子どもを褒めて伸ばすのがよいと言うけれどUpload By かなしろにゃんこ。ADHDと広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)の診断を受けたのは小4のときでした。息子の療育などを通して、褒めることで自己肯定感が育まれることを知り「なるべく気をつけて声をかけよう」とは思っていました。ですが、だんだんと反抗期に突入していった息子はイライラしていることが多く、特性から忘れ物やなくし物も多いことで私もイライラしてしまい、息子を素直に褒められないことが多くありました。Upload By かなしろにゃんこ。「褒め方が分からない」「褒めるところが分からない」と思っていた私でしたが、クリニックでペアレントトレーニングを受けていたときに「君は息を吸って吐いているだけで完ぺきなんだ、生きているだけで素晴らしい」という究極の褒めに達したお母さんもいるんですよ!と教えてもらいました。それを聞いてからは「なんだ、どんな些細なことでも褒めちゃっていいのね!」と思い、素直に息子を褒められるようになっていったと思います。(自画自賛ですけど、笑)Upload By かなしろにゃんこ。そんなとき、発達障害の自助会で出会った当事者の先輩から親や周りの大人から受ける傷つく言葉に「こんなふうに言われたら嫌!」とか、逆に「親からこう伝えられていたら変わったかもしれない」など、いろいろな話を聞きました。(※事前に掲載の許可をいただいております)そこで聞いたこんな意見が印象に残りました。「子どもの意見になんでも反対しないでほしい」「親の言う通りの進路を歩めないからといって全否定しないでほしい」「わざとらしく褒めないでほしい」「偉人=発達障害というケースを比べて自分に期待しないでほしい」大人が放った言葉一つで心が大きく揺れてしまうことがあるのだと知り、息子への声かけにも応用してみようと思いました。息子に合った「自己肯定感を育む関わり方」とはUpload By かなしろにゃんこ。そして、息子が小5年生くらいのときから自己肯定感を育むために「リュウ太の意見尊重しますよ!」作戦をスタートしました。それは、息子が言った「意見」に乗っかること。夕飯何が食べたいか聞いて「オムライスがいい」と言ったら、私は「リュウ太のそのアイデアいいね!オムライスにしよう!」と息子に夕飯のメニューなどを決めてもらうことにしました。意見に賛成する言葉を伝えると息子は嬉しそうでした。また、それまで褒めるとき私は手をたたいて褒めていたのですが「その言い方マジキモイ」と息子に言われてしまったので、高学年になった息子に合わせてクールな、さりげない言い方に変更しました。「お!ソレいいじゃん」や「カッコイイね」とか「へ~うまいじゃない、やるね~」など。そのほうが本心で肯定している感じに伝わると思いました。Upload By かなしろにゃんこ。息子が大人になってから言っていたのですが「大げさに褒める言い方は、オレにヤル気を出させるために褒めてる感が伝わってきて本心じゃないなって思ってた」と。年齢や性格によっては、絶賛よりも同意程度がいいのね~と息子から教わりました(笑)当事者の先輩の意見であった「偉人=発達障害と比べられたくない」というものに対しては、私はあえて使ってみることにしました。息子に偉人のようになれ!とは思っていないので、「こんな人もいるんだって」程度に起業する社長さんや研究者、芸能界などアイデアや瞬発力が必要な分野で活躍している発達障害がある先輩たちの話をしました。Upload By かなしろにゃんこ。ADHDがあるから失敗を恐れず再チャレンジができることや、豊かな発想を発信できること、好奇心旺盛で気になったらコツコツ探求、研究ができる能力があることなど、発達障害のいいところをたくさん伝えました。息子が誇らしげに聞いてくれたことが嬉しかったです。子どもを褒めようと意識するようになったときに、(うちの子、褒めるところがこんなに少ないなんて…)って思ってこともありましたが、息子と話しているうちに「この子にもいいところいっぱいあったわ!」と気がついていきました。Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。細かいことを気にしないで失敗しても「いっけね☆」とクヨクヨしないところなどは、本来いいところ! 忘れ物なくし物が多いマイナス面と同じくらいいいところもある!今では、「発達障害がいけないわけじゃない、世の中に発達障害があるからこそ新しい物づくりや産業が栄えたかもしれないよね!」なんて話も親子でしています。初めのうちは発達障害の悪いところばかり見てしまったいた私ですが、徐々に考えを改めて息子自身のいいところに注目できるようになっていったような気がします。息子の自己肯定感も中学からはそんなに下がることがなく、明るくのびのびと好きなことを好きなだけやる人に成長できたんじゃないかな~って思います。執筆/かなしろにゃんこ。(監修:井上先生より)思春期になると、褒め方も年齢に合わせて変わっていきますよね。子どもの話を最後まで聞き、受け止めることはすばらしいことです。たとえ、子どもの意見が間違っていたとしても一旦最後まで聞き受け止めることが「褒めること」以上に大切だと思います。また、かなしろさんのように見方を変えることで子育ても随分楽になると思います。子どもが言われて嫌なことは障害があってもなくても同じかもしれません。子育てをする保護者みなさんが応用できることだと思いました。
2022年01月08日世の中には、さまざまな特徴を持つ人がいます。ほとんどの物事をそつなくこなせる人もいれば、うっかりミスが多い人も。漫画家の弓木らん(@Yumiki_ran)さんは、20代の頃、バイト先でやらかした苦い経験を漫画にしました。(2/2) pic.twitter.com/SI9N6V8zN6 — 弓木らん (@Yumiki_ran) December 3, 2021 更衣室に弓木さんのズボンが脱ぎ捨てられてあったのを見て、同僚は「着替えている最中に消滅しちゃったのかと思った!」と爆笑。当の弓木さんは、そのことをまったく覚えておらず、恥ずかしさや申し訳なさから「消えてしまいたい」と思ったそうです。そんな弓木さんの性質を知って離れる人もいれば、笑って許してくれる人もいるのだとか。弓木さんの漫画には、共感の声が多く寄せられています。・めちゃくちゃ共感しました。周りに同じような人がいないので、認められた様な気持ちです。・この漫画は、まさに私!でも、なんとか生きています。工夫して、頑張りましょう!・本人の気持ちを考えると切なくて笑えないけど、内容が面白すぎて感情がぐちゃぐちゃになりました。優先順位がバラバラになってしまったり、忘れっぽかったりすることに生きづらさを感じていたという、弓木さん。そこで、医師に診てもらった結果、ADHD(注意欠陥・多動症)や、ASD(自閉症スペクトラム障害)である可能性が高いと診断されたそうです。弓木さんは、診断を受け、これまでの生きづらさの正体を知ることができたため「診断を受けてよかった」と感じたのだとか。また、同様の経験をしている人に対し、「困っていなければそのままのあなたでいいし、仕事や生活に支障があり、つらいと感じているなら診断を受けるといいのでは」ともつづっています。人の特性はさまざまであり、どう生きるかはその人自身が決めるものでしょう。自身の特性を把握し、どうやって付き合いながら生きていくのかが、大切なのかもしれませんね。[文・構成/grape編集部]
2022年01月07日学校へ行かない生活小1の秋に不登校を選んだむっくん。当初は、精神的に不安定だったこともありゆっくりと本を読んだり、テレビを見て過ごすことが多かったような気がします。3ヶ月経ったころから、少しずつ活気が戻り「何かやることない?」と家の中をうろうろするようになりました。とは言っても、外へ出てどこかの集団に属することはしんどいと話すことから自宅で過ごすことに。自分のために使える時間がたっぷりある自宅でいったいどう過ごせばいいのだろう?自由って尊いけど、自由って難しいなあと感じたものでした。Upload By ウチノコおうち時間の過ごし方学習意欲が多少あるむっくんは、当初から1日1時間程度学習していました。少しずつ時間が増えていき、現在は2時間ほどの学習をこなしています。得意な内容は先に進め、苦手な内容は時間をかけて、興味を持った内容を深堀したりと、むっくんに合う方法を模索しつつ学習を進めています。初期のころは外出を嫌がりましたが、少しずつ拒否感は消えてサイクリングを楽しむようになりました。いつもより少し遠いスーパーに出かけてみたり、通ったことのない道を開拓してみたり。最近は歩数でキャラクターを育成できるスマホゲームに夢中で、歩くことを心がけているようです。本が好きなので図書館によく行きますし、科学館や市営プールなどの公営施設にもときどき出かけます。むっくんは感覚過敏があり、人が多いと疲れてしまうため今までは人の多い場所は敬遠していました。ですが、平日昼間はどこも人が少ないのでおでかけのハードルが下がり、今までは絶対無理だったショッピングモールも短時間なら付き合ってくれるように!息子との買い物にウキウキしてしまう母です。家事スキルはぐーんと伸びました!料理がお気に入りで、お腹がすくと本やインターネットのレシピを参考に斬新な食事やお菓子をつくってくれます。家にずっといるので、昼食どうしよう?と毎日悩ましかったのですが、むっくんと交代制になりずいぶん楽になりました。洗濯や掃除なども手伝ってくれることが増え、暮らしにゆとりがあるからいろいろと興味をもってくれるのかな?なんて考えています。Upload By ウチノコ過ごし方の基本かもしれないテレビゲーム!これは毎日楽しんでいます。私もゲームが好きなので、一緒にプレイしたり対戦することもあります。またscratchなどのプログラミングにも興味を持って取り組んでいます。Youtubeを使って知りたいことを調べたり、ゲーム動画、アニメ、実験動画、コマ撮り動画などをよく見ています。テレビでは学習番組や自然科学系の番組を好んで見ている様子で、ニュースチェックもするようになりました。外の世界を知ることができ、いい刺激になっている様子です。もともと高学年での理科実験を楽しみにしていたので、自宅で実験やっちゃおうと働きかけたときはとても喜んでくれました。最近では図鑑や動画でやり方を調べて、材料をメモして、買い物に行き、準備を整えて実験するという一連の流れを楽しんでいます。また、自分の実験の様子などをタブレットで撮影、編集して見せてくれることもあります。Upload By ウチノコ本が好きなこともあり、暇さえあれば何か本を読んでいます。教科書などに乗っているおススメの本を借りてきて読んだり、漫画も読むようになりました。気に入った作家さんの作品を集めて読むなど、新しい世界の広げ方を覚えてきました。音楽をよく聴くようになりました。YouTubeを使って好きな曲をいろいろ流したり、演奏したいと楽器に向かうこともあります。また、映画もよく見るようになり、80年代のハリウッド映画が今のお気に入りです。もともと物をつくることが好きなむっくん。小さなころから何かに感銘を受けたら手元で何らかの方法でそれを再現していました。頭の中がいっぱいになりそうなときに、手元でアウトプットして頭の容量を開けているのだろうと私は理解していますが、これが思うようにできないことがつらいようなので、いつでも自由に表現できる現在は満たされているようです。おかげで癇癪などはずいぶん減ったように感じています。畑を借りて一緒に野菜を育てています。一生懸命草取りをする私を尻目に、むっくんは昆虫やカエルを取ることに夢中ですが…。今年はチョウやカエルなどの飼育にも挑戦し、学びの多い活動ができました。Upload By ウチノコ自宅で1年過ごして思うことむっくんが「なにかやることない?」と言い出したとき、私は「何か刺激を与えてあげなくちゃ!」と思い込み、頑張りすぎてへばってしまいました。そのため今は、手抜きも意識しつつ暮らしています。私がやる気を出そうが出すまいが、むっくんは自分の調子で1日の過ごし方を選んでいるようです。親子が1日中一緒に過ごすのですから、当然疲れるときもあるし、喧嘩だってします。だけど、不登校生活は楽しいなぁって感じる自分もいます。むっくんは何もせず過ごす日もあれば、忙しく情報を集め活動する日もあり。当たり前なんだけど、どこで過ごそうが子どもは成長するんだなぁとしみじみ感じています。今日も私たちは明るく楽しく1日を過ごしています。執筆/ウチノコ(監修:三木先生より)とても活動の種類が多くて良いですね!これだけのことを準備してあげるのはすごく大変だったでしょうけど、でもおかげでむっくんは楽しく過ごせているようですね。また、外出で「いつもと少し違ったこと」に取り組めているのも良いですね。そうやって少しずつ世界を広げていくことも大事です。それらも含めて「頑張ったり、頑張らなかったり」を繰り返しながら、成長していくんですね。
2022年01月07日修学旅行…楽しみでもあり、不安でもあり?ASDとADHDのある息子コウ、小学6年生。「行けたらいいなぁ」と楽しみにしていた修学旅行が近づいてきました。Upload By 丸山さとこクラスメイトの子に『丸山、迷子になりそう』と言われたというコウは「僕もそう思う」と笑っていましたが、本当に迷子になりかねないコウなので笑いごとではありません。「見学で夢中になって群れから離れないように気をつけてね。周りを見るようにしてね」と改めて念押ししたものの、それで何とかなる子どもであればADHD治療薬の服用をすることもなかったでしょう。「もうあとは祈るしかないな…先生及び班員のみなさま、(多分)ご迷惑おかけします…!」という気持ちで支度を進めました。ただでさえ心配の尽きない修学旅行ですが、荷物の準備中に「日中持ち歩くリュックを自室から持っておいで」とコウへ言うと、「あー、それ、家庭科でつくったナップサックに入れるんだって」と驚きの返答。Upload By 丸山さとこ普段のお出かけはポケットを使い分けることで荷物を管理しているコウです。そんな彼が、ポケットのないナップサックに全ての荷物を入れたらどうなるのでしょうか…?「これだけ沢山の荷物をナップサックに入れたら、何か出すたびに道路や床に物を散らかすことになるのでは?」と、目に浮かぶ光景にゲッソリしながら、「これは何かしらの対策が必要だな」と思いました。Upload By 丸山さとこポーチと大判の袋で、荷物を分けて収納!班行動中にナップサックで持ち歩く荷物の数は結構多くて、全てナップサックへ入れたところ「これだけ荷物がギュウギュウに入ってると、底に沈んだ小さな物を探すのは大変だね…」という感じになりました。そこで、小さな物や薄い物はそれぞれポーチに入れることにしました。カッパ・マスク・ビニール袋は、分けて収納ができるメッシュケースにin!”収納場所のサイズとしまってある物のサイズ”を揃えることで、感覚的に分かりやすい収納になりました。Upload By 丸山さとこスポーツバッグに入れる衣類や洗面用具は、使用シーンごとに分けてまとめることにしました。Upload By 丸山さとこ・入浴時に持っていくタオルやパジャマなどをナップサックに入れた『お風呂セット』・2日目の朝に着替える服を巾着袋に入れた『2日目衣類セット』・予備のタオルや衣類をメッシュケースに入れた『予備の物セット』・そしてハブラシとコップの『ハミガキセット』浴場にいくときは『お風呂セット』、朝着替える時は『2日目衣類セット』、予備の着替えが欲しいときは『予備の物セット』と、使用シーンごとに使いやすいようまとめました。そうして荷物を整理してみた結果もし「細かく分けられると返って使いにくい」などコウから不評であればやめようと思いつつ用意してみた”袋分けシステム”でしたが、「分かりやすいしスゴく便利!」「見たら分かるし取り出しやすいよ」と喜んでくれました。Upload By 丸山さとこ「〇〇はどこ?」と聞いて取り出せるか確かめましたが、どれもスムーズに取り出すことができたので『大丈夫そうかな?』と思い荷物をまとめ、コウは修学旅行へ出発しました。『準備しているときに今分かっていても当日は焦って取り出せなくなるかもな~』と思っていましたが、その後修学旅行から帰ったコウは「大丈夫だったよー」と言っていました。後に担任の先生からも「移動中も集団から離れることなく行動できていましたし、支度も大きく散らかさずにできていました」とうかがってホッとしました。彼の”自称大丈夫”は今一つ信憑性に欠けるため出発前は心配していましたが、『荷物関連で困ったり焦ったりすることなく修学旅行を楽しめたのであれば、それはよかった!』と嬉しく思いながら、家族みんなでお土産のお菓子を食べました。Upload By 丸山さとこ執筆/丸山さとこ(監修:鈴木先生より)ADHDのある人のカバンや引き出しの中はゴチャゴチャしてしまうことが多くあります。カバンいっぱいに荷物を詰めすぎることがあるのでチャックが閉まらず開いたままということもあります。このようなことがよくある方の場合、カバンもナップサックも同じようなもので、手を入れて手探りで物を探す光景を私の外来ではよく目にします。カバンの中を見られるならば、色のついた子袋に分けるのも一つの方法でしょう。しかし、カバンの中が荷物で埋まっていて上から下まで見ることは不可能な場合も多いです。そういう場合、今回のように手触りでも分かりやすい袋などに分けておくといいでしょう。今回の場合、「使い慣れたリュックサックでもいい」という学校側の配慮もあったらよかったのかなと思いました。
2022年01月06日微細運動とは、持つ・にぎるなど手指を使った動きで、身の回りのケアに必要な体の動き微細運動は手指のこまかい動きのことで、持つ・にぎるから始まり、道具を使う、操作をするといった動きのことです。立つ・歩くなどの体を移動させるための大きな動きである粗大運動に対して微細運動と呼びます。たとえばフォークを使って食べ物を刺し口元まで運ぶ動作、クレヨンを握って紙に何かを書く動作、さらに服のボタンのかけはずしや、靴を履くなど、自分の身の回りのケアに必要な動作でもあります。微細運動は、いつごろからどんなことができるようになる?目安は?Upload By 発達障害のキホン粗大運動は、脳に近い部分から体の末端に向かって順に発達していきます。一方、微細運動は背骨に近いところから指先に向かって発達していきます。新生児期にみられる原始反射に「把握反射」(はあくはんしゃ)という、手に触れたものをにぎるという動作がありますが、これは体の発達が進む間に見られなくなります。手のひらに何か触れると無条件に指関節が曲がって握るという動作は、人類の祖先が樹上生活をしていた際の、木の枝から落ちないための古い記憶からきているともいわれます。体の中心から末端に向けてだんだんにできるようになっていく微細運動は、どのような過程でできるようになっていくのでしょうか。いつごろ、どんな動きができるようになるのか目安を見てみましょう。●両手を合わせられるようになる(生後2ヶ月ごろから)赤ちゃんにとっていちばん身近にある目の前で動くものといえば、自分の手。肩関節から先を動かすことができるようになる2ヶ月ごろから、両方の手を合わせてさわることができるようになります。●手のひらを使って、にぎることができるようになる(生後5ヶ月ごろから)生後3ヶ月ごろから細い柄のついたもの(おもちゃのガラガラなど)を、手に近づけてあげればにぎっていられるようになります。ただ、このあと自分でさわろうとしたりするのは、興味があるものに手を伸ばすようになる3~4ヶ月ごろからです。また、肘関節が動かせるようになる4ヶ月ごろから、手のひらでものをにぎれるようになります。●手に持ったものを別の手に持ち替える(生後6~7ヶ月ごろから)手のひらでにぎったものを、もう一方の手に持ち替えることができるようになっていきます。また、生後8ヶ月ごろからは、両手につみきなどを持ち、持ったものをカチカチと打ち合わせたりすることができるようになっていきます。両方の手の動きを連携させることができるようになるのです。●親指と人差し指でものをつまむ(生後10ヶ月ごろから)自分の意思で動かせる範囲が、かなり末端まで広がっていきます。指の関節が動かせるようになり、こまかいものをつまむことができるようになります。手をなめるだけでなく、おやつのボーロを手指でつまみ上げて口まで運ぶという動作も可能になります。また、ボタンなどを押すのが面白くなってくるのもこのころです。●肩関節から指の関節までを組み合わせた動きが自在になる(1歳~1歳半ごろ以降)1歳を過ぎるころから、手に持ったものを、目的をもって動かす動作ができるようになっていきます。スプーンやフォークを握って、口がある場所に持っていき、道具の先端にある食べ物を口にこぼさずに入れるという一連の動作は、分解してみるとかなり複雑な動きであることが分かります。また「こうしたい」という心の発達もともなう動作でもあります。こうして体幹からだんだん末端へと、自在に動かせる範囲が広がります。道具を使う手指の動きには、筆記用具を使って「書く」という動作があります。この動きも体の中心に近いところから末端の手指の関節へと、運動神経が伝わっていくことで、こまかい動作ができるようになります。● 10ヶ月ごろ…点を打ち付けます。これは筆記用具をにぎり、肩関節を動かすだけでできます。● 1歳ごろ…線を書く、いわゆるなぐり書きです。肘関節を動かすことで、紙の上に筆記用具を滑らせて書きます。● 2~3歳ごろ…最終的にまるが描けるようになります。手首を動かすことによって、円を描きます。また、手の動きだけでなく、筆記用具の握り方も成長します。0~1歳の前半ごろは、いわゆる「にぎり持ち」、指を使わず手のひらを使って筆記用具をもちます。このころは、柄が太く短いクレヨンなど、手と一体になるようなデザインの筆記用具が使えます。だんだんに、柄が細く、握ったところから遠いペン先で書くようになっていきます。握り方も成長します。人差し指と親指で筆記用具を持ち、その他の指で支えるようになり、複雑な線を描けるようになっていきます。ほかにも、ビーズにひもを通す(1歳ごろ)、ハサミを使う(2歳ごろ)、ボタンをかける(3歳ごろ)、ふたを開ける(5歳ごろ)、ひもを結ぶ(6歳ごろ)などといった細かい動作がたくさんあります。なお、生活に必要な動きのみではなく、手芸や工作などさらに精密な動きをするようになっていくためには、「こういうものをつくりたい」という心の発達が必要であり、どんな人でもトレーニングが必要です。立つ、歩くといった粗大運動とは少し違い、自然にできるようになるものではありません。発達障害(神経発達症)がある場合に見られる微細運動の特徴(併存症として発達性協調運動症がある)それでは、発達障害(神経発達症)があった場合、微細運動の発達には何か影響があるのでしょうか。それはなぜなのでしょうか。●協調運動の課題発達障害(神経発達症)がある場合、神経伝達がうまく伝わらないことがあります。「皿の上にあるボーロを取って、口に運んで食べたい」と脳で思っても、そのとおりに体を動かせないために、ボーロをつまめない、つまめたとしても力が軽すぎて落としたり、逆に強すぎてつぶしてしまう、また、そのあと口元まで運ぶことがうまくできない、ということがあります。●感覚過敏があるため、物に触りたがらないもうひとつの発達障害(神経発達症)の特徴として、感覚過敏があります。そもそも違和感のあるものを触りたがらないために、微細運動の発達の遅れがみられる場合があります。物の温度・手触り・色・材質・形・におい・その物が発する音などについて、温度覚、触覚、視覚、嗅覚・聴覚等が関わってきます。そうしたものについて、いやな思いをしてしまうと、同じ色のものは触りたがらない、といった傾向もあらわれます。また、特に冬場の空気が乾燥しているときには静電気もあり、パチッという感覚を怖がって、物を触らないことがあります。これは、発達障害(神経発達症)がない子どもにも、あることです。こうして、発達障害(神経発達症)がある子どもの場合、微細運動の発達に遅れがみられることがあります。それぞれの動作ができるようになる時期の目安は前述の通りですが、たとえば1歳半を過ぎたころになっても、ものをつかむときに指を使わず手のひら全体でつかもうとしたり、フォークやスプーンがうまく使えなかったりといったことがあります。一般的にいわれる「不器用」というのは、感覚とこうした手指の動きがうまく連動できないということです。体の感覚統合がうまくいっていない場合に起こります。* 感覚統合とは人間の感覚には、既によく知られている五感(触覚、視覚、聴覚、味覚、嗅覚)に加えて、固有受容覚(手足の状態・筋肉の伸び縮みや関節の動きを感じる感覚)、前庭覚(身体の動きや傾き、スピードを感じる感覚)といった合計7つの感覚があります。(中略)次々と身体に入ってこようとするこの7つの感覚を整理したり分類したりするのが感覚統合です。このはたらきによって、その場その時に応じた感覚の調整や注意の向け方ができるようになり、自分の身体を把握する、道具を使いこなす、人とコミュニケーションをとるというような周囲の状況の把握とそれをふまえた行動ができるようになります。リハビリではOT(作業療法士)が感覚統合訓練を担当します。発達障害(神経発達症)がある子どもにとって一番いい療育は、感覚統合訓練が含まれている音楽療法と乗馬療法です。(「感覚統合」とは? 発達障害との関係、家庭や学校でできる手助けまとめより)参考:音楽とこころ発達障害(神経発達症)がある子どもの微細運動の発達を促すためにできること微細運動がうまくできない状態は、脳からの神経伝達が体の細部にうまく伝わらず、自分が思ったように手指を動かせないということです。生活する中で身の回りのことを自分でできるようになるためにも、感覚統合を促すようなトレーニングが必要となります。ただ、子どもが興味を示さないようなトレーニングでは、長続きはしません。道具の選び方を工夫したり、遊びの中でチャレンジする機会を増やしたりしてみましょう。うまくできたら、ほめることも大切です。0歳代から遊べる、いわゆる「知育玩具」と呼ばれるおもちゃの中には、手指の動きをトレーニングできるものがあります。ボタンを押したり、ダイヤルを回したりすると音がしたり、形の合う穴に積み木を入れたり、遊びながら手指を使う練習ができます。ユニバーサルデザインの食器類を使うことで、フォークやスプーンが使いやすくなります。通常のスプーンは柄から先端までがまっすぐで、口に入れるためには手首の動きをこまかく調節して角度を変えなくてはなりません。はじめから角度がついているものなら、そのまま口元へもっていくだけで自然と口に先端が向くようになります。自分でうまく食べられたという成功体験を積むことで、いやがらずにトレーニングを進めていくことができます。筆記用具を使う練習は、柄の部分が太く丸いクレヨンなど、手のひらで握ることができるものからスタートします。だんだんと、柄の細い鉛筆やペンに慣れていきます。鉛筆の正しい握り方を伝えるときには、ただ握り方を見せてまねをさせるのではなく、こまかいプロセスに分解して教えることが必要です。親指と人差し指でペンをはさんで持たせてみて、そこに中指・薬指を添えて、小指を紙に接するようにさせて安定した持ち方を覚えます。手指のこまかい動きが必要な、服を着たり脱いだりと言う動作。特にボタンをかけるのは両手の人差し指・親指を使う複雑な動作となります。大きなボタンからトライして、だんだんに小さなボタンも開け閉めできるようにしていきます。靴を履くときには、手指の動きだけでなく、足の動きも連動します。足首をしっかり固定する靴のほうが、歩行の成長には望ましいですが、履き口が深い靴は脱ぎはきがむずかしいこともあります。最近は、ひものないマジックテープの靴(※)もあります。靴ひものある靴は、デザインはよいですが、履くのがとても大変です。特にひもを結ぶ「蝶結び」は、手指の動きの中でもかなり高度なテクニックが必要です。 子どもが自分で脱ぎ履きできるように工夫された靴を選びましょう。※自閉スペクトラム症のある子どもは、こだわりのためマジックテープの位置が気に入るまで何回もはがすことがありますこのほかに、穴にひもを通したり、ひもを結んだり、両手を連動させるより高度な微細運動にトライしていきます。自分の身の回りのことが一通りできる微細運動よりもさらに複雑な動きは、その子がつくりたいものや、やってみたいことに合わせてトライしてみるといいでしょう。いずれにしても、繰り返しトライすることでだんだんにコツがわかったり、腕や手指の可動域が広がったりして、できることが増えていきます。そして、何度もやってみるためには、できたときに「できたね!」とほめられて、成功体験となることも大切です。楽しく遊びながらトレーニングをしていきましょう。微細運動の発達が気になったら、どこに相談する?微細運動の発達が気になったら、まずは1歳6ヶ月健診や、3~4歳児健診などの健診の機会に相談してみましょう。問診の中で指摘されることもあります。また、かかりつけの小児科医に相談してみるのもよいでしょう。リハビリや作業の訓練などをしてくれる作業療法士につなげてくれることもあります。医師の診断のもと、体の動かし方、手指の動かし方をトレーニングしてくれます。個々の骨格や関節の動き方を見ながら、その子に合った動かし方を考えて指導します。トレーニングといっても、楽しく遊びながら自然とできるような方法を教えてくれるでしょう。作業療法士は、単独での判断でリハビリを行うことはできません。医師の診断が必要となります。ケガなどが原因で手指が動かしづらい場合には、整形外科での相談もありますが、発達障害(神経発達症)による感覚統合訓練の場合は、小児科医や児童精神科医との連携となるでしょう。まとめ微細運動の発達を促すのは、何度も繰り返し練習してみること。楽しく遊びながらでなければ続かないし、やらなくなってしまいます。また、「できた!」という成功体験も大切。「訓練しなくては」ではなく、「楽しみながらできるようになる」ことを目指しましょう。(監修:鈴木先生より)かつて、発達障害(神経発達症)は微細脳機能障害(MBD/Minimal Brain Dysfunction)と言われていました。周産期に何らかの微細な損傷が脳内に起こったために多動や不注意など今でいうADHD症状、こだわりや感覚過敏など今でいう自閉スペクトラム症の症状、手先が不器用で協調運動が拙劣など今でいう発達性協調運動症の症状があったと信じられていたのです。しばらくしてそれは否定され、ICDやDSMで「軽度発達障害」という概念が生まれてきたという歴史があります。いずれ、その「軽度」もなくなり、「発達障害」となり、今の「神経発達症」に至っています。今回のテーマである微細運動における障害は、発達障害(神経発達症)のお子さんには比較的多くみられ、「発達性協調運動症」と言われています。手先が不器用でヒモを結んだりボタンをかけたりすることが苦手で、体のバランスや手足の協調運動が悪く縄跳びや球技が苦手なお子さんがこれにあてはまることが多いです。定規を使って線を引くことや字を書くことが苦手なお子さんも多くいます。ただ、根底にADHDのあるお子さんはADHDを治療することによって発達性協調運動症を多少改善することが可能です。非薬物療法としては音楽療法や乗馬療法などもあります。公園やアスレチックなどでバランスを磨き、ブロックなどを使って指先を鍛えることも重要です。トレーニングとしては作業療法士が行う感覚統合訓練が有効です。病院や療育などで行われていますが、感覚統合の講習を受けその資格を持った作業療法士のもとで行うことが重要です。
2022年01月05日冬の服はとにかく重いこんにちは。加藤路瑛です。15歳、高校1年生です。自分の困りごとである感覚過敏の問題を解決したいと思い13歳のときに「感覚過敏研究所」を立ち上げ、感覚過敏の課題解決に取り組んでいます。当事者目線、特に子どもの視点で感覚過敏について話していきたいと思います。 今回は、冬ならではの感覚過敏の困りごとを私の体験と、私が運営している感覚過敏の当事者と家族が参加できる感覚過敏コミュニティ「かびんの森」の参加者の体験を交えて紹介したいと思います。寒い冬は、服を何枚も着込み、コートやマフラー、帽子、手袋、ブーツととにかく身につけるものが多い!けれど、服の重さが苦手、重ね着が苦手、首回りが過敏など、触覚に過敏さがある人にはつらい季節でもあります。私の場合、まず、コートやジャンパーなどの防寒着を着たくありません。コートは重いし、その重みで肌に服があたる面積が増える。うまく表現ができませんが、「着ている感」が強くなるのです。私立中学校に通っていたときは、コートは学校指定のものがありました。いわゆるPコートと呼ばれるタイプのコートです。値段も高かった記憶もあり、私は「いらない」と親にいいました。親も流石に寒いときに困るから買っておこうというのですが、絶対に着たくない。制服ですら重いのに、コートなんて着たら鉛を背負っているようなものです。私は、真冬もコートなしで制服のみで登校しました。小学校時代は親に言われるがまま冬はジャンパーを着ていたと思いますが、中学生以降、私はプライベートでもコートを着なくなりました。制服だけで登校するなかで、「なくてもなんとかなるのでは?」と真冬でもランニングシャツとパーカ1枚で外出します。親には「見てるだけで寒いからなんとかして」とよく言われましたが、身軽さを体験するともう重いコートやジャンパーは着られないのです。そんな状態だった中学1年の2月、北海道に行く用事ができました。「北海道はパーカだけじゃ無理だから何か買おう」と言われ、母が「これは最高級にあったかくて軽いから」と超薄手ダウンジャケットを買ってきました。確かに軽い。北海道に行く日、はじめてそのダウンジャケットを着て、受け入れられる防寒着ができたことに安心した記憶があります。高校生になった今も、基本はパーカだけで出かけてしまいます。やっぱり寒いことより、服をいろいろ着込むことが嫌なのです。なので、このダウンジャケットは常時リュックに入れてあります。限界だと思う日に着ます。大体、家を出るときはパーカだけで出て、駅のホームとか外で信号待ちしているときとか、ビル風に吹かれて限界を感じます。そうしていそいそとダウンジャケットを着ます。「そんなの手間だから家から着ていけ」と言われるのですけどね。やっぱり防寒具はできるだけ着ていたくないです。Upload By 加藤路瑛そもそも冬はアイテムが多い冬は、マフラーや帽子、手袋などのアイテムが増えます。どれも私には無理です。厳密には、私の場合、毛糸のマフラーや手袋、帽子はチクチクして難しいですが、ほかの素材なら受け入れられるものはあると思います。でも、寒くてもできるだけ体には何もつけないことを選びます。本当に極寒の地ならば、手袋も選ばざるを得ないのかもしれません。状況を比較して、耐えられるギリギリの選択をしているのかもしれません。こう書くと「着られるなら我慢して着ろ」ということになるのかもしれませんが、これがなかなか苦しいです。最近、感覚過敏のつらさをお伝えするいい例えを思いついたので共有したいと思います。外を歩いているとき、ふと、靴の中に小石が入っていることに気がつきます。痛い。気になる。すぐに止まって小石を取り除きたいが、人通りが多く急に立ち止まることができない。数歩頑張って歩いて立ち止まれる場所でようやく靴をぬいで小石をとる。感覚過敏の人の痛みはこの「靴の小石」に似ていると思います。数歩、数秒は我慢できるけど、ずっとはきつい。小石を入れながら歩き続ける苦しみを想像いただければと思います。そんな感じで、冬の服装は、ずっと苦しいです。体が冷え切って限界です外でも薄着ですが、家の中でも薄着です。私は冬でも家の中はランニングシャツとパンツだけです。エアコンはついていますが、それだけでは寒く、手足、特に足先は氷のように冷たく、親にもびっくりされます。布団の中に潜り込むことが多いですが、机で作業したり、勉強したり、ゲームしているときは肌が露出していて寒いです。布団をかければいいのでしょうが、体を起こしているときに布団をかぶると、ふとんが重くて苦しいのです。肌着もランニングシャツで、長袖タイプや冬の暖かくなる下着なども苦手で着られません。軽くて、着ていることが苦しくない服を早く作りたいなと思っています。ちなみに、靴下が最大に苦手な私は、冬、近所に出かけるくらいなら、裸足にサンダルです。感覚の刺激になるものは最初から避けてしまうのでしょう。Upload By 加藤路瑛クリスマスとお正月の食べ物出典 : 楽しみにしている人も多いクリスマス。クリスマスパーティーに呼ばれても私は食べられるものが少ないので、参加する直前は「食べられるものあるかな?」と不安になります。誰かの家のパーティーだと残してしまうことが失礼な行為だという気持ちがあるので最初から避けてしまいます。賑やかなパーティーも聴覚過敏のせいなのか疲れてしまいます。みんなが楽しんでいることを避けてしまうと、寂しい気持ちも生まれます。今は、私の過敏さや食べられないことを理解してくださる人たちと行動することが多いので、気が楽になりました。それでも、ケーキくらいはという気持ちはあるのですけどね。シンプルなショートケーキならいいなと思うのですが、ショートケーキの中でも食べられるものと食べられないものがあるので、自分の味覚にうんざりします。みんなと「美味しいね」と言いながら同じものを食べる。たったそれだのことができない自分に悲しくなるときもありますが、これが私なのだから、今は受け入れたいと思っています。いつか、味覚過敏で食べられるものが少ない人も、みんなと一緒に食卓を囲み、「美味しいね」と笑いあえる、そんな発明をしたいとも思っています。お正月の食事も悩みでした。おせち料理はまったく食べられません。子どもならそんなものだとも言われますし、親は食べられるものを出してくれますが、親戚と集まるときは「それだけしか食べないの?」とみんなに言われます。そして、美味しそうにたくさん食べる子どもを褒めます。食べられない私が劣等感を感じる時間でした。「たくさん食べる子はえらい」というのは給食を含め、ずっと感じていることです。「たくさん食べることがえらい。おいしそうに食べることがえらい」そういう見えない常識のようなものが、薄い膜のように食べられない人間を覆うのです。冬の世界はまぶしい私は視覚過敏はそこまで強くはないので眩しさで困ることは少ないのですが、私が運営する感覚過敏コミュニティ「かびんの森」のメンバーの中には、クリスマスや冬のイルミネーションが眩しいという方が少なくありません。誰もがきれいだと喜ぶものが喜べないのです。イルミネーションから顔を背けて歩く。雪の真っ白さにが目に刺さって痛い方もいるでしょう。太陽の光を乱反射させる雪が眩くて目が開けられない人もいるでしょう。冬は眩しい。夏にサングラスをしていても不審がる人はいませんが、冬、特に夜にサングラスをしていると怪しい人に見えます。イルミネーションだけの問題ではなく、夜のネオンや車のライトが眩しすぎて、季節関係なく夜もサングラスをしたいという人もいます。でも、周囲からの目「あやしい」と思われるのを躊躇して我慢している人もいます。最近は、透明度の高い遮光メガネもありますが、手軽さはサングラスですね。個人的には夜にサングラス、かっこいいとすら思います。そう思っても、当事者はいろいろ周囲の目を気にしてしまうものなのだということを、自分の経験や過敏な方々の体験から感じます。まとめ冬の感覚過敏あるあるを集めてみました。冬の服、冬のイルミネーション、冬のイベントなど、感覚過敏の困りごとは季節にかぎらずずっとありますが、冬ならではの悩みがあることをお伝えできたらなと思います。みんなが当たり前にできたり、楽しんだりすることが、感覚過敏によって少し寂しさやつらさを感じることもあるよということを知っていただけたら嬉しいです。でも、だからと言って、遠慮せずに楽しめる人は楽しんでほしいと思っています。いつか、テクノロジーの進化によって過敏な私たちもみんなと一緒に楽しめるものが増えたらいいなと思っています。執筆:加藤路瑛(監修者 井上先生より)感覚過敏をはじめ、食のアレルギーや手術の後遺症、トラウマなどさまざまな理由や原因によって、服装や食事などに困難がある人がいますが、そうした当事者が気を遣って我慢をしたり、言いづらかったりする場面は実は多々あるのではないでしょうか。食については、アレルギーによって食べられない人がることは理解されるようになってきましたが、感覚の過敏さによるものはまだ理解されづらいですし、視覚過敏によって強い日差しやイルミネーションなどがつらく感じる人もいます。私自身、目の手術をした影響で夏場はサングラスをしないとつらいことが多いのですが、園や学校へコンサルテーションや教育実習の監督で赴く際にサングラスをすることに気を遣ってしまう場面もあります。視覚や味覚についての困難は特に、今の社会状況ではまだまだ理解されづらいと思いますが、こうした状況があることを発信し、さまざまな感じ方をする人がいるということを発信していくことがとても大事だと思います。対人不安などからマスクをずっとつけている人がいますが、以前はマイノリティーでしたが、現在はみんなが付けるようになったこともあり、まったく問題がなくなったという例もあります。みんなで一緒にサングラスをつける日など、キャンペーンをしてみるのもいいのではないかと思います。
2022年01月05日子どもの小学校・中学校入学に向けて発達障害のある子の小学校、中学校への入学。子どもに合うのは通常学級?特別支援学級?特別支援学校?中学やその先の高校、就労など、将来に向けてもどんな選択をしたらいいのか悩んでしまいますよね。今回は入学、就学関連のコラムをまとめてお届けします。参考になるエピソードばかりなので、気になるコラムはぜひリンクをクリックして読んでみてください。通常学級?特別支援学級?クラスを決めるまでの1年間ADHDと自閉スペクトラム症の診断を持つむっくん。一見困難さを抱えているようには見えないのですが、見えない困難さもあり…。前半は進学相談スケジュールや面談の様子、後半は見学や進路決定など詳しく描かれています。小学校見学に学童に…説明会が盛りだくさん!自閉スペクトラム症のあるミミくん。説明会に行き、学校公開日に3校を訪問し…。それぞれの学校の特色や毎月のスケジュールの流れなど参考になりそうですね。ASD息子が授業に慣れるために行った「授業ごっこ」とは?自身にもASDがあり、小学校入学時、突然始まった「授業と勉強」に戸惑った経験のある母の丸山さとこさん。その経験から、息子のコウくんに「勉強ごっこ」を提案します。一体その内容とは…?進路を迷うことすらできないの?「特別支援学校」を受け入れるまでの母の葛藤自閉スペクトラム症と知的障害のあるぽぺろうくん。母のぼさ子さんは早い段階から特別支援学校への進学を想定していましたが、その結論を受け止めるまでにはさまざまな思いもあり…。発達凸凹長男くんの全7話の中学校受験物語!小6を迎えた自閉スペクトラム症のある長男くんが私立中学を受験!受験校選びから始まり、受験勉強、親子ゲンカ、志望校の変更などさまざまな出来事をどう乗り越える…?!全7話の読み応えのあるコラムになっています。発達障害のある小6息子が心配で中学校に相談したけれど…発達障害のある小6のリュウ太くん。母のかなしろにゃんこ。さんは中学生活が心配で進学先に配慮をお願いに行くのですが、校長先生から言われた言葉にがっかりしてしまい…。でもいざ入学してみると…?4月からの新学期に向けてさまざまな入学・就学関連のコラムをお届けしました。新学期まであとわずか!お子さんにとってより良い環境で新学期が迎えられることを願っております。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2022年01月04日もしかして感覚過敏?子どもの行動が気になる場合と対処方法Upload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホン子どもの行動が気になったときには、まず子どもの行動をよく観察してみましょう。観察するときは、特定の気になる行動が起こったときに、「どのような状況だったのか(時間、場所、その場にいた人、出来事)」と、「その行動に対してどうしたのか、その結果どうなったのか」という前後の状況を記入しておきます。そうすることで子どもの困りごとやその行動がどこからきているのか把握するための手立てとなります。また、行動をするときにはその背後に何らかの理由があります。子どもが気になる行動をとったときには、その行動がどのような刺激や、どのような理由によって引き起こされているのかを知ることが必要です。つまり、子どもがどのような種類、強さの刺激に対して過敏なのか、嫌悪感を感じているのか、受け取りにくいのかを周囲の大人が知っておくことが大事です。子どもの感覚の偏りを知ることによって、日々の子育てに役立てることができたり、幼稚園や保育園、学校の先生に具体的なサポートをお願いしたりすることができます。また、子どもの感覚の特性を把握するために、保護者が簡単に利用できる感覚のチェックリストもあります。このようなチェックリストを参照することで、気をつけておくべき子どもの行動特徴を知ることができます。判断がつかず心配な場合には、病院の小児科や、地域の子育て支援センターを訪れ、専門家に相談してみましょう。感覚過敏、感覚の鈍感さがある子どもへの3つの対応方法上で述べたように、お子さんの様子を注意深く見て、困りごとを発見することで、子どもの困りごとに対する適切な対処方法を考えることができます。感覚に過剰な偏りのある子どもの困りごとを軽減させるためには環境を整える方法と、個人にアプローチする方法があります。感覚の偏りは、刺激に対して過剰に反応する、または感覚に対する反応が鈍いというあくまで「状態」であり、病気とは異なります。医師の間でもその定義はあいまいで、処方箋や治療方法は確立されていないのが現状です。ここでは、感覚に偏りのある子どもの苦痛や困りごとを軽減するための方法についてお伝えします。1.嫌悪刺激を取り除く・別の刺激に変える子どもの感覚過敏を理解する上で重要なことは、「無理に刺激に慣れさせることは逆効果である」ということです。感覚過敏自体は、訓練や練習で急激に改善することは難しい場合もありますが、時間の経過や子どもの発達とともにある程度緩和されていくことがあります。刺激に嫌な経験が結びつくと、さらに刺激に対して嫌悪感を強めるようになります。無理に刺激を受けることを強要せず、軽減する方法を考えます。運動会やお祭りといった行事など、いつもと異なる環境で強い刺激が想定される場合・一部のみの参加にする・ピストルの音を子どもが受け入れることができる音(ホイッスルなど)にしてもらうなど刺激を軽減してもらうことも検討する触覚が鈍い子どもは、自分の感じることのできる刺激を過剰に求める「感覚探求」と呼ばれる行動をとる場合があります。例えば、なんでも触って回る、絶えず洋服を触っている、など落ち着きがなかったり、周りの人にべたべたして距離が近いなどの行動が例として挙げられます。このような落ち着きのない行動がみられる背後には、本人の脳に必要な感覚が十分満たされていないことがあるのではないかと考えられています。本人の感覚への欲求を満たせるような遊びや課題を提供してあげるのがよいでしょう。例えば、タオルや人形など、別の触っても構わないものを渡すことで、それらの感覚要求は満たされることもあります。その結果、子どもは落ち着きのない行動をとる必要がなくなり、安心してじっとして居ることが可能となります。また、痛みに対して鈍感なお子さんの場合には自ら訴えることが難しいので、共通理解や対応が必要です。2.ルールを決めておく自分で刺激を回避する方法を学ぶことも、感覚過敏による苦しみを軽減する一つの手段です。子どもと大人の間で、このような出来事が起こったときにはこうする、というルールを決めておくとよいでしょう。感覚が過敏である場合について考えます。例えば、教室が賑やか過ぎて落ち着かないときに、黙って教室を飛び出るのではなく、イヤーマフを自分でしたりして、適切な対処方法をとることができます。また、視覚が過敏な場合には、サングラスをかけたりすることにより回避することができます。「音がうるさいときには、イヤーマフをする」「外に行くときにはサングラスをする」というように子どもに決まりごととして認知させることにより、自ら刺激を回避できるようになる場合があります。これらをする場合、先生やクラスメイトなど周りの人たちの理解なども大事です。3.刺激が発生するメカニズムや、刺激が入ってくることを前もって伝える感覚過敏のある子どもは、思ってもみなかったタイミングで音や光が突然に入ってくる場合に、不安やパニックなどの不快な情動が特に起こることがあります。ゆえに、子どもを不安にさせないためにはこれから入ってくる刺激に対して、その量や質、そのタイミングを予測できるようにすることが大切です。また、なぜその刺激が生じるのか、刺激に直面した場合、どのように対応したらいいのかを理解することで、刺激に対する不安を軽減することができます。例えば触覚に偏りがある子どもの場合だと、突然に体に触れられると、驚いてパニックになってしまうことがあります。子どもの体に触れたり、水をかけたりする前に、あらかじめ声をかけるなどの工夫をしましょう。まとめ感覚過敏・感覚の鈍麻がある子どもは一人ひとりその困りの内容が違います。まずはお子さんの様子を注意深く見て、一体何に困っているのかを見つけ、適切な対応をすることがお子さんの苦痛の軽減・安心に繋がっていきます。イラスト/かなしろにゃんこ。
2022年01月03日大好評企画「児童精神科医 三木先生に聞いてみた!」まとめ第二弾漫画『リエゾン ーこどものこころ診療所ー』の監修や、発達ナビでもコラムの執筆などでおなじみのフリーランス児童精神科医の三木崇弘先生。今回はそんな三木先生とママコラムライターさんが対談した大好評企画「児童精神科医 三木先生に聞いてみた!」コラムをまとめてみました。第二弾でご紹介するコラムのテーマは「言い争いにならない伝え方」「不登校と将来」「進路問題」「障害告知」「子どもと親の距離感」「衝動性」などなど…気になるコラムはぜひリンクをクリックして読んでみてくださいね。当たり前が分からない!息子が理解しやすい伝え方は?おもちゃを拾ってくれた大人を見て「おもちゃとった!」と大騒ぎになってしまったむっくん。もしかして"当たり前"のことが分かってない?発達障害のある息子の癇癪。納得するのに必要なのは…!?小さなころから癇癪が起きがちなむっくん。ウチノコさんが家庭で行ってる対策や三木先生のアドバイスは役に立つものばかりです。中2発達障害長男。進学しても進路や勉強の悩みは尽きず…中学2年生のASDとADHDのある長男くん。理系の私立の中学に進学し、本人の環境にも合っているのに「進路を変えて定食屋になりたい」と言い出して…!?小5ADHD次男への障害告知のタイミング次男くんも小5になり、そろそろ障害告知をする時期が近づいているのかも…と思うスガカズさん。障害告知、障害受容などどのように考えていったらいいのか三木先生にお聞きしました。親は発達障害のある子どもをどこまでサポートしたらいいの?まだまだコウくんにはサポートが必要だと考えているさとこさん。でも一体どこまで関わっていいのかサポートの加減に悩んでいて…。衝動性からの「ついやっちゃった」への対応への理解と付き合い方ASD・ADHDのあるコウくん。理屈では理解していても「ついやっちゃった」「なんとなく」と衝動性で動いてしまうこともしばしば。そんなときに親としてできることとは…?三木先生のコメントには今後の子育てのヒントがたくさん三木先生の優しさと、ときに鋭さのあるコメントに「なるほど…!」と感じる方も多いのではないでしょうか。三木先生とママライターさんたちの掛け合いの様子も楽しい対談コラムです。各ママライターさんたちの描く三木先生の似顔絵も必見!
2022年01月02日新年あけましておめでとうございますUpload By 発達ナビ編集部新年あけましておめでとうございます。編集部一同、2022年がみなさまにとって素晴らしい一年となることを願っております!さて、2021年、発達ナビはさまざまな取り組みを行ってきました。ここで、この1年を振り返り、取り組みについてご紹介したいと思います。新たな連載ライターが12名加わり、発見や共感がたくさんあるコミックエッセイをお送りしてきました。気になるテーマでの特集も行いました。また、さまざまな分野で活躍されている当事者や保護者への取材も行い、将来に向けてのヒントになればとお届けしてきました。保護者向け有料サービス「発達ナビPLUS」はサイトデザインも一新、発達が気になるお子さんの子育ての助けとなる動画や教材、勉強会などのコンテンツを量・質ともに充実させてきました。好評のケース相談は毎月数百件寄せられており、各ご家庭に合わせたアドバイスを専門家監修のもとお届けしてます。発達ナビは、みなさまのパートナーとして、2022年もお役に立つ情報を届けてまいります。より使いやすく、みなさまにとってなくてはならない存在となれるよう、2022年も進化していく所存ですので、ぜひ今年も発達ナビをご活用ください。みなさまのご意見、発達ナビとの関わりをコラムに!1月26日は発達ナビの6歳の誕生日です。この日を記念して、ユーザーのみなさま参加型のコラムもリリースさせていただきたいと考えています!「発達ナビと出合って変わったこと」「こんな風に使っています」「こんな機能があったらうれしいな」発達ナビを活用いただくことで変わったこと、変わるといいなと思っていることをぜひお寄せください!いただいたエピソードやご意見は、6周年記念コラムでもご紹介させていただければと考えています。アンケートを実施しますので、ぜひご協力ください。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2022年01月01日年末年始にやりたい「アナログゲーム」や、その他いろいろなゲーム関連コラムをご紹介年末年始、ゆっくりと過ごす時間の多いこの時期はご家族でゲームを楽しんでみてはいかがでしょうか?発達障害のあるお子さんと一緒にやりたい、コミュニケーション能力を伸ばせる「アナログゲーム」やすぐに真似できそうなお手製カードゲームなどを紹介。オンラインプログラミングでのゲームつくり体験や、YouTube配信、休み期間だからこそ親子で考えたい「テレビゲームとの付き合い方」なども。気になるコラムはぜひリンクをクリックして読んでみてくださいね。「アナログゲーム」でコミュニケーション能力を伸ばす!ゲームを楽しみながらコミュニケーション能力を伸ばせる「アナログゲーム療育」をご紹介。伸ばしたいスキル別、年齢別など分かりやすく分類されているのでお子さんの特性に合わせたゲームを選ぶことができます。質問力が身につく!療育でも使われているカードゲームお子さんが楽しみながら「質問する力」を身につけられるカードゲーム「わたしはだあれ?」。年齢の離れた子ども同士で遊ぶこともできるので、きょうだいや帰省先のいとこたちと一緒に遊ぶのにもオススメです。子どもの「視覚優位」を活かしながら遊べるカードゲームドイツAMIGO社の「虹色のへび」は、美しい色のカードを並べてヘビを完成させるゲームです。そのカラフルさは自閉スペクトラム症のあるお子さんの特徴である視覚優位性を生かし、心を掴むのに最適です。お仕事カードからさまざまな仕事を知り、「なりたい自分」について考える!『7歳からできるみんなのハローワークゲーム』『7歳からできる みんなのハローワークゲーム』は、仕事をテーマにしたカードゲーム。105枚の「お仕事カード」と42枚の「とくちょうカード」、そして1〜3位の「順位カード」を使って行うゲームは、さまざまな職業との出合いと自分の興味に気づくきっかけになるのではないでしょうか。子どもの語彙力を伸ばすために。お手製のカードゲームで楽しくトレーニング2歳7ヶ月のときから1ヶ月に1回ほど言語訓練に通い始めたあーさん。おうちでもトレーニングを!と思いSAKURAさんは絵カードを作成。発達に合わせて絵カードの使い方が変わっていく工夫の様子が素敵です!ゲームについて親の悩みはさまざまで…寺島さん一家は家族そろってゲームが大好き!兄のタケルくんや妹のいっちゃんのゲーム遍歴など、寺島家のゲームとの付き合い方をご紹介いたします。ADHD息子とテレビゲームの付き合い方を考える5歳でテレビゲームデビューした、ADHDと自閉スペクトラム症のあるむっくん。ウチノコさんはむっくんの特性を考えて最初に「ゲームを楽しむためのルールつくり」を始めます。小1、ASDミミくんの初めてのゲームづくり体験!オンラインプログラミング教室で初めてゲームつくりを体験したミミくん。集中できる?楽しめる?ゲームは完成する!?その様子をtaekoさんにレポートして頂きました。発達凸凹きょうだい、なんとyoutuberデビュー!情報を得たり、ケンカトラブルを減らせる一方で、子どもたちが熱中しすぎてほかの活動の妨げになってしまうなど、悩みのタネになる面もある「YouTube」。そんな中、パパの提案で親子でYouTube配信を始めたスガカズさん一家。前半は配信のためのルールつくりや保護者のやるべき環境調整について、後半は配信で得られた変化や成長などを振り返っています。ゲームで家族のコミュニケーションをさまざまなゲーム関連のコラムをお届けしました。年末年始はご家族みんなでゲームなどをして、楽しい時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年12月31日感覚過敏のある人に起こる、それぞれの感覚ごとの症状Upload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホン刺激の感じ方は個々によりさまざまで、症状も多岐にわたります。感覚の偏りが引き起こす具体的な症状とはどのようなものなのでしょうか。ここでは、五感と呼ばれる視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚と、体の動きをつかさどる固有感覚、体のバランスをつかさどる平衡感覚について、それぞれに分けてお伝えします。視覚人は多くの刺激がある環境でも、注意を向けたい刺激を無意識的に選ぶことができます。しかし、視覚過敏がある場合には、全ての刺激情報を均等な濃さで受け取ってしまいます。ビビッドでカラフルな色のものや、たくさんのものがある場所は苦手なことが多くあります。視覚過敏でない人にとっては気にならないような光や白いものが、視覚過敏のある人にとっては目に突き刺さるほどまぶしいことがあります。蛍光灯の光や、テレビやパソコンの液晶画面、白い紙など苦手なことが多いです。授業中に席を離れてしまうなどの子どもの行動の背景には、感覚の偏りがある可能性があります。聴覚賑やかな場所にいると疲れやすいなどが聴覚過敏の症状です。聴覚過敏の症状が強い場合、耳をふさぎたくなるほど耳の奥が痛くなったり、頭痛が起きたりするような身体的な痛みを伴うことがあります。人によって気になる音は異なりますが、例として、女性の甲高い声や、休み時間のチャイム、合奏の音、掃除機などの機械音などが挙げられます。選択的に音を拾い集めるのが困難になってしまい、音の刺激に対して適切に注意を向ける処理ができないために起こります。一生懸命聞こうとしていても、たくさんの音が聞こえてしまうので本人は混乱しています。逆に聴覚への反応性が低い場合には、音を聞き取ることができないために、結果的に授業中に上の空になったり、呼びかけても応じなかったり、またテレビの音を大きくしたりといった様子が見られることがあります。嗅覚少しのにおいを過敏に受け取ってしまうことが嗅覚過敏です。少しのにおいでも過剰に受け取ってしまうあまり、ストレスが増加します。においに耐えられなくなって、吐いてしまうこともあり、ひどい場合には身体的、精神的ともに支障をきたすことがあります。逆に、嗅覚の鈍感さが見られる場合には、適切ににおいを感じることができません。においが分からないと、味も分かりにくくなるので、嗅覚と同時に味覚の感覚にも支障をきたすことがあります。味覚味覚に感覚の偏りが見られる場合、多くの人にとって美味しいと感じられる味がそうではないように感じたり、変わった味を好むようなことが見られることがあります。例えば、特定の味に対して、非常に強い不快感を感じたり、味が混じることを嫌がり、分けて食べたがったり、食べ物、飲み物の苦みや酸味を過剰に感じたりします。結果的に食べ物の好き嫌いの差が顕著で偏食の傾向が見られるようになったり、刺激的な味を好むゆえに調味料や香辛料で過剰に味付けすることがあります。食べ物に関する感覚は味覚のほか、におい、食感、色、といったさまざまな感覚が関係していることがあります。一人ひとり原因が異なるので注意が必要です。触覚触覚が過敏な場合には、皮膚に触れる刺激を過剰に感じて不快感が生じます。触ることができないものとしては、のりやねんど、スライムなどのぬるぬる、べたべたするものや、たわし、毛糸、洋服のタグが代表として挙げられます。また、自分から触ることは平気でも、人から触られることが苦手な子もいます。触覚に対する過敏さからくる反応として、以下のような例が挙げられます。・特定の肌触りの服を嫌がる/好む・爪切り、耳かきを嫌がる・自分からは人懐っこい関わりをするのに、触れられることを嫌がる・触ることのできないものがある(よって、遊び・活動の幅が制限される)触覚の鈍さが見られる場合には注意が必要です。というのも、触覚が鈍いときには、痛覚(痛みを感じる感覚)、温覚(温度を感じる感覚)も同時に鈍いことがあるからです。温度、身体的な痛みを感じることができないと、身体の異変に気がつかず、その結果適切な対処をできないこともあります。例えば、転んで怪我をしたときにも、本来ならば病院に行って手当をしなければならないはずなのに、その痛みや怪我をしていることに気が付かず、即座に適切な治療を受けることができない場合もあります。自傷行動は感覚の過敏性や鈍さから起こるだけではありませんが、自分が感じることのできる刺激を求めるあまり、血が出るまで腕を掻いたりかんだり、嫌な刺激から逃れたいために頭をぶつけるなどの自傷行動を行ってしまうこともあります。固有感覚固有感覚とは、筋肉の張り具合や関節の曲げ伸ばしを感じとる感覚です。自分の体の位置や動きを把握する役割があります。固有感覚につまずきがあると、筋肉に対する刺激を過剰に求める「感覚探求」が生じると言われています。固有感覚が直接の原因ではないこともありますが、以下のような行動があげられています。・強く足踏みをする・体の一部を動かし続ける(常同行動)・他人に思いっきりぶつかる、激しく関わる平衡感覚平衡感覚とは体のバランスをとるときに働く感覚で、主に姿勢のコントロールや体のバランスを保つことに関わっています。平衡感覚が鈍い場合には、体の揺れや傾きを自身で調節することが難しく、例えば、頭を振りながら走ったり、ぐるぐる回ったり、回る遊具やブランコなどが大好きで離れようとしなかったりすることもあります。逆に、平衡感覚が敏感な場合には、動きの刺激に対して恐怖心や不安を持ってしまうこともあります。例えば、ブランコや高い場所に行くことを嫌がったり、頭を傾けたり体が傾いたりするのを嫌がったりします。感覚の偏りの原因は? 発達障害と関係があるの?感覚に偏りが見られる原因はあいまいではっきりとは分かっていませんが、中枢神経系(辺縁系や視床下部など)における感覚情報処理の問題によるのではないかと考えられています。感覚の過度な偏りと発達障害には密接な関係があります。その中でも、自閉スペクトラム症(ASD)では、幼いころから感覚の偏りが見られることが多いと言われています。発達障害のある子どもは、刺激に対して適切な感情を生じさせる機能に特性があると考えられています。そのため本来は有害でない刺激に対して過度な恐怖、不安の感情を持つことがあります。また、適切に外部の刺激を取捨選択し、注意を向けたり調整することが難しいために、定型発達の子どもに比べて、過剰に反応をしてしまうことがあります。その結果、新しい活動を避けるようになってしまったり、多動傾向になったり、パニックになったり、周囲に対する不安感が強くなったりすることもあります。それらの行動の背景に感覚の偏りがあるかどうかを見極めることは大切なことです。このような刺激に対して、環境を調節したり、適切にコントロールしたりすることができれば、本人の不安やストレスが軽減できるようになります。※記事中のような行動があったとしても、感覚の特性だけが原因とは限らないので注意が必要です。専門機関で相談されることをおすすめいたします。イラスト/かなしろにゃんこ。
2021年12月30日年末年始の帰省・旅行・カミングアウト問題などご家族で帰省される方も多い年末年始。帰省すると顔を合わせることになる祖父母や親族に、子どもの発達や特性について、どのように説明したらいいのか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。今回は、そのようなときのヒントにもなる、祖父母との付き合い方やカミングアウトの体験談、また帰省時の移動での工夫など、発達が気になる子どもとの帰省や旅行に関するお役立ち記事をまとめました。気になるコラムはぜひリンクをクリックして読んでみてください。初めての飛行機での帰省にパニック…!?「お出かけ」がストレスなむっくん。不安が高まるとパニックを起こしてしまうことも…。初めての飛行機での帰省。移動時の不安が少しでも減らせるように母のウチノコさんが作成したものとは…?社会のテストが赤点だらけの息子が「旅育」で変わり…社会が苦手なリュウ太くん。地理にもまったく興味がなかったのですが、高校生になったころ、突然小さいころの旅の記憶を思い出し…。自閉スぺクトラム症長男、帰省での心の成長長男くんの精神安定剤はピンクのボール。家の中で長男くんとピンクのボールは常に一緒です。帰省のときに母のシュウママさんはそんなピンクのボールを荷物の中に入れ忘れ焦りますが、長男くんがとった行動は意外なもので…。新幹線での長時間移動。パニックにならないためのコツとは長時間移動での「ストレスからの総崩れ」。ASDとADHDのあるコウくんの母、丸山さとこさんの実体験をふまえた”一工夫”はすぐに真似できそうなものがたくさん!わが子の癇癪以上にストレスだった義理両親との関係グレーゾーンの娘さんの子育て。思った通りにいかずに葛藤している母のとまぱんさんは、義両親からいろいろと口を挟まれるのがつらくて…。避けられない親族へのカミングアウト。どう伝えたらいい?「子どもに障害があり、帰省して親戚に会うとき、障害について話した方がいいのか、またどう説明したらいいのか分からない」という質問を知人から受けた立石さん。知的障害と自閉スペクトラム症があるお子さんを育てるご自身の体験をふまえたお話や、監修の小児科医・鈴木先生からのアドバイスなど、とても参考になります。ASD長男4歳を連れての長距離帰省!親は大忙しだったけれど長男けんとくんが自閉スペクトラム症と診断を受けて半年。ゆきみさん一家は長距離移動での帰省を試みます。移動手段、偏食や移動の対策など、苦労と工夫の様子が描かれています。息子よりも親が楽しみな保育園行事。祖父と一緒に行ってみると…2歳ごろから発達が気になり始めたまるさんの息子くん。保育園1~2年目は保育園行事がよくわからない感じだったけれど、3年目の今年は…?楽しみにしていたじぃじと一緒に行ってみると…。家族みんなで楽しい年末年始を。長距離移動や、両親・義両親・親戚などとの関わりなど、年末年始はいつもと違うシーンがたくさん!親も子どもも、楽しいけれど疲れてしまうこともありますよね。コラムの中のヒントが少しでもそんなストレスを解消できますように。ご家族みんなで楽しい年末年始をお過ごしくださいね。
2021年12月29日心理的プレパレーションとは?Upload By 発達障害のキホン心理的プレパレーションとは、心理的ストレスを軽減し、自分にされる処置を受け入れるための心理的準備、環境づくりのことを指します。分かりやすい言葉や道具を使って心理的プレパレーションを行うことで、子どもが治療や検査を受けやすい状況や環境をつくることができます。・子どもに対して、認知発達に応じた方法で病気・入院・手術・検査・その他の処置について説明を行い、不安・恐怖・混乱を最小限にすること・年齢や理解力に応じて、おもちゃ・絵本・紙芝居などのツールを使用・子どもや親の対処能力を引き出すような環境および機会を与えること・海外では「チャイルドスペシャリスト」という専門家が担当プレパレーションには、・子どもに情報を正確に伝えること(嘘はつかない)・情緒的表出を後押しすること(子どもの気持ちを表出できる機会をつくること)・病院スタッフと信頼関係を築くこと(一緒に頑張ろうとする気持ちを伝えること)の3要素が重要であるといわれています。言葉だけでなく、おもちゃやジェスチャーなど視覚的なツールを用いながら、子どもの発達段階に応じた理解しやすい方法でコミュニケーション取っていきます。子どもの不安や恐怖心を和らげるだけでなく、「頑張ろうと思う気持ち」を引き出すような環境を与えることができます。また、もし不安や痛みで泣いたり叫んだとしても(これも大切な自己表出)、自分が「頑張れた、乗り越えられた」という自己肯定がその後の生活に活かされることも、プレパレーションの大切な役割だといわれています。プレパレーションはなぜ必要なの? どんなことをするの?まだ医療に対する知識もなく、言葉の理解もあまり進んでいない子どもに対してなぜ十分なプレパレーションが必要なのでしょうか。ここでは、プレパレーションの必要性や行うにあたって心がけるべきこと、手順などを解説します。子どもは、自分の身に突然知らないことが起こると、恐怖に怯えたりパニックに陥る場合があります。特に病院という特殊な環境の場合、普段は大丈夫なはずの子どもでも恐怖心が強くなるものです。子どもがパニックに陥ると、たいていの場合暴れたり叫んだり、逃げ出そうとします。大人数人が取り押さえて検査を行っても、データが上手く取れない、暴れすぎて適切な治療ができないなどの結果に終わることもあります。また、失敗・恐怖体験だけが残ったり、再度痛い思いをしなければならないなど、不安が増すことにもなりかねません。十分なプレパレーションを行い、子どもがしっかり理解し納得したうえで検査に臨むことで、検査をスムーズに行えるだけでなく、子どもの成功体験にもつなげていけます。特に繰り返し医療処置を受けなければならない慢性疾患を持つ子どもには、プレパレーションはとても重要となります。Upload By 発達障害のキホン3歳前後~6、7歳くらいまでの子どもは、見立て遊びやごっこ遊びを通して物事を理解するため、ぬいぐるみやおもちゃを使ったごっこ遊びの中で説明していきます。ぬいぐるみと自分を同化させ、「ぬいぐるみも頑張ったから自分も頑張る」と子どものやる気を引き出すことにもつながります。この時期の子どもは自分自身の立場からしか物事を見ることができないため、子どもの視点に立った内容の説明をする必要があります。7歳前後~11歳くらいになると多くの子どもはごっこ遊びなどをしなくても物事を理解することができるようになります。しかしまだ仮定の話が理解しにくいため、未体験のことを言葉だけで理解するのは難しい時期です。この場合、点滴をつけた人形を見せたり、紙芝居や絵本あるいは動画を利用すると理解しやすくなります。また、プレパレーションをしている中で、子どもは「嫌だ」「痛い」などの思いを表出します。それに対し「嫌じゃない」と否定したり、「痛くない」と嘘をつくのではなく、「嫌だね、でも元気になるためにするんだよ。だから一緒に頑張ろう」「チクッと痛いけど、病気を治すためには大切で必要なんだよ」など、共感しながら嘘をつかず話すことが大切です。プレパレーションは処置前に行う説明や配慮だけではありません。来院前から帰宅後まで順序立てて継続的に行われ、これを「プレパレーションの5段階」といいます。ステージ1来院前に、親が子どもに情報を与えます。効果的なプレパレーションを行うためには、医師や看護師と保護者の情報共有や協力が重要となります。ステージ2入院や処置などの説明(オリエンテーション)をする中で、子どもの状態を観察したり理解度を知ることで、その子に適したプレパレーションの方法を模索します。ステージ3実際にプレパレーションを行い、医療行為の説明を行うだけでなく、励ましや安心感を与えます。ステージ4実際に医療行為をする中で、おもちゃや人形などのツールを使って遊びながら子どもの気を紛らわせます。ステージ5治療後や退院後の時期に、外来や自宅での遊びを通した支援によって、子どものケアをします。参考:「小児保健とプレパレーション--子どもの力と共に」より プレパレーションの5段階について(順天堂大学医学部 田中恭子)| 小児保健研究 = The journal of child health参考:プレパレーションの実践に向けて 医療を受ける子どもへの関り( 神戸市看護大学 研究代表者 蝦名 美智子)参考:プレパレーションについて(筑波大学発達支援看護学研究室)発達障害がある子どもの場合定型発達児を対象としたプレパレーションは少しずつ浸透してきているものの、発達障害がある子どもに対するプレパレーションについては医療現場にもあまり周知されず、診察や治療に苦慮しているという現状が多く見受けられます。発達障害がある子どもにはどのようなプレパレーションが必要なのかを考えていきます。文字が読めない、発語がないなど、口頭説明では対応できない子どもに対しては、視覚的なツールが有効です。たとえば各検査をミッションと見立て、写真入りの手順カードとミッションカードを使います。「今日は大切な任務があります。これを見て、ミッションをクリアしてきてね(できたらシールを貼る、など)」と伝えます。このような工夫をすることで、文字や言語が分からなくても写真やイラストで理解しながらすべてのミッション(検査)を終えることができます。また、終えたら親や医師、看護師から賞賛と激励を得ることができるという流れをつくることで、「処置を受けてみよう」という子どもの動機づけにもなります。発達障害がある子どもは、物事の見通しを持ちにくかったり、慣れないことへの不安が大きく、パニックを起こすケースが多く見られます。見通しを持たせるためのプレパレーションが必須ですが、抽象的な説明では理解できない場合もあります。たとえば注射をする際、「注射をする意味」「針を刺してから終わるまで何秒程度かかるのか(具体的な数字で)」「たくさん予告してから針を刺す」など、分かりやすく具体的な言葉で説明し、かつ終わりを明確に伝えること大切です。発達障害のある子ども多くは、感覚過敏を持っているといわれています。注射や点滴など痛み、あるいは心電図などひんやりする感覚を伴う処置は、過敏性が感じ方に影響したり、不安の高まりから過敏性がより増して処置そのものを嫌がるようになります。口頭やツールを使った説明だけでなく、「なるべく細い針で行う」「麻酔クリームやパッチ使用する」「温めたタオルで肌を拭いてから行う」など、感覚が増すことを極力抑えるやり方を本人に選択させる方法もあります。こだわりや過敏性などから、処置中に動いたり、起きて歩き回ったり、突如暴れだすなどのリスクがつきものです。「こういう状況になると興奮してしまう」「見通しが立ちすぎると不安になるので、最小限の説明でいい」など、子どもが不安を覚えやすい、あるいは怒りのスイッチが入ってしまう状況をその都度医療者に伝えることも大切です。医療者と保護者のやりとりの中で「子どもの拒否・興奮を避ける方法の模索」をしていきます。発達障害は個々によって特性が異なるため、本来なら詳細なアセスメント行い個々に合ったプレパレーションを行うことが理想的ですが、現在の医療現状からは困難であると考えられます。しかし、具体的で簡潔な言葉で説明する(難しければマニュアルなどで対応)、視覚的なツールや痛み・苦痛を軽減できる器具を使うなどの支援を中心とした汎用性の高いプレパレーションであれば、医療関係者の負担も少ない方法で行えるかもしれません。参考:小児科外来における発達障害児へのプレパレーションの現状とその効果に関する検討(鳥取大学 鳥取大学大学院 医学系研究科 井上 雅彦)|厚生労働科学研究成果データベース (MHLW GRANTS SYSTEM)プレパレーションの具体例治療や手術に臨む、一人で入院する子どもの不安や痛みを少しでも和らげるにはどのような方法が行われ、どのような工夫がされているのでしょうか。いくつかプレパレーションの具体例を紹介します。まずはどこで受けるのか(病室か処置室か)実際部屋を見せたり、パペットやぬいぐるみを使ってどのようにするのか(どのような姿勢で受けるのか、お母さんに抱っこしてもらうのかなど)、腕のどこに刺すのか、どのような感覚か(アルコールで拭くとヒヤッとする、刺すときチクっとするなど)、 どのようなスタイルでするのか(寝るのか、お母さんに抱っこしてもらうのかなど)を順を追って視覚的に説明します。そして、子どもにしてほしいこと(泣いてもいいけど、このときは手を動かさないでね、など)も伝えます。Upload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホン参考:プレパレーション人形『プレパちゃん』監修:田中恭子国立研究開発法人 国立成育医療研究センター こころの診療部児童・思春期リエゾン診療科製造・販売:㈱内藤デザイン研究所CTやMRIを受ける前の点滴や服薬で眠くなること、機械までの移動(抱っこかストレッチャーで寝て行くか)、実際の撮影時に経験すること(ゴンゴン音がする、機械が動く、赤い点が動くなど)、子どもに協力してほしいこと(検査が終わるまでご飯が食べられないこと、「終わりだよ」と言うまでじっとしていてほしいことなど)を、子どもの気持ちに寄り添いながら説明します。このとき、CTやMRIのミニチュアモデルと小さな人形を使って視覚的に説明すると効果的です。Upload By 発達障害のキホン参考:ぷれぱらウッド吸入中、子どもがじっと座っているのは難しいもの。また、吸入器を当てるのを嫌がる子どもも少なくありません。事前に吸入器具を口に当てる練習をしたり、ぬいぐるみに吸入器を当てて「何分間だよ」と実際にかかる時間を体感します。吸入器にキャラクターを飾るなどの工夫をしている病院もあるようです。こうしたプレパレーションを行うことで、吸入を受け入れるようになるだけでなく、ゆくゆくは自分でできるようになっていきます。手術室は特殊な環境で、子どもの緊張や不安が高まってしまうため、手術室入室体験を行う病院もあります。手術前の麻酔や酸素投与でマスクを使うこと、点滴やチューブが入ること、子どもに協力してほしいことを、実際使う器具やプレイモービル(実際の手術室の模型)やぬいぐるみやパペット、絵本や動画を使って視覚的に伝えます。また、子どもにとって「手術が終わる=手術前の何もない状態」という理解なので、手術が終わっても、実際は点滴がついていたり、ドレーンが入っている状態であることもしっかり伝えます。病室だけでなく、処置室や手術室に移動する際の廊下やエレベーターなどに親しみやすいキャラクターの模様を施したり、照明を柔らかくするなど、子どもが少しでも明るく前向きな入院生活を送れる環境をつくります。また、病院によっては子どもがのびのび遊べるプレイルームを設置したり、節句やクリスマスなど季節ごとのイベントに力を入れているところもあります。検査や治療、手術が終了しても、その後の経過観察や自宅で行う治療(吸入など)の訓練など、日常生活で注意しなければならないこともあります。子どもが「痛かった」「怖かった」という気持ちから処置に対する考えを歪めてしまわないよう、処置前に行ったプレパレーションを継続的に繰り返すことで子ども「頑張ろう」という気持ちを持続することができます。また、子どもは退院後急に日常生活に戻ることに戸惑う場合もあります。医療者は入院中の頑張りをしっかり褒めつつ、家に帰ったらどのような生活をするとよいかを話します。処置や退院などで長期欠席したあと、初めて登校・登園する日は保護者が付き添い、学校や園の先生に、今の状態や気をつけるべきことなどを話すことも大切です。保護者が子どもに治療や検査について伝える際、不安を和らげるというより、「病院へ連れて行くこと」を目的とした説明が行われることが多いのが現状です。医療者が処置に関するパンフレットや絵本などのプレパレーションツールを作成し事前に保護者へオリエンテーションを行う、実際使う器具(酸素吸入器など)や疑似ツール(聴診器のおもちゃなど)を貸し出して、自宅で触ったり遊びの中で親子で治療について話し合う機会を促すなど、「保護者ができるプレパレーション」にも重きを置いています。参考:プレパレーションの実践に向けて 医療を受ける子どもへの関り( 神戸市看護大学 研究代表者 蝦名 美智子)プレパレーションが必要だと感じながら、実施が困難と感じている病院や医師、看護師が多いのが現状です。たとえば「腎生検・心臓カテーテル検査」などの難しい検査は、子どもの発達を踏まえた特別な知識や技術が必要になってきます。特に混合病棟(さまざまな年代や科が一緒になった病棟)では、「子どもの状態を熟慮し、どのような言葉や方法で説明するかを考える」ための時間やマンパワーが不足しているのが現状です。プレパレーションは、子どもの認知発達に関する知識に加えて、「子どもの質問に分かりやすく答える」などのコミュニケーション技術も必要であるため、医師や看護師に取ってもハードルが高い作業といえます。こうした課題を踏まえ、小児患者に対するプレパレーションの実施頻度が増えるような対策や取り組みが望まれます。参考:「小児保健とプレパレーション--子どもの力と共に」より プレパレーションの5段階について(順天堂大学医学部 田中恭子)| 小児保健研究 = The journal of child healthまとめプレパレーションには、「子どもの知る権利を尊重する」「子どもの自信とやる気を引き出す」という意味も込められています。プレパレーションを行うことは、子どもの恐怖心や不安感を軽減したりスムーズに検査が受けられる環境をつくるだけではありません。たとえ何度か失敗したとしても、経験を重ねていくことで「上手に検査を受けられた」「次も大丈夫」という自信につなげるという大切な役割があります。また、子どもの成長した姿を見る親の喜びや、「今後も安心して医療措置が受けられる」という安堵感を得ることもできます。プレパレーションを行うことによって、子ども本人だけでなく、親や医療従事者にも大きなメリットをもたらすことが予想されます。今後どの医療機関においても、プレパレーションが浸透していくことを願うばかりです。
2021年12月28日神奈川県児童発達支援事業所Upload By 発達ナビ施設情報てらぴぁぽけっと相模原駅前教室では、一人ひとりに合わせたプログラムを組み、マンツーマンでの支援を提供しています。明るく・楽しく・笑顔で・丁寧に。お子さんがしっかりと着実に社会に適応できることを目指しています。また体幹の力を強くし姿勢をよくするリズムウォーキングというプログラムにも力をいれています。こちらでは、「小集団プログラム」で社会的場面での成長のヒントを見つけ、「個別支援」では個々の目標や特性に応じて社会生活を送るうえでの課題にチャレンジすることができます。課題ができるようになってきたら、一人ひとりのペースでその次の段階に挑戦することができます。また、その日行った支援を保護者と連携し、ご家庭でも同様の課題を意識した関わり方ができるようにしています。神奈川県の児童発達支援事業所をもっとみる千葉県児童発達支援事業所Upload By 発達ナビ施設情報てらぴぁぽけっと南柏教室は、JR常磐線・南柏駅から徒歩30秒の距離にある2022年2月オープンの施設です。この施設では、お子さんの可能性をあらゆる方向から探し出し、今後の目標を保護者と支援者で一緒に決めます。小さなステップで目標の実現へ向けて小さな成功体験を幾度も体験し、お子さんの成長を促進します。保育士免許、教員免許、言語聴覚士、作業療法士、強度行動障害の資格を取得したスタッフが在籍。家庭でのセラピーの実践、幼稚園や保育園などの大きな集団でも練習したことができるようサポートをする施設です。Upload By 発達ナビ施設情報2021年12月にオープンしたてらぴぁぽけっと市川行徳教室は、東京メトロ東西線・行徳駅から徒歩4分ところにあります。お子さんが必要な力を、スモールステップで1つずつ身につけられるように、教員免許・公認心理師・介護福祉士の資格を取得したスタッフがプログラムを考え、マンツーマンで支援。お子さんや保護者の困りごとに合わせ、個別のプログラムでスタッフと一緒に練習し、徐々に大きなセラピールームで3~4人の小集団の中で実践することができます。「集団ではできなかったことも、先生と一緒に、小さく・たくさん練習することで確実にできるようになっていく」という機会を提供している施設です。千葉県の児童発達支援事業所をもっとみる茨城県放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報やるきゃんつくば校は2021年11月に開所した就労準備型の放課後等デイサービスです。中高生を中心に、就労に向けた、PCスキル、社会のルールやマナー、コミュニケーショントレーニングなどを授業形式で支援を提供しています。プログラミングの知識を持つスタッフ、教員免許を持つスタッフ、子育て支援経験者、保育士など、専門知識を持ったスタッフが在籍しています。通信制高校在籍の方の日中利用や不登校のお子さんが登校できるようになるまでの日中利用も受け入れており、必要に応じて通学支援や学校連携も行っている施設です。茨城県の放課後等デイサービスをもっとみる愛知県児童発達支援事業所Upload By 発達ナビ施設情報フォレストキッズ中央教室では、支援の三本柱「身体技能の獲得(感覚統合)」「知識の獲得(学習支援)」「社会性の習得(SST)」を基盤に、お子さんに適したオーダーメイドの支援を実践しています。支援は1コマ90分で行い、アセスメントに力を入れています。保護者からの情報や指導員とのやりとりをもとに、一人ひとりに応じた課題の設定や到達目標を決定しています。またこちらの施設では、お子さんが楽しく遊べるような感覚で取り組める課題の中に、成長する仕掛けを盛り込んでいます。大学や専門機関で研修を受けたスタッフが在籍し、ESDMやTEACCH、ABAなどの療育プログラムを受けることができます。Upload By 発達ナビ施設情報児童発達支援まのまの、の「まのまの」とは「手と手」のこと。お子さんとスタッフ、保護者とスタッフの間はもちろん、保護者同士やお子さんと保護者のみんなで「手と手」を取り合っていける場所づくりを目指しています。こちらでは、子どもたちそれぞれの特性に合った支援計画を立て、さらに成長に応じて1ヶ月ごとに支援プランを作成し提供しています。また、療育へ言語聴覚士や英語外部講師の参加を通し、よりたくさんの大人の目で見守っていける環境づくりをしています。大学や専門機関で学び、その後現場で保育、療育に携わった経験のあるスタッフが支援。日々の育児の相談や些細な疑問も聞くことができる施設です。愛知県の児童発達支援事業所をもっとみる大阪府放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報2021年7月に施設をリニューアルした、ハイチーズは多くの人が生活するマンションテナント内でソーシャルスキルトレーニングなどの療育を提供している放課後等デイサービスです。こちらの施設では、周囲の施設と連携し、イベントを開催したり、社会的なルールやマナーのほか、外国語にも興味をもって参加できるよう、簡単で楽しめる、外国人講師による英会話レッスンを随時実施しています。土曜日や祝日には、お子さんが楽しめるイベントも。現在、こちらの施設は利用者募集中です。Upload By 発達ナビ施設情報放課後等デイサービス スーパーきっずは、一人ひとりの個性に合わせた計画を立て、完全個別の学習支援を提供している施設です。スモールステップで学習を提供できるベテラン講師や、絵画、工作、英語レッスンを提供できるスタッフ、ピアノやリトミックを提供するプロの先生が在籍しています。この施設では、オリジナル教材「ながはまメソッド」を活用。運動や音楽リズム、工作などさまざまな方面から働きかけ、「ほめて、みとめて、はげまして」多くの成功体験からお子さまの自己肯定感が上がる支援を行っています。大阪府の放課後等デイサービスをもっとみる兵庫県児童発達支援事業所Upload By 発達ナビ施設情報Lii sports studio 神戸元町は、2022年1月以降OPEN予定の施設です。デジタルスポーツを活用した支援やマンツーマン支援、感覚統合・ビジョントレーニングなどを行います。楽しくスポーツすること、さまざまなアプローチを通して、運動能力を高め「強くて健康なカラダ」「いろんなことにチャレンジするココロ」「仲間と目標を達成するヨロコビ」を育みます。スタッフには、保健体育教員免許を持つスポーツ指導のプロのトレーナー、保育士など専門性の高いスタッフが在籍。マンツーマンやスモールグループでの活動を選ぶことができる、一人ひとりに寄り添った支援を提供する施設です。兵庫県の児童発達支援事業所をもっとみる「もっと施設の情報を詳しく知りたい!」「見学をしてみたい!」と思ったら、WEBからもお問い合わせが可能です。施設情報ページでは、掲載されている施設の情報を地域ごとに検索して見ることができますよ。
2021年12月27日大好評企画「児童精神科医 三木先生に聞いてみた!」まとめ第一弾漫画『リエゾン ーこどものこころ診療所ー』の監修や、発達ナビでもコラムの執筆などでおなじみのフリーランス児童精神科医の三木崇弘先生。今回はそんな三木先生とママコラムライターさんが対談した大好評企画「児童精神科医 三木先生に聞いてみた!」コラムをまとめてみました。第一弾でご紹介するコラムのテーマは「癇癪」「親の心の傷」「きょうだい児問題」「学校トラブル」「将来の方針」「コミュニケーション問題」などなど…気になるコラムはぜひリンクをクリックして読んでみてくださいね。「怒る」の定義が違う?条件反射のように癇癪を起こす息子への対応方法感覚過敏もあり、刺激に対する不安や癇癪の多いむっくん。本人の恐怖心や不安を取り除くために、親ができることとは。ポイントは『屁理屈』!? 本人が怒られたと感じないための言い回しとは母のウチノコさんの言葉の意図が伝わらず、結果怒られたと思い癇癪につながることのある息子・むっくん。そんなむっくんが納得するのに必要なのは「屁理屈」だった!?発達障害児育児をしている方に読んでほしい。自分自身を大切にするために。育児を通して自分の心の傷に気づく瞬間ってありませんか?自分で自分を癒していくためのヒントがもらえる、そんな素敵なコラムです。きょうだい児の気になる「誤学習問題」について4人きょうだいのスガカズさん一家。障害児ときょうだい児両方の子育てをする中で気になる「誤学習」についての解決方法や確認方法など、参考になるアドバイスがたくさんです。きょうだい児の精神的フォロー、どうしたらいい?長男・次男に発達障害があり、その下の長女・三男が定型発達。障害のある子に手がかかってきょうだい児がガマンしすぎていないか心配…。そんなきょうだい児へのフォロー方法などを三木先生にお聞きしました。発達障害のある子の学校トラブル、先生への相談の仕方は?ADHDのある次男くんが小1のときの出来事です。親と学校側の連携がうまくいかなかった経験のある母のスガカズさん。あのとき、一体どんな対応すればよかったの?「長い目で見て方針になるもの」が知りたい!ASD親子に必要なのは「失敗への準備」?どうしても「現時点での課題」に目が行きがちだと話すコウくんの母、丸山さとこさん。長期的な方針が知りたいと三木先生に聞くと、鋭くも現実的なアドバイスが返ってきて…。成長はしているけれど…ASD息子のコミュニケーション問題以前より落ち着いて会話ができるようになってきたASDとADHDのあるコウくん。ですがまだまだコミュニケーションの課題は多く…。各ご家庭、さまざまな悩みを抱えているけれど三者三様、さまざまなお悩みがありますが、三木先生の回答やお話の中で解決の糸口が見つかっていく様子が素敵ですね。参考になる対応方法や考え方などもたくさんです。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年12月27日カードゲーム「こまった課?」について「こまった課?」は、2人以上6人までで遊ぶカードゲーム。役所の「こまった課?」の職員と、発達障害による特性や先天性・後天性の疾患などがある方をモデルとした、社会生活での困りごとがある住人に分かれてプレイします。住人カードを引いた人は、その住人になりきって、役所の職員の質問に答えます。場面カードを引き、「この場面では困ることがありますか?」と住人に聞きます。役所の人は、その答えによって、相手の住人が「誰」なのか、キャラクター名を当てます。さらに、ヒントカードを使って、その住人が困っていることの解決策を楽しく探ります。今回は、「こまった課?」の企画・制作に携わった株式会社デジタル・アド・サービスのお二人にお話を伺いました。竹内悠さん:ビジネスデザイン部サービス推進リーダー コピーライター・コンサルタント。企業のビジョンや理念など、組織にかかわることばづくりからその実践に向けた取り組みまで、継続的な支援を行う。藤井さとみさん:ビジネスデザイン部 デザインリサーチャー。大学卒業後にコピーライターとして入社。現在は組織やブランド、サービスのコンセプトをユーザーやクライアントと共創するリサーチャー。Upload By 発達ナビ編集部発達の特性について知ることは、想像力を広げることになる発達ナビ 牟田暁子編集長(以下――)カードゲームで人々の個性・特性を理解するという発想が新しいですが、なぜデジタル・アド・サービスさんのようなデザイン会社が、こうしたゲームをつくったのか、開発のきっかけから教えてください。竹内悠さん(以下、竹内):私はふだん、高齢者福祉や障害福祉施設のビジョンづくり、パンフレットやホームページなどのコミュニケーションツールの制作に携わっています。そこから、障害や特性のある人々について、何か一般の人の理解につながるようなことができないか、という発想がありました。障害福祉に最初に私が仕事で関わったのが、「こまった課?」の共同開発・監修者である、障害者支援施設 ひだまりの里きよせ(社会福祉法人東京都手をつなぐ育成会)でした。パンフレットを制作したのですが、ひだまりの里きよせが開設する前にお話を伺いに行ったときに、すごく緊張していたことを覚えています。当時は、知的障害や自閉症(当時の呼び方)といった言葉も、聞いたことはあってもよく分からなかったし、「障害者施設」ってどんな場所なんだろう、どういう人たちがいるんだろう…と思っていました。職員の方にいろいろお話を伺うときに、「こんなこと聞いていいのかな?」という不安感、緊張感もありました。でも、一緒にお仕事をさせていただくようになって、少しずつ知っていくうちに、漠然とした不安感は、だんだんに自分の中で減っていきました。そういう体験があったから、「よく知らなくてなんだかこわいから、関わらないでおこう」ではなく、違う視点をもてる体験を社会の中に増やせたらいいな…ということを、少しずつ考えるようになっていきました。知るという機会を、施設の紹介パンフレットをつくるといったこと以外に、もっと違うアプローチから、何かできないかなと思うようになっていったのです。――知る、ということは大事な一歩ですよね。藤井さんは、ご自身ではそういう視点が変わるような体験、これまでに何かありましたか?藤井さとみさん(以下、藤井):私は、入社前は福祉とほとんど関わりのない大学生でした。入社2年目ごろから、竹内とともに福祉関係の仕事をするようになり、障害のある人について少しずつ知っていくようになりました。あるとき、買い物をしていたら、レジ前で大人の男性が騒いでいる様子を見かけたのです。そのときに、「何か気に入らないこととか、いつもと違うことでもあったのかな」と思ったのですが、そういう風に考えられるようになったのは、障害福祉に少しでも関わる仕事をしているからだ、と気づきました。騒いでいる人を見て、「なんだかこわい」ではなく、「なぜ騒いでいるのかな」と疑問に思うのは、大学生のころの私にはなかったこと。仕事で知ったことや経験したことから、その人の背景を想像するようになっていました。Upload By 発達ナビ編集部竹内:私の場合は、そうしたくっきりしたエピソードがあるわけではありませんが、福祉施設の方々やその利用者さんと接するうちに、徐々に状況のとらえ方の変化が起きていった感じです。たとえば、会話の中で「みんなが」という言葉を使うときに、自分の周りだけの視点で「みんな」と言ってしまっていないかな?というように、視点が変わっていく体験があります。私も藤井もこういう体験を経て、多様な人がいる社会に対して、デザインで「伝える」というデザイン会社としてのアプローチで、なにかできたらと思うようになっていったことが、「こまった課?」をつくることになった背景にあります。「カードゲーム」で遊ぶという体験のなかで知ってほしい――こうした啓発活動には、いろいろなアプローチがあると思いますが、「カードゲーム」という形になったのは、どういう発想でしたか?竹内:障害について、学ぶ・教えるという切り口よりも、遊ぶ・楽しむというアプローチがあってもよさそうと思い、それならゲームがいいのでは?という発想でした。藤井はゲームや漫画が好きで、まずは世の中にあるゲームにどんなものがあるか、いろいろなものを取り寄せてみていくうちにテーマに合った形として、カードゲームとなりました。――キャラクター設定がよく考えられていると思いましたが、これは共同開発した「ひだまりの里きよせ」の方々の発案もありますか?竹内:はじめは、ひだまりの里きよせのみなさんとお仕事するなかから、「こういう特性のある方がいますよ」とか、「この特性によってこういう場面が起こりやすいです」という話を聞いた中から考えました。そのほかにも本や資料、ブログなどもいろいろと読みました。それこそ、発達ナビも見ていました。そうした中から、特性をリスト化してキャラクターの名前を考えて、その段階で一度、ひだまりの里きよせの職員の方々や、臨床発達心理士の方などに相談しました。その中で、こういう住人さんもいたほうがいいのではなどのアドバイスをもらって、最終的には27人の住人になりました。原案は、自分たちで絵を描いたりしてつくったカードを机にバーッと広げてみて、重複したり、抜け落ちていそうな住人さんの特性を考えたりしながらセレクトしました。Upload By 発達ナビ編集部――場面カードも、お困りを感じるシーンがそろっていますよね。この開発はどのように?竹内:朝から晩までの生活シーンで、ありそうな場面をピックアップしていきました。キャラクターと同じように、似たような場面ばかりにならないようにバランスを見て、ある程度「抜け」もないように調整しました。藤井:学校と働くシーンのバランスも考えました。カードゲームで遊ぶ人が子どもたちだと、会社のシーンばかりでは想像できないですしね。――役所が舞台というのも面白いですよね。いろいろな人が相談に来る場所だから、役所にしたんですか?藤井:はじめは、ストーリー設定はなくて、困ってしまう可能性のある人々がいて、なんで困っているか当てるというシンプルなゲームを考えました。そこで、どうして困っているかを見つけて解決する人々に近いのは、どういう場所にいる人だろうと考えたら、市町村役場の職員という設定が近いかもと考えて、役所の文脈を追加しました。Upload By 発達ナビ編集部デザインと福祉の仕事の意外な共通点――このゲームをつくるにあたって、本業であるデザインのスキルを生かせたと思う部分はありますか?竹内:小さなプロトタイプをつくってみて、失敗したら直すということを繰り返すプロセスでつくっていきました。全体のデザインについては、アートディレクター、グラフィックデザイナー と一緒につくっていきましたが、どうしたら楽しく伝わるかを考えるという面では、リサーチしたものをたくさんの人に伝わるような形を考えるという本業のやり方が、役に立ったのかなと思います。――住人さんのキャラクターは、困っている人たちですが、どこかユーモラスで可愛いというか、親しみやすいデザインになっていますよね。竹内:そこは気を配った部分です。困っていることがネガティブな伝わり方にならないようにと考えて、漫画家のスケラッコさんに作画をお願いしました。住人さん自身をネガティブな存在にしたくない、住人さんが困った存在なのではなくその状況に困っている人なのだという表現にしたかったので、絵や文章に関しては気を配りました。Upload By 発達ナビ編集部参考:「こまった課」公式サイト | デジタル・アド・サービス――さまざまな専門家の意見も取り入れて、ゲームをつくっていったと伺いました。その過程での印象に残っているエピソードはありますか?竹内:先ほどもお話ししたように、制作当初は、単純に住人さんが誰なのかを当てるというゲームでした。でも、臨床発達心理士さんに相談したときに、「せっかく当てたなら、その方のお困りを解決してあげたい、役に立ってあげたい」と言われたことがきっかけで、ゲームをさらにアップデートして「ヒントカード」もつくることになりました。こうして、困りごとの解決というゴールまでができたのです。藤井:今回のゲームの制作過程だけでなく、障害福祉全般にかかわる方々と話していて普段から感じていたことなのですが、障害福祉の仕事と私たちの仕事と、プロセスが似ていると思ったことがあります。デザインの仕事は、たくさん情報を集めて分析して、伝えたい人に伝わるようにしぼったものをつくり、さらに相手にちゃんと伝わったかを繰り返し検証していきます。障害福祉の現場の職員さんも、支援する方に常に接して、その人の情報を少しずつ集めて、その方ができることが増えたり、心地よく過ごせたりするためにはどういうことが必要なのかと、常に情報を集めて分析しています。この情報収集と分析、検証していくプロセスが似ていると思ったんですよね。広い意味で同じ「デザイナー」なんだな、ということを感じました。竹内:支援の現場では、利用者の方が「これが課題ですから、こう解決してください」とおっしゃることは少ないと思います。その状況で、仮説を立てて試して、違っていたら調整して、また仮説を立て直して…というプロセスなんですよね。――なるほど。言われてみるとそうですね。竹内:もう一つ、嬉しかったエピソードとしては、支援職のみなさんが協力的で、実際に喜んで遊んでみてくださったこと。職員研修や地域の人とも遊んでみたい、といった声もいただきました。ゲームの内容からさらに、ゲームを使って展開できるアクションについて、ポジティブに考えてくださったことが、つくる過程での励みにもなりました。Upload By 発達ナビ編集部広い意味での他者理解ができるワークショップにも活用してほしい――カードゲームは発売中とのことですが、今後どのような展開で広めていきたいですか?竹内:場面カードには学校のシーンもあるので、子どもたちにも遊んでみてほしいし、ゲームを使ってのワークショップを展開していけたらいいですね。このゲームは、障害理解はもちろんですが、広い定義での「他者理解」ができるものだと思っています。「○○障害」と障害名がついている場合だけでなく、ものの感じ方・考え方は人によってさまざまであることを知るゲームでもあります。そういう意味で、チームビルディングの場でも活用できると思います。多様な人がいると知ったうえで生活する、働いていくことを、今までより想像力をもって受け入れながら生きていけるような、「こまった課?」のプレイと組み合わせたワークショップを提供していきたいです。――社員研修にもよさそうですよね、知って想像して、お互いに優しくなれる…といいですね。竹内:困らないようにすることも大事ですが、困っているときに「困っている」と言えて、お互い助け合える、そういう状況がいいですよね。多様な人との安心できるつながりがあることは、街で生活していても、働いていても大切なことだと思っています。「こまった課?」が、そうしたことについて考えるきっかけになれたらうれしいです。――今後の展開も、楽しみにしています。今日はありがとうございました。文/関川香織撮影/鈴木江実子企画・開発・制作・デザイン:デジタル・アド・サービス共同開発・監修:社会福祉法人東京都手をつなぐ育成会 障害者支援施設ひだまりの里きよせ、一社団法人ぽろんのいえ 代表理事 富樫京子(臨床発達心理士SV・特別支援教育士)イラスト:スケラッコUpload By 発達ナビ編集部
2021年12月26日パニック、周りへの配慮で移動手段に悩むUpload By ゆきみ長男けんとが自閉スペクトラム症と診断を受けて半年以上が経ったころ、長期休暇があったので夫の実家へ帰省することに(コロナ流行前)。とても離れている夫の実家への移動手段は、飛行機、新幹線、車の3つ。子どもたちは飛行機に乗ったことがなかったのですが、けんとが大きな音が苦手でパニックをおこしてしまう可能性が高いのでやめました。新幹線は、電車が大好きすぎて興奮して車内を走りまわってしまいそうですし、大声などで周囲にご迷惑をおかけしてしまうのでやめました。残る手段は車のみ。移動時間はとてもかかりますが、家族だけの空間なので安心!旅行がてら、数ヶ所の宿泊をはさんで行くことに決定。Upload By ゆきみ通常の旅行荷物に加え、偏食対策にと普段飲んだり食べたりしているもの、実家や移動中でも子どもたちが楽しく過ごせるようにハマってるおもちゃ、DVD、絵本を大量に準備し、さらには階段用にベビーゲートまで!車は荷物でいっぱいになりました。いざ、出発!普段から車移動に慣れていることもあり、大好きなDVDを観て過ごしたので泣くこともなく、旅行も楽しみながら帰省することができました。お義母さんの愛情がつまった一言Upload By ゆきみけんとが自閉スペクトラム症の診断後、初めての帰省。あらかじめ夫が診断についてメールでお義母さんに伝えてくれていましたが、特に返信がなかったとのことで心配していました。しかし、到着すると以前とまったく変わらずに大喜びで子どもたちを迎え入れてくださったお義母さん。そして私に「大丈夫よ」と声をかけてくださいました。短い言葉の中に、とても強く深い愛情を感じました。夫の実家では目に入るものすべてが新鮮なようで、衝動がとても強いけんとは気になるものを発見しながら家の中を走り回りました。とてもマイペースで天然なお義母さん。普段、大人だけの生活をされているので、手の届く位置にハサミ、カッター、花瓶、ダンベルや割れ物があり、しかもこの帰省時、たまたまエアコンが壊れていたそうで、大きなストーブが出ていました。「危ない、熱い」が理解できていなかった2人だったので、親が1人ずつに必ずついて、朝から夜まで家の中を追いかけまわしていたらヘトヘトに。結局、持っていったオモチャではほとんど遊びませんでした。Upload By ゆきみUpload By ゆきみ視覚過敏?水族館でエンドリピート階段遊び家の中を追いかけまわしたら疲れ果ててしまい、2日目は外出することにしました。けんとの好きなローラー滑り台がある公園をネットで見つけ行ってみると、想像よりも広い公園でした。高台にそびえたつローラー滑り台は、たどり着くまでに大人は息を切らしてしまうほど。目を離すと順番抜かしをしてしまうので、ずっと一緒について楽しく遊びました。Upload By ゆきみ午後は、ゆうきの大好きな水族館へ。けんとは療育手帳を持っているので、本人、介護者が半額になる割引サービスを利用させていただきました。目を輝かせながら、あっちの魚、こっちの魚へと水槽をみてまわる、ゆうきは本当に楽しそう。けんとは、視覚過敏の影響で薄暗いのが怖いのか、入場してすぐのエントランスから先へは入ろうとしませんでした。エントランスにある階段の上り下りにハマり、長時間、階段で過ごし親の足はパンパン。公園に続き階段エンドリピートとなったのです。そして、けんとのご要望にお答えして館内のカフェへ。綿菓子を食べてとてもおいしかったようで大満足な子どもたちでした。Upload By ゆきみコタツでのんびりする日を夢見て家の中でも外出先でも朝から夜まで追いかけ回し、さらには車での長距離移動ということで、とても体力的には疲れた帰省となりましたが、久しぶりにお義母さんと会うことができ、子どもたちもとても楽しんでいたので、行ってよかったです。水族館はコロナの影響もあり最近は行けていません。ゆうきが好きなので、また行くことがあると思います。けんとは薄暗いのが今も苦手なので水槽エリアには入れないかもしれませんが、そのときは、また一緒にカフェでおいしい物を食べようかと思っています。公的施設などでは、療育手帳を提示すると入場料などが割引になることも多く、「試しに行ってみよう」とダメ元でチャレンジしやすくなるのでありがたいです。全部のエリアは行けなかったとしても、いつかのチャレンジで行けるエリアが見つけられるかもしれません。あれから2年。子どもたちも以前より少しだけ落ちついてきたので、もしも帰省できたときには前回よりはゆったりと体を休められる時間があったら嬉しいなと願ってます。執筆/ゆきみ(監修:初川先生より)まずは、お疲れ様でした…!子連れで家を数日離れるのは大変なことですが、発達的な特性によって、きっと衝動的に動いてしまうだろうとか、環境の変化に何らかの反応を出してしまうかもしれないといったことが想定されやすいお子さんの場合、保護者の方の準備段階からかかる心身へのご負担はなかなかだろうと思います。日頃慣れた環境では、危ない物は取り除き、お子さんがエラーを起こしにくいようにしていたり、お子さんが楽しく過ごせる仕掛け・工夫をされたりしていることでしょうから、ご実家の環境でお子さんに危険が及ばぬよう、文字通り「見続ける」こと、大変だったとお察しします。ゆきみさんの語りの中で、保護者にとってはそんな緊張状態の連続ながらも、お義母さんのお言葉や公園での様子、水族館のメインである生き物では楽しめずともカフェで楽しめたなど、単に大変だっただけではなく、よかったなぁと感じる場面もしっかりと感じていらっしゃること、とても大切なことだなと感じますし、きっとお子さん方にも、そんなお母さんの気持ち(一緒に楽しめている気持ちもあるということ)は伝わっているだろうと感じました。
2021年12月25日私の息子は3歳半健診で、「発達障害の疑いがある」と診断されました。結果的に、その1年後の健診で「発達障害ではない」と診断されましたが、息子の幼過ぎる行動を見るたびに、発達障害と親のしつけについて考えさせられた私の体験談をお伝えします。3歳半健診で色が答えられない私の夫は外国人で、私たち家族は長い期間を国外で過ごしています。息子の周りで日本語を話すのは私だけでした。 あれは日本に帰国し、3歳半健診を受けたときのことです。「この色は何?」という質問に、息子は答えられませんでした。私は相談室に入り、医師に「息子は日本語が苦手なだけです」と話をしました。その後もさまざまなテストを受け、できることもあればできないこともありましたが、最終的には「発達障害の疑いがある。様子を見ましょう」と医師に言われてしまいました。 発達障害? 親のしつけのせい?息子はレゴブロックを組み立てたり、本の内容を覚えたりする点ではほかの子よりも優れているところもありました。そのため、息子が店で走り出したり、大声で怒り出して止まらなくなったりしても、手のかかる子だと思う程度でした。 ところが周りからは、私の息子への対応が甘過ぎる、しつけが悪いと言われることもありました。そう指摘され、息子に厳しく接することも。そのため、3歳半健診で「発達障害の疑いがある」と言われたとき、「本当に発達障害かもしれない」という思いと、「いや違う、私のしつけのせいだ」という思いから毎日悩みました。 息子の個性と親のしつけを考える 1年後の健診で、息子は「発達障害ではない」との診断を受けました。テスト結果は、同年代より優れている部分と劣っている部分の両方がありましたが、普段の生活でも、ほかの子より優れている部分と劣っている部分の差が大きい息子。以前はその劣っている部分を直そうと、厳しくしつけをしていました。 私はその視点を変えることにしました。周りからのプレッシャーもありましたが、今は息子の個性を大事にして優れている部分を伸ばそうと考えています。 息子は、いまだに幼い子のように自分の感情を強く出します。それは、のちに発達障害と診断されることになるかもしれません。でも、私には息子の優れた部分もきちんと見えています。今はその個性を大切にしたいと思っています。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 イラスト/imasaku監修/助産師REIKO著者:シュストルじゅんこ二児の母。海外で結婚し、2人の男の子を妊娠・出産。異文化を楽しみながら子育てをしている。自身の体験をもとに妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆中。
2021年12月24日息子より親が楽しみな保育園行事Upload By まる2歳ごろから発達が気になり始めた息子が通っている保育園では、メインの行事として夏祭りとクリスマス会、卒園式が開催される。PTAや係などがないため保護者がやることなどはほとんどなく、保育園側が準備をしてくれるので、私はただただ普段と違う息子の表情を見れる機会として楽しみにしている。なんなら私だけではなくじぃじもとても楽しみにしていて、わざわざ息子の行事に合わせて休みを取るほどだ。先生や子どもたちによる出し物や、お店を出してくれてのお買い物ごっこなど、シャッターチャンスが山ほどあるので、わが子のかわいい表情を残そうと意気込んでしまう。保育園1~2年目の息子Upload By まる初めて体験した行事は夏祭り。まだコロナ前だったので私と祖父母全員で参加した。息子はいつもと違う雰囲気に最初泣いていたが少ししたら慣れ、お買い物ごっこでお菓子やジュースをもらい保護者もスイカをご馳走してもらったりと、とてもいい思い出になっている。そのころ息子は、1歳3ヶ月で発達の遅れなどには気づいていない時期。その後にあった1年目の行事のクリスマス会と卒園式は息子も幼いしよく分かっていなかったようで、特に泣きすぎて困ることもなく参加できた。1歳11ヶ月での卒園式での出し物で同級生のお友達がみんな先生の膝に座っておとなしくお歌に合わせて体を揺らしている中、息子だけがフラフラごろごろしていたが「落ち着きなくておもしろいなぁ!うちの子」くらいにしか思っていなかった。今思うと、すでに多動だったのだろう。2年目(去年)はコロナの影響で夏祭りは中止、クリスマス会は保護者1名のみの参加で開催された。先生の出し物の最中、ご機嫌斜めで泣き続ける息子。私は息子をあやしながら1番うしろの列で出し物を見たり、泣き方がひどいときは教室から出たりしつつ参加していた。どうにか後半は泣き止んで少し参加することができたが、写真を見返すとすべて真顔で笑顔の写真が一枚もなかった。保育園3年目、大泣きの夏祭りUpload By まる今通っている保育園は2歳児までの保育園のため今年で卒園。もうこの保育園も通い出して3年目、さすがに行事にも慣れてきて今年は楽しく参加できるだろうと私の胸も高鳴っていた。まだまだコロナ禍だったが今年の夏祭りは保護者2人まで参加していいと言われたため、じぃじも休みを取り参加。当日は家からじぃじと手を繋いでニコニコで歩く息子と保育園へ出発した。保育園の前に着いた途端に、息子の表情が曇ってきた。「なんかいつもと違う」とさっそく感じ取ったのか。息子自体は人見知りも場所見知りもあまりないため、どこに連れて行くのにもあまり苦労はないのだが、通い慣れた所でのいつもより多い大人と園児、いつもと違う雰囲気に明らかにのまれて泣き出してしまった。まずは園庭に集まるように言われたが、大泣きの息子が踏ん張って動こうとしない。これには私もせっかく来てくれたじぃじも困惑だ。どうにか園庭まで引きずってきたものの、意地でも入り口に近い場所から先に進もうとしないのでそこで参加することにした。息子は園庭での出し物が終わるまでひたすら泣いていた。先生やお友達がかわるがわる声をかけに来てくれたが、息子にはなにも響かなかった。行事に参加できずに早退Upload By まる園庭での出し物が終わったあと、室内に入ってお店やさんでお買い物ごっこやゲームに参加することに。息子より幼い子たちもたくさんいて、みんな問題なく室内に入っていく中、息子だけが中に入りたくない外に行きたい(帰りたい)とぐずっている。室内に入っていくみんなの最後につき、どうにか玄関まで入れた。先生たちがおもちゃなどで説得してくれる中、ひたすら響く泣き声。玄関の扉にピッタリと背中をつけて泣き叫んでいる。これはもうダメだな…。私もじぃじもそう感じ、「もうこのまま帰ります…」と先生に伝え、お買い物ごっこでもらう予定だったおもちゃなどを玄関先で全て私が選んだ。今回も息子の笑顔の行事写真は撮れず、大泣きの写真と動画だけが残った。外に出ると息子は泣き止み疲れた顔でじぃじと手を繋ぎ帰ってきた。「何しにきたんだろう今日は…」全員思っていただろう。私もじぃじもなんだか疲れてしまった。違いの変化を感じ取れるように成長している?Upload By まる夏祭りから5ヶ月、先日クリスマス会が行われた。保育園に到着するなり違いを感じ取った息子が玄関で動かなくなったが、泣くことなくどうにか教室内に入ることができた。しかしまぁ、私から離れようとせず、べったり膝の上に乗って動かない。クリスマス会中ほぼ私の膝の上におり、息子のクラスの出し物の太鼓の演奏の際も先生から「ママ一緒に出てきて隣にいていいから」と言われるほどだったが、途中から笑顔を見せる場面もいくつかでてきた。発達が気になると言われた2歳ごろは、感情が普通より薄い気がすると保育園から伝えられていた。私からしたら、そのころもちゃんと笑うし泣くし、そんなに感情薄いのかな?と疑問だったのだ。けれど、息子自身がこだわりがない、癇癪もパニックもない、長時間泣き続けるなどもないとても穏やかなタイプだったからなのだろう。それでも気に入らないときは大泣きするし大変だが…。療育に通い出して1年、「よく感情が出てくるようになってきたね!」と言われるので、この行事に参加したくない大泣きやママから離れたくない行動も息子の成長なんだろうと思う。執筆/まる(監修:初川先生より)行事は子ども本人にとっても、保護者にとっても特別なものですね。保育園の先生方が子どもたちのために心を尽くして準備してくださって、子どもたちもその特別な時間を楽しみ、笑顔があふれる…それを楽しみにするのは保護者として自然なことですね。息子くんにとって、保育園は通常通りであれば楽しく安心して通える場になっているとのこと、何よりです。しかし、行事だといつもとは違う雰囲気で、大人の数も多いし、子どもたちのテンションもいつもと違います。本番では装飾に変化があったりして、通い慣れた教室とは違う景色であることに拍車をかけていたことでしょう…。今はそういう変化が「怖い、安心できるいつもとは違う…!」のように怖さが勝る段階なのかもしれません。ある日突然、通い慣れた場や人が全然違うことになっていたらそれは怖かろうと思いますし、いつもの大好きな保育園の様子に戻ってほしい、どうしてみんな平気でいられるの?くらいの感じかもしれません。環境の変化を感じ取れるようになったのは紛れもなく成長の一端ではありますが、変化をとらえる力があまりに細やかだと家族でも困ってしまうことになりますね。クリスマス会ではお母さんにくっついていればその場に留まれるようになれたとは、それもまた成長ですね。もう一息成長すると、「予告」が入るようになるかなと思います。昨年のその行事の様子を写真や映像などで先生に見せていただいたり、言葉での説明をしていただいたりすることで、変化に対して心の準備ができると、また反応は変わってくるのではと思います。
2021年12月24日帰国後、次女の場面緘黙の症状は変わらなかった現在小学4年生の次女。小学2年生のときに場面緘黙と診断されています。小学校1年生のときに海外引っ越して、2年生で帰国。1年生のときのスクールカウンセラーから「帰国後しばらくしても変化がなかったら新しい学校で、先生やスクールカウンセラーに相談してみてくださいね」と言われていました。日本に帰国したら次女の心境も変化があるかも…と思っていたのですが、帰国後の次女の様子を見ていても、1年生のときと全く変わらず、学校で話せない状態が続いていたのでした。学校の先生との相談まずは担任の先生に相談しました。前の学校のスクールカウンセラーに場面緘黙かもしれないと言われたことや(先生自身が場面緘黙についてご存じなかったので、とりあえず一通り説明)、学校で話せないこと、友達ができないことについてお話しました。Upload By まりまりそこで言われたのは「一人が好きな子もいますし、次女さんもそうなのかもしれませんね」「学校では特に問題なく過ごせています」ということでした。先生は、学校での次女は特に問題ないと感じていたようです。スクールカウンセラーに相談その後、学校のスクールカウンセラーに相談しました。Upload By まりまりそこで言われたのは、「学校に来られていて、教室にいることができていれば問題ない」ということでした。次女は、クラスメイトと話せないだけだし、場面緘黙の子は5年生くらいになったら話せる子もいるから、今はただ見守っていくしかないと。「緘黙症状が長引くと二次障害になりやすい」とか「早く気づいて支援を始めることが重要」といったことを本で見たりしていたので、「2年生から5年生まで見守っていくだけで大丈夫なんだろうか…」と不安な気持ちになりました。次女のように静かに困っている子は見えづらいこうして、相談した先から「問題ない」と言われ続けた次女。アレ?話せないことって、そんなに問題じゃないんだっけ…? と私の今までの心配は大したことじゃなかったのかも…?とあやうくバグを起こしかけました…。こうした経過から、次女のように「学校に行けていて、何とか勉強もできている子」は、学校としては、なんら問題のない子になるのかもしれないなと思いました。たとえば、学校で友達同士でのおしゃべりの声が大きかったら先生の目に留まり、「何があったの?」と気づいてもらうことができます。ですが、クラス内で表立って問題を起こすわけでもなく、困っていても自分からそのことを言えない場合は、そもそも先生が困りに気づけず、よほどよく見ていない限り、先生からしたら「特になんの問題もない子」に分類されてしまうのかもしれません。Upload By まりまりどうしたら良いのか分からず、でも助けが必要だった「問題ない」と言われた次女ですが、それでも目に見えにくい困りはたくさん抱えています。担任の先生とだけは必要最低限のことを話すことはできますが、あくまでも「最低限」のことだけです。本当はもっと「友達や先生と話したい」「友達と遊びたい」と思っているのに…。次女の頑張りでどうにかなるものでもないですし、このころの私は次女の気持ちを大切にしたいのに、どうしたらいいのか分からずに見守ることしかできず、もどかしい気持ちでいっぱいでした。Upload By まりまりUpload By まりまり本人への声掛けや家族や学校でのサポート方法など、どうしたら次女の今の状況を良くすることができるのか悩みました。そして、私自身、自分の力だけではこの状況を変えていけるとは思えず、さらに一人で抱えていることがつらくなり、何か頼れる場所が必要だと思って児童精神科を受診しようと決意したのでした。執筆/まりまり(監修:初川先生より)次女さんの学校での様子、気になりますね。担任の先生が「問題ない」とおっしゃるのは、次女さんがかなり努力されているのではと思うのですが、どんな様子なのでしょう…。音読をする、隣の人や班の人と話し合うなど、学校生活の中では「話す」ことが必要な場面は結構あります。先生が配慮して困っていないのか、そういう場面ではがんばって何らか意思表示しているのか、クラスメートの子たちの反応や受け入れも気になるところです。言葉での意思疎通が難しいと、場合によっては遊びを通して仲良くなることも難しい場面もあるかもしれません。確かに慌てずに見守るスタンスは大切です。しかし次女さんが「話したい」「友達と遊びたい」という気持ちを持っていることをまりまりさんはしっかり把握されている。無理に話をさせていいことがある訳ではないですが、待っているだけでいいのかと不安になる気持ちも当然のことです。次女さんのそういう気持ちをもっと共有できたらきっとまりまりさんも心強かったことでしょう。次女さんやまりまりさんの気持ちをうまく支えてくれる支援者と出会えるといいなと思います。その一つとして、児童精神科があったということですね(ほかには、地域の教育相談センターも同じくきっと支えになってくれるかなと思います)よき出会いとなりますように。
2021年12月23日好評いただいている商品をご紹介!2022年1月の発売に向けて第3弾が進行中の、「発達ナビ×フェリシモ」発達が気になるお子さんや保護者さまが便利に快適に過ごせるためのグッズづくり。今回は、第1弾、第2弾で開発した中から8商品をご紹介します。※詳細ボタンをクリックすると発達ナビのサイトから株式会社フェリシモのサイトに遷移します発達障害の中でも、特にADHD(注意欠如・多動症)のあるお子さんは、注意が散漫になりやすかったり、整理整頓が苦手なことが多かったりするといわれています。アンケートでは、ランドセルインナーにほしい機能として、「忘れ物を防ぐ工夫」「プリントをきれいなまま持ち帰れるようなポケットの工夫」「中身を出し入れしやすい工夫」の3つに意見が集まり、これらのご要望に応えたのが「トート&ランドセルインナー」です。ランドセルだけではなく、縦型のトートバッグにも対応。財布やポーチもすっきり立てて取り出しやすく収納できます。また、筆箱や教科書など、小学校でよく使うアイテムのアイコンカードと、忘れ物を防ぐ持ち物リストがついていて、各ポケットにセットして使えます。学校から帰って翌日の準備をする時間や、忘れ物対策として持ち物チェックの習慣を身につけるためのサポートにもおすすめです。【価格】月1個¥2,800(+10% ¥3,079)→うち10円は「CCPチャレンジド応援基金」として運用(基金部分は非課税)※毎月1回、3種類の中から、1種類ずつお届けします。(全種類届くと、以降はストップします。/ 1回だけのお届けでストップも可)Upload By 発達ナビ編集部お出かけ時の困りごとについて聞いたアンケートで最も多い回答は、「バッグの中がぐちゃぐちゃで、どこに何を入れたか分からくなる」という意見でした。そのほかに「忘れものが多い」「見つけられないとパニックを起こす」といった声もあり、これらの困りごとを解決するリュックインナーです。ポケットがメッシュ素材のため、中身がすぐに見える、付属の財布やハンカチなど持ち物の絵が描かれた「アイコンカード」をセットすれば、定位置が分かりやすくなる、自分の持ち物の写真を撮って、アイコンカードにしてカスタマイズも可能といった工夫が満載です。【価格】月1個 ¥2,950(+10% ¥3,243)→うち20円は「CCPチャレンジド応援基金」として運用(基金部分は非課税)※色違いで3種類あり※毎月1回、3種類の中から、1種類ずつお届けします。(全種類届くと、以降はストップします/1回のお届けでストップも可)Upload By 発達ナビ編集部お子さんの忘れ物に注目したアイテムです。アンケートでは、「忘れ物が多いうえに、忘れ物をしたこと自体を忘れてしまうので困る」「『失くした』と言って大騒ぎ」などの声がありました。その中でも、「なくすものは、かぎ」「いろいろなかぎをなくす」と、大切なかぎの困りごとが多く集まりました。「リール付き本革キークリップ」は、かぎの抜き忘れを防止する「キーリール」と、バッグの中での迷子を防ぐ「キークリップ」を合体させたアイテムです。大事なかぎを、場所を決めて携帯できるので、「かぎが見つからない」ということがなくなり、便利です。バッグの内側や外側のポケット、スカートなどボトムスのポケットにもセットできます。【価格】月1個¥1,500(+10% ¥1,649)→うち10円は「CCPチャレンジド応援基金」として運用(基金部分は非課税)※毎月1回、3種類の中から、1種類ずつお届けします。(全種類届くと、以降はストップします。/ 1回だけのお届けでストップも可)Upload By 発達ナビ編集部交通カードやスポーツ施設などの利用者証、外見から分かりにくい障害のある方が支援や配慮を必要としていることを周囲に知らせることができる「ヘルプマーク」については、「バッグにつけはずししにくいのが不便」「障害の情報は見せる必要がないときは隠したい」などのお悩みがアンケートから浮かび上がりました。さらに座談会では子どもが抵抗なく持てるかわいいホルダーがあれば、という意見も出ました。そこでお守りのようにさりげなくカバンにつけられるデザインで、提示も付けはずしも簡単にできるカードホルダーができました。【価格】月1個 ¥2,250(+10% ¥2,474)→うち10円は「CCPチャレンジド応援基金」として運用(基金部分は非課税)※毎月1回、デザインを変えて、1種類ずつお届けしますUpload By 発達ナビ編集部家庭学習に関するお悩みも多くいただきました。「気持ちがすぐに違うところへ飛ぶ」などのコメントに共感が集まり、「テレビや家族の様子が気になる」「周りの目に入るものに気が散って、勉強に集中できない」というお悩みに応えたのが「おうちで集中できるデスクパーテーション」です。コンパクトに四つ折りできて、さっと広げればリビングでの勉強や作業に集中できるパーテーション。A4が入るマチつきポケットやメモなどの入る小ポケット、プリントやドリルが挟めるクリップなど、要望の多かった機能に絞ったシンプルな仕様です。【価格】月1枚¥2,950(+10% ¥3,244)→うち10円は「CCPチャレンジド応援基金」として運用(基金部分は非課税)※毎月1回、3種類の中から、1種類ずつお届けします。(全種類届くと、以降はストップします。/ 1回だけのお届けでストップも可)Upload By 発達ナビ編集部出したいお金が見つけられずお会計が苦手、お会計の時に焦ってしまってなかなか取り出せない、といったお悩みが聞かれました。とくに、視覚優位と呼ばれる傾向のある方は、お札や硬貨が隠れて見えないと、お勘定を正確に出せず大きなお金を出すため、たくさんのお釣りでお財布がいっぱいになってしまうという悪循環があるようです。また、硬貨がいくらなのかを瞬時に判断するのが苦手な方もいらっしゃいました。アンケートでは、「カードポケットを見やすくしたい」という意見が多く集まりました。「メッシュ財布」は、小銭入れが2色に分かれていることでお金をマイルールで管理でき、マグネットやブックタイプの仕様にすることで不器用さがある方にも使いやすく。やさしい仕様だけれど見た目は大人っぽいエナメル風素材で、みんなのお買い物を楽しく応援してくれるお財布に仕上がりました。【価格】1個¥3,900(+10% ¥4,289)→うち10円は「CCPチャレンジド応援基金」として運用(基金部分は非課税)※この商品は、お申し込みいただいた月だけお届けしますUpload By 発達ナビ編集部文房具が見つからなくて勉強や作業がなかなか始められない、ものをどこに片付けたのか分からなくなってしまう、といったお悩みが多く聞かれました。そこで、可動仕切りやアイコンカードでじぶん専用にカスタマイズしてひと目で分かりやすく整とんできるお道具箱をつくり、「これひとつあれば作業が始められる」状態になれることを目指しました。アンケートでは、「可動仕切りで定位置を決められるボックスタイプ」と「カレンダーのように立てられるファイルタイプ」という意見が多く、置きやすくて中身が見やすいタイプが求められていることが分かりました。必要なものをまとめて収納できて、まるごと持ち運びできるお道具箱です。仕切りで見やすく整理できて、ひと目で入れるものの定位置が分かるように貼れるアイコンシートも付いているから、出し入れもらくにできます。ふたは一体型になっていて、中にはA4ファイルを挟めるゴムつきです。開けると立てたまま固定できるので場所を取らず、ふたの紛失も防げます。お薬や手芸、メイク道具の収納にもおすすめです。【価格】月1個¥2,200(+10% ¥2,419)※組み立て式→うち10円は「CCPチャレンジド応援基金」として運用(基金部分は非課税)※毎月1回、3種類の中から、1種類ずつお届けします。(全種類届くと、以降はストップします。/ 1回だけのお届けでストップも可)Upload By 発達ナビ編集部いかがでしたか。お子さまやご自身へのプレゼントに、ぜひご検討ください。2022年1月発売の新アイテムもお楽しみに!
2021年12月22日小学2年生だった次男がいじめにあう発達障害の中でもADHDとASDのほか、躁鬱病(双極性障害)がある猫ママ(仮名)さん。学生時代はまだ発達障害や躁鬱病が今ほど世の中に知られておらず、周囲の理解が乏しい中、「突然落ち込んで動けなくなる」ことが多かった。「あの子は怠け者」。夏休みの宿題もやり切れたことがなく、いつも「頑張らなきゃ」と無理をしていた。高校卒業後、1年余り会社勤めを経てすぐに結婚。3人の子宝にも恵まれた。ただ、当時小学2年の次男が日に日に元気がなくなっていくのを見て、違和感を覚えていた。すると授業参観の日、担任教師から「お子さんが友達に対して注意をすることが多く、反感を買っている。その話を本人にしたら、最近元気がなくなってしまった」と言われたという。しかし、詳しく状況を確認をしたところ、担任教師の対応がクラスのいじめを助長していたことが発覚。学校に事実を伝え、事態は収拾したものの、猫ママさんの心に引っかかったことがあった。「友達に注意をすることが多い」とは――。周囲に自閉スペクトラム症のある子どもがいたことから発達障害の勉強をしていたという猫ママさんにとって、次男の特性があてはまることに気付いた瞬間だった。Upload By 桑山 知之「勉強もできて友達だってたくさんいる、こんなにいい子なのに、発達障害だなんて有り得ないって最初は思いました。でもある日、夕飯を作っていたときに肉じゃがを見て次男が『これ、何ていう食べ物だっけ?』って言ったんですよね。何度も食卓に出している献立の名前も知らなかったのか、今まで意識したこともなかったのかと――それで次男にはなにかあるという確信に変わったというか。でも、どこか気持ちが軽くなったんですよね」(猫ママさん)その後、学校でのルールに耐えられなくなり、眠れない日々を過ごしたという次男。診断の結果、ADHDとASDがあることがわかった。「しんどいからできない」のか「甘えている」のかが分かりづらく、叱るのを躊躇した時期もあったが、特性を深く理解することで線引きがわかるようになったという。息子が苦手なことは自分も苦手――自身も発達障害の診断をUpload By 桑山 知之次男のあと、長男や三男の障害も明らかになった。そして猫ママさん本人も35歳のころ、診断を受けた。夫は診断こそ受けていないが、息子の担当医によれば「間違いない」という。こうして“発達障害一家”として歩んでいく決意を固めた猫ママさんは、子どものサポートに徹しようと仕事をせず、書類や水筒を忘れたらいつも学校まで届けた。「家族のサポートをする上で、私自身の苦手分野と彼らの苦手分野が被りすぎていることは、ハッキリ言ってかなりの負担です。誰か1人でもいいから、片づけができるといいんですが…。彼らの負担を軽くするために、彼らがどうしてもできないことはやってあげたいと思っています。ですが、私も同じようにどうしてもできません。私だってできることなら誰かに頼りたい」(猫ママさん)Upload By 桑山 知之思い返してみれば、猫ママさん自身も子どものころ、空気が読めなかった。周囲の様子をきちんと理解できていなかった。相手の表情や、何を喋っているか、あらゆる情報が今でもほとんど思い出せない。でも母親や教師からはよく怒られた。当時を知る高校の同級生からは「あのころはマシンガントークがすごくつらかった」とも言われた。どうやら、しょっちゅう友達の間に割って入って自分の話をまくしたてていたらしい。発達障害一家だからこそわかること「ゆっくりだけど、みんな学んでいる。」これはドキュメンタリーCM『見えない障害と生きる。』の中に差し込まれたコピーだ。猫ママさん一家も、決して例外ではない。Upload By 桑山 知之社会には、どうしても守らないといけないルールや、やらないといけないことがある。しかし、発達障害のある人にとって、「できないこと」や「わからないこと」があるのも事実。猫ママさんは、自分なりのペースで「誠意を持って生きる」ことが大切だと話す。「そもそも、自分が何をわかっているのか、わかっていないのか、わかっていないことがわかっていないというか。それダメだよって言ってくれれば、ダメなんだってわかるんだけど、言われなかったり酷い目に遭わなかったらわからないんです。そういう人多いんじゃないかな、ラインがわからない人。感覚としてわかんない。備わっていないんです」(猫ママ)Upload By 桑山 知之苦しんで育ってきた自分だからこそ、息子3人が一体どういったことに苦しんでいるのかがわかる。そのサポートをしながら、親がレールを敷くのではなく、本人の意思を尊重してきた。そのうえで、子育てにおいて大切なのは、「何ができるか」ではなく、「愛される人間であること」だという。「いちいち他人を敵に回すようでは、困ったときに助けてあげようと思ってもらうことはできません。逆に、できることが少なくて手がかかっても、いわゆる憎めない人には、ピンチのときに誰かが必ず助けてくれると思うんです。特性ゆえにわからないならなおのこと努力が要るのではないでしょうか。そのためには、障害を受容し、許容することが大前提になるのだと思います。まず親が一番最初に、わが子をしっかりと受け止め、許容すること。できないことを受け止め、その中で一緒に歩いていくこと。そしていつか必ず『手を離す』覚悟を持って」(猫ママさん)長男は25歳になり工場用機械を作る会社に就職。次男は21歳で名古屋のアパレルショップで働いている。三男は全日制の高校に通う1年生だ。猫ママさんは10年前から、発達障害や家族のことを知ってもらおうとブログなどを通じて発信を続けている。特性と躁鬱の症状で仕事は途切れがちだったが、現在はクローズ(※障害があることを申告せずに一般雇用で就労すること)でサポート側として2年半継続して勤務している。ゆっくりだけど、みんな学んでいる。Upload By 桑山 知之平成元年愛知県名古屋市生まれ。慶應義塾大学経済学部在学中からフリーライターとして活動。2013年に東海テレビ入社後、東京支社営業部を経て、報道部で記者/ディレクター。2018年から公共キャンペーンのプロデューサーとして「いま、テレビの現場から。」や「見えない障害と生きる。」、「この距離を忘れない。」といったドキュメンタリーCMを制作。主な受賞歴は、日本民間放送連盟賞CM部門最優秀賞、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSゴールド、JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール経済産業大臣賞、ギャラクシー賞CM部門優秀賞、広告電通賞SDGs特別賞など。取材・文/桑山知之取材協力/若者支援ネットワーク研究会in東海(監修・三木先生より)「誠意をもって生きること」「愛される人間であること」はすごく大事ですね。どういった苦手さを持っているかももちろん人生に大きく影響するのですが、その困難に直面したときに誰かに助けてもらえたり許してもらえるようなキャラクターだったり振る舞いができたりすることは、実は何よりも強い武器なのかもしれません。
2021年12月22日小学3年生のころUpload By かなしろにゃんこ。ADHDと広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)がある息子リュウ太が小学校3年生のときに親子で教育相談所(※)に通っていたときのことを書きたいと思います。※「教育相談所」は、地域の教育委員会が設置している相談機関。地域によっては「教育センター」という名称の場合もあります。ほっとできる場所がなかった息子Upload By かなしろにゃんこ。このころの私は、勉強にやる気を出さない息子に対して、嫌がっている塾に無理やり行かせたり、宿題ができるまで厳しく接してしまうこともありました。同じ年頃の定型発達の子どもと同じように課題に取り組めるようにしなければならないと焦っていたのです。思い返すと厳しすぎる親だったと思います。一方でこのころの息子は、家庭では勉強のことなど厳しく言われ、学校ではお友達とのトラブルが多発していました。家庭でも学校でもほっと安らげるときがなかったのではないかなと思います。今思えば、特性が原因でうまくいかないことを親も理解できていなかったために叱られたり、友達とトラブルになったりしていたのだと分かります。しかし、まだ子どもの特性とその支援がよく分かっていなかったこの当時、イライラしている息子に対してどうしたらいいのか、どこに頼ったらいいのか私自身とても悩んでいました。そんなとき小学校の担任の先生の勧めで、地域の教育相談所に親子で通うことになりました。これが私たち親子の最初の公的な支援機関との関わりでした。そこで母の私は相談員の方と育児の相談・カウンセリングを受け、その間に息子はサポートルームで指導員さんと過ごしていました。※地域によって相談室・サポートルームの有無や利用のしくみは違うため、お近くの教育相談所(または教育センター)にお問い合わせください。サポートルームでは息子が過ごしていたサポートルームは、6帖ほどの畳の部屋でオモチャがたくさん置いてありました。そして優しい指導員さんがいて、一緒に遊んでくれます。どれでも好きなオモチャで遊んでよく、どんな遊び方をしてもOKでした。子どもが遊びを通して「自己肯定感を育む」場所なのだそうです。Upload By かなしろにゃんこ。そこでは、指導員さんは息子がやることに一切否定的なことを言いませんでした。「そうだよ、それでいいんだよ!その遊び方や考え方でいいんだよ!」と絶賛してくれるのです。学校ではトラブルが多発し、家では母や父にガミガミ叱られることが多かった息子にとって、最高の場所だったようです。Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。私の育児相談やカウンセリングをしてくださった相談員の先生は、私が話す家庭の情報から今の息子にとって必要なことを導き出し、サポートルームで”息子が安らげる時間”を提供してくれたのだと思います。小学校3年生から5年生の2年間、隔週1時間お世話になりました。Upload By かなしろにゃんこ。小学5年生のときUpload By かなしろにゃんこ。小学5年生のときに「リュウ太くんはもう大丈夫、ほかにもこの場所に来るのを待っている子がいるからバトンタッチしようね」ということで、サポートルームに通わなくなりました。最後の日に息子は「ここ好きだったのに寂しいな…」と言いました。息子に発達障害があるかもしれないと分かってから、いろいろな支援機関に足を運びました。息子は親に連れられて仕方なく支援機関に通っていた感じに見えたのですが、このとき息子がサポートルームに毎週来ることを楽しみにしていたんだと分かってほっこりしました。困っているときは頼っていい。大丈夫になったらそっと離れても心配ない。Upload By かなしろにゃんこ。息子をまるごと受け止めて接してくれたサポートルームの方々と、その場所が好きだったいう息子の様子を見てから、私は公的な支援機関を頼ることに抵抗がなくなりました。困っているときは頼っていい。大丈夫になったらそっと離れても心配ない。この経験から、現在も息子にも「困ったら公的な支援機関に相談しようね!」と気軽に話すことができるようになりました。執筆/かなしろにゃんこ。(監修:井上先生より)子育てに行き詰ったときについ感情的になってしまったりすることは多いと思います。また、支援機関に行くことは勇気が必要ですし、その間お子さんはどうしようと悩むこともあると思います。かなしろさんが体験されたように、保護者もお子さんも支援してもらえる場所もあります。地域によって相談室やサポートルームなどの有無やしくみは違うため、すべての教育相談所(※)がかなしろさんが体験されたようなシステムをもっているとは限らないので、お近くの相談できる機関や親の会などから情報を得るといいかもしれません。※「教育相談所」は、地域の教育委員会が設置している相談機関。地域によっては「教育センター」という名称の場合もあります。
2021年12月21日長男を出産後、初めての年末は夫の実家で過ごしました。義父母、義兄、義弟と私たち家族3人で新年を迎えたのですが、夫の家族は全員、夜型の生活をしている人たちでした。今回は、生後11カ月の長男を連れ、夜型家族と一緒に過ごした初めての年末年始で困ったことをお話ししたいと思います。※コロナ禍前の体験談です 眠れなかった夜大晦日、夫と私と長男の3人で夫の実家へ行きました。家とは違う場所と、ほとんど面識のない義父母や義兄弟に会った長男は少しとまどっていました。それでも、無事に1日を過ごす事ができ、夜11時ごろ、お借りした部屋で先に休ませてもらいました。 私も長男もすぐ眠りにつくことができたのですが、夜中に何度か大きな話し声が聞こえてきて、そのたびに私はびっくりして起きてしまいました。朝4時くらいまでの間に3回ほど目が覚めたので、その夜はよく眠れませんでした。 夫家族を気づかって外で過ごした元日の朝朝7時ごろに目を覚ました長男。朝4時くらいまで夫家族は話をしていたので、当然みなさん寝ていました。 長男に朝ごはんを食べさせようと思い、静かに居間へ行くと、居間で夫家族が雑魚寝をしていました。居間と台所がつながっていたので、台所を使わせていただくことも無理でした。さらに義母は台所に義母以外の人が入るのを嫌う方だったので、勝手に台所を借りるわけにはいきませんでした。 それで、夫家族を起こしてはいけないと思い、長男と外に出ることにしました。 行くところがなく、ひたすら歩いた午前中夫を含め、夫家族が夜型の生活をしていることは聞いていました。しかし、何に困るのか予想ができなかった私は、着替えや長男のおむつ、おやつ、絵本しか持ってきていませんでした。 どこかのお店で朝ごはんを食べようと近所をひたすら歩いて探してみましたが、運悪く食事をとれるお店がありませんでした。仕方なく、コンビニでプレーンなパンと水、ヨーグルトを買って、長男と食べました。 その後も行くところがなかったので、実家の近くを歩きながら過ごしました。そして11時半ごろ、夫から起きたという連絡があり、夫の実家に戻ることができました。 このときの経験から、生活パターンが違うことは仕方がないので、泊まりで夫家族と過ごすときは、パン類、水、自分用のカロリーメイトを持っていくようにしています。 イラスト:imasaku著者:川本 千華発達障害の長男、兄が大好きな次男を育てる2児の母。元ピアノ講師。自身の経験を活かし音楽・発達障害に関するライターとして活動中。
2021年12月20日自閉スペクトラム症のあるPには兄がいます。長男が3歳のときに弟のPは生まれました。Pが赤ちゃんだったころは、長男は弟が生まれたのが嬉しそうで一緒に遊べるようになることをずっと楽しみにしていました。でも待てども待てども、弟とはほとんどコミュニケーションが取れないし、関わろうとしても無視され、癇癪につながるからと母親の私から自分の行動を止められることもあって、なかなか弟と一緒に遊べず、長男は「Pはいつしゃべるようになるの?」「Pはずっとこのままなの?」と疑問や不安を感じるようになっていました。Upload By みん「弟には障害がある」ということに、長男はどのように理解を進め、どのようなことに悩んでいるのか?私たち夫婦は長男の前でもPの障害についての話を自然にしていたので、長男は大人の会話を聞いてなんとなく「Pは普通の子とは違うんだ」ということを理解していたようです。それに自分の友だちの弟や妹はしゃべったり兄姉にくっついてきたりするのにPはそういうことはまったくしないし、自分と同じ幼稚園へは行かずに、家から遠い普通の園とは少し雰囲気の異なる園に通っているということ、病院へ定期的に何回も通院していることなどからも、自閉スペクトラム症のことはまだ詳しく分かっていなくても「弟には何らかの障害がある」ことを長男なりに感じるようになっていました。そんな長男ですが、Pは自分の物を平気で取ったり壊したりするし、自分は何もしていないのに急にかまれたり引っかかれたりすることもあるし、家族がいつもPを中心に、Pに合わせた行動ばかりしていることに、日頃から不満を感じたり我慢したりしている部分は多々あるのではないかと思います。そのため、たまに「Pが僕の弟じゃなければ良かった!」「このまま大人になったら心配だよ!」「Pと一緒にいたら恥ずかしい!」と言ってしまうこともあります。私はそんな風に思ってしまうのは自然なことだし仕方がないと思い、長男のそのような発言も言いたいときは言わせていたし、聞いてあげるようにしていました。Upload By みん弟の困った行動に振り回される日々…そんなある日、PがAIアシスタントで音楽を聴きたがっていたのですが、自分ではうまく発音ができないので、長男がPのために音声操作をしてあげていたことがありました。Pは同じ曲を繰り返し聴きたがるので、長男はAIアシスタントに向かって「リピート再生」「戻って」などと延々と言ってあげなければなりません。長男は止めどきが分からず、ずっとPに付き合うのにも嫌気がさしている様子でしたが、急に止めるとPが癇癪を起こして大変なことになるのも分かっていたので、『どうしたらいいかな?』と私に相談してきました。私は「次が最後の1回だと予告してから再生して、終わったらおしまいのジェスチャーをしてみたら?」と長男にアドバイスをしました。そのアドバイスを聞いた長男は「本当にそんな風に言うだけで終わることができるのかな?」と半信半疑の様子でした。Upload By みん弟の特性に合わせた対応をしたことで、長男は弟の成長を感じることができて…しかし、実際にそのように言ってみるとPは長男の指示をちゃんと理解し、スッと音楽を聴くことを止めることができたのです。そんなPの様子を見て長男は感動したらしく思わず涙を流していました。私は長男が泣いて喜んでいる様子に驚き、何で涙が出たのかを聞くと、長男は「Pに言ったってどうせ無理だと思っていたのに、ちゃんと僕の指示を聞いてくれたから感動したんだ!物凄く嬉しかった!」と言いました。そんな長男の言葉を聞いて私は、親である私がPの小さな成長を感じては喜ぶのと同じで、兄である長男にとっても、弟の成長を感じるとたとえ小さなことだとしても、こんなにも嬉しく感動できるものなんだなと思いました。きょうだい児は、普通のきょうだいより不安や苦労もいろいろとあるかもしれません。でも普段からきょうだいのことを考える機会も多く、障害のあるきょうだいから学べることも沢山あるのかもしれないなと長男を見て思っています。まだまだ成長過程ですが、長男にとって弟のPの存在は、良くも悪くも影響があることを忘れず、長男とPとの関係も一緒に見守っていきたいと思っています。Upload By みん執筆/みん(監修:井上先生より)子育てをしていると、つい発達障害のある子の方に手を掛けてしまうことも多くなりがちです。幼いきょうだい児にとっては、自分にかまってもらえないことで感情を爆発させてしまうこともあると思います。このコラムで素晴らしいのは、この年齢のきょうだい児さんに「〇〇障害とはこういうものなんだよ」と言葉で説明するのではなく、「こうしたら弟が受け入れてくれるんだよ」「こんな声かけをしたら伝わるかもしれないよ」ということを体験的に理解させてあげられたことです。このような工夫すればうまくいく、という体験が、将来的な障害理解にも結びついていくのではないでしょうか。きょうだい児も成長とともに障害を言葉や概念としても理解できるようになってくると思います。ご家庭で発達障害について、話すことをタブーにしない雰囲気をつくっていくことが重要かと思います。
2021年12月20日ブラックがサッカーを始めた理由とは…?突然サッカーを始めたブラック。どうやら気になる子がサッカー好きのようです。ストイックに練習するブラックですが…Upload By 荒木まち子執筆後記失恋の傷を癒すには新たな恋!ブラックに幸あれ!!(執筆/荒木まち子)LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年12月19日初めての公開授業で見た子どもの姿にビックリ!?Upload By 丸山さとこ現在小学6年生のコウですが、彼が小学校に入学してまだ間もない1年生だったころの思い出の1つに、”初めての学校公開(授業参観)”があります。教室から聞こえてくる授業の様子にドキドキしながら、廊下からそーっと教室を覗いて見たのを覚えています。グニャっとした姿勢ながらも椅子に座っているコウの姿を見て、「何とか授業を受けていられるようだな、よかったよかった…」とホッとしながら眺めていると、コウは手に取った教科書の角をかじり始めました。『落ち着きのない小学生あるあるで鉛筆をかじる話はよく聞くけれど、教科書をかじるパターンもあるんだな~!』と驚きながら、夫に「【速報】コウ(6)、教科書をかじってマズそうな表情」とメッセージを送りました。Upload By 丸山さとこ職場で休憩中だった夫は私からのメッセージを見てコーヒーを吹いたそうで、「いやー、”驚いて飲み物を吹く”ってリアルにあるんだな~!」と笑っていました。(メッセージを送ったのは、スクールカウンセリングなどの面談時にコウの様子を伝えられるように記録をとっておくためでもあったのですが、夫と衝撃を共有したい気持ちもありました)日ごろのコウの様子から、授業中に集中しなかったり指示が通らなかったりすることはあるのだろうなと思っていました。また、保育園に通っていたころも見学は何度か行っていたので、教室内でコウがどのような振舞いをするかはある程度想像できていました。そのため、コウが椅子の上でグニャっとしていても、ポケットティッシュや鉛筆を両手の間で転がしていても、「あ~こういう感じか~。なるほどなー!」と思っていました。Upload By 丸山さとこ教科書をかじるのは想定外のことだったので一旦驚きましたが、『想定外ではあるけれど意外ではないかも…。コウだったら、それくらいするよなぁ…』と思った私は”コウらしいエピソードの1つ”として、その出来事を受け止めました。数ヶ月後に中学校への進学をひかえて、しみじみ(?)しています!そんな初めての学校公開の思い出ですが、それから6年間見てきた学校公開を今振り返ってみて『コウ以外に教科書をかじっていた子どもは見たことがないな』と気がつきました。Upload By 丸山さとこスクールカウンセリングでの面談にて「授業中、〇〇をしているのはコウ君だけですね」と言われたことが今まで何度かあったので、きっと私が見た姿以外にも、たくさんの”〇〇しているのはコウ君だけ”があったのだろうなと思います。スクールカウンセリングでも、私の通っている病院でも「この辺りは中学校に入ると支援や配慮はまず期待できないです」と言われている現在の状況…。以前、児童精神科医の三木先生に“学校にサポートをお願いしたいとき心がけたいこと”をお伺いしコラムにしましたが、そのときに三木先生がおっしゃっていた「(保護者は、サポートに対して)準備か覚悟をしておく」という言葉を思い出しては、『改めて沁みるな~!』と感じています。『親が余力をもって暮らしておく』という準備が理想ですが、実際余力がないときはありますし、支援がうまくいかないことやトラブルなどに対して『起きたらもうしょうがないと腹を括る覚悟』は心構えとしてしておきたいものです。 By 丸山さとこ指示の通りにくさ、周りを見て動くことの苦手さ、忘れ物や聞きもらしの多さなどなど…進学を考えるのであれば重要になるであろう内申点のことを考えると気が遠くなりますが、準備と覚悟を用意しつつ、できることを見つけてやっていこうと思います!Upload By 丸山さとこ執筆/丸山さとこ(監修:初川先生より)小学校1年生の授業参観時のエピソード、ご夫婦で共有され、ある程度客観視できていたところが素晴らしいと思いました。教科書をかじる息子に怒りが湧くのではなく、衝撃を受けつつも、いい意味で心的な距離を取り「おもしろがる」、そんなあたたかいまなざしを持つことができているように感じました。おそらく、スクールカウンセリングなどの面談時に、そうしたエピソードをカウンセラーに語る中で、ますますコウくんの姿を客観視し、保護者の方が感情的に振り回されすぎず、だからこそ成長を感じ…という良い循環もあったこととお察しします。そういう中で、おそらく覚悟の芽が育ち、冷静に準備に取りかかれているのだと思います。中学進学、おめでとうございます。義務教育もあと3年というところにさしかかりました。中学校ではきっと体だけでなく内面的にも大きく成長するでしょう。楽しみですね。そして小学校よりも中学校では保護者の方は後方からの関わりにシフトチェンジします。準備と覚悟を携えて、コウくんの新しい環境での日々を見守っていけたらいいですね。
2021年12月18日「助けて」運良く空きがあった発達クリニックへ2歳の後半からほぺろうの癇癪は悪化。一日のうち10回は癇癪が起爆し、一回につき1時間ほど引きずるという毎日を繰り返し、当のほぺろうも、つき合わされる私も満身創痍でした。さすがの私も「成長を待てば何とかなるものではないかも」と察し、誰かに助けを求めなければと思い始めました。調べてみると、ちょうど近所に発達クリニックがあったので意を決して電話。一般的に発達クリニックは予約を取るのが大変だと聞いていたので、半年は待つことを想定していましたが、運良く「2週間後に空きがあります」との返事に私は飛びつきました。Upload By ぼさ子初めて訪れた発達クリニック。病院っぽい佇まいを見ただけで、ほぺろうは案の定、大号泣!!パニックを起こし、抱きかかえるのも至難の業でした。待合室に検査の人が来て「こんなに泣かれては検査できません。本当に今日検査しますか?」と聞かれました。そう言われて「発達検査って、泣かない子しか受けられないものなの!?」と頭をよぎりましたが、当時の私は発達クリニックをよく知らなかったので、この時点で「ほぺろうは発達クリニックでも手に負えないんだ」と愕然としました。でも今日を逃したらもう予約は取れないと思った私は、「すみません、すみません…やれることだけでもお願いします」と必死にお願いしました。Upload By ぼさ子ほぺろうに検査は到底できないので、暴れるほぺろうを抱えながら行った”保護者の聞き取り調査“。待合室中にほぺろうの泣き声が響き渡り、ほかの患者さんやクリニックに申し訳ない気持ちで心が折れそうでした。検査の人にも「今日は無理じゃないですか?」と何度か声をかけられましたが、当時の私はほぺろうの困りごとを助けてほしくて「聞き取り調査だけでもお願いします!」と必死でした。しかし、やがてベテランらしきスタッフが登場し強い調子で言われました。「こんなに泣くなんて、すごい声」と。お子さんは連れてこないでさらに、「聞き取り調査の結果は10日後に出ますが、説明が泣き声で聞こえないのでお子さんは連れてこないでください」と言われました。結果が出る日は夫にもほぺろうを預けられないことが分かっていたので、「どうか子ども連れでもお願いします」と私は頭を下げましたが、「無理なら諦めてください。その日しか予約は取れませんよ」と言われてしまいました。そして当日、嫌な顔をされると分かりつつ この日しか話を聞けないということなので、号泣するほぺろうを抱えて再び来院。待合室に入るなり、「詳しい説明はいらないでしょう」と言われてしまい、そのまま追い返されるように帰りました。Upload By ぼさ子「今 本当に困っているけど、ほぺろうもしんどいし周りにも迷惑かけるから、ほぺろうに手がかからなくなる日まで診察は諦めるべきなのかな…」そのときすでに心身擦り減っていた私は、何が正しい判断か分からなくなっていました。そして「私たち親子は、発達クリニックにも助けてもらえない存在なんだ」と、ますます孤独が深まりました。Upload By ぼさ子クリニックが変われば対応も変わる時が経ち、その後、引越しを機に現在お世話になっている発達クリニックを発達支援センターより紹介してもらいました。そこでもほぺろうは変わらず大号泣。申し訳なさすぎて、以前の発達クリニックでの経験から「次回から先生のお話だけの日は、息子を夫に預けてきた方がいいですか?」と恐る恐る聞いてみました。すると先生が、「お子さんの様子を見るのも診察のうちなので、なるべく連れてきてほしいです」と仰ってくださり、存在を否定されなかったことに私は目頭が熱くなりました。Upload By ぼさ子医療・療育関係のみなさまへの願い初めて発達クリニックを訪ねてから数年が経ち、優しく親身になってくれる方々にたくさん出会うことができました。今なら「初めて行った発達クリニックは、配慮がなかったな」と思うことができますが、何も知らなかった当時の私は、発達障害のある子を助けてくれるはずの機関に見放されるなんてと思い詰めていました。あのような対応は滅多にないと信じたいですし、現在お世話になっている発達クリニックのような対応が一般的なのかもしれません。『もしかして発達障害?』とわが子の発達に心配を抱える親子は、おそらく診断が出る前が一番精神的に不安定なのではと想像できますし、心身がすでにボロボロになっている可能性が高いと思うのです。医療機関や療育関係のみなさまにとっては、数多くいる相談者の中の一組かもしれません。でもその一人ひとりの親はわが子を心配し、とまどい悩み必死です。どうか保護者の気持ちにも寄り添っていただけたらと願ってやみません。Upload By ぼさ子執筆/ぼさ子(監修:初川先生より)あぁ、なんと最初のクリニックのひどいこと…!!拝読しながら衝撃を受けました…!困っているから受診しているのに、そんな親子をさらに追い詰めて、一体何がしたいんだと怒りすら湧いてきます…。同じ支援者界隈の人間として、つらい思いをさせてしまったことをお詫びしたいくらいです。ほんとにもう…!さて、しかしながら、残念な支援機関や医療機関が存在するというのは、私も各所で耳にすることです。それを回避する方法として、一つには、地域の相談機関や子育て支援機関にまず相談して、その中でおすすめの医療機関など地域の情報を得るという方法があります。行政の相談窓口だと、特定の医療機関をおすすめすることは実は難しいことですが、それでも実際には、「このあたりの人がよく受診する医療機関」については教えてくれたりします。ぼさ子さんが最後のイラストで描かれているように、「子どもの安心って親の安心からつくられる」はまったくその通りです。保護者の方をまず支えるのが支援機関の最低限の務めだと思います。クリニックであれ、相談機関であれ、最初に訪れる際にはとても勇気が要ったことと思います。「相談に来てよかったです」や、「あのとき勇気を出してよかったです」と感じていただけるのが支援者の使命だと多くの支援者は思っています(なのにほんとに、どうしてあんなことに…!)。みなさまが良き支援者・機関と出会えることを祈りつつ、支援者として気が引き締まるお話でした。
2021年12月17日不登校の中3娘、受験よりも心配なことは…うちの娘いっちゃん(ASD・中3)は、睡眠障害があり決まった時間に起きることができません。できれば進学したいという希望を持っているので、家庭での学習も(少しは)やりながら、絵の塾のようなところにも行っています。でも、テストより心配なのは「学校に受かったとして通えるか」ということなのです。Upload By 寺島ヒロ睡眠障害の改善のため服薬を実は全日制の高校に通う可能性も考えて、睡眠を朝方に安定させるべく、今年の4月ぐらいから投薬治療を始めていました。同い年の子と比べても小柄ないっちゃん、薬での治療は不安でしたが、「最近はいい薬が出てるので」と朗らかに言う医師の指導のもと、最初はロゼレム錠という自然な眠気を強化する薬を半錠飲み始めました。1ヶ月ほど飲み続けた後、医師と相談し1錠に増やしました。が、3ヶ月経ってもはっきりとし改善された様子は見られませんでした。さらに薬を増やしても改善せず…元々自然に眠くなる時間がずれているので、眠気のない時間に飲んでも眠れないのではないかと、再び医師と相談し、今度はデエビゴ錠というもう少し即効性がある薬を夜の10時ごろに重ねて飲むことにしました。これは飲むと20分ほどで眠くなるので、希望の時間に眠れるのは眠れるのですが、なんと起きる時間は「本人が本来起きるはずだった時間」になってしまうのです。Upload By 寺島ヒロ※薬の効果には個人差があります。詳しくは医師にご相談ください。10月ごろにはこれ以上は薬を増やしても、今は早急に結果が出ることはないだろう…という雰囲気が濃厚になってきました。医師も「まだ受験までには半年あるけど、どうしましょうかね…」と歯切れが悪くなってきました。いっちゃんの決断!薬は規定上はまだ増やすことはできるようでした。しかし、いっちゃんはこれを拒否。「薬を飲むと使える時間が減る!」と言うのです。Upload By 寺島ヒロ医師の先生の言うとおり、来年の春までにまだ時間はあります。まだ睡眠が改善する余地はあるのかもしれない…。でも…。来年の春からの学校生活も大事ですが、今も大事です。半年の間にいっちゃんが何枚の絵を描くことができ、どれだけの曲をつくれるのか…と考えると、14歳の半年間がとってももったいなく感じられてきました。結局、来年の春までになんとかというのはやめて、薬はデエビゴ錠のみにし「今日は用があるので絶対起きたい!」というときだけ、起きたい時間の9時間前に飲んでなんとかするというように方針を切り替えました。根本的な解決は見えていないけど…朝起きられるようにはならなかったけど、薬を飲むことでいっちゃんは自分の眠りのペースを掴むことができてきたようです。高校選びも、今までは「母さんがいいと思う学校でいいよ」と言っていたのですが、自分でネットで調べたりするようになりました。改めて通信制の学校をチョイス「ここ受けたい!」そんな娘が選んだのは、関東に本校がある高校のオンラインコース。一人でも勉強や創作に取り組むことができるいっちゃんには合っているかもしれません。ネットで調べたところ、定員に達したら募集終了になる可能性があるとのことだったので、娘から希望を聞いてすぐに願書を取り寄せ、提出しました。Upload By 寺島ヒロ結果は合格!選考基準が分からなかったので心配していましたが、なんとか進学の目処がつきました!余談ですが、結果発表は選考完了予定日の夕方5時ちょうどにメールで届きました。通信制の学校ということでネットを活用しているとは聞いていましたが、私が学生だった時代には学校まで掲示板を見にいってましたので(昭和っぽい?)、なんだかすごく便利になってびっくりしましたね!デジタル化が進むことで、学び方や学校のあり方も変わってくるのかもしれないなあと思いました。執筆/寺島ヒロ(監修:鈴木先生より)睡眠障害の場合、一般的に精神科医は睡眠薬を処方しますが、小児科医は初めから睡眠薬を処方することはほぼありません。まずは、早く起こして朝陽を浴びさせて体内時計をリセットし、日中の活動性を高めることから始めます。朝起きが不良の場合、小児科医ならまず起立性調節障害を疑います。ほかの症状として頭痛・車酔い・立ちくらみなどもあり、親からの遺伝性もみられます。15分ほどの起立テストで血圧・脈・心電図を測定することで大体分かります。治療としてはミドドリンというお薬で目覚めはよくなります。また、16歳未満の自閉スペクトラム症に伴う入眠困難の場合は、メラトベルというお薬を内服することで入眠時間を早めることもできます。
2021年12月16日