現在ヨーロッパ在住のファッションジャーナリスト、平野秀美さんのファッションスナップレポートです。本日は、ロンドンっ子も大好きなワイドデニムパンツを特集します。やっぱり着こなし方がおしゃれ!ワイドデニムパンツがこんなに上品に!ワイドなデニムとなると、60年代70年代のスタイルのような印象を受けますが、実はこの方のように着こなし方によって、こんなにもトレンディで上品になるんですね!そして、この方のワイドパンツ、かなり幅の広いもので、通常は着こなしが本当に難しそう。ロングコートにアンティークなデザインのシャツで、パーフェクトな着こなし!古着を上手にコーディネイトするロンドンっ子古着ファッションを着せたら、一番おしゃれに着こなしてくれそうなロンドンっ子。サングラスからコートまで、バッチリ決まった70年代風スタイル。長すぎるデニムを、厚底で上手に工夫!トレンディでかっこいいスタイルカジュアルに見えるデニムを、人気ブランドの小物やトレンディなボンバージャケットなどと合わせて着こなすのもいいかも!?ヘアスタイルからトレンドを意識した動きやすいスタイル!スタイルを良く見せる参考スタイル!まさに、この方のスタイルは、スタイルを一番良く見せる方法を知っているかのように、小物や洋服を上手に使っています。ワイドパンツとの相性の良い厚底シューズは、ご存じのように脚長効果を生み出してくれ、さらにトップスを短くすることで、腰の位置が上がって見え、引き締まって見えます。ここまでやってしまうかと思うくらい、小物使いも上手!ここでベレー帽を使用することで、ファッション全体に作りたかった雰囲気を完成させています。色を使って、ワイドパンツという古い印象を一新!さすがインフルエンサーファッション!上手に色を使ったこちらのスタイル、パンツも個性的ながら、シューズからジャケットまで、ピッタリ合った色使いが上手。リップのカラーまで完璧に見せてくれてます。いかがでしたか?ワイドパンツはなかなか手が出しにくいファッションアイテムの1つ。しかしロンドンっ子は上手に、上品にもトレンディにも着こなしていました。ぜひ参考にしてみて下さい。
2022年03月18日何かとストレスが溜まりやすい現代で、ときにはうっぷんを晴らしたいと思うこともあるのでは?そこで、憂うつな気分も吹き飛ばしてくれるオススメの話題作をご紹介します。『ガンパウダー・ミルクシェイク』【映画、ときどき私】 vol. 466ネオンきらめくクライム・シティで、暗殺組織に属する腕利きの殺し屋サム。トップ・アサシンとして暗躍していたが、彼女はあるミッションでターゲットとされていた人物の娘エミリーをかくまったことで、組織から逆に命を狙われてしまう。次々とやってくる刺客たちを蹴散らし、夜の街を駆け抜けるサムとエミリーは、かつて殺し屋だった 3 人の女性が仕切る図書館に飛び込むことに。知恵と力を結集させた女たちは、図書館秘蔵の銃火器の数々を手に、悪の組織への反撃を開始する!CG抜きの迫力あるアクションを堪能できるだけでなく、バイオレンスとユーモアを融合させた“新世代のシスター・ハードボイルド・アクション”として注目を集めている本作。作品の裏側について、こちらの方にお話をうかがってきました。ナヴォット・パプシャド監督世界各国の映画祭で数々の賞を受賞した経験に加えて、クエンティン・タランティーノ監督からも才能を認められているイスラエルの鬼才パプシャド監督。今回は、映画マニアならではのこだわりや日本に対する特別な思いなどについて、語っていただきました。―まずは、本作に登場する主要の殺し屋を全員女性にしようと思った理由から教えてください。監督僕にとっては、「そうしない理由はないんじゃない?」と思っていたくらい自然なことでした。『エイリアン』とか『キル・ビル』のように、女性が物語を引っ張っていくような作品は以前からもわりとあるようなイメージがあったので。ただ、数としてはまだまだ足りていないのかなという印象はありました。それからもうひとつの理由としては、「もし男性が主人公だったらこんなスマートな判断はしないかもしれない」と思うところが本作にはいくつかあったので、女性のほうがいいのではないかなと。決して男性を見下しているわけではありませんが、人質になった少女と母娘のような関係になるほうが自然だし、そのほうがおもしろいと感じたのです。そういったところからこの映画では女性であることが大きなテーマになり、シスターフッドの作品となりました。女優たちとのコラボはキャリアにおいても最高の経験―なるほど。そのあたりについては、出演されている女優陣とも話し合ったのでしょうか。監督そうですね。物語の主軸となる感情面や葛藤というのは女性ありきの部分だったので、彼女たちと一緒に相談しながらキャラクター造形を完成させることができたのは大きかったです。彼女たちが素晴らしいコラボレーターとなってくれたおかげで、作品のレベルも上がりましたし、僕自身のキャリアにおいても最高の経験となりました。―劇中では気になるアイテムが数多くありましたが、タイトルにも使われているミルクシェイクを母娘の絆を感じさせる大事なシーンのアイテムとして選んだ理由とは?監督2人をつなぐものとして何かを入れたいと考えていたときに思いついたのが、ミルクシェイクだったからです。僕自身、食べ物とともに両親との思い出を振り返ることが多かったというのもありますが、そのなかでもミルクシェイクに含まれているのは、童心に帰れる要素とロマンチックさ。それをスローモーションで撮ることによって、母親と子どもの絆をノスタルジックな瞬間として表現できたと思っています。僕にとって母親の作ってくれたチョコレートケーキは、たとえ味で負けていたとしてもミシュランの3つ星店が作るチョコレートケーキよりも特別なもの。そんなふうに記憶や感情とつながり、絆を感じさせるものがこの作品には必要だったのです。日本文化とは昔からつながりを感じている―そのほかに日本製のシリアルをサムが食べていたり、サムとエミリーが日本語の書かれたシャツを着ていたりしているのも気になりました。小道具に日本の要素を取り入れたのには何か意図がありますか?監督まだ1度しか訪れたことがないものの、僕は日本が大好きで、大きな敬意の念を抱いています。言葉ではうまく説明できませんが、昔から日本文化とはつながりを感じていましたし、日本語の響きは僕にとっては音楽のようでもあります。僕は日本から影響を受けていることを隠すつもりはなく、むしろそれをドンドン出していきたいと思っているので、劇中で日本語の書かれたアイテムを登場させました。それくらい僕は日本の文化や映画に対して思い入れがあるので、それをみなさんにも知ってほしいです。―さらに、この作品では黒澤明監督にインスパイアされて作ったところもあるのだとか。映画マニアでもある監督が、本作に黒澤監督の要素を取り込もうと思ったのはなぜでしょうか。監督それは、もはや愛のようなものですね(笑)。人を好きになるのに理由がないのと同じではないかなと。今回は、黒澤明監督だけでなく、セルジオ・レオーネ監督とアルフレッド・ヒッチコック監督という3名からインスピレーションを受けているので、それらが交錯するような映画になっています。僕の祖父が映写技師だったこともあり、僕は「映画とは何か」というのを知る前から映画に触れて育ちました。そういったなかでも、観ているだけでまるで催眠にかかったかのように引き込まれてしまうのがいま挙げた3人の監督。黒澤監督に関していうと、幼いころに父と観た『七人の侍』に魅了されたことをよく覚えています。落ち着いたら日本には一番初めに行きたいと思っている―そのなかでも、注目してほしいところはありますか?監督本作では暗殺モノを誘拐モノにつないでいく、というアイデアを実現させることができました。たとえるならレオーネ監督の『続・夕陽のガンマン』を観ていたと思ったら、黒澤監督の『天国と地獄』になっていたというような感覚に近いかなと。そうやってジャンルをミックスすることも今回は意識したところです。―それでは最後に、監督が日本に対して伝えたい思いがあれば、お聞かせください。監督僕は学生時代から黒澤明監督や黒沢清監督、三池崇史監督といった方々から影響を受けてきました。映画を通して日本という国を知ったというのもありますが、僕にとって日本は“映画的な国”です。そのほかにも、アニメや音楽といった日本の文化も大好きなので、このパンデミックが落ち着いたら一番初めに行きたいと思っています。ポップでカラフルなのにバイオレントも全開!強さと美しさを兼ね備えた女性たちが繰り広げる手加減なしのド派手なバトルに、爽快感炸裂の本作。甘さは控えめだけど超刺激的な1本に、誰もが心をシェイクされること間違いなし!取材、文・志村昌美興奮が止まらない予告編はこちら!作品情報『ガンパウダー・ミルクシェイク』3月18日(金)、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー配給:キノフィルムズ©2021 Studiocanal SAS All Rights Reserved.
2022年03月17日保護犬や保護猫など、年々高まりを見せている動物愛護への関心。そんななか、オススメする1本は、全編ほぼ犬目線で撮影されたことでも注目を集めている話題のドキュメンタリーです。『ストレイ 犬が見た世界』【映画、ときどき私】 vol. 465殺処分ゼロの国トルコ・イスタンブールの街で、人間と自然に共存生活を送っている野良犬たち。そのなかにいたのは、自立心が強くいつも単独行動の犬ゼイティン、フレンドリーで人懐っこい犬ナザール、そしてシリア難民の心の拠り所になっている愛らしい表情の子犬カルタルだった。異国情緒あふれる街中を縦横無尽に移動する彼らの目線から見えてきたものとは?舞台となるトルコは、20世紀初頭に行った大規模な野犬駆除に対する反省から、殺処分や野良犬の捕獲が違法とされている国のひとつ。それゆえに、動物愛護に関する国民の意識も非常に高いと言われています。そこで今回は、その現状に迫ったこちらの方にお話をうかがってきました。エリザベス・ロー監督監督のみならず、プロデューサー、撮影監督、編集も務めた香港出身のロー監督。撮影時に驚かされたエピソードや愛犬家でもある監督だから気づいたこと、そして私たちが犬たちの生き方から学ぶべきことについて語っていただきました。―今回は、犬と同じ目線での撮影に挑戦されましたが、ローアングルで撮ることに決めた理由からお聞かせください。監督本作では犬の生活が物語の中心なので、それをとらえるためには、彼らの視点で描かなければ意味がないと感じました。人間が主人公の場合は、私たちの目の高さで語られているので、それと同じことだと考えたのです。そしてもうひとつの理由は、意識下に潜り込むような体に響く映像が撮れるのではないかと思ったから。私たちは物事を考える際、人間を中心としていますが、視点を低くすることで普段とは違う新しい見方で世界をとらえられるはずなのです。私たちが何を中心に置いて物事を考えるべきなのかを見直すきっかけになるような映像にしたかったというのが意図としてありました。―とはいえ、自由に暮らす犬を追いかけながら、同じ目線を維持して撮影するのはかなり大変だったのでは?監督そうですね。どうすれば思い通りの映像が撮れるかについてはかなり悩みました。基本的に野良犬たちは人間の言うことを聞かないので、そこが一番難しいところだったかなと。最終的には、いくつかの装置を駆使しながら低い体勢で撮影できる方法を見つけることができたので、今回のような映像を撮ることができました。おかげでいろいろなことが自然発生的に起きた瞬間をカメラに収められたと思っています。犬たちは深いところで人間が望むことを察知してくれる―そうやって撮られた映像から、ご自身で新たな発見をすることもあったのではないでしょうか。監督それはありましたね。たとえば、ゼイティンとナザールが車のたくさん走っている道路に向かって急に走り出すシーン。撮影しているときは奇妙な行動だと感じていましたが、編集の段階で何度も同じ場面を見ていたところ、彼女が一瞬振り返って「いい画が撮れた?」みたいな顔をしていることに気がついたんです。あのシーンによって、彼らの置かれている状況がとても危険であることが表現できましたし、生き物の不可解さみたいな部分もとらえられたのではないかなと。すごく心配になる行動でしたが、よく見るとリスクをきちんと計算していることもわかりました。私たちが自分自身でも気がつかないうちに望んでいることでさえ、犬たちは深いところで人間のことを察知してくれているんですよね。そんなふうに少しずつ行動の意味がわかるようになってきたので、フィルムメイカーとしては本当にワクワクする作業でした。野良犬たちが豊かな生活をしていることに気がついた―人間と野良犬が共存している様子は日本ではあまり見ない光景なので驚きましたが、監督も2017年にトルコを旅した際に知ったとか。監督私が生まれ育った香港と生活経験のあるアメリカという2つの国は野良犬を許容しない社会なので、トルコのコミュニティが法律とともに野良犬をケアしていると知ったときは私も驚きました。そのときに感じたのは、資本主義社会では何も生産しない野良犬を置いておく余地がないということ。それだけに、いきいきとしているトルコの野良犬たちの姿は、野良犬を必要のない存在とする資本主義に対する抵抗のようにも見えました。ただ、トルコでも現大統領が路上から動物を排除しようと考えているようなので、いま彼らの置かれている立場は非常に不安定なものになりつつあるのが現状。それもこのドキュメンタリーを作りたいと思った理由のひとつでもあります。―トルコでの半年間の撮影を経て、いま思うことといえば?監督最初は、ペットと違って愛を受けていない野良犬がどんな生活をしているのかを追いかけようと考えていたのですが、実際に彼らと過ごしてわかったのは、すごく自由で豊かな暮らしをしているということでした。そして、私たちは野良犬がいると道徳的によくないと思いがちですが、彼らをケアしているコミュニティのほうがよっぽど人間的であることにも気づかされたのです。香港やアメリカ、そして日本のように野良犬を許容しない社会の考え方をひっくり返すのは難しいことではありますが、そういった思い込みがあることを知ってほしいなと。トルコのように共存のモデルができあがっていることは本当にすごいことですよね。人間と違って、犬は相手を裁くことはない―犬たちと共存することが人々に与えているいい影響なども、感じることはあったのではないでしょうか。監督そうですね。今回登場する野良犬たちは路上で暮らすシリア難民の少年たちと行動をともにしていますが、一緒にいたいと思うのは、お互いにどこかに属したいとか、仲間を作りたいという気持ちがあるからだと思いました。特に、人間と違って犬は相手を裁くことはなく、あくまでも自分をどう扱ってくれるかで相手との関係性を決めている存在ですから。そんなふうに、少年たちはひとりの人間として必要とされている喜びや癒しを犬から与えられたくて一緒にいることを望んだのだと感じました。―街に暮らす一般の方々にとっても野良犬たちが生活の一部になっており、その姿は美しかったです。監督確かに、トルコでは社会にいるどんなクラスの人でも野良犬に対しては、深い愛と寛容さを持って接していると思いました。たとえば、2匹の犬が餌を取り合っているシーンではゴミ収集車の人がケンカを止めようとするのですが、そんなちょっとしたことでも介入しようとする姿は素晴らしいなと。野良犬たちを守る法律は、もともとトルコの人たちが自ら戦って作り上げたものですが、それをまた政府が覆そうとしている状況はとても悲しいことです。しかも私からすると、そのほかの社会問題からみんなの目をそらすための“身代わり”に利用されているのではないかという懸念もあります。犬たちがしっかりと生きることを教えてくれる―人にとっても犬にとっても、いい方向へと進んでほしいですね。ちなみに、もし日本にも旅行されたことがあれば、そのときのことを教えていただけますか?監督日本には何度か訪れたことがありますが、場所も文化もとても興味深く、美しい国ですよね。ただ、動物好きの観点から気になっているのは、日本の動物園について。細かいところにまで心配りがされているものの、ほかの国と比べて動物の居住区や展示スペースが殺風景に見えて残念に思ったことがありました。今回は動物に関わる映画ということでそんなことを思い出してしまいましたが、日本の文学や映画はとても素晴らしいと感じています。―貴重なご意見ありがとうございました。それでは最後に、犬たちの生き方から私たち人間が学ぶべきところについてお聞かせください。監督人間というのは、つねに生産しなければいけないと考えがちですが、そういった思考をリセットさせ、その瞬間をしっかりと生きることを教えてくれる存在が犬たちではないかなと。彼らは人やほかの生き物と絆を築くうえで見返りを求めることなく、自分が興味を持ったものだけを追求していくので、私はそんな姿に敬意を払っていきたいです。新しい視点を手に入れれば、世界は広がる!思い込みや凝り固まった考え方から解放されるのに必要なのは、いままで見たことのない目線から世界を眺めること。犬たちが送る豊かな生き方は、私たち人間が忘れがちな大切なことを教えてくれるはず。愛に満ちた美しいトルコの街に彼らと一緒に繰り出してみては?取材、文・志村昌美優しさに満ちた予告編はこちら!作品情報『ストレイ 犬が見た世界』3月18日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開配給:トランスフォーマー© 2020 THIS WAS ARGOS, LLC
2022年03月16日春のお出かけにぴったりの展覧会が、都内各所で次々とはじまっています。今回は、特に日本が誇る美しい芸術品を見られる場所にフォーカス。サントリー美術館、山種美術館、アーティゾン美術館と東京国立近代美術館の企画展をまとめてご紹介!サントリー美術館『よみがえる正倉院宝物―再現模造にみる天平の技―』【女子的アートナビ】vol. 237御大典記念特別展『よみがえる正倉院宝物―再現模造にみる天平の技―』では、奈良にある正倉院宝物の精巧な再現模造のなかからセレクトされた逸品をまとめて展示。近現代の一流工芸家により再現された天平時代の技と美をたっぷり楽しめます。正倉院宝物とは、東大寺の重要な資財を納める「正倉」に伝わった約9,000件の品々のこと。聖武天皇ゆかりの品をはじめ、奈良時代の貴重な宝物が多く、調度品や楽器、武具、仏具、染織品など多彩な品があります。でも、なぜ本物の宝物ではなく再現模造を展示するのでしょうか?宮内庁正倉院事務所保存課長・飯田剛彦さんによると、正倉院宝物は壊れやすく、全国各地の展覧会で積極的に作品を公開するのは難しいとのこと。代わりに再現模造で理解を深めてほしい、とのお話でした。明治期の模造製作は、宝物を修理するための試作品としてつくられたことが多く、今では万が一の際のスペアとしての役目や、今回のような展覧会に出品する役割も担っているそうです。例えば、正倉院の国宝「螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)」の模造をつくる際、まず製作前にレントゲンやCTスキャンなども駆使して徹底的な調査を実施。痕跡を探り、さらに当時と同じ材料も各地から探し集め、そのうえで当代の名工たちが当時の技法を再現しながらつくりあげたそうです。「螺鈿紫檀五絃琵琶」は、正倉院宝物を代表する名品のひとつ。楽器としても大変珍しく、世界で現存するのは正倉院の現宝物のみ。それと同じものをほぼ完ぺきに再現した模造も、やはり素晴らしい芸術品といえると思います。前出の飯田さんは、この企画展の楽しみ方について、次のように教えてくれました。飯田さん再現模造には変色や欠けている部分もなく、ストレートな美しさがあります。また、現代の一流工芸作家が失われた技術をどのように再現したのか、という部分も注目点です。模造のパーツなども展示されているので、製作過程も含めて楽しんでみてください。本展は3月27日まで開催。その後、長野に巡回します。山種美術館『上村松園・松篁 ―美人画と花鳥画の世界―』渋谷区広尾にある山種美術館では、美人画の巨匠として知られる上村松園と、その長男・松篁(しょうこう)に焦点を当てた展覧会『上村松園・松篁 ―美人画と花鳥画の世界―』が開催中。気品あふれる日本画を心ゆくまで堪能できます。上村松園(1875~1949)は、京都で活躍した女性画家。葉茶屋の娘として生まれ、京都府画学校(現:京都市立芸術大学)で鈴木松年に、その後は竹内栖鳳などのもとで日本画を学びます。1902年に長男・信太郎(のちの松篁)を出産。家業の茶商を廃業して画家に専念し、シングルマザーとして息子を育てます。1948年には、女性初の文化勲章を受章。格調高い美人画で人気を博し、日本画家として成功を収めました。上村松篁(1902~2001)は、花鳥画で有名な画家。特に鳥の絵に定評があり、アトリエで多くの鳥を飼って観察しながら描いていたことで知られています。1984年には文化勲章を受章。息子の上村淳之も、日本画家として活躍しています。会場では、山種コレクションの上村松園作品全18点・松篁作品全9点を一挙に公開。さらに、淳之も含めた三世代の作品を見ることができます。なかでも時期的に必見なのが、松園の《春芳》(しゅんぽう)。梅の木の前でたたずむ女性の姿が描かれた大変美しい作品です。芳しい梅の香りが漂ってきそうで、作品の前に立つだけで一気に春の空気に包まれます。本展は4月17日まで開催。アーティゾン美術館『はじまりから、いま。1952ー2022』公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館では、現在『はじまりから、いま。1952ー2022 アーティゾン美術館の軌跡―古代美術、印象派、そして現代へ』が開かれています。本展では、石橋財団コレクションの歴史を約170点の作品とさまざまな資料で紹介。古代美術や日本東洋古美術から現代美術まで、幅広いジャンルの名作を楽しめます。展覧会は3部構成。第1章「アーティゾン美術館の誕生」では、近年収蔵された作品や、これまで開催された展覧会のポスターなども展示。ブリヂストン美術館時代の懐かしい企画展などを思い出しながら、美術館が歩んできた歴史に触れられます。第2章「新地平への旅」では、中国出身の画家ザオ・ウーキーによる墨で描かれた大作が登場。また、新所蔵作品《平治物語絵巻 常磐巻(ときわのまき)》も初公開中です。これは鎌倉時代に制作された作品で、清盛勢が内裏に討ち入りする場面などがドラマチックに描かれています。さらに、みんな大好きな“日本の宝”も第2章に登場!国宝《鳥獣戯画》(京都・高山寺蔵)甲巻の一部だった作品《鳥獣戯画断簡》も、石橋財団コレクションの所蔵作品です。最後の第3章「ブリヂストン美術館のあゆみ」では、開館初期のコレクションを紹介。モネやマネなどの絵画やギリシア彫刻などを楽しめます。本展は4月10日まで開催。東京国立近代美術館『没後50年 鏑木清方展』最後にご紹介するのは、美人画の大家として活躍した鏑木清方(1878~1972)の日本画約110点を集めた展覧会『没後50年 鏑木清方展』。こちらは3月18日からはじまります。鏑木清方は東京・神田生まれ。浮世絵系の画家に師事したあと挿絵画家としてデビューし、新聞や小説雑誌などの挿絵を手がけます。その後、人物画を中心とした日本画にも取り組み、庶民の暮らしや文学などをテーマに絵画を制作。関東大震災後、清方は再開発で失われていく明治の景色をテーマに作品を描き、代表作のひとつ《築地明石町》が誕生します。明石町は、明治時代に外国人居留地だった場所。本作の背景には洋館の垣根が描かれ、黒い羽織姿の女性の髪形は、明治期に流行した「イギリス巻」になっています。鏑木清方は、先にご紹介した上村松園と並び称されることも多く、特に美人画の雰囲気が似ているので違いがわかりづらいと思う人もいるかと思います。でも、山種美術館の企画展と本展を見れば、その違いがきっとわかるはず。ぜひ、どちらにも足を運んで、じっくりと本物の作品をご覧になってみてください。本展会場の東京国立近代美術館は千鳥ヶ淵にも近く、周辺にお花見スポットがたくさんあります。アートとお花見と一緒に楽しむのもおすすめです!Information御大典記念特別展『よみがえる正倉院宝物―再現模造にみる天平の技―』会期:~3月27日(日)※火曜休館※3月22日は開館会場:サントリー美術館開室時間:10:00~18:00(金・土は10:00~20:00)※3月20日(日)、3月21日(月・祝)は20時まで開館※いずれも入館は閉館の30分前まで※開館時間は変更の場合があります観覧料:一般¥1,500、大学生・高校生¥1,000『上村松園・松篁 ―美人画と花鳥画の世界―』会期:~4月17日(日)※月曜休館※3/21(月)は開館、3/22(火)は休館会場:山種美術館開室時間:10:00-17:00(入館は16:30まで)観覧料:一般¥1,300、春の学割 大学生・高校生¥500、中学生以下無料 (付添者の同伴が必要)『はじまりから、いま。1952ー2022 アーティゾン美術館の軌跡―古代美術、印象派、そして現代へ』会期:~ 4月10日(日)※月曜休館※3/21(月)は開館、3/22(火)は休館会場:アーティゾン美術館開室時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)※金曜日は20:00まで観覧料:ウェブ予約チケット¥1,200、当日チケット¥1,500、学生無料(※要ウェブ予約)『没後50年 鏑木清方展』会期:3月18日(金)~5月8日(日)休館日:月曜(※3月21日、28日、5月2日は開館)、3月22日(火)会場:東京国立近代美術館1F企画展ギャラリー開室時間:9:30-17:00(金・土曜は9:30-20:00)(入館は閉館30分前まで)観覧料:一般¥1,800、大学生¥1,200、高校生¥700、中学生以下無料
2022年03月13日スマホやSNSの発展によって“1億総クリエイター時代”と呼ばれるなか、エンタメ業界では新しい才能が次々と登場しています。そこで、ananwebが注目するのは、次世代を担うであろう映画監督たち。今回は、新世代の映像クリエイターを発掘&育成するプロジェクト「Hulu U35クリエイターズ・チャレンジ」で戦う5名のファイナリストをご紹介します。近藤啓介さん、老山綾乃さん、上田迅さん、幡豆彌呂史さん、吉川肇さん【映画、ときどき私】 vol. 464実施中の映像クリエイターコンペ「Hulu U35クリエイターズ・チャレンジ」とは、35歳以下でアイデアさえあれば誰でも応募ができ、最終選考まで勝ち進むと、制作費1000万円とプロの映画制作チームのサポートを受け、監督として作品を制作できるという革新的なプロジェクト。最終選考に残ったファイナリストたちが制作した作品は動画配信サービスHuluで独占配信されており、まもなく開催される授賞式でいよいよグランプリが発表されます。849の企画から勝ち残ったのは、写真右から映画監督の近藤啓介さん、報道番組のADである老山綾乃(おいやま・あやの)さん、演出家の上田迅さん、大学生の幡豆彌呂史(はず・みろし)さん、テレビ局員の吉川肇さん。今回は、グランプリにかける意気込みや豪華審査員とのエピソードなどについて、語っていただきました。―まずは、この企画に参加しようと思ったのはなぜですか?老山さん私は報道番組でADをしていますが、以前から自分で映像制作をしたいという思いはずっとありました。今回は、報道の仕事をしながら感じていたことを作品にしたくて応募したのがきっかけです。幡豆さん正直に言うと、私はお金に目がくらんで応募しました(笑)。というのも、最初は制作費が賞金だと勘違いしていたので……。大学では公務員になるための勉強をしていることもあり、脚本を書いたことはありませんでしたが、「企画書を出すだけで1000万円もらえるならば!」とインターネットで調べながら独学で完成させました。―まったくの未経験でファイナリストになるとはすごいです。ちなみに、1000万円でしたいことがあったのですか?幡豆さんはっきりとはありませんでしたが、私はアニメや漫画が好きなので、いろいろと爆買いできたらいいなとは考えていました(笑)。憧れの監督に自分の作品を観てほしかった近藤啓介さん作品―確かにそれは楽しそうですね。ほかの方はどうですか?上田さん僕は普段からドラマの演出をしていて、10年ほど助監督もしてきたので、自分が書いたものを自分で撮りたいとつねに考えていました。そんなときにこのコンペのことをたまたま知ったので、挑戦することにしました。吉川さん僕もテレビ局でディレクター業務に携わるなかで、いつか自分で映画やドラマを撮ってみたいという思いが心の片隅にあったのがひとつめの理由。そしてもうひとつは、仕事に忙殺されているうちに、「自分は誰のために番組を作っているんだろう」という悩みを抱えるようになったからです。きっかけは、怖い上司に怒られないようにとか、偉い人にハマるようにと考えて作っている自分に気がついたこと。そのときに自分が本当にやりたいことに一生懸命向き合いたいと思ったので、一から出直す気持ちで応募しました。近藤さん僕がこのコンペに興味を持ったきっかけは、映画会社である東京テアトルさんが制作に入っていたことでした。過去には自分が作った自主映画をテアトル新宿で上映していただいたこともありましたが、一緒に映画を作れたらおもしろいなと。あとは、僕が憧れている沖田修一監督が審査員にいらっしゃったので、自分の作品を観てほしいという思いもありました。緊張感をほぐして、肩ひじ張らずに観てほしい老山綾乃さん作品―現在、近藤さんの『脱走球児』、老山さんの『まんたろうのラジオ体操』、上田さんの『速水早苗は一足遅い』、幡豆さんの『鶴美さんのメリバ講座』、吉川さんの『瑠璃とカラス』の5作品が配信されていますが、ライバルだけどすごいと思った方や個人的に好きな作品があれば、教えてください。老山さん私は近藤さんの『脱走球児』が好きで、特にタイトルが出る瞬間までがいいなと思いました。スピード感があって、これから絶対におもしろい物語が始まるというワクワク感がすごく好きです。近藤さんタイトルはスタッフさんの手書きで作ってもらったものですが、そう言ってもらえてうれしいです。僕はどれもおもしろいと思いましたが、それ以上にこんなにもみんな違う作品になるのかというおもしろさがありましたね。なかでも、幡豆さんはテロップや小道具の使い方とか、映画やドラマを撮ってきた人だったら絶対にしないことをしていたので、逆に勉強になりました。幡豆さん何も知らないのはハンデですが、強みになることもあるんだというのは私も感じました。たとえば、撮影を担当してくださったカメラマンさんはすごい方だったのですが、そのことを知らなかったからこそ「もっとこうしてほしい」といろいろな意見が言えたのかなと。ただ、いま思うと申し訳ないというか、やってしまったなという感じです……。みなさんの作品のなかでは、自分も関西出身ということでお笑いをテーマにした吉川さんの『瑠璃とカラス』がとても心地よく拝見できました。吉川さん僕は配信された瞬間にすべて観させていただきましたが、近藤さんの作品はさすがプロの映画監督だなと感じましたし、老山さんは報道の現場にいるからこその目線がかっこよかったですし、上田さんは女優さんの演出が見事でオシャレな作品だと思いました。そんななかで、僕が勝手にライバル視していたのは幡豆さん。コメディ要素が自分とかぶってしまうのではと心配していたからですが、想像の遥か上を超えてくる作品で、いままでにないようなエンタメ体験をしました。積んでるエンジンが違うというか、末恐ろしいですね。上田さん僕も個人的に一番好きだったのは、幡豆さんの作品です。全編通してエネルギーがずっと継続しているので、普通に深夜の連ドラを撮れるくらいのレベルだなと。ただ、下積みなしでこれをやられてしまうと、「僕の10年は何だったんだろう……」となりそうですが(笑)。がんばって助監督を続けている仲間の光になりたい上田迅さん作品―今回は、沖田監督をはじめ、女優の橋本愛さん、小説家の本谷有希子さん、芸人のシソンヌ じろうさんという豪華な顔ぶれが審査員に名を連ねています。みなさんの前でプレゼンをしてみていかがでしたか?上田さん僕が一番印象に残っているのは、沖田監督の「長年助監督として下積みを経験して詰んできた人に撮ってほしい」という言葉。というのも、助監督のなかには、知識と実力があっても上に行けずに腐ってしまう人が多く、その衰退感と日本のエンタメ界が抱える危機を僕自身が10年肌で感じていたからです。第一線で活躍している監督が自分と同じ感覚であったことがうれしかったですし、救われる想いでした。同時に、未来も希望も見えない助監督業をがんばって続けている仲間の光に少しでもなりたいという気持ちが強まりました。老山さん私は橋本愛さんから「渋谷のラストシーンが印象に残っているので、たくさんの人に届くシーンになってほしい」と言っていただけたのがうれしかったです。私自身、このシーンは実験だと思っていたのですが、経験豊富なスタッフのみなさんが私1人の思考を超えた先にあるものを映像に残してくれたと思っています。吉川さん僕も橋本愛さんに「お笑いを作品にすることはハードルが高いと思うけど、だからこそ、その挑戦を見てみたい」とコメントしていただいたことが印象的でしたね。審査員の方々やスタッフさんに背中を押していただいたからこそ、自分がおもしろいと考えることから逃げず、正々堂々とお笑いをテーマにした映画を最後まで撮り切ることができたのではないかなと。あとは、最終選考の日が父親の誕生日で、シソンヌのじろうさんからもお祝いしてもらえたことがうれしかったです。最近、実家の棚にシソンヌさんのライブDVDが追加されていたので、父も相当喜んでいたんだと思います。幡豆さん私も同じく橋本愛さんですが、「アニメや漫画が本当に好きなんだろうなと感じた」と言われたときに、脚本を読むだけでその人の性格や好みがわかることに驚きました。あとは、二次選考で提出した経歴書の自己PR欄に「褒められるとよく伸びます」「期待の新人です」と書いたことにシソンヌのじろうさんが反応してくださったのがうれしかったですね。何一つPRすることができない私にとっては苦肉の策でしたが、「作戦成功!」と喜びました。近藤さん僕はピッチで審査員の方々の反応を見ていたのですが、シソンヌのじろうさんがまったく笑っていなくて怖くなりました(笑)。「尊い」という“魔法の言葉”で高揚感を楽しんでほしい幡豆彌呂史さん作品―さすがに、最終選考会ならではの緊張感もあったんですね。それでは最後に、絶賛受付中のオーディエンス・アワードの投票に向けてアピールしたいことがあればお願いします!上田さん今回はどの作品も本当にクオリティが高いので、自分の作品だけでなく、まずは全作観ていただきたいですね。そのためにも、普及活動をこれからもがんばります。もし『速水早苗は一足遅い』を観て、コロナ禍で会いたいけれど会えない人に連絡を取りたいと思っていただけたらうれしいです。近藤さん僕の『脱走球児』は、ビジュアルやタイトルからかっこよくて甘酸っぱい青春映画のように見られがちですが、「ただの青春映画ではないぞ」というのだけはしっかりと伝えたいなと。子どもだけでなく、がんばっている大人にも響くような作品なので、青春映画だと毛嫌いせずに、まずは一回観ていただきたいです。幡豆さん私は中学生くらいからアニメや漫画を好きになりましたが、当時はアニヲタであることがマイナスイメージなんだと思ってなかなか周りに言えない時期がありました。でも、いまはそれもひとつのアイデンティティとして、大きな声で言えるようになったので、劇中でもそういう気持ちの高揚感を「尊い」という“魔法の言葉”で表現しています。同じような感情を持ったことがある人もない人も、ぜひ『鶴美さんのメリバ講座』を楽しんでください。悩みを抱える人たちを笑顔にしたい吉川肇さん作品吉川さん『瑠璃とカラス』のポイントは、青春を経験していない人間が作った青春映画であるところです。実は、僕は中学も高校もほとんど学校に行っていません。だからこそ、青春に対する強い憧れを本作では自分の想像力とアイデアで埋めながら描きました。あとは、僕がこの世で一番尊敬している芸人さんに対する思いやポップカルチャーへのリスペクトも入れているので、そのあたりも見どころかなと。「また明日もがんばろう!」と悩みを抱える人たちが笑顔になってくれたらいいなと思います。老山さん世の中では大きな見出しになるものばかりが取り上げられますが、私たちが日々生きているなかでは、モヤモヤすることや言語化できない悩みがいっぱいあると感じています。だからこそ、「みんなが苦しいから自分も我慢しないといけない」という緊張感を『まんたろうのラジオ体操』を通してほぐせたらと。ぜひ、肩ひじ張らずに観ていただきたいと思っています。激しい戦いを制するのは誰か?現在配信されているのは、それぞれの個性と才能が溢れた5本の短編作品と制作過程風景に密着したドキュメンタリー番組。夢をつかむために全力を注ぐファイナリストたちの姿からは、きっとエネルギーをもらえるはず。あなたの“清き一票”が彼らの運命を変えるかも!?取材、文・志村昌美盛り上がりを見せる予告編はこちら!プロジェクト概要「Hulu U35クリエイターズ・チャレンジ」Huluにて独占配信中オーディエンス・アワード投票受付:3月18日(金)18:00まで最終審査・グランプリ発表・授賞式:3月22日(火)19:00開始、20:00終了予定主催・企画・製作/HJホールディングス株式会社制作・運営/東京テアトル株式会社©2021 HJ Holdings, Inc.
2022年03月12日婚活で約1000人の男性と出会い、年下夫を射止めたライター・かわむらあみりがお届けするコラム【結婚引き寄せ隊】連載第103回は、恋活や婚活をしているとできる女友達についてのエピソードです。なかでも、嫌味な言葉をぶつけられてモヤッとした出来事をお届けします。1.「まだ頑張ってるんだ?」と上から目線【結婚引き寄せ隊】vol. 103出会いを探して恋活や婚活をしていると、同じ境遇だからと婚活友達ができることもあります。でも、なかには「本当に友達!?」と思わせる、嫌味な言葉をぶつけてくる女性も…。そんなモヤッとした出来事のひとつめは、飲み会で彼氏ができた女性のことです。世の中には、恋愛体質の女性がいますが、まさに「常に彼氏がいないとイヤ」というタイプが、その女性。常に彼氏を切らしたことがない彼女でしたが、なぜかいつも長続きせず、1年も経たずに別れてしまいます。20代後半ぐらいから、「結婚したい!」と言っていたわりに、婚活して出会っても続かない状態が続き、すでに30代半ばになっていました。あるとき、30代の独身の男女が集まる合コンがあり、彼女はそこで気の合う男性と付き合うことになりました。やっとの彼がうれしいのか、婚活友達たちに、「彼氏できたよー!」「結婚の話も出てて〜(デレデレ)」という聞いてもいない報告を細かくしてくるようになりました。最初はみんなで喜んでいたけれど、デートのたびに聞いてもいないのに報告してくるのがしんどくなって、だんだんと婚活友達同士でも集まらなくなっていたとき、久しぶりに集まることに。婚活中のグチや悩みを言い合う婚活女性たち同士で、「まだいい人に巡り会えないんだよね」と話していると、「あれー?まだ頑張ってるんだ?」と上から目線でひとこと、彼女がキツい言葉を投げかけてきたのです。一瞬シーンと静まり返り、モヤモヤがどんどん溜まっていき、二度と彼女は集まりに呼ばれなくなったのでした。自分もシングルだったんだから、もうちょっと場の空気を読んでほしいところです。2.「その男はダメだね」と勝手にジャッジそれは独身アラサー&アラフォー女性が集まっていたときのこと。みんなバリバリ仕事をしているものの、忙しさもあって、つい恋愛はおろそかになりがちなタイプでした。「出会わないよねー!」と言っては、女性同士でビールを一気飲みするのもなかなか楽しくて、それはそれとして面白い集まりではありました。ところが、あるとき、ひとりの30代の女性が「取引先の男性にアプローチをされた」という話に。どんな男性なのか、性格は、今度連れてきてなど、大盛り上がりになりました。でも、盛り上がる私たちをよそに、いつものようにひとり黙々とお酒を飲んでいた40代のキャリアウーマンの女性がぽつりと、「その男はダメだね」というのです。アプローチされてちょっとハイテンションになっていた30代の女性は、「なんで?」とすぐ突っ込むと、「だってさあ…」と「そもそも仕事がらみで恋愛なんてどうかと思う」などと、一意見というよりも、だんだんとなぜか説教モードに変化する発言にまわりで聞いていた私たちがモヤッ。そのやりとりを見つつヒヤヒヤしながらも、要はちょっとうらやましいみたいだな、と感じました。確かに、フリーの女性同士で団結しているように思えて、急に浮いた話が出るのも不快かもしれないけれど、他人の幸せは素直に喜んであげたいなと思ったのでした。3.「なんか私がいいって」と順調自慢婚活パーティで空振りだったことはよくあるのですが、ときどき、参加していた女性と友達になって、お互いに飲み会の情報などを交換するようなこともあります。そんななかで、けっこう前に連絡先を交換していた婚活友達から、久々に連絡がありました。婚活で頑張っている女性同士でランチに行くというので、そのひと以外は初対面ながら、婚活女性4人でおしゃれなカフェへ集合。最近行ったパーティなどの話をしていたら、初対面のうちのひとりの女性が、「実は」と、パーティで出会った男性から「また会いたいですと迫られている」と言うのです。良かったねえと喜んでいたら、気分がよくなってきたのか、「やっぱりさあ、会ったときからなんかいい感じだと思ったの」と言う女性。それでそれで?とみんなで興味津々に聞いたこともあるからか、しまいには「タイプだったみたいで、絶対に私じゃないといやだとかで、なんか私がいいんだって」とのことで、その子以外の3人でモヤモヤ度MAXに。もともと自慢げに話すように見えてしまうタイプなのか、うっかり鼻高々に話してしまったのかは初対面なのでわかりませんでしたが、その子以外のみんなで顔を合わせながら、「よ、よかったねえ」とひきつった笑顔で祝福したのでした。ちょっとのことなら喜べるけれど、あんまり長々とのろけられても、なかなか難しいなあと思ったのでした。婚活していると、いろいろなタイプの女性にも出会うことがあります。くれぐれも、みなさんも良い女友達にも巡り会えますように!文・かわむらあみり©LordHenriVoton/Getty Images©taseffski/Getty Images©Carlo107/Getty Images
2022年03月11日現在ヨーロッパ在住のファッションジャーナリスト、平野秀美さんのファッションスナップレポートです。本日は、ロンドンファッションウィークでも一際目立ったピンクを使ったファッションをご紹介します。淡いピンクで可愛い大人ファッション!アイボリーやイエローは春に人気上昇するカラーですが、ピンクも今季ファッションウィークではより目立っていました。また、ピンクは苦手かもという方も、淡いピンクはホワイトやベージュとも比較的相性が良いので、初めて着こなすにはおすすめです。写真のような淡いカラーは、春夏にはさらに人気です!ジャケットだけでも思いっきりピンク!思い切ったダウンジャケットを、ロンドンでは見かけます。その中で気になったのがこちらの2パターン。形も個性的でさらに色も派手なので、かなり遠くからでも目立ちます。個性的なファッションが好きな方は、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょう!?ピンクワンピースはブラックとあわせて正直ピンクのワンピースは可愛すぎると個人的に思っていましたが、どうやって着こなすかで、上品でスタイリッシュに見せることが可能なんですね!どちらともブラックと合わせてトーンを抑え、かっこよく見せている印象。バッグもどちらともワンピースにあったデザインをチョイスしています。ワンピースがピンクのときは、他のアイテムはかっこいい色で抑えるのもポイントのようです。ファッショニスタはピンクスーツがお気に入り日本ではあまり見ませんが、実は海外では比較的よく見かけるカラースーツ。今回はピンクスーツを何度か見かけたのでピックアップ!淡いピンクでも濃いピンクでも、しっかり着こなせてるのがすごい。セクシーに、女性らしさを出しているように見えますが、しかもかっこいい!濃いめのズボンはスマートにするとカッコよく決まる!最後に私も真似たいスタイルはこちら!ボトムスのみピンクで決めています。素材の良いものを選ぶのもポイントのよう。カジュアルに見せず、上品な印象を与えてくれます。全体にインパクトが欲しいと思う時は、ぜひ一度ピンクなど刺激のあるカラーでスタイルしてみるのもいいかも!いかがでしたか?今回ロンドンでは、ピンクを上手に着こなしたスタイルを本当によく見かけました。今回は女性に絞りましたが、男性も淡い色やピンクの入った色を使っているのが印象的。好き嫌いがありそうな色ですが、今年の春は一度トライしてみてください。写真、文・平野秀美
2022年03月11日現在ヨーロッパ在住のファッションジャーナリスト、平野秀美さんのファッションスナップレポートです。本日は、起源はイギリスとされるトレンチコートを、本場ロンドンでスナップしてみました。1枚あればお洒落に見えちゃうアウター!日本でもトレンチコートは人気ですが、やっぱりここロンドンでも大人気。1枚あればスタイリッシュに見えるアウターの1つです。写真のスナップは偶然、全員シューズをホワイトで決めていますが、トレンチコートの定番カラーはブラウン/ベージュなので、どんな色の小物も合わせやすいです!仕事でもプライベートでも使えるので、1枚は絶対持っていて損しないアウターです。バーバリーのトレンチコートは憧れの1着トレンチコートと言えばやっぱりバーバリー!チラリと見える(見せる)裏地のバーバリーチェックは憧れですよね。通常のトレンチよりはお値段が張りますが、それでもしっかりとした作りとバーバリーチェックは、1度は手にしたいトレンチの1つです。年齢関係なく男女共にロンドンでも人気です。色違いのトレンチもチェック済み!?今回一番気になったカラーが、このダークグレーカラー!ブラックカラーの小物との相性も抜群ですが、きっとホワイトやネイビーとの相性も良さそう。あまり多くの人が持っていないので、今からトレンチコートが欲しいという方には狙い目のカラーです。オーバーサイズで着こなしの幅が広がる!ここ最近アウターでもオーバーサイズがとても人気ですが、トレンチコートもそのの1つ。中にさらにデニムやスーツ、ベストなどを着ることができるので、特に寒い時期には重宝しそうです。個性的なトレンチコートも続々登場シンプルなトレンチコートはもうお腹がいっぱいという方には、ぜひ個性的なデザインのものをおすすめします。いまはトレンチとは思えない大胆なデザインから形までさまざまなものがあります。それくらい、トレンチコートは世界的に人気なんですね。さらに日本でも夏以外ならいつだって使えそうなので、長い期間使用できるのもポイントです。そう考えると、シンプルなものがいいか、それとも個性的なものがいいか、考えてもいいかもしれません。男性にも人気!ネイビーがおすすめ!?トレンチコートはデザインがシンプルなだけあって、女性にも男性にも人気。ネイビーは特に男性に人気なような気がします。スーツでビシッと決めている人から、Tシャツとデニムなどにカジュアルに合わせているのもかっこいいんですよね!いかがでしたか?日本でも人気のトレンチコート、現在は多くの種類も発売されているので、自分好みのデザインを選ぶも良し、長く着用したいからシンプルなデザインを選ぶもよし、1着あれば春先も使用できるので、着こなし方を参考にしてみてください。写真、文・平野秀美
2022年03月09日婚活で約1000人の男性と出会い、年下夫を射止めたライター・かわむらあみりがお届けするコラム【結婚引き寄せ隊】連載第102回は、婚活していると出会う“男性”についてのエピソードです。なかでも、いまでも印象に残っている「婚活男性3選」その34をお届けします。1.他人の評価を気にする男【結婚引き寄せ隊】vol. 102それは婚活サイトで出会いを探していたときのこと。40代半ばの堅実そうなサラリーマンの男性とやりとりするようになり、実際にふたりで会うことになりました。当日、待ち合わせ場所として指定されたカフェへ到着すると、その男性は写真で見た堅実な印象そのままで、休日ながらスーツ姿で待っていました。「ここのカフェ、初めて来たんですけど、口コミで上位だったから、どうですか?」と、今日のためにお店をサイトで調べて予約したと話す男性。ありがたいものの、なんとなく違和感も。話をしていると、だんだんと違和感の正体がわかった気がしました。男性が着てきたスーツについて、「気に入っていないんだけど、ショップの人に絶賛されて買ったスーツなんです。似合ってます?」という問いかけがありました。唐突だなあと思いつつも、「似合いますよ」と言うと、満面の笑みになる男性。さらに、半年前まで付き合っていた女性がいたというので、別れた理由をたずねると「僕はいいかなと思っていたんですけど、友人にイマイチだなって言われたんで別れました」という、驚きの返事が。周りに言われて別れたのが本当ならドン引きだし、しかもその理由を初対面の私に言う感覚もわからず、それによく考えれば、お店選びも口コミで選んだり、自分が気に入らなくても人にいいと言われたらスーツを買ったり……他人の意見を聞くのも大事だし、参考にはするけど、この男性は、他人の目を気にしすぎかもと思いました。やっぱり、自分軸がない男性に、それ以上いい印象を持てなくなったのは言うまでもありません。婚活サイトやアプリなどではいい感じで進んでいっても、やっぱり会ってみないとわからないものだな、と痛感したのでした。2.良妻賢母を探す男それは30代と40代の男女が集まる婚活パーティに参加したときのこと。男女ともに清潔感のある人たちが参加していて、いい出会いがあったらいいなと、期待していました。ほぼフリータイムだったそのパーティでひとり、熱心に質問してくる男性がいました。「どんなお仕事してるんですか?」「休みの日は何をしてますか?」と聞かれ、素直に答えていましたが、矢継ぎ早に質問するなかで、「貯金はいくらですか?」という質問が。初対面で貯金額聞くの!?と唖然としていたら、空気を読んだのか、「あ、じゃああの、結婚したら家庭に入りますよね?」と、今度は仕事をやめること前提での質問をしてくる始末。さらに、はあ?という不快感が顔に出てしまっていたのか、「いや、もう大丈夫です〜」とヘラヘラ笑いながら目の前からいなくなりました。しばらくして我にかえった私がふと遠くのテーブルを見ると、その男性につかまった女性が何か質問されているようで、見ていてすぐわかるぐらい、すぐいやそうな顔つきに。きっと同じ質問してるんだろうなあと思いながら、あとでその女性とも話をしてみると、どうやらその男性は「妻になる女性は良妻賢母がいいから」と言っていたそう。だったら、パーティでひとりずつ女性を当たっていくよりも、結婚相談所に登録して条件に会う人だけに絞ったほうがいいのにと謎。それに、その男性にとっては、貯金があって家庭に入る女性が良妻賢母と思っているなんて…遠い目をした私たちなのでした。自分の価値観を突きつけてくる人なんて、女性側からも御免です。3.決め手に欠ける男それは結婚相談所で紹介された男性と、お見合いすることになったときのこと。高い入会金を支払っているだけあって、ベテランのアドバイザーのもと、希望条件に近い男性を紹介してくれたことに喜んでいました。私が入会していた結婚相談所では、大手企業と提携していたこともあって、それなりにエリートだけど仕事ばかりしていて出会いがないという、堅実なサラリーマンの方も多く登録していました。そんななかで紹介されたのは、30代後半の男性。穏やかそうな雰囲気ながら、とくに特徴のない印象で、きっと次の日にすれ違っても気づかないかも……と思ってしまいました。顔合わせ自体、結婚相談所の一室を借りての時間となるため、合コンや婚活パーティとは違った緊張感もあります。だからなのか、あまりカジュアルな話をする感じになはならず、終始仕事と趣味の話で終わりました。高収入で経済力はあるものの、それ以外にとくに惹きつけられるものはないという出会いに、「結婚は生活なんだから経済力さえあれば」と思っていたけれど、やっぱり私の場合はフィーリングも大事だなと実感。いい人なのに、決め手に欠けて見送ったため、さらにまた婚期が遅れていったのでした。とほほ。婚活していると、いろいろなタイプの男性に出会うことがあります。人生のパートナーに何を求めているのか、事前にわかっていると、男性選びもスムーズにいくのかもしれませんね。文・かわむらあみり©Mike Kemp/Getty Images©Thomas Barwick/Getty Images©Stephen Zeigler/Getty Images
2022年03月04日いくつになっても青春の楽しさを味わいたいものですが、そんな欲求に応えてくれる1本といえば、アニメ映画『ブルーサーマル』。上昇気流に乗って空を飛ぶ航空機・グライダーというスポーツを通じて成長し、恋愛や友情に悩む若者たちの姿が幅広い層から共感を集めています。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。堀田真由さん【映画、ときどき私】 vol. 463“ネクストブレイク必至”として注目を集め、現在は女優、モデルとして活躍している堀田さん。本作では、キラキラな大学生活を夢見ている一生懸命な主人公の都留たまきを演じ、声優に初挑戦しています。今回は、声優として味わった苦労や学生時代の思い出、そしてこれからのことについて語っていただきました。―以前から声のお仕事をやってみたいと思われていたそうですが、そう考えるようになったきっかけはありましたか?堀田さん自分ではあまり意識していませんでしたが、周りの方から声をほめていただくことが多く、自分の声に対する“気づき”があったのがはじまりでした。そこからいつかアニメーションやナレーションといった声のお仕事ができたらいいなと。そんななかで、この作品のことを知り、ぜひ私も参加したいと思ってオーディションを受けることにしました。―オーディションの前に、特別な準備などもしましたか?堀田さん家でセリフの練習はしましたが、ほかに何をしたらいいのかまったくわからなかったので、とにかくフラットでいることを意識しました。あとは、『ブルーサーマル』のタイトルに合わせて、願掛けでブルーのセーターを着ていったくらいですね(笑)。全部にぶつかっていく思いで挑んだ―実際、手ごたえを感じる瞬間もありました?堀田さんそこで自分ができることは精一杯できたかなとは思います。ただ、役が決まってからは周りが声優の方々ばかりだったので、「私で大丈夫なんだろうか」と不安になったことも。でも、やり始めたらすごく楽しかったので、いまはまたぜひやりたいという気持ちでいっぱいです。―演じるうえで苦労したのは、どのあたりでしょうか。堀田さん普段、私は関西弁を使っていますが、長崎弁は話したことがなかったので、本当に大変でした。声優が初めてなうえに、方言も初めてでまさにダブルパンチ。そんななかでも、いろいろな練習をしたり、現場で教えていただいたりしながらできるようになっていった感じです。あとは、テクニック的なことよりも、一生懸命なたまきの気持ちがしっかりと伝わればいいなと。わからないことだらけでしたが、「全部にぶつかっていこう!」くらいの思いで挑みました。―初めてのアフレコ現場ということで、驚いたこともあったのではないかと思いますが。堀田さんそうですね。いつもはすべてのセリフを頭に入れた状態で現場に行くので、台本を見ながらお芝居をする感覚は不思議でした。台本の持ち方から立ち方、ページをめくるタイミングまでびっくりすることはたくさんありましたが、いろいろと学ぶことは多かったです。努力していれば、無駄になることはない―ご自身もたまきと同じように、10代で滋賀から単身で上京を経験されています。演じるうえで、当時のことを思い出すこともあったのでは?堀田さん私の場合は、夢を叶えるために出てきたので、そのとき抱えていた思いはたまきとは少し違うかもしれませんが、「人生は何があるかわからないな」という気持ちは近いと感じました。―たまきは偶然の出会いから思いがけない方向へと人生が進んで行きますが、ご自身にも似た経験があったということですか?堀田さん私は自分の意志でこの仕事を選びましたが、最初は受かると思っていなかったので、「とりあえずオーディションに行ってみよう」くらいの感覚でした。ただ、そのときにいまのマネージャーさんが私を見つけてくれたおかげで、人生が大きく変わったと感じています。―とはいえ、その過程でくじけそうになったことはないのでしょうか。堀田さんいまはいろいろなことを考えてしまいますが、10代のときのほうが怖いもの知らずでしたね(笑)。ただ、たとえ夢が叶わなかったとしてもちゃんと努力をしていれば、絶対に無駄になることはないと昔から思っていたので、ダメ元でもオーディションに向けて準備することが大事だといつも考えていました。おいしいご飯を食べているときが一番幸せ―そういう積み重ねがいまに繋がっているんですね。では、青春の思い出といえば?堀田さん昔は美容にもあまり興味がなかったので、日焼けで真っ黒な“スポーツ女子”みたいな感じでした(笑)。高校生になってからは、学業とレッスンと現場をかけ持っていたので、いま思うとある意味あのときが青春だったなと思います。―本作では、空の映像も圧巻でしたが、実際にグライダーで飛んでみたい場所はありますか?堀田さん地元である琵琶湖や自分が住んでいた街の上を飛んでみたいですね。とはいえ、実は高いところが苦手で、飛行機もあまり得意ではないんですけど……。ただ、映像として完成したものを観たときは、乗ってみたいなと思いました。―劇中でブルーサーマルをつかまえると幸せになれると言われていましたが、いま堀田さんが幸せを感じる瞬間は?堀田さん仕事をしているときやクランクアップの瞬間は幸せですが、やっぱり一番は、そのあとにおいしいご飯を食べているときです(笑)。最近は、韓国料理にハマっています。大切なのは、疲れを次の日に持ち込まないこと―とはいえ、やはり体のことを気遣った食生活などを送っているのでしょうか。堀田さんモデルのお仕事もしているので、「ちゃんとしなきゃ」とは思うんですけど、実はまったく何も意識していなくて……。とにかくいまを楽しみたいという気持ちのほうが強いので、ついいっぱい食べてしまいます(笑)。―では、その代わりに美容法として毎日していることがあるとか?堀田さんどれだけ忙しくても、湯船にはちゃんと浸かるようにしています。その日の疲れはその日のうちに取りたいので、湯船でしっかりとリラックスするというのは続けていることです。というのも、なるべく次の日に持ち込まないというのは大事だなと思うので。悩みを抱え込んでしまいそうなときは、ドラマや映画を観たり、小説を読んだりして、一旦違う世界に行くように心がけています。あとは、なるべくひとりの時間を作ること。自分自身と対話しながら、いまどういうコンディションなのかをチェックするように意識しています。寝る前にその日あったいいことを考えることもありますが、そんなふうに前向きな気持ちで寝るのもオススメです。この作品が何かのきっかけになってほしい―それなら誰でもすぐに実践できそうですね。今回は声優に初挑戦しましたが、これから挑戦したいことを教えてください。堀田さん長く仕事を続けていると、だんだん初めてのことが少なくなってきますが、最近楽しかったのは、ラジオのゲストに初めて呼んでいただいたときのこと。「やっぱり私は声のお仕事が好きなんだなぁ」と改めて感じたので、これからも声を使ったお仕事をもっとしていけたらいいなと思っています。―それでは最後に、ananweb読者へのメッセージをお願いします。堀田さんいまは前向きな気持ちになれないときもあるかもしれませんが、エンターテインメントに救われることもあるので、この作品がみなさんにとって何かのきっかけになってもらえたらいいなと思っています。映像もとてもキレイなので、ぜひ映画館でご覧いただきたいです。インタビューを終えてみて……。たまき同様に笑顔がステキで、何事にも一生懸命なところが伝わってくる堀田さん。劇中では、声優初挑戦とは思えない見事なハマりっぷりを見せています。透明感がありながら、お茶目さもある魅力的な声にぜひ注目です。どこまでも飛んでいける可能性を感じる!「スポーツ・恋愛・青春」の三拍子に加え、まるで空を飛んでいるかのような美しい映像も満喫できる本作。もがきながらも前に進もうとする主人公たちから、自分を信じて飛び出す勇気をもらえるはず。あなたも幸せになれる風に乗って、どこまでも遠くへ飛んでみては?写真・山本嵩(堀田真由)取材、文・志村昌美ドレス¥148,500、ジャケット¥137,500、シューズ¥80,300/すべてPlan C(パラグラフ03-5734-1247)ストーリー「キラキラな恋がしたい!」と普通の大学生活に憧れて長崎から上京した都留たまき。ひょんなことから体育会航空部の雑用係をすることになってしまう。思い描いていた大学生活とかけ離れた環境に不満を抱いていたが、主将の倉持が操縦するグライダーで空に飛び立った瞬間から、その世界に魅了されていく。気がつけば、ともに練習に励む先輩や同期との間にも固い絆が生まれていた。そんななか、仲たがいしていた姉や強力なライバルがたまきの前に現れる。果たしてたまきは“幸せになれる風=ブルーサーマル”を捕まえることができるのか……。吸い込まれるような予告編はこちら!作品情報『ブルーサーマル』出演:堀田真由島﨑信長榎木淳弥小松未可子小野大輔白石晴香大地葉村瀬歩古川慎高橋李依八代拓河西健吾寺田農原作:小沢かな『ブルーサーマル―青凪大学体育会航空部―』(新潮社バンチコミックス)監督:橘正紀脚本:橘正紀高橋ナツコ主題歌:「Blue Thermal」SHE’S(ユニバーサル ミュージック)挿入歌:「Beautiful Bird」SHE’S(ユニバーサル ミュージック)アニメーション制作:テレコム・アニメーションフィルム製作:「ブルーサーマル」製作委員会3月4日(金)全国公開配給:東映映画公式Twitter/Instagram:@eigabluethermal© 2022「ブルーサーマル」製作委員会写真・山本嵩(堀田真由)
2022年03月03日DV、セックスレス、夫の浮気など、さまざまな悩みを抱えた妻たちの“禁断の愛”を描き、大きな反響を呼んでいるNetflixシリーズ『金魚妻』。配信開始後から人気を博し、国内の「今日の総合TOP10」でもつねに上位にランクインするほどの盛り上がりを見せています。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。篠原涼子さん【映画、ときどき私】 vol. 462劇中で、主人公である“金魚妻”こと平賀さくらを演じている篠原さん。夫からのDVやモラハラに苦しむ日々を送っているなか、金魚屋を営む春斗と運命的に出会い、一線を越えてしまう様子が描かれています。今回は、演じるうえで意識したことや現場の様子、そしていま叶えたい夢などについて語っていただきました。―まずは、本作に出演したいと思った決め手から教えてください。篠原さん以前から地上波では難しい作品に挑戦してみたいなという気持ちがあったので、この作品のオファーをいただいたときはチャンスだなと。特に、世の中の女性たちが秘めている気持ちを表現できるところにもおもしろさを感じたので、すぐにお引き受けしました。―さくらを演じるうえで、どういったことを意識されましたか?篠原さんさくらはどちらかというとか弱い女性ですが、これまでの私は強い女性を演じることが多かったので、か弱さをどう出すかというのは慎重に考えました。ただ、それだけでは人間味がなくなってしまうので、自分を守ろうとする芯の強さみたいなところは持っていたいなと。自分を大切にしたいとか他人に対する思いやりには共感できたので、演じやすいキャラクターではありました。―本シリーズには、金魚妻のほかに外注妻、弁当妻、伴走妻、頭痛妻、改装妻といったさまざまな秘密を抱えた妻たちが登場します。篠原さんが気になったのはどの妻でしょうか。篠原さん一番好きなのは、やっぱり自分が演じた金魚妻ですが、意外性があっておもしろかったのは弁当妻。一視聴者としても「もしこんなことが起きたら……」と考えて、すごくドキドキしてしまいましたから。想像を超えてくるところもあったので、見応えがありましたね。みなさんも、「自分だったらどれかな?」と当てはめながら観るのが楽しいと思います。ひらめきと刺激をもらいながら演じていた―今回、相手役を務められた春斗役の岩田剛典さんとの共演で、印象に残っていることがあれば、教えてください。篠原さん岩田さんとは同じ場所での撮影が多かったので、浅草に行ったシーンでは本当に外に遊びに行っているような感覚で楽しかったです。現場では彼のお芝居を見て、「こうくるなら私はこういう表現にしてみよう」といった感じでひらめきをいただきながら演じさせてもらいました。―役者としてインスピレーションをもらえる存在だったと。篠原さんそうですね。岩田さんはとても真面目で、ひとつひとつのお芝居をとても丁寧に大切にする方なので、刺激をもらいつつ私はそれを乱さないようにしていました。―篠原さんから見た岩田さんの魅力といえば?篠原さん全部が魅力的だと思います。気さくで、本当に気遣いができる方ですし、集中力もとてつもなく高いので、すべてにおいてきちんとされている方だという印象を受けました。―そんな岩田さんに、多くの女性たちがキュンとしてしまいますが、篠原さんもキュンとしたシーンはありましたか?篠原さんたくさんありましたね。なかでも、春斗の肩に湿布を貼ってあげるシーンで、部屋から出て行こうとした瞬間に後ろから腕をつかまれて引き戻されるところはいいなと思いました。本当は行きたくないけれど、その気持ちを出してはいけない場面だったので、止めてくれる彼の熱意がすごくうれしく感じたシーンです。運命の出会いがあると信じていたほうが楽しい―本作では、おふたりの刺激的なシーンも話題となっていますが、撮影はどのように進められていったのでしょうか。篠原さんまず初めに何となく流れを決めてから取り掛かりましたが、技術的なことも含めたうえでやってみないとわからないことのほうが多かったので、いろいろと話し合いながら進めていきました。―本作のキャッチコピーのひとつに「その愛は裏切りか、運命か」というのがありますが、篠原さんは運命の出会いは信じている?篠原さん私は絶対にあると思っています。特にこういうお仕事をしていると、恋愛に関わることだけでなく、運命的な出会いはたくさんありますから。それに、運命の出会いがあると信じて生きていたほうが楽しいんじゃないかなと。みなさんにもこういった作品を通して、夢心を抱いていただけたらと思います。―前回取材時に、「念じていれば思いは絶対に叶う」という気持ちをつねに大切に持っていらっしゃるとお話されていたことがありましたが、いま叶えたい夢は何ですか?篠原さん『金魚妻』を全世界の方々に観ていただけること。まずはそれを願っています。―配信が始まってから、すでに反響を感じているのでは?篠原さんまだ自分で調べたりはしていないので、いまのところはスタッフの方からいただいた感想を聞いているところですが、これからチェックしてみようかなとは思っています。英語を学んで、幅広い考え方に触れたい―ちなみに、プライベートで叶えたい夢があれば、教えてください。篠原さんこれは前からずっと言っていることですが、英語を話せるようになりたいですね。とはいえ、なかなかやる気になっていないので、この気持ちをちゃんと形にできるようにしたいですし、それがいまの目標です。―英語を使うお仕事もしたいとお考えですか?篠原さんまずは旅行で使えるようになったり、いろいろな人たちとコミュニケーションを取れるようになったりしたいですね。そうすることで幅広い考え方に触れられるので、いろいろと学べることも増えるかなと考えています。―お仕事で忙しい日が続いていると思いますが、オンオフの切り替えに役立っているものはありますか?篠原さんそれは、お風呂から上がってNetflixを観ている時間です。最近はいろんな作品をたくさん観ているので、家に帰ったら、「今日は何を観ようかな?」と考えたり、マイリストに入れたりするのが楽しみのひとつになっています。―いまハマっているシリーズは?篠原さん『Lupin/ルパン』とか『イカゲーム』とかもおもしろかったですが、最近はスペインのシリーズ『ペーパー・ハウス』にドハマリしています。仕事のモチベーションは、みんなの笑顔―ほかにも、スタイル維持のためにYouTubeでエクササイズをしているとか。それも毎日続けられているのですか?篠原さん正直に言うと、『金魚妻』の撮影が終わってからリバウンドしてしまって、元に戻っちゃったんです(笑)。でも、また運動を始めようと思ってはいるので、食事制限や運動を少しずつ再開しようと思っています。―以前、ananweb読者へ向けて「悩みごとはあるほうが人生の糧になる」ともおっしゃっていましたが、悩みとうまく付き合える方法があれば、教えてください。篠原さん私は基本的に悩みを作らないようにしていますが、できてしまったとしたら乗り越え方はよく寝ること。まずは健康でいることが一番重要ですからね。エネルギーがあれば、それが明日へとつながり、悩みに向き合う力になると思うので、よく食べてよく寝てよく笑うことが大事だと思います。―では、お仕事に対するモチベーションの源となっているものは?篠原さんスタッフや支えてくださっている観客の方々の笑顔を想像することですね。みなさんが喜んでくれたらいいなという気持ちを大切にしています。いつでもいろいろな色に染まれるようにいたい―作品選びの基準となっているものは何ですか?篠原さん「いろいろな色に染まりたい」というのが私の変わらない思いであり、そこが基準となっています。ただ自分がやりたいものだけをするのではなく、周りの意見を聞きながら私自身はどんな色にも染まれるように白のままでいたいです。―『金魚妻』を経たいま、次に挑戦するならどんな役?篠原さんポップな作品とかファンキーな役というのはあまりないので、そういうのができたらおもしろいかなと。でも、まったく違うものをしたいと思うようになるかもしれないので、あまり自分で決めつけないようにしています。―それでは最後に、ananweb読者へ見どころをお願いします。篠原さん冒険できる作品で、ドキドキワクワクもできるような内容になっています。恋人と一緒に楽しむこともできると思うので、あまり難しく考えずにぜひリラックスしながら楽しんでいただけたらうれしいです。インタビューを終えてみて……。圧倒されてしまうような大人の色気がありつつ、チャーミングさもある篠原さん。『金魚妻』にかける強い思いを感じずにはいられませんでした。徐々に変化していくさくらの表情に込めた篠原さんの繊細な演技にも、ぜひ注目してみてください。女性たちの秘密が次々と明かされる!誰もがうらやむようなタワーマンションに暮らす6人の妻たちが繰り広げる禁断のラブストーリー。葛藤や悩みを抱えた女性たちが自らの意志で人生を選択し、一線を越えた瞬間、あなたの心もざわつき始めるかも写真・北尾渉(篠原涼子)取材、文・志村昌美ストーリー多数のサロンの共同経営者として働き、タワーマンションの最上階で華やかな生活を送っている平賀さくら。ところが、実は夫からのDVに苦しむ日々を過ごしていた。夫の浮気も仕事のために耐えていたさくらだったが、ある日ふと立ち寄った金魚屋で店主・春斗と出会う。なぜか懐かしそうに自分を見つめる春斗との会話に、さくらは心が癒されていくのを感じていた。そして、夫からの暴力が限界となり家を飛び出したさくらは、春斗と一線を越えてしまう。果たしてその愛は裏切りか、運命か……。作品情報Netflix シリーズ『金魚妻』Netflix にて全世界独占配信中写真・北尾渉(篠原涼子)
2022年03月03日黒塗りの画面に亡霊のような顔が浮かびあがる絵など、心に深く突き刺さる作品を数多く残した画家、香月泰男(1911-1974)。彼の生誕110年を記念した展覧会『香月泰男展』が、練馬区立美術館で開催中です。画家から兵隊になり、戦後はシベリアに送られ、帰国後再び画家に戻った香月は、自身のつらい体験を20年以上も描き続けました。展覧会の様子と彼の人生をあわせてご紹介します。画家として認められたが…【女子的アートナビ】vol. 236香月泰男は、代々医業を営む家の長男として山口県に生まれます。幼いころから絵を描くのが好きで、20歳のとき東京美術学校(現・東京藝術大学)西洋画科に入学。学生時代は、ピカソやゴッホの作品などから影響を受けます。卒業後は、美術教師として北海道に赴任。その後、故郷の山口県にある女学校に転任し、教師をしながら公募展に絵を出品していきます。27歳で結婚し、1939年には第一子が誕生。また、文部省美術展覧会で特選を受賞するなど、画家としても認められはじめましたが、そのころ第二次世界大戦が勃発していました。中国からシベリアへ…1942年に召集令状を受け、翌年、32歳のとき満州国(現・中国東北部)に配属されます。絵具箱を持っていった香月は、軍務の間にも絵を描き、また家族あてにスケッチ入りの郵便を数百通も出していました。終戦後の1945年11月、香月はシベリアの収容所に送られます。極寒のなか、森林伐採や運搬作業など過酷な重労働に従事。食糧事情もかなり悪く、多くの収容者たちが亡くなります。2年間の抑留後、1947年に帰国。香月は山口の学校に復職し、油彩画も描きはじめます。戦争体験のほか、草花や食材など、さまざまなテーマで描きながら、技法の研究にも取り組みました。しだいに作品に使われる色彩が限られるようになり、モノトーン系の画風になっていきます。悪夢のような体験をアートに…1959年から、香月は兵役とシベリアの経験を本格的に描きはじめます。現地で見た景色や強制労働の様子を描いたもののほか、私刑にされた日本人の姿、収容所で亡くなった仲間の顔など、苛烈な作品も制作。悪夢のような体験をした香月にとって、この重いテーマをアートにするまでには長い時間が必要でしたが、1960年代以降、シベリアの作品が一気に増えていきます。例えば、黒い塊に足が生えたような作品《運ぶ人》(1960年)は、60キログラムもある麻袋を運んでいる抑留者の姿を描いたものです。近くで見ると、黒い部分に亡霊のような顔が浮かんでいます。「シベリアの画家」に香月が描いた戦争・抑留体験の絵は注目されはじめ、1967年には画集『シベリヤ』を刊行。それらの作品は「シベリア・シリーズ」と呼ばれるようになり、香月は「シベリアの画家」として評価を確立していきます。晩年になると、黒や茶色のモノトーン系の作品に少しずつ色が戻りはじめます。特に、鮮やかな青を使った作品は印象的。《青の太陽》(1969年)は、戦争中、匍匐(ほふく)前進の演習をしていたときに見た地面のアリの巣から着想した作品で、地中から空を見上げる構図になっています。新たな画風が表れはじめた1974年、心筋梗塞により急逝。62歳でした。心が震え続ける…この展覧会では、香月の作品が制作順に展示されています。情感豊かな戦前の作品から、どのように画風やテーマが変わっていったのか、その流れを画家の人生と重ね合わせながら見ることができます。テーマも画面も重々しいものが多いのですが、目をそむけたくなるような残酷さは感じられません。恐怖や苦痛、鎮魂、祈りなど画家のさまざまな思いがアートに昇華され、作品の前に立つと、静かな感動が押し寄せてきます。美術館を出てからもその余韻は残り、ずっと心が震え続けました。会場には、香月が残した言葉もところどころに記されています。ぜひ足を運んで、作品を通して画家の思いを感じてみてください。Information会期:~3月27日(日)※途中展示替えあり前期:~3月6日、後期:3月8日~3月27日※休館日は月曜日。ただし3月21日(月・祝)は開館、3月22日(火)は休館会場:練馬区立美術館開室時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)観覧料:一般¥1,000、大学生・高校生、65歳~74歳¥¥800、中学生以下、75歳以上は無料その他割引制度あり
2022年02月27日「いくつになって生涯現役でいたい」と願う人は多いと思いますが、今回オススメする映画を制作したのは、そのロールモデルとなる一人。91歳で新作を完成させたジョージア映画界が誇る伝説的女性監督の注目作です。『金の糸』【映画、ときどき私】 vol. 461ジョージアの首都トビリシの旧市街にある古い家で、娘夫婦と暮らしている作家のエレネ。今日は彼女の79歳の誕生日だったが、家族の誰もが忘れていた。そんななか、娘はアルツハイマーの症状が出始めた姑のミランダをこの家に引っ越しさせるという。ソヴィエト時代に政府の高官だったミランダをエレネは快く思っていなかった。そこへかつての恋人アルチルから、数十年ぶりに電話がかかってくる。蘇るのは、甘い恋の思い出だけではなく、つらい記憶もあった。そして、やがて彼らの過去が明らかになり、ミランダは姿を消してしまうことに……。割れたり欠けたりした陶磁器を修復する「金継ぎ(きんつぎ)」と呼ばれる日本の技法から着想を得ているという本作。今回は、こちらの方にお話をうかがってきました。ラナ・ゴゴベリゼ監督ジョージア初の女性監督を母に持ち、自身は戦後のジョージア映画界を代表する女性監督とされているゴゴベリゼ監督。91歳で27年ぶりの新作を制作し、大きな注目を集めています。そこで、現在は93歳となった監督に、本作に込めた思いや日本文化との関わりについて語っていただきました。―まずは、これだけ長い間映画を撮らなかったのはなぜですか?監督この27年間はジョージアが激動の時代を経験していたので、映画よりも政治的な問題のほうが自分の人生のなかでより取り組むべき課題となっていたからです。実際、私は国会議員になり、与党のリーダーになり、ジョージアの欧州議会で大使になり、ユネスコでもジョージアの大使になるといった具合に政治的な活動に私のエネルギーを費やしてきました。映画を撮らなかったもうひとつの理由としては、国内が経済的に混乱していたので、映画を撮る資金も時間もなかったから。でも、だんだん社会が落ち着いてきて、その間に私の思考も蓄積されてきたので、今回はそれを久しぶりにどうしても映画として表現したかったんです。主人公たちの考えそのものが大きな役割を果たしている、そんな映画になりました。日本人はお互いを理解し、美しさを尊重する国民―本作にインスピレーションを与えたという日本の「金継ぎ」については、どういった経緯で知ったのでしょうか。監督具体的にどこの記事だったかは覚えていませんが、たまたま目にした記事に写真が載っていて、壊れた器の破片がまるで金の糸を使って繋ぎ合わせたかのように修復されていました。壊れていて存在していなかったものが、美しく元通りに復元されているのがとても印象深かったです。その記事を見たときに、人間の悲劇的な過去も同じように愛と理解と思いやりで修復して美しいものにできれば、新しくこれからを生きていく力を得ることができるんじゃないか、というふうに考えました。金継ぎのみならず、私は前々から日本人の美意識をとても素晴らしいと思っていましたし、日本文化を深く尊敬しています。―日本文化に対して、そういう印象を持たれるようになったきっかけはありますか?監督私はどこの国の文化にも興味を持っていますが、そのなかでも昔から映画や文学をはじめとする日本の文化には特別なものを感じていました。特に映画に関しては、私が黒澤明監督と個人的に知り合いで、実際に会ったこともあるというのは大きいのかなと。黒澤監督とは私の過去作である『インタビュアー』について、深く話し合ったこともあるほどです。そして、私が日本文化で素晴らしいと思うのは、日本人の美意識。この点において、日本人は特別な感覚を持っているのではないでしょうか。暴力が蔓延し、バラバラになっている世界を救う唯一の手段は“美”だと私は考えていますが、日本人のみなさんは昔からお互いに理解し合うことや美しさを尊重している国民だと感じています。過去を深く考えないと、現在も未来も築けない―劇中でエレネが発する人生や過去、死に対しての言葉は、非常にどれも印象的でしたが、さまざまな経験をしてきた監督が大事にしていることは?監督年を重ねるごとに、だんだんと人生を俯瞰して見ることができるようになってきました。そんななかで痛切に感じているのは、人生における人と人との関係性、お互いに対する思いやりや理解以上に大切なものはないということです。だからこそ、壊れた器を金継ぎで直すように人間の過去における不幸な出来事も元通りに美しく修復できたらいいなと。そういった考えをこの作品のメタファーとしてうまく表現できたと思っています。―「過去は重荷か、財産か」という言葉も、誰もが人生で抱く問いだと感じました。激動の時代を生きてきた監督が次の世代に向けて、過去との向き合い方について伝えておきたいことはありますか?監督私は過去について深く考え、きちんと理解しないことには現在も未来も築けないと思っています。ジョージアというのは大変な歴史をたどっているので、私も子どもの頃に父が処刑され、母が10年間も強制収容所に送られるというつらい経験をしました。非常に不幸な過去ではありましたが、それについてもよく考えたうえで理解しないことにはただ重荷になってしまうだけなんですよ。というのも、大きなトラウマになるような出来事ではあったものの、いろいろな人が救いの手を差し伸べ、助けてもらうことはたくさんありました。不幸な記憶ばかりでなく、人の優しさや思いやりを感じることもあったので、それらをひとつずつ思い出すことで“金の糸”が過去を美しくつなげて修復してくれるのではないかなと。そうすることで重荷が財産となり、より豊かな現在と未来を楽に生きることができるのです。大切なのは国や組織と言った大きな単位ではなく、人間ひとりひとりの関係。それを美しいものにしていく意識を持ってほしいとみなさんにも伝えたいです。内面的な老いは自分でコントロールすることができる―いつまでもやりたいことを追求している監督の姿に憧れる女性は多いと思うので、ぜひ生涯現役の秘訣を教えてください。監督年を取ることを止めることはできませんが、内面的な老いはある程度自分でコントロールすることはできると思っています。そのためには頭を働かせることが必要ですが、大事なのは私たちを取り巻く世界に対する関心と興味をつねに持ち続けること。そして、もし扉をひとつ閉めたら、別の扉を開けて新しい人々と出会ったり、新しい詩を見つけ出したりしています。それが私に大きな力を与えてくれているものです。そんなふうに、いろいろなことに興味を持っているうちは生きている実感があるので、老いのプロセスもゆっくりと進むのではないかなと。あともうひとつ付け加えるなら、誰かに必要とされている感覚を味わい、自分の存在意義を感じながら生きるというのも秘訣だと思います。―素晴らしいお言葉をありがとうございました。日本ではジョージアの文化に触れる機会は少ないので、ご自身の作品を通して日本人に知ってほしいジョージアの文化や歴史についてお聞かせください。監督ジョージアの歴史は3000年以上あるので、1本の映画だけで層の厚いジョージア文化を伝えるのは難しいかもしれません。例を挙げるなら、映画のなかにも出てくるショタ・ルスタヴェリというジョージアを代表する大詩人。14世紀頃に始まる西洋のルネサンスのアイディアも、その数百年前に先取りしていたと言われているほどなんですよ。いろいろな民族から侵略されるような大変な経験をしてきた私たちですが、そんななかでも少数派のジョージア人が生き残れたのは、生きる力や喜びを与えてくれた文化の力だったのではないかなと。建築や絵画をはじめとするジョージア文化はとても独特なので、ぜひ注目していただきたいです。過去をつなぐ“金の糸”は、よりよい未来を紡いでくれる激動の時代を生き抜いてきたからこそ、発せられる重みのある言葉の数々。さまざまな葛藤を抱えながら生きる女性たちの姿は、過去との向き合い方を学ぶことがよりよい未来へと繋がっているのだと身をもって教えてくれるはずです。取材、文・志村昌美心に響く予告編はこちら!作品情報『金の糸』2月26日(土)より岩波ホールほか全国順次公開配給:ムヴィオラ© 3003 film production, 2019
2022年02月25日世の中には知られざる驚きの実話が数多く存在していますが、今回映画化されたのは、名画盗難事件の真相。犯人でありながら、イギリス中を感動の渦に巻き込んだ男の嘘のような本当の話をご紹介します。『ゴヤの名画と優しい泥棒』【映画、ときどき私】 vol. 461イギリスが誇る“世界屈指の美の殿堂”として多くの人を魅了しているロンドン・ナショナル・ギャラリー。ところが、1961年にゴヤの名画「ウェリントン公爵」が盗まれ、前代未聞の大事件が発生する。その犯人は、60歳のタクシー運転手ケンプトン・バントン。孤独な高齢者にとってテレビが唯一の娯楽だった時代に、彼らの生活を少しでも楽にしたいと盗んだ絵画の身代金で公共放送の受信料を肩代わりしようと企てたのだ。しかし、事件にはもうひとつの隠された真相が……。本作は、残念ながら2021年9月に急逝した『ノッティングヒルの恋人』で知られるロジャー・ミッシェル監督にとって最後の長編映画作品。そこで、その思いを受け継いだこちらの方にお話をうかがってきました。ニッキー・ベンサムさん映画業界で長年キャリアを積み、本作ではプロデューサーを務めているニッキーさん。今回は、映画化にいたった経緯やロジャー監督から学んだことなどについて、語っていただきました。―もともとはケンプトンのお孫さんからニッキーさんに送られてきたメールがきっかけだったそうですが、どういった内容だったのでしょうか。ニッキーさん ある年のカンヌ国際映画祭のプロデューサーリストを見た彼から、「僕の家族に関するすごい話があります」と突然メールが送られてきたんです。私以外にも何名かのプロデューサーに送っていたようですが、書かれていた簡単なあらすじに魅了された私はすぐに返信をしました。―つまり、その時点で「これはいい映画になる」という手ごたえを感じていたと。ニッキーさん そうですね。家族モノで、実話に基づいていて、絵画の盗難もあるというのはおもしろいので、いい映画になる可能性はいくつも秘めているなと。しかも、それがあまり知られていないというのも大きかったですね。まずは自分で調査を始め、すべての事実がはっきりしてから企画に取り掛かることにしました。ロジャーの姿勢から学ぶことは多かった―その後、本作の監督としてロジャー・ミッシェル監督を指名した理由についてお聞かせください。ニッキーさん 彼の過去作には素晴らしい作品が揃っていますが、彼の映画はたとえ規模が大きくても必ずパーソナルな部分にフォーカスしているのが魅力だと感じていました。この物語も背景にあるのは当時大きく取り上げられたスキャンダルですが、核心となるのは家族の温かみやユーモア。そういった家族ドラマを作るには、ロジャーが一番だと思ったのが理由です。彼ほどバランスの取れる監督はなかなかいないので、完璧な人選だったなと思います。なぜ彼がそこまで温かいストーリーを描けるかというと、彼自身が人間や俳優を心から愛しているから。だからこそ、俳優たちの才能を引き出し、心地よく演技できるような演出ができるのです。―ananwebでは2021年に『ブラックバード家族が家族であるうちに』でロジャー監督へ取材をさせていただき、映画作りに対する興味深いお話をたくさん聞かせていただきました。実際にロジャー監督と一緒にお仕事をされてみて、感銘を受けたこともありましたか?ニッキーさん 企画が動き始めるといろいろな混乱に陥りやすいものですが、そのときにロジャーがよく言っていたのは、「何かあったら脚本に戻れ。答えはそこにあるから」ということ。どれだけ周りが騒いでいても、そういったノイズはすべて消して、脚本をガイドとして歩んでいけばいいんだと教えてくれました。そういう彼の姿勢から学ぶことは多かったですね。それからロジャーの撮影方法はすごく効率的で、だいたい1回撮ったらOK。私としてはクローズアップや別の角度からも撮り直さなくて大丈夫かなと思っていたのですが、ロジャーは「最初の純粋な演技が一番なんだよ」とつねに自信を持って言っていました。そんなふうに、何よりも脚本と俳優を信じることを彼から教えてもらいました。ゴヤの絵には何か惹かれるものを感じた―また、本作でもうひとつの主人公と言えば、ゴヤの名画「ウェリントン公爵」。ニッキーさんはこの絵に対してどのような印象を抱かれましたか?ニッキーさん 最初にこの絵を見に行ったとき、すでに事件についてすべてのことを知っていたので、まるで有名人にでも会えたような気分でしたね(笑)。正直言って、ナショナル・ギャラリーのなかで一番素晴らしい作品だとは思いませんでしたが、絵の存在感やパワフルさという意味では、何か惹かれるものがあるとは感じました。ゴヤの作品においても、もっとも素晴らしい作品とは言えませんが、インパクトはありますし、こういったストーリーのもとにもなっているので、魅力のある作品ではないかなと。依頼をした脚本家たちと初めて会うときに「事件の現場で会いましょう」と言って絵画の前で待ち合わせしたのもおもしろかったです(笑)。―では、何か日本にまつわるエピソードについても教えていただけますか?ニッキーさん 私はオーストラリア出身なのですが、子どものころに家族旅行として初めて訪れた東京や京都、そして富士山の横を通ったときの記憶はいまでも鮮明に覚えています。それから、オーストラリアでは有名なベン・リーというシンガーソングライターがいますが、大学の同級生であった彼が日本でツアーを行ったときに撮影担当として来日したことも。日本の食事はおいしいし、人々は優しいし、地方の景色は美しいので、いろんなJ-POPのアーティストたちと一緒にツアーを回るのは素晴らしい経験でした。最近、私の子どもが日本の文化にハマっているので、旅行ができるようになったらぜひ一緒に日本へ行きたいですね。女性たちに必要なのは、自分の体験談をシェアすること―ニッキーさんは育児や介護をしながらでも女性たちが映画業界で働けるような活動にも力を注いでいますが、ご自身もそういった困難を味わったことがあるのでしょうか。ニッキーさん もちろん、私自身の経験に基づいているところもありますが、周りの女性たちの声にも耳を傾けてみたら、「キャリアは積みたいけれど、この業界にいるのは難しい」という意見が多く上がりました。そういったことが発端となりこの活動を始めることになったのですが、問題はどうすれば女性が映画業界に来てくれるかよりも、どうすれば女性たちが映画業界に残ってくれるか。それに改めて気づかされました。実際、若い世代の男女比は半々ですが、監督や上のポジションになると女性の数は減ってしまいますからね。ただ、私は文句を言うだけで終わりにするのは嫌なので、解決策を見つけて変化をもたらしたいという思いから女性たちをサポートする方法を考えました。映画業界の未来のためにも、才能のある女性たちを失わないような活動をこれからも続けていきたいです。―日本の働く女性でもキャリアと家庭との両立に悩んでいる人は多いので、アドバイスをお願いします。ニッキーさん 私が育児や介護をしながら働く女性たちのための団体を立ち上げたとき、まず初めに作ったのは、女性たちがそれぞれの体験をシェアできるコミュニティ。そこで多くの女性たちが自分の失敗談や成功談を語り合っていたのですが、そうすることで「大変なのは自分だけじゃない」と勇気づけられたと聞きました。おそらく日本の女性のみなさんも、同じような苦労があると思うので、お友達や同僚、もしくはそういった話ができるコミュニティでそれぞれの体験をシェアし合うことが大切なのではないかなと。ただ、それが一部の間だけで行われるのではなく、より多くの人の間で語り合うことができるような社会になるための働きかけも必要だと考えています。笑って泣いて心まで盗まれる!他人に対して無関心になりがちな時代だからこそ、忘れたくないのは、互いを思いやる優しさと人が寄り添い合っていくことで生まれる温もり。何ものにも代えがたい夫婦や親子の絆だけでなく、弱者のために1人で戦うケンプトンの姿は、いまの私たちに大切なものは何かを教えてくれるはずです。取材、文・志村昌美驚きの詰まった予告編はこちら!作品情報『ゴヤの名画と優しい泥棒』2月25日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開監督:ロジャー・ミッシェル出演:ジム・ブロードベント、ヘレン・ミレン、フィオン・ホワイトヘッド、アンナ・マックスウェル・マーティン、マシュー・グード配給:ハピネットファントム・スタジオ©PATHE PRODUCTIONS LIMITED 2020
2022年02月24日人生においてよくあるのは、「あのとき別の道を選んでいたら……」と考えること。ときには苦しくなることもありますが、さまざまな経験から学びながら生きていくのもまた人生の醍醐味でもあります。そこで、今回ご紹介するのは、そんな思いを重ねることができる話題作です。『選ばなかったみち』【映画、ときどき私】 vol. 460ニューヨークに住むメキシコ人移民で作家のレオ。認知症を患ったことで誰かの助けがなければ生活はままならず、娘のモリーやヘルパーとの意思疎通も困難な状況になっていた。レオを病院に連れ出そうと、モリーがアパートを訪れた朝。レオはモリーが隣にいながらも初恋の女性と出会った故郷メキシコや作家生活に行き詰まり一人旅をしたギリシャを脳内で往来し、モリーとはまったく別の景色を見ていたのだった。そして、レオは夜の街を徘徊することに……。人気俳優であるハビエル・バルデムとエル・ファニングが父娘役で初共演を果たしたことでも話題の本作。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。サリー・ポッター監督イギリスを代表する女性監督のひとりとして知られているポッター監督。本作は、若年性認知症と診断された弟の介護を経験した監督自身の思いをもとに描かれています。今回は、介護が抱える問題点や現場の様子などについて、語っていただきました。―介護している側の目線で描かれる作品が多いなか、本作では患者目線で進んでいくのが興味深いところですが、さらに現実とは別に選ばなかった2つの人生も主人公の頭のなかで並行しています。こういったストーリーを構築するうえで、どのようなことを意識されましたか?監督まずは、パラレルな世界を喚起させるような構造にしたいという意図がありました。というのも、映画の場合、Zoomのように複数のスクリーンを並べて見ているわけではないですからね。頭のなかにいる自分からまた違う自分へとどんどん移り変わっていく過程をひとつずつ振り返りながら見せていかなければなりませんでした。ジグソーパズルのピースが徐々に集まり、最後にひとつになっていくようなイメージというのが、私にとってはガイドラインになっていたと思います。もちろん娘側の視点も出してはいますが、私が一番大事にしていたのは、レオが自分の居る場所をその瞬間にどのように経験しているのか、ということでした。介護はいまの社会において非常に大きなテーマ―いっぽうで「介護は特に女性にふりかかる大きな問題」と監督が指摘されているように、女性の多くは娘のモリーに共感してしまう部分が大きいのではないかなと。監督自身も、弟さんの介護を経験されたそうですが、それによって物事に対する見方が変わった部分もあったのではないでしょうか。監督介護やケアに関することは、とても興味深い問題だと考えています。実は最近も死期が近づいている知人男性を目の当たりにした際、多くのプロフェッショナルたちが関わっていることに気づかされました。特に心を動かされたのは、普段私たちがあまり触れ合うことのない介護士の素晴らしい生きざま。本当に心が優しくて思いやりがある方々にもかかわらず、彼らのステータスというのはいまだにあまり認められていないところがあるように感じました。また、一般家庭においては家族から病人が出たり、子どもがいたりすると「女性が面倒を見るべき」という考え方がいまだに根強く残っているところも問題のひとつ。国やそれぞれの家族によって男性がしている場合もありますが、多くの場合はまだまだ女性に任されているのが現実ではないかなと感じています。―そういった現状は、どうしたら改善していけるとお考えですか?監督義務ではないので、あくまでも愛があってしていることであり、弱っている人を助けたいというのは、とても人間的な行為。ただ、ケアをしている本人にも人生や仕事があるので、男女関係なくケアするという行為をみなでわかち合うべきだと考えています。私が弟の介護をしていたとき、彼が苦しんでいるのを見るのはつらかったですし、自分ができることは何でもしてあげたいと思ういっぽうで、仕事もしなければならなかったのでプロの方に関わっていただきました。そういった葛藤はおそらくみなさんも経験することだと思うので、介護に関する問題は、いまの時代においても非常に大きな社会的テーマだと感じています。ハビエルとエルはお互いに助け合いながら演じてくれた―また、本作で多くの映画ファンが注目しているところといえば、ハビエル・バルデムとエル・ファニングの初共演。本当に素晴らしい演技でしたが、現場でのおふたりの様子について教えてください。監督ハビエルといえば悪役を演じることでも知られているところがありますし、スペイン人のマッチョな男性みたいなオーラを持っているタイプの俳優だからこそ、今回はいつも演じているものとは真逆のものをさらけ出すような役だったと思います。そして、それを演じるうえで大きな役割を果たしてくれたのがエル。彼女はまだまだ若いですが、本当に経験豊富だし、人間のもろさみたいなものを表現する役をハビエルよりも多く演じてきているところもありますからね。彼女の素晴らしいスキルのひとつは、完全に役と直結して本当にその瞬間に存在してくれるところですが、彼女がオープンでいてくれたからこそ、ハビエルもそれに反応して演じられたのではないかなと。しっかりと向き合いながら、お互いに助け合っているように見えました。―では、監督にとっていま仕事のモチベーションとなっているものといえば?監督昨今のパンデミックの状態は、フィルムメイカーにとっては非常に奇妙な時期だなと思っています。映画の制作やプレミアがキャンセルになったこともありましたが、そうなって初めて観客に作品を届けることが映画を作るうえでいかに大事なことだったのかを改めて気づかされました。特に、映画館で観られるのか、配信になってしまうのかによっても大きく状況は変わってくるので、コロナ禍が明けても劇場用の映画に対する未来には多くの疑問が残ってしまうのではないかと懸念しています。ただ、逆にこの機会を受けて、「映画だからできることってなんだろう」と考えるべきではないかなと。こういう状況だからこそ、ただ映画を作るのではなく、観客は何を観たいのか、何を観るべきなのか、といったことを考えるいいチャンスにしたいなと感じています。いまは全世界が危機に陥っていて、誰もがいろいろな選択に迫られているので、自分がどう振る舞い、誰といたいのか、そしてどんな未来を見たいと思っているのかといったことに対する価値についてこのタイミングで考えていきたいですね。観客にも神秘的な人生を追い求めてほしい―その通りですね。ちなみに、まもなく公開を迎える日本に対しては、どのような印象をお持ちですか?監督まだ2回しか行ったことはありませんが、今回のプロモーションでも来日できていたらよかったなと残念に思っています。日本には本当に興味深い文化があるので、早くまた戻りたいですね。―お待ちしております!それでは最後に、観客へ向けてメッセージをお願いします。監督私は脚本を執筆している最中、この映画を人生の奥深さに迫る作品にしようと考えていました。陰うつで悲劇的なシーンもありますが、ひと筋の光が与えられればいいなと。ぜひ、観客のみなさんには、レオの物語を通して、複雑で神秘的な自分の人生を追い求めてもらえたらと願っています。押し寄せるさまざまな感情に心が揺れる誰もが味わったことのある“選ばなかったみち”への後悔と葛藤。心の奥底にしまい込んだ過去の思い出と記憶のなかを旅するレオとともに自分自身の人生を振り返り、これからの“選ぶべきみち”について思いを馳せてみては?取材、文・志村昌美胸を締めつける予告編はこちら!作品情報『選ばなかったみち』2月25日(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開配給:ショウゲート© BRITISH BROADCASTING CORPORATION AND THE BRITISH FILM INSTITUTE AND AP (MOLLY) LTD. 2020
2022年02月24日誰もが孤独を感じることがありますが、そんな心に光を与えてくれるもののひとつといえば映画。そこで、今回ご紹介するオススメの話題作は、フランスを舞台に描かれる唯一無二の青春映画です。『GAGARINE/ガガーリン』【映画、ときどき私】 vol. 459パリ郊外にある赤レンガの大規模公営住宅“ガガーリン”で育ったのは、宇宙飛行士になることを夢見る16歳の青年ユーリ。ところが、老朽化と2024年のパリ五輪のために、団地の解体計画が持ち上がり、住民たちは次々と退去していった。そんななか、恋人のもとへと去った母との思い出が詰まった大切な場所を守るため、ユーリは親友のフサームと恋心を抱いていたディアナとともに、取り壊しを阻止しようと動き出す。団地の解体が迫るなか、立てこもったユーリは無人になった住宅を大好きな宇宙船に改造して守ろうとするのだが……。第73回カンヌ国際映画祭でオフィシャルセレクションに選出され、高い評価を得た本作。そこで、鮮烈な長編デビューを飾ったこちらの方々にお話をうかがってきました。ファニー・リアタール監督 & ジェレミー・トルイユ監督「カンヌに彗星のごとく現れた2つの若き才能」と注目を集めているのは、フランスを中心に活動をしているリアタール監督(写真・左)とトルイユ監督(右)のユニット。今後さらなる活躍が期待されるおふたりに、初長編作品へ込めた思いや撮影秘話などについて語っていただきました。―まずは、本作が誕生したいきさつから教えてください。トルイユ監督きっかけは2015年に建築士である友人からガガーリン団地のドキュメンタリーを撮ってほしいと頼まれたことですが、宇宙船のような建物を見たときにフィクションの物語が作れると感じました。そこで、5日後に締め切りが迫っていた短編のシナリオコンテストにガガーリン団地を舞台にした作品を書き上げて提出。そのコンペで勝った僕たちは15分の短編を完成させましたが、それを長編にするまでには6年もの時間がかかりました。―おふたりで創作活動をする際、それぞれに役割があるのでしょうか。リアタール監督すべてを一緒に行っているので、特に役割分担というのはありません。私たちは政治学の勉強をしていたときに出会い、共同で短編を作ることになったわけですが、2人が同じ意見を持って作品づくりに臨めるように、準備にたくさんの時間を割いています。準備を重ねたからこそ、2人の思いは完全に一緒―ということは、今回の制作過程でも、意見が分かれたりすることもなかったと。トルイユ監督そういうことはなかったですね。なぜなら、何年にもわたって準備を重ねてきたので、撮影に入ったときはすべてにおいて2人が完全に同じ思いでしたから。スタッフに正確なヴィジョンを効率的に伝えるためにも準備段階で意見の相違をなくすようにしています。―素晴らしい関係性ですね。そのうえで、この2人だからできたことをあげるとすれば?リアタール監督1人だと最後までやり遂げる力が出ないような気がするので、集団で作業をしているというのはモチベーションのひとつになっているのかなと。それは私たちだけでなく、以前から一緒に仕事をしているスタッフたちがいてくれることも含めて、非常に重要だと感じています。―今回苦労した点や特にこだわった部分などがあれば、教えてください。トルイユ監督映像的な見せ方についてはかなり考えましたが、各成長段階におけるユーリの視点を映像で表したいというのが僕たちの意図です。ユーリの夢や空想が随所に差し込まれているシーンではカメラを円のように回したり、動きを遅くしたりすることで、いままで見てきたSFのような映像を意識しています。そういったことすべてが、僕たちにとっては技術的な挑戦でした。団地で出会った人から多くのインスピレーションを受けた―また、移民や親子の問題など、ガガーリン団地での出来事はフランスや世界の縮図のようにも感じました。実際に取材されてみて、いかがでしたか?リアタール監督団地で出会った人たちの話や彼らの持っている美しさから、私たちは多くのインスピレーションを受けました。そのなかでも映画に取り入れたいと思ったのは、団地の近くにあるスラム街に暮らすロマたち。そこからディアナという登場人物を思いつきました。ユーリとディアナの母国語は違いますが、それでもコミュニケーションが取れる姿を描きたいなと。そして、共に生きることを“最後の希望”として出したいと思いました。―団地では何度も住民たちとワークショップをしたそうですが、ユーリのモデルになったような人もいたのでしょうか。トルイユ監督さすがに宇宙飛行士を夢見ているような若者には出会いませんでしたが、それと同じくらいクレイジーで独創的な夢を持っている住人はたくさんいましたよ。なので、そういう彼らから刺激をもらいながら、ユーリのイメージを作っていった部分はありました。すべての登場人物に自分たちが反映されている―ちなみに、監督たち自身を投影しているようなキャラクターもいますか?リアタール監督そうですね。いつも私たちの一部がすべての登場人物に反映されていると言ってもいいのではないでしょうか。今回でいうと、特にユーリとディアナがそれにあたりますが、特殊な世界観を持っている2人は私たちがなりたいと思う人物でもあります。ユーリのように子どもの時代からの夢を大人になっても持っているようなところは素晴らしいですし、本当に大好きなキャラクターです。―キャスティングが決まったあと、ユーリ役のアルセニさんのお父さんが実はガガーリン団地に住んでいたことが発覚するという不思議な偶然もあったようですね。ほかにも撮影中の印象的な出来事があれば教えてください。トルイユ監督アルセニの父親がセネガルからパリに出て、最初に住んでいたのがガガーリン団地であると気がついたときは感動しましたね。あと、団地にとっても僕たちの映画にとっても重要な人物として忘れたくないのは、イベット・テナールという女性との出会い。彼女は団地に暮らす人々の言葉を集め、それを演劇として表現するということを何十年にもわたって続けていた人でした。住民の女性たちのなかでも中心的な存在だったので、劇中でも団地の周りで走ったり、踊ったりしている女性たちのシーンに出演してもらっています。残念ながら完成した映画を観ることなく亡くなってしまいましたが、彼女の名前はみなさんにもぜひ伝えたいです。それくらい大切な人でした。映画を作る理由は、観客たちと対話をするため―そういった方々の思いも込められているのですね。それでは、まもなく公開を迎える日本に対してどのようなイメージをお持ちかを教えてください。リアタール監督日本には行ってみたいと思いつつまだ行ったことがないので、あまり詳しくはないのですが、私たちは是枝裕和監督の大ファン。『誰も知らない』や『万引き家族』といった是枝作品を通して日本社会について知っているように感じています。あと、興味があるのは日本の幽霊について。日本の幽霊にまつわる本を読んだことがあるのですが、日本の幽霊には美しさがあるように感じています。見えないものとの関係に興味があるので、もっと知りたいですね。―それでは最後に、日本の観客へ向けてメッセージをお願いします。トルイユ監督コロナ禍で難しいなか、50か国以上に配給され、多くの観客たちと作品をわかち合うことができたのはとても幸運だと思っています。ただ、日本のみなさんと直接お話ができないことはとても残念です。というのも、僕たちが映画を作っている理由のひとつは、観客の方々と対話をしたいからなので。日本の素晴らしさも自分の目で発見したかったですね。とはいえ、映画を通してでも交流できると思うので、ぜひ本作をよろしくお願いします。リアタール監督実は以前ペルーに住んでいたときに日本人とルームシェアしていた経験があるので、個人的にはこの映画を日本のみなさんが気に入ってくれたらとてもうれしいなと思っています。もし映画を観て気に入ったら、私たちに手紙を書いてくださいね(笑)。終わりは新たな人生の始まりでもある!若手キャストたちの瑞々しい演技と、独創的な美しい映像で観る者を引き込んでいく本作。きらめくような青春と切実な現実との狭間で葛藤しながら成長していく若者たちの姿に、心を奪われるエモーショナルな1本です。取材、文・志村昌美感情を揺さぶる予告編はこちら!作品情報『GAGARINE/ガガーリン』2月25日(金)新宿ピカデリー、HTC有楽町ほか全国ロードショー!配給:ツイン©2020 Haut et Court – France 3 CINÉMA
2022年02月23日素顔を見せることなくトップまで駆け上がり、“顔なきポップスター”と称されている世界の歌姫Sia。新体感ポップ・ミュージック・ムービーとして大きな反響を呼んでいる『ライフ・ウィズ・ミュージック』で、映画監督に初挑戦したことでも注目を集めています。今回は、いよいよ日本にも上陸する本作について、こちらの方にお話をうかがってきました。ELAIZAさん【映画、ときどき私】 vol. 458今回、主題歌であるSiaの「Together」を日本語で歌う日本版カバーソングアーティストを務めているELAIZAさん。女優業だけでなく、幅広いフィールドで才能を発揮している池田エライザさんが「ELAIZA」の名義で本格的なアーティスト活動を始めたことでも話題となっています。そこで、本作の見どころや音楽に救われたエピソード、歌手でもあるお母さまとの関係性などについて、語っていただきました。―本作では、孤独に生きる主人公のズーが自閉症の妹ミュージックと関わることで愛や希望を見出していく様子が描かれていますが、ご覧になったときはどのような印象を受けましたか?ELAIZAさん人間としてまだ完成していない未熟な者同士がお互いを補い合っていく姿を魅力的に描いている作品だと思いました。しかも、人が抱えている孤独とか寂しさというのは、ともすれば薄っぺらくなりがちな部分ですが、それをセリフや展開で見せるのではなく、ミュージックの頭のなかにある音楽や映像で表現しているのがSiaらしいなと。Siaだからこそ、これだけの完成度で映画として示せているんだと感じました。―現在は女優、歌手、映画監督などさまざまな活動を行っていますが、それぞれの観点によって本作の注目するポイントも違ったのではないでしょうか。ELAIZAさんいろいろなことをしているとそれぞれに垣根があるように見られがちですが、実はあるようでまったくなくて、ただ「表現する」というのが1本ある感じです。今回は、純粋に観客として楽しんでいる部分が大きかったですが、監督を経験したことがある人間からすると、自分自身の人生に起きたことを人に託すSiaの勇気はすごいなと。それはお互いに信頼関係があって、俳優たちがSiaを尊敬していなければ絶対にできないことですから。そういうところには、すごく感銘を受けました。Siaが叫んでくれるだけで安心できる―ELAIZA さんから見たSiaの魅力とは?ELAIZAさんいつも車のなかで歌っているほど、以前から大ファンなのですが、自分が日頃叫べないことを彼女が叫んでくれるだけで安心するところはありますね。あの声で張り上げてくれると、胸の暗いところが開けていくというか、明るく照らされていくような感じがするというか。苦しそうなのに、すごく希望を持った歌い方をしているので、本当に不思議な魅力を持っているのがSiaだと思います。私はそういうところが好きですね。―今回、主題歌の「Together」を日本語でカバーされていますが、実際に歌ってみて気づかされることもあったのではないかなと。ELAIZAさんSiaの曲なので簡単ではなかったですが、好きなお菓子を袋詰めしているときのようなワクワク感を味わえる言葉たちがたくさん並んでいたことと、音の運びがいいことにはすごく驚かされました。ただ、和訳したときに文章の並び方とか言葉の音とかは違ってくるので、日本語に合う柔らかさみたいなところはちゃんと出していけたらいいなと。日本語は強く歌えば歌うほど、いろいろな意味を持ち始めたりすることがあるので、それぞれの言葉にマッチする歌い方を探していく作業はすごく楽しかったです。―ご本人も聴いてほしい?ELAIZAさんそうですね。私の歌唱力がどうこうよりも、日本語バージョンを聴いてもらうことでSiaが日本にもこの映画が広がっていくのを感じてもらえるのなら、それはすごくうれしいです。音楽と関わっているときが一番イキイキしている瞬間―「ELAIZA」として本格的に音楽活動を始められたところですが、名前に込めた思いをお聞かせください。ELAIZAさん「サブスクで海外の人も見やすくなったらいいかな」と思っただけで、実は特に意味はないんですよね。実際、発表の何日か前に決めたくらいですから(笑)。―歌手であるお母さまの影響もあって、子どものころから幅広いジャンルの音楽を聞いて育ってきたそうですね。歌手活動をするなかで、改めてご自身にとって音楽はどういう存在だと感じていますか?ELAIZAさん自分が内側から輝くのを感じることもあり、私にとっては音楽と関わっているときが一番イキイキしている瞬間。いろいろな気持ちが溢れてくるので、普通に話をしているときには開けられない“蓋”を開けられるのが音楽の魅力だと思います。みなさんにとってもそうかもしれないですが、私とは切っても切れない関係ですね。―お母さまからは、先輩としてのアドバイスなどもあるのでしょうか。ELAIZAさんなかなか褒めてはくれないですね(笑)。でも、お母さんがいることで積極的に取り組もうと思えるので、「厳しくいてくれてありがとう」という感じです。ただ、私が出演している番組は全部見てくれているので、厳しいですけど、大好きでいてくれているんだなと。すごく仲がいいので、親友みたいな存在です。「生きてるだけで偉い」と思うようにしている―音楽に救われた経験はたくさんあると思いますが、いま頭に浮かんだエピソードといえば?ELAIZAさん中学生のときに、受験に落ちてしまった日のこと。山の上にあった学校からの帰り道で、目の前に真っ赤な夕日が広がっていたんです。ちょうどそのときに聴いていた曲の歌詞が、「陽は落ちても、明日はもっと明るい太陽が昇ってくるよ」みたいな感じで、それを聴いた瞬間に、すごく吹っ切れたんですよね。いまどれだけ悲しくても、明日には元気になるのっておもしろいなって。そこから、「1日以上落ち込むほどのことじゃないし、いままでもそういうのたくさん乗り越えてきたんだから、よし次行くぞ!」と思えたんです。知り合いのバンドマンが作った曲で世に出てない曲でしたが、そんなこともありましたね。あと、子どものときから好きなのは、スティーヴィー・ワンダーの「フォー・ワンス・イン・マイ・ライフ」。歌詞の意味がわからなくても心躍る曲なので、音楽の力を感じる1曲として、いまでもよく聴いています。―また、本作の主人公ズーは、自己肯定感が低く孤独な人物でしたが、共感するようなところはありましたか?ELAIZAさん日本は自己肯定感が低い人が多いと言われていますが、理由もなく低いとしたら、それほど恐ろしいことはないなと感じてます。私はどちらかというと意識的に上げているほうですが、やりたいことが全部自分の外側にあるので、あまり自分のことを考えていないというか、「生きてるだけで偉いじゃん!」と思うようにしています。努力していれば、自分の価値は見出してもらえるはず―劇中では、ズーがミュージックと出会うことで自分の存在価値を見つけていく過程も描かれています。職業的にもそういうことと向き合う瞬間は多いのではないでしょうか。ELAIZAさん存在価値というのは、 自分が意図しないほうへと転がっていくこともありますからね。でも、自分の存在価値を他人に押し付けるほど厚かましいことってないんじゃないかなって。ただ、努力することは好きなので、それを続けていれば、きっと信頼している人が自分の価値を見出してくれるとは思っています。―最初のほうに、歌手でも女優でも監督でも垣根はないとおっしゃっていましたが、創作活動の源となっているものは何ですか?ELAIZAさん思いついてしまうから、やるしかないんですよね(笑)。ただこの仕事が好きなだけで、その気持ちは小さいときに恐竜の図鑑を読んでいたときと何も変わらないかなと感じています。―ということは、やりたいと思ったらすぐ行動に移せるタイプ?ELAIZAさんいや、私はそんなに大胆ではないです(笑)。なので、ジワジワと地道に勉強してからするようにしています。映画を観ることで心を明るくしてほしい―昨年インタビューをさせていただいたときも、歴史や日本のことなど幅広く勉強されたいとおっしゃっていましたよね。ELAIZAさん東京オリンピックのときに、開会式の入場を見ていて、自分が知らない国がこんなにもあるのかと、打ちのめされてしまいましたから。まずは世界地図を覚えたいなと。そこから自分がいる国の状況や立場などを勉強して、身の丈を知っていけたらいいなと考えています。社会科の勉強からですね(笑)。―先が見えない時代のなかで、ズーのように自暴自棄になったり、悩みを抱えていたりする人も多いと思うので、最後にananweb読者へのアドバイスがあればお願いします。ELAIZAさんうまくいってないなと思っているときというのは、自分が変わらなきゃいけない瞬間やこれまでの価値観を否定しなければいけないこともあるので、その過程でつらい思いをすることはあるかもしれません。でも、映画を観ていると、そういう瞬間も含めて美しいと思えるので、『ライフ・ウィズ・ミュージック』のような映画から努力している人の美しさを感じて、自分自身も当事者であると感じられたらいいのかなと。それほど素晴らしいことはないと私は思っています。あとは、この作品のなかに盛り込まれている音楽シーンの映像は、純粋に心を明るく持ち上げてくれるので、そういう意味でもぜひ観てほしいです。私もがんばりますので、みなさんもがんばりましょう!そして、私の1stアルバム『失楽園』にも伝えたいことは込めているので、合わせて聴いていただけるとうれしいです。インタビューを終えてみて……。ブレることのない芯の強さがありつつ、天真爛漫な笑顔でその場を一気に明るくしてしまうELAIZAさん。お話をしているだけで、ポジティブな気持ちにさせていただきました。これからも溢れ出る才能から生み出される作品の数々が楽しみですが、まずは「Together」で披露している美しい歌声は必聴です。琴線に触れる珠玉の音楽と人間ドラマ自身の実体験を基にしたリアルな苦しみや痛みを描きつつ、唯一無二のアーティストであるSiaにしか表現できないカラフルな世界観で愛と希望を映し出している本作。Siaが放つ音楽と映像は、これまでにない映画体験とともに、誰もが抱える孤独に救いの手を差し伸べてくれるはずです。取材、文・志村昌美撮影・金井尭子(A.K.A.)ヘアメイク・豊田健治(資生堂)スタイリスト・カトウリサドレス¥81,400、グローブ¥23,100(共にANNA SUI/アナ スイ ジャパン03-6635-6470)ストーリーアルコール依存症のリハビリテーションプログラムを受けたズーは、祖母の急死により、長らく会っていなかった自閉症の妹・ミュージックと暮らすことになる。頭のなかではいつも音楽が鳴り響く色とりどりの世界が広がっているが、周囲の変化に敏感なミュージックとの生活にズーは途方に暮れていた。そこに現れたのは、アパートの隣人である優しい青年エボ。次第に3人での穏やかな日々に居心地の良さを覚え始めたズーは、孤独や弱さと向き合い、自身も少しずつ変わろうと決意するのだが……。目と耳を奪われる予告編はこちら!作品情報『ライフ・ウィズ・ミュージック』2月25日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開配給:フラッグ© 2020 Pineapple Lasagne Productions, Inc. All Rights Reserved.
2022年02月23日婚活で約1000人の男性と出会い、年下夫を射止めたライター・かわむらあみりがお届けするコラム【結婚引き寄せ隊】連載第101回は、韓国ドラマで根強い人気を誇る名作ラブストーリーの男性主人公から見る、男性タイプ別の恋愛のコツをお届けします。『キム秘書はいったい、なぜ?』のエリート系主人公U-NEXTにて配信中© STUDIO DRAGON CORPORATION【結婚引き寄せ隊】vol. 101現在、第4次韓流ブームといわれるなか、韓国ドラマに注目する方が増えていますよね。ヒューマンストーリーからアクションものまで、さまざまな作品がありますが、女性に人気があるのはやっぱりラブストーリー。とくに人気の高い名作は、男性主人公の個性が際立ち、実際の恋愛でも「その手のタイプの男性ならこうすべきかも!」と参考になりそうなポイントも見受けられます。U-NEXTにて配信中© STUDIO DRAGON CORPORATIONそこでまず、映画『パラサイト 半地下の家族』(2019年)でのカメオ出演や、日本での第4次韓流ブームの立役者となった韓国ドラマ『梨泰院クラス』(2020年)の主演、今後マーベル・スタジオの映画『ザ・マーベルズ(原題)』の公開が控えるなど世界的な俳優として飛躍を見せている、パク・ソジュンさんのシンデレラ・ラブコメディ『キム秘書はいったい、なぜ?』(2018年)からご紹介。U-NEXTにて配信中© STUDIO DRAGON CORPORATION容姿も頭脳も良く完璧な財閥の副会長イ・ヨンジュン(パク・ソジュン)は、ある日、退職したいと言いだした敏腕秘書キム・ミソ(パク・ミニョン)に大ショック。ヨンジュンは遊園地貸し切りデートやプライベートの花火など、あの手この手でミソを引き留めようとするうちに、だんだんとふたりの心の距離が縮まっていくのです。U-NEXTにて配信中© STUDIO DRAGON CORPORATIONヨンジュンのようなエリート男性は、有能ゆえになんでも自分の思う通りにいくと思いがちなところがあり、恋愛だって思うがままという勘違いをしていることも。実際にエリート男性はハイスペックでモテ男の確率は高いからこそ、思い通りにいかない女性に魅力を感じやすく、手に入れようと必死になるため、気づくと夢中になっているという構図。この手の男性には、ちょっとクールに接するぐらいがちょうどいいでしょう。『コーヒープリンス1号店』の浮き草系主人公U-NEXTにて配信中©MBC, iMBC All Rights Reserved.続いては、アジアにトッケビシンドロームを巻き起こした韓国ドラマ『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』(2016年)の主演なども務めながら、30代からは映画『82年生まれ、キム・ジヨン』(2019年)ほか社会派作品に数々出演。近年では、韓国で「国民の彼氏」と呼ばれるパク・ボゴムさんと共演した映画『SEOBOK/ソボク』(2021年)も大ヒットするなど、実力派トップスター俳優コン・ユさんのラブコメディの決定版『コーヒープリンス1号店』(2007年)をご紹介。U-NEXTにて配信中©MBC, iMBC All Rights Reserved.頭が良く気配りもできるが自由気まますぎて、定職に就かずふらふらとしていた大企業の御曹司チェ・ハンギョル(コン・ユ)は、イケメンしか雇わないカフェ「コーヒープリンス1号店」を経営することに。家計を支えるために男装し、イケメンカフェで働き始める女性コ・ウンチャン(ユン・ウネ)に次第に惹かれ、悩むハンギョル。一見BL展開となる複雑な恋の行方は……!?ハンギョルのような浮き草系男性は、しばられることが嫌いで、恋も直感的。たとえうまく恋愛関係に持ち込んでも、結婚へと進むかは気分次第かも。実際に浮き草系男性は、理詰めでないぶんピュアに感じられて、女性からすると放っておけないと思わせる魅力があります。この手の男性は、女性もルールにうるさいタイプではなく、個性的な女性や甘えられる女性に惹かれるため、自立した女性であることをアピールするといいでしょう。『星から来たあなた』のミステリアス系主人公U-NEXTにて配信中©HB ENTERTAINMENT最後は、韓国ドラマ『太陽を抱く月』(2012年)で人気を博し、近年では日本の韓流ブームを牽引した『愛の不時着』でのカメオ出演や『サイコだけど大丈夫』(ともに2020年)の主演など、注目を浴び続ける、キム・スヒョンさんのファンタジー・ラブコメディ『星から来たあなた』(2013年)をご紹介。同作は、今年、福士蒼汰さんと山本美月さんによる日本版ドラマとしても公開されるため、日本でも再注目されています。U-NEXTにて配信中©HB ENTERTAINMENT17世紀初頭、銀河系の彼方から朝鮮に来た宇宙人のト・ミンジュン(キム・スヒョン)は、現代では大学教授となり、正体を隠して長い年月を生きていました。いよいよ故郷の星に帰る日が迫るなか、マンションの隣の部屋に引っ越してきたのは、人気女優のチョン・ソンイ(チョン・ジヒョン)。傍若無人なソンイにあきれながらも、ミンジュンは彼女を守るようになっていきますが、地球を離れる日が近づくのです。ミンジュンのようなミステリアス系の男性は、ポーカーフェイス気味なのが特徴です。実際に、ミステリアス系の男性は何を考えているのかつかみどころがないため、どんなアプローチをしていけばよいのかも作戦を立てづらいところ。この手の男性は、自分のペースに合わせてくれる女性や理解しようとしてくれる女性に魅力を感じやすいため、まずは聞き上手な女性を演出しながら、距離を縮めるといいでしょう。もし今回ご紹介した韓国ドラマの登場人物のようなタイプの男性に出会ったら、参考にしてみてくださいね。たくさんある韓国ドラマから、自分の道しるべになる作品を見つけてみるのも、おもしろいかもしれません。みなさんに素敵な恋が訪れますように!文・かわむらあみり文・かわむらあみり
2022年02月20日なにかとお世話になるプチプラ服。手頃な価格なので、流行りの服を試したい時やイメチェンしたい時に助かりますよね。ですが、大人の女性はプチプラで失敗した経験も多いのではないでしょうか?今回はプチプラファッションの高見えするアイテム&失敗しやすいアイテムのポイントをご紹介します。これは買っちゃダメ!?失敗しやすいプチプラ服もっとも注意が必要なアイテムは「薄手素材のTシャツ・カットソー」です。素材が薄いとどうしても生地がペラペラで安っぽく見えてしまいます。ニットやカーディガンのインナー程度に活用するのならまだ良いのですが、Tシャツorカットソーだけでコーデを完成させてしまうとコーデ全体にチープな印象が出てしまうので気をつけましょう。もう一点、気をつけたいのが「ふだん選ばない服」です。価格が安いため、失敗しても良いという気軽な気持ちでトレンド服を買えるのはプチプラ服の利点です。しかし、普段の自分が絶対に手に取らないであろうデザインはプチプラでも避けるべき。というのも、いざイメチェンのつもり買ってみても“手持ち服に合わない”“着こなす気分にならない”といった問題が出てきます。服のテイストはいつもの自分が好むものをベースにしつつ、色や柄で新しいアイテムを取り入れる程度にしておくと良さそうです。これは高見え!買って得するプチプラ服失敗しない三大アイテムをあげるなら迷わず「デニム」「ボーダーカットソー」「襟つきシャツ」です。この3点はどのファストファッションブランドでも必ずといっていいほど売っている定番商品ですね。シルエットや色に幅広い展開があり、プチプラ価格でも自分のサイズに合うアイテムが見つけやすいのも特徴的。とくにデニムはユニクロ、GUが生地も上質、シルエットも美しいのでおすすめです。ボーダーカットソーは無印良品のやや肉厚な素材がきちんと見えします。襟つきシャツは定番ものならユニクロ、デザイン性ならZARA、安さ重視ならしまむらでもOK。襟つきシャツも生地がクタッとしていない適度なハリ感のある素材を選びましょう。これら定番服が高見えする理由は、いずれも基本的に肉厚な素材もしくはハリ感のある素材で作られているためです。このほか、いつの時代にも存在するベーシックデザインであるというのも価格の安さを見破られにくいポイント。トレンド服はデザイン性が高いので縫製にこだわらないと安っぽさが浮き立つのがデメリットですね…。なので、プチプラ服でトレンドアイテムを取り入れる場合はシルエットの美しさを見極めるのが大事です。困ったら「ブラックアイテム」が鉄板プチプラ服で失敗しないもうひとつのテクニックはブラックのアイテムを取り入れることです。黒というだけでどんな服もカッコ良く、モードな印象を作ることができます。極論ですが生地がペラペラでも黒い服なら、あまり気になりません。高見えを狙うにあたって色で迷った時は黒を選ぶことをおすすめします。ぜひ、ご参考までに!イラスト 角 佑宇子
2022年02月19日「禁断の小説がついに映像化」として注目を集めている話題の1本といえば、まもなく公開を迎える日・台合作映画『ホテルアイリス』。そこで、主演を務めたこちらの方にお話をうかがってきました。永瀬正敏さん【映画、ときどき私】 vol. 457小川洋子さんによるエロスが描かれた同名小説をもとにした本作で、ロシア文学の翻訳家として孤島に暮らす謎めいた男を演じる永瀬さん。劇中では、ホテル・アイリスを手伝う若い娘マリと繰り広げる倒錯した愛とゆがんだ欲望に堕ちていくさまを見事に演じ切っています。今回は、台湾での現場の様子や海外で活躍し続ける秘訣、そして自身にとって欠かせない存在について語っていただきました。―まずは、出演の決め手となったものから教えてください。永瀬さん僕が若いころはこういうタイプの映画がけっこうあったので、自分もいつか出られるといいなと以前から考えてはいました。それがこのタイミングできたこと、そして役者として幅が広がることがすごくうれしいなと感じたのが最初です。ただ、原作の翻訳家は僕よりもさらに年上の設定。特殊メイクをしたり、白髪を増やしたりするような作り込みをしてやるべき役ではないなと考えていたところ、映画では原作よりも年齢を引き下げたいと。さらにマリの年齢を上げ、2人の年齢差を縮めることで生まれる“化学反応”を見たいということだったので、それならぜひということでお受けしました。意識していたのは、答えを出さない芝居―以前、作品選びにおいては脚本を重視されているとお話をされていましたが、今回の脚本を読まれたときの印象は?永瀬さん原作にも言えることですが、自分のなかで「これだ!」という結末が見えませんでした。マリの妄想の世界だったのか、夢なのか、それとも現実だったのか……。人によっても、そのときの気分によっても、まったく違って感じられる作品だなと。どんなふうにでも受け取れるので、おもしろい脚本だと思いました。だからこそ考えていたのは、「いろんな解釈してもらうためにはどうすればいいのだろうか」ということ。芝居もはっきり答えを出さないように意識していたので、どこまでやるかの線引きは監督に厳しくジャッジしてもらっています。原作を大切にしつつ、あの場所でこの俳優たちと監督が作り出す『ホテルアイリス』のリアリティや寓話性をどう見せるか?という思いはありました。―なるほど。翻訳家はかなり謎の多い男性でしたが、演じてみていかがでしたか?永瀬さんぜひ、また演じてみたい役どころのひとつですね。似たようなキャラクターはいると思いますが、アプローチ方法や演出によって表現の仕方も変わっていくおもしろさがある役ですから。そういう出会いがまたあればうれしいです。―撮影は約3年前ということなので、昨今の現場とは違うところもあったのではないかなと。あのときだからできたこともあるのでしょうか。永瀬さんおそらくそれはあると思います。いまはコロナ禍で生まれた新しいスタンダードができていますが、僕にとってはそれまで当たり前だと思っていたやり方で撮ることができた最後のほうの現場ですから。あと、マリを演じたルシアさんは映画初出演でしたが、初めてだったからこそ彼女の「ドンときやがれ」みたいな感じが出せたのかなと。経験や勉強を積み重ねると違う表現の出し方が身についてくるので、そうではないものが見られたのはよかったです。台湾の人たちは、切り替えるのがうまい―ルシアさんとのシーンでは息を飲むような過激な場面も多かったですが、意識されていたことは?永瀬さん彼女は現場に入った時点ですでにマリとして存在してくれていたので、僕が余計なことをする必要はありませんでした。彼女自身の真ん中にある“骨”の部分がブレることは一切なかったので、それは大したもんだなと。きっとこれから幅広い作品で、いろいろな表現をしていかれると思いますが、この現場で彼女と一緒にお芝居できたのは、本当に刺激的でした。―日本からは、マリの母親役である菜葉菜さんと翻訳家の甥を演じた寛一郎さんも参加されています。現場でのやりとりで印象に残っていることはありますか?永瀬さん菜葉菜さんは髪型が気になっていたようで「私、ヅラっぽくないですか?」とずっと言ってましたね(笑)。でも、その違和感があの母親っぽいなと思いましたし、ストレートヘアのマリの髪をとかすシーンにも意味合いが出てくるので、それがいいんじゃないかなとは伝えました。寛一郎くんはある理由でしゃべれない役どころなので、それゆえに表情の足し引きは難しかったでしょうし、彼のなかでもいろいろなチャレンジがあったと思います。あと、メイクをしているシーンがありましたが、あのときはめちゃくちゃキレイでしたね(笑)。―永瀬さんはこれまでも台湾での撮影を経験されていますが、台湾の現場といえばどんな特徴が挙げられますか?永瀬さん台湾の人たちは、とにかく切り替え上手。撮影中はすごく集中力がありますが、一旦撮影が終わったら、友達みたいになるんですよ。特に今回は若いスタッフが多かったというのもありますが、シビアな撮影の合間にルシアさんとスタッフが近くにあった小道具を僕にいっぱいつけてキャッキャ言いながら写真撮って遊んだりしていたことも(笑)。集中するところと気を抜くところのメリハリのつけ方がうまいなと感じました。海外の現場で大事なのは、積極的に関わること―年齢に関係なく、フレンドリーでフラットな方が多いんですね。永瀬さん本当にそうですね。なので、打ち上げも最高におもしろかったですよ。現地の女性プロデューサーさんが嗚咽をもらしながら号泣していたりとか。―台湾流の打ち上げはどんな感じですか?永瀬さんガンガン飲んで、ガンガン食べるだけ(笑)。とにかくみんな元気ですよ。―現地の方々と打ち解ける永瀬さんのお力もあると思いますが、これまで数多くの海外作品にも出演をされています。海外でも活躍し続けられる秘訣についてお聞かせください。永瀬さん特に、英語圏の方々とお仕事をするときですが、僕の英語は中学生レベルよりもひどいボキャブラリーなので、そこに関しては開き直りですね(笑)。「だって日本人なんだもん。もうちょっと簡単な単語でゆっくりしゃべってよ」と。ただ、わからなかったときに「エクスキューズミー」をちゃんと言えるかどうかは大きいかなと思います。―恥ずかしがらずに「わからない」と言えるのはできそうで、なかなかできないことかもしれません。永瀬さんそのほかに大事なのは、積極的に関わること。海外だと日本の現場よりも、役者の意見を聞きたがるので、そこでアイディアを出せないとダメな場合も。気に入ってもらえるかもらえないかよりも、自分のなかでアイディアをたくさん持っていたほうが相手とコミュニケーションを取れる気がします。日本には“引きの美学”がありますが、国によってはそれが通用しないこともありますからね。ただ、「一緒にものを作りたい!」という気持ちがあればどの国でも受け入れてもらえるとは思います。これまで味わったことのないジレンマを感じている―2年前にananwebにご登場いただいた際、「まだ内緒だけど、国籍に関係ないプロジェクトが3つくらいある」とおっしゃっていました。今回教えていただける最新情報があれば、お聞かせください。永瀬さん1つのものを形にするというのはこんなにも大変なんだなと思いつつ、まだいろいろとがんばっている最中です。特にいまは海外の方々とコラボレーションするのは本当にむずかしい時期ですからね。さまざまなジレンマを感じてはいます。―このような葛藤は、長いキャリアでも味わったことがなかったのでは?永瀬さんそうですね。でも、そこを乗り越えていかないといけないですし、それを言い訳にもしたくないので、逆にもっといい作品を作ろうとしなきゃダメだなと思っています。いまは頼れる仲間たちと肩を組んで、表現できる場を作っていけたらいいなと考えているので、小さな一歩ではありますが、ちょっとずつ前に向かっている感じかなと。いつか完成したら、「この作品のことでした」とお知らせするので、そのときにまたananwebでインタビューしてください(笑)。女性のみなさんがどう感じるかがこの作品の“肝”―楽しみにしておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。つねに映画のことを考えていらっしゃると思いますが、仕事を忘れて素に戻れる瞬間はありますか?永瀬さんこれを言うとすぐ家に帰りたくなってしまうんですが、それはうちの息子といるときです。……といっても、猫なんですけど(笑)。あの無垢な存在のおかげで、オフにパーンと切り替われるので、いまは彼の存在感が大きすぎるくらいで。本当に、天使ですね。今年15歳になったばかりですが、最近少し体調を崩したので、極力一緒にいるようにしています。いまも話ながら「何をしてるかな?」と考えてしまうので、もう家に帰りたくなってきました(笑)。僕は彼に助けられている部分がすごくあると感じています。―永瀬さんに愛されていて幸せですね。それでは最後に、公開を楽しみにしているananweb読者へメッセージをお願いします。永瀬さん最初にお話したように、観る方やそのときの状況によっていろんな解釈ができる映画なので、観終わったあとにぜひ話し合っていただきたいです。特に、女性のみなさんがどういうふうに感じられるのかに興味がありますし、そこがこの作品の“肝”ではないかなと。できれば、観ていただいた方全員の感想をうかがいたいくらいです。友達でも彼氏でも家族でも近所の方でもいいので、一緒に劇場へ行って観終わったあと話をしていただき、みなさんの間で何かが生まれればいいなと思っています。インタビューを終えてみて……。劇中では、冒頭から圧倒的な存在感を放っている永瀬さん。匂い立つ色気と底知れぬミステリアスさには、誰もが釘付けになってしまうはずです。そのいっぽうで、取材では目を細めて愛猫のことを語る姿もとても素敵でした。進行中のプロジェクトではいったいどんな永瀬さんを見ることができるのか、次の取材が楽しみです。欲望の果てまで溺れてしまう一度足を踏み入れたら最後、抜け出すことのできない官能的な“禁断の世界”へと堕ちていく感覚を味わえる本作。異国情緒あふれる美しい景色とともに、濃密で刺激的な時間を堪能してみては?写真・北尾渉(永瀬正敏)取材、文・志村昌美スタイリスト・渡辺康裕 (W)桶谷梨乃 (W)ヘアメイク・勇見勝彦(THYMON Inc.)コート、シャツ、パンツ/ともにYOHJI YAMAMOTO(ヨウジヤマモト プレスルーム03-5463-1500)ストーリー寂れた海沿いのリゾート地にあるホテル・アイリスで母親を手伝っているマリ。ある日、階上から響き渡る男の罵声と暴力から逃れようと取り乱している女の悲鳴を聞く。マリは茫然自失で静観していたが、男の振る舞いに激しく惹かれているもう一人の自分と無意識に何かが覚醒していくことに気づき始めていた。男はロシア文学の翻訳家で、小舟で少し渡った孤島に独りで暮らしているという。住人たちは、彼が過去に起きた殺人事件の真犯人ではないかと噂していた。男とマリの奇妙な巡り合わせは、二人の人生を大きく揺さぶり始めることに……。胸がざわめく予告編はこちら!作品情報『ホテルアイリス』2月18日(金)より、全国ロードショー配給:リアリーライクフィルムズ + 長谷工作室©長谷工作室写真・北尾渉(永瀬正敏)
2022年02月17日いつの時代も、大きな関心を集めるものといえば、グルメに関する話題。そこで、破格の値段で取引されることもある“世界最高級食材”として注目を集めている白トリュフの知られざる真実に迫ったドキュメンタリーをご紹介します。『白いトリュフの宿る森』【映画、ときどき私】 vol. 456北イタリアのピエモンテ州でささやかれていたのは、夜になると白トリュフを探しに出かける妖精のような老人がいるという“言い伝え”。人の手によって栽培が行われたことがないアルバ産の白トリュフは、なぜそこに育つのか解明されていなかった。危険が多い森の奥深くで、訓練された犬たちとともに伝統的な方法で白トリュフを探す老人たち。まるで宝探しをするように楽しんでいたが、近年は気候変動や森林伐採によって収穫量が減少していた。トリュフが実る場所を決して誰にも明かさない彼らの“秘密”とは……。サンダンス映画祭を皮切りに、世界有数の映画祭で“異彩を放つドキュメンタリー”として大きな話題となった本作。今回は、舞台裏を知り尽くすこちらの方々にお話をうかがってきました。マイケル・ドウェック監督 & グレゴリー・カーショウ監督2018年の『THE LAST RACE(原題)』以来、2度目の共同監督を務めたドウェック監督(写真手前・右)とカーショウ監督(同・左)。謎に包まれていたトリュフハンターたちの日常に迫るため、3年もの歳月をかけたおふたりに、撮影秘話や現在取り組んでいる新たなプロジェクトについて語っていただきました。―家族にさえトリュフの場所を教えないほどの秘密主義であるトリュフハンターたち。そのコミュニティに部外者が入り込むのはかなり大変だったと思いますが、どのようにして彼らの信頼を勝ち取ることに成功したのですか?ドウェック監督まず言えるのは、ワインとエスプレッソはかなり飲んだということですね(笑)。というのも、ここではすべてのことが秘密なので、街に2軒ほどしかないレストランに通うところから始めたからです。メニューに載っているトリュフをどのハンターから仕入れているのかを尋ねても、最初は「父親の代から40年以上の付き合いだが、トリュフハンターには会ったことがない」と言われてしまうほどでした。―なかなか厳しい対応ですね。実際、彼らはどうやって取引しているのでしょうか。ドウェック監督夜中にお金を入れた木箱を外に出しておくと、朝には魔法のようにトリュフが入っているそうです。その後、店主が司祭をしているいとこなら何か知っているかもしれないからと紹介してくれました。そこで、「カルロという人が教会に来るときはいつもトリュフの匂いがするから彼がハンターじゃないかな」という情報を得て、今度はカルロを紹介してもらったのですが、彼からは「僕は違うけど、あの人が怪しいかも」と言われてしまったんです。そんな状況が3~4か月ほど続きましたが、それでも諦めずにいろいろな方に話を聞き続けました。その間はカメラを出さずに、ただ彼らから家族にまつわる思い出話を聞いたり、農場を見せてもらったりするだけ。かなり時間はかかりましたが、そんなふうに接していくなかで家族のような関係性を築くことができました。減少する白トリュフを保護する一助になりたい―その結果、実はトリュフハンターだったカルロさんはじめ、みなさんが出演してくださったのですね。ドウェック監督あとは、僕たちが滞在していたアパートの近くにお肉屋さんとチーズ屋さんがあったので、朝イチで大量のお肉とチーズを仕入れることも大事な日課。それを持って、行く先々の人たちとおみやげ交換をしていましたから。そうやって心地よい関係になってからカメラを入れたので、撮影を始めたときには彼らもカメラを意識することなく自然と進めることができたのだと思います。―ただ、そのいっぽうでトリュフハンターたちの背後に渦巻く深刻な問題の数々が映し出されており、衝撃を受ける場面もありました。カーショウ監督毎年トリュフの獲れる数が減っているにもかかわらず、世界的な需要がどんどん上がっているので、いまや白トリュフは金塊と同じくらいの値段で取引されることもるほどですからね。そういったことが大きなプレッシャーとなり、それまで起きなかった争いやライバルの犬を毒殺してしまうといったダークな部分を生み出しているのだと感じました。―それらの現実を目の当たりにして、監督たちの考え方に影響を及ぼすこともあったのでは?カーショウ監督僕たちも、白トリュフがこれほど稀有な食材となっていることを今回の撮影を通して知ったので、それがきっかけとなって始めたのが保護プログラム。集めた資金をトリュフハンターたちに渡し、彼らがトリュフハンティングしている土地を買えるようなシステムを作りました。そうすることで、危険にさらされているこの場所を永久的に保護できると考えているので、それが減少しているトリュフの問題を解決する一助になることを願っています。トリュフハンターたちから大きな影響を受けている―この伝統を守るために、消費者である私たちでもできることがあれば教えてください。ドウェック監督先ほどお話した保護プログラムとともに行っていることのひとつが、この地域で作られたトリュフハンターワインを生産すること。そこで得たすべての収益が彼らに還元されるようなシステムになっており、それによって現在までに52エーカーもの森林を守ることができました。なかなか難しいところですが、まずは森を守ることが一番だと考えています。―支援の第一歩として、トリュフハンターワインを買うことから始めるというのであればできそうですね。ドウェック監督今後は、これをお手本にしてほかの街や国がそれぞれの文化を保護する動きが活発になることを願っているところです。というのも、これらのプログラムは森林だけでなく、コミュニティなどの“文化的生態”を守るためのものでもありますからね。あとは、この映画にインスピレーションを受けて、新しい世代のトリュフハンターが生まれてくれることも願っています。―いろいろな形で広がっていくといいですね。また、個性豊かなトリュフハンターたちの“名言”も見どころですが、彼らと接するなかで感銘を受けたことといえば?ドウェック監督彼らが自然や犬と密接な関係を保ちながら過ごしているのを見て、「自分はこれからどういうふうに生きていけばいいのか」と考えるきっかけになったので、僕たち自身も大きな影響を受けました。すでにこの映画を観た方々からも、「生き方を変えようと思った」とか「自給自足の生活をしてみたい」といった意見がたくさん届いたほどです。カーショウ監督トリュフハンターのなかには、すでに90歳を過ぎている人もいますが、みんなエネルギーや喜びを持って生活している人ばかり。一緒にいると、若者と接している感じがしてとても驚きました。なかでも、カルロの奥さんが「年も取ったんだし、仕事はもう終わりにしてほしい」と言ったときに、カルロが「もしこれが人生の始まりだったらどうする?」と返した場面はすごかったですね。いくつになっても、人生のどのタイミングでも、「ここが始まりかもしれない」というのはとても美しい考え方だと思います。この作品が生活を見直すきっかけになってほしい―確かに、非常にステキな言葉だと思いました。では、まもなく公開を迎える日本に対しては、どのような印象をお持ちかを教えてください。ドウェック監督僕が初めて東京で写真展を開催したのは20年前ですが、それからだいたい年に1回は日本を訪れているくらい本当に日本が大好きです。特に、ものづくりや伝統では高いレベルを極めようとする姿勢がすばらしいなと。それは食文化においても言えることですが、食材や生産地にこだわり、自然をリスペクトしているところには感銘を受けています。今回は、映画の写真も含めた写真展を2月16日~4月24日まで東京のブリッツ・ギャラリーで行うので、そちらにもぜひお越しいただけたらと。コロナ禍が終わったら、なるべく早く戻りたいと思っているほど、僕にとって日本は大切な場所です。実は、いま検討している企画のひとつに日本が候補地に挙がっているものがあるので、ぜひ日本で撮影できたらいいなと考えています。―楽しみにしております。それでは最後に、本作を通して伝えたい思いをお聞かせください。ドウェック監督2年以上コロナ禍でみなさんも感じているかもしれませんが、デジタルメディアよりも、もっと自然と触れ合う時間を取るべきだと考えています。この作品が、デジタルメディアに支配されている自分の生活を見直すきっかけとなり、自然との関係性についても改めて考えてもらえたらうれしいです。カーショウ監督確かに、彼らはデジタルが介入する前の世界にそのまま残っている生活を送っていたので、僕たちも1960年代にいるような感覚を味わうことができました。映画を観ていただく方々にも、僕たちと同じようなタイムトラベルのマジックを体感してほしいですし、いまの時代ではなかなか見つけることができないような幸せや喜び、そして美しさを彼らから感じてもらえたらと思っています。“白トリュフの秘密”がいま明かされる!美しい森が生み出す神秘と、その裏に渦巻く欲望の世界を垣間見ることができる本作。人々を虜にする芳醇でミステリアスな白トリュフの香りに包まれながら、無垢なトリュフハンターたちの生き様に心が刺激される1本です。取材、文・志村昌美美しさに魅了される予告編はこちら!作品情報『白いトリュフの宿る森』2月18日(金)より、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント©2020 GO GIGI GO PRODUCTIONS, LLC
2022年02月17日映画といえば、“時代や社会を映す鏡”とも言われていますが、イランから届いたのは、死刑制度や冤罪問題を背景に描いた傑作サスペンス。ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品されたのをはじめ、世界各国で高く評価されている衝撃作をご紹介します。『白い牛のバラッド』【映画、ときどき私】 vol. 455テヘランの牛乳工場で働きながら耳の聞こえない幼い娘ビタの育てるミナは、1年前に夫が殺人罪で死刑に処せられてしまい、シングルマザーとして暮らしていた。いまなお喪失感に囚われている彼女だったが、夫ではなく別の人物が真犯人だったという信じがたい事実を裁判所から告げられる。深い悲しみに襲われたミナは、賠償金よりも担当判事の謝罪を求めるが門前払いされてしまう。そんななか、救いの手を差し伸べたのは、夫の旧友と称する中年男性レザ。ミナとビタ、レザの3人はいつしか家族のように親密な関係を育んでいくが、レザはある重大な秘密を抱えていた。その罪深い真実を知ったとき、ミナが最後に下した決断とは……。世界的な評価を得ているものの、本国イランでは政府の検閲によって正式な上映許可が下りていないという問題作。そこで、イラン社会の不条理に鋭く切り込んだ本作について、こちらの方々にお話をうかがってきました。ベタシュ・サナイハ監督 & マリヤム・モガッダム監督良質な映画が生まれる国として知られているイランで、“新たな才能”として注目を集めているサナイハ監督(写真・左)とモガッダム監督(右)。私生活でもパートナーのおふたりが、共同監督を務めるのは本作で2度目となります。今回は、主演も務めたモガッダム監督がミナに込めた思いや死刑制度が抱える問題、さらにイランと日本の共通点などについて語っていただきました。―イランは死刑執行件数が世界2位となっていますが、さまざまなリサーチを行う過程でイランの死刑制度にはどのような問題があると感じましたか?モガッダム監督イランの死刑制度に対する私たちの意見は、映画を観ていただければわかる部分もありますが、“社会の暴力”をより増やしてしまうものが死刑制度なのではないかと思っています。そういった観点から、この映画では死刑制度が生み出してしまうかもしれないひとつの結果を描くことにしました。まず問題となるのは、冤罪によって罪のない人が命を落としてしまう可能性があること。人間なので、どうしても間違いを犯すことはあると思いますが、死刑制度という法律にはそういった“バグ”があると考えています。―死刑制度を取り上げようと思ったきっかけなどもあったのでしょうか。モガッダム監督実は、父が政治犯として処刑されてしまったこともあり、私にとっては身近な題材だったので、長年温め続けていました。この作品を制作するにあたって、死刑制度に関係のあるさまざまな人たちにリサーチをしましたが、その過程で「これはイランだけでなく、死刑制度があるすべての国にいる人々の物語なのではないか」と考えるようになっていったのです。日本でもよく見られるテクニックを取り入れたかった―本作に登場する白い牛は、「死を宣告された無実の⼈間」を表しているのだとか。そのほかにも劇中でメタファーやダブルミーニングを込めたシーンがあれば、教えてください。サナイハ監督まず白い牛についてもう少し詳しく説明すると、コーランのなかにある牛の章が罪や罰に関するすべてのもとになっているので、今回使用することにしました。イスラムの世界では神に牛を捧げる儀式もあるほど、牛は無垢や謙虚さの象徴とされていますから。そういう意味もあり、白い牛を無実で処刑される人のシンボルにしたいと考えました。モガッダム監督娘のビタをろう者にしたのは、イスラムの女性たちの声が世界や権力者に届いていないこと、そして彼女たちの声が聞こえないものとされていることを意図したかったからです。あと、ミナが口紅を塗るシーンが2回ありますが、そこで表しているのは、彼女が芯の強い女性であること。彼女の強さや自身を鼓舞する気持ちを表現するためのメタファーとして入れています。サナイハ監督そのほかにも、今回は建築の要素を効果的に使っており、特にこだわったのは、窓やドアのフォルム。それらは登場人物たちに新鮮な空気が吹き込むような造りになっていますが、そこでは彼らがつかもうと手を伸ばしている“自由への道のり”を意味しています。これらのメタファーは、日本文化や文学のなかでもよく見られるものだと思いますが、イラン文化でも同じようなところがあるので、こういったテクニックを自分たちの映画にも用いたかったというのが私たちの意図です。―また、本作ではイランのシングルマザーが置かれている状況に驚かされました。国際的に活躍されているモガッダム監督は、どのような思いでミナ演じられましたか?モガッダム監督本作では、物語とともに「イランで女性として生きることはどういうことなのか」というのをリアルに見せたいと思っていました。イランではいまだに男尊女卑なところがありますが、同じような状況の国はたくさんあるので、そういった社会で女性が暮らしていくことの大変さや不公平さ、そして女性が抱える葛藤は表現したいと考えていました。2つの国が刺激し合えているのは、素晴らしいこと―先ほど、本作には日本文化でも見られるテクニックを使われたとのことでしたが、日本から影響を受けている部分などもあるのでしょうか。モガッダム監督私はまだ日本へは行ったことがありませんが、いつか絶対に行きたいと思っている国のひとつ。文化的にもイランと日本には近いものを感じるので、非常に興味を持っています。サナイハ監督実は、僕は8歳のときに家族と東京に1か月ほど滞在したことがあるんですが、とても素敵な街ですし、日本の文化が大好きです。特に、影響を受けているとすれば、それは日本のクラシックな映画ですね。ストーリーテリングに詩的な要素を入れることを大事にしているところに、日本映画とイラン映画の共通点を感じていますが、これは映画作りにおいては非常に重要な部分だと考えています。実際にそれらは小津安二郎監督や黒澤明監督、そしてアッバス・キアロスタミ監督にも共通しているのではないかなと。最近の日本の映画作家たちに受け継がれている資質だと思いますし、イランでもバハラーム・ベイザー監督は黒澤監督の影響を強く受けていると感じるほどです。そんなふうに2つの国がお互いに刺激し合いながら映画を作っていることは、本当に素晴らしいことだと思っています。―これからもそうあり続けてほしいですね。それでは最後に、日本の観客へ向けてメッセージをお願いします。サナイハ監督死刑制度というルールが生む痛みは、日本とイランが共通して抱えているものだと考えているので、ぜひそういったことを含めてこの作品を観ていただきたいです。溢れ出る感情に締め付けられるサスペンスとして秀逸でありながら、日本人として決して目を背けてはいけない“社会の闇”を突きつける本作。母として女性として強く生きようとするミナの姿と衝撃のラストは、観る者の心を激しく揺さぶり、さまざまな問いを与えてくれるはずです。取材、文・志村昌美胸がざわめく予告編はこちら!作品情報『白い牛のバラッド』2月18日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開配給:ロングライド
2022年02月16日小柄さんに似合う最新トレンドコーデを、イラストでご紹介!小柄さんに似合う最新トレンドコーデの詳細を知りたい人は、こちらからチェックして。ニットカーディガン+トラックソールブーツハーフジップニット+ニットワンピ
2022年02月14日婚活で約1000人の男性と出会い、年下夫を射止めたライター・かわむらあみりがお届けするコラム【結婚引き寄せ隊】連載第100回は、恋活や婚活中に見聞きしてわかった、せっかく恋が進展している気配なのに、なぜかモヤモヤしてしまうその理由をご紹介します。1.なかなか連絡がこない【結婚引き寄せ隊】vol. 100気になっていた男性や、恋活・婚活で出会った男性とデートするなど、うまくいっているように思える状況なのに、なぜか心のどこかで何かがひっかかってモヤモヤした経験はないでしょうか。会っているときは相手の男性も優しいし、一緒にいるとすごく楽しい!だから女性側も気持ちがどんどん入っていくのに、「あれ?」という状況がまたやってくると、モヤモヤが増大。たとえば、「ちょっと声が聞きたいな」と思って連絡しても、全然連絡がつかないとき。電話しても出なくて、折り返しの連絡もかかってこないとか、LINEをしても既読にすらならないようなとき、ましてや既読スルーされてしまうときって、はたしてタイミングがわるいだけなのでしょうか。相手の男性が仕事中だったり、大事な用事があったりするともちろんスピーディに対応することは難しいですが、大事な存在の女性だとしたら、向こうの時間ができたときに必ず、「何かあった?」などと連絡をしてくるものです。女性側から連絡をして、たまたま相手の男性の都合があったり、興味が向いているときだけ会えたとしても、大事な女性を放っておいて平気な男性はあまりいないものです。気づいたら、女性側からだけしか連絡していない、いつも向こうの都合に合わせてしまっているというような状態なら、それは大事な存在ではないということ。しっかり相手の真意を見極めたいものです。2.こちらの話をすぐ忘れる好きな人とふたりで会話した内容を忘れてしまうことって、ありますよね。でもそれは、うれしくてテンションが高くなってしまったり、逆に緊張して頭が真っ白になってしまったり、相手の男性との交流がまだ慣れない時期にはたまにはあるかもしれないというぐらい。ですが、もう何度も会っているとか、けっこう話し込んだはずのことでも覚えていない、前にも話したことと同じ話をしているのにすぐに忘れてしまっているような男性の場合、もしかすると相手の女性に興味がないのかもしれません。もっとひどいパターンだと、こちらの話を忘れるだけではなく、なんとなくしか覚えていないために、ほかの女性とした会話と混同しているような男性も。気になる女性や、大切にしたい存在だとしたら、相手の話したことや考えていることは、忘れたくないものです。とはいえ、人によってはあまり覚えることがニガテなタイプもいるので、もともと忘れっぽいだけなのか、興味がないからインプットされないだけなのか、よく見ておくといいでしょう。3.聞いていた話と違うたとえば、仕事熱心で、毎日忙しく過ごして休みの予定も立てづらいはずなのに、偶然、女友達が街で彼がぶらぶらしているのを見かけたと聞く。または、いい会社に勤めていて経済力があるらしく、デートのときに来てくる洋服もブランドものっぽいと思っていたら、実は借金もあって、見栄をはっていたとわかる……。筆者のまわりで聞いた、いい感じになっている男性が「聞いていた話と違った」というお話ですが、こういった内容ではないとしても、過去に聞いていた話と違っていて、相手の男性に対して不信感を持つようになってしまったという女性も少なくありません。相手の男性も、最初から嘘をつこうと思って言ったわけではなく、ちょっと自分を大きく見せようとして言った話が、だんだんとその設定を忘れて話のつじつまが合わなくなってしまうこともあるのでしょうか。悪気がなくそうなってしまっただけなのか、ただの嘘つきなのか、しっかりと見定めたいものです。気になる男性に出会っても、ふたりでいてどこか違和感を覚えるようなことがあったら、勢いで進まずにちょっと立ち止まってみるのもいいかもしれません。くれぐれも、みなさんもお気をつけて、運命の恋をつかんでくださいね!文・かわむらあみり©Zinkevych/Getty Images©stock-eye/Getty Images©Vincent Besnault/Getty Images
2022年02月12日ふだん何気なく使っているカタカナ語の由来や、意外に知らない略語の正式名称など、外国語の雑学をクイズ形式でご紹介。語学教材元編集者の “語学大好き”ライターがお届けします。今回のワードは「アルバイト」!今回のお題は…「アルバイト」きっと誰でも一度は経験したことのあるアルバイト。「今日、バイトの面接行ってきた~」など、ふだんから使っていると思いますが、どこの国の言葉か知っていますか?フランス、オランダ、ドイツ、スペイン……さて、どんなイメージ?ヒント:日本と同じく、勤勉な人が多いといわれている国の母国語です!アルバイトの由来正解は、ドイツ語です!Arbeitはドイツ語の女性名詞。意味は、「仕事・労働」などで、発音はカタカナで書くと「アルバイト」。「ア」の部分にアクセントを置いて読みます。でも、ドイツ語のArbeitには、日本で使う「一時的な仕事」のような意味はありません!日本語の「アルバイト」的な仕事を表すドイツ語は「Job」(ジョッブと発音)。こちらは英語由来の言葉です。なぜ「アルバイト」が定着?なぜ、ドイツ語のArbeitが日本で使われるようになったのでしょう?諸説ありますが、旧制高校でドイツ語を学んでいた学生たちが、スラングとして使い始めたという説が有力。Arbeitには、「仕事」のほかに「勉強、研究、論文」という意味もあるので、学生たちにとっては身近な言葉だったようです。その後、第二次大戦後の混乱期、経済的に困窮していた学生たちが一時的な仕事として「アルバイト」をしはじめたことから、一般化していったそうです。アルバイトはドイツ語!今回は、アルバイトの由来をご紹介しました。これからは、「ア」にアクセントを置いて「アルバイト」とドイツ語っぽく発音してみるといいかも!参考資料:『クラウン独和辞典第4版』(三省堂)『世界大百科事典』第2版(平凡社)
2022年02月12日ふだん何気なく使っているカタカナ語の由来や、意外に知らない略語の正式名称など、外国語の雑学をクイズ形式でご紹介。語学教材元編集者の “語学大好き”ライターがお届けします。今回のワードは「IT」、「AI」、「DX」!今回のお題は…「IT」、「AI」、「DX」新聞やネット記事でもよく見かける略語「IT」、「AI」、「DX」。それぞれ、意味はイメージできそうですが、なんの略かご存じですか?ヒント:すべて英語由来。でも、DXのXは難しいです!IT、AI、DXの表記は…正解は、次のようになります。IT= information technologyAI=artificial intelligenceDX=digital transformationでは、一つひとつ意味を見ていきましょう。ITの意味は?information technologyの意味は「情報技術」。コンピューターやインターネットを使った情報処理技術や通信技術などを総合的に指している言葉です。IT革命やIT家電、ITバブル、ITリテラシーなど、日本語と組み合わせた使用例も豊富。ただ、これだけ見慣れている言葉でも、略さずinformation technologyのまま英文に紛れ込んでいると、意外にサッと意味がとれないことも。特に、ビジネス英語を使う可能性がある場合、ITの正式表記は知っておいたほうがよさそうです。ちなみに、ITはinclusive tour「パック旅行」の略語や、イタリアの国名コードとしても使われています。AIの意味は?artificial intelligenceの意味は、「人工知能」。artificialは「人工的な」、intelligenceは「知能、知性」を表します。ただ、日本語の意味がわかっても、具体的に内容を説明するのは案外難しいものです。人工知能の意味は、『広辞苑』(岩波書店)によると以下の通り。推論・判断などの知的な機能を人工的に実現するための研究。また、これらの機能を備えたコンピューター-システム。AIなんて、いかにも最近できた言葉のように思えますが、実はartificial intelligenceが命名されたのは1956年。アメリカの研究集会で、「人工知能の父」と呼ばれる科学者、ジョン・マッカーシー(1927 -2011)が名付けたそうです。なお、AIはAmnesty International「国際アムネスティ」の略語としても使われています。DXの意味は?digital transformationの意味は、「デジタル変革」。これだけではイメージしづらいので、『現代用語の基礎知識』(自由国民社)の説明を引用します。デジタル技術で抜本的な変革をもたらし、生活様式を向上させるという考え。そもそもdigital transformationの概念は、2004年にスウェーデンのストルターマン教授が提唱。AIほどではないですが、DXもそこそこ歴史があります。ちなみに、digital transformation がDTではなくDXと略されているのは、英語でtrans-という接頭辞をx-と省略する慣習があるから。この略語のつくり方、非英語圏の人間にはかなり難しいです!IT、AI、DXをマスターしよう!今回は、IT、AI、DXの正式名称をご紹介しました。略語だけでなく、information technology、artificial intelligence、digital transformationもあわせてインプットしておけば、ビジネス英文やTOEICで見かけてもコワくないです!参考資料:『情報・知識 imidas』(集英社)『コンサイスカタカナ語辞典』(三省堂)『ビジネス技術実用英語大辞典』(プロジェクトポトス)『デジタル大辞泉』(小学館)『広辞苑』(岩波書店)
2022年02月12日ふだん何気なく使っているカタカナ語の由来や、意外に知らない略語の正式名称など、外国語の雑学をクイズ形式でご紹介。語学教材元編集者の “語学大好き”ライターがお届けします。今回のワードは「ゲレンデ」!今回のお題は…「ゲレンデ」冬になると見聞きすることが増える「ゲレンデ」。スキーをしない人でも、「スキー場」という意味はイメージできる言葉です。また、90年代にスキーブームを巻き起こした映画『ゲレンデがとけるほど恋したい。』を思い出す人もいるもしれません。そんな冬の景色と結びつく「ゲレンデ」、もともと何語だったのでしょう?ヒント:スキー競技強豪国の母国語です!ゲレンデの由来は…正解は、ドイツ語です!Geländeはドイツ語の中性名詞。カタカナで発音を書くと「ゲレンデ」で、Geländeの「ä」部分にアクセントがあります。Geländeの主な意味は、「土地、地形、敷地」などです。ちなみに、カタカナ語になっている「ゲレンデスキー」は、和製語。同じく、ゲレンデにいるスキーウエア姿の異性がステキに見えてしまうことを指す言葉「ゲレンデマジック」も和製語です。さらに日本語とミックスした「ゲレ食」なんてワードも誕生。言葉の進化や変化って、おもしろいです。ドイツ語はスキーや登山用語に多い!カタカナ語になっている「ゲレンデ」は、スキー場のほかに「ロック‐クライミングの練習場」という意味もあります。実は、スキーや登山など山岳関係の言葉はドイツ語由来のものが割と多いのです。スキーの回転技術のひとつ「ボーゲン」も、ドイツ語Bogen由来。また、登山用のロープを指す「ザイル」もドイツ語のSeilです。ちなみに、近代のスキー技術がヨーロッパから日本に伝来したのは1911(明治44)年。オーストリア=ハンガリー帝国の軍人、テオドール・フォン・レルヒが新潟県上越市高田でスキー術を日本の将校たちに指導したのがはじまり、とされています。ゲレンデはドイツ語!今回は、ゲレンデの由来をご紹介しました。ゲレ食を食べるときがあったら、ぜひゲレンデがドイツ語だったことを思い出してみてください!参考資料:『クラウン独和辞典』(三省堂)
2022年02月12日ふだん何気なく使っているカタカナ語の由来や、意外に知らない略語の正式名称など、外国語の雑学をクイズ形式でご紹介。語学教材元編集者の “語学大好き”ライターがお届けします。今回のワードは「アカペラ」!今回のお題は…「アカペラ」音楽関係の番組やサイトで見聞きする「アカペラ」。無伴奏で歌うこと、という意味はイメージできても、その由来まで説明できる人は少ないかもしれません。この「アカペラ」、どこの国の言葉でしょう?ヒント:美しい教会が多い国です!アカペラの由来は…正解は、イタリア語です!イタリア語で書くと、「a cappella」。発音は、「アカペッラ」となり、アクセントはcappellaの「e」にあります。筆者は、イタリア語を習うまで「アカ・ペラ」と読んでいました。実際の発音がかなり違うので、知ったときはビックリ。ちなみに、カタカナ語辞典などには、「ア-カペラ」と原語に近い表記がされています。アカペラ、もとの意味は…?a cappellaの最初の「a」は、イタリア語の前置詞。cappellaは「教会内にある礼拝堂、チャペル、教会付き聖歌隊」などの意味で、a cappella全体を訳すと「教会風に、礼拝堂風に」となります。もともとa cappellaは、教会で歌われていた「宗教的な合唱曲」などを指していました。そこから変化して、「無伴奏で歌う」という意味でも使われるようになったそうです。アカペラはイタリア語!今回は、アカペラの由来をご紹介しました。音楽関係の用語なので、イタリア語風にしっかり抑揚をつけて「アカペッラ」と正しく発音してみるといいかも!参考資料:『伊和中辞典』(小学館)『情報・知識 imidas』(集英社)『デジタル大辞泉』(小学館)『コンサイスカタカナ語辞典』(三省堂)
2022年02月12日ふだん何気なく使っているカタカナ語の由来や、意外に知らない略語の正式名称など、外国語の雑学をクイズ形式でご紹介。語学教材元編集者の “語学大好き”ライターがお届けします。今回のワードは「グルメ」!今回のお題は…「グルメ」みんな大好きな「グルメ」。グルメ番組やグルメランキング、ご当地グルメなど、ちまたにはグルメという言葉があふれています。「あの人はグルメだから」など、日常会話でもよく使いますが、グルメって、そもそもどこの国の言葉でしょう?ヒント:ヨーロッパの農業大国です!グルメの由来は…正解は、フランス語です!gourmetはフランス語の男性名詞。発音をカタカナで表すと「グルメ」となり、gourmet の語末にある「t」は読みません。仏和辞典に載っている主な日本語訳は「食通、美食家、(知的,芸術的な)通(つう)」。また、「ワイン鑑定家、ワインの毒見役」という意味もあります。日本では、「おいしい料理、高い料理」にも「グルメ」を使うようになり、カタカナ語として完全に定着しています。語源をたどると…フランス語gourmetの語源をたどると、中世英語gromにたどりつきます。その意味は、「身分の低い者、下男」。そこから、「ワイン商の従僕」「ワイン通」「食通」と変化していったそうです。なお、グルメと似たような言葉で「グルマン」があります。フランス語名詞gourmand(グルマン)の意味は「食いしん坊、食い道楽」。日本では、「グルメ」のほうがよく使われていますが、「グルマン」もカタカナ語辞典などに載っています。ちなみに、gourmetやgourmandは英語やドイツ語などの辞書にも掲載。さすが、ヨーロッパの農業大国で、美食の国フランス!「グルメ」関連語は、世界各国で通用するようです。グルメはフランス語!今回は、グルメの由来をご紹介しました。ほかにも食・料理関係でフランス語由来の言葉がいくつもあるので、また取り上げたいと思います。参考資料:『フランス語 語源こぼれ話』田桐正彦著(白水社)『デジタル大辞泉』(小学館)『ロベール仏和大辞典』(小学館)『コンサイスカタカナ語辞典』(三省堂)
2022年02月12日『石の繭』、『水晶の鼓動』、『蝶の力学』と3度にわたって映像化され、人気を博している大ヒットクライムサスペンス『殺人分析班』シリーズ。多くのファンが続編を待ち望むなか、新シリーズとなる『公安分析班』がついに始動します。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。青木崇高さん【映画、ときどき私】 vol. 454まもなく放送が開始となる『連続ドラマW 邪神の天秤 公安分析班』で、主演を務めている青木さん。本シリーズでは、日本警察の中でもエリートとされている公安部に異動した元捜査一課のエース・鷹野秀昭が、新たな猟奇殺人事件と陰謀に立ち向かう姿が描かれています。演じるうえでの苦労や共演者とのエピソード、そして今後について語っていただきました。―4作目にしてシリーズ初主演となりますが、決まったときのお気持ちはいかがでしたか?青木さん主演というのはありがたいと思いましたが、やるべきことは変わらないので、まずは自分自身が脚本を楽しむところから始めました。セリフの分量が多くて大変だったものの、脚本はすごくおもしろかったので、集中していいものが撮れたと思っています。―鷹野を演じるのは約2年ぶりですが、役の感覚はすぐに取り戻せましたか?青木さん今回は、少し時間がかかりました。というのも、続編のときはだいたい衣装に袖を通すと感覚を思い出せるんですが、これまでとスーツの感じがかなり違ったので。「これは本当に鷹野の衣装ですか?」と聞いてしまったほどでしたが、そういう変化も楽しむことができました。―衣装にはどういった違いがあったのでしょうか。青木さんこれまでの鷹野は黒いスーツとグレーのシャツでピシッと決めていましたが、公安に求められているのは、より人のなかに紛れられるような格好。そのためには、いわゆる一般的な服装にしなければいけなかったので、少しゆるめな灰色のスーツと白のシャツにしています。ただ、公安のことはあまり公には明かされていないですからね。正解がないなかで作っていく難しさはありましたが、クリエイティブな面においては、それがおもしろいのりしろのような部分になっていたのかなと。YouTubeで家宅捜索の映像を見たり、資料を見たり、いろいろな話を聞いたりしましたが、公安の方々というのは、本当に“普通の人”に見えるらしいです。公安ならではの大義名分があることを知った―では、役作りで苦労されたこともあったのではないでしょうか。青木さん今回はとにかくセリフ回しが大変でした。特に、公安の分室でのシーンはまとめて撮っているんですが、それが何日も続いたときは、キャスト全員が疲労困憊の状態になってしまったほど。刑事モノではよくあることですが、そのなかでも公安というのは特殊だと思いました。ただ、単眼鏡や懐中電灯など、道具の扱い方はほかと違っていておもしろかったです。―なかなか実態を知ることができない公安という職業に触れてみて、何か発見などもあったのでは?青木さんこれまで公安といえば、“謎の組織”のように描かれがちでしたが、彼らはテロや国家転覆に関わる事件を未然に防ぐための動きをしているので、彼らには彼らの大義名分があると思うんです。とはいえ、そのために無断で人の家に侵入したりしているので、キャスト内でも「公安に目をつけられたら終わりだな」という話はしていましたが(笑)。あと気になったのは、彼らは何をモチベーションにしているのかということ。表に出ることがないので、犯人を捕まえて感謝されたり、表彰されたりみたいなことはないですし、場合によっては家族に危害がおよぶ可能性もありますから。そういった危険を冒してまで働く彼らは、どういう思いなのかというのは、みんなでも話し合ったところです。―そういった難しさがあるなか、鷹野として演じるうえで意識していたことがあれば、お聞かせください。青木さん表面上はだいぶ抑えていますが、冷静にアンテナを張り巡らせながらつねに感情がうごめいているので、気をつけたのは目の動かし方。聴覚に集中しているときは目線を外したり、何かを想像しているときは目が動いたり、といった感じで考えながら演じています。あとは、ひとつひとつの動作や呼吸で、いかに視聴者のみなさんに緊張と緩和を共有できるかを意識しました。共演者のみなさんが素晴らしくて、感謝しかない―新シリーズの鷹野に関しては、どのように捉えていますか?青木さん鷹野は変わり者でマイペースのように見られていますが、どこに行っても変わらないというか、彼の軸はブレていないんですよ。ただ、かたくなに自分のスタイルを崩さないわけではなく、いろいろな感情や意見を柔軟に取り入れ、それを分析して捜査につなげていっていると思います。チームとも信頼を築いていき、どんどん頭角を現していきますが、人と群れない感じとかもカッコイイですよね。捜査の手法がまったく違う公安で戸惑ったり、組織のあり方に疑問を感じたりもしていますが、おそらく視聴者のみなさんも社会で環境が変わったときに、同じような経験をされているのではないかなと。鷹野の場合、公安のいいところは認めつつ、いままで培ってきたものも取り入れながらハイブリッドなやり方を提案していくので、彼自身とともにチームの変化というのも見どころになっています。―今回も幅広いキャストの方が顔を揃えていますが、現場の様子はいかがでしたか?青木さん共演者のみなさんが素晴らしくて、本当に感謝しかないですが、まずは「松雪泰子さん、ありがとうございました!」という感じです。普段から素敵な方ですが、役者として長年積み重ねてきた経験がある方なので、精神的にかなり頼らせていただきました。公安には、松雪さん以外にも、筒井道隆さんはじめ、徳重聡さんや小市慢太郎さんといった年上の方が多かったので、落ち着いた雰囲気ではありましたが、みなさん曲者ぞろいと言いますか(笑)。それぞれキャラクターが立っている方ばかりで、本当におもしろかったです。年下の福山翔大くんは、ムードメーカーになってくれていたと思います。「いつかみんなでキャンプしたいね」とか、大谷翔平くんのホームラン話で盛り上がったりとか、いろいろな話ができる楽しい現場でした。人間はそんなに単純じゃないと感じる―鷹野といえばいくつか癖があり、写真を撮りまくる記録魔的なところもそのひとつ。青木さんも現場で必ずしてしまうことはありますか?青木さん僕はロケでさまざまな場所に行った際、現地の食べ物屋さんのチェックは欠かしません(笑)。それが楽しみのひとつですから。でも、最近はコロナ禍で行けないことが多いので、ぜひ落ち着いたら、いろいろなお店に行きたいです。―ほかにも、鷹野は好物のトマトジュースでエネルギーチャージをしていますが、青木さんにもそういったものがあれば、教えてください。青木さんやっぱりお酒じゃないですかね(笑)。でも、お酒自体というよりも、みんなでワイワイ飲むことからエネルギーをもらっている部分もありますが。今回の現場では、そういうことができずに残念でした。あとは、マッサージとか整体とか、お風呂とかでも疲れは取れているのかなと。ただ、今回の現場では、お風呂のなかでもずっとセリフの練習をしていました。―ということは、オンオフの切り替えはどうされているのでしょうか。青木さんそれが、僕はできないんですよ。走ったり、犬の散歩をしたりとかで汗をかくと多少できますが、仕事が終わって家に帰っても残ってしまうことが多いので、人間はそんなに単純じゃないんだなと。スイッチのように切り替えられたらいいなとは思いますが、そのいっぽうであんまり器用になりたくないなというのもあります。後悔しないためにも、向き合うならいましかない―今年で俳優デビューから20周年を迎えますが、いまの活躍を支えている青木さんの“ルール”があれば教えてください。青木さん今年で20年ってほんとですか?自分では全然意識していなかったので(笑)。ルールというと難しいですけど、「おもしろい人生を生きたい」というそれだけです。そのためにも、ひとつひとつの作品にしっかりと時間をかけて向き合い、観てくださった方々の声がちゃんと聞けるところまで立ち会いたいと思っています。観客に作品が届いて、おもしろかったと言っていただけたら、また次もがんばろうとなれますから。すぐ次の作品に入るというサイクルが僕に合っていないのもありますが、仕事がひとつ終わったら、余韻というか、自分にとってその作品がどうだったのかと考える時間を持つようにしています。―それでは最後に、今後やりたいことやいまご自身が目指していることについてお聞かせください。青木さんすでに自分で映像を作ったり、絵を描いたりしていますが、個人でもチームでも0から1にしたものをこれからも発信して続けていきたいと考えています。やっぱり人生の時間には限りがありますから、「本当はやりたかったんだけど……」みたいな後悔はしたくないなと。「向き合うならいましかない」くらいの気持ちにはなっています。世界的なレベルで足止めを食らってしまいましたが、これを絶対に無駄にはしたくない。立ち止まって考えることができる時間にもなったので、転んでもただでは起き上がらない、何かしら拾って立ち上がりたいと思っています。インタビューを終えてみて……。言葉の端々から、作品や仕事に対する熱い思いがヒシヒシと伝わってくる青木さん。細部にまでこだわって役作りをした青木さんだからこその新たな鷹野と、普段見ることのできない公安の裏側をぜひお見逃しなく。予想できないラストが待ち受ける!『殺人分析班』同様に、二転三転するストーリーと息もつかせぬ緊迫感で観る者を引き込む最新シリーズ。秘密に包まれた公安を舞台に繰り広げられるスリリングな攻防戦と、これまでの刑事モノとは一線を画す展開は必見です。取材、文・志村昌美スタイリスト・小泉美智子ヘアメイク・NANAストーリー公安部に異動したばかりの鷹野が担当するのは、爆破事件の現場近くで起きた与党大物議員の殺害事件。遺体からは臓器が抜かれ、その付近には心臓と羽根を載せた天秤が残されていた。猟奇事件現場に臨場した鷹野は、古代エジプト神話を模した殺害方法に違和感を持ち、筋読みを始める。しかし、同僚の氷室から公安には公安のやり方があると一蹴されてしまう。情報収集活動は警察にとって捜査の基本ともいえるが、公安警察ではより緻密で複雑なものを要求されることとなる。鷹野も公安独自の捜査手法で事件を追っていくのだが……。衝撃が走る予告編はこちら!作品情報『連続ドラマW 邪神の天秤 公安分析班』2 月 13 日(日)スタート毎週日曜午後 10 時放送・配信(全 10 話)[第 1 話無料放送]【WOWOWプライム】[無料トライアル実施中]【WOWOWオンデマンド】
2022年02月11日