人生100年時代ともいわれ、老後がますます長くなる一方、少子高齢化などの影響により、老後の生活を支える公的年金の支給額は今後減少すると予想されています。退職金と年金で悠々自適に暮らせる時代はすでに終わりを迎えており、老後に生活費が足りず家計が破綻する「老後破綻」は、決して他人事ではなくなっています。老後破綻に陥ることなく、ゆとりある老後を送るにはどうすればよいのか。この記事では、老後にいくら生活費が必要なのか、老後に備えて今から何ができるのかについて解説していきます。老後の生活費は毎月どれくらい必要?「平成29年(2017年) 家計調査結果」(総務省統計局)持ち家率は94.2%世帯主が65歳以上・二人以上の世帯においては持ち家率が94.2%と高いため、統計上は住宅費が少なくなっていますが、賃貸に住み続けるという選択をする場合には、家賃分だけ生活費を多く見積っておくべきといえます。公的年金だけでは毎月5万円以上の赤字同調査による無職世帯の毎月の平均収入は209,198円(うち公的年金等の社会保障給付が191,880円)であり、直接税や社会保険料を差し引いた後に残る、自由に使えるお金(可処分所得)は180,958円となっています。月235,477円の生活費を差し引くと、毎月54,519円の赤字。つまり、毎月貯蓄を切り崩さなければ生活できない状況であり、十分な貯蓄がなければ家計はすぐに破綻してしまいます。現時点でこのような状況であり、将来年金が減ると予想される若い世代にとっては、自助努力による備えがより重要になってきます。ゆとりある老後に必要な生活費は月35万円上記の月24万円というのは、平均的な生活を送るために必要な最低限の生活費といえるものです。生命保険文化センターの調査(※1)によると、老後のゆとりある生活に必要と考える生活費は平均34.9万円。つまり最低限の生活費プラス10万円がゆとりある老後に必要な生活費の目安であり、年金以外に月15万円必要となる計算です。ゆとりある老後には65歳時点で総額3600万円の貯蓄が必要65歳で退職し85歳までの20年間、年金と貯蓄を切り崩しながら生活する想定では、最低でも約1300万円(=月5.4万円×12カ月×20年)、ゆとりある老後には約3600万円(=月15万円×12カ月×20年)の貯蓄が必要となります。ただし、これは現時点の物価水準、年金水準で、65歳以降運用を行わないと仮定した場合の数字。将来年金支給額が減れば、より多くの貯蓄が必要となります。一方、老後に貯蓄を運用しながら切り崩していけば必要な貯蓄額は少なくて済みます。なにをもってゆとりと考えるかは価値観の問題であり、あなた自身が老後をどのように過ごしたいのかによって、必要な生活費も変わってきます。必要な貯蓄額は、実際に受け取れる年金額や、持ち家・賃貸の別、希望する老後のライフスタイルなどを踏まえ、個別に考えるべきです。この3600万円という数字も平均値に基づいて計算した結果であり、あくまで参考として捉えてください。老後に備え、20代から各年代でどれくらい貯めていけばいい?『The Automatic Millionaire』(David Bach)この基準は、60代以降お金の心配なく暮らすために必要な貯蓄を行う目安であり、希望するライフスタイルよっても変わります。実際にはこの基準を目安としながら、目標額とそのほかの資金(教育資金、住宅資金)とのバランス、家計の状況などを踏まえて、無理のない範囲で積立額を決める必要があります。運用によって効率よく貯める効率的に老後の生活費を貯めるには、運用しながら積み立てていくことも重要なポイントです。老後資金の運用では、運用期間が長くとれるため、利益が利益を生む「複利効果」が大きくなり、運用リスクの軽減効果も期待できます。複利効果とは?複利効果:元本に利益を加えた合計を新たな元本として継続的に運用されることで、雪だるま式に利益が増えていく効果たとえば月5万円(年間60万円)ずつ30年間積み立てる場合の積立総額は1800万円。同じ月5万円の積立でも、年3%の複利運用ができれば、30年後には2855万円、年5%では2倍以上の3986万円まで増やすことができます。Guide to the Markets・1Q 2019(J.P. Morgan Asset Management)老後資金を貯める方法は7種類自助努力によって老後資金を貯める方法としては、以下のようものがあります。預貯金普通預金、定期預金などの形で銀行にお金を預け、利息を受け取りながらお金を貯めていく方法。安全性の高さ(1金融機関あたり元本1000万円とその利息まで(当座預金など決済用預金は全額)の元本保証)と、すぐに現金化できる流動性の高さが特徴。現在は低金利状態が続いており、運用効果はほとんど期待できません。財形貯蓄(会社員・公務員)毎月の給与やボーナスからの天引きで貯蓄を行う方法。財形貯蓄制度を導入している企業に勤める55歳未満の会社員が利用できる制度で、財形一般貯蓄、財形住宅貯蓄、財形年金貯蓄の3種類があります。このうち老後資金準備を目的としているのが「財形年金貯蓄」です。財形年金貯蓄は、5年以上の期間、定期的(年1回以上)に給与天引きで積み立てを行い、積立金を60歳以降年金形式で受け取るもので、財形住宅貯蓄と合算して元利合計550万円(保険型は払込保険料385万円)までの利子が非課税となるメリットがあります。小規模企業共済(自営業)退職金や企業年金などがない自営業者などが、自助努力で退職金を準備する方法。掛金は月1,000〜70,000円まで500円単位で設定でき、全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となるため、節税効果の高い制度です。個人向け国債個人を対象に国が発行する債券(個人向け国債)を購入していく方法。個人向け国債は1万円単位で購入でき、国が元本と利息の支払いを保証するもっとも安全性の高い金融商品。年0.05%(税引前)の金利が最低保証されており、預貯金よりも安全性・収益性が優れています。半年ごとに適用利率が変わる「変動10年」、発行時に設定された利率が満期まで変わらない「固定5年」「固定3年」の3タイプがあります。貯蓄性保険「終身保険」や「養老保険」「個人年金保険」など貯蓄性のある保険を利用する方法。終身保険や養老保険は、保険の対象者(被保険者)が死亡したり、高度障害状態となったりした場合に備える保障がメインの商品。支払った保険料は一定額まで生命保険料控除の対象となり、税金面でのメリットもあります。ただし、保障部分にかかるコストや、他の金融商品に比べて割高な手数料に加え、低金利による運用効率の低下もあり、運用商品としての魅力は薄れています。「保障+運用」が目的であれば、「掛け捨て型の保険」と「投資信託などの投資商品」を別々に購入したほうがよいといえます。個人型確定拠出年金(iDeCo)個人型確定拠出年金(iDeCo)は、どの商品にどのくらい割合で投資するかを自分で決め、毎月の掛金を積立投資して老後資金を準備する方法。積立時、運用中、受取時において税金面で優遇されるメリットがあります。日本国内に住む20歳以上60歳未満の方であれば、月5,000円から1,000円単位で加入可能(掛金の上限は月額1.2〜6.8万円。職業(加入する公的年金の種類)や企業年金の有無などにより決まる)。老後の資産形成を目的とした制度であるため、掛金や運用益は原則60歳まで引き出せないことに注意が必要です。NISA(少額投資非課税制度)NISAは一定額まで購入した株式や投資信託の運用益が非課税となる制度。3タイプあるNISAのうち、老後資金準備には「(一般)NISA」「つみたてNISA」が利用できます。途中で払い出しできないといった制約もなく税制優遇が受けられる制度であり、株式や投資信託を利用して老後資金を準備するのであれば、ぜひ利用したい制度です。どうやって貯めるのがよい?老後まで時間のある20代〜40代の間は、ほとんど利益を生まない貯蓄商品(預貯金や財形貯蓄など)の利用は最低限にとどめ、ふやすことを意識して、つみたてNISAなどを活用しながら、株式や投資信託への長期積立投資を行うとよいでしょう。投資先としては、S&P500や全世界の株式に連動した運用成果が期待できるインデックスファンド(投資信託・ETF)などがおすすめです。50代以降は、それまで積み上げた資産を守ることを意識し、貯蓄商品や個人向け国債などの割合を徐々に増やしていくとよいでしょう。老後の生活費まとめ夫婦2人の老後には平均で月24万円、ゆとりある老後を送るには月35万円の生活費が必要になります。現在年金を受け取っている世代でさえ、年金だけでは生活費できない状況であり、今後年金が減ると予想される世代は、老後の生活費は自分たちで貯めるという意識をより強く持たなければなりません。長期運用ができる老後資金のメリットを活かし、なるべく早い時期から積立投資をはじめ、効率的に老後の生活費を貯めていくことが大切です。
2019年02月04日介護保険は、年齢が40歳になると強制加入となる公的介護保険のほかに、生命保険会社が販売している民間介護保険があります。民間介護保険は、公的介護保険のように強制加入とはならず、あくまでも将来の介護や介護費用に対して心配な方が任意で加入する生命保険となりますが、やはり、メリットとデメリットがそれぞれあることも確かです。そこで本記事では、将来の介護や介護費用について心配な方をはじめ、民間介護保険への加入を検討している方を対象に、生命保険会社が取り扱う民間介護保険のメリットとデメリットを中心に基本的な部分から注意点まで幅広く紹介をしていきます。生命保険会社が取り扱う民間介護保険とは?生命保険会社が取り扱う民間介護保険は、介護保険に加入している方が、認知症や寝たきりになった場合などで介護サービスを利用した際に生じる自己負担額を保障することを目的とした生命保険になります。民間介護保険は、基本的に40歳から強制加入となる公的介護保険と連動している部分もあるものの、生命保険会社によって保障内容が大きく異なっている特徴があり、仮に、契約加入をする場合には、比較検討することが重要です。民間介護保険の保障は、生命保険会社によってどの程度違うのか民間介護保険は、生命保険会社によって保障内容が大きく異なっている特徴があることをお伝えしましたが、以下、参考情報をざっくり表にまとめて紹介します。なお、生命保険会社の公平性の観点から、保険会社名は公開せずにA社からD社としておりますので、あらかじめご了承ください。保険会社保険金の種類保険金が支払われる場合A社年金(分割)公的介護保険制度の要介護2以上になった場合に一生涯支払われるB社加入した商品によって、年金(分割)と一時金(一括)といった保険金の支払われ方が異なる公的介護保険制度の要支援2以上で保険金が支払われるC社年金(分割)と一時金(一括)の方法から選択が可能公的介護保険制度の要介護認定D社年金(分割)公的介護保険制度の要介護1以上になった場合に一生涯支払われるここでは4社を比較しておりますが、保険金の種類や保険金が支払われる場合がすべて異なっていることがわかります。当然のことながら、負担しなければならない保険料も保険会社によって異なりますので、民間介護保険の契約加入をする場合には、事前に保障内容や保険料を比較検討することが大切になります。併せて、民間介護保険の保険金が支払われる場合は、公的介護保険制度にある7段階の介護度合いと連動していることがほとんどであるため、これらの介護度合いがどのような状態を指すのか確認しておくことも大切です。公的介護保険と民間介護保険の違い本記事のメインである民間介護保険に加入するメリットとデメリットを知るためには、まずもって、公的介護保険と民間介護保険の違いについて、大まかにでも知っておく必要があります。介護保険の種類公的介護保険民間介護保険介護保険の加入義務あり(40歳から強制加入)なし(任意加入)給付方法現物給付(介護サービスを給付)現金給付(契約に応じた保険金)介護保険料お住まいの市区町村や収入(所得)によって、それぞれ異なる40歳から死亡するまで介護保険料を負担し続けていかなければならない契約年齢・性別・契約内容・生命保険会社によって、それぞれ異なる保険会社との契約によって、介護保険料の負担する期間を任意で選ぶことができる給付要件介護保険法に定められている7段階の介護度合いの内、いずれかの介護認定を受けている(年齢によって異なる)各生命保険会社が定めている約款によって異なる民間介護保険に加入するメリットとデメリットを知る上で、特にポイントとなる部分には、給付要件があげられ、最近の民間介護保険は、公的介護保険の要介護認定に連動した商品が増えています。これは、民間介護保険に加入するデメリットに大きく関係することになるほか、民間介護保険に加入する必要性についても大きく関係してくることになるため、細心の注意を払っておかなければなりません。民間介護保険に加入するメリットとデメリット民間介護保険に加入するメリット民間介護保険に加入するデメリット公的介護保険を利用した際に生じる介護サービスの自己負担額を補填することができる生命保険料控除が受けられるため、所得税や住民税の負担軽減効果がある将来の介護費用に対する備えを準備することができる公的介護保険とは別に生命保険会社に保険料の支払いをしなければならないため、経済的負担が重くなる保険金の支払いを受けるには、公的介護保険の要介護認定を受ける必要があるため、身体状態によって、保険金が必ず支払われるとは限らない公的介護保険の介護サービスにかかる費用は、原則として1割が自己負担額となるのですが、年齢が65歳以上で年金収入やその他の収入が多い場合は、自己負担額が2割や3割と重くなる仕組みになっています。もちろん、公的介護保険制度にある7つの介護度合いの内、介護度合いが重くなればなるほど、その自己負担金額が重くのしかかってくることは言うまでもありません。老後生活に欠かすことができない年金収入が少ない場合は、介護サービスにかかる自己負担額が1割であったとしても、その経済的な負担は重荷になることは明白であり、時として所帯を持っている子供に経済的な負担をかけてしまう懸念も否めません。このようなリスクヘッジができる効果が民間介護保険に加入する大きなメリットと言える一方で、民間介護保険は、保険金が必ず支払われるとは限らない大きなデメリットがあります。では、保険金が支払われる程度の要介護認定を受けている方は、いったいどのくらいいるのでしょう?介護保険のサービスは、どのくらいの方が利用しているのか単位(千人)厚生労働省平成28年度介護保険事業状況報告(年報)報告書の概要厚生労働省が公開している平成28年度介護保険事業状況報告(年報)によると、要介護認定を受けている第1号被保険者(65歳以上)および第2号被保険者(40歳から64歳)は、632万人(総数合計)いることが確認できます。ポイントになるのは、民間介護保険の多くは、要介護2以上の介護認定をされていることが保険金を支払うための条件としている保険会社が多いところにあり、これを見ていきますと、第1号被保険者(65歳以上)および第2号被保険者(40歳から64歳)は、330万人となっており、要介護認定を受けている方の約半数であることもわかります。(赤枠部分の合計)第2号被保険者(40歳から64歳)で要介護2以上の介護認定者に至っては、7.8万人と極めて少ないことも確認できます。つまり、民間介護保険に加入して実際に保険金を受け取るためには、ちょっと高めのハードルを越えていなければならないことも知っておく必要があり、併せて、働き盛りの現役時代に、民間介護保険の保険金を受け取れる可能性は低いことも少なからず理解しておく必要はあると言えるでしょう。まとめ民間介護保険は、将来の介護に対する備えとして有効な生命保険であることは確かです。その一方で、保険料負担が重くなることや必ずしも保険金を受け取ることができるわけではないといったデメリットも踏まえた時、この辺も加味した判断が個々に求められることになります。現実的に考えますと、65歳以上になってからの、もしもの介護の備えに対して、今から準備しておくといった考え方が最も自然だと思いますが、これから民間介護保険の加入を検討している方は、とにかく保障内容の比較検討を念入りにされるように心掛けることを強くおすすめします。
2018年12月10日介護保険は、年齢が40歳以上で、お住まいの市区町村に対して申請を行わなければ利用することができない制度になっており、年齢が、65歳以上と65歳未満によって、介護保険を利用するための条件に違いもあります。このようなことを踏まえますと、介護保険の申請を行うタイミングというのは、とても大切になってくると考えられ、それに合わせて、どのように対策をしていく必要があるのかといったポイントについても知っておくことが重要と言えます。そこで本記事では、介護保険の申請を行うタイミングをケース別に紹介し、併せて対策ポイントもわかりやすく伝えていきたいと思います。ケース別に考える介護保険の申請を行うタイミング介護保険は、誰でも利用できるものではないことを本記事の冒頭から何となくご理解いただけたと思いますが、そもそも、どのような場合が介護保険の申請を行うタイミングなのかわからない場合も多いと思われます。実際のところ、介護保険の申請を行うタイミングの良し悪しといったものはありませんが、以下のようなケースがあった場合には、速やかにお住まいの市区町村に対して介護保険の申請をされることをおすすめします。家族が突然倒れてしまった結果、身体に障害が残ってしまった場合脳梗塞などの脳血管疾患によって、命に別状はなかったものの、身体に障害が残ってしまった場合というのは、よく聞く話です。このような場合は、年齢が40歳以上の方であれば介護保険の申請をお住いの市区町村に対して行い、要介護認定を受けることによって介護保険を利用した介護サービスを受けることができます。対策ポイント身体の障害がどの程度のものなのかによって、対策の仕方が異なってくることが考えられますが、意思疎通が図れる場合は、本人の考えを尊重した介護サービスを利用するのが良いと思われます。たとえば、自宅で介護サービスを受ける訪問介護のほか、福祉用具の購入や貸与、住宅改修なども必要になると考えられることから、ケアマネジャーといった専門家のアドバイスを参考に介護保険や助成を利用されることが望ましいでしょう。また、特に注意が必要なポイントとして、介護保険は、高齢者のみが利用できるといったものではなく、具体的には、40歳から64歳の方で厚生労働省が指定している特定疾病にかかっている方であれば介護保険を利用することができます。なお、特定疾病には、末期がんや脳血管疾患も含まれており、詳しい病名につきましては、同サイト内で公開している以下の記事で紹介しております。高齢の親が一人暮らしで心配。遠方に住んでいて様子も見られない両親の内、いずれかがすでに亡くなっており、高齢の親が一人暮らしで心配だという方も多くおられると思います。また、遠方に住んでいて連絡を取ることはできても、定期的に様子も見られない場合ですと、心配になるのは当然のことだと思われます。このような状態に置かれている方であっても、介護保険を利用することで心配が緩和できる場合があります。対策ポイント介護保険は、実のところ、介護が必要になった時にだけ利用できるといったものではなく、手厚い介護が必要とならないようにするための介護予防として利用することもできます。ただし、このサービスを利用するためには、お住まいの市区町村から要介護認定を受けることが必要であるため、まずは、お住まいの市区町村や地域包括支援センターに相談されてみることをおすすめします。なお、高齢による衰弱や持病があったりする場合をはじめ、足腰が衰えて弱ってきているような場合であれば、要支援1や要支援2といった軽度の介護認定を受けることも十分に考えられます。認知症による物忘れがひどくなってきた場合高齢になりますと、物忘れがひどくなってくるのはごく自然のことではありますが、これが認知症という診断を医師から受けたことに伴い、意思疎通が図れない場合や徘徊など、日に日にひどくなるような場合でも介護保険を利用することができます。認知症による家族の介護は、常に目を離すことができないなどといった理由から、精神的な負担や肉体的負担は計り知れないものになってしまい、老々介護、介護うつやその他の病気に家族もかかってしまう負の連鎖も決して否めません。対策ポイント認知症による物忘れがひどく介護が必要な場合は、介護保険を利用して家族の負担を減らすことができることから、早めに介護保険を利用していくことが何よりも大切になると考えられます。在宅介護による訪問介護をはじめ、認知症対応型通所介護(デイサービス)など、認知症に対応した介護施設がありますので、それらの施設利用をすることで、家族全体のライフサイクルがうまく回っていくものと思われます。低収入や無年金の両親に介護が必要に。自分も低収入で介護資金に余裕がない両親が年金生活を開始している状態で介護が必要な身体になり、両親が低収入や無年金といった理由から介護にかかる費用を負担できないといった場合もあると思います。これに加えて、ご自身も低収入であったり、その他の理由から親の介護資金を負担する余裕がないといった場合も十分に考えられ、このような場合において、どのようにしていったら良いのか不安を抱える方も少なくありません。対策ポイント介護保険を利用する上で、お住まいの市区町村から要介護認定を受けることが必要ですが、低収入や無年金といった経済的な理由が原因で介護保険のサービスを利用できないといったことはありません。ただし、介護保険を利用したことによって生じる自己負担額は、原則として1割であることから、少なからず、経済的な負担から免れることは残念ながらできません。このような場合におきましては、低収入の方を対象にした軽減制度があるため、まずは、お住まいの市区町村に対して相談を行い、必要な申請を行うことが大切です。また、低金利でお金を借入することができる公的な救済制度として、生活福祉資金貸付制度があります。生活福祉資金貸付制度は、介護サービスなどにかかる必要な資金についてお金を借入できるほか、日常生活で一時的に必要なお金についても借入の対象であることから、低収入の方にとって非常に利便性の高いものとなっています。なお、相談窓口は、市区町村の社会福祉協議会になりますので、市区町村に対する軽減制度の相談と合わせて、社会福祉協議会に対して生活福祉資金貸付制度の相談を行ってみることが望ましいでしょう。参考:要介護認定を受けた場合における税金や年金の対策こちらは、すべての方があてはまるわけではありませんが、要介護認定を受けたことに伴い、介護保険を利用するようになりますと、税金や年金についての優遇制度を活用できる場合があります。ただし、これらの優遇制度というものは、原則として、ご自身で所定の機関へ申請をすることが条件となっている(税理士や社会保険労務士などの代理人を立てることも可能)ため、要は、優遇される制度があることを知っていなければ活用することができないことを意味します。介護に関係するもので、税金にかかるものには、障害者控除、医療費控除、住宅改修や住宅改修に伴うリフォームをしたことによる税額控除などがあります。年金につきましては、障害年金があげられ、いずれも適用条件を満たしていれば、申請や申告手続きによってお金の負担を軽減させられる効果が期待できます。気になる制度や該当しそうな制度がある場合には、まずは制度がどのようなものなのかを確認し、必要に応じて関係機関や専門家に尋ねてみることが望ましいでしょう。まとめ介護保険の申請を行うタイミングについて紹介させていただきましたが、介護保険を利用した介護が始まりますと、周りの家族にとっても時間的な拘束や経済的な負担も余儀なくされることが十分予測できます。このような時に、介護保険を活用しながら税や年金の制度も活用した対策を使える方と使えない方では大きな差が生じることも確かです。基本的には、申請や申告手続きが必要になるものばかりですので、介護保険を利用する状況に置かれた場合は、対策ポイントを参考に、早急な行動に移されることをおすすめします。
2018年12月08日在宅介護は、通常、自宅で高齢の両親や祖父母の介護をすることを指す場合が多いのですが、実際には、自宅で介護をするだけに限らず、介護施設へ通ったり、短期的に介護施設へ入所して介護サービスを受けるなど、その内容はさまざまです。一般に、家族が在宅介護に関わるきっかけとなるのが、やはり、近親者の高齢による虚弱や病気などが多くあげられますが、1人で介護を続けることは、介護に伴う離職をはじめ、介護うつや高齢者の虐待といった大きな問題も否めません。このような場合に、真っ先に考えたいのが介護保険の申請と利用になるのですが、本記事は、初めて介護に関わる家族の方を対象に、介護保険を使って在宅介護をするためのポイントを幅広く紹介していきます。初めて介護に関わる家族が知っておくべき介護保険制度の基本現在(平成30年)の介護保険制度は、年齢が40歳になりますと強制的に加入することになる仕組みになっておりますが、以下、簡単に介護保険制度の基本を紹介しておきます。介護保険を利用するためには、お住まいの市区町村に対して申請を行い、要介護認定という認定を受けなければならない要介護認定を受けた人は、原則として1割の自己負担で介護サービスや予防サービスを利用することができる介護保険には、居宅サービスや施設サービスなどさまざまな介護サービスがあり、利用することができる周りの家族が介護を必要となる身体状態になってしまいますと、経済的負担、精神的負担、肉体的負担などがエンドレスに付きまとってしまうことも十分予測できることから、介護保険制度を利用して、専門職の協力を得ながら生活をすることが大切になってきます。要介護認定の目安と自己負担額介護保険を利用するために、お住まいの市区町村から要介護認定を受けた場合、認定された介護度合い(全部で7段階)によって1ヶ月あたりの自己負担限度額が異なる特徴があります。介護度合い介護認定の目安支給限度基準額(自己負担額)要支援1社会的支援を要する状態日常生活上の基本動作については、ほぼ自分で行うことが可能であるが、現在の状態が悪化し、要介護状態にならないように支援が必要と見込まれる。1ヶ月あたり50,030円(自己負担額5,003円)要支援2社会的支援を要する状態要支援1の状態から、日常生活上の基本動作を行う能力がわずかに低下した状態。1ヶ月あたり104,730円(自己負担額10,473円)要介護1部分的な介護を要する状態①排泄や食事はだいたい1人でできる。②立ち上がりや歩行が不安定。③身だしなみや居室の掃除などの身の回りの動作に何らかの介助や見守りが必要。④問題行動や理解の低下がみられることがある。1ヶ月あたり166,920円(自己負担額16,692円)要介護2軽度の介護を要する状態①排泄や入浴などの動作に何らかの介助や見守りが必要。②立ち上がりや歩行に何らかの支えを必要とする。③身だしなみや居室の掃除などの身の回りの動作全般に何らかの介助や見守りが必要。④問題行動や理解の低下がみられることがある。1ヶ月あたり196,160円(自己負担額19,616円)要介護3中等度の介護を要する状態①排泄や入浴などの動作が1人でできない。②立ち上がりや歩行が自分1人ではできない。③身だしなみや居室の掃除などの身の回りの動作が自分1人ではできない。④いくつかの問題行動や理解の低下がみられることがある。1ヶ月あたり269,310円(自己負担額26,931円)要介護4重度の介護を要する状態①排泄や入浴などの動作がほとんど1人でできず、介助が必要。②立ち上がりや歩行が自分1人ではできない。③身だしなみや居室の掃除などの身の回りの動作が1人でできず、介助が必要。④多くの問題行動や全般的な理解の低下がみられることがある1ヶ月あたり308,060円(自己負担額30,806円)要介護5最重度の介護を要する状態①意思の伝達が困難。②生活の全般について全面的介助が必要。③多くの問題行動や全般的な理解の低下がみられることがある。1ヶ月あたり360,650円(自己負担額36,065円)1ヶ月の自己負担限度額は、お住まいの地域によって単価が変わり、東京23区や首都圏、政令指定都市などは、介護の単価が高めになっています。在宅介護を無理なく続けていくための4つのサービス介護保険を使って在宅介護を無理なく続けていくためには、在宅介護には、どのようなサービスがあるのかを詳しく知り、自分たちにあった工夫をしていくことがとても大切になります。そこで、ここでは在宅介護を無理なく続けていくための方法として、以下、4つのサービスをそれぞれ個別に紹介していきます。①在宅介護を続けるために訪問サービスを利用する介護保険の訪問サービスは、在宅介護をする上で最も基本的な介護サービスにあたり、家事などを手伝ってもらう生活援助、食事や入浴などの介助を受ける身体介護、病院への通院に対する通院等乗降介助の3つのサービスがあります。訪問サービスは、非常にサービスが多岐に渡りますが、以下、介護サービスをまとめて紹介しておきます。訪問サービスの種類サービス内容訪問介護ホームヘルパーや介護福祉士が自宅へ訪問して介護サービスを行う生活援助:食事の準備・洗濯・掃除・衣服の整理・ベッドメイク・日用品の買い物など身体介護:服薬の介助・食事、入浴、排せつの介助・衣服の着脱・おむつ交換・外出・通院の付き添いなど通院等乗降介助:乗車や降車の介助・通院先での受診手続きなど訪問看護看護師などが自宅へ訪問し、医療サービスを行う血圧測定・注射・服薬管理・リハビリテーション・清潔指導など訪問入浴介護介護職員や看護職員が自宅へ訪問し、入浴車や持ち込んだ浴槽で入浴介助を行う訪問リハビリテーション理学療法士が自宅へ訪問し、自宅でリハビリテーションを行う訪問サービスを利用することによって、高齢者の見守りとしての効果が期待できるほか、他の人との交流につながるため、孤立の予防に効果が期待できます。②在宅介護を続けるために通所サービスを利用する通所サービスとは、介護サービスの内容は先に紹介した訪問サービスと大きな違いはありませんが、自宅ではなく、施設に通う通所介護(デイサービス)や通所リハビリテーション(デイケア)のことを言います。通所サービスを利用するおもなメリットは、以下の通りです。通所施設で知り合った方との交流が図れ、生きがいや元気につながる通所サービスの間、家族は介護から解放される認知症の方に対応した施設もあるため安心通所介護は、介護をする家族にとって自分の時間を作ることができるため、先に紹介した訪問サービスと合わせて通所サービスを利用される方も多くおられます。そのため、自分たちのライフプランや時間を考慮した介護サービスの利用の仕方や工夫が大切になってくると言えます。③在宅介護を続けるために短期入所サービスを利用する短期入所(ショートステイ)サービスは、介護を必要とする方が一時的に施設に入所して介護サービスを受けるものになります。ここで言う一時的というのは、おおむね1週間程度ですが、この間、介護に追われる家族としては、介護から解放されることになるため、介護疲れが深刻になった場合や介護者が入院した場合などは、利用を検討されるのも良いでしょう。ただし、短所入所サービスを利用する場合には、施設に入所する本人の意思を尊重した判断が必要であるほか、認知症を患っている方は、認知症が進んでしまう恐れがある点も視野に入れた工夫が必要となってきます。④介護支援にかかる助成サービスを利用する介護保険を利用した介護サービスが必要になる場合、車いすや歩行器などの福祉用具が必要となる場合が多くなるほか、自宅を改修する、住宅改修やリフォームをする方も少なくないと思われます。このような場合において、福祉用具の貸与や住宅改修に対して助成があったり、リフォームをすることで税優遇が受けられたりもしますので、これらの活用予定がある場合は、ケアマネジャーなどの専門家をはじめ、FPや税理士などの専門家のアドバイスを取り入れるようにしたいものです。まとめ介護が必要な家族がいる場合は、介護保険を使って在宅介護をするところから始まることと思われますが、在宅介護の介護サービスの利用の仕方や工夫によって、周りの家族の負担が大きく変わることは確かです。介護が一度始まりますと、基本的に介護者が亡くなるまで続くエンドレスとなるのが通常であることを踏まえますと、それに向けた事前準備や介護の基本的な知識を持っておくことも大切だと言えます。特に、お金の面につきましては、毎日の生活に直接影響を与えることになるため、介護する側、介護される側の双方が危機意識を持った準備をしておくことが極めて重要になると言い切れます。
2018年12月07日「へそくり」と聞くと、本に挟んでおく、タンス預金など、ちょっとお金を隠しておくというイメージがありますよね。しかし、シニア層のへそくり事情は、どうもイメージと違うようなんです。自分の欲しいものを買ったり、美味しいもの食べたりと、自分の楽しみに使うというよりは、もっとリアルな考えで貯めているみたいです。今回は、そんなシニア夫婦のへそくりについてのお話です。■ 平均額は436万円!シニア層の半数以上が「へそくり」アリ「株式会社ハルメク」は、60~79歳の婚姻関係のあるシニア男女437名を対象に「夫婦関係とへそくり」に関するアンケート調査を実施しました。まずは、シニア層のへそくり事情を見ていきましょう。なんと、シニアの半数以上である53.5%が「へそくりを貯めている」と回答しています。佐竹 美幸 / PIXTA(ピクスタ)そして驚きなのはその額。平均へそくり額は436万円。茶封筒にそれほど多くはない額のお金をこっそり隠しておく、という筆者のイメージとは別物でした。shu / PIXTA(ピクスタ)実は30代男性の大卒・中小企業勤務者の平均年収に相当するかなりの金額を貯めているようなんです。”へそくり”とは、パートナーに明かさない内緒にしているお金の存在として解釈すると、これだけの額を貯めているシニア層はかなりのやりくり上手といった印象を受けます。■ 男性は平均330万円、女性は514万円!「へそくり」の額は女性の方が圧倒的に多い次に、男女のへそくり額を比較してみましょう。男性は平均330万円、女性は514万円であり、女性は男性の1.6倍もへそくりを貯めているようなんです。Deja-vu / PIXTA(ピクスタ)ドラマなどでも、へそくりでブランドバッグを購入……など妻がよくやっているイメージもあり、やはり女性はへそくりを貯めるのが上手!と筆者は感じてしまいました。th1215 / PIXTA(ピクスタ)しかしシニア女性がへそくりを貯めるのは、”配偶者の財産管理に対する不信・不安”、そして”男性より長生きするリスクへの備え”などシビアでもっとリアリティのある理由があるようなんです。確かに、女性の方が平均寿命が長く、”残されるのは私”という思いが強い妻たち。xiangtao / PIXTA(ピクスタ)”へそくり=いざというときの安心材料”としての要素が強いことが分かりました。■ 不仲夫婦ほど「へそくり」の額は多い半数以上がへそくりがあり、その額は女性ほど多く、そして自分が生きていく上で困らないようにするためのお金としての性格を持つシニア夫婦のへそくり事情。なんと、このシニア夫婦のへそくり、不仲であるほどその額が多いようなんです。夫婦仲とへそくり額の傾向をグラフで見てみると、不仲夫婦の「妻」は平均で898万円もの「へそくり」を貯めている驚きの結果が明らかとなりました。仲良し夫婦の妻と比べると、その差は400万円。プラナ / PIXTA(ピクスタ)不仲夫婦の夫が「妻は一人では生活できない、離婚をいってこないだろう」と危機感が薄い一方、「妻」は「親としての責任は終わった……夫はなにもできない」など着実に「へそくり」を貯め、離婚などもしもの時に備えているようです。シニア夫婦の不仲、その延長にあるのは”熟年離婚”……。ちょっと心配してしまいましたが、回答者の意見を見てみると一度は離婚を考えても、実際は「離婚しない」人が大多数。何十年も生活を共にし、家族のいい時も悪い時も一緒に乗り切ってきた夫婦。もしもの時のへそくりはあっても、離婚という決断をされる人は少数派のよう。Rina / PIXTA(ピクスタ)へそくりと聞くと「隠し事!?」と思ってしまいますが、”備え”の要素が強いシニア夫婦のへそくり。自分が将来なるのであれば、”へそくりを貯める仲良し夫婦”でありたい、と思われた方も多いのでは?普段から良好なコミュニケーションを心がけること、相手のお金の遣い方に不安があれば改善策を一緒に考えることなど普段から風通しのいい夫婦関係を築くことが重要であると感じます。【参考】※【調査リリース】60代・70代のシニア男女に聞いた「夫婦関係とへそくり」に関する調査/不仲夫婦の方が「へそくり」額が多い結果に
2018年10月30日「教育資金について、『情報格差』を感じます」とおっしゃるのは、教育資金の相談を数多く手掛けてきたファイナンシャルプランナーの竹下さくらさん。いまの時代、教育資金作りに必要なことのひとつとして、「情報力」があげられます。必要な情報を集め、「わが家のライフプラン」にそれを落とし込んでいく力が、情報力です。そのために、ママたちが本当に知っておくべき、教育資金づくりの「勘どころ」について教えていただきました。【「教育費どうしようかな?」と思ったら】 第1話 “情報格差”で、子どもの進路に影響が出る!? 第2話 普通の進路でも、老後破産する!? その落とし穴とは 第3話 児童手当が大学資金に! “いつの間にか貯まる”教育資金ワザ 第4話 「もらえる」教育費がトレンド! 充実の教育支援制度を活用するには -->■普通の家庭で普通の進路でも、老後破産する!?少し唐突ですが、「人生の三大資金」と呼ばれているお金について、ご存じでしょうか?答えは、「住居費」「教育費」「老後資金」です。毎日、子育てに追われているママたちにとって、「老後」なんて、はるか遠い話ですよね…。ただ、「年金がもらえない」「老後破綻」といった言葉は、何となく気にはなっているのではないでしょうか? 前回にも書いたとおり、「教育費」と「老後資金」は、綱引き関係にあります。たとえば、年収500万円のご家庭で、子供二人が平均的な進路を歩んだ場合を竹下さんに試算をしていただきました。結論からお伝えすると、次の設定条件では、83歳で貯蓄が枯渇してしまいました…。そう、老後破綻です。「一般的な家庭」で、「二人の子」が「平均な進路」を歩んだ場合でも、2つの落とし穴があるということ。「落とし穴」とは、何年も続いて赤字となってしまう期間をいいます。1つめは教育費のピーク時(夫50歳~56歳:「貯蓄残高の推移」図のAの部分)、そしてもう1つは60歳以降の期間です。Aの部分は教育費のピークが終わり退職金で補填されることで乗り切れますが、60歳以降は、貯蓄を切り崩すしか術がないので、Bの部分(「貯蓄残高の推移」図)である83歳で資金が枯渇してしまうのです。▼夫婦二人+子供二人のキャッシュフロー例<資産の前提条件>家族プロフィール:夫(30歳、会社員)、妻(27歳、専業主婦)年収:夫500万円~、年間の生活費:360万円、住まい:賃貸、現在の金融資産残高:200万円子ども1人目:私立幼稚園→公立小・中・高校→国立大学(自宅外)子ども2人目:私立幼稚園→公立小・中→私立高校→私立大学(文系・自宅)■老後破産しない教育資金の立て方とは竹下さんは言います。「金融庁のデータによれば、多重債務の一番の原因は、『生活費・教育費等』の不足です」。前述の「二つの落とし穴」に落ちてしまわないよう、教育費で大切なことは、「資金計画」をきちんと立てることです。大切なことなので、もう一度、書きますね。老後破綻にならないために大切なことは、教育費資金のかけすぎで、「二つの落とし穴」に落ちてしまわないよう、あらかじめ資金計画を立てておくことです。教育資金や老後資金は、巨額なお金。日常の生活費とは「金額」「スパン」が違いすぎて、つい「何となくなるだろう」と思考停止してしまいます。でも、本来は、きちんとしたライフプランニングが必要な種類のお金です。ライフプランニングとは、金銭面からの生活設計を考えてみること。筆者が「ライフプランニング」という言葉を最初に聞いたのは、いまから20年前、20代の後半の頃でした。そのときは、「人生なんて思うどおりにならないよね? そんなことをして、意味があるの?」と感じました。「計画どおりの人生なんて、つまんない!」とすら思っていた、当時の自分がまぶしい(笑)。あれから20年。子どもが生まれ、その子たちが中高生ともなれば、教育費はイヤでもかかってきます。そんな現実を生きている今、ライフプランニングの大切さを骨の髄まで感じているのも事実です。■教育費の総額はいくら?では、教育資金のライフプランニングをするための第1歩は、何なのでしょうか? それは、「どんなコースを歩むと、それくらいお金がどれくらいかかるのか?」ということをザックリと知っておくことです。次に、教育費の「コース別概算」を一覧表にしてみました。各ルートの教育費の中身については、今回の参考文献とさせていただいた竹下さんの著作に詳細があります。平均データを把握したら、「わが家の場合は、ここをもう少し多めにした方が良いな」など調整をしながら、より現実的な金額へと絞りこんでいきます。こういったことを、家庭運営のできるだけ早い時期に考えてみることが、「ライフプランニングをすること」なのです。▼教育費の総額(概算)■「学費」と「受験にかかる費用」が「教育資金」の2本柱教育資金のプランニングには、「学費」と並ぶ大きな柱として、「受験にかかる費用」があります。つまり、塾代、予備校代です。ウーマンエキサイトの読者世代の場合、「小学校受験」にかかる費用や、「中学校受験」の塾代の目安が気になるところですよね。▼小学校受験にかかる費用▼中学受験の塾代■中学受験塾に通い始めたら、私立中高を覚悟する中学受験のための塾代は、3年間の総額で200万円は超えると言われています。ちなみに、ファイナンシャル・プランニング的には、私立中学校・高校の学費水準について、「6年生の塾代を無理なく払えるご家庭なら、中高6年間の『学費』についてはクリアできそう」(竹下さん)という判断があります。 逆に、4年生から「なんとなく塾通いを始めた」ものの、5年生、6年生に上がるにつれて家計がキツキツというご家庭の場合、収入アップの手立て(専業主婦家庭であれば妻がパートにでるなど)は早めに検討することをおすすめします。なお、中学受験の勉強をスタートした頃は、「希望の中学校に受からなかったら公立へ」と考えているご家庭は多いものです。けれども、5年生、6年生、そして中学受験と、さまざまな「試練」を体験したことで、「ここまでがんばったのだから」と、すべり止めの私立中学校へ進学するご家庭も多いと思います。塾からの子どもへの刷り込みもあるので、「全部落ちた場合でなければ、公立には進学しない」くらいに思っておいた方が、現実に即していると筆者は感じます。竹下さんも、「いったん中学受験の塾に通ったら、中学校・高校の6年間は私立の学費で見積もっておいたほうが無難です」とのことでした。次回は、いよいよ教育資金づくりの具体的な方法についてお話しを伺います。■今回のお話を伺った竹下さくらさんのご著書 『「教育費をどうしようかな」と思ったときにまず読む本』 竹下さくら著/日本経済新聞出版社 ¥1,500(税別)竹下さくらさんファイナンシャル・プランナー(CFP)。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。慶応義塾大学商学部にて保険学を専攻。卒業後、損害保険会社・生命保険会社の本店業務部門等を経て、1998年よりFPとして独立、現在に至る。主に個人向けのコンサルティングに従事し、講師・執筆活動なども行っている。
2018年09月27日安全で儲かる投資と思っていたのに、老後のためにコツコツ貯めたお金が消えてしまった――そんな悲劇を避けるにはどうすれば?専門家に聞いた。負債1,053億円、債権者数約3万4,000人――。3日に破産を申し立てた「ケフィア事業振興会」は、干し柿やヨーグルトなどの加工食品のオーナーになれば、約半年で8~10%の利息を支払うとして会員を募集。今回の破綻で、少なくとも340億円あまりの投資金が戻ってこない事態になっている。被害対策弁護団のひとりで、リンク総合法律事務所の中森麻由子弁護士が解説する。「仕組みは複雑ですが、典型的な会員制オーナー商法です。投資した人の8割は60歳以上の高齢者で、そのほとんどが“投資に慣れていない女性”という印象をもちました。5年以上にわたって金利が支払われてきたこともあり、銀行に預けているという感覚で信用していたようです。老後のために貯めておいたお金を投資した方が多く、被害額が1億円を超えた例も。みなさん長年にわたって出資してきたので、被害額の平均は100万円を超えていると思われます」’11年にはじまったケフィア事業振興会のオーナー制度。昨年11月から、会員への配当や元本の支払いが遅れ、訴訟問題に発展した。同社の鏑木秀彌社長は、いまだ公の場に姿を現していない。今回の事件は、これまでの高齢者を狙った詐欺事件と少し異なっているという。被害者の相談に乗っている名城法律事務所の正木健司弁護士が語る。「パンフレットを郵送するだけで直接対面しての勧誘があるわけでもなく、マルチ商法のように、人を紹介したら紹介料が入るというものではありません。金塊や健康器具、和牛などの高額商品ではなく、干し柿やジュースなどの加工食品の通販を入口にして、1口5万円からと、ハードルが低いことが特徴です。それに加え、約半年後に最大10%もの異常な高利を、長年支払い続けたことで出資者を安心させました。しかし、このビジネスの実態は、新規で集めた資金を、前に契約した人への金利に回している自転車操業のようなものです。とくに破たんが確実になった昨年11月以降も、商品数を増やしてさかんにダイレクトメールを送ったり、世界的なサーカスの貸切り公演や音楽祭の計画などで経営状況をよく見せたりして、会員からさらにお金を“搾り取ろう”としていた。支払いができないと認識しながら、出資を募っていた場合、詐欺罪に当たる可能性があります」超低金利のなか、退職金を資産運用しようとするシニアを狙った投資詐欺も急増している。上級ファイナンシャルプランナーの北川邦弘氏が警鐘を鳴らす。「60代のご夫婦には、退職金という、これまで手にしたことがない大金が入ることで、冷静な判断力を失う方がいることは確かです。まず提案をされた金融商品の金利に注意すべき。銀行の普通預金が0.05%という低金利の時代に、100倍となる年利5%の商品が存在するわけがありません。元本保証で高利回りなど、低リスク高リターンをうたうものほど、詐欺の可能性があります。また、なぜ金利が高いのか、なぜ儲かるのか、仕組みがわからないものには手を出さないほうがいいでしょう。勧誘のときに専門用語や難解な言葉が出てきますが、自分で理解できない話には乗ってはいけません。さらに、金融商品を扱う会社は、行政の監視下に置かれ、金融庁に登録する義務があります。契約を交わそうとしている会社の登録状況を確認することも大切です」最後に中森弁護士が語る。「『ケフィア事業振興会』は、詐欺目的で創立された会社ではないと見ています。しかし、オーナー制度による資金集めがうまくいったことから、事業を広げ、けっきょく、今回の悪質な投資トラブルを引き起こしました。そんなトラブルに巻き込まれないためには、“こんなにおいしい話があるわけない”と疑ってかかる心が大事。疑問があったら、家族や近くの消費生活センターなどに相談したほうがいいでしょう」虎の子を狙う投資詐欺。専門家の話をもとに、だまされないための10カ条を作成した。【1】「元本保証、金利5%超」などはすべて疑う【2】「少額でもできる」「1口◯万円~」に要注意【3】なぜ儲かるか理解できないものには手を出さない【4】コンサートへの招待や有名人を使った宣伝にだまされない【5】立派な社屋や施設を持っていても安心ではない【6】社会貢献や健康などのうたい文句に注意【7】5年以上金利が払われていても、突然破たんすることはある【8】急に勧誘が激しくなったり、商品数が増えたら危ない【9】業者が金融庁に登録しているか確認する【10】不安に思ったら、第三者にすぐに相談するこれを心に刻み、老後の資金計画を立てよう。
2018年09月13日子どもを作らず、2人で一生を過ごす選択をする夫婦も増えている現代。子どものいない夫婦の老後は、いったいどうなるのでしょうか。老後について考えなければいけないことと必要な貯金額についてまとめました。子なし夫婦の老後について子どもがいると、子どもや孫を通じて交友関係も広がりますが、いない場合はやはり夫婦ふたりでの生活がメインになると思います。老後で考えないといけないことは、たくさんあります。例えばどちらかが「介護」となった場合、老々介護となってしまうため外部へ委託する必要があります。また片方が大病を患ったときに、病院へのお見舞いやケアなどもひとりで手配しなければいけません。そういった不安な気持ちを共有する人が少ないために、一人で抱え込んでしまう可能性も。どちらかが亡くなったときやお墓の管理、遺産相続なども話し合っておく必要があります。いざというときにひとりで困らないためにも、さまざまな外部サービスや頼る先の確保が必要です。子なし夫婦の場合は子どもにかけるお金がない分、老後の資金も多く用意できている可能性が高いと思います。定年後は夫婦で旅行に行ったり趣味をしたりと、楽しみもたくさん用意されています。ただし、生活費が足りなくなっても仕送りをしてくれる人がいないので、計画的に使うようにしましょう。とにかく老後を楽しく暮らすためには「貯金」が大切です。 老後に必要な貯金額厚生労働省の「平成28年簡易生命表」によると、平均寿命は男性では80.98年、女性では 87.14 年です。定年が60歳だとすると、20年は年金や貯金を使っての生活になるでしょう。生命保険文化センターの「平成28年度 生活保障に関する調査(速報版)」によれば、「ゆとりある老後生活費」は月額34.9万円。これは、公的年金や個人年金で賄うのは難しい金額といえますね。そして、総務省統計局の「平成29年度家計調査報告世帯属性別の家計収支(二人以上の世帯)」のデータを見てみると、高齢夫婦の無職世帯は年金を受給していても収支のバランスとして毎月マイナスが出ているようです。マイナスの平均額は約50,000円ほど。年間では年間600,000円となりますから、20年で12,000,000円は不足すると予想できます。ただし、この金額はギリギリの数字。日々物価も上昇していて、もらえる年金額はこれから下がっていくと言われています。さらに子どもがいないため、困ったときや介護などは外部サービス、老人ホーム頼みになるので、生活資金以外のお金も必要になってきます。目安として3,000万円以上の貯金は必要なのではないでしょうか。老後に必要な金額について詳しくはこちらもご覧ください。> 貯金はいくら必要?子なし夫婦に必要な老後の資金 まとめ結婚したからといって、必ずしも子どもをつくらなければならないということはありません。子なしで夫婦2人の時間を時間を楽しむ選択もあります。ただし、楽しい老後を過ごすためにも、貯金は必ず用意しておくようにしてくださいね。 参考:厚生労働省離婚に対する統計厚生労働省「平成28年簡易生命表」国立社会保障・人口問題研究所:第15回出生動向基本調査
2018年08月25日厚生労働省が発表した、平成29年度の日本人の平均寿命は男性81.09歳、女性87.26歳。このデータを今からおよそ30年前の平成2年と比較すると、男女ともに5歳以上も平均寿命が延びているんです。長生きできる社会ほど素晴らしいものはありませんが、そのぶん気になるのが老後の生活資金のこと。皆さんどのように考えているのでしょうか?■ 世代別調査で分かる!60歳代・70歳代の生活資金の想定は?株式会社インテージリサーチが全国の16~79歳の男女1万1217人を対象に「老後の生活資金に関する意識調査」を実施。自身が60歳~70歳になったときの生活資金は”自分が稼いだ収入”、”貯金”、あるいは“公的年金”などどのような資金であると思うかについてアンケートをとりました(60歳以上の人は生活資金源は何だったか)。60歳代の生活資金の想定60歳代の想定を見てみると、「働いて稼いでいる収入」を生活資金源とする回答が47.5%。また、47.0%の人が「公的年金」と回答しています。Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)60歳代といえば定年退職を迎える世代ですが、この年齢ではまだまだ働いている(働かなければならない)と想定する人が多く、70歳代以降に定年をイメージされている方が多いのでしょうか。70歳代の生活資金の想定一方で70歳代の生活資金の想定を見てみると、「公的年金」が最も高く、67.7%。akiyoko / PIXTA(ピクスタ)さらに、60歳代のアンケートと比較すると「個人年金」の割合も増加しており、老後の資金源の想定は労働収入から年金へとシフトしていることが分かります。しかし、70歳代のアンケートでも39歳以下の若い世代は生活資金の想定を「公的年金」とする回答は4~5割台にとどまっています。一方で、「貯金」を資金と想定する割合は約半数超え。花火 / PIXTA(ピクスタ)少子高齢化社会を生きる若い世代は「年金だけをあてにしない」傾向が強いことがグラフから見て取れます。■ どれくらいを希望?定年退職後の「賃金」全世代で半数以上が”自分で稼いだ収入”を老後(60歳代)の生活資金と想定していることが明るみになった今回の調査。そこで気になるのは再雇用後の収入額。厚生労働省の「高年齢者の雇用・就業の現状と課題」によると、1000人以上の雇用者規模の企業において、定年後、継続雇用の際の給与水準が50%以上減少した、との回答が3割以上にのぼったというデータもあります。では、定年退職後の就労に関してみなさんどのくらいの時給を希望しているのでしょうか?定年退職後就労時の希望時給額回答者が60歳以上の場合、希望する時給額が低下する傾向があり、60~70歳代の半数が「1,000円未満、または1,300円未満の時給でも働き続けたい」と回答しています。SoutaBank / PIXTA(ピクスタ)確かに、定年後の給与は企業によってバラつきがあり、多くは正社員ではなく自社の正社員以外(嘱託社員・契約社員・パート)で雇用されることがほとんど。他社へ再就職も厳しいとなると、自分の希望の時給より低い場合でも働き続けたいと思う人が多いことが窺えます。■ 生涯現役社会の実現現在70歳以上まで働ける企業の状況は、全国の常時雇用する労働者が31人以上の企業156,113社中、35,276社、割合にして22.6%にも上ります。平均寿命が延びるに伴い、定年退職後の人生も延長。それにより公的年金のみで退職後の生活費を賄うことは、少子化も背景にあることから不安は拭えません。freeangle / PIXTA(ピクスタ)一方で定年後に働き続けることに対しポジティブな姿勢がうかがえ、昔と比べると多趣味で若々しいイメージの高齢者たち。kotoru / PIXTA(ピクスタ)今後は高齢者の能力や経験に見合った労働環境の整備、賃金形態の構築を推進していくことが急務であると考えられます。【参考】※老後の生活資金、「年金」より「労働」や「貯金」で!?10~20歳代は特に「公的年金だけをあてにしない」傾向全国1万人の意識調査※平成29年度簡易生命表の概況-厚生労働省※高年齢者の雇用・就業の現状と課題2 – 厚生労働省※平成29年「高年齢者の雇用状況」集計結果-厚生労働省
2018年08月24日老後の出費がどれくらいになるか、不透明な昨今。ある程度、保障内容をスリムにしてもいい家族構成になったら、保険で家計見直しをするチャンスかもしれない。 「家賃、通信費、食費、光熱費に並ぶ固定費として、家計を直撃するのが保険料。子どもの教育費がかかる時期は、働き手になにかあったときのために保障はある程度必要です。しかし、親が50歳くらいになって子どもの自立が見えてきたなら、死亡保障も減らして身軽になっていいでしょう。その際、選択肢に入ってくるのが共済です。50歳前後となれば、いざ見直しをしようと思っても保険料は高額。共済は年齢や性別の区別なく一律で、2,000〜5,000円程度の安価な掛金で、しかも幅広い保障が受けられるんです」 そう語るのは、All Aboutマネーガイドの平野敦之さん。年金減や消費税増税など負担増に備え、出費を減らしたい方には、家計の見直しの“切り札”にもなりうるのが共済だという。 「共済では、生保・損保会社の『保険料』を『掛金』、『保険金』を『共済金』というように表現の違いはありますが、相互扶助という仕組みの面では、どちらも違いはありません」 営利団体である生保や損保は全国から契約者を募ることができる。ただし、非営利団体である共済は、加入に際して居住地域や一部の企業の社員、組合員に限るなどといった制限がある。 「しかし都道府県民の共済は、その都道府県に居住していたり職場があれば加入できるし、佐賀県、高知県、福井県など一部存在しない所もありますが、多くの都道府県にあるので、対象者は多いはず。全労済やコープ共済は全国展開しており、それぞれ数百円の出資金を出して組合員となれば、加入することができます」 今回は加入者が多い都道府県民共済と、全労済(こくみん共済)、コープ共済について、平野さんとファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんに、解説してもらった。 「都民共済は、ブライダルの割引、こどもの日の兜やランドセルの割引など、付帯サービスがあります。全労済は自動車保険や火災保険、地震保険などに相当する共済があるなど、カバー範囲が広い。コープ共済は女性向けの商品や、100万円、200万円の一時金が出るがん特約があるのが特徴です」(風呂内さん) 風呂内さんは、これら各共済に共通するメリットがあるという。 ■高齢で加入しても、掛金は上がらない 「各共済によって多少の違いはありますが、一部商品を除き1カ月の掛金は2,000〜5,000円ほどです」(平野さん) 生命保険の場合は、医療保険でも死亡保険でも、5歳ごとに年齢を区切るなどして、加入時の年齢が上がるごとに保険料が高くなる構造になっているが……。 「共済は年齢群団方式といって、加入時の年齢や性別の区別なく、一律の掛金であることが大きな特徴です。20歳前後の若い人からすると“なんで50歳と同じ掛金なんだ”と不公平感を抱くかもしれません。ある程度の年齢、たとえば50歳くらいで新たに保障を受けたいというのなら、掛金は安く済みます」(平野さん) 高齢で加入するほどおトク感が増すということだ。 「都民共済の『総合保障型』の掛金2,000円の内容は、生保なら特約もありますので、50歳女性で1万円くらいになりますね」(風呂内さん) ■加入条件が緩和されている 自分では健康なつもりでいても50代ともなれば、だいぶ体にガタが来ている。血液検査の数値を見れば、自覚はなくとも、基準値をオーバーしている項目もあるはずだ。 「この年代で保険に入ろうとすると、血圧が高く、医師の診査を求められることもあります。保険は健康状態が重要で、契約に条件がついていて加入できないと、保険料が高い“緩和型”を選ばざるをえないケースもあります。いっぽう、共済は告知義務はありますが、医師の診査は不要で加入が簡素化されているケースが多いです」(平野さん) 全労済のホームページには「今まで高血圧の治療中を理由にご加入を諦めていた方も加入しやすくなりました!」とある。 「’16年10月に制度改定してから、一定の条件をもとにお引き受けできるようにしています」(全労済広報室) コープ共済の広報部もこう語る。 「高血圧の場合、高血圧が原因で過去5年間に入院していない、一定の数値でコントロールできているなどの加入条件を満たせば加入できる制度があります。商品やコースを問わず、加入できる間口を広げています」 都民共済担当者はーー。 「個々のお話をうかがって、相談しながら、条件をつけさせていただくこともあります」 いずれも加入となった場合、病気ではない人と同一の掛金となる。 さまざまなメリットのある共済。もちろん、共済にも注意点がある。 「掛金と同様に保障内容もずっと変わらないと考えている人が多いようです。しかし、注意が必要です」 と生活マネー相談室の八ツ井慶子さんは言う。確かに都民共済の「総合保障4型」を見ると、同じ掛金なのに、18〜65歳までの病気による病気入院保障額は1日あたり9,000円なのに対し、熟年4型に移行すると、65〜80歳で5,000円、80〜85歳では0円になる。 「高齢期になると保障内容が薄くなります。高齢になっても手厚い医療保障を求めるのなら、共済ではなく生命保険会社の終身の医療保険のほうが適しているでしょう」(八ツ井さん) 平野さんはこう語る。 「共済は掛金が安く、割戻金がある分、貯蓄に回すお金もできます。1カ月内で一定額を超えた医療費が返金される高額療養費制度という公的制度もあります。ある程度まとまった医療費を貯蓄できれば、80歳で保障が薄くなった共済を、継続する必要はなくなるかもしれません」(平野さん) 保障内容が薄くなる分は、安い“掛金”で浮いたお金でまかなう。貯蓄しておけば、老後のあらゆる出費にも回せるという。共済のメリット・デメリットを考慮して、今加入している保険の見直しを考えてみては。
2018年05月31日老後の生活と聞くと、まずイメージするのが「定年」、そして「年金」。現在の定年は65歳とされていますが、65歳を超えても現役で働いていらっしゃる方は珍しくありません。一方で引退後の暮らしを支える「年金制度」は、予測できない将来のリスクを社会全体で整え、生活を保障していくものであるとされています。しかし、その仕組みの複雑さから自分がいつから、いくら貰えるのか、分からない人も多いというのが現実。皆さんはこの引退年齢と年金についてどう捉えているのでしょうか?働く主婦にそれらの意識について聞いてみました。freeangle / PIXTA(ピクスタ)■ 理想の引退年齢は30%が65歳以上!まさに生涯現役社会の到来!?働く主婦層を対象にした「引退年齢と年金」のアンケートによると、自身の理想の引退年齢は、65歳以上が30.1%とトップ。cba / PIXTA(ピクスタ)次いで、70歳以上が27.7%。全回答者の平均は68.4歳という結果となりました。驚くことに80歳以上を理想の引退年齢と回答された方は10%に上り、高齢になっても働きたいとするポジティブな考え方が印象的です。■ 70歳以降の「年金受給開始年齢の選択可能案」に40%が反対!自身の理想の引退年齢について、全体的に“長く働きたい”という傾向がみられました。しかし、政府が検討している「年金受給開始年齢を70歳以降でも選択可能」という案について賛成か、反対かについての回答を見てみると……。反対派が40%にのぼり、賛成、分からないと回答した人はは3割という結果に。Rina / PIXTA(ピクスタ)反対派の理由としては定年年齢と支給受給年齢が同時でないと意味がない何歳まで生きられるか分からないなどが挙げられます。nonpii / PIXTA(ピクスタ)逆に賛成派・分からないと回答人たちは、昔の70歳より今の人は若いそうしないと年金制度が維持できない受給開始年齢が選択性であれば問題ない元気でいれば賛成、病気になれば反対生活の状況によって決めるべきという回答が挙がりました。自身の引退年齢の理想はポジティブな姿勢が感じられる反面、受給開始年齢については回答の内容から年金ついての不安が感じられる。ここに、大きなギャップが生じていることが分かります。■ 老後の蓄えを知るには、年金の見込額を確かめることが大事!ahirun / PIXTA(ピクスタ)なるべく長く働きたいが、高齢者が働く環境は整っているかが分からない。将来自分がどれくらい長生きできるのか分からないため、受給開始の年齢はいつがベストなのか今現在は不明。しかし、少子化が進む現在、年金制度を支える人口はこれからも減少していくのは事実です。ahirun / PIXTA(ピクスタ)老後の備えについての考え方は人それぞれですが、まずは生活基盤となる年金をいくら受け取ることができるか、見込額を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。例えば、『日本年金機構』の「ねんきんネット」であれば現在の仕事状況や、今後の働き方なとの試算条件に回答すると、見込み額の把握が可能となります。ねんきんネット以外にも見込み額のシミュレーションなどはインターネットで可能です。見込額を把握することは、将来の幸せを考えるきっかけの1つになると言えるのではないでしょうか。いかがでしたか?筆者も高齢になっても、働き口があるのであれば少しでも働いていたい派です。高齢になっても働きたいと考える人が多い現代、この状況をプラスに捉え、近い将来高齢者が働くことができる場所や環境が整うことを期待したいですね。【しゅふJOB総研調べ】【参考】※<年金もらうなら65歳?68歳?70歳?>働く主婦に『引退年齢と年金』に関するアンケート/理想の引退年齢:平均値68.4歳※公的年金制度の概要-厚生労働省※年金見込額試算-日本年金機構
2018年05月16日子どものいない夫婦は、養育費や教育費といった子どもに関する費用が掛からないため、子あり夫婦に比べると生活に余裕が生まれそうなイメージ。ただ、気になるのが「老後のこと」ですよね。年々珍しくなくなっている子なし夫婦ですが、老後の生活費や貯金はどのくらいあれば良いのでしょうか。今回は子なし夫婦の老後にフォーカスを当ててみます。 老後の生活費はどのくらい?厚生労働省の「平成28年簡易生命表」によると、平均寿命は男性では80.98年、女性では 87.14 年となっています。定年が60歳だとすると、少なくとも20年はセカンドライフの期間があるということ。子どもがいないため夫婦でゆっくり暮らせる老後ですが、生活費などお金の面ではどうなってしまうのでしょうか。まず、基本的に定年となるのは60歳ですが、年金は65歳からの支給になります。その間のつなぎとして、65歳まで「再雇用」といった形で働くことができる企業が多数あります。収入は現役時代よりも少なくなりますが、子どもがいない夫婦は自分たちだけの収入で生活していく必要があるので、65歳まで働いたほうが安心です。それから年金生活となるのですが、総務省統計局の「平成29年度家計調査報告世帯属性別の家計収支(二人以上の世帯)」のデータを見てみると、高齢夫婦の無職世帯は毎月平均263,717円の支出があり、54,519円の赤字になっているそうです。生命保険文化センターの「平成28年度 生活保障に関する調査(速報版)」によると、「ゆとりある老後生活費」は月額34.9万円だそうです。公的年金や退職金だけでは、何年間も賄えそうにありませんね。 理想の貯金額それでは65歳になるまでに、老後資金はいくら必要なのでしょうか。先ほど平均寿命が男女共に80歳以上だとお話ししましたが、現在100歳の人も珍しくありません。95歳まで生きると仮定して、老年資金が30年間必要だとします。赤字が54,519円だったので、年間約65万円が30年だとすると、必要額は最低でも1950万円以上。ゆとりある老後生活を送りたいなら、赤字は139,802円になるので、年間約168万円が30年で5,000万円以上必要ということになります。また、夫が先に亡くなってしまったときのこともも考えておきましょう。妻は、夫が受給していた老齢厚生年金の一部を「遺族厚生年金」として、自分の老齢基礎年金に上乗せすることができますが、それでも何かあったときに不安ですよね。日々物価も上昇していて、もらえる年金額はこれから下がっていくと言われています。さらに子どもがいないため、困ったときや介護などは外部サービスや老人ホーム頼みになるので、生活資金以外のお金も必要になってきます。最低でも3,000万円以上貯金しましょう。ちなみに子ども1人育てるのに必要な額は3,000万円以上だと言われています。子どもがいないからといってその分お金を使っていると、老後になって慌てることになってしまうかも。今から老後資金を貯めておきましょう。 亡くなったときのことを考える考えたくはありませんが、考えなければならないのが亡くなったときのこと。その中でも気になる「相続」と「お墓」のことについてご紹介します。まず相続について。配偶者は常に相続人となり、次に子どもが優先されます。ただ、子どもがいない場合は複雑です。例えば子なし夫婦の夫が亡くなった場合、夫の直系尊属(父母や祖父母など)が相続人、直系尊属がいない場合は、夫の兄弟姉妹が相続人となります。取り分は以下のとおり。配偶者と直系尊属が相続人の場合配偶者2 / 3、直系尊属(2人以上のときは全員で)1 /3配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合配偶者3 /4、兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)1 /4夫の親族とお金の問題で関わることになるので大変です。夫が遺言で「全財産は妻に」という趣旨のことを記しておけば、相続で悩むことも少ないかもしれません。ただ、その後妻が亡くなった場合、夫婦の全財産が妻側の直系尊属か兄弟姉妹へいくことになるため、夫の親族からすれば不満につながることも。死後の揉めごとを避けるために、夫婦で遺言を残しておく必要がありそうです。そして死んだ後に入るお墓について。子どもがいないため、供養されないのではと不安になりますよね。将来的な管理も気になるところ。「永代供養墓」というものがあるのをご存知ですか。お寺や霊園が家族の代わりに供養や管理をしてくれるお墓です。一式の費用を支払うだけで良いので安心です。また、「樹木葬」というものもあります。許可を得た専用の敷地に遺骨を埋葬し、墓石の代わりに樹木を植えます。こちらも一式の費用を支払うだけ。ペットの骨と一緒に埋葬できるところもあるので、さまざまな家族の形に対応しています。 子どもがいないということで、老後はさまざまな不安があるかもしれません。とりあえずすべきことは、お金を貯めておくことと、夫婦で老後の過ごしかたを話し合い、相続やお墓についても決めておくこと。子どもがいる・いないに関わらず、いつなにが起こるかわからないので、準備はしっかりしておくといざというときに安心です。素敵な老後が過ごせるとよいですね。 参考:人生100年時代突入?老後の不安を軽くする3つの考え方平成28年簡易生命表の概況老後の生活費は年金プラス月5万円で安心家計調査報告(家計収支編)―平成29年(2017年)平均速報結果の概要―「平成28年度 生活保障に関する調査(速報版)」まとまる子ども1人にかかる費用は3000万円もかかるって本当?老後の生活費27万円、貯蓄額2080万円相続人の範囲と法定相続分永代供養墓とは樹木葬とは
2018年05月15日厚生労働省の「平成29年就労条件総合調査」によると、79.3%の会社の定年が60歳ということがわかったそう。「人生100年時代」などといわれる今、定年後の40年をどう生きるかも考えなくてはいけなくなりました。そこで、パパママ世代に何歳まで働きたいかを調査してみました。Q.高齢化社会!あなたは何歳まで働きたい?1.〜50歳 11.9%2.〜55歳 4.6%3.〜60歳 19.3%4.〜65歳 27.3%5.〜70歳 18.1%6.〜75歳 7.5%7.76歳〜 11.4%もっとも多いのは〜65歳で27.3%という結果になりました。次に多いのが〜60歳。この2つを合計すると46.6%となり、約半数の人が、56〜65歳までの10年間を定年の時期と考えているようです。一方で76歳以上でも働きたいという人も10%以上いました。■早めにリタイアして、趣味や旅行に時間を使いたい!経済的な理由がなければ、今すぐにでも働きたくない人や60歳前にリタイアを希望する人もいました。今の仕事がつらいと思っている場合は、長く続けるのは難しいかもしれませんね。「今ももう働きたくない。生活のために、教育費のために仕方なく働いている。旦那の給料だけじゃやっていけない」(千葉県 40代女性)「仕事も家事からも解放されなくて、子育てが終わるころには親の介護も始まり、もうくたくたです。自分が歳をとったあとくらい、休ませてください」(千葉県 40代女性)「できれば働きたくない。子どもとの時間を大切に過ごして、友だちとお茶したりして楽しく! 老後は旦那とふたりで旅行とか行きたいなー。嫌いな仕事ばかりして、一度きりの人生を終わりにしたくない」(宮城県 40代女性)「『労働は最大の暇つぶしである』って昔のえらい人が言ったらしいけど、早めにリタイアして、趣味や旅行に時間を使いたいです」(滋賀県 40代男性)「年金問題もあるし、働けるうちは働くべきなんでしょうが、基本的に働くのが好きではないので、許されるなら自家菜園でもしながら、のんびり生活したいです」(千葉県 40代女性)■フルタイムじゃなくてもいいから働き続けたい60歳でもまだ子どもが成人していなかったり、大学生だったりする場合、まだまだ働き続けないといけないと思うようです。それ以外にも、働いたほうが心身ともに健康でいられそうという意見もありました。「若くして大病をしたので、現在は働けるということに感謝です。大変ですが、ずっと元気に働けるなら、それに越したことはないと思います」(千葉県 40代女性)「元気にずっと働いていたいです」(三重県 30代女性)「下の子を38歳で産んだので、60歳のときは順調にいっても大学4年生。まだまだ頑張らねば」(青森県 50代女性)「体が元気で人様に迷惑をかけないでいられるうちは、仕事を持っていないとな…と思っています。気持ちも若くいられますし、社会に貢献しながらお金も得られれば、生活だけでなく気持ちにも余裕が出てくるような気がするので」(神奈川県 40代女性)「気持ち的には無限です。ボケ防止に体を動かすことが好きだし、何より他にすることがないので。年金を当てにしない生活が送れるように貯金もしたいから」(栃木県 40代男性)「働けるなら働きたい。定年になっても短い時間でも働きたい。小遣い稼ぎや孫にもいろいろ買ってあげたい」(兵庫県 40代女性)Q.高齢化社会!あなたは何歳まで働きたい?アンケート回答数:5717件 ウーマンエキサイト×まちcomi調べ
2018年04月09日日々の支出を見直し、現在・将来のお金の問題を解決するヒントを探るべく、20代~50代の女性の意見を集めた今回の記事。前編では、子どもの教育費や老後への備えとして、家計の見直しを考える人が多数に上ることがわかりました。後編では、見直すべき費用や実践すべきことについて紹介します。今回のテーマは「家計の見直し」。前編で、ほとんどの人が「教育費」「老後のため」などの理由で家計の見直しを希望していることがわかりました。お金の悩みは尽きないものですね。【家計の見直し・前編】はこちらから後編は、いよいよ実践編。50名の女性から集めたリアルな声をもとに、世間の女性はどのようにして倹約しているのか探っていきます。■目次1.大きく節約効果が狙えるのは、食費や通信費!2.まずは把握から。家計簿は見直しの第一歩3.実は無駄な出費がいっぱい?コツを押さえて確実な節約をまとめ1. 大きく節約効果が狙えるのは、食費や通信費!【食費】■「ついつい、スーパーではなくてコンビニで買い物をしてしまうクセを徹底的に直すようにした。コンビニで買うジュースとスーパーで買うジュースの値段の差を考えると、“ガン”はここだと思った」(30代・個人事業主)■「一番変える事ができるはずと思っています。しかし、それには結構な努力と継続が必要です」(40代・正社員)■「食費のなかでも特にペットボトル飲料やアルコールなど、嗜好品にあたるものの出費が思っている以上に大きくなっていることがあるので」(40代・個人事業主)家計の改善をする際に過半数の方が気をつけていたのが、「食費」の見直し。もっとも買う頻度が高いものであるだけに、1回1回の出費を抑えられれば、大きな節約となります。コンビニや自販機をできる限り避けてスーパーを活用するのが、ポイントのひとつですね。【通信費】■「よほどのヘビーユーザーでなければ、スマホの通信料を削減することで毎月かなり節約できるようになりました」(40代・主婦)■「意外と高額であることが多いから。家族全員の携帯の通信費を見直せば、トータルでかなりの額になる」(20代・正社員)1人分だけでも月々数千円かかる携帯・スマホ代。4人家族で全員持っていれば、毎月3万円近いお金が出て行く可能性も。近年は格安SIMを使えば月々2,000円程度でまかなえるケースも増えてきましたので、乗り換えを検討してみるのもいいでしょう。【保険】■「月々高いですからね。いらない保険以外は解約しました。死亡保険とかだけ残して」(30代・正社員)■「毎月決まっている金額を減らすのが確実なんですが、保険の見直しってつい先延ばしにしてしまってなかなかできないんですよね……」(40代・正社員)将来のための保険ですが、契約締結後の見直しをしなければ、無駄な出費に気づかないままになってしまう恐れもあります。定期的に見直しをするようにしましょう。2. まずは把握から。家計簿は見直しの第一歩【家計簿をつける】■「家計簿というかレシートをとってある程度ですが、一応1ヶ月の収支だけは把握しています」(40代・個人事業主)■「家計の支出の把握をするために、アプリを使って家計簿をつけています。勝手に分析までできるので、手書きの家計簿より分かりやすいと思います。どこを節約するかですが、固定支出はなかなか減らせないので、食費かなと思い、気力のある時には、お弁当を作って仕事に行きます。負担にならず、継続可能なレベルで節約します」(40代・パート)次に実践していることについて聞いたところ、半数の方から「家計簿をつける」という回答が得られました。ノートにメモするのが面倒という方は、便利なスマホアプリもありますよ。【生活費を倹約】■「家計簿をつけても、結局は記録を付けただけで家計の見直しにはなりませんでした。とにかく家計全般を抑える癖をつけると良いと思います」(40代・正社員)【お弁当を作る】■「休日の過ごし方として、おにぎりやサンドイッチなどの主食を作って公園に持っていくだけでもお金がかからなくなります。おかずまで作ると手間もかかるし、面倒になってやめてしまいますので、おかずだけはコンビニなどで買います」(40代・主婦)食費をはじめとする生活費を削るために、倹約したりお弁当を作ったりしている方も多数。最初は面倒かもしれませんが、徐々に増えていく貯金残高を見れば、モチベーションも上がります。【娯楽・旅行を控える】■「レジャーを控えます。今まで行っていた遊園地などより、安く済む科学館にいったりして満足度は下がらないように工夫しています」(40代・正社員)■「交際費や旅行の費用などは、上手に便利なシステムを使うことでかなり節約できる」(40代・正社員)また、レジャー費をできる限り抑えるという意見も。場所や交通手段の選定を考えれば、満足度を下げずとも十分に楽しむことができますよ。3. 実は無駄な出費がいっぱい?コツを押さえて確実な節約を最後に、家計を見直す際のコツや注意点について、みなさんの意見を聞いてみました。実践できそうなものは、今日からでも取り入れていきましょう。【買い物時の工夫。お得なチャンスを逃さない!】■「ドラッグストアのポイントがたくさんもらえるときや割引があるときを活用してまとめ買いをしたり、食材の割引などがあったときに、浮いた分だけの現金を分けて置いてためています。これだけ節約できた、と思うと結構やる気もわいてきます」(40代・主婦)■「まず食費。午前中と夕方はスーパーの値引きがあります。値引きコーナーの設置されることもあり、普段よく食べるもの、すぐに消費できるものを半額程度で買います」(40代・正社員)■「家族構成や住む地域にもよりますが、近くにスーパーがあるのであれば、食品をまとめ買いしすぎない方が良いと思います。大量に入った野菜や調味料を買うのではなく、必要な分だけをこまめに買った方が、一見高く感じても廃棄するなどの無駄が減ると思います。食べ過ぎも抑えられ、家計にも優しくなると信じてます」(40代・主婦)スーパーのセールスを利用したり、必要な分だけを購入して「無駄」をなくしたり。たった数百円の節約ですが、1ヶ月・1年と積み重ねれば大きな貯金となります。【プロに相談のもアリ?】■「家計の見直しや節約をしたいと思ったら、人に相談することが一番です。節約方法なら雑誌やWEBでもたくさんアイデアが掲載されていますし、具体的な家計の見直しについては、ファイナンシャルプランナーに相談したり、雑誌の企画等に応募して見直しをしてもらったりと様々な方法があります」(40代・個人事業主)意外に、自分だけでは客観的な判断はできないもの。むやみやたらに倹約する前に、プロに相談して今発生している無駄について教えてもらうことも有効な手段です。まずは現状を適切に把握するところから、家計の見直しはスタートするのです。そのための費用が発生することを考えると敬遠しがちですが、長期的な目線で見ると、明らかな効果が期待できるかもしれません。“急がば回れ”ということですね。【定期的な出費の見直し】■「車を持っていてもあまり使わないなら、思い切って処分するか、カーシェアリングにする。駐車場代や保険代、税金など維持費が高いので節約効果は大きいはず」(50代・主婦)■「保険の見直し。必要以上の保障に入っていることがあるから。携帯電話などの通信費も、格安やセットにすると割引になるものもある」(30代・主婦)保険や車の維持費など、毎月定期的に出て行くお金を考え直すことも大切。ちょっとしたプランの変更で、月々数千円のお金が浮く可能性もあります。まとめ家計の見直しのためには、まず「日常の無駄」を見抜き、それをなくしたり別のもので代用できないか考えることが大切です。削れるところは削りつつも、子どもや自分の将来に関わる出費にはしっかりと投資しましょう。アンケート実施期間:2017年8月9〜10日対象:20〜50代の専業主婦、パート・アルバイト、正社員、派遣社員、個人事業主の女性の方アンケート総数:50
2017年09月24日日々暮らしていて出ていくお金はさまざま。生活のためにお金が必要とはいえ、将来への不安から、その収支のバランスを考えたいと思うこともあるかもしれませんね。アンケートの回答をもとに、家計の見直しを一緒に考えていきましょう。家族がいるみなさんは、一人暮らしや実家暮らしをしていたころと比べて、毎月出て行くお金の多さに驚いたことはありませんか?家族の人数分の食費やレジャー代、家のローンに子どもの教育費……。なかには「貯金残高が減っていくばかり」という方もいるでしょう。そんな方のヒントとなるよう、今回は家計の見直しについて、子どもがいる家庭の20~50代の女性50名を対象にアンケートを実施しました。収支バランスを適正にすべく、さっそく結果を見ていきましょう。■目次1.家計を見直したい人は98%!みんな不満・不安を持っている2.家計における大きな負担はやはり、子どもの教育費まとめ1. 家計を見直したい人は98%!みんな不満・不安を持っている最初の「家計の見直しを考えたことはありますか?」という質問に対しては、「ある」と答えた方がなんと98%。ほとんどの方が、収支になんらかの不満を持っている(持っていた)ことがわかります。その理由を見てみると、今現在家計が苦しい方と、将来のことを考えている方の2種類がありました。【今の生活が苦しい……】■「子どもたちの教育費にかかる一方なので、どこか削れないかと悩み中です」(40代・主婦)■「子どもの進学などで家の経済状態が大きく変わり、見直さないと生活できなくなったことがあったから」(50代・主婦)■「毎月赤字なので、このままではいけないと思いました。しかし家族みんなの理解と協力がなければ、私一人が頑張っても目標達成は難しいと痛感しました」(40代・主婦)子どもの教育費をはじめとする多額の出費に、毎月苦しいやりくりを強いられているという声が、とくに主婦の方から多く聞かれました。【将来を見据えて家計を改善したい】■「今はいいにしても将来的なことを考えたときにこのままだと足りないな〜、ダメだな〜と思うことはあります」(40代・主婦)■「大きな出費があると固定費などを必ず見直しています。削れるところは少ないですが少なくとも気をひきしめる役には立ちます」(40代・パート)■「夫が定年に近づいているので、まさに現在家計の見直しをしている真っ最中です」(50代・主婦)今はよくとも、老後や近い将来の出費を考えて見直しをしているという方も。計画的に貯蓄をしないと、将来苦しむのは自分たち。早い段階から引き締めに入っている様子です。また、将来を見据えているという方からは、こんな意見も聞かれました。■「家計簿をつけ続けているので、都度見直しをしています。今度住宅ローンを繰上げ返済します」(40代・主婦)家計簿は、定期的に家計を見直せる、良い指標になりそうですね。日々の生活だけでなく、続けるごとに年単位での家計を把握できるようになります。2. 家計における大きな負担はやはり、子どもの教育費次に、家計を見直す詳しい目的について見ていきましょう。【子どもの教育費】■「子ども3人、一番お金がかかる時と言われる時期真っ只中です。どこも削れない、削りようがないのですが、子どもの教育費をどうにかせねばと思う度に家計を見直さねばと思います」(40代・主婦)■「子どもの進学のために、家計を見直そうと思います。できれば進学する前から備えておきたいので」(40代・主婦)もっとも多かった目的は、前の章でも挙がった「子どもの教育費」。とくに私立の学校に、それも2人、3人と通わせると非常に多くの学費が必要になります。また、塾や家庭教師にかかるお金も安くありません。受験期になると、嫌でもその負担を感じることでしょう。【生活にゆとりを持つため】■「自分達も年齢を重ねていくにつれて、子どもたちにもお金がかかるようになってきます。子どもたちが何かしたいという時に、お金がないからという理由では諦めさせたくないし、夫婦共に老後の2人の生活を考え始めてもおかしくない年齢になってきていると思うので」(40代・正社員)■「何にしろ、しっかりとある程度のお金は大事なので、無駄はなくしたいと思うため」(40代・正社員)次が、「生活にゆとりを持つため」。ぎりぎりの生活を強いられていると、食べるものが偏ったり旅行などのリフレッシュにも行けなかったりして、心も追い詰められてしまいがち。ある程度ゆとりを持つため、日頃から無駄を削ることは大切です。【老後に備えて】■「夫がそろそろ定年なので、収入が激減すると考えられ、家計を見直しています」(50代・主婦)■「年金もいつからもらえるか分からない時代、一馬力で働くことに不安があるので」(40代・主婦)将来のことを考える多くの主婦の方々から意見をもらったのが、老後に関する項目です。年金についての不安や、医療・介護についての懸念が聞かれました。【そのほかにも家計を見直したい理由はたくさん】■「旦那さんの収入が全然あがらないので、このままではいけない、なんとかしたいと思いました」(40代・パート)■「子どもが生まれる時。転職した時。突然、漠然と見直そうと思うことがある」(20代・主婦)またそのほかに、旦那さんの収入や家族のライフイベントに合わせて家計を見直しているという方も。ちょっとしたきっかけに背中を押されて、見直すというケースもあるようです。まとめ前編ではおもに、家計を見直す目的についてまとめてきました。将来のため、そして子どものためという2点がポイントだということがわかりましたね。後編ではさらに具体的に、見直すべき費用などについて紹介していきます。この機会に家計を改善させていくヒントになりますように。【家計の見直し・後編】はこちらからアンケート実施期間:2017年8月9〜10日対象:20〜50代の専業主婦、パート・アルバイト、正社員、派遣社員、個人事業主の女性の方アンケート総数:50
2017年09月24日定年から生涯を終えるまでに、どのくらいの資金が必要かご存知ですか?退職後の主な収入源となる「年金」は先行きが不透明で、今後受給年齢の先延ばしや支給額の減少が見込まれます。その一方で高齢になると医療や介護に関する支出が増え、まとまった資金がなければ安心して生活することができません。そんな老後への経済的不安を解消するべく、必要な老後資金についてまとめてみました。実際に老後を迎えてから慌てることがないよう、今からできる準備を考えてみましょう。■老後資金とは?定年後に必要となる支出をチェック近年よく耳にする「老後資金」という言葉。高齢化社会が年々深刻化してきている中、年金など公的制度によって手厚く老後を保障してもらえる可能性は低くなってきています。そのため若いうちから老後を意識して資金を確保していく「老後資金」の重要性が問われています。しかし一口に老後資金と言っても漠然としていて、何のためのお金が必要なのかイメージしづらいですよね。まずは定年後に実際どのような支出が想定されるのか、具体的な内容や金額について知っておくことが大切です。【毎月かかる支出の内訳】・生活費(食費・光熱費・雑費):80,000~100,000円・医療費(外来):3割負担で20,000円程度、1割負担で10,000円程度・医療費(介護):要介護3、在宅介護の場合で40,000~50,000円程度・娯楽費:1人につき20,000~30,000円(夫婦で50,000円程度)・老人ホーム利用料:50,000~150,000円程度毎月このような使い道でお金が必要となりますが、もちろん年齢や健康度によって大きく異なります。娯楽費については「必要ない」と考える人がいるかもしれませんが、老後の生活を楽しむために準備しておくべき金額です。夫婦の場合、平均すると月に220,000円程度、住宅ローンが残っていたり娯楽への支出が多かったりする場合は250,000~350,000円程度必要になってきます。独身の場合も夫婦とさほど差はなく、150,000~250,000円程度は必要と言えるでしょう。【年間にかかる支出の内訳】・固定資産税など税制面における支出:50,000~200,000円程度・車関係の支出(ガソリン代・車検代):200,000円程度・旅行関係の支出:300,000円程度・子供や孫への支出や交際費:200,000円程度年間にかかるお金は住まいの状況や車の有無、人付き合いの程度などによって大きく変わります。平均すると夫婦2人の場合で、年間3,000,000~4,000,000円程度、独身の場合で2,000,000~3,000,000円程度見積もっておく必要があります。【特別なときの支出】・家のリフォーム費用:1,000,000~2,000,000円・入院時の医療費:3割負担で50,000~100,000円程度、1割負担で40,000~50,000円程度・介護サービスを利用するための費用(自己負担額):20,000円程度・老人ホームへの入居費用:入居一時金として200,000~10,000,000円住宅購入する人の平均年齢が30代後半~40代前半頃なので、ちょうど定年頃にリフォームやリノベーションの必要性が出てきます。また入院時や介護サービスの利用などまとまったお金が必要になるケースを想定し、特別なときの支出用に資金を確保しておくと安心です。夫婦2人で10,000,000円程度、独身の場合は7,000,000円程度見ておきましょう。■夫婦の場合に必要な老後資金はいくら?老後にかかる具体的な支出がわかったところで、実際にどのくらいの老後資金が必要なのか算出してみましょう。まずは夫婦2人で生活している場合に必要な老後資金を求めてみます。求め方は定年後に予想される年間支出から年間で得られる収入を引き、そこに残された寿命(年数)をかけて計算します。例えば65歳の夫婦の例を見てみましょう。まず年間支出としては毎月かかる費用が220,000円程度のため、年間で2,640,000円程度、その他医療や娯楽などにかかる特別な年間費用を1,000,000円と見積もると、年間支出は2人でおよそ3,600,000円となります。次に年間収入の見込みを考えてみましょう。会社員の夫と専業主婦の妻の場合、夫が月に147,000円の厚生年金、妻が54,000円の国民年金を受け取ることができると想定でき、年間収入はおよそ2,400,000円となります。残された寿命を割り出すには、現在の平均寿命を使います。日本人の場合は男性が80歳、女性が86歳となっています。よって現時点で65歳ですから、残りおよそ20年間分の資金を蓄えておくと安心であることがわかります。上記を参考に、夫婦2人に必要な貯金額を算出してみましょう。【夫婦2人(どちらも65歳)の場合に必要な老後資金額の例】年間支出3,600,000円-年間収入2,400,000円×残りの寿命20年=およそ24,000,000円また老人ホームに入居した場合など特別な支出が増えるケースを考慮すると、さらに資金はプラスされます。そう考えると、最低でも夫婦で30,000,000円程度の資金を貯蓄しておく必要があると言えるでしょう。ただし人によって収入や支出の額が異なるため、自分たち夫婦のライフスタイルを念頭に置いて老後資金を考えてみましょう。■独身の場合に必要な老後資金はいくら?続いては独身のケースを考えてみます。夫婦の場合と同様に、年間で必要な支出や得られる収入、残された年数から老後資金の平均的な必要額を算出してみましょう。同じように65歳の例で考えてみると、支出が毎月180,000円程度かかったと仮定して、年間で2,160,000円、そこに固定資産税や車検といった年間支出を足して2,860,000円程度となります。また老人ホームや介護サービスを利用した場合の特別な支出は7,000,000円程度で見ておきます。次に年間収入ですが、仮に会社員とした場合は厚生年金として月に147,000円支給されるため、年間で1,760,000円が見込まれます。残された年数については、夫婦の場合と同様に20年、85歳まで生きると仮定して計算してみましょう。【65歳の独身者の場合に必要な老後資金額の例】年間支出2,860,000円-年間収入1,760,000円×20年=22,000,000円+特別な支出7,000,000円=29,000,000円仮に退職金が10,000,000円程度ある場合は、最低でも19,000,000円程度貯金から切り崩す必要があることになります。ゆとりある生活を送るためにはさらに大きな資金が必要となるでしょう。必要貯蓄額は求める生活レベルや必要となる医療・介護費用によって異なるため、自分自身のケースに当てはめて算出しておくと安心です。■老後資金はこうやって貯めておこうこうして見てみると、老後資金の想像以上の額にびっくりした人も多いでしょう。老後は収入が減ってしまうにもかかわらず、支出は増える一方であることがわかってもらえたと思います。もし老後までに必要な資金を準備できなかったら、どのような生活をすることになるのでしょうか。家賃が払えなくなったり、病気になっても医療機関を受診できなかったりなど、さまざまなリスクが予想されます。そういった生活苦に見舞われてしまうと、健全で楽しい老後生活を送ることができないだけでなく、長生きすることも難しくなってしまうでしょう。このような心配がないように、今から老後のことをしっかりと考えて備えておく必要があります。実際どのように老後資金を増やせばいいのか、今からできることをまとめてみました。【貯蓄方法1】貯蓄まずは、日々の貯蓄に対する意識を高めることが大切です。例えば30代の場合は子育てへの支出が多い時期ですが、収入のほとんどを子育てに注ぎ込んでしまうと老後資金を増やすことができません。収入から「子育て+老後資金」の両方を差し引き、それ以外のお金で生活費を賄うことが理想的です。銀行に定期預金をしたり、保険を利用したり、自分たちに合う方法でコツコツと老後資金を確保していきましょう。40代になると子供の入園や入学などで子育てが一段落、妻がパートあるいはフルタイムで働くことで、それまで以上の収入が確保できるようになります。一方で子供の受験・進学によって養育費がかさみ、支出が増えることも事実です。子供が成人するまでにかかる養育費を算出した上で、月々にかかる生活費や保険内容を見直してみましょう。節約と貯蓄をバランスよくやりくりすることが大切です。50代になると子供の独立によって子育てにかけるお金がグンと減るため、老後資金を増やす大きなチャンスです。ただし生活習慣病や持病のリスクが増える時期でもあり、健康面における大きな支出が懸念されます。定期検診をしっかり受けて健康に留意しつつ、これまで以上に貯蓄に回す額をプラスして、着実に老後資金を増やしていきましょう。【貯蓄方法2】資産運用資産運用はうまく行けば一気に資産を増やせますが、一方で元本割れのリスクもあります。運用期間や商品によっては手数料が高額になる場合もあるため、慎重に検討する必要があるでしょう。ローリスクでできる資産運用としては、個人向け国債がおすすめです。個人向け国債は国が発行する債券のため、国が破綻しない限りは安全です。商品は固定金利3年・5年と変動金利10年があり、1年を経過すれば中途解約できます。債権は10,000円から購入できるため、始めやすいでしょう。銀行に預けておくよりも利率が高いため、使う予定のない貯金がある場合にお得に資産運用できます。また2014年からスタートした少額投資非課税制度(NISA)もおすすめの資産運用です。投資によって出た利益がまるまる非課税になるというお得な運用法で、年間100万円を限度として自由に投資金額を決めることができます。投資期限は5年間ですが「ロールオーバー」という非課税の期間が延長されるシステムを利用すると、最長10年まで非課税扱いになります。こういったローリスクの資産運用法を実践し、長期間コツコツと老後資金を増やしていきましょう。初めは右も左もわからず不安かもしれませんが、知識と経験を積むほどにコツが掴めてきます。資産運用の仕方に不安がある場合は、資産運用のプロに相談する方法もあります。身近なのはファイナンシャルプランナーでしょう。現時点での貯蓄額や資産運用の目的などを考慮し、1人1人に合った運用方法をアドバイスしてもらうことができます。まずは少額から始めて、ローリスクの投資商品や非課税扱いの投資商品を利用し、焦らずじっくりお金を増やしていきましょう。【貯蓄方法3】保険の見直し今加入している保険をよく見直してみることも大切です。見直しすることで、月に数千円安くなる場合があります。ほんの少しの違いでも、年間あるいは長期間で考えると大きな金額。今契約している保険に無駄がないかどうか確認しましょう。【貯蓄方法4】定年後も働く健康状態がよければ、再雇用などを利用して引き続き働くという選択肢もあります。今まで働いていた会社でなくても、ハローワークなどで新しく職を探すことは可能です。これまでに得た資格や特技を活かせる職を探してみると、意外と見つけやすいでしょう。働くことで貯蓄に頼らずに済むのと同時に、生活にメリハリが生まれるといったメリットもあります。実際に定年後に働いている人はたくさんいるため「定年=隠居生活」と決めつけずに生き生きした生活を目指すことをおすすめします。■おわりにいかがでしたか?老後は意外と必要なお金が多いことがわかりましたね。また老後に求める生活水準やそのときの健康状態によっても必要資金は大きく変わるため、今からある程度シミュレーションをして、気持ち的にも物理的にも備えておくことが必要です。確実に言えることは、健全な老後生活のためには今からコツコツ貯蓄しておくことが大切だということ。理想としては老後を迎えるまでに30,000,000円は貯めておきたいところでしょう。年金だけをあてにして今の生活を楽しむのではなく、老後のことを考えて日々の生活やお金のやりくりを見直すことから始めましょう。
2017年05月12日30代がもらえる年金で老後は大丈夫? 毎月いくら足りない? 年老いた自分を養うには マネー業界大トピック発動! 知っている人だけトクする制度 節税力がスゴい! 確定拠出年金の3つの「おトク」大公開 専業主婦はメリットあるの? 確定拠出年金を始める3つのポイント の続きです。「30代から考え始める『自分年金』」特集も、今回は最終回。それでは現実的に確定拠出年金に加入しようと思う人はどれくらいいるのか、率直なところをフィナンシャル・プランナーで「 確定拠出年金相談ねっと 」代表の山中伸枝さんに質問してみた。投資デビューをするなら個人型確定拠出年金で本特集の冒頭で、「『老後のためのお金』を考えるとき、(現役時代の)収入が多い・少ないよりも、計画を立てて準備していないことが命取りになります。」と書いた。私自身は、この「計画を立てて、準備をすること」の中に、「投資をすること」はマストだと思っている。なぜなら月額7万円(「 毎月いくら足りない? 年老いた自分を養うとは【30代から考える「自分年金」 第2回】 」)という金額は、貯蓄だけではためることはとても難しいからだ。だからこそ、投資が必要だと考えている。そのうえで、私自身が、ひとつだけ提案できることといえば、「投資を始めるのであれば、個人型確定拠出年金から手をつけたら良いのでは?」という思いだ。なぜ、投資デビューに個人型確定拠出年金?1.個人型確定拠出年金は選びやすい個人型確定拠出年金としてラインアップされている投資商品は、多くて10数本(金融機関によって違う)。普通の投資信託だけでも5、000本あるといわれているほかの投資商品より、目移りせずに選びやすい。2.販売手数料が原則無料個人型確定拠出年金として扱っている商品は、販売手数料が原則無料だ。同じ証券会社の投資商品が販売手数料3%だとしても、個人型確定拠出年金は販売手数料が無料となる。3運用手数料が安く設定されている投資信託の運用手数料である「信託報酬」も、比較的安く設定されている商品が多い。つまり、投資コストを低く抑えることができるのだ。すぐさま始める人は100人に2人それでも個人型確定拠出年金への気持ち的なハードルは、すごく高いのではないだろうか? 今回、特集を担当してみたものの、「やっぱり、よくわからない」。これが2016年現在の多くの人の感覚だろう。山中さんは言う。「個人型確定拠出年金についてお話をして、『じゃあ始めよう!』とすぐさま思う人は、100人に2人くらいですね。」少し、ホッとした。いや、かなりホッとした。1対1の対面で伝えても、そのくらいのヒット数なのか、と。山中さんは、個人型確定拠出年金への加入をためらうお客様にこんなふうに伝えることもあると言う。「大丈夫ですよ。今日、決められないのであれば、今日はそういうタイミングなんだと思います。そのかわり、どこかのタイミングで、『やっぱり、やってみようかな』と思ったら、また、いらしてくださいね」すこしとっぴな例えかもしれないが、個人型確定拠出年金を始めるための気持ち的な階段が10段あるとしたら、本特集は、その1段になれば良い。また、何かのキッカケで1段あがる、次は3段あがる…。堂々巡りも意味があるし、なにも無駄にはならないのだ。出遅れを心配する必要はない個人型確定拠出年金について、出遅れを心配する必要はまだない。「現段階(2016年11月取材時)では、商品構成が発表されていない金融機関もあります。まだ、まだ、これから商品のラインナップなどには動きがあるでしょう」。(山中さん)ちなみに、個人型確定拠出年金は「投資」商品だけ扱っている訳ではない。「投資」商品以外のもの、たとえば、「預貯金」や「年金保険」などもある。2017年1月1日から、個人型確定拠出年金の加入資格者が拡大し、『だれでも』加入できるようになった。この事実を知り、「個人向け確定拠出年金には、どんな商品があるのだろうか?」と、商品のラインアップについて、興味を持ってみる。そんなところから、「自分年金」づくりを始めてみてはどうだろうか?※この記事は2016年11月の取材を基づいて書いています。■今回取材にご協力いただいた山中伸枝さんの著書 ど素人が始めるiDeCoの本 (山中伸枝/翔泳社 本体1,500円+税)
2016年12月20日30代がもらえる年金で老後は大丈夫? 毎月いくら足りない? 年老いた自分を養うには マネー業界大トピック発動! 知っている人だけトクする制度 節税力がスゴい! 確定拠出年金の3つの「おトク」大公開 の続きです。前回までに「確定拠出年金」が節税効果が高いことを説明したが、実際に始めるためにはどうすればいいのか? ファイナンシャル・プランナーで「 確定拠出年金相談ねっと 」代表の山中伸枝さんにお話を聞いた。ポイント1 個人型確定拠出年金の対象者と限度額2017年1月1日から、個人型確定拠出年金の加入資格者が拡大し、『だれでも』加入できるようになる。。だからもちろん専業主婦も加入できるようになったわけだが、正直なところ、専業主婦にはそれほどメリットはない。なぜなら確定拠出年金のメリットは前回話したように、所得控除にある。しかし所得がない専業主婦の場合、夫の所得からの掛け金控除は受けられない。こういった家庭の場合は、専業主婦が確定拠出年金に加入するよりは、夫の確定拠出年金の枠を広げた方が世帯としての税金は安くなる。税金が安くなるからといって、確定拠出年金はいくらでもかけることができるわけではない。「対象者」によって、積立できる金額が異なってくるのだ。積み立てる掛け金は毎年4月~翌年3月までの間に、1回だけ変更ができる●個人型確定拠出年金の対象者と限度額掛け金は、月額5,000円以上 1,000円単位※1 企業年金の種類によって違ってくる※2 国民年金基金、付加保険料と合わせて6万8000円が限度ポイント2 個人型確定拠出年金を始める場合の流れ個人型確定拠出年金を始める場合の流れはを簡単に説明する。<事前に確認するポイント>・選択する金融機関(運営管理機関)によって用意されている金融商品が違う金融機関選ぶ際には、商品のラインアップをチェックしよう。・投資信託の信託報酬など、手数料をチェック長期に渡っての運用となるので、手数料の違いがのちのち大きく響いてくる。<確定拠出年金を始めるときの流れ> ポイント3 原則60歳まで引きだせない確定拠出年金は、節税というメリットがあり、良いことづくめのようにみえる。ではデメリットはないのだろうか。最大のデメリットとしては、原則として60歳まで引きだせないということだ。「原則」と書いたが、ほとんど引きだせないと思っておいた方が良い。過去には東日本大震災のときでさえも、かなり限定された場合だけしか引き出しに応じなかったという事例がある。ただしこれをデメリットととらえるか、メリットととらえるか…、これこそが老後プランを考える上での分岐点となるかもしれない。なぜなら確定拠出年金は、引き出しが厳格に制限されているからこそ、「老後資金を確実にためる方法」といえるのだ。加入期間中に自己破産になっても確定拠出年金の資産は差し押さえの対象とならないほど、特権的な扱いを持っている。だからこそ確定拠出年金とは、これらのことを心して、ためていくお金だということ覚えておきたい。※この記事は2016年11月の取材を基づいて書いています。■今回取材にご協力いただいた山中伸枝さんの著書 ど素人が始めるiDeCoの本 (山中伸枝/翔泳社 本体1,500円+税)
2016年12月19日30代がもらえる年金で老後は大丈夫? 毎月いくら足りない? 年老いた自分を養うには マネー業界大トピック発動! 知っている人だけトクする制度 の続きです。知っている人だけがトクをする「確定拠出年金」という制度。「どうしてトクをするのか?」を「 確定拠出年金相談ねっと 」代表の山中伸枝さんに聞いた。■国が用意した老後資金貯蓄方法確定拠出年金とは、税制優遇を受けた国の「老後資金専用貯蓄制度」である。つまり、確定拠出年金とは、国が用意してくれている老後資金の貯蓄方法で、それを使うメリットは、税金が安くなることだ。では、どんなときに、どれくらいの税金が安くなるのだろう? これこそが確定拠出年金の「肝」である。■おトク1 個人年金より上! 所得控除のすごさひとつめのメリットは、積立時の掛け金が全額所得控除となる点。これは、すごく大きい。なぜなら所得税というものは、収入に課せられるわけではなく、そこから必要経緯、医療保険を引いた額に課税される。その控除できる中に、確定拠出年金も入ってくる。所得控除の額が大きければ、税金で引かれる金額が小さくなる。ようするに、節税になるわけだ。節税できる具体的な金額をイメージしたい場合は、「 個人型確定拠出年金ナビ 」でザックリとした計算ができる。節税できる「老後資金の積立て」という意味では、生命保険会社の個人年金保険がメジャーだ。しかし確定拠出年金とこの金融商品を比べても、差は歴然としている。仮に毎月2万円を1年間24万円積立てしたとして、次の試算表のように、節税メリットは、圧倒的に確定拠出年金の方が上だ。●個人年金保険と確定拠出年金の節税メリット比較<年収500万円で所得税率10%、住民税率10%で試算>※控除額:税金を計算する金額から差し引いてもらえる金額のこと。控除額が大きいほど、税金は安くなる。出典:『こう変わった確定拠出年金』(山中伸枝/株式会社 税経)より抜粋■おトク2 元本保証商品も! 運用益も自分のものふたつめのメリットは、運用益(※)が非課税となる点。投資などを行ったときに得られた利益にも税金はかかってくる。そもそも、いま、運用益にかかる税金は何%かご存じだろうか? 答えは、20%! たとえば10万円の運用益が出たとしたら、2万円が税金として差し引かれてしまう。けれども非課税であれば、この2万円が、まるまる自分のものとなる。運用益が非課税となる制度として、「NISA(少額投資非課税制度)」もある。NISAとの違いを表にまとめると、次のようになる。確定拠出年金だと、元本確保型の商品も非課税の対象になる点がポイント。投資にアレルギーがあるという人でも元本保証の商品であれば、「とりあえず、預貯金を確定拠出年金で始めてみる」だけでも、節税効果という「実」は受け取ることができるのだ。※運用益 : 資産の運用によって得られた収益のこと。たとえば預貯金に金利が100円ついた場合、運用益は100円。このうちの20%が税金で差し引かれる計算。2037年までは復興増税が加算され20.315%となっている。●NISA(少額投資非課税制度)と確定拠出年金の違い比較出典:『こう変わった確定拠出年金』(山中伸枝/株式会社 税経)より抜粋■おトク3 年金は受取時に税金が!でも確定拠出年金は控除みっつめのメリットは、確定拠出年金を受け取るときにある。あまりに未来すぎて、イメージが沸かないと思うが、実際に受け取るときには、これの効果が実感できるはず。そもそも、年金は支給額をまるまるもらえると思っている人も多いようだが、じつは年金も収入なので、所得税が発生し源泉徴収される。確定拠出年金は60歳時点で10年以上の加入期間があれば、60歳から70歳までの10年間で、好きなときに引き出すことができる。受け取りかたの選択肢は次の3つ。それぞれにメリットがある。●確定拠出年金の受け取りかた出典:『こう変わった確定拠出年金』(山中伸枝/株式会社 税経)より抜粋長々と解説したが、要するに、下記だけは覚えておいて欲しい。確定拠出年金をすると、節税ができる「老後資金なら、しのごの言わずに、まずは確定拠出年金から始めましょう」(山中さん)次回は、確定拠出年金制度の「ポイント」3つを解説!※この記事は2016年11月の取材を基づいて書いています。■今回取材にご協力いただいた山中伸枝さんの著書 ど素人が始めるiDeCoの本 (山中伸枝/翔泳社 本体1,500円+税)
2016年12月18日30代がもらえる年金で老後は大丈夫? 毎月いくら足りない? 年老いた自分を養うには の続きです。老後資金を考えるのなら、「確定拠出年金」がキーワードとなる。引き続き、ファイナンシャル・プランナーで「 確定拠出年金相談ねっと 」代表の山中伸枝さんは、「マネー業界大トピックが起こる!」と話す。■確定拠出年金という言葉を知っている?そもそも、「確定拠出年金」という言葉は、ご存じだろうか?じつは、わが家自体は、数年前から夫が会社の確定拠出年金制度に入っている。夫の会社が確定拠出年金を導入したとき、妻である私は、「何か難しそう…」と、夫がもらってきた書類一式を放置していた。そんなあるとき、私が参加したファイナンシャル・プランナー向けの確定拠出年金の勉強会で、もっとも具体的に切りこんで質問していたのが、今回取材させていただいた山中さんだ。「いま、確定拠出年金が注目されているのは、2017年1月1日から、個人型確定拠出年金の加入資格者が拡大し、『だれでも』加入できるようになったからです」と、このことがマネー業界の大トピックであると、山中さんは話す。ひと口に確定拠出年金といっても、「企業型」と「個人型」がある。これまで確定拠出年金に入ることができたのは、「会社が制度を導入したから」自動的に入っていた「企業型」の加入者だ。しかし2017年1月からは、「個人型」の確定拠出年金に加入できる人の範囲が広がるのだ。■確定拠出年金のメリットって?「だれでも個人型確定拠出年金の加入できるようになったことが、そんなに大トピックなの?」と、多くの人は素朴な疑問が沸くことだろう。最大のメリットは、確定拠出年金に加入すると、節税ができるけれども、「節税!? それが、そんなに良いことなの」と、思う人も多いだろう。■節税とは、根にある「実」!? 「『金利』はわかるけれど、『節税』はわからないという方は多いみたいですね。たとえるならば、『金利』は木に花が咲いて実がなるイメージ。『節税』は、お芋みたいに土を掘ってみないとわからないものなんです」(山中さん)実がなる(お金が殖える)という意味では、「金利」も「節税」も両方とも同じ。けれども、目に見える形で殖えないので、主婦にとって節税は遠い話になりがちだ。「でも、節税の方が、じつは確実なんですよ。市場の動向によっては、金利(木の上になっている実)は、嵐がくれば落ちてしまうこともあります。けれども節税(木の下にある実)は、大丈夫。この目に見えない部分を意識していくことは、お金を殖やす上で、とても大切なことなんです」(山中さん)。貯蓄をしようと考えたときに、節約やら収入を殖やすなどは考えるのに、税金を節約することは抜け落ちがち。でもじつは、節税というものをしっかり考えていくことも、老後の準備をする上では、とても大切なことだ。次回は、節税というメリットがある確定拠出年金制度の「おトク」3つを解説!※この記事は2016年11月の取材を基づいて書いています。■今回取材にご協力いただいた山中伸枝さんの著書 ど素人が始めるiDeCoの本 (山中伸枝/翔泳社 本体1,500円+税)
2016年12月17日30代がもらえる年金で老後は大丈夫? の続きです。30代~40代の心がけによって、「お金に困らない老後生活を送れるかどうか」が変わってくる。ファイナンシャル・プランナーで「 確定拠出年金相談ねっと 」代表の山中伸枝さんにお話を聞いた。■年金をもらっている人も毎月不足している!?「いま、年金をもらっている人たちのモデルケースでは、毎月7万円が足りないと言われています。」(山中さん)。 定年が65歳で、90歳まで生きるとしたら、不足額面は、2,100万円!(7*12)=84万円(年間) 84*25年=2,100万円これがついこの間退職をした、いわゆる「もらえる年金額的には『裕福』な人」の実態なのだ。「いまの高齢者でも7万円足りていないなら、私はもっと足りない。『65歳になったときに、お金のない自分はどうしているだろう?』、そのイメージを確実に作っていくことが大切です」(山中さん)■人生3大資金の山場「老後資金」30~40代の人は、人生の3大資金のうち、「住宅ローン」「教育費」という「お金の山場」を、必死で登っている段階。筆者自身が、「老後資金の準備」なんて、まったく考えにも及ばなかった。しかし死力を尽くして「住宅ローン」「教育費」の山を登り終えたと思ったら、老後なのだ。そしてそこには、お金の足りない自分がいる。自分にとって、20年前って、つい最近だったような気がする。だったら、20年後も、わりとすぐにやってくるのではないか?■将来の自分に「仕送り」を 山中さんはいう。「老後の準備とは、言葉を変えれば『将来の自分への仕送り』です。年老いた自分は、今の自分が養わなければならない扶養家族なんですよ」 たとえば、65歳以降90歳まで生きたとして25年。いまの年金受給者である不足分「毎月7万円」が私たちも不足すると考える。この分を、「30代の自分が60代の自分に仕送りをする」、こんな風にイメージしてみよう。将来への仕送りは、早くから始めるに越したことはない。30歳から65歳への仕送りを始めたのであれば、仕送り額は7万円でなくても大丈夫となってくる。■毎月の老後への仕送りなんて無理なのか?月額7万円! 老後の自分のために月額7万円なんて、とてもじゃないけれども仕送りできない。けれども、そこで思考停止してしまっては、よけいにお先真っ暗だ。どうしたら良いのだろうか?「老後資金について考え始めたのなら、『確定拠出年金』から着手しましょう。なぜなら老後資金づくりに限定すれば、確定拠出年金はダントツ有利な制度だからです」(山中さん)次回は、知っている人だけが得する確定拠出年金制度です。※この記事は2016年11月の取材を基づいて書いています。■今回取材にご協力いただいた山中伸枝さんの著書 ど素人が始めるiDeCoの本 (山中伸枝/翔泳社 本体1,500円+税)
2016年12月17日「老後」。この言葉を聞いて、明るい気持ちになる人は、まずいないだろう。ほぼすべての人がが、「なんとなく、ブルーな気分」になるのでは?連載の冒頭から結論をいってしまうと、「お金に困らない老後生活を送りたい」と思うのなら、30代~40代の過ごし方(心がけ)が大事になってくる。それでは30代の人はどうすればいいのか? その不安から抜け出す対策について考えてみたい。■なぜ、30代から「老後」を考える必要があるの?ファイナンシャル・プランナーで、「 確定拠出年金相談ねっと 」代表の山中伸枝さんは言う。「老後はだれにでも必ず訪れる『事実』です」と。マネー分野では、よく「人生の3大資金」という言葉が使われる。人生の3大資金とは、「住宅ローン」「教育費」「老後資金」。このうち「住宅ローン」と「教育費」は、必要ない人もいる。けれども、「老後資金」だけは、だれもが「当事者になるお金」だ。この大金を準備するために、「自分がお金を稼げる時期」が終わるまでにやっておかなければならないことがいくつかある。「『なんとかなる』と思って、やるべきことをやらなければ、『老後貧乏』という形でツケを払うことになるかもしれません」(山中さん)■幸せの老後には、収入が多い・少ないは関係ない「老後の準備」というと、「できるだけお金をためておくこと」と思う人も多いだろう。けれども、山中さんは言う。「『老後のためのお金』を考えるとき、(現役時代の)収入が多い・少ないよりも、計画を立てて準備していないことの方が命取りになります。」幸せな老後は、計画を立てて準備を始めることから。だからこそ、30代から、「老後」についてのイメージトレーニングを始めることに意味があるのだ。 ■現在、年金をもらっている人の平均額は?老後のイメージトレーニングとして、「いま、実際に老後を迎えている人」がもらっている平均的な年金額を知ることから始めてみよう。 年金額280万円=夫(年額200万円)+妻(年額80万円)「会社員だった夫と専業主婦だった妻の年金額の平均は、280万円といわれています」(山中さん)年収280万円といえば、月収22万円くらい。ここから税金や社会保険料が差し引かれ、手取りは18万円程度となる。もっとも、この数字は、「いま、実際に老後を迎えている人」がもらっている金額であり、いわゆる「もらえる年金額的には『裕福』な人」といわれている層がもらえる年金となる。■30代の人が「老後」になったときもらえる年金額では、年金制度が先細りになるといわれている、私たち30代~40代の年金額面はどれくらいになるのだろう? 年金額240万円=夫(年額160万円)+妻(年額80万円)「会社員だった夫の年金は160万円(年額)くらいに下がるといわれています。専業主婦だった妻の年金を現状のままもらえると考えて、240万円くらいが良いところでしょう」(山中さん)夫の年金額が下がるのだから、妻の年金額も下がることが予想される。つまり、年額240万円よりも年金額は低くなると考えておいた方が良さそうだ。次回は、「いま、30代の人が「老後」に足りなくなる具体的な金額」です。※この記事は2016年11月の取材に基づいて書いています。■今回取材にご協力いただいた山中伸枝さんの著書 ど素人が始めるiDeCoの本 (山中伸枝/翔泳社 本体1,500円+税)
2016年12月16日こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ベストセラーになった『下流老人一億総老後崩壊の衝撃』の著者で、社会福祉士・社会運動家の藤田孝典さんは、「老後破産にいちばん陥りやすいのは、 年収700万円前後の現役時代に比較的収入に恵まれていた世帯である」という主旨のことを述べて広く国民に警鐘を鳴らしました。その反響は大きく、今では現役時代の収入にかかわらず、不測の事態によって誰でも老後破産に陥る恐れがあるということが常識として定着しつつあります。藤田さんは社会運動家の立場から、西欧の先進諸国に比べて著しく遅れたわが国の社会保障行政の問題点を鋭く指摘しますが、一方で老後貧困に陥りうつ状態を呈して訪れる患者さんたちの診察にあたっている精神科の医師の中には、「足るを知るという心の持ち方ができていないと、結局お金がいくらあっても精神的に充実したシニア・エイジを過ごすことはできない」と、異口同音に指摘する人たちが存在します。これからシニア・エイジを迎える者の一人として、皆さんと一緒に、今回はこの“知足”の思想 を重要視している複数の精神科医たちのアドバイスに着目してみたいと思います。●「退職後に数千万円が必要という言葉に惑わされてはいけない」と言う保坂隆先生『精神科医が教える50歳からのお金がなくても平気な老後術』などの著書がある精神科医の保坂隆先生は、『マスコミやネット上に溢れる「退職後に数千万円が必要」といった言葉に惑わされてはいけない』と言っています。お金はその人の人生観やライフスタイル、家族状況、生活環境、健康状態などによっていくら必要になるかが全く違ってくるため、老後に数千万円は必要だといったような、金融資本ビジネスの立場から庶民の不安を煽るような言説を鵜呑みにしてはいけない ということです。また保坂先生は、**********『慎ましい暮らしでも明るく過ごしている人もいれば沢山お金を持ちながら不安でたまらないという人もいる。生き方を分けるのは、ものの捉え方である。人と比べず、不要な物は持たず、身軽に、自分流で、低く暮らし高く思う。このような心の持ち方ができていればシニア・エイジの毎日を心から楽しんで暮らすことは誰にでも可能である』**********と言っています。●「世間体を過剰に意識したらいくらお金があっても足りない」と言う吉本博昭先生次にご紹介するのは、“内観療法”という心理療法の第一人者でもある、医師で精神科アイ・クリニック(富山市)を開院する吉本博昭先生の見解です。現役時代に収入が比較的多かった人たちを、一転して“老後破産”へと追い込んでいく原因として最も大きなものが「病気」と「介護」であることは藤田孝典さんも指摘していますが、吉本医師は内観療法研究の機関誌『やすら樹』に寄稿した『医療と内観~知足(ちそく)~』という文章の中で、以下のような主旨のことを述べておられます。『知足(ちそく)という思想は中国の哲学者・老子が書いた「老子道徳経」に出てくるもので、「足るを知る者は富む」すなわち「今あるものの中に積極的に喜びを見出す生き方ができている者は幸いだ」という考え方である。老子の思想と数多くの共通点を持つ中国仏教の禅宗にも同様の概念があり、京都の龍安寺にある蹲踞(つくばい)に記された「吾唯足知(われ、ただ、たることをしる)」という言葉も老子の理念と同じ意味である。自分は精神科の医師として、「この患者さんは知足という考え方を持ってさえいれば病気にならなかったのではないか」と思うことがとても多い』そして吉川先生は、『境界性パーソナリティー障害とまでいえなくても、他人の生活水準より低いことを必要以上に恐れたり世間体を過剰に気にしていたらお金などいくらあっても足りないし、心身の健康という意味でもきわめて不安定な状態と言わざるをえない』といった主旨の結論づけをされているのです。●老後破産に陥ってしまった元プチ富裕層の人たちによく見られる傾向とはそれでは、保坂隆医師や吉本博昭医師らが異口同音に述べる“知足の心”という概念を念頭に置きながら、藤田孝典さんら社会福祉の専門家の人たちが共通して指摘する、“老後破産に陥ってしまった元プチ富裕層の人たちによく見られる傾向”についてまとめてみましょう。筆者がみる限り、ざっと次のような点を挙げることができます。●(1)持ち家にこだわるがゆえに身動きがとれなくなってしまった現役時代の収入に比較的恵まれている大企業のサラリーマンの場合、住宅ローンが難なく組めるがゆえに、ややもすると分不相応な持ち家や分譲マンションにこだわる傾向があります。同僚に対する見栄もあったでしょう。ところがこれが意外とくせもので、自分や家族が思いがけず大病を患ったり介護を要するようになったりしたときに、ローンがあるがために身動きがとれず 、賃貸住宅で暮らす人のように安い家賃の住居に柔軟に移ることができずに破たんしてしまう。こういうケースはしばしばみられます。●(2)学費が払えたがために無理をして子どもを私立学校に通わせてしまった私立の中高一貫校の学費を何とか払っていけるだけの収入があったがために、無理して子どもを私立に通わせ、生活が苦しくなってしまったというケースもよくみられます。無理をしてでも将来少しでも収入の高い仕事に就けるようにとの親心はわかるのですが、藤田孝典さんは言います。**********『最近では無理して私立中高・有名大学を卒業しても就職した会社が世間一般では一流企業と呼ばれているにもかかわらず内実はブラック企業で、うつ病になるとか、会社を辞めて再就職できないケースも多い。そうなると30歳前後の子どもを定年退職してから養わなければならず、親の年金頼みの子どもによって老後に経済破たんしてしまう例が珍しくありません』(『週刊現代』2015年11月6日号より)**********●(3)プライドのせいで定年後に就ける職がないため年金以外の収入が皆無定年退職後に20年〜30年もの人生が待っている今の超高齢化社会では、リタイアした後でも年金以外の収入があった方が安心です。ところが、現役時代に比較的高い収入を得ていたような人たちは中途半端なプライドが邪魔をして 、「警備員なんかできない」「駐車場の交通整理など無理」のように“○○したくない”が先に立ってしまう傾向があります。これに対し、比較的低収入だったシニアの人たちはつまらないプライドが無いため、倉庫管理員でも清掃作業員でも抵抗なくこなし、結果的に60代以降の継続的な収入では元プチ富裕層の方が少なくなってしまうきらいがあるのです。----------いかがでしょうか。上記の他にも、「一度手にした生活水準をどうしても落とすことができなかった」とか、「どうしても見栄があって第三者にSOSを発信することができなかった」といった傾向が指摘できるかもしれません。こういった傾向は、保坂隆医師や吉本博昭医師らが言う“足るを知る”という心の持ち方ができていないということと関連するように思いませんか?現役時代にそこそこ高収入であった人の方が老後破産に陥りやすい という傾向を“自業自得”のように評するのではなく、知足の心を持って生きないことには結局は誰しも穏やかで充実したシニア・エイジを過ごすことはできないのだということの教訓にすべきなのではないでしょうか。【参考文献】・『精神科医が教える50歳からのお金がなくても平気な老後術』保坂隆・著・『一生お金に困らない老後の生活術』保坂隆・著・『下流老人一億総老後崩壊の衝撃』藤田孝典・著●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)●モデル/TOYO
2016年11月22日こんにちは、ファイナンシャルプランナーでライターのyossyです。皆さんは、「老後破産 」という言葉を聞いたことがありますか?テレビ放送で“老後破産”している高齢者の現状が紹介されて以降、波紋を呼んでいます。今回は、老後破産とはどんな状況なのか、どんな人が陥りがちなのか、見ていきましょう。●年金だけでは生活していけない“老後破産”2014年9月に放送された、NHKスペシャル『老人漂流社会 “老後破産”の現実』。そのなかでは、多くの独居高齢者世帯が生活保護世帯よりも低い収入しかなく、困窮している現状が紹介されました。基本的には、収入が低いにも関わらず生活保護を受けておらず、破産状態にあることを“老後破産”と表現します。●老後破産に陥りやすい人の特徴5つでは、どんな人が老後破産しやすいのでしょうか。5つのポイントに分けて見ていきましょう。●(1)定年後は悠々自適の生活を送るつもりで、働く気がない「ずっと頑張ってきたんだから、定年後はゆったりとしたい」と考え、定年後に働かないでいると困ったことになるかもしれません。年金の受給開始年齢が定年よりも後だったら、その間は貯蓄で生活をつないでいくしかなくなってしまいます。貯蓄がみるみる減り、後々の生活がどんどん苦しくなっていってしまいますね。健康状態によっては働けない可能性もありますが、できる限り健康に気を配り、長く働けるようにしたいものです。●(2)生活レベルを下げられない意外と高収入だった人がなりがちとも言われる老後破産。現役時代よりも収入が減っているにも関わらず、無駄にプライドが高く、生活レベルを下げられない人 は多いものです。早い段階から長期的なマネープランを立てて、収入と支出のバランスを見て、冷静になっておく必要があるでしょう。●(3)貯蓄をせず、定年後に高額の支出が残っている住宅ローンの返済や子どもの教育費などの大きな出費は、現役時代にしっかり完済する、貯蓄しておくなどの対処をする必要があります。先延ばししておいた大きな出費は、老後の生活を苦しいものにさせてしまうのです。また、もちろん老後のための貯蓄も必要ですね。そういった貯蓄をせずに毎月の収入やボーナスを使い切ってしまっているなら、一度生活レベルを見直しましょう。早めが肝心です。●(4)プライドが邪魔をして人に頼れない「国の世話になるわけにはいかないから、生活保護は申請できない」「親族にはこの状況を知られたくない」など、プライドが邪魔をして誰にも相談できずに苦しんでいる 高齢者が多いと言います。早い段階から相談すれば、早く解決できるケースもあるでしょう。●(5)自分の老後やリスクを想像できていない人間、年をとれば病気しがちになり、医療費もかさみます。配偶者に先立たれる可能性や、介護をする可能性だって十分にあるでしょう。近年は若者の雇用が不安定なため、子どもが自立できなかったり、リストラされたりして同居するケースも増えているようです。そのときになってから、「老後の支出がこんなに多いなんて……」と後悔する前に、あらかじめ備えられるリスクには備えておきたいものです。----------生きていれば、誰もが年をとり老後を迎えます。「今は若いから関係ない」と楽観視していると、高齢者になってから苦しい生活を送ることになるかもしれないのです。住宅を購入するとき、子どもの教育プランを考えるとき、保険を検討するとき、毎日のちょっとした贅沢、その一つひとつが老後に影響を与える可能性もあります。ぜひ、早いうちから長期的なマネープランを立てておきましょう。【参考リンク】・老人漂流社会”老後破産”の現実 | NHKスペシャル()●ライター/yossy(フリーライター)
2016年10月03日こんにちは、ライターの渦マキです。今、増税や年金制度が重くのしかかり、老後を心配する中高年が増えています。「老後の資金として○千万円が必要」などさまざまな意見があり、焦りや不安を抱えて暮らしている人も少なくないでしょう。筆者は、現在自動車での移動が必須であるような田舎に暮らしていますが、ご近所の方たちはほとんどがこの近隣出身ではなく、お仕事を引退し、新築したり中古住宅を購入したりして“田舎暮らし”を選んだ年配の方たちです。ところで、持ち家と賃貸とでは、どちらが老後の生活に余裕が持てるのでしょうか?目次持ち家と賃貸、どっちが得?“都会に住み続けるか、引退後田舎暮らしを始めるか”という選択もさいごに●持ち家と賃貸、どっちが得?●持ち家の場合持ち家は、ローンを支払っていれば月々の負担は大きいもの。子どもの成長とともに家計の出費も増えていきます。働き盛りで夫婦共働きであれば負担は軽減されますが、支払いをしているあいだは大変です。しかしながら、終わってしまえば一気に楽 になります。●賃貸の場合一方賃貸は、家賃の支払いが一生ついてまわります。年収に対して家賃に占める割合が大きくなれば、それだけ生活に余裕がなくなっていきます。老後、年金で暮らしていくには当然負担が大きくなってしまいます。安い家賃の物件に引っ越すなどして、生活費の圧迫をくいとめるなど考えなくてはなりませんね。その代わり、住む場所を変える自由 はあります。筆者の近隣の方たちのように、引退後に田舎で暮らし始めるのもひとつの選択肢でしょう。都会にマンションを購入後、田舎暮らしを勧められてマンションを売却し、移動してこられた方もいるようです。高齢になってくると賃貸物件が借りにくくなるという話もあるそうなので、そこは気になるところです。おそらく、孤独死や認知症などの高齢者独特の問題を考慮してのことでしょう。若いころに比べて、すぐ引っ越して次を見つけるということがしづらくなってきますね。●“都会に住み続けるか、引退後田舎暮らしを始めるか”という選択もずっと都市部に住み続けるのであれば、若いうちにローンを組むなどして住居を持つことが理想です。年金暮らしの家計には、ローンの支払いは大きな負担となってのしかかってきます。年金をもらう年齢になる前に完済できるペースでの支払い計画を立てましょう。せっかく頑張って購入した家を手放してしまうことになれば、そのころは建物の価値は驚くほど下がっています。“家を購入する=財産が残る”という過度の期待は禁物 です。引退後に田舎暮らしを選択するのであれば、土地代や物価が驚くほど安いという利点があります。しかし、田舎では公共機関や医療機関も少なく、交通手段はほとんど車に頼ることになるという一面もあり、一長一短といえますね。●さいごに賃貸か持ち家か?どちらが得か?金銭面を考えれば、どちらも大差はないといえるでしょう。利便性が大事なのか、少し不便でもゆったりと暮らしたいのか。結論は、住む人の考え方にあるのではないでしょうか。忘れてはならないことは、“賃貸に住む”という選択をした場合、老後も家賃の支払いがあるということ。余裕をもって暮らすためには、働ける時期に蓄えをしっかりしておくことが大切になってきますね。【参考文献】・『荻原博子の金持ち老後 貧乏老後』荻原博子・著●ライター/渦マキ(フリーライター)
2016年09月28日いまや介護は誰でも避けては通れない問題。平成27年の厚生労働省の調査では、85歳以上の60.3%は介護が必要な状態であることがわかっています。家族の介護には多額の費用が発生しますが、それだけでなく、介護する側が仕事を辞めたり、休職したりせねばならず、収入が減ってしまうこともあります。このような状態で徐々に家計が圧迫され、「介護破産」に陥るケースも近年増えているといいます。収入が減っても住宅ローンなどは払い続けなくてはならないため、事前にきちんと資金計画をしていないと、後で取り返しのつかないことになってしまうかもしれません。そこで目を通しておきたいのが、『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本』(太田差惠子著、翔泳社)。介護が必要になった場合の施設の選び方から、かかるお金、契約についてまでが具体的に説明されています。今回は本書のなかから、施設入居を計画する際に知っておくべきポイントをご紹介します。■1:親が「100歳になるまで」を想定して計画する高齢者施設に入居するにあたって必要な費用は、大きく分けて「入居一時金(前払金)」「月々必要な料金(居住費・食費・サービス費など)」「その他の費用(医療費・生活用品・小遣いなど)」「予備費」となります。入居一時金は無料~1億円、月額費用は5~40万円と施設によってかなり幅があるため、「いくらかかるか」というより「いくらかけられるのか」という視点で検討していく必要があります。資金計画を立てる際は、親が100歳まで生きると想定して計算します。入居一時金などのまとまったお金は貯蓄から、月々の支払いは年金などの収入から支払うのが基本です。たとえば、1,000万円貯蓄があるAさん(80歳)の場合、一時金200万円、緊急の出費に備えた予備費を200万円とすると残りは600万円になります。100歳まであと20年間生きるとすると、年間で使えるお金は30万円で、月額にすると25,000円。毎月10万円の年金があるとすると、12万5,000円までは支払えるということになります。まずは早い段階で、親の貯蓄と毎月の収入を把握しましょう。資産状況がわからないまま施設探しをすると、あとあとやりくりができなくなってしまう恐れがあります。■2:月額利用料の他にかかる費用にも注意する特別養護老人ホームや老人保険施設など、介護保険で入れる「介護保険施設」では、おむつ代や食事用エプロン代など細かなものまで介護費に含まれています。しかし、介護付き有料老人ホームなどの民間施設の場合、おむつ代は原則有料。持ち込みをした場合でも廃棄料金が必要になる施設もあります。通院への付き添いや買い物代行なども費用がかかります。また、民間施設入居中に病院に入院する場合、食費以外は継続して支払わなくてはいけません。このような状況になると「施設費用」と「入院費用」が二重にかかり、厳しい状況になります。そのため、あらかじめ予備費をとっておかなくてはいけません。■3:利用料金に合ったサービスかどうか確認する民間施設の利用料金を大きく左右するのは、「立地」「設備」「人件費」の3つ。一般不動産と同様、立地条件のよいところは施設料金も高くなる傾向があります。建物についても新築は割高で、中古物件をリノベーションした施設は割安になっています。共用施設の広さや豪華さも注意したいところです。また、人員体制も確認しましょう。国の指定基準は要介護者3名に対して職員1名となっていますが、民間施設では2.5:1や2:1となっているところもあります。また、介護職員よりも看護職員の方が人件費が高くなるため、看護師が24時間体制で常駐する施設では利用料金が高くなります。比較検討する際は、なにが必要でなにが必要ではないのかをしっかり見極めることが大切です。■4:自分自身も年金生活になる可能性を想定する親の貯蓄や年金で費用が十分にまかなえない場合、子からの支援が必要になることもあります。しかし、現在は働いていて収入が十分にある人でも、将来は年金生活になるということを意識しておかなくてはいけません。自分自身が介護される身になった、もしくは先に自分が亡くなってしまった場合は次の世代に大きな負担をかけることになってしまいます。親の支援をする場合は、子の生活設計も考え、できる範囲で行うことが大切です。■5:「共倒れ」になる前に生活保護も視野に入れる介護疲れで、共倒れ寸前のような状態になると「お金はあとでなんとかなるはず」と考えて、とにかく施設入居の契約をしてしまう人がいます。しかしこれは危険。途中で経済状況が厳しくなり、施設を退去しなくてはならない事態に追い込まれることもあります。それを回避するには、まず担当のケアマネージャーに相談し、在宅のままショートステイを連続30日間利用する、3ヶ月間老人保健施設に入居してもらうなど一時的に親と離れ、冷静に考える期間をもうけましょう。親の経済状況がかなりひっ迫している場合は、親に生活保護を申請することも一案です。施設の月額利用料を生活保護の「生活扶助」「住宅扶助」で賄える可能性があります。実際生活保護を受けながら、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅で生活している例も珍しくありません。*介護にかかる費用は施設によって大きく異なるので、資料などを取り寄せてしっかりと比較検討することが大切。親が元気なうちはまだまだ大丈夫と思いがちですが、元気なうちだからこそ、しっかりと話し合っておきたいですね。(文/平野鞠) 【参考】※太田差惠子(2016)『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本』翔泳社※介護や支援が必要な人の割合はどれくらい?-公益財団法人 生命保険文化センター
2016年08月02日最近、「親の介護のため仕事を辞めざるをえなくなり、生活が苦しい」とか、「両親の介護費用のために貯蓄が減ってしまった」という話を聞くことがあります。自分たちの介護にかかるお金の準備をするより先に、両親の介護にかかるお金が心配だという方も少なくないでしょう。しかし実際問題として、介護の費用はどのくらいかかるのでしょうか?今回はみなさんの気になる疑問を解明していきたいと思います。■公的介護保険から保障を受けられる!公益財団法人 生命保険文化センターが、「年代別人口に占める要支援・要介護認定者の割合」というデータを発表しています。これによると、日本人が老後の介護状態になる確率は、80~84歳では29.9%、85歳以上で60.3%。確率は75歳をすぎたあたりから急速に上がりはじめます。平均寿命が女性86.41歳、男性79.94歳(2012年)という世界一の長寿国に生まれ育った私たち。人生の最終コーナーのあたりで、どうしても介護状態になる確率が高くなるようです。介護にかかる費用については、国の公的介護保険が導入されたため、介護保険の対象サービスを受けた場合の自己負担は1割で済むようになりました(2015年8月より一定収入以上の方は2割)。つまり居宅サービスを例にとると、もっとも多く介護サービスを受けることができる要介護5の人でも、自己負担の上限金額は36,065円というわけです。さらに、健康保険の高額療養費制度と同様介護保険にも「高額介護サービス費」という制度があり、一般世帯の場合であれば、37,200円を上限としてそれ以上自己負担が増えないようになっています。ただ、介護の状態や環境によっては、支給限度を超えたサービスが必要になる場合もあり、それは全額実費となってしまいます。すると、次に気になるのは実費がいくらになるのか、ですよね?これについては、同じく公益財団法人 生命保険文化センターの「介護保険からの給付と自己負担額(1ヶ月分)」にある介護費用例からイメージできるようになっています。あくまで例ですが、月額サービスの利用合計金額が277,070円(訪問看護40,700円、訪問介護85,360円、デイケア100,360円、ショートステイ25,650円、福祉用具貸与25,000円)で、要介護度別の支給限度額(本事例は要介護3)が269,310円。つまり、277,070円から269,310円をひくと7,760円になるので、7,760円の自己負担があるということになります。■本当に毎月25万円以上もかかるのかこう見てみると、「それほど介護費用がかかるのか?」という疑問が生まれますよね。介護の話になると「施設に入れば毎月25万円以上はかかる」というような話をよく聞きます。しかし、これは「有料老人ホーム」に入所した場合なのです。同じ施設でも「特別養護老人ホーム」であればこんなに費用はかかりません。ただし東京をはじめ各地とも、「特別養護老人ホーム」は定員がいっぱい。順番待ちも相当な人数です。つまり、ここに介護の問題があるわけです。「介護が必要な両親がいる。でも費用の安い施設は定員がいっぱいで入れない。かといって高額な有料老人ホームに入れることはできない。結果、自宅で介護をせざるをえない」こんな図式なのです。自宅で介護となれば、働き方にも制限が出る場合があります。そのため収入が減り、生活苦という悪循環に陥るのです。近年は、10万円台で入所できる有料老人ホームも増えてきました。10万円台であれば、両親の年金を考慮すると多少の負担で預けられるかもしれません。親の年金受給額を早めに把握し、有料老人ホームの情報にもアンテナを張っておくことお勧めします。(文/ファイナンシャルプランナー・岡崎充輝) 【参考】※介護や支援が必要な人の割合はどれくらい?-公益財団法人 生命保険文化センター※介護保険制度の改正について-神奈川県ホームページ※実際にかかる介護費用はどれくらい?-公益財団法人 生命保険文化センター
2016年04月27日【ご相談】教育費や住居費、老後のことを考えたとき、今の収入で大丈夫か心配。28歳パート勤務の女性です。今27歳の夫が30歳~33歳頃に、3,500万円程度の住宅購入を考えています。このままの収入で、教育費や住宅ローン、さらに老後のことを考えると、お金が足りなくなるのではないかと不安になり、このままパートで働くよりも正社員で働いた方がいいのではないかと悩んでいます。このままだと、いつ頃、いくらくらい足りなくなるのかを教えてください。奈良県在住 大田 美樹さん (仮名)【回答】お子さまの出産・育児期間以外はパート勤めし、3,500万円の住宅を購入された場合、約20年後にお金が足りなくなる可能性があります。しかし、収入を増やしたり支出を減らしたりして、今よりも1カ月25,000円ほど収支増の家計に改善できれば、平均余命まで黒字がキープできそうです。働ける環境にあるときは、思い切って正社員になることを考えてみてもいいのではないでしょうか。(ファイナンシャルプランナー 中垣 香代子からのアドバイス)「人生の三大支出」という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。これは、人が生活していく上で必要なお金の中でも大きな割合を占める、3種類の費用のことです。1つ目は住宅にかかわる費用、2つ目は子どもにかかわる費用、3つめは老後の生活にかかわる費用です。大田さまはパートで働き続けた場合に、これから先に控えている三大支出を乗り切ることができるのかがご心配なのですね。まだ20代という若さで先々のことを考えておられ、素晴らしいです。住宅購入やお子さまの誕生など、これからかなえたい夢がたくさんですね。思い描く生活が経済的に可能かどうかを知るためには、毎年の収支と貯蓄残高をシミュレーションすることが一番です。今回は以下の内容で今後の年間収支と貯蓄残高をシミュレーションしてみました。【収入】夫:59歳まで358万円、60歳退職・退職金1,500万円、60歳以降64歳まで300万円、65歳退職妻:第1子出産に伴いパート勤務退職、第1子小学校入学を機にパート再開96万円児童手当を見込む※厚生労働省ホームページ「児童手当について」をもとに試算【年金】夫:老齢基礎年金満額・老齢厚生年金受給妻:老齢基礎年金満額受給※老齢基礎年金満額を78万円として試算※老齢厚生年金を65歳~73歳は84万円、74歳~87万円として試算【お子さま】第1子:妻30歳時に誕生、第2子:妻33歳時に誕生私立幼稚園・公立小学校・公立中学校・公立高校・私立大学文系に進学と仮定※文部科学省ホームページ「平成26年度子供の学習費調査」「私立大学等の平成26年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」をもとに試算【住宅】夫32歳時に3,500万円の物件購入自己資金1,000万円(諸費用175万円込み)ローン(年間100万円):借入額2,675万円、返済期間35年、固定金利(1.6%)管理費・火災保険料・固定資産税合わせて年間45万円夫60歳時にリフォーム:300万円【保険】夫:29歳から55歳まで、万一のときに毎月10万円ずつ給付される収入保障保険に加入(年間保険料 約31,000円) 妻:妊娠前に夫と同様の保障内容の医療保険に加入(年間保険料 約32,000円、払込期間60歳まで)【食費、水道光熱費、通信費、医療費などの基本生活費】現在の支出金額をベースに、お子さまが誕生した年は月1万円増額お子さまの成長に伴う増加分として毎年1.0%ずつ増額60歳時は前年の80%で計上、以降同額【その他の年間支出】現在と同額の年間15万円を夫80歳まで計上シミュレーション結果住宅を購入すると、ローンの他に管理費・修繕積立・固定資産税・火災保険料などのランニングコストがかかります。現在に比べて住宅関連費が年間で50万円以上多くなります。住宅購入と奥さまの出産・子育て時期が重なり年間で見ると収支がマイナスになってしまいますが、その後奥さまのパート復帰により改善します。しかし、お子さまが大きくなるにつれ、教育費に加え、食費・日用品・光熱費などの生活費がジワジワと増加していくため、上のお子さまが中学校に上がる頃には再度年間の収支がマイナスになってしまい、大学に入学する頃には貯蓄が底をついてしまいます。だからといって、「住宅購入ができない」とか「子ども2人は無理」ということではありません。下のシミュレーションをごらんください。大田家の年間収支を年金開始時期まで30万円ほど改善することにより、住宅の購入資金や、お子さまの進学資金も準備でき、老後も平均余命まで黒字をキープすることができます。年間30万円というと1カ月25,000円です。収支を改善する方法は3つ。1つ目は、奥さまの収入を増やすこと。働ける環境にあるときは、思い切り収入を増やすことを考えてはいかがでしょうか。社会保険に加入する働き方をすることにより、健康保険からは出産手当金が、雇用保険からは育児休業給付金の支給があります。子育て期間中に無給になるのと社会保険から給付を受けられるのとでは、家計状況が大きく変わってきます。また、65歳以降には老齢厚生年金も受給できることになります。2つ目は、支出を減らすこと。支出を減らす順番としては、1度見直せば効果が継続する固定費が最初になります。電力自由化により電気事業者を自由に選べるようになりました。各社のプランを比較してみてはいかがでしょうか。携帯電話などの通信費もプランを見直したり、思い切って格安SIMに変更したりするのも良いですね。3つ目は、お金を殖やすこと。収入を増やしたり支出を減らしたりして赤字を回避できるようになったら、お金を運用して殖やすことも考えてみてください。将来のことをあまり心配し過ぎて、お金を使うことにマイナスの感情を持つよりも、「こうすれば大丈夫」という方法を知り、気持ちよく上手にお金を使ってくださいね。今回のシミュレーションは、多くの仮定の上で作成しています。大田さまの実情に合わせ数字を入れ替えてみてください。また、住宅購入やお子さま誕生など、人生の分岐点にファイナンシャルプランナーに詳しいライフプラン表を作成してもらうこともおすすめです。コラム執筆者プロフィール 中垣 香代子(なかがき かよこ)CFP(R)/2級ファイナンシャルプランニング技能士損害保険会社に約10年勤務後、子育てに専念。約20年間の専業主婦の後、ファイナンシャルプランナーとなる。「老後のお金サポーター」として、相談業務の他、40~50歳代女性にお金の知識をわかりやすく伝える活動をしている。また、自身の経験から、経済的理由で進学をあきらめるお子さんが一人でも減ることを願い、就学支援の情報発信にも力を入れている。老後のお金を一緒に考える事務所 所長。コラム監修者プロフィール 柳澤 美由紀(やなぎさわ みゆき)CFP(R)/1級ファイナンシャルプランニング技能士関西大学社会学部卒。大学時代に心理学を学び、リクルートグループに入社。求人広告制作業務に携わった後、1997年ファイナンシャルプランナー(FP)に転身する。相談件数は800件以上。家計の見直し、保険相談、資産づくり(お金を増やす仕組みづくり)が得意で、ライフプランシミュレーションや実行支援も行っている。家計アイデア工房 代表※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
2016年04月26日いま、年収が多くても貯金できない家庭が問題になっています。年収750万円以上1,00万円未満の家庭の11.2%、1,000万円以上1,200万円未満では13.5%、1,200万円以上では11.8%が金融資産ゼロ、というデータもあります。『隠れ貧困 中流以上でも破綻する危ない家庭』(荻原博子著、朝日新聞出版)の著者は、テレビでも人気の経済ジャーナリスト。著者がこれまでに取材してきた“高収入なのに貯金できない家計”をヒントに、老後破綻をきたさない家計を考えてみましょう。■人生には「3つの大きなお金のハードル」がある本書では、「年収800万円ありながらも、ローン返済や教育費を払うと毎月の収支は赤字」といったケースが示されています。こうした、大きな無駄をしているわけではないのに貯金ができず将来が不安な家計を、著者は「お金の生活習慣病」と呼びます。こんな状態では老後も不安。そのため、ローンを長期に組みなおすなどして家計に余裕を持たせ、「若いうちから退職までに何万円貯めよう」という考えになりがちです。しかし著者は、そんな発想に“待った”をかけています。「30代、40代で老後の準備を始めるのは合理的ではない」というのです。人生には、「住宅ローン」「子どもの教育費」そしてその後にくる「老後資金」という3つの大きなお金のハードルがあります。著者によれば、貯金できない家計の問題の根本は“貯金ができない”こと自体ではなく、ハードルを越える“順番”を見極められていないこと。まず「住宅ローン」「子どもの教育費」をクリアしてから「老後資金」に着手すべき、というのが著者の主張。そして、30~40代の目標は「ズバリ、家計を“50歳でプラスマイナスゼロ”に近づけておくこと」。仮に貯金ゼロでも、現役時代に住宅ローンさえゼロにできるなら「老後の勝ち組といっても過言ではない」とまでいいます。■住宅ローンの返済は「早ければ早いほどおトク」そのために、30~40代は貯蓄できなくてもまず繰り上げ返済で住宅ローンをできるだけ早く返し終えることが得策、と著者は訴えます。その理由は2つ。ひとつは、早めに返すほどおトクだということ。多くの人が、最初に利息を多く払う「元利均等方式」でお金を借りているため、早い時期に多めに返済することで利息分が大きく減るのです。買ったばかりの時期に約100万円繰り上げ返済をすれば、約100万円分の利息を払わずに済むそう。これは、なんと100万円投資して200万円手にするのと同じことなのです。そして、住宅ローンを早く返し終われば、それまでローンで支払っていたお金を貯金に回せる点。たとえば年間150万円をローンで払っていた場合、そのお金は“ないもの”として生活してきているので、家計に大きなメスを入れなくても年150万円の貯金をすることが可能なのです。年間150万円のローンを50歳で終えれば、その後60歳で退職するまでに1,500万円貯めることができます。妻がパートに出るなどすれば、2,000万円も見えてきます。■まずは「住宅資金を用意すること」に専念すべきもうひとつ、著者が指摘するお金の使い方は「住宅ローンの頭金をなるべく多く出す」こと。ここでもハードルの順番をよく考えて行動することが大切になってきます。教育資金や老後資金として別に貯めていると、必然的にその分住宅ローンの頭金に割ける金額は少なくなるもの。しかし著者は「まずは目前の住宅資金を貯めることに全力投球しましょう」と断言します。頭金を多めに用意できれば、住宅ローンもその分少なくなり、返済を早めたり貯蓄をしたりする余裕が出て、教育資金も貯められます。最も教育費がかかる大学入試から大学卒業までの数年間を乗り切ることができれば、今度は老後資金に全力投球することができるのです。「お金には色がついていない」と著者はいいます。その時々、手元にあるお金をもっとも使わなくてはいけないところに集中的に使っていくことで、効率的なお金の使い方ができるというわけです。*公的年金が目減りしていくなか、30~40代の若い世代にとって「老後資金をどうつくっていくか」は大問題。しかし著者は、「30~40代は、年金より現金」を肝に銘じよと訴えます。遠い将来を不安がり個人年金などを検討するよりも前に、まずは足元固め。確実に借金を減らす方が、効率よく家計を回すことができるのです。本書では、平均より収入が多くても効率的なお金の使い方をしていないばかりにお金の生活習慣病に陥っている家計を詳細に分析。そこから逆説的に「効率的なお金の使い方」を導き出しています。また、高収入でも収支がマイナスになるケースなど62の具体的なお悩みをQ&Aの形で解説。自分の家計に即、活かせるアドバイスを見つけることができます。収入が増えてくる50代、そして老後に借金家計に陥らないために、30~40代で読んでおきたい1冊です。(文/よりみちこ) 【参考】※荻原博子(2016)『隠れ貧困 中流以上でも破綻する危ない家計』朝日新聞出版
2016年04月24日会社員にくらべて、仕事のペースや幅に自由度のある自営業。「思い切って独立したい!」「脱サラしてカフェをはじめたい!」というような働き方にあこがれる人が多い一方、「厚生年金にくらべて年金が少ないし、退職金もないし……」と二の足を踏んでいる方も少なくないはず。でも、本当にそうでしょうか?じつは自営業者をはじめとした「国民年金の第1号被保険者」こそ、工夫しだいで年金を増やすことが可能なのです!節約アドバイザーのヨースケ城山さんに、自営業者の老後資金づくりについて伺いました。■1:攻めの「個人型確定拠出年金」で年金を増やす確定拠出年金は、自分で増やして公的年金に上乗せできる制度です。特徴は、自らの責任のなかで金融商品を選び運用する点。運用次第で受け取れる年金額が決まる「資産形成」と、掛け金が控除対象になる「公的制度」の側面を併せ持っています。最大のメリットはやはり、毎月の掛け金(保険料)全額が所得控除の対象になる点。保険料として支払っている金額×税率分が戻ってくることになります。自営業者など「国民年金第1号被保険者」の場合、掛け金は月5,000円~68,000円の間で自由に決めることができます。最大で年81万6,000円までが所得控除の対象になるのです。なお、受給は原則60歳から。つまり60歳までは引き出せないのですが、60歳時点で通算加入期間が10年に満たない場合は支給開始年齢がさらに繰り上がります。60歳から受け取りたい場合は50歳までの加入が必須です。■2:「国民年金基金」で守りを固めるもうひとつ、自営業者など第1号被保険者の老後の所得保障のためにつくられた公的年金制度が「国民年金基金」です。これにより、自営業者も「国民年金(老齢基礎年金)」と「国民年金基金」の2階建てにすることができます。掛金の上限は月額6万8,000円(個人型確定拠出年金の掛金との合計)。加入は口数制で、何口、何型を選ぶかによって、将来受け取る年金が決まります。終身年金のA型・B型、「15年間」「10年間」など支給期間に年限のあるⅠ型・Ⅱ型・Ⅲ型・Ⅳ型・Ⅴ型の7種類の組み合わせで、年金額や年金支給期間、開始年齢などが幅広く選べるようになっています。こちらも掛金の全額が所得控除の対象。一般の個人年金が最大で年額4万円(平成24年1月以降に契約した個人年金の場合)までしか所得控除されないのにくらべ、断然お得です。しかし、若いときから加入しているほど掛け金は安く、50代になってから加入すると高くなるということは覚えておいた方がいいでしょう。■3:「付加年金」でコツコツと年金を増やす付加年金は、国民年金の第1号被保険者だけが掛けられる年金です。ただし国民年金基金に加入されている方は対象外。国民年金基金には加入する余裕がない、という方におすすめできる制度です。付加年金の魅力は、気軽に始められる金額設定。保険料(掛け金)は1か月400円です。そして、65歳からは『付加年金を納めた月数×200円』が年金でもらえます。仮に1年間(12ヶ月)だけ付加保険料を払った場合、12ヶ月×400円=4,800円となり、65歳から、毎年12ヶ月×200円=2,400円が年金に上乗せされます。つまり、わずか2年で元が取れる計算です。40年付加年金に入っていれば、65歳から毎年(40年×12か月×200円で)96,000円が受け取れます。■4:未払いでも間に合う「年金」に加入する(1)70歳まで任意で加入できる「特例」も国民年金(老齢基礎年金)は40年間、所定の保険料をすべて支払った場合に満額が支給されます。つまり、そうでない人は満額を受け取れないということ。「それでは困る」という人のためにあるのが、「任意加入」の特例。昭和40年4月1日以前生まれの人に限り、年金の受給が始まる65歳まで加入期間40年をめざして加入を続けることができます。また、60歳を過ぎて加入期間が25年に満たない場合は、最大70歳まで加入期間を延ばすことができます(受給資格を満たすまでは年金は支給されません)。(2)公的年金の受給資格が10年に短縮年金を受け取るために必要な「公的年金の受給資格期間」は25年でした。しかし、今後これが半分以下の10年に短縮されます。いまのところ、平成29年4月から実施予定です。これまでは、加入期間が25年に満たず「もう無理だ」とあきらめて年金を未納にしていたケースも少なくなかったそう。10年に短縮されることで、加入のチャンスが格段に広がります。「年金がまったくもらえないのと、少額でも年金が受け取れるのでは、老後の生活は大きく変わります。これまで未納だった場合でも、まだ遅くはありません」と城山さん。将来のため、少しでも年金を受け取れる準備をしたいものです。*「自営業=年金は期待できない」とあきらめていてはもったいない!一度きりの人生、工夫次第で大きく広がる国民年金制度を賢く利用して「やりたいこと」を追求してみませんか?(文/よりみちこ) 【取材協力】※ヨースケ城山・・・節約アドバイザー、ファイナンシャルプランナー、AFP、住宅ローンアドバイザー、年金アドバイザー。著書は『給料そのままで「月5万円」節約作戦!』(ごま書房新社)。本の内容は、『らくらく貯蓄術。住宅ローン地獄に落ちない為の家計防衛のススメ。』にもまとめられている。ブログ『節約アドバイザーヨースケ城山ブログ』では、節約だけではなく転職活動、著書、社労士、FPのことを配信中。 【参考】※国民年金連合会
2016年04月12日