日々成長を遂げている子どもの身体と心。「もうこんなに背が伸びたんだね」「ちょっとしたことで泣かなくなったね」と、その成長を見届けることは、親としてなによりの喜びなのではないでしょうか。でも、成長しているのは身体と心だけではありません。目には見えませんが、子どもの『脳』も “段階的に” 成長することはご存知ですか?その発達段階に適した教育をすることで、本来持っている能力を最大限に伸ばしてあげることができます。今回は、子どもの年齢に合った『育脳』について詳しくお教えします。脳には学びの適齢期がある!?脳医学者の林成之先生は「子どもの脳の発達段階に合わせて育てると、能力を驚異的に伸ばすことができる」と述べています。つまり、脳の成長に合わせた刺激を与えることで、本来子どもに備わっている能力を最大限に引き出すことができるのです。たとえば、0歳から3歳くらいまでは視覚や聴覚などの「五感」が発達する時期です。だからこそ、この時期にたくさん読み聞かせをしてあげることは、脳にとって非常に良い結果をもたらします。小さいうちから脳に良い刺激はどんどん与えてあげるべきでしょう。だからといって、脳の仕組みを理解しないまま、闇雲にたくさんの習い事をさせることはあまり意味がなく、子ども自身にもあまり良い影響を与えません。東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授は、次のように述べています。使う脳の部分によって、伸ばしたい能力によって、成長の始まるタイミングは違います。脳は、そんな性質を持っているのです。ある能力が一番伸びやすい時期に、その能力に関係する習い事を始める。次の時期になったら、違う習い事を試してみる。それを繰り返すことで、子供の能力を効率的に伸ばすことができますし、子供自身が感じる学習ストレスを大幅に減らすことができるのです。(引用元:瀧 靖之(2016年),『「賢い子」に育てる究極のコツ』,文響社.)脳の発達段階に合わせた学習は、成長に沿って無理なく結果に結びつくので、親にとっても子どもにとってもストレスなくスムーズな学びにつながるのです。【年齢別】脳の発達段階:0歳~3歳文教大学教授で小児科医の成田奈緒子先生は、0歳~3歳は『からだ脳』が成長する時期だといいます。『からだ脳』とは「動物として生きるための脳」であり、基本の生活習慣や愛情形成をはぐくむ時期です。だからこそこの時期には、太陽の動きに合わせた起床・就寝、おいしい食事、ふれあいや声かけ、散歩など、五感からの刺激が何よりも大切。脳神経細胞が増え続ける時期なので、未熟な脳に負担をかける知識の詰め込みはNGです。また、要求をそのまま言葉や行動に表す時期です。わがままをおおらかに受け止めてあげて、我慢できたときはたくさん褒めてあげましょう。■0歳〜3歳に適した育脳この時期には耳を鍛えることが有効です。遊びの中に歌や楽器を取り入れると◎。できれば音階のあるものを使いましょう。ドレミの音階を聞き分ける能力を鍛えておくと、集中力や反射神経などが良くなります。まだ子ども自身の「好き・嫌い」の判断が未熟なので、脳がたくさんの情報を受け入れられるように工夫しましょう。たとえば、「お母さんは虫が嫌いだから、虫の図鑑は置かない」と大人中心に物事を判断するのではなく、できるだけたくさんのジャンルに触れさせてあげるといいですね。【年齢別】脳の発達段階:3歳~7歳3歳~7歳は『おりこうさん脳』が成長する時期。『おりこうさん脳』とは「人間らしさの脳」ともいえます。この時期は、思考の中枢となる大脳皮質や、まっすぐ立ったり指を使って作業したりするための運動機能を調整する小脳が鍛えられます。そのため、勉強・スポーツ・芸術などに必要な言語機能や、手先を使った微細な動きといった知能全般の発達が期待できる時期なのです。大人との会話や遊びから刺激を受け始め、幼稚園や学校などでさらにたくさんの人たちとの関わり合いによって飛躍的な成長を遂げます。昼間たっぷり刺激を受けて、夜眠っている間に神経回路網として定着させていくため、日中の過ごし方が重要になるでしょう。■3歳~7歳に適した育脳この時期は、勉強もスポーツもできる脳を育てましょう。まずは、正しい姿勢と歩き方で体のバランスを鍛えることを意識します。良い思考力には正しい歩き方が大切。身体のバランスが整って視覚的に正しい空間認知ができることによって、脳に良い影響を与えるのです。正しい姿勢で正しく筋力を使う運動がおすすめです。縄跳びやキャッチボールなどは空間を予測しながら遊べるため、空間認知能力を伸ばす効果が期待できます。また言語能力が発達する時期なので、言い訳をするなど口が達者になったと感じることも。以前に比べて親の言うことに反論するようになったと思っても、まずは子どもの意見を聞き入れましょう。それで失敗しても大丈夫です。「失敗して、考えさせて、行動を変えさせる」の繰り返しが脳を育てます。■巧緻運動を取り入れると◎細かい動作をする「巧緻運動」をつかさどる運動野がピークに発達するのがこの時期、とくに3歳~5歳であると言われています。考えながら手を使うことによって、頭でイメージしたとおりに身体を動かす「錘体路(すいだろ)」という神経回路が発達するため、紙を折ったりハサミで切ったり、のりで貼ったりといった手指や身体の器用な動きを取り入れた遊びがおすすめです。また楽器の習い事を検討しているのなら、この時期に始めるといいでしょう。楽器の演奏は聴覚を発達させる効果もあるため、聴覚野のそばにある言語野にもいい刺激を与えます。前出の瀧靖之教授も、「この時期に楽器や運動を始めたことで身につけた能力は、将来、種類や競技を変えたとしても「基礎的な能力」として、その子のプラスになる」と強くすすめています。【年齢別】脳の発達段階:7歳~10歳7歳~10歳は『こころ脳』が成長する時期。いわゆる「社会の脳」ともいえる『こころ脳』の成長時期は、言語の発達がピークを迎え、語学力が総合的に伸びます。大人と変わらない話し方をするようになり、相手によって言葉を使い分けることができるようになるなど、著しい成長を感じる親御さんも多いはず。さらに、相手の表情を読み取る、必要なときには我慢する、想像力を駆使して何かを作り出すといった能力が伸びることで、コミュニケーション能力や集中力、想像力、自制心などが鍛えられます。■不安定な子どもの心とどう向き合う?自分が他者から認められ、受け入れられていると実感することで、自己肯定感が高まり自立と自律が進む大事な時期なので、本格的な思春期に入る前に親子間の信頼関係をしっかりと築く必要があるでしょう。たとえば、家族の前で弱音を吐いたときには決して突き放さず、まずは共感して安心させることが大切です。小学校高学年、『こころ脳』の完成時期に近づくと、子どもは社会(学校)では理性的にふるまえるようになる一方で、家庭ではまだまだわがままを言ったり甘えたりすることも多いでしょう。そこで、親は子どもの甘えを受け止める余裕を持つことを心がけなければなりません。赤ちゃんや幼児のころに比べると、ほとんど手がかからなくなる時期ですが、心が不安定になったり親に反発したりすることは格段に増えます。親として心配になりますが、必要以上に不安にならずに、いつでも落ち着いた穏やかな対応を心がけたいですね。■7歳~10歳に適した育脳情報伝達回路がさらに発達して大人の脳に近づく時期であり、本格的な学習を始めるのにベストなタイミングです。言語野が発達するので、語学の学習に挑戦するといいでしょう。ただしこの時期は、基本的に子ども扱いするのはNG。「自分でやりたい」気持ちが働いているので、子ども扱いしてその芽を潰さないようにしましょう。質問形式で「どうしたいのか」「どうするのか」を自分で考えさせて、自分で決めさせます。親御さんはそれを達成できるようサポートしてあげるだけで大丈夫。この時期の脳には「指示・命令」は避けるべき、と覚えておきましょう。また『こころ脳』を育てるには、勉強や習い事よりも責任を持って家事をする方が効果が期待できます。家事は注意力、同時処理能力、段取り力、処理速度が鍛えられるので、家事を通じて試行錯誤することが脳への刺激になるのです。***10歳を過ぎると、思考やコミュニケーションなどの高次認知機能をつかさどる前頭前野が著しく発達します。そのときにしっかりとした社会性を獲得するためにも、『からだ脳』『おりこうさん脳』『こころ脳』がちゃんと育っている必要があるのです。お子さんの豊かな未来のために、脳の発達段階を考えながらサポートしてあげましょう。(参考)林 成之(2011),「子どもの才能は3歳、7歳、10歳で決まる!脳を鍛える10の方法」,幻冬社新書.瀧 靖之(2016年),『「賢い子」に育てる究極のコツ』,文響社.PHPファミリー|年齢別!子どもの脳を育てる甘えさせ方洋泉社MOOK(2017),『子どもの脳を伸ばす 最高の勉強法』, 洋泉社.
2019年05月13日「朝ごはんを毎日食べている子どもほど、学力が高くなる」そんな文部科学省のデータがあります。また、50m走や持久走、瞬発力を判定するような調査についても同じような結果が出ているのだそう。忙しい朝の時間帯ですが、朝食の時間はしっかり確保したいものですね。■参照コラム記事はこちら↓朝食で子どもの未来が決まる!?恐ろしい……ウソのような「朝ごはん」の事実。
2019年05月13日私には子どもが3人います。上の娘はもう3歳になり、私の子育ても3年目に入りました。だいぶしっかりおしゃべりができるようになった長女に言われた言葉で、自身の子どもへの接し方について振り返り、感じたことについてお話ししたいと思います。 娘からの一言でハッとしたある朝、保育園に行く身支度をしていると、「〇〇しなさいって言わないで。〇〇しようって言って」と言う娘。そのときは私も出勤時間が迫っていたので「準備をしようね」と言い直して、なんとかその場を乗り切ろうとだけ思っていました。 しかし、保育園への送迎も終わり落ち着いてからその言葉が妙に気になり、今までの子どもへの私の言葉を思い返してみました。するとたしかに、毎日忙しさを理由にして「〇〇しなさい」と口癖のように言っていることに気づいたのです。 母からの言葉を思い出した以前、娘が私の言うことを聞かないと母に相談したとき、母は「子どもは思い通りにならないものよ」と言いました。その言葉について改めて考えると、私は娘の立場に立って考えるよりも、どうやってこの育児や家事をこなしていくかに気をとられ、自分のペースで進めようとしていたなと思いました。 娘の立場に立って考えてみると、なぜなのかよく理解もできていない状況で「〇〇しなさい」と言われても理解できないし、私の言い方で娘も嫌な気持ちになっていたんだなと思いました。 夫に相談すると…そのことを夫に相談すると夫は、「俺は前からできるだけ〇〇しようかと声かけしているよ」と。そして「でも危険なことやどうしてもわかってほしいときは、〇〇しなさいとか、してはいけないと厳しく言うようにしているよ」と言いました。 確かに夫は、「〇〇しなさい」とは言いません。例えば食事のときなども、「もうすぐごはんだよ。自分の良いタイミングで席につくんだよ」と言っているのを思い出しました。 私は自分の娘への接し方について、さらに反省しました。 それからの私それから私は娘に何かしてほしいことがあるときは、きちんと理由を説明したうえで、「〇〇しようか」と促すような言い方を心掛けました。 すると娘は遊びの途中でも自分の中で気持ちを切り替えてくれるようになり、物事がスムーズに運ぶようになりました。また、危険な場面ではきつく言うことで、「これは本当にいけないんだ」と娘も理解してくれるようになりました。 これからの娘への接し方はもちろん、娘の下の1歳の双子への接し方もきちんと考えなければと思いました。まだ言葉はあまり理解できなくとも、威圧的な言い方や言葉は良くないと思うので、子どもたちをきちんと見守りつつ、子どもたちの意思も尊重した声かけをしていきたいです。著者:松裏幸恵二男(二卵性の双子)一女の母。薬剤師として働きながら子育てをしている。自身の妊娠・出産・育児に関する体験談を中心に執筆中。
2019年05月12日子どもの知能を示す「IQ」とは別に、昨今では「SQ」という指数に注目が集まっていることをご存知でしょうか?SQが高い子どもは、一人ひとりの個性や多様性が重視されるこれからの社会で活躍できるといわれています。今回は、SQの意味や役割、それを高めるポイントについてご紹介しましょう。そもそも「SQ」って?今、子ども達に求められる能力とは「SQ」とよく似た言葉に、IQとEQがあります。しかし、この2つはSQとは少し異なったものです。IQは、Intelligence Quotient(知能指数)の略で、俗にいう「頭の良さ」を指すものとしてよく知られていますよね。そして、EQはEmotional Intelligence Quotientの略で、「感情指数」や「心の知能指数」とも呼ばれています。自分自身の感情を把握してコントロールすることで、その場に合った言動をとれるかどうか、また相手の感情を理解しながら適切な配慮をし、他者との関係を良好にできるかどうかを指しています。SQ(Social Intelligence Quotient)とは、著書『EQこころの知能指数』を通してEQの認知度の向上に貢献したアメリカの心理学者ダニエル・ゴールマンが発表した概念であり、コミュニケーション能力や社会性の高さを指すものです。「社会的指数」や「生き方の知能指数」などとも呼ばれています。SQが高い人は、自分の考えを相手が理解できるようにまとめて、わかりやすく伝えることができ、人に何かをお願いしたり、されたりといった協力することの大切さをしっかりと理解できる傾向にあります。さらには、自分なりの目標を作って取り組んだり、成功しても謙虚な気持ちを忘れずにまた新たな挑戦ができたりするという特徴も。ダニエル・ゴールマンは、EQの考え方に脳科学研究をプラスすることで、SQを生み出しました。著書『SQ生きかたの知能指数』では以下のように述べています。人生でかかわりあう人々から受ける作用によって、気分だけでなく身体そのものが影響され、形成されることを自覚して、賢明に行動しなければならない。また、逆に自分自身が他人の情動や健康にどのような影響を与えるかも、よく考えてみなければならない(引用元: ダニエル・ゴールマン(2007),『SQ生きかたの知能指数』,日本経済新聞出版社.)人が生きていくためには、家族や友だち、学校の先生や職場の人々など、誰かとコミュニケーションをとることが不可欠です。周りの人々とうまくかかわれるかどうかは、自分がその環境で快適に過ごせるかどうかや、社会に出てからの生き方に大きく影響します。そのため、小さな頃からSQを高めていくことは、子どもが人とのつながりからさまざまなことを学んだり、子ども自身が生きやすくなったりするためにも非常に重要なのです。「SQの低さ」が招きかねない恐ろしい将来とは昨今では、不登校や引きこもり、犯罪行為など、さまざまな問題が子どもたちを取り囲んでいます。こうした問題を回避するためにも、SQを育てることが重要です。SQが低いと、共感力が低く相手の気持ちが理解できなかったり、友だちや家族と信頼関係を結びづらくなったりするなどの弊害があります。さらに、キレやすく攻撃的な性格になって人をいじめたり、周囲から孤立したりしてしまうことも……。こうなってしまうと、子どもは生きにくさを感じるようになり、自己肯定感が低くなったり、強い孤独感を覚えたりするようになります。そこから不登校や引きこもりになってしまったり、危険行為や犯罪行為に走ったりする危険性があるのです。子どもがすこやかで楽しく、安心・安全な毎日を送るためにも、SQを育てることは欠かせないといえるでしょう。SQを育むために重要な3つのポイントSQは「愛情が感じられるやりとり」をすることで育っていくといわれています。具体的には、子どもと接する際に以下のポイントをおさえることが有効です。・愛情をめいっぱい表現する子どもと接する際には、愛情表現を忘れないようにしましょう。愛情表現にはさまざまな種類があります。例えば、アイコンタクトを欠かさない、タッチやハグ、手をつなぐなどのスキンシップを習慣にする、子どもの話にしっかりと耳を傾けてリアクションする、などです。いずれも当たり前のように思えますが、忙しさに追われるとついつい忘れがちになってしまうことでもあります。これらを意識して行うことで、より子どもに愛情が伝わりやすくなりますよ。また、親が子どもに対して表情豊かに接することで、子どもの免疫力が高まるという説もあるのだそう。・「親は子どもの絶対的味方」であることを伝えるどんなときでも、「ママ(パパ)はあなたの味方だよ」「あなたのことが大好きだよ」と伝えてあげましょう。言葉で伝えるのももちろん良いですし、字が読める場合はお手紙にして子どもに渡すのも良いでしょう。子どもにとって「どんな自分でも味方でいてくれる存在」がいることは、精神的な安定はもちろん、他者に優しく接することにもつながります。ただし、お手伝いをした際や、テストで良い点をとった際など、「いい子だったとき」にしか褒めないというのはNGです。この場合、子どもは「『いい子でいる自分』しか受け入れてもらえない」と思うようになり、本音を隠すようになったり、ストレスをうまく発散できなくなったりする可能性があります。・テレビやインターネットはほどほどにテレビやインターネットには、さまざまなコンテンツがあり、「子どもの教育に良い」と謳っているものもたくさんあります。もちろん、これらを観て楽しむのもよいのですが、何時間も見せっぱなしにするのは避けましょう。感情の変化や他者への思いやりなどは、テレビからではなく人間同士のかかわりから学んでこそ、実践できるようになるからです。***SQの高さは、学校の成績や運動能力だけでは測れない、人間としての魅力でもあり、トラブルや悩みにぶち当たったときの助けにもなります。普段の接し方を意識して、子どものSQを高めましょう。文/田口るい(参考)ダニエル・ゴールマン(2007),『SQ生きかたの知能指数』,日本経済新聞出版社.All About|SQ(社会的指数)とは?子育てにおける7つのポイントAll About|子供の性格を「良い子=SQ(社会的指数)高い子」に育てるにはカオナビ|SQとは? 人間の社会性や対人能力を示すSQとEQとの違いについて日本の人事部|SQ
2019年05月11日子どもに人気がある学びのツールといえば、絵本の読み聞かせがあるでしょう。むかしから変わらない、大定番のツールです。発達心理学と認知心理学の専門家である十文字学園女子大学の大宮明子先生によれば、「もちろん、読み聞かせにはたくさんの学びの要素がある」とのこと。ただ先生は、「その学びが読み聞かせの目的だと思ってはいけない」とも語ります。その理由はいったいどんなものでしょうか。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)読み聞かせがもたらすさまざまな学び幼い子どもに絵本の読み聞かせをする場合、親御さんとしてはどうしてもその「学びの効果」を期待してしまうものですよね。もちろん、子どもは読み聞かせによって多くのことを学び、吸収していきます。第一に、絵本を読み聞かせしてもらうことで、それまで知らなかった言葉やその使い方を知るということが挙げられますし、さまざまな概念も覚えるでしょう。たとえば絵本に「宅配便」が登場したら、「宅配便って荷物を運んでくれるお仕事のことなんだ」と知ることができる。実際にはまだ見たことがないものであっても、絵と文章によって新たな概念を覚えられます。また、読み聞かせのシチュエーションがちがえば、子どもが学ぶことにもちがいが出てくる。たとえば、家庭でなく幼稚園や保育所などでお友だちと一緒に読み聞かせしてもらうことには、マンツーマンになりがちな家庭での読み聞かせとはまたちがった学びがあります。それはなにかといえば、共感するということ。ドキドキするような少し怖いストーリーなら、ひとりだと不安になってしまいますよね。でも、隣に同じようにドキドキしているお友だちがいれば、互いに気持ちが通じ合ってちょっと安心できる。ストーリーが進んで怖い場面を過ぎれば、「ああ、よかった」と一緒にほっとするするかもしれない。そのようにして、お友だちと一緒にドキドキしたり悲しくなったりよろこんだりして、自分自身の心に気づき、心を動かす楽しさを知りながら、共感力を高めることになるのです。子どもは絵本で学びたいわけではない?ただ、それらが読み聞かせの目的だと考えてしまってはいけないとわたしは考えています。子どもが「絵本を読んで」と親におねだりするときは、なにかを学びたいわけではありませんし、もっといえば絵本の内容を知りたいわけでもないという場合もあります。つい昨日も読んだばかりの絵本を子どもが持ってきて、親としては「またこれ?」と思うこともあるはずです。子どもは同じ絵本をなぜ読んでほしいのでしょうか?それは、絵本の内容を知りたいのではなく、絵本を読んでもらうことで親と一緒にいられる時間が楽しいとか、その時間だけは大好きなお父さんやお母さんを独り占めできてうれしいとか、そういう気持ちがあるからなのです。また、子どもには子どもなりの絵本の楽しみ方があります。「昨日は絵本の左ページばかり見ていたから、今日は右ページをよく見てみたい」といった単純なことも、子どもの楽しみ方だと思うことが大切です。それから、親が一生懸命に読んでいるのに子どもは上の空で聞いているように見えることもありますよね。そういうときは、絵本のストーリーを自分で膨らませて、絵本のなかの世界に自分も入っているような想像を広げているということもあります。ですから、学びを意識するのではなく、そういった子どもなりの楽しみ方を大事にしてあげてほしい。「どんなお話だった?」は最悪のNGワードそう考えると、読み聞かせのコツも自ずと見えてくるはずです。ちょっとまずい読み聞かせとしては、大人がただ音読しているようなもの。まるでアナウンサーがニュースを読んでいるようにさらっと読んで「はい、おしまい」という感じの人が少なくないのです。とくに、男性に目立つタイプですね。それでは、子どもが自分なりに楽しむどころではありません。あくまで読み聞かせですから、「聞かせ」に重点を置く必要がある。子どもが聞いて楽しめるかと考えながら読むことがポイントです。保育士さんとちがって、一般の親御さんの場合は恥ずかしさも邪魔します。その恥ずかしさを取っ払って、登場するキャラクター別に声色を変えてみたり、場面によってはゆっくり読んでみたりと工夫をしてみましょう。それから、読むスピードも意識してほしい。まるでルールが決まっているようにどのページも同じスピードで読んでしまう人がいます。そうではなくて、子どもがじっと注目しているなら、そこで止まってあげる。子どもが満足したようなら、「じゃ、次にいこうか」というふうに進んであげてください。逆に、子どもがそのページに興味を示さず、先をめくりたがるという場合もありますよね。そういうときはさっさと進んであげればいいのです。「ちゃんと聞きなさい」「飛ばしちゃったらお話がわからないでしょ?」なんていうのは、単なる大人の理屈に過ぎません。子どもにとっての絵本の楽しみ方はストーリーを追うことだけではありません。子どもが興味を持ったところで止まり、興味の移ろい次第では前のページに戻ってもいい。読み聞かせは子どものためにするのですから、あくまでも主体は子どもにあるのです。そういう意味で、最悪なNGワードは、読み聞かせのあとの「どんなお話だった?」というもの。これをいってしまうと、子どもは絵本を読んでもらったあとは必ずそう聞かれると思って、絵本を楽しむことができなくなります。信じられないことに、「せっかく読んであげたのに聞いていないんだったらもう読んであげない」なんてことをいう親御さんもいます。それでは、親がわざわざ子どもの興味の芽を摘んでいるようなものです。誰かの「おすすめ絵本」は参考程度にどんな絵本を選ぶかも、子どもの興味に合わせていくことがベストです。子どもの好みはそれぞれちがいます。ストーリーものを好む子もいれば、図鑑っぽいものを好む子もいます。ですが、図鑑っぽいものにしか興味を示さない子どもの場合、親御さんとしてはストーリーものを楽しめない子に育つのではないかと心配してしまうかもしれませんね。そういうときにも工夫できることがあります。たとえば、働く車の図鑑ばかりを見たがる子どもだったら、働く車が主人公のストーリーものを選んであげればいい。そういう子どもも、ストーリーものはなんでもかんでも嫌いというわけではなく、たまたま内容物に興味がないだけというケースもありますからね。いずれにせよ、子どもがどんなものに興味を持っているのかをしっかり観察して、夢中になれる絵本を選んであげましょう。どこかの誰かが「おすすめの絵本」として挙げているような名作も、子どもによってはまったく興味を示さないことも大いにあり得ます。そういう名作リストは、参考程度と考えるようにしてください。『幼児期からの論理的思考の発達過程に関する研究』大宮明子 著/風間書房(2013)■ 十文字学園女子大学教授・大宮明子先生 インタビュー一覧第1回:東大・京大・司法試験・医師試験の合格者たちが、幼児期に共通してやっていたこと第2回:「ママがやって」と言われたら黄色信号。子どもの考える力を奪う親のNGワード第3回:「親の言葉遣い」に見る、成績優秀な子が育つヒント。語彙力が伸びる会話の特徴第4回:絵本の目的は学びにあらず。子どもの興味の芽を摘む、読み聞かせ後の「最悪の質問」【プロフィール】大宮明子(おおみや・あきこ)6月5日生まれ、東京都出身。十文字学園女子大学人間生活学部幼児教育学科教授。1988年、中央大学法学部法律学科卒業。1997年、お茶の水女子大学教育学部教育学科心理学専攻3年次編入学。2001年、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科発達社会科学専攻博士前期課程修了。2008年、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科人間発達科学専攻博士後期課程修了。人文科学博士。発達心理学、認知心理学、とくに子どもの思考の発達、乳幼児期の親子の関わりを専門研究分野とする。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年05月11日こんにちは、保育士の中田馨です。お友だちと遊んでいて「貸して」と言われたのに頑なに嫌がり、「ハイどうぞ」が言えないわが子。普段はそんなに使っていないおもちゃも貸せないわが子に思わず「少しくらい、貸しなさいよ」と言って半ば無理やり取り上げてしまったことはありませんか? 今回は、うちの子はいつになったら「ハイどうぞ」が言えるようになるの? というママのお悩みに答えます。 「ハイどうぞ、できる?」と言われたときの子どもの気持ち今、遊んでいるおもちゃや自分のおもちゃを、お友だちが「貸して」と言ってきたときの子どもの気持ちを予想してみましょう。 ・今、遊んでるのに何で貸さなくちゃいけないの?・これ、僕のおもちゃなんだけど・貸したくない気分だな もしかすると、こんなふうに感じているかもしれません。それをいきなり貸すことは、なかなか難しいことですね。 子どもへの声かけはどうしたらいい?では、こんなときにどういった声かけをすればいいでしょうか? その一例を三段階で紹介します。 1. 自分の子のそのおもちゃへの遊びたい気持ちを尊重お友だちに貸せなかった場合は、「このおもちゃで遊ぶの楽しいのね」と気持ちを尊重します。 2. お友だちの貸してほしい気持ちも伝えるお友だちの「貸してほしい」気持ちを伝え、「遊び終わったらお友だちにも貸せるかな?」と聞いてみましょう。 3. お友だちには別のおもちゃを提案するお友だちには、自分の子どもの気持ちと待ってほしいことを伝えます。そして「こんなおもちゃもあるよ」という提案もしてみましょう。 「ハイどうぞ」できなかったときは?「ハイどうぞ」はすぐにできなくてOKです。親に言われると、子どもも意地になってしまうこともあります。「見守りながら待つ姿勢」がとても大切です。十分に遊んだ子どもは、案外アッサリとお友だちに渡すことができることもあります。 普段の生活でしていないのに、急に「“ハイどうぞ” をしなさい」と言われてもできることではありません。日常の生活の簡単な場面で、「ハイどうぞ」の遊びを家族と一緒に始めてみましょうね。 著者:保育士 一般社団法人 離乳食インストラクター協会 代表理事 中田家庭保育所施設長 中田馨0~2歳対象の家庭保育所で低年齢児を20年以上保育する。息子が食べないことがきっかけで離乳食に興味を持ち、離乳食インストラクター協会を設立。現在は、保育士のやわらかい目線での離乳食の進め方、和の離乳食の作り方の講座で、ママから保育士、栄養士まで幅広く指導。離乳食インストラクターの養成をしている。「中田馨 和の離乳食レシピ blog」では3000以上の離乳食レシピを掲載中。
2019年05月10日幼い子どもがいる親御さんには、小学校での勉強に子どもが置いていかれないようにと、いわゆる就学前教育を検討している人もいるはずです。でも、発達心理学と認知心理学の専門家である十文字学園女子大学の大宮明子先生は、「いわゆる先取り学習にはあまり意味がない」と語ります。しかし、就学前教育のやり方次第では、その後の学力の伸びを左右する大きな効果も期待できるのだそうです。その鍵を握るのは「語彙力」です。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)先取り学習にはあまり意味がない?就学前教育はおおまかに3つの種類にわけられます。ひとつはピアノなどの音楽、お絵描きといった芸術系の習い事。もうひとつがスイミング、体操、リトミックなどの体育系の習い事。そして3つ目が、小学校で学ぶ内容のいわゆる先取り学習、知育系の教育です。就学前教育といった場合、最後の知育教育をイメージする親御さんが多いようです。そして、その効果も気になるところ。たとえば幼児期に先取りして漢字を覚えれば、小学1年の段階ではやっていない子どもよりは国語の成績は良くなります。それは至って当然のことですよね。でも、追跡調査をしてみると、じつは小学2年の1学期が終わる頃にはほとんど差がなくなってしまうのです。つまり、先取り学習にはあまり意味がないといっていいかもしれません。ここで、多くの親御さんが持っている誤解を解いておきましょう。全国には49の国立大学付属幼稚園があります。いわゆるエリートコースの幼稚園と思われているのですから、それらの園では先取り学習をしていると思うのが自然ですよね。でも、実際のところ、いっさい勉強をしていません。ひらがななどの文字学習もまったくやらないのです。これには明確な意図があります。平成30年に幼稚園教育要領と保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領が改訂され、幼稚園や保育所では「遊びを主体とした学び」を小学校以降の学びにつなげていくという方針が明文化されました。国としても、幼いときには子ども一人ひとりが自主的に好きなことをとことんやっていく、遊んでいくことが将来的な学びの力につながると考えているわけです。幼児期の語彙力がその後の学力を予測するでも、親御さんはやっぱり不安なのでしょうね。「そうはいっても、小さいときから勉強をしたほうがいい」と考えてしまう。もちろん、知育系の教育にしろ、芸術系、体育系の習い事にしろ、子ども本人が「やりたい!」と思っていることなら、さまざまなものを得ることができるでしょう。そのなかでも、わたしが注目しているのが語彙力です。わたしも携わったある研究では、なんらかの習い事をしている子どもは、一切習い事をしていない子どもより語彙力が高いという結果が出ました。大好きな習い事をしていれば、先生や同じ教室に通う友だちとも積極的に話すことになります。そのコミュニケーションによって、語彙力が伸びたのだと推測できます。ただ、面白いことに、知育教育を受けた子どもが、たとえば体操教室に通った子どもより語彙力が高いかというと必ずしもそうではありませんでした。語彙力というと、知育教育で伸びるイメージを持つと思います。でも、なによりも言葉は実際に使わないと身につきません。語彙力の伸びという点では、習い事の種類ではなく、習い事をすること自体に意味があるのです。そして、語彙力と学力には非常に強い相関関係があります。幼児期の語彙力が高いほど、小学校以降の学力が伸びることがある研究であきらかになっているのです。その理由について、わたしの考えをお伝えしておきましょう。語彙力というと、たくさんの単語を知っていることだと思うものですよね?もちろん、ある程度の数の単語を知っていることも重要ですが、その使い方も知っておかなければ、本当の意味で語彙力があるとはいえません。小学校以降になると、たとえばテストの問題文に使われているそれぞれの単語がいったいどういう意味を持ち、ひとつの文としてなにを要求しているのかを理解する必要があります。幼児期に触れる具体物を指す言葉とちがって一気に抽象度が上がり、そういう内容も含めて理解できる語彙力が求められることになる。高い語彙力を幼児期に身につけておけば、勉強の最初の段階(小学校)でつまずくこともないでしょう。だからこそ、幼児期の語彙力が学力の伸びに大きく関与していると考えることができるのです。楽しく豊かな会話が子どもの語彙力を伸ばすそうなると、「幼いときから子どもの語彙力を伸ばしてあげたい」と親御さんは考えますよね。そのために親御さんができることは、日常で豊かな会話をするということ。豊かな会話とは、なるべく具体的な言葉を使う会話です。「こそあど言葉」を多用する家庭で育った子どもとそうではない子どもでは、後者のほうが小学校の成績が優秀だという研究結果があるほどです。「これ」とか「それ」は、会話相手が目の前にいるのなら通じる言葉ですよね。でも、隣の部屋にいる人に「それ、取って」といったところで、話は通じません。はっきりと対象物を名前でいって、どうしてほしいかということまで動作を表す言葉を使っていわなければ意図が伝わらないからです。「それ、取って」ではなくて、「テレビの横にあるリモコンをわたしのところに持ってきて」といった具合です。ちょっと回りくどいようですが、そういった積み重ねが子どもの語彙力を大きく伸ばすことになります。わたしもずいぶんたくさんの家庭を追跡調査してきましたが、やはり親御さんがきちんとした言葉を使っている家庭の子どもの語彙はとても豊富だという実感があります。子どもは周囲の大人を真似して言葉を覚えますから、それも当然のことかもしれませんね。ですが、「きちんと具体的に話さなきゃ……」と思うあまり、親御さんが自然にしゃべれなくなってしまっては本末転倒です。大人でもつねに厳密な日本語を使っているかというとそうではないですよね。こそあど言葉をなるべく使わないようにするという意識は重要ですが、そのことに余計に注意を向けることなく、まずは、子どもとの会話を楽しむことを心がけてください。お父さん、お母さんとの楽しい会話こそ、子どもの語彙を豊かにしていくものなのですから。『幼児期からの論理的思考の発達過程に関する研究』大宮明子 著/風間書房(2013)■ 十文字学園女子大学教授・大宮明子先生 インタビュー一覧第1回:東大・京大・司法試験・医師試験の合格者たちが、幼児期に共通してやっていたこと第2回:「ママがやって」と言われたら黄色信号。子どもの考える力を奪う親のNGワード第3回:「親の言葉遣い」に見る、成績優秀な子が育つヒント。語彙力が伸びる会話の特徴第4回:絵本の目的は学びにあらず。子どもの興味の芽を摘む、読み聞かせ後の「最悪の質問」(※近日公開)【プロフィール】大宮明子(おおみや・あきこ)6月5日生まれ、東京都出身。十文字学園女子大学人間生活学部幼児教育学科教授。1988年、中央大学法学部法律学科卒業。1997年、お茶の水女子大学教育学部教育学科心理学専攻3年次編入学。2001年、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科発達社会科学専攻博士前期課程修了。2008年、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科人間発達科学専攻博士後期課程修了。人文科学博士。発達心理学、認知心理学、とくに子どもの思考の発達、乳幼児期の親子の関わりを専門研究分野とする。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年05月10日私は物心が付いたころから、母親からのきょうだい間の対応の差を感じていました。私はずっと「私は親からきょうだい差別を受けている」と思っていました。でも、大人になってからは「あれは、区別だったのかも」と思うことも。しかしどちらにしても、私にとってはつらい経験でした。 幼いころから感じていた「差」私は幼いころから、私と弟に対する母の対応に差を感じていました。例えば、おもちゃ。おもちゃ箱の中には、弟のプラレールやトーマスのおもちゃがたくさん詰まっていました。でも、私のおもちゃはないのです。弟のおもちゃで遊んだ記憶はあるのですが、自分のおもちゃで遊んだ記憶はありません。 私に向けられたものは、本棚に立てられた幼児教育の教科書だけでした。写真を見ても、これは私の記憶違いではなさそうでした。 弟は褒められるのに、私は…少し成長してからは、「弟は褒めてもらえるのに、私は褒めてもらえない」と思うことが多くありました。 例えば、学校のテスト。私が90点台を取ると、「どうしてこんな問題を間違えたの!? ちゃんと勉強しなかったからでしょ!」と怒られました。一方、弟が50点台を取ると、「ここも、ここも、できたね! 頑張って勉強したからだね! すごいね!」とやさしく褒められていました。それを見た私は大ショックです。私のほうが良い点数なのに、なぜ私は怒られるのか。なぜ弟は褒められるのか。 とてもつらかったことを覚えています。 母は私のことが嫌いなのだと思ったなぜ母は「きょうだい差別」をするのか。幼い私が考え出した答えは、「ママは私のことが嫌いだから」でした。「ママは弟のほうが好きなんだ」「私はいらない子なんだ」そんなことを考えると、つらくて悲しくてたまりませんでした。 しかし、今になって考えると、あれは「差別」ではなく「区別」だったのではないかと思うこともあります。母は私に「あなたは何でもひとりで、じょうずにできた。でも弟は何をやらせても遅いし、下手だった」と言っていたことがあるからです。 平等に接してほしかったもしかしたら母は、こう考えたのかもしれません。「姉には遊びより教育を与えたい。弟には教育より遊びを与えたい」「もし50点で良いと姉を褒めたら、姉がそれで良いと勘違いして怠けてしまうかもしれない。逆に、90点を取れないからと弟を叱るのは、弟には酷だ」 確かにその子の個性、その子の個性に合わせた対応をすることは大切なことです。しかし子どもの私にとって、それはとてもつらい出来事だったことに変わりはありません。 私も親となった今、子どもへの接し方の難しさがわかるようになりました。でもやはり、あからさまにきょうだい間の対応を変えることは、子どもの心を傷付けることに繋がると感じています。 子どもの個性に合わせた対応をした結果、傷つく可能性があるくらいなら、みんな同じように接してあげたいと感じます。私は現在第二子妊娠中です。第二子が生まれたあとは、自分のつらかった経験を思い出し、どちらも「差別されている」と感じないよう、平等に接してあげたいと思っています。著者:丸川朋一女の母。出産を機に仕事を退職。子育てのかたわら、妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆中。現在第二子妊娠中。
2019年05月09日日常生活のなかで、子どもに対してどのような言葉をかけることが多いでしょうか?「○○しなさい!」「駄目でしょ!」といった類のものであるなら要注意。そういう声かけを続けていると……子どもは自分で考えられない人間になってしまうかもしれません。自ら学び、考えられる子どもに育てるための方法や注意点を、発達心理学と認知心理学の専門家である十文字学園女子大学の大宮明子先生が教えてくれました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)本を読むだけでは本当の語彙力は育たない子どもというのは、なにかを意識的に学ぼうとするのではなく、自分が好きなことを楽しんだ結果として学ぶという習性を持っています(インタビュー第1回参照)。そういう学びを日常的にできるかどうかは、親御さんのしつけのスタイルの影響がとても大きいといっていいでしょう。以前、2,700人くらいの未就学児とその親御さんを対象にある調査を実施しました。その調査の内容は、子どもには読み書きの力と語彙力の検査、親御さんにはどういうしつけをしているかというアンケートです。結果として、しつけのスタイルは大きく3つのタイプにわけることができました。ひとつが「共有型」で、これは子どもを主体としたスタイルです。子どもの自主性を大事にして、子どもの気持ちに親が寄り添うかたちでしつけをしていくようなイメージでしょうか。そういう親御さんの場合は、子どもに対する日常の接し方を見ても、子どもを認めたり褒めたりすることがとても多いのです。2つ目が「強制型」で、共有型とは対照的に親が主体のスタイルです。親の意のままにしつけをして、「○○しなさい!」「駄目でしょ!」といった指示・命令の言葉がすごく多く、子どもはそれに従うだけです。3つ目が「放任型」。これはただ放任しているというものの他、親御さんが育児不安などで精神的に参ってしまって子どもを放置しているというものも含まれます。興味深いことに、しつけのスタイルのちがいによって、子どもの語彙力にはっきりとしたちがいが見られました。想像できるかもしれませんが、共有型のしつけをされている家庭の子どもの語彙力は、強制型の家庭の子どものそれを大きく上回っていたのです。放任型に関しては一定の傾向はありませんでした。語彙力が高い子どももいれば、そうではない子どももいた。親に放置されていたとしても、たとえば本が好きな子どもの場合は語彙力がある程度伸びたということもあるのでしょう。しかし、それには限界があります。というのも、言葉の力はひとりでは育つものではないからです。なぜ、共有型の家庭の子どもの語彙力が大きく伸びていたのでしょうか。それは、親が子どもに寄り添うことによって、親子間のコミュニケーションが密になっているからです。本を読めば、たしかにある程度の語彙を手に入れることはできるでしょう。でも、言葉ですから、本当の意味で身につけるには、実際にその言葉を使ってやり取りをおこなうことがとても大事になる。かかわってくれる人がいなければ、子どもはせっかく知った言葉を使う練習をすることができないのです。答えを待つ子どもにしてしまう親の「先回り」しつけのスタイルは、これからの時代を生きる子どもに必要とされる「自ら学ぶ、考える」姿勢にも影響を与えます。たとえば、子どもが新聞紙で坂道をつくって、ペットボトルのキャップを転がすという遊びをはじめたとしましょう。子どもはキャップをなんとか真っすぐ転がそうとしますが、新聞紙は柔らかいので、なかなかうまくいかない。そこで、子どもは壁をつくってみるなどいろいろと工夫します。そういった試行錯誤こそ、子どもが「自ら学ぶ、考える」ということなのです。そして、一生懸命に工夫した結果、キャップが真っすぐ下まで転がったら、「やったー!」と大きな達成感を得ることになる。でも、お父さんやお母さんが「それじゃ駄目でしょ」「こうしたほうがいいんじゃない?」なんていってしまったらどうでしょうか?もちろん、親が子どもの遊びにかかわることは悪いことではありません。ただ、子どもが考える前から答えを与えてしまっては、子どもの試行錯誤、粘り強く頑張ること、その結果の達成感などをすべて奪い取ってしまうことになるのです。そんな「先回り」を繰り返していると、子どもに「遊びなさい」といったところで、「ママがやってよ」というようになる。小学校に上がって勉強をはじめる前から、答えを教えてくれることを待つ子どもになってしまうのです。そういう姿勢で育った人間は、残念ながらこれからの時代では活躍できないかもしれません。あちこちでいわれているように、これからの時代は多くの職業が機械(AI)に取って代わられるようになります。そんな時代に活躍するためには、機械にはできないことをできる人間にならなければなりません。そういう人間に必要なものこそ、「自ら学ぶ、考える」姿勢なのです。子どもと遊ぶときは「お友だちになったつもり」ででは、子どもの遊びに対して、親はどうかかわればいいのでしょうか。それは、もちろん子どもの気持ちに親が寄り添う共有型の関わりです。子どもと一緒に遊ぶ際には「大人を捨てる」ということをアドバイスしておきましょう。大人は行動の前につい頭で考えてしまいがちです。でも、子どもは「これをやったらどうなるのか」なんてことを考えず、ぱっと見て「わあ、面白そう!」「なにこれ!?」と感じた途端に動きはじめます。そういう子どもに寄り添うには、大人を捨てて子どもになればいいのです。子どもの仲良しのお友だちになったつもりで、ときにはわざと失敗する、知っていることも知らないふりをするというようなことをしてみてもいい。大人として子どもに接すると、子どもは「この人は大人だ」と思って構えてしまいます。とくに親の場合には、ときには叱る人だと思っていますから、なにか失敗したり変なことをいったりすると「怒られちゃうんじゃないか?」とか「おやつをくれないんじゃないか?」と思ったりもする。そう思った結果の子どもの振る舞いは、本来の自然な子どものものではないですよね。子どもと遊ぶときは、「子どもの仲良しのお友だちになったつもり」で――。そう心がければ、自然と共有型のスタイルで子どもに接することができるはずです。『幼児期からの論理的思考の発達過程に関する研究』大宮明子 著/風間書房(2013)■ 十文字学園女子大学教授・大宮明子先生 インタビュー一覧第1回:東大・京大・司法試験・医師試験の合格者たちが、幼児期に共通してやっていたこと第2回:「ママがやって」と言われたら黄色信号。子どもの考える力を奪う親のNGワード第3回:「親の言葉遣い」に見る、成績優秀な子が育つヒント。語彙力が伸びる会話の特徴(※近日公開)第4回:絵本の目的は学びにあらず。子どもの興味の芽を摘む、読み聞かせ後の「最悪の質問」(※近日公開)【プロフィール】大宮明子(おおみや・あきこ)6月5日生まれ、東京都出身。十文字学園女子大学人間生活学部幼児教育学科教授。1988年、中央大学法学部法律学科卒業。1997年、お茶の水女子大学教育学部教育学科心理学専攻3年次編入学。2001年、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科発達社会科学専攻博士前期課程修了。2008年、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科人間発達科学専攻博士後期課程修了。人文科学博士。発達心理学、認知心理学、とくに子どもの思考の発達、乳幼児期の親子の関わりを専門研究分野とする。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年05月09日今年のゴールデンウィークは10連休ととても長いものでしたね。遠方にお出かけしたり、野外で遊んだり、子どもたちは思い切りこの10連休を楽しんだことでしょう。そんな連休が終わり学校が始まりましたが、連休の疲れを引きずっていたり、学校生活に戻るのが辛いと感じているお子さんもいるかもしれません。5月は運動会シーズン。体育の授業や運動会の練習が本格化する学校もあるでしょう。子どもたちには、疲れ知らずで元気に過ごしてもらいたいものですね。今月の『まなびの保健だより』では、現場の養護教諭や保育士が「少し気になる」「どこかおかしい」と実感している問題を取り上げました。それは、子どもの「体力と睡眠」です。一見健康そうに見える子どもたちが、転んでも手が出なかったり、朝からぼんやりしていて元気がなかったりすることがあります。病気ではないものの健康とは言えない、まさに「おかしいなあー」という状態です。皆さんのお子さんにも、似たような様子が見られることはありませんか?こうした子どものちょっとした異変がどこから来ているのか、詳しく解説していきます。毎日の子どもたちの生活の仕方を、ぜひ見直してみましょう。今の子どもたちは、スポーツはできても体力がない「転んでも手が出なくて顔のけがが増えた」「すぐに疲れて座り込んでしまう」。このように現場の教師や保育士たちが「近頃子どもたちの体や訴えが変わってきたな」と感じ始めてから、実はずいぶん経ちます。このことは、今日になっても改善されるどころかますます深刻になってきているのです。まずは、「子どもたちの体力」について考えてみましょう。体力には、行動体力と防衛体力があります。行動体力とは、一般的に「体力」と言われているもの。文部科学省が定める「新体力テスト」の各項目で測られます。<新体力テスト項目>握力・上体起こし・長座体前屈・反復横跳び・20mシャトルラン・50m走・立ち幅跳び・ボール投げ毎年、文部科学省が体育の日の前に「体力・運動能力調査結果」を発表しています。その平成29年度版を見ると、小学生の各項目の成績の年次推移は、ボール投げや握力などの項目で落ちていますが、上体起こし、反復横跳び、シャトルランなどは上昇しています。この結果から、今の子どもは以前の子どもに比べてすべての項目において体力が落ちているのではなく、体を上手にコントロールする力や身体操作能力が低下していると言えるのです。これは今の子どもたちが、小さな時から遊びを通して多様な運動をするよりも、サッカーや野球など固定したスポーツしかしていないことに原因がありそうです。実際、野球はすごくうまいけれど逆上がりができない子や、スキップができない子などもいるんですよ。また、近頃では運動をする子どもとしない子どもの二極化も問題になっています。運動をする子はしっかりするけれど、しない子は全然しない傾向にあるのです。特定のスポーツに励むことが悪いわけではありませんが、子どもは本来なら、木登りや鬼ごっこなどをして友だち同士で遊び込むことが大切です。幼児期や小学生時代は、多様な遊びを通してバランスよく体力を向上させましょう。そうすれば、転んでも手が出ず顔を怪我することも、疲れてすぐに座り込んでしまうこともなくなるはずですよ。また、もうひとつの「体力」である「防衛体力」についても少し触れておきましょう。防衛体力とは、病気やストレスに対する抵抗力のこと。近年、子どもたちの防衛体力の低下が問題になっています。防衛体力は、しっかり食べたり充分な睡眠をとったりすることによって向上させることができるものです。というわけで、次は「子どもたちの睡眠」へと話を移します。子どもの就寝時刻は年々遅くなり、睡眠時間は世界一短い学校で午前中ぼーっとしている子どもや、遅刻して登校する子どもは、今や珍しくありません。その理由は、子どもの就寝時刻が年々遅くなっているからです。こちらのグラフを見てください。1歳半~5歳の幼児のうち夜10時以降に寝る子どもの割合はどの年齢でも例外なく年々増加しています。また、『平成28~29年度児童生徒の健康状態サーベイランス事業報告書(日本学校保健会)』によると、小学生の就寝時刻は1・2年生で9時過ぎ、高学年になると10時を過ぎています。そして、その時刻は年々遅くなる傾向にあるのです。子どもの就寝時刻が遅くなり睡眠時間が短くなると、以下のような悪影響が懸念されます。<夜更かしをすると>・睡眠不足になり肥満につながる。・心身の成長が妨げられる。・慢性的な時差ボケ状態になり集中力がおちる。・セロトニンの分泌が減り、イライラが増し、感情のコントロールが困難になる。・メラトニンの分泌が減少し、性の早熟化を招く。(神山潤著『子どもの睡眠―眠りは脳と心の栄養』(芽ばえ社)参照)睡眠不足の弊害について詳しく説明しましょう。・睡眠不足は、心・体・脳の成長を妨げる「寝る子は育つ」という諺がありますが、人の体の中では眠っている間に「成長ホルモン」が出て、骨や筋肉を成長させたり、傷んだ細胞の修復をしたりします。だから「寝る子は育つ」は本当なのです。成長ホルモンが足りないと肥満にもなりやすくなるので、体の健やかな成長のために睡眠時間の確保は大切です。また、脳は眠っている間に記憶を整理しながら自らを休ませています。睡眠をしっかりとらないと脳は充分休むことができず、集中力や記憶力が減退し、イライラしたりやる気が出なくなったりしてしまうのです。・睡眠不足は、良い眠りを促すホルモンの分泌を阻害する良い眠りのためには、暗くなると分泌される「メラトニン」というホルモンが必要です。このホルモンは、眠気をもたらし、しっかり眠るために必要なホルモンですが、暗くならないと分泌しません。夜遅くなってもテレビやスマートフォンなどの明るい画面を見ていてはいけないのです。また、メラトニンの材料になるセロトニンは、昼間たっぷり活動することによって作られます。良い睡眠に不可欠なメラトニンやセロトニンをたっぷり分泌させるためには、「夜になったら暗くして眠る、朝明るくなったら活動する」という生活が子どもにとってとても大切です。・睡眠不足は、体内時計を乱す人間は昼行性の動物なので、暗くなったら寝て、明るくなったら起きて活動するリズム(サーカディアンリズム、体内時計)が脳に刻み込まれています。にもかかわらず夜更かし・朝寝坊をしてしまうと、自律神経の働きが乱れ、更年期障害のような症状(頭痛・頭がぼーっとする・体がだるいなど)が出てしまいます。日本学校保健会が調べた、寝起きの状態に関する子どもたちの自覚症状を見てみましょう。すっきり目覚めた子どもは少なくて、「少し眠かった」「眠くて起きられなかった」と答えている子どもが低学年で6割、高学年だと7割ぐらいいます。夜遅くまで起きていれば、当然朝すっきり目覚めることなどできません。睡眠不足のまま登校するのですから、午前中にぼーっとしてしまうのは言うまでもないこと。実際、午前中に体調が悪くて保健室を訪れる子どもや、「イライラする」「やる気が出ない」と訴えてくる子どもたちは睡眠不足のことが多く、ベッドに寝かせるとお昼ぐらいまでぐっすり眠ってしまったり、教室で机にうつ伏して眠ってしまったりする子もいます。小学校低学年の子どもには、10時間以上の睡眠時間が必要です。登校時間から逆算して朝6時半に起きるとすると、夜9時前には就寝することが必要です。みなさんのご家庭では、実践できているでしょうか?夜遅く、カラオケボックスや居酒屋さんで親に連れられた子どもの姿が見られることがありますが、これが良い状態だと言えないのは誰の目から見ても明らかなこと。驚くべきことに、日本の子どもたちは世界一睡眠時間が短いとも言われています。それほど、日本の子どもたちの睡眠に関する問題は深刻なのです。これをお読みの親御さん方は、お子さんの就寝時刻、睡眠時間をぜひ見直してみてください。「うちの子は疲れやすいのかも」と心配しすぎないでここからは、この時期の親御さんのお悩みに“養護教諭の視点から”アドバイスをするコーナーです。最初の質問はこちら。【親御さんからの質問 1】うちの子は、運動会の練習があった日は帰宅した時点でもうくたくたです。でも他の子のお母さんに聞くと、そんな日でも放課後たっぷり外遊びしている子が多い様子。うちの子は他の子より疲れやすいようです。「体力のある子」と「疲れやすい子」の違いはどんなところにあるのでしょうか?子どもは体格にも個人差があるように、体力にも個人差があって当然です。一般的に言えば、よく食べる子、よく眠る子は元気でよく遊びます。食事が細かったり、睡眠が充分とれていなかったりすると疲れやすくなり、外遊びもしなくなります。食事の食べ方にもかなり個人差がありますが、食べられない子には無理に食べさせるというより、バランスよく食べさせること。そのためには、できるだけ間食を減らして3度の食事をしっかりとらせることが大切です。あとは、早寝早起き、体を動かすことなどを心がけるといいでしょう。他の子どもたちとあまり比較しないで、疲れたら休ませればいいのです。しっかり眠って、次の日に元気になっていれば問題ありません。体だけでなく心も休養を。おすすめの週末の過ごし方【親御さんからの質問 2】共働き家庭のため、平日は寝るのが遅くなりがちで、子どもは睡眠不足気味。土日たっぷり寝ることで体力は復活するのですが、一週間が始まると、月曜日が終わった時点でさっそく疲れてしまうようです。疲れをとるだけでなく、より疲れにくい体を作るために、子どもには土日どう過ごさせればいいのでしょうか?基本的には「寝だめ・食いだめ」はできません。土日、たっぷり寝ることで、一見疲れが取れているようには見えますが、寝だめによる生活リズムの崩れはかえって次の1週間に影響してしまいます。最近は、土日になると午前中はベッドの中、食事は1日2食という家庭もあるようですね。大人はそれでもいいですが、成長期の子どもにはNGです。休日も、家族そろって朝食を食べ、少し体を動かし、昼食や夕食もしっかり食べましょう。その方が、次の週を元気に過ごせます。「休みの日をゆっくり過ごす」とは、「遅くまで寝ている」ことではなく、「いろいろなことに追われないで、家族で散歩したり、一緒に夕ご飯を作って家族でゆっくりお話ししながら食べたりする」こと。そんな生活が望ましいですね。「1週間に一度は、家族そろって素材から調理したものを一緒に食べる」。こんな休日の過ごし方をお勧めします。疲れを取るためには、体の休養だけではなく楽しく過ごすという心の休養も必要です。遊び疲れて宿題ができないなら「朝宿」を【親御さんからの質問 3】学校から帰ってくると「疲れたー」と言って宿題もしないのに、お友だちから「遊ぼう」と誘われると途端に元気になって外へ出て行ってしまいます。外遊びから帰ってくれば当然クタクタでますます宿題を嫌がるので、つい叱ってしまう毎日です。「疲れたー」と言う子どものマインドをサッと宿題へ向けさせる、効果的な声掛けはないでしょうか?「疲れたー」と言って帰ってきても、友だちから誘いがあれば元気に出かけていくのが子どもです。当然、遊んだ分体は疲れますが、そんな時は早く夕ご飯を食べてお風呂に入り、すぐに寝させるといいでしょう。宿題ができなかったら朝やればいいのです。そのほうが、人間の生体リズムに合っていて能率は上がります。「朝宿」がおすすめですよ。子どもの体力アップの3か条子どもは成長・発達していく途上にあります。子どもに元気にすくすく育ってほしいと思うのなら、家庭の生活リズムは大人ではなく子ども優先にすることが大切です。子どもの「行動体力」や「防衛体力」を高める秘訣は、なんといっても、「体を動かして遊ぶ」「おなかをすかしてしっかりご飯を食べる」「夜は早く寝て朝は早く起きる」この3つです。お子さんの成長のために、できるだけ大人が子どもの生活に合わせたいですね。
2019年05月09日私は小学生用の辞書が大好きです。そこには、大人の辞書には少ない、挿絵があるからです。何か言葉を引いたとき、そのページにある挿絵をじっと見てしまいます。例えば「このあいだ」のページには、「こはぜ」と「こぶし」と「コブラ」の挿絵が載っています。私はこれを見て、「こはぜ」という物を初めて知りました。未だに知らない言葉に出会えるのがうれしいですね。こんにちは。ゆか先生です。前回は、国語辞典をさっと使えるようにする仕掛けについてお伝えしました。外箱を外し、名前を書いて、リビングに置く。これで準備はOKです。さあ、当たり前ですが、このままでは辞書を引けるようにはなりません。今回は文字の引き方、付箋紙やノートを使った辞書引き学習の方法など、実践方法をお伝えします。国語辞典の基本出版社によっては、ガイドブックが付属しているところもありますが、基本的に、文字の引き方については辞書のはじめに載っています。そこを読めばだいたいのことは分かりますが、今回、注意点も含めまとめてみますね。1. まずは五十音を体感日本の国語辞典は、五十音順に載っています。未就学児、小学校低学年の場合、細かいルールはそれほど気にしなくても構いません。ただし、五十音の順番は分かっていた方が引きやすいです。まずは「あ段」の言葉の順番を覚えましょう。本の開く側を「小口」といいますが、そこに「あ・か・さ・た・な……」と書いてあります。その順番をまずは覚えると良いでしょう。しかし、そこだけ暗唱させて覚えるなんて方法はナンセンス。辞書を引くことで自然と分かるようになりますので、辞書を引く機会を利用し、「あ・か・さ・た・な……」と口で言うようにすると良いですね。次に例えば「ぬ」が「な行」にあるという感覚も必要になります。それは、五十音表などを活用して覚えるようにしましょう。壁に五十音表を貼るのも手です。手始めに、自分の名前が何行の何段にあるのか指でさせるようになるといいですね。これは全ての調べ学習の基礎になります。そして、これは一朝一夕に身につく力ではありませんので、毎日の生活の中で取り入れていくと良いでしょう。「『ぬ』はどこ?」と問いかけ、探させるゲームのような方法も、子どもが楽しみながら学べるので、とても良いと思います。2. 活用に注意「先生『買った』がのっていません」そんな気づきにはっとさせられます。大人の辞書には言い切りの形で載っています。大人の場合は「買った」を「買う」で引きますよね。「買った」は「買う」の変化であることを知っているからです。ところが子どもには言い切りの言葉が想像できません。子ども向けの国語辞典は、このあたりを実に細やかに工夫してあり、言い切りでない形で引いたときも、言い切りの形に誘導するようになっています。「買った」「買わない」「買おう」などの変化した形からでも「買う」に誘導されるようになっているのです。ここが大人の国語辞典と大きく違うところですね。もし家に子ども用の辞典がある場合は、試しに「買った」を引いてみてくださいね。なお、全ての語について変化形が載っているわけではありません。この件についても、辞書を引くうちに、言葉がどういう形で辞書に載っているのか分かるようになります。文法も自然と分かるようになります。辞書引きにはこのような良い面もあるのですね。もしも、変化した言葉が辞書に載っていなくて、子どもが言い切りの言葉を思いつけない様子であれば、保護者の方が手伝ってあげてください。「その言葉は○○という形で載っているよ。一緒に探そうか」などと、アドバイスしてあげるとよいでしょう。3. 引いても意味が分からない最初のうちは、引いても意味が分からない場合が多いです。何しろ言葉を習い始めた時期なわけです。大人でいえば、まるで英英辞典を引いているような気分だと思います。その場合にはやはり保護者の方のフォローは必須。意味をかみ砕いて説明してあげましょう。これ、言葉の再発見にもなり、大人にもとても良い勉強になります。例えば「右」という言葉、みなさんならどう説明しますか?私が持っている小学生用の辞書では「日の出に向かって南側に当たる方」と書いてあります。子どもにはちょっと難しいかもしれません。その際は実際に、一緒に日の出の方向を向いてみると良いでしょう。また、具体例を織り交ぜると、ぐっと理解しやすくなりますので、そのような工夫も大切かと思います。【例:記念】意味思い出として残しておくこと。また、そのもの。具体例「○○ちゃんは、幼稚園の卒園式で△△をもらったよね。あれは、○○ちゃんが幼稚園楽しかったなーっていう気持ちをずっと残しておいて、いつでも思い出せるようにしてあるんだよ。そういうものを記念のものっていうの」付箋紙大作戦私の講座では、入会時に、保護者の方向けに3冊の本を推薦図書としています。『どの子も伸びる国語力』岸本裕史小学館『小学校1年で国語辞典を使えるようにする30の方法』深谷圭助明治図書出版『学力は家庭で伸びる―今すぐ親ができること41』陰山英男小学館の3冊です。おすすめの理由、本の詳細については、こちらをご覧ください。その中の『小学校1年で国語辞典を使えるようにする30の方法』で取り上げられている付箋紙による辞書引き方法は、とても効果が高いと実感しています。辞書を引いたら、調べた言葉を付箋紙に書き、番号を振り、そのページに貼っていくという方法です。保護者の方々の報告では、付箋紙を貼ることは、本当に励みになるようです。私の受講生の中で、実際にこの方法で取り組んで、効果を上げた生徒を紹介します。まずはIくん。小1で入会して、今は6年生です。1年生から辞書引き学習を始めました。これは最近の写真です。付箋紙がはみ出していて、もはや辞書には見えませんが(笑)。 付箋紙は、彼にとっては勲章なのでしょう。これを見るたびに、自分が積み重ねてきたものを誇りに思うに違いありません。最初は1枚、2枚と寂しい感じだったでしょう。ところが、10枚、20枚となってくると、俄然何かのスイッチが入ります。4月に始めたのですが、5月には620枚になり、12月には1,500枚になっていました。これは、1年生の9ヶ月で1,500の文字を辞書で引いたということです。学校ではしないことですので、どれだけ彼の語彙が増えたのか、想像できると思います。彼は、語彙がどんどん増え、文章も上手になり、読書感想文などで賞も取るようになりました。また、中学年の夏には、真っ白な自由帳に自分で線を引いて、「読書帳」を作りました。自分なりにハートに火が付く学習法を見つけたようです。もう一人、これは去年入会した2年生のMちゃんです。調べた言葉と番号だけでなく、例文も書いたらいいのではないかということを自分で思いつき、書いているそうです。保護者の方のお話では「目的の単語を調べるのに、まだ時間がかかるので、私と一緒に辞書を引いています。ゆか先生のおすすめの本を参考にして受講時から付箋を使用しています。先生のおかげで親子で学習するきっかけができています。ありがとうございます。」とのこと。大学生になる私の息子も、小学1年生から辞書を引かせ、付箋紙学習をしていました。彼は引いた語の一覧がほしかったようで、ノートに作っていました。他にも付箋紙を貼っていく方法で頑張っている生徒がいますが、共通することが、自分で新しいアイディアを試したり、工夫を重ねたりしていることです。そして、親に言われたやり方ではなく、自分独自の方法を作り出していく力があると思います。さらに、どの子も語彙を増やすだけでなく、文章全体が上手になっていく傾向があるようです。知っている言葉が増えると、表現が豊かになる結果なのでしょう。現在、この辞書引き学習法は、さらに発展していて、著者の深谷先生のサイトでも詳しく紹介されていますので、興味のある方はぜひ試してみてください。ゲーム感覚で競争!ある程度、文字が引けるようになってからは、目的の言葉にたどり着くまでの時間を親子で競争するのも面白いでしょう。子ども用のかるたを使う方法が便利です。かるたには、子どもが知っている言葉がのっていますので、それに出てくる言葉を辞書で引いてみるのです。かるたがない場合は、絵本でも、テレビでもなんでも良いので、目に付いた言葉を引いてみます。教科書に出てくる言葉でも良いのですが、ちょっと「宿題」を思い起こさせてしまい、やる気がなくなってしまうかもしれません。なるべく「生活」に近い言葉の方が良いでしょう。また、調べる言葉をお子さん自身が探すというのも良いと思います。兄弟でする場合は、様子を見てハンデをつけましょう。保護者の方は、同じ言葉を和英辞典で探し、出てきた英単語を英和辞典で探す、なんていうのも面白いかもしれません。親が辞書を引く姿を子どもに見せる「分からない言葉は調べなさい」なんて口で言うのは簡単ですが、実際親はスマホで済ませようとしてしまいます。昔は、言葉が分からない場合は、ケイタイではなく辞書を使って調べていました。お子さんの辞書引きを習慣化させるためにも、ぜひ、そのお手本になってください。日常の場面で、知らない言葉に出会った時、「○○ってどういう意味かしら。調べてみようっと」と言って辞書を引くのです。これは、スマホで言葉を検索することになれてしまった保護者の方にも良い機会となるはずです。その姿を見て、子どもは自然と「分からない言葉があれば辞書を引けば分かるようになる」と知るでしょう。そして何より、連載第1回でもお伝えしましたが「分からないことをそのままにしない」という姿勢を親からも学べます。まずは、今日、知らない言葉に出会ったら、スマホを手に取る前に、辞書で調べてみてください。新しい気づきがありますよ!■ 連載『ゆか先生の 国語辞典の世界へようこそ』各回の内容第1回:国語辞典でこの時代を生きぬくための基本動作が身につく第2回:子どもにぴったりの国語辞典を選ぼう! 電子辞書ってどうなの?第3回:初めての国語辞典。カバーは?置き場所は?どんなふうに引くの?第4回:ゲーム感覚でやる気をアップ! 付箋紙やノートで記録する方法など第5回:漢字辞典、百科事典、ことわざ辞典、四字熟語辞典、語源辞典など、子どもの世界の辞典いろいろ(※近日公開)第6回:まとめ国語辞典を使えるようになった子どもたちのその後(※近日公開)
2019年05月08日「10歳の壁・9歳の壁・小4の壁」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。9~10歳のころに、子供が勉強面や心理面でつまずいてしまうのは珍しくありません。「壁」を乗り越え、将来、自立した大人になるためには、この時期に自分に自信をつけることが大切です。今回は、子供が自分に自信を持つべき理由と、そのために親ができることを2つ紹介します。劣等感が生まれる!?「10歳の壁」とは10歳の壁とは、10歳前後の子供が直面する課題として、よく知られています。「9歳の壁」「小4の壁」と言われることもありますね。文部科学省は、この時期の子供について、次のように説明しています。対象との間に距離をおいた分析ができるようになり、知的な活動においてもより分化した追求が可能となる。自分のことも客観的にとらえられるようになるが、一方、発達の個人差も顕著になる(いわゆる「9歳の壁」)。身体も大きく成長し、自己肯定感を持ちはじめる時期であるが、反面、発達の個人差も大きく見られることから、自己に対する肯定的な意識を持てず、劣等感を持ちやすくなる時期でもある。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:文部科学省|3.子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題)子供の考え方は9~10歳の時期に大きく転換します。この転換によって、抽象的な「5-2=3」という式を、「5個のミカンを2つ食べたから残りは3個」などの具体例を介さずに理解できるようになります。また、抽象的な概念だけでなく、他人の目から見た自分の姿も理解し始めます。抽象的な考え方ができるようになるまでの期間は個人差があるので、子供たちは自己と他人を比べてしまい、自己肯定感を失いがちです。そして、このときに自己肯定感を失ったままだと、その後の成長に大きな影を落としかねないのです。10歳の壁を壊す「自己肯定感」の大切さ多くの企業・学校で活用されている行動習慣化メソッドを開発した人材育成研究家の永谷研一さんは、自己肯定感の大切さを次のように述べます。自己肯定感が高い人は、楽観的に物事を考えることができるので、少々不安であっても前向きな行動を起こすことができます。また自分の気持ちを開示することができるので、周りからのアドバイスも受けやすく、ぐんぐん成長することができます。その逆に自己肯定感が低い人は、悲観的に物事を考えてしまう傾向があります。新しい行動を起こそうとしてもリスクを考えて踏みとどまってしまい、前に進むことができません。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:東洋経済ONLINE|「自己肯定感」が低い人に現れる”残念な症状”伸びる人と停滞する人の差にもつながる)自己肯定感を失ってしまった子供は、「どうせ頑張ったって、できないんだ」と考えるようになり、次第に挑戦をしなくなります。自分から行動を起こすことはなくなり、将来、指示待ち人間となってしまう可能性もあるでしょう。そして、人の後をついてゆくだけの人間にとって、これからの時代を生き抜くには厳しそうです。「東大・京大で一番読まれた本」として知られる『思考の整理学』の著者・外山滋比古さんは次のように述べます。僕が本に書いたのは、“墜落してもいいから飛行機になれ”ということです。グライダー型人間はモノマネが得意だけれど、新しい事態や時代の変化に対応できません。しかも現在は30年前よりはるかに時代が進み、学校で学んだ知識がより通用しなくなった。人工知能(AI)やITなどが発達した今こそ、他人に引っ張ってもらって飛ぶグライダー型人間ではなく、自力で自分のめざす場所まで飛べる飛行機型人間が求められています。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:NEWSポストセブン|外山滋比古氏の提言「墜落してもいいから飛行機になれ」)子どもが将来活躍するためには、主体性を持って行動する必要があります。そのため、主体性を生みだす自己肯定感はとても大切な要素なのです。では、10歳の壁に負けず、子供に自己肯定感を身につけさせるためにはどうすればよいのでしょうか?叱ってばかりだと、自己肯定感はボロボロに……一番大切なのは、親が子供を信頼し、行動を見守るということです。子供が行動するとき、失敗しそうで不安になり、あれこれ口を出していませんか?「早く宿題をやりなさい」や「部屋をきれいにしなさい」などと、子供の行動に毎回口をはさみ叱っていると、子供はどんどん挑戦する心を失っていってしまうのです。教員出身の教育評論家、親野智可等(ちから)さんは次のように述べます。待てない親や先生は必ず子どもを傷つけます。目先のことばかり見て「○○ができてない。ちゃんとやらなきゃダメでしょ」と否定的に叱り続け、結局は子どもの自己肯定感をボロボロにしてしまうのです。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:親力|やる気のスイッチが入る人と入らない人、その差はどこに?)子供は自分で必要だと感じたら、その時に自分で考えて、何とかしようと行動します。そして、その行動をやり遂げることによって、子供たちは「自分なら大丈夫だ、自分もできるのだ」と思えるようになるのです。したがって、自己肯定感を身につけさせるには、まず、子供の行動を見守ってあげることが大切なのです。「頭がいいね!」で自己肯定感は伸びないまた、親が子供をきちんとほめてあげることでも、子供の自己肯定感は高まります。その際、ほめ方に注意が必要です。褒めるときは子供の能力ではなく、行動を褒めましょう。スタンフォード大学で行われた実験によると、能力をほめられた子供は学習意欲が下がってしまうのだそう。ドゥエック教授は、子どもを対象としたテストで「頭がいいから成績がよかった」と能力をほめたグループと、「がんばったから成績がよかった」と努力をほめたグループのその後の行動を観察しました。すると、能力をほめたグループの子どもは新しい課題に消極的になったり、なかなか解けない難題に対して「楽しくない」「自分はできない」とあきらめてしまったりしたそうです。一方、努力をほめたグループは新しい課題にも積極的に取り組み、難問にも根気よくがんばる姿勢を見せ、最終的にいい成績を収めたといいます。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:サイバーユニバーシティ株式会社|能力ではなく「努力」をほめる!効果的なフィードバックの方法)人間は能力を評価されると、その「能力が高い」という評価を維持するために行動してしまうのだそう。「頭がいいね」と褒められた子供たちは、「自分が問題をとけない、つまり頭がよくない」という評価を避けるために、「そもそも挑戦をしない」という決断をしてしまうのですね。また、米カリフォルニア大学サンディエゴ校とカナダのトロント大学、中国杭州師範大学の研究者らが行った研究では、「頭がいいね」と褒められた子供たちは、不正行為をする可能性が高くなるという結果でした。したがって、子供を褒めるときは、子供が努力した姿に注目してあげるようにしましょう。***9~10歳の子供は、勉強・身体の成長・人間関係などあらゆる面で大きな変化を迎えます。そんな子供がのびのびと挑戦し育ってゆくためにも、親はどーんと構えて子供を見守ってあげましょう。そうすることで、子供は主体性のある大人に成長できるでしょう。文/村瀬裕一(参考)文部科学省|3.子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題ダ・ヴィンチニュース|225万部突破! なぜ『思考の整理学』は東大生から根強く支持されるのか?AllAbout|「10歳の壁/小4の壁」子供がぶつかる勉強の見えない壁への対策3つ親力|やる気のスイッチが入る人と入らない人、その差はどこに?AERA dot.|「9歳・10歳の壁」を乗り越える3つの法則帝京科学大学学術リポジトリ|児童期の認知発達と心理発達の特徴と支援について産経新聞|写真で褒める「ほめ写」子供の自己肯定感アップJ-CASTニュース|子どもを「賢い」と褒め続ける教育ご用心!インチキする子になりますよ
2019年05月07日教育熱心な親御さんのなかには、「プレイフル・ラーニング」という言葉を耳にしたことがある人も多いかもしれません。いわゆる詰め込み型教育の対極にあるものとして、「遊びながら学ぶ」というイメージを持っているのではないでしょうか。でも、ちょっとだけ、そのとらえ方のニュアンスがちがうようです。では、そもそもプレイフル・ラーニングとはなにか。そして、家庭教育に生かすための方法にはどんなものがあるのかを、発達心理学と認知心理学の専門家である十文字学園女子大学の大宮明子先生に教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)楽しんでいるなかに学びがあるプレイフル・ラーニングとは、同志社女子大学の上田信行先生が提唱された概念で、一般には2000年代前半頃から認知度が高まってきました。「プレイ」という言葉から、「遊びながら学ぶ」教育手法だと思われがちですが、プレイフル・ラーニングの根底にあるのは「楽しんでいるなかに、そもそも学びがある」という考え方です。「楽しんでいるとき」ですから、いわゆる「遊び」でない場合もあります。ただ、子どもの場合、楽しんでいるときにしていることというと、基本的には遊びが多いですよね。ですから、必然的に子どもにとっては遊びから学ぶことが多くなるのです。親御さんに意識しておいてほしいのは、大人と子どもの学び方はまったくちがうということ。決定的なちがいは、「目的や目標があるかどうか」という点です。大人が学ぶときには、ほとんどの場合はなにかのスキルを身につけたいといった目的や目標がありますよね。そして、その目的や目標を達成するために本を読んだり講座を受けたりするわけです。大人は、「学ぶこと」とはそういうものだと思っています。でも、子どもの場合は多くの学びがある遊びをするにも、なにかを学びたいといった目的や目標を持っていません。ただ楽しくお人形さんごっこをやっていたら、いつの間にか自分の着替えもできるようになった。これも立派な学びですが、その子は「着替えができるようになりたい」と思っていたわけではないのです。子どもの学び方は、あらかじめほしい結果があるのではなく、楽しく遊んでいたら、結果としてなにかを学んでいたというかたちだと思っていいでしょう。好きなことを追求していた難関突破経験者幼いときのプレイフル・ラーニングは、将来的には学力を大きく伸ばすことにもつながります。以前、先の上田先生、お茶の水女子大学の内田伸子先生とわたしの3人でおこなった研究を紹介しましょう。その研究では、東大や京大といった難関大学合格者、あるいは司法試験や医師試験の合格者という「難関突破経験者」とその親にウェブ調査をおこないました。調査内容は、幼児期になにをしていたことが難関突破につながったか、ということです。結果は、見事にプレイフル・ラーニングでした。普通、そういうエリートと呼ばれる人たちなら、小さいときから塾に通って先取り学習をするなど一生懸命に勉強していたのではないかと考えるのが自然です。でも、実際にはそうではなかった。彼らが幼いときになにをしていたかというと、それぞれが好きなことをとことんやり続けた。そして親は、子どもが好きなことに一緒に取り組むなどして、子どもを応援していたのです。たとえば、ある人は虫が大好きでひたすら網を持って虫取りばかりしていたそうです。他には、とことんサッカーをしていた、野球をしていたという人もいます。いわゆるお勉強からは程遠いことをしていた人たちばかりでした。それがなぜ知的なレベルの学習にもつながったのか?その部分にはみなさんも関心があるでしょう。その答えは、その人たちが幼いときにやっていたことは、親に強制されたものではなく、自分が好きなことだったということ。そして、親がそれを止めることなくやり続けさせた。そうして、持続力や集中力が身についたのだろうと推測できます。また、好きなことを通じて、彼らは自分なりに学びに向かうための方略を身につけていきました。虫好きの子どもなら、知らない虫を捕まえてくれば自分で図鑑を開いて調べる。そして、単にバラバラの知識を頭に入れるのではなく、「この虫とこの虫はここが似ているから、きっとこういう似た場所にいるのだろう」というふうにも考えたりもする。つまり、自ら学ぶ姿勢を身につけ、さらには自分で得た知識を体系立てる、構造化するということも、小学校に入る前からしていたというわけです。そんな学びの姿勢がある子どもの興味の対象が教科になったとしたらどうでしょうか?学力が一気に伸びることは明白ではありませんか。ものを過剰に買い与えることも要注意!大切なことは、子どもにとっては遊びのなかに学びがあるからといって、「はい、これで遊びなさい!」と強制してもなんの意味もないということ。子ども自身が「やりたいと思うこと」を思う存分やらせてあげることがポイントです。すると、「なるべく選択肢が多いほうがいいだろう」と考えて、いろいろなものを買い与えようとする親御さんもいるようです。しかし、その考えは要注意。大人にとっては珍しくもなんともないものでも、子どもにとっては「これ、なんだろう?」と思うものが家のなかにはあふれているものです。それこそ、単なるテレビのリモコンだって、幼い子どもにとっては興味の対象になるのです。それなのに、お店で少しでも子どもが興味を示したからと、あれやこれやと買い与えると、子ども部屋はものであふれかえります。すると、ものがあり過ぎるためにものが風景の一部になり、子どもはどこに注意を向けていいのかわからなくなり、かえってものに対して興味を示したり集中したりすることができなくなるのです。意識的にものを与えなくても、子どもは子どもなりに周囲のものに必ず興味を示します。そして、その興味を邪魔することなく、子どもの行動、遊びを見守ることを心がけてください。『幼児期からの論理的思考の発達過程に関する研究』大宮明子 著/風間書房(2013)■ 十文字学園女子大学教授・大宮明子先生 インタビュー一覧第1回:東大・京大・司法試験・医師試験の合格者たちが、幼児期に共通してやっていたこと第2回:「ママがやって」と言われたら黄色信号。子どもの考える力を奪う親のNGワード(※近日公開)第3回:「親の言葉遣い」に見る、成績優秀な子が育つヒント。語彙力が伸びる会話の特徴(※近日公開)第4回:絵本の目的は学びにあらず。子どもの興味の芽を摘む、読み聞かせ後の「最悪の質問」(※近日公開)【プロフィール】大宮明子(おおみや・あきこ)6月5日生まれ、東京都出身。十文字学園女子大学人間生活学部幼児教育学科教授。1988年、中央大学法学部法律学科卒業。1997年、お茶の水女子大学教育学部教育学科心理学専攻3年次編入学。2001年、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科発達社会科学専攻博士前期課程修了。2008年、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科人間発達科学専攻博士後期課程修了。人文科学博士。発達心理学、認知心理学、とくに子どもの思考の発達、乳幼児期の親子の関わりを専門研究分野とする。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年05月07日親子のコミュニケーションの一環として、あるいは寝かしつけのおともとして、多くの家庭で取り入れられている「絵本の読み聞かせ」。しかし、「なんとなく教育によさそうだからやっているけど、どういいのかはわからない」という親御さんも少なくありません。絵本の読み聞かせには、子どもにとってたくさんのメリットがあります。具体的に知っておいて損はないはずです。とりわけ、学びに関するメリットについては、「こどもまなびラボ」の読者のみなさんにとっても興味深いものではないでしょうか。今回は、絵本の読み聞かせのメリット——なかでも学力向上につながる効果と、それを高める読み聞かせ方をご紹介します。絵本は「心の脳」に働きかける!?子どもに絵本を読み聞かせると、その内容に応じて子どもがニコニコしたり、目を見開いたりする様子が見られます。ときには、日常生活では見られないような複雑な表情をすることも。そんな我が子の一面を見て、読み手である親もうれしい気持ちになるでしょう。このように、読み聞かせ中に聞き手である子どもの表情がクルクル変わるのは、子どもの脳内で喜怒哀楽を司る大脳辺縁系が活発に動いているから。元東京医科歯科大学大学院教授の秦羅雅登先生は、大脳辺縁系のことを「心の脳」と表現し、それが子どもにどんな影響をもたらすか次のように説明しています。読み聞かせは子供の「心の脳」に直接働きかけることがわかっています。言葉はわからないけど「心の脳」はしっかり働いて、うれしい、たのしい、こわい、悲しいがちゃんとわかる子が育ちます。(引用元:東京都教育委員会|脳科学の先生が考える“絵本の読み聞かせ”って?)スポーツにトレーニングが欠かせないのと同じように、脳も使わなければ発達しません。「心の脳」も同様です。絵本の読み聞かせにより、「心の脳」をしっかり動かし、発達させることで、感情が豊かになっていきます。また、「心の脳」が発達すると、その子の行動も発達するといいます。心がうれしい、楽しいと感じれば、「もっとやりたい」と思って行動するし、悲しい、怖いと感じれば、「やめよう」という判断ができるからです。絵本の読み聞かせは、子どもの脳に働きかけ、心や体を動かす糧となることがわかります。語彙力を鍛え、学力向上にも効果あり!絵本の読み聞かせの効果は、それだけに留まりません。学力向上にも効果があるのです。「2013年度全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する調査研究」(国立大学法人お茶の水女子大学)をもとにつくられた、絵本の読み聞かせと学力の関係を示すデータがあります。それによれば、子どもが小さい頃絵本の読み聞かせをしていた家庭の子どもは、そうでない家庭の子どもより、国語と算数の正答率が高かったのだそう。小学6年生と中学3年生を対象とした調査ですが、その傾向は両方に見られました。一方で、2015年に実施された「大学生意識調査-東京大学編」(KUMON)では、「子どものころ、親にしてもらって感謝している教育とは?」という問いに対する東大生の答えで最も多かったのが、「本の読み聞かせ」でした。つまり、実際に学力の高い学生の多くが、小さい頃に絵本の読み聞かせをしてもらい、それがよかったと感じているということです。なぜ、絵本の読み聞かせで学力が向上するのでしょうか。絵本スタイリストの景山聖子さんは、その要因のひとつに「語彙力」を挙げます。ここでいう語彙力とは、どれだけ多くの言葉を知っているか、その言葉をどれだけ適切に使えるか、を示す力のこと。景山さんは、次のように説明します。お子さんに絵本を読み聞かせてあげるだけで、自然と語彙力が鍛えられます。その上、多くの言葉を理解することで、文章理解力も増します。さらには、小学校で全教科の先生の話がより深く理解できるようになります。その結果、学力の高い子どもが育ちます。(引用元:Study Hackerこどもまなびラボ|「読み聞かせ」でなぜ学力が上がるのか?絵本がもたらす ”驚きの効果”)景山さんの言うとおり、語彙力や文章理解力は国語のみならず、全教科で活かされます。言葉や文章がまったく使用されない教科はないからです。逆に、語彙力が乏しいと、授業中に先生が何を言っているのかわからない、テスト中に問題文の意味が理解できない、なんてことも起こりえます。絵本の読み聞かせで鍛えられた語彙力は、学校に入ってからの学びをそっと支えてくれるでしょう。効果を高める読み聞かせ方とは!?では、こうした効果をより高めるには、どのように読み聞かせればいいのでしょうか。まず、読み聞かせる絵本の選び方としては、毎日違う絵本をたくさん読み聞かせるより、同じ絵本を繰り返し読み聞かせるほうが、語彙力を鍛えるのには効果的であるといえます。イギリスで行われた研究では、1冊の絵本を何度も読み聞かせたグループと、複数の絵本を読み聞かせたグループで覚えた単語数を比較したところ、前者が後者の2倍も多く覚えたのだそうです。一方で、「ただ読むだけでは、理想的な語彙力や文章理解力はつきません」と、教育環境設定コンサルタントの松永暢史さんは言います。松永さんが効果的な読み聞かせ方として推奨しているのは、絵本に書かれた一字一字のすべてをハッキリ発音する、「一音一音ハッキリ読み」です。街中で移動販売車から聞こえてくる、「いしや〜きいも〜」「たけや〜さおだけ〜」などの呼びかけをイメージするとわかりやすいかもしれません。一音一音切って、下記のように母音を正しく発音し、口を大きく動かして読み聞かせます。「あ」→最大限に口を開く発音。自分の口にゲンコツを入れるイメージで広げ、腹の底から音を出す「い」→「あ」の状態から左右を思いっきり口を引き裂くイメージで。「う」→口を前にとがらせて、しっかり止める。「え」→唇を少しかたくして、口をやや縦に開いて発音する。「お」→口を結びかけて下あごを下げ、口の中に空洞を作る。(引用元:EhonNavi|『将来の学力は10歳までの読書量で決まる!』松永暢史さんインタビュー)この読み聞かせ方をするときは、子どもにわかりやすいように言い換えたり、抑揚をつけたりする必要はありません。子どもの耳から体内へ注入させるようなイメージで、ゆっくり淡々と読み聞かせるのがポイントです。なお、集中力のない子や、じっとしていられない子に読み聞かせるときは、親子で一緒に寝転がって読むとうまくいくかもしれません。松永さんによれば、この読み聞かせ方を実践した親御さんから、「今まで、じっと聞いていられなかった子どもが、じっと聞いている」という報告があったそうです。読み手がしっかりと言葉を発することで、聞き手もしっかりとその音を聞き、言葉のひとつひとつを理解しようとするのでしょう。***絵本の読み聞かせのコツについては、あらゆる媒体で様々な情報が公開されています。大切なのは、読み手である親御さんがいろいろ試してみて、一番楽しく読み聞かせることができるやり方を知ることです。読み手が楽しめなければ、聞き手も楽しめませんし、長続きしません。親子で一緒に楽しむことが、絵本の読み聞かせの最大のコツといえるのではないでしょうか。(参考)東京都教育委員会|脳科学の先生が考える“絵本の読み聞かせ”って?Study Hackerこどもまなびラボ|「読み聞かせ」でなぜ学力が上がるのか?絵本がもたらす ”驚きの効果”Study Hackerこどもまなびラボ|「東大生が親に感謝していること」堂々1位!本の読み聞かせの効果と “学力を上げる” 本の選び方。EhonNavi|『将来の学力は10歳までの読書量で決まる!』松永暢史さんインタビューStudy Hackerこどもまなびラボ|国語力は“〇〇の音読”で爆発的に伸びる。読むだけで子どもの頭がよくなる名作本の選び方
2019年05月06日恐竜が大好きで、幼稚園から小学校低学年のころにかけて、いろいろな種類の恐竜について図鑑で調べて名前を覚えたり、恐竜のおもちゃを欲しがったりする子は意外と多いものです。恐竜に限らず、「熱中する」「ハマる」という体験は、一時的なブームとして終わるものではなく、この先のお子さんの学習姿勢を大きく左右するのだそう。今回は、恐竜好きなお子さんの「もっと知りたい」という探求心をくすぐり、「学び」へとつなげるコツについて紹介します。恐竜好きな少年がたどり着いた研究者への道NHKラジオで長い間子どもに親しまれている「夏休み子ども科学電話相談」という番組をご存じでしょうか。子どもたちの素朴な「なぜ?」に、各分野のプロフェッショナルがわかりやすく丁寧な解説で相談にのる人気番組です。この番組で「恐竜」のテーマを担当する北海道大学総合博物館・小林快次博士は、中学生のころ化石に出合ったのをきっかけに「恐竜博士」へと突き進んだのだそう。中学一年生で化石に出会って以来、毎日のように化石を採集する日々を過ごしました。大学でアメリカに留学し、日本人で初めて恐竜の博士号を取得。(引用元:NHK|夏休み子ども科学電話相談)もともと理科が好きだった小林先生は、中学で入った理科クラブのアンモナイトの化石採集で、周りの人がたくさん化石を見つけているのに自分だけは見つけられなかったのだそうです。あまりに悔しくて、その後何度も同じ場所へ足を運んで化石を掘り続けていたとき、先生から「石を割れば割るほど化石が見つかる可能性は上がる」と声をかけられ「スイッチ」が入ったと言います。その後、日本の大学へ入るものの1年でワイオミング大学地質地学物理学科へ留学、飛び級するほどの目覚ましい才能を開花し、日本で初めて恐竜の「博士号」を取得したという経歴の持ち主です。あまりに化石をよく見つけることから、研究仲間から「ファルコンズ・アイ(ハヤブサの目)」や「イーグルズ・アイ(鷲の目)」「ホークス・アイ(鷹の目)」といったニックネームを付けられたのだそう。現在も1年の5カ月ほどは、恐竜の化石を発掘するために世界中へフィールドワークに出かけ、恐竜の化石発掘の第一線で活躍されています。そんな小林先生の恐竜学者としての道のり、そして大発見をなしとげるようになった現在までのお話がたっぷりつまった本がこちら。ドキドキワクワクしながらページをめくってください。『ぼくは恐竜探検家!』小林快次(講談社)恐竜に「ハマる」経験は、小学校6年生の理科につながる興味をもって「ハマる」経験は、小林先生のようにそのまま将来の職業につながるような才能を開花することもありますし、普段の学習においても探求心を育むための大切な基礎を作ります。たとえば現在、小学校6年生の理科では「土地のつくりと変化」というテーマのもとに、土地は礫(れき)、砂、泥、火山灰、岩石からできる地層が積み重なってできていること、地層には化石が含まれていること、火山の噴火や地震によって土地が変化することなどを学びます。恐竜好きなお子さんは、博物館や子ども向けのイベント会場で開催されるような「化石発掘体験」に参加することも多いでしょう。そこで得た経験や知識は、小学校6年生の理科の授業で必ずいかせるはずです。「もっと知りたい!」そんな子どものためにできること4つ子どもの「恐竜が好き、もっと知りたい」という探求心をくすぐるには、昔ながらの本や博物館以外にデジタルコンテンツなども活用しましょう。ここでは、オススメの「図鑑」「デジタルコンテンツ」「博物館」「発掘作業」を紹介します。<図鑑>『DVD付 新版 恐竜 (小学館の図鑑 NEO)』監修・執筆/冨田幸光(学研プラス)恐竜図鑑のベストセラー。専門家の監修のもと細部まで表現されたイラストや世界中から集めた恐竜の写真、国内で発見された恐竜についての情報など充実した内容が評価されています。また、ドラえもんとのび太がナビゲートして、一緒に恐竜の世界を冒険するDVDも付録で収録されています。『DVD付恐竜 (学研の図鑑LIVE)』監修/真鍋真(学研プラス)1点ずつ細部までチェックされた実物に近づけたイラストは迫力満点。BBC(イギリス放送協会)「プラネットダイナソー」の映像がDVD、スマホ・タブレットで見ることができる3D・ARなど、「本物」にこだわった図鑑です。『こども百科 4・5・6歳のずかんえほん きょうりゅうの本 (えほん百科シリーズ)』監修/真鍋真(講談社)種類別に分けた恐竜をわかりやすいイラストで紹介しているのが特徴の絵本です。すべての文字がひらがなで、カタカタにもルビが振られているほか、巻末には内容をおさらいできるクイズやなぞなぞも掲載され、子どもが1人で開いて楽しめるように工夫されています。<デジタルコンテンツ>先に紹介した図鑑には映像がDVDで収録されているほか、専用サイトを開設している出版社もあります。また、NHKや海外のテレビ局が制作しているドキュメンタリー番組にも良質なコンテンツが充実しています。■【もっとNHKドキュメンタリー】「これが恐竜王国ニッポンだ!」・近年、日本各地で「むかわ竜」をはじめ、さまざまな恐竜の化石が見つかっている・“恐竜を愛する”専門家や化石愛好家たち発掘や生態の解明に挑む姿を追う・恐竜たちの姿を超リアルなCGで再現海の巨大は虫類「モササウルス」も!(引用元:もっとNHKドキュメンタリー|これが恐竜王国ニッポンだ!)■【BBC Earth Unplugged】Walking With DinosaursBBCワールドワイドが運営する自然ドキュメンタリーのオリジナルチャンネル『Earth Unplugged』。その中のひとつである「Walking With Dinosaurs」では、迫力ある恐竜たちの姿が楽しめます。最新技術を駆使したCG映像が魅力です。<博物館>世界三大恐竜博物館として知られる「福井県立恐竜博物館」をはじめとして、親子で楽しく学べる博物館は国内各地にあります。■福井県立恐竜博物館(福井県勝山市)■国立科学博物館(東京都台東区)■北九州市立いのちのたび博物館(福岡県北九州市)■群馬県立自然史博物館(群馬県富岡市)<発掘体験>化石の発掘体験は、上記に紹介したような博物館のほか、全国各地で夏休みに開催されるイベント型フィールドワークもあります。また、家庭で簡単に発掘体験ができるキットも販売されています。Geoworldの「恐竜発掘キット」は、ティラノサウルス、トリケラトプス、ステゴサウルス、プテラノドンなど子どもたちが大好きな恐竜がそろっている人気のアイテムです。***かつて男の子だったパパにとって、「恐竜」にロマンと懐かしさを感じる人も多いのではないでしょうか。お子さんが恐竜に興味をもったら「ここはパパの出番!」かもしれません。一緒に図鑑を開き、博物館へ足を運び、そして発掘作業を楽しんでみるのもいいですね。(参考)NHK|夏休み子ども科学電話相談Webナショジオ|小林快次恐竜化石フィールド日誌 第5回恐竜を研究する意味Webナショジオ|小林快次 恐竜化石フィールド日誌 第1回 恐竜化石は「歩いて探す」文部科学省|学習指導要領「生きる力」第2章各教科第4節理科小学館|小学館の図鑑NEO〔新版〕恐竜学研の図鑑LIVE|学研の図鑑 LIVE恐竜AllAbout|恐竜図鑑 人気おすすめ10選!2018年最新版もっとNHKドキュメンタリー|これが恐竜王国ニッポンだ!BBC Earth Unplugged |Walking With DinosaursNIKKEI STYLE|大迫力にワクワク恐竜を楽しめる施設、ベスト10
2019年05月05日こんにちは。離乳食インストラクターの中田 馨です。5~6カ月ごろ(離乳食初期)・7~8カ月ごろ(離乳食中期)は赤ちゃんの生活リズムに合わせて離乳食を食べることが多かったと思いますが、3回食になる9~11カ月ごろ(離乳食後期)からは、少しずつ家族の食事と同じ時間に離乳食を食べることをおすすめします。 赤ちゃんの離乳食と家族の食事時間を一緒にすることでメリットがたくさんあるからです! 今日はその4つのポイントをお話ししますね。 大人と一緒の時間に食事をする4つのメリット家族と一緒に食事をすることで、赤ちゃんの食欲や意欲を増進させてくれます。 1.食に興味を持つ家族の食べているメニューはどんなんだろう? どんな香りがするんだろう? どんな雰囲気で食べているんだろう? 赤ちゃんは五感を働かせながら、赤ちゃんは食に興味を持ちます。 2.食べることの楽しさを味わう誰と一緒に会話をしながら食べると大人も楽しいですよね。赤ちゃんも一緒です。家族と一緒に食べることでいつもの離乳食がさらにおいしく感じることができます。 3.苦手な食材に興味を持つ赤ちゃんに苦手な食材があったとしても、家族がおいしそうに食べている姿を食卓で見せ続けていることで、その食材に興味を持つことがあります。わが家の子どもたちは、それでいろいろな食材が食べられるようになりましたよ。 4.スプーンやお箸に興味を持つ9~11カ月ごろ(離乳食後期)、徐々に手づかみ食べが始まります。赤ちゃんは手づかみ食べをしながら、1歳に近づくにつれてスプーンに興味を持ち始めます。そして、自分も持てるようになるとうれしくて仕方ありません。 パパやママがスプーンやお箸をどう使っているのか? 赤ちゃんは観察して、興味を持っていますよ。 大人のごはんをほしがったら?家族と一緒に食べ始めることで、赤ちゃんが離乳食ではなく家族のごはんを食べたがることがあります。でも、まだ赤ちゃんには食べさせたくないメニューがありますよね。そんなときは、赤ちゃんに食べられないことを伝え、代わりのものを用意します。 とは言っても、赤ちゃんがそれで納得してくれればいいですが、毎回そうはいきません。そんなときは次のことをしてみてください。 ・だしや湯ざましで薄めて食べさせる・赤ちゃんが食べられる部分だけ与える・赤ちゃんが食べられないものは食卓からなくす たとえば、大人のメニューからの取り分け離乳食なら、見た目が同じで味が薄めのものを与えることができます。取り分け離乳食も活用してみてくださいね。 生活リズムは各家庭によってさまざまです。赤ちゃんといっしょに食べる時間がなかなか取れない場合は、まずは休日から取り入れてみるなど、無理のないようにしてくださいね。赤ちゃんと一緒に食べることで、家族の食卓が楽しくなるといいなと思います。 著者:保育士 一般社団法人 離乳食インストラクター協会 代表理事 中田家庭保育所施設長 中田馨0~2歳対象の家庭保育所で低年齢児を20年以上保育する。息子が食べないことがきっかけで離乳食に興味を持ち、離乳食インストラクター協会を設立。現在は、保育士のやわらかい目線での離乳食の進め方、和の離乳食の作り方の講座で、ママから保育士、栄養士まで幅広く指導。離乳食インストラクターの養成をしている。「中田馨 和の離乳食レシピ blog」では3000以上の離乳食レシピを掲載中。
2019年05月04日「協働力」をいう言葉をご存知ですか。普段の生活の中ではあまり聞かない言葉かもしれません。しかし、これからの時代に子どもたちに求められる大切な能力のひとつ。アメリカでも、リーダーシップの必須要素として重要視されているそう。詳しく解説していきましょう。たくさんの人と協力して道を切り拓く力「協働」とは、同じ目的のために、対等の立場で協力してともに働くことを意味します。グローバル化が進み、少子高齢化、生産年齢人口の急減、また労働の多くが人工知能やコンピュータに代替されていくこれからの時代、この「協働」が求められているのです。私たち親の世代では、知識から正解を早く導き出すことや、他者よりも上に立ち、勝者となることが良しとされてきました。しかし、これからの時代は、解決すべき課題を発見する力や、学び続ける強い意志、協働により課題解決の道すじを切り拓く力こそが重要となってくるのです。“尾木ママ”の愛称でおなじみ、教育評論家の尾木直樹先生も次のように言っています。(先進34か国が加盟する「経済協力開発機構OECD」は)2030年に求められる力として、たくさんの人と協力して答えを見つけていく力、情報を整理するか、複数の要素を結びつけ、新たな価値を生み出す力などをあげているんです。(中略)そして、それらの力を身につけさせるためにはコミュニケーション力や協働性、創造性、批判的思考能力、好奇心等をはぐくむ教育が必要だと説いています。今後ますます国と国の垣根が低くなり、価値観の異なる人どうしが一緒に暮らすようになります。難しい言葉でいうと、多文化共生社会に突入するの。その社会の中で必要な力なのです。(引用元:さぽナビ|尾木ママが語る!グローバル化時代に求められる子育ての視点 (1))また、文部科学省のホームページにも、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」「他者と協働して課題解決を行う人材」が求められると書かれています。今後、学校ではこういった能力を伸ばすためのディスカッションやプレゼンテーションの場が増えていくでしょう。トップダウン型のリーダーではもう勝ち残れない!ところで皆さんは、リーダーと聞いてイメージするのはどんな人物でしょうか。人を引っ張っていく、いわゆる「ボス」タイプのトップダウン型のリーダーを想像するのではないでしょうか。日本ではこういったリーダー像が一般的ですよね。しかし、アメリカではすでにそういったリーダーシップ育成は行われていないようです。個人の利益ではなく、自分が属するコミュニティ、社会がどうすればより良くなるかを考え、多くの人や異なる強みを持つ他者と協働できる人間こそがこれからの時代に求められるリーダー像であるとされているのです。“社会起業家”というコンセプトが一般的になりつつあるアメリカでは、ただお金を儲けるだけの企業にはリーダーシップがない、発展性はない、と見なされることも多いそう。近い将来、日本もきっと同じようになっていくのではないでしょうか。協働力アップのための3つの方法では、協働力を高めるためにはどうすればよいのでしょうか。ライフコーチ、アートコンサルティングであり、自身の娘が「全米最優秀女子高生」に選ばれたボーク重子さんは、著書の中で「協働力」がアメリカでも重要視されていることを挙げ、その能力を高めていくための方法を紹介しています。ぜひ参考にしてみましょう。【1】家族のルールを決めてそれを全員で守る協働力を鍛えるためには、「コミュニティに属し、同じ目標に向かって進んでいる」という自覚が必要。そこで誰でもすぐに実践できるのが「家族」というコミュニティ。家族が協力してより良い未来を作り上げていくことが、協働力を伸ばすことにつながるのです。ボーク重子さんの家庭では、以下のルールを決めているそう。■家族の中の自分の役割に責任を持つ■夕飯は可能な限り一緒に食べ、その日の出来事をオープンエンドで話す■自分でできることは自分でやる■年1回家族一緒にボランティアをする 【2】共感力を高める「協働力を育むためには何よりも『共感力』が必要」とボーク重子さんは言います。共感力とは、相手がいまどんな立場に置かれているのか、どのような背景が今のその人を形作っているのかなど、自分自身が持っている先入観をなくし、オープンマインドに考えられる力を指します。そして、この共感力を高めるためには、以下のような「多くの疑似体験」が効果的なのだとか。■地域のボランティアやインターンに参加する■ノンフィクションの本やドキュメンタリー番組を見る■演劇鑑賞をする■絵本の読み聞かせをするこれらは子どもの共感力アップにつながると言われていますので、ぜひ実践してみてくださいね。【3】家族以外との自然体験独立行政法人国立青少年教育振興機構で理事長を務める鈴木みゆきさんは、「家族以外の人との自然体験」を勧めています。一般の親子が参加できる『ファミリーキャンプ』というものも数多く実施しています。これは、青少年自然の家など全国に散らばるわたしたちの施設でお互いに知らない親子同士がキャンプをするというもの。自然体験をとおして親子の絆を深めることが大きな目的なのですが、子どもを寝かせた後に親だけでくつろぐうち、親同士が仲良くなっちゃう。すると、親たちのコミュニケーションが子どもにも伝染するんですよね。そうして、子どもは家族以外の人間とのコミュニケーション力や協働力を身につけるというわけです。(引用元:Study Hackerこどもまなびラボ|「大人の愛」と「協働力」が子どもを大人に導いていく――親以外の人との交流によって広がる子どもの視界)海や山など、気持ちの良い自然に囲まれた場所なら、親も子も開放的な気分になり、他人ともコミュニケーションがしやすくなるのかもしれませんね。こういった機会があれば、ぜひ積極的に参加したいものです。***これからの社会で、子どもたちが求められるであろう「協働力」。ただ、冷静に考えれば、「相手の立場にたって物事を考える」「人と協力し合って行動する」という昔から重んじられてきたことでもあります。家庭でも意識的に取り入れていけば、きっと身につくのではないでしょうか。文/鈴木里映(参考)ボーク重子(2018),『世界最高の子育て』,ダイヤモンド社.Z-KAI|求められる「学力」が変わるって本当?主体性・多様性・協働性を問う出題とは文部科学省|現状と課題子どもまなびラボ|観劇に出かける親子は驚異的に少ない。メリットだらけの演劇鑑賞、しないなんてもったいない!さぽナビ|尾木ママが語る!グローバル化時代に求められる子育ての視点 (1) Study Hackerこどもまなびラボ|「大人の愛」と「協働力」が子どもを大人に導いていく――親以外の人との交流によって広がる子どもの視界
2019年05月04日「小学校入学前にひらがなやカタカナを覚えたし、簡単な足し算・引き算なら大丈夫!」というご家庭が多くなっています。出遅れないようにと準備して臨みますが、小学校低学年で習う内容は簡単なので、入学後は親子で拍子抜けしてしまうかもしれません。ところが、簡単な低学年での学習内容こそが、中学年以上での理解度を大きく左右する大事な基礎となります。簡単なのに絶対外せないのが低学年の学習内容なのです。今回は、低学年(1~2年生)で習う国語と算数の学習内容からいくつか例を挙げ、どんなポイントが重要なのか、何に気をつけて学習すれば学年が上がっても苦労しないのかを紹介していきます。【国語】漢字は成り立ちから考える。音読は具体的に褒める。まず国語ですが、文部科学省の学習指導要領には1年生の授業全体850時間のうち306時間が、2年生は910時間のうち315時間が定められ、実に3分の1以上の授業時間が費やされるほど重視されています。【重要ポイント】ひらがな、カタカナ、漢字の読み書きによって、物の名前や動きや様子、自分や相手の気持ちを理解し表現できるようになります。漢字は1年生で80文字、2年生では160文字を習いますが、身の回りのことを伝えるのに必要な、数、方向、位置、形状、色、時間、自然、天気、学校生活でよく使う日常生活に密着した文字が中心になります。<↑1年生で習う漢字><↑2年生で習う漢字>【勉強のコツ】正しい文字を習得するには、書けることよりも読めるようになることが先で、ひらがな、カタカナ、漢字のどれにも同じことがいえます。その中で、■形がよく似ている文字を比べてどこか違うのかを見つける■ひらがなとカタカナは1文字ずつ対応していることが分かる■漢字にはよく似た仲間(部首)があるといった、文字の比較から部首の存在に気づけると、漢字の成り立ちや意味をスムーズに理解できるので、その先の漢字学習が楽になります。ただくり返し書くだけでなく、漢字にインパクトを持たせることが重要なのですね。また、低学年の教科書に取り上げられている文章は、シンプルでリズムが良いのが特徴で、何度も繰り返し音読してフレーズに親しむことで、文章の組み立て方や表現の仕方を学ぶことができます。語彙や表現方法の幅が広がると文章力アップにつながります。子どもの音読は聞き流しせず、「おじいさんのセリフがとてもよかったよ」「大きな声で読めていたね」と具体的に褒めてあげましょう。【算数】足し算・引き算をとにかくしっかり定着させる次に、算数の授業時間数は、1年生では授業全体850時間のうち136時間が、2年生では授業全体910時間のうち175時間が文部科学省の学習指導要領に定められています。国語に比べて時間数は少ないですが、この先の算数や数学へつながる基礎を作る内容ですのでしっかり理解しておく必要があります。【重要ポイント】算数の勉強といえば、足し算や引き算からスタートというイメージもありますが、実は「数の仕組み」から始まります。ものの個数を数えたり数字で表したり、あるいは「前から○番目」「右から○人」といった順序数を学びます。そのうえで、繰り上がりや繰り下がりも含めた足し算・引き算について学び、2年生になると掛け算へと発展していきます。また、数や計算以外にも量や長さ、広さ、時間といった図形や単位に関わる学習も始まります。【勉強のコツ】数の仕組みを最初に学習するとき、お子さんが何番目といくつ分の違いをしっかり理解しているか確認しましょう。これは日常生活の中で「上から3段目の棚の右から2番目にあるお皿を1枚取ってくれる?」「100円で39円のきゅうりは何本買えると思う?」といった問いかけで理解度を確認できます。単位や時間についても同じように、机以外の場所で「水を150ml用意してくれる?」「この番組は30分だったから、今日はあと30分テレビが見られるね」など、なるべく具体的なものや形を使って問いかけるといいでしょう。子どもはクイズが大好きです。「えー!すごいね、合ってるよ!」など大げさに褒めてあげてください。足し算や引き算は計算カードで繰り返し何度も覚え、タイムを計って読み上げる宿題を出す学校もあります。数式をみるたびに数の増減を考えるのではなく、見た瞬間に答えが口をついて出るまで慣れておきましょう。というのも、2年生や3年生で登場する掛け算や割り算は、足し算と引き算が繰り上がったり繰り下がったりしながら何重にも関わる「積み上げの学習」ですから、掛け算や割り算をスピーディに計算をするには基本となる足し算や引き算がいかに定着しているかがカギになります。勉強が簡単なうちに身につけたい「学習習慣」と「問題解決力」一度子どもが「なんだか国語(算数)って難しい……」と感じてしまうと、なかなかスムーズに学習が進まないようです。簡単に理解できて「勉強って楽しい!」と感じる段階から、少しずつ勉強の習慣づけをしていくことが大切です。低学年のうちは、家庭での学習時間は5~10分もあれば十分とも言われます。しかし、学校の授業は45分単位と子どもが集中できる時間に比べて長いので、これに慣れるためにも30分くらい続けて机に向かうことができるのが望ましいでしょう。学校から出された宿題を済ませたあとは、図書館で借りた本や授業で使う副読本を読むのもいいですし、席を立ってうろうろ歩き回らなければ、塗り絵やパズルなどで遊ぶことも立派な勉強だと認めて褒めてあげてください。低学年のうちに「1日30分、必ず机に向かって勉強する」ことを毎日達成して自信につなげるようにします。また、内容が簡単なうちに「分からないところを分かるようにするクセ」をつておくことも重要です。特に、算数は上述したように1年生の学習から積み上げていくものですから、どこかでつまずいたまま進んでいくと、その先の理解をストップさせてしまいます。ひとつずつ問題をクリアしていく問題解決力を養うためにも、毎日の学習で分からないところを分かるようにしましょう。***大きくなってからでは、なかなか身につかない勉強の習慣。低学年のうちにしっかり身につけるには、お父さんやお母さんがお子さんの横で勉強を見届け、頑張っている姿を認めて褒めてあげると効果的です。しばらく時間はかかるかもしれませんが、親御さんの声かけで子どもは自分に自信がつき、学年が上がってからも机に向かうようになりますよ。(参考)文部科学省|平成29年改訂小学校学習指導要領浜学園教育情報TIPS|小学校低学年から身につけたい学習方法浜学園教育情報TIPS|高学年の成績に直結!低学年のうちに最低限 身につけたいこと【算数編】ベネッセ教育情報サイト|元小学校教員が語る!低学年のご家庭でやっておきたい3つのことって?
2019年05月03日子どものさまざまな能力には、身体だけでなく脳が関係していることが知られています。そのため、昨今では脳を育てることに注目が集まっています。しかし、具体的にはどんなことをすればいいのでしょうか?今回は、脳を育てることの重要性や、そのためのポイントについてご紹介します。「脳を育てる」ことが重要すぎるワケ脳を育てることは、子どもが心身ともに健康に成長していくことや、社会性や学力の向上に大きくつながっています。脳の中でも、子どもの成長に特に影響を及ぼす部位は、脳幹、大脳新皮質、前頭葉、シナプスの4つです。脳幹は、中枢神経系を構成する重要な部位が集まる器官です。睡眠欲や食欲、呼吸など人間が生きていくために必要な機能を担っており、情緒面にも影響しています。五感からの刺激によって、特に2~6歳の時期に大きく育つのだそう。大脳新皮質は、言語能力や手指を使った細かい動きなどの機能を担っており、親からの言葉や仕草から刺激を受けています。前頭葉は記憶力や集中力、論理的思考などの機能を司り、心の状態にも大きくかかわっている部分です。運動やコミュニケーションなどで活性化するといわれています。シナプスは、脳の中にある神経細胞同士のつながりのことです。神経細胞同士がうまくつながると、脳がよく働きます。シナプスは会話やスキンシップによって増えていくものです。これらの部分を育てることで、子どもが生きていくうえで欠かせないさまざまな力が身につくのです。健康体、ストレスフリー、チャレンジ精神……。脳が育つとメリットだらけ!脳が育つと、以下のようなメリットがあります。・規則正しい生活が送れるようになる脳が育っていくことで、体内時計がしっかり働くようになるため、朝は自然に目が覚めて活動的になり、夜は自然に眠くなってぐっすり寝ることができるようになります。よって、健康体になっていきます。・自分の気持ちをコントロールできるようになる脳の中でも、前頭葉がしっかりと育つと、自分の気持ちをコントロールできるようになります。そのため、嫌なことがあっても気持ちを切り替えることができたり、不安になった時にも解決策を探して安心できたりと精神が安定するのだそう。さらには、自分の気持ちをしっかりと相手に伝えられるため、ストレスを溜めにくくなります。・好奇心旺盛になるシナプスが増えて脳が発達していくと、好奇心旺盛になり、運動や勉強など何事にもチャレンジできるようになります。そして新しい刺激をたくさん受けることによって、さらに脳が活性化されるという好循環につながるのです。「脳を育てる」ために、すぐにでも始めたい5つの習慣子どもの脳を育てるために、以下の事柄を始めてみませんか?・朝型の生活をする朝は、睡眠によって脳内のシナプスが整理された状態となっており、脳を育てるのに適したタイミングです。親子で早起きして、運動や散歩をしたり、ゆっくりと朝ご飯を食べながら会話を楽しんだりすることは、脳を育てるのに有効です。ぜひ習慣にしましょう。・会話に具体性を取り入れる子どもの言葉や表現を引き出すために、会話の中で具体性を意識することも脳を育てるのに役立ちます。例えば友だちと遊んだ後は「楽しかった?」だけでなく、「どんなことをして遊んだの?」「その時、〇〇ちゃんはなんて言ってたの?」などと、より具体性のある質問を投げかけましょう。記憶を辿ったり、表現を考えたりしながら話すことで、子どもの脳が刺激されます。・食事中はテレビをつけない食事は、料理のにおいや味、色合いや温度などで、あらゆる五感が刺激されるため、脳を育てるのに欠かせません。しかし、その際にテレビをつけてしまうと、五感からの刺激がなくなってしまいます。食事中はテレビを消すルールを作りましょう。・魚料理を定期的に出す魚の脂に含まれているDHA(ドコサヘキサエン酸)は、脳の神経細胞の主な成分でもあり、脳の働きを高めるといわれています。ぜひ普段の食卓に魚料理を取り入れましょう。時間がない時には缶詰やフレークなどを使うのもおすすめです。・ピアノなどの楽器を演奏させるアメリカのバーモント大学で行なわれた200人超の子どもを対象にした調査では、楽器を演奏することによって脳の運動機能を司る部分が活性化することがわかりました。また、音を司る脳の領域と言語を司る脳の領域は非常に近いため、楽器を演奏することは言語能力の発達や外国語の習得にも役立つといわれています。***子どもの脳を育てる工夫を行なうことで、親の脳の活性化にもつながる場合がたくさんあります。ぜひ親子で脳を活性化させていきたいですね。文/田口るい(参考)こどもまなび☆ラボ|“親の愛情” で子どもの海馬が大きくなる!?子どもの脳を育てる5つのヒントPHPファミリー|6歳までが勝負です!才能の芽がグングン育つ「脳の鍛え方」日経DUAL|脳科学者が教える「努力する子を育てる10カ条」ダ・ヴィンチニュース|一番最初に始める習い事のおすすめは? 脳科学で解明する賢い子の育て方マイナビニュース|脳を育てる食事ってどんなもの? 子どもの成功を支える食生活の秘訣
2019年05月02日共働きやひとり親、専業主婦…それぞれの家庭の状況によって子どもの預け先を決めますよね。現在、子どもを預ける場所と言えば幼稚園、保育園、子ども園と3つ。選択肢が広がったからこそ、うちの家庭状況ではどこに入れるのが良いのか迷ってしまいます。では、それぞれのメリット・デメリットを挙げ、どこに入れるのが最適か、考えていきましょう。幼稚園幼稚園は3歳~小学校就学前の幼児が対象。親が働いている、働いていないなどは関係なく、この年齢に達したすべての幼児が申し込みできます。【メリット】・親子の時間が長くとれる・座って先生の話を聞く姿勢が就学前からできあがる・制服がある(制服が無くても制帽や通園バッグが指定のものの場合もある)【デメリット】・フルタイムで働いている親は預けにくい(追加での料金支払いで延長保育が可能)・食べ物の好き嫌いが直らない降園時間が早い幼稚園では、親子の時間が長くとれる一方、フルタイムで働く親にとっては預け先に困ることがありますね。延長保育を頼んだらその分だけ毎月の支出が増えるため、結局「なんのために働いているのか」状態に陥りやすいという難点もあります。また、給食ではなくお弁当を持参での昼食の幼稚園は多いので、どうしても子どもの好きなものしか入れず、結局好き嫌いが直せなくて給食が苦手になったという人もいるようです。ちなみに、管轄としては文部科学省となっており、教育という視点で児童に対しカリキュラムが組まれています。保育園保育園は、0歳~就学前までの乳幼児が対象。条件としては、共働きかひとり親、親が病気により十分な保育を行えない場合に申し込みができます。【メリット】・保育時間が長い・給食とおやつがある・園によって0歳児から保育を受けられる【デメリット】・親子の時間が短くなりがち・制服がない・習い事をさせる時間があまりない保育園は朝から夜まで保育してくれることから、フルタイムで仕事をしている親にとってはとてもありがたいですよね。また、0歳児から保育を受けられるというのも、女性が社会復帰するには嬉しいですね。ただ、0歳児枠はどの園でもいっぱいということが多いので、タイミング良く入れるかどうかにもかかっているといえます。給食やおやつも保育園でしてくれるので、栄養面でも安心です。ただ、保育時間が長いことで親子の時間は短いところはネック。それは、仕事と子どもとの時間のバランスを調整していき、親子で過ごす家での時間をより充実させたいところですね。幼稚園と違って保育園は厚生労働省の管轄となっており、保育という観点で児童に接してくれています。こども園こども園とは、幼稚園と保育園が一環となった保育施設。0歳児からは保育園同様、満3歳以上からは午前中は幼稚園と同様の教育が受けられ、午後の午睡からは保育園のように保育が受けられるシステムです。通常の保育時間だけ利用する場合は「1号認定」、親が働いていて満3歳児以上の場合は「2号認定」、親が働いていて満3歳児未満であれば「3号認定」です。パートタイムでも、働いていたら2号認定?という声が聞こえてきそうですが、あくまでも通常の保育時間だけ利用するという場合は「1号認定」を受けることができます。【メリット】・幼稚園の学習と、保育園の保育、どちらも受けることができる・0歳時~就学前の幼児がいるため、集団行動が自然と身に着く・入園していなくても、一時保育が利用できる【デメリット】・共働きやひとり親家庭の入園が優先される・こども園の幼稚園部分によって、フルタイムの親が行事に参加できない可能性がある・送迎時間が他の家庭と異なり交流が少ない・教材費がかかり毎月の費用が割り高になる傾向がある入園していなくても一時保育が利用できるというのはとてもありがたいですね。また、幼稚園と保育園のいいとこどりというのも、なんとなく得した気分。とはいえ、参観日などは1号・2号認定であれば平日、3号認定は日曜日にするという幼稚園もあるため、その辺の確認は必要ですね。いかがでしたか?幼稚園も保育園もこども園も、それぞれのデメリットを考えれば自分の家庭に合った場所が見つかるはずです。また、その園内の雰囲気も、重要な選択要素。焦らずゆっくり子どもに合う場所を探してあげましょう。
2019年05月01日『触って感じて想像する美術遊びをしよう!家にある素材ですぐできる「コラージュ」』では、雑誌やチラシの切り抜きを使ったコラージュ、家にある素材で簡単にできるコラージュをご紹介しました。今回はちょっとステップアップ編。絵具やクレヨンを使ってみましょう。そして、この世に一冊だけの手作りコラージュ絵本を作ってみませんか?文・作品提供/芸術による教育の会講師後藤和人色の変化や組み合わせを楽しむ「コラージュ」「コラージュ」には、写真や異素材を使って貼り合わせていく方法がありましたね。さて、今回は「素材」から作りますよ。年長さんや小学生以上の子どもたちが楽しめる内容ですので、ぜひ汚れてもいい服装で挑戦してみてくださいね!まず、素材制作の過程では、色の変化や模様を描く事にフォーカスします。猫や犬、車など、意味のある形を描くのではなく、クレヨンの線と絵の具の色の組み合わせでできる模様を楽しむのです。複雑に絡み合ったクレヨンと絵の具の組み合わせは、いつものお絵かきでは表現できないテクスチャー。そんな、いつもとひと味違う素材を使って、世界にひとつだけの作品を作ります。子どもたちは目をキラキラさせながら作業をするでしょう。できた素材は、ハサミで必要な形に切って、それぞれを好きなように組み合わせていきます。頭は黄色、胴体は紫など、この工程では形を意識し、イメージにあった色合いの素材を選びながら作品を仕上げていきましょう。<材料>・画用紙、新聞紙、色紙、包装紙などの紙類※それぞれの紙はハガキサイズ程度に切っておくと便利です・水彩絵の具、クレヨン、カラーペン、墨など・ハサミ・のり・ラミネートフィルム(なくても良い)<コラージュのやり方>①ハガキサイズに切ってある紙にクレヨンで模様を描いていきます。何かを描くというより、線や模様を楽しめると良いです。②クレヨンの上を絵の具で着色していきます。クレヨンの線がはじく程度の濃さで絵の具を塗ると、綺麗に模様ができます。③①と②を繰り返し、できるだけ多くの素材を作りましょう。④作った素材を切って、のりで貼りながら制作をしましょう。白い紙を貼って「目」を入れても◎です。⑤完成した作品はラミネート加工をしてみてはいかがでしょうか(手貼りのラミネートフィルムもあります)。ラミネートがない場合は、画用紙などの台紙に貼り付けても素敵ですよ。唯一無二の「名作コラージュ絵本」を完成させよう!さあ、次はいよいよコラージュで絵本を作ってみましょう!『はらぺこあおむし』などの作品で知られるエリック・カールや、独特の世界観を持つ『わたしの家』の作者、クラウディア・レニャッツィなど、コラージュを使った絵本はたくさん出版されています。表現に奥行のあるコラージュの絵本は、ほかの絵本とはまた違った魅力がありますよね。そんなコラージュ絵本を作るのですが、今回は少し小さな「手のひらサイズの絵本」です。子どもたちは、想像力をかき立てながらストーリーをどんどん作っていくはず。子どもによっては、絵本のストーリーに一貫性がないこともあります。でも、それはただの “大人の感覚”。その子にとっては、頭の中のイメージをぎゅっと詰めこんだ作品なのです。できた絵本がハチャメチャな内容でも、ぜひ楽しんであげてください。<コラージュ絵本の作り方>①八つ切りまたはB4サイズ画用紙を縦長半分に切ります。②切った画用紙を半分に折り、2枚の画用紙を重ねると冊子状になります。画用紙の折り目を紐で縛るとページがバラバラになりません。③まずは表紙をコラージュで作ってみましょう。最初からどんなストーリーにするか決める必要はありません。楽しく表紙を作ることが大事なのです。④冊子を開いて中のページにもどんどん制作をしていきましょう。コラージュにカラーペンなどで文字や細かい部分を描き足していきましょう。⑤絵本のページが足りなくなった場合は、①に戻ってページを付け足してください。⑥完成した絵本をみんなに見せてあげましょう!今回のコラージュ制作は、「色や模様にフォーカスする工程」「形の組み合わせにフォーカスする工程」があります。それぞれにフォーカスするテーマがあるので、子どもたちにとって、どちらの制作も集中しやすいと思います。また、できた作品もいつもの作風とは違うことが多いので、子ども自身が自分の新たな才能に気づくこともあるでしょう。お父さんやおじいちゃん、おばあちゃん、たくさんの人に「名作絵本」をお披露目してあげてくださいね!【プロフィール】芸術による教育の会(げいじゅつによるきょういくのかい)東京、神奈川、埼玉、千葉、インターネット上に約100教室の美術教室を運営。在籍生徒数約3800人。「世界の子どもたちとアートを通してつながりたい!」を将来のビジョンとし、言葉の壁をアートで乗り越えた未来を目指しています。■芸術による教育の会ホームページ「芸術による教育の会」は、5つの事業と60年以上の実績をもとに美術を通して、子どもたちの成長に寄り添います。■お家でビジュツ!動画で学べる!作品を掲載できる!どこでもアート!!「びじゅつでつながろうどこでもアートきっず」・インターネット美術教室なので、自宅でレッスンが受けられます。必要な教材は発送します。・お子さまに合わせたカリキュラムを作成し、個性を引き出して伸ばします。・それぞれの成長段階や個性に合わせた技術指導を行います。・YouTubeの動画もあるよ。いろんな工作動画を見て下さい。どこでもアート公式チャンネルはこちら
2019年05月01日ヘヴィ・メタル(以下、メタル)と聞いて、みなさんはどんな印象を持ちますか?ただ叫ぶだけの音楽?不良が聴くような音楽?そのように、一般的には悪いイメージを持たれるメタルですが、脳科学者の中野信子さんは中学生のころから一貫してメタルを愛聴してきたといいます。そして、むしろ思春期の子どもには、メタルは「心にも頭にも良いかもしれない」と提案します。2019年1月には、メタルが脳に及ぼすポジティブな影響を考察した『メタル脳 天才は残酷な音楽を好む』(KADOKAWA)を上梓した同氏に、メタルを聴くと本当に「心が整うのか」「頭が良くなるのか」を聞きました。構成/岩川悟(slipstream)取材・文/辻本圭介写真/櫻井健司(インタビューカットのみ)子どもにクラシック音楽を聴かせると頭が良くなる?書店の児童書売り場に行くと、クラシック音楽の「効能」を謳う本や教材がたくさん並んでいます。「クラシックを聴くと情動が落ち着いた子に育つ」「子どもの頭に良い影響がある」……。そんな「クラシック信仰」とでもいうべき見方が、世の中には根強く存在しています。幼い子どものころにモーツァルトを聴かせると頭が良い子に育つという、いわゆる「モーツァルト効果」を頭から信じ込み子どもに聴かせる親もいまだに多いようです。わたしは、こうしたことを「ちょっと問題がある行動では?」と感じています。子どもにクラシックをすすめることにどのような背景があり、聴くと具体的にどんな効果が見込めるのかを理解してすすめるなら問題ないのですが、「うちは落ち着きがないから、なんとか模範的な子どもに育ってほしい」と願って押しつけるような親には、疑問を抱かざるを得ません。「モーツァルト効果」が広まったのは、1993年に『Nature』に掲載された「モーツァルトを聴かせたら大学生の認知力テストの成績が上がった」とする研究報告がきっかけです。「モーツァルトを聴くだけで頭が良くなる」という方法は、子どもの教育に悩む親が欲していた手軽な解決策であり、また「そうであってほしい」と願っていた結果でもあったので、発表されるとまたたく間に全世界に広まりました。「モーツァルト効果」 が存在しないのは研究者のなかでは常識しかし、その6年後、心理学の専門誌『Psychological Science』に掲載された論文によって、その研究結果は再現性がないとして否定されます(※1)。「モーツァルト効果」が、「アーティファクト(人工的に出てきた結果)」であることがあきらかになったのです。「アーティファクト」といっても、けっして悪意のある捏造などではなく、おそらく最初の研究者は、「モーツァルトを聴くと頭が良くなるはずだ」と思い込んで研究したのでしょう。すると、一般的な科学実験でも起こることですが、真実の効果ではなく「研究者が見たいと思う効果」が見えてしまうことがあるのです。つまり、「モーツァルト効果がある」と仮定して実験していると、それを補強するデータだけを拾ってしまう現象が起きるのです。さらに、ハーバード大学のクリストファー・チャベス氏をはじめ、そのほかの研究者たちもモーツァルト効果を否定する論文を発表し(※2)、現在では「モーツァルト効果」など存在しないことは研究者のあいだでは「常識」となっています。でも、古い研究しかご存じない方や、「モーツァルト効果」を謳ったビジネスを展開されている先生たちは、現在でもそうした主張を繰り返している可能性があります。そして、子どもの行いが悪くて勉強もしないといった理由からか、せめて音楽はクラシックのような「良い音楽」を聴かせたいと考える親がいます。子を思う親の純粋な気持ちが謎のビジネスの資金源にされていることを思うと、なんとも残念でなりません。メタルで「不安傾向」を埋めると、「頭が良くなる」可能性が高いそこで、根拠のない「モーツァルト効果」がいまだ音楽産業や教育産業のPR・マーケティングとして使われ続けている現状を見て、わたしは「むしろメタルのほうが、ある思春期の子どもたちには良い効果があるのでは?」と考えるようになりました。もちろん、これもあくまで推論ですが、ある程度のレベル以上の成績優秀者に限っていうと、メタルを聴いている子どものほうがより「頭が良くなる」と考えることができるからです。というのも、成績が良い子というのはちょっと先生に怒られたり、ちいさなミスを犯したりしただけで、「もっと悪いことが起きるかも……」と不安に感じてしまうような不安傾向が高い子どもが多いから。脳科学的にいうと、心のバランスを取る役割を持つホルモンである「セロトニン」があまり出ないような脳の持ち主です。そんな子どもは、勉強においても「ここが悪かったんだ」「次は良くしなきゃ」というように、自分に対してネガティブなフィードバックをする傾向にあります。まさに、それゆえに成績が良くなる面があるのですが、この高すぎる不安傾向をメタルがうまく埋めてくれることで実力を発揮しやすくなったという報告があるのです。ちなみに、不安傾向の高さと成績の良さの関連性も、推論の域を出ないものではありますが、ペーパーテストについていえば、90点で満足する子どもと90点しか取れなかったと悲観する子どもでは、どちらのほうがより成績が伸びるかという単純な比較はできそうです。「なぜまちがったのだろう?」「次は絶対失敗しないぞ!」と思って繰り返し勉強を続ける子どものほうが、モチベーションとしても成績は上がりやすいと推測できるでしょう。激しい音楽を聴きながら手術に臨む外科医たち世間一般的に成績優秀者と認められている医師たちが、じつは手術中に流す音楽は「ハードな音楽がもっとも多い」という面白い調査もあります。この調査ではメタルは広義のロックに含みますが、音楽のストリーミング配信サービス『Spotify』と医師向けInstagram『Figure 1』がアメリカの医師をリサーチしたところ、90%の外科医が手術中に音楽を流していると答え、もっとも人気なジャンルはロックだったのです(49%)。49%という数字は、単なる偶然の一致とはいえない数字ですよね?なかでも、メタリカやレッド・ツェッペリンなどの人気が高く、ある医師は「ロックを流すと快適になり、患者に集中できる」とコメントしたほどです(※3)。わたしたちは、手術室は無音、もしくは音楽をかけていたとしてもクラシックやヒーリングミュージックが流れている程度だと想像しがちです。しかし実情は、激しい音楽を聴きながら手術に臨んでいる医師がもっとも多かったのです。医師は若いころは当然成績優秀者であったはずで、そのころに激しい音楽を聴いて不安が解消された情動の記憶を持っている人が多いのでは?とわたしは推測しています。もちろん、手術室に「ぶち壊せ!」と叫ぶこともある音楽が流れているとなると、歌詞ではなくリズムに乗って集中していると思いたいですけどね……(笑)。ストレス耐性を上げて、不安を直視する力をメタルが与えてくれるふだんの学校での勉強や近い将来に控えた受験などを心配して、不安に感じない子どもは少ないでしょう。ただ、不安傾向が高すぎると、「学校や社会から疎外されている」と感じたり、「大事なときに本来の力が出せない」という実行面で影響が出たりすることもあり、その心理的ブレーキをやわらげてくれるなにかが必要になります。不安がパフォーマンスを左右することについては、2011年にシカゴ大学の心理学者シアン・ベイロック氏らが実験を行い、「試験についての不安を試験直前に書き出すことで、成績が向上する」という実験結果を発表しました(※4)。簡単に内容をまとめると、学生をふたつのグループにわけて2回の試験を受けさせて、1回目と2回目の成績を比べました。このとき、まず2回目の試験前に重要な試験であることを伝えてプレッシャーを与えます。そのうえで、片方のグループには10分間時間をとって「試験について不安なこと」を書き出させ、もう一方のグループはただ静かに座らせました。すると、不安を書き出したグループのほうが、1回目のテストより正答率が5%向上し、もう一方のグループは正答率が12%も下がったというのです。つまり、この実験で見えてくるのは、不安をうまく扱うためには、むしろ「不安を直視したほうが良い」ということ。そこでわたしは、子どもに不安を直視させるためにもメタルが役に立つのではないかと考えています。なぜなら、メタルの歌詞や破壊的な音を聴くことで、「自分と同じようなストレスや疎外感を持って生きている人がいるんだ」というメッセージを音楽から得て、一時的にストレスを軽減する効果があると推察しているからです。さらに、イギリスのウォーリック大学の研究チームが成績の優秀な学生を選んでメタルに関する調査を実施したところ、メタルにはストレス発散や欲求不満の解消に役立つ効果が認められました(※5)。成績優秀であることは、自分自身への期待に加え、まわりからの期待によって大きなプレッシャーを抱える場合があります。しかしメタルを聴くことでそんなプレッシャーを一時的に忘れ去り、ストレス耐性を上げる可能性が言及されたのです。「良い子にならなきゃ」というプレッシャーが、子どもの才能を潰すこのようなことからも、「子どもにメタルなんか聴かせるのは良くない!」といった意見が、いかにステレオタイプな見方であるかがおわかりになるはずです。別に成績優秀者に限らず、思春期の子どもはストレスを感じやすい存在です。そんな子どもが、自分自身を過度な不安傾向から守り、「ここぞ!」というときに力を発揮するには、「メタルも役立つかもしれないな」という認識を新たに持っていただけると良いと思いますね。どれだけ美しいクラシックでも、励ましのメッセージが詰まった音楽でも、そんな音楽をきれいごとに感じる子どもにとっては、「ウソをつけ!」となって逆効果です。むしろ、不安傾向が高い子どもには、「現実に向き合え!」「騙されるな!」と歌ってもらったほうが、「うんうん、そうだよな」と納得できることもあります。「世界は残酷で噓だらけの場所なのだ」とあらかじめ認識しておくことで、心の安定に寄与することがあるというのがわたしの考えであり、また偽らざる実感でもあるのです。たしかに、メタルという音楽ジャンルは一般的なイメージこそ良くないかもしれません。でも、「イメージが良くない」ことが大事なのです。「良い子にならなきゃ」という不安やプレッシャーが、子どもたちの成績を落とし、才能を潰します。ノーベル賞を受賞した科学者たちは、ほぼみんな「好きなことをやれ」といっています。むしろ、親のいうことに従ってしまう子どものほうが怖いかもしれない。「うん、わかった」といいながら、とんでもないことする子どもだっているのですから。そこで親は、「清濁併せ呑む」度量を持っていることを示したほうが良いのだと思います。そして、子どもに無条件の愛情を与える。たとえば、成績が良いときはほめて甘やかすのに、落ちたらものすごく叱ったり、「おまえの味方だ」といいながら子どもが悪いことをしたら責めるだけだったりすると、子どもはとても混乱します。「悪いことをしたけど、おまえを信じている」というのが無条件の愛情であり、存在を受け入れるということ。子どもが安定した愛着を築いていくためにも、親は「悪いところも良いところも受け入れる」という真の愛情を示すことが必要なのだと思います。※1:『The Mystery of the Mozart Effect: Failure to Replicate』 July 1,1999, Psychological Science, Kenneth M. Steele, Karen E Bass, Melissa D. Crook※2:『Muting the Mozart effect』Dec 11,2013, The Harvard Gazette※3:Spotify and Figure 1 team up to hear what surgeons are playing in the OR, Figure1※4:Writing about worries eases anxiety and improves test performance, Jan 13,2011, uchicago news※5:『Gifted Students Beat the Blues With Heavy Metal』 March 19,2007, University of Warwick, Stuart Cadwallader and Professor Jim Campbell『メタル脳 天才は残酷な音楽を好む』中野信子 著/KADOKAWA(2019)【プロフィール】中野信子(なかの・のぶこ)脳科学者、医学博士、認知科学者。東日本国際大学特任教授。1975年生まれ。東京大学工学部応用化学科卒業、同大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。2008年から2010年まで、フランス国立研究所ニューロスピン(高磁場MRI研究センター)に勤務。脳科学、認知科学の最先端の研究業績を一般向けにわかりやすく紹介することで定評がある。コメンテーターとしてテレビ番組に出演する傍ら、ベストセラーも多数。近著に『サイコパス』(文春新書)、『あの人の心を見抜く脳科学の言葉』(セブン&アイ出版)、『ヒトは「いじめ」をやめられない』(小学館新書)、『不倫』(文藝春秋)などがある。
2019年04月30日炊き込みごはんを作ったときのこと。5歳の息子が「今日のごはん、おいしくない!」と言ってきました。「せっかく作ったのに悲しいよ~」と私が泣きマネをしたところ、2歳の娘が思いがけない言葉を発してきたほっこりエピソードをお伝えします。 「ごはん、おいしくない!」と言われてショック根菜や野菜類が苦手な子どもたち。どう調理したらおいしく食べられるのか、私は毎日、試行錯誤をして食事を作っていました。 ごぼうを細かく刻んだ炊き込みごはんを作ったときのこと。5歳の息子が「おいしくない!」と言ってきました。食べやすいよう工夫して作ったのに……。地味にショックを受けますよね。そこで私は「せっかく作ったのに悲しいよ、えーん」なんて言いながら泣きマネをしてみたんです。すると隣にいた2歳の娘が思いがけない言葉を発したんです。 ウソ泣きのはずが、本物の涙に娘はママが泣いている、悲しそうと思ったのでしょう。「ママ、おいしいよ!」と言ってきたんです。そして苦手なはずのごぼうを口に入れています。さらに「ママ、泣かないで」と。 その瞬間、ウソ泣きをしていたはずなのに、本物の涙が溢れてきました。人を思いやる気持ちが育っているんだなと感じた瞬間でした。ほうれん草の和え物もペロリ。そんな光景を見た息子も「やっぱりおいしいよ」と言って、食べ始めてくれました。 子どもたちのやさしさがうれしいごはんを食べなかったらママが悲しむ。そう思うと子どもたちは食べてくれるのかもしれません。それ以来、子どもたちの食事が進まないときは、「食べてくれないとママ悲しいな」と気持ちを伝えると、頑張って食べてくれることが増えました。 また、お菓子が人数分ないとき、私が食べずにいると「ママどうぞ!」と半分くれることも。子どもたちのやさしさが垣間見え、とってもうれしくなりました。 苦手なものを無理に食べさせなくてもいい、楽しく食事ができればいいなど、食の意見はさまざま。私はできることならいろいろな食材を食べてもらいたいなと思っています。みなさんはご家庭で心がけている食事の工夫はありますか?著者:田中由惟一男一女の母。二人目の出産を機に食品会社を退職。現在は子育てのかたわら、記事執筆をおこなう。趣味はスポーツとピアノ、美味しいものを食べること。
2019年04月29日先行きが見えないといわれるいまの時代に子育てをしていると、親はこれまで以上に子どもの将来を心配しているかもしれません。そのため、親の注目を集める新しい教育手法が次々に生まれています。アクティブ・ラーニングやプレイフル・ラーニングと呼ばれるものもそれらのひとつです。人の学習について研究をしている慶應義塾大学環境情報学部教授の今井むつみ先生に、アクティブ・ラーニングやプレイフル・ラーニングの要素を家庭教育に取り入れるためのアドバイスをしてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)学びは夢中になる行為の副産物皆さんは、人がいちばん学べるときはどんなときだと思いますか?それは、自分で「楽しい」と感じていて、それをもっと「知りたい」「やりたい」と思っているときです。もしかしたら、本人は学んでいるつもりがないかもしれません。でも、楽しくて夢中になる行為の副産物として「学び」が残るのです。そういう過程で得た学びがいちばん深く定着する学びになるという考えから、いま教育界には「プレイフル・ラーニング」というものが広まりつつあります。簡単にいえば、遊びと学びが連動していて、「遊びながら学ぶ」というものです。遊びというと、たとえばアウトドアで体を動かすような遊びなどをイメージしがちだと思いますが、じつは学校での授業も内容によってはプレイフル・ラーニングと呼べるものになり得ます。本当に生き生きしている学級では、学び自体が完全に楽しく、ワクワクするものになっているのです。その内容は、先生が睡眠時間を惜しんでひたすら考えてお膳立てをしたというようなものではありません。大切なのは、子どもになにをしたいのかを尋ねて子どもに決めさせること。同じものを学ぶにしても、子どもに主体を持たせるというわけですね。知識は他人が入れようとして入るものではないこれまでの教育のほとんどは、学習指導要領をいかに解釈して、どれだけ効率的に子どものなかに知識を入れられるかという視点でおこなわれていました。そして、そういった授業こそがいいものとして評価されてきたのです。でも、じつは、「生きた知識」は外から「入れ込む」ことはできないものです。とくに、子どもが興味を持っていないことに関しては、外から入れようと一生懸命に教師が頑張っても、それは子どもを素通りしてしまいます。多くの人が、なにかをわかりやすく説明してもらえればすべて理解できると考えます。でも、人がどのように情報処理をするかという観点から考えると、どんなにわかりやすく説明されたとしても、10の内容のうち3くらいが記憶に残れば上出来だといえます。なぜなら、人間の注意や記憶に限界があるからです。説明された直後は、誰もがすべて理解できたつもりになります。でも、10の内容すべてに注意を向けて、そこで得た内容がこれまでの知識と結びつき、10の内容すべてがずっと残るということはあり得ないのです。でも、自分が興味を持っていることなら話は別。自分が主体的に働きかけて疑問に思ったこと、知りたいと思って調べたり聞いたりして発見したことは確実に残っていきます。そういう学びこそ、プレイフル・ラーニングなのです。重要なのは形式ではなく学び手の主体的な行為子ども教育に興味がある人なら、「アクティブ・ラーニング」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。一般的には、議論形式やグループ形式の学習方法を指すことが多いものです。でも、アクティブ・ラーニングは、特定の学習形式を指すものではないとわたしは考えています。座学形式ではなく、グループでわいわいと勉強すればアクティブ・ラーニングになるわけではありません。アクティブ・ラーニングとは、子どもたちに知識を入れるのではなく、子どもたち自身が主体的に知識を得ようとする学習のこと。無理やりグループ形式の学習を押しつければ、子どもがアクティブになるのでしょうか?一方、子どもたちが主体的となり「自ら学ぼう」という姿勢を持てば、これまでと変わらない座学形式であっても、それはアクティブ・ラーニングといえます。そういう学びこそが、本当に実社会で役立つ「生きた知識」を生んでいくのです。もちろん、アクティブ・ラーニングと同様に、プレイフル・ラーニングもある形式を指すものではありません。ダンスや体操を通じて学ぶというプレイフル・ラーニングも存在しますが、子どもが興味を持っていないのに、大人が設定した場に子どもを押し込んでも、プレイフルではないのです。逆に、はたから見れば遊んでいるようには見えなくても、子ども本人が楽しんでいれば、その学びはプレイフル・ラーニングといえます。アクティブ・ラーニングもプレイフル・ラーニングも、学び手の能動的な行為によって定義づけられるものなのです。ここまでの話を聞くと、「子どもがあまり興味を持っていないのに、親が家庭教育をすることにもあまり意味がないのではないか?」と考える人もいるかもしれません。でも、そこであまり難しく考えてほしくはありません。家庭での教育をアクティブでプレイフルなものにすることはそう難しいことではないからです。親が子どもと一緒に遊びながら学ぶ。それがいちばんの方法です。子どもは、無条件にお父さんやお母さんのことが大好き。そんな大好きな親となにかを一緒にすることがいちばんうれしく、ワクワクしながら多くのことを学ぶことができます。家庭で学ぶものは、子どもが興味を持っているものならどんなものでもかまいません。昆虫かもしれないし、怪獣かもしれない。子どもが大好きなものなら、それについてお父さんやお母さんが、逆に教えられてしまうなんてこともあるはずです。そんな時間は、子どもにとっては本当にうれしいもの。そして、「学ぶよろこび」を得ることにも大きくつながっていくのです。『科学が教える、子育て成功への道』キャシー・ハーシュ=パセック、ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ 著今井むつみ、市川力 翻訳/扶桑社(2017)■ 慶應義塾大学環境情報学部教授・今井むつみ先生 インタビュー一覧第1回:我が子の「成功」を願う親が、絶対に伸ばしてやるべき子どもの“力”第2回:小さな子どもが喜ぶ「デジタル絵本」に、実は“学びの効果”は期待できない第3回:「コミュニケーション能力を重視しすぎ」な親が、犯しかねない過ちとは第4回:家庭での学びが「アクティブ」で「プレイフル」になる、いちばんの方法【プロフィール】今井むつみ(いまい・むつみ)慶應義塾大学文学部西洋史学科卒、慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了、ノースウェスタン大学心理学部博士課程修了。1993年より慶應義塾大学環境情報学部助手。専任講師、助教授を経て2007年より教授。専門は認知・言語発達心理学、言語心理学。とくに語彙(レキシコン)と語意の心のなかの表象と習得・学習のメカニズムを研究している。著書に『学びとは何か――<探求人>になるために』(岩波書店)、『言葉をおぼえるしくみ 母語から外国語まで』(筑摩書房)、『ことばの発達の謎を解く』(筑摩書房)など。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年04月29日ガミガミいわず、いつも子どもと笑っていたい。でも親である以上「私がしっかり言い聞かせないと」と思っているママは多いですよね。私たちは、本当にしつけをしなければならないのでしょうか?最終回となる今回は子育てにありがちなシチュエーション別の対応を『 今日からしつけをやめてみた 』(主婦の友社)を監修された柴田愛子先生にうかがいました。お話をうかがったのは…「りんごの木 子どもクラブ」代表 柴田愛子先生「子どもの心により添う保育」をモットーにした「 りんごの木 子どもクラブ 」代表。絵本作家。 保育者。育児書の執筆、雑誌への寄稿だけでなく全国で保育者向けセミナーや母親向け講演会をおこない支持を得る。NHK『すくすく子育て』出演。園で行っている「子ども達のミーティング」はテレビ・映画で取り上げられ「子どもの力を最大限に引き出している」と話題に。■場面その1:おはよう、バイバイなどのあいさつをしない――先生、今回は子育て中によくあるシチュエーション別に、ママの対処法をお聞きしたいと思っています。最初の事例は「あいさつ」です。「おはよう」や「バイバイ」がいえない…と悩むお母さんは少なくありませんが、先生はどのようにお考えでしょうか?柴田愛子先生(以下、柴田先生):これはね、大人がいいたいの。だから大人がいえばいいのよ。――え、大人がいうんですか?(焦)柴田先生:そう。「〇〇ちゃん、おはよう」っていわれて、子どもが何もいわなかったらお母さんが「おはようございます!」って代わりに答えればいいの。――それでいいんですか…?柴田先生:いいと思う。親の後ろ姿を見て「こういうときは、こういうのか」って子どもは学んでいくもの。いわなくてもいいよっていうことではなくて「母は母でやらせていただきます。母のやり方で」っていうことなの。――親がお手本になる…ということですね! ちなみに、どのくらいで自らあいさつできるようになるんでしょうか?柴田先生:そうね。最初のうちはお母さんが「おはようございます!」っていっても子どもはボーッとしてる。でも、5歳の中ごろになると、親をまねて「おはようございます」っていうようになる。それまではいいんじゃない?りんごの木に子どもがやってきて、私が「おはよう!」っていうと子どもは「ふふっ」と満足そうな顔をするの。それでいいじゃないですか。――ふふって、かわいいですね(笑)。親の私たちが「あいさつ」ができた、できなかったを必要以上に気にしているだけなのかもしれませんね。柴田先生:そうね。「おはようございますは?」と子どもにいうのは、調教しているように思う。もちろん、儀式的なことを大事に考えている人もいるわね。その人はそれで良いかもしれない。でも、礼儀作法はあとでも間に合うと私は思っているの。人と人とのつながりを優先したいと思うから。■場面その2:帰ろうと声をかけても遊びが切り上げられず、泣いて暴れる――夕方、帰宅のため子どもに「帰ろう」と声をかけると「イヤだ!」「帰らない!」とごねられ、なかなか帰れない…というお悩みについてはどう思いますか?柴田先生:これは、当たり前のことだと思う。親っていうのは勝手なときがあるわね。公園でおしゃべりしていて、子どもが「帰ろうよ!」といったら「待ってて」と待たせるのに、自分の用事が終わったら「さあ、帰ろう」って。こんなときは「待っててくれてありがとね。ママの話、終わりました! じゃあ、帰ろうか」といってほしい。――確かにそうですね…!柴田先生:帰ろうっていわれて、素直に準備して帰るのは大人にゆずっているのよ。子どもに失礼なことだと思う。でも、子どもからの「帰ろう」の言葉を自然に待ってたら、夜は更けちゃうわけね…。――そのとおりです…!柴田先生:そんなときはね。「もうすぐ帰ろう」と声をかけて、遊びたい熱をさましてあげる時間をつくるの。「もうちょっとたったら帰ります」「もうすぐ帰ろう」「そろそろ行きます」「そろそろですけど…?」という感じで、4回くらい繰り返すのよ。――4回もですか…!柴田先生:場所と時間によっては大変かもしれない(笑)。3歳くらいの子だったら、20分くらい用意できるといいわね。20分たつと、子どももそろそろ意識しはじめるから。――20分かぁ…(涙)。「ごはんが食べられなくなるよ~」と声がけするのはどうでしょう?柴田先生:時間的な把握は、子どもにはまだ難しい。だから「早く帰らないとごはんが食べられなくなる」といっても「早く帰ること」と「ごはん」が結びつかずに、ピンと来ない。脅かしになってしまうの。だからとにかく「早く帰ろう」っていう気持ちにさせるしかない。「もうすぐ帰るからね。もうすぐね」「お母さん、ごはんをつくらなきゃいけないから」って少しずつプッシュする。そして最後は「さあ、帰ろう!」でいいですよ。だけど夢中になってるときに、いきなり「帰るよ!」は人さらいみたいで無謀よね。泣いて暴れるっていうのは自分の気持ちを無視されて、腹がたっているんじゃないかな。急に連れて帰ろうとするから「なんなんだ!」って抗議しているんだと思うわね。■場面その3:友だちのことを悪くいう、横柄な態度や言い方をする――私の息子がときどき、友だちのことを「バカ」とか「お前、アホだな~」とか悪くいうときがあって「そんなこといわないの」と諭すのですが、こんな場面で親はどうすべきなのでしょうか? 悪口や人を馬鹿にしたような物言いは気になってしまいます。柴田先生:そうね。これはね、人の悪口や人を馬鹿にする子に育ってほしくないという思いからよね。――そうです!柴田先生:そうよね。でもこれ、親だからいってるのかもよ?――…え?柴田先生:例えば、強い子にいばられた子は、うちに帰っていばるわね。だって自分がいばられた分、消化しなくちゃいけないから。だから外でも人のことを悪くいっているかというと、私はあまりいってないと思うのね。なぜって、気持ちを受け止めてもらったら落ち着くから。「あら~、それは嫌な子だね~」って共感してあげると子どもは落ち着くの。――嫌な気持ちを、家でリセットさせている…?柴田先生:そう。「僕は何もしていないのに、意地悪された」っていってきたら、親は「本当に何もしてないの?」とか「誰に意地悪されたの?」と追求して事実確認しようとすることが多い。事実がどうとかではなく、今この子は自分の味方が欲しいだけなのね。「そうなんだ、嫌だったね」と受け止めて欲しいと思っている。事実だけを知ろうとしてその結果「あなたが悪かったでしょ」となったら、この子の気持ちは消化できないままになってしまうのね。――子どもが外で経験したイヤなことを受け止めてあげることが大事なんですね。柴田先生:そう。「ママは僕の味方だ」と思うと、子どもは心が落ち着いて処理できる。おもしろいのはね。子どもって気持ちが落ち着いてくると「でも、○○(友だち)ってそこまで意地悪でもないんだよ」といったりするのよ(笑)。――友だちをかばいはじめる(笑)。柴田先生:そんなものなのよ。だから大人の八つ当たりと同じで、子どもなりに社会を持っているから、社会のイヤなことは全部おうちではき出させてあげましょうよ。はき出すから、また社会に出ていける。これって大人と同じだと思わない? イヤなことがあるとグチをこぼしたり、やけ食いしたり、物に当たったり、どなったりするわよね。そうすると、次の日スッキリして元気になったりする。抱えたままだと、気持ちはおさまらないと思うの。――大人と同じ…! 私も嫌なことがあった日はコンビニで高めのアイスクリームを買って、気持ちを切り替えようとします(笑)。柴田先生:子どもは「このモヤモヤを受け止めてほしい」と思っている。大事に思ってほしいのね。愛されていると確認をすることが、社会に出る元気をもらうことなのね。何歳になってもそうだと思うわよ。子どもを変えようとせずに、親である自分も穏やかに過ごせる方法を選んでいく。すると、子どもも大人も心を開きやすくなるそうです。「親も子どもも、ありのままを大事にして生きられたらいいね」という先生の言葉が心に残りました。参考図書:『 今日からしつけをやめてみた 』(主婦の友社)あらい ぴろよ (イラスト), 柴田 愛子 (監修)「小さいうちから、きちんとしつけないと…」そうしておこなわれる「しつけ」は子どもにどんな影響を与えているのか? しつけなくして、親子が笑顔になる方法はあるのか? 子どもの目に映る世界は、大人が見ている世界とは違うもの。親子でストレスの溜まる「しつけ呪縛」から解放される一冊。
2019年04月28日公共の交通機関での子連れ移動は本当に大変ですよね。「静かにできないなら、〇〇に着いても何も買ってあげないよ」「いいかげんにしなさい!」――楽しいはずのお出かけなのに、一気に不機嫌モードになってしまうこともしばしば。もう絶対にお出かけなんてするもんか!と感じることも一度や二度ではありません……。どうやら、移動中に子どもの聞き分けが悪くなるのには理由があるようですよ!■参照コラム記事はこちら↓長距離移動中に子どもの聞き分けが悪くなるのには理由があった!【年齢別 伝わる言葉かけ】
2019年04月28日電車の中でさわぐ。好き嫌いが多い。友だちと遊んでいると、すぐに手が出てしまう…。子育てをしていると「どうしたらいいのだろう」と思う場面は少なくありませんよね。しつけをしなければ…と考える前にちょっと意識してほしいのは、子どもの年齢です。それぞれの年齢で、世界はどのように見ているのか。その違いを知っておくと、伝える言葉や行動が変わってくるといいます。 前回 は、子どもを「こんな子にしたい」ではなく「そもそも、どんな子なのか知る」ことから子育ては始まり、親都合のしつけをやめてみることが第一歩であると、『 今日からしつけをやめてみた 』(主婦の友社)を監修された柴田愛子先生にうかがいました。実は、2~3歳の場合と4~5歳の場合では対処が大きく違うそうです。年齢ごとの対応に踏み込んでお話を聞きました。お話をうかがったのは…「りんごの木 子どもクラブ」代表 柴田愛子先生「子どもの心により添う保育」をモットーにした「 りんごの木 子どもクラブ 」代表。絵本作家。 保育者。育児書の執筆、雑誌への寄稿だけでなく全国で保育者向けセミナーや母親向け講演会をおこない支持を得る。NHK『すくすく子育て』出演。園で行っている「子ども達のミーティング」はテレビ・映画で取り上げられ「子どもの力を最大限に引き出している」と話題に。■「困った!」その1:公共の場でさわぐ、走る、興奮する――例えば、電車やバス、お店の中などで子どもが大きな声を出してさわいだり、走り回って困る…というお悩みがあります。できることを工夫しているママも多いかと思いますが、先生はどのようにお考えでしょうか?柴田先生:そうね。結論をいうと、2~3歳までの子どもには何をどういい聞かせてもムダだと思うの。――2~3歳は何をいってもムダ…!柴田先生:この時期、子どもは自分のことしか分かっていない。「静かにしようね」「走らないでね」といわれても分からないの。だから「さわいではいけない場所に極力連れていかない」というのがベストな対処になる。とはいっても、病院での診察や家族の都合などあって、連れていかなければならないときってあるわよね。けれど子どもを変えることはできない。だったら大人が工夫するしかないのね。――やっぱり…(涙)柴田先生:おもちゃ、絵本、食べもの。私はスマホを使うのも仕方ないと思うわ。子どもの気をそらす、ありとあらゆる道具を駆使して乗り切っちゃいましょうよ。電車に乗るときは最前部か最後部がおすすめね。この場所は、車掌さんの席や窓からの風景がよく見えるところだから、子どもの気も多少まぎれると思う。――なるほど。4~5歳くらいになると、対応はまた変わってきますか?柴田先生:4~5歳になると、周りの状況を見てだんだん自分をコントロールできるようになるから、おでかけの前に緊張感を与えてみましょう。「今から電車に乗るけど、寝ている人や疲れている人がいるの。大きな声を出すとみんな驚いちゃうからシーッね」。そして「さわいだら電車はおりるからね」と伝えます。でも悲しいことに、子どもはそんなことをすっかり忘れてさわいでしまうこともある(笑)。そんなときは、思いきって電車をおりましょう。すると、ママが電車をおりたのは、自分がさわいだからと子どもは理解します。「ママは本気だ!」と思うと、次回からの行動が少し変わっていくかもしれないわね。■「困った!」その2:いつも食事を残す、好きなものしか食べない――子どもが好きなものしか食べなかったり、残してしまったりしたとき「栄養をきちんと摂ってほしい」というもどかしさから、つい「残さず食べなさい!」「好き嫌いはダメ!」と厳しくいってしまうことがあります。こんなときはどうしたらいいでしょうか?柴田先生:そうね。子どもがごはんを食べているのを監視しているようなお母さんっているわね。でも「残さず食べよう」っていうのは、生き物の中で人間だけのこと。本来は命をつなぐために体が要求しているものだけ食べる。いわば「おなかが空いたときだけ食べる」という本能的なものを、子どもは持っているのね。2歳くらいは胃も小さくて未発達だから、おなかがすぐいっぱいになるし、すぐに空く。4~5歳になると大人の食文化が分かるようになって、ウロウロしないで食べるようになる。体の大きさに比例して食があるから、自然と食べるようになるのね。――4~5歳くらいまで待てば自然と食べるようになる?柴田先生:そう。2~3歳の本能的に生きている時期に、子に「あれもこれも食べなさい」「残さず全部食べなさい」というのは、大人の文化を押し付けていることになる、ということに気付いてほしい。食事を摂るのは、命をつなぐためよね。そして、食べることは楽しいこと。それを忘れてしまって「栄養価のあるものをバランス良く食べさせなきゃ」「せっかくつくったのにどうして食べないの?」とイライラする…。そんなの、子どももつらいけど大人もつらいわね。――先生のお話を聞くと、親と子でまったく別の次元にいるような気がしてきますね。柴田先生:親は「どうしたら子どものためになるか」を頭で一生懸命に考えている。でも、子どもは本能的に生きている。そのギャップがすごくストレスになると思うの。本能的に生きているのに、いきなり私たち大人の食文化を押し付けられた子どもは気の毒だと思わない? だから子どもを信じて、1年、2年待ってみましょうよ。――待っていても、いいんですね…!■「困った!」その3:友だちと遊んでいると、言葉より先に手が出てしまう――先生、これも聞きたいのですが息子が小さいとき、持っていたおもちゃをとられて思いきり友だちをたたいてしまったことがあったんです。しかも自分より小さい子を…。相手の子に申し訳ないのと、この子にどういえばいいんだろうという気持ちで泣きたくなりました。手が出てしまうとき、親はどう対処すれば良いのでしょうか?柴田先生:2~3歳までの子は、自分の思いを言葉で説明できないのね。だから、行動で訴える。「イヤだ」という気持ちをたたくことで伝える子もいるし、かんだり、けったり荒っぽい表現をする子もいる。その子にとってはコミュニケーションのひとつになっているの。――コミュニケーションのひとつ?柴田先生:そう。言葉で伝えられない思いを行動であらわしている。だからこの時期に「たたいちゃダメ!」と言い聞かせても、本人には分からないものなの。――では親ができることは…?柴田先生:ほかの子をたたいてしまったら、親がごめんなさいねと謝りながら「一緒に遊びたかったみたい」と子どもの気持ちを相手に伝えてみてはどうでしょう。それは、子ども同士をつなげることにもなりますよ。なかなかつらい時期かもしれないけど、4歳くらいになると言葉で気持ちが表現できるようになる、と覚えていてほしい。気持ちと行動が結びつきはじめると、たたいたり、けったりという表現がおさまってくるから。――どうして言葉で表現できるようになると、手が出なくなるんでしょう?柴田先生:「やめて」というと、相手がやめてくれることが分かってくるからね。ずっとたたいたり、けったりと乱暴な子もいるけれど、そういう子は5歳くらいでほかの友だちに敬遠されちゃうのね。遊び相手がいなくなってしまうの。そうすると本人も「これはまずいぞ」と気付いて、行動が変わってくる。暴力だけじゃ自分の思い通りにならないと悟るのね。――成長にともなって、自分で自分を変えていくんですね。柴田先生:そうね。それから言葉うんぬんではなく、手が出る子もいる。そういう子は警戒心が強くて、さびしがり屋なことが多い。何かしら満たされない思いを抱えているものだから、そんな子が暴力をふるったら、私は無条件で抱きしめてあげる。そして私が「あのおもちゃが使いたかったね。でも貸してくれなくて、くやしかったね。だからぶっちゃったんだね」とその子の気持ちを代わりに言葉にするのね。「この人は自分の気持ちを分かってくれた」という安心感は、子どもに自分の感情の出所を理解させるの。こんなにも苦しい気持ちになったのは、おもちゃを貸してもらえなかったからなんだって。子どもの手が出てしまったとき、どうしても大人は「悪いのはあなたです」と裁判官のようになっちゃう。でもそうじゃなくて「通訳」になってあげたらいいと思うわね。子どもを変えようとせずに、大人が工夫する。子どもを信じて待つ。ジャッジせず、どう感じているかを理解しようとする。先生の口からは「しつけ」という言葉が出てこないことに驚きます。「私がいわなければ…」というママのプレッシャーが少しでも軽くなるのではないでしょうか。最終回となる 次回 は、「あいさつをしない」「遊びが切り上げられなくて泣いて暴れる」など、どう対処すればいいのか悩む子育てあるあるシチュエーションでの具体的な対処法をうかがいました。参考図書:『 今日からしつけをやめてみた 』(主婦の友社)あらい ぴろよ (イラスト), 柴田 愛子 (監修)「小さいうちから、きちんとしつけないと…」そうしておこなわれる「しつけ」は子どもにどんな影響を与えているのか? しつけなくして、親子が笑顔になる方法はあるのか? 子どもの目に映る世界は、大人が見ている世界とは違うもの。親子でストレスの溜まる「しつけ呪縛」から解放される一冊。
2019年04月27日変化のスピードはどんどん増し、ほんの数年後の世界がどうなっているのかも誰にもわからない時代――。そのなかで、未来を担う子どもには「6つの力」が必要だと提唱している研究者がアメリカにいます。ただ、彼女たちの著書『科学が教える、子育て成功への道』(扶桑社)を翻訳した慶應義塾大学環境情報学部教授の今井むつみ先生は、「6つの力を伸ばすことにこだわり過ぎることも危険」とも語ります。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)子どもの成功のために必要な能力とはなにかわたしが翻訳した、『科学が教える、子育て成功への道』(扶桑社)のふたりの著者は付き合いの長い友人です。その本では、これからの時代に必要な力として「6Cs」というものを提唱しています。まずは、その6Csを順に説明していきましょう。【これからの時代に求められる「6Cs」】1.コラボレーション(Collaboration)自分をコントロールして他者とコラボレーションすることは、大人、子どもを問わず、わたしたちすべてに求められるスキルの中核であり、社会的に有能であるための基本です。2.コミュニケーション(Communication)コラボレーションを基盤にして築かれるのがコミュニケーション。コミュニケーションスキルの高さが、より健康な状態を育み、学業とかかわるスキルの高さにも関連するという研究結果もあります。3.コンテンツ(Contents)コンテンツとは知識といっていいでしょう。新しい情報に出会ったときに、どんな戦略を取ってアプローチするかという、学ぶスキルもコンテンツに含まれます。4.クリティカルシンキング(Critical Thinking)莫大な情報にさらされる時代、一歩引いて考え、なにが本当に必要かを見極めて、答える必要のある問いを選ぶ、クリティカルシンキング(批判的思考)の力を発揮できる人こそ、これからの時代において目指すべき人物像です。5.クリエイティブイノベーション(Creative Innovation)コンテンツとクリティカルシンキングをともに働かせた結果、生まれるのがクリエイティブイノベーションです。コンテンツを身につけないまま自由に発想しても、創造性は育ちません。6.コンフィデンス(Confidence)問題に直面したときに必要となるのは、すぐにあきらめることなく、自分自身の気持ちと行動をコントロールし、失敗を乗り越えようとするコンフィデンス(自信)です。いかにして「生きた知識」を得るかじつは、これら自体は新しい概念ではありません。ただ、未来を生きていく子どもが成功に至るためには、いわゆる学力と同じくらい、あるいはそれ以上に大事なものがあるとして、綺麗にまとめたことに大きな意味があります。これまで、数値化してランクづけができるハードスキルと呼ばれるものが「学力」と呼ばれてきました。一方、たとえば「他人の気持ちを推し量る」といった、「6Cs」を含むソフトスキルと呼ばれる能力は数値化することが難しいものです。学校という場所では、学力で生徒を評価します。なぜなら、数値化できるので評価しやすいからです。しかし、ハードスキルは人が成功するために必要とされるもののほんの一部に過ぎません。学力は学力テストや大学入試には使えるものです。でも、実社会に出たときの問題解決にはあまり役に立たないという側面も持っています。学力は大事なものですが、使えない知識をいくら持っていてもそれでは意味がありません。いわばそれは、「死んだ知識」です。それに対して「生きた知識」というものは、それを使うことでどんどん新しいことを学習できる知識です。たとえば、言葉の知識は「生きた知識」のとてもよい例といえます。ある言葉を知っていることで、新しく出会った言葉の意味を推論することができるからです。これはまさに、知識を使って新しい知識を生んでいるということ。そういう好循環を生むのが、「生きた知識」なのです。人が学ぶときに注意しなければならないのは、あるコンテンツのピースを単体で学ぶだけではあまり意味がないということ。それでは、単発の知識になってしまい、「使えない知識」「死んだ知識」を得るだけになるからです。そうではなくて、ある一定以上のボリュームのピースを学び、そこにある規則性などを発見していく必要があります。それは、すでに持っている知識と新たに得た知識をリンクさせるということ。それが、知識を「生きた知識」にするための鍵です。「6Cs」にこだわり過ぎることも危険?話を「6Cs」に戻しましょう。たしかに、「6Cs」はこれからの時代を生きていく子どもたちにとって大切なものです。だからといって、6つすべての能力を伸ばすということは難しいですし、完璧を目指してはいけないとも思うのです。さまざまな能力の高さには、個人によって「凸凹」があって当然です。たとえば近年、多くの人が大切だと述べているのが、コミュニケーション能力です。でも、コミュニケーションが得意な人もいれば不得意な人もいる。それはあたりまえのことです。そして、仮にコミュニケーションが苦手であっても、黙々と自分がやるべきことに打ち込んで成功している人も世のなかにはたくさんいます。コミュニケーション能力が大事とはいっても、逆に周囲をシャットアウトして自分の道を自分のスタイルで進んでいけるということも、コミュニケーション能力とは対極にある力だと思うのです。大切なのは、子どもそれぞれの個性を伸ばしてあげるということ。幼稚園にも、他の子どもとのお遊戯にはあまり興味を示さずに、ひとりで園庭に走っていって虫ばかり見ているような子どももいるかもしれません。ならば、その興味を大切にしてあげなければなりません。コミュニケーション能力が大事だからとその子を虫から無理やり引き離してしまうと、本来、伸びるはずだった力が伸びないということになりかねないからです。そういう過ちを犯さないためにも、自分の子どもはどんなことに興味を持っているのか、どんな能力が伸びそうなのかといった子どもの個性をしっかりと見てあげてほしいのです。教育という分野も研究が進み、どんどん新しい考え方が出てきます。「こういう教育が大事だ」と、主流になるようなものもあるでしょう。ただ、いくら世間一般的に重要なことだといっても、不得意なことを無理にさせることは、子どもの成長にとって決していいことではないのです。やはり重要なのは、その子の興味がどこにあるのかということ。まずはその部分を大切にしてください。『科学が教える、子育て成功への道』キャシー・ハーシュ=パセック、ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ 著今井むつみ、市川力 翻訳/扶桑社(2017)■ 慶應義塾大学環境情報学部教授・今井むつみ先生 インタビュー一覧第1回:我が子の「成功」を願う親が、絶対に伸ばしてやるべき子どもの“力”第2回:小さな子どもが喜ぶ「デジタル絵本」に、実は“学びの効果”は期待できない第3回:「コミュニケーション能力を重視しすぎ」な親が、犯しかねない過ちとは第4回:家庭での学びが「アクティブ」で「プレイフル」になる、いちばんの方法(※近日公開)【プロフィール】今井むつみ(いまい・むつみ)慶應義塾大学文学部西洋史学科卒、慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了、ノースウェスタン大学心理学部博士課程修了。1993年より慶應義塾大学環境情報学部助手。専任講師、助教授を経て2007年より教授。専門は認知・言語発達心理学、言語心理学。とくに語彙(レキシコン)と語意の心のなかの表象と習得・学習のメカニズムを研究している。著書に『学びとは何か――<探求人>になるために』(岩波書店)、『言葉をおぼえるしくみ 母語から外国語まで』(筑摩書房)、『ことばの発達の謎を解く』(筑摩書房)など。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年04月27日お行儀よくできない。友だちと仲良く遊べない。そんなわが子の様子を「私のしつけが良くないのかな…」と自分のせいにしてしまうお母さんは、とても多いように感じます。「子どものしつけは親の責任」という言葉にうなずきながらも、「そうだけど…」とどこか釈然としない気持ちになったことはありませんか?本当にしつけって必要? しつけは本当に子どものためになるの?そんな疑問を解決すべく、今回は『 今日からしつけをやめてみた 』(主婦の友社)を監修された保育のプロ・柴田愛子先生にお話をうかがってきました。お話をうかがったのは…「りんごの木 子どもクラブ」代表 柴田愛子先生「子どもの心により添う保育」をモットーにした「 りんごの木 子どもクラブ 」代表。絵本作家。 保育者。育児書の執筆、雑誌への寄稿だけでなく全国で保育者向けセミナーや母親向け講演会をおこない支持を得る。NHK『すくすく子育て』出演。園で行っている「子どもたちのミーティング」はテレビ・映画で取り上げられ「子どもの力を最大限に引き出している」と話題に。■イヤイヤ期の2〜3歳「本能で生きる時期」しつけは押し付け?今回、お話をうかがってきたのは「子どもの心により添う保育」をモットーにした幼稚園「りんごの木 子どもクラブ」代表の柴田愛子先生です。――先生、今日はよろしくお願いいたします! 先生が監修された『今日からしつけをやめてみた』のタイトルに「え? いいの?」と驚くお母さんも多いかと思いますが、ここでいう「しつけをやめる」とはどういう意味なのでしょうか?柴田愛子先生(以下、柴田先生):なかなか過激なタイトルよね(笑)。これは「しつけはいらない」という不要論ではなくて、あなたを脅かしている、誰がいっているか分からない「しつけ論」をちょっとやめてみない? という意味なの。――誰がいってるか、分からない「しつけ」…?柴田先生:しつけをしなければいけない、と悩んでいるのは2~3歳のお子さんを持つお母さんに多いわね。でも2~3歳ってイヤイヤがはじまる、いちばんどうにもならない時期なんですよ。そんな子どもをどうにかしようとするほど、至難の業はないと思うの。――でも、早いうちからいろいろ示しておかないと将来が心配だし、しつけることがわが子のためになると思って口うるさくいってしまうんです…。柴田先生:そうよね。最近までおっぱいやミルクを飲んで寝ていたのに、立ち上がるようになって、大人のような姿かたちになりはじめる。でもね、大人に近づいたように見えるだけで、まだまだ未発達の状態なの。2~3歳ごろまでは本能的に生きている時期で、それが自然。その本能的に生きている時期に、世間一般でいわれるような「しつけ」をするということは、人間の文化を無理やり押し付けていることになるの。――未発達な時期でのしつけは、押し付け…?柴田先生:そう。押し付けられる子どもは気の毒だなぁ…と私は思う。子どもにとっても、「しつけないとしょうがない子になる」と頑張る大人にとっても、つらいものだと思うんです。■「ごめんなさい」の言葉の前に「なんだかイヤ」の感情を大切に――先生は「りんごの木」でたくさんの子どもたちと過ごされていますよね。しつけが必要とされるような場面では、どうされているのですか?柴田先生:例えば「ごめんなさい」ね。相手が泣いちゃった、だから「ごめんなさい」をいわせる。これは大人の終止符の打ち方ですよね。大人は効率良く、さっさと片付けたいと思う。でも、子どもというのは効率を考えないし、さっさと片付けられないものなのね。――私も子どもがケンカしたときは「ごめん」をいわせて、早くいざこざを終わらせたいと思ってました…。柴田先生:りんごの木では、子どものペースを保証したいから「ごめんなさい」は強要していないんですね。2~3歳の子は、今自分が持っている気持ちと「ごめんなさい」の言葉がまだ結びついていない。「なんだかイヤだった」という気持ちと、相手が泣いちゃって「困った」という気持ちはあるけれど、そうした気持ちから「ごめんなさい」という言葉を出そうとは思わないんですね。 ――そうか、なんて言葉にしたらいいかまだ分からないんですね。柴田先生:そうです。分かっていないんですね。でもここで、あなたが今感じている気持ちが「ごめんなさい」という言葉なんだ、ということは大人として伝えてあげたい。そんなときはこう伝えます。「痛かったね~。ごめんなさいだね~。ごめんね」って私がいうんです。そうすると「ああ、この気持ちはごめんねっていえばいいんだ」と子どもは分かっていく。――「ごめんねといいなさい」と強要するんじゃなくて、気持ちと言葉を大人がつないであげるんですね。柴田先生:そうです。気持ちに言葉がついていくのであって、言葉で処理すべきことではない。これは「ありがとう」もそう。「ありがとう」「ごめんなさい」はとても大事な言葉ですね。だからこそ、子どもがたっぷり育ってから、言葉と気持ちがくっついたときでいいと思うんですよ。■「どんな子にしたいか」じゃなくて「どういう子なのか」――りんごの木では保護者に向けて、何か伝えていることはありますか?柴田先生:りんごの木には遅刻という言葉はありません。「用意ができたら来てください」と伝えています。乳幼児って、朝がうまくいかないじゃない? 出かけようとすると「うんち」っていったり、飲み物をこぼしてびしょびしょになったり…。――そうそうそう! そうです!柴田先生:そのときに「出かけられないでしょ!」って怒るなら「あ~あ。やっちゃったか。じゃあ、着替えてね」でいい。みんなの用意ができたら来てね、なんですね。私の家が遅刻OKの家庭で、実はみんな遅刻常習者だった(笑)。だからって大人になって遅刻するようになるかというと、そんなことはなかった。そこはわきまえて成長する。育つってそういうことなんじゃないのかな。――「朝は準備できてからでいい」って、なんだか夢のようです…!柴田先生:これまで長く幼稚園の先生なんかをやってきたけれど、いつも親は「どういう子に育てたいか」「どういう子にしたいか」という大人の思いで子どもに接していると思うんです。そうして行き着いたところで、何が正しいことなのか分からなかった。それに気づいたとき、私は「どういういう子に育てたいか」の前にそもそも「どういう子なのか」。子ども本人のことを知らないんじゃないか、と思ったのね。――わが子が「どんな子」なのか…。柴田先生:そう。だから知りたいと思ったの。どんな子なのかを知るためには、子どもの育ちは子どもに任せてみようって。子どもを知るためなんだから、ルールは一切なし! 大人の「こうさせたい」をなしにして「りんごの木」をはじめたんですね。――子どもの育ちを子ども自身に任せる…?柴田先生:そうよ~。だから子どものやりたい放題の世界よ! でも、子どものやりたい放題って、思春期の子と違ってそうたいしたことじゃない。水道出しっぱなしとか、家の中に水を持ち込むとか、壁に絵を描くとか…。これは大変かしら(笑)。でも、やることが一人ひとりすごく違うのね。ママと別れるとき、ある子は我慢していたり、ある子は事実を目をつむって見ないようにしていたり。ワンワン泣く子もいれば「ママがいないからあなたでいいわ!」と別の大人に抱きつく子もいる。みんなこらえ方が違うのね。 本当に子どもっておもしろいなって。子どもがどうあるべきかでなく、どういう子なのかを知りたい。ただそれだけなのね。「子どものために」としつけをしていたはずが、そもそも子どものためではなく、親のため、大人の都合だったとしたら…。それならしつけなんて、今日からやめたい! と思うのは私だけでしょうか。子どもの文化を大事にすることで「これは私のせい?」「こうしなきゃいけない?」と不安になっている時間を、子どもと笑顔になれる時間に変えていくことができるかもしれませんね。 次回 は、子どもの3大「困った!」での、年齢別対処法をご紹介しましょう。参考図書:『 今日からしつけをやめてみた 』(主婦の友社)監修 柴田 愛子/イラスト あらい ぴろよ「小さいうちから、きちんとしつけないと…」。そうしておこなわれる「しつけ」は子どもにどんな影響を与えているのか? しつけなくして、親子が笑顔になる方法はあるのか? 子どもの目に映る世界は、大人が見ている世界とは違うもの。親子でストレスの溜まる「しつけ呪縛」から解放される一冊。
2019年04月26日2020年からはじまる新たな大学入学共通テストは、より「思考力」が問われる内容に変わります。そのことにも表れているように、多くの教育関係者が口をそろえるのが「これからの時代を生きる子どもたちには『思考力』が必要だ」ということ。認知科学の専門家で、人の学習について研究をしている慶應義塾大学環境情報学部教授の今井むつみ先生によれば、思考力を育むために有効なものが「絵本」なのだそう。新たな子ども向け教材がどんどん生まれているいま、絵本というむかしながらのメディアにどんな力があるのでしょうか。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)親子の対話が子どもの思考力を伸ばす先行きの見えにくいいまの時代、子どもを「成功」に導くには、「言葉の学習を通じて思考力を高める」ことが大切です(インタビュー第1回参照)。では、子どもの思考力を高めるために家庭でなにができるでしょうか?まず、なによりも「子どもと話す」こと。すごく基本的ですが、これはとても大切なことです。いまはたくさんのアプリが存在するなど、子ども向けの教材が豊富な時代です。ただ、それを子どもになんでも手渡せばいいと思っている親御さんが多いことが残念ですね。もちろん、親は良かれと思ってやっていることですが、そういったものをただ手渡されても、子どもはあまり学べないのです。大人の場合はテキストなど教材からも十分に学べます。でも、子どもの場合は「一方通行」の情報では学ぶことはできない。子どもは、親御さんなど周囲の大人が見ているものに注意を向けます。大人と注意を共有しながら、さまざまなことを学んでいくのです。そういう意味では、絵本の読み聞かせは子どもの思考力を高めるためにとても有効だと考えることができます。その学びとは、ただ文字を覚えるといったものではありません。お父さんやお母さんと絵本を読むという場を共有し、絵本を読んでいる親の視線をたどっていく。そのような、絵本に書いてあること以外にもその場にあるたくさんの状況の手がかりがあると、「この言葉はこういう意味なのか」と子どもは理解します。テキスト情報だけではなく、親の視線や表情といった情報を受け取り、推論して理解していくのです。デジタル絵本では子どもは学べない?先に、いまはアプリなどの子ども向け教材が豊富だと述べました。絵本にだってたくさんの種類があります。注意してほしいのは、絵本が子どもの思考力を高めるために有効とはいっても、いわゆる「デジタル絵本」や「動画」は、ただ、子どもにポンと手渡すだけではその効果はあまり期待できないということです。デジタル絵本や動画を与えると、子どもはよろこんで見入ります。しかし、じつはそれらからは子どもはなにも学んでいません。それは、そのように使われたデジタル絵本や動画が一方向性のものになりがちだからです。デジタル絵本や動画は綺麗な絵が動いたり音声も出たりと、すごく情報がリッチで刺激的です。でも、それらをただ一方的に与えられても子どもはそのリッチな情報をうまく消化することができないのです。もちろん、子どもの年齢や使い方によってはデジタル絵本や動画も子どもの思考力を高めるためにいいツールになり得ます。子どもとひと口にいっても、2歳と5歳ではまったくちがう生き物だと理解することが重要です。5歳になれば、子どもがデジタル絵本や動画からもある程度学ぶこともできるでしょう。でも、2歳の場合は効果がほとんど期待できないといっていいかもしれません。そもそも、すごく情報がリッチだということが、じつはネックなのです。情報が多いがために、子どもはなにに注目していいのかがわからなくなってしまう。小さい子どもの場合であれば、むしろ情報はミニマムのほうがいい。そのミニマムな情報のなかから、お父さんやお母さんが見ているものに注目して、子どもたちは学んでいきます。「わからない」は子どもの学びに重要また、大人が紙の絵本を読み聞かせする場合は、読み手が子どもを観察しながら間髪入れずに反応できることも大きなメリットになります。子どもがなにを聞きたいのか、どこに注目しているのか。そういうことを表情などから読み取りながら、たとえばある部分を大げさに読んでみたり、読むスピードを変えてみたりと変化をつけられますよね。そういうちょっとしたテクニックを入れることが、子どもがより深く学ぶことにつながっていきます。もしかしたら、今後、子どもの反応をカメラでとらえ、分析して音声などに変化をつけるというようなデジタル絵本が生まれるかもしれません。それが生の大人の反応と同じ効果を生むのかどうかは、実証的に検証する必要がありますが……。そんなわたしも、テクノロジーを一概に否定しているわけではありません。ただ、デジタル絵本などのつくり手は、どうしても「テクノロジーありき!」という考えを持っているように感じるのです。「テクノロジーがあるから絵本をつくる」ということに主眼を置いていて、子どもがどういうふうに使うかとか、それが子どもの学習をどう助けられるのかという観点が足りていないのではないかと思います。いずれにせよ、現時点のデジタル絵本は紙の絵本での生の読み聞かせには勝てないでしょう。やはり、質という点では、生のコミュニケーションにはかなわないからです。とくに小さな子どもというのは、直接の生のコミュニケーションをとおしてもっともよく理解し、学ぶことができることが多くの研究で実証されています。もちろん、子どもにとって学びになるコミュニケーションは、絵本の読み聞かせだけではありません。普段の会話もとても大切です。そのなかで、子どもの理解度を見極めながら、同じことを別のいろいろないい方で話すように心がけてみてください。使う言葉を変えてもいいですし、構文を変えてみるのもいいでしょう。そのような対話の中で、子どもは「わからない」言葉にたくさん出会います。じつは、子どもの学びにとって「わからない」ことがあるのはすごく大切なことです。わからない言葉を聞き、会話の内容や文脈からその意味を推論する。そうやって子どもは学んでいくのです。語彙力、推論力が高い子どもの親御さんはそういうことを日常で自然にやっている場合が多いのです。親をはじめとしたまわりの大人の語りかけの量と質が子どもの言葉力に大きな影響を与え、それがさらに思考力を磨いていくのです。『科学が教える、子育て成功への道』キャシー・ハーシュ=パセック、ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ 著今井むつみ、市川力 翻訳/扶桑社(2017)■ 慶應義塾大学環境情報学部教授・今井むつみ先生 インタビュー一覧第1回:我が子の「成功」を願う親が、絶対に伸ばしてやるべき子どもの“力”第2回:小さな子どもが喜ぶ「デジタル絵本」に、実は“学びの効果”は期待できない第3回:「コミュニケーション能力を重視しすぎ」な親が、犯しかねない過ちとは(※近日公開)第4回:家庭での学びが「アクティブ」で「プレイフル」になる、いちばんの方法(※近日公開)【プロフィール】今井むつみ(いまい・むつみ)慶應義塾大学文学部西洋史学科卒、慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了、ノースウェスタン大学心理学部博士課程修了。1993年より慶應義塾大学環境情報学部助手。専任講師、助教授を経て2007年より教授。専門は認知・言語発達心理学、言語心理学。とくに語彙(レキシコン)と語意の心のなかの表象と習得・学習のメカニズムを研究している。著書に『学びとは何か――<探求人>になるために』(岩波書店)、『言葉をおぼえるしくみ 母語から外国語まで』(筑摩書房)、『ことばの発達の謎を解く』(筑摩書房)など。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年04月26日うちの家族、個性の塊です
夫婦・子育ていまむかし
めまぐるしいけど愛おしい、空回り母ちゃんの日々