発達障害の治療、お薬はどんなときに使われる?出典 : 発達障害に対してお薬が使われるとき、それは全て対症療法として投与されます。対症療法とは症状を和らげることが目的の治療で、根治、つまり障害を治すための治療でありません。残念ながら現在の医学の水準では、発達障害を根治する治療はありません。ただ、適切なタイミングと種類、量のお薬を使うことで、その症状を緩和できる場合があります。どんな症状に対してお薬が使われるの?出典 : では主にどんな症状に対して、お薬が使われるのでしょうか。自閉スペクトラム症の場合には最も効果が確かめられているのは、その易刺激性、つまり刺激に対して反応しすぎる状態に対する投薬です。日本でもいくつかの抗精神病薬が、厚生労働省からその適応を正式に承認されています。こうしたお薬は自傷や他害といった攻撃的な行動がある際に用いられますが、その効き目の見極めには大事なポイントがあります。易刺激性に基づく攻撃的な行動、例えば嫌いな音を聞いた後のパニックやイライラする状況から逃れるために人を突き飛ばすなどの行動には、ある程度効果が期待できることがあります。一方で、遊びの目的、つまり「窓ガラスを叩くといい音がして楽しいから」とか、コミュニケーションや交渉の目的で「冷蔵庫を開けさせるために家族を叩く」とかの行動には、お薬の効果は期待しにくいのです。ここを上手く見極めて使わないと、無効なお薬を飲むことになったり、大量にお薬を使って、効果よりむしろ副作用が問題になったりすることが起こってきます。結局はお薬を使う場合にも、その標的となる行動の分析が必ず必要となるのです。著しい反復的な行動に対してもお薬が使われることがありますが、この場合もその背景が重要になります。遊びの性格が強い反復的な行動にはお薬はほとんど効果がありません。もしこれを薬で止めようとすると、大量のお薬を使って、眠くてだるくて遊ぶ元気もないという状態を作ることになってしまいます。一方で不安や強迫といった、「やらないと心配」「やらないと落ち着かない」からやむを得ずやっているという、繰り返しの行動には時にはお薬が有効な場合があります。その他、睡眠の障害やカタトニアなどの症状に対して、それぞれの状況にあったお薬が使われることがあります。これらの場合にも有効な場合とそうでない場合の見極めが必要ですので、主治医にご相談いただくとよいでしょう。また注意欠如多動症(ADHD)に対しても、お薬が使われることがあります。実はADHDの治療薬は、あらゆる精神科のお薬の中でも一番効き目が確かなお薬の一つです。投与するとかなり高い割合で効果を発揮します。しかしこれも対症療法に留まり、一方で副作用もしっかりあるので、使いどころを見極める必要があります。どんなときに「薬を使う」という決断をすれば良い?出典 : さてそれでは、どんなときにお薬を使うことを考えればよいのでしょうか。発達障害そのものへの投薬は常に対症療法であるため、発達障害があること、それだけでは投薬の対象にはなりません。必要な対応や環境の調整をして、それでも本人の苦しさが続くとき、またいろいろな対策を講じていてもどんどん環境との不適合が増しているときは、お薬をつかうことを考えても良いでしょう。自分の場合には、「人生の中で嫌いなもの・ことがどんどん増えているとき」というのを一つの基準にしています。またお薬以外の方法をとることがそもそも難しい場合も、投薬を考えることになります。家庭の状況に全く余力がないとき、家族に他の危機が訪れているときなどには、時期を限ってお薬を使うこともあります。もう一つ、これは発達障害に対する投薬ではありませんが、併存する他の精神疾患がある場合には、当然その治療薬を使うことになります。また最も大切で難しいのはお薬のやめどきです。これについては、常に止めることを考えながらお薬を使う、というのがおそらく正解であると思います。減薬や中止のチャンスを常にうかがっていないと漫然とお薬を使うことになってしまいます。・標的となっていた症状が改善してきたとき・環境との不適合が小さくなってきたと感じられるとき・他の支援がうまく回り始めたときなどが、お薬を減らす・止めるチャンスです。ただし急な中止や減量によって逆に有害な症状を来すお薬があるので、減量、中止の際には必ず医師と相談してください。
2016年10月14日反抗挑戦性障害(ODD)とは?出典 : 反抗挑戦性障害(ODD)とは、別名「反抗挑戦症」とも呼ばれ、親や教師など目上の人に対して拒絶的・反抗的な態度をとり、口論をしかけるなどの挑戦的な行動をおこしてしまう疾患です。症状の現れ方によって過興奮型、すね型、マイペース型に分類される場合があり、症状を発症する場面・相手が多いほど重度であると診断されます。反抗挑戦性障害が発達期を通じて何年間も続く場合、両親、教師、監督者などの目上の人だけではなく、同年代の友人、恋人ともトラブルを起こしてしまい日常生活に様々な障害が発生します。反抗挑戦性障害は捉え方によって特徴が異なる疾患です。とくにアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)と世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)では診断基準などが違う場合があるので注意が必要です。反抗挑戦性障害の主な症状出典 : 反抗挑戦性障害の症状として大きく3つのパターンがあげられます。・怒りっぽくイライラする:周囲からの刺激に過剰に敏感になり、すぐにイライラしてしまいます。そのためしばしばかんしゃくを起こしたり、腹を立てて怒ったりしてしまいます。・周囲に挑発的な行動をする、口論がすき:権威のある目上の人物や、子どもの場合は大人から決められたルールに従うことに積極的に反抗し、口論をふっかけます。そしてわざと周囲の人をイライラさせ、自分の失敗、または失礼な行動の原因を他人のせいにしてしまいます。・意地悪で執念深い:周囲の人との間に起こった出来事を根に持ち続け、他人に対して優しくなれない状態が半年に少なくとも2回発生します。反抗挑戦性障害と反抗期の違い出典 : 通常子どもの健康な育成に反抗期は必要なものとされています。反抗期には誰でも親に反抗的な態度をとったり、いらいらしたりするものです。そのため反抗期と反抗挑戦性障害を見きわめることは難しい場合があります。見分けるためには反抗的な行動がどのくらい続いているのか、どのくらいの頻度で発症するのかを考えることが重要です。例えば第一次反抗期にあたる5歳未満の子どもの場合、周囲の人に対して怒ったり、乱暴な言葉をもちいて反抗したり、かんしゃくを起こしたりする行為が1週間に1回、少なくとも半年間続くことが条件となっています。しかし反抗挑戦性障害か見分けるためには、これらの条件だけではなく発達水準、性別、文化の基準などさまざまな条件を考慮する必要があります。これらすべての条件をふまえた上で発症頻度・症状の重さが通常の反抗期を超えている場合は、反抗挑戦性障害と診断されます。判断することが難しい場合は専門家に相談することをおすすめします。反抗挑戦性障害を発症しやすい人出典 : 反抗挑戦性障害は通常就学前に発症し、青年期初期以降の発症はあまり見られないといわれています。発症率の男女比は思春期以前は1.4:1となっており、男児のほうが発症率が約1.4倍高いです。しかし思春期以降は性別による発症率の差はあまり見られなくなります。2~5歳児を対象とした調査では反抗挑戦性障害を発症している人の割合は、それ以外の疾患を発症している人の割合より格段に多く、16.8%のという研究結果がでています。そのうちの半数は重い症状があると診断されました。参考文献: ロバート・ヘンドレン/著 『子どもと青年の破壊的行動障害―ADHDと素行障害・反抗挑戦性障害のある子どもたち』 2011年 明石書店/刊反抗挑戦性障害の主な原因出典 : 反抗挑戦性障害の要因として、育った環境が関わっている場合があるといわれています。その理由として、反抗挑戦性障害は、目上の人からの指示などに対して拒否する拒絶症状が症状の中核となっていることが挙げられます。拒絶症状は一日で現れるものではなく、反抗的な感情がだんだん積み重なって発症してしまうと考えられており、主に幼少期の環境に左右されやすいのです。保護者や周囲の人と対立してしまったときに、大人が次はこうしようかという改善策を提示せず、子どもをただ批判、非難することによって抑圧してしまうことはとても危険です。これにより、子どもは自分を守るため挑戦的で反抗的な感情をおこしたり、行動してしまう可能性が生まれるのです。しかし環境要因は決定的な要因ではなく、気性が荒い、我慢することを苦手などのもともとの気質要因、遺伝的要因なども関わり合うともいわれているため、はっきりとは原因が解明されていないのが現状です。反抗挑戦性障害の診断基準出典 : アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)による診断基準は以下の通りです。A. 怒りっぽく/易怒的な気分、口論好き/挑発的な行動、または執念深さなどの情緒・行動上の様式が少なくとも一人以上の人物とのやりとりにおいて示される。怒りっぽく/易怒的な気分:(1)しばしばかんしゃくをおこす(2)しばしば神経過敏またはいらいらさせられやすい(3)しばしば怒り、腹を立てる口論好き/挑発的行動:(4)しばしば権威のある人物や、または子供や青年の場合では大人と、口論する(5)しばしば権威のある人の要求、または規則に従うことに積極的に反抗または拒否する(6)しばしば故意に人をいらだたせる(7)しばしば自分の失敗、または不作法を他人のせいにする執念深さ:(8)過去6ヶ月に少なくとも2回、意地悪で執念深かったことがある注:正常範囲の行動を症状とみなされる行動と区別するためには、これらの行動の持続性と頻度が用いられるべきである。5歳未満の子どもでは、ほかに特に記載がない場合、その行動は1週間に1回、少なくとも6ヶ月間にわたって起こっていなければならない(基準A8)。このような頻度の基準は、症状を定義する最小限の頻度を示す指針となるが、一方、その他の要因、たとえばその人の発達水準、性別、文化の基準に照らして、行動が、その頻度と強度で範囲を超えているかどうかについても考慮すべきである。B.その行動上の障害は、その人の身近な環境(例:家族、同世代集団、仕事仲間)で本人や他社の苦痛と関連しているか、または社会的、学業的、職業的、またはほかの重要な領域における機能に否定的な影響を与えている。C.その行動上の障害は、精神病性障害、物質使用障害、抑うつ障害、または双極性障害の経過中のみ起こるものではない。同様に重篤気分調整相の基準は満たされない。■現在の重症度は軽度:症状は一つの状況に限局している(例:家庭、学校、仕事、友人関係)中等度:いくつかの症状が少なくとも二つの状況でみられる重度:いくつかの症状が三つ以上の状況でみられる『DSM-5』では、反抗挑戦性障害と素行症を別の疾患として定義しています。素行症とは、周囲の人に反発して、学校のずる休みや繰り返しの嘘をつくなどの挑発的な行動をとったり、激しい喧嘩をしたりすることに加えて、放火や盗み、物に対しての破壊行為などの法律違反に当たる行動をとることを指します。一方、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)では、反抗挑戦性障害は素行症という疾患の中に含まれて定義されます。ここでは、反抗挑戦性障害はおよそ9~10歳未満の子どもに発症する行為障害(素行症)の軽度の症状であると位置づけられます。参考文献: 『ICD-10』 2013年 中山書店/刊反抗挑戦性障害の合併症出典 : ■素行症反抗挑戦性障害の代表的な合併症として素行症が挙げられますが、これは小児期発症型のをもつ子どもによくみられる併存症です。合併してしまう主な原因は、自分より偉い人との間に挑戦的な感情をもってトラブルを起こしてしまうという、共通の症状があることと言われています。反抗挑戦性障害が重度になるにつれて素行症の症状もあらわれてきてしまうのです。しかし反抗挑戦性障害と違い、素行症には人や動物に向けた殴るなどの攻撃的な行動や、物の破壊、または盗みや詐欺など違反行為がみられるため、しっかりと区別することが重要です。■ADHD(注意欠陥・多動性障害)もう一つの代表的な合併症としてADHD(注意欠陥・多動性障害)があげられます。ADHDとは、不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状がみられる発達障害のことです。 年齢や発達に不釣り合いな行動が社会的な活動や学業に支障をきたすことがある障害です。ADHDを発症している子どもの20~56%は二次障害として反抗挑戦性障害を発症するといわれており、発症する確率は3歳の子どもが一番高いと言われています。その他にも反抗挑戦性障害は不安症群やうつ病の合併のリスクも高いと言われています。その理由は怒りっぽい、気分の波が激しいなどの症状が一致している傾向にあるからです。発達障害に関連のある行動障害についてl 国立特別支援教育総合研究所ADHDの二次障害としての反抗挑戦性障害出典 : 反抗挑戦性障害とADHDは強い関わりがあるといわれており、年齢を重ねるとともに合併する可能性が高くなると言わています。そのときは、元々ADHDがある人が“人間不信的行動”という二次障害として反抗挑戦性障害を発症する場合が多いです。人間不信的行動とは、自尊心・自己肯定感が低下して自分はダメな人間かも知れないと思い、そんな自分のことを誰も理解してくれないという気持ちから、周囲の人を信じれなくなったときに起こしてしまう行動のことを指します。ADHDを発症している人は、自分自身がADHDであることを認識していないケースも多く、周りから理解が得られていない場合も多いです。そのため知らない間に人間不信になり、反抗挑戦性障害を発症しているということも少なくないのです。またADHDには主に、不注意優勢型、多動性・衝動性優勢型、混合型の3つのタイプがあります。その中でも、不注意優勢型のADHDのほうが反抗挑戦性障害の症状が比較的軽い傾向にあります。ADHDのある子どもとその家族の間でおこる衝突の多くは、合併症としての反抗挑戦性障害が関与している場合があります。そこで衝突・喧嘩をする回数が過度に多いときはADHDではなく、反抗挑戦性障害が原因かもしれないと考えることが重要です。ADHDに反抗挑戦性障害が合併すると、対立や怒りの感情の発生、コミュニケーション障害によって、単なる衝突・喧嘩にとどまらない対人関係への悪影響の及ぼし合いが多く発生します。例として母親との関係を挙げると、ADHDと反抗挑戦性障害が合併している10代の子どもの多くで、その青年の症状に加えて母親の精神的苦悩が加わり、親子間の対立や悪影響の及ぼし合いが発生することが分かっています。反抗挑戦性障害が気になったときの相談先出典 : 反抗挑戦性障害は素行症(行為障害)やADHD、うつ病などの、様々な合併症と関わりあっている場合が多く、年をとるにつれて症状が複雑化しやすい傾向があります。また、年齢が上がってからの治療は、反抗挑戦性障害がある子どもが治療に対して抵抗することがあるため、早期に診察・治療することがおすすめとされています。明らかに感情の波が激しく怒りっぽかったり、口論が絶えなかったりする場合は以下の相談先に相談するか、医療機関の受診をおすすめします。■児童相談所:「子どもの養育に関する相談」、「障害に関する相談」、「性格や行動の問題に関する相談」などの育児に関する相談ができる機関となっています。全国児童相談所一覧l 厚生労働省■全国精神保健福祉センター:各県、政令市にはほぼ一か所ずつ設置されている窓口であり、精神保健福祉に関する相談をすることができます。相談については、予約制、健康保険の適応があるところがあります。詳細は、それぞれのセンターにお問い合わせください。全国精神保健福祉センター一覧l 厚生労働省■精神科・心療内科:心の症状、心の病気を扱う科です。心の症状とは具体的に不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想などのことです。心療内科は心と体の不調だけではなく、ほてり、動悸などの身体的症状とその人の社会的背景、家庭環境なども考慮して治療を行います。反抗挑戦性障害の治療法出典 : 反抗挑戦性障害の治療は・症状の重さと発症する頻度を減らすこと・患者が社会生活を送る上で発生するトラブルを少なくすること・家族のストレスを軽減すること・行為障害へ進行することの予防を目的として実施されます。治療法として主に薬物療法、社会技能訓練、認知的技能訓練、ペアレント・トレーニングなどがあります。薬物療法に関しては、反抗挑戦性障害の原因に直接的に効果がある薬はまだ開発されていないため、興奮や衝動性などの症状を抑える薬が処方されます。社会技能訓練とは反抗挑戦性障害がある人が、大人や友だちがいる場で周囲の人のサポートを受けながら行う、社会の中での過ごし方を取得する訓練です。正しいコミュニケーション方法のとり方、怒りや拒絶の感情が発生したときの対処方、目上の人との適切なやり取りの仕方などの練習を行います。また、反抗挑戦性障害がある人が否定的な物事の捉え方や考え方を修正し、トラブルが起こらない意見の言い方を獲得するための治療を認知的技能訓練といいます。そこでは主に反抗挑戦性障害がある人がトラブルをおこさないように、自分で課題解決が行えることを目的としています。反抗挑戦性障害がある人を訓練するのではなく、その保護者の子どもとのかかわり方を訓練する、ペアレント・トレーニングという支援方法もあります。主に、保護者の子どもへの行動、対応方法を変えられるようになることを目的としています。親は子どもの反抗的な行動の動機、行動のパターンを理解・分析する訓練をすることによって、問題行動にたいして上手く対応し、子どもの反抗的な行動を減少させることを目指します。日本ではアメリカで開発されたペアレント・トレーニングをさらに日本向けに改良した治療法が実施されており、訓練を受けたトレーナーの指導の下で行われています。反抗性挑戦性障害がある子どもへの周囲の人の対応方法・接し方出典 : 反抗挑戦性障害には主に過興奮型、すね型、マイペース型の3つのタイプがあります。タイプ別の対応法を解説します。■反抗-過興奮型過興奮型の子どもは指示に素直に従えず、無視するか、返事はするものの結局やらない傾向があります。このような状態にも関わらず指示を繰り返すと、子どもが興奮して暴言を返してくるなど、売りことばに買いことばとなってしまいがちです。「指示に従うことは自分の負けだ」などと、誰に対しても、勝ち負けの気持ちが働いてしまうことが主な原因です。このような過興奮型には、前もって約束する方法が適切です。その場ですぐに「~しなさい」と命令するのではなく、前もって約束したことを思い出させるようにします。そうすることで子どもにとって親との戦いではなく、約束を守るかどうかという「自分との闘い」となるように誘導します。具体的なポイントとして、子どもが約束を思い出せないときは、「何を約束したっけ?」と内容を聞きだすのではなく、まず約束したという事実を伝え、「お風呂、遊ぶ、どっちかな?」と二択の質問にします。ことばだけでは伝わらないときには、絵カードを用いて選ばせることもおすすめです。■反抗-すね型すね型の子どもは衝動性が高く、思いついたら計画性なくすぐに行動してしまいます。しかし、自分の思い通りにならないことがあると、ちょっとした拍子ですねていじけてしまったり、ケンカをしてしまったりします。すねていじけてしまう原因として、数多くの失敗体験が心の中にたまり自信が持てなくなり、どうせやっても失敗してしまうとネガティブな思考が染み付いてしまったことが挙げられます。そのため、自分は上手になれる、上達できるという成功体験を実感してもらう必要があります。おすすめは、運動や料理などを通じて、成功体験を実感してもらうことです。例えば縄跳びでは、跳ぶ回数や跳び方でランクをつくり、徐々に上手くなっているという実感を体験してもらいます。ここで重要なポイントは、・何をやるべきかを明確にする・どこまで到達することができたか分かりやすくするために段階的な目標を示す・子どもの取り組みのモチベーションを維持するために結果のみではなく過程を評価することです。また子どもは。本当に自分にできるかと、心の中では不安を感じています。そのため、「本当に上手くなってきたね、こうやっていけばもっと上手くなるよ」と語りかけをしつつ、自信をつけてあげることが大切です。■反抗-マイペース型マイペース型の子どもは集団で遊ぶことや、他の子との共同作業を苦手とします。幼児期では集団に入るよう誘うとパニックを起こしてしまうことがあります。その後、小学校の半ばあたりになると、周りの子どもたちと興味やペースが合わないことがはっきりとしてきます。マイペース型は、じっとすることは苦手であるにも関わらず、好きなものには集中することができるといった子どもによく見られます。また、人の気持ちを理解することを苦手とする一面がある子もいます。このような子どもに対しては、本人の興味やペースなどを配慮して、周囲との距離感を調整してあげることが主な対応方法となります。子どもが嫌がっているような素振りや表情を見せた場合は、無理強いしないで合わせてあげることが重要です。出典 : と反抗挑戦性障害を合併している子どもと家族がうまく関わっていく上で、重要な4つのポイントを紹介します。1. 感情的に対応しない:子どもが感情的に話をする場合には「静かに話すこと」を促し、落ち着くまで相手をしないようにしましょう。ちょっとしたことでも感情的に反応してしまう傾向があり、周囲の人々がそれに対して感情的に接してしまうと状況が悪化してしまう恐れがあります。2. パパに理解してもらう多くの家庭は子どもと多くの時間を過ごすのはママである場合が多いです。そのため、たとえ子どもとママの関係が悪化してもパパはあまり状況をつかむことができず、子育てから離れるようになってしまうケースは少なくありません。一方、子どもは普段一緒に過ごす時間が少なく、あまり反抗する相手とはならないパパの話にはよく耳を傾けることも多いため、パパが話し合いに加わることでみんなで冷静な話し合いができるということも考えられます。思春期を乗り越えていくときのことも含めて子どもを上手に育てていくには、パパの理解を得てみんなで協力していくことが重要です。3.約束を守りきる経験を積ませる:ADHDと反抗挑戦性障害を合併している子どもは約束したことをなかなか守れないという傾向があります。しかしそのような傾向があるからといって諦めたり大目に見ることを続けたりすると、子どもはどんどん約束を守ろうとしなくなります。そのため子どもの特性を理解し守りきれる約束をすることが大切です。守れたらいっぱいほめる、破ったらなんで守れなかったのかきちんと話し合うとあらかじめ明確に決めておくことがポイントです。また約束を守れなかったときには簡単に許さず、譲らないようにしましょう。4. 子どもに期待し、ポジティブになる:過去のことを責めても子どもの自尊心が低下し、状況や症状が悪化する場合が多いです。これからの成長に期待しネガティブになりすぎないことが子どもの心の健康のために重要です。の理解と対応l 公益社団法人発達協会まとめ出典 : 反抗挑戦性障害とは、通常子どもが発症する障害であり、青年期早期以降の発症はあまりみられません。発症する症状として怒りっぽい、口論が絶えない、執念深く根に持つなどの症状が少なくとも半年続くことが挙げられますが、現れる症状は人それぞれです。通常、反抗期そのものは子どもの健康な成長には必要なものです。それゆえ、反抗期と反抗挑戦性障害の見極めが難しい場合があります。また反抗挑戦性障害はADHD・素行症などの他の障害とも合併・併存しやすい疾患であり、症状が複雑化しやすい傾向にあります。気になることがある場合は、専門家に相談しながら、症状の見極めや対応方法を検討すると良いでしょう。
2016年10月09日感覚の過敏さ(感覚過敏)、鈍感さ(感覚鈍麻)とは?出典 : 「感覚過敏(過剰反応性)」とは、光や音などをはじめとする特定の刺激を過剰に受け取ってしまう状態のことを指します。逆に、刺激に対する反応が低くなることを「感覚の鈍感さ(鈍麻・低反応性)」といいます。どちらも感覚のはたらきに偏りがあることが原因です。感覚過敏があると、多くの刺激を受け取りすぎることによってストレスが増したり、多くの人にとって平気な刺激を過剰に怖がることがあります。また、感覚の鈍感さがあると、遊びの呼びかけの声を聞き逃してしまい、仲間に入れないなど、集団の中でうまく過ごせないことがあります。身体の痛みに気がつかず、病院で手当てを受けるのが遅れてしまうこともあります。このように感覚の感じ方に過度な偏りがあると、日常生活に支障をきたす場合があります。感覚プロファイル,日本文化科学社感覚は、個人の主観的なものであり、個々によって刺激の受け取り方はそれぞれです。そのために、感覚の偏りがある人の困難さは、他の人からは理解されにくいものです。以下に、感覚の偏りのある子どもの情報のとらえ方を表した映像があります。ご覧ください。映像では、子どもが、環境の中にあふれる情報や刺激を細かく大量に拾ってしまう様子が表現されています。多くの人が何も感じない場面でも、感覚に偏りがあると、その場所にいるだけで耐えがたい苦痛を感じることがあるのです。感覚の偏りは4つのパターンに分けられる出典 : 感覚の偏りに関する問題は、その傾向によってパターンに分けて整理することができます。以下に感覚刺激への反応傾向のプロファイリングで使用される4つの分類をご紹介します。なかなか理解のされにくい感覚の偏りについて、客観的な把握をすることで役立てることができるでしょう。■感覚過敏刺激に対して過剰に反応することで、環境の変化やちょっとした刺激も極度に気になるという状態を指します。■感覚回避刺激に対する過剰な反応があるため、刺激のある環境を回避する行動をとることです。■低登録刺激に対する反応が弱く、感覚が鈍い傾向があるとされます。低反応・感覚鈍麻(どんま)のことです。■感覚探求刺激に対して反応が弱いがゆえに、強い刺激を求める行動をすることです。青年・成人感覚プロファイル|日本文化科学社それぞれの感覚ごとの症状刺激の感じ方は個々によりさまざまで、症状も多岐にわたります。感覚の偏りが引き起こす具体的な症状とはどのようなものなのでしょうか。ここでは、五感と呼ばれる視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚と、体の動きをつかさどる固有感覚、体のバランスをつかさどる平衡感覚について、それぞれに分けてお伝えします。出典 : ■情報の刺激がいっぺんに目に飛び込んできてしまう人は多くの刺激がある環境でも、注意を向けたい刺激を無意識的に選ぶことができます。しかし、視覚過敏がある場合には、全ての刺激情報を均等な濃さで受け取ってしまいます。ビビッドでカラフルな色のものや、たくさんのもののある場所は苦手です。■白いものや光をまぶしく感じる視覚過敏でない人にとっては気にならないような光や白いものが、視覚過敏のある人にとっては目に突き刺さるほどまぶしいことがあります。蛍光灯の光や、テレビやパソコンの液晶画面、白い紙を苦手とします。授業中に席を離れてしまうといった問題とされる子どもの行動の背景には、感覚の偏りがある可能性があります。出典 : ■音がやけに大きく聞こえる、響く賑やかな場所にいると疲れやすいなどが聴覚過敏の症状です。聴覚過敏の症状が強い場合、耳をふさぎたくなるほど耳の奥が痛くなったり、頭痛が起きたりするような身体的な痛みを伴うことがあります。人によって気になる音は異なりますが、例として、女性の甲高い声や、休み時間のチャイム、合奏の音、掃除機などの機械音などが挙げられます。■周囲の全ての音が等しく同じように聞こえてくる選択的に音を拾い集めるのが困難になってしまいます。音の刺激に対して適切に注意を向ける処理ができないために起こります。一生懸命聞こうとしていても、たくさんの音が聞こえてしまうので本人は混乱しています。■音が聞き取りにくい逆に聴覚への反応性が低い場合には、音を聞き取ることができないために、結果的に、授業中に上の空になったり、呼びかけても応じなかったり、またテレビの音を大きくしたりといった様子が見られることがあります。埼玉県立総合教育センター特別支援教育担当 『自閉症の特性と支援 Q&A集』p6出典 : ■においに過剰に反応する少しのにおいを過敏に受け取ってしまうことが嗅覚過敏です。少しのにおいでも過剰に受け取ってしまうあまり、ストレスが増加します。においに耐えられなくなって、吐いてしまうこともあり、ひどい場合には身体的、精神的ともに支障をきたすことがあります。■においがわからない逆に、嗅覚の鈍感さがみられる場合には、適切ににおいを感じることができません。においがわからないと、同時に味も分かりにくくなるので、嗅覚と同時に味覚の感覚にも支障をきたすことがあります。出典 : ■偏食がはげしい味覚に感覚の偏りがみられる場合、多くの人にとって美味しいと感じられる味がそうではないように感じたり、変わった味を好むようなことがみられることがあります。例えば、特定の味に対して、非常に強い不快感を感じたり、味が混じることを嫌がり、分けて食べたがったり、食べ物、飲み物の苦みや酸味を過剰に感じたりします。結果的に食べ物の好き嫌いの差が顕著で偏食の傾向が見られるようになったり、刺激的な味を好むゆえに調味料や香辛料で過剰に味付けすることがあります。出典 : ■触るのを嫌がる触覚が過敏な場合には、皮膚に触れる刺激を過剰に感じて不快感が生じます。触ることができないものとしては、のりやねんど、スライムなどのぬるぬる、べたべたするものや、たわし、毛糸、洋服のタグが代表として挙げられます。触覚に対する過敏さからくる反応として、以下のような例が挙げられます。・他人から離れて座る、近づこうとする人を押しのける・特定の服ばかり着たがる・爪切り、耳かきを嫌がる・自分からは人懐っこいかかわりをするのに、触れられることを嫌がる・触ることのできないものがある(よって、遊び・活動の幅が制限される)■痛みや熱さに気づきにくい触覚の鈍さがみられる場合には注意が必要です。というのも、触覚が鈍いときには、痛覚(痛みを感じる感覚)、温覚(温度を感じる感覚)も同時に鈍いことがあるからです。温度、身体的な痛みを感じることができないと、身体の異変に気がつかず、その結果適切な対処をできないこともあります。例えば、転んで怪我をしたときにも、本来ならば病院に行って手当をしなければならないはずなのに、その痛みや怪我をしていることに気が付かず、即座に適切な治療を受けることができない場合もあります。■刺激を求めて自傷行為をしてしまう自分が感じることのできる刺激を求めるあまり、血が出るまで腕を掻いたり噛んだり、頭をぶつけるなどの自傷行為を行うことがあるので注意が必要です。■筋肉に対する刺激を過剰に求める固有感覚とは、筋肉の張り具合や関節の曲げ伸ばしを感じとる感覚です。自分の体の位置や動きを把握する役割があります。固有感覚につまづきがあると、筋肉に対する刺激を過剰に求める「感覚探求」が生じます。その結果として、見られる子どもの行動特性には以下のようなものがあります。・強く足踏みをする・体の一部を動かし続ける(常同行動)・他人に思いっきりぶつかる、激しく関わる■動きの刺激を過剰に好んだり、過剰に怖がったりする平衡感覚とは体のバランスをとるときに働く感覚で、主に姿勢のコントロールや体のバランスを保つことに関わっています。平衡感覚に偏りがある場合には、体の揺れや傾きを自身で調節することが難しく、その結果、刺激を求める探求行動があります。例えば、刺激を求めて頭を振りながら走ったり、ぐるぐる回ったり、席を立ったりすることや、まわる遊具やブランコなどが大好きで離れようとしなかったりします。逆に、平衡感覚が敏感な場合には、動きの刺激に対して恐怖心や不安を持ちます。例えば、ブランコや高い場所に行くことを嫌がったり、頭を傾けたり体が傾いたりするのを嫌がったりします。ります。感覚の偏りの原因は? 発達障害と関係があるの?出典 : 感覚に偏りがみられる原因はあいまいではっきりとはわかっていませんが、中枢神経系(辺縁系や視床下部など)における感覚情報処理の問題によるのではないかと考えられています。感覚の過度な偏りと発達障害には密接な関係があります。その中でも、自閉症スペクトラム障害(ASD)では、幼いころから感覚の偏りが見られることが多いといわれています。発達障害のある子どもは、刺激に対して適切な感情を生じさせる機能に特性があると考えられています。そのため本来は有害でない刺激に対して過度な恐怖、不安の感情をもつことがあります。また、適切に外部の刺激を取捨選択し、注意を向けたり調整することが難しいために、発達障害のない子どもに比べて、過剰に反応をしてしまうのです。その結果、新しい活動を避けるようになってしまったり、多動傾向になったり、パニックになったり、周囲に対する不安感が強くなったりします。そして、子どもの場合には、そのような不安を適切な方法で表現できないために、癇癪(かんしゃく)や自傷行為などの問題行動につながりやすい傾向にあります。また、逆に感覚の鈍感さがあるときの行動の一つとして見られるのが、手をふらふらする、首をふるなど、「常同行動(自己刺激行動)」と呼ばれる行為です。これは、感覚刺激を求めたり、不安を紛らわせたりするための、自己調整の行動ではないかと考えられています。常同行動だけを見てしまうと、その行動は不思議に見えてしまいますが、その理由には感覚の偏りがあるといわれています。このような刺激に対して、適切にコントロールすることができれば、本人の不安やストレスは軽減され、そのような行動が減るようになります。子どもの行動が気になるときには?出典 : 子どもの行動が気になったときには、まず子どもの行動をよく観察してみましょう。観察するときは、特定の気になる行動が起こったときに、「どのような状況だったのか(時間、場所、その場にいた人、出来事)」と、「その行動に対してどうしたのか、その結果どうなったのか」という前後の状況を記入しておきます。そうすることで子どもの困りごとやその行動がどこからきているのか把握するための手立てとなります。また、行動をするときにはその背後に何らかの理由があります。子どもが気になる行動をとったときには、その行動がどのような刺激や、どのような理由によって引き起こされているのかを知ることが必要です。つまり、子どもがどのような種類、強さの刺激に対して過敏なのか、嫌悪感を感じているのか、受け取りにくいのかを周囲の大人が知っておくことが大事です。子どもの感覚の偏りを知ることによって、日々の子育てに役立てることができたり、幼稚園や保育園、学校の先生に具体的なサポートをお願いすることができます。また、子どもの感覚の特性を把握するために、保護者が簡単に利用できる感覚のチェックリストもあります。このようなチェックリストを参照することで、気を付けておくべき子どもの行動特徴を知ることができます。判断がつかず心配な場合には、病院の小児科や、地域の子育て支援センターを訪れ、専門家に相談してみましょう。日本版感覚インベントリー改訂版(JSI-R)感覚過敏、感覚鈍麻のある子どもへの4つの対応方法出典 : 上で述べたように、お子さんの様子を注意深く見て、困りごとを発見することで、子どもの困りごとに対する適切な対処方法を考えることができます。感覚に過剰な偏りのある子どもの困りごとを軽減させるためには環境を整える方法と、個人にアプローチする方法があります。感覚の偏りは、刺激に対して過剰に反応する、または感覚に対する反応が鈍いというあくまで「状態」であり、病気とは異なります。医師の間でもその定義はあいまいで、処方箋や治療方法は確立されていないのが現状です。ここでは、感覚に偏りのある子どもの苦痛や困りごとを軽減するための方法についてお伝えします。■感覚に過敏である場合子どもの感覚過敏を理解する上で重要なことは、「無理に刺激に慣れさせることは逆効果である」ということです。感覚過敏自体は、訓練や練習で急激に改善することは難しい場合もありますが、時間の経過や子どもの発達とともにある程度緩和されていくことがあります。刺激に嫌な経験が結びつくと、さらに刺激に対して嫌悪感を強めるようになります。無理に刺激を受けることを強要せず、軽減する方法を考えます。運動会やお祭りといった行事など、いつもと異なる環境で強い刺激が想定される場合・一部のみの参加にする・ピストルの音を子どもが受け入れることができる音(ホイッスルなど)にしてもらうなど刺激を軽減してもらうことも検討します。■感覚が鈍い(低反応である)場合触覚が鈍い子どもは、自分の感じることのできる刺激を過剰に求める「感覚探求」と呼ばれる行動をとる場合があります。例えば、なんでも触って回る、絶えず洋服を触っている、など落ち着きがなかったり、周りの人にべたべたして距離が近いなどの行動が例として挙げられます。このような落ち着きのない行動がみられる背後には、本人の脳に必要な感覚が十分満たされていないことがあるのではないかと考えられています。本人の感覚への欲求を満たせるような遊びや課題を提供してあげるのがよいでしょう。例えば、タオルや人形など、別の触っても構わないものを渡すことで、それらの感覚要求はは満たされることもあります。その結果、子どもは落ち着きのない行動をとる必要がなくなり、安心してじっとしていることが可能となります。自分で刺激を回避する方法を学ぶことも、感覚過敏による苦しみを軽減するひとつの手段です。子どもと大人の間で、このような出来事が起こったときにはこうする、というルールを決めておくとよいでしょう。感覚が過敏である場合について考えます。例えば、教室が賑やか過ぎて落ち着かないときに、黙って教室を飛び出るのではなく、イヤーマフを自分でしたりして、適切な対処方法をとることができます。また、視覚が過敏な場合には、サングラスをかけたりすることにより回避することができます。「音がうるさいときには、イヤーマフをする」「外に行くときにはサングラスをする」というように子どもに決まりごととして認知することにより、自ら刺激を回避できるようにします。感覚過敏のある子どもは、思ってもみなかったタイミングで音や光が突然に入ってくる場合に、不安やパニックなどの不快な情動が特に起こります。ゆえに、子どもを不安にさせないためにはこれから入ってくる刺激に対して、その量や質、そのタイミングを予測できるようにすることが大切です。また、なぜその刺激が生じるのか、刺激に直面した場合、どのように対応したらいいのかを理解することで、刺激に対する不安を軽減することができます。例えば触覚に偏りがある子どもの場合だと、突然に体に触れられると、驚いてパニックになってしまうことがあります。子どもの体に触れたり、水をかけたりする前に、あらかじめ声をかけてあげるようにしましょう。特に「触覚」「平衡感覚」「固有感覚」の発達については、運動や遊びによって日常生活に必要な感覚を整えることができます。これは、「感覚統合療法」と呼ばれ、療育の場面で使われています。感覚統合とは、人の持つ複数の感覚を組み合わせて、整理したりまとめることです。人は、環境からの刺激を受けると、無意識のうちに複数の感覚を連携させながら、反応を起こします。例えば、床に置いてある水の入ったバケツに足をぶつけてしまったときの例を考えてみましょう。バケツに足をぶつけた瞬間、①足にぶつかった感覚を「触覚」で確認し、②身体の現在位置を「固有感覚」で把握し身体に力を入れます。③その情報を受けた「平衡感覚(前庭感覚)」が、こけないように姿勢を保ちます。④ぶつけた音を「聴覚」で聞き、⑤足元にあるバケツを「視覚」で見て、このように、人は複数の感覚を「統合」し、日常生活を送っています。この感覚の統合がうまくいかないと環境から感じた刺激に対して体がうまく反応できません。この感覚統合のプロセスが適切に生じるように促していくくのが「感覚統合療法」です。感覚統合療法を受けるには、自治体の療育センターや、リハビリ、小児の医療機関を訪れ、感覚統合療法に専門性のある作業療法士(OT)に治療を行ってもらうことができます。また、専門のスタッフに治療を行ってもらうほかには、家庭や学校で遊びを通して感覚統合を行うこともできます。家でできる感覚統合の遊びが以下の書籍で紹介されていますので、参考にしてみるとよいでしょう。太田篤志/著『イラスト版発達障害児の楽しくできる感覚統合―感覚とからだの発達をうながす生活の工夫とあそび』2012年/合同出版/刊太田篤志/著『「発達障がい」が気になる子がよろこぶ!楽しい遊び』2016年/PHP研究所/刊森嶋勉・太田篤志/著・監修『ちょっとしたスペースで発達障がい児の脳と感覚を育てる かんたん運動』2011年/合同出版/刊川上康則/著『発達の気になる子の学校・家庭で楽しくできる感覚統合あそび』2015年/ナツメ社/刊おわりに出典 : 感覚に偏りがある場合には、子どもの生活空間に存在する不快な刺激をコントロールする同時に、感覚の偏りによる困難さを理解し、子どもが生きやすい環境をつくることが大切です。子どもが安心して過ごすことのできるように、周囲の大人が子どものことをよく見て、感覚の偏りがあることを本人が知ることで、適切に対処できるようになるといいですね。
2016年10月06日こんにちは、海外在住プロママライターのさとうあきこです。甘くてトロピカルな味のするマンゴーは、スーパーマーケットでも見かけるほど身近なフルーツになりましたね。南国の味を手軽に味わえるようになってうれしい限りです。ところが、マンゴーを食べる機会が増えたことである問題が起こっています。それはマンゴーアレルギーにかかる人が増加していること。今回は、“マンゴーアレルギー”についてご紹介します。目次マンゴーアレルギーの症状マンゴーアレルギーが起こるメカニズムマンゴーアレルギーの予防方法まとめ●マンゴーアレルギーの症状マンゴーを口にして15分程度で口や唇のしびれ、顔のむくみ、喉の腫れ などを感じたら危険信号。激しい症状では、じんましんが出たり、呼吸困難などを引き起こすこともあります。ほとんどの症状は1時間程度で治まりますが、進行が続き、救急治療を必要とする場合も稀にあります。花粉症や喘息患者、他の野菜・植物・フルーツなどにアレルギーを持っている人の場合は、特にアレルギー反応が激しく出る可能性があり、注意が必要です。●マンゴーアレルギーが起こるメカニズムマンゴーアレルギーは、ほぼ花粉症と同じメカニズムで起こっている と考えられています。花粉症を引き起こすアレルゲンの構造と、マンゴーに含まれる植物性のタンパク質の構造がよく似ているため、マンゴーを摂取した口腔内で同じようにアレルギー反応を起こしてしまうのです。また、リンゴやキウイ、桃、メロンやサクランボなどのフルーツでも同様の反応が起こることがあります。●マンゴーアレルギーの予防方法アレルギー反応を完全に防ぐには、マンゴーを食べないことが一番の予防となります。特に花粉症患者はマンゴーアレルギー発症率が高いので注意しましょう。発症してしまった場合は、抗アレルギー薬を服用することで症状を抑え、激しい症状が出ている場合にはステロイド薬を使用することもあります。ほとんどのマンゴーアレルギーは、「アレ?ちょっと口の中がむず痒い?」程度です。そのため、アレルギーであることに気づかずに食べ続けてしまう ことも少なくありません。ただ、体調不良時に大量に食べると突然強い症状が出ることもあるので、マンゴーアレルギーの存在を知り、食べ過ぎに注意することが大切でしょう。また、幼児などに食べさせる場合は少量から、様子を見ながら与えるようにしましょう。●まとめマンゴーをはじめとしたフルーツにアレルギーがあることは、意外と知られていません。また、その症状もナッツなどのように激しく現れることが少ないために見過ごしてしまうことも多いようです。ところが、花粉症の時期や体調不良時などにいつもより多く食べると、突然激しいアレルギー症状を起こして驚かされることがあります。こうなると、マンゴーに敏感に反応するようになってしまい、今後食べたいのに食べられないという悲しい状況に追い込まれてしまいます。適量を食べていれば、絶食するほどの大きなアレルギーではないだけに、マンゴーが好きな人は“食べ過ぎ”には十分注意したほうがよさそうです。【参考リンク】・口腔アレルギー症候群・ラテックスフルーツ症候群の診断・治療 | 渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック()●ライター/さとうあきこ(海外在住プロママライター)
2016年10月04日1学期はあまり学校に通えなかった娘、心境の変化。出典 : 学期が始まりました。昨年話題となった、鎌倉市図書館の「学校が始まるのが死ぬほどツラかったら、図書館においで」というツイートで、9月1日に子どもたちの自殺が多いということを、ご存知の方もいらっしゃると思います。小学生の娘も、1学期の終わりは半分ほどしか登校しておらず、2学期が始まればまた、大きなストレスがかかるのではないか?と不安を抱えながら夏休みを過ごしていました。ところが8月を少し過ぎた頃、娘が突然「私、2学期は毎日学校に行くことに決めた!」と宣言したのです。あれほど、学校へ行きたくないと言っていた娘の、突然の変化。私「どうして行きたいと思うようになったの?」娘「先生や友達に会いたくなったから、かな。」私「そっか。じゃあ、無理はせずに楽しんで行けるようなら行ってみようね。」体に異変が出るほど辛い登校。それでも娘は学校に行くと決めた出典 : そして、その日から娘のチックが始まったのです。本人は気付いていませんが、1日中、目や口を右に左にぐいっと上に引き上げるようになりました。体にチック症状が現れるのは、いつも過剰なストレスを受けたとき。それほどまでに負担がかかるなら、なぜ「学校へ行く」という選択をしたんだろう?それでも私は、娘の決めた事ならば見守ってみよう、と様子を窺っていたのですが…。案の定、9月を前にすると不安は増し、チックはますます酷くなり、塞ぎ込む日が続きました。身体症状が出るほど、娘にとって負担の大きい「学校へ行く」という選択。それでも、娘が「学校へ行く」という選択をしたのは、お友だちや先生に会いたいという気持ちが大きかったからでした。学校から戻るやいなや、娘は私にこう言った…出典 : そして迎えた始業式当日。チックはまだ出ていましたが、娘が決めたことです。私は温かく送り出しました。その後、自宅に戻ってきた娘は一言、「私、学校やめるね」と宣言しました。そして、それ以降、娘は学校に行かずに家で過ごしています。ご家庭によって、「学校」の捉え方は千差万別。また、学校へ行かなくなる理由も、子どもによって違うでしょう。娘の場合、慕ってくれるお友だちは割と多く、先生との仲も良好です。成績もそこそこ良く、授業についていけないという訳でもありません。それでも、行けないのです。その理由を以前、聞いたことがあります。私「学校に行っている間、楽しい時間はある?」娘「家から持って行った本を休み時間に読んでるとき!」私「お友だちや先生と過ごす時間はどう?」娘「う~ん、楽しいのは楽しいけど、私がお喋りしたいことはみんなが知らないことだし、みんなが興味のあることは私にはどうでもいいことだから、結局疲れちゃう。」私「先生は時々しか時間が空いてないし、1対1で話せるわけじゃないから。」とのこと。結局、娘にとってはお友だちと過ごす時間も、会話の内容を相手に合わせる「おつきあい」の一環でしかないようです。朝は仲良しのお友だちが誘いに来てくれて一緒に学校へ行くのですが、ルールに厳格な娘は、道路に向かって缶を蹴ったり、急に走り出したりする児童にも強い怒りを覚えます。出典 : 理由は他にもあります。贅沢な悩みと思われるかも知れませんが、教科書に1度目を通せばわかることを、延々と説明され反復させられる授業も、娘にとっては辛い時間なのです。授業時間を、娘にも意味のある時間にできれば…と、「先生が人に教える時、どんな工夫をしているか観察してみたら?」「先生がお友だちをあてる順番に、どんな意味があるか考えてみたら?」といろいろやってみました。でも、それも1度わかってしまえば、つまらなさすぎる、とのことでした。今、娘にとっての学校は『安心して過ごせる』場所ではなく、顔中にチックが出るほど負担のかかる場所なのです。ずっと頑張ってきました。お友だちも作ったし、係の仕事も掃除も運動会の練習も応援も、誰よりも頑張ってきた。「行かない」と決めたなら、それでいいんじゃない。そんな大きなことを自分で決められるようになった。それだけでも、充分得るものがあったのだと思います。学校が悪い訳でも、娘が悪い訳でもなく、学校というシステムに娘がマッチしなかった。そういうことなんだろうと思います。やめさせるのは簡単なこと。だとしても、子ども自身の学びに繋げたい出典 : 実は、娘が学校へ行くと決めた後、繰り返されるチックを見て、私は何度も「もう学校へ行かなくていいよ」という言葉を口にしそうになりました。でもこれは、自分の人生を決めるのは自分なんだ、ということを身を持って学ぶ良いチャンスと考えていました。苦しんでいる娘に一声かけて、楽にしてあげるのは簡単なことですが、そこで私が「行かない」方へ背中を押してしまうと、「お友だちや先生に会いたかった」という心残りがいつまでも消えず、いつの日かきっと後悔すると思うのです。私にできることは、娘に寄り添い、学校に行かない場合のメリット・デメリットを話し合い、どんな結論を出しても「ママはあなたを応援する」と繰り返し安心させてあげることだけでした。「学校へは行きたくない」でも「お友だちや先生に会いたい」という気持ちを天秤にかけ、どちらを選択するかは、娘自身にしかできないからです。学校をやめた子どもを支えるため、大切にしたいこと出典 : こうして、学校へ通わず家で過ごすようになった娘。これから、担任の先生やスクールカウンセラーを交えての話し合いが、続くことになります。この先、学校へ行かないことでどんなメリット・デメリットがあるのかも、よく調べていかなければなりません。それでも、自宅でリラックスしながら、自分のペースで学習に取り組める環境は、娘に合っているようです。学校の話をすると、まだチックの出る娘。しかし、リラックスしている時には出ないので、この選択で良かったのだと思います。何が正解なのかは誰にもわかりません。だからこそ、親も子もゆっくりと問題点を洗い出し、考え、決断をしていかねばならないのだと思います。わが家では、これからも『安心して過ごせる場所』を基準に子どもと一緒に考えていこうと思います。
2016年09月27日統合失調症はどんな病気?出典 : 統合失調症とは、認知、行動、情動のいずれかに機能障害が発生する精神疾患です。代表的な症状としては、意味がよく分からない言葉を言う、幻覚、幻聴、被害妄想が起こるなどが挙げられます。一般的に10代後半から30代半ばに出現します。神経伝達物質の異常が原因と考えられており、人により機能障害がおこる脳の部分が異なるため、人により症状が大きく異なります。以前は精神分裂病という病名で呼ばれていましたが、病名に対してネガティブなイメージがあることから、2002年から新しく統合失調症という病名を使用することになりました。現在では統合失調症という病名がよく使われているため、本記事では統合失調症と記します。日本精神神経学会/監修 『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』 2014年 医 学書院/刊統合失調症の主な症状出典 : 統合失調症の主な症状は、陽性症状と陰性症状の2種類に分けられます。陽性症状は「妄想」や「幻聴」が代表的な症状として挙げられます。陰性症状は「うつ状態になること」や「感情の起伏が少なくなること」が代表的な症状として挙げられます。人が変わったかのように急に症状が現れるため、周囲の人が戸惑うことも少なくありません。本人には自覚症状がないことが多く、そのため受診が遅れる場合もあります。次のような症状がみられる場合は周囲の人が受診をすすめるとよいでしょう。陽性症状とは神経が興奮し、精神的に不安定になる症状です。主な症状として、妄想、幻覚の2つがあります。・妄想:妄想とは、現実的にはありえないことを信じてしまうことを言います。誰かに攻撃される、悪口を言われているといった被害妄想など数種類の妄想があります。幻覚:現実には起こっていないことが見えたり聞こえたりします。実際にどのような症状があるのか、体験談をご紹介します。今日一日中悪口聞こえた…。いつ治るんだろうこの病気。泣きたい、というか無様だけど、泣いた。頑張っても頑張り続けると、そのストレスで病気悪化するし、どうしたら幸せになれるの?馬鹿みたいなこと言ってるって分かってるけど、神様に嫌われてるとしか思えない。お隣の方の音が私に対する嫌がらせと感じたり、悪口を言っているように感じたりします。又、発症した時には家の中で監視カメラを撮られているように感じて落ち着かなかった経験もあります。セールスの方が来た時には自分を調査していると感じた事もありました。被害妄想が始まると、段々とエスカレートしていって、収拾が付かなくなりがちです。他人から陰口を言われているのではないかなどと要らぬ心配や不安を感じるのです。そんなとき、どうすればいいか判断できません。陰性症状は、エネルギーが下がった状態で起こる症状です。主な症状としては、うつ状態になることと、感情の起伏が少なくなることの2つがあります。陰性症状が進むにつれて日常生活を送ることが難しくなる特徴があります。やる気がないように見えることから周囲の人からは怠け者と見なされ、精神疾患に気づいてもらえないことも少なくありません。具体的な症状としては次のようなものがあります。・感情の表現が乏しくなり、喜怒哀楽がなくなります。・意欲が下がり、やる気がなくなります。例えば身の回りのことに気が回らなくなります。・考える力が低下し、話す内容が少なくなります。話の流れからすると全く関係のないことを話したり、受け答えをしたりすることがあります。・コミュニケーションを取ることが難しくなり、塞ぎこみがちになります。そして外出を控えるようになり、ひきこもりに発展してしまうこともあります。統合失調症の陰性症状が酷くなってきてて記憶力や思考力低下で困ってる統合失調症の陰性症状で動けないんだけど怠け扱いされてツラい。統合失調症の診断ガイドライン出典 : 統合失調症は、大きくとらえると「統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群」という疾患分類の中に含まれる病気です。2014年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)によると、統合失調症の診断基準は次のようになります。A. 以下のうち2つ(またはそれ以上)、おのおのが1ヶ月(または治療が成功した際はより短い期間)ほとんどいつも存在いする。これらのうち少なくとも1つは(1)か(2)か(3)である。(1)妄想(2)幻覚(3)まとまりのない発語(例:頻繁な脱線または滅裂)(4)ひどくまとまりのない、または緊張病性の行動(5)陰性症状(すなわち情動表出の減少、意識欠如)B. 障害の始まり以降の期間の大部分で、仕事、対人関係、自己管理などの面で1つ以上の機能のレベルが病前に獲得していた水準よりも著しく低下している(または、小児期や青年期の発症の場合、期待される対人的、学業的、職業的水準にまで達しない)C. 障害の持続的な兆候が少なくとも6ヶ月間存在する。この6ヶ月間の期間には、基準Aを満たす各症状(すなわち、活動期の症状)は少なくとも(または、治療が成功した場合にはより短い期間)存在しなければならないが、全駆期または残遺期の症状の存在する期間を含んでもよい。これらの前駆期または残遺期の期間では、障害の兆候は陰性症状のみか、もしくは基準Aにあげられた症状の2つまたはそれ以上が弱められた形(例:奇妙な信念、異常な知覚体験)で表されることがある。D. 統合失調感情障害と「抑うつ障害または双極性障害、神経病性の特徴を伴う」が以下のいずれかの理由で除外されていること。(1)活動期の症状と同時に、抑うつエピソード、躁病エピソードが発生していない。(2)活動期の症状中に気分エピソードが発症していた場合、その持続期間の合計は疫病の活動期および残遺期の持続期間の合計の半分に満たないE. その障害は、物質(例:乱用薬物、医薬品)または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない。F. 自閉スペクトラム症や小児期発症のコミュニケーション症の病歴があれば、統合失調症の追加診断は、顕著な幻覚や妄想が、その他の統合失調症の診断の必須症状に加え、少なくとも1ヶ月(または、治療が成功した場合はより短い)ぞんざいする場合にのみ与えられる。(参考文献:日本精神神経学会/監修 『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』 2014年 医学書院/刊p.99-100)統合失調症のプロセス出典 : 統合失調症にはいくつかの段階があります。それは時間の経過とともに症状や程度が少しずつ変化するからです。一般にうつ症状と似ている前兆期に始まり、興奮の激しい急性期、落ち込みの激しい消耗期を経て、回復期へとむかいます。■前兆期焦りと不安を感じ、感覚が過敏になったり気力がなくなる症状が現れます。例えばいらいらしたり、忘れっぽくなることなどが挙げられます。また頭痛や食欲減退が生じることもあり、身体の不調が起こり始めます。■急性期幻覚や幻覚、妄想などの、統合失調症に典型的な症状が現れます。この場合、光に敏感になることも多く生活リズムが崩れてしまうこともあります。例えば誰かに監視されているような妄想があったり、誰かが自分の悪口を言っているように幻聴が聞こえたりすることもあります。■消耗期疲れやすく、集中力がなくなるなどの症状が現れます。神経が消耗することからよく眠るようになります。また子どものような振る舞いがみられる退行が生じることもあります。これはエネルギー不足から生じる症状です。よく眠り、よく休むことでエネルギーを充電しているのです。■回復期エネルギーが次第に戻ってくると、治療などにより行動範囲が徐々に広がり、生活意欲が高まります。そこでリハビリテーションにより社会復帰を目指します。しかし社会復帰に向けてがんばるなかで焦りを感じ、状態が悪化する場合もありますので注意が必要です。統合失調症が生じる要因出典 : 統合失調症はさまざまな要因が複雑に関係しています。いくつかの要因によりストレス耐性が弱まり、それをきっかけに発症すると考えられています。統合失調症が生じる要因としては主に環境要因と遺伝要因、脳内物質の異常の3つがあります。■遺伝要因遺伝要因は統合失調症の発症に関連していると考えられています。しかし、単純に親から子への遺伝だけが統合失調症の原因ではないということが研究で分かっています。あくまで、発症リスクが他の親子と比べて高いということに留まります。統合失調症の親から生まれた子が統合失調症になる率は13%ですので、一般人口における100人に1人よりはリスクが高まりますが、統合失調症を発症しない人のほうがずっと多いといえます。功刀 浩/著 『図解 やさしくわかる統合失調症』 2012年ナツメ社/刊遺伝要因に加えて環境要因が合わさって、統合失調症の発症に影響を及ぼすとも考えられています。■環境要因環境要因としては生まれた季節や生まれ育った環境が関係すると考えられています。たとえば、晩冬や早春、都市部で育った子ども、少数民族の集団などが挙げられます。また胎児期から思春期にかけて起こった出来事も関連があると考えられています。胎児期におけるストレスや感染症への感染、幼児期の虐待などが挙げられます。■脳内物質の異常脳内で情報伝達の役割を担うドーパミンやセロトニンといった脳内物質の分泌量の異常が、統合失調症の要因の一つとして考えられています。伊藤 順一郎/著 『統合失調症 正しい理解と治療法 (健康ライブラリーイラスト版)』 2005年講談社/刊功刀 浩/著 『図解 やさしくわかる統合失調症』 2012年ナツメ社/刊統合失調症の治療を受けるには出典 : 統合失調症を発症する人は自分が病気にかかっていると自覚していないことがほどんどです。本人が病院などの専門機関に行きたがらない場合、周囲の人が受診を勧めましょう。治療が早ければ早いほど回復が早くなります。早期発見、そして早めの治療がポイントになります。統合失調症が疑われる場合は、神経科や精神科、精神神経科などを受診しましょう。病院により受診内容が異なることもあるので、受診できるかどうか事前に病院へ問い合わせて確認すると安心でしょう。本人が病院へ行くことがためらう場合は、保健所、精神保健福祉センターなどに相談するのも良いでしょう。全国の精神保健福祉センター一覧 | 厚生労働省緊急の場合には、夜間や休日でも受付している精神科救急医療機関にいきましょう。周囲の人に危害が及ぶほどの緊急事態の場合は、精神保健福祉法に基づき任意入院または医療保護入院などを行うことも選択肢となります。早めに専門機関に相談しましょう。【精神科救急情報センターご利用のご注意 】夜間休日精神科救急情報センターのご利用に際しては、下記のことについてご協力とご理解をお願いしています。(1)激しい暴力行為等でお困りの場合は、110番通報、お近くの警察署にご相談ください。(2)怪我や病気など、急を要する身体科治療が必要な場合は、119番へご連絡ください。(3)夜間・休日の緊急入院患者用に確保しているベッドの数が限られています。この為、翌日以降の受診で対応できる方については、ご連絡を頂いても受診できない場合があります。(4)緊急入院患者用にベッドを確保している病院は、都道府県内精神科病院による当番制となっています。この為、必ずしもお住まいの近くの病院をご紹介できるとは限りません。また、受診が必要と判断できるまで、原則病院名をお教えすることはできません。(5)入院を前提とした受診を行っても、医師の診断によっては入院が不要となることがあります。(6)お酒を飲んで酩酊状態にある方や、危険ドラッグ・覚醒剤等の薬物を使用されている方は対象外となる場合があります。(7)受診が必要かどうか判断するために、現在の状況やお住まいの場所等を教えていただく必要がありますので、ご了承ください。(夜間休日 精神科救急医療機関 案内窓口 | メンタルヘルスONLINE)一般的に医師が問診を行います。以下が質問の一例となります。・現在どのような症状がありますか・いつから症状は始まりましたか・どのような経過を経ていますか・生活にはどのような支障をきたしていますかできるかぎり家族など周囲の人も付き添いましょう。本人だけではなく身近な人からの情報も役立つことがあります。ただ本人が家族の同席を希望しないこともあります。そういった場合、本人は医者と、家族はカウンセラーやソーシャルワーカーといった専門家と面談するのがよいでしょう。鑑別診断/統合失調症の診断フローチャート | 統合失調症ナビ統合失調症の治療には一般的に、薬物治療を併用しながら心理社会的療法(リハビリテーション)が行われます。薬物療法と他の療法を併用することによって、再発率が低下することがわかっています。治療法の組み合わせによる1年後の再発率*を調べた研究によると、「薬物療法のみを行った群」での再発率が約30%であったのに対して、「薬物療法とリハビリテーションを併用した群」および「薬物療法と家族心理教育(家族技能訓練)を併用した群」の再発率はともに8%と著しく低下していました。リハビリテーションや家族心理教育を単独で行っても再発率は低下しませんので、薬物療法と組み合わせることで高い治療効果が得られることになるといえます。(治療する 治療のポイント | 統合失調症ナビ)それぞれの治療法について、詳しくご紹介します。■薬物治療薬物療法は抑うつ状態や不安を軽減し、気持ちを安定させることなどを目的としておこなわれます。薬物治療には抗精神病薬と補助治療薬を使います。主に抗精神病薬を主とし、他の精神病の症状がある場合に医師の判断により補助治療薬を併用します。・抗精神病薬抗精神病薬とは精神症状を和らげるために使うものです。幻覚や不安、神経症状といった陽性症状や陰性症状に対して有効です。・補助治療薬抗精神病薬のほか、補助治療薬が処方されることもあります。補助治療薬とはうつや不安、不眠など精神症状がある場合に、併用するお薬です。また副作用を和らげたり、気分の上がり下がりを安定させたりするような薬もあります。必要な場合は医師が判断し、服用します。薬物治療は人により副作用が生じることがあります。これは服用する薬が神経へ働きかけているからです。薬物治療を行う際には必ず医師の指導に従い、副作用と疑われる症状が起きた場合には、自分で判断せず医師に相談しましょう。起こりうる副作用について詳しくは次のサイトをご覧ください。うつ病・統合失調症薬の副作用イラスト集とその使い方(医師) | COMHBO 地域精神福祉福祉機構■心理社会的療法(リハビリテーション)心理社会的療法(リハビリテーション)はストレスの原因となるものを特定することや認知(ものの考え方やとらえ方)を変えることを目的としておこなわれます。カウンセリングなどを通して病気への理解を深めます。自分の考え方のくせを知ることでストレスへの対処法を学びます。またリハビリテーションを通して生きがいや働く力を育み、社会生活への復帰を目指します。さらに本人が睡眠・生活バランスを整えたい場合や医師や家族が必要と判断する場合、入院を選択肢の一つとして考えることができます。詳しくは次のサイトをご覧ください。活用できる資源や制度 | こころの健康情報局すまいるナビゲーター統合 失調症統合失調症に対する望ましい接し方出典 : 統合失調症の治療には周囲の理解と協力が欠かせません。しかし人が変わったかのように急に症状が現れるため、周囲の人は戸惑ってしまいます。症状に対する正しい理解のもと、次のようなことを心がけるとよいでしょう。■幻覚や幻聴などの症状に悩まされている場合、否定したり説得することを避けましょう。本人の話を聞いてうなずき、安心させましょう。■正しい知識を身につけ、統合失調症の症状を理解しましょう統合失調症には様々な症状があります。たとえば次のような症状があります。覚えておくとよいでしょう。・疲れやすい・臨機応変に行動できません・周囲の状況を把握することが苦手です・新しい環境や急な変更に対応できません■本人を勇気づけ、治療をサポートしましょう■医師と連携し、薬の服用や生活リズムなどを確認し、治療を支えましょう。また幻聴や気分の落ち込みが続くと、自殺を図る場合があります。自殺してはいけないというメッセージを伝えるとともに、危険な場合には医師に相談し医療機関との連携を取りましょう。何か少しでも疑問などがある場合は、気軽に専門機関に相談しましょう。本人を支える家族も一緒に悩み、抱え込んでしまうことが少なくありません。何か悩みがあるときは相談相手を増やしましょう。医師や保健所、精神保健福祉センター、関係者が集まる家族の会などがあります。一人で悩まず、誰かに相談することで不安な気持ちを解消しましょう。統合失調症のある人にどうやって接したらいい?体験談を紹介出典 : 統合失調症のある方は症状により幻覚や幻聴、気分の落ち込みがあるため、いつもと違った言動や行動をしてしまうことが少なくありません。そういったとき、家族をはじめとする周囲の人はどのように対応したらいいか悩んでしまいます。一体どのようにして統合失調症のある方に接しているのか、体験談をご紹介します。私の身近な人が統合失調症を患っています。すでにお勉強済みかもしれませんが、妄想の話にあわせてはいけません。どんどん妄想がエスカレートしてひどくなります。調子のいい時と悪い時があるはずなので、担当の患者さんをよく診てその時その時の状態を察して上げれるようになってください。性格に素直な人も多いと聞きますがお薬を飲むのを嫌がったり治らないのではと絶望的になっている方には調子の落ち着いている時に向き合ってあなたが真剣に患者さんのことを考えている、一緒に回復へ伴走しましょう、と話してみてください。妄想の話が止まらない時は話題をお互いの共通のもので声を掛けてみてください。そして恐ろしいと思うことを言っても落ち着いて、接してください。統合失調を患っている方は電話ででも相手がどう感じているかなど敏感です。妄想に話をあわせないこと、私は真摯にあなたの病気を一緒に治そうとしているんだよ、という気持ちを伝えること、こういったことはとっても重要に思えます。というのも、私も、思い出せば、家族にそのように接してもらっていたからです。そのおかげで、幻聴や妄想も、自分の、病気による妄想、思い込みなんだと身体できづくことができました。なかなか時間はかかりましたが。そしてなにより、真剣に私の病気を健康に治そうとしてくれているんだ、という、信頼感、安心感がもてるようになり、心を素直に開くことができました。あと、どんなささいなことも、いいにくい環境をつくるのではなく言いやすいように接してもらうと、とても気分が楽なります。人により症状はさまざまですが、その症状を冷静に観察し、適切に対応することが求められます。例えば妄想がある場合は話をあわせないことが重要になります。また“あなたのことを見守っている”という姿勢を見せることで、本人は安心感を感じることができます。統合失調症がよくわかる本統合失調症は症状が多岐にわたる、とても複雑な病気です。そのため今ではたくさんの本が出版されています。今回はその中でも統合失調症を理解するのに役立つおすすめな本を3冊ご紹介します。出典 : 功刀 浩/著 『図解 やさしくわかる統合失調症』 2012年ナツメ社/刊出典 : 白石 弘巳/著 『よくわかる統合失調症―ねばり強い治療で、回復と自立をめざす (こころのクスリBOOKS)』 2011年 主婦の友社/刊出典 : 利用できる福祉サービスは?出典 : 統合失調症となったとき、必要性が認められれば障害年金や心身障害者扶養救済、自立支援医療、生活保護、障害者手帳をはじめとする福祉サービスを利用することができます。■障害年金…障害の程度に応じて、一定の金額が毎月支給される年金制度です。■心身障害者扶養救済…障害者のある方の生活の安定と将来に対する不安の軽減を目的に、保護者が生存中掛金を納付することで本人に終身年金を支給する任意加入の制度です。■自立支援医療…自立支援医療は心身の障害を取り除くためにかかる医療費の自己負担額を軽減する制度です。障害の種類や所得に応じて、ひと月当たりの負担額に上限が設定されています。■生活保護…病気やけがにより収入がない、もしくは不十分な場合に最低限度の生活を保障するために給付される制度です。■障害者手帳…障害のある人が取得することができる手帳のことをいい、取得することで障害の種類や程度に応じて様々な福祉サービスを受けることができます。一般に身体障害者手帳、療育手帳と精神障害者保健福祉手帳の総称のことを障害者手帳と言います。詳しい制度内容や利用方法は以下のリンクをご覧ください。伊藤 順一郎/著 『統合失調症 正しい理解と治療法 (健康ライブラリーイラスト版)』 2005年講談社/刊まとめ出典 : 幻覚や幻聴、気分の落ち込みなどが統合失調症の特徴的な症状としてあります。不眠や焦りが病気の徴候としてみられることもあります。また、陰性期にはなにも手に付かず、無気力になってしまうこともあります。身近に統合失調症のある人がいる場合、家族や身近な人は振り回されると感じたり、なんとかしたいと注意したり励ましてしまうこともあるでしょう。ですが、本人は強い不安や追い詰められてつらい気持ちを感じています。そんなとき、周りの人が本人の気持ちに寄り添うことがなにより助けになるのです。本人や周りの人が統合失調症への正しい理解をすることがとても重要です。統合失調症は、治療を早く始めれば早いほど、治りが早くやすいという特徴があります。統合失調症が疑われる場合は早めに受診しましょう。セルフチェック | 統合失調症ナビ心身障害者扶養保険共済制度の改正について | 独立行政法人福祉医療機構自立支援医療 | 厚生労働省生活保護制度 | 厚生労働省参考文献:伊藤 順一郎/著 『統合失調症 正しい理解と治療法 (健康ライブラリーイラスト版)』 2005年講談社/刊テーマ1: 統合失調症とは何か | 公益社団法人 日本精神神経学会 事務局統合失調について | こころの健康情報局すまいるナビゲーター統合失調症統合失調症 | 厚生労働省 知ることから始めようみんなのメンタルヘルス統合失調症とは・統合失調症 症状と治療法 | メンタルヘルスONLINEどんな病気?/症状と機能障害 | 統合失調症ナビ統合失調症 | 東京都立松沢病院
2016年09月23日異食症(Pica)とは?出典 : 異食症とは少なくとも1ヶ月間、通常食べることのない・栄養がないものを1つ以上、継続して口にしてしまう摂食障害の一つです。摂取してしまうものの例としては、氷や土、毛髪、チョークなどが挙げられます。特に氷、土、毛髪を食べることは多く知られており、氷食症、土食症、食毛症という個別の症状名がつけられています。しかし乳幼児のように、まだ十分に認知機能が発達していないことから生じる突発的な異食行動や、熱帯地域などの場所で慣習的に土が食べられているといった、異食行動がその地域にとって普通の行為である場合は異食症とはみなされません。文化的にも社会的にも通常食べられないものを摂取してしまう場合に限り、異食症とみなします。異食症は年代や性別などによっても様々なタイプがある疾患です。おもに、子ども・妊婦・他の疾患を発症している人と3つのタイプに分けることができます。タイプごとにどういう症状や原因があるのか、どういった対応・治療をしていけばよいのか見ていきましょう。子どもの異食症の症状・原因出典 : 乳幼児期は物の区別を苦手とする上に好奇心が旺盛で、何でも口に入れてしまう傾向があります。しかし異食行動を行う頻度は年齢とともに低下していく傾向にあるため、2歳以前の異食行動自体がすぐに問題になるわけではありません。そこで、子どもにおいては生後24ヶ月以降に栄養のなく、通常食べることのないものを継続して摂取してしまうという症状があった時、異食症とみなされる場合があります。子どもが摂取してしまう異物は、子どもの身近にあり手に入りやすいものと考えられます。例えば氷、毛髪、氷、土、毛髪、絵具、ひも、鉛筆の芯、布、ほこり、糞便、紙片が挙げられます。先述したとおり、2歳までは知的好奇心による正常な行動の場合が多いです。しかし、それ以降も異食行動が習慣化するまで継続してしまうと、異食症と診断される場合があります。異食行動を続けてしてしまう原因として、保護者のネグレクトなどにより空腹感から異食してしまう等も考えられますが、決してそれだけではありません。子どもがストレスをため込みやすい性格をもっており、その発散方法として異食行動を行ってしまう、周囲の人が知らない間に異食行動を見逃し、それが常態化しているなど、様々なケースがあります。妊娠中の女性の異食症の症状・原因出典 : 女性は妊娠期間中に衝動的に異食行動を行ってしまうことがあります。この場合は妊娠中のみに発症し、自然に治ることが多いと言われています。口にするものとして、土、石、氷、生のジャガイモや小麦粉がよく挙げられます。妊娠中の女性による異食症は、鉄や亜鉛などの栄養不足が大きな原因と言われています。妊娠することによって女性のからだは、自分自身ではなく赤ちゃんに優先して栄養や酸素を供給するように自然とはたらき始めます。栄養や酸素は血液を通して赤ちゃんに送り込まれるため、からだは体内の血液量を増やそうとします。しかし、通常摂取している1人分の栄養素で多くの血液を体内で生成しようとすると、成分に影響が出てくる可能性があります。その成分が鉄や亜鉛です。妊娠中に意識的に必要な栄養素を摂取していない場合、身体が通常の鉄分・亜鉛でたくさんの血液をつくろうとするため、これらの成分が不足してしまいます。血液中に栄養素が少なくなると、体内で酸素をうまく運ぶことができなくなり貧血がおこります。この鉄欠乏性貧血は、妊娠中に特に起こりやすくなる貧血の一つです。氷や石・土の異食症は、身体が無意識に鉄分を補おうとして引き起こされることが多いとされています。しかし、妊娠中によって発症する異食症の原因は栄養不足だけではありません。脳への酸素供給量が不足することによって、「おなかいっぱい」だという感覚を失ったり、からだの温度調節の機能が鈍くなったりすることで異食症が引き起こされる場合もあります。またその他にも精神的ストレスによって、精神を安定させる働きのある脳内の神経伝達物質の一つ、セロトニンが不足してしまい、感情や欲求が抑制できなくなったりするなど、様々な要因が重なり合っている場合があると考えられます。その他の疾患と異食症を併存している人の症状・原因出典 : 併存症を発症している人は、その併存している疾患によって症状が異なります。その代表的な例として、統合失調症、脅迫性障害、パーソナリティ障害などの他の精神疾患、自閉スペクトラム症などの発達障害、知的障害、そして認知症があげられます。上記で述べた他の疾患と異食症と併存している場合、目に入るものが食べ物かどうか判断することを難しいと感じる認知の障害が元となり、異食行動を起こしている場合が多いです。そのため異食症として摂取してしまうものは、その人の身近にあり手に入りやすいものであることが多くなります。例えば氷、毛髪、氷、土、毛髪、絵具、ひも、鉛筆の芯、布、ほこり、糞便、紙片が挙げられます。またパーソナリティ障害の場合は、自傷行為のために釘や針を異食したり、出血するまで爪をかんだりすることがあります。パーソナリティ障害とは、思考、感情、人とのかかわり方、衝動の制御の4つのうちの少なくとも2つにおいて、柔軟性がないと判断された場合に診断される疾患です。パーソナリティ障害がある人は、考え方や行動パターンの偏りが大きくなるため、異食行動を起こしてしまうことがあります。異食症と一緒に発症しているその他の疾患が直接的な原因となる場合があります。疾患が進行していく途中に異食行動を起こすようになり、エスカレートしていくと異食症と診断される傾向があります。・自閉症スペクトラム:自閉症スペクトラムとは、社会性と対人関係の障害、コミュニケーションや言葉の発達の遅れ、行動や興味の偏りの3つを特徴とする発達障害の1つです。この場合の異食行動は、本人が特定の食べものの視覚や舌ざわりに対して強いこだわりを持った場合に起こることが多いです。・統合失調症:統合失調症は、感情や考えがまとまりづらく、気分や行動、人間関係などに影響が出てきてしまう疾患です。この場合の異食行動は、幻覚や妄想の症状によって引き起こされやすいと言えます。・認知症:中度~重度へと進行した際に引き起こされる、味覚障害、認識障害が主な異食行動の原因となります。・知的障害:18歳までの発達期に生じた知的機能の障害により、理解、判断、思考、記憶、知覚などの知覚機能の発達が、周囲と比べて遅れている状態のことです。発達の遅れによる認知の障害が異食症の要因と言われています。異食症と関係する合併症出典 : 異食症では普段口にすることがない物質を体内に入れるため、身体的に様々な合併症を引き起こすこともあります。合併症の症状は食べたものによりますが、主に・胃炎、胃潰瘍、腸閉塞・中毒・電解質異常・寄生虫の発生があります。その他にも普段の食事の栄養バランスに偏りがうまれ、ビタミン欠乏症、鉄欠乏性貧血が発症する可能性もあります。病院へ行くべきなの?異食症の見分け方と相談先出典 : 乳幼児期の異食行動は、ほとんどの子どもに起こりうることです。また、妊娠中の女性の異食に関しても、多くの場合起こりうる症状です。しかし、以下に当てはまる場合は要注意です。・行動が徐々にエスカレートしていく。・ストレスを感じている様子がある。・明らかな体調不良を感じる。・継続的に異食する物質が人体に有害な恐れがある。本人の状態を見てこれらに当てはまるときは、ためらわず、かかりつけのお医者さんに相談することをおすすめします。異食症は、様々な原因によって発症する疾患です。そのためまずは、かかりつけの病院で相談することをおすすめします。しかし身近に相談できる病院がすぐには見当たらない、いきなり病院へ行くのはためらいを感じる場合は以下の相談先も活用してみましょう。・児童相談所:児童相談所は、すべての都道府県と政令指定都市に最低1つ以上設置されている児童福祉の専門機関です。主に、「子どもの養育に関する相談」、「障害に関する相談」、「性格や行動の問題に関する相談」などの育児に関する相談ができる機関となっています。全国児童相談所一覧l 厚生労働省・全国精神保健福祉センター:各県、政令市にはほぼ一か所ずつ設置されている、保健・精神保健に関する公的な窓口です。精神保健福祉に関する相談をすることができます。精神科医、臨床心理技術者、作業療法士、保健師、看護師などの専門職が配置されており、相談については、予約制、健康保険の適応があるところがあります。詳細は、それぞれのセンターにお問い合わせください。全国の精神保健福祉センターを探すl 厚生労働省・精神科:心の症状、心の病気を扱う科です。心の症状とは具体的に不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想などのことです。心の症状に対して治療を行います。・心療内科:心と体、それだけでなく、その人をとりまく環境等も考慮して扱う科です。上記の心の症状だけでなく、ほてり、動悸などの身体的症状とその人の社会的背景、家庭環境なども考慮して治療を行います。精神科、心療内科どちらに行ったらいいか迷う方もいらっしゃるかもしれませんが、異食症の場合、精神科を受診しても心療内科を受診してもどちらでも大丈夫です。食べてしまったものによって明らかに身体に不調がでている場合は、まずは内科に行き、中毒症状などの治療を受けることを優先してください。異食症の診断基準出典 : 年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)によると、異食症の診断基準は次のようになります。A. 少なくとも1ヶ月間にわたり。非栄養的非食用物質を持続して食べる。B. 非栄養的非食用物質を食べることは、社会的にみて標準的な慣習でもないC. その摂食行動は文化的に容認される慣習でも、社会的にみて標準的な慣習でもない。D. その摂食行動が他の精神疾患(例:知的能力障害、自閉スペクトラム症、統合失調症)や医学的疾患(妊娠を含む)を背景にして生じる場合、特別な臨床的関与が妥当なほど重篤である。世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)によると、幼児期に土を食してしまう割合は1歳児で35%あるのに対し、4歳児では6%ほどになるとされています。その為、幼児期の異食行動は自然に起こるものという考えが一般的です。そこで、2歳を異食症の境界としています。参考文献:ICD-10精神科診断ガイドブック2013年中山書店/刊先ほど説明した『ICD-10』では「精神遅延を除く他の精神および行動の障害が存在しない」ことを条件としています。しかし『DSM-5』については「他の精神疾患の経過中にのみ認められる場合、特別な臨床的関与が妥当なほど重症である」と条件付きの併存を認めています。異食症の治療法出典 : 異食症の治療は、合併症の有無をまずは判断し、ある場合は先にその合併症を治療します。その後、心理的評価を行い、心理療法および薬物療法により対処します。異色症の治療l health line育児放棄や虐待がある場合には、その状況を変えなければなりません。また、鉛などの毒性物質への暴露も避けるべきです。治療のポイントは心理社会的、環境的、行動的、家族指導的アプローチにおきます。穏やかな嫌悪療法や負の強化療法(例えば軽い電気ショック、不快な音、催吐薬)が効果を挙げています。正の強化、モデリング(modeling)、行動修正(behavioral shaping)、矯正(overcorrection)治療なども用いられています。年にはマルチビタミンサプリメントが、子どもの異食症治療に効果的であるという研究結果が発表されました。ビタミンにより、栄養のない物を食べたいという欲求を減じるか、なくすことができる可能性があります。異食症の子どもに対するビタミンサプリメントの効果l National Center for Biotechnology Information, U.S.異食行動を発見した時の緊急対処法出典 : あなたの周りの人が異食行動をしているのを発見してしまった場合、どうすればよいのでしょうか?以下の緊急の対処法を行うことをおすすめします。大声を上げて怒らず優しく接することが重要です。なぜなら怒鳴られたりすることで、びっくりして口の中のものを急に飲み込んでしまったり、ストレスを感じて異食行動がエスカレートしてしまったりする可能性があるからです。優しく、お菓子など口に入れる代替品となるものを差し出し、吐きだすように誘導するようにしましょう。体に有害なものを飲み込んでしまった場合は、早急に以下のように対処する必要があります。・ティッシュや紙くずなど消化できるもの....のどに詰まってない場合は、しばらく安静にして様子を見ます。・小銭、電池、ビー玉、ビニール、おむつなど消化できないもの....のどに詰まっていない場合は、無理に吐かせず直ぐに受診します。・たばこ....ニコチンなどの有害な物質を体に吸収させてしまう恐れがあるので、水を飲ませず早急に吐かせます。・洗剤....食道や胃の粘膜を炎症させたり、傷つけてしまう恐れがあるので、吐かせずに水を飲ませて直ぐに受診します。しかしこのような誤って物を飲み込んでしまう緊急事態が起こってしまった場合は、個人で判断せず、すぐに駆け込める病院を確保しておくこと、日本中毒情報センターの中毒110番に確認することがおすすめです。中毒事故発生時の対応l 公益財団法人日本中毒情報センターまとめ異食症は短期間で症状が治まる可能性が高く、治療法もあります。特に子どもの場合は物を口に入れてしまうことは自然なことであり、焦る心配はありません。しかし食べてしまう物によっては、身体に影響を与える危険性のある疾患です。ですので、まず第一に飲み込まないようにすることが大事です。万が一、飲み込んでしまった場合や、症状について気になった場合は迷わず診察を受けに行くことをおすすめします。またご自身でも小さなストレスから取り除いていき、不足していると感じる栄養素を積極的に摂取していく日々の積み重ねが大切といえるでしょう。
2016年09月22日こんにちは、子育て研究所代表の佐藤理香です。先日、子どもの予防注射で『MR(麻しん・風しん)』2回目を予約しようと試みました。ところが病院からの返事は、「現在、麻しんのワクチンが不足している ため、予約できない状況です。入荷も未定です」でした。この“麻しん”こそ、2016年9月現在流行中の『はしか 』です。乳幼児がかかると死にも至るケースがある怖い病気。本日はこの『はしか』のポイントを確認したいと思います。目次1 『はしか』ってどんな病気?2 どんな症状がでるの?3 妊婦と1歳前後の乳幼児、ママパパ世代は要注意!4 どうやったら予防できる?●『はしか』ってどんな病気?はしかは、麻しんウイルスによる感染症です。感染力が強く、死に至ることもあります。ワクチンを接種していない乳幼児に比較的多い傾向があります。空気感染やひまつ感染、接触を通じても感染します。『世界保健機関(WHO)』では、はしかを排除することを目標にしています。日本では昨年2015年に、“はしかを排除できた状態”と認定されましたが、なんと今年の8月中旬以降、患者が出てきてしまいました。●どんな症状がでるの?10日~12日くらいの潜伏期を経て、熱が出て発症します。はじめの2日~3日は38度前後の熱や咳、鼻水、結膜炎など、かぜと同じ症状です。その後、一旦熱が下がる傾向にありますが、再び高熱、それとともに赤い発しんが出てきます。全身に発しんが現れてからも4日~5日高熱が続きます。合併症で肺炎などを併発することでも知られています。一度発症してしまうと特効薬はなく 、熱をやわらげるなどの対処療法となります。●妊婦と1歳前後の乳幼児、ママパパ世代は要注意!妊婦と1歳前後の乳幼児、ママパパ世代は特に注意が必要です。妊娠中の方が『はしか』に感染すると、流産や早産の恐れがあると言われています。さらに1歳前後の乳幼児は免疫力が低いうえ、ワクチンを接種していない場合もあるので、流行している場合はできるだけ人混みを避けるなど対策が必要です。つい先日、兵庫県尼崎市では、保育園に通う子どもや職員が18人も集団感染する事態になりました。厚生労働省から各自治体を通じて集団生活の場となる園にも連絡が入っているとは思いますが、気になる場合は感染防止対策について園の先生に聞いてみるのもよいと思います。意外にも要注意なのが26歳~39歳のママパパ !実際に感染した人を年齢別にみた調査では、この世代が半分以上いることがわかっているのです。なぜかというと、理由はワクチンの接種回数にありました。『はしか』はワクチンを2回接種することで、高確率で予防することができるといわれています。しかし、この世代のママパパは、ワクチンの定期接種が1回しかなかったのです。このため、きちんと免疫がついていない、または免疫が低下してしまったママパパが『はしか』にかかりやすい状態になっているのです。●どうやったら予防できる?一度かかってしまったら対処療法しかとれないので、予防することが最優先になります。『はしか』はワクチンを2回接種することで、免疫が確実につきます。現在は、1歳で1回目、小学校入学前に2回目の定期接種(通常は無料)が行われています。このため、1歳になったらできるだけ早く接種する ことがポイントです。また、『はしか』を予防するMRワクチンは、生ワクチンです。赤ちゃんへの影響を避けるため、妊娠している人は接種できません。妊娠していない場合であっても、接種後2か月程度の避妊が必要と言われています。妊娠の希望がある人は事前に確認しておきましょう。感染症を防止するための一般的な対策も有効です。人混みを避ける、マスクを着用する、しっかり手を洗うなどを行いましょう。----------最後に、『国立感染症研究所』が出しているスローガンをお伝えします。『はしかにならない!はしかにさせない!1歳のお子様は、1歳のお誕生日に!!』わが子のためにも、お友達にうつさないためにも、時期がきたらすぐにワクチンを接種したいものですね。【参考リンク】・麻しん・風しん | 厚生労働省()・麻疹とは | NIID国立感染症研究所()●ライター/佐藤理香(株)●モデル/大上留依(莉瑚ちゃん)
2016年09月19日睡眠障害とは?子どもが眠ってくれないのは睡眠障害なの?出典 : 睡眠障害とは、眠りに何らかの問題がある状態を指す医学用語です。子どもの「睡眠障害」というと大げさでは、と思うかもしれませんが、子どもの心身の育ちにとって睡眠はとても重要です。また、子育て中のパパママにとって、子どもの睡眠は大きな悩みのひとつといえます。「子どもが夜ちゃんと寝てくれなくて……」、「たびたび夜中に起きて騒ぐので、家族みんな寝不足で……」という経験をするパパママは少なくないのではないでしょうか。子どもがぐっすり寝てくれないと、付き合ってお世話をするパパママも寝不足になり、体力的にも精神的にもつらいですね。夜泣きしたり騒いでしまったりすると、近所迷惑になっていないかというストレスを感じることもあるでしょう。うまく眠れない日が続くと、何かの病気ではないか、発育に影響はないのか、不安になったりするのではないでしょうか。子どもは、乳児期から3歳くらいまでの間に睡眠リズムを確立します。赤ちゃんの眠りはまだ未成熟で浅い眠りなので、大人と違って夜泣きをすることも多いのです。ですが、3歳以降になっても睡眠に何らかの問題がある場合、改善の必要があるといえます。特に、発達障害のある子どもの多くは、睡眠に何らかの問題を経験する場合が多いと言われています。発達障害の子どもは、睡眠リズムのシステムづくりになんらかの問題があって睡眠に影響したり、発達障害の二次障害として睡眠障害があらわれたりする可能性が高くなるのです。そして睡眠障害の状況が長く続くことで悪循環を生み、障害や日常生活に更なる影響が出てしまうこともあります。子どもの発育に睡眠が重要な理由は?出典 : 子どもの睡眠のメカニズムは、脳の成長につれ変わっていきます。生まれてすぐの頃は短い周期で昼夜の区別なく眠りと覚醒を繰り返します。生後16週ごろまでには昼間に長めに起きて夜に集中して眠る、約24時間の生体リズムが形成されます。その後、午前中の昼寝、午後のお昼寝の順に必要がなくなり、5~7歳くらいまでに夜間にまとまって寝るようになります。睡眠量だけでなく、睡眠の質(睡眠構造)も年齢・成長にともない変化します。人間の睡眠は、レム睡眠(浅い眠りで身体は眠っているのに、脳が活発に動いている状態)とノンレム睡眠(脳も身体が休んでいる深い眠りの状態)の2つに分けられますが、生後間もなくはレム睡眠に似た浅い動睡眠が睡眠全体の約半分を占めます。3ヶ月ごろにレム睡眠とノンレム睡眠があらわれるようになり、2~3歳までにはノンレム睡眠とレム睡眠を90分ほどの周期で繰り返す、大人とほぼ同じ睡眠リズムができてきます。そのために睡眠のシステムが形成される時期に良質な睡眠をとることは、一生の生活リズムを左右する大きな意味を持つと言われています。成長につれ、メラトニンというホルモンの分泌量も増えてきます。メラトニンは夜間分泌されるホルモンで、覚醒と睡眠を切り替えて眠りをうながしますが、日中に光をたくさんあびることで分泌されるので、早寝早起きの生活リズムを続けることでより分泌量が増え、より眠れるようにもなります。乳児期はこれらの睡眠のシステムが形成される途中であるため、睡眠が浅かったり、細切れになりますが、3歳以降になってもこのシステムがうまくできていない場合、対策を考えたほうがよいかもしれません。細胞組織の生成と新陳代謝を促す成長ホルモンは、身長を伸ばしたり、筋肉をつくったりするのに欠かせません。また、脳の発達や記憶などにも関係するホルモンです。この成長ホルモンは、睡眠中、特に入眠後最初に訪れるノンレム睡眠中に多く分泌されると言われています。つまり睡眠中に成長ホルモンが分泌されることで、身体の組織や脳が構築され発達するのです。このように、子どもにとって睡眠は日中の疲労を回復するだけではありません。乳幼児から思春期の睡眠は、心身が大きく成長する時期に必要なホルモンが分泌される、発達に欠かせないもっとも大切な時間といえるでしょう。そのため、子どもの睡眠の問題には早期に対処することが重要です。睡眠障害が改善されることで発達障害にもよい影響を与えると考える医師や研究者も多く、さまざまな研究も進められています。子どもの睡眠と脳の発達 ─睡眠不足と夜型社会の影響─ 大川匡子子どもの睡眠障害とは?どんな場合に疑われる?出典 : 眠りになんらかの問題がある状態を睡眠障害と言います。「眠れない」不眠症をイメージする人が多いのですが、眠りすぎやいびきなども含め、眠りの質と量にまつわるさまざまな問題を広く含みます。子どもに見られる症状の目安として、以下のうち、ひとつでも当てはまる場合、睡眠障害ではないかを検討するほうがよいとする専門家もいます。①夜間睡眠中に何度も目を覚ます②強くいびきをかく③日中不機嫌でイライラしている④よく泣く⑤保育園や幼稚園に行きたがらない⑥頭痛や腹痛が多い⑦1日中ねむけを訴える⑧朝起きて学校に行くまでにぐずぐずと時間がかかる⑨土曜・日曜日・休日はお昼まで寝ている⑩成績や部活の伸びが止まってしまった、あるいは急激に伸びた(がんばっている)、朝起きることができず学校にも行けなくなった(『子どもとねむり<乳幼児編>』三池輝久著メディアイランド刊P83より引用)このほか、以下の様子が見られるときも睡眠障害が原因の可能性があります。・夜中に突然大声で叫び、パニックを起こす・手足のムズムズ感や違和感、痛みで眠れない・夜中に歩き回る・夜普通に寝ているが、日中眠そうにしていたり居眠りしたりする・寝る時間が遅くて不規則な生活が続き、直せない・睡眠が十分に取れなくて頭痛や体調不良が続いている・落ち着きがなく、衝動性がある睡眠時間や睡眠中に起きる問題のほか、一見睡眠と関係なさそうなことも睡眠障害が原因かもしれません。子どもが良質な睡眠ができているか、普段の様子や生活をチェックしましょう。子どもの睡眠障害の種類出典 : 睡眠障害にはさまざまな症状や病気が含まれます。代表的な睡眠障害にはどんなものがあるのでしょうか?寝つきが悪い、朝早く起きてしまう、眠りの質が悪いなど、睡眠が十分でない状態です。睡眠不足が続くと、「なんとなく調子が悪い」といった不定愁訴や、頭痛・腹痛、不機嫌やイライラの原因にもなります。夜ちゃんと寝ているはずなのに、日中あらがえないほど眠い状態です。低年齢の子どもは昼寝を必要としますし、体力が無いので疲れていることもありますが、じゅうぶんに睡眠時間を取っているのにひどく眠そうな場合やずっと寝ている場合、睡眠時無呼吸症候群など別の病気が関係している可能性があります。昼夜のリズムと体内時計がうまく合わず、調節できなくなって睡眠リズムがくずれてしまい、社会生活に支障をきたす状態のことです。子どもの場合、朝起きられないと園や学校にも遅刻してしまい、不登校につながりやすい傾向も指摘されています。子どものいびきや無呼吸は、正常な睡眠や成長に悪影響を及ぼすことがあります。子どもの場合、いびき、無呼吸の主な原因は、鼻づまりやアデノイド・口蓋扁桃(こうがいへんとう)といったのどや鼻の奥のリンパ組織の肥大で、物理的に気道が狭まることです。また、肥満で気道が狭くなることもあります。呼吸がしにくいので血中酸素濃度が低下し、何度も脳が目覚めてしまい、十分に睡眠がとれなくなってしまうのです。長時間のSASが続くと、慢性的な低酸素症に伴う精神遅滞、深い睡眠がとれないことによる成長ホルモンの分泌低下に伴う低身長など発達のさまたげになるおそれもあります。アデノイドや扁桃肥大の場合、耳鼻咽喉科で手術すると治ることが多いようです。小児の「睡眠時無呼吸症候群」について■むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)脚などの下肢がむずむずするなど動かしたい強い衝動を覚えます。夜間など睡眠時間帯に起こることで、気になって眠れなくなったり深い睡眠をさまたげてしまいます。主に下肢にあらわれますが背中や顔などに違和感が生じることもあります。子どもの場合、成長痛と間違われることもよくあります。脳内の伝達物質であるドーパミンの機能異常のほか、子どもは鉄分不足が原因で起きる場合が多いようです。鉄分の多い食事やサプリメントで改善することもあります。■律動性運動障害乳幼児期から4歳くらいまでの時期で発症する睡眠障害。入眠時や睡眠中に手足や頭を激しく動かしたり、頭を打ち付けたりする。9ヶ月の子どもでは59%に見られるほど、乳児期には非常に多い症状ですが、5歳前後には5%以下になります。ただし、知的障害、自閉傾向にある子どもでは、後年まで症状が残ることもあります。ふとんにぶつける程度の軽度なら問題ありませんが、頭を壁にぶつけてけがをしたり、音で家族が不眠になったりすると、治療が必要になる場合があります。出典:『睡眠障害の子どもたち』大川匡子編著合同出版刊p66睡眠中の異常行動や不快な身体的現象の総称です。子どもによくある「寝ぼけ」を含め、睡眠中に歩き回り、起きると覚えていない睡眠時遊行症(夢遊病)、恐怖の叫びをあげたり、泣いたりして目覚める睡眠時驚愕症(夜驚症)、睡眠中に恐怖や不安をともなう生々しい夢をみる悪夢障害などがあります。重症なものは本人や家族を悩ませることがあります。思春期までになくなることがほとんどですが、遺伝やストレス、外部からの刺激が原因と言われています。ストレスや刺激を取り除くとともに、症状が出ているときにけがをしないように見守りましょう。発達障害の二次障害として睡眠障害が現れることもある睡眠障害は、発達障害の二次障害として発症することが多いと言われています。自閉症やADHDなど、発達障害と診断された人は高い確率で睡眠の問題が起こります。特に乳幼児期には、寝つきが悪かったり、ちょっとの音で目を覚ましてしまい、途中で目を覚ますとなかなか寝ないなど、年齢相応の睡眠リズムが確立しにくい傾向が顕著にみられることも知られています。(『睡眠障害の子どもたち』大川匡子編著合同出版刊p49より)これは、睡眠障害が発達障害を引き起こすという意味ではありません。発達障害の特性により、睡眠になんらかの問題が出てしまうことが主な原因です。ですが、乳幼児期の睡眠は脳の発育に大きく関わりますので、睡眠障害が長引くこと自体が睡眠不足や生活リズムが乱れて悪循環を生み、子どもの心身の発育に影響している可能性も否定できません。音や光などに対する感覚が過敏なため、覚醒しやすいといわれています。また、睡眠に関係するメラトニンの量や、セロトニン・メラトニンといったホルモンの元となるトリプトファンの量が、極端に多すぎたり少なすぎたりするからではないかと考えられています。ADHDの特性として切り替えが苦手、ということがあります。つまり「起きている」状態から「眠る」状態へ、または「寝ている」状態から「起きる」状態にスムーズに移行することが難しいのではないかといわれています。また、ADHDのある人の脳にはセロトニンが不足しているとも言われています。セロトニンを原料として作られるメラトニンという体内時計をコントロールするホルモンも不足してしまうため、不眠や概日リズム睡眠障害に陥りやすいのではないかと考えられています。寝るのも忘れて熱中してしまう過集中で睡眠リズムが崩れてしまうことが多いようです。また、感覚過敏が、寝つきが悪くなったりすぐに目が覚めてしまう原因にもなります。また、アスペルガー症候群の二次障害としてのうつ症状などによる不眠の可能性も考えられます。Upload By 発達障害のキホン発達障害と誤診される睡眠障害も出典 : 睡眠不足から集中力や落ち着きがなくなった子どもにADHDのような症状がみられることもあります。特に子どもの睡眠時無呼吸症候群の症状として多動や不注意、衝動的行動がよくあらわれることもあり、ときにADHDと誤診されることもあるようです。また、子どものむずむず脚症候群も大人と比べて昼間に症状が出やすく、授業中などにむずむずしてじっとしていられないことからADHDと間違われることもあります。もちろん、診断にはくわしい生育歴などが精査されますので、きちんと医療機関で診断を受ければわかることです。しかし、このことからも、子どもの睡眠障害が、心身の不調や問題行動とされる症状と密接に関わっていることがよくわかります。参考文献:『睡眠障害の子どもたち』大川匡子編著合同出版刊p65、p105Upload By 発達障害のキホン睡眠障害を改善する方法・対処法出典 : 子どもの心身の成長には良質な睡眠が不可欠ですし、軽度の睡眠障害や生活リズムの乱れは家庭での工夫で改善できる場合も多いです。睡眠障害がよくなると、家族の生活の質も上げることになるので、早期に取り組むことが大切です。朝、光を浴びることで体内時計がリセットされます。まず起きたら窓を開け、お日さまの光をあびましょう。毎日早寝早起きのリズムで生活し、きちんと朝食を食べているでしょうか?昼寝の時間や長さは適切でしょうか?生活習慣を見直しましょう。また、適度に疲れていると眠くなるので、外で身体をうごかすなどの日中の行動も大切です。夕ご飯やお風呂が遅くなったり、だらだらテレビを見ることも、不眠につながります。親の都合で子どもの生活リズムが崩れることのないように気をつけましょう。寝る前に着替えて歯を磨く、絵本を読むなどの決まりごとをつくります。毎日同じ習慣や手順で眠りに就くことで、自然と寝るモードに気持ちが変わり、寝つきがよくなります。子どもがどんなことをすると眠りやすいか探しながら、合うものがあれば毎日繰り返して「おやすみの儀式」にしましょう。子守唄をうたう、背中をとんとんするなど、赤ちゃんの寝かしつけにも効果がありますので、試してみてくださいね。寝室の環境も睡眠に影響します。落ち着いて眠りにつける空間づくりと、朝起きやすくなる工夫をしましょう。まず、ベッドは日当たりのよい場所に置きましょう。遮光性のあるカーテンをして、朝決まった時間に開け、起床時に日光を浴びるようにします。インテリアの色使いは、赤などの原色は神経を興奮させると言われていますので、避けた方がよいでしょう。淡い青や黄色、アースカラーなどの穏やかで落ち着いた色がおすすめです。不安を感じやすい場合や光に敏感な場合は、天井に布などを吊って天井を低くしたり、照明を和らげると効果があるようです。また、お気に入りのものを置いたり、囲って個室のようにすると「自分のスペース」と安心できる場合もあります。入眠する数時間前からは明るい照明は避け、テレビやスマホも使用しないほうがよいようです。せっかく寝ようとしても、隣室などから大人の楽しそうな声やテレビの音が聞こえると、目が覚めてしまいます。子どもが静かで落ち着いた雰囲気で眠りにつけるよう、環境づくりを工夫しましょう。どうしても寝つきが悪い時には無理に寝かせようとせず、思い切って起きるという手もあります。一度部屋を明るくして外に出てみたり、好きなことをしたり、音楽をかけてみたり、一度気持ちを切り替えると、かえって落ち着き、眠くなることもあるようです。マッサージもおすすめです。やさしくなでてあげるだけでもよいので、眠る前の親子のスキンシップを入眠儀式として取り入れてみてはいかがでしょうか?睡眠障害の治療法出典 : 子どもの睡眠障害の注意点として、大したことではないと放っておいたり、どこに相談していいのか分からなかったりするうちに悪化してしまうことがあげられます。子どもの眠りについて気がかりなことがあったら、まずは抱え込まずにかかりつけの小児科や地域の保健センターに相談しましょう。専門機関や対処を教えてくれるでしょう。乳幼児期は子どもの心身が発達する大事な時期ですので、早めに対処することが重要です。医療機関で行われる代表的な治療法をご紹介します。子どもの睡眠障害の場合、親の生活習慣の影響を受けやすいので、家族全体の生活習慣を見直したり、夜泣きへのかかわり方などについての指導したりといった、行動療法的なアプローチが特に有効です。まずは睡眠に関する知識を正し、睡眠環境や生活リズムを整えることで適切な睡眠が得られるようにします。睡眠リズムを記録する睡眠表をつけることもあります。子どもの薬物治療については、医師による治療方針やケースにもよりますが、生体リズムの改善のため、メラトニンやドーパミンを薬で調整する治療法があります。また、緊張や不安が原因の場合、それを和らげるための薬が処方されることもあります。いずれにしても薬物治療を行う際には主治医と相談の上、用法や用量を守って進めることが重要です。朝に強い光を浴びることで体内時計がリセットされる仕組みを使い、朝、身体の中心部の体温が上昇し始める時間に、人工的に作った5000ルクス以上の明るい光を浴びる治療法です。睡眠障害が生活指導や薬で改善しない場合などにまれに行われますが、1か月以上の入院が必要となることもあります。睡眠の改善が発達や生活によい影響をもたらします出典 : 睡眠障害は家族も本人もつらい問題ですが、生活習慣や環境の改善などで劇的によくなることもあります。「寝る子は育つ」ともいいますが、子どもにとってよい睡眠は成長・発達にかかせないもの。睡眠に問題があると感じたら早期に対処法を考え、ときに病院などに相談し、一緒に改善していく方法を探しましょう。参考:睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドライン|日本睡眠学会HP
2016年09月05日緘黙症(かんもくしょう)とは?出典 : 緘黙症(かんもくしょう)とは、発声器官には問題がなく、言葉を理解したり、言語能力があると分かっている人が、ある特定の場面や状況で話すことができなくなってしまう精神疾患です。たとえば、家庭の中や家族とは元気よく話せるが、幼稚園や学校では無口になり、話すことができなくなってしまいます。これは、言葉の遅れや、発声障害で話すことができないのではなく、精神的な原因があるのではないかと言われています。緘黙症には、場面緘黙症(選択性緘黙症)と全緘黙症の2つの種類があります。場面緘黙症の場合、話すことを期待されている特定の場面で、話す言語能力があるにも関わらず話せなくなってしまいます。全緘黙症とは、どの場面でも話せなくなってしまう場合を指す言葉です。緘黙症は、医学的な診断名としては「選択性緘黙症」と名付けられていますが、日本では「場面緘黙症」と呼ばれるのが一般的です。"選択"という日本語が、能動的に本人が場面や状況を選んで黙っているような印象を与えやすいため、誤解を避けるために「場面緘黙症」と呼称する人が多いようです。実際、場面緘黙症のある本人は、話したくても話すことができません。医学的な診断名が"選択"性緘黙症となったのも、場所を選ばされざるを得ないという意味合いで"選択"という言葉が使われていると考えられます。このコラムにおいては、比較的一般的な呼称である場面緘黙症を用いて症状や対策等を詳しく説明していきます。場面緘黙症の症状出典 : 主な症状は、ある特定の、話すことを求められる社交場面や状況で話すことができなくなることです。場面緘黙症のある子どもの多くは、家族に対してや、家庭では活発に話しますが、学校やそのほかの社交場では話すことができません。また、家庭の中や家族などの親しい人とも、あまり話すことができない場合があります。話さない代わりに、擬声音を出したり、指をさしたり、筆談したりすることもあります。場面緘黙症のある子どもの年齢が低い場合、つきまといやかんしゃくを起こすこともあります。場面緘黙症の診断出典 : 診断基準には、大きくわけて、2014年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計のマニュアル』第5版)と世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の二つがあります。ICD‐10では、小児期の情緒障害に含まれています。これは、ICD-10では、場面緘黙症は、子どもが発症する疾患という見方が強いことを示しています。一方、DSM-5 において場面緘黙症は、不安障害の一種とされており、不安や恐怖心が一因になっているのではいかという見方をしています。今回はDSM-5の診断基準をご紹介します。1.ある特定の状況、場面以外では話すことができるが、そのある特定の社会的状況、場面では常に話すことができない。2.この疾患により、学業上、職業上の成績が適正に評価されない、または対人コミュニケーションを円滑に行えない。3.この疾患が少なくとも一カ月続いている。4.場面に応じた知識があり、会話の楽しさを知っているが、話すことはできない。5.コミュニケーション症(例:小児期発症流暢症)ではうまく説明されず、自閉スペクトラム症、統合失調症またはその他の精神病障害の経過中にのみ起こるものではない。場面緘黙症は、5歳前後で発症することが多いですが、話す機会の増える学校へ行き始める時期まで、症状が顕在化しないことが多いです。研究では、成長とともに場面緘黙症の症状が改善するというものもありますが、研究段階であり、確証はありません。一方、青年期、成人でもまれに場面緘黙症を発症します。場面緘黙とその他の疾患との関係出典 : 場面緘黙症は不安障害の一種と考えられていますが、その他の疾患・障害との併存もしやすいようです。以下では、場面緘黙症との併存が多い疾患・障害について説明していきます。場面緘黙症の併存症で最も多いものは、他の不安障害との併存です。不安障害群の中でも、社交不安症が最も多く、次いで、分離不安症や限局性恐怖症が多いと言われています。2000年にアメリカの学会でクリステンセンが発表した説によると、発達障害は、不安障害と同じくらい場面緘黙症と併存しやすいと言われています。コミュニケーション障害、発達性協調運動障害、軽度精神発達遅滞、アスペルガー症候群などとの併存が多いようです。夜尿症(Kristensen, 2000)、聴覚に関する疾患(Bar-Haim, et al., 2004)などを合併している場合が、場面緘黙症でない子どもに比べて多いという報告もあります。参考: Kristensen, 2000, Selective mutism and comorbidity with developmental disorder/delay, anxiety disorder, and elimination disorder.場面緘黙症の相談先出典 : 場面緘黙症は、発症時期である5歳前後だと、まだ学校に通っておらず、他人と話す機会がそもそも少ないため、症状が見落とされがちです。また学校に通い始めてからも性格の問題だと片づけられてしまうこともあります。ですが、場面緘黙症は、本人が好きで黙っているわけではなく、本人が話したくても話せない状態であることに注意が必要です。子どもが場面緘黙症かもしれないと心配になったら、以下で紹介する相談先に早めに相談に行くことをおすすめします。保護者や周りの人が少しでも早く症状に気づければ、困難の乗り越え方を手助けすることも可能になりますし、生活しやすい環境を整えてあげることができるかもしれません。一方、支援や治療を受けずにいると、症状改善が遅れたり、社交不安障害などの二次障害が発現するリスクが高くなります。家族だけで抱え込まず、専門家や周りの人たちの協力を得ながら、本人にあった接し方でサポートすることが大切です。1. 保健センター市区町村ごとに設置された、地域の健康づくりの場です。保健師さんが常駐しており、子どもの発達に関する悩みの相談を受けてくれます。場合によっては医療機関や療育施設の紹介をしてくれます。2. 子育て支援センター子育て家庭の支援に特化している機関です。自治体運営や医療機関に委託運営されており、保健師さんまたは看護師さんが相談に乗ってくれます。中には、療育指導を実施をしている子育て支援センターもあるので、お近くのセンターに問い合わせてみてください。3. 児童相談所都道府県ごとに設置されており、児童福祉を専門とした機関です。医師、児童心理士、児童福祉士がおり、相談に乗ってもらえます。必要に応じて発達検査を行ってくれる場合もあります。また、全国共通児童相談所ダイアルがあり、189番にかけると24時間365日、児童福祉に関する相談を受けてくれます。青年・成人の方で場面緘黙症のある方にとっては、電話や対面での相談はなかなかハードルが高いと思います。webで予約できる相談機関、病院や、メールで相談に乗ってくれるところを探すことをおすすめします。1. 精神保健福祉センター都道府県ごとに設置されており、精神保健の向上を専門とした機関です。ここでは電話相談、施設によってはメール相談を受け付けているところもあります。また、精神障害者向けのデイケアを行っているところもあります。以下は全国の精神保健福祉センターの一覧です。全国の精神保健福祉センター一覧2. 心の耳厚生労働省が行っている、働く人向けの心のポータルサイトです。ここでは、メール相談を受け付けており、場面緘黙症の症状でうまく話せない方や、電話や面接に大きなハードルを感じる方におすすめです。以下はそのリンクです。働く人の「こころの耳メール相談」3. 相談事業所など上記の他にもお住まいの地域の自治体に相談窓口が設置されている場合がほとんどです。電話や対面での相談が多いのですが、お住まいの地域の自治体に確認してみましょう。場面緘黙の治療・支援機関出典 : 上記の相談先で紹介された病院へ行くことをおすすめします。直接病院へ行く場合は、心療内科や精神科を受診してみましょう。その上で、必要があればカウンセリングを受けていきましょう。この他にも、子どもに対しては療育施設や発達支援センターで療育を行うことで、場面緘黙が緩和されるケースもあります。場面緘黙症は情緒障害の一つとして、公的な支援が受けられます。情緒障害児短期治療施設では、情緒障害を持つ児童に対して医学的な観点から、心理治療を中心に生活、教育支援を行う場所です。最近では虐待を受けていた児童や、不登校の児童が多く治療・支援を受けているようですが、場面緘黙症による不登校を抱えている児童もいるようです。詳しくはこちらを参照ください。情緒障害児短期治療施設(児童心理治療施設)ネットワーク家庭でできること出典 : 子どもが安心できる環境をつくる子どもの不安を取り除いてあげましょう。リラックスし、安心した環境を整えることが重要です。2. 答えや反応を無理やり求めることはしない話せないからといって、強制的に声を出させたり、答えさせるとかえって不安感、不信感が増します。そして話さないからといって、声をかけない、無視するのもよくありません。積極的に声をかけ、言葉による反応がなくても、表情や動きでコミュニケーションをとれるように工夫してみましょう。3. 非言語コミュニケーションの活用言葉を発することができなくても、ジェスチャーや筆談でコミュニケーションをとってみましょう。例えば、首の動きで、うなずいたり、首を振ったりして、YES、NOの意思表示ができるように促すことも一つの方法です。4. できたことを褒める今まで話すことや、感情表現できなかった場面や状況で、話すことや感情表現ができた場合は、どんな小さなことでも褒めてあげましょう。本人の自信につながります。場面緘黙症を取り巻く環境出典 : 日本では、場面緘黙症という疾患に対する治療法は確立されておらず、研究もまだまだ進んではいません。しかし、場面緘黙症のある子どもや人を支援する団体や。情報発信機関は多くあります。以下では、そうした支援団体の取り組みを紹介します。場面緘黙症を持つ方々の生活の役に立つかもしれません。場面緘黙症は、教育法上の情緒障害とされており、特別支援教育の対象です。具体的には、通級や支援学級で適切な支援を受けられます。通級とは、在籍は普通学級ですが、週1、2度、普通学級を抜けてその子に合った特別支援を受けられます。特別支援学級とは、在籍は支援学級となり、子どもの障害などに合わせた教育が受けられます。学校教育法「かんもくネット」という団体が提供している、「状況によっては声が出づらいです」と書かれたカードです。公共交通機関の使用時や、災害などの非常時に、周囲の人に場面緘黙であることを知らせる上で役立つかもしれません。以下からダウンロードして印刷し使うことができます。当事者用提示カード1. Free candle息を吹きかけてろうそくを消すゲームのアプリです。声が出ない場面でいきなり声を出す練習をするのではなく、息を吐くところから徐々に慣れていく練習をすることが出来るのが長所です。 おしゃべり猫のトーキングトム話しかけると、猫のキャラクターがおかしな声で返してくれるボイスチェンジャーです。ゲーム感覚で声を出す訓練ができます。その他にも、ボイスレコーダーアプリや筆談アプリなどあるので、必要に応じて探し、活用してみてください。まとめ場面緘黙症は、単にその人が内気であったり人見知りというわけではなく、本人が話したくても話せなくなってしまう状態です。性格のせいだと決めつけず、心配な場合は一度相談に行くと良いでしょう。直接相談に行くことが難しい場合は、メールを活用した相談窓口も活用してみましょう。場面緘黙やその治療法の研究はまだまだ発展途上ですが、支援グッズや、地域ごとの支援団体は多く存在します。本人に合うツールを活用して、コミュニケーションの支援をしていきましょう。本人が安心できる環境を整えたり、ジェスチャーやうなずきなどの非言語コミュニケーションも織り交ぜながら、焦らず、本人が伝えたい気持ちを受け取り、寄り添っていくことが大切です。
2016年09月05日回避性パーソナリティ障害とは出典 : 回避性パーソナリティ障害とは、日本人に多いパーソナリティ障害の一種で、人より不安を感じやすく、傷つくことや失敗することを極度に恐れるようになってしまう精神障害のことです。パーソナリティ障害の一般的な特徴は以下の3点です。・認知、感情、対人関係、衝動性などにおいて、著しい偏りのパターンがあること・偏りのパターンは、青年期か成人期の早期(10歳代後半から20歳代前半くらいまで)に始まり、それから長年つづいていること・偏りのパターンがあることにより、社会生活や仕事の場面で支障が生じていることアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)によると、パーソナリティ障害は以下のように3つに分類されています。Upload By 発達障害のキホン回避性パーソナリティ障害はC群に該当し、不安が強いことや、傷つきと失敗を恐れるあまり、人と接触したり、課題にチャレンジしたりすること自体を避けてしまうことを特徴としています。回避性パーソナリティ障害がある人の割合は、一般人口では0.5~1%、精神科通院者での割合は10~25%です。出典:岡田尊司 「回避性パーソナリティ障害いかに接し、どう克服するか」 PHP新書対人関係においても不安や恐怖が強いため、仕事や恋愛などにも支障をきたし、場合によっては引きこもりになってしまうこともあります。日本人に比較的多くみられるパーソナリティ障害であり、他のパーソナリティ障害に比べると比較的社会適応の幅が広いとも言われています。このパーソナリティ障害では、他者からの批判や拒絶を恐れ、自分が軽んじられているという思いを抱きやすいことから、社会的かかわりが困難となっている。彼らは常々、自己への不確実感および劣等感を抱いており、習慣的に自己にまつわる不安や緊張を持続させている。このため、羞恥心を生じる状況や注目の集まる場で失態を演じることを恐れ、そのような場面を避ける傾向をみせる。その結果、彼らは対人交流に消極的になり、限られた範囲でしか親密な関係を形成できなかったり、ひきこもって生活の範囲を制限したりすることがある。岡崎祐士/監修『ICD-10精神科診断ガイドブック』(中山書店/刊)より引用回避性パーソナリティ障害の症状出典 : 回避性パーソナリティ障害の症状としては、以下のようなものがあります。・他人からの批判や拒否を恐れ、大切な用事や面談を避けてしまう・人と上手く付き合えないと感じているため、新しい人間関係を築こうとしない・他人より長所が少なく、自分を劣っている人間だと思っている・恥をかくのが嫌でその不安から新しいことにチャレンジしたりするが苦手である・自分に好感を持っていると確信できなければ、その人と親密な関係を持たない・恥や馬鹿にされることを恐れ、親密な関係でも共同作業を断ることがある・人といる時に、普段通りに自然に振舞うことがなかなかできない回避性パーソナリティ障害の前兆は、内気さ、孤立、および見知らぬ人や新しい状況に対する恐怖が生まれる幼児期または小児期に始まりますが、ほとんどの人はこれらの傾向は成長・加齢によって消えていきます。ところが回避性パーソナリティ障害を発症する人は、新しい人との社会的関係が特に重要になる青年期および成人期早期にますます内気になり、回避的になっていく可能性があります。参照:聖心こころセラピー回避性パーソナリティ障害の診断基準出典 : パーソナリティ障害の診断は、パーソナリティが形成されていることが前提となるため、一般的には18歳以上で診断が下されることが多いです。診断基準は医療機関によって異なりますが、主に世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)とアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)に基づいて診断が下されます。ICD-10による診断基準では、以下から3項目以上が認められれば回避性パーソナリティ障害が診断されます。(1)持続性で広範な緊張と不安(2)自分は社会的に不適格だなどの劣等感(3)対人場面で批判・拒否されることの不安(4)好かれている相手でないとかかわれないこと(5)安全を追求するためライフスタイルが制限されていることや批判や拒否を恐れるため対人的接触を回避すること参考書籍:『ICD-10精神科診断ガイドブック』中山書店/刊DSM-5による診断基準では、以下から4項目以上が認められれば回避性パーソナリティ障害が診断されます。(1)批判、非難、または拒絶に対する恐怖のために、重要な対人接触のある職業的活動を避ける(2)好かれていると確信できなければ、人と関係を持ちたがらない(3)恥をかかされる、または嘲笑されることを恐れるために、親密な関係の中でも遠慮を示す(4)社会的な状況では、批判される、または拒絶されることに心がとらわれている(5)不全感のために、新しい対人関係状況で抑制が起こる(6)自分は社会的に不適切である、人間として長所がない、または他の人より劣っていると思っている(7)恥ずかしいことになるかもしれないという理由で、個人的な危険をおかすこと、または何か新しい活動にとりかかることに、異常なほど引っ込み思案である参考書籍:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院/刊たいていの人は、多かれ少なかれこのような回避的なパーソナリティを持ってはいます。しかし、回避性パーソナリティ障害であるといえるのは、これらの傾向に柔軟性がなく、持続的で、社会生活が困難になるほどの苦痛を引き起こしている場合のみです。特にこれらのパーソナリティの傾向は、日本特有の奥ゆかしさや恥の文化と重なります。他人の評価や反応を必要以上に気にして人前にあまり出たくないというパーソナリティを持つ日本人は多く、これらの基準に当てはまるからといって必ずしも「障害」とはいえないこともあります。例えば、DSM-5はアメリカの基準であるため、日本の社会の仕組みや文化的背景を考慮しないと必ずしも治療を必要としない人まで「障害」になってしまうこともあるのです。しかしこれは裏を返せば、日本では回避性パーソナリティ障害の人は理解されやすく、受け入れられやすい土壌があるということも意味しています。回避性パーソナリティ障害と他の障害との関連出典 : 回避性パーソナリティ障害の症状は、他のパーソナリティ障害の症状と重なる部分もあり、下記の障害が併発することもあります。しかしこれらと回避性パーソナリティ障害とを区別することは自分の障害を理解するためにも、また治療するうえでも重要です。以下では、回避性パーソナリティ障害と共通の症状を持つパーソナリティ障害と、各障害との違いについてまとめました。どちらも他人からの批判に対して過敏であること、他人から自分が受け入れられていることの保証を求めることを特徴としています。しかし回避性パーソナリティ障害の人は、内に依存心を秘めながらも、その依存性を嫌って自立的であろうとする傾向があります。どちらも社会的孤立を特徴としています。回避性パーソナリティ障害の人は他人と関係を持ちたいという思いがあり、孤独感を強く感じているのに対して、シゾイド・統合失調型パーソナリティ障害の人は社会的孤立に満足していたり、むしろそれを好む傾向があります。他人に秘密を打ち明けることを躊躇するという特徴が共通していますが、回避性パーソナリティ障害の人がこれを躊躇するのは、恥ずかしい思いをさせられたり、不適切だということが分かったりすることを恐れるためです。妄想性パーソナリティ障害の人は、他人と共有する情報が自分に不利に用いられるという恐れのために秘密を他人に打ち明けたがらないという点で異なります。また、同時に診断されることが多い障害としては他に、・抑うつ障害・双極性障害・社交不安症・境界性パーソナリティ障害があります。回避性パーソナリティ障害の原因は?発達障害との関連は?出典 : パーソナリティ障害の原因は遺伝的要因と環境的要因の2つに分けられると考えられています。遺伝的要因についてはまだ解明途上で、詳しいことはよく分かっていません。回避性パーソナリティ障害については、消極的な性格や不安が強い性格が遺伝していることも考えられますが、かつては活発な子どもだったにも関わらず、あることをきっかけに回避性パーソナリティ障害となることもあるため、環境要因も大きく影響していると考えられます。環境的要因については、親とのかかわり方や過去の社会的体験などが関係しているといわれています。典型的な環境要因としては、親からの過干渉やあからさまな批判、強制的に勉強や習い事をやらされ続けるといった支配的な教育環境があります。また、いじめ、教師からの強い叱責、人前で恥をかかせられるような体験などの社会的体験も、回避性パーソナリティ障害の一因となりうるようです。パーソナリティ障害は、複数の要因が複雑に絡み合って起こるものです。パーソナリティ障害の場合、原因が分かったところで、それが治療に直結するとは限りません。そのため、原因を追求することよりも「これからどうすればよいか」を考えることのほうが重要です。ハートクリニック回避性パーソナリティ障害とは岡田尊司 『パーソナリティ障害がわかる本: 「障害」を「個性」に変えるために』 ちくま文庫岡田尊司『回避性パーソナリティ障害いかに接し、どう克服するか』 PHP新書発達障害がある子どもが周りからの適切な支援や理解を得られないと、周りの大人から注意されることが多くなったり、いじめのターゲットになったり友達から孤立するなど、社会的体験がつらいものになりがちです。この経験の積み重ねが、将来のパーソナリティの形成に大きく影響しています。発達障害自体がパーソナリティ障害へと発展するのか、それとも発達障害の抱えるハンディが社会的体験を不利にして、パーソナリティ障害になりやすい要因となるのかは未だ解明されていません。ですが、発達障害がある人に対しては、本人の特性を理解し、できるだけポジティブな社会心理体験が積めるように配慮することが特に重要だといえるでしょう。回避性パーソナリティ障害の疑いを感じたら出典 : パーソナリティ障害の診断は、精神科医や専門医にも難しいものです。もしご自身やご家族に回避性パーソナリティ障害の疑いを感じた場合は、一人で悩む前にまずは専門機関に相談することをおすすめします。医療機関での受診先は精神科、神経科、心療内科などになります。「相談」のつもりであっても、形式は「受診」になるため、できるだけ本人を連れていくようにしましょう。いきなり精神科などの病院に行くことには抵抗がある場合には、各市区町村にある保健所の保健センターで相談することもできます。また、各都道府県に設置される精神保健福祉センターでもメンタルヘルスに関する相談事業を行っています。全国の保健福祉センター一覧また、本人が会社勤めの場合や高校や大学に通っている場合、学校や企業専属のカウンセラーに相談することもおすすめです。企業や学校のカウンセラーは、その人が所属している組織の内情にも通じているため、より適切なアドバイスをもらうことができる可能性が高いです。また、連携している医療機関を紹介してもらえる場合もあります。回避性パーソナリティ障害の治療法出典 : パーソナリティ障害を確実に根治させる、決定的な治療法はありません。パーソナリティは一人ひとり異なるものであるため、治し方も人それぞれです。一般的には精神療法と薬物療法が中心になりますが、必要に応じて家族療法や福祉・医療関係施設で行われるデイケアなどの社会療法が同時に行われます。一人ひとりの治療目的に合わせて、複数の治療を組み合わせます。医師や心理技術者が患者さんの心理面に様々な働きかけを行い、患者さんの認知や思考、行動パターンなどの偏りを改善して少しずつ社会に適応できるようにしていく根本的な治療法です。1週間に1~2回、30分から1時間程度、治療者が患者さんと面接する形で行うのが一般的です。内容に関しては個々の治療者の判断によるところが多く、統一のガイドラインはありません。この治療法においては、以下の3点を患者さんと周囲の人々が理解する必要があります。・効果が表れるのに時間がかかる治療法であり、一般的には数年かかる・誰にでも効果が期待できるものではない・治療者との信頼関係がなければ効果は得られない個人精神療法は、精神科医が行うもっとも基本的な治療法の1つではありますが、「絶対的な治療法」であるという過度の期待を持つと、すぐに効果が出ないと治療を投げ出してしまったり、治療者を疑ったりと逆に治療が困難になってしまうことがあります。その場しのぎではなく問題を根本から改善しようとするものであるため、時間はかかりますが、本人が治療の意思を持って、治療者と信頼関係をしっかり結んで治療を継続していくことが必要です。また、回避性パーソナリティ障害の基盤となる気質を「森田神経質」と呼ぶことがあり、その治療法として「森田療法」があります。森田神経質のある人は、不安や恐怖を「あってはならないもの」として排除しようとするあまり、かえってそれにとらわれてしまうという悪循環に陥っています。この悪循環を断つために、不安や恐怖を「あるがまま」受け入れる姿勢を身につけようとするのが森田療法です。公益財団法人メンタルヘルス岡本記念財団「森田療法とは」集団精神療法とは、同じパーソナリティ障害を持つ人が複数人集まり、グループで話し合いをしたり、共同で作業をしたりする活動を通して、社会にうまく適応できない原因を見つけて解決する方法です。他の患者さんとコミュニケーションをとりながら、自分と同じ障害を持っている人を見つめることで問題に気付き、それを自分にあてはめて考えることができるようになります。また、集団精神療法での仲間体験は、患者さん自身の自己肯定感を持たせることにつながり、他人とコミュニケーションの取り方を練習する機会にもなります。家族療法では、患者さん本人だけでなく、家族にも治療を行います。パーソナリティ障害がある患者は、その家族にも認知や思考のパターンに偏りがあることが多いです。この偏りのために、家族の努力が患者さんの症状を逆に悪化させていることもあります。具体的には、治療者が家族全員と面接を行ったり、患者さんの付き添いで来院した際に話を聞いたりします。患者さんに思いをうまく伝える言葉のかけ方や、患者さんの気持ちを安定させるための振舞い方など、適切な対応法を治療者から指導します。なお家族療法は、患者さんが未成年のときに行われることが多いです。患者さんがある程度の年齢に達している場合は、患者さん自身が家族から自立する方向で治療が行われる傾向にあります。薬物療法は、強い不安や緊張、抑うつなど、程度の強い精神症状を一時的に和らげる目的で使われます。しかし、あくまで対症療法にすぎず、障害を根本から治すことはできません。治療の中心は精神療法で、薬物療法はその潤滑油としての役割を果たします。使われることのある薬の種類と働きは以下の通りです。■抗精神病薬脳に働きかけて、興奮を静めたり、心を安定させます。フマル酸クエチアピン、リスペリドンなどリスペリドン■抗うつ薬気持ちの落ち込みをやわらげ、心を楽にします。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)など■抗不安薬抗うつ薬より効き目がおだやかで、不安感をやわらげます。ベンゾジアゼピン系抗不安薬(ロラゼパム、ブロマゼパムなど)ロラゼパムブロマゼパム■その他睡眠のリズムが乱れているときは睡眠薬を、そのほか衝動を抑えるためにてんかんの薬や副作用を抑える薬なども使われます。ここでも、「薬を飲むことで、障害がすぐに良くなる」という過度な期待を寄せないことが大切です。また、服薬の決まりをきちんと守り、量や種類に不安があるときはきちんと主治医に相談しましょう。患者さんの認知のゆがみを是正するための治療法です。患者さんに自分を客観的に観察してもらい、認知のゆがみがいつどのようにして起こったのかを記録し、自覚してもらいます。そのうえで、それを改善するための認知の仕方、行動の取り方をロールプレイングなどを通して実践的に学びます。回避性パーソナリティ障害の人が悩んでいる様々なことが、いかに主観的な心配にすぎないかを本人に気付かせて、問題の解決を目指します。近年は簡易型の認知行動療法の研究・開発が進んでいます。具体的には、当事者や仲間がお互いに支え合うサポートグループ・プログラム、短時間で相談に乗る相談センターや電話相談、コンピュータ支援型認知行動療法が実際の現場で活用されています。国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター認知行動療法とは障害を克服するために、本人が心がけること出典 : 回避性パーソナリティ障害の人は、親の期待のもとで形成された「理想的な自己」のイメージと、その理想に届かない「劣等的な自己」のイメージの両方を持っていますが、中間にある「等身大の自己(ありのままの自分)」のイメージが持てていません。そのため、何か行動を起こして失敗したときに自尊心が傷つくことに過敏になってしまっています。「等身大の自己」を形成するためには、どんなに小さなことでも自らチャレンジして、成功体験を積み重ねることが必要です。不安や恐れ、迷いは一度横に置いてみて、チャンスが巡ってきたときはまず実行してみましょう。小さなことでもチャレンジを続けることで、失敗の恐れや不安は次第に消えていくはずです。また、うまくいく経験ばかりを求めないことも大切です。失敗する経験は成功する経験よりももっと価値のある体験です。「失敗してもまたやってみればいいや」と気楽に構えてみてください。どうしても一歩を踏み出せないときは、背に腹は代えられない状況を作ってみるというのも一つの方法です。これまでの自分を守ってくれるものがなくなると、一歩踏み出して動き出したというケースは多いようです。例えば、引きこもりの青年が、その子をずっと心配していた父親が亡くなるとその年のうちに仕事をはじめ、以来ずっと仕事を続けているというケースもあるそうです。まずは自分が「やってみたい」と思うことから、少しずつチャレンジしてみてはいかがでしょうか。周りはどう支えればいい?出典 : 回避性パーソナリティ障害を本人が克服するにあたって、周りの人々が対応を工夫することも大切です。ご家族やご友人に障害のある方がいるとき、以下のことに気をつけてみてください。回避性パーソナリティ障害の人は、「自分は何をやってもダメだ」という否定的な自己イメージを持っています。他者からの評価にも非常に敏感であるため、周囲の人は言葉のかけ方に配慮する必要があります。自信を失って症状が悪化するのを防ぐために、けなしたり、否定したり、拒絶したりといった対応は避けなければいけません。逆に、どんなに小さなことでも何かに成功したときは、良かった点を褒めることで本人の自信につながります。結果だけでなく、その過程や意欲、姿勢自体を褒めるのがよいでしょう。回避性パーソナリティの人に、本人の意志とは無関係のことをやらせ、そしてそれがうまくいかなかったときに本人を責めれば、本人の自尊心は深く傷つき自己肯定感が失われてしまいます。周りが先回りして本人の意思決定を横取りするのではなく、本人の主体性や気持ちを尊重して、本人が意思表示をするのを待つことが大切です。本人に人生の決定権と責任を求めていくことが自立へとつながります。本人が行動や意思決定を躊躇している場合は、周りは第三者のような距離で程よく背中を押すとよいでしょう。回避はストレスや傷つきに対する自然な反応です。極限まで頑張らせようと無理強いすると回避が全般化し、すべてを回避するようになってしまうことがあります。そのため、「疲れた時は休めばよい」ということを教えて適度に逃げ場をつくってあげることが大切です。回避の反応が長引いている人に対しては、第三者の力を借りて風穴を開けたり、本人がやりたいと思っていたことを突破口にしてみることが有効です。失敗やつまづいたことにはこだわらず、うまくいかなかったらまた考える、というようなのんびり構えたスタンスがプラスに働くことが多いです。まとめ出典 : 日本人は回避的なパーソナリティを持つ人が多いため、回避性パーソナリティ障害は他のパーソナリティ障害に比べて「困った人」と思われにくく、受け入れられやすい傾向にあります。そういった環境があるため、比較的周りの人に相談しやすかったり、共感を得られやすかったりするのではないでしょうか。また、日々の心がけだけでも、克服に向けた取り組みはしやすいと思います。「等身大の自己」を受け入れるために、不安や心配はひとまず置いておいて、小さなことから少しずつ何かを始めてみてはいかがでしょうか。ただし、生活に支障が出る程の症状が出ているときは専門機関に相談することをおすすめします。医療機関などで適切なサポートを受けることが、克服への近道になることもあります。
2016年09月05日ディスグラフィアとは?どんな障害?出典 : ディスグラフィアは書字障害のことをさし、「読む」「書く」「聞く」「話す」「計算する」「推測する」のうち、文字を「書く」ことに困難がある学習障害(LD)です。ディスグラフィアの定義には曖昧な部分がありますが、アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では限局性学習障害のうちの1つとし、以下のように定めています。315.2(F81.81) 書字表出の障害を伴う:綴字の困難さ文法と句読点の正確さ書字表出の明確さまたは構成力(日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』2014年 医学書院/刊p66より引用)ディスグラフィアは通称であり、書字障害や書字表出障害などといったようにさまざまな呼称がありますが、この記事ではディスグラフィアという名称を用いて説明していきます。また、「書き」の困難は「読み」に困難のあるディスレクシア(読字障害・読み書き障害)に伴って生じている場合もあります。この記事ではその場合についても紹介します。ディスグラフィアを含む、学習障害の特徴の一つに「知的発達には大きな遅れがない」ことが挙げられます。つまり、話したり行動することはでき、文字を読むこともできるのに、文字が書けなかったり、苦手だったりするのです。その子の姿だけを見ると、しばしば「努力していないから書けない」「苦手なら人よりたくさん練習すればいい」と本人の努力不足を責められたり、親には「子どもに勉強をさせていない」などの偏見が生まれることがあります。これはディスグラフィアや学習障害のある子、そしてその親にとってはとても辛いことです。なぜなら学習障害の場合、周囲の子と同じやり方では、どんなに本人が頑張って努力しても字を書くのが難しい状態だからです。ディスグラフィアの症状出典 : ディスグラフィアの症状の現れ方や苦手なことは、一人ひとり違いますが、代表的な症状には以下のようなものがあります。・書き文字がマスや行から大きくはみ出してしまう・文字を書くときに鏡文字を書く※ただし、鏡文字は幼少期の発達段階で誰にでも起こりうるものなので、必ずしもディスグラフィアの症状とは言えません・年相応の漢字を書くことができない・文字を書く際に余分に線や点を書いてしまう・間違った助詞を使ってしまう・句読点などを忘れるなど読字障害であるディスレクシアに伴ってディスグラフィアが生じることもあり、その場合は、字を読めないという症状もあります。いずれにせよ、文字を書く際に何かしらの困難がある症状がみられる場合、ディスグラフィアの可能性があると言えます。ディスグラフィアの原因出典 : ディスグラフィアの原因やメカニズムは、明確には明らかになっていませんが、現在、以下のような要素が「書き」の困難につながっていると考えられています。ディスグラフィアの原因は一つではなく、人によっても原因が異なると考えられます。そのため、本人にとってなぜ書くことが難しいかの原因を考えることは、困りごとを解決する上でとても大切です。視覚情報処理は、文字のパーツの位置関係や大きさを認識したり、パーツから形を構成したりする働きです。英語圏などで使用されるアルファベットは比較的、シンプルな文字の形をしています。一方、日本語の場合などは漢字のように複雑な形の文字が多いため、小学校などで漢字に出会うことで困難が表れやすい傾向にあります。「読み」には問題ないが、「書き」のみに困難が生じる場合、視覚情報処理に関連している可能性があると考えられています。また、視覚過敏によって、紙と文字の色のコントラストを過敏に感じ取ってしまうことでノートに向き合えない場合もあります。音韻処理とは、特定の文字がどのような音と対応しているかを理解する働きです。例えば「た」という文字が「ta」という音であると理解するものです。また同時に、「り」と「ん」と「ご」→「りんご」のように、文字を単語のまとまりとして捉えることも難しい場合があります。この「読み」の困難が「書き」の困難につながる場合があります。ディスレクシアに伴うディスグラフィアの場合はこのことが原因として考えられます。発達性協調運動障害とは、日常生活における協調運動が、本人の年齢や知能に応じて期待されるものよりも不正確であったり、困難であるという障害です。別名、不器用症候群とも呼ばれていました。発達性協調運動障害がある場合、字を書くなどの指先を使った細かな作業、または目などの感覚器官からの情報と指先の細かな作業との協調運動が同年代に比べぎこちなく、遅かったり、不正確になります。このことで、字がマスからはみ出してしまう、という症状が現れたりします。また、筆圧の薄い原因としては、筋力が弱いことでうまく鉛筆などを握ることができない場合があります。ディスグラフィアの困りごとと工夫出典 : ディスグラフィアは、たくさん練習するだけでは字を書けるようになりにくい障害です。なので、量よりも質に重点をおいた訓練をゆっくり家庭でするなど、家族の協力が必要です。では、どのようにディスグラフィアと向き合っていけばいいのでしょうか?ディスグラフィアと向き合うには、その子の特性に合った方法を見つけていくことが大切です。ここでは6つの困りごとに対する工夫を紹介します。文字のバランスがうまく書けない原因として、「マスの空間を捉えにくい」、「細かく手を動かすことが難しい」などがあります。マスの空間を捉えることができるようにするために、マスを4色のブロック分けをして文字のどのパーツがどれくらいマスを占めるのかを教えていく方法や、その文字の各パーツの書き始めの箇所に印をつけて大きさを覚えさせる方法があります。Upload By 発達障害のキホン他にも、細かく手を動かすことが難しいお子さんには、滑り止めマットを張り付けた下敷きを使って力の入れ具合を教えたり、ひらがなのバランスが崩れやすいお子さんには、イラストを使って形を覚えやすくする方法もあります。文字や数字が読めるのに書けない理由はさまざまあります。一人ひとり、なぜ書けないのかを考え、その子に合った方法を考えることが大切です。形として覚えるのが苦手かもしれない場合は、お子さんが楽しめるような方法で形を覚えさせていく方法があります。たとえば文字をイメージしやすくなるようにイラストを使ったり、数字の書き方をリズムに乗せながら練習することができます。また、漢字の場合はパズルのようにへんやつくりのパーツを組み合わせて1つの漢字をつくることもおすすめです。字を書くことが苦手なお子さん向けの漢字練習教材もあるので活用してもよいでしょう。Upload By 発達障害のキホン読み・書き・計算等の苦手を改善・克服するための 特別支援教材「プレ漢字プリント」|NPO法人スマイルプラネット似た文字を書き間違えてしまう場合、その似た文字の違いを区別することが難しいのかもしれません。たとえば、ひらがなの「わ」と「れ」、「め」と「ぬ」、漢字では「手」と「毛」などは形が似ているために混乱してしまうことがあります。そうした場合、その2つの違う部分を太くしたり、色を付けて目立つようにして覚える方法などがあります。これらの方法で似た文字の違いを意識しやすくすることで、間違えにくくなります。Upload By 発達障害のキホン鉛筆を使うためには「親指・人差し指・中指で鉛筆をつまんで動かす動き」と「薬指と小指の安定」が必要になります。細い鉛筆だと、より指先の力が必要だったり、手全体で支える必要があります。細い鉛筆より太い鉛筆の方が持ちやすいので、はじめは子ども用の太いものを使うこともおすすめです。他にも、指を動かす運動をすることで鉛筆をつかむ力や安定性を得ることができます。また、この場合は筆圧が弱いことも要因とされるので、2Bや4Bといった芯が濃くて柔らかいものを使うことでお子さんの自信をつけることにもつながります。また、市販の補助グッズを使うことで鉛筆た持ちやすくなることもあるので、使ってみるのも良いでしょう。視覚過敏がある子は、紙の白さを過敏に感じ取ってしまいます。文字の黒さと紙の白さのコントラストに目がチカチカしてしまうこともあり、長い間ノートに向き合うことができない子もいます。白ではなく、コントラストの激しくない色のノートを使ったり、色つき眼鏡を使ってみるなど、視覚過敏を緩和することのできる方法を探してみましょう。Upload By 発達障害のキホン鏡文字を書く原因として、右と左の認識ができていない可能性があります。そのため、「左から書くよ」「右に伸ばすよ」などといったように書く際に左右の声かけがおすすめです。左右がどちらなのかがすぐにわからず困っているようでしたら、まずはお子さんが左右を認識できるようにする必要があります。「右足から靴を履いてみよう」「左手でコップを取ってみよう」など日常生活での声かけを通して、定着を図りましょう。また、左右の認識が難しかったら、薄く書かれた見本をなぞることも工夫としてあげられます。鏡文字は必ずしもディスグラフィアのような学習障害の症状とは限りません。幼少期では脳の発達がまだ完全ではないため、左右がどちらかか把握できていなかったり、利き手が分化されていないことがあります。日本小児神経学会によると、一般的には、小学校1年生が終わる頃でもひらがな文字を書く際に困難がみられる場合や、拗音、撥音、促音の特殊音節につまずきがみられる場合は、小児科への受診をおすすめしています。ひらがな文字に限らず、漢字や英語に困難が現れる場合もあるので、ディスグラフィアの特性があっても、それに気づく時期はそれぞれです。お子さんがどんな文字を書くことに対して困難を感じているか、まずは様子を見てみましょう。学習障害について|日本小児性神経学会黒板の文字をノートに写す際には、黒板とノートを交互に見る必要があるため、焦点を移す目の動き(眼球運動)と記憶が必要になってきます。風船バレーやスーパーボールなど、目の運動を取り入れた遊びを通した訓練が有効でしょう。また、学校と話し合うことで、マス目黒板を使用してもらったり、iPadなどで黒板の写真を撮ることができるようになる場合があります。ディスグラフィアに対する合理的配慮出典 : こうした家庭での工夫だけでなく、実際の学校などの教育現場では合理的配慮が必要になってきます。教育現場での合理的な配慮とは、障害のある子どもが十分に教育を受けられるために、一人ひとりの障害の状態や教育のニーズに合わせ、本人と周りの人が話し合い納得した上で行われる配慮のことです。以下、実際にあったディスグラフィアの合理的配慮の体験談をご紹介します。板書の量が増えてきて娘がついていけなくなり、サポートの先生が手伝ってくれるようになりました。先生がノートに書いてくれている間、娘は何をしているんですか?お絵かき?と思わず聞いたら、(娘は気が散ると授業中でもすぐお絵かきをします)「黒板を読み上げてもらってます。こちらも書きやすいですし」とのことで、授業にきっちり参加しつつ、サポートを受ける体制になっているようです。(出典:発達ナビ Q&A)の結果から、処理速度が低い事が分かっています。・授業では、1人読みさせない←音読がゆっくりで、人前で失敗させては自己肯定感が下がるから。・連絡帳は昼の休み時間に書かせる。←書くのに時間がかかり、帰りの会の時間では乱雑な字になってしまうから。・板書の前に先生から合図(肩を叩く、小声で一声かける)をして貰う←言葉だけの指示では通り辛いので。あとは、たまに連絡帳の文言だけでは分かりづらく、口頭で児童に説明した事は、個別に付箋に詳細を書いて頂いたり、漢字連絡の課題は先生が赤字で書いて貰っていたりします。(出典:発達ナビ Q&A)年になっても作文や漢字、読書などが、本人の頭の中や会話の能力と比べるとあまりにレベルが低く、訓練でどうにかなる物でもないと思い、授業中のノートテイクと作文のために、持参したiPadを学校で使わせてもらうよう交渉しました。担任との交渉がうまくいかず、時間がかかりましたが、6年になってから通常授業と、通級の個別授業でiPadを使い、カメラで黒板を撮ったり、音声入力で作文をしてみたりと実績を作りました。授業の内容は理解しているだけに、中学校のノートや、定期テストができないと、成績が落ち込み勉強意欲がなくなるだろうと思われたので、入学前に支援会議を開いていただき、小学校の通級担任、中学校校長、学年主任の先生などにできない部分を何度か説明して、授業へのiPad持ち込みと、定期テストでの配慮(現状は時間延長)をしていただけることになりました。(出典:発達ナビ Q&A)上記の体験談のように、合理的配慮を学校が検討してくれることもあります。体験談を参考に、まずはお子さんの通っている学校に相談をしてみましょう。「合理的配慮」ハンドブックのダウンロードはこちら|LITALICOジュニアディスグラフィアの治療法はあるの?出典 : 現在、ディスグラフィアの医学的な治療法は確立されていません。一般的には対症療法として読み書きのトレーニングが行なわれます。ですが、ディスグラフィアも含まれる学習障害は、知的発達の遅れがないことから発見が難しいとされています。そのため、小学校入学後の、実際に読み書きなどの学習が始まる時期に気づく場合が多くなっています。また、日本での認知度も低いため、まだまだ対応が遅れがちなのが現状です。気になる症状があったら専門機関へ出典 : 子ども本人が「書き」に困難を感じていたり、同年齢の子どもと比べて著しく書字の習得に遅れが見られるなど、子どもの様子からディスグラフィアかもしれないと感じた場合は、まず学校や地域の保健センター、児童相談所などで相談してみましょう。子どもだけではなく、大人になってから気づく場合もあります。その際、子どもと大人で専門機関が変わってくるので以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所など【大人の場合】・発達障害支援者センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所など地域情報|発達ナビディスグラフィアに対する専門的な支援は、上記のような相談機関を経て、専門家による検査・診断を受けてから行われることが一般的です。しかし、医師による診断がつかなかった場合や検査を受ける前であっても、その子に合った環境を整え、学習方法を見つけてあげることが大切です。親が子どもにあった学び方を見つけるケースもありますが、難しい場合は専門機関に相談したり、学校の特別支援教育を担当する先生に相談してみるとよいでしょう。まとめ出典 : ディスグラフィアは、書くことに困難がある学習障害です。そのため、書くことを努力してもなかなか上手くいかず、先生や周囲の友達から「努力不足」とされ、障害だと理解されないことがあります。そのことから「自分は字が書けない」と自信をなくしてしまい、うつ病や不登校といった二次障害になってしまう子どももいるのです。練習が足りないからとたくさん書かせたり、叱ったりするのではなく、周囲の人がその子に合った方法を考え、ゆっくりと向き合っていきましょう。
2016年09月04日発達障害の娘に、二次的な症状として現れた「解離」22歳でアスペルガー症候群と診断された娘。小学校高学年から高校卒業まで続いたいじめにより、神経性食欲不振症、不登校、被害妄想、幻聴幻覚、解離などの二次障害がひどくなり、現在入院しています。二次障害の中でも、不安が強くなった時に起こる解離は、本人の記憶もあやふやで分からないことが多いもの。私が体験した娘の不思議な解離症状をお話したいと思います。普段から、夜になると突然不安に襲われる娘出典 : 日中は穏やかに過ごしている娘ですが、夜になると一気に不安が押し寄せて来ます。不安はどんどん大きくなって娘に襲いかかるので、側に寄り添い言葉をかけても不安が収まることはありません。やがて強い不安は、パニックとなり過呼吸や引きつけを起こします。手や足をバタバタさせたり、全身を揺らしながら大声をあげ泣き叫んだりするのです。その間、大声で泣き叫ぶ娘を前にしても、どうする事も出来ずオロオロして疲弊してしまいます。頓服が効けば、1、2時間ほどで治まり、そのまま眠ってしまうのですが、夜が来れば眠れなくなり不安が襲ってくるので、相変わらず頓服を飲んでばかりの日が続いていたのでした。その日は、いつもと様子が違った。しきりに「行かないで!」と言う娘出典 : その日、娘は絵を描いて過ごしていましたが、私が家事をしようと娘のそばを離れると「行かないで!」と言うのです。結局何も出来ずに、1日中娘に付きっきりの状態でした。夕方になり、重度知的障害のある二男が施設から帰宅する時間になったので、私はいつものように送迎バスを迎えに玄関先へ出ました。すると娘は「行かないで!」と言い、私を引き止めたのです。娘は私の足にしがみついていましたが、バスはすでに到着しています。私は、娘の手を振りほどいて玄関に向かったのでした。「 行かないでー! あぁーーっ!」と、叫ぶ娘の大声が聞こえましたが、その時の私は大袈裟だなぁと思いながら外に出たのでした。二男を迎え、家に戻ろうと振り返ったとき、そこには裸足で呆然と立ち尽くす娘の姿がありました。あろうことか、娘は、私の横に立っていたのです。「どうしたの?」私は驚いて、娘に声をかけました。「家に帰りたいの…。」娘はそう答えると、裸足のまま家の門を出ようとしたのです。「ここが家でしょ?何言ってるの?」私は、無理やりに娘を家の中へと押し込んだのでした。「あなたは、だあれ?」と呟いた。娘は私の名前もわからなかった家に入ると、「あなたは、だあれ?」と娘は呟きました。一瞬ドキッとしました。ですが、以前にも薬を飲んだ後に意識がぼんやりしていたとき、この言葉をつぶやいていた覚えがあったので、今回も一瞬の出来事だろうと軽く考えておりました。ところが「あなたは、だあれ?」と何度も尋ねる娘の様子に、私は初めてとんでもない事が起きているのかもしれない…と、気づいたのでした。「家に帰りたいの。おばあちゃんのところに帰らなきゃ。」娘はしきりに家に帰ると言っては、玄関から出て行こうと試みました。玄関のドアの前で、両手を広げて立ち塞がり、娘が外に出ないように必死に止めると「どうして止めるの?おばさん、だれ?」と、 娘は声を荒げて怒りながら言いました。私は言葉を失いました。目の前にいる娘は、さっきまでの娘と違っていたのです。声のトーンも、言葉づかいも、確かに娘とは違っていたのでした。「お母さんだよ!」「お母さんって、だれ?」私が名前を告げると娘は「知らないわ」とぽつりと言いました。この言葉で、ようやく何が起きているのか知ったのでした。出典 : 以前、医師から娘に解離症状があると告げられてから、ずっと 解離性同一性障害の心配をしていました。まさか…今、目の前にいる娘に起きているのは、もしかして…。私は、恐るおそる娘に聞いてみたのでした。「あなたはだあれ?お名前は?」「知らないわ!」本当に何も知らない様子の娘に、私は娘の名前を告げました。「だれ?それ。変な名前!そんな名前嫌いよ!」娘は、嫌そうに顔をしかめて言ったのでした。「お母さんは?お父さんは?」「いないわ!死んじゃったの。」「どこから来たの?」「ずうっと遠くの外国。船に乗って来たの。」「どうしてここに来たの?」「お花がたくさん咲いていて、綺麗な絵があったからホテルだと思って入ったの。」「家族もみんな死んじゃった。おばあちゃんと住んでるの。おばあちゃん 病気だから早く帰らないと死んじゃうわ。」そう言ってすぐに玄関から出ようとするのです。私は、引き止めるので精一杯でした。重度知的障害の二男は施設から帰宅したばかりでしたが、いつもの娘と異なる様子を察し、娘と私のやり取りを遠巻きに見ていました。「この子はだあれ?」娘が二男を指差して尋ねるので、名前を告げると「可愛いわね!」と頭を撫でて微笑むのでした。いつもなら、夕食の支度をする時間でした。このまま日が暮れていき、夜になって娘が外に飛び出してしまえば、もう私一人では対応出来ません。友人から聞いた「交代人格」という言葉。まずは今夜を乗り切ろうと覚悟を決めた出典 : 娘の対応に困り、私は友人にメールをして相談しました。「事故防止のためにも、交代人格には家にいて欲しいが、無理なら一緒に出かける事。人格が戻るまでは、交代人格と対峙するしかない事。この時、交代人格を否定してはいけない。」友人が下さったこのアドバイスは、解離について全く知識のない私にとって、ただ1つの救い。その後も情報を提供して下さり、ご自分の事のように心配して下さったのでした。思いがけない娘の変異に驚き、何とかしてとにかく一晩を乗り切らなければという思いで必死でした。無我夢中で、目の前の娘ではない別人格と話をして「今夜は遅いからここで泊まって欲しい」と話したのでした。私との力づくの引っ張り合いで疲れたのでしょう。娘は、素直に私の言葉にうなずいて「今夜はこちらで泊めて下さい。」とやっと布団に入ったのでした。そのとき既に23時をまわり、夕食の時間はとっくに過ぎていました。出典 : その間は二男は放ったらかしでしたが、気づいたら自分でパンを焼いて黙って食べておりました。重度の知的障害がある二男ですが、こんな時は事態を察知して私の手間を取らせずに自分でやってくれるのです。私はごめんねと謝り、感謝をしたのでした。娘がやっと落ち着いて話ができる状況になったとはいえ、普段から服用している薬を飲ませるのにまた一苦労。いつも通り「これを飲んでね。」と差し出すと、「毒じゃないの?」と疑って聞かないのです。必死で説得して飲んでもらい、やれやれでした。深夜1時。大学病院に、やっとの思いで電話をかける出典 : 娘が眠ってから、すぐに大学病院に電話をかけました。深夜1時を過ぎていました。当直医に状況を伝えると「うちの病院では、すぐに入院できないが、どうしてもと言うなら、緊急救急システムを使う方法がある。」と教えて下さいました。他害や自傷などで命の危険があるときに、緊急で入院措置をとってくれる病院を紹介してもらえる、というような説明でした。すがるような気持ちで、緊急救急システムに電話をかけました。しかし「おとなしく眠っている現在の状況ではシステムは使えない。もっと深刻な場合に限る。仮に使っても、遠隔地の病院しか空いていない」とのことで紹介してはもらえませんでした。明日の朝まで、別人格と対峙しようと、私は覚悟を決めました。長い長い夜が過ぎて行きました。眠れない一夜を明かし「娘が目を覚ました時には、元の娘に戻っていますように」と、心の底から祈りました。朝が来て、別人格の娘との2日目が始まった出典 : 朝になり目覚めた娘は、別人格のままでした。そして「家に帰りたい」と再び言い出したのです。別人格の娘は、朝ごはんを食べ、毒ではないかと疑いながらも薬を飲み、だんだんと私を頼ってくれているのではないかと感じるようになりました。娘ではないけれど、暴言は吐かないし、言葉使いも丁寧で、穏やかな性格のようだ…。私は次第に、別人格の娘も愛おしく思えてきたのでした。そんな時、突然娘が「おばさんの事、お母さんと呼んでいい?」と言ったのです。私は嬉しさのあまり、「いいよ!呼んで!」と笑顔で答えていました。「お母さん優しいから、ずっとこのまま ここにいてもいい?」「うん!いいよ。ここにいて!」「じゃあ、家に帰らなくてもいいわ。ここにいる!私、名前がないから、お母さん 名前つけて!」別人格の娘がそういうので、娘の名前を告げてみましたが「そんな名前嫌いよ!大っ嫌い!」と言うのです。自分の名前に嫌悪感を示すことは不思議でした。ですが、一先ず入院中の主人に電話をかけ「名前をつけて欲しいと言ってるけど、どんな名前がいい?」と相談しました。主人には、ずっと電話で状況を伝えていたので、すぐに答えてくれました。出典 : 「マリア…」「えぇっ?マリア?恥ずかしいんじゃない?」「じゃあ、サラ!」マリアもサラも聖書に書かれている女性の名前です。聖書もキリスト教にも興味のない主人が、この名前を出した事に私はとても驚きました。娘にどちらが良いか聞くと「サラがいい!」と即答しました。「サラちゃんにする!今日から私は サラちゃんになる!」と言って、大喜びしたのでした。自分の手の甲に「サラ」と書き「サラちゃんと呼んで!」と何度も言い、家族の名前を一人ずつ書いて欲しいと言ってノートを差し出したのでした。言われるままに、私はノートに家族の名前を書きました。「お父さん、お母さん、お兄ちゃん、サラちゃん、弟…」名前を言いながら説明をしていると突然、別人格の声が変わり娘の声になったのです。驚きました。いつの間にか、別人格は消えていました。このとき既に23時間が経過していました。長い長い時間でした。娘は、やっと元の娘に戻ったのでした。本当の娘に戻ったとき、別人格で過ごした出来事を覚えていた出典 : 「お母さんが上手く誘導してくれたから、戻って来れたんだよ。」娘は嬉しそうに話してくれました。「えっ?覚えているの?」「うん。ところどころ覚えてる。自分が誰だか分からなくなって、自分の名前も家族も分からなかったから、それでノートに書いて!って、言ったんだよ。」確かに、言われてみれば別人格のはずなのに、娘自身の私物が入っているボックスを開けていたり、自分の名前を嫌いだと言ったり、不思議な行動がありました。私が別人格だと思いひたすら対峙していたのは、娘自身だったのかもしれないと思えてきたのでした。「この先、多重人格になったらどうしよう」と不安だった私は、ぼんやりとでも昨夜の出来事を覚えているという娘の言葉に、 少しホッとしたのでした。何度も解離を引き起こし、専門病院に入院中。穏やかな日々を願いながら…出典 : すぐに主治医の診察を受けると「記憶があるので、真性の解離性人格障害ではないでしょう。自分を認識出来ない状態になって、混乱したのではないか。解離ではあるけれども、多重人格とは違うでしょう。」との事でした。安心したのもつかの間、翌日も翌翌日も、娘は再び解離になり同じような症状が出ました。「あなたはだあれ?ここはどこ?」と、同じ質問を繰り返し家から出ようとする娘。私ひとりで対応することに限界を感じました。連休中だったので、仕方なく何度も救急外来に娘を連れて行きました。主人は手術を受けるために入院中だったのですが、「お父さんの手術に対しての不安から来ている解離なので、手術が終わるまでは繰り返し続くでしょう。」との診断でした。そして連休明けに、主治医に「何度も解離を起こす娘の対応が難しい」と伝えました。退院したばかりなので再入院は出来ないが、代わりに別の病院を紹介しますと言われ、精神科の専門病院を紹介していただき、娘はやっと入院できたのでした。後日、発達障害があると解離症状が出やすいと主治医に聞きました。娘の場合は解離ではあっても解離性同一性障害ではないそうですが、「これは別人格だ」と信じ込んでしまうほど、あの時の娘は声も話し方も異なっていました。今でも不安になると、解離になり自分が誰なのかどこにいるのか、分からなくなってしまいます。今は、娘を襲う不安が少しでも和らいで、穏やかな毎日が過ごせることを願うばかりです。
2016年08月29日トゥレット障害(トゥレット症)とは?出典 : トゥレット障害とは、児童期から青年期にみられるチック症の一種で、多様な「運動チック」と1つ以上の「音声チック」が1年以上持続することを特徴とする精神・神経疾患です。1885年に研究者のGilles de la Tourette(トゥレット氏)にちなんで命名され、トゥレット症やトゥレット症候群と呼ばれることもあります。トゥレット障害は、大きくはチック症と呼ばれる疾患群の1種として分類されます。まばたきや首振り、咳払いといった、一見癖のように見える症状が起こることをチックと呼びます。チックの症状には運動性チックと音声チックの2種類があり、さらに持続時間に応じて、単純性チックと複雑性チックに分類されます。2013年に出版されたアメリカ精神医学会のDSM-5(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)の診断基準によると、チック症は5つの診断カテゴリに分類されます。そのうち、以下の4つの条件を満たすものがトゥレット障害と診断されます。トゥレット症の推定有病率は学童期の子どもで1000人あたり3~8人の範囲とされています。A. 多彩な運動チック,および1つまたはそれ以上の音声チックの両方が,同時に存在するとは限らないが,疾患のある時期に存在したことがある.B. チックの頻度は増減することがあるが,最初にチックが始まってから1年以上は持続している.C. 発症は18歳以前である.D. この障害は物質(例:コカイン)の生理学的作用または他の医学的疾患(例:ハンチントン病,ウイルス性脳炎)によるものではない.(日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院,2014年/刊)東京大学医学部附属病院精神神経科―トゥレット症候群の概要チック症について詳しくは次の記事をご覧ください。トゥレット障害の症状経過出典 : トゥレット障害は、平均的に4~6歳で発症し、10~12歳くらいに重症度のピークがきます。まず初期の段階で、まばたきや首ふり、顔をしかめるといった「単純運動チック」が始まることがあります。そしてしばらく経つと、物に触る・蹴る、飛び上がるなどの「複雑運動チック」、不謹慎な言葉を唐突に言ってしまうなどの「複雑音声チック」へと進行していく場合があります。その後、一般的には青年期の間に症状は軽減するといわれています。トゥレット障害を含むチック障害(発達障害者支援関係報告会金生由紀子)トゥレット障害の主な原因と悪化要因出典 : トゥレット障害正確な原因はまだわかっていませんが、家系発症が多いことや双生児研究の結果から遺伝的要因の関連性が指摘されています。また、情動、注意、意欲、報償、依存、歩行運動などをつかさどる、大脳基底核のドーパミン神経受容体の異常が関連しているともいわれています。トゥレット障害の症状を悪化させる要因は環境要因、気質要因、その他の要因の3つに分けることができます。■環境要因チックの症状は、不安、興奮、強い疲労によって悪化し、落ち着いて集中しているときは改善します。たとえば、テストを受ける、課外活動に参加するなどの、ストレスが多い出来事はしばしば症状を悪化させる一方、勉強や仕事に集中しているときは、症状を軽減させます。■気質要因対人関係が不器用、不安やストレスを感じやすい、緊張を感じやすいなど、デリケートな気質の子どもがトゥレット障害を発症しやすいといわれています。■その他の要因併発したADHD(注意欠陥・多動性障害)の症状緩和のために使用される中枢刺激薬などが、トゥレット障害の症状を促進することがあります。また、結膜炎を生じた際の目のかゆみでまばたきをしていたのが癖になったケースや、テレビの見過ぎによる目の疲れが原因となったケースもあります。トゥレット障害によく見られる合併症出典 : トゥレット障害のある人は、他の障害も併発することが少なくありません。代表的なものとして、ADHD(注意欠陥・多動性障害)と強迫性障害の2つが挙げられます。これらが合併症として現れる理由は、トゥレット障害、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、強迫性障害がいずれも、ド-パミン系やセロトニン系などの脳内神経伝達物質の機能不全に起因するためであると推測することができます。その他、学習障害、睡眠障害、気分障害、自傷行為などを併発することがあります。これらは、日常生活においてチックが現れることへの不安や、チック症状そのものが学習活動や仕事をするうえでの支障となることで生じる二次障害であると考えられます。しばしばみられる合併症(併発症)は、小児期の注意欠陥多動性障害と10歳以後の強迫性障害がある。ほかに、小児期には睡眠障害、昼夜の区別に一致した生活リズムがとれない、直立二足歩行がきちんとできないことがみられ、10歳代には衝動性行動などをみることもある。(「神経系疾患分野トゥレット症候群(平成22年度)」難病情報センター)東京大学医学部附属病院精神神経科―トゥレット症候群の概要ADHD(注意欠陥・多動性障害)、強迫性障害について、詳しくはこちらをご覧ください。トゥレット障害の治療方法出典 : トゥレット障害の基本的な治療方針は、トゥレット障害を除去することを目的としていません。トゥレット障害や合併症があっても本人が社会に適応できるようにしたり、周囲の環境を整備して症状や困難を緩和するという考えに基づいて、治療が行われています。そのため、本人や周囲への心理教育や環境調整などの治療法を基本としつつ、チック症や合併症の症状に合わせて、認知行動療法や薬物療法などの治療法がとられることが多いのです。比較的軽度の症状であれば、家族や学校など周囲の理解を得ることで、通常通りに生活することができます。心理教育および環境調整とは、患者の家族や学校に対して適切な支援を行うための情報提供やアドバイスを行うことで、社会適応できるようにサポートしていける環境を整備することです。重症・慢性化した症状の場合、習慣逆転法(ハビット・リバーサル)という行動療法がとられることがあります。習慣逆転法(ハビット・リバーサル)とは、意識化練習、拮抗反応の学習、リラクゼーション練習、偶然性の管理、汎化練習の5つのステップを用いた治療法のことで、これらを習得することで症状が改善されるというものです。ただし、現在のところ日本ではあまり普及しておらず、一般的な治療法ではありません。上記の療法では解決できない場合、薬物療法が行われることもあります。合併症も含めて、どの症状に的を絞るのか、副作用の程度などを考慮して選択されます。ドーパミンの過剰な働きを抑制するハロペリドールのほか、リスペリドン、クロルプロマジン、アリピプラゾールなどが用いられます。薬は人によって合う・合わないもありますので、主治医と相談し、指示のもと用法用量を守って治療を進める必要があります。ハロペリドール|独立行政法人医薬品医療機器総合機構HPリスペリドン|独立行政法人医薬品医療機器総合機構HPクロルプロマジン|独立行政法人医薬品医療機器総合機構HPアリピプラゾール|独立行政法人医薬品医療機器総合機構HP以上に示したいずれの方法でも治療できない場合は、外科治療が施されることもあります。大脳基底核に電極を埋め込んで持続的に刺激を与える、深部脳刺激療法という手術が行われます。法人日本トゥレット協会―トゥレット症候群についてトゥレット障害の診療・相談先出典 : 幼児期・乳幼児期に発症した場合は、小児診療内科・児童精神科などで診療できます。大人の場合は、精神科や神経内科、心療内科などが適切です。その他相談先には、市区町村窓口、保健所、精神保健福祉センター、発達障害支援センターなどがあります。トゥレット障害には、周囲の理解とサポートが不可欠トゥレット障害はあまり知られていない精神・神経疾患で、悪い癖やしつけが足りないなどと周囲から誤解されることが少なくありません。そのため、本人だけでなく周囲の人たちがチック障害を正しく理解し、適切な対応や望ましい接し方を身に付けることが求められます。病気について学び、正しい対応法などを学ぶことを心理教育といいます。保護者や周囲に対するトゥレット障害における心理教育は次のようになります。・チックは運動を調整する脳機能の特性やなりやすさが基盤にあり、親の育て方や本人の性格に問題があって起こるのではない。・チックの変動性や経過の特徴を理解し、些細な変化で一喜一憂しない。・チックを悪化させるかもしれない状況があれば、その対応を検討する。・チックを本人の特徴の一つとして受容する。・チックのみにとらわれずに、長所も含めた本人全体を考えて対応する。・チックや併発症及びそれに伴う困難を抱えつつも本人ができそうな目標を立て、それに向かって努力することを勧める。(トゥレット障害を含むチック障害発達障害者支援関係報告会金生由紀子)また、小学生以上でトゥレット障害のある人が生活する上で生じる困難に対する理解をサポートする教材として、次のようなものがあります。心理教育を通してトゥレット障害に対する理解を深めましょう。「チック」や「くせ」をよく知ってうまくつきあっていけるように(齋藤万比古,分担研究者:金生由紀子)まとめ出典 : もしトゥレット障害の症状が見られたら、まずは専門機関での相談・受診をおすすめします。早期から適切な支援を行うためには、自分たちの判断ではなく、専門家に相談するのが一番です。仮にトゥレット障害ではないと診断された場合でも、困難を乗り越えるための様々なアドバイスをしてもらえることが多いので、一度相談してみることをおすすめします。東京大学医学部附属病院精神神経科―トゥレット症候群の概要日本小児神経学会―Q&A大人のためのADHD.co.jp―ADHDの原因強迫性障害ガイド―強迫性障害の原因発達障害療育の糸口―トゥレット症候群の症状法人日本トゥレット協会―相談窓口
2016年08月28日高機能自閉症とは?出典 : 高機能自閉症(HFA:High Functioning Autism)とは、他者との社会的関係の困難さ、言語発達の遅れ、限定的・反復的な興味やこだわりがあり、知的発達の遅れを伴わない障害です。言語発達の遅れがあるかどうかは、2歳までに単語を習得しているかどうか、3歳までにコミュニケーション的な語句を用いているかどうかが基準になります。また、知的発達の遅れを伴わないとは、IQ70~IQ95以上など様々な基準がありますが、概ねIQ70以上である場合を示します。文部科学省では高機能自閉症を以下のように定義しています。高機能自閉症とは、3歳位までに現れ、①他人との社会的関係の形成の困難さ、②言葉の発達の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害である自閉症のうち、知的発達の遅れを伴わないものをいう。また、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。参考書籍:岡崎祐士/総編集『ICD-10精神科診断ガイドブック』(中山書店、2013年/刊)参考書籍:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(2014年 医学書院/刊)高機能自閉症の特徴出典 : 高機能自閉症は対人コミュニケーション能力や社会性、想像力に障害があるため対人関係がうまくいかなかったり、限定された物事へのこだわりなどが強く表出されたりする特徴があります。言語の発達に遅れがありますが、知能の発達に遅れはありません。■社会性と対人関係の障害・あいまいなコミュニケーションが難しい言われたことをそのままの意味で受け取ってしまうため、冗談が通じにくいことがあります。顔の表情を読み取ることも苦手な人もいます。見たまま、思ったままに発言をしてしまうと、相手を傷つけてしまうこともあります。・相手の気持ちを理解することが難しい想像することが苦手なため、相手が何をどう考えているのかを想像して行動を調整することに困難さがあります。一方的に自分の興味分野の話をし続けてしまったり、関心ない話には一切興味を示さないことがあります。・場の暗黙の空気を読むことが難しいその場や集団内で共有されている暗黙の共通ルールや慣習を察して行動することが難しい傾向があります。そのため、そうした場の"空気"を共有している人たちから見ると、自己中心的と取られがちな言動をしてしまうこともあります。■幼児期に言語能力の発達の遅れ・年齢に応じた言語やコミュニケーション能力の獲得に遅れがある2歳までに単語を習得し、3歳までにコミュニケーション的な語句を用いることができていない場合、言語発達に遅れがあると言われています。・幼児期後期から言語能力は遅れて発達する自閉症は話し言葉(言語能力)の明らかな発達の遅れ、ないしは完全な欠如があるといわれています。しかし、高機能自閉症の人の場合、話し言葉の発達が遅れているだけで、発達過程で豊富な語彙を扱えるようになります。音程、抑揚、速さ、アクセントなどにも問題なく発話することができます。■限定的な反復行動・限定された物事へのこだわり・興味が強い一度興味を持ったものに対しては、過剰といえるほど熱中する傾向があります。一般的に法則性や規則性のあるものを好み、特定の領域に関しての知識や高い集中力をもっています。しかし、集中しすぎるあまり、物事をやめられなくなることもあります。・記憶力が高い興味のある物事に関しては大量の情報を記憶して、引き出すことができます。一方で、興味がない領域に関しては覚えられず、すぐ忘れてしまうなど、アンバランスが生じることがあります。・自分独自の行動ルールへのこだわりが強い自分の決めた予定や手順などに強いこだわりを示すことがあります。その予定や手順を急に変えられることが苦手で、いつものパターンにこだわることもあります。無理に変更しようとすると混乱してしまうこともありますので、事前に変更を予告すると混乱せずに行動することができます。高機能自閉症とアスペルガー症候群は同じ?出典 : 知的機能に遅れがなく対人コミュニケーションに困難さがある発達障害として、アスペルガー症候群があります。高機能自閉症と似た特性がありますが、高機能自閉症とアスペルガー症候群はどういった違いがあるのでしょうか。アスペルガー症候群は知能・言語の発達に障害がありません。一方の高機能自閉症は知的発達における遅れや障害はありませんが、言語発達において遅れがあります。この症状の違いが臨床的な診断の際に用いられてきました。しかし、近年の研究によって、2~3歳頃にみられた高機能自閉症とアスペルガー症候群の言語能力の差は、時間の経過とともに縮まっていくことが分かりました。また、高機能自閉症は年齢を重ねて言語が身に付き始めると、アスペルガー症候群と変わらない特徴や症状がみられることが分かりました。以上のことから近年、両者はあまり区別しないで扱われることが多くなってきました。そこで、以下の項目では、高機能自閉症とアスペルガー症候群をあわせてご説明していきます。参考:大井学/『高機能広汎性発達障害にともなう語用障害:特徴,背景,支援』高機能自閉症の診断基準出典 : 高機能自閉症という言葉は一般的によく使われていますが、精神医学における診断名としては確立していません。高機能自閉症に当たる特徴・症状のある方は、診断基準上はアスペルガー症候群の診断に含まれます。また前項で説明した通り、近年は高機能自閉症とアスペルガー症候群は同種の発達障害であるという説が主流になっています。そのため、この項では、アスペルガー症候群の診断基準を紹介していきます。アスペルガー症候群(高機能自閉症)は世界保健機関(WHO)の診断基準である『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)では広汎性発達障害のカテゴリーに属しています。広汎性発達障害には「3つ組の障害」と呼ばれる「社会性の障害」、「コミュニケーションの障害」、「限定的な反復行動」の3つの領域があります。高機能自閉症は、その中でも「コミュニケーションの障害」が軽度で知能の発達もないことを言います。■ICD‐10におけるアスペルガー症候群の診断基準・認知的発達において臨床的に明らかな遅延がみられない・相互的な社会関係の障害がある・限定的で反復的な行動、関心、活動がある・明らかな言語遅滞が存在するときはこの診断は除外されるアスペルガー症候群の障害名は、アメリカ精神医学会の診断基準である『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版テキスト改訂版)において廃止されました。そして『DSM-5』で新たに、早期幼児自閉症、小児自閉症、カナー型自閉症、高機能自閉症、非定型自閉症、小児期崩壊性障害、アスペルガー症候群が「自閉症スペクトラム障害」の障害名のもとに統合されました。それに伴い、高機能自閉症の方は今後は『DSM-5』を用いて自閉症スペクトラム障害の名称で診断されることが多くなると予想されます。広汎性発達障害の「3つ組の障害」は『DSM-5』で「社会性の障害」と「コミュニケーションの障害」が1つにまとめられ、2領域に統合・再編されました。自閉症スペクトラム障害と診断するためには、「対人コミュニケーション」領域の元に分類される3項目すべてを満たしつつ、「限定的な反復行動」領域の4項目中2項目の合わせて5項目に最低限満たす必要があります。■対人コミュニケーション1.対人的に異常な近づき方をしたり、通常の会話のやりとりができない。興味・情動・感情を共有しない2.視線を合わせない。身振りや顔の表情などの非言語的コミュニケーションが不自然または異常と思われる3.状況に合った行動ができない。ごっこ遊びができない。協同することができない。仲間に興味がない■限定的な反復行動1.常動的・反復的な運動や物の使用、会話をする2.同一性への固執、習慣へのかたくななこだわりがある3.ある対象への強い愛着・没頭することや過度に限定・固執した興味がある4.感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さがある。環境の感覚的側面に対する並はずれた興味がある高機能自閉症は大人になってからも発症する?出典 : 高機能自閉症(アスペルガー症候群)は先天性の発達障害です。そのため正確には大人になってから後天的に発症することはありません。多くの場合は幼児期または小児期に症状が明らかに現れ、診断されることがほとんどです。しかし、知能にも問題がなく、年齢を重ねたことで言語を習得し発達の遅れを感じさせず、その他の自閉症状も軽度な場合、高機能自閉症だと本人も周囲も気づかないまま成人することもあります。たとえば「ちょっと変わっている人」「こういう性格なんだ」と解釈され、軽度の自閉症状を表出しつつも大きな問題を起こすことなく過ごす場合もあります。しかし、周囲からの本人に対する要求水準が年齢とともに高まり、ストレスを感じることによって二次障害の症状が表出し、そこで初めて医療機関を受診して、高機能自閉症だと判明する、というケースもあります。知人がうつ病になり、病院へかかったところ、アスペルガーだと診断されました。今までも生きにくさを感じ、職場などでもいじめやリストラを受けたことがあるようです。しかし、まぁ普通に暮らせていました。しかし、2年前から仕事上のトラブルを引き金に精神が落ち着かなくなり、うつ病で入退院を繰り返すようになってしまいました。高機能自閉症でよく表出される二次障害について以下にまとめました。■高機能自閉症の二次障害・不安障害・・・社会恐怖、パニック障害、強迫性障害・適応障害・身体表現性障害・・・てんかん性障害、小児心身症・気分障害・・・大うつ病性障害、気分変調性障害・その他の疾患・・・統合失調症、反抗挑戦性障害と行為障害など参考:独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所 植木田 潤/『二次障害の理解と対応』高機能自閉症の人の困りごとは?出典 : ここでは、高機能自閉症の方の困りごとをいくつか紹介します。高機能自閉症は他人に気付かれにくい障害であるがゆえに理解を得ることが困難なことがあります。また自らをコントロールできず様々なトラブルを誘発し、ストレスによる二次障害を起こすことがあります。高機能自閉症の困りごとは、それを引き起こしている原因もはっきりしていることがあり、困りごとを解決するためには本人の努力だけでなく、周囲の協力も必要な点がいくつかあります。■高機能自閉症であることが気付かれにくい繰り返しになりますが、高機能自閉症は知的・言語能力に明らかな遅れがなく、その他の症状も軽度の場合には本人も周囲も高機能自閉症だと気付かない場合があります。人間関係のトラブルが絶えなかったり、タスク管理ができなかったり、急なスケジュールの変更に混乱してしまったりなど「自分はダメだ」と落ち込んでしまうことがあります。■高機能自閉症の症状以外にも二次障害の症状に悩まされることがある他人からの要求水準が高かったり、自分の言動に対する自己嫌悪からストレスを感じ、うつ症状などの二次障害を伴うこともあります。高機能自閉症の中核症状以外にも二次障害の症状が現れるため、本人はとても困難な状況に置かれる場合があります。■自分でも気付かないうちに人を傷つけてしまうことがある対人コミュニケーション能力の障害のため、不謹慎な発言やその場にそぐわない言動をしてしまうことがあります。そういった言動によって大切な人が傷ついていることに気付かないこともあります。想像することが苦手な特性もあるので本人にとっても歯がゆい状態になることがあります。■周囲の理解が得られないことがある高機能自閉症のある人は見た目や言動に明らかな障害が見られない場合も多く、周囲から障害への理解が得られにくいことがあります。苦手なことに高い水準の成果を要求されることや、人間関係でも言動が理解されない、なおかつ助けてくれないなどの状況におかれる場合もあります。高機能自閉症の人と周囲の人たちの接し方は?出典 : ここでは、高機能自閉症の方の困りごとをいくつか紹介します。高機能自閉症は他人に気付かれにくい障害であるがゆえに理解を得ることが困難なことがあります。また自らをコントロールできず様々なトラブルを誘発し、ストレスによる二次障害を起こすことがあります。高機能自閉症の困りごとは、早く適切な診断と周囲の対応によって困りごとを避けたり、解消することができます。その困りごとを解決するためには本人の努力だけでなく、周囲の協力も必要な点がいくつかあります。■高機能自閉症であることが気付きにくい繰り返しになりますが、高機能自閉症は知的・言語能力に明らかな遅れがなく、その他の症状も軽度の場合には本人も周囲も高機能自閉症だと気付かない場合があります。人間関係のトラブルが絶えなかったり、タスク管理ができなかったり、急なスケジュールの変更に混乱してしまったりなど障害としての特性を自分の能力が低い、努力不足だと落ち込んでしまうことがあります。■周囲の理解が得られないことがある高機能自閉症のある人は見た目や言動に明らかな障害が見られない場合も多く、周囲から障害への理解が得られにくいことがあります。苦手なことに高い水準の成果を要求されることや、人間関係でも言動がわがまま、やる気がない、協調性がないと誤解によって理解されないことがあります。■自分でも気付かないうちに人を傷つけてしまうことがある対人コミュニケーション能力の障害のため、その場にそぐわないストレートな物言い、不謹慎な言動をしてしまい対人トラブルの原因になることがあります。そういった言動によって大切な人が傷ついていることに気付かないこともあります。想像することが苦手な特性もあるので本人にとってもどうして相手が傷ついたのか分からず、歯がゆい状態になることがあります。■高機能自閉症の症状以外にも二次障害の症状に悩まされることがある他人からの要求水準が高かったり、自分の言動に対する自己嫌悪からストレスを感じ、うつ症状などの二次障害を伴うこともあります。高機能自閉症の中核症状以外にも二次障害の症状が現れるため、本人はとても困難な状況に置かれる場合があります。高機能自閉症の人は障害者手帳がもらえるの?出典 : 高機能自閉症は発達障害に分類されます。発達障害に関する障害者手帳がないため、手帳を取得したい場合は知的障害者を対象とする療育手帳ではなく、原則として精神障害者保健福祉手帳の申請をすることになります。ただし地域によっては療育手帳がもらえることがあります。詳しくはお住まいの都道府県または担当窓口にお問い合わせください。発達ナビに寄せられた質問からも、手帳の取得について疑問に思っている方は多いようです。アスペルガー症候群の障害者手帳の申請について成人してからアスペルガー症候群の診断を受けたものです。25歳女性です。障害者手帳の申請について簡単な説明を聞きたいです。対象となる方は何らかの精神疾患により、長期にわたり日常生活又は社会生活への制約がある方になります。この精神疾患には発達障害も含まれるため、高機能自閉症の方も取得できる場合があります。また、精神障害保健福祉手帳の取得には、発達障害の初診から6ヶ月以上が経過していることが条件になります。精神障害者保健福祉手帳の取得申請は、お住まいの市区町村の担当窓口で行います。■市区町村の担当窓口・特別区(東京23区)地域にお住まいの方: 保健所・保健センター・市区町村地域にお住まいの方: 市役所・町村役場の障害者福祉担当窓口■申請方法市区町村の担当窓口で配布している「申請書」を受け取り、必要事項を記入した後「医師の診断書」「本人の写真」を持って市区町村の担当窓口へ提出してください。申請すると、各都道府県・政令指定都市の精神保健福祉センターにおいて審査が行われます。認められると手帳が交付されます。参考:みんなのメンタルヘルスまとめ出典 : 高機能自閉症は一般的に使われている名称ですが、精神医学における診断基準を持っていないためこの障害名で診断されることはありません。また近年の研究によって高機能自閉症やアスペルガー症候群などの障害の統合が行われ、新たな自閉症スペクトラム障害という考え方や認識が生まれました。高機能自閉症の特徴を理解することで、困りごとを緩和したり、高機能自閉症の方の特性を十分に生かした社会生活も可能になります。こだわりや集中力を活かし探求的な学習や特殊な仕事で活躍している方も多くいます。苦手なことに対しても周囲が工夫しながらサポートすることで乗り越えることができたり、本人の潜在的な意欲を引き出すことが可能です。周囲の協力や本人の意欲によって、障害を共に乗り越えた生きやすい社会をつくっていきましょう。参考書籍:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院,2014)参考書籍:岡崎祐士/総編集『ICD-10精神科診断ガイドブック』(中山書店,2013)参考書籍:飯田順三/編著『アスペルガー症候群の子どもたち』(合同出版,2014年)参考書籍:神尾陽子 /『神経発達症群, 食行動障害および摂食障害群, 排泄症群, 秩序破壊的・衝動制御・素行症群, 自殺関連 (DSM-5を読み解く─伝統的精神病理, DSM-IV, ICD-10をふまえた新時代の精神科診断) 』(中山書店,2014)
2016年08月24日こんにちは。心理食育インストラクターのSAYURIです。猛暑日が続く2016年夏。暑さの中でも元気いっぱいの子どもたち。ついさっきまではいつもと変わらず元気だったのに、急に機嫌が悪くなったと思い抱き上げてみると、体が異様に熱い! 慌てて水分補給をしようとしても嫌がって飲まない。そんな症状が代表的なのが『ヘルパンギーナ 』です。今回は『手足口病』『プール熱』と並ぶ夏の三大感染症の1つ『ヘルパンギーナ』についてご紹介したいと思います。●1歳児が最も多い! ヘルパンギーナの症状ヘルパンギーナの罹患者はその90%を5歳以下の子どもが占めており、中でも最も多いのが1歳児 。まだうまく自分の体調を説明できないので、触ってわかる発熱以外の症状は把握しにくいかと思います。ヘルパンギーナは『エンテロウイルス 』の一種が引き起こす感染症で、突然39度以上の高熱が出ます。発熱があると水分を摂らせたくなるのですが、飲んでくれない理由は喉やのどちんこ付近に1mmから大きいものでは小豆大にもなる口内炎 ができて痛むため。関節痛やだるさから機嫌が悪くなることもあります。●特効薬がない!?実はヘルパンギーナそのものを治癒させる特別な薬はありません。ウイルスによる感染症ですから抗生物質も効かないので、他の風邪と同じように症状を抑える薬を飲ませながら、できるだけ栄養を摂らせ、安静にして体力と免疫力に頼るしかないのが現状です。そうはいっても、口内炎や水泡が口の中にいっぱいあっては大人でも飲んだり食べたりはつらいものです。冷たいもの、熱いものを避け、サラッとした水分よりも少しとろみのあるものの方が飲み込みやすいので、常温にしたスムージーやお米の粒をすり潰したお粥、卵豆腐(タレの塩分がしみるのでタレはかけないで)、片栗粉でとろみをつけたスープなどを少しずつでもいいので食べさせてあげましょう。おう吐や下痢がある場合も少なくないので、たとえ吐いても下痢をしても脱水状態にならないよう、根気よく少しずつでも水分補給をしてあげましょう。通常、2日~4日で熱が下がり体調も回復するので、もし5日以上高熱が続くようであれば早めに再診 を受けましょう。●日常生活で発症は抑えられます通常、8月中旬ころには減少するヘルパンギーナですが、この夏の猛暑で子どもたちの体力や免疫力が下がっている可能性もあります。お盆明けのこの時期は特にお盆中の生活の乱れからの体調不良が増える時期。感染しても発症するかどうかは、その子の免疫力次第です。食生活では、納豆や味噌などの発酵食品、ビタミンCなどを多く含む新鮮な緑黄色野菜、果物、粘膜を守るオクラや里芋などのネバネバ食品、ミネラルが多い海藻類などを毎日の食事に取り入れましょう。そしてそうめんなどの冷たい麺類。今はエアコンのきいた室内での食事がほとんどのはずですから、特にしょうがやネギといった体を温めて冷やし過ぎないようにするための薬味を一緒に摂るのも効果的です。しょうがやネギといった薬味が苦手な子どもには、そうめん自体を氷などで冷やし過ぎないよう配慮してあげるのもいいでしょう。【参考リンク】・ヘルパンギーナとは | NIID 国立感染症研究所()●ライター/SAYURI(心理食育インストラクター)
2016年08月18日広汎性発達障害(PDD)の原因は?出典 : 広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders:略称PDD)は、コミュニケーションと社会性に障害があり、限定的・反復的および常同的な行動があることを特徴として分類される発達障害のグループ です。世界保健機関(WHO)の診断基準である『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の診断カテゴリでは、このグループには自閉症、アスペルガー症候群のほか、レット症候群、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害という5つの障害が含まれています。広汎性発達障害は、最新の診断基準であるアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版テキスト改訂版)では自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害というカテゴリに変更されています。また、広汎性発達障害の障害名、症状の中には自閉症スペクトラム障害の概念では除外されたものも含まれています。ですが、行政や医療機関で広汎性発達障害の名称を使用している場合も多いこと、すでにこの名称で診断を受けた人も多いことから、本記事では『ICD-10』の診断カテゴリに準拠して広汎性発達障害の名称でご説明します。広汎性発達障害のはっきりとした原因はまだ解明されていませんが、脳の機能障害がその原因と考えられており、親の子育て方法が原因で起こるものではありません。このうち、レット障害(レット症候群)についてはX染色体上に存在する遺伝子の突然変異が原因であることが分かっています。ほかの障害についても最近では遺伝的要因の関与が有力視されていますが、必ずしも単純に親から子どもへ遺伝するという意味ではありません。遺伝的要因と環境要因が複雑に相互に影響しあっていることが原因ではないかと言われています。しかしながら具体的な障害の原因やメカニズムは分かっておらず、様々な説が議論されている段階です。広汎性発達障害って治療できるの?出典 : 広汎性発達障害を根本的に治療する薬や手術といった医学的な方法はありません。しかし、広汎性発達障害による困難を緩和・解消するための教育・療育によるアプローチは存在します。本人が困難への対応法を学んだり、困難を未然に防ぐための環境調整をすることで、生きやすい環境を作っていくことが可能です。広汎性発達障害のある人はその特性ゆえに、生活する中で様々な困難にぶつかりがちです。他者の感情の読み取りが困難なため、会話の意図を誤解して受け取ったり、コミュニケーションがかみ合わなかったりする場合があります。抽象的な指示が理解できないために同じミスを繰り返したり、こだわりのため順番やルールを守れずトラブルになったりすることもあります。中には自分に自信をなくしたり、周りに強い被害者意識を持ってしまうこともあります。こういった日々の困難さが引き金となって、うつ病やひきこもりなどのいわゆる二次障害が発現することもあるのです。特に思春期以降の不安障害や気分障害の予防が大切です。広汎性発達障害の特性による困りごとを緩和するのに加え、こうした二次障害のリスクを極力なくすためにも、周りが障害の特性についてよく理解し、どのように対応すれば本人が行動しやすいか、生きやすいかなどを考えていくことが必要です。また、てんかん発作や感覚過敏など、一部の症状に対しては薬物療法によって症状を緩和できる場合もあります。うつ病や睡眠障害などの二次障害に対しても精神安定剤などの薬物治療が行なわれることもあります。これらの二次障害に対する治療の一つとしては、心理療法である認知行動療法の有効性が示されています。広汎性発達障害の治療の判断基準は?出典 : 広汎性発達障害は主に「社会性・対人関係の障害」「コミュニケーションや言葉の発達の遅れ」「行動と興味の偏り」の3つの症状が現れると言われています。専門機関においても上記の3つの症状が見られるかを本人や保護者への問診や本人の行動観察などから評価・判断します。親が気づく子どもの症状としては「視線を合わせない、または避ける」「言葉の発達が遅い」などの症状がよく挙げられます。また、広汎性発達障害のある人のほとんどに何らかの感覚過敏が見られます。例えば、小さな物音を怖がったり(聴覚過敏)、抱っこされることを嫌がったり(触覚過敏)、偏食が多い(味覚過敏)などの感覚過敏があります。広汎性発達障害の症状は上記のように複数存在しますが、特定の症状がでたら治療が必要という明確な線引きはできません。また症状ごとに対処法や治療プログラムは異なります。本人が特性による困りごとに直面している場合、専門家による何らかの治療や支援が必要になると言えるでしょう。障害ではないかと気づいた場合には、まずは近くの保健センターや子育て支援センター、児童発達支援センターなどの専門機関に相談するようにしましょう。広汎性発達障害の治療法と治療を行う年齢は?出典 : 広汎性発達障害の根本治療はできませんが、症状を緩和するためには療育的アプローチと薬物療法の2つが効果的です。■療育療育は何歳からでも始めることができ、なるべく早くから通うことが推奨されます。療育とは、以下のように定義されています。療育とは医療、訓練、教育、福祉などの現代の科学を総動員して障害を克服し、その児童が持つ発達能力をできるだけ有効に育て上げ、自立に向かって育成することである。■薬物療法広汎性発達障害そのものを根本的に直す薬はありませんが、特定の症状を緩和するために使用することがあります。薬によって開始できる年齢や症状が決まっており、人によって副作用がある場合もあるので、主治医とよく相談し、用法用量を守って服薬していくことが大切です。薬物療法は、症状を一時的に抑えるためのものであり、症状が軽減している間に、教育や支援を行うと効果的であるともいわれています。治療を終える判断基準については、根本治療ができないため、はっきりと決まっているわけではありません。ですが、本人が特性への対処法を習得したり、環境調整を行ったりすることで困りごとが緩和されれば、治療が必要のない状態になることも少なくありません。しかし、進学や引っ越し、転職などの大きな環境変化によってさまざまな困難が再発する可能性もあるため、十分なフォローが必要です。広汎性発達障害の具体的な療育法・治療法出典 : 療育の遊びを通じてコミュニケーションの取り方を学んだり、友達を作ったりすることができます。また、ストレスを抱えがちな親にとっても療育の場は相談できる場所であり、同じ悩みをもつ親同士の交流の場所にもなっています。療育の効果は個人差があり、子どもに合った療育が必要となりますが、子どもにとっても親にとっても療育は心の面の大きなサポートになると言えるでしょう。広汎性発達障害の療育方法は様々ですが、下記の4つがよく知られています。それぞれの位置づけは異なりますが、ここでは簡単に概要のみを説明します。■ABA(エービーエー、Applied Behavior Analysis/応用行動分析)人間の行動を個人と環境の相互作用の枠組みの中で分析し、問題解決に応用していく理論と実践の体系です。広汎性発達障害に対する療育だけでなく他の障害や教育、福祉、医療、スポーツ分野でも利用されています。■TEACCH(ティーチ、Treatment and Education for Autistic and related Communication handicapped Children)米国ノースカロライナ州で生まれた、自閉症スペクトラム障害の当事者とその家族を障害支援する総合的なプログラムです。※自閉症スペクトラム障害とはレット障害を除く広汎性発達障害を指します。■PECS(ペックス、Picture Exchange Communication System)絵カードを使ったコミュニケーション援助プログラムです。上記のABAの原理に基づいて作成されています。■SST(エスエスティー、ソーシャルスキルトレーニング)対人関係をうまく行うための社会生活技能を身につけたり、障害の特性を自分で理解し自己管理をするためのトレーニングの総称です。紹介した療育方法はごく一部ですが、療育機関ではこれらの療育理論や方法を複数組み合わせたり、独自のプログラムを利用して、子ども1人ひとりにあった療育方法が行なわれます。広汎性発達障害の根本的な治療としての薬物療法はありませんが、一部の症状に対しては対症療法として薬を使用することがあります。例えば、パニック症状を緩和するためには抗精神病薬、てんかん発作や感覚過敏には抗てんかん薬などが処方される場合もあります。その他様々な症状に対して薬物療法が行なわれますが、薬は一時的なもので、症状が完全になくなるというわけではありません。また薬には副作用が出ることもあります。薬の使用は必ず医者の指示を守りながら使うようにしましょう。適切な治療やサポートを受けられない場合、広汎性発達障害の主症状とは異なる合併症や状態を引き起こしてしまうことがあります。このような症状や状態を、一般的には「二次障害」と言うこともあります。注意すべき症状・状態には以下のようなものがあります。・気分障害(うつ病など)・不安障害・睡眠障害・不登校やひきこもり・アルコールなどの依存症などこのような症状や状態が現れた場合には専門の相談機関や医療機関で早期に相談・治療を開始しましょう。二次障害の治療には、それぞれの症状によって認知行動療法などの心理療法的アプローチや薬物療法などが用いられます。二次障害の予防のためには環境調整や周囲の理解、親や家族以外にも本人が信頼して相談できる人間関係を作ることなどが大切です。接し方で大きく変わる!広汎性発達障害の子どもへの接し方のポイント出典 : 広汎性発達障害のある子どもの中には、使っている言葉の意味を理解していなかったり、遊びのルールを理解するのに時間がかかってしまう子もいます。その際は絵や写真を使うと、理解しやすくなる場合があります。また、あいまいな表現は苦手なので、できるだけ具体的な言い方をするようにしましょう。何度叱っても同じことを繰り返してしまうために、親もイライラしてつい大声で叱ってしまうかもしれません。広汎性発達障害のある子どもは恐怖心でトラウマになりやすい傾向にありますので、大声で叱ってしまいそうになったら一度その場を離れるなど、冷静になるよう心がけてみてください。広汎性発達障害のある子どもが適切な行動を習得するまでには、根気強く教える必要があることを理解しましょう。叱るときには感情的にならず、具体的に注意する方が効果的です。上記でお伝えしたように写真や絵を使うなど、どうすれば上手く伝わるかを試行錯誤することも大切です。手をひらひらさせたり、ぴょんぴょん飛び跳ね続けたりするなど、広汎性発達障害のある子どもの中には同じ行動を長時間続ける常同行動が見られる場合があります。これらは視覚支援によって見通しを持てる環境を作ったり、コミュニケーションスキルを学んだり、適切な遊びにかえることなどで改善することが多いです。無理に止めさせようとするとパニックに陥ることもあるため、何回やったら終わりと決めたり、何か違うことに集中するための課題などを与えてあげたりするとよいでしょう。広汎性発達障害の子どもを持つ保護者は、できないことや、やめさせたい行動が多く目につき子育てが不安になってしまうこともあるかもしれません。ですがマイナス面ばかりに目がいかないように、得意分野を見つけて、できることを増やすことが大切です。また、ちょっとしたことでも褒めることが子どもの自信につながります。広汎性発達障害のある子どもの子育ては通常に比べて少しコツが必要になってきます。家族だけで解決しようとするとつまづくことも多いため、プロの手を借りて、子育ての仕方を学んでいくのもおすすめです。ペアレントトレーニングでは褒め方のコツや上手な指示の出し方、危険な行動を予防する方法などを学ぶことができます。まとめ出典 : 広汎性発達障害の根本的な治療方法はありませんが、療育によってコミュニケーションを取りやすくなったり、生活の困難に対処しやすくなります。そのためできるだけ早く療育をスタートしたほうが、本人の生きづらさも減ると思います。日常生活において不安に思ったりすることもあるとは思いますが、何かあった場合は身近な専門機関に相談してみてください。また、本人にとってよい環境を整えて生きづらさを少しでも減らせるように、周囲の人たちは障害の特性を理解した上でサポートするようにしましょう。
2016年08月17日こんにちは、ライターの佐原チハルです。みなさま、『とびひ 』はご存じでしょうか。「聞いたことある!」という人、きっと少なくないですよね。“とびひ”という言葉自体は耳にすることが多いため、身近に感じられますが、その分罹患した際の苦労についても小さく見積もられがち。子どもがかかってしまったら、子ども自身も、ママ・パパも、結構な苦労をしてしまうものです。そこで今回は、“とびひ”についてポイントをまとめてみました。●“とびひ”ってどんな病気?“とびひ”という名前は、実は通称。正しくは、『伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん) 』という病名がついています。虫刺されやあせも、肌に傷を負ったときなど、そこに細菌が感染することで起こります 。“とびひ”という通称は、感染した場所をかいてしまうことで、症状があっという間に他の部位に広まってしまうことからつけられました。“とびひ”には、2種類があります。水ぶくれのできる『水泡性膿痂疹』と、かさぶたのできる『痂皮性膿痂疹』です。“とびひ”の大半は前者で、原因は“黄色ブドウ球菌”と呼ばれる細菌 です。目・鼻・口の近くからできはじめ、水膨れやかゆみが全身に広がります。基本的には夏にかかることが多いですが、暖房の効かせすぎなどにより、冬に見られることもあります。●“とびひ”の予防法は?“とびひ”の予防法としては、やはり“皮膚を清潔に保つ ”ことが一番のようです。手はしっかりと洗う、爪は短く切る、ひどく汗をかいた場合はシャワーを浴びる、などです。またお子さんが小さいと、“鼻をほじる”ことも多いと思います。しかし、鼻の中には“とびひ”の原因になる細菌が多いとのこと。注意したいところです。●“とびひ”にかかってしまったら、どうしたらいい?“とびひ”は、名前のとおり、広まってしまうのがとても早いです。注意していても、かかってしまうことはあるでしょう。ひどい症状になってしまうのを防ぐためには、“すぐに皮膚科に行く ”のが一番です。小児科でも薬がもらえることはありますが、皮膚科の方が確実です。実は筆者は昨年、子どもが“とびひ”にかかり、全身に広めてしまいました。小児科には通っていたのですが、症状がおさまらず、皮膚科に紹介状を出してもらう事態になりました。“とびひ”は、患部を覆ってさえいれば、保育園など休む必要はありません。ただ、うちの子はあまりにも全身に広まりすぎてしまったため、2週間ほど通園ができなくなってしまいました。そうなるまで、本当にあっという間でした 。プール遊びもできずじまいで、かわいそうなことをしてしまったと後悔しています。筆者の子もそうなのですが、アレルギー体質・アトピーのお子さんの場合は、皮膚のバリア機能が低くなっているため、“とびひ”になりやすいそうです。子ども自身の予防や、子どもから家族や友達に感染することを防ぐためにも、“患部をこすらない”“タオルや衣服は共用しない”などの対策が必要とのことです。お子さんの年齢や体質によっては、“とびひ”を防ぐのは、とても困難なことでしょう。しかし、日頃からしっかりと予防策を講じておくことで、また早期発見・早期治療を行うことで、軽い症状ですませることができるかもしれません。夏を満喫して楽しむためにも、気をつけてあげたいですね。【参考リンク】・「とびひ」ついて詳しく知ろう | maruho()●ライター/佐原チハル(フリーライター)
2016年08月16日こんにちは。健康管理士のSAYURIです。全国的に猛暑日、熱帯夜が続く2016年夏。熱中症だけでなく十分な睡眠がとれずに体調不良を訴える人も少なくないようです。そこで今回は、不眠症についてご紹介したいと思います。●不眠症は自己申告制!?近年、ストレスからの不眠症に悩む人たちが増加して社会問題となっています。睡眠障害の中で最も多くみられる『不眠症』。実は実際の睡眠時間の長短に関わらず、睡眠に対する不足感を訴え毎日の生活に支障をきたす症状を指します。すなわち、睡眠時間がたとえ4〜5時間でも本人が満足して日中、正常に活動できるのであれば不眠症とは呼びません。一般的に高齢になるほど眠れないと訴える人が増加しますが、ぐっすり眠ったという満足感があるかどうかは個人差があります。本人が睡眠不足だと感じ不調を訴えれば、たとえ何時間眠っていても不眠症になります。つまり、不眠症は自己申告の疾患 とも言えるのです。たとえば他の疾患であれば、治療をして検査結果が正常に戻れば治ったとされます。しかし、不眠症の場合は『睡眠ポリグラフ検査』という脳波、眼球運動、筋電図などの検査で眠っていたことを実証できても、本人が眠ったと満足感を得ることができなければ、治ったということにはならないのです。●不眠症の症状と期間不眠症はその症状や期間によって下記のように分類されています。●症状・入眠障害……寝つきが悪く、ベッドに入ってもなかなか眠れない・中途覚醒……夜中に何度も目が覚める・早朝覚醒……朝早く目が覚めて、その後眠れない・熟眠困難……眠りが浅く、ぐっすり眠ったという感覚がない●期間・一過性不眠……1週間以内・短期不眠……1〜3週間・長期不眠……4週間以上一過性不眠は、普段正常な睡眠の人が海外旅行などの時差や、試験前日などで特別な緊張を伴う出来事 があったときなどに起こりやすくなります。短期不眠は家族など近親者の大病や死、仕事や家庭内でのトラブル、本人の病気など長く続くストレス を受けたときに見られます。そして長期不眠は薬物性不眠 や他の疾患による不眠、精神疾患 などによる不眠が多く見られます。----------不眠はこの他にも原因別の分類もあるので、次回はその原因別の分類と予防、改善法についてご紹介したいと思います。【参考文献】・総務省認証予防医学学術刊行物『ほすぴ』成人病予防対策研究会発行●ライター/SAYURI(心理食育インストラクター)
2016年08月11日学習障害(LD)で働いている人はどのくらいいるの?出典 : 学習障害とは、全般的な知的発達に遅れがないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力のうちいずれかまたは複数のものの習得・使用に著しい困難を示す発達障害のことです。英語ではLearning Disabilityと呼ばれ、LDと略されることも多いです。学習障害は、知的発達に遅れが見られないことから、障害者自立支援法の対象外とされてきました。現在では障害者基本法の改正により精神障害者保健福祉手帳の対象となりましたが、まだまだ学習障害を「障害」として認識している人が少ないのも現状です。学習障害の人の就職率として、はっきりとした数字は出ていません。厚生労働省のアンケート結果では学習障害を含む知的障害の見られない発達障害の人は普通学級に進学した人の割合が最も多いことが分かっています。また発達障害がある人の就職状況をみると、一般枠で就労した人の割合は全体の40%近く、障害者枠で就労した人の割合は25%以上いることが分かりました。これらのことから、学習障害の人の中には社会に出て働いている人もたくさんいることが予想されます。厚生労働省「発達障害のある人の就労の現状と課題 障害者権利条約への対応に向けて」大人の学習障害、いつ診断された?きっかけは?出典 : 学習障害は今でこそ知っている人が増えてきている障害ですが、昔はそれほどそうでもありませんでした。知的発達に遅れが見られないため気付きにくく、学習障害が障害として認識されないまま大学へ進学したり、就職したりすることも少なくありません。学習障害の症状は「勉強が苦手」や「やる気がない」などとひとくくりにされ、大人になって初めて発達障害だったと気づいた人も少なくないのです。現在では障害者基本法の改正により精神障害者保健福祉手帳の対象となりましたが、まだまだ学習障害を「障害」として認識している人が少ないのも現状です。以下では、大人になって学習障害と診断された方の小さい頃の症状や、きっかけなどの体験談をご紹介します。私は、注意欠陥障害と学習障害(算数障害で四則計算がまったくできない)です。小学1年生でついていけず、中学でも数学や化学は0点でした。でも、自分なりに数学0点でも他の教科で頑張って高校にも行きましたし、大学も行って、就職もしました。この人のように、学習障害であっても大学へ行き就職する人も多くいます。学習障害の場合、苦手な勉強分野に偏りがあるので、この人は苦手な数学以外に力をいれるという工夫をし、大学へ進学したそうです。小さい頃から勉強が苦手でした。計算ができなかったり、文書を作るのが苦手だったり、記憶力が無く一つのことを覚えるのに時間が掛かりました。よく天然だね!と言われて過ごしてきましたが、天然ではなくただ、発達障害の為、人の話や空気が読めなかったり、質問に対して違う返事を返してしまったりします。なので、上手く伝えられない自覚はあります。その為、自然と臆病になり、なるべく自分から発言したり行動を取らなくなりました。また、あまり考えれないので、とっぴおしないことをしだしたり、自分の思う様に出来ない苛立ちから、癇癪を起こすようになりました。小学生の時に一度学習障害ではないかと言われていたようですが、最近専門の病院で診察してもらったところやはり学習障害という結果でした。このように、大人になってから学習障害が発覚する人もいます。子どもの頃を振り返ってみると、学習障害の症状があった人が多いようですね。学習障害の人が向いている仕事、向いていない仕事は?出典 : 学習障害は、能力の凸凹や特性の偏りが多く、苦手なことにかなり個人差がある障害です。そのため、向いている仕事、向いていない仕事も人によって様々であると言えます。本人の特性を理解し、得意な分野を活かせる仕事につけることが理想ですね。向いていない仕事は一概には言えませんが、苦手な業務が多い仕事内容だと、困難な場面も増え、ストレスを感じることも多くなるかもしれません。一方、別の手段で代替できたり、職場の理解や協力があれば乗り越えられる可能性も大いにあります。たとえば、算数障害(ディスカリキュリア)の人の場合、日々、多くの計算が業務に必要な仕事は苦手かもしれません。ですが、計算機で解決できる場合もあります。同じ小売業でも、暗算が苦手な場合、お釣りを計算しなければいけないお店の会計業務は向いていないと言えますが、バーコードを読み取るだけのレジであれば、問題ないこともあるでしょう。また、書字障害の人は、文字を書く業務が苦手かもしれませんが、パソコンでタイプしてプリントすればよいこともあります。読字障害の人も、音声読み上げソフトを使用したり、録音することで困難が解消できることもあります。苦手な分野を避けることは働き続ける上で大切ですが、テクノロジーや手段を替え工夫することでうまくいくこともあるので、「この仕事は無理」と決めつけてしまう前に検討するのがよいでしょう。実際に、様々な障害特性を乗り越えて作家、映画監督、発明家、俳優など様々な職業で活躍している人もいます。障害特性と向き合いつつも、自分が希望する仕事に目を向ける、という進路も選択肢の一つかもしれません。学習障害の人の仕事の探し方Upload By 発達障害のキホン■学校の進路相談を利用する発達障害に関する就労支援は、現在、よりよい対応を整えている状態です。特別支援学校などでは、卒業後に就職できる企業の紹介もあります。通常学級でも高校、大学ともに進路指導の先生に相談することも可能です。■ハローワークなどの公的支援を利用するまず、最寄のハローワークでの相談をおすすめします。障害者雇用の窓口もあるので、そこでご自身の学習障害の特性について伝え、仕事を探していること、仕事で不安に感じていることなどの相談をすることができます。障害者を対象とする障害者合同就職面接会などの情報を得ることもできます。障害者向けの支援を希望しない場合でも、ハローワークできめ細やかな相談・支援を実施してくれます。適職があれば求人に応募してもよいでしょう。「若年者コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」として、発達障害などでコミュニケーションに困難を抱えている場合の支援も行っており、不安がある場合には、発達障害者支援センターや医師との連携をとってもらうことができます。適職を自分では探すことが難しい場合には、適職を探す方法や調べてもらえるところも紹介してもらえます。就職に不安をかかえている場合には、就労移行支援という方法で就職をすることもできます。これは障害者総合支援法に基づいた支援で、就労移行支援事業所が各都道府県や政令都市の認可を受けて民間が運営しています。この就労移行支援は手帳を取得していなくても支援を受けることができます。まずは最寄のハローワークや就労移行支援事業所に連絡をとってみましょう。ハローワークは発達障害のある人が就職された場合、その事業主に対して助成を行う「発達障害者雇用開発助成金」という制度を設けています。他にも「障害者トライアル雇用奨励金」という短期間の施行雇用を行い、仕事に慣れることで実際の雇用につなげる制度もあります。詳しい情報は以下のリンクを確認してください。実際に働いてみると仕事が想像していた仕事内容と大きく異なった、と離職を希望される場合も少なくありません。仕事を探す際には、似たような職種で職務経験を積んでいく方法や、希望の会社でまず一定期間働くことが可能なのか、聞いてみる方法もいいでしょう。より自分の得意・不得意を理解し、どの仕事ならこなせるか、やりがいを持てるかどうかを把握するヒントになるかもしれません。就職後も相談に乗ってほしい場合はジョブコーチによる支援を受けることもできます。これは、就職後、職場にジョブコーチが出向き、職場でうまく仕事をしていくための支援をしてくれる制度です。■障害者雇用制度を利用する手帳を取得している場合はいわゆる「障害者雇用制度」の対象となります。・手帳所持者を事業者が雇用した際の、障害者雇用率へのカウントの対象となり、障害者雇用枠での就職ができる・障害者職場適応訓練を受けられるなど、就職への支援が受けられます。実際に障害者雇用制度を利用して就労する人の数は年々増加しています。ですが、希望している職種や企業が障害者雇用枠で募集しているとは限らないこと、賃金などの面で希望と合わないこともあるでしょう。一般の求人に応募したい場合などには、手帳を持っているからと言って必ずしもこの制度を利用しなくてもよいですし、手帳取得者であることを報告する義務はありません。制度を利用するかどうか、よく考え、支援機関などと連携し、相談しながら進めていくとよいでしょう。厚生労働省「障害者トライアル雇用奨励金」厚生労働省「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発助成金」学習障害の会社への報告出典 : 大人になって学習障害に気づいた方は会社に報告するか迷うかもしれません。いままで何の問題もなく仕事をこなしていた人、困難があり失敗続きだった人、大人の学習障害は様々ですが、いずれにせよ「障害」という言葉は相手にマイナスのイメージを与える可能性もあるため、報告するかどうか、また誰に報告するかは慎重に検討するべきと言えます。学習障害と診断され、報告をする方の場合、理解のある会社であることが多いようです。何かを隠しながら会社で働くのは、自分へのストレスと、会社への負担を生みかねません。報告することで、「学習障害があったから苦手だったのか」「サボってるわけではなかったのか」と、周囲に理解してもらい、自分の得意・不得意に合った仕事に配慮してもらいやすくなる、というメリットも感じられます。会社に学習障害を報告した人の割合は分かっていませんが、発達障害の人で一般枠での就労後1年で離職する人の割合は37.5%と非常に高いという話もあります。離職の理由としては「仕事のミス」「上司の要求に応えられない」「毎日変わる仕事についていけない」などの仕事上での困難が挙げられました。会社に報告し、自分に合う仕事を担当させてもらうことで、それらの困難が軽減されることもあります。一方で、学習障害の間違った理解により「あいつは仕事ができない」「教えてもできないから教えても意味ないか」など、望まない結果になってしまうことも考えられます。伝える場合は、まずは障害を理解してもらえるよう、しっかりと説明するようにしましょう。厚生労働省「発達障害のある人の就労の現状と課題 障害者権利条約への対応に向けて」学習障害を伝えるとき、「学習障害と診断されました」と伝えるだけでは「障害がある」ということしか伝わりません。学習障害の中でも、どの部分に特性の偏りが見られるのかをきちんと説明し、自分の得意・不得意を理解してもらうことが大切です。1.自分が難しいこと・苦手なこと2.どうすればうまくいきやすいか3.会社・同僚にどうして欲しいのかなどをできる限り具体的に伝えるとよいでしょう。例えば、・書類に記入するのは苦手だが、パソコンは得意なので、パソコン入力を許可してほしい・書類を読むのは苦手だが、読みあげればわかるので、口頭で指示してほしいなど、自分の特性と工夫すればできることを伝え、お願いすれば職場でも対応しやすいでしょう。言葉で伝えるだけでは、理解が難しい部分もあります。その際は、文面に起こす、参考資料をもって伝える、などの工夫もいいかもしれません。同僚には要点をしっかりまとめ、配慮してもらいやすいよう、報告してみましょう。人事のみに伝える場合と、働いている同僚にも伝える場合と、両者のメリットやデメリットも考えてあなたにとって一番いい方法を選んでいきましょう。学習障害を報告した場合でも、職場や周囲に偏見が無理解があれば、職場で差別・虐待を受けてしまう可能性もゼロではありません。こうした深刻なケースでは、本人から周りに助けを求めるのが難しい場合もあるので、周囲の人が虐待に気づいた場合、各市町村の障害者虐待防止センターなどの専門機関に虐待の存在を知らせましょう。本人からの申告も可能性です。またこの虐待は就業場に限らず家庭内の虐待も含みます。障害者虐待防止センターに虐待を相談すると、支援・指導を受けることができ、問題の糸口を探す手伝いをしてくれます。強制的に仕事や家族から隔離されたりすることはありませんので、安心して相談することができます。学習障害の仕事での困りごと・よくあるミスと対処法Upload By 発達障害のキホン学習障害の人は職場で様々な困りごとに直面し、時にはミスを繰り返すこともあります。よくある職場での困りごとと、それを解消するための対処法をまとめてみました。中には、話を覚えるのが苦手で一度にいろんな物事を同時に理解するのが難しい方もいます。メモを取るのが苦手な場合もあります。事前に上司に障害のことを説明し、口頭だけでなく文字に起こした状態で伝えてもらうよう依頼するのもいいかもしれません。また、会議などではボイスレコーダーなどを使用して、あとで聞き返すのも効果的です。自分で話したい物事があっても簡潔にまとめたりその場で話すのが苦手な人は、あらかじめ文章にまとめ原稿を作成しておきましょう。会議中に作成した原稿を確認しながら提案すればスムーズにこなせるはずです。学習障害の中には、文章を読むのが苦手な人もいます。そういった場合には、理解が難しかった言葉や概念をカードやノートなどにまとめておきましょう。一度理解できなかったことは必ず意味を調べ、次に出てきたときにすぐに分かるように常備しておきましょう。読字障害のひとつに読んでいる部分が分からなくなる症状があります。会議の資料やメールなど社会では長い文章が多いですよね。読むのが困難に感じる場合は一行だけ見えるように切り取った枠をつかって対処しましょう。一行ずつ読んでいけば理解がしやすくなります。またタブレットやパソコンなどの音声読み上げ機能を使用するのもおすすめです。まとめ出典 : 学習障害の人が就業する場合、多少の困難はもちろんつきものです。職場の方から偏見を受けたり誤解されてしまうこともあります。学習障害は障害の中でも知的発達に遅れがない分、他人には障害であることが理解されにくい場合があります。自分でも自覚が少なく、仕事ができないと他人と比べて落ち込むこともあるかもしれません。しかし、自分の障害特性を理解することで適切な支援も受けられますし、必要な配慮を周囲の人に伝えやすくなります。自分の特性を理解し、自分にあった対処法を工夫し、やりがいの感じられる働き方ができるとよいでしょう。法令データ提供システム「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」2012年
2016年08月09日発達性協調運動障害とは?出典 : 協調運動とは、手と手、手と目、足と手などの個別の動きを一緒に行う運動です。例えば、私たちがキャッチボールをする時、ボールを目で追いながら、ボールをキャッチするという動作を同時にしていますよね。他にも、縄跳びをする時、ジャンプする動作と、縄を回す動作を同時にしなくてはなりません。このような運動を協調運動と言います。発達性協調運動障害とは、日常生活における協調運動が、本人の年齢や知能に応じて期待されるものよりも不正確であったり、困難であるという障害です。別名、不器用症候群とも呼ばれていました。本人の運動能力が期待されるよりどのくらい離れているかは、通常「MABC-2」(Movement Assessment Battery for Children,2ndversion)や、「JPAN」(日本版感覚統合検査)と呼ばれる感覚処理行為機能テストなどのアセスメントテストによって評価されます。これらのテスト結果を参考に、医師が発達性協調運動障害かどうかを判断します。アメリカ精神医学会の診断基準である『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版テキスト改訂版)では以下のような診断基準になっています。A.協調運動技能の獲得や遂行が、その人の生活年齢や技能の学習及び使用の機会に応じて期待されるよりも明らかに劣っている、その困難さは、不器用(例、物を落とす、またはぶつかる)、運動技能(例、物を掴む、はさみや刃物をつかう、書字、自転車に乗る、スポーツに参加する)の遂行における遅さと不正確さによって明らかになる。B.診断基準Aにおける運動技能の欠如は、生活年齢にふさわしい日常生活活動(例、自己管理、自己保全)を著明及び持続的に妨げており、学業または学校での生産性、就労前及び就労後の活動、余暇、および遊びに影響を与えている。C.この症状の始まりは発達障害早期である。D.この運動技能の欠如は、知的能力障害(知的発達症)や視力障害によってうまく説明されず、運動に影響を与える神経疾患(例、脳性麻痺、筋ジストロフィー、変性疾患)によるものではない。発達性協調運動障害と運動能力出典 : 人間の運動には大きく分けて、粗大運動と微細運動があります。人間は、さまざまな感覚器官から得られた情報をもとに、初めは姿勢を保つことや寝返りといった粗大運動を習得し、次第に段階を踏みながらより細かい微細運動ができるようになります。粗大運動とは、感覚器官からの情報をもとに行う、姿勢と移動に関する運動です。粗大運動には、先天的に人間に備わっている運動と、後天的に学ぶ運動があります。寝返り、這う、歩く、走るといった基本的な運動は人間が先天的に持っている粗大運動能力です。一方、泳ぐ、自転車に乗るなどの運動は、環境的な影響や学習によって身につけると言われています。微細運動とは、感覚器官や粗大運動で得られた情報をもとに、小さい筋肉(特に指先など)の調整が必要な運動です。モノをつまんだり、ひっぱったり、指先を使って細かな作業、例えば、絵を書く、ボタンをかける。字を書くなどの運動があります。成長とともに、粗大運動から、より細かい微細運動ができるようになります。発達性協調運動障害のある人は、粗大運動や微細運動、またはその両方における協調運動が同年代に比べぎこちなく、遅かったり、不正確になります。子どもによって、乳幼児期の粗大運動には全く遅れや苦手はなかったが、幼稚園や、小学校に行くようになり微細運動を必要とする場面が増え、微細運動が顕著に困難である場合もあります。発達性協調運動障害のある子どもの年齢別の困りごと出典 : 発達性協調運動障害かどうかの判断は、協調運動が本人の年齢や知能に応じて期待されるよりも著しく不正確であったり、困難であるかどうかが重要なポイントとなります。以下で年齢別によく見られる傾向を紹介します。とはいえ、年齢が低ければ低いほど、得意な運動と困難な運動は子どもによって大きく差があり、人それぞれです。ですので、以下の例に当てはまるからといって、必ずしも発達性協調運動障害であるということではありません。子どもの様子を見つつ、気になるときは専門家に相談してみましょう。乳児期は、そもそも基本的な粗大運動を学び、獲得していく段階です。また子ども一人ひとりの運動機能獲得のスピードは違いますし、できること、できないことも個人差が大きい時期です。ですので、苦手なことがあっても心配する必要がない場合も多いと言えます。ですが、発達性協調運動障害と診断される子どもは、乳児期に以下の様な特徴が共通して見られる傾向があります。例:母乳やミルクの飲みが悪い、離乳食を食べるとむせる、寝返りがうまくできない、はいはいがうまくできない幼児期は、特に5歳を過ぎると、運動能力の個人差が縮まってきます。そのためこの時期に発達性協調運動障害と診断される場合が比較的多いと言えます。発達性協調運動障害のある幼児は以下のことが不正確であったり、習得が遅れていたり、困難な場合があります。例:はいはい、歩行、お座り、靴ひもを結ぶ、ボタンをはめる、ファスナーを上げる、平坦な場所でも転ぶ(転んだ時に手がでない)、トイレで上手にお尻をふく小学校に上がると日常生活、学習生活でより複雑で繊細な動作を求められる場面が増えます。そのため微細運動での協調運動障害が顕著に表れます。発達性協調運動障害のある子どもは以下のことが不正確であったり、習得が遅れていたり、困難な場合があります。例:パズルを組み立てる、模型を作る、ボール遊びをする、活字をますの中に入れて書く、階段の上り降りがぎこちない、靴ひもが結べない、お箸をうまく使う、文房具作業が苦手(消しゴムで消すと紙が破れる、定規をおさえられずにずれるなど)発達性協調運動障害の原因出典 : 発達性協調運動障害のはっきりとした原因は、まだわかっていませんが、いくつかの原因が検討されています。まず妊娠中、母親のアルコールを摂取、またはそれによる早産、低体重で生まれた場合、発達性協調運動障害を発症する確率が高いという研究があります。次に、ADHD、学習障害、アスペルガー症候群を含む自閉スペクトラム症との併発が非常に多いため、なんらかの共通する遺伝的要因があるのではないかと言われています。また、上記のような障害のある子どもは定型発達の子どもより、発達性協調運動障害を発症する可能性が高いと言われています。5歳から11歳の子どもでは、5~6%が発症します。また、女児より男児のほうが発症率が高いことが分かっています。『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版テキスト改訂版)発達性協調運動障害の診断と発達障害の関係は?出典 : 現在使われている精神疾患の診断基準は、アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』5版テキスト改訂版)と世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)による診断基準があります。現在、最新の診断基準である『DSM-5』が主流になりつつありますが、医師や医療機関によってどちらの診断基準に準拠しているかは異なります。発達性協調運動障害における診断基準の違いは、『ICD-10』と『DSM-5』で異なる点があります。『ICD-10』では発達性協調運動障害は心理発達の障害に分類されるため、精神遅滞と知能指数が重要になります。『ICD-10』の診断基準では、明らかな精神遅滞(知能指数70以下)の場合、運動の困難さ、不器用さはその精神遅滞が原因によるものと判断されます。一方で精神遅滞のない広汎性発達障害の場合、発達性協調運動障害と併発し、両方の診断が下りる場合があります。『DSM-5』の診断基準では、発達性協調運動障害は神経症群に入るため、精神遅滞や知能指数との関係ではなく、純粋に発達性協調運動障害の症状に当てはまるかどうかが重要になります。広汎性発達障害(アスペルガー症候群)と発達性協調運動障害を併発することは少なくありません。『ICD-10』の診断基準では、両方の診断基準を満たしている場合、両方の診断が下ります。対人関係において、認知されたものを統合する際に混乱が起きコミュニケーションがうまくとれないというアスペルガー症候群の特徴が、運動機能面においても現れているのではないかと検討されています。『ICD-10』の診断基準では、子どもが知的能力障害を持っている場合、その知的能力障害のため運動能力が損なわれているとの見なされる場合もあります。しかし、その運動が知的能力障害を考慮してもなお、不器用であったり、不正確である場合は、知的能力障害と発達性協調運動障害の両方の診断が下ります。ADHDのある子どもがよくころんだり、物にぶつかったりしてしまうのは、ADHDによる注意散漫や衝動性に原因があるのか、それとも発達性協調運動障害によってなのかを注意深く観察する必要があります。子どもの運動に対する困難さ、不器用さは必ずしも、ADHDだけが原因、発達性協調運動障害だけが原因というわけではなく、両方が原因となっていることもあります。特にADHDの場合、発達性協調運動障害との併存確率は50%と非常に高いです。発達性協調運動障害とADHDは併存しやすいため、二つを併発している場合は、DAMP症候群(deficits in attention, motor control and preception/注意・運動制御認知における複合的障害)と呼ばれることもあります。発達性協調運動障害について相談できる機関出典 : 子どもの運動や動作の不器用さが気になったら、まず以下の3つのどれかに相談に行きましょう。市区町村ごとに設置された、地域の健康づくりの場です。保健師さんが常駐しており、子どもの発達に関する悩みの相談を受けてくれます。場合によっては医療機関や療育施設の紹介をしてくれます。子育て家庭の支援に特化している機関です。自治体運営や医療機関に委託運営されており、保健師さんまたは看護師さんが相談に乗ってくれます。中には、療育指導を実施している子育て支援センターもあるので、お近くのセンターに問い合わせてみてください。都道府県ごとに設置されており、児童福祉を専門とした機関です。医師、児童心理士、児童福祉士がおり、相談に乗ってもらえます。必要に応じて発達検査を行ってくれる場合もあります。また、全国共通児童相談所ダイアルがあり、189番にかけると、24時間365日いつでも児童福祉に関する相談を受けてくれます。発達障害者支援全般を行っている機関であり、都道府県・政令指定都市やその他法人によって運営されており全国に設置されています。お近くの発達障害者支援センターは以下のリンクより検索できます。発達障害情報・支援センター相談窓口情報ここでは、相談支援と発達支援を行っています。相談支援では子どもの相談はもちろん、その様子に応じて医療機関、療育機関の紹介、行政サービスの利用方法を紹介してくれます。発達支援では、医療機関、療育機関との連携を図りながら、家庭での療育方法のアドバイス、発達検査、発達状態に応じた療育計画の作成や具体的な助言をしてくれます。発達性協調運動障害への支援を受けられる機関出典 : 上記の相談先で紹介してもらった医療機関を受診しましょう。小児専門や発達障害専門の医療機関では療育も行っているところがあります。上記の相談先で紹介してもらった療育機関で療育を受けましょう。療育機関では子どもの成長や自立支援のための、医療、治療、育成、保育、教育を総合的に行っています。民間の療育機関は保険が適用されないため、各施設により費用は様々です。内容や療育に当たる方との相性もあるので、あらかじめ見学に行くことをおすすめします。発達性協調運動障害の支援・治療方法出典 : 作業療法は、作業(子どもの場合、主に遊び)などをして、複合的な動作をできるようにしていくものです。運動、日常生活、学習などの動作をスムーズに行えるようにするために、基本的な動作に加え、動きと動きの統合が必要な協調運動への支援を行います。発達性協調運動障害のある子どもは、一つ一つの行動の統合が苦手であることが分かっているので、作業療法は障害の改善に効果があるといわれています。東京小児療育病院みどり愛育園広義には高齢、障害などによって運動機能が低下した状態にある人々に対し、運動機能の維持・改善を目的に運動、温熱、電気、水、光線などの物理的手段を用いて行われる治療法です。特に運動による理学療法が発達性協調運動障害の改善に役立つとされています。別名運動療法ともいわれますが、理学療法に含まれない場合もあり、定義はあいまいです。理学療法士が行う運動を使った療育では、日常生活で必要な運動、行動を訓練し改善していきます。日本理学療法士協会家庭でもできること出典 : 家庭でもできることは多くあります。家庭で様々なサポートを行う場合は、まず、「こうするべき、こうあるべき」という先入観を捨て、子どもと一緒に楽しみながらやることが長続きの秘訣です。あくまで遊びの中で取り入れ、訓練、という位置づけにしないことも大切です。家庭で見られる困りごとの例としては、以下のような例が挙げられます。・手先がうまく使えていない・正しくお箸の使い方を何度も教えたけれど、なかなかお箸をうまく使いこなせない。・服のボタンをうまくはずしたり、かけたりすることができない。・文字を書くときに極端に筆圧が弱い、強い。上記のような困りごとに対して、考えられる不器用さの原因としては、・手の筋肉の動きをうまく制御できない・手元に注意が向いてない・手の動きと視覚の情報の連携が取れていないなどが挙げられます。これらを踏まえた上で、手で何かを握る経験や、握ったあとの状態を把握する機会を増やすことにより、手の筋肉に入れる力の制御を学ぶことができ、つまむ機能や握る機能が育っていきます。具体的に家庭で出来ることとしては、以下のような取り組みが考えられます。・ブランコやアスレチックで遊び、どのくらいの力で自分の体重を支えれれるようになるのかを学ぶ。・コイン遊びを通して、コインを握る、つまむ、入れるという動作を経験する。いろんな指でコインをつかむことで指の力の入れ加減を学ぶ。・粘土で遊び、粘土の形を変形させたり、細かい作業を行うことで、感覚の加減を学ぶ。ここで紹介した方法はあくまで一例であり、他にも様々な方法があります。また、家庭でできるこうした取り組みも、すぐに効果が表れるとは限りません。ゆっくり時間をかけて、楽しみながらやっていきましょう。 コラム粘土遊びは子どもの脳が活性化する!?楽しく創造力を伸ばす、3つの魅力とは?乳幼児期の感覚統合遊び発達障害の子の感覚遊び・運動遊び 感覚統合をいかし、適応力を育てよう1まとめ発達性協調運動障害は、一つ一つの運動を関連づけたり、統合することが困難な障害ですが、運動の得意不得意はどんな子どもにも見られるため、ただの「不器用な子」ですまされる場合も少なくありません。しかし、発達性協調運動障害のある子どもが見過ごされ、必要な支援を受けられないままでいると、その子どもが集団に適応することが困難になることもあります。たとえば、運動能力を中心とした遊びは、子どもたちの社会で周囲との関係を構築するために重要な役割を果たします。また授業での運動課題に取り組む場面では、その子ども自身の評価を著しく下げることがあるかもしれません。子どもが発達性協調運動障害かどうか心配な場合は、早めに相談機関に相談し、必要に応じて専門家の支援を受けながら、家庭でできる工夫を行っていきましょう。お子さんが楽しめるペースや方法で、出来ることを少しずつ増やしていけば、自信にもつながり、学校生活へも良い影響が出ることでしょう。
2016年07月27日ハンチントン病とは?出典 : ハンチントン病とは、運動症状・精神症状などの症状がみられる遺伝性の神経変性疾患で、国の指定難病にされています。平均30歳~40歳頃に発症する方が多く、症状は本人が気づかないうちにいつの間にか始まっていることが大半で、約15年をかけてゆっくり進行していきます。アジアでの発症確率は10万人に0.4人と、比較的稀な疾患です。運動症状としては、不随意運動(舞踏運動)によって手足が自分の意思とは関係なく動く、精神症状としては苛立ちやうつ状態が続くことなどがあります。これらの症状は時間に伴って進行していきます。参考書籍:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院/刊ハンチントン病の症状出典 : ハンチントン病の症状には運動症状と精神症状があり、初期・中期・後期と症状が進行していきます。しかし、人によって症状の程度には個人差があり、またすべての症状が発症するわけではありません。不随意運動(舞踏運動):自分の意思とは関係なく体が運動することを不随意運動と言います。ハンチントン病では、手足を勢いよく曲げたり伸ばしたりする動き、頭部を回したり伸ばしたりする動きや、舌を出したり、しかめ面をしたりなどの表情の動きなどがみられます。進行するにつれて、歩行・食事・着脱・排泄等も難しくなり、介護が必要になることがあります。短気・いらだち・うつ状態・不安・無気力状態等の症状がみられます。進行するにつれて症状は悪化していきます。認知能力が低下し無目的な言動が増えてきます。また、抑うつ状態が続くせいで、自殺を図ろうとすることもあります。精神症状も進行すれば介護が必要となることがあります。Upload By 発達障害のキホン症状の発症や程度には個人差があり、運動症状は初期症状でも、精神症状は中期症状等というように、症状のパターンは様々です。また上記の症状以外の症状も発症する場合があります。ハンチントン病の原因出典 : ハンチントン病は、第4染色体に局在する遺伝子(IT15 またはハンチンチンと呼ばれます)の繰り返し配列の異常によって引き起こされます。第4染色体の遺伝子の通常の繰り返し配列の長さは26回以下ですが、ハンチントン病の方は36回以上と染色体が伸長しています。この反復配列の数の長さによって発症年齢が決まり、伸長するほど若い時期に発症するといわれています。また、ハンチントン病の主な症状である不随意運動(舞踏運動)は、脳の一部で随意運動を司っている大脳基底核と大脳皮質が萎縮することで発症します。ハンチントン病は常染色体優位性遺伝といって、発病の原因となっている遺伝子が親から子に伝わる病気です。両親のうちのどちらか一方がハンチントン病の原因遺伝子を持っている場合、子どもには50%の確率で遺伝します。ただし、祖父母から孫に世代をまたいで原因遺伝子が遺伝することはありません。ハンチントン病の診断基準は?出典 : ハンチントン病の診断基準は問診や画像検査によって分かることがあります。また、受診機関もその時々の症状に合わせて横断的に受診し、専門医にも診てもらうことをおすすめします。ハンチントン病の診断は主に問診によって行われ、家族歴、臨床所見により臨床判断が可能です。しかし、確定診断は遺伝子検査により診断されます。■家族歴:近親にハンチントン病を患った方がいるか、または神経疾患や精神疾患がある方がいるかどうか。ハンチントン病の原因は親から子への遺伝によるものです。したがって、近親でハンチントン病になったことがある方がいるかどうかを問うことがあります。■特徴的な臨床所見:上記で述べたようなハンチントン病特有の運動症状(不随意運動)や精神症状を自覚または他覚できるかどうか。初期症状では日常生活中のふとした瞬間に手が震える等の軽い不随意運動が起こります。初期症状を他覚するのは難しいですが、自覚があるならば問診時に話してみることをおすすめします。神経内科や精神科を受診して、専門医に診てもらうことをおすすめします。近親にハンチントン病の方がいらっしゃる場合には、その旨を医師にお伝えください。■CT検査・MRI検査ハンチントン病の不随意運動(舞踏運動)は脳の一部の大脳基底核と大脳皮質の異常により生じるため、CT検査やMRI検査を行います。さらにこれらの検査は他の病気である可能性を否定するために行うものとされています。また、うつ病の方は共通して大脳基底核と大脳皮質の萎縮が見られますが、これらの特徴がうつ症状にどのように影響しているかはまだ分かっていません。■遺伝子検査確定診断のために遺伝子検査を行います。近親にハンチントン病の方がいて、ご自身にも自覚症状がある場合には遺伝子検査を受けることをおすすめします。近親にハンチントン病の方がいるが、ご自身に自覚症状がない場合は、遺伝カウンセリング等を受けることが一般的にすすめられています。ハンチントン病の治療法出典 : ハンチントン病の原因治療はなく、対症治療がメインになります。主に薬物療法を用いて運動症状・精神症状を和らげています。不随意運動(舞踏運動)の治療薬には2013年から使用が許可されたテトラベナジンがあり、精神症状には抗精神病薬を使用しています。参考サイト:テトラベンジン添付文書ハンチントン病と診断されたら…出典 : ハンチントン病が進行するにつれて、自分の意思を伝えることが困難になってきます。そのため、本人が自分の意思・希望を伝達するための方法を確保することが重要です。また、難病指定がされている疾患のため、医療費の助成支援を受けることもできます。以下では、診断を受けたらしておくと良い手続きなどをご紹介します。事前指示書とは本人が医療についての決断を下すことができなくなった場合に、医療についてのその人の希望を伝達するための文書です。以下の文書を作成し、手続きを行っておくと自分の意思や尊厳を優先することができます。■リビングウィル医療に関する患者の指示や希望をあからじめ表明した文書■医療判断代理委任状本人が決断を下すことができない状態に陥った場合に本人の代わりに決断を下す(代理人)を指定するための文書参考サイト:メルクマニュアル医学百科事前指示書(アドバンス・ディレクティブ)ハンチントン病は国の指定難病にされているため、医療費の助成を受けることができます。指定難病の医療費の自己負担割合は2割です。また、その他の制度による医療費がすでに1割負担となっている患者さんの場合、負担割合は1割のまま変わりません。難病医療費は世帯の所得に応じた医療費の自己負担上限額(月額)が設定されます。自己負担上限額は、受診した複数の医療機関などの自己負担をすべて合算したうえで適応されます。参考サイト:難病医療費助成制度の対象疾病についてまとめ出典 : ハンチントン病は、10万人に0.4人が発症するという極めてまれな病気です。人から人へ感染する病気ではなく、親から子へ遺伝によって原因遺伝子を引き継ぎ発症するため、生活習慣の悪化によって発症したり進行したりする病気ではありません。根本的な治療方法はまだ見つかっていませんが、不随意運動を和らげる薬や、精神症状を和らげる抗うつ薬や抗てんかん薬等があり症状を和らげることができます。症状を緩和するためにも早めに医療機関の受診をおすすめします。参考サイト:難病情報センター参考サイト:メイクマニュアル参考サイト:ハンチントン病と生きる参考サイト:メディカルノート
2016年07月25日チック症とは出典 : チック症とは、まばたきや首振りなど一見癖のように見える行為が現れる精神疾患です。2013年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)においては、チック症群/チック障害群という疾患分類に位置づけられます。本記事では疾患の呼称をチック症と統一して説明していきたいと思います。『DSM-5』では、チックは以下のように定義されています。チックは, 突発的, 急速, 繰り返される不規則な運動もしくは発声(例:瞬目, 咳払い)である.(DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル 日本精神神経学会医学書院p239)チック症は心の動きと関係があると考えられており、決して稀な疾患ではありません。一般には幼児期(3~4歳)から始まり、学童期(7~8歳)に特に多く症状がみられます。しかしこれは、大人になるにつれて自然に治癒する傾向があります。チック症の主な症状出典 : チック症の症状は、動作の種類と動作の持続時間により、4つのグループに分けることができます。まず、生じる動作の種類によって音声チック・運動チックに分けられ、さらに、その動作の持続時間によって単純性チック・複雑性チックと分類されます。チック症の症状分類方法と具体例を一覧表にまとめたのが、下の図になります。一つひとつ、具体例とともに見ていきましょう。Upload By 発達障害のキホン■音声チック音声チックの症状としては、咳払いがもっとも多くみられます。他には、単純な音声や複雑な発声、汚言、卑猥な言葉などがあります。咳払いは日常よくみられるものであるため、周囲の人もさほど気にかけないことが多いです。他方、「あー」といった甲高い奇声や汚言は、周囲の注目をより集めやすい症状となります。本人が周りの目を気にして登校を渋ったり、外出を控えることも少なくありません。■運動チック運動チックとは一見すると癖に見える、まばたきや肩すくめなどの身体の動きのことを言います。例えば、まばたきは日常動作でみられるものであり、多少まばたきが多くても周囲の人間はあまり気にしません。しかし顔や肩の動きといった目立ちやすいチックでは、周囲も本人も気にしやすいと言えるでしょう。また、手のチックなどでは、字を書くのが困難になるなど、日常生活に支障をきたすことがあります。■ 単純チック一般に瞬間的(1秒未満のことが多い)に発生し、明らかに無意味かつ突然起こるものです。■複雑チック単純チックに比べて動きが少し遅く、意味があったり周囲の環境に反応しておこるように見えるものです。チック症の4つの診断分類とその基準出典 : 年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)の診断基準を参考にすると、チック症の診断は以下の4つに分けることができます。①トゥレット症群・トゥレット障害②持続性(慢性)運動または音声チック症・障害③暫定的チック症・障害④他の特定されるおよび特定不能のチック症群上記の診断分類によらず、4つすべてに共通する診断基準が3点あります。・発症が18歳以前であること・物質の生理学的作用(例:コカイン)または他の医学的疾患(例:ハンチントン病、ウイルス性脳炎)によるものではないこと・一度ある階層レベルのチック症と診断されると、それより下位の階層の診断がなされることはないこと続いて、診断分類ごとの症状と基準を見ていきましょう。以下の基準に当てはまる場合は、トゥレット症群・トゥレット障害と診断されます。・多様な運動チック、1つ以上の運動チックの両方が同時とは限りませんが、症状のある時期に存在する・チックの頻度は増減することがある・最初にチックが始まってから一年以上持続している以下の基準に当てはまる場合は、持続性(慢性)運動または音声チック症・障害と診断されます。・①にあてはまらない・1種類または多様な運動チック、または音声チックが同時に存在したことがある・運動チックと音声チックの両者がともにみられることはない・チックの頻度の増減することある・最初にチックが始まってから一年以上は持続している※該当する場合、運動チックのみ・音声チックのどちらかかを特定する必要がある以下の基準に当てはまる場合は、暫定的チック症・障害と診断されます。・①②にあてはまらない・1種類または多様な運動チック、または音声チックが病期に存在したことがある・運動チックと音声チェックの両者がともにみられることはない・チックの持続は最初にチックが始まってから一年未満であるチック症に特徴的な症状はありますが、チック症または精神発達症の診断分類の中で、どの疾患の基準にも当てはまらない場合はこちらに分類されます。・他の特定されるチック症:臨床家が、チック症または特定の神経発達症の基準を満たさないという特定の理由を伝えることを選択する場合・特定不能のチック症:臨床家が、チック症または特定の神経発達症の基準を満たさないとする理由を特定しない場合、およびより特定の診断を下すのに十分な情報がない場合以下の表は、チック症の診断分類とその基準を簡潔にまとめたものです。Upload By 発達障害のキホン 精神疾患の診断・統計マニュアル(日本精神神経学会医学書院)チック症を引き起こす要因出典 : チック症の要因は、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)によると以下のように推定されていますが、厳密には特定されていません。ただし少なくとも、身体的要因と環境的要因の両方が影響していることが分かっています。「病因に関しては、トゥレット症候群を中心とした研究から慢性チックは遺伝的要因と環境要因とが合わさって関与しているという理解が形成されてきた。遺伝的要因としては双生児研究や家族研究からトゥレット症候群に家族集積性が指摘された。また環境要因としては胎生期や周産期の障害の関与が関係されてきている。最近注目されているものとしては溶連菌感染症の自己免疫疾患(pediatric autoimmune neuropsychiatric disorders associated with streptococcal infections: PANDAS)という概念も存在するが、チック障害のすべてをそれだけで説明することは難しいようである。(『ICD-10精神科診断ガイドブック』中根允文・ 山内俊雄、医学書院)遺伝的要因と生理学的要因は、チック症の出現率と重症度に深くかかわっています。例えば、低出生体重、妊娠中の母親の喫煙などが挙げられます。不安や興奮、激しい疲労によりチック症は悪化し、落ち着いて集中しているような環境では症状が安定する傾向があります。そのためストレスがかかる条件下ではチック症が起こりやすいといえます。チック症によく見られる合併症出典 : チック症のある人は、他の障害も合併していることが少なくありません。代表的なものとして、ADHD(注意欠陥・多動性障害)と強迫性障害が挙げられます。チックに関連した疾患の中でも、多彩な運動性チックと音声チック、および特異な性格傾向を示すトゥレット症候群では、40%以上に注意欠陥・多動性障害(ADHD)を合併します。また学習障害を合併していることもあります。 鑑別診断としては意識がはっきりしていて、不随意運動をきたす様々な疾患が対象となります。すなわち舞踏(ぶとう)病、突発性ジスキネジア、部分てんかんなどです。チック症の治療出典 : チック症は、一般の小児科や心療内科で診察・治療を受けることができます。上述した、『DSM-5』(米国精神医学会編集による『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)の基準をもとに診断が下されることが一般的です。診断の後は、一人ひとりの症状にあった治療をすることが重要となります。軽度の場合:できるだけ身体や心理的なストレスを減らす環境を整えましょう。遊戯(ゆうぎ)療法などの行動療法的なアプローチ・心理療法、親へのカウンセリングが重要となります。重度の場合:薬物療法が有効となります。主としてハロペリドールやリスペリドンなどの向精神薬が挙げられます。症状が長期・慢性化し、多発・激症化などする場合は、お近くの子ども専用の精神科を受診しましょう。ただし副作用として、ふらつきが生じる場合があります。年少者に使用するときにはとくに注意が必要です。初診の場合、かかりつけの小児科・神経内科・精神科の病院やクリニックが適しています。チック専門医の受診でなくても問題ありません。年齢・症状の程度によって受診する科が異なりますので、以下を参考に診療科に選ぶことをおすすめします。■小児期(0~15歳)の場合症状が軽度な場合はかかりつけの小児科を受診しましょう。重度の症状が出現している場合もしくは、かかりつけの小児科での受診が難しい場合は診療情報提供書(紹介状)を作成してもらい、専門の病院を受診することをおすすめします。■青年期(15~24歳)の場合軽度・重度ともに、神経内科もしくは精神科を受診しましょう。チック症の体験談出典 : 発達ナビでは、チック症について次のような質問がよせられました。弟はチック症でしょうか?弟は20歳なのですが、舌打ちを急にしたり、人の嫌がる言葉を話したりします。外でどのような態度かは分からないのですが、家の中では家族がいる目の前でも急に人が不快になるようなことを言ったりします。また、口から出す音もかなり不快でとてもイライラします。私から何か言うと全身をかきむしったりします。これらの症状が気になって調べたところ、「チック症」というものを見つけました。このような症状はチック症なのでしょうか?これに対して、投稿された回答の一つをご紹介します。「人の嫌がる言葉」「口から出す音」「年齢が20歳」から、もしかしたら息子と同じトゥレットの可能性があるのかな?と思いコメントしています。一般的に言われるチックはストレスや疲労により、一過性で出ます。だから出たり消えたりです。トゥレットなら手足や顔面が動く「動作チック」と口から意味不明な音を出す「音声チック」が様々な形で、出てきます。その中でも「人の嫌がる言葉」は「汚言症」とも言われています。「動作チック」は私自身が見なければ(視界に入らなければ)やりすごせるのですが、「音声チック」は嫌でも耳に入ってくるので、少々つらい時期もありました。幸い「汚言症」はそんなにひどくはならなかったのでよかったのですが、ひどくなったらタルトさんのように辛かったと思います。今でも「ぐんぐん!」「あ~は~」など言いますが慣れたので気にならないし、外ではかなり抑えているようです。どちらにせよ、ストレスや疲れは症状を増幅させるので、ゆったりリラックスできたらいいですね。ストレスを減らし、疲れを減らすことで症状を軽減することができるようです。本人がストレスを感じず快適に過ごせる環境を見つけることで、より安定した生活を送ることができるでしょう。子どものチックが気になるとき、保護者の方に意識してほしいこと出典 : チック症の症状は、まばたきや首振りなど一見癖のように見える行為も少なくありませんが、単なる癖ではない精神疾患であるため、無理やりおさえつけるのではなく、一人ひとりに合った治療や支援をおこなうことが重要です。お子さんに、「チック症かな?」と思われる、気になる症状がある場合は、以下のような点に注意してお子さんと関わってみてください。・症状の出現をやめるよう、いたずらに叱責して注意を促すことは避けましょう。・チック症をを引き起こす緊張状態や不安を軽減することで、症状を和らげることができます。- 全身発散など気を紛らわせることも有効です。- また長期的な取り組みとして、緊張や不安をもたらす場面に対する耐性や精神的抵抗力を高めることも有効です。・本人の意識、理解:本人がどのように症状を認識しているのか確認し、年齢に応じて説明することが大切です。・チック症かどうかが気になる場合は、ご家庭だけで判断せず早めに小児科や心療内科に相談しましょう。チック症には、周囲の理解とサポートが不可欠出典 : チック症の多くは一過性の精神疾患であり、成人期初めまでに症状が改善することが大半です。しかしごく稀に重症なチックが続いたり、成人後に再発したりすることがあります。チック症のある成人の方が日常生活を円滑に行えるようになるためには、なによりも周囲の協力が欠かせません。家族および周囲の人に症状を説明し、理解を求めましょう。また症状が長期化・悪化する場合には抱え込まず、小児科や精神科などの医療機関へ受診しましょう神経系疾患分野トゥレット症候群(平成22年度)(難病情報センター)チック(チック症)の症状や原因・診断と治療方法(goo ヘルスケア)チック症(医療法人社団雅会前田クリニック)チック症の症状・原因・治療(All About健康・医療)トゥレット障害を含むチック障害(発達障害者支援関係報告会金生由紀子) 精神疾患の診断・統計マニュアル(日本精神神経学会医学書院)精神科診断ガイドブック(中根允文・山内俊雄、中山書店)
2016年07月25日学校でのトラブルが続くと、子どももしんどい様子…出典 : 娘は、学校でお友だちに指摘したことが発端となり、長期間ケンカをしていた時期があります。その頃、チック症状が増え始めていました。今はでは仲直りをし、普段通りに笑って話せるようになっているものの、それでも1度出現したチック症状はなかなか治まらず、学校へ行くのがつらいと言うようになりました。学校から帰ると頭痛を訴えたり、娘が精神的に追い込まれているときよく出る右足の痛みも、頻繁になっていました。チック症|クラスメイトとのトラブルが原因?新たなチックが出現しました学校を休む基準は、しんどさの度合いで決めればいいのだろうか?Upload By GreenDays私たち家族は、学校を「どうしても行かなくてはならない場所」という位置づけで考えてはいません。熱が出れば休むのと同じように、心が苦しくなった時には積極的に学校を休んで心をほぐす時間に当てようと考えています。ですので、チックが発症して以来、娘は登校日の半分ぐらいの割合で学校を休んでいます。少しずつチックは治まってきましたが、1番症状が激しく出るのは「今日は学校を休むかどうか」を決める瞬間です。娘なりに色々な葛藤もあるのでしょう。行くと決めていたのに、朝食の途中で足が痛みはじめ、結局学校を休んだ日もあります。幼い娘に「学校を休む」という決断をさせるのは酷なようにも思いますが、「しんどい」の度合いは本人にしかわかりませんので、私が決めるというのもなかなか難しく、何か良い方法はないかなと考えていました。娘の「しんどい」を洗い出して可視化!私が娘と話し合うときにいつも困っていたのは、「しんどい」と訴えられても、その詳細な度合いまで共有できない事でした。「ちょっとしんどいけど、まあ頑張れる」レベルなのか、「これ以上頑張ったら苦しい」レベルなのか、「すごくしんどくて心が壊れる寸前」なのか。たくさん会話をしながら探っていきますが、本人も自分の状態をきちんと把握できていないので、私と娘の認識が大きくずれていることもあります。そこで、娘が「しんどい」と思う出来事を「1~10」にレベル分けしてみました。「レベル5」までは、なんとか頑張れる程度。「6~10」は、チックや頭痛・吐き気・足の痛みなどの身体症状が出始めるため、何らかのサポートが必要になってきます。Upload By GreenDaysこうして娘のストレスを数値化することで、「しんどい」と訴えられたときに「今、1~10で言うとどのぐらい?」と確かめ、そのレベルを推測することができるようになりました。しんどいレベルが「4」か「5」の時は、そっと背中を押してあげれば前に進む勇気が出ることもあります。「6」以上の時に背中を押してしまうと「ママの期待に応えなければ」という気持ちが芽生え、余計に娘を追いつめてしまうことになるので「まずは心を休めようね」と声をかけることにしています。この数値化のおかげで娘と私の認識は大きくずれることなく、その認識を前提に話ができるようになりました。出典 : 「しんどさ」がわかれば課題や手立ても見えてくる!また、娘のストレスを書き出してみることで、わかった事もたくさんありました。雨の日と晴れの日では同じ出来事でもストレスの度合いが違うこと、児童精神科への通院前には、娘にとんでもない負荷がかかっていたことお友だちとバイバイする時間になると激しく怒り、泣いて抵抗する娘にも、その瞬間はかなりのストレスがかかっていることも判明しました。わがままなのではなく、自分ではどうしようもない感情の揺れに振り回されていたのです。「お友だちと遊ぶときには、あらかじめ帰り際の対策をたてておく」という課題も見えてきました。こうして娘と一緒に「今はどんな状態だろうね」「こんな状態の時はどうしたらいいかな?」と話し合っていくことで、娘は安心してSOSを発することができるようになっていると思います。年齢が上がるにつれ、いろいろな感情やプライドが邪魔をして、本当のことを話してくれなくなる時期が来るかも知れません。それでも、「SOSを出せば一緒に解決策を考えてもらえる」という経験は、娘の今後の人生できっと役立ってくれることと思います。客観的に自分の状態を判断できるようにUpload By GreenDays「今、自分はどういう状態にあるのかを知る」ことは、とても大切なことだと思います。同じ出来事が起きても、なぜ今回は怒ってしまったのか、なぜ今回は平気だったのか。それを自分自身が少しずつ理解していくことで、自分自身の理解は少しずつ進んでいくと思います。理解が進めば対策が立てやすくなり、対策が立てられれば毎日穏やかに過ごせることも増えるのではないでしょうか。「己を知る」手立てを伝えることは、いずれ私の手を離れて巣立つ娘へ贈る大切なプレゼントです。焦らずゆっくりと。娘に合った方法を模索しながら、いつの日か客観的に自分の状態を判断できる力を身につけてあげたいと思います。
2016年07月21日自閉症とは出典 : 自閉症は先天的な発達障害の一つで、社会性と対人関係の障害、コミュニケーションや言葉の発達の遅れ、行動や興味の偏りの3つの特徴があると言われています。世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)では広汎性発達障害というカテゴリーのもと、自閉症という障害名が使われています。一方、2013年に発行されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)において自閉症のという障害名は廃止され、自閉症スペクトラムの障害名のもとに統合されました。そのため、今後自閉症という名称での診断は少なくなることが予想されますが、自閉症という名称は現在も一般的であり、また発達障害者支援法などの法律や文部科学省・厚生労働省などでも使用されています。以上をふまえ本記事では、下記の文部科学省の定義で示されるような概念における「自閉症」についてご紹介します。自閉症とは、3歳位までに現れ、①他人との社会的関係の形成の困難さ、②言葉の発達の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害であり、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。自閉症の特徴的な3つの症状出典 : 自閉症は3歳頃までに主な症状や特性が現れ、成長するにつれ色々な症状が顕著になります。以下に3つの代表的な症状を説明します。自閉症の方は、対人関係を築くことが苦手なことが多いです。具体的な特徴としては、・目線を合わすことができない・周囲に関心がないように見える・相手の気持ちがわからない・その場の空気が読めないなどが挙げられます。自閉症の方は、会話をしていても目を合わすことが苦手です。無理に視線を合わせようとすると落ち着きがなくなったり、パニックになってしまいます。自閉症の方は環境の変化を敏感に感じることが苦手なため、このように対人関係が苦手だと受け止められてしまいます。自閉症の方はコミュニケーションや言葉の発達が遅れる傾向があります。具体的な特徴としては、・言葉を話すのが他の子と比べて遅い・人の話したことをオウム返しする・抽象的な言葉・比喩や皮肉の意味を理解できない・呼んでも反応しない・自分の話したいことだけ一方的に話すなどが挙げられます。自閉症の方は言葉を話し始めるのが遅く、言葉の意味を理解するのが困難です。言葉を話し始めても、意味のある言葉で会話をするのではなく、誰かの言葉をオウム返ししてしまう場合も少なくありません。相手に自分の気持ちがうまく伝わらず、暴れてしまうこともありますが、正しい対処法をしていれば成長と共に落ち着いてきます。自閉症の方はある一定の行動をとる傾向があります。具体的な特徴としては、・落ち着きがなく、手を動かしたり、部屋の中を行ったり来たりする・毎日決まった行動をし、予定外の行動は取れない・1つのものに執着する・自分の興味があるものに対して、とても執着する・予定外のできごと・初めての人/場所/活動などに抵抗を示すなどが挙げられます。自閉症の人は、自分の興味のあることに対してとことん熱中する傾向があります。なので、自分の興味のある物事をとことん調べ、誰も教えていないのに専門家顔負けの知識を持っている方も珍しくありません。自閉症はいつ分かる?診断の年齢は?出典 : 言語・認知・学習といった発達領域が未発達の乳児では、自閉症の特徴となる症状が分かりにくい場合があります。ですから、生後すぐに自閉症の診断がでることはありません。個人差がありますが、早ければ1歳ごろから症状が現れはじめ、3歳までに何らかの症状が出てくると言われています。一般的には3~5歳ごろに気づくことが多いようです。定期検診の時に医師から専門機関の受診をすすめられる家族も少なくありません。家族が夜泣きや睡眠障害などの症状に気づき、子どもの育てにくさを感じていることが多いです。自閉症はなんらかの症状や困りごとに直面してはじめて障害がある可能性に気づきます。そのため、軽度の自閉症や家族や本人が気付かない場合、大人になるまでわからないこともあります。また、見過ごされたまま困難を抱え苦しんでいる人もいるのです。自閉症と診断されると、対処方法もはっきりしてきます。ですからその後の生活も、様々な特性にあった工夫をしていくことで困難を解決していくことができるようになります。自閉症の診断基準出典 : 専門機関を受診し、問診とコミュニケーション能力・言語の発達を調べるための知能検査・心理検査などを行います。施設によってはMRIで脳の器質的な病気がないか調べたり、脳波を検査しててんかんなどの併存症がないか調べる場合もあります。自閉症の診断基準には、『DSM-5』(アメリカ精神医学会,『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)や『ICD-10』(WHO, 『国際疾病分類』第10版)といった基準が使われており、検査結果から総合的に判断します。『DSM-5』では、広汎性発達障害の下にあったレット障害を除くすべての障害名が、自閉症スペクトラムという名称に統合されました。そのため自閉症は現在では自閉症スペクトラムという診断名で診断されることが多くなっています。以下はDSM-5にある自閉症スペクトラムの診断基準になります。以下の診断基準において当てはまる項目が多い場合や気になる場合は、専門機関での検査をおすすめします。A. 複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的な欠陥があり、現時点または病歴によって、以下により明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)。(1)相互の対人的・情緒的関係の欠落で、例えば、対人的に異常な近づき方や通常の会話のやりとりのできないことといったものから、興味、情動、または感情を共有することの少なさ、社会的相互反応を開始したり応じたりすることができないことに及ぶ。(2)対人的相互反応で非言語コミュニケーション行動を用いることの欠陥、例えば、まとまりの悪い言語的・非言語的コミュニケーションから、視線を合わせることと身振りの異常、または身振りの理解やその使用の欠陥、顔の表情や非言語的コミュニケーションの完全な欠陥に及ぶ。(3)人間関係を発展させ、維持し、それを理解することの欠陥で、例えば、様々な社会的状況に合った行動に調整することの困難さから、想像上の遊びを他人と一緒にしたり友人を作ることの困難さ、または仲間に対する興味の欠如に及ぶ。B.行動、興味、または活動の限定された反復的な様式で、現在または病歴によって、以下の少なくとも2つにより明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)(1)常同的または反復的な身体の運動、物の使用、または会話(例:おもちゃを一列に並べたり物を叩いたりするなどの単調な常同運動、反響言語、独特な言い回し)。(2)同一性への固執、習慣へのかたくななこだわり、または言語的・非言語的な儀式的行動様式(例:小さな変化に対する極度の苦痛、移行することの困難さ、柔軟性に欠ける思考様式、儀式のようなあいさつの習慣、毎日同じ道順をたどったり、同じ食物を食べたりすることへの要求)(3)強度または対象において異常なほど、きわめて限定され執着する興味(例:一般的ではない対象への強い愛着または没頭、過度に限定・固執した興味)(4)感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ、または環境の感覚的側面に対する並外れた興味(例:痛みや体温に無関心のように見える、特定の音、感覚に逆の反応をする、対象を過度に嗅いだり触れたりする、光または動きを見ることに熱中する)C. 症状は発達早期に存在していなければならない(しかし社会的要求が能力の限界を超えるまで症状は明らかにならないかもしれないし、その後の生活で学んだ対応の仕方によって隠されている場合もある)。D. その症状は、社会的、職業的、または他の重要な領域における現在の機能に臨床的に意味のある障害を引き起こしている。E. これらの障害は、知的能力障害(知的発達症)または全般的発達遅延ではうまく説明できない。知的能力障害と自閉スペクトラム症はしばしば同時に起こり、自閉スペクトラム症と知的能力障害の併存の診断を下すためには、社会的コミュニケーションが全般的な発達の水準から期待されるものより下回っていなければならない。(『日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』2014年 医学書院/刊P.49より引用)専門機関での診断は受けるべき?どこへ行けばいいの?出典 : 自閉症かな?と感じることがあったとしても判断に困ったり、なかなか受診へ踏み切ることができない場合もあると思います。ですが、適切なサポートを受けられないまま生活していると、最も困りごとに直面するのは本人です。また、自閉症の症状には個人差があります。まずは、気になる症状や困りごとなどがある場合、または子育てや生活を送っていく中で何か不便を感じる場合、年齢に関係なく早めに身近な専門機関へ相談されることをおすすめします。少しでも早く本人の特性に気づいてあげれば、フォローして困難の乗り越え方を手助けすることも可能になりますし、できるだけ生活しやすい環境を整えてあげることもできるかもしれません。それには親や家族で抱え込まず、専門家や周りの人たちの協力を得ながら、その子にあったやり方で接することが大切です。特に自閉症は小さい時からその方に合った療育を行うと、才能を最大限に発揮することのできる障害であることに加えて、生活面でもちょっとしたことを気をつけるだけで、本人や家族のストレスを軽減することができます。いきなり専門医に行くことは難しいので、まずは無料で相談できる身近な専門機関の相談窓口を利用するのがおすすめです。早めに相談し、自閉症に対して正しい知識を付けることが重要です。家族で試行錯誤をして対処法を見つけていくよりも、専門機関に相談し色々な方法を教えてもらった方が、時間もかかりませんし、ストレスも少なくすみます。必要であれば医療機関を紹介してもらうこともできます。子どもか大人かによって、行くべき機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所など【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所など身近な相談センターに行って相談し、自閉症の疑いがあり、診断を希望すればそこから専門医を紹介してもらえます。自宅の近くに相談センターがない場合には、電話での相談にのってくれることもあります。自閉症を含む発達障害の専門の医療機関は他の病気に比べると少ないですが、発達障害者総合支援法などの施行によって年々増加はしています。医療機関での診断は、子どもの場合は、専門外来のある小児科、脳神経小児科、児童精神科などで行われることが多いです。また、18歳以上の場合は一般的に精神科や心療内科などで診断がなされます。しかし、自閉症を診療できる専門の医療機関はまだまだ少ないのが現状です。また、保健センターなどでは知能検査や適応能力を診断する検査を受けられるところもあります。医療機関で診断を受けるかどうか、決めるのは本人やご両親の判断となりますが、専門機関で相談し、すすめられた場合は、ぜひ医療機関に行き医師に相談しましょう。診断を受けて自閉症だった場合は今後どのように対応していけばいいか聞くことができますし、仮に自閉症でなくとも普段の行動を見直すきっかけになると思います。以下のリンクは発達障害の診療を行える医師の一覧です。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」診断の流れ、当日準備していくものは?出典 : 医療機関では、専門医の問診と様々な検査を総合して自閉症かどうか診断されます。何度か診察を重ね、慎重に自閉症かどうかが判断される場合が多いようです。発達障害を診断できる医療機関はまだ数が多くないこともあり、予約をして初診までに1ヶ月以上かかることもあります。それまでの間に問診票を渡されて記入し、初診の時に持っていく場合もあるので、予約を入れた時に必要なものを問い合わせましょう。基本的には専門機関の指示に従ってください。何も指示がなかった時は、どのようなことが問題だと思うのかを伝えるために、今まで記録してきた日記や、問題や気になる行動があればメモにまとめたり携帯で動画を撮って持っていくなど、普段の生活で気になることを、医師に伝えやすいように準備をしていきましょう。まとめ出典 : 自閉症の症状が出て本人が困っているのに、そのまま放置してしまうのは、本人や家族にとって一番避けたいことです。近所の子育て支援センターや掛かりつけの医師に相談するだけで道は開けます。また、保育所や幼稚園に通っているのであれば、担任の先生に相談するだけで、どこに行って相談するべきなのか教えてくれるかもしれません。家族で悩み孤立してしまうのは、誰にとってもいいことではありません。自閉症だということを受け入れるのには時間がかかるかもしれませんが、家族みんな笑顔で過ごせるように、色々な方に話を聞き、色々な方法を試すのはマイナスにはなりません。悩んでいるより行動することでストレス解消になりますし、同じ問題を抱えている方とお話ができれば、いいアドバイスがもらえるかもしれません。地域と家族が障害の特性を理解し、本人にとって生活をしやすい環境を作っていきましょう。
2016年07月18日自閉症とは?出典 : 自閉症(Autism)は先天的な発達障害の一つで、社会性と対人関係の障害、コミュニケーションや言葉の発達の遅れ、行動や興味の偏りの3つの特徴が発達段階で現れると言われています。文部科学省によると、自閉症は以下のように定義されています。自閉症とは、3歳位までに現れ、①他人との社会的関係の形成の困難さ、②言葉の発達の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害であり、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。■ICD-10の分類における自閉症自閉症は、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の分類では広汎性発達障害に含まれます。広汎性発達障害のうち、知能指数が高い(IQ70以上)高機能自閉症の場合は「アスペルガー症候群」、知能指数が低い(IQ70以下)の場合は「カナー症候群」にあてはまります。自閉症の分類は分かりにくいですが、以下の図がわかりやすいので参考にしてください。Upload By 発達障害のキホン■DSM-5の分類における自閉症2013年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)ではそれまでの診断基準であるアメリカ精神医学会の『DSM-Ⅳ-TR』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第4版テキスト改訂版)における広汎性発達障害の分類に変更点がありました。変更点としては、広汎性発達障害のサブカテゴリーである自閉症やアスペルガー症候群が廃止され、レット障害を除くすべての障害名が自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(Autistic Spectrum Disorder、略称ASD)に含まれるようになりました。これらは本質的には同じ1つの障害単位であると考えられており、症状の強さに従っていくつかの診断名に分類されます(そのため、spectrum=連続体と呼ばれています)。このようなことから、2013年以前に自閉症やアスペルガー症候群に分類された症状は、現在では自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害という診断名に分類されるようになりました。詳細は下の図をご覧ください。しかし『DSM-5』が未だ浸透していない場合もあり、『ICD-10』の診断基準を用いる医師もいることや、すでに自閉症の診断名を受けている人も多くいます。また、発達障害者支援法での障害名が「自閉症」であることから、この障害名を使い続けている人も多いのです。そのため本記事では文部省の定義に準拠し「自閉症」という名称を使用しながらご説明します。Upload By 発達障害のキホン自閉症の特徴的な3つの症状出典 : 自閉症の方は、対人関係を築くことが苦手なことが多いです。具体的な特徴としては、・目線を合わすことができない・周囲に関心がないように見える・相手の気持ちがわからない・その場の空気が読めないなどが挙げられます。自閉症の方は、会話をしていても目を合わすことが苦手です。無理に視線を合わせようとすると落ち着きがなくなったり、パニックになってしまいます。自閉症の方は環境の変化を敏感に感じることが苦手なため、このように対人関係が苦手だと受け止められてしまいます。自閉症の方はコミュニケーションや言葉の発達が遅れる傾向があります。具体的な特徴としては、・言葉を話すのが他の子と比べて遅い・人の話したことをオウム返しする・抽象的な言葉・比喩や皮肉の意味を理解できない・呼んでも反応しない・自分の話したいことだけ一方的に話すなどが挙げられます。自閉症の方は言葉を話し始めるのが遅く、言葉の意味を理解するのが困難です。言葉を話し始めても、意味のある言葉で会話をするのではなく、誰かの言葉をオウム返しし続ける場合も少なくありません。相手に自分の気持ちがうまく伝わらず、暴れてしまうこともありますが、正しい対処法をしていれば成長と共に落ち着いてきます。自閉症の方はある一定の行動をとる傾向があります。具体的な特徴としては、・落ち着きがなく、手を動かしたり、部屋の中を行ったり来たりする・毎日決まった行動をし、予定外の行動は取れない・1つのものに執着する・自分の興味があるものに対して、とても執着する・予定外のできごと・初めての人/場所/活動などに抵抗を示すなどが挙げられます。自閉症の人は、自分の興味のあることに対してとことん熱中する傾向があります。なので、自分の興味のある物事をとことん調べ、誰も教えていないのに専門家顔負けの知識を持っている方も珍しくありません。年齢別に見た自閉症の症状の現れ方出典 : 自閉症の症状は成長とともに変化していきます。自閉症の症状は人によって個人差が大きいのですが、大まかな年代別の症状を紹介します。自閉症スペクトラム・広汎性発達障害・アスペルガー症候群・自閉症については、以下のような共通の症状があります。これらの症状は、すべてがあてはまるわけではなく、症状の現れ方は人によって異なります。自閉症は発達障害のひとつですが、発達障害は、言語・認知・学習といった発達領域が未発達の乳児では、その特徴となる症状が分かりにくい場合があります。ですから、生後すぐに自閉症の診断がでることはありません。しかし、幼児期全体を通してみると、以下のような特徴的な行動をとっていたことが多いと言われています。以下にそれらの症状を紹介します。■周囲にあまり興味を持たない傾向がある視線を合わせようとしない子が多いです。また他の子どもに興味をもたなかったり、名前を呼んでも振り返らないことが多いです。定型発達の子が興味をあるものを指で指して示すのに対し、自閉症の子は指さしをして興味を伝えることをしない傾向があります。■コミュニケーションを取るのが苦手知的障害を伴う自閉症の子は、言葉の遅れや、オウム返しなどの特徴がみられます。会話においては、一方的に言いたいことだけを言ってしまったり、質問に対してうまく答えられないなどの特徴があります。定型発達の子が友達とのごっこ遊びを好むのに対し、自閉症の子は集団での遊びにあまり興味を示さないことが多いです。■強いこだわりを持つ興味を持つことに対して、同じ質問を何度もすることが多いです。また、日常生活においてあらゆるこだわりを持っていることが多いので、ものごとの手順がかわると混乱してしまうことが多いです。■集団になじむのが難しい年齢相応の友人関係がないことが多いです。周囲にあまり配慮せずに、自分が好きなことを好きなようにしてしまう子が多い傾向があります。人と関わるときは何かしてほしいことがあるときなだけのことが多く、基本1人遊びを好みます。人の気持ちや意図を汲み取ることを苦手とする子も多いです。■臨機応変に対応するのが苦手きちんと決められたルールを好む子が多いです。言われたことを場面に応じて対応させることが苦手な傾向にあります。■どのようになぜといった説明が苦手言葉をうまく扱えず、単語を覚えても意味を理解することが難しい場合があります。また、自分の気持ちや他人の気持ちを言葉にしたり、想像するのも苦手です。そのため説明がうまくできないこともあります。■不自然な喋り方をする抑揚がない、不自然な話し方が目立つ場合があります。■人の気持ちや感情を読み取るのが苦手上記でも述べましたが、コミュニケーション能力が乏しく、人が何を考えているのかなどを考えるのも苦手な傾向にあります。■雑談が苦手目的の無い会話をするのを難しく感じる人が多いです。■興味のあるものにはとことん没頭する広汎性発達障害の人は物事に強いこだわりをもっています。そのため、興味のあることにとことん没頭することが多いですし、その分野で大きな成果をあげられることもあります。自閉症の診断基準出典 : 自閉症について、気になる症状がある場合は医師に相談し、診断を受けることもできます。医療機関での診断は、『DSM-5』や『ICD-10』による診断基準によって下されます。医療機関での診断は、子どもの場合は、専門外来のある小児科、脳神経小児科、児童精神科などで行われることが多いです。また、18歳以上の場合は一般的に精神科や心療内科で診断がなされます。しかし、自閉症を診療できる専門の医療機関はまだまだ少ないのが現状です。各地域の「発達障害者支援センター」に相談をして、専門の医療機関を紹介してもらう方法をおすすめします。担当者との相性も大切なので、納得のいく医療機関を選ぶようにしましょう。医療機関では、診断基準に基づいたテスト、生育歴の聞き取り、その人のライフスタイルや困難についての質疑応答など、しっかりと問診をしたうえで総合的に判断されます。『DSM-5』では、広汎性発達障害の下にあったレット障害を除くすべての障害名が、自閉症スペクトラムという名称に統合されました。そのため、自閉症は現在では自閉症スペクトラムという診断名で診断されることが多くなっています。以下に『DSM-5』にある自閉症スペクトラムの診断基準をご紹介します。A. 複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的な欠陥があり、現時点または病歴によって、以下により明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)。(1)相互の対人的・情緒的関係の欠落で、例えば、対人的に異常な近づき方や通常の会話のやりとりのできないことといったものから、興味、情動、または感情を共有することの少なさ、社会的相互反応を開始したり応じたりすることができないことに及ぶ。(2)対人的相互反応で非言語コミュニケーション行動を用いることの欠陥、例えば、まとまりの悪い言語的・非言語的コミュニケーションから、視線を合わせることと身振りの異常、または身振りの理解やその使用の欠陥、顔の表情や非言語的コミュニケーションの完全な欠陥に及ぶ。(3)人間関係を発展させ、維持し、それを理解することの欠陥で、例えば、様々な社会的状況に合った行動に調整することの困難さから、想像上の遊びを他人と一緒にしたり友人を作ることの困難さ、または仲間に対する興味の欠如に及ぶ。B.行動、興味、または活動の限定された反復的な様式で、現在または病歴によって、以下の少なくとも2つにより明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)(1)常同的または反復的な身体の運動、物の使用、または会話(例:おもちゃを一列に並べたり物を叩いたりするなどの単調な常同運動、反響言語、独特な言い回し)。(2)同一性への固執、習慣へのかたくななこだわり、または言語的・非言語的な儀式的行動様式(例:小さな変化に対する極度の苦痛、移行することの困難さ、柔軟性に欠ける思考様式、儀式のようなあいさつの習慣、毎日同じ道順をたどったり、同じ食物を食べたりすることへの要求)(3)強度または対象において異常なほど、きわめて限定され執着する興味(例:一般的ではない対象への強い愛着または没頭、過度に限定・固執した興味)(4)感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ、または環境の感覚的側面に対する並外れた興味(例:痛みや体温に無関心のように見える、特定の音、感覚に逆の反応をする、対象を過度に嗅いだり触れたりする、光または動きを見ることに熱中する)C. 症状は発達早期に存在していなければならない(しかし社会的要求が能力の限界を超えるまで症状は明らかにならないかもしれないし、その後の生活で学んだ対応の仕方によって隠されている場合もある)。D. その症状は、社会的、職業的、または他の重要な領域における現在の機能に臨床的に意味のある障害を引き起こしている。E. これらの障害は、知的能力障害(知的発達症)または全般的発達遅延ではうまく説明できない。知的能力障害と自閉スペクトラム症はしばしば同時に起こり、自閉スペクトラム症と知的能力障害の併存の診断を下すためには、社会的コミュニケーションが全般的な発達の水準から期待されるものより下回っていなければならない。(『日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』2014年 医学書院/刊P.49より引用)自閉症の疑いを感じたらどうすればいい?出典 : もし、上記の診断基準において当てはまる項目が多い場合や気になることがある場合は、専門機関での相談をおすすめします。誰かに相談することによって気持ちも楽になります。家族で悩んでいても、困難に対する改善策はなかなか見つかりません。できるだけ早期に小さい頃から自閉症に対する教育方法や療育などの対処法を始めると、その後の発育に大きな違いがみられます。はじめの一歩を踏み出すのには勇気がいるかと思いますが、一歩を踏み出すことによって色々な悩みが軽減されます。自閉症ではないと診断された場合でも、困難を乗り越えるための様々なアドバイスをしてもらえる場合が多いので、一度相談してみることをおすすめします。障害なのかな、と疑問を持った場合、いきなり自分で専門医を探すのは難しいので、まずはお住まいの地域の身近な専門機関に相談するようにしましょう。子どもか大人かによって行くべき専門機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所・発達障害者支援センターなど【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所など知能検査や発達検査は児童相談所などで無料で受けられる場合もありますし、障害について相談することも可能です。その他、発達障害者支援センターで障害についての相談ができます。自宅の近くに相談機関が場合には、電話での相談にものってくれることもあります。以下は小児神経学会が発表している、発達障害診療医師の名簿です。この他にも、児童精神科医師や診断のできる小児科医師もいます。まず身近な相談機関に行って、診断の疑いがあればそこから専門医を紹介してもらいましょう。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」自閉症の症状・特徴は人それぞれ出典 : 自閉症には様々な症状がありますが、その症状には個人差があります。早期にそれらの特性に気づき、一人一人に合った環境をつくること、早期療育や適切な教育を行っていくこと、苦手なことの対応方法を工夫していくことで、逆に特性を強みとして活かすこともできます。自閉症のある人の中でも、特性を活かして活躍している人がいます。特性を活かせるような環境づくりをすることで、本人の生活上の困難さを解消し、その人らしく生きることが可能になるでしょう。
2016年07月14日カサンドラ症候群とは?出典 : カサンドラ症候群とは、アスペルガー症候群がある人とのコミュニケーションがうまくいかないことによって、家族や友人など、アスペルガー症候群の人の身近にいる人に心身の不調が生じる二次障害のことです。特に妻や夫といったパートナーに起こる場合が多いと言われています。対人での関係性による障害であることから、状態として捉えられることもあります。2003年に心理学者がカサンドラ症候群と名付けましたが、まだ障害名としては確立しておらず、現在のところアメリカ精神医学会による診断基準である『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)などにも記されていません。そのため、カサンドラ症候群、カサンドラ情動剥奪障害、カサンドラ愛情剥奪障害などと呼ばれることもあります。今回はカサンドラ症候群という名称を用いて、身近にアスペルガー症候群の人がいる人が陥りやすい不調や対人関係の問題と、その対処法などについてご紹介します。カサンドラ症候群の症状出典 : カサンドラ症候群の症状としては、身体的なものと精神的なものがあります。症状の程度によっては、日常生活に困って医療機関を受診しなければならないほどまで、高いストレス状態に陥ってしまう場合があります。代表的な症状は以下のようなものがあります。・偏頭痛・体重の増加または減少・自己評価の低下・パニック障害・抑うつ・無気力・自律神経失調症など下記は、カサンドラ症候群に陥った方の体験談です。アスペルガー症候群の夫と生活を共にするうち、私のほうがカサンドラ症候群を患ってしまいました。娘が産後7カ月の時、私が鬱っぽくなり、産後鬱かと受診したところ、カサンドラ症候群だと診断されました。このように、うつ病などの疑いで受診し、カサンドラ症候群だと診断される場合もあります。また、『旦那(アキラ)さんはアスペルガー―奥(ツナ)さんはカサンドラ』(コスミック出版) の著者である野波ツナさんは実際に以下のようなことを経験したそうです。自宅の購入の際には野波さんに全てを任せきり。突然、仕事を辞めたときも、将来の話し合いはできなかった。揚げ句の果てには、300万円の借金が発覚した。夫の言動を周囲に訴えても「男の人ってそんなもの」などと言われて終わり。「自分が悪いのかもしれない」と思い詰め、抑鬱状態になった。離婚が頭をよぎる中、インターネットを検索していると、夫の言動がアスペルガーの人と一致していることに気づき、医療機関を受診。すぐに、診断がついた。『旦那(アキラ)さんはアスペルガー―奥(ツナ)さんはカサンドラ』 |野波ツナカサンドラ症候群の原因出典 : カサンドラ症候群を引き起こす発端には、身近な人のアスペルガー症候群の特性によるトラブルがあるといえます。では一体、カサンドラ症候群の発端となるアスペルガー症候群の特性とはどのようなものなのでしょうか。アスペルガー症候群には3つの症状があります。「コミュニケーションの問題」、「対人関係の問題」、「限定された物事へのこだわり、興味」の3つです。・コミュニケーションの問題表面上は問題なく会話できるのですが、その会話の裏側や行間を読むことが苦手です。明確な言葉がないと理解がむずかしく、比喩表現などをそのままの意味で鵜呑みにしてしまう傾向があるため、人の言葉を勘違いしやすく、傷つきやすい面があります。具体的な症状としては、曖昧な表現が苦手だったり、不適切な表現を使ってしまうことなどがあります。・対人関係の問題場の空気を読むことに困難さがあり、相手の気持ちを理解したりそれに寄り添った言動が苦手な傾向にあります。そのため、社会的なルールやその場の雰囲気を平気で無視をしたような言動になりがちで、対人関係を上手に築くことが難しいです。具体的な症状としては、相手の気持ちを理解することが苦手なことから、相手を傷つけたり、自己中心的と思われる言動や行動をしてしまうことなどがあります。・限定された物事へのこだわり、興味いったん興味を持つと過剰といえるほど熱中します。法則性や規則性のあるものを好み、異常なほどのこだわりを見せることがあります。その法則や規則が崩れることを極端に嫌う傾向があります。一方、この特性は逆に強みとして活かすこともできます。具体的な症状としては、自分のルールがあったり、興味のあることに対して話し続けてしまうことなどがあります。周囲の人たちは、アスペルガー症候群の特性だとわかっていても、アスペルガー症候群の人と接していくうちに、うまくコミュニケーションが築けないことに自信をなくしてしまったり、周囲に相談しても理解をしてもらえないため、孤独感を感じてしまう場合があります。家族は毎日の生活の中で接する機会は多いですし、パートナーであればなおさら、愛する夫・妻と心を通わせたいと思う気持ちは強いでしょう。それが難しいときストレスを感じるのは、ある意味当然のことかもしれません。その結果、体調不良や抑うつ症状といった症状に陥ってしまうのです。カサンドラ症候群になりやすい人は?出典 : アスペルガー症候群は、比較的男性に起こりやすい障害です。そのためカサンドラ症候群が起こるのは、アスペルガー症候群の男性を夫やパートナーに持つ女性に多いといわれています。しかし、夫婦やパートナー間のみにカサンドラ症候群が起こるのではなく、家族や友人、会社の同僚など、アスペルガー症候群がある人に関わる身近な人にも、カサンドラ症候群が起こる可能性があります。下記は、会社の上司や子どもにアスペルガー症候群がある場合の経験談です。アスペルガーの上司がいます。グループでする仕事なのでグループ内の同僚はアスペルガーと気づいていますが、他部署の人は気づきません。最近ストレスがひどいので距離を置いてます。そしたら他部署から仲が悪くて同僚2人でいじめをしていると言われました。(中略)毎日同じ動きをし、型にはまらないのに型にはめようとして失敗し、言い訳をしてきます。ストレスが限界なので、距離を置いているのにいじめをしていると言われて苦しいです。アスペルガーグレーの子どもによるカサンドラ症候群です。ずっと子どもからモラハラされているような違和感を知人に相談したら、カサンドラ症候群ではないかといわれました。(中略)一緒にいると、ガッカリさせられることが多く、うつっぽいので投薬中です。カサンドラ症候群の対処法はあるの?出典 : カサンドラ症候群の症状であるうつ病の症状を緩和するために薬物療法が行われることがあります。しかし、カサンドラ症候群はコミュニケーションという対人関係から起こるものなので、薬物によって症状の緩和ができても、根本的な解決につながっているとは限りません。ここではカサンドラ症候群の対処法についてご紹介します。お互いが相手の立場を理解しあうことが大切です。たとえば、アスペルガー症候群の人が察することを求めすぎず、「夫(妻)は相手のことを察することが苦手」だということを理解したり、発達障害専門のプログラムや病院での受診などを通して、本人がアスペルガー症候群であることを理解して受け入れることなどがあります。発達障害専門のプログラムを行っている病院があるので参考にしてみてください。発達障害専門プログラム|昭和大学付属烏山病院カサンドラ症候群は、周囲に悩みを相談しても理解してもらえず、孤独感を感じてしまうものですが、同じような悩みや辛さを抱えた者同士が、お互いに支え合い、励まし合うことで、問題の解決や克服を図る活動があります。それを自助グループといいます。自助グループではセミナーやワークショップなどを行っており、個別相談を行っている自助グループもあります。フルリールかながわ(神奈川)アスペルガーアラウンド(東京)アスペルガー夫の妻達(東京)あじさい会(大阪)サラナ(名古屋)わかば会(明石)また、同じ体験をしている人のブログなどから、アスペルガー症候群との向き合い方を理解しようとしている人もいます。ブログだけではなく自助グループのように、同じ悩みや辛さを抱え散る人たちがお互いに励ましあったり、情報を交換しているカキコミサイトもあります。ハートネット|NHK 福祉ポータル奥村隆「息子と僕のアスペルガー物語」(中略)わたし自身、カサンドラ状態ですが上記ブログを読んで、「アスペの人が、そういう不可解で衝動的な言動をする理由や心の特性」と「アスペの人を落ち着かせる言葉のかかけた」がわかってきて、希望がみえてきている気がしてきました。息子と僕のアスペルガー症候群|奥村隆アスペルガー症候群について理解していてもつらい場合も多いでしょう。体調が悪い、ストレスが強いときは、一人で抱え込まないことが大切です。心療内科や精神科といった医療機関、お近くの発達支援センターでも相談ができるので、まずは相談をしてみることをおすすめします。全国の発達支援センター|発達障害情報・支援センター他にも、ある程度の距離を置くことで、症状が改善する人もいます。夫婦や家族の場合、別居という形をとるなどしてストレスのもととなる対人関係から離れることで、気を休めることだけではなく、冷静になったり状況を見つめ直したりすることができる場合もあります。「私も夫も悪くない。夫の良いところも思い出せた。結婚は間違いではなかったと過去も肯定できました」。別居は続けているが、離婚はしておらず、「いい距離感」という。まとめ出典 : カサンドラ症候群は、アスペルガー症候群がある人とのコミュニケーションにおいて、家族や友人などの身近な人に起こる二次障害だといわれています。また、アスペルガー症候群がある人との向き合い方で悩んでいたり、カサンドラ症候群の症状があらわれている人は増えてきています。正式な診断名がないこともあり、自分とアスペルガー症候群がある人、二人の間の個人的な問題であると捉えられて理解が得られず、ひとりで悩みやつらさを抱え込む方も多いようです。もし、抱えている悩みやつらさがあったら、専門機関や自助グループを活用することをおすすめします。カサンドラ症候群は、どちらか一方が悪い、どちらか一方が正しいというものではないため、自分や相手を責めたり背負いすぎず、お互いに理解しあうための一歩を踏み出してみましょう。
2016年07月13日【ママからのご相談】近頃暑い日が多くなってきました。家の中にいても汗をかいてしまいます。最近気がついたのですが、汗をかくとどうしようもなく“首が痒い ”のです。鏡で見ても目立った赤みや発疹はなく、ただチクチクと痒いのです。掻いてしまうと皮膚が傷ついて余計に痛い思いをすることになりますが、掻きたくて仕方がないので困っています。子どもも汗をかいたときに首を気にしていることがあり、実際に掻いていることもあります。あせもとは違うようなのですが、対策がわかりません。教えてください。●A. そのかゆみは『汗あれ』かもしれません。ご相談ありがとうございます。ママライターのあしださきです。本格的な夏を目前に、早くも肌トラブルが起きてしまって大変でしょう。私も汗をかいたときの“首のかゆみ”には長年苦しんできました。見た目にはなんともなく、汗をかくと首がただただ痒い!皮膚科を受診しようにも、汗をかいていないときは痒みがないのでどう症状を伝えたらよいか分からずに、放置していました。しかし、よく調べてみると同じ症状を持っている方も多くいるということ、またその対策法もあるということが分かりました。そこで今回は、この症状が『汗あれ 』というものだということ、またその対処法をご紹介いたします。●『あせも』と『汗あれ』どう違う?汗をかいたときの肌トラブルといえば、まず思い浮かべるのは『あせも 』ではないでしょうか。小さいお子さんをお持ちのママたちは、夏場はお子さんのあせも対策に頭を悩ませることも多いのです。ベビータウンが2014年12月に実施した、「赤ちゃんのスキンケアの悩み」のアンケート調査があります。その中で、「実際に経験した赤ちゃんの肌トラブルは?」という質問に対して「あせも」は「おむつかぶれ」「乾燥による肌荒れ」「乳児脂漏性湿疹」に次いで4番目に多い回答でした。では、あせもとはどういう症状のことを指しているのでしょうか。ユースキン製薬の『ユースキン家族のあせも汗あれ対策委員会』によると、『あせも』とは、運動などで大量の汗をかいた後に、汗を排出する管が詰まってできたブツブツ のことだそうです。赤ちゃんや子どもだけでなく、近ごろの高温多湿の気候に加え節電により汗をかく機会が増えたため、“大人あせも”に悩む方も増えているとのこと。症状としては、・汗の出口が詰まって正常に外に出ない汗が刺激になり、肌の内部で炎症を起こす・白く透明感のある水泡やかゆみを伴う赤いブツブツが表れる・掻き壊してしまうと悪化して化膿し、ジュクジュクした状態になることもというものが挙げられるそうです。一方の『汗あれ 』とは、汗をかいた後、汗に含まれるアンモニアなどの成分が刺激になって肌が荒れ、チクチク・ピリピリと感じる状態 のこと。これが汗によるかぶれ、『汗あれ』の状態です。『汗あれ』が起こりやすいのは、顔、額、ひじ、ひざの内側、衣類やおむつで覆われてこすれる部分。子どもから大人まで、誰もがなりうる肌トラブルだそうです。また、汗あれになりやすい部分は、皮膚が薄くて弱いところや乾燥しているところであるといいます。前出のユースキン製薬の「みんなの「あせも・汗あれ」調査報告」においても、「あせも・汗あれ」が気になる場所についての質問に対して、女性は67%が「首」と回答。以下、38%が「背中」、33%が「肘の内側」と続きました。ご相談者様の「汗をかいたときに首にかゆみを感じる」というのは、この『汗あれ』の症状に当てはまっているように思います。●汗あれ対策に有効なのは?“あせも・汗あれ”に有効な、正しい予防法も紹介されています。**********(1)通気性の良い洋服を選ぶ(2)長い髪は束ねる(3)汗はこまめに優しく拭く(4)入浴後は適度に保湿する**********いかがでしたか?最後の“保湿”が有効な予防法だというのは、夏場のスキンケアには珍しく感じるかもしれません。しかし、皮膚が薄く乾燥した部分は、肌のバリア機能が低くなりがちなのです。それを補う有効な対策は、“保湿”ということなのだと思います。「夏こそ保湿」というスキンケア、親子でぜひお試しくださいね。【参考リンク】・ユースキン 家族のあせも・汗あれ 対策委員会 | ユースキン製薬株式会社()・赤ちゃんのスキンケアの悩み アンケート調査 | ベビータウン()●ライター/あしださき(元モデル)
2016年07月11日女性の美に彩りを与える“ネイル”。近年ではネイルアートが進化しており、多くの女性が取り入れている定番ファッションとなっていますね。しかし、そんな“ネイル好き”な女性たちを悩ませる『グリーンネイル』 という症状があることをご存じですか?ネイルをしている女性は誰もが発症しうる病気ですので、一緒にどういうものなのか見ていきましょう。●グリーンネイル=爪カビ“グリーンネイル”と聞くと、キレイに緑に塗られたネイルを想像するかと思いますが、実際には“細菌の感染で緑色になった爪” のことです。別名『緑色爪』『爪カビ』とも呼ばれます。グリーンネイルは、“カンジダ菌”というカビ菌や“緑膿菌”などが爪の組織に感染して爪に変色が起こる症状のことを言います。感染の経過によって爪の変色の仕方が異なり、“黄色→薄い緑色→濃い緑色→暗緑色”へと変化していきます。●グリーンネイルになりやすい人の特徴3つ●(1)サンディングなしでジェルネイルする人「面倒だから」という理由でファイルやバッファーなどでサンディングをせずにジェルを塗る人は要注意 です。サンディングは爪とジェルの密着性を高めるために行うものですが、これを怠ってしまうと衝撃を与えた際などに“浮き”を起こしてしまいます。爪とジェルとの間に隙間があると、そこから菌が繁殖してグリーンネイルを発症してしまうのです。●(2)長期間つけ爪をしている人つけ爪、とりわけ“スカルプチュア”を長期間している人はグリーンネイルを発症しやすいと言われています。つけ爪を長い間付けっぱなしにしていると、自爪から浮き上がってしまう“リフト” という現象が起こります。それに気づかず放置していると、自爪とつけ爪の隙間に菌が入り込み繁殖しやすくなります。●(3)他の爪の疾患にかかっている人グリーンネイルは、『爪白癬(爪水虫)』や『爪カンジダ症』などの爪の疾患にかかっている人ほど発症しやすいと言われています。●グリーンネイルに気づいたときの対処法自分の爪を見て、「グリーンネイルかも」と思った人は、すぐに付け爪を外したりジェルネイルをオフしたりしましょう。症状が軽い場合は、ファイルなどでサンディングするだけで爪カビ部分を削り取ることができます。その後除菌消毒することも忘れずに。爪が暗緑色に変色している重度のグリーンネイルの場合は、他の病気と合併している可能性があるため、つけ爪やジェルネイルを取り除いたあとすぐに病院へ行くようにしましょう。●グリーンネイルの治療法グリーンネイルは皮膚科で治療してもらえます。『爪白癬(爪水虫)』や『爪カンシダ症状』などが見られる場合はその治療を優先し、患部を乾燥させます。薬は、“抗真菌薬”を使用します。半年〜1年の間、毎日患部に塗り続けます。変色した部分がなくなって健康な爪に生え変わってきたら治療終了 となります。----------女性を魅力的に見せることができる“ネイル”。日頃からケアを徹底していればグリーンネイルを発症することはありませんので、今日からこまめなチェックを心がけましょう。●文章/パピマミ編集部
2016年06月16日こんにちは、齋藤惠です。これから初めての夏を迎える赤ちゃんにとって気をつけなければいけないのが、“虫さされ”による被害です。ただの虫さされと侮ってはいけません。大人の場合はかゆくなる程度ですむものでも、免疫のない赤ちゃんにとっては大きな肌トラブルに発展してしまう可能性があります。今回は、赤ちゃんの“虫刺され”についてお話ししていきます。●虫のタイプ別! 赤ちゃんに起こる“虫さされ”の症状●蚊やダニの場合血を吸う虫に刺された場合、大人よりも反応が強く出ることがあります。刺されたところがパンパンに腫れ上がり、かきむしってしまうことで“とびひ” になるケースもあります。【対処法】刺されたところを水で洗い、冷たく絞ったタオルなどで冷やします 。市販薬を塗ってしばらくすれば治まることが多いのですが、腫れたりしこりになったりしたら皮膚科で診てもらいましょう。●ハチやムカデの場合刺したりかみついたりする虫の場合、腫れや痛みが強く出てしまいます。ハチの場合はアナフィラキシーショックによって重篤な症状に陥ることもあります。【対処法】ムカデに噛みつかれた場合は、蚊やダニ同様の処置をしましょう。ハチに刺された場合はすぐに皮膚科へ。ショック症状がみられるときは救急車を呼びましょう 。●毛虫の場合触れるとかぶれるタイプの虫の場合は、触れた部分一面に赤い発疹が出て強いかゆみが発生します。【対処法】衣服を脱がせ、ついた毛は絶対にこすらず、シャワーなどで洗い流します 。その後、かぶれたところを皮膚科で診てもらいましょう。●虫さされを未然に防ぐ方法4つ(1)肌の露出を控える(2)窓を開けっ放しにしない(3)赤ちゃん用の虫よけ剤を買う(4)ハーブを虫よけにするまずは薬などに頼る前に、服装や窓の開閉で防ぐようにしましょう。特に蚊は、朝や夕方になると活発に活動しはじめるので、その時間帯は赤ちゃんの肌の露出を控え窓を極力開けないようにすると良いでしょう。また、外出時には赤ちゃん専用の虫よけ剤 を使います。塗るタイプからベビーカーに吊るすタイプのものまでさまざまな種類がありますので、用途に合ったものを選んでください。さらに、薬剤に抵抗がある方は天然のハーブを使うことをオススメします。虫よけに効くハーブは、ミントやローズゼラニウム、カモミールやローズマリーなどです。●赤ちゃんは虫に狙われやすい!赤ちゃんは新陳代謝が活発で汗かきなので、虫が寄りつきやすい傾向にあります。暖かい季節になってきたら、大人以上に虫さされの予防対策をすることが必要です。外出したときだけではなく、家の中にいるときでも予防を怠らないようにしましょう 。そして万が一、刺されてしまったら即座に緊急の処置を行い、その後できるだけ早急に皮膚科へ行くようにしましょう。【参考文献】・『はじめてママ&パパの0〜6才病気とホームケア』渋谷紀子・監修●ライター/齋藤惠(金融コンシェルジュ)
2016年06月13日めまぐるしいけど愛おしい、空回り母ちゃんの日々
こどもと見つけた小さな発見日誌
育児に遅れと混乱が生じてる !!