力差はあるので、とても能力が高くて先取り学習をさせてあげたほうがいいなと思うような子どもも存在します。とはいえ、学力を上げるベストの選択肢のように先取り学習が取り上げられる風潮には疑問を持っています。まずは、「いまやるべきこと」にしっかり取り組ませること。それがなによりも大切ではないでしょうか。子どもが話を聞けないことの責任は教員にあるここで親御さんに問いたいのは、そもそも「いい子」とはどんな子どもなのか、ということです。それは、「勉強ができる子ども」ですか?あたりまえのことですが、勉強だけが子どもの評価基準ではないはずです。僕のクラスに、漢字がすごく苦手な子どもがいます。でも、その子には別の特徴もある。給食のおかずが残ってしまいそうでみんなが困っているとき、その子は3人前もおかわりして食缶をしっかりからにしてくれる(笑)。クラスのみんなにとってヒーローであり、僕にとっても紛れもなくいい子です。また、「先生の話をきちんと聞ける子ども」がいい子だともいわれます。でも、子どもが教員の話をきちんと聞けないことの責任の半分は教員にあると僕は思っています。僕の話を子どもたちが聞いてくれないとしたら、僕の話し方が下手だというだけのことなのです。ここで、子どもたちに対する話し方、授業の進め方についての僕の考え方をお伝えします。多くの教員は、いい教材をつくっていい授業にして、子どもに学習内容をしっかり理解させようとすごく努力をしています。でも、僕の場合は、そういうセンスがないし努力があまり得意ではありません……(苦笑)。だから、必然的に他の先生たちとはちがうやり方になる。たとえるなら、他の先生たちのやり方は、「カウンターのすし店」に子どもたちを連れて行くというもの。いわば、「いいもの」を提供する考え方です。一方、僕は子どもたちが「いまいちばん食べたいもの」を提供したいのです。高級すし店に連れて行かれた子どもが、本当は「フライドチキンが食べたい」と思っていたとしたらどうでしょうか?当然、フライドチキンを出してあげたほうが食いつきは格段にいいはずですよね。授業に対する興味を子どもに持たせるには、僕が、彼らが求めているものに気づき、面白く話をできればいいだけのことなのです。いまの子どもたちに求められる「自分で考える力」それこそ、これからは多様性が求められ、社会ではダイバーシティという考え方が重要になるといわれる時代なのに、画一的な「いい子」に育てることにこだわる必要はありません。とはいえ、あまり特殊な例に引っ張られ過ぎるのも危険かもしれない。たしかに、「いい大学に入っていい企業に就職すれば安泰」というような、これまでの人生のモデルケースが崩れたともいわれます。学歴は大学中退や高卒でも、個人の力でものすごく稼いでいる人がいるのは事実です。でも、それはあくまで「特殊な例」に過ぎないのです。そういう例に極端に感化され、「じゃ、僕も大学を中退しよう」「大学に行かなくてもいいや」と安易に考えると、人生で大きな失敗を犯すことにもなりかねません。そういう失敗を避け、また自分の個性をしっかり社会で生かして人生を歩んでいくためにも、いまの子どもたちに必要とされるのはやはり「自分で考える力」といえるでしょう。なにかを調べることなんて、『Google』に任せれば済むかもしれない。そんな便利な世の中になっているからこそ、自分がどう生きていくかをしっかり考えられなければなりません。そして、子どもの「自分で考える力」を育むには、それこそ実際にもっともっと考えさせるしかありません。僕が4年生のクラスの担任をしていたときには、朝の会で必ず政治問題を取り上げていました。「そんなの早過ぎるよ」と感じる人もいるかもしれませんが、そんなことはないのです。わたしたち大人の世界で見ても、50歳の人の意見が必ず正しくて、30歳の人の意見が必ず間違っているということはありませんよね?「まだ子どもだから」なんて考えず、子どもと一緒にテレビで観たニュースについて、「どうしてこんなことになっているんだろうね?」「どうしたらいいと思う?」といった質問を投げかけてみてください。子どもは子どもなりに考えて、子どもなりの答えを見つけるようになるはずですから。それこそまさに、「自分で考える」姿勢に他ならないと思うのです。『家でできる「自信が持てる子」の育て方』沼田晶弘 著/あさ出版(2018)■ 東京学芸大学附属世田谷小学校教諭・沼田晶弘先生 インタビュー一覧第1回:子どもの「内発的なやる気」を引き出す、たったひとつの方法。第2回:「早くしなさい!」と言わないためには?着替えの時間の『ドラえもん』が効果大な理由第3回:「褒める」にひそむ意外な盲点。本当に褒めるべきこととそうでないことの違い第4回:「典型的ないい子」を育てるよりも大切な、伸ばしてやるべき子どもの「考える力」【プロフィール】沼田晶弘(ぬまた・あきひろ)1975年9月19日生まれ、東京都出身。東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。学校図書生活科教科書著者。東京学芸大学教育学部卒業後、インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。スポーツ経営学の修士課程修了後、同大学職員などを経て、2006年から現職。児童の自主性・自立性を引き出す斬新でユニークな授業が読売新聞に取り上げられ話題となる。教育関係のイベント企画を多数実施する他、教育関係だけではなく企業向けの講演も精力的におこなっている。著書に『「変」なクラスが世界を変える! ぬまっち先生と6年1組の挑戦』(中央公論新社)、『子どもが伸びる「声かけ」の正体』(KADOKAWA/角川書店)、『ぬまっちのクラスが「世界一」の理由』(中央公論新社)、『「やる気」を引き出す黄金ルール 動く人を育てる35の戦略』(幻冬舎)など。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月24日「学力が高い子どもは自己肯定感も高い」という、学力と自己肯定感の関係性については、子どもの教育に高い関心を持つ読者の皆さんはよくご存じかもしれません。そしてきっと、子どもの自己肯定感を高めるための言葉がけなども、すでに実践済みかと思います。しかし、「自己肯定感は親子セットで育むもの」ということまで知っている方は、あまり多くないのではないのでしょうか。子どもの学びや気づきをサポートする私たち親も同じように、自己肯定感を高めて接することが大切なのだそうです。自己肯定感は大人になってからも高めることができます。今日からできる自己肯定感アップの方法についてご紹介しましょう。「自己肯定感」が高い子どもは学力も伸びるまず、「自己肯定感」について見てみましょう。「自分ならできる」「ここに存在していていいんだ」「自分は愛されている」と思う気持ちが自己肯定感です。「自己効力感」「自己承認」「自己評価」「自尊心」なども同じような意味といえます。心理学や教育学の文献では「自己肯定感」を次のように定義しています。「自分の可能性を信じ, 自分はできるんだという自信をもち,肯定的に自己を認識すること」「ありのままの自分を受け止め、自己の否定的な側面もふくめて、自分が自分であっても大丈夫という感覚である」(引用元:田島賢侍, 奥住秀之(2013),「子どもの自尊感情・自己肯定感等についての定義及び尺 度に関する文献検討 : 肢体不自由児を対象とした予備的 調査も含めて」, 東京学芸大学紀要. 総合教育科学系 64(2): 19-30.)また、自己肯定感と学力には関係があるともいわれています。毎年、小学6年生と中学3年生を対象に行なわれている全国学力・学習状況調査では、算数・国語(および3年に一度の理科)の学力調査のほか、学習や生活環境についてのアンケートも行なわれており、この調査結果から、自己肯定感と学力には関係があると指摘されています。「自分には、よいところがあると思いますか」との質問に、肯定的に回答した児童生徒の割合は平成25年度以降、増加傾向が見られ、平成30年度は約8割となった。また、この質問に肯定的に回答した児童生徒の方が、平均正答率が高い傾向が見られた(ただし、中学校国語においては「どちらかといえば、当てはまる」と回答した生徒の平均正答率が最も高かった)。(引用元:国立教育政策研究所|平成30年度全国学力・学習状況調査の結果5.児童生徒の自己肯定感等に関する状況)平均正答率が高い子ほど自己肯定感も高いということに、因果関係がはっきり見出されているわけではありません。とはいえ、学力が高いと「自分は頑張れる」という自信につながり、その自信がまた学力アップの原動力になるのですから、やはり何らかの相関関係があるといっていいでしょう。親の「自己肯定感」を高めるべき理由子どもが毎日の生活で接する社会はあまり広くありません。お子さんに今日1日の出来事を聞いてみると、話の中に登場する人は、家族以外では園や学校、習い事で会う先生とお友だちがほとんどではないでしょうか。このように、限られた範囲の人からの言葉や接し方にふれて自己肯定感を育んでいくことを考えると、子どもと最も近いところにいる両親の言葉や接し方は、子どもの自己肯定感を大きく左右するといってよさそうです。もし毎日一緒にいるお母さん、お父さんの自己肯定感が低かったとしたら、子どもにどのような影響を及ぼすのでしょう。(1)自己防衛のため、子どもに介入や干渉をしがち子どもに対して「そんなやり方ではダメだよ」「ママの言うとおりにやってごらん」と口出ししてしまうのは、心配する気持ちだけではない場合も。うまくできるようにと子どものためを思ってアドバイスしているつもりでも、実は子どもがうまくできず失敗に終わると自分の価値が下がってしまうという恐怖感から口出しすることもあります。これは自己肯定感の低さによる自己防衛だと考えられます。(2)子どもとの信頼関係が築きにくい自己肯定感が低いと、親が自分自身を守りたいという気持ちが上回り、その心理が言動にも表れてしまいます。子どもは、親が自分のことを思ってくれているのではないと敏感に察知し、信頼関係が築きにくくなります。子どもは「お父さんやお母さんは自分を大事にしてくれる」「自分は認められている」と感じる経験が乏しくなり、自己肯定感を高めることは難しい状態になります。今日から親子で自己肯定感アップ!日常生活で意識したいこと上述した理由からも、子どもの自己肯定感を高めるには、まず毎日近くにいる親の自己肯定感を高めることが第一といえるでしょう。自己肯定感は大人になってからでも高めることができます。今日から始められる自己肯定感アップの方法をいくつかご紹介します。■パートナーの良いところを褒める夫婦の良好な関係は子どもの心の安定につながり、自己肯定感を育みます。パートナーの良いところを積極的に口に出して褒めるようにしましょう。また、褒められたら「ありがとう」と感謝することが習慣になると、夫婦間だけでなく子どもに対しても同じように接することができます。良いところを褒められ、感謝の気持ちを受け取ることは年齢に関係なく自己肯定感のアップにつながります。■「できたこと」を親子で共有する毎日、どんなに小さなことでもいいので「今日、これができた」ことを親子で共有し、認め合います。お風呂タイムに話し合ってもいいですし、交換日記スタイルで書いていくのもおすすめです。この方法は、できたことを少しずつ積み上げ、自信をつけて自己肯定感をアップさせるだけでなく、自分の考えをまとめて相手に伝わるように表現するプレゼンテーションのトレーニングにもなります。■趣味や楽しみをもち、人づきあいを広げる子育て以外にも視野を広げるために、やってみようと考えていた趣味を始めたり息抜きのショッピングや食べ歩きで楽しんだりしてみましょう。生活が充実することで自己肯定感もアップします。また、子どもの心配事はひとりで抱え込まず、友だちや子育て支援センターのスタッフなど周囲の人を頼ってみると、ひとりで悩んでいたときよりも楽観できるようになり「やれるところからやってみよう」と自分に自信がつくようにもなります。どの方法も簡単に始められるものばかりです。一度に始めると続けられないと思えば、この中から始めやすいものを選んで試すのもおすすめです。うまくいかないことを恐れず、まずは、私たち親が前向きに取り組んでみましょう。その姿を見せることも、子どもの自己肯定感を高めるための良い刺激になります。***子どものことを心配しているつもりでも、その言動の裏側に親自身の自己防衛やコンプレックスが隠れていることは少なくありません。子どもの成績をほかの子と比べる、兄弟姉妹で自転車や逆上がりのできた時期を比べるという例はもちろんですが、ハサミの使い方や絵の具の色使いなど、ちょっとアドバイスしたいと思ったときに、「これは誰のための言葉なのか?」と考えてみるといいかもしれませんね。(参考)田島賢侍, 奥住秀之(2013),「子どもの自尊感情・自己肯定感等についての定義及び尺 度に関する文献検討 : 肢体不自由児を対象とした予備的 調査も含めて」, 東京学芸大学紀要. 総合教育科学系 64(2): 19-30.国立教育政策研究所|平成30年度全国学力・学習状況調査の結果5.児童生徒の自己肯定感等に関する状況一般社団法人 日本セルフエスティーム普及協会|部下を伸ばせる上司、子どもを伸ばせる親は「自己肯定感」が高い!AERAdot.|親の「自己肯定感」が低いと子どもも低くなる?簡単にアップする方法とはこどもまなび☆ラボ|「立ち上がる力」を持つ、自己肯定感が高い子どもの親に共通する2つの特徴
2019年03月23日子どもは褒めて伸ばす――。教育に関わる多くの人が口をそろえて唱える言葉です。ただ、「どんなことでもとにかく手放しで褒めればいいというわけではない」と語るのは、東京学芸大学附属世田谷小学校教諭の沼田晶弘先生。子どもの自主性・自立性を引き出す独自の授業で注目を集めています。沼田先生によれば、褒め方には5つのレベルがあるといいます。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)「褒め方」には5つのレベルがある「褒めて伸ばす」という考え方には、僕も基本的には賛同します。でも、ただ褒めればいいというわけでもありません。僕は「褒め方には5つのレベルがある」と考えています。【褒め方の5つのレベル】レベル1:見るレベル2:気づくレベル3:認めるレベル4:褒めるレベル5:よろこぶレベル1は「見る」。子どもたちは、親や教員など周囲の信頼できる大人が「見てくれている」と思うだけで安心します。レベル2は「気づく」。子どもの存在自体、子どもがしていることに気づいてあげることも「褒める」につながる大切なステップです。レベル3は「認める」。これは、子どものすべてをただ肯定するという意味ではありません。なにかができたということはもちろん、できなかったことを認めることも大切です。そして、レベル4でようやく「褒める」。おそらく、多くの親御さんが経験していることかと思いますが、褒めるという行為はそう簡単なことではありません。労力も使いますし、意外にハードルが高いのです。そもそも、子どもが日常的にできるようなことを褒めるのは難しいですよね?子どもが洗濯機に自分の服を入れた。そこで、「すごいじゃない!今日も入れられたね」なんて褒められれば、子どももバカにされているのかと思ってしまうかもしれない(苦笑)。しかも、「褒めるのがいい」という情報をさまざまなメディアで得ているからと、半ば無理やり褒めようとすれば、そういう下手な演技は敏感な子どもにしっかり見破られます。そうなると、それまで積み上げてきた信頼関係も崩れかねません。親が本心から褒めたくなるようなことでなければ、レベル3の「認める」までで十分です。最後のレベル5が「よろこぶ」。つい最近、僕のクラスである問題が起こりました。子どもたちはどんな行動をするのかなと見ていたら、ひとりの女の子が見事にその問題を解決してくれた。その対応に対して、僕は当然褒めました。だけど、それ以上に僕はうれしかった。だからよろこんだわけです。そういう大人の姿を見れば、子どもたちのなかでも褒められる以上のよろこびが生まれ、自己肯定感が高まり、やる気が生まれるということになるのです。「教える」は減点法、「褒める」は加点法また、教育には、「褒める」やり方の他に、「教える」やり方があります。「教える」やり方は、「こうあってほしい」という100点満点の理想がある減点法です。一方、「褒める」やり方には100点満点はありません。前に進めば進んだ分、評価する加点法といえるでしょう。まったく別のスタイルですから、それぞれに特徴があります。たとえば、東京から大阪に行くという理想があるとしましょう。子どもたちが京都で立ち止まった場合、100点満点にはあと少し足りません。減点法の「教える」やり方の場合、叱らなければならない。そのため、子どものモチベーションは上がりにくいというデメリットがある。だけど、目標を達成するための力のレベルはキープしやすいという一面もあります。一方、加点法の「褒める」やり方の場合、たとえば東京からほんの少しだけ進んで品川に着いただけでも褒めることになる。子どもたちも、「僕たち、なかなかできるじゃん」なんて思って、モチベーションを保つことができるでしょう。でも、結果はほんのわずかな距離を進んだだけに過ぎず、目標を達成するための力のレベルは上がりにくいのです。どちらのやり方にも、メリットもデメリットもある。だとしたら、バランスを考えてそれぞれを使いわけていくことが大切だと思います。そのためには、なによりも子ども本人の個性をしっかり見てあげることが重要でしょう。「親の気持ち」ではなく「子どもの気持ち」に注目親御さんにとって子どもへの対応が難しいのは、先の例なら目標の大阪にまであと少しの京都までたどり着いたという場合かもしれません。テストでいうなら90点というところでしょうか。普通に考えればしっかり褒めてあげていい点ですが、親御さんには「あと少しで100点だったのに」という気持ちもある。「もう少し頑張ったらよかったのに」なんていいたくもなるかもしれません。でも、それはあくまで親の視点からの気持ちです。注目すべきは、「子ども本人がどう思っているか」ということのはず。子どもが子どもなりに目標を掲げて、90点で「やった!」と思っているなら褒めてあげてください。「しまった!」と思っているなら「惜しかったね」と声をかけてあげればいいと思うのです。100点を取れる力があり、本人もそう思っていたなら、「駄目だなあ」なんて嘆いて、プライドをくすぐってあげてもいいかもしれませんね。いずれにせよ、「親の気持ち」ではなく「子どもの気持ち」に注目して対応することを意識してほしいと思います。『家でできる「自信が持てる子」の育て方』沼田晶弘 著/あさ出版(2018)■ 東京学芸大学附属世田谷小学校教諭・沼田晶弘先生 インタビュー一覧第1回:子どもの「内発的なやる気」を引き出す、たったひとつの方法。第2回:「早くしなさい!」と言わないためには?着替えの時間の『ドラえもん』が効果大な理由第3回:「褒める」にひそむ意外な盲点。本当に褒めるべきこととそうでないことの違い第4回:「典型的ないい子」を育てるよりも大切な、伸ばしてやるべき子どもの「考える力」(※近日公開)【プロフィール】沼田晶弘(ぬまた・あきひろ)1975年9月19日生まれ、東京都出身。東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。学校図書生活科教科書著者。東京学芸大学教育学部卒業後、インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。スポーツ経営学の修士課程修了後、同大学職員などを経て、2006年から現職。児童の自主性・自立性を引き出す斬新でユニークな授業が読売新聞に取り上げられ話題となる。教育関係のイベント企画を多数実施する他、教育関係だけではなく企業向けの講演も精力的におこなっている。著書に『「変」なクラスが世界を変える! ぬまっち先生と6年1組の挑戦』(中央公論新社)、『子どもが伸びる「声かけ」の正体』(KADOKAWA/角川書店)、『ぬまっちのクラスが「世界一」の理由』(中央公論新社)、『「やる気」を引き出す黄金ルール 動く人を育てる35の戦略』(幻冬舎)など。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月22日「早くしなさい!」。つい子どもに言ってしまう言葉のひとつです。強い口調で言ってしまい、自己嫌悪に陥る親御さんも少なくないはずです。では、子どもが自主的にやるべきことをやってくれるようにするには、一体どうすればいいのでしょうか。子どもの自主性・自立性を引き出す独自の授業で注目を集める、東京学芸大学附属世田谷小学校教諭・沼田晶弘先生にお話を聞きました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)「音楽」を使い子どもの時間感覚を育てるまず、親がつい「早くしなさい!」と言ってしまう理由から説明します。すごく単純なことで、親の都合でスケジュールを考えているからです。たとえば、○時までに家を出なくちゃならない、だから子どもには○時までに着替えてほしい。それは親の勝手な都合に過ぎません。自分の子どもはなにをするのにどのくらいの時間がかかるのか、普段からきちんと子どもを見ていれば、それを踏まえたスケジュールを組むこともできるはずです。そもそも、幼い子どもにはしっかりとした時間感覚がまだ備わっていません。そこで、子どもが時間感覚を早くつかんでいくために周囲の大人ができることもあります。そのために僕が使っているのは「音楽」の力。僕の学級経営には、iPodとスピーカーが欠かせません。それを使ってどうするのか。たとえば、掃除の時間には決まった曲をかけます。毎日同じ曲を聞くことになるので、子どもたちはあとどれくらいで曲が終わる、つまりあとどれくらいで掃除を終わらせなければならないかがわかるのです。曲が終わりに近づけば、子どもたちは自然に急いで掃除をします。僕は「早くしなさい!」とあまり言わないほうの教員ですが、代わりにiPodの音楽に、「早くしなさい!」と言わせているわけです。もちろんこれは、家庭と連動してできることでもあります。僕が担任している1年生のクラスでは、体育着の着替えの時間にはいつも『ドラえもん』の曲をかけることにしています。その子どもたちの姿を授業参観で見せたところ、家庭でも『ドラえもん』の曲をかけたら、子どもたちは自然に早く着替えるようになったそうです。ただ、これはなにも珍しいことではありません。大人でも無意識のうちにやっていることでしょう。僕は学校のそばに住んでいて、いつも遅刻ギリギリに滑り込むのですが……その時間を教えてくれるのが、テレビ番組『ZIP!』の「MOCO’Sキッチン」。速水もこみちさんを見れば、「そろそろ家を出ないとやばいぞ」と思える(笑)。それと同じ状態を、音楽を使って子どもたちにもつくっているだけのことなのです。ただ、子どもの場合だと、テレビには見入ってしまうものですから、やはりラジオや音楽などが適しているかと思いますね。自主的にやれば「お得」だという経験を積ませるそういう時間感覚とはちがう、広い意味での自主性を伸ばす方法についてもお伝えしておきます。子どもがなかなか自分から宿題に取り組んでくれないといった悩みは多くの親御さんが抱えているものでしょう。とくに夏休みの宿題は、教員の僕から見ても量が多く感じますし、大変だろうと思います。でも、そんな夏休みの宿題にだって子どもたちが嬉々として取り組むようにもできるのです。過去にこんなことがありました。ある年の夏休み前に、本来は夏休みの宿題であるドリルを取り出して、僕は子どもたちに言いました。「来週から夏休みだけど、特別に1週間前にこのドリルを渡すね」と。すると、子どもたちは「うひょーっ!」とよろこんで、夏休みに入る前にそのドリルを終わらせてしまいました。なぜそんなことが起きたのかというと、それまでに「なんでも早くやればお得だ」という経験を子どもたちに積ませていたからです。いま、僕が担任をしている1年生のクラスは、給食を配るのがとにかく早い。ただ、食べるのは遅い。なぜかというと、残さず全部食べるように指導しているからです。でも、代わりに給食後の掃除が猛烈に早い。そうすることで、昼休みを長く取れて「お得」だと子どもたちが感じているからです。それは授業でも同じです。みんなが集中して早く授業が終わったら、早めに休み時間にするのです。「率先してやるべきことを早く終わらせたら、たくさん遊べるんだ」。子どもたちがそう理解できれば、自分たちから動きはじめるようになるのです。親御さんが子どもに自主性を持ってほしいと願うのは、自分の経験からのものでしょう。「子どもの頃にもっと自主的に勉強をしていたら……」といった多少の後悔の念から、「子どもには同じ失敗をしてほしくない」と願うのです。では、「子どもの頃にもっと自主的に勉強をしていたら」どうなったと考えますか?「もっと上位の学校に進学できたかもしれない」「もっといい人生を歩んでいたかもしれない」。それは「お得だった」ということですよね?だとすれば、早くからもっと身近な「お得」を感じさせてあげることが、子どもの自主性を伸ばすことにつながるのではないでしょうか。『家でできる「自信が持てる子」の育て方』沼田晶弘 著/あさ出版(2018)■ 東京学芸大学附属世田谷小学校教諭・沼田晶弘先生 インタビュー一覧第1回:子どもの「内発的なやる気」を引き出す、たったひとつの方法。第2回:「早くしなさい!」と言わないためには?着替えの時間の『ドラえもん』が効果大な理由第3回:「褒める」にひそむ意外な盲点。本当に褒めるべきこととそうでないことの違い(※近日公開)第4回:「典型的ないい子」を育てるよりも大切な、伸ばしてやるべき子どもの「考える力」(※近日公開)【プロフィール】沼田晶弘(ぬまた・あきひろ)1975年9月19日生まれ、東京都出身。東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。学校図書生活科教科書著者。東京学芸大学教育学部卒業後、インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。スポーツ経営学の修士課程修了後、同大学職員などを経て、2006年から現職。児童の自主性・自立性を引き出す斬新でユニークな授業が読売新聞に取り上げられ話題となる。教育関係のイベント企画を多数実施する他、教育関係だけではなく企業向けの講演も精力的におこなっている。著書に『「変」なクラスが世界を変える! ぬまっち先生と6年1組の挑戦』(中央公論新社)、『子どもが伸びる「声かけ」の正体』(KADOKAWA/角川書店)、『ぬまっちのクラスが「世界一」の理由』(中央公論新社)、『「やる気」を引き出す黄金ルール 動く人を育てる35の戦略』(幻冬舎)など。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月21日日本に住んでいた頃、上の子供の英語教育は、頭痛の種でした。お父さんがイギリス人だから、苦労しなくても英語が話せるようになっていいねとよく言われましたが、子供だって必ずしも苦労せずに言語を覚えるのではないのだなあと、そばで見ていてしみじみ思ったものです。現に一才からイギリスで育っている下の子も、会話で “I buyed” などと言ってしまうのを、何度も “I bought” と言い直したものです。今ではさすがに減りましたが、それでも時々、不規則動詞の過去形はミスが出ます。話し言葉でもそうですから、読み書きはさらに工夫が必要です。日本の子供達が長い時間をかけて漢字を覚えていくように、イギリスの子供は例外が多い英語のスペルを、時間をかけて覚えていきます。私たち家族にとって難しかったのは、ちょうど日本語の読み書きに興味を持ち始めた上の子の、日本語に対する好奇心を潰すことなく、どうすれば英語の読み書きを導入できるか、でした。英語圏の小学校で使われるフォニックス教材最初に購入したのは、フォニックス教材のJolly Phonicsでした。英語圏の小学校などで使われる教材で、アルファベットと音をうまく組み合わせて教えていくのには非常に向いています。動画の14秒あたりから見るとわかるように、子供達にアルファベットと音、それに体の動作を教えていきます。CDやビデオも併用して使う、基本的には学校用の教材です。小さな子供の興味を引くように作ってあり、とても助かったのですが、我が家には一つだけ問題がありました。これは、親がつきっきりで見ないとならないプログラムだったのです。フルタイムで働いていた当時の私には、子供が保育園から帰ってくる7時過ぎから、夕飯、お風呂、翌日のしたくと、やるべきことが山積みでした。その中でこの教材を使うのは、とても難しいことでした。優れた教材ですから、もっと時間があったら活用できたのに、と残念に思っています。オンライン識字教育プログラム “Reading Eggs”そんな時、同じように日本で子育てをしているニュージーランド人のお母さんから勧められたのが、オンラインの識字教育プログラム、Reading Eggsです。対象は2歳から13歳まで。英語圏の小学校で公式に使われることもあるプログラムですが、ゲームのような感覚で英語が読めるようになっていきます。あまり小さいうちからコンピューターに触らせるのはどうかな、とも思ったのですが、これはとても使いやすいプログラムでした。7時過ぎに保育園にお迎えに行き、帰ってきてご飯のしたくをしている間、数十分、遊び感覚でやってもらうのに最適だったのです。ちなみにReading Eggsを開発した会社(3P Learning)は、子供向け算数のオンラインプログラム、Mathseedsも出しています。簡単な計算をゲーム感覚で楽しみながらマスターすることができるので、こちらも一時期、併せて利用していました。まさに英語「を」学ぶだけでなく、英語「で」学ぶことができる、貴重な教材だったのです。オンラインプログラムは、イギリスの小学校の宿題でも大活躍イギリスに引っ越してきてから気づいたのですが、イギリスの小学校の宿題は、こういったオンラインプログラムを使うことが多いのです。算数の計算のような単純な問題は、オンラインプログラムに任せてしまえば先生は採点をしなくても良いですし、それでいて、それぞれの子供の弱点がわかりますよね。学校から出される宿題だからといって、クラスの子供たち全員が一斉に同じ問題を解くのではなく、それぞれ違う問題に取り組むこともあります。オンラインプログラムを活用することで、前回お話ししたオックスフォード・リーディングツリーを使った識字教育と同様に、子供のレベルに合わせた教育をすることができるのです。家庭にコンピューターがない子供のために、休み時間に学校のコンピューターを使って宿題をやってしまう「ホームワーククラブ」もあります。どこの国でも先生は大忙しですが、機械に任せられるような単純作業を機械に任せられる、良いシステムだと思います。英語圏にはきちんとした教育目的のオンライン教材がたくさん!オンライン識字教育プログラムReading Eggsや算数プログラムMathseedsは、会費がかかりますが、家庭で手が出せない金額ではありませんし、非常に良いプログラムだと思います。※識字・算数プログラム合わせて、年間購読で一ヶ月あたり7.92ドル(約880円)、識字プログラムのみだと一ヶ月あたり6.70ドル(約750円)。子供が自分である程度読めるようになると、多読教材がオンラインで読めるのも魅力的です。図書館で英語の本を借りることも日本国内ではそう簡単ではありませんから、絵本を一冊買う程度の金額で、ある程度の読書量を確保することができるのはいいですよね。実は英語圏にはかなりの数、しっかりとした教育用のオンラインサービスがあります。そして多くが、比較的利用しやすい価格帯で提供されているようです。例えば、全世界の子供たちと、算数の競争ができるサイトMathleticsは、先ほどご紹介した3P Learning 社の開発したもので、会費は年間約60ポンド、日本円で8,700円前後でしょうか。こうした教材が開発される背景には、小学校での宿題に使われるだけでなく、一定人数ホームスクール(ホームスクーリング)をしている子供がいることも挙げられるでしょう。学校に通うのではなく家庭で教育を受けるホームスクーリングは、アメリカやオーストラリアのように国土が広い国では、場合によっては必然的なチョイスです。病気であったり、家庭の方針でホームスクーリングを選ぶケースもあります。これは海外に限ったことではありません。インターナショナルスクールに通わせると年間300万円を超える学費がかかることもあり、東京に住んでいる外国人の親御さんの中には、経済的な事情からホームスクーリングを選ばざるをえない方もいます。日本に住んでいた頃は、日本の保育園に通う上の子のために、「ホームスクーリング」と「小学校」をキーワードに、オンラインサイトをかなり探しました。まだまだある!低年齢向けオンライン教材識字だけでなく、様々な科目を教えてくれるサイトもあります。現在下の子供が小学校で使っているサイトはPurple mashといい、英語だけでなく科学や算数、ITやアートなど、イギリスのカリキュラムに沿った様々なトピックを扱っています。残念ながら、学校向けの事業展開ですが、似たようなサイトで家庭教育に使われているものもあります。たとえば上の子の小学校が使っていたのはEducation Cityと呼ばれるサイト。イギリスやスコットランドのカリキュラムをカバーしており、ホームスクーリングをしている家庭向けのサービスは年間89ポンド、日本円で約13,000円で利用することができます。英語だけでなく算数や科学、IT、フランス語やスペイン語も。そして英語を外国語として学んでいる子供向けの教材もあります。アメリカのカリキュラムを念頭においたものですが、英語や算数、理科や社会、ITに加え、ヘルスやアート&ミュージックなどの様々な科目を扱っているBrain Popは、家庭ごとに利用することができます。現在はアメリカの小学校の約4分の1が利用しているとされているサービスです。同様にStarFallもアメリカのカリキュラムに沿った識字教育のサイトです。フォニックスを学べるアニメーションや、音声付のウェブ絵本、ダウンロードしてワークシートとして活用できる紙ベースの教材をはじめとして、多岐にわたった学習コンテンツを楽しむことができます。一部有料コンテンツもありますが、無料で楽しめる教材も豊富に用意されています。幼稚園生向け、小学生向けに分かれ、会員登録の手間なく、子供の学習レベルに合った内容にアクセスできます。子供の負担にならない程度、ゲーム感覚でイギリスやアメリカの小学生たちの使っている教材に触れることは、実は日本にいても、昔よりずっと簡単になっているのです。(参考)Wikipedia|BrainPopJolly Phonics UK Catalogue
2019年03月21日昨今では共働き家庭が増えていることから、子育てや家事を母親・父親がそれぞれ分担しながらこなしていくことが求められています。その結果、ひと昔前に比べて、父親が育児に参加することが一般的になってきました。こうして父親が積極的に育児に取り組むことは、母親の負担が減ることはもちろん、子どもに対してもさまざまな影響があります。今回は、「お父さん効果」とも呼ばれる、父親の教育への参加が子どもに与える影響を紹介しましょう。いつの時代もお父さんは子どもの憧れである!子育ての中心は母親になることが多い傾向にあります。そのため、子どもは母親の趣味嗜好や考え方、行動などの影響を強く受けやすいとされています。しかし、父親も積極的に子育てに参加すれば、当然父親から受ける影響も多くなります。その結果、子どもがさまざまな価値観に触れることになり、学ぶ機会も増えるのです。教育ジャーナリストの清水克彦氏は、著書『頭のいい子が育つパパの習慣』の中で、父親の影響について以下のように話しています。世の中の出来事に敏感で、(私はこういった仕事に就きたい)というビジョンを持っている学生は、小・中学生の頃から父親の影響を色濃く受けてきた学生が多いこともわかりました。このように、家庭の力、とりわけ父親の力は、子どもの成長を左右する大きな要素になり、父親の積極的な教育参加は子どもを伸ばすうえで重要なカギとなります。(引用元:清水克彦著(2014),『頭のいい子が育つパパの習慣』,PHP研究所.)子どもにとって父親とは「社会人としての在り方」を示す存在です。父親が仕事を生き生きとこなす姿を見せながら、仕事の楽しさやすばらしさを子どもに伝えることは、子どもが「働く」ということに興味を持つきっかけになったり、将来自分が就きたい職業を考えるときにも影響したりします。また清水氏は、「父親と子どもとの対話時間がほどよく確保」されていることも重要であると言っていました。「仕事が忙しいのに、お父さんは私のために時間をさいてくれている」ということは、子ども心に嬉しいものです。なかなか難しいかもしれませんが、毎日少しでも子どもと向き合う時間があるといいですね。教育に積極的な父親を持つ子どもの特徴5つシカゴのアン・アンド・ロバート・H・ルーリー小児病院の主治医でもあるガーフィールド博士と、ハーバード大学医学部の臨床小児科学准教授のマイケル・ヨグマン博士の研究によると、父親が育児に携わった子どもには以下のような特徴があるといわれています。■言語能力が優れている■自尊心が高い■学校の成績が良い■うつや不安症になりにくい■学校をずる休みしたり、10代で親になったりする割合が低い言語能力や学校の成績といった学力的な部分はもちろん、自尊心の高さやうつや不安症のなりにくさといった精神的な部分は、子どもがすこやかに成長していくためには欠かせないものです。子どもの可能性を十分に伸ばすためには、父親が育児に積極的にかかわることが重要だといえるでしょう。父親の読み聞かせは母親の3倍の効果がある!?父親が育児や教育に積極的にかかわることが大切だといっても、実際には仕事などの都合でなかなかかかわることができない、どうかかわればいいのかわからないという方もいるでしょう。そんな忙しい方でも取り入れやすい習慣を紹介します。1.絵本の読み聞かせをする母親による絵本の読み聞かせに慣れている子どもにとって、父親による絵本の読み聞かせはとても新鮮なものです。母親とは違う父親の声や語り口調は、子どもの好奇心を刺激し、集中力や想像力をかき立てることにもつながります。一説によると、父親の読み聞かせは母親の読み聞かせの3倍の効果があるといわれています。週末や休みの前日に絵本の読み聞かせをする習慣を作りましょう。2.家族そろって食卓を囲む日を作る家族そろって食卓を囲み、子どもと父親がゆっくりと対話することは、子どもの学力を伸ばすことにもつながるといわれています。毎日一緒に夕食をとることは難しくても、週に何度かは早めに帰宅し、親子で会話を楽しみながら夕食をとるようにしましょう。また朝食を一緒にとるというのもひとつの手です。父親が朝からしっかり食べることで、子どもも朝からたくさん食べる習慣がつきますよ。3.父親だからこそできる遊びを楽しむアスレチックやスポーツなど、父親だからこそできるパワフルな遊びを楽しみましょう。母親にはできない遊びを通して子どもとかかわることで、子どもは父親への信頼感がより強くなり、さらには精神的な安定をもたらします。自然体験は子どもの自己肯定感を育てますし、キャンプには子どもの脳機能を向上させるという効果もあるそうです。ぜひどんどん子どもを外に連れだしてあげてください。4.子どもの好きなものを知る子どもと過ごす時間が母親に比べて少ない父親は、子どもの趣味嗜好をしっかり把握できないことも多いです。子どもの好きなものを知ることは、子どもとのコミュニケーションのきっかけになったり、子どもの気持ちを汲み取ったりすることにもつながります。好きな食べ物、好きなキャラクター、好きな遊びなどは母親に聞くなどして把握しておき、子どもとの会話や遊びに生かしましょう。父親が自分の好きなものを知ってくれていると、子どもは「自分を受け入れてくれている、理解してくれている」と感じ、自己肯定感が高まります。5.母親を褒め、感謝する父親と母親がお互いに尊敬・信頼し合うことは、子どもの心の安定につながります。子どもの前で母親を褒めて、感謝する気持ちを示せば、子どもも母親を大切にするようになります。母親にも、子どもの前で父親を同じように褒めてもらうようにしましょう。父親と母親の関係は、将来的な子どもの恋愛観や結婚観に影響することもあるため、夫婦間での信頼感を築くことも重要です。***育児に積極的に参加する父親の中には、「育児をするためには仕事を早く片付ける必要があるので、以前に比べて効率的に仕事ができるようになった」という方もいます。子どものために、妻のために、そして自分自身のために、より子育てに携わってみませんか。文/田口るい(参考)東洋経済オンライン|「父親」が育児に携わった子が優れている理由プレジデントオンライン|「子供を潰す・伸ばす」父の習慣と口癖5プレジデントオンライン|子どもの生きる力を育てる父親の役割ベネッセ教育情報サイト|子どもがパパになつかない時にできることとは?ベネッセ教育情報サイト|どうすればいいのかわからない…パパ育児のススメPHPファミリー|父親の読み聞かせは、母親の3倍の効果があるThe Sydney Morning Herald|Why story time is better when dad’s reading the bookPHPファミリー|父親との会話が子どもの学力を伸ばす清水克彦著(2014),『頭のいい子が育つパパの習慣』,PHP研究所.Study Hackerこどもまなび☆ラボ|子どもに「自然体験」をさせよう!正義感と自己肯定感を強くする方法
2019年03月20日勉強であれスポーツであれ、意欲的に取り組める子どもになってほしい、子どもの「やる気」を引き出したいと願う親御さんは多いでしょう。でも、なかなか親の思い通りにはならないのが子どもであり、現実です。そこで、子どもの自主性・自立性を引き出す独自の授業で注目を集める、東京学芸大学附属世田谷小学校教諭・沼田晶弘先生に、子どものやる気を引き出すためのアドバイスをしてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)誰でもやる気にさせる魔法の言葉は存在しないこう言ってしまうと元も子もないかもしれませんが……「この言葉をかけたら子どもがやる気になる」というような魔法の言葉は存在しません。「やる気スイッチ」という言葉が、それこそスイッチを入れるように簡単に子どものやる気を引き出す方法があると誤解を与えているのでしょうね。やる気というものは、コップに水が少しずつ溜まっていくように徐々に蓄積していくもの。その水を溜めるには、日頃から子どもと関わり、声かけをするなどまめにコミュニケーションを取るしかありません。そうして徐々に溜まった水がコップいっぱいになり溢れはじめると、ようやくやる気も溢れ出すという状態になるのです。しかし、具体的にどんな声かけをすればいいのかというとひとことで表現するのはとても難しい。というのも、子どもにはそれぞれに個性がありますし、万能に効く言葉はこの世に存在しないからです。僕の場合であれば、ときには褒めるし、ときには叱るというやり方をします。また、しっかり信頼関係が築けている子どもが相手の場合、「もっとできるだろう、そんなものか」と、発破をかけるようなこともあります。子どものプライドを刺激してやる気を引き出すというわけです。このような場合には、言葉のチョイスは慎重にしなくてはいけません。もちろん、信頼関係を構築するために、日頃から密なコミュニケーションを取っておく必要がある。多くの教員は教室にある自分の席で給食を食べますが、僕は子どもたちのなかで一緒に食べるようにしています。そういった場面では本当にくだらない話もしながら、子ども一人ひとりの性格やキャラクターを把握するのです。自分の子どものやる気を引き出すには、どんなコミュニケーションをするべきか――。親御さんがつねにその意識を持ってお子さんに接してください。そうすれば、自然とかけるべき言葉が見えてくるはずです。子どもが持つプライドが、内発的なやる気を生み出す親御さんにお伝えしておきたいことのひとつに、いわゆるご褒美を頭ごなしに否定しないでほしいということがあります。子どもに限らず、大人でもただ「やる気になりなさい!」と言われてそうなれるものじゃありませんよね(苦笑)?子どもがやる気になることが重要だと思うのなら、やる気を引き出すご褒美を否定するべきではないと思うのです。ご褒美を嫌う親御さんは、「ご褒美で起こしたやる気なんてすぐになくなる」と考えます。たしかにそれには一理あるかもしれない。でも、子ども自身の内側からやる気がみなぎるのをただ待っているだけではなにも変わりません。そうではなくて、ご褒美で出させたやる気が消える前に、内発的にやる気が生まれるように変える必要があるのです。いわばこれは、バーベキューのときの着火と同様の原理です。ご褒美は最初に火をつける新聞紙のようなものだと考えてください。そこに新聞紙をただどんどん足していくだけでは、肝心の炭には火がつきません。炭に火をつけるのが目的だとわかっていれば、新聞紙をどう使えばいいのかがわかるはずなのです。ご褒美否定派の人は、それこそ勝手に炭に火がつくのを待っているだけの状態……。それでは、なかなかやる気を引き出せるものではありません。では、ご褒美という新聞紙でどのように炭に火をつけるのか。それは、先に少しお伝えしましたが、「プライドを刺激する」ということに尽きます。内発的にやる気を生み出すものは、その子が持つプライドしかないといっていいかもしれません。家庭教育にもゲーム的要素を取り入れるこれらのことは、僕がクラスでやっている計算トレーニングに臨む子どもたちを見ていてもよくわかります。そのトレーニングでは、ある条件を満たせばシールをもらえるルールにしています。でも、トップクラスの子どもたちは、続けているうちにシールなんてほしがらなくなってしまいました。では、なにをほしがるのかといえば、「記録」(計算時間)なのです。そういう子どもたちは、すでに自分との戦いという領域に入っていて、内面からどんどんやる気が溢れているような状態にあります。なぜそうなったのかといえば、「もうこのレベルまで到達したら、シールなんかのためじゃないよな!」なんていって、僕がたきつけたからです。そういうことを繰り返してきたことで彼らのモチベーションは一気に上がり、いまや誰にいわれるでもなくとんでもない量の計算を毎日しています。「この子たちは遊びが嫌いなのかな?」なんて心配になるほどに(笑)。このようにして内発的なやる気が生まれるようになれば、当然、勉強の成果も飛躍的に上がります。計算トレーニングをはじめた当初、10分で問題の半分も終えられなかったある女の子は、いまは1分以内にすべての問題を終えるようになりました。家庭では、クラスのライバルのような競争相手がいないので、プライドを刺激するということはやりにくい部分もあるかもしれません。それでも、お父さんやお母さんが競争相手になるとか、ゲーム的な要素を取り入れてプライドを刺激する、やる気を引き出すということはできるのではないでしょうか。『家でできる「自信が持てる子」の育て方』沼田晶弘 著/あさ出版(2018)■ 東京学芸大学附属世田谷小学校教諭・沼田晶弘先生 インタビュー一覧第1回:子どもの「内発的なやる気」を引き出す、たったひとつの方法。第2回:「早くしなさい!」と言わないためには?着替えの時間の『ドラえもん』が効果大な理由(※近日公開)第3回:「褒める」にひそむ意外な盲点。本当に褒めるべきこととそうでないことの違い(※近日公開)第4回:「典型的ないい子」を育てるよりも大切な、伸ばしてやるべき子どもの「考える力」(※近日公開)【プロフィール】沼田晶弘(ぬまた・あきひろ)1975年9月19日生まれ、東京都出身。東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。学校図書生活科教科書著者。東京学芸大学教育学部卒業後、インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。スポーツ経営学の修士課程修了後、同大学職員などを経て、2006年から現職。児童の自主性・自立性を引き出す斬新でユニークな授業が読売新聞に取り上げられ話題となる。教育関係のイベント企画を多数実施する他、教育関係だけではなく企業向けの講演も精力的におこなっている。著書に『「変」なクラスが世界を変える! ぬまっち先生と6年1組の挑戦』(中央公論新社)、『子どもが伸びる「声かけ」の正体』(KADOKAWA/角川書店)、『ぬまっちのクラスが「世界一」の理由』(中央公論新社)、『「やる気」を引き出す黄金ルール 動く人を育てる35の戦略』(幻冬舎)など。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月20日日中たくさん運動して、へとへとになって帰ってきた子どものために作る夜ごはん。あとは寝るだけだし、何でもいいか……と考えがちですが、実は夜ごはんには大事な役割があります。それは、運動で疲れた体をリカバリーし、成長するための栄養を供給すること。夜ごはんでは、主食(ご飯)、主菜(メインのおかず)、副菜(野菜や海藻のおかず)、果物、牛乳・乳製品の5つをまんべんなくそろえ、質と量を確保したメニューを心がけるのが理想です。とは言っても、気負う必要はありません。“栄養フルコース”を作るには、30分もあればじゅうぶん。今回のテーマは「夜ごはんのメインのおかず」。パッと作れて栄養満点な、ボリュームたっぷりの夜のおかずを紹介しましょう。肉も野菜もたっぷりで大満足!『牛肉と豆腐のすき煮』1日ハードに動いた体に、たんぱく質をしっかり補給できるおかずです。子どもが好きな食材と味つけで、もりもり食べられるよう工夫しました。■ 材料(2人分)牛こま切れ肉……150g木綿豆腐(4~8等分に切る)……2/3丁(200g)白菜(ざく切り)……2~3枚にんじん(輪切り)……3cm大根(せん切り)……100g長ねぎ(斜め切り)……2本えのきたけ(長さを半分に切る)……1/2袋(A)めんつゆ(4倍濃縮)……1/4カップ(50ml)(A)しょうゆ……大さじ1(A)水……1 1/2カップ(300ml)■ 作り方(1)鍋に(A)を入れて煮立て、牛肉を加えてアクを取り、豆腐、白菜の軸、にんじんを加えて煮る。(2)にんじんがやわらかくなったら、残りの野菜を加えてしんなりするまで煮る。【栄養士より:ここがポイント!】・大根、長ねぎ、白菜は、合わせて500~600gくらいになります。大好きな肉といっしょに野菜もたっぷり食べてもらえる優秀メニューですよ。・ご飯は、ご飯茶碗大盛り1杯、または丼1杯以上が目標。カルシウムが豊富な牛乳やヨーグルト、体のコンディションをととのえるビタミンCを含む果物を添えれば、栄養フルコースの出来上がり。***メインのおかずがたった2工程でできてしまうという手軽さ!簡単なのに栄養バランスも◎な、親御さんにも嬉しい一品です。1日頑張った我が子のために、美味しくて栄養満点な“ごほうびごはん”を作ってあげたいものですね。■ 『かんたん! おいしい!ジュニアのためのスポーツごはん栄養満点パワーチャージレシピ』株式会社 明治(監修)/2017年、金の星社■ この書籍の監修者インタビューを掲載しています試合当日の朝食には「炭水化物をたっぷり」。スポーツ栄養学にもとづいたメニューとは?不足しがちな「たんぱく質」と「カルシウム」、朝ごはんに取り入れるコツ
2019年03月19日みなさんのご家庭では、お子さんにお手伝いを分担させていますか?小さい頃は、お手伝いをさせることでかえって親の負担が大きくなってしまうこともあり、時間がないときはやらせたくない……と思いがち。でも、お手伝いを習慣にさせることには、子どもにとってのメリットがたくさんあるのです。今回は、子どもがお手伝いをすることで得られる教育的効果をご紹介しましょう。自己肯定感を高め、時間の管理が上手になる!子どもに家のお手伝いをさせることは、親がこなすべき家事の負担を多少軽くすること以上に、子どもにとっても大きなメリットがあります。国立青少年教育振興機構の理事長を務める鈴木みゆきさんは、お手伝いがもたらす効果のひとつに「子どもの自己肯定感を高められる」ことが挙げられると言います。ご両親からお手伝いの分担を与えらることで、家の中に自分の役割や居場所があると子ども自身が感じたり、お手伝いをして家族から褒められると「自分は必要とされている」と実感できたりするのです。そして、子どものこれからの人生にとって必要な自己肯定感を高めることにつながります。ほかにも、食事の準備を手伝うことで配膳の仕方などマナーを学ぶことができたり、洗濯やそうじのお手伝いをすることで上手な手順を身につけたりすることもできます。このような実践的な生活スキルは、お手伝いを通じて自然と身についていくものです。また、祖父母の家に行ったときにお手伝いをさせてみると、住んでいる地域や家によってルールやマナーが違うことを知る機会にもなるでしょう。また、お手伝いによって時間の感覚を身につけることも重要だと鈴木さんは言います。お手伝いはなによりも「時間の感覚」を身につけることにつながります。お手伝いが習慣化していれば、この時間にはなにをしなければならないということが「体でわかる」ようになるからです。ひいては、その習慣や感覚は「24時間をコントロールする力」につながっていくでしょう。じつは、わたしは長く生活習慣の研究をしてきました。結局、人間にとってなにが大事かといえば、「24時間をコントロールする力」だと思うのです。働いている大人でも、優秀な人の多くはタイムマネジメントにも長けた人ではないですか?(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「お手伝い」が子どもにもたらすいくつものメリット――お手伝いの習慣が高い学力につながる理由)このように、お手伝いは一度で終わらせず習慣にすることで、自己肯定感を高めたり、ルールやマナーを学んだり、時間の感覚を身につけたりすることができるのです。また、時間の感覚を身につけることは、自然と生活習慣を身につけることにもつながります。2018年に文科省が公表した「平成29年度全国学力・学習状況調査」によると、「毎日朝食を食べる」「新聞や本を読む」「計画的に勉強をする」といった生活習慣をきちんと身につけている子どもは、学力が高い傾向にあることがわかっています。「植物の水やり」にも教育的効果がある!?“お手伝いには教育的効果がある” とひと言で言っても、それぞれのお手伝いによって、身につく効果には多少の違いがあります。今回は種類ごとに、期待できる教育的効果をご紹介します。■そうじ例:ゴミ出し、お風呂そうじ、掃除機をかける<期待できる効果>責任感が身につく自ら考える力が身につく身の回りの整理整頓ができるようになる分担することで協調性が生まれる■洗濯例:洗濯物をたたむ、洗濯物を取り込む、上履きを洗う<期待できる効果>自立しやすい自ら考える力が身につく身の回りの整理整頓ができるようになる問題解決能力が備わる■料理例:食事の配膳、食器洗い、調理<期待できる効果>自立しやすいマナーを身につけられる自ら考える力が身につく親子でのコミュニケーションができる分担することで協調性が生まれる■ペットの世話・植物の水やり例:ペットの餌やり、水の取り替え、植物の水やり<期待できる効果>生き物を大切にする心を育む命の大切さを学ぶことができる■日常のお手伝い例:新聞取り、回覧板を回す、買い物<期待できる効果>自ら考える力が身につく分担することで協調性が生まれる判断力・決断力■兄弟の世話例:妹や弟の面倒を見る<期待できる効果>他者を思いやる心を育む命の大切さを学ぶことができる我が子にこのような力が身についてほしいと思ったら、そのお手伝いを分担させてみるのもいいかもしれませんね。お手伝いを継続するには、親の声かけが重要!お手伝いをすることで教育的効果を期待するのであれば、習慣づけすることが大切です。そのためには、子どもがお手伝いをしてくれたときは、「ありがとう」「○○ちゃんのおかげで、お母さんすごく助かったよ」と感謝の言葉を伝えましょう。また同時に「上手にできたね」「すごくきれいになったよ」「一生懸命そうじしてくれたね」など、できた結果はもちろん、その過程も褒めてあげてくださいね。言葉がけは、お手伝いが終わったらすぐにするのがポイント。褒めるタイミングも大事です。このような言葉をお母さんやお父さんからかけられると、子どもは達成感や満足感を味わい、それが自信へとつながります。そして、もっとお手伝いがしたい、次もやりたいという継続する意欲にもつながるでしょう。感謝の言葉はできれば毎日伝えてください。昨日褒められたことは、次の日には子どもは忘れているもの。毎回褒められることで子どもは自信を持ち、できることが増えていく喜びを感じます。そして、このように普段から子どもを尊重し、肯定的な声かけをすることで、お手伝いをし忘れてしまったときでも、親からの「お手伝いしてくれるかな?」と言った声かけで子どもは動いてくれるはず。お手伝いの習慣や継続には、親子の信頼関係も大切になってくるのです。また、お手伝いがうまくいかなくて、途中で投げ出してしまうこともあるものです。もし、うまくいかなくても、すぐに手を出さずに見守ることも大切。少し様子を見て、タイミングを見ながらヒントを与えたり、お手本を見せてみましょう。時には、あえて見て見ぬふりをする必要も。お互いがストレスにならないように気づかないふりをして、次回につなげるようにします。もちろん、「こんなこともできないの?」と、できなかったことを責めるのはNG。どうすればうまくできたのかを子どもと考えてみて、場合によっては一緒にやり直してみるのもいいですね。ただし、料理の場合は包丁や火などを使用するので、飽きて遊び始めてしまったら、「今日はここでおしまい」「食べ物では遊んではいけないよ」とけじめをつけるようにしましょう。***お手伝いにはさまざまな教育的効果がありますが、そのベースとなっているのは、やはり親子間のコミュニケーションや信頼関係です。親側はお手伝いをしてくれてありがとうという気持ち、子ども側は家族の役に立ってうれしいという気持ちなど、お互いを思いやる気持ちが大切です。そのうえで、できることが増えていく達成感や、家族から認められる自己肯定感、時間を自分でコントロールできる時間の感覚を養うなど、さまざまな力を自然と育んでいくことができるでしょう。ぜひ、お手伝いについて親子で話し合ってみてくださいね。文/内田あり(参考)StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「お手伝い」が子どもにもたらすいくつものメリット――お手伝いの習慣が高い学力につながる理由StudyHackerこどもまなび☆ラボ|お手伝いの習慣が学力アップにつながる!子どもの自己肯定感を高める4つのヒント。ベネッセ教育情報サイト|お手伝いが子どもにもたらす効果とは?いつから何をさせればいい?
2019年03月18日そろそろ子どもに学習習慣をつけさせたいと考えているなら、朝の時間を勉強タイムにしてはいかがでしょうか。「早起きは三文の徳」と言いますが、脳のはたらきも朝が最も活性化しているようです。今回は、朝学習を取り入れるにあたって、お子さんの年代に合わせたおすすめ勉強法をご紹介します。また、「朝が弱く、すっきり起きられない」「親は朝学習に付き合う必要があるか」など、朝学習を続けるうえで気になるお悩みも解決します。すでに小学生のお子さんでなかなか勉強の習慣が身につかず、この先が不安な親御さんも必見ですよ。朝は脳の「ゴールデンタイム」!早朝から集まって朝食を取りながらミーティングを行なうパワーブレックファストや、観光や寺院巡り、サーフィンなどを楽しんでから会社へ向かうエクストリーム出社など、ここ数年は朝時間を活用する動きが盛んです。このような朝時間の活用は、脳科学においても有効だとわかっています。脳科学者の茂木健一郎氏は、脳のゴールデンタイムについて以下のように話しています。私たちは日中の活動を通して、目や耳からさまざまな情報を得ています。その情報は大脳辺縁系の一部である海馬に集められ、短期記憶として一時的に保管されます。その後に、大脳皮質の側頭連合野に運ばれますが、この段階では記憶は蓄積されているだけです。それが睡眠をとることで、記憶が整理され長期記憶へと変わります。すると朝の脳は前日の記憶がリセットされるため、新しい記憶を収納したり、創造性を発揮することに適した状態になります。この脳の仕組みが、朝の時間がゴールデンタイムだと言われる理由です(引用元:THE21 ONLINE|脳科学者が勧める「朝時間」の使い方)※太字は編集部で施した朝、目覚めたばかりの脳が、1日のうちで最もぐんぐん情報を吸収して新しいことを考えだせるとしたら、この時間帯を上手に使わない手はありませんね。小中学校の約7割が、読書や勉強などの朝学習を実施脳のゴールデンタイムを使った活動は、公立の小中学校でも広く行われているようです。1時間目が始まる前の10~15分くらいを使い、「朝学習」「朝学」のような名前で、子どもたちはドリル学習や読書などを行なって朝の時間を有効に活用しています。文部科学省の教育課程部会が調査した結果によると、平成26年度の実績では、公立の小学校で74.8%、中学校では64.8%が短時間の朝学習を取り入れています。小学校では、そのうちの約半数が朝学習を週に5日行なっていて、「読書」「漢字」「計算」のほか、最近はゲームやチャンツなど音声中心の外国語活動を取り入れているところもあるようです。また、朝学習で得られる効果や成果については、次のように報告されています。目的・効果・成果(小学校)○ 目的として考えるものについては、9割程度の学校が「繰り返し学習による基礎的な知識・技能の定着を挙げており、6割程度の学校が、「朝学習を通じた児童の一日の生活リズムの定着」を挙げている。○ 「短時間学習により、指導の成果や児童の変容がみられたか」という質問に対し、「とてもみられた」または、「みられた」と回答した学校は9割を超える。○ 具体的な成果や変容については、9割程度の学校が「基礎的な知識・技能が身についた」を挙げており、6割程度の学校が「児童の一日の生活リズムが整うようになった」と回答している。(引用元:文部科学省|公立小学校・中学校における短時間学習の実施状況(平成26年度実績))朝の10~15分というわずかな時間でも、繰り返しの学習で知識やスキルの定着のほか子どもたちの生活リズムが整っていることが実感されているようです。年齢別にみた「最適な朝学習」の内容と時間脳は朝から午前中にかけて、前日の情報が整理されてクリアになっている状態なので、考える力が求められることや集中力が必要なことに適しています。ただし、目が覚めてすぐの時間帯は、脳もまだしっかり起きていません。あれこれ複雑に考えなければならない勉強ではなく、音読や計算問題などで脳のウォーミングアップをするのがいいようです。お子さんの年齢に合わせて次のような学習を取り入れてみてはいかがでしょうか。<小学校入学前>入学前に覚えられるようにと、ひらがなや数字の練習をさせたくなりますが、まずは「朝起きたら声を出す、手を動かす」ことから始めましょう。お子さんが好きな絵本があれば親子で音読をするのもいいですし、塗り絵や迷路、仲間見つけなどで楽しく学べる幼児向けのステップアップドリルもおすすめです。毎日少しずつドリルを進めていくと、達成感が得られ、明日も頑張ろうというやる気も起こります。ときには、カルタやパズルで学びにつながる遊びを取り入れてもいいですね。<小学低学年(1~2年生)>音読は、読解力を身につけるためのトレーニングとして効果的ですし、朝一番に声を出すことで脳と体が目覚めます。国語の教科書から、学習している単元の文章を音読してもいいですし、小学校低学年用の読み物を音読してもいいですね。ほかには、学校で習った内容の復習時間にするといいでしょう。宿題で漢字ドリルや計算ドリルの学習が出されていたら、1週間前にやったところや、ひとつ前の単元に戻ってやってみます。すでに済んだところは復習したがらないというお子さんもいるかもしれません。そんなときは、ドリルの問題を逆から進めたりパパやママがランダムに「次は○番!」と指定したりすると、おもしろがってくれますよ。朝学習にかける時間は個人差が出る部分ですが、習慣化していくことを考えると5~30分を目標にすると良さそうです。日によっては、5分、10分を確保するのが精いっぱいということもありますが、朝学習に取り組めたことを認めて褒め、子ども自身が達成感を得られるようにしましょう。また、毎日朝学習を続けていると、その子の中で「型」ができてきます。そして、その「型」が崩れると気持ちが悪いのです。歯を磨いたりお風呂に入ったりするのと同じように、「朝の勉強」をしないと、なんだか気持ちが悪くなるのだそう。そうなったらしめたものですね!朝学習の「困った!」こんなときは、こんなふうにとはいえ、朝学習をしようと親子で決めても、毎日続けるのは大変なことです。大人でさえ、早く起きられない日や気乗りしないこともあるので、当然ながら子どもにもそんな日はあります。朝学習を始めて直面する「困った!」には、どのように対処すればよいでしょうか。●朝、起きられない!朝起きられないことには朝学習も進みません。早めに就寝して、十分な睡眠時間を確保しましょう。朝学習へと一足飛びに進まず、まずは生活リズムを早寝早起きパターンに整えることから始めます。●朝せっかく起きたのに、ボーっとしている目が覚めるのは予定通りの時間でも、起きてからボーっとしていては朝学習の時間を取る前に登校時間が迫ってきます。そのようなときは、朝の日光を浴びる、家の中をぐるぐる歩く、歯を磨いて顔を洗う、音読で声を出すなど体を動かすと目が覚めて頭もスッキリしてきます。●朝は忙しく、子どものそばにいてやれない朝学習が習慣化するまでは、なるべく近くで見届けると、子どものやる気も出やすく、やり遂げることで自信や達成感を得られます。朝は忙しく十分に時間が取れないという家庭であれば、リビングやダイニングテーブルで朝学習をさせながら、目の届くところで朝食や出勤の準備をしながら見届けてもいいでしょう。小学校入学前のお子さんは、朝の30分を学習時間に使えるように起きるところからスタートになる子が多いかもしれません。なかなかスムーズに進まなくても焦らず、子どもの頑張りを応援する気持ちでいることが大切です。***朝学習の良いところは、曜日に関係なく一定の時間を確保しやすいことです。習い事や塾があって、夕方の時間帯はコンスタントに学習時間を取りにくいというお子さんにもオススメの勉強法といえるでしょう。(参考)THE21 ONLINE|脳科学者が勧める「朝時間」の使い方東京法経学院|朝は「脳のゴールデンタイム」!朝に勉強をするのが効率的な理由とは文部科学省|公立小学校・中学校における短時間学習の実施状況(平成26年度実績)ベネッセ教育総合研究所|第4回学習指導基本調査 第2章 教育課程外の時間Study Hacker|勉強する時間帯のゴールデンルール。効率よく勉強できる時間帯をまとめて紹介!Study Hacker|朝の勉強で脳は冴えわたる。メリットだらけの朝勉を続ける3つのコツAll About|「朝勉強」のススメ~朝は勉強のゴールデンタイム~Study Hackerこどもまなび☆ラボ|1日5分から始めよう!毎日続けることで自己肯定感が高くなる「学習習慣」のコツ
2019年03月18日あり子のワーママ奮闘記
PUKUTY(プクティ)只今育児奮闘中!
たんこんちは ボロボロゆかい