【音楽通信】第51回目に登場するのは、世界66か国をひとりで旅して各地でLIVEを行い、世界の音楽と文化を体感してきた、シンガーソングライターのナオト・インティライミさん!取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol. 51もともと歌うこともサッカーをすることも好き世界66か国をひとりで旅して各地でLIVEを行い、世界の音楽と文化を体感してきたナオト・インティライミさん。自らのソロ活動のほか、コーラス&ギターとして Mr.Childrenのツアーサポートメンバーに抜擢され、2010年4月にシングル「カーニバる?」でメジャーデビュー。シングル「タカラモノ ~この声がなくなるまで~」「今のキミを忘れない」は100万ダウンロードを超え、2012年リリースの3rdアルバム『風歌キャラバン』は1位を獲得しNHK紅白歌合戦に初出場するなど、以降も数々のヒット曲を世に送り出し、ナゴヤドームなど大会場でのライブも大成功をおさめ、2019年には「Naoto」名義で世界デビューも果たしました。また、役者としても「コノウドリ」などに出演。南米インカの言葉で「太陽の祭り」の意味を持つ「インティ ライミ」という名前の通り、明るくポジティブな印象のあるナオトさん。2020年10月7日に、EP『オモワクドオリ』をリリースされたということで、お話をうかがいました。ーー音楽活動をされる以前のことから少しお話をお聞かせください。ナオトさんは、かつて柏レイソルのジュニアユースチームに所属されていたことがありましたが、サッカーから音楽へと、意識が切り替わったきっかけはなんだったのでしょうか。もともとサッカーも、歌うことも、どちらも好きだったんです。音楽でいえば、中学2年生のときから自分で曲を作っていたんですが、そのときも将来の夢はずっとサッカー選手でしたし、実際にサッカー中心の生活をしていました。でもそんなある日、高校1年生の春に、「音楽で飯を食っていこう」と決断をしたんです。サッカーがつまらなくなったわけではなくて、音楽への情熱が、それよりも勝り始めたというところですね。だから、まだサッカーへの思いは成仏できていなくて、いまも趣味とはいえない域でプレイするときもあって、やっぱり試合になると負けられないと思いますね。ーーナオトさんは以前、Mr.Childrenさんのサポートミュージシャンとしても活動されていたときがありましたが、ボーカルの桜井和寿さんもサッカーがお好きですよね。そうですね。もちろん桜井さんともサッカーをすることがありますし、いろいろな方と交流していますね。そしてこの数年間は、(ブラジル発のサッカーの一種で砂浜で行う)ビーチサッカーの日本代表を本気で目指していた時期もありました。今後も時間が許しさえすれば練習したいですし、心のどこかで、ずっと日本代表を目指す気持ちを持ち続けると思います。ーーすごいですね。ナオトさんは世界66か国の音楽の旅をされていたこともありましたし、いまも音楽活動をしながらビーチサッカーを本気でやっているそのバイタリティの原動力はどこからきているのでしょうか。なんでしょうかね……やっぱり、好奇心でしょうね。幼い頃から、好奇心旺盛な少年で、親を振り回していました(笑)。ーーナオト・インティライミさんとしては、2020年が10周年というメモリアルイヤーですね。はい、いままで、とんでもないことが起きた10年だと思っています。音楽活動でしたかったことがたくさんあって、ありがたくも携わってくださった多くの方々がいました。振り返ると、すべてのみなさまと作り上げてきた大きな足跡がありますよね。EPは1年作ってきた曲たちの「福袋」ーー2020年10月7日に、初のEP『オモワクドオリ』をリリースされましたが、ご自身ではどのような作品になりましたか。この1年作ってきた曲たちの「福袋」といった感じでしょうか。いまの自分の音をおさめました。ーーアルバムのタイトル曲でもあるファンキーな1曲目「オモワクドオリ」は“つきあっている男女の痴話喧嘩を3分間にまとめた歌”だそうですが、それは体験談ですか。もう生涯のなかでしてきたすべての喧嘩がモチーフになっています(笑)。何か他のところからアイデアを持ってくるのではないですね。恋愛経験は豊富なほうではないんですが、とくに多感な時期だった学生時代など、恋愛においての感情はたくさん持っている気がするんです。ーーそういったこれまでの実体験から曲作りをされているのですね。そうですね。想像ではなかなか書けないので、基本的には自分の体験をもとに曲作りをしています。ーー「オモワクドオリ」はバーチャル背景を利用した“ZOOMミュージックビデオ”もあって、拝見していて面白かったです。とんねるずの木梨憲武さんもご出演されていますね。木梨さんには、急遽、撮影の前日にお電話させていただいて、翌日に会いに行ってというようなスパンで撮らせていただきました。スペシャルゲストとして登場していただきましたが、本当にありがたい、兄貴の優しさですね。この数年間、普段から、仲良くしていただいております。ミュージックビデオは、コロナ禍というこの状況下で面白いことをやろうということで、最初から「こんなときだからこその映像を作りたいね」とみんなで話していて、今回完成しました。ーー3曲目「スタートライン」は、子どもの声のコーラスも入っていて、元気になれる明るい曲ですね。ピアノバージョンとインストも収録されていてアルバムの中でも存在感があります。「スタートライン」は、NHK『みんなのうた』(8-9月の歌)に抜擢していただいた歌で、そういう意味ではひとつ、アーティストとしての夢が叶いました。いままで、1stアルバムのときから、「この曲が『みんなのうた』になったらいいな」と思って作っていた曲もあって。たとえば輪投げの歌があったり、バルーンの歌があったり、これまでにも子ども向けの曲はたくさん作ってきましたね。ーーそれは子どもたちにメッセージを発信したいという気持ちが強くあるのですね。子どもが大好きですし、日本でもアフリカの奥地の民族の村に行っても、どこに行っても子どもたちとずっと遊んでいます。日本でも数年間、「ドリームキッズプロジェクト」といって、サッカーと踊りを全国でしていくというような“スポーツと音楽でカラダもココロも強くなろう”をコンセプトに、スポーツと音楽を通じて子どもたちの夢を応援するプロジェクトをやっているんです。僕らは先にいなくなってしまいますから、子どもたちに思いを伝えていきたいなと思っていますね。ーー他にライブではおなじみの「Ballooooon!!」のRemixバージョンも収録されています。この曲は、ワークアウト系YouTuberの「たけまり」こと竹脇まりなさんとのコラボレーションなんです。「何か一緒にできないかな」という話をしていて、「Ballooooon!!」のRemixバージョンを作って、その音源でたけまりさんが自分のYouTubeチャンネルで踊ってくれた動画が、あっという間にものすごい数の人たちに広まって。たけまりさんのYouTubeチャンネルを観てワークアウトしている知り合いからも、そこで僕の曲だと気づいて「一緒にやってるんだね」と連絡がくるぐらい、反響がありました。とくにステイホーム期間は外出できなかったので、家でワークアウトして鍛えながら、みなさん「Ballooooon!!」と接触してくれたみたいですね。こんなふうに新しいコラボのかたちを見出せました。いまSNSで活躍している方はすごい力を持っているんですよね。そういう過程を経て、自分でも今回のコロナ禍で、SNSをいろいろ試してみました。SNSをきっかけにいつかライブにも来てほしいーーお話は変わりますが、宝塚歌劇団雪組トップスター、望海風斗(のぞみふうと)さんに、ナオトさんが特別に書き下ろした楽曲「夢をあつめて」が望海さんの初コンサートで初披露されて話題となりましたね。この曲は、望海さんからお話をいただいたんですよね。宝塚を退団される際、「ソロとしての曲、ポップミュージックを作りたい」というお話をされていたときに、僕の名前があがったということで、本当にありがたいお話です。まさかそんなところからオファーをいただけるなんて、曲を聴いて知っていてくださったことは、うれしいですね。ーーさまざまなかたちで、ナオトさんの曲が多くの人たちのもとに届くといいですね。ではコロナ禍の現在、おうちではどのようにお過ごしですか。毎日必死でTikTokをあげていますね(笑)。この25年間、ほぼライブをやってきた人生だったので、何か自分の発表の場、表現の場を作れないかと探していたんです。TikTokを始める前までは、自分はSNSには疎いほうだったので、コロナ禍でライブもできない状況となり、どうしたらいいのか絶望的な感覚で悶々としていたんですよね。そんななか、インスタグラムやYouTube、TwitterといったSNSに強い方やSNS世代の方々がどんどん発信されていて、置き去りになっているような焦りがありました。自粛期間の最初の1か月半ぐらいは、焦りの気持ちが強かったんですが、でもさすがにそのままではいけないと。その頃、TikTokで医療従事者の方々にエールを送るチャリティ生配信ライブという企画があって、それをきっかけにTikTokを深く知る機会ができました。それまではTikTokというと、若い世代が元気に踊っているイメージしかなかったんですが、いろいろと知っていくと、すごくユーモアのある投稿が多かったり、まだ世間には知られていないけれど若い世代の素敵な曲や歌がざくざく眠っていたり。「これは面白いぞ」とやり始めたら、年甲斐もなく毎日投稿して、どんどんその魅力にハマっていきました。いまも投稿するときには、緊張しながら投稿ボタンを押して、頑張っています(笑)。そうやって、SNSでも僕の音楽を知ってもらえるきっかけが増えてくれたらと思いますし、自分自身でも多くのいい出会いがあります。ーーでは最後に、今後の抱負を教えてください。いままでナオト・インティライミのことを知らない人、存在は知っているけれど歌や曲をちゃんと聴いたことがないという方には、TikTokをきっかけに知っていただくという、コロナ禍の現在はSNSでのきっかけ作りも大事だと考えています。今回、ミュージックビデオをZOOMで全部撮ったという初めての試みもありましたが、SNSからなど何かのきっかけで音楽を聴いていただくこともうれしいです。いずれコロナ禍が開け始めて、ゆくゆくはちゃんとしたライブができるようになったら、そのときはみなさんにぜひ遊びに来ていただけたらなと思います。取材後記有観客ライブの開催が難しい現在、SNSであらたな音楽活動を展開されているナオト・インティライミさん。今年はデビュー10周年のアニバーサリーイヤーを迎える予定をコロナの影響で2021年に、まるっと1年延期することを発表しました。来年にさまざまな企画を実施される予定のようですので、楽しみにしていたいですよね。そんなナオトさんのEPをまずはチェックしてみてくださいね。ナオト・インティライミ PROFILE8月15日三重県生まれ、千葉県育ち。名前の「インティ ライミ」とは南米インカの言葉で「太陽の祭り」の意味。世界66カ国をひとりで渡り歩き、各地でLIVEを行い、世界の音楽と文化を体感。自らのソロ活動の他、コーラス&ギターとして Mr.Childrenツアーサポートメンバーに抜擢され、知名度を上げていく。2010年にメジャーデビュー。「タカラモノ ~この声がなくなるまで~」「今のキミを忘れない」では100万ダウンロードを超えるヒット。2012年リリースの3rdアルバム『風歌キャラバン』は自身初となるオリコン・ウィークリーチャート1位を獲得。同年にはNHK紅白歌合戦に初出場を果たす。年末には自身初となる大阪、京セラドームのLIVEで4万人の観客と共に大成功のうちに収める。2016年リリースのシングル「Overflows〜言葉にできなくて〜」は配信開始と共に主要配信9サイト・18部門で1位を獲得し、iTunes・レコチョク・歌ネットなどでは週間ランキング1位を獲得。2017年もう一度自分の原点に戻るための旅に出ると宣言し、世界19か国の旅を経て7月10日のスペシャルLIVE「ナオトの日」にて完全復活。2018年、「全国47都道府県弾き語りツアー」、約3年ぶりのドーム公演もナゴヤドームを開催。俳優活動としては、TBSドラマ「コウノドリ」などにも出演を果たした。2019年、世界三大レーベルのうちのひとつである「ユニバーサルミュージック ラテン」から「Naoto」名義で世界デビューした。2020年、予定していたデビュー10周年企画「10周年!アニバーサリーおまっとぅりYEAR」を2021年に、まるっと1年延期することを発表。10月7日、EP『オモワクドオリ』をリリース。InformationNew Release『オモワクドオリ』(収録曲)01.オモワクドオリ02.Invitation03.スタートライン04.Sunset Lovers05.きっかけはキッカケで06.Ballooooon!!(Remix ver.)07.スタートライン(Piano ver.)08.オモワクドオリ(Instrumental)09.Invitation(Instrumental)10.スタートライン(Instrumental)2020年10月7日発売*収録曲は全タイプ共通。(通常盤)UMCK-1667 (CD)¥2,200(税別)(初回限定ファンクラブ盤)PROS-1918 (CD+DVD)¥3,300(税別)
2020年10月08日【音楽通信】第50回目に登場するのは、日本語で鳴らすエモーショナルなサウンドが世代を超えて支持されているロックバンド、ASIAN KUNG-FU GENERATION(アジアン・カンフー・ジェネレーション)!取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol.50アジカンはひとつの人格みたいなもの写真左から、山田貴洋(B、Vo)、喜多建介(G、Vo)、後藤正文(Vo、G)、伊地知潔(Dr)。1996年、大学時代に後藤正文さん、喜多建介さん、山田貴洋さん、伊地知潔さんにより、通称“アジカン”ことASIAN KUNG-FU GENERATIONを結成。2003年には、インディーズ時代に発表したミニアルバム『崩壊アンプリファー』のリイシューでメジャーデビューしました。同年から、ライブハウスの新宿LOFTでフェス「NANO-MUGEN FES.」を立ち上げ、2004年からは海外アーティストも加わり、日本武道館、横浜アリーナと会場の規模を拡大し、その他たくさんのステージでも多くのロックファンを魅了し続けています。そんなアジカンが、2020年10月7日、両A面シングル「ダイアローグ / 触れたい 確かめたい」をリリースするということで、バンドを代表してボーカル&ギターの後藤正文さんにお話をうかがいました。ーー後藤さんの音楽的なルーツから知りたいのですが、初めて買ったCDから教えていただけますか。中学1年生ぐらいのときに、THE BLUE HEARTSのCDを初めて買いました。それまではテレビや親の影響から音楽を聴くことのほうが多かったんです。でもそれ以前、小学生の頃だと、少年隊や光GENJIが好きでしたね。ーーそれは意外ですね。少年隊と光GENJIは、子ども心に、「曲がいい!」と思っていたんです。ーーすでに小学生の頃から、曲の良さを聴き分けることを無意識のうちにしていたんですね。だと思います。調べたら、光GENJIはCHAGE and ASKAさんだったり、少年隊は筒美京平さんだったり、名だたる作家の方が曲を担当していて。当時は小学生ながら、何か他とは違って聴こえたんですよね。ーーでは実際に、ご自身で曲を作ろうと思われたきっかけはなんだったんでしょうか。中学生の頃にUNICORNに憧れて、(ボーカル&ギターの)奥田民生さんがすごく好きで、民生さんの影響でギターを買って弾いてみたんですが、難しかったんです。UNICORNは、非常に複雑な音楽なんですよね。だから、指が痛くてギターをすぐやめて、そのあとだいぶ時間が進んで高校を卒業したあとに、イギリスの音楽に憧れるようになって。(イギリスのロックバンドの)オアシスに憧れてギターを再び買いに行って、そこからですね、自分で曲を作ろう、音楽をやろうと思ったのは。ーー人の作った音楽よりも、やはり自分の曲のほうが気持ちが入るものですか。そうですね。最初の頃、オアシスのコピーを自分で部屋でやってみたんですが、どうやっても彼らみたいにカッコよくできないんですよ。本人が歌うのがいちばんかっこいいなと思って。バンドを組むんだったら、自分で曲を作りたいなって、楽器を買ったときに思いました。コピーしても、本人たちを超えられないから。いまは人が作った曲でも、気持ちを込めることができますが、若い頃は「自分が作ったものこそが、感情移入できるものだ」と信じていました。アジカンのフロントマン、後藤正文(Vo、G)。Gotch名義でソロ活動も。ーー1996年にASIAN KUNG-FU GENERATIONを結成されて、2021年には結成25周年を迎えます。結成時から現在まで、アジカンはどのように変化されましたか。振り返るとあっという間でしたが、さまざまな時期を経て、いまがあるという感じがします。若い頃はエゴが強い時期もありましたが、アーティストとしてやりたいことがあるなかで、大人になってくると協調性が生まれてくるというか(笑)。とくに僕はフロントマンで、いろいろとワガママを通すことも多かった。そのあたりは、歳を取りながら、上手にメンバーが傷つかないやり方を覚えてきましたね。ーーそんななかで、後藤さん主催のインディーズレーベル「only in dreams」を立ち上げ、今年3月には後藤さんがGotch名義で活動されているシングル「Nothing But Love」も発表されましたね。バンドとソロとでは、ご自身のなかでどのようなスタンスの違いがありますか。バンドは、ASIAN KUNG-FU GENERATIONという、ひとつの人格みたいなものがあると思っていて。バンドの回路というか、仕組みに曲を通すと、どうしてもASIAN KUNG-FU GENERATIONの音になってしまうんです。25年もやっているので、強烈な個性というのがあって、どうやったってバンドの音になる。そこでできること、できないこと。やってしまうと増幅されることと、スポイルされることとの両方があります。なので、そのバランスを考えると、僕もいい大人なのでこれだけ生きていると、また別の新しい仲間にも巡り会うこともあって。世の中にはいろいろと魅力的なミュージシャンがいるので、そういう人たちとも音楽を作っていきたいという気持ちも出てくるんです。だから、僕のなかでは「ソロはバンドと器の違うもの」として、分かれているんですよね。ーーたとえばファンの方からすると、バンドとソロとでは反応が違いますか。聴かれ方としては、ゼロがふたつぐらい違いますね。アジカンが100万回聴かれるとしたら、僕のソロは1万回ぐらいしか聴かれないぐらい差があります。端的に、海外まで音楽が届いているのかという背景もあると思うんですけれども。ファンの人としては、僕のソロが売れると、僕が「アジカンを辞めるんじゃないかな」という思いがあるのかもと言う人もいて、素直に応援できない気持ちもわからなくはないですよね。ソロが原因でバンドをやめはしないですが、僕の好きなバンドのフロントマンがソロに熱中すると、「バンドもやってくれよ」って思う気持ちはわかるんです。(イギリスのロックバンドの)レディオヘッドのフロントマンのトム・ヨークしかり。(アメリカのロックバンドの)ウィーザーのリヴァース・クオモしかり。そういうのは昔からあるので、あまり気にはしていないです。憧れの地、ロンドンでレコーディングした新曲ーー10月7日に、両A面シングル「ダイアローグ / 触れたい 確かめたい」をリリースされますが、ロンドンでレコーディングされたのですね。ロンドンの中心部にあるスタジオを借りることができました。ちょうどヨーロッパツアーを行なっていて、ロンドン公演とパリ公演の間の2日間で、レコーディングしたんです。それまで、アメリカではニューヨークやシカゴ、ロサンゼルスでレコーディングしたことはあったんですが、ロンドンではなかなかスタジオに入る機会がなくて。ロンドンは、僕らの世代にとっては、憧れの地。とくに90年代のイギリスのロックはとてもかっこよかったので、そういうものに憧れたからこそいまがある。この歳になって、やっとスタジオに入ることができました。ロンドンでレコーディングするために、今回のシングルの曲は日本で作って、ある程度整理してから行ったんです。ーー日本で録るのとロンドンで録るのとでは、やはり気分は違いましたか。はい、これはanan読者には全然引っかからない話なんですが(笑)、電圧が高いという良さがあって。電圧なんか知るかよという話だと思うんですが、電気のエネルギー、電圧がロンドンはすごく大きいんです(笑)。240ボルトぐらいあって、日本は100ボルトなので、ロンドンだと機械もいきいきと動くというわけですね(笑)。ーーなるほどです(笑)。あとは歴史的な街でもありますから、スタジオで働く人だったり、スタジオの文化だったり、名残だったり、いまも続いているんですが伝統が染みついている。僕たちも作業すると、その伝統に触れられるというか。すてきな機材だったり、働き方だったり含め、他のメンバーも、自分たちの好きな音楽が生まれた街ということでテンションも上がるでしょうし、音がいいということで喜ぶメンバーも。街並みもすてきですからね、見たこともない、住んだこともない場所で、気分が違いますよね。ーー「触れたい 確かめたい」は、羊文学の塩塚モエカさんがゲストボーカルで参加しています。後藤さんと塩塚さんが掛け合う歌声が絶妙ですが、もともとゲストボーカルを呼ぶ前提で曲作りをされていたのですか。作っている段階から、デュエットになったらいいなというイメージはありました。ゲストボーカルは、いろいろなバンドの音を聴きながら考えていて。雰囲気的にも、イメージ的にも、羊文学もかっこいいバンドなので合うんじゃないかなと、彼女を選びました。ーー実際、デュエットされていかがでしたか。歌は上手でしたね、何テイクも歌わなくて大丈夫というか。若い人たちは、僕らの世代よりも、やっぱり上手ですね。ーー配信では、両A面の2曲のみとなり、CDでは3曲目「ネクスト」が収録されています。後藤さんが作詞を、ベースの山田さんが作曲をご担当し、リモート環境下で制作されたそうですね。コロナの自粛期間中に、初めてリモートで作ったんです。他のメンバーは3人で練習していたみたいですが、その場でアレンジして、コロナ禍で会えなくなってそれぞれが家で自分のパートを録音して、僕のもとに送ってもらいました。僕は自分のプライベートスタジオを持っているので、そこでミックス、最後まで作業ができるので、仕上げます。ーー今後リモートで制作することは増えていくんでしょうか。どうなんでしょうかねえ。でも基本的に、ヒップホップのミュージシャンやダンスミュージックの場合、自宅に近い作業スペースで完結するようにできているんですよね。ロックバンドだけ、どうしてもドラムを家で録ると大変なことになるので、スタジオで録るというだけの話なんです(笑)。ただ、ドラムって、それをよく録るためだけにわざわざロンドンに行くんですよ。なので、そこは文化として、僕らが守りたい気持ちがあります。ASIAN KUNG-FU GENERATIONとしては、リモートが向いているバンドだとはあんまり思わないから。ーーコロナ禍というと、恒例のライブツアーシリーズ「酔杯」が、約5年ぶりに今年5月から「酔杯2 ~The Song of Apple~」として開催予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、10月からの開催に延期になりましたね。今年は、ツアーもフェスもなかなか厳しい。みんな中止や延期になったり、大変です。配信ライブもいいのですが、観客の前で演奏する喜びのほうが強いですね。いちばんはやっぱり、コロナの問題が解決して、徐々にコンサートの現場が元どおりになっていくことを願うしかないです。ーー今回も中村佑介さんのイラストで描かれたジャケットのアートワークもすてきです。完全生産限定盤には、ジャケットのイラストTシャツが付いていますね。コロナの影響で、今年はリリースする作品自体も減っていますし、レコードショップは人が来ない状況が続いているなかで、何か売るものがないと困ると思うんですよね。みんなこれまではツアーをすることと、音源を売ることが連動していた時代なので、ツアーが延期になると僕らも4月からのリリースを見送ってこの10月になっていて、同じようなことをいろいろな現場でやっていると思うんです。だから、最初は配信だけにしようかと思っていたんですが、でもレコードショップやCDショップに売る物があるというのは、いまのこういう状況だと意味があると思ったんです。どうせ音源を出すなら、僕らはいろいろなことを考えて、今回のようなかたちでリリースしました。すてきな音楽を作れるような人間になりたいーーコロナ禍の現在、後藤さんはおうちでどのようにお過ごしですか。外食もできなくなって、買い物ぐらいしか行けなくなりました。家では、自粛期間はとくに自炊にハマりましたね。よく釜飯を焚いていました。うちのドラムで料理研究家の(伊地知)潔のように上手にとはいかないですが、外食ばっかりだとどうしようもないので、自炊していましたね。ーーでは音楽活動以外での、ご趣味は。音楽以外、ほとんど無趣味なんですが、読書はしますね。好きな作家はたくさんいますが、古川日出男さんは全作持っていますし、町田康さんも好きです。でもコロナのなかで、柴崎友香さんの新刊『百年と一日』(筑摩書房)は技術的な面で飛び抜けてすごいなと、驚いてしまいましたね。ものすごい小説でした。あとは、せっかく休みがいっぱいできたから映画を観に行きたかったんですが、映画館もやっていなくて。常日頃、映画館に行けないんですよ、2時間ほど拘束されるというのが難しいから。音楽を聴きながら映画を観れないし、音楽を作りながら映画を観れないじゃないですか。僕らの仕事って、拘束されると、耳も目もふさがってしまう仕事ですし、夜中も考えごとをすることもあって。だから映画館に行くなら、そのとき調べていちばんいいと思える映画を観るという感じですね。ーーでは最後に、今後の抱負を教えてください。独立した、かっこいい大人になっていきたいですね。たとえば、YMOのお三方は集まってもすごいですが、それぞれに素晴らしいじゃないですか。そういうお手本があるので、アジカンとしても頑張りたいですし、アジカンを離れてもひとりのミュージシャンとして、すてきな音楽を作れるような人間になりたいと思っています。取材後記ASIAN KUNG-FU GENERATIONのフロントマンとして、ソロアーティストとして、インディーズレーベルの主宰者としてなど、多彩な顔を持つ後藤正文さん。デビュー当時からアジカンのライブを拝見していますが、後藤さんが放つ世界観はこれからも多くのロックファンを惹きつけていくはずです。そんな後藤さんをはじめとする、アジカンのみなさんのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。ASIAN KUNG-FU GENERATION PROFILE1996年、大学時代にバンド結成。後藤正文(Vo、G)、喜多建介(G、Vo)、山田貴洋(B、Vo)、伊地知潔(Dr)による4人組ロックバンド。2003年、インディーズ時代に発表したミニアルバム『崩壊アンプリファー』のリイシューでメジャーデビュー。同年、新宿LOFTより「NANO-MUGEN FES.」を立ち上げ、2004年からは海外アーティストも加わり、日本武道館、横浜アリーナと会場の規模を拡大。2016年、バンド結成20周年イヤーを迎え、自信最大のヒット作「ソルファ」の再レコーディング盤をリリースするなど話題を集めた。2018年、ベストアルバム第2弾となる『BEST HIT AKG 2(2012-2018)』および、Official Bootlegと位置づけた裏ベストといえる2枚のアルバム『HONE』盤と『IMO』盤をリリースし、6月からは全22公演の全国ツアーを開催。12月、オリジナルアルバム『ホームタウン』をリリース。2020年8月、『NANA-IRO ELECTRIC TOUR 2019』を発売。10月7日、両A面シングル「ダイアローグ / 触れたい 確かめたい」をリリースする。InformationNew Release「ダイアローグ / 触れたい 確かめたい」(収録曲)01. ダイアローグ02. 触れたい 確かめたい03. ネクスト2020年10月7日発売*配信は2曲目まで収録。3曲目はCDのみ収録。(通常盤)KSCL-3264(CD)¥1,200(税別)(完全生産限定盤A)KSCL-3260 〜 KSCL-3261(CD+Tシャツ)¥3,500(税別)(完全生産限定盤B)KSCL-3262 〜 KSCL-3263(CD+Tシャツ)¥3,500(税別)
2020年10月07日1児のママでもあるライター・かわむらあみりがお届けするコラム【ママライフばんざい!】連載第20回は、もしかしてモラハラかなと思うような夫の言動があったママの声から、関係悪化を防ぐためのコツを3つご紹介します。1. 夫の小言は華麗にスルー【ママライフばんざい!】vol. 20コロナ禍の現在、仕事がテレワークに切り替わった方もいるでしょう。そうなると、以前よりも夫婦で過ごす時間が長くなり、よりお互いのことを知る時間も増えているはず。そんなときに、「もしかしてモラルハラスメントかも」と思うような相手の言動があったとき、関係悪化を防ぐためのコツを3つお届けします。相手が「夫」でなく、「彼氏」におきかえても、同じように使えるコツかもしれませんよ。共働きをしていてお子さんがいる30代半ばのAさんは、仕事に家事に毎日大忙し。同年代の夫はというと、たまに少しだけ家事を手伝う程度でしたが、大変そうなAさんのことを気にかけてはいる様子だったそう。ですが、だんだんとお子さんのことに意識が向くAさんに、嫌味を言うようになります。疲れ果てて休日の朝にAさんが起きられないときに、「あれ?洗濯まだしてないの」と催促したり、「最近部屋が片付いてないんだけど」と掃除を促したり。自分でやれば、と思うAさんですが、言い返すと倍になっていろいろと言ってくる夫の性格がわかっているのでそうなるとよけい面倒なため、疲れた体に鞭を打ってなんとか家事をすることも。しかし、あるとき、あまりに疲れ果てていて、夫が話してくる内容がほとんど頭に入ってこないときがあったのだとか。そこからわかったのが、適当に相槌を打って夫の話が終わるのを待てば、“とりあえず言いたいことを話した”という満足感からか、夫はスーッとおとなしくなるのです。モラハラかと思うような言動があっても、そこでいちいちビクビクしたり、言い返したりしないで“スルースキル”を身につけると、それ以上はしつこく言ってこないことがわかり、それ以来は華麗に夫の小言をスルーするAさん。耐えているわけではなく、相手にしないスタイルでいくと、ストレスもたまらないのだとか。確かに、ふっかけてくる相手と同じ目線になるともめやすいので、うまくかわすことができればいいかもしれませんね。但し、このやり方は、言えばスッキリする自己完結型の夫にはいいですが、なかにはスルーにキレる夫もいるのでご注意を。また、Aさんが負担過多であることに変わりはありません。家事分担など、根本的な解決を求めるのであれば、お互いが冷静な時に気持ちを伝え、じっくり話し合うのがよさそうです。2. 高いプライドを満足させるアラフォーのBさんは、バリバリ働いていましたが、結婚を機に退職。エリートサラリーマンの年上の夫と二人暮らしです。結婚当初は、恋人時代と変わらずに、記念日があるたびに高価なプレゼントを贈ってくれたり、おいしいと評判のレストランに連れていってもらったりしていたのだとか。ですが、だんだんと夫は仕事のグチをBさんに言うようになります。もちろん、がんばって働いてきているのですから、グチぐらいいくらでも言っていいと思っていたBさんですが、次第に「俺がこんなにがんばっているのにお前は家でのんびりして……」などと、八つ当たりのような言動が出てきたそう。最初は申し訳ない気持ちもあったBさんですが、働くことの大変さをわかっているからこそ、あるとき、夫がなぜそんなグチを言うようになったのかを冷静に考えました。思うに、仕事がうまくいかないモヤモヤを話せる相手がいないからぶつけてしまう、甘えてしまうんだろうと分析。そこで、夫の激しい言動が出てきたときは、「こんなに努力しているのに周りは見る目ないよね!」「やっぱりその考えはスゴイわ」などと、高いプライドを満足させるような言葉をあえて言うようにしたところ、夫の態度が落ち着いてきたのです。仕事のスランプ時期を脱したのか、夫も以前のように優しくなってきたのだとか。相手が口撃してくるときは、冷静に対処をするというのは、ポイントなのかなと思いました。とはいえこのケースは、たまたま仕事が落ち着いたことも大きいです。再び仕事が大変になった場合を考えると、また暴言を吐かれるかもしれません。穏やかないまのうちに、「あの時、あなたにあんなことを言われて、私はこういう気持ちになった。あなたも同じことを言われたらどう思う?」と自分の気持ちを正直に伝えると、夫なりに気づきを得られるかもしれません。夫の心に余裕がある時に諭し、このような事態を二度と繰り返さないようにしましょう。3. 我慢も限界になったら別離も考える30代前半のCさんは、もともとおとなしい性格で、女友達といるときも、自分から何かを提案するというようなことはありません。Cさんをグイグイと引っ張ってくれる、頼もしい夫がいて、相性は良さそうに見えていました。ただ、リーダーシップを取りがちな夫は、家庭での発言権も強く、だんだんとCさんに対して傲慢になっていきます。あるとき、Cさんが女友達と集まったときに、そんな家庭の様子を話すと、まわりからはブーイングの嵐。Cさん自身も、実は「ちょっともう限界かな」と思っていたそうで、まわりの励ましもあって、別れることも考え出すようになりました。すると、いつもと違ってきているCさんの様子に気づいた夫が、「なんかいつもと違う?」などと顔色をうかがうようになります。「別に」とそっけなく対応していたCさんは、少しずつ、本音が言えるようになり、結果として夫との関係も以前より回復しだしたのだとか。それもやはり、「別れることまで考えなかったら夫に冷たくならなかったかもしれない」と、最悪のパターンを想定したからこそ、本音が話せるようになったそうです。いずれにしても、自分にとってマイナスとなる相手や原因には、できるだけうまく対処していけるといいですよね。いろいろなものを乗り越えて、みなさんもすてきな日々を過ごしてください。©GeorgeRudy/Gettyimages©GeorgeRudy/Gettyimages©g-stockstudio/Gettyimages
2020年09月23日「ムーミン」をモチーフにしたドリンクスタンド「ムーミンスタンド」から、秋限定ドリンクが登場。「むらさき芋プリンミルク」&「えびすカボチャミルク」が、2020年9月18日(金)より期間限定発売される。「ムーミンスタンド」の秋限定ドリンクは、ハロウィンを思わせる鮮やかなビジュアルが特徴の2種類。「むらさき芋プリンミルク」は、沖縄県産のむらさき芋ペーストを使用したこっくり甘いドリンクと、とろりとしたカスタードプリンの二層から成るドリンク。口にふくむとむらさき芋ドリンクとプリンが混ざり合い、“むらさき芋プリン”のような味わいを楽しむことができる。「えびすカボチャミルク」は、北海道産えびすカボチャペースト入りのミルクに、チョコレートソースを添えたドリンク。濃厚なチョコレートの味わいが、かぼちゃの素朴な風味を引きたててくれる。どちらのドリンクにも、もっちりキャラメル味の“ニョロニョロのたね”をトッピング。また「ニョロニョロ」をモチーフにしたストローも付いてくる。【詳細】「ムーミンスタンド」秋限定ドリンク提供期間:2020年9月18日(金)~販売店舗:ムーミンスタンド コピス吉祥寺店、ランドマークプラザ店、サンシャインシティ店、浅草店、名古屋mozoワンダーシティ店、イオンモール岡崎店、土岐プレミアム・アウトレット店、天王寺ミオ店、神戸ハーバーランドumie店、イオンモール広島府中店、キャナルシティ博多店・むらさき芋プリンミルク(COLD) Rサイズ 667円+税・Lサイズ 787円+税・えびすカボチャミルク(COLD) Rサイズ 556円+税・Lサイズ 676円+税※ニョロニョロストローが付属。
2020年09月14日【音楽通信】第49回目は、ロックバンドのL’Arc~en~Ciel(ラルク アン シエル)、そしてロックユニットのVAMPS(ヴァンプス)のボーカリストでもある、HYDE さんのソロライヴのレポートをお届けします!取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol.49アコースティックアレンジで新たに魅了カリスマボーカリストのHYDEが、9月5日に、Zepp Haneda(TOKYO)でワンマンライヴ「HYDE LIVE 2020 Jekyll & Hyde」の初日公演を開催した。9月5日、6日、7日の前半3日間を「Acoustic Day」、9月11日、12日の後半2日間を「Rock Day」と題して、合計5日間の有観客かつ配信の両方で参加できる公演だ。今回、ライヴ配信プラットフォーム「SHOWROOM」より、生配信された。コロナ禍において、ライヴの中止や延期を余儀なくされるアーティストは苦悩し、ファンも楽しみが遠のく状況にあるなか、配信ライヴを実行するのは簡単なことではないのかもしれない。そんななか、HYDEは有観客での配信ライヴを決断した。ライヴ会場では、新型コロナウイルス感染拡大防止策を徹底し、観客数は座席使用時の収容人数の50%以下、さらに東京都に在住のファンクラブ会員のみ。公演前日には、HYDEが自身のツイッターでPCR検査の結果を「スタッフ含め142人全員陰性で明日からライヴします」と万全の体制を報告していた。開演時刻を知らせる数字がスクリーンに浮かび、ソーシャルディスタンスを保って座席に座るマスク姿の観客が配信画面に映し出されている。やがてステージの幕が開き、黒いフードをかぶったHYDEとバンドメンバーが登場。HYDEは、唇からはみ出す真っ赤なルージュに金髪姿、バンドメンバーはそれぞれが仮面をつけている。退廃した街を背に、2019年6月にリリースされたHYDEの最新ソロアルバム『ANTI』の1曲目「WHO’S GONNA SAVE US」から、ライヴはスタート。HYDEは最初のMCで、「こんな形で再会するとは思わなかったけど、会えてよかった」と語りかける。「困った世の中になったよね。よく頑張ったよね、みんなね。元気そうで」と、コロナ禍で不自由さを感じているであろうファンに、優しい眼差しを向けるたび、会場からは拍手が起こる。『ANTI』からのナンバーを中心に、HYDE feat. YOSHIKI名義の「ZIPANG (Japanese Version)」、今年3月にリリースしたニューシングル「BELIEVING IN MYSELF」など、新旧織り交ぜたソロ名義の楽曲を披露。また、L’Arc~en~CielやVAMPSの曲、自身が作詞作曲とプロデュースをして中島美嘉に提供した「KISS OF DEATH」やニルヴァーナのカバー曲「Rape Me」を歌うなど、多彩なセットリストとなった。アコースティックアレンジされた数々の楽曲は「まさかこの曲がこんなふうになるとは」「アコースティックのほうも好き!」と、配信画面上に次々と絶賛のコメントが入力され、新たな息吹を吹き込まれて、また別の名曲が誕生していた。クオリティの高いアコースティックバージョンの楽曲は、観客や視聴者に、驚きとときめきを与えたようだ。終盤、「久しぶりにみんなに会って感情が高ぶっている」と話すHYDEは、歌いながら涙を流す場面もあった。有観客で生配信ライヴを行えたこと、目の前に待ってくれていたファンがいること、歌える喜び、音楽活動の未来……さまざまなことを乗り越えてきたこの日をひしひしと実感しているようだった。美しいその涙は、観る者すべてをさらに虜にし、HYDEの歌声は心の奥深くまで響いていく。そして、この特別な空間がもうすぐ終わるという時間が迫ってきたが、ここで予定にはなかった楽曲を1曲、サプライズで演奏。みんなの気持ちがひとつになり、喜びと感動に包まれた。MCでは「この半年は家にいました。スーパーに行くのが楽しみだった」と、コロナ禍における過ごし方を話し、さらに、実は以前まで配信ライヴに興味が持てなかったことを告白。しかし、音楽番組『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)つながりで配信ライヴに出演した際、その考えは一変する。HYDEの前にファン200人が映るLEDスクリーンが置かれて、まるで「目の前にいるような感覚がして、感動した」と言う。「みんな僕を盛り上げてくれて、すごくいじらしくてね、コロッと気持ちが変わって」と、今回の公演を実現するまでの心情を吐露していた。全17曲を歌い上げ、幸せそうな笑顔を見せたHYDE。「ありがとうございました」と言い、ステージをおりるときに、HYDEが観客と視聴者に贈ったたくさんの投げキッスは、配信画面に舞うハートマークとともに心のなかを熱くさせた。このライヴが成功したことは、エンターテインメント業界の未来へつながる大事な一歩へとなっていくだろう。取材後記さまざまなことを考慮し、コロナ禍においての有観客&生配信ライヴを5日間行う、HYDEさん。並々ならぬ決意のもと実施されたライヴは、HYDEさんの音楽やファンのみなさん、エンタメに関わる人たちへの愛情にあふれていました。そんなHYDEさんが作り上げていく音楽の世界をこれからも楽しみにしていたいと思います。セットリスト01.WHO’S GONNA SAVE US02.AFTER LIGHT03.UNDERWORLD04.HORIZON05.OUT06.Rape Me ※Nirvana Cover07.MAD QUALIA (Japanese Version)08.ANOTHER MOMENT09.ZIPANG (Japanese Version)10.SET IN STONE11.LION12.BELIEVING IN MYSELF13.KISS OF DEATH14.I’m so happy15.EVANESCENT16.EVERGREEN17.ORDINARY WORLDInformation
2020年09月09日【音楽通信】第48回目に登場するのは、音楽シーンのみならず、さまざまなメディアでご活躍中のDAIGOさんがボーカルの3人組ロックバンド、BREAKERZ(ブレイカーズ)!取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol. 48ボーカルとダブルギターの編成で面白いことができる写真左から、AKIHIDE(G)、DAIGO(Vo)、SHINPEI(G)。2003年7月から「DAIGOSTARDUST」としてソロ活動していたDAIGOさんが、2006年にSHINPEIさんと、2007年にAKIHIDEさんと出会い、6月にバンドを結成。7月にはアルバム『BREAKERZ』でメジャーデビューした、ロックバンド「BREAKERZ」。そんなBREAKERZが、2020年9月9日に、21枚目となる両A面シングル「BARABARA / LOVE STAGE」をリリースされるということで、ボーカルのDAIGOさん、ギターのAKIHIDEさん、SHINPEIさんのメンバー全員に、お話をうかがいました。ーーまず、みなさんの音楽的なルーツや影響を受けたアーティストから、お話をお聞かせください。DAIGO 僕が初めて買ったCDは、アニメーション映画『魔女の宅急便』の「サントラ音楽集」でした。ロックを好きになったのは、15歳のときです。氷室京介さんがボーカルをしていたロックバンド、BOØWYの音楽を聴いて、からだに稲妻が走り抜けるような衝撃を受け、ロックに目覚めました。それからはGLAY、L’Arc-en-Ciel、LUNA SEA、THE YELLOW MONKEYなどのバンドの音楽に浸りましたね。その後に洋楽も好きになって、デヴィッド・ボウイにめちゃくちゃハマりました。AKIHIDE テレビの音楽番組でX JAPANのパフォーマンスを観て、ロックに目覚めました。そこからビジュアル系のバンドにハマり、その人たちのルーツである洋楽を追求していくようになりましたね。SHINPEI 90年代のJ-POPを聴いて育ちました。そのなかでも、B’zやWANDS、T-BOLAN、DEENなどのビーイングに所属しているアーティストが大好きで、よく聴いていたんです。いまでも自分の音楽ルーツとなっています。ーー2007年にBREAKERZを結成された際、この3人でご活動すると決めた当時の心境を教えてください。DAIGO SHINPEIは、あまりにもロックをやるには普通だったから、実は第一印象があまり良いとは言えなかったんです。しかし、一緒に作業をしているうちに、音楽への情熱を感じて、どんどん曲を作ってストックしていきました。そしていざレコーディングをする時期が見えてきて、誘っていたベース担当が、参加しないことになったんです。僕とSHINPEIの2人だと「バンドとして寂しいかもしれない」と考えていたときに、10年来の仲のAKIHIDEさんが当時組んでいたバンドがちょうど解散したので、一緒にバンドをしようと即、誘いました。そしてAKIHIDEさんも加わることになり、そこからBREAKERZが始まったんです。ボーカル、ギター、ギターという変わった編成ですが、何か面白いことができそうな気がしていました。AKIHIDE 当時、プロミュージシャンになる夢を諦めかけていたんですが、DAIGOくんから一緒に「バンドをやってみませんか?」と熱い言葉をかけてもらって「バンドドリームを見る最後のバンド」にしようと思って加入したんです。SHINPEI DAIGOさんと出会ったのは15年近く前になるのですが、そのときからすでに、彼にはフロントマンとして完成された風格がありました。AKIHIDEさんにも同じような印象があって、初めて出会ったときから、孤高のギタリストというオーラを感じていました。「この2人とバンドを始めたら、すごいものが生まれそうだ!」という期待で、胸がいっぱいになりましたね。あれから13年経ったいまでも、同じメンバーと音楽作りができているのは、本当にうれしいことです。ーー2009年に念願の日本武道館単独公演を実施されて以降、4年連続で開催されました。2020年の5月から、その武道館4公演のライブ映像と、ミュージックビデオ35曲をYouTubeでフルサイズ公開されましたね。DAIGO 誰しもが、新型コロナウイルスの影響によって、家にいる時間が増えました。そんな家にいる時間を少しでも楽しんでもらえたらと思い、ライブ映像などを公開しました。僕たちの歴史を感じてほしいですし、何より、前向きな何かを感じてほしかったからです。SHINPEI BREAKERZの持ち味をもっとも表現できるのは、ライブの空間ではと自負しています。コロナ問題によって、いままでのように会場で生のライブを共有できないのは残念ですが、いまだからできることを考えて、YouTubeでのライブ映像フル公開を企画しました。BREAKERZの魅力を感じてもらえる作品ばかりなので、ぜひ大音量で楽しんでほしいと思います。でも、夜はご近所迷惑かもしれないので、イヤホンをつけて楽しんでくださいね(笑)。BREAKERZ史上、もっとも狂気的な曲の誕生ーー2020年9月9日には、21枚目となる両A面シングル「BARABARA / LOVE STAGE」をリリースされます。「BARABARA」は、映画『妖怪人間ベラ』(2020年9月11日公開予定)の主題歌となっている、ミステリアスなナンバーですね。妖しくも切なげなギターリフも印象的です。DAIGO 「BARABARA」は、人間に傷つけられ裏切られ、苦しんできた『妖怪人間ベラ』たちの思いにシンクロして、歌詞を書き上げました。人の愚かさを歌った曲でもあります。BREAKERZ史上、もっとも狂気的な曲の誕生でした。AKIHIDE 心の奥に秘めた狂気をイントロのフレーズで描いて、劇中でみんなが狂って爆発してゆく情景を激しいビートとギターで表現しました。誰もが持っている秘めたる思いや、そこからあふれ出るエナジーをこの曲で感じていただけたらと思います。SHINPEI 事前に映画の試作版を観てから、曲作りに臨みました。楽曲候補はいくつかあったのですが、そのなかでもこの曲は、デモの時点ですでに存在感がすごかったです。BREAKERZらしいロックサウンドと、映画の世界観が見事にマッチしました。CDジャケットやミュージックビデオには、『妖怪人間ベラ』にも印象的に登場するグリーンカラーにインスパイアされた要素が入っているので、ぜひ映画とともに、この楽曲を楽しんでもらいたいです。ーー楽曲の途中に「人間になんてなりたくない」とセリフが入ったり、アニメ『妖怪人間ベム』(昭和43〜44年放送)のオープニング曲のフレーズが聴こえる部分もあります。AKIHIDE 『妖怪人間ベラ』という映画が、アニメ『妖怪人間ベム』を受け継いだ新たな形ということで、当時のアニメのフレーズも交えて過去へのリスペクトを込めつつも、いまのBREAKERZのソリッドでダークなサウンドで新たな形を表現してみました。ーー「LOVE STAGE」は、DAIGOさんのお姉さんである漫画家・影木栄貴さんの同名BL原作コミックの実写映画『LOVE STAGE!!』の主題歌です。原作にも登場する、BREAKERZをモチーフにした3人組ロックバンド「CRUSHERZ」の「瀬名聖湖役」として、2014年の同作のアニメ放送に続いて、今回の実写映画でも、DAIGOさんは特別出演されていますね。DAIGO はい。主題歌を担当することや出演することについては、とにかくいつもまず姉からの直電で頼まれるので、そこで話はほぼついてしまいますね。参加できることに関しては、シンプルに、うれしく思います。姉の作品が漫画からアニメになり、そしてついに実写化。どこまで表現していくのか、僕も楽しみにしています(笑)。ーー両A面となる2曲目「LOVE STAGE」は、明るくてアッパーなナンバーです。途中、BREAKERZさんのお名前をコールする箇所があり、3曲目に収録された同曲“CRUSHERZ Version”では、「CRUSHERZ」の役名でコールされるなど、遊び心にあふれていますね。SHINPEI 『LOVE STAGE!!』は、映画化する前から読んでいた作品なので、今回のタイアップは本当にうれしかったです。恋愛にはいろいろな形があって、自分が心から求めているなら、時には誰の目も気にせずに突き進んでほしい! という、明るく前向きな気持ちを歌詞にも楽曲のメロディにも込めました。間奏は、アイドルライブでよく見られる、MIXコールをモチーフにしてみました。早くこの曲をライブで演奏して、ファンのみなさんに、僕たちの名前を叫んでもらいたいです!ーー完全受注生産販売だったシングルの「13周年記念 Special Deluxe Edition for TEAM BREAKERZ」バージョンには、2ndアルバム収録曲からの新録となった、ストリングスも美しい楽曲「Day Soldier〜Acoustic Version〜」が収録されています。AKIHIDE 10年以上も前の曲ですね。リリース当時はロックなアレンジでしたが、バンドも月日を重ねて少しは大人な音も奏でることができるようになってきたので、いまだからできる大人っぽいBREAKERZを感じてもらえたらと思います。15周年を達成し笑顔の種になる活動をしていくーー現在、世界的にコロナ禍となっておりますが、みなさんは「おうち時間」をどのように過ごしていますか。現在ハマっているものは。DAIGO いまは映画やドラマを観たり、曲を作ったり、料理をしたりと、さまざまなことを楽しんでいます。いまハマっているのは、朝、ミキサーでフレッシュジュースを作ることですね。AKIHIDE いまだからこそできる「配信ライブ」を自分のスタジオから、自分で配信することにハマっています。配信に必要な機材をいろいろと手に入れて、勉強しながら楽しんでいます。SHINPEI 家事が大好きなので、ある意味「おうち時間」は自分にとってうれしい時間。手作り料理、部屋の模様替え、普段掃除しない換気回りや水回りの大掃除、小物の整理整頓など、いろいろなことを楽しんでいます。以前、整理収納アドバイザーや掃除能力検定など、たくさん取った資格が、こんなときに役立つとは思いませんでした。ーー現在は、新しい生活様式で暮らす日々となりましたが、以前はメンバー3人でどこかへおでかけになることはありましたか。みなさんそれぞれに日課とされていることなどもあれば、教えてください。DAIGO メンバー3人だけで外出することはなかなかないですが、記念日には集まったりすることもありましたね。僕は毎朝8時に、わが家の愛猫ジルちゃんに、ご飯をあげます。かわいくて癒されまくっていますね。AKIHIDE 僕が日課にしているのは、1日終わりのビールです。これがないと、1日が終わった気がしません。SHINPEI もともとプライベートでメンバーと遊ぶ機会はあまりなかったのですが、そのぶん、レコーディング中はさまざまなところへ食事をしに行ったり、ツアー中は朝まで飲み明かしたりしていました。CDリリースやライブツアーの傍らには、たくさんの楽しい打ち上げの思い出があります。最近の日課は、家での筋トレに、より力を入れています。いままでベッドを置いていたスペースに、筋トレ用のマシーンを導入したので、ジムのようなトレーニングもバッチリできるんです。そのかわり、布団の肩身が狭くなっています……(笑)。ーーそれでは、BREAKERZさんの今後の抱負をお願いします。DAIGO BREAKERZとしては、とにかく15周年を無事に達成したい。そう思っています。いまはライブも中止が相次ぎ悔しい思いがありますが、ライブができる日も少しずつ近づいていると信じて、万全を期して、自衛しながらみなさんも毎日を過ごしていきましょう! これからもよろしくお願いします!AKIHIDE 聴いてくれるみなさんにとって、どんなときでも笑顔の種になるような活動を、そして曲をお届けし続けたいと思います。SHINPEI バンドとしてのキャリアが長くなればなるほど、継続していくことの重要さが増していると感じています。ミュージシャンとしてやれることといえば、「良い曲を作って、良いライブを披露する」ことに尽きると思うので、今後もより良い楽曲作りを続けていきたい。ライブの表現方法はインターネットやCGを活用した世界がもっと主流になっていくと思うので、人間だけが与えられる感動と、デジタルの力がくれる新たな世界をうまく共有させていきたいですね。取材後記テレビなどで見せる穏やかな印象のDAIGOさんがボーカリストとなり、ダブルギターのAKIHIDEさん、SHINPEIさんとともに、ロックサウンドを奏でているBREAKERZ。今回、三者三様の音楽への熱い想いを知ることができました。そんなBREAKERZのみなさんのニューシングルをまずはチェックしてみてくださいね。BREAKERZ PROFILEDAIGO(Vo)、AKIHIDE(G)、SHINPEI(G)からなる3人組ロックバンド。2003年7月から「DAIGOSTARDUST」としてソロ活動されていたDAIGOが、2006年にSHINPEIと、2007年にAKIHIDEと出会い、6月にBREAKERZを結成して7月にアルバム『BREAKERZ』でメジャーデビュー。以降、コンスタントに楽曲をリリースしライブ活動を展開。2009年には、日本武道館での単独公演を開催し、2012年まで4年連続公演を行う。2013年から、メンバーそれぞれでのソロ活動もスタート。以来、バンドとソロを並行して活動を行う。2020年9月9日、21枚目となるシングル「BARABARA / LOVE STAGE」をリリース。9月26日(土)17時から、初のオンラインライブ「BREAKERZ ONLINE LIVE 2020 -ONE NIGHT LOVE STAGE-」の開催も決定(ライブ配信サービス「PIA LIVE STREAM」にて配信)。BREAKERZ初の無観客生配信ライブは、新曲「BARABARA / LOVE STAGE」を引っさげ、久しぶりのバンドセットで、タイトル通りの“一夜限り”の愛に溢れたステージを披露する。InformationNew Release「BARABARA / LOVE STAGE」(収録曲)01. BARABARA02. LOVE STAGE03. LOVE STAGE 〜CRUSHERZ Version〜2020年9月9日発売(通常盤)¥1,320(税込)ZACL-6052*CD Only。*裏表紙は蔵王大志さんによるオリジナル描き下ろしイラスト仕様。*封入特典は豪華特典プレゼント応募シリアルナンバー。
2020年09月09日【音楽通信】第47回目に登場するのは、歌手としてはもちろん、声優やタレントとしても幅広いジャンルで活躍されている、中川翔子さん!取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol.47子どもの頃からの夢はアニメソングを歌うこと2006年7月、シングル「Brilliant Dream」でCDデビューした、「しょこたん」こと中川翔子さん。歌手としてNHK紅白歌合戦にも出場するなど、コンスタントに楽曲をリリースするなか、ディズニーアニメ『塔の上のラプンツェル』の主人公ラプンツェルの日本語吹替版ボイスキャストを務め、NHK連続テレビ小説『まれ』では女優デビューするなど、多岐にわたりご活躍されています。そんな中川さんが、2020年9月9日に、ニューシングル「フレフレ」をリリースされるということで、お話をうかがいました。ーー今日は『ananweb』の音楽インタビューとなります。『anan』さんでは、以前表紙巻頭でグラビアページに出させていただいて(2012年4月27日発売のNo.1805)すごく反響があって、人生の勲章になったと、ずっと感謝しております。ーーとても美しいグラビアでしたよね。今回は音楽活動について、中川さんの音楽的なルーツからお話をお聞かせください。音楽のルーツでいうと、幼い頃に母が働いていて夜はあまり家にいなかったこともあって、祖母とふたりで過ごしていた時間に、祖母の大好きなシャンソンを毎日童謡がわりに聴いていました。それとは別に、昭和歌謡も好きな子でしたね。寝る前に、NHKの深夜放送のラジオ番組『ラジオ深夜便』が流れていた影響で、昭和歌謡が好きになって、ちょっと渋い子だったかもしれないです(笑)。中学生のときは、学校生活がうまくいかず、スクールカーストになじめなかった頃、家に帰っていつも絵を描いていたんです。そんなときに救ってくれたのが、アニメソングでした。だから、アニソンと昭和歌謡の話は、ずっとしゃべっていられるぐらい大好きなんです。大人になってからも「アニメソングを歌う」という大きな夢が、自分の人生の真ん中にあります。シャンソンは自分のディナーショーで歌って、夢を叶えることができました。大人になってからは、ジャズに興味を持っています。ーー松田聖子さんもお好きでしたね。はい、高校生のとき、聖子さんしか聴いていない時期がありました。80年代の聖子さんが大好きなんですが、世代的にまわりの友達はギャルだったので、ギャルの友達から浜崎あゆみさんのCDを借りて、そのかわりに聖子ちゃんのCDを貸すという感じで、ハマってもらえたらうれしくて。聖子さんの曲は、松本隆さんの歌詞がすばらしいので、歌詞の世界を妄想してイメージイラストを勝手に描いたりしていました。とくに聖子さんの83年、84年ごろの歌唱が好きでまねして研究して、ずっと家で歌ってきたので、それがいま役に立つ経験値として、未来に繋がりましたね。ーー中川さんの歌唱力は折り紙付きですが、多彩なご活動をされるなかで「歌うこと」については、ご自身でどのように感じていらっしゃいますか。絵を描くことと歌うことは、空気のように自然とやってきたことですね。何にもせずに、何にも聴かずにという、無の時間が無理なんです。だから、歌うことはずっと大好き。ですが、まさか自分が歌を歌ったり、コンサートをしたりするようになるとは、夢にも思っていませんでした。初めてのコンサートのときは、ステージが始まる前に、「むりむり! 私なんてただのひきこもりなのに!」と、号泣したことも。「アニメソングを歌いたい」という一番の夢が叶ってから、「生きていてよかった」という気持ちをライブやコンサートからいただきました。いまはコロナ禍の影響で、ライブが尊いものになっている状況ですよね。でもやっぱり歌は、人と人とを出会わせてくれるから、素晴らしいもの。私のライブがきっかけで付き合って、結婚したという方が数え切れないほどいらっしゃるんです。そしてアニメソングは、海外でも、日本語のままで通じますよね。たとえばアメリカやフランス、中国、香港といろいろな国や地域でアニメフェスが開催されています。昨年は韓国のアニメフェスに出演させてもらったのですが、アニメソングが好きという気持ちは世界共通なので、初めましての場所でも「空色デイズ」という曲を歌うと日本語でみんなが合唱してくれて、泣けちゃいましたね。アニメソングは魔法のパスポートだと思います。30代となったいまは、「子どもたちにアニメソングを届けたい」という内容に、夢がスライドしました。自分の人生を振り返ると、本当に好きなものって、思春期や10代のときに出会ったものから変わらないと思うんです。それは大人になってからも自分を助けてくれているから、いまの子どもたちもそうなるのではと。私の歌が、子どもたちの思い出のどこかの一瞬でいてくれたらいいな。新曲は優しい楽曲の「心の応援歌」ーー2020年9月9日に、アニメ『ハクション大魔王2020』(日本テレビ系 毎週土曜午後5:30)のエンディングテーマとして話題のニューシングル「フレフレ」をリリースされます。キラキラとしたかわいいナンバーですね。アニメのエンディングテーマというものが、もともとすごく好きなんです。「今週が終わっちゃったー! でもまた、明日から学校が始まるなあ」という、ふとした瞬間は、誰しも記憶のなかに“名前のない思い出”として残っていくんじゃないのかなと。次のシングルは応援歌がいいなと思っていて、今回は「フレフレ」というタイトルがいいなと、メロディを聴く前から考えていました。本当だったら、今年は東京オリンピックやパラリンピックが行われているはずだったんですよね。たとえばいまインターネットでは誹謗中傷が問題視されがちですが、本当はどこにいても離れていても、好きなことで繋がり合えたり、「あなたいいね」「あなたも素敵だね」と言い合えるというのは、ネットがない頃はできなかったこと。オリンピックだけではなく、誰かを応援するのはすごくいいことだし、それを無理せずゆるく応援できる世界だったら素晴らしいので、「フレフレ」はそんな心の応援歌にさせていただきました。ーー「フレフレ」は、SNS総フォロワー500万人超えの“ねお”さんが振付を担当していますね。SNSで大人気のねおちゃんは、令和の若者を象徴する存在で、きっと子どもたちが憧れるキラキラしたものを持っている方だろうと思い、オファーしたら快諾してくださって。振付もとってもかわいくて、まねしやすいんですよ。歌詞にある「ハートで祈ってる」という部分は、『ハクション大魔王2020』に出てくるアクビちゃんぽい振りなんです。優しい楽曲ですが、ダンスはポップなので、すごく元気になれるんじゃないかなと思いますね。みなさんが踊るフレフレダンスをTikTokで募集したら、かわいい女の子たちがたくさん動画を送ってくれて、いまはインターネットが意味を持ついい時代になってきたと思うんです。離れていても笑顔で繋がれることが、「フレフレ」を通じて見えてきてくれたらうれしいですね。ーーわが家でも私と娘で「フレフレダンス」を踊っています。うれしいです。私と同じ世代の人たちはもう結婚してお子さんがいらっしゃって、子どもの頃に見つけたワクワクキラキラは心のなかに宝石として残っているので、それを次の世代の子どもたちに届けたい。アニメだけじゃなく、ダンスも親子で一緒に楽しめるのは、昔よりも共有しやすい時代になった気がします。テレビで流れないところの歌詞もすごく好きなんですが、私の原点回帰と言いますか、子どもの頃から憧れていたアニソンを歌う先輩方の優しい歌声を目指して歌っているので、いつか本編でこの部分も含めてフルサイズで楽曲が流れるかもしれないので、アニメのほうもご覧いただければと思います。ーーカップリング曲の「フライングヒューマノイド 2020Ver.」は、2010年にリリースされたシングルの2020年版なのですね。はい。10年前は、10年後も生きているとか、楽しくやっているということは想像できなかったので、「十年先の未来が見える魔法があったらな…」という歌詞の気持ちはぼんやりとしか思っていませんでした。でも、10年経ってみると本当にあっという間で、光の中のトンネルをばっと走って来たような感じ。だから続けてこられたことが、いかに尊くて大変でありがたいことかを非常に感じますね。10年前というと、私は24、5歳。けっこう暗かった10代を乗り越えて、一番無敵感があったころですね(笑)。anan世代の方も、20代になってから、ますますやりたいこととやれることとが広がっていく時期だと思うんです。10年先のことを意識しながら何かをしたり、10年前のことを抱きしめたりしながら、これからも一瞬一瞬を大事にしたい。こうやって歌を続けてこられているのも、聴いてくださる人だったり、出会ってくださったりした方々のおかげなので、心から感謝しています。ーーこの曲は、BiSHなどを手がける松隈ケンタさんの作品ですね。10年ぶりにお会いしましたが、松隈さんは売れっ子さんなのでお話を受けてくださってびっくりですが「懐かしいね」とお話ししていました。私もこんなに歌い続けてこられたことはうれしいですが、まだ歌っていることを知らない方にも届くように、これからもすべての活動が、歌う瞬間に報われるようにがんばりたいと思っています。ただ、自粛期間のなかではお仕事がすべてなくなったんですが、人生終わりかなと落ち込みそうになったときに、でも何かやっていないと無理だと思って、YouTubeを始めました。そこでゲーム実況をしてみたら、日本のいろいろな都道府県、そしてロックダウン中の海外、イギリスやアメリカや香港といったさまざまな国から実況に参加してくれた方がいて。離れていてもこうして繋がれるし、いつか本当に会えたらいいなという夢もできましたし、落ち込んでいるからこそ、見えた世界がありましたね。ずっと子どもたちに歌を届けていきたいーーいま自粛は解除されましたが、活発には活動できない時期です。中川さんは「おうち時間」をどのように過ごしていますか。もともと家での趣味が主なので、いろいろやっています。今回は新しい文房具に挑戦しました。海外のアーティストさんが色鉛筆でものすごくリアルな絵を仕上げていく動画が大好きで、その人が使っている高い色鉛筆を買って、自分でも練習してみたんです。あと映画を観たり、アニメを観たり、絵を描いたり。夜中にシュークリームを焼くとか、なかなかやらなかった料理に挑戦するのも楽しくて。いまは舞台の稽古をしたり、YouTubeの撮影も室内でできちゃうので、忙しい(笑)。ステイホームののんびりの時間でも、いろいろなことが発見できました。うちには猫もいっぱいいて、猫と一緒の時間を過ごしているので、おうち時間は全然苦じゃないですね。ーー中川さんは愛猫家ですが、猫の魅力はなんでしょうか。いま猫を9匹飼っていて、YouTubeでも猫の紹介動画を撮っていますが、みんな違って、みんなかわいいんですよ。全部雑種で、捨て猫や保護猫なのですが、みんな無償の愛をくれます。家族であり、兄弟であり、子どものようであり、親のようであり。猫がいない世界は考えられない。猫は、私が落ち込んだときにわかってくれるんです。一緒に腕のなかで寝るのが大好きな猫がいて、ステイホーム期間もずっと一緒に寝てくれたおかげで、落ち込まずに済みました。その期間に発見したのが、保護猫カフェから連れてきた、すごくビビりで地味な猫のみかんが、私に会いたいがために立ち上がってドアノブを開けるという特技を身につけたことです。びっくりして動画も撮ったんですが、すると、情報番組から、みかんにオファーが来て(笑)。テレビの仕事がなくなっていたときに、みかんのおかげでテレビの仕事がキター!と(笑)。猫の個性はそんな感じで、それぞれ違いますね。ーー私もいずれ保護猫を飼おうと思っています。かわいいですよ、保護猫。できれば多くの猫が救われる世界になってほしいといつも思うので、BEAMSさんと共同プロデュースしてコラボレーションした『mmts(マミタス)』というブランドをずっとやらせてもらっているんですが、その売上の一部を動物保護団体へ寄付させていただいたり、個人的にもキャットフードを保護施設へ支援させていただいております。雑種、おすすめですよ。ーー続いては、お気に入りのメイクのことも教えてください。いまは、マスクでメイクが落ちないものを誰か発明してくれたらなと思いますね。でも、アイシャドウやアイメイクで遊んだりできるかな。お気に入りのブランドは、ルナソルです。5色入っていて、アイブロウも、ノーズシャドウとアイラインも描けるものがあるので、とりあえずカバンにこれだけ入れておけば、なんとかなります。あとチョコレートの香りがするシャドウもあって、締め色がすごく目をしっかり見せてくれるので、マストアイテムですね。ーーちなみに、おこもり期間に愛が深まるカップルも多いようですが、中川さんが魅力的だと思う男性とは。私はやっぱり、根が真面目な人がいいですね。仕事をコツコツとやり遂げる、仕事が好きというのも大事だし。私は絵を描くのが好き、ゲームが好きという趣味はありますが、それを否定しない人だったら、すごくうれしいですね。でも、同じ趣味であってほしいまでは思わないんですが、同じだと一緒にできるから。あと、猫が好きな人! これだけは譲れないですね。あとはもう、収入などはどうでもいいや、働いていればいいですね(笑)。ーー声優をされているラプンツェルのアニメも観させていただいておりますが、今年の冬は、劇場版のポケモン映画の声優もご担当されますよね。私自身、落ち込んだらラプンツェルを見ると元気が出るので、大好きなんです。なるべく長くラプンツェルを演じられるように、声と健康を守ろうと思いますね。ポケモンの映画は2007年からずっと参加させていただいていて、昨年は主題歌も担当させていただいていて、今回また声優で復活できるなんて。子どもたちが笑顔になれる時間になったらいいなと思っています。ーー歌手活動においての今後の豊富を教えてください。壮大な夢としては、かっこいい熟女になったときに、ステージでかっこよくシャンソンを歌いこなせるシャンソン歌手になりたいんです。そう思うと、年齢を重ねることも楽しみ。たとえばシャンソン歌手のみなさんは、スパンコールの派手なドレスを着ているイメージなのですが、それはきっと年齢を重ねていくからこそ似合うはず。歌詞の説得力が、レベルが上がっていく(年を重ねていく)ことで増していくと思っていているので、私が憧れたレジェンド歌手のみなさんのように、ずっと歌い続けられる人になりたい。そして、コロナが収束したときに、いつか海外でも歌えたらいいなと。あと子どもたちに歌を届けていきたい気持ちは、ずっと変わらないんです。これからも健康で、なるべく長くアニメソングを歌い続けたいですね。取材後記抜群の歌唱力で、子どもから大人まで、国内外問わず歌を届けてくれる、中川翔子さん。「アニメソングは魔法のパスポート」だとお話しされていましたが、これからも私たちに、元気になれる歌声を聴かせてくれることでしょう。そんな中川さんがリリースするニューシングルをまずはチェックしてみてくださいね。中川翔子 PROFILE1985年5月5日、東京都出身。歌手・タレント・声優・女優・イラストレーターなど、活動は多岐に渡り、多数のバラエティ番組にも出演中。数々の人気アニメ・ゲーム等の主題歌を担当し、2019年12月には5年ぶりとなるフルアルバム『RGB 〜True Color〜』を発売。文化人としての活動も行っており、2019年夏には、自身の経験を元に書籍『「死ぬんじゃねーぞ!!」いじめられている君はゼッタイ悪くない』を出版。以降は多数の講演会等に登壇し、多様化するいじめ問題に取り組んでいる。この他に、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた「マスコット審査会」委員を務め、聖火ランナーを務めることも決まっていた。2025年開催の万博に向けた「万博誘致スペシャルサポーター」としても活動している。最近ではYouTubeチャンネル『中川翔子の「ヲ」』を開設し、イラスト動画やゲーム実況の動画が話題となっている。InformationNew Release「フレフレ」(収録曲)01.フレフレ02.フライングヒューマノイド 2020 Ver.03.フレフレ -Anime edit-04.フレフレ -Instrumental-05.フライングヒューマノイド 2020 Ver. -Instrumental-2020年9月9日発売*CD収録曲は通常盤・初回限定盤共通。(通常盤)SRCL-11543¥1,182(税込)*CD only。(完全生産限定盤)SRCL-11540〜11542¥4,527(税別)DVD内容:1「フレフレ」Music Video、2 TVアニメ「ハクション大魔王2020」エンディング映像(ノンクレジットver.)*CD+DVD+Tシャツ。*完全盤封入グッズ:中川翔子とBEAMSが共同プロデュースする「mmts(マミタス)」 の中川翔子描き下ろし“アクビちゃん”イラストTシャツ(全3種のうちランダム1種封入)。
2020年09月02日【音楽通信】第46回目に登場するのは、インパクトのある歌詞と耳に残る楽曲、コミカルな要素を感じさせるパフォーマンスも人気のゴールデンボンバーのボーカル、鬼龍院翔さん!取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol.46バンドに憧れて、インディーズで活動する道を選択“ヴィジュアル系エアーバンド”ゴールデンボンバーの鬼龍院翔さんは、バンドの全楽曲の作詞作曲やライブの演出なども手掛けるうえ、ソロ活動や他アーティストへの楽曲提供なども行う多彩なボーカリストです。2004年に鬼龍院さんとギターの喜矢武豊さんを中心にバンドを結成されてから、インパクトのある歌詞や耳に残る楽曲、鬼龍院さん以外は楽器を弾かずに披露するパフォーマンスなどで注目を集め、さらにシングル「女々しくて」で大ブレイク。以降も数々の楽曲を世に送り出し、近年では時代の変化を絶妙にブレンドしたシングル「令和」や、アルバム『もう紅白に出してくれない』なども、話題を呼びました。そんな鬼龍院さんが、2020年8月30日に、ファンクラブの方からのリクエスト上位曲のみで制作されたカバーCD『うたってきりりんぱ』をソロでリリースされるということで、お話をうかがいました。ーー過去の音楽活動から少し振り返ります。19歳のとき、喜矢武さんと前身バンドを結成され、2007年にはベースの歌広場淳さん、2009年にはドラムの樽美酒研二さんが加入されて以来、ゴールデンボンバーは大活躍されている印象です。バンド活動の手応えを感じたのは、いつ頃でしたか。手応えを感じたのは、ギターの喜矢武しかいなかった2007年頃ですね。それまではわかりづらかったライブでのネタの振り方を芸人の知り合いから「わかりやすくやったほうがいいよ」と助言されて、やってみたらお客さんが受けて、「自分たちのやり方を見つけた」と思ったんです。そこから自分のやりたいことがはっきりわかって進んでいくんですが、歌広場が入ったり、ドラムの人がサポートメンバーだったのがいまの樽美酒に変わったりして。でも、メンバーが変わったからといって、モチベーションに差はありませんでしたね。ーー楽曲もライブも手掛ける鬼龍院さんなので、ソロで活動していくお考えはなかったのですか。考えなかったです。いまは時代が変わってきたかもしれないですが、当時は“ソロシンガー”より“バンド”に憧れを抱きやすい時代だったんですよね。同じ実力のあるアーティストがいたとして、それが“ソロシンガー”と“バンド”だったら「バンドに憧れるはずだ、世の中そういうもんだろう」と決めつけていました。僕はバンドが良かったので、誰かしらメンバーがいてほしいと思っていたんですよね。ーーゴールデンボンバーは、メジャーレーベルの数あるオファーを断り、現在もインディーズで活動されている理由は。駆け出しの頃はメジャーデビューしてもいいかなと思っていたんですが、いまの事務所さんにお世話になるようになって、そこはインディーズでCDも出せるんですよね。ちょうど時代がメジャーデビューにうまみがあまりないのではと思われ始めた頃に、メジャーレーベル7社から一気にオファーがきたんですが、社長にも「どうしたらいいですかね」と話をしました。社長は、「メジャーレーベルに行くと関わるスタッフが増えるから、稼ぎは減る。でもうちとは違うルートの宣伝がある気がする。でもインターネットでも宣伝はよかったりもするし、いまの給料に並ぶには、君たちがEXILEぐらい人気者にならないとダメ。だから結局、給料が1/10ぐらいになると思ったほうがいい」と言われて。「じゃあ、しなくていいですよね」と(笑)。でも一番いやだったのは、メジャーに行くとやれることも減るかもしれないから。過激なパフォーマンスができる機会が減ってしまうと、僕もそうですがメンバーはもっと困る。飛び道具、いろいろな変なこと、過激なことをやって、やっと居場所があるのに。それができないとなると、彼らの居場所がなくなるわけです。メンバーにも「メジャーデビューの話、断ったよ」と事後報告したら、「ふーん、そうなんだ」と言っていました。ーー2009年に発売された「女々しくて」が年月をかけて2012年に大ヒットし、同年からNHK紅白歌合戦に4年連続出場されましたが、当時の心境は。曲が流行っているのは素直にうれしかったんですが、それと同時に、生活がものすごく不便になったんです。ブレイクするとそのぶん注目されるので、プライバシーの侵害や中傷も一気に増えて、いやなことだらけでした。振り返ると、敏感すぎたかなといまは思いますが、当時はちょっと参っていましたね。あと、ヒットすることで「一発屋って言われるんじゃないか」「もっといいヒット曲を作らなきゃ」と考えながら作曲をしていましたが、「女々しくてを超えない⋯⋯」とずっと思っていて。全然、安心できませんでした。新作は「かしこまって聴いてほしくない」ーー2020年8月30日に、ファンの方からのリクエストによって選曲された、鬼龍院さんのソロカバーCD『うたってきりりんぱ』をリリースされます。このタイトルの意味から教えてください。タイトルは、聴く人の姿勢を決めるじゃないですか。今回、リクエストされた曲をカバーして歌うので、かしこまって聴いてほしくなかったんです。ここでたとえば、鬼龍院翔のカバーCDが英語の大文字でカッコよく、『VOICE』とかだったら、なんか肩に力が入りそうで(笑)。検索していたら、子ども向け番組の『うたってオドロンパ』(1995年から2006年まで放送されていたNHKの子ども向け音楽番組)という文字を見つけて、それをもじりました。『うたってきりりんぱ』という、このひらがなの感じがちょうどいいかなと。ーー選曲については、いかがでしたか。リクエストされた選曲については、ファンの方に募る前から「僕の感情で選びません」と、「ランキング上位のものから、許可が出たものからカバーしていきます」と説明していたんです。結果として、決定された選曲を見て、失礼かもしれませんが「ベタだなー」と思いましたね(笑)。たとえば、僕もファンである、中島みゆきさんの名曲「糸」が今回選ばれました。中島さんのファンからしたら、「糸」はもうメディアでいっぱい使われているからもういいよ、というテンションになってしまうぐらいのメガヒット曲なんですよね。この曲ももちろんいい曲ですが、もっとほかにもいい曲あるよって。ゴールデンボンバーのファンがよく「女々しくて」以外もいい曲あるよって言う感覚に似ているんですが(笑)。だから、ファンの方からしたら「糸」を選ばれると、ベタだな〜と(笑)。ーーほかにも、鬼龍院さんが中学生の頃からお好きだったヴィジュアル系バンド・MALICE MIZERの元ボーカルでもあり、現在は親交が深いGACKTさんの曲「Vanilla」も選曲されています。カバーするのは、緊張したのでは。確かに「Vanilla」だけは、「この機会に歌っていいんだろうか?」と思いました。でも、リクエストで上位に入ったのに歌わないのはファンへの嘘になるので、上位に入って許可がおりたからには、やらないという選択肢はありませんでした。今回のアルバムは制作期間が短いんですが、この曲については「もっと時間をかけてじっくりやりたかった」という気持ちが強いですね。僕はもともと物心ついたときから、GACKTさんのボーカルをまねて生きてきたんですよ。でも、近年はGACKTさんの歌声をまねできなくなってきていて。それはたぶん、GACKTさんのまねをして歌を歌ってきた期間よりも、自分の歌を歌って活動してきた期間が長くなってきたことが、原因だと思うんです。以前のGACKTさんの歌声のモノマネが得意だと自負していたときなら「うまく似せなきゃ」と思ったはずですが、つい先日レコーディングしたときも「自分らしくカバーさせてもらおう」という気持ちで歌えたので、いい意味で、いまは気負わずカバーできるタイミングだったと思います。ーーPRINCESS PRINCESSさんの「M」や西城秀樹さんの「傷だらけのローラ」があるかと思えば、King Gnuさんの「白日」、Official髭男dismさんの「Pretender」など、新旧の楽曲が揃いましたね。これは単純に、ファンクラブ会員の方の年齢の振り幅が広いということですね。選曲するには、ひとり一票しか入れられないようになっていました。でもたぶん、King Gnuさんの「白日」に投票した人は、PRINCESS PRINCESSさんの「M」に投票しようか迷わなかったと思うんですよね。僕らがライブハウスだけで活動していたときよりも、テレビなどに出させていただくようになってからは、幅広い年齢層の方に知ってもらえるようになりました。ーーバンドの曲はいつも全作詞作曲を手掛けていらっしゃいますが、カバーとなると、また心持ちは違いますか。そうですね。僕も作詞作曲している身からして、作詞した方や作曲した方も聴くかもしれないと思って、変なアレンジはせずに歌います。とくにメロディのアレンジはしないんです、していいのは作曲した人だけだと思うから、忠実に歌わなきゃなと。敬意も込めて、なるべくだいそれたことはしないようにしています。ただ、歌声の暑苦しさはどうにもなりません(笑)。「健康に気をつけて、定期的にライブ活動したい」ーーお話は変わりますが、鬼龍院さんは中学時代から音楽とお笑いが好きで、吉本興業の養成所であるNSC東京に在籍していた時期があったそうですね。高校を卒業してから、NSCに行きました。10歳ぐらいのときに、母さんがテレビに出ている芸人さんを観ながら「この人たち、しゃべっているだけでお金がもらえていいわね」と言っていて、「じゃあ、お笑いっていい職業だな」と思い始めたのがきっかけです。根本的に、人を笑わせたり、ふざけたりするのも好きで、「お笑い芸人になりたい」と思ったんですね。お笑いブームで『ボキャブラ天国』(1992年から99年にフジテレビ系列で放送されていたお笑い番組)が流行っていて、お笑い芸人が輝かしいスターのように描かれていて。そして、思春期は音楽を好きになるわけなんですが、「自分はキャーキャー言われるような人間ではない、だからミュージシャンなんてバカ言っちゃいけないよ」という自己評価だったので、音楽も好きだったんですが、その道はないと思っていました。ーーお笑い芸人の、しずるの池田一真さんとコンビを組まれていたとか。組んでいましたね。ただ、僕が芸人をしていた期間が、NSCにいた1年間だけの活動なんです。やることといえば、ネタ作りをして、ネタ見せの授業のときにネタ見せをして。だから、在学中の人が出るステージに出たぐらいで、お客さんの前でネタをしたことは1度もないんですよ。ーーネタはどちらが書かれていたんですか。どっちもなんですよ、それがよくなかったんじゃないかと思うんです(笑)。いまもメアドぐらいは知っていますが、連絡しないですね。池田くんはかなり変わった人なので、コンビを組んでいたと聞いたほかの芸人の方に「よくあの人と組んでいたね」と驚かれます(笑)。ーーところで、今年予定されていた全国ツアーが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、2021年に変更されましたね。先の予定が立てづらい状況ですが、鬼龍院さん個人として、バンドとして、今後の抱負があればお聞かせください。僕自身の抱負は、「メンバーよりも明るい人間になる」ということですね(笑)。ゴールデンボンバーとしては、「普通にライブをすること」それだけで、十分です。いま、億万長者になりてー! とか言っていたら、いやじゃないですか(笑)。ステージに立つみんなが「普通にライブさせてください」って思っていると思うんです。もう世界の望みですね。それを成し遂げるためには、健康であることも大事。全然運動もしていませんが、心身ともに健康を保っていれば、いつか必ずライブはできますので。いまの目標は「健康に気をつけること」、長期的な目標としては「定期的にライブ活動をすること」につきますね。取材後記ゴールデンボンバーのフロントマンとして、ソロアーティストとして、音楽活動はもとより、バラエティ番組など多岐にわたり活躍されている鬼龍院翔さん。お話しさせていただいていると、ジャンルレスにさまざまなシーンに対応できるのも、頭の回転がはやい方だからだと実感。そんな鬼龍院さんのカバーアルバムは、聴けば聴くほど歌唱力の高さに驚かされましたし、とても楽しくなりました。みなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。鬼龍院翔 PROFILE1984年6月20日、東京都浅草生まれ。鬼龍院翔(Vo)、喜矢武(きゃん)豊(G)、歌広場淳(B)、樽美酒研二(Dr)の4人からなるヴィジュアル系エアーバンド・ゴールデンボンバーの全楽曲の作詞作曲を手掛ける。ギター、ベース、ドラム、ピアノ、バイオリンなど一通りの楽器は演奏でき、ライブの演出なども担当。ソロ活動や他アーティストへの楽曲提供なども行っている。愛称は「キリショー」「キリちゃん」など。ゴールデンボンバーは、2004年、鬼龍院と喜矢武豊を中心に結成。略称は「金爆(きんばく)」。インパクトのある歌詞や耳に残る楽曲、鬼龍院以外は楽器を弾かずに披露するパフォーマンスなどで注目を集める。2009年に発売されたシングル「女々しくて」が年月をかけて2012年に大ヒット。同年からNHK紅白歌合戦に4年連続出場。2013年にはカラオケランキング51週連続1位獲得。2014年、第56回日本レコード大賞作曲賞受賞。2019年4月1日発表の新元号に合わせ、「新元号ソング」をどこよりも早く制作、発表、発売すべく、制作の模様を生配信。同年4月よりゴールデンボンバー全国ツアーを開催し、11月には、沖ノ島という無人島で無観客ライブを行い、その様子を全国へ生配信した。12月、アルバム『もう紅白に出してくれない』をリリース。2020年、3月から7月まで予定していた全国ツアー2020「楽器を弾いたらサヨウナラ」 を2021年に延期し、開催予定。8月30日、鬼龍院翔のリクエストカバーCD『うたってきりりんぱ』をリリース。InformationNew Release『うたってきりりんぱ』(収録曲)01. サウダージ(ポルノグラフィティ)02. Vanilla(GACKT)03. 楓(スピッツ)04. 糸(中島みゆき)05. 白日(King Gnu)06. Pretender(Official髭男dism)07. 妄想日記(シド)08. 最後の雨(中西保志)09. M(PRINCESS PRINCESS)10. 傷だらけのローラ(西城秀樹)2020年8月30日発売(CDのみ)¥1,818(税別)EAZZ-5025*通販限定発売。なくなり次第終了。
2020年08月25日【音楽通信】第45回目に登場するのは、さまざまなメディアから「ブレイク必至」と話題の期待のニューカマー、大阪発の5人組ロックバンド、Novelbright(ノーベルブライト)!写真・大内香織 取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol.45路上ライブ映像がSNSでバズり人気急上昇写真左から、ねぎ(Dr)、竹中雄大(Vo)、沖聡次郎(G)、圭吾(B)、山田海斗(G)。2013年にオリジナルメンバーで結成。2019年1月に現体制となり、大阪を拠点としていた5人組ロックバンド、Novelbright。同年7月に行った路上ライブの模様が「上手すぎる」「路上でやってる場合じゃない」とSNSや口コミで拡散されバズを繰り返し、瞬く間に全国区へとその名を広めました。なんでも“人が集まりすぎる”ゆえに路上ライブを卒業した後も、各種ストリーミングチャートではロングヒットを記録。さまざまなメディアでも“2020年ブレイクするニューカマー”として注目を集めています。2020年8月17日には、なんと大阪城ホールから「バーチャルブライトSPECIAL at 大阪城ホール〜バンド史上最強の発表あります無料です〜」と題した、無料配信ライブを開催。メジャーデビューとなるデジタルシングル「Sunny drop」をリリースされたということで、竹中雄大さん(Vo)、沖聡次郎さん(G)、山田海斗さん(G)、圭吾さん(B)、ねぎさん(Dr)のメンバー全員に、お話をうかがいました。ーー2013年にバンドを結成され、2019年に現体制となったそうですね。そもそものバンド結成のきっかけは。竹中雄大(以下、雄大) 僕が高校生のときにONE OK ROCKのコピーバンドをやっていたのですが、直に反応してくれるライブが楽しくて、ちやほやされたい気持ちもあって、自分自身でも本気でバンド活動をしたいと思ったんです。もともと歌うことがすごく好きで「これを仕事にしたい」と高校3年生のときに強く思って、Novelbrightを結成しました。17歳だった2013年9月に活動を始めて、当初は地元の仲間4人でバンドをやっていたんです。地道に3、4年は活動をしていて、2016年の夏頃にメンバーが抜けて、11月にギターの海斗くんと聡ちゃん(聡次郎)と、ドラムのねぎの3人が加入しました。そこから前のベースと5人でバンド活動を続けて、2018年12月にベースが抜けて、2019年1月に圭吾が加入して、いまに至ります。竹中雄大(Vo)。作詞作曲も担当。「小学校6年生のとき、口笛の世界大会をテレビで観た後、出場して2度優勝しました」ーーではメンバーのみなさんの音楽的なルーツはどのような感じでしょうか。雄大 みんなそれぞれバックボーンは違って、根底にあるルーツはばらばらですね。圭吾 そう、全然違います。沖聡次郎(以下、聡次郎) 僕はアメリカのミュージシャンで、グラミー賞も受賞している、スティーヴ・ヴァイがルーツです。海外のヘビーメタルが好きで、そういうバンドのギターヒーローに憧れていました。ねぎ 僕は雄大くんと一緒で、コピーバンドをしたことがきっかけで、バンドを好きになりました。それまではGReeeeNなどJ-POPが好きで、バンドを始めてからはONE OK ROCK、UVERworldなどを好きになりましたね。雄大 僕が音楽を始めようと思ったきっかけは、ゆずです。ゆずが好きで、アコースティックギターも弾き始めました。バンドを始めたきっかけはONE OK ROCKなので、一番の音楽的なルーツというと、ゆずとONE OK ROCK。あとは日頃から、洋楽アーティストの音楽もよく聴いてきています。沖聡次郎(G)。作曲も担当。ゲームやアニメが好き。「新作ゲームはすべて試し、いまは『モンスターハンター』にハマり中」山田海斗(以下、海斗) 僕はテレビでB’zを観て「こんなカッコいい人になりたい!」と思って、音楽を始めました。圭吾 僕はナイトメアとthe GazettEという、ヴィジュアル系がルーツです。バンドの音楽を聴きはじめたのも、ヴィジュアル系が初めてでした。あとは、ずっと昔からUVERworldが好きですね。ーー雄大さんは、もともと歌うことが得意だったのですか。雄大 中学生のときは3日に1回ぐらいはカラオケに行っていました(笑)。友達と行くと「うまい、うまい」と言われるのがうれしかったんです。メンバーもそうですが、僕は歌が、みんなは楽器が、年々うまくなっていっているかなと。声質は昔からそんなに大きくは変わってないですね。自分で得意だと言うのは難しいですが(笑)。聡次郎 小さいときから、まわりの人に「うまい」って言われてきたっていうことやな(笑)。雄大 まあまあまあ、そうやな(笑)。圭吾(B)。もとは天然パーマという圭吾さん。「毎日髪をブロッキングして束を作りながらアイロンしないとアフロになります(笑)」ーー2019年7月に開催された「どチクショー路上ライブTOUR」の模様を圭吾さんがSNSに投稿し、おおいに話題となりました。圭吾 バズりましたね(笑)。僕はそもそも別のバンドをやっていて、Novelbrightとは対バンもして友達ではありましたが、Novelbrightに入る前からこのバンドのことが好きで、当時から「もっとNovelbrightを広めたい!」と思っていたんですよ。まだメンバーではないときも、バンドの動画を撮ってSNSにアップして「いいね」を稼ごうと活動していたくらい(笑)。あわよくば拡散されてヒットしないかなと思っていて、その後メンバーとして加入してからも、以前と同じようにNovelbrightのことを知ってもらいたくて動画を投稿していたら、すごく話題になったんです。聡次郎 圭吾が加入する前も、バンドでSNSはやっていたんですが、そこまで戦略的にはやっていなかったんです。「どうやったらお客さんに広まっていって効果的なのか」ということを切れ者の圭吾が考えてやったら、すぐに拡散されて、「いいね」のような数字が、日に日に10倍、100倍と増えていって。雄大 広がるのは早かったよね。圭吾はお客さん目線で僕たちのことをずっと見てくれていたので、友達ではありますが「客観的にみたらこうしたらいいんじゃない」というポイントをメンバーのなかで一番わかっています。バンドのことをSNSで宣伝することにおいて、圭吾はいいところに着目したと思いますね(と言い終わるやいなや、圭吾さんに向けて、拍手を送る雄大さん)。海斗、聡次郎、ねぎ (笑顔で圭吾さんを見て、拍手)圭吾 ありがとうございます!山田海斗(G)。作曲も担当。「ファッションに興味があり、見た目が変わったものや人が選ばないものが好き」ーー2020年8月17日に「大阪城ホール」で無料生配信ライブを開催されました。まず、大阪城ホールを貸し切ることがスゴイことですね。雄大 そうですね〜! いままでだったら、大阪城ホールでライブをする人はスゴいと僕も思っていたんですが、僕らの場合は、大人の協力のおかげです(笑)。ーー大阪を拠点に活動されてきたので、いつかは大阪城ホールでライブをと考えていたのですか。圭吾 僕ら地元を大事にしているんです。だから、ドームならどこでもいいのか、東京ドームなのか、横浜アリーナになるのかというと、それは違って京セラドームで。やっぱり関西から制覇したいから、まず大阪城ホールでライブをするというこだわりは、メンバー全員持っていました。雄大 僕たち、路上ライブをずっとやってきていました。その路上ライブを卒業した場所が、大阪城公園なんですよ。聡次郎 大阪城公園の路上でライブをしながら、「次はあっち側でライブをするぞ!」と、大阪城ホールを見ながらMCをしていたんです。雄大 だから、大阪城ホールでライブがしたかったですし、今回は無観客ですが来年はお客さんで会場を満員にするという、意思表示でもあります。この大阪城ホールでメジャーデビューを発表したのですが、デビューを発表することは人生で一度きりじゃないですか。いまはコロナの影響でライブができない日が続いていて、お客さんと直に会えないはがゆい日々が続いていているなかで、何か人とは違うことをして、みなさんを元気づけたい。大阪城ホールを貸し切って、無料生配信ライブを行い、デビューを発表することは“規格外”だから、こういう面白いことをやろうとメンバー全員で話していました。ねぎ(Dr)。「メンバーは年も近いので常に共通の話をしています。家ではハンドパンという楽器にハマっています」ーーメジャーデビューされましたが、心境に変化はありましたか。ねぎ 「やったー!」という感じです(笑)。雄大 僕はメジャーデビューしても、インディーズのときとそんなに気持ちは変わらなくて、ただ、箔が付くかなと。聡次郎 僕たち、全然誰にも知られていなかった1年前と、いまの差が激しいんです。雄大 ドンキホーテでお米のパックを買って、納豆と一緒に食べたりしていましたから(笑)。圭吾 ツアーでも、安い宿の一室にみんなで泊まって、自分たちで運転しているハイエースが壊れて、押しながら移動したことも(笑)。そのときと比べると、デビューすることで僕たちのことを手伝ってくれるスタッフの人たちがどんどん増えてきて、Novebrightに関わるチームが結束してきました。だから、音楽面というよりも、そういったまわりのサポート環境面で、デビューをしたという実感がありますね。雄大 それは確かに僕も思います。メジャーデビュー曲はバンドの代名詞になる作品ーー8月17日には、メジャーデビュー第1弾となるデジタルシングル「Sunny drop」をリリースされました。雄大さんのファルセットが響く爽快なアップチューンですね。雄大 聴いていただいてありがとうございます。曲については、どれも全部どのタイミングでリリースしても大事なんですが、やっぱり、ここ一番というときに出す曲というのもあって。今回、メジャーデビューの最初の曲となると、すごく大事じゃないですか。いろいろな曲があって、さまざまなテーマの歌を歌っているんですが、まずは「Novelbrightといえばこんな曲」という、バンドの代名詞になる作品でデビューしたい気持ちがあって。この「Sunny drop」は、僕たちがいまできることをしっかりと詰め込んだ、自分らしさ全開の曲になっています。ーー雄大さんが作詞、雄大さんと聡次郎さんの共作で作曲されていますが、曲作りについてはいつもどのように行なっているのですか。雄大 ギターの聡ちゃんと海斗くんがそれぞれ、トラックを作るんですね。そのメロディがない音源をある程度完成形に近いものにして提出してもらい、そこに僕がメロディをつけて、アレンジを話し合ってまとめ、さらに歌詞を書いたりもします。ーー今回、亀田誠治さんが編曲を担当されていますね。雄大 聡ちゃんが作った曲に、僕がメロディと歌詞を付けたものを亀田さんがブラッシュアップして、アレンジをしてくださったんです。海斗 できる限りのアレンジを自分たちでしてから、そこに亀田さんが魔法をかけてくれて、すごく輝いた曲になりました。曲のストーリーが良い方向に動いた感じがします。聡次郎 僕らが思いつかないアレンジを亀田さんがしてくださって、曲がすごく良くなりました。「日本を代表するアーティストになりたい」ーー「Sunny drop」では“笑う君が愛しい”という歌詞が出てきますが、実際にみなさんが愛しく思う、魅力的な女性のタイプを教えてください。聡次郎 一番大事だと思うのは、言葉遣いです。容姿がいいのも魅力的ですが、それよりも、TPOに合わせてきれいな言葉遣いのできる女性が一番だと思いますね。ねぎ 僕の場合、何かに向かってひたむきに努力している女性は「いいな」と思いますね。僕らも夢に向かって突き進んでいるので、同じように頑張っている女性が魅力的です。雄大 僕は、気遣いができる女性がいいですね。圭吾 たとえば?雄大 ファミレスに行ったら、すすんで水を持ってきてくれる子とか。圭吾 それは男が持っていこう(笑)。雄大 そうか、でも焼肉を食べに行っても、焼いてくれる子がいいな(笑)。圭吾 それも男がやろう(笑)。海斗 僕は女性らしい人がいいですね。男の子っぽくない感じ。だから、自分のことをかわいいとわかっていてアピールするような“ぶりっ子”の女性も好きなんです。圭吾 僕は精神年齢がだいぶ低いので、そのレベルで同じ時間を過ごせる女性が魅力的だと思いますね。僕がアホなことをしていたら、「アホやな」って思われるよりは、一緒にアホなことができるほうがいいんです。ーーお話しいただいて、ありがとうございます。では最後に、Novelbrightとしての今後の抱負を教えてください。雄大 今年はメジャーデビューしましたが、コロナ禍でライブができなくて活動しにくい状況のなかでも、僕たちなりのやり方で日々模索し続けて、こういうご時世だからこそできること、やれることをまずはしっかりやっていきたいです。夢は果てしなく大きいので、ここ数年で日本を代表するアーティストになりたいと思っていて、大きいキャパのアリーナツアーやドームツアーをやりたいですね。そして将来的には、すごく先の話ですが、おじいちゃんになっても、みんなで仲良く楽しくバンド活動ができていたらいいなと思っています。取材後記令和時代にフィットした目覚ましい活躍で、大阪から全国へと飛躍する、Novelbright。フレッシュな感性をきらめかせながら、取材時にはメンバー5人の仲の良さが垣間見える和気あいあいとした様子を見せてくださいました。そんなNovelbrightのみなさんのデビューシングルをまずはチェックしてみてくださいね。Novelbright PROFILE竹中雄大(Vo)、沖聡次郎(G)、山田海斗(G)、圭吾(B)、ねぎ(Dr)からなる大阪出身の5人組ロックバンド。2013年にオリジナルメンバーで結成後、2019年1月に現体制で活動スタート。同年7月に開催した「どチクショー路上ライブTOUR」がSNSや口コミで拡散され、瞬く間に全国区へとその名を広める。路上ライブ卒業後も各種ストリーミングチャートでロングヒットを続け、インディーズアーティスト史上初のレコード協会に「ストリーミング認定」されるなど、大躍進。さまざまなメディアで「2020年ブレイク必至」と注目を集めている。2020年8月17日に、大阪城ホールから「バーチャルブライトSPECIAL at 大阪城ホール〜バンド史上最強の発表あります無料です〜」と題した、無料配信ライブを開催し、メジャーデビューとなるデジタルシングル「Sunny drop」をリリース。InformationNew Release「Sunny drop」2020年8月17日配信¥255ヘアメイク・又吉桃花 (superbly inc.)、スタイリスト・MIDORI竹中雄大 シャツ¥50,000 Tシャツ¥14,000 パンツ¥64,000 (共にキディル/サカス ピーアールTEL:03・6447・2762) ネックレス¥99,000(シンゴクズノ/シアン PR TEL:03・6662・5525) リング¥15,000(キュイエール アン 925/シャポリエ クールTEL:06・6202・3730) シューズ 本人私物、山田海斗 オールインワン¥80,000(リベルム/エスティーム プレスTEL:03・5428・0928) シャツ スタイリスト私物 シューズ 本人私物、圭吾 シューズ 本人私物 その他 スタイリスト私物、ねぎ シャツ¥34,000(メアグラーティア/シアン PR TEL:03・6662・5525) パンツ¥27,000 シューズ¥35,000(共にクルニ/シアン PR TEL:03・6662・5525) ニット スタイリスト私物 リング 本人私物、沖総次郎 シャツ¥42,000 パンツ¥34,000(セブンバイセブン/サカス ピーアールTEL:03・6447・2762) ハット¥26,000(メゾンバース/シアン PR TEL:03・6662・5525) リング¥77,000(シンゴクズノ/シアン PR TEL:03・6662・5525) Tシャツ スタイリスト私物 その他 本人私物
2020年08月18日【音楽通信】第44回目に登場するのは、数多くのアニメ作品やナレーションなどに出演する人気声優でありながら、ソロシンガーとしても大活躍中の下野紘さん!取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol.44デビュー当時はうれしさ以上の緊張とプレッシャー2001年に声優デビューした下野紘さんは、『進撃の巨人』のコニー・スプリンガー役や『鬼滅の刃』の我妻善逸役ほか、アニメを中心にゲームや吹き替え、ナレーション、ラジオなどに数多く出演し、実写映画で初主演を務めるなど、多彩な活動を展開。今後も出演作が目白押しの人気声優です。2016年には、声優デビュー15周年を記念したソロシンガープロジェクトを始動し、1stシングル「リアル -REAL-」でアーティストデビュー。そんな下野さんが、2020年8月19日に、1stフルアルバム『WE GO!』をリリースされるということで、お話をうかがいました。ーーまずは、少し前のことからお聞きします。下野さんが影響を受けた作品やそもそも声優を目指されたきっかけを教えてください。コメディSFアニメ『無責任艦長タイラー』(1993年)を観ていて、主人公のジャスティ・ウエキ・タイラーのような「おおらかでいつもニコニコしている大人になりたい」と思うようになりました。この作品が、声優という仕事を意識するきっかけですね。もともとアニメやゲーム、声優さんが好きだったこともあり、声優さんのラジオやCDドラマを聴いて、「なんて楽しそうな仕事なんだろう」と思い、この仕事を目指すようになりました。ーーその後、2001年にゲーム『リリーのアトリエ〜ザールブルグの錬金術士3〜』で声優デビューされて、翌年にはテレビアニメ『ラーゼフォン』の主役に抜擢されました。声優デビューという、夢が現実になっていかがでしたか。もちろんうれしかったです! 『ラーゼフォン』に関しては、オーディションで受からなければ声優をやめようと本気で考えていたので、大喜びしましたが、そのあとは緊張の連続でした。自分なりに「声優事務所に所属して、少しずつ仕事をもらうようになって、いつかはアニメで主役を……」と計画していたので、当時は主役を務めるうれしさ以上に、緊張とプレッシャーでいっぱいいっぱいだった気がします。ーーそんなデビュー後から現在、そして今後も大活躍の下野さんですが、昨今ではアニメファン以外も巻き込み一世を風靡している『鬼滅の刃』の我妻善逸役での反響について、どのように感じましたか。また、善逸役をされているときに心がけていらっしゃったことは。ありがたいですし、うれしいのですが、たじたじしてしまいますね(笑)。『鬼滅の刃』がこんなにも大きな反響があると思っていなかったので、僕自身、ビックリしています! 基本的には、ほかのアニメでも、どのキャラクターのときも変わらず、そのキャラクターの持つ感情や状況を大切にしています。ただ、善逸の場合は、表情と動きが豊かすぎるので、そのあたりはとくに気をつけているところもあるかもしれませんね。感慨深いフルアルバムはよりいっそう楽しい作品ーー2016年からは、声優デビュー15周年として「下野紘ソロプロジェクト」と題してアーティスト活動もスタートされました。2020年8月19日には、1stフルアルバム『WE GO!』をリリースされます。今回のアルバムにこめた思いをお聞かせください。アーティスト活動を始めた当初の目標が、フルアルバムを出すことだったので、感慨深いものはありますね、やっと出せたなと。そして今回はいままで以上に「みんなとライブで盛り上がりたい」という思いを込めて作らせていただいたので、いままでよりいっそう、楽しいアルバムになっていると思います。ーー収録曲から、いくつかおうかがいさせてください。3曲目「WE GO! –On Your Mark」はタイトル曲でもありますが、前山田健一さん作詞作曲のアッパーチューンですね。今回、初のフルアルバムということで、僕の憧れのアーティスト、もしくは縁のあるアーティストの方に楽曲を作ってもらうのはどうだろうという話になったんです。相談の結果、ヒャダインこと前山田くんに、表題曲である「WE GO! –On Your Mark」を作ってもらうことになりました。ギターロックとポップサウンドが融合した、“アーティスト下野紘”としては、いままで以上に前向きな楽曲になっていると思います。ーー4曲目「リアル-REAL2020-(Re-Recording)」は、2016年3月リリースのデビューシングルを“2020年バージョン”にされての新録とのことですが、デビューのときと現在とで、歌ってみての心境の変化などありますか。デビューシングルだったからこそ、如実に違いがわかりますね。楽曲に対する向き合い方や感情のバランスなど……。以前シングルでリリースしたときは、ガムシャラにしか歌えなかった「リアル-REAL-」を、いまは少し俯瞰で捉えることができるようになったので、ある種、成長できたなと思っています。ーー9曲目「ONE CHANCE」は下野さんとRUCCAさんの共作詞で、憂いを帯びた痛快なサウンドですが、どのような気持ちを歌詞に込めていますか。こちらは、2ndシングルとして出させてもらった楽曲ですね。1stシングル「リアル-REAL-」の続きといいますか、繋がりがある楽曲で、殻を破り、自分を信じて突き進んでいけ! という思いを表現した「リアル-REAL-」から一転。この「ONE CHANCE」では、その先でたとえつまずき、何度倒れようともチャンスは必ずある、あがけるだけあがけ! という思いで作った楽曲です。ーー10曲目「アトサキ」は、別れた恋人を思うミディアムテンポのバラードですね。下野さんが作詞を、高橋諒さんと共作曲されていますが、これは実体験でしょうか。曲作りのときは、何を参考にして作っていますか。また、歌うときは曲の世界にどう入っていかれますか。フルアルバムということで、せっかくなら自分で作詞作曲した楽曲を入れたいという思いから、高橋さんにご協力いただき、作らせていただきました。実体験ではないですが、2人が出会ってから別れまで、そしていまがあり、この先がある。この時間軸をひとつの線に見立てて未来を見据えた、前向きな大人の恋愛ソングを作らせていただきました。失恋の曲ではありますが、彼女に対する前向きな思いを歌った楽曲です。ーー今回のアルバムコンセプトは“MODS”ということで、ロンドンでトラックダウンをされ、撮影されたジャケットやミュージックビデオをご覧になっていかがですか。また、ロンドンでのエピソードがあれば教えてください。楽曲も、ミュージックビデオも、素敵な仕上がりでしたね。ジャケット撮影やミュージックビデオ撮影をロンドンでやっただけでもスゴいことなのに、まさかトラックダウンもやらせていただけるとは、ただただ感動ばかりでした。なので、話したいことは山ほどあります。弾丸撮影旅行ではありましたが、修学旅行のように、みんなでワイワイ楽しみながらの3泊5日のロンドンでした!いつかライブでみなさんと一緒に盛り上がりたいーー現在、全世界的にコロナ禍となっておりますが、下野さんは「おうち時間」をどのように過ごしていますか。いまハマっているものは。自粛期間は、ちょこちょことひとりでやる仕事もあったので、長期間家にいるというわけではなかったのですが、それでも料理や部屋の片付け、積んでいたゲームなどをやっていましたね。とくに料理をしていた影響で、鳥ササミを調理しては食べていましたし、積んでいたゲームもクリアできて、いまは『ファイナルファンタジーV』などの懐かしいゲームをやったりしています。ーー下野さんは、8年連続で“ベストカラアゲニスト”を受賞された「唐揚げ」や、大泉洋さんらが出演しているHTB北海道テレビのバラエティ番組『水曜どうでしょう』がお好きということで、どのくらいお好きなのでしょう。大泉さんらと実際に交流はありますか。どのくらいと聞かれると困りますが、どちらもかなり好きなほうではないでしょうか。唐揚げは、僕のファンのみなさんなら好物だということはご存知でしょうし、『水曜どうでしょう』に関しては、ラジオなどのフリートークのしゃべり方や、ロケ収録などにとても影響を受けていて、真似していたぐらい好きなんです。出演者の大泉さんや鈴井貴之さんにお会いしたことはありませんが、ディレクターでありながら出演もしている藤村忠寿さんや嬉野雅道さんとは、仕事や飲みなどでご一緒させていただきました!ーーお好きなものということでいえば、下野さんが素敵だなと思う女性も教えてください。メガネをかけている女性は、素敵ですよね。昔から、かなりのメガネ好きなんです(笑)。あとは、まわりに気配りや気遣いをしつつも、自分の意見をちゃんと持ちつつ、ハッキリと言える女性。まわりに目を向けるだけでもなく、自分だけに関心を持つわけでもなく、だけど芯はしっかりしているという女性は、本当に素敵ですね。ーー下野さんの声優としての、そしてアーティストとしての、今後の抱負をお聞かせください。いまは「ライブでみなさんと一緒に盛り上がりたい」というのが、アーティストとしての抱負です。声優としては、もっといろいろなことに挑戦させていただきつつ、またみなさんとイベントで会えたらうれしいですね。どんなかたちであれ、みんなで大盛り上がりできる日が来ることを、いまから楽しみにしています!取材後記アニメはもちろん、ナレーションや吹き替えなど、さまざまなかたちで私たちの耳に心地よい声を届けてくれる、下野紘さん。昨今の作品ですと、わが家では『鬼滅の刃』などを子どもと一緒に楽しませていただいています。そんな下野さんがソロシンガーとして発表される、アーティストとしての1stフルアルバムをまずはチェックしてみてくださいね。下野 紘 PROFILE4月21日、東京都生まれ。声優としては、2001年、ゲーム『リリーのアトリエ〜ザールブルグの錬金術士3〜』のテオ・モーンマイヤー役でデビュー。2002年、テレビアニメ『ラーゼフォン』の神名綾人役で初主演を果たす。以降、『うたのプリンスさまっ』シリーズの来栖翔役、『進撃の巨人』のコニー・スプリンガー役、『鬼滅の刃』の我妻善逸役ほか、アニメを中心に、ゲームや吹き替え、ナレーション、ラジオなどに数多く出演し、実写映画『クロノス・ジョウンターの伝説』(2019年)で初主演を務めるなど、多彩な活動を展開。今後も数々の作品が決定している。歌手としては、2016年、声優デビュー15周年を記念したソロシンガープロジェクトを始動。1stシングル「リアル -REAL-」で歌手デビュー。これまでに限定シングルを含めた5枚のシングル、1枚のミニアルバム、3枚の映像作品を発表。2020年8月19日、1stアルバム『WE GO!』をリリースする。InformationNew Release『WE GO!』(収録曲)01. Departure02. Survive03. WE GO! -On Your Mark-04. リアル-REAL2020-(Re-Recording)05. Running High06. Because You Are07. Viva The Life08. Change+ing(Album Version)09. ONE CHANCE10. アトサキ11. I’m Home12. Soul Flag2020年8月19日発売*CD収録曲は通常盤・初回限定盤・きゃにめ限定盤共通。(通常盤)PCCG.01873¥3,000(税別)*CD ONLY。封入:特製ブックレット。(初回限定盤)PCCG.01872¥4,000(税別)*CD+DVD。仕様:三方背BOX、特製ブックレット、フォトブック付。*映像特典:「WE GO! -On Your Mark-」MV、「WE GO! -On Your Mark- 」MVメイキング ショートバージョン。(きゃにめ限定盤)SCCG.00046¥4,500(税別)*CD+DVD。仕様:三方背BOX、特製ブックレット、フォトブック付 。*映像特典:「WE GO! -On Your Mark-」MV、「WE GO! -On Your Mark-」MVスペシャルメイキング。
2020年08月17日【音楽通信】第43回目は、日本を代表するシンガーソングライター、山下達郎さんの初めてのライブ映像配信のレポートをお届けします!写真・濵田志野(京都『拾得』)、菊地英二(氣志團万博2017) 取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol.43ライブ配信は京都のアコースティックセットからこれまで数々の名曲を生み出してきた、日本を代表するシンガーソングライターの山下達郎が、7月30日に『TATSURO YAMASHITA SUPER STREAMING』と題したライブ映像を、高音質の動画配信サービス『MUSIC/SLASH』のこけら落としとして配信した。ロックバンドのシュガー・ベイブとしてデビューした1975年以降、1976年12月のソロ活動からも、2012年に劇場公開されて伝説となった『山下達郎シアター・ライヴ PERFORMANCE 1984-2012』以外、これまでに山下の映像作品が発売されたことはない。今回のライブ映像の配信は、山下にとって、キャリア初の試みとなった。また、ファンにとっても“動く山下達郎”を自宅で視聴できることは、画期的な出来事。コロナ禍で先の見えない状況を過ごす人々が多いなか、山下のツアーも延期や中止となり、今回のライブ映像配信で元気づけられた人は多いだろう。ライブは、2018年3月17日に行われた、京都のライブハウス『拾得』の映像からスタート。ボーカルとアコースティックギターを務める山下と、ベースの伊藤広規、キーボードの難波弘之の3人編成。ファンにとってはおなじみのこの3人による、アコースティックセットでの演奏だ。1曲目は、1991年に発売された楽曲「ターナーの汽罐車」から。まっすぐに聴き手の胸に届く、揺るぎないボーカルの力は、会場のみならず、視聴している画面の前のオーディエンスをも撃ち抜いていく。続き、1982年発表で同名ドラマの主題歌でもある「あまく危険な香り」をしっとりと聴かせ、2010年発表で下を向く気持ちをそっと励ましてくれるバラード「希望という名の光」、小気味良いサウンドで軽やかなボーカルを聴かせるカバー曲「WHAT’S GOING ON」などを披露した。氣志團万博での圧巻のステージ&34年前の映像もそして、2017年9月17日に千葉県の袖ケ浦海浜公園で開催されたロックフェスティバル “氣志團万博2017”のライブ映像では、なんと山下が登場した40分のステージをノーカットで配信した。まずは会場に「山下達郎 紹介VTR」が流れ、主催者である氣志團の綾小路翔が、山下のことを「日本の音楽を変えた人」と話し、「神すぎて」と絶賛する映像が大型モニターに映し出される。そう紹介された山下の登場をいまかいまかと待つオーディエンスの前にバンドメンバーが現れ、大歓声のなか、最後に山下が登場。場内を見渡しながら、「山下達郎です、よろしく!」と、きりりとした表情で挨拶し、おおいに沸き立つ。1曲目は、山下が作曲を担当し、近藤真彦に提供した1982年の楽曲「ハイティーン・ブギ」。きっと会場にいた誰もが予想外だった選曲からスタートし、同じく1982年の爽快でグルーヴィンな「SPARKLE」では、卓越したギターカッティングも披露。さらに、1997年にKinKi Kidsのデビュー曲として作曲した「硝子の少年」を艶やかに歌い、続く1992年のアップテンポな「アトムの子」では、間奏で「アンパンマンのマーチ」のフレーズを挟みながら熱唱。そんな山下のバックコーラスに目をやると、妻の竹内まりやが参戦している。大型モニターにも竹内の姿が映し出され、盛り上がるオーディエンス。その後、山下が作曲しアン・ルイスに提供した1979年の「恋のブギ・ウギ・トレイン」で、山下はまたもや神業ともいえるギターカッティングほか、圧巻のパフォーマンスを見せる。この曲までは竹内もバックコーラスを務めて夫婦の絆を垣間見せた後、出演者全員で手を繋ぎ、客席へとお辞儀。最後は、山下がハンドマイクで1991年の「さよなら夏の日」を歌い、ステージ上を動きながら、すべての人たちの心へその澄んだ歌声を染み渡らせた。ここまででも十分貴重なライブ映像なのだが、ここからはまさかの1986年のお宝映像を配信。真っ赤なシャツにネクタイ、ジーンズ姿の山下が2曲を披露。何よりも驚いたのは、34年前のライブ映像だというのに、山下のキーも声量もスタイルもいまもまったく色褪せず、変わらない力強さがあるということ。たとえ何年経っても、山下が人々の心を惹きつけて離さない理由がわかった、なんとも贅沢な夜だった。取材後記心に響く数々の名曲を生み出している山下達郎さん。ストイックにご自身の音楽の道を突き進み、時代が移り変わろうとも、けっしてブレないその姿勢、たゆまぬ努力、そして並外れた才能に脱帽するばかりです。表現者として、これからもきっとわたしたちに素敵な音楽を届けてくれるでしょう。山下さんの貴重なライブ映像を堪能させていただきました。セットリストOPENING京都のライブハウス「拾得」より(2018年3月17日のライブ映像)01.ターナーの汽罐車02.あまく危険な香り03.砂の女04.希望という名の光05.SINCE I FEEL FOR YOU06.WHAT’S GOING ON氣志團万博2017より(2017年9月17日のライブ映像)07.ハイティーン・ブギ08.SPARKLE09.BOMBER10.硝子の少年11.アトムの子12.恋のブギ・ウギ・トレイン13.さよなら夏の日「PERFORMANCE 1986」ツアー郡山市民文化センターより(1986年10月9日のライブ映像)14.SO MUCH IN LOVE中野サンプラザホールより(1986年7月31日のライブ映像)15.プラスティック・ラブCLOSING(THAT’S MY DESIRE)Information
2020年07月31日1児のママでもあるライター・かわむらあみりがお届けするコラム【ママライフばんざい!】連載第17回は、育児をしていると避けて通れない、ママ同士のコミュニケーションの場についてご紹介。漫画やドラマの話ではない、本当に体験した疲れるママの特徴を3つお届けします。1. グループを仕切りたがるボスママ【ママライフばんざい!】vol. 17それは子どもの検診先で知り合ったママのこと。育児について勉強中だった私は、あるママに「たまには息抜きしよう」と誘われ、ママ友グループのランチ会に参加することにしました。そこには、同世代から年下まで、さまざまなバックボーンを持ったママと子どもがずらり。育児について意見交換をしたり、話したりしていると、そのなかのひとりのママが突然、「じゃ、次はこの話をしよう!」と場を仕切り出しました。そのママは、もともとちょっとヤンチャ系だったということで、自分の意見をズバズバ言って切り込んでいきます。たとえその意見が間違っていたとしても、私を含めその場にいるママたちは、圧のあるその元ヤンチャ系ママに逆らえる雰囲気ではありません。そんな状況ではあるものの、他のママとの交流も持っていたほうがよいのかなとも思い、その後もママ友会があるときは行くか行かないか考えあぐねていました。そのうち、その元ヤンチャ系ママ以外のママとも親しくなり、それぞれお家を行き来する機会がありましたが、ママ会に行くと元ヤンチャ系ママから「ねえ、この前〇〇の家に遊びに行ったんだって?聞いてるよ」と言われました。他のママとの交流も、すべてその元ヤンチャ系ママに「報告」があがっていたのです。そこにいたママたちは、元ヤンチャ系ママを慕っているのか、怯えているのか、なんでも言う通り。元ヤンチャ系ママが場を仕切り、すべてを掌握できるようにされていました。自分も同じように元ヤンチャ系だとシンパシーを感じることができたかもしれませんが、もともとしがらみが苦手な私は、だんだんと息苦しくなり、徐々にフェイドアウトしていったのでした。やっぱり、ママがしんどいと、子どもにもその気持ちが隠しても伝わってしまうもの。心すこやかに育児をするべく、離れてみて、解放感でいっぱいになったのでした。2. 勝手にSNSに人の子どもの写真をアップするママそれはあるとき知り合ったママのこと。30代半ばのそのママは、働くことが大好きだと言っていて、同じワーキングママとして共感し、仲良くなりました。都内には、子どもが遊べるスペースが設けられていたり、ベビーフードを置いていたりする、親子にやさしいカフェが増えてきていて、そういった場所にお互いのママ友を連れて行くことも。子どもたちも無邪気に遊んでいて、ママたちもいろいろな話をしながら、お茶をすることが楽しかったのです。何度かお茶をした後、今度はお家でご飯を食べようということになり、予定を考えていたある日。フェイスブックに、その30代半ばのママが、知り合いかもと表示されました。あのママだなと思って見てみると、なんと私も一緒に写っている、ママや子どもたちの集合写真がアップされているではありませんか。それもママたちだけならまだしも、みんな子どもの顔もハッキリくっきりと写っている親子の写真が、どーんと目に飛び込んできました。いまでは保育園でも、「勝手に園内で写真を撮らない」「SNSでアップしない」など、個人のプライバシーへの配慮が定められていることが当たり前ですが、なんの許可もなく、勝手に写真をアップされていて大変驚きました。別の友人と「もう大人なんだし、こういうときは相手に聞くよね」という話をしていたら、あるママが「10代、20代だったら無許可で写真を掲載してもスタンプで顔を隠したり、上手に加工するかもしれないけど、30代のママだから逆に無知だったんじゃない」と言われ、納得。いや、もちろん、SNSを駆使している30代のママもたくさんいますし、きちんと写真掲載について連絡をくれるママのほうが多いはず。ですが、時々こういったタイプのママにも遭遇してしまうので、怖いなあと思ったのでした。3. 派閥を組んでボスママの顔色をうかがうママそれは子どもを遊ばせようと、近所の児童館へ行ったときのこと。その児童館には、毎日子どもを遊ばせに来ている親子や、たまに来ている親子など、いろいろなご家庭の方が来ていました。私はたまに顔を出していのですが、あるとき、「最近この街に引っ越してきたんです」というママとお子さんがいました。その次に児童館に行くと、またその引っ越したばかりと言っていた親子がいて、まだこの街に慣れていないのではと気になったので話しかけ、「困ったことがあったら言ってくださいね」「時間があったらお茶でも行きましょうね」という会話がありました。その日はそのまま帰宅し、またしばらく経ったときに児童館に行ったところ、今度はそのママから声をかけてきました。何かと思って話を聞くと、「お茶に行こうという話が出てたんですけど、〇〇さんにグループに入れていいかを確認してみたら、いまはグループの人数が増えすぎちゃって入れないみたいなんですぅ」とのこと。グループ? 〇〇さん?と、初耳だらけの話をするそのママの話をずっと聞いていたら、どうやらその児童館ではママ友グループの派閥が存在。児童館に来るようになってすぐ、そのママはあるママ友グループに入れられ、個人で行動することは控えて、自分に関することはすべてボスママのジャッジをあおいでいました。そもそもしがらみが苦手なので派閥があるだけでもゲッソリするのに、頼んでもいないし入りたくもないママ友グループに、知らないうちに入会希望ということになっていて人が多いと言われるなんて、まったくもって意味不明……。うーん、なんだか、疲れるかもしれない。そう思い、なんとなく児童館からは足が遠のいていったのでした。育児をしていると、さまざまなタイプのママに会うことがありますが、いつかママになる人もいままさに育児中の人も、自分らしくのびのびとしたママライフが過ごせるよう祈っています!©lisegagne/Gettyimages©YakobchukOlena/Gettyimages©monkeybusinessimages/Gettyimages
2020年07月24日【音楽通信】第42回目は、男女混合パフォーマンスグループ「AAA(トリプル・エー)」のメインボーカル、宇野実彩子さんの初“オンライン誕生日ライブ”のレポートをお届けします!取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol. 42趣向を凝らしたトーク&ライブで構成された生配信「AAA」の宇野実彩子が、自身の34歳の誕生日となる7月16日に、誕生日ライブ「“MISAKO UNO “ birthday party & live session ~いくつになっても離れていてもお祝いしてほしいの~」を動画配信プラットフォーム「OPENREC.tv」より、生配信した。午後9時からは表題と同じ「“MISAKO UNO” birthday party & live session ~いくつになっても離れていてもお祝いしてほしいの~”」をトーク&ライブで、午後11時前からは「2部」を「“MISAKO UNO” after party ~だってまだ足りないの~」と題して、ゲストを交えながらのトークを配信。1部がスタートすると、華やかなバルーンやカラフルなクッションがレイアウトされ、ゆったりとしたソファに座りながら進行できるように設定された部屋に、ドレスアップした宇野が登場した。配信ライブならではといえる、ファンからの「おめでとう」メッセージがコメント欄に盛んに飛び交って、すぐさまお祝いムードは満点に。宇野は「私の初のオンライン誕生日パーティに参加してくれて、本当にありがとうございます!」と、ファンに感謝を述べる。本来なら、ツアーの東京公演の予定だったこの日。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、全公演が開催自粛で延期となっていたところに、今回の誕生日ライブ配信が決定し、宇野もファンも喜びもひとしおの様子。トークを行うなか、“宇野ちゃんからのバースデープレゼント”という、3つの報告があった。1つめは、「ソロとしてのオフィシャルサロンを開始しまーす!」と発表された、『MISAKO UNO Inc.』の創立。2つめは、「YouTubeチャンネルを開設しまーす!」と、『MISAKO UNO OFFICIAL』の開設を公表。3つめは、延期になっていた全公演の代替公演となるホールツアーを2021年1月29日(金)の東京公演を皮切りに、全15公演予定していることを公表した。そんなうれしい報告に沸くファンたち。続く“宇野ちゃん! お願いこれやって”という、事前にやってほしいことを募ったという企画コーナーへと進んでいくと、全力でリクエストに応える宇野の姿に盛り上がる。すると、クローシュがのせられたテーブルが運ばれ、蓋を開けると、赤いボタンが。恐る恐るボタンを押すと、幼い女の子からのメッセージが流れる。宇野いわく、前から「大きくなったらみーちゃん(宇野)のために働いてあげるから、ずっと一緒に暮らして」とお願いされている、姪っ子の声だった。サプライズに喜ぶ宇野だが、ひとつ困ったこととして「結婚しないで」と言われているそうで、「結婚はさせてくれ!」と頼む場面も。この後、ライブコーナーに移るため、準備に入る宇野。その間、視聴者には、配信直前の新曲「Stand UP!」のミュージックビデオが公開された。さらに、オリジナルの「Stand UP! Tシャツ」の作り方動画も紹介。「新しいかたちでみなさんとつながれてうれしい」続いては、待望のライブコーナーへ。「みなさん、お待たせしましたー!」と、黒のベアトップとパンツスタイルに髪をアップにして、バンドメンバーと一緒に、アコースティックギターを抱えて現れた宇野。「すごく“ドキンちゃん”です! 心臓がどっかいっちゃった」と、生配信でのライブセッションに少々緊張気味のなか、ライブがスタート。1曲目は、カントリー調の「マイフレンド」を披露。歌い終わると、途中で歌詞を忘れ即興で作詞して歌ったという裏話を話しながらも、「こうやってまた新しいかたちで、みなさんと繋がっていられるのは、うれしいですね」としみじみ。「3月、4月、5月といろいろな気持ちになりました」と、ひとりで苦しかった時間を超えて、この日を迎えたことの幸せを実感しているようだった。2曲目は、ソロで歌うのは初めてだという、AAAの曲から「Love」。ラップも歌いながらも、ミディアムバラードでしっとりと聴かせる。歌い終わるとファンのコメントを確認し、「改めていい曲!」というメッセージに同意し、「練習していて何回も泣きそうになった」と告白。次はガラリと雰囲気を変え、「ここからはあったまりたい! クラップしたい」と煽る。3曲目はAAAの曲から、「Day by day」をのびやかな高音で、軽やかに歌唱。「とびきりの誕生日になりました!」と感謝し、「集まっていただいているので、未発表の新曲を持ってきました!」と、4曲目「きみとぼく」を歌い、ライブコーナーを締め括った。古坂大魔王との絶妙なクロストークも披露2部では、1部のトーク終わりで紹介していたオリジナル「Stand UP! Tシャツ」と、白のチュールスカート姿で現れた宇野。ここからはアフターパーティということで、宇野が18歳のときから知り合いだという、古坂大魔王が特別ゲストとして登場。お笑い芸人、アーティスト、クリエーターなどマルチに活躍する古坂だけあって、鋭いトークがビシバシ飛ぶなかに、笑いのエッセンスが随所にちりばめられる。古坂は、バカラのクリスタルで作られた、折り紙の動物モチーフのオーナメントを宇野にプレゼント。本当は「10万円分の生肉か、コレか迷った」と激白し、笑いを誘った。軽快にクロストークが進むなか、実は宇野が33歳最後の日に、財布をなくして大騒動だったことを話す。最終的には、冷蔵庫の野菜室に、リンゴと一緒にうっかり財布を入れていたという仰天エピソードを披露し、意外な一面をのぞかせた。そして宇野の誕生日翌日となる7月17日に、47歳の誕生日を迎えるという、古坂。宇野からも古坂に、カシウエアのペアスリッパをプレゼントする。続いては、「幸せだと感じる瞬間は?」「うちの家族自慢」など、トークテーマに沿って、続々とふたりのエピソードを紹介していく。笑いを交えて話す古坂に、容赦なくツッコンでいく宇野。長年の信頼関係があるふたりだからか、その掛け合いを観ていると、ほっこりした気分になった。生配信もあと5分を切るというところで、クローシュがのせられたテーブルが運ばれ、蓋を開けると、プリンが。古坂の誕生日を祝った後、駆け足でオンラインライブを振り返る。時計が深夜0時を過ぎ、また何かやろうと意見が合致するふたり。最後に「みなさん、こんな時間まで本当に、本日はありがとうございました! 34歳の宇野実彩子も、よろしくお願いします!」と、初のオンライン誕生日ライブを笑顔で終えたのだった。取材後記アーティストとしてはもちろん、メイクやファッション、スタイルまで支持の厚い、宇野実彩子さん。その力強いボーカルで私たちの心を響かせたり、古坂さんとのやりとりで見せたようなコミカルさでほのぼのとした気持ちにさせてくれたりと、色とりどりの魅力を発揮しています。34歳からの宇野さんのご活躍も目が離せませんね。セットリスト01.マイフレンド02.Love03.Day by day04.きみとぼくInformation
2020年07月21日【音楽通信】第41回目に登場するのは、センセーショナルなアイドルグループを輩出している音楽事務所WACKから放たれた、個性あふれる5人組アイドルグループ・GO TO THE BEDS(ゴートゥーザベッツ)!写真・角戸菜摘 取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol. 41GANG PARADEからGO TO THE BEDSへ写真左からユイ・ガ・ドクソン、キャン・GP・マイカ。“アイドル”というカテゴリーで勝負しながらも、ロックやパンクの要素も強い楽曲や強烈なパフォーマンスで人々を釘付けにするグループが多数在籍し、人気の高いBiSHなども所属する音楽事務所、WACK。そこからまた、新しいグループ「GO TO THE BEDS」が誕生しました。もとは2014年に結成された「プラニメ」が前身ユニットで、その後改名やメンバーの増減を経て「GANG PARADE」というグループに昇華。その後順調に活動をしていましたが、2020年3月、事務所代表でプロデューサーの渡辺淳之介さんが、WACKのなかで最もキャリアの長いグループ「GANG PARADE」を「GO TO THE BEDS」と「PARADISES」という、コンセプトの違う2つのグループにわけました。GO TO THE BEDSは、ヤママチミキさん、ユメノユアさん、キャン・GP・マイカさん、ココ・パーティン・ココさん、ユイ・ガ・ドクソンさんの5人で構成されたアイドルグループで、4月にはPARADISESとのスプリットアルバム『G/P』をリリース。そんなGO TO THE BEDSが、7月22日に1stフルアルバム『GO TO THE BEDS』をリリースするということで、グループからキャン・GP・マイカさん、ユイ・ガ・ドクソンさんのおふたりに登場していただき、お話をうかがいました。キャン・GP・マイカ。10月6日生まれ。2016年10月2日にGANG PARADEに加入。ーーまずはおひとりずつ、自己紹介をお願いします。キャン・GP・マイカ(以下、マイカ)グループの振り付けを担当しています。美容やダイエットについて調べたり実践したりすることが大好きで、最近はスムージー作りにハマっています。ユイ・ガ・ドクソン(以下、ドクソン)好きなものはラーメンで、ラーメンを早く食べることが得意なんです。最近は自転車に乗ることにハマっています。ユイ・ガ・ドクソン。10月21日生まれ。2016年10月6日にGANG PARADEに加入。ーーマイカさんとドクソンさんは、2016年にGANG PARADEに加入しています。2020年の現在はGO TO THE BEDSとなったおふたりですが、精神的支柱だったメンバー、カミヤサキさんが5月に脱退されてどう思われましたか。マイカ 私にとって、サキちゃんは、生みの親のような存在だったんです。サキちゃんがいなかったらこのグループにも入っていなかったので、やめると聞いて最初はびっくりしましたし、焦りもありました。でも、巣立った子どものような気分で「もっと強くなろう」と、あらためて思いましたね。ドクソン サキちゃんはグループの始まりの人だから、祖先のような感じだと思っていたので、脱退はびっくりしました。ーーそんななかで、GO TO THE BEDSとして活動していくことについては、どう感じましたか。ドクソン 正直なところ、思いがけないことでしたね。マイカ びっくりしましたが、クビじゃなくてよかったと思いました(笑)。まだ頑張れる場所があるというのが、救いでしたね。気持ちの切り替えはけっこう早かったです。ドクソン サキちゃんがいなくなって悲しい気持ちもありましたが、これからのグループに対してのワクワクもあったので、それぞれの気持ちが心のなかに同居していました。まさに、カオス。まるで頭の中に“小宇宙”ができる感じでした。マイカ しょう……焼酎?ドクソン 焼酎じゃないわ! 小宇宙(笑)!!アルバムは“This is GO TO THE BEDS”を体現ーー2020年7月22日に、1枚目となるフルアルバム『GO TO THE BEDS』をリリースされます。グループ名を冠したタイトルを含め、アルバムにこめた思いを教えてください。マイカ アルバム1枚を通して、力強いメッセージ性があると思います。今回、メンバーが作詞させてもらっている曲も多くて、いままで以上に自分たちの心の中をさらけ出しているかも。社長の渡辺さんが書いてくださった歌詞もあって、いまの自分たちに響くものが詰まっています。いままでいろんなことがありましたが「こんなところで止まっていられない!」という、強い気持ちがこもっているんです。ドクソン このアルバムは“This is GO TO THE BEDS”を体現した1枚なので、タイトルにもそれが表れているんです。ーー4曲目の「GO TO THE BEDS is my life」はみなさんで作詞されていて、決意表明のような曲だと感じました。ドクソン そうですね。「これが、私たちです」というメッセージをとくにこの曲にはこめています。ーーマイカさんは8曲目「Where are you?」の歌詞を書かれています。どこかセンチメンタルな印象のあるナンバーですね。マイカ 以前1度作詞を採用されて以来、かなり久しぶりにこの曲で、自分の作詞を採用されました。もともと恋愛映画やドラマを観るのが大好きで、動画配信サービスで観ていた「愛の不時着」という悲恋の物語に着想を得て、想像しながら歌詞を書いたんです。まだ自分のなかの引き出しが少ないので、作詞するときに読書するといいとまわりに言われることもあるんですが、本を読むと眠くなってしまうので(笑)。自分の好きなものから取り入れようと思いました。ーー実際に歌ってみて、どうでしたか。マイカ 歌っていても、気持ちが入りましたね。メンバーはサビの部分が大好きだと言ってくれて、うれしかったです。この歌詞は、自分の恋愛に置き換えてもらったり、恋愛じゃなくても身近にいる大切な人を想ったり、人それぞれの気持ちに合わせて聴いてもらえたらいいなと。ーードクソンさんは6曲目「SCREWY DANCER」の歌詞のほか、サウンドプロデューサーの松隈ケンタさんと10曲目「ROOM」の歌詞を共作されています。とがった印象の6曲目と柔らかい印象の10曲目と、サウンド的にも対照的ですがご自身ではこの2曲の印象はいかがですか。ドクソン 「SCREWY DANCER」は、もともと音楽がすごくかっこよくて、聴いたときに初めて頭のなかに映画のように映像が流れたので、それを歌詞にしました。歌詞の世界観については、救いがないんです(笑)。生きづらい世界だけど、逃げてもいいんじゃないかって、睨みながら生きるという曲になっています。「ROOM」は、もともと松隈さんが書いた歌詞で曲ができていて、それを聴いたときに、すごく良くて。そこに自分の言葉を足して作詞してみました。このアルバム全体に共通しているテーマで、最初はすごく苦しんでいるのですが、そのなかで希望を見つけて、それでも生きていくというイメージ。曲によってカラーは違うのですが、とくにこの「ROOM」はそういう、苦しいけれど、未来は楽しみでもあるという気持ちで書きました。ーー睨むというと、先行配信されていたアルバムの収録曲「I don’t say sentiment」のミュージックビデオを拝見すると、けっこうダークでパンキッシュな印象でした。ドクソン そうですね、地獄のような燃え盛る炎のなかで撮影した、ダークな世界観です。マイカ ミュージックビデオでは頭のネジが3、4本はずれた感じで、振り切ってパフォーマンスしています(笑)。久しぶりに広い場所で動きましたね。まるで演出のように雨が降ってきて、とても気持ちよく撮影できました。ーー今回の撮影でも着ていらっしゃるお衣装は、アーティスト写真では卒塔婆と一緒に写っていますが、どのようなコンセプトなのでしょうか。マイカ 墓場から出てくるという、ゾンビ林のような感じで……。ドクソン ゾンビ林って、何(笑)!?マイカ ゾンビがたくさんいるような林(笑)。卒塔婆には「呉音遠座別怒(GO TO THE BEDS)」と書いてあったり、骨がモチーフになっていたりしていて、全部がダーク。墓から這い上がってくるというイメージがあって、復活を試みている人という感じで、それはグループのスタンスにも、全部にリンクしています。ドクソン 「早く墓に入れよ!」という状況ですが、「意地でも入らない!」と(笑)。“意地”というテーマがありますね。「知らないわけない」と言われる存在になりたいーーいまは自粛や制限が解除されたものの、新しい生活様式で行動する時期となりましたが、普段はおふたりで出かけることはありましたか。ドクソン ふたりではあんまりないかな。マイカ このふたりに、メンバーのココ・パーティン・ココが入って、3人で行動することが多かったですね。ドクソン 3人でご飯を食べたりします。マイカ この3人は事務所に入った時期がほぼ同じという同期メンバーなので、一緒にいることが多いんです。ドクソン メンバー全員でいることも多いですよ。自粛期間中は外出しないので、みんなでZOOMで話したりしています。ーーZOOMではどんなお話をされるんですか。マイカ 会っていないと、「今日は何時に起きて、何を食べた」というくだらない話から会話が始まるので、すごく話が長くなるんです(笑)。最初はグループのことについて話をしたくてZOOMをつなぐんですが、2、3時間は世間話をしてしまって、本題になかなか入れない。ドクソン 「これを話そう」と思っていたことを話し終える頃には、すでに3時間ぐらい経っているんです(笑)。ーーみなさんの仲の良い様子が伝わってきますね。ところで、おふたりはメイクやダイエットなどで気をつけていることはありますか。マイカ 朝は白湯を飲んでいますね。お風呂に入るときは、浴室にルームスプレーをシュッとしてから、いい匂いに包まれながらお湯に浸かることもあります。ドクソン お湯に浸かりながらお茶を飲んでるよね?マイカ ハーブティーを飲んでる。ほかには自粛期間にヨガマットを買ったので、おうちで筋トレもしています。ライブができるようになったときに、体力がついていないとよくないので、おうちで鍛えて、体を絞っているんです。メイクは、大好きな田中みな実さんが使っているものを自分でも使ったり、バズっているものを一通り買ったりしていますね。ーー田中みな実さんの好きなところは。マイカ あざとくてかわいいところ(笑)。ずっとかわいいんですが、“いまが一番かわいい”んです。ずっとかわいいを更新しているところは、女性として見習いたいですね。だって、「前のほうがかわいかったよね」とは言われたくないから、常に「いまが一番かわいいよね」と言われたくて(笑)。ーードクソンさんはラーメンがお好きですが、ダイエットなど美容面で気にしていることは。マイカ 本当、太らないよね?ドクソン うん。でも、すごく食べるので、運動するように意識はしています。自粛が明けてからは、たまにランニングをすることも。以前はダイエットしていた時期もあって、やるとなったらとことんこだわってやる、ストイックな生活でした。ただ、ダイエットするとやせはしますが、疲れるというか。だから、いまはそれほど気にしません。食べたいものを食べてのびのび生活するほうが幸せ。そのほうが太らない気がします。美容面では、あまり気にしたことがないですね。普段は化粧を落とさないことが多くて、でもそのおかげで、肌が鍛えられています。あえて負担をかけて、基礎力を上げているんです(笑)。体のほうも、ジャンクフードばっかり食べていますが、病気も一切しないですし。ーーきっと代謝がすごくいいのかもしれませんね。ドクソン そうなんですかね。体に悪いことをして悪いものを食べて、基礎力をあげることに成功しました(笑)。グループのなかで私が1番健康だと思います。ーーでは、おふたりが 1番好きな人、憧れの人を教えてください。マイカ ひとりだけとなると、1番は土屋アンナさんですね。小学生のときに「東京ガールズコレクション」にモデルとして出演されているアンナさんを見て、ビビビときたんです。そこからアンナさんのことを調べていったら、モデルも演技も歌もされているオールマイティな活動や生き方に感銘を受けて。もともと幼稚園のときからアイドルになりたいとは思っていたんですが、アンナさんの存在が、本格的に芸能の世界でがんばりたいと思うようになったきっかけだったから。ドクソン ひとりに絞るのは難しいですが、筋肉少女帯の大槻ケンヂさんですかね。ほかにもいる好きなアーティストの人たちにも共通しているんですが、何もなかったところから何かを生み出している方が好きなんです。大槻ケンヂさんはそれをいくつも成し遂げていらっしゃいますし、ライブにもよく行っていたんですが、すごく楽しい。MCも多くて、それも全部面白くて、楽しい。もう尊敬するところしかないです。ーー筋少のライブからご自身のパフォーマンスに影響を受けているところはありますか。ドクソン コール&レスポンスの楽しさをお客さんとして味わったのは、大きいですね。ライブではお決まりの、これを言ったらこう返すという、お客さんとのふれあい。ライブに行っても、最初はよくわからなくて聴いているだけだったのが、回を重ねるごとにコール&レスポンスが自然とできるようになって、人の気持ちをうれしくさせることができるのは、すごいと思います。ーーでは、GO TO THE BEDSさんとしての今後の目標を教えてください。マイカ 私たちは、ライブがカッコいいグループになりたいと思っています。そして、いままで活動してきたことを着実に超えていきたいです。「GO TO THE BEDSが好きだったらカッコいい」という、そういう流行り方をしてほしい。「GO TO THE BEDS、知らないわけないよね」とみなさんに言われるくらいの存在になりたいですね(笑)。ドクソン 「I don’t say sentiment」のミュージックビデオでもそうだったんですが、あの設定では起きたら地獄で、地獄を抜けた先もまた地獄だったという世界なんですが、最近そのことを考えていて。ミュージックビデオに限らず、どんなに幸せそうに見える人でも、それぞれの尺度でたぶん誰でも何かしらの地獄を感じることがあるんじゃないかと。そんな地獄を乗り越えるためのささやかな存在になれるよう、これからも活動していければと思っています。取材後記個性の違うキャン・GP・マイカさん、ユイ・ガ・ドクソンさんのおふたりに、自粛は解除されましたがさまざまなことに配慮しながら、取材させていただきました。時折見せる無邪気な表情がキュートなおふたりのいる、GO TO THE BEDSさんの1stアルバムをまずはチェックしてみてくださいね。GO TO THE BEDS PROFILEヤママチミキ、ユメノユア、キャン・GP・マイカ、ココ・パーティン・ココ、ユイ・ガ・ドクソンの5人からなるアイドルグループ。2020年3月、所属する音楽事務所WACKが主催する所属アーティストエキシビジョン「WACK EXHiBiTiON」で、事務所代表の渡辺淳之介より「GANG PARADE」を「GO TO THE BEDS」と「PARADISES」の2つのグループにわけた形での結成がアナウンスされた。4月1日、PARADISESとのスプリットアルバム『G/P』をリリース。7月22日、1stフルアルバム『GO TO THE BEDS』をリリース。InformationNew Release『GO TO THE BEDS』(収録曲)01.行かなくちゃ?02. I don′t say sentiment03. Don′t go to the bed04. GO TO THE BEDS is my life05. パッパラパー06. SCREWY DANCER07. MISSING08. Where are you?09. EGOIST10. ROOM11. GROOVE12. VILLAIN2020年7月22日発売WPCL-132223000円(税別)
2020年07月17日【音楽通信】第40回目に登場するのは、愛にあふれるパワフルなボーカルで、いつも聴き手をハッピーにさせてくれる、AIさん!取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol. 40毎日を精一杯過ごしていたら20年経っていた2000年11月にシングル「Cry,just Cry」でデビューされてから、20周年イヤーを迎えている、シンガーソングライターのAIさん。アメリカで生まれ、鹿児島で育ったAIさんは、そのワールドワイドな感性と確かな実力で、国境をボーダレスに飛び越えて大活躍。また、「Story」「ハピネス」「みんながみんな英雄」などの大ヒット曲を世に送り出し、これまでに3度のNHK紅白歌合戦出場、第59回日本レコード大賞・優秀作品賞を受賞するなど、AIさんの歌声は私たちの心に着実に届いています。そんなAIさんが、2020年7月8日に、アニバーサリーミニアルバム『IT’S ALL ME –Vol.1』をリリースされるということで、お話をうかがいました。ーーデビュー20周年ですが、これまでを振り返ってみていかがですか。この20年はいろいろなことがありました。デビューした頃は自信に満ちあふれていたのですが、なかなか売れなかったり、ライブにお客さんが来てくれなかったりといったところから、ちょっとずつやってきた感じがあります。ーー徐々にアーティスト活動に手応えを感じたのはどのようなときでしょうか。ライブにお客さんが来てくれるようになって、そこから手紙をいただけるようになったときですね。「え! 私に手紙をくれるの!? これがファンレターだ!」と、すごくびっくりしました(笑)。でも、とてもうれしかったですね。ライブのあとに待っていてくれる人もいて、「サインください」と言ってくれて。私、サインないけどなあと思いながら署名して(笑)。なつかしいです。最近は、普通にライブをさせてもらえるようになって、すごくありがたいと思っています。自分としてはこの20年間、毎日をなんとか過ごすので精一杯。それを繰り返していたら、気づくと20年も経っていたという感じですね。ーーこの20年のなかで、安室奈美恵さんやEXILE ATSUSHIさん、The Jacksons、チャカ・カーン、最近では長渕剛さんといったそうそうたる面々とコラボレーションされていますね。いろいろな方がいらっしゃいますが、コラボレーションするたびに、勉強になっています。みなさんに共通しているのは、「自分が本当にリスペクトしている人たち」ということですね。もしその人の曲が趣味じゃなかったら、コラボしていません。自分ではなく、コラボしてきたまわりの人たちがすごい人たちなので、それによって活かされてきた気がするんです。世界中の人々が仲良くなるよう、音楽でつなぎたいーー2020年7月8日に、豪華タイアップ曲や海外アーティストのフィーチャリング曲を収録した、アニバーサリーミニアルバム『IT’S ALL ME –Vol.1』をリリースされます。どのような思いを込めたアルバムですか。もともとこのアルバムを作るときに、東京オリンピックの開催予定があって、世界各国から日本にさまざまな人が来ると思っていました。万が一、外国の方が私の曲を聴いたときでも「ウェルカム!」という気持ちが強くて、世界平和を目指して「人々が仲良くしてほしい、人と人を音楽でつなぎたい」というメッセージを込めて作ったんです。国同士でけんかしたり、トップ同士が争っていたりしますが、私たちは仲悪くなりたくないじゃないですか。アルバムだと、3曲目「kokoro feat.jenn Morel,Joelii」はドミニカ出身の女性ラッパーと、5曲目「You Never Know feat.MJ116」は台湾のヒップホップグループといった海外のアーティストとコラボしていますが、それぞれいろいろなことがあっても、私たちは仲良くなれる。世界に向けて、アジア人でも、白人でも、黒人でも、ヒスパニックでも関係なく、「言葉がわかりあわなくても、心で、音で、通じ合える」と思っていて。こういう曲は、これからもずっと作っていきたいですね。ーー6曲目「僕らを待つ場所」は、映画『AI崩壊』(2020年公開)の主題歌となったバラードです。“AI”崩壊なのに“AI”が歌うというのは、最初はギャグなのかな、どうしようかなと(笑)。映画は人工知能の話でしたが、主題歌は逆に人間味のある音楽にしたいと思いました。ミュージックビデオでも、いつもは感動を避けるのですが、この曲に関しては「泣きたいんです」と監督に言って、ドキュメントのように仕上がりました。レコーディングでもこの曲は感情的になって泣いてしまったので、その感動をみなさんにも味わってほしいなと。泣いてすっきりすることもありますし、そういう曲も必要だと思ったんです。ーー1曲目の「ギフト」は、2020年4月24日に配信された新しい曲ですね。もともとテレビ番組(TBSテレビ『王様のブランチ』のテーマソング)で流れることが決まっていたんですが、テレビはひとりで観ている人もいれば、夫婦で観ている人も、怒っている人も、幸せな人もいろんな人が観ますよね。だから、どんな人が観て、この曲を聴いても、気持ちがすっきりするものにしようと意識して作った曲です。ーーイラストレーターのChocomooさんが手がけた「ギフト」のリリックビデオもあたたかい感じがしました。Chocomooは最高なんですよ。彼女の絵で、パソコン同士がつながっていて、握手をしているイメージのものがあるんですが、コロナ禍で活動を自粛していたり制限していたりするいまの状況にぴったりだと思いましたね。ーー今回、『IT’S ALL ME』の“–Vol.1”ということですが、今後も続くのですね。ほかにもいい曲がいっぱいあるので1枚には収まらないのと、少しメッセージが違ったところもあるので、続いていく感じもいいんじゃないかと。“–Vol.1”も1曲ごとに大事に作っているので、曲数は少ないのですが、そのぶん曲をちゃんと聴いてほしいというメッセージもあります。なるべくポジティブなものを発信したいーーAIさんを拝見していると、こちらまで元気になれるようなパワーやあたたかさを感じます。ご自身では、いつも前向きにいようと心がけていらっしゃるのですか。お客さんや聴いてくれる人の前といった、外に発信するものは、なるべくポジティブなものにしようと意識しています。暗い気持ちは、家族や近い存在の人の前で出せばいいから。もしも外に自分の暗いテンションを出していっても、みんなからしたら関係ないことですよね。大変なのはみんなも一緒なので、メッセージなども前向きなものを心がけています。ーー活動自粛や制限は解除されましたが、現在、AIさんはおうちでどのように過ごしていますか。自粛、制限があったときは、買い物もひとりで行っていましたし、子どもが小さいので一緒に連れていって何かあってはいけないので、外に出ませんでしたね。感染しないようにということもありますが、もしも感染していて気づかずに私や夫が外に出て、たとえばテレビのお仕事で共演者にうつしてしまうようなことがあってもいけないから、いろいろと考えて過ごしています。自粛が解除されてからは、久しぶりに子どもと一緒に公園に遊びに行きました。ーーおうち時間が長くなって、興味を持ち始めたことはありますか。料理をどれだけ楽に作るかですね(笑)。もともと料理をすることが好きで、食材を切るのがストレス発散になるんです。どれだけ正確に野菜が切れるか、どれとどれを混ぜたら、どんな味になるかというゲームみたいだなと(笑)。料理をしているときは自分の時間になるので、楽しいですね。あとはやっぱり、子育てですね。コロナ禍になる以前は、仕事で外出する機会も多く、集中して子育てできないところがあって、自分を正したいと思っていました。いまは1日の流れを見ながら、自分の性格も研究しながら、子どもと過ごしています。以前はベビーシッターさんもいたし、一緒に外出するときは関係者の方に抱っこしてもらったりも。いまのように24時間、何か月も子どもと一緒ということはなかなかなかったので、とてもうれしいですね。ーーそのお気持ちわかります! ところでAIさんはおしゃれなイメージがありますが、普段はメイクなどどうされていますか。普段は全然メイクしないんですよ。この髪の毛も自分で染めました。いまの時期は、美容室に行くのもまだ控えようと思って、とりあえず自分でなんでもやろうと思っているんです。今回のミニアルバムのジャケ写も、全部自分でやりました。服だけ、スタイリストの方に持ってきてもらって着替えて、メイクも自分でして、準備して、撮影現場もカメラマンと私だけだったんです。ーージャケ写でAIさんが抱えているものは何ですか。“煙”なんです。下からワッと煙が出たときに写真を撮って、後から色をつけました。アートディレクターのとんだ林蘭さんからのアイデアです。パッと見たときに何かを抱きしめているイメージでインパクトがあるなと。自分だったら子どもがいるので抱きしめている感じもありますし、それぞれの人にとっての“大事なもの”を抱きしめるというイメージですね。ーー今後の状況にもよるとは思いますが、11月からは全国ツアーの予定がありますね。ツアーはやりたいですけどね、これがどうなるかはわからなくて。もしツアーができるとしたら、20周年ということで昔の曲もやって、ベストツアーのようにしたいです。いまライブハウスだと透明のカーテンで区切っていたりしますが、ホールツアーだとどうやって安全性を保つか。安心して来てもらえるようにして、楽しんでもらいたい。もし開催できたら、感動して大号泣しそうですね(笑)。取材後記AIさんの力強い歌声と笑顔は、私たちを元気にさせてくれるパワーがあります。今回は、Zoomでインタビューさせていただきましたが、ひとつずつ丁寧にご対応してくださいました。アーティストとして、女性として、ママとして、誰もが応援したくなる魅力いっぱいのAIさんのニューミニアルバムを、まずはチェックしてみてくださいね。AI PROFILEアメリカ合衆国ロサンゼルス生まれ。鹿児島県鹿児島市育ち。ゴスペルクワイアーで鍛えた本格的な歌唱力、L.Aアートスクールで学んだダンスのセンス、完璧な英語、バイリンガルでラップもこなせるストリート感覚を持つ。アンダーグラウンドからオーバーグラウンドまで指示を得ている。2000年11月、シングル「Cry,just Cry」でデビュー。2005年5月にリリースしたシングル「Story」が大ヒット。2009年9月、1stベストアルバム『BEST A.I.』はオリコンチャート1位を獲得し、名実ともにトップアーティストの座を確立する。その後も「ハピネス」、「みんながみんな英雄」などの大ヒット曲を世に送り出す。これまでに3度のNHK紅白歌合戦出場、第59回日本レコード大賞・優秀作品賞を受賞。自身の生い立ち、バックボーンである“和”と“洋”の両極を掲げ奏でるのは、予定調和の聴き心地いい楽曲ではなく、新鮮な驚きと純粋な感動を与えるサウンド・メイキング。2019年11月、デビュー20周年イヤーを迎え、20周年記念ベストアルバム『感謝!!!!! – Thank you for 20 years NEW &BEST -』を発表。2020年1月、シングル「僕らを待つ場所」、6月9日に「長渕剛 feat. AI『しゃくなげ色の空』」を配信リリース。7月8日、アニバーサリーミニアルバム『IT’S ALL ME –Vol.1-』を発売。9月から10月に予定していた7公演は中止・延期とし、11月3日から2021年3月14日まで、「AI 20周年記念全国ツアー」を開催予定。InformationNew Release『IT’S ALL ME – Vol.1』(収録曲)01. ギフト02. GOOD AS GOLD03. Kokoro feat. Jenn Morel, Joelii04. Summer Magic – Japanese Version05. You Never Know feat. MJ11606. 僕らを待つ場所2020年7月8日発売*CD収録内容は通常盤・初回限定盤共通(通常盤)UPCH- 20554¥1,600(税別)(初回限定盤)UPCH- 29369(CD+DVD)¥2,000(税別)*初回限定特典ボーナスDVD付き。シングル曲MV+メッセージ&スペシャルメドレー映像。【初回限定盤特典DVD】1.「Summer Magic」Music Video 2.「You Never Know feat. MJ116」Music Video 3.「僕らを待つ場所」Music Video 4.「ギフト」 Lyric Video (feat. Chocomoo)5.AI’s メッセージ&スペシャルメドレー (Stay Home Version)。
2020年07月08日【音楽通信】第39回目に登場するのは、同世代の女性から支持されている、ポップスの王道を走り続ける次世代シンガー、杏沙子(あさこ)さん!取材、文・かわむらあみり【音楽通信】vol.39母の大好きな松田聖子さんの歌が音楽の原点2016年に初めてオリジナル曲「道」を発表し、インディーズ時代からYouTubeで公開しているミュージックビデオの総再生回数が現在1000万回を超え、とくに女性からの人気が高い杏沙子さん。2018年にメジャーデビューしてからも、その共感を呼ぶ歌詞やポップネスな楽曲が注目を集めています。そんな杏沙子さんが、2020年7月8日に2ndアルバム『ノーメイク、ストーリー』をリリースされるということで、お話をうかがいました。ーー2016年から音楽活動をスタートされましたが、音楽の道を選んだきっかけは。鳥取県出身なのですが、鳥取は車社会で、どこへ行くにも車移動でした。その車の中で出会った音楽が、いまのわたしの音楽の原点になっています。母の大好きな松田聖子さんの曲はとくに車の中でよくかかっていて、聖子さんの歌を聴きながら、幼心に「この人はいくつ声を持っているんだろう?」と興味を持ち、「自分もこんなふうに歌いたい」と思ったんです。だから、聖子さんが、音楽の道を進むきっかけとなったアーティストです。家族みんな歌うことが好きだったので、車の中はいつもカラオケボックス状態で、毎日、毎日歌っていましたね。小学生の頃から、歌手になりたいと思っていました。ーーその後、実際に音楽活動をスタートされて、インディーズ時代からYouTubeで公開しているミュージックビデオの総再生回数は現在、1000万回を超えています。なかでも「アップルティー」という曲は再生回数750万回を超えていますが、とくに中高生の女性から支持されているそうですね。「アップルティー」は2作目のミュージックビデオなんですが、当時インディーズ活動をしていた私は、かき集めたバイト代で学校を借りて、友達にノーギャラでエキストラの学生役を頼んで……と、半分遊び感覚でそのミュージックビデオを制作したんです。その結果、まさかこんなにたくさんの方に見てもらえるとは、思ってもいませんでした。とくに中高生に見てもらえているというのは、この曲の歌詞やメロディに詰め込んだ“青春”と、リアルな友達と遊び感覚で作ったからこそ撮ることができた本物の“青春”がばっちりハマって伝わったからかなぁと思います。本物って、理由なく伝わるものなんでしょうね。みんなで制服を着て、みんなでダンスを踊ったあの撮影は、音楽活動と切り離しても、特別な思い出です。ーー2018年7月に、ミニアルバム『花火の魔法』でメジャーデビューされました。もともとデビューを目指していたのですか。デビュー前と後で心境の違いは。メジャーデビューが決まった時は、もちろんうれしかったんですが、背筋が伸びる思いのほうが強かったです。「ちゃんとしなきゃ」というか。良くも悪くも真面目な性格なので、それこそ「アップルティー」のときみたいに、もう遊び感覚じゃいけないなと(笑)。デビュー前後の気持ちの違いは、自分の音楽に、より向き合うようになったことですね。“杏沙子の音楽”ってなんだろう、私は何を歌うべきなんだろうって。自分ではデビュー前後で何かを変えるつもりはなかったし、変わったつもりもなかったのですが、いま考えると、けっこう肩に力が入りすぎていたかもしれない。最近、やっと力が抜けてきた気がします。新作は“すっぴんの気持ち”を歌った物語が満載ーー2020年7月8日に、2ndアルバム『ノーメイク、ストーリー』をリリースされます。どんな思いがこめられたアルバムでしょうか。また、タイトルの意味は。タイトルを日本語にすると「すっぴん」の「物語」です。隠しておきたい感情や、言えなかった言葉、恥ずかしい気持ち、情けない自分。そんな“すっぴんの気持ち”を歌った物語がたっぷり詰まったアルバムです。これまで映画や小説のようにフィクションの物語を歌にすることが好きだったのですが、最近はエッセイのような、よりリアルな温度のあるノンフィクションの物語を歌いたいと思うようになってきました。その温度が高いほど、ひとりよがりな歌になってしまうんじゃないかと以前は思っていたんですが、意外とそうではなく、より「誰かの歌」にもなり得るんだと、気づく瞬間があったんです。今回、思い切ってノーメイクなストーリーを書いたので、「あなたの」ノーメイクなストーリーが1曲でも見つかるとうれしいです。ーー収録曲「見る目ないなぁ」は6月10日から先行配信されていますね。終わりを告げた恋へのやりきれなさが伝わるが曲ですが、実体験なのでしょうか。ミュージックビデオでは、コンビニの袋をぶらさげてお酒を飲みながらトボトボと帰る背中が悲しく印象的でした。はい、実体験をもとにして書いた曲です。この曲が生まれたのはけっこう前のことなのですが、書いた当時はあまりにぶっちゃけた内容すぎるので、自分の中でお蔵入りさせていました(笑)。でも、先ほど言ったように歌いたい、書きたいものが変わってきて、ずっと忘れられずにいたこの曲を引っ張り出してきて、完成させました。とにかくこの曲に合わせたリアルなミュージックビデオにしたくて、「コンビニから家に帰る」というだけのごくシンプルな設定にしました。撮影は、リアル感を出すために、できるだけ何も考えずにたくさん歩いたんです。表情を最後の最後まで見せない演出なんですが、それは「私の物語であると同時に、誰かの物語になったら」という願いを込めて、意図的に顔が見えないように撮影しました。ーー収録曲「クレンジング」の歌詞に出てくる「コーラル色のリップ」や「ラメ入りアイシャドウ」など、こちらにもパッと映像が浮かび、好きな人に会うときにおしゃれしたい恋する女性の姿が伝わってきます。歌詞を書かれる際、情景なども意識しているのですか。「クレンジング」も実体験をもとにしているので、見た景色、感じた気持ちをそのまま言葉に変換する感覚で作りました。実体験ではない曲も、基本的には、情景が浮かぶ言葉、色を感じる言葉を意識して書いているんです。私の音楽のルーツである松田聖子さんの楽曲の、多くの作詞を手掛けていた松本隆さんの書く歌詞が大好きで、松本さんの言葉が見せてくれる情景や色に、すごく影響を受けています。ーーほぼすべての作詞と作曲を杏沙子さんご自身で手がけていらっしゃいますが、ひとつの曲を完成させるまでに心がけていることは。直感です。なんだかよくわからないけれど、直感的に心が動いた言葉や表現は、すぐにメモするようにしています。その直感が起爆剤になって曲を書き始めるので、最初の「ビビッ!」と来るものがないとワクワクが持続せず、だいたい途中で書くのをやめてしまうことが多くて(笑)。直感を掘り下げて、広げて曲にしていくので、書き切った頃には心が動いた理由がわかるので、答え合わせみたいで面白いんです。ーー収録曲「ファーストフライト」は、特別な曲だそうですね。今回の『ノーメイク、ストーリー』のような、自分の中にある本物の気持ちをテーマにしたアルバムの、先駆けのような曲です。女の子がパイロットを目指すドラマL『ランウェイ24』(テレビ朝日系=ABCテレビ制作、2019年放送)の主題歌のお話をいただいたことがきっかけで作った曲です。夢を追うからこそ感じる不安や焦りの感情、道なき道を進む孤独感が、ドラマの主人公とパイロットという職種が自分と完全にリンクして、思い切って自分の中にある負の感情を曲にぶつけてみたんです。自分のために書いたようなこの曲が、誰かのテーマソングに、お守りのような曲になっている声を聞いて、「自分の本物をさらけ出すことが、自分が歌う意味になるのかもしれない」と気づかされた特別な曲。自分で書いた言葉に自分が救われるという経験をしたのも、この曲が初めてでした。ダイヤの原石みたいな“本当”を見つけていきたいーー目標としているアーティストの方はいらっしゃいますか。何度かお話に出ておりましたが、松田聖子さんは別格なのでしょうか。歌う、という点では、やはり小さい頃から聴いている松田聖子さんに、いまも変わらず憧れています。聖子さんのように、曲ごとに声を変え、時にはその曲の主人公になりきる、文字通りいろいろな声色でいろいろな色を見せられる歌い手を目指し続けます。書く、という点では、松本隆さん。言葉でも、色を見せられるソングライターを目指し続けたいですね。ーーところで、美容面において、好きなコスメや普段のお化粧、ファッションなどを教えてください。メイクもファッションも大好きなんです。美容面は、自粛期間中にずっとほしかった美顔ローラーを奮発して買って、毎日コロコロしています(笑)。あと、作曲がはかどるお風呂タイムも、欠かせません。最近、“艶肌メイク”の気分になっているので、ハイライトにハマっていますね。どこにどう入れたらナチュラルに透明感が出るのか、日々研究中。ファッションは、透け感のある服に、少し個性的なゴールドやシルバー、ガラスのアクセサリーを合わせるのが、いまのマイブームです。ーーでは現在、ご興味のあることはなんですか。おうち時間が増えたので、リラックスできるおうちを目指して“おうち革命”を起こしました(笑)。寝る前のルーティンに、アロマディフューザーで部屋を好きな香りでいっぱいにして、好きな音楽を聴く時間が加わりました。興味があるのは、香りですね。いま、4種類のアロマオイルが家にあるのですが、毎日、選ぶ香りが変わるんですよ。昨日は癒されていた香りが、今日はなんだか甘ったるく感じたり。面白いので、香りオタクになってみたいです(笑)。ーーシンガーソングライターとしての今後の抱負を教えてください。歌いたいこと、書きたいことが、日々変わっていっているのを感じているので、素直にそれに従っていきたいなと思っています。普段の生活も、曲を書くときも歌うときも、いまはできるだけ自分に正直でいたい気分。それで、自分でも気づかなかったダイヤの原石みたいな“本当”を見つけていきたいですね。それをもっともっとたくさんの人と、音源やライブで共有していけたらうれしいです。取材後記ナチュラルでチャーミングな印象の杏沙子さんの歌は、女性なら誰しもが「わかる!」とうなずいてしまう、色とりどりのストーリーに満ちています。これからももっとたくさんの人たちに、杏沙子さんの歌が届いてくのでしょう。そんな杏沙子さんのニューアルバムをまずはチェックしてみてくださいね。杏沙子 PROFILE1994年4月4日、鳥取県生まれ。2016年、初のオリジナル曲「道」を発表し、本格的に音楽活動をスタート。YouTubeに公開した曲「アップルティー」は女子中高生を中心に注目を浴び、後にJTBのCMソングにも起用される。2018年7月、1stミニアルバム『花火の魔法』にてメジャーデビュー。2019年には、「ケチャップチャップ」が『NHKみんなのうた』に抜擢される。同年夏、初のドラマ主題歌(ABCテレビ「ランウェイ24」)に「ファーストフライト」を書き下ろす。2020年1月、配信限定シングル「こっちがいい」をリリース(JSBC SNOW TOWN 2019CM曲)。7月8日、2nd フルアルバム『ノーメイク、ストーリー』をリリース。新曲「ジェットコースター」がNHK-FMの「ミュージックライン」6・7月度のエンディングテーマに決定。InformationNew Release『ノーメイク、ストーリー』(収録曲)01. Look At Me!!02.こっちがいい03.変身04.クレンジング05.見る目ないなぁ06.outro07.交点08.東京一時停止ボタン09.ジェットコースター10.ファーストフライト2020年7月8日発売*CD収録曲は通常盤・初回限定盤共通。(通常盤)VICL-65383¥3000(税別)*CD収録内容は全形態共通(初回限定盤)VIZL-1772¥4000(税別)*特殊パッケージ、2CD。〈初回限定盤 LIVE CD収録曲〉ワンマンライブ「あさこまとめ2019 ~まとめません~」2019.12.8 Veats Shibuya公演01.ファーストフライト 02.青春という名の季節 03.Look At Me!! 04.真っ赤なコート~toi toi toi 05.見る目ないなぁ 06.道 07.花火の魔法 08.あなたのことが好きだなんて言えないんです。 09.こっちがいい
2020年07月06日【音楽通信】第38回目に登場するのは、ソロデビュー15周年を超えて、さらに前進し続けるヒップホップ界のカリスマ、KREVAさん!写真・角戸菜摘 取材、文・かわむらあみり ヘアメイク・結城藍【音楽通信】vol.38ソロデビューしてからの15年は楽しくやってきた2019年にソロデビュー15周年を迎えたKREVAさん。昨年は9カ月連続リリース、『成長の記録~全曲バンドで録り直し~』『AFTERMIXTAPE』と2枚のアルバムを発売、日本武道館でのワンマンライブに加え、横浜アリーナでの<908 FESTIVAL 2019>開催、「KREVA CONCERT TOUR 2019-2020『敵がいない国』」のライブハウスツアーを実施するなど、精力的な活動を展開されました。そんなKREVAさんが、2020年6月24日にニュー・シングル「素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI」をリリースされるということで、お話をうかがいました。ーーまずソロデビューされてからの15年を振り返ると、どのような日々でしたか。この15年の変化を広い意味で言うと、テクノロジーの面で、だいぶん変わってきた気はしますね。CDもどんどんストリーミングに変わってきて、曲を作る機材も変わってきました。パソコンの変化ともいえますね。ーーKREVAさんは、常に何かに挑戦していらっしゃるようなイメージがあります。そうですねえ。楽しいですよ、進んでいくテクノロジーについていくというのは。たとえば、ロボット掃除機って、最初出たときに「いらない」って思ったんですが、いまは性能も上がってきて「あると便利だな、ないと困るな」という感じになってきている。音楽でもロボット掃除機的な、便利なものがたくさん出てきて、それもどんどん使いやすくなって、自分のような完全独学でやっている身としては、助かっています。その面白みで、音楽を続けていられますね。お米を炊く以外に、料理もできる炊飯器を買うと、とりあえず一発目にパエリアいっとこうか、みたいな(笑)。そしてまた、パエリアから違う料理にいってみようとする感じ。この道具があるから、この音楽を作ろう、という考え方も増えました。ーー15年はあっという間でしたか。振り返り方、切り取り方にもよるんですが、シンプルに年月だけを言うと「おお、もうそんな?」という感じもするし。ただ、やってきたことを振り返ると「なっげぇ!」って、なってくると思うんですけどね(笑)。楽しくやってきました。ーー今年、2月から6月まで開催予定だった「KREVA CONCERT TOUR 2019-2020『敵がいない国』」のホール&アリーナツアーを新型コロナウイルス感染拡大防止のため、はやい段階で無期限延期とされました。2月には無観客ライブをYouTubeで配信されていましたね。「敵がいない国」というタイトルを掲げたツアーだったことが、無期限延期する決断がはやかった理由です。「敵がいない国」というのはファンタジーで、ライブのMCでも、「敵がいない国ってないじゃん、でもあるじゃん」って伝えていて。「ここにいる人たちだけでも、敵がいない国を作ろうって全員が思えば、そうなるよね」って、ファンタジーで作り上げていく世界だったんです。でもそのファンタジーを上回る、全世界が敵の見えない状態になるなんて、想像だにしない現実がやってきてしまったから。本番同様のリハーサルであるゲネプロもやってみたんですが、何をやってもハマんないというか。自分が考えていたすじ道のことも全然響かなくなって、「やめましょう」と言いました。ーーすごいご決断でしたね。いまとなればね。あのときはやったほうがいいのかなという気持ちも少しはありました。みんなが不安な気持ちで来ても、俺が楽しめていれば、「楽しもうか」という気にもなれたかもしれないですが、こっちもみんなも迷っている状態で「敵がいない国」はありえなかったです。新曲はこの3年で1番好きなメロディとトラックーー本来は「敵がいない国」ホール&アリーナツアーで披露されるために書き下ろされた新曲「素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI」が6月24日に発売されます。KREVAさんが見出されたシンガー・SONOMIさんとの楽曲ですね。「敵がいない国」のツアーに、SONOMIを呼んでいたんです。2006年に出した『愛・自分博』というアルバムに入っている「涙止まれよ feat. SONOMI」という曲をこのツアーで歌いたくて。当時から、ふたりでひとつの声になっている感じがあるんです。今年のホール&アリーナツアーは無期限延期になりましたが、昨年12月には「敵がいない国」のライブハウスツアーがあったので、そこでSONOMIと一緒に歌ってみたんです。どちらもベストな声が出る高さの曲じゃないんですが、大きくもない、小さくもない声で、ほどよく歌うふたりの気持ち良さがあって。これはやっぱりすごいなと思って、そんな曲がもう1曲できたらと考えていたんです。この曲は、自分がこの3年ぐらいで作ったなかで1番好きなメロディ、トラックです。ーー『愛・自分博』のときの「KREVA TOUR 2006 愛・自分博〜国民的行事〜」のツアーファイナルとなった日本武道館ライブに、私も行かせていただきましたが、当時からSONOMIさんは堂々とされていた印象です。SONOMIは、何年一緒にいるかわからないですが、妹みたいな感じなんです。自分の声の成分のなかに、SONOMIの声の成分も聴こえてくるというか(笑)。科学的に調べたら、同じ成分が出てくる気がして、以前から響き合うところがありました。ーーSONOMIさんの一番の良さはどこですか。なんかずっと垢抜けない感じかな(笑)。ただ、キャリアも長いんで、SONOMIが出演しているイベントでは“姉さん”という捉えられ方をしていて、俺からすると「お前が!?」と(笑)。「敵がいない国」でも、SONOMIは“国民の妹”というキャラクターで出演していたんですが、俺からすると、“永遠の妹”。視点が人とちょっと違う感じがあって、そこが面白いんです。音楽的な面では、グッとくるポイントがすごく似ていると思います。そこはすごく大事。「これ泣ける!」と言ったときに、「はっ?」って言われると困るんですが、そこはお互いに同じことをキャッチできていると思います。ーー「素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI」のKREVAさんのラップ部分で、「自分で終わらせるのは無し 必ず生きる いつかは笑えるかな これもかすり傷って」という歌詞がありますが、とても深い言葉だと感じました。うちの事務所の社長と20年前ぐらいから、「とりあえず死ぬのは無しにしよう」って、ずっと言っているんです。ヤバいものとか、エグいものとか、いろいろあるとしても、自分で人生を終わらせるのはとにかく無しにしようというのは、よく言っていたんですよ。あと「敵がいない国」のライブハウスツアーのときに、ファンクラブの方と直接会う企画の“ミート&グリート”をやったんです。各公演5人ぐらいの方とお話をしたんですが、「よくそんなにつらいことがあって堪えられたな」という経験をしている方がいて。そういう方が、俺の音楽を聴いて「がんばろうって思えた」と言ってくれるんですよ。俺なんて、9対1ぐらいで嫌なことばっかりなんですが、このレベルで「もうやだ」と言っている場合じゃないなって。そこで、その歌詞が出てきました。ーー今回、楽曲からアートワークまですべてKREVAさんご自身が手がけた完全セルフプロデュース作品ということですが、ジャケット写真には幼少期のKREVAさんの写真を使用されたそうですね。このジャケ写は“棚から牡丹餅”的な感じなんです。昔から趣味のようにやってきた、コラージュで作っています。今回のツアーに向けて、ファンじゃない人も含めて来てもらえるようにとYouTubeを始めてみて、自分で動画の編集もやって、できるようになってきたんですよ。そうやって動画編集ソフトを使えるようになったら、デジタル的にコラージュができると思って、やってみたらこうなりました(笑)。この写真は、うちの父親が写真好きで、3歳ぐらいのときに撮ってくれたものです。母親はなんでもとっておくタイプで、たとえば俺が子どものときに使っていたマグカップをまだ家で使っているみたいなのが、いっぱいあって(笑)。そのなかで、とっておいていた写真のひとつをジャケ写にコラージュしました。それとバンドメンバーに、「ヴィンテージの楽器の写真を撮って送ってくれたら、コラージュするよ」と言っていたんです。(ホールツアーの)バンドメンバーの田中義人さんのギターとか、ベースの大神田智彦くんとか。神ちゃんは1960年代後半の楽器を持っていて、「いい音するんだよね」って、楽器をずっと使い続けられるのはいいなと。一発目に、ドラムの白根(佳尚)から、ヴィンテージシンバルの写真が送られてきて、そのシンバルの写真がまるで“年輪”みたいだなと。シンバルにもともと「15」という数字も入っていて、最初俺は気づいてなくて、メンバーから「ちょうど15周年だね」と言われて、今回のジャケ写にぴったりだと思いました。未開拓の領域に踏み込むと、いい時を重ねられるーーお話はかわりますが、KREVAさんは活動自粛制限期間はどのように過ごしていましたか。また、自粛が解除された現在はどのように過ごしていますか。自粛期間は、とにかく家にいましたね。1週間、外出しないことも多かったです。以前は、ちょっと買い物に行くだけでもひとりで行っていましたが、いまは子どもを連れていくこともできるようになりましたね。ーーおうちではどんなふうに過ごしていたんですか。最初のうちは断捨離をしていたんですが、途中から捨てるものもなくなってきて、家で曲を作っていました。ただ、それを自分のスタジオで聴いてみたら、集中できていない感じがして、あまりよくない出来でしたね。ーー新曲でも「素敵な時を重ねましょう」とおっしゃっていますが、一般的に年を重ねることに肯定的な方は多くない印象もあります。どうすれば、素敵な年を重ねられると思いますか。たとえばリモートワークをしていると、前進している感じがあまりないかもしれないですよね。さっきの曲を作った話もそうですが、曲を作ってトラックが1個増えたはずなのに、なんか前進した気がしない。それを超えていくには、スキルアップしていくのが大事なのかなと思いました。未開拓の領域にちょっとでも踏み込んでみると、いい時を重ねられるんじゃないかな。この曲のジャケ写も、やってみて「デジタルでできるんだ、コラージュ!」と思って。いままでできなかったことができたという意味で、“ゼロから1”は、“1から2”よりも、前進した感じが強いじゃないですか。だから、まったくしたことがなかったジャンルの料理をするとか、釣りなのか、ランニングなのか、手を出したことがなかったやつを一歩進んでやってみると、充実感がハンパないです。心がふさぎ込んでいると、だんだん心も体も衰えていく気がします。ーーそれは若くても、年を重ねても、関係なくそうかもしれないですね。そうなんですよ。俺は50歳から、字がうまくなるって決めているんですよ(笑)。無限のスキルアップの可能性がある、何歳からでも、字をうまくすることはできるじゃないですか。手が震えてきたことからの“達筆風”とかも(笑)。可能な領域に残されています。ーーでは、そうやって前進していくことで、魅力的な女性になっていくと。やっぱり、いろいろなことに挑戦している人は、魅力的だと思いますね。あとは自分が熱中して取り組んでいることで、前進感が得られるなら、それも魅力になると思います。心と実績とを得ていくことが大事なんじゃないかと思います。ーー今年の11月6日公開予定の、V6の井ノ原快彦さん、なにわ男子/関西ジャニーズJr.の道枝駿佑さんらの映画『461個のおべんとう』にご出演されていますね。劇中では、井ノ原さん、やついいちろうさんと「Ten 4 The Suns」というバンド仲間として、KREVAさんはMC担当の古市栄太役を務めていらっしゃいますが、撮影はもう終わられたんですか。もう終わりました。撮影中は、イノッチ(井ノ原さん)と、やっつん(やついさん)と、ずーっと3人でしゃべっていましたね(笑)。ーー音楽のお話ですか。いや、くだらないことから、何から何まで(笑)。ライブシーンがあったんですが、ステージに出てからも、3人ともずっとしゃべっていました。観客役のエキストラのみなさんを盛り上げるために、俺も、イノッチも、やっつんもずっと黙らないから(笑)。本番では使われないシーンなんですが、3人でずっとしゃべり続けたことによって、お芝居ではなく本当にライブ感が生まれたので、良かったと思いますし、楽しかったです。正直、映画に出たという感覚はない(笑)。ーーそれはミュージシャンの役だからでしょうか。そうですね。それに、自然でいるほうがいいなと思って。映画ではラップもしていますし、ミュージシャン役だったんで、より自分らしく、自分のまんま出ている感じですね。ーー井ノ原さんの息子役の道枝さんとは、お話しされましたか。話しましたね……話したと思うけど、振り返ると、イノッチとやっつんとずっとしゃべっていた記憶しか(笑)。兼重淳監督も、現場に緊張感を走らせるタイプの方じゃないので、みなさんにもよくしていただきました。ーーでは最後に、いまはなかなか予定も立てづらい時期ではありますが、今後のご予定は。いまはもう、何にも考えてないですね。いままでもそうだったんですが、ある時期から、「こうしたい、ああしたい」という目標がだいぶんなくなってきて。よりいっそう、ひとつずつ全力でやっていこうかなと思いました。次の曲を出したら、「これが最後」くらいの気持ちでやろうかなと。でもね、求めているものは、さらっとしたものを出したい。最後だと思って、「全身全霊をかけてやりました!」というものが誰かから来たら、俺からすると重い気がするので(笑)。そこらへんの塩梅をよく読みながら、今後もやっていけたらと思います。取材後記日本のヒップホップシーンを牽引し続けているKREVAさんは、常に挑戦し、私たちに新しい驚きと喜びをもたらしてくれる稀有な存在です。折しも自粛制限は解除された時期でしたが、さまざまなことに配慮をしながらの取材となりました。そんななか、快く取材に応じてくださったKREVAさんは、シングル発売日と同日の6月24日に、無観客有料生配信ライブ、KREVA Streaming Live『(マルイチ)』を急きょ開催されます。ぜひライブもチェックしてみてくださいね。KREVA PROFILE国民的人気を誇るヒップホップアーティスト。ヒップホップの殿堂『B-BOY PARK』のMCバトルで3年連続日本一の栄冠に輝く実績を持ち、現在に至るまでその記録は未だに塗り替えられていない。2004年9月08日(クレバの日)に、シングル「音色」でソロメジャーデビュー。2006年2月リリースの2ndアルバム『愛・自分博』は、ヒップホップソロアーティストとして史上初のオリコンチャート初登場1位を獲得。リリースされる楽曲は常にチャート上位にランクイン。9月08日は「クレバの日」と日本記念日協会に正式認定される。2019年、1月から9月08日(クレバの日)まで9ヵ月連続リリースを敢行し、ニューベストアルバム『成長の記録~全曲バンドで録り直し~』と8枚目のオリジナルアルバム『AFTERMIXTAPE』の2枚の作品をリリース。さらには、日本武道館ワンマンライブとKREVA主催の“音楽の祭り”「908 FESTIVAL 2019」横浜アリーナ公演を開催。12 月、「KREVA CONCERT TOUR 2019-2020『敵がいない国』」ライブハウスツアーを実施。2020年2月から6月のホールツアー&アリーナ公演は、新型コロナウイルス感染拡大抑止のため、全公演の無期限延期を決定。6月24日、シングル「素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI」を発売。同日、無観客有料生配信ライブ、KREVA Streaming Live『』を開催する。11月6日にはTOKYO No.1 SOUL SETの渡辺俊美さんによるエッセイ「461個の弁当は、 親父と息子の男の約束。」(マガジンハウス刊)原作の映画『461 個のおべんとう』が公開予定。常に新しいことへ挑み続ける、日本の音楽界最重要人物のひとり。InformationNew Release『素敵な時を重ねましょう feat.SONOMI』(収録曲)01.素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI02.素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI (Inst.)2020年6月24日発売NCS-970¥908(税別)※紙ジャケット仕様。※KREVAオフィシャルオンラインショップのみでの数量限定販売。
2020年06月22日フランク・オーシャンをはじめとする、現在の音楽シーンをリードする豪華アーティストによる31の名曲が彩る『WAVES/ウェイブス』。音楽を愛するトレイ・エドワード・シュルツ監督は、音楽が重要な意味を持つ物語として『ブギーナイツ』や『グッドフェローズ』などに影響を受けたと話している。これまで音楽が印象的な作品はたくさんあり、その中でも「音楽」と「青春」を組み合わせた作品は、一生に一度は観ておくべき名作揃い。今回は、選び抜かれた豪華楽曲がひとつの物語を紡ぎだし、曲や歌詞が登場人物の心の声を伝える青春音楽映画5選をお届け。未来を選べ!90年代最高の大ヒット青春映画『トレインスポッティング』(1996年)『スラムドッグ$ミリオネア』『イエスタデイ』などの監督ダニー・ボイルが、アーヴィン・ウェルシュの小説を映画化した青春ドラマ。ドラッグ中毒の主人公と仲間たちの希望の見えないハチャメチャな日々を、スタイリッシュな映像で活写する。いまや大スターとなった若き日のユアン・マクレガーが主演を務め、海外ドラマ「エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY」のジョニー・リー・ミラーらが共演。イギリスをはじめ、世界中が熱狂したポップな感性に魅了される。主な使用楽曲「ラスト・フォー・ライフ」「ナイトクラビング」イギー・ポップ、「ディープ・ブルー・デイ」ブライアン・イーノ、「トレインスポッティング」プライマル・スクリーム、「銀河のアトミック」スリーパー、「テンプテーション」ニュー・オーダー、「シング」ブラー、「パーフェクト・デイ」ルー・リード、「マイル・エンド」パルプ、「2:1」エラスティカ、「ボーン・スリッピー」アンダーワールド、「クローゼット・ロマンティック」デーモン・アルバーンアメリカのポップカルチャーの裏側を描いた傑作『ブギーナイツ』(1997年)『マグノリア』『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』『ザ・マスター』『ファントム・スレッド』と、アカデミー賞作品を多数手掛けるポール・トーマス・アンダーソン監督作品。70年代後半のアメリカで、ポルノ業界に革命を起こそうとした映画制作者たちの大所帯をめぐる、波乱に満ちた舞台裏ストーリー。レオナルド・ディカプリオが降板した主演はマーク・ウォールバーグが務めた。ゴールデングローブ賞助演男優賞(バート・レイノルズ)を受賞したほか、アカデミー賞では助演男優賞(バート・レイノルズ)、助演女優賞(ジュリアン・ムーア)、脚本賞(ポール・トーマス・アンダーソン)がそれぞれノミネートされた。主な使用楽曲「ベスト・オブ・マイ・ラブ」エモーションズ、「フライ・ロビン・フライ」シルバー・コンベンション、「ジャングル・フィーバー」チャカチャス、「心の扉をあけよう」メラニー、「ママ・トールド・ミー」スリー・ドッグ・ナイト、「愛に狂って」エルヴィン・ビショップ、「黒い夜」マーヴィン・ゲイ、「神のみぞ知る」ザ・ビーチ・ボーイズ、「ロックバルーンは99」ネーナ、「オーロラの救世主」エレクトリック・ライト・オーケストラ爽快!感涙!80年代を席巻した大ヒット曲の数々『シング・ストリート 未来へのうた』(2016年)『はじまりのうた』『ONCE ダブリンの街角で』のジョン・カーニー監督の半自伝的作品で、1980年代のアイルランド・ダブリンを舞台に、好きな女の子を振り向かせるためにバンドを組んだ少年の恋と友情を、1980年代ブリティッシュサウンドに乗せて描いた青春ドラマ。カーニー監督の音楽人生の原点とも言えるストーリーを、「ザ・キュアー」「デュラン・デュラン」「ザ・クラッシュ」「ザ・ジャム」など当時のヒット曲が彩る。主題歌を「マルーン5」のアダム・レヴィーンが担当していることも話題となった。主な使用楽曲「ステイ・クリーン」モーターヘッド、「リオ」デュラン・デュラン、「悪意という名の街」ザ・ジャム、「インビトゥイーン・デイズ」ザ・キュアー、「マンイーター」ダリル・ホール&ジョン・オーツ、「ステッピン・アウト」ジョー・ジャクソン、「ポップ・ミューヂック」M、「ゴー・ナウ」アダム・レヴィーン音楽と映像がシンクロする爽快アクション!『ベイビー・ドライバー』(2017年)『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ俺たちスーパーポリスメン!』などで知られるエドガー・ライト監督が、音楽にのりながら驚異の運転テクニックを発揮する若きドライバーの活躍を描いたオリジナル作品。主人公ベイビーを『きっと、星のせいじゃない。』で注目されたアンセル・エルゴートが、ヒロインとなるデボラを『シンデレラ』のリリー・ジェームズが演じるほか、ケビン・スペイシー、ジェイミー・フォックスといった実力派ベテラン俳優も共演。第90回アカデミー賞において3部門(音響編集賞、録音賞、編集賞)でノミネートされた。主な使用楽曲「Bellbottoms」ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン、「Neat Neat Neat」ダムド、「Easy (Single Version)」コモドアーズ、「Early in the Morning」アレクシス・コーナー、「When Something Is Wrong with My Baby」サム&デイヴ、「Intermission」ブラー、「Radar Love (1973 single edit)」ゴールデン・イヤリング、「Brighton Rock」クイーン、「Baby Driver」サイモン&ガーファンクルミュージカルを超えたプレイリスト・ムービー『WAVES/ウェイブス』新進気鋭のスタジオ「A24」が放つ、超豪華アーティストによる31曲が物語を彩る<プレイリスト・ムービ>。ある夜を境に、幸せな日常を失った兄と妹。傷ついた若者たちが、再び愛を信じて生きる希望の物語。スクリーンいっぱいに躍動するサウンド、息を呑むほど美しい色彩と独創的なカメラワーク、登場人物の心情を疑似体験するストーリーテリングは、かつてない映画体験をもたらし、映画の持つ無限の可能性を感じさせる。豪華31曲のプレイリスト「FLORIDADA」「LOCH RAVEN (LIVE)」「BLUISH」アニマル・コレクティヴ「BE ABOVE IT」 「BE ABOVE IT -EROL ALKAN REWORK」「BE ABOVE IT ー LIVE」テーム・インパラ「MITSUBISHI SONY」「SIDEWAYS」「FLORIDA」「RUSHES」「RUSHES (BASS GUITAR LAYER)」「SEIGFRIED」 フランク・オーシャン「WHAT A DIFFERENCE A DAY MAKES」ダイナ・ワシントン「La Linda Luna」 ケルヴィン・ハリソン・Jr「LVL」 エイサップ・ロッキー「AMERICA」 ザ・シューズ「BACKSEAT FREESTYLE」 ケンドリック・ラマー「IFHY」 タイラー・ザ・クリエイター feat. ファレル・ウィリアムス「FOCUS」 H.E.R.「LOVE IS A LOSING GAME」 エイミー・ワインハウス「SURF SOLAR」 ファック・ボタンズ「U RITE」「U-RITE (LOUIS FUTON REMIX)」 THEY.「I AM A GOD」 カニエ・ウェスト「GHOST!」 キッド・カディ「MOONLIGHT SERENADE」 グレン・ミラー・オーケストラ「THE STARS IN HIS HEAD(DARK LIGHTS REMIX)」 コリン・ステットソン「HOW GREAT」 チャンス・ザ・ラッパー「PRETTY LITTLE BIRDS」 SZA feat. アイザイア・ラシャド「TRUE LOVE WAITS」 レディオヘッド「SOUND & COLOR」 アラバマ・シェイクス『WAVES/ウェイブス』は7月10日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ベイビー・ドライバー 2017年8月19日より新宿バルト9ほか全国にて公開トレインスポッティング 1996年、公開WAVES/ウェイブス 2020年7月10日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開©2019 A24 Distribution, LLC. All rights reserved.
2020年06月15日音楽をこよなく愛する、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。【音楽通信】第37回目に登場するのは、新海誠監督作『天気の子』の音楽を担当していたRADWIMPSに、ボーカリストとして抜擢され話題を呼んだのも記憶に新しい、歌手で女優の三浦透子さん!「2代目なっちゃん」から『天気の子』ボーカリストへ【音楽通信】vol. 372002年の5歳のときに、清涼飲料水『なっちゃん』のCMで女優デビューした、三浦透子さん。2020年は『ロマンスドール』や『架空OL日記』などの映画に出演するなど、これまでに数々の映画やドラマで活躍しています。歌手としては、大ヒットした新海誠監督作『天気の子』(2019年)の音楽を担当していたRADWIMPSにボーカリストとして大抜擢されました。「役者の歌声というよりも世界そのものの響きのような、個人の感情を少しだけ越えたような何かを、まっすぐに運んできてくれる声」(新海監督)、「どんな天気をも晴れにしてしまうような圧倒的で不思議な力を持つ」(RADWIMPS 野田洋次郎)と称されて、その歌声にも注目が集まっています。そんな三浦さんが、2020年5月27日に1stミニアルバム『ASTERISK』をリリースされるということで、お話をうかがいました。ーー5歳のときに『なっちゃん』のCMに出演され、2代目なっちゃんに抜擢された当時のことは覚えていますか。また、もともと女優を目指していたのでしょうか。当時のことは、ひどく現場で迷惑をかけたということだけはしっかり覚えています。とにかく調子乗りで大人の言うことを聞かない子どもだったので、まわりのみなさんは本当に苦労したと思います。もともと私も家族も芸能界に興味があったわけではなく、習い事で通っていたダンススクールの友達と一緒に、ふらっとオーディションに参加しました。CMが決まった後も、母親は、「思い出作りになれば良いかな」くらいの気持ちだったと聞いています。ですから、ここまで続ける仕事になるとは、そのときはまったく思っていませんでした。ーー結果として、5歳から現在まで女優としてご活躍されていますが、目標とする俳優さんや憧れの作品、監督はいますか。目標というのとは少し違いますが、田中絹代さん、京マチ子さん、乙羽信子さんはとても好きな俳優です。相米慎二監督の『台風クラブ』(1985年)、ツァイ・ミンリャン監督の『青春神話』(1992年)は初期の映画体験だというのもありますが、私にとって特別な作品です。ーーでは、歌手活動を始めたきっかけを教えてください。タナダユキ監督と役者としてCMの撮影をご一緒したときに、ワンフレーズだけ歌うシーンがありました。その際、「声が良い」とおっしゃっていただいて以降、タナダ監督のCMや映画の音楽の仕事をさせていただくようになったのがきっかけです。ーー映画『天気の子』(2019年)のボーカリストとして、主題歌「祝祭 feat.三浦透子」と「グランドエスケープ feat.三浦透子」で大抜擢されました。ご自身の歌声が、新海誠監督とRADWIMPSの野田洋次郎さんを唸らせたことやおふたりの印象を教えてください。もともと「歌の仕事をしっかりやりたい」という気持ちが心のどこかにはあったので、新海さんと野田さんの反応は素直にうれしかったです。ボーカリストとして新しいチャレンジをすることに対して、とにかく楽しみな気持ちが一番でした。新海さんは、私がお会いしたときは特に忙しい時期だったと思いますが、いつお会いしてもとても穏やか。常にリスペクトを感じる丁寧な言葉でお話ししてくださるのが印象的です。野田さんは、妥協せず、私に対してもプロフェッショナルとして接してくださいました。おふたりとも、それぞれの分野の先頭を走っている方々ですが、どなたにも変わらない姿勢がとても素敵です。——2019年は『ミュージックステーション』や『第70回NHK紅白歌合戦』などにRADWIMPSさんと共に初出演されましたが、歌番組はいかがでしたか。歌の現場と、お芝居の現場との違いや心境の違いは。2019年は本当にいろいろな景色を見させていただきました。本当に想像していなかった出来事ばかりで、心の整理をする時間がなかったのが逆に良かったと、いまでは思います。どのステージもただただ楽しかったな、という印象が強いです。ただ、こういう流れは、いずれ落ちつくものだという認識もしっかりありました。CM『なっちゃん』のときと同じですね。『天気の子』で体験させてもらったことは、ある意味、一番華やかなところ。これから自分で歩いていくときには、歌もお芝居も一歩ずつ、丁寧にやりたいという思いが強いです。歌とお芝居の細かな違いはたくさん感じますが、一貫した“自分がやる”ということをいまは意識しています。新作は本格的に音楽と向き合うけじめの作品ーー5月27日に1stミニアルバム『ASTERISK』をリリースされます。2017年にカバーアルバムをリリースされてから、今回が初めてのオリジナルアルバムとなりますね。はい、今回のリリースは素直にとてもうれしいです。自分名義でのオリジナル作品というのは、やはりいままでとは感覚が全然違いますね。私にとっては、本格的にこれから音楽と向き合っていこうという、けじめの作品でもあります。最初の一歩なので、みなさんからどんな反応が返ってくるのか、とても楽しみです。ーー収録曲の、映画『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』(近日公開予定)の主題歌「uzu」は、まるで子守唄のようにも聴こえるやさしい歌ですね。歌詞のない歌ですが、心がけたことはありますか。作曲をした森山直太朗さんとは曲について話し合うことはあったのでしょうか。ムヒカさんの物語や言葉から、観る側が受け取る感情はさまざまだと思います。エンドロールは、そういう映画の余韻を邪魔しない、言葉を反芻し、自分と向き合うような時間になればいいなと思いました。歌詞のない歌になったのは、田部井一真監督や直太朗さん、みんなのそういう思いから。直太朗さんが、「寝起きみたいな感じがいいな」とおっしゃっていたので、“歌う”というよりは、声を“鳴らす”というようなイメージで歌いました。レコーディングでは、メロディ以外の決まりは何もなくて、とにかく自由。直太朗さんの人柄も相まって、のびのびとリラックスして純粋に音楽を楽しめる贅沢な時間でした。このアルバムの中で最初にレコーディングをしたのが「uzu」でしたが、これが最初でとても良かったです。ーー収録曲「ブルーハワイ」は曽我部恵一さんが作曲した曲です。曽我部さんのバンド、サニーデイ・サービスはもともとよく聴いていたそうですが、今回は三浦さんのオリジナル楽曲を歌われてみていかがでしたか。2017年にリリースしたカバーアルバムの際にも、サニーデイ・サービスの楽曲「東京」を歌わせていただきました。今回はその流れでまた、オリジナル作品でも楽曲を提供していただけるというのは、とても感慨深いです。曽我部さんはふわふわ漂っているような不思議な存在感の方で、お話ししていてすごく楽しかったです。その反面、曽我部さんの頭の中ははかり知れなくて、いったいどんな曲になるのだろうと、まったく予想ができませんでした。いただいた曲は、まるで自分が見透かされているかのようで驚きました。心にすっと落ちてくる歌詞とメロディで、一番自然に歌うことができたんです。ーー収録曲「FISHANDCHIPS」は、赤い公園の津野米咲さんが担当された曲ですが、ラップや和洋折衷のようなサウンドなど、おもしろい楽曲だと感じました。今回は、今までとは違ったアプローチで声を聴かせたいというのが、アルバムのテーマとして最初にありました。「FISHANDCHIPS」はまさにそのコンセプトにあった曲だと思います。これまで歌ってきたオーガニックな楽曲とは違って、音数もたくさん、これでもかというくらい盛り込んで、遊び尽くしてもらいました。そのなかで、私の声をどうたたせるか。私もたくさん声で遊んで、ニュアンスもいろいろ試しながら歌いました。今までは、どれだけ削ぎ落として歌えるかということをテーマに歌ってきたので、とても楽しいチャレンジでした。中毒性があって、個人的にも一番よくリピートしているかもしれません。ーーそのほか、映画『天気の子』のRADWIMPS「愛にできることはまだあるかい」のカバーや、スカート・澤部渡さんが作曲した「波がたった」など、多彩な楽曲が詰まったアルバムです。今回、7組のアーティストが制作に参加されていますね。7アーティストのみなさんは、私の希望でお願いさせていただいた方がほとんどで、本当にとても光栄です。何よりも今回、一番大事にしたのは“7つのカラーで声を見せる”こと。ただ私がご一緒したいという理由だけで選ぶと偏りが出て難しかったので、そのバランスは慎重に考えました。それぞれのアーティストさんとしっかりコミュニケーションを取るところからはじめて、参加できるところはオケ録りもなるべく見学させていただきました。曲が違えば、毎レコーディング、課題も違います。曲数は少ないですが、とても濃密なレコーディング期間でした。ーー『ASTERISK』というタイトルに込めた思いと、実際に完成して聴かれた印象を教えてください。記号の「*(アスタリスク)」は、掛け算記号としても使われますが、その“掛け算”という意味合いが今回のアルバムにとてもしっくりきたので、このタイトルにしました。良いコラボレーションというのは、やはり私が受け身になりきってしまうと成立しない。もらった歌を歌う、というところから一歩先に進んで、“関わる”という意思表示でもあります。また、「アスタリスク」には、ギリシャ語で「小さな星」という意味があると、後から調べて知りました。星や光のイメージも、今回のアルバムビジュアルとも合っていて、良いタイトルになったかなと思っています。7曲すべて本当に違った曲なので、聴き応えもある反面、アルバムを通して聞いても30分かからないという、気軽さが気に入っています。変わることと、変わらないこと、そのどちらも大事ーー女優、歌手としてご活躍の三浦さんですが、普段から美容面などで気をつけていることは。私は中学の頃と高校の頃の2回、ひどい肌荒れに悩んだことがあります。こればっかりは、この方法が一番と言い切れないのが難しいところですが、私の場合は朝の洗顔をやめたことが一番効果がありました。自分の肌の特徴を理解することが大事だと思っています。ーーよく聴くアーティストや楽曲はありますか。人生で一番聴いたのは、NUMBER GIRL。私の青春のバンドです。最近はエレクトロやジャズなどインストを聴くことが多くなりました。あとは、大貫妙子さん、吉田美奈子さんなどの70〜80年代の日本の音楽も聴いています。いまはたくさん時間もあるし、音楽の活動を始めたという意味でも、いろいろと吸収する必要がある時期だと思うので、周りの信頼できる人から、さまざまな音楽を教わっています。ーーいま興味のあることはなんですか。建築に興味があります。はじめはただ建物を見るのが好きなだけでしたが、ル・コルビュジエ(モダニズム建築の礎を築いた20世紀を代表する建築家)の「住宅は住むための機械である」という言葉に惹かれて、それ以来、その建物が建てられた背景や建築家の持つ哲学にも興味を持つようになりました。昨年、ロシア・アヴァンギャルド建築のお話の舞台に出演したこともあって、その分野を勉強したのも影響しています。駒場東大前にある日本民藝館も、はじめは建物が好きで通い始めましたが、いまは民藝品や民藝の考え方にも興味を持つようになりました。ものづくりの裏側にあるものに興味があるのかもしれません。ーー現在、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、世界的に活動自粛制限がありますが、三浦さんはどんなふうにおうちで過ごされていますか。こういう時期は、特別なことはしないで、いつも通りを心がけています。つい何かやらなくてはと意識しすぎてしまいますが、変わることと、変わらないこと、そのどちらも私は大事だと思っているんです。いま時間が与えられたと思って、しっかり自分と向き合い、考える時間にしたいです。取材後記女優として活躍しながらも、歌手としても存在感を発揮されている三浦透子さん。その透明感のある心地よい歌声は、新海監督や野田さんではなくとも、魅了されてしまうに違いありません。そんな三浦さんがリリースされるミニアルバムをまずはチェックしてみてくださいね。三浦透子 PROFILE1996年10月20日、北海道生まれ。女優としては、2002年、サントリー『なっちゃん』のCMでデビュー。 その後、映画、ドラマなどで本格的に女優としての活動を開始。近年は2018年、映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』でヒロインを務め、2020年、映画『ロマンスドール』や映画『架空OL日記』などにも出演。歌手としては、2017年、90年代の名曲をアコースティックカバーした企画アルバム『かくしてわたしは、透明からはじめることにした』でCDデビュー。2019年、新海誠監督最新作『天気の子』の音楽を担当していたRADWIMPSにボーカリストとして大抜擢され、その歌声にも注目が集まる。2020年5月27日、1stミニアルバム『ASTERISK』をリリース。InformationNew Release『ASTERISK』(収録曲)01.uzu02.愛にできることはまだあるかい03.蜜蜂04.おちつけ05.波がたった06.ブルーハワイ07. FISHANDCHIPS2020年5月27日発売(初回仕様)UPCH-29362¥2,000(税別)※初回仕様出荷終了次第、同価格の通常仕様(UPCH-20542)に切り替わります。
2020年05月15日音楽をこよなく愛する、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。【音楽通信】第36回目に登場するのは、モデルやラジオDJとしても活躍されている、シンガーの安田レイさん!「元気ロケッツ」から、ソロシンガーへ【音楽通信】vol. 36アメリカで生まれ、3歳で日本ヘ来た、安田レイさん。13歳のときに、音楽ユニット、元気ロケッツに参加。その後、2013年にシングル「Best of My Love」でソロシンガーとしてデビューしました。2015年には「第57回輝く!日本レコード大賞」新人賞を受賞し、その後もドラマやアニメ主題歌、CMタイアップ曲など話題の楽曲を次々と発表し、2020年3月には3rdアルバム『Re:I』をリリース。今回、5月27日にニューシングル「through the dark」をリリースされるということで、お話をうかがいました。ーー3歳でアメリカから日本へいらしたのち、シンガーを志した経緯を教えてください。アメリカのノースカロライナ州で生まれ、お父さんの仕事で3歳のときに日本に来ました。小学校はインターナショナルスクールに通いましたが、それ以外の幼稚園や中学、高校は日本の学校へ行きました。そんな学生生活のなかで出会ったいろいろなジャンルの音楽やアーティストに影響を受け、小さい頃からずっと音楽に興味があったんです。とくにシンガーになりたいと思った一番のきっかけは、宇多田ヒカルさんの曲「First Love」との出会いでした。そのとき、私はまだ小学1年生で、恋愛の歌詞の意味なんて何ひとつわかりませんでしたが、宇多田さんの歌の表情やサウンドが他の人にはない個性的なヒカリに感じて、一目惚れした記憶があります。ですから、宇多田さんは、いまでも雲の上の存在です。ーー13歳で音楽ユニット、元気ロケッツに参加され、その後ソロ活動されたきっかけは。それぞれどのような心境だったのでしょうか。元気ロケッツと出会っていなかったら、いま私はどんなふうに生きていたんだろうと、たまにふと考えてしまいます。歌以外にできることが何も浮かばないんですよね。小学校6年生のときに、元気ロケッツのオーディション会場で、緊張して顔を真っ赤にしながら歌った“チビレイ”に感謝です(笑)!それまでボイストレーニングにも行ったことがなかったですし、人前で歌うのはカラオケくらいでしたし、受かる自信はありませんでした。会場には自信に満ちてキラキラしている洗練された美しい人ばかりで……。私はランドセルを背負ってましたし、ソバカスだらけでしたし、まわりには大人しかいないし、「あぁ、どうしよう、怖い」と思いました(笑)。それなのに、こんな私を選んでくださって、感謝しかないです。元気ロケッツで学んだいろいろなことが、いまの安田レイのベースになっていると思います。右も左もわからないただの小学生に、さまざまなことを教えてくださったプロデューサーの玉井健二さん含め、チームのみんなに感謝です! We LOVE GENKI ROCKETS!ーー2013年からソロシンガーとしてご活躍され、2020年3月には、ドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』のオープニング曲「Sunny」や、ドラマ『モトカレマニア』オープニングテーマ「アシンメトリー」などを含む3rdアルバム『Re:I』をリリースされましたね。さまざまな作品を通して、みなさんが安田レイの音楽に出会ってくれていると思うんです。今回のアルバムもそうなのですが、その一つひとつのタイミングは、本当に奇跡。日本には、世界には、たくさんの素晴らしい音楽が存在していて、生きているなかで全部聴くことは不可能なので、この出会いに「感謝! 乾杯! ありがとう!」という想いをどの作品にもぶつけています。ですが、一番伝えたいのは、今年の7月でデビュー7周年を迎える目前で、何かいい意味でみんなの中の「安田レイ」というイメージを壊したいというエネルギーがあって。これは昨年からすごく強くなって、ちょっといい子ちゃんな自分のイメージを壊して、「こんな私もいるんだよ、知ってほしいな」というところから制作が始まりました。もちろん、その想いを受け入れてもらえなかったらどうしよう、こんなの安田レイじゃないと思われるかもしれないという覚悟でアルバムを作りました。でも、ずっと同じ場所で前にも後ろにも動けずにいるのがイヤで、トライした結果、やってよかったです。たまには心の信号無視はしていいものですよ、みなさん。気持ちがいいです(笑)。誰かへこのエールが届いていたらうれしいです。光と闇、遠距離恋愛がテーマの新曲ーー5月11日に先行配信した、14枚目のシングル「through the dark」を5月27日にCDとしてもリリースされますね。“光と闇”をテーマに表現されたそうですが、歌詞にはどのような思いを託されましたか。光と闇が大きなテーマですが、実は遠距離恋愛というテーマでもあるんです。遠くにいる大切な人へのストレートな気持ちを歌詞にしてみました。「会えない時間が私を少し迷わせる」という歌詞があるんですが、こういうことって、実際にもありますよね。好きな人に会えないことによって、余計なことを考えてしまい、自分の正直な気持ちが見えなくなるあの恋愛の謎めいた感情を歌詞にしてみました。でも、実はすごく会いたくて、触れたくて、その人がもしいま苦しんでいたら、闇のなかであっても救い出したい、この僅かな光ででも、照らして見つけて、抱きしめたい。そんな想いを歌詞に込めています。ーー今作は、ゲーム発のテレビアニメ『白猫プロジェクト ZERO CHRONICLE』(TOKYO MXほか 月曜 22:30)のエンディングテーマにもなっていますね。はい。アニメも毎週の楽しみになっています。この「through the dark」は、ヒロインのアイリス目線の楽曲なので、私は自然とアイリスを応援してしまいますね(笑)。とにかく心がピュアで美しいアイリスは目の保養にもなりますし、こんなエンジェルのような心を持ちたいと思いながら、毎回TVの向こう側にいるアイリスを応援しています。ものすごいプレッシャーと戦いながら、世界の平和を守るアイリスはカッコ良すぎます!ーー「through the dark」は生命力を感じる楽曲ですが、曲の第一印象や歌唱の面で気をつけた点はありますか。今回初めてご一緒したプロデューサーのJeff Miyaharaさんが作る、繊細さのなかにある、心のなかの叫びのようなサウンドに初めて触れたとき、ゾクゾクしました。レコーディングのときは、ディレクションが面白くて新鮮。なかでも一番印象に残っているのは、「5歳のレイちゃんならどう歌う? ヴォーカルテクニックとか全部忘れて、もっと素直になって、うまく歌わないで」と言われたこと。いままでそんなディレクションをされたことがなかったので、最初は少し戸惑いましたが、だんだんとその意図を読み解くことができた気がしました。この曲のピュアなメッセージは、この歌い方が正解だったんだと思います。ーーでは、カップリング曲の「true colors」には、どのような思いがありますか。この曲は、鳥かごのなかに閉じ込められた鳥というのがテーマなんです。本当は見たい世界があって、広げる羽があるのに、そこから抜け出せない。これは職場の人だったり、親だったり、恋人だったり、そういう近くにいる人が自由にしてくれないというフラストレーションを歌詞で表現しています。私はそんなコントロールが大っ嫌いです。実はこの歌詞は何年か前に書いていたメモから生まれたんですが、そのときの悩みが、まさかこうやって曲になるとは!ーーそうだったのですね。この「true colors」の編曲者には、元気ロケッツでも組まれていた玉井健ニさんの名前があります。玉井さんが携わっている楽曲と、そうではない楽曲ですと、心境の面で違いはありますか。小学校6年生の頃から玉井さんと一緒に制作しているので、確かに阿吽の呼吸みたいなものはあると思います。いまだに、私が27歳だという事実を玉井さんは疑いますしね(笑)。玉井さんのなかでは、出会った12歳の頃の私でストップしているみたいです。ですが、初めましての方とモノ作りをするのも刺激的で楽しいです。みんなやり方が十人十色で面白いです! 結果、音楽を通して出会ったみんなが大好きです!ーー今回のジャケット写真では、通常盤は安田さんが白い服を着て白い球とともに、初回生産限定盤では黒い服を着て黒い球とともに写っていますがコンセプトは。今回、光と闇がテーマなので、「光の私」「闇の私」をテーマにしてみました。光は闇を、闇は光を、求め、共存していく。そんなことを思いながら撮影していました。光だけの世界も、闇だけの世界もなくて、きっとどちらもお互いを求めていると思うんです。共存するからこそ、グラデーションが生まれ、お互いが存在する。大切な人の光も闇も、私は知りたいですしね。ーーところで、ラジオパーソナリティとしてもご活躍ですが、歌うことと話すことでの意識の違いはありますか。まず、歌うときと話すときの声が全然違うと言われますね。しゃべるときはかなり素でやらせていただいています(笑)。歌うときは、その楽曲の世界観、キャラクター、歌詞のメッセージなどが楽曲によって違うので、声も自然と変わってきますね。マイルールは“できることを無理せずにやる”ーー容姿端麗な安田さんですが、普段から美容で気をつけていることはありますか。“できることを無理せずにやる”がマイルールです(笑)。あとは長風呂をして汗をかいています。湯船に浸かりながら動画配信サービスを観ていると、1時間なんてあっという間。長いときは2時間近く入っているんですよ。たっぷりと水分を摂りながら、たまに足湯にチェンジしながら入るのがオススメです。無理は絶対続かないので。ーー食事やダイエットはどうされていますか。おすすめの健康法があれば教えてください。フルーツや野菜を多く摂っていますね、最近は味噌にハマっていて、毎日お味噌汁を飲んでいます。お味噌汁の具材は、冷蔵庫に残っている野菜を適当に入れるだけで、パパッとできるので大好き。健康にも美容にも発酵食品はいいので、お味噌料理を極めたいです。いつかマイ味噌も作ってみたいですね。ーー好きなアーティストはいますか。好きなアーティストはたくさんいます。最近注目しているのは、藤井風さんです。こんなに若いのに、この色気と、可愛さと、センス! 「ずるーい!」と言いながらも釘付けになっている私です(笑)。藤井さんはピアノの技術もすごくて、欠点が何も見当たらない。たぶん、あっという間にスーパースターになると思います。ーー安田さんがいま興味のあることは。最近は古着のTシャツ集めにハマっています。仕事で全国をお邪魔した際に、その地域の古着屋さんに行くのがいつも楽しみなんです。ハーレーTとか、タイダイTとか、あとは男子には全くウケないだろうちょっと変わったモチーフのTシャツとか(笑)。Tシャツは夏だけではなく、冬はレイヤードして使えるので、何枚あっても困らないんです。ーー現在、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、世界的に活動自粛制限がありますが、安田さんはどんなふうにおうちで過ごされていますか。洋服のDIYにハマっています! 「ブリーチタイダイ」といって、漂白剤でタイダイの模様を作るDIYなんですが、もう着ないと思っていた服が生まれ変わるんですよ。作り方をインスタにアップしているので、見てみてください。すごく簡単にできるので、ぜひやってみてくださいね。取材後記2020年7月で、デビュー7周年を迎える、クールビューティな安田レイさん。モデルとして、ラジオDJとして、シンガーとして、これからもさらにご活躍されるはずです。音楽への愛情にあふれる安田さんがリリースされるニューシングルをまずはチェックしてみてくださいね。安田レイ PROFILE1993年4月15日、アメリカのノースカロライナ州生まれ。3歳で日本ヘ。10歳の頃、母親が聴いていた宇多田ヒカルに衝撃を受けてシンガーを志す。13歳で音楽ユニット、元気ロケッツに参加。2013年7月、シングル「Best of My Love」でソロシンガーとしてデビュー。その後も、ドラマやアニメ主題歌、CMタイアップ曲など、話題の楽曲を次々とリリース。2015年11月にリリースしたシングル「あしたいろ」がTBS系ドラマ『結婚式の前日に』主題歌として共感を呼び、その年の活躍が認められ、「第57回輝く!日本レコード大賞」新人賞を受賞。配信シーンでの活躍が顕著で、これまでにリリースした1stアルバム『Will』2ndアルバム『PRISM』はともにiTunesでJ-POP1位、総合2位を獲得。2020年3月、3rdアルバム『Re:I』をリリース。5月11日に先行配信したシングル「through the dark」を5月27日にCDとしてもリリース。JFN38局放送 TOKYO FM『JA全農 COUNTDOWN JAPAN』、JFN系列『CITY GIRLS MUSIC』ではラジオDJとして、ファッション分野ではモデルとしても活動し、さらなる活躍が期待されている。InformationNew Release「through the dark」01.through the dark02.true colors03.through the dark -Instrumental-04.true colors -Instrumental-2020年5月27日発売*通常盤と初回盤の収録曲は共通(通常盤)SECL-2577(CD)¥1,200(税込)(初回生産限定盤)SECL-2575(CD+DVD)*DVDは「through the dark」Music Video。¥1,800(税込)(期間生産限定盤)*収録曲は3曲目「through the dark -アニメサイズ-」以外は共通。SECL-2578(CD+Blu-ray Disc)*アニメ絵柄描き下ろしデジパック仕様。*Blu-ray DiscにはTVアニメ『白猫プロジェクト ZERO CHRONICLE』ノンクレジットエンディング映像を収録。¥1,500(税込)
2020年05月14日音楽をこよなく愛する、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。【音楽通信】第35回は「番外編」! 現在、活動自粛期間で“Stay Home”を続けるみなさんの力になりたいと、EXILEのパフォーマーであり、俳優でもあるAKIRAさんから『ananweb』をご覧のみなさんだけにお送りする動画とスペシャルメッセージが届きました。 ぜひチェックしてくださいね!!内田紘倫(The VOICE) スタイリスト・jumbo(speedwheels) ヘア&メイク・MAKOTO(juice & juicy)僕ら一人ひとりが与えられた使命を全うしたい【音楽通信】vol. 35「番外編-AKIRAさんスペシャルメッセージ」新型コロナウイルス感染拡大防止のため、現在は世界的に活動自粛制限がなされていますが、ananwebをご覧のみなさんはどんな毎日を過ごしているでしょうか。いつもは音楽記事をお届けしている「音楽通信」ですが、普段とは違う日常生活を送り“Stay Home”を続けるみなさんに、今回は特別編として、AKIRAさんから動画とスペシャルメッセージが届きました!いまAKIRAさんが思うこと、どんなおうち時間を過ごしているのか、そしてEXILEのことまで、さまざまなことをうかがいました。AKIRAさんのメッセージに込められたエールを受け取ってくださいね。ーー「LDH PERFECT YEAR」にあたる今年ですが、活動自粛のためライブは延期または中止となりましたね。ご来場されるみなさまの健康と安全を最優先に考えたうえでの判断ではありますが、「LDH PERFECT YEAR 2020」を楽しみにしていただいた多くのファンのみなさまには、大変申し訳なく残念な気持ちでいっぱいです。LDH独自に専門家の方々で構成した「LDH新型コロナウイルス感染症対策専門家チーム」による対策会議を開催し、さまざまな状況を検討した結果、想定以上に当面はライブの開催が困難であるとの判断に至りました。ですが、このまま中止、延期とするだけではなく、この新型コロナウイルス感染症が終息した際には、明るい未来へ向けてみんなが一緒に歩んでいけるようにとメンバー、スタッフと、日々熟考しています。ライブが開催できない期間においては、いましかできないことにも積極的に取り組み、自宅でも楽しんでいただけるようなLDHらしいエンタテインメントを作れないかと、連日、メンバーやスタッフでアイデアを出し合い、みなさまに楽しんでいただきたいとの想いでいろいろな準備もしています。ーー休校になったり、職場へ出社せずにリモートワークになったり、外出できない人々がたくさんいるなかで、おすすめの家での過ごし方はありますか。普段、僕は日本にいるときも海外への移動があるときも、ライブやイベントなど地方に飛んでばかりで、とにかく外出が多いんです。家で過ごす時間や自分の時間が少なく、アウトプットばかりしてきたので、むしろいまはこの期間を活用しています。インターネットやSNS、読書や映画などから、さまざまな知識や情報をインプットして、自分自身の成長につなげて生活していますね。ーー予定していたスケジュールが変更になるなど、外出できないストレスを抱えている方もいるかもしれませんが、いま一番心がけることは何だと思われますか。また、AKIRAさんが現在心がけていらっしゃることは何でしょうか。まずは、さまざまな葛藤や恐怖、プレッシャーと隣り合わせのなか、新型コロナウイルスと最前線で戦ってくださっている世界中のドクター、医療関係のみなさまに、感謝の気持ちを持って生活するように心がけています。大変な状況下ではありますが、そんなみなさまのおかげで僕らの生活が保たれて、世界中がなんとか持ち堪え、終息に向かうことができていると思いますので。世界各国で最前線で戦ってくださってるみなさまも、早く安全な私生活を取り戻していただけるよう、まずは、僕ら一人ひとりがいま与えられている使命をしっかり全うして、一刻も早い終息を願っています。もしオンライン飲みをするならファンのみなさんと乾杯したいーーEXILEのメンバーのみなさんも、いまはどのように過ごしていらっしゃるのでしょうか。EXILE TRIBEメンバーの世代を超えて、定期的に情報共有会議やビジョン会議をリモート会議や各自それぞれで話し合ったりしています。先日は、GENERATIONSの数原龍友からもいろいろなアイデアの共有や相談の連絡がきました。とにかくみんなで一丸となって、新たなエンタテインメントを考えています。ーー自宅にこもる人が多いなか、オンライン飲み会をする人もいるようです。AKIRAさんはリモートで、メンバーのみなさんやご友人と盛り上がることはありますか。飲酒はいまの時期は控えていますが、もし、オンライン飲みをするなら、たくさんのファンのみなさんと乾杯してみたいですね(笑)。さすがに、何万人という方々とは、レモンサワー乾杯をしたことがないので(笑)。ーー想像しただけで楽しそうですね(笑)。そんな明るいイメージをずっと保てるといいのですが、もしこのまま自粛期間が長引いて落ち込んでしまうときがあったら、どうやって前向きさを取り戻せばよいでしょうか。落ち込んだときは、自分より大変な思いをしている人が、この世界にどれだけいるのだろうと、イメージしてください。現代の僕らは、きっといろいろな意味で恵まれすぎなのではないかとも思います。もちろん個人差もありますし、そう思えない方々もいらっしゃることは重々承知ではありますが。世界各地では、生まれたときから家も家族もなく、ごはんもろくに食べられず、必死で生きている子どもたちがいます。学びも社会に出ることもできず、必死に生きることだけに日々を過ごしている子どもたちもいます。自分のまわりに存在するどんな小さなことにもすべてに感謝の気持ちを持って向き合えば、きっと、自然と笑顔や幸せを感じでいけるのではないかと。そして次第に、自分の悩みも少しは癒えるのではと思うんです。地球規模で考えて「自分の悩みなんてこんなに小さいではないか!」と思えば、少しは気が楽になるかもしれませんね。僕はそうやって、乗り越えてきました。あと“ピンチはチャンス”ではないですが、ネガティブな状況下だからこそ見えてくる発想やアイデアを見出すように心がけ、さらにプラス思考に持っていき、さらなるビジョンやプランを立てていきます。思い通りにいかないことは当たり前だと思って、常に芯は持ちながら柔軟に対応、変化していける自分作りが大事。“人生日替わり弁当”です、当たり前はない。だからこそ、変わりゆくその日、その日の流れに順応しながら“日替わり弁当”を楽しんでいく。そういう生き方のほうが、ネガティブ思考にならず常にワクワクしていられます。嫌いなことも許し、受け入れ、克服していくことが大事ではないでしょうか。世界を明るくする気持ちと意識で過ごしてほしいーーAKIRAさんのご自宅での過ごし方を教えてください。いまは生活リズムを改める良いチャンスかなとも思うので、朝8時に起きて、自宅でできるトレーニングをし、しっかり朝昼晩、自炊して健康的な生活を心がけています。いま、アスリートや世界のアーティストたちもたくさん、トレーニング方法をアップしてくださっているので、参考にすることも。僕は、日頃からEXILE専属トレーナーとしてお世話になっている『コアパフォーマンスジムPCP』の吉田輝幸さんのメニューをこなしているんです。女性の方にも簡単にできる内容もありますので、YouTubeなどでチェックしてみてくださいね。ーーいずれ活動自粛制限が解除されたら、AKIRAさんはまず何がしたいですか。LIVEです!ーーLIVEも楽しみですが、自宅でもEXILEのみなさんの音楽を聴いて勇気づけられる方はたくさんいると思います。今後もSNSなどから、近況報告を届けてくださるのでしょうか。自社メディアを充実させていけるよう、メンバー、スタッフと面白い企画を練っている最中です。いまはYouTubeやSNSなど含めて、みなさんと離れていても自分たちのエンタテインメントを共有できるツールがたくさんありますよね。離れていてもワクワクしていただけるような企画や、ゆくゆくは家からでも体感できるLIVEシステムや音楽配信システムが充実していくとよいなとも考えています。ーーAKIRAさんの今後の活動のご予定は。「LDH PERFECT YEAR 2020」の再開に向けて、準備をしています。先行きは不透明ではありますが、この事態が落ち着きLIVEができる環境になったら、まずは「EXILE THE SECOND PERFECT LIVE」をリスタートできることを願っています。今回の「EXILE THE SECOND」のLIVEは、集大成であり、新たな幕開けともなるべく、進化したLIVEスタイルをお届けできると確信しているんです。以前は、EXILE TRIBE全体として「LDH PERFECT YEAR 2020」の4つのシーズン「IGNITION(1月〜3月)」「IMAGINATION(4月〜6月)」「INFINITY(7月〜10月)」「BEYOND THE BORDER(11月〜12月)」を計画していました。ですが、新型コロナウイルス感染拡大防止による現状の開催期間延長に伴って、ファイナルシーズンとして新たに「RISING SUN〜TO THE WORLD〜(2021年1月〜3月)」をテーマに、開催することを決定しました。「RISING SUN〜TO THE WORLD〜」は、東日本大震災の復興へ向けて「日本を元気に」という想いを込めてEXILE が作った楽曲「Rising Sun」が根本のテーマにあって。東日本大震災とはいままた状況が違いますが、私たちが経験したことがないこの状況を克服し、また新たな未来へと力強く歩んでいこうという希望と願いを表現しています。そして「Rising Sun」にはEXILEがいつも大切にしてきた想いが込められています。かつてない挑戦への絶対に負けないという不屈の精神と、困難を乗り越え次の時代を切り拓いていく力。これまで歩んできたEXILEの精神そのものでもあり、いまでは、EXILE TRIBE、LDH全体に受け継がれている精神でもあります。LDHのエンタテインメントで「日本を元気に」というテーマを掲げ、LDHアーティスト、スタッフ一丸となって、お待ちいただいているみなさまが一人でも多く笑顔になっていただけるように、LOVE、DREAM、HAPPINESSあふれるエンタテインメントをお届けしていきたいと決意を新たにしていますので、ご期待いただき、楽しみにお待ちいただけたらと思います。ーー最後に、ananwebの読者のみなさんにメッセージをお願いします。ananwebをご覧のみなさん、僕のインタビューを読んでくださり、ありがとうございました!現在は大変な状況下ですが、読者のみなさま、そしてみなさまのご家族や身内の方が安全で健康な日々でありますよう、心から願っています。新型コロナウイルスはとても怖いです。どうか、一人ひとりが正しい知識と危機管理意識を持って、日々を生活していただければと思います。手洗い、うがいを徹底して、不要不急な外出は控えて、不確かな情報をうのみにしないようにしましょう。今日、私たちができることをそれぞれの場所で徹底し、こんな時代だからこそ、一致団結し終息に向かっていけたらと思います。暗いニュースばかりの世の中なので、どうかみなさまご自身が世界を明るくしていく気持ちと意識で、日々を過ごしてくださいね。取材後記AKIRAさんの真心がまっすぐに伝わってくる動画とメッセージ。かつてない状況にいるわたしたちですが、AKIRAさんのあたたかい言葉は、「前を向こう」という勇気をくれます。励ましの言葉をくださったAKIRAさん、本当にありがとうございました!AKIRA PROFILE1981年8月23日生まれ、静岡県出身。EXILE、EXILE THE SECONDのパフォーマー、俳優。EXILEの中心核としてグループを牽引し、パフォーマーとしての活動に加え、数々の映画、ドラマ、舞台、声優などさまざまな分野で活躍。2009年、長編映画初主演作『ちゃんと伝える』では日本映画批評家大賞新人賞を受賞。2010年、中国公開のアンドリュー・ラウ監督作品『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』でアジア映画デビュー。2017年、マーティン・スコセッシ監督のハリウッド作品『沈黙‐サイレンス‐』に出演。2018年、三船敏郎の生涯を描いたドキュメンタリー映画『MIFUNE:THE LAST SAMURAI』日本版ではナレーターを務め、2019年、童謡100周年を記念して作られた映画『この道』では大森南朋とダブル主演を果たす。また、アーティスト、役者として活躍するなか、2017年からはアジア人初となるRalph Laurenアンバサダーに就任し、2018年と2019年の2年連続で最高峰ラインPurple Labelの広告イメージモデル契約を結ぶなど、世界に活躍の場を広げている。2020年、小泉堯史監督作品『峠 最後のサムライ』の9月25日公開が控えている。Information
2020年05月13日「ルタオ」人気No.1のドゥーブルフロマージュが、季節限定で苺味に。香り豊かな『北海道苺のドゥーブル』が、通信販売に登場します。下層のベイクドチーズに合わせたのは、シェフが農園で出会った北海道産苺。晴れの日が多く、昼夜の寒暖差が大きい北海道十勝で栽培された苺です。ほど良い甘みがあり酸味は控えめで、スイーツに最適なフルーツです。ミルク感豊かなレアチーズ層上層のレアチーズには、北イタリア・アンブロージ社のマスカルポーネチーズを採用。何度も試作を積み重ね、深い甘みとコクを漂わせるミルク感を引き出し、一層なめらかな口どけを実現しています。味の基礎となる、ルタオ特製生クリーム味の基礎となるのは、ルタオ特製・北海道産の生クリーム。乳脂肪分42%の濃い味わいながらも、北海道てんさい100%のビート糖を加えて、不思議なくらいすっきりした味わいに仕立てています。苺の味わいを感じながらもふわりととろける苺とフランボワーズでピンクに色付いたスポンジクラムとともに、ひとつになって口の中でふわりととろけます。商品詳細■商品名北海道苺のドゥーブル■商品価格1,728円(税込)※送料別/890円■大きさ直径12cm■販売期間2020年5月10日まで■お届け期間2020年5月15日まで■商品詳細その他にも、「北海道苺のドゥーブル」を含む特別送料のセット商品や、贈り物にもぴったりなフラワーアレンジメントとのセットなど、バリエーション豊富に用意。▼ルタオ公式オンラインショップ※ご注文期間中でも商品がなくなり次第販売を終了。限定商品のご注文はお早めに。
2020年04月30日音楽をこよなく愛する、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。【音楽通信】第34回目に登場するのは、メンバーそれぞれが自分の趣味に特化したコアなオタクで、秋葉原を拠点に国内外で活躍している6人組アイドルグループ、でんぱ組.inc(でんぱぐみインク)!写真・黒川ひろみ秋葉原から世界のでんぱ組.incへ写真左から古川未鈴、相沢梨紗。【音楽通信】vol. 34メンバーそれぞれが、アニメ、漫画、ゲームなど自分の趣味に特化したコアなオタクで、「萌えきゅんソングを世界にお届け」をキャッチフレーズに、秋葉原を拠点に活躍している古川未鈴さん、相沢梨紗さん、成瀬瑛美さん、藤咲彩音さん、鹿目凛さん、根本凪さんからなる6人組ユニット、でんぱ組.inc。2013年にはJAPAN EXPOに日本代表として出演し、2014年度は東アジア文化都市2014横浜親善大使を務め、2015年はワールドツアーも敢行するなど国内のみならず、海外でも活躍しています。2019年1月には、約2万人を動員した日本武道館公演2daysを開催し、夢眠ねむさんが卒業して、現在の6人体制に。12月に行った幕張メッセ2days公演「幕張ジャンボリーコンサート」の模様をおさめた映像作品は、2020年3月25日に発売されました。今回、4月15日にニューアルバム『愛が地球救うんさ!だってでんぱ組.incはファミリーでしょ』をリリースされるということで、でんぱ組.incから古川未鈴さん、相沢梨紗さんにお話をうかがいました。ーーまずはおひとりずつ、自己紹介からお願いします。古川未鈴「みりんちゃん」こと古川未鈴です、テーマカラーは赤です。もともとゲームが好きで、いろいろなきっかけがあって秋葉原に来て、メイド喫茶で働き始めて、ディアステージ(秋葉原のライブ&バーであり、でんぱ組.inc他が所属する芸能事務所)へ入ったんです。そこで、「どうしてもアイドルグループが作りたい」と、もふくちゃん(でんぱ組のプロデューサー)に直談判して、紆余曲折あり、いまのでんぱ組.incが結成されました。相沢梨紗「りさちー」こと、相沢梨紗です。テーマカラーは白で、でんぱ組.incのリーダーをさせていただいております。「2.5次元伝説」が私のキャッチフレーズなんですが、もともとオタク気質で、声優さんのラジオをよく聴いていました。そしてコスプレをしたり、メイド喫茶のメイドさんをしたりと秋葉原に通うようになった後、ディアステージに入って、でんぱ組として活動するようになりました。古川未鈴(ふるかわみりん)。9月19日、香川県生まれ。A型。でんぱ組.incのセンター。オタクジャンルは、ゲーム。ーーそもそも、おふたりがアイドルになろうと思ったきっかけは何だったんでしょうか。古川私はもともとSPEEDさん、モーニング娘。さんなどの女性アイドルに憧れていたんです。学生の頃にすごくいじめられていたので、アイドルのようにみんなが憧れるようなキラキラした人になれたら、いじめていた人を見返せるんじゃないかと思ったことから、アイドルを目指しました。だから、ひとりではなく、どうしてもグループでのアイドル活動がやりたかったんです。所属しているディアステージでは、その当時、アイドルグループよりもソロシンガーで活躍する人が多くて。でも、どうしても人を集めてアイドル活動がしたいと思って事務所に直談判して、(相沢)梨紗ちゃんなどにも加入してもらい、でんぱ組.incができたという感じですね。私はアイドルになりたくてなったんですが、他のメンバーはどちらかというと、アーティスト志望だったり歌手志望だったり、アイドルになりたいっていう動機の子はほとんどいなかったという、不思議なグループなんですよ。たぶん、梨紗ちゃんも、「アイドルになりたい」とは思っていなかったよね?相沢梨紗(あいざわりさ)。8月2日、大阪府生まれ。A型。でんぱ組.incのリーダー。オタクジャンルは、2.5次元。相沢私は声優さんになりたくて、声優さんをしつつ歌唱をしている人にあこがれていたので、いろいろな活動ができればいいなとは思っていました。でも、私は秋葉原に来るまで歌や踊りもしたことがなかったですし、そんな急にはできないですし。アイドルになりたいというよりも、なれないから、なりたいとも思っていなかったんです。当時、でんぱ組に入ると「ゲームの歌が歌えるよ」と聞いて、「じゃあ、やりたいです!」とオーディションを受けて入れてもらって、気づいたらアイドルになっていました(笑)。だから、アイドルになりたかったわけではなかったのに、だまされたわけではないんですが……。古川それはだましてますね(笑)。相沢ははは(笑)。だから「あれ?アイドルになりたかったんだっけ」と思いながら、でんぱ組を始めたんです(笑)。オタクからしたら、三次元で輝いているアイドルに対しては、もはや嫉妬の感情しかないんですが(笑)。私は自分から音楽を聴いてもこなかったので、音楽活動をしているいまが不思議な感じです。ーーそういった経緯がありながらも、実際にアイドルとしてご活躍されていていかがですか。相沢「人って、めちゃくちゃ変われるんだ」と思いましたね(笑)。「でんぱ組.inc」になる前の、初期の「でんぱ組」に入ったとき、私はダンスも踊ったことがないのでツーステップも踏めなかったんです。学生時代も体育の授業はできる限りサボっているようなタイプで……。でも、マネしちゃダメですよ、授業はサボっちゃいけません(笑)。ただできる限り、ドッジボールをしてもはしっこにいるとか、そんな運動が苦手な人間だったので、それがいますごくはやい曲を歌いながら踊れるようになるというのは、やり続けていると、人は変われるんだと思いました。いまはけっこう踊るのも歌うのも好きになったんです。古川私は人に興味のない人生を送ってきたんです。それこそ梨紗ちゃんからは、自分の世界だけで生きている“古川未鈴は人間じゃない”ぐらいのイメージを持たれていて(苦笑)。相沢そうだね(笑)。古川でも、でんぱ組.incを通じて、私自身の意識が変わってきました。活動していると、応援してくださるファンのみなさんは、心から応援してくれているんだなということを肌で感じるじゃないですか。そういうときに、みなさんにもっと喜んでいただけるようにという意味でも、私は「とにかくアイドルだけで生きていればいい」とより強く思いますね。相沢そう、わりと人って、優しいんだなと思いますよね。私たちは本当にオタクの集まりーー国内外でご活躍されているでんぱ組.incさんですが、2019年1月に夢眠ねむさんがでんぱ組.incから卒業されてから現在までに、心境の変化などありましたか。古川ねむさんはメンバーをまとめてくれていた方で、すごく優しいので、私にない人間味の良さを120パーセント持っている方だったんです。そういう方が卒業するとなって、グループが空中分解するんじゃないかと、ちょっと不安でしたね。でも、いまの6人でも、ちぐはぐしながらもなんとかやってこれている状態ではあります。相沢私たちは本当にオタクの集まりなので、すごく得意な分野もあれば、すごく苦手な分野もあって。ねむさんは、秋葉原に来たことがない方やアイドルを初めて知るような方に「こういうことを伝えたいんですよ」とか、未鈴ちゃんが「こんな気持ちでいるんです」、梨紗が「ボケているようですけどこう言ってるんです」という、メンバーの状況を説明する架け橋の役割をしてくれていたんですよね。それは外でもそうですし、グループのなかでもそれぞれの共通言語を見出す役割を担っていたから、いままでねむさんに頼っていたところを「どうしようか、そこ」となっちゃいましたね。古川私たちが話す内容は、まわりにあまり伝わらないことが多いんです(笑)。そういうときに、「あ、通訳のねむさんがいない」と気づいて、自分の話し方を反省することもあります。家族のようになってきたでんぱ組.incーー2020年4月15日に、6枚目のアルバム『愛が地球救うんさ!だってでんぱ組.incはファミリーでしょ』を発売されますね。相沢毎回、良いアルバムなんですが、今回は本当にめちゃくちゃ良くて。でんぱ組.incとしては珍しく、じっくりと「でんぱ組らしさとは何か」ということを考えて、純粋にこのアルバムのために楽曲を作っていったというイメージの作品です。古川今回はコンセプチュアルなオリジナルアルバムで、2019年にやってきたことがすべて入っている集大成。そもそもの2019年のテーマが「愛」「ファミリー」だったので、リリースまでに1年半ぐらいの時間をかけた壮大な作品です。1曲、1曲に、このアルバムに収録をしていった意味があると思っています。ーーでは、1年半前に、すでに「愛」と「ファミリー」をテーマにして活動されていたのですか。古川アルバムの最後の「いのちのよろこび」という曲が、現体制で走り出した1枚目のシングルだったんですね。そのツアーが2019年の初頭で、そのときに「でんぱ組っていろいろな背景がある子の集まりだけど、やっと今になって大事なのは愛なんじゃないか? と気付きはじめた」ということをプロデューサーが言い始めて。私は日常会話で「愛がさあ〜」とは、なかなか言わないんですが。相沢うん、なかなか言わないよね(笑)。古川10年ぐらいでんぱ組.incをやっていて、前まではメンバーのことを「一緒に走り抜けてきた仲間」や「戦友」という気持ちがあったんです。でも、2017年12月の大阪城ホール公演で、ぺろりん(鹿目凛)、ねもちゃん(根本凪)がでんぱ組.incに入って「家族っぽくなってきたな」という雰囲気になって。そんな家族のようなメンバーと一緒にいる気持ちから「いのちのよろこび」という曲ができて、それで2019年を走り続けてきた現在しか歌えないアルバムになっていると思います。相沢ねむちゃんがいて7人でツアーをまわっていたときは、いわば宇宙でいろいろな探査をしていた時期。そのなかで、私たちが見つけてきたものが愛なんじゃないかと思っています。もちろんこのアルバムにねむちゃんの声は入ってないんですが、愛の意思も受け継ぎつつ、これまでの歴史のなかででんぱ組の歴史も感じつつ、ここに辿り着いているのかなって。ーーそんな楽曲が14曲収録されています。どの曲も大切だと思いますが、とくに思い入れのある1曲を選ぶとしたら、どの曲でしょうか。古川う〜ん、1曲。相沢1曲となると……どれも良いんですよね。なんとか2曲にしてもいいですか(笑)。このなかで、ライブをしていて一番「いいなっ」とより好きになったのは、アルバムのタイトル曲にもなっている2曲目「愛が地球救うんさ!だってでんぱ組.incはファミリーでしょ」ですね。この曲は、2019年12月に2日間行った幕張メッセ公演で初めてお披露目した曲なんですが、そのときにすごく素直にいまの気持ちや宣言を歌える曲で、いまのでんぱ組.incらしい曲だと感じています。そしてアルバム用に作った新曲があるんですが、8曲目「桜が咲く頃に」は、(3人組バンドの)LUCKY TAPESさんのKai Takahashiさんが書いてくださった曲なんです。もともとLUCKY TAPESさんが好きでよく聴いていて、今回のアルバムタイミングで曲を作っていただきました。作っていただいてからわかったのですが、LUCKY TAPESさんの「MOOD」という曲とまったく同じ音を「桜が咲く頃に」でも使っているそうで、このアルバムがなかったらそんな嬉しいことはなかったかと思うと、感慨深いですね。ーーこの曲はラップがありつつもメロウな感じのアンニュイな曲ですよね。相沢そうですね。曲の分布図のようなものをサウンドプロデュースのYGQさんが作ってくれたんですが、「でんぱ組のなかには、おだやかでラップぽい、エモ目の曲がないよね」ということを発見してくれて、こういうタイプの曲にもアルバムで挑戦してみようということで作ってくれたのですが、難しい歌でしたね。古川気づくと口ずさんでいるのが、4曲目の「もしもし、インターネット」です。この曲は、高校1年生のシンガーソングライターの諭吉佳作/menさんが作ってくれた曲で、家族というテーマのなかで、年若い諭吉さんがこういう曲を作ったという事実自体がなんかいいなと思って。諭吉さんはでんぱ組.incのメンバーではないですが、こうやって新しく“でんぱファミリー”が増えていくというファミリー感もいいと思ったし、歌詞の最後のほうで「もうここには残るものもないのに、何ひとつとして諦めたりはしないの」と歌う部分があるんですが、それがいまの心境に合っているんです。歌詞の心境に共感して歌えたので、このパートを歌わせてもらえてよかったなと感じていて、お気に入りの1曲です。誰にとっても優しいでんぱ組.incでありたいーーアルバムのリリース後は、全国ツアー「THE FAMILY TOUR 2020」がスタートしますが、どのようなステージになりそうでしょうか。相沢アルバムの新曲はチャレンジングな曲が多く、私たちもライブでやったことがないタイプの曲がけっこう入っているので、実際にどんなステージなるのかは、やってみないとわからないところがありますね。みんなでアルバムのステージバージョンを作りつつ、これから練習をしていく感じになります。古川ツアーといえば、昨年末の幕張のツアーで私は“サプライズフライング”をしてもらって、会場の宙に飛ばされたんです(笑)。それは私が昨年の9月に、ファンのみなさまの前で結婚発表をしたお祝いフライングだったんですが、「おめでとう!」と言われたかと思いきや、ばーん!と飛ぶ、みたいな(笑)。その結婚発表をしてから初めてのツアーが、今回の「THE FAMILY TOUR 2020」なんです。幕張公演のように単発のものではなく、今回行うツアーのように全国各地をまわるライブは結婚後初めてになるので、観てくれている人もたぶんこれまでと違う目で私のことを見ますし、でんぱ組.incのことも見ると思うんですよ。だから、みなさんにどういう目で映るのかも気になるし、私自身も結婚で人生がガラッと変わったなかでのツアーは、また新しい思いでまわることになるのかなと。いまから、そこは楽しみであり、不安でもありますね。ツアーのこまかいところはまだ詰めきれていないんですが、これまでとはまたひとつ、違ったでんぱ組.incになるかと思います。ーーここでがらりと違うお話ですが、おふたりが普段から美容面で気をつけていることはありますか。古川とくにこのふたりは“美容大好き人間”なんです。やっぱりオタクって、ゲームだったりアニメだったり、何かを突き詰めるじゃないですか。私たちはそういうのも好きなんですが、美容に関して、このふたりはずば抜けて興味があるんですよ。相沢ちょうどこの間、未鈴ちゃん家におじゃまして、「新しいメイクをやってみようか」「このコンシーラーがいいんだよ」とか、情報共有しながらやっていました(笑)。古川めったにメンバー同士、仕事以外では会わないんですよ。相沢メンバーはみんなオタクなので、それぞれの趣味のオタク活動をしなきゃいけないので、趣味が合わないとあまり一緒に何かをやるということもなくて会わないんです(笑)。古川それがこのふたりは、美容という目的だけで会うんです。意見交換をすることもあるので、お互いに美容については気をつけていることがいっぱいありますね。相沢実は2018年末ぐらいから筋トレを始めて、ジムに通い始めて、まわりからは「スタイルが良くなったね」と言われるようになったんです。それで未鈴ちゃんにも「一緒にやろうよ」と言って。古川梨紗ちゃんと同じジムに通いました。同じように食事制限をして、ストイックに筋トレをやりましたね。相沢いまも続けていますが、以前よりは緩やかにやっている感じです。古川食事では「油を絶対に食べてはいけない」という制限があって、サラダチキンをいっぱい食べ、玄米を食べ、タンパク質を摂るという食事スタイルなんです。それを面倒くさがらず、ひとつずつ制限についても、夢中になれるふたりなんです。相沢さっきもずっとそんな話をしていました(笑)。ーーおやすみの日の過ごし方も教えてください。相沢趣味が料理なので、家にいると、ずーっと料理を作ってしまいますね。この間は、自家製ジンジャーエールを作ろうと思って、生姜を買ってきて、お鍋でコトコト煮込んでいました。ジムに通ったことがきっかけで、自分が何を食べているのかをわかっていなきゃいけないと思うようになって、何も考えずに何が入っているかわからないものばかり食べていてもだめだなって、料理に目覚めたんです(笑)。古川でんぱ組.incは、大人なんですよ(笑)。私の場合、お休みの日はひたすら化粧品について調べていますね。いま流行っているものや新発売のものをYouTubeで調べています。やっぱり、いま、かわいくなければ意味がないと思っているんですよ。数々のアイドルのオーディションに落ち続けてきた人間なので、なんとかしてかわいくなりたいと思っているんです。メイクにはこだわりがあって、不自然に見えないようにするとか、そういうものも鏡を見ながら日々研究しています。ーーでは最後に、でんぱ組.incさんとしての今後の目標を教えてください。相沢まずは全国ツアーを成功させたいですね。いままで来てくれている方はもちろん、ちょっと離れちゃったという方、遠くてなかなか行けなかったという方も来てほしいです。それに、こちらの体制が変わったり、曲も変わったりしているので、いろいろな方に「今日、でんぱ組.incに時間を作ってよかったな」と思ってもらえるような私たちでいたいと、そういう気持ちでツアーに臨みたいと思っています。古川私が結婚してもアイドルを続けられているというのは、けっこう奇跡的なことだと思っているんです。みんなにも何かしら恩返しできたらいいなと思っています。みんなが私にしてくれているように、誰にとっても優しいでんぱ組.incであればいいなと。ふわっとした感じではありますが、それが長期的な目標ですね。取材後記明るく、元気で、カラフルなイメージのあるでんぱ組.inc。今回登場してくださった古川未鈴さん、相沢梨紗さんは「あまりこういう写真撮らないかも」と言いつつ、撮影では大人っぽい表情も見せてくださいました。好きなことをとことん追究するすてきなオタクで、アイドルのでんぱ組.incのみなさんがリリースされるニューアルバムをまずはチェックしてみてくださいね。でんぱ組.inc PROFILE古川未鈴、相沢梨紗、成瀬瑛美、藤咲彩音、鹿目凛、根本凪からなる6人組ユニット。メンバーそれぞれがアニメ、漫画、ゲームなど、自分の趣味に特化したコアなオタクで、「萌えきゅんソングを世界にお届け」をキャッチフレーズに、秋葉原を拠点に活躍中。また、東京コレクションほかさまざまなクリエイターとのコラボレーションを活発に展開し、国内のみならず海外からも注目を集め、台北やジャカルタでのファッションイベントにも参加。2013年にはJAPAN EXPOに日本代表として出演。2014年度は東アジア文化都市2014横浜親善大使を務めた。2014年は日本武道館で1万人動員、2015年は国立競技場代々木第一体育館2days単独公演を大成功させた。シングル「あした地球がこなごなになっても」でミュージックチャート1位を獲得。2015年はワールドツアーも敢行。MTV「ワールド・ワイド・アクト賞」の日本部門「ベスト・ジャパン・アクト」のウィナーに。2016年12月、ベストアルバム『WWDBEST 〜電波良好!〜』をリリース。2017年1月、アリーナツアー6公演を開催し、2度目となる日本武道館公演も行う。8月、最上もが脱退。12月、大阪城ホール公演で鹿目凛、根本凪が加入し、2018年4月4日に7人体制となって初のシングル「おやすみポラリスさよならパラレルワールド / ギラメタスでんぱスターズ」をリリース。2019年1月1日、7人体制初のアルバム『ワレワレハデンパグミインクダ』をリリース。1月6、7日に日本武道館公演2daysを開催し、約2万人を動員。この公演で、夢眠ねむはでんぱ組.incから卒業。12月7、8日に幕張メッセ公演2daysを開催。2020年3月25日、昨年12月の幕張メッセ公演「幕張ジャンボリーコンサート」の模様をおさめた映像作品を発売。4月15日、ニューアルバム『愛が地球救うんさ!だってでんぱ組.incはファミリーでしょ』をリリース。InformationNew Release『愛が地球救うんさ!だってでんぱ組.incはファミリーでしょ』01.ファミリーワールド02.愛が地球救うんさ!だってでんぱ組.incはファミリーでしょ03.子丑寅卯辰巳04.もしもし、インターネット05.生でんぱ06.星降る引きこもりの夜07.ボン・デ・フェスタ08.桜が咲く頃に09.形而上学的、魔法10.私のことを愛してくれた沢山の人達へ11.結婚してもMAMAになっても君は永遠にぼくのIDOL12.アイノカタチ13.秋の葉の原っぱで14.いのちのよろこび2020年4月15日発売*CD収録内容は全形態共通(通常盤)TFCC-86710(CD)¥3,000(税別)(初回限定版A)TFCC-86708(CD+DVD)*特典DVDにはMusic Video9曲を収録。¥4,500(税別)(初回限定盤B)TFCC-86709(CD+CD)*特典CDにはメンバー6人のソロ曲を収録。¥4,000(税別)
2020年04月13日音楽をこよなく愛する、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。【音楽通信】第33回目に登場するのは、歌手としてだけでなく、俳優やモデルなどでも幅広く活躍している5人組ボーカルダンスユニット、M!LK(ミルク)!写真・大内香織音楽以外にも多ジャンルで活躍する5人写真左から吉田仁人、山中柔太朗、佐野勇斗、曽野舜太、塩﨑太智。【音楽通信】vol. 332014年11月に結成され、2015年3月にシングル「コーヒーが飲めません」でデビューしたボーカルダンスユニット、M!LK。「何色にも染まることのできる存在に」という意味が込められたグループ名の通り、メンバーは音楽活動に留まらず、ドラマ、映画、舞台、モデルと幅広く活躍しています。2018年にリリースされた8thシングル「Over The Storm」でオリコンウィークリーランキング2位、2019年11月にリリースした結成5周年アニバーサリーシングル「ERA」はトータルセールス10万枚を超え、ゴールドディスク作品として認定されました。2020年2月から、佐野勇斗さん、塩﨑太智さん、曽野舜太さん、山中柔太朗さん、吉田仁人さんの5人編成となったM!LKが、3月11日に3rdアルバム『Juvenilizm(ジュブナイリズム)-青春主義-』をリリースされるということで、メンバー全員にお話をうかがいました。ーーまずはおひとりずつ、自己紹介からお願いします。佐野佐野勇斗、22歳です。特技は書道です。塩﨑塩﨑太智、19歳です。趣味はゲームです。曽野曽野舜太、17歳です。もうすぐ高校3年生になります。人に笑ってもらえたり、笑顔を見ることが好きです。山中山中柔太朗、18歳です。最近、ドライヤーの髪の乾かし方にハマっています(笑)。どうやったら効率良く乾かせるか、研究しています。吉田リーダーの吉田仁人、20歳です。特技はダンスと合気道です。蕎麦、アメフト観戦、盆栽が好きなんですが、最近はゴルフも好きです。5人になっていまはすごくいい現状のM!LKーーM!LKさんは2020年1月まで7人編成でしたが、おふたりが卒業されました。2月からは現在の5人編成となりましたが、心境の変化はありますか。佐野5人になってより一層、団結力を深めたいと思いますし、「後がない」という気持ちでがんばらなきゃなとは思っていますね。曽野“背水の陣”という感じですね!(静まり返るメンバー)佐野……よかった、言わなくて(笑)。山中その言葉、このために残しておいたの(笑)?佐野そう、(曽野)舜太が言うだろうと思って残しておいた(笑)。曽野ありがとう(笑)。もう僕らは、前しか向いていないんです。もし次に誰かが卒業するとなったら、解散するぐらいの気持ちでいるから。それぐらい5人で上を目指す気持ちがかたまっていますし、スタッフさんも含めての強い絆があるんです。吉田字面で“背水の陣”と見ると、危機感があるように見えるかもしれませんが、僕らはいつも笑っているというか。どんな状況になっても「いけるっしょ!」という気持ちで前を向ける5人なので、いまはすごくいい現状だと思いますね。ーー5人編成となって初のニューアルバム『Juvenilizm -青春主義-』を3月11日にリリースされましたね。吉田今回は“シネマティックアルバム”というコンセプトアルバムになっていて、1曲目から順番に聴いていくと、ストーリーが進んでいくように工夫されています。5人になって初めてのアルバムということで、「5人だとどういうものを最初に出すんだろうな?」と思っているM!LKを知っている方も、そして知らない方でも、聴きごたえのあるものになりました。「これが5人のM!LKですよ」と堂々と言える力作になっています。最新作では5人それぞれが主演のショートフィルムもーー“シネマティックアルバム”ということで、メンバーのみなさんがおひとり1曲ずつ、収録楽曲の5曲をそれぞれモチーフにしたショートフィルムも制作され、主演を務めています。佐野さんは、アルバムの14曲目に収録された「君がくれた宝物ならココにある」のショートフィルムでは、新人美容師を演じていましたね。佐野この役がけっこう難しかったんです。“佐野勇斗だけど佐野勇斗”じゃないから。普通は役で別の人物の人生を演じていますが、今回は佐野勇斗役。だけど、パラレルワールドといいますか、違う時間軸を生きている佐野勇斗なんです。この5人の関係も、メンバーではなく、幼なじみという設定になっていて。ショートフィルムの中で、僕は幼なじみのみんなにハサミをもらって、「一流の美容師になりたい」と希望を持つのですが、実際には大変な状況なんです。目指す場所にたどりつけていない自分にモヤモヤするという心情を今回演じてみて、世の中のみなさんのなかにももしかして壁に当たってしまった方がいるとしたら、悩む気持ちに共感することができました。そのあたりは繊細に演じています。ーー吉田さんは、収録曲の5曲目「晴れのち曇り時々虹」に連動したショートフィルムで主演を務めていますね。吉田この曲は、(山中)柔太朗くんとふたりで歌うユニット曲なんです。ストーリーで僕は就活生の役。実際に、就活生のみなさんが経験したことのあるかもしれない、就活があまりうまくいかないという設定です。現実的で、考えさせられる部分が多くて、いろいろな作品を読んで勉強しました。ストーリーでは、うまくいったら「みんなでビールを飲む」という夢があって、支えてくれる仲間がいるから、就活もがんばれるんだと思いました。そういう点では、支えてくれるメンバーがいる実際の自分自身と重なっている部分もあると感じましたね。自分だけど自分じゃないという役なので、「もしかすると自分はこういう人生を送ることもあったのかもしれない」と思うと、別の人生を送る“吉田仁人”を演じるのは難しかったけれど楽しかったです。ーー山中さんは、11曲目の「last moment」ですね。山中はい。「last moment」のストーリーのなかで、僕はフリーターで仕事もせず、ヒモというんですかね。年上の彼女の家にずっと住み込んでいるという男性の役で、面白いなと。でも監督さんと役について話し合うと難しい役だと思いましたが、演じていると、だんだんとこの役の気持ちがわかってきました(笑)。僕とはさすがに正反対だと思いたいんですが(笑)。世の中にいるこういうタイプの男性は、その人にはその人なりの魅力があるんじゃないかなと。年上の彼女が思わず世話したくなるような魅力があると気づいて、演じていて楽しかったです。ーー曽野さんは、6曲目の「DEAR LIFE」をご担当です。曽野はい。このストーリーをひとことで言うと、「運命のマドンナに再会……だが!?」というところです(笑)!メンバー爆笑曽野学生時代に好きだったマドンナに、デリバリーサービスの配達員をしていたら偶然再会するんですが、だが! しかし! という展開(笑)。そこにはマドンナが付き合っているダメ男もいて、しょんぼりしていたら、(塩﨑)太智くんたちと偶然出会って、運命の歯車が動き出していくというストーリーになっています。実生活では、運命のマドンナに再会という経験がなく、まるで夢の世界のストーリーなので、演じていて楽しかったですね。あと偶然この撮影現場で、小学校のときに一緒にサッカーをやっていた友達に出会ったんです。しかも僕、東京ではなく、三重県の出身なんですよ。三重県出身の男同士が、東京のスカイツリーの下で偶然出会うという経験をして、そのことに運命を感じました(笑)。ーー塩﨑さんは、9曲目「Don’t think Jump!」ですね。塩﨑僕は、友達の前で強がってしまう俳優志望という役柄でした。演じてみて、(曽野)舜ちゃんと一緒の場面も多くて、みんなが学生という設定での場面を撮ったときは、ナチュラルに普段の僕らの感覚で演技ができました。でも、大人になったときの場面を撮るときもついはしゃいでしまって、そこがちょっと難しかったところではありましたね。完成したアルバムを聴いてやっと安心ーーアルバムのレコーディングは順調でしたか。山中まあ順調でしたね。曽野いつもメンバーは別々にレコーディングするんです。吉田(佐野さんを見ながら)確か、レコーディングは主演舞台『里見八犬伝』(2019年10月~12月開催)のときだったよね?佐野そうだったね。舞台とレコーディングの日程が重なっているときがあったんですが、舞台で声を張っているから喉を壊してしまっていて。歌えなくて、初めてレコーディングの日程をずらしてもらいましたね。僕が歌う曲数は多いので、喉の調子を見ながら、メンバーのなかでは最後に歌録りをしました。吉田それぞれがレコーディングをしていて、まとめあげて完成された音源を聴いたときに、「おっ!」って思いましたね。「やっと出来上がったな」という実感がわきました。山中7人体制のときに、「5人になる」と決まってからのアルバム制作期間でした。曽野長期的な計画だったんです。吉田なんだその、ロケットを飛ばすような「長期的な計画」って(笑)。それはつまり、ちょうど今回のアルバムは、M!LKが7人から5人体制に移行するタイミングで、じっくりと時間をかけたという意味での長期的な計画です。だから、完成したアルバムを聴いて、やっと安心できましたね。個性豊かな5人のエピソードーーここで趣向を変えて、メンバーそれぞれの普段の行動を見て思う「さわやか」エピソードを本人以外のメンバーの方から、おひとりずつ教えてください。曽野今日カフェに行ったんですが、スコーンを(佐野)勇斗くんが買ってくれて、お礼を言おうとしたら「you’re welcome」って言われました(笑)。吉田ダサい(笑)!メンバー爆笑曽野さらっと「you’re welcome」なんて言葉が出てくるところが、さわやかだなと思いました!佐野文字にされると恥ずかしい(笑)。曽野なんていうか、「どういたしまして」をあえて英語で言うさわやかさが、ニュアンスだけでも伝わればいいなと思います(笑)!吉田あとのメンバーはさわやかさはない気がするんですが……(笑)。佐野僕らには、さわやかさが足りていないのかな(笑)。吉田そういえば、さっき車中でアルバムの曲をみんなで大合唱してきたんです。勇斗もめいっぱい歌っていましたし、これは“さわやか”じゃないでしょうか。曽野(吉田)仁人くんは、スタジオに入るときに「先にどうぞ」って譲ってくれましたね。山中そう、そういうところだね、さわやか!曽野あと仁人くんは、メイクをするときも順番があったんですが、先に譲ってくれました。佐野それはゆっくりしたかったのかも(笑)。吉田話を聞いていて思いました、こうやって人のいいところを見つけられる舜太は、さわやかですね。佐野太智は、アルバムの2曲目「Winding Road」のミュージックビデオで一生懸命自転車をこいでいて、その姿はさわやかです!塩﨑ぜひ見てほしいですね(笑)。曽野太ちゃん、この前ハワイに行って帰ってきてから、「ハワイの男性は常にレディファースト」だと教えてくれました。それ以来、僕も太ちゃんを見習って、レディファーストをまねしています(笑)。吉田意外とあんまり見せないけど、柔太朗は笑顔がさわやかですよ。山中そういえば、以前撮影していたときに、作り笑顔じゃなくて、自然といい感じの笑顔ができたこともありましたね。ーーさわやかエピソード、ありがとうございます。ところでみなさん、好きな女性のタイプも教えていただけますか。塩﨑これは盛り上がっちゃうな(笑)。曽野時間が足りないかもしれない(笑)。佐野好きなのは、笑顔ですね。でも、なんでも笑ってほしいわけじゃないんですよ。流す感じの「ははっ」という笑い方ではなく、ちゃんと僕の話を聞いて、自然と笑顔を見せてくれる人はうれしいですね。あとは家族や同性を大事にする人ですね。女の子同士でいるときに、まわりの女の子にも気をつかえる、優しいタイプの女性は、本当にいい子だと思います。吉田僕は、自分のままでいられる人が一番です。嬉しいときは嬉しい、悲しいときは悲しいと、素直に表現できる人が一番心が強いと思っているので、そういうありのままでいられる人が魅力的だと思います。あとは、笑ってくれる人がいいですね。山中うん、ささいなことでも笑い合える人がいいですよね。僕は、おしゃれな人が好きです。僕と価値観が合うようなセンスの人がいいですね。佐野じゃあ、外見も内面もめちゃくちゃタイプだけど、ファッションがイマイチの女性だと、どうなるの?山中それは……コーディネートを考えたりしたいですね(笑)。でも基本的には、おしゃれな人、服の価値観が合う人だと、うれしいですね。曽野僕はですね、一緒に笑ってくれる人。相手が「ありがとう」って言ったときに、歯が見えるくらいのニコッとした笑顔がいいですね。塩﨑確かに、まず笑ってくれるのは、僕も大前提ですね。そしてたとえばお金を払ったときに、ちゃんと感謝をする人。「あ、払ってくれるのね〜」と流すんじゃなくて、毎回「ありがとう」を言える人、気遣いができる人、料理ができる人がいいです。外見でいうと、清楚な雰囲気が好きですね。これからもどんどんM!LKを広げていきたいーー最後に、今後のM!LKさんとしての目標を教えてください。佐野ヒット曲を出したいですね。楽曲からもM!LKのことを知ってもらいたいので、代表曲がほしいですし、冠番組も持ちたいですね。吉田メンバーで夢を語り合うことがよくあるんですが、僕としてはずっと、「この5人で一生M!LKをやっていたい」と思っています。それぐらい大事なメンバーだし、日本中の人がM!LKを聴いてほしいですし、僕たちのことを知ってもらいたい。目標は、M!LKでドームツアーをすること、紅白歌合戦の司会をすること。日本中の人にM!LKを知ってもらえたら、目標にしていることもできるようになるのではと思っています。大きな夢を掲げて、一歩ずつ地道に進んでいきながら、まずはこのアルバムをみなさんに聴いていただきたいですね。そして2020年、2021年と、どんどんM!LKを広げていきたいと思っています。取材後記佐野さん、塩﨑さん、曽野さん、山中さん、吉田さんらメンバーそれぞれが多岐にわたってご活躍されている、M!LK。取材の合間にも楽し気に過ごす姿を見せてくださって、5人の仲の良さやチームワークの良さを強く感じました。それぞれが織り成すカラーをまとい、これからも全国の女性のハートをキュンキュンさせてくれるはず。まずはニューアルバムをチェックしてみてくださいね。M!LK PROFILE2014年11月結成。佐野勇斗、塩﨑太智、曽野舜太、山中柔太朗、吉田仁人からなる5人組ボーカルダンスユニット。スターダストプロモーション所属。“今この瞬間の感情”を収めた楽曲や、エモーショナルで強いメッセージ性が話題を呼び、注目を集めている。グループ名には「何色にも染まることのできる存在に」という意味が込められており、メンバーは音楽活動に留まらず、ドラマ、映画、舞台、モデルと幅広く活躍している。2015年3月「コーヒーが飲めません」でCDデビュー。8枚目のシングル「Over The Storm」で自身最高のオリコンウィークリーランキング2位、2019年にリリースした結成5周年アニバーサリーシングル「ERA」はトータルセールス10万枚を超え、ゴールドディスク作品として認定された。2020年3月11日に3rdアルバム『Juvenilizm-青春主義-』をリリース。InformationNew Release『Juvenilizm-青春主義-』01. Theme of Juvenilizm-青春主義-02. Winding Road03. かすかに、君だった。04. Searchlight-僕らが僕らになる方法-05. 晴れのち曇り時々虹06. DEAR LIFE07. Ordinary-最高の退屈-08. We’re Here!!!09. Don’t think, Jump!10. Lost and found-am 0:00-11. last moment12. 嫌い13. ERA14. 君がくれた宝物ならココにある(通常盤)2020年3月11日発売ZXRC-2061(CD)¥2,750(税込)(Limited盤)ZXRC-2059(CD+Blu-ray)*Juvenilizm-青春主義-Special Short Film+40Pフォトブック+身蓋箱¥4,950(税込)(初回限定盤)ZXRC-2060(CD)*40Pフォトブック+三方背仕様¥4,070(税込)※封入特典:Limited盤、初回限定盤、通常盤(初回生産分)共通全18種類(メンバーソロ各3絵柄メンバー全員3絵柄)のトレカから1枚ランダム封入
2020年03月27日音楽をこよなく愛する、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。【音楽通信】第32回目に登場するのは、“上地雄輔”として俳優やタレント活動も行うなかで、今年歌手活動12年目を迎える、遊助さん!写真・黒川ひろみ応援してくださる方が作ってくれた“遊助”【音楽通信】vol. 32俳優の上地雄輔さんが、2009年からソロ名義の「遊助」として行なっている歌手活動は、今年の3月で12年目を迎えます。時に役者としてシリアスな姿を披露し、時にバラエティ番組でチャーミングな表情を見せ、時に多くの人たちを勇気づける歌を歌う、遊助さん。そんな多彩な活動を展開している遊助さんが、2020年3月11日に9枚目のアルバム『遊言実行』をリリースします。今回は、アルバムでコラボレーションをした大人気YouTuberのフィッシャーズから、んだほさんも途中登場。遊助さんらにお話をうかがいました。ーーあらためて、「遊助」名義で歌を始めたきっかけから、教えてください。以前、『クイズ! ヘキサゴンII』という番組に出演していたときに、僕がいた羞恥心というユニットでのライブがあったんです。そのとき、ライブでひとり1曲ずつ歌うコーナーがあって、それぞれ歌を用意することになり、僕は事前に「ひまわり」という曲を作りました。当初「ひまわり」はライブ用に作った曲だったので、CDにしたいとはまったく考えていなかったんです。でも、SNSで話題になったり、番組への問い合わせもたくさんあって「CD化してほしい」という反響もあり、2009年3月にシングル「ひまわり」としてリリースして、遊助名義での歌手活動がスタートしました。ーー2009年以降から現在まで、コンスタントにCDリリースとライブ活動をされています。ご自身では、音楽活動についてどのようにお考えでしょうか。気づいたら、1年間のほとんどを音楽活動が占めているほど、大事なものになっています。昔は番組企画やユニットという傘の中に入っていましたが、いまは傘に入っていなくて、一本立ちしました。ひとりになると、制作時間や打ち合わせ、人選びやリハーサルなど、やらなくてはいけないことがいろいろとあるので、責任感がより増しましたね。2020年3月11日で、遊助の活動が12年目に入るんです。できるだけ続けようとは思っていましたが、ソロ活動を始めた当時はこんなに続くとは思っていませんでした。もともと歌を歌おうと思っていたわけではなかったですし、歌手になりたいとも思っていなかったから。でも、それはいまが楽しくないというわけではなく、歌手活動はもらった命といいますか、応援してくださる方が作ってくれた“遊助”だと思っています。与えられた場所がけっこう光り輝いているので、そのぶん自分でやらなきゃいけないこともたくさんありますし、背負わなきゃいけないものもたくさんあるからこそ、続けていって少しでもみなさんに恩返しがしたいんです。アルバムには第2ステージに行く気持ちを込めたーー3月11日に、9枚目となるアルバム『遊言実行』をリリースされますね。『遊言実行』は、遊助として10年が過ぎて、第2ステージへ行く気持ちを込めています。年齢も40歳になって、いろいろな人への恩返しはもちろん、聴いてくださるみなさんに向き合う気持ちで、さらに僕がみなさんの背中を押すことで、やりたいことを行動に移してほしい、勇気を出してほしい、そういうエールを込めて音楽を作り続けようとこのタイトルにしました。ーーアルバムでは、“遊turing”と題したコラボレーションをされています。今回、んだほさん(フィッシャーズ)、サイプレス上野さん(サイプレス上野とロベルト吉野)、MaRuRiさん(まるりとりゅうが)といった幅広い世代の3組が参加していますね。毎回、さまざまなジャンルの方とコラボレーションをやってきました。応援してくださる方は、同世代や年配の方はもちろん、10代や20代の方も多いので、そういった年齢の人たちなどともおたがいに高め合えるようなコラボをしています。歌手活動を10年もやっていると、どうしても方程式というか、「こうすればいいだろう」というものができてしまうんです。40歳になったこともそうですが、20年も芸能界にいると、「なんとなくこうやっとけばいい」という自分の言い訳がうまくなってしまうところもありますが、それはつまらないし、飽きちゃうんです(笑)。だから、いろいろな分野で活躍している人たち、さまざまな世代の人たちと組んで、刺激をもらわないといけない。やっぱりアーティストって、アウトプットしていくことが多いので、違う環境で育った人たちの感性が知りたいですし、話を聞いていかないと、視野が狭くなってしまうんです。僕のように、若くもない、ベテランでもないというポジションは、上の人たちからも下の人たちからもいろいろなものを学んでいかないと、いつかカラカラになってしまうので。視野を広く、いつも受け入れる余裕を持って、なんでも吸収できるスポンジのような状態でいることを大事にしています。コラボしたフィッシャーズ、んだほ登場写真左から遊助、フィッシャーズのメンバー、んだほ。ーーここで、今回コラボされたうちのおひとり、YouTuberのフィッシャーズのメンバー、んだほさんが取材に駆けつけてくださいました。んだほさんは、もともと遊助さんとお知り合いだったのですか。んだほもともと遊助さんのファンで、勝手ながら、応援させていただいていたんです。YouTuberとしての活動をやるなかで、遊助さんにたまたま僕のことを知っていただく機会があって、遊助さんのライブで楽屋にお邪魔させていただいたときに、そこから話がふくらんで今回のアルバム参加にまでつながりました。今回「よかったら一緒にやろうよ」と遊助さんから言っていただいて、僕からすると「いいんですか!?」という歓喜でしかないんですが、そうしてコラボが始まったんです。遊助さん、ですよね?遊助そうです! いつもひとりで取材を受けているから、ふたりだと自分が話さなくていいときがあるって、なんかうれしいなと思って話を聞いていました(笑)。ーー確かにソロインタビューとは違う感じですよね(笑)。遊助さんは、んだほさんがご自身のことをお好きだと、ご存知だったのですか。遊助最初はスタッフさんから、んだほのことを聞きました。YouTubeで活躍している人とはわかっていましたが、僕はSNSに疎かったので、んだほが応援してくれているという話を聞いてから、しっかりと動画を見させていただいたんです。んだほはがんばっている子で、僕も感化されましたし、刺激になって、インスタグラムからダイレクトメッセージを送らせていただいて。すると、んだほが、当時の彼女でいまの奥さんに「プロポーズしたんです」と、「今年もライブに行きます」と言うので、だったらお祝いが言いたいから、ライブでは楽屋に来てよと伝えたんです。んだほちょうどプロポーズしたその日に、遊助さんからメッセージをいただいたんですよ。そもそも遊助さんが、前はやっていなかったツイッターやインスタグラムを始めて近況をファンに聞かせてくれるようになったことも、すごくうれしかったんです。遊助マジ?んだほめっちゃマジです! 結果として、インスタがあったから、連絡もつながったので、さらにうれしい!ーーんだほさんは遊助さんの大ファンだそうですが、どのぐらい昔からお好きなのですか。んだほ普段アップしているYouTubeでも、遊助さんのグッズを持って紹介していたり、遊助さんのグッズのハーフパンツを履いて出たり。ツイッターに、遊助さんのライブに行った話もあげていて、それをファンのみなさんがご本人に伝えてくれたというか、つなげてくれたのかなと。僕からしたら、この展開は本当に不思議なことですね。遊助んだほの気持ちは、めちゃくちゃうれしかったです。ライブで楽屋に来てくれたときも、泣きそうな顔で来てくれて、本当にすてきな人だと思いました。そうやって僕を応援してくださる仲間、クルーのことは自分自身でも誇りに思っているので、恩返しできたらいいなと思ったんです。んだほうれしいですねえ(笑)。ーー実際にお会いできるようになって、遊助さんの印象はいかがですか。んだほ遊助さんは本当に、光っています(笑)!遊助光ってる(笑)?んだほ出会って半年経ちましたが、ずっと遊助さんは光っています! 遊助さんにお会いする日が来るまで、カレンダーを見ながら、日が近づくたびにドキドキしてしまいますし、前日の夜はさらにドキドキ。遊助実は、取材でこうして一緒に話すのは、初めてなんですよ。んだほだから今日も緊張しています。声がいつもより小さいです(笑)。コラボ曲は、遊助から、んだほへのお祝いソングーーではここであらためて、んだほさんが所属されている「フィッシャーズ」はどんなグループなのか、普段のご活動を教えてください。んだほ中学校の同級生で組んだチームで、変わらずみんなで遊んでいるところをたまたま動画に撮っていて、みんなで観れるようにYouTubeにあげていて、その延長が10年ぐらい続いています。毎回テーマは決めず、歌や運動など、いろいろなことに挑戦しながら“みんなで遊んでいる”という動画をあげているのが、フィッシャーズです。たまに休みますが、基本は1日、1本か2本は動画をあげていますね。遊助こうやって活躍しているYouTuberの人と一緒になるのは、普段ほとんどないんですよね。たまに音楽番組などで一緒になるときに、ご挨拶に来てくださったりということはあったとしても、話す機会がなくて。僕はすごくアナログ人間ですが、YouTubeなどのSNSで活躍している子たちが、どういう感性を持っていて、どういうふうに活動しているのかを知るのは刺激的です。それこそ、いまはさまざまなチャンネルが増えて、いろいろな媒体が増えるなかで、YouTubeで活躍するんだほの真っ直ぐさ、努力家だからこそのエネルギーで続けている姿勢が勉強になりましたね。んだほこの取材の音声をください(笑)!めっちゃうれしいです(照)!ーー今回、遊助さんとんだほさんは、アルバムの3曲目に収録された「HERO宴 遊turingんだほ」でコラボされました。遊助さんが、んだほさんへのお祝いの気持ちを込めて書き下ろしたメッセージソングになっているんですよね。遊助そう、奇跡が重なったから。んだほが楽屋に来たとき、んだほの彼女も一緒だったんですが、「遊助さんのライブでこの子と会ったんです」という話を聞いて、ビックリしました。人との出会いは一期一会ですし、そのときの高ぶった気持ちやうれしさ、お祝いの気持ちを「曲にして作らなきゃ」と思ったんです。そして、「こんなのないから一緒にやっちゃおうぜ」って。んだほその後、ご連絡先を交換させていただいて、「こういうテーマにしたいんだけどいいかな」と曲の相談をしてくださって、「HERO宴 遊turingんだほ」という、おめでとう! な感じの曲になりました。ーー実際に完成した曲を聴いていかがでしたか。んだほ毎日聴いてますが、「やった、できた!」という気持ちと、不思議だなという気持ちと、いろいろな気持ちがこの曲を聴くたびにあふれ出てきます。遊助さんのようにマルチに活動したいので、遊助さんを目標にして、3、4年前から僕も歌の活動をしているんですよ。遊助目標にする山が低い(笑)。でも、ありがたいですね。ーー今回、おふたりで歌っていますが、レコーディングはいかがでしたか。んだほ遊助さんはめっちゃ録るのはやいんですよ。僕が慣れてないのもあるんですけど。遊助それは「遊turering」でコラボした人みんなに言われる。「めちゃくちゃはやいね」って(笑)。んだほ遊助さんは役者もされているので、曲の世界観のイメージが固まっているといいますか、レコーディングでは集中力がすごいんです。「うわあっ!!」と感動して見ていました(笑)。遊助レコーディングはすごく楽しかったし、親戚や弟が急に現場に入ってきた感じもありましたね。んだほも緊張感を持って歌ってくれましたし、いっぱい練習してきてくれたんだろうなというものを感じました。歌には人柄が出てしまうものですが、んだほの場合、仲間や家族に愛情をたくさんもらってきているんだろうなということを感じて。親心じゃないですが、大きくなったねって、すくすく育ってよかったなって思いましたね(笑)。ライブは見えないところも含めての連携プレーーーんだほさん、貴重なお話をありがとうございました。ここでソロインタビューに戻りますが、「レコーディングがとてもはやい」というお話がありましたね。ほかの人たちがどうやって作っているのか、覗いたことがないからわからないのですが、けっこう言われますね(笑)。一気に歌詞の世界に入り込んで歌いますし、芝居もそうですが、何回も同じことをやりたくないんです。芝居だと、ドライやテストというものをやって、同じ芝居を何度も確認するんですが、僕は本番用にとっておくんです。相当、めんどくさいと思いますよ、共演者にとっては(笑)。でも、最初に「上地雄輔は本番でこういうことやるやつ」という取り扱い説明書を渡しておくというか、伝えておけばいい。さすがにまったく違うことを本番でやらないですが、“これをパッとやって、あれもパッとやって、はい次!”というリズムが体に入っています。バラエティもやらせていただくので、瞬間的に物事をとらえるといいますか、切り替えがはやいんです。ーーリリース後は、4月18日に横浜の山下埠頭でライブもありますし、7月4日からは全国ツアーが行われます。4月18日は誕生日なんですが、地元の横浜に帰って、山下埠頭で大きな野外ライブをやります。小さい子もおじいちゃんおばあちゃんも、久しぶりに来た人でも、一発で虜にさせられるような、いやなこと忘れてみんなで大騒ぎできるライブを考えています。さらに、今年のツアーはホールツアーをやらせていただきます。ちゃんと箱(ホール)があるので、そのなかでエンタテインメントとして、何十回観ても楽しいものにしようと。もしもライブがどういうものかわからない人でも、僕の曲を知らない人でも、盛り上がることができるショーにしたいと思っています。ライブは、連携プレーですよね。お客さんは、たとえば一緒に連れて来た彼氏が笑っていなかったら彼女も笑いにくいし、前に座っているおじさんが肩を揺らしていないと笑いにくいし。ステージだけがライブではないから、僕ひとりだけではなく、見えないところでスタッフさんががんばってくれていたり、警備員の人も、もぎりの人も、そういう見えないところも含めて連携プレーで、ひとつのライブだと思っているんです。そこを意識しておかないと、誰かひとりでも疲れたり楽しくなかったりすると、どんどん負の連鎖になりがち。リハーサルに入る前から、そこの意識は高めて、チームとして作り上げています。そんな“チーム遊助”として、どういうものを作り上げていくのか、スタッフやパフォーマーもどういう意識でいるかが大事なので、ツアーはそこから気合を入れていこうと思います。いつもインプットするために仲間と過ごすーーお休みのときは、どのように過ごしていますか。結局、休みの日も仕事しちゃうんですよね。「いまのうちに曲作んなきゃ」「いまのうちに台本読んどこう」って。趣味がないんですよ。ゴルフはたまにやるんですが、それは一緒に行くやつが楽しいから行くだけです。野球もやっていましたが、草野球チームを作っているわけじゃないし、波乗りもしますが地元の知り合いがいるから行くだけで。打ちっぱなしにひとりで行くわけでもないし、バッティングセンターでストレス解消することもないし、カラオケでひとりで歌うのもないんです。一緒にいるやつが楽しいから、どこかに行くだけです。友達と飲みに行くこともありますが、ひとりでは行かないので、そういう意味では、仲間に恵まれていますね。常に仕事を意識してしまうから、いつもインプットしないといけないと考えています。道で「この前、犬のうんち踏んじゃってさあ」ってバラエティで言おうとか、「この前振られたんだ」という話を聞いたら、「この役に活かせるな」と思ったり、ずっと何かの日常を描かなきゃいけないから。それを自分から出し続けてばかりだと、からっぽになってしまう。だから、どこの場所に行くにしても、誰かが行くなら行く。そこに行ったら、面白い話はありそうかなって、結局、仕事になってしまうんです。何もしないでいると、「ヤバい、家にいちゃダメだ! 外ならまだ面白いことがあるかも」って、その生活が当たり前になっています。自分のために生きている人がいいーー話は変わりますが、好きな女性のタイプを教えてください。自分のために生きている人がいいですね。冷たい言い方かもしれませんが、他人に「こうであってほしい」という期待をしていない人。それは女性に限らず、友達でもそうかもしれません。たとえばSNSが普及してから情報がいっぱい入ってくるようになって、その情報を自分のものと思いがちですよね。知らないうちに他人に期待していて、自分が思ってもいないことが書かれたり、反応されたりすると、怒ったり悲しんだりしやすい。でも人間は、そのときどきの感情があるから、自分の思い通りの答えが返ってこないときもあるし、以前とはまた考えが変わってしまうこともあると思うんです。なんでも自分の思った通りに相手が反応しないこと、期待をしすぎて違う反応をしたときに、悲しむ人は多い気がします。昔はテレビに出ている人はあこがれの対象でしたが、いまは親近感のある人がよくなってきて、さらに自分を肯定できる人、わかってくれる人ばかりを好きになるという風潮もありますよね。そういったことに流されずに、友達でも恋人でも家族でも、尊重し合うことが大事だから、自分のなかでの「こうであってほしい」という期待を押しつけない人が好きなんです(笑)。40歳になったいまがいちばん楽しいーー今後は、どのような未来を思い描いていますか。10年後も、こんな話をしていたいなって思いますね。実は30歳のときも、同じことを言っていたんです。「やっと30歳になった、何も成し得ていないけど、ここまで来たぞー!」と。なんとか生き延びたと思っていたんですが、30代は大変でしたね(笑)。もう1度自分を見つめ直すという、30代だった気がしています。とはいえ、30代ももちろん楽しいこともありましたが、40歳になったいまが、いちばん楽しいです。だから、50歳になっても同じことを言っていたいと思いますし、そうなれるように、37歳、38歳、39歳をがんばったんですよ。これは30代に限らず、10代なら17、18、19歳。20代なら27歳、28歳、29歳。30歳なら37、38、39歳。40代なら47歳、48歳、49歳といった具合に、どの年代でも後半の“7、8、9歳”の3年間をがんばればいいと思っていて。次の年代にあがったときも「絶対楽しくなる!」って勝手に言っています(笑)。だいたいこの3年間は、まわりでも自分を見つめ直すやつが多いんです。子どもの7、8、9歳だと、急に小学校のルールにとまどうようになったり、17、18、19歳も「あれ? 思ったより夢がかなわないぞ」って気づいてきたり、27、28、29歳も「結婚しなきゃいけないのかな」とか。僕も失敗をいっぱいしてきたんですが、なんだかんだで駆け抜けてこれたので、40歳になったいまも楽しいんです。だから、未来に「50歳になっても楽しい」と言っているように、まだ先ですが47、48、49歳もがんばりたいと思います(笑)。取材後記アーティストとして、全力で音楽に向き合う遊助さんは、自然体ながらも、とても熱いパッションを感じさせてくれました。きっと50歳になっても、ポジティブなオーラとさわやかな笑顔を絶やさず振りまいてくれるでしょう。フィッシャーズのんだほさんも、遊助さんへの愛いっぱいのお話をありがとうございました。ソロデビュー12年目を迎える遊助さんのニューアルバムをまずはチェックしてみてくださいね。遊助 PROFILE遊助(上地雄輔)。1979年4月18日、神奈川県生まれ。俳優、タレント活動の他、歌手として、ソロ名義では「遊助」として活動。2009年3月11日、シングル「ひまわり」でアーティスト「遊助」としてデビュー。以降、コンスタントに作品リリースとライブ活動を展開。2020年3月11日、9枚目のアルバム『遊言実行』をリリース。4月18日に、遊助250回記念LIVE「宴」を横浜の山下埠頭の特設会場で実施。7月4日から「遊助 2019年全国ツアー」を開催する。InformationNew Release『遊言実行』(収録曲)01.JACKPOT02.千羽鶴03.HERO宴遊turingんだほ04.俺達には明日があるんだ05.Pom Pom06.Why7.砂時計8.場外HOMER 遊turing サイプレス上野9.wind10.桜遊turing MaRuRi(まるりとりゅうが)11.俺と付き合ってください。12.3分30秒のタイムカプセル13.ありがと。2020年3月11日発売(通常盤)SRCL-11437¥3,500(税別)※CDのみ。(初回限定盤A)SRCL-11433~11434¥4,500(税別)※CD+DVD。CD収録曲は通常盤の12曲目まで同じ。(DVD内容)1.HERO宴遊turingんだほ -Music Video–2.-Documentary of 遊言実行-(初回限定盤B)SRCL-11435~11436¥4,500(税別)※CD+DVD。CD収録曲は通常盤の12曲目まで同じ。(DVD内容)1.遊飯Special in 北海道2.Making of 北海道
2020年03月06日音楽をこよなく愛する、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。【音楽通信】第31回は「番外編」! 雑誌『anan』が誕生してから2020年で50周年を迎えるにあたり、「音楽通信」にご登場された森山直太朗さん、Chuning Candyさん、ゴスペラーズさん、曽我部恵一さん、家入レオさん、中島美嘉さん、中村一義さん、シーナ&ロケッツの鮎川誠さんからコメントを頂戴しましたので、一気に8組をご紹介します!アーティスト8組の『anan』のイメージは?【音楽通信】vol.31 「番外編-50周年へのコメント」雑誌『anan』は、1970年3月3日に創刊してから、今年2020年で50周年を迎えます。そこで「音楽通信」にご登場いただいた一部のアーティストのみなさんに、50周年を迎えた『anan』に対しての貴重なコメントを頂戴しましたので、ここで一気に8組をご紹介します。※「音楽通信」掲載日の順番でご紹介しています。森山直太朗「若い女の子の本音が載っている雑誌」もう50年になるんですね。雑誌の『anan』といえば、“若い女の子の本音が載っている雑誌”というイメージです。雑誌創刊当時の70年代の若さと、現在の若さとは、時代とともに捉え方が違ってきていることもあると思いますが、時代ごとに独創的な発想を提案しているのが『anan』。女の子同士のいろいろな会話を雑誌というかたちで、ちょっとおしゃれに、本音で、発しているのではないでしょうか。Chuning Candy「すぐ手にとって見ちゃう雑誌」写真左から琴音、ソフィー、LILI、ゆうり、愛子。愛子『anan』の表紙がいつも楽しみです。ソフィー私たちからすると、ちょっと大人の雑誌という印象もありますね。琴音いろいろな話題が紹介されている雑誌だと思います。愛子『anan』さんを本屋やコンビニエンスストアで発見すると、ほかの雑誌とは違う雰囲気で、すぐ手に取って見ちゃいます!琴音、ソフィー、LILI、ゆうり、愛子50周年! おめでとうございます〜!ゴスペラーズ「インパクトと振り幅のある雑誌」写真左から、村上てつや、黒沢 薫。黒沢『anan』は大学時代によく読んでいて、憧れの雑誌だったんですよ。いつか『anan』に歌の記事で出ることができたら最高だと思っていました。だから、2000年だったかな。初めて出させていただいたときはうれしかったですね。村上僕たちが出させていただいたときはhydeさんが表紙の『anan』で、その号にちょこっとだけ載せてもらったんですが、うれしかったですよ(笑)。『anan』の“好きなミュージシャン特集”に出るのが夢だったから。黒沢男性にとっても憧れがある雑誌ですし、これからもそうあってほしいですね。女性にとっては、地に足のついた特集もすれば、キラキラした特集もしていて、とても振り幅の大きい雑誌だと思うので、これからもそのままで進んでいってくれると楽しいです。村上『anan』は世間にインパクトを残してきた雑誌だと思うんですよ。いまでも取ってありますが、1990年ごろに篠山紀信さんが素人女性のヌードを撮った号があって(※1)、とても衝撃的でした。※1. 1992年10月2日特大号で篠山紀信さんが撮影する企画に全国から応募が殺到し、選考の末、読者代表として19人の女性が登場。きっと宮沢りえさんの『サンタフェ』(※2)からきた流れですね。普通の本屋に並ぶ雑誌に、“24歳OLさん”などの一般人の女性のヌードが載っていて、当時20歳ぐらいの僕は衝撃を受けました。※2. 1991年に篠山紀信さんが出版したヌード写真集。その後も、めっちゃ保守的な回と、けっこう攻めている回があって面白い(笑)。人間もそうですが、どちらもあってそのコントラストがある人ほど面白いので、そのスタンスをずっと『anan』は続けていらっしゃるから、ドキドキします。黒沢振り幅があるのが魅力ですね。曽我部恵一「僕らの世代にとって特別な雑誌」50年はすごいですね。僕らの世代は、ぎりぎり男も『anan』を読むような世界観があったんですよ。「Olive」(1982年創刊、2003年8月号休刊マガジンハウス)などもそうですが、90年代のマガジンハウスの雑誌には、女性だけではなく男性も読む雰囲気がありました。その前は“もっとリベラルな新しいもの”というイメージです。以前は、マガジンハウスではなく平凡出版でしたよね(※3)。マガジンハウスの近くに、音響ハウスというスタジオがあって、僕はときどき録音をしていたので、「ここがあの平凡出版か」と思いながら眺めていました。僕らの世代にとって『anan』は特別な雑誌ですね。※3. 1945年に合資会社凡人社として設立、1954年から平凡出版株式会社、1983年に株式会社マガジンハウスと社名変更。家入レオ「いろいろなテーマを真正面から主張する雑誌」『anan』50周年、おめでとうございます。『anan』はその時代ごとに、女性にまつわる情報や話題にスポットを当てて作られていて、照れたり恥ずかしがったりするテーマでも真正面から主張している雑誌だと思います。みんなが持っている気持ちを代弁してくれている『anan』の姿勢はすてきですね。中島美嘉「常に読者を楽しませてくれる雑誌」『anan』は、昔から、きれいなお姉さんがたくさん出ている雑誌というイメージが強かったですね。私自身、『anan』の占い企画で鏡リュウジさんと対談させていただいたり、恋愛企画やファッションだったり、音楽記事以外でもいろいろな特集に出させていただいています。常に読者を楽しませてくれる雑誌だと思います。中村一義「みんなが手に取りやすいおしゃれな雑誌」50周年、すごいですね。『anan』は、みんなが手に取りやすい、すごくおしゃれな雑誌だと思います。大衆的なんですが、なんかちょっと違うという存在。僕もそういう存在を目指しています。妻も昔から『anan』を読んでいますよ。シーナ&ロケッツ 鮎川誠「等身大のスーパーファッション雑誌」『anan』50周年、おめでとうございます!僕のギターのレスポールも50年やけ、同い年やね。『anan』は、以前やっていたバンドのサンハウス時代に作った「もうがまんできない」という曲の歌詞に出てくるんです。男女が別れる曲なんやけど。その歌詞の中に出てくる知ったかぶりをする女の子がする話は“全部『anan』に載っていたことをネタにしていると俺はお見通しだ”っていうような歌です。この曲を作ったのは1972年ぐらいだから、雑誌『anan』が一番という時代。とてもバランスがよいし、品がよいし、みんなが興味を持つテーマを扱っている。女性が興味を持つものは男性も好きだからね。旅行やらグルメやらファッションも、すべて『anan』はリードしてきた、等身大のスーパーファッション雑誌。だから『anan』は見とかないかんのです。取材後記雑誌『anan』が創刊してから今年で50周年。「音楽通信」でコメントを頂戴した森山直太朗さん、Chuning Candyさん、ゴスペラーズさん、曽我部恵一さん、家入レオさん、中島美嘉さん、中村一義さん、シーナ&ロケッツの鮎川誠さん、ご協力いただきましてありがとうございました!1年限定の50周年スペシャルサイトもオープンしておりますので、ぜひご覧ください。雑誌『anan』そしてこちら『ananweb』ともに、今後ともよろしくお願いいたします!Information森山直太朗初のアニメ主題歌「ありがとうはこっちの言葉(TV version)」配信中。3月30日から始まるNHK連続テレビ小説『エール』に出演。撮影・大内香織、ヘアメイク・北島圭二、スタイリスト・上野真紀Chuning Candyニューシングル「STAND UP!!/アイのうた」発売中。4月26日、ワンマンライブ「Chuning Candy 2nd Anniversary LIVE!」を代官山UNITで開催。写真・角戸菜摘ゴスペラーズシングルコレクション『G25 -Beautiful Harmony-』発売中。4月11日から全都道府県ツアー「ゴスペラーズ坂ツアー2019〜2020 “G25”」開催。写真・大内香織曽我部恵一自主レーベルの音源のみで構成されたソロベスト盤が発売中。今春、サニーデイ・サービスのニューアルバムをリリース。4年ぶりとなる全国ツアーも5月よりスタート。写真・大内香織家入レオ月9ドラマ『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』(フジテレビ系毎週月曜午後9時)の主題歌であるニューシングル「未完成」発売中。写真・大内香織中島美嘉ニューシングルMarie starring MIKA NAKASHIMA「イノサンRouge」発売中。写真・大嶋千尋中村一義ニューアルバム『十』発売中。3月1日から全国ツアー「中村一義 “十” acoustic Live tour 2020」、さらに5月10日からはバンド編成による「中村一義 “十” Band Live tour 2020」を開催。撮影:角戸菜摘シーナ&ロケッツアルバム『LIVE FOR TODAY ! -SHEENA LAST RECORDING & UNISSUED TRACKS-』、完全受注生産限定盤BOX『LOVE BOX -42nd Anniversary Kollection--』発売中。撮影:大内香織
2020年03月02日音楽をこよなく愛する、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。【音楽通信】第30回目に登場するのは、あふれる個性で多様性のある楽曲を生み出し、美しいファルセットボイスも聴かせるシンガーソングライターのビッケブランカさん!写真・土佐麻理子いまも小学生のときの延長線上にいる【音楽通信】vol. 30小学校の頃から作曲を始め、音楽活動を目標に大学進学のため上京後、2016年10月にメジャーデビューを果たしたビッケブランカさん。独創的なピアノスタイルで、一度聴いたらクセになるような多様性のある楽曲が注目を浴びています。2020年3月4日に、3rdアルバム『Devil』をリリースするビッケブランカさんに、お話をうかがいました。ーー影響を受けた音楽がバラエティ豊かなラインナップだそうですね。もともと両親が音楽好きで、家でも車の中でもいつも曲がかかっていたんです。幼少期にミュージックビデオを観てマイケル・ジャクソンにハマって、アイドルとして流行していたSMAPも好きになって。20歳ぐらいのときには、MIKAやエルトン・ジョンを好きになりましたね。ーーそんななかでご自身で音楽をやろうと思ったきっかけは何だったんですか。小学校の給食のときに、教室にあるテレビにSMAPが流れて、友達と当て振りをして遊んで目立つこと、まねごとをするのが好きだったんですね。クラスにいる変なやつでした(笑)。いまもその延長線上にいます。ーー以前はバンド活動をされたこともあるそうですが、バンドやソロ活動も、そのときどきの自然な選択だったのですか。そうですね。大学生のときに上京して、そのときは出演者とはいえ、まだライブハウスにお金を払ってやるライブをしていたんですよ。だからひとりよりもメンバーがいたほうがいいと思って、5人組のバンドを作りました。そこからライブをしたり、いろいろ経験したりすると、お金を払ってライブをやるのはどうかと思うようになって。バンドはメンバー全員の意見を聞かないといけないこともあって、いろいろと知っていくうちに、ソロ活動をするようになりました。ソロだと、うまくいったら自分の頑張りの結果、うまくいかなかったら自分の準備不足ですから、反省するのも自分を褒めるのも、ひとりのほうが簡単です。ーー2016年にミニアルバム『Slave of Love』でメジャーデビューされましたね。デビューはうれしいことではあったんですが、当時はデビューすることだけが目標ではなくなっていました。実は大学生のときにレコード会社にデモテープを送ったことがあって、大学3年生で1度、いまのレコード会社とは別のところと契約をして大学をやめているんです。だから、2016年の段階ではいろいろなことを知りすぎていたんですよね。子どものときは、メジャーデビューするだけですごいと思っていたんですが、それが何もすごくないことがわかりました。デビューした先にある、仲間と協力して、結果を出して、それを何年も続けていくことこそが成功だとわかってしまったのが25歳ぐらいのとき。だから、デビューしたこと自体はひとつの通過点だと冷静にとらえていたんです。ーー2019年には、サブスクリプションサービス“Spotify”のTV CM曲となった3rd シングル「Ca Va?」がヒットして反響があったと思いますが、ご自身ではやはり冷静にその状況を見ていたのでしょうか。いえ、とてもうれしかったですよ。ソロ活動を始めた頃は、例えばライブだったら、ひとりでステージをしてちゃんとやれたかどうか、失敗したとしたら自分の集中力が足りなかったとわかりやすい。でもそんな次元じゃないと考えるようになっただけなんです。ひとりで何かを成すなんて、どんな仕事でも不可能じゃないですか。「Ca Va?」の反響があったことで、自分ではよくわからない宣伝の仕事やアライアンスなど、それぞれプロの人にお願いして、もちろん自分でやることは任せてもらってという、協力体制を築けるようになっていましたね。アルバムは自分の年表としても信憑性のあるものーー3月4日に3rdアルバム『Devil』がリリースされます。1曲目「Devil」はインストで、アルバムの表題曲でもありますね。シングルをたくさん出したので、それをまとめたアルバムを出したかったのと、ツアーをやりたかったんです。毎回、1曲目はこういうアルバムタイトルのインストやショートソングを入れているんですが、「Devil」は、1番最後にできた曲なんですよ。毎回、アルバムの収録曲が全部できたあとに、アルバム名と、1曲目ができるんです。ーー今回集まった楽曲から『Devil』とアルバムタイトルを付けたのは、どのあたりがDevilなのでしょうか。なんかもう、悪いなっていうイメージから……そんなに深い意味はないんです(笑)。ただ、ひとことでバーンとくるインパクトを重視していますね。前作のアルバム『wizard』と比べたら、今作はより統一性がなくて、よりきちんとしようとしていない感じがあるんです。『wizard』は“魔法使い”という意味で、どちらかというと正義寄りだと思っているので、それに対抗するという意味でも今回は悪の『Devil』という感覚です。そういうことでいうと、さらにこの次のアルバムは、正義と悪の対決を見る人という意味で、“レフェリー”とタイトルを付けるかもしれないですね(笑)。ーー『Devil』はポップな楽曲やダンサブルなナンバーなど、いろいろな表情の見えるアルバムだと感じました。自分では「いろいろな表情を見せてやるぞー!」と意気込んで作っているわけではないのですが、そのときに好きな曲、曲調、瞬間のトレンドを大切に作っています。気づくと「昨日からこの曲しか聴いてないな」「このジャンルしか聴いてないな」という状況になって、「じゃあこんな曲を作ろう」と制作に入ります。だからこの制作期間での自分のブームがアルバムに詰まっている感じですね。面白く、意欲任せに作りきれるし、振り返ったときに「ああ、このときはこんなジャンルが好きだったんだな」と自分の年表としても信憑性のあるものにするために、一瞬の感覚で作っているんです。ーーすべてご自身で作詞、作曲、編曲をされていますが、いつもどのように曲作りをしているのですか。ポンとひらめいておりてきた曲はなくて、「作んなきゃ」という思いで、いろいろな音楽を無意識に頭の中に取り入れているんです。その状態でパソコンの前に座って、音楽制作ソフトに向き合っていますね。ポンポンと1個ずつキックを入れて、スネアを入れて、ピアノを弾いてみて、「違うな、ああでもない」と葛藤しつつ、勝手にスピードがついてもうそこから出られなくなっている間にアイデアがどんどん出てきて、曲ができあがります。インスピレーションを溜め込んで、出す場所は、パソコンの画面上にインプットという感じです。ーー今回のアルバムで、とくに思い入れのある曲は。「Ca Va?」を作ったときに音楽性に何もとらわれない状態だったので、そのときと同じような感覚で作ってみようと思ったものが、2曲目の「Shekebon!」です。そして4曲目の「Save This Love」は、日本を見ずに、世界標準を最低限たたきだす心意気で作りました。だから、歌詞も英語ですし、発音もちゃんとしています。初のホールツアーも自由度を高く柔軟に展開ーー最後に作った曲は1曲目の「Devil」ということでしたが、7曲目の「かたうた」は取材時の資料に歌詞がなかったので、こちらも最後のほうに作った曲なのですか。「かたうた」は、これからもずっと歌詞は載せないんです。歌っている内容が個人的すぎるから、わざわざそれを言葉にして伝えようなんて僕は思いませんよ、という設定なんですよ。実際に発売するときも、「恥ずかしいのでここには書いてません」とだけひとこと入れて、歌詞はありません。聴いていただくだけで十分です、という曲です。ーーそうだったのですね。他の歌詞では、「・」(なかぐろ)が多用されているのも特徴的だと思いましたが、こちらも意図して入れているのですか。以前、歌詞が改行されて明記されていることにデザイン的にうんざりしたので、歌詞を立方体に明記したくて、「・」で区切っています。むちゃくちゃ練って凝ってという感じでもないんですが、反射的に感じたことはなるべく伝えて、このように作ってもらいました。ーー4月からは全国ツアー「Tour de Devil 2020」が開催されますね。どのようなステージになりますか。初めてのホールツアーなんですよ。椅子があるところでは、自分でもどうなるかまだ想像がつかないんですが、多分楽しいだろうなと思いますね。すでに東京の中野サンプラザ公演はソールドアウトしているので、ありがたいことです。アルバムの曲は披露すると思いますが、制作のときと一緒で、当日のリハーサルの場で思いついたことをやると思います。最初にどうするのか考えるほど、臨む気持ちがこわばりそうですし、正解が狭まる気がするんですよ。だから直前ぐらいに、パッパッパッと、「楽しい! 面白い!」と瞬間的に思ったことを取り入れてやりたいですね、自由度の高い感じで。“ライブ”という言葉通り、本番中でも曲順も変えます。そのときに見て、感じたこと、思ったことをみなさんにも伝えるというスタイルで、なんとかこれまでかたちになってきているので、それをもっと柔軟にやっていけたらいいなと思っています。音楽活動もゲーム配信もさらに力を入れていくーーおやすみのときは、どのように過ごしていますか。家から一歩も出ずに、ずっとゲームをしていますね。世界で3本の指に入る「FORTNITE」という、ファンシーな戦争ゲームを外国人の友達と一緒にやっていて、もう気分転換でゲームをするという域を出て、ゲームをする様子を生中継してメディア化しているんです。Twitch(ツイッチ)というアメリカのプラットフォームがあって、アメリカだとゲーム配信ではYouTubeよりも大人気で、それが日本に来たのでTwitchでゲーム実況をしているんです。Twitchから認証マークをもらっていて、ある程度、プロとしてゲーム実況もやっています。ーーゲームのプロとはすごいですね。ところで、まったく違う話題で恐縮ですが、好きな女性のタイプはありますか。話の機微を感じてくれる、話のわかる女性がいいですね。ふたりで思い出を共有していくときに、同じ感覚でいろいろなことを話せるとうれしいから、賢い人がタイプです。ーー教えていただいてありがとうございます。では最後に、今後はどのような展開をお考えでしょうか。まず手始めに、きっと雑誌『anan』さんの連載を始めることになるはずです(笑)。そして音楽活動については自分で曲を作ったり、人に曲を提供したり、外国人のアーティストに歌ってもらってプロデューサーDJのように世界を一緒にまわったりしていきたいですね。ゲームについても、ちゃんとしたクオリティで、強さもデザイン性も高めたゲーム配信をしていければ。2020年はやることが増えるだろうなという予想をしているので、期待していてください。取材後記とても寒い冬のある日。びゅうびゅうと風が吹くなか、外のテラスでの撮影に挑んでくださったビッケブランカさん。インタビューでは、クレバーでユーモラスな顔も見せてくださいました。そんな変幻自在なサウンドと、艶やかなボーカルを聴かせるビッケブランカさんのニューアルバムをまずはチェックしてみてくださいね。ビッケブランカ PROFILE2016年、ミニアルバム「Slave of Love」でメジャーデビュー。2018年、2ndアルバム『wizard』収録曲「まっしろ」がドラマの挿入歌に抜擢され、同アルバムツアーを全国7都市開催し、各地ソールドアウト。2019年にリリースした3rdシングル「Ca Va?」が音楽配信サービスのSpotifyのTV CMに起用され、2019年度6月度銘柄別CM好感度トップ10入り(CM総研調べ)。東名阪ライブツアーはすべてソールドアウト。夏の”Zoff”サングラスコレクションのビジュアルモデルに抜擢されるなど、音楽以外の分野でも活躍。12月、「白熊」をデジタルリリース。2020年、3月4日、3rdアルバム『Devil』をリリース。4月3日から全国ツアー「Tour de Devil 2020」を開催。InformationNew Release『Devil』(収録曲)01.Devil02.Shekebon!03.Ca Va?04.TARA - 2020 Mix05.白熊 - Main Version06.かたうた07.Black Catcher08.Save This Love09.Heal Me10.Lucky Ending11.Avalanche※収録曲は3形態すべて共通。2020年3月4日発売[CD only]AVCD-96459¥3,000(税別)[CD+DVD]AVCD-96457/B ¥4,500(税別)[CD+Blu-ray]AVCD-96458/B¥4,500(税別)
2020年02月29日音楽をこよなく愛する、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。【音楽通信】第29回目に登場するのは、聴くだけで癒やされるような“ボタニカルボイス”を持つシンガー、Wakanaさん!写真・土佐麻理子母の影響で音楽に触れる環境に育つ【音楽通信】vol.2912歳から声楽を学び、17歳より多数のイベントに出演していたWakanaさん。福岡県から上京後、2008年に「Kalafina(カラフィナ)」のメンバーとしてデビューし、本格的にシンガーとして活動をスタートされた後、2019年にシングル「時を越える夜に」でソロデビュー。その後、コンスタントに作品をリリースし、ワンマンライブでもたくさんの人たちにシルキーで心地よい歌声を届けているWakanaさんが、2020年2月26日に2ndアルバム『magic moment』をリリースされるということでお話をうかがいました。ーーWakanaさんは12歳から声楽を学ばれていたそうですが、もともと音楽に触れる環境にいらっしゃったのですか。母が小学校の音楽の教師だったんです。母のピアノの伴奏で歌うことが好きで、小学生のときに少年少女合唱団に入っていました。さらに歌の基礎を教えてもらうために、中学校の3年間はご近所の先生に歌を教えてもらっていたので、歌にはよく触れ合っていた生活でしたね。母がピアノ教室も行なっていて、高校1年生ぐらいまでは家のピアノの発表会に出ていました。発表会では、生徒さんたちみんながピアノを2曲演奏するところ、私は母のすすめもあり、歌1曲とピアノ1曲を披露していました。私だけ歌が入っていることに、多感だった当時の私は恥ずかしかったのですが、学校の先生が発表会に来て、歌を褒めてくれたことがとてもうれしかったことを覚えています。ーーその後、福岡県から上京後、「Kalafina(カラフィナ)」のメンバーとして2008年にデビューされ、2019年にはWakanaさんがソロデビューされています。2008年から約10年間、梶浦由記さんという作曲家でプロデューサーの方のもとで、歌い手として活動していました。そのぶん、ソロになって環境が変わり、自分自身がどういうものを発信していけばいいのか、自分の良さはなんなのかということをものすごく考えなければいけない場面になりました。デビューシングルでは、初めて作詞をさせてもらったのですが、恥ずかしさが先にきてしまって、悩みましたね。ただ、1年間ソロ活動をさせていただいたなかで自分の書きたい欲も出てきましたし、こういうものを書いてみようという意欲にもつながっていったんです。いままでの自分を認めてあげる気持ちになったーー今回、2月26日に2ndアルバム『magic moment』をリリースされますね。『magic moment』は、ソロデビューしてからの1年間を通して培った経験から、「すべての瞬間を音楽に変えられたらいいな」という思いを込めさせていただきました。今回のアルバムは、昨年の春に初めてのソロツアーをさせていただいた後、次に出すEPから2ndアルバムまでの活動を「同じコンセプトで統一させよう」と話し合って決めていたんです。最初は“magic hour”というコンセプトを立てて、それに沿っていこうと。昨年の11月にリリースしたEP「アキノサクラ」では、空を意識したmagic hour的なものが収録曲の中に入っていますし、例えば恋に落ちる瞬間もmagic hourなんじゃないかと思っていて。ということは、“hour”という時間だけではなく、ほんの一瞬のような瞬間も考えると、アルバムタイトルは「magic moment」にしようと思いました。12月のワンマンライブでも、「瞬き」というタイトルをつけたんですね。ライブという瞬きの時間と、CDという作品を聴く時間、それぞれ私にはとても大切な時間で、どの瞬きも一番でひとつは選べないというお話をいつかみんなにしたいと思っていたんです。ライブではライブの時間、CDに込めた思いはいつだってどこだって届く、ということをライブでも伝えていました。今回のアルバムは、いままでの自分を認めてあげようという気持ちにもなった作品です。曲が歌詞の世界に連れていってくれるーー11曲目はストリングスの厚い表題曲の『magic moment』ですね。この曲は、人生で最後の場所ぐらい自分で決めていこうという旅の歌。「magic moment」というタイトルも、他にもいろいろと案があって、実は最後の最後まで悩みました。わたしたちは普通になめらかに動けますが、瞬間で動きがつながっていて、その瞬間の大切な思い出を1つ残らず次に持っていきたいと思っています。自分が生まれるときにきっと場所を決めて生まれてきていますが、そのときの記憶は忘れているから。生きているということが、奇跡の積み重ねですが、宇宙からしたら人の人生なんて一瞬だと思っていて。でもそのなかで、その人の人生はぎゅっと詰まっているということをこの曲に込めたかったんです。「何処か遠く」という歌詞は、最後の場所と言いつつ、まだまだやりたいことがある状態。この曲を11曲目の最後に持ってきて、1曲目の「breathing」にまたつながれる世界観になっています。「breathing」には、生きていくうえで必ず誰しもが息をして、鼓動を鳴らしているという、思いが入っています。海の生き物も空の生き物も、見え方が違っても、息をして鼓動を動かしていることを私の意思では止められないのが、生き物の面白さだと思っていて。そんな自分の意思だけで止められないことが、“生かされている”という部分でもあると思うので、「breathing」も最後まで悩んでタイトルをつけました。呼吸にスポットをあてたときに、11曲目から1曲目はつなげて考えてもらっていいと思ったんです。ーー輪廻転生のようなイメージですね。Wakanaさんの歌詞は知的な印象がありますが、今回は7曲の作詞を手がけていらっしゃいます。まだ作詞を始めたばかりで、勉強中なんです。これからどんどんやり方も変えていきたいですし、もっとうまくやりたいとも思うこともあるのですが、曲から得たイメージで詞を書いています。曲のイメージが、私を歌詞の世界に連れていってくれると思っているんですよ。ライブで歌うことで曲の表現が変わってくるーーそれぞれの曲へのアプローチはどのようにされているのですか。曲へのアプローチは、曲のイメージを大事にしたいと思って向き合っています。どう表現するかということは、曲を作ってくださった方の思いが込められていると思うので、それを読み取りたいから、歌でどう表現するかをあまり悩んだことがないんです。曲以上のものはまだこれから生まれてくるものだと思っていて、それもライブで歌うことで変わってくるんですよ。レコーディングのときは、自分にとってそのとき求めていることを最大限にやっています。ライブでは、何よりも自分を変えてくれるのが、お客さんです。ーーライブではおなじみという8曲目「君だけのステージ」は、明るいアップテンポのナンバーです。作曲と編曲を担当されている音楽プロデューサーの武部聡志さんとは、ライブでもご一緒されているそうですね。ソロデビュー前のファーストライブで、武部さんが音楽監督を努めてくださって以来、ずっとライブは武部さんが音楽監督です。そのファーストライブ制作の際に武部さんが曲を何曲かあげてくださって、「歌詞を書いてみて」とすすめられて書いたうちの1曲なんです。そして「この曲もライブでやりましょう」と武部さんが言ってくださって。当時はリリース前で曲数が少なくて、武部さんの作ってくれた曲、カバー曲、Kalafinaの曲なども歌わせてもらってライブをしていました。その頃から「君だけのステージ」を歌っていることもあって、歌い込んでいるからすごく楽しかったし、アルバムのなかでも1番年季の入った曲です(笑)。ピアノはもちろん武部さんが担当で、ギターとベースの方もライブでお世話になった方で、ドラムの方は初めてだったんですが自分の歌の雰囲気もすぐ読み取ってくれて、歌の思いを汲んだドラムをたたいてくださって、みなさん歌を音としてとらえてくれるので、すごく気持ちのいいレコーディングでした。音楽監督の武部聡志さんがメンバー加入ーー3月14日には、リリース記念のワンマンライブ“Wakana Spring Live 2020 ~magic moment~”がヒューリックホール東京で開催されるそうですね。今回は、音楽監督の武部さんが、初めてミュージシャンのメンバーとして入ってくださるんです。これまでレコーディング以外で、武部さんがバンドのみなさんと弾いてくれるという経験をしていないんですよね。ライブに武部さんがゲストとして登場してくださるときはピアノ1本なので、今回はどうなるのか楽しみです。『magic moment』リリース後のライブになるので、バンドサウンドで生でお披露目できる曲たちをどういうふうにみんなのところに届けようかなと考えているところです。ーーWakanaさんの歌声は、シルキーで包み込むような高音がきれいですが、普段ののどのケアはどのようにされていますか。ケアは、秋からずっと寝るときにマスクをしています。昨年まではマスクなしで加湿器のみで夜は寝ていたんですが、加湿しすぎるのもどうかと思って、マスクに切り替えたらのどの調子が良いんです。最初はマスクが苦しくて自然と取ってしまうこともあったんですが、つけたまま眠れるようになると、朝はのどの痛みがまったくないんですよ。ーーところで、Wakanaさんはメイクのこだわりはありますか。メイクはいつもナチュラルにしたいと思っていますね。アイラインもブラウンが多いんですよ。冬はいつもマスクをするので、よれにくいファンデーションを研究することもありますし、メイクさんが使っているものを見て探すこともあります。春や秋に出る黄色や黄緑色のような発色がいいハイブランドのものも見ますが、ペンシルやマスカラなどのポイント使いでしか使用せず、アイシャドウでは色はいつもブラウンになっちゃいますね。ステージでは、ブラウンのメイクはパッと見なじんでしまうので、アイラインはブラックを使います。肌が敏感なので、オーガニックコスメのSHIROやTHREE、ジュリークは肌にやさしいとうたっているから安心して使っています。マスカラはお湯で落ちるタイプを使用していて、クレンジングもジュリークのミルククレンジングを使っていて。ダブル洗顔は乾燥するので、いつもミルククレンジングのみなんです。今後は狭いテーマでより内面が出る曲も作りたいーーおやすみの日は何をされていますか。お友達と約束して、食事に行きますね。それにもともと植物が大好きでお部屋にも緑がいっぱいあって、お休みの日は、さらに植物を探しに行きます。お店で球根を見つけて、球根の水栽培に挑戦したんですが、よく考えたらどんな花が咲くのかわからないまま買っていました(笑)。水栽培の仕方を調べると、最初は寒いところに置いて冬をイメージさせるとまず根っこが生えてくるそうで、根っこが生えたらお水の量を加減して、明るい場所に置くと「春かな」と思って咲くということで、その通りに栽培して無事にピンクの花が咲きました(笑)。春先は、お花や植物がお店に多くなるんです。お花は命が短いので、冬になると枯れた部分を切ったり枝だけになったりして、春に花が咲くのか不安になることもあってすごく育てるのが難しいですね。置く場所が重要だから、お部屋のなかの太陽が当たる場所がもう満席なんですよ。ーー最後に、Wakanaさんの今後の目標を教えてください。聴いてくれる方の気持ちをいつも大切にする音楽を作っていきたいですね。アルバム2枚を制作して、あらためて2枚を通して聴いた時に、曲間や1曲ごとにこだわりもありますし、レコーディングのときにいろいろと相談したこともいっぱい思い出していたんです。今回は「magic moment」というテーマで作ってきましたが、今後はもっと狭いテーマでスポットを狭くして、自分の内面がもっと出る曲を作ってみたいと思いました。自分の思い描く声やあこがれの声もあるし、好きな音もあるので、そういうものを表現できるよう、これからも追究していきたいなと思います。取材後記しなやかで心地よい歌声を持つWakanaさんは、お会いすると明るい笑顔を見せてくださる、エレガントな女性。東京の神宮外苑いちょう並木通りでの撮影は、Wakanaさんのナチュラルな一面が樹々と溶け込んで絶妙にマッチしていました。そんなWakanaさんのニューアルバムをチェックしてみてくださいね。Wakana PROFILE12月10日、福岡県生まれ。12歳から声楽を学び、17歳より多数のイベントに出演。上京後、FictionJunctionのプロジェクトに参加。その後、劇場版アニメ「空の境界」主題歌プロジェクトとしてスタートした「Kalafina」のメンバーとして2008年1月にデビュー。本格的にシンガーとしてのキャリアをスタート。2019年2月、シングル「時を越える夜に」でソロデビュー。3月に1stアルバム『Wakana』、11月に1stEP『アキノサクラ EP』をリリース。2020年2月26日、2ndアルバム『magic moment』をリリース。3月14日、ヒューリックホール東京で「Wakana Spring Live 2020 ~magic moment~」を開催する。InformationNew Release『magic moment』(収録曲)01.breathing02.揺れる春03.where04.44205.ひらり ひらり06.アキノサクラ(Acoustic ver.)07.myself08.君だけのステージ09.オレンジ10.Happy Hello Day11. magic moment2020年2月26日発売※収録曲は(通常盤)(初回限定盤)AとB全共通。(通常盤)VICL-65328¥3,000(税別)※CDのみ。(初回限定盤A)VIZL-1730¥4,000(税別)※LIVE CD「Wakana Winter Special Live 2019 ~瞬き~ at マイナビBLITZ赤坂」※2CD。(初回限定盤B)VIZL-1731¥4,800(税別)※LPサイズジャケット仕様。LPサイズフォトブックレット封入。ポスター(B2変型サイズ)封入。ボーナスディスク(全曲インストゥルメンタル収録)付き2枚組。高品質SHM-CD仕様※SHM-CD。ヘアメイク・丹羽寛和(maroonbrand)
2020年02月25日音楽をこよなく愛する、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。【音楽通信】第24回目は、5人組ロックバンドのBUCK-TICK(バクチク)が、代々木体育館で開催した「THE DAY IN QUESTION 2019」ファイナル公演のライヴレポートをお届けします!撮影:田中聖太郎、立脇卓、渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)2019年「THE DAY IN QUESTION」最終日は代々木体育館【音楽通信】vol. 24櫻井敦司(vo)、今井寿(g)、星野英彦(g)、樋口豊(b)、ヤガミ・トール(ds)の5人からなるBUCK-TICKは、1987年のメジャーデビュー以降、メンバーチェンジをすることなくロックシーンの第一線で活躍し続けている。気高く、不動の存在といえるBUCK-TICKは、2020年にバンド結成35年、デビュー33年。いまもなお後続するアーティストたちに多大な影響を与え、誰もがリスペクトする唯一無二のバンドへと遂げている。そんな彼らが20年間開催し続けているのは、毎年12月29日に恒例となっている日本武道館公演。2019年は、12月3日に出身地でもある群馬県の高崎芸術劇場から、ツアー「THE DAY IN QUESTION 2019」がスタート。ファイナルとなる12月29日は、改修工事により武道館が使用できないため、会場を初となる国立代々木競技場第一体育館に移して開催された。国立代々木競技場第一体育館に着くと、アリーナ席からスタンド席まで約12,000人の満席。以前からBUCK-TICKを応援している支持者から、20代前後の男女や子どもを連れた親子まで、幅広い層のオーディエンスが集結している。BUCK-TICKの音楽が色褪せることなく、循環され、進化し続けているからこそ、新しいファンを常に獲得し続けているのだろう。会場が暗くなり、ステージ上のスクリーンに映像が映し出され、荘厳でゴシックな世界観の「夢魔-The Nightmare」からライヴがスタート。黒いベールをまとった黒衣装の櫻井が、圧倒的な存在感で一気にオーディエンスを惹きつける。今井と星野のツインギターが交差し、樋口とヤガミがボトムを支えていく。続いてハードなロックナンバー「唄」へ。ボーカルの櫻井敦司。そしてこの日の初MC。櫻井が「みなさん、こんばんは。代々木体育館は初めて舞台に上がります。こんなにたくさんの方がいらしてくれて、本当に幸せです。ありがとうございます。それでは最後まで楽しんでいってください」と伝えると、大きな歓声がわいた。次にダンサブルな「獣たちの夜」、アグレッシブな「Jonathan Jet-Coaster」、メロディアスで切ない「羽虫のように」を披露。前半ですでに場内のテンションは上がり続け、館内は熱気でいっぱいに。ギターの今井寿。さらにスパニッシュサウンドの「絶界」、今井が「メリーさんの羊」のフレーズを弾きながらの「細胞具ドリー:ソラミミ:PHANTOM」、インダストリアルな「PINOA ICCHIO-踊るアトム-」を放ち、センチメンタルな「月下麗人」を披露。櫻井が「どうもありがとう」と歓声に応え、スクリーンの雪景色を背に歌う「Snow white」では、雪が舞う演出がなんとも幻想的だ。続いて、今井がエレキギターで「きよしこの夜」を弾き、バックのスクリーンに教会が映し出されるなか、星野がアコースティックギターで「SILENT NIGHT」を鳴らす。ここまでのしっとりとした静寂を打ち破るかのように、ファンタジックでポップな「Alice in Wonder Underground」を演奏。緩急のついた構成でオーディエンスをまったく飽きさせない。そして「スピード」のイントロが流れ歓喜する場内はヒートアップ。たたみ掛けるように、続いてエレクトロなダンスナンバー「独断場Beauty-R.I.P.-」で会場を揺らす。ラストは、優しくて儚い「FLAME」で締めくくった。櫻井は何度も深いお辞儀をして、ステージをあとにし、メンバーも続いて退出。暗くなった会場では「アンコール!」の声が響き渡る。ギターの星野英彦。しばらくした後、メンバーがステージに再登場。アンコール1曲目は、2020年1月29日にリリースされるニューシングル「堕天使」。続いて、アンニュイでロマンティックな「RONDO」、ヘビーな「無題」を繰り広げ、会場をダークネスに染め上げた。メンバーがステージをあとにし、再度暗くなる場内。1度目よりもさらに力強い「アンコール!」の声が広がるなか、メンバーが現れ、明るくなる場内とオーディエンス。2度目のアンコールでは、アコースティックな「Coyote」、メランコリックな「ドレス」を披露。櫻井が「どうもありがとう。次は懐かしいエイトビートの曲をやりたいと思います」と言い終わるやいなや、ヤガミが「ワン、ツー、スリー、フォー!」とカウントし、疾走感あふれるナンバー「惡の華」へ。ベースの樋口豊。そして櫻井はスタッフ、生放送中継をしていたWOWOWの視聴者、代々木に集まった来場者に感謝の意を述べ、メンバー紹介。「まずは自己紹介。ボーカル櫻井です」と話し、「ギター!今井寿」「ギター!星野英彦」「ベース!樋口豊」「ドラムス!ヤガミ・トール」と紹介していき、ヤガミ以外のメンバーは退出。ここでヤガミはドラムソロを披露する。まずは素手でドラムをたたき、次にドラムスティックを持って、見事なドラミングをプレイ。会場から「おお〜っ!」という歓声が飛び、メンバーが再登場。ドラムのヤガミ・トール。櫻井は「良いお年をお迎えくださいませ。みなさんもどうか、お幸せに。では最後に1曲、みなさん、自分を愛しましょう」。そう言って、この日のライヴを締めくくったのは、1990年に発表されたキャッチーな「LOVE ME」。今井は童謡の「お正月」のフレーズをしのばせて、最後の曲を盛り上げる。この曲に限らず、彼らは新旧織り交ぜたナンバーを披露しているが、2020年間近のいま現在どの曲を聴いても、古く感じさせないどころか魅力的な楽曲ばかりだという事実に驚いてしまう。会場中にメンバーを呼ぶ声が響くが、女性だけではなく、野太い声の男性が「櫻井さーん !!」などと叫んでいるところも、BUCK-TICKのすごさのひとつ。女性ファンはもちろん、確実に男性のファンも新たに増加し続けていることは、彼らの魅力が多岐にわたって発揮され続けていることの証しだといえる。果たして、これほどまでに長年支持され続けているバンドはどれほどいるだろうか。彼らがステージから去ったあと、スクリーンには、2020年5月からオフィシャルファンクラブ会員とモバイル会員限定のライブハウスツアーを全国7会場8公演開催すること、夏にはニューアルバムがリリースされて秋には全国ホールツアーを、12月29日には日本武道館公演を行うことが発表された。けっして守りに入ることなく、常に進化し続けるBUCK-TICKの偉大さをあらためて実感した夜だった。取材後記筆者は、BUCK-TICKが1988年に『ミュージックステーション』に初登場し「JUST ONE MORE KISS」を披露した回を目にしたとき、その麗しくも尖ったビジュアルと楽曲に衝撃を受けたことをきっかけに、「将来は素晴らしい人たちを伝える仕事をしよう」と心に誓いました。そして現在、ライターや編集のお仕事を通して素晴らしい表現者のみなさまの作品を文字でお届けしております。こんなふうに、キャリアが長いバンドはそれだけ人々の人生の折々に触れることも。新旧の楽曲を披露されたBUCK-TICKのライヴに魅了された夜でした。セットリスト01.夢魔-The Nightmare02.唄03.獣たちの夜04.Jonathan Jet-Coaster05.羽虫のように06.絶界07.細胞具ドリー:ソラミミ:PHANTOM08.PINOA ICCHIO-踊るアトム-09.月下麗人10.Snow white11.SILENT NIGHT12.Alice in Wonder Underground13.スピード14.独断場Beauty-R.I.P.-15.FLAME<アンコール1>1.堕天使2.RONDO3.無題<アンコール2>1.Coyote2.ドレス3.惡の華4.LOVE MEInformationNew Release「堕天使」01. 堕天使02. Luna Park2020年1月29日発売VICL-79005 (通常盤)¥1,000(税別)VIZL-1685 (完全生産限定盤A(SHM-CD+Blu-ray))¥2,380(税別)VIZL-1686 (完全生産限定盤B(SHM-CD+DVD))¥1,880+税[完全生産限定盤 (A/B共通)]・「堕天使」(「THE DAY IN QUESTION 2019」高崎公演)音源収録。・Blu-ray/DVD : 「堕天使」 MUSIC VIDEO収録。・スペシャルデジパック仕様New ReleaseBUCK-TICKトリビュートアルバム『PARADE III ~RESPECTIVE TRACKS OF BUCK-TICK~』01. ICONOCLASM / BRAHMAN02. 青の世界 / 八十八ヶ所巡礼03. 形而上 流星 / minus(-) featuring 藤川千愛04. 天使は誰だ / GRANRODEO05. JUPITER / シド06. Lullaby-Ⅲ / 黒色すみれ07. 愛の葬列 / Der Zibet08. LOVE ME / Cube Juice09. 唄 / 椎名林檎10. NATIONAL MEDIA BOYS / DIR EN GREY11. ミウ / 坂本美雨12. 惡の華 / GARI13. JUST ONE MORE KISS / 藤巻亮太2020年1月29日発売VICL-70243¥3,000(税別)
2020年01月14日音楽をこよなく愛する、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。【音楽通信】第23回目に登場するのは、ロックバンド「サニーデイ・サービス」のフロントマンでもあり、ソロとしても多彩な活動をされているシンガーソングライターの曽我部恵一さん!写真・大内香織そのときどきでやりたいことをやってきた15年【音楽通信】vol.231990年代初頭から、ロックバンド「サニーデイ・サービス」のボーカル&ギタリストとして活動をスタートし、2001年からは並行してソロとしても活動している曽我部恵一さん。2004年12月には自主レーベル「ROSE RECORDS」を設立し、インディペンデント/DIYを基軸とした活動も展開しています。メジャーでもインディーズでもシーンを選ばず、プロデュースや楽曲提供、映画音楽やCM音楽、執筆、俳優など形態にとらわれない表現を続けている曽我部さん。2019年12月25日にリリースされたベスト盤『The Best Of Keiichi Sokabe -The Rose Years 2004-2019-』について、お話をうかがいました。ーー今回、2004年に設立されたご自身のレーベル「ROSE RECORDS」の15年間を振り返るベスト盤となりますが、ソロもバンドもさまざまな活動を維持されているのはすごいことですね。15年前から、現在の状況を計画していたのでしょうか。いえ、何にも考えていないです(笑)。僕はいま成功しているとも何とも思わないのですが、こうしてやりたいことを続けてこれたことに、もし秘訣があるとしたら、適当にやっているからだと思います。ーー事業計画を立てたりすることは。全然ないです。企業と組んで何かやるようなこともないですし、とにかく失敗しそうなことは絶対しないぐらいですね。大きいことはやりたくないんです、怖いから(笑)。ーー音楽シーンにおいて曽我部さんは大御所の域に入りつつあるかと思いますが……。大御所とかになるのもいやなんです、責任が増す感じがあるじゃないですか(笑)。ブログやインスタで変なことは書けないし、変な自撮りとか上げられないし(笑)。そういうのはいやなんですよ。ーーでは、メジャーなレコード会社に所属していたときは窮屈な感じがあったのでしょうか。窮屈ではなかったんですが、結果を残せていないということですね。大会社でやってみましたが数字では結果を残せていないし、じゃあドラマのタイアップで売れるような曲を作れるのかと言われると、そこまでしてやってみようという気にはなれなかった。だから、自分で責任を持って「やりたい音楽をやりたいだけだ」ということに気づいて、独立したんです。自分がやりたいことをそのときどきでやりたいように、のらりくらりとやっていきたいなというのが心のどこかにあって、それをいまもやっているだけなんです。ベストアルバムをCDとアナログ盤と配信の3形態でリリースーー12月25日に、ベストアルバム『The Best Of Keiichi Sokabe-The Rose Years 2004-2019-』をCDとアナログ盤と配信の3形態でリリースされましたね。以前は2013年に、2001年から2013年の楽曲を収録したベスト盤をリリースされていますが、今回のベスト盤発売のきっかけは何でしょうか。2019年は弾き語りのライブでいろいろな場所に行って、演奏してきました。そういった場所で初めてライブを観た人に、僕は作品が多いのでどれを最初に聴けばいいかわかりやすく、ベスト盤を買ってほしいという思いがあるんですよ。前は2枚組だったので、もう少しコンパクトなベスト盤を作ろうと思って、1年ぐらい計画していたんです。今回は、前に発売したベスト盤に入っていなかった曲も入っていますし、ちょうど自主レーベルが15年になるので、いいタイミングだと思いました。ーーとくに録り直したりもしなかったのですか。もちろんミックスダウンし直したり、いまのテイストに仕上げたりはしました。ーー今回はどのような基準で選曲されたのでしょうか。CDは、だいたい曲が70分代後半ぐらいまで入るんですが、ぎりぎりまで入れようと思いました。「自分がCDで聴くんだったら、どういう選曲かな」という視点から、いいと感じたものを選んでいます。さらにアナログ盤の発売と配信もありましたが、それぞれ収録曲は違うものを選びました。いまスマートフォンなどで曲を聴く人も多いので、配信は配信用に、アナログはアナログ用にマスタリングもやっています。何か引っかかるポップな曲がおもしろいーー収録曲には、ラブソングから社会的なメッセージの強い曲までありますが、いつも社会的なことは意識されているのでしょうか。意識していますね。例えば、このベスト盤に収録している「街の冬」という曲は、新聞を読んで知ったニュースのことをテーマに曲を書いていますし、「汚染水」という曲も原発について思ったことを曲にしています。歌に社会的なメッセージを込めることは多々ありますね。ーー強いメッセージを込めた曲を発表されるときは、好意的な反応だけではないときもあるかとは思いますが、そういったことも覚悟して出していらっしゃるのでしょうか。僕の場合は覚悟までしていないですね。ただ、「これは曲にしておもしろいか、おもしろくないか」という基準で作っているかもしれません。何かのニュースを知ったからといって、ただそれを書けばいいというものじゃないと思っています。曲を作って、そこからみんなが共感なり反感なり、何か引っかかるポップなものじゃないとおもしろくないですから。ーーでは曽我部さんが曲を作るときは、ご自身の中のセンサーで「これはおもしろい、おもしろくない」と判断しているのですか。これは曲になるような気持ちだな、風景だなというときに曲を作ります。ラブソングも、この感情は歌にしておきたいな、聴いてほしいなというものを作っています。ーーそれはソロのときとバンドのときでは、同じなのでしょうか。やっぱりサニーデイ・サービスのほうがチームワークといいますか、バンドとしてやっているので、個人とはちょっとだけ違いますが、基本は同じですね。全国でライブを約100本も行った2019年ーー今日は曽我部さんのホームタウンといえる下北沢での取材ですが、撮影場所でお借りしたこのライブハウス『CLUB Que』に、よくライブ出演されていますね。そうですね。2019年に『CLUB Que』が25周年で、ライブハウスができたばかりの頃から出演しているので、25年前にサニーデイ・サービスのワンマンライブとして初出演してから、毎年何かしらで出演しています。ーー『CLUB Que』25周年企画では、12月に曽我部さんのソロライブ「それからlove 東京編」2daysを開催されていましたが、いかがでしたか。各地で弾き語りのワンマンライブを続けてきたので、ここが2019年の締めとなる弾き語りの2daysでした。ソロのライブでもサニーデイの曲を演奏しましたが、2019年はバンド自体をお休みしていたので、(サニーデイ・サービスのベースの)田中貴くんが「ゲスト」というかたちで入ってくれました。ーーそんな2019年は、曽我部さんにとってどんな年でしたか。撮ったのは2018年なんですが、2019年に公開された音楽と映画をテーマにした『アイムクレイジー』という映画に初出演しましたし、「ロロvol.15『はなればなれたち』」という舞台にも初出演して、お芝居に挑戦したりといい年でしたね。ライブではフィジカルな運動性が大事なんですが、お芝居に出たことで、筋トレやフィジカルなことに目覚めたこともよかったです。ーー劇団ロロの舞台は、なぜ出ようと思ったのですか。「出て」っていわれたから(笑)。もともと好きな劇団で2017年に音楽を担当したことがあったのですが、今回はオファーされたこともあり、舞台に出てしまいました。それに2019年は音楽活動でも、ライブを100本くらいやっていたから、ものすごく働いた年です。ライブが1日2本ある場合、京都と東京間で移動してライブをするようなことも平気でやっていました。ーー普通に移動するのも大変だと思いますが、さらにライブもするなんてタフですね。でも100本ライブをしてもお金が儲からないんですよね、怖い(笑)。レコーディングはお金がかかるんですよ。スタジオ代だけではなく、エンジニアやスタジオミュージシャンを呼んだりすると、どんどんお金が出ていってしまうんです。しかも録ったものがお蔵入りすることもあって、作品として世に出るわけでもなかったり。実は2019年、あまりリリースがなかったんですよ。新曲を作っていないし、新曲として出したのは後藤まりこさんとデュエットした「結婚しようよ」という曲のみだったんですが、これも吉田拓郎さんのカバーだから。実はサニーデイ・サービスの曲を1年かけてずっと作っていたというのもあるんですけどね。2020年はソロとしてもサニーデイとしても活動ーープライベートにおいて、曽我部さんはシングルファーザーで3人のお子さんがいらっしゃいますが、育児と仕事の両立は大変ではないでしょうか。子どもがちっちゃいときは大変でしたが、いまは大変じゃないですね(笑)。いま一番上の子が高校生、次が中学2年生、一番下が小学校5年生ですから。ーーこの15年で、一番変化を感じるのはどんなことでしょうか。生活は日々変わっていくので、子どもの成長に一番変化を感じますね。その一方で、音楽はそんなに変わっていないんですが、テクノロジーは15年の間に変わっていって、スタジオに入らなくても曲作りができるようになりました。あとは3年前ぐらいに車の免許を取得したことも大きな変化かもしれません。それからはどこ行くにも、車移動になって、とても便利になりました。ーーお休みのときはどうされているんですか。基本的には休まないんです。でも、この間久しぶりに1日だけ休みがありましたが、ひたすら寝ていました。いつもだいたいは制作や取材やライブなど、何かしら予定が入っています。ーー曽我部さんご自身はハードすぎてご負担はないのでしょうか。僕は大丈夫です。ただ、忙しくて家にいないと、子どもたちは寂しいかもしれませんね。でも、その寂しさや悔しさをバネに生きていってほしいと思っているんです。それで将来、子どもたちがどうなるかはわからないですが。ーーそうなんですね。お子さんのお話ありがとうございました。ではまったく違うテーマですが、曽我部さんが思う魅力的な女性像とはどんなタイプでしょうか。一般的には、魅力的だと思えるタイプには、いろいろなパターンがあると思うんです。モデルさんのように見た目がかわいい人やキレイな人というのもひとつあるだろうし、「この女性を自分のものにしたい」という征服欲や性的な欲求がわく人というのもひとつあるはず。でも、いま僕は48歳なので、ご飯を作ってくれる人がいいですね(笑)。お掃除してくれる人もいいかな。容姿よりも雰囲気。いまは子育てなども共有できる人がいいです。ーーでは、2020年はどんな年になりそうでしょうか。ソロだけではなく、サニーデイとしても動こうと思っています。アルバムをリリースしますし、ツアーで全国をまわります。ドラムもキーボードも入れてライブをしていく予定なので、楽しみにしていてください。取材後記音楽家として、経営者として、父として、さまざまな顔を持つ曽我部恵一さん。取材日の数日前に「家族にカレーを作っていたら指を切っちゃって」と話してくださった曽我部さん。音楽に生活が溶け込むなか、あふれる才能でこれからもたくさんの作品を生み出し、ソロでもサニーデイでも色褪せない音楽を聴かせてくれるはず。そんな曽我部さんのベストアルバムをまずはチェックしてみてくださいね。曽我部恵一 PROFILE1971年8月26日生まれ。乙女座、AB型。香川県出身。’90年代初頭よりサニーデイ・サービスのヴォーカリスト/ギタリストとして活動を始める。1995年に1stアルバム『若者たち』を発表。’70年代の日本のフォーク/ロックを’90年代のスタイルで解釈・再構築したまったく新しいサウンドは、聴く者に強烈な印象をあたえた。2001年のクリスマス、NY同時多発テロに触発され制作されたシングル「ギター」でソロデビュー。2004年、自主レーベルROSE RECORDSを設立し、インディペンデント/DIYを基軸とした活動を開始する。以後、サニーデイ・サービス/ソロと並行し、プロデュース、楽曲提供、映画音楽、CM音楽、執筆、俳優など形態にとらわれない表現を続ける。最新作は、2019年12月にリリースされた『The Best Of Keiichi Sokabe -The Rose Years 2004-2019-』。InformationNew Release『The Best Of Keiichi Sokabe -The Rose Years 2004-2019-』(CD収録曲)1.キラキラ!2.愛ってやつを3.抱きしめられたい4.汚染水 (2019 Stereo Mix)5.街の冬6.碧落 -へきらく-7.コーヒーとアップルパイ8.満員電車は走る (Single Version)9.bluest blues10.スウィング時代 (Another Version)11.オーロラ12.春の嵐13.恋人たちのロック14.シモーヌ15.東京 2006 冬16.おとなになんかならないで (Shimokitazawa Concert Live)17.魔法のバスに乗って18.LOVE-SICK※レコード、CD、配信で収録内容は異なります。[ダウンロード・ストリーミング]2019年12月11日配信開始ROSE 242D[CD]2019年12月25日(水) 発売ROSE 242 ¥2,500(税別)[アナログ盤]2019年12月25日(水) 発売ROSE 242X ¥3,900(税別) ※2枚組/完全限定生産
2020年01月10日