テンポよく繰り出される膨大なセリフ。笑いを含んだ軽快な会話のなかに切っ先鋭い刃が交じり、ふいに世の本質を問う言葉でずばりと観客に切り込んでくる。そんな野田秀樹さんの傑作戯曲『パンドラの鐘』が、熊林弘高さんの手により上演される。出演する門脇麦さんが作品について語ります。熊林さんの演出で、よりストレートに本題に向き合う作品になる気がします。「熊林さんが野田さんの戯曲を演出するって聞いたとき、少し意外だと思いました。これまで西洋の翻訳劇を演出している印象があったし、どちらも肉体先行型の演出をされる方だと思いますが、その方向性がまったく違うんです。たとえば野田さんの場合は、体を動かしながら早口で喋ることで、あの大量の言葉たちを転がしていく感じがあって、言葉と体が相乗効果を生んでいく演出なのかなって気がします。でも熊林さんは、言葉を転がしたり説明したりする動きというよりは、愛してるって言いながら殴り合う…といったような体と言葉が相反する動きをさせることが多いと思います。言葉にたくさんの意味が生まれるし、強い言葉を発せられる。そんな感覚です」そう話すのは、舞台『狂人なおもて往生をとぐ』で熊林演出を経験した門脇麦さん。過去には野田作品への出演も果たしているが、今回の作品は「難しくてまだ語れるところまではいけていなくて…」とぽつり。物語は、太平洋戦争開戦前夜の長崎と、遥か遠い昔の古代王国の2つの時間軸で展開されていく。そこに長崎の原爆や天皇制などのモチーフが複雑に絡まり、時空を超えて描かれるのは重厚で壮大な世界。「日本の演劇は、小さな空間で見せる物語に魅力的なものが多いと思うんです。でも、野田さんの舞台の特徴のひとつは、大きな空間をめいっぱい使っても広さを感じさせないこと。それだけスケール感のある作品を生み出せる方って、あまりいないと思います」それが熊林演出によって、「艶っぽくなるし、重心が重くなって、よりストレートに本題に向き合う作品になるんじゃないかと思う」と話す。「熊林さんが描く女性って、どこか生々しさがあるんですよね。野田さんとの一番の違いはそこだと思います。私自身はたぶん艶っぽくない人間ですが、言葉の重力と相反する肉体の動きを取り入れることで、逆の効果が生まれる気がするんです」さまざまな映像作品で引っ張りだこの門脇さんだけれど、数年に一回は舞台に立つ機会を作っているそう。「舞台に立つと、自分の実力不足を映像よりダイレクトに感じられて、とても貴重な時間です。映像の現場は撮り終えたら次のシーンに進むけれど、舞台は毎日同じシーンと向き合わなきゃいけない芝居の訓練って感じ。でも、いろんな試みができる嬉苦しい作業でもある。私、出番直前の、袖に立つ瞬間が好きなんです。ジェットコースターに乗っているときのゾワゾワッてする感覚に似た高揚感があるんですよね」『パンドラの鐘』太平洋戦争開戦前夜の長崎で、考古学者のオズ(金子)は巨大な古代の鐘を発掘。一方、古代王国では兄の死によりヒメ女(門脇)が王位を継承。王の埋葬を依頼された葬式屋のミズヲは、棺の中に隠された死の秘密を知ってしまう。彼は、処刑される代わりにヒメ女にある任務を命じられる。長年隠されてきた古代王国の謎が長崎の地で明らかに…。4月14日(水)~5月4日(火)池袋・東京芸術劇場 シアターイースト作/野田秀樹演出/熊林弘高出演/門脇麦、金子大地、松尾諭、柾木玲弥、松下優也、緒川たまきほか一般7000円ほか(4月13日にプレビュー公演あり。一般6500円ほか)東京芸術劇場ボックスオフィス TEL:0570・010・296大津、西宮、金沢、水戸、名古屋公演あり。かどわき・むぎ1992年8月10日生まれ、東京都出身。最近のおもな出演作に、大河ドラマ『麒麟がくる』や映画『さよならくちびる』など。出演映画『あのこは貴族』が公開中。また、今年冬に全世界同時配信予定のNetflix映画『浅草キッド』にも出演。ニットベスト¥35,200Tシャツ¥18,700(共にキャバン/キャバン 代官山店 TEL:03・5489・5101)プリーツスカート¥33,000(エストネーション TEL:0120・503・971)イヤリング、ベルトはスタイリスト私物※『anan』2021年4月14日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・吉田 恵ヘア&メイク・石川奈緒記インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2021年04月12日崖っぷちの出版社を舞台に、裏切りやリーク、告発など、仁義なき騙し合いが繰り広げられる『騙し絵の牙』。その渦中で奮闘する、新人編集者の高野を演じた松岡茉優さん。「編集者の方って朝早くから夜遅くまで忙しいし、バッグが重い!資料の本やゲラ、パソコン、筆記用具も何種類も持ち歩いていて…。大変な仕事ですよね。撮影中、高野のバッグを軽くしてください、とお願いすることもできたのですが、走る時に持ち替えたり、一回床に置くなど、この重さがあるからこその役作りができると思い、そのままにしました。純粋に文学を愛し、出版業界が衰えてほしくないという強い思いを持っていて、とにかく休まない人。そんな彼女の人柄を表現する上でも、必要な重さでした」このような目には見えにくい演出をはじめ、松岡さんの役者魂を感じるエピソードはまだまだある。「気をつけたのは、まだ若い彼女の文学愛みたいなものが、見る人に暑苦しく、やかましく感じてほしくないというところ。曲者揃いの中で、右も左も分からないままがむしゃらに突き進む女性ではなく、文学に真っ当に向き合いたいという信念を感じていただきたくて、落ち着いたお芝居を心がけていました。時には大胆な発言をする人でもあるんですが、それに行動が伴っているから強くてかっこいいんですよね。監督からは、出版業界の販売システムやルールが書かれた本を何冊か資料として渡され、それらを読んで勉強しました。高野の実家は書店を経営しているんですが、演じながら、書店が本を売るために自由に舵を切れるものでもないということも知ったり。本が好きでうっかり本屋に寄ると何冊も買ってしまう私にとっては、興味深いことばかりでした」主演の大泉洋さんをはじめ佐藤浩市さんや木村佳乃さんなど、そうそうたるキャスト陣にも注目が集まる。「最初は緊張から胃薬を持ち歩いていましたが(笑)、みなさん気さくで。私が知らない時代の撮影現場の話などを聞かせていただいたりと、長い待ち時間でも持て余すことがない楽しい現場でした。大泉さんは、屋上のシーンで直射日光を浴びていても『大丈夫?眩しくない?』と自分よりも私を気遣ってくださる優しい方。視野が広く、場の空気感を敏感に察知して行動をされ、ユーモアもあって…まさに私のなりたい大人像なんです」コロナ禍において、予定より遅く公開される今作への思いはひとしお。「曲者揃いの登場人物たちの決断や勇気にきっと励まされるはず。新生活に向けて、一歩踏み出すきっかけになれば嬉しいです」『騙し絵の牙』大手出版社で次期社長をめぐる権力争いが勃発する中、次々と現れる曲者たちが心理戦を繰り広げる。監督・脚本/吉田大八原作/塩田武士『騙し絵の牙』(角川文庫/KADOKAWA刊)3月26日より全国公開。©2021「騙し絵の牙」製作委員会まつおか・まゆ1995年2月16日生まれ、東京都出身。近年の主な出演作に映画『蜜蜂と遠雷』『ひとよ』『劇場』など。ドラマ『おカネの切れ目が恋のはじまり』(TBS)のDVD&Blu‐rayが発売中。トップス¥135,000スカート¥278,000(共にエトロ/エトロ ジャパン TEL:03・3406・2655)※『anan』2021年3月31日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・山田梨乃ヘア&メイク・伴まどかインタビュー、文・若山あや(by anan編集部)
2021年03月30日ドラマや映画で、気になる存在感を放つ浅香航大さん。思わずクスッとさせられるコミカルなキャラクターから、クールで毒舌な男や熱血漢まで、幅広い役柄を演じつつも、そこに揺らぎを加え、血の通った人間くさい人物を立ち上げてみせる人。そんな浅香さんを写真家の岩澤高雄さんが撮影します。取材現場にやってきた本人は、シャイでもの静かな雰囲気を漂わせる。「色気って目には見えない魅力ですよね。味とは違う。哀愁とか優しさとも少し違うけれど、どこか近い部分はあって。なんとなくですけれど、その人が積み重ねた人生から哀愁とか優しさが滲み出てくればくるほど、それを色気として感じるんじゃないかという気がします」ゆっくりと考えを巡らしながらぽつりぽつりと語った後に、ふっと笑って「めっちゃムズいですね」とこぼした。では、と質問を変え、浅香さんが色気があると感じる人について尋ねてみる。「表情とか仕草とか言葉選びとか…そういうものから受ける部分は多い気がします。言葉に余韻のある人とか、いいですよね。それで言うと、現場でご一緒している宇野祥平さんは素敵だなと思います。撮影の合間に結構話すんです。いまやっている作品についてとか、どんなきっかけでこの世界に入ったかとか、これまでにどんな作品を観てきたのかとか。僕が一方的に根掘り葉掘り聞いているんですけれど、言葉の端々に人柄が滲み出ていて、話していていいなと思うんです」普段からそうやって共演者とコミュニケーションをとるのかと思いきや、「現場であまりしゃべらないタイプ」だとか。「もともと現場でも寡黙にいちゃうほうなんで、いろんな人とコミュニケーションをとれる人を尊敬しています。でもだからこそいまは、興味が湧くタイプの方とご一緒した時には意識的にしゃべろうとしています。宇野さんは、作品について話した時に『難しいね』とおっしゃったんです。ベテランで先輩ですけれど意外と悩まれるんだなと思いましたし、後輩で年下の僕にも俳優同士として、話してくださるところも素敵で。僕、迷いのある人が好きなんですよ。自信を持ってバーンと出ていかれる方もカッコいいとは思うんですけれど、人として惹かれるのはそっち。お芝居も同じで、迷いとか余白があるほうが人間的な気がして」その言葉に、浅香さんの役作りに対する想いの一端が垣間見えた気がする。「迷いを感じさせようと思って演じてはいないですが、余白は作っておきたいとは思っています。どんな役でもどんな状況でも、行動するに至るには、悪いことでもいいことでも、その人なりの理由というか正義があるはずで。そこを感じさせられたらなと思っています」そこまで話し、「…でも正直、あんまり難しいことは考えてないです」と続けた。「僕の場合、演じている様を先に絵で思い浮かべてしまうことが多いんです。飲み屋で知り合ったあのお兄さんがイメージに合っているなとか、そんなことを考えながらちょっと真似てみたり、そんな感じかもしれないです」自身もまた「迷いのある人」だそう。「最近は減ってはきましたけど、やりたい仕事があるとか、オーディションに受からなかったとか、お芝居が思ったようにできなかったとか、多くは仕事のことですね。だから僕は、たくさん仕事をさせてもらうのが合ってるんだと思います。迷ってる暇がないくらい、どんどんやっていくっていう。もちろん1本に集中してじっくり向き合うのは理想ですけど」迷う、というのは、それだけ思考を巡らせるということでもある。「確かに人一倍考える癖はありますね。気にしぃだし、人と接するにしてもあれこれと考えてしまいがち。あと、何かにハマったり気になることがあると、全部知るところまでいかないと気が済まないんです。キャンプもだし、釣りもだし。去年のコロナ禍から始めた作曲も、マイクとかスピーカーとか宅録環境まで整えて夜中まで毎日やってましたから(笑)」人として、俳優として大事にしていることは…「優しさじゃないですか」。「人を思い遣るとか、相手のことを汲むってことなのかなと思います。現場でいえば、お芝居する相手が表現しようとしているものを受け取ることと、信じて委ねることなのかもしれません」あさか・こうだい1992年8月24日生まれ、神奈川県出身。出演ドラマ『リカ~リバース~』(CX系)は現在放送中。ドラマ『君と世界が終わる日に』Season2はHuluで配信中。ジャケット¥66,000シャツ¥29,000パンツ¥38,000リング¥29,000(以上ザ ヴィリディアン/ザ ヴィリディアン TEL:03・5447・2100)眼鏡¥36,000(アイヴァン/アイヴァンPR TEL:03・6450・5300)その他はスタイリスト私物From photographer今回の撮影では、浅香さんに「こうしてください。ああしてください」とあまり具体的に言わなかったんです。それは、ページのテーマと撮影のイメージを伝えてカメラを向けた時に、浅香さんの中から自発的に“表現したい何か”が見えたから。それがすごく面白いなと思ったし、どんなものが出てくるのか見たいと思って、僕は淡々と撮ることに徹するようにしました。それが、彼自身の持つ色気を引き出すような気がして。おそらく場の雰囲気をキャッチする能力に長けた方なんだと思います。とくに感じたのは、床に横たわっていただいたカットですね。そういう撮影に慣れた方だと最初から表情を作り込まれたりされますが、浅香さんは最初は控えめなんだけれど、シャッターを切るうちにどんどん憂いというのか、何とも言えない表情を見せてくる。そっちの“モード”に入っていくスイッチというか集中力が素晴らしかったです。いわさわ・たかお1984年生まれ。玉川竜氏に師事し2014年に独立。雑誌グラビアをはじめPARCOなどのファッション系広告、赤い公園ほかのCDジャケットなども手がける。※『anan』2021年3月31日号より。スタイリスト・根岸 豪ヘア&メイク・泉脇 崇(ロマリア)取材、文・望月リサ(by anan編集部)
2021年03月29日夕暮れ時の原宿、代々木公園周辺。186cmの長身にトープ色のロングコートをひるがえし、只者ならぬオーラをふりまく清水尋也さんにレンズを向けるのは、写真家の岡田潤さん。とくに細かくポージングを指示するわけでもなく、笑いに溢れた和気藹々な雰囲気とも違い、2人だけにしかわからない呼吸で黙々とシャッターは切られる。今回のテーマでもある“色気”について、思い浮かべるのは「“危うさ”とか“得体の知れなさ”」だと語ってくれた清水さん。「私生活が想像できない人、何を考えているかわからない人に、僕は無意識に惹かれてしまいます。それも一種の色気になるのかな、と。個人的に色気を感じるのは窪塚洋介さん。インスタライブなどでは、窪塚さんはいつでも取り繕わずに本音でしゃべっているように見えるんですが、それでも掴みきれない何かや、容易に他者を寄せつけないような雰囲気を常に纏っている、本当に不思議な方。つい目で追ってしまいますね」憧れを口にするが、その色気を自身がすでに身につけていることには、あまりピンときていない様子。「『色気がありますね』と言われることもあるし、そう言われて悪い気はしません。ただ自分では、そうかなぁ?って感じ。僕昔から、ボーッとしているだけで『大丈夫?悩んでるの?』って心配されるタイプで。何も考えてないのに『何を考えているかわからない』なんて言われちゃうんですよね。じつは今日の撮影中も、ただぼんやりと街の風景を眺めていました(笑)。僕は昔から目がいいと褒めてもらえることが多いんですが、二重幅も変わっているし、目頭の切り込みが深くて日本人にしてはめずらしいらしい。せっかくだからそこを活かしたいなとは思っていて、役を演じる時も、こういう雑誌やファッションなどの撮影をする時も、視線には気を使うようにしています。グッと真正面から見据えるのか、ちょっと視線を逸らすのかで、相手への印象や第三者への見え方がだいぶ変わってくると思うんですよね」そんな清水さんが考える、色気の身につけ方とは。「カラッと明るいエネルギーもそれはそれで素敵だけど、色気となるとちょっと湿ったエネルギーが必要な気がします。挫折や苦労をたくさん経験し、見返してやりたいというようなちょっとネガティブな要素から生まれるエネルギーのほうが、爆発力がある気がするんですよね。それを矢印にして飛び出させるのではなく、滲ませることでより深みのある、人を惹きつける色気になるのではないでしょうか。でもそもそも、色気って他人が感じるもの。色気があると言われたところで、本人は実感できないんでしょうね。『色気をあげるよ』って言われたら喜んでもらいますけど(笑)」ネット社会において問題視されている誹謗中傷を題材としたドラマ『アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~』では、ホワイトハッカーとしてレギュラー出演した清水さん。昨年は4本の出演映画が公開されるなど、業界からも注目を集める、気になる存在だ。今後、役者の仕事にどのように向き合っていきたいと考えているのだろうか。「現時点で一番やりたいこと、やっていて充実しているのが役者の仕事。とくに、演じている最中にやりがいを感じています。たとえば、最初はこちらの目を見て『ありがとう』というセリフを言っていたのに、次のテイクでは目を見ずに言ってきたり…。相手の役者さんが、現場で毎回おなじ芝居をしてくるわけじゃないところが面白いと思うし、そのライブ感が楽しいんですよね。一方で、一人の人間として、役者として生涯どう生きるのかというよりは、常に自分で責任を持って選択したり、意思決定ができる人間でありたいんです。それから家族や友達など大切な人との関係性を一番大事にしていて、愛情を持って接するように意識しています。『尋也のこういうところいいよね』『お前のこういうとこ好きだよ』なんて、周りが僕の好きなところを教えてくれるおかげで、自分のことを好きでいられる。だから僕も、大切な人たちにはいろんな“好き”を伝えていきたいと思っているんです」しみず・ひろや1999年6月9日生まれ、東京都出身。出演映画『東京リベンジャーズ』、主演を務めた劇場アニメ『映画大好きポンポさん』が今年公開予定。コート¥139,700プルオーバー¥61,600シャツ¥103,400パンツ¥61,600靴¥82,500(以上ルメール/スクワット/ルメール TEL:03・6384・0237)ネックレス¥16,500(トーガ ビリリース/TOGA 原宿店 TEL:03・6419・8136)リング¥14,300(ミラ/スタジオ ファブワークTEL:03・6438・9575)キーリング¥22,550(D’HEYGERE/MATT.)From photographer清水さんとは初めましてだったのですが、スクリーン越しや誌面から受けるイメージから、綺麗な光で撮りたいなと思いました。陽が傾いた夕暮れ間近の光がしっくりくるのではないかと思って、光の入り方が美しい時間と場所を選んで撮影に臨みました。フレッシュな若さを持った清水さんですが、一方で落ち着いたクールさを持ち合わせているのが魅力の一つ。彼の中に同居した異なる印象を、光のニュアンスで捉えることができたと思います。モデル撮影では被写体に細かくポージングや表情などの指示を出すことも多いのですが、経験上、俳優さんや女優さんの場合はこちらの意図するものを汲み取る勘の良さがあると思っています。清水さんにも同じような感覚がありました。初対面でさほどコミュニケーションをとったわけではないのですが、良い撮影になりました。その空気感を誌面から感じ取っていただければ嬉しいです。おかだ・じゅんBE NATURAL所属。ファッション誌やカルチャー誌、カタログの撮影を手がける。被写体が醸し出すものまでも写し出すセンスに定評がある。※『anan』2021年3月31日号より。スタイリスト・八木啓紀ヘア&メイク・須賀元子(星野事務所)取材、文・若山あや(by anan編集部)
2021年03月27日成田凌さんが映画『まともじゃないのは君も一緒』で演じるのは、数学一筋で生きてきて、普通の結婚を夢見るものの、その「普通」が何かわからない予備校講師・大野。コミュニケーションが下手で、生徒の香住からも「普通じゃない」と指摘されるという役どころ。「人それぞれの“普通”があるけど、僕は“普通じゃない”と言われたい」「大野はけっして変な人ではなくて、素直なんです。香住から『普通はさ~』と説明されても『普通って何?』って聞いてしまうんだけど、よくよく考えてみたら、それって素直でピュアな質問ですよね。本当に何が“普通”なのかは人それぞれで、曖昧な言葉だと思うけど、僕自身は『普通だね』よりは『普通じゃないよね』って言われたいですね」香住を演じるのは、清原果耶さん。マイペースな大野とガンガン攻める香住。テンポのいい会話の応酬に引き込まれる。「台本を読んでる時は相手がいなくて、どうなるか想像がつかなかったんです。でも、最初の本読みから清原さんがガンガン攻めてきてくれたんで、すぐに掛け合いが馴染んで、撮影が楽しみになりました。清原さんが、冷静に、真摯に本と向き合っているのが伝わってきました。完成作を観て自分で言うのもなんですが、純粋に二人の掛け合いは面白く楽しんで見ることができました」香住は大野に恋愛指南するのだが、アドバイスの元ネタはSNSで、実は大野と同じく恋愛未経験。「やっぱり恋愛って、相手にされてきた経験によって、どうしたら人に喜んでもらえて、嫌がられるのか、わかってくるんだと思います。あるドラマで共演させていただいた方が、トイレの洗面台をマイハンカチで拭いてたんですよ。人に気づかれるかどうか関係なく、自然とそういうことができるってすごいことだし、素敵ですよね」大野は社会人になって初めて異性に興味を持ち、数学一筋だった人生が輝き始める。「青春が訪れるタイミングも人それぞれだと思うんですよね。僕自身の青春は高校で部活を引退した後ですね。小学生の頃からサッカーのある生活が僕にとって、それこそ“普通”だったんですけど、辞めてからは制服のネクタイ緩めて、水鉄砲や水風船で近くの土手で友達と遊んだり。そんな、ザ・高校生の時間が楽しかったですね。あの時は、ブルブル震えながらコンビニでおでんを買ってました」『まともじゃないのは君も一緒』“普通の恋愛”がわからない予備校講師の大野(成田凌)は、生徒の香住(清原果耶)から“普通”になるためのアドバイスを受けながら、女性と付き合う練習をする。一方、香住は憧れの実業家に接近するが、彼には婚約者がいた。共演に、小泉孝太郎、泉里香ら。3月19日全国公開。©2020「まともじゃないのは君も一緒」製作委員会なりた・りょう1993年11月22日生まれ。埼玉県出身。2014年、俳優デビュー。近作に『カツベン!』『窮鼠はチーズの夢を見る』など。現在、NHK連続テレビ小説『おちょやん』に出演中。待機作に『ホムンクルス』(4月2日公開)、主演映画『くれなずめ』(4月29日公開)などがある。Tシャツ¥22,000(クラウディ/DOYA TEL:03・6459・3946)その他はスタイリスト私物※『anan』2021年3月24日号より。写真・小川久志スタイリスト・伊藤省吾(sitor)ヘア&メイク・宮本 愛(yosine.)インタビュー、文・小泉咲子(by anan編集部)
2021年03月21日デビューから10年間の歴史が詰まった、[Alexandros]初のベストアルバム『Where’s My History?』は2枚組全33曲に及ぶ。ロックバンドであることを強固な軸としながらも、日本語と英語、そして多様なサウンドが入りまじった音楽性はまさにボーダーレスだ。ロックバンドって反骨精神だと思うんです。「セカンドアルバムまではアマチュア時代のストック曲でまかなえてたんですけど、そこからは、新しいものを絞り出していく時期でした。4枚目からは、ロックやライブハウスに興味のない人にも届くための曲を意識し始めた頃。そういう歴史もわかる選曲になってますね」(川上)「サードから新しいところにいくために、キーボードやギターの本数が増えて、音数が増えましたね。実験的なことが始まったし、幅が広がったと思います」(白井)「その時期は、このままでもいい部分と足りない部分はどこなんだろうって、己から出てくる瞬間的な爆発を求めて、4人でずっと試行錯誤を続けていた日々でしたね」(庄村)「僕らには基本的にはプロデューサーがいないんです。自分たちで判断するしかなかったから、音も混沌とするはずですよね。だからこの10年で何を培ったかといったら自己プロデュース力。衣装も自分たちで選んでますし。それがうちらのスタイルを培いましたよね」(川上)混沌としたベスト盤の中でも、初期からのライブアンセムのひとつでもある「For Freedom」は、[Alexandros]の座右の銘のような曲名と、枠を壊すようなヘビーで振り切れた音が、バンドの宣誓にも聞こえる。「ライブハウスでお客さんが増えなくて、少しでも増やすために路上ライブをやって。目の前を歩いてる老若男女に対して間口の広い曲を作ったこともあったけど、やっぱりライブハウスのことを考えて『For Freedom』ができた。この頃僕は会社員とバンドの二足の草鞋で精神的に苦しかったんですが、その気持ちも込めてこの激しい曲ができて。転機になりましたよね」(磯部)「『俺ら本当に死に物狂いでやらなきゃ終わっちゃうな』って思ったことによって、初めて同じところを見つめられて、一発録りでこの曲ができて。俺にしか作れないこういう曲をメンバーも待ってたと思うし。やっぱり、ロックバンドって反骨精神だと思うんですよね。僕らも曲の作り方やバリエーションは増えていったけど、基本的なマインドはそこ。僕がクラスの端っこにいるような性格っていうのもある(笑)。それがロックだと思ってるんです」(川上)連続ドラマ『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』への川上さんの出演も話題になっている。「脚本の北川悦吏子さんから直々にお手紙をいただいて。それで新しい景色が見たいって気持ちが生まれて、出ることを決めたんです」(川上)ベストアルバム『Where’s My History?』は3月17日発売予定。全33曲収録。【初回限定盤(2CD+DVD)】¥4,300【初回限定盤(2CD+Blu‐ray)】¥4,700【通常盤(2CD)】¥3,000(UNIVERSAL MUSIC)アレキサンドロス左から、庄村聡泰(Dr)、磯部寛之(Ba&Cho)、川上洋平(Vo&Gt)、白井眞輝(Gt)。2010年1stアルバム『Where’s My Potato?』発売。’15年ユニバーサルミュージックとグローバル契約を結ぶ。※『anan』2021年2月3日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)取材、文・小松香里(by anan編集部)
2021年01月31日海の底へと男の体がゆっくり沈んでいく。そんなファーストシーンが悲劇的な結末を予感させる、綾野剛と舘ひろしの初共演作『ヤクザと家族 The Family』。しかも、メガホンをとるのは、『新聞記者』の藤井道人だ。権力の腐敗をメディアが暴いて、「正義は勝つ」的な爽快感を味わわせてくれるハリウッド映画と違い、不正を知っても闘うすべのない虚無感に日本社会の現実を映し出した監督である。その注目監督が、ヤクザを題材に描くとなれば、いわゆる任侠映画になるはずがない。抗争ではなく、“家族”を通して描かれるヤクザもまた、日本社会を映し出すことになる。3つの時代で描く、あるヤクザの20年。初のヤクザ役となる綾野が演じるのは、海辺の町で荒んだ少年時代を送った男・山本賢治。43年ぶりのヤクザ役という舘が演じるのは、地元のヤクザの親分・柴咲博。運命の巡りあわせか、柴咲の危機を救った山本は、柴咲と父子の契りを結び、ヤクザの世界に足を踏み入れる。持ち前の一本気を武器にヤクザの世界で男をあげるなか、山本は愛する女性とも出会うが、対立組織・侠葉会の攻勢は強まる一方。柴咲組という“家族”を守るためにある決断をした彼は、14年後、暴対法の影響で衰退した柴咲組の姿に、もはや社会にはヤクザが生きる場所がないことを知ることに。そんなヤクザになるしかなかった男と、そうすることで得た“家族”の20年間が、1999年、2005年、2019年という3つの時代を舞台に描かれる。綾野は、山本の20 年間を鮮やかに体現。金髪で真っ白な上下に身を包んだ尖った空気の19歳。背中の刺青もサマになっている20代半ば。そして、ヤクザが排除される社会で、愛する人からも疎まれる存在になってしまう現実に苦悩する40歳近くまで。しかも、リアリティに溢れているのは、さすが綾野といったところ。時代ごとに変わる映像のテイストも、1999年と2005年の過去パートと2019年の現代パートでは変わるスクリーンサイズも、山本の生き様の変化をより体感させてくれる。一度足を踏み入れたら、ヤクザをやめても5年間は、銀行口座も作れず、社会復帰が難しい現実をも映し出すあたりは社会派監督ならでは。しかも、時代はSNS全盛。心ない情報発信で、やっと手に入れた新しい家族との幸福は簡単に壊れてしまう。もはや、ヤクザは映画の中でもかつての任侠映画のように男が憧れる存在ではなく、生きるためにもがく存在なのだ。でも、これはせつないだけの物語ではない。父親を抗争で殺され、幼い頃から賢治を慕っていた半グレのリーダー・翼と、自分の父親がどんな人間だったか知りたがる少女・彩。そんな2人は、たとえヤクザでも父親は子供にとって大切な存在だということを浮かび上がらせ、この物語を本当の家族の物語へと昇華させて、驚くほど深い余韻を残す。しかも、どこか品格を感じさせる昔かたぎのヤクザが似合う舘の存在感も抜群なら、悪徳刑事役の岩松了ら、脇を固める面々も実力派揃い。侠葉会のキレキレの若頭・川山を演じる駿河太郎といい、『何食べ』のジルベールとも『恋する母たち』の赤坂くんともまるで別人の翼役の磯村勇斗といい、役者の新たな一面に触れる醍醐味もいっぱい。この魅力、ぜひ味わって。『ヤクザと家族 The Family』監督・脚本/藤井道人出演/綾野剛、尾野真千子、北村有起哉、市原隼人、磯村勇斗、菅田俊、康すおん、二ノ宮隆太郎、駿河太郎、岩松了、豊原功補、寺島しのぶ、舘ひろし1月29日(金)全国公開。©2021「ヤクザと家族 The Family」製作委員会※『anan』2021年2月3日号より。文・杉谷伸子(by anan編集部)
2021年01月31日一作ごとに着実にキャリアを重ねる深川麻衣さんが映画『おもいで写眞』で挑むのは“遺影”を撮るヒロイン。東京で夢破れ、祖母と暮らした富山に帰った結子が、町役場に勤める幼馴染み・一郎(高良健吾)にお年寄りの遺影撮影を依頼されることから物語は始まる。最年少として挑んだ現場は、とびきり贅沢な経験でした。「遺影という、なかなかないテーマに踏み込んだ物語です。みんなの心に残るものなのに、一方で集合写真を引き伸ばして遺影にしたり、と満足のいかないものになってしまうこともあるとはよく聞く話で…。実は結子も、祖母の遺影に心残りがある女性。それをきっかけにお年寄りの遺影ではなく、“おもいで写真”を撮る活動に夢中になっていくんです」それぞれの思い出がある場所で、最高の一枚を!最初は「縁起でもない」と顔をしかめたお年寄りたちも結子の情熱に動かされ、懐かしい場所を訪れることで、いきいきとした表情を取り戻していく。「結子は裏表がなくて喜怒哀楽がむき出しの、いまどき珍しいほど不器用な人。前半は怒った顔ばかりで申し訳ないんですけど(笑)、高良健吾さん演じる一郎の包容力や周りの方々の富山弁の温かさでほっとした気持ちになってもらえれば…」今回は最年少キャストにして主演の深川さん。高良さんはじめ先輩に囲まれて過ごした富山ロケを「贅沢な日々」と振り返る。「どの現場でも年下の方が増えていくなかで、あんな機会は二度とないかも。特に吉行和子さん、古谷一行さんという大先輩とご一緒させていただいたことは貴重な経験になりました。数え切れないほどの作品を経て、ご自身のアプローチをお持ちのはずなのに、現場では監督と対話しながら、柔軟に作品づくりを楽しまれていたのが印象的で…。仕事をするうえでは、考えることも大事だけど、その場を楽しむこともすごく大切。私もそんな年齢の積み重ね方ができたらいいなあと思いました」乃木坂46を卒業して4年半。女優として存在感を増しつつあるいま、じわじわと手応えを感じている。「最近は作品を通して私の存在を知ってくれたという方が増えたことがうれしくて。自分の変化より、周りの声で少しずつ前に進んでいることを実感できています」一人で歩み始めてから増えた「自分と向き合う時間」も演技の糧に。「私の仕事は自分の感情を掘り起こし、カメラの前で見せること。負の感情や弱さも直視しないと表現に偏りが出るから、苦手なものや意地っ張りな性格など(笑)、弱点も直視するようにしています」そして今年は、30歳の節目の年。「なんか30代は楽しくなりそうという漠然とした期待があります。警察や病院を舞台にした“職業モノ”とか未体験のジャンルにも30代で挑戦できたら。でもどんな作品でも演じたいのは“普通にいそうな人”。作品が終わった後もどこかで続きを生きているだろうと思わせる、地に足のついたお芝居をできる人になりたいです」『おもいで写眞』失意とともに富山に戻ってきた結子に幼馴染み・一郎が依頼したのは遺影撮影の仕事だった。深川麻衣、高良健吾、香里奈、古谷一行、吉行和子ほか幅広い年代の名優が紡ぐ温かな物語。1月29日より全国公開。©「おもいで写眞」製作委員会ふかがわ・まい1991年3月29日生まれ、静岡県出身。乃木坂46一期生としてデビューし、2016年に卒業。その後、初主演映画『パンとバスと2度目のハツコイ』をはじめ、映画やドラマを中心に活躍中。ワンピース¥52,000(WRYH/untlim TEL:03・5466・1662)パンツ¥18,000(Sara Malika/ルシファーリサーチ TEL:03・6427・9951)イヤリング(片耳)¥14,000(atelier ST,CAT)※『anan』2021年2月3日号より。写真・小川尚志スタイリスト・原 未来ヘア&メイク・山口朋子(HITOME)インタビュー、文・大澤千穂(by anan編集部)
2021年01月30日名だたる刀剣が戦士の姿となり、過去へと遡り戦いに身を投じる。刀剣男士たちの生き様を深遠な物語で綴る舞台『刀剣乱舞』。この冬の新作に出演中の本田礼生さんと荒牧慶彦さんに注目。2016年にスタートし、高い人気を誇る舞台『刀剣乱舞』(以下、刀ステ)。今年の新作は、6か月連続の史上最大スケールで、豊臣軍と徳川軍が雌雄を決した大坂の陣を、冬の陣と夏の陣のふたつの物語として描くというもの。現在上演中の冬の陣公演「天伝蒼空の兵 -大坂冬の陣-」で作品の中心を担うのが、一期一振(いちごひとふり)役の本田礼生さんと山姥切国広(やまんばぎりくにひろ)役の荒牧慶彦さん。荒牧:礼生とは以前に別の作品で共演してるんだよね。お芝居では、あまり絡みはなかったんだけど…。本田:僕は以前からまっきーさんの人柄が素敵だと伺っていたんですけど、実際ご一緒したら思ったより天然な方で…。荒牧:(笑)。…鍵の件、でしょ?本田:稽古終わりにまっきーさんが鍵がないってジャケットのポケットを捜してたんですけど、そもそもジャケットが別の人のだったっていう…。もう、どっから突っ込んでいいやらでした(笑)。荒牧:言い訳すると、同じジャケットを俺も持ってたから、何の疑いもなく着て帰ろうとしたんだよね。いつもの習慣で帰る前にポケットの鍵を確認したらなくて…。みんなを巻き込んで捜してたら、「まっきーさん、それ僕のです」って言われて、うそ~んって(笑)。本田:そんな普段お芝居している時とのギャップが素敵だなと。荒牧:あの時は本当に申し訳ない。礼生はさ、体がすごくきれるよね。バネが日本人離れしてるというか。本田:ブレイクダンスとアクロバットを長くやっていたんです。荒牧:あれだけ動けるのがすごい。本田:僕としては、今回初参加なので、まっきーさんみたいな頼れる先輩が一緒で安心したんです。荒牧:ありがたいことに、刀ステは長くやらせていただいているからね。そのぶん思い入れも増すし、戻ってこられてよかったなと思ってるよ。また新しい戦いが始まるプレッシャーもあるけど。本田:刀ステの現場はやらなきゃいけないことが多いですからね。荒牧:まず殺陣が作品の見どころのひとつになってるのもあって、必ず毎日稽古のどこかにアクション稽古が入ってるし。でも俺、刀ステの避(よ)けるか避けないかのギリギリの殺陣、嫌いじゃないんだよね。本番になるとゾーンに入るのかわからないけれど、戦ってる時に剣筋が見えることがあるの。悲伝(’18年「悲伝 結いの目の不如帰(ほととぎす)」)で三日月宗近役の鈴木拡樹くんとやった時なんか、本番中、本当に真剣での勝負みたいに感じる瞬間があって、すごく面白かった。本田:僕はまだ怖いです…。あと今回、劇場がステアラ(IHIステージアラウンド東京)じゃないですか。初参加でステアラの公演で、刀ステってこんなに大変なんだって実感する日々です。荒牧:舞台の一面の幅が、日頃よく立っている劇場の倍あって、それが4面だからなんと8倍。舞台以上に裏で走る量が半端ない。本田:客席の回転に合わせて僕らも移動しながら殺陣をするシーンがありますけど、それが大変で…。荒牧:でも、刀剣男士って人ならざるものだから、そういう部分を特殊な舞台機構を使って表現できるんじゃないかと思うんだよね。いい形で夏の陣公演にバトンを繋げられたら。荒牧:末満(健一)さんは、委ねる部分はすごく役者に委ねてくださるけれど、作品の世界観を守る意味で演技指導は結構厳しいよね。本田:役の解釈が甘かったりすると、「もっと研究してきて」って言われたりしますからね。荒牧:それは、末満さんが『刀剣乱舞』とかそのファンの方々をそれだけ大事にしているっていうことでもある。こちらが疑問を感じたところは、すごく丁寧に言語化してくださいますしね。本田:僕からすると、まっきーさんの芝居は、迷いが全然なく安定して見えます。荒牧:山姥切国広としてやらさせていただいている時間が長いっていうのはあると思う。今回、山姥切国広としては、これまでのシリーズにも登場してきている弥助というキャラクターとどう絡んでくるかが見どころになるかのかな。本田:僕が演じる一期一振は、たくさんの兄弟の中でお兄ちゃんの役割。上品で笑顔は穏やかだけど、どこか物悲しげでもあって。今回はそこがキーになるんですかね。荒牧:以前は廣瀬大介くんが演じていた役だけれど、礼生のは、また別ベクトルになってるのが面白いよね。しかも今回、一期一振は元の主(あるじ)が…。本田:はい(笑)。…おそらく一期一振の新しい一面が出てくるんじゃないかと…。刀剣男士は人ではないですが、すごい人間ドラマですよね。僕、刀ステを初めて観た時、何の前情報もなかったのに、元の主(あるじ)と刀剣男士たちの関係性から生まれる深いドラマに圧倒されたんです。荒牧:そう。深いストーリー性があって、作品単体でも楽しめるんだけど、シリーズで観るとこんなふうに繋がっているんだっていう驚きもある。今回の脚本にも、これは一体どういうことなのって思うようなセリフがあったりして、ここからどう展開していくのか、すごくワクワクしてる。本田:今回の冬の陣は、この後に上演される夏の陣(4~6月上演)に繋がっていくわけで、今回の冬の陣を観てると、夏の陣がどうなるかも気になりますよね。荒牧:うん。いい形でバトンを繋げていけたらいいよね。TBS開局70周年記念舞台『刀剣乱舞』天伝 蒼空の兵 – 大坂冬の陣-Supported by くら寿司上演中~3月28日(日)豊洲・IHIステージアラウンド東京原案/「刀剣乱舞-ONLINE-」より(DMM GAMES/Nitroplus)脚本・演出/末満健一出演/本田礼生、前嶋曜、北川尚弥、佐々木喜英、松田凌、北乃颯希/荒牧慶彦ほかReo Honda1992年10月28日生まれ、愛媛県出身。10代前半から始めたダンスで頭角を現し、その後、俳優の世界へ。その高い身体能力でTHE CONVOYSHOWなどにも参加。この夏には舞台『鬼滅の刃』も控えている。本田さん・コート¥46,000(コノロジカ/HEMT PR TEL:03・6721・0882)ニットジャケット¥46,000(タクタク/スタジオ ファブワーク TEL:03・6438・9575)シャツ¥13,000(マニュアル アルファベット/エムケースクエア TEL:06・6534・1177)デニムパンツ¥16,900(ウィーク/シーアトリエ TEL:06・6536・3237)スリッポン¥23,000(トス/HEMT PR)Yoshihiko Aramaki2月5日生まれ、東京都出身。原作を深く掘り下げ構築した役作りに定評があり、数多くの2.5次元作品で活躍。近年は映像出演も多く、現在、ドラマ『FAKE MOTION―たったひとつの願いー』(NTV系)に出演中。荒牧さん・コート¥53,000(ハバノス/HEMT PR)ニット¥32,000(タクタク/スタジオ ファブワーク)パンツ¥32,000(イキジ TEL:03・3634・6431)スリッポン¥23,000(トス/HEMT PR)※『anan』2021年2月3日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・鹿野巧真ヘア&メイク・古橋香奈子海野由香(共にLaRME)取材、文・望月リサ(by anan編集部)
2021年01月30日出会うべくして出会った二人が心霊探偵として事件を追う映画『さんかく窓の外側は夜』。初共演にしてW主演の二人、岡田将生さんと志尊淳さんが濃密で特別なその絆を語ります。深く話せる二人だからいい“相棒”になれた。霊が祓える冷川理人(ひやかわりひと)(岡田将生)と、霊が視える青年・三角康介(みかどこうすけ)(志尊淳)が未解決事件と呪いを操る女子高生・非浦英莉可(ひうらえりか)(平手友梨奈)を追う今作。謎が謎を呼ぶ物語で“心霊探偵バディ”二人の関係はひときわ魅力的に描かれる。岡田:早い段階から志尊くんとは仕事のことも私生活のことも深く話せる間柄になってたんだよね。だから冷川と三角の特殊な関係にも自然と入っていけた気がする。志尊:あれ、撮影中は淳くんって呼んでましたよね?(笑)まーくん、淳くんって呼び合ってたのに寂しいなあ…。岡田:そうでした(笑)。そして俺が演じた冷川は常識を持たない男で。それが人間味のある三角くんと出会って、足りなかったものに気づいていく。その変化していく過程は演じていても幸せに思いました。三角くんに会うべくして会えた冷川さんはよかったなあと。志尊:霊が視えることに怯えながら生きる三角くんにとっても、冷川さんは安心できる言葉をかけてくれる存在。「僕と一緒にいれば怖くなくなりますよ」とかね。岡田:ああ、ミステリーでホラーだけど、そういう意味ではバディ要素もあるね。でも「バディっぽくしようぜ!」みたいな意識はお互い全然なかったけどね。志尊:ソロの撮影も多かったし。でもそういう場面にこそ絆の深さが表れてると思う。実際まーくんのいない現場で三角が感情を吐露するシーンを撮影したけど、その時すごく感情が高ぶって…。クランクアップ前だったのもあって嘘なく恋しさが湧き上がってきた。岡田:現場以外でもたくさんコミュニケーションとったからね。冷川さんから三角くんに「君は僕の運命だ」という言葉があったけど、俺も運命を信じてるし、いい出会いだったと思ってる。志尊:知り合う確率も全世界の人口の何百万分の一とかって考えたら、出会えたこと自体もう運命でしょ。ましてや共演する確率なんて…。しかも僕は学生時代からまーくんをテレビで見てたし!岡田:あはは。でもまた共演できるかはわからないでしょ?だからこの出会いは運命というか「一期一会」。でももし再共演できるなら…兄弟役やりたいな。志尊:うっわ、それ僕もいま言おうとした!敵役もいいかなって思ったけど無理でしょ?岡田:無理無理無理(笑)。志尊:ゆる~く縁側で話し合ってる兄弟を長回しで…。でも特に仲いい兄弟とかじゃなくて、イザコザもありつつ。岡田:「兄ちゃん、昔からお前のそういうところが嫌いだったんだぞ!」みたいな。仲いいけど馴れ合わない二人らしいよね。志尊:撮影中も、てち(平手友梨奈)と三きょうだい的な感じだったし。てちとまーくんがずっと言い合いして。「こうだよ!」「いやだからこうだって言ってんだろ!」みたいな。で、僕が仲裁役…。岡田:垣根なしに本音で接していたら、いつのまにか反発される大人になってしまった(笑)。でもそのチームワークがよく出た映画になったと思うよ。志尊:それに霊が祓える男と視える男、そして呪いを操る少女の話…っていうとファンタジーと思われるかもしれないけど、根底にはいまの社会にもリンクする部分もあって。でも難しいことなく、まずは軽い気持ちで観てほしいな。岡田:そしてやっぱり映画館で観てほしい。あの特別な空間で作品にのめり込んでもらえたら、より多くのことが伝わるはずだから。おかだ・まさき1989年生まれ、東京都出身。’07年映画デビュー、’09年『ホノカアボーイ』など話題作に多数出演し新人賞独占。30代になり実力派として新境地を開拓中。衣装協力・NEEDLES(服)Paraboot(靴)しそん・じゅん1995年生まれ、東京都出身。’11年『ミュージカル・テニスの王子様2ndシーズン』でデビュー後、戦隊ヒーロー、映画、ドラマなど幅広い分野で活躍中。カットソー¥20,000ジャケット¥42,000パンツ¥25,000(以上CULLNI/Sian PR TEL:03・6662・5525)その他はスタイリスト私物『さんかく窓の外側は夜』霊が祓える男・冷川と、霊が視える男・三角が出会い、心霊探偵として怪事件に挑む。そして事件の鍵を握る女子高生、非浦英莉可とは何者なのか…?ヤマシタトモコさんによる大人気ミステリーコミックを森ガキ侑大監督が実写化。1月22日、全国松竹系劇場にて公開予定。※『anan』2021年1月20日号より。写真・長山一樹(S-14)スタイリスト・大石裕介(岡田さん)手塚陽介(志尊さん)ヘア&メイク・中西樹里(岡田さん)礒野亜加梨(スタジオまむ/志尊さん)取材、文・大澤千穂(by anan編集部)
2021年01月19日スターの登竜門ともいわれる『仮面ライダーゼロワン』のヒーローに抜擢され、脚本・鈴木おさむ×主演・田中圭のタッグで話題になったドラマ『先生を消す方程式。』で演じたサイコな優等生・藤原刀矢役の怪演でその実力を世の中に知らしめた俳優・高橋文哉。端正な顔立ちと圧倒的なスタイルの良さも脚光を浴び、人気はまさに飛ぶ鳥を落とす勢い。「2020年は異なるキャラクターを演じさせていただいたということもあり、これまでの人生の中で一番成長できた一年でした。俳優としてスタートを切ったばかりの僕は、おろしたてのスポンジのような状態。良いことも悪いことも、この仕事をしていく上で必要とあらば、なんでも吸収したいと思っているんです。『先生を消す方程式。』の現場では、山田裕貴くんのお芝居を裏のモニターで見て脳裏に焼き付けて、こっそり家で真似してましたね。普段の生活の中でも人の所作を無意識に観察するようになってしまって、電車の同じ車両の人が冬なのにサンダルを履いてるのを見たらそれがどうしてなのか勝手に推測したり、座っている人のほんの少しのそわそわ加減から“この人はこの次の駅で降りる!”って予想したりしています(笑)。人の所作の機微って注意して見ると本当に奥深いし、演技を深めていく上で糧になることばかり。小さな“気付き”をいっぱい溜めて、どんどんバージョンアップしていけたらいいなって思ってます。昔から知識や経験を100手に入れたら終わり、ではなく次の日に101にしたいと思うタイプなんです」そんな彼の役作りは、“役作り”をするのではなくその役として生きること。「台本を読んで、与えられた役柄のライフスタイルをひもといて、食が細そうな人格だったら食事制限をして見た目を絞ったりしますね。そう話すと周囲の人から驚かれることが多いんですけど、役を与えられた時点でその役になりきりたいタイプなので、僕としては呼吸をするように自然なことなんです」真っすぐな瞳で、いつか俳優として誰かの生きる源になりたいと語ってくれた。「窪田正孝さんに心の底から憧れていて。あんなに役によって変わる人を僕は見たことがありません。絶対に追いつけないくらい大きな存在なんですが、役者として、お爺さんになるまでその背中を追い続けたいです」今日より明日、さらに進化するために雑誌や映像作品、身近な人の何気ない一言など、心に響いた言葉は書き留め、壁に貼るのが習慣。「最近だと中谷美紀さん主演の『Followers』の中に出てきた『お前が演じる1秒が誰かの1秒になる』って言葉に感銘を受けて、すぐにしたためました」壁が金言でいっぱいになってきたらくしゃくしゃに丸めて捨てるのもお決まり。「いいフレーズに共鳴するのは素晴らしいことだけど、同じ言葉にずっと囚われていたら、未来は切り拓いていけないと思っています」始まったばかりの2021年。抱負を聞いてみると、顔をくしゃっと緩ませながら「ヤンキーやクズな役がやってみたいです」と話してくれた、高橋さん。「でも、基本的に夢や目標はあまり意識しないようにしているんです。今、上っている階段を上り切ったらその先の階段がきっと見えてくると思うから、それを一歩ずつ着実に上っていく方が大事なことなんじゃないかなって思っていて。時々、転がり落ちることもあるかもしれないけれど、そうしたらもう一度上ればいいだけ。気持ちを立て直すのは、結構得意な方なんです」現在は、和山やま氏漫画原作のテレビドラマ『夢中さ、きみに。』の撮影の真っ最中。「僕の演じる二階堂明という役はどこか微笑ましいところがあるんです。皆様がクスッと笑って心がほっこりするような作品なので、楽しみにしていてください」今年は、さらなる飛躍の年になりそうだ。たかはし・ふみや2001年3月12日生まれ、埼玉県出身。令和初の仮面ライダー『仮面ライダーゼロワン』の主人公・飛電或人役に抜擢。『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』が公開中。ドラマ『先生を消す方程式。』で好演し、1月7日よりMBS、tvkほかにて放送スタートのドラマ特区『夢中さ、きみに。』にて二階堂明役で出演が決定している。自身初の写真集『架け橋』(ワニブックス)絶賛発売中。話題作への出演が続々決定の期待の大型新人!ファーコート¥89,000(Needles/NUBIAN 原宿店 TEL:03・6447・0207)ネックレス¥79,000ブレスレット¥91,000チェーンブレスレット¥83,000(以上nobu Ikeguchi TEL:03・6438・9036)その他はスタイリスト私物※『anan』2021年1月13日号より。写真・岡田 潤(BE NATURAL)スタイリスト・吉田ケイスケヘア&メイク・岩田美香(mod’s hair)取材、文・石橋里奈(by anan編集部)
2021年01月06日将棋のプロになる夢破れ、コンピューター将棋のプログラム開発の道を見つけた英一(吉沢亮)と、天才棋士・陸(若葉竜也)の成長を描く『AWAKE』。馬場ふみかさんは、英一を見守る栞を演じる。「英一に対して、優しく寄り添う人でありたいと思いながら演じました。栞ちゃんの英一への優しさがまなざしに出たらいいなって。それと、栞ちゃんのリアクションが、将棋を知らない方の目線に近いんです。なので、あえて将棋の勉強もせず、現場に入りました。だから、栞ちゃんと同じように、対局の時の譜の読み方とか、『全然わからないなあ』ってリアルに思ってましたね(笑)」実は、登場シーンが…?「少ないです(笑)。栞ちゃんについて作品で描かれていることは多くないんですが、衣装合わせの時に監督から『この後、英一と栞は結婚する』といった裏設定を伺えて、役を膨らませられましたね。途中からの参加だったこともあって、初日はすごく緊張していたんです。ただ、監督をはじめ全員がそれぞれの思いを持って、ひとつの同じ方向に向かっていく気持ちが感じられて、すごくいい空気の現場でした」栞は、昼夜問わずソフト開発にのめり込み、失敗しても前に進んでいく英一の姿に惹かれていく。「男性が熱中している姿って、やっぱりカッコいい!熱中していることが、自分の知らない世界であればなおさらです。それと、女子は男性に弱さを見せられるとグッとくるところ、あるじゃないですか(笑)。栞ちゃんが英一に惹かれた理由、よくわかります。実際の吉沢さんは、こう言ってしまうと簡単ですが、すごいなって。さっきまで普通に喋っていたのに、本番になると一気にスイッチが入るんですよ。私もどちらかというと“スイッチ型”で、撮影期間中ずっと役に入っていると苦しくなるタイプです。でも、自分のスイッチがどこにあって、どう入れているのか、わからなくて…。なので、上手く切り替えできる吉沢さんのようにありたいなって」若葉さんについて伺うと、過去の出演作品をいろいろと見ているそう。「一番好きなのは『愛がなんだ』です。今回ももちろんですが、すごく素敵なお芝居をする方ですよね。吉沢さんと若葉さんの対局シーンは、自分が出ていることを忘れるくらい見入ってしまいましたね。色気さえも感じました。おふたりが演じる役が、互いに刺激し合うライバル関係は、女性に絶対にササります!」『AWAKE』棋士vsコンピューターが公式に戦った、2015年の「電王戦」に着想を得たオリジナル脚本作品。将棋を題材に、挫折から再起する主人公たちのドラマを描く。新宿武蔵野館ほか全国公開中。©2019『AWAKE』フィルムパートナーズばば・ふみか1995年6月21日生まれ、新潟県出身。2014年、映画『パズル』で女優デビュー。現在、Paraviオリジナルドラマ『love distance』などが配信中。出演映画に『クソ野郎と美しき世界』『糸』などがある。ワンピース¥69,000(フミエタナカ/ドール TEL:03・4361・8240)その他はスタイリスト私物※『anan』2020年12月30日‐2021年1月6日合併号より。写真・岡本 俊(まきうらオフィス)スタイリスト・石田 綾ヘア&メイク・鈴木海希子インタビュー、文・小泉咲子(by anan編集部)
2020年12月28日ドラマ『恋する母たち』で見せる、危険な色気に魅了されている方も多いのでは?俳優・磯村勇斗さんの“色気”に迫ります!自分で考えて意思を持って動く。そういう人に色気を感じます。今回、磯村さんにお願いしたのは、なかなか来ない人を待ちわび、恋心を募らせてゆくというシチュエーションでの撮影。「僕は時間を潰すのがあまりうまくないので、待つのに飽きちゃうんです。理由がわかっていれば1時間でも待ちますけど、その間、時間の過ごしかたを必死に探すんでしょうね」憂いのなかに、恋慕の切なさや孤独、諦念や怒り、希望など、さまざまな表情を見せる。どんな役を演じていても、感情の複雑な陰影を浮かび上がらせる。その陰影こそが磯村さんが放つ色気の正体ではないだろうか。「自分ではわからないです。色気を感じていただけるのであれば、それは嬉しいけれど、自分からあえてそこを意識することはないです。ただ、役として必要なのであれば、テクニックではないですが、目とか口元とか首まわりとか、指先や手の動きで表現できることはあるのかなとは思っています」色気で浮かぶイメージは、「髪が垂れているとか、濡れているとか、長い髪をかき上げている」仕草。そして、「内面から滲み出てくるものな気がします。オーラというか」。「たとえば、とくにこの人というのはないけれど昭和のスターと呼ばれた方がたって、みなさん若くても色気があるじゃないですか。当時の時代背景もあったり、芸能界の雰囲気とか、そういったものが作用していたんでしょうけれど…。その人らしさをすごく持っている、あの感じへの憧れはあります」現在28歳。30代が射程圏内に入り、「大人になるのに向けて、色気みたいなものはあったほうがいいとは思っています」との言葉。これからがますます楽しみに。「と言いつつ、何かしているかといったら、何もしてないんですけれど…。ただ、これからの2年、人とどう接していくかによって変わってくるような気はしているんです。人に言われたことを鵜呑みにするのではなく、一回自分の頭で考えて、ちゃんと意思を持って考えたり行動したりするとか、人に対する優しさとか。素敵だと思う人って、みなさん顔つきに本人の生き様が表れていて、イキイキしているんですよね。これからの目標としては、包み込む父性というか包容力みたいなものが持てたらと思います」ドラマ『恋する母たち』に、吉田羊さん扮する優子の部下で、彼女に想いを寄せる赤坂剛役で出演中。普段爽やかな好青年が、熱情に駆られて見せる危険な色気に、魅了されている人、増えてます。「演じるときに画面でどう見えるかは意識していなくて、あくまで赤坂として生きることを考えています。ただ、赤坂の行動とか言動を、見てくださっている方に素敵だと思っていただけるのはありがたいです」ただ今回、役のため、“見せる体”作りには積極的に取り組んだのだそう。「脱ぐシーンがあると聞いていたので、見える部分も役作りをしないといけないと思って、赤坂剛として必要な体を作っています。これは僕のイメージですが、太っていないけれど痩せすぎてもいない、ナチュラルに少し筋肉があるくらい。完全に感覚的なもので、自分が納得できるかどうかだけなんですけど」赤坂は優子が子供もいる既婚者と知りながら恋に突き進むが、本人は「危険信号を感じると、急に恋愛感情が冷めちゃう」ほうなのだとか。「もともと恋愛に対してさっぱりしているんだと思います」とも。では、そんな磯村さんに最後の質問。色気に必要なものって何だと思います?「わからないけれど、恋をするって大事な気がします。恋じゃなくても、映像の中の誰かに夢中になるとかでもいい。それがエネルギーになるだろうし、自分以外の誰かを思いやることで得られるものもあると思うんです」いそむら・はやと1992年9月11日生まれ、静岡県出身。出演するドラマ『恋する母たち』は毎週金曜22時からTBS系にて放送中。12月には出演映画『新解釈・三國志』の公開も控える。(1枚目写真)ジャケット¥56,000パンツ¥31,000(共にマンド/スタジオ ファブワーク TEL:03・6438・9575)タンクトップ¥6,900(イロコイ TEL:03・3791・5033)コイントレイ¥1,000(PUEBCO TEL:050・3452・6766)(2枚目写真)タンクトップ¥6,900(イロコイ)パンツはスタイリスト私物※『anan』2020年11月25日号より。写真・樽木優美子(TRON)スタイリスト・藤長祥平ヘア&メイク・佐藤友勝取材、文・望月リサ(by anan編集部)
2020年11月21日幸福論。妙にドキッとさせられる題名のこの舞台、現代能楽集X『幸福論』~能「道成寺」「隅田川」よりは、能の『隅田川』と『道成寺』から着想を得て書き下ろされた2本の現代劇からなる作品。「元宝塚トップスターという肩書からか、お金持ちや元女優の役をいただくことが多いんですね。でも私は、そのイメージを崩すというか塗り替えていきたいと思っているんです。いまの自分は、ヒロインっていう年齢でもなければ、誰かのお母さんというにも中途半端。でもこの年齢だからこそ演じられる役もあるんだって、いますごく感じているんです」「隅田川」で瀬奈じゅんさんが演じるのはカウンセラー。「この舞台のお話をいただいた時、演出の瀬戸山(美咲)さんが当て書きでやりたいとおっしゃられたんです。正直、最初は悩みました。演じるのが嫌なわけではなく、観る方に役の中の人物ではなく“私”として見えてしまうとしたら、それは役者としてどうなんだろうっていうのが気がかりで。でもそれを家族に話したら、『あなただから伝えられることもあるんじゃない?』って言われて。実際、完成した台本は私の経験も含め女性たちの思いをリアルに描いてくださっていて、何の疑いも躊躇もなく取り組めています」一方の「道成寺」では、小説教室で教えている作家役に。「この作品のなかで生徒から、結婚していないあなたにはわからないということを言われるシーンがあるんですけれど、まさに役者もそうですよね。でも体験していようがいまいが、勉強したり想像力を働かせたりするのが仕事。だから遠慮なく演じていきたいなと思っています」こちらは家族を主軸とした物語。「私が絡むのは父親である高橋和也さんだけなんです。この役に関しては、父親の人生観や考え方を引き出す道具だと思っています。私自身のことはおいておいて、その役割をきちんと果たせたらと思っています」これも役割に徹したのか、ドラマ『今日から俺は!!』の三橋の母親役の“オバチャン”ぶりに驚かされた。「流れに身を任せる感じで引き受けちゃったけれど、すごく楽しかったです。いまの私にもう“イメージ”みたいなものって必要ない気がするんです。自然な自分でいられるようになれたのは…年の功なのかな」現代能楽集X『幸福論』~能「道成寺」「隅田川」より運命的に出会う3世代の女性たちを描いた「隅田川」。恵まれた家族がさらなる幸福を激しく求める「道成寺」。2作を通じ、現代における本当の幸福とは何かを問いかける。11月29日(日)~12月20日(日)三軒茶屋・シアタートラム作/長田育恵(弐「隅田川」)、瀬戸山美咲(壱「道成寺」)演出/瀬戸山美咲出演/瀬奈じゅん、相葉裕樹、清水くるみ、明星真由美、高橋和也、鷲尾真知子一般7500円ほか(税込み)世田谷パブリックシアターチケットセンター TEL:03・5432・1515(10:00~19:00)撮影:ヤン・ブースせな・じゅん1974年4月1日生まれ、東京都出身。出演作に、ミュージカル『ラ・マンチャの男』、ドラマ・映画『今日から俺は!!』など。近年は社会貢献活動も精力的におこなっている。※『anan』2020年11月25日号より。写真・小笠原真紀ヘア&メイク・藤原リカ(ThreePEACE)インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2020年11月21日あらゆる女性の憧れの的・美容家の神崎恵さん。「色気は日々の心がけで育てることが可能」と言う神崎さんに、佇まいから色気を放つ方法を具体的にお伺いしました。また、アーティスト、女優の鞘師里保さんが「いるだけで色香を放つ佇まいのつくり方」を体現!姿勢清潔感と品格を感じさせる美しい絵画のような佇まいを。「大人としてあるべき清潔感や品は、色気以前の問題。どんなに美人でも、猫背になって背中が丸まっているだけで清潔感が削がれてしまう。常にバレリーナのように天から吊るされているような意識で姿勢をまっすぐに正すことで、芯が通った清々しい色香のある人に」手指先に可憐な空気が流れるようゆったりとした動きを心がける。「会話中、もっと伝えようという気持ちから、手をせかせか動かしてしまうことがありますが、相手の目に映る景色がせわしい印象に。美しくゆったり、指先まで丁寧に扱うことで、自分を取り巻く空気がエレガントに。手は道具として使わないことを意識しましょう」首・肩首と肩は離すほど色っぽく、横顔美人になれる。「首と肩をできるだけ離すように立つと、首筋や鎖骨が浮き出てデコルテまわりに表情がつき、首も長く見えて色っぽさが増します。髪の毛も耳にかけて片側に流せば、女性らしいラインを強調できますよ。肩甲骨ごとすとんと肩を下げるのがコツです」視線・口元濁りがないまなざしと口元に透明感のある色香が宿る。「視線も口元も、濁りがないことが大事。なぜなら、目や口元はマインドが響く部分だから、ネガティブな感情や言葉でたちまち濁った雰囲気になってしまうんです。文句を言いたくなっても、口に出すのはやめる、そして行動やマインドを前向きに変えてみましょう」さやし・りほ1998年生まれ。アーティスト、女優。『ドラマ24 あのコの夢を見たんです。』(テレビ東京系)の12月4日放送回にヒロイン役で出演。ニット¥15,000スカート¥21,000(共にウィム ガゼット/ウィム ガゼット ルミネ新宿店 TEL:03・5909・7050)ピアス¥18,000(ココシュニック TEL:03・5413・5140)神崎 恵さん美容家。独自の美容法はもちろん、そのマインドやライフスタイルにも注目が集まり、多数の雑誌連載を抱える。放送中のドラマ『だから私はメイクする』(テレビ東京系)では女優としても活躍。初のボディ本『神崎CARE』(ワニブックス)が発売中。※『anan』2020年11月25日号より。写真・土山大輔(TRON)スタイリスト・SHOCOヘア&メイク・笹本恭平(ilumini.)取材、文・岡井美絹子(by anan編集部)
2020年11月21日今なお熱狂的なファンを持つ岡崎京子さん原作の珠玉の青春コミック『ジオラマボーイ パノラマガール』が実写映画化。山田杏奈さん扮する平凡な高校生・渋谷ハルコと、鈴木仁さん演じる風変わりで掴みどころのない神奈川ケンイチが、恋に潜む葛藤や喜びを通じて大人になっていく姿をファンタジックに描く。山田:私はもともと『リバーズ・エッジ』とか『pink』とか、岡崎京子さんの漫画が好きなので、このお話をいただいた時は嬉しくて。鈴木:僕はこの映画をきっかけに初めて原作を読んだんだけど、すごくおしゃれで可愛い作品だよね。山田:仁くんとは事務所も同じだし、映画『小さな恋のうた』での共演経験もあったから、やりやすかったよね?事務所が一緒って安心感があるし、最初から一緒に作っていこうみたいな雰囲気があったような気がするんだけど…どうですか?(笑)鈴木:やりやすかったよ(笑)。最初からコミュニケーションもとれたし。役作りで髪を切った時、マネージャーさん同士が写真を送ったりして。山田:そうそう。仁くんはオン眉にメガネだからちょっと変になるのを期待してたんだけど、意外とハマってたから、なんかつまんないなーとか言ったりしてね(笑)。鈴木:今回の役は、お互い今まで演じてきた役のイメージと違うよね。山田:普段のお互いのイメージとも違う気がする。ハルコは常に動き回っている小動物のような女の子だけど、私は全然そんな感じじゃないし。鈴木:普段はあんなにコミカルでポップじゃないよね。今までの役もちょっと陰がある女の子のイメージが強いから、最初は少し驚いた。山田:うん。だから新鮮だったよ。鈴木:僕はボーッとしてるところとか、ケンイチに近いところはあるんだけどね。さすがに衝動的に学校を辞めるようなことはしないけど。山田:話し方とかは違うけど、何を考えているかわからない雰囲気は仁くんに通じる部分があるかも(笑)。鈴木:ハルコもケンイチもそうだけど、この映画はキャラクター一人一人の個性が強いのに、しつこすぎないバランス感がすごいなと思っていて。若い人はもちろん、大人世代が観ても青春時代を思い出して楽しんでもらえる作品になってると思う。山田:うん。戸惑いながらも衝動的に生きる二人がすごく愛おしいなって。最初は別々の方向を向いている二人の“好き”という想いが、それぞれどう向かっていくのかに注目して観ていただけると嬉しいです!『ジオラマボーイ・パノラマガール』ハルコ(山田)はある夜、橋の上で倒れていたケンイチ(鈴木)に一目惚れする。一方ケンイチは、勢いでナンパした危険な薫りのする女性に夢中になっていって…。出演/山田杏奈、鈴木仁、森田望智ほか11月6日公開。©2020 岡崎京子/「ジオラマボーイ・パノラマガール」製作委員会やまだ・あんな(写真・左)2001年1月8日生まれ、埼玉県出身。女優。主演ドラマ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』が放送中。来年の公開待機作に『名も無き世界のエンドロール』、『樹海村』(主演)、『哀愁しんでれら』がある。シャツ¥25,000(soduk)スカート¥38,000(LEINWANDE)共にMATT.INFO@THE-MATT.comイヤカフ¥9,000(e.m./e.m.表参道店 TEL:03・5785・0760)すずき・じん(写真・右)1999年7月22日生まれ、東京都出身。俳優、MEN’S NON-NO専属モデル。配信ドラマ『30禁 それは30歳未満お断りの恋。』に出演中。主演舞台『オレステスとピュラデス』は11月28日より上演。ニット¥45,000(チノ/モールド TEL:03・6805・1449)パンツ¥28,000(ギャルリー・ヴィー/スーパーエー マーケット 新宿 TEL:03・3351・3860)※『anan』2020年11月4日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)スタイリスト・中井彩乃(山田さん)小松嘉章(nomadica/鈴木さん)ヘア&メイク・菅長ふみ(山田さん)NOBUKIYO(鈴木さん)取材、文・菅野綾子(by anan編集部)
2020年11月03日“自然体”という言葉がぴったり。気持ちがいいくらい、ストレートに役と向き合っていく、吉高由里子さん。目が見えない女性という難役に挑戦した最新作『きみの瞳(め)が問いかけている』について、そしてカラダケアについてお話を伺いました。気取りがなくてチャーミング。同性からの支持も厚い吉高さん。最新主演映画『きみの瞳が問いかけている』で演じた明香里は、ご本人を思わせる明るさと優しさに溢れた女性。ただ、明確に違うのは目が見えないこと。「撮影前に、盲目の方からメイクの仕方や見えないことで感じる怖さなど、いろいろ伺えました。私は目隠しをして、一緒に料理もさせてもらったんですが、“手探り”といいますが、見えないと手で探ることしかできず、指先の感覚が研ぎ澄まされたように感じました。今回、目の見えない方々と直接お話しすることができたことは、この作品に参加してよかったと思うことのひとつです。みなさん、すごくパワフルなんです。内面から出てくる生命力の強さに驚かされましたし、励まされもして。素敵な出会いの機会をいただけました」事前に勉強してはいても、実際に演じるのはたやすいことではなかった。「相手役の方と目を合わせないでお芝居したのは初めてで、間合いが本当に難しかったです。今、相手の方がどんな目をしているのか、見たくなる衝動も必死に我慢してましたね。演じる時に意識したのは、音の鳴る方向に目線ではなく、首から動かすこと。目が見えないと、髪がかかっていても気にならないそうで、髪を触る仕草もしないようにしました」明香里が惹かれる男性を演じたのは、横浜流星さん。共演するまでは、大人びたイメージだったそう。「会うとあどけなくて、ピュア!夜の街が似合わないし、東京のお店とか何も知らなそうというか(笑)。横浜さんとは『敬語はなしね』って決めたんです。時々、出てましたけど、自然にコミュニケーションがとれました。写真もたくさん撮って、パンダやネズミに加工して遊んだり。フォルダに何十枚と残ってます(笑)」本格的な恋愛作品は、映画『僕等がいた』以来、実に8年ぶり。「ストレートな恋愛作品は、照れますね。私のニーズじゃなさそうな気もして(笑)。今回は、コテコテの甘い台詞がなかったので、違和感なくやれました。この作品を観た方には、『観終わって、最初に思い浮かべた人が、キミの大切な人』って伝えたいですね。私自身は、感想を聞かれると、やっぱり照れくささが大きくて。エモーショナルなラブストーリーについて自分で語るのは相当恥ずかしい!みなさんもやってみたらわかると思います(笑)」実践している“カラダにいい”ことを尋ねると、「超夜型で、運動は寝返りくらい」。テーマに合わないと心配そう。「以前、海外旅行先で食べすぎて、作っていただいた衣装が入らなくなったこともありましたね。あの時は、100%自分が悪かったので、元に戻すのに必死で、1週間水だけで過ごすという極端な方法をとっちゃって…。とにかく食べることが好きなんです。自炊もしてますけど、食べたいものを作るだけ。昨日は、すごく辛いよだれ鶏を作ったので、そろそろお腹がキリキリしてきそう(笑)」それでも、水を1日2L飲んだり、お風呂にゆっくり浸かったり、カラダにいいことも取り入れている。「出たり入ったりを繰り返しながら、お風呂には最長2時間入ったこともあります。湯船に浸かりながら本を読んだり、テレビを見たり。ドラマを全録していて、1話は必ず見るようにしてます。台詞を覚えることもありますね。『覚えるまで出ない』ルールでやると、早く覚えられるんです。ギリギリまで追い込まれないとやらないタイプですね。子供の頃から、夏休みの宿題は最後の2日間で終わらせてました!」よしたか・ゆりこ1988年7月22日生まれ。東京都出身。2006年、デビュー。東野圭吾原作のドラマ『危険なビーナス』(TBS系)に出演中。『きみの瞳が問いかけている』は、10/23よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開。ブラウス¥39,000ドレス¥64,000イヤリング¥18,000シューズ¥56,000(以上TOGA PULLA/TOGA 原宿店 TEL:03・6419・8136)※『anan』2020年10月28日号より。写真・酒井貴生(aosora)スタイリスト・藤本大輔(tas)ヘア&メイク・RYO取材、文・小泉咲子(by anan編集部)
2020年10月24日端正なルックスに、常に自然体な雰囲気。周囲を包み込むような、穏やかさを纏う杉野遥亮さんは、自らをよく知る人でした。素直に、真正面から人と向き合ってきた彼が考える、愛される人の秘訣とは…?“いま、愛される男たち”という今号『anan』の特集テーマを伝えると、思わずはにかむような笑顔を浮かべた杉野さん。「僕、愛されているのかな?(笑)自分ではそんなにわからないですが…もしそうだとしたら、僕自身が“人好き”だからかもしれません。男女や年齢の上下も関係なく、好きな人にはすぐ『好き』と言ってしまうから」ほぼ直感的に人を好きになるという杉野さん。では、相手に対して好意のスイッチが入る基準はありますか?「自分に正直に生きている人はすごく好きです。たとえば最近の若手芸人さんでも、自分の意見をはっきり言える方が多いと思うんです。それは相手の考えを否定しているわけじゃなくて、きちんと本音でぶつかっている証拠というか。そんなふうに、自分という軸をしっかり持って発信していける人が、今の時代に愛される人なのかなと思います」かく言う杉野さん自身はというと、「今までは他人に影響を受けやすいタイプでした」と振り返る。「“スポンジ体質”って言うんですかね。よくも悪くも、何でも人の考えを吸収してしまうから、軸がブレやすかったんです。それが変わってきたのは、ごく最近のこと。きっかけは、断捨離です(笑)。自分の中の余計なものをいろいろとそぎ落としていくうちに、いま取り組むべきことや、本当に大切にすべきことが見えてきた気がしました。考え方の転換期かもしれません」モノを手放すことで、気持ちも整理できたという。見つけたのは、“自分は自分”という答え。「みんなどこか自分が“普通”でいたいから、『はみ出さないように』『溢れ出さないように』と思っているけれど、本当ははみ出たっていいし、溢れ出たっていいし、足りなくたっていい。『全部まるっとそれが自分なんだ』と考えられたらいいなと思うんです」言葉で取り繕うのではなく、本質と本質でぶつかりたい。そんな杉野さんが出演する映画『水上のフライト』は、パラリンピックの正式種目でもあるパラカヌーをテーマにした人間ドラマ。事故をきっかけに二度と歩けなくなった主人公の遥(中条あやみ)が、パラカヌーとの出合いを通して希望を取り戻していく姿を描く。「自分自身に嘘がない人って魅力的ですし、そういう人を見ると周りは応援したくなると思うんです。主人公の遥がまさにそう。ただ、事故に遭う前の遥は、人に支えられて生きていることをきちんと理解できていなかった。でも最終的には自分の弱さをすべてさらけ出して、本音でぶつかっていくことができたから、僕が演じた颯太をはじめ、たくさんの人の愛を感じることができたんだと思います」相手の顔色を見て適当な言葉を取り繕うのではなく、この映画の登場人物たちのように、本質と本質でぶつかり合うこと。それが理想のコミュニケーションのあり方だと杉野さんは言う。「自分の個人的な感情を度外視して、相手のことを100%考えられる人の言葉にはやっぱり説得力があると思います。実は僕自身にも最近、僕のことを本気で叱ったり、心配してくれる存在が何人か現れて。そういう人に恩返ししていきたいなと思いました。究極の理想を言うと、余計な気づかいすらせずに、テレパシーみたいに自分の気持ちをそのまま相手に伝えることができればいいのになって思うんですけど(笑)」ストレートな言葉で思いを語ってくれた杉野さん。この飾らない人柄こそが、多くのファンや周りの人に愛されている理由なのかも。「まずは自分のことを徹底的に好きになろうと思います。今の自分を最強に愛することができてからじゃないと、他人を愛することはできないと思うから。自分のダメな部分はどんどん改善して、もっと高めていきたいです」映画『水上のフライト』不慮の事故で脊髄を損傷してしまった走り高跳びの選手・藤堂遥が主人公。杉野さんは遥を陰で支えるエンジニアの加賀颯太を演じる。実在するパラカヌー選手に着想を得た奇跡の物語。11月13日(金)公開予定。©2020 映画「水上のフライト」製作委員会すぎの・ようすけ1995年生まれ、千葉県出身。2015年に第12回FINEBOYS専属モデルオーディションでグランプリを獲得。『キセキ ―あの日のソビト―』で映画デビュー。出演映画『東京リベンジャーズ』が近日公開予定。ジャケット¥196,900ニット¥92,000シャツ¥97,900(以上マルニ/マルニ 表参道 TEL:03・3403・8660)※『anan』2020年10月14日号より。写真・野呂知功(TRIVAL)スタイリスト・櫻井賢之ヘア&メイク・速水昭仁取材、文・瀬尾麻美プロップ協力・AWABEESバックグラウンズファクトリー(by anan編集部)
2020年10月11日神木隆之介さんは今年、27歳の若さにして役者生活25周年。人気稼業といえるこの仕事を25年間も第一線で続けてきたこと自体がかなりすごいが、当のご本人に気負った感じは見受けられない。「今までも節目をそれほど気にしてこなかったから、正直実感はあまりないです。だけど、この仕事を四半世紀やらせてもらってきたのだと考えると、早かったといえば早いかな。イメージ的には大卒からストレートで会社に入って、今は47歳の気分。パワーのある若い子たちを見ると、元気だなあって思っちゃいます(笑)」神木さんから見て“若い子”というのは、「同世代か、3つくらい下」とのこと。やはりこの業界に長くいるだけあって、10代や20代で役者の仕事を始めた人たちとは違う落ち着きや、思慮深さがあるのも神木さんの魅力のひとつ。もっと言えば、ここ数年でより成熟したのかもしれない。「もちろん僕もお芝居に関しては頑張るぞ!と思いますけど、昔みたいに“何も怖くない”感じはたぶんもうない。それこそ20歳くらいのときは、勢いだけはあって何でもできると思ってましたから」現状維持をやめた今、挑戦したくてたまらない。「この仕事って、本当はものすごい競争社会だと思うんですけど、僕は昔から周りのことがあまり気にならなくて。マイペースなんでしょうね。友達が活躍している姿を見るとすごく嬉しいし、行け行け!って思います」類まれな競争社会のなかでマイペースでいられるのは、2人の人物のおかげと考えている。ひとりは11歳のときから神木さんを見てきた、マネージャーさん。もうひとりは母親だ。「そのマネージャーさんには会った頃から、こう言われていました。『君にしてあげたいのは、長く生きていける居場所をこの世界に作ること。だから君にしかできないことをゆっくりやらせてあげたい』って。何をもって“売れる”というのかわからないけど、マネージメント的にはやろうと思ったらいろんな道筋があったはず。だけどそう言ってもらえたおかげで、奇跡的に焦りもしなかったし、誰かに対して競争心を持つこともなかった。仲間みんなで、最高のエンターテインメントを作ればいいよねって思えたんです」芸能界に入るきっかけを作った母親もまた、神木さんを競争させようとはしなかった。「母は、あの子に負けちゃダメよみたいなことを絶対に言いませんでした。学校の成績にも口を出さなかったし、通信簿で気にするのは先生の短評だけ。だから、勉強するもしないも、完全に僕の意思次第だったんです」一方で母親が神木さんにことあるごとに言っていたのは、感謝をすることの大切さ。「今この環境にいられるのは、人にしても作品にしても本当にいい出会いがあったおかげ。子どもの頃からずっとそれは思ってます」素晴らしい出会いを生かして、最近は俳優業以外にも新しい挑戦を楽しんでいる。6月に開設して、週1回配信しているYouTube公式チャンネル「リュウチューブ」は、自らの提案で実現した。「ファンの方と近い距離でやり取りできる場所があったらいいなとは、以前から思っていました。だけど生配信なんてしたことがなかったし、SNSの怖さもわかるから、いろんなリスクを背負うくらいなら別にやらなくてもいいかなと二の足を踏んでいたんです」心境が変化し始めたのは、2年前の25歳のとき。「役者をずっといい感じでやってこられたので、来年の目標を聞かれると毎年のように『現状維持』と答えていました。でもあるときふと、このまま何年、何十年も現状維持を続けるということは、失敗が許されないのと同じだと気づいたんです。もちろん最初から目に見えるような失敗は避けたいけど、失敗から学んで次に生かせることもあるし、そもそもやってみなければわからないことはたくさんある。それなのに25歳の頃までは、ここで失敗したら一巻の終わりという思いが自分のなかに無意識にあって、息苦しさを感じていました。一回でも失敗したら人生終了くらいに思ってましたから」失敗を極端に恐れたのは、小さい頃から当たり前のように芝居の世界に身を置き、それ以外の場所にいる自分を想像したことすらなかったから。演じることに盲目的になるほど、広い視野を持てなくなっていったと冷静に振り返る。「失敗できないから、挑戦もできない。ある意味淡々と芝居をやっていくだけなのかなと想像したら、僕自身がつらくなってくるんじゃないかなと思ってしまって……」突破口となったのは、やはり母親の言葉。直接的に悩みを伝えたわけではなかったけれども、神木さんのことを思う気持ちに後押しされ、進むべき道が見えてきた。「あるとき母が、『この世界にあなたを入れたのは私だし、あなたが続けたいと言ったからそうさせたけど、正直今も心配している』と言いました。『重い作品で役にのめり込みすぎて、心が壊れたりしてほしくない。親としては、息子がどんな職業でも元気で楽しく生きていてくれれば、それでいいのよ』って。それを聞いて、役者を辞めたいわけじゃないけど、辞める選択肢もあるし、この世界だけじゃないんだと心が軽くなりました。だったら失敗を恐れず何でも挑戦してみようと思えるようになったんです。それまでは失敗しないことに重きを置いていたけれど、今はせっかく恵まれた環境にいるのだから、面白いことを自分たちで作り出して何でもやってみることに価値を感じています」『おもて神木/うら神木』発売中。俳優としての“おもて”と、27歳の男性としての“うら”の2つの面から、25年間の歩みをひもとくアニバーサリーブック。染谷将太、中村隼人、志田未来、本郷奏多との対談のほか、母へのインタビュー&親子ショット、錚々たる著名人からのメッセージなどを収録。[限定版]特装BOX&メイキングDVD付き¥4,500[通常版]¥3,000かみき・りゅうのすけ1993年5月19日生まれ、埼玉県出身。近年は舞台への出演やMVの監督・プロデュースでも才能を発揮。デビュー25周年記念プロジェクトを始動中。YouTube公式チャンネル「リュウチューブ」は毎週木曜20時配信。チルデンニット¥36,000(ジョン メイソン スミス)チェーンブレスレット¥25,000バングル¥14,000(共にトゥエンティー エイティー) 以上HEMT PR TEL:03・6721・0882※『anan』2020年10月14日号より。写真・松田 拓スタイリスト・鹿野巧真ヘア&メイク・MIZUHO(vitamins)取材、文・兵藤育子(by anan編集部)
2020年10月11日女優の芦田愛菜さんが、久しぶりにスクリーンに戻ってきました!6年ぶりの主演映画は、『星の子』。未熟児として生まれた主人公・ちひろ(芦田)。あらゆる手を尽くそうとした両親は、ある日“金星のめぐみ”という水に巡り合い、それをきっかけに新興宗教に心酔。嫌気が差した姉は家出、両親は宗教にのめり込むあまり家はますます貧しくなる。中学3年になったちひろの、家族や友人など信じているものへの思いが徐々にゆらぐ様子を描く物語。「両親に守られて育ったからか、ちひろは純粋、疑うことを知らない。自分の考えや意見はしっかり持っているのですが、一方それを表現するのは苦手なタイプ。彼女を理解するには、どう育てられてきたか、また友だちとどんな時間を過ごしているのか、そういうところが大きなヒントになりました。永瀬正敏さんと原田知世さんが演じる両親から、ちひろは本当に大切に扱われていて、こういうふうに育てられたからこそ、あの純粋な心が生まれたんだなと、強く実感しました」さまざまな役を演じてきた芦田さんですが、ちひろのような等身大の役は、演じやすくもあり、難しい部分もあるのだそうで…。「年が近い分、心の動きや感情には共感できるところがたくさんあります。特に、親に話せない悩みを友だちに話すようなシーンは、リアルだなあと思いながら演じました(笑)。でも一方で、SFなどの非日常を舞台にした作品とは違い、ストーリーやキャラクターに特別な“濃さ”があるわけではないので、つい“素の芦田愛菜”が出てしまいそうになる。自分と似ている部分があるとしても、素に戻る瞬間はあってはいけないと思うんですよ。特に、どう演じたらいいんだろうとか、セリフなんだっけとか、迷いがあるとき、“自分”が顔を出しそうになるので…。自分的には、役の気持ちを理解すれば、自然に行動やセリフがついてくると思っていて、脚本を頭に入れるというよりは、役の気持ちの動きを掴むことを大切にしました…といっても、なかなか難しいんですけどね(笑)」学校の先生への淡い恋心、他者から奇異の目で見られる両親への思い、そしてあたりまえのようにそこにある宗教…。映画の大きなテーマである“信じること”の意味を、芦田さんに聞いてみました。「信じるとは、“期待すること”だと思います。人でも物でも、“こうあってほしい”と期待するものですが、その期待とは異なるものが見えたとしても、その対象を信じ続けることができるかどうか…。不安だからこそ、人は“信じる”という言葉を口にし、その言葉にすがりたくなるのかも、と思ったりします」『星の子』宗教にのめり込む両親から愛情を持って育てられたちひろが、中学3年になり世界を疑い始め…。原作は芥川賞作家・今村夏子の小説。監督&脚本を手掛けたのは、『日日是好日』などの大森立嗣。10/9(金)より公開。©2020「星の子」製作委員会あしだ・まな女優。2004年生まれ、兵庫県出身。’10年、ドラマ『Mother』で注目を浴びる。『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』(テレビ朝日系)にレギュラー出演中。実写映画の主演は6年ぶり。ワンピース(ズッカ/エイ・ネット TEL:03・5624・2626)※『anan』2020年10月7日号より。写真・岡本 俊(まきうらオフィス)スタイリスト・浜松あゆみヘア&メイク・久慈拓路(KIBI)インタビュー、文・河野友紀(by anan編集部)
2020年10月04日クールな目つきに宿るアンニュイな表情。スラリとした長身に、凛とした佇まい。リアリティのある演技で、どんな役もこなし、作品をきりりと引き締める、比類なき女優。江口のりこさんが輝き続ける秘密とは?『半沢直樹』の国土交通大臣・白井亜希子役が強烈なインパクトを与えた江口のりこさんが、一躍脚光を浴びている。「いや~、世間の注目度が高い作品にたまたま出演しただけで、私自身は何も変わってません。出演のオファーをいただいた時は、前作が大ヒットしたことはもちろん知っていたし、自分とは縁遠い世界だと思っていたので、『なんで私なんやろ?』と驚きました。でも実際に現場入りしたら、雰囲気は他の現場と同じ。みなさん自分の仕事を淡々とこなしていたので、私もいつも通りに仕事ができました。ただ世間の関心が高すぎるのが…ちょっと。注目を浴びるのが苦手なので、正直、もうほっといてほしい(笑)。私にとってはどの作品も、同じ一つの作品にすぎないし、それに、今までだって頑張ってきたと思っているんですけどね~」江口さんのぼやきは、ごもっとも。芸歴約20年のベテランで、これまでも数多くの映画やドラマに出演して、存在感を放ってきた。シリアスからコミカルな役柄まで、オールマイティな役者として、確かな実力を存分に発揮している。江口さんが演じると、どの役もリアルな人間の質感と味わい深さを感じられ、たった数分の出演であっても強く印象に残る。クセや毒気の強い役でも愛着が湧いてくるから不思議だ。そんな幅広い役柄をこなしてきた江口さんは、毎回どのように役作りをしているのだろうか。「演じる役の職業のことを調べたりはしますけれど、自分の中で細かく作り込んでしまうと、現場の指示に素直に従えなくなるので、役作りは特にしません。どんなことがあっても臨機応変に対応できるように、とにかくセリフだけは頭にしっかり叩き込むようにしています。これは、劇団で習ったことのひとつですね」舞台、映画、テレビドラマと、多方面で活躍し、いくつもの役を掛け持ちすることも多い。しかし、混乱したり切り替えが難しかったりすることはないそう。「朝起きて、『あれ?なんで起きたんやろ。今日は何するんやったっけ?』と、ぽかんとなることはありますが、現場に入ってしまえば混乱することはないですね。そもそも切り替えという概念がない。役者さんの中には、役が抜けないと言う方もおられますが、『どういうことなんやろ』と思います。だってどんな役を演じても、結局は自分でしかないですもん。それを美術セットやメイク、衣装などによって、その役に見えるように作ってもらっているだけなので。特に映像の仕事はスタッフさんの力量が大きいですね」映像の仕事が増えても、劇団に所属し続ける理由は、舞台が自分のホームグラウンドという気持ちが強いから?「そういう意識はないけど、舞台は稽古時間が決まっていて、わりと健康的だし、どっぷりと落ち着いて作品について考えられるから好きです。映像のお仕事は、セリフさえ間違えなければ、次々と物事が進んでいくので怖くなる時があって。そんな時、劇団でひとつの芝居とじっくり向き合うと、今の自分を確認することができるんです。座長の柄本(明)さんに、『芝居はそんな簡単じゃないよ。もっと考えて、もっと探せ』と、芝居への姿勢を指摘されることがあります。どっかで簡単に解決するような癖がついてしまっているのかもしれません。だから定期的に劇団の舞台に立つことで、気を引き締めることができるんです。でも、映像の仕事も大切。もともとテレビドラマに出たいという思いは全くなかったんですが、やっているうちにドラマの世界もおもしろいなぁと思うようになってきました。特にそれを感じたのが『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』の現場でした。プロデューサーの小田玲奈さんを中心に、良い作品を作ろうという気持ちの強いスタッフや共演者ばかりで、前向きに取り組めたんです。でもやはり怖さはあるので、毎回みなさんに励まされながらやっている感じですね」これからも世間の評価は気にせず、長く演じていきたいと、江口さんは話す。「芝居は、一生続けたいくらい楽しい。難しいから楽しいと思えるので、日々勉強です。この思いは、19歳から20年間、何も変わってませんね。そう思って続けてたら、40歳になってました。役者って、いくつになってもカラダさえ健康ならやれる。たとえば98歳とかで、私がめっちゃ元気やったら、役を独り占めできるわけじゃないですか。そうやって、長く役者をやっていたいですね」過去&現在進行形の出演作『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』ファッション誌編集者を目指し出版社に入社したのに、地味な校閲部に配属されたヒロインを石原さとみさんが演じる。江口さんは、厳しく真面目な校閲部の先輩・藤岩役を好演。2016年、日本テレビ系で放送。Huluで配信中。©NTV『事故物件 恐い間取り』売れない芸人のヤマメは、TV出演を条件に事故物件に住むことになり、そこから怪奇現象に巻き込まれていく。主演は亀梨和也さん。ヤマメに事故物件を紹介する不動産屋・横水を演じる江口さんの怪演が話題に。公開中。©2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会『キワドい2人‐K2‐』新米刑事役の山田涼介さんと、型破りな破天荒刑事役の田中圭さんの異母兄弟凸凹バディが池袋を守る。江口さんは、2人が勤務する強行犯係の頼れる姉貴的存在の木村ともこを演じる。毎週金曜22時~、TBS系で放送中。えぐち・のりこ1980年4月28日生まれ、兵庫県出身。’99年に柄本明さんが座長を務める劇団東京乾電池に入団し、現在も所属。2002年にスクリーンデビュー、’04年に初主演を務める。ドラマ『時効警察』シリーズにレギュラー出演し、知名度を上げた。’20年は、『ソワレ』『事故物件 恐い間取り』など5本の映画に出演。ドラマ『キワドい2人‐K2‐』が放送中。『#リモラブ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ系)が、10月14日スタート。ニットロングドレス¥64,000中に着たタートルネックニット¥37,000(共にAURALEE)レザーフラットミュール¥49,000(AURALEE MADE BY FOOT THE COACHER) 以上AURALEE TEL:03・6427・7141その他はスタイリスト私物※『anan』2020年9月30日号より。写真・宮崎健太郎スタイリスト・清水奈緒美ヘア&メイク・廣瀬瑠美取材、文・鈴木恵美(by anan編集部)
2020年09月27日「春に出演していた舞台が、当初の予定の4分の1しか公演できずに中止になってしまいました。悔しさと、有り余ったエネルギーとでモヤモヤしている最中に今回の舞台のお話をいただいて…。ここにすべてをぶつけようと気持ちを切り替えました」穏やかな口調の奥に、宮沢氷魚さんの強い覚悟すら感じる。コロナ禍にある今の時世に立ち上げられたのが、舞台『ボクの穴、彼の穴。』。演じるのは、戦場で塹壕にひとり取り残された兵士の役だ。「見えない敵と戦うというのが大きなテーマなんですが、いま上演する意味がすごくある気がするんです。僕らが生きている世界でも、コロナをはじめ災害や人種差別…もっといえばSNSなどでの誹謗中傷とか、正体のわからないものと戦うことが多くなっています。そういうものに対し、どう立ち向かってどう乗り越えたらいいかを考えさせられる作品じゃないかと思います」孤独のなか死の恐怖に怯え、戦争のマニュアルに書かれた敵の姿を想像し、猜疑心を募らせていく。「家にいるだけで必要なものは何でも手に入るぶん、孤立するのが簡単な時代です。でも自分の世界に閉じこもることで見えなくなってしまうものも多い。自分の穴から一歩踏み出して、他者を理解しようと歩み寄る姿勢というのが、これまで以上に大事なんじゃないかと思うんです」出演者はたったふたり。主人公と同じように塹壕にひとり残った敵方の兵士を、2度の共演経験のある大鶴佐助さんが演じる。「佐助くんは言葉をものすごく大事にする役者さん。セリフのひとつひとつに、書かれている理由があって、それをしっかりと意識して発しているのがわかります。毎日稽古場ですばらしい芝居を届けてくれるので、それにすごく刺激を受けています」ふたり芝居というハードル以外にも今回は、「これまでとはちょっと違う不安と戦っている」とも。「装置や小道具が最低限しかなくて、舞台上には僕らだけ。間違いなく、自分の身体なり、言葉や佇まいで劇場の空間を埋める表現が大事になってくる。物語はいきなり戦争の最中から始まるんですが、その緊迫した精神状態とか切迫感とか、家で脚本を読んでいると近づけているように思っていても、稽古場に来ると全然足りていないのがわかるんです。自分の頭の中だけでは、太刀打ちできない世界なんですよね。セリフ自体は簡単な言葉ですが、だからこそ、気持ちをきちんとのせないと薄っぺらく聞こえてしまうんです。言葉をちゃんと自分のものにして、稽古場で生まれる全部を体で感じながら、セリフを発していくことを大事にしたいと思っています」宮沢さんにとって、これが5作目の舞台出演となる。「初めて舞台に立つ時に、ある方から『一回舞台に立ったら、たぶん一生やるよ』って言われたんです。その時は、毎日重圧と戦わなきゃいけないのにと半信半疑でしたけど、いまは少しわかってきました。すごくしんどいんですけれど、それに勝る喜びとか感動とか達成感を肌で感じて、自分がすごく充実するんです」『ボクの穴、彼の穴。』戦場の塹壕に取り残された兵士(宮沢)。殺すか殺されるか、穴の中にじっと身を潜める彼は、「戦争のしおり」に書かれたモンスターのような敵の姿を想像し、自らの妄想に恐怖心を煽られていく。敵方の兵士(大鶴)もまた同じ状況とは知らず…。9月17日(木)~23日(水)池袋・東京芸術劇場 プレイハウス原作/デビッド・カリ訳/松尾スズキ(千倉書房より)翻案・脚本・演出/ノゾエ征爾出演/宮沢氷魚、大鶴佐助全席指定8000円(税込み)サンライズプロモーション東京 TEL:0570・00・3337みやざわ・ひお1994年4月24日生まれ。アメリカ出身。モデルの傍ら、今年公開の『his』で映画初主演するなど俳優として着実にキャリアを重ねている。公開待機作に映画『騙し絵の牙』。※『anan』2020年9月23日号より。写真・小笠原真紀ヘア&メイク・阿部孝介(トラフィック)インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2020年09月20日豊原功補さんと小泉今日子さんの初プロデュース映画『ソワレ』に出演する村上虹郎さんと芋生悠さんに、制作の裏側を聞きました。映画の力に、魂が震える。出逢ったばかりの男女の逃避行。役者を夢見ながらもオレオレ詐欺の片棒を担いでいる岩松翔太と、父親から虐待を受けてきた山下タカラ。苦しみを抱えてもがいていた二人が出逢い、ある事件をきっかけに衝動的な逃避行をはじめたことから、それぞれに「生きる理由」があることを見出していく。豊原功補さんと小泉今日子さんの初プロデュース映画は、ふたりがその才能に惚れ込んだ外山文治監督の繊細な映像表現が、“映画”を観る幸福も味わわせてくれる感動作。芋生悠さんが演じるタカラ役のオーディションは、翔太役の村上虹郎さんも立ち会った。村上:選ぶ側で参加するのは初めてだったので、正直、楽しかったです。タカラは自発的なものがないように見えて、パワーを内包していなきゃいけない難しい役。一緒に演じていて、芋生さんからはそのパワーが強く伝わってきた。芋生:そのときが初対面だったんですけど、純粋に楽しくて。その日、私が最後だった?帰りに村上さんがひと言、「また」って。また会えるかもしれないって嬉しかった。村上:俺が?覚えてない…。全員に言ってたかも(笑)。話、作ってないですか?芋生:作ってないです(笑)。タカラという役は結構大変なシーンもある。そこに引っ張られて壊れてしまうのが怖かったので、撮影では役に入り込むというよりは、タカラに寄り添って一緒に歩けたらいいなと思ってました。村上:翔太は翔太で厳しい状況にあるけど、見ていても辛いシーンはタカラのほうが多いから。芋生:もし自分のせいで撮影が止まったらと、最初は怖かった。でも、監督さんはじめ、みんなが見守ってくれているという信頼関係があったので、私たちは本能のまま、和歌山の土地を走り続ければよかった。村上:俺はクランクインの日に体調壊して、迷惑をかけてしまったけど。どの地方に行っても1~2日はちょっと調子悪いから、今回は2日前に入ってたのに、クランクインがいちばん調子悪いっていう。主演のくせに何してるんだ、俺は。芋生:村上さんがうなだれてる写真が監督さんから送られてきた(笑)。村上:舞台で小泉さんと豊原さんとご一緒したときも、千秋楽に倒れたんですよ。外山監督とは以前短編でご一緒させていただいたことがあって。これは主人公が逃げる作品ですけど、外山監督は何からも逃げずに、丁寧に向き合ってる。ストーリー自体は仕掛けはあるけれども、どんでん返しがあるサスペンスではない。じゃあ、何を観るかっていうと、作家性やキャラクターや、そこに映ってるもの全部。そこに観てくれる人たちの想像力をちょっとお借りしないといけない。僕もそういう映画が大好きですけど、集中力は必要ですよね。芋生:撮影はドキュメンタリータッチと言われていたんですけど、わりと映画的だなって途中で感じてた。村上:二人の感情を影で見せたりとか、ギミックを使うシーンも印象的で、外山さんの新たな一面を知った感じ。“ザ・ソワレ”という幻想的なシーンでは、美術さんをはじめみんなの気合がひときわすごかった。芋生:ソワレはフランス語で「夜会」とか「夜明け前まで」の意味ですよね。でも、このタイトルには、景色も変わらないような暗い道をずっと歩いてきた子たちが、誰かがそばにいることや自分の足でちゃんと歩けるようになることで、景色が変わるというか、違う明日を迎えることができるという意味があるのかなって。今、大変な時代だからこそ、光を見つけられた子たちに勇気づけられる映画になった気がする。村上:確かに俺自身も面白い映画に出合うと、観ながら、俺だったらどうだろうって考える。結果、大事な台詞を聞き逃したりするんだけど。芋生:めちゃわかる。ほんと自分を見つめ直す感じになるよね。村上:ただ、俺はあまり「ソワレ」の意味は意識せずに演じてた。最初はまったく違う仮題が付いていたので、タイトルに託された意味も豊原さんのインタビューで知ったくらい。芋生さんはちゃんと説明されたんだね、プロデューサーのおふた方とよく飲んでるから。芋生:お酒が好きなので(笑)。村上さんはあまり飲まないですよね。村上:だから、俺のほうが付き合い長いのに誘われない。作品には呼んでいただいてるけど(笑)。『ソワレ』故郷の高齢者施設で演劇を教えることになった翔太と、そこで働くタカラ。出逢ったばかりの二人は、ある事件を機に衝動的に逃避行に出る。監督・脚本/外山文治出演/村上虹郎、芋生悠ほか8月28日よりテアトル新宿ほか全国公開。©2020ソワレフィルムパートナーズむらかみ・にじろう1997年3月17日生まれ。主演を務めた河瀬直美監督の『2つ目の窓』(‘14年)で映画デビュー。外山文治監督とは短編『春なれや』(‘17年)で顔を合わせている。映画『佐々木、イン、マイマイン』は11月27日公開。『燃えよ剣』が公開待機中。シャツ 参考価格¥49,000パンツ 参考価格¥67,000(共にMAGLIANO/Diptrics TEL:03・5464・8736)いもう・はるか1997年12月18日生まれ。『バレンタインナイトメア』(‘16年)で映画デビュー。ヒロイン役を務めた映画『#ハンド全力』が公開中。映画『HOKUSAI』が公開待機中。豊原功補演出の『後家安とその妹』(‘19年)では舞台女優としての力量も発揮。イヤリング¥1,880バングル¥2,280リング¥2,680(以上ROOM)その他はスタイリスト私物※『anan』2020年9月2日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)スタイリスト・望月 唯(村上さん)末吉久美子(芋生さん)ヘア&メイク・Yoshikazu Miyamoto(村上さん)YOUCA(芋生さん)取材、文・杉谷伸子(by anan編集部)
2020年08月28日技術革新、配信系サービスの充実、そしてこの度の新型コロナウイルスの影響を経て、映像エンタメの形は急速に変化。俳優に加え、白黒写真家、さらには映画監督としての顔も持つ、斎藤工さんが、時代とともに移り変わる、映像表現のあり方を語ります。人と会えない状況を、あえて大喜利として考えた。――新型コロナにおける自粛期間、斎藤さんはリモートでいくつか作品を作られましたが、どんなきっかけで始まったのでしょうか。まず、今回初めてZoomに触れて、その機能に好奇心が湧きました。そんな中で4月に「劇団テレワーク」という劇団のZoom公演を拝見し、「映像作品として、これで何ができるかな…」と、いろいろ考えてみたんです。もともと僕は、かつての日本映画を、尊敬しつつもライバル視していて、彼らができなかったことをやりたい、という思いを常に抱いているのですが、たとえば松田優作さんや原田芳雄さんがご存命だったら、きっとZoomをおもしろがって、作品を作ったと思うんですよね。僕も、これを使って何か作品を生み出そうと思いました。――人と会えない状況というのは、クリエイションにマイナスにはなりませんでしたか?ちょっと不謹慎かもしれませんが、この現状を、“人が人に会えない縛り”の大喜利みたいに考えてみたんです。会えないから、離れているからできることってなんだろうと考え、仲間と立ち上げたのが、「TOKYO TELEWORK FILM」のプロジェクト。――Zoomを使ってドキュメンタリーやドラマを制作されましたね。それとは別に、岩井俊二さんらと共にドラマも作られました。昨年、’21年公開の映画『シン・ウルトラマン』に出演させていただいたご縁で、樋口真嗣監督から“怪獣バトン”に誘われたんですよ。そこから繋がって、バトンに参加していた岩井俊二さんからお声がけいただき、『8日で死んだ怪獣の12日の物語』という短編ドラマを、スマホの自撮りで撮影しました。ドラマの中に粘土細工が登場するんですが、制作者である岩井さんが、「崩れると心配だから」って、僕の家まで届けてくれたんですよ。しかも一人暮らしの僕を気遣って、野菜やマヌカハニーなどとともに(笑)。――なんていい話…。そういう、距離はあっても心は密、のようなものづくりは、初めてだったと思います。どんな経験でしたか?映像作品は常に、“今”というものをどう捉えるか、そこと向き合って作られていると思うんです。ものづくりの動機と時代は、大きな関わりがある。自粛期間に作った作品は、小規模で、自分たちの足元を改めて見つめ直したようなものですが、2020年のこの時期にしかできなかったことであることは間違いない。それから作り手も観る側も全員が“コロナ禍”というバックグラウンドを共有している中で、その事情を盛り込んだ作品を作るっていうのは、“共犯関係”があるみたいで、ちょっとおもしろかったです。――斎藤さんは、ミニシアター存続の支援など、劇場に対する働きかけもしています。現在映画館は大変な状況ですが、どんな今後の展望を持っていますか?長い歴史の中には時代の転換期というのが必ずあるわけで、ミニシアターにとってここ数年は、まさにそんな時期です。古き良きものが必ず残っていけるわけではないですし、さらにこれから座席数を減らさなければならないので、収益は格段に減りますよね。ただそこで思うのは、映画館という場所に人を集めて収益を上げるという、これまでと同じ形での存続ではなく、それこそ今オンラインという使えるインフラがあるわけですから、それを駆使して新しい“映画を観る手段”を考え、そこでマネタイズしていく。そんな新しい生き残り方を考えていきたいし、映画館に育ててもらった俳優ですから、恩返しとして、運動を支えていきたいです。――斎藤さんが始められた移動映画館「シネマバード」も、常設という固定観念から解き放たれたという意味では、新しい手段です。僕の尊敬するフィルムメーカーはみな、作品のテーマに加え、映画の公開方法なども、時代を反映して変化している人ばかりなので、僕も同じように、考え方をアップデートしながら、新しい未来に向かって進んでいきたいですね。映画界における斎藤さんの活動『8日で死んだ怪獣の12日の物語』斎藤さん演じるYouTuberがカプセル怪獣を購入。育てる様子を動画配信する、リモート撮影短編シリーズ。YouTubeで限定公開され話題に。新たにのんさんなどが加わり、7/31より劇場版の公開が決定。「TOKYO TELEWORK FILM」コロナ禍で日常化した“テレワーク”を題材にした映画企画。斎藤さんは出演に加え、企画、プロデュース、監督も担当。オムニバス作品で、伊藤沙莉さんやラバーガールの大水洋介さん、滝藤賢一さんらが出演。「シネマバード」’14年にスタートさせた移動式映画館。映画館のない町に「映画+エンタテインメント」を届けるプロジェクト。これまでに沖縄県うるま市や北海道むかわ町などで開催。ドライブインシアターなどの展開も計画中。「ミニシアターパーク」「ミニシアター・エイド基金」の活動を俳優が引き継ぐ形で、井浦新さん、渡辺真起子さん、斎藤さんの3人が立ち上げたプラットフォーム。劇場、配給、俳優などが未来を語る場所の役割を担う。「ミニシアター・エイド基金」全国の小規模映画館を守るため、映画監督の深田晃司さんと濱口竜介さんが発起人となり立ち上げたクラウドファンディング。斎藤さんも発起の会見に参加。4月にスタートし、目標額を大きく上回る3億円以上を集め、5月に終了した。さいとう・たくみ俳優、映画監督。1981年生まれ、東京都出身。ドラマ『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日系)に出演中。今年から来年にかけ、映画『糸』や『シン・ウルトラマン』など、出演待機作が多数。※『anan』2020年7月15日号より。(by anan編集部)
2020年07月12日俳優に加え、白黒写真家、さらには監督としての顔も持つ、斎藤工さん。映画をはじめとした“映像エンタメ”に深い愛を抱く斎藤さんに、愛する理由、またそれらが私たちに与える影響について伺いました。延々と観てしまうので、自分でルールを決めました。――自粛期間中は、家にこもって何をなさっていましたか?封を開けてなかった映画のDVDを観たり、字幕のない海外映画をじっくり観たり…。映画を紹介する番組をWOWOWでやっているので、時間をなるべく映画観賞に使うため、海外ドラマを観ることは自制していたんです。なので、まだ観てなかった『ウォーキング・デッド』や『ストレンジャー・シングス』を一気観しましたし、『愛の不時着』を観て、一人で泣いたりも(笑)。意識しないと朝からずーっと観続けるので、それはさすがにダメだと思い、映像作品が観られるテレビやパソコンは、午前中は触らない、という自分ルールを作りましたよ。――まるで親にゲームを禁止された小学生みたいですね(笑)。そう、まさにそれです。“光る板”は、午前中は禁止!(笑)――改めて伺いますが、斎藤さんは、なぜそんなに映像エンタメに惹かれるのでしょうか?そうですねぇ…。まずどんなテーマでも、映像エンタメにすることで娯楽性が生まれるのですが、一方で主題の社会性が強まる。それにより、物事にはいろいろな見方があるということを教えてくれます。’18年に作られた『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』という骨太な韓国映画がありまして、内容は、北朝鮮に潜り込んだ韓国人スパイが最高国家権力を持つ金正日に会い、あるミッションを遂行するというもの。“38度線”という国家間にある緊張感を扱ったという意味では、恋愛モノの『愛の不時着』と同じですが、その2作を比べただけでも、38度線に対する解釈や描き方の角度が、作品ごとに異なることがわかるんです。さらに、日本に暮らしている僕にとっては、“地続きの隣の国との緊張状態”というものは、情報はあるけれど実感はできない。でも作品を通じて、ある種の疑似体験はできる。映画は、時として自分から見える景色と真逆の景色を映し出します。それを見て「こんな世界があるのか」と感じることで、自分とは違う視点を得られる。逆に、全く違う文化を持つ国の作品でも、恋心や家族間の感情など、「同じだ」と思う描写に出合うと、共通性を見いだせる。――なるほど。海外に行った際、違いに驚きつつも、親しい文化を発見したときにちょっとうれしくなる、あの感じですね。そう、まさしくそれです。あともう一つ、映画は自分自身を深く知るきっかけにもなり得ます。たとえば、主人公の圧倒的な孤独を映し出した『ジョーカー』や、格差社会がテーマの『パラサイト 半地下の家族』といった映画は、描かれた悲しみや絶望が、自分の心の奥にある醜さや弱さ、貧しさなどに共鳴し、もしかしたらつらい思いをするかもしれないけれど、逆に癒されたり、救われることもある。そういった瞬間を求めて、映画を観ているところもありますね。ディズニーのようなポップな作品ももちろん好きですが、“誰にもわからない俺の孤独”みたいな、自分でもちょっと気持ち悪いと思う部分を救ってくれるような、恵みのある作品を求めている…そんな自分もいます(笑)。さいとう・たくみ俳優、映画監督。1981年生まれ、東京都出身。ドラマ『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日系)に出演中。今年から来年にかけ、映画『糸』や『シン・ウルトラマン』など、出演待機作が多数。※『anan』2020年7月15日号より。(by anan編集部)
2020年07月11日ラストショウを終えたダンサーの女が、観客の前で自らの人生を語りだす。舞台『殺意 ストリップショウ』は、戦前戦後の激動する時代の影や、深遠な人間の本質を描いてきた作家・三好十郎作のひとり舞台。ひとり舞台は、いま乗り越えるべきハードルなんだと思います。「演出の栗山民也さんは、私…役者・鈴木杏に対して、いつも予期せぬところから予期せぬ重さのものをポーンと投げてくださる方。その栗山さんがやれとおっしゃるならば、やりませんとは言えないです。きっといまの私が乗り越えるべきハードルなんだと思いますが、それにしても大変なものが来たな、と(笑)」なんと台本は100ページ超え。「人生のなかでこんな量のセリフを覚えることになるとは思わなかった」と苦笑。しかし同時に、三好十郎のセリフを口にする喜びも。「以前、三好先生が書かれた『浮標(ぶい)』という舞台を拝見したことがあって、そのセリフの素晴らしさに胸を打たれたんです。戯曲を買って家に帰って声に出して読んだりして。いつか自分もできたらいいなと思っていましたけれど…まさかひとりでやることになるとは、です」実際に稽古で口にし、その言葉の深さや重さに驚かされる日々。「役者の力とか演出の力みたいなものにへんに委ねられていない、甘えのないホンだなと思います。まるで三好先生が作品の責任をすべてご自身で背負おうとしているくらいの鋭さで書かれている。戯曲自体が素晴らしいから、私は安心して言葉に潜っていける。自然と役の声になり、感情が流れていくんです」そう感じられるのは、鈴木さん自身が優れた戯曲の読み手だからだ。インタビュー中、「私、ストリッパーとか娼婦とか、あまり幸せそうじゃない役が多いんですけれど、なんでなんだろう…」と首を捻る場面があった。しかし理由は明確。鈴木杏という女優は、台本に書かれたセリフから、役の背負ってきた重みや苦み、喜びや切なさを読み取り、体現できる人だからに違いない。「戯曲に描かれた時代の空気、匂い、音…そこにできるだけ近づけるよう資料を読んで想像はしますけれど、どこまでできているかわからない。ただ、その人がどういう景色を見ていたのか…自分も同じ景色を一緒に見ようとしている感覚です」『殺意 ストリップショウ』兄の勧めで上京した緑川美沙(鈴木)は、左翼の社会学者・山田のもとに身を寄せる。そこで山田の弟・徹男と運命的な出会いを果たすが、世の中が右傾化し…。7月11日(土)~26日(日)三軒茶屋・シアタートラム作/三好十郎演出/栗山民也出演/鈴木杏全席指定一般6000円、高校生以下3000円(当日要証明書提示)、U24チケット(前売りのみ)3000円(すべて税込み)世田谷パブリックシアターチケットセンター TEL:03・5432・1515(10:00~19:00)すずき・あん1987年4月27日生まれ、東京都出身。映像で活躍する一方、故・蜷川幸雄をはじめ、様々な演出家の舞台に出演。’16年には読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞。衣装協力・AOI WANAKA TEL:03・6805・0029※『anan』2020年7月15日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・和田ケイコヘア&メイク・菅野綾香(ENISHI)インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2020年07月08日17歳の少年が、祖父母を殺害した。『MOTHER マザー』は、この実際に起きた衝撃的な事件に着想を得て紡ぎ出された新たな物語。社会の底辺で長い歳月をかけて築かれた母と息子の共存関係が、息子を凶行に向かわせる過程を描いている。残酷な結末が待ち受けているとわかっていても惹きつけられるのは、タイトルになっている「母」という存在が、誰にとっても大きな意味を持つものだからだろう。しかも、その母親・秋子を長澤まさみが演じるのだ。コメディからシリアスまで、ジャンルを超えて魅力的な人物を演じてきた人気実力派が、息子に恐ろしい行為を強いるシングルマザーをどう演じるのか。いわば、新境地開拓なわけだが、これがもうこちらの想像をはるかに超える役どころ。世間の常識では計り知れない秋子の行動には、衝撃を受けっぱなしなのだ。秋子ときたら、自分で働いて子供を養おうという気はさらさらない。幼い周平(郡司翔)を家に残したまま、出会ったばかりのホストの遼(阿部サダヲ)と何日も家を空ける。そんなネグレクトの一方で、内縁の夫となった遼との間にできた子供の命は頑として守ろうとする。母性があるのか、ないのかわからない。実に不可解な存在ときている。やがて成長した周平(奥平大兼)にも母親らしいことをするどころか、歪んだ愛情で支配する一方で、ときには恋人や友達のような存在として頼っているようなところもある。子供の未来など考えず、ただ独占していたいだけに見える秋子は、“毒母”という言葉で簡単には片付けられないほど。けれども、そんな母親でも、子供にとっては大切な存在。秋子という人間が理解できなければできないほど、母親という存在の大きさや、母と子の絆について考えずにいられなくなるのが、この作品の面白いところ。それもキャストが迫真の演技を見せてくれているからこそ。秋子の身勝手さに絶句させつづける長澤はもちろんのこと、阿部は久々の“クズ”ぶりで驚かせつつ、遼の身のこなしの軽やかさにさえも、この男の薄っぺらさを感じさせて、なんと魅力的なことか。出会いや再会のシーンで披露するダンスのみならず、ちょっとした動きにも滲む愛嬌がたまらない。そして、16歳からの周平を演じる奥平大兼。過酷な日々のなかで芽生えた未来への希望の芽を摘み取られてもなお、母親や幼い妹を支えようとする周平の選択が、せつなくてたまらない。作品の世界はヘビーだけれど、初めてのオーディションで、この難しい役を手にした新星のデビューを目撃することができるのは、映画好きにはたまらない幸せだ。さらに、もうひとり、観客の心を鷲掴みにするのが、子供時代の周平を演じた郡司翔くん。ガスも電気も止められた真っ暗な部屋で、たった一人で母親の帰りを待つ周平のいたいけなことときたら。といって、ただ健気なだけではなく、秋子に言うべき文句はちゃんと言う。子供の“リアル”を感じさせる彼は、数年後、「ああ、あのときの子が!」と驚かせてくれる注目俳優に育っているはず。いや、2人の周平のどちらも、すぐにいろんな作品でお見かけするようになるんだろうな。『MOTHER マザー』自堕落に生きてきたシングルマザーの秋子が、息子の周平を祖父母殺害に向かわせる。監督・脚本/大森立嗣出演/長澤まさみ、阿部サダヲ、奥平大兼、夏帆、木野花ほか7月3日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開。©2020「MOTHER」製作委員会※『anan』2020年7月8日号より。文・杉谷伸子(by anan編集部)
2020年07月06日17歳の少年が祖父母を殺害するという、実際に起きた衝撃的な事件に着想を得た大森立嗣監督作『MOTHER マザー』。破滅的な母親に挑戦する長澤まさみさんと、本作が俳優デビューの奥平大兼さんにお話を伺いました。――この作品でご家族のことを改めて考えられましたか。長澤:やっぱり私にとってもバイブルはお母さんなので。母親の言葉に耳を傾けて育ってきたから、今の自分がある。もし、自分が親になった時にどうすればいいのかということも、ちゃんと考えながら生きていきたいと思いましたね。奥平:今まで、母親とか家族とかがどれだけ大きな存在で、どれだけ影響されたり、影響を与えたりするのかを考えもしなかったんですけど。僕が長男で、妹が1人いるという関係がこの映画とまったく同じなので、母親や妹をちょっとは守る立場にいるんだよってことを考えさせられましたね。妹は今年中1なんですけど、環境も変わるじゃないですか。僕にできるサポートはしてあげたほうがいいんだなと、撮影が終わってから正直感じてます。長澤:しっかりしてるなあ。ほんと、しっかりしてる。――デビュー作でお母さん役だった長澤さんが、芸能界のお母さん的存在になりそうな予感は?奥平:そうなんですよ。もう、お母さんが2人いる感覚なんです。長澤:ほんと?奥平:こういう仕事をしていくなかで最初に育ててくれたっていうか。親みたいな感覚があるので。長澤:うれしいよ。奥平:親子役だったからだけじゃなく、現場で話しかけてくれたり、優しくしてもらって、すごくお母さん感を感じましたね。長澤:優しいお母さんだった?(笑)私も、こんな息子がいたらいいなって思いますね。奥平くんにも子役の子たちにも、すごく元気や勇気をもらったんですよ。お芝居とはいえ、ひどいことを口にしたり、態度をとったりすると、私自身も後ろめたさを感じる。でも、その場で、役として純粋に無垢に生きてくれている彼らに救われるというか。この作品の世界に引っ張っていってもらってる感覚がありました。奥平:お父さんは、阿部さんですかね(笑)。ほんとにお父さん感ありましたね。長澤:優しいもんね、阿部さん。奥平:優しかったです。長澤さんは、1回、ごはんも作ってきてくれて。おいしかったです。長澤:え?作ってないよ。差し入れじゃない?(笑)奥平:作ってきてくれませんでした?差し入れも、どれもおいしくて。芋とか。長澤:芋!?奥平:スイートポテトみたいなのです。長澤:作ってないよ、私は(笑)。あ、差し入れでね。奥平:撮影の合間に、すごく癒されてました。長澤:癒されるよね。撮影大変だったもんね。やっぱり、食べ物しか楽しみないもんね(笑)。――完成した作品を初めてご覧になった時はどうでしたか。奥平:恥ずかしかったですね。長澤:ふふふ(笑)。奥平:自分が出てきた瞬間、「やっば!」って、下向いちゃって。隣にいる監督も笑ってて。試写室には視界に入るだけでも40人ぐらいいて、恥ずかしくて。公開したらもっと多くの人に見られて、いろいろな人からの意見とかあるじゃないですか。長澤:まだ同級生にも言ってないんだよね?奥平:言ってないです。友達に見られるのも恥ずかしいと思います。先生にはある程度理由を話してあったんですけど、同級生にはまったく理由を言わずに学校を休むようになって、復活したら髪型が変わっているという(笑)。長澤:いったい何があったんだ、みたいな(笑)。奥平:やっと言えるので。“ヤバいヤツ”っていう誤解が解けますね(笑)。長澤:面白いね、それ。でも、私もずっと恥ずかしい。その感覚は、ひとつの成長に繋がることだから。悪いことじゃないみたいよ。奥平:恥ずかしいと思って、いいんですね。安心しました(笑)。ながさわ・まさみ1987年6月3日生まれ。静岡県出身。2000年にスクリーンデビューし、コメディからシリアスまで幅広い作品で活躍。『コンフィデンスマンJP プリンセス編』が待機中。ワンピース¥82,000(ティビ/ユニット&ゲスト TEL:03・5725・1160)シューズ¥72,000(クレジュリー/ヒラオインク TEL:03・5771・8809)リング、人差し指¥14,000中指¥21,000(共にマリア ブラック/ショールーム セッション TEL:03・5464・9975)おくだいら・だいけん2003年9月20日生まれ。東京都出身。初めてのオーディションで大抜擢され、本作で俳優デビュー。空手初段で、2012年に全国武道空手道交流大会「形」で優勝。ニット¥18,000パンツ¥28,000(共にウル/スタジオ ファブワーク TEL:03・6438・9575)その他はスタイリスト私物『MOTHER マザー』シングルマザーの秋子から、自分に忠実であることを強いられ続けた周平。母と息子のいびつな絆が、やがて周平を祖父母殺害へ向かわせる。監督/大森立嗣出演/長澤まさみ、阿部サダヲ、奥平大兼ほか今夏、TOHOシネマズほか全国公開。※『anan』2020年5月27日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)スタイリスト・木村真紀(長澤さん)伊藤省吾(sitor/奥平さん) ヘア&メイク・小澤麻衣(mod’s hair/長澤さん)永瀬多壱(VANITES/奥平さん)取材、文・杉谷伸子(by anan編集部)
2020年05月23日17歳の少年が、祖父母を殺害した。実際に起きた衝撃的な事件に着想を得た大森立嗣監督作『MOTHER マザー』で、長澤まさみさんが破滅的な母親に挑戦。本作が俳優デビューの新星・奥平大兼さんにも注目です。――長澤さんが演じる秋子は、息子の周平を歪んだ愛で翻弄します。常識では理解できないこの母親を演じたいと思われた理由は?長澤:私は結婚もしていませんし、子供もいないので、いただいた脚本も母親ではなく、周平目線で読んでいたんですね。誰にとっても母親は、自分のバイブルみたいな存在であるなかで、親子の関係性をすごく考えさせられたし、この作品が他人事に感じられなくて。でも、演じていても複雑な気持ちでしたよ。秋子はずる賢さだけが成長したような人で、自分にはない感情ばかりだったので、毎日、これでよかったのかなという疑問しかなかったですね。――奥平さんは、初めてのオーディションで周平役に大抜擢ですね。奥平:最初、「受かったよ」とお母さんから聞いたんですけど、僕、その時、ゲームにすごい集中してて。何の話だかわからなくて。長澤:はははは(笑)。奥平:「やった!」というよりも驚きのほうが大きかったですし、いろいろ考えなくちゃいけない役なので、現場に入る前は不安で。正直、あんまりやりたくないなっていう気持ちだったんですけど、入ったらもう楽しくて!こういう作品だから、現場の空気も重いのかなと思っていたら、すごく明るかった。阿部(サダヲ/秋子の内縁の夫役)さんも面白いし、妹役の子もすごく元気で、「もう、撮影終わっちゃうの?」って感じでした(笑)。長澤:奥平くんは役のことをすごく考えて、自分の意見があって現場にいた。ベテランみたいでした。それに、監督が優しかったのもあるしね。奥平:優しかったです。長澤:奥平くんとの最初の撮影は、ラブホテルに家族3人で泊まっているシーン。奥平:僕に演技の経験がなかったので、セリフのないシーンから撮りました。それもあって、結構リラックスしてできたんです。長澤:みんなが作ってくれた環境に純粋に反応して、現場に入ることができていた、いい俳優さんですよね。――撮影の合間も、「お母さん」「周平」と呼び合っていたんですか。長澤:うーん、「長澤さん」だよね?奥平:そうですね。長澤:秋子と周平は親子だけど、恋人のようだったり、友達のようだったりと関係性がすごく複雑。だから、奥平くんは、“お母さん”として私に接してなかったんじゃないかな。奥平:確かに、あんまり“お母さん”という感じでは話してなかったですね。でも、気持ち的にはすごく“お母さん”でした。長澤:だった?そうか…。私は、子供時代の周平との時間も長くて。虐待の中にも何かしらの信頼関係がある彼との距離感が難しかったんですね。でも、周平が大きくなると、もう少し、対等になる。秋子も、わがままを言いながら、どこかで周平に頼ってると感じる瞬間もあったり。不思議な関係なので、私自身も成長してからの周平に寄り掛かっていた感覚がありました。奥平:周平は母親に命じられることを仕方なくやってるように見えるかもしれないけど、お母さんのことは好きだし、一番デカい存在なんですよね。子供の頃の周平も普通じゃ考えられない経験ばかりしてますけど、成長した周平もお母さんや妹を支えなくちゃいけないという使命感が、ちっちゃい頃の周平よりはあった。やっぱり妹の存在も大きかったです。ながさわ・まさみ1987年6月3日生まれ。静岡県出身。2000年にスクリーンデビューし、コメディからシリアスまで幅広い作品で活躍。『コンフィデンスマンJP プリンセス編』が待機中。ワンピース¥82,000(ティビ/ユニット&ゲスト TEL:03・5725・1160)シューズ¥72,000(クレジュリー/ヒラオインク TEL:03・5771・8809)リング、人差し指¥14,000中指¥21,000(共にマリア ブラック/ショールーム セッション TEL:03・5464・9975)おくだいら・だいけん2003年9月20日生まれ。東京都出身。初めてのオーディションで大抜擢され、本作で俳優デビュー。空手初段で、2012年に全国武道空手道交流大会「形」で優勝。ニット¥18,000パンツ¥28,000(共にウル/スタジオ ファブワーク TEL:03・6438・9575)その他はスタイリスト私物『MOTHER マザー』シングルマザーの秋子から、自分に忠実であることを強いられ続けた周平。母と息子のいびつな絆が、やがて周平を祖父母殺害へ向かわせる。監督/大森立嗣出演/長澤まさみ、阿部サダヲ、奥平大兼ほか今夏、TOHOシネマズほか全国公開。※『anan』2020年5月27日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)スタイリスト・木村真紀(長澤さん)伊藤省吾(sitor/奥平さん) ヘア&メイク・小澤麻衣(mod’s hair/長澤さん)永瀬多壱(VANITES/奥平さん)取材、文・杉谷伸子(by anan編集部)
2020年05月22日大迫力のアクションも見どころの、映画『太陽は動かない』。過酷な撮影を共に支え合って乗り越えた藤原竜也さんと竹内涼真さんの、良き“相棒”ぶりとは?――お二人は同じ事務所の先輩後輩ですが、この共演を通してお互いに感じたことはありますか?藤原:この話をいただいた時、僕は舞台稽古や違う作品も重なっていたんです。そんな状況でトレーニングしろって言われてもムリじゃないですか(笑)。そうしたら涼真が僕の楽屋に来て、ずっと筋肉見せてくるんです。「めっちゃトレーニングしてるんですよ」って。不公平だと思いました。竹内:あはは(笑)、ちょうどその時期はヒマだったんで…。僕は竜也さんの作品は舞台も映画も毎回観に行かせてもらってたし、共演できるのは本当に嬉しかったです。藤原:共演して、涼真はストレートに感情表現をする、すごく素敵な俳優だと思った。竹内:嬉しいです。竜也さんは僕にとって頼もしい先輩。現場で芝居に迷った時は相談に乗ってくれるし、台本読んでいてどうしたらいいかわからなくなったり、行き詰まった時は、セリフ合わせに付き合ってもくれました。――いい先輩ですね。藤原:とか言いつつ、僕が連日のすさまじいアクションでいよいよキツくなってきたな…って時に涼真はトム・クルーズのアクション動画を見せてきて「ほら、トムだってこんなにやってるんだから、もっと頑張ってくださいよ」とか言ってくるんですよ。――それを見て、よし頑張るぞ、ってなるんですか?藤原:ならないでしょ!(笑)竹内:あはは!(笑)でもそうやって僕らよりもすごいアクションを見て、奮い立たせるしかなかったんです。藤原:スタートしたらやるしかないし、常にお互いに背中を押し合っていた感じはするね。竹内:そんな毎日の中で竜也さんは、ごはんとか率先して「行くぞー」って誘ってくれてありがたかった。酔っ払うとただのおじさんですけど(笑)、面倒見がすごくいい兄貴肌。(市原)隼人さんと撮影が重なっていた期間は、隼人さんが飲んで酔っ払うと部屋に送っていくのは竜也さん。そのあと解放された竜也さんがさらに飲んで酔っ払って、結局僕が、竜也さんを部屋まで連れて帰るという流れでした。藤原:さすが相棒!(笑)ふじわら・たつや1982年5月15日生まれ、埼玉県出身。舞台『身毒丸』でデビュー。代表作は『デスノート』や『カイジ』の実写シリーズ、映画『22年目の告白 ―私が殺人犯です―』など。ジャケット¥34,000(ヨーク/スタジオ ファブワーク TEL:03・6438・9575)シャツ¥43,000(バナナタイム/オー! ショールーム TEL:03・5774・1408)パンツ¥16,000(リーセンシィ オブ マイン アバハウス/アバハウス 原宿 TEL:03・5466・5700)シューズ¥36,000(フットストック・オリジナルズ/ギャラリー・オブ・オーセンティック TEL:03・5808・7515)たけうち・りょうま1993年4月26日生まれ、東京都出身。初主演はドラマ『仮面ライダードライブ』(テレ朝)。『過保護のカホコ』(日テレ)、『テセウスの船』(TBS)などで注目を集めた。ジャケット¥220,000パンツ¥106,000(共にエトロ/エトロ ジャパン TEL:03・3406・2655)シューズ¥65,000(パラブーツ/パラブーツ 青山店 TEL:03・5766・6688)Tシャツはスタイリスト私物『太陽は動かない』謎の組織AN通信に属する鷹野と田岡は、24時間ごとに本部へ定期連絡しなければ、心臓に埋め込まれた起爆装置が発動し5分で爆死する。二人は任務を遂げられるのか…。近日公開。5月24日よりWOWOWでドラマ版が放送。※『anan』2020年5月27日号より。写真・森山将人(TRIVAL)スタイリスト・小林 新(UM/藤原さん)徳永貴士(竹内さん)ヘア&メイク・赤塚修二(メーキャップルーム/藤原さん)佐藤友勝(竹内さん)取材、文・若山あや(by anan編集部)
2020年05月21日