専門家・プロ:陰山英男質問小2の娘の宿題のことで困っています。娘が「宿題が分からないので教えてほしい」というので教えると「先生が言ったんだからこれでいいの!」といって、それが明らかに間違っていても聞く耳を持たない状態です。たとえば、昨日の宿題の内容は、〈最初に計算するほうをカッコでくくる〉というもの。その中のひとつはこんな感じの問題でした。27+20+10=この問題を娘は、最初に数字を分解しようとしたので、「それは分解する意味ないよと」教えても、「違う!それでは先生に怒られる!」と言います。でも、途中で「分解する問題」ではなく「最初に足すほうにカッコをつける問題」ということに気がつき、(27+20)+10=と前のほうの数字にカッコをつけていました。「後ろの方の数字につけた方が簡単だよ?」と言うと、意地を張っているのか「いいの!」と言って、その後の問題もすべて前のほうの数字にカッコをつけていました。たぶん、〈最初に足す方〉の意味を「足し算の最初に書いてある方(の数字にカッコをつける)」だと勘違いしたのだと思います。こんな風に、親がアドバイスをしても聞いてもらえない場合は、どうしたら良いのでしょうか。回答こういう事例は一般的によくあることですね。実はわが家でも学校の宿題について、わたしが助言しようとすると子どもが「先生の言ってることと違うから」、といって助言を受けつけなかったことがありました。「お父さんの指導の方が絶対正しいよ」と言っても、「これでいい」と言い張ります。そのとき、わたしは「あ、そう」と言ってそのままにしておきました。なぜなら、そのことによって子どもが先生のことを信頼しているのがわかったからです。自分で間違いに気づく体験をさせましょうたとえば、親の方から「先生のやり方が違う」と言うのは、先生に対する不信を親が持っているということを子どもに伝えてしまうことになるので、あまり望ましいことにもなりません。また、先生の指導を子どもが間違って受け取っているのならば、学校に行き学習をするなかでその間違いに気がつくはずです。その「自分で気がつく」という体験の方が、意味があると思います。学習において、間違いというのは日常的に起きてきます。それがどのような形で修正されてくるかというのは大事な問題です。今回の場合は、おそらくお子さんの理解が間違っていると感じられます。しかし、学校で答え合わせをするなかで、お母さんの指摘が正しかったということを自然に知るでしょうから、それでいいのではないかと思います。どうしても親の方は心配をし、いつも正しく答えてほしいと願いがちですが、むしろどんな間違いをし、それがなぜ違うのか、どう修正すればよいのかということを知ることはもっと重要です。なぜならば、子どもたちは今後も数多くの間違いをしていくことになるからです。それを自分や先生との学習のなかで、自然に修正していくことがもっとも望ましいのです。今回の場合には、その日は「お母さんの言ったことが正しいんだけどな」、と言うくらいにしておいて、翌日「どうだった?」と聞いてみてもいいでしょう。お子さんは「お母さんの方が正しかったみたい」と、言うかもしれません。そのときには「やっぱりね」と言わずに、「自分で間違いがわかったのなら、よかったね」と、ポジティブな言葉をかけるのが良いでしょう。「先生への信頼」が、学習の基盤になる一般的にはこのように、自然な形で対応すればいいのですが、ごくまれに明らかに先生の指導が間違っているというような場合もあります。そのことで子どもの表情が暗く、神経質になるようなときには、いくつかの事例を確認しながら、機会をみて担任の先生に適切な指導をお願いされるというのもひとつの方法です。わたしの同業者である教師の問題点を指摘するのは、正直気が重いのですが、わたし自身の子育てのなかにも、そういう事例はわずかですがありました。この場合に注意してほしいのは、子どもの前では学校の先生に対する批判を控えるということです。なぜなら、子どもというのは先生への信頼を基盤として学習を進めていくものだからです。当然、その土台には、保護者が教師を信頼しているということが必要です。今回の質問の内容を見て気になったのは、ひょっとしたら「お母さんの、先生に対する信頼感が弱く、だからこそお子さんの宿題のことを気にされたのかもしれない」ということでした。もし、明らかに先生の間違った指導や、子どもに伝わりにくい言い方が原因でお子さんが誤った理解をしていると思われるような場合は、似たようなことが何度も起きることがないように、子どもたちの学習状況に注意しながら先生の指導方法にも気を配る必要が出てきます。陰山英男(かげやまひでお)1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。兵庫県朝来町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。2003年4月尾道市立土堂小学校校長に全国公募により就任。百ます計算や漢字練習の反復学習を続け基礎学力の向上に取り組む一方、そろばん指導やICT機器の活用など新旧を問わず積極的に導入する教育法によって子どもたちの学力向上を実現している。近年は、ネットなどを使った個別の小学生英語など、グローバル人材の育成に向けて提案や実践などに取り組んでいる。2006年4月から立命館大学教授(立命館小学校副校長 兼任)に就任。現在は、立命館大学 教育開発推進機構 教授(立命館小学校校長顧問 兼任) 。全国各地で学力向上アドバイザーなどにも就任し、学力向上で成果をあげている。また、北は北海道,南は沖縄まで、全国各地で講演会を実施している。過去には、文部科学省 中央教育審議会教育課程部会委員,内閣官房 教育再生会議委員,大阪府教育委員会委員長などを歴任。著書多数。Webサイト
2018年11月05日専門家・プロ:野﨑誠第3回社会に出ると湿疹ができるの法則秋の湿疹のお話3回目は、「社会生活と湿疹」についてです。社会生活が関係するのは学童期以降であって、それ以前の年齢は関係ない?いえいえ、そうとも言い切れないのです。皮膚科外来をのぞけば湿疹の予測ができる秋になぜ湿疹が悪化するのか?その答えは9月上旬の皮膚科外来にヒントがあったりします。その時期の皮膚科では、一部の年齢層の子の来院が一時的にガタッと減ります。そして、9月下旬から10月にかけて戻ってくるんですね。さて、どの年齢の子たちでしょうか?答えは幼稚園児から小学生にかけてです。とくに小学生にその傾向があります。原因は学校。夏休みが終わると急に慌ただしくなります。通学という生活習慣に慣れるまで、どうしても病院に行く時間が取れなくなってしまうんですね。とくに湿疹の治療は緊急性はあまりありませんので、どうしてもあと回しにされてしまいます。え、夏休みの宿題が終わっていない子もいるのか?さすがにそういう子は耳にしませんが・・・幼稚園児に比較的その傾向が少ないのも同様の理由から。小学生に比べて自発的に生活を組み立てているわけではなく、家族に連れられての受診になりますので、9月になったからといって小学生ほど大きな生活の変化はないようです。ただしお母さんがバテてしまい受診できない子はいるようですね。つまり、夏休みが明けてすぐの時期には皮膚科の受診は減り、その間に湿疹が悪化してしまうパターンが結構多く見られることになります。子どもだってストレスフルなんだ子どもの側から見ていきましょう。夏休みが終わると、どうしてもバタバタします。程度の差はあるでしょうが、夏休みのマイペースな生活習慣を学校生活に合わせて修正していかなければなりません。そしてまた、学校の社会関係の中で長い時間を過ごしていくという、非常に大きなストレスを抱えることになります。ときには眠れない夜を過ごす子もいるでしょう。これは小学生だけではなく幼稚園児にもその傾向はあります。家族と離れて生活する時間が増えるのですから。この生活の変化がストレスとなり、結果として湿疹を悪化させてしまうということも十分に起こりうるのです。いや、子どもたちも大変です。学校行事も湿疹を悪くする秋の学校行事も9月末ごろから続々と入ってきます。その筆頭となるのは運動会でしょうか。最近は春に行なうところも多いようですが、2学期が始まってから運動会の練習がスタートするところも多いようです。運動会の練習は湿疹に対してはくせものです。大汗をかき、泥だらけになります。この時期だけは他の科目の時間まで体育の時間にあてて運動会の準備や練習に取り組んでいる小学校も多いようです。こうした環境は湿疹を治療する立場からすると非常に憂慮すべき状態です。先に述べた行為はすべて湿疹を悪化させる要因となるからです。だからといって練習をやめなさいとは言えないですし・・・皮膚科医にとって悩ましい時期となるのです。また、遠足だったり、おいも堀りだったりといったイベントも汗と汚れから湿疹を悪化させます。とくに指先の湿疹ですね。やっと治ったと思った翌週に遠足に行って指の湿疹を悪化させた子も数多くいます。はあ。治療はすごく大変なのです実は最も治療に苦労するのが、この社会的活動からくる湿疹です。まず厄介なことは、予防がほとんどできないこと。今までのお話のように汗にはシャワーで対抗し、乾燥には保湿剤で対抗するというような単純な対策が取れません。湿疹を治すためだけに運動会に出るなとは言えませんしね。なので、皮膚科医としてはできるだけこのようなイベントで皮膚が悪化しないように願う限りだったりするのです。練習のとき、暑くなりすぎないように、さりとて乾燥しすぎないように。太陽にも程々に隠れてもらって、かといって雨に降られても困ります(スケジュールが遅れてしわ寄せがきて、湿疹も悪化するのです)。ヤキモキする毎日です。と、このように社会活動がダイレクトに影響してくるのが湿疹の特徴ともいえるでしょう。皮膚科医って、実はこんなところにも目配りをしているんです。というお話でもありました。ここ3回は体の外の原因についてお話をしてきました。最終回となる4回目は、体の中の原因について触れていくことにしましょう。ではでは。おまけ気象・社会生活と皮膚についてちょっとだけこぼれ話をしましょう。「手湿疹」という病気があります。子どもたちも結構な頻度で手先や指先が剥けたり割れたりする病気です。この原因はいろいろありますが、その1つが汚れること、力がかかることです。実はこの手湿疹、今年の7月から8月にかけて、比較的良くなる子が多かったです。例年は悪くなる子のほうが多いにもかかわらずです。なぜでしょうか?答えは熱波です。熱波が直接湿疹に作用したわけではありませんよ。気温があまりにも高くなりすぎたので、みんな外で遊ぶことを止めたんですね。子どもの手湿疹の原因は想像の通り、砂遊びからの汚れなので、外遊びに行けなくなったことが湿疹を良くしたのでしょう。また、あまりの暑さのためにうんていや鉄棒で遊べなくなり、結果的に湿疹が良くなったと言っている子もいました。気象条件って、これだけ皮膚に影響してくるんですね。勉強になった今年の熱波でした。関連記事秋 -季節の変わり目‐ になぜ湿疹が悪化するのか第1回夏の戻りが湿疹を呼ぶ第2回冬の始まりが湿疹を招く野﨑誠(のざきまこと)わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市・皮膚科、小児皮膚科)院長。国立成育医療センター(小児皮膚科)、東京都立東大和療育センター(皮膚科)勤務。2001年山形大学医学部卒業山形大学医学部皮膚科入局山形県公立置賜病院(山形県長井市)、国立成育医療センター(東京都世田谷区)、はせがわ小児科医院(東京都武蔵野市)などの皮膚科・小児皮膚科を経て、2013年、わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市)開院。院長を務めるかたわら、専門家向け、一般向け、教育機関(保育園、幼稚園、小学校、中学校など)向けの各種講演会、勉強会を精力的にこなす。雑誌他執筆多数。広い年齢層の皮膚病、あざの治療やスキンケアに携わる。わかばひふ科クリニックWebサイト
2018年10月16日2018年6月27日から7月16日に、LITALICO発達ナビでは「子どもとゲームのつきあい方についてのアンケート」を行いました。ゲームを使用するお子さんを持つ683名の保護者の方々が回答し、うち618名が「子どもがゲームをすることで困っていること・悩んでいることがある」と回答しました。この記事では、アンケートによる調査結果の一部を抜粋し、専門家による対応策についてのアドバイスも加えて、お伝えします。<調査対象について>「LITALICO発達ナビ」会員へのメールから、アンケートフォームにて回答いただいた発達障害の保護者の中から「子どもがゲームをすることで困っていること・悩んでいることがある」618名の回答を集計しました。(調査期間:2018年6月27日~7月16日)※設問によっては618名全員が回答していないもの、複数回答可のものがあります。※調査結果の構成割合は四捨五入をしているため、合計が100%にならない場合があります。ゲームの使用が心配な子どもの年齢は?Upload By 発達ナビ編集部小学生が約55%、中学生が約29%で多くをしめました。8割以上の子どもが小学校高学年になる以前にゲームを始めているUpload By 発達ナビ編集部8割以上の子どもが小学校低学年や未就学であるときからゲームの使用を始めているとの回答でした。Upload By 発達ナビ編集部また、保護者の半数以上は、小学校高学年になる以前から子どものゲーム使用について問題に思い始めていることが分かりました。7割以上が、問題が1年以上続いていると回答Upload By 発達ナビ編集部ゲームに触れるきっかけとして多いのは、1位周囲の人の影響(親、兄弟、友達など)2位プレゼント3位空き時間(不登校、入院中、移動時など)が挙げられていました。周囲の人の影響では、「親が遊んでいるのを見て」、「学校でみながゲームの話題をし始めたから」、「周りのお友達もゲームを持ち始めて、自分も欲しいと言い出した。」、「上の子が使っているのを見て一緒にやっていた」などがありました。プレゼントでは誕生日やクリスマス、子どもが何かを頑張ったご褒美としてゲームをあげる方が多くいました。さらに、空き時間でのゲーム使用に関しては、不登校や、引っ越しや移動の際の暇つぶし、病院での空き時間などで子どもが手にしているという回答がありました。また、ゲームの種類は、インターネットにつないで使用するオンラインゲームが約70%、ネットを介さない家庭用のゲーム機の使用が約60%と多くの方がこの2つを使用していることがわかりました。ゲーム使用の頻度は8割以上が「ほぼ毎日」、1日あたりの使用時間は「1~3時間以上」が約4割Upload By 発達ナビ編集部Upload By 発達ナビ編集部約85%の子どもたちが、ほぼ毎日ゲームを使用していることが分かりました。さらに使用時間は、■1~3時間が約38%■3~6時間が約33%と、多くの時間を費やしていることが分かります。ゲームへの没頭度合いは?Upload By 発達ナビ編集部1.自分でゲームとの関わりをコントロールできている、2.長時間ゲームに没頭しているが日常生活は送れている、3.ゲームを最優先し日常生活に支障が出ている、いずれの状態かを聞いたところ約55%が「長時間ゲームに没頭しているが日常生活は送れている」、約36%を超える子どもが「ゲームを最優先し日常生活に支障が出ている」というアンケート結果でした。没頭するようになったきっかけ・心当たりとしては、学校でのストレスや不登校、友人関係がうまくいかないことやオンラインでの交流の方を好む傾向があるため、という回答が多くみられました。また、過集中などの発達障害の特性が影響していると考えている保護者もいるようです。ゲームに熱中することで、勉強や生活に問題が出ている子どももUpload By 発達ナビ編集部上記のグラフにある通り、「勉強が手につかない」が383人と最も回答数が多く、朝起きられない、お風呂に入らない、食事をとらない、昼夜逆転など、基本的な生活習慣に影響があるという回答も多く挙げられました。ものに当たる・壊す、家族への暴力などの問題が挙げられている点も無視できません。保護者の悩みごととは?Upload By 発達ナビ編集部子どものゲームの使用に関して、保護者の方々は上記のような悩み・心配ごとを抱えています。具体的なエピソードとしては次のようなものが寄せられました。〇本人に問題意識がない「1年前までは、ネット依存外来に半ば強引に通院させていましたが、本人の否認が強く、医師も治療の手立てが無く、悪化するばかりで、現在大学も休学して、家族とも話さず昼夜逆転でゲームしているので、通院もさせる事も出来ず、途方に暮れています。」「タブレットを触っていると、会話もなくなります。でも本人はそれを問題だとは思っていません。」〇将来が不安「どうやったらゲームの優先順位を下げれるでしょうか。やるべき事を終えればゲームしてもいいと言っていますが、ゲームが最優先で勉強をしなければならないと思っていない様子で心配しています。」「ゲームを生活の最優先にしていることが悩みです。一方で、ネットゲームの仲間とスカイプで楽しそうに会話しているのを見ると、学校にはない、本人にとっては心の許せる大切な友達なのだとも思います。来年は中学3年生で受験と向き合わなければいけませんが、このままでは志望校に合格するのは難しいです。本人の気持ちも大事にしたいですが、どうしたら勉強にも向き合ってくれるかが悩みです。」〇目が悪くなる「家族が寝静まるまで待ってからゲームを始めます。寝たふりをしているので真っ暗な部屋でゲームをしていて、これはマズイと思いました。」〇言葉が乱暴になっている「そろそろゲームをやめる様に声かけすると暴言をはきます。」「ゲームで勝てないと本気で泣いて暴言を吐いて暴れだします。」〇食事睡眠をとらず健康に影響が出ている・出そう「土日になると前日遅く寝ても朝、早く起きてゲームをします。私が何も言わなければ飲食もせずにゲームを一日中続けています。ゲーム時間をどのように減らしていければよいのか悩んでいます。」家庭ではどんな対策をしている?Upload By 発達ナビ編集部約76%が現在ゲームの使用に関して対策や工夫をしています。また、行っている対策は、次のような結果でした。Upload By 発達ナビ編集部具体的な対策の内容として寄せられたものの中から、一部を紹介します。■ルールの決め方の工夫「ゲームの時間を決めても辞められないため、勉強の時間を決めてその時間はやらないようにしました。自分で決めた時間なので、声をかければ何とか時間内に宿題に取り掛かれるようになりました。」「本人も交えて話し合い、守れそうな時間制限をルールにしたので、自分から意識して止めることがほぼ定着しました。」■専門家に指摘してもらう「子どもがゲームをやり過ぎているために、生活の管理ができていない事をカウンセラーの方から話していただき、元々の不登校の原因である起立性調節障害の回復が遅れる事を指摘していただきました。家族からの指摘より、専門家にお話ししていただく方が具体的でピンポイントだったので、子ども自らが進んで生活表を作って頑張ろうとしています。」「病院で決められたことなので、子ども自身がタイマーを使って時間を守っています。」■ゲーム以外に興味を引き出す「学校へはいけないので、放課後等デイサービスで体を動かすようにお願いしています。するとデイサービスが本人にあっていたのか、その時間はゲームから離れられるようになりました。」「月に2回程度スポーツ教室に通い始めました。本人なりに楽しそうに取り組んでおり、体を動かした日の夜は朝まで熟睡しています。」■家族も一緒にやる「一緒にゲームをすることで、親もキャラクターを覚えました。その上でゲームとのかかわりについて注意をしました。親も一緒にゲームを楽しみ、コミュニケーションを取ってから、決まりについて話したところ、徐々に子どもも聞いてくれるようになりました。」■気づかせる「ゲームをしている時間を細かく書き、本人に知らせるとすんなりゲームをやめられました。ただ、1分でも間違えたら怒ったりもします。ゲームを使用している時間を細かく書いて知らせることで、子どもは長い時間使用していると理解し、一定の時間でやめてくれるようになりました。毎回ではないですが、すごい進歩です。」6割以上が相談相手がいるUpload By 発達ナビ編集部7割近くが子どものゲームの使用に関して誰かに相談しています。Upload By 発達ナビ編集部具体的な相談相手としては次のような結果となりました(複数選択あり)。■医者、専門家(235名)■家族(207名)■友達(112名)■スクールカウンセラー(96名)医者や専門家、学校などで子どもを見守るスクールカウンセラーなどの第三者に相談をしている方が多くみられました。専門家によるアドバイスを紹介!「ゲームにまつわる悩み」どう対処する?Upload By 発達ナビ編集部医者や専門家に聞いてみたいこととして、上記のような内容が希望として挙げられました。すでに改善しようと多くの保護者が取り組んでいますが、それぞれのお子さんに合う解決策が分からないという人も少なくありません。そこで、具体的な質問内容から、鳥取大学の井上雅彦先生に対応策を伺いました。時間制限がしづらいスマートフォンとのつきあい方に悩んでいるという場合については「コミック本やテレビと違い、ゲームやスマホは終わりがないので依存が生じやすくなりがちです。依存しすぎる前に、自分の力で管理できるように環境を整える必要があります。ルールの決め方の基本は1. 子ども参加でつくる2. 無理のない具体的な使用時間を決める3. ゲーム機やスマホは親の目の届くところで使う4. (ルールを適用する)期間を設定する(例:1日間、1週間など)5. 守れたらほめるでも、ゲームをやめて、その分勉強をしろというのはハードルが高すぎるかもしれません。まずは、ゲーム以外の趣味を増やす、ゲームと少し距離を持つことができるようにしましょう。刺激を求める子どもの場合は、ゲーム以上にワクワクできる体験(アウトドア体験、映画館で映画を観る、一人旅、高校生以上ならアルバイトなど)の機会をつくるのもいいですね。好きなことが増えることで、ゲームがなくても大丈夫な時間が生まれ、その時間を勉強に向けることもできるようになっていきます。また、頭痛や不眠など、ゲーム依存による身体症状が出てしまっている場合は、それを話し合いのチャンスとし、主治医や専門家の協力を得て、ルールづくりをできるとよいでしょう」ゲームによる勉強への影響に悩んでいる場合については「まず、志望校合格までの計画づくりを一緒にします。そのために、ゲームの時間をどう管理すべきかを考えさせます。ゲームを一方的に取り上げるのではなく、自分で管理できるようにする必要があります。目の前にあるとどうしても手に取ってしまうと本人が考えるのであれば、保護者が管理するとか、子どもの部屋には置いておくけれどカバンに入れて部屋の隅に置くなど、すぐには手に取れない状態にします。少しずつ離していけるようにしてみると、管理ができるようになっていくと思います」子どもに対してだけでなく、夫への対応や、夫から子どもへどう接してもらったらいいかについて悩んでいるという場合については「夫に対して、感情的にコミュニケーションすると、夫はゲームをしている自分を責められているように感じてしまいがちです。”子どもはゲームを毎日○時間やっている”という現状があり、そのため”勉強をまったくしない”というように、何が起きていて、どう支障が出ているのかを具体的に伝えることが大切。父親が子どものゲーム仲間になること自体はいいけれど、子どもが勉強する時間に横でゲームをやるのは控え、自室で楽しむなど、子どもへの影響を考えた具体的な関わり方を話し合う必要があります」また、「母親もゲームをやってみて、”なかなかやめるのが難しい”ことを実感し、子どもの立場に立って”どうしたらやめられるか”を一緒に考え、約束をつくっていくのもいいでしょう」とのアドバイスもいただきました。まとめ今回アンケートをとってみて、ゲームが身の回りにあるのが当たり前な環境にいるお子さんに対して、ゲームとの適切な関わりの示し方に悩まれている保護者の方々が多く見受けられました。LITALICO発達ナビでは、今後子どもとゲームとの関わりについて記事を掲載していきます。専門家の視点やすでに取り組まれている方々の声も取り入れながら、子ども一人ひとりに合った関わり方ができるようになることを願っています。
2018年10月09日専門家・プロ:藤田由美子今回は、特別活動で社会参画する力、安全を守る力をどのようにはぐくもうとしているかに焦点をあてて紹介します。学んだことを成長につなげる特別活動の内容は大きく3つに分かれます。(1)学級(高等学校ではホームルーム)や学校における生活づくりへの参画(2)日常の生活や学習への適応と自己の成長および健康安全(3)一人一人のキャリア形成と自己実現次期学習指導要領では、小学校、中学校での特別活動の内容を下図のように示しています。小学校における特別活動の内容 (出典:文部科学省「小学校学習指導要領(平成29 年告示)解説特別活動編」をもとに作成)中学校における特別活動の内容 (出典:文部科学省「中学校学習指導要領(平成29 年告示)解説特別活動編」をもとに作成)学級活動を通して社会参画を学ぶ「(1)学級や学校における生活づくりへの参画」とはなんのことでしょうか。次期学習指導要領では、特別活動全体を通して、自治的能力※1や主権者として積極的に社会参画する力を育てることを重視しています。具体的には、学級や学校の課題を見いだし、課題を解決するためにみんなで話し合って合意形成すること、主体的に組織をつくり、役割分担して協力し合うことの重要性を明確にしました。この背景には、子どもたちの社会参画意識を高めなければならないという社会的なニーズがあります。※1所属する集団が決定した総意にもとづいて、教師の支援を得ないで行動する力「(1)学級や学校における生活づくりへの参画」は、次の3つの内容に分かれています。ア 学級や学校における生活上の諸問題の解決イ 学級内の組織づくりや役割の自覚ウ 学校における多様な集団の生活の向上「ア 学級や学校における生活上の諸問題の解決」は、たとえば入学や進級のときに新しい学校生活に慣れること、学級での生活を見直す活動、いじめや不登校の未然防止や暴力のない学級づくりなどが想定されます。子どもたちが個々に学級や学校における課題を見いだし、おたがいの意見を認め合いながら、くふうして諸問題の解決に取り組みます。「イ 学級内の組織づくりや役割の自覚」は、次のような活動のことです。子どもたちが話し合って決めた学級の目標をふまえ、目標を実現するために必要な組織をつくる。仕事の役割分担やルールをつくる。学級内の組織の意義や活動について話し合って合意形成を図る。分担した役割の計画や成果を学級で共有する方法について話し合う。活動について振り返り、改善策について話し合う。「ウ 学校における多様な集団の生活の向上」は、生徒会や部活動など、学級の枠を超えた集団での活動や学校行事を通して、学級としての提案を話し合って決める活動のことです。こうした活動を通して、子どもたちは社会に参画し、主権者としてどのように行動したらいいかを学びます。生きる力をはぐくむ「(2)日常の生活や学習への適応と自己の成長及び健康安全」には、防災教育、安全・健康教育、食育、よりよい人間関係の形成などが含まれます。いろいろな内容が盛り込まれているのは、複雑で変化の激しい社会のなかで求められる多様な能力を育成する必要に迫られているからです。特別活動と各教科を関連づけながら、資質・能力を育成します。次期学習指導要領では、事件や事故、災害から身を守ることの重要性について明示しています。災害などから身を守り、安全に行動するためには、具体的な場面を想定した訓練を体験することが重要であると強調しています。防災に関しては、地理で地域の地形の特徴や過去の自然災害について学び、理科で自然災害につながる自然の事物・現象の働きや規則性などを学びます。また、災害からどのように身を守ったらいいのかを実地訓練します。安全に関しては、日常生活に潜むさまざまな危険を予測したり、問題解決の方法を話し合ったりして、安全な生活を送るためにどうしたらいいか、理解を深めます。たとえば、生活習慣の乱れやストレスへの対処、インターネットでのトラブル事例、自転車を運転するときの交通安全、事故の発生状況や危険箇所の調査結果などについて話し合いを通じて学びます。学校での特別活動を通じて子どもたちが生きる力を身につけ、多くの問題を乗り越えられるようになってほしいものです。藤田由美子(ふじたゆみこ)株式会社ユーミックス代表取締役社長。1993年の創業以来、コンピューターリテラシー教育を数多く手がける。「生きる力」「社会力」の育成をめざして、子ども向けICT教育のカリキュラム作りにも力をいれており、大手携帯電話会社のケータイ安全教室の企画立ち上げ、ネット安全利用推進プログラムの開発など、実績多数。
2018年10月08日専門家・プロ:陰山英男質問小6の娘が、担任の先生を嫌っていて困っています。担任の先生は30代前半の男性です。小5から持ち上がりで同じ先生なのですが、娘はこの先生をとても嫌っています。理由をたずねると授業中、同じ子ばかり指名するなど、気に入った子をひいきする。女子が集まって話していると、会話に入ってくるからウザイ。授業がつまらないし、説明がよくわからない。汗をよくかくなど、なんか不潔な感じがする。……というようなことでした。小5のときから、嫌っているようすはあったのですが、ここ最近、エスカレートしているようで、嫌いだという態度を露骨に出したり、休み時間に仲の良いクラスメートと、大きな声で先生の悪口を言っているようです。多感で大人に対して反抗心を持つ時期だとは思うのですが、それにしても過剰反応のような気がします。クラスのほとんどの女子が、担任の先生を嫌っているようですが、娘がいちばん目立つ行動をとっているようで、同じクラスの男子のママから「先生、困っているみたいよ」と言われてしまいました。親として、どう対処したらいいのでしょうか?回答男性の先生が高学年を担任する場合、女の子との関係でこうした問題はしばしば起きてきます。それはこの年代の女の子独特の心のあり方から出てくるもので、相手が担任でなくても、たとえばお父さんが嫌われるようなこともしばしばあります。ただ今回の場合、学級全体に広がっているという点や、公然と先生の悪口を言っているというような点で、やや深刻です。この状況をそのままにしておくと、今後学級崩壊といわれる状況に近づいていくようで心配です。ですから、ここは慎重に対応する必要があるでしょう。先生と子ども、両方の問題が絡み合っている一般的にありがちな問題が深刻になったのには、いくつかのポイントが考えられます。そして先生の問題とお子さんの問題が絡み合っていますから、一方的な注意にならないようにしないといけません。まず、先生の問題です。授業が退屈で説明がよく分からないというのは、子どもの意見を聞いてあげないといけないでしょう。そもそも授業がおもしろくないというのは、しばしば学級崩壊の原因になります。一部の子をひいきしているというのも問題です。とくに女の子はこういうことに敏感です。担任の先生は、反発する子が出てくると、無意識にその子を避けるので、どうしても他の子どもをひいきしているように見えてしまうのです。また、子どもの会話に入ろうと努力するのは分かりますが、子どもの気持ちを察し、話題を考えないと逆効果になります。担任の先生がまだ30代ならば、学年主任など管理職の先生に間に入ってもらい、お話されるのがいいと思います。次にお子さんの問題です。いちばん気になるのは、先生に対する反抗の中心にいるということです。「みんなも先生を嫌っているはず」と本人が思っていても、意外とそうではありません。先生がどんな人でもちゃんと話を聞こうとする子はいます。そういう子も含めて先生に反発させようと思って、声高に先生の悪口を言ってしまっているのではないでしょうか。そうした場合、クラスの雰囲気を悪くしているのは、先生ではなくその子だと思われてしまうのです。今回男友だちのお母さんから忠告されているのは、その状態になっているためではないかと、とても気になるのです。先生への不満は保護者から伝えるではどうすればいいのでしょう。第一は先生に反発するようなことがあっても、冷静であるべきで、感情的になってはいけないということを教えてあげることです。「人を呪わば、穴二つ」ということわざがありますが、人を嫌い、それを口にすると、やがて自分が周囲から嫌われるようになることは子どもでなくてもよくあることです。そしてクラスが改善していく段階になると、クラスを悪くした犯人だという扱いをされてしまい、やがて自分がクラスに居づらくなることがあります。先生に限らず誰に対しても悪口を言うべきではなく、誰かに何か問題があれば問題そのものに絞って、相手に冷静に伝えてあげればいいことです。また相手が先生の場合、先生に対する要望は保護者が伝えるからと話し、子どもが過度に反発すると問題が悪化することを教えてあげるべきでしょう。同じクラスの男子のお母さんから「先生は困っているみたいよ」と、すでに言われてしまっていることの意味を理解させてあげてほしいのです。そしてもうひとつ。多くの女子がいるなかでお子さんの反発が目立つというのは、お子さん自身がこの問題とは別に、不満やストレスを抱えているというようなことはないでしょうか。学校や塾、おけいこ事、家庭内などで困っていることはないか、不満に思っていることはないか、お子さんの話をゆっくり聞く時間を持ってみてはいかがでしょうか。そして、どこに本当の問題があるのかということを理解し、そこから少しずつ解決策を探ってあげることが大切だろうと思います。陰山英男(かげやまひでお)1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。兵庫県朝来町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。2003年4月尾道市立土堂小学校校長に全国公募により就任。百ます計算や漢字練習の反復学習を続け基礎学力の向上に取り組む一方、そろばん指導やICT機器の活用など新旧を問わず積極的に導入する教育法によって子どもたちの学力向上を実現している。近年は、ネットなどを使った個別の小学生英語など、グローバル人材の育成に向けて提案や実践などに取り組んでいる。2006年4月から立命館大学教授(立命館小学校副校長 兼任)に就任。現在は、立命館大学 教育開発推進機構 教授(立命館小学校校長顧問 兼任) 。全国各地で学力向上アドバイザーなどにも就任し、学力向上で成果をあげている。また、北は北海道,南は沖縄まで、全国各地で講演会を実施している。過去には、文部科学省 中央教育審議会教育課程部会委員,内閣官房 教育再生会議委員,大阪府教育委員会委員長などを歴任。著書多数。Webサイト
2018年10月01日ほんの少し前に入園したばかりと思っていたわが家の長男も、早いもので来年4月には1年生。早生まれということが関係しているのか、甘えん坊で好きなこと以外やる気なし。小学校に上がったらちゃんとやっていけるのか心配です。小学校入学に向けて子どものやる気を引き出したい! と思い、以前もお世話になった発達心理学・教育心理学が専門の東北文教大学准教授 永盛善博先生に、子どものやる気の引き出し方を教えてもらいました。先生の話によると「子どもがやる気がない時は、疲れや眠気など自分ではどうしようもない統制不可能な要因。難しすぎる、逆に簡単すぎてつまらない、そもそも興味がないといった内的要因。慣れない環境、親しい人がいないなどの外的要因が考えられます。子どものやる気を引き出すには、やる気がない原因を大人が明確にすることと、『この子のスキルは今どのくらいのレベルなのか』を見極めることが必要です」。年長さんのママに実際の悩みを挙げてもらい、先生にアドバイスしてもらいました。お悩み1:夢中で遊んでいて、片づけになった途端やる気がなくなる子どもには「もっと遊んでいたい」という気持ちがあるので、お片づけになると急にテンションが下がってしまいます。ただ、5、6歳にもなると物事を頭で理解することができるようになってくるので、「何時になったら片づけようね」と事前にいつまで遊べるか伝えておきましょう。事前に伝え忘れた時は、いきなり遊びを中断させず「あと10分遊んだら」と気持ちを切り替える時間を与えます。また「ご飯を食べないといけないから」「幼稚園に行く時間だから」と、片づけないといけないはっきりとした理由を伝えることで生活習慣が身についていきます。ワンポイントアドバイス:やる気があってスキルもあるパターン子どもが好きなこと、興味があることは、どんどん伸ばしてあげたいですね。子どものやる気を今以上に引き出したい時は、「今できるレベルより4%上のこと」=「背伸びすればできるくらいのこと」に挑戦させるともっとも効果的。求められることが自分のスキルより低すぎても、高すぎても子どものやる気は失われてしまいます。お悩み2:運動会やお遊戯会、保育参観など、思い出に残る行事の時やる気を出してほしい幼稚園の行事で自分の子だけなんだかやる気がない…と悩む人もいますね。イベント当日は、お父さんお母さんたちがいて、いつもと違った雰囲気で集中できない子もいます。元々の性格なのか、環境のせいなのか、それともスキルが足りないせいで不安なのか見極めが必要です。子どもが不安を抱えている場合は、子どもと話をして原因を掘り下げてみましょう。「面白くない」ならなぜ面白くないのか、「できない」から面白くないのであれば、どうやったらできるようになるのか親子で考えてみましょう。当日は、できなくてもそれまでの頑張りを認め、できていなかったことも含め、受け入れてあげます。自分のことを理解してくれる人に励まされることで安心感が得られ、子どもの自信に繋がり失敗を恐れず挑戦できる子に育っていきます。ワンポイントアドバイス:やる気があるけどスキルがないパターンやる気があっても、目標を達成するスキルが足りない時は「スモールステップ」と言って、小分けにして課題を与えます。いきなりできないことをさせてもやる気を失ってしまうので、やはり子どものスキルの4%上のことに挑戦させるのがベスト。小さな課題をひとつずつクリアしていくことで自信がつき、やる気にも繋がります。お悩み3:水泳(習い事)で壁にぶつかった時、マンネリになってきた時やる気がなくなる最初は子どものやる気があったけど、だんだんやる気がなくなってきたり、壁にぶつかったりするのが習い事でありがちな悩みです。壁にぶつかった時は、その先にどんな楽しいことが待っているかを教える。努力や頑張りをほめることが大事です。この時期は、同年代のライバルの存在がやる気に大きく関係してきます。競争相手がスキルも年齢も離れすぎていると「負けて当たり前」「できなくて当たり前」と感じてしまいますが、同じくらいの年齢の子と一緒だと「自分にもできる!」「負けたくない!」という気持ちが芽生え、そういった環境に連れて行く、見せることでやる気が出る場合もあります。ワンポイントアドバイス:やる気がなくてスキルがあるパターン一度スキルを身につけてやる気を失ってしまった場合、これ以上スキルを伸ばす必要があるかどうか、親子で話し合いが必要です。もっと伸ばしたい場合、興味を失ってしまった理由は何か、原因があるなら解決します。目標が明確ではない場合は、目標を設定してそれができるようになるまで続けてみる。簡単すぎてもう飽きた場合は、少し難易度を上げてみるなど、今やっていることが子どものレベルに合っているか再確認しましょう。お悩み4:小学校準備で勉強をしていますが、まったくやる気を感じられない親が始めさせた勉強や習い事に対しては、子どもの興味がすぐなくなってしまうことがあります。まわりの子が読み書きができたり、計算ができると焦ってしまうかもしれませんが、「みんなやっているから」という理由だけでは、「なぜやらなければいけないのか」分からず、子どもはやる気が出ません。入学前の学習は、勉強内容を身につけることを目的にするよりも、学習することで身につけられることに注目すべきです。例えば「自分で本が読めるようになりたい」だからひらがなの読み方を勉強する。「知りたい!」という知的好奇心を満たすために調べる。やればできるという「成功体験を積み重ねることで自信をつけさせたい」など、目的をはっきりさせた上で、子どもに合った勉強方法を見つけましょう。ワンポイントアドバイス:やる気がなくてスキルもないパターン興味がなくてやる気がない時は、興味を持ってもらえるように働きかけ、それでも興味を持たない場合「本当に今やる必要があるのか」を、もう一度考えてみましょう。できないことをできるようになってほしいという気持ちもあると思いますが、子どもの良いところに目を向けて、できることを伸ばしてあげることも大切です。お悩み5:子どもは“ほめて伸ばす”と聞いたけどそれって間違いなの?“ほめて伸ばす”という言葉が一人歩きして、何でもでもほめればいいという風潮が見られます。ですが、ほめられ続けると「失敗したらどうしよう」「できなかったらどうしよう」と、子どもはプレッシャーに感じることもあります。また、プライドが高い子にできて当然のことをほめると「自分はその程度しか評価してもらえない」と傷ついてしまうんです。極端な話、6歳の子に「すごい! 上手に歩けたね!」とほめても、嬉しくないどころかバカにされているように感じてしまいますよね。やみくもにほめるのではなく、子どものレベルより上のことができた時ほめるのが効果的。特に大事なのは“できたこと”(結果)だけではなく、できるまでのプロセス(過程)をほめること。できなかった時も、努力したことを認めて励ますことで自信に繋がります。子どもは、頑張ったことに対してほめられると認めてもらえたと嬉しくなります。また、できるのにやらない時に叱ることも、子どもの能力を認めていることになります。ほめることと叱ること、真逆のように感じますが、実はどちらも子どものことを認めている証になります。ほめるばかりではなく、『励ますことや叱ることも子どものやる気を伸ばすために必要』ということを頭に留めておきたいですね。
2018年09月25日専門家・プロ:陰山英男質問小5の息子が忘れ物や時間を守れないので困っています。とにかく忘れ物が多く、掃除当番などを忘れて帰ってしまったということもありました。時間も守れず、塾や習い事などにもよく遅刻しています。絵を描くことやゲームなど、好きなことをしていると集中しすぎて、時間を忘れてしまうようです。わたしが働いているので、塾や習い事がある日は、携帯のタイマーが鳴るようにセットしてみましたが効果はありませんでした。お友だちと遊ぶことよりも、一人でいるほうが好きですし、学校の行事などにも消極的で、協調性があまりないようです。好きじゃないことは、できるだけやりたくないという傾向が強く、夏休みの宿題もギリギリまでやる気配がありませんでした。小さいころからそういう傾向はありましたが、成長すれば改善するのではないかと思っていました。もしかしたら、発達障害なのではないかと思うこともあります。担任の先生には「そこまで心配しなくてもいい」と言われましたが、やはり心配です。カウンセリングを受けたほうが良いのでしょうか?また、ほかに改善する方法がありましたら教えてください。回答極端な忘れ物でお悩みですね。その内容を読みながら、わたし自身の子ども時代みたいだと思わず笑ってしまいました。わたしも子どものころから極端に忘れ物が多く、ずっと先生に叱られていました。そしてそれは大人になっても直らず、最近は何か忘れたとき、「歳からくる健忘症かな」と言うと、家族から「以前からずっとそうだった」と突っ込まれます(笑)。ネガティブに考えずに、対策を立てましょう天才的な野球選手である長嶋茂雄氏も忘れ物がひどく、野球場に子どもを連れて行っておきながら子どものことを忘れて、ひとりで帰宅したというのは有名な話です。ですから、お子さんのことはネガティブに考えないことが一番だと思います。人には長所短所が必ずあります。なかには、そう簡単には直らないような欠点をもつ場合もあるでしょう。また学校の先生も大丈夫と言っておられるなら、障害かどうかと心配されることもないと思います。それよりまず大切なのは対策です。メモを取る習慣とその時間を確保することわたし自身が忘れ物対策としてやっていることは、ことあるごとにメモをし、それを何回も見ること。メモはいつも持ち歩いているカバンの決まった箇所にしまい、毎朝、電車に乗ったらそこからメモを取り出してチェックする。このように、習慣にするための環境をつくっているのです。でも、そうは言ってもそれがなかなかできないからこそ、悩んでいるわけですよね。なぜそれができないか?それはメモをしたり、それを見る時間が確保されてないからではないでしょうか。本当に大切なのは、この時間の確保なのです。そのためには、朝食や夕食というような毎日決まった時間の前後に、今日明日中に必ずやることとあわせて、メモを書いたり、そのメモを読んだりする時間を確保するといいでしょう。その時間の確保がないままメモの重要性を子どもに伝えても、言いっぱなし、聞きっぱなしになってしまうのです。ひとりの時間を減らすことも忘れ物防止に最初はメモ帳に自分で書くことが難しい場合もあるでしょう。それならメモも工夫をして、自分のメモ帳に書かせるのではなく、冷蔵庫などに付箋で掲示してみたり、リビングにわが家の掲示板を用意し、そこに予定を書き込んだりするようなところから始めるのもいいでしょう。こうすれば家族全員で予定などを確かめる時間を作ることになりますから、家庭内全体の日程を確認することもできます。日程の確認が自分だけのことではなく、家庭のものとなる分、習慣化しやすくなります。気になったのは、ひとりでいることが多く、絵を描くことやゲームなどをしていることが多いということです。お子さんは、ひとりでいることに慣れて、それが心地よくなってしまっているのかもしれません。すると、どうしても自分の都合で動くことになりますから、忘れ物が増えます。休日などには友だちと外で体を動かすように促すことも、意外と忘れ物を減らすことにつながるかもしれません。友だちと遊ぶ時間が楽しみになってくれば、その予定を確かめることも楽しいことになるでしょう。最後に、確認の時間を取り習慣化に成功した、わたしの経験をひとつ。わたしは仕事でよくホテルに泊まるのですが、朝、部屋から出るとき、必ずといっていいほど、エレベーターのある方向とは違う方向に歩き出していました。そして、その理由を「方向音痴だから」と自分で思っていたのです。しかし、今はそうしたことはほとんどありません。なぜなら今は、最初部屋に入るとき、エレベーターからどう歩いてきたか、部屋の前の廊下ではどんなものが見えたか、確かめるようにしているからです。面倒でもその時間を必ずつくります。そして、出るときはすぐに歩こうとせず、入ったときのことを思い出してから歩き出すようにすることで、違う方向に行ってしまうことがなくなったのでした。このように、大人になってからも習慣づければ、解決することができます。お子さんもメモを取ることが習慣になり、困ることが減ってくれば、忘れっぽい性格をどう補うか、自分でも考えるようになるでしょう。最終的に困るのは本人なのですから。陰山英男(かげやまひでお)1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。兵庫県朝来町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。2003年4月尾道市立土堂小学校校長に全国公募により就任。百ます計算や漢字練習の反復学習を続け基礎学力の向上に取り組む一方、そろばん指導やICT機器の活用など新旧を問わず積極的に導入する教育法によって子どもたちの学力向上を実現している。近年は、ネットなどを使った個別の小学生英語など、グローバル人材の育成に向けて提案や実践などに取り組んでいる。2006年4月から立命館大学教授(立命館小学校副校長 兼任)に就任。現在は、立命館大学 教育開発推進機構 教授(立命館小学校校長顧問 兼任) 。全国各地で学力向上アドバイザーなどにも就任し、学力向上で成果をあげている。また、北は北海道,南は沖縄まで、全国各地で講演会を実施している。過去には、文部科学省 中央教育審議会教育課程部会委員,内閣官房 教育再生会議委員,大阪府教育委員会委員長などを歴任。著書多数。Webサイト
2018年09月12日専門家・プロ:中曽根陽子すぐキレる問題児。どうしたらいい?近ごろ、子どもの教育にたずさわる人たちから、「キレやすい、人の話を聞けない、すぐあきらめる、まわりの子に手をあげるなど、気になる子どもの割合が増えている気がする。」という話をひんぱんに聞くようになりました。公的な調査などで明らかになっているわけではありませんから実際に増えているのかははっきりとわかりませんが、子どもと直接ふれあう立場の人たちの生の声ですので、気になりますね。小学4年生のA君もその一人。「授業中に立ち歩く」「宿題をしない」「まわりの子に手をあげる」など、学校の先生からいつも怒られる問題児でした。お母さんはなんとかしなくては! と、A君が学校から帰ったらすぐに、お母さんが宿題の有無をチェックして、つきっきりで宿題をさせました。すぐに飽きてしまうA君をきつく叱るお母さん。宿題が終わらないと夕食の支度もできないので、食事の時間が遅くなることもたびたび。宿題が終わったら制限なしにゲームをしてもいいことにしていたので、寝るのも遅くなりがち。朝はぎりぎりまで寝かせてお母さんが起こす。忘れ物をしてはいけないので学校の準備はお母さんがする。という対応をしていたそうです。果たしてうまくいくようになったのでしょうか?結果は×。少しも良くならないどころか、どんどんひどくなり、家でもキレることが多くなっていきました。さて、このお母さんの対応のなにが問題なのでしょうか?生活習慣の乱れから悪循環にこのお母さんの対応で問題だったのは、宿題をさせることを優先順位の一番にしてしまったことです。その結果、日によって夕食や入浴、寝る時間がまちまちになり、朝起きられないという生活習慣の乱れにつながりました。また、宿題ができなければ感情的にきつく叱り、反対に学校の用意など子どもが自分でやるべきことを親が代わりにやって甘やかすというように、子どもの自律を妨げる対応をしていました。その結果毎日の生活が落ち着かず、子どももお母さんもイライラがつのり、きつく叱るとA君はますます反発するという悪循環に陥ってしまっていたのです。これは発達脳科学の専門家、成田奈緒子先生のところに訪れた実際の親子の話です。実は、このコーナーの第2回「キレる子どもたちの原因は眠りにあり」で紹介したように、規則正しい生活を送らないと、さまざまな問題が起きてきます。そこで成田先生は、①夕食は19時にとる。②21時までに寝る。この2つだけを守るようにA君に約束させて、宿題はできてもできなくても気にしないでいいと伝えました。さらに、お母さんにはときおり、わざと食事の支度が間に合わない事情をつくってA君に手伝ってもらって、できたら必ずありがとうと言う。お父さんにはできるだけいっしょに食事をする機会を増やし楽しい会話をするなど、親の関わり方を変えるようにアドバイスしました。すると2カ月後、A君はすっかり落ち着き、問題児どころか、やり残した宿題も、朝自分で起きてやるようになったそうです。よい脳が育つ環境を用意すれば、何歳からでも脳は育て直せるそんな魔法のようなことがどうして起こったのでしょうか。そのかぎを握るのが生活環境を整えることです。成田先生は次の6つを「親など周囲が子どもに与える、脳を育てる生活環境」として整理しました。ブレない生活習慣を確立する。調和がとれたスムーズなコミュニケーションを図る。親子がお互いを尊重して協力しあう体制をつくる。怒りやストレスへの適切な対処法を共有する。親子が楽しめるポジティブな家庭の雰囲気をつくる。親はブレない軸を持つ。 これは、わたしがこれまでいろいろなテーマでお伝えしてきた6つの栄養素とも共通することが多いなと思います。(6つの栄養素については第1回をご参照ください)脳を育てる生活環境をつくるには、まずは、起きる時間、寝る時間、食事の時間といった基本的な生活リズムを整えること。そして、子どもを感情的にコントロールしたり、反対に手を出して甘やかしたりせず、共同生活を送る一員として尊重しあうことが大切です。成田先生は、何歳からでも、どんな子でも脳は育て直せると言います。もし、困ったなと思うことがあってもあきらめずに、やってみてくださいね。※脳を育てる6つの生活環境を生活にとり入れるための具体的な方法は、『子どもの脳を発達させるペアレンティング・トレーニング』(成田奈緒子上岡勇二著、合同出版)で紹介されています。子どものよい育ちは、よい脳の育ちから関連記事失敗力第1回失敗できない人は、成功できません失敗力第2回 キレる子どもたちの原因は眠りにあり中曽根陽子教育ジャーナリスト教育雑誌から経済誌、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。子育て中のママたちの絶大な人気を誇るロングセラー『あそび場シリーズ』の仕掛人でもある。 “お母さんと子ども達の笑顔のために”をコンセプトに数多くの本をプロデュース。近著に『1歩先行く中学受験成功したいなら「失敗力」を育てなさい』『後悔しない中学受験』(共に晶文社)『子どもがバケる学校を探せ』(ダイヤモンド社)などがある。教育現場への豊富な取材や海外の教育視察を元に、講演活動やワークショップもおこなっており、母親自身が新しい時代をデザ インする力を育てる学びの場「Mother Quest 」も主宰している。公式サイト
2018年09月04日子どもの便秘を「この子の体質だから」とあきらめていませんか?医学博士・松生恒夫先生によれば、がんこな便秘でも病院にかかる前に家庭で食生活に気をつければ、あるていど解消が期待できるとか。松生先生の新刊 「子どもの便秘は今すぐなおせ」 (主婦の友社)から、今日から始められる快便のための食事法を紹介してもらいました。もちろん、子どもだけでなく、ママ自身の便秘解消にも役立つはず!お話をうかがったのは…松生クリニック院長 松生恒夫(まついけ つねお)先生医学博士。大腸内視鏡検査や生活習慣病としての大腸疾患等を専門とする。30年間で4万人の腸を見てきた腸のエキスパート。なるべく薬に頼らない便秘解消のための食生活指導などを行っている。新刊に「子どもの便秘は今すぐなおせ」(主婦の友社)がある。■子どもの便秘「快便のサイクルを完成させる」3つの生活習慣松生先生のクリニックには、3、4日どころか1週間も便が出ないような便秘体質の患者さんが相談に来ています。「子どもを含め、あらゆる年代の人が来ますが、20歳ぐらいの若い人も多いですね。いつから便秘なのですか? と質問すると、『ものごころついたときから』と答える。腸内細菌のバランスは子どものうちにある程度決まるので、お母さんたちにはできるだけ早いタイミングで“腸育”を心がけてほしい。やはり幼少期に快便の習慣をつけることが大事です」(松生先生)“腸育”にはどんな方法があるのでしょうか? 「子どもの便秘は今すぐなおせ」で紹介されている生活習慣として気をつけるべきことは次の3つです。1)寝起きに1杯の水を飲み、1日3食きちんととる腸がうんちを送り出す“ぜん動運動”は、からっぽの胃に朝食が入ってくる朝が最も強く、消化に時間のかかる固形物よりまず水を飲むのがベストだそうです。「水で腸に刺激を送り込みましょう。子どもの寝起きに、コップ1杯の水を出してあげるといいと思いますよ。朝昼夕の3食をとるといいのは、規則的な食事をすれば、腸の動きも規則的になるから。決まった時間に排便できるようにするために、心がけてください」(松生先生)2)寝る3時間前は食べない大人のダイエットでも寝る前は食べないというのは鉄則ですが、子どもを快便に導くためにも、寝る3時間前からはものを食べさせないよう注意すべきとか。「就寝前に食事をすると、うんちのリズムをつかさどる自律神経が乱れてしまいます。また、朝の“大ぜん動”が起こりにくくなりますね」(松生先生)3)便意をがまんさせないオムツをしている間はだいじょうぶですが、トイレトレーニングが終わってから出てくる問題が、子どもがうんちをがまんしてしまうということ。かたいうんちを出すと痛いので怖がってしまったり、友だちと遊ぶのに夢中になってトイレに行かなかったり。まだ就学前の子どもでも、そういう傾向があります。「がまんすることが続くと、『うんちがたまった』と直腸が認識しにくくなり、便意が起こらなくなります。『したくなったらすぐ出す』習慣をつけることが大事です」(松生先生)具体的には、朝、時間にゆとりをもってトイレにすわり、便を出す習慣をつけること。また、おけいこごとや塾の時間などに「便意をがまんせざるをえない」状況を減らすこと。ママがこまめに「うんち? トイレへ行こう」などと声をかけるといいかもしれません。■子どもの便秘「便秘解消に効く食べ物ベスト3はこれ!」一般的なイメージとして、胃腸の働きを良くする食材というと、ヨーグルトや食物繊維いっぱいのキャベツなどを思い浮かべますが、松生先生によれば、便秘解消に効く食べ物は「キウイ」「植物性乳酸菌」「オリーブオイル」とちょっと意外なもの。この3つにはどんな働きがあるのか、聞きました。1)キウイオリゴ糖がたっぷり含まれていて、食物繊維のバランスが理想的なフルーツ。便をやわらかくし、カサも増してくれます。「私の調査によれば、便秘ぎみの中学生・高校生とその母親に1日1個のキウイを2週間食べてもらったところ、その約7割が1日1回以上の便通になったということ。キウイがきらいな子なら、バナナでも同じような効果が期待できます」(松生先生)2)植物性乳酸菌乳酸菌といえばヨーグルトを思い浮かべますが、松生先生によれば、「残念ながら、ヨーグルトに含まれる動物性乳酸菌(通称)は、胃で死んでしまう場合が多い。植物性乳酸菌(通称)をとるように心がけてください」とのこと。「植物性乳酸菌とは、漬物、甘酒、みそなどの発酵食品に含まれるもの。生きて大腸に届き、善玉菌を増やしてくれます」(松生先生)3)オリーブオイル体に良い油として知られるオリーブオイルは、便通も良くするのでしょうか。「小腸で吸収されにくいので、腸をやさしく刺激してくれる天然の下剤ともいえます。また、それこそ潤滑油として、うんちのすべりをスムーズにしてくれます」(松生先生)ほかにも、海藻やきのこ、もち麦なども便秘解消に役立つそうです。どれもスーパーで買える食物で、日常の食事にとり入れやすいものばかり。子どもが便秘ぎみというママは、料理するとき、この3つを積極的にとり入れてみることをおすすめします。■子どもの便秘に効果的! 腸元気レシピ「キウイシャベーット」「子どもの便秘は今すぐなおせ」には腸が元気になる具体的なレシピがたくさん紹介されています。その中から、火を使わずにできる夏場にピッタリのかんたんメニューをピックアップ。子どもが喜ぶキウイのシャーベットデザートです。食べやすいので、食欲がないときにも試してみては?「キウイシャーベット」(レシピ:荻田尚子)【材料】キウイ 2個砂糖 40g【作り方】1. キウイは皮をむいて5mm厚さの輪切りにする。冷凍用保存袋に入れて砂糖を加え、袋の口を閉じる。上から軽くもみ、砂糖をとかす。2. 平らにならし、袋の空気を抜いて口を閉じ直し、バットなどにのせて冷凍室で冷やしかためる。3. かたまったら取り出し、室温で少しやわらかくする。めん棒でたたいてあらくつぶし、さらにめん棒を押しつけて転がす。やわらかくなったら、軍手をして袋の上からもんでつぶす。キウイをそのまま食べると、すっぱさが強い場合があり、子どもは敬遠しがちですよね。このレシピなら簡単なうえ、砂糖で甘みが増し、キウイもたくさん食べられるので、暑い季節にぴったりですね。「子どもの便秘解消のために、食事指導に一番力を入れています」と語る松生先生。うちの子、ちょっとうんちがかたいな、便通がないのにおなかを痛がるなど、便秘が疑われるときは、まず食事や食生活を見直してみましょう。参考図書: 「子どもの便秘は今すぐなおせ」 (主婦の友社)松生 恒夫著 1,200円(税別) 子どもの腹痛・イライラ・学校嫌い…それ、「便秘のせい」かも! ? 「母親が便秘なら子どもも便秘の可能性大! 子どもは約5割が便秘ともいわれているのに、気づかない親が多いのです」。便秘外来で多くの子どもを診療してきた松生恒夫医師が、子どもの隠れ便秘のチェック方法、改善法を紹介します。新生児〜6カ月、6カ月〜3歳まで、3〜12歳、12歳以降ではつまる場所、原因、対策などが違う子どもの便秘。特に幼児~小学生ママ必見の1冊です。
2018年08月29日子どもへの声かけを学ぶ!『発達障害とグレーゾーン子どもの未来を変えるお母さんの教室』発達障害のグレーゾーンのお子さんがいるお母さんに、具体的なシチュエーションを想定して、肯定的な言葉がけができるテクニックや好ましくない行動をされたときの対応などをその理由とともに解説しています。幼少期に「体が弱く、手のかかる子」だったという著者の吉野加容子さん。自己肯定感が低かったそうですが、「苦しいよね。よく頑張ってるよ」と声をかけられてから、心が軽くなる経験をし、コミュニケーションや声かけの大切さを知りました。吉野さんは発達科学コミュニケーショントレーナー、臨床発達心理士。特別支援教育や発達心理学を学び、脳科学の研究を行っています。本の中では、「まずは3ヶ月やってみる」というスモールステップが設けられているので、始めやすいかもしれません。15年ほど発達支援に関わっていた吉野さんが、頑張るお母さんの気持ちに寄り添って声かけのアドバイスをくれます。(発行: 2018/7/1)子育ての気持ちが楽になるヒントを一問一答で!『「ウチの子、発達障害かも?」と思ったら最初に読む本』約20年にわたり、3,000人もの発達障害のある人と接してきた横須賀市療育相談センター所長で小児精神・神経科医の広瀬宏之先生の著書です。この本は、「発達障害かも?」と疑問を持ったり、発達障害の診断を受けて間もない子の保護者に向けられています。「診断されたら、何をしたらいいの?」「子どもの障害を受け入れるのがつらい」「保育園や幼稚園、学校にはちゃんと行けるの?」など、多くの保護者がぶつかる疑問や不安に対して、一問一答方式で、特性や困りごとへの対応などを紹介しています。1つの質問に対しての解説は1〜2ページにまとめられているので、気になる部分を中心に読み進められます。知らないことが多いと不安も多いですが、あらかじめ困りごとへの準備ができたり、先のことが分かると、いざというときに落ち着いて対応ができるようになりそうですね。(発行: 2018/7/10)保育者向け雑誌から発達障害の特集が登場!『PriPri特別編集発達支援「困った!」を抱える子の保育』これまで保育者向けの雑誌「PriPri」の中で数ページを使って連載してきましたが、10年の連載を経て現場からの強い要望から発達支援に特化した一冊として登場しました!子どもの困りごとの例やその対応をはじめ、園内研修向けの"困りごと擬似体験"の方法など、保育者が発達障害のある子どもに寄り添えるようなコンテンツがまとめられています。また、保護者と連携したサポートなども提案。巻末には幼稚園の指導計画の事例などもあり、実践のヒントになりそうです。同時に、食事やトイレの生活習慣をうながす絵カードの使い方も紹介されているので、さまざまな場面で活用したいですね。ほかにも、保育のノウハウだけでなく、特性を生かし、15歳でコーヒー焙煎士の道を選んだ岩野響さんや家族のインタビューなど、さまざまな内容が盛り込まれています。(発行: 2018/6/28)子どものころからの苦しみを救った自分へのメッセージ『ヘン子の手紙 発達障害の私が見つけた幸せ』自分と夫に宛てた作文「ヘン子の手紙」が第51回NHK障害福祉賞で最優秀作品に選ばれ、その後テレビでドキュメンタリーが放送されるなど話題になった著者・伊藤のりよさんの著書です。発達障害のある2人の子どもを育てる中で、36歳で自分にも発達障害があることに気づいた伊藤さんが、これまでの人生をつづっています。大人に怒られることが多かった子ども時代、生きる意味を見出せなくなったほどの特性による生きづらさ、葛藤もありのままに振り返っています。伊藤さんは生きづらさが発達障害のためだったと分かり、ホッとしつつも、対処が分からず精神的に追い込まれてしまいました。そこで自分への手紙を書いたことで抱えていたものと向き合うことができたそうです。発達障害のあるなしに関わらず、読む人が今の自分を見つめ直すことができる一冊です。(発行: 2018/7/31)医師であり発達障害当事者の著者が解説『自分の「人間関係がうまくいかない」を治した精神科医の方法』30代半ばにアスペルガー症候群とADHDがあると気づいた精神科医の西脇俊二さんが、自身の経験などから人間関係に悩みがある人へ解決のヒントを集めた本です。「なぜか相手をいつも怒らせてしまう」「学校や職場など、集団での生活が苦痛」といった悩みがある人に向けて、自身が行って改善があった対処法などを紹介しています。また、「人間関係がうまくいっていない人」とのコミュニケーションのポイントもシチュエーション別にまとめられています。当事者と夫婦や友人、部下、上司といった立場で関わりがあり、悩みを抱えている人も参考になりそうです。コミュニケーションにとらわれず、好きなことにのめり込むことで、社会に影響を与える仕事ができたり「特性は悪いことばかりではない」というメッセージも。自分がつまずいた経験があるからこその視点が詰まっています。(発行:2018/7/25)
2018年08月08日起立性調節障害(OD)とは?出典 : 起立性調節障害(OD)とは、思春期に起こりやすい自律神経機能不全のことです。人が立ち上がると、血液が下半身に集まり、血圧の低下や心拍数の増加が起こります。通常、これらの変化ができるだけ少なくなるように、自律神経が働くようになっています。しかし、それがうまく行かないためにさまざまな症状が現れるのが、起立性調節障害なのです。具体的な症状としては、立ちくらみや失神、朝起きられない、倦怠感(だるさ)や動悸、頭痛といったものがあります。軽症であれば治療が必要ないことも多いのですが、重症になると日常生活に支障が出て、不登校やひきこもり状態になることもあります。症状が長く続くと、その後の社会生活にも大きな影響を及ぼすため、早い段階で適切に対処することが重要です。しかし、一部ではまだ理解が進んでおらず、周囲に「ただのなまけ」「気持ちの問題」と誤解されてしまう場面も多いといわれています。起立性調節障害の主な症状出典 : 日本小児心身医学会によると、起立性調節障害には主に以下のような症状があるとされています。・立ちくらみ、朝起床困難、気分不良、失神や失神様症状、頭痛など。症状は午前中に強く午後には軽減する傾向があります。・症状は立位や座位で増強し、臥位にて軽減します。・夜になると元気になり、スマホやテレビを楽しむことができるようになります。しかし重症では臥位でも倦怠感が強く起き上がれないこともあります。・夜に目がさえて寝られず、起床時刻が遅くなり、悪化すると昼夜逆転生活になることもあります。実はこれらの症状は、生活習慣の乱れや、不登校でも起きうる症状です。そのため、体の病気ではなく気持ちの問題だと誤解されることが多くあるのです。日本小児心身医学会が定めたガイドラインでは、起立性調節障害の診断方法が定められています。1)立ちくらみ、失神、気分不良、朝起床困難、頭痛、腹痛、動悸、午前中に調子が悪く午後に回復する、食欲不振、車酔い、顔色が悪いなどのうち、3つ以上、あるいは2つ以上でも症状が強ければ起立性調節障害を疑います。2)鉄欠乏性貧血、心疾患、てんかんなどの神経疾患、副腎、甲状腺など内分泌疾患など、基礎疾患を除外します。3)新起立試験を実施し、以下のサブタイプを判定します。(1)起立直後性低血圧(軽症型、重症型)(2)体位性頻脈症候群(3)血管迷走神経性失神(4)遷延性起立性低血圧起立性調節障害が疑われる場合、まずは他の病気が原因になっていないかを調べる必要があります。貧血や心臓の病気などでも、立ちくらみなどの似たような症状を起こすことがあるためです。病気の有無を調べるためには、血液検査やレントゲン検査、超音波検査などが必要に応じて行われます。この時点で原因となっている病気が分かれば、適切な治療を行うことで改善する可能性があります。他の病気でないことが分かった場合、起立性調節障害と確定するために新起立試験が行われます。新起立試験とは、起立前後の血圧や心拍数がどのくらい変化するかを見る検査のことです。この変化の度合いによって、起立性調節障害の中でどのサブタイプに属するか、重症度はどのくらいかを見ることができます。起立性調節障害の4つのタイプ新起立試験によって分類されるサブタイプは4つあります。それぞれのサブタイプについて、以下で説明していきましょう。起立直後性低血圧は、立ち上がった直後に血圧低下や血圧回復の遅れが見られる状態のことを言います。通常、人間は立ち上がったときの血圧低下を予防するため、交感神経が活発になってノルアドレナリンという物質が出るようになっています。しかし、起立性調節障害の子どもは、このノルアドレナリンの分泌量が少ないために、血圧を維持することができないのです。起立直後性低血圧と診断する具体的な値として、以下のような条件が定められています。・起立後血圧回復時間≧25秒または、・起立後血圧回復時間≧20秒かつ、非侵襲的連続血圧測定装置で求めた起立直後平均血圧低下≧60%軽症型の場合は、起立中に徐々に血圧が回復していきますが、重症型の場合は血圧低下が一定時間持続すると言われています。体位性頻脈症候群の場合は、立ち上がるときに血圧低下が見られません。その代わり、心拍数に著しい増加が見られるのが、体位性頻脈症候群です。立ち上がったときに、下半身に血液がたまっていると、上半身の血液量が少なくなるため、心臓の動きは遅くなります。この動きを維持しようとするため、心拍数が速くなってしまうのです。具体的な数字としては、以下のように定められています。・軽症〜中等症: 起立時心拍数≧115または心拍数増加≧35・重症: 起立時心拍数≧125または心拍数増加≧45起立直後性低血圧や遷延性起立性低血圧といった、別のサブタイプと合併していることもあります。血管迷走神経性失神は、起立中に突然血圧が下がって意識レベルが下がったり、意識を失ったりする状態を指します。立ち上がったときに、静脈を流れる血液量が少なくなって、心臓が激しく動くようになると、反射的に自律神経が興奮し、活動を止めてしまうことがあります。その結果起こるのが、血管迷走神経性失神なのです。ひどい場合には、心停止することもあるとされています。軽症であれば、約4割の人が大人になるまでに経験すると言われており、治療をする必要がないことも多いです。しかし、起立直後性低血圧や体位性頻脈症候群と合併していることもあり、その場合には治療が必要となります。遷移性(せんいせい)起立性低血圧は、起立直後の血圧や心拍数は正常であるものの、3〜10分たってから血圧低下(収縮期血圧が横になっているときの15%以上、あるいは20mmHg以上の低下)が見られるというものです。軽症であれば日常生活への影響は少ないものの、中等症ではやや影響が見られるようになり、重症ではほぼ毎日支障をきたすようになります。起立性調節障害の多い年代出典 : 起立性調節障害は、思春期特有の病気と言われています。発症する年齢は10〜16歳が多く、小学生の約0.5%、中学生の約10%にこの病気があるとされています。男女比で見ると女子の方が多く、男子よりも1.5〜2倍多いです。出典:起立性調節障害(OD)|日本小児心身医学会起立性調節障害の合併症出典 : 起立性調節障害の合併症としては、以下のようなものが挙げられます。・身体面: 睡眠障害、ときに痙攣を伴う失神、著しい頻脈・心理面、行動面:: 集中力や思考力の低下、日常生活の活動量の低下、長期間にわたる欠席また、発達障害のある子どもが起立性調節障害を発症することも少なくありません。発達障害のある子どもは、ストレスを感じやすい傾向があると言われています。これが原因で自律神経に影響を及ぼし、起立性調節障害を起こしやすいと言われています。起立性調節障害と似た病気出典 : 起立性調節障害と似た症状が現れる病気がいくつかあります。その中から、「うつ病」と「脳脊髄液減少症」についてご紹介します。起立性調節障害では集中力の低下や活動量の減少などが見られるため、しばしば心の病気=うつ病と診断されることがあります。しかし、うつ病は昼夜問わず無気力などの症状があるのに対して、起立性調節障害では夜になると元気になるという傾向があります。起立性調節障害ではなくうつ病だと診断された場合、抗うつ薬の服用によって起立性低血圧が起きてしまうこともあり、症状が悪化する可能性もあります。起立性調節障害と間違えられやすい病気として、脳脊髄液減少症も指摘されています。脳脊髄液減少症とは、脳や脊髄のまわりにある脳脊髄液が、何らかの原因で漏れることを言います。脳脊髄液が減少すると起こる症状の中に、起立したときの頭痛やめまい、血圧・脈拍の異常などがあります。このような症状があることから、起立性調節障害と間違えられやすいのです。発症する原因には、交通事故でのむち打ちといった外傷などがありますが、原因不明な場合も少なくありません。病気としてはまだ広く知られておらず、発見されるのに時間がかかることも多いようです。起立性調節障害が疑われるとき、病院はどこを受診したらいい?出典 : 起立性調節障害は思春期特有の疾患であることから、診察は主に小児科で行われています。診断は、日本小児心身医学会が定めたガイドラインに沿って行われます。ただし、サブタイプを診断するために必要な機械が備わっている医療機関は、まだ全国でも数ヶ所しかありません。そのため、機械がない医療機関では簡易的な方法を用いて検査を行っています。診断か可能かどうか、事前に医療機関に確認してみても良いでしょう。起立性調節障害は治るの?出典 : 起立性調節障害は、軽症であれば適切な治療によって2〜3ヶ月程度で改善すると言われています。しかし、中には学校生活や日常生活に支障をきたす重症例もあり、その場合は社会復帰に2〜3年以上という長期間を要することもあります。起立性調節障害の治療と対処法出典 : 起立性調節障害の治療と対処法は、大きく以下の4つに分けられます。・疾病教育・非薬物療法・学校との連携・薬物療法これらに加えて、必要に応じて心理療法が行われることもあります。それぞれの内容について、以下で具体的に見ていきましょう。起立性調節障害を治療する上で重要なポイントは、本人と保護者が「起立性調節障害は体の病気である」と理解できることです。本人がいくら不調を訴えても、保護者が「夜更かしするからだ」「なまけているだけだ」として叱ったり、無理やり起こそうとすることも多く、親子関係が悪化している場合も少なくありません。まずは、起立性調節障害がどのような病気なのか、治療して改善するには時間がかかることなどを説明します。本人と保護者が治療が必要であることを理解した上で、正しい治療が行えるようにしていきます。起立時に症状が起こる起立性調節障害では、日常生活の中で動作や食事に気をつけることで、症状を起こしにくくすることができます。▪️体を起こすときの動作に注意する寝た状態や座った状態から急に立ち上がると、脳の血流が一気に低下して気分不快などを生じやすくなるため、ゆっくりと体を起こすようにします。特に、朝は脳の血流が悪い状態なので、注意が必要です。頭を起こさず、下げた状態でゆっくりと立ち上がることが大切です。▪️水分と塩分をしっかりととる水分摂取量が少ないと、体の中の血液量が少なくなり、血圧を維持することが難しくなってしまいます。塩分は通常であれば控えた方が良いとされていますが、起立性調節障害の子どもは塩分摂取量が少ない傾向にあります。塩分を摂取すると体は水分を維持しようとするため、血圧低下を防ぐことができるとされています。水分は1日1.5〜2リットル、塩分は1日10〜12gを目安に摂取します。▪️生活リズムを整える起立性調節障害の子どもは、朝起きられないために起床が遅くなり、寝る時間も遅くなりがちです。寝る時間が遅くなりすぎないよう、毎日23時には布団の中に入るようにしましょう。できるだけ入眠しやすくなるよう、環境を整えることも大切です。寝る前には早めに部屋の明かりを落としたり、朝は早い時間にカーテンを開けて、日光に当たるようにします。▪️適度な運動を行う毎日の適度な運動も、起立性調節障害を治療する上で大切です。筋力が低下すると血圧が下がりやすくなるほか、自律神経のバランスを崩しやすくなって、症状が悪化してしまいます。▪️暑い場所を避ける気温や室温が高いと、血管が広がって血圧が下がりやすくなります。さらに汗をかくと体内の水分が少なくなり、より症状を悪化させてしまいます。外にいる場合は日影にいるようにしたり、空調を調節したりといった工夫をするようにします。起立性調節障害と診断された場合、学校との連携も大切なポイントです。教師も起立性調節障害について十分な知識がないために、「なまけている」「気の持ちようだ」と思われてしまうことも少なくありません。起立性調節障害は体の病気であること、いつ体調不良が起きてもおかしくないことを理解してもらい、子どもが適切なサポートを受けられるよう、協力を仰ぎましょう。学校側に依頼する具体的なサポート方法としては、以下のような項目が挙げられます。・体調不良が起こったときには速やかに横にする・静止した状態での立ちっぱなしの姿勢を3〜4分以上続けない・暑さは避け、水分補給を欠かさないようにする・登校する時間は本人の体調に合わせるようにする・登校を促すために、教師やクラスメートが迎えに行くことはストレスとなる可能性があるので、本人と保護者の希望を聞く・欠席が何日も続くようなときは、毎日の連絡は保護者の負担になることがあるため、行ける日の朝に連絡をするようにする適切なサポートをすることで、起立性調節障害を持つ子どもの精神的な負担は軽減することができます。実際にどのようなサポートを依頼するかについては、担当医とも相談して、学校側に伝えると良いでしょう。薬を使った治療は、非薬物治療を行った上で進めていきます。起立性調節障害の治療に使用される薬にはいくつか種類があり、ガイドラインではサブタイプごとに適した薬剤が掲載されていますが、効果は個人差があるので、必ずしもこれでなければならないというわけではありません。薬の種類は、主に以下のようなものがあります。・ミドドリン塩酸塩: 血管を収縮させて、血圧を上げる薬。起立直後性低血圧と対位性頻脈症候群の第1選択薬・アメジニウムメチル硫酸塩: 交感神経の機能を亢進させる薬。副作用として、起立時に頻脈を起こすことがある・プロプラノロール: アドレナリンなどの作用を弱め、心拍数を低下させて、血管を収縮させる薬。起立性調節障害では、対位性頻脈症候群だけに使われる効果が現れるまでに1〜2週間かかることもあるため、その点を子どもにも理解できるように説明しておきましょう。ミドドリン塩酸塩アメジニウムメチル硫酸塩プロプラノロール塩酸塩子どもが起立性調節障害と診断されたら、どんなことに気をつけたらいい?出典 : もしもご自身の子どもが起立性調節障害と診断された場合、まず気をつけたいのが「平常心を保つ」ことです。起立性調節障害の治療には時間がかかるため、「どのくらいで良くなるのか」「学校に行けるようになるのか」など、保護者が不安になってしまうことも少なくありません。起立性調節障害は体の病気であると分かっていても、不安を感じることはあると思います。しかし、不安から子どもを叱ってしまったり、イライラした気持ちを表に出したりしてしまうと、子どもとの関係が悪くなってしまうかもしれません。まずは平常心を保つという心構えを大切にした上で、日常生活のサポートをしていきましょう。毎日の生活の中では、起立性調節障害の治療の中で説明した、「非薬物療法(日常生活における注意点)」を工夫して行っていくことが大切です。起立性調節障害の子どもは朝起きるのが苦手なので、生活リズムの改善は難しいことが多いです。すぐに改善することはできないと理解した上で、子どものサポートを行っていきましょう。また、家族全体でルールを共有し、一定の生活パターンを送ることも有用です。テレビを見る時間を決める、夕食は全員で食べるなど、家族と話し合って可能なものからルールを作ってみると良いでしょう。それらの生活パターンが、子どもの体のリズムにも良い影響を与えてくれます。起立性調節障害を持つ子どもは、脳の血流量が少なくなっているため、授業に集中できずに学力が低下したり、欠席が続くと授業に遅れてしまうこともあります。起立性調節障害の場合、夕方から夜は比較的元気に過ごせることも多いです。学業面が心配な場合、学校に放課後の補習をお願いしたり、塾や家庭教師を活用したりしても良いでしょう。起立性調節障害の子どもをサポートする上で、子どもに無理をさせないこと、家族でしっかりと話をすることも大切なポイントです。保護者が良かれと思って、朝無理に起こしたり登校を促したりすることが、反対に子どものストレスとなってしまうことも考えられます。また、保護者が心配しすぎないようにしましょう。起立性調節障害の治療には時間がかかりますし、考えすぎると保護者も精神的に疲れてしまいます。治療やサポートは、子どものペースに合わせて進めていくことが大切です。まとめ出典 : 起立性調節障害は、気持ちの問題だと誤解されやすい病気ですが、体の病気です。人によっては治療が必要なこともあり、回復するまでに時間を要することも少なくありません。病気そのものの認知度もまだ低いため、起立性調節障害と診断されずに、苦しい思いをしている子どもや保護者も多くいると考えられています。適切な治療をすることで、起立性調節障害の症状は改善する可能性があります。もし該当する症状や心配な症状があるようであれば、診断が可能な小児科のある医療機関を受診してみてはいかがでしょうか。起立性調節障害(OD)|日本小児心身医学会
2018年07月22日夏野菜のおいしい季節になりました。夏バテ予防に効果があると言われている夏野菜ですが、野菜が苦手なお子さんに手を焼いている方も多いですよね。そこで今回は上手に夏野菜を料理にとり入れるために、新鮮な夏野菜の見分け方と、栄養士のHARUKAさんに聞いた子どもの苦手を克服する夏野菜レシピをご紹介します。おいしい夏野菜の選び方夏野菜は夏に成熟し、収穫する野菜を指します。代表的なものといえば、トマトやナス、キュウリ、オクラ、トウモロコシ。これらの野菜はハウス栽培などにより1年中スーパーなどで買うことができますが、本来は夏が旬の野菜。旬物は栄養価が高いうえに、安く買うことができ、料理に生かさない手はありません。おいしい旬の野菜ですが、さらにおいしく食べるために、新鮮な野菜を見分けるポイントを押さえておきましょう。トマト・色むらがなく、全体的に赤い・ヘタがピンと立っている・ヘタと反対側に、放射線状の白い線が均等に表れている・持ったときにずっしりと重みを感じるナス・ハリがあってつやつやした紫色・ヘタのとげがするどく、触ると痛みを感じる・ヘタの筋がくっきりとしている・ヘタのすぐ下が太いキュウリ・表面のいぼがするどく、チクチクする・太さが均一・ヘタがしっかりと立っている・全体的に濃い緑色オクラ・全体的に産毛に覆われている・成長しすぎていない、小ぶりなもの・全体的に濃い緑色・ヘタが黒ずんでいないトウモロコシ・ヒゲの量が多く、茶褐色・皮がみずみずしく緑色・持ったときにずっしりと重みを感じる・中身を見ることができる場合、粒が揃っていることなお、トウモロコシは鮮度を保つために皮つきを選ぶほうがおすすめです。全体的に言えることは、見た目にみずみずしさがあり、色つやのいいものということです。また、手に持ったときに重いほど、中身が詰まっている証拠。ポイントを押さえていれば、買い物に行ったときに迷わずに済みますね。夏野菜レシピ今回は、トマトとオクラとナスを使った料理を教えてもらいました。どれも簡単なので、お子さんと一緒に作ってみてください。自分が作った料理は食べたくなる傾向があるようで、食べ物に興味をもつきっかけにも。【トマトの苦手克服レシピ】トマトが好きな子どもには、切ってお皿に盛るだけで手軽に食べられるのですが、好きでない子どもにとってはハードルの高いもの。そこでトマトを調味料と和えて、しっかり味付けし、独特の風味を抑えましょう。トマトの中華風サラダ(材料)・トマト中サイズ2個・砂糖大さじ1・ごま油小さじ1.5・中華だし小さじ1・酢小さじ1・しょうゆ小さじ1・すりごま大さじ1(作り方)1.トマトは乱切りにする2.トマト以外の材料を混ぜて、そこにトマトを和えれば完成【オクラの苦手克服レシピ】オクラを刻んでわからなくするのも1つですが、オクラに対する苦手意識を変えたいのであれば、あえて中身を見せるカットの仕方で包み隠さずオクラを全面に押し出してみましょう。筆者の娘もオクラは苦手なので見た目で拒否していたのですが、「一口だけ」と食べさせたあとはパクパク喜んで食べ、おかわりをねだるほどでした!オクラバター(材料)・オクラ・バター・しょうゆ(作り方)1.オクラをさっと湯がいて、ヘタを切り落とし、縦半分に切る2.切り口にバターを乗せ、しょうゆをほんの少し垂らして出来上がり【ナスの苦手克服レシピ】カレーライスは子どもの好きな鉄板メニュー。また作り手としても手軽にできるため、親子ともどもうれしい料理の1つです。ナスはしっかり炒めて食感と風味を変え、カレーになじませることで苦みを感じにくくさせることができます。ナスとひき肉のカレー(材料)・ナス2〜3本・豚ひき肉200g・サラダ油大さじ3・にんにく(すりおろし)ひとかけ・しょうが(すりおろし)ひとかけ・ローリエ1枚・コンソメの素少々・カレールゥ(好みの物)(作り方)1.ナスはヘタを切り落とし、1.5cm角に切る2.鍋にサラダ油を熱し、にんにくとしょうがを弱火で香りが立つまで炒める3.水気をきったナスを加え、弱火〜中火でじっくり、ナスがクタクタになるまで炒めるひき肉を加え、色が変わるまで炒める(お好みで、カルダモンを加えるととても良い香りに)4.水、ローリエを加え、アクを取ったらコンソメを入れて10分ほど煮込む5.火を止め、ルゥを割り入れ弱火で10〜15分煮込んだら完成暑さで疲れやすい夏ですが、規則正しい生活習慣に加えて、食生活に旬をとり入れることで元気に夏を乗り切りたいところ。ぜひ参考にしてみてくださいね!<文・写真フリーランス記者:沖田かへ>
2018年07月13日アトピー性皮膚炎や肌の乾燥によるは、1度痒みが起きると なかなか改善しないもの。ですがステロイドなどの強い薬は、副作用が心配です し、まずは根本からアレルギー体質に合った食事をすることが大切ですよね。そこで今回は、薬に頼りたくない方のための、アトピーや肌の乾燥による肌荒れに効く食べ物や控えた方がいい食事をご紹介します。なるべく病院にかからず…筆者の子供は、義理の実家への帰省でペットにアレルギーを起こし、そこから頻繁にアトピー湿疹ができるようになりました。1度酷くなったので受診したものの、何でもかんでも病院や薬に頼ってばかりの治療では、大人になっても薬を手放せないのではと考えました。そこで、根本からアレルギーに立ち向かえる体作り をさせることにし、まずは食べものや生活習慣から見直すことにしました。●アトピー、肌の乾燥の改善中良い食べ物、控えるべき食べるもの・添加物を減らす食生活肌荒れが酷い時は外食はなるべく、減らす。加工品を選ぶ時はなるべく添加物の少ないシンプルな原材料 のものを選ぶようにしましょう。・なるべく地元に近い野菜を買う(農薬対策)野菜の添加されている農薬もアトピーを引き起こす原因となります。普通のスーパーで無農薬野菜はなかなか置いていませんが、なるべく地元の野菜をえらぴしょう。・粗食をめざすパンはなるべく控えお米中心生活に。お米、小松菜やほうれん草のおひたし 、味噌汁、お豆腐や納豆、お漬物…といった昔ながらの食事が、日本人の体に合っています。お漬物はぬか漬けが乳酸菌が豊富でおすすめです。・緑黄色野菜を積極的に小松菜をしらす、お酒、自然塩と煮て煮びたしにすると食べやすく栄養も良くとれます。・ほうれん草とかぼちゃがおすすめほうれん草はのりと醤油で磯辺和えにしたり、豆腐で白和えするとオススメ。かぼちゃはベーコンとサラダ油で炒めるとコクが出て美味しく、子供も食べやすくなります。・肉、牛乳をなるべく控えるお肉、牛乳はアレルギー体質の方にはアレルギーの引き金となりやすいので、なるべく控えることはおすすめします。・デトックスできる体づくり規則正しい食生活、質のいい睡眠、適度な運動 を、心がけ、便通をスムーズにしましょう。アロマテラピーをアトピー治療に筆者の子供は重度のアトピー体質ではないのですが、お肌は弱く、体調が悪かったり、アレルゲンに触れると広範囲にかぶれたり乾燥したり、湿疹ができたりします。季節の変わり目は乾燥し掻きむしり夜中眠れない程でした。そんな時薬にあまり頼らないために用いたのはアロマテラピー 。肌荒れの部分に、ホホバオイルオイルで5パーセント以下に希釈した精油を塗布し、マッサージしてあげると気持ちよさそうで、夜もよく眠れるようでした。この香りが痒いの治してくれるからね 、と呪文のように唱えながらマッサージするのがコツ。●皮膚の弱い子供たちに効いたアロマテラピー・ラベンダー、カモミールの塗布アレルギーの抑制に効くラベンダー、カモミールを、積極的に塗布しました。他にティーツリーも効果的ですが、我が家の子供たちはラベンダーとカモミールが良く効きました。・夜中かゆがる時の特効薬はペパーミントペパーミントや、ハッカのメントールの清涼感で、即効性のあるかゆみ止めが期待出来、夜中のかゆがる時にはとても重宝しました。まずは薬の前に食生活からアトピーといえば、特別な皮膚病のような印象がありますが、実は「原因不明の肌荒れ」 を総称していいます。その原因は一概に特定できず、昨日は食事が原因でも今日はハウスダスト等の外部刺激が原因だったり、疲れやストレスが原因だったりするため、まずは体質を整える食事を継続的にしていくことが重要です。筆者の子供も旅行などで食生活が乱れ、疲れが溜まった時にアトピー症状が出やすいため、アトピー症状が出た時は特に食事に気をつかっています。お子さんや御自身がアトピーで悩まれている場合、皮膚科への通院と並行し、食事内容もよく見直すようにしてみてください。●参考URLアトピー性皮膚炎を食べ物から見ると●ライター/ましゅまま●モデル/REIKO
2018年07月09日便の異常とつらい腹痛が続く「潰瘍性大腸炎(UC)」とは?出典 : 潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis:UC)は、大腸の粘膜に炎症が起きて、びらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患です。びらんも潰瘍も粘膜が傷ついた状態を指しますが、傷の深さが異なります。びらんは粘膜の表面がただれている程度なので、傷は浅く症状も比較的軽めです。一方で潰瘍は傷が深く、粘膜の深部まで傷が及んでいるので重症な場合が多いです。潰瘍性大腸炎は、病変の広がりや症状の重さなどによって下記のように分類されています。1)病変の拡がりによる分類:全大腸炎、左側大腸炎、直腸炎2)病期の分類:活動期、寛解期3)重症度による分類:軽症、中等症、重症、激症4)臨床経過による分類:再燃寛解型、慢性持続型、急性激症型、初回発作型炎症は一般的に肛門に一番近い直腸から広がっていき、その範囲によって大きく3つに分けられます。・大腸全体に炎症が広がる「全大腸炎」・直腸から大腸の左側部分(左側結腸)まで炎症が及ぶ「左側大腸炎」・直腸のみに炎症が起こる「直腸炎」潰瘍性大腸炎は完治が難しく、治療は、症状が一時的に軽くなる、もしくは消える「寛解」と言う状態を目指します。また、症状がおさまる寛解期(かんかいき)と、治療によって落ち着いていた症状が再燃する活動期を繰り返すのが特徴です。再び悪化する可能性もあるため、定期的な検査や寛解を維持する治療をしていく必要があります。潰瘍性大腸の患者数は増加傾向。男女比率や発症年齢は?出典 : 日本での患者数は毎年増えていて、平成25年度末時点では16万6,060人を超えました。その後も急速に増加し続け、潰瘍性大腸炎の患者数は指定難病の中で最も多くなっています。出典:潰瘍性大腸炎(指定難病97)|難病情報センター発症年齢のピークは男女ともに20代で、性別による差はありません。0歳から高齢者まで、どの年齢でも発症します。参考:特定疾患医療受給者証所持者数|難病情報センター潰瘍性大腸炎の症状は?重症になるとどうなる?出典 : 潰瘍性大腸炎で多く見られる症状は、便の異常(血便、下痢、軟便など)や腹痛です。「軽症」であれば、1日の排便回数も4回以下と少なく、下痢や血便の程度も軽いです。ただし「重症」になると、1日の排便回数が6回以上と多くなり、37.5度以上の発熱や体重減少、強い腹痛、貧血などの症状も現れます。潰瘍性大腸炎は、起きている間だけでなく寝ている間も症状が出るので、質の良い睡眠が取れなくなってしまいます。またトイレに自由に行けない環境に不安を感じる場合も多く、生活の質は著しく下がります。精神的に落ち込む人も少なくありません。ちなみに軽症と重症の中間の症状を「中等症」、重症よりもさらに重篤な状態を「劇症」と呼びます。劇症になると、38.5度以上の持続する発熱や1日に15回以上の排便などの症状が起こり、早急な治療が必要になります。出典 : 潰瘍性大腸炎になると、合併症を発症することもあります。合併症には、腸管(小腸・大腸)に起こる合併症と、腸管外に起こる合併症があります。腸管の合併症では、腸管に穴があいたり(穿孔:せんこう)、狭くなったり(狭窄:きょうさく)、大量出血したりといった症状から、中毒症状を引き起こす中毒性巨大結腸症などが見られます。これらの合併症が出た場合は、緊急手術が必要になる可能性が高いです。腸管外の合併症としては、皮膚症状、関節や眼の痛みがあります。例えば口内炎や関節炎、脊椎炎、結膜炎などがあり、全身に症状が現れます。手術率は、発症時の重症度と炎症範囲によって決まります。重症で炎症範囲が広いほど、手術率は高くなります。潰瘍性大腸炎の死亡率はきわめて低く、潰瘍性大腸炎の患者とそうでない人の平均寿命は大体同じです。ただし、重症の場合の早期手術、大腸がんの早期発見が重要です。潰瘍性大腸炎の原因は?ストレスや食生活の乱れは関係があるの?出典 : 潰瘍性大腸炎のはっきりとした原因は、いまだに分かっていません。しかし、潰瘍性大腸炎の炎症に白血球が関わっていることは確認されています。白血球は本来、体内に入ってきた異物を食べて体を守る働きをします。ところが、免疫機能の異常が起こると、白血球が自分の腸管粘膜を外敵だと判断して攻撃してしまいます。その結果炎症が起き、潰瘍性大腸炎の発症につながってしまうのです。どうしてこのような免疫機能の異常が起こるのかは不明です。最近では、遺伝的要因、食生活の変化、環境要因など、さまざまな要因が絡み合って潰瘍性大腸炎を発症すると考えられています。潰瘍性大腸炎の診断・検査出典 : 潰瘍性大腸炎の診断はたいてい以下の流れで行われます。1.症状の経過と病歴などの問診…便の状態、排便回数、お腹の調子、これまでにかかった病気を聞かれます。いつから調子が悪いのか、血便は出ているか、発熱はあったかなど、答えられるようにしておくことがポイントです。2.血液検査…炎症の程度や栄養状態を調べるために行われます。3.便潜血検査 / 便培養検査…便に血液が混ざっていないか、血便を起こす菌がいないかを調べます。4.大腸内視鏡検査や注腸X腺検査、腹部X腺検査など…どの部位まで炎症が広がっているのか、炎症状態はどの程度か、腸内ガスは溜まっていないかを調べます。これらの検査から総合的に診断されます。潰瘍性大腸炎とクローン病の違いは?出典 : 潰瘍性大腸炎と見分けにくい疾患としてクローン病があります。どちらも原因不明の慢性炎症性疾患であり、難病に指定されている病気です。患者数も増加傾向で、現れる症状(下痢、腹痛、体重減少)も似ています。潰瘍性大腸炎とクローン病の大きな違いは、炎症が起こる部位です。潰瘍性大腸炎は大腸のみですが、クローン病は口から肛門までのすべての消化管の部位に炎症が起こります。特に炎症が起きやすい部位は小腸や大腸ですが、どの消化管にも炎症が起こりうるのがクローン病です。発症年齢や男女比も違います。10歳代~20歳代の若年者に好発します。発症年齢は男性で20~24歳、女性で15~19歳が最も多くみられます。男性と女性の比は、約2:1と男性に多くみられます。また、クローン病は合併症が伴うケースも多く手術率も高い病気です。潰瘍性大腸炎と同様、再燃にも気をつけたい病気で定期的な検査が重要です。潰瘍性大腸炎では薬物療法がメイン。具体的な治療法は?出典 : 潰瘍性大腸炎の治療は、活動期にはまずは大腸の炎症を抑えて寛解させる治療を行います。症状が落ち着く寛解期には、寛解状態を維持して再燃させないための治療に移行します。・薬物療法と食事改善薬物療法では、大腸の炎症を抑える薬を使います。食事は、腸に刺激を与えるような食べ物や飲み物を控えることが重要です。例えば脂っこいものや香辛料は避けて、食物繊維を多く含む食品や発酵食品を摂取するようにします。・血球成分除去療法薬物療法で改善が見られない場合に用いられます。腕から抜いた血を専用の装置に通すことで、炎症を起こす白血球を取り除き、浄化された血を再び体内に戻す治療法です。1回の治療時間は1時間程度で、副作用に吐き気、発熱、頭痛などがありますが、一過性のものです。・手術(大腸の全摘出)最終手段として、切除手術が考えられます。大腸に穴があく(穿孔)、大量出血、重症なのに薬物療法や血球成分除去療法の効果がない、ガンの疑いがある場合などは、切除手術が必要な場合が多いです。術後は、潰瘍性大腸炎でない人とほぼ変わらない生活を送れます。潰瘍性大腸炎は再燃しやすい病気。普段から気をつけておきたいことは?出典 : 潰瘍性大腸炎は一度症状が良くなったと思っても、再び悪化することが多い病気です。ですが、自分に合った治療をきちんと続け、コントロールしていくことで、再燃させずに寛解を保つことができます。実際に、潰瘍性大腸炎にかかっていても、多くの人は仕事や学業を続けていて、妊娠や出産も可能です。再燃させないためには「質の良い睡眠」「規則正しい生活」が基本です。症状が落ち着いている寛解期に、食事の制限は特にありませんが、普段からバランスの良い食事を心がけておくと良いでしょう。腸を刺激しやすいアルコール、香辛料、脂っこい食べ物、冷たい飲み物、乳製品などはとり過ぎないようにして、よく噛んで食べるのも大切です。また発病後7、8年経つと、大腸がんを合併する可能性もあります。たとえ症状がなくても、1~2年に1回は内視鏡検査を受けることをすすめます。潰瘍性大腸炎は「医療費助成制度」を受けられる病気出典 : 潰瘍性大腸炎は国の指定難病に定められています。中等症以上の場合に限られますが、申請手続きをして認定されると「医療受給者証」が交付され、治療費の助成が受けられます。受給者証の有効期間は申請日から1年間で、医療費の自己負担割合が3割負担から2割負担になります。指定難病医に診断書を書いてもらい、お住まいの都道府県に指定難病であることを申請すれば手続きは完了です。所得や治療状況により、1ヶ月あたりの自己負担上限額が決まり、超過分は公費で助成されます。まとめ出典 : 潰瘍性大腸炎は原因不明の指定難病ですが、症状をコントロールできる病気の一つです。血便が出たり、排便回数が異常に増えたり、ひどい腹痛が襲ってきたりと、不安がつきまといますが、自分に合った治療を受けることで、再燃せずに過ごせる場合も少なくありません。治療には薬や手術だけではなく、普段の生活習慣(規則正しい生活リズム、バランスの良い食事)の見直しも有効です。中等症以上の患者さんは医療費助成制度を受けられるので、検討してみるのも良いと思います。
2018年06月11日「あなたは依存症です」医師の言葉に救われた出典 : 発達障害に詳しい病院に転院して約1年半が経ちました。先生のアドバイスは発達障害の特性を踏まえており、ときには痛いほど的をついてきます。ある日の診察で「深夜になってもネットを止められないんです。1日の終わりに、ホッとリラックスしながら、満足するまでSNSをやったり、いろんなサイトを見て回ったり、ネットゲームを楽しまないと気が済まなくて」と言うと、「それなら時間を決めて無理やりパソコンをシャットダウンさせるソフトがあるから、それで止めるようにしてください」とアドバイスされました。探してみると、Windowsでは「Wise Auto Shutdown」という無料ソフトがあり、時間を決めると5分前からカウントダウンが始まって、時間がくると容赦なくシャットダウンされます。ただこのカウントダウン、キャンセルボタンで止めることができるのです。次の診察で「先生、ソフトを入れてみましたが、キャンセルボタンを押してついついそのまま続けてしまうんです。ひどい日には朝までやっていることもあります」と正直に言うと、「あなたは依存症ですよ」と衝撃的な一言を言われてしまいました。「え、娘がネットやゲームの依存症なのは分かっているけど私もなの?」とショックでした。容赦なく先生の言葉は続きます。「まぁね、発達障害がある人に、併発していることが多いんですけどね」「先生、なんだか気分が重くなってきました」「重くさせるように言ったんです。『大丈夫、いつでも止められますよ』なんて言われたら止めないでしょ?アルコール依存症などと一緒ですよ」あきらめきれない私はなお先生に食い下がりました。「ネット小説を読むのも大好きなんですけど、じゃあ本で読めば依存症じゃないんですか?」「それなしではいられないのなら、やはり依存症ですよ」あー、ばっさりやられてしまいました。くやしい。でも、私はそういう病気だったんだと分かったら、ふっと楽になったのです。それから生活習慣をどうすればいいのかという話になりました。すでに睡眠障害状態だった私は「早寝早起きをしなさい」と言われることを恐れていました。だって、それができるくらいなら苦労しないというか自分にできるとは全く思わなかったからです。「先生、私は朝10時ごろに起きるのが精いっぱいなんですけど」「それなら深夜2時に寝て朝10時に起きればいいです。できもしないような目標を立てても仕方ないでしょ。それと睡眠薬は増やしませんよ。そういう問題じゃないですからね」この言葉は、目からウロコでした。そうか、自分にできる範囲で目標を立てればいいんだ!と気づいたんです。そして、このやりとりのおかげでずいぶん気が楽になったのでした。ネットとゲームに救われた経験も。娘の不登校と引きこもりで悩む私の逃げ場だった出典 : とはいえ、ネットやゲームへの依存は悪いことばかりではないと思える出来事が私にはありました。娘が小2で不登校になり、親子2人きりで家に閉じこもるような生活になってから、私はものすごいストレスに押しつぶされそうになっていました。仕事は辞めざるを得なかったし、娘は暗い顔で泣いてばかり。正直、何もかも放り出して娘と一緒にどこかへ消えてしまいたいと思い詰めるほどだったのです。そんなとき娘の主治医のすすめで携帯型ゲーム機を買い、最初は娘が夢中で遊んでいましたが、私も一緒にゲームを楽しむようになりました。ゲームに夢中になっている間はつらい現実を忘れることができる。現実には何も達成感はないけれど、ゲームでは達成感を味わうことができる。「現実よりこの世界の方がいい」と本気で思ったほどです。ゲームをしているときは、娘とも親子という立場を離れて対等にコミュニケーションを持てるようになり、お互い笑顔で楽しく過ごすことができました。娘も私に教えることができて自信を取り戻したようです。だから、一番つらい時期にいる子どもも大人もネットやゲームに避難することは決して悪いことではないとも思っています。自分が起きたときが朝――。「体が、今何時だか分からなくなっている」とぼやく私に放った、娘の一言出典 : 主治医のアドバイスも守ることができず、相変わらずネットやゲームにのめりこんでいった私の生活は、どんどん夜型になりました。朝5時に眠り、11時頃目覚めて朝ごはん。深い睡眠が得られないので、そのあとまたウトウトと昼寝してしまい本格的に活動し始めるのは夕方という生活。でも正直に言うとこの生活の方が快適なんです。聴覚過敏がある私にとって、家の中で娘が走り回る音や、外で子どもが遊んでいる声が聞こえてくると耐えられないのです…。でも夜中なら静かだし、何か作業するにしても集中することができます。働けないことに罪悪感を感じることも、この生活リズムなら少しは楽ということもあります。昼間は、やはりコンプレックスが刺激されてしまうからです。診断される前からそういうところはあって、仕事や育児をしていれば無理やり適応できるのですが、そうでなければ起きる気がしなくて寝てばかりいました。そして夜はやっぱりネットや本などに夢中になっていましたね。起きる目的がないと起きようという気にならないのです。それでも、時には通院も必要ですし、ヘルパーさんもやってきます。できるだけ朝早い時間には用事を入れないようにしているのですが、そういう時は目覚ましを使って無理やり起きます。すると、よけい体内時計が無茶苦茶になってしまうのです。ある日、昼夜回転(※)生活7年目の娘に「体が、今何時だか分からなくなっている」と相談してみました。すると娘はきっぱりと一言「自分が起きたときが朝だ」と言ったのです。なるほど、その思い切りが娘の元気の秘訣なのかと妙に納得したのでした。そして、そう言い切るまでに娘の心の中でもいろいろ葛藤があったのだろうなと思いをはせたのでした。※1日25時間周期で睡眠時間が回転していく概日リズム睡眠障害によるケースワーカーさんの「あせらないでいいのよ」にホッとした出典 : 「やっぱり私ってダメ人間なのかな」「この生活、なおさなくちゃだめだよね」とあせる気持ちもあります。月1回面談しているケースワーカーさんに思い切って自分の気持ちを話してみました。すると「あなたは充分頑張っているんだから、あせらないでいいのよ」と言ってくれたのです。なんだかホッとしました。今までの経験からしても、なおるときにはスコンとなおるので、今は心地よくネットやゲームへ依存し、睡眠障害に浸っていようと思います。ゴミの日がなければもっと安心して浸れるのに。
2018年06月09日児童養護施設とは?出典 : 児童養護施設とは、経済的な理由や虐待など、さまざまな理由で保護者と生活することが難しい、そして社会のサポートが必要と判断された児童が入所する施設です。入所した子どもたちを保護し、生活習慣を身につけたり社会生活に必要なスキルを得られるよう、支援を行います。そして、自立に向けた支援、退所した者に対してもアフターケア支援を行います。児童福祉法では、どの児童も適切に養育され、生活を保障され、愛され、保護されることで心身の健やかな成長を保障される権利を有すると定められています。そして、児童が適切に養育され、生活を保障されるための一つの手段として、児童養護施設があります。児童養護施設はなんのための施設か出典 : 児童養護施設に求められている役割は、入所している児童が健やかに発達できるよう、できる限り家庭的で落ち着いた環境で生活を送れるようにすることです。つまり家庭に代わる家として、子どもが暮らす場所となり、この生活を通して、家庭に戻ることや児童の自立を支えます。参考:「もっと、もっと知ってほしい児童養護施設」|全国児童養護施設協議会児童養護施設への入所の対象者とは?出典 : 乳児を除く原則18歳まで(必要に応じて20歳まで)の、保護者による養育が困難な児童、また何らかの理由で児童養護施設によるサポートを必要とする児童が対象です。特に必要があると判断された場合は乳児も対象となりますが、基本的に2歳未満の乳幼児は、乳児院を利用することになっています。出典:児童養護施設等について|厚生労働省児童養護施設に入所する理由は、多岐にわたります。父母の傷病、家庭の経済的な理由や虐待などで、保護者による養育が困難な場合です。相談相手が少ない、離婚率が高まりシングルマザーが増えているなど、現代の子育て環境が保護者の孤立や困難を生みやすいことも、その背景にあると言えるでしょう。出典:「児童養護施設等について」|厚生労働省参考:「社会養護の施設等について」|厚生労働省参考:「児童養護施設入所児童等調査結果」|厚生労働省参考:「社会的養護の現状について参考資料(平成26年3月)」|厚生労働省児童養護施設の入所プロセス出典 : 何らかの事情があるため家庭で子どもを育てることが難しい場合は、まずは近くの児童相談所や自治体の子育て支援の窓口に相談してみましょう。児童がサポートを必要としている状態だと判断された場合、児童相談所の職員が入所までの手続きを行います。児童養護施設の入所に伴う費用は、保護者の所得に応じて変わります。また、保護者からの相談がなくても、児童相談所で必要だと判断された場合などに、子どもが児童養護施設に入所することがあります。児童養護施設ではどんな人が働いているのか出典 : 児童養護施設では、施設長のほか、児童指導員、保育士、個別対応職員、家庭支援専門相談員、栄養士および調理員等、嘱託医の配置が児童福祉法に定められ、児童をサポートします。乳児が入所している場合は、これらに加えて看護師の配置が求められています。また、心理療法担当職員がいる施設も多くあります。・児童指導員・保育士: 児童が健全に成長できるよう、日常生活や自立に向けた支援を行います。・嘱託医・看護師: 児童の健康を医療の面からサポートします。・家庭支援専門相談員: 家族との環境調整や親の相談を行います。・栄養士・調理員等: 児童への食事提供を支援します。※栄養士・調理員等については条件によっては施設にいない場合もあります。参考:児童養護施設等について | 厚生労働省参考:「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」|e-Gov参考:「社会的養護における職種別任用要件等」|厚生労働省児童養護施設入所後の生活出典 : 入所した児童の中には、児童養護施設で長い期間暮らす子どもも少なくありません。彼らが落ち着いた環境で過ごせるよう居室、相談室、調理室、浴室および便所の揃った空間を用意することが求められています。児童は児童養護施設から学校へ通い、地域で生活をしています。施設にいる職員が具体的にどのようなことを児童に提供するかは、児童福祉法に定められていますが、児童養護施設では、保護者に代わって生活の支援や自立に向けたサポートをしています。施設によって異なりますが、様々な行事やグループワーク、独自の余暇プログラムなどを行っているところもあります。出典:「社会的養護の施設等について」|厚生労働省出典:「児童福祉法」|e-Gov基本的には保護者と児童は面会交流ができます。ただし、その児童が入所した理由や状況によって保護者に会うべきではないと判断された場合などには、児童の人権を第一に考え、面会できないこともあります。参考:「児童相談所運営指針の改正について:第4章援助」|厚生労働省参考:「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」|e-Gov児童養護施設の現状出典 : 平成28年10月時点の、児童養護施設の数と入所児童数は次のようになっています。■施設数603カ所■入所児童数27,288人近年、児童養護施設の数は増加傾向にあります。これは大規模施設から比較的生活人数の少ない小規模施設に分割されているなどの背景もあるようです。平成13年10月時点では、551カ所だった児童養護施設が平成28年10月には603カ所になりました。また、入所する児童の割合にも変化があり障害がある児童の入所が増えています。また、平成25年の時点では知的障害3,685人、その他の障害2,319人、広汎性発達障害1,576人など、児童養護施設入所児童の28.5%が障害のある児童だということが分かっています。出典:「社会的養護の施設等について(平成28年10月)」|厚生労働省出典:「児童養護施設について(平成29年5月26日) 」|厚生労働省出典:「児童養護施設入所児童等調査結果(平成25年2月1日現在)」|厚生労働省児童養護施設退所後の生活出典 : 児童養護施設の退所については、家庭に戻る場合もありますし、高校を卒業するなどして施設から社会への自立を目指す児童も大勢います。中には里親委託され、退所する児童もいます。出典:「児童養護施設入所児童等調査結果(平成25年2月1日現在)」|厚生労働省入所した児童の家庭への引き取りについては、保護者の生活や養育環境が整っているかどうかを確認した後、保護者・児童相談所・施設等で話し合って決めます。高校卒業後、専門学校や大学など、高等教育に進学する児童もいます。平成24年度末に高等学校を卒業した児童のうち、平成25年5月1日現在の進路は厚生労働省の調査によると、大学進学12.3%、専修学校等進学10.3%、就職69.8%、その他7.6%です。東京では19.8%が大学に、17.7%が専修学校等に、合わせて37.5%が進学しており、地域や施設によっても差異があると言われています。出典:「社会的養護の現状について(参考資料) 平成26年3月」|厚生労働省児童養護施設は、原則高校を卒業すると社会的自立を目指すことになります。しかし、本人にとっては児童養護施設は生活の場であり、家庭のような存在です。18歳になった後も自立に向けてサポートがまだ必要な場合もあります。そのような児童に対して、色々なサポート制度があることをここで紹介します。■自立援助ホーム児童福祉法で児童自立生活援助事業として位置づけられている自立援助ホームでは、児童養護施設を退所した児童に対しても職業支援や社会的自立に向けた援助を行っています。対象となる児童は、義務教育終了後の15歳~20歳までです。必要に応じて22歳の年度末までの間延長されることもあります。■児童養護施設で過ごす期間の延長現在、児童養護施設で過ごせる年齢は原則18歳までとなっていますが、引き続き必要と判断された場合、22歳の年度末まで支援を継続することができます。■身元保証人確保対策支援事業児童養護施設等を退所後、自立に向けてアパートの賃貸や就職する際に保証人が必要になってくる場面があります。しかし、児童の中には身元保証人を引き受けてくれる人を見つけることが難しくアパートの賃貸や就職が困難になる場合があります。身元保証人確保対策支援事業とは、そのような状態を改善するための制度です。具体的には、施設長等が児童の保証人を引き受けた後、なんらかの損害を被った時に国と都道府県等が賠償額の一定額を支払うというものです。このようなサポートによって、施設長等が保証人になった場合の負担が減り、保証人を引き受けやすくなります。参考:「自立援助ホームとは」|全国自立援助ホーム協議会参考:「平成28年児童福祉法改正のポイント(平成28年6月3日公布、順次執行)」|厚生労働省参考:「社会的養護の現状について」|厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課参考:「児童福祉施設等に関する「身元保証人確保対策事業」」|社会福祉法人全国社会福祉協議会・全国母子生活支援施設協議会児童養護施設のこれから出典 : 社会的養護を必要とする児童の増加に伴って、それらの質と量の充実が求められています。具体的には、できるだけ一般家庭に近いような環境を提供するために小規模化やグループホームのような地域分散化が進められていくこととなります。小規模化が進むことで児童一人ひとりと向き合える時間が増え、子どもと職員の関係形成が、一層重要になります。また、被虐待児や障害のある児童の増加に伴い職員の高い専門性が求められているため、職員の資質向上を目的とした研修事業が実施されています。参考:「児童養護施設等の職員の資質向上のための研修等事業の実施について」|厚生労働省出典:「児童養護施設について」|厚生労働省まとめ出典 : 様々な事情で子どもを養育するのが困難になってしまう場合もあるでしょう。残念ながら、虐待の通告件数も年々増加が報告されています。そのような状況をそのままにしておくことは、子どもにとっても保護者にとっても健全な状態であるとは言えません。そのような状況となった時に、子どもを守り、居場所となり得る一つの手段が児童養護施設です。自分ひとりで何とかしようとするのではなく、誰かを頼ることも状況を改善する一つの手段です。もし、保護者の方で子どもの養育に困難を感じている方は、まずは児童相談所などの専門機関に相談してみてはいかがでしょうか。すべての子どもは社会全体で育てていく「社会的養護」という考え方に基づき、児童養護施設は設置されています。児童養護施設では子どもが健やかに暮らせるように子どもに寄り添い、サポートをしています。そのために、より家庭に近いスタイルの施設も増えています。
2018年05月18日お腹の不調がつらい「過敏性腸症候群(IBS)」の具体的な症状とは?出典 : お腹が痛い、下痢や便秘が長引いている、お腹にガスが溜まっているような気がする。腸の疾患がないのにお腹に痛みがあったり、調子が悪く、それに関連した下痢や便秘などの異常が数ヶ月以上続くなどの症状に悩まされているなら、過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome: IBS)かもしれません。過敏性腸症候群の症状は多岐にわたります。代表的なお腹の痛み、腹部不快感、下痢・便秘が続く症状のほかにも、腹部膨満感(腸内に水分やガスが溜まりお腹が張って苦しい状態)、おならがよく出る、食欲不振、頭重感、お腹がゴロゴロ鳴るといったさまざまな身体症状が現れます。夜寝ている時に症状が出ることはほとんどなく、排便すると一時的に症状から解放されるのも特徴です。過敏性腸症候群には身体症状だけでなく、精神症状が伴うケースもあります。特に重症になると、トイレに自由に行けない環境に不安を感じたり、見た目では理解されない苦しみを抱え込んだりします。過敏性腸症候群は命にかかわる病気ではありませんが、日常生活に支障をきたし、生活の質が著しく下がる病気です。学生であれば、授業中やテスト中に何度も教室を抜け出すのがつらい人もいます。働いている人であれば、通勤には各駅停車を使って、いつでもトイレに駆け込めるように対策している人もいるほどです。こういった不安や苦痛を隣り合わせのため、勉強に集中できなくなったり、働く気が起きなくなったりすることもあるようです。さらには外出を控えるようになり、不登校になったり、仕事を辞めることまで考える人もいます。参考:過敏性腸症候群(IBS)患者さんとご家族のためのガイド「Q1 過敏性腸症候群(IBS)ってどんな病気ですか?」|日本消化器病学会ガイドライン実は10人に1人が過敏性腸症候群。4つのタイプや性別・年齢との関係は?出典 : 過敏性腸症候群は、便の形状や排便頻度によって4つのタイプに分かれています。・便秘型: 週に3回以下の排便で便が固くなる。お腹にガスが溜まりやすい。・下痢型: 1日に3回以上の排便で便が水っぽくなる下痢型。急に襲ってくる便意があるため、トイレに自由に行けない環境に不安を感じやすい。・混合型: 便秘型と下痢型の症状を繰り返す・分類不能型: 以上3つのタイプには当てはまらないタイプ過敏性腸症候群は10人に1人がかかっている病気で、決してめずらしい病気ではありません。男性より少し女性に多く、加齢とともに患者数は減少すると考えられています。一般人口の11.2%(95%CI,9.8%-12.8%)が IBS を発症しており,男性に比べて女性が発症しやすいことが示された(男性:女性=1:1.67)。年から,1991年から,2001年からの各10年間にわたるIBSの有病率は変化していない. しかし,30歳未満,30歳代,40歳代,50歳代,60歳以上の有病率は各々11.0,11.0,9.6,7.8,7.3%であり,全体として,50歳以上ではそれより若年者に比して有病率が低い傾向が認められた.過敏性腸症候群を発症する原因は?ストレスとの密接な関係が指摘出典 : 過敏性腸症候群の発症の原因は解明されていません。ただし、腸の検査や血液検査をして、腸に明らかな異常(潰瘍や腫瘍など)がある病気ではないため、ストレスが原因ではないかと考えられることも多くあります。実際に、過敏性腸症候群はストレスと密接な関係があり、強いストレスを感じたときには症状が強く表れ、ストレスが軽減されたときには、症状が軽くなる傾向があります。これは脳と腸が自律神経でつながっていて、脳が不安やストレスを感じ取ると、その影響を受けて腸の動きが乱れ、痛みを感じやすい状態になるためです。特に過敏性腸症候群の患者はこの状態が強く現れる傾向があり、腸の動きの早さによって下痢や便秘などの症状につながります。精神的なストレスを感じていなくても、過労や睡眠不足、乱れた食生活が続いている場合は腸に負担がかかっているため、過敏性腸症候群を発症しやすくなります。また細菌やウイルス性の胃腸炎から回復した後は、過敏性腸症候群にかかりやすいと言われています。そのほか、腸内細菌のバランスが崩れて発症することもあります。善玉菌が減って悪玉菌が増えることによって腸が過敏になるためです。参考:過敏性腸症候群(IBS)の病態・診断・ 治療|日本内科学会雑誌 第102巻 第 1 号・平成25年 1 月10日過敏性腸症候群の症状にあてはまったら…出典 : 過敏性腸症候群の症状が続いている場合は一度病院の受診を検討するとよいでしょう。まずはかかりつけ医もしくは内科医に行き、重症で内視鏡検査などの精密検査が必要になる場合は消化器内科か胃腸科をおすすめします。もし大きなストレスがかかる状態が続いていて、抑うつ状態や気分の落ち込みがある場合は、心療内科やメンタルクリニックの受診も視野に入れてみましょう。診察の際、飲んでいる薬があれば必ずお薬手帳を持参してください。また、直近の健康診断の結果が手元にあれば合わせて持参すると、診断がスムーズになります。腹痛、下痢・便秘を繰り返す腸の病気は、過敏性腸症候群以外にもあるため、医師の診察をしっかり受けることが必要です。過敏性腸症候群の診断にはどんな検査がある?出典 : 過敏性腸症候群の診断は、国際消化器病学会の専門委員会が作成した診断基準で、国際的にも多くの医師が用いている「ローマⅢ基準」によって行われます。IBSの診断基準(ローマⅢ基準)最近3ヵ月の間に、月に3日以上にわたってお腹の痛みや不快感が繰り返し起こり、下記の2項目以上の特徴を示す1)排便によって症状がやわらぐ2)症状とともに排便の回数が変わる(増えたり減ったりする)3)症状とともに便の形状(外観)が変わる(柔らかくなったり硬くなったりする)「ローマⅢ基準」による診断を確定するために尿・便検査、血液検査のほか、症状や過去にかかった病気(既往歴)や家族の既往歴によって、腹部X腺検査、大腸内視鏡検査、超音波検査、CT検査などが追加されることもあります。急激な体重減少・血便・寝ている間もトイレに行きたくなる場合は、過敏性腸症候群ではなく他の病気の可能性もあるため、追加の検査が必要となることもあります。潰瘍性大腸炎やクローン病などの初期症状は過敏性腸症候群の症状に似ていること、細菌・ウイルスに感染していることも考えられるため、自己診断ではなく必ず病院で診察を受けましょう。検査以外にも、心理状態や生活状況を聞き出して総合的に診断することもあります。市販薬で乗り切れているから自分は大丈夫だ、と思っていても重大な病気が隠れている場合もあります。胃に違和感を感じたり、下痢や便秘などの症状に悩まされている場合は、早めに医師による診断をしてもらいましょう。治療法はさまざま。症状に合った治療法を選ぶことが大切出典 : 過敏性腸症候群の治療は、たいてい以下の順番で行われます。1 生活習慣の改善・朝、排便をする習慣をつける・夜更かしをせずに十分な睡眠をとる・運動不足であれば適度な運動をする(運動療法)※運動することでストレスが減り、便通も促されるため2 食事指導(食事療法)・香辛料、冷たい飲み物、脂っこいもの、コーヒーやアルコールなど、腸に刺激を与えるようなものは控える・食物繊維を多く含んだ消化に良い食べ物を食べる・食事は早食いしない、食事を抜かない、1日3食決まった時間にとる3. 薬物療法・生活習慣や食事を改善しても症状が変わらない場合は、症状(身体症状・精神症状)に合わせて薬や漢方を使う4. 心理療法・薬を使ってもあまり症状が改善されないときやストレスが強い場合は心理療法が用いる・心理療法には認知行動療法やストレスマネジメント、対人関係療法などがある※薬を使いながら心理療法を併用する治療もある過敏性腸症候群の治療では、自分の症状に合った治療法を選び、症状を改善させます。日常生活の工夫で過敏性腸症候群を予防することはできる?出典 : 過敏性腸症候群を予防できるという研究はありませんが、普段からの心がけで症状を避けたり軽減したりすることはできます。十分な睡眠、心地よい睡眠環境、規則正しい食生活、お酒やたばこを避ける、ストレス解消法を見つける(休む時間を作る)、胃に優しいものを飲む・食べるなどさまざまな方法があります。もし運動不足であれば、軽い散歩をすることで、腸の働きを整えるだけでなくストレス解消になります。こうした規則正しい生活習慣や自分なりのストレス解消法を取り入れて過敏性腸症候群を改善していきましょう。まとめ出典 : 過敏性腸症候群は、めずらしい病気ではありません。ただし、お腹の不調を伴う病気は過敏性腸症候群以外にも多くあるため、一度病院で医師の診察を受けることが重要です。下痢や便秘が長引けば、ストレスや不安も大きくなり、生活の質も落ちてしまいます。現在過敏性腸症候群の治療法はたくさんあり、自分の症状に合わせて治療ができます。もしもお腹の不調に悩んでいるのであれば、なるべく早めに病院に行って症状を軽減していくことをすすめます。
2018年05月15日突発性難聴とは出典 : 突発性難聴は、突然片耳の聞こえが悪くなる病気です。2000年以降、何人もの人気歌手が発症を公表したことで、多くの人にこの病気が認知されました。何の前触れもなく生じた難聴のうち原因が不明、もしくは不確実なものが突発性難聴とされています。診断も治療法も確立していないという、まだまだ分かっていない部分の多い病気でもあります。耳の奥、内耳という部分に何らかの障害が起こっていると考えられています。突発性難聴の原因は分かっていませんが、いくつか有力な説はあります。一つはウィルス感染です。ウィルスと言っても、難聴を引き起こすウィルスがあるわけではありません。インフルエンザやはしかなどのウィルスに感染し内耳が炎症、結果として難聴につながってしまうという説です。もう一つは内耳循環障害説です。内耳に十分な血液が届かない、血流に問題があるとされる説ですが、ほかの器官は正常です。ほかにはストレスも関係しているとも言われます。体調不良や過労を含めたストレスは多くの病気の一因となりますし、直接の原因とはならなくとも、発症をしやすくすることはあります。とはいえすべて原因としては可能性の域を出ません。この原因不明なところが、突発性難聴の特徴なのです。突発性難聴の症状出典 : 突発性難聴の代表的な症状は病名の通り、突然耳が聞こえにくくなるというものです。朝起きたときや店を出たときなど、本人には聞こえにくくなった瞬間がはっきりと分かります。「まったく聞こえない」から「なんとなく聞こえづらい」まで、聞こえにくさの程度は人によって異なります。突発性難聴の診断を受けるまで難聴の自覚がないこともあります。共通しているのは、片耳にだけ症状が表れるということです。両耳の場合は別の病気である可能性が高いです。ほかに突発性難聴でよく見られる症状は、耳鳴りとめまいです。キーンという高音、ジーというセミの鳴くような音などの耳鳴りが起こることがあります。飛行機に乗った時のような、耳の詰まった感じを訴える人もいます。耳鳴りの強さや種類は様々ありますが、それで突発性難聴かどうかを鑑別することはできません。難聴は軽度でも、耳鳴りがあることで突発性難聴と診断されることもあります。めまいには、目が回る感覚の「回転性」、体がフワフワ浮いているように感じる「不動性」、立ちくらみのような「失神性」などの種類があります。突発性難聴で現れるめまいは「回転性」です。耳の病気によく見られるもので、ふらついて立っていられなくなったり真っすぐ立てなくなったりします。嘔吐や吐き気を伴うこともあります。突発性難聴と症状が似ている病気出典 : 突発性難聴は突然片耳が聞こえにくくなる病気ですが、原因がはっきりしていません。難聴、耳鳴り、めまいなどの症状だけでは他の病気の可能性もあるのです。突発性難聴と症状が似ている病気には以下のようなものがあります。・外リンパ瘻(ろう)・メニエール病・急性低音障害型感音難聴・加齢性(老人性)難聴・聴神経腫瘍・騒音性難聴・音響外傷・内耳炎外リンパは内耳の中を満たす液体のことで、それが内耳から中耳に漏れてしまう病気が外リンパ瘻です。主な症状は難聴やめまい、水の流れるような耳鳴りなどで、突発性難聴と誤診されやすい病気でもあります。突発性難聴とは違い、原因ははっきりしています。原因は内耳と中耳を仕切っている部分が破れてしまったこと。気圧の変化や外傷などきっかけが分かることもあれば、はっきりとは分からないこともあります。仕切り部分が破れてしまうときに「ポン」「パチン」という破裂音(ポップ音)が聞こえる人もいます。薬物治療や点滴治療で治らなければ、手術で治療を行うこともあります。激しいめまいが特徴のメニエール病。吐き気や冷や汗、頻脈をともなうこともあります。回転性のめまい、耳鳴り、難聴と、症状が突発性難聴とよく似ているうえ、多くは片耳だけにその症状が見られることも似ています。しかし、メニエール病には繰り返し症状が起こるという特徴があり、発症が一回限りの突発性難聴とはこの点で異なっています。原因は内耳にリンパ水腫ができたことだと考えられていますが、水腫が発生する原因はまだ解明されていません。過労やストレスがメニエール病を引き起こすとも言われ、その点でも突発性難聴と共通しています。低音の難聴や耳鳴り、耳の詰まる感じが特徴の急性低音障害型感音です。突発性難聴の男女比がほぼ同じであるのに対して、急性低音障害型難聴は圧倒的に女性の患者が多いのも特徴です。突発性難聴と比べると症状は軽く、再発の可能性もあります。ストレスや過労で発症しやすくなりますが、原因はメニエール病と同じく内耳の蝸牛部分の水腫です。めまいの有無がメニエール病との大きな違いです。難聴の中では最も一般的なもので、名前の通り原因は加齢です。徐々に聞こえが悪くなるのが突発性難聴との大きな違いです。聞こえの悪さにも特徴があります。年齢を重ねたことで聞こえなくなるのはまず高音で、交通機関のアナウンスが聞き取りづらくなります。また、聞き間違いも増えます。加齢によるものなので治療はできません。日常生活の不便を取り除くため、補聴器をつける人もいます。内耳から脳へ情報を送る聴神経に腫瘍ができる病気が聴神経腫瘍です。腫瘍が神経を圧迫することで、難聴、耳鳴り、めまいといった症状が生じます。聴神経のすぐ近くを通る顔面神経を圧迫すると、顔面マヒが起こる場合もあります。良性の腫瘍で発育のスピードも遅いため、腫瘍が小さければ診断後は経過観察となることもあります。腫瘍が大きくなった場合は耳鼻咽喉科で摘出手術をしたり脳神経外科で開頭手術をします。どちらも音が原因で起こる難聴です。騒音性難聴は、長期間騒音にさらされていたことで徐々に進行する難聴です。内耳にある蝸牛の膜が破れたり血流が滞って細胞が傷ついたりすることで起こります。両耳に症状が現れる点や徐々に進行する点が、突発性難聴とは異なります。長時間騒音を発する場所で働いている人によく見られることから、職業性難聴とも呼ばれます。コンサートの大音量や爆発音など、短時間の騒音が原因で耳鳴りや難聴を感じるのが音響難聴です。耳の痛みを感じることもあります。騒音性難聴と同様、蝸牛の細胞が傷ついて起こります。軽度であれば、時間の経過で細胞は修復され、元に戻ることもあります。主に中耳炎の症状が内耳に広がって起こるのが内耳炎ですが、おたふくかぜやインフルエンザなどのウィルスが内耳に感染する場合もあります。内耳には痛みを感じる神経がないため、炎症があっても痛みは感じません。症状は突発性難聴と同じく、難聴、めまい、耳鳴りなどです。内耳炎は診察や画像診断で判断します。突発性難聴の治療法出典 : 突発性難聴の治療には内服や点滴での薬物治療が一般的ですが、症状に合わせて追加治療を行うこともあります。発症後すぐや症状が重い場合は入院を勧められることもあります。薬物療法の代表はステロイド薬の投与ですが、「米国耳鼻咽喉科頭頸部外科アカデミーが提唱した診療ガイドライン(2012年)」によると、ステロイド投与は選択肢の一つという程度です。強く推奨されるものではないということです。しかしステロイド投与以上に科学的根拠の裏付けがされ、有益で害のない治療法は確立しておらず、難聴に伴うハンディキャップを考えると、ステロイド投与が一般的な初期治療になっています。【参考】突発性難聴治療のEBM(2014) Practice Guideline: Sudden Hearing Lossほかに血管拡張薬や血流改善薬、ビタミン剤などを併用することもあります。原因がはっきりと分かっていないため、薬物といっても直接病気の元を絶つものではありません。内耳の血液循環を良くし、細胞や神経に栄養を与えて動きを活性化させる働きがあるものを用います。発症からの時間や症状に合わせて、薬物治療と並行して別の治療法が用いられることがあります。たとえば内耳に大量の酸素を送る高気圧酸素療法や星状神経節ブロックなどです。高気圧酸素療法は循環改善を目的に行われます。地上よりも気圧の高い環境で高濃度の酸素を吸入し、内耳へ多くの酸素を送り、症状の改善を促します。脳梗塞や一酸化炭素中毒などの治療に使われていましたが、突発性難聴にも活用されるようになりました。同じ循環改善でも交感神経(星状神経節)を麻痺させて緊張を緩めるのが星状神経節ブロックです。交感神経が過緊張になると血管は収縮し、血流が悪くなります。星状神経節の近くに局所麻酔を注射して交感神経の働きをブロックすることで、緊張がゆるんで血流も良くなるという治療法です。突発性難聴の治療は通院でも可能ですが、症状が重い場合は特に入院を勧められることがあります。集中して治療に努めることができ、安静にもしやすいというのが理由です。一般に早期に治療を始めたほうが治りが良いとされています。突発性難聴の診断後すぐに服薬や点滴で治療を開始すると考えると、入院は有効な手段と言えます。また、ストレスも一因と考えられます。家事や仕事などをせず休養や睡眠をしっかりとって安静にする環境を作るのにも、入院は有効です。たとえ重症でなくとも、入院できると治療も安静もしやすくなります。病院で診断を受けるときには入院という選択肢も考えておきましょう。突発性難聴は完治するのか出典 : 年の論文には、121例を観察したところ76%が聴力改善に至ったとのデータがあります。聴力改善とは完治以外に、ある程度回復したという状態も含みます。突発性難聴で完治する、つまり以前の聴力まで戻るのは約3割です。残りはある程度まで聴力が改善した、もしくは変化なし(不変)です。参考:突発性難聴における聴力改善経過と改善率に関する検討(2016年)症状が軽ければ治りやすいと思われがちですが、一概にそうとも言えません。確かに難聴の初期症状が軽いほど治療によって完治する可能性は高いと言えます。しかし同時に、まったく症状が改善しないことも多くあるのです。たとえ症状が軽くとも、しっかりと治療をするのが良いでしょう。参考:突発性難聴の治療成績(2016年)突発性難聴は原因、治療法とも確定されていませんが、できるだけ早く治療を受けることが良いとされています。特に「発症から2週間以内の治療を」という文言は多くの病院で言われています。ですが、早期に治療を開始すると治りが良いというデータの中には、自然治癒の症例が含まれている可能性もあります。治療が早かったことで症状が改善されたのか、自然治癒によるものかは判別できません。もちろん治療は早く始めるに越したことはありませんが、発症から時間をおいてしまったからといって諦める必要はないのです。参考:突発性難聴 ―診断・治療の問題点とそれに対する対応―(2010年)後遺症には、程度に差はありますが聴力障害や耳鳴りが挙げられます。高齢であったり難聴の症状が重かったりした場合は回復しにくいと言われます。また、発症して2週間以降に治療を開始した場合も同様です。聴力が改善せず、日常生活に不便さがあるなら補聴器を使うという選択肢があります。補聴器を使うことで会話もスムーズになり、仕事や人間関係での不便が緩和されます。難聴と一口に言っても、聞こえの状態は様々です。補聴器も耳穴に収まる小型のものや耳にかけるタイプのものなど、さまざまな種類があります。症状の変化に応じて再調整も必要です。最近ではインターネットで手軽に買うこともできますが、補聴器を検討する場合はまず耳鼻科で聞こえの状態をチェックしましょう。病院に補聴器外来があったり補聴器相談医がいたりするなら、相談してみるのが良いでしょう。参考:補聴器相談医名簿 | 一般社団法人日本耳鼻咽喉科学会販売店で補聴器を購入する場合は以下の項目が参考になります。・日本補聴器販売店協会の加盟店・認定補聴器技能者の在籍店・認定補聴器専門店しっかりと話を聞いてくれ、対応にあたってくれるお店を選びましょう。参考:補聴器が必要になったら | 一般社団法人日本補聴器販売店協会ストレスも突発性難聴の一因とされているため、治療と並行して生活習慣も見直してみると良いかもしれません。家事に仕事に子育てと、ストレスは気づかないうちにどんどんたまってしまいます。趣味や休養などで定期的に発散させましょう。突発性難聴の症状としてあげられるめまいや耳鳴りのせいで、寝つきが悪くなったりすぐに起きてしまったりすることもあります。ですが、まとまった睡眠がとれないことを気にしてしまうのは逆効果です。時間ではなく、自分が寝られたと感じられる睡眠をとることが重要です。突発性難聴の治療法に血流を良くするものが多くあります。その点では適度な運動や入浴も効果的です。食生活では塩分を控え、血流を促進させる食材を積極的にとりましょう。お酒は適量であれば良いのですが、たばこは血管を収縮させてしまうので避けます。まとめ出典 : 突発性難聴は、ある日突然発症します。まったく聞こえない状態ならすぐ病院へ行く人がほとんどでしょうが、少し聞こえないくらいだとそのまま放置してしまう人もいるかもしれません。ですが、早めに受診することで症状が改善することもあります。発症に気づいたらすぐに耳鼻科へ行きましょう。同時に、しっかりと休養をとる準備もしましょう。家事や育児、仕事など、毎日を忙しく過ごしていた場合はストレスがたまっている可能性もあります。リラックスしてゆっくり休める環境を作ることも大切です。
2018年03月24日思春期は、子どもから大人への変化を遂げる期間出典 : 思春期とは、子どもが大人へと移行する時期のことです。この時期には第二次性徴という体の変化が生じたり、異性への関心が育まれたりします。始まる時期には性差があり、女子は9歳、男子は11歳くらいです。二次性徴が始まった年齢から18歳頃までの期間を一般的には思春期と呼んでいます。思春期に入ると、脳から生殖器に性ホルモンを分泌するような指令が届き、男性なら精巣、女性なら卵巣からホルモンが全身に分泌され、身体に様々な変化が起こり始めるのです。二次性徴とは、このように思春期の身体に起こる性的な変化の総称です。第一次性徴とは、性別を決定する要素、つまり生まれてすぐわかる男女の性器にみられる特徴(精巣や陰茎、女性の子宮、卵巣)のことを指し、第二次性徴は、性器以外の身体の各部分において男女の違いが現れる変化を指しています。女性の第二次性徴の例として、乳房の発達、丸みを帯びた体つきになる、初経(初めての月経)などがあります。これらの体の変化がいきなり自分の身に起こることで、子どもたちは「これは自分の体ではない」と違和感を感じることもあるかもしれません。特に、発達障害や知的障害がある子どもの中には、突然の変化が苦手な子や、感覚過敏のため月経に生理的な嫌悪感を抱く子、それらの違和感をうまく表現できずに大きなストレスを感じてしまう子もいるでしょう。つまり、思春期は子どもにとって身心に大きな変化と、それに伴う悩み事が生じる時期なのです。次の章では、発達障害の女の子にとって思春期がどのような時期なのかを説明していきます。参考:野口忠/著『栄養・生化学辞典』(朝倉書店)2011年参考:女性アスリート指導者のためのハンドブック「発育・発達について」│国立スポーツ科学センターHP女の子の発達障害は、思春期に見つかることが多い出典 : 発達障害とは、認識や行動に特性があり、社会生活に支障をきたす状態にあることを言います。女の子は、男の子と比べて特性による困り感を抱えながらも発達障害と診断されない「グレーゾーン」の子が多いとされます。特性の出方には性差があり、相対的に、目立った問題行動が少ない傾向がある女の子の発達障害は気づかれにくいのです。性差の背景には、発達障害で課題とされる「社交的な言動」は女性のほうが得意であること、女性のADHDは不注意優勢型が多いこと、などがあります。なぜ不注意優勢型は気づかれにくいかというと、周囲への攻撃や発散といった形で特性が現れる多動・衝動性と違い、「わすれんぼうな子」「ボーっとしている子」と本人の性格だと解釈されるため、問題なりにくいと考えられています。このように、発達障害があることを見過ごされていた女の子でも、思春期に入るとその特性が目立つ場面が増えます。成長とともに変化する人間関係についていけなくなったり、周りとの違いが明らかになったりするのです。例えば、女の子同士の仲良しグループや、男女の役割分担など、暗黙の了解が必要なコミュニケーションなどで混乱してしまうことがあります。さらに、この時期は自意識が芽生える時期でもあるため、それまで自分の特性に自覚がない子でも、自らの特性が気になり、悩むようになることもあるでしょう。思春期という、自意識を育みながら成長する時期に他者との違いによって責められ、傷つく経験を重ねたり、特性に合った支援を受けられなかったりすると、症状の悪化や二次障害に繋がってしまいます。次の章からは、思春期に起こる具体的な変化と、発達障害の女の子ならではの注意点や対処方法を説明していきます。思春期の女の子に起こる体の変化とは出典 : 思春期に入ると、脳が生殖器にホルモンを出すよう指令を出し、生殖器が分泌した女性ホルモンが全身を巡ることで、女性らしい体への変化(第二次性徴)が起こります。では、具体的にはどのような変化が起こるのでしょうか。具体的には、以下のような変化が起こります。変化が起こる順番や、その程度は人それぞれです。・乳房が膨らむ・丸みを帯びた体つきになる・陰毛、わき毛が生える・初経が起こる(後述)・外性器・内性器(子宮・卵巣・腟・外陰部)が発達する女性アスリート指導者のためのハンドブック「発育・発達について」│国立スポーツ科学センターHPこのような変化を受け、女の子の身体は大人に近づいていきます。皮下脂肪の増加によって疲れやすく眠くなりやすくなる、生理に伴う体調不良など、変化と共に訪れる不調や困りごとがあります。これからは、体の成長に伴う発達障害の女の子ならではの困りごとと、その対処法を紹介します。思春期は”第二の誕生”と呼ばれるくらい、体に大きな変化が訪れます。この変化は、大人になる過程での自然な出来事ですが、大きな変化に戸惑いを覚える子どもたちも少なくないようです。特に、特性がある女の子は急な変化が苦手なため、強いストレスを感じることがあります。また、身体つきの変化に伴い、日常で行うべき事柄が増えることも精神的負担になりえます。たとえば、ブラジャーを着ける、生理ナプキンを取り替える、などです。これらのことを事前によく知らずに変化を迎えた場合、対応が遅れ、拒否感や苦手意識に繋がることもあります。さらに、感覚過敏が原因でブラジャーのワイヤーで締めつけられる感覚を不快に感じる、不器用さゆえにホックを上手に閉められない、などの困りごとも考えられるでしょう。■事前準備で見通し不安を解決!見通し不安がある子には、前もってこれから起こる変化の内容を伝えておきましょう。特性がある子どもたちは、いきなり変化する身体への違和感や、異常なのではないかという不安を感じています。親しい立場にある大人の女性が、体の変化は自然の流れであること、順調な成長の証であることを伝えておきましょう。さらに「胸が膨らむ」「おりものがでる」「初経は茶・黒っぽい血が少しパンツにつく」など、変化の内容を具体的に説明できると、よりイメージを持ちやすくなります。■子どもの感覚にあった下着を選ぶワイヤー入りのブラジャーに違和感を感じる場合、ワイヤレスのブラジャーやカップつきキャミソールを試してみましょう。比較的締めつけ感が少ないため、ストレスを減らすことが期待できます。不器用でホックが上手に扱えない場合は、シームレスタイプのブラジャーがおすすめです。また、母親や姉妹など、身近にいる女性が実際に着けるところを見せたり、いっしょに練習したりすることも効果的です。思春期は、自意識が芽生え、周囲の目を気にするようになる時期です。自分という存在を他者の視点から考えるようになるため、想像力や社会性が育まれる時期とも言えます。発達障害がある子どもの中には、自分の言動や容姿が周囲にどのような印象を与えるのか想像をすることが苦手、または興味がない子どもがいます。本人の悪気はなくても、周囲から「距離感が近すぎる」「はしたない」と感じられる言動をしてしまうことがあります。その結果、同性から距離を取られる、勘違いした異性による性的被害に遭う、などの問題に繋がってしまう可能性があるのです。■「マナー」「エチケット」はルール作りで明快に!発達障害の子は認知に特性があるため、「公共のマナー・エチケットを守りなさい」「女の子らしく」などの抽象的な注意は理解が難しいでしょう。なぜその行動をしてはいけないのか(周りの人を嫌な思いさせたり、誤解させたりした結果、自分がトラブルに巻き込まれることがあるから、など)を説明すると同時に、してはいけない行動と、対応する行動案を合わせて示してあげましょう。行動単位で提案されることで、判断の難しさが軽減されます。ルールの例として、次のような項目が考えられます。・男の人に触らない…男の人と話すときは腕1本分の距離を取る。・人前で着替えない…どうしても服を脱ぎたいときはトイレか保健室、更衣室を使う。・人前で性器、胸を触らない…どうしてもかゆみ、違和感などで触りたいときはトイレに入る。・人前で性的な発言をしない… 発言したいときは、おっぱい→胸などの言い換えを利用する。子どもたちは、一つひとつ教えられるうちにパターンとして整理できるようになっていきます。根気はいりますが、ぜひ、具体的な言葉で示すことを続けてみてください。生理について。ナプキンの扱い方、どう教える?出典 : 生理は、思春期の女の子の体の変化でいちばん戸惑いやすいと言えるでしょう。この章では生理に関して発達障害の女の子にどんな困りごとが起こり、どうサポートするべきなのかを説明します。生理(月経)は「約1ヶ月の間隔で起こり、限られた日数で自然に止まる子宮内膜からの周期的出血」を指します。医学的な正式名称は月経ですが、生理という呼び方も一般的です。初めての月経のことを初経と言い、迎える年齢は平均12~13歳(小学校6年生~中学校1年生)です。初経が起きる前触れとして、体の変化があります。急に身長が大きくなったり、胸が膨らみ始めたりしたら、いつ初経が来てもいいよう生理について説明し、生理用ショーツやナプキンを携帯させておくと安心です。月経周期とは、月経初日から次の月経の前日までの日数を指します。25~38日が正常範囲ですが、思春期には多少のずれがあり、毎回周期がちがっていても心配する必要はありません。特に、初経を迎えてからしばらくは乱れがちなことが多く、周期が安定するには数年かかると言われています。月経周期を把握すると、生理と関連した不調の存在を知ることに繋がります。生理に関連した不調では、月経前症候群(premenstrual syndrome)が代表的です。この症状は略してPMSと呼ばれ、月経開始の3~10日ぐらい前から始まる精神的・身体的な不調の総称です。身体的な症状として、乳房が張る、痛む、乳首が敏感になる、頭痛、肩こり、腰痛、下痢、ニキビ、肌あれなど、不快感を伴う変化が起こります。精神的な症状としては、イライラ、憂うつ感、不眠、眠気、過食などがあります。このように、生理に関係して女の子の体はとてもデリケートに変わります。特に、発達障害の女の子は、特性によって独特な困りごとを感じることがあるのです。以下では、生理に関係する困りごとと、対処法を説明します。感覚過敏がある女の子の中には、生理中の蒸れ・かぶれ、ナプキンの肌触りに対する不快感をより敏感に感じる場合があります。■生理用品を工夫して少しでも快適に蒸れやかぶれに対しては、蒸れを軽減する生理用品(サニタリーショーツや布ナプキン、月経カップ、タンポンなど)を利用したり、こまめなナプキン交換を習慣化する、などで対処しましょう。かぶれが気になるときには、婦人科などで薬を処方してもらうことも可能です。不器用さや、順序立てた行動の苦手がある子は、ナプキンをつける手順がわからなかったり、正しくつけられなかったりという困りごとが起きます。■視覚的なイメージに訴える手順を知るには、周囲の大人の女性が実際につけ替えする場面を見せてあげることが一番効果があるでしょう。他にも、絵や図を使って視覚的なイメージに働きかける方法も効果的です。■不器用さはつけ方の工夫で解決!不器用でつけられない子どもには、比較的手順が単純な羽根なしのナプキンや、家でナプキンを2枚重ねにしておき、外でははがす手間を省く、などの方法が考えられます。感覚鈍磨の特性がある子どもは、経血に気づかずナプキンをつけなかったり、蒸れやかぶれに気づかず、ナプキンをつけっぱなしにしてしまいます。ナプキンをつけている下着の中は湿気がこもっていて雑菌が繁殖しやすく、皮膚炎や感染症につながる場合があります。■「交換するタイミング」をルール化しようナプキンを交換するタイミングをルールとして決めましょう。「1時間目、お昼休み、4時間目が終わった時に変える」など、具体的なタイミングを指定されているほうが意識しやすいでしょう。生理に関係する不調は生活習慣、メンタルの影響を受けやすいと言われています。発達障害(特にASD)の子どもは生活習慣が乱れやすく、ストレスも感じやすいと考えられています。そのため、月経不順や生理痛・PMSの重症化に気をつける必要があります。■生活リズムを整えるホルモンバランスを安定させるためには、規則正しい生活が必要です。そのため、起床・食事・入浴・就寝など、1日の中での出来事を同じ時間に行うように心がけましょう。■月経周期を記録する周期の乱れを判断する目安として前後およそ1週間ほどのズレが続くようでしたら、産婦人科に相談してみましょう。この時、生理周期の記録を持っていくと医師が状況を把握しやすくなります。生理周期の記録の仕方としては、大人のサポートのもと生理開始日終了日にカレンダーにシールを貼る、生理日予測アプリを使う、などがおすすめです。自身の月経周期を把握すると、月経周期に伴う体調の揺らぎのリズムをつかめます。体調不良が起きやすい時期に入ったら、激しい運動や夜更かしを控える、温かい食べ物を意識的にとるなど、自身の症状にあったPMSとの付き合い方を見つけていきましょう。どうしてもつらいときは、低用量ピルという薬で症状を和らげることも可能です。気になるときは婦人科に相談してみましょう。■体調が悪い時は無理をしない生理に関係する体調不良は、精神状態に大きな影響を受けます。さらに、思春期の発達障害の女の子にとって、集団生活によるストレスや身体の変化に対する違和感から、より精神に負担がかかりやすい時期だと言えます。そのため、本人がつらいと感じているときは無理強いせずに、休ませることも大切です。発達障害の女の子にとって、思春期はなぜつらい?心に起こる困りごとにはどんなものがある?出典 : 思春期には、心は体と同じくらい大きく変化します。この章では、思春期に起こりうる心の変化と、発達障害の女の子が感じる困りごと、その対処法を説明します。思春期は、子どもから大人への成長段階として、自らのアイデンティティを築き上げている時期です。そのため、性格や人とのかかわり方にも、様々な変化が起こります。その変化は、急激で、個人差があるため理解が難しく、本人も家族も戸惑ってしまいます。また、困った言動が思春期特有のものなのか、特性によるものなのかの判断がつかず、対応が難しいと感じることもあるでしょう。この時期の環境とのかかわり方は、精神の健全な発達や、自己肯定感の向上に強く結びつきます。思春期ならではの心の問題が適切に対処され、子どもにとって成長機会となることを目指しましょう。では、思春期の心の変化に伴って起こりうる困りごとにはどのようなものがあるのでしょうか。子どもは精神面での成熟が進むにつれて、自立心が芽生え、大人に対して反抗的・疑い深い態度を態度をとるようになります。「一人前に見られたい」という気持ちから、大人に対して反抗的な態度をとるようになります。また、刺激欲しさに衝動的な言動をしやすくなるのです。また、もともとの特性であった衝動性や多動性が強化され、いきなり激情的な言動を見せるようになることがあります。さらには、成長による心境の変化や沸き起こる衝動などの感情を発散する術や場面がないことも、この時期の発達障害の子にとっては大きな問題と言えるでしょう。ASDの子の中には、この時期特有の興味関心や反抗的な感情、将来への不安といった複雑な感情を認識・表現することが苦手な子がいます。そのため、自分の中でため込みすぎて根強いストレス感情を持ったり、無気力感を抱いたりして、問題の悪化を招きかねません。■感情の流れを親子で整理しよう「どんな時に怒鳴ってしまうのか」「何に対して不安を感じるのか」など、漠然とした感情の流れを整理する手伝いをしましょう。問題行動を起こしてしまう場面や漠然とした不安感情の中身を紙に書き出すことで、行動以前にできる手立てはないのかを探ったり、感情の具体化によって不安感情を和らげたりできます。■ADHDの場合は薬物療法による支援も視野にADHDは薬の効果が出やすい症状です。合う合わないは個人差がありますが、本人の力や周りの環境調整ではどうしようもない時は、医師の指導のもと、薬物療法による支援も選択肢のひとつとなります。■興味関心を頭ごなしに否定しないこの時期の子どもたちは、様々な事柄に興味を持ち、試してみたい衝動を持っています。大人から見ると、不釣合いであったり、滑稽に思えたりすることもあるかもしれません。けれども、そのような多方面への興味関心はアイデンティティの確立において重要な役割を果たしています。見守ることが子どもの長い目で見た子供の成長につながるでしょう。精神面での成長によって、人付き合いが複雑になり、女の子ならではのかかわり方のスタイルもできていきます。男女の役割や、仲良しグループなどの表面的には表現されない意味や役割を共有する集まりが増え、”暗黙の了解”を読み解くスキルが求められるようになります。特に女の子は仲良しグループの意識が強く「ガールズトーク」といった、自分たちにしかわからない、かつ、話題がどんどん切り替わる話を楽しむようになるのですが、特性がある女の子は空気を読んだり、人の気持ちを考えることが苦手なため、意図せず周囲を傷つけるような発言をして孤立してしまうことがあるのです。また、人の評価や目線に敏感になる思春期に、失敗経験や叱責を積み重ねることで自己肯定感さがり、困りごとの悪化や人付き合いへのトラウマ、二次障害に繋がることもあります。■社交性が苦手なのを認め、無理させない友達づきあいや集団行動ができなくても大丈夫、と伝えましょう。人付き合いで困った場面を上記の方法で整理してみましょう。■専門家の力を借りる家族だけではどうしても解決が難しいこともあるでしょう。学校のカウンセラーや医師、臨床心理士などの専門家に頼って人付き合いの方法を勉強することも一つの手段です。女の子の性の問題に向き合う出典 : 思春期以降は、それぞれの性の特徴がはっきりし始め、異性への関心が高まる時期です。発達障害がある女の子は、性への関心や周囲の目線への無自覚さがあるために、トラブルに巻き込まれる可能性があります。本人が、自分の特性と周囲からの見え方を客観的に認識し、自らの体を守れるような仕組みを作りましょう。以下では、発達障害がある女の子が注意すべき、性にまつわる問題と対処法を紹介します。アスペルガー症候群の女の子は、仲良くなることと性交渉をすることとの区別が理解できない場合があります。また、ADHDの女子は性的衝動に駆られやすく、性交渉の頻度が高くなり、不本意な妊娠や性感染症につながる恐れがあるといわれています。このような問題を防ぐために、不用意な性交渉による影響を教えましょう。性交渉の意味、仲良くすることとは違うことをしっかり説明し、性交渉によって起こる性感染症や不本意な妊娠のリスクを伝えてください。そして、性交渉を求める男性の言葉や態度、断り方、避妊についても具体的に説明できるとよいでしょう。相手の意図が理解できずに、言葉をそのまま信じてしまい、見知らぬ男性の誘いに乗って性的関係に持ち込まれる危険があります。また、適切な距離感がつかめず、勘違いをした異性から性的被害を受けることも考えられます。こういった場合、なぜだめなのかを説明するよりもルールとして教えたほうが理解しやすくなります。言葉で伝えるだけでなく、文字に起こしたり、図で示すとよりイメージが付きやすい場合もあります。例えば、男の子に触らない、話すときは腕一本分の距離をとる、知らない人と話さない、メールアドレスや名前、電話番号を安易に教えない、個人情報をネットに書き込まない、などのルールを決めたり、目安となる距離感を描いた絵を見せる、といった方法があります。アスペルガー症候群の特性として、人との距離感がわからない、また、周囲から自分がどのように見えているかを認知することの苦手があります。こういった特性が、異性との近すぎる距離感や、自分や他者の恋愛について気軽に話してしまう、同性と異性での行動の区別がつけられないといった、恋愛にまつわる人間関係のトラブルにつながる場合があるのです。また、衝動性があるADHDの女の子は好きな異性に近づきすぎたり、場面を気にせず「好き」と言ってしまう、などの行動を起こしてしまうことがあります。このようなトラブルが見られる場合、本人は性的知識の不足や概念的な物事を理解することの難しさを抱えています。そのため、周囲の大人が場面ごとにどうすべきかを、一つひとつ説明し、理解してもらう必要があります。家庭が、子どもにとってわからないことがあるとき、トラブルが起こったときにすぐ相談できる場であるために、普段から恋愛や性のことについて話合う機会を持っておくとよいでしょう。まとめ出典 : 思春期は、発達障害がある女の子にとって心身共に揺らぎが大きい時期です。この時期は、大きな変化による身体的な負担や精神の不安定さから、本人だけでなく、周囲の大人も不安や戸惑いを感じる機会が多くなります。お子さんに次々と起こる変化に向き合うことは根気が必要です。ですが、不安定な時期だからこそ、お子さんの特性についてより深く理解し、一緒に困りごとを解決していくチャンスでもあります。家族で話し合いながら、あまり悲観的になりすぎずに、一つひとつ乗り越えていきましょう。梅永 雄二/監修 『15歳までに始めたい! 発達障害の子のライフスキル・トレーニング』2015年/健康ライブラリー宮尾 益知/監修『女の子の発達障害: 思春期の心と行動の変化に気づいてサポートする本』2016年/河出書房新社田中康雄 /監修『イラスト図解 発達障害の子どもの心と行動がわかる本』2014年/西東社女性アスリート指導者のためのハンドブック│国立スポーツ科学センターHP
2018年02月02日子どもが成長してくると、一日の生活リズムを親が整えてあげる必要があります。朝起きる時間や朝ごはんの時間、お昼寝のタイミング、寝る時間といったことです。一日の生活リズムを整えてあげる理由は、朝早く起きて朝日を浴びると体内時計がリセットされ、体調が整うことがひとつは挙げられます。そして夜早く寝ることで成長ホルモンがきちんと分泌され、身体が成長していきます。そうすることで、子どもの身体が健全に成長するための基礎が整うわけです。まずは早寝早起きのペースを整えてあげましょう。加えて今回は、子どもに早めに身に着けてほしい生活習慣を紹介していきます。●社会で生きていく上での基本「挨拶」子どもが話せるようになるのを待たなくても、子どもに挨拶の習慣をつけさせることはできます。まずは親がお手本を見せてあげましょう。近所の人や顔なじみのスーパーの店員さん、バスの運転手さん、児童館の先生などに親がきちんと挨拶しているところを見せてあげます 。お辞儀の真似ができるようになったら、一緒に頭を下げるようにするといいのではないでしょうか。子どもがまだ幼いころから挨拶の習慣をしっかりつけることで、社会で生きていく上での基本中の基本を身につけることができます。●可能な限り食後には必ず「歯磨き」をする幼稚園に入るまでは、家で遊ぶことが多いと思います。お世話をするママやパパには少々手間になりますが、家にいるときは食後必ず歯磨きをしてあげましょう 。ママやパパが朝晩しか歯磨きの習慣がなくても、子どもは可能な限り食後の歯磨きをします。その習慣をつけさせると、もしママやパパが食後の歯磨きを忘れても子どもから「歯磨きしてないよ!」と教えてくれるようになるでしょう。●ウイルスや菌から自分の身を守る習慣「うがい・手洗い」インフルエンザなどの感染症が流行する時期だけでなく、一年を通じて外出先から家に帰ったら子どもに「うがい・手洗い」の習慣をつけさせることも大切なことです。そのためには、ママやパパも一緒にうがいと手洗いをする ことが必要です。「一緒にうがいと手洗いしよう」と声をかけると子どもも受け入れやすいでしょう。子どもが手洗いをしやすいように泡で出てくるタイプのハンドソープを用意することをおすすめします。まだ子どもが小さく、いわゆる「喉を洗ううがい」ができない場合は、まず口に水を含んで吐き出すことから練習してもらいましょう。----------挨拶、歯磨き、うがい・手洗いといった生活の基本となる習慣は、小学生になってからでもよいのでは?と思われるかもしれません。しかし、小学生ともなるとすでに自分の生活ペースができあがっています。そこに親から半ば強制的に新たな習慣を組み込まれると反発されるかもしれません。ですので、まだ子どもなりの生活習慣ができあがっていない年齢のうちから親が生活習慣を作ってあげる ことが大切なのです。筆者の息子は一時期恥ずかしがって挨拶をできなくなってしまいました。でも根気よく言い聞かせることで、元通りに挨拶ができるようになりました。筆者のケースのように親の思い通りにいかないこともあるかもしれません。子どもの話をよく聞き、「なぜ挨拶をしなければいけないのか」「なぜ歯磨きをしないといけないのか」「なぜうがい・手洗いをしないといけないのか」をかみ砕いて話すことで、子どもは理解してくれますよ。【参考リンク】・改善しょう! 子どもたちの生活リズム – 東京都医師会●ライター/前嶋志保●モデル/REIKO
2018年01月22日こんにちは。臨床心理士の今井千鶴子です。12月となり、来春小学校へ入学するお子さんがいるママにとっては、小学生の生活がそろそろ気になる時期ではないでしょうか。そこで今回は、さまざまな調査結果をもとに、小学生の1日の過ごし方についてご紹介します。●起床から登校・下校までの様子(1)起床時間村田(2014)によると、小学生全体の平均起床時間は6時34分とのことです。ちなみに、カゴメ(2016)の調査では、保護者が子どもの健康状態について最も気になるのは「朝すっきり起きられない(25.4%)」であることがわかっています。この結果をふまえると、「登校時間に間に合うように何とか起きている」お子さんが多いことがうかがえます。入学後に今よりも早く起きる必要があるお子さんは、新生活に向けて今から早起きの習慣を身につけておきたい ですね。(2)登校時間学校によって異なりますが、8時前後に登校している子が多いようです。また、学校までの距離によって違いはありますが、7時半から8時までには自宅を出る お子さんが多いようです。(3)下校時間学校や学年によって下校時間はさまざまですが、一般的には小学校1年生だと15時頃、その他の学年でも16時頃に帰宅する ことが多いようです。また、下校後に児童クラブ等で過ごすお子さんもいます。●起床帰宅後の子どもの様子最近の小学生は忙しいといわれます。例えば、16時帰宅で21時就寝の場合、5時間の間に、勉強(宿題)、夕食、入浴、習い事などさまざまな活動を行っています。博報堂こそだて家族研究所(2016)の調査でも、小学生の81%が何らかの習い事をしている ことがわかっています。最近は「疲れた」が口癖のお子さんも目立ちますので、お子さんにとって無理のないスケジュールになるよう配慮していきたいですね。(1)夕食時刻夕食の時間は、小学校2年生では18時頃、5年生では19時頃が最も多いのですが、20時頃に食べている子も10%前後いる ことがわかりました(久世,2010)。(2)勉強(宿題)小学2年生では30分〜1時間ほど、5年生では1時間〜1時間半ほど勉強している 子が多いようです(久世,2010)。これまでの研究から、睡眠には記憶を定着させる働きもあるといわれています。ですから、特に暗記が求められる問題は(睡眠時間を減らさない範囲で)就寝前にやるのもよいかもしれません。(3)お風呂浴室に滞在する時間は25分前後 だといわれています(東京ガス都市生活研究所,2010)。また、夕食前に入浴する家庭、夕食後に入浴する家庭がそれぞれあるようです。(4)就寝時間小学生全体の平均就寝時間は、21時30分とのことでした(村田,2014)。就寝時間に関しては、小学1年生が21時06分であるのに対し、小学校6年生は21時55分など、学年が上がるごとに遅くなる傾向があるようです。多くの研究で子どもの夜ふかしのデメリットが指摘されていますので、気をつけていけたらいいですね。----------いかがでしたか?今回は小学生の1日の過ごし方についてお伝えしました。お子さんが楽しい学校生活をおくれますように!文献村田他(2014)日本の小学生の睡眠習慣と睡眠に影響を及ぼすライフスタイルについての大規模調査小児保健研究,73,798-810東京ガス都市生活研究所(2010)親子入浴に関する実態調査カゴメ(2016)小学生のお通じに関する調査博報堂こそだて家族研究所(2016)小学生ママの「子どもの習い事・身につけさせたいスキル」レポート久世他(2010)子どもの生活習慣づくりに関する調査概要岐阜女子大学紀要,39,27-33●ライター/今井千鶴子
2017年12月21日こんにちは。コラムニストの鈴木かつよしです。筆者は東京の出身ですが22歳で就職と同時に兵庫県の神戸市に赴任しました。それからは山形県の山形市や栃木県の那須塩原市など、38歳で東京に戻ってくるまで東西の数か所に移り住んだ経験を持つ元・転勤族です。全ての土地に単身で赴任した経験から申しますと、できることならママやお子さんたちにもパパと一緒にいろんな土地の文化と親しんでいただけたらいいなと思います。ただ、その際ですが、知っておいた方がいい「西日本」と「東日本」の“常識の違い”というものがあるのも事実です。今回はそんなお話しをさせていただこうかと思います。●阪神地区に「きつねそば」や「たぬきうどん」は無い社会人になった自分がはじめて暮らした西日本の街・神戸では、お蕎麦屋さんに入って「きつねそば」を注文しても「お兄さん、そんなのは無いよ」と笑われました。同様に「たぬきうどん」もありません。あとで分かったことですが、神戸や大阪といった阪神地方では東京で言う「きつねうどん」のことを『きつね』の一言で表し、東京で言う「きつねそば」のことを『たぬき』の一言で表していたのです。東京で言う「たぬき○○」に該当する“天かすがのったそば・うどん”はそもそもお蕎麦屋さんのメニューには無いのが一般的で、これでは何の予備知識もなく赴任した筆者のような者が困惑するのも無理のないことでした。この例だけではなく、“食べ物”は西日本と東日本の違いを際立たせる分野です。代表的な例としては次のようなものを挙げることができます。・東京では人気のおでんダネ「ちくわぶ」は西日本ではあまり知られていない・お正月に食べるお餅、東日本では四角いのが一般的だが西日本では丸いのが普通・雛あられは東日本では砂糖でコーティングした甘い米菓子。西日本では丸いお煎餅。・長ネギは東日本では白ネギが一般的だが西日本では青ネギが普通・すき焼きは東日本では「鍋物」だが西日本では砂糖をまぶして焼く「焼肉」●文化や生活習慣の違いは慣れるしかない!食べ物の違いは東日本と西日本で大きく違うものがありますが、ただ今どきは自分の出身地の食べ物が食べたいと思えばネット通販もありますし、どうにだってなる時代になりました。それよりも文化や生活習慣の違いの方が実際に生活するうえでは重要で、これはもう慣れるしかないことばっかりだとも言えます。例えば以下のようなことです。・電源周波数が東日本は50Hzだが西日本は60Hz・エスカレーターの追い越し車線、東京は右側で大阪は左側・東日本では雪かきに使う大型の掘削用具がスコップで小型のがシャベル、西日本では逆・某大手ハンバーガーチェーンの呼び方、東日本は「マック」、西日本は「マクド」・東日本ではポリタンクの色が赤、西日本では青●「人」の“気質”の違いがいちばん興味深いさて、ここまで東と西の食べ物や慣習の違いについて見てきましたが、筆者がいちばん興味を持っていることは東日本と西日本の「人」の“気質”の違いです。みなさんは“朝ドラ”をみていて、東京局制作のドラマと大阪局制作のドラマとでは“随分と趣きが違うなあ”と思ったことはありませんか?筆者はこの点について次のようなことを感じています。・大阪局制作のドラマは姑が嫁を苛めるが東京局制作のドラマでそれはあまり見られない・大阪局制作のドラマは子役の子どもたちの演技が“わざとらしい”が東京のは“自然体”----------いかがでしょうか。これは「いい」とか「わるい」とかの問題ではなくて、“その方がその地域ではウケがよくなるのでマーケティング戦略としてそういった手法を採用する”という話しです。なので筆者から何かしらの「価値判断」をすることはいたしません。気質の違いということでは、これも筆者の印象ですが・東日本は個人主義的、西日本は集団主義的・東の人は落ち着いた色づかいを好み、西の人は比較的派手な色づかいを好む・東の芸人は自分からはけっして笑わないが、西の芸人は身内のネタで自分がゲラゲラ笑うなどの特徴が挙げられるかと思います。いずれにしても「郷に入っては郷に従え」です。何かの縁で赴くことになった土地での暮らしを満喫するには、その土地での“常識”をいったん丸ごと受け入れて、楽しんでしまうのが近道ではないかと思います。●参考文献『東日本と西日本』大野晋・宮本常一著、洋泉社MC新書(2006年)●ライター/鈴木かつよし●モデル/神山みき
2017年11月29日こんにちは、1歳の息子の母であり5か月目の妊婦でもある金融ライターの齋藤惠です。産後ダイエットというと、さまざまな情報やノウハウがネットに出回っていますが、果たしていつ・どのように始めるのがもっともベストなのでしょうか?今回はそんな疑問にお答えすべく、専門書から産後ダイエットについてまとめてみます。もちろん、個人情報がありますので、参考程度にご覧ください。●産後すぐに本格的なダイエットをはじめていいの?医学博士の本田由佳氏は著著で、産後すぐの激しいダイエットに警鐘を鳴らしています。急なダイエットを行っても水分や筋肉しか減らず肝心の体脂肪はすぐには落ちないそうで、健康的に痩せることはできないどころか髪・肌・爪などにダメージを与えてしまう ことがあるそうです。本田氏いわく、「産後のダイエットは1か月に1キロダウンくらいのペースが理想」とのこと。ただでさえ育児は体力が必要なので、無理なダイエットによって体調を崩しては健康的な美しさを取り戻すことはできません。産後すぐにダイエットに取り組むという高い意識を持つのは良いことですが、最初からストイックにならずに少しずつ産後の身体をダイエットに慣らしていくよう心がけましょう。●妊娠前の体重に戻したい!梶田了氏(ライフ快療院院長・かじた式骨盤矯正スクール主宰)の著書によると、体重を戻すときのポイントは大きく3つあるそうです。1、筋力を動かす2、食事のコントロール3、睡眠時間を確保するこれら3つをすべて完璧にこなそうというのは、産後のママにとって不可能なことです。しかし、筋力アップならラジオ体操から始めてみる、食事ならタンパク質、ビタミン、ミネラルなどをどこか1回の食事で最低限摂取することで1日トータルでの栄養バランスアップを目指す、睡眠なら子どもの寝ているときにもっと積極的にとる(省略して支障ない家事はどんどん省く!)といった小さな工夫を日々積み重ねていくことで、数か月後の体質や体調に大きな変化が表れるはずなのです。●専用の補助ベルトで骨盤矯正からはじめるのもおすすめ!産婦人科医として有名な宋美玄氏が著書で推薦している産後のセルフケアの中に、補助ベルトを使うという方法があります。産後ダイエットに大切な骨盤などの回復に効果的なのだそうです。骨盤が整うことで体重や体型も戻りやすくなる ので、運動や生活改善が難しいママにはとくにおすすめですね。健康的な生活習慣と専門の道具を使うことによって、無理せず自分に合ったダイエットを継続してみてください!参考書籍:・『ママと赤ちゃんにやさしい産前・産後のボディケアとビューティーメゾット』本田由佳・『30歳からの産後骨盤ケアセルフエクササイズと日常生活のアドバイス』梶田了・『産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK』宋美玄●ライター/齋藤惠●モデル/神山みき(れんくん)
2017年11月06日1. お子さんの就学先に悩む保護者の方へ出典 : 障害のあるお子さんを持つ保護者の方にとって、お子さんの就学先選びは非常に大きな決断になると思います。特別支援学校・特別支援学級・通級・通常学級と様々な選択肢がありますが、それぞれの仕組みや教育環境、メリットやデメリットを把握したうえで、今、お子さんにもっとも合う学校を選ぶことが大切です。この記事では、特別支援学級の対象となる障害や教育環境、通級・特別支援学校との比較、入学の方法から卒業後の進路などについて詳しく解説していきます。ぜひ就学先選びの参考にしてください。2. 特別支援学級ってどんなところ?出典 : 特別支援学級とは、障害のある子ども一人ひとりに応じた教育を行うため、小・中学校に設置された、障害種別ごとに編成された少人数の学級をいいます。学校教育法81条では、以下のように定められています。幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校及び中等教育学校においては、次項各号のいずれかに該当する幼児、児童及び生徒その他教育上特別の支援を必要とする幼児、児童及び生徒に対し、文部科学大臣の定めるところにより、障害による学習上又は生活上の困難を克服するための教育を行うものとする。○2 小学校、中学校、義務教育学校、高等学校及び中等教育学校には、次の各号のいずれかに該当する児童及び生徒のために、特別支援学級を置くことができる。一 知的障害者二 肢体不自由者三 身体虚弱者四 弱視者五 難聴者六 その他障害のある者で、特別支援学級において教育を行うことが適当なもの○3 前項に規定する学校においては、疾病により療養中の児童及び生徒に対して、特別支援学級を設け、又は教員を派遣して、教育を行うことができる。年の文部科学省の調査によりますと、特別支援学級に在籍している幼児児童生徒の数は187,100人で、幼児児童生徒全体に対する割合は1.2%です。ただし、高校で特別支援学級を設置している例はまだ見受けられず、在籍している生徒数も調査によると0人になっています。特別支援学級を設置している小学校の割合は76.6%、中学校は73.7%と、ほとんどの小・中学校が特別支援学級を設置しています。また、特別支援学級に在籍している幼児児童生徒の数、特別支援学級の数は、どちらもここ20年間は増加傾向にあり、そのニーズの高まりとともに小・中学校での支援体制の整備が進んでいます。文部科学省特別支援教育資料(平成27年度)【第1部集計編】3. 特別支援学級の対象となる障害の基準は?出典 : 特別支援学級は障害種別ごとに、知的障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱、弱視、難聴、言語障害、自閉症・情緒障害の7種類のの学級があります。特別支援学級の対象となる障害の程度は以下の通りです。知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通に軽度の困難があり日常生活を営むのに一部援助が必要で、社会生活への適応が困難である程度のもの補装具によっても歩行や筆記等日常生活における基本的な動作に軽度の困難がある程度のもの・慢性の呼吸器疾患その他疾患の状態が持続的または間欠的に医療又は生活の管理を必要とする程度のもの・身体虚弱の状態が持続的に生活の管理を必要とする程度のもの拡大鏡等の使用によっても通常の文字、図形等の視覚による認識が困難な程度のもの補聴器等の使用によっても通常の話声を解することが困難な程度のもの口蓋裂、構音器官のまひ等器質的又は機能的な構音障害のあるもの、吃音等話し言葉におけるリズムの障害のあるもの、話す、聞く等言語機能の基礎的事項に発達の遅れがあるもの、その他これに準じるもの(これらの障害が主として他の障害に起因するものではないものに限る。)で、その程度が著しいもの・自閉症又はそれに類するもので、他人との意思疎通及び対人関係の形成が困難である程度のもの・主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので、社会生活への適応が困難である程度のもの文部科学省通知「障害のある児童生徒の就学について」これらの基準をもとに、最終的な就学先は、お住まいの市区町村で行われる就学相談を通して、保護者の方の意見を尊重しながら決定します。また、これらの基準より重い障害のあるお子さんは、多くの場合、特別支援学校の対象になります。以下の記事も参考にしてみてください。4. 通常の小・中学校でもきちんと支援を受けられるの?出典 : 通常の小・中学校でも、障害のある子どもに対して理解ある支援が受けられるのかどうかを心配されている保護者の方は多いのではないでしょうか。ここでは、障害のあるお子さんも保護者の方も安心して学校生活を送ることができる支援体制の例をご紹介します。「個別の指導計画」とは、障害のある子どもに指導を行うためのきめ細かい計画です。子どもの一人ひとりの教育的ニーズに対応して、指導目標や指導内容・方法を盛り込んであります。例えば、単元や学期、学年等ごとに作成され、それに基づいた指導が行われます。特に、後述する「自立活動」の指導は、この計画に基づいた内容になっています。「個別の教育支援計画」とは、進級・進学時の引継ぎ、他機関との連携を図るための計画をいいます。乳幼児期から学校卒業後までの一貫した長期的な計画である点が「個別の指導計画」との違いです。学校が中心となって、教育・福祉・医療・労働などの関係機関と連携し、保護者の意見とともに作成することなども求められています。通常の小・中学校でも、障害のある児童・生徒に対しては学校の教員と保護者とが一緒になってこの計画を作成し、学校と協力しながら適切な支援を受けることができるようになっています。独立行政法人国立特別支援教育総合研究所(4)個別の指導計画と個別の教育支援計画特別支援教育コーディネーターは、学校内や福祉・医療等の関係機関との間の連絡調整役として、あるいは保護者に対する相談の窓口として、校内の関係者や関係機関との連携協力の強化を図るための役割を担っており、学校内の教員が指名されています。つまり、特別支援教育コーディネーターは学校や担任の先生と保護者、専門機関とのパイプ役を果たしており、必要なときには相談できる体制になっています。また、小・中学校の教員は障害に対する専門的な知識を必ずしも持っているわけではありませんので、特別支援教育コーディネーターが担任に対する助言も行っています。5. 特別支援学級の教育環境出典 : では、特別支援学級のなかはどのような教育環境になっているのでしょうか。特別支援学級では、障害のあるお子さんが能力を最大限発揮して学習できるよう、様々な工夫がされています。また、障害のない通常の学級の子どもと触れ合う機会も設けられています。特別支援学級の上限定員は8人と定められています。少人数教育で、障害のある子ども一人ひとりのニーズに合わせた教育が受けられるようになっています。また、教室内は、子どもの実態に即して安全で過ごしやすい環境になるような工夫がされています。例えば、教室という多目的な空間に混乱してしまう子どもがいる場合、一つの場所では一つの活動が行われるような環境が作られます。自立活動とは、特別支援学校学習指導要領に定められている教育活動の一つです。障害による学習上または生活上の困難を改善・克服するための指導を行う目的で設けられています。「個別の指導計画」に基づいて子ども一人ひとりにあった指導目標が設定され、その目標を達成するような指導が行われます。例えば、身体の動きに困難のある子どもに対してはそれを改善するための指導が、コミュニケーションに不安のある子どもに対してはそれを支援するための指導が自立活動の時間に行われます。具体的な内容は子ども一人ひとりに合わせたものになっています。文部科学省特別支援学校学習指導要領解説自立活動編特別支援学級では、必要に応じて、各教科の目標・内容を下学年の教科の目標・内容に替えたり、各教科を知的障害特別支援学校の各教科に替えたりすることができます。これは通常の学級に所属している場合は受けることのできない大きなメリットです。小・中学校や特別支援学校の学習指導要領などには、障害のある子どもと障害のない子どもが活動を共にする機会を積極的に設けるよう示されています。これにより、障害のある子どもが通常の学級で障害のない子どもと触れ合うことができます。例えば、・朝の会や帰りの会を、同じ学年の通常の学級である「交流学級」で、通常の学級の子どもたちと一緒に過ごす・給食や体育、音楽の時間は通常の学級で活動するなど、通常の学級と特別支援学級を行き来するといった例があります。6. 障害種別ごとの教育内容出典 : 特別支援学級は小・中学校に設置された学級であるため、上述したような配慮を行う場合であっても、学校教育法に定める小学校及び中学校の目的・目標を達成するものである必要があります。特別支援学級においてもその教育目標を達成するために、障害の種別ごとに教育内容が工夫されています。知的障害特別支援学級における教育内容としては、・特別支援学校の学習指導要領を参考にしながら、子どもの知的発達の段階に合わせた目標、内容を選択し、教科学習の内容を決める・特別支援学校の学習指導要領に示されている「自立活動」の指導を行う・学校教育法施工規則に規定されている「領域・教科を合わせた指導」を行うという工夫がされています。「領域・教科を合わせた指導」とは、指導内容を教科別・領域別に分けない指導のことを言い、これが時間割に取り入れられています。具体的には以下のような授業があります。■日常生活の指導基本的生活習慣や集団生活をするうえで必要な内容■遊びの指導遊びを学習活動の中心に据えて、身体活動を活発にし,仲間とのかかわりを促し、意欲的な活動を育てていくもの■生活単元学習生活上の課題処理や問題解決のための一連の目的活動を組織的に経験することによって,自立的な生活に必要な事柄を実際的・総合的に学習するもの■作業学習作業活動を学習活動の中心に据え,児童生徒の働く意欲を培い,将来の職業生活や社会自立を目指して総合的に学習するもの。産業現場等における就業体験等を含め,学校卒業後の社会生活につなげるようにしていく。肢体不自由特別支援学級においては、通常の学級での授業のほかに、身体の動きや認知能力などの向上を目指した指導が行われています。また、子どもの個人差を考慮し、個別指導やグループ指導といった授業形態を積極的に取り入れたり、教材・教具の開発・工夫を行ったりするなどの配慮が行われています。さらに、通常の学級の子どもと運動会や給食の場を通じて一緒に活動するなど、社会性や集団へ参加する力を高めるための配慮もされています。また、子どもが可能な限り自らの力で学校生活が送ることができるよう、廊下やトイレに手すりを取り付けたり、便器を洋式にしたりするなどの配慮がされている学級が多いです。病弱・身体虚弱特別支援学級には、病院内と学校内の2つがあります。■病院内の特別支援学級入院中の病弱児のために、近隣の小学校や中学校を本校として、病院内に設けられている特別支援学級です。ここでは、病院の職員との連絡を密にしながら、健康状態の回復・改善等を図るための指導を行うとともに、各教科等の指導に当たっては内容の精選を行い、特に身体活動を伴う学習については、指導方法や教材・教具を工夫するなど、様々な配慮をしています。子どもの病状や発達段階に合わせて、子どもの学年に準じた教育課程、下学年・下学部適用の教育課程、特別支援学校(知的障害)の教育課程などが準備されます。■小・中学校内の特別支援学級入院を必要とせず家庭などから通学できる病弱・身体虚弱児のために、小学校や中学校の中に設けられている特別支援学級です。ここでは、通常の学級とほぼ同様の授業内容・授業時間を定められますが、子どもの病状や発達段階等に応じて下学年・下学部の教育内容が指導されることがあります。通常の学級の子どもとともに活動する機会を積極的に設け、家庭などとの連絡を密にしながら、健康状態の回復・改善や体力の向上を図るための指導もあわせて行われます。弱視特別支援学級では、原則として小学校や中学校と同様の学習指導が行われます。しかし、子どもの視覚障害の実態に合わせた少人数のクラス編制になっており、子ども一人ひとりの障害の状態や特性に応じて具体的な目標を設定し、特別な配慮や工夫をしながら指導が行われます。特に必要がある場合には、特別支援学校小学部・中学部学習指導要領を参考にして教育課程を編成することがあります。難聴特別支援学級でも、原則として小学校や中学校と同様の学習指導が行われますが、自立活動などが時間割に取り入れられることもあります。例えば語句・文・文章の意味理解やコミュニケーションの改善についてが自立活動の内容になります。また、聴覚活用のためにオージオメータや集団補聴器、発音・発語指導のための音声直視装置などの機器が用意されています。言語障害特別支援学級では、自立活動の時間として言語障害の状態の改善もしくは克服を目的とする指導が取り入れられています。また、国語や算数・数学など個別指導などでより手厚く行う必要があるものについては特別支援学級で行い、生活科、図画工作(美術)・体育科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間など集団の中で行うことがふさわしい教科等については、通常の学級で行うといった教室間の行き来をすることもあります。自閉症・情緒障害特別支援学級の授業内容は、通常の小・中学校の教育課程を基準にしながら、必要に応じて、特別支援学校学習指導要領を参考にして、学級や子どもの実態に応じて決定されます。また、自閉症や発達障害をもつ子どもが将来の社会生活に適応できるような指導が行われています。■日常生活習慣形成のための指導自閉症・情緒障害特別支援学級では、日常生活における生活習慣を身に付けるため、食事・排泄・衣服の着脱などの指導を学校生活の中で行います。子どもの発達段階を考慮し、例えば、食事領域では、「スプーンやフォークで食べる」「箸を使って食べる」「スプーンやフォーク、箸を使い分ける」「マナーを守って食べる」など、段階的に指導目標を立てていきます。■運動機能・感覚機能を高めるための指導運動発達や知覚の発達の基礎をつくり、情緒の安定や言語の発達、時間・空間の概念を形成するための指導です。自閉症などの子どもは、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚などの感覚刺激に対して、過敏性などの問題がある場合があります。これらの感覚知覚の問題が、日常の生活環境において不安や苦痛の原因となっていることもあるので、この対応には十分に配慮しながら、できるだけ不安を軽減できる環境を工夫し、改善に向けて指導していきます。■言葉の内容を理解するための指導人の声に注意を向ける、人の話を聞く、返事やあいさつをするなど社会生活に必要な態度を形成し、人とのかかわりを深めるための基礎をつくることが目的です。注意力や集中力を身に付け、言葉を理解するとともに、実際の生活に必要な言葉を適切に使用できるようにコミュニケーションの指導を行います。サイン、絵カード、写真、文字、ジェスチャー、表情などの手段を使って、必要最低限の相手とのやりとりができるようにしていきます。■人とのかかわりを深めるための指導人とのかかわりが苦手な子どもに対して、強引に他の子どもたちと一緒の集団活動に参加させることは、人とのかかわりの困難さを強くしてしまいがちです。そのため特別支援学級では、大人との一対一の関係の構築から始めて、少しずつ小集団の児童生徒との関係に広げていくようにしています。7. 特別支援学級と発達障害出典 : 発達障害がある子どもは知的障害特別支援学級か自閉症・情緒障害特別支援学級に在籍することになります。これは、子どもに知的障害があるかどうかによって異なります。文部科学省によると、特別支援学級に在籍している187,100人の子どもたちのうち、50.7%である94,821人が知的障害特別支援学級に、43.6%である81,624人が自閉症・情緒障害特別支援学級に在籍しています。このことから、特別支援学級に在籍する子どものうち90%以上が知的障害や発達障害をもつ子どもであることが分かります。8. 特別支援学級と、通級指導教室・特別支援学校との違いは?出典 : 特に義務教育が始まる小学校入学の前に、お子さんをどの教育環境で育てるか迷う保護者の方は多いと思います。障害のある子どもの教育環境として、通常の学級・通級指導教室・特別支援学級・特別支援学校の4つがあります。それぞれの対象となる障害の程度に明確な基準はありませんが、一般的に通級指導教室・特別支援学級・特別支援学校の順に障害の程度は軽くなります。Upload By 発達障害のキホン通級は、通常学級の学校に籍があり、通級指導の時間のみ通級指導教室に通います。通級指導教室が通常学級の学校にない場合は、通級指導教室がある他の学校に通級指導の時間のみ通います。また、担任は通常学級の先生が受け持ちます。Upload By 発達障害のキホン特別支援学級に通う場合は、特別支援学級が設置されている学校に籍を置きます。基本的に特別支援学級で授業を受けますが、体育や図画工作、給食の時間は通常学級の子どもたちと過ごすこともあります。担任は特別支援学級の先生が受け持ちます。Upload By 発達障害のキホン特別支援学校に通う場合は、通学する特別支援学校に籍をおきます。また、通級・特別支援学級は通常の教員免許のみでも受け持つことができますが、特別支援学校の教員は通常の教員免許に加え、特別支援学校の教員免許を取得しています。9. 通級・特別支援学級・特別支援学級のメリット・デメリット出典 : 教育システムの違いから、通級・特別支援学級・特別支援学校それぞれにメリット・デメリットがあります。お子さんの学校選びの参考にしてみてください。■通級・通常学級での子どもとコミュニケーションをとる機会が比較的多い・学習面で通常学級の授業が受けられる・必要なフォローを受けられる・通常学級から離れる時間が気分転換になることもある■特別支援学級・給食の時間や昼休みなどは通常学級での子どもとのコミュニケーションなどの経験ができる・発達・障害の程度に準じたカリキュラムで指導を受けられる・学校と相談しながら通常学級との行き来ができるようにもなる■特別支援学校・個々人の障害の程度に合わせたカリキュラムで、専門性を持った先生からきめ細かい指導が受けられる・高等部では職業教育が受けられる■通級・特別支援学級・在籍基準があいまい・すべての学校に通級指導教室や特別支援学級があるわけではなく、場合によっては遠くの学区に通学しなければならない・高校では通級制度はまだ整えられておらず、特別支援学級も設置されていないのが現状(ただし、2018年度から高校でも通級指導を始めるよう文部科学省が準備を進めている)・学級数や受け入れ可能人数などに地域差が大きい・通常学級との行き来がお子さんのストレスになることもある■特別支援学校・通常学級の子ども、同世代の子どもと触れあう機会が少ない・転学・転校は可能だが手続きが必要・障害の程度によっては入学できない可能性がある・特別支援学校高等部を卒業しても、通常の高卒資格は得られない(ただし大学入学資格を得ることはできる)・地域差、学校差がある10. 特別支援学級への入り方出典 : ■年中期~6月ごろ:情報収集お住まいの市区町村の教育委員会に問い合わせたり、ホームページを参照して、地域にある特別支援学校や、小学校の特別支援学級の有無などについて情報を集めましょう。地域によって異なりますが、4月から6月ごろにかけて、特別支援学級や特別支援学校などへの就学を検討している保護者向けに、教育委員会が就学についての説明会が行われる場合もあります。ここでは就学先として考えられる選択肢について、それぞれどのような支援や教育が受けられるか、今後の就学相談や就学先決定までの流れなどについて説明があります。保護者が情報収集や相談をしない場合もあるので、教育委員会では様々な機関と連携して特別支援学校への就学のニーズがある子どもの把握につとめます。教育委員会が幼稚園や保育園、園や発達支援センターや療育センターなどに調査票の作成を依頼したりする地域もあります。その場合、通常の学級・学校に就学することに不安があると思われるお子さんについて、園やセンターは保護者の了承を得て調査票を作成します。■7~9月ごろ:就学相談市区町村の教育委員会へ連絡し、就学相談を受けます。園やセンターの調査票がない場合は、ご自身で市区町村の教育委員会に問い合わせをしましょう。就学相談では、専門の就学相談員と保護者との面談(複数回のこともあります)を通して子どもにとって最適な就学先を決めます。子どもの状態を把握するための検査が行われたり、相談員がお子さんの在籍園・在籍校に赴いてお子さんの様子を確認することがあります。障害の状態、障害に基づく教育的ニーズ、保護者・専門家の意見、学校や地域の状況などを考慮して、就学指導委員会がお子さんにとって良いと思われる就学先を決定します。この決定に保護者の方が同意をすれば就学先が決定します。もし同意できない場合はその旨を教育委員会に申し立て、再度就学相談を受けることもできます。最終的には保護者の方の意向が尊重されます。就学相談では、子どもの状態を正確にしっかりと伝えることが大切です。医療機関で受けた診断書や療育手帳などがあれば持参することをおすすめします。■10~11月:就学時健康診断と小学校の選択就学時健康診断とは、小学校に入学する前に行われる健康診断のことであり、身体検査に加えて発達検査、知能検査等があります。お子さんの障害や発達の遅れについて、この健康診断によって初めて気づく場合があります。就学基準にお子さんが当てはまると思われる場合、就学相談・就学指導を受けることを教育委員会からすすめられます。就学相談で、特別支援学校、特別支援学級、通級、通常学級という選択肢の中からお子さんにとって最適と思われる就学先を決定します。小学校入学時は通常学級に在籍していた子どもが、その後特別支援学級に転籍する場合もあります。これには小・中学校の校内委員会が関係しています。校内委員会とは、子どもの状態に早期に気付き、適切な支援を行うために小・中学校に設置されたものです。その役割は以下の通りです。・学習面や行動面で特別な教育的支援が必要な子どもに早期に気付く。・特別な支援が必要な子どもの実態を把握し,担任の指導への支援方策を具体化する。・保護者や関係機関と連携して,個別の教育支援計画・個別の指導計画を作成する。・特別な支援が必要な子どもへの指導とその保護者との連携について,全教職員の共通理解を図る。また,そのための校内研修を推進する。・専門家チームに判断を求めるかどうかを検討する。※LD,ADHD,高機能自閉症の判断は教員が行うものではない・保護者相談の窓口となるとともに,理解推進の中心となる。こういった支援体制が小・中学校内にあるため、最初に通常学級に入学したお子さんでも、特別支援学級や通級での支援を受けることができます。小学校で特別支援学級に在籍していたお子さんが、中学校でも特別支援学級に在籍する場合、同じ学区域内であれば、特別支援学校や特別支援学級で行われた特別支援教育の内容は、小学校と中学校の先生、特別支援教育コーディネーターを通して引き継がれます。11. 中学校卒業後の進路出典 : 高等学校においては特別支援学級が設置されていないのが現状です。その理由としては、義務教育でないこと、入学試験など選抜があること、高等学校学習指導要領に特別支援学級に関する記述が少ないことなどがあげられます。ただし通級については2018年度から開始されるよう文部科学省が準備を進めています。高校における特別支援学級の整備が進んでいないことから、中学校卒業後のお子さんの進路を心配されている保護者の方も多いのではないでしょうか。文部科学省の報告によれば、中学校の特別支援学級を卒業した子どものうち、進学する子どもの割合は94.1%です。進学した子どもの中では63.4%が特別支援学校の高等部に進学しています。他の進路としては、教育訓練機関等が2%、就職が0.8%、社会福祉施設などへの入所・通所およびその他が3.0%となっています。このデータからわかるように、多くの子どもが特別支援学校高等部もしくは通常の高等学校に進学しています。文部科学省特別支援教育資料(平成27年度)【第1部集計編】12. まとめ出典 : 高校での整備が遅れていたり、全ての学校に特別支援学級があるわけではなかったりと課題はあるものの、特別支援学級は同世代の子どもたちと触れ合える機会があり、かつ子どもたちに合った支援を受けられる点で魅力的です。地域や学校によっても特別支援学級の雰囲気は異なるので、お子さん自身や学校の先生、かかりつけのお医者さんなどの周りの方や学校の先生、特別支援教育コーディネーターと相談しながら、お子さんの障害の程度や性格に合った就学先を選ぶのがよいのではないでしょうか。
2017年10月29日「妊活をしたことがありますか?」このアンケートに、回答してくれたママたち149人。みなさんの経験談をまとめてみました。基本的な妊活~基礎体温、体作り、サプリや漢方、ストレス対処も~回答者の約7割が妊活の経験者でした。ほとんどの人が基礎体温測定や生活習慣改善など、まず家庭でできることから始めるようです。具体的にどのようなことをしたのでしょうか。「基礎体温を測り、体を冷やさないように。規則正しい生活をこころがけた」(ぴよこさん36歳)、「基礎体温を測り、次に食生活の改善、サプリの服用、適度な運動を実施、継続しました」(雪ん子さん36歳)、「体を温めると良いと知り、冷たい飲み物はなるべく避け、冬は首、手首、足首が出ないような格好をしていた」(ひーさん37歳)、「妊娠しやすいからだ作りとして葉酸を摂取したり、代謝をあげるように意識した」(レミリカさん44歳)。「基礎体温を測り、排卵予想アプリを活用」(ぷさん31歳)のように、基礎体温の管理に、アプリを使っている人もちらほら見られました。妊活にはストレスも大敵。その回避方法は?「ストレスをためないように自分の癒やしの時間を作りました。体を温めることが良いので、岩盤浴や週1回温泉に入ってリフレッシュも」(はなさん36歳)、「ヨガをして体の調子を整えて、ストレスをためないようにする」(mizuさん 34歳)、「姑のせいで精神的に不安定なため、夫の実家に行かないように、連絡を取らないようにした」(おこちゃんさん34歳)。中には「基礎体温に一喜一憂する日々で、ストレスになってきたので測ることをやめた。通院もストレスになりそうだったので、排卵日検査薬を使用。排卵がわかり、不安やストレスがなくなった」(はれのまるさん35歳)というママも。ストレスをためないようにすること、またストレスの原因がわかっている場合には、上手にその原因を取り除くことも大切なんですね。基礎体温を測り、排卵日を予想してタイミングを合わせたとしても、なかなか結果がついて来なくて、通院を考える人も。「自己流のタイミング法に限界を感じて不妊治療専門病院へ行くことに決めた」(ちいこうさん34歳)という人や、「病院に通う前は、ただただ授からないことに一喜一憂して、生理がくるたびに泣いていたこともあったけれど、割り切って通院してからは気持ちも楽になり、前向きに妊活できました!」(こあらさん36歳)という声もありました。不妊治療専門病院への通院は妊活経験者の半数不妊治療専門病院へ通ったのは5割です。「生理がこなかったので婦人科に」(きのこのこのこさん31歳)、「結婚して丸2年、普通に性生活をしていても子宝に恵まれず、まずは漢方薬と基礎体温排卵日チェックなど、できることから始めた。半年経っても妊娠せず、大きな総合病院の婦人科へ」(れのママさん36歳)、と通い始めるタイミングはそれぞれ。「基礎体温を3年つけましたが、セックスレスなこともあり、なかなかタイミングがとれずに、不妊治療をはじめました」(いち2さん32歳)。また、ともさん(32歳)は、1人目を不妊治療で授かり、2人目も自然にはできないことがわかっていたので再び基礎体温をはかり、その後不妊治療の病院へ通ったそう。そのほか、結婚が遅かったり、40歳になったのを機にクリニックに通い始めたというママもいました。長期治療~体外授精、人工授精~専門病院に通った人に、治療内容や期間を聞きました。「1人目、2人目は基礎体温を測り、産婦人科でホルモン誘発剤、排卵誘発剤を使用して妊娠できました」(さやさん35歳)、「タイミング、人工授精、フーナーテスト※(ヒューナーテスト)、血液検査をしましたが、原因不明でした。鍼治療にも通いました」(ちいこうさん34歳)「タイミングから顕微鏡受精までひと通りやりました。最終的に人工授精に戻して授かりました。今は2人目を妊活中です」(mikaさん46歳)、「一般産婦人科でタイミング療法、人工授精をしてもダメで、不妊治療専門病院にて、体外受精で1人目を妊娠し出産。2人目は顕微鏡受精で妊娠し、出産。現在は凍結受精卵で3人目を妊娠中」(ゆきさん39歳)。長期におよぶ治療を経験された人も。「転勤族なので、2つの病院にお世話になり、それぞれの病院で4回、計8回の人工授精をしました」(けんけんさん36歳)、「IVF(体外受精)を足かけ4年。鍼灸や漢方、食生活、生活習慣改善などを試しながら43歳で出産」(ひなさん46歳)、「不妊治療を6年間やりました。人工授精も8回。子どもを授かるまで大金がかかりました」(こきちゃんさん54歳)。一度は妊活をストップしたれのママさん(36歳)は、さまざまな検査の結果、黄体機能不全が判明。その後の治療の結果、無事に妊娠することができました。「妊娠確定した時に、担当医師が泣いて喜んでくれたのはうれしかった」と教えてくれました。妊活には、経験した人にしかわからない辛さがあるもの。みなさん、貴重な経験談をありがとうございました。※フーナーテスト(性交後試験):フーナーテストとは、性交後の子宮頚管粘液の中にある精子の状態を見る検査です。(引用元:e-にんしん)<文・写真:フリーランス記者林未香>
2017年10月09日児童相談所は悩める親子のための相談機関出典 : 児童相談所は、子どもに関するあらゆる問題の解決のために、児童福祉法に基づいて設置された専門的な相談機関です。18歳未満の子どもに関することであれば、本人・家族・学校の先生・地域の住民等、どんな立場からでも相談することができます。児童相談所のスタッフは児童福祉司(ソーシャルワーカー)、児童心理司、医師などの専門家から構成され、すべての都道府県と政令指定都市に設置されています。児童相談所の仕事は、子どもに関するあらゆる問題の相談窓口として相談に応じ、周辺の機関との連携によって必要な援助を行っていくことです。具体的には、親の事情や子どもの問題行動等による子育ての悩み、障害児福祉、虐待の対応などの問題に対して、助言や治療の補助、さまざまな手当ての案内などの支援を行います。いきなり学校や病院に相談することは気が引けるけれど、自分だけでは解決が難しいという時、誰かに相談に乗ってほしい時には、相談先の一つとして児童相談所を検討してみてはいかがでしょうか?次の章からは、児童相談所が取り扱う相談内容と支援方法を具体的に説明していきます。子どもの性格・行動、健康、進路など...子育てに関するお悩みへの児童相談所の支援出典 : 子育てをしていると、たくさんの悩みが出てきますよね。児童相談所では、子どもの性格や行動、健康管理、進路など幅広い困りごとに対応した支援が用意されています。・保健相談未熟児、虚弱児、内部機能障害、小児喘息、その他の疾患(精神疾患を含む)等がある子どもに関する相談・育成相談悪癖(チック、夜尿)や生活習慣、困った行動(家庭内暴力など)、不登校、性格上の問題(内気、友達と遊ばない、わがまま)への対処の相談・育事、しつけの相談遊び、性教育などに関する相談継続的な支援によって状況の回復が見込める場合は、在宅のまま支援が行われます。訪問型の相談や助言や施設の紹介、施設利用の際のアセスメントを行ったりします。他にも、子育ての情報に関するセミナーをしているところもあるので、ぜひチェックしてみてください。その他にも、メンタルフレンドというサービスがあります。メンタルフレンドとは、心に傷を負った子どもを、遊びや学習の手伝いをしながらケアをする青年ボランティアのことです。児童相談所の運営指針について:図表|厚生労働省HPメンタルフレンドとは?|東京都福祉保健局カウンセリングや手当、施設の紹介など、障害のある子どもに対する児童相談所の支援出典 : 子どもに知的発達の遅れ、肢体不自由、ことばの遅れ、虚弱、自閉傾向があるのではないかなどと気になったときには、児童相談所に相談してみましょう。児童相談所に相談すると、所属の児童福祉司や医療機関等が協議し、障害の疑いがあるかどうか、重軽度などを調べます。支援が必要とされる障害が認められた場合は、児童相談所から様々な支援を受けられるようになります。・1歳6ヶ月、3歳の健康診査において知的発達面に詳しい検査が必要だと診断された場合は、児童相談所が助言と指導を担当します。・医師、児童福祉司などによる訪問相談、発育相談会、親子へのカウンセリングが行われます。・「子どもの困った行動にどう対応すればいいのか分からない」「周りからの理解が得られず子育てがつらい」などの相談について専門家が具体的な提案をしたり、心理的なケアを施します。知的障害などの都合を配慮した金銭的な手当のことを特別児童扶養手当と呼びます。この手当を受けられるかの判定は役所の児童福祉課か児童相談所です。認定請求を行う本人または都道府県等児童福祉主管課のいずれかから診断書の作成を求められた児童が対象となります。療育手帳とは、知的障害のある方に付与される障害者手帳です。知的障害のある方が一貫した療育・援護を受けられるよう、様々な制度やサービスの利用をしやすくすることを目的にしています。児童相談所では、療育手帳の申請受付、調査、交付を担当しています。ただし、療育手帳は自治体によって名称が変わることがあるので窓口で確認してみましょう。子どもに必要な支援に合わせて、近隣の施設を紹介します。ここで紹介される施設は、就学中の子どもの学習をサポートする放課後デイサービスや、必要な日常生活の支援や技術の指導をする社会福祉施設等があります。また、どうしても保護者が育てることが困難だと判断した場合には障害児福祉施設が引き取り、18歳までは生活の援助をしていく場合もあります。虐待問題に対する児童相談所の支援出典 : 虐待の疑いのある家庭が近くにある、自分が虐待の被害者である、虐待してしまっているのではないかと悩んでいる、など虐待に関する相談に対応します。児童相談所が持っている役割をいくつか羅列していきます。虐待の疑いがある場合や、SOSを出したい場合には児童相談所に通告をしましょう。全国の児童相談所共通ダイヤルである「189」(イチハヤク)に電話をかけると近隣の児童相談所に繋がります。通話料は通告者の負担となりますが、相談は無料です。通告を受けた後は、児童相談所の専門的なスタッフが、行政や民生委員、学校などの関係機関を巻き込んで家庭の様子を調べます。虐待の有無や重軽度を調べて必要な措置を検討した後、関係機関を巻き込んでの支援を開始します。調査の結果に応じて、在宅支援と社会的養護の2種類の支援が施されます。在宅支援の場合、民生委員による定期的な訪問相談、ペアレントトレーニング、カウンセリングなどの保護者向けサポートや、学校・保育施設での子どもへのヒアリングなどを通して、虐待の再発を防ぐと同時に、家族関係を改善することを目指します。社会的な養護とは、子どもを分離する必要性が認められた場合に児童養護施設や里親に預けることです。一時保護の第一の目的は、子どもの安全を守るためです。他にも保護者も子どもと一時的に離れることで落ち着いたり、援助を受けるきっかけになったり、子どもにも安全な環境にいることでより正確な情報を聞き取ることが期待されます。このような理由から、必要がある場合は児童相談所が子どもを保護することが認められています。親子の関係修復が望める時は、再び家族が統合されることもあります。虐待は子どもの生命に関わる問題であるため、調査から行動措置において児童相談所は強い権限を持っています。子どもを育てることが難しい家庭のための養護相談出典 : 虐待と同様、様々な事柄によって子どもを育てることが難しい家庭があります。養育困難とみなされる場合には、以下のような事例が挙げられます。・父または母等保護者の家出、失踪、死亡、離婚、入院をした子ども・稼働及び服役等による養育困難な子ども・棄児、迷子、虐待を受けた子ども、親権を喪失した親の子、 後見人を持たぬ児童等環境的問題がある子どもこのように、やむなく家庭での育成が難しくなった子どもを一時保護所や児童養護施設で保護したり、または里親に預けたりします。一時保護、里親制度って?子どもが健やかに育つための制度とは出典 : 虐待をはじめ家庭内で問題が生じ、かつ子どもと保護者の分離が必要だと判断された場合には、社会的養護という措置が取られます。一時保護とは、児童相談所が必要を認めた時に子どもを一時保護所に一時保護するか、警察署、福祉事務所、児童福祉施設、里親などに保護を求めることを言います。一時保護の必要がある場合について、厚生労働省は次のように定義をしています。(1) 緊急保護ア棄児、迷子、家出した子ども等現に適当な保護者又は宿所がないために緊急にその子どもを保護する必要がある場合イ虐待、放任等の理由によりその子どもを家庭から一時引き離す必要がある場合(虐待を受けた子どもについて法第27条第1項第3号の措置(法第28条の規定によるものを除く)が採られた場合において、当該虐待を行った保護者が子どもの引渡し又は子どもとの面会若しくは通信を求め、かつこれを認めた場合には再び虐待が行われ、又は虐待を受けた子どもの保護に支障をきたすと認める場合を含む。)ウ子どもの行動が自己又は他人の生命、身体、財産に危害を及ぼし若しくはそのおそれがある場合(2) 行動観察適切かつ具体的な援助指針を定めるために、一時保護による十分な行動観察、生活指導等を行う必要がある場合(3) 短期入所指導短期間の心理療法、カウンセリング、生活指導等が有効であると判断される場合であって、地理的に遠隔又は子どもの性格、環境等の条件により、他の方法による援助が困難又は不適当であると判断される場合つまり、子どもを身の危険から守る場合と問題行動について詳しい調査が必要な場合、集中的なケアが必要な場合に一時保護が行われるということです。一時保護された子どもは、保護施設の中で勉強、遊び、スポーツなどをしたり、年齢や成長に応じた生活習慣が身につくような生活指導を受けたりしながら過ごします。他にも、様々な事情により家庭で生活することができない子どものための里親制度があります。子どもが家庭的な環境の下で成長できるように、官民連携で制度を進めています。児童相談所に助けを求めるときは?出典 : 児童相談所は全ての都道府県と政令指定都市にあります。地域によっては「児童相談所」の名称ではない場合もあります。なにか児童相談所に相談したいことがあるときは、最寄りの相談所に電話をするか訪問してみましょう。訪問するときは、事前に電話で予約をすることもできます。下の一覧表から最寄りの児童相談所を探すことができます。全国児童相談所一覧|厚生労働省また、児童相談所には虐待かもと思った時などにかけられる全国共通ダイヤル「189(いちはやく)」があります。この番号に電話をかけて音声案内に従うと、最寄りの児童相談所につながります。出典 : 児童相談所はなぜ強い権限を持っているのか出典 : 児童相談所は仕事の性質上、強い権限を持っています。その仕事内容から、措置についてあまり明らかにされないこともあります。それはなぜなのでしょうか。児童相談所の特性から考えてみましょう。・子どものプライバシーを扱う仕事児童相談所は子どもとその家族をめぐる問題を扱うため、プライバシーの扱いは最も重要な事項の一つと言えるでしょう。そのため、具体的な仕事内容をあまりオープンにしていないと同時に、虐待で一時保護をされた場合には、たとえ保護者であっても子どもの状況を教えることはできません。・子どもの命や健やかな育ちをを守る役割を担う児童相談所は子どもの命に関わる問題を扱っており、一時保護をする最終的な決定権限を与えられています。そのため、子どもの命が危ないと判断された場合には、保護者の了解が無くても子どもを連れていくことも許されています。「児童相談所一時保護所の現状と課題」|和田一郎児童相談所の措置に納得できない...そんな時はどこに頼る?出典 : 前の章の通り、児童相談所は子どもを守るための強い権限を持っています。一方で昨今は子どもに関する問題の増加に伴い、児童相談所の慢性的な人員不足や、せっかく児童相談所に情報があっても警察や学校など他の機関との連携システムが整っていないことなど、さまざまな課題が問題点として挙げられることもあります。これらの問題のために、すべての人にとって納得できる判断や対応ができているとは言い切れない面があるかもしれません。もし、児童相談所での相談ができなかったり、児童相談所の決定や支援内容に不服があったりする場合、どうすればよいのでしょうか?・対応が間に合わないとき「相談をしたいのに対応が遅い...」児童相談所に相談が立て込んでいたりすると、相談をしてもなかなか対応してもらえないことがあります。そのようなときは市区町村の子育て支援課や地域の子育て支援センターでも、同様の支援を受けられます。・障害児療育の対応ができる職員がいないとき障害児の療育など、専門性が求められる相談には、対応できる職員がいない場合もあります。そのような場合には、各市区町村の障害福祉課、地域の障害児等療育支援事業所、相談支援事業所にて、施設の紹介や療育を受けられます。・事実が無いのに疑いをもたれてしまったとき子どもの特性や保護者の特徴によっては、虐待の事実が無くても疑いがあるという理由で一時保護措置がなされる場合がないわけではありません。不服申し立てという制度があり、児童相談所による一時保護の正当性について第三者に審査をしてもらうことができます。審査にあたっては、第三者機関が一時保護を決定するにあたって使用された資料や子どもの言動の記録、保護者に関する情報などを使います。ここに挙げている支援のほかに、自治体ごとに提供される支援の種類もあるでしょう。自分が持つ悩みごとにはどのような支援が受けられるか、児童相談所のほかにどこで相談できるのかなどを確認しておくと、もしもの時にもあわてずにすむのではないでしょうか。このように、児童相談所の判断に納得できない場合にも他の相談所や不服申し立て措置をとるなどの手段が考えられるでしょう。まとめ出典 : このコラムでは、児童相談所の役割や、具体的な支援の内容、困った時の相談・利用方法について紹介しました。児童相談所という名前は一度は聞いたことがあるものの、何をしているのかは今イチわかりにくい、と感じる人もいるかもしれません。児童相談所の役割としては、子どもの権利を守り、健やかな育成のため、専門性をもって相談や支援にあたるということが第一に挙げられます。具体的な業務内容としては、子どもの健康管理や障害児福祉、虐待の対応など多岐に渡っており、子育てに関するあらゆる相談口の窓口としての役割を担っています。一人では解決が難しいことでも、専門機関の力を借りれば解決の糸口が見つかるかもしれません。困った時は、ぜひ一度、些細なことでもいいので相談してみてはいかがでしょうか。
2017年09月26日こんにちは。子育て支援を専門にする臨床心理士の今井千鶴子です。夏休みが終わり、ホッとしているママも多いのではないでしょうか(笑)。夏休み明け、お子さんは楽しく園や学校に通っていますか?長期の休み明けですので、まだ生活リズムが整っておらず、登園・登校前にグズグズしてしまうお子さんもいるかもしれませんね。そこで、今回は夏休み明けに試したい、ママができるお子さんのグズグズ対策についてご紹介します。●勉強からのアプローチ夏休みの中の小学生の一般的な家庭学習時間は1時間程度ともいわれています。仮に、夏休みの学習時間が1時間程度だった場合、新学期がスタートするやいなや勉強に向き合う時間が急激に増えることになります。これはお子さんにとってかなりしんどいことだと思います。なかなか授業に集中できないお子さんもいるのではないでしょうか。そんなときにママができることの一つは、お子さんへのある声かけです。どんな声かけかというと、「今日の国語、どんなことを勉強したかママに教えてね」というものです(国語以外のどの教科でもかまいません)。多くの人は、「誰かに教えなきゃ 」と思うと、普段より真剣に(集中して)話を聞こうとするものです。お子さんも「ママに教えよう!」と思ったら、「集中して授業を聞かなきゃ」と思うはずです。また、「ママに教えよう!」と思うだけで、いつもよりも授業内容に興味をもったりワクワクしたりする子もいるでしょう。永江誠司先生の著書『子供の脳を育てる教育』では、人は興味をもったり、ワクワクしたりするときに“シータ波”という脳波が出ていることが指摘されています。そして、この“シーター波”が出ているときは出ていないときに比べて、5〜10倍の速さで効率よく学習できる と述べられています。さらに、この“誰かに教える”という行為は、メタ認知を鍛えることにつながる可能性もあります。このように、夏休み明けの勉強ペースを整えるだけでなく学習効率も高まる可能性があるなら一石二鳥の方法だと思いませんか?この方法で大切なことは、お子さんが説明しはじめたら、ママは真剣(熱心)に話を聞く ことです。ママが真剣に聞けば聞くほど、お子さんは教えることに喜びを感じるはずです。ただ、低学年のお子さんの場合には、明確な説明が難しい可能性もありますので、お子さんには内緒で事前に授業内容をチェックしておくと安心です。また、園に通っているお子さんの場合には、「今日、幼稚園でどんな遊びをしたか、帰ったらママに教えてね!」などの声かけがよいかと思います。ポイントは、お子さんが園や学校での活動に集中したり、興味を抱いたりするサポートをしていくことです。●生活習慣からのアプローチ大川(2010)は、睡眠に問題をもつ子どもたちは、身体症状(昼間に眠い、横になりたい、頭痛、肩こり)とともに、イライラする、物事に熱心になれないなど集中力・記憶力の低下、感情抑制の困難がみられることを指摘しています。また、西出(2007)の園児を対象とした調査では、園児の休み明けの疲労は休日の睡眠習慣に関連することが示唆されています。このことからも、ママはお子さんにとって最適な睡眠を確保 できるよう心がけたいものですね。ある調査では、就寝時間が遅い子どもたちの特徴として、親自身が遅くまでTVを見ていることがわかっています。ですから、もしお子さんの就寝時間が足りないと感じているのなら、お子さんの寝る時間には一度TVを消してみるのもよいかと思います。ちなみにわが家も、子どもの寝る時間にはTVを一度消すことにしています。また、読み聞かせをした後には部屋の電気も消しています。子どもが寝たら起きようと思っていたのに、何度そのまま朝まで寝てしまったことか……翌朝、後悔の嵐です(笑)。それでも多くの専門家が乳幼児期・児童期における睡眠の重要性を指摘していますので、子どもが小さいうちは、子どもの睡眠を第一に考えて生活できたらと思っています。----------いかがでしたか?今回は夏休み明けにママが簡単に試せるお子さんのグズグズ対策についてご紹介しました。お子さんが元気に楽しく学校生活が送れるヒントになったら嬉しいです。【参考文献】・『子どもの脳を育てる教育家庭と学校の脳科学』永江誠司・著・『子どもの睡眠と脳の発達睡眠不足と夜型社会の影響』学術の動向vol15(P34〜39)大川匡子(2010)・『就園児の休み明けの疲労と休日の睡眠に関する調査研究』三重看護学誌9巻(P73〜82)西出りつ子・谷崎美幸(2007)●ライター/今井千鶴子(臨床心理士)●モデル/REIKO(SORAくん、UTAくん)
2017年09月12日こんにちは、ママライターのましゅままです。うなじや背中って、自分ではあまり見る機会がないのですが、意外と人から見られているものですよね。そしてちょっとしたことで肌荒れしやすい場所でもあるので、常に清潔で健康なお肌にしておくことが大切です。今回は、うなじと背中のお手入れ方法についてご紹介します。●うなじと背中のお手入れ方法●(1)正しいむだ毛処理ツルッとしたうなじや背中への第一歩はまずムダ毛の処理 から。とはいえ、うなじ・背中は自分では処理しにくい箇所ですよね。一番安全なのはシェービングのプロフェッショナルである理容室でキレイにしてもらうことです。美容室よりも専門の知識を持った施術を受けられますし価格も安価です。セルフでムダ毛処理を行う場合は、以下の4ステップを遵守しましょう。・1……ホットタオルで背中やうなじをあたためる。・2……ローションを塗る。・3……清潔なカミソリを使って撫でるようにそる。・4……保湿し、冷たいタオルで引き締める。●(2)皮脂バランスを整える保湿うなじや背中は肌荒れが起きやすく、顔同様に水分と油分両方を与えてあげるケア がおすすめ。入浴剤はなるべく保湿効果のあるものを選び、お風呂から上がったらすぐに背中にローションを塗りましょう。広範囲に塗りやすいスプレーのものがオススメ。水分を補給したらクリームを手にたっぷりと取って塗ります。背中は届きにくいですが指だけでなく手のひら全体を使ってまんべんなく塗るようにします。●(3)生活習慣の見直し背中やうなじの肌荒れは生活習慣に左右されやすくなっています。早寝早起きや規則正しい、なるべく和食中心の食生活 を心がけましょう。●背中とうなじのお手入れ方法体験談『わたしはずっと背中のニキビで悩んでいたのですが、シャンプーやトリートメントの流し残しを防ぐため、最後に体を洗う ようになりました』(30代/男の子ママ)背中はシャンプーやトリートメントの洗い残しや髪の毛や肌着の刺激が原因で肌荒れすることがあります。背中が荒れやすい方はシルクや肌触りの良いコットンを肌着にし、なるべく低刺激の石けんでしっかり洗い流すようにしましょう。『うなじは、髪を束ねたときや、上着を脱いだときなど自分が気が付かないようなタイミングで結構チェックされているので、定期的に理容室か、美容室でシェービングしてもらって、顔同様に保湿やUV対策 もしっかりしています』(20代/女の子ママ)うなじは顔に比べてUV対策を怠りがちなため、化粧下地を首やうなじにも塗るようにしましょう。美容室でもシェービングをしてくれるところがありますが、専門は理容室ですので、女性向けの理容室を探してみましょう。『背中は自分でクリームを塗りにくいので幼稚園児の子どもに塗ってもらってます。スキンシップ にもなりますし、結構上手に塗ってくれますよ』(30代/女の子、男の子ママ)背中は自分でケアしづらい、という方は家族に手伝ってもらうのもオススメ。子どもの手は柔らかく、タッチも優しいため上手に塗ってくれますよ。●うなじと背中はケアしづらいからこそ入念にいかがでしたか?うなじや背中は自分ではなかなか確認できない箇所。だからこそ、入念なケアが必要です。また、美しいうなじや背中は、1日や2日では手に入れることができません。丁寧なお手入れで時間をかけて綺麗なうなじや背中をつくっていきましょうね。●ライター/ましゅまま(ママライター)●モデル/赤松侑里(さゆりちゃん)
2017年09月11日知的障害者福祉法とは?出典 : 知的障害者福祉法(旧:精神薄弱福祉法)は、1960年に制定された法律です。知的障害のある人の福祉をはかることを目的とした法律です。2006年の改正前、その目的は「生活支援」という側面だけでしたが、現在は知的障害のある人の自立と社会参加を促進するよう法律で定められています。それでは実際の法律の文言を見てみましょう。(この法律の目的)第一条 この法律は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 (平成十七年法律第百二十三号)と相まつて、知的障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため、知的障害者を援助するとともに必要な保護を行い、もつて知的障害者の福祉を図ることを目的とする。また、この法律は2013年に制定された「障害者の日常及び社会生活を総合的に支援するための法律」、別称「障害者総合支援法」という障害のある人全般に適用される法律とあいまって、その内容が定められています。それまでは、障害種別によって個別の法律に基づき様々なサービスや制度が成り立っていました。その後、総合支援法ができたことにより、「知的・身体・精神」の3つの障害が同じ法律内で扱われることとなりました。そのため、従来の知的障害者福祉法がもっていた独自の法的な意義は希薄化しているのが現状です。それにともない、知的障害のある人へのサービスや制度も、障害者総合支援法に移行しています。知的障害者福祉法の概要出典 : 知的障害者福祉法は以下の4つから構成されています。・総則・実施機関及び更生援護(実施機関等、障害者入所支援施設等の措置)・費用・雑則総則とは、全体を通じて適用される法律のきまりのことです。つまり、法の根幹となる部分です。知的障害者福祉法における総則は、以下の4つの項目から成り立っています。◇目的知的障害のある人の自立と経済活動を促進させるために、知的障害者の福祉をはかることを目的としています。このために、国や自治体、施設などは知的障害のある人を保護し、適切な援助を行うことが定められています。◇自立への努力と機会の確保・知的障害のある人は、そのもっている能力を使って社会活動、経済活動に参加するように努力しなければならないとしています。・社会を構成する一員として、自立し、社会、経済、文化などの活動に参加する機会をもっているとされています。◇国、地方公共団体と国民の責務国や地方公共団体は、上の理念が達成されるために、国民の理解を促し、必要な援助と保護を行うことが定められています。国民は、知的障害のある人の福祉について理解を深め、社会経済活動参加する努力に対して協力することが定められています。◇職員の協力義務知的障害のある人に援助や保護を行う職員は、児童から成人まで一貫して福祉支援を行うことが定められています。このように、知的障害のある人が社会の一員として、社会的、経済的な活動に参加できるように、すべての国民、行政、職員が努めることを義務付けたのが、知的障害者福祉法です。この部分には、知的障害福祉法に関する支援を提供する機関について記載されています。・支援の実施は、市町村が実施の主体となっていること・知的障害者の判定は、知的障害者更生相談所で行うことなどの点が記載されています。この部分はのちの章で詳しく説明します。知的障害者福祉法のこの項では、知的障害のある人のための施設を運営、設立する際の費用を出す義務者が定められています。また、知的障害のある人がサービスを利用するときには、一部または全部の負担が課せられることになっていますが、その負担は、当事者および扶養者の自己負担の能力に応じることが記されています。知的障害者福祉法ができたわけ出典 : 知的障害のある人への総合的な福祉支援は、どのような理由から展開され、本格的に開始したのでしょうか。日本で、最初に知的障害のある人への福祉サービスを規定したのは、1947年の児童福祉法です。ここでは、障害の有無についての言及はなく、すべての児童が等しく、生活を保障されなければならないという理念が述べられています。その後、1953年に「精神薄弱児対策基本法」が策定されました。この法は、のちの1960年に成立する知的障害者福祉法の下敷きとなったものです。この法律の要綱では、成人をも視野に入れており、18歳を過ぎた知的障害のある人にも必要な施策がとられることとなっていました。しかし、この法律には様々な問題点がありました。というのもこの法律では、知的障害のある人の「隔離」と「保護」を前提としていた点です。そのために、具体的にとられた施策は、不良行為を行う知的障害のある人を収用する設備の強化や、優生手術の実施など、知的障害のある人を社会から排除するものでした。また、実際の福祉施策が適用されたのは、18歳未満の知的障害がある子どもだけでした。「隔離」を前提とするような法律の問題点を改善する声があがり、1960年に成立したのが知的障害者福祉法です。この法律でようやく、名実ともに児童から成人までの一貫した支援を提供する事業が整備されました。知的障害者福祉法の改正と障害者総合支援法出典 : 障害者制度は2003年、2006年、2013年と3度の変革を迎えています。これにともない知的障害者福祉法の位置づけや内容も変化してきました。まず2003年には、支援費制度が導入されました。ここでのキーワードは「障害者の選択の尊重」です。この制度の導入により、それまでは行政が定めたサービスしか受けることのできなかった利用者は、自分に合ったサービスを選べるようになりました。そして2006年には、「障害者自立支援法」が成立しました。ここで福祉サービスにおける障害者の位置づけが大きく変わりました。というのも、それまでは障害の種別によって提供されるサービスは分かれていたからです。障害者自立支援法の成立により、障害の種類や年齢にかかわらず、障害のある人たちが必要とするサービスを利用できるように、利用のしくみが一元化されました。そのために、それまで知的障害のある人を対象として提供されていたサービスの多くが障害者自立支援法という共通の制度のもとで一元的に提供されることになりました。2013年には、上記の障害者自立支援法の改正法として、障害者総合支援法が成立しました。ここで、よりよい支援を行うことで施設を退所する障害者が省令で追加されるなど、障害のある人が自立した日常生活、社会生活を営むことが法律の目的として定められいます。障害者総合支援法については以下の記事で詳しくご紹介しています。知的障害者福祉法の中で明確な定義がない「知的障害者」出典 : 「知的障害」という名称は、学校教育法や児童福祉法などの法律で使用されてから、一般的に福祉現場や医療の領域で、日常的に使われるようになりました。一般的には、知的障害とは、金銭管理、読み書き計算など日常生活や学校生活の上で知的機能を使う知的行動に支障があることを指す場合が多いです。しかしながら、肝心な法律においては、どのようなものを知的障害と指すのかを定める規定が見られません。このために、医学、心理学、教育学の領域でそれぞれ定義が定められており、共通した理解が得られていないのが現状です。またその呼び名も、教育分野では「知的発達障害」「知的発達遅滞」、医学関連では「精神遅滞」「精神発達遅滞」などばらばらです。支援の必要性の有無、障害の程度をもって、知的障害者を定義する法令は存在せず、客観的な基準を示していません。厚生労働省においては、知的障害を精神医学の領域における「精神遅滞」と同じものと定めていることから、法令上の用語もその基準にならっていることが多いようです。知的障害(ID: Intellectual Disability)は、医学領域の精神遅滞(MR: Mental Retardation)と同じものを指し、「知的発達の障害」を表します。すなわち「1. 全般的な知的機能が同年齢の子どもと比べて明らかに遅滞し」「2. 適応機能の明らかな制限が」「3. 18歳未満に生じる」と定義されるものです。「知的障害者更生相談所」知的障害のある人がより暮らしやすくなるための機関出典 : 知的障害者福祉法は、知的障害のある人がより暮らしやすくなるためのサポートを行う機関を、都道府県に設置することを定めています。それが知的障害者更生相談所です。主に18歳以上の年齢の人が対象となります。18歳未満の場合には、児童福祉法のもと設置された児童相談所を利用することとなります。知的障害者更生相談所では、以下の3つの取り組みが行われています。この施設では、知的障害に関する高度で専門的な知識や技術を必要とする人のための相談を受け付けています。医師やケースワーカーなどの知的障害者福祉司という専門の知識をもった職員が相談にのってくれます。知的障害者更生相談所では、知的障害の判定と療育手帳の交付を行っています。判定および交付は、医師や心理判定員によるものです。知的障害には、国の法律によって定められている定義が存在しません。そのため、障害の認定区分や基準は自治体により異なっています。おおまかには、知能や生活習慣、行動の特徴などから判定します。その他には、IQ(知能検査などの発達検査の結果でわかる知能指数のこと)や日常生活動作(身辺処理、移動、コミュニケーションなどの能力のこと)などが判定の材料に用いられることもあります。療育手帳の交付の詳しい方法は、以下の記事を参照ください。障害の状況や地理的な理由により、来所相談や定期相談ができない場合もあるかもしれません。そのようなときには、自治体によっては福祉士や心理判定員が、相談受付のため地域の巡回も可能ですので、利用するとよいでしょう。知的障害のある人に関連する制度や利用できる手当て出典 : 知的障害のある人に対する支援の体制にはさまざまなものがあります。現在、障害の種別に関わりなくサービスを一元化する動きのために、本法律を根拠とした知的障害のある人に特化した制度はありませんが、別の法律に準拠やガイドラインに定められた制度や手当をご紹介します。知的障害と判定された人に、一貫した相談や指導を行い、各種の福祉サービスを受けやすくすることを目的とした制度です。交付は、都道府県及び指定都市の長が行います。療育手帳制度は、法律で定められた制度ではなく、「療育手帳制度について(昭和48年9月27日厚生省発児第156号厚生事務次官通知)」というガイドラインに基づいた制度で、都道府県・政令指定都市ごとに要綱などを制定して行われています。療育手帳をもつことで、以下のような支援やサービスを受けることができます。・保育園への入園優待・就労支援・障害者医療費の助成・公共交通機関の割引・各種料金の割引、減免支援費制度とは、障害のある人自らがサービスを選択して、デイサービスや授産施設などの事業者と対等な立場で契約を結び、サービスを受けることのできる制度で、2003年に導入されたものです。当たり前のことだと思われた方もいらっしゃったでしょうが、導入以前は、利用者はサービスを選択することができず、市区町村などの行政が障害のある人の受けるサービスを決定していたのです。支援制度の「支援費」というのは、「利用者が施設を利用するための費用を市区町村が負担しますよ」ということです。ですので利用者は、直接何らかの金銭を受け取ることができるというわけではありません。障害のある人が施設を利用する際には、本来は全額費用を払わなければならないところから、行政がその利用料を負担するために、利用者が支払う費用が軽減されたという意味で「支援費」なのです。支援費制度は、現在障害者総合支援法に移行しています。それまでの支援費制度は、障害種別ごとのものであったり、利用できる施設が障害種別に応じて細分化されているという点から、複数の障害種別のある利用者からするとややこしいものでした。そこで、これらの課題を解決するとともに、障害のある方本人を中心とする個別の支援をより効果的に行っていくために、2005年に障害者自立支援法(のちの障害者総合支援法)への移行が行われました。成年後見制度とは、認知症のある高齢者、精神障害のある人、および知的障害のある人など、判断能力の十分でない人を支援する制度です。1992年に設けられました。この制度では、お金の管理や相続という手続きを、その人に代わって代理人が行うことができます。成年後見制度には二つの種類があります。一つは、法定後見制度といわれ、家庭裁判所が成年後見人などを選任し、すでに判断能力が低下している人に対して行われるものです。もう一つは、任意後見制度といい、あらかじめ本人が任意後見人を選び、近い将来に備え支援者と支援内容を決めておくものです。具体的な利用の方法や手続きについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参照ください。「もしも」のときのために、掛け金を積み立てておく制度です。精神、知的、身体に障害のある人の保護者が、亡くなったり、重度の障害になったときに、本人に終身一定額の年金が支給される制度です。対象は、・将来独立することが困難であると認められる、特に知的、身体障害の1~3級の手帳をもつ者の保護者・65歳未満の保護者・特別な疾病、障害がないなどの条件があります。対象となる保護者は、毎月1口~2口の掛け金を納めます。1口あたりの金額は、保護者の年齢により変わります。支給は保護者が亡くなった、重い障害をもった場合に、1口につき、月額2万円が本人に、終身支払われます。詳しくは、お住いの市区町村の保健所、保健局のHPをご覧ください。障害の等級によっては、以下の手当が支給されます。該当する手当をもらうことで経済的、精神的な負担の軽減することができます。・障害基礎年金・障害厚生年金・在宅重度心身障害者手当・特別障害者手当・特別児童扶養手当・障害児福祉手当など赤塚俊治/著『新・知的障害者福祉論序論』2008年/刊/中央法規出版山内一永/著『図解 障害者総合支援法早わかりガイド』2012年/刊/日本実業出版社まとめ出典 : 知的障害のある人のための法律は、刻々と変化しています。歴史的な背景から起こっている、障害のある人への差別や偏見から派生する社会問題を解決するために、国の施策が展開されています。法律の目的である「自立」「社会参加」という理念に向かう途上で、まだまだ課題点は多く残りますが、その達成に向けて私たちは着々と歩を進める途上にあるともいえるでしょう。
2017年08月30日虐待とは出典 : 児童虐待防止法の表現を借りると、虐待とは「特定の相手に対して、その人の人権を著しく侵害し、心身の成長及び人格形成に多大な影響を与えること」です。その対象になりやすいのは児童、高齢者、障害者などの社会的な立場が弱いとされる人たちです。平成27年度に厚生労働省が発表した統計によると、虐待の疑いが専門機関に連絡された件数(通告件数)は高齢者が28,328件、障害者7,768件、児童103,260件であり、児童に対する虐待の通告件数が一番多い結果になっています。また、平成29年8月17日に発表された平成28年度の児童虐待相談対応件数は122,578件で、その数も年々増加している傾向がわかります。この記事では最も通告件数が多い児童虐待について説明していきます。児童虐待の通告件数が増加している背景には2つの要因が挙げられます。1つ目はメディアの報道により関心度が高まったこと、2つ目には法律の改正により通報が義務付けられたことです。通告件数の多さからわかる通り、いまや児童虐待は稀な出来事ではありません。子育ての孤立や貧困など、現代の子育て環境は過酷で、かつて考えられていたような「一部のひどい親」だけが行うというものではなくなってきています。つまり誰にでも、虐待という不適切な親子関係に陥る可能性があるのです。いつ自分の身の回りに起きても大丈夫なように、正しい知識を持っておきましょう。虐待につながりそうな親子の存在にいち早く気づき、適切な支援につなげることで、救われる親子がいるかもしれません。参考:平成27年度高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果|厚生労働省参考:平成27年度 「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」に 基づく対応状況等に関する調査結果報告書|厚生労働省参考:平成27年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数<速報値>|厚生労働省参考:平成28年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数<速報値> |厚生労働省虐待の種類出典 : 虐待はその手段によって、いくつかの種類に分類されています。ここでは厚生労働省が「児童虐待の定義と現状」で使っている分類を紹介します。1.身体的な虐待殴る、蹴る、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などで縛るなど2.心理的な虐待言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるうこと(ドメスティック・バイオレンス/DV)など3.性的な虐待子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にするなど4.ネグレクト家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かないなど参考:厚生労働省「児童虐待の定義と現状」これら4種類の虐待は単独で起こるだけでなく、複合的に起こることもあります。また、法律の条文に載っていなくても、子どもの健康的な心身の発達を阻害する可能性がある言動は虐待に値します。次の章で紹介する基準をもとに、柔軟に判断することが子どもたちを救うのです。どこからが虐待なの?出典 : 専門機関が虐待かどうかを判断する指標として、児童虐待防止法の定義が使われます。一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。つまり、前の章で挙げた身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクトの項目に当てはまるような言動が見られる場合に、虐待と判断されるのです。けれども、法律上の定義だけでははっきりと判別できない事例も多いことが事実です。虐待としつけの間には線引きが難しいグレーゾーンが存在し、第三者からは見分けがつきにくいこともあるでしょう。虐待の判断で重要なポイントは、子どもの視点に立って考えることです。親はしつけや教育のためと思っていても、子どもが耐えがたい苦しみを感じ、心身の成長に悪い影響を与えそうなときは虐待として考えるべきという専門家も増えています。また、もし、虐待かどうか判断しかねるときは、児童相談所にまずは相談しましょう。虐待かどうかの判断をするのは児童相談所です。虐待でなかったとしても、故意によるものでなければ通告をした人自身の責任は問われません。なので、通告の段階では主観的な判断であってもよいのです。むしろ、虐待かどうか判断しかねるような段階で早めに専門機関につながることで、支援の手により虐待が未然に防げることもあります。虐待の影響出典 : 虐待は子どもの心身に非常に大きな影響を与えます。この章では、虐待の影響を分類ごとに説明します。身体的影響は、さらに2つに大きく分けられます。一つは、外的な傷害です。外的な傷には打撲、切り傷、やけどなど目に見える傷と、骨折や頭蓋骨内出血などの見えない傷があります。また、目に見える傷であっても衣服に隠れる場所にあるため発見が遅れてしまう場合があります。外傷が重い場合には、重い障害が残ったり死に至る可能性があるため、いち早く気付けるように注意する必要があります。二つ目は発育の遅れです。十分な食事を与えられなかったり、愛情を注がれなかったために栄養障害や発育の遅れが生じることを言います。逆にストレスで過食になったり、感覚が鈍くなり、外傷を負っても気付かないこともあります。虐待を受けた子どもの中には、家庭内が安心できる環境ではないこと、十分に学校に通うことができないこと、また、保護者から知的発達に必要な関わりをしてもらえないために、知的な発達面に異常が生じることがあります。知的な発達の異常は、認知機能(知覚、記憶、思考、判断)の低下、衝動性や多動性により発達障害だと誤解される可能性もあります。本来、最も愛情を注いでくれるはずの保護者から傷つけられることで心理的な問題が生じることも多々あります。親子間の愛着関係を築くことができなかったため、対人関係の構築に問題が生じます。「人を信用できない」「仲良くなってもすぐに関係を壊してしまう」「否定されることが怖くて自分の意見が言えない」などの困りごとが生じます。これらは子どもが大きくなって社会生活を送る上で大きな障害となるでしょう。つまり、虐待の影響はその場限りではなく、子どもが成長してもずっと続くことがあるのです。他にも、自己評価の低下や行動コントロールの困難さが原因となり、暴力的・衝動的な行動や非行に走ることがあります。偽成熟性も特徴的な症状です。精神的に不安定な大人と関わることで自分が大人の役割を果たさなければいけないように思い、大人びた行動にでることを言います。一見成熟しているように見えても思春期頃に問題行動が出てくることもあります。また、強い心理的ストレスによる記憶喪失や解離性障害、不眠など、日常生活に支障をきたしてしまう精神疾患に至るケースもあります。このように、虐待は子どもの心身に多大な影響を残し、その回復のためには長期間の治療やケアが必要になるのです。手遅れにならないように、周囲がよく気を配ることが必要です。なぜ虐待が起こるのか出典 : 虐待が起こりやすくなるリスク要因として、「子どもによるもの」「保護者によるもの」「社会/環境によるもの」という3つの要素が挙げられます。1つ目は、子どもによる要因です。発達障害、身体的な障害、精神疾患など、その子が持つ特性によって、保護者がその子のことを育てにくく感じることもあります。もちろん、これらの要因は子どものせいではありませんが、特別なケアが必要だったり、愛着形成やコミュニケーションをとりにくかったりといった育児の難しさが、過剰なしつけや保護者自身のストレスにつながりやすく、虐待のリスクが高まることがあります。2つ目は、保護者による要因です。様々な要因により、保護者が子どもを受け入れられないことがあります。具体例としては、望まない妊娠、子育てに関する知識不足、保護者自身の発達障害、虐待を受けて育った経験、などです。子育ての途中につらい記憶がよみがえってきたり、子どもに注意を払いたくても気付けないことが多かったり、教育のしかたがわからなくて暴力的な言動やネグレクトを引き起こしてしまうことがあります。3つ目は、社会/環境による要因です。貧困家庭やひとり親家庭などの場合には、保護者が環境に関心を向ける余裕がなく、社会的に孤立してしまう場合があります。このような家庭は保護者が生活を維持することに精いっぱいなため、子どもへの関心が向きづらく無自覚のうちにネグレクトにつながってしまうことがあります。孤立している家庭は周囲とのコミュニケーション、サポーティブな関係、頼れるサービスが身近にあることで家庭内トラブルのリスクが大きく減ると言われます。本人や周囲の人々がリスクを認識しつつ、支え合える関係を築いておくことが重要です。虐待のサイン出典 : 家庭内に虐待が起こっている場合、子どもや保護者の様子に異変が生じるはずです。周囲がその変化にいち早く気づくことで深刻な虐待に至る前に早期発見し、食い止めることができるでしょう。1.身体的な変化□不自然な傷や同じような傷が多い□原因がはっきりしないケガをしている□治療していない傷がある□極端な栄養障害や発達の遅れが見られる2.表情□表情や反応が乏しく活気がない□ボーっとしている□おびえた泣き方をする□養育者と離れると安心した表情になる3.行動□食事に異常な執着を示す□衣服を脱ぐとき異常な不安を見せる□ひどく落ち着きがなく乱暴、情緒不安定である4.他者との関わり□他者とうまく関われない□繰り返し嘘をつく□態度がおどおどしている□親や大人の顔色をうかがう□誰かれなく大人に対して警戒心がうすい(なれなれしい、ベタベタする)□保護者が迎えにきても帰りたがらない□他者との身体接触を異常に怖がる5.生活の様子□衣服や身体がいつも不潔である□基本的な生活習慣が身についていない□予防接種や健康診査を受けていない□年齢不相応の性的な言葉や性的な行動が見られる□夜遅くまで遊んだり徘徊したりしている□家に帰りたがらない1.子どもへの関わり方□子どもへの態度や言葉が拒否的、無関心的である□子どもの扱いが乱暴である□子どもに理想を押し付けたり、年齢不相応な要求をする□体罰の正当化や偏った養育方針(しつけかた)をもっている□きょうだいに対して差別的である2.他者への関わり方□他者に対して対立的、否定的な態度をとる□特に、理由も無く関わりを避けたり、連絡が取りづらい□説明の内容が曖昧でコロコロ変わる□子どもに関する他者の意見に被害的・攻撃的になる3.生活の様子□近隣との交流を拒否し孤立している□不衛生な生活環境である□小さい子どもを家に置いたままよく外出している□夫婦関係や経済状態が悪い□夫婦間の暴力が認められている4.保護者自身のこと□ひどく疲れている□精神状態が不安定である□性格的な問題として、被害観が強い、偏った思い込み、衝動的、未成熟など□いつもお金に困っている様子がある□家族関係のトラブルを抱えている参考:虐待のサインを見つけるには|神奈川県参考:横浜市子ども虐待防止ハンドブック|横浜市参考:教職員・保育従事者のための児童虐待対応マニュアル|埼玉県もちろん、この基準に当てはまるからといって、虐待が起こっているとは限りません。その子どもの特性を踏まえて変化に注目してみましょう。たとえば「今まで活発だった子が急にふさぎこんでしまった」「お友達と遊ぶことが好きだったのに、最近は一人でボーっとしている時間が多い」などです。親子の様子に著しい変化や違和感がないか、確認しましょう。変化に気付くためには、周囲の注意深い観察が必要です。ぜひ、上の項目を意識しながら子どもたちを見守ってみてください。虐待の可能性があるときは?出典 : 虐待から子どもを守るためには、虐待のリスクに周囲が気づき、早期に関係機関に通告することが最も大切です。速やかな通告がされないと、行政機関も虐待の防止に向けた活動を行うことができず、虐待を受ける子どもの生命や心身に大きなダメージを与える危険性が高くなります。そのため、虐待の通告はとても重要な役割を担っており、児童虐待防止法では通告を国民の義務と定めています。児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。「もし違ったらどうしよう」とためらってしまうかもしれません。しかし虐待かどうかの判断は児童相談所が行うので、通告者が虐待であるかどうかを判断する必要はありません。少しでも虐待の可能性がある場合、そのリスクを見落とさないためにも、より多くの情報が必要です。そのため「一般の人の目から見て主観的に子どもの安全・安心が疑われる場合」であればためらわず通告してください。もし仮に通告の後で虐待の事実がないと判明したとしても、虐待の事実がないことを知りながらあえて通告したという場合などを除けば、法的責任を問われることはありません。まずは「189」に電話相談!「189」は、児童相談所や市区町村が「いちはやく」児童虐待に対応できるよう、厚生労働省により設けられた全国の児童相談所の共通ダイヤルです。「189」に電話をかけると最寄りの児童相談所につながります。児童相談所に電話をすると、専門家が子どもの状況や、「いつ、どこで、どのような異変を確認したのか」などの聞き取りを行います。出典 : 「189」への相談は24時間365日いつでもすることができます。電話の通話料金は相談者の負担となりますが、相談料などはいっさいかかりません。また、相談者の氏名や相談内容に関する秘密に関しては口外されないよう定められているため、相談者にとって安心して相談しやすい環境が整えられています。児童相談所に担当者に対して氏名を明かしたくない場合は、匿名での相談もおこなうことができます。虐待の通告への対応を含め、その後の親子への支援は児童相談所が担当します。虐待の疑いがある子どもを見つけても、「自分の子どもなんだから、これ以上のことはしないだろう」「通告したら、親子の関係をより悪化させてしまうのではないか」「親から告げ口をしたと恨まれないか」と不安に感じ、通告に踏み切れないこともあると思います。そう感じるときに思い出してほしいのは「虐待の通告は子どもだけではなく、親も救う」ということです。通告は罰することではなく、必要なサポートや支援につなげるための手段です。前述の通り、虐待が起きている家庭は孤立状態にある場合が多く、困りごとを共有できずにいます。通告によって行政が虐待の存在に気付ければ、保護者が子どもへの向き合い方を見直し、自らの困難さへの対処をすることにつながるのです。通告後はどんなサポートがあるの?出典 : 虐待が発見されたら、近くの児童相談所か行政の相談窓口に通告されます。通告が受理された後、保護者や児童本人にヒアリングして重症度・緊急度の審査が行われます。審査の結果を踏まえて、児童の一時保護を含めた措置を検討します。在宅支援とは、子どもの生活拠点は家庭のままにして、家族への支援を行うことです。在宅支援が行われる場合は、虐待のリスクはあるが「止めたい」という保護者の意思が確認できるときや、保護者を支援することで問題の改善が期待できるときなどです。児童相談所や自治体、民間団体など様々な機関から広い支援を受けることができます。1.ペアレントトレーニングペアレントトレーニングとは、行動療法的な考え方を使って保護者自身が子どもとの関わり方を学んでいく方法です。子どもを自分の思い通りに操作するために暴力や暴言に頼る方法ではなく、より良い関係の中で親子関係を築く方法を学びます。2.ピアカウンセリングピアカウンセリングとは、子育てに困りごとを抱えている保護者同士が話し合うことで困りごとを共有し、支え合う関係性を築くことです。境遇が似ている人と気持ちを共有することで、自分自身の行動を受け止め、許容することができるようになります。3.支援団体と保護者の面談主に児童相談所と行政の担当課による家庭訪問や面談です。話を聞いたり、困りごとの相談に応じることで、保護者が孤立してしまうことを防ぎつつ、子どもに対する行動を客観的にとらえられるように促します。4.幼稚園、学校内での見守り主に教職員によるモニタリングを行います。「ちゃんとご飯食べてる?」などの質問を通して子どもが健やかに育っているか、虐待の再発は無さそうかの変化を観察します。児童相談所から指示があれば、追加の支援も行われます。5.地域での見守り児童委員の人が家庭訪問等を通して、家庭内の状況を見守ります。親子を分離する必要があると判断された場合は、児童福祉施設や里親に預けられます。子どもの保護を保護者が拒否するときは、児童相談所が裁判所に申し立てをし、裁判所の命令によって児童を保護することになります。今までは児童福祉施設に預けられることが多かったものの、2017年8月に厚生労働省が被虐待児の施設受け入れよりも、里親の受け入れを増やす方針を発表しました。この方針は、家庭に近い環境での発育が必要な子どもの選択肢を広げることが狙いです。こういった世相の変化によって、子どもの特徴に合った、支援の幅が広がっていくことになるでしょう。子どもが保護されている間には、保護者に向けた関係機関からの支援が受けられます。支援によって親子関係の再構築が望める場合、家族が再び一緒に暮らすこともあります。子どもに虐待しそうになったときは出典 : 「自分が虐待をしてしまうのではないか」「自分が虐待をしているのではないか」、また「どうしても自分をコントロールできない」などと悩む保護者の方も少なくないようです。そういった悩みを抱える保護者向けのサポートがあります。子育ての悩み相談や地域で受けられるサポートを知りたい場合は、児童相談所のほか各市区町村の役場(役所)にある「児童福祉課」「子育て相談課」で対応してもらえます。情報収集や気軽に話せる相手がほしい場合はサポートをしている団体に連絡してみるとよいでしょう。社会福祉法人子どもの虐待防止センター(CCAP)が、研修を受けた相談員による電話相談を行っているほか、ケースによっては虐待などの悩みをもつ保護者同士が自分の体験を語ることによる治療的グループケアなども行っています。また、社団法人子どもの虐待防止センターでは、電話での相談を受け付けているとともに、育児スキルトレーニングの教室の実施なども行っています。このように信頼できる専門機関とつながることで、育児のストレスを減らすことが期待されます。子どもの虐待防止センター相談電話|社会福祉法人子どもの虐待防止センター (CCAP)参考:「虐待をやめたい」と悩み苦しむ親への支援|社会福祉法人子どもの虐待防止センター自分の感情をコントロールできない人には、アンガーマネジメントを学んでみることもおすすめです。アンガーマネジメントとは、イライラや怒りの感情と上手に付き合うための心理教育です。自分のイライラや怒りの原因を理解し、ポジティブな方向に持っていくための訓練をします。自分や子どもにあるリスク要因を認識し、感情が高ぶったときの対処法をあらかじめ考えておくと自分の感情をコントロールしやすくなります。アンガーマネジメントは日本アンガーマネジメント協会が行っている研修や、関連図書で学ぶことができます。困っているときにどのように対処するか、どこに相談するのかを知っておくことで、解決の糸口が見つかるかもしれません。参考:愛の鞭ゼロ作戦|厚生労働省参考:アンガーマネジメントとは|日本アンガーマネジメント協会参考図書:監修/日本アンガーマネジメント協会,著者/長縄 史子, 篠 真希 , 小尻 美奈『ママのアンガーマネジメント: 子育てのイライラスッキリ 8つのマジック 』(合同出版・2017年)まとめ出典 : 虐待は、保護者が故意に子どもに危害を加えるというイメージがあります。しかし、実際には虐待をしたくてしている保護者は少ないのではないでしょうか。もちろん子どもを傷つける行為自体は決して許されるものではありません。しかし、その背景に目を配ると、実は子育てに悩んでいて、どうすればいいのか分からずに虐待をしてしまっている人も多いのです。子育ての悩みと言っても子どもの問題や保護者自身の問題、社会や環境にある問題など、様々な要素が複雑に絡み合っているために本人では解決が難しい場合がほとんどでしょう。そのような困りごとを抱えている家族を救うためには、周囲の人の通告が一番重要な役割を担っています。通告と言うと、その過程に与える影響が気になりためらってしまう人もいるのではないでしょうか。けれども、通告は”悪い親“を罰するためではなく、困っている家庭を救うための手段です。親子の支援と早期発見が子どもの健やかな成長には必要です。虐待について知り、勇気を持って行動に移せる人が増えてほしいと思います。
2017年08月18日4人の子ども育ててます
子育て楽じゃありません
良妻賢母になるまでは。