“私の兄は、障害者”。見て見ぬ振りして、直視できない現実を避けるように生きてきた、妹目線の連載です。初めてできた彼氏に家のことを聞かれた私は、いつもの笑顔が消えて言葉が詰まってしまいました。文・心音(ここね)【兄は障害者】vol. 13彼と過ごす時間は特別同じバイト先で働く、4つほど歳の離れた定時制に通う彼。大きなバイクで学校まで迎えに来てくれて、そのまま彼の家で過ごしたり、バイト先のお店まで送ってもらったり。自宅からすぐの距離に住んでいたこともあり、私たちは毎日のように会っていました。彼は、校内の様子は知らないし、私の同級生とも特に接点はない。この距離感が、私にとっては気が楽だったので、普段学校の友人や家庭内では見せることのない、素直に甘えられる “本当の自分” に戻ることができていました。「家族について教えてよ」しかし、行く場所といえば常に彼の実家。私の実家は、友だちですらあがったことがありませんでした。兄が家にいるので、むやみに人を連れていって兄が安易に話しかけたりすることがイヤだったからです。高校生にもなれば、友だちと “お泊まり会” もよくあると思いますが、私の家には1回も呼んだことはありませんし、来て欲しくもありませんでした。とはいえ、1年以上も交際していれば、彼は「なぜ心音は自分を実家に招くことを嫌がるのか」、知りたがるようになったのです。「俺は実家に呼んでいるし、両親や兄弟にも心音のことを紹介してるのに……」と不満そうな顔を見せては、「まあ、いいけどさ」と半分諦めモード。「お父さんが厳しいから、彼氏がいるのは秘密にしたいんだ〜」と、適当に理由を言っては心の中で「お願い、触れないで」と叫んでいました。「俺の兄も、精神安定剤飲んでたよ」けれども、なんで私がそんなに実家がイヤなのか、ふとしたタイミングで言ったことがありました。「実は、私のお兄ちゃんずっと家にいるの」と。詳しくは告げず、「心の病気があって、家にいるんだ」とだけ説明したのです。彼の反応は、「そうなんだ、もっと早く話してよ〜。そんな気にすることじゃないよ。俺の兄も、前精神安定剤飲んでたし」という言葉。少しだけ安心したと同時に、「でも彼のお兄さんは、ちゃんと働いてるじゃん」。正直、精神安定剤を飲んでいたり、精神科にカウンセリングを受けたりという人は、表立って言わないだけで、多くいると思います。障害者手帳を持つまでは至らなくても、心のバランスを保つことが難しく、仕事をしながら精神科に通っている人は決して珍しい話ではありません。でも、私の兄は、働くなんて到底無理。会話でさえも成立させるのが難しいのですから。同じように心の病を抱えていても、彼の兄と私の兄では、雲泥の差がある……。彼との認識のズレに心がチクチク痛みました。……「やっぱり、実家に来ることはやめて欲しいな」という言葉しか出てきませんでした。通院していた病院先でその頃、近所の精神科に通院していた兄は、病院で開かれるデイサービスやイベントにも参加していました。病院に通っている患者はもちろん他にもいます。気さくに人とコミュニケーションしたがる人、自分の殻にこもって人とは接したくない人、家族とは話すけど医師には口を閉ざす人。さまざまな人々がいました。兄は、家から歩いてすぐだったその精神科に、診察やデイサービス以外にも勝手に足を運ぶようになっていきました。そこで、“ある問題”を起こしてしまいます。©petrenkod/Gettyimages©PeopleImages/Gettyimages©kitzcorner/Gettyimages©sudok1/Gettyimages
2018年04月25日“私の兄は、障害者”。見て見ぬ振りして、直視できない現実を避けるように生きてきた、妹目線の連載です。精神障害者保健福祉手帳の2級を発行された、兄。両親でさえ、この状況を受け入れることに時間がかかりました。文・心音(ここね)【兄は障害者】vol. 12直視できないのは、私だけではなかったこの連載を読んで、兄の凄まじい変化に胸が痛んでいる方もいらっしゃると思います。その胸の痛みは、当時の私たち家族が感じていた紛れもない事実。妹である私ですら、この現実を直視することができずに心をかたく閉ざしていったことを今でも覚えています。そして、両親はさらに苦しい気持ちだったと私は想像しています。なぜなら、障害者手帳が発行された後も両親は、兄のことを周囲に言わなかったからです。この事実を隠していました。冷たく鋭い世間の目唯一両親がこの事実を話していたのは、祖父母と両親の兄弟のみ。本当に近い身内だけが知っていました。両親が仲良くしている古くからの友だちや知り合い、近所の人などは兄がこのような経緯を辿ったことは知りません。「世間体なんて気にしなくても良いじゃん」という意見もあると思いますが、この話をしたことで私たちが得るのは、多くの人からの「かわいそうだね」「大変だったね」と哀れみや同情の言葉だけ。兄が良くなるわけではありません。たとえ遠い身内だったとしても必要以上に兄の話をするのは、余計に私たちがストレスを抱える原因にもなったので、両親もなるべく内密にするようになったのだと察しています。また、よくある “親戚の集まり” のようなものも、兄が迷惑をかける可能性があるため、ほとんどうちにはありません。物心ついた時から結婚式やお葬式、法事などは両親のみが参加。兄は参加しないのが家族のなかでの暗黙の了解でした。“諦めと守り” の意味を理解する兄の回復を切に願っていた両親ですが、明るい兆しは一向に訪れる気配がなく、苦渋の決断をして、障害者保健福祉手帳を申請しました。これは、仕方のない選択でした。しかし、この決断は、デメリットだけではありませんでした。精神障害者保健福祉手帳の2級を発行された兄は、障害者年金として2か月に1回、国から13万円の援助金をもらえることになり、病院の診断や薬代の負担が軽くなったのです。また、交通機関が無料になるなど、地域によって異なるものの、待遇を受けられることに。こうして時間はかかったものの、「障害者」になることを選んだことで、兄を守ることができた。そう考えると、非常に前向きな選択だったと言えることでしょう。今となっては “生活の一部” となっているこの状況も、当時の両親からすると “ギリギリまで諦めたくなかった” というのが本心だと思います。なぜなら、もっと早い段階で障害者手帳を手にすることができたから。8年粘り続けてやっとの思いで申請した。これが、両親の決断だったと思うと、私は深い拍手を送りたいと心から感じています。その頃、私は初めて彼氏ができたこの頃、私は高校生。地元の飲食店でアルバイトを始めた私は、同じバイト先の年上男性と距離が近くなっていました。高校2年生から付き合い始めて、1年半か2年近く一緒にいました。第一希望の高校を落ちた私は、特に楽しみを見いだすことができずにただ通っていた高校生活と、冴えない家庭の間に挟まれて、バイトで元気に働くことが唯一楽しい時間でもありました。家も自転車ですぐ近くの彼。一緒にいる時間が長くなるにつれて、言葉が詰まる質問。それは、「心音の家族って、どんな感じなの?」という話題でした。好きな人に一番聞かれたくないことだったのです……。©laflor/Gettyimages©c11yg/Gettyimages©undefined undefined/Gettyimages©Toru-Sanogawa/Gettyimages
2018年04月18日“私の兄は、障害者”。見て見ぬ振りして、直視できない現実を避けるように生きてきた、妹目線の連載です。病院通いと大量の薬を飲み始めて、4年近くが経とうとしていました。文・心音(ここね)【兄は障害者】vol. 11他人事のような発言に虚しさを覚える通っていた精神科の先生は、毎日心の病を抱える人たちと接して仕事をしているからか、先の見えない闘病生活に慣れている印象。「ご両親も、あまり肩に力を入れずに過ごしてくださいね」と、言われることもありました。正直、他人と身内では兄の病気に対する思いは雲泥の差です。「『あまり肩に力を入れずに』なんてよく言えたものだな」と、両親が呆れて帰宅することもありました。かつては学校で人気者だった兄が、たまたまこうなってしまっただけ。すぐに良くなる。そう願って両親は、兄に良い影響を与えると聞いたことは全て挑戦していました。薬と病院 “だけ” を頼りにしていても解決する見込みがないので、デトックス効果があると言われる話題のジュース、パワースポットでお参り、サプリメントや料理方法など、とにかく “なんでも” 良いと聞いたことは兄に試す。そんな日々だったのです。「病気」と認めたくない葛藤兄は、高校をやめてから3年間引きこもり、そこから病院に通いだしてもうすぐ5年目に差しかかろうとしていました。気づけば、25歳。周りの同級生は大学に進学したり、就職したり、早ければ結婚して家庭ができていたりと充実している様子です。そんななか、先の見えないトンネルをひたすら歩き続ける兄は、大人になるどころかひとりでは何もできない状態にどんどんなるばかり。薬と母親の付き添いがなければ、何もできません。それでも、「まだ治る」と信じていた両親は、兄に大量の薬を飲ませ、看病をします。「まだ治る」「肩の力を抜いてください」という、両親と医師の相反する言葉は、両者の葛藤を表している言葉だと私は感じます。8年を経て、両親が出した答え入院してすぐに兄の病名はわかったものの、それでもまだ「病気を抱える健常者」。このまま粘っていても、先は見えない。高額な医療費をいつまで払い続けるかもわからない……。治ると信じて戦い続けた結果、両親が下した決断は「障害者手帳」の申請に踏み切るということでした。障害者手帳を発行する手順は、通院していた病院に診断書を書いてもらい、住んでいる市役所に申請。診断書が全てで審査などははありませんでした。兄は、障害者になった障害者手帳には、大きくわけて、身体障害者手帳・療育手帳(知的障害者用)・精神障害者保健福祉手帳の3種類があり、さらに階級が分類されます。私の兄は、統合失調症の診断から「精神障害者保健福祉手帳」に当てはまり、1級〜3級まであるなかの2級。1級から順番に重度の障害と見なされ、国から降りる金額や待遇、保護などが異なりました。今までの入院や通院の様子、飲んだ薬などの診断書から判断されたのですが、兄は一番重度ではないものの、社会の適応が難しく両親のサポートが必要。そして、部屋のなかでは身動きができるが、自己判断できる精神状態ではない。そんな状況からこの結果になりました。自分の子どもがついに「障害者」になった瞬間。この選択をするまでに、8年かかったのです。©wutwhanfoto/Gettyimages©ClarkandCompany/Gettyimages©BrianAJackson/Gettyimages©kaipong/Gettyimages
2018年04月10日“私の兄は、障害者”。見て見ぬ振りして、直視できない現実を避けるように生きてきた、妹目線の連載です。大量の薬に不信感を抱いた母は医師に相談すると、思いがけない辛い言葉が返ってきました。文・心音(ここね)【兄は障害者】vol. 10母は精神的な病気について勉強する日々自宅で療養していても、兄は一向に良くならず、費用はかかるけれど、定期的な検査入院を繰り返していました。嘔吐がどうしてもひどい薬についてお医者さんに相談したり、大量に飲む水の対策を考えたり。検査入院をすると、兄の行動を医師が観察することができるので、良い方法だと考えたからです。そして母は、病院や薬、医師だけに頼ることなく、精神的な病気に関して自ら調べるようになっていきました。同じような境遇にいる家族が出している書籍を読んだり、セミナーに参加したり。全く知識がないところから、心の病気がどのように作られるのか、自律神経とは何か、薬の飲み方は本当に正しいのか。気づけばいろいろな精神障害について詳しくなっていきました。頭が真っ白になった言葉しかし、改善が見られない兄を心配して、診察の時に「どのくらい薬を飲み続けたら治るのでしょうか?」と母が聞いたところ、返ってきた医師の答えは「精神的な病気はなぜこうなるのか、今の医学でははっきりわからない」という言葉。母は、その回答に頭が真っ白になったと言います。なぜならその言葉の裏返しは、「治る見込みは今のところない」という意味だからです。あの大量の薬を飲み続けても、どれだけ入院しても、どれだけ勉強しても。いつ、どのタイミングで、どうしたら治るのか? まったく予想ができない人生がこれから始まろうとしている。そんな、ゴールのないマラソンがスタートしたのです。費用を考えると入院は高額だった定期的に検査入院をしていた兄ですが、保険が効くとはいえ、10日の入院で15万の費用がかかりました。食事や検査、薬などを全て診てもらえる代わりに、出費はどんどんかさみます。しかし、母は兄が高校をやめてから付きっきりでお世話をしていたので、仕事もできない状態です。復帰しても良いけれど、突然またどこで何をするかわからない兄をひとりにすることはできません。おまけに、「今の医学では原因がわからない」と言われてしまっては、右も左も選択の余地がなかったのです。そうしているうちにもお金はどんどん出ていきます。そこで入院から通院に変更し、定期的な検診と薬の処方をしてもらい、自宅で面倒をみるように切り替えていきました。精神科に通いだして、はや4年“神頼み” のように駆け込んだ精神科で、恐る恐る飲み始めた大量の薬の効き目は、4年めに入っても改善の方向性が見えませんでした。できるようになったことと言えば、「薬を決まった時間に飲むこと」だけ。アラームとカレンダーが増えて、薬の飲み方が上手になった。たった、それだけでした。体は健康だけど、心は病気。どうしようもならない兄に対して、両親はいつも怒るか泣くかのどちらかでした。夜な夜な「こんなふうになるはずじゃなかったのに」「どこで子育てを間違えてしまったのだろうか」と、互いに自分を責めあう両親の声は、私にとって痛み以外の何ものでもありませんでした。「別に、パパとママは悪くないよ」と言いたかったけれど、ただ遠くで聞いているだけだった当時の記憶。そこから両親は、ある決断に出ますーー。©demaerre/Gettyimages©atbaei/Gettyimages©elenaleonova/Gettyimages©KatarzynaBialasiewicz/Gettyimages
2018年04月05日“私の兄は、障害者”。見て見ぬ振りして、直視できない現実を避けるように生きてきた、妹目線の連載です。検査入院の結果から、「統合失調症」と診断された兄は大量の薬を服用するようになりました。文・心音(ここね)【兄は障害者】vol. 9飲み始めた “大量の薬”病院で渡された大きな袋と紙の束は、大量の薬と、それぞれの薬に対しての作用と副作用が書かれたものでした。怒りを抑える薬や夜眠りにつくための薬、意欲を出す薬など……。こんなに大量の薬を飲んだこともなければ、いつまで継続するかもわかりません。「とりあえず、様子を見ましょう」という医師の言葉だけが頼りだった両親は、毎食、どのタイミングで飲むのか、指示書を丁寧に読み始めます。飲み忘れがないようにタイマーをかけたり、カレンダーに印をつけるなど、今までしたことがない習慣を作ることからスタート。毎日大量の薬を飲むことは、飲ませる両親も飲み込む兄も大変なことでした。兄は、自分から薬を管理して飲めるような精神状態ではありませんし、ましてや「なんでこんな薬飲まないといけないの?」と時折薬を嫌がることもありました。その気持ちは、家族全員同じ。誰もこんな大量の薬、兄に飲ませたくはなかったですし、これを飲んで良くなる保証はどこにもありません。薬で感情をコントロールする意味私は、自分自身で喜怒哀楽を持つことがもっとも素敵で、健康的だと思っています。そのことを実感するようになったのは、兄がこの大量の薬を飲むことを、目の当たりにするようになってからでした。3年間引きこもりで次第に人とのコミュニケーションが難しくなっていった兄ですが、それでもまだ “自分の意思” で行動したり発言したりすることが微かにあったと記憶しています。大量の薬を飲むことで、“自分の意思” ではない感情になっていった兄の姿は、周りから見ても明らかでした。突然ハイテンションになり笑い出したり大声を上げたりしたら「お兄ちゃん、お薬の時間だよ」と母は丁寧に袋分けした薬を取り出し、兄に飲ませる。そうすると、次第にテンションが下がりじっと椅子に座ることができるようになります。また、急に悲観的な気分になったのか部屋から出なくなった兄を見て、母は「今度はこっちの薬を飲もうね」とお水と薬を差し出します。そうすると、集中力が少し出てテレビを見始めたり顔を洗ったりする “行動” に出ます。これらはすべて、薬が兄の感情をコントロールしているのです。そう、まるでロボットか操り人間のように……。“作用” が強ければ “副作用” も強かったもちろん薬を飲んだおかげで、兄の不規則な生活スタイルは改善し、感情の起伏を制御することはできました。しかし、メリットだけではありません。作用があれば副作用もあるといいますが、まさにその通り。大量の薬を日々飲むことは、いろいろな副作用が伴ったのです。筋肉質でスポーツマンだった兄は、体脂肪も少なく55〜60キロ前後の締まった体でしたが、薬の副作用で25キロも増加。そして、喉が異常に乾くようになり、炭酸ソーダやジュースをがぶ飲みしてしまう癖ができ、トイレの回数も異常に増えました。トイレでしてくれたらまだしも、寝ている間にそのまま自分の布団で……ということも日常茶飯事。成人を迎えようとしている兄が、どんどん幼くなるばかりで何度布団を買い換えたかわかりません。また、薬との相性がどうしても悪い時には嘔吐がひどく、食べては吐いて、食べては吐いて。でも喉が乾くからたくさん水分補給はするけれど、また吐いてしまう。そんな、見るに耐えない状況だったのです。しかし、痩せ細るわけではなく薬の副作用で、どんどん太っていきます。この不思議な現象に薬の怖さを知りました。薬が病気を悪化させている?疑いたくはないけれど、この “大量の薬” がさらに兄の体を痛めつけているのではないか? と感じるほど、薬のパワーは強く現れていました。そのことから母は、1日23錠の薬を自己判断で減らし、医師に内緒で少しずつ調節するようになっていきました。「とりあえず、様子を見ましょう」という言葉通りに飲んでいたら、兄はこのままどうなってしまうかわからない。不安にかられた母が悩んだ末にとった選択でしたーー。©stock_colors/Gettyimages©SvetaZi/Gettyimages©SasinParaksa/Gettyimages©bernie_photo/Gettyimages
2018年04月01日文・心音(ここね)【兄は障害者】vol. 8気づけば3年間も引きこもりだった母が仕事をやめて、兄をいろいろなところに連れて行くようになってから、3年が経とうとしていました。外出といっても頻繁にあるわけではなく、兄はほとんどの時間を自室に閉じこもって過ごしていました。高校退学後、数か月の間は友人が家に来ては「僕にできることはありませんか?」「大丈夫ですか?」と声をかけてくれていましたが、「ごめんなさいね、あまり人に会いたがらないんですよ」と、母が友人たちに言うごとに、ひとり、またひとりと心配する声も少なくなっていきました。3年間も家のなかで過ごしていた兄は、こうして人間関係と社会から孤立していきました。理解不能な “兄の世界”「気分転換」「思い出づくり」と懸命にしていた、兄を外に連れ出す母の行動は、道行く人からの冷たい視線を受けて恥ずかしい思いをするだけでした。また “あの頃の人気者だったお兄ちゃんに戻るよね” という願いは届かず、次第に兄は大声を出したり、突然笑い出したりするようになり……。しまいには、「ねえ、今日ご飯食べたっけ?」と自分がとった食事のことも、忘れていくようになりました。少し前までは会話が噛み合っていたはずの兄は、まともなコミュニケーションすらできない状態になりました。両親と私は「はいはい、また言ってる」と受け流すように変化していきます。そろそろ20歳を迎えようとしているのに、精神年齢は5歳以下の幼児。兄にいったい何が起きているのか? 時間が過ぎるほど、不安が募っていきました。近所の精神科へ見かねた両親は、危機感を感じてついに病院に行くことを決意。近所にある精神科を調べはじめました。健常者で生まれてきて、運動神経も良い人気者だった子どもを、まさか精神科に連れて行く日が来るとは……。怪我をしているわけでもないし、何か体に不自由があるわけでもない。兄には、どこも悪いところなんてないはずです。病院で診てもらったら、きっと何か新しい発見があるかもしれない。「大丈夫ですよ、異常はありません」という言葉を聞けたら、安心する。そう願って、人生で初めて精神科を訪ね、様子を見るために検査入院をすることになりました。検査入院の結果は……。退院後に診察室に呼ばれて、医師から告げられた診断は「統合失調症」の可能性。症状は独語、突笑、幻聴、精神状態不安定などがみられるとのことで、そのような病名が浮上しました。診察を終えて渡されたのは、指示書とともに、大量のカプセルに錠剤、粉末……なんと1日23錠も飲むのです。診断結果と大量の薬を前にして、両親も私も放心状態でしたーー。(C)taniche/Gettyimages(C)Imgorthand/Gettyimages(C)LightFieldStudios/Gettyimages(C)psphotograph/Gettyimages
2018年03月27日障害のある方の「働く」を応援する、LITALICO仕事ナビがオープン!Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)働くことに障害のある方と、就労支援事業所(就労移行支援事業所・就労継続支援A型事業所・就労継続支援B型事業所)を繋ぐ情報サイト、「LITALICO仕事ナビ」が、2018年3月26日にサービスを開始しました。LITALICO仕事ナビでは、全国の就労支援事業所の情報を分かりやすく掲載するほか、障害のある方が受けられる支援の利用方法や就職に向けた実践的なノウハウを紹介する専門家監修記事や、就職者インタビュー・企業インタビューといったコンテンツを幅広く発信していきます。障害のある方一人ひとりが、自分のニーズに合った事業所を選ぶことができる情報プラットフォームをつくることで、誰もが自分らしく働くことのできる社会の実現を目指します。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)障害がある方の「働く」を取り巻く社会の課題は?LITALICO仕事ナビ、サービス開始の背景そもそも、障害のある方の「働く」を取り巻く状況はどのような状況なのでしょうか。また、就労移行支援をはじめとした、障害のある方の「働く」を支援する事業所の運営状況は、現在どのような課題があるのでしょうか。この記事では、「LITALICO仕事ナビ」のサービス開始の背景となる社会課題や、運営スタッフの思いをご紹介します。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)運営スタッフ プロフィール:鈴木悠平(写真左)2014年に新卒として株式会社LITALICOに入社。LITALICOジュニアの指導員として、発達が気になるお子さんや保護者の方々の学習・生活支援を経験したのち、LITALICO研究所の立ち上げ・事務局長を担当。現在は国内最大級の発達障害ポータルサイト「LITALICO発達ナビ」編集長としてコンテンツ制作を統括するほか、LITALICO仕事ナビ創刊編集長としてコンテンツの企画・制作を推進。昆野祐太(写真中央)2012年に新卒として株式会社LITALICOに入社。「LIALICOワークス」支援員として、障害のある方一人ひとりの就労・定着の支援を経験したのち、延べ4センターでのセンター長・新規開設を担当する。現在は、LITALICO仕事ナビの地域連携担当として、全国各地の就労支援事業所を訪問。勝俣友紀子(写真右)2016年に新卒として株式会社LITALICOに入社。子育てメディアConobie(コノビー)の企画営業職を経て、2017年よりLITALICOワークスの新規センター開設チームへ。主にご利用検討者さまの初回相談面談(年間300名ほど)と地域連携(関係機関訪問、セミナー講師)等を担当。障害のある方の就職者数は年々増えており、昨年は47万人以上が民間企業に雇用され、13年連続で過去最高を更新しています※1。また、今年は4月に障害者雇用促進法が改正され、企業の障害者法定雇用率が現行の2.0%から2.2%に引き上げられるなど、障害のある方の雇用に対する企業の関心も、年を追うごとに高まっていると言えるでしょう。株式会社LITALICOは、就職を目指す障害のある方のための就労移行支援事業所「LITALICOワークス」を全国で運営しており、これまでに5,000名以上が企業への就職を果たしています。こうした障害のある方の「働きたい」を支援するのが、障害者総合支援法に定められた就労系障害福祉サービス(就労移行支援事業・就労継続支援A型事業・就労継続支援B型事業)です。これらの事業所は2016年10月時点で全国に17,000近くあり、3年前と比べて約 1.4 倍に増加しています※1。ところが、障害のある方の就労・雇用への関心の高まりや、障害のある方を支援する事業所数の増大にもかかわらず、実際に就職を目指す障害のある当事者にとっては、必要な情報が十分に届いていない、自分にあった支援にたどり着くことが難しい、という課題が残っています。※1 厚生労働省「平成28年 障害者雇用状況の集計結果」よりUpload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)LITALICO仕事ナビが昨年12月に就労支援事業所を探したことのある方(877 名)を対象に実施した調査では、就労支援事業所を探すにあたり困ったこととして、8割以上(81.4%)の方が、「自分にふさわしい事業所の探し方がわからなかった」の項目に「(非常によく/まあ)あてはまる」と回答しました。※2また、就労支援事業所をどのように探したかという問いに対して、「パソコン(PC)で検索した」の項目に 「(非常によく/まあ)あてはまる」と回答した方が最も多く、6割以上(64.5%)に上っています。※2しかし、就労支援事業所としては、インターネットでの情報発信には費用や手間がかかることや、現利用者への支援で手一杯になってしまうなど、新しい利用者を集めるための活動が難しい状況にある場合も少なくないようです。厚生労働省の調査によると、就労移行支援事業所の7割弱は定員に達していないというデータもあります。※3就労支援事業所は、それぞれが特色のあるサービスを提供しているものの、利用を希望する方にとって、どの事業所が自分に合った事業所かを探す手段に乏しいのが現状と言えるでしょう。※2 LITALICOプレスルーム掲載、LITALICO仕事ナビ実施の調査より※3 厚生労働省 「平成 28 年 社会福祉施設等調査の概況」よりプレスルーム: 働くことに障害のある方と就労支援事業所をマッチングする情報サイト「LITALICO仕事ナビ」を2018年3月開始Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)昆野「私はこれまで、LITALICOワークスの複数のセンターで就労支援に携わるなかで、さまざまな特色ある魅力的な事業所さんと繋がってきました。障害のある方の就労に向けたニーズや、必要とする情報や支援の性質は一人ひとり異なります。LITALICOワークスに限らず、お住まいの地域にあるさまざまな就労支援事業所を比較検討し、ご自分に合った支援に繋がってほしいという思いがありました。ですが、障害のある方も、そもそもどうやって就労支援事業所を探して良いのかわからなかったり、事業所の運営者さんたちも、日々の支援と、地域への情報発信をなかなか両立することが難しいという課題もあるようです。今回、LITALICO仕事ナビのオープンに先立ち、さまざまな事業所さんと意見交換をさせていただいていますが、インターネットでわかりやすく、多くの当事者に情報を届けていくことの重要性は、多くの方が実感しておられました。LITALICO仕事ナビを通して、多くの事業所さんに、事業所の特色や、支援に対する想い、プログラムの内容などを発信していただきたいと思っています。」Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)勝俣「LITALICOワークスの新規拠点開設担当として、各地で障害のある方向けの就職相談会を行うなかで、忘れられない一言があります。精神障害のある当事者の方に、就労移行支援サービスについてご説明した際、「あと1年早く、こんな支援制度があることを知りたかった。そうすれば私の人生はもっと変わっていただろうに…」と言われたんです。その方は、精神障害によって以前の仕事を辞め、病院での治療を受けたのちにご自身で就職活動を始められたそうです。しかし、ご自分の障害について企業にどう説明すれば良いか、ご自分の症状や体調に合わせて働けるにはどのような仕事・企業を選べばよいかといった、障害のある方の就職活動におけるノウハウを持たれないなか、なかなか内定を得ることができませんでした。一年間、就職活動を続けるなかで、貯金もだんだんと減っていき、また一緒に暮らすご家族の健康状態にも変化があり…と、再就職に向けた"溜め"がなくなっていくなかで、就職に対して希望が持てない状態に陥ってしまっていたのです。障害のある方が就労に至る方法はさまざまですが、ご自分の環境や願いにあった選択をするためにも、適切な「情報」を得ることや、就職活動に伴走する「支援者」に繋がることは、とても重要だと感じています。あの日お会いした方のように、情報や支援に繋がることが出来ず困っている方は全国にもっとたくさんいるのではないか…こうした状況をなんとかしたいという思いから、LITALICO仕事ナビの立ち上げに携わっています。」LITALICO仕事ナビのサービス概要「LITALICO仕事ナビ」は、働くことに障害のある方と、障害のある方の「働きたい」を支援する就労支援事業所双方の課題を解決するプラットフォームです。障害があり、仕事を探しているユーザーの方々は、LITALICO仕事ナビ上で多くの事業所情報を閲覧・比較することができ、現利用者の障害種別や施設運営のこだわりポイント、就職者実績などを調べることで、ご自分の状況に最適な就労支援事業所を選んでいただきやすくなります。また、障害のある人の「働きたい」を支援する、就労支援事業所の方々は、LITALICO仕事ナビ上で自身の事業所紹介ページを設けることができます。ページ運営や問い合わせ管理をLITALICO仕事ナビ上で一括して対応することが可能となり、事業所を探す新規利用者の方々への情報発信に必要な時間や費用を減らし、現在の利用者の方々への支援に一層注力できる環境を提供します。LITALICO仕事ナビのサービスを通して、障害のある方、就労支援事業所双方のお悩みを解決し、一人ひとりが自分らしく働ける社会の実現を目指します。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)撮影: Junichi Takahashi
2018年03月26日LD(学習障害)とは?LD(学習障害)は、全般的な知的発達に遅れは見られないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力の1つ以上の習得や使用に困難がある状態のことです。イラストや例でLDの全体像が分かる『LD 学習症(学習障害)の本』筑波大学教授で発達行動小児科学を専門とする宮本信也先生が監修している本です。裏表紙に ”きちんとした対応、サポートで、LDの子供たちの生きにくさは、ぐぐっと改善されるのです”とあるように、当事者だけでなく広くLDを知ってほしいという思いが込められています。内容は「LDとは」「ウチの子がLDだったら」「LD教育とは」という3章に分かれ、イラストと短い文で構成されています。第1章ではLDの特徴や具体例が挙げられています。鏡文字を書く、似た文字を判読することが苦手、数字の繰上りができないなど、子どもの行動と照らし合わせやすくなっています。また、その行動が引き起こすトラブルについても書かれているので、心当たりのある人もいるかもしれません。第2章ではLDのサインや相談先、接し方などが説明されています。LDは育児に問題があったのか、子供にLDについて聞かれたらどうすればいいかなど、さまざまなケースを想定して解説がされています。どのようにサポートしたらよいか悩む保護者に寄り添う内容です。第3章ではLD教育へと話は変わり、LDのある子どもを持つ親が不安に思う学校の体制などが分かります。特別支援学級など、聞いたことはあっても具体的なことは分からない……というサポートについて知ることができ、LDの子供の将来を考える希望となります。全体を通してフラットな語り口で、分かりやすく解説されています。1時間程度で読み終わるボリュームですが、一通りLDについて理解することができます。LDとの付き合い方が分かる『怠けてなんかない!ゼロシーズン』国際ディスレクシア協会会員で教育ジャーナリストでもある品川裕香さんの著書です。ディスレクシアとは「読み書きのLD」とも言われます。文字と音が結び付きにくく、読み書きに困難が生じるのが特徴です。この本ではディスレクシアの特徴やものの見え方感じ方、さらには苦手を緩和する訓練についても書かれています。前述の『LD学習症(学習障害)の本』よりも少し踏み込んだ内容です。日本語の音韻ルールや脳の情報処理システムなど、より専門的な解説が多いのが特徴です。言葉を聞く力が弱いなら音韻を意識して手を叩く遊び、見て覚えるのが苦手なら神経衰弱ゲームを取り入れるなど、子どもの苦手に合わせた数十の訓練も紹介。苦手、分からない、難しいで終わらず、それを緩和して生きやすくする方法がわかるため、安心につながります。子どもの苦手をサポートしたいのに何をすればいいのかわからない。苦手をイメージできずどう声をかけてよいかわからない。不安や焦りで感情的になってしまうときこそ読みたい一冊です。“どの子もみな、「できないこと、苦手なことが少しでもできるようになりたい」と願っています”ディスレクシアを個性だからと放置するのではなく、苦手を緩和し社会での不自由をなくしてあげたいと考える著者のメッセージに勇気づけられます。親の手記に共感『ぼく、字が書けないだけど、さぼってなんかいない』LDやディスレクシアの概要や特徴が分かる上記2冊と異なり、この本は親たちの手記を中心として編まれた本です。LDを含む読み書き困難を抱えた発達障害の子供たちの苦労、そしてそれを目の当たりにしている親たちのリアルな苦悩が伝わってきます。編集したのは窪島務先生をはじめとするNPO法人滋賀大キッズカレッジの手記編集委員会。ほかの先進国と比較すると、日本は読み書き障害のある子どもへの対応が遅れていると窪島先生は語ります。LDの子を持つ親が抱く思いや願いをまとめ、学校や行政の理解とサポートを訴える本です。本書の半分を占める親や本人の手記は、切実な思いであふれていました。子供の声を聞かない先生、こころない言葉を浴びせる周りの親たち、保護者とのかかわりを避ける学校…読むだけで心が張り裂けそうになります。でも、もちろんつらい話ばかりではありません。担任が代わったことがきっかけで学校へ行けるようになった子供もいますし、LDに理解を示す友達ができたことで学校生活が楽しくなった子供もいます。そしてキッズカレッジに救われた親たちも。「もしかしてLDかも」と思った段階で読むには少々苦しい内容かもしれません。LDをとりまく親子の現実に不安と戸惑いを覚えるかもしれません。ですが、そんな現実を知ることで漠然とした不安ではなく、子供とともに何をすべきなのかを考えることができます。本人や親の生の声は多くのことを教えてくれます。会ったことはなくとも、先輩として仲間として励ましてくれているように感じることができそうです。一通り知識を得た後に読むと心に響きます。LDを受け入れ、ともに生きていくことを考えるとき、味方になってくれる一冊です。まとめ「うちの子はLDかもしれない」と思ったときに手に取りたい3冊を紹介しました。どの本も専門的な内容ではあるものの、LDについての知識がなくても読みやすく、分かりやすい文章で書かれています。すらすらと頭に入ってくるので、読み終わったときには「子どもと話してみよう」「本に書いてあったアレをやってみよう」とポジティブになれるでしょう。いずれも、LDのある子どもとのつきあい方や、サポートのヒントが詰まった本です。
2018年03月25日“私の兄は、障害者”。見て見ぬ振りして、直視できない現実を避けるように生きてきた、妹目線の連載です。 兄のサポートに必死な両親を横目に、私は少しずつ家族と距離を置くようになっていきました。文・心音(ここね)【兄は障害者】vol. 7自分が悪いくせに、なぜそんなに……?前回のお話はこちらをどうぞ。今こうして振り返ってみると、将来がある兄のことを「なんとか更正させたかった」という親心がわかります。しかし、当時の私からすると、兄を一生懸命サポートする意味がまったくわかりませんでした。自分で人間関係を崩し、自分で学校で悪さをして、自分で崩壊させ、高校退学になった。「知り合いに会いたくない」と言い張り、自分の部屋から出ない。「そんなの、完全に自業自得でしょ?」と冷たく兄を見ていた私は、成長するにつれてさらにその想いは強くなっていくばかりでした。兄だけいろいろなところに連れて行ってもらって、好きなものも買ってもらえる。ちょっとワガママを言えば、両親は兄をそこに連れて行く。それをして何の得になるのか? 兄は調子に乗るだけじゃないの? と、なんだかバカらしいな〜なんて、子どもながらに思っていたことを記憶しています。家に帰らない日が続くようになった小学校から始めていた金管楽器。それは、私の心の支えでした。中学になっても私は吹奏楽部に入り同じ楽器を続けます。しかし、だんだん練習をサボり、帰宅も遅い時間に……。特に悪さをするわけではなかったけれど、単純に「荒れ果てた家」に帰りたくなかったのです。どうせ帰ったって、母は兄につきっきり。“自分の世界” に入る兄は、突然笑い出すし、いきなり話し出す。いっぽうで両親は、兄についてこれからどうしていくのか? という話題ばかりで、私のことなんてどうでもよさそうでした。気づけば、夜まで遊んでそのまま友人の家に泊まるというサイクルができていました。両親から夜電話がかかってきても、無視して干渉を避けていきます。そのほうが、気が楽だったから……。ある時、腕を掴まれて呼び止められるそれは、ある日のことでした。学校から帰宅する途中で、近所の人にいきなり腕を掴まれたことがありました。「ねえ、あそこのお家の娘さんだよね?」「最近、お兄さん昼間も家にいるけどなんでなの?」と。突然のことすぎてハッとしましたが、気づけば兄の行動は確かに “変” でした。普通なら、朝学校に行き、部活をして帰ってくるはずの年齢ですが、ずーっと家から出ないからです。そして、外出している姿を見かけても、母と一緒。昼間から公園に行ったり、ショッピングセンターで買い物をしたり。確かに周りからしたら、学校に行かずに遊んで暮らしているように見えたのでしょう。世間体を気にするのか? それとも…。その腕を掴まれた時、私はとっさに「え? 知りません。関係ないので」と言い放ちました。その頃から、私はくだらない “世間体” に嫌気がさしていました。わざわざ私を呼び止めてまで、人の家庭事情を詮索するなんて本当にいい迷惑だと思っていました。本人たちが一番パニックになっているのに、その様子がどのような状態なのか根掘り葉掘り聞こうとしてくるとは……。それをネタに今日も井戸端会議? 本当に、やめてほしい。また、兄の退学を知った近所の人たちのなかには、お世話を焼くつもりだったのか、ただの批判なのかわからないけれど、ヤジを飛ばしてくる人も。そんな不愉快な日々は日常茶飯事で、私はだんだん「家族とは関係ない」フリをし始めたのです。家族の話は、私にとってタブー。「兄弟いるっけ?」と聞かれても、「いないよ〜、ひとりっ子」と適当に言って、私は心をかたく閉ざしていました。もう誰も心の中に入ってくるな。しかも、私はこのあと、衝撃的な事実を知ることになるのです。(C)martin-dm/Gettyimages(C)finwal/Gettyimages(C)ColobusYeti/Gettyimages(C)max-kegfire/Gettyimages
2018年03月18日“私の兄は、障害者”。見て見ぬ振りして、直視できない現実を避けるように生きてきた、妹目線の連載です。 母はパートをやめて、兄につきっきりになっていきました。文・心音(ここね)【兄は障害者】vol. 6精神年齢は中学生のまま止まっていた一般常識や人間関係のルールを覚えるのに、効率が良い環境。それは「学校」です。当時、私が中学生だった頃はわかりませんでしたが、「学校」という小さな世界で揉まれることで、さまざまな学びがあることを大人になって深く感じています。多少、先輩後輩の煩わしさがあったり、部活が大変だったり、授業がつまらなかったりしても、「学校」にはとても大切な面があります。義務教育が終わっても、「学校」には行く意味があると、私は感じています。そのことを痛感したのは、兄が部屋から出なくなっていった頃からでした。同年代の友人たちは、月日と共に修学旅行やキャンプ、運動会、合唱祭など「学校」でしか味わうことができない集団生活を経験します。しかし、兄は自分の部屋から出ようとしませんでした。たまに外出しても、帽子を深く被り「知り合いには会いたくない」の一点張り。兄の人生は “中学生卒業” の思い出でストップしました。一般常識をこれから身につけていくであろう時期に、吸収する機会が極端に減ったのです。アルバイトをしてお金を稼ぐ同級生そして、高校生になれば「短期バイトOK」「高校生歓迎」の募集要項をみて、アルバイトをし始める同級生もいました。田舎だった地元では、高校生の時給は750円程度。それでも、1日5時間働けば、3750円になります。1万円稼ぐにも根気は入りますが、それでもアルバイトをしながらお小遣いを貯めて、休みの日に友だち同士で集まって花火大会に行ったり、彼女ができればデート代に回したりもできるでしょう。しかし、兄のアルバイト経験は、高校を退学させられる前に少しだけコンビニで働いていただけです。“数万円” を稼いだ経験が最後の兄は、そこから社会とかけ離れていくいっぽうでした。「お金がなくても、生きていることに意味がある」というのは、嘘だと思います。とても冷たい言い方かもしれませんが、キレイゴト抜きでお金がなければ何もできません。兄は働く場所もない。しかし、ご飯は通常の人間と同じように食べます。部屋から出なくなり、未来に何がやりたいかもわからない。そんな兄のお金はもちろん全て親まかせでした。母のサポートは「思い出づくり」だった私の両親は共働きでしたが、母は兄の引きこもりを心配して、ある日仕事をやめてきました。確かに働いていたほうがお金を稼ぐことができますが、母が仕事をやめた理由は「兄に思い出を作ってあげるため」だったのです。母に当時のことについて聞いてみたところ、「一般常識が作られる時期に、お兄ちゃんは家に引きこもっていたから、収入は減っても一緒に時間を過ごすことに注力した」と言います。動物園や映画、コンサートに行ったり、神社で兄が元気になるようにお参りしたり。季節の行事を楽しむために、ビニールシートを敷いてお花見をしたり、兄のために新しい洋服を買いに行ったり。兄が行きたいと興味を示した場所には、すべて連れて行ったと言います。しかし、兄は両親以外とは人間関係がまったくなかったため、「人と接すること」をどんどん忘れていきました。周りに気配りがまったくできず、大きな声で「あれが欲しいー!」と幼児のようにワガママを言ったり。ドタドタ歩いてズボンが下がってきても、兄は平気な様子でした。ヨダレが垂れて、独り言をブツブツ言い始める兄にとって自分を守る唯一の方法だったのかもしれませんが、「自分の世界」に入り込むようになっていったのです。まるで小さな幼児のように、ご飯を食べても全部口に入れずにボタボタと落としたり、洋服に平気でこぼしたり。ヨダレが垂れてもぼーっとしているだけで、母が拭いてあげる日々。気づけば独り言を言いながら笑い、誰と話しているかわからない。「お兄ちゃん、誰とお話してるの?」と母はいいながら、それでも思い出づくりをやめませんでした。あんなに「人気者だった兄」が、いつの間にか「見て見ぬ振りをされる人」に変わっていったのです。そんな兄と、さらに母は格闘します。ずっとあの人気者のお兄ちゃんに戻ると信じて。(C)maroke/Gettyimages(C)AzmanL/Gettyimages(C)fstop123/Gettyimages(C)sdominick/Gettyimages
2018年03月15日“私の兄は、障害者”。見て見ぬ振りして、直視できない現実を避けるように生きてきた、妹目線の連載です。 暴力的だった兄は、次第に家から出ない状態に変化していきました。文・心音(ここね)【兄は障害者】vol. 5高校退学後、兄は急に内向的になった大声をあげながら夜中に帰ってきたり、学校では “ヤンキー系” でヤンチャをしたりしていた兄。しかし、高校を退学させられた後は、だんだん世の中のギャップに気づきだしたのか、家から出ない日々が続きました。もちろん、中卒扱いで働く場所もない。外に出れば、好奇の的。だからといって、新しい予備校に行くという意欲もない……。母は「中学生までは、自慢の子供だった」と言います。運動神経が良く、足も速くていつもリレーの選手。ルックスもよくてオシャレが好きだった兄は、ファンクラブができるほど人気だったからです。それだけに、急に高校からいなくなった “人気者で目立つ兄” の噂は、瞬く間に広がっていきました。そして、自分の悪事に対して後から反省し始めたのか、兄は知り合いに合うたびに引け目に感じるようになっていきました。2階にある兄の部屋は、孤立していた両親は、兄の将来を考えて進路を応援する取り組みをしていましたが、兄は乗り気ではありませんでした。それどころか、部屋から出なくなっていったのです。基本的に部屋のドアを開けるのは、トイレのみ。歯磨きもしない、顔も洗わない、お風呂も入らない。ご飯を用意しても、リビングには来ない。同じ服を何日も着て、布団から出ないんです。「ねえ、お兄ちゃん、お風呂入ってスッキリしたらどう?」と母は、怒ることなく自分の部屋に何日も引きこもる兄に声をかけていました。「ご飯ができたから、リビングにおいで」と呼んでも出てこなければ、母は兄の部屋の前に、お味噌汁やご飯、焼き魚をトレーに乗せて「ドアの前に置いとくから、食べてね」とひと言。数時間経って、そーっと2階の階段を上ってトレーのご飯が減っていれば、片付ける。その繰り返しの日々が続きました。両親は無理に部屋から連れ出そうとはしませんでした。自分が撒いた “種” は、荒れ果てていた正直、兄に関して父より母のほうが献身的だった気がします。自分がお腹を痛めて “産んだ子” だからなのか、母はいつも兄の味方でした。見ていて苦しくなるくらい……。父は仕事から帰ってくると、たまに「疲れて帰って来ても、家の中では休まらんわ」と愚痴をこぼすこともチラホラありました。「知り合いに会いたくない」と兄がいっても、「お前が撒いた “種” だろ?」と冷たく言い返すこともありました。まさに、私は父が言った通りだと思います。“撒かない種に、芽は出ない” とよくいいますが、自分が撒いた後の畑には、必ず何かしらの “芽” が出ます。兄の畑は、荒れ果てていました。まるで、水のない乾燥した状態を耕さずにそのまま放置し、雑草が生えてぐちゃぐちゃになった畑。それは、兄が撒いた “種” の結果だったのです。そんな状況をなんとか打破するべく動いたのは、やはり母でした。パートをやめ、次のステップに踏み出しますーー。(C)RyanKing999/Gettyimages(C)yigitdenizozdemir/Gettyimages(C)Xander_D/Gettyimages
2018年03月11日2017年11月25日から12月5日に、LITALICO発達ナビでは「女の子の発達障害に関するアンケート」を行いました。発達障害のある子どもの保護者677名、発達障害の当事者445名の声が寄せられました。ご協力いただいたユーザーの皆様、どうもありがとうございました。この記事では、「約700名の保護者が回答!女の子の発達障害、学校や友達との関係、身だしなみの悩みや解決策は?」とし、調査結果の一部を抜粋し、お伝えします。発達障害の当事者の声については、「約450名の当事者が回答!女の子の発達障害、勉強や仕事、恋愛、交友関係など悩みや解決策は?」でご紹介しています。<調査対象について>「LITALICO発達ナビ」会員へのメールから、アンケートフォームにて回答いただいた発達障害の子どもをもつ保護者:677名の回答を集計しました。(調査期間:2017年11月25日~12月5日)※設問によっては677名全員が回答していないもの、複数回答可のものがあります。※調査結果の構成割合は四捨五入をしているため、合計が100%にならない場合があります。女の子の発達障害とは?発達ナビに寄せられた、保護者約700人の声出典 : 「約700名の保護者が回答!女の子の発達障害、学校や友達との関係、身だしなみの悩みや解決策は?」では、学齢期を中心とした発達障害の女の子の保護者677名が回答。現状や不安に思っていること、悩み、解決策までが寄せられました。小学生を中心に、幼児から中高生までの女の子の保護者が回答Upload By 発達ナビ編集部発達障害があることに気づいた年齢やきっかけは?Upload By 発達ナビ編集部お子さんの発達障害があることに気づいた時期は、就学前が約60%、小学校低学年が約20%となっています。気づいたきっかけは、1歳半健診など健診時(21件)や、幼稚園・保育園の先生(10件)からなど、専門家や先生からの指摘という回答がありました。他に目立ったのは、「言葉の発達の遅れ」(47件)によるものです。「発語が遅い」「単語のみで会話にならない」など、言葉の発達について保護者が疑問・不安を持ち、医療機関を受診したり専門家へ相談したという回答が寄せられました。就学後のきっかけとしては、学校でのトラブルのほか、不登校(23件)などがあげられました。また、癇癪や多動、こだわりの強さ、友人関係のトラブル、てんかん発作などがきっかけという声もありました。約40%が二次障害を発症しているUpload By 発達ナビ編集部発達障害特性を原因とした二次障害を発症している割合は約40%でした。二次障害で多くあげられたのが「不登校」(111件)です。続いて「うつ」(35件)、「不安障害」(17件)、「自傷」(13件)という回答でした。不登校とうつ、不登校と自傷など、複数の二次障害があるお子さんも多いようです。他に「反抗挑戦性障害」「ゲーム依存」「睡眠障害」「緘黙」などを発症した例もありました。また、特性である聴覚過敏などがひどくなった、ストレスでじんましんになった、クラスで孤立したという声も寄せられました。歳でアスペルガーと診断。二次障害で苦しむ娘を想い考えること90%以上の子どもが、不安や困難を感じているUpload By 発達ナビ編集部保護者から見て、日常生活に不安や困難を感じていると感じられたお子さんは、回答したご家庭90%以上に上りました。では、どのような場面で困難を感じているのでしょうか?Upload By 発達ナビ編集部保護者からみて、園・学校生活(76%)で不安や困難があると感じられることが一番多く、友人関係(72%)、学習面(53%)と続きます。具体的にどのような不安・困難を感じているのでしょうか?次に、具体的な回答内容を紹介していきます。女の子の発達障害、保護者から見た不安や困難の具体的な内容とは?出典 : 園・学校生活では、下記のような困難やトラブルがあるようです。■一斉指示に従えない■切り替えがうまくできない■トラブルがあっても大人に伝えられない■忘れ物が多いエピソードとしては、次のような例があげられています。「一斉指示が入りにくい」「高学年になると、先生も説明が簡単になり、理解出来ず泣いて固まる」「耳からの情報を捉えにくいため、先生からの指示を聞き逃して注意を受ける」など、一斉指示や口頭指示などが理解できない・気づかず、集団生活にうまくなじめない例。「給食、遊び、散歩など決まったスケジュールに沿った切り替えができない」という例。「何があったのか 誰が何を言ったのかを 明確に教えれないので発覚が遅れる」など、トラブルがあっても大人へうまく伝えることができない例。「ハンカチ、ティッシュの予備は登園するリュックの中にある事を知っているのに、(必要になった時に)どうしていいかわからず、スモックで拭いたり友達や先生に借りたりしている」など、忘れっぽいことや、場面に応じた対応が不得手なために困惑してしまう例。上記のような困難やトラブルから叱られることが増え、自己肯定感が下がってしまうお子さんもいるようです。中には、不登校や場面緘黙など二次障害を発症する場合もありました。「学校で声が出せない。後ろから誰か来ると動けなくなるためスイミングでも急に沈む。運動会で動けなくなる」「私立中学に通学していたが、コミュニケーションの取り方がうまくいかなかったり、誤解をされたりしたことで孤立ぎみになったため学校をやめて、本人が興味を示していた海外に留学させている。しかし現在、言葉の壁にぶち当たっている真っ只中で、閉鎖気味になってきた」不登校などの二次障害を発症する前に、対人関係や集団生活のフォローが必要になると考えられます。出典 : 友人関係では、女の子特有の交友関係でのトラブルについての回答が目立ちました。微妙なニュアンスが分からないためにガールズトークについていけず、ストレスを感じてパニックを起こしたり登校渋りにつながってしまうという声も。「ガールズトークについてけない、何となく浮いてるなど気になる部分がある。学校で頑張るせいか、家庭では未だにパニック起こしたり不注意が多い」「思春期では友人関係に苦しんでいました。女の子特有の集団発想など、気持ちがわからないためにしばしばトラブルに」いじめを受けてしまう場合もあるようです。「今まで話かけてくれていた子から、まったく話かけてもらえなかったり、声をかけるとみんな黙ってしまい、自分でどうしたらいいのか分からない為に辛い」「集団登校で、死んだらええのに、と言われたり、持ち物を捨てられる」反対に、中学校までは孤立していたものの、自分に合う学校を見つけられたことで転機となったお子さんもいました。「女の子が作りがちな派閥が嫌いで、中学までは孤立していた。通信制高校に入り、生徒会的な仕事をきちんとしていたら、派閥に入らなくても認められるようになってきた」出典 : 苦手教科がある、理解に時間がかかるという悩みを持つお子さんがいるようです。「算数が苦手」「文を読むのが苦手、+−=などの意味が全くわからなかった」「みんなと同じ宿題がこなせない」書字障害や注意欠如などが原因で、学習で必要な準備ができない場合もありました。「連絡帳が書けない」「忘れ物、連絡事項が記憶できない」感覚過敏が原因で、授業に集中できないお子さんもいました。「聴覚過敏があるため、授業中に隣のクラスの声も聞こえていたらしい」一方、「行けそうな時間割のところだけ行く。 教室には入れない。授業を受けていないので勉強が分からない」というように、不登校になったことで学習面で遅れてしまうケースもありました。出典 : 感覚過敏やこだわりによって、身だしなみに関わるトラブルが起こることもあるようです。「感覚過敏から特定の服ばかり着たがる」「服の色にこだわりがあり体操服が着られない」また、身だしなみをきちんとしていなくてはいけないという意識が低いお子さんも多いようです。「髪の毛がいつもボサボサ」「変な格好も平気で外に出る。上下がちぐはぐだったり、季節感がおかしかったり、年齢的に幼かったりする」「寒暖に合わせて服が選べない・ボタンの掛け違いや前後逆でも気づかず出かけてしまう」また、中にはこだわりすぎてしまうようになった例も。「中1までは、無頓着で、髪の毛ボサボサ・服もダサい。 中2からは、気にしすぎて、美容品や服にお金が掛かる」。衛生面で問題が出てしまう場合もあるようです。「洗髪しなくても気にならない」「時間に間に合わないので、毎日風呂やシャワーを浴びれない日がある。心身が落ちているときは何日も風呂に入らず不衛生」身体面で大きな影響が出ている場合があるようです。「本人が、体が疲労してても気がつかず、逆にテンションオーバーしてしまい、睡眠障害が出たり、こだわりが強いため、成長がどうしてもそこで止まってしまう」「起立性調整障害のため朝起き上がれず、眩暈・吐き気をもよおして登校・外出できない。PMS・生理痛がひどく月の半分は体調が悪い」出典 : 親子関係では、家庭内での暴言・暴力、嘘などについて悩んでいる保護者も多くいました。「母親への異常な反発」「かんしゃくから家庭内暴力になること」「自分の感情を抑える事ができない。パニックを起こす」「嘘をつく、兄弟をいじめる、お金を盗む」家庭内のトラブルから「普段の生活そのものを家族と共有することが大変」と感じてしまう保護者も多いようです。社会的な活動ができない状態について、どのように対応してよいか分からず困惑している様子もうかがえました。「人との距離感が近い。感覚過敏や体調不良、気が乗るときと全く動けないときの差が大きい」「友達が一人もいない、自己肯定、自尊心が低く、不安が強い。社会に出られない。働く勇気がない。何事も人のせいにする。いつもイライラしてる」その他、睡眠に関する困難について、多くの声が寄せられました。「ストレスから夢遊病、夜驚症」「不眠症、イライラ」「就寝前に家中の戸締りを確認しないと眠れない。死んだらどうしよう、といういう気持ちに襲われ不安で眠れない」睡眠のトラブルについても、本人はもちろん、一緒に暮らす家族への影響が大きく、悩む保護者が多いようです。女の子だからこそ心配なこと、悩むことはある?Upload By 発達ナビ編集部約80%の保護者が、お子さんの発達障害について、女の子ならではの悩みや心配を抱えています。寄せられた悩みの多くは、下記の4つに関連するものでした。■女の子特有の人間関係(41件)■第二次性徴による体の変化(14件)■異性関係・性のこと(47件)■将来のこと(14件)子どもの「生理」について悩む保護者が多いUpload By 発達ナビ編集部さらに、「思春期の心身の変化や生理などについて、不安や困っていることがある場合、どのようなことに困ったり、不安に思っていますか?」という質問を行ったところ、「異性関係・性被害」(15件)、ホルモンバランスの変化などの影響による「精神不安定」(10件)などがあげられましたが、一番多い回答は「生理」(44件)についてでした。特に、生理時に適切な処理ができない・できるのか不安という回答が多く寄せられました。「生理になったときの対応ができるかどうか(予期せぬ対応ができない為)」「自分で汚れ物の処理をちゃんとしてない。そこら辺にナプキン投げて恥じらいがない」「生理の始末が面倒で、たびたび衣服を汚すがまったく気にしていない」また、感覚過敏などの特性により、生理時に困難がある場合も。「感覚過敏があるので、下着がどれでも着られない。 生理用ショーツが履けない。ナプキンもつけていられない」「少しの傷で血を見ると大騒ぎなのに、生理の出血をどうとらえるか心配」また、生理前や生理中の気分の変調が大きいお子さんも多いようです。「生理中、生理前の気分の変調が激しく、仕事にいけない事がよくある」「生理の前は気分が沈むことが多く、悲観的になる」生理についての対応策については、後述する体験談も参考にしていただきたいと思います。女の子の発達障害不安や困難が少ない家庭は、どのような工夫をしているの?出典 : では、特に不安や困難を感じないで生活できている人は、どのような対策をとっているのでしょうか。下記の4つが、対策のポイントのようです。■事前に説明しておく(53件)■ツールを活用する(15件)■見守る・認める(23件)■第三者に頼る(4件)皆さんが行っている具体的な対策について、次に紹介していきます。出典 : 見通しが持てるように、事前に説明しているとスムーズだという意見が寄せられました。「何かをする前や出かける前は、説明したり事前に行く場所を見学する」「具体的になぜ気を付ける必要があるのか逐一説明している」「事前に『こんな時にはこう言おう』『相手の返事を聞いてから行動しよう』など伝えている」生理についても具体的な対策方法があげられました。「サラサーティなどで練習させている」「生理は、低学年の頃から母のトイレでのナプキンの付け方など見せて説明していた」「大きなナプキンにしたり、パンツ型のものを買っている」ナプキンの使い方を見せたり実際に使わせるなどして早いうちからロールプレイングする、処理が難しい場合はパンツ型のものを使うなどの例は、ぜひ取り入れてみたいものです。また、体の変化や異性関係などについては、下記のような声が寄せられました。隠すことなく、具体的に、分かりやすく伝える姿勢が大事なようです。「性教育の、かたくない本を複数わたしてある。興味がある分野なので、真剣に読んでいる」「知らない人と話さない。携帯電話を常に持っていることをアピールしながら歩く」「機会があるたび、性行為などについて教えている」具体的に話すほか、女の子の発達についての書籍も活用できそうです。参考:デビ・ブラウン著 『アスピーガールの心と体を守る性のルール 』(東洋館出版社)参考:やまがたてるえ著『15歳までの女の子に伝えたい自分の体と心の守り方』(かんき出版)出典 : また、混乱なく生活できるよう、ツールを活用している保護者もいます。視覚的に分かりやすいツールを取り入れている例としては、下記があげられました。「スケジュールはじめ、家庭内でホワイトボードなどを利用し視覚化。模擬時計、キッチンタイマーを利用」「時間割り、時系列がわかりやすいように色分け」自分の気持ちを伝える場合にもツール活用できます。「困った時に『困っています』とカードを見せられるようにしている」忘れ物が多い場合などは、必要なものを一カ所にまとめておくという工夫をしている家庭もありました。「お手伝いや、色んな出来たことに対してポイント制にしてモチベーションをあげてます。また、忘れ物が多かったり面倒くさがりな所があるので学校に必要なものは全て玄関に置いてあるボックスにて完結できるようにしている」子どもにあったツールを活用することで、スムーズに生活ができるようになりそうです。子どもが「初めて」に挑戦するときに最適!絵カードの使い方とは出典 : また、子どもの立場に立つことや、自主性を尊重することで、家庭生活がスムーズになったという声も寄せられました。「子どもの目線になり、親の独り善がりにならないように寄り添い傾聴した」「唯一の楽しみがスマホでアニメを見ること。その時間を作り出すためにお風呂の時間が短くなった。髪や身体を洗う順番や工夫があるみたいです」また、子どもを追い詰めないような接し方を心がけることで、二次障害を防ぐことも大切です。「緊張が高まりやすいことに対しては無理せずできなくてもいいんだよと話すようにしている。 苦手なことはなるべく先に慣れるように家でやってみたりしている(なわとびの練習やお当番さんの練習など)」「出来ない事を、出来るだけ怒らないようつとめている」出典 : 第三者の力を上手に借りている保護者の声も寄せられました。「困った時は、通級の先生や臨床心理士の先生のアドバイスなどを受け、子どもに適切に伝えていくようにしている」「生理の処理方法などは、母親の私が言っても全然耳に入らないので、学校の先生(女性)やデイサービスの指導員(女性)のかたにお任せしてたいぶ改善した」家庭の中だけで駆け込むのではなく、保護者が積極的に第三者にアドバイスをもらう姿勢が大切です。また、思春期は保護者の言うことは聞かないことも多いため、先生などの力を借りて対応したほうがうまくいく場合もあるようです。スクールカウンセラーに関するコラムを総まとめ!役割や相談の様子などをご紹介します85%は相談相手がいるUpload By 発達ナビ編集部約85%の保護者には、相談相手がいるという回答でした。具体的な相談先としては、次のような結果となりました。療育機関の先生(26件)カウンセラー(26件)医療機関・医師(22件)友人(18件)園・学校の先生(8件)夫(7件)通っている療育機関や、学校や行政などのカウンセラー、医療機関というように、専門家へ相談している人が多いようです。ただ、多くの保護者はさまざまな悩みを抱えている現状が見えてきました。不安や困難がある場合は、積極的に専門機関などを活用し、解決策を見つける必要がありそうです。今回の調査結果から今回の調査結果から、女の子ならではの不安や困難を感じているものの、具体的な解決策が見つけられず悩んでいる保護者や、発達障害を原因とした二次障害に苦しむお子さんがいることが分かりました。そこで、LITALICO発達ナビでは1月~2月にかけて「女の子の発達障害」特集を組み、コラム記事を掲載していきます。家族だけで抱え込まず、専門機関などに相談するなど第三者を上手に活用したり、書籍やコラム記事で紹介する内容を取り入れて、少しずつでも生きやすくなる工夫を試していっていただきたいと思います。
2018年01月19日発達障害の子育てママの座談会で、よく話題にのぼるものの一つに、夫の無理解や無協力があります。「無」とまではいかなくても、子どもの障害をなかなか認めようとしなかったり、療育や児童精神科などに行くことに乗り気ではなかったり、というお父さんがどこにも一定数はいるようです。そんな時、知ったのが一般社団法人「発達障害ファミリーサポートMarble(マーブル)」。発達障害児とその家族を支えるため、発達障害の正しい理解のための講演活動や、発達障害児を持つ家族のための相談支援活動などを行っている団体です。代表理事の国沢真弓さんは自身も、高校生になる自閉症児の母であるため、「当事者家族」の視点からのお話にはとても説得力があり、温かみのある方です。また、本業がアナウンサーであるため、周囲への「伝え方」のアドバイスは、なるほど! と深く納得できるものです。そんな国沢さんに、発達障害の子育てに協力的ではないお父さんや、育児に口出ししてくる祖父母への対策法をうかがいました。■発達障害はグレー診断な子ほど夫の理解が得られにくい――発達障害の子育てにおいて、ママの間でよく「夫が子どもの障害を認めてくれない」とか「夫が育児に協力的じゃない」という愚痴を聞くのですが、国沢さんの周囲でもこういった相談は多いですか?「今まで、保護者の相談を約500名ほど受けてきましたが、そのうち半数以上が、知的に遅れのない発達障害児(通常の学級に在籍して通級や校内特別支援教室などを利用しているようなお子さん)のお母さんからの相談です。その中で、夫の無理解や無協力という相談はとても多いですよ」――発達障害はグレー診断なほど、夫の理解が得られにくいというわけですね。「子どもとの会話が成り立たなかったり、説明しても理解できなかったりすれば、お父さんも『うちの子、何かある?』と思わざるを得ませんよね。でも、例えば、週末に家族の中だけで接していて、会話もほぼ成り立っている程度だと、たとえ外で問題行動があったとしてもお父さんにはなかなか、わかりません。『これくらい、男の子だったら当たり前じゃん?』とか『俺も昔そうだったよ』『個性だよ』という一言ですまされたり、ひどい時には『お前は、なんでそんなに障害児にしたがるんだよ!』なんてお母さんが怒られてしまうこともあるそうです」――障害と個性の線引きは、専門家でも判断が難しいと言われていますものね。では、知的に遅れがない発達障害のケースでは、ほとんどのお父さんは、わが子は問題ないと思っているのでしょうか?「いえ。私は、お父さんも本当は薄々わかっていると思いますよ。『なんでこんなに育てにくいんだろう?』とか『なんでこんなに癇癪がひどいんだろう?』という違和感は持っていると思います」――そうすると、わかっているのに認めたくないということ?「私がいろいろ相談を受けてきて思うに、男の人はとてもナイーブなんです。その点、女の人はとてもたくましいですね。もちろんお母さんだって、わが子の障害が判明した時はショックを受けて泣いたり悲観したりはします。でも、いろいろなところに相談して発散したり、専門家に助けを求めたりして、お母さんはさまざまなことを学びます。そうやって子どものことを苦しみながらも少しずつ受容し、子どもへの接し方もどんどん上手になり、プクプク…と浮上していくことが多いのです。一方、お父さんは、お勤めの関係などで、子どもと一緒に過ごす時間が物理的にとれないケースが多いため、専門家やドクターと接する時間もなかなかとれないまま、子どもに障害があるということを認める機会を逃してしまいがちなんです」■子どもが大きくなった時こそ父親の出番――お母さんはどんどん学んでいく一方で、お父さんは置いてきぼりになりがちなのですね。「夫婦で子どもに対する意識もスキルもどんどん離れていき、お父さんは家族の中で孤立してしまう…といった悩みを、お父さん自身から聞くことも多いんですよ。さらに、追い打ちをかけるように、一緒に過ごす時間が多いきょうだい児も、お母さんと一緒にどんどん学んでいくから、気がついたらお父さんだけがポツ~ン…って。でも、お父さんには、『お父さんにも教えて』と素直に言えないプライドがあるんですよね(苦笑)」――そうなると、お母さんは「じゃあ、もういいわよ! 私が全部やるから!」となるか、「この人にはもう期待しない」とコミュニケーションをあきらめちゃいそうですね…。「ただでさえ、お母さんは子どものことでいっぱいいっぱいなのに、夫にまで配慮していられない! という気持ち、よくわかります。でも、子どもが大きくなった時のためにも、ここはなんとかお父さんを積極的に子育てに巻き込む機会を早期にどんどん作った方がいいと思います」――子どもが大きくなった時のため、というのは?「発達障害というのは、男の子の割合が非常に多いのです。男の子の場合でも、小学校低学年くらいまでなら、お母さんの力でも主導権をにぎることができます。そのため、この時期ならば、お母さんのペースで日々の暮らしを仕切っていくことも、なんとかできるのです(まぁ、子どものタイプにもよりますが…)。でも、高学年くらいになると、お母さんが主導で物事をやっていくには限界があります。だって、男の子のトイレやお風呂に、高学年になっても一緒について行くわけにはいかないでしょう? その他、進路の問題や、思春期特有の難しい問題も出てきます。そうした時に、お父さんの出番となるのです。でも、急にその年齢になって『お父さん! お願いします!』と言っても無理なので、早い段階からどんどん子育てに巻き込んだ方が後々のために良いと思うのです」――なるほど。確かに健常児だって、男の子の思春期対応法は、お母さんには難しいですものね。では、夫を積極的に育児に参加させるには、具体的にはどうしたらいいのでしょうか?「大事な局面には必ず連れて行って、夫を頼る姿勢をみせてみてはどうでしょうか? 例えば、小児科や療育の面談など、ここぞ! という時は絶対に同席してもらうようにして、『あなたがいないと場がしまらない』とか『あなたがいないとちょっと心細い』とか頼ることで、男の人のやる気を引き出したり」――お母さんがお父さんのやる気をうまく引き出すということですね。「大事な局面に夫婦2人で参加した方がいいのには、別の理由もあります。例えば、一人でドクターへ面談に行った場合、聞くこと、答えること、話を受け止めること、書き留めること、即座に判断すること、これ、全部お母さん一人がやらなければならなくなります。専門家の時間は限られているので、いろいろ言われてワーッと終わっちゃうと、家に帰ってきた時に『あれが言えなかった』『これが聞けなかった』と不完全燃焼で終わり、悶々としちゃうことも多いのですよね。その点、2人いれば、お父さんが質問している間に大事なポイントを書き留めたり整理したりできるし、状況を客観的に見ることもできます。もちろん、直接先生と会って話すことで当事者意識が育つので、お父さんのためにもなると思います。そういう状況を作るのが、難しいご家庭もあると思いますが。可能なら…ということです」 ■疲れたり迷ったりしたら…心強いペアレント・メンターの存在――非協力的なお父さんを育児に巻き込むには、お父さんをわが子が集団にいるシーン(例えば、園や学校の普段の様子やイベントなど)に積極的に連れていくのが良いと聞いたことがありますが、どう思われますか?「お父さんは、集団の中にいるわが子の姿を見る機会が少ない方も多いので、理解をうながすには良い方法だと思いますよ。ただ一つ落とし穴があって、男の人って実はナイーブなので、集団の中で、わが子とほかの子どもとの違いを目の当たりにして、ガーンとショックを受けて落ち込んじゃうケースもあるんですよ。で、その後、お母さんがいくら誘っても、園や学校に行くのを避けるようになってしまった、そんな相談を受けたことも、たくさんあります」――すでにさまざまなことを乗り越えてきたお母さんとしては、「傷ついてる場合じゃないでしょう~!」と思ってしまいそうですが…。「お気持ち、よくわかりますよ(笑)。でも、男の人はそういう生き物と割り切って、『パパもショックだったよね。私も初めて見た時はショックだったんだよ』と寄り添いつつ、『うちの子みたいな子が落ち着けるように、こんな療育があるみたいだよ。一緒に見学行ってみない?』という感じに、だんだん専門領域の世界に引き込んでみてはどうでしょう?お母さん、大変ですね!(笑) たとえば、理論で入る男の人には、専門書をさりげなく渡してみるのもいいかもしれません。そういう方法で、実際に夫が協力的になったというご夫婦もいましたよ。――なるほど。専門書から理解を促すのは良い方法かもしれませんね。「お母さんは本当に大変だと思います。でも、これは大きくなった時に返ってくる「保険」だと思ってあきらめないで、早い段階から協力的な夫になってもらえるよう働きかけてほしいです。ここでガツンと切っちゃうと、夫婦関係が険悪になってしまったり、離婚という選択にもなりかねません。そういった例も、たくさん見てきました。逆に言うと、お父さん役も担っているシングルのお母さんは、大変な負担のなか、とても頑張っているんです。本当に、身体が心配です」――発達障害の子育てにおける、お母さんの負担はとても大きなものなのですね…。「そうですね。でも、しんどい時は、どんどん専門家に頼りましょう。もちろんママ友や先輩ママに頼るのも良いけれど、私は専門的な訓練を受けたペアレント・メンターをおすすめします」――ペアレント・メンターって何ですか? 「ペアレント・メンターとは、自分自身も発達障害の子育てを経験し、さらに相談支援に関する一定のトレーニングを受けた親のことです。私も資格を持っているんですよ。2010年から、厚生労働省もメンターの養成に力を入れています。発達障害の子育てに関する悩みや相談を抱えた親に対して、気持ちに寄り添い、その親にとって必要な情報(病院、療育、学校、福祉サービス、地域の情報など)を提供したりしています」――実際に発達障害の子育てをしている方だと、専門家とはまた違った安心感がありますね。「発達障害児の子育てでは、すべての情報が親に集中します。しかも、情報は多岐に渡ります。療育機関の専門家、医療機関のドクター、心理士、作業療法士、園や学校の先生、療育ママ友、家族、親せき、近所の人…いろいろな人から『ここが良いわよ』『これをしたら良くないわよ』という情報が、すごい勢いで入ってきます。そこから、親はわが子に必要なことを取捨選択するわけですが、そのプロセスは想像以上に大変です。ペアレント・メンターは親に寄り添い、一緒に情報を整理し、今後の道を一緒に考える役割を担うので、とても心強い存在になると思いますよ。同じ仲間として、先ほどお伝えしたような、お父さんへの上手な接し方などもアドバイスしてくれます。ストレスがたまったり、子育てに疲れてしまったら、こういった専門家に頼るのも手だと思います」■祖父母世代には、「専門家の意見では…」で対応――周囲には、義理両親(もしくは自分の両親)の子育てへの口出しに悩んでいるお母さんもいましたが、祖父母関係の相談は多いですか?「10年前くらいはとても多い相談でしたが、最近は少し減ってきたように思います。逆に、孫のことを理解しようと講習会に積極的に参加したり、自分も何とか役に立ちたいという祖父母の方も増えてきました。とはいえ、まだまだ『そんな子育てだから、子どもがワガママになるのよ』とか『もっと、こうしてみたら伸びるんじゃないの』とか、ひどい例では『うちの家系には、こんなことをする子はいない』といったことを言われてしまうことも残念ながらあります。そんな時は、大変つらいと思いますが、すべてキッチリ理解してもらおうと思わず、上手に受け流して、別のところでストレス解消をしましょうね。自分たちより長く生きて、自分のスタイルを確立している人たちの認識を変えることは、とても大変です。ただ、言われっぱなしも悔しいので『専門家に相談してすすめていますので見守ってください』などと、自分たちも自己流ではなく、ちゃんと考えて子育てしている、ということはアピールしておくといいかもしれません。で、ほかのところで毒を吐く(笑)。同じ思いをしている仲間は、意外にたくさんいますよ」――ちょっと極端な話ですが、お姑さんのちょっとした子どもへの体罰に悩んでいるお母さんもいました。良くないことをすると、手をつねって教えるという。「お嫁さんが『嫌だから止めてください』という言い方をすると角がたつから、専門家の名を借りてみてはいかがでしょう。たとえば、『専門家から、そういうことを続けるとほかの子に暴力をふるうようになるって聞いたんです』などと伝えてみるとか。もちろん、ただの『嘘』になってはいけないので、専門家にも、その件を相談してみる。『義理の母が、しつけと称して子どもの手をつねるんですけど、こういうことを続けていると、この子がほかの子をつねる可能性もありますよね?』と聞いて『可能性あるね』と言われたら、それを『お墨付きのアドバイス」』にする。専門家の意見と言えば説得力が増すので、さすがのお姑さんも自制するのではないでしょうか?『伝え方の工夫』、これは、発達障害児の子育てで、とても必要な力だと思います」――確かに、「専門家の意見では…」という言葉は効果ありそうですね。「私は、これを学校の先生対策にも利用していますよ。例えば、生徒を大きな声で叱る先生がいて、それが怖くて、指示されても全然動けなくなった子がいるとします。そんな時、『児童精神科の先生に相談してみたら、大きな声がすごく苦手みたいなので、席を後ろにしていただけませんか? もしくはイヤーマフをつけさせてもいいですか? このままだと学校に行けなくなって不登校になる可能性もあると言われたんです』というふうに。親が『大きな声で叱るのはやめてください』とだけ言うと、ただのクレームみたいに思われてしまうけど、専門家の指示であれば対応せざるを得ないでしょう。周囲を上手に説得したい時は、専門家の意見を上手に借りるのも一つの手だと思いますよ。『伝え方』を工夫をすれば、双方の関係は悪化せず、子どもの状況が改善される…そんなケースを、私はたくさん見てきました。こうして見てくると、お母さんには、たくさんの力が要求され、本当に大変ですが(涙)、一緒に励まし合って、乗り越えていきましょうね!国沢真弓さん プロフィールフリーアナウンサー、自閉症スペクトラム支援士、一般社団法人 「発達障がいファミリーサポートMarble」 代表理事<役職>ペアレント・メンター、三鷹市相談支援事業「ママサロン」相談員 、三鷹市知的障害者相談員、三鷹市発達障害児親の会「モンブランの会」会長、社会福祉法人「清陽会」評議員、児童発達支援施設「すこっぷ調布」アドバイザー、三鷹市教育支援推進委員会委員。<経歴>都立新宿高校、聖心女子大学文学部歴史社会学科を卒業。富士通株式会社を3年勤務後、アナウンサーに転向。NHKテレビ「きょうの料理」「婦人百科」の進行を約10年務めたほか、多数のテレビ・ラジオ番組に出演。海外特派員、番組企画構成も担当。ナレーション・司会は各500回以上務め、厚生労働省主催「世界自閉症啓発デイシンポジウム」の総合司会を毎春担当。「3歳までの子育ての裏ワザ」「こんな時どうする?子どもの友達・親同士」(PHP出版)など共著多数。<現在の活動>一般社団法人「発達障がいファミリーサポートMarble」代表理事として、「発達障害」や「伝える力UP」といったテーマでの講演を、全国で行っている。また、「ペアレントメンター」として保護者や支援者の相談に応じるほか、障害児の家族が気軽に参加できるイベントやお喋り会の開催等を行い、家族の元気を応援している。(詳しくはホームページをご覧ください)。取材・文/まちとこ出版社N
2018年01月14日筆者の息子が発達障害の疑いをかけられた時、ネットにかじりついて情報収集する中で、たどり着いたのがABAという療法でした。ABAとは、アメリカの心理学者スキナーが創始した学問体系のことで、日本語では「応用行動分析学」と呼ばれます。人の行動の原因を内部(心)ではなく、人を取り巻く環境に求める考え方で、自閉症など発達障害の子どもに非常に有効なアプローチ法とされています。最近では、このABAを取り入れた療育療法が非常に多くなっています。でも、専門書を読んである程度の考え方は理解したものの、「具体的にどう子どもに接したらいいのか?」はわからずに困っていました。そんな中、とても役立ったのが、shizuさんの著書「発達障害の子どもを伸ばす 魔法の言葉かけ」(講談社)でした。発達に遅れがある子どもへの具体的なアプローチ方法が書かれており、日々の生活の中で、子どもとの関わり方にたくさんのヒントを得ることができました。しかも、その考え方は、発達障害だけでなく上の子(定型発達)の子育てにも同じように役立ったのです。著者のshizuさんの息子さんも、3歳の時に自閉症スペクトラムと診断されており、ちりばめられたご自身の体験エピソードには、とても重なるところがありました。「私だけじゃない」「やればできるかもしれない」ととても励まされたのです。そんなshizuさんに、「ABAを利用して発達障害の子どもを伸ばすにはどうしたらいいのか?」をテーマにお話をうかがいました。■3年間できなかった滑り台、ABAでたった30分で滑れるようになっちゃった!?――ABAは素人が専門書を読んで理解するにはなかなか難しい学問ですが、わかりやすく言うと、shizuさんはABAをどういうものだとお考えですか?「私は、ABAは親子の関係を笑顔に導く1つの学習方法だと思っています。子どもが生きやすく生きるために、「できないこと」を「できた」に導きやすくする有効な働きかけだと思います」――具体的には、どんな手法なのでしょうか?「ABAの醍醐味のひとつに、スモールステップというものがあります。これは、ひとつの課題をできるだけ細かいステップに分け、1回の目標達成レベルを低くして、そのステップを一つ一つ達成しながら成功体験を重ねていくというもの。それが子どもの自信となって大きな課題達成につながるというわけです。この手法で取り組んでいくと、まるで魔法みたいに、全然できなかったことがコロッとできるようになっちゃったりするんですよ」――著書の題名も「魔法の言葉かけ」ですものね。実際に、魔法のような出来事はありましたか?「私が関わった子で、滑り台がまったくできない子がいました。3歳の時に滑り台でひどい尻もちをついてしまって、以来3年間、滑り台を断固拒否していたんです。でも、身体的な原因ではないし、私はその子の様子を見ていてできる可能性は十分あると思い、スモールステップで取り組んでみました。そしたら、たった30分足らずで滑れるようになったんですよ!」――3年間できなかったことが30分で!? 具体的にはどうやったのですか?「目標値を滑り台の下の方から、70センチくらいに設定し、ちょっとずつ登って滑ることを繰り返しました。その都度「すごい! ここまでこられたね!」とほめて、だんだんと目標値を高くしました。下の方から登れば、手を離すだけでスーッと滑りますよね? だから少しずつ滑り台の感覚を楽しめると思ったのです。私も後ろからついて子どもの恐怖心を和らげました」――なるほど。逆から少しずつ滑らせて、恐怖心を取り除くというワケですね。「滑り台の上まで登れたお子さんを見て、ご両親は本当にうれしそうで、何度もほめていらっしゃいました。そしたら、その子はすごくうれしくなって、1つできたことから自信がどんどん広がったんです。大きく揺れることを拒否していたブランコも大きく揺らして乗れるようになり、ジャングルジムも2段目までが精いっぱいだったのに、一番上まで登れるようになったんです。これ、全部その日のうちにできるようになったんですよ。その後、市内の滑り台めぐりをして、児童デイサービスでの散歩の時間にも『滑り台のある公園はありますか』とリクエストしたそうです。それまで、その子はあまり自分のやりたいことを積極的に言うタイプじゃなかったそうで、ご両親は積極性が出てきたこともとても喜んでいました」――自分ができたことはもちろん、お父さんとお母さんにほめられたことが、ものすごくうれしかったんでしょうね。「子どもにとって、親のほめ言葉は何よりのご褒美です。どんなささいなことでも、できたことに対していっぱいほめてあげてほしいです」――スモールステップを成功させるコツはあるのですか?「まず、親が『できる』と信じること。子どもは親が思っていることを敏感に察知するので、信じて『できるオーラ』を送ることが大事です。だからと言って、親のエゴで『この歳で滑り台ができないなんて恥ずかしい』とか『みんなができるんだから』というのは違いますよね。それは、親が子どもを思い通りにコントロールしたいと思っているだけ。そうではなくて、滑り台って本来、子どもにとってとても楽しいモノ。その楽しさを味わえたらいいよね、というイメージをふくらませてほしいです」――親のエゴを押し付けるのは違う、ということですね。「言葉かけも大事です。親目線で『やってごらんなさい』と言うのではなく、子どもと同じ目線になって『ちょっとやってみようよ! 〇〇ちゃんならきっとできると思うな』という感じで。NHKの歌のお兄さんやお姉さんみたいに、思わず子どもの気分が乗っちゃうようなノリやテンションで盛り上げるのもコツですね」――子どもがチャレンジに不安を感じたら?「子どもが不安を感じていたら、まずは、不安に寄り添ってあげることが大切。いったんはスルーして、気分が戻ってきたら『ちょっとだけやってみる?』とうながしてみてはどうでしょうか? 時間を空けるとスルッとできちゃうこともあるので、1回であきらめずに何回かはトライしてほしいですね」――でも、もしそれでもダメだとしたら…?「たとえ滑り台の一番上まで登れなかったとしても、『ここまでできたんだね! すごいね!』と、必ず成功体験で終わりにしてあげることが大事です。『あとちょっとだったのに!』という捨てセリフは厳禁。どんなにわずかでも、自分で踏み出せてそこまでできたということを、まずは認めてあげてください。また、ちょっと難しそうだったら、子どもの苦手な動作を背後から補助するような形で、親が少しだけ手助けしてあげることも有効です」――他にうまくいかない課題に取り組むときに心がけた方がいいことはありますか?「子どもの興味あることに寄り添って、課題の設定を工夫することも大切だと思います。例えば、こんなお子さんがいました。その子は平仮名を覚えるのが苦手で、カードで『あ』『い』『う』…と教えても、上の空で全然頭に入らない。そこで、その子が大好きな戦隊モノを利用することにしました。戦隊キャラの写真と名前(平仮名)をゲーム感覚で一致させて、その子の興味を引き出す仕掛けを作り、平仮名を読む行為自体が楽しくなる方法で取り組んだのです。そうしたら、その子はどんどん平仮名を覚えて、後にお母さんから『文章も読めるようになりました!』と報告がありました」――「教える」というより、その子の「興味を引き出す」仕掛けを作る。そして、それが楽しいと思えれば、後は、自らどんどん吸収してくれるというわけですね。親もそんな子どもの成長がうれしい。子どもも笑顔&親も笑顔、親子の関係を笑顔にする、まさにウィン・ウィンの方法ですね。 ■ABAを行ううえで、親が気を付けるべきこと――スモールステップがとても有効なやり方だということはよくわかりました。では、課題を少しずつクリアしていけば、何でもできるようになるのでしょうか?「いいえ。一点注意しなければいけないのは、何でもかんでもスモールステップで繰り返しやれば身に付くわけではないということです。滑り台の例のように、ちょっとした勇気やきっかけ作りでクリアできそうな課題はスモールステップが有効です。でも、平仮名の読み書き、算数など、さまざまな工夫をしてもどうしてもうまくいかない場合、もしかしたら学習障害が絡んでいる場合もあるかもしれません。その場合は、『これは生まれ持った特性なのでは?』と考えを切り替えることも大切です。そのことも頭にとめておいてほしいです(文字の読み書きにはビジョントレーニングが有効な場合もあります)」――ほかに、ABAを行ううえで気をつけておくべきことはありますか?「よく、家で机に座って子どもにガッツリABAの課題をやらせる、という話も聞くのですが、体を動かすことや外に出て五感を生かすことも大切にしてほしいと思います。五感を働かせることは、視機能、脳機能を伸ばすのにも大切だと思いますよ。あと、ABAはちょっと間違えると、『指示して動かす』ということに終始しがちな危険性があるので、子どもに選択させることを常に意識してほしいと思います。例えば、どんなに障害が重いお子さんであっても、食べ物の好き嫌いはあるはずです。『はい、お菓子よ』とあげるだけではなくて、『どっちが食べたい?』と選ばせる。選ぶというのは楽しみでもあるので、どんなにささいなことでも自分の意思で選ぶという体験を重ねてほしいと思います」■客観的視点が大事! ABAは親子の笑顔を引き出すアプローチ――最近では、ABAの認知度が高くなって、家で実践している方も多くなってきたようです。でも逆に、それがうまくいかないと、自分と子どもの努力不足だと追い詰められてしまう方もいるようですが…。「確かに、向き不向きがあるかもしれません。そんな時は、そもそもABAは子どもの笑顔を引き出すアプローチということを思い出してください。そこを外れて『なんでできないの?』『どうしてあなたはいつもこうなの?』というふうになってしまったら本末転倒ですよね…」――私もそんな時期がありました(苦笑)。つい「あなたのためなのよ!」と力が入ってしまって…(苦笑)。「私もそうだったのでよくわかりますよ。でも、お母さんが『これができないと困る』と思って一生懸命やっていても、子どもは全然困っていなかったりするんですよね(笑)。困っているのは、子どもじゃなくて、実はお母さんの方。お母さんが、他人からどう見られるかを気にしてやっていることの方が多い気がします。そんな時は、ちょっと立ち止まって『今の私って人の目を気にしてる?』と自分のことを客観的にみることが大事です」――確かに(苦笑)。当時は、「普通に近づけたい」という私のエゴが、常に頭のどこかにあったように思います。「私も息子が自閉症と診断された当初は、とにかく『普通に近づけたい』と夢中になっていた時期がありました。でも、その結果、課題をなかなかクリアしない息子を追いつめ、見事に失敗しましたけどね(苦笑)。普通にこだわったり、周囲からどう思われるかにとらわれると、子どもの悪いところ・できないところばかりが目についてしまい、悪循環に陥っちゃうんですよ」――そういう時って、もはや自分のことが見えなくなっているはず(汗)。自分のヤバさに気づくサインはありますか?「常に子どもが教えてくれるはずです。子どもに笑顔があるかどうかです。子どもに笑顔がなかったら、きっとその時、お母さんにも笑顔がないと思いますよ。お互いに笑顔がないのなら、家庭でのABA(療育)はいったんお休みしましょう」――いろいろお話をうかがっていると、もちろんABAは子どもの力を伸ばす可能性に満ちているけれど、それ以前に、お母さんの心の健康の方が大事という気がしてきました。「そう。子どもうんぬんよりも、まずはお母さんが自分自身を大切にすることが何より大事。だって、同じことが起こっても、自分に余裕がある時は『あらま~』って笑えるけど、余裕がない時だと『何やってんのよ!』って怒っちゃったりするでしょう? 物事をどう受け取るかはすべて自分次第なんですよ。借りられる手は全部借りて、まずは、お母さん自身の心を満たすことを考えましょう。子どもが見たいのは親の笑顔ですから。あと、何もかも完璧を求めすぎず、『まぁ、いいか』というゆるい心を持つことも大事です」――確かに、発達障害の子育てで「ゆるさ」は大切ですね。発達障害児のお母さん(私?)って、常に、子どもの将来の心配をするのが癖のようになっちゃっているのですが、ここらへんはどうしたら?「みなさんが不安に感じているのは、まだ、実際には起きてない予期不安ですよね? だとしたら、起きてない不安を延々と考えて苦しむのはムダじゃないですか?まずは、不安を感じているという自分の気持ちを『~って思っちゃうんだね。わかるよ』と認めて受けとめ、『また出てきたあ! 私って本当に悲劇のヒロイン好きだわ~』って笑い飛ばしちゃうのもひとつの方法です。思考癖に気づくことが大切です」――先のことは誰にもわからないはずですものね。「もう、『なんか知らないけど、この子はきっと大丈夫!』と決めてしまいましょう(笑)。先のわからないことはプラスに考えた方が楽しいし、それに、人はみな、決めてから行動を起こすでしょう? だったら、『大きくなった子どもの笑顔を思い浮かべ、今、サポートできることは?』と応援団として行動を起こすのです。それでも不安に押しつぶされそうになった時は、どうか、この言葉を思い出してみてください。それは、『今の子どもの姿がすべてではない』ということ。これは、私がお守り代わりに心にとめている言葉です。親が信じて、コツコツ働きかけていれば、きっとうれしい成長があります。今の姿だけを見て将来を悲観せず、子どもの可能性を信じて、楽しく働きかけていきましょう!」「今の子どもの姿がすべてではない」――著書を読んで以来、私がずっと心にとめている言葉です。shizuさんのこの言葉は、いろいろな局面で私の心を楽にしてくれました。子どもの可能性を信じてコツコツ働き続けることの大切さ、そしてそれ以上に、子どもと自分が笑顔でいることの大切さを、改めて感じた取材でした。参考図書: 発達障害の子どもを伸ばす 魔法の言葉かけ 著者 shizu/監修 平岩 幹男11万部13刷のロングセラー。手を洗うときの言葉かけ、食事をしながらの言葉かけ、いっしょに料理をするときの言葉かけ、散歩のときの言葉かけ、遊びながらの言葉かけ―ABA(応用行動分析)を利用した「言葉かけ」をすれば、楽しみながら家庭で子どもの力を伸ばせることを紹介した一冊。shizu プロフィール自閉症療育アドバイザー。講演会などで、日常生活の中で子どもの力を伸ばす楽しい関わりや言葉かけを紹介。家族に笑顔を増やすため、親が心掛けたい子どもへの気持ちの持ち方も伝えている。無料メール講座『発達障害の子と楽しく生活する7つのコツ』配信中。講演会の詳細はブログ参照。ブログ: 「発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉」 取材・文 まちとこ出版社N
2018年01月07日難航する仕事選び。障害者雇用枠で、最も多い求人は事務職。けれども…出典 : 私は、26歳のときにアスペルガー症候群、ADHDの診断を受け、同時に退職も余儀なくされました。就職をするまでの学生生活では、表面上のコミュニケーションや、日常生活、勉強という面では、これといった支障はなく、自分が発達障害であることにも気づいていませんでした。しかし、社会人になってから対人関係の困り事などが表出し、行く先々で、「常識がない」「もう少し場をわきまえろ」と言われてきました。そして発達障害の診断を受けた後、そのことを職場にカミングアウトしたのですが、残念ながら退職せざるを得ない状況に追い込まれてしまったのです。それからは就労移行支援事業所に通うことになり、支援員の方の手を借りながら障害者雇用枠での就職活動を進め、内定を獲得することができました。就労移行支援事業所は障害がある人の就労をサポートする機関で、職業訓練や職場探し、職場への定着支援など、さまざまな支援を受けることができます。しかし、その道のりは一本道というわけではなく、壁に直面したり、どうすればいいかわからないことも少なくありませんでした。特に悩んだのは、自分の特性と仕事の性質の兼ね合いです。障害者雇用枠のおよそ半分以上は事務職と言われれており、一般事務や経理、総務、人事などの職種で就職する場合が多いそうです。しかし、私は何か目新しさがないと注意や集中力を持続することができません。例えばExcelなどで売上伝票などを作成する際に、売上金などのデータ入力が必須になってきますが、ミスしないよう慎重に作業しているとスピードが他の人に比べて明らかに遅くなってしまうのです。するとそれが焦りに繋がり悪循環に陥ります。結果として、雑な仕上がりとなってしまったり、思いもしないようなミスをしてしまうのです。「働く」という字は、人と一緒に動くと書く。でも自分はコミュニケーションが苦手…出典 : また、空気が読めない、他人の気持ちに配慮した言動が難しいなどの特徴から、仕事上での困難に直面することも少なくありませんでした。営業の仕事にかかわっていたときは、相手の意図を汲み取りつつも、相手に探りを入れる高度なコミュニケーション能力が求められましたが、どうやってもうまくこなすことができませんでした。また、営業職は電話応対が頻繁に発生するため、他の人が話している電話の声が気になってしまったり、聞こえてくる会話内容を意図せずメールに書いてしまう事もありました。1つの作業に没頭すると他のことを忘れてしまうことも少なくなかったため、報告・連絡・相談がおろそかになるのは日常茶飯事。こうした自分の特性を考えたうえで就職をしようとすると、どうしても選択肢は数少ないものになってしまい、愕然とせざるえませんでした。自分には一体、何が出来るんだ!?出典 : 次第に頭のなかには、「自分には一体何ができるのか?」という思いが込み上げてきました。考えても出てくるのは「できることなんて無い」という答えばかり。私はどうすればわからず、毎日落ち込んでばかりいました。このとき、前を向く光をくれたのが、前職を退職してから相談を続けてきたカウンセラーさんです。障害の診断を受けて薬が処方されてからというもの、見知らぬ地でひとりぼっちのような気持ちでしたが、どうしたら生きやすくなるかの相談を続けてゆくうちに、自分がたどるべき道を何となくイメージできるようになってきたのです。検査結果ではわからなかった自分の数少ない強みカウンセリングでは、WAIS-III(ウェクスラー式知能検査)の結果を紐解いて、苦手なことと、苦手ではないことを分類していくことを行いました。私のWAIS-IIIの結果は、言語理解の部分が苦手ではない。しかし、決してずば抜けている訳でもないと言えるくらいで、他の項目はすべて平均より低いと言わざるを得ない状況でした。カウンセリングに行く度に話す内容をA4、1枚の紙にまとめて、ときには参考になりそうな資料なども合わせて準備していました。相談したいことがいくつかあった場合でも、話しているうちに相談しようと思っていたことを忘れてしまい、相談室を出た後で、話し忘れたと後悔することが多かったからです。そんな中あるとき、私の作った資料を見たカウンセラーさんが、ひょっとしたら自分の考えをまとめることが得意なのかもしれないと指摘してくれたのです。言われてみれば、心当たりがありました。以前仕事をしていたときは毎日が失敗の連続だったので、なぜ怒られたのか?何がいけなかったのかを自分で分析するために、日記に書くようになりました。1日の終わりに静かな自宅の部屋で、時間をゆっくりとかけながら何が問題だったのかを洗い出し、それはそしてときには視覚的に情報をまとめます。それは私にとってはまったく苦にならない作業であったことに気づいたのです。Upload By ツーちゃんこのことから自分で企画を考え、図やイラストで分かりやすく説明するような仕事内容にチャレンジしたいと思うようになりました。不注意傾向があってもソフトのスペルチェック機能を使えば、ミスが未然に防げたり、取りこぼしが減らせたりすることはできます。なので、Webデザイナーや、ライター、企画職など、クリエイティブ寄りの職種を志望し、就職活動を進めることにしたのです。Upload By ツーちゃん出来ることと(障害特性上)難しいこと=配慮して欲しいことを整理する出典 : 私の場合、障害者雇用枠での就職を目指すということは比較的早い段階で決まっていました。というのも仕事量や、割り振りなどに関して、会社側の配慮がどうしても必要だと強く感じていたからです。そのため、検査の結果なども加味して考え、障害を隠して働くという選択肢は消えていました。次に私は、自分の特性を面接官に分かりやすく説明する、「ナビゲーションブック」の作成に取り掛かります。そこで難しかったことは、障害の程度をいい塩梅で面接官に伝えるということです。文字などでまとめることは苦にならない私ですが、ありのまますぎて、より強烈な印象を与えてしまうような文章を書いてしまいがちでした。あまり欠点のみを書き過ぎてしまうと、人事担当も評価ポイントを見出しにくくなってしまいます。なので、自分自身の障害特性をしっかりと自覚し、そうした過去の失敗を繰り返さないように気をつけていると明記し、加えて過去の自分からの成長をアピールしました。また作成した当初は、できることと、配慮して欲しいことの2つのみを書いていましたが、それだと配慮してもらって当たり前というような印象を受けると支援員の方から指摘して頂いて、障害特性はあるものの、自分自身の努力でカバーできることもあると書くようにしました。Upload By ツーちゃんナビゲーションブックは就職活動を進める上で、どう役に立ったのか?出典 : 障害者雇用枠での面接では、仕事に対する熱意や志望動機以上に、障害のことや、それに対して必要な配慮について質問されました。そういったときにナビゲーションブックが役立ちます。2部、印刷して持参しておいたナビゲーションブックを、面接官と一緒に見ながら、事細かに説明しました。ナビゲーションブックを見た感想を、面接まで進んだ企業の採用担当者に聞いたことがあります。「障害者雇用によく使われる履歴書には3行程度障害について記載する欄があるが、3行程度の説明では、障害の多様さを理解するのは難しい。こういったナビゲーションブック等で障害に関して、詳しく説明して頂けるのは、とても助かる。また人事としても、障害に関してどこまで聞いて良いのか非常に気を遣う。求職者の方からオープンにして頂けると採用担当者からしてもやりやすい」と言われました。また別の面接官は「伝言ゲームだと、聞いた内容があやふやになりやすいが、こうした資料があれば、次の面接官への引き継ぎがしやすい」といった声もありました。総じて、障害を隠すよりも、かえって包み隠さず話した方が好印象と受け止められるケースが多かったです。またナビゲーションブックを用意しておく事で、その内容に沿った質問が多くなり、予想外の質問を減らす事が出来るというメリットもありました。臨機応変力があまり高くない私にとっては嬉しい誤算でもありました。必ずしもナビゲーションブックの作成をしなければいけない訳ではありませんが、ナビゲーションブックを用意する事で、障害についての理解が深まり、企業の採用担当の方にとっても不安が少なくなるのかもしれないなと感じました。参考: LITALICOワークス合理的配慮ガイドブック障害者雇用枠での就職活動を振り返って出典 : こうして就職活動を進めているうちに、半年が過ぎ、やっと内定を手に入れることができました。内定した会社は、スマートフォン向けのゲームアプリを開発する会社です。パソコンなどの扱いに精通していたことや、ADHDで新しいもの好き、好奇心旺盛な部分が、結果的に良い方向に働いたと感じています。配慮の面では、「困っていることはないか?」と人事の担当者が相談する時間を設けてくれたり、上司には指示が曖昧で分かりにくいといった、言いづらいことを代わりに伝えてもらうといった配慮を受けています。ただ、人事部と現場レベルで障害への理解、業務指示などを含めた接し方に対して、温度差が多少あるようには感じられます。また、環境の変化や、刺激の多い環境に対して疲れやすい特性を持っているので、最初の1か月間は、時短勤務を許可してもらっており、とても大事にしてもらっていると感じています。内定を得るまでには、合同就職説明会などで大量エントリーした企業も含めると、30社から40社ほどは受けたと思います。そのうち、面接に進んだのは6社で、最終面接に進めたのは4社。内定はたった1社のみという結果です。正直なところ、綱渡りのような状態で、これに落ちたらまた振り出しのような状況だったので、内定が出て胸をなでおろしたような気持ちです。就職活動が長引いてしまった理由としては、書類選考で落ちることも多く、モチベーションを保つのが難しかったこと、企業が特に精神障害・発達障害のある人の採用に対して慎重な姿勢を貫いていることから、選考期間が長期化してしまうことが挙げられると思います。障害者雇用については、まだどこも手探りのような状態で、書類選考に1ヶ月かかることも少なくありませんでした。新しい仕事は、すべてが未経験で「初めてづくし」な部分は大きいのですが、1年ぶりに仕事が出来ること、就労移行支援を退所した後も、支援員の方が定着支援として、企業と私との連絡係としてサポートしてくださることなどが、前職の時には無かった安心感を生んでいます。今から新しい門出にワクワクしています。私の経験は1つの例でしかありません。他にもさまざまな歩き方があると思います。それでも、私の歩んだ道が、少しでも役に立てば、これほど嬉しいことはありません。
2018年01月03日「親なきあと」に関する不安とは?発達ナビに寄せられた、保護者500名の声出典 : 年10月30日から11月8日に、LITALICO発達ナビでは「親なきあとの暮らし・お金に関する実態・意識調査」を行いました。ご協力いただいたユーザーの皆様、どうもありがとうございました。この記事では、調査結果の一部を抜粋し、お伝えします。<調査対象について>「LITALICO発達ナビ」会員へのメールから、アンケートフォームにて回答いただいた発達障害の子どもをもつ保護者:529名の回答を集計しました。(調査期間:2017年10月30日~11月8日)※設問によっては529名全員が回答していないもの、複数回答可のものがあります。※調査結果の構成割合は四捨五入をしているため、合計が100にならない場合があります。「親なきあと」の子どもの暮らしについてUpload By 発達障害のキホン「親なきあとの子どもの暮らしについて、不安はありますか?」という質問に対し「はい」と答えた保護者は94.9%、「いいえ」と答えた保護者は5.1%と、親なきあとの子どもの暮らしについて不安に思っている保護者は9割を超えました。では、保護者の皆さんはどのようなことに不安を感じていられるのでしょうか?「就職できるのか、1人で暮らしていけるのか不安を感じる」「お金の管理。人にだまされないか。」「他人とうまくコミュニケーションをとって、上手に過ごせるか 」「1人で自立して生活していけるか?社会に適応できるか?」子どもが将来、経済面・生活面・精神面で自立できるのか、社会に適応して生活できるのかといった不安を持つ人が多くがみられました。また、「就職して生きていくためのお金を稼げるか、弟に負担もかけたくはないが、なるべく兄弟助け合って生きてほしい」「自立生活の維持、兄妹が背負うかもしれない養介護」などの意見にみられるように、誰が子どもの生活や精神面のサポートするのかなど、子どもを日常的にサポートする人やきょうだいについての声も目立ちました。「親なきあと」の住まいについてUpload By 発達障害のキホン「親なきあと、お子さんはどこで暮らすと考えられますか?」という質問に対し、回答が多い順に「一人暮らし(66%)」「グループホーム(29.3%)」「施設(27.6%)」「親族・きょうだい(20.6%)」となり、「一人暮らし」という回答が最も多く なりました。また、「その他」と回答の中には「結婚出来たら良いなあ。出来なくても、支え合えるパートナーと暮らしてほしい。」「私達の家が相続出来れば今の家ですが、固定資産税等払えず管理出来ないと思うので…気の合う方に巡り会えて、新しい家庭を持ち、その方と新居を持てれば…」と、幸せな結婚をし、パートナーとともに新たな家庭を築いてほしいという声もありました。「親なきあと」のお金への備え出典 : 次に、親なきあとのお金について、どのように考えているのか、どんな対策をしているかなどについて、皆さんの回答を紹介していきます。Upload By 発達障害のキホン「子どもの将来に向けて貯蓄・資金準備はしていますか?」という質問に対して「はい」と答えた保護者は64.8%、「いいえ」と答えた保護者は35.2%となり、子どものために貯蓄・資金準備をしている保護者は約6割でした。準備をしている場合、どのようなことをしていますか?という質問に対して多かった回答として、「学資保険(36)」「貯金(31)」「貯蓄(18)」といった意見があげられました。ほとんどの保護者は預貯金か保険で備えているようです。また、行政からの手当金は、今すぐ使わず子どもの将来のために貯蓄に回しているという風に、子どものためにもらえる手当は生活費とは切り分けて、子どもの将来のための備えに回しているという回答も複数ありました。手当=貯蓄に回す、と決めることで貯蓄しやすくなりそうです。Upload By 発達障害のキホン「子どもの将来に向けた貯蓄額は現時点どの程度ですか?」という質問に対して、回答が多い順に、「~49万円(19.7%)」「200~399万円(16.3%)」「100~149万円(15.3%)」という結果になりました。Upload By 発達障害のキホンでは、みなさんはどのような方法で貯蓄・資金準備しているのでしょうか?「資金準備の方法を教えてください」という質問に対して、回答の大半を占めたのが「銀行・郵便局の預貯金(82.9%)」と「保険商品(学資保険含む」(51%)」、その他には「投資信託(NISA含む)(5.8%)」、「外貨建て商品(3.6%)」、「不動産の運用(2%)」などがみられました。多くの方は、金融機関での預貯金や、学資保険・生命保険などの保険商品を用いて貯蓄しているようです。また、生命保険信託を活用している方も、少数ですが見受けられました。また全体の6%弱は、投資信託などでも資産を殖やしていました。Upload By 発達障害のキホン利用している金融機関は、多いものから「銀行・郵便局(63.1%)」、次に「保険会社(37.4%)」、以下順に「利用していない(21%)」、「証券会社(5.5%)」「信託銀行(2.5%)」「その他(0.9%)」という結果になりました。「障害年金」について障害年金は、障害の程度に応じて一定の金額が支給される、障害のある方の生活をサポートするための制度です。この制度について、どのくらい認知されているか伺いました。Upload By 発達障害のキホン障害年金について知っている保護者は41.6%と、4割強の認知がありました。「いいえ」と答えた保護者は10.6%、「聞いたことはあるがよく分からない」と答えた保護者は47.8%となり、障害年金について聞いたことはあることはあるものの、どのような制度なのかまでは分からないという保護者も半数近くいました。障害年金がいくらもらえるかについては、81.1%が知らないという回答でした。障害年金が具体的にいくらもらえるかなど、詳細までは知らない人が多いようです。Upload By 発達障害のキホン障害年金について知りたいこととして、「もらえる条件」「金額の他、受取方法などの仕組み全般が知りたい」「一生涯不十分なく年金受給されるのか」「発達障害では、障害年金もらえないと認識している」などの意見がありました。発達障害・知的障害の度合いが軽く、「障害年金が受給できないのでは?」と危惧している保護者の声も多くあげられました。なお、発達障害でも障害の度合いによっては障害年金を受給が可能です。また、同じように「等級」という言葉を使うため混同しがちですが、障害者手帳の等級と障害年金の等級や判定は別です。どちらの等級も、重いものから1級、2級という風に等級がありますが、制度が異なるので認定基準は異なります。概ねどちらの等級も重なる内容が多いとはいえ、それぞれ状況が異なるので、相談・申請してみないことにはどの等級にあたるのかなどは分かりません。まずは実際に年金事務所や、無料相談を行っている社会保険労務士(社労士)などの事務所に相談してみることをおすすめします。詳しくは以下の記事やリンクを参照ください。「親なきあと」相談室「親なきあと」、どのように子どもへお金を渡すのか出典 : 障害のある子どものために資産をつくったり、障害年金を受給できるように制度を理解したり申請をしたりすることに加えて、どのようにしたら適切に渡していけるのか考え、備えておくことも大切です。ここでは、皆さんの意識や、対策方法などについてみていきます。Upload By 発達障害のキホン「相続について、対策していますか?」という質問に対して、「いいえ」と答えた保護者は94.5%、「はい」と答えた保護者は5.5%でした。相続対策をしていない保護者が9割以上という結果でした。では、相続対策をしている保護者はどのような対策を取っているのでしょうか?「住むところに困らないよう、自宅の土地建物を相続するようにしている」「生命保険信託と、生前贈与の形での個人年金保険」「親の死亡保険」などの意見がみられました。また、「子どもの名義で通帳に預金しているくらいで、対策すべきかどうかわからない」「具体的な行動はしていないものの、行政書士に相談することができることなどを本、ネットで調べている。」など、具体的にどうしたらいいのか知りたいという意見や、相続対策の方法について詳しく知りたいという意見も寄せられました。障害のある子への適切に資産を引き継ぐ方法として活用できる制度に特定贈与信託があります。障害の程度に応じて贈与税が一定額まで非課税となる制度ですが、認知度は3%に留まりました。Upload By 発達障害のキホン特定贈与信託とは、特定障害者(重度の心身障害者、中軽度の知的障がい者および障害等級2級または3級の精神障害者等)の親なきあとの生活を支援するための信託制度です。この制度を利用すると、障害の程度に応じて6,000万円もしくは3,000万円まで贈与税が非課税ととなるとともに、障害のある子どもへ生活費などとして定期的にお金を渡していくことができ、生活を安定させることができます。信託制度については、下記の記事をご参照ください。特定贈与信託も含め、信託制度の紹介をしています。「親なきあと」の生活やお金について寄せられた、保護者からのさまざまな声出典 : その他、「親なきあとの子どもの生活・お金に関して、困っていること、知りたいこと、社会に向けて発信したい・知ってほしいことなど、思うところ」についても、多くの声が寄せられました。「障害者の親向けの税の優遇制度があると聞いてるが、それについてもっと発信してほしい、 施設に入所するにはどの程度の費用が必要なのかを知りたい、グループホームで生活する場合、障害年金だけでやっていけるのか、実際他の人たちはどのようにしているのか知りたい」「お金を管理する方法がわからない。誰に相談したら良いか。親なきあとは、どうやって、誰に相談したら良いか。」「今回の質問項目で知らないことも沢山ありました。それがどのように有効かわかりやすく教えていただければと思います。」障害年金や障害者控除、信託などの財産管理をする方法、グループホーム(共同生活援助)を利用する場合の実情、親なきあとについての相談先などについての疑問が寄せられました。そこで、既存の記事で役立ちそうなものを、いくつかご紹介します。また、寄せられたご意見をもとに、必要とされる記事を今後さらに充実させていきたいと考えています。「手帳の交付や明らかに支援が必要な場合は、何らかの手だてがあり支援や補助の安心があるが、グレーのまま成長し、グレーな大人になった場合はどのように過ごすことができるか、自立していられるのか、親としては不安です。」「40代で知的、発達障害の子を育て始め、残りの時間を考えると、どこまで責任を持って見守りができるか。また、将来、該当児を託したいがため、兄弟にも過度な期待、プレッシャーをかけがちで、反省しつつも、やはり、強い対応をしてしまう。また、兄弟にも希望する人生があるのに、将来の職業、結婚の選択が狭まったと感じ、常に申し訳なく感じている。」「日々の生活でいっぱいで先のことなんて考えられない。」グレーゾーンにあるお子さんが適切な支援を受けられるのかといった不安や、きょうだい児への負担についての葛藤などから、日々の生活での問題の対処で精一杯で先のことを考える余裕までないといった声もありました。「もっと発達障害者を理解し働きやすい企業が増えてほしい。」「障害があるからといって、特別な目で見ないでほしい。」「ちょっとした手助けや、理解してもらうことは必要かもしれないけど、周りの人の関わり方一つで、社会人として、ちゃんとやっていけることを知ってほしい。」障害に対する偏見や障壁がない未来を願う、切実な声が多く見受けられました。障害のある子やその家族が、生き生きと暮らしていける世の中になるよう、これからも発達ナビでは、さまざまな発信をしていきたいと思っています。今回の調査結果から出典 : 今回の調査結果から、「親なきあと」に不安を感じているものの、具体的にどのような対策を取ったらよいか分からないという保護者が多いことが分かりました。発達ナビでは12~1月に「親なきあと」特集を組み、親なきあとの暮らしやお金の問題についてコラム記事を掲載していくので、ぜひ読んでいただきたいと思います。また、ママ友や障害のある子の家族会などの自助グループでの情報共有も非常に役に立ちます。保護者の皆さんが元気なうちに、さまざまつながりをつくっていくことが、親なきあとのお子さんの生活を支えることにつながるかもしれません。もちろん、日常生活だけで手一杯ということもあるかもしれません。あせらず、まずはできそうなことから、少しずつ進めていきましょう。
2017年12月25日信託とは、財産の管理を第三者に信じて託すこと出典 : 信託とは、自身の財産を、自分または他人のために管理・処分してもらうよう、人や機関に託す制度です。信託と一口にいっても、目的やニーズによってさまざまな商品があります。運用の専門家にお金を託して、株式や債券などに投資・運用する投資信託のほか、財産の継承をスムーズに行うための相続信託などは、耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。自分以外の誰かに財産の運用を任せることを信託と言いますが、この制度を活用することで、親なきあとの子どものために資産を適切に管理し、必要な生活費などを定期的に交付することができます。ここでは、障害のある子の資産管理に信託を活用する方法について紹介します。信託制度では、財産を託す人を委託者、託され管理する人を受託者、その財産から利益を受ける人を受益者と呼びます。信託契約の形は、委託者と受託者が話し合って契約を結び、その契約に基づいて受託者がお金を管理しながら受益者に定期的に金銭を交付します。信託制度は、受託者の性質によって大きく2つに分けられます。1. 商事信託信託業の資格を持っている人や機関が受託者となる信託制度のことを言います。商事信託は報酬が発生します。2. 民事信託受託者に信託業の免許が不要で、受託者は主に家族や知人になります。報酬は必ずしも払わなくてもよいことになっています。また、民事信託の中でも受託者が家族である信託契約を家族信託、受益者が障害者や老人である契約を福祉型信託と呼ぶこともあります。信託制度の特徴出典 : 財産の管理方法の中でも、信託にはいくつかの特徴があります。管理をするのが第三者であること、契約が柔軟であること、です。たとえば、障害がある子どもに財産を遺した場合、第三者が適切に管理・運用してくれるのかが心配だという方もおられるかもしれません。信託契約を結ぶと、託された財産の所有権は委託者から受託者に移ります。ですが、この財産は受益者(この場合は障害のある子ども)のものなので、受託者が勝手に使うことはできません。信託した財産は契約に基づいた使い方しかできないのです。また、仮に受託者が破産してしまったとしても、この財産は債権者から守られます。また委託者が死亡しても、契約が終了することはありません。信託契約は委託者と受託者の間で財産の管理方法などが決められます。財産委任契約などと違い、比較的一人ひとりのニーズに沿った管理方法を選択できるのです。例えば、「子どもが亡くなった後は、残った財産はお世話になった施設に寄付したい」など、受益者の死後のお金の行方までも、事前に決めることができます。「遺産は子どもに遺したいけど、その子が亡くなったら面倒を見てくれた知人に贈りたい」など、生前お世話になった人や施設に感謝の気持ちを伝えたい人にとっては嬉しい特徴だと言えるでしょう。障害のある子どもの家族が、信託制度を活用するメリット出典 : 障害がある子どもの保護者にとって、親なきあとの子どもの生活についての大きな心配事のひとつに「お金の管理の問題」があげられます。障害がある人の場合、収入が障害のない人よりも少なくなる場合が多く、できるだけ多くのお金を遺しておきたいと考える保護者の方も多いでしょう。親なきあとのお金の問題においては、どれだけ多くの財産を遺せるかだけでなく、子どものために遺したお金をどのように管理するのかも重要な要素となります。まとまったお金が手元にあったとしても、だまし取られたり、浪費してしまったりと、トラブルが生じる可能性があります。特に、ある程度認知能力があり、施設などで暮らさず一人で生活できる場合は、より財産管理におけるリスクが高くなるでしょう。そのため、本人を財産管理の面からサポートする仕組みを作っておく必要があるのです。契約の下に第三者が責任を持って管理する信託制度を利用することで、財産管理における心配事を解消することができます。信託にもさまざまな種類があります。次の章から、障害のある子どもを育てる家族に活用してほしい信託を紹介していきます。特定贈与信託出典 : 特定贈与信託は、特別障害者(重度の心身障害者)や、それ以外の特定障害者(中軽度の知的障害者および障害等級2級または3級の精神障害者など)の親なきあとの生活を支援するための信託制度です。信託銀行などの受託者が、親族などから信託された財産を管理・運用し、受益者へ定期的にお金を交付します。この信託制度の最大の特徴は、節税と財産の定期交付が同時に叶うことです。一定額まで贈与税が非課税になり、受託者である信託銀行などが、障害のある子へ生活費や医療費などを定期的に交付してくれます。特別障害者(重度の心身障害者)は6,000万円、特別障害者以外の特定障害者(中軽度の知的障がい者および障害等級2級または3級の精神障がい者等)は3,000万円を限度として贈与税が非課税になります。以前は、特別障害者だけがこの制度の対象でしたが、2013年の法改正によって特定障害者も利用できるようになり、利用できる人の幅が広がりました。通常、贈与税は年間110万円以上の贈与から課税されるため、節税という意味でもメリットがあります。出典:障害者と税|国税庁・金銭・有価証券・金銭債権・立木および立木の生立する土地(立木とともに信託されるものに限る)・継続的に相当の対価を得て他人に使用させる不動産・受益者の居住の用に供する不動産(上記の財産のいずれかとともに信託されるものに限ります。)信託できる財産は、受託者の管理できる能力によって異なりますので、いくつかの機関や専門家に相談してみましょう。・ 委託者信託する財産、印鑑・受益者障害者非課税信託申告書、特定障害者の区分に応じた証明書、住民票、 印鑑等以上のほか、後見人等が選任されている場合には、後見人等の届出書、印鑑証明書等が必要となります。これらは一例であり、利用する信託銀行によって多少の違いがあります。利用を考えている信託銀行の相談窓口で聞いてみましょう。特定贈与信託│一般社団法人 信託協会特定贈与信託│三井住友信託銀行特定贈与信託│三菱UFJ信託銀行生命保険信託出典 : 生命保険信託とは、保険の受取人を信託銀行や信託会社にして、受託者である信託銀行などが受益者である障害のある子のために、学費や生活費を一括、または分割で交付する、という制度です。生命保険信託の一番の特徴は手続きが比較的簡単なことです。先の特別贈与信託や次の後見制度支援信託は、利用するための条件や手続きがいくつかある一方、生命保険信託は保険契約に信託契約を付加するだけなので、比較的取り入れやすいと言えます。保険金いくつかの費用が保険金から支払われます。主に契約金、委託者死亡時の保険金受領時報酬、信託中の管理手数料がかかります。これらの費用は商品によって数万円~十数万円と大きく変わり、また死亡保険金額の最低ラインを設けている場合もあるので、どの商品がご家庭の状況に合うのか、いくつかの商品を比較検討することをおすすめします。生命保険信託とは│プルデンシャル信託株式会社生命保険信託「想いの定期便」│第一生命生命保険信託型│三井住友信託銀行『生命保険信託(未来あんしんサポート型)』の取扱開始について│みずほ信託銀行株式会社、FWD富士生命保険株式会社、株式会社ジェイアイシー後見制度支援信託出典 : 後見制度支援信託は、後見人制度を財産面から支援する信託制度です。後見人とは、障害や加齢のため判断能力が十分でない人を支援する役割を持つ人のことです。生活費など日常使う分のお金は後見人が管理をし、その他の日常では使わない分のお金を信託銀行が管理をする仕組みを言います。後見制度支援信託を利用することで、財産の管理が後見人と家庭裁判所という2段階制になるため、より安全に財産を守れるようになります。そのため、被後見人に500万円を超える財産がある場合に、家庭裁判所がこの制度を利用すべきという判断をすることがあります。金銭のみ家庭裁判所からの指示書のほか、成年後見人や被後見人についての確認書類などが必要です。必要なものは取り扱う信託銀行などによって異なるので、各社の相談窓口にて詳細を確認する必要があります。後見制度において利用する信託の概要│家庭裁判所後見制度支援信託│信託協会後見制度支援信託│三井住友信託銀行後見制度支援信託のしくみ│三菱UFJ信託銀行まとめ出典 : 信託制度は、自分自身や大切な人のために、第三者に財産の管理を託す制度です。これは、障害がある子どもの親なきあとの生活をサポートする際にも有効な制度と言えるでしょう。委託者と受託者間の話し合いによって契約内容を決めることができるので、一人ひとりに合った財産管理方法を結ぶことができることも利点です。現在、こうした福祉型信託をめぐる法的な環境は、法制度が変わるなど過渡期にあり、今後より活用しやすい制度になっていくことが期待されています。今はまだ契約を結ぶ段階ではなくても、まずは信託制度について理解を深め、将来に向けて相談できる専門家や機関を探すことから始めてみてはいかがでしょうか。
2017年12月20日発達障害当事者による、発達障害当事者のための居場所「Necco」Upload By 発達ナビ編集部東京の高田馬場にある「Necco」は、大人の発達障害当事者による、大人の発達障害当事者のための居場所です。高田馬場にある雑居ビルの1室にあり、18時までは一般のカフェとして発達障害の当事者によって営業され、18時以降はフリースペースとして発達障害の当事者のために場が解放されます。スペースでは茶話会やゲーム大会といったイベントも頻繁に開催されており、発達障害の当事者が気軽に集まれる居場所づくりがなされています。大人(成人)の発達障害当事者のためのピアサポート Necco(ネッコ)取材に訪れた日もたくさんのお客さんで賑わっており、別フロアではフラワーアレンジメント講座が開かれていました。Upload By 発達ナビ編集部本棚には発達障害関連の本が多数並んでいます。Upload By 発達ナビ編集部Neccoは自由に集まれる居場所としては2010年、カフェとしては2011年に活動をスタートしており、大人の発達障害当事者のための常設の居場所としては、日本で最初に出来た場です。今回の記事では、このNeccoを立ち上げた方であり、ご自身も発達障害の当事者である金子磨矢子さんに、活動を始めたきっかけや、長年続けていく中での苦労、活動を続けるモチベーションや今後の展望についてお話をお聞きしました。金子さんは平成28年度厚生労働省より「発達障害者の当事者同士の活動支援のあり方に関する調査」を受託し、その報告会である「発達障害当事者会フォーラム2017」を開催された主催者のおひとりでもあります。この報告会は、1月にも「発達障害当事者会フォーラム2018」として大阪で開催する予定とのことです。金子さんのインタビューから見えてきたのは、当事者活動を続けることの大切さと、当事者活動としてどう外の社会と関わっていくかという問題意識でした。ずっと自分はちょっと変な子だと思っていたUpload By 発達ナビ編集部―金子さんがご自身の発達障害について知ったのは、どういったきっかけだったのでしょうか。金子さん: 子供のころからずっと、自分はちょっと変な子だとは思っていました。しかし本格的に自分のADHDを知るきっかけとなったのは、子育てに悩み、本屋で調べ物をしていたときですね。子どもが2才の時にプレイグループに参加させたんですけど、どうにもよその子と何かが違ったんです。なかなかうまく他の子どもと交わることが出来ず、自分のやり方で自分なりの遊びをつくるのを好む傾向があって。プレイグループには、参加している子供の他にその子たちの弟や妹にあたる赤ちゃんも何人かが場にいたのですが、赤ちゃんの泣き声を極端に嫌がるそぶりも見せました。うちの子はよその子となにか違うのかしら?という答えが知りたかったんですが、当時はインターネットも普及していなかったので、しょっちゅう本屋に入り浸っては答えを探し求めていました。その時に出会ったのが『のび太・ジャイアン症候群』という本です。落ち着きがない・忘れ物が多い・後先を考えずに行動する・いじめられる…この本を読んで、子どものことはひとまずそっちのけで「これは私だ!」って叫びそうになりましたね。その場で立ちつくし、購入して帰り、何度も何度も読みました。それまでも自分自身に対する違和感はずっと持っていたんですが、こんな変わった人は自分だけじゃない、特性というものなんだと知り、この本にとても励まされたんです。よその子とは何かが違うと感じていた子どもに関しては、その後、2004年ごろですかね…テレビ番組がきっかけで、アスペルガー症候群だということに気付きました。自分が発達障害だと気づいてから起こした私の行動Upload By 発達ナビ編集部―ご自身の発達障害特性に気付いた金子さんですが、当事者としてNeccoの活動をはじめるきっかけは何だったのでしょうか。金子さん: 最初は活動というまでのものではなかったんです。SNSが普及した頃に、そのSNSの発達障害コミュニティのメンバーでリアルでも会ってみようということになり、定期的にオフ会をするようになったのがはじまりです。そうやって集まるようになっていた中で結束が強くなったのは、リタリンの処方が制限されるようになったのがきっかけです。(編集部注:現在リタリンはナルコレプシーにのみ適応)メンバーの中にはリタリンなしではADHDの症状がしんどい人もいて、これはなんとか訴えないと!ということで、厚労省の会議に傍聴に行ったり、ネット上で活動を行ったりしました。結局私たちの訴えは聞き届けてはもらえなかったのですが、この活動がきっかけで2つの願いが強まりました。ひとつは、いつでも私たち発達障害の当事者が集まれる場所がほしいということ。当時は私の家のリビングに集まってミーティングをしていましたので。そしてもうひとつは、自分たちが集まる居場所を得るだけではなく、社会に対して働きかけを行い、当事者発信で発達障害を広く知ってもらうことです。リタリンの処方うんぬん以前に、当時の発達障害の認知度の低さを思い知らされましたね。私自身、自分の発達障害を知ることが出来てよかったと思っているんです。だから今度は私が、まだ自身の発達障害に気付かずひとりで悩んでいる人の気付くきっかけになったり、居場所になれたらいいなと思って、啓発や居場所づくりの活動を続けています。また、最近でこそ「発達障害」という名前だけは知られてきましたが、「それでは発達障害とはいったい何なのか」という本質的なことは、まだほとんどの人に理解されていないのではないでしょうか。発達障害の啓発活動の動機として、生きづらさを抱えながらも自分が発達障害だと気付かずに生きている方本人に、自分自身のことを気付いてもらいたいというのもありますが、本人だけじゃなくてもっと多くの人にも発達障害についてちゃんと知ってもらいたいと思っています。というのも、発達障害に対する無理解によって苦しんでいる当事者の人がたくさんいることを知っているからです。この人たちはこういう人たちなんだよっていうことを、目に見えないのでむつかしいとは思うのですが、発達障害じゃない人たちにも分かってもらいたい。学校の先生、役所の方、会社の上司…出来ないことは出来ないんだと分かってもらえないと、当事者の方はつらいばっかりです。わざとやらない、怠けたくて障害のせいにしている、そういう風にとられてしまいがちなんですが、本当にそんなことないんですよ。むしろ精一杯努力している真面目な方が多いと思います。必要としてくれている人がいる限り、続けていきたいと思ってるUpload By 発達ナビ編集部―Neccoを続けてきた中で、印象に残っていること、大変だったことはありますか。金子さん: もう、大変なことだらけです(笑)まずNeccoをはじめるにあたり、場所探しから大変でしたね。「借りた場所を発達障害の人の居場所にしますので物件を貸してください」と言って、理解してくれた上で快く貸して頂ける場所を探すのに1年ぐらいかかりました。現在Neccoの運営母体は一般社団法人としており、非営利で運営しています。カフェの店員はボランティアで、費用の持ち出しも発生しています。とはいえNeccoを必要としてくれている人がいる限り、なんとかして運営を続けていきたいと思っています。「Neccoという居場所があるから今、学校や会社に頑張って行けている」、そういう方がたくさんNeccoにいらしているんです。なかには毎週末、長野から夜行バスでNeccoに来ている方もいます。月から金までなんとかお仕事を頑張り、金曜の夜の夜行バスで東京に来て、日曜の夜の夜行バスで長野に帰っていくんですね。また以前は40才前後のいわゆる団塊ジュニアといわれる世代の方が多かったのですが、最近は高校生や大学生といった若い方も増えてきました。当事者としてどう社会と関わりを持つかUpload By 発達ナビ編集部―今後、Neccoの将来の展望はありますか。金子さん: Neccoに関していえば、"来たかったらいつでもここに来ていいんだよ"という居場所がある状態をこれからも維持していくだけだと思っています。発達障害の人は、かつての私がそうであったように、いろんな場所で苦労している方が多いと思います。そういった人たちの誰もが気軽に来れるような居場所を準備しておきたい。欲を言えばここだけじゃなくて、もっと日本中のいろいろなところにたくさんNeccoのような居場所ができたらいいなとは思いますね。また最近力を入れていたのは、大人の発達障害当事者会に関する調査報告書の作成ですね。これは厚生労働省から依頼を受けた調査事業で、私は事業責任者をしていました。長年Neccoに関わってきて、自分たちで自分たちの居場所をつくることももちろん大切だと思っていますが、当事者たちだけでやっていくのはなにかと限界があります。というのも、当事者の生きづらさは、自分の努力や行動で解消出来る部分もありますが、当事者の周りにいる発達障害ではない人や社会の理解、配慮や助けがとても重要です。また先ほどお話したように、私は私自身が発達障害だと分かったことですごく人生が楽になった経験から、まだ自分の特性に気付かず生きづらさを感じている人に発達障害というものを知ってもらいたい。ですから発達障害の啓蒙のため、まず私が出来ることとして、当事者や当事者会の情報を取りまとめ、私たちの生きる困難さや活動を社会に向けて発信し、知ってもらう必要があると考え行動しています。長年発達障害の当事者活動に関わってきましたが、課題はまだまだ山積みです。当事者同士の活動に関して言えば、とにかくいろんな特性を持った方が集まるので、運営のむつかしさがあります。こだわりの強い特性の人同士の意見が対立して分裂してしまったり、正直当事者同士での連携のむつかしさは感じています。なんとか意見をまとめてルールをつくってみると、今度は逆にそのルールを文字通りにとらえてしまって、ルールからちょっとずれる人がいるとこだわりから許せない人がいたり。たとえばNeccoでいうと、かつてはフリースペースのクローズ時間は22時だったのですが、スタッフが大変だということで21時に変更したんですね。たまに場が盛り上がってクローズが21時を過ぎてしまうことがあったのですが、そのことに対して「ずるい」と腹を立てる方がいたこともありました。同じ発達障害の当事者同士とはいえ、特性は本当に人によってさまざまなので、いろんな国の外国人同士が集まっていっしょに何かやろうとしているような困難さを感じています。当事者活動をどうしたらいいか、ずっとそればかり考えています。しんどいと思うことも多々あります。だけど続けている、それは、私は子供の頃からずっと自分のことをダメな人間で、人の役に立つことが出来る人間ではないと思っていたんですね。そんな私が今、活動を通して、目の前の人の支えになったり、社会に働きかけを行ったり出来ている。そのことが生きがいであり、生きるよろこびだからかもしれません。見えない障害とどう向き合うか「私は私が発達障害だと気付けて心から良かったと思っています」これは取材中に金子さんが繰り返しおっしゃっていた言葉です。この記事を掲載している発達ナビのユーザーさんからは、病院へ行き診断を受けることへの心理的抵抗感や、障害受容のむつかしさなど、日々さまざまなお悩みが寄せられています。自分や自分の子どもの生きづらさ・育てにくさをどうとらえるかについて、それぞれに多様な悩みを抱えられているのだと思います。「見えない障害」であり、また「ここからこっち側は障害です」と線を引くように切り分けることは難しいからこそ、その悩みは尽きないのかもしれません。いろんな考え方があって当然で、答えはないのかもしれません。金子さんの場合、彼女は子どもの頃からずっと「自分はちょっと変な子だ」「自分は努力不足でダメだ」と思い悩んでいたそうですが、一冊の本との出会いをきっかけとして発達障害を知ったことで、自分は努力不足でもなく、親の育て方のせいでもなかったということが分かり人生が前向きに進んだと語っています。今、人知れずしんどい思いをしている人、一人でつらい思いを抱えている方が、もしこの記事を読んでくださっていたら、こういった考えや経験をもとに活動をしている人がいることや、その人がつくった居場所があることを、選択肢のひとつとして心の片隅にとどめておいていただけるとうれしいです。大人(成人)の発達障害当事者のためのピアサポート Necco(ネッコ)
2017年12月01日平成30年度の「東京都立高等学校募集案内」が発表。障害への合理的配慮は?出典 : 東京都教育委員会から、「平成30年度東京都立高等学校募集案内」が発表されました。全日制高校の推薦入試の場合は2018年1月23日(火)が、学力検査の第一次募集の場合は2月6日(火)・7日(水)が入学願書の受付日となります。平成30年度東京都立高等学校募集案内入学試験が差し迫ってくる中、障害のあるお子さんや保護者の皆さんにとって、受験時に特性を踏まえた配慮をしてもらえるのかが気になるのではないでしょうか。今回の記事では、具体的にどのような合理的配慮が可能か、またその申請方法などについて、都立高校の場合を例にご紹介します。「障害者差別解消法」で、受験時の合理的配慮を義務付け2016年4月に施行された「障害者差別解消法」では、障害がある志願者が公立高校を受験する際、障害による不利益が生じないような配慮について申請があれば、過度に負担にならない範囲内で合理的配慮を提供することが義務付けられました。障害者差別解消法でも定められているように、都立高校での入学試験でも障害特性に応じた合理的配慮がされています。学力検査、小論文又は作文、面接等において、検査方法、検査時間、検査会場等についての特別な措置を申請することが可能です。志願者の障害の特性等を考慮した上で、問題用紙・解答用紙の拡大、英語リスニングテストでの座席の配慮、別室受検、検査時間の延長、記号選択式での受検、ICT機器の使用、介助者(代筆者や音読者などを含みます。)の同行などが認められます。また、現住所から通学至便な全日制又は定時制の高校を志願する場合、選考の特例を申請することが可能です。合理的配慮の例としては、書字に困難がある場合:・問題用紙を拡大して記入をしやすくする・試験時間を延長する・パソコンを使用して作文問題に解答できるようにする識字に困難がある場合:・問題用紙にルビをふる・介助者が検査問題を読み上げるといったことが考えられます。車椅子を使用する場合などは、検査会場となる教室の階数や机の位置、高さなどへの配慮も申請できるでしょう。ただし、志願者の特性や都立高校側の状況によって、可能となる配慮の内容は異なるので、中学校を通して早めに申請することが大切です。なお、合理的配慮を求めたからといって受験の合否判定で不利になることはありません。都立高校受験の合理的配慮、申請手続きの締切や方法は?出典 : 申請は、在学する中学校を通して行います。まず、担任の先生に相談し、中学校長を通じて志望する都立高校の学校長へ、所定の申請書を用いて申請します。申請後、中学校・都立高校・東京都教育委員会で、志願者の特性や、中学校での学習指導の状況などを考慮した対応を調整することになります。都立高校への申請締切は2017年12月22日(金)までですが、早めに申請ができると、その分余裕をもって都立高校とのやりとりをすることができます。中学校に在籍していない場合は、都立高校入試相談コーナー(電話 03-5320-6755)まで問い合わせます。高校入学後の学校生活での合理的配慮についても相談できる?出典 : 障害がある生徒の場合、入学試験だけでなく、入学後の生活でも合理的配慮が必要となることがあります。学校生活における合理的配慮についても、志願する都立高校に事前に相談することができます。入学試験での配慮の申請に合わせて相談してみましょう。東京都以外の公立高校受験での合理的配慮の対応は?各都道府県それぞれで対応の方法や基準は異なるため、すべての都道府県で都立高校と同様の配慮があるとは限りません。詳しくは、在籍する中学校の先生を通して確認をする必要があります。子どもたちが、未来への一歩を踏み出せるように出典 : 障害があっても、その特性や困り事に応じた合理的配慮を受けることによって、自分の力を発揮して入学試験に臨むことができるようになります。志望校に合格する。そのことで、子どもたちは未来へ向かう道へ踏み出していくことができます。そのためには、自分の力を発揮できる環境をつくることが大切です。これから高校受験を控える生徒さん・保護者の方々は、まずは中学校の先生に相談をしてみましょう。
2017年11月10日先月、NHK総合テレビで 「深夜の保護者会/発達障害 子育ての悩みSP」 をはじめ、Eテレ「ハートネットTV」では 「自閉症アバターの世界1・2」 、NHK「あさイチ」では 「シリーズ発達障害/どう乗り越える? コミュニケーションの困りごと」 など、続々と発達障害特集が放送された。どれも見ごたえのある内容だったが、4歳の自閉症スペクトラムの息子を持つわが身としては、やはりリアル世代である「深夜の保護者会」が一番興味深かった。話し合いにのぼったテーマは、「周囲へカミングアウトはするべきか?」「カミングアウトするとしたら、どう説明したらよいのか?」「夫や子どもの本音は?」「ありのままのわが子を受け入れるには?」など。どれも、まさに発達障害の子育てをしている親の悩み、ど真ん中の内容だったと思う。現役ママの葛藤は、私には痛いほど伝わってきて、ちょっとホロッとしてしまうほどだったし、すでにさまざまなことを乗り越えてきた先輩ママたちが、試行錯誤の上生み出した、わが子との向き合い方はとても参考になった。■わが子を嫌いになる、自分が辛いそして、現役ママの苦しい胸の内を聞いて、改めて発達障害を持つわが子の「ありのままを受け入れる」ことの難しさを思い知った。「彼らを大好きなのに、大嫌いになる時がある自分が辛い」(番組に寄せられたファックスのコメント)「比べるものではないと重々わかっているけど、どうしても下の子と比べてしまう。下の子はできが良くて、かわいくてギュッって抱きしめられるけど、上の子にはできない…。できない上の子を受け入れられない」(番組に参加した現役ママのコメント) NHK総合テレビ「深夜の保護者会/発達障害 子育ての悩みSP」より そんなママたちの悲痛な叫びに、胸が締め付けられた。■本当に、子どものこと受け入れてる?ありのままのわが子を受け入れる――それは発達障害の子育てのスタート地点のように思えるのだが、実は、親にとっては、それが一番難しいことのような気がする。私自身も、「私は周囲にもカミングアウトしてるし、もう受け入れているから大丈夫!」と、すっかり達観したつもりでいたのに、自分でもビックリするほど些細な事で傷ついてしまうことがある。そんな時は、「実は、心のどっかでは息子のことを受け入れられてないのかも…?」と心が揺れる。ブレない自分でいたい。…なのに、なかなかなりきれない! それが自分でも、すごく歯がゆくて悔しいのだ。■子どもが笑ってくれる、そのために何ができるか?これに対して、先輩ママたちや尾木ママの意見は…「試行錯誤する、という作業がすごく大事。私たちも最初はどうしたらいいのかわからない状態で、いろいろ試して、今がある。のちのちつながっていくことだから、あきらめないで少しずつでも進んでいってほしい」「高望みせずに、『一個できたらすごい!』を積み重ねていけばいい。とにかく今できることを褒めて。『褒めるは認めること』って言葉に置き換えてもいい。良いところを褒めるのではなく、できていることを認めればいい。それが丸ごとの発達障害と付き合っていく姿勢につながっていくはず」「発達障害は、息子の世界と私たち世界の交わるところにある、『壁』みたいなもの。でも、その壁は環境や周囲の考え方、関わり方で低くもなる。息子の世界も尊重しつつ、私たち側もお互い気持ちよく過ごせるエリアが広がるように、私たち側が変わっていかなければならない」 NHK総合テレビ「深夜の保護者会/発達障害 子育ての悩みSP」より 様々なアドバイスが飛び交ったが、なかでも印象に残ったのは、先輩ママの次の言葉だった。「よっちゃん(息子さんの名前)に笑ってほしい。そのために自分がどうしたらいいか? それを考えれば自ずと変わってくる。それを変えただけ」私は、障害(発達障害に限らず)を持つ子どもの親というのは、何か高尚な考え方ができるような、立派なママにならなければならないような気がしていた。でも、そうではなくて、この先輩ママが言うような、子どもの毎日の笑顔の積み重ねの先に、いつの間にか生まれてくるような、もっと自然な感情なのかもしれない。そう思うと、私はまだまだ肩の力が入ってしまっているようで、まだまだだなぁ~と苦笑してしまった。■障害は敵ではないまた、当事者である子どもの発言にも考えさせられた。「悪いのはこの子ではなく、障害のせい」と、子どもと障害を別々に考えるということで気持ちが楽になったというお母さんに対してお子さんの考えは違った。「僕は、そういう考え方はやめてほしい。障害は敵ではない。生まれてしまった以上しょうがない。しょうがないから向き合う。うまく付き合っていけたら気持ちは楽になる」 NHK総合テレビ「深夜の保護者会/発達障害 子育ての悩みSP」より この2人のやり取りを見て、発達障害の子育てを描いたコミックエッセイ『母親やめてもいいですか』に書かれていた、自閉症当事者によって書かれた「私たちのことを嘆かないで」という詩の一節のことを思い出した。自閉症は人を閉じ込める殻ではありません中に普通の子どもが隠れているわけではないのです自閉症は私が私であること、そのもの私という人格から切り離すことはできません「うちの子が自閉症でなければよかった」「この子の自閉症がよくなりますように」その嘆き、その祈りは、私にはこう聞こえます。「自閉症ではない別の子がよかった」両親が語りかける夢や希望に、私たち自閉症者は思い知るのです彼らの一番の願いは、私の人格が消えてなくなり、もっと愛せる別の子が私の顔だけ引き継いでくれることなのだと… 『母親やめてもいいですか』(山口かこ・文/文春文庫)より引用 ■何を持って「息子」なのだろう?障害を持つ子どもの親であれば、誰しも、わが子の障害がなおることを願ったことが、一度はあると思う。私自身も、息子が自閉症スペクトラムと診断された当初は何度となく、この障害を息子から取り除きたいと願った。一生治らないものだと知った時は、夜中パソコンの前で号泣した。でも、1年経った今は、こう思うのだ。例えば、息子がいきなりおしゃべりで明るい社交的な子になったとしたら…? それはそれでうれしい面もあるのかもしれないけど、果たしてそれは息子なんだろうか? と。改めて、「何を持って息子なのだろう?」と考えると、思い浮かぶのは、なぜか、やっかいで面倒なエピソードばかり(笑)。むしろ、そのやっかいなところこそが、息子が息子であるための大切な要素なのかもしれない、と。最近ではそう思うのだ。最後に、先輩ママたち全員が、声をそろえていたことがある。それは、「まずは、お母さんが元気なことが基本。自分を犠牲にしちゃダメ。お母さん自身の人生も大事にしてほしい」ということ。子どもに笑顔でいてほしいなら、そのためには、まずはお母さん自身が笑顔でいることこそが大切なのだ。まちとこ出版社N NHK 発達障害プロジェクト 【発達障害についての記事一覧】▼大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)▼「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年10月12日厚労省が「精神・発達障害者しごとサポーター」の養成を決定出典 : 精神障害や発達障害のある人が働きやすい職場作りを促すべく、厚生労働省は今秋から「精神・発達障害者しごとサポーター」の養成講座の開催を決定しました。企業の経営者や管理職、人事部といった人材に限らず、広く一般従業員を対象にした講座です。実際に職場の同僚となる人たちに、精神・発達障害に関する知識や必要な配慮について学んでもらうことで、より身近で具体的な支援体制を作ることを目的としています。「今年度内に2万人の受講およびサポーターの養成を目指す」(厚生労働省)とのことです。毎年、厚生労働省が発表している「障害者雇用状況の集計結果」によると、精神・発達障害者の雇用は2006年から年々増加しています。そのような中、厚生労働省は精神障害者の雇用義務化に伴ない、今年5月に民間企業に義務付けている障害者の法定雇用率の段階的な引き上げを決めました。今まで以上に精神・発達障害者の雇用機会が増え、その人数も増えることが予想されています。一方で、厚生労働省が行った2013年の障害者雇用実態調査によれば、精神障害者の平均勤務年数は約4年。身体障害者のそれが約10年であることと比べても、職場の定着率は高いとは言えません。主な理由は「職場の人間関係」にあると考えられています。例えば、同調査では、精神障害があり、転職を経験した人のうち、半数以上は転職の理由を「個人的理由」だと回答しています。さらに具体的な理由を複数回答で選択してもらうと、「職場の雰囲気や人間関係」と答えた人が33.8%と最も多い結果となりました。こうした状況を受け、「職場の同僚がその人の障害特性について理解し、共に働く上での配慮をしていくことが重要であろうと考え、人事担当者や障害者雇用担当者を中心に行っていた従来のセミナーに加えて、一般の従業員の方を主な対象に、精神障害、発達障害に関して正しく理解いただき、職場における応援者=精神・発達障害者しごとサポーターになっていただこうと考えました」(厚生労働省障害者雇用対策課)とのことです。厚生労働省は約4,300万円の予算を拠出し、今秋から随時、講座を開催していく予定です。誰が講座を受けられるのかこの講座は、企業の雇用者であれば、誰でも受講可能です。受講時間は2時間程度で、特に企業は受講や受講人数を義務付けられてはいません。有志による受講となっています。修了者には「精神・発達障害者しごとサポーター」として、パソコンにはることができるステッカー(写真)や首からかけるストラップなどの「精神・発達障害者しごとサポーターグッズ」の進呈が予定されています。Upload By 発達ナビニュース精神・発達障害者しごとサポーター養成講座では、具体的に「精神疾患(発達障害を含む)の種類」、「精神・発達障害の特性」、「共に働く上でのポイント(コミュニケーション方法)」を学びます。これらの内容について75分程度の講義で学んだ後、15分から45分程度の質疑応答を行う構成となっています。養成講座の講師は普段から、精神・発達障害のある方の就労支援をしているハローワークの職員が担当します。精神・発達障害者サポーターの役割は?出典 : ここで、改めて理解しておかねばならないのは、「精神・発達障害者しごとサポーター」は特別に何かの義務や責任を負う資格ではないということです。サポーターになったら、「○○をしなければならない」といったことは決まっていません。また、しごとサポーターは障害のある特定の同僚を一人で支援しなければならないといったものでもありません。確かに、精神・発達障害者しごとサポーターがいることで、職場で精神障害のある人や発達障害のある人が働く上で、周囲から正しい理解や配慮が受けられるようになり、より働きやすい職場に変わっていくことが期待されます。しかし、障害の有無にかかわらず、共に働くことができるような職場の実現のためには、精神・発達障害者しごとサポーターに特別な役割を求めるのではなく、講座を受けていない方も一緒に職場の雰囲気作りにかかわっていくことが大切です。精神・発達障害者サポーターに関する問い合わせ先企業に勤めている方であれば、勤務先や身近身近に精神・発達障害者で働いている方がいなくても、誰でも講座に参加できます。「ぜひ参加したい」と思われた方はお住まいの地域の都道府県労働局にお問い合わせください。講座は、厚生省があらかじめ指定した会場で行われるものだけでなく、講師が事業所を訪れて行う「出前講座」も用意されています。出前講座に関しても、問い合わせ先は地域の都道府県労働局となっています。養成講座では、精神・発達障害について学ぶだけでなく、精神・発達障害者を雇用する上での実際の困りごとについて質問したり、ハローワークの精神保健福祉士や臨床心理士などの専門家に相談するきっかけを作ったりできます。以下のサイトで、養成講座に関する各地域の問い合わせ先を確認できます。より詳しい情報や、なにかわからないことがあれば、気軽に問い合わせてみましょう。障害者雇用対策施策紹介事業主の方へ|厚生労働省しごとサポーター養成講座リーフレット
2017年09月25日2017年7月に放送されたNHK「あさイチ」の発達障害特集の続編として、9月24日(日)午後11:00~11:50にNHK総合テレビで 深夜の保護者会「発達障害 子育ての悩みSP」 が放送される。「あさイチ」とEテレ「ウワサの保護者会」のコラボ特番だ。出演は、発達障害の子を持つ一般&先輩ママ、有働由美子アナ、尾木ママこと教育評論家の尾木直樹さん、タレントのはなわさん。「ママ友の『大丈夫だよ~』という善意の励ましが辛い」、「夫が非協力的」、「周囲にどう伝えたらいいか?」など、発達障害の子を持つ親が抱えがちな悩みに、先輩保護者らが自らの経験で、具体的な対処法や解決のヒントを紹介してくれるとのこと。また、今回はママだけでなく、夫の本音や当事者である子どもの声も紹介するという。例えば、「悪いのはこの子ではなく、障害のせい」と「子どもと障害を別々に考える」ということで楽になったというお母さんの発言に対して、それを聞いた子どもからは意外な本音が飛び出す。子どもの生の声を放送するのは、今までほとんどなかった試み! 今回の放送は、非常に内容の濃いものになりそうだ。■同じ境遇のママと繋がることのメリット一般的に、発達障害の子育ては少数派なので、子育ての情報源が少ない。だから、こういった番組で、ママの本音や先輩ママから具体的なアドバイスが得られるのは、とても貴重なことだと思う。筆者にも自閉症スペクトラムの息子がいるのだが、以前の保育園でのことを振り返ってみると、正直、居心地の良いものではなかった。他のママの子育て話は、申し訳ないがほとんど参考にならなかったし、正直、保育士の中にも、「発達障害のことをあまり理解していない?」と思わせる先生もいた。だから、療育で同じ境遇のママ友に出会えたことは本当にありがたかった。療育では、みな似たような子育てを経験しているので、相手の気持ちは痛いほどわかるし、こちらも気持ちもわかってもらえるという安心感があった。子どものことをありのままに話せるという心地よさもあった。療育機関や小学校、病院の評判など、地域の情報が得られたり、良質な専門書について情報交換ができるのもとてもありがたかった。また、不思議なもので、「同じような境遇で頑張っている人たちがいる」と感じられるだけで、励まされ、心が強くなれた。療育ママとの座談時間は、まさに、私の癒し&パワーチャージの場であった。■療育ママだって、さまざまだが、当たり前のことだが、次第に、療育ママもさまざまなのだなと思うようにもなった。同じ発達障害でも、子どもの特性や障害の程度はさまざまだし、親の価値観や考え方も違う。子どもの障害を認めたがらないママもいたし、支援学級や支援学校に対して偏見を持っているママもいた。また、コミュニティができればできたで、その中でまた比較が生まれて、誰かが誰かの成長をうらやましいと思ってしまったり。時には、愚痴が長引いたり、悪口などのマイナス話で盛り上がってしまったり。ちょっとした違和感を感じることもあった(もちろん、こんなことは少なかったけど)。 ■自分の身近な範囲を「世界の基準」にしない同じ境遇の仲間、それは本当に心強く大切な存在だ。だが、その世界だけにどっぷり浸かっていると、自分でも知らないうちに、周囲が見えなくなってしまう危険性がある。以前 取材 した(株)アイムの佐藤典雅さんは、「発達障害児のママこそ、常に意識して開かれた視点を持つことが大切。療育だけの狭い世界に自分を閉じ込めずどんどん外の世界に出なさい」と、力説されていた。人は、自分の身近な範囲を世界の基準にし、子育てやわが子の生き方について「こうあるべきだ」と決めつけがちだ。でも、自分の知っている世界なんて、ほんのわずか。偏った価値観に縛られないためには、常に広い世界に触れる必要がある。■発達障害は、「支援すべき少数派の種族」また、以前、NHKスペシャルに出演した本田秀夫氏の著書には、自閉症スペクトラムは「治療すべき“病気”」ではなく、「支援すべき“少数派の種族”」である、という認識を持っておくことが重要 「自閉症スペクトラム10人に1人が抱える『生きづらさ』の正体」(本田秀夫 著)より一部編集して抜粋 と表現されており、なるほど! と思ったものだ。少数派の種族が多数派の種族(一般の人たち)とうまくやっていくには、まず、多数派に自分たちのことを正しく理解してもらわなければならない。そのためには、内輪で慰め合っているだけではなく、積極的に外に向けて発信していかなければならないと思うのだ。私のように、「健常児のママの悩みには共感できない」とか「自分の大変さをわかってもらえない」など、自分で壁を作って引きこもっていても、問題は解決しない。■健常児の子育てをしているお母さんにこそ、知ってほしい私は、たまたま縁あって、ウーマンエキサイトに寄稿する機会を得た。だが、今では、こうした一般の子育てサイトにこそ、発達障害の記事を掲載する意義があると思っている。「こういった子どももいるんですよ」と、普通の子育てをしているママにも、ほんの少しでいいから知ってほしいと思うのだ。私自身、上の娘(定型発達)を育てている時は、発達障害というものをまったく知らなかった。子どもというものは、親が愛情持って育てていれば、自然に優しい心を学び、真っすぐに育ってくれるものだと思い込んでいた。だから、感情の抑えられない子や暴力的な子を見ると、「親にも原因があるのでは?」などと、うがった目で見てしまったりしていた。あの時、私がこの障害のことを知っていたら、もう少し違った見方や対応ができたかもしれない。■壁を取り払うこと、隣の子育てに想像力を持つことだから、こうした寄稿を通して、発達障害の子育てを、周囲に広く知ってほしいと思っている。お互いに隣の子育てに想像力を持つことで、発達障害の子育てを一般の子育てともっと繋いでいきたいと思っている。そして、発達障害の子育てをしているママにも、一歩踏み出すきっかけになればと願っている。私自身、保育園の保護者会で息子のことを説明してからは、園での生活(私の)がずっと楽になった。児童心理学の知識があるママが役立つ情報を教えてくれたり、障害は違うけど障害児を持つママが就学相談のアドバイスをくれたり。「お兄ちゃんがそうかもしれない」と興味を持ってくれたり、「そういう子にはどう接したら負担じゃないかな?」と関わり方を知ろうとしてくれたママもいた。また、いろいろ話してみれば、健常児でも登校しぶりで悩んでいるママがいたり、お友達トラブルで悩んでいるママがいたり、離婚した元旦那と養育費でもめているママがいたり…。私は、自分の子育てばかりが大変だと思い込んでいた。でも、みなそれぞれ、いろいろな事情を抱えて生きている。壁を取り払い、隣の子育てに想像力を持つことで、見えてくる景色はずいぶんと違ってくるのだ。今回、番組の担当プロデューサーからも、「発達障害のある子を持つ親御さんに見てもらいたいのはもちろんだが、それだけではなく、周囲の人にも見てほしい。普段なかなか言えない、当事者の本音を周囲に知ってもらう意味は大きいと思っています」というメッセージをいただいた。さらに、NHKでは、今後、9月26日(火)、27日(水)に「Eテレ」ハートネットTVで「自閉症アバターの世界 1、2」が、9月27日(水)に「あさイチ」の特集で「シリーズ発達障害 どう乗り越える? コミュニケーションの困りごと」など、続々と発達障害が特集されるとのこと。今後の放送にも、注目していきたい。文:まちとこ出版社N<NHK発達障害プロジェクト 今後の放送予定>・2017年9月24日(日)午後11:00~11:50 NHK「深夜の保護者会」「発達障害 子育ての悩みSP」・2017年9月26日(火)午後8:00~8:29 Eテレ「ハートネットTV」 「自閉症アバターの世界 ①」・2017年9月27日(水)午後8:00~8:29 Eテレ「ハートネットTV」 「自閉症アバターの世界 ②」・2017年9月27日(水)午前8:15~9:54 NHK「あさイチ」 「シリーズ発達障害 どう乗り越える? コミュニケーションの困りごと」※内容は変更になる場合がありますNHK 発達障害プロジェクト 【発達障害についての記事一覧】▼大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)▼「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年09月22日9/24(日)深夜の保護者会「発達障害 子育ての悩みSP」見どころは?Upload By 発達ナビニュース2017年9月24日(日)、NHK総合の特別番組、「深夜の保護者会『発達障害 子育ての悩みSP』」が放送されます。小・中学生の保護者の皆さんと教育評論家の尾木直樹さんが子育てについての悩みを共有しながら、問題解決のヒントを探していくEテレの人気番組「ウワサの保護者会」。NHKの通年企画「発達障害プロジェクト」の一環として特別バージョンでの放送です。今回は7/24に放送されたあさイチ「他の子と違う?子育ての悩み」とのコラボとして、あさイチで紹介された家庭のVTRを見ながら話し合いをしていきます。■周囲の理解が十分ではない中、子どもの発達障害・または特性を周囲に伝える?伝えない?伝えるならば誰にどう伝える?■子どもの気持ちにどうやって寄り添う?など、発達障害がある子どもを育てる上での困り事や悩み事から、「発達障害ってなに?」「子どもを丸ごと受け入れられるためにどうする?」といった深い内容まで、出演者・保護者の皆さんが本音で語り合います。番組の詳細はこちら!Upload By 発達ナビニュース◆番組名NHK総合 深夜の保護者会「発達障害 子育ての悩みSP」◆放送日時2017年9月24日(日) 23:00~23:50◆出演者はなわ、尾木直樹、有働由美子、高山哲哉◆サイトURL総合 深夜の保護者会「発達障害 子育ての悩みSP」(画像提供:NHK)
2017年09月22日昨今、メディアでも取り上げられることが増えてきた「発達障害」。身近に当事者がいない人でも、この言葉を耳にする機会は多くなってきているのではないでしょうか。そんななか、NHKが「発達障害プロジェクト」と銘打ち、今年5月から1年を掛けて特集放送を行っています。このプロジェクトのなかのひとつに、イギリスのTVドラマ『ハンク―ちょっと特別なボクの日常―』があります。このドラマは、ディスレクシア(読み書き障害)の少年ハンクを主人公にした学園ドラマ。もともと2016年にNHKで放映されていたものを、「発達障害プロジェクト」に合わせて選りすぐりの5本を再放映するというもの。日本ではまだ発達障害を扱ったエンタメ作品の数は少ないですが、このイギリスのドラマでは「ディスレクシアとはどんなものか」を視覚的にわかりやすく表現しています。当事者たちが学校生活を送る上でどんな困難を抱えているか、さらにその困難さを主人公のポジティブな性格と大胆な発想で乗り越えていくさまをスパイスたっぷりに、コメディタッチで描かれています。■ディスレクシア(読み書き障害)とは?ディスレクシアとは、発達障害のひとつである「LD(学習障害)」の一種で、知的発達に遅れはないものの、脳の働きに特徴があり、文字や数字の読み書きなどに困難が生じることをいいます。有名人では、俳優のトム・クルーズやオーランド・ブルーム、映画監督のスティーブン・スピルバーグなどがディスレクシアであると告白していて、多くの人が障害について知るきっかけとなりました。主人公ハンクは12歳の少年。彼の場合は文字を読もうとすると「字が躍っている」ように見え、書くこと、計算も苦手。「作文の宿題をやろうとしても、文字が躍ってなかなか書くことができない!」「ミュージカルの主役に抜擢(ばってき)されたのに台本が読めない!」など、たびたびピンチに陥ります。どんなふうにこのピンチを切り抜けるのだろう? と思っていると、作文を書かされる回では、考えて考えて考え抜いた結果、「作文ではなくて、工作で伝えよう!」というとっぴな方法を思い付き、立派な作品を作り上げてしまいます。そう、彼のすごいところは、どんなピンチに遭遇しても決してあきらめず、ユニークなアイデアで切り抜けること。じつはハンクは頭の回転がとても速く、行動力もあるのです。なんでも突っ走ってしまうので、先生には怒られてばかりだけど…。■ディスレクシアの子どもが学校生活を乗り越える処世術ディスレクシアであることを悲観せず、親友や家族に助けられながら学校生活を送るハンクですが、ちょっとだけ愚痴が出ることも。「成績はいつもビリだから、いじめられる。ディスレクシアだけど頑張ってるのに…。みんな結果しか見ないんだ」発達障害の子どもは、ときにいじめられたり、不登校になったりするとよく耳にします。これを「二次障害」と呼ぶのですが、まさにハンクも同じ。でも、彼はへこたれません! “成績ビリ”という自分のイメージを変えるためには、「何か得意なことをみんなに見せればいいんだ!」と考えることのできる強さがあります。ハンクの姿を見てハッとさせられるのは、そんな発想の転換。ディスレクシアの自分を受け入れ、ほかのことでカバーしたり名誉挽回を目指したり。とくに読み書きや計算についてはみんなと同じようにできないけれど、自分なりの方法でならゴールにたどり着くことができる。それがハンクの学校生活を乗り切る処世術であり、二次障害を深刻にしない助けになっているようです。■発達障害児子育てのヒントがいっぱいあった!筆者にも、発達障害の疑いのある息子3歳がいます(診断待ちの状態です)。まだ私自身も発達障害について初心者で、毎日迷いながら子育てをしています。療育や幼稚園、児童館など、ほかのお子さんたちと活動をする場所に行くと、つい「みんなと同じように」やらせたいと思ってしまいます。でも息子には「できること」と「できないこと」があって、それが息子にとって大きな負担になってしまっていると感じることも多くあります。そして私は、あとから反省することばかり…。また、同じような境遇のママたちと会話して思うのは、自分も含めみなさん真面目だということ。病院や療育の先生のアドバイスひとつ取っても、まっすぐ受け止めすぎてしまいます。子どものことを考えて、「少しでもできることを増やしたい」という必死な思いが、いつの間にか「アドバイスどおりにしなければならない」という強迫観念にも近いものに変わってしまい、そこから外れるものを許容できなくなってしまうのです。どんなことをするにも、答えはひとつではないし、手段もひとつではありません。ハンクの行動は、それを証明しているように思えます。ママの考え方にしてもきっと同じではないでしょうか。みんなと同じようにできなくてもいい。いろんなやり方を試して、生きる力を身に着けることの方がきっと大事なはず。ステレオタイプにとらわれず、柔軟な考え方・受け止め方ができれば、発達障害児の育児の窮屈さが少しでもやわらぐのではないでしょうか。そんな、ちょっとしたヒントを、ハンクから教えてもらった気がしました。TVドラマ「ハンク―ちょっと特別なボクの日常―」第4回は、NHKにて9月23日(土)23:25より、第5回は、NHKにて9月30日(土)23:35より放映。<NHK発達障害プロジェクト 今後の放送予定>・2017年9月24日(日)午後11:00~11:50 NHK「深夜の保護者会」「発達障害 子育ての悩みSP」・2017年9月26日(火)午後8:00~8:29 Eテレ「ハートネットTV」 「自閉症アバターの世界 ①」・2017年9月27日(水)午後8:00~8:29 Eテレ「ハートネットTV」 「自閉症アバターの世界 ②」・2017年9月27日(水)午前8:15~9:54 NHK「あさイチ」 「シリーズ発達障害 どう乗り越える? コミュニケーションの困りごと」※内容は変更になる場合がありますNHK 発達障害プロジェクト 【発達障害についての記事一覧】▼大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)▼「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年09月22日息子の日々の生活の流れ。平日の過ごし方がどうしても単調に…出典 : 息子には、重度の知的障害があります。身体は健康ですが、言葉は二語文程度で、意思表示はできるものの、人との会話やコミニュケーションが難しい状況です。特別支援学校を卒業し、就労継続支援B型事業所に8年間通所していましたが、3年前に東京都から九州に転居したのを機に、生活介護事業所に移りました。朝9時過ぎに、事業所の送迎車に乗って家を出て、夕方4時半に帰宅するまで、事業所内で活動して過ごしています。現在は、大好きな刺繍や、刺し子、織り機を使って、作品を仕上げています。事業所から帰宅すると、夕食までの間、息子はiPadを使いネット動画を見たりして過ごしています。その後は、夕食を食べて就寝まで、日々の生活に追われる毎日です。休日には、家族で外出し、買い物や食事に出かけます。息子も買い物が大好きで、いろいろな店に行くのを楽しみにしています。息子の帰宅後の生活をもっと充実させたい出典 : 買い物が大好きな息子。でも、休みの日以外は、特別に用がある場合でなければ、施設から帰宅後に出かけることはありません。夕飯の支度や家事がある私は、息子と出かける余裕もなく、毎日が過ぎていってしまいます。この空いた時間に、何か習い事や運動などを入れることはできないかと考えたりもしましたが、送迎や待ち時間などを考慮すると、我が家の現在の状況では難しく、断念せざるを得なかったのでした。大好きな買い物に移動支援が利用できるかも!出典 : 私は、このことを相談支援事業所に話してみました。施設から帰宅後の2, 3時間を、もっと息子の喜ぶような時間にできないものか。息子の大好きな買い物に付き添ってくれるような支援はないだろうか……すると、地域生活支援事業の一つである移動支援を受けられると教えてくれました。息子の外出も、移動支援を利用すれば、ヘルパーさんに付き添って貰うことができるとのことです。すぐに息子の支援計画に移動支援を利用することを加え、区役所の障害福祉課に申請をしました。こうして、息子は移動支援を受けられるようになったのでした。初めてのヘルパーさんとの外出は、徒歩で行ける場所息子に割り当てられた移動支援の月の時間数は、20時間。週に一度、買い物に出かけたとしても、一回に5時間は利用できる計算です。付き添ってくださる事業所のヘルパーさんも決まり、いよいよ、買い物に出かけることになりました。家族や、施設の職員さん以外の人との初めての外出です。ヘルパーさんは、予定時間に家まで迎えに来てくださり、息子と一緒に外出し、買い物を終えると自宅まで送ってくださいます。息子にも、ヘルパーさんにも負担にならないように、最初は家から徒歩で行ける場所を選びました。自宅から徒歩で 約10分のコンビニに出かけ、買い物をし、大好きなアイスクリームを食べて帰宅する計画にしました。出典 : 当日、息子は、少し緊張した面もちでしたが、ヘルパーさんと元気に出かけて行きました。ヘルパーさんのお名前や、当日の行動の予定は、前もって息子に繰り返し説明をしています。事前に、どんな事をするのか息子に説明をすることで、息子も状況を理解し、不安も少なくなります。ヘルパーさんにも、息子の行動の様子や性格など、できるだけ詳しくお話ししました。さて、どんな顔をして帰ってくるか…私は、期待と心配の入り混じった気持ちで、帰りを今か今かと待ちわびました。30分後、息子は息を切らし、少し顔を赤らめて、ヘルパーさんと帰宅しました。手には、コンビニで買ったフライドチキンの包みを持って…「お帰り!どうだった?」と尋ねる私に「楽しかった…」と小さな声で、恥ずかしそうに息子は答えてくれました。移動支援は息子の生活に潤いと成長の機会をつくってくれた出典 : あれから、9ヶ月…息子は、ヘルパーさんとの外出を元気に続けています。月に2回、近い場所での買い物と、少し離れた場所での外食を楽しんでいます。買い物は場所が近いので、1時間以内で帰宅しますが、外食は、食事時間が長い事もあって、3時間くらいで帰宅しています。ヘルパーさんにも慣れて、今では外出を心待ちにしていて、「次はどこに行こうかな…」と、とても楽しみにしているようです。移動支援を利用するようになり、息子の生活は楽しみが増え、充実感のあるものへと大きく変化しました。また、家族や施設の職員ではない、ヘルパーさんとの新しい関わりが増え、コミュニケーションの力も少しずつ育っているように感じます。現在は、月に2回のペースですが、いずれは回数や場所、行動の計画も増やして、20時間を有効に使いたいと考えています。重度知的障害のある息子は、将来的には、家族と離れて入所生活を送る事になると考えていますが、その近い将来のためにも、多くの人との関わりを持ち、コミュニケーション能力を高めていく機会を増やすことが大切だと思います。手探りで始まった移動支援でしたが、息子の毎日の生活を潤し、喜びと楽しみが増えたことで、とても有意義なものになっていることに感謝しています。
2017年09月12日「とにかく勉強ができなくて。実は私、発達障害のひとつ、学習障害だというのが最近わかったんです。道理で、勉強してもいっこうに読み書きができなかったわけです。師匠がしゃべるのを聴いて覚える落語なら、すぐに頭に入ったんですがね」 そう話すのは、古典芸能の型を大切にしつつ、現代的要素を取り入れたスタイルで人気の落語家・柳家花緑師匠(46)。新刊『花緑の幸せ入門「笑う門には福来たる」のか?〜スピリチュアル風味〜』(竹書房新書)では、冒頭で発達障害をカミングアウトしている。 著書に掲載されている中学3年の通知表では、英語と音楽、美術以外はほとんどオール1。この通知表が学生時代の最後にもらったもので、中学を卒業すると祖父である故・5代目柳家小さん師匠に入門した。ところが……。 「“人間国宝・小さんの孫”と言われ続けると、自分が偽者みたいな劣等感に襲われて、若いころはそのプレッシャーに押しつぶされそうでした。八方ふさがりで精神的に不安定な時期がありまして。祖父がいなきゃ自分の存在意義がないんだと思い詰めて、死のうとさえ考えたことも」 笑顔を絶やさず冗舌で、羨ましがられるほどの落語界きってのサラブレッド。けれどだからこそ、心の奥底に苦しみを抱えていたのだ。その鬱屈した毎日から抜け出すべく、自己啓発やスピリチュアル系の本を読みあさったという。そして、幸福について考えたプロセスや結果を著したのが今回の著書だ。 さて、近ごろ師匠を満たしたラッキーな「福」は? 「この間ね、落語会で出囃子を頼める人がいなかったんですよ。10人も弟子がいながら、全員がそれぞれの高座に出かけてしまっていて。途方に暮れていたところへ、近々真打ちに昇進する立川流の落語家が挨拶しに訪ねてきたの。まさに渡りに船!『出囃子をお願いできる?』と(笑)。この縁、“シンクロニシティ”という偶然の一致なんですね。遭遇したら幸せな気分になりますけど、自分から意図して起こすことはできないんですよ。おもしろいでしょ」 10月には東京での独演会「花緑ごのみ」が控えている。その稽古にも余念がない。 「本を読んで興味を持ってくださった方に、落語も楽しんでいただければ!」
2017年09月11日知的障害者福祉法とは?出典 : 知的障害者福祉法(旧:精神薄弱福祉法)は、1960年に制定された法律です。知的障害のある人の福祉をはかることを目的とした法律です。2006年の改正前、その目的は「生活支援」という側面だけでしたが、現在は知的障害のある人の自立と社会参加を促進するよう法律で定められています。それでは実際の法律の文言を見てみましょう。(この法律の目的)第一条 この法律は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 (平成十七年法律第百二十三号)と相まつて、知的障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため、知的障害者を援助するとともに必要な保護を行い、もつて知的障害者の福祉を図ることを目的とする。また、この法律は2013年に制定された「障害者の日常及び社会生活を総合的に支援するための法律」、別称「障害者総合支援法」という障害のある人全般に適用される法律とあいまって、その内容が定められています。それまでは、障害種別によって個別の法律に基づき様々なサービスや制度が成り立っていました。その後、総合支援法ができたことにより、「知的・身体・精神」の3つの障害が同じ法律内で扱われることとなりました。そのため、従来の知的障害者福祉法がもっていた独自の法的な意義は希薄化しているのが現状です。それにともない、知的障害のある人へのサービスや制度も、障害者総合支援法に移行しています。知的障害者福祉法の概要出典 : 知的障害者福祉法は以下の4つから構成されています。・総則・実施機関及び更生援護(実施機関等、障害者入所支援施設等の措置)・費用・雑則総則とは、全体を通じて適用される法律のきまりのことです。つまり、法の根幹となる部分です。知的障害者福祉法における総則は、以下の4つの項目から成り立っています。◇目的知的障害のある人の自立と経済活動を促進させるために、知的障害者の福祉をはかることを目的としています。このために、国や自治体、施設などは知的障害のある人を保護し、適切な援助を行うことが定められています。◇自立への努力と機会の確保・知的障害のある人は、そのもっている能力を使って社会活動、経済活動に参加するように努力しなければならないとしています。・社会を構成する一員として、自立し、社会、経済、文化などの活動に参加する機会をもっているとされています。◇国、地方公共団体と国民の責務国や地方公共団体は、上の理念が達成されるために、国民の理解を促し、必要な援助と保護を行うことが定められています。国民は、知的障害のある人の福祉について理解を深め、社会経済活動参加する努力に対して協力することが定められています。◇職員の協力義務知的障害のある人に援助や保護を行う職員は、児童から成人まで一貫して福祉支援を行うことが定められています。このように、知的障害のある人が社会の一員として、社会的、経済的な活動に参加できるように、すべての国民、行政、職員が努めることを義務付けたのが、知的障害者福祉法です。この部分には、知的障害福祉法に関する支援を提供する機関について記載されています。・支援の実施は、市町村が実施の主体となっていること・知的障害者の判定は、知的障害者更生相談所で行うことなどの点が記載されています。この部分はのちの章で詳しく説明します。知的障害者福祉法のこの項では、知的障害のある人のための施設を運営、設立する際の費用を出す義務者が定められています。また、知的障害のある人がサービスを利用するときには、一部または全部の負担が課せられることになっていますが、その負担は、当事者および扶養者の自己負担の能力に応じることが記されています。知的障害者福祉法ができたわけ出典 : 知的障害のある人への総合的な福祉支援は、どのような理由から展開され、本格的に開始したのでしょうか。日本で、最初に知的障害のある人への福祉サービスを規定したのは、1947年の児童福祉法です。ここでは、障害の有無についての言及はなく、すべての児童が等しく、生活を保障されなければならないという理念が述べられています。その後、1953年に「精神薄弱児対策基本法」が策定されました。この法は、のちの1960年に成立する知的障害者福祉法の下敷きとなったものです。この法律の要綱では、成人をも視野に入れており、18歳を過ぎた知的障害のある人にも必要な施策がとられることとなっていました。しかし、この法律には様々な問題点がありました。というのもこの法律では、知的障害のある人の「隔離」と「保護」を前提としていた点です。そのために、具体的にとられた施策は、不良行為を行う知的障害のある人を収用する設備の強化や、優生手術の実施など、知的障害のある人を社会から排除するものでした。また、実際の福祉施策が適用されたのは、18歳未満の知的障害がある子どもだけでした。「隔離」を前提とするような法律の問題点を改善する声があがり、1960年に成立したのが知的障害者福祉法です。この法律でようやく、名実ともに児童から成人までの一貫した支援を提供する事業が整備されました。知的障害者福祉法の改正と障害者総合支援法出典 : 障害者制度は2003年、2006年、2013年と3度の変革を迎えています。これにともない知的障害者福祉法の位置づけや内容も変化してきました。まず2003年には、支援費制度が導入されました。ここでのキーワードは「障害者の選択の尊重」です。この制度の導入により、それまでは行政が定めたサービスしか受けることのできなかった利用者は、自分に合ったサービスを選べるようになりました。そして2006年には、「障害者自立支援法」が成立しました。ここで福祉サービスにおける障害者の位置づけが大きく変わりました。というのも、それまでは障害の種別によって提供されるサービスは分かれていたからです。障害者自立支援法の成立により、障害の種類や年齢にかかわらず、障害のある人たちが必要とするサービスを利用できるように、利用のしくみが一元化されました。そのために、それまで知的障害のある人を対象として提供されていたサービスの多くが障害者自立支援法という共通の制度のもとで一元的に提供されることになりました。2013年には、上記の障害者自立支援法の改正法として、障害者総合支援法が成立しました。ここで、よりよい支援を行うことで施設を退所する障害者が省令で追加されるなど、障害のある人が自立した日常生活、社会生活を営むことが法律の目的として定められいます。障害者総合支援法については以下の記事で詳しくご紹介しています。知的障害者福祉法の中で明確な定義がない「知的障害者」出典 : 「知的障害」という名称は、学校教育法や児童福祉法などの法律で使用されてから、一般的に福祉現場や医療の領域で、日常的に使われるようになりました。一般的には、知的障害とは、金銭管理、読み書き計算など日常生活や学校生活の上で知的機能を使う知的行動に支障があることを指す場合が多いです。しかしながら、肝心な法律においては、どのようなものを知的障害と指すのかを定める規定が見られません。このために、医学、心理学、教育学の領域でそれぞれ定義が定められており、共通した理解が得られていないのが現状です。またその呼び名も、教育分野では「知的発達障害」「知的発達遅滞」、医学関連では「精神遅滞」「精神発達遅滞」などばらばらです。支援の必要性の有無、障害の程度をもって、知的障害者を定義する法令は存在せず、客観的な基準を示していません。厚生労働省においては、知的障害を精神医学の領域における「精神遅滞」と同じものと定めていることから、法令上の用語もその基準にならっていることが多いようです。知的障害(ID: Intellectual Disability)は、医学領域の精神遅滞(MR: Mental Retardation)と同じものを指し、「知的発達の障害」を表します。すなわち「1. 全般的な知的機能が同年齢の子どもと比べて明らかに遅滞し」「2. 適応機能の明らかな制限が」「3. 18歳未満に生じる」と定義されるものです。「知的障害者更生相談所」知的障害のある人がより暮らしやすくなるための機関出典 : 知的障害者福祉法は、知的障害のある人がより暮らしやすくなるためのサポートを行う機関を、都道府県に設置することを定めています。それが知的障害者更生相談所です。主に18歳以上の年齢の人が対象となります。18歳未満の場合には、児童福祉法のもと設置された児童相談所を利用することとなります。知的障害者更生相談所では、以下の3つの取り組みが行われています。この施設では、知的障害に関する高度で専門的な知識や技術を必要とする人のための相談を受け付けています。医師やケースワーカーなどの知的障害者福祉司という専門の知識をもった職員が相談にのってくれます。知的障害者更生相談所では、知的障害の判定と療育手帳の交付を行っています。判定および交付は、医師や心理判定員によるものです。知的障害には、国の法律によって定められている定義が存在しません。そのため、障害の認定区分や基準は自治体により異なっています。おおまかには、知能や生活習慣、行動の特徴などから判定します。その他には、IQ(知能検査などの発達検査の結果でわかる知能指数のこと)や日常生活動作(身辺処理、移動、コミュニケーションなどの能力のこと)などが判定の材料に用いられることもあります。療育手帳の交付の詳しい方法は、以下の記事を参照ください。障害の状況や地理的な理由により、来所相談や定期相談ができない場合もあるかもしれません。そのようなときには、自治体によっては福祉士や心理判定員が、相談受付のため地域の巡回も可能ですので、利用するとよいでしょう。知的障害のある人に関連する制度や利用できる手当て出典 : 知的障害のある人に対する支援の体制にはさまざまなものがあります。現在、障害の種別に関わりなくサービスを一元化する動きのために、本法律を根拠とした知的障害のある人に特化した制度はありませんが、別の法律に準拠やガイドラインに定められた制度や手当をご紹介します。知的障害と判定された人に、一貫した相談や指導を行い、各種の福祉サービスを受けやすくすることを目的とした制度です。交付は、都道府県及び指定都市の長が行います。療育手帳制度は、法律で定められた制度ではなく、「療育手帳制度について(昭和48年9月27日厚生省発児第156号厚生事務次官通知)」というガイドラインに基づいた制度で、都道府県・政令指定都市ごとに要綱などを制定して行われています。療育手帳をもつことで、以下のような支援やサービスを受けることができます。・保育園への入園優待・就労支援・障害者医療費の助成・公共交通機関の割引・各種料金の割引、減免支援費制度とは、障害のある人自らがサービスを選択して、デイサービスや授産施設などの事業者と対等な立場で契約を結び、サービスを受けることのできる制度で、2003年に導入されたものです。当たり前のことだと思われた方もいらっしゃったでしょうが、導入以前は、利用者はサービスを選択することができず、市区町村などの行政が障害のある人の受けるサービスを決定していたのです。支援制度の「支援費」というのは、「利用者が施設を利用するための費用を市区町村が負担しますよ」ということです。ですので利用者は、直接何らかの金銭を受け取ることができるというわけではありません。障害のある人が施設を利用する際には、本来は全額費用を払わなければならないところから、行政がその利用料を負担するために、利用者が支払う費用が軽減されたという意味で「支援費」なのです。支援費制度は、現在障害者総合支援法に移行しています。それまでの支援費制度は、障害種別ごとのものであったり、利用できる施設が障害種別に応じて細分化されているという点から、複数の障害種別のある利用者からするとややこしいものでした。そこで、これらの課題を解決するとともに、障害のある方本人を中心とする個別の支援をより効果的に行っていくために、2005年に障害者自立支援法(のちの障害者総合支援法)への移行が行われました。成年後見制度とは、認知症のある高齢者、精神障害のある人、および知的障害のある人など、判断能力の十分でない人を支援する制度です。1992年に設けられました。この制度では、お金の管理や相続という手続きを、その人に代わって代理人が行うことができます。成年後見制度には二つの種類があります。一つは、法定後見制度といわれ、家庭裁判所が成年後見人などを選任し、すでに判断能力が低下している人に対して行われるものです。もう一つは、任意後見制度といい、あらかじめ本人が任意後見人を選び、近い将来に備え支援者と支援内容を決めておくものです。具体的な利用の方法や手続きについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参照ください。「もしも」のときのために、掛け金を積み立てておく制度です。精神、知的、身体に障害のある人の保護者が、亡くなったり、重度の障害になったときに、本人に終身一定額の年金が支給される制度です。対象は、・将来独立することが困難であると認められる、特に知的、身体障害の1~3級の手帳をもつ者の保護者・65歳未満の保護者・特別な疾病、障害がないなどの条件があります。対象となる保護者は、毎月1口~2口の掛け金を納めます。1口あたりの金額は、保護者の年齢により変わります。支給は保護者が亡くなった、重い障害をもった場合に、1口につき、月額2万円が本人に、終身支払われます。詳しくは、お住いの市区町村の保健所、保健局のHPをご覧ください。障害の等級によっては、以下の手当が支給されます。該当する手当をもらうことで経済的、精神的な負担の軽減することができます。・障害基礎年金・障害厚生年金・在宅重度心身障害者手当・特別障害者手当・特別児童扶養手当・障害児福祉手当など赤塚俊治/著『新・知的障害者福祉論序論』2008年/刊/中央法規出版山内一永/著『図解 障害者総合支援法早わかりガイド』2012年/刊/日本実業出版社まとめ出典 : 知的障害のある人のための法律は、刻々と変化しています。歴史的な背景から起こっている、障害のある人への差別や偏見から派生する社会問題を解決するために、国の施策が展開されています。法律の目的である「自立」「社会参加」という理念に向かう途上で、まだまだ課題点は多く残りますが、その達成に向けて私たちは着々と歩を進める途上にあるともいえるでしょう。
2017年08月30日「○○が苦手です」では、発達障害の実情が上手く伝わらないこともある出典 : 発達障害のある子のことを説明する際、よく耳にするセリフに「うちの子は○○が苦手です」というものがありますよね。私も、療育センターでそのように説明することをすすめられていたこともあり、最初は長男の障害名ではなく「〇〇が苦手なのよ」と特性だけを伝えるようにしていました。障害名を言って偏見を持たれるよりは、具体的な得意不得意を話した方が伝わりやすいだろう…そう思っていたからです。実際に、そのように伝える方がコミュニケーションが円滑にいく場合もあるでしょう。ですが、私が直面した現実は真逆だったのです。帰ってきた言葉の多くは「苦手ってことは頑張ったらできるんでしょう?」「甘やかしすぎじゃない?」「しつけの仕方が悪いんじゃない?」といった、息子や私の”がんばり”不足を原因とするかのような反応でした。「トツカさんって、ほんと過保護よねー」知らないところでそんな風に言われることもあり、当時はひどく落ち込みました。しかし、今思えばこちらの伝え方のせいで余計な誤解を招いていたのだと感じます。確かに、「うちの子は○○が苦手です」と突然言われても、それがどの程度苦手かを想像することは難しいですよね。「うちの子だって大変なのに、この人は何を甘えているの?」そう思うのは自然なことだと思います。それが定型発達の世界なのです。こうしたことがあってからは、私はあえて先に「うちの子は自閉症という障害を持っています」と伝えた後に、「障害の特性から○○が苦手なため、ご理解いただけると助かります」というように伝えるようにしました。もちろん「障害があるから迷惑をかけても許してね」という意味ではありません。「本人も家族も努力をしていますが、それでも難しいことが多々あります。そのためご迷惑をおかけすることがあるかと思うので、もし気になったことがあれば遠慮せずお知らせください」という意味です。何かあれば常に対応するという姿勢を示しておくことで、理解し合うための土台作りができることに気がついたのです。発達障害がある子たちにとって“苦手”という感情は生きるか死ぬかのレベルであることも多いです。しかし、ただ“苦手”と伝えるだけでは、その困難の大きさを判断できないのも無理はないですよね。そのために、少しでも相手が抵抗なく受け入れられるようにこちらができる工夫。それが「障害名から伝える」ということではないかと感じました。「障害名を伝える=偏見を持たれる」とは限らない出典 : 障害名を伝えることに関して、多くの保護者の方が悩む問題があります。「障害名を伝えることで障害名が一人歩きして偏見を持たれないだろうか…」ということです。私の結論を言うと、それは違います。悲しい話ですが、発達障害に対して偏見を持っている方は特性に対しても偏見を持っていることが多いため、障害名を伝えても伝えなくても大きく変わらないのです。「子どもが○○をするのは親のしつけのせい」すでにそう思っている方にとって、障害名は重要ではありません。むしろ障害名や詳しい特性を伝えることで「障害があるからそのような行動をすることもある」ということを知ってもらえ、逆に偏見がなくなることの方が多かったのです。そのため、障害名を伝えることでプラスになることはあってもマイナスになることはありませんでした。あえて障害名を伝えることで良い意味で変化が!出典 : とはいえ、実際に障害名を伝えるとなると「お友だちができなくなるのではないか」「偏見を持たれないか」など、どうしてもマイナスのことを考えてしまいがちですよね。ですが、先にお話しました通り、実際はプラスになることも多いのです。なぜならば「正しい知識を伝えられる」からです。恥ずかしながら、私自身も、わが子が自閉症だと知る以前は「自閉症=喋らない障害」だと思っていました。実際はそんな子もいればそうでない子もいますよね。しかし、以前の自分のように誤って認識している方は大勢いらっしゃいます。そのため意図せず傷つけたり傷つけられたりということが起こってしますのです。けっして悪意があるわけではありません。ただ、知らないだけなのです。障害名を伝えた後、そんな方たちによく聞かれることがあります。「自閉症って○○な障害だよね?でも、息子くんはそんな風には見えないよ?」それぞれがイメージしている“自閉症”とギャップがあるのでしょうね。障害のカミングアウトを機にこうした質問をされることが増え、その度に説明をするようになりました。大人が正しい知識を持つことで、子どもにも間接的に障害がある子との関わり方を伝えることができます。逆にこちらは年相応の成長や遊びを教えてもらえ、お互いに知らない情報を知ることができるのです。言わなければ伝わらず歩み寄ることができなかったであろう関係も、こちらから一歩踏み出すことで世界が大きく広がり、この先必要な社会とのつながりを作ることができるのではないでしょうか。また、学校でもある程度オープンでいることで、学級内での配慮が円滑に行えると聞いたことがあります。高学年になると、それまで漠然とゆるされてきた発達障害の子を見て「あの子だけ特別扱いされてずるい!」と感じる子が増えてきます。大人でも理由を聞かされず一人だけ特別に配慮されている状態を快く思うことは難しいですよね?それと同じなのです。なぜその子には配慮が必要なのか、それをある程度示してあげることで、クラスメイトにとっても良い効果があると感じました。伝え方を工夫して否定し合わない関係作りを出典 : 現在長男は特別支援学級と普通学級を行き来しています。特別支援学級に通っている子どもたちは、必ずしも障害の確定診断がある子どもばかりではありません。長男に発達障害があることを知っている親御さんもいれば知らない親御さんもいます。子どもたちも同様です。そのような状況ですが、障害名が足かせになっていると感じる経験をしたことはありません。多くの方は定型発達の子と同様、本人の性格や人間性を見て判断してくれていると私は感じています。見えない障害をカミングアウトすることが正解かどうかはわかりません。しかし、私自身は少なくとも不正解ではないと思っています。障害の有無を問わず、すべての人たちが理解し合って生きることは難しいことです。しかし完全に理解することはできなくても、伝え方一つで否定し合わない関係が築けると思うのです。そんな関係を築いていくことが、将来社会で共存することにつながるのではないでしょうか。障害の種類・子どもの性格・周りの環境などで伝え方は変わってきますが、あえて障害名を伝えるという選択もあるということを知ってもらえたらと思います。
2017年08月14日NHK「あさイチ」シリーズ発達障害“ほかの子と違う?”子育ての悩みNHKが1年を通してさまざまな番組で、発達障害の多様な姿を伝えていく「発達障害プロジェクト」7/24(月)にも「あさイチ」で特集が放送されました。今回のテーマは、「“ほかの子と違う?”子育ての悩み」朝の番組で、発達障害のある子どもの子育てを取り扱ったことから、特に保護者の方々の視聴・感想が多かった様子です。発達ナビ編集部でもTwitterで番組の内容を実況し、視聴していた方々の感想もまとめました。以下の、Twitter「モーメント」機能によるまとめをご覧ください。「あさイチ」シリーズ発達障害“ほかの子と違う?”子育ての悩みワガママと発達障害の境界線は…?番組で投げかけられた問いと、視聴者の声今回の番組では、発達障害のある小学生の子どもが二人いるご家庭が取材されました。小学6年生の女の子が、学校から帰って来た場面。直前までお友達とおしゃべりしていた内容が心に残って、なかなか気持ちや行動の切り替えをすることができない、結果、宿題を始めるまでに50分もかかったという様子が映されます。お子さんの発達に違和感を感じたのは3歳児の頃。癇癪が激しく周囲に相談したが、その時は周囲から「大丈夫だよ」と言われるだけで、お母さんはギャップに苦しんだそうです。その後4歳児になったとき病院を受診、発達障害と診断されました。お子さんが「宿題をなかなかやろうとしない」「学校に行きたがらない」といった状況や悩み自体は、子育てしているご家庭なら大抵、一度は直面することかもしれません。ですが、発達障害のあるお子さんの場合、気持ちや行動の切り替えの難しさ、困りごとが起こる頻度や程度には大きな差があり、なかなか簡単には困りごとは解消されません。番組で映されるお子さんとお母さんのやり取りから、診断されてから今に至るまでの日々、積み重ねて来た工夫や理解、お子さんの成長の足跡も感じられます。それでもやはり、思うようにいかなくて、パニックや癇癪を起こしてしまうこともある。同じく発達障害のあるお子さんを育てる保護者の方や、ご自身も幼少期に似たような状態になっていたと語る、成人の発達障害当事者の方など、視聴者の方々から共感の声が寄せられていました。一方、スタジオゲストの方からは、「これが単なるワガママなのか、発達障害によるものなのか、わからない」という意見も出てきました。ワガママと障害はどう違うのか。そんな疑問に対して、Twitter上でも視聴者のさまざまな声が寄せられます。番組中でも、一見して誰にでも起こるような困りごとでも、発達障害の場合は、生活に支障がでるぐらい、程度や頻度が大きいという説明がなされていました。ですが、程度や頻度は違えど、起こっている症状や困りごと自体は、どんな子どもにも見られうるものであるゆえに、周囲の人からすると一見してその違いはわかりにくいのでしょう。どこまでがワガママで、どこからが障害なのか…発達障害が身近でない人からそのような疑問が呈されること自体は、無理もないことかもしれません。また、性質や程度の違うさまざまな凸凹のある人々が、連続体(スペクトラム)のように存在していると言われる発達障害それ自体の特性からも、明確な線引きをすることは非常に難しいと言えます。目に見えにくい、わかりにくい障害としての発達障害の性質を示すようなエピソードだったように思います。こうしたジレンマに対して、具体的にはどのように対処すれば良いのか。番組のゲストコメンテーターとして出演された、鳥取大学大学院の井上雅彦教授のコメントがヒントとなります。わがままと障害の線引きはどこかと線引きすることは、厳密には難しい。それよりも大切なのは、周りがどういう風に対応して工夫すれば本人が頑張れるようになるのか、という観点だと井上先生は語ります。線引きをすること自体を目的としても、議論にキリをつけることは難しいですが、その子が何に困っていて、周囲の人たちには何ができるのかと、個別具体的な対応・行動をベースに考えることができれば、発達障害かどうかに関わらず、どんな子どもにとっても有効な困りごと解決のアプローチが見つけられるはずです。番組の後半には、下のような声も寄せられました。どんな状況であれ、お子さんも、親御さんも、それぞれのありのままを受け止めて認めて合うことを願う声です。あさイチ出演、古山さんより保護者の方々へのメッセージ最後に、今回の番組のVTRに出演された古山さんからのメッセージをご紹介します。番組終了後、発達ナビ編集部宛にご連絡をいただき、いま、子育てに頑張っている保護者の方々へ伝えたい思いを語ってくださいました。Upload By 発達ナビ編集部「7月24日のあさイチで取り上げて受けていただいた、古山です観ていただいた皆様、本当に本当にありがとうございます井上先生はじめ、スタジオの皆様が沢山協力して下さり、短い時間でしたが、濃い内容になっていたと思います放送後も沢山の反響をいただき驚いています発達障害の子育てをしているママの沢山の方が涙を流しながら共感してくださったメッセージをいただき、勇気を出して良かったと思っています我が子の姿をさらけ出すことに抵抗がなかったわけではありませんその中で取材を受けた理由は、育児に悩んでいるママに伝えたい想いがあったからです毎日毎日、育児に行き詰まり悩んでいるかもしれません発達障害の子育ては育児上級者コースを受講しちゃったと私は捉えていますだから、もう、毎日100点は目指さないでください今日が20点だった日も落ち込んだり自分を責めたりしないで20点だったなら次の日60点以上を目指せばいい一週間で平均60点取れたら、花マルだから、40点が続いたらお休みの日に80点目指せばいいんですそれだって、1人で頑張らないで家族総出でかき集めたっていいんですあ、失敗した、言いすぎたって時は、素直に謝っちゃえばいいんですママが悪かったです、言い直すからさっきの言葉、消しゴムで消して欲しいっていま、悩んでいるママたち毎日、育児に奮闘していると一人で闘っている気持ちになるかもしれません誰にもカミングアウト出来ず誰にも共感してもらえず苦しくて寂しくて辛い毎日を過ごしているかもしれません私もそんな風な光の見えないトンネルの中にいた経験がありますでも少し勇気を出して周りを見てみてくださいあなたには必ず味方がいるはずですあなたは毎日毎日、子供に向き合い悩みながら色々なことを選択していることでしょうもしかしたら世間一般的には間違いかもしれない選択をしていることもあるかもしれません私自身が、子供達に学校以外の場所に行かせることを決めたように…でもあなたが真剣に子供達の幸せを想いながら出した選択ならたとえ、間違いかもしれない選択だとしてもあなたの決めたことなら応援してくれる人がいるはずです私にとっての実母のように味方がいればたとえ一緒に生活していなくても頑張れるチカラになります勇気を出してみてくださいまたもしも味方がみつからなくても覚えていてくださいあなたが真剣に子供達と向き合い孤独と闘いながら子育てしているとき同じ空の下で私も同じように過ごしていますあなたが今日も上手く対応してやれなかったと子供達の寝顔を見ながら涙しているとき同じ空の下で私も同じように涙していますあなたが真剣に子供達の幸せを想いながら頑張っているなら私はあなたの味方ですあなたは一人ではありませんつらいときくるしいとき良かったら私を思い出してくださいあなたとお子様達の幸せを心から願っています」
2017年08月07日障害者総合支援法の自立支援給付とは?出典 : 障害者総合支援法が定めるサービスには、大きく「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の2つの種類があります。自立支援給付は、利用するサービス費用の一部を行政が障害のある方へ個別に給付するものです。具体的には、障害に関する医療や福祉サービス、福祉用具(補装具)などの費用が給付されます。自立支援給付の基本的な運用ルールは、国(厚生労働省)が定めます。これに対し、地域生活支援事業は、国が一律に運用ルールを定めるのではなく、障害のある方がお住まいの各地域で運用ルールを定めて実施した方が実情に応じた対応を期待できる事業や、一般的な相談対応のように個別の給付には当たらない事業をまとめたものです。例えば1人では外出が困難な方への付き添いを提供する「移動支援」や、手話通訳者や要約筆談ができる人を派遣・設置する「コミュニケーション支援」といった事業が挙げられます。詳しい法律の概要やサービスの内容などは次のリンクを参考にしてください。この記事では、自立支援給付の利用申請方法・利用負担額を詳しく解説していきます。障害者総合支援法の給付サービスの申請方法出典 : 自立支援給付の利用手続きはサービスごとに申請方法が異なります。それぞれの申請方法を詳しくご紹介します。障害福祉サービスには「介護給付」と「訓練等給付」の2種類があり、それぞれ申請の流れが多少異なります。介護給付を希望する場合は障害のある方の生活環境を踏まえ、どのような支援をどの程度必要とするかといった度合いを測る「障害支援区分(以下、支援区分)認定」を受けることが必要になります。訓練等給付を希望する場合には原則として支援区分の認定は不要ですが、共同生活援助(グループホーム)を利用する場合には、支援区分認定が必要となります。支援区分は、7段階の区分に分かれ、もっとも支援の必要性が高い区分が「6」、以下「5・4・3・2・1」と続き、もっとも支援の必要性が低い場合は「非該当」となります。支援区分は7段階の区分に分かれ、もっとも支援の必要性が高い区分が「6」、以下「5・4・3・2・1」と続き、もっとも支援の必要性が低い場合は「非該当」となります。この支援の必要性の区分によって、支給されるサービスの時間に違いが出てきます。一部のサービスは支援区分が低いと利用できないこともあります。以下が申請からサービス利用までの流れです。1. 市区町村の障害福祉担当窓口へ申請申請の際には、状況に応じて障害者基礎年金1級の受給の有無や介護保険申請の状況などを聞かれる場合があります。2. 障害者支援区分認定調査市区町村の認定調査員による面接が行われ、全国共通の質問票から心身の状況に関する80項目と状況の調査が行われます。詳しくは次のリンクをご覧ください。参考:障害者総合支援法における「障害支援区分」の概要|厚生労働省3.一次判定認定調査の結果に基づき、コンピューター判定が行われます。4.二次判定一次判定の結果と状況調査、医師意見書などを踏まえ、市区町村が主催する、支援区分や特別な支給決定(必要とするサービス量が基準よりも多い支給決定など)を審議する「審査会」で二次判定が行われます。医師意見書とは、医師が申請した方の心身の状態、特別な医療などに意見を付すものです(市区町村が依頼します)。5.障害区分認定二次判定の結果に基づき、非該当、区分1~6の全7段階で支援区分認定が行われます。各サービスの区分ごとのサービス量は上記のリンクを参考にしてみてください。6.サービス利用意向の聴取・サービス等利用計画案の提出支援区分の認定と並行して、市区町村から福祉サービスの利用等に関する計画(サービス等利用計画、または障害児支援利用計画と呼びます)の案を提出するように求められます。サービス等利用計画案、障害児支援利用計画案は市区両村から指定された特定相談支援事業者、障害児相談支援事業所が作成しますが、申請者自身による作成も可能です(申請した方自身が作成する計画をセルフプランと呼びます)。7.支給決定支援区分や本人の状況、家族・家庭の状況、現在の困りごとや将来に向けた希望、福祉サービスの利用意向、サービス等利用計画案などを踏まえてサービスが支給決定され、受給者証が申請者に通知されます。8.サービス担当者会議申請した方が利用する全サービスの担当者(サービス管理責任者)が出席し、利用する方に適したサービス提供のあり方や、事業所ごとに作成する「個別支援計画」の方向性などについて話し合われます。9.支給決定時のサービス等利用計画の作成市区町村の支給決定やサービス担当者会議での案協議をもとに、最終的なサービス等利用計画を作成します。(セルフプランの場合には、8・9が省略されることがあります)10.サービスの利用開始申請した方はサービスを提供する事業所と利用契約を結び、サービスの利用を開始します。サービスの量や内容については、サービス利用開始後であっても必要に応じて見直すことができます。Upload By 発達障害のキホン自立支援医療には、育成医療・更生医療・精神通院医療があります。育成医療は身体障害のある子ども向け、更生医療は身体障害のある方向け、精神通院医療は精神疾患があって定期的に通院している方向けに、医療の給付を行うものです。利用手続きに関しては市区町村ごとに異なるため、最寄りの市区町村または都道府県窓口に問い合わせてください。申請の際には下記のような事項や持ち物が必要になります。育成医療: 申請書、所得が確認できる書類、医師の意見書など更生医療: 身体障害者手帳精神通院医療: 指定医療機関の中から通院先を決めておくこと車いすや義足、補聴器や白杖などの補装具を製作・修理する際に要する費用の給付を「補装具費」と呼びます。補装具費の給付を受けるためには、障害のある子どもの保護者または障害のある本人が、お住まいの市区町村に申請します。市区町村は医師の意見書による身体障害者更生相談所の判定・意見を依頼し、補装具の製作や修理が必要かどうか決定し、給付が認められると補装具費支給決定通知書、補装具費支給券が発行されます。その後、補装具業者と製作・修理の契約を結び、完成品を受け取るとともに利用者負担(原則1割負担)を支払うことになります。障害者総合支援法の自立支援給付、利用者負担額はいくら?出典 : 障害者総合支援法の障害福祉サービスを利用した際の利用者負担は、原則として「1割」です。ただし、世帯ごとの前年度所得に応じて負担額の月額上限が定められているため、その金額以上の自己負担は生じないことになっています。利用月額が0円に免除される場合もあります。特に、生活保護を受けている世帯や住民税が非課税の世帯については、利用者負担はありません。世帯の範囲には、障害がある大人の場合は利用する本人と配偶者が含まれ、本人と配偶者の前年度所得を参考に負担額を決定します。親の所得は本人の前年度所得には換算されないことになっています。障害がある子どもの場合は、保護者の属する住民基本台帳での世帯が範囲となります。月額上限負担額の目安として、下記を参考にしてみてください。■障害者の利用者負担・生活保護受給世帯・・・0円・市区町村民税非課税世帯・・・0円・前年度所得約300万円以上~約600万円以下の方・・・9,300円・前年度所得約600万円以上・・・37,200円以上が障害のある方に提供している障害福祉サービスの利用者負担額になります。ただし、サービス事業所やグループホームなどで発生する食費、光熱費、交通費などの生活費などは別途に自己負担となります。出典:障害者の利用者負担|厚生労働省出典:障害福祉サービスの利用について|厚生労働省自立支援医療の場合には、下記の条件に当てはまる方であれば、0円~20000円までの月額負担上限となります。下記の条件に当てはまらない場合は原則1割負担となっています。また、入院時の食事療養費又は生活療養費(いずれも標準負担額相当)については原則自己負担になります。・生活保護世帯・・・0円・市町村民税非課税世帯で本人収入が80万円未満・・・2500円・市町村民税非課税世帯で本人収入が80万円以上・・・5000円・市町村民税を33000円以上納めている・・・育成医療の経過措置5000円・市町村民税を33000円未満から23.5万円以下納めている・・・育成医療の経過措置10000円・市町村民税を23.5万円未満以上納めている高額治療継続者・・・20000円自立支援医療における利用者負担の基本的な枠組み補装具費の利用者負担額は原則1割です。ただし世帯の所得に応じて負担上限額が設定されています。・生活保護世帯・市町村民税非課税世帯・・・0円・それ以外の世帯・・・37,200円また、補装具費については障害者本人または世帯が一定所得以上(市町村民税所得割の最多納税者の納税額が46万以上)の場合、給付対象外となります。また、例えば補装具を購入すると世帯の所得状況によっては生活保護の対象になってしまう場合があります。それでは本末転倒ですので、その場合は利用者が負担する費用は生活保護の対象とならない範囲まで減免することになっています。出典:補装具の利用者負担|厚生労働省障害者総合支援法が定める、医療費や食費の免除・減免制度出典 : 障害者総合支援法では条件を満たした方に向けて、生活費や医療費など別途利用料金を超えてかかった費用を免除する制度があります。■障害のある人向けの費用免除と上限・療養介護を利用する場合は、医療費と食費の軽減措置があります・入所サービス、通所サービスを利用する場合、食費・光熱費実費負担に対して減免・軽減する制度があります・グループホームの利用者向けに家賃助成する制度があります■世帯での合算額が基準額を超える場合の高額障害福祉サービス給付費同一世帯に障害福祉サービスを利用する方が複数いる場合や障害児が障害者総合支援法と児童福祉法のサービスを利用している場合などに利用者負担の合計額が一定の額を超えるとき、高額障害福祉サービス給付費が支給され利用者負担額が軽減されます。費用免除や上限、高額障害福祉サービス費についての詳しい内容は次の資料を参考にしてみてください。障害福祉サービスの利用について|厚生労働省まとめ出典 : 障害者総合支援法の給付支援における申請方法は、サービスごとに異なります。また障害福祉サービスの中でも介護給付、訓練等給付によって異なるため、複雑に捉えがちです。とはいえ、ほとんどのサービスは市区町村の障害福祉担当窓口で所定の書類への記入や提出を行えば、その後はある程度まで役所がリードしてくれますから、大まかな仕組みを把握していれば問題ないでしょう。また利用者負担額についても、給付を受ける人や世帯の収入に応じて市区町村が設定しますので、細かいルールまで把握する必要はありません。実際の運用ルールは複雑な総合支援ですが、手続きなどで迷ったらお住まいの市区町村の障害福祉担当課や市区町村から委託されている基幹相談支援センターや委託相談支援事業所へ相談してみましょう。
2017年08月04日