申請窓口に書類提出へ。初めてお会いした担当の方は…娘の記録を引っ張り出し、主治医や過去にかかっていた療育センターなどにも連絡をとり、申請に必要な書類を揃えた私はいよいよ申請窓口に向かいました。過去に何度か相談をしに行ったことはあったのですが、年度が替わり人事異動があったのか、当日担当してくれたのは初めて見る方でした。Upload By 荒木まち子その方は若くて柔らかな物腰の方でしたが、お話をすると経験と知識が豊富で、頼りになる方だということがすぐに分かりました。(実際、申請手続き中に他の職員さんが質問をしに来たりしていました。)Upload By 荒木まち子申請窓口では...医師が作成した『診断書』や『受診状況等証明書』を確認した後に『病歴・就労状況等申立書』の記載内容を確認しました。Upload By 荒木まち子Upload By 荒木まち子Upload By 荒木まち子アドバイスをもとに初診日などを変更私が作成した『病歴・就労状況等申立書』の[発病したときの状況と発病から初診までの間の状況]記入欄の“呼びかけても振り返らない、指示が通りにくいなどのことから総合病院にて聴覚検査を受けたが、異常はなかった。”という箇所を見て、窓口の担当者さんは「娘さんの場合、初診日を誕生日ではなく、総合病院の受診日に変更した方が良いでしょう」とアドバイスをしてくれました。また、状況欄に書いた『厚着をし過ぎて電車内で体調を崩し、駅の救護室に運ばれたことがある』という記述から、[日常生活状況欄]の《着替え》の4段階の評価を3→4に見直しをすることも提案されました。(『病歴・就労状況申立書』裏面・赤枠の部分)Upload By 荒木まち子災害時にも有効な「ヘルプマーク」を知っていますか?丁寧に確認してもらえて安心!『年金請求書』など、記入方法がわからない部分がある申請書類は、申請時に窓口で担当者と一緒に記入することは事前に打ち合わせ済みでしたが、『病歴・就労状況等申立書』もここまで丁寧に確認してもらえると思っていなかったので私は驚きました。Upload By 荒木まち子障害年金請求を審査、認定するのは日本年金機構です。役所の窓口では書類が全て正しく整っているかを確かめる作業をしています。ですが窓口の方が「『病歴・就労状況等申立書』を読んだ審査担当者が、状況を正確に把握できるように」と内容を一緒に確認してくれたことを私はとても嬉しく思いました。また、申請窓口の方は後の消費税アップを見越して、今後に必要になると思われる『年金生活者支援給付金』の申請手続きも同時にしてくれました。最後に戸籍課で発行した戸籍謄本を提出し手続きは終了しました。全ての手続きを終えるのには一時間ほどかかりました。申請してみて実感。障害年金請求の資料はそんな早くから準備する必要はないかも一連の手続きを終えて私が感じたのは、障害年金申請資料準備は「早ければ早いほど良い」というものではないということでした。※娘の初診日は18歳より以前でしたので、「障害認定日」は20歳の誕生日の前日です。初診日、障害認定日等によっては早めに動き出す必要がある場合もあります。「障害認定日」とは、障害の程度の認定を行うべき日をいい、請求する傷病の初診日から起算して1年6月を経過した日又は1年6月以内にその傷病が治った場合においては、その治った日(その症状が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日を含む。)をいう。たとえば年金申請コラム第3話で書いた、“初診の医療機関が廃業していたり、カルテが破棄されていたりして『受診状況等証明書』を作成してもらえなかった場合は2番目に受診した医療機関で『受診状況等証明書』を作成してもらう。もし2番目の医療機関でも『受診状況等証明書』が作成できなかったら3番目の医療機関…と辿っていく”という規定は、障害認定日が20歳に達した日以前である場合は、障害の程度を認定する時期は一律に20歳となる。2番目以降の医療機関の受診日から障害認定日が20歳以前であることを確認でき、かつその受診日前に厚生年金等の加入期間がない場合には、初診日の医証を追加で請求者に求めずとも、20歳前の期間で請求者が申し立てた初診日を認めると新たに規定されました。5年、10年経てば制度は変わります。(逆に時代やニーズに沿って改新されなければ困ってしまいますよね)ですので、お子さんが未就園児や小学生のころから窓口に障害年金についての相談に行ったり、焦って申請書を取り寄せたりする必要はないと思います。20歳になるまでに子ども自身や子どもを取り巻く状況、困りごとなどは刻々と変化していきます。いくら別紙添付が可能とはいえ、子どもが小さいうちからのできごとすべてを『病歴・就労状況等申立書』に書くことはあまりおすすめできません。『病歴・就労状況等申立書』では1.病院や療育センターの初診日2.通院、入院歴3.投薬履歴4.障害に起因した大きなアクシデント(怪我や事故など)と、どのように対処しても改善できない現状や“申請時の”困りごとをしっかりと伝えることが大切だからです。ブログや日記などで子どもの記録を残していく場合、『日記や日々の子育て記録』と『書類に書いた方がよい内容』をカテゴライズしておくと良いかと思います。障害年金申請よりも先に意識しておきたい『子どもの情報の引き継ぎ』娘が通っていた療育センターは利用が小学生までだったので、中学進学を機に成人まで見てくれる病院に転院しました。当時はまだサポートブックなども普及しておらず、私は転院時に受けるソーシャルワーカーとの「受理面接」の為の資料として独自に娘の療育、発達検査、通院、投薬、病歴などを年表形式でまとめた『成育歴表』を作りました。子どもは成長と共に小児科や小児精神科から思春期外来や青年期精神科に移ることが多いですが、幼年期から成人までの発達障害を一貫して診てくれる医師はなかなかいないのが現状です。転院や主治医変更を意識して成育歴のような資料を予め作っておくと、『病歴・就労状況等申立書』作成時だけでなく、放課後等デイサービスやショートステイの利用等の申し込み、役所の相談窓口の担当者が代わったときなどに子どもの説明をするのに役に立つので良いと思います。次回は年金コラム最終話これまでのコラムでは主に提出する書類について書いてきましたが、次回最終話では書類についてではなく、申請作業を進めていく中で知った新事実や、改めて気がついたことについてお話しします。
2020年03月05日「年金」と聞くと、60代以降の方が受給している「老齢年金」をイメージする方がほとんどですよね。「年金=シニア世代」の印象が強くあるかと思います。しかし「年金」をもらっている方で20代の方も存在します。実は年金にはこの【老齢年金】以外にあと2つあります。【障害年金】と【遺族年金】です。この2つはシニア世代になっていなくても、条件に該当すれば若い世代で受給している方もいらっしゃいます。今回のテーマは若年層でももらう可能性のあるうちの一つ【遺族年金】について。中でもさらに【遺族厚生年金】についてわかりやすく解説していきますね。難しい言葉はなるべく使わないようにしますので、ご安心ください。年金には2種類あるここからは【遺族年金】だけではなく、少しだけ日本の年金制度自体の概要についてお伝えしましょう。なるべくわかりやすくポイントを絞って解説します。今ここで理解しておくと、【遺族年金】だけでなく【老齢年金】【障害年金】についても理解が深まります。国民年金に加入していた人の年金【基礎年金】日本に住んでいる20歳以上60歳未満の人は、必ず【国民年金】に加入して、しっかり国民年金保険料を払わなければいけません。様々な事情から払えない場合は、納付猶予や納付免除を申請することで、払えるようになったときに遡って追納することもできます(追納期間には別途定めがあります)。20歳から60歳までの40年間(480月)全額払い込むことで満額の年金額を受け取ることができますが、未納などがあるとその分だけもらえる額が減ります。まとめると、国民年金は【誰でも必ず加入していなければならないもの】です。このことから、年金制度の基礎となるという意味で【基礎年金】と呼ばれます。国民年金の保険料(掛け金)は、ほぼ毎年料率改定がありますが、仕事や属性によって金額の差はありません。掛け金は一律同額です。ちなみに令和元年度は月額16,410円です。厚生年金に加入していた人の年金【厚生年金】【厚生年金】とは、会社員や公務員などの給与所得者(勤務先から給料をもらっている人のこと)が、毎月の給与や季節の賞与などから自動的に保険料を天引きされているものです。平成27年以前は公務員の方が加入する【共済年金】がありましたが、現在では厚生年金と統合されています。つまり、厚生年金の加入対象者は会社員や公務員となります。私が行っているマネーコンサルティングでもよく質問を受けるのが「【厚生年金】に入っていれば【国民年金】には入れないの?まさか2つも加入できないでしょ?」という内容のご質問です。二階建ての年金という言葉を聞いたことはありませんか?【厚生年金】は、いわゆる二階建ての年金の「二階部分」にあたります。では一階部分は何かというと、上の項目で解説した【基礎年金】です。【基礎年金】は、とにかくどなたでも加入しなければいけないものなので、会社員などの厚生年金加入者は【一階も二階も加入し、両方もらえる】ということですね。【厚生年金】の保険料は、給料に応じて変動しますので、例えば同期入社の方でも全く同じ厚生年金保険料であることはまず考えられません。更に、厚生年金加入の一番のメリットとして【保険料が労使折半であること】が挙げられます。年金保険料の約半分は勤務先企業や団体が負担してくれているので、給与明細で確認する天引き額の倍の金額を実際には年金保険料として納めていることになります。遺族厚生年金・支給の条件それでは早速、今回のテーマである【遺族厚生年金】について確認していきましょう。基礎・厚生ともに【遺族年金】とは【故人が生前もらうはずだった年金を遺族補償として遺族に支給する】という性質があります。つまり、故人が何の年金に加入していたかによって、ご遺族がもらえる【遺族年金】は違うという事です。【遺族年金】を考える場合は「故人の要件」と「遺族の要件」をどちらも満たす必要があり、この後の項目で更にそれぞれについて見ていきましょう。遺族の考え方として、一昔前までは「遺族年金の対象配偶者は妻のみ」とされていました。しかし、家族スタイルの多様化が進む中、それではあまりにも時代に沿っていないということで、現在では配偶者である「夫」も対象となっています。ただし、まだまだ夫が受給するためには細かい要件が設けられていますので、この後の項目で解説しますね。必要な支給要件とは【遺族厚生年金】を受け取る為に必要な支給条件は以下の通りです。厚生年金被保険者が死亡した時被保険者期間中のケガや病気が原因で、初診日から5年以内に死亡した時【老齢厚生年金】の受給資格期間が25年以上あるものが死亡した時【障害厚生年金】1級または2級の受給資格のある方が死亡した時故人・遺族がそれぞれ満たす要件についてここからは、お亡くなりになった方(故人)と、遺されたご遺族がそれぞれ満たさなければいけない要件についてまとめます。いくつか項目がありますが、そのいずれかに該当すれば足ります。[adsense_middle]故人の要件故人の要件として真っ先に挙げられるのは、死亡した方が生前きちんと年金保険料を納めていたかどうかということです。上の項目でもご紹介していますが、【厚生年金】は基本的に給与から自動天引きされていますので未納ということはほぼ考えられないのですが、お亡くなりになった日にちの前に未納がなかったか等の細かい要件がありますので、以下リストアップします。以下のどちらかに該当すれば【遺族厚生年金】の故人の要件は満たしたことになります。故人の加入していた年金について不明な場合は、お住まいの地域の年金事務所などへご相談ください。死亡した日が令和8年4月1日より前であり、死亡した日に65歳未満で、なおかつ死亡した月の前々月までの1年間で保険料の滞納が無いこと被保険者が亡くなった場合、保険料納付期間が厚生年金加入期間の2/3以上あること(ただし免除期間を含む)対象者別・遺族の要件【遺族厚生年金】の対象者とは、お亡くなりになった方から生計を維持されていた(簡単に言うと、生活を共にしていた)妻、子、孫、55歳以上の夫、父母、祖父母です。対象者別に要件をまとめますので、確認していきましょう。また、遺族には年収の制限があり、遺族の年収が850万円を超える場合は残念ながら【遺族厚生年金】をもらえない決まりです。子に関しては【基礎年金】【厚生年金】いずれの場合でも次のように定義付けられています。【18歳に到達した年度末まで。または障害等級の1級または2級で20歳未満の者】いくら生計を同一としていて、同居している大学生の子供だとしても、18歳を超えていれば「子」としての【遺族年金】を受け取ることは残念ながらできません。妻妻は、再婚しない限り受給期間は一生涯です。また、年齢条件や子供の有無に関わらず、無条件で遺族年金がもらえます。ただし注意点として、お子さんのいない妻で、夫が亡くなった時に30歳未満である場合、5年間で【遺族年金】は打ち切りとなります。子・孫子の要件は一つ前の項目でもご紹介しましたが、基礎・厚生いずれも同一の基準です。子や孫の場合、18歳に到達した年度末までは【遺族厚生年金】の対象です。また、《障害等級1又は2級》の20歳未満の子も該当します。受給期間としては、それぞれ「子」の要件から外れる時までです。18歳到達の年度末までか、障害等級のあるお子さんの場合は20歳到達の年度末までです。夫・父母・祖父母夫・父母・祖父母の要件は、被保険者が亡くなった時に遺族の年齢が55歳以上である場合に、その後遺族が60歳到達後にもらえるようになります。妻や子、孫と違って、被保険者の死後すぐに受け取れるものではありません。もらえる人がたくさんいたらどうなる?例えばの話ですが、祖父母から妻、子、孫全てを支える大家族の世帯主が亡くなったとしましょう。この場合【遺族厚生年金】を受け取ることができるのは誰になるでしょうか?もちろん全員がもらえるわけではありません。実は【遺族厚生年金】をもらうことができる順番は決まっていて、すでに上位の順番の方が受け取ることになれば、後順位者は貰うことが出来ません。一番にもらう権利があるのは【子のある妻】です。次に【子】【子の無い妻】と続きます。では独身で配偶者が居ない場合はどうなるかというと【父母】【孫】【祖父母】の順で、同じく上位の方が受け取る権利があるという事になります。受給額の計算方法これまでにも解説しましたが【遺族厚生年金】は給与によってその受給額が変動します。なおかつ、加入期間を2つに分け、それぞれ所定の計算式に当てはめて計算し、それらを合算したものが【遺族厚生年金】の受給額の概算となります。計算式は以下の通りです。①2003年3月以前の加入期間:平均標準報酬月額×(7.125/1,000)×2003年3月までの加入期間(月数)②2003年4月以降の加入期間:平均標準報酬額×(5.481×1,000)×2003年4月以降の加入期間(月数)①+②の合計が、遺族厚生年金の概算となります。小数点が多かったり、計算式が複雑だったりで、なかなかこのような計算式を使って手動で算出するのも難しいかと思います。インターネット上には、無料で【遺族厚生年金】の目安額を知ることができるシミュレーションもあります。この場合は平均標準報酬額などが不明であっても、現在の月給などから簡易的に計算することができ、非常に便利です。目安として知っておく分には、このようなシミュレーションを使ってみることをお勧めします。[adsense_middle]年金は請求してもすぐはもらえない!【遺族厚生年金】をもらうためには、様々な書類を取り寄せて記入してから年金事務所に提出しますが、そこから実際に一回目の遺族厚生年金が振り込まれるまでに3~4か月程かかります。その間、提出された書類に関して、然るべき審査をきっちりしているという事です。(もちろん間が開いた分でも受給権が発生した期間については、第一回の年金振込の際に合算されて支給されますのでご安心くださいね。)被保険者の死後、葬祭費や医療費など様々な支払いが発生しているにも関わらず、収入の途絶する期間が続くのは心細いと思います。お子様の居るご遺族の場合は、今後の教育費についてもご心配なことでしょう。代表的な対策としては、一つ前の項目で紹介した年金受給額の目安を把握しておき、年金額でも足りない部分(例えば教育資金など)について予め民間の生命保険などで備えておくことが挙げられます。さらに、実際に年金が振り込まれるまでの生活費の3~4カ月分の預貯金を準備しておくことも有効ですね。【補足】遺族年金以外の支給額について被保険者が死亡した場合【遺族厚生年金】以外にも、ご遺族に支払われるお金があります。在職中であれば勤務先から死亡退職金が支給されます。また、加入していた社会保険から「埋葬費」「埋葬料」などの呼び名での一時金の支給があります。一律5万円程度を支給している場合が多いようです。遺族年金・遺族厚生年金に関するまとめ今回は、遺族厚生年金を受給する際のポイントについてまとめました。厚生年金のみ受給対象となる場合と、基礎年金も合わせて受給できる場合があります。それぞれ受給の条件が違いますので注意が必要ですが、詳細に関してはお住まいの地域の年金事務所や年金相談センター、または年金のプロである社会保険労務士の方へ個別ご相談することもお勧めです。また、今回ご紹介した計算方法についても、あくまで概算としてお考え下さい。だいたいの目安として捉えていただき、足りないと思った場合は民間の生命保険や預貯金などで早めに対策することが出来ます。万が一のことが起こってからでは対応できない場合がほとんどですので、前もって大体の額を把握しておくと良いですね。ご家族に万が一のことがあるということを仮定すること自体、不謹慎なような気がして気が進まない方がほとんどかと思います。しかし「万が一」は必ずいつかはやってきます。そうなったときに少しでも精神的、肉体的な負担を減らすことが出来るよう、遺族年金の制度や仕組みについて前もって知っておくことは非常に大切であると言えます。
2020年03月04日いよいよ今年も確定申告が始まりました。自営業などで毎年確定申告を行っている方は一連の流れと、どのようなものが確定申告の対象になっているかご存知の方も多いでしょう。しかし、遺族年金を受給している方が、確定申告が必要か否かは、普段から確定申告をしていてもなかなかわからないでしょう。そもそも年金制度自体、確定申告が必要なのかというところも分かりづらいですよね。では実際どうなのかというと、確定申告が必要な場合も、不必要な場合もあります。本記事では、この遺族年金の確定申告について、必要な場合・不必要な場合に分けて詳しく解説していきます。どうぞ皆様のお役に立ちますように。遺族年金は非課税であるまず初めに大前提として「遺族年金は金額に関わらず全額非課税である」という事は覚えておいてください。これは、遺族年金の内、自営業者など国民年金加入者だった方のご遺族が受け取る「遺族基礎年金」の場合でも、会社員などの給与所得者が加入している厚生年金の場合に受け取る「遺族厚生年金」の場合でも、とにかく遺族年金は全て非課税です。遺族年金は非課税=所得税や住民税、相続税などあらゆる税の対象とならないということ年金と税金の関係遺族年金が非課税であることは必ず覚えていただきたいポイントです。この後解説しますが、障害年金も遺族年金と同様に非課税です。年金制度には3つの年金があります。今回のテーマである【遺族年金】と【老齢年金】【障害年金】があります。基本的に日本の年金制度は【一人一年金】を掲げており、何かしらの年金を受給していたら他の年金と併給できないことになっています(同時に発生した別の年金は、どちらか選んで受給することになります)。中には特例として併給可能な年金もありますが、基本的には【一人一年金】であることも覚えておくと良いですね。課税される年金3つの年金のうち、課税されることがある年金は「老齢年金」です。老齢年金は一定額以上であれば課税対象となります。「老齢年金」つまり老後資金としての年金はどなたでも貰う権利があります(未納などが無ければ)。なぜなら、誰だって歳を取るからです。しかし「遺族年金」「障害年金」に関しては、必ずしも全員が一生涯の内にもらうわけではありません。該当せずに一生を終える方もいらっしゃいます。付け加えて、遺族年金に関しては大人だけが対象となるわけではありません。わかりやすい例では、遺族基礎年金の場合は「18歳未満の子」も受給対象であることから、大切な家族を亡くした後の貴重な生活費として受給している遺族年金に対して、未成年の子に課税するのはあまりにも酷ですよね。イメージとしてわかりやすくするために、このようなことを頭の片隅に置いていただくと良いかと思います。非課税の年金金額によらず一律非課税となる年金は以下の通りです。遺族年金や遺族保障関係と障害年金は全て非課税と覚えていただくと良いですね。所得税・住民税等全て非課税遺族基礎年金遺族厚生年金寡婦年金、死亡一時金障害年金(基礎・厚生いずれも)勤務先団体による遺族保障としての遺族年金(この場合は所得税のみ非課税となる)所得税や住民税以外に相続税・復興特別所得税などがありますが、いずれも遺族年金には課税されません。他に収入があれば確定申告を遺族年金は非課税です。つまり所得とはみなされませんから、遺族年金以外に収入がない場合は確定申告をする必要がありません。では、遺族年金をもらっている人は、どのような場合に確定申告が必要となるかというと、年金以外の給与所得や事業所得がある場合や、遺族年金以外の年金を受け取っている場合などがあります。この場合でも、遺族年金は金額に寄らず非課税ですので、それ以外の収入について確定申告をすることになります。補足・年金受給中は源泉徴収票もらえる?ここまでに繰り返している通り、遺族年金と障害年金は所得とみなされず非課税ですから、当然源泉徴収票は発行されません。しかし、老齢や退職にともなう年金の受給がある場合は源泉徴収票が発行されます。源泉徴収票は確定申告の際の必要書類です。年金受給に関して源泉徴収票の発行があったという事は、確定申告が必要な場合かもしれないので注意が必要です。[adsense_middle]【ケース1】確定申告が必要な場合遺族年金受給者で確定申告が必要な場合とは、遺族年金以外に収入がある場合です。この場合の注意点として【遺族年金以外の収入のみを確定申告する】ということです。繰り返しになりますが、遺族年金は収入とはみなされませんから非課税です。収入とみなされないのですから、申告する必要がないということです。例えばご主人を亡くされた奥様が自営業だった場合、その事業に対する所得の申告のみをすればよいという事です。【ケース2】確定申告が不要な場合確定申告が不要な場合の代表例として【遺族年金や障害年金のみ受給していて他に収入が無い場合】です。何度も繰り返しますが【遺族年金・障害年金は非課税】だからです。課税する収入がこの非課税の年金しかない場合は、確定申告のしようがないということになります。これから紹介する2つのケースでも、確定申告が不要となります。これらはどなたも一律で当てはまる条件ではないので、年金に関するご不明点は日本年金機構のホームページでご自身でお調べになるか、お住まいの地域の年金事務所に尋ねてみるとよいでしょう。①老齢年金のみ受給の場合また、これまで解説したように老齢年金では金額によって課税される場合もありますが、老齢年金のみが収入の方で(年金以外に収入がない場合)一定の金額に満たない場合は確定申告は不要となります。金額の目安は以下の通りです。65歳未満の場合…年額108万円未満の場合65歳以上の場合…年額158万円未満の場合②確定申告不要制度を利用する場合老齢年金をもらっている人で、確定申告の手間を省くために特例として「確定申告不要制度」というものがあります。以下の条件をどちらも満たす場合は、この制度を利用できます。受け取っている老齢年金の全額が源泉徴収の対象で、その合計が400万円以下であること公的年金以外の所得が20万円以下であること非課税でも更に節税できる場合って?遺族年金は非課税ですから、遺族年金しか収入がない場合は「所得がない」とみなされます。つまり、通常の確定申告などで発生する各種所得控除が一切関係ないことになります。そもそもの所得がないことになっているので、控除(差し引く)の意味がありません。所得控除の主なものとして「基礎控除」「医療費控除」「生命保険料控除」「寡婦(寡夫)控除」「扶養控除」「配偶者控除」などがあります。しかし、遺族年金を受け取っている人でも角度を変えれば「節税ポイント」が見えてきます。ここでは代表的な2つの例をご紹介します。医療費控除と住民税等のポイントご本人が遺族年金を受け取っている方で、生計を同じにしているご家族がいらっしゃる場合、同一世帯ということで医療費控除をまとめて受けることが出来ます。おひとり分より、二人分または複数名のご家族分まとめた方がメリットは高くなりますよね。例えば、ご主人を亡くされたお母さまと、会社員の息子様の同居世帯の場合、お母さまが遺族年金以外に所得が無ければ息子様の扶養親族になることで医療費控除の面でもメリットがありますし、扶養親族になることによって息子様の所得税及び住民税の控除が発生します。つまり節税になるという事です。必ずしも同居である必要はありませんが、別居の場合は少し控除額が下がります。扶養親族の控除額子や孫の扶養親族となる場合の控除額は以下の通りです。70歳未満の同居の親族の扶養となる場合、所得税38万円・住民税28万円の控除が発生します。70歳以上で同居の親族の扶養となる場合、所得税58万円・住民税45万円の控除が発生します。別居の場合は所得税48万円・住民税38万円の控除となります。社会保険でなければ意味がない扶養親族になることで、もう一つメリットがあります。今度はお母さまに対してのメリットです。この場合の例でいくと、息子様の健康保険に加入することで健康保険料を負担しなくてよくなります。ただし健康保険に関する注意点として【社会保険加入でなければ意味がない】ということです。自営業者やフリーランスなどの国民健康保険加入者の扶養に入ったとしても、ご本人はご本人で保険料を負担する必要がありますので、あまり意味がありません。遺族年金を受け取っている人の負担を減らすには、可能であれば扶養親族になって健康保険料を削減。遺族年金と確定申告に関するまとめ遺族年金と障害年金は収入とみなされず非課税であるということは、本記事を読んで一番印象に残ったのではないでしょうか。【収入とみなされない=所得ではない=確定申告不要】とイメージで覚えると良いかもしれません。関連する情報として、老齢年金は一定額以上では確定申告が必要であることも知っておくと役に立ちますね。医療費控除や扶養控除など【控除を活用した節約ポイント】は裏技的ではありますが、決して裏技ではなく、知っておくとおかないでは差が出る豆知識です。もし該当するようであれば、是非この控除を活用しましょう。年金にしても税にしても、なかなかわかりにくいことばかりですよね。しかし、実際に一度手続きをしてみると「意外と簡単!」と思うこともしばしば。あまり苦手意識を持たず、該当する場面においては本記事のようなインターネット上の情報も参考にしながら進めてみてはいかがでしょうか。
2020年03月03日遺族年金は、老齢年金制度(一般的に「年金」と呼ばれるもの)ほどは日常的に話題になるものではありません。老齢年金は誰でももらうことができるのに対し、遺族年金は必ずしも誰もがもらえるものではないからです。また、詳細は後述しますが遺族年金に関しては女性の方が受給の幅が広いことや、受給できるターゲット層の狭さも一般的に遺族年金の認知度が低い要因であると考えられます。今回の記事では、これらの手続き方法について手順通りにまとめて解説します。是非参考になさってください。遺族年金とは遺族年金には、故人が生前どの年金に加入していたによって2種類あります。ひとつは国民全員が加入義務のある「国民年金」に加入していた場合の【遺族基礎年金】、もうひとつは会社員などの給与所得者が厚生年金に加入していた場合の【遺族厚生年金】です。国民年金加入の方のご遺族は【遺族基礎年金】の受給要件に該当しなければ他の遺族補償はありませんが、厚生年金加入だった方のご遺族は「基礎」または「厚生」のどちらか(または両方)の要件に該当すれば、どちらの年金も受け取ることが出来ます。ここからは、この受給の要件に関して、加入していた年金別に詳しく解説をしていきます。日本の年金制度には、この【遺族年金】も含めて3種類があります。一般的に「年金」と呼ばれるのは【老齢年金】のことで、老後資金としての年金です。他に【障害年金】がありますが、これは所定の障害状態に該当した場合に受け取ることができます。受給の要件故人が、生前に加入していた年金がどれであるかによって、遺族がもらえる年金は変わってきます。さらに《故人の要件》《遺族の要件》があり、このいずれにも該当しなければ受給できません。どちらかの条件しか満たしていない場合は遺族年金を受給することはできません。ここからは年金の種類別に受給要件のポイントを解説していきます。基礎・厚生ともに共通する配偶者の所得要件として「年収850万円未満であること」があります。遺族基礎年金故人の要件《故人の要件》として、「国民年金に加入していること(していたこと)」「現に【老齢基礎年金】を受け取っていたこと」などがあります。遺族の要件《遺族の要件》としては「子(18歳を迎えた年度末まで)」または「子のある配偶者」です。つまり、お子さんのいらっしゃらない配偶者や、18歳を超えたお子さんがいる場合は【遺族基礎年金】は受給できません。子供の有無が非常に大きなポイントであり、あくまでも子供の養育のための側面が強いのがこの遺族基礎年金です。遺族基礎年金の場合の【配偶者】とは、父親・母親どちらでも良いとされています。生前、生計維持関係にあった妻や夫・子であれば、この受給対象となります。遺族厚生年金故人の要件《故人の要件》として、「厚生年金の加入者だった場合」「厚生年金加入期間に初診日のある病気やケガが原因で初診日から5年以内に死亡した場合」「所定の障害年金を受けられる場合」「老齢基礎年金の資格期間を満たしている場合」があります。遺族の要件《遺族の要件》として、生計維持関係である「1・配偶者」「2・子」「3・孫」「4・父母」「5・祖父母」の順位で受給権が発生します。配偶者や子がいる場合は真っ先に受給対象者となり、配偶者も子もおらず、例えば同居して生活を共にしている(これを生計維持関係と言います)親がいる場合には、その親が遺族厚生年金の受給の対象者となります。【遺族基礎年金】よりも受給範囲が広いことが特徴です。この場合の配偶者は夫でも良いのですが、妻が死亡した時点で、夫が55歳以上の場合、60歳になった以降遺族厚生年金をもらうことになります。【遺族厚生年金】の場合、子供の有無は問題ではありません。子どもの居ない配偶者でも年金をもらうことが出来ます。ただし、夫の死亡時に30歳未満で子どもの居ない妻である場合は、受給から5年間の有期年金となります。5年経過すると【遺族厚生年金】は打ち切りという事になります。【補足】現に会社員の妻である場合若くで夫が亡くなった場合、妻と子はどうなるのでしょうか。遺族年金として受け取る額は、本来夫が【老齢厚生年金】としてもらえるはずだった金額の3/4が目安です。この場合、若くして亡くなった場合は厚生年金の加入期間が少ないため【遺族厚生年金】も少なくなってしまうのではないか、と心配される方がいらっしゃいます。しかしご安心ください。厚生年金の加入期間が25年(300月)に満たない場合でも、300月とみなして遺族厚生年金を支給する【短期要件】という特別な要件があります。この短期要件があるおかげで、厚生年金加入が25年に満たない若年層の方の遺族補償として十分に安心できる仕組みとなっています。途中でもらえなくなる場合も配偶者の死亡時には要件に該当しており長年もらっていた遺族年金も、様々な理由から途中で打ち切りとなる場合があります。最も代表的な例は「子供が成長し、18歳を迎える年の年度末を過ぎてしまい【子のある配偶者】ではなくなった場合」や「新たなパートナーを得て再婚することになった場合」などがあります。[adsense_middle]申請に必要なもの申請に必要な書類は以下の通りです。年金請求書年金手帳(紛失の場合は再発行)故人と受給権者の続柄の明記のある戸籍謄本住民票(世帯全体で故人の除票となるもの・マイナンバー不要)受給権者の所得証明(源泉徴収票など)義務教育以外の子供がいる場合は、子の所得証明(高校生は学生証のコピーなど)死亡診断書交通事故など第三者行為による死亡の場合は、それらを証明する書類(交通事故証明書など)遺族年金の振込先金融機関の通帳印鑑(実印でなくても可。スタンプ印不可)申請場所遺族年金に関する書類の提出先は、全てが年金事務所ではありません。実はこの提出場所に関しても、受給する年金が基礎か厚生かによって違います。年金事務所へ提出する場合【遺族厚生年金】の受給対象者の方は、お住まいの地域の管轄である年金事務所へ提出します。市役所・区役所などへ提出する場合【遺族基礎年金】の受給対象者の方は、市役所や区役所などの市町村役場の年金担当課に提出します。代理での提出は可能?配偶者を亡くされた後は、遺族年金の手続きだけでなく相続や遺品・財産整理など、精神的にもお辛い中でやるべきことは山積みの状況です。遺族年金の手続きに関しては、委任状などの然るべき書類を揃えることで代理申請も可能です。社会保険事務所に依頼も可遺族年金だけに限らず、年金に関する手続きの専門家は社会保険労務士です。遺族年金の代理申請に関して、親族が遠方でお願いできない場合や、間違いの無いようにプロに依頼してきっちり手続きを進めたい方などは、社労士のいる社会保険事務所へ有料で依頼することもできます。料金目安として、2万円前後~せいぜい5万円くらいで収まります。郵送での提出も可どうしても時間が無い場合などは、必要書類を郵送して遺族年金の請求を行うことも可能です。ただし、この場合に注意しなければいけない点として、もし書類の不備や訂正が発生した場合に、やりとりに時間がかかってしまうという事です。可能であれば、やはり年金事務所や市役所等の年金窓口などの提出先に持参するのが確実でしょう。年金に関する相談場所遺族年金に限らず、年金制度全般に関しての相談場所は年金事務所です。時期によっては年金事務所でも大変混雑していることがありますので、前もって予約をしてから訪れる方が良いでしょう。提出期限遺族年金は、基礎・厚生ともに、いつまでに提出しなければいけないという期限は特に設けられていません。しかし遡って申請できる時効期間は受給権が発生してから5年と決まっており、受給権が発生して5年を超えると時効により権利が消滅します。やむを得ない事情により5年を超えてしまっても、時効撤回の申し立てをすることもも可能ではありますが、当初の期間内に行うよりも遥かに時間と労力がかかる作業なので、やはり早めに提出し申請することがベストです。実際に遺族年金の受給申請をしてから実際に受給するまでに3~4カ月かかることもあります。このことから、ご自身が遺族年金の受給対象者であると分かり次第、なるべく早めに必要書類などを揃えて然るべき提出先へ提出することをおすすめします。受給開始の目安遺族年金は、偶数月の15日に2カ月分を振り込まれる仕組みになっています。しかし、遺族年金の初回分の振り込みに関しては、ここまで解説してきたような様々な書類を提出し、それを基に「故人の要件」「遺族の要件」を満たしているか等の審査が行われまず。それらを経てから受給開始となりますので、早くても申請から3か月程度、長い場合は更にあと1か月程度かかる場合もあります。初回振込が遅れても、受給権が発生している年金額に関しては後の振り込みと合算されますのでご安心ください。受給開始までの生活費の備えが肝心実際に生活費としての遺族年金をもらえるようになるまで、最大4か月程度かかるとすると、その間収入がかなりダウンすることになります。配偶者の逝去により葬儀費用や医療費など、様々な形での出費は免れません。さらに、住居費や教育費など、配偶者の生前と変わらない定期的な出費も続きます。近年では民間の生命保険での保険金支払いもスピーディになりましたので、きちんとした保障の生命保険に加入していれば、実際に遺族年金を受け取るまでの生活費として十分な一時金となるでしょう。しかし、そうではない場合は、少なくとも当面の生活費として預貯金で備えることになります。生命保険にしても、預貯金にしても、早めに万が一に備えておくことが大切です。[adsense_middle]老齢年金と遺族年金は併給できる?日本の年金制度には【老齢・遺族・障害】の3種類があります。日本では【一人一年金の原則】があり、複数の年金の受給権が発生しても、基本的にはいずれか一つを選んで受け取ることになります。同じ種類の年金は併給OK遺族年金の場合、基礎と厚生を同時にもらうことは出来ます。これは老齢年金や障害年金の場合でも同じで、基礎と厚生は併給可能です。種類の異なる年金は要注意種類の異なる年金の受給権が発生した場合は、注意が必要です。どちらの受給権も発生していますので、どちらを受け取るか選ばなくてはいけません。ここでポイントとなるのは、一度発生した年金の受給権は消滅しない、ということです。今はいずれか一つの年金を選んでも、のちに別の受給権のある年金に切り替えることもできます。選ばなかったからといって、受給権が消滅するわけではありません。併給の例外65歳以上になって老齢年金の受給権が発生した後は、一人一年金の原則ではなく例外としていくつかの併給が認められます。老齢基礎年金+遺族厚生年金障害基礎年金+遺族厚生年金障害基礎年金+老齢厚生年金複数の年金受給権が発生した場合は、年金手帳を持参のうえ年金事務所等へ「どれを選ぶと良いか」の相談に行くことをお勧めします。本当に困っている事象に対して年金制度がより役に立つ方法を専門家に相談することが安心の第一歩です。遺族年金の税務遺族年金は、基礎・厚生どちらも全額非課税です。遺族年金とは、生計維持関係にある配偶者が逝去したことによる、生活費の大幅ダウンに備えるための生活費という位置づけであるからです。遺族年金の手続き方法に関するまとめ配偶者が亡くなった場合でも、受給のための要件を満たしていない場合は残念ながら受給することができません。まずは要件を満たしていることが大前提ですが、一度受給開始した遺族年金でも途中で要件を満たさなくなれば途中で打ち切りとなる場合もあります。手続きの流れとしては、故人が生前加入していた年金制度の窓口となる然るべき提出先に提出するだけで良いのですが、大変なのは書類の取り寄せや記入です。なるべく何度も書類の取り寄せに動くのではなく、本記事でまとめている必要書類を参考に、限られた時間の中で効率的に書類を集めることが出来ればと思います。これらの必要書類や手続きの流れについては、日本年金機構の遺族年金のページにもしっかりまとめられていますので、お困りの際は是非そちらもご参照ください。また、最寄りの年金事務所や市役所等の年金担当窓口にたずねるのも確実かと思います。
2020年02月20日生活を共にしていた配偶者が死亡した場合、これからの生活や今後の事など不安に苛まれ、精神的にとてもお辛いかと思います。日が経つにつれ、現実的には金銭面での今後についても一気に不安になることでしょう。この金銭面でのサポートとして「遺族に対する年金制度」があります。しかし残念ながら、どなたにでも平等に…というわけにはいきません。この遺族年金をもらうためには、いくつかの要件を満たす必要があります。その要件を満たしていない場合は残念ながらもらえないということです。本記事では、遺族年金を受け取るにはどうしたら良いか等について、具体的な申請方法についてわかりやすく解説をしていきます。受給の条件「遺族年金」の受給の条件として《亡くなった方が満たすべき条件》と、《受給の対象となるご遺族が満たすべき条件》の2種類があります。更に、亡くなった方が生前加入していた年金が、自営業やフリーランスの加入する国民年金であるのか、会社員や公務員などの給与所得者が社会保険と同時に加入している厚生年金なのかによって、それぞれの受給の条件が変わります。対象となるお子さんの条件に関しても年齢の制限がありますので、よく確認しましょう。【共通要件】遺族の所得制限基礎・厚生どちらにも共通することとして「遺族年金」を受け取ることになる方の所得の制限があります。年収850万円を超えている配偶者(遺族)の場合は、所得制限にかかり受け取ることが出来ません。この所得の制限を調査するためにも、年金請求書とともに提出する書類として「源泉徴収票」などの所得のわかる書類が含まれています。【自営業者等】国民年金加入の場合国民年金のみ加入している自営業者やフリーランスの方は、遺族年金のうち【遺族基礎年金】のみを受給することが出来ます。亡くなった方の条件受給資格期間が25年以上ある(免除期間も含めて保険料納付済期間が2/3以上であること)死亡日に65歳未満の場合は死亡した月の前々月までの1年間の保険料の滞納が無いこと(令和8年4月1日までの特例)ご遺族の条件以下のいずれのかに該当する必要がありますが、いずれ場合も、死亡した者と同居していた等の生計維持関係であることが前提です。子(18歳を迎えた年の年度末まで。または障害等級1級か2級で20歳未満)子のある配偶者【会社員等】社会保険加入の場合会社員や公務員など給与所得者として社会保険に加入し、厚生年金をかけていた場合は、遺族年金の内【遺族基礎年金】と【遺族厚生年金】の両方を受け取る権利があります。ただし、それぞれの要件を満たす必要がありますので、どちらか片方または両方を受け取ることとなります。亡くなった方の条件厚生年金に加入していた場合被保険者期間中にの病気やケガが原因で5年以内に死亡した場合免除期間も含めて保険料納付済期間が2/3以上であること死亡日に65歳未満の場合は死亡した月の前々月までの1年間の保険料の滞納が無いこと(令和8年4月1日までの特例)【老齢厚生年金】の受給資格期間が25年以上ある場合【障害厚生年金】の1級または2級を受けられる方が亡くなった場合ご遺族の条件以下のいずれのかに該当する必要がありますが、いずれの場合も、死亡した者と同居していた等の生計を維持する関係にあることが前提です。妻子(18歳を迎えた年の年度末まで。または障害等級1級か2級で20歳未満)孫55歳以上の夫父母祖父母申請方法遺族年金の条件を満たしていた場合は、速やかに年金受給の手続きをしましょう。ここからは、必要書類や申請先について解説します。[adsense_middle]必要書類必要書類は以下の通りです。年金請求書(日本年金機構HPよりダウンロードも可能)年金手帳世帯全員の住民票亡くなった方の住民票の除票請求する方(遺族年金の対象者)の収入のわかるもの(源泉徴収票など)子供の収入の収入のわかるもの(義務教育は不要。高校生は学生証の写しなど)死亡診断書のコピーまたは死亡届の記載事項証明書年金振込先に指定する金融機関の通帳印鑑(認印可。スタンプ印不可)申請先申請先は、どの年金を受給するかによって違います。遺族基礎年金はお住まいの地域の市町村役場の年金担当窓口です。遺族厚生年金は最寄りの年金事務所です。受取方法遺族年金の受け取り方法は、指定した銀行口座へ2カ月分の合計額が振り込まれます。支給のタイミングは1年の内の偶数月(2月・4月・6月・8月・10月・12月)の各15日です。15日が土日祝日に重なる場合は、前倒しで直前の平日となります(たとえば15日が日曜日である場合は、13日金曜日に振り込まれます)。初回分が振り込まれるまでの期間遺族年金の申請手続きを済ませてから、実際に1回目の年金振込があるまで約3~4か月かかります。支給日が遅れた場合でも、受給の権利が発生した日以降の分は初回分に合算して振り込まれますのでご安心ください。収入の途絶に備えるために手続きの為には、まず様々な必要書類を集めたり記入する必要があります。遺族年金の申請手続きと並行して、配偶者の逝去に伴う様々な手続きを同時進行する場合がほとんどですので、なかなか思うようには進まない場合もあるかもしれません。先ほども紹介しましたが、遺族年金を受取るには申請してから更に3~4か月かかります。その前の段階(提出する前)にも時間がかかってしまうと、配偶者の逝去から半年~1年後から遺族年金を受け取ることになる方も少なくありません。その間の収入の途絶に備えるために、生命保険や預貯金での最低限の生活費の備えは、あらかじめしておくようにすると安心です。受給額の目安について年金の受給額に関しては、各ご家庭の家族状況などによって差があります。もちろん、受け取る遺族年金が基礎年金か厚生年金かの違いもあります。遺族年金は非課税遺族年金は全額非課税扱いです。これは金額の多寡に関わらず、どなたでも一律課税されません。遺されたご家族の生活費の要となるお金ですので、そこまで課税していては本末転倒です。ただし、老齢年金や付加年金に関しては課税されます。扶養親族になるメリット高齢の親御様が遺族年金を受給している場合、給与所得者であるお子さんの「扶養親族」とすることで、お子さんの節税になり、さらに親御様も健康保険の保険料が安くなるなどのメリットがあります。夫ももらえる?これまでは【遺族基礎年金】における定義付けとして「子または子のある妻」と限定されていました。現行では「子のある配偶者」と改正されていますが、これは近年の家族形態の多様化によるものです。必ずしも夫が一家を担う大黒柱である必要はなく、夫婦が揃って社会で活躍するスタイルが増えてきました。このことから【遺族基礎年金】では、夫も対象となります。また【遺族厚生年金】でも夫が受け取ることは出来ますが、この場合は妻が死亡した当時に夫が55歳以上で、なおかつ夫が60歳以降にならなければ受け取ることが出来ないという少々厳しい条件となっています。[adsense_middle]年金がもらえなくなる場合とは?配偶者が亡くなった当初は受給の要件に該当していて受け取ることが出来ていた年金が、途中でもらえなくなることがあります。もらえない場合に該当する一般的な例として「再婚による場合」「子どもが成長して18歳を超えた場合」があります。事実婚の場合どうなる?近年、家族形態の多様化に伴い、事実婚や内縁関係でも柔軟に遺族年金が支払われる場合があるとのことです。この場合の大前提として、戸籍上別の婚姻相手がいないことは当然ですが、離婚後そのまま同居して事実上夫婦の形態で暮らし、生計を維持する関係にある場合などが、遺族年金上の生計維持関係とみなされる場合があるようです。実際に事実婚を証明するには様々な必要書類を提出しなければいけませんが、仕事上の都合や何かしらの理由があって未入籍のまま長く夫婦同然に生活をしている場合は、遺族年金の受給の要件に該当する場合もありますので一度年金事務所などに相談に行かれると良いでしょう。シングルマザーはどうなる?シングルマザーの方でお子さんとご本人だけの生活である場合、子供にとって唯一の親であるお母さまに何かあったら遺族保障はどうなるのでしょうか。まず、アルバイトやパートなどで国民年金のみ加入している場合、遺族基礎年金の受給要件である「子」に該当すれば、お子さんに遺族基礎年金が支給されます。お母さまの要件として、直近1年以内に保険料の未納が無ければ大丈夫です。会社員や派遣社員などで社会保険加入の場合、「子」の条件に当てはまれば、遺族厚生年金も受給できることになります。この場合のお母さまの要件として、基礎年金と同様に1年以内に保険料未納が無いこと等があります。配偶者が居なくても、お子さんは守られるべき存在です。然るべき遺族保障が遺されたお子さんにきちんと支給されることになっています。どうぞご安心ください。遺族年金の受給条件に関するまとめいかがでしたか。遺族の条件や亡くなった方の要件、さらに加入していた年金がどれであるかによって満たさなければいけない内容が様々です。ご自身がどこに、どう該当して、果たして遺族年金をもらうことが出来るのか、なかなかご自身で判断できかねる場合もあるかと思います。そのような時には最寄りの年金事務所や年金相談センター、市町村役場の年金担当窓口などへお気軽にご相談されることをお勧めします。ちなみに、委任状による代理申請や郵送での申請も可能です。また、年金制度全般に関する専門家は社会保険労務士です。別途有料にはなりますが、年金関係の手続きの代行も行ってくれますので、時間短縮や正確さを求める場合は社会保険労務士に依頼することも一つの対策となります。
2020年02月18日ベビーカレンダーをご覧の皆さま、こんにちは。 ファイナンシャルプランナー(FP)さんに保険の見直しを依頼したわが家。いろいろなプランを検討した結果、夫と私の最低限の医療保険と、夫に万が一のことがあった場合の収入保障保険に加入することにしました。 あとは生まれてくる赤ちゃんのための学資保険。大学入学の際にかかるお金を貯蓄するのが目的で(行くかわからないけど一応)、私たちが選んだのは18歳満期になると約200万円が支払われるものでした。結局、出産後まだ私が入院している間にもう一度来ていただき、学資保険の契約をしました。(17歳満期にするとか、何回かに分けてお金を受け取るプランにするとか、ドタバタしない方法はいくつかあったのですが、なんとなく18歳満期のプランにしたかったので)その後、家を建てたときと2人目が生まれたときにも保険の見直しをして、今に至ります。 ※最後に大事なことを付け加えておくと、この漫画は「保険には絶対入っておいたほうがいいよ!」という内容ではございません。ちゃんと貯蓄できる&資産がある場合や、逆に保険に入る余裕がない場合は、保険は必要ないと思います。「貯蓄目的で学資保険に入ろうとしたら、赤ちゃんが早生まれだったのでドタバタしちゃった!」というだけの内容です(汗)。同じように早生まれで学資保険を検討中の方のお役に立てれば幸いです。 著者:イラストレーター 和田フミ江姉妹の母。趣味はゲームと旅行と美味しいものを食べること。著書に「お母さんまであとすこし!」(ベネッセコーポレーション)、「おうちクエスト」(竹書房)など。
2020年02月15日配偶者が亡くなり、これからの生活をいかに立て直していくか大変心細い状況の中で、「遺族年金を受給できる」ということは唯一の安心材料ではないでしょうか。どんなにつらい状況であっても生活は続きます。つまり生活費は日に日に減っていきます。精神的にもお辛い中で、2カ月に一度の振込日には、必ず生活費として遺族年金を受け取ることが出来ると思うと、少なくとも金銭面での不安は少し解消されるかもしれません。本記事では、この大切な遺族年金の受け取りの流れについて解説していきます。申請方法の流れ遺族年金は、老齢年金と違って誰しもが受け取る権利のある年金ではないので、該当する場合にはご自身で申請しなければ受給できません。配偶者の逝去により、なんらかの遺族年金を受給できる要件に該当するかもしれない、と思った方は最寄りの年金事務所へ相談に行くと良いでしょう。もちろん本記事のようにインターネットや書籍などで遺族年金についてご自身で調べるのも一つの手段ではありますが、配偶者を亡くした後で精神的にもお辛い中、ご自身で調べるにも限界があるのではないでしょうか。ここからは実際の申請方法の流れや必要書類について、なるべく簡潔にポイントを絞ってまとめていきます。是非参考になさってください。申請に必要な書類申請に必要な書類として、2パターンあります。まずは【ご自身で取り寄せる書類】、もうひとつは【年金事務所から受け取る書類】です。年金事務所から受け取る書類は「年金請求書」のみです。実際に年金事務所へ行き直接受け取ることもできますし、日本年金機構のホームページ内より年金請求書のダウンロードもできます。記入見本を確認することもできますので、ホームページの資料をお使い頂いても良いでしょう。【ご自身で取り寄せる書類】はいくつかありますので、以下リストにて紹介します。年金手帳戸籍謄本(提出の6カ月前までのもので、配偶者との続柄のわかるもの)世帯の全部の住民票請求者(ご遺族)の収入のわかるもの(生計維持認定のため)子の収入がわかるもの(義務教育中の子の証明は不要。高校生は学生証など)死亡診断書または死亡届の記載事項証明書受取先金融機関(遺族年金振込先)の通帳印鑑(スタンプ印不可。認印は可能)どこに申請するのか「遺族年金の受給」といっても、自営業者やフリーランス等のご遺族が受け取る年金なのか、会社員や公務員等の給与所得者のご遺族が受け取る年金なのかによって、申請および提出先が違います。亡くなった方が国民年金の加入者だった場合の申請先は「市町村役場の年金窓口」です。一方、給与所得者であり、厚生年金の加入者だった方の請求先は「お住まいの都道府県の最寄りの年金事務所」となります。申請から実際の受け取り年金請求書や取り寄せるべき書類一式を提出したら、あとは実際に振り込みがあるまで3~4カ月待つことになります。途中で進捗状況を知らせる葉書や封書が日本年金機構から届きます。またその間、書類に不備などがあれば当然修正することになり更に時間がかかりますので、なるべく最初の提出時に間違いのないよう書類を揃えましょう。以下、申請から初回の振込までの流れを順を追って解説します。受給資格の取得(配偶者逝去の翌月)遺族年金の請求(請求締め切りの期間は特にありませんが、なるべく早めが良いでしょう)日本年金機構より【年金証書・年金決定通知書】が郵送で届く日本年金機構より【年金振込通知書】【年金支払通知書】が郵送で届く第一回目の年金受取その後は偶数月の15日(土日祝の場合は前倒し)に遺族年金振込受給できる期間各種遺族年金を受け取ることが出来るのは、受給要件に該当したときからスタートで、該当しなくなれば取り消しです。最初は貰っていたのに、のちに要件に該当しなくなる場合とは、主なもので【新たなパートナーと再婚する場合】や【遺族年金を受け取っていた遺族の死亡】により中断すること等が挙げられます。加えて、遺族基礎年金に関しては子供がいるかいないかは受給するための大前提となります。そのお子さんが成長し、18歳を超えた場合には、遺族基礎年金は打ち切りとなります。いつからもらえる?遺族年金の開始時期は「配偶者の死亡した日の翌月から」対象となります。ただし、翌月からすぐに振り込みがあるわけではありません。実際には諸手続きを済ませた後、3~4カ月くらいは初回の振込までに時間がかかります。また、振り込まれるタイミングは個別に違うものではなく、全国一斉に日にちが決められており、銀行などの金融機関では「年金支給日カレンダー」をあらかじめ掲示や配布しているところもあります。支給月および支給日支給月は1年の内の偶数月で(2月・4月・6月・8月・10月・12月)、支給日は偶数月の15日です。ただし土日や祝日などで一般的な金融機関が営業していない日にちに年金振込日が重なった場合は、前倒しでの振込となります。(たとえば2月15日が土曜日である場合、前倒しの14日金曜日に年金が振り込まれます)遺族年金の認定日から実際の初回振り込みまで時間がかかっても、その間に受け取ることが出来る年金額については、初回振込分に合算して支給されます。たとえ遅れていても、年金受給の権利が発生していればもれなく受け取ることが出来ますのでご安心ください。受給できる要件受給できる要件として、亡くなった配偶者が「国民年金」「厚生年金」いずれに加入していたかによって違います。また、どちらの場合でも【配偶者】であれば夫でも妻でも良いのですが、夫の場合は少々要件が厳しい場合があります。ここでは年金制度別に、受給の要件についてポイントをまとめます。[adsense_middle]①国民年金受給の対象は「生計維持関係にある子または子のある配偶者」子の要件として18歳に到達する年度末までであること子の18歳以降はもらえなくなる妻の死亡により夫が受給する場合は、夫の年齢が55歳以上で60歳未満であること子供の居ない場合は受給不可遺族の要件として前年の収入が850万円以下であることお子さんの居ない国民年金加入のご夫婦の場合、遺族年金をもらうことが出来ません。現行の遺族年金制度では、年齢や収入に関わらず、子供の有無が大きなポイントとなっています。例えばご夫婦二人で自営業を営んでいる場合などは、配偶者の内どちらかがお亡くなりになると事業自体の規模縮小や、場合によっては廃業せざるを得なくなる場合もあります。遺族年金が無いという事は、配偶者の死後の生活費を自分で準備しておくしかありません。生命保険の死亡保障でしっかりお互いの為に資産を残すことや、事業の内容によっては損害保険への加入検討など、早めに万が一に備えておくことをお勧めします。②厚生年金受給の対象は「配偶者、子、父母、孫、祖父母」の順で順位の高い人が受給する。子供の居ない配偶者でも受給できる(ただし妻が30歳未満の場合は受給上限5年)40歳以降65歳未満の場合は中高齢寡婦加算も上乗せされる場合もある。妻が死亡した時に夫が55歳以上であれば60歳以降から受給可能。中高齢寡婦加算とは、遺族厚生年金を受給する妻にお子さんがいない場合(または18歳に到達した子がいる場合)に、40歳から65歳未満であればその期間だけ上乗せして支給されます。残念ながらこの制度は、妻を亡くした夫には適用されません。また、中高齢寡婦加算が65歳で終了した後、妻が自分の老齢基礎年金を受給するようになったら、今度は【経過的寡婦加算】という加算を受け取ることが出来る場合もあります。これも遺族が夫の場合は受け取ることが出来ません。このような遺族年金に関する諸制度に関しては、妻が遺族になる場合が未だ優遇されている面があります。受給できる金額の目安遺族年金の金額は、亡くなった配偶者が生前に加入していた年金が、国民年金か厚生年金かどちらだったかによって計算基準が変わります。なお、年金制度の違いによる受取基準は上記の通りです。ここでは年金別に金額の目安となる概要を説明します。また、年金額の一般的な計算はご自身やファイナンシャルプランナーでも行うことは可能ですが、年金に関する専門的なご質問に関しては、最寄りの年金事務所または社会保険労務士までお尋ねください。基礎年金は一律遺族基礎年金(国民年金加入者だった方)の場合は、年金受給の要件に該当すれば受け取る年金額はどなたでも一律です。基準となる額は同じなので、変動があるとすればせいぜい子供の人数によって金額が変わるくらいです。一律の金額は以下の通りです。780,100円+子の加算(第2子までは各224,500円・第3子以降は各74,800円)厚生年金は報酬により変わる遺族厚生年金の受給額は、亡くなった配偶者の年収に応じて細かく金額が変わります。基礎年金と違い、決して一律ではありません。平成15年以前とそれ以降の被保険者月数と、平均標準報酬月額(平均標準報酬額)を掛け合わせ、さらにそれぞれに対して所定の係数をかけて合算したものが遺族厚生年金の額の目安となります。この計算式は非常に複雑な為、手計算で行うのではなく、Web上に無料で公開されている遺族厚生年金の受取額を調べるための簡易シミュレーターがありますので、そちらを活用するのが良いでしょう。遺族年金がいつからもらえるのかに関するまとめ遺族年金をもらうと言っても、なかなかすぐには受給開始とならないことはお分かりいただけたのではないでしょうか。年金を受け取ることになる方(ご遺族)の生計維持関係の確認や、年齢・年収の確認、お子さんの条件など、申請してから調査し認定を受けるまでに、最低でも3カ月~4カ月は時間がかかると思っておいた方が良いでしょう。またその際でも所定の期間の分は、1回目の支払日にまとめて振り込まれますが、初回振込まで少し間が空く間の生活費に困ることがないよう、できるだけの預貯金は常に準備しておくことをお勧めします。申請先に関しても、基礎年金の請求は市町村窓口、厚生年金の申請は年金事務所と、実は細かく分けられています。もちろん年金全体に関するご相談やお尋ねは最寄りの年金事務所で構いませんが、提出先は異なるという事は覚えておきましょう。
2020年02月14日1月28日、日本初の「わりかん保険」が発売になった。わりかん保険とは、加入者の誰かにもしものことが起きたとき受け取る保険金を、加入者の割り勘でまかなうというもの。少額短期保険を扱うジャストインケースが、がん保険としてリリースした。そんな、わりかん保険について、経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれたーー。■40歳未満なら月500円という保険料の安さも魅力わりかん保険は、がんの診断で保険金が一律80万円出ます。保障はこれだけ、とてもシンプルです。加入者が払う保険料はいくらか、加入者が1万人でかんになった人が2人のケースで見てみましょう。保険金は80万円×2人=160万円で、保険会社の経費(30%)も支出に加えます。これをがんになっていない9,998人で割り勘すると、保険料は229円になります。がんになった人への保険金はいったん保険会社が立て替え、こうして計算された保険料を、加入者は翌月後払いするのがわりかん保険の特徴です。保険料の中身がわかる透明性がメリットでしょう。わりかん保険は、がんになる人がいなければ保険料はゼロですが、がんになる人が多くても、保険料には上限があります。年代ごとに20~39歳が500円、40~54歳が990円、55~74歳は3,190円。がんになる確率に応じた負担上限です。注意したいのは、少額短期保険なので、保険契約者保護機構の対象外ということ。保険会社が倒産したら保険料は戻らない可能性も。ただ1年契約の月払いなので、個人の被害額は大きくなりませんが。保険は本来、仲間同士でお金を積み立て、お金が必要な仲間に用立てる助け合いの仕組みでした。しかし今の保険は、保険料を前払いし、その中から保険金が支払われます。保険料がいくら集まり、保険金がいくら支払われたか、また、保険会社がいくら利益を得ているかなどが見えにくいため、保険会社への不信感が根強いです。ジャストインケースは、加入者の募集から、クレジットカードなどでの支払い、毎月の保険料もメール連絡と、一連の流れがインターネットで完結します。だから、毎月清算の後払いという手間はかかっても、仲間の助け合いを実感できる仕組みを作ることができたのでしょう。ただし、再発した場合のフォローはありません。私はわりかん保険の登場で、保険がシンプルでわかりやすいものに変わるのではないかと期待しています。「保険はハズレを引いた人が保険金をもらうくじ引き」ですから、「保険はむずかしい」という思い込みをなくしましょう。たとえば自動車保険なら、事故後の交渉など、保険会社によるアフターフォローが重要ですが、自分で診断書を取り提出すれば保険金が下りる生命保険に、アフターフォローはありません。もらえる保険金額が同じなら、保険料の安い保険がよい保険。選ぶのも簡単です。このようなタイプの保険は、海外ではすでに注目を集め、特に中国では、1年間で1億人の加入者を集めた保険もあるといいます。日本でも、犬種ごとのペット保険が今年中にリリースされる予定です。今後の広がりに注目しましょう。「女性自身」2020年2月25日号 掲載
2020年02月14日配偶者を亡くし遺族年金を受け取ることになった場合、ご遺族がご本人だけなのか子供がいるのかによって支給額が変わります。他にも、配偶者が国民年金に加入していた場合にももらえる「遺族基礎年金」か、会社員や公務員などの給与所得者で厚生年金に加入していた場合にもらえる「遺族厚生年金」なのか、あるいはそのいずれも貰える場合があるのか、など遺族年金の受給には様々なパターンがあります。本記事では、どのような状態に該当すれば、どこの年金からいくらもらえるのか、受給要件や計算方法も含めて解りやすく解説していきます。なお、遺族年金制度全般に関しては【日本年金機構】ホームページ内の遺族年金に関するページにて、解りやすくまとめられています。受給要件とは遺族年金をもらえるようになるための要件は【亡くなった方の要件】と【ご遺族の要件】の2種類があります。このどちらも満たすことで初めて年金の受給権が発生します。該当する遺族年金が基礎・厚生いずれの場合でも共通する要件として、「亡くなった配偶者と生計維持関係にあること」「生計維持関係にある遺族の年収が850万円に満たないこと」があります。そこから更に基礎・厚生で要件が違いますので、ここからは基礎と厚生に分けて解説します。ご遺族が遺族基礎年金をもらうということは、亡くなった配偶者が自営業やフリーランスなどで国民年金に加入している(していた)場合です。加入義務のある国民年金は、誰でも加入しなければならないので、会社員などで厚生年金に加入している人でも、この基礎部分の条件も満たせば厚生年金と併せて貰えることになります。よく「二階建ての年金」と言われますが、一階部分は国民全員が支払う義務のある【国民年金(基礎年金)】です。二階部分は、給与所得者が更に上乗せで加入している【厚生年金】です。つまり、厚生年金加入者は一階にも二階にも該当すればどちらも貰えるという事になります。遺族基礎年金を受給するための条件亡くなられた方の要件亡くなられた方の要件として、下記要件などのどれか一つに該当しなければなりません。国民年金に加入している(していた)こと保険料の納付について免除している期間を含めて加入期間の2/3以上の保険料を納付していること老齢基礎年金を受給する資格を保有していること保険料の納付が済んでいる期間が25年以上であること遺族の要件遺族の要件として、18歳到達の年度末を迎えるまでの子と、その子のある配偶者(夫でも妻でも可能)です。子の要件として、もう一つ【20歳到達未満で、障害等級1級・2級に該当する子】という条件もあります。お子さんが、この内いずれかに該当すれば対象となります。遺族厚生年金を受給するための条件亡くなられた方の要件亡くなられた方の要件として、下記要件などのいずれかに該当する必要があります。厚生年金に加入している(していた)こと厚生年金の被保険者期間中のケガや病気が原因で、初診日から5年以内に死亡した場合1級または2級の障害厚生年金を受給している人が亡くなった場合免除期間も含めて保険料納付済期間が25年以上であることまた、特例として【2026年3月末までに65歳未満で亡くなった場合、亡くなった付きの前々月までの1年以内に保険料の未納がなければ良い】というものがあります。遺族の要件遺族の要件としては、基礎年金よりも更に範囲が広がり【妻】【55歳以上の夫(60歳以降に受給開始)】【子】【父母、孫、祖父母】の順で、順位が高い人に要件を満たす人が居れば、その方が受給できる人ということになります。遺族厚生年金は、子供の有無に寄らず《妻》が受給権者の第一順位となっています。ただし、お子さんのいない妻が30歳未満である場合は、5年のみの有期年金となります。途中でもらえなくなる場合も配偶者と死別した段階では、上記のような要件にいずれも該当しており年金を受給していたとしても、途中で打ち切りになる場合もあります。主なものでは、【遺族である配偶者が新たなパートナーを得て再婚する場合】や【基礎年金の場合の受給要件である「子」が18歳を迎えた年度末を経過し、遺族年金の制度上における「子」に該当する人がいなくなった場合】などです。試算の仕方・方法遺族年金の詳細な金額については受給額が決定してみないとわかりません。ただし、日本年金機構ホームページ内でも計算式が公表されていますので、概算については決定前にご自身で割り出すことも可能です。受給決定前に試算することのメリットとしては、前もって受給額の概算を知っておくことで、それに対しての過不足を予め備えておくことが出来ます。例えば自営業者の配偶者の場合などで、生活費としての遺族年金が思っていたよりも少ない、またはそもそも要件に該当せず年金をもらえない場合などは、民間の生命保険や預貯金などで備えておく必要があります。試算をすることで、遺族補償を考えるきっかけになればと思います。[adsense_middle]国民年金加入者の計算方法国民年金に加入していた方の計算方法は、金額が一律であるため比較的シンプルでわかりやすい内容です。基本となる加算額+該当者が何人いるかの合計ですので、遺族基礎年金に関してはご自身でも一度計算してみると良いでしょう。780,100円+子の加算(第2子までは各224,500円・第3子以降は各74,800円)厚生年金加入者の計算方法厚生年金の加入者だった方の遺族厚生年金を試算する場合、基準となるのは《平均標準報酬月額》や《平均標準報酬額》です。報酬比例部分と言われるもので、その名の通り《報酬(給与)に比例して額が変わる》という性質のものです。ですから、算定基準がどなたも一律である遺族基礎年金の場合と違って、遺族厚生年金に関しては全く同じ金額を受け取っている方は日本中でもかなり少ないと言えます。計算式はかなり複雑ですが、こちらも日本年金機構にて計算式が公表されているものですので、参考までにご紹介します。〈平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの被保険者期間の月数+平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以降の被保険者期間の月数〉×3/4シミュレーションを活用しよう遺族厚生年金をご自身で試算するには、まず《平均標準報酬月額》や《平均標準報酬額》、各期間における加入月数を調べておく必要があります。毎年誕生日頃に届く《ねんきん定期便》や《ねんきんネット》などで把握することはできますが、これらが活用できない場合、ご自身ではなかなかはっきりした試算が出来ないのではないでしょうか。そのような場合には、インターネット上で簡単に遺族年金の額を試算できる無料のシミュレーションの活用をおすすめします。あくまでも目安の金額ではありますが、だいたいいくらくらいもらえるのかの参考にはなります。いくつかの項目について、簡易的に入力するだけで概算がわかりますので利用されてみるのも良いのではないでしょうか。【補足】各種加算について遺族厚生年金には、試算して割り出す受給額とは別に、該当者に特別に加算される金額があります。【中高齢寡婦加算】【経過的寡婦加算】です。ここでは、どのような条件に当てはまれば加算があるのかポイントを解説します。この加算はいずれも《妻》だけが対象となっている点は注意が必要です。残念ながら現行制度ではまだ《遺族である夫》は該当しません。中高齢寡婦加算注意点として、遺族年金について基礎と厚生のどちらも受け取っている方は該当しません。お子さんが居ない、または18歳を超えたため制度上の子が居ないことになり基礎年金を受け取れない遺族厚生年金の受給者で、夫の死亡時に40歳以上65歳未満の場合に【中高齢寡婦加算】があります。加算額は以下の通りです。中高齢寡婦加算の額=585,100円経過的寡婦加算経過的寡婦加算の要件として《昭和31年4月1日以前に生まれた妻》で、妻が65歳以降になれば妻の生年月日に応じて一定の金額が加算されます。この【経過的寡婦加算】は、昭和31年4月2日以降に生まれた妻には支給されませんのでご注意ください。経過的寡婦加算の額は以下の通りです。経過的寡婦加算の額=19,500~585,100円の間の所定の額(生年月日により額は変動する)遺族年金は金額によらず非課税遺族年金はご遺族の大切な生活費としての側面があり、2カ月に一度の振込額も決して少額ではないことから、精神的な支えとしても金額的にも大きな収入です。しかし、遺族年金(基礎・厚生いずれも)は全額非課税です。一般的に「年金」と呼ばれるのは、退職後のシニア層が受け取る「老齢年金」のことですが、この老齢年金は雑所得として課税対象となります。一方遺族年金や障害年金に関しては、年齢によらず条件を満たせば受給対象者となりますが、これらは年金年額や受給対象者の年収など一切関係なく全額非課税です。遺族年金の受給要件&計算方法に関するまとめ遺族年金は、配偶者を亡くした方やそのご家族を支える大切なお金です。生きている限り何かしらの出費はありますが、配偶者の死去により入ってくるお金が大幅にダウンしてしまうことが考えられ、この遺族年金は全ての収入の内で大きな割合を占めることになります。それだけ意味のあるお金だという事です。本記事でご紹介した遺族年金の受給額を知る方法は、あくまでも目安であり確定の金額ではありません。遺族年金に関するご相談やお尋ねは、お近くの年金事務所や市町村の年金窓口、社会保険労務士などの専門家に直接お尋ねください。ただし、詳細までは解らないにしても、概算としてお知りになる方法は本記事にて紹介していますので是非ご活用ください。誰でも利用できる年金シミュレーションも上手に取り入れながら、万が一に備えて、遺族年金以外の遺族補償も備えておくためのひとつの目安にしてはいかがでしょうか。
2020年02月13日交通事故で被害を受けた際には、加害者側の保険を利用して賠償金を請求するのが一般的なイメージですが、一定の場合には労災保険を適用して保険金を受け取ることもできます。労災保険と自賠責保険の両方が使える場合は、どちらを使うかによって損することがあるので仕組みについて正しく理解しておくことが重要です。そこで本記事では、労災保険と自賠責保険の違いや給付の種類などについて詳しく解説します。仕事中に交通事故の被害に遭われた方は、ぜひ参考にしてください。労災保険の対象とは?労災保険とは仕事中に発生した事故などについて一定の保険金が給付される保険のことで、交通事故の適用範囲は次の2種類があります。業務災害仕事中に交通事故の被害に遭った場合に適用でき、具体的には次のようなケースをいいます。トラックドライバーが運転中に事故に遭ったタクシードライバーが業務中に事故に遭った営業マンが自動車を運転して取引先に向かう途中に事故に遭ったこのようなケースは、交通事故の損害に対して労災保険を適用することが可能です。通勤災害出勤途中や帰宅途中に交通事故の被害にあった場合は、通勤災害として労災保険の対象となります。ただし、帰宅途中に居酒屋などに立ち寄ってそのあとに事故に遭ったような場合については、居酒屋に立ち寄った段階で帰宅が完了していると考えられるため、業務命令の接待などでなければ原則として労災保険は使えません。自賠責保険の対象とは?[adsense_middle]自賠責保険の補償の種類会社で加入している労災保険に対し、自賠責保険は交通事故の加害者側の加入している保険に対して保険金を請求することになります。自賠責保険は交通事故の中でも人身事故の被害者に対して最低限の補償を約束するためにある保険で、すべてのドライバーに加入が義務付けられている強制加入保険です。自賠責保険の補償の種類は主には、次のようなものがあります。治療に関する損害交通事故によって怪我をしたことに対して発生する損害に対する補償で、補償される上限金額は120万円です。ただ、この120万円の中に含まれる項目が次のように非常に多いので、治療期間が長引くと金額をオーバーして足りなくなってしまうことも少なくありません。治療費入通院交通費看護費用雑費義肢、義足の費用診断書の作成費用文書費用慰謝料治療費怪我の治療にかかった費用の実費について、自賠責保険から補償が受けられます。ただし、際限なくどんな治療でも実費を請求できるというわけではないため注意が必要です。例えば、交通事故でむち打ちになった場合、病院であれば整形外科で治療をしますが中には接骨院や整骨院、マッサージなどに通う人もいるでしょう。基本的に治療費として認められるのは医師の指示に基づく治療に限られるので、その他の治療院での治療費は自賠責保険が適用できないことがあるのです。医師の指示による場合など一定の場合なら認められることもありますが、後で解説する後遺障害認定まで考えた場合はできるだけ医師の治療を受けることをおすすめします。腕の悪い柔道整復師に当たってしまうとかえって症状を悪化させてしまうこともあり、加害者側から被害者側の治療を受ける際の過失だと指摘される可能性があるので、どこで治療するのかについては慎重に判断する必要があるのです。入通院交通費治療のために通院するための交通費や入院費用も、自賠責保険から補償を受けられます。ただし、どうせ保険が使えるからといって公共交通機関ではなくタクシーを使ってもタクシー代は補償されません。医師からタクシーの必要性を指摘されていれば別ですが、原則として公共交通機関での通院が可能な場合はその分の交通費しか支払われないので注意しましょう。また、駅から遠く自動車で通院するしかない場合はガソリン代や駐車代が補償の対象になりますが、高速道路代についてはよほどの事情がなければ認められるのは厳しいと考えらえれます。看護費用症状がひどく看護が必要な場合は看護費用も自賠責保険から補償が受けられます。看護費用はプロの看護師を雇った場合ではなく、家族が看護する場合でも請求が可能です。具体的には入院看護1日あたり4,100円、自宅看護や通院看護の場合は1日2,050円が原則です。ただし、それ以上に収入が減ったなどの立証ができれば近親者の場合で最高19,000円、近親者以外はその地域の家政婦料金の相場を限度として実費が補償されます。雑費入通院においてかかる雑費も補償の対象です。具体的には入院1日あたり1,100円で、万が一超える場合は必要かつ妥当な範囲で実費が補償されます。義肢、義足の費用怪我の影響で義肢や義足の作製が必要になる場合、必要かつ妥当な範囲で実費が補償されます。また、眼鏡が必要になった場合は50,000円を限度として補償を受けられます。診断書の作成費用医師に診断書の作成を依頼した場合にかかる費用も、自賠責保険から実費が補償されます。特に後遺障害認定をする際には後遺障害診断書が必要になるので、必ずかかる費用です。ここまでは病院関係でかかる費用ですが、以下の項目についても同じく傷害(治療)に関する損害として同じカテゴリに分類されます。文書費用保険金を請求する際に必要となる交通事故証明書(いわゆる事故証明)の取得にかかる発行手数料についても、実費が補償されます。休業損害交通事故で怪我をしたことで仕事を休まなければならなくなった場合は、それによる減収分の補償として休業損害を請求することができます。原則として1日あたり5,700円で、それ以上の損害が立証できる場合は例外的に19,000円を限度として実費が補償されます。ただし、労働としての対価ではない収入を得ている人については、たとえ交通事故で仕事を休んだとしても休業損害は請求できません。たとえば、会社役員で配当金を受け取っているような場合については、仕事を休んでも減収は発生しないので請求はできません。慰謝料交通事故で怪我をしたことによる精神的苦痛に対する損害賠償で、1日あたり4,200円で計算をします。慰謝料の対象となる期間は、原則として治療期間の範囲に限られるので、治療が終了したらそれ以降は請求できません。治療の終わりは誰が決める?怪我が完治すればそれによって治療が終わり、慰謝料の請求も終了するのですが怪我の内容によってはいくら治療を続けてもそれ以上の回復が難しい場合も出てきます。医学的には後遺症といったりしますが、交通事故の補償の範囲は医師がそう判断した時点までの治療費について加害者に請求でき、それ以降についてはいくら治療を続けても治療費は補償されないというルールがあるのです。医師が今以上の回復が難しいと判断することを症状固定といい、症状固定以降の治療費はすべて実費になります。このように傷害による損害の項目は非常に多いので、一見すると手厚い補償が受けられるように感じるかもしれませんが、実はこれらすべて含めて120万円までしか補償されないので、実際のところは自賠責保険だけでは十分な補償が受けられないことが多いです。自動車の修理費用は?ちなみに自賠責保険は人身事故に対する補償なので、基本的に物損事故つまり自動車の修理費用に対する補償は一切ありません。自動車の修理費用の補償を受けるためには、加害者側の加入している損害保険の対物賠償に請求するか、自分自身で加入している損害保険を使って補償を受けることになります。もちろん加害者本人に請求することも可能ですが、現実的には上記のいずれかの方法で自動車を修理するケースがほとんどです。労災保険の補償範囲&請求に関する疑問労災保険の補償範囲は、概ね先ほどの自賠責保険と同じですが補償される金額に違いがあります。具体的には以下の通りです。治療費は原則として全額が補償の対象休業損害は、平均賃金の80%が補償の対象このように、上限金額は違いますが補償している範囲は自賠責保険とほぼ重なっています。となるとこんな疑問が湧いてくるでしょう。両方に請求すると金額は2倍になるの?労災保険と自賠責保険を両方適用させて、より多くの補償を受けようと考える被害者の方が時々いますが、基本的に同じ損害項目について両方の保険から重ねて補償を受けることはできません。火災保険で言うところの、いわゆる焼け太りはできないので、両方適用するというよりはどちらを優先して適用するかという判断が必要になります。[adsense_middle]法的な手続きの優先順位は?労災保険を管轄する厚生労働省の通達によると、基本的には自賠責保険を使うことと示していますが強制力はありません。実際、自賠責保険を使うよりも労災保険を使ったほうが結果的に得られる金額が大きくなることもあるため、適用にあたっては慎重に判断する必要があります。労災保険を優先すべきケース労災保険最大のメリットは、治療費などが過失割合に基づく過失相殺の対象にならないという点にあります。例えば、次のような交通事故が発生したと想定します。損害総額=100万円のうち50万円が治療費過失割合=加害者7:被害者3この場合、過失相殺によって被害者が請求できるのは100万円の損害総額のうち70%に当たる70万円となります。このうち50万円が治療費として自賠責保険から支払われると、残り加害者に請求できる金額は20万円だけになってしまいます。対して、労災保険を使うと治療費については過失相殺の対象から外れるので、50万円全額を労災保険から補償を受けた上で残りの50万円に対して過失相殺が行われます。つまり、50万円の70%である35万円を加害者に請求できることになるので、自賠責保険を使った場合に比べて請求できる金額が15万円も増えることになるのです。交通事故は自分自身が被害者だと思っていても、お互いの自動車が動いている時にぶつかった場合は、被害者であっても一定の過失割合がつくことが多いので、過失相殺の影響を受けない労災保険を使ったほうがより多くの補償を受けられるケースが出てきます。後遺障害の結果が変わる?交通事故で一定の後遺症が残った場合は、後遺障害認定を受けることで後遺障害慰謝料という通常の慰謝料とは別の慰謝料を請求できるようになります。実は労災保険も自賠責保険も同じように後遺障害認定があり、基本的には基準も同じなのですが審査している組織が違うため、認定結果に違いが出てくることが多々あるのです。基本的には労災保険の方が審査が緩やかな傾向があり、自賠責保険よりも等級が認定されやすいと言われています。そのため、自賠責保険の後遺障害認定で非該当となっても労災保険で等級が認定されれば、その結果をもって再度自賠責保険の異議申し立てをすることで等級が認定される可能性が上がります。労災保険を使うデメリット労災保険を使うためには、勤務先の協力が必要不可欠です。ただ、業務中に事故を起こしたことで労災保険を使って会社に迷惑をかけたくないという方が多いという現実もあります。実際、保険金を請求するとなると会社の捺印が必要になる書類が複数あるので、諦めて自賠責保険だけ請求する人もいるようです。自賠責保険の場合は、加害者側の損害保険会社が窓口となって手続きを行ってくれるので、請求の流れとしてはとても簡単で使い易くなります。損害保険に加入していない場合加害者が損害保険に加入していない場合は、自賠責保険からしか保険金が出ないため、限られた上限金額を有効に活用する必要性が出てきます。そのため、できるだけ労災保険から補償を受けられる部分は労災保険で補償を受けて、その他の部分の補償について自賠責保険を使うといった工夫も必要です。詳しくは弁護士に確認することをおすすめします。交通事故における労災保険に関するまとめ今回は交通事故における労災保険と自賠責保険の違いなどについて詳しく解説してきました。給付の種類は非常に似ていますが、過失相殺の部分で取り扱いが大きく異なるので、もしも仕事中に交通事故の被害に遭われた場合は、どちらの保険から優先的に適用するのかについて弁護士に相談してから決めることをおすすめします。会社に気が引けて労災保険を使いにくいという場合もあるかもしれませんが、そもそも労災保険はこのような時のために保険料を支払っているので遠慮する必要はありません。特に自分自身にも過失割合がつくケースでは、労災保険を有効活用したほうが最終的に手元に残る金額が多くなるので判断は慎重にすることが大切です。
2020年02月11日お子さんが生まれると学資保険に加入しようと思っている方もいらっしゃると思います。しかし、2016年2月から始まったマイナス金利の影響で学資保険の返戻率(保険料の掛金合計に対して満期にいくら戻ってくる率)が下がったり、販売を取りやめたりと数年前とは学資保険に対する環境が変わってきています。 そのため学資保険を活用するかどうかも数年前とは異なりますので、学資保険の内容・目的と教育費の準備についてお伝えします。 学資保険とは貯蓄と保障を兼ねた保険学資保険(「こども保険」と呼ぶことも)は、お子さんの進学時期を満期に設定し、満期を迎えると学資金を受け取ることができます(貯蓄機能)。また、満期を迎える前に契約者(両親か祖父母のうち1人を設定)が亡くなった場合は、その後の保険料を支払わなくても満期保険金が受け取れることができます(保障機能)。なお、特約として死亡保険や医療保険を追加することができるものもあります。なお、2016年1月から始まったマイナス金利の影響を受け、市場の金利や国債の利回りが低下し、学資保険の返戻率も低下しています。3年以上前の学資保険より返戻率が下がり、過去には18年の保険期間で10%を超えるプラスになったもののありましたが、現在の学資保険は2~3%程度のプラスになるものが返戻率の上位となっています。そのため、数年前よりも学資保険に入る意味合いが薄れてきています。 お子さんの教育費の積立は必要学資保険は返戻率が下がり、加入する意味合いが薄れていますが、お子さんの教育資金を準備しなくても良いというわけではありません。最も安いとされている国立大学でも入学料と4年間の授業料だけでも約250万円かかります。私立大学などであればさらに学費がかかる可能性が高いです。 そのためにもできることであれば、お子さんが小さい頃から準備をしておく必要があります。利息を0とした場合、18年間で250万円を貯めるには、毎月11,574円の貯金が必要となります。現状の家計が赤字でなければ、まずは教育費の準備をすることを検討しましょう。 教育費の積立準備は学資保険以外の方法でも学資保険は貯蓄機能と保障機能を兼ね備えた保険ですが、貯蓄機能が低下している現状からすると優先順位が低くなるのは致し方ありません。また、加入している終身保険や収入保障保険などの死亡保険に必要な保険金があれば、保障機能を学資準備と合わせてする必要性が少ないと思われます。そのためにも、教育資金準備の方法は学資保険だけでなく、別の選択肢で教育資金を準備することを検討してみましょう。金利はほぼ0ですが、元本保証のある積立預金(積立定期預金など金融機関にとって名称が異なります)、金融庁が認定した投資信託で非課税での運用を行うつみたてNISA、アメリカドルなどの外貨で準備する外貨積立や外貨建て保険、その他、一般財形や個人向け国債などいくつかの方法があります。場合によっては複数の方法を組み合わせて、ご自身やご家族に合う方法で教育資金をするようにしましょう。 学資保険はかつてほど増えてくれる保険ではなくなりました。お子さんが生まれたら学資保険に加入すると単純に考えるのではなく、金額・年数・運用の経験などに基づいて、情報を収集した上で最適な準備方法を考えるきっかけにしていただければと思います。 監修者・著者:ファイナンシャルプランナー 大野高志1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®(日本FP協会認定)。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。予備校チューター、地方公務員、金融機関勤務を経て2011年に独立。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用等 多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。
2020年02月10日夫や妻が死亡し、悲しみのあまり普段の生活もままならない状況が続く方がほとんどかと思います。しかし現実は非常にシビアで、いくら普段通りに生活が出来ないとしても、生活費の支払いは待ったなしです。税金や年金保険料、行政に対して支払うお金に関しては、事情を説明して猶予してもらえる場合もあるでしょう。一方で民間企業に対して支払うべきお金(家賃や住宅ローン、車のローンなど)は、ほとんどの場合そのような事情が通用しません。このような経緯もあり、遺族年金はご遺族にとって生活の要となる非常に貴重な収入源です。本記事では、この遺族年金を受け取ることが出来ない場合について解説していきます。もし「受給できない状態」に該当すると判明した場合は、早めに民間の生命保険や預貯金などで、遺族補償としての対策を打ちましょう。遺族年金がもらえない場合とは一般的に、配偶者の逝去により「遺族年金」の受給手続きを始めると思いますが、手続きの途中で「遺族年金が受給できない」と判明する場合も少なからずあります。遺族年金を受け取れない状態は、大きく分けて2パターンがあります。一つ目はご遺族ご本人が該当しない場合、二つ目は亡くなった配偶者が要件を満たしていなかった場合です。具体的で個別の詳細をお知りになりたい場合は、お近くの年金事務所までご相談ください。障害年金と併給不可の場合もご遺族や亡くなった方の要件以外に、国の制度として受給できなくなる場合もあります。非常に稀なケースではありますが、遺族年金をすでに受給中時に、障害年金を受給する要件に該当した場合、65歳未満の場合はいずれか一つを選ぶことになります。つまり併給不可ということです。ただし、選ばなかった方の年金の受給権は全て消滅するというわけではないので、65歳以上になればどちらも貰えるという事です。原則として「一人一年金」です。基本的には年金の併給はできないと思っておいて良いのですが、例外として併給可能なものがあります。65歳未満の場合は、同じ種類の年金(遺族・障害・老齢)であれば基礎と厚生をどちらも貰うことが出来ます。種類の違う年金の権利が発生した場合には、どちらを受け取るか選ぶ必要があります(一人一年金の原則にのっとる為)。ただし例外として、65歳以降になれば「老齢基礎+遺族厚生」「障害基礎+遺族厚生」「障害基礎+老齢厚生」この3つの場合のみ併給可能です。再婚した場合は打ち切り最初は遺族年金を受給していた場合でも、その後新たなパートナーと新しい人生を歩んでいく場合、元の配偶者からの遺族年金は打ち切りになります。この場合は、年金事務所に「遺族年金失権届」を提出する必要があります。再婚後もそのまま受け取ることは不正行為に当たります。必ず自ら失権届を提出しましょう。①配偶者の年間の収入合計が制限以上の場合遺族年金をもらうためには、以下のような配偶者の年収制限があります。亡くなられた方の配偶者(または子)など遺族年金の対象となる方が、年収850万円以上を生涯にわたって受給できると確定している場合、遺族年金受取不可。現段階で850万円以上であっても5年以内に下回るのであれば遺族年金受取可能。受給者の要件についてこれらの遺族年金をもらうことが出来る方として配偶者や子などがありますが、この場合大切なのが「生計を一にしていた」というところです。いわゆる生計維持関係とも言いますが、同居して家族として一緒に暮らしている場合が一番スタンダードな生計を一にしている場合です。一方、世帯主が単身赴任などで家族とは別のところで暮らしていたとしても、配偶者や子に対して生活費の仕送りをしていることや、定期的に自宅に帰ってくる等の場合は、離れていても生計を維持する関係と言えます。遺族年金は、世帯主が逝去することによる生活費の大幅ダウンを補う公的な年金です。精神的な支えだけでなく金銭的にも支えを失った配偶者やご家族に対して、しっかりとサポートをする役割のあるお金です。②亡くなった方の条件も必要亡くなった方が以下のどちらかの要件に該当していない場合、ご遺族は遺族年金をもらうことが出来ません。どの年金に加入していたかで条件が違いますので、こちらでご確認ください。遺族基礎年金(国民年金)の場合国民年金に加入している人国民年金に加入していた60歳~65歳の人既にこれまで老齢基礎年金をもらっていた方(国民年金に加入していた方)老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている方遺族厚生年金(会社員・公務員)の場合厚生年金に加入している人被保険者期間中の傷病が原因となって5年以内に亡くなった方障害年金の受給を受けられる障害等級1級あるいは2級の方老齢厚生年金を既に受け取っていた方老齢厚生年金の受給資格期間を満たしている方亡くなった方の年金が未納だったら?年金保険料を全く払っていない場合は当然に遺族年金は貰えません。しかし、若くで逝去された場合でもご遺族に少しでも年金が支払われるように、納付に関する要件は明確化されています。被保険者の納付要件は以下の通りです。これのどちらかに該当しなければ、たとえ他の要件に該当していても遺族年金は貰えません。亡くなった日の属する月の前々月までの1年間に滞納がないこと亡くなった日の属する月の前々月までの被保険者期間の中で、保険料納付済期間と納付免除期間の合計が2/3以上であること子供の有無がポイント遺族に対する年金は2種類存在するという話はすでにお伝えした通りですが、これらの年金の受給の有無で決定的な違いは「お子さんが居るか居ないか」です。基礎、厚生のそれぞれについて解説します。[adsense_middle]遺族基礎年金の場合遺族基礎年金を受給できるのは「子」または「子の居る配偶者(夫・妻)」です。つまり「子の居ない配偶者」は遺族基礎年金をもらうことが出来ません。これまで解説してきたように、亡くなった方がきちんと国民年金を納めていても、お子さんが居ない場合は遺族基礎年金をもらえないということになります。また「子の居る配偶者」であっても、その子が18歳に到達した年度の3月末までで遺族基礎年金は打ち切りとなります。遺族厚生年金の場合遺族厚生年金を受給できるのは「配偶者」「子」「父母」「孫」「祖父母」の順ですが、配偶者が最優先です。この全員がもらえるというわけではなく、配偶者がいない場合は子、配偶者も子もいない場合は父母、といった順番で受給権者が繰り下がっていきます。遺族厚生年金は、遺族基礎年金と違って第一順位が「配偶者」となっており、つまり「お子さんのいない配偶者」でも受給できるということです。ただし死別した時点で配偶者の年齢が30歳未満の場合、遺族厚生年金は5年で打ち切りとなります。長年別居中では貰えない場合も近年、家族形態の多様化が進み、未入籍のシングルマザーや、働き盛り世代の「別居婚」、シニア層の「卒婚」など夫婦や家族のスタイルは様々です。遺族厚生年金の観点からいうと問題になってくるのは、いわゆる「別居婚」や「卒婚」といわれる「別居または別世帯での夫婦形態」の場合です。遺族厚生年金の受給要件の一つに「生計を一にしている」というものがあります。この場合の配偶者が逝去した場合に支払われるのが遺族厚生年金ですので、そもそも生前にすでに別居していたり世帯を分けて実体のない夫婦関係である場合は、生計維持関係とみなされず、たとえ籍を抜いていなくても遺族厚生年金の要件に該当しない場合があります。別居の理由が仕事上の単身赴任である場合や、親族の介護のため実家に帰っている等社会通念上正当な理由がある場合はこの限りではありません。ただし、長年別居していても籍を抜いておらず、戸籍上の夫婦である場合は、配偶者の死亡時に法定相続人として相続権は発生します。遺族年金がもらえない場合に関するまとめ遺族年金をもらう、と一口に言っても、「遺族基礎年金」なのか「遺族厚生年金」なのかによって受給できる条件が全く違います。大まかにいうと、お子様の有無は非常に大きなポイントとなりますし、受け取る側の所得の制限もあります。また他の年金との併給に関しても、一定の年齢にならなければどちらか一つの年金を選ぶ事にもなります(併給不可)。それら様々な要件をクリアして、最終的に遺族年金を受け取ることが出来ます。配偶者と死別した時点での生活環境に変更があるときは、速やかに年金事務所に届け出ましょう。
2020年02月02日配偶者を亡くした方が受け取ることが出来るのが「遺族年金」ですが、この遺族年金は死別後の生活費としていただくものです。同じく老後の生活費として受け取る「老齢年金」や所定の障がい状態になった場合に受け取る「障害者年金」もあります。いずれも、なにかしらで困っている人が受け取る「生活費」としての側面がある年金ですが、これらの年金に対しては、果たして税金を払わなくてはいけないのでしょうか。今回は、特に遺族年金について税務関係を確認していきますが、わかりやすいようにその他の年金とも比較しながら解説していきます。税金のかかる年金とは?年金には3つの種類があります。一般的に「年金」と呼ばれるものは「老齢年金」です。定年退職後の老後資金として受け取るものです。他に「障害者年金」は、所定の障がい状態になった場合に受け取ることが出来ます。最後に「遺族年金」ですが、これは配偶者を亡くした方で、なおかつ一定の条件を満たした方が受け取ることのできる年金です。公的年金の税務の取り扱い公的年金等の内、老齢年金(基礎年金・厚生年金いずれも)は雑所得として課税対象になります。一方、遺族年金と障害者年金に関しては、受給する金額に関係なく非課税となります。年金は貴重な収入世帯主の逝去に伴い、その後はそれまでのような生活が出来なくなる方がほとんどです。たとえば住居が賃貸の方は、もう少し家賃の安い部屋に引っ越しを余儀なくされる場合もあるでしょう。団体信用生命保険に加入して住宅ローンを組んでいた場合でも、負債は保険により相殺され住宅が残ったとしても、たとえばそこが地域の中でも一等地だった場合などは固定資産税の支払いが生活を圧迫する場合もあります。このようなことから、遺族年金を受給している方にとって、この年金は非常に貴重な収入となっていることは間違いありません。ここからは、少しでも生活の負担を軽減することが出来るポイントをご紹介していきます。確定申告で受けられる控除遺族年金を受給しているということは、確定申告や年末調整の際に「寡婦控除」「寡夫控除」「特別寡婦控除」のいずれかを受けられる場合があります。自ら申告しなければ誰も指摘してくれませんので、案外これらの控除を忘れている方もいらっしゃいます。控除を受けることができる権利があるのに手続きを失念すると、せっかくの権利が無駄になってしまいます。ここから詳細を解説していきますので、該当する方は是非覚えておかれると良いでしょう。寡婦(寡夫)控除は27万円、特別寡婦控除は35万円の所得控除となります。所得控除とは、一定の要件に当てはまる場合、所得合計から一定の控除額を差し引くことを指します。この所得控除には上記にて紹介した寡婦控除等を含めて細かく15種類もあります。これらは、該当する場合には全てご自身で申告しなければ控除を受けられませんので、節税のためにも必ずチェックしましょう。よく知られているものでは「医療費控除」「生命保険料控除」「寄附金控除(ふるさと納税も含む)」がありますが、詳細は国税庁ホームページ等でご確認ください。①寡婦控除寡婦控除には2つの要件があり、この内いずれかに該当すれば控除適用となります。寡婦控除・条件1「夫と死別、もしくは夫と離婚後婚姻をしていない人、または夫の生死が明らかでない一定の人で、扶養親族(子以外)がいる人、または生計を一にする子があること」。つまりこの場合は、配偶者と死別した人だけではなく、離婚して子供のいるシングルマザーでも寡婦控除の対象となるということです。寡婦控除・条件2「夫と死別した後婚姻していない人、または夫の生死が明らかでない人で、合計所得金額が500万円以下であること」。この場合は条件1とちがい、子供の有無は関係ない代わりに所得の制限があります。寡婦(寡夫)控除の概念における「死別」「離婚」とは、法律上の婚姻関係にあった者との死別や離婚を指します。未入籍であったり、事実婚や内縁関係のままであったりは、これらの寡婦控除を受けることは出来ません。しかし近年、家族スタイルの多様化から未入籍でシングルマザーになる方も増えてきた背景があり、今後の法改正のポイントとなっています。②寡夫控除二つ目は「寡夫控除」です。この概要は、ほとんど寡婦控除の条件と類似していますが「妻と死別または離婚後に再婚していないこと」「生計を一にする子があること」「合計所得が500万円以下であること」の3つを全て満たす必要があります。死別だけでなく、お子さんを連れて離婚したシングルファーザーの方でも、合計所得500万円以下であれば寡夫控除を受けることが出来るということです。逆に、妻と死別をしてもお子さんがいらっしゃらなければ寡夫控除の適用外ということになります。③特別寡婦控除特別寡婦控除とは、以下の要件全てに該当する場合に受けることが出来ます。通常の寡婦控除の要件をさらに厳しくしたものというイメージで良いでしょう。特別寡婦控除は「妻」のみに限られ、夫の場合は特別な寡夫控除制度はありません。夫と死別した、または離婚した、または夫の生死が不明生計を一にする子がいる合計所得が500万円以下市民税・住民税が軽減される寡婦(寡夫)控除や特別寡婦控除を適用すると何がメリットかというと、その控除額が所得から差し引かれることにより、市民税や住民税の算出根拠となる所得自体を少なくすることが出来ます。補足・シングルマザーの場合これまでの解説の通り、未婚のシングルマザーの方は現状では寡婦控除を受けることが出来ません。あくまでも婚姻歴のあるシングルマザーの方が対象です。しかし、未婚のシングルマザーの方は2021年から個人住民税が非課税になるという制度が新たに開始されることになりました。政府としても家族の多様化をサポートする姿勢が見られます。計算上節税になるポイントここからは、計算上「節税」ということになるポイントを解説します。主に、税制上や健康保険についてまとめていますが、いずれも知られていない場合が多く、せっかく制度として設けられているものばかりなので、是非こちらでご確認ください。[adsense_middle]健康保険のポイント例えば、既に成人したお子様の世帯に入れてもらっている方であれば、健康保険のポイントとして「生計を一にしている方の扶養に入る」ことができます。ただしこれは、お子さんが国民健康保険以外に加入していることが前提です。給与所得者で健康保険組合などに加入している場合であれば、被扶養者として健康保険に加入することが出来ます。お子さんが国民健康保険に加入している場合は、被扶養者となったとしても、通常通りおひとり分の保険料を払わなくてはいけないので、おひとりで加入しても扶養親族となってもあまり意味がないと言えます。さらに、75歳以上になると加入している健康保険に関わらず、皆さんが「後期高齢者医療制度」に加入することになりますので、健康保険上の扶養親族になれるのは実質75歳までということになります。健康保険の被扶養者になるには、以下の2つの収入の制限があります。「遺族年金も含めた年間収入が130万円未満、60歳以上の場合は180万円未満であること」「被保険者(世帯主)の収入の1/2以下であること」扶養控除の場合は年収制限がありませんが、健康保険における被扶養者に関しては年収制限がありますのでご注意ください。扶養にすると世帯の節税になる上記の様に、遺族年金を受給している家族を扶養親族として迎える場合、その受け入れる側の世帯にとってもメリットがあります。扶養親族が増えるという事は「扶養控除」が発生します。扶養控除は所得控除ですので、結果として住民税と所得税の節税となります。扶養控除額扶養控除は年齢によって控除額が違います。23歳以上70歳未満の親族…38万円70歳以上の親族(老人扶養親族)…48万円(ただし同居の場合は58万円)年末調整での証明について給与所得者の場合、確定申告ではなく年末調整にて税務手続きが完了します。上記のような「遺族年金を受給している同居親族を扶養親族にする場合」は年末調整の書類にて、扶養控除や老人扶養控除を申告することで手続きは終わります。ただし、遠方に住んでいて仕送りをしている等で「別居だが生計を一にしている状態」である場合、勤務先によっては仕送りした通帳の履歴などの確認が求められる場合もあります。ここでの別居とは、親が老人ホームなどの施設に入居していて、施設での入居費用や身の回りの世話をしている場合も含まれます。義父母の場合どうなるか?遺族年金を受給している義父母がいる場合も、実の父母同様に扶養親族とすることができます。しかし、ひとつだけ違う点があります。それは「同居していること」が前提です。いくらこちらから仕送り等をきちんと行っていて、事実上生計を一にしている形になっていても、別居の義父母であれば扶養親族にはあたらない、ということになっています。非課税の年金&遺族年金の税務と節税に関するまとめいかがでしたか。遺族年金を受給している世帯にとって、年金額の多寡に関わらず非常にありがたいお金です。亡くなられた方がきちんと年金保険料を納めていたからこそ、ご遺族が2カ月に1度まとまった金額を受け取ることが出来るものです。亡くなられた方からの「天国からの生活費の仕送り」だと思えば、少しでも工夫をして大切に遣いたいと思うのではないでしょうか。今回ご紹介した節税のポイントについても、これは決して裏技や法の抜け道ではありません。正当に公になっているものばかりですので、どうぞ正々堂々と大いにご活用ください。また、一般的な税務に関してはFPでもご紹介・ご案内が可能ですが、税務の詳細、具体的な算出根拠やその理由について等、具体的な個別相談に関しては税理士までご相談ください。
2020年02月02日配偶者と死別した後、良きパートナーに恵まれ再び人生を共にする方もいらっしゃるでしょう。今後高齢化が進むのは間違いありませんから、長い人生を歩んでいくために家族がいるのは心強いものです。もし素敵なご縁があって再婚することになった場合、これまでに受け取っていた遺族年金については一体どうなるのでしょうか。今回は、再婚後の遺族年金(基礎・厚生)の取り扱いに関して、いくつかタイプ別に分けて解りやすく解説します。なお、基本となる遺族年金の概要についても触れながら進めていきます。遺族年金の概要遺族年金とは、【遺族基礎年金】と【遺族厚生年金】の二種類があります。フリーランスや自営業で国民年金のみ加入している場合は基礎年金のみを、会社員等の給与所得者の方で厚生年金に加入している場合は、基礎・厚生の二つとも受け取る権利があります。細かな受給要件の概要は、以下でポイント解説をします。受給資格者の年収制限生前、厚生年金に加入していた方のご遺族には、収入の上限の定めがあります。その他の要件も満たし、なおかつ年収850万円未満の配偶者は遺族厚生年金を受け取る権利が生じます。遺族が妻の場合、この年収制限のみに該当すれば【遺族厚生年金】を受け取りますが、ここで問題となるのが《夫が遺族になった場合》です。妻が死亡し【遺族厚生年金】の受給対象となった夫の場合、850万円未満という年収制限に加えて、夫の年齢が55歳以上の際に妻が亡くなった場合、夫が60歳以降にならなければ【遺族厚生年金】をもらうことができません。例えば若くで奥様と死別されシングルファーザーになった場合でも、年収に関係なく年齢条件に該当しない場合は一切【遺族厚生年金】が支給されないという事です。対象者まず【遺族基礎年金】の受給対象者は《子または子のある配偶者》とされています。以前は「子のある妻」に限定されていましたが、近年の家族環境の多様化を受けて改正され、現在では夫婦どちらも対象となりました。【遺族厚生年金】を受け取ることが出来る順番として、第一に「配偶者」「子」です。遺族厚生年金における配偶者は、お子さんが居なくても受給対象者となります。ただし、夫の死亡時に妻が30歳未満でなおかつお子さんがいらっしゃらない場合は、5年間のみの期間が定められています。①子供のいない妻(夫婦のみ世帯)の場合子どものいない妻が新しいパートナーと再婚する場合、遺族年金は打ち切りとなります。この場合の「遺族年金」とは【遺族厚生年金】を指します。なぜなら、遺族基礎年金の受給要件として「子」または「子のある配偶者」ですから、お子さんのいらっしゃらない場合は【遺族基礎年金】の受給対象者には該当しません。入籍の有無に関わらず、生活を共にして夫婦同然の暮らしをしている相手がいる場合(いわゆる内縁や事実婚と呼ばれる状態)は再婚とみなされます。未入籍だからバレないだろう等の問題ではありません。年金制度全体において、このような不正受給は厳しく処罰されます。この場合の受給資格者①の場合に受け取ることが出来る人は存在しません。そもそも遺族年金とは、生計維持者の死亡により同一生計だったご家族が生活に困窮しないように支給されるものです。お子さんのいらっしゃらない配偶者が新たなパートナーと再婚すれば、そこで新たな生計維持関係が発生しますから、従前の年金は打ち切りになるという事です。②子供のいる妻の場合子どものいる妻の場合、さらに2つに分けて解説します。お子さんと新しいパートナーとの養子縁組を行うか否かで、これまで受け取っていた遺族年金の支給状況が大きく変わります。子供のいる妻の遺族年金についての共通事項として【妻の年金と子の年金】を合算して、ここでいう母である妻が受け取っています。再婚すれば当然、妻は全ての遺族年金が打ち切りになります。子に関しては、新しい夫と養子縁組するか否かで、基礎年金と厚生年金の取り扱いが全く変わってくるということです。養子縁組する場合再婚し、子供と新しいパートナーを養子縁組する場合でも、基本的に子の持つ遺族年金を受け取る権利は同じで変わりません。ただしもともと基礎・厚生のどちらも受け取っていた場合、養子縁組後は遺族厚生年金のみの受給となります。この場合も当然に再婚した妻の遺族年金は打ち切りとなります。この場合の受給資格者この場合に受け取ることが出来るのは《子》のみです。ただし基礎年金部分は消滅し、厚生年金のみ存続となります。養子縁組しない場合妻が再婚し、事情があってお子さんと新しいパートナーを養子縁組しない場合(たとえば親族に預ける等)、お子さんの持つ遺族年金の権利はいずれもそのままです。つまり、母親が再婚しても新しい配偶者と子を養子縁組しなければ、お子さんの年金は再婚前と同じ状態であるということです。また、再婚すれば当然に妻は全ての遺族年金は打ち切りです。この場合の受給資格者この場合で年金を受け取ることが出来るのは「子」のみです。ただし新しい親と養子縁組をしていないことから、遺族年金(基礎・厚生)いずれもこれまで同様に受給することができます。つまり子にとっては、母親の再婚前と何も変わらないということです。③新しい配偶者が死亡した場合夫と死別した妻が子供を連れて再婚した後、新しい配偶者が亡くなった場合も養子縁組の有無により受給権が違ってきます。妻の場合、子の場合、それぞれに分けて解説します。養子縁組していた場合前提条件として、新しい配偶者が会社員で厚生年金加入・子が18歳未満であるとした場合、妻は【遺族基礎年金】【遺族厚生年金】を受け取ることになります。子が養子縁組をしていた場合は、子にも遺族基礎年金と遺族厚生年金の権利が発生しますが、合わせて母親(妻)への支給となります。養子縁組していなかった場合養子縁組をしていなかった場合は、新しい配偶者(新しい父親)の子に対する遺族年金に関してなんの権利も発生しません。妻は婚姻関係にあったので、夫の死亡に伴い遺族厚生年金を受け取ることになります。すなわち、この場合に年金を受け取るのは《妻のみ》ということです。【補足】遺族厚生年金の支給額遺族厚生年金の額は、亡くなった方の収入に応じて決まります。詳細な額は年金事務所などでご相談することになりますが、最近では、年収等のデータを入力すると、簡易的に遺族厚生年金の額を調べることが出来るシミュレーションがウェブ上で公開されています。安心できるサイトで調べてみるのもオススメです。④子供を引き取って再婚した夫が死亡した場合当初の離婚の際に、子が妻でなく夫に引き取られ、さらに夫が子供を連れて別のパートナーと再婚し、その後死亡した場合は少々複雑です。まず、既に離婚しているので当然に前妻は何の遺族年金も発生しません。元夫の死亡により受給権が発生するのは、後妻にあたる新しい配偶者と、夫が引き取った子です。この場合、後妻と子が養子縁組をしていなかったとしても、子も後妻も遺族基礎年金・遺族厚生年金の対象者となります。いずれにしても、お子さんは絶対的にその年金の権利を失うことはありません。【補足】⑤子供のみが受給者になる場合親権者不在で、不幸にも子供たちだけが遺された場合、その子供たちに対して直接【遺族基礎年金】が支払われます。遺族基礎年金を受給できる対象者として《子または子のある配偶者》です。亡くなった方から見て配偶者、お子さん達から見ると親が不在であっても、子に対する年金の権利は残ります。付随して、お子さんたちだけになってしまった場合でも、然るべき行政サービスを受けることが出来ます。再婚する場合の手続きこれまでに遺族年金をもらっていた方が再婚する場合、「遺族年金失権届」という書類を自ら年金事務所へ提出しなければなりません。再婚の際、この失権届の提出を失念してしまうと後で大変なことになります。遺族基礎年金は14日以内に、遺族厚生年金は10日以内に、お住まいの地域の年金事務所や関連の出張所まで提出しましょう。遺族年金受給者の再婚に関するまとめ遺族年金を受給している方が、新しいパートナーと再婚する場合、再婚にもいろんなパターンがありますが、全てに共通していることとして《配偶者は再婚後に全ての遺族年金受給権を失う》という事です。一方子どもの場合は、新しい配偶者との養子縁組の有無によって遺族厚生年金のみになることはあっても、全ての遺族年金が打ち切られることはありません。いかなる場合でも子どもは守られるべき存在です。また、再婚したら自動的に遺族年金が打ち切られるわけではありませんので、必ず年金事務所等へ【遺族年金失権届】を自ら提出しましょう。個別案件のご相談結果は様々です。個別のご不明点は、ご自身にて年金事務所等でご相談ください。
2020年01月31日結婚し、ともに家庭を築いてきた配偶者が逝去することは、縁起でもないので本来ならあまり考えたくないものです。しかし、万が一そのようなことになってから考えるとなると、配偶者の死後は各種手続きでの時間も必要となりますし、事務手続きと並行して考えることも多いとなると、心身ともに大変お辛いかと思います。不幸にも若くして配偶者と死別し、幼い子供を抱えたまま未亡人になる方も中にはいらっしゃいます。遺族年金制度とは、高齢者になってからの死別のみが対象ではありません。では、配偶者と死別した場合の生活保障などはどうなるのか、最低限の知識は前もって身に付けておくと安心でしょう。本記事では、配偶者と死別したその後の生活費として受給する【各種遺族年金】について、いくらもらえるか等についても解説していきます。遺族年金とは遺族年金とは、その名の通り「世帯主(正式な呼び名は生計維持者と言います)の逝去に際し遺された遺族に対し年金形式で支払われるお金」のことです。遺族年金といってもその内訳は2種類あり、一つは【遺族基礎年金】、もう一つは【遺族厚生年金】です。遺族の補償として【基礎年金】だけなのか【厚生年金】だけなのか、どちらとも受け取ることが可能かの違いがあります。この場合における受給権の算定基準となるのが、世帯主の年金加入状況です。フリーランスや自営業の方で、国民年金だけ加入していた(現在加入中)のか、会社員などの給与所得者として厚生年金に加入していた(現在加入中)のかが、遺族年金を決める大きなポイントとなります。以下、亡くなった方が【厚生年金加入】か【国民年金加入】か、それぞれについて概要をまとめていきます。年金受給は高齢者だけではない通常「年金」と聞くと、大半の方が「老齢年金」をイメージするでしょう。一般的にはそのとおりで、一定の年齢に達した高齢者の方がもらっているのが、一般的な「年金」です。しかし実は年金制度には、この老齢年金以外にあと二つの年金があります。ひとつは今回のテーマである【遺族年金】であり、もう一つは【障害年金】です。この遺族年金と障害年金に関しては、若年層であってもこれらの事由に当てはまれば、年金としてお金を受け取る権利が発生します。すなわち、老齢年金のみ一定の年齢以上に達しなければもらえない年金であり、他の二つの年金に関しては年齢問わず誰もが受給対象になり得るということです。もちろん受給するためには年金保険料を納付していること等の要件はありますが、年金には3種類あると覚えておくと良いかと思います。①厚生年金加入の場合お亡くなりになった方が生前会社員などサラリーマン(給与所得者)だった場合、ご遺族に何らかの遺族年金が支払われる要件として、ご本人(世帯主・生計維持者)が以下の要件の内いずれかに該当しなければ、ご遺族は補償を受けることができません。短期要件厚生年金に加入中である(在職中の死亡の場合)厚生年金加入中の初診日における病気またはケガが原因で5年以内に死亡した場合長期要件【老齢厚生年金】の受給資格期間が25年以上既に【老齢厚生年金】を受け取るようになった場合この長期要件のいずれかに該当する場合は、加えて以下の年金保険料の納付に関する要件にも当てはまる必要があります。国民年金加入期間の内、納付済期間が2/3以上であること(免除は納付済とみなされる)【特別措置】令和8年3月31日までに65歳未満でお亡くなりになった場合、死亡の前々月迄の1年間に保険料の滞納が無いこと②国民年金加入の場合お亡くなりになった方が、生前に自営業者やフリーランス等で国民年金のみの加入だった場合、そのご本人が以下の要件の内いずれかに該当していなければ、ご遺族は遺族年金を受給できません。国民年金加入中であること国民年金に加入していて60~65歳の日本在住であること既に【老齢基礎年金】を受け取っていることさらに、厚生年金加入の場合の長期要件で解説したものと同じ「老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある」「特別措置として令和8年3月31日までに65歳未満でお亡くなりになった場合、死亡の前々日までの1年間に保険料の滞納が無い」という要件も必須です。ご注意ください。遺族の受給要件について遺族年金を受け取る為の要件として、亡くなられた方だけでなく、残されたご家族の要件もあります。亡くなった方の生前の働き方によって大きく2つに分けられます。サラリーマンの場合、自営業者の場合に分けて解説していきます。[adsense_middle]サラリーマンの場合亡くなった方がサラリーマンだった場合、ご遺族は「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」のいずれからも貰える権利があります。ただし、遺族が以下の要件を満たすことも必要です。子どもの有無に関わらず妻(ただし子供がいない30歳未満の配偶者は5年間のみ支給)高校卒業相当の年齢に達するまでの子妻が世帯主(生計維持者)である場合の夫で、55歳以上で遺族基礎年金を受給している場合上記の要件は「第一順位」の場合です。この後第一順位に該当する方がいない場合、それ以降の順位として「父母」や「孫」「祖父母」に受給権が発生することもあります。自営業の場合亡くなった方が自営業者の場合は、ご遺族が受け取ることのできる遺族年金は「遺族基礎年金のみ」となります。さらに遺族が受給できる条件として、以下の条件に該当しなければなりません。子(18歳の年度末を迎えるまで)子のある配偶者(夫または妻)お子さんの居ない専業主婦の方は注意世帯主が自営業者で配偶者が専業主婦で、なおかつ18歳未満のお子様がいらっしゃらない場合、上記の受給要件のいずれにも該当しないということになり、結果として【遺族基礎年金】は受給できません。この場合は将来の老後資金に対策として、早い内からご夫婦で話し合い備えておく必要があります。夫婦二人ともが国民年金のみに加入している場合は早めの対策を上記のようにお子さんが居ないご夫婦の場合、条件によっては遺族に対する補償が全く受けられない、ということも考えられます。例えば、ご夫婦二人で美容室や飲食店など自営業を営んでいる場合などは早めの対策がポイントです。世帯主様がお亡くなりになった後、お仕事自体の存続をどうするかも考える必要があり、さらに店舗兼住宅の場合は「お店を閉店せざるを得ない場合の住居」についても問題となる場合があります。このように、ご夫婦二人ともが国民年金のみ加入している場合は、万が一に備えて多角的なプランニングが必要です。夫が会社員の場合はWで受給できる場合あり世帯主(生計維持者)がサラリーマン等の給与所得者で、厚生年金加入の場合、遺族年金(基礎・厚生)どちらの受給要件も満たしている場合は、合わせた額を受給することが出来ます。一般的な例としては「18歳未満の子のいる妻」ですが、実際の年金受給に関しては個別条件が違いますので、年金事務所等でお尋ねください。受給の金額と受け取り方法受給の金額は、遺族厚生年金に関しては亡くなられた方の生前の給与に比例し算定されます。一方遺族基礎年金は、要件に該当さえすればどなたにでも一律同じ額が支給されます。遺族厚生年金の支給額【遺族厚生年金】の額の算出に関しては、平均標準報酬月額や亡くなられた方の年金加入期間等を基に、所定の倍率をかける等細かく計算をします。また、毎年少しずつ改定も行われており1円単位で変動していることから、遺族厚生年金の支給額に関してはご自身での計算はオススメしていません。概要を計算してみたい方は、遺族厚生年金のシミュレーションを無料で利用できるウェブサイトもありますので、そちらを利用すると良いでしょう。遺族基礎年金の支給額遺族基礎年金はどなたにでも一律です。計算式は以下の通りです。【780,100円+子の加算】★第2子までは一人当たり224,500円、★第3子以降は一人当たり74,800円受け取りは2カ月に1度遺族基礎年金、遺族厚生年金いずれも、2カ月に一度指定した金融機関への振込が原則です。また、毎年料率の改定も行われており、おおむね毎年少しずつ減っているのが現状です。妻が知っておきたい遺族年金の基本に関するまとめいかがでしたか。お子様の有無によって受給できなかったり、死別した時の配偶者の年齢などによっては途中で打ち切られることもあるという事実は、なかなかショッキングな内容だったのではないでしょうか。遺族年金の制度自体は広く知られていますが、条件によっては受け取ることが出来ない場合があることも、今回を機に知って頂くことが出来たかと思います。さらに、今回の記事を読んで遺族年金の受給要件に該当しないと判明した方は、今からでも備えをスタートすることが可能です。遺族年金に代わるような老後資産作りを早速はじめませんか。おひとりでの生活になると、これまでの生活費から何割くらい抑えれば暮らしていけそうか等も考慮する必要があります。夫婦、また家族が健康で末永く時間を過ごすことが大前提ではありますが、万が一の場合の知識を持っておくかおかないかは、その万が一が訪れたときに慌てず対応できるポイントとなります。
2020年01月30日政府は、’23年度からマイナンバーカードを介護保険の保険証(以下、介護保険証)としても利用できるようにする。介護保険証は、おもに65歳以上の人が持つケアプランの作成などに必要なものだ。そんなマイナンバーカードについて、経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれたーー。マイナンバーカードは顔写真や住所、氏名と12ケタの個人番号(マイナンバー)などが記載されたカードです。’16年から交付が始まったが、普及率は今も15%を超えません(’19年11月・総務省)。そのため、普及率を上げる施策が次々打ち出されています。介護保険証も普及率を上げる施策の一環です。’21年3月から健康保険証として使えることは、昨年発表されていますので、医療と介護2枚の保険証がマイナンバーカード1枚で済むと取得を勧めたいのでしょう。ほかにも、国家公務員や地方公務員には今年度中にマイナンバーカードの全員取得を促しています。’22年度からは国立大学の職員や学生の証明書を、’23年からは生活保護受給者への医療扶助の医療券をマイナンバーカードで代用できるようにします。さまざまな方の生活が、マイナンバーカードにひもづけられようとしています。マイナンバーカードは金融機関、財産課税に持ち込みたい思惑があるといわれます。さらに、社会保障や家計から生活全般まで、国に管理される日がくるかもしれません。「女性自身」2020年2月4日号 掲載
2020年01月24日こんにちは! 助産師のREIKOです。昨年12月29日、「厚生労働省が『母乳バンク』を全国的に整備する方針を固めた」という報道がありました。そこで今回は、母乳バンクについてお話ししたいと思います。 母乳バンクとは?「母乳バンク」とは、母乳がたくさん出るママが寄付した母乳(ドナーミルク)を、適切に検査、保管・管理をおこない、母乳を必要としている他の赤ちゃんに提供する仕組みのことを言います。ドナーミルクを提供されるのは、早産などで生まれた極低出生体重児(出まれたときの体重が1,500g未満の赤ちゃん)です。 現在、世界の50カ国以上で600を超える母乳バンクがありますが、日本の母乳バンクは昭和大学江東豊洲病院内の1箇所のみとなっています。その後、2017年に一般社団法人 日本母乳バンク協会が設立され,2018 年以降、ドナーミルクを利用するNICUは増加しているそうです。 母乳栄養のメリットは早産で生まれた赤ちゃんにも早産で生まれた赤ちゃんは体のさまざまな機能が未発達なため、呼吸器や消化器に合併症を生じる恐れがあります。なかでも新生児壊死性腸炎は、極低出生体重児や超低出生体重児(生まれたときの体重が1,000g未満の赤ちゃん)の約3〜7%に発症し、進行すると赤ちゃんの命に関わる恐れのある疾患の1つです。 母乳(特に初乳)には免疫物質が多く含まれるため、育児用ミルクより新生児壊死性腸炎を起こしにくいと言われています。また、新生児壊死性腸炎だけでなく、慢性肺疾患や後天性敗血症に対する予防効果,将来的な神経発達予後の改善など、早産で生まれた赤ちゃんにとってもさまざまな利点があるということが明らかになってきています。 早く赤ちゃんに母乳を与えたい! でも…。そのため、早い時期から赤ちゃんに母乳を与えたいところですが、赤ちゃんを産んですぐにたくさんの母乳が出るというママはあまりいません。そのため、低出生体重児用のミルクか他のママの母乳(もらい乳)を使用するという方法が取られます。 しかし、低出生体重児用とはいえ、やはり消化機能が未発達な赤ちゃんにとって人工乳は負担になってしまいます。また、もらい乳の場合は、他のママから提供された冷凍母乳を解凍後、加温して使用します。そのため、感染症のリスクが否定できないという問題もあり、もらい乳を実施していない施設も多々あります。 私が働いていたNICUでは、もらい乳が必要だと判断された場合、母乳を提供してくださるママの感染症の有無を確認し、母乳を必要としている赤ちゃんのママ、双方に個別で説明をおこない、同意書をとったうえでもらい乳をしていましたよ。 母乳バンクでの徹底管理母乳バンクで取り扱われる母乳はドナーからの提供によるものですが、ドナー登録にはいくつかの条件があり、指定された施設での検診が必要になります。母乳を提供する際にも家族を含めたその時点での健康状態の確認がおこなわれます。 そして、提供された母乳は殺菌処理の前に細菌検査をおこない、母乳に病原菌が含まれていないことを確認します。そして、62.5℃、30分の低温殺菌処理をおこない、その後、あらためて細菌検査で細菌がまったく検出されないことを確認し、冷凍保存されます。 このように徹底管理された母乳バンクのドナーミルクは、一般的に安全であると受け止められています。ですので、日本小児科学会でも早産・極低出生体重児の経腸栄養に関して、「自母乳が不足する場合や得られない場合,次の選択肢は認可された母乳バンクで低温殺菌されたドナーミルクである」と提言しています。 ドナーになりたいママはたくさんいるけれど…日本母乳バンク協会では、ドナー登録、ドナーミルクの殺菌処理、ドナーミルクの他施設への無償提供、地域の母乳バンク設立への働きかけ、研究などさまざまな活動がおこなわれています。このような活動に賛同するママたちも増え、ドナー登録をする方も200人を超えたとのこと。しかし、現行の母乳バンクではキャパシティの問題もあり、ドナー登録を制限しているそうです。 こうした状況の中、育児用品を取り扱うピジョン株式会社が、日本母乳バンク協会への経済的支援に手を挙げ、2020年春から会社の一部スペースを「東日本橋 母乳バンク」として使用することになりました。現在の母乳バンクが年間80人の赤ちゃんにしか対応できていないのに対し、新しい母乳バンクは年間200人に応えていく予定だそうです。 母乳バンクが全国に整備されるのはいつ?極低出生体重児を産んで、母乳を与えたいのに母乳が出ない(与えられない)ママにとって、母乳バンクの整備は朗報だと言えます。ですが、今すぐ実現する……というわけではないようです。 厚生労働省によると、まずは2020年度から3年程度、調査研究をおこない早ければ2023年度からの事業開始を目指すとのことです。調査研究の内容は、現行の母乳バンクにおけるドナーミルクの提供を受けた児の予後の追跡調査、諸外国での母乳バンクの運用と法的規制等の実態調査と整理、医療機関関係者・NICU児の親・一般の妊産婦に対する母乳バンクに対する意識調査などがあがっています。 過去には不衛生な状態の母乳をインターネット上で販売していたとして、厚生労働省や消費者庁から注意喚起がなされたこともあります。より安全な方法で安心してドナーミルクを活用できるようなシステムが全国にでき、1人でも多くの小さな命が助かるといいなと思います。 監修者・著者:助産師 REIKO医療短期大学専攻科(助産学専攻)卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務。 大学附属病院で助産師をしながら、私立大学大学院医療看護学研究科修士課程修了。その後、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。
2020年01月15日自己都合や会社都合など、様々な理由から離職した場合「失業保険」について考えると思います。次の仕事が見つかるまでの間、失業保険(雇用保険のうち基本手当)としていくらを、何日くらい貰えるのかが頭に浮かんでくる方がほとんどではないでしょうか。しかし、退職後しばらくして条件の合う仕事に就くことが出来た場合に、この基本手当ではなく、別にもらえる給付金があることをご存知ですか?基本手当ほど知られていませんが、実は「再就職手当」と言う手当が存在します。今回はこのあまり聞きなれない再就職手当について、解りやすくポイントを絞って解説していきます。雇用保険における給付金の種類雇用保険でもらえる給付金の中で、一番有名なのは「基本手当」です。これはいわゆる「失業保険」「失業手当」と呼ばれるもので、前の仕事を辞めた後から次の仕事が見つかるまでの間の最低限の生活費として、一定の期間もらうことが出来る給付金です。実はこの他にも、雇用保険に加入している方が受け取ることが出来る手当や給付金は様々あります。代表的な物をいくつかご紹介します。求職者給付求職者給付とは、何らかの事情があって働くことが出来ない場合の、最低限の生活費の補償としてもらうことが出来る給付金です。代表的な物は、冒頭でも紹介した「基本手当」もこの求職者給付に含まれます。次によく耳にするのは「傷病手当」ではないでしょうか。傷病手当とは、失業認定のあと求職活動をしている期間に、所定の働くことが出来ない状態に該当した場合に生活費のサポートとして受け取ることが出来ます。他に「技能習得手当」「高年齢求職者給付金」などもあります。教育訓練給付教育訓練給付とは、必ずしも求職活動中である必要はなく、働きながらスキルアップをしたい場合でも受け取ることが出来ます。この教育訓練給付には「一般教育訓練給付」「専門教育訓練給付」「教育訓練支援給付金」の3種類があります。それぞれ給付金の上限額や、受給に関する要件の違いなど細かい違いは様々ありますが、いずれも働くために必要なスキルを身に付けるための制度です。スキルアップをすることで、会社側・勤労者の双方にとって雇用環境の改善にもつながります。実際に専門学校などに通う場合の費用や、該当する通信教育の受講料などがこの対象となります。雇用継続給付雇用継続給付は、働く意思や能力が有るにもかかわらず、高年齢であることや、育児・介護の当事者とっなってしまい、今までの様に働くことが出来なくなってしまった場合でも、少しでも安心して働き続けることが出来るように支給される給付金です。「育児休業給付」「介護休業給付」「高年齢雇用継続給付」の3種類があります。就業促進給付就業促進給付は、大きく分けて「就業促進手当」「移転費」「求職活動支援費」の3種類があります。就業促進手当は、本来まだもらえるはずの失業手当が残っている期間のうちに、新しい就職先が決定した場合に受け取ることが出来る給付金です。本記事のテーマである「再就職手当」は「就業促進手当」のうちの手当のひとつです。「就業促進手当」には、このほかに「就業促進定着手当」「就業手当」「常用就職支度手当」があります。再就職手当とはここまでで「再就職手当」が「就職促進給付」のうちの一つであると解説しました。「再就職手当」の概要について更にポイントをご紹介します。再就職の祝い金のようなもの再就職手当とは「失業保険を受給しながら求職活動をしている期間に、次の勤務先に就職が決まった場合、本来もらえる権利のある失業保険(基本手当)のうち、残りの日数分のうち所定の割合に応じて一時金として受け取ることが出来る手当」です。平たく言うと「再就職の祝い金」のような手当です。早く再就職すると損?失業手当の受給日数を残して再就職すると、フルで手当をもらうことが出来なくなり損するのではないか?と考える方も中にはいらっしゃいます。もちろん失業保険を限度いっぱいまでもらう場合よりは、再就職手当の方がトータルで考えると少ないですが、再就職が決まれば生活も安定しますし、働く意欲がある方にとっては、一日も早く新たなスタートを切ることがベストです。失業保険をもらうことが出来る期間一杯まで再就職をせずに失業保険をもらい続けるより、再就職をして現役並みに給与をもらい、条件を満たした再就職手当を受け取る方が、結果的に金銭的でも大きな安心になることは言うまでもありません。再就職手当は、新たに就職するだけでなく自営業の開始でも、事業計画書などの提出によって要件に該当する場合があります。自営業を開業して再就職手当を希望する場合の詳しい要件に関しては、ハローワークまでお尋ねください。支給額の算出根拠再就職手当の算出の根拠となるものには、以下の3つがあります。この3つをかけ合わせると、再就職手当の支給額となります。全ての算出根拠に共通して、早く再就職をすることで、より高い再就職手当を受け取ることに繋がります。つまり、なぜ再就職手当が存在しているかというと、より早期の再就職を促進しているということです。失業手当の支給日数の残基本手当日額所定の給付率1、支給日数の残失業手当をもらいながら求職活動を行い、その中で再就職が決まった場合、あと何日分の支給日数が残っているかは給付額に大きな影響を与えます。残日数が多いほど、再就職手当の額はあがるということになります。2、基本手当日額基本手当日額は、前職での給与などで差があります。もともと働いていた会社での働き方によって日額は違いますので、ここを増やしたり減らしたりすることは出来ません。3、所定の給付率所定の給付率は、残りの残日数によって変わります。再就職が早く決まれば決まるほど、高い給付率で再就職手当を受け取ることが出来ます。おおむね50%~80%のうちのいずれかとなります。一時金として支給されるこれらの3つの数字をかけ合わせて、再就職手当の額が決まります。その際、一時金として一括で振り込まれます。再就職手当・受給の条件再就職手当を受給するためには、以下の受給要件を満たす必要があります。7日間の待期期間の満了新しい勤務先と再就職先に関連がないこと事前に再就職することが決まっていた会社ではないこと新しい勤務先での就業が1年以上の長期であること再就職先でも雇用保険に加入すること(正社員など)直近3年以内に類似の給付金を受給していないこと[adsense_middle]失業保険の受給資格の有無がポイント再就職手当をもらうためには、本来もらえるはすだった失業保険の給付日数の残が1/3以上あることが大前提です。ここでポイントとなるのは「給付額の残」ではなく「給付日数の残」が必要であるとういうことです。自己都合退職の場合自己都合退職の場合は、7日間の待期期間ののちに給付制限がありますが、その給付制限の1か月目までの間に再就職を決める際は、ハローワーク経由の求人か人材紹介会社経由の求人であることが条件となります。ハローワークや人材紹介会社以外での自己発見や個人の紹介、縁故などでの再就職では条件を満たしません。再就職手当・受給する際の注意点正社員での再就職だけでなく、パートやアルバイトでも要件さえ満たせば再就職手当を受給することが出来ます。また、この要件を満たしていると認定され、一時金で再就職手当を受け取った後でやむを得ない事情から退職することになっても、特に返還しなければならない決まりはありません。しかし、雇用保険全般において給付金の不正受給は厳しく罰せられます。手続きの流れ再就職が決まったら、まずはハローワークに再就職する旨を届け出る必要があります。そこで「再就職手当支給申請書」を受け取ります。ここに記載されている項目全てを埋める必要があります。聞きなれない用語なども申請書には多く出てきますので、わからない箇所はハローワークで訊ねながら、正しく記入していくと良いでしょう。なお、提出期限は、実際に再就職した日から1か月以内と決まっています。再就職したばかりで仕事に慣れるのにも時間がかかる時期ですので、つい失念してしまう方が多いのも事実です。せっかくもらう権利がある給付金ですから、もらい忘れることがないよう、早めに記入し早めに提出することを心がけましょう。審査には時間がかかる実際に再就職手当が振り込まれるまでには、申請後約1カ月ほどかかります。ここまでにも解説したとおり、再就職手当をもらうまでにはクリアしなければならない条件がいくつもあります。雇用保険全体の公平性を守るためにも、しっかり審査をして正しい支給をする必要があります。このことから、どうしても約一カ月程度の時間を要することになります。失業保険・再就職手当に関するまとめ再就職手当や失業手当などは、一生懸命に働いている方々の万が一に備えたお守りとなる手当です。例えば再就職先が遠方である場合などは、この再就職手当が一時金としてまとまってもらえることで、転居費用などに充てることもできます。失業手当を全額もらうことと、途中で再就職をして手当をもらうことと、どちらが損か得かではなく、心身ともに健康で、働く意欲があり能力もあるのであれば、やはり一日も早く再就職することに越したことはありません。いずれにしても、支給された給付金を最大限活用して、ご自身の望む形での再就職が出来るように求職活動を進めていく必要があります。注意点として、手続きを失念していてもらえなかった、となると非常に勿体ないことになりますので、必ず提出期日を守ってしっかり手続きを済ませましょう。この記事を読んで少しでも心当たりや不明点が生じた場合には、一度雇用保険の担当機関であるハローワークに直接訊ねてみると良いかと思います。
2020年01月14日「今年度、6〜10%以上の大幅値上げがあった火災保険ですが、’20年度にも同程度の値上げが決まりました。火災保険を見直すとしたら、いまがラストチャンスです」こう話すのは、ファイナンシャルプランナーの長尾義弘さん。長尾さんは『よい保険・悪い保険』(宝島社)の監修者でもある“保険のプロ”だ。昨年9〜10月に発生した台風15号、19号、21号によって、東日本各地に甚大な被害が出た。台風15号では、住宅がゴルフ練習場の鉄柱の下敷きになり、再建費用は原則、自前の火災保険で、と報じられたのも記憶に新しい。「一昨年には、台風21号によってタンカーが押し流されて関西空港の連絡橋に衝突するなど、関西を中心に大きな被害が出ました。被災された方の多くが『何十年も住んでいるけど、こんな被害ははじめて』と話されています。気候温暖化の影響もあり、毎年、襲来する台風被害が甚大化しているのは明らか。火災保険にはきちんと加入しておくのが鉄則です。『うちはもう建物が古いから』などと、火災保険に加入していない人は早急に加入を検討するべきでしょう」(長尾さん・以下同)一方、木造一軒家の場合だと、火災保険料(建物と家財を合計して)は年間6万〜12万円。10年一括だとかなりの負担になることも事実。そこで、長尾さんに「火災保険」選びの条件を教えてもらった。■加入するなら「10年契約」にせよ保険選びの基準にまず長尾さんが挙げるのは契約期間だ。「以前は数十年の長期契約も可能でしたが、低金利の影響や支払いリスクの増加などから、現在は最長でも10年。もともと長期のほうが割安に設定されているうえ、近年の自然災害の急増で今後も値上げは必至。今年入るなら、最長の10年契約を選ぶべきです」■古い住宅でも、補償額は「新築に建て替えられる額」にせよ建物の保険金額はどのくらいにすればいいのだろう?「自宅の建物を建て替えるために必要な金額を目安にするとよいでしょう。最近は、この金額を基準にしている保険会社が多いです。古い建物でも新規加入するときや中古物件を購入したときには、新築のときの金額で契約しておかないと、損害額どおりの補償が出ないケースや、ムダな保険料を支払うことにつながります。万が一、家が全焼した場合でも、新しい家を建てられる金額を想定して補償額を決めることをお勧めします」それでは、家財に設定する補償額は何が目安になるのか?「『家財にまで保険を掛ける必要があるのか』という人もいますが、火災や水災で家電や家具、洋服などをすべて買い換えなければならなくなったときには相当な費用が掛かります。これを補償してくれるのが家財保険。35歳前後で子どもが1人いる家庭を想定した場合で1,000万円が目安となるでしょう」■「免責額は1万円以下」に設定せよ次に免責について。火災保険には、自動車保険と同じような免責条項がある。これは支払い保険金の計算に当たって、損害額から差し引く自己負担金のこと。保険会社によって異なるが、1万円、3万円、5万円、10万円などがあり、免責金額が高くなるほど、支払う保険金は安くなる。だが、保険金が安くなるからと免責を10万円に設定するのはやや早計だという。「補償内容のうち、いちばん請求対象になりやすいのが『破損・汚損』です。建物でいえば、物をぶつけて窓ガラスが割れたり、家財でいえば、テレビを倒して壊してしまったといったケースで、修理費用は数万円のことが多い。免責10万円だと、全額自己負担になってしまいます。免責を最低額の1万円にすることで、こういうときでも差額の保険金をしっかり受け取ることが可能になります」経験したことのないような雨風が甚大な被害をもたらした昨年の台風。いつまた襲いかかってくるかわからない自然の猛威には、十分な保険でいまからきちんと備えておくことが大切だ。「女性自身」2020年1月21日号 掲載
2020年01月08日パートで仕事をするとき、社会保険に加入すれば保険料で手取りが減るので、加入したくないという人も多いのではないでしょうか?雇用保険も広い意味での社会保険の一種ですが、健康保険や厚生年金とは入るための条件が違ってきます。本記事では、パートで働く人が雇用保険に入るための条件やメリットについて説明しますので、参考にしていただければ幸いです。雇用保険の仕組みと対象厚生労働省二事業の保険料率とは?雇用保険の二事業とは、雇用安定事業と能力開発事業のことです。雇用安定事業には、事業主に対する助成金、中高年齢者等への再就職支援、若者や子育て中の女性に対する就労支援が含まれます。能力開発事業には、在職者・離職者に対する訓練、事業主が行う教育訓練への支援などがあります。これらの二事業は、事業主の保険料のみを財源として行われています。条件を満たせば入る義務がある雇用保険に入りたい場合、加入条件を満たしている必要があります。また、加入条件を満たしていれば、入りたくなくても入らなければなりません。加入手続きはどうやってする?加入手続きは、事業主が行います。加入条件を満たしていても、事業主が手続きしてくれなければ入ることができません。会社が入らせてくれない場合には?雇用保険の手続きは、ハローワーク(公共職業安定所)で取り扱っています。加入条件を満たしているにもかかわらず入らせてもらえない場合には、ハローワークに行って相談しましょう。雇用保険加入に必要な労働時間や日数の条件は?ハローワークインターネットサービスもし被保険者証を受け取っていなくても、会社で保管しているケースがあります。手元になければ、会社に確認してみましょう。被保険者証を紛失した場合でも、ハローワークで再発行の手続きができます。退職するときには離職票が発行される会社は従業員が退職したら、ハローワークに離職証明書を提出し、ハローワークから離職票の発行を受けます。失業保険をもらうには、会社から受け取った離職票を提出しなければなりません。なお、再就職が決まったら、再就職先に被保険者証を提出して、雇用保険の引き継ぎを行います。最大のメリットは失業保険パートでも仕事を辞めて次の仕事が見つからなければ、収入が減って困ることには変わりありません。雇用保険に入っていれば、失業中にお金をもらうことができます。[adsense_middle]失業保険とは失業保険とは雇用保険の「基本手当」のことで、失業した人の生活を支えるものとなります。基本手当の金額は、在職していたときの賃金にもとづいて計算されます。失業保険がもらえる条件離職の日以前の2年間に、被保険者だった期間が通算して1年(12か月)以上という要件があります。なお、失業保険をもらうには、ハローワークで求職申し込みをし、失業認定を受けなければなりません。働く意思があっても、病気やケガ、妊娠・出産などの理由によりすぐに働けないときには、失業保険はもらえないことになっています。失業保険がもらえる期間基本手当がもらえるのは、離職後1年間です。ただし、誰もが1年間継続してもらえるわけではなく、加入期間や仕事を辞めた理由により90日から360日の間で給付日数が決まります。待期期間とは基本手当は求職の申込みをした後、7日間は受給できません。この期間を待期期間といいます。また、会社都合ではなく自己都合で仕事を辞めた場合には、その後さらに3か月の給付制限があります。受給期間の延長ができるケースとは?受給期間内に病気や出産などで引き続き30日以上働けない期間があった場合には、受給期間の延長ができます。延長できる期間は最長で3年間になります。失業保険でもらえる金額基本手当を計算する基準となる金額が、賃金日額です。賃金日額は、在職中の平均賃金で、次の計算式で出します。賃金日額=離職日直前の6か月に支払われた賃金の合計÷180(日)基本手当日額は賃金日額の50%~80%となり、これを給付日数分もらえます。基本手当以外の手当ももらえる失業したときには、基本手当以外に、就職促進給付ももらえます。就職促進給付には、次のようなものがあります。教育訓練給付や雇用継続給付ももらえる雇用保険に入るメリットは、失業保険だけではありません。失業していなくてももらえる給付金もあります。スクールや通信講座の費用を出してもらえる!雇用保険には「教育訓練給付」という制度があります。教育訓練給付とは、スクールや通信講座などを利用し、厚生労働大臣指定の教育訓練講座を受講し終了した場合に、費用の一部を支給してもらえるものです。教育訓練給付には、次の表のとおり、一般教育訓練給付金と専門実践教育訓練給付金の2種類があります。育休中や介護休暇中の賃金も保障される!雇用保険には、「雇用継続給付」という制度もあります。雇用継続給付とは、雇用の継続を促進・援助するための給付で、次のようなものがあります。パートの雇用保険に関するまとめパートの場合には、労働時間が基準を上回ると、雇用保険の加入義務が発生します。と言っても、給料が大きく減るわけではないので、あまり気にする必要はないでしょう。雇用保険に入っていれば、仕事を辞めたときに失業保険がもらえます。雇用保険にはスクールや通信講座の受講料金が安くなる教育訓練給付の制度もあるので、キャリアアップのための勉強や資格取得にも活用するのがおすすめです。
2019年12月21日まずは情報収集「20歳になったら障害年金の申請ができる」ということはうっすらと知ってはいましたが、それが現実味を帯びてきたのは娘が高校3年(18才)のときです。きっかけは学校主催の保護者向けの障害年金説明会でした。講師の日本年金機構の担当の方の話によると、申請に必要な主な書類は1.医師による『診断書』2.初診時の医療機関が書く『受診状況等証明書』(初診時の医療機関と診断書を作成した医療機関が異なる場合)3.請求者(本人や保護者)が作成する『病歴・就労状況等申立書』で、その中で私が「一番大変そう」と感じたのは3.の『病歴・就労状況等申立書』(※1)でした。※1発症から現在までの日常生活状況や就労状況を3~5年に分けて記載する。「?」がいっぱい『病歴・就労状況等申立書』の記入欄には「発病日」(※2)や、「障害認定日」(※3)などといった、聞きなれない用語もありました。また、「初診日」(※4)にも細かな規定がありました。※2「発病日」・健康診断で異常が発見された場合は、異常を指摘された日・先天性疾患の場合は、症状を自覚したときまたは検査で異常が発見された日・生来性の知的障害(精神遅延)の場合は出生日※3「障害認定日」障害認定日は原則として初診日から1年6ヶ月後の日を言いますが初診日から1年6ヶ月を経過する前に20歳の誕生日が到来する場合は20歳の誕生日(正確には20歳の誕生日の前日)が障害認定日となり、その日以降に障害年金の手続きを行うことができる。一方初診日から1年6ヶ月後の日が20歳の誕生日以降に到来する場合は原則通り初診日から1年6ヶ月後の日が障害認定日となる。※4初めて診療を受けた日を記入するが、初めて診療を受けるよりも前に次のようなことがあったら、その日を記入。・健康診断で異常が発見され療養に関する指示を受けた場合は、健康診断日・生来性の知的障害(精神遅延)の場合は出生日娘の場合、どれにあてはまるのか私には判断できませんでした。Upload By 荒木まち子また「傷病名」(=診断書の病名)についても障害年金申請は審査基準が複雑で、複数の傷病がある(例:うつ病とパニック障害、知的障害と発達障害など)場合、どの病名で申請すれば良いのかなどは素人には到底判断ができそうにありませんでした。さらに「傷病があったとしても、薬などでコントロールできている(例:てんかんがあるが、薬で発作が抑えられている)場合は障害年金支給の対象外になる」など、障害年金の申請の難しさを感じました。説明会の後しばらくして別件で役所に行く機会があった私は、帰り際に年金課に寄り、障害年金の申請書をもらうことにしました。Upload By 荒木まち子早すぎた!私は「申請用紙をもらうだけ」と軽い気持ちで年金課の窓口に行ったのですが、窓口の職員さんからは娘の障害名や現在の状況など細かな聞き取りがありました。(職員さんはメモを取っていました)障害年金申請書類一式をもらうことはできましたが、職員さんに「時期が早すぎるので、20歳の誕生日の3カ月くらい前に改めて窓口に相談に来てください」と言われました。請求するときに必要な書類等 | 日本年金機構申請書のサイズの大きさにビックリ!Upload By 荒木まち子娘は20歳前の障害なので「障害認定日」は“20歳の誕生日の前日”になります。その場合、申請には障害認定日の前後3カ月以内に医師が作成した診断書が必要です。診断書作成は早すぎてもだめですが、保護者が作成する『病歴・就労状況等申立書』は早めに準備をしても大丈夫な書類です。私は少しずつ、『病歴・就労状況等申立書』の作成に取り掛かることにしました。娘が小学生以降の資料はコラムやブログを書くときに使用していたので、すぐに取り出せる場所にありましたが、産まれてすぐのときの細かな資料や記録は、娘が幼年期に作った作品やアルバムなどと一緒に『思い出ボックス』に保管してありました。何度も引越しを経験しているわが家には、以前の引越しのときに箱詰めしたままの段ボール箱があり、「思い出ボックス」もその中にありました。開けたら過去の思い出に浸ってしまうことは容易に想像ができましたが(笑)私は娘の20年分の記録を読み返す作業を始めたのでした。続く...年金受給者(老齢年金・障害年金・遺族年金)に関する届出・手続き | 日本年金機構
2019年12月06日自分がもらえる年金はいくらなのか、スマホで”最短3分”で試算できるサービス「撮るだけねんきん試算」が登場しています。公的年金は、老後や働けなくなった時、死亡したときにも受け取れます。年金受給額が分からない方は、このサービスを使って試算してみましょう。「撮るだけねんきん試算」とは?撮るだけねんきん試算とは、スマホで「ねんきん定期便」を撮影するだけで、自分がいくら年金を受け取れるか試算できるサービスです。西日本シティ銀行が、今月からサービスを開始しました。ねんきん定期便って?年1回・誕生月に、日本年金機構から年金加入状況を知らせる青いハガキが届きます。このハガキが”ねんきん定期便”です。ハガキの見方が分からない将来いくら年金がもらえるか書いていない年金額が少なくて驚いたこうした方もいるでしょう。というのも、50歳未満の人のねんきん定期便には、今までの加入実績による年金額しか記載されていません。筆者も、自分のねんきん定期便を見てみたところ”年間21万円”、月額にすると2万円弱と書いてあります。ねんきん定期便を見るだけでは、将来受け取る年金額は分からないのです。「撮るだけねんきん試算」の使い方将来の年金額を知りたいときは、3分で手軽に試算ができる「撮るだけねんきん試算」がオススメです。早速使ってみました。手順①年齢や職業を入力入力する自分の情報は、この5つです。生年月日も入力する必要がなく、30秒ほどで入力できました。年齢性別職業現在の年収配偶者、子供の年齢手順②カメラでねんきん定期便を撮影カメラ起動のボタンを押して、ねんきん定期便を撮影します。撮影したデータから必要な情報が読み取られ、自動で入力されます。カメラを使わず直接入力することもできるので、パソコンから試算も可能です。試算完了!たったこれだけで「老齢年金・障害年金・遺族年金」3種類の年金額を、まとめて試算してくれます。「撮るだけねんきん試算」をおすすめする3つの理由日本年金機構のウェブサイト”ねんきんネット”でも老後の年金は試算できます。両方のサービスを使って感じたのは、撮るだけねんきん試算の3つのメリットです。おすすめ①難しい作業は一切なし、スマホとハガキだけで確認できるスマホとハガキ(ねんきん定期便)があれば、家族の生年月日が分からなくても試算は完了します。難しい作業は一切なし、会員登録も不要です。利用登録準備するもの撮るだけねんきん試算○不要スマホねんきん定期便ねんきんネット(日本年金機構)✕必須ID、PW、メールアドレスなどスマホねんきん定期便基礎年金番号メールアドレス…などおすすめ②障害年金・遺族年金もシュミレーションできるこれも「撮るだけねんきん試算」ならではのサービスです。老齢年金障害年金遺族年金撮るだけねんきん試算◎◎◎ねんきんネット(日本年金機構)◎✕✕障害で働けなくなったとき、健康保険から受け取る傷病手当金もまとめて試算できます。障害年金は働けなくなってもすぐには貰えない遺族基礎年金は子供が成長すると受け取れなくなる厚生年金のみ・基礎年金のみといった受給パターンがあるこのように本来は複雑な障害年金・遺族年金ですが、試算をすると受給額の推移がグラフになり、どのくらい年金が受け取れるか分かり易くなっています。おすすめ③「撮るだけ」なのに、撮らずに試算もできるねんきん定期便のデータから、一人ひとりに合わせた年金額を計算してくれますが、手元にねんきん定期便がない場合も、試算ができます。ハガキが無い場合のの試算額は、これまでも現在と同じ仕事に就いていたと仮定した額です。より詳しく試算するなら、ねんきんネットも活用!手軽に年金額を知りたいなら撮るだけねんきん試算がオススメです。一方、日本年金機構のウェブサイト「ねんきんネット」では、老後の年金をより詳しく試算できます。納めていなかった保険料を払ったら、年金がいくら増えるか年金を受け取りながら働き続けたら、年金がいくらに減るか簡単・手軽な「撮るだけねんきん試算」と、いろいろなパターンの試算ができる「ねんきんネット」どちらも活用するのがよいでしょう。老齢年金額撮るだけねんきん試算○目安が分かるねんきんネット(日本年金機構)◎より詳しく分かる若いうちから年金受給額を試算する必要性は?メリットを2つご紹介年金受給額を試算することは、老後までまだ時間がある若い世代にもメリットがあります。メリット①これからいくら積み立てたらいいか分かる老後に受け取る年金額が分かると、老後に足りないお金の目安が付けやすくなります。「老後に2,000万円不足する」と言われていますが、これは全員に当てはまることではありません。それでも不安に駆られてしまうのは、自分の年金額がいくらになるか、よくわからないからではないでしょうか。自分の年金受給額が分かれば、足りない分をいくら備えたらいいのか分かり、計画的に準備ができます。年金の平均受給額は、夫婦で月額19万円?”老後2,000万円不足”の元になったデータ・総務省の家計調査年報によると、平均の年金収入は夫婦で月191,880円です(2017年)。しかし、その人の職業や年収によって年金額は全く違います。夫婦ともずっと自営業であれば、月13万円しかもらえないこともあるでしょうし、一人暮らしであればその半分、月6万円台です。平均ではなく自分自身の年金額を知って足りない金額を計画的に準備することが、老後に備えるポイントです。メリット②かしこく保険を買えるもしもの時に受け取れるお金が分かると、ケガや病気のために備えるべき金額が分かります。医療保険や死亡保険を契約する前に、公的年金の給付額を知っておきましょう。何もかも民間の保険で備えようとすると、保険料が今の生活を圧迫してしまいます。過不足なく保険で備えるためにも、年金の見込額を知ることが大切なステップです。年金試算のまとめもしもの時に、どのくらい年金が受け取れるのかを大まかに把握しておくことはとても大切です。面倒だから、今困っていないから…と備えを後回しにしてしまうことはNGです。手軽に試算できるサービスを活用して、賢くリスクに備えましょう。
2019年12月05日社会保険とは、個人ひとりでは対応できないリスクに備えて、対象になる国民全員から保険料を集めて、もしもの時にお金を給付するものです。民間の保険と比べて、次のような特徴がみられます。保険料だけでなく、国が負担するお金で運営本人の意思に関わりなく加入義務がある健康状況によって保険料が変わらない今回は自営業からアルバイトまで、どんな社会保険制度の対象になるか、タイプ別に確認します。社会保険には5つの分野がある日本の社会保険は、次の5分野があります。分野ごとにカバーしているリスクがあります。収入が減ってしまうことに対して「年金」「手当金」が支給されたり、治療や介護サービスを利用する時の本人負担が軽くなったりします。社会保険制度を一覧でおさらいどの制度の対象になるかは「雇われているかどうか」「職業は」「年齢は」「住んでいるところは」などで区分されています。雇われて働いている人が対象になる保険は被用者保険と呼ばれます。厚生年金保険や、船員保険などが被用者保険です。被用者保険の対象にならない、地域の住民を対象にした保険は地域保健と呼ばれます。国民健康保険、後期高齢者医療保険などが地域保健です。タイプ別:どの社会保険に加入するか社会保険には5つの分野がありますが、5つすべてに加入するわけではありません。次の働き方を例に挙げました。A~Eの例を見ながら、どんな場合に、どの社会保険制度に加入するのかチェックしましょう。会社員専業主婦学生バイト個人事業主法人の社長A.会社員Aさん(45歳)は、正社員として株式会社に勤めています。会社員として就職すると、社会保険の手続きはほとんど会社任せで完結します。そのため、自分がどんな保険の対象になっているか、把握していない人も多いでしょう。こうして見ると、社会保険で幅広いリスクをカバーされていることは会社勤めのメリットとも感じられます。B.専業主婦Aさんの妻、Bさん(45歳)は専業主婦です。Aさんの配偶者として、国民年金の「第3号被保険者」になります。第3号被保険者は、国民年金の保険料を納める必要はありません。第3号被保険者になるのは、20歳以上60歳未満の期間です。仕事に就いていないので、雇用保険や労災保険には加入していません。C.学生アルバイトAさんの子供、高校生のCさん(16歳)はアルバイトをしています。学生は、原則として雇用保険には加入しません。労災保険は当然に対象になります(一部の農林水産業を除く)。Cさんはまだ年金保険には加入していませんが、もしも高校卒業後18歳で会社員になれば、その時から厚生年金保険に加入します。いっぽう大学に進学する場合は、20歳になった時に国民年金保険に加入します。20歳前に厚生年金保険の適用がない事業所に就職した場合は、20歳になったら国民年金に加入する必要があります。D.個人事業主Dさん(50歳)は、個人事業を営んでいます。会社員のAさんと違い、加入の手続きはどれも自分でする必要があります。手続きを忘れていると、無保険や保険料滞納になってしまうかもしれません。国民健康保険は疾病の原因が業務災害かを問わないので、仕事で負ったケガでも、国民健康保険を使って治療を受けることができます。労災保険は、希望すれば特別に加入できる制度があります。E.法人の社長Eさん(30歳)は、株式会社を立ち上げて、代表取締役に就きました。同じように1人で事業をしていても、個人事業とするか法人とするかで、社会保険の中身は大きく違ってきます。会社の代表者・個人事業主はどちらも雇用保険に加入できません。役員の場合は、労働者性があれば、雇用保険に加入できることもあります。協会?組合?国保組合?違いを確認社会保険の5分野の中で、特にたくさんの制度に分かれているのが医療保険です。その医療保険を実施している組織には、とても名前の似通ったものがあります。全国健康保険協会健康保険組合国民健康保険(都道府県)国民健康保険組合「健康保険組合」と「国民健康保険組合」は名前はよく似ていますが、全く違う制度です。混同しがちな両者について、違いを押さえておきましょう。[adsense_middle]1.雇われている人の保険「協会けんぽ」「健保組合」会社員など雇われて働く人を対象にした健康保険。健康保険の事業を行っている組織は、大きく2つに分けられます。全国健康保険協会(協会けんぽ)健康保険組合全国で幅広く事業をする「協会けんぽ」全国健康保険協会は「協会けんぽ」とも呼ばれます。健康保険が適用になる会社のうち”健康保険組合がない会社”が対象です。中小企業など、社員が1人の会社でも加入することができます。厚生労働省の「平成29年度健康保険・船員保険事業状況報告」によると(以下同じ)、被扶養者も含めて、約3,800万人が加入しています。より会社に密着したサービス「健康保険組合」主に大企業では、企業ごとに組織される「健康保険組合」があります。約1,400の組合があります。解散や合併で、健康保険組合の数は減少傾向です。被扶養者も含めて、約2,900万人が加入しています。法律で決まっている最低限の給付のほか、組合が独自で給付を手厚くすることができます。従業員の健康意識は組合の財政に繋がるので、禁煙プログラム、メタボ解消キャンペーンなど、積極的に健康増進に取り組む組合も多くあります。2.健康保険の対象にならない人は「国保」「国保組合」健康保険・船員保険・共済保険などの対象にならない場合は、国民健康保険の対象になります。健康保険との違いは、家族を扶養にする制度が無いこと、退職後の任意継続が無いこと、傷病手当金が(基本的に)無いことなどが挙げられます。都道府県と市区町村が行う国民健康保険国民健康保険組合原則は”都道府県が行う国民健康保険(国保)”の対象に原則として、都道府県の区域内に住所があれば、都道府県が行う国民健康保険の対象になります。その都道府県の中にある市区町村は、都道府県と一緒に運営を行います。各々役割分担があり、加入している人の直接の窓口は市区町村です。国保組合もある特定の職業に就いている個人事業主や、個人事業の従業員を対象に、「国民健康保険組合」が組織されている場合もあります。全国に約160の組合があります。医師・歯科医師薬剤師建設・土木税理士美容師など全国どこでも加入できる組合と、職業も地域も限定されている組合があります。社会保険の種類に関するまとめ5分野の社会保険について、仕事のタイプ別に加入する制度をチェックしました。20歳になったとき、40歳になったとき、就職、退職…など、ライフステージによって加入する社会保険は変わります。せっかく持っている保障なので、イザという時に使えるように把握しておきましょう。
2019年12月04日失業保険とは、簡単にいうと「雇用保険に加入する働き方をしていた人が、離職した場合などに受給できる最低限の生活費」です。もちろん、基本的には受け取る権利のあるお金ですので、どなたでも平等にその権利はあります。しかし、該当事由を満たしていない場合や、違反行為に抵触しながら気づいていない場合もあり、その際は不正受給とみなされ罰則やペナルティを課されることになります。今回はこの「不正受給」について解説していきます。失業保険とは何らかの理由により(会社都合・自己都合)離職した場合に、受け取る権利の発生するお金のことを、一般的に「失業保険」や「失業手当」と呼びます。正式には、失業保険ではなく「雇用保険」と言い、失業手当ではなく「基本手当」という名称です。ここからは、雇用保険と基本手当について概要を解説します。管轄はハローワーク雇用保険の申請の手続きに関して管轄はハローワークです。ヤングハローワークや、マザーズハローワークなどの簡易的な機能のみの施設ではなく、お住まいの地域の要となっているハローワークにて手続きをしなければなりません。前の勤め先を退職された際に、雇用保険被保険者証などの書類を一式受け取ると思いますので、それらを持参して手続きを行うことになります。雇用保険について雇用保険で受給できるお金には、以下のものがあります。基本手当(いわゆる失業手当や失業保険と呼ばれるもの)就職促進給付(再就職手当など)教育訓練給付(一般教育訓練給付金など)雇用継続給付(高年齢雇用継続給付など)基本手当について雇用保険で受給できる権利のあるお金のうち、最も代表的なものは「基本手当」です。これは「失業保険」や「失業手当」と一般的に呼ばれているもので、離職後に次の仕事が決まるまでの間、所定の要件を満たすと「生活費」としてもらえる給付金です。ちなみに、雇用保険における基本手当は所得とはみなされず、非課税扱いとなります。基本手当給付の内容と流れ雇用保険における基本手当を受給するためには、一定の要件を満たし、所定の手続きを済ませる必要があります。ここからは、その一連の流れについてそれぞれ解説していきます。手続きの方法離職(退職)した場合、退職時にこれまで勤めていた会社から「雇用保険被保険者証」などの書類を受け取ります。これは、在職時に雇用保険に加入していた証明書となり、基本的には離職時に必ず受け取ることになります。これらの書類を持って管轄のハローワークへ行き、離職票に記入し基本手当を受給するための準備に入ります。受給開始までの流れ受給開始までには、一定の期間と手続きを踏む必要があります。一般的には以下の流れになります。離職受給資格決定受給説明会への参加(日程は予め決まっています)失業の認定を受けるまでの期間の求職活動失業の認定(4週に1度は活動状況をチェックされます)受給開始受給開始までの期間について雇用保険における基本手当の受給が実際に開始されるまでには、前職を離職した理由によって期間の差があります。離職理由は大きく二つで「会社都合」と「自己都合」に分けられます。会社都合とは、勤務先の倒産などによるやむを得ない離職の場合です。自己都合とは、転職を希望して退職した場合など働いている側の意志で退職した場合です。不正受給は詐欺とても残念なことに、本来であれば「働きたい人を応援するお金」である雇用保険に関して、不正受給をする(しようとする)人が少なからずいることも確かです。手当の不正受給は必ずばれます。不正受給は雇用保険法で厳しく罰せられます。これらの中でも特に悪質な場合は、詐欺罪として刑事告訴され処罰を受けることもあります。不正受給がばれた場合のペナルティについては以下の項目で詳しく紹介します。[adsense_middle]該当した場合のペナルティ不正受給が発覚した場合、その日以降の基本手当は打ち切りとなります。さらに、これまで受け取った給付金の全額返還を命じられます。この返還命令の金額とは別に、ペナルティとして「不正受給の額の約2倍の額以下の金額」を納めなければなりません。これを、いわゆる「3倍返し」と呼び、不正受給がいかに厳罰に処されるかおわかりいただけるかと思います。さらに、納付命令分の全額及び不正受給した金額の返還が全て終わるまでの間、年に5%の延滞金が発生します。また、命令に従わず放置していると財産の差し押さえもあります。これまでの受給分を全額返還+不正受給額の約2倍以下のペナルティ納付=3倍返し不正は必ず発覚するハローワークでは、このような不正が行われないように、様々な調べ方を用いて徹底して不正を取り締まっています。不正受給を見逃してしまうことは、正しく受給している方たちとの不均等を生むことにもなります。正しく受給している方たちへ迷惑をかけないためにも、ハローワークでは常に取り締まりを強化しています。具体的な調査方法不正を取り締まる為の具体的な調査方法には、一般的に以下のようなものがあります。ただし、これら一つだけの調査で発覚するのではなく、二重、三重での調査を行っているため、小さな不正でも見逃さないよう徹底されています。勤務先の帳簿や各種書類による記録照合直接、雇用保険被保険者を訪ね事情を訊く直接、会社などを訪問し会社側から事情を訊く一般の方からの通報(電話、メール、投書など)会社側への調査協力依頼雇用保険被保険者による不正だけではなく、その不正に協力した雇い主(会社側)も厳しく罰せられます。不正受給の主な動機と内容不正受給には、二つのパターンが考えられます。ひとつは「わかっていてバレないだろうと不正をする」場合、もうひとつは「勘違いから結果的に不正受給をしたことになる」場合です。前者の場合は本人の意思で不正をしているので罰せられるべきですが、少なくとも後者の「勘違い」や「認識不足」の結果として不正をしていた場合に関しては、正しい知識をもって未然に防ぐことが出来ます。また、判断に悩む場合は必ずハローワークに相談しましょう。不正受給の主な動機不正受給をしてしまった方の動機として、よくあるものは以下のものがあります。これらは全て不正受給に該当します。離職後に自営業を始めたが開業届も未提出だからバレないと思った超短期のアルバイトで給与手渡しの為バレないと思った知り合いの仕事を少し手伝った際の謝礼程度は不正にならないと思った知人を手伝っただけで交通費しか受け取っていないから良いと思った居住地ではない他県での短期アルバイトだからバレないと思った不正受給の事例具体的な不正受給の事例として、よくあるものを以下に紹介します。「こんなことも不正受給にあたるのか」と感じるような事例も中にはあるかもしれませんが、万が一不正受給をしてしまうと認識の甘さでは済まされませんのでお気を付けください。退職後に再就職するつもりがないにも関わらず、求職活動を行ったようにみせかけ基本手当を満額受給するアルバイト等賃金の発生する行為をしたにも関わらず、失業認定申告書に記載しなかった前職の離職後、自営業など会社員以外の働き方を始めたにもかかわらず偽りの申請をしたそもそも求職活動を行っていないのに「失業認定申告書」に偽りの内容を記載した「失業認定申告書」とは失業認定申告書とは、離職に伴う手続きをハローワークで行った後、受給説明会に参加することで発行されます。受給説明会は、簡単に言うと雇用保険制度についての講習会です。ここで正しい基本手当の受給について等を学びます。この失業認定申告書は、失業認定に必要な項目が記載されており、正しい求職活動をしているにもかかわらず、働く意欲があるのになかなか仕事が見つからない状態であることの証明になります。一カ月に一度程度、失業の認定のためにハローワークに出向く必要がありますが、その際にはこの申告書と「雇用保険受給資格者証」などを持参しなければなりません。意図しない不正受給を防ぐためにはここまでで、雇用保険についての基礎知識や手続きの流れ、どのようにして受給するか等についてお解りいただけたと思います。不正受給は厳しく罰せられますから絶対にしてはいけません。しかし、上にまとめた事例の中で、ひょっとしたら「これくらいでも不正に当たるのか」と思う項目があった方もいらっしゃるかもしれません。また、不正と気付かずに抵触する行為を行おうとしていた場合もあるかもしれません。不正受給を防ぐために大切なことは、良いか良くないかをご自身で判断するのではなく、実際の状況に関して正しい内容をハローワークへの提出書類に記しましょう。離職後の働き方に関することであったり、実際に受給するまでの間や、基本手当受給前後のアルバイトなどに関しても申告すべき内容になります。偽りなく申告することで、自分の身を自分で守ることにも繋がります。不正受給を防ぐためには、自己判断は絶対にせずハローワークに正しい内容を申告しましょう。失業保険・不正受給に関するまとめいかがでしたか。ご本人の意志で不正受給をすることはもちろん絶対にやってはいけない行為ですが、ご本人の知らない間に違反行為に抵触している場合も考えられます。失業保険を受給することになった際には最低限の知識をもって、普段から気を付けておくことをオススメします。不正受給の罰則は厳しく、その不正は必ず露呈します。最も重い罰として、詐欺罪でも刑事告訴もあり得ますので「ばれないだろう」という安易な気持ちで不正に手を染めることは絶対にやめましょう。不正受給に抵触してしまうのではないか?などの判断に悩む場合は、早めにハローワークに相談しましょう。
2019年12月04日仕事を退職したら、それまで使っていた健康保険証はどうなるのでしょうか。社会保険のうち「健康保険」には、退職後も加入し続けられる”任意継続”の制度があります。退職したあと高額になりがちな保険料を抑えられるメリットがあります。任意継続以外にどんな選択肢があるのかも知っておきましょう。基本:退職したら、翌日から健康保険は使えない勤務先を退職する場合、翌日から健康保険の給付を受ける資格は無くなります。健康保険証は会社の指示に従って、速やかに返却しましょう。退職日までに会社へ返却できるとよいでしょう。保険証を持っていても、使ったらダメ!医療機関で提示を求められなかったからといって、うっかり退職の翌日以降に、在職時の保険証の情報のまま治療を受けたらどうなるのでしょうか。もし自己負担3割で治療を受けた場合、後から治療費の7割を返還しなければいけません。返還の手続きには手間もかかります。被扶養者になっている家族の保険証も、退職日の翌日からは使用できません。家族が持っている保険証も含めて、返却漏れがないようにしましょう。例外:資格喪失後も受け取れる給付がある実は、退職して健康保険証を返却した後でも、一定の期間に限り受け取れる給付があります。いずれも、給付額は在職時と変わりません。傷病手当金・出産手当金の継続給付(収入の約3分の2)退職日に傷病手当金を受けていて、かつ退職日まで引き続き1年以上被保険者だった場合は、支給開始日から最大1年6カ月まで引き続き傷病手当金を受け取ることができます。出産手当金も同様です。退職日に出産手当金を受けていて、かつ退職日まで引き続き1年以上被保険者だった場合は、出産の日後56日まで出産手当金を受け取ることができます。埋葬費、埋葬料(最大5万円)退職した本人が、退職後3カ月以内に亡くなった場合、健康保険から「埋葬料」もしくは「埋葬費」が支給されます。金額は最大で5万円です。そのほかにも、退職した後の傷病手当金を受けている人や、傷病手当金の支給が終わってから3カ月以内に死亡した人も受給できます。退職後の出産育児一時金(1児につき42万円)退職した日の翌日から6カ月以内に、被保険者だった本人が出産した場合は、出産育児一時金が支給されます。一児につき原則42万円です。ただし、退職日まで引き続き1年以上被保険者であった場合に限ります。なお、退職したあと家族の健康保険の扶養になった場合は、家族の健康保険からの「家族出産育児一時金」を受給する資格も発生します。重ねて受給はできないため、どちらかを選んで受給します。退職後も医療保険に加入しなければいけない期間をあけずに再就職し、再就職先で健康保険に加入できる場合は、続けて健康保険の被保険者になるため、医療保険の心配はないでしょう。もし次のように健康保険に加入できない事情がある場合は、失業中にも何かしらの公的医療保険に入らなければいけません。再就職するまで期間がある再就職先が決まっていない再就職するが、就職先で健康保険に加入できないたとえ病院にかかる予定がなくても、公的医療保険には必ず加入しなければいけません。加入していなかったことが後から分かった場合は、保険料をさかのぼって請求されることもあります。健康保険が途切れる場合、3つの選択肢では退職後の公的医療保険には、どんな選択肢があるでしょうか。家族の健康保険の被扶養者になる前の会社で入っていた健康保険を任意継続する市区町村で国民健康保険(国保)に加入する続けて健康保険に加入できない場合は、この「1→2→3」の順に検討してみましょう。家族の被扶養者に健康保険の被扶養者が増えても、被保険者が負担する保険料は増えません。まずは被扶養者になれるかどうか検討してみましょう。国保・任意継続保険料などを比較保険料や給付など、両制度を比較してみましょう。国民健康保険の保険料は、市区町村のHPなどで試算もできます。個別に計算してみないと判断できませんが、退職直後は国民健康保険のほうが保険料が高くなるケースが多いようです。国民健康保険では、前年の所得額や、家族の人数に応じて保険料を計算します。国民健康保険(国保)と任意継続の保険料、家族の保険料も含めどちらが安くなるか計算してみましょう。倒産や解雇による離職は、国保料が安くなることも倒産・解雇・雇止めなどの理由で退職した場合には、国民健康保険料の軽減を受けられることがあります。お住いの市区町村に相談してみましょう。任意継続被保険者とはでは、3つの選択肢から「任意継続被保険者になる」ことを選んだ場合、受けられる給付や支払う保険料はどうなるでしょうか。任意継続とは文字通り、健康保険に加入する資格を”任意”に”継続”できる制度です。[adsense_middle]任意継続の給付内容傷病手当金と出産手当金を除いて、被保険者だった時と同じ給付が受けられます。負担割合や給付額も、被保険者であるときと変わりません。配偶者・子・親など、被扶養者の治療についても引き続き給付が受けられます。任意継続被保険者の保険料従業員として勤めている間は、健康保険料のうち2分の1が給与から天引きされ、残った2分の1は会社が負担していました。ところが任意継続被保険者になると、保険料の全額を負担しなければいけません。簡単に言えば、負担する保険料は退職前の2倍になります。任意継続の場合、標準報酬月額は退職時の金額を使用しますが、保険者ごとに上限があります。協会けんぽであれば、令和元年度は標準報酬月額(月収)30万円が上限です。任意継続できる条件・年数任意継続被保険者になるための条件離職する日まで継続して2カ月以上被保険者であった離職した翌日から20日以内に、保険者に申し出た任意継続被保険者になるためには、そう細かい要件はありません。退職後、健康保険・船員保険・後期高齢者医療などの医療保険制度で被保険者になる場合は、任意継続できません。加入できる期間退職した翌日から2年間限りです。延長はできません。手続きは、退職翌日から20日以内に任意継続を希望する場合は、退職日の翌日から20日以内に保険者に申し出なければいけません。保険者…保険事業を行うもの。全国健康保険協会もしくは各健康保険組合。手続きをする場所加入している健康保険が、全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合は、各都道府県にある支部で手続きができます。健康保険組合に加入している場合は、各健康保険組合に問い合わせるなどして、手続き方法を確認しておきましょう。保険料の支払い毎月の保険料は、その月の10日までに支払います。例えば4月分なら、4月10日までに支払います。初回の保険料は、保険者が指定する日に支払います。例えば3月31日から4月29日までの間に退職した場合、4月分から保険料を支払い始めます。保険料の未払いは、資格喪失に初回の保険料を期日までに支払わなかった場合には、始めから任意継続被保険者になれなかったことになります。2回目以降の保険料も、納付期日までに保険料を支払わなければ、翌日から資格を失ってしまいます。くれぐれも気を付けましょう。在職時の保険証は返却して、任意継続の保険証を受け取る任意継続被保険者としての保険証は、在職時の保険証とは別のものです。任意継続を申し出てから2~3週間ほどで、本人の手元に新しい保険証が届きます。保険証が届くまでに医療機関にかかる場合は、医療機関の窓口で、まだ保険証が届いていないことを伝えましょう。もし10割負担で治療を受けた場合、自己負担を超えた金額は、保険証が届いた後で保険者に請求できます。全国健康保険協会では、令和元年10月から、申出後1週間程度での保険証交付が可能になりました。早めの交付を希望する場合は、任意継続の申出をするときに、退職証明書等を添付する必要があります。[adsense_middle]任意継続をやめる時いったん任意継続被保険者になると、自分の希望で任意継続をやめることはできません。「やっぱり国民健康保険に変更したい」と思っても2年間は手続きできないのです。どんなときに任意継続が終わるかは、決められています。任意継続被保険者になってから2年が経った死亡した保険料を支払わなかった後期高齢者医療の対象になった再就職などで健康保険・船員保険に加入した再就職しなかったり、再就職先に健康保険がなかったりと、何もないまま2年が経つと、任意継続被保険者の資格を失います。この場合は、市区町村で国民健康保険に加入しましょう。退職時、健康保険以外の手続きは?被用者保険のなかで、任意継続の制度があるのは健康保険だけです。勤務先で他に加入していた社会保険はどうなるのでしょうか。年金保険制度…「免除」の手続きも20歳以上60歳未満の人が失業した場合は、退職日の翌日が属する月の分から、年金保険料を支払います。扶養していた配偶者がいる場合は、配偶者の年金保険料もかかります。保険料は月額16,410円(令和元年度)ですが、失業後は保険料を支払うことが負担になることもあるでしょう。国民健康保険は、失業を理由として保険料の免除申請ができます。保険料全額の免除や、一部金額の免除があります。4分の1免除半額免除4分の3免除全額免除再就職して経済的に余裕ができた場合に、後から保険料を納めることもできます。社会保険(健康保険)の任意継続に関するまとめ健康保険の任意継続ができる期間は、退職翌日から20日間と短いです。また任意継続をする以外にも、国民健康保険に加入したり被扶養者になるなど、他の選択肢もあります。退職してから慌てて考えるのではなく、事前に検討して手続きの方法を確認しておくことをおすすめします。
2019年11月29日こんにちは、婚活FP山本です。現役会社員なら税金のことは年末調整で済みますが、年金を受給するようになると確定申告が必要になるかもしれない事をご存じでしょうか。仮に不要であっても、確定申告しないことで余計な損をしているケースも多々あるのが実情です。現役中の方も年金受給中の方も、基本的な知識は持っておきましょう。そこで今回は、年金受給者の確定申告についてお伝えします。あなたの人生に、お役立て下さいませ。そもそも年金受給者でも確定申告が必要?まずは年金と確定申告の基本についてお伝えします。そもそも日本では、基本的に「全ての利益」に対して税金が発生するルールです。これは給料でも年金でも変わらず、そして給料もそうですが、年金でも基本的に税金が源泉徴収されます。一方、いくつか例外もあり、公的年金が158万円未満の場合(65歳未満なら108万円未満)だと源泉徴収はありません。また公的年金には、給与所得控除のような「公的年金等控除」という制度もあり、年金額が158万円未満(65歳未満なら108万円未満)だと収入ナシと見なされて税金も発生しない制度です。あなたの年金額はいくらでしょうか?上記の通り、158万円が一つの境界線となります。この金額を超えているなら確定申告が必要……というより、基本的に「したほうが得」です。覚えておきましょう。年収の中に税金天引きの所得があるならメリット年金を含めて、年収の中に税金が天引きされている、源泉徴収されている所得があるなら、確定申告したほうが得なことも多いと言えます。なぜなら、源泉徴収された税金は多めに取られていることも多いので、確定申告することで返してもらえることも多いためです。なお、先ほどの公的年金等控除は、2020年から変更予定となっています。一応、年金その他の収入が1000万円以下なら、同時に基礎控除も変更予定なので税負担は変わりません。しかしそれでも「自分の場合はどうか」を確認しておきましょう。年金所得者の確定申告不要制度の要件!次は、年金所得者の確定申告不要制度についてお伝えします。実は年金所得者の場合、以下の要件を満たす時は確定申告が不要です。公的年金等の収入金額が400万円以下公的年金等に係る雑所得以外の所得が20万円以下簡単に言えば、まず年金が400万円以下で、そして給料や個人年金などが年20万円以下の場合、確定申告しなくても良い制度になります。ただし、以下の場合は確定申告が必要です。所得税の還付を受ける場合確定申告が必要な特例を受ける場合つまり……悪く言えば「損を受け入れるなら確定申告しなくていい」といった意味合いです。また確定申告は不要でも、代わりに住民税の申告が必要なこともあります。なるべく、確定申告することをおすすめしたいところです。20万円以下の対象者は年金暮らしの人?先ほどの要件で、年金が400万円を超える人は滅多にいません。しかし給料や個人年金などが年20万円以下というのは、意外と厳しい要件と言えます。給与所得控除などを差し引いて計算するにしても、多くの場合で超えてしまうでしょう。20万円以下の対象者は、実質的に「年金暮らしの人」かもしれません。必要性の面でも損得勘定の面でも、どちらで考えてもやはり確定申告は「すべきもの」と考えておくことをおすすめします。年金だけで生活できる人は限りなく少ない……ここで少し余談をお伝えします。確定申告が必要なら老後は働きたくない……などと考えた人もいるかもしれませんね。確定申告が必要なのは、基本的に「年末調整がない年金受給者」です。定年延長などで、引き続き勤め先で年末調整できるなら確定申告は要りません。ただ、定年後の就労は非正規雇用やアルバイトということも多く、必ずしも年末調整があるとは限らないのが実情です。一方、今は老後資金2000万円問題が上がっているように、定年後に働かなくていい人はかなり限られています。実質的に、働かない選択肢は中々ありません。年金だけでは中々生活できない以上、ひいては確定申告も必要になる可能性が極めて高いと言えます。余計な損を防ぐためにも、確定申告できるようになっておきましょう。在職老齢年金の見直しを含め、働くのが基本実は現在の年金は、現役世代並みに稼げる(65歳以上なら月47万円)高齢者に限り、年金額が減らされる「在職老齢年金制度」が採用されています。ちなみに対象者は、高齢在職者のうち約13%です。この制度が、2021年から見直される可能性が高まっています。つまりそれほど、国としても高齢者に意欲的に働いてほしい訳です。もはや定年まで働けばいい人生モデルは成り立たなくなっています。老後も働く前提なのですから、合わせて確定申告も覚悟しておきましょう。年金収入の確定申告の方法とは?ここからは、年金収入の確定申告の方法についてお伝えします。まず、年金(と給料)収入について申告する場合に使う必要な書類は、以下の通りです。確定申告書A(公的年金等の)源泉徴収票また確定申告では、1枚目(第一表)で所得毎の総額を、2枚目(第二表)で内訳を記載します。なお、書類作成は国税庁サイトにある「確定申告書等作成コーナー」を使うと、書き方の説明もありますからおすすめです。合わせて、必要に応じて「生命保険料控除(証明書)」なども申告・添付します。税金とは、以下の流れで計算しますから、合わせて理解しておきましょう。収入-経費=利益×税率=税金額「〇〇控除」という税金計算上の経費を増やせるほどに、最終的な税金額も安くなります。全部で14種類ありますから、他に使えるものがないかも確認しましょう。収入の金額と種類以外は通常と同じ給料は給与所得に該当し、年金は雑所得に該当します。また現役中の給料と比べ、基本的に年金額は割安です。そんな収入の金額と種類の違いはあるものの、確定申告の基本や書き方については現役の方と変わりません。経験済みなら、安心して取り組みましょう。なお、扶養控除や配偶者控除は、対象が高齢者(70歳以上)になると控除額が上がります。高齢者に優しいのが日本ですね。せっかくの優遇があるのですから、使えるなら忘れず申告しましょう。[adsense_middle]確定申告の提出の仕方と期限は?今度は、確定申告の提出や期限についてお伝えします。まず、確定申告書の提出の仕方は以下の通りです。税務署へ郵送する税務署へ持参するe-Taxを利用する(事前の申請や一定の機器が必要)また確定申告は、毎年2月16日~3月15日が期限となっています。この期間の税務署は沢山の高齢者が申告に来ていますから、持参するにしても気後れはしないでしょう。さらに最近では、土曜日も受け付けている税務署も増えてきましたから、平日働いていても大丈夫です。なお、申告が必要なのに期限に間に合わなかったり申告しなかったりすると、相応のペナルティを受ける可能性があります。余計な損を生まないためにも、ひとまず期限はしっかり守りましょう。書き方や仕方が分からない時は税務署で相談を!初めて確定申告するのであれば、どうしても分からない部分も出てくるのが普通です。そんな時は、ぜひ税務署に相談しましょう。特に確定申告の期間中は、専用の相談・作成コーナーを設ける税務署も多いです。書き方や仕方について、署員の方に相談しながら完遂しましょう。一方で、確定申告は毎年のことです。いつまでもできない、分からないままでは、それはそれで節税面などで損に繋がりかねません。なるべく早めに確定申告のことも理解していきましょう。老後資金は2000万円どころか4000万円必要!最後に、肝心なことをお伝えします。確定申告も含め、何事も年齢が高まるほどに目新しいことに困難や苦手意識を感じがちです。すると、どうしても人は避けようとしますね。お気持ちは分かるものの、確定申告を避けると労働を避けることにも繋がりかねません。一方、今は老後資金2000万円問題が言われていますが、実際には多くの場合で2000万円どころか倍の4000万円は必要です。しかし4000万円を超える資産を持つ高齢者は、全体の2割以下となっています。つまり、多くの場合で老後も働かなければならない訳です。限界まで働き、ギリギリまで貯金を減らさないようにするのが老後を生き抜く基本と言えます。そのためには、確定申告もセットで必要です。ちなみに確定申告は、例えば家賃収入や資産運用で老後対策をする際にも必須ですから、避けられないと考えて挑みましょう。尽きる直前では遅い、早くから対策を!多少なりとも貯金がある方の中には、まだまだ「いつか貯金が尽きる現実」を理解していない方も沢山おられます。実際のところ、70代~80代で貯金が尽きそうな方も多いです。尽きてから、尽きる直前になってからでは、定年直後よりもさらに諸々の対処のハードルは高いでしょう。働き口を探すのも働くのも、確定申告を覚えるのも、少しでも若いほうが有利です。70代~80代よりは、まだ今のほうが若いのではないでしょうか。どんなに周囲のサポートがあったとしても、肝心なのは本人です。ぜひ今のうちから、少しでも早くから、確定申告も含めて「未来への備え」を始めていきましょう。年金生活のためにも確定申告に慣れておこう働くにしても年金生活するにしても、どちらにしても老後は確定申告が必要になる可能性が高いです。仮に不要であっても、確定申告しない・できないのは損に繋がりやすいと言えます。人間いくつになっても成長できない訳ではありませんから、ぜひ早めに確定申告にも慣れていきましょう。
2019年11月25日勤め先で健康保険に加入していると、病気やケガのとき3割の自己負担で医療機関を受診することができます。この健康保険には、病院での自己負担額を抑える以外に、病気やケガで働けなくなった時の収入をカバーする保障もあります。それが「傷病手当金」です。身近な病気やケガでも使えますが、自分で申請しないと受け取れません。申請手続きも難しくないので、病気やケガに備えて知っておきましょう。傷病手当金の内容病気やケガが理由で仕事を休んだ場合、休んだ間は給料が貰えなかったり、給料が減ってしまったりすることがあります。この場合に、減った収入の一部を保障してくれるのが傷病手当金です。健康保険の被保険者である人が利用できます。対象になる健康保険の「被保険者」とは勤務先で、健康保険に加入している本人が対象です。市区町村で加入手続きをする「国民健康保険」に加入している場合は、傷病手当金制度はありません。全国健康保険協会(協会けんぽ)健康保険組合どちらが保険者になっている健康保険も対象になります。親や配偶者の「被扶養者」になっている場合は、傷病手当金を受け取ることはできません。手元の健康保険証をチェック医療機関を受診するときに使う「健康保険証」をご覧になってみてください。被保険者本人であれば、自分の勤め先が書いてあり、”本人(被保険者)”といった印字があります。この場合、傷病手当金を申請できる「被保険者」です。家族の扶養になっている場合は、家族の勤め先が書いてあり、”家族(被扶養者)”といった印字があります。傷病手当金が受給できる条件傷病手当金を受給するためには、次の1~4の要件をすべて満たす必要があります。1)療養のために休んでいること必要と認められれば、自宅で療養する場合や、自費診療を受けた場合も対象になります。一方で美容を目的とした整形手術は、対象になりません。通勤中のケガ、業務に関連するケガ・病気は対象外業務災害・通勤災害によって負ったケガや病気は、対象になりません。この場合は、健康保険ではなく労災保険から給付が行われるからです。給与明細には「労災保険料」と書かれていることはないので、「自分は労災保険の対象になるの?」と分からない人もいるでしょう。実は、ほとんどの労働者は労災保険の給付を受けることができます。労災保険の保険料は、事業主が全額を支払っています。労働者を1人でも雇ってる事業主は、当然に労災保険が適用されます(一部の農林水産業を除く)。アルバイトでも、勤務時間に関わらず対象になります。労働災害が起こった場合は、労災保険から給付を受けましょう。2)仕事をすることができないことここでいう仕事の内容は、傷病手当金を受ける本人の本来の業務に就けるかどうかで判断します。会社に出勤はできない状態だったが、自宅で副業はしていた→〇:本来の業務に就けないので、支給される医師が許可したので、半日だけ出勤した→✕:半日でも本来の業務に就けるので、支給されない3)連続する3日間の待機期間が完成していること3日間継続して、休業している必要があります。傷病手当金が受け取れるのは、早くても4日目以降の期間です。3日間の待期期間には、会社の定休日や、有給休暇も含めることができます。勤務時間中に病気が発生して途中から働けなくなった場合は、この1日目も待期期間に含めます。一方で、退勤後に働けなくなった場合は、翌日から待期期間を計算します。待機期間は、同じ傷病について1度だけ計算します。その後に出勤日を挟んで、再度休業が必要になったとしても、2回目以降は「連続して3日の待期期間」は必要はありません。4)報酬が支払われていない、または少ない傷病手当金を受け取る休業日に、事業主から給料が支払われているときは、原則として傷病手当金は支給されません。有給休暇を使っている日は、待期期間に数えることはできますが、”有給”の休暇なので傷病手当金は支給されません。なお、給与が支払われていても、その額が傷病手当金の額よりも少ないときは、その差額が支給されます。他の給付金と調整で受け取れないことも傷病手当金以外の給付金を受け取ることができる場合は、傷病手当金の金額が調整されたり、受給額がゼロになったりします。同じ疾病に限らず、別の疾病で給付金を受け取っている場合も調整の対象になります。健康保険の出産手当金障害厚生年金、障害手当金労災保険の休業補償給付(退職後に傷病手当金を受け取る場合は)老齢基礎年金、老齢厚生年金受け取れる日数は、最大1年6カ月傷病手当金は、同じ病気・ケガに対して支給開始日から1年6ヵ月を限度に支給されます。支給開始日とは、3日間の待期期間が終わったあと、初めて傷病手当金を受け取る日です。途中でケガ・病気が治って出勤していた期間も、この1年6カ月に含みます。そのため、1年6カ月中に出勤した期間がある場合、受け取ることができる日数は1年6カ月より短くなります。傷病手当金の金額傷病手当金は、休業1日ごとに支給されます。1日あたり支払われていた報酬の額を「標準報酬月額」をもとに算定し、その3分の2程度が傷病手当金の額になります。標準報酬月額とは、社会保険料を決める際に基準にするおおよその月給のことです。その人に支払われている4~6月の賃金をもとに年1回見直されるほか、昇給や減給があった際にも変更されます。[adsense_middle]実際に、傷病手当金を計算してみましょう次のような収入の場合、傷病手当金の額はいくらになるでしょうか。①直近12カ月間における標準報酬月額の平均を求める(30万円×9カ月+34万円×3カ月)÷12=31万円「継続する12カ月間」が対象になります。例えば入社してから5カ月しか経っていない場合は[5カ月間の標準報酬月額の合計額÷5]で計算します。このように支給開始日以前の期間が12カ月に満たない場合、30万円が上限になります(平成31年4月以降に支給開始の場合)。②30で割り、1日あたりの金額を求める31万円÷30=10,333.33…≒10,330円10円未満の端数は四捨五入します。③3分の2の金額を求める10,330円×2/3=6,886.66…≒6,887円1円未満の端数は四捨五入します。1日あたり6,887円、30日あたり206,610円の傷病手当金が受け取れます。組合によっては独自の”付加給付金”があるところも健康保険事業を行う「保険者」は、大きく2つに分けられます。全国健康保険協会(協会けんぽ)…主に中小企業健康保険組合…主に大企業健康保険の事業を行っているのが「健康保険組合」である場合、法律で決まった金額にプラスして独自の給付金を支給しているところもあります。例えば1日の給付額が本来は「3分の2(約67%)」のところ「80%、85%」などに増額されたり、給付期間が「最長1年6カ月」のところ「2年、3年」と長く受け取れたりする場合があります。詳しくは、加入している健康保険組合に確認しましょう。傷病手当金の受給手続き申請するタイミング傷病手当金は、実際に休業したあとに申請できます。休業”見込み”では申請できません。休業期間が4日~1カ月程度であれば、疾病が治り復職してから申請すればよいでしょう。休業の1日ごとに2年を経過すると、時効によって権利が消滅してしまい請求できなくなります。数カ月にわたって休む場合は、何日分をまとめて申請するかは法律で決まっていません。協会けんぽでは、給与の締め切り日ごと・1カ月単位の申請を勧めています。必要な書類申請書には、自分を含めて3者の記入欄があります。被保険者本人の記入欄事業主が証明する欄医師が意見を記入する欄申請書は、健康保険事業を行う保険者によって違います。協会けんぽであれば、ホームページから印刷して使用できます。申請先医師の記入をもらってから、会社を経由して申請するのがスムーズでしょう。協会けんぽの場合は、事業主経由ではなく、協会けんぽに直接郵送することもできます。退職した後の期間は受け取れるか?治療が長引いて仕事に就くことができず、やむなく会社を退職することもあるかもしれません。条件を満たせば、退職日のあとも引き続き傷病手当金が受け取れる場合があります。退職しても引き続き受給できるケース2つの条件をクリアする必要があります。まず、退職した時点で傷病手当金を受けることができる状態にあることです。退職日に出勤したときは、退職後の傷病手当金は受け取りできません。加えて、引き続き1年以上の被保険者期間があることです。「引き続き1年以上の被保険者期間」は、1日も空白期間のない被保険者期間です。空白がなければ、転職で勤務先が変わったり、組合から協会けんぽに保険者が変わったりしても、期間を通算することができます。任意継続被保険者であった期間は含めません。短い休み…有給休暇とどっちを使う?たとえばインフルエンザで1週間会社を休んだ場合も、傷病手当金は受け取ることができるのでしょうか?受給要件を満たせば、もちろん受け取ることができます。1週間の休みであれば、最大4日分の手当金です。(休業1週間ー待機期間3日間)ですが、休業が数日程度であれば傷病手当金を受け取らずに有給休暇を使うという選択肢もあるでしょう。休業開始から3日間は有給休暇を使い、4日目から傷病手当金を申請することもできます。傷病手当金の申請の際には、医療機関にも書類を記入してもらう必要があるので、手間はゼロではありません。状況によって、どちらの制度を使うか判断するとよいでしょう。社会保険の傷病手当金に関するまとめ傷病手当金は、申請しないと受け取れない給付金です。病気・ケガで4日以上休業する際は、勤務先にも相談して受給漏れのないようにしましょう。
2019年11月21日今回のテーマは「失業保険の給付制限」についてです。失業保険とは一般的な名称であり、正式には「雇用保険のうちの失業手当の給付について」ということになります。この失業手当については、一度でも転職や退職を経験された方ならご存知ではないでしょうか。失業したらすぐに失業手当がもらえるのか?失業保険とはどのようなシステムになっているのか、等を項目別に詳しく説明していきます。また、この記事の内容はあくまでも一般的な解説です。ご自身の給付内容についての詳細はハローワークにてお尋ねください。管轄はハローワーク退職後はやらなければならないことが多く、会社勤めの社会保険から国民健康保険への切り替えや、厚生年金から国民年金への変更手続きも必要な為、一体どこに何をしに行って良いのか混乱する場合もあるかと思います。退職後の手続きについては、まず一番にハローワークへ行きましょう。離職票など、退職時に前の勤め先から渡される必要な書類を持参してハローワークを訪ね、「求職票」に所定の事項を記入し提出しなければいけません。曜日や時間帯によっては、かなり待たされてしまうこともありますので、時間には余裕を持って行動しましょう。退職後の手続きをする場所以前は公共職業安定所と呼ばれていましたが、現在ハローワークと呼ばれるようになりました。これに付随して、土日祝日も開所していて、遅い時間まで空いており利用しやすい出張所のような関係施設も増えてきました。そこでは主に、求人情報の閲覧や職業相談を行っています。たとえば若者支援コーナーやマザーハローワークコーナー等のような施設ですが、このような関係施設では退職後に行わなければならない求職票の記入、提出などを行うことができない場合がほとんどです。退職後まず最初の手続きについては、お住まいの地域の要となるハローワークで行う必要がありますので、退職時に受け取る書類などで事前に調べてから手続きに向かうようにしましょう。雇用保険とは雇用保険=失業保険と考えている方がほとんどだと思います。しかし、雇用保険はこれ以外にも大切な役割を担っています。メインは「失業手当」ですが、他にも、求職活動の促進・働く人の能力開発などの教育支援・働く人の働く環境を改善し、あらゆる年齢や性別の方でも平等に払炊くことが出来る機会を与えられるよう推進すること等を目的としています。ハローワークの掲示板には、公共職業訓練の資格取得講座や各種セミナー募集の張り紙を見かけることもありますが、このようなことも雇用保険の一環です。職業訓練には2種類あり、ひとつは失業手当を受け取ることが出来る人が対象の「公共職業訓練」もうひとつは、失業手当の給付対象ではない人向けの「求職者支援訓練」です。失業保険の対象で、失業給付の受給権を持っている方は「公共職業訓練」でスキルを身に付け、次のお仕事へのステップにすることができます。簿記などの資格取得を目指すコースや、パソコンスキルを身に付けるコースなど様々な講義があります。是非ハローワークにてお尋ねください。育児休業給付金雇用保険は、働く意思があるのに事情があって働けない方をサポートする目的があります。育児休業給付金という制度も、実は雇用保険の制度として利用できます。失業手当について失業手当とは、正式名称「基本手当」のことを指します。基本手当とは退職する前の2年間の中で、連続して12カ月以上雇用保険に加入している人が退職した場合に受け取る権利が発生します。この際の失業手当の額は、退職する6カ月前の「平均賃金日額」の5~8割部分を日額として計算し、退職した理由や雇用保険に加入していた期間などから「いくら(基本手当)」を「いつまで(受給期間)」もらえるか決まります。[adsense_middle]期間や受給額は人それぞれ基本手当を受給できる日数や受給金額などは、離職理由や年齢、これまでに何年間雇用保険に加入していたか等によって差があり、決して一律ではありません。基本手当を受けられる期間は離職日翌日から1年間という条件は統一されています。実際に受給できるまでの期間実際に失業手当(基本手当)をもらえるようになるまでには、どれくらい時間がかかるのでしょうか。退職した条件によって給付額や給付期間が変わります。以下「会社都合退職」と「自己都合退職」にわけて解説します。会社都合の場合リストラや勤務先の倒産など、本人の都合ではなく勤務先の都合で退職せざるを得ない場合を「会社都合」と呼びます。この場合は、最短で7日間の待期期間の後、受給開始となります。会社都合の場合、雇用保険に加入していた本人はまだ働く意思が有ったにも関わらず退職せざるを得ない状況であり、突然無職になるわけですから、当然給付制限なしですぐに失業手当をもらうことができます。自己都合の場合自己都合退職(離職)の場合、7日間の待期期間の後、さらに3ヶ月の待期期間(給付制限)があります。したがって、早くても3ヶ月と7日間経った後からの受給開始となります。いずれの場合も給付制限後すぐに失業手当をもらえるわけではありません。手当の所定の振込日が決まっていますので、最短の締め切り日後の振込日に受給できることになります。2週間~1か月後と思っておく方が確実です。給付制限の意味とは?雇用保険に加入していて離職した場合、すぐに失業手当などを受給できるわけではありません。なおかつ、離職後に働く意思がない場合などは「求職者」に認定されず、失業手当の受給条件に該当しない場合もあります。ここから給付制限の概要と、なぜ給付制限が設けられているのかについて解説します。給付制限は原則3ヶ月自己都合退職の場合、原則として3ヶ月の給付制限があります。そもそも自己都合退職で、失業保険をもらっているという状況は「働く意思があり、少なくとも認定日には必ずハローワークに行き就職活動をしているにも関わらず、なかなか仕事が見つからない」状態のことです。この給付制限の3ヶ月の間には、十分な就職活動をしたとみなされる必要があります。このことから、求職活動をするのに十分な期間ということで、自己都合退職の場合のみ給付制限が3ヶ月とされます。【補足】特定理由離職者自己都合の場合は必ず3ヶ月の給付制限があることは、すでに解説しました。一部、給付制限が免除になるケースがあり、これを「特定理由離職者」と呼びます。主に、急を要しやむを得ない離職理由である場合です。これらのいずれかに該当すれば特定理由離職者となり、給付制限なしで失業給付を受給することができる場合があります。ドクターストップの場合(医師から勤務継続が困難であると診断された場合)家庭環境の急変により勤務困難になった場合(家族の死亡など)結婚による転居や、勤め先が変わり長距離通勤の必要がある場合(往復4時間が目安)家族の長期看病(または看護)により勤務不可能(おおむね30日以上が目安)失業保険の給付制限に関するまとめいかがでしたか。一度も退職、転職をしたことがない方には未知の世界だったことと思います。失業保険は雇用保険のことですが、雇用保険の核は失業手当ですが、失業した時だけでなく、育児中の給付金やスキルアップのための教育訓練にも利用できます。給付制限は、離職理由によって差があることもお解りいただけたと思います。特定理由離職者の概念も覚えておかれると心強いでしょう。ご自身の意思での退職の場合はもちろん、意図しない離職に見舞われた際にもお役に立てるかと思います。是非ご参考になさってください。
2019年11月20日「年金を受け取れる年齢が迫ってきました。しかし、周囲からは“受給を繰り下げたほうが後々楽になる”と言われたり、“死んだら終わりだから、繰り上げて60歳からもらったら”と言われたり……。いったい何を信じていいのかわかりません」(59歳専業主婦)年金の受給開始は原則65歳からだが、最大5年、受給を繰り上げたり(早めたり)、繰り下げたり(遅らせたり)することができる。“年金博士”として知られる、社会保険労務士の北村庄吾さんは、こう解説する。「年金は65歳より1カ月受給を繰り上げるごとに、0.5%ずつ減額されます。5年早めて60歳からもらおうとすれば、30%も減額された年金が生涯続きます。反対に、1カ月受給を繰り下げるごとに、年金額は0.7%ずつ増額します(繰り下げ期間は最低1年以上)。最大70歳まで繰り下げれば、42%も増える計算に」(北村さん・以下同)次の「繰り上げ、繰り下げ受給をした場合」の「受給率」と「損益分岐点」を見てほしい。損益分岐点の年齢で、年金を繰り上げ/繰り下げ受給をした場合の受給総額と、65歳から年金を受給した場合の受給総額が並ぶことになる。以降、長生きすればするほど、65歳に受給開始した場合に比べて、繰り上げ受給した場合には“損”に、繰り下げ受給した場合は“得”になっていく。【繰り上げ受給】60歳=受給率:70%/損益分岐点:76歳8カ月61歳=受給率:76%/損益分岐点:77歳8カ月62歳=受給率:82%/損益分岐点:78歳8カ月63歳=受給率:88%/損益分岐点:79歳8カ月64歳=受給率:94%/損益分岐点:80歳8カ月65歳=受給率:100%【繰り下げ受給】66歳=受給率:108%/損益分岐点:77歳10カ月67歳=受給率:117%/損益分岐点:78歳10カ月68歳=受給率:125%/損益分岐点:79歳10カ月69歳=受給率:134%/損益分岐点:80歳10カ月70歳=受給率:142%/損益分岐点:81歳10カ月「長生きリスクを考えて、よっぽど生活に困窮しているなどではない限り、繰り上げはしないほうがいい」と語る北村さん。では、年金額を増やすために、必ず繰り下げをしたほうがいいのだろうか。「無理に年金の受給を繰り下げて、生活に困窮してしまっても、意味はありません。また、妻が年下の専業主婦などの場合、夫が20年以上厚生年金に加入しているなどの条件を満たせば、年間およそ39万円の加給年金 が、妻が65歳になるまでの間、夫の年金に加算されます。しかし、厚生年金を受給していることが条件なので、受給を繰り下げると、その間の加給年金はもらえません。人によって、寿命や加入している年金の種類、夫婦の年齢差も異なりますし、繰り下げることが、必ず得とは言い切れないのです」さらに、注意してほしいのが、5年年金を繰り下げたからといって、手取り額が42%増額するとは限らないという点だ。「平均的な収入で、40年勤め上げたサラリーマンの年金額は、厚生年金と基礎年金を合わせて、約188万円とされています。しかし、国民健康保険や介護保険などの社会保険料があるため手取りは約166万円になります。これを70歳まで繰り下げると、年金額は約267万円まで増えるが、社会保険料に加え、所得税と住民税もかかるようになり、手取り額は約225万円に。手取り額でみれば、35%の増額にしかなりません」
2019年11月15日「年金は繰り下げが正解!」「いや65歳からもらうべきだ」。さまざまな意見に、多くの人も迷っていることだろう。でも、正解は“夫婦によって違う”。あなたにとっての正解はーー。「年金を受け取れる年齢が迫ってきました。しかし、周囲からは“受給を繰り下げたほうが後々楽になる”と言われたり、“死んだら終わりだから、繰り上げて60歳からもらったら”と言われたり……。いったい何を信じていいのかわかりません」(59歳専業主婦)年金の受給開始は原則65歳からだが、最大5年、受給を繰り上げたり(早めたり)、繰り下げたり(遅らせたり)することができる。“年金博士”として知られる、社会保険労務士の北村庄吾さんは、こう解説する。「年金は65歳より1カ月受給を繰り上げるごとに、0.5%ずつ減額されます。5年早めて60歳からもらおうとすれば、30%も減額された年金が生涯続きます。反対に、1カ月受給を繰り下げるごとに、年金額は0.7%ずつ増額します(繰り下げ期間は最低1年以上)。最大70歳まで繰り下げれば、42%も増える計算に」(北村さん・以下同)次の「繰り上げ、繰り下げ受給をした場合」の「受給率」と「損益分岐点」を見てほしい。損益分岐点の年齢で、年金を繰り上げ/繰り下げ受給をした場合の受給総額と、65歳から年金を受給した場合の受給総額が並ぶことになる。以降、長生きすればするほど、65歳に受給開始した場合に比べて、繰り上げ受給した場合には“損”に、繰り下げ受給した場合は“得”になっていく。【繰り上げ受給】60歳=受給率:70%/損益分岐点:76歳8カ月61歳=受給率:76%/損益分岐点:77歳8カ月62歳=受給率:82%/損益分岐点:78歳8カ月63歳=受給率:88%/損益分岐点:79歳8カ月64歳=受給率:94%/損益分岐点:80歳8カ月65歳=受給率:100%【繰り下げ受給】66歳=受給率:108%/損益分岐点:77歳10カ月67歳=受給率:117%/損益分岐点:78歳10カ月68歳=受給率:125%/損益分岐点:79歳10カ月69歳=受給率:134%/損益分岐点:80歳10カ月70歳=受給率:142%/損益分岐点:81歳10カ月「長生きリスクを考えて、よっぽど生活に困窮しているなどではない限り、繰り上げはしないほうがいい」と語る北村さん。では、年金額を増やすために、必ず繰り下げをしたほうがいいのだろうか。「無理に年金の受給を繰り下げて、生活に困窮してしまっても、意味はありません。また、妻が年下の専業主婦などの場合、夫が20年以上厚生年金に加入しているなどの条件を満たせば、年間およそ39万円の加給年金 が、妻が65歳になるまでの間、夫の年金に加算されます。しかし、厚生年金を受給していることが条件なので、受給を繰り下げると、その間の加給年金はもらえません。人によって、寿命や加入している年金の種類、夫婦の年齢差も異なりますし、繰り下げることが、必ず得とは言い切れないのです」それでは、さまざまな夫婦のケースから、“賢いもらい方”を考えてみよう。【1】会社員の夫と同年齢妻サラリーマン家庭の場合、夫が完全リタイアする65歳から受給を開始するのが基本だ。「いまは企業に再雇用が義務付けられていますし、60歳からの5年間は働くことは大前提です。収入がある間は繰り上げる必要はないですよね」65歳以降も、家計に余裕がありそうなら、年金の繰り下げを検討してもいいかもしれない。「じつは、どの年金を繰り下げるかは選ぶことができる。夫の厚生年金のみを繰り下げたり、妻の基礎年金のみを繰り下げたり。さまざまな選択ができるのです」繰り下げる場合、女性の平均寿命のほうが長いので、妻の年金から検討するのが合理的だ。要件を満たしていれば、夫が亡くなると、妻は遺族厚生年金がもらえるようになるが。「妻が基礎年金のみ受給している場合、夫の厚生年金の約4分の3が、妻の年金に上乗せされます。しかし、仮に繰り下げによって、生前に夫が厚生年金額を増額していたとしても、遺族厚生年金の算出の基準となるのは、65歳時点でもらったときの受給額です」【2】会社員の夫と年下妻妻が年下の専業主婦などの場合は、加給年金をもらえるので、厚生年金は繰り下げないほうがいい。ただし、夫の基礎年金を繰り下げても、加給年金には影響はない。「夫の厚生年金は65歳から受給して、基礎年金のみを70歳まで繰り下げると、加給年金をもらったうえで、70歳からの年金額を約33万円も増やすことができます。仮に、夫が5歳年上の夫婦の場合、夫が81歳、妻が76歳の時点で、夫婦の受給総額は4,326万8,040円となり、繰り下げなかった場合の受給総額を超えることになります」夫が85歳、妻が80歳の時点では、134万円も“得”をする。ちなみに、加給年金をもらわずに夫の厚生年金と基礎年金の両方を70歳まで繰り下げた場合、受給総額が夫の基礎年金のみを繰り下げた場合を超えるのは、夫が86歳、妻が81歳の時点だ。だが、「平成30年簡易生命表」(厚生労働省)によると、65歳男性は平均84.7歳までしか生きられない。夫が65〜70歳の間は無年金になるうえ、夫は平均よりも長生きしなければならない。【3】会社員と姉さん女房妻が年上の場合は、妻が65歳を迎えた時点で、夫は現役世代か、再雇用で働いていることになる。「夫が働いている間は、妻は年金をもらわなくても生活が成り立つ可能性が高い。であれば、受給を繰り下げて、老後に備えるという選択をすることもできます」仮に妻が5年受給を繰り下げた場合、81歳時点で“得”することになる。【4】自営業の夫婦満額の基礎年金は、65歳受給開始で月額約6万5,000円。夫婦でも13万円ほどにすぎない。「定年のない自営業者の場合は、できる限り働き、可能な限り繰り下げることが大事です」70歳まで繰り下げれば、基礎年金額は月額9万2,300円に。夫婦ともに繰り下げれば、18万4,600円。だいぶ心強い金額になるのだ。必ずやってくる老後を豊かなものにするために、あなたも年金の繰り下げを検討してみてはどう?
2019年11月15日