※画像はイメージです近代日本の誕生に大きく貢献した武士・坂本龍馬。妻のお龍と霧島連山の主峰・高千穂峰に登頂した一連の行程が「日本初の新婚旅行」だといわれている。鹿児島県霧島市役所のホームページにも『龍馬・お龍日本最初の新婚旅行地霧島市』と記載されているが、その実態はどのようなものだったのだろう。新婚旅行の歴史「坂本龍馬は伏見の寺田屋で幕吏の襲撃を受けた際に、薩摩藩邸に逃げ込みました。そのときに出会ったのが妻のお龍で、それがきっかけで仲が深まり結婚に至ります。その後、刀傷を癒す目的もあり、お龍とふたりで鹿児島へ旅をすることになりました。現存する資料では、この旅行が厳密な意味で“日本最初の新婚旅行である”とは断言できませんが、日本の新婚旅行を考えるうえでのエピソードとしてはおもしろいですね」そう教えてくれたのは、千葉商科大学でブライダルサービスを専門に研究している今井重男さん。それでは、日本における新婚旅行はいつぐらいから始まり、どのような変遷を遂げてきたのだろうか。「明治維新以降、西洋文化を紹介する訳報のようなものが出てきたのですが、そのなかにハネムーンを意味する“ホネームーン”という語が散見されます。また、1889年(明治22年)5月3日の『東京日日新聞』において“新婚旅行”という言葉が日本で初めて掲載されています。つまり、明治時代には新婚旅行という概念はすでに日本に入ってきていたわけですが、一般の間に新婚旅行が浸透するのは、まだまだ先のことですね」(今井さん、以下同)明治期には鉄道網が徐々に整備されていたが、東京起点の新婚旅行は、神奈川県の江ノ島や逗子などの近場が主流だったようだ。ただし、それすらも一部の富裕層に限られており、新婚旅行自体はまだまだ物珍しいものだった。「大正時代にはもう少し足を延ばせるようになり、熱海や箱根などの温泉地が人気だったようです。伊勢神宮への参拝なども定番のコースとなりましたが、やはりまだ一般的に普及したとはいえず、新婚旅行は上流階級以外には高嶺の花のようなものでした。その後、昭和前期になってやっと新婚旅行の普及がうかがえるような資料が出てきます」昭和に入ると、婦人向け雑誌に『新婚旅行の心得』といった記事が多く掲載されるようになった。このころの旅行先は近隣の温泉地だけでなく、伊豆・静岡周遊といったコースや、1週間以上をかけて京都や奈良まで足を運ぶプランなども登場している。「ちょうどこの時期だと思いますが、私の祖父母の新婚旅行の写真も残っています。昭和2年に三重県伊勢市の二見浦にある名勝“夫婦岩”の前で撮ったものです。当時は恋愛結婚はまだ珍しく、お見合いで結ばれるケースが大半でした。出発時は恥じらって顔を見合わせることもできないような夫婦が、旅行を経て徐々に打ち解けていく儀式のような意味合いが新婚旅行にはあったのでしょうね」一般化されはじめた新婚旅行その後、新婚旅行はさらに一般化する。戦前の新聞では新婚旅行にまつわる記事が度々紹介されるように。「昭和11年11月16日の読売新聞では、大安の夜に東京駅をたつ“新婚列車”について報じられました。熱海行きの車両に二等車2両を増結した特別列車に乗り込み、たくさんの新婚カップルが旅へ向かうようすが紹介されています。新婚旅行が広く浸透していたことがうかがわれますね」こういった大々的な新婚旅行も、戦時に入ると一時中断となった。国を挙げた質素倹約の時局となり、新聞報道でも新婚旅行の代わりに神社参詣が推奨されている。新婚旅行が復活を見せるのは、戦後しばらくたってからだ。「終戦後、戦地から復員してきた人々が結婚をして第一次ベビーブームが始まります。その後、国鉄の発足などもあり、戦後復興が進むにつれて新婚旅行も徐々に再開されました。この時期もやはり箱根や熱海、伊勢などが変わらず人気だったようです。旅先に大きな変化が見られたのは、第一次ベビーブームに誕生した世代が結婚し始める1960年代以降。このころには南九州、特に宮崎県が新婚旅行の新定番地として大ブームが起こっています」高度経済成長に伴い、観光振興のために毎日新聞社が企画した『新日本観光地百選』というキャンペーンの後押しを受け、宮崎交通が日南海岸という新しい観光地を開発。また、1960年には昭和天皇の第五皇女・島津貴子さまが結婚され、夫側の実家でもある宮崎県を訪問された。その行程は事実上の新婚旅行として広く報道されている。「さらにその2年後、ご結婚後間もない現上皇ご夫妻もおふたりで宮崎を訪問されています。また、1965年にはNHK連続テレビ小説『たまゆら』の舞台としても知名度が高まり、異国情緒あふれる日本の南国・宮崎は瞬く間に新婚旅行の中心地になりました。この時期の新婚旅行の写真を見ると、男性はスーツにネクタイ、女性も白手袋をつけるなど、フォーマルな装いが目立ちます。女性は全員、景色がよく見える窓際に座っているのも印象的です」海外へも羽を伸ばして昭和後期以降、沖縄や離島などさらに遠方への新婚旅行も普及。1973年には変動相場制への移行や、日本とホノルル・グアム間にジャンボジェットが導入されたことから、ハワイ、グアム、東南アジアなどへの海外旅行も一気に増加していく。「沖縄が日本に復帰して今年で50年になりますが、特に1975年の沖縄国際海洋博覧会の開催は沖縄への旅行が普及する大きな契機になったと思います。那覇周辺の道路などが整備され、リゾートホテルなどの開発も進んだことで、沖縄でのリゾートウエディング人気が高まるきっかけとなりました。また、同時期にワタベ衣装店(現ワタベウェディング)がホノルルに海外1号店をオープンし、日本の“ハワイアン・ウエディング”を開拓するなど、新婚旅行のバリエーションはどんどん広がっていきました」1980年代以降は、北米や欧州などの選択肢も増え、新婚旅行は「豊かさの象徴」にもなった。バブル景気や円高の影響が海外ハネムーン人気を後押しするなか、やはり定番はハワイやグアムだ。「こうして概観するとわかるように、新婚旅行先に選ばれやすいのはやはり暖かい場所。昭和初期には草津ではなく熱海が選ばれ、その後も宮崎、沖縄の人気を経て、現在でもハワイなどの南国がやはり人気です。特にハワイは昭和後期以降、数多くの芸能人が新婚旅行で訪れたり、リゾートウエディングを挙げる様子が度々メディアに取り上げられたこともあり、現在も憧れの新婚旅行先です」その後、現在に至るまで新婚旅行の在り方はますます多様化している。結婚式の披露宴でのフォトスライドに使用する“映え写真”を撮りに行く婚前プチ旅行や、旅先でウエディングドレスを着て写真を撮る“ハネムーンフォト”といったプランも人気だ。「現代の新婚旅行は、夫婦になるための通過儀礼としての意味合いは薄れ、ふたりで過ごすかけがえのない一瞬を撮影する記録の旅といった側面が大きいかもしれません。そのロケーションとしても“映えスポット”の多いハワイなどの南国は、格好の旅行先といえるかもしれませんね」コロナ禍や円安の影響も長引くなか、今後の新婚旅行のトレンドがどう変わっていくのか、興味は尽きない。日本人のハネムーン史『ホネームーン』から『フォトウエディング』まで、時代に合わせて変化を続ける新婚旅行。明治期から現在まで、その変遷をたどる。明治期……関東では逗子、江ノ島が人気近郊の海水浴場は一般の旅行先としても人気で、新婚旅行の目的地にもなっていた。そのほか、鎌倉や湯河原といった例もあるが、いずれも上流階級の一部の間でのみ行われる程度。大正~昭和前期……熱海行きが新婚夫婦であふれる新婚旅行が一般に浸透する過渡期は、熱海や箱根といった温泉地が定番。このころは酒色に富んだ娯楽地というよりは、閑静な保養地の風情を残しており、新婚夫婦にも好まれた。昭和中期~後期……九州の温泉地が爆発的人気に戦後の新観光地開発や、皇族の来訪といった影響もあり、空前の宮崎への新婚旅行ブームが到来。明るく伸びやかな雰囲気の「日本の南国」に憧れる新婚カップルが急増した。平成前期~中期……国内外でのリゾート婚が定着する海外旅行が一般化し、沖縄や周辺離島のほか、ハワイやグアムなど、時間や費用をかける新婚旅行の「リッチ化」が顕著に。新婚旅行と挙式を兼ねたリゾートウエディングも人気。平成後期~現在……“挙式前”“映え”がキーワードに結婚式の前撮りを兼ねた婚前旅行や、海外でウエディングドレスを着て記念撮影をするフォトウエディングが流行。一方、長引く不景気の影響で、新婚旅行をしない「ジミ婚」派も。お話を伺ったのは……今井重男さん●千葉商科大学副学長、千葉商科大学サービス創造学部教授。経営学を主たる専攻として、日本のブライダル産業やブライダルサービス、ブライダルツーリズムなどを研究。(取材・文/吉信 武)
2022年05月18日100円ショップ『ダイソー』100円ショップ業界最大手である『ダイソー』。同社は“安物買いの銭失い”というイメージを払拭するかのような、コスパ最高の便利アイテムを数多くラインナップさせ、多くの消費者の心を掴んでいる。そんなダイソーは掃除アイテムをたくさん販売しているが、種類が多すぎてどれを買うべきかと迷ってしまう人も少なくないだろう。そこで今回はダイソーを知り尽くした節約アドバイザーの和田由貴さんに、ダイソーのお掃除“神”アイテムを10つ厳選していただいた。※以下、税込表記『ダイソー』神アイテム1:ワイパー(スプレー付き)/110円はじめに紹介してもらったのは、この『ワイパー(スプレー付き)』という商品。ガラス掃除をする際、洗剤をかけてから水拭きを行うことが面倒だと感じる方もいるはず。そんな悩みを解決する画期的なアイテムがこちらだ。「持ち手の先っぽの部分がスプレーボトルになっているワイパーです。プッシュの部分は取り外し可能で、中に液体を入れることができるので、液体洗剤を窓に吹き付けながらワイパー掛けが行えますよ」(和田さん)2つの工程が一気にできるというわけだ。仕組み自体はシンプルなものの、1人2役の機能を持つ便利アイテムと言えるだろう。『ダイソー』神アイテム2:マイクロファイバーお掃除手袋/110円家具、家電の隙間など、掃除がしにくいところをきれいにできるアイテム。要するに手にはめれば、掃除したい箇所をそのまま手の平や指先で拭き取っていけるというわけである。「マイクロファイバーは繊維が細かくゴミを付着させやすい素材。照明器具やブラインドなど雑巾で拭きにくい形状のものも、手の感覚でそのまま掃除できるというアイデア商品ですね」(和田さん)和田さんいわく、「水回りの掃除に使用することもできる」とのこと。濡らして使う場合はゴム手袋をしたうえからはめると手が汚れないのでおすすめだ。『ダイソー』神アイテム3:加圧式霧吹き(ペットボトル用)/110円次に紹介するのは、ガーデニング用の霧吹きである『加圧式霧吹き(ペットボトル用)』。ガーデニング用アイテムなのだが、お掃除アイテムとして活躍する。「ペットボトルに装着し、ポンプを押したり引いたりして圧力をかけて勢いよく霧吹きをするアイテムです。ガーデニングだけではなく、網戸やキッチン周りの掃除にも使えるので重宝しますよ」(和田さん)吹き出す水の勢いは強く、溜まったゴミやわずかに付着した汚れ程度であれば簡単にキレイにすることができる。掃除する箇所に直接触れる必要がないため、手が汚れずにすむというわけだ。『ダイソー』神アイテム4:ペットボトル+スリムブラシ/110円サッシレールに溜まるほこりや汚れなどの掃除は手間がかかりやすい。だが、そんな悩みもこちらの『ペットボトル+スリムブラシ』が解決してくれるだろう。「ペットボトルに取り付けて使用するブラシです。ブラシの隙間から液体が出てくるため、薄めた洗剤を入れて水洗いができるんですよ」(和田さん)水色のボタンを押せば液体が出て、赤色のボタンを押せば止まる仕様になっているので、自分で出す量を調整できる。このシンプルで扱いやすい仕様も嬉しいポイントだ。『ダイソー』神アイテム5:曲がるタイルブラシ/110円浴室のタイルなどが凹凸のある形状だと、きれいに掃除するのも一苦労。だがこの『曲がるタイルブラシ』があれば楽に汚れを落とせる。「本品は柔軟性に優れており自在に曲げることができます。浴室のタイルや溝の凹凸、角の掃除しにくい部分も簡単に掃除できますね」(和田さん)その他にも車のタイヤや壁の汚れなどにも対応可能。かなり柔軟に曲がるので、手にあまり力を入れずにゴシゴシ洗えるのも便利だ。『ダイソー』神アイテム6:髪の毛くるっとキャッチ/110円浴室の排水溝に髪の毛が詰まったときの掃除は、不衛生に思えて生理的に苦手という方は多いだろう。だが、この『髪の毛くるっとキャッチ』を使えばその手間を大幅に減らすことができる。「本品は独自の渦巻き形状のため、目皿の中心に髪の毛が集まる仕組みになっています。排水溝の掃除が格段に楽になるアイテムでしょう」(和田さん)溜まった髪の毛は目皿を逆さにすれば、簡単に処理できる仕様になっている。直接髪の毛を触る必要がなくなるため、排水溝の汚れが苦手な方はぜひ試していただきたい。『ダイソー』神アイテム7:キッチンブラシ(PUSH WASH)/110円次は、購入者から“洗剤の継ぎ足しが不要”“きれいに泡立つ”といった声があがっている、水周りに便利な『キッチンブラシ(PUSH WASH)』。「ディスペンサー付きのブラシです。上にあるボタンを押すと液体が出てくるので、洗剤を薄めた水を入れて常備しておけば、いつでも手軽に掃除ができます」(和田さん)『ダイソー』の公式サイトによると、「フライパンやザルの他にも、襟袖ブラシやタイルブラシ」に使用できるとのことでその用途は広そうだ。『ダイソー』神アイテム8:ジェルクリーナー/110円パソコンのキーボードの隙間にはいつの間にかゴミやほこりが溜まっていくもの。そんなとき、この『ジェルクリーナー』を使えば隙間にある取りにくいゴミも取り除ける。「スライムのような柔らかいジェルとなっていて、隙間に入ったゴミをくっつけて取ることができるアイテムになっています。キーボードのみならずリモコンなどの機器のゴミも取り除けるんです」(和田さん)粘着力が高く、隙間に深く侵入してくれるジェルなのでとても便利。使用後は乾燥を防ぐため、しっかり密閉しておこう。『ダイソー』神アイテム9:隙間らくらくハンディワイパー/110円続いて紹介するのは、床などの掃除をする際に重宝するワイパーを、細かい隙間にも対応させた『隙間らくらくハンディワイパー』。「フローリングシートを挟んで使う隙間用の掃除アイテムです。家具の間や冷蔵庫の下など手が届かない範囲まで届くので重宝しますね」(和田さん)隙間が狭くて掃除できない……なんて悩みもこの商品があれば問題なし。平たい形なのでたいていの隙間に入っていけるのだ。『ダイソー』神アイテム10:電子レンジ洗浄剤/110円電子レンジの中は汚れやすく、なおかつ匂いが残りやすいものだが、『電子レンジ洗浄剤』は電子レンジの内部を掃除できるという便利なアイテムだ。「洗浄剤を染み込ませたスポンジを電子レンジで温めて掃除するアイテムです。洗浄剤の蒸気によってしつこい油汚れを浮かせて落しやすくなり、匂いもすっきりしますよ」(和田さん)汚れと匂いを同時に落とすことができるというわけか。使用前に電子レンジで温めるだけという手軽さもポイントだ。***暮らしに役立つ商品を販売しているダイソー。節約アドバイザーの和田さんがおすすめしてくれた商品は、お掃除の際にあると便利なものばかり。気になった方はぜひ購入してご自身でその実力を体感していただきたい。PROFILE●和田由貴●消費生活アドバイザー、家電製品アドバイザー、食生活アドバイザーなど、幅広く暮らしや家事の専門家として多方面で活動。また、環境カウンセラーや省エネルギー普及指導員でもあり、2007年には環境大臣より「容器包装廃棄物排出抑制推進員(3R 推進マイスター)」に委嘱されるなど、環境問題にも精通している。2人の子を持つ節約主婦でもあり、日常生活に密着したアドバイスが得意。(文=文月<A4studio>)
2022年05月15日100円ショップ『DAISO』(撮影/矢島泰輔)100円ショップ「DAISO」を運営する大創産業の創業者の矢野博丈氏は、大学卒業後、学生結婚した妻の実家のハマチ養殖業を継ぐが失敗。借金を背負ってしまう。その後9回もの転職を重ね、広島県で荒物、鍋、雑貨を扱う移動販売業に従事。1972年に「矢野商店」と名付け、夫婦で働くことに。【1】100円均一のビジネスモデルはひょんなことから「訪れた先で、トラックから商品を降ろし、ベニヤ板に並べて売る。雨が降れば休業という、いわゆる露店のような商売だったそうです。ある日、開店を待ちわびていたお客様から『これいくら?』と声がかかりましたが、多くの商品があるため、価格表を見なければ即答できません。そのとき、矢野が『100円でええ!』と口にし、これが100円均一というビジネスモデルの始まりだったといわれています。わかりやすさが功を奏したのか、商売は小さいながらも順調に伸びていきました。『これも100円で買えるの?』と喜んでくれるお客様の笑顔が、矢野商店の原動力となりました」(大創産業・広報担当、以下同)【2】店舗はなく移動販売からスタート100円均一での商売は評判を呼び、矢野商店はスーパーマーケットの店頭で催事販売を行うように。大手の総合スーパーからも声がかかり、東京まで出向くこともあった。4トントラックに商品を満載して、広島から10数時間かけて走った。「商売は順調でしたが、同じことを続けていては、いつかお客様に飽きられるのではないかと、通常の販売とは別に、アイデア商品ばかりを集めたコーナーや、手芸関連の商品だけに絞ったコーナーなどを考え、催事を行いました。また、独自の自社での商品開発にも乗り出していきました。催事でお客様を集めていたら、あるスーパーから『4階に店を出してみないか?』と誘われ出店したところ、お客が来なかった4階に人が上がってくるように。このときに、『よい商品を置いていれば、固定の店舗でも売れる』ことがわかり、常設店の展開が始まったのです。それから全国47都道府県へ、ついには海外にまで出店することができました」【3】“大創”という名前に込めた願い1970年代の中頃になると、同じように100円均一で商売をするライバル業者が現れる。それでも、品質にこだわる矢野商店の商品は、多くのお客様に評価され、飛ぶように売れていった。「『年商1億円の大きい会社を創りたい』という思いで、社名を株式会社大創産業に改称したのは1977年です。字画も考慮してつけたそうです。夫婦で始めた会社でしたが、社員も増えていき、社長の家でみんなでごはんを食べる家族のような生活でした。年商1億円を達成することができ、今年で50周年を迎えました。最近では店舗数が伸びていることもあり、コロナ禍でも売り上げを伸ばしてきました。2021年度は今年の2月までで5493億円の売上高です。衛生関連の製品の売れ行きがいいのも好調の理由です。さらに昨年はネットストアもスタートし、店舗に行かなくても商品が買えるようになりました」【4】銀座に旗艦店をオープン4月15日には、銀座という日本の一等地のマロニエゲート銀座店にオープン。暮らしを楽しくするアイデアあふれる生活必需品を誇る「DAISO」、国内生産者と生活者をつなぐサステナブルな品ぞろえの「StandardProducts」、トレンドカラーで暮らしに彩りを添える新装「THREEPPY」の3ブランドが同じフロアに集結した、大創産業として世界初の取り組みだ。「『DAISO』は、おうち時間が増えたことを意識してDIY関連の商品を新たに開発し、キャンプや釣り、レジャー関係の商品も増やしていきます。『THREEPPY』は大人かわいい商品をそろえ、『StandardProducts』は洗練されたデザインで、使い勝手がいい生活雑貨のブランドです。みなさまの豊かな暮らしに貢献できるよう、銀座から世界へと発信していきます。ワンプライスで買い物や暮らしを支え、世界中をもっとワクワクさせる“欲しい、楽しい、新しい”がテーマです」【5】ロゴは2019年に変更DAISOのロゴは、以前はカタカナの「ダイソー」の文字であったが、2019年に変更となり、アルファベットのみに。Aが山のようになっているのが特徴だ。「スリーアローズという山をイメージし、生活をアップデートしていこうという意味を込めています。カタカナでダイソーと書いたほうが日本ではわかりやすいと思いますが、海外でもブランドを認知してもらうため、アルファベットにしました。スローガンは『だんぜん!ダイソー』で、だんぜん多い品ぞろえ、だんぜん高いクオリティー、だんぜん楽しいアイテムでお客様に笑顔と豊かな生活を届けてまいります。センスのいいデザインやトレンドも意識して商品開発を行っています。今年は50周年企画として特別に、日用品増量キャンペーンを行っています。対象商品は、アルコール除菌ウエットシート、不織布マスク、メラミンスポンジ、ベビー用綿棒などの日用品なので、ぜひお試しください」【6】アメリカで人気の商品はこれ大創産業は、「DAISO」「StandardProducts」「THREEPPY」の3ブランドを合わせて、2022年2月末現在、海外には2296店舗、国内は4042店舗で、世界中で6338店舗がある。「2001年に台湾店を出店したのが海外初店舗です。アジアではほかに中国、韓国、香港、タイなどに出店。中東ではUAE、サウジアラビアなど。オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、カナダ、ブラジルにも出店しています。2022年度はさらに国内外に約500店舗の出店を予定しており、シンガポールにグローバル旗艦店もオープン予定です。商品展開は、海外も日本も基本的に同じですが、国によって売れている商品は異なります。アメリカでは『アニマルトレーニング箸』が人気で、箸を上手に持てる練習をしたい人が多いようです。ふわっと軽い紙粘土やコットンパフの90枚入りといった商品も人気です」【7】毎月1200の新商品を開発新商品の開発は常に行われていて、毎月1200ほど!お店によって人気商品は異なる。商品の入れ替わりや改良が多いため、50年前の創業当初からずっと販売されている商品はない。100円とはいえ、使いやすさや耐久性など、常に進化を続けているのが「DAISO」の商品だ。「商品は全部で7万6000アイテムぐらいありますが、すべてそろえているお店はなくて、大型店舗でも5万アイテムぐらいです。常にお客様のニーズを察知して、企画、商品化しつつ、昔からある商品も品質をアップしたり、改良したりしています。プライベートブランドも1980年代から作っています。本来の使い方ではなく、お客様がそれぞれ工夫して使っていただけるのも、当社の商品の魅力です。例えば、傘立てにラップを入れてラップケースにするなど、SNSや雑誌、テレビなどで紹介されて、お客様独自の使い方が広がります。お客様のアイデアにはいつも驚くばかりです」数ある店舗のなかでも1600坪ある千葉のギガ船橋店が最も大きく、次いで1000坪の東京・錦糸町店などが続く。来店するお客様の層に合わせて、店舗によって品ぞろえは異なっている。【8】一番大きい店舗は千葉のギガ船橋店「消耗品はどのお店でもまんべんなく売れていますが、ソラマチ店、錦糸町店などでは、海外のお客様に日本の和雑貨などが人気でした。扇子や小物、お箸、お寿司のマグネットなどが売れていて、お土産で買われていました。最近では“推し活”用のグッズもニーズがあります。当社はもともとトラックで移動して特設会場で100円グッズを販売していましたが、50周年記念でそういった企画もできればと考えています」【9】サステナビリティにも取り組むSDGs(持続可能な開発目標)は、100円ショップでも推進されている。オープンしたマロニエゲート銀座店は、サステナビリティ拠点として位置づけられている。「当社は環境配慮型商品を多数展開し、エコな活動を推奨してきました。環境や安心への積極的な取り組み、お客様のより豊かな暮らしに貢献してまいります。『StandardProducts』では、東京都檜原村の間伐材や国産木材を活用したご祝儀袋、メモ帳などの文具商品と、しゃもじ、菜箸などのキッチン用品を発売しています。マロニエゲート銀座店では、店舗の改装にあたって、床材、レジ仕切り板などの資材に環境負荷の少ない材料を選定、活用し、100%リサイクル原料を使用した抗菌仕様の買い物かごを導入しました。取り扱い商品も環境負荷削減を意識し、植物由来の成分を配合したポリ袋やプラスチックカップ、サトウキビの絞りかすからできる紙皿、フードロス削減につながる保存袋などがあります」(取材・文/紀和 静)
2022年05月11日たべっ子どうぶつバター味63g動物型にアルファベットの刻印でお馴染み、ギンビスの薄焼きビスケット『たべっ子どうぶつ』。発売は1978年。以来、伝統の素材と製法を大切に、変わることない味わいで世代を超え長く愛され続けてきた。さらに近年はファン層が広がり、子どもはもちろん若者たちの間で新たなブームが起きているという。その理由は何なのか。まずは45年近くに及ぶ長い歴史を振り返り、ロングセラーを支える魅力のルーツを探ってみたい。実は『たべっ子どうぶつ』には前身となった商品がある。1969年発売の『動物四十七士』で、ネーミング通り47種類のどうぶつたちがビスケットにかたどられていた。「『動物四十七士』は厚焼きビスケットで、昔ながらの素朴な味わいで支持をいただいていました。さらにより多くの方に親しんでもらえるよう、食べやすい薄焼きのビスケットを作ろうと考えたのが『たべっ子どうぶつ』開発のきっかけになりました」と話すのは、ギンビス広報の吉村萌子さん。再現できなかった意外な動物薄焼きに徹底してこだわり、配合や製法を調整し試作を重ねた。結果『動物四十七士』の約半分ほどの厚さの薄焼きを実現し、サクサク軽い食感を生み出すことに成功。一方、薄焼きを追求したことで、どうしても再現できなかった意外などうぶつがある。「『たべっ子どうぶつ』は全46種類ですが、これは『動物四十七士』からコアラを除いた数。あの特長的な耳を薄焼きビスケットにするのは難しく、泣く泣く断念したという経緯がありました。そのほかワニやキリンなど長細いフォルムのどうぶつは薄焼きにするとどうしても割れてしまうため加えることができず、かわりにパッケージにイラストとして描いています」今ではギンビスの看板アイテムであり同社を代表する一大ブランドに成長した『たべっ子どうぶつ』だが、発売当初の売れ行きはあまり芳しくなかったそう。「売り場で目立つよう当時斬新だったピンクのパッケージを採用したところ、派手な印象となり当初は苦戦を迫られたんです。ただ次第にテレビCMの効果や美味しさが口コミで広がり、徐々にヒットしていきました」ギンビスは「独自性」を企業理念にしており、食品にはあまりなかったピンクのパッケージカラーをあえて採用したのもそのひとつ。またアルファベットの刻印は『動物四十七士』から続くスタイルで、当時としては画期的なアイデアだった。「創業者の宮本芳郎が海外に強い関心があったことや、第2外国語として英語への注目が集まっていた時代背景を踏まえての導入でした。食べて美味しいだけでなく、コミュニケーションにもなるビスケットとして、楽しさや癒しなど、より次元の高い価値を提供したいという考えがその根底ありました」ピンクパッケージの定番バター味をはじめ、のり味、チーズ味、メープルバター味と、時代に合わせさまざまな商品を展開。最近では白いたべっこソルティーや、カフェオレ味など、飽きることない美味しさでファンの心を捉えてきた。さらに2007年には「たべっ子」ブランドシリーズとして『たべっ子水族館』を発売。同社のチョコスナック『しみチョココーン』で培った含浸製法を活用したアイテムで、海のどうぶつたちにチョコレートを染み込ませ、新たな魅力を提案している。発売から45年近くが経ち、競合アイテムも次々登場してきたが、「お陰様で発売以来右肩上がりの売り上げを保っています」(吉村さん)というから驚かされる。「自分が子どものころに食べたお菓子というのはやはり安心して子どもに食べさせることができる、というお声をよくいただいています。『たべっ子どうぶつ』をはじめ弊社の商品は、卵アレルギーの方を考慮して、すべて卵不使用で、安心安全なおいしさを大切にしてきました。ロングセラー商品として三世代にわたり安心してお召し上がりいただいてきたという部分が、売り上げを支えているひとつの要因ではないかと考えています」さらに近年人気に火をつけたのが、2019年に発売したカプセルトイ。『たべっ子どうぶつ』のどうぶつたちをフィギュア化し、一躍ブームを巻き起こした。「『たべっ子どうぶつ』ブランドのファンを増やし、そしてブランドを強化するために、どうぶつたちのグッズ化に至りました。カプセルトイは芸能人の方がSNSで発信してくださり、またさまざまなメディアに取り上げられたことで、多くのお客様に目にしていただくことなりました」カプセルトイの第一弾は、らいおん、かば、ねこ、ひよこ、ぞうの5種類で、第二弾は、きりん、さる、わに、うさぎ、ぱんだの5種類を販売。全種類制覇を目指すファンも多く、SNSではどうぶつたちがずらりと並ぶ写真に数万いいねが付くなど大きな注目を集めた。続いて翌2020年にはキャラクターくじ『一番くじ ギンビス たべっ子どうぶつ お菓子がいっぱいコレクション』、今年2月にはGUとのコラボレーションで衣類や雑貨を販売。3月にはマクドナルドとの初のコラボレーションでハッピーセットを販売し、いずれも大きな反響を呼んだ。「一番くじの第一弾はオリジナルクッションを景品に用意しました。担当者が販売先のコンビニエンスストアへ視察に行ったところ、朝から行列ができていて、正直なところ社内でも驚くほどの反響でした。マクドナルドのハッピーセットは当初2週間の販売を予定していましたが、想定以上のご好評をいただき1週間で販売を終えることになりました」長年親しまれてきた看板アイテムゆえ、年季の入ったファンも多い。グッズ化する際にはそのイメージを裏切らないよう配慮を凝らしたと話す。「パッケージの絵は40年以上前に描かれたもので、もともと平面のみのキャラクターを違和感ないよう立体に作り込む作業が一番苦労したところでした。どうぶつたちの背面や見えない部分に関しては、パッケージに描かれている尻尾など細部を参考に想像を膨らませて作り上げています。またどうぶつたちはそれぞれ色味が決まっていますので グッズにした時にそれらをきちんと出せるよう留意し、お菓子のファンの方々にも喜んでいたける商品作りを心がけました」5月5日は『たべっ子どうぶつの日』ギンビスでは創業者の誕生日にあたる5月5日を『たべっ子どうぶつの日』に制定。記念日に毎年キャンペーンを展開し、今年はオリジナルデザインの限定グッズをはじめ総勢630名にプレゼントが当たる3大キャンペーンを行っている。またバンダイスピリッツより、今年6月には『とるバカ! たべっ子どうぶつおててくつろぎマスコット』の新作を、7月には一番くじの新商品『HAPPY Tabekko cafe』を順次発売予定。新製品も毎年春夏と秋冬に発売し、この春夏には『全粒粉入りたべっ子どうぶつ』や大豆イソフラボン配合の『厚焼きたべっ子どうぶつSOY』がラインナップに加わるなど、『たべっ子どうぶつ』ワールドはますますバラエティ豊かに広がっている。「お客様の声を参考に新たな商品が生まれることも多く、実際“健康志向で身体に優しいお菓子を”というお声からできたのが『全粒粉入りたべっ子どうぶつ』でした。こんなお菓子があったらいいな、という夢やアイデアを募集しています。ぜひご意見をお寄せください」と吉村さん。ロングセラーを支える理由は、変わることない確かな味と進化する美味しさ。誕生から45年近く経った今、その魅力は色褪せることなくファンを増やし、お菓子を通して世界平和に貢献し続けている。
2022年05月05日遠藤英三郎氏。カルビー株式会社執行役員。同社にて多数のヒット商品を開発。現在の役職は品質保証本部本部長《あなたが神か》《これはお菓子界のスティーブ・ジョブズ》。ネット上で、ある男性に対し称賛の声が上がった。カルビーの公式note(文章や動画などを使った記事を投稿できるサイト)に掲載された開発本部長(当時)である遠藤英三郎氏のプロフィールに対してだった。《1984年入社。4年間の工場勤務後、「ピザポテト」のほか「堅あげポテト」や「ア・ラ・ポテト」「ポテトチップス 九州しょうゆ」など多くのロングセラー商品を開発》確かにこれは“神”かもしれない。連ねられた商品名は日本において“知らぬ者はいない”といっても過言ではないのではないか。遠藤氏が開発部署に異動して最初に開発に携わったのが、『お好み焼きチップス』。これがよく売れた。「その次はなんだと模索していたときに、同じく丸い形ということからピザが思い浮かびました。お好み焼きは和風で、ピザは洋風ということで、そこにすごく可能性を見いだしたんですね。またチップスの表面にチーズフレークをふりかけて付着させていますが、当時このチーズフレークという面白い素材があることを知り、これを使って面白い商品を作れないかと思っていて。チーズフレークがポテトチップスについていることが、パッと見てわかることにこだわりました。見た目で楽しさを伝えたかったんです」(遠藤氏、以下同)若気の至りで作り始めた“『ピザポテト』お笑いコンビ『かまいたち』は自身のユーチューブチャンネルにて、“好きなスナック菓子ベスト5”を発表。ともに2位にセレクト。唯一意見が合ったのが『ピザポテト』。「半分くらいにしとこ思って、半分で終わったためしないな」(濱家)、「発明者に会いたいやつ。これをプレゼンで会議に出したときに、どのように会議が盛り上がったんか知りたい」(山内)、とコンビで激賞した。実際は?「どうだったかなぁ(笑)。最初から“ピザポテト”があったのではなく、すでに『イタリアンピザ』という商品があって、その後に『ピザチップス』があって、その後に『ピザポテト』が生まれました。社内会議にかける前に担当者だけで進めていたので、誰に気兼ねするわけでもなくできたんですけど、そういう意味ではラッキーだったかもしれないですね。どうやって作るかとか、製造所でどういう問題が起きるかとか、そういったことをまったく検討しないでいきなり作り始めました。若気の至りで、勢いだけでいっちゃったところはありますね」発売後の会社の反応は?「“そうか、これは応援してやらねばな”ということで、“なにやってんだ”という雰囲気が変わりました。イタリアンピザのときは、キッチン用のスコップを持って、コンベアで流れてくるポテトチップスにチーズをかける作業を、1日8時間くらい延々とやっていました。作るのにすごく苦労しましたが、すごく売れたんですね。それでみんな黙っちゃいましたね」『堅あげポテト』は全国展開まで“12年”『堅あげポテト』は、当然ながらあの“堅さ”を出すために製法がまるでほかと違う。「普通のポテトチップスは、スライスしてから水やお湯で洗って、一定の色合いを出す調整をします。『堅あげ』の場合は、切ったイモをそのまま揚げる。堅さを生み出すためには洗ってはいけないんです。美味しさも出てこないし、堅さも出てこない。堅あげはすごく原料を選ぶ商品なので、使える原料が限られていた。また、生産する機械が望む品質に至っていなかった。そのため最初はじゃがいもの産地である北海道に機械を置き、そこだけでの販売でした。全国展開まで12年。下積みが長い商品です」ヒット商品は、アイデアから製品化までどのくらい月日がかかるものなのか。「『堅あげ』は、これでいくぞと腹を決めるまでには5年くらいだったと思います。5年は短いほうかもしれません。いろんな商品にいろいろなステージがあり、課題がたくさんある。原料の手当から生産のプロセスを整えるまでには5年や10年はかかってしまいますね。『ピザポテト』はわりと簡単にできましたが、量産化のシステムが完成するまでに10年ほどかかったと思います」ヒットメーカーは、新商品を作るとき、何を考えるのか。「まずは世の中にないものを出したいということ。世の中にすでに出てしまっているものでも、そこに改良、改善をして新しく見せることも含めて、世の中にないものをと考えています。開発するうえでは、この商品は何のために存在しているのか、あるいはこの商品のよさは何かというところをしっかりと見極める。その商品を買っていただくための最大の特徴は何か。それをぶれることなく、品質を追究していくというところが、いちばん大事かなと思います」なぜこれだけヒット商品を開発できたか。その秘訣は。「難しいですね(苦笑)。技術については絶えず網を張って見ておき、探していかなくてはダメだと思います。あとは人の意見をよく聞くことでしょうか。相手の感想、想いをまず聞くことが重要なことかなと思います。どこに共感してもらえて、逆に共感してもらえないのか。そこはよく聞くようにしています。もう1つは、そうは言いながら、ヒットを生むために必要なものというのは、やっぱりこだわりを持つことだと思います。『堅あげポテト』でしたら、“この堅さ”ですとか、『ピザポテト』だったらこの見た目ですとか、絶対に譲れないところがあるので、そこをしっかりと持つことですね」会社上層部から「ネーミング変更」の提案がくるも…『堅あげポテト』開発時は別チームで『じゃがりこ』が開発されていた。当時の名前は“じゃがスティック”。こちらの方が名前だけでどんな商品かわかりやすいが……。「ある日突然、即物的な名前から、“じゃがりこ”というなかばキャラクター的なブランド名に変わりました。堅あげポテトにも上層部から名前を変えるのはどうかという提案もありました」時代的な背景もあり、当時はまだ会社的にトップダウンな側面もあったという。「当時の社長は堅あげポテトをじゃがりこと同様に夢のあるブランドにしたかったのだと思います。ただ、いろんな人に聞いて、調査をして、いろんな名前を考えましたが、お客様の評価として堅あげポテトがよかったので、トップの意見として尊重しつつ、堅あげポテトに収束しました」数多くのロングセラーとなったポテトチップスを開発した神の考える“次”は?「油は身体に絶対必要なものですが、そこまで油は要りませんというお客様も増えている。そういった方にフライじゃない商品も提供できるような準備が要ると考えています。直近で手掛けたのがフライに頼らない乾燥製法のものです。今までのドライフルーツともフリーズドライともまったく違う、カリッとした食感のりんごを使った商品などですね。まだまだ職人技から量産に向けての仕組みを作っている最中の商品なので、今はブランド育成の苦しみを味わっているところです。ここがいちばん楽しい時期かもしれないですけど(笑)」苦しみが楽しい。そう笑える心こそ、ヒットメーカーの心得かもしれない。
2022年04月30日ダイソーやセリアのおすすめキャンプ用品本格的なアウトドアシーズンが到来。ここ数年は、新型コロナウイルスの影響で人混みを避ける傾向が強まり、キャンプなどのアウトドアアクティビティへの注目度は高い。テレビやYouTubeでもキャンプ動画が人気。おしゃれなキャンプグッズを使ったソロキャンやキャンプ飯が話題だ。ところが、実際にキャンプを始めようと思っても、そう簡単に「よし、今週末はキャンプに行こう!」とはいかない。初心者キャンパーがぶつかる壁は、そろえるべき道具の多さ。アウトドアブランドの種類や取扱店舗が増えているので、本当に必要なものを見極めることはなかなかむずかしい。キャンプの金銭的ハードルを解決!?アウトドアライターの関美奈子さんは「テントやテーブル、椅子、焚き火台など、必要最低限の道具を有名ブランドでひと通りそろえようとすると、夫婦ふたりのキャンプでも最低26万~28万円くらいはかかってしまいます。この金銭的なハードルの高さが、興味はあってもキャンプに尻込みする要因になっています」と話す。そこで強い味方が、100円ショップ。チープなプラスチック製のお皿やスプーンなどを想像する人も多いだろうが、侮るなかれ。春になるとアウトドア用品の特設コーナーが設置され、テントや寝袋(これらは特別価格だが……)まで購入でき、有名ブランドのキャンプグッズにもひけをとらない便利&スタイリッシュなアイテムが盛りだくさん!「ダイソーなど、毎シーズン独自のキャンプグッズを発売していて、そのラインナップには目を見張るものがありますね。調理器具はもちろん、キャンプに欠かせない熱源として使えるグッズもそろい、各社の本気度がうかがえます。ビギナーさんはもちろん、キャンプ上級者も愛用する、コスパ抜群なお宝アイテムがたくさんありますよ。ぜひ、近所のショップをチェックしてみてください」(関さん、以下同)ダイソーの便利なキャンプグッズ食器やカトラリーはもちろん、テント設営に必要なロープ、持ち運び可能なLEDライト、調理に欠かせない五徳、鉄板、コルク抜きさえ兼ね備えたポケットナイフまで、キャンプに便利な用具のほとんどが110円で購入可能だ。持ち運びしやすかったり、扱いがラクなのもうれしい。とくに大きな焚き火台やBBQコンロは持ち運びも片づけも大変。しかし、100均のミニストーブや五徳を1つ持っていけば、簡単な料理ならこれだけでOK。固形燃料も合わせて100均で購入できるので、面倒な火おこしも不要だ。SNSで話題になっているのがダイソーのメスティン。メスティンとはアルミ製の飯盒のことで、アウトドア感満載なビジュアルで気分も上がるアイテム。通常であれば2000円前後のところ、ダイソーなら破格の550円。それに加え、初心者でも手軽に「メスティン炊飯」に挑戦できるよう、内側に目盛りが刻まれていたり、くわしい炊飯手順が記載された説明書が付属していたりといたれりつくせり!キャンプ飯に重宝するアイテムそのほかにもミニ鉄板や、焼き網などミニサイズの五徳に合わせた調理器具もそろっているので、いろんな料理が作れる。密閉性が高く、計量スプーンがなくても量を加減できる機能性の高い調味料入れは買ってソンのないアイテム。自宅の調味料を詰め替えて持っていくと便利だ。ばらけやすいお皿をまとめるシリコーンバンドや、テントのポール、ブランケットなどを留めておくベルトなどもひとつあればさまざまな場面で活躍。コンパクトな折りたたみ式のスプーンやフォーク、コーヒードリッパーは使い捨てできるという気軽さがいい。キャンプ以外でも使える初心者キャンパーがキャンプ用品を買いそろえる際に、躊躇してしまう理由が「せっかく道具をそろえたはいいが、キャンプ以外で使う機会がない」。でも100均のキャンプグッズには工夫次第でさまざまな使い方ができるものも多い。どこにでも引っかけられるカラビナ付きライトや、万能ナイフ、テント用のロープなどは防災グッズとしても役立つので一石二鳥。また吸水クロスは結露で濡れたテントをしまう際などにもってこいだ。汚れても洗って再利用することができるので、家庭でのふだんづかいにもおすすめ。空前のキャンプブームで、キャンプ人口は激増しているが、関さんは「キャンプ仲間が増えることはとても喜ばしいですが、残念なことに一部のキャンパーによるマナー違反も目立ちます。火の始末やゴミの持ち帰りなど、周囲への配慮をして気持ちよくキャンプ場を後にし、長くキャンプを楽しんでもらいたいです」という。教えてくれた人は……関 美奈子さん●千葉県在住。アトリエばく代表。アウトドアライター。1982年度ニュージーランド・ガールスカウト国際キャンプ大会日本代表、ガールスカウト日本連盟キャンプ指導者資格取得。<取材/オフィス三銃士>
2022年04月30日懐かしの缶ジュース。左から「維力」「ピコーストレートティー」「サスケ」「はちみつレモン」「ジャズイン」1954年(昭和29年)4月28日、明治製菓から日本で初めての缶ジュース『明治オレンジジュース』が発売された。それまではビン入りのジュースが主流だったが、みかんの缶詰製造のノウハウを生かし、商品化に成功。当時の缶ジュースは完全密封タイプで、付属の小さな缶切りを使って上ぶたの対角線上に2か所穴をあけて飲んでいた。「プルタブ式の商品が出てきたのは、1970年代初めごろ。缶から完全に分離する構造で、空き缶のポイ捨てとともにゴミ問題にも発展し、“プルタブは空き缶に入れて空き缶はくずかごに”というマークが付けられるようになりました。現在流通しているような、缶にくっついたままのステイオンタブが使われるようになったのは1990年代になってからですね」そう教えてくれたのは、清涼飲料水評論家の清水りょうこさん。いちばん飲みたいのは1987年発売の『維力』その後はペットボトルの商品が主流となり、2020年の清涼飲料水容器別生産量のデータでは、ペットボトルの飲料が76%で、缶飲料は11%ほどになっている。「2020年には1000種類以上の清涼飲料水の新商品が出ています。すべてが定着するわけではなく、タイミングを逃すと飲めなくなるものも多い。ジュースと私たちは一期一会の関係にあるんです」(清水さん、以下同)そこで、今回はこれまで数々の清涼飲料水を味わってきた清水さんに、もう1度飲んでみたい懐かしのジュースについて教えてもらった。「今でもいちばん飲みたいのは、1987年にポッカコーポレーションから発売された『維力(ウィリー)』ですね。オリンピックの強化選手のために開発された中国のスポーツドリンクがもとになっていて、中国産の植物エキスが入っていました。好き嫌いが分かれる特徴的な味でしたが、私は好んで買っていました」好みの分かれる独特の味わいから、『維力』とともにジュース好きの間で今も語り継がれる伝説のドリンクがある。それが『サスケ』だ。「“コーラの前を横切るヤツ冒険活劇飲料サスケ”というキャッチコピーが印象的で、『ドクターペッパー』や『チェリーコーク』に近い独特の味わいの炭酸飲料だったそうです。なぜか私は手に入れる機会が得られず、そのまま発売終了に。私の前を横切ってはくれませんでした(笑)」手に入らなかったからこそいつか会いたいと願ってしまうのは、缶ジュースも一緒なのかもしれない。『IMO』というドリンクも、そういった憧れを覚える1本だという。「1986年にカゴメから“焼き芋ハイテク飲料”と銘打って発売されました。大々的に売られていたはずが、やはりこちらも手に入らず……いつか再販される日がきたら飲んでみたいですね」出ては消えるを繰り返す紅茶の炭酸飲料そもそも「ジュース」とは、厳密には100%果汁のもののみを指すが、この記事では一般的なソフトドリンク全般をジュースと呼びたい。日本に初めて登場したジュースは1853年のペリー来航とともにやってきたレモネードだと言われている。その後も甘酸っぱい柑橘系の飲料はジュース界の定番商品となった。「もう1度飲みたいレモン飲料といえば、カルピスが発売していた『B&L』です。ビター アンド レモンという名のとおり、レモンの苦みを生かした大人向けの味わいが特徴でした。缶のほかにビン入りも売っていましたね」また、ホットで楽しめるのも柑橘系飲料の魅力。特にサントリーの『あったまるこ』は思い入れが深いという。「キンカンとカラマンシーという柑橘類を使用したドリンクで、ホットで飲むジュースはレモネードぐらいしかなかったので、新鮮でした。甘さ控えめでおいしく、その後発売された『なっちゃん』と同じデザイナーによるパッケージもかわいかったですね」なかなか定着せず、現在も出ては消えるを繰り返しているのが、紅茶やコーヒーの炭酸飲料。なかでも『ジャズイン』は印象的な1本だ。「“誰でもオイシイ成人飲料”というキャッチコピーでペプシコから1990年に発売されました。紅茶を使った炭酸飲料で、甘さを抑えてスッキリ飲める味わいでしたね。紅茶やコーヒーの炭酸飲料は今でもたまに発売されていますが、なかなか定番商品が生まれていません」当時の飲料メーカーは自社の自動販売機を多く持っていたため、少し挑戦的なドリンクを開発する余裕も販路もあったと清水さんは分析する。個性的な自販機や地方にしかないメーカーの自販機もあり、それらの商品を眺めるだけでも新しい出会いがあった。なかでも特に思い入れが深いのが、『花紅茶』だという。「今は飲料事業から撤退してしまった日本たばこ産業が発売していた無糖の紅茶です。いわゆるローズティーで、ほのかなバラの香りをよく覚えています。私のまわりではJTの自動販売機でしか売っていなかったので探すのは大変でしたが、無糖の紅茶は当時は珍しく、食事のときなどにもよく飲んでいました」もうひとつ、よく飲んでいた紅茶ブランドとして挙げてくれたのが、女性向けのかわいらしい商品デザインが魅力の『ピコー』だ。「パッケージデザインだけでなく、CMもとにかくかわいかった。マザーグースの早口言葉を歌にのせて、女学生風の外国の女の子が軽快なステップで踊るという内容で、“ピコー”と言いながら片足を上げたポーズをとるのが大流行していましたね」現在でも手に入る、懐かしジュースもある。サントリーの『はちみつレモン』だ。「1986年発売の大ヒット商品なので覚えている方も多いはず。“はちレモ”なんて呼ばれていましたが、平易すぎる一般名称のため商標登録ができず、類似商品が多く販売されました。当時は缶でしたが、現在はペットボトルで度々再販されていますね」もう1本、海外で今も飲める可能性があるのが、スイスの乳清炭酸飲料『リベラ』だ。「ヨーグルトの上澄みである乳清を使ったジュースで、日本ではカゴメが輸入し、国内販売をしていました。ハーブの香りがして、身体によさそうな味わい。現在もスイスや周辺国では売られているようなので、海外に行けば再会できるかもしれませんね」数々の商品が生まれては消えていった、約70年の日本の缶ジュースの歴史。清水さんにとって懐かしジュースの魅力とはなんだろうか。「手軽に買うことができる身近さこそがジュースのいいところ。自分が飲んでいた時代や、当時の記憶を呼び起こす“記憶のスイッチ”みたいな要素も魅力のひとつですね」今飲んでいるジュースも、いつか思い出とともに懐かしむ日がくるのかもしれない。清水さんセレクト!懐かしジュース10選『維力』(ウィリー) ポッカ/1987年植物エキスによる酸味とすっきりした甘味が特徴の、中国由来のスポーツドリンク。『B&L』(ビター アンド レモン)カルピス/1979年代レモンの苦みが特徴的な、大人向けのレモン飲料。1998年に復刻されるも、発売中止に。『ピコー ストレートティー』 (Pekoe)サントリー/1993年商品名は茶葉の等級「ペコ」が由来。同社が『リプトン』を発売した2001年に終売となった。『IMO コンダク』(アイ エム オー)カゴメ/1986年さつまいもが原料。白濁した『コンダク』、透明な『クリア』、炭酸入りの『タンサン』があった。『サスケ』(SaSuKe)サントリー/1984年コカ・コーラに対抗する商品として登場したものの、わずか1年後、1985年に販売終了。『リベラ』(rivella) カゴメ/1984年スイスを中心に発売されている、乳清炭酸飲料。国内ではカゴメが輸入販売していた。『はちみつレモン』サントリー/1986年ハチミツとレモン果汁を使用した、言わずと知れた清涼飲料水。ホットでも楽しめる。『花紅茶』日本たばこ産業/1990年かすかにバラの香りがする無糖紅茶。1990年に登場したあと、1998年にも再販された。『ジャズイン』(JAZZ’INN)ペプシコ/1990年紅茶の炭酸飲料。後の缶デザインには「スッキリ飲める紅茶です」の一文も追加された。『あったまるこ』サントリー/1990年缶を顔に見立てたデザインの柑橘系ドリンクで、サントリー『なっちゃん』のお姉さん的存在。お話を聞いたのは……清涼飲料水評論家清水りょうこさん1964年、東京都生まれ。1980年代から、飲料関係の記事やコラムを執筆し、各種メディアにも登場。思い出の昭和ジュースの数々を誌面の許す限り網羅。『日本懐かしジュース大全』辰巳出版・刊/1320円取材・文/吉信 武写真協力/久須美雅士、スタジオ クライン
2022年04月28日西ゆり子ドラマスタイリストとして活躍するほか、バラエティー・歌番組・CMとジャンルを問わずに活動。個人向けに、理論と実践で「着る力」を学べるスタイリングレッスンも展開。年を重ねるにつれて「ファッションが楽しめない」「何を着たらいいのかわからない」と感じる女性が多い。「そんな大人の女性こそ、服を着ることを楽しんでほしい」とは長年スタイリストとして第一線で活躍する西ゆり子さん。「おしゃれはとびきりのサプリメント。憂鬱な気分を吹き飛ばしてくれますよ」と話す。服には着る人の人生を輝かせるパワーがある西さんは数々のヒットドラマでヒロインの衣装をスタイリング。45年以上この仕事をしてきて、つくづく感じるのは“服にはパワーが秘められている”ということ。「女優のオーラと服のパワーがひとつに溶け合ったときは圧巻。それぞれのパワーが倍増し、驚くほど輝きます」(西さん、以下同)例えば『セシルのもくろみ』(’17年、フジテレビ系)というドラマで、ファッション編集部デスクを演じた板谷由夏さんには、普通の女性では着こなせない柄物トップスに柄物スカートという組み合わせをスタイリングした。「柄を着こなせる強い女性という思いを託しました。服に負けない存在感ある演技は、見た方ならうなずいていただけるはず」また『家売るオンナの逆襲』(’19年、日本テレビ系)でヒロインを演じた北川景子さんには、赤のロングコートに黒と黄色のスヌードを合わせ、色鮮やかな衣装に。天才肌で豪快なヒロインとして輝きを放った。「ファッションは役柄や人間性をわかりやすく表現するもの。それは女優だけでなく、人生というドラマを生きる一般の方も同じ!」自分に何が似合うのかわからないという人は“手に取ってワクワクするもの”を、まずは着てみてほしいと西さん。「赤い服は着たことないけど、このニュアンスの赤はきれいだな……と思ったら、思い切って買っちゃって。自分が惚れ込んだ服を着ていると、『私ってすてき!』とテンションが上がるはず」自分の人生を表現しよう加齢やコロナ禍で気分が落ちている今こそ、服のパワーが必要なのだ。「色合わせ、体形とのマッチなどあれこれ悩むことでおしゃれの感覚が鋭くなっていきます。少しずつでもクローゼットに心ときめく服が並び始めたら、見るたびにすごくワクワクします」特に年をとってからの服選びは、自分の人生を表現するためのものだ。「大事なのは未来に向けて、前向きに“着ることを楽しむ”。なんとなくだけじゃつまらない!あなたというヒロインを輝かせる服探しを、ぜひ楽しんでください」人生輝く!西さんのおしゃれ格言12自分の個性に合った服を着ると顔つきが明るくなって生き方までもが前向きに。1. “服”と“心”は密接な関係50代のころ、一時、暗い色の服ばかりを着ていたら徐々に気力がダウン……。コレではいけないと、再び元気が出る色やデザインの服を着るように。すると、たちまちパワーがみなぎってきたのです。年齢とともに体力や気力がダウンしていくからこそ、アドレナリンを注入してくれるビビッドカラーの服が必要です。2. 洋服は“毎日、考えて着る”ことその日に着る服を選ぶことは“今日の自分をプロデュースする”こと。何をするのか、誰と過ごすのか、そのために何を着たら楽しいのか。毎朝考えることで、感性も磨かれます。年をとっても感性だけはシュッととぎすまされていたいものね。3. 50歳からはおしゃれの第二幕家庭や仕事での役割が一段落。自分を見つめる余裕ができ、この先の人生について考え始めるタイミングが“50歳”。これからの人生の主役は私と自分に言い聞かせて、気になっていたブランドの服を手に取ってみたり、新しい小物を身に着けるなどして殻を破って。4. 似合わないと思っても3回は着てみる初めて挑戦した服で、「やっぱり似合わない?」と1回目は違和感を覚えても大丈夫。2回目には抵抗感が薄れて、3回目には「似合ってる?」と前向きに思えることがよくあるからです。見慣れてしまえば「似合わない」なんてないのです。5. 好きな服は似合う服「好きな服が自分に似合うとは限らない」と心配される方がいます。でも私の経験からいって、好きな服に、似合う似合わないはありません。「似合う、似合わない」の固定観念は不要で“好きだから着る”でよし!6. くつろぎ服こそ自分のためにコロナ禍となってホームウエアを見直しました。おしゃれをして出かけることもできず、ここで手を抜いたら何の楽しみもない。日ごろは着ないような色柄の服など、自分が楽しくなる部屋着を選んでみましょう!7. 手持ちのアイテムと合うかで、服を選ばない便利で着回しがきくというのは、その服が凡庸で無難な証拠。せっかく買うなら着回しよりもトキメキを優先すべし。お金を出して買ったかいがあるというものです。8. 服にはパワーがある素材や縫製の悪い服ではパワーも半減。ファストファッションもいいけれど、服からパワーをもらいたいときは、自分にとって少しだけ背伸びした価格のものをチョイスして。あなたを一段上のステージに引き上げてくれます。9. 10年後の自分をイメージして服を選ぶ「まだバリバリ働いている」「のんびり余暇を楽しんでいる」……どんなところでどんな服を着ている姿が浮かびますか?未来の自分をイメージすれば、今選ぶべき服が見えてくるはず。ちなみに私は80歳になったら、ゆったりとしたワンピースを着ようと思っています。エレガントで仕事場でもなじむと思うから。今からいろいろ目星をつけて、新しい服を着た自分に出会えるのを楽しみにしています。10. 「これでいい」から、「これがいい」へ“好きな服を選べ”と言われても思い浮かばないとき。心躍る服はどれ?今着たいのはどんな服?と、真剣に考えてみます。すると、さびついていたセンサーが、徐々に機能回復!お店に入った瞬間に好きな服が目に飛び込んでくるように。11. 白は、大人を輝かせる最強カラー白は無難で簡単だと思っている人が多いけど、白は着た人をセンターに押し出す「勝負な色」でもあるんです。シャキッとしたオーラが出るから、勝負時には白い靴がおすすめ。トップスに白を選べば顔色が明るく見え、パンツに白を選べば背筋がシャキッと伸びる。大人世代を輝かせる色なのです。12. 今しか着られないと思って“攻め”の服を私は「来年は着られないだろう」と、毎年自分的に“攻めてる服”を着るようにしています。ショートパンツもノースリーブも今年が最後と思いつつ、実際は20年くらい着てますが(笑)。現在の自分を思い切り輝かせる服を選んで楽しんで。お話を伺ったのは「西ゆり子」さん●テレビ番組におけるスタイリストの草分け的存在で、現在もドラマスタイリストとして活躍するほか、バラエティー・歌番組・CMとジャンルを問わずに活動。個人向けに、理論と実践で「着る力」を学べるスタイリングレッスンも展開。<取材・文/樫野早苗>
2022年04月26日呪術の専門家は「実は怖いものじゃありません」と話す『呪い』。本来は切実な願いを叶える最後の手段なのだが、最近では相手を呪う理由にもネット社会の『闇』が垣間見えるという。写真はイメージです恋愛成就など前向きな“呪い”もある『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載中の芥見下々さんの人気漫画『呪術廻戦』。電子版を含むコミックスの発行はシリーズ累計6500万部を突破、劇場版アニメ『呪術廻戦0』も好評で、興行収入は130億円を突破するなど大ヒットを記録している。「以前は30代以降の方の相談が中心だったのですが、作品の影響なのか20代の依頼や呪いに関する問い合わせが2、3年ほど前から増えているんです」そう話すのは日本呪術協会の如月純一郎さん。同協会は50年以上の歴史がある『呪術師』の集団だ。現在は全国で20名ほどの呪術師が所属する。呪術は縄文時代より存在しており、平安時代以降、陰陽師や修験道の世界で確立されていった。有名なのが飛鳥時代の呪術者『役小角』や平安時代の陰陽師『安倍晴明』。『呪術師』は現実にも存在しているのだ。「かつては国の専属の『呪術師』たちが国難を防ぎ、政や物事の吉凶を占ったり、疫病を鎮めるために術を使っていました。協会の会員も含め、現在ではその役割を担う多くが僧侶や神職についている人です。通常の寺社仏閣で行う祈祷とは別で、そこでは祈れない願いを成就させるために呪術を用いるんです」(如月さん、以下同)一般的な寺社仏閣ではできない祈祷、それが『呪術』で、俗にいう『呪い』だ。「日本は多神教の国。八百万のたくさんの神様がいらっしゃいます。参拝する寺社仏閣にもそれぞれ仏様や神様がいますが、かつて神様がひとりで大勢のお願いを聞き、それを叶えるのは大変ではないか、という考え方がありました。それが呪術の始まりです」呪術とは願いを叶えやすくするために複数の神様に同時に託す術をいう。「漫画や映画などの影響で悪いやつを懲らしめたり、憎い相手に恨みを込めるなどの怖い印象が独り歩きしています。ですが、実際は違います。呪いはよいこともお願いできるんです」恋愛成就や病気を治したり、就職や結婚など、切なる願いを叶えるために祈祷するのも呪いのひとつ。「縁切りがイメージする呪いといちばん近いでしょう。悪縁を切る、という意味には人に限らず、病気、災いなど自分と誰かの縁や悪い事象を切ることでもあるんです。ただ、例えば夫と不倫相手の仲を切ってほしい、と願うように他人と他人の縁を切りたい願いや相手を懲らしめたい願いの場合、神社やお寺の神様はなかなか聞いてくださらないこともあります。そこで呪いでは自然界にいる神様に願い、その神様が“その人のためになるなら”と引き受けてくれるんです」呪い=怖い、という印象が広まったのは江戸時代といわれている。中でもインパクトが強かった呪いが藁人形を用いた丑の刻参りだった。丑の刻参りとは憎む相手に厄災が生じることを願って藁人形に呪いをかける儀式。丑の刻は午前1時~3時のことで、この時間は『鬼の方位』。白装束姿で顔におしろい、口には紅をひき、頭には鉄輪にろうそくをともし、鉄下駄を履き首から鏡を下げる。人に見られぬように呪いの言葉を述べながら人形に呪いの五寸釘を打ち付ける。これを7日間続けると呪いが成就すると伝えられている。「米はかねて、尊いものとされてきました。残った藁も同様に尊いものとして考えられ、それで人の形を作ることで人の魂が宿ると考えられ、藁人形が生まれたんです」特に江戸時代、当時の農民たちは地主ら権力者への不満や恨みを込めて藁人形を作り、儀式を行ったという。「丑の刻参りを行う人は多く、役人たちもなかなか取り締まれなかった。丑の刻参りをやめさせるため、呪いにまつわる怖い内容を広めたのが原点だそう。それが気に入らない相手を攻撃する道具、怖い、という印象だけが現代まで残っているんです」同協会では40年ほど前から藁人形の通信販売も行う。「依頼者の代行で丑の刻参りをしていますが、実際に自分でも丑の刻参りをしたい、という人もいます」SNSの普及で安易に呪いに頼る人が急増藁人形を買い求めるリピーターもいて、半年に1回のペースで購入する人も。「セットで1万円ですが、藁人形のほか、内容はその人のお願いの内容によって変えています。どんなお願いをしたいのか、相談しながら決めさせてもらいます。かつては自分で呪いの言葉を唱えながら藁人形を作りました。人形には魂が宿りますから、作る工程が大事です」呪いの成就には個人差があるという。「大切なのは気持ち。丑の刻参りは作法もありますが、本当の作法どおりではとてもお参りはできません。どんなに難しくてもやる、という願いかどうかが問われているんです。最低限できることをし、願いへの強い気持ちがある人だけ臨んでください、というのが呪いです」そのため、丑の刻参りは神社に行かなくても自宅でリモートでしても問題はないそう。「作法を間違えると怖い目に遭うと思っている方も多いと聞きますが、それはありません。人を助けてくれるのが神様。失礼はダメですが一生懸命祈る人に対して、作法で怒るような心の狭さは持たないんですよ」これまでは顔見知りからされて困っていることの最後の解決手段とし、追い詰められた人が駆け込んでくることが多かった。最近ではネット社会によるものが目立ち、如月さんら呪術師たちも困惑する事態が増えている。「この子が嫌いだから、とかSNS上で見たこともない人を呪ってほしいとか、そんな呪いの依頼が後を絶ちません。顔が見えない相手でも、悪意や気に入らないことがあったら安易に呪いに頼ろうとしている人が増えていると思います。特に若い人は呪いをゲームのように簡単に考えている人が多い印象です」中には一方的にメールで呪い代行を依頼してくるケースも増えている。さらにはネット上で誹謗中傷を受けている被害者からの相談も相次いでいる。「特定されないことをいいことにネット上で誹謗中傷を繰り返す人もいますよね。本来は名前や顔写真などが呪いの儀式には必要なのですが誹謗中傷を繰り返す、相手のハンドルネームやアドレスだけでお参りすることもあります」如月さんは呪いの依頼を通し、ネットの世界には特に悪意があふれていることを実感していると警鐘を鳴らす。同協会では呪いの代行依頼や藁人形購入希望者からの問い合わせがあると必ずなぜ呪いを行うのか、話をする。「もう30年、40年の付き合いになる人もたくさんいます。相談内容によっては呪い代行を断ったり、藁人形の販売をしないこともあります。呪いの前に自分が変わることも必要です。どんなに頑張ってもできないことを最後にお願いするのが呪いです」お話を聞いたのは日本呪術協会(www.noroi.net)50年以上の歴史がある呪術師の集団。会員は全国におり、現在は20名ほど。藁人形の販売や丑の刻参り、呪いの代行のほか各種祈祷や相談などにも応じてくれる。
2022年04月10日『月曜日のたわわ』1巻の表紙(Amazonより)日経新聞に掲載されたコミックの全面広告『月曜日のたわわ』については、SNSを中心に多くの批判的意見が出され、またその批判に対する反論という形でも多くの投稿がなされています。『月曜日のたわわ』について繰り広げられる論争直接的な裸体表現はないものの、未成年を含む女性に対して間接的に性的な視線を向けるという作品のコンセプトをめぐってのもので、ここ数年のSNSの論争で繰り返されてきたテーマのひとつと言っていいかもしれません。フィクション表現に対して、プロの批評家だけではなく、アマチュアを含めた多くの人が自分の意見を述べられるようになったことは、社会にとって良いことだと思います。フィクション表現は多くの場合、書き手と読者の欲望を含んでいます。その欲望に対して、「その欲望は自分のものではない」「その欲望は自分を傷つける」と表明することがある意味では他者からの批評、批判になります。しかしそれは、もともとの表現に対して事前に基準を設け、人々の目に見えなくさせる規制や禁止とはまた違います。もちろん現在も社会にはゾーニングが存在し、新聞広告に対しても基準があります。しかし今回の日経新聞に掲載された『月曜日のたわわ』に関してはその基準をクリアした上で掲載されています。批判の中にはあくまで純然たる批判であり、掲載の停止は求めないという意見もあるでしょう。しかし一部は、「さらなる厳しい『価値観のアップデートされた』基準を設け、こうした作品の広告は今後掲載しないようにしよう」という意見もあるように思えます。しかしそうした、「新しい厳格な基準」には、未成年の性について描いた多くの作品が該当してしまうかもしれません。今回の広告については、掲載される広告の絵そのものには問題が少なく、作品の内容そのものに問題があるとする声が多く聞かれます。しかし、フィクション作品の広告に対して、作品の内容にまで踏み込んだ厳しい基準を適用した場合には、例えば『新世紀エヴァンゲリオン』の旧劇場版のいくつかのシーンや、高校生と教師の恋愛をテーマにした過去の無数の作品が該当してしまい、新聞広告が打てないということが起きかねません。あるいは、法律的には完全に逸脱した不良少年たちをヒロイックに描いた古今東西の作品たちの広告が掲載不可になるかもしれません。昔からフィクションにしばしば登場する日本人好みの「優しく人情があり、頼りになるヤクザ」もまた、「暴力団への厳しい対応が必要だ」という理由で『アップデートされた、新しく厳しい基準』に該当するかもしれません。そうした名作たちとは作品の内容レベルが違うのだ、という声もあるでしょう。しかし「内容を吟味して広告の掲載可否を判断する」となった場合、「その作品が名作であるかどうか、文脈によって描かれた作品であるか」を新聞社がすべてチェックした上で判断することになります。外部の審査機関を設けるにせよ、どれほど優れた人材を登用しても、それは極めて少数の読み手による「判断」が、作品の広告という社会全体に及ぶ影響に決定権を握ることになります。仮にそこに利権や権力の介入がなかったとしても、少数の判断に無数の表現の門番を委ねることが良い効果をもたらすとはあまり思えません。歪(ゆが)みを監視する人間の目が歪んでいないとは限らない、あるいは歪んでいない目を持つ人間などいないかもしれないからです。歪んだ表現、歪んだ価値観で描かれた作品に対して必要なことは「この作品は歪んでいる」という批評であり、「このような形で歪んだ作品は人々の目に触れさせない」という事前の規制、禁止ではないように思えます。表現し、そして他者から批評されることでしか、人間は自分の目の歪みに気がつくことができないからです。そして、批判されることの多い少年雑誌の性描写のあるコミックの中にも、無意識のうちにそうした他者の価値観は影響を与えます。『鬼滅の刃』の映画が公開され、歴史を塗り替えるヒットになる前、作品に登場する女性キャラクター、甘露寺蜜璃の扱いが性的でひどい、胸を強調されているという批判がツイッターで多く共有されたことがありました。映画がヒットするにつれてそうした批判の声は小さくなり、『鬼滅の刃』のフェミニズム的側面に言及する声が大きくなりました。前者が間違っていて、後者が正しいのではありません。ヒットしたから意見を変えたのだろう、という揶揄(やゆ)でもありません。『鬼滅の刃』に対する否定も肯定もそれぞれの個人の感情の必然に根ざした人間の声であり、フィクションとはその否定と肯定が出会い、対話する開かれた場所であるべきなのです。良い作品と悪い作品があらかじめ存在するのではなく、作品は良い面と悪い面を持つ多面体であり、それらを丸ごと広告規制することは、良いとされる作品の悪い面、悪いとされる作品の良い面に出会う機会を狭める結果になり得るからです。欲望は誰のどのような欲望であれ、欲望の持ち主を「元気にする」面と、別の誰かを「傷つける」暗い面を持っています。必要なのはそうした欲望に対する開かれた議論であるように思います。映画『ダークナイトライジング』が公開された時、コロラド州の映画館では銃の乱射事件が発生し、多くの死傷者が出ました。事件と、前作『ダークナイト』も含めた映画との関係は不明です。しかし、その後もアメリカのヒーロー映画は悪の描写を自主規制するのではなく、社会から孤立した悪の問題に向き合い続けているように思えます。村上春樹の小説『1Q84』では、ふかえりと呼ばれる17歳の少女が登場し、主人公の幻想の中で性的なシーンが描かれます。世界の村上春樹が書いて各国の書店でも売られているのだからいいのだ、ということではなく、そうした村上春樹の少女幻想に対する厳しい批評も含めて、社会はフィクション作品に広く開かれているべきであり、新聞にはその広告が掲載され、そして掲載された作品には多くの視点からの自由な批判がされるべきであると考えます。歪んだ欲望に必要なことは広く開かれた場所で他者の視線と声に出会うことであり、禁止と規制で欲望を暗く狭い場所に押し込めることは、歪んだ欲望をさらに歪めるからです。PROFILE●CDB(シー・ディービー)●Twitterを中心に好きな映画や人物について書いている。『文春オンライン』『Real Sound』『FRIDAYデジタル』などで芸能時評を執筆。著書『線上に架ける橋CDBのオンライン芸能時評 2019-2021』(論創社)
2022年04月08日アニメ『月曜日のたわわ2』(公式サイトより)「不安を吹き飛ばし、元気になってもらうために全面広告を出しました」『月曜日のたわわ』大炎上してるワケ漫画『月曜日のたわわ』が大炎上している。ことの発端は、4月4日、日本経済新聞に掲載された同漫画の単行本発売をPRする全面広告だ。その広告というのも、『月曜日のたわわ』のキャラクターである女子高生「アイちゃん」が横向きに、「今週も、素敵な一週間になりますように。」と微笑んでいるというもの。あくまで、4月4日に発売される単行本4巻の広告であることは間違いない。では、『月曜日のたわわ』とはどんな作品なのか。漫画誌編集者によると、「2015年に漫画家の比村奇石(ひむら・きせき)さんがTwitterにアップした1枚のイラストからスタートしたものです。『月曜朝の社畜諸兄にたわわをお届けします』と題されたイラストはツインテールの美少女の水着姿で、リプライには“全てはここから始まった”などとまるで聖地巡礼のようなコメントもあります。当初はイラストの投稿だったものが、人気を集め2020年に『週刊ヤングマガジン』にてストーリーを再構築され、漫画として連載されるようになりました」比村氏の投稿イラストに描かれている女性のほとんどはバストが強調されている。アニメ『月曜日のたわわ2』公式サイトによると、《「月曜日のたわわ」とは、たわわな美少女たちにドキマギさせられる爽やか日常ラブコメディ》とされていて、“たわわ”=バストを指していると言えるだろう。そんな『月曜日のたわわ』が全面広告に出されると、瞬く間に炎上。「不安と恐怖しかない、きもい、嫌がらせだ取り下げろ」「どんな内容か見に行ったら普通にエロマンガって感じだし、電車の週刊誌のエロ中吊り共々消えてほしいな」嫌悪感をあらわにするコメントが並ぶことになった。さらにはこれらのコメントへの反論も出てきて、『月曜日のたわわ』論争は激化していく。「日本で最大の性的消費は“ジャニーズJr”だと思うのは私だけ?“裸の少年”はOKで『月曜日のたわわ』はNGって、男女差別だよね」「広告に起用した意図が悪いよたわわは悪くない」女子高生の胸を強調したイラストが悪い、広告を出した新聞社が悪い、フェミニストが騒ぎすぎだ、作品は悪くない……さまざまな意見が飛び交い燃え広がっていく。広告代理店関係者はこう話す。「漫画の版元はお堅い日経新聞であえてこのような全面広告を出すんですから、“炎上”狙いもあったと思います。でもここまでいろんな視点の意見が出て、盛り上がるとは予想していなかったはず」元気になったのは、漫画の版元である出版社ということなのかもしれない。
2022年04月08日(c)諫山創・講談社/「進撃の巨人」TheFinalSeason製作委員会「世界各国で人気がある『進撃の巨人』は、SNSで世界中からコメントが寄せられています。ロシア、ウクライナに例えている人も多く、“子どもに戦争を学ばせるなら進撃を読ませろ”という海外からの投稿には1万いいねがついています」(アニメ制作会社スタッフ)昨年4月に『別冊少年マガジン』で11年半におよぶ連載を終えた『進撃の巨人』だが、テレビアニメはファイナルシーズンパート2に突入し、佳境を迎えている。巨人対人間の戦いから物語は複雑に絡み合い、おのおのの正義が描かれていく進撃世界。主人公・エレンが始めた物語はどのような終幕を迎えるのか。最終回の放送日は未定だが、先駆けて“進撃ファン”1000人を対象に好きなセリフを徹底調査。上位10セリフを紹介。今からでも遅くない、進撃の沼へハマってみませんか?【進撃の巨人】心に響く名セリフランキングTOP10第10位「お前らができるだけ苦しんで死ぬように努力するよ……」(53票)仲間だと思っていたライナー・ブラウン(鎧の巨人)、ベルトルト・フーバー(超大型巨人)に向かってエレンが言い放ったセリフ。(11巻第46話「開口」エレン・イェーガー)第9位「仕方無いでしょ?」「世界は残酷なんだから」(56票)女型の巨人の正体が仲間のアニ・レオンハートと知ったエレンたち。ミカサとアルミンがアニを攻撃しようとするところにエレンが「何でお前らは戦えるんだよ」と問い、ミカサが答えた。(8巻第32話「慈悲」ミカサ・アッカーマン)第8位「森から出るんだ」(59票)パラディ島の少女・カヤとマーレの戦士候補生の少女・ガビ。かつては互いを悪魔だと思っていたが、それは間違いだったことに気づく。「私は何人も殺した。褒めてもらうために」と自分を責めるガビ。そんな彼女にマーレの捕虜で調査兵団のサシャに好意を持ってしまったニコロが言う。「みんなの心に悪魔がいるから世界はこうなっちまったんだ」と。「どうすればいいの?」と問いかけたガビにニコロが答える。(31巻第124話「氷解」ニコロ)第7位「だからこの子はもう偉いんです」「この世界に生まれて来てくれたんだから」(79票)エレンの母・カルラに好意を寄せていたキースだが、グリシャ(エレンの父)の妻になってしまった。カルラに「凡人」と嫌みを言ったキースに対して、カルラは幼いエレンを抱きながら言う。「特別じゃなきゃいけないんですか?」(18巻第71話「傍観者」カルラ・イェーガー)第6位「…なぁ? 向こうにいる敵…全部殺せば……オレ達自由になれるのか?」(81票)調査兵団のエレンたちは壁の外に出て初めて「海」を見る。はしゃぐアルミンたちを尻目にエレンは問いかける。(22巻第90話「壁の向こうへ」エレン・イェーガー)第5位「100年壁が壊されなかったからといって今日壊されない保証なんかどこにもないのに……」(89票)壁の中の世界にいることで100年平和だったパラディ島の人々。壁を巨人に壊される前の平和な世界で主人公のエレンとミカサの幼なじみ2人と話しているときにアルミンが放ったセリフ。実際にこの直後、大型巨人によって壁は破壊され、人類は鳥かごの中にいた屈辱を思い出す。(1巻第1話「二千年後の君へ」アルミン・アルレルト)第4位「それはわからない」「進み続けた者にしか…わからない」(92票)23巻から突然物語は敵国、マーレ編に変わり、主人公たちが25巻まで登場しない展開に。謎の男、クルーガーがマーレの戦士候補生に戦場に行く人間の気持ちを話した言葉。(24話第97話「手から手へ」クルーガー)第3位「みんな何かに酔っ払ってねぇとやってらんなかったんだな……」(127票)調査兵団団長のリヴァイ・アッカーマンの叔父、ケニーが死ぬ間際にリヴァイに言う。「酒だったり…女だったり…神様だったりもする。一族…王様…夢…子供…力…」から続けてのこの言葉にしびれた読者は多い。(17巻第69話「友人」ケニー・アッカーマン)第2位「まだ…ちゃんと…話し合ってないじゃないかぁあああ」(134票)いち早くライナーやベルトルトの正体に感づいたマルコ。ライナーたちは発覚を恐れてマルコを見殺しにする。死に際にマルコが泣きながら放ったひと言。戦いの前にまず対話を望むマルコの言葉に胸を打たれた人は多い。(19巻第77話「彼らが見た世界」マルコ・ボット)第1位「突然無差別に殺されることがどれほど理不尽なことか知ってるはずだろ!?」(142票)イェーガー派に従わない意思を示したオニャンコポンが処刑されそうになる前に放ったひと言。(第126話「矜持」オニャンコポン)『進撃の巨人』(’09年~’21年)累計発行部数が世界で1億部を突破した諫山創の人気漫画(全34巻)。あらすじ巨人がすべてを支配する世界で、巨人に母親と故郷を奪われた主人公・エレン・イェーガーが、幼なじみのミカサ・アッカーマン、アルミン・アルレルト、“人類最強の兵士”リヴァイ・アッカーマンといった仲間たちとともに、“自由”を求め、巨人を相手に絶望的な戦いに挑む姿が描かれている。テレビアニメ『進撃の巨人』The Final Season Part2(NHK総合)毎週日曜24時5分から<(c)諫山創/講談社>
2022年04月04日“ホリエモン”こと堀江貴文、ローランド近年、男性の美容意識が変わってきている。1990年代までには確実にあった「美容は女性だけがするもの」という風潮から打って変わり、美容整形を行う男性が増えているのだ。なぜだろう?男性専用の総合美容医療「ゴリラクリニック」総院長の稲見文彦先生に伺った。「実は、以前から外見を気にする男性はいたんですね。ただ、女性患者が圧倒的に多い美容クリニックへ男性が行くのはかなり勇気がいりましたし、医療従事者の側にも『下半身系の悩みなのかな?』『包茎手術を希望されているのかな?』と男性患者を色眼鏡で見てしまう状況がありました。つまり、男性が意識を持っていたとしても受け皿がなかったんです。そこに当院のようなメンズ専門のクリニックが2014年に生まれ、さらにジェンダーフリーの考えを持つ人たちが増えました。旧来の“男らしさ”のような固定観念にとらわれず、美容に前向きな人が増えたのだと思います」(稲見先生)ちなみに、ゴリラクリニックの提携院でもある美容外科「東京イセアクリニック」内での“ニーズが高い美容整形トップ3”は、男女ともに1位が「目元」で2位が「鼻」、3位が「輪郭(フェイスライン)」だそう。男女の違いを挙げるとすれば、女性は「きれいになりたい」という意識が強いが、男性は利便性も重視している点だ。「実業家の堀江貴文さんは、収監されていた際にアンダーヘアの脱毛を考えたと伺いました。『いくら掃除しても床に落ちている陰毛がなくならない』という思いが、その理由だそうです。それって他人からの見た目うんぬんではなく、『掃除する手間を省きたい』という利便性を重視したからこそですよね。見た目で考えれば、『成人に陰毛がないって恥ずかしくない?』となりそうですが、そこを『だって、ないほうが蒸れないし、毛も落ちないじゃない』と考える男性は最近多いんです」(稲見先生)海外赴任を機に脱毛するビジネスマン下着をつけたときの美しさを想定してアンダーヘア(VIO)脱毛をする女性との性差は、このへんにあるようだ。利便性といえば、ビジネスパーソンが仕事のために施術を受けるケースも増えている。「海外赴任をする直前に、『海外には温水洗浄便座がないから肛門まわりを脱毛したい』と来院するビジネスマンの方もいらっしゃいます。普段はその部分が見られるわけでもないし、やはり利便性を重視されていますよね。あと、コロナ禍にオンラインでミーティングする機会が増え、そこでまじまじと自分の顔を見たことで『俺の顔はこんなにたるんでいたんだ』と認識した40~50代のミドル世代の方が“オンライン映え”を気にし、来院されるケースも増えています」(稲見先生)美容クリニックを利用するのは決して20代の若者とは限らないのだ。例えば、ある35歳の男性は朝にヒゲを剃っても夕方には青ヒゲが伸びてしまう体質に悩み、ヒゲの濃さを長年のコンプレックスにしていたという。そしてある日、娘さんが描いた“家族の似顔絵”を見ると、自分の口まわりに青ヒゲが描かれていたことに衝撃を受け、落胆。クリニックでのヒゲ脱毛を決意したそうだ。「誤解のないように言っておくと、別にヒゲはあってもいいんです。ただ、伸びるのが早い方もいますし、濃い方はそもそも剃るのが大変なので肌もあれます。ならば、いっそのこと脱毛すればその負担はかなり減るし、ヒゲ剃りに使う時間も節約できます。清潔感や身だしなみといったことだけでなく、日々の利便性や時間短縮といった面からもいいことずくめということで、『脱毛』は男性の間でいまや一般化しつつあります」(稲見先生)美容整形を受けて「心が楽になる」利便性でいえば、ワキガや多汗症による体臭を気にしてクリニックを訪れる人も多い。「ワキガの方が施術を受けると確実にニオイが減り、生活は楽になります。あと、実際にはニオイがあまりしないのに、必要以上に気にして来院される方も多くいらっしゃいます。そういう方の場合、保険診療だと『あなたはワキガじゃないから手術をする必要はありません』と帰されてしまうことが多く、気持ちの部分までは向き合ってもらえないんですね。ただ、われわれのような自由診療だと、『そこまで強いニオイはしないし、ワキガじゃないかもしれないけど、そんなに気にされているなら治療をやってみますか?』と応えてあげられるんです。そうすると、ニオイはもともと強くなかったので治療効果はそこまでではないですが、患者さんはすごく満足されるんですね。ただ、自由診療で大事なのは何でもかんでも施術するのではなく、『治療をやりすぎるとこうなる可能性もありますよ』と、きちんと患者さんにお伝えすることです」(稲見先生)満足の理由は「美容クリニックの先生に太鼓判を押してもらったから、俺はもう大丈夫」と、心が楽になったからである。気持ちがアガると人は自己肯定感を保つことができる。脱毛やAGA、医療痩身の施術を受ければ、男性だって気持ちはアガる。体重が減って身体が軽くなると「じゃあ、運動しよう」という気になるし、やせて髪が増えればおしゃれはもっと楽しくなる。「ただ単に髪が増えたり体重が減るだけじゃない、プラスアルファが非常に大きいんです。その取っ掛かりをつくってあげることは非常に重要で、自信も取り戻せます」(稲見先生)美容整形を希望する男性は成人だけでなく、10代の若年層にも増えている。「東京イセアクリニック」形成外科医の鈴木知佳先生に伺った。「特に10代に人気の施術は大掛かりなものより、メスを使わず顔の一部を変えられるような『プチ整形』と呼ばれていた種類のものが多いです。代表的なのは、埋没法などの二重術、ヒアルロン酸注入による涙袋形成、小顔・輪郭の治療です。幼少期より悩み続けたコンプレックスから解放され、自分らしさを取り戻せるのであれば、美容整形はよいことだと思います。しかしながら未成年の場合、多感な時期で自分の意志が定まっていない方も多いです。カウンセリングでしっかりとお話をしたうえで適応があるかどうか、親御さんの意見も含めて判断することが大切だと思います」(鈴木先生)親が子どもに美容整形を勧める実は、親が子どもに美容整形をすすめることも少なくないらしい。「『悩んでいたから二重整形を提案した』と二重の施術を、『夏になると息子のニオイが気になった』とワキガの手術を、『ニキビが治りにくく、保険診療の皮膚科に行っても治らない』と美容皮膚科の治療を……というように、悩みを抱えたお子さまと背中を押してくれた親御さんとが親子で来院されるケースも多いです。親御さん世代も昨今のSNSに触れることで美容施術のハードルは低くなっている印象です」(鈴木先生)幅広い世代にわたり、男性の美容意識は変わっているようだ。とはいえ、「クリニックに行くのは、どうも……」と腰が引ける人もいるだろう。そんな人たちのために、家で美容のためにできることは何かないか稲見先生に伺ってみた。「まずはスキンケアです。特に30~40代の男性は1日1回水だけの洗顔ですます方が多いですが、それでは足りません。洗顔料を使って洗うこと。あと、男性は洗うときにゴシゴシしすぎです。1回洗っただけだと『まだベタベタしてる』と満足できず、もう1回洗って『やっとツルツルになった』と喜ぶ方が多いですが、それってツルツルではなくカサカサなんですね。あと、洗いっぱなしもよくない。多くの男性は化粧水やクリームを使う習慣がないですが、例えば自転車のチェーンって汚れを落としただけだと錆びてしまうので、そうならないために油を差しますよね?それと一緒なんです」(稲見先生)「何もしない」が男らしさの時代は、もう終わった!取材・文/寺西ジャジューカ
2022年04月02日上から時計回りに『食べログ』『ぐるなび』『ホットペッパーグルメ』のグルメサイト「事実を書いただけなのに口コミが削除されてしまうのは、正直納得がいかない。飲食店に有利な口コミだけが残るとしたら、今後はもうグルメサイトを信用できません」強い口調で憤りを漏らすのは、都内在住の田崎洋子さん(30代・仮名)。昨年のクリスマスに起こった悲しい出来事を口コミとしてグルメサイトに投稿したところ、投稿が一方的に消されてしまったのだという。彼女が投稿したのは、次のような内容だ。『数週間前からクリスマスディナーのコースを予約していました。当日、彼氏とふたりで楽しみにしながらお店に向かいましたが、席に案内されて10分待っても20分待ってもドリンクの注文を聞きに来てくれませんでした。そのまま1時間が経過しても、結局何も出てこないまま……さすがにそれ以上は待てず、何も口にしないままお店を出ることにしました。年に1回の特別な日のディナーをこのお店に任せたのは失敗でした』そのお店はグルメサイトでは評価が高く、田崎さんもそれを鵜呑みにして予約をしたという。しかし、この日の店内ではほかの席の客からもクレームが飛び交っているような状況で、ピリピリとした雰囲気だったという。お店へクレームを伝えたいという気持ちもあったが、ほかの人が同様の悲しい思いをしないですむように、情報のひとつとして上記の口コミを投稿したと田崎さんは語る。「最初に投稿したのは『食べログ』でした。すると投稿から2日ほどたったあとに“口コミガイドラインに該当する内容となっており、勝手ながら下書き状態へ変更させていただきました。現状でのご投稿はお控えいただけますでしょうか”というメールが届き、口コミは非掲載の状態になりました。具体的には“実際にお食事された内容を具体的に記述してください”というガイドラインに触れるらしく、たしかに食事を口にしていない私の口コミは不適切だったのだなと納得しました」各サイトの“ガイドライン”にばらつき各グルメサイトの対応はどうなのか。そのお店を予約した『一休.comレストラン』と普段使っている『Retty』、そしてグーグルマップの店舗口コミ欄にそれぞれ食べログと同じ内容を投稿したところ、Rettyでは『ガイドラインに反する』という理由で削除された一方、ほかのふたつは問題なく掲載されたままだった。「お店にとってマイナスの情報でも、利用者がお店を選ぶうえでは重要です。サイト上で評価がいいお店を予約しても、その情報が偏ったものだとしたら……今後そういうグルメサイトは使いにくいなと思いますね」(田崎さん)ネット上では田崎さんと似たような体験が散見される。そこで、メディア内での口コミの削除について、大手グルメサイトである『食べログ』『ホットペッパーグルメ』『一休.comレストラン』『Retty』『ぐるなび』を運営する5社にアンケート取材を行った。ぐるなびは「トリップアドバイザー社との連携により、一部の店舗ページで口コミ情報が掲載されていますが、独自の口コミ投稿サービスとしては扱っていないため、いただいたご質問にはお答えしかねます」と回答。 Rettyからは期日までに回答はなかった。そのほかの3社についてはいずれも、「口コミの掲載についてはガイドラインや利用規約に沿って運用しており、ガイドインに抵触する内容については必要に応じて対策をする可能性がある」という回答だった。一方、その審査の具体的な内容やプロセスについては、各社非公表だ。「グルメサイトができた当時から“サイトが掲載店からお金を受け取っている場合、そのお店の悪い口コミは削除される”といったウワサは後を絶ちません。ただし、実際にそういった事実があるわけではなく、各社のガイドラインに沿った内容かどうかというのが、口コミの掲載可否につながる主な理由でしょうね」そう語るのは、グルメジャーナリストの東龍さん。「おいしくない」「サービスが悪い」「高すぎる」といった客観的な判断がしにくいマイナスな内容は、特にガイドラインに抵触しやすいという。評価基準が公表されない“ブラックボックス”「こういうウワサが出てしまうのは、大きく2つの原因があると考えられます。ひとつは、誰の目にもはっきりとわかる形で点数が現れること。もうひとつは、その評価のロジックが公表されず、ブラックボックスであることです。評価基準が不透明なので、その点で不審に思う人が出てしまうのは仕方ないのかもしれませんね」(東龍さん)例えば、食べログにつく星はユーザーの各評価を単純平均したものではなく、 レビューする人の影響度の高さを加味して全体の評価を決定するといった“加重平均”が行われていると公表している。ただし具体的なプロセスが公表されているわけではない。「評価プロセスの非公表はユーザー側が悪用してお店の評価をいたずらに操作できないようにするための予防策でもあります。店側だけでなくユーザーメリットも第一に考えた結果が、いまの形なのだと思いますよ」(東龍さん)特に口コミについては各社その扱いに神経を尖らせているようだ。食べログの広報によると、「たとえ食事に対する不満や批判的な内容でも自由に投稿することが可能となっています。ただし、どのような内容・表現の口コミでも投稿できるということではなく、事実関係の確認が困難な事象についての口コミがお店に悪影響を及ぼしたり、ユーザー様とのトラブルのもととなったりするのは本意ではありません。そのため、口コミガイドラインや利用規約で投稿をご遠慮いただきたい内容を定めております」という。グルメサイトを「信頼していない」が3割「グルメサイトの利用が高まるにつれて、お店側に与える影響も非常に大きなものになっています。消費者側が自由に参加してコンテンツが成り立つ口コミサイトの場合、その主観的な内容をどう扱うかは永遠の課題でもあります。ユーザー側もその利点や問題点を正しく理解して使用していくことが重要だと思いますね」(東龍さん)2021年のテーブルチェック社の調べでは「グルメサイトの信頼度」について、信頼していないという回答が3割近くにも上るという結果に。最近では、SNSやグーグルマップを見て、飲食店を探す人も多い。先述の田崎さんもいまはSNSが最も信頼できるメディアだと語っている。「ツイッターで“渋谷 居酒屋”と調べれば、情報はどんどん出てきます。マイナスの情報も、このメニューがおいしいというプラスの情報もあるので、その情報をもとに店名をGoogleで検索し、さらにはグルメサイトでの評価も見て、最終的な判断材料にしていますね」(田崎さん)自分に合ったお店の探し方という点については、東龍さんも同様の意見だという。「あらゆる情報が氾濫している一方、お店選びの選択肢も多様化しています。圧倒的な情報量と掲載店舗数を誇る食べログ、厳選したお店のみを掲載してサイト経由で予約した人のみが口コミ評価もできる一休、実名での口コミにより成り立つRettyなど、グルメサイトだけを見てもその個性はさまざま。複数の意見を比較して、なるべく客観的な情報を参考にしていくということが重要ですね」メディアを横断して情報を比較するのはネット社会での基本リテラシー。店選びにおいても決して例外ではない。取材・文/吉信 武
2022年04月02日エイプリルフール、バズりと炎上の境界線は?今年ももうすぐやってくる『エイプリルフール』。企業や有名人がSNSなどでこぞってウソを投下することで、衆目を集めるのはおなじみの光景になりつつある。昨年も、自動車メーカー・ダイハツ工業が、自社の公式ツイッターに、軽自動車『ミラ モルモット』を発売すると投稿。「低燃費」、「経済性」といった謳い文句とともに、人気アニメ『PUIPUIモルカー』を意識したかのようなモルモットそのままのカワイイ車体が話題を呼び、7万を超えるリツイート数を記録した。また、ホンダは、「スーパーカブの製造方法初公開」と題し、畑にまいたカブの鍵からスーパーカブが育っていく過程を投稿し、こちらも2万を超えるリツイート数を弾き出した。ユーザーに愛着心や好感を抱いてもらえるよう、マーケティングの一環としてエイプリルフールを利用する─。そんな企業の思惑も働いて、エイプリルフールは春の風物詩になった。海外ではエイプリルフールネタで炎上もこのような“ネタ合戦”は、国外でも変わらない。ドイツの自動車メーカー大手フォルクスワーゲンは、新型電気自動車の発売に合わせ、アメリカ法人の社名を電圧単位であるボルトに由来する『ボルツワーゲン』に名義を変更すると発表。もちろん、エイプリルフールのネタだったのだが、その発表を受けてフォルクスワーゲンの株価は5%近く上昇(!!)。すぐさま、「エイプリルフールのネタで、社名もフォルクスワーゲンのまま」と釈明したが、SNS上で大顰蹙を買い、謝罪する事態にまで追い込まれた。まさしく「蹴る馬も乗り手次第」ならぬ、エイプリルフールも使い手次第。バズるネタもあれば、炎上に発展するネタもあるわけだが、ネットの炎上事情に明るいライターで、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏は、「フォルクスワーゲンしかり、ウソかホントかわからないような中途半端なウソは炎上しやすい」と指摘する。「’17年にフィギュアスケート選手の安藤美姫さんが、自身のツイッターで“みなさん今まで応援ありがとうございました。スケートから離れようと思います。本当にありがとうございました”と引退を発表し、炎上した。後日、“ウソでした”と弁明されても、心配したり、労ったりしたファンからすると許せないでしょう」(中川さん、以下同)実は、同じ年に俳優の野村周平も、「芸能界を引退する」といったツイートを投下し、炎上している。「“実はウソ”ですまないようなエイプリルフールのネタは、フェイクニュースになってしまう」と中川さんが語るように、笑えないウソともなれば当然アレルギー反応を起こす人は増え、炎上に発展する可能性は高くなる。企業と芸能人のエイプリルフールの違い「企業のエイプリルフールは、デザインを含め手の込んだものが多く、ひと目見てウソとわかるものが多い。一方、芸能人に顕著ですが、ブログやツイッターなどテキストだけの投稿はウソだとわかりづらく、混乱を招きやすいため炎上しがち」’12年には、NHK広報の公式ツイッターが、「本日、NHKと全ての民放が合併して国営放送になった」とつぶやき炎上。’13年には、福岡県古賀市の高原伸二市議(当時)が、「宝くじが当たったので、1000万円とバス2台を市に寄付した」というウソをブログに書き込み、厳重注意されている。また、’20年には元東方神起のキム・ジェジュンが、「コロナウイルスに感染しました」とインスタに投稿。「エイプリルフールの冗談」として削除したが、韓国で国民が国政に直接要望を出す国民請願にまで非難が発展する事態になった。反面、サブウェイは『猫サンド』と題し、観賞用として猫を挟んだサンドイッチを販売(’21年)、ブラックサンダーを製造する有楽製菓は、『ブラックサンダーEats』と題し、1本(30円)から自宅へお届けするサービスを開始するといったネタを発表(’20年)。いずれも見た目にも楽しく好評を得た。「仮にテキストだけでウソをつくなら、不安にさせたり、モヤモヤさせたりしないこと。ほっこりさせるとかクスッとさせないといけない。ウイットに富んだセンスがない人はやらないほうが賢明」ここ日本において、エイプリルフールネタの先駆けは東京新聞だといわれている。’01年4月1日に東京新聞の『こちら特報部』がエイプリルフール連動広告を組み、以後、話題を集めるようになった。「’00年代中期になると、WEBメディアを中心にくだらないエイプリルフールネタが流行り、ネット民だけで盛り上がるといった時代になります。その後、’09~’10年くらいから、企業がネットでの情報発信を重要視するようになったため、エイプリルフールに参入する企業も続出し、現在の土台を形成するようになる」東日本大震災が発生した’11年は自粛するケースが目立ったが、’12年以降はツイッターをはじめSNSが浸透することで、エイプリルフールネタは一般化。先述したようにSNSを介したテキストのみのネタも増え、炎上に発展するケースが散見されるようになる。また、「企業のエイプリルフールネタを、ネットニュースが取り上げるといった風潮ができあがった。多額の宣伝費をかけずに、自社PRができるエイプリルフールは、企業としてもメリットがあります。有名人も、ブログのPV数が伸びる、ツイッターのリアクションが増えるわけですから、注目を集める絶好の機会としてとらえる。結果、ハロウィンのようなお祭り感が生まれ、現在に至っている」エイプリルフールで免罪符を得たYoutuberお祭り感覚で参入する人が増えれば、炎上する人が増えるのも納得だろう。こうした流れができあがっているだけに、中川さんは、「今年、来年はYouTube発の炎上が増えるのでは」と予測する。「岡江久美子さんがコロナウイルスによる肺炎で亡くなった際、“岡江久美子の息子”を名乗る悪質動画が多数アップされました。迷惑ユーチューバーのように、手段を選ばずに動画再生数を稼ぐ人もいる。彼らからすれば、エイプリルフールは免罪符を与えられたようなもの」実際、昨年はゲーム系ユーチューバーが、自身を有利にさせるゲーム改造行為(チート行為)をしたとされる動画を投稿し、局地的に話題になった。粗製乱造も珍しくないYouTubeから新たな爆弾が投下される可能性は否めない。「リターンが少ない」禁止を通達する企業も「東京新聞のエイプリルフール企画から’20年も経過していることを考えると、そろそろ曲がり角を迎えているのではないか」とは中川さんの弁だ。「わいわいと盛り上がるというより、シビアな目でエイプリルフールネタを見る─そんな雰囲気すら感じます。企業のエイプリルフール担当者が胃痛にならないか心配です(苦笑)。4月1日に業種関係なく、競合他社がひしめく中で、一斉にネタを投下する。そして、ツイッターでどれくらいリツイートされ、“いいね”を押されたのか見える化してしまう。場合によってはスベることもある」言われてみれば、エイプリルフールは“超”がつくほどのプレゼン大会の様相を呈している。昨今では、話題になるエイプリルフールネタはせいぜい10個ほど。ほかよりも目立たなければ埋もれてしまう─、そんな心理が働けば、多分に“燃料”を含んだネタが投稿されても不思議ではない。「かつては費用対効果に優れたエイプリルフールでしたが、今では非効率的な宣伝機会の場だと感じます。その手間や労力を、ほかの部分に注いだほうがリターンも大きいのでは。例えば、自社の商品にゆかりのある日を狙えば、競合他社とかぶらないように仕掛けることだってできますよね」’19年、アメリカのマイクロソフトは、従業員に「エイプリルフール禁止」を通達した。同社は、それまで毎年ネタを公開していたが、’16年にはグーグルがGmailのネタでやらかし、謝罪に発展。それらに鑑みて、マイクロソフトは「得るものより失うもののほうが多いことを示している」という理由からエイプリルフール撤退を決めた。「エイプリルフールだったら何をやってもいいのか、ということを見直すタイミングにある」そう中川さんが語るように、もし今年、度が過ぎるネタが話題を呼べば、エイプリルフールそのものがなくなるかも……。そんな杞憂が、「ウソでした」で終わることを願うばかりだ。なかがわ・じゅんいちろう 博報堂を退社後『TV Bros.』編集者を経て、2006年からネットニュース編集者に。近著に『炎上するバカさせるバカ』(小学館)がある。<取材・文/我妻アヅ子>
2022年04月01日癒しの塊♪マイクロブタの魅力飼いやすい!ブサかわいさハンパない!ミニブタよりもさらに小さい!マイクロブタにハマる人が増えてます。マイクロブタ 引き渡し件数の増加率日本初のマイクロブタファームを運営するmipigでは、2019年より飼育希望者に引き渡しを開始。以来、引き渡し実績は右肩上がりで急増中!近くにいれば寄ってくる人懐っこさが人気!テレビやSNSで「かわいすぎる!」と人気のマイクロブタ。ふれ合いが楽しめる「マイクロブタカフェ」にも予約が殺到している。マイクロブタは2000年代にイギリスでミニブタから品種改良されて誕生。その人気の背景を「mipig cafe」の北川さんに聞いた。「ミニブタは“ミニ”とはいえ体重100kg近くまで成長します。それに比べてマイクロブタは、成長しても18〜40kgと小柄なので、家庭でも飼いやすいんです」人気の秘密は犬や猫をしのぐ、人懐っこさ。「こちらが静かに座っていると近寄ってきてひざに乗り、安心して寝てしまう。この甘えん坊で無防備な姿に、癒されるという人も多いです」マイクロブタってこんな動物ですおしゃべりで感情表現が豊か鳴き方にもさまざまなバリエーションが!人懐っこくて甘えん坊寂しがりやで、誰かにくっついていると安心食べることや寝ることが好きごはんはいくらでも食べてしまうので注意実はこんなこともできる!■キレイ好きでトイレも早く覚えるトイレと寝床はしっかり分けたい清潔派■記憶力がよく3歳児と同等の知能レベル人を見分けてニオイで長期間記憶する■「おすわり」「お手」などを覚える芸達者!エサにつられて「スピン」や「待て」などもマイクロブタを飼う前にココが知りたい! Q&Aお金や健康、注意点など、マイクロブタを飼いたい人の疑問を解決!Q.飼い始めと、毎月のお世話にかかるお金は?A.「一般的には飼い始めるときに20万〜30万円程度、月々にはエサ代やトイレシート代など1万〜2万円程度かかります」。マイクロブタ用フードはまだ一般的に流通していないが、mipigで注文することができる※。Q.飼い始めるときの注意点は?A.「マイクロブタはほかのブタと同様『家畜』に当たるため、飼うときにはお住まいの地域の家畜保健衛生所に届け出が必要です」都内では「飼ってOK」な自治体が増えている。届け出の方法などもmipigに相談可能。Q.されると嫌がることは?A.「実は抱っこが苦手! 先祖のイノシシの時代から子どもを口にくわえて移動する習性がないので“足が浮く=食べられる”と思ってしまうのです。ひざにマイクロブタを乗せ、足を優しく腕で抱えてから抱っこすると安心してくれますよ」Q.体調が悪くなったらどうすればいい?A.「通常の動物病院では、マイクロブタを診られない可能性があるので要注意。事前に問い合わせてから病院へ行くのがおすすめです」。mipigでは、利用できる病院の情報を発信したり、日々の健康観察をサポートしたりしてくれる※。(※会員登録が必要)教えてくれた人は……mipig広報 北川史歩さん●mipigは、マイクロブタを育てるファーム事業から始まり、家族に迎え入れたい飼い主への橋渡しをする。mipig cafeは、マイクロブタが人に慣れるための「保育園」としての機能も持ち、そこから巣立ったマイクロブタを継続的にサポート。【mipig cafe 原宿店】住所:東京都渋谷区神宮前1-15-4電話番号:03-6384-5899営業時間:10:00〜21:00(ふれ合いは20:00まで)<取材・文/金指歩>
2022年03月27日キャラメルのような濃厚なクリーム状で、味や風味が特徴的なマヌカハニー異次元級の美しさを誇る、御年69歳の大地真央。朝食に関するインタビューでは「私が好きなのは、玄米パンに黒ゴマペーストとニュージーランド産のマヌカハニーをつけたものとコーヒーなど」と過去に語っている。さらに、こちらも異次元級美ボディを誇る藤原紀香はブログで「1日数回ニュージーランド産マヌカハニーを食べる。夜は胃を温めるためにマヌカハニー入りのホットドリンクを飲んで寝る。ビタミン・ミネラル・アミノ酸など栄養価が高く、美味しいので嬉しい食材」と紹介。他にも数多くの女優や歌手、アナウンサーに愛用されているマヌカハニー。ここ2年、コロナが流行りだしてから脚光を浴びているという。「天然由来で、抗菌作用のエビデンスがある食材として、コロナ感染などが心配なご時世に、健康への気づかいとして愛用している人がすごく増えているようです」と語るのは、日本はちみつマイスター協会副理事長の河村千影さんだ。抗菌、保湿、体調管理にも重宝するマヌカハニーマヌカハニーとは、ニュージーランドやオーストラリアの一部でしか棲息しないマヌカの木の花から採れたはちみつのこと。古来より先住民のマオリ族が薬の木としてマヌカの葉や幹などを利用していた。しかし、この木の花から採取されるはちみつに健康効果があると発見されたのはわずか40年前のことだ。「そもそもニュージーランドには花の蜜を吸うミツバチがいなかったのですが、西洋文化の広がりによりミツバチが持ち込まれ養蜂が始まりました。近年になってこのマヌカの木から採れる独特な舌触りと、とろみの強いはちみつを、ニュージーランドのワイカト大学が研究。高い抗菌作用を含んでいることが科学的に示され、一気に脚光を浴びたのです」(河村さん、以下同)この研究でマヌカハニーに含まれることがわかったMGO(メチルグリオキサール)は、悪玉菌だけを殺せる唯一の成分で、腸内環境を整える作用がある。「抗菌機能の高いランクのマヌカハニーは、胃潰瘍の原因菌であるピロリ菌や大腸菌、にきびの元にもなるアクネ菌などにダイレクトに効く。さらに高い保湿力も兼ね備えています」感染症治療にも効果的で、天然由来として、持病のある人が愛用しているケースもあるほどだ。アスリートも認める有効性改めてその摂取メリットが世界的に示されたのが、テニストッププレイヤーのノバク・ジョコビッチ選手による2018年に上梓した著書で、スプーン2杯のマヌカハニーを毎朝食べていることを紹介した。当時不調にあえいだジョコビッチが、自らの肉体改造に挑戦したメソッドが公開され、その中で、マヌカハニーを身体のケアアイテムのひとつとしてあげているのだ。「世界で活躍するトップアスリートが太鼓判を押したのは、幅広い層に影響を与えたと思います」さらに、はちみつのような甘いものは虫歯の原因になるイメージが強いが、このマヌカハニーはなんと口腔内への抗菌作用も高く、虫歯をも予防してくれる。「虫歯の原因菌であるミュータント菌に対しても抗菌作用があります。すぐに飲み込んでしまうのではなく、ゆっくり口の中で溶かして全体にいきわたらせてみてください」乾燥からくる口臭予防や歯周病、口内炎予防にも効果的。さらに、できてしまった口内炎にすこし塗布することで炎症を鎮静させる効果がある。「ぜひ、毎日の歯磨き後にスプーン1杯のマヌカハニーを試してみてください」自分にあったマヌカハニーの見分け方マヌカハニーを購入するならば、MGOやUMF(ユニークマヌカファクター)といったマーク表記があるものを選ぶべきだという。ニュージーランド政府の認可した検査機関を通った正規品という証だ。「UMFは、マヌカハニーだけに含まれる特殊な抗菌作用を、フェノール消毒薬の濃度に比較して抗菌力の強さを示した数値。MGOは、マヌカハニー特有の抗菌成分のメチルグリオキサールが、1kgの中に含まれる含有料を数値で表したマークになります」例えばUMF16+とあればフェノール消毒薬と同じ抗菌力が16%の含まれ、MGO550+とあれば、1kgの中に抗菌成分が550mg含まれているということだ。いずれの数値レベルでも日常生活において健康維持に役立ち、感染症や傷の治癒に効果ありといった研究結果がある。「選ぶ基準として、ピロリ菌対策や消化器系などの医療の補助食品として摂取するのであれば数値が高いものを選んでみては。普段の身体メンテナンス程度であれば、低い数値のものでも大丈夫。数値が高ければ当然お値段も高く、MGO550+といった商品は1万円以上になります。味もそれぞれのランクで変わってきますから、まずは小さいサイズで試してみることをお勧めします」先に紹介した藤原紀香さんのブログ内でも文末に「数値によって効き目も違い、今はMGO100+を愛用」とあり、体調によって使い分けている様子。腸内環境を良くしておくことはコロナなどの感染予防はもちろん、花粉症といった季節系のアレルギー対策にもよい。「年をとるにつれて胃腸の抵抗力も下がり、悪玉菌が増えやすい身体になってきます。薬やサプリではなく、天然由来の成分で負担なく体調管理ができるので安心ですね」健康と美容維持のために、毎日スプーン1杯のマヌカハニーを取り入れてみては。河村さんおすすめマヌカハニー3選【株式会社コサナ】……マヌカハニーのテイストに強いクセを感じる人もいるが、おいしくて食べやすいラインナップ。【株式会社ハニーマークスアンドカンパニー】……さまざまなフレーバーがあり選びやすい。小さなボトルでの販売も多く購入しやすい。【ポウアツマヌカハニー】……昨年日本に初上陸したブランド。パッケージもかわいく贈答品としてもおすすめ。お話を伺ったのは……一般社団法人 日本はちみつマイスター協会●正しいはちみつの食べ方や、栄養成分を損なわない使い方、はちみつを使いこなすための体験講座を開催。仕事に役立てたい人向けの資格講座を開催。そのほか雑誌・テレビ・ラジオなどのメディア出演を含め、はちみつに関する様々な情報の提供を行っている。
2022年03月24日今年で140周年を迎える上野動物園1882年3月20日に開園し、今年で140周年を迎える東京都恩賜上野動物公園。通称、上野動物園。都心にありながら、約300種3000点の動物を飼育し、日本でトップクラスの規模を誇る動物園だ。季節を問わず、家族連れやカップルでにぎわう動物園だが、あの動物たちはいくらで買いつけている?エサ代は?など知らないことも数多い。そこで、動物園の素朴なギモンを、体感型動物園・iZooの園長で『動物の値段』の著者でもある白輪剛史さんに直撃取材!ただ見ているだけではわからない動物園の裏側に迫ります。人気者パンダをめぐる上野動物園の“懐事情”上野動物園といえば、いちばん人気は、やはりパンダ。1972年に国交正常化を記念して中国から贈られた、カンカンとランランのときから園の“主役”として注目を集め続けている。昨年の6月、シャオシャオとレイレイの双子を産んだシンシン。父親のリーリーとともに、実は中国から“借りている”状態なのだ。「そのお礼として、中国の野生動物保護基金に寄付金を送っています。“寄付”という名目になっていますが、実質はレンタル料ですね(笑)」(白輪さん、以下同)上野動物園を運営する、東京動物園協会が公開している資料を見ると、その額は2頭で年間95万ドル(約1億900万円)。エサとなる竹の購入額は、’20年には約5460万円!「メインのエサは竹ですが、ほかにもとうもろこし団子や柿といった果物などいろいろ与えていますので、これ以外にもかかっています」ただ、パンダが食べ残した竹はアジアゾウのエサにも利用されていて、ほぼムダなく消費されているとか。ちなみに、動物園全体のエサ代が年間で1億5000万円ほどなので、パンダは動物園屈指の大飯喰らいということになる。また’18年には、ジャイアントパンダ飼育時の賠償責任保険として、1549万円が計上されている。これだけの掛け金だと、万が一の場合にいくら支払われるのだろう……。まあ、園の“スター”なのでそこは別格ということ!?高騰する動物の国際市場価格アップの原因はあの国!?“貸与”されているパンダ以外のお値段はどうなっているのだろう?上野動物園でいちばん高価な動物は、約3700万円でホッキョクグマやインドサイ、オカピなど。この値段について白輪さんは「安いほうですよ」と話しつつ、こう続ける。「今、ホッキョクグマを購入しようとしたら1億円超えを覚悟しないとムリです。上野動物園さんが購入したのは2012年ですが、僕がその前年に販売したときは6000万円で売りました。以前は数百万円が相場だったのですが、ここ数年で高騰してきて……。つい最近ですが、ホッキョクグマが欲しいと探したら、1億3000万円と言われました。ここまでくると買えません」価格が高騰している原因は「新興国での動物園の建造ラッシュがある」と白輪さん。「中東や旧ソ連から独立したジョージアなどで水族館や動物園のブームがきているんです。そこが潤沢な資金を持っていて買っています。その中でも特に中国の力が強いですね。圧倒的な資金力で買い占めてしまうんです。今はコロナ禍で輸入が規制されて動物の買いつけも止まっていますが、コロナ前の“中国神話”が市場にはまだあり、コロナが収まれば中国に高値で売れると見られていて、値段が高止まりしたままになっているんです。民間の動物園より公営の上野動物園さんは安く購入できるとは思いますが、それにしても激安で買えましたね。逆にそこで買っていなければ手に入れられなかったと思いますよ。今の動物の売買における国際市場で、日本の資金力では太刀打ちできません」買えないのなら増やす苦肉の策で乗り切る!?悲しいことに、世界と比べて資金力で負けている日本。新しい動物を手に入れるために“背に腹は代えられない”と、ある方法がとられているという。「動物園同士が“互助会”みたいになって、“ウチで生まれた子どもをそちらの園に”というブリーディングローンという方式をとっています」例えば、3年計画で繁殖させることを条件に動物の個体を違う動物園から借りてきて、生まれた第1子をそこの施設で引き取る。第2子を借りてきた動物園に譲渡する、というやりとりをするという。上野動物園でも’20年にはレッサーパンダを山口県周南市徳山動物園から借受し、別の個体を長野市茶臼山動物園と交換している。しかし、公開されている資料には「借受」のほかに「預かり」という文字も。このふたつ、一体何が違うのか?「借受は期間を区切って戻すという約束があります。預かりは、“余剰個体”といって、増えてしまって飼育できるキャパを超えてしまったので、そちらでお願いできませんか?という扱いですね」動物からしてみれば迷惑な話だが、あの人気動物が余剰個体のおかげで安く売買されているのだ。それは─、「ライオンです。輸入で購入するとなると1頭で250万円くらいしますが、日本で繁殖した個体であれば、50万円前後で手に入ります」動物園でも人気の動物なのに、そんなに安値とはかなり意外だ。「よく子ライオンを抱いて記念撮影とかやっていますよね。その場で必要となる子ライオンの需要があるわけです。そういった要因もあり、繁殖させていくと個体としてどんどん増えていきます。なので安く流通できるんです。言ってしまうと動物の値段は“言い値”なんです。欲しいと思って探していると高くなります。でも、待っていると、余剰になった個体が出てきて“タダでもいいよ”となる場合もある」変わりゆく時代の中で考えるこれからの動物園動物園の目的のひとつとして、種の保護や保全というものがある。増えすぎた個体を“余剰”と呼ぶことに、違和感を覚える人もいるだろう。特に最近では、動物愛護の立場から、動物を展示している動物園は虐待じゃないのか、という声も上がっている。「そういった批判的な声は確かにあります。でも僕は、動物園は必要なものだと思っています。ネットやテレビ、本などで動物の姿を知ることはできても、本当の姿は見えません。あと、自然の中で保護や保全をといっても人間が開発していく中で、動物のすむ環境がなくなってきているんです」密猟で数を減らしたり、自然開発で追いやられる動物は時おり報じられる。「例えば、かつてトラが10万頭いたのに今は1万頭になってしまいましたと。なので保護をして保全して増やしたとします。でも、どこにそのトラを放すのですか?もといた場所に人間が住んでいたら、立ち退きしてもらうんですか?そういう状況を知ってもらうためにも、動物園は必要だと思います。ゾウを見て“こんなに大きな生き物がいなくなってしまう世界は異常”と思い、そんな世界をどうにかしようと考えるきっかけになればいいですし。ただ、動物園が乱立したのは事実で、いろいろな動物がまんべんなくいる動物園は、それほど多くは必要ないと思います。ゾウならゾウ、ライオンならライオンに特化した施設のほうが、保全や保護といった部分で動物のためになるのではないでしょうか。“なんでもいる”という施設は、上野動物園さんに頑張ってもらいたいですね(笑)」<取材・文/蒔田 稔>
2022年03月19日上からBTS、下段左 イカゲーム(Netflixニュースルームより引用)、下段右 韓国の人気コスメ長年、アジアでトップを走ってきた日本が追い越されつつある。今、世界が注目するのは韓国だ。昨年、Netflixにて配信された韓国のドラマ『イカゲーム』は世界的な社会現象を巻き起こした。同配信サイトの視聴ランキングは韓国映画、ドラマが1位を独占。BTSやBLACKPINKといったアーティストたちが世界規模で活躍、日本のファンも多い。さらにはファッションやコスメ……。韓国カルチャーが日本国内を席巻する。若手は危機感を……日本エンタメとの差今年1月、俳優の菅田将暉が「(韓国映画やエンタメと日本製との)その差は何だというところを、ちゃんと僕らは悔しがらなきゃいけないんだろうと思います」と発言し、話題に。それほどにまで日本のエンタメ業界は押され、危機感を抱いている若手俳優やアーティストなども少なくない。そこで菅田が指摘する「日韓エンタメ事情の差」について韓国エンタメ事情に詳しい古家正亨さんに聞いた。「韓国エンタメが優勢な背景には、同国がこれまで培ってきた下地があったんです」まず、2003年〜’04年のドラマ『冬のソナタ』をきっかけに起きた韓流ブーム。次が’09年から’11年にかけてのKARAや少女時代ら『K-POPアイドル』たちの登場だ。彼女らの洗練されたファッションやスタイルは多くの若い女性たちを魅了した。そしてBTSらの登場。K-POPアーティストたちは若者たちの心をつかみ日本のアーティストたちよりも一歩前に躍り出たのだ。ただし、古家さんいわく、今回の流行はK-POPでも韓国ドラマでもないという。「音楽やエンタメにとどまらず、ファッションやコスメ、食べ物までトータル的に韓国の大衆文化が日本で流行っている。これはエンターテイメントを介した韓国そのものの流行です。エンターテイメントの領域を超えて韓国というブランド力が社会に浸透していることが、これまでの流行との決定的な違いです」日本のエンタメ業界と差がついた原因その流行の中心を担うのが10代~30代の若い世代だ。「これまでは韓国に対し、『反日』などのネガティブなイメージを持っていた層は少なくなかった。ですが、今の若い世代にはそうしたバイアスがまずない。純粋に自分たちが『よい』と思ったものを評価しているだけ」(古家さん、以下同)前述の菅田によるコメントのように韓国との差が如実に表れた現状には同国のアーティストやインフルエンサーらが世界から注目され、成功していることも関係している。「K-POPアイドルになりたいと韓国に行く日本人は年々増えており、理由を尋ねると“世界が近い”と答えます。日本にいて世界を目指せる術があればわざわざ韓国に渡る必要はない。でも、現状の日本から世界に進出することが難しいのです」若者たちは韓国に自らの夢の希望を見いだしているのだ。「日本にも才能のある人は山のようにいる。ですが彼らを活かすことができない業界にも問題があるんです」日本のエンタメ業界がこれまで戦略的にアジアをターゲットに展開してこなかったことも差がついた要因のひとつとして考えられるという。これまで韓国は早い段階からアーティストを育成、世界規模でイベントやライブ活動を精力的に行っていた。「このブームで韓国芸能界が将来を見据えて投資していたものを回収している状況です。日本も海外向けに積極的な戦略をとっていたら状況は変わっていたかもしれない。流行はエンタメから発信するところが大きいのですが、日本国内のカルチャーを動かす人たちに先を見据えたセンスがないのも課題でしょう」若いアーティストらは危機感を持っているのだが……。「日本のエンタメや芸能システムは’70年代から変わっておらず、上の人たちはあぐらをかいたまま。現在の国内ではチャンスも限られている。当然、優秀な人材は流出します。日本も若い世代を軸に仕掛けていかない限り、韓国を追い越せないでしょう」では今後、日本は何をしなければいけないのか─。「もっと国外に対して、積極的に動いていかないと世界から取り残されていくと思います。ただし、短期的に収益を上げようといま流行っているものに迎合する流れは問題です。日本人自身が新しい流行を作る必要があります。そのためには世界に通用する日本の資源を見極め、発信するプロデューサーが必要です」一方で面白い現象も起きているという。韓国では日本のシティポップをはじめとする音楽や地下アイドル文化に脚光が当たっているという。日本だけが韓国の影響を受けているわけではなく、互いに影響を受け合っていることも多いというのだ。反発ではなく、よいものを取り入れ、切磋琢磨することで日本から新たに生み出されるものがきっとあるはずだ。通販サイトも話題!韓国ファッション楽天のフリマアプリ「ラクマ」が昨年7月に調査した『ファッションの参考にする国』では、国内の10代~40代、60代の女性の第1位が韓国という結果だった。「韓国ファッションの魅力は安くて気軽に買えること。それに国内では見られない新鮮なデザインや色使いなどもウケています」(ファッション誌ライター)それに、同国のタレント、インフルエンサーのファッションから受ける影響も大きい。「韓国アイテムを集めたアパレルブランドの通販サイトも人気です」(同・前)ファッション同様、コスメも10代後半から20代の女性を中心に支持されている。免税品店で知られるラオックス株式会社は今年1月、アジアコスメ専門店「LAOX BEAUTY AIRPORT」の2号店を東京・吉祥寺にオープンさせた。同店では韓国、中国、タイ、台湾のアジアコスメを120ブランド1300商品そろえている。中でも韓国コスメは売り場の7割を占めているという。「特徴は低価格で商品の質がいいこと。それにパッケージも可愛い。“映える”アイテムが多いんです」(広報担当者)例えば、アイシャドー。複数色が入ったパレットタイプが人気。1000円台〜2000円で買えるのも魅力だ。韓国発祥のクッションファンデーションやティントのリップ、アイブロウは発色もよく、色落ちしにくくマスクにつきにくいものも多い。フェイスマスクなどスキンケアアイテムはリピーターも。「フェイスマスクだけで180種類をそろえています。美容液が多く含まれており、人気です」(広報担当者、以下同)とはいえ、まだ韓国コスメを使ったことがない人も多い。「試してみよう、と思ったときに手軽に購入できる価格帯なのも特徴です。現地では40代、50代の方も当然使っておりますし、娘さんと一緒にお母さんが使ってもいいかもしれません」教えてくれた人は……古家正亨さん●ラジオDJで韓国大衆文化ジャーナリスト。韓国観光名誉広報大使も務める。ラジオやTV出演の傍ら大学でも教えている。約20年以上にわたり、K-POPの魅力を紹介している
2022年03月15日モスライスバーガー『つくね』(同社撮影)日本発祥のハンバーガーチェーン、『モスバーガー』。現在、日本国内で約1250店舗、海外は9つの国と地域に約450店舗展開している。3月12日で創業50年。歴史の中でいくつもの画期的なメニューを生み出してきた。モスバーガー50周年、ライスバーガー誕生秘話まずファストフード店でおなじみの『テリヤキバーガー』。実は’73年にモスバーガーが開発、発売したもの。忘れてはならないのが’87年に発売された『モスライスバーガー』だ。看板メニューとして多くの人に愛されているライスバーガー。だが、その誕生に至るまでの過程は非常に困難を極めたという。’89年の入社後、モスライスバーガーシリーズの商品開発にも携わった経験のある株式会社モスフードサービスの寺本和男さんに聞いた。「ライスバーガー開発のきっかけは、日本全体で指摘されていた米余り問題でした」’80年代、パン食などの増加により米の消費が減っていた。そこで当時の農林水産省から外食産業の団体に対し、メニューで米を使えないかと打診があったという。創業者の櫻田慧氏も“ハンバーガーはパンで挟むのがすべてではない”との考えがあったこともあり、米を使った商品開発がスタートした。「開発メンバーは2~3人。当初、パンに挟む具材として米の利用を考えていました」(寺本さん、以下同)例えばバンズに挟むパティに米を混ぜたり、ライスコロッケを作ったり……。「米を具材にあれこれ考えたそうですが、何をやってもしっくりといかない」そんなとき、ひとつのヒントが導き出された。「名古屋の天むすでした。天むすは海老天がご飯でくるまれている。それを見た開発メンバーの1人が、“お米をパンの代わりにできないか”とひらめいたそうです」まさに発想の転換だった。「ゼロからの開発、世にないものを生み出す苦労がありました」次には新たなハードルが待っていた。米を成型して作るライスプレートの開発だ。「お世話になっていたメーカーにお願いして試行錯誤を繰り返したのですが、彼らも作ったことがない商品。苦戦したそうです」形は丸がいいのか、四角がいいのか。炊き方。米の品種など、課題は多かった。注目したのが回転ずし用に開発されていたロボット。ロボットがシャリを成型する過程から「あれなら自分たちが思い描くライスプレートができるのではないか」とひらめいたという。第1弾は『つくね』、四味一体の味にだが、問題は解決したわけではない。おいしくて、食べた人が食感も楽しめることにもこだわった。機械で丸い形を成型できても、粒を残そうとすると持ったときに崩れてしまう。反対に機械で圧力をかければ粘り気が出て、米は崩れなくなるが粒感は残らず、餅のようになってしまった。そこで当時の開発メンバーが取り組んだのは成型の仕方。複数回に分けてプレスすることで粒感を残したままのライスプレートを生み出した。さらに、ヒントになったのは「焼きおにぎり」だった。「しょうゆをつけて焼くことで表面は硬くなり、中は米粒が残せる。それで形や食感を保持できた。ようやく完成形が見えてきました」同時に具材の研究も行われていた。最初は梅やおかか、納豆といったおにぎり的な具材が候補に挙がったというが、ハンバーガーである以上ボリューム感は必要だった。議論を経て、選ばれたのは『鶏のつくね』だった。「つくねにした理由は、当時ハンバーガーに使っていたパティもヒントに、ご飯との相性や食べやすさなどをトータルで考えたときに“焼き鳥店のつくねはご飯に合うよね”との結論に。つくねを挟んだらハンバーガー的な雰囲気も出せる。ライスバーガーにしてもなじみがあるんじゃないか、とつくねに決まりました」そこにソテーしたいんげんとたまねぎを挟んだ。ライスプレート、つくね、いんげんとたまねぎ、そして和風ソース。四味一体となり、日本初のお米を使ったハンバーガー『モスライスバーガー』が誕生した。「新しいものを生み出す苦労、これは商品開発の宿命だと思います。与えられた課題は絶対にやりとげる、という思いを持ち、私たちは商品開発に携わっています。もがきながらも完成したときの喜びは普通の仕事では味わえないところがあるんじゃないかと思います」’87年の12月、モスライスバーガーつくねは全国で一斉販売された。誰もが初めて見る食べ物。珍しさもあり、店舗では売り切れが続出した。だが、販売が開始されたからといってすべてが終わったわけではなかった。「ライスプレートの品質の向上はその後も研究が続き、食感などを安定させるには相当時間がかかりました。誕生した商品はお店やお客様の声を聞き、改良と研究を繰り返します。さらに手をかければかけるほど商品は成長するんです。改善改良はずっと続きます。商品開発に終わりはないですね」寺本さんはそう言って笑う。そして新しい商品も次々に生み出されていった。「私も入社後、開発に関わりました。第2弾のきんぴらはつくねを作る過程でも具材の候補になっていました」一方の第3弾の焼肉はきんぴらに比べるとシンプルな商品。この3商品がライスバーガーの骨格となった。その後、モスライスバーガーには海老竜田、豚生姜焼き、六彩がんも……ラインナップは続いた。さらに、モスライスバーガーは特にアジアの店舗では日本以上に人気だ。「印象に残っているのは台湾のサクラエビを入れたライスプレートですね。商品開発には苦労しましたが、ものすごくおいしかった」サクラエビは素揚げをしてその香ばしさを引き立たせ、米に混ぜてライスプレートを作った。「ライスバーガーを通じてお米を手軽に食べてもらいたい。そんな思いが根底にあります。モスライスバーガーをもっと進化させていきたいと思っているので楽しみに待っていてもらいたいです」3月12日は“モスの日”!1972年3月12日、東京・板橋区成増。商店街の一角にモスバーガーは誕生した。まず実験店が稼働し始めた3月12日は“モスの日”とし、今年で半世紀の歴史を刻む。その後、同年6月に実験店からほど近い場所に、約2.8坪の1号店がオープンした。「地元に愛され、現在でも店舗は残っております。そこから店舗は全国、海外へと広がっていきました」同社では50周年に合わせてさまざまな企画も計画中だという。「1号店の成増店をリニューアルします。そして4月30日までは同店を“成増”という地名にちなんで“なりもす店”の愛称で呼びます」(同社の広報担当者、以下同)さらには創業当時のメニュー『モス・ダブルバーガー』(1990年まで販売)を期間限定で復刻販売をスタートする。同社の代表メニュー『モスバーガー』に、ミートソース、パティ、オニオン、レタスを追加、ボリューム満点のメニューだ。「私たちのモットーは地域に貢献して、おいしくて安全なものを提供しお客様に幸せな時間を過ごしてもらうかです。私たちは経営理念の『人間貢献・社会貢献』を忘れずに、次の50年に向けてこれまで以上にみなさまに愛されるモスバーガーを目指します」
2022年03月12日写真はイメージです「今は月に100万円を稼ぐ人もわりといます。去年、おととしであれば“すげー!”って言われたと思いますけど、自転車で数分の距離を配達して、配達料2000円なんてこともありますから」そう話すのは都内在住・30代の男性Aさん。「’20年以降、国内でフードデリバリーサービスが乱立し、激しいシェア争いとなっています。利用者も増え続けており、やはりコロナの影響が大きいと思いますね」(フードアナリスト)コロナ禍で利用者が増えているが、配達側の変化は。「この人、コロナかなっていう注文がやっぱり増えましたね。スポーツドリンクとレトルトのおかゆとか。体調不良のような注文ですね。コロナに関しては、受け取るときにマスクをしない人も結構いて、ちょっと抵抗がありますね」(前出・Aさん、以下同)フードデリバリーは、サービス提供会社と契約した飲食店の品を注文できるシステムだ。当然、“売っていない”ものもある。そのため……。「“お使い”を頼む人もいます。“配達料払うから、ついでにタバコも買ってきて”とか。自分はお金くれるならいいと思いますが、気分が悪い人もいるでしょうね」出前館のインセンティブ制度現在フードデリバリーで、急激に伸びているのが『出前館』だ。Aさんは『Uber Eats』なども含め複数のサービスで配達員をしている。「出前館は、昨年の11月から新規の配達員獲得のために大きなキャンペーンを打ちました。新規の配達員は1件当たりの基本報酬が30%割り増しに。報酬の面だけで見れば出前館はダントツにコスパがいいですね」出前館では、“ブースト”と呼ばれる、忙しい時間帯に設定されるインセンティブがある。下の画像にある“1・5”や“1・8”という数字がそれだ。東京都の場合、配達の報酬単価は1件715円。仮にブーストが1・8だった場合、715×1・8で1287円となる。「キャンペーンでは3倍のブーストも。出前館バブルでしたね。配達員同士で“こんなに払ったら出前館は赤字だよね”って話していました。月に100万円稼ぐ人は出前館に絞って配達していたと思います。キャンペーンは終了したので、今は若干配達員は離れているかもしれませんが」帽子を忘れた配達員がとった行動一方、報酬面でブーイングを浴びているのがUberだ。昨年報酬体系を刷新した。「以前の算出方法は、エリアごとに金額は異なりますが、距離などによって明確に金額が決まっていました。新しい方式では“ベース”という料金がまずあり、時間や距離をもとに算出されるようです。それに加えて“配達調整金額”というものができました。これは交通状況の混雑具合などから算出される料金らしいのですが、“何がこうだったから、規定のとおり、この報酬額となる”ことが明確に示されていません」Aさんの場合、以前と同程度の配達量をこなしても報酬は6〜7割に落ち込んだ。「規定が変わったことによって報酬が下がるなら、会社の事情もあるので仕方ないと思います。しかし、報酬の内訳が明示されなくなり、報酬額決定のシステムがブラックボックス化していることは問題じゃないでしょうか」自由に働けるイメージのあるフードデリバリーだが……。「出前館の注文で配達に行ったら、後でお客さんにクレームを入れられました」そう話すのは30代女性のBさん。出前館やUberで配達員の登録をしている。「出前館は配達のときに出前館の帽子をかぶらなきゃいけないのですが、それを忘れて。また普通、配達先に着いたら鞄から商品を出して、商品だけを持ってお客さんに届けるのですが、そのお客さんは庭にいて鉢合わせしてしまいました。そのときにUberの鞄を使ってたんです。それでお客さんが“出前館で頼んだのに、Uberから届いた”と思って、不審に思って会社に連絡したみたいで。自分が悪いのですが」前出のAさんは、「出前館は“他社のロゴが入った鞄は禁止”としています。最近Uberのロゴ部分を黒いテープで隠している人はそのためですね」配達員の多くは各社を掛け持ちすることも多い。「単純に掛け持ちしたほうが配達件数が増えます。会社の掛け持ちだけでなく、注文の掛け持ちも多いですよ。同じ方角の注文を同時に受けて、複数の注文を同時にこなす。デリバリーのドライバーは運転マナーが悪いといわれていて、無謀な運転をしている人も少なくない。ただ事故が多くなってしまう大きな原因の1つがこの掛け持ちができることだと思います。複数をこなすためにかなり配達を急いでしまっているからです」(Aさん、以下同)危険な運転は問題外だが、配達員が最も怖いのが事故だ。「Uberや出前館の社員ではなく、個人事業主なので、やはり補償は薄いですね。改善している部分はありますが基本は“自分で解決してね”というスタンス。一度自分も歩行者と接触して事故になったことがあるのですが、配達中ではなく自宅に帰っているときだったので、Uberからの補償はなく、自分で治療費その他を支払いました」Uberに報酬体系変更の理由、出前館にキャンペーンの収支などを問い合わせたが、期日までに回答はなかった。あなたの元に届くデリバリーフードもさまざまな背景を持って届けられている。
2022年03月11日「無印良品」元・開発担当が“全力推し”するキッチン小物とは?お気に入りのキッチングッズがあると家事効率が上がるし、料理のモチベーションもグンとアップしますよね。人気上位に挙がるのが、シンプル&機能的、ハズレなしの無印良品。多くの商品を企画開発し、ウラを知り尽くす元・社員が「買ってソンなし」と太鼓判を押すアイテムを厳選!家事の負担を軽くする「こんなものないかな、と思ったら、まず無印良品へ足を運ぶんですよ」と話すのは、無印良品で13年間、企画・デザインを手がけてきた水谷妙子さん。現在は整理収納アドバイザーとして独立しているが、今でも無印良品のものを多数愛用している。「重さ、素材、長さ、色、すべて考え尽くされて誕生したものばかりなので、やっぱり使いやすいんです。キッチングッズは特にそう。作業効率も上がるし、何年も使い続けられる丈夫さも魅力です」3人の子どもを持ち、仕事と家事とを日々こなす水谷さんにとって、調理は極力手間をかけずにすませたい。それゆえ機能性の高い無印良品のアイテムは必須だ。例えば、道具は使いやすいことはもちろん、洗いやすさも考えてチョイス。キッチン収納は片手で出し入れができ、流れるように作業が進むように配慮している。「ひとつで複数の使い方ができるものも重宝しています。おすすめはシリコーン調理スプーン。炒め物をするとき、木べらのように混ぜたり、できあがったらすくってお皿に盛ることもできる。シリコーン製なので、フライパンに残ったソースも余すところなくすくえます」そんな水谷さんがモノ選びで大切にしていることは、“選ぶ理由”を明確にしておくこと。「まず、そのモノが必要な理由や、買い替えたいと思った理由を紙に書き出してみるんです。どういう場面で使うのか、どういう点が不便だったのか、収納はどうするのかなどを明確にします。色やデザイン、ブランドを検討するのはその後。そうすれば、口コミやセールストークに惑わされなくなり、不要なものを買ってしまうという失敗もなくなります」調理器具は毎日使うからこそ、ちょっとした不具合でも小さなストレスに。積み重なれば、暮らしにくさにつながってしまう。モノを知り尽くし、モノが大好きな水谷さんが愛用するキッチンアイテムを参考に、自分なりのベストアイテムを見直してみては。お役立ちBest1“いろいろなシーンで活躍する汎用性の高さがいい”●シリコーン調理スプーン「木べらとお玉のいいとこ取りをしたもので、炒める、すくう、盛りつけるが1本ですみます」。シリコーンならではの柔らかさで、縁や底についたソースもしっかり取れる。「小さいほうはしゃもじ代わりにも使用。ご飯がくっつかないし、子どものぶんをよそうのにちょうどいい大きさです」耐熱温度の高いシリコーン素材で食洗機にも対応。長さ約26cm。490円●シリコーン調理スプーン スモール「黒なので汚れや変色が気になりにくいのもポイント」。長さ約25cm。390円お役立ちBest2“空間を仕切ることで食器がグンと出しやすい!”●アクリル仕切棚・小「デスクトップ収納として作られたアクリル仕切棚を食器棚の中へ」。空間を上下に分けることで、種類の違う食器を仕切って収納できる。「厚さがありとても丈夫なので、重い食器をのせても、しなったり、ぐらつくことはなし。透明だから、食器が隠れずに見えるのも便利です」棚の上下にモノが置け、スペースを有効活用できる。約幅26×奥行17.5×高さ10m。590円お役立ちBest3“毎日のイライラから解放されました”●ポリプロピレンメイクボックス・1/2横ハーフ「メイクボックスシリーズは小分け収納に至るところで使っていますが、水切りネットを入れるのにとっても便利」。水切りネットはくっついてきて1枚ずつ取り出すのに手間取りがちですが、ボックスに入れて、輪ゴム2本を間隔をあけてかけると、中央のすき間から片手でもスルッと取り出しやすい。細かいモノの収納に便利。約150×110×86mm。150円お役立ちBest4“ラップがつかない木製で大きさもちょうどいい”●アカシア深皿「普通に食材を盛りつけるだけでなく、わが家では冷凍ご飯の“型”として使用しています」。ちょうど1合分を取り分けることができ、円盤形なので、電子レンジで解凍するときに均一に熱が通りやすいそう。「木製のお皿はラップがくっつかず、効率よく包めるのも気に入っています」アカシア材ならではの美しい木目が特徴。約直径16×高さ3.5cm。990円お役立ちBest5“ワンアクションで分解できて清潔感あり”●分解して洗えるキッチンばさみ「肉や魚を切るときは、後片づけが楽なので、キッチンばさみだけで処理することがあり、分解できるか否かは重要です」。このはさみは刃を大きく開けば、一発で分解できるスムーズさが秀逸。「分解後はカトラリーと一緒に立てて食洗機へ。場所を取らずに洗えるのもナイス!」硬いものでも切りやすい波刃で、隅々まで洗える分解式。長さ約20cm。1490円お役立ちBest6“スルスルッと簡単に汚れ除去”●シリコーンスクレーパー「調理器具や皿にこびりついたカレーなどの油や汚れは、これでサッとぬぐってから洗います」。先端の丸みがすべての角で違うので、フライパンや鍋、お皿に加え、弁当箱や保存容器などの角があるものにもフィット。「使ったあとは食洗機にポンで、いつでも清潔です」鍋や食器・フライパンを傷つけずに汚れをすくって片づけをスピーディーに。約長さ11cm。290円お役立ちBest7“口径が狭いボトルにうってつけ”●隅まで洗えるボトル用ブラシ・大口径が狭くて、普通のボトル用ブラシでは洗いにくい場所にも便利なブラシ。「スッと入るし、先端はポリプロピレンの毛が密集していて汚れ落ちも抜群。L字になっているのも絶妙に洗いやすいです。小さめの水筒や深さのある一輪挿しを洗うときに重宝しています」洗剤や化粧品などのPET詰め替えボトルの中を洗うのに最適。290円お役立ちBest8“こげたり、先端が欠けたりしないのがいい”●シリコーン菜箸「菜箸って使っているうちに先端が変色したり、焦げたり、欠けたりしがち。でもこれは耐熱性があるのでそんな心配もないし、黒色なので変色して見た目がイマイチになることもありません」。持ち手は樹脂性で軽く、六角形の形が指に沿いやすく、しかも転がりにくい。先端部分にシリコーンゴムを使い、滑りにくい仕上げ。長さ約30cm。490円お役立ちBest9“手のひらサイズで置き場所とらず”●磁器ベージュお玉おき「レードルスタンドは場所を取りがちですが、これは場所いらず。しかも重量感があるので、大きめのお玉を立ててもグラつかないんです」。引っかけるだけで自立し、使いやすく、しゃもじや菜箸も引っかけることができる。「卓上で鍋料理をするときにも便利です」シンプルな形状で洗いやすい。約直径10.5×高さ4cm。490円お役立ちBest10“大きさや形がバラバラでもすっぽり!”●シリコーンカトラリーカバー「子どものお弁当のカトラリー入れにしているのですが、箸やスプーンなど全部すっぽり入るし、くるりと巻いてヒモでひっかけるだけなので子どもでも扱いやすいのがいい」。汚れても、食洗機に入れられるので楽チン。「歯磨きセットやメイクブラシ入れにしてもよさそうです」形の違うものも一緒に包める。約縦10.5×横9cm。490円水谷さん流 キッチン収納の極意すぐにゴチャついたり、ダブり買いをしてしまったり……。片づけられない人や、モノの管理が苦手な人は“見える化”がおすすめ。01モノを隠さない扉の中で食材を収納するボックスは、迷わず透明なタイプをセレクト。中が透けて見えるので、目当てのものへのアクセスが断然早い。派手なパッケージも当然見えるが、扉を閉めれば隠れるので問題なし。O2フタをしないフタつきのほうが、「スタッキングができる」「ごちゃごちゃを隠せる」という理由で選ぶ人が多い。けれども使用のたびにフタを開閉するのは手間だし、中身の把握がしにくくなる。頻繁に出し入れするものはフタなしが便利。残量も一目瞭然で、補充も忘れにくい。O3個室化する引き出しや棚などの大きな収納スペースは、ボックスで仕切り、アイテム別に収納。あれこれごちゃ混ぜになって埋もれて見つからない……なんて惨事もなくなり、迷うことなく目当てのモノを見つけられる。水谷さんはサイズ違いのメイクボックスを仕切りに活用。問・無印良品 銀座電話:03-3538-1311教えてくれたのは…ものとかぞく・水谷妙子さん ●整理収納アドバイザー。“家が整うと、家族も整う”というコンセプトのもと「ものとかぞく」を起業し、整理収納サービスや講座を展開。雑誌やWeb、テレビなどでも話題に。『長続きするラク家事収納術』(文友舎)など著書多数。〈取材・文/樫野早苗〉※価格はすべて税込み。商品情報は2022年2月現在のものです
2022年03月11日※写真はイメージです3月7日、Twitterのトレンドに突如上がった「GUCCIの財布」というワード。今、その「GUCCIの財布」を巡って一部で“論争”が起きている。ことの発端は、高校生の娘を持つ父親のとあるツイート。内容としてはこうだ(現在は削除)。『高1娘が誕プレにGUCCIの5~6万の財布を「みんな持ってる」とねだってきて断ったら泣いてたが、こういうのはバイトなりで先ずお金を貯めて最後の一詰のところでねだるべきだしそもそも高校生には早い、と。物欲感覚崩れるとP活の危険も。。最近の中高生はやはりネットでいろいろ狂うんだよな。』(※P活とはパパ活のこと)これに対しネットでは、〈高校生にGUCCIは早い〉〈高1の誕プレに5〜6万…金銭感覚やべーな〉という意見があった一方で、〈高1でグッチの財布は、普通では〉〈誕生日でしょ?そのくらい買ってあげないのは可哀想〉という真逆の意見が。さらには、つぶやきにあった「買ってあげない=パパ活を心配」という構図に疑問の声も挙がった。そのさまざまな意見は当然、ツイート主の元へも多く届いたわけだが、探っていくと、そのツイートには140文字のつぶやきには収まりきらない父親としての思いが込められていた。「普段から、ツイッターや自身のnoteに親子関係や教育に関することを書いていていたんです。今回もそのうちの何気ないひとつのつもりでした」とは、ツイート主のこゆるぎ岬さん(@o_thiassos)。次第にツイートは一人歩きしていき、炎上。中にはひどい誹謗中傷をしてくる人も。今回の一連の騒動について、本人に話を聞いた。見合った消費感覚を理解させておきたい――GUCCIのツイートに大きな反響がありました。つぶやきによると、娘さんのおねだりを断ったとのことですが、そこにはどんな思いがあったのでしょうか。「私は高校1年生にハイブランドの財布を無条件に買い与えるということはしたくありませんでした。お財布を買ってあげることはできますが、生まれや育ちが上層でもない私は、イチ社会人として、親として、“身の丈にそぐわない高い物品を簡単に手に入れる”ことで金銭感覚・消費感覚が崩壊することを危惧しています。それに、子どもの人生を長い目で見たとき、そのリスクは軽くないと思うんです。ただ、なんでもかんでも買わないというわけではありません。子どもの習い事、学習塾など子育てには高額な費用がかかりますが、そういうことには必要十分な支出をしています」――中には「お財布くらい買ってあげてもいいのでは?」という意見もありました。「これはこの財布ひとつの話ではないと思っています。欲しいものを安易に与える前に、労働の対価として受け取る賃金とそれに見合った消費感覚、労働の大変さというものを十分に理解させておきたい。ごく普通の庶民として社会を生きていくうえで、賃金労働で6万円を稼ぐとはどういうことか。アルバイトが時給1000円だったとしたら、60時間働いてやっと手にできるものです。そういう感覚を持つ前にブランド財布はまだ早いんじゃないか、これが娘のおねだりを断った理由です」“みんな”とは2人だけだった――ただ、子どもからの“みんなが持っているから”というのは、親として引っかかる部分だと思います。SNSでも「みんなが持っているのに買ってあげないのは可哀想」なんて声もありましたが、それについてはどう思われましたか?「娘とあとから話してわかったことですが、“みんな”とは学校の友達2人でした。もちろん同級生が手にしているものを持てない疎外感はあると思います。例えば、娘はバイトをしているので、“バイトでお金を貯めたけど、どうしてもあと少し足りない!”というおねだりだったら、買ってあげたかもしれません。いきなり“みんな持っているから買って”とは、話が違うと思うんです」――ツイートでは、パパ活について心配されていましたが、そのあたりも娘さんにはお話されたのでしょうか。「私は、財布を与えない=パパ活をするのでは?という心配ではなく、先にお伝えしたように消費の感覚が狂ってしまうことに危険を感じています。思春期である高校1年生の子どもと、パパ活という“性行為”に結びついてしまうような話をするというのは、ものすごく困難です……。直接的にはパパ活という言葉を使ってはいませんが、言葉に気をつけながら、自分の思いを伝えました」――おねだりを断られた娘さんは、少し泣いてしまったとのこと。今回の一件で親子関係にヒビが入ったりはしませんでしたか?「特に関係に変化はありません。小さいころから会話をたくさんすることを心がけ、関係を築いてきたので、財布の件に関しても心から腹を割って話すことができました。今回の炎上の件も娘は知っているのですが、そのことも笑い合いながら話しました。あのツイートのあと、あらためて“本当にあの財布、ほしい?”と聞いてみたんです。そしたら“やっぱりまだいいや”と言っていました。よくよく考えるとデザインも心から好きなわけじゃないし、やっぱり高いし、自分が本気で可愛いと思えるものを探すね、と。娘との話し合いの結果、今回の誕生日はディズニーのチケットがいいということで、そちらをプレゼントすることになりました」――普段からたくさんコミュニケーションを取っているからこそ、お父さんの思いが娘さんにも通じたような印象があります。いつもの父娘関係はどのような仲なのでしょうか。「普通に仲よしですよ。2人で映画を観に行くこともあれば、スイーツを食べにいくこともあります。また以前から、“お父さんの誕生日に、バイト代で何かプレゼントを買ってあげるね”と娘が言っていたんですが、さきほど公言どおりウエストバッグをもらい、涙が出そうになりました。娘が私に対してどう思っているのかは、娘にしかわかりませんが、私は良好な関係が築けていると思っています」◆◆◆子育てに正解はないが、こゆるぎ岬さんに話を聞くと、理想とも思える父娘関係が見えてきた。しかし、SNSではどんなことにも批判はつきもの。今回の件でこゆるぎ岬さんの元には〈こんなゴミでも結婚できるんだ〉〈娘にセクハラしてるだろ〉〈5~6万の財布を買えないのに子どもを産むな〉〈子どもは良い父アピールの道具〉といったような多くの誹謗中傷が。騒動を経て、最後にこんな思いも話してくれた。「インターネットは誰もが自由に発言をできますが、ちょっと見かけたほんの一部のことで赤の他人を断罪して、追い詰め、社会的に抹殺できてしまうものなんだなと……。GUCCIを高1の娘に買い与えるか?だけで人格否定もできるし、子どもへの中傷もできてしまう。そういう時代の中、親子の人間関係を構築したうえでリテラシーを教えていくのも、教育として大事なことなのかなと思いました」多くの議論を生んだ今回の “GUCCIの財布”論争。もし自分が親の立場だったらーー。あなたは子どもに、どう答えただろうか。
2022年03月10日※イラストはイメージです『ポニーテール禁止』がブラック校則だとして物議を醸している。ポニーテール禁止の理由が男子の欲情制止、批判多数ことの発端は3月7日に配信された南日本新聞の記事だ。鹿児島市の女子生徒が中学時代、校則でポニーテールが禁止されているのはなぜかと担任の女性教員に尋ねたところ、「男子がうなじに興奮するから」と答えられたという。これに対しネット上では、《ポニテ禁止の理由がうなじに興奮するからって理由?年頃の男の子のなんて女の子自体に興奮するでしょ。なら女の子禁止しなきゃね(笑)》《男の興奮を抑えるために、女子側に規則を与える……立派なセクハラ行為だよね》《理由が男子生徒が興奮するというけど、男子生徒やなくてオッサンの先生が興奮するのまちがいでしょ》と理不尽な校則への批判が相次ぎ、『ポニーテール』、『ポニテ禁止』がトレンド入りした。なかには「振り向いて髪が当たったら危ないから」という理由ではないかとの声もあったが、男子の欲情を抑えるためだとしたら、いささか疑問とも思える。校則について都内在住の教員(50代)はこう話す。「これまでにも校則に対する物議はありました。男子の髪型について、丸刈りにすることを強制的に定めた『丸刈り校則』が有名です。80年代には日本全国の3分の1の中学校が実施していました。“清潔感”という理由だけでなく、“歴史と伝統”、“自分たちも我慢したから”と丸刈りを強制している学校もあったようです」校則に対する批判はこれだけではない。今月1日、とある男子高校生が人生で初めて緊急搬送された日に“頭髪検査を受けないと卒業式には出席させられない”と登校を強制させられたとのツイートが話題になった。男子高校生は卒業式の予行に向かう通学の電車内で、神経の突発的な異常で意識を失ったという。同乗した女性に助けられ、駅員に救急車を呼んでもらい病院で措置を受け、安静にするように診断された。だが、学校側から「頭髪検査がしたいので今すぐ登校してください」と連絡があったそうだ。何度も事情を説明して「今日は学校に行けない旨」を伝えたが、学校は「学校に来て頭髪検査を受けないと卒業式に出席できない」の一点張りだったそうで、救急搬送されたその日に頭髪検査をするためだけに学校に行ったという。男子高校生は教育委員会、文部科学省などに連絡したが「私立は独自の教育方針を持っているため学校側が判断をすることでこちらでは何もできない」と言われたそうだ。髪型に対する学校側の考え方はどのようなものだったのだろうか。「制服のスカート強制はいいの?」の声さらに、ポニーテール禁止に対しては、女性からの反発で別の議論にも発展。《男子が興奮するからポニーテール禁止なのに、スカートをズボンにするのはダメなの?》《変態基準で校則を考えるなら、色付き下着やポニテ禁止よりもスカートを廃止すべきなのに、なぜか女子のスカートがズボンになるのは消極的な学校》《ポニテ禁止のツイート見たけど生脚にスカートのほうがよっぽど危ねえよ》“スカート強制”への反対意見には、性的に見られないためだけではなく、寒さや冷えを訴えるものも多かった。靴下が指定されていたり、防寒性があるタイツが禁止されている場合も多く、真冬の寒さでも素足が露出したままで耐えなければならない。最近では新型コロナウイルスの蔓延を防止するために、季節を問わず教室の窓を開ける感染対策がなされている。換気するたびに下がる室温の影響で、身体の冷えから体調を崩すなど、ますます女子生徒には辛い環境になっているのではないか。ジェンダーレスが叫ばれる昨今、青山学院中等部・高等部や慶応義塾中等部などで、女子生徒の制服について、スカートとズボンの選択制が導入された。実際、ズボンを着用した女子生徒からは「本当に暖かい」と喜びの声が上がっている。それでも選択制を導入している学校はまだまだ少数派だ。時代に見合わない理不尽な校則がいまだはびこる学校は多いが、生徒側の理に適った意見にはもっと耳を傾けるべきかもしれない。
2022年03月08日タカラ「焼酎ハイボール」人気トップ3に君臨するドライ、レモン、シークヮーサー《真面目に酎ハイを焼酎で作っている数少ないメーカー。これからも呑みますよ!》《多少値上げしても、甘味料等入っていなくて美味しいから呑み続けます》《去年全国で消毒用アルコールが不足していたときに高濃度アルコールを製造してくれていたことは忘れていません。これからも買い続けますよ》これらは宝酒造が今年1月20日に一部商品の値上げを発表したのを受け、ネット上でファンから寄せられたコメントの一部。通常、消費者にマイナスとなる値上げのニュースは批判にさらされる。だが宝酒造の場合は異なり、温かいコメントであふれていた。人々に愛される「宝焼酎」「驚きとともに、大変ありがたく思っています。みなさまから当社の製品が愛されていることを改めて実感し、一広報として目頭が熱くなりました」こう語るのは宝ホールディングス・環境広報部の奈良有里代さん。国内トップの焼酎メーカーとして市場を牽引する宝酒造。同社の品はなぜ熱く支持されるのか。6月から値上げされる主力ブランドのタカラ「焼酎ハイボール」にスポットを当て人気の秘密を探った。タカラ「焼酎ハイボール」は2006年に新発売された。昭和20年代、東京の墨田区や葛飾区を中心とした下町にある大衆酒場を発祥とし、以来、飲み継がれてきた焼酎ハイボール。下町の大衆酒場で愛される“元祖チューハイ”を商品化したい──。そんな思いからタカラ版の焼酎ハイボールは生まれ、世に送り出されたが、いきなり壁にぶち当たる。「発売初年度はまったく売れませんでした。当時ブームだったのは果汁感たっぷりの比較的甘いチューハイ。当社の焼酎ハイボールは辛口が特徴で、味が正反対のため理解されにくかったのでしょう。一方、人気俳優をCMに起用するなど、ほかの缶入りチューハイと似た雰囲気のプロモーションもミスマッチだったと思います」(奈良さん)しかし、あきらめなかった。社員たちも焼酎ハイボールを好み、思い入れが強かったからだという。地道な営業努力、大衆酒場感を重視したプロモーション活動により、風向きは変化。次第に認知され、人気を博すようになっていった。「15年連続で前年の売り上げを更新中です。当社で同様の成果を挙げている製品はほかにはありません」(奈良さん)それを支えるのが、タカラ「焼酎ハイボール」の熱烈なファンだ。ファンを引きつける理由を、飲料専門家の江沢貴弘さんはこう指摘する。「焼酎ハイボールに使われている甲類焼酎の絶対的なうまさ。純粋さに加えて“味わい深い個性”があることが、いちばんの魅力といえます」甲類焼酎は、芋などの乙類焼酎とは違ったすっきりした味を特徴とする。反面、物足りなさを感じがちだが、宝酒造のそれにはあてはまらない。ピュアなアルコールを生み出すこだわりの蒸留技術「長い歴史を持つ焼酎メーカーだからこそです。洗練された甲類焼酎を生み出す蒸留技術と、貯蔵する焼酎のバリエーションの豊富さやブレンド技術が強みになっています」江沢さんのこの評価は、奈良さんの説明に裏打ちされる。「甲類焼酎の製造には連続式蒸留機を使います。その性能によって仕上がりは大きく変わるのですが、当社は優れた蒸留機をそろえており、それを扱う技術もあると自負しております。結果、雑味成分を取り除き、限りなくピュアなアルコールができあがるのです」加えて、さまざまな味わいを引き出せる樽貯蔵熟成酒の存在が大きい。「宮崎県の焼酎蔵に約2万樽、約85種類」に及ぶというから驚きだ。こうして深い味わいとコクを育んだ甲類焼酎「宝焼酎」をベースに、タカラ「焼酎ハイボール」は造られている。ちなみに焼酎ハイボールの略称とされるのが“酎ハイ”。缶入りのチューハイにはウオッカをベースに炭酸や果汁で割ったものもある。対してタカラの「焼酎ハイボール」の場合、ウオッカは使わず、あくまで焼酎をベースにしている。「ウイスキーを炭酸で割ったのがハイボール。そのルールに従えば、焼酎を炭酸で割った焼酎ハイボールこそ本物のチューハイです」(江沢さん)美味しい焼酎を造ることに絶対的な自信を持っている宝酒造。その武器があるゆえに、「甘さに頼らなくても、目指す焼酎ハイボールを実現できた」と話す奈良さん。当初、甘くないチューハイは市場に受け入れられなかった。だが異質な要素がいつしかほかのチューハイにはない魅力として輝き、焼酎のうまさとともに受け入れられていった。「甘くないから食事と一緒に楽しめるという声は多いです。料理の味を邪魔せず、相性がいい。食事しながら美味しく飲めるわけです」(奈良さん)レモンやドライなどフレーバーによっては甘味料、糖質、プリン体がすべてゼロというのも、健康が気になるユーザーにはうれしいところ。「何度飲んでも飽きがこない。まさに長く飲み続けられる=ドリンカビリティが高いですね」(江沢さん)下町の大衆酒場由来ということで愛飲者は中年男性中心。しかし最近は昭和レトロブームの影響もあり、女性ファンも増えているそうだ。タカラ「焼酎ハイボール」は全16種類のラインナップ(期間限定商品除く)。幅広い商品群も魅力であり、ファンの広さを物語っている。「1番人気はレモン。次がドライ、シークヮーサーと続きます」(奈良さん)「大衆酒場好きにはレモン、ドライがオススメです。焼酎ハイボール初デビューなら好きなフレーバーを試し、下町の味へとステップアップしましょう」(江沢さん)下町の情深さを見習う名店の味と題した「立石宇ち多゛のうめ割り風」。同商品は東京・立石のもつ焼き屋の名店「宇ち多゛」とコラボして誕生したもの。店主監修ながら同店では提供しない味わいを楽しめる。東立石のお酒も飲めるうどん屋・四ツ木製麺所では、この名店コラボ缶を置いている。「もともと宇ち多゛さんの三代目とは懇意にさせてもらっていたんです。宇ち多゛さんの常連さんは大抵、うちに来て『立石宇ち多゛のうめ割り風』焼酎ハイボールを飲んでいきますよ。三代目に寄っていくよう言われるみたいで(笑)。ありがたいです。売り上げの一部を葛飾区内のこども食堂に寄付している三代目に倣い、うちでもそうしています」(店主・守田良一さん)焼酎ハイボールを通じた下町ならではの助け合いを垣間見ることができた。焼酎ハイボールをリスペクトし、熱烈なファンを築いたタカラ「焼酎ハイボール」。その歩みはこれからも続く。「『宝焼酎』には100年を超える歴史があります。飲み継がれる美味しさ、人生に寄り添う味わいを目指してきたことは、今までもこれからも変わりません。次の100年に向けて、さらに品質を磨き、安全・安心な製品を提供することで、みなさまの潤いある豊かな生活に寄与してまいります」(奈良さん)(取材・文/百瀬康司)
2022年03月05日板ガムには根強いファンもいるそうひと昔前、ガムといえば「板ガム」が主だったが、現在、スーパーやコンビニの売り場で見かけるのはほとんどが「粒ガム」。SNSを見ても、久しぶりに手に取った「板ガム」を懐かしむ人たちの声も多い。いつから「板ガム」→「粒ガム」がメインとなったのだろうか。調べてみると、これほどまで「粒ガム」が主流になっても「板ガム」が消えずに支持される理由、そして長い歴史を持つ「板ガム」だからこその“深イイ話”が見えてきてーー。粒ガム流行の裏に「女性の社会進出」「ブランド担当者として、よくSNSをチェックしているのですが、多く見かけるのが、“板ガムを復活してほしい”とのお声。我々からしたら『まだ売ってますよ!』と声を大にして言いたいのですが(笑)。『ブルーベリーガム』『梅ガム』をラムネ化して販売した当初も、“板ガムでも復活して欲しい!”という声を多くお見かけしたのですが、ずっと板ガムは売っているんです。もう板ガムは売っていないものと思われている方も多いようです」そう話してくれたのは、株式会社ロッテ ブランド戦略部の毛利彰太さん。思えば、ガム売り場はいつからか「板ガム」→「粒ガム」へと変わっていった。粒ガムしか置いていない、そんなお店も少なくない。いまでは主要となった「粒ガム」だが、ロッテで初めて発売されたのは1994年のこと。「1994年2月に、『ブルーベリーガム シュガーレス』、『フラボノガム シュガーレス』がロッテ初の粒ガムとして発売されました。当時は正直、すごく売れたとか、大きな反響があったというわけではありませんでした。その流れが変わったのは約3年後。1997年に『キシリトール』が粒ガム形態で発売されてから、主流が粒ガムへと変わっていったんです」実は「粒ガム」が流行った裏側には、こんな時代背景も影響していたとか。「ちょうどそのころは、女性の社会進出が進んだ時代でした。人前で大きな口を開けてガムを食べることに抵抗を持つ女性もいたことから、スッと口の中に運ぶことができる粒ガムが支持されたと言われています」次第に世間に浸透していった「粒ガム」は現在、ガムの売り上げ全体の大部分を占めているという。一方で、追いやられているように見える「板ガム」だが、“存続の危機”なんてことはこれまでになかったのだろうか。「これまでそういう話はなかったですね。ただ、今は板ガム一本でやっている『グリーンガム』とかも、一時は粒ガムに浮気したこともありました(笑)。確かに粒ガムが多くの売り上げを占めているのですが、一定数以上、板ガムには根強いファンの方がいるのも事実。特に板ガムに慣れ親しんでいる世代の方の中には、“やっぱり板ガムじゃないと嫌だ”という方もいるので、これからも完全に板ガムがなくなるということはありません」客層は商品によって異なるそうだが、全体の傾向としては、他のガムと比べて50〜60歳代が多いという。板ガムの魅力について、毛利さんはこう話す。「板ガムの噛み心地って、粒ガムにはない魅力があるんです。弊社はガムの噛み心地にもすごくこだわっていて、板ガムには“噛み心地”の決め手となる『ガムベース』という原料が粒ガムより多く配合されています。ファンの方の中には、その板ガム特有の噛み心地を支持してくださっている方も数多くいらっしゃいます。また粒ガムのようなコーティングが施されていないため、パッケージを開けた瞬間に、ガムから広がる豊かなか香りを楽しむことができます」確かに、包み紙を開けた瞬間の香りは、板ガムならでは。多くの商品が「粒ガム化」される中で、板ガム一本で勝負を続ける商品もあるが、それには、香りや噛みごこちなど、板ガムにしか出せない魅力との相性も関係しているようだ。復刻販売が話題にそんな板ガム、昨今のレトロブームを受け、2020年11月に『ジューシー&フレッシュガム』(1970年発売)、『クイッククエンチ-Cガム』(1978年発売)を期間限定で復刻販売したところ、大きな反響があった。「芸人さんがラジオで話題にしてくださったりもして、SNSでも多くの方に注目していただいて、すごく嬉しかったですね」『コーヒー』『スウィーティ』『アセロラ』など、思わず“あった、あった!”と言いたくなる思い出のフレーバーばかりだが、中にはこんな“幻”のフレーバーも。「2002年には期間限定で発売された『花の蜜』という一風、変わったガムがありました。小さい頃、多くの人が公園でツツジなどの花の蜜を吸う経験をしたことがあると思うのですが、あの“花の蜜の味”を再現したものになります。私も研究所で似たような味のものを食べたことがあるんですが、まさにその通りでした(笑)」まさか、そんな味があったとは……!一昨年の復刻も大反響、レトロブームも追い風となり、ネットでも懐かしむ声は多いが、今後も「板ガム」の懐かしのフレーバーが復刻することはありえる?「多くの方に再販の要望をいただければ、我々も常々お客様の声は情報としてインプットしておりますので、復刻は全然ありえると思います!」私たちにさまざまな思い出を残してくれた「板ガム」。一部の人にとっては懐かしい商品であり、若い世代にとっては新しい商品になるかもしれない。またさまざまなフレーバーが、店頭に並ぶことを期待したい。【こぼれ話1】『クールミント』にペンギンが描かれているワケ「1956年、南極観測隊から依頼を受け、栄養素をプラスしたガムを提供したことがありました。というのも、ガムは賞味期限がなく、日持ちするんです。その後、1960年に『クールミントガム』が誕生したのですが、そこにはペンギンが描かれています。それまで、ロッテのガムは甘く、もっと辛いものがほしいというお客様の声から生まれた商品ですが、1956年に南極観測隊との縁があったので、そこから着想を経て、『クールミントガム』のデザインは南極風になりました。実は、発売当初はクジラも描かれていたんですよ(笑)」【こぼれ話2】50年以上前のガムを発見!そのクールミントの裏話には続きが…。「昨年、南極で発売当初となる1960年頃の『クールミントガム』が、発見されました。観測隊の方が、コカ・コーラなどと一緒に氷の中から見つけて。日本に持ち帰っていただいたんです。紙なので見た目はボロボロではあったのですが、ちゃんとガムとわかる状態でした。我々にとっては、南極観測隊から着想を得た商品が、南極観測隊の方を通して再び私たちの手元に戻ってくるという出来事に、ロマンを感じました」【こぼれ話3】ガムには賞味期限がありません!「特定保健食品とか、機能性表示食品とか、機能を訴求しているようなものに関しては賞味期限がついているのですが、『グリーンガム』や『クールミント』など、ガムには基本的には賞味期限はついていません。ガムってすごく水分が少ないので日持ちするんです。ちなみに弊社の商品には、アイスも賞味期限がついていないんですよ」
2022年03月04日スカイツリー東京の街をやさしく照らす、東京スカイツリー。2012年2月29日に竣工し、今年で10周年を迎える。東京スカイツリー最大の魅力といえば、やはりライトアップだろう。東京の夜空で幻想的に輝くツリーの姿は、見る者にいつも感動を与えてくれる。この美しいライトアップを照明設計者の日建設計やライティングデザインのシリウスライティングオフィスとともに演出するのは、家電などで私たちの生活でも身近なパナソニック。ツリー開業2年前の2010年にライティングパートナーに選ばれ、当時世界でも類を見ない、オールLEDによる大型建造物のライトアップに挑戦することになった。開発の舞台裏や、2019年の大規模リニューアル工事など、ツリーとともに歩んだ試行錯誤の10年を照明機器担当者に聞いた。【1】前代未聞の挑戦だったスカイツリーのライトアップここ数年で急速に普及したLED。例えば東京都では、LED信号機の普及率はいまや100%だ。だが、パナソニックがライティングパートナーとなった2010年当時は、家庭用のLED電球がようやく普及し始めたころだった。パナソニック・エレクトリックワークス社ライティング事業部エンジニアリングセンターの上田泰佑さんは、「高さ634mもの巨大な建造物をオールLEDでライトアップすることは、当時ではありえないほどの大きなチャレンジでした」と振り返る。スポーツスタジアムや大型商業施設などの大規模物件でLED化が進み始めたのは、ここ最近のこと。フィラメントが発光する蛍光灯や白熱電球と違い、LEDは半導体素子そのものが発光する。LED照明器具については、当初は家庭用の製品しか存在しなかった。「LEDは大光量になるほど発熱量も大きくなるため、放熱がうまくできなければ破損してしまいます。そのため大型建築物での導入は難しいとされ、光量が小さい家庭用の製品が最初に普及したのです」(上田さん、以下同)つまり当時、東京スカイツリーを照らすようなLED照明器具は存在しなかった。すべてを一から作るしかない。「光量、投光角度の計算、ライティングデザイナーがイメージする色の表現など、前例のない照明設計のなかで開発されたLED照明器具は、東京スカイツリーのためだけに作られた特注品です。耐風速、耐震性、耐雷性の品質基準も最高レベルのもので、現在もここでしか使われていません」【2】補強工事にもエピソード東京スカイツリー専用のLED照明器具は、現在2362台が設置されている。2019年9月から約9か月にわたって大規模なライティング増強工事が行われ、347台が増設された。「東京オリンピックを控え、東京の玄関口である羽田空港からの視認性向上と、より躍動感のあるライティングを目指したリニューアル工事でした」東京スカイツリーから羽田空港までは約18km。実際の視認実験は、羽田とほぼ同距離の約19km離れた埼玉県越谷市で行われた。「大型トラックをレンタルして、ショッピングモールの駐車場に向かいました。関係先のスタッフみんなでトラックの荷台に乗り、墨田区の東京スカイツリーからの光を確認したんです。光の出力や照明機器の設置台数を決定するため、この実験を5回行いました」リニューアル工事では、照明機器の増灯だけでなく、LEDの性能もバージョンアップ。従来と比べ、約10倍もの明るさを表現できるようになった。【3】こだわりの色表現とはリニューアル工事前から、ライティングの基本パターンは3種類。水色と白色の爽やかな光が特徴の『粋』。江戸紫をテーマカラーに、金箔のきらめきをゴールドで表現した『雅』。縁起がよいとされる橘色を基調とした『幟』が、日替わりで披露される。このほか、バレンタインやクリスマス、オリンピックなどの行事では「特別ライティング」が披露されることも。リニューアル工事後は明るさだけでなく、より複雑な色の演出も可能となった。「ライティングデザイナーがイメージした光を忠実に再現できるよう、色の表現にはかなりこだわっています」従来はR(赤)、G(緑)、B(青)の3種のLED素子を組み合わせて色を作り出していた。リニューアル後は、これにW(白)のLED素子を加えたRGBWの光源を導入。なんと約42億色もの表現が可能に。「各色のLEDに合わせて設計した専用レンズを組み合わせることで、よりきれいな光の色みと高出力を実現しています。カメラ製造の歴史で培ってきたパナソニックのレンズ設計技術が、東京スカイツリーのLED照明でも生きています」【4】明るいのにまぶしくない工夫リニューアル工事後、都民から多く寄せられたのが「ツリーのてっぺんが明るくなってる!」という声。アンテナ設備があるツリーの先端部分は「ゲイン塔」と呼ばれ、地上497mから630mの部分にあたる。「新たに設置した347台の照明機器のうち、179台をゲイン塔に設置しました。従来に比べて光が均一に照射され、ゲイン塔自体が発光して見えるようになりました」ゲイン塔を明るく照らしつつ、かつ遠くからも見えやすくするには、単に光量をアップさせればいいわけではない。光がムダに拡散する光漏れをすることなく、いかに効率よく配光制御ができるかがカギとなる。そこで採用されたのが、超狭角のピンスポット照明器具だ。「7度という超狭角の配光を実現する照明器具、ダイナシューターです。LEDに2枚のレンズを組み合わせ、光漏れの少ない超狭角のスポット光が投影できるようになりました。これをゲイン塔の最頂部の630mに設置しました」以前は暗く見えがちだったゲイン塔部分が、今ではくっきり。ツリーの高さがより強調されるライトアップとなった。明るさが向上したぶん、心配になるのが周辺住民への影響。特に都市部では「光害」が問題になることが多いが、この対策にも実はダイナシューターの性能が役立っている。東京スカイツリーを間近で見たことがある人は、タワーが外に放つ光よりも、タワーそのものを光らせる間接照明のやわらかい光のほうがメインであることに気づくだろう。「本工事の時点から光害には配慮しており、タワーは間接照明でのみ照らしています。リニューアル工事でゲイン塔の輝度をアップした際も、遠くからよく見え、逆に近くからは見えにくい配光の照明器具を採用しています」地上630m地点のゲイン塔最頂部にあるLED照明器具は、遠くからよく見えるよう外向きの照明となっている。ただし、ダイナシューターの超狭角ピンスポット光は18km先をターゲットとしているため、近くからはまぶしさを感じない。例えばコンサートのステージ上でアーティストに明るいスポットライトが当てられていても、その周辺は暗く、光の影響を受けないのと同じ理屈だ。本工事からリニューアル工事までの7年間で、色の再現性、光量などLED照明器具の性能は格段に進歩した。ツリー周辺の光害という問題にも配慮しつつ、遠くからの視認性は向上させるという相反する難題にも、最新の技術で見事に応えたかたちだ。【5】関係者が明かすビュースポット東京スカイツリーのライトアップには、熱烈なファンも多い。「点灯パターンを動画ですべて撮影して、SNSにアップしてくださっている方もいらっしゃいます。こちらが撮影した動画よりきれいなものもあり(笑)、ときどき参考にさせていただいております」ライトアップをもっと楽しむための豆知識を最後に教えてもらった。「私たちが照明確認をする際は、墨田川の吾妻橋や十間橋、源森橋からの眺めを参考にします。東京スカイツリーがきれいに見える、おすすめのスポットです。じっくりと観察してみてください」人々を楽しませ、癒すやさしい光は、陰の立役者たちによりこれからも灯され続ける。(取材・文/植木淳子)
2022年03月01日Netflixシリーズ『今、私たちの学校は…』独占配信中1月28日に配信がスタートし、わずか1日で世界1位を記録したNetflixオリジナルの韓国ドラマ『今、私たちの学校は…』。その後も勢いは増すばかりで各国で1位を独走、世界を席巻する大ヒット作となっている。舞台は小さな街の高校。ある日突然ゾンビウイルスが広がり、学校が血染めの修羅場と化す。全速力で迫ってくるゾンビと逃げ惑う学生たち。消火器やドア、本棚など、校内の備品を使ってゾンビに立ち向かい、必死で助かる道を探るがー。1話60分強、全12話のサスペンスドラマだ。今作で特徴的なのが、見終わったあとにまた最初から見たくなるという沼度の深さ。SNSでは「2周目行きます!」「今、3.5周目です!」などのコメントが飛び交っている。ゾンビの恐怖、学生たちの恋や友情、そしてこだわりまくりの演出まで。ループ見しちゃう秘密を大解剖!オンジョ&チョンサン、ナムラ&スヒョク……何度見てもキュンな恋幼なじみのオンジョ(パク・ジフ)とチョンサン(ユン・チャンヨン)。委員長のナムラ(チョ・イヒョン)とイケメンのスヒョク(パク・ソロモン)。2組の恋がキュン♪オンジョは消防官のお父さんと2人暮らし。隣に住むチョンサンはちょっと抜けててオンジョの尻に敷かれてる純粋な男の子。冒頭では頼りなかったチョンサンが、危険を顧みずオンジョや仲間を助け成長していく姿。そして、オンジョが自分の気持ちに気づいていく過程は、見返すたびに新しい発見が。対するナムラ&スヒョク。成績優秀だが孤立しているナムラ。スヒョクは元不良だが今は足を洗ってチョンサンとも仲よし。2人が絆を深めていく描写も美しい。ナムラがスヒョクにキスするシーンは、「目をつぶって行くので唇がどこかわからず」(チョ・イヒョン)、17テイク撮ったそう。パク・ソロモンは「これが恋愛ドラマの醍醐味なんだなと思いました(笑)」と、かわいいジョークを。究極の悪役、グィナムの怖さが神レベル不良集団のパシリだったグィナム(ユ・インス)。ゾンビ初襲来時は腰を抜かしてたのに、噛まれて“ハンビ”(人格は人間のまま身体能力はゾンビの“半分ゾンビ”)になると、「ここはまるで天国だな」と暴れ放題に。とにかくチョンサンが憎くて倒したいグィナムは何回窓から突き落とされても復活し、血だらけで「イ・チョンサーン!!(怒)」。イ・ジェギュ監督の「グィナムは、最初は中身のないわかりやすい悪役だったが、深みを持たせるためにインスをキャスティングした」という言葉も納得の強烈演技は、怖すぎるからこそリピートしたくなる。チョンサン役のチャンヨンとインスは、実は仲よし。「家が近くて、カフェに行ったり夜景を見にいって、演技について3時間くらい話した」(チャンヨン)、監督は「2人のアクションシーンは、相性がよかったからこそ」と語っている。そんな背景を知ると、また格別の感動が。●クセになっちゃうゾンビの動き全速力で追いかけてくる不死身の(というか、すでに死亡している)ゾンビが怖すぎる!その怖さをより高めているのが、独特の動き。実はこれ、ダンサーと振付師が考えた動きとのこと。大勢のゾンビ役の人たちが練習しているメイキングは圧巻だ。ゾンビ集団ひとりひとりの動きを鑑賞するにはループ見必須。●伏線、セット、カメラワーク……こだわりまくりの演出イ・ジェギュ監督の「何度も見ると細かい伏線に気づくでしょう」という言葉どおり、チョンサンと親友のギョンスが口笛で吹く“蛍の光”など、その後で重要なモチーフとなる伏線の数々は見事!また4階建ての校舎は全長100mのセットというスケールのデカさだし、圧巻は食堂で生徒たちが初めてゾンビと対峙する2話の冒頭。200人の生徒が逃げ惑うこのシーンはワンテイク(カット割りせず長回しで撮影)だったそう。さらに、いじめや受験、2014年のセウォル号沈没事故を想起させる描写、コロナ禍の現在の状況との類似点など、社会派作品の側面も。感情移入しちゃうキャラのオンパレード「リアルに見せるために、まだ有名ではない俳優をキャスティングした」とイ・ジェギュ監督。その目論見、大成功!ものすごい演技力&熱演で、感情移入しちゃうキャラばかりなのだ。屋上で“これが終わったら行こう、どこでも好きなところへ”と歌う友情シーン。ゾンビの中に身を投じて全身を噛まれながら「家に帰ろう!」と友人たちの脱出を助ける男子生徒……。脚本のチョン・ソンイルは、「“子どもたち”という言葉を使わずに書いた。そう書くと、大人の視点から書くことになってしまうから」と言う。愛あふれる脚本!●平和な学校生活をもう一度「対比をつけるため冒頭の学校生活は明るいトーンで撮った」とイ・ジェギュ監督。これがループ見不可避の最大要因かも。平和だった日常をもう一度!と、また1話を再生してしまうのだ。「生き残ることよりどのように生きるかがより重要」という監督の言葉を胸に何度でもリピートしたい。
2022年02月26日日清食品のカップヌードル今や国民的インスタント食品といえる『カップヌードル』。発売当初、低迷していた売り上げを救ったのは、意外な人たちだった。「どうして“ラーメン”ではなく“ヌードル”?」「インスタントは身体に悪い!?」など日清食品広報が語る『カップヌードル』の“イロハ”。「あさま山荘事件」で一躍有名に 「あさま山荘事件」が起こったのは1972年2月。連合赤軍の残党5人が軽井沢の保養所『浅間山荘』に人質をとって立てこもり、民間人を含む多数の死傷者を出した日本の犯罪史に残る大事件だ。山荘に打ち込まれる鉄球に、銃で応戦する連合赤軍、搬送されていく負傷者、強行突入する機動隊─。10日間にわたり続いた攻防戦の模様は連日テレビで生放送され、平均視聴率50・8%、最高視聴率は前代未聞の89・7%を記録した。この衝撃的な事件は人々の目を釘付けにし、同時にあるひとつのヒット商品を生んだ。日本の国民食として今やおなじみ、日清食品の『カップヌードル』である。「当時、日清食品では警視庁の第1から第6機動隊の全部隊に『カップヌードル』を供給していました。出動に伴う非常用食料としても利用されていたんです」と話すのは、日清食品の広報担当者。現場となった浅間山荘には、警視庁、長野県警、群馬県警、埼玉県警から合わせて3000人もの警察官が集結。マイナス15度という弁当も凍る極寒の軽井沢で、最前線で闘う彼らの胃を満たしたのが、非常食として配られた『カップヌードル』だった。湯気を立て麺を頬張る機動隊員の姿が繰り返しニュースで流されたことで販売店に視聴者が殺到、『カップヌードル』は一躍その名を世に広めることになる。事件を機に注目を集めたわけだが、あれは偶然の成り行きか、はたまた販売戦略の一環だったのだろうか?「まったくの偶然でした。あれを機に『カップヌードル』は羽が生えたように売れだしたのです」(前出広報、以下同) 『カップヌードル』の生みの親は、世界初のインスタントラーメン『チキンラーメン』を発明した日清食品の創業者・安藤百福。朝ドラ『まんぷく』にも登場した人物だ。視察で欧米を訪れた安藤が、紙コップに麺と湯を入れてフォークで試食する現地担当者の姿を目にしたことが、カップ入りの麺というかつてない商品開発のきっかけとなった。世界初のカップ麺を世に送り出すにあたり、ネーミングにもこだわり抜いた。「それまでにない食品だったことから、全く新しい名前をつけたいとの思いがありました。ところが提案されるのは従来のラーメンの概念に束縛されたものばかり。『チキン・カップ』といった名前も候補に挙がりましたが、日清食品のアメリカ法人から『カップヌードル』という案が出され、“これこそ、新製品にふさわしいネーミングだ!”と安藤百福が決断を下しました」『カップヌードル』の発売はあさま山荘事件の5か月前にあたる1971年9月18日。鳴り物入りで登場し、「画期的なインスタントラーメンが登場!」とマスコミにも大きく取り上げられたものの、意外にも当初の売れ行きはあまり芳しくなかったという。「袋麺が25円の時代に『カップヌードル』は1食100円と高価でした。また当時打ち出した、その場で立ったまま食べるというスタイルが良風美俗に反するといった意見も飛び出し、なかなか店頭に並べてもらえませんでした」店頭販売が難しいならと、夜勤が多い消防署や警察署といった特殊ルートへの売り込みに営業をシフト。結果「あさま山荘事件」で認知度を高め、生産が追いつかないほどの売れ行きを見せることになる。発売時は『カップヌードル』1種類でのスタートだったが、翌年には『カップヌードル天そば』、翌々年には『カップヌードル カレー』と、新作を次々投入。バリエーションの拡充とともに、ヒット商品も多く生まれた。なかでも2014年発売の『カップヌードル トムヤムクンヌードル』は販売計画を大幅に上回る売り上げを果たし、生産が追いつかず一時販売休止を余儀なくされることに。また派生商品も誕生し、2010年発売の『日清カップヌードルごはん』は予想を上回る売り上げを記録。あまりの人気に発売4日で一時販売休止を迎えている。現在は『カップヌードル(レギュラー)』をはじめ20種類前後の定番品のほか、数量や期間限定販売品を合わせて常時25種類前後のフレーバーを展開。売り上げトップはやはり『カップヌードル(レギュラー)』で、しょうゆベースにペッパーを利かせたその味は誕生以来、基本変わらず50年以上もの間ファンに愛され続けている。続く2位は『カップヌードル シーフードヌードル』、3位『カップヌードル カレー』、4位『カップヌードル 味噌』、5位『カップヌードル チリトマトヌードル』と、定番が上位を占める。話題呼んだ“謎肉”、その正体は…… 『カップヌードル』の具材といえば、まず思い浮かぶのが“謎肉”の愛称で知られる「味付豚ミンチ」。その人気はとりわけ高く、2009年4月のリニューアルで角切りチャーシュー「コロ・チャー」に変更されるも、“謎肉”を惜しむファンの声を受け2015年4月のリニューアルで復活。 「コロ・チャー」とのW入りで新たに販売をスタートさせている。同時にファンの間で親しまれてきた“謎肉”の愛称を日清食品が初めて公認し、大きな話題となった。「2016年、当社が公式に“謎肉”の愛称を認めたことで、その存在が一気に知られることになり、“謎肉”は『カップヌードル』を代表する具材ともいえる存在になりました」また2017年には発売46年目にして日清食品が“味付豚ミンチ”の正体を告白。一見すると角切り肉の“味付豚ミンチ”だが、実は豚肉と大豆由来の原料に野菜を混ぜて味付けしたミンチのフリーズドライだと明かした。ちなみに2019年10月に“謎肉”を増量するリニューアルを行い、これにより「コロ・チャー」は姿を消した。 『カップヌードル』は大好き!だけどインスタント食品は身体によくないのでは─、と罪悪感を抱く人は多いはず。しかし、意外とカロリーは高くないのだという。「一般的に高カロリーなイメージがあるカツ丼は893kcal、チャーハンは754kcal。一方インスタントラーメンはスープを全部飲んでもレギュラーサイズで1食約300~500kcal。これは成人男性が1日に必要なエネルギーの約11〜20%、成人女性の約15〜20%にすぎません」 『カップヌードル(レギュラー)』も、1食350kcalと思うほど高くはない。「健康を意識されている方には『カップヌードル PRO』がおすすめ。『カップヌードル』のおいしさはそのままに、糖質50%オフ・300kcal以下を実現しています」昨年4月に発売した『カップヌードルPRO 高たんぱく&低糖質』は、わずか半年で年間販売目標数を達成した近年のヒット商品。また2019年には『カップヌードル』の味と食べ応えはそのままに30%の減塩を実現した『カップヌードル ソルトオフ』を開発するなど、時代のニーズに柔軟に寄り添い新たな可能性を切り開いてきた。今年発売51年目を迎える『カップヌードル』。累計販売食数は500億食を超え、日本はもちろん世界中で今なおファンを増やし続けている。その勢いはとどまるところを知らず、この春には『カップヌードル スモークベーコンカリー ビッグ』『カップヌードルPRO 高たんぱく&低糖質 チリトマトヌードル』と新作も続々登場。世界的認知を確立した今、ブランドとしてこの先どんな未来を目指すのか─。「時代や環境も日々変化していく中で、さまざまな社会課題にも向き合いながら、恐れず変化していくことが『カップヌードル』というブランドの使命だと思っています。例えば植物由来の原材料だけを使用したものや、必要な栄養素をすべて満たす商品もそのひとつです。“100年ブランド”を目指して、『カップヌードル』はこれからも進化を続けていきます」取材・文/小野寺悦子
2022年02月23日ピップエレキバン130。永久磁石を使い、絆創膏部分も肌への負担が少ない素材(管理医療機器認証番号:225AGBZX00030000)肩、腰、背中で起きるコリトラブル。コリとは生活習慣による緊張や疲労が蓄積し、筋肉が収縮して太く、硬くなった状態のことをいう。『ピップエレキバン』はそうした症状を改善してくれる磁気治療器のことだ。使い方は筋肉がこり固まっている患部に貼るだけと簡単。磁気の力が血管を広げ、血行をよくすることで老廃物を流してくれるのでコリに効果があるといわれている。大人から子どもまで、幅広い層に使用されており、今年で誕生から50年を迎える。そこでピップ株式会社商品開発事業本部の伊賀遥香さんに聞いた。ピップエレキバン開発のきっかけは一粒の米ピップエレキバン誕生のきっかけは’68年、商品開発の部署が立ち上げられたことにある。開発担当者が注目していたのが当時、流行の磁気を使った健康アイテムだった。「磁気の力で血行、血流を改善するというものでした。アイデアはよかったのですが、課題はその形状。主流だったのはブレスレットタイプだったため、“もう少し使いやすくできないか”と考えていたそうです」(伊賀さん、以下同)ヒントはとある社員が行っていた民間療法にあった。「身体のこっている部分に絆創膏で米粒を貼り、ツボを押していました。そこから磁石を粒状にして直接、身体に貼ったら面白いんじゃないか、とひらめいたそうです」そのアイデアは採用され、商品化を目指した。臨床試験を重ね、約2年の歳月を経て1972年に誕生した。効果的な使い方はあるのだろうか。「こった場所に2、3個を2〜5日、貼り続けていただくことです。貼る時間帯は朝でもお風呂上がりでもいつでもいい。コリを感じたときに使ってもらうのがベスト!」平賀源内が名づけ親!?発売当初は『恵麗喜絆』という漢字表記だった。名づけのヒントは江戸時代の奇才、平賀源内とか!?「商品名は開発担当者が読んでいた平賀源内の本がもとになっているといわれています。そこに書かれていたエレキテル(静電気発生装置)のエレキ、から磁気を連想。商品の効能とエレキの意味は結びついていませんが、イメージ的に似たようなものとして提案したそうです」ちなみにバンは『絆創膏』のバン。エレキとバン(絆創膏)で『エレキバン』という商品名がつけられた。ヒットの鍵は地道な努力「弊社はさまざまなメーカーの商品を取り扱っているため、取引先とかぶらない、ほかと違う商品展開が求められていました。そこでニーズの隙間を縫うようなニッチなアイテムを企画していったんです」ちなみに最初に誕生したのがシャンプーハット。これもピップが考案したものということはあまり知られていない。そしてピップエレキバン。今では肩コリ改善におなじみのアイテムだが、発売直後は知名度は低く、売り上げは伸びなかった。そのため、営業マンが小売店を一店一店、回り、売り込んでいった。「売れないからと商品を撤退させるのではなく、せっかく作ったものはあきらめずに育成していこうという気持ちだったそうです。そしてもっと世の中の人にその存在を知ってもらうことが必要では、との結論に至りました」名物会長と樹木希林さん’73年、最初のテレビCMが放送された。’77年に故・横矢勲会長が自ら出演し、商品をPRしたCMが大ウケした。内容は横矢氏がエレキバンの箱を持って机に座り「ピップエレキバン!」と言うシンプルなもの。だが、素人っぽさや横矢氏のコミカルな動きが視聴者に響いた。さらに横矢氏が女優の故・樹木希林さん(享年75)や故・藤村俊二さん(享年82)らとも共演したCMは軒並み大人気。商品の知名度はアップし、売り上げにつながった。特に樹木さんは出演期間が長く’79年〜’96年までの登場。横矢氏とのコンビはシリーズとなり、どのCMも話題に。中でも「この、しぶとさが会社を繁栄させるワケですね」との樹木さんが横矢氏に言ったセリフは当時の流行語にもなったほどだ。’86年4月、横矢氏は82歳で死去。告別式で同氏を偲び、樹木さんが弔辞を読み上げた。CMが地域おこしにも!CMで印象深いのは、北海道比布町で撮影されたシリーズだろう。駅や神社などさまざまな場所が登場し、同町は一躍脚光を浴びた。「あるラジオ番組でリスナーが“北海道に比布町がある、そこでロケをしてほしい”と投稿したことがきっかけでした。それを社員が聞いていて“面白い”と採用、撮影に至ったようです」歩く広告塔横矢会長の人柄「ひと言で言い表せば、動く広告塔。その自覚と責任を常に持っており、“外に優しく、内に厳しく”を徹底された方でした」自社製品には絶対の自信を持ち、ピップエレキバンを常にポケットに入れて電車の中でも乗客に配って歩いたというエピソードは有名な話だ。さらにその温和な人柄でも多くの人々に愛された。’86年1月、横矢氏はオーストラリアで新作のCMを撮影していた。だが、同年に死去、そのとき撮られた3本のCMは放送されることはなく、幻となったという。商品は進化し続ける「時代とともにコリの理由も多様化。今は仕事でも日常生活でもPCやスマホなど画面を見ている時間が増えました。そのため、眼精疲労や姿勢からくる肩コリに悩む人も多いんです」座っている体勢が長くなったことから腰や背中のコリに悩む人も増えているという。そこで、現代人のニーズに合わせた商品開発も盛んに行われている。「足裏に着けるバンドタイプ、ブラジャーの紐に挟むインナークリップといったアイテムも誕生しています」磁石を絆創膏で貼るものがベーシックなタイプ。だが、最近では肌に負担がかかることを懸念する人やコスパを考え、繰り返し使いたい、という要望も増えており、違う形状のアイテムが誕生している。「これまでは中高年が使用しているイメージを持っている人が多かったかもしれませんが、今は20代、30代からも注目されています」ボツになった商品のその後新商品が誕生する一方でボツになる商品も……。「印象的だったものはブラジャーの紐そのものに磁石が入った商品。ただ、これは短命で終わってしまいました」自分では貼りにくい背中もケアできるという発想はよかったものの、商品は紐をつけ替えて使わないといけなかった。そのためつけ替えのハードルが高く、あまり受け入れられなかったという。ただし、その発想はピップエレキバンインナークリップへと受け継がれた。ユーザーのエレキバン愛「発売当初のCMは確かにインパクトがありました。ですがただの一発屋で終わらず、リピーターも多く、暮らしに根づいたのは、使用感はもちろんですが、手軽さが取り入れやすかったと考えています。それと口コミ。売り上げに苦戦していた時期でも“効いた”という声が数多く届けられ、お礼の菓子折りを送ってくれる方もいました」熱いファンの存在は冬の時代、ピップエレキバンを存続させるというモチベーションにつながっていったという。「50年間愛され続けてきたアイテム。そこから商品への自信や利用者への感謝の思いを感じています。商品は常に進化を続け、新たな時代でも暮らしに欠かせないアイテムになれるようにアプローチを続けていきたいです」
2022年02月19日