そろそろ子どもに学習習慣をつけさせたいと考えているなら、朝の時間を勉強タイムにしてはいかがでしょうか。「早起きは三文の徳」と言いますが、脳のはたらきも朝が最も活性化しているようです。今回は、朝学習を取り入れるにあたって、お子さんの年代に合わせたおすすめ勉強法をご紹介します。また、「朝が弱く、すっきり起きられない」「親は朝学習に付き合う必要があるか」など、朝学習を続けるうえで気になるお悩みも解決します。すでに小学生のお子さんでなかなか勉強の習慣が身につかず、この先が不安な親御さんも必見ですよ。朝は脳の「ゴールデンタイム」!早朝から集まって朝食を取りながらミーティングを行なうパワーブレックファストや、観光や寺院巡り、サーフィンなどを楽しんでから会社へ向かうエクストリーム出社など、ここ数年は朝時間を活用する動きが盛んです。このような朝時間の活用は、脳科学においても有効だとわかっています。脳科学者の茂木健一郎氏は、脳のゴールデンタイムについて以下のように話しています。私たちは日中の活動を通して、目や耳からさまざまな情報を得ています。その情報は大脳辺縁系の一部である海馬に集められ、短期記憶として一時的に保管されます。その後に、大脳皮質の側頭連合野に運ばれますが、この段階では記憶は蓄積されているだけです。それが睡眠をとることで、記憶が整理され長期記憶へと変わります。すると朝の脳は前日の記憶がリセットされるため、新しい記憶を収納したり、創造性を発揮することに適した状態になります。この脳の仕組みが、朝の時間がゴールデンタイムだと言われる理由です(引用元:THE21 ONLINE|脳科学者が勧める「朝時間」の使い方)※太字は編集部で施した朝、目覚めたばかりの脳が、1日のうちで最もぐんぐん情報を吸収して新しいことを考えだせるとしたら、この時間帯を上手に使わない手はありませんね。小中学校の約7割が、読書や勉強などの朝学習を実施脳のゴールデンタイムを使った活動は、公立の小中学校でも広く行われているようです。1時間目が始まる前の10~15分くらいを使い、「朝学習」「朝学」のような名前で、子どもたちはドリル学習や読書などを行なって朝の時間を有効に活用しています。文部科学省の教育課程部会が調査した結果によると、平成26年度の実績では、公立の小学校で74.8%、中学校では64.8%が短時間の朝学習を取り入れています。小学校では、そのうちの約半数が朝学習を週に5日行なっていて、「読書」「漢字」「計算」のほか、最近はゲームやチャンツなど音声中心の外国語活動を取り入れているところもあるようです。また、朝学習で得られる効果や成果については、次のように報告されています。目的・効果・成果(小学校)○ 目的として考えるものについては、9割程度の学校が「繰り返し学習による基礎的な知識・技能の定着を挙げており、6割程度の学校が、「朝学習を通じた児童の一日の生活リズムの定着」を挙げている。○ 「短時間学習により、指導の成果や児童の変容がみられたか」という質問に対し、「とてもみられた」または、「みられた」と回答した学校は9割を超える。○ 具体的な成果や変容については、9割程度の学校が「基礎的な知識・技能が身についた」を挙げており、6割程度の学校が「児童の一日の生活リズムが整うようになった」と回答している。(引用元:文部科学省|公立小学校・中学校における短時間学習の実施状況(平成26年度実績))朝の10~15分というわずかな時間でも、繰り返しの学習で知識やスキルの定着のほか子どもたちの生活リズムが整っていることが実感されているようです。年齢別にみた「最適な朝学習」の内容と時間脳は朝から午前中にかけて、前日の情報が整理されてクリアになっている状態なので、考える力が求められることや集中力が必要なことに適しています。ただし、目が覚めてすぐの時間帯は、脳もまだしっかり起きていません。あれこれ複雑に考えなければならない勉強ではなく、音読や計算問題などで脳のウォーミングアップをするのがいいようです。お子さんの年齢に合わせて次のような学習を取り入れてみてはいかがでしょうか。<小学校入学前>入学前に覚えられるようにと、ひらがなや数字の練習をさせたくなりますが、まずは「朝起きたら声を出す、手を動かす」ことから始めましょう。お子さんが好きな絵本があれば親子で音読をするのもいいですし、塗り絵や迷路、仲間見つけなどで楽しく学べる幼児向けのステップアップドリルもおすすめです。毎日少しずつドリルを進めていくと、達成感が得られ、明日も頑張ろうというやる気も起こります。ときには、カルタやパズルで学びにつながる遊びを取り入れてもいいですね。<小学低学年(1~2年生)>音読は、読解力を身につけるためのトレーニングとして効果的ですし、朝一番に声を出すことで脳と体が目覚めます。国語の教科書から、学習している単元の文章を音読してもいいですし、小学校低学年用の読み物を音読してもいいですね。ほかには、学校で習った内容の復習時間にするといいでしょう。宿題で漢字ドリルや計算ドリルの学習が出されていたら、1週間前にやったところや、ひとつ前の単元に戻ってやってみます。すでに済んだところは復習したがらないというお子さんもいるかもしれません。そんなときは、ドリルの問題を逆から進めたりパパやママがランダムに「次は○番!」と指定したりすると、おもしろがってくれますよ。朝学習にかける時間は個人差が出る部分ですが、習慣化していくことを考えると5~30分を目標にすると良さそうです。日によっては、5分、10分を確保するのが精いっぱいということもありますが、朝学習に取り組めたことを認めて褒め、子ども自身が達成感を得られるようにしましょう。また、毎日朝学習を続けていると、その子の中で「型」ができてきます。そして、その「型」が崩れると気持ちが悪いのです。歯を磨いたりお風呂に入ったりするのと同じように、「朝の勉強」をしないと、なんだか気持ちが悪くなるのだそう。そうなったらしめたものですね!朝学習の「困った!」こんなときは、こんなふうにとはいえ、朝学習をしようと親子で決めても、毎日続けるのは大変なことです。大人でさえ、早く起きられない日や気乗りしないこともあるので、当然ながら子どもにもそんな日はあります。朝学習を始めて直面する「困った!」には、どのように対処すればよいでしょうか。●朝、起きられない!朝起きられないことには朝学習も進みません。早めに就寝して、十分な睡眠時間を確保しましょう。朝学習へと一足飛びに進まず、まずは生活リズムを早寝早起きパターンに整えることから始めます。●朝せっかく起きたのに、ボーっとしている目が覚めるのは予定通りの時間でも、起きてからボーっとしていては朝学習の時間を取る前に登校時間が迫ってきます。そのようなときは、朝の日光を浴びる、家の中をぐるぐる歩く、歯を磨いて顔を洗う、音読で声を出すなど体を動かすと目が覚めて頭もスッキリしてきます。●朝は忙しく、子どものそばにいてやれない朝学習が習慣化するまでは、なるべく近くで見届けると、子どものやる気も出やすく、やり遂げることで自信や達成感を得られます。朝は忙しく十分に時間が取れないという家庭であれば、リビングやダイニングテーブルで朝学習をさせながら、目の届くところで朝食や出勤の準備をしながら見届けてもいいでしょう。小学校入学前のお子さんは、朝の30分を学習時間に使えるように起きるところからスタートになる子が多いかもしれません。なかなかスムーズに進まなくても焦らず、子どもの頑張りを応援する気持ちでいることが大切です。***朝学習の良いところは、曜日に関係なく一定の時間を確保しやすいことです。習い事や塾があって、夕方の時間帯はコンスタントに学習時間を取りにくいというお子さんにもオススメの勉強法といえるでしょう。(参考)THE21 ONLINE|脳科学者が勧める「朝時間」の使い方東京法経学院|朝は「脳のゴールデンタイム」!朝に勉強をするのが効率的な理由とは文部科学省|公立小学校・中学校における短時間学習の実施状況(平成26年度実績)ベネッセ教育総合研究所|第4回学習指導基本調査 第2章 教育課程外の時間Study Hacker|勉強する時間帯のゴールデンルール。効率よく勉強できる時間帯をまとめて紹介!Study Hacker|朝の勉強で脳は冴えわたる。メリットだらけの朝勉を続ける3つのコツAll About|「朝勉強」のススメ~朝は勉強のゴールデンタイム~Study Hackerこどもまなび☆ラボ|1日5分から始めよう!毎日続けることで自己肯定感が高くなる「学習習慣」のコツ
2019年03月18日入学や進学で環境が変わるこの時期。「新しい環境になじめるかな?」「勉強についていけるかな?」と心配事を抱えて不安でいっぱいになっていませんか?親の不安な気持ちは、子どもにも伝わるもの。親御さんご自身が余裕をもって新しい環境を迎えるためには、どうしたら良いのでしょうか。まずは自宅でできることとして、少しずつ知育アイテムを取り入れることから始めてみましょう。次第に子どもは好奇心が刺激されて、不安な気持ちが小さくなっていくはずです。新しい環境や勉強に対する不安より、「はやくたくさんのことを知りたい!」という期待のほうが大きくなれば、新生活への心配事も吹き飛ぶのではないでしょうか。今回は、子どもの勉強意欲や知的好奇心を自然と高めてくれるアイテムを家庭の中に取り入れるコツをお教えします。子どもの能力を伸ばすとっておきのアイテムとは?賢い子の家にあるものと聞いて何を思い浮かべますか?よく言われているのは、『図鑑』『地図』『地球儀』ですね。なぜ、それらが家にあると、子どもの能力を伸ばすことができるのでしょう。図鑑、地図、地球儀は、どれも子どもの頭に浮かんだ「?」を解決するのを手助けするアイテムです。しかし現代では、「知りたいことを知るため」「情報収集のため」だけであれば、インターネットで充分ですよね。では、今あえてこれらのアイテムを家に置いておく意味とは一体何なのでしょう。なぜ図鑑や辞書や地図がいいかといえば、編集者が情報をきちんと整理して、必要なものを目立たせてくれているからです。(中略)想定される読者とその背景を理解して、どう届くかということを編集者が考えてまとめてくれたものが辞書、図鑑、地図。気づきを生みやすい情報を集合させて、わかりやすいかたちで整理してくれている本の力は、インターネットでは置きかえられません。(引用元:WEDGE Infinity|頭がいい子の家のリビングに辞書・地図・図鑑があるのはなぜ?)そう述べるのは、『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』(すばる舎)の著者・小川大介氏です。つまり、あらかじめ図鑑や辞書などの紙で得た知識があるからこそ、インターネットという玉石混交の情報の渦の中に飛び込んでも、情報を取捨選択することができる、というわけです。また、30年以上にわたり難関中学・高校受験指導を行ってきた家庭教師の西村則康先生は、たくさんの家庭にお邪魔するうちに気づいたことがあるそうです。それは、「できる子の家庭は、意外と散らかっている場合が多い」ということ。「お母さんが一生懸命片付けても、子どもの好奇心が勝ってリビングにモノが転がり出てしまっているんです。たとえば、リビングの中心に地球儀が出してあって、それがほこりをかぶっていなければ、「この家の子は地理に興味があって、しょっちゅう眺めているのだろう」と判断できます」と西村先生が言う通り、せっかく買った図鑑も地球儀も、実際に使わなければ何の意味もありません。「ただ置いてあるだけ」ではなく、日常の生活の一部として家庭に馴染ませることが大切なんですね。図鑑・地図・地球儀は小学校の授業で必ず役に立つ!次に、それぞれのアイテムがもたらすメリットについて、より具体的にご紹介します。「本当にいつか役に立つのかな?」と半信半疑の親御さんも、きっと安心できるはずですよ。■図鑑16万人の脳画像を見てきた脳医学者・瀧靖之先生は、著書『「賢い子」に育てる究極のコツ』(文響社)の中で、「成績が伸びていった子は幼い頃から図鑑が大好きで、よく見ていた」と述べています。そして、伸びる子の親は、図鑑を使って子どもの好奇心を上手に刺激していることがわかっていて、それは脳科学の観点からも理にかなっていると説きます。本を読むときは、脳の中でも、「言語野」と呼ばれる「側頭葉」や「前頭葉」などの部分が活性化します。それに加え、図鑑は必ず画像(写真やイラスト)をともないますから、図形認識や空間認知を担う領域など、言語野以外の複数の脳の領域も同時に活性化できます。脳の刺激という面だけで考えても、「図鑑は子どもの脳にいい」ということがわかるでしょう。(瀧 靖之(2016年),『「賢い子」に育てる究極のコツ』,文響社.)また、図鑑の題材の多くは自然科学なので、理系の能力を伸ばすアイテムとしても最適です。たとえば、就学前に魚の図鑑を眺めていて「エラ呼吸」という言葉が目に入ったとします。その時点ではよく意味がわからなくても、小学校6年生の理科で呼吸について習ったとき、「あ!図鑑に出てきた!」という気づきにつながります。このように、「自分はこれを知っている」という自信は、確実に子どもの学習意欲を高めるでしょう。■地図今、子どもの行動力や空間認識力が低下傾向にあることが問題視されています。大人である私たちも、スマートフォンや車のナビゲーションシステムの発達により、音声案内のおかげで地図を読まずに目的地までたどり着くことが可能になりました。しかし、どんなに時代が変わっても「地図が読めること」は、生きていくうえで必要不可欠な能力であり、もちろん学校教育でもしっかりとカリキュラムが組まれています。小学校1・2年生は、生活科の授業において地図を読むための基礎的な力を養います。学校探検や通学路探検、学区内探検を通じて簡単な絵地図などを書かせることで、身近な場所について認識します。小学校3年生からは、本格的に社会科の授業が始まります。地域における社会的事象や地形といった深い知識を学ぶために、地図の見方や記号などを認識し、具体的に活用しながら学習に活かします。また、地図を作成することで空間認識力を養います。生活科の授業に比べて、学ぶ範囲は身近な地域→市区町村→都道府県→世界へと広がります。■地球儀「百ます計算」に代表される陰山メソッドで有名な教育者・陰山英男先生が「子どもの知的好奇心を刺激し、満たすのに地球儀は最適」と太鼓判を押すほど、地球儀は子どもの学びの可能性を広げてくれるアイテムです。一言で地球儀と言っても、基本的なものから付属のタッチペンで音声情報を聞くことができるものまで、今はさまざまな種類が展開されています。お子さんの興味をそそるものを一緒に選んであげましょう。小学校の授業に地球儀が登場するのは5年生から。それまでに、地球儀を身近な遊び道具として生活の中に取り入れることで、小学校高学年からの学習にもスムーズに入っていけるはずです。親が家庭でできること最後に、これらのアイテムを上手に活用するために親ができることについて考えていきましょう。■はじめての図鑑にはワクワク感を!前出の瀧靖之教授は「3~5歳頃に訪れる『なぜなぜ期』には、ぜひ図鑑を活用して子どもの好奇心を思考力に結びつけましょう」と述べています。初めて図鑑に触れさせるときに重要なのが、「図鑑には知らないことがたくさん詰まっていて、ページをめくれば世界が広がって楽しい!」と実感することであり、それを親と共有することです。■図鑑から実体験へとつなげる子どもが図鑑を見て目を輝かせていたら、その内容に関する体験をさせてあげるといいでしょう。恐竜なら博物館、魚なら水族館……図鑑と現実が結びつくと、知識はより強固になります。■地図を貼るならリビングに子どもの目線に合う位置に地図を貼ることで、リビングでリラックスして過ごしているときにも、無意識に目に入ってきます。すると、地図が生活の一部となり、いずれ学校で勉強する地図学習においても抵抗なく受け入れることができるでしょう。■手づくりの地図が宝物になる就学前のお子さんなら、少しずつ地図に慣れさせましょう。いつもは自転車で通り過ぎる近所の道も、あえて地図を片手に徒歩で探索してみると意外な発見があるかもしれません。手づくりの地図を用意して「きれいなお花が咲いている場所」や「猫ちゃんが集まっている公園」に、花や猫のシールを貼って印をつけるのもいいですね。■子どもが自然に手に取る工夫を隂山英男先生は、テレビの近くに図鑑や地球儀を置くことをすすめています。理由は、ニュースやクイズ番組を見て気になったことをすぐに調べられるからです。子どもの行動パターンや生活動線を考えて、「この場所にこれがあったら、学習意欲の向上につなげられるかも」と想像して、さりげなく置いてあげるのがポイントです。■ニュースの話題に国名が出てきたらチャンス!スポーツを題材にすれば低学年の子どもでも世界の国に興味を持つことができます。「サッカーワールドカップが開催されたロシアってどこ?」「テニスの国際大会が開かれるウィンブルドンってどこにあるの?」ニュースから流れてくる話題に耳を傾けていると、自然と世界の国々に興味がわいてきます。■一歩進んだ地球儀の活用法「どうして夏は暑いの?」「どうして夜になると暗くなるの?」こういった疑問に答えるときも地球儀が役立ちます。たとえば懐中電灯を太陽に見立てて地球儀に当て、「日本に太陽が当たっているとき、裏側のブラジルは真っ黒だよね。だから日本が昼ならブラジルは夜だね」と説明しましょう。さらに深い理解につながります。***重要なのは、知育に役立つアイテムを置いておくことではありません。それらをいかに活用し、お子さんの学びにつなげることができるか、そのことを忘れないようにしましょう。(参考)WEDGE Infinity|頭がいい子の家のリビングに辞書・地図・図鑑があるのはなぜ?日経BPムック(2017),『日経DUAL Special!』,日経BPムック.瀧 靖之(2016年),『「賢い子」に育てる究極のコツ』,文響社.洋泉社MOOK(2017),『子どもの脳を伸ばす最高の勉強法』,洋泉社.Study Hacker こどもまなび☆ラボ|もっと地図を楽しもう!「地図が読める」だけじゃない、子どもが地図に親しむメリットStudy Hacker こどもまなび☆ラボ|地球儀で子どもの興味関心をグローバルに!遊びながら学べる、地球儀の上手な活用法。
2019年03月11日子どもが学校から帰ってきてもなかなか宿題に取りかからない、机に向かってはみるけれど勉強に集中できていない様子だ、といった悩みを抱えていませんか?勉強の時間や場所を決めて実行しても、なかなか集中モードに入れないお子さんも多いようです。そんなときのお子さんは、「脳が覚醒していない」のかもしれません。実は、集中して勉強するには「脳が覚醒している」ことが大切なのです。脳が覚醒しているというのはどのような状態をいうのか、覚醒レベルはどうしたらアップできるのか、さらに子どもがあっという間に集中する簡単なエクササイズを3つご紹介します。脳が覚醒すれば集中できる集中して勉強する方法には、さまざまなアプローチがあります。たとえば、食後は血流が脳よりも消化器官に優先して流れるので勉強するなら食前がいい、他に気を取られないよう机の上には勉強に使わないものは置かない、勉強が終わったらゲームやおやつなどのご褒美を用意するなど――。実際にご自身の学生時代やお子さんの勉強対策に試したことがあるでしょう。しかし現実には、環境や条件を整えても、さっと集中モードに切り替えて勉強するのは難しいですね。集中して勉強するには、「集中している」ときの脳の状態を知るとヒントが見えてきます。脳科学者の篠原菊紀先生は、以下のように話しています。脳科学の観点から説明すると、「集中できている」というのは、脳の線条体(せんじょうたい)という部分が活動している状態。線条体とはいわゆる「やる気スイッチ」です。行動と快感を結びつけている器官で、移動する動物のすべてが持っているものとされます。というのも、行動に快感を感じられなければ、動物は生き抜くことができないからです。(引用元:Study Hackerこどもまなび☆ラボ|子どもの「やる気」と「集中力」を引き出す脳科学的テクニック)線条体は、脳の奥にある大脳基底核という神経細胞体の一部で、運動の始まりや持続、制御を司っている部位です。体への刺激を伝えるはたらきがあり、ここから出される信号が「淡蒼球(たんそうきゅう)」という部分に届くことで、脳の「やる気スイッチ」がオンになります。つまり、脳を集中している状態にするには、体に運動などで刺激を与えて線条体を活動させ、淡蒼球に刺激を与えることが必要で、運動によって脳をうまく騙せれば集中できるといえるでしょう。脳の集中力を上げるには、体幹の筋肉を動かす実際、運動をすることで集中力が上がるという脳の仕組みを生かして、授業が始まる前に外遊びや運動の時間を取り入れている学校や園も各地にあるようです。同じように帰宅後、家でも宿題や勉強の前に運動を取り入れて集中力をアップさせることができます。その際、「体幹」の筋肉を意識することがポイントです。東京大学名誉教授の小林寛道氏は、体幹の筋肉(体幹深部筋)を動かす効果について、次のように述べています。「体幹深部筋というのは、背骨や骨盤周辺、また四肢の付け根にある筋肉の総称です。姿勢を保ったり、歩く・走るといった人間の基本的な動作にかかわる重要な働きをする筋肉であり、その代表的なものが、背骨と脚をつないでいる大腰筋です。そして、これらの筋肉に刺激を与えると、意欲や根気、集中力が高まることがわかっています」(引用元:プレジデントムック(2017),『プレジデントFamily 小学生からの知育大百科 2018完全保存版』, プレジデント社.)※太字は編集部で施した本来は、勉強の前に外遊びをさせて体をのびのびと十分に動かせるのが理想ですが、環境や状況によって難しい場合は、体幹の筋肉を動かすことで同じような効果が期待できます。脳に効く!集中力が高まるエクササイズ脳の「やる気スイッチ」である線条体は、体を動かせば活動してくれます。そのため、特に決まったエクササイズを行なう必要はありませんが、ここでは例として、小林教授が提唱する大腰筋を動かすエクササイズを3つご紹介します。【仰向けで行なうエクササイズ】1)仰向けで床に寝ます2)膝を90度に曲げ、お尻を浮かせます。おへそを天井へくっつけるイメージでゆっくり持ち上げます3)持ち上げたらゆっくり元に戻します4)2と3の動きを8回繰り返し、2セットを目安に行ないます【正座で行なうエクササイズ】1)正座の姿勢になります2)両手を前に伸ばし、背筋がまっすぐになるように前屈して伸ばします3)伸ばした姿勢のまま、前を見るように首を上げます4)そのままおなかの筋肉を引き締めて体をゆっくり元に戻します【あぐらで行なうエクササイズ】1)足の裏を合わせて胡坐の姿勢になります2)両手でそれぞれの足首をつかんで、背中はまっすぐ伸ばしたまま、頭と肩でぐるっと大きな円を描くように上体をまわします3)次に肩をまわさず腰だけをまわします正座やあぐらはヨガや座禅にも取り入れられているように、集中したいときやリラックスしたいときに適していると小林教授はいいます。そして、正座やあぐらで姿勢良く座るには、お尻を後ろに突き出すくらい腰をしっかり伸ばすのがコツだそう。また、これらのエクササイズで効果を上げるには、背骨と脚をつないでいる大腰筋をイメージしながら行なうように声をかけてあげるといいですよ。もちろん、上記エクササイズでなくても、ストレッチやスクワット、逆立ちなどでも効果を得ることができます。親子で軽く体を動かしたあとに、タイマーなどを使って「宿題何分で終わるかなゲーム」をしてみてはいかがでしょう。いつもはダラダラとやっている宿題があっという間に終わるかもしれませんよ!***勉強前だけでなく仕事、スポーツ、芸術など分野を問わず、集中力はさまざまな場面で必要になる能力です。それぞれの分野で必要になる記憶力、思考力、技術力、創造力といった能力を十分に発揮する場合でも、高い集中力を自在に操れることが大きなアドバンテージになります。(参考)Study Hackerこどもまなび☆ラボ|子どもの「やる気」と「集中力」を引き出す脳科学的テクニック親力講座|簡単な問題でやる気スイッチの線条体を活性化するさぽナビ(Z会)|<あなたのまわりのサイエンス>集中力と継続力を発揮するしかけをつくるベネッセ教育総合研究所|やる気は脳ではなく体や環境から生まれる(池谷裕二インタビュー)プレジデントムック(2017),『プレジデントFamily 小学生からの知育大百科 2018完全保存版』, プレジデント社.
2019年02月27日長年にわたり、人気の習い事として名が挙がる「ピアノ」。ピアノが弾けるようになると、楽譜が読めるようになる、音感が身につくなど、さまざまなメリットがあります。この記事を読んでいる親御さんのなかにも、習ったことのある方は少なくないでしょう。では、東大生の多くが幼少期にピアノを習っていた、ということはご存じでしょうか。もしそれが事実なら、ピアノを習うと頭がよくなるの? と、期待が高まりますよね。実際はどうなのか、ピアノが脳にもたらす影響について調べてみました。ピアノが東大合格に役立った!?ミキハウス子育て総研が2017年に行った調査「Weekly ゴーゴーリサーチ(第815回分析結果)」によれば、ピアノを習っている子どもは全体の23.9%。これはスイミングに次いで2番目に多い割合です。およそ4人に1人がピアノを経験しているといえます。また、別の調査では、東大生のおよそ2人に1人がピアノを習っていた、と判明したそうです。また、ヴァイオリンやエレクトーンなど音楽系全般となると、その数は全体の約6割を超えるといいます。この調査を行なった教育ジャーナリストのおおたとしまささんは、この数字について下記のようにコメントしています。世の中全体では楽器を習っている子供の割合は1:3くらいで女子が圧倒的に多いのに、東大は4:1の割合で圧倒的に男性が多い母集団であるということも考慮すれば、「6割以上」という数字がいかに突出した数字であるかがわかるだろう。(引用元:東洋経済オンライン|東大生にピアノ経験者が圧倒的に多い理由)さらに、東京大学新聞社では、東大生を対象に小学生時代の習い事が東大合格に役立ったかどうかの「貢献度」についての調査が行なわれました。この調査では、習い事の種類ごとに、「とても役に立った」なら4点、「ある程度役に立った」なら3点、「少し役に立った」なら2点、「役に立たなかった」なら1点を加算していき、平均点を算出します。ピアノは2.5点で、学習塾や英会話などを除く非学習系の習い事のなかでは、習字に次いで2番目に高い貢献度でした。つまり、小学生時代にピアノを習っていた現役東大生の多くは、ピアノの経験が少なからず東大合格に役立ったと考えているようです。ピアノはすべての脳機能を高めてくれる習い事では、科学的にピアノと学力向上に相関関係はあるのでしょうか。結果からいうと、「ある」と示す論文や調査結果が数々発表されています。例えば、ヨーロッパで8~10歳の小学生を対象に行われた研究では、小学生を2つのグループに分け、片方にはピアノを、もう片方には演劇を週1回習わせました。4カ月後、8カ月後に問題解決能力を測定すると、ピアノを習っていたグループのほうが能力の伸びが明らかに大きかったと発表されています。同じくヨーロッパで行なわれたほかの研究では、ピアノを習うことでIQ(知能指数)が向上する効果が認められました。これは、片手で弾くピアニカや、両手の動きが異なるヴァイオリンには、まだ認められていない効果だそうです。また、脳科学者の澤口俊之さんは、ピアノを習うことでHQ(人間性知能)が向上し、夢の実現や社会的成功、器用さなどにつながると話しています。さらに澤口さんは、左右の脳のバランスがよくなること、海馬と呼ばれる部分が発達し記憶力がアップすることなど、ピアノが脳にもたらすよい影響を複数述べています。ほかにも、「ピアノは両手を複雑に使い、楽譜を一時的に記憶し、楽譜を先読みする」ことで、脳機能がまんべんなく鍛えられるとしています。地頭がよくなり、スポーツにまで効果を及ぼすそうですよ。一見、勉強とは何の関係もないような習い事ですが、ピアノはこんなにも多くのメリットを脳にもたらすのです。であれば、多くの東大生が習っていたという事実にもうなずけるでしょう。グループレッスンなら協調性も身につくピアノがもたらす影響は、脳に関するものだけではありません。例えば、ピアノに向かい座って演奏することで、落ち着きをもたせる効果があるといわれています。それは、机に向かい集中して勉強することにもつながるかもしれません。また、グループレッスンの場合、生徒どうしでパートを分けて演奏する「アンサンブル」を通して、協調性が身につくといわれています。グループレッスンを行なっているヤマハ音楽教室には、生徒の親から下記のような声が寄せられるそうです。「アンサンブルを経験するうちに、自分ばかりが出過ぎるのではなく、お友達との兼ね合いに気を配れるようになった」「自分が練習しないと友達に迷惑をかけるという意識が芽生えた。皆のために練習しようという気持ちになれるのは、グループレッスンならでは」(引用元:日経デュアル|小学校で差がつくヤマハ音楽教室幼児科の秘密)協調性を身につけることは、学力向上に直接関係するわけではありません。ですが、ライバルと切磋琢磨したり、仲間と勉強や受験に関する情報交換を行なったりするなど、大学合格までのプロセスに役立てられる可能性があると考えられます。このように、ピアノの経験は、勉強する子どもをあらゆる角度から支えてくれるのです。***音楽の能力を高めてくれるだけでなく、勉強にもよい効果をもたらしてくれるピアノ。「習い事をしながら、難関大学を目指したい」「成績を下げることなく、勉強以外に打ち込めることを見つけたい」と考えているお子さんには、ピッタリの習い事かもしれません。ぜひ、候補として検討してみてはいかがでしょうか。(参考)ハッピー・ノート ドットコム|Weekly ゴーゴーリサーチ(第815回分析結果)東洋経済オンライン|東大生にピアノ経験者が圧倒的に多い理由東大新聞オンライン|東大生の65%が習っていた習い事とは?デイリー新潮|なぜ東大合格生の2人に1人は「ピアノレッスン」経験者なのか3つの理由を分析日経デュアル|小学校で差がつくヤマハ音楽教室幼児科の秘密PTNA|今こそ音楽を!第3章 脳科学観点から~澤口俊之先生インタビュー(1)脳科学者はかく稽ふ|【10/09/01】ピアノ稽古の良さ:一般知能gFの向上
2019年02月19日「プログラム学習」というものを知っていますか?2020年度から小学校で始まる「プログラミング教育」とは別物です。この「プログラム学習」とは、現在は大学などで幅広く利用されている「eラーニング」や子ども向けタブレット教材などの基盤になったもの。心理学の理論を応用した、専用の機械を使う学習方法です。難しそう……と思われるかもしれませんが、プログラム学習の概要を知っておくと、家庭における子どもの教育に応用できたり、タブレット教材ならではの学習効果を理解しやすくなったりします。そこで今回は、プログラム学習についてわかりやすくご紹介しましょう。スキナーのプログラム学習とはプログラム学習(programmed instruction)を提唱したバラス・フレデリック・スキナー(1904~1990)は、米国の心理学者。人間や動物の感情よりも行動に着目して実験・観察を行う「行動分析学」の祖として知られています。スキナーの成果として特に有名なのが「オペラント条件づけ(operant conditioning)」です。これは簡単にいうと、人間・動物が特定の行動をとるように条件を与えること。たとえば、箱に入れたネズミに、箱のなかのレバーを押してほしいとします。その場合、まずネズミが偶然レバーを押したとき、ネズミにとって「報酬(reward)」となるエサを与えます。これを、行動を「強化(reinforcing)」するといいます。そして、ネズミがまたレバーを押した際にはエサを与えます。繰り返すと、ネズミは積極的にレバーを押すようになるのです。このようなプロセスはオペラント条件づけと呼ばれます。ご存知のように、犬や馬の調教に使われている手法ですね。そして、オペラント条件づけを人間の教育に応用したのがプログラム学習です。プログラム学習には、「ティーチングマシン(teaching machine)」という専用のデバイスが使われます。ティーチングマシンは学習者に対し、説明および説明を理解したか確認する設問を次々に提示します。学習者が解答すると、正解・不正解がすぐに知らされ、次の問題に移行します。これを繰り返すうち、最終的に当初の学習目標を達成できるようになるのです。ゲーム機やPCの普及した現代、多くの人がこのような形式のクイズゲームや教材に触れたことがあるのではないでしょうか?プログラム学習における5つの原理スキナーのプログラム学習には、5つの「原理(principle)」があると考えられています。スキナー自身の言葉とともにご紹介しましょう。学習者が積極的である学校における一斉授業の多くは、教師がしゃべり、生徒が聞くという形式です。皆さんも経験があると思いますが、このやり方では、先生の話をぼーっと聞き流すことも可能。生徒が何も学習しないまま授業が終わる、ということもありえます。しかし、プログラム学習で用いられるティーチングマシンは、常に学習者自身が動かす必要があります。問題が出題され、学習者が「解答」という行為をしてはじめて次に進むのです。そのためプログラム学習においては、常に学習者の積極性が必要とされています。プログラムと生徒のあいだでは常にやり取りが発生する。講義や教科書、一般的な視聴覚教材と違い、ティーチングマシンは持続的な行動を引き起こす。生徒は絶えず集中し、やることを抱えている。(引用元:Burrhus Frederic Skinner (1968), The Technology of Teaching, New York, Appleton-Century-Crofts.)学習者に即時のフィードバックを与える学校の宿題やテストは、子どもが問題を解いてから正解・不正解がわかるまで、およそ数日のブランクがありますよね。答え合わせ・採点が終わり結果がわかったときにはもう、問題を解くときに自分が何を考えていたかなど忘れていることが多いのではないでしょうか。しかし、プログラム学習においては、学習者が問題に答えた直後に正誤が判明します。時間をおいてからまとめて結果を通知されるよりも、1問答えるごとにフィードバックをもらえるほうが、より強い印象を受けるはず。ティーチングマシンは家庭教師のごとく、正しい返答をするたびに生徒を強化する。このような即座のフィードバックを利用し、生徒の行動を最大限効果的に形成するだけでなく、一般人が「生徒の興味関心を保つ」と表現するような方法で、行動を維持するのだ。(引用元:同上)ゆるやかに難易度が上がるプログラム学習において、教材の作り方は非常に重要です。皆さんも想像できるように、簡単な問題ばかりやっても難しい問題ばかりやっても、効果的な学習にはなりません。また、それまでは順調に問題をクリアしていたのに、ある時点から急激に難しくなって先に進めなくなったら、学習者は意欲を失ってしまうでしょう。そうならないよう、プログラム学習の教材の難易度は、ほんの少しずつ上げる必要があります。それぞれのステップを難なくこなしていくうちに、いつのまにか目標を達成しているというわけです。生徒は複雑な行動を修得するにあたって、慎重に設計された、多くの場合は相当に長い一連のステップを経なければならない。それぞれのステップは、生徒が必ず理解できるくらい小さく、かつ行動の充分な修得にいくらか近づくものでなければならない。ティーチングマシンは、これらのステップが慎重に規定された順番で提供されるようにしなければならない。(引用元:同上)学習者に合ったペースで学べるスキナーはプログラム学習を提唱するにあたって、教室に生徒を集めて講義する従来型の教え方を批判しました。現在の学校制度も同じですが、大勢を一度に教えようとすると、指導側はどうしても平均的な理解度の人に合わせがち。そうなると、理解のスピードが遅めの人には難しすぎてついていけず、理解が速い人には簡単で退屈です。しかし、プログラム学習においては学習者がそれぞれのペースで学びを進めるので、あらゆるタイプの人に対応できるのです。優れた家庭教師のように、ティーチングマシンは生徒が次の段階に進む前に、教えた要点をひとつひとつ完璧に理解することを要求してくる。一方、講義や教科書、それに類する機械は、生徒が理解したかどうかを確認せずに進行してしまい、生徒をたやすく置き去りにしてしまう。(引用元:同上)ティーチングマシンの成功を説明するにあたっては、それぞれの生徒が自分のペースで自由に進められるという事実も重要だ。教育的な目的から、生徒たちを一つのクラスにまとめて収容することは、おそらく教育における非能率性の最大要因である。複数の生徒を一度に指導しようとすれば、速い学習者も遅い学習者も害することになる。優秀な生徒の窮状はこれまで認識されてきたが、遅い学習者はさらに悲惨な結果をこうむっているのだ。当人の自然なスピードを超えて進行することへのプレッシャーの効果は累積する。最初のレッスンを完全にマスターしていない生徒は、次のレッスンもマスターしにくいものだ。(引用元:Burrhus Frederic Skinner (1999), Cumulative Record: Definitive Edition, Xanedu Pub.)学習者によって検証されるプログラム学習の教材が優れているかどうか決めるのは、作成者ではなく学習者です。そして、学習者がプログラム学習をどのように行ったかのデータを通じて、教材は改良されていきます。たとえば、複数の学習者たちが教材の同じ部分でつまづくのであれば、そのレッスンにおける解説が不充分だということです。教材の解説を手厚くしたりといった対応をとることで、プログラム学習の教材はより効果的なものへとアップデートされるのです。優れたプログラムは芸術でありつづけるべきか、それとも科学技術となるべきか。最終的に決定するのは生徒であると知ることは安心材料となる。ティーチングマシンによる学習が持つ予期せぬアドバンテージは、プログラム作成者へのフィードバックであることがわかった。(引用元:Burrhus Frederic Skinner (1968), The Technology of Teaching, New York, Appleton-Century-Crofts.)プログラム学習の例では実際、プログラム学習の教材はどのように「プログラム」されているのでしょうか?以下はスキナーが提示した、小学生に「manufacture(製造する)」という動詞のつづりを覚えさせるための設問です。1.manufactureとは、作る(make)ことや建てる(build)ことを意味します。Chair factories manufacture chairs.(椅子工場は椅子を製造する。)単語をここに写してください。□□□□□□□□□□□2.この単語の一部は、factoryという単語の一部と似ています。どちらの部分も、makeやbuildを意味する古い言葉に由来します。manu□□□□ure3.この単語の一部は、manual(手動の)という単語の一部と似ています。どちらの部分も、hand(手)を意味する古い言葉に由来します。かつて、多くのものは手で作られていました。□□□□facture4.どちらの空欄にも同じ文字が入ります。m□nuf□cture5.どちらの空欄にも同じ文字が入ります。man□fact□re6.Chair factories □□□□□□□□□□□ chairs.(引用元:同上)このように丁寧な解説と設問があれば、manufactureという単語を初めて知った人でも、つづりを覚えられそうですね。ひとつひとつのステップは非常に簡単ですが、こなしているうち、最後には目的を達成できるのです。プログラム学習の優れた点さて、スキナーのプログラム学習を知ったところで、私たちはそれをどう現在に応用できるのでしょう?注目してほしいのが、上で挙げた5つの特徴。これらはプログラム学習だけでなく、一般的な勉強においても知っておいてほしいことばかりです。あらためて振り返ってみましょう。インプットとアウトプットを交互に行うプログラム学習においては、学習者の積極性が必要とされます。教材をぼーっと見たり聞いたりしているだけでは学習は進まないのです。上で挙げた例のように、プログラム学習ではインプットとアウトプットを交互に行います。これは非常に学習効果のある方法。ただ教科書を読んだり授業を聞いたりしているだけでは、インプットに偏りすぎ。インプットしたことを記憶として定着させるには、アウトプットが不可欠なのです。勉強というものは、単純化するとインプットとアウトプットの繰り返しです。新しい知識を頭に入れて、それを問題を解くという形式でアウトプットする。この流れがスムーズに行えれば、たいていの問題は解くことができるはずなのです。(引用元:StudyHacker|効率的勉強法 —— これだけは知っておきたい5つの基本。)脳には出力依存性というものがあるので、「インプットしよう、記憶しよう」とするだけでは情報はなかなか入っていきません。逆に、「情報を使おう」「表現しよう」とすれば入っていきやすくなる。記憶するために「情報を使う」ことは、「アウトプットする」ことですよね。これが重要になるのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|記憶力の要は「記憶の仕方」にあり。親が知っておくべき「記憶の脳科学」)即時のフィードバックが受けられるプログラム学習においては、学習者が問題に答えた直後、正解・不正解がわかります。この「即時フィードバック」は、学習者の能力を引き出すのに非常に重要です。「フロー理論」を提唱したことで有名な心理学者、ミハイ・チクセントミハイ教授(クレアモント大学院大学)によれば、人間は特定の条件が整うと「フロー」もしくは「ゾーン」という極度に集中した状態に入ることができます。そうなると、その状況を心から楽しいと思い、集中しても疲労を感じず、優れたパフォーマンスを発揮することができるのです。その「フロー」になるために必要な条件のひとつが「明確なフィードバックが即座に得られる」状態です。自分の行動に対する反応がすぐに返ってこないようでは、「フロー」は生まれません。たとえば、学校の宿題を自宅でやり、翌日の授業で答え合わせをする。学校でテストを受け、数日後もしくは1週間後に答案が返却される。このような状態では、行動とフィードバックのあいだにタイムラグがありすぎるため、「フロー」は生じません。しかし、プログラム学習ならば「フロー」発生の条件を整えることができるのです。子どもが自宅で勉強する際も、できるだけ速いペースでフィードバックが受けられるようにしましょう。たとえば、1ページ分の問題を解いたらすぐに答え合わせをさせる、もしくはしてあげる。タブレットなどのデジタル教材で勉強するのも、即時フィードバックという意味では効果があります。勉強でわかりやすいフィードバックと言えば点数でしょう。テストや練習問題の正誤で自分の取り組みの成果を確認することができます。しかし、テストのための勉強はするけれど、参考書の章の終わりなどにある練習問題をおろそかにしていませんか?この練習問題は、理解の確認はもちろん、勉強の成果を自分で実感し次の集中につなげるために必要なものです。(中略)テストや練習問題は狭い範囲ごとに細かく行うことが大事です。章の途中などで、区切りが難しいときは、その日やった問題をもう一度やり直すだけでも効果を実感できるはずです。(引用元:StudyHacker|「勉強に集中」のコツは、身近な “ゲーム” に隠れていた!?『集中力アップ』3つのきほん)スモールステップ学習法プログラム学習において、出題される課題はほんのわずかずつ難易度が上がっていきます。「急に難しくなって分からなくなった」という断絶が起こらないよう、注意して設計されているのです。このような学習法は「スモールステップ」と呼ばれています。最初から高い目標を掲げるのではなく、目標を細分化することで、“小さな成功” が得やすくなります。この成功体験を少しずつ積み重ねることで、最終目標に近づいていけるのです。(引用元:StudyHacker|「何をやっても続かない人」が陥っている “3つの大いなる誤解”)そして「スモールステップ」は、上述した「フロー」状態をもたらす必要条件にも関係しています。なぜなら、「フロー」になるには、向き合っている課題の難易度が適切でなければいけないから。余裕でこなせるくらい簡単でもいけないし、達成不可能なほど難しくてもいけないのです。少しずつ難易度が上がっていくプログラム学習ならば、「フロー」になりやすい条件が整っているといえるでしょう。最もフロー状態に入るためには、取り組む課題が簡単すぎても、難し過ぎてもいけません。適切な難易度は、自分の能力を少し超える、「背伸びすれば何とか達成できる」程度の難易度だと言われています。ですので、取り組む課題の難易度を、ちょうどいいレベルになるようきちんと設定することが大切です。(引用元:StudyHacker|フロー状態で勉強が効果的?コツは “ちょっと高め” の目標設定)自分のペースで学ぶ自分のペースで学ぶということは、プログラム学習だけでなく、学ぶという行為全般において大切なことです。物事に関する説明を読んだり聞いたりして理解できる速度は人によって違うものですし、学ぶジャンルによっても異なるでしょう。個人個人のペースに配慮しない一斉授業では、「全然わからなかった……もう嫌だ」「簡単すぎて退屈。授業に出る意味がない」というストレスを生みかねません。自分のペースで学べるプログラム学習は、そのような問題を解決してくれます。海外のオルタナティブ教育として知られる「イエナプラン」や「ドルトンプラン」では、生徒が自分で計画を立てて科目の自習を進めることが重視されています。日本でも、学校の一斉授業についていけない子どもを1対1の個別指導塾に通わせる親は珍しくありません。一斉授業の弊害を危惧している人は多いのですね。子どもに合った教材を選ぶ何かを自習するとき、目的に応じた教材が必須です。そして教材を選ぶときに考慮するべきなのは、「ベストセラーだから」「著名人が書いたから」ということではなく、それが学ぶ人に合っているかどうか。当たり前といえば当たり前ですが、意外と忘れてしまうこともあるのではないでしょうか。たとえば教材に書かれていることが難しすぎてわからないと感じても、「理解できないのは自分が勉強不足だから。もっとよく読まなければ」と思うのではないでしょうか?それで解決する場合もあるかもしれませんが、実はその教材自体がそもそも説明不足だったり、学習者に合っていなかったりするかもしれません。「すごくわかりやすい!これならスムーズに学習できる」と確信できる別の教材を選び直したほうが、学習の目的を達成しやすいのではないでしょうか。お子さんの勉強を応援するのであれば、お子さんの理解度やペースに適した教材を吟味して選んであげましょう。最初はどの本や参考書を選べばいいか分からず、とりあえずネットで評判がいいものを探してみるかもしれません。しかし、どんなに評判がよくても、名著といわれていても、必ずしも自分にとっていい本とは限らないといいます。何を選べばいいか分からないとき、柳川氏(※)の場合はまず信頼できる人に紹介してもらうそう。しかし、それでも自分に合う本と出会うためには試行錯誤が必要とのこと。自分が理解しやすいパターンと、その本の説明や論旨の展開がかみ合っていないと、内容が頭に入ってこないからです。自分の学びスタイルの確定にもつながるので、数ページ読んでやめてしまう本があっても気にせず、合う本が見つかるまで試行錯誤を繰り返しましょう。そのほうが、結果的には効率がよくなるはずです。(※東京大学大学院経済学研究科教授・柳川範之氏)(引用元:StudyHacker|東大教授とハーバード合格者が教える「最高の独学法」)***ともすれば、古典的な知識だと思われてしまうプログラム学習。しかしその理論には、効果的な学びに欠かせない要素が詰まっていたのです。明日から使えそうなものはありましたか?(参考)Burrhus Frederic Skinner (1968), The Technology of Teaching, New York, Appleton-Century-Crofts.Burrhus Frederic Skinner (1999), Cumulative Record: Definitive Edition, Xanedu Pub.eLearning Industry|Instructional Design Models and Theories: Programmed Instruction Educational ModeleLearning Industry|Cognitive Flow And Online Learning: 4 Steps For Putting Your Learners In The Zone脳科学辞典|オペラント条件づけコトバンク|プログラム学習The B. F. Skinner Foundation|DifinitionSimply Psychology|Skinner – Operant ConditioningStudyHacker|効率的勉強法 —— これだけは知っておきたい5つの基本。StudyHacker|「勉強に集中」のコツは、身近な “ゲーム” に隠れていた!?『集中力アップ』3つのきほんStudyHacker|「何をやっても続かない人」が陥っている “3つの大いなる誤解”StudyHacker|フロー状態で勉強が効果的?コツは “ちょっと高め” の目標設定StudyHacker|東大教授とハーバード合格者が教える「最高の独学法」StudyHackerこどもまなび☆ラボ|記憶力の要は「記憶の仕方」にあり。親が知っておくべき「記憶の脳科学」StudyHackerこどもまなび☆ラボ|尾木ママ絶賛!“日本教育の3周先を行く“オランダの「イエナプラン教育」StudyHackerこどもまなび☆ラボ|ドルトンプランの学校が日本にもできるってホント?知っておくべき3つの基本
2019年01月21日筋肉をつくるにはタンパク質、骨をつくるにはカルシウムが必要という具合に、食事と体の関係に関しては多くの人が少なからず知識を持っているはずです。でも、いい脳をつくるために必要な栄養素、食事といったら……?詳しく知っているという人は、そう多くはないでしょう。そこでお話を聞いたのは、オリジナルの「育脳」レシピ開発で子どもを持つ親御さんのファンも多い管理栄養士・小山浩子さん。脳に欠かせない栄養素を教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)脳を「つくる」材料となる栄養素子どもの頭が良くなるかどうかは、遺伝の影響が大きいと考えている人も多いでしょう。もちろん、頭の良し悪しには遺伝も大いに影響を与えます。ただ、その影響がはっきり表れはじめるのは、13歳くらいから。それまでは、赤ちゃんの頃からの脳への刺激や本人の好奇心といった外的要因、それから「食事」が大きな影響を与えます。食べものによって体がつくられることは、多くの人がイメージするものでしょう。でも、脳も体の一部ですから、当然、食事による影響を大きく受けます。子どもをかしこく育てたいのなら、食事にきちんと気を配る必要があるのです。脳のなかではいろいろな栄養素がチームとなって働いています。そこでまず意識してほしいのは、脳を「つくる」栄養素、「働かせる」栄養素、「動かす」栄養素をしっかり摂るということです。脳を「つくる」栄養素を紹介するにあたって、ひとつ質問をしましょう。脳はなにでできていると思いますか?じつは、脳の6割は脂肪でできているのです。そして、いい脳をつくる材料が、有名なDHA、それからEPAという油状物質。特にDHAは脳にとっての最重要栄養素と言えます。DHAをきちんと摂取しないと、脳の発達障害を起こしてしまうことも……。DHAの摂取量が十分な子どもとそうでない子どもでは、脳の神経回路の発達の度合いはい大きくちがいます。ただ、これは後からでも取り戻せるものです。オックスフォード大学の実験では、3カ月間、DHAを投与された子どもは、脳の神経回路がしっかりと改善されました。親の愛情が子どもの脳の発達を促すこのDHA、EPAの特徴として、体のなかでつくることができないことが挙げられます。つまり、食べものからきちんと摂取する必要があるということ。青魚に多く含まれることが知られていますね。ただ、意外にも、サバやイワシなどの青魚より多くのDHAを含むのがマグロのトロの部分。でも、お値段も高いですし……毎日のように食卓に出すのは難しいですよね。日常的に食べられるものとしては、サバの水煮缶や魚肉ソーセージ、それからツナ缶をおすすめしています。もちろん、魚が大好きなお子さんになら、ときには奮発してマグロのトロを食べさせてあげてください。その際、「頭が良くなるからね」と言ってあげましょう。子どもは100人いたら100人が「頭が良くなりたい」と思っています。そして、大好きなお母さんが自分の応援をしてくれていると感じるだけで、子どもは「頑張ろう」と思うもの。その気持ちが、脳の発達も促すのです。お子さんが魚嫌いという場合も安心してください。じつは、アマニ油とエゴマ油が、体内でDHAやEPAと同じ働きをするということがわかってきたのです。これらをドレッシング代わりに使うだけで、魚を食べるのと同じくらいの効果を発揮してくれます。脳を「働かせる」「動かす」栄養素IQが高い子どもの脳には、脳を「働かせる」アセチルコリンという神経伝達物質が多いという特徴があります。じつは、このアセチルコリンは、生まれたときには誰もがいっぱい持っているもの。神様は本当に平等に人間をつくっているんですね。ただ、その量は5歳くらいまでの間に徐々に減っていくのです。つまり、アセチルコリンをなるべく減らさないようにキープできた子どもがかしこくなる。5歳くらいまでの間に将来の脳の土壌ができるというわけですね。それだけ、幼い頃の食事が脳の発達には重要だということを意味します。このアセチルコリンの材料となるのが、卵や大豆に含まれるレシチンという栄養素。卵は1日に1個は子どもに食べさせてほしい。また、豆が苦手だという子どもには、きな粉をうまく使うことをおすすめします。朝食なら、「きな粉トースト」なんていいですよね。きな粉とはちみつと練乳を混ぜると、自家製のきな粉ジャムになります。これをトーストに塗るだけ。すごく手軽ですよ!それから、脳を「動かす」ガソリンとも言えるのが炭水化物です。脳が消費するエネルギーは、体全体の消費量のなんと20%に達します。低炭水化物ダイエットがはやっていますが、脳のためには、ご飯やパン、麺類をしっかり食べさせることが必要です。牛乳は体にも脳にも効く完全栄養食品そして、脳にいい食事のカバー役として欠かせないのが「牛乳」です。ここで、牛乳の偉大なパワーを紹介しましょう。これは、ここまで紹介したDHA、EPA、レシチン、炭水化物以外に脳が必要とする栄養素、そしてそれらを含む主な食べものです。【牛乳は万能育脳食材】ここで挙げた栄養素の多くを含むのが牛乳なのです。牛乳というと完全栄養食品とも呼ばれ、健康な体をつくるために欠かせないものですよね。学校給食でも何十年にもわたって出されてきました。その理由を裏付けるように、脳にとっても牛乳は完全栄養食品になっているのです。『かしこい子どもに育つ! 「育脳離乳食」:脳をはぐくむ食事は0歳から』小山浩子 著/小学館(2018)『こどもの脳は、「朝ごはん」で決まる!』小山浩子 著/小学館(2015)■ 管理栄養士・小山浩子さん インタビュー一覧第1回:子どもの脳は“親の愛情”と“食事”で育つ!「育脳」に効く食材の選びかた第2回:“パン&〇〇”で最高の朝食になる!脳が育つ食べ合わせ「5つの黄金ルール」(※近日公開)第3回:“美味しい”か“美味しくない”か。結果がすぐにわかる料理は、子どもがPDCAを学ぶのに最適(※近日公開)第4回:「お米さえ食べさせておけば大丈夫」が危険な理由。手抜きでも脳に効く朝ごはんとは(※近日公開)【プロフィール】小山浩子(こやま・ひろこ)1971年9月5日生まれ、愛知県出身。料理家、管理栄養士、フードコーディネーター。大手食品メーカー勤務を経て2003年にフリーに。料理教室の講師やコーディネート、メニュー開発、健康番組への出演など幅広く活動する。料理家としてのキャリアは20年以上。これまで指導した生徒は5万人以上に及ぶ。著書『目からウロコのおいしい減塩「乳和食」』(社会保険出版社)で、2014年グルマン世界料理本大賞イノベイティブ部門世界第2位を受賞。健康とつくりやすさに配慮したオリジナルレシピにファンが多い。2015年には日本高血圧協会理事に就任。また、日本ではじめて育脳をコンセプトにした離乳食を監修()。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年01月16日「子どもにやらせたい習い事」として、しばしば挙げられるスイミング。かつて自分もやっていたという親御さんも多いのではないでしょうか。子どもは保育園・幼稚園でプール遊びを始め、小学校で泳ぎ方を習うことが多いと思いますが、習い事としては何歳から始めさせるのが効果的なのでしょう?今回は、子どもにスイミングを何歳から習わせるべきか、3つの観点から考察します。みんなは何歳からスイミングを習っているの?実際のところ、どれだけの子どもがスイミングを習っていて、何歳から始めているのでしょう?広告代理店の博報堂が2016年3月、「小学生の長子がいる母親」1,428名を対象にインターネット調査を実施したところ、小学生の81.0%が習い事をしていると判明しました。なかでも最多だったのが「水泳教室」(31.1%)。「低学年」では39.8%、「中学年」では35.6%と、3分の1を超える多さでした。一方、「高学年」では17.8%と、第5位にまで落ち込んでしまっています。代わりに第1位となったのが「通信教育、宅配教材」でした。また、「習い事を始めた年齢」の平均について、「水泳教室」は5.6歳。これは「ピアノ、音楽教室」「野球やサッカー等の運動クラブ」など19個の項目のうち、「ダンスなどのパフォーマンス教室(バレエ含む)」と並んで第4番目の早さです。一方、「続けさせたい年齢」の平均は「水泳教室」だと11.3歳で、同じく第4番目でした。「体力作りのために小さい頃から水泳をやらせていたけれど、高学年になったらやめさせて勉強に注力させる」という図がイメージできますね。別の調査結果も参照してみましょう。ベネッセ教育総合研究所が2017年3月、「3~18歳(高校3年生)の子どもを持つ母親」16,170名を対象に行ったアンケートによると、最も人気の習い事はやはり「スイミング」。幼児の23.0%、小学生の33.6%が習っていました。両方のアンケート結果を見ると、およそ3割の子がスイミングを習っていて、就学前から始める子も小学生から始める子も多い、ということですね。スイミングを習うメリットどうしてこんなにも多くの親が、子どもにスイミングを習わせているのでしょう?それは、スイミングを習うことには「泳ぎが得意になる」という以上のメリットが数多くあるからです。体力をつけられる「元・水泳日本代表選手、萩原智子さんに聞いた『習い事としての水泳をオススメしたい5つの理由』」でもご紹介したように、スイミングは健康な体づくりに最適です。健康のためというなら、ほかのスポーツでもよさそうですが、スイミングならではの大きなメリットがいくつもあります。温水プールの水温はおよそ28~30℃ですが、体温より低い水中で運動を繰り返すことで、体温調節機能が強化され、カゼを引きにくくなると言われています。水泳は最高スピードで泳いでも、最大筋力の1/3程度しか使わず、テンポが毎分60回程度であるため、筋の血流量が最大となり、筋の持久的能力の発達を促します。また、最大筋力を必要としないので、筋・腱や関節・骨への負担が小さく、成長期の児童・生徒も安全に運動することができます。水泳はテニスやバドミントン等とちがって、左右両側の筋を交互にバランスよく使用するので、均整のとれた身体の発達が期待できます。また、特定の腕や脚を集中的に使うことがないので、関節が未発達な、幼児や児童にも安心して泳がせることができます。様々なスポーツ傷害に関する報告書をみても、水泳はサッカー・テニス・野球のような、特有のスポーツ傷害が最も少ないスポーツの一つです。(太字による強調は編集部で施した)(引用元:文部科学省|学校体育実技指導資料第4集「水泳指導の手引(三訂版)」)自分もスイミングを習っていたという親御さんなら、うなずける点が多いのではないでしょうか。スイミングは全身を使ううえ、水の浮力のおかげで体に負担がかかりすぎず、腕や脚など特定の部位を傷めることが少ないのです。小さな子にも安心して運動させられますね。空間認識能力を鍛えられる「空間認識能力を鍛える楽しい方法。ゲームとおもちゃが意外と使える!」で詳しくお伝えしたように、「空間認識能力」は「人間が秘めた最大の潜在能力」かもしれないと考えられています。空間認識能力が高いと、各種のスポーツでパフォーマンスを発揮しやすくなったり、設計関係の職業に就きやすくなったりするだけでなく、空間認識能力は創造力・イノベーションと関連しているとまでいわれているのです。この空間認識能力を伸ばすにはいくつか方法がありますが、そのひとつがスイミング。人類学者のグウェン・デワー氏によると、子どもの空間認識能力を育てるには、子どもがものの大きさや方向を意識できるような声かけをするのが効果的だそう。そして、数学教育などを研究するロビン・ヨルゲンセン教授(キャンベラ大学)によれば、スイミング教室のコーチが指導で使う言葉には、家庭ではなかなか出会えない空間的な表現(「突き出しの角にある赤いリング」「背泳ぎできるように向きを変えて、目は上に」など)が多く含まれています。実際、ヨルゲンセン教授が、スイミングを習っている3~5歳の子ども177人に認知機能測定テストを受けさせたところ、「Understanding Directions(方向理解)」分野での得点平均が、一般の平均より約16点も高いという結果でした。集中力がつくスイミングスクール「ケーニーズ」によると、スイミングは「何もしなければ水中に沈んでしまう」ため、一生懸命に泳ぐことによって集中力がつくそう。たしかに、泳いでいるあいだは早くゴールに着こうと必死ですよね。それに、正しいフォームで泳がないと沈んでしまい、適切なタイミングで息継ぎをしないと水を飲んで苦しい思いをします。そのため、泳いでいるあいだは自分の体の動きに全神経を集めるので、集中力がつくのかもしれません。東京大学の学生にスイミング経験者が多いのは有名な話ですが、「スイミングのおかげで集中力がついた」と話す東大生もいるようです。スイミングは何歳から始められるのかさて、スイミングには多くのメリットがあることがわかりましたね。すぐにでも子どもにやらせたくなりそうですが、実際のところ、スイミング教室に通えるのは何歳からなのでしょうか?実は、0歳から通えるスイミングスクールは多いのです。2018年12月時点で29都道府県に展開している「コナミスポーツクラブ」は、4カ月~高校生まで年齢に応じた5種類の子ども向けスイミング教室を展開。4カ月~2歳の子どもが保護者といっしょに参加する「ベビースイミング」は、親子で水遊びをしたり子どもが水に浮かぶのに慣れるのを促したりするコース。泳ぐ練習はしませんが、親子のスキンシップには最適ですし、水への恐怖心を小さいうちに取り除くことには大きな意味があります。スイミングを何歳から始めるべきか1:運動神経を鍛える『栄養・生化学辞典』によると、運動神経とは「筋肉を支配し、身体の運動や姿勢を制御する神経」。運動が上手にできる人のことを、俗に「運動神経がよい」と言いますね。さて、この運動神経ですが、米国の高名な人類学者リチャード・スキャモン(1883~1952)によると、神経の発達は4歳頃に全体の約8割が、6歳でおよそ9割が完了するそう。そして12歳でほぼ10割です。つまり、神経の発達期間が終わってしまう前に、さまざまな経験を子どもにさせて神経に刺激を与えることにより、「運動神経を良くする」ことが重要だといえます。そのため、神経が急速に発達している4歳までにスイミングを習わせはじめるのが特に効果的だといえるでしょう。幸いなことに、スイミングスクールには0歳から通えるので、運動神経を刺激するのに最適だというわけです。スイミングを何歳から始めるべきか2:子どもに意欲はあるか?4歳までにスイミングを始めるのが効果的とはいえ、あくまで目安にすぎません。2016年に引退した水泳のマイケル・フェルプス選手は、五輪で計23個もの金メダルを獲得した伝説的人物ですが、水泳を始めたのは7歳だったそう。ADHD(注意欠陥・多動性障害)だと診断され、「エネルギーをコントロールするため」にスイミングを勧められたそうです。スイミングは神経の発達に効果があるとはいっても、小さい子どもが嫌がっているならば、無理に通わせるのは賢明ではないかもしれません。ベネッセ教育総合研究所が2009年3月、「3歳~17歳(高校2年生)の子どもを持つ母親」15,450名を対象に実施したアンケートによると、小学生の親が運動系の習い事を選ぶ際に最も重視している点は「子どもが楽しんでいる」(95.8%)かどうか。これに対して「成果が目に見える」はわずか18.8%でした。我が子にスイミングを習わせたいと思ったら、まずは子どもの意思を確認してみましょう。「ぜひやってみたい」と前向きならよいのですが、あまり乗り気ではなかったり、スイミングがどんなものかよく知らなかったりする場合、とりあえず体験教室に行かせてはどうでしょうか。そこで水遊びを楽しいと思えたら入会すればよいし、やはり嫌だと思ったらやめればよいのです。以前はスイミングを嫌がった子どもでも、成長とともに興味を持ち、やってみたくなるかもしれません。幼稚園や小学校のお友だちに触発されて「うまく泳げるようになりたい」と一念発起するかもしれませんよ。「運動神経をよくするために、すぐにでもやらせなきゃ!」と焦らずとも、子どもが意欲を持つまで待ってみてもよいのではないでしょうか。スイミングを何歳から始めるべきか3:水を怖がっているか?子どもにスイミングを習わせるメリットのひとつには、「子どもが水に慣れ、水を怖がらなくなる」ことがあります。皆さんのお子さんのなかにも、お風呂を嫌がったり、プールを怖がったりする子がいるのではないでしょうか。そうなると、子どもをお風呂に入れるのに苦労したり、小学校の水泳の授業が心配になったりしますよね。もし今、子どもが水を怖がっているのなら、小さいうちにスイミングに通わせることで水に慣れさせることができるかもしれません。浅いプールで水遊びをしたり、ほかの子どもたちが泳いでいるのに触発されたりして、だんだんと水への恐怖を克服できる可能性がありますよ。もっとも、「小さい頃に無理やりスイミングに行かされてトラウマになり、ずっとプールが苦手」という人もいますので、注意が必要です。スイミングを習うのに必要な費用スイミングが持つ数々のメリットと、習いはじめるのに適切な時期を確認しました。すぐにでも始めたくなったかもしれませんね。そこで気になるのは、お金の問題です。楽器などほかの習い事に比べれば安いイメージがありますが、実際、どれくらいの費用がかかるのでしょう?上述したベネッセによる2009年のアンケートでは、子どもにスイミングを習わせている親が払う関連費用は、平均で6,100円/月。運動系と芸術系を合わせた40種類の活動のうち、9番目の高さです。ほかの運動系の習い事は、野球・ソフトボールが3,900円、サッカー・フットサルが4,200円、空手が4,200円などでした。意外に費用が高めなのはどうしてでしょう?それは、スイミングを習っている子の多くは民間企業のスクールに通っている一方、野球やサッカーを習っている子は地域ボランティアや自治体が運営する団体に所属することが多いから。ベネッセの同調査によると、民間企業のスクールに通う場合の支出平均は、スイミングが6,900円。サッカーが6,400円、野球が6,000円。いずれも安くありません。ところが地域ボランティアが運営する団体だと、それぞれ2,600円、3,300円、3,000円にまで激減します。そして、民間スクールに通う子の割合は、スイミングで86%、サッカーで32%、野球で9%。この差が、習い事にかかる費用の相違に直結しているのです。スイミングにかかるお金を節約したいのなら、地元の自治体やボランティア団体が運営する教室を探すのがよいといえます。***あまりにもメリットの大きい習い事、スイミング。お財布と相談しつつ、ぜひ小さいうちから習わせてあげたいものですね。(参考)StudyHackerこどもまなび☆ラボ|元・水泳日本代表選手、萩原智子さんに聞いた「習い事としての水泳をオススメしたい5つの理由」StudyHackerこどもまなび☆ラボ|東大生の約6割が習っていた「スイミング」。いつから習いはじめるべき?StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの「集中力」を養う方法。遊びや習い事を活用しよう!StudyHackerこどもまなび☆ラボ|東大生の幼少期の習い事の第1位は「スイミング」!そのメリットとは?StudyHackerこどもまなび☆ラボ|空間認識能力を鍛える楽しい方法。ゲームとおもちゃが意外と使える!ジュニア スイミング スクール ケーニーズ|水泳から得られる効果とはコナミスポーツクラブ|スイミングスクールプレジデントオンライン|水泳で頭が良くなる?東大生の6割が小学生時代にスイミング公立はこだて未来大学|身体的な発達心理学コトバンク|運動神経博報堂|【博報堂こそだて家族研究所】「子どもの習い事・身につけさせたいスキル」レポートベネッセ教育総合研究所|第1回 学校外教育活動に関する調査 2009ベネッセ教育総合研究所|第3回 学校外教育活動に関する調査 2017(データブック)文部科学省|学校体育実技指導資料第4集「水泳指導の手引(三訂版)」Olympics|Michael PHELPSRobyn Jorgensen Consulting | Adding Capital to Young AustraliansEarly Childhood Australia| Australasian Journal of Early Childhood Vol. 37 No. 2 June 2012
2019年01月08日お風呂でのひと時は、親子の大事なコミュニケーションの場です。ゆったりと湯船につかっていると身体も心もリラックスして、普段話せないようなことを話してくれることもありますよね。それ以外にも、お風呂はとても有効な「学びの場」でもあります。お風呂で九九を覚えることや、親子で言葉遊びをすることは、子どもの能力にも効果的に働きかけます。今回は、お風呂で役立つ知育アイテムや数遊びなどについて詳しくご説明します。さっそく今夜から試してみてくださいね。お風呂場は集中力が増す!『欲育』のススメ東京ガスの都市生活研究所が提唱する『浴育』という言葉を知っていますか?その定義は、「入浴を通じて生涯の心身の健康をより良く育むために、入浴の効果や入浴方法、お風呂の楽しみ方などを学ぶこと」とあります。親子入浴は、子どもの成長や親子関係にも大きな影響があることも知られており、その日一日の出来事を話すことで、親子ともに元気をチャージできる場であることは、誰もが実感したことがあるのではないでしょうか。さらに、お風呂タイムを親子の学習タイムとして活用することも、広い意味での『浴育』につながっています。「お風呂場は集中できるベスト空間」と述べるのは、『子どもの能力を決める0歳から9歳までの育て方』(KADOKAWA出版)の著者であり、子育て支援士の田宮由美さん。気が散るものを持ち込めない狭い空間は、何かを覚えたり考えたりすることに向いているそうです。つまり、習慣として毎日入っているお風呂は、親子のコミュニケーションが深まるだけではなく、『学び時間』としてもその効果が絶大であることは明らかなのです。子どもは成長とともに一人でお風呂に入るようになります。親子で一緒にお風呂に入る時期は、思っているよりもずっと短いもの。だからこそ、毎日の入浴タイムを大切にしたいですね。定番の「お風呂ポスター」は目的に合わせて選ぼう小さなお子さんがいるご家庭のお風呂には、必ずと言ってもいいほど水でくっつくポスターが貼られているのではないでしょうか?ただぼんやり湯船につかっているだけでも、壁に貼られているポスターを眺めていると、いつのまにかその内容を覚えてしまうものです。カリフォルニア工科大学の研究者によると、リラックス状態の脳は新しい記憶が残りやすいのだそう。お風呂の中は絶好の学習時間というわけですね。また、親御さんが指差しながら質問するなど、親子コミュニケーションにも役立ちます。くもん出版のお風呂用ポスター「おふろでレッスン」シリーズは、その種類の多さと充実した内容が高い人気を誇っています。ひらがな・すうじ・ABC・九九といった基本の表から、四字熟語や慣用句などの珍しいものまで、子どもの年齢に合ったものを選ぶことができます。「おふろでレッスンひらがなのひょう」くもん出版「おふろでレッスン九九のひょう」くもん出版「おふろでものしりはかせ四字熟語/ことわざ」くもん出版また、日本地図や世界地図を貼るのもおすすめです。教育コンサルタントの上野緑子さんは、「親子でお風呂に入り、その日のニュースに出てきた地域や自分の住んでいるところ、おじいちゃん、おばあちゃんの住んでいるところを探してみると楽しいですよ」と述べています。家族旅行で行った場所やこれから行ってみたい場所など、親子共通の話題で盛り上がることもできますよ。「おふろでレッスンにほんちず」には、全都道府県の県章と県花も載っているので、県章の由来を親子で考えてみてもいいでしょう。「おふろでレッスンにほんちず」くもん出版「おふろでレッスンせかいちず」には、各国の国旗が載っています。上野さんによると、「国旗を覚えるとオリンピックの開会式の入場行進などテレビで国旗を見つけるのが楽しくなりますよ」とのことです。東京オリンピックに向けて、今から各国の国旗を覚えることを目標にしてもいいですね。「おふろでレッスンせかいちず」くもん出版また、あの無印良品でも、子どもの学習用おふろポスターを作っています。シンプルでスッキリとしたデザインなので、インテリアの邪魔にもなりません。「おふろポスター・ABC」無印良品日本地図のポスターは、枠に沿って各地域の特産物のイラストが並べられています。これをきっかけに日本の各県に親しみを感じ、日本各地の特産物などさまざまなことに興味を抱いてくれることも期待できますね。「おふろポスター・ちず」無印良品それ以外でも、長い期間子どもが飽きずに、楽しみながら勉強ができる工夫を凝らしているポスターが各社から発売されています。学研の『おふろで旅する世界地図』は、お湯をかけると黒い部分が消えて答えが見えるようになるという優れもの。クイズになっていると熱中して楽しめるので、いつのまにか各国の特徴をつかんでいるお子さんに驚かされますよ。「おふろで旅する世界地図」学研お風呂で「算数脳」を育む!?次にご紹介するのは、ポスター以外のアイテムです。子どもにとって、水(お湯)の中で手を動かすことや、浴室の壁におもちゃをペタペタ貼ってはがす、という遊びを繰り返すことは、巧緻性を鍛える訓練にもなります。スポンジ状の数字やアルファベットのセットは、100円ショップなどでも手軽に手に入れることができますよ。水に濡れてもOKな絵本やパズル、お風呂でお絵かきができるグッズなど、お風呂用の知育アイテムは世の中にたくさんあります。どれも子どもが喜んで夢中になる工夫がされているため、「気に入るかな?」と心配せずに気軽に用意してあげましょう。また、算数脳を鍛える「タングラム」を、お風呂でも楽しめるアイテムもあります。三角や四角のピースを組み合わせて絵を作っていく遊びから、図形感覚を育むことができます。「さんすう脳をきたえるおふろタングラム」小学館最近では図形の問題でつまずく小学生が増えてきているといいます。苦手意識が芽生える前にお風呂で楽しく学ぶことが大切ですね。何もなくてもお風呂で「学び」を生み出せる!最後に、ポスターやおもちゃなどのアイテムを一切使わない「お風呂の学び」をご紹介します。まず、親子のスキンシップも兼ねて「背中の文字当て」はいかがでしょうか。背中に文字を書き合いっこをして、何という文字が書かれたのか当てるゲームです。記憶力アップに最適な「逆さ言葉遊び」もいいですね。「ろふお」→「おふろ」「35842」→「24853」単語や数字をしっかり覚えて逆さに答えるという単純なゲームですが、毎日続けていれば確実に集中力と記憶力が養われます。「100まで数えたらお風呂から上がろう」というのはよくありますが、「100、99、98、97、96……」と逆から数えたり、「1、3、5、7……」と一つ飛ばしにして数えたりすると新鮮です。親子で交互に数えることで「負けないぞ」と正しく数える意欲も高まります。ただし、数を数えるときに絶対に守らなければならない「決まり」があります。「脳科学おばあちゃん」として有名な久保田カヨ子先生は、次のように述べています。注意しなければならないのは、日本語の場合、「1、2、3、4、5、6、7、8、9」のうち、「4」と「7」を「よん」「なな」と必ず同じように読むことです。こうすることで、数字の意味をきっちり理解してもらいます。決して、「し」「しち」と、カウントダウンしてはいけません。(引用元:DIAMOND online|お風呂学習で絶対にやってはいけないこと)日本語にはさまざまな読みがあり、意識していないとついごちゃ混ぜにしてしまいがちです。正しい日本語で、正しい数え方を教えてあげることも大切なんですね。***お風呂は親子のもミュニケーションの場であると同時に、貴重な学びの場でもあります。ここでご紹介したヒントを参考に、充実したお風呂タイムを楽しみましょう!(参考)東京ガス株式会社風呂文化研究会|「浴育」のすすめSHINGA FARM|お風呂で子どもを伸ばす入浴法とは!~毎日の入浴タイムを有効活用~All About|世界をもっと身近に感じ、日本にもっと興味を持とう!お風呂で学ぶ日本地図・世界地図All About|お風呂で知育遊び 算数・国語編DIAMOND online|お風呂学習で絶対にやってはいけないことStudy Hacker|お風呂は暗記効率が良いことが明らかになりました!お風呂暗記ツール3選
2019年01月05日2018年2月にスタートした『StudyHacker こどもまなび☆ラボ』では、たくさんの学びの情報を読者のみなさまにお届けしてきました。その中でも最も人気の高かった記事をランキング形式にしてご紹介します。ここからは上位(5位〜1位)にランクインした記事をダイジェストでお届けします!★第5位★『“親の愛情” で子どもの海馬が大きくなる!?子どもの脳を育てる5つのヒント』脳が発達する幼少期、親がしてあげられることとは?習い事や運動が脳に及ぼす影響はもちろん、自然体験や絵本の読み聞かせも脳科学の視点から非常に良い影響を与えていることがわかりました。「子どものために」と信じて行なっているけれど、はたして脳科学的に効果があるのかな?と不安を感じている親御さんが、安心して子育てできる情報が満載です。ワシントン医科大学のJoan Luby博士らの研究グループはMRIを用いて92人の子どもの脳をスキャンしました。その結果、親からの愛情を充分に浴びて育った子どもは、そうでない子どもに比べて、脳の海馬の大きさが10%近くも大きかったそうです。脳とはとても不思議なもので、親の愛情のかけ方さえも子どもの発達に大きな影響を与えるのですね。他にも、自然体験では脳の前頭葉機能を改善してくれたり、読み聞かせが感情や情動にかかわる「大脳辺縁系」が活性化したりすることもわかっています。記事の中でより詳しく説明しているので、ぜひお読みください。★第4位★『「10歳の壁」「9歳の壁」「小4の壁」とは?子どもの発達段階を意識した4つの対処法』「○○の壁」という言葉、最近よく耳にするようになりましたよね。とくに9〜10歳という年齢は子どもの成長にとって大きな転換期であり、抽象的な概念も理解できるようになる大事な時期です。勉強がぐんと難しくなる時期でもあるので、ここでつまずかないためにも、この壁はぜひ乗り越えたいところ。そんな不安を抱えた親御さんたちからたくさんの支持を得たこの記事が第4位です。10歳ごろになると「他者意識」が発達し、他人との比較を通じて自分を認識するようになるため、子どもの自己評価や自尊心が低下してしまうのだそう。嫉妬などのネガティブな感情も生まれ、気に入らない相手を無視したり、その人について悪いうわさを流したりといった「関係性攻撃」につながってしまう場合もあるとのことです。勉強面だけではなく、精神面でも大きな変化が現れるこの時期。深刻な問題としてメディアなどでも取り上げられるようになり、いっきに注目が集まりました。そこでこの時期、親として子どもにどのように接したらいいか、記事の中で詳しく解説しています。「ほめて自信をつけさせる」「家事を手伝わせる」「体験活動をさせる」など、難しいことは一つもありません。ぜひ記事を読んで試してみてくださいね。★第3位★『「落ち着いて」はNGワード!?“本番に強い子”になる、正しい言葉かけと簡単トレーニング』子どもが本番で実力を発揮できないのは、「緊張しているから」だと思い込んでいませんか?でも緊張は誰でもするものです。ここで重要なのは「緊張していても実力が発揮できるか」ということ。この記事は「本番に強い子になるための方法を知りたい!」と願う多くの親御さんたちの心に響き、堂々の3位にランクインしました。森川氏は、「自己肯定感」が本番で力を発揮するための大きなポイントになると言います。(中略)“緊張したけどできた”という成功体験を積み重ね、自己肯定感を育てることが、“本番に強い子”につながっていくと言います。大事な本番前、ついつい「落ち着いて!」「あなたなら絶対にできる!」と励ましてしまいがちですが、これらの言葉を子どもにプレッシャーを与えてしまいNGだそう。ポイントは、子ども自身が「どれくらいできそう」かを確認する手助けをしてあげること。そして、「自分ができそうな行動(=OKライン)」を決めてあげて、ひとつひとつクリアしていくことです。これなら難しくありませんね。★第2位★『フランスの子どもは消しゴムを使わない。「間違いを消さない」がとても大切な理由』『StudyHacker こどもまなび☆ラボ』がスタートしてからすぐに公開されたこの記事は、長きにわたりランキング上位に君臨してきました。しかも、10ヶ月が経過したこの時期にも人気記事ランキングに再浮上するなど、その注目の高さがうかがえます。日本とは違うフランスの学習環境や学習への取り組み方、きっと参考になるはずですよ。消しゴムによって、子どもたちが書いた内容を初期化させないことで、教師は子どもたちの情報のすべてを把握できるのです。プロセスも含めて“思考の進化”が記録されることで、子どもの個性までが筒抜けになるため、採点する教師としては的確な評価と指導が可能になります。大事なのは、「正しいか」「間違っているか」ではなくそこに至るまでのプロセスなのですね。思考の過程を教師が把握することこそが、それぞれの子どもたちに合った指導を可能にしているのです。また、消せない文房具を使うことについて、「美しさ」を重視するフランスらしい理由も。文房具から見える教育への姿勢に驚き、感心したという読者からの熱い支持により、堂々の2位を獲得しました!★第1位★『観劇に出かける親子は驚異的に少ない。メリットだらけの演劇鑑賞、しないなんてもったいない!』映えある第1位に輝いたのは、『演劇鑑賞』のメリットをご紹介したこの記事です。公開後じわじわと話題を呼び、異例のロングランを記録したこの記事は、とある劇場からも問い合わせがくるほどに注目が集まりました。世の親御さんたちの「本当はもっと子どもを観劇に連れて行きたい!」という切なる願いがランキングの結果につながったように感じます。子どもたちは演劇を鑑賞することにより、人とのかかわり方、自分の意見の持ち方などを考えることができます。演劇鑑賞は、学力としては測ることのできない共感力や社会性などを養うことができる絶好の機会なのです。子どもの情操教育にも大きなメリットが期待できる演劇鑑賞について、今一度考えさせられる充実した内容の記事でした。豊かな感情表現を養い、共感力や社会性も育まれる演劇鑑賞は、子どもが小さいからこそぜひ親子で一緒に楽しみたいですね。記事では、子ども向け演劇の紹介もしていますので、ぜひ参考になさってください。***『2018年人気記事ランキング第6位~第10位』はこちら
2019年01月01日折り紙やビーズなど巧緻性を養う遊びは、手指の巧緻性を鍛えることができます。そして、子どもの巧緻性を鍛えると学習面でも良い影響が見られることがわかっているのです。インタビュー記事『子どもの「やる気」と「集中力」を引き出す脳科学的テクニック』が大好評の、脳科学者 篠原菊紀先生も折り紙遊びを推薦しています。折り紙を楽しむことで、記憶力、集中力、表現力に深くかかわる前頭前野が活発に働くのだそうですよ!■参照コラム記事はこちら↓「巧緻性」の意味って?簡単にトレーニングできる方法とおもちゃ教えます
2018年12月23日子育てにおける心がけとして常套句のひとつとなっているのが、「褒めて育てる」。常套句になっているくらいですから、実感としてその効果を感じている親御さんも少なくないでしょう。脳科学者の篠原菊紀先生によれば、この言葉は脳科学の観点から見ても正しいのだそうです。では、どんな褒め方がより効果的なのか。「子どものやる気を維持する」ための褒め方を教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)やる気アップのために具体的な「行動」を褒める「褒めて育てる」という言葉がありますが、それは脳科学の観点からも大いに有意義なことだと言えます。そもそも「やる気」とはなにかといえば、「行動と快楽の結びつき」です。そして、その結びつきを司るのが脳の線条体(せんじょうたい)と呼ばれる部分と腹内側前頭前野(ふくないそくぜんとうぜんや)です。そして、線条体の最大の特徴として、「予測的な活動をする」ことが挙げられます。なんらかの行動をしたら快楽を与えてあげる。たとえば、子どもが勉強をしたら褒めてあげる。そうすると、子どもの線条体は「勉強をすれば褒められるんじゃないか」と予測するようになります。つまり、褒められるという快楽を得たいがために、勉強に対するやる気がアップするというわけです。ただ、「褒めて育てる」と言っても、「素質」を褒めるのか「行動」を褒めるのかといった議論もあります。自信を失ってしょげてしまっている子どもを励ましたい、子どもの自己肯定感を高めてあげたい——さまざまな場面で褒めることは効果的ですが、勉強好きにさせたい、サッカーがうまくなってほしいといったなんらかの方向性を持って子どものスキルアップを図りたいのであれば、その議論の答えは明快です。線条体は「行動」と快楽を結びつける器官。つまり、ある「行動」をする際の線条体の活動を高めたいと思ったら、その方向性に沿った具体的な「行動」を褒めなければ意味がない、子どものやる気アップにはなかなかつながらないということです。「適当に」気が向いたときに褒めるくらいでいいとはいえ、褒め方には注意も必要です。ここで、イギリスのシュルツという学者がおこなったサルを使った実験を紹介しましょう。シュルツは、どのような条件下なら、サルの脳にドーパミンという快楽物質が出るかを調べました。まずはジュースを舌に垂らす。サルはジュースが大好きですから、ジュースが垂らされた瞬間、ドーパミンが出ます。次に、赤いランプが点灯して、レバーを押すとジュースがもらえるという装置をつくってトレーニングを繰り返しました。当初はどうすればジュースがもらえるのか予測できないので、ジュースをもらったときだけドーパミンが出る。でも、トレーニングを繰り返すうちにサルは学習し、ランプが点灯すると必ずレバーを押すようになります。すると、ランプが点灯しただけでドーパミンが出るようになり、実際にジュースをもらったときにはドーパミンは出なくなるのです。これがどういうことかを理解するために、レバーを押すことを「勉強すること」、ジュースをもらえることを「褒められること」に置き換えて考えてみましょう。つねに子どもを褒め続けてしまうと、子どもが「勉強をすれば褒められるんじゃないか」と予測したときには快楽を感じるが、実際に褒められたときにはそうならなくなってしまうということ。褒められることが、子どもにとってよろこびではなくなるわけです。しかも、褒められそうだと思ったのに褒められなかった場合には、むしろ怒りに転化することもある。大人ならば、給料日に給料が入金されていなかったようなものですから、それも当然ですね。こまめに子どもを褒めることは大事ですが、子どもにとって「勉強したら必ず褒めてもらえる」があたりまえになると、褒めることの効果は薄れてしまうので、注意が必要です。では、どうすればいいかというと、「ギャンブル条件」というものを使ってほしい。レバーを押してジュースをもらえる確率を50~70%にする。ジュースをもらえるときもあれば、そうじゃないときもあるようにするわけです。こうした不確定な状況がギャンブル条件です。そうすると、ランプが点灯したときもジュースをもらえたときも、ドーパミンが出るようになるのです。子どもを褒めることでいえば、それこそサイコロでも振って、褒めたり褒めなかったりする。「間引く」ことが重要なのです。とはいえ、あまり考え過ぎる必要はないかもしれませんね。親御さんも仕事に家事に忙しいでしょうし、子どもが勉強したら100%必ず褒めるなんてことは、やろうと思ってもそうできるものではありません。自然に間引くことができているのではないでしょうか。子どもを褒めることの重要性は知っておいて損はありませんが、あまり意図的にコントロールしようとするのではなく、「気が向いたときに褒める」くらいの適当さが、褒めることの効果を高め、結果的には子どものやる気を維持させることにもつながるのだと思いますよ。『男の子がさいごまでできる めいろ』『女の子がさいごまでできる めいろ』篠原菊紀 監修/KADOKAWA(2018)■ 脳科学者・篠原菊紀先生 インタビュー一覧第1回:記憶力の要は「記憶の仕方」にあり。親が知っておくべき「記憶の脳科学」第2回:子どもの「やる気」と「集中力」を引き出す脳科学的テクニック第3回:子どもの気質をテストで診断。脳のタイプ別「“勉強好き”に育てる方法」第4回:「間違った褒め方」していませんか?子どものやる気を維持させる「褒め方」メソッド【プロフィール】篠原菊紀(しのはら・きくのり)1960年生まれ、長野県出身。東京大学教育学部卒業、同大学院教育学研究科修了。東京理科大学諏訪短期大学講師、助教授を経て、現在は諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科教授、地域連携研究開発機構・医療介護・健康工学部門長、学生相談室長。「茅野市縄文ふるさと大使」という肩書も持つ。応用健康科学、脳科学を専門とし、「遊んでいるとき」「運動しているとき」「学習しているとき」など日常的な場面での脳活動の研究をしている。教育関連の他、アミューズメント、自動車産業などとの共同研究も多数。子どものための「脳トレ」に関する著書も数多い。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2018年12月22日子どもをやる気にさせる、勉強好きにさせる方法をいろいろと学んで実践しているのに、あまり効果を感じられない——。もしかしたらそれは、選択した方法が子どもの「遺伝的な脳の癖」に合っていないからかもしれません。お話を聞いたのは、脳科学者・篠原菊紀先生。先生によると、同じ方法も「脳の癖によるタイプのちがいによっては効果が半分以下になる」こともあるそう。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)どんなことに子どもの脳が快楽を感じるのかを知る一般的に「やる気スイッチ」とも呼ばれる脳の線条体(せんじょうたい)と呼ばれる部分が活動している(インタビュー第2回参照)と、ただやる気になるということ以上のメリットがあります。線条体とは、行動と快楽を結びつける器官。つまり、線条体が活動しているということは、いまおこなっている行動が望ましいものだと感じているということです。そして、快楽を感じているために記憶がつくられやすい状態でもある。であるのなら、子どもをやる気にさせ勉強効率を上げるには、それぞれの子どもの脳がどんなことに対して快楽を感じやすいのかということを知る必要があります。これには一種の、「遺伝的な癖」があります。「気質」と言ったほうがわかりやすいかもしれませんね。たとえば、将来的にマスコミの道に進むような子どもは、もともと新しもの好きな子が多いでしょう。新しい刺激やスリリングな事柄に対して快楽を感じるのです。そういう子どもの場合、新しいことにチャレンジをしたら褒めてあげるとか、チャレンジできる環境を用意してあげると、やる気の維持につながります。一方で、逆にとにかくリスクを嫌う子どももいます。そういう子どもだと、新しいことにチャレンジをしたからといって褒めても、やる気の維持といった効果は半分以下。そうではなくて、「この勉強をしておくとあとで安心だよ、役立つよ」といった、保険外交員のような言葉が効果的です。そうした脳の癖を知るのに、以下のようなチェックテストも役に立ちます。子どもにあてはまる項目、あるいは親御さん自身にあてはまる項目をチェックしてください。というのも、親子が一致していれば親が自分をモデルにして考えればいいし、不一致なら親の思いはすれ違いを生みやすくなると自覚できるからです。【A】~【D】まで、それぞれいくつチェックしてもらっても大丈夫です。【A】□ ヘアスタイルをよく変える□ コンビニやドラッグストアの新製品は必ずチェックする□ 急に新しいことをはじめたくなる□ 進学するならやっぱり都会がいい□ ルールを守るのが苦手□ お金は使うためにある【B】□ 安心、安全が一番□ 疲れやすい□ 人見知りするほうだ□ 友だちと直接話すよりメールのほうが気楽□ 外出するより家にいるほうが好きだ□ 目立つことはあまり好きじゃない【C】□ 「親友」と呼べる友だちが多い□ ドラマや映画を見てつい涙が出る□ 甘いものが大好き□ 人にプレゼントをする、他人をよろこばせることが好き□ 褒められ好きで、褒められるとやる気が出る□ 友だちの誘いはなるべく断らない【D】□ 自分の部屋はいつも整理整頓されている□ 朝ごはんは、毎日決まった時間に食べたい□ バッグのなかには「いざ」というときのアイテムがけっこう入っている□ DVDを借りたら必ず特典映像を見る□ 空気が読めない人やノロノロしている人には我慢できない□ 少しでも太ったら「ダイエット」の文字が頭に浮かぶ子どもの脳の癖に合わせて言葉や環境を選ぶ人の行動特性はこの【A】〜【D】のベクトルの組み合わせになります。チェックの多い上位ふたつぐらいの傾向に留意するといいでしょう。【A】新しものの好きの「新奇探索傾向」感性が豊かでチャレンジ精神旺盛ですが、飽きっぽい傾向もあります。ですから、この傾向を持つ子どもはスタートダッシュが重要。じっくりスケジュールを立てて勉強の準備に時間をかけるとその段階で飽きてしまうことも。宿題でもテスト勉強でも、一気にやらせてしまうのがいいですね。また、子どもが新しいことをはじめたら、なんらかの「ゴール」を設定してみてください。飽きさせないという意味もありますが、達成感は脳の活性化に重要なもので、次なるステップへのモチベーションとなるからです。【B】リスクを嫌う「損害回避傾向」安定を好む心配性で、日本人に多い傾向です。この傾向を持つ子どもは、基本的に習慣的な勉強を苦としません。反面、一度スケジュールが狂うと、「もういいや」と一気にやる気を失う可能性もある。急に割り込む用事にも対応できるよう、勉強のスケジュールには余裕を持たせておきましょう。また、習慣的なことを好むので、次々に新しい参考書や問題集に取り組むのではなく、1冊に決めてじっくり勉強するほうが向いています。【C】承認欲求が強い「報酬依存傾向」この傾向にとっての報酬とは、「まわりから認められているという実感」です。この実感がなくなると不安に陥ってしまいますが、自分を認めてくれる人の前では存分に力を発揮できます。この傾向の子どもが期待しているのは「頑張ったね」「すごいね」という褒め言葉です。家での勉強についてはもちろん、学校での勉強についても話を聞いて、「今日もよく頑張ったね」と褒めてあげてください。【D】完璧主義の「固執傾向傾向」【C】とは逆に周囲の評価はほとんど気にしません。なにかをはじめると完璧にやり遂げないと気が済まず、ものごとに白黒をつけたがる傾向もあります。この傾向を持つ子どもは一つひとつ着実に勉強していくことを好みます。一度に複数のことをするとストレスを感じるので、勉強の優先順位をつけさせるといいでしょう。また、完璧主義ゆえに自己評価が低い一面もあるため、勉強したら「今日できた勉強」を書き出すなどして、勉強の成果を肯定的にとらえられるよう工夫してあげてください。子どもがどういうことに快楽を感じるのか、それに合わせて言葉や環境を選んであげることが大切です。中学入試を受けるにしても、「この学校に行けば世界が開けるぞ」と言うのが子どものやる気アップに効果的なのか、あるいは「あとあと安全だよ」「みんなに褒められるよ」「こんなすごいことができるぞ」と言うのがいいのか。特に気を使いたいのは一見矛盾する傾向がいずれも強いとき。そういう場合、子どもはストレスを抱えやすいので、子どもの「ああでもない、こうでもない」に粘り強く付き合ってあげてください。『男の子がさいごまでできる めいろ』『女の子がさいごまでできる めいろ』篠原菊紀 監修/KADOKAWA(2018)■ 脳科学者・篠原菊紀先生 インタビュー一覧第1回:記憶力の要は「記憶の仕方」にあり。親が知っておくべき「記憶の脳科学」第2回:子どもの「やる気」と「集中力」を引き出す脳科学的テクニック第3回:子どもの気質をテストで診断。脳のタイプ別「“勉強好き”に育てる方法」第4回:「間違った褒め方」していませんか?子どものやる気を維持させる「褒め方」メソッド(※近日公開)【プロフィール】篠原菊紀(しのはら・きくのり)1960年生まれ、長野県出身。東京大学教育学部卒業、同大学院教育学研究科修了。東京理科大学諏訪短期大学講師、助教授を経て、現在は諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科教授、地域連携研究開発機構・医療介護・健康工学部門長、学生相談室長。「茅野市縄文ふるさと大使」という肩書も持つ。応用健康科学、脳科学を専門とし、「遊んでいるとき」「運動しているとき」「学習しているとき」など日常的な場面での脳活動の研究をしている。教育関連の他、アミューズメント、自動車産業などとの共同研究も多数。子どものための「脳トレ」に関する著書も数多い。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2018年12月20日子どもが勉強に対する意欲を持ってくれない、集中力が続かない……。小さな子を持つ親御さんであれば、そんな悩みを抱えているはずです。その悩みを解消してくれるのは、脳科学者の篠原菊紀先生。「やる気になる」「集中できている」ということはどういう状態なのか、どうすればそうなるのか、脳科学の観点から教えてくれました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)勉強への集中力が持続する時間は15分まず、集中力が「どのくらい持続するか」という話からはじめましょう。じつは、集中力の持続時間はテストの内容によって異なりますから、一概には言えません。たとえば、クレペリンテスト。就職、転職時の適性検査に採用している企業もありますから、受けたことがあるという人もいるでしょう。1列に並んだ隣り合う1桁の数字をひたすら足し算していくもので、計算能力、集中力などを測定するテストです。このクレペリンテストの場合、だいたい7分くらいを過ぎるとパフォーマンスが落ちて、休憩を挟むとまた上がってくるということが研究結果からわかっています。また、テレビ番組などの映像コンテンツに対する集中力が持続するのはだいたい15分くらい。10分から15分ごとに1回CMが入るというのは、脳科学の観点からすれば正しいのです。そして、肝心の勉強に対する集中力が持続するのもだいたい15分くらいですから、15分をひとつの目安に休憩を挟んであげるのがいいかもしれません。ただ、「手慣れた」科目の勉強への集中力はより長く持続します。20代くらいの若い人のほうが、集中力が続きそうなイメージを持たれがちですが、マサチューセッツ工科大学の調査によると、じつは集中力のピークは43歳くらい。これも、その年齢に至るまでの人生のなかでさまざまな経験を積むうち、知識やノウハウが蓄積し「手慣れ」てくることが関係します。年齢と集中力に関連することとして、もうひとつお話をしておきましょう。ビジネス書等で「朝のほうが勉強や仕事に集中できる」というようなことを見聞きするかと思います。じつは、これも年齢によって変化するもの。中高年層だと午前のほうがパフォーマンスは高い。でも、若者となると、午後~夜のほうが集中できる傾向にある。もちろんこれには個人差もあります。結局のところ、集中できる時間帯というものは人それぞれちがうということです。であれば、集中力を高めるためにはどの時間帯に集中力が増しているのか、集中力が減っているのか――時間によって変化する「やる気曲線」を本人に書かせてみてはどうでしょうか。これには、「この時間帯には集中力が増している」と自己認知することで実際に集中力を高めるという効果が期待できます。もちろん、小さい子どもにあまり遅い時間に勉強させるわけにはいきませんが、今後の学習のためにも知っておいていいことだと思いますよ。「行動」をイメージさせてやる気スイッチを入れる子どもの集中力を高めたいのなら、「集中できている」というのはどういう状態なのかを知っておく必要もあるでしょう。脳科学の観点から説明すると、「集中できている」というのは、脳の線条体(せんじょうたい)という部分が活動している状態。線条体とはいわゆる「やる気スイッチ」です。行動と快感を結びつけている器官で、移動する動物のすべてが持っているものとされます。というのも、行動に快感を感じられなければ、動物は生き抜くことができないからです。わたしたちの祖先が獲物のマンモスを見つけて追いかけはじめた。でも、あっさりと追跡をあきらめてしまったらどうでしょうか。獲物を捕らえることができず、餓死してしまいますよね。追いかけはじめたら、追いかけ続けられなければならないのです。実際にそうして獲物を確保して、生き延びることができた。つまり、一度「やる気スイッチ」が入ったら行動に快感を感じるという仕組みを人間は持っているのです。であれば、子どもを勉強に集中させるためには、「やる気スイッチ」を入れる方法さえ知ればいいということになる。その方法とは、「行動」をイメージさせることです。「勉強しよう」「やる気を出そう」と思って線条体の活動がはじまるのならそもそも苦労はありません。どんなにそう思っても線条体にその命令が届かない、その場合が問題なのです。「やる気を出そう」と思っているときの脳活動を調べると、じつは言語野と呼ばれる部分は活発に動いています。勉強をしないでだらけている子どもに「勉強しなさい」と言うと、「いましようと思ってたのに」なんて答えませんか?それは嘘ではないのです。そういうときには、子どもに、立ち上がって机に向かって歩いて椅子にドンと座って教科書をガバッと開いてガシガシと勉強するというようなことを映像のようにイメージさせる。先にお伝えしたように、線条体は行動と快感を結びつける器官ですから、「行動」をイメージすることで重い腰も浮きやすくなるのです。いま、「ドン」「ガバッ」「ガシガシ」という言葉を使いましたが、オノマトペ(擬声語)を使うと線条体の活動がはじまりやすくなります。また、実際には楽しくないことも口角を上げて取り組めば楽しくなるという話を聞いたことがあるのではないでしょうか。1980年代頃から感情心理学において言われてきたことですが、これは脳科学の点からも正しいと言えること。口角を上げると脳のなかでドーパミンという快楽物質の分泌が盛んになり、記憶効率が高まりスキルアップしやすくなることがわかっているからです。苦手な科目の勉強に取り組む際には、子どもにニコニコしながら楽しそうにやるよう教えてあげる。とはいえ、小さい子どもなら理屈で理解することは難しいかもしれません。であれば、親御さん自身も、面倒なことをニコニコしながらやってみる。そういう姿を子どもに見せてあげてください。『男の子がさいごまでできる めいろ』『女の子がさいごまでできる めいろ』篠原菊紀 監修/KADOKAWA(2018)■ 脳科学者・篠原菊紀先生 インタビュー一覧第1回:記憶力の要は「記憶の仕方」にあり。親が知っておくべき「記憶の脳科学」第2回:子どもの「やる気」と「集中力」を引き出す脳科学的テクニック第3回:子どもの気質をテストで診断。脳のタイプ別「“勉強好き”に育てる方法」(※近日公開)第4回:「間違った褒め方」していませんか?子どものやる気を維持させる「褒め方」メソッド(※近日公開)【プロフィール】篠原菊紀(しのはら・きくのり)1960年生まれ、長野県出身。東京大学教育学部卒業、同大学院教育学研究科修了。東京理科大学諏訪短期大学講師、助教授を経て、現在は諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科教授、地域連携研究開発機構・医療介護・健康工学部門長、学生相談室長。「茅野市縄文ふるさと大使」という肩書も持つ。応用健康科学、脳科学を専門とし、「遊んでいるとき」「運動しているとき」「学習しているとき」など日常的な場面での脳活動の研究をしている。教育関連の他、アミューズメント、自動車産業などとの共同研究も多数。子どものための「脳トレ」に関する著書も数多い。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2018年12月18日これからの時代には「考える力」が必要とされ、学校の教育内容も以前の詰め込み型から変化していきます。ただ、学習していくためには「記憶力」は欠かせないもの。子どもの記憶力を伸ばしてあげたいと思う親御さんが多いなかで、そのためにはどんな教育が必要なのでしょうか。脳科学を専門とする篠原菊紀先生は、「まず記憶の仕組みを知らないことにははじまらない」と語ります。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)「記憶力がある」ということは「記憶の仕方を知っている」ということ当然ながら、子どもの能力には遺伝が大きく関係しています。IQでいえば、じつは7〜8割くらいは遺伝で説明できてしまうほどです。残念ながら、努力でIQを上げるということはなかなかできるものではありません。ところが、学力となると話は別。遺伝で説明できるのは5割程度に落ちてくるのです。記憶力も同様。記憶力こそ遺伝が大きく影響しそうなものじゃないですか?でも、じつはそうではない。記憶力は、環境、教育による影響を大きく受けるものなのです。つまり、「記憶力がある」ということは、「記憶の仕方を知っている」ということが大きい。なにかを覚えようとするとき、覚えるべきものをただ眺めているのか、そうではなくて記憶するためのスキルを使うのか。復習のタイミングは適切か。これこそ記憶力の本体と考えてもいい。となると、親御さんが気になるのは「記憶の仕方」でしょう。まず、それ以前のスタート地点として、「見れば覚えると思っている」という誤解を排除してあげることからはじめてほしい。人間は、ただ見ただけでものごとを覚えられるようにはできていません。記憶の仕組みをごく簡単に説明しましょう。記憶には大きくわけて2種類の記憶があります。一時的に必要な情報が保持される「短期記憶」。そして、この短期記憶のうち、強い刺激を伴ったり、重要だとされたりした情報が長時間にわたって保持される「長期記憶」となる。勉強における記憶とは、長期記憶でなければ意味がありません。では、そうするためにはどうすればいいか。記憶は繰り返して情報を使わないと脳に定着しません。繰り返しチェックテスト、つまり、復習をする必要があるということです。ただ年がら年中するわけにはいきませんから、どういうタイミングでチェックテストをするのがいいのかということを知る必要もあります。ひとつは記憶の作業をおこなった直後、そして12時間後、1日後、1週間後、1カ月後というふうにチェックテストをする。そうするなかで、どのくらい記憶の作業をしてどういうタイミングで復習すれば覚えることができるのかを知る。これは、親御さんというより子ども自身が知っていくべきことです。「記憶の仕方を身につける」とは、「自己モニターができるようになる」ということでもあります。「僕はこれくらい勉強しないと覚えられない」「こういうタイミングで復習をしないと覚えられないんだ」と子ども自身が知ること。それが、「記憶の仕方を身につける」ための大きなステップとなります。また、チェックテストには大きな意味がもうひとつあります。それは「アウトプットする」ということ。脳には出力依存性というものがあるので、「インプットしよう、記憶しよう」とするだけでは情報はなかなか入っていきません。逆に、「情報を使おう」「表現しよう」とすれば入っていきやすくなる。記憶するために「情報を使う」ことは、「アウトプットする」ことですよね。これが重要になるのです。もちろん、アウトプットの方法はチェックテストだけに限りませんよ。たとえば、覚えたことを友だちに説明する。これもまた、立派なアウトプットです。そもそもの話をすれば、インプットとアウトプットを独立させて考えないほうがいいでしょうね。それらは記憶のネットワークにおいてはセットのものだからです。インプットだけなんて現象は起きませんし、情報をアウトプットしてみないと記憶のネットワーク化はできません。アウトプットできないものは、極論すれば、記憶のネットワークとしては「ない」に等しいのです。記憶すべきことではなく、記憶の「手順」を教える「子どもの記憶力を伸ばしたい」と考えている親御さんに、もう少しアドバイスをしておきましょう。どういうときに記憶の定着が起きやすいかということについて、いくつか研究によってわかっていることがあります。ひとつは「強い刺激」を伴うとき。「感情を絡める」と言い換えてもいいかもしれません。みなさんも、強く感動したことや怒りを感じた出来事ははっきりと覚えているはずです。脳は、強い感情と結びついて記憶されたことは記憶し続けるようにできているのです。つまり、勉強のための暗記という単純な作業にもどこかで感情を絡めてあげると、記憶に定着しやすくなるということ。たとえば、暗記作業中に感じたことをノートに記すということでもいいかもしれません。「感情」に着目して、いろいろと工夫してみてください。それから、「複合する」ということも記憶の定着を促すために重要なキーワード。ある事柄を単体で覚えようとするのは、じつは脳にとってはすごく記憶しづらいものなのです。そうではなくて、覚えようとする事柄にいくつもの別の事柄を絡めてあげると覚えやすくなる。たとえば、鎌倉幕府ができた1185年という年を覚えるにも、それ単体で覚えようするのではなく、同時期にどこでどんなことが起きていたというようなことを絡めて覚える。そうすれば、記憶効率が格段に上がります。これは、単体での記憶が稠密(ちゅうみつ)化してつながりを持ちはじめると、新しく加わったことも覚えやすくなるという脳の仕組みによるものです。そういう意味では、子どもがなかなか暗記できないからといって、親御さんも子ども自身もがっかりする必要はありません。なぜなら、子どもが暗記作業をはじめたばかりのときは、脳のなかにはまだ記憶がまばらにあるだけなのです。それが徐々に増えてつながりを持ちはじめると、量質転化的とでもいいますか、暗記の質が一気に上がる。粘り強く頑張れば、いずれ結果が出ることを知っておくべきだと思います。最後に「寝る前の復習」についてもお話しておきましょう。睡眠の直前に復習すると記憶に定着しやすいということを耳にしたことがある人も多いはずです。ただ、幼い子どもの場合、明るい光の下で机に向かって復習するような必要はありません。というのも、寝る直前に興奮して睡眠の質が下がると記憶の定着が阻害されるからです。子どもなら、布団に入って、その日に勉強した内容を少しだけ思い出しながらそのまま寝る習慣をつけてみる。その程度でいいと思います。『男の子がさいごまでできる めいろ』『女の子がさいごまでできる めいろ』篠原菊紀 監修/KADOKAWA(2018)■ 脳科学者・篠原菊紀先生 インタビュー一覧第1回:記憶力の要は「記憶の仕方」にあり。親が知っておくべき「記憶の脳科学」第2回:子どもの「やる気」と「集中力」を引き出す脳科学的テクニック(※近日公開)第3回:子どもの気質をテストで診断。脳のタイプ別「“勉強好き”に育てる方法」(※近日公開)第4回:「間違った褒め方」していませんか?子どものやる気を維持させる「褒め方」メソッド(※近日公開)【プロフィール】篠原菊紀(しのはら・きくのり)1960年生まれ、長野県出身。東京大学教育学部卒業、同大学院教育学研究科修了。東京理科大学諏訪短期大学講師、助教授を経て、現在は諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科教授、地域連携研究開発機構・医療介護・健康工学部門長、学生相談室長。「茅野市縄文ふるさと大使」という肩書も持つ。応用健康科学、脳科学を専門とし、「遊んでいるとき」「運動しているとき」「学習しているとき」など日常的な場面での脳活動の研究をしている。教育関連の他、アミューズメント、自動車産業などとの共同研究も多数。子どものための「脳トレ」に関する著書も数多い。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2018年12月16日子どもの習い事として、ピアノは永遠の憧れかもしれません。自分がやっていたという親御さんも、やってみたかったという親御さんも、自分の子どもにピアノを習わせたいと願う人は少なくないのではないでしょうか。では、何歳から始めるべきなのでしょう?さすがに1歳では早そうですが……。今回は、子どもにピアノを何歳から習わせるべきか、4つの観点から考察します。ピアノを何歳から始めるべきか1:絶対音感を育む「絶対音感はどう養う?子どもに身につけさせたい、絶対音感と相対音感のトレーニング法。」でも取り上げたように、人間が獲得できる音感には、絶対音感と相対音感の2種類があります。相対音感は訓練すれば大人でも得られるもの。しかし、絶対音感は小さいうちにしか身につかないといわれているのです。音楽心理学を専門とする、「一音会ミュージックスクール」の榊原彩子氏によると、絶対音感保有者が音楽のレッスンを始めた年齢で最も多かったのは5歳だと、いう調査があるそう。非保有者だと6~7歳だったそうです。また、音楽家600人以上を対象にした調査では、4歳以前に音楽のレッスンを始めた人の40%が絶対音感を持っていた一方、9歳以降に始めた人で絶対音感を持っていたのはたった9%だったそうです。これらの調査結果を考慮すると、絶対音感を身につけるためには、遅くても5歳までにピアノを始めるのがよさそうですね。ピアノを何歳から始めるべきか2:脳を発達させるピアノの練習によって脳が発達するという説は近年、多くの人に支持されています。絶対音感養成プログラムを提供している一般社団法人・日本子ども音楽教育協会の理事長・滝澤香織氏によると、右手と左手を同時に使うピアノは、右脳と左脳の両方を活性化させるそう。右脳と左脳のあいだには、神経繊維が2億本ほど詰まった「脳梁」と呼ばれる大きな束がありますが、左右の脳をバランス良く使うことで、脳梁はより太く育ち、左右の脳の伝達もより円滑になるのです。脳梁の発達のためにも、左右の手指を平等に使うピアノはとても効果的なのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|ピアノは “脳を育ててくれる” 楽器である。)精神医学を専門とするジェームズ・ハジアク教授(米バーモント大学)らの研究も、楽器を練習した子どもほど、集中力などに関する脳の部位が発達していることを明らかにしました。ピアノをはじめとする楽器の演奏には、指を正確に動かしたり、音を聞き取ったり、楽譜を読んだりなどの緻密な作業が要求されますからね。脳には、発達しやすい年齢というものがあります。米国の高名な人類学者リチャード・スキャモン(1883~1952)によれば、20歳時点での脳の発育度を100%とすると、4歳ですでに約80%、6歳では約90%にもなっているそう。それ以降の発達は非常にゆるやかです。つまり、脳が急激に発達している4歳までのあいだ、脳に刺激を与えることが重要だといえます。すると、できれば4歳までに、遅くとも6歳になる前にはピアノを始めているべきだというわけです。ピアノを何歳から始めるべきか3:体は充分に発達しているか子どもの能力を伸ばすには早いうちからピアノを始めたほうがよいとはいえ、肉体的な制約というものがあります。やはり、体幹が発達して椅子に座れるようになるまでピアノは弾けないでしょうし、鍵盤を押すには力も必要です。子どもは何歳からピアノを習えるのでしょうか?執筆や講演活動を行っているピアノ講師・笹田優美氏によると、ピアノは幼児の体にとって大きいだけでなく、指に負担もかかるそう。そして、体の骨格が安定するのは「6才前後」だそうです。もちろん、発達の速度は人それぞれ。子どもによってピアノを始めるのが何歳からなのかは異なります。笹田氏によれば、小学生になって「身体と脳のバランスが整ってくる」のを待ってからでも遅くはないそうです。とはいえ、小学生になるまで音楽に触れないというわけではありません。上述のとおり、4歳までに人間の脳は大部分が形成されています。笹田氏によれば、リトミック(身体を用いてリズムを学ぶ教育法)やダンスなど、体を通じて音楽を感じる体験がおすすめだそうですよ。ピアノを何歳から始めるべきか4:じっと座っていられるかピアノを習うのであれば、大人しく椅子に座り、先生の指示に従わなければなりません。それにはある程度の肉体的・精神的成長が不可欠ですね。このような能力は何歳くらいで身につくのでしょう?お茶の水大学子ども発達教育研究センターが2004年に発行した『幼児教育ハンドブック』によると、体を自分の思い通りに動かせるようになるのは2歳から。指先の動きも急速に発達するそうです。しかし、全身のバランス感覚が発達するのは4歳からなのだとか。そして、大人の指示に従えるかどうかは、子どもの個性によって全く異なります。素直に従う子もいれば、空想に夢中で話を聞いていない子も、周囲のことに気を取られやすい子もいるでしょう。しかし、だからといって教室に通わせないよりは、習い事を通じて落ち着いた態度を身につけさせるほうが建設的ですね。これまでの説明を振り返ってみましょう。絶対音感を会得するなら5歳まで、脳の発達を考えると6歳まで、骨格が安定するのが6歳ごろ、全身のバランス感覚が発達するのは4歳から。これらを総合すると、ピアノは4歳~6歳のあいだに習い始めるのがよさそうですね。くわえて、脳の発達のためには、4歳より早く音楽教室に通わせるのが効果的のようです。ピアノを習うメリットさて、ピアノを何歳から習うべきかがわかったところで、立ち止まって考えてみましょう。どうして子どもにピアノを習わせたいのでしょうか?「ピアノが弾けるようになる」以外に、どのようなメリットがあるのでしょう。また、上で述べたようにピアノを弾くことが脳を活性化させるとはいえ、「脳の活性化」にはどのような意義があるのでしょうか?外国語が得意になる「楽器を習うと英語力が上がる?英語を学ぶと音楽が得意に?音楽と外国語の深い関係」でもご紹介したように、幼少時に音楽のレッスンを受けていると外国語を習得しやすくなることを示した研究があります。音に敏感になるため、母語にはない外国語の音を聞き取ったり、脳内での処理能力が高まったりするそうです。たとえ音楽のレッスンを子どものうちにやめてしまっても、その恩恵はずっと続くそう。英会話スクールにお金をかけるより、効果があるかもしれません。「生きる力」が養われる「知能指数」を意味するIQ(Intelligence Quotient)は多くの人が知っていると思います。では、近年注目されているHQ(Human Quotient)――「人間指数」はどうでしょうか?認知神経科学を研究する澤口俊之教授(武蔵野学院大学)によると、HQとは「目的・夢に向かって、社会の中で協調的に生きるための脳力」。ワーキングメモリ、一般知能、自己制御、注意力、問題解決能力など、さまざまな要素を含んでいるそうです。そして、塾に通ったり、スポーツや習字、英会話を習ったりしている子どもに比べ、ピアノを習っている子どものHQは突出して高いそう。その理由を澤口教授は「両手で微妙に違う指の動きができること」と「譜面を先読みして覚えて後追いしながら弾くこと」だと推測しています。ピアノの練習によって脳が活性化された結果、目的達成のため主体的に生きていくのに必要な能力が育つようです。机に向かっての勉強だけでは得られないHQが育つことは、ピアノを習う大きなメリットだといえるでしょう。ピアノを習うのに必要な費用子どもにぜひ習わせてみたいピアノですが、やはり気になるのはお金ですよね。レッスン代や楽器の購入費用など、どれくらい必要なのでしょう?全国に展開する「ヤマハ音楽教室」の小学生向け「ピアノコース」は、月3回・1回30分で7,000~9,000円(税抜)。入会金・施設費・教材費が別途発生します。個人のピアノ教室だと、もっと安くなることが多いようです。ピアノには大きく3種類があります。発表会で弾く大きなグランドピアノ、家庭に置きやすいアップライトピアノ、夜でも練習できる電子ピアノ。総合楽器店「島村楽器」の公式サイトに掲載されている価格は以下のとおりです。-グランドピアノ:129万6,000円(税込)~-アップライトピアノ:43万2,000円(税込)~-電子ピアノ:2万8,800円(税込)~やはり、電子ピアノならば圧倒的に安いですね。音だけでなく鍵盤の重さやフットペダルの有無など、本来のピアノとは異なる点が多いとはいえ、価格の安さは習い事の続けやすさにつながります。プロのピアニストを目指すのでなければ、電子ピアノから入る選択肢も充分にありうるでしょう。***ぜひ幼少期に習っておきたいピアノ。高価なピアノを買えなくても、諦めるのは早いですよ!(参考)StudyHackerこどもまなび☆ラボ|絶対音感はどう養う?子どもに身につけさせたい、絶対音感と相対音感のトレーニング法。StudyHackerこどもまなび☆ラボ|ピアノは “脳を育ててくれる” 楽器である。StudyHackerこどもまなび☆ラボ|楽器演奏により脳が発達することが研究で明らかに。おすすめは「7歳までに」始めること。StudyHackerこどもまなび☆ラボ|楽器を習うと英語力が上がる?英語を学ぶと音楽が得意に?音楽と外国語の深い関係国立国会図書館デジタルコレクション|なぜ絶対音感は幼少期にしか習得できないのか? : 訓練開始年齢が絶対音感習得過程に及ぼす影響公立はこだて未来大学|身体的な発達心理学Roland|ピアノを始める前に知っておきたい5つのこと ~その1~お茶の水女子大学|乳幼児の発達の概要LinkedIn|How the Human Quotient Improves Careers and Companiesキャリコネニュース|ビジネスパーソンの力は「人間性知能HQ」で測れる!? 脳科学者・澤口俊之氏が「脳力」の鍛え方伝授ピティナ|今こそ音楽を!第3章 脳科学観点から~澤口俊之先生インタビュー(1)ヤマハ音楽教室公式サイト|ピアノコース島村楽器|鍵盤楽器島村楽器オンラインストア|電子ピアノ
2018年11月27日今は小学校入学前に平仮名や片仮名をマスターする子が大半で、なかには足し算や引き算、英語ができる子もいるようです。我が子も遅れを取らないように早期教育を行うべき?いったい何歳から始めればいい?そんな焦る気持ちになりますが、誤ったやり方をしないように、まずは早期教育について知っておきましょう!そもそも早期教育って?早期教育とは小学校に入る前から教育を取りいれること。胎児・乳児期に行うものは、超早期教育と呼んだりもします。早期教育を行う機関や家庭で読み書きなどを教えたり、英語やピアノ、スイミングなどの習い事を早い段階から始めることなどです。「2~3歳から始める〇〇トレーニング」や「頭のいい子に育つ〇×式子育て」なんてキャッチフレーズも目にしますよね。0~5歳は脳の神経系が急激に発達するので、この時期から経験させることでその子の能力や関心を高めることが狙いと言われています。ただ、その効果は、実はまだ明確に証明されていないのです。専門家や教育に携わるプロの間でもさまざまな意見に分かれているのは現状です。では、結局どうするのが正解なの?という疑問がわきますよね。判断材料となる、早期教育のメリットとデメリットをご紹介しましょう。早期教育のメリット〇子どもの得意分野を知り、伸ばせるスポーツ、音楽、芸術分野……我が子は何に興味があり、何が得意なのか。幼児期の習い事は、そんなことを知る良いきっかけになります。サッカーやピアノ、スイミングなどを体験させる中で、子どもの得意分野がわかってくるでしょう。おっとりしている性格だと思っていた我が子が、実は負けず嫌いだったなど、意外な発見もあるかもしれません。そして、子どもは楽しみながら自分の能力を高めていけます。〇子どもに自信がつく早期教育や習い事を通し、先生や親に褒められたり、時には失敗や困難を乗り越えたりすることで、子どもは自分に自信をつけていくことができます。また、小学校で習う前に平仮名や片仮名、漢字、足し算や引き算を学んでおけば、最初の段階で授業についていけずにつまずく、ということもありません。「私はできる!」という自信は、その後の学習意欲にもつながってくるのではないでしょうか。〇脳の働きに大きく影響子どもの脳の神経系は0~5歳の時期に最も発達すると言われています。そのため、早期教育を行う機関などでは、好奇心が旺盛で、脳が柔軟な子どものうちに教育を開始して脳を活性化することで将来も優秀な人間に育つ、という考えに基づいて行われています。行っていない子に比べて、高い基礎学力を身につけることができると言えるでしょう。早期教育のデメリット●インプット教育の弊害新しい情報を与えることはとても大切ですが、一方的に何かを教え込むインプット教育を続けていると、子どものやる気がダウンしてしまいます。「お母さんに教えてくれる?」など、アウトプットの機会をはさむことで、子どものやる気も学習効果もアップするようです。●自主性の抑圧早期教育はパターン化され、それに反応するという受け身の学習、訓練が多いと言われています。また、「早くできるように」と親が先回りして無理に教えたりすることも良くありません。子どもの自主性・創造性の領域の発達が抑圧され、受け身的になってしまう危険があります。子どもの自主性を育てるためには、親は過度な口出しをせず、失敗もつまずきも見守る姿勢をつらぬくことが大切です。●親同士の競争になってしまいがち「友達の××君が始めたから」「〇〇ちゃんはもうできるから」と他の子と比較し、子どもに過度の期待を押しつけないように気をつけないといけません。親の方が早期教育にハマり、「もっと早く、もっと正しく」と求めすぎると、子どもは精神的に追い詰められてしまいます。親自身がライバル心をコントロールできるようにしましょう。教育学博士・教育カウンセラーの諸富祥彦氏は、著書の中でこう書いています。早期教育をやるかどうか決めるときは、「お子さんの能力」よりも、子どもと親がいっしょに楽しんでできるかどうかを、真っ先に考えるべきなのです。お母さん自信が「誤りを許せない」完璧主義、「ほかの子と張り合ってしまう」ライバル心を抑えられないようなら、早期教育はおすすめできません。(引用元:諸富祥彦(2010),『女の子の育て方』,WAVE出版.)早期教育を始めるか検討の際には、これらのメリット、デメリットを踏まえた上で、お子さんに必要かどうかを判断するのが良さそうです。“教えない”という早期教育にも注目を「子どもが将来困らないように、できる限りの教育をするのが親の役目」「子どもの学力や将来は親から与えられた教育の質や量が影響する」そんな風潮から、我が子にも幼いうちから何かしてやらなければ、と思ってしまう方も多いのではないでしょうか。しかし、諸富氏によれば、子どもの教育において重要なのは、親が何かを「させる」ことばかりではない、とのこと。余計な手出し、口出しをしないこと、子どもの内的な成長をじっくりと見守るということも親の大切な役割のひとつだと指摘しています。人間には一人でいるときにしか起こらないある種の内面的成長があり、そのため、一人になって自分と対話する時間を持たず、絶えず外界からの刺激に身をさらしてばかりいると、想像力や創造性の発達が妨げられるのだそうです。また、共働きの保護者に向けた役立つ情報を提供している『日経DUAL』の記事内では、早期教育について取材した記者が次のように語っています。脳科学分野の権威である小泉英明さんは、「小さいうちにそういった“不自然な教育”に時間を取られて本来伸ばすべきことがおろそかになる」という状況を懸念していました。知育よりも、子どもの意欲を伸ばすことのほうがはるかに大切で、脳が内側から外側へと進化した人類の進化の順に照らし合わせ、「意欲」や「やる気」が関わる脳の内側をまず鍛えるのが一番なんだそうです。(引用元:日経DUAL|“教えない”早期教育を脳科学者らが勧める理由)様々な考え方がある早期教育。焦らずに、また周りと比べることなく、親子が納得して楽しめるものを探した先にあるのが“答え”なのかもしれません。文/鈴木里映(参考)マイナビウーマン子育て|「早期教育」はどのような教育法?その種類や実践する際の注意点などALL About|早期教育のメリット・デメリット日経DUAL|“教えない”早期教育を脳科学者らが勧める理由諸富祥彦(2010),『女の子の育て方』,WAVE出版ベネッセ教育情報サイト|インプットよりアウトプットで子どもは伸びる
2018年11月13日トップライター:中森かなめ1994年から毎年開催され、今年で25回目を迎えた『工学院大学わくわくサイエンス祭 科学教室』。今年の夏も工学院大学八王子キャンパスで開催されました。科学の面白さが体験できる多摩地域最大級の科学イベントに、娘(中1)といっしょに行ってみると、娘をひきこむ科学体験テーマがたくさんありました。サイエンスに対する意識が変わる!小学生のときから、理数系科目に苦手意識がある娘。学校の定期テストでは点数こそとれているものの、苦手意識は払しょくできずにいました。そんな娘に担任の先生は「授業で教科書とにらめっこして先生の説明を聞いているだけでは、理数系科目に対する意識は変わりませんよ。科学館や水族館などに行って、実際に自分の目で科学現象や動植物の生態を見てきたほうがいい」と助言をしてくださいました。先生から言われると「そうかも!」と思える素直さが娘のいいところ。さっそく夏休みに娘はお友だちと新江ノ島水族館を訪れ、水の中で暮らす生物を観察し、海や川の中にはいろんな生物が棲んでいることを楽しく学んできました。そして、夏休みも終盤にさしかかったところで、工学院大学で科学教室が行なわれると聞きつけ、誘ってみると「面白そうだね」との反応があったのです。紙で学ぶ、完成するまであきらめない気持ちこうして訪れた科学教室は、テレビのお天気キャスター気分を体験できる『お天気コーナー』や、自分だけのろうそくを作ってものが燃える仕組みを学ぶ『カラーアロマキャンドルをつくろう!!』をはじめ、84個もの演示テーマがありました。この中から、まず娘が興味を示したのが、建築を学ぶスタートとして紙を使ってモノづくりの楽しさを体験できる『紙から建築をまなぼう!』です。『紙から建築をまなぼう!』ブースでは、五重塔や自由の女神など、国内外の有名建築物を工作できました『紙から建築をまなぼう!』ブースで使うものは、“カッター”“カッターマット”“型紙”そして“完成するまであきらめない気持ち!”とあります(笑)。型紙に記されている実線をカッターナイフで切り、点線を山折りし、破線を谷折りすれば、折り紙建築ができ上がり。難易度中級レベルのエッフェル塔を選んだ娘は、作業に取りかかってしばらくして、「完成するまであきらめない気持ちは本当に大事!」と笑っていました。難易度中級レベルに挑戦し、根気よく作業を進める娘各ブースでは、大学生や大学院生、附属中高の生徒のみなさんが「教える側」として活躍していて、娘は建築学専攻の女子大学院生とお話しながら、作業を進めていきました。細かい作業は嫌いではないという娘の作業ぶりを見て、院生のおねえさんは「去年、大学の卒業制作で建築模型を作ったんですけど、わたしは細かい作業が苦手で……。助手として手伝ってほしかったな~」と、ほめてくれて娘もうれしそうでした。完成したエッフェル塔。細かい作業だったので、制作に1時間ほどかかりました身の回りのものは科学が関係している!?次に向かったのは『CAD/CAMとNC工作機械を操作してネームプレートを加工しよう』ブースです。実は、娘の祖父は長年工作機械メーカーで主に海外営業を担当していて、昨年引退したばかり。ここで工作機械と対面するのも何かの縁かもしれません。ネームプレートに加工する文字や大きさをコンピューターでデザインし、自分がデザインした名前の加工のようすや、工作機械に命令するプログラムをコンピューターの画面を見ながら確認した娘。コンピューターが加工しやすいように文字を削っていくので、漢字の書き順どおりに文字ができ上がっていくわけではないということが、娘には新鮮だったようです。大学生に教えてもらいながらコンピューターにプログラムしていきますその後、『チタン製のカラフルなしおりを作ろう』ブースで、化学実験をしつつ軽い金属製のしおりを作り、『缶バッジを作ろう』ブースでてこの原理を利用してオリジナルの缶バッジを作った娘。身の回りの物は、科学が関係していることが多いということを実感することができました。『チタン製のカラフルなしおりを作ろう』ブース。リン酸の液にチタンのプレートを浸し、電流を流すことでプレートの色が変化します娘が参加したプログラムのほかに、『巨大シャボン玉に入ろう』や『液体ビー玉を作ろう』など、興味深い科学体験テーマがたくさんありました。同イベントは毎年8月最後の週末に行なわれるそうなので、来年の夏休み前にウェブサイトをチェックしてみてください。中1の娘は、「小学生のときにこのイベントの存在を知っていれば、夏休みの自由研究にきたのに!」と悔やみつつ、工学院大学をあとにしたのでした。イベント情報施設名 工学院大学八王子キャンパス 住所 東京都八王子市中野町2665番地1 問い合わせ E-mailksec@sc.kogakuin.ac.jp電話042-628-4835 工学院大学Webサイト 中森かなめ(なかもりかなめ)東京都在住・40代夫と娘(中1)と3人暮らし。大学卒業後、出版社勤務を経て、渡仏。1年弱遊学した後、フリーランスライターとなる。結婚して出産後、しばらく休業するも、娘が5歳のときに復帰。現在も細々と執筆業に励む。
2018年11月07日今月の人。脳研究者・薬学博士池谷裕二さん1970年、静岡県生まれ。1998年、東京大学大学院薬学系研究科で薬学博士号取得。2002~2005年コロンビア大学客員研究員を経て、2014年より同学部教授。専門分野は大脳生理学。特に海馬の研究を通じて、脳の健康について探求している。文部科学大臣表彰 若手科学者賞(2008年)、日本学術振興会賞(2013年)、日本学士院学術奨励賞(2013年)などを受賞。著書に『記憶力を強くする』、『進化しすぎた脳』、『受験脳の作り方』、『パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学』、『脳には妙なクセがある』など多数。「ぱぴぷぺぽ」の音とカラフルな色と形の世界に赤ちゃんも大はしゃぎ!『ぽぱーぺ ぽぴぱっぷ』絵・おかざきけんじろう文・谷川俊太郎¥1200/クレヨンハウス谷川俊太郎さんの「あかちゃんから絵本」シリーズ。多彩な創作活動を展開するアーティスト、おかざきけんじろうさんの絵を見て、谷川俊太郎さんが文を書きました。「ぱぴぷぺぽ」の音に合わせて、ヘンテコなものたちがあっちこっちに……。赤ちゃんと一緒にパパ、ママも心地よい言葉のストレッチができます。読み聞かせのときは、大きく口を開けて、大きな声で読むのがポイント。「初めて手に取ったのは、長女が生まれて半年くらい経ったとき。ストーリーはなく、ただ“ぱぴぷぺぽ”の音と、原色っぽい色と形の抽象画で構成されているんですよ。この音と光!人間の原点というか、魂に直接触れちゃうようなイメージですね。赤ちゃんでもめちゃめちゃ反応します。たぶん500回じゃすまないくらい読んだので、うちの絵本はボロボロです。最初は読むのが大変だったけど、もう見なくてもぜんぶ言えちゃうくらい(笑)」音に敏感な詩人ならではのセンス読めばポーンと心地よく胸に入ってくる「私は絵本好きだという印象があるんでしょうね。まだ子どもがいない時から、学生さんが『先生、これ誕生日プレゼントです』って、よく絵本をプレゼントしてくれたんですよ。だから、むしろ大人になってから知った絵本が多いです。絵本って、もちろん子どもが読むのもいいけど、大人も楽しい。物語のように起承転結もいらないし、伏線を回収しなくてもいい。それって絵本だけに許された自由なんだと思います」脳研究者として、長年、さまざまな研究を続けるかたわら、脳について最先端の知見を老若男女、世界に向けて分かりやすく伝えている池谷裕二さん。私生活では現在5歳半の長女、2歳半の次女がいる、子育て真っ最中のパパでもある。「子どもがもっとちっちゃかった頃は、大脳生理学的に考えて、絵本を選んでいました。インパクトのある音や色が使われているなど、フィルターなく、子どもの脳にストレートにポンと届くもの。それ以外に、ひらがなだけで構成されているかどうかもチェックしていましたね。字を覚え始めの頃って、カタカナは読めないですから」まずは親が実際に声に出して読んだときに、子どもの耳にどう響くかが大事。その点、詩人の谷川俊太郎さんによる「あかちゃんから絵本」シリーズはさすがの完成度。中でも、池谷さんが一番好きなのが『ぽぱーぺぽぴぱっぷ』だ。「もともと谷川俊太郎さんの詩が好きで、『二十億光年の孤独』などの詩集は家の本棚に並んでいます。読むたびに、谷川さんの言葉のセンスって素敵だなと思っていたところに、この絵本。もはや言葉ですらない、音のセンスなんですよ。パピプペポだけで、こんなに表現できちゃうんだ!という感動。この作品自体が絵本というより、芸術ですね」最初のうちは噛まずに読むのが難しい。でも、何度も繰り返し読んでいるうちに、いつしかリズムよく、なめらかに読めるようになる。この爽快感ときたら!「子どものためというより、結局、私が好きなんですよ。子どもがいないときも、私ひとりで読んでいますもん(笑)。スラスラ読んでいると、気持ちが明るくなってきます。長女は今、妹に絵本を読んであげるのが好きで、この絵本も読み聞かせしているんですけど、やっぱりまだうまく読めず、悪戦苦闘しています(笑)」魅力的な絵本はいつだってイマジネーションを刺激してくれるこのところ、池谷さんの家の本棚に増えつつあるのが、ヨシタケシンスケさんの絵本。きっかけは、昨年出版されたヨシタケさんの育児マンガ『ヨチヨチ父—とまどう日々』を読んだことだった。「もうウケましたね。こんなおもしろい絵本作家さんが最近いらっしゃるんだと。その後、ヨシタケさんの絵本をたくさん買ったんですが、僕の中で自然に感覚がフィットするのが『なつみはなんにでもなれる』です。読み手のイマジネーションを刺激するというのは、絵本にとってすごく大切なことだと思っていて。この絵本の主人公の女の子のように、物マネ遊びをするって、まさにイマジネーションの世界に入ることなんです。何かの特徴を見つけて、工夫しながらマネして、相手に伝えようとする。そもそも“学ぶ”という言葉は“まねぶ”つまりマネをするというのが語源なんです。模倣することで、私たちは何でも学んでいく。だから、子どもの物マネって、学びの原点なんですよ」両手をウサギの長い耳に見立てて、うさぎのマネをするのだって、立派なイマジネーション。あらゆる動物の中で、自発的に他の動物の物マネをするのは人間だけなのだ。「反論もあるんですよ。たとえば『九官鳥だってマネしているじゃん』って。でも、あれは意味も分からず、音をコピーしているだけ。マネっていうのは違うんです。もっと広くて、ふくらみがある。マネすることによって、そこから発展していくものがいくらでもある、というのが本当のマネなんです」柔軟な視点を持つために常識をくずすことを子どもに教えたい池谷さん自身が影響を受けたメッセージ絵本として忘れられないのが、2001年に発行され、大ベストセラーになった『世界がもし100人の村だったら』。池谷さんが奥様と結婚する前、誕生日プレゼントに贈った思い出の本でもある。「妻とつきあい始めたのが、ちょうど2001年だったんです(笑)。世界を100人の村にたとえて、比較することで、日本がこんなに特殊な国なんだということが分かってハッとしましたね。当時は若造で粋がって、自分では視点をたくさん持っているつもりだったんだけど、これを読んだら、自分は何も知らなかったんだなぁと。反省するとともに、もうちょっと謙虚に生きなきゃいけないな、そもそも常識って何だろう?などと、いろいろ考えさせられました。私が本を書くときは、常識をくずすことをひとつの目標にしているんですが、そういうスタイルの原点になっています」池谷さんが自身の著書を通して伝えたいことは、やはり親として、子どもたちに伝えたいことともダイレクトにつながっている。「子どもって、何かものを見たときは『こうだね』って、すぐ言っちゃいますよね。そのときに『でも、そういう見方だけじゃなくて、こういう見方もあるよね』と、常に教えるようにしています。『君から見ればそうだけど、相手から見たら、こう感じるかもしれないよね』とか。そうやって、親子で会話するときに『あなたが信じている世界が正しいとはかぎらないよ』と伝えることを、長女が2~3歳の頃からずーっとやってきました。これがいいことか悪いことかは分かりません。だって、子どもだって、信念が必要でしょう。それをいきなり壊しているわけですからね。でもその声かけによって、娘は今、パッと何かを考えたときに、それに飛びつかないで、これってああかもしれない、こうかもしれないって、考えるクセがついています。まさにヨシタケシンスケさんの『りんごかもしれない』と一緒ですよ。だから、もしかすると変な性格になっちゃっている可能性もあるんだけど(笑)、娘が将来、柔軟な視点を持つために、すごく大切なことだと思うんです」[ 池谷さん、これもオススメ ]子どもの物マネは〝学び〟の原点子どもと親、それぞれの目線に共感『なつみはなんにでもなれる』作・絵ヨシタケシンスケ¥1000/PHP研究所人気の絵本作家ヨシタケシンスケさんがおくる、くりかえしが楽しいマネっこ絵本。なつみは「すごくいいことおもいついたよ!」と、お母さんのところにやってきました。そして、「なんのマネをしているか、あてるゲームだよ!」と問題を出します。毛布にくるまったり、手をグルグル回したり、いろいろなやり方で何かのマネをしていきますが、お母さんはなかなか当てられなくて……。親子のほのぼのとしたやりとりも見どころです。「子どもがごっこ遊びをする日常のシーンを描いた絵本ですが、初めて読んだときに大爆笑しました。最後まで、まともに読めなかった。笑っちゃって。女の子が一生懸命、アサリの物マネをする場面の可愛さなんて、もう(笑)。親から見ても、あぁ、子どもって、確かにこう!って、共感できる楽しさがありますね。長女は最近、毎日のようにこの絵本を読んでいます。それで妻のところに行って『これなーんだ?』ってやるんですよ(笑)」ラララン ロロロン♪心をつかむフレーズこんな魔法みたいな服があったら最高!『わたしのワンピース』作作・にしまきかやこ¥1100/こぐま社空からフワフワと落ちてきた真っ白い布で、うさぎさんがワンピースを作りました。出来上がったワンピースを着て、お花畑を散歩していると、ワンピースはいつしか花模様に。雨が降ってきたら、水玉模様に……。場面が変わるたびに、次々と柄が変わっていきます。1969年の発行以来、世代を超えて愛され続けているファンタジー絵本の名作。「うちの子はふたりとも女の子で、ワンピースが大好きなんですよ。この絵本のワンピースはさらに柄がどんどん変わっていくんですから、最高ですよね。一方、私がこの絵本に惹かれるのは、ララランロロロンという音の連続。読むと、頭から取れなくなっちゃう。特に意味はなくても、心をグッとつかむ力があるのがいいなぁって。作者が一文字一文字、練りに練った音のリズムと、豊かなイマジネーションの両方を兼ね備えた絵本ですね」子どもの想像力を刺激して、聴く力を育てる親子で聴きながら会話もはずむオーディオブック『お話、きかせて!聴く絵本 むかしばなし ベスト100』¥2700/パンローリング日本のお話からは『ももたろう』や『かぐや姫』、外国のお話からは『大きなカブ』や『三匹のこぶた』。イソップ、グリム、アンデルセンの三大童話も含め、本当に子どもに聴かせたい有名な昔話を集めて、100話にまとめました。子どもが集中して聴けるように、お話は1話5~10分程度。耳で聴くことで記憶に残りやすく、きれいな日本語を自然と学べます。「今、長女は〝耳で聴く絵本〟にハマっています。シリーズになっていて、500話くらい集めているところです。移動中の車の中や、夜寝る前の寝室で、毎日ずっと聴いているほど大好き。私も娘と添い寝しているので、一緒に聴いているうちに、世界中の昔話にすっかり詳しくなっちゃいました(笑)。娘も真剣に聴きながら、見たこともない昔の情景を子どもなりにちゃんと想像しているみたいです。『マッチ売りの少女』に出てくる『マッチって何?』と娘に聞かれたときは、後日、実物を手に入れて、目の前で火を点けてあげました」Illustration:Yuka HiiragiText:Keiko IshizukaComposition:Shiho Kodama
2018年09月22日専門家・プロ:渡邉純子(コドモット)第4回親子で科学館を120%楽しむ方法とは渡邉:科学館での体験をより豊かに、子どもの未来にいつか芽吹くようにするために、保護者ができることはありますか?持永:お子さんを連れてきたときに、保護者の方もいっしょに体験してほしいと思います。子どもだけに「やってごらん」とやらせるのではなく、保護者もいっしょにやってみる。そのときに「おもしろいね」と声をかけるだけでなく「なんでだろう」と子どもに伝えてほしいと思います。渡邉:なるほど!持永:そのときに保護者がしくみをわからなくてもいいんです。保護者が子どもといっしょに体験して、なんでこうなんだろうねと言えば、子どももただ楽しいだけではなく、なんでだろうと思ってくれるんです。その疑問は、その場で解決しなくてもいいんです。ただ、子どもには「なんでなんだろう」という気持ちをもって帰ってほしいんです。そうしたら、いつかどこかで発見があるかなと。「あのときの“なんで?”の答えはこれだ!」というように。「なんでだろう」と子どもに伝えてほしいと話す持永館長持永:だからわたしは、子どもたちが帰るとき、「科学館で体験したことは科学館で終わりにしないでね」と言っています。身近なところにいろいろな科学があるから、自分なりの科学を発見してほしいというメッセージを毎回伝えるようにしているんです。渡邉:子どもが科学館から家に帰ってきて、体験したことや得た知識を家族に話しているようなとき、どんな態度をとるのがいいのでしょう。持永:子どもを先生にするのがいいと思います。子どもが科学館でなにか学んできて、話したそうにしている状況のときは、保護者は「ちょっと教えて」という姿勢で聞くのがいいと思います。そうなると子どもは得意になって話しますので、自分はそのことにくわしいんだと自信をもつ。そうするとその分野がちょっとでも好きになる、という流れができますので。渡邉:その後、その子がたとえばカブトムシをすごく好きになって、もっと知りたいと思ったけれど、イベントはもう終わってしまっている。そういうときに、保護者は次のイベントを探したりするほかに、どんなことをしたらいいでしょう。持永:イベントをやっていなくても、まずは科学館に聞いてみるといいと思います。渡邉:それはおどろきです。「カブトムシのこういうことについてくわしく教えてください」なんて、科学館に聞いていいものなんですか?持永:たとえば、プラネタリウムでは、実際に星空を見たいのだけれどどこに行けばいいの?とよく聞かれますし、昨日の夕方、空にすごく明るい星があったけれど、あれはなんですか?なんて電話もあります。そんなふうに、なにか疑問があったら、科学館に聞いてみる。そこでは解決しないかもしれませんが、こういう施設があるから聞いてみたらどうかとか、こちらの施設に行くとこんな体験ができるかも、といった答えが得られるかもしれません。渡邉:科学知識の普及が目的の科学館だからこそ、そういう疑問にこたえてくれるんですね。施設によって対応が違うかもしれませんが、まずは足を運んだ科学館にもっと聞いてみたら、なにか新しい情報が得られそうです。科学館には近隣の科学展示などのチラシが置いてあることもさて、長い休みなどを利用して、1日科学館ですごすとしたら、どんなプランがオススメですか?持永:大きい科学館だと回っているだけで1日すごせるところもありますが、わたしたちのような小さい科学館では、来るまえに情報を調べておくといいと思います。どういう順番で行けばなにが体験できるのか調べたり、イベントやワークショップの受付時間や、お目当てのプラネタリウムの投影時刻といったことを、ぜひホームページで調べてみてください。渡邉:先着順とか、開催時間が決まっているものを事前に調べておけば、足を運んだけれど体験できなくて残念ということがなくなりますものね。最後に、理想として、小学生にはどんなふうに科学館とつきあってほしいと考えているか、お聞かせください。持永:理想としては、科学館を、ただ遊びにくる場所ではないと意識してほしいと思います。ただ楽しいだけの場所ではなく、なにかがある場所ということに気付いてほしいなと思います。ほかにも興味が出たら、別の場所にも行ってステップアップしてほしい渡邉:そのなにかというのは、科学的な気付きだったり、知的好奇心をくすぐるものだったりするわけですね。持永:そうです。そこに気付いてほしい。そして、気付いた子には別の場所に行って、さらにステップアップしてほしいです。わたしはプラネタリウムで解説していたとき、プラネタリウム好きの子どもになってほしくないと思っていました。もう1回プラネタリウムに行きたい、それはそれでうれしいことですが、次は空を見に行ってほしいと思っていました。これちょっと不思議だな、なんでなんだろう、と気付いて、ほかにどんなことがあるのかなと興味が出たら、ほかのところに行ってみてほしいですね。渡邉:保護者が自分だけでその気付きを広げるのが難しそうだったら、科学館の人に聞けばいいのですね。とても力強く背中を押してもらったように感じました。本日は本当にありがとうございました。第1回科学館ってどんなところ?第2回科学館展示の舞台裏第3回イベントや実験教室で、もっと科学にふれる第4回親子で科学館を120%楽しむ方法とは板橋区立教育科学館科学に関する知識の普及・啓発を推進し青少年の健やかな成長をはかること、科学情報・教育情報を集めて学校教育・社会教育の充実に貢献することを目的に設立された東京都板橋区立の科学館。株式会社学研プラスが指定管理者となり運営している。2018年9月に開館30周年を迎える。■板橋区立教育科学館ウェブサイト渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)株式会社コドモット代表取締役社長。NTT在籍時代の2001年、子ども向けポータルサイト「キッズgoo」を立ち上げ、同サイトでデジタルコンテンツグランプリ・エデュテイメント賞受賞。独立後は小学生向けのコンテンツを中心に、企業の子ども向けWebサイトや公共団体の子ども向けツールなどの企画制作を数多く手がける。一男一女の母。
2018年08月31日専門家・プロ:渡邉純子(コドモット)■第3回イベントや実験教室で、もっと科学にふれる渡邉:板橋区立教育科学館のイベントでは、どんなものに人気がありますか?持永:展示や体験、イベントと、さまざまなバリエーションがありますが、プラネタリウムは人気がありますね。また、さまざまなテーマで科学教室を行なっていますが、カブトムシが自然のなかにいるような標本づくりをする、ジオラマづくりの体験教室は大人気です。ロボットプログラミング教室も非常に人気があります。小学校4年生から参加できるので、4月の募集では4年生になった子が一気に応募してくれて、定員の10倍以上の応募がありました。ロボットプログラミング教室ではレゴ®マインドストームを使い、作成したプログラムでロボットを動かす昨年のワークショップでは「スライムを作ろう」が人気でした。そのワークショップでも、ちょっと工夫をしまして。スライムは洗濯のりとホウ砂で作るんですね。洗濯のりにホウ砂水溶液(もしくはホウ砂を溶かした液)を容器から3回プッシュして入れるとスライムができるように、量や濃度などを調整しておいたのですが、そのホウ砂水溶液(もしくはホウ砂を溶かした液)を、色ちがいで3色用意したんです。そうすると、3つの色の組み合わせによってさまざまな色のスライムができるので、子どもたちが山のように来てくれました(笑)さまざまな色のスライム渡邉:物質の変化と色の変化、両方を体験できるんですね。それはおもしろそうです。科学教室のカリキュラムを作るまでにはどんな工程があるのでしょうか。持永:まず、なにをテーマに教室をやるのかを検討するところから始まります。板橋区立教育科学館にはさまざまな科学的知識をもった科学指導員が集まっているので、いろいろな案を出していきます。そして、テーマが固まったら、そこにある科学的な要素をどういうふうに子どもに伝えればいいのかを考えます。渡邉:たとえばカブトムシのジオラマを作る教室であれば、どんな科学的要素があるのですか?国産カブトムシのジオラマ標本持永:そうですね、体の構造とか、オスとメスのちがいとか、どういう生態なのかとか、木のところでなにをしているのか。オスとオスの組み合わせだと闘いの場面になるけれど、オスとメスを配置するのであればまた違う場面になる。そういったことを反映してプログラムを作っていきます。ただ標本を作るだけだと、工作教室になってしまうんです。そして、そういった科学的要素が子どもたちにどうすればよりよく伝わるのかを考えて、カリキュラムを組んでいきます。渡邉:それはトークで入れたり、説明書をつけたりして伝えるのですか?持永:そうです。授業のような型式になるので、どういう画像や映像を見せるか、どういう話をどのタイミングですると子どもたちが興味をもつのか、そこにはかなり工夫を凝らしています。たとえば、事前準備に鍋で煮る工程があれば、科学指導員に魔女のかっこうをさせて写真をとったりとか(笑)、子どもたちが「えっ」って思うような要素を入れたりもします。そんなふうに、まじめな要素とちょっと楽しめる要素を入れながら作り込んでいきます。渡邉:伝えるところにも、さまざまな工夫が込められているんですね。持永:科学指導員の仕事のメインは「伝える」という部分ですからね。科学指導員の仕事のメインは「伝える」ことだと話す持永館長持永:かっこよさも大事な要素です。以前、「レアメタルの結晶を作ろう」というプログラムで、ビスマスという物質の結晶を作ったんです。これがものすごい人気でした。どうしてこんな結晶ができるのかを考えていくとけっこう難しい内容なのですが、まずは見た目がきれいでかっこいいということで興味を引くんですね。見た目から入っても、それで興味をもってくれればいいと思うんです。見た目がきっかけで「おっ」と思ってもらえれば、こちらのもくろみが成功したということなんですよね。さまざまな色に輝くビスマスの結晶渡邉:ほかに大切にしている要素はありますか?持永:楽しさですね。たとえば「ティラノサウルスのひみつをさぐろう」という教室では歯の化石のレプリカを作るんですが、当館では、科学教室で作ったものをなるべく持ち帰れるようにしています。この場所で実験や製作を体験して終わりではなくて、体験したものを持って帰れば楽しいですし、子どもが「あのとき、これを作った」と覚えていてくれるので。渡邉:成果物があれば、作ったときのプロセスも思い出しやすくなるので、家族で体験したことを共有できますし、会話もできますね。科学的要素を盛り込んで、子どもたちに適した方法で伝え、楽しさと成果物をおみやげとしてもち帰ってもらう。教室やワークショップには、科学館ならではの取り組みがたくさん盛り込まれていました。最終回となる次回は、親子で科学館をめいっぱい楽しむためのコツを聞きます。※紹介されている各教室の募集は終了しました。第1回科学館ってどんなところ?第2回科学館展示の舞台裏第3回イベントや実験教室で、もっと科学にふれる第4回親子で科学館を120%楽しむ方法とは板橋区立教育科学館科学に関する知識の普及・啓発を推進し青少年の健やかな成長をはかること、科学情報・教育情報を集めて学校教育・社会教育の充実に貢献することを目的に設立された東京都板橋区立の科学館。株式会社学研プラスが指定管理者となり運営している。2018年9月に開館30周年を迎える。■板橋区立教育科学館ウェブサイト渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)株式会社コドモット代表取締役社長。NTT在籍時代の2001年、子ども向けポータルサイト「キッズgoo」を立ち上げ、同サイトでデジタルコンテンツグランプリ・エデュテイメント賞受賞。独立後は小学生向けのコンテンツを中心に、企業の子ども向けWebサイトや公共団体の子ども向けツールなどの企画制作を数多く手がける。一男一女の母。
2018年08月24日子どもへの声かけを学ぶ!『発達障害とグレーゾーン子どもの未来を変えるお母さんの教室』発達障害のグレーゾーンのお子さんがいるお母さんに、具体的なシチュエーションを想定して、肯定的な言葉がけができるテクニックや好ましくない行動をされたときの対応などをその理由とともに解説しています。幼少期に「体が弱く、手のかかる子」だったという著者の吉野加容子さん。自己肯定感が低かったそうですが、「苦しいよね。よく頑張ってるよ」と声をかけられてから、心が軽くなる経験をし、コミュニケーションや声かけの大切さを知りました。吉野さんは発達科学コミュニケーショントレーナー、臨床発達心理士。特別支援教育や発達心理学を学び、脳科学の研究を行っています。本の中では、「まずは3ヶ月やってみる」というスモールステップが設けられているので、始めやすいかもしれません。15年ほど発達支援に関わっていた吉野さんが、頑張るお母さんの気持ちに寄り添って声かけのアドバイスをくれます。(発行: 2018/7/1)子育ての気持ちが楽になるヒントを一問一答で!『「ウチの子、発達障害かも?」と思ったら最初に読む本』約20年にわたり、3,000人もの発達障害のある人と接してきた横須賀市療育相談センター所長で小児精神・神経科医の広瀬宏之先生の著書です。この本は、「発達障害かも?」と疑問を持ったり、発達障害の診断を受けて間もない子の保護者に向けられています。「診断されたら、何をしたらいいの?」「子どもの障害を受け入れるのがつらい」「保育園や幼稚園、学校にはちゃんと行けるの?」など、多くの保護者がぶつかる疑問や不安に対して、一問一答方式で、特性や困りごとへの対応などを紹介しています。1つの質問に対しての解説は1〜2ページにまとめられているので、気になる部分を中心に読み進められます。知らないことが多いと不安も多いですが、あらかじめ困りごとへの準備ができたり、先のことが分かると、いざというときに落ち着いて対応ができるようになりそうですね。(発行: 2018/7/10)保育者向け雑誌から発達障害の特集が登場!『PriPri特別編集発達支援「困った!」を抱える子の保育』これまで保育者向けの雑誌「PriPri」の中で数ページを使って連載してきましたが、10年の連載を経て現場からの強い要望から発達支援に特化した一冊として登場しました!子どもの困りごとの例やその対応をはじめ、園内研修向けの"困りごと擬似体験"の方法など、保育者が発達障害のある子どもに寄り添えるようなコンテンツがまとめられています。また、保護者と連携したサポートなども提案。巻末には幼稚園の指導計画の事例などもあり、実践のヒントになりそうです。同時に、食事やトイレの生活習慣をうながす絵カードの使い方も紹介されているので、さまざまな場面で活用したいですね。ほかにも、保育のノウハウだけでなく、特性を生かし、15歳でコーヒー焙煎士の道を選んだ岩野響さんや家族のインタビューなど、さまざまな内容が盛り込まれています。(発行: 2018/6/28)子どものころからの苦しみを救った自分へのメッセージ『ヘン子の手紙 発達障害の私が見つけた幸せ』自分と夫に宛てた作文「ヘン子の手紙」が第51回NHK障害福祉賞で最優秀作品に選ばれ、その後テレビでドキュメンタリーが放送されるなど話題になった著者・伊藤のりよさんの著書です。発達障害のある2人の子どもを育てる中で、36歳で自分にも発達障害があることに気づいた伊藤さんが、これまでの人生をつづっています。大人に怒られることが多かった子ども時代、生きる意味を見出せなくなったほどの特性による生きづらさ、葛藤もありのままに振り返っています。伊藤さんは生きづらさが発達障害のためだったと分かり、ホッとしつつも、対処が分からず精神的に追い込まれてしまいました。そこで自分への手紙を書いたことで抱えていたものと向き合うことができたそうです。発達障害のあるなしに関わらず、読む人が今の自分を見つめ直すことができる一冊です。(発行: 2018/7/31)医師であり発達障害当事者の著者が解説『自分の「人間関係がうまくいかない」を治した精神科医の方法』30代半ばにアスペルガー症候群とADHDがあると気づいた精神科医の西脇俊二さんが、自身の経験などから人間関係に悩みがある人へ解決のヒントを集めた本です。「なぜか相手をいつも怒らせてしまう」「学校や職場など、集団での生活が苦痛」といった悩みがある人に向けて、自身が行って改善があった対処法などを紹介しています。また、「人間関係がうまくいっていない人」とのコミュニケーションのポイントもシチュエーション別にまとめられています。当事者と夫婦や友人、部下、上司といった立場で関わりがあり、悩みを抱えている人も参考になりそうです。コミュニケーションにとらわれず、好きなことにのめり込むことで、社会に影響を与える仕事ができたり「特性は悪いことばかりではない」というメッセージも。自分がつまずいた経験があるからこその視点が詰まっています。(発行:2018/7/25)
2018年08月08日いつもの旅に少しの工夫を加えることで子どもの成長をうながす「旅育」。 『家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ 旅育BOOK』 (日本実業出版社)の著者で旅行ジャーナリストの村田和子さんに、前回は、旅のプラン作りや準備のコツについてお聞きしました。今回のテーマは、旅先での旅育。持て余しがちな移動時間はどう過ごしたらいいのか、親はどう関わったら良いのか、旅の思い出を定着させるテクニックなどをうかがいました。お話をうかがったのは…村田和子さん旅行ジャーナリスト。1969年生まれ、1児の母。子どもが生後4カ月の時に家族旅行を開始し、9歳までに47都道府県を制覇。『All About』では2001年からガイドを務めているほか、『週刊文春』では子連れ旅行の連載、JALサイトの『初めての子連れ海外』ページを監修・執筆するなど、家族で旅をする魅力やヒントを多方面で伝え、2013年には子どもの生きる力を育む「家族で旅育メソッド」を発表。子どもが旅育を実践し中学入試で志望校に合格したことを機に『プレジテンドファミリー』『AERA with Kids』『日経DUAL』をはじめ雑誌・新聞・ウェブで注目を集める。 「家族deたびいく」 運営。旅行業務取扱管理者・クルーズコンサルタント。 ・公式ホームページ(トラベルナレッジ) ■話す・遊ぶで“退屈”を吹き飛ばす「移動時間」――子連れにとって、移動時間は大きな課題です。私自身、6歳息子と出かける時は、一緒に遊んであげなきゃと思いつつゲームやタブレットに頼ってしまうことがあります。村田和子さん(以下、村田さん):ゲームをやること自体は悪くないんですよ。大人がスマホをさわっているのに、子どもにだけ「ゲームをしちゃダメ」というのは説得力がないですしね(笑)。事前に「最初の30分は自由時間にしよう。ゲームをしてもいいし、ママもスマホを見るね。でもその後の30分はお話しようね」というように、時間を区切り、ちゃんとできたらほめれば、それも成功体験になります。最初、一緒にルールを決めると、子どもは案外守れるものですよ。一番避けたいのは、子どもが騒いだらゲームを渡す、というやり方。騒げばゲームができるんだとなり、負のスパイラルにはまってしまいます。そもそも、移動中は家族が一緒に過ごせる貴重なチャンスなんです。ふだんは聞けない学校や園での様子も、旅の楽しい雰囲気に押されて話してくれるかもしれません。会話だけではなく、小さなお子さんは簡単なクイズやしりとり、計算ができるお子さんなら車のナンバーで足し算クイズなどをすると、遊びながら自然と学びにつなげられます。■子どもの新しい一面を発見できる「旅の目標」――移動は大変というマイナスイメージを持つよりも、旅育に活用するといいんですね。旅先ではどう過ごすと、より効果的なのでしょうか村田さん:なにか目標を持たせるといいと思います。未就学児なら、「元気にあいさつをする」「自分の荷物は自分で持つ」といった約束をして、ちゃんとできたら具体的にほめてあげる。すると「できた」という成功体験が心に刻まれ、自己肯定力が養われていきます。旅先では親以外にも、仲居さんや施設のスタッフ、通りすがりの人など、いろいろな人がほめてくれる機会も多くあります。それまで気づかなかった子どもの長所をほめてもらえることもあり、親にとっても発見があります。小学校中学年以上なら、会計係を任せる、時刻表を調べてもらうなどの役割をお願いするのも良いでしょう。考える力がついて学習に役立つほか、頼られることで自主性と責任感が身につきます。――親として、何かやるべきことはあるのでしょうか。村田さん:子どもの「なぜ?」「なに?」にはとことん付き合うこと。今はスマホで一緒に調べればすぐにわかりますし、「どうしてだろうね?」と子どもが自ら考える時間を持つ方法もいいでしょう。旅行中は時間に余裕がある分、子どもの小さな疑問や好奇心を見逃さないようにしたいですね。帰宅後にも図鑑で調べたり、博物館に足を運んだりして、学びを深めるのも良いと思います親自身が興味を持って旅を楽しむことも大切です。例えば、めずらしい料理が出てきたら、スタッフの方に「これはなんですか? この土地のものですか?」と聞くのもいいでしょう。子どもは親をよく見ていて、親のマネをします。親のそういった姿に、子どももやる気になるものです。 ■旅の記憶を定着させる旅先からの「絵ハガキ」――旅行中はとても楽しそうだった子どもが、数日後にはすっかり忘れて日常に戻ってしまう。仕方がないのかもしれませんが、もったいなく感じてしまいます。村田さん:子どもの毎日は刺激の連続ですから、放っておくと忘れてしまい、がっかりということもありますよね。私が実践しているのは、旅先から1枚の絵ハガキを送ること。後日届いた絵ハガキを見ながら「これ見たね」「こんなことしたね」と会話をすることで、旅の記憶が定着していきます。絵ハガキは場所を取らないので、保存しやすいのもメリットです。最初はハガキからはみ出しそうな字でひらがなしか書けなかった息子が、だんだんと漢字を交えた長文を書けるようになり、思春期になると面倒がってひとことコメントだけになる(笑)。子どもの成長がダイレクトに残るので、後で見返すと面白いですよ。■中学受験直前まで続けた「週末旅行」――小さな頃から旅育を続けると、家族の思い出も増えていくわけですね。わが家は子どもが小学生になり、旅が難しくなったと感じてします。未就学児のうちに、もっと行っておけばよかったと後悔しています。村田さん:小学生になると、どうしても週末限定になってしまいますよね。わが家の場合、金曜の夕方に出発して日曜に戻ってくる、というパターンが定番でした。学校のスケジュールを見ながら、テストや行事に影響が出ない日程を選ぶので、旅行を決めるのはいつも直前でしたね。それでも、中学入試の直前まで毎月1回のペースで行き続けていました。――入試の直前まで! 試験前は勉強に集中させる家庭が多いなか、変わらずに旅を続けられたんですね。村田さん:私は「旅育からの中学受験」と呼んでいるのですが、息子は小学5年生までは塾に通わず、旅で得た経験をベースに学びを深めていました。小さい頃から地図を見ながら旅をしていたので、日本地図は学校で習う前から頭に入っていましたし、その土地の産業や気候といった知識も体験とひもづけて役立ったようです。小学校中学年からは、教科書に載っている史跡や絵画などを見に行く旅も、子どもの興味に応じてしていました。こうした体験は、単なる暗記ではなく、本質的な学びにつながります。――旅育で育った息子さんは現在17歳。息子さんご自身は、これまでの旅についてどう言っていますか?村田さん:人と出会い、いろいろな体験ができたことがためになったと言っています。特に、素晴らしく美しい料理を作るシェフ、知識豊富で話上手なバスガイドさん、カツオをさばいてタタキにする方法を教えてくれた漁師さんなど、その道のプロフェッショナルとの出会いが印象的だったようです。旅で身につけた力は、子どもにとって一生の財産となります。息子は17歳になり、旅育の経験を生かして、自ら人生を切り開く次のステージになりました。今までの経験から得た旅育の魅力やノウハウを、次世代の親御さんをはじめ多くの方に伝えたいと思い、 『家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ 旅育BOOK』 を執筆しました。多くの方が旅育を実践するきっかけになればうれしいです。また、私も旅育の環境整備など、今後もライフワークとして「旅育」に関わっていきたいと思います。親子で旅をできる時間は案外少ないもの。筆者も荷物運びを手伝ってくれたり、6時間のトレッキングを達成したりと、成長していく息子の姿に旅の力を実感しています。家族それぞれの形で、旅育に挑戦してみてはいかがでしょうか。参考図書: 『家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ 旅育BOOK』 (日本実業出版社)村田和子著 1,512円(税込) 旅を通じて子どもの脳を刺激し、自立心や感受性、行動力、考える力などを育む「旅育」。旅行ジャーナリストの村田和子氏が十数年の親子旅の経験をもとにした旅育の5つの基本メソッドと、実践するための25のヒントを紹介する。47都道府県の親子旅を経験した著者が選ぶおすすめスポットやモデルコースに加え、星野リゾート代表・星野佳路氏に聞いた「子どもにとっての旅の効果・効能」、茂木健一郎先生の旅×脳コラムなども掲載。取材・文/まちとこ出版社 渡辺裕希子
2018年08月02日旅を通じて子どもの心と脳を育てる「旅育」。家族旅行はもちろん、帰省や日帰りのレジャーも、子どもを大きく成長させるチャンスです。特に、言葉を理解し始める3歳頃から基礎的な脳が出来上がる9歳頃までは、旅育のゴールデンエイジだといいます。現在、6歳の息子を持つ筆者も旅育を実践中。そこで、 『家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ 旅育BOOK』 (日本実業出版社)の著者で、旅行ジャーナリストの村田和子さんに旅育についてお話をうかがいました。お話をうかがったのは…村田和子さん旅行ジャーナリスト。1969年生まれ、1児の母。子どもが生後4カ月の時に家族旅行を開始し、9歳までに47都道府県を制覇。『All About』では2001年からガイドを務めているほか、『週刊文春』では子連れ旅行の連載、JALサイトの『初めての子連れ海外』ページを監修・執筆するなど、家族で旅をする魅力やヒントを多方面で伝え、2013年には子どもの生きる力を育む「家族で旅育メソッド」を発表。子どもが旅育を実践し中学入試で志望校に合格したことを機に『プレジテンドファミリー』『AERA with Kids』『日経DUAL』をはじめ雑誌・新聞・ウェブで注目を集める。 「家族deたびいく」 運営。旅行業務取扱管理者・クルーズコンサルタント。 ・公式ホームページ(トラベルナレッジ) ■3歳~9歳が「旅育」のゴールデンエイジ――村田さんは、現在17歳の息子さんが生後4カ月の頃から親子旅を始め、9歳までに47都道府県を制覇されたと聞きました。当初はまだ、子連れ旅行が一般的ではない時代ですよね。村田和子さん(以下、村田さん):「小さな子どもを連れて旅行なんてとんでもない」とよく言われましたし、施設側も子連れを受け入れる体制が整っていませんでした。その点、今は子ども向けの施設やプランが充実した宿がたくさんあり、新幹線や飛行機などのサービスも行き届いています。親子で旅に出るには、絶好の時代だと思いますよ。――確かにそうですね。私は5年前から親子旅を始めたのですが、おいしそうな離乳食やキッズミールがあったり、キッズルームや子ども向けのイベントが用意されていたりと、レベルの高さを感じます。村田さん:それに、子どもにとって旅に出ることの重要性は増していると感じます。昔に比べて、今の子どもたちの世界はかなり狭い。子どもたちがふだんふれあう大人は、親御さん、幼稚園や学校の先生、習い事の先生、友だちのお父さんお母さんくらいではないでしょうか。子どもは自分が知っている世界が社会のすべてだと考えがちなので、日常で自分の居場所が見つけられないと悩んだり、自暴自棄になったりする危険性があります。実際、私の息子も、男の先生にほめられて自信になっていた「朝の元気なあいさつ」を、小3になり先生が変わった途端「そんなに大きな声を出さなくて結構です」と言われたことで混乱。旅先でもあいさつができなくなってしまったことがあるんです。「これまでに、たくさんの人に元気なあいさつをしてきたけれどどうだった? そうだよね? 笑顔で返してくれた人やほめてくれた人が多かったよね? 担任の先生は価値観が違うかもしれないけれど、ママはすてきだと思うよ」と話し合って解決したんですが、子どもにとって学校や先生の影響がいかに大きいかを思い知らされました。――それは辛いですね。でも、息子さんがすぐに納得してくれたのは、やはり旅を通じて多くの人や価値観とふれあった経験が大きいんでしょうか。村田さん:そう思います。息子はいかにも社交的で目立つという感じではないんですが、さまざまな地域で暮らす年代も異なる多様な人々との交流を通じて、懐の深い人間に育っていると感じます。また、旅のトラブルを乗り越えた経験などから、何事にも「手をつくせば、なんとかなる」というタフさや、臨機応変に対応する力は身についたと思います。今の子どもたちが生きてくのは変化の時代ですから、旅育は大いに役立つと考えています。――受験勉強だけできればいい、という時代ではないですものね。子どもたちが成長する頃、「生きる力」がますます重要になっていると実感しています。村田さん:私が提案している「旅育メソッド」では、生きる力を「自己肯定力・コミュニケーション力・知恵を育む力」の3つと定義しています。旅育で一番大切なのは、親子のコミュニケーションです。親のちょっとした心がけや働きかけで、この3つの力はぐんと伸びていきますよ。特に、言葉を理解し始める3歳頃から、基礎的な脳が出来上がる9歳頃までは旅育のゴールデンエイジですから、積極的に旅に出ることをおすすめします。――そうなると、赤ちゃん時代に旅に出ることはあまり意味がないのでしょうか? 確かにうちの息子も、小さい頃の旅はまったく覚えていません。村田さん:旅にはリフレッシュ効果もあります。親御さんが旅でストレスを解消して、ゆとりを持って子育てをできるのは、子どもにとって大きなメリットだと思います。また、小さな頃の旅は忘れてしまうので意味がないのでは? と思いがちですが、本の中で脳科学者の茂木健一郎先生が解説してくださったように、記憶には残らなくても、子どもが成長した時、ものの見方や行動に影響を与えると考えられています。 ■「どこに行くか」より「何をするか」――周囲のママたちに旅育をすすめると、「楽しそうだけどお金がかかりそう」と言われることが多々あります。村田さん:旅というと、どうしてもぜいたくなイメージがあるのかもしれません。でも、近場の日帰りレジャーやイベントに出かけるだけも旅育はできるんですよ。ネットで検索すると、子連れ向けの施設やイベントはたくさん見つかります。肝心なのは「どこに行くか」ではなく「何をするか」。特にお子さんが小さいうちは、無理をして遠出をしなくても大丈夫。日常と違う経験をすることは、それだけで子どもの脳に刺激となります。――小さな子を連れた旅やおでかけでは、公共の乗り物や施設で迷惑をかけないか心配、という声もよく耳にします。村田さん:小さくても旅をする仲間ですから、「どうせわからないだろう」と子ども扱いしないことが大切だと考えます。私は写真や地図を見せて「これからこの場所に行くよ」「電車に◯時間乗るよ」「眠りたい人もいるから、静かにしていようね」などと説明していました。そして、上手にできたら「頑張れたね! えらいね!」と認めてあげると、子どもにとって成功体験となります。「電車に何分乗るから、その間は何をして遊ぼうか」と相談しながら、子ども自身が持ち物を用意するのもおすすめです。――自分で用意をさせると、自主性が身につきそうですね。でも息子が3歳の頃にリュックに入れるおもちゃを選ばせたら「全部持っていく!」と言い張り、荷物がパンパンになってしまった経験があります(笑)。村田さん:3歳くらいだとまだ自分では気がつかないことも多いので、「全部使って遊ぶ時間あるかな?「持てる? ちょっと背負ってみようか。自分でずっと持つんだよ?」と親が助言してあげたほうがいいでしょうね。ただ、可能な限り、最終的には本人の判断に任せるのが良いと思います。自分で言い出したことに責任を持つのも大事ですし、失敗から学ぶことも多いと感じます。■未就学児&低学年「旅育プラン」3つのアイデア旅育のモデルプランは無数にあり、どんなプランがいいのかは子どもの個性や発達によってさまざま。「小学校中学年以上の子どもなら話し合いで決めるのも旅育の一環となりますが、小さいうちは親がナビゲートする必要があります」と村田さん。そこで、プラン作りのヒントとなる3つのアイデアを教えていただきました。1.テーマを決めてとことん追求する!子どもが興味を持っていることをより深めていくことで、探究心や集中力が育ち、自信にもつながります。例えば、電車好きの子どもなら鉄道博物館に行く、ユニークな観光列車に乗ってみる、鉄道会社のスタンプラリーに参加するなどの選択肢があります。食べることが大好きなら、フルーツ狩りや食品メーカーの工場見学もいいでしょう。「これといって興味を持っていることが見当たらない、というお子さんは、親の趣味から子どもの成長に合ったものを選んで、お子さんに提案してもOKです。ただし無理強いは禁物。もし子どもが興味を持てないようなら、違うプランを試しましょう」(村田さん)2.親子でいっしょに「初めて」を体験!人生経験が豊富な親は、つい「上から目線」で子どもに接してしまいがち。「親も子もどちらにとっても初めての体験なら、同じスタート地点に立つことができ、親子の連帯感が育まれます。例えば、見たことがない花や動物を見に行ったり、専門家のもとで簡単なトレッキングやアクティビティに参加してみたりといったプランがおすすめですよ」(村田さん)子どもにとって、初めての体験は深く心に残るもの。小さいうちから親子で、たくさんの“初めて”に挑戦してみましょう。3.家族で別々に過ごす時間を作る!旅行中に親子別々の時間を作ってみましょう。子どもは、ホテルにあるキッズクラブや子ども向けの自然体験教室などに参加。親と離れて何かに挑戦することで子どもは一気に成長し、再会した際には「こんなことをしたんだよ」と家族の会話が広がります。「もし、旅先にキッズクラブや自然体験教室などがなく、子ども1人で参加できる環境が整わないなら、ふだんとは違う家族の組み合わせで行動するのもいいですね。例えば、ママと一緒に過ごすことが多い子どもは、パパやおばあちゃんと一緒、ママはひとりなど、いつもと違う組み合わせで行動すると、意外と発見もあり、うまくいって楽しめることが多いんですよ」(村田さん)自分の子どもはどんなことに興味があり、どんな力を身につけさせたいか。上記を参考に、ぜひプラン作りに挑戦してみましょう。次回は、旅育の実践編として、旅先での過ごし方をお教えします。参考図書: 『家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ 旅育BOOK』 (日本実業出版社)村田和子著 1,512円(税込) 旅を通じて子どもの脳を刺激し、自立心や感受性、行動力、考える力などを育む「旅育」。旅行ジャーナリストの村田和子氏が十数年の親子旅の経験をもとにした旅育の5つの基本メソッドと、実践するための25のヒントを紹介する。47都道府県の親子旅を経験した著者が選ぶおすすめスポットやモデルコースに加え、星野リゾート代表・星野佳路氏に聞いた「子どもにとっての旅の効果・効能」、茂木健一郎先生の旅×脳コラムなども掲載。取材・文/まちとこ出版社 渡辺裕希子
2018年07月26日赤ちゃんが生まれると、育児に家事に奔走するママたち。悪気がないのはわかるけれども、そこに追い打ちをかけるのが、夫の行動ですね。「子どもを早く寝かせたいのに、仕事から帰ってくるなりテレビをつけてしまう」「家事をしたいのに、子どもの面倒を見てくれずスマホばかり見ている」などママたちのイライラは募る一方…。つい文句を言ってしまって夫婦げんかになることはありませんか?子どもが生まれる前はけんかをしない仲良し夫婦だったのに、なぜ産後はけんかが増えるのでしょうか? 脳研究者で自身も子育て中の池谷裕二先生にお話をうかがいました。池谷裕二先生 プロフィール研究者、薬学博士。東京大学・薬学部教授。専門は神経科学および薬理学で、脳の成長や老化について研究している。『海馬』(新潮文庫)、『進化しすぎた脳』(講談社ブルーバックス)など著書多数。近著に『パパは脳研究者』(クレヨンハウス)がある。プライベートでは二児の父。■育児で脳がスタミナ切れ!? ママの脳内で起きていたのは…―― 仲の良かった夫婦が、産後、急にけんかが増えたという話を聞きます。なぜそのようなことが起きるのでしょうか?池谷裕二先生(以下、池谷先生):まず、考えられることとして、脳の「自我消耗」があります。自我消耗とは何かひとつのことにパワーを費やすと、別のことにパワーを使えなくなることを指します。言い換えれば、「精神力のスタミナ」を使い果たしてしまうこと。ママたちは初めての育児だと特に精神面での負担が大きく、育児で精神力が尽きてしまった結果、夫婦関係にまで気が回らなくなってしまっているのではないでしょうか。―― たしかに、一日の生活の中で子ども優先に考えるようになるので、夫のことはつい後回しにということはあるかもしれません。池谷先生:自我消耗は産後に限った話ではなく、あらゆる人に起こります。たとえば、気力の充実している午前よりも、疲れの出てくる午後のほうが、人はウソをつきやすくなる傾向にあります。海外旅行でお金をドーンと使ってしまうのもそう。初めての場所で極度の緊張状態からそうなってしまうのです。「対ストレス」という意味では、一般的に人生経験が少なく若い人ほど自我消耗しやすいといわれています。多くのママがそれに当てはまり自我消耗しやすいため、けんかが多くなると言えるでしょう。■産後のイライラ、実は「子どもを守るため」―― よく聞かれるのが、産後のママはホルモンバランスが変わってイライラするということ。やはりホルモンの影響はあるのでしょうか?池谷先生:そうですね。イライラとはちょっと違うかもしれませんが、「オキシトシン」の影響が大きいと思います。「オキシトシン」とは、子育て中に出るホルモンで、別名「愛情ホルモン」とも言われるので聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。生物学的に見て、産後すぐから1年間くらいまでがピークです。オキシトシンの影響で子どもに対して無償の愛情を注ぐ一方で、わが子を守るがゆえに他者に対して攻撃性が増すという側面もあります。人間がまったく同じとはいえませんが、赤ちゃん連れの猫や猿が攻撃的になっている姿を思い浮かべていただければわかりやすいかと思います(笑)。―― 同じ家族なのに攻撃されてしまうパパが気の毒になってきました(笑)。池谷先生:いえいえ、オキシトシンは何も女性だけに出るものではないんですよ。子育てへの参加率が高い男性からもオキシトシンが出ていることがわかっています。パパもぜひ育児に積極的に参加してみてはいかがでしょう。 ■「自分ばかり家事育児をやっている」は単なる思い込み!?―― ママたちの間でよく話題になりがちなのが、「夫が家事をしてくれない」「家にいる自分ばかりがやっている」ということですが、それについて先生はどう思われますか?池谷先生:物理的にパパのほうが仕事で外にいる時間が長く、家事をやる時間が短くなる傾向はあるでしょう。ただ、ママのほうに「セルフ・サービング・バイアス(自己奉仕バイアス)」がかかっている場合もあるといえます。セルフ・サービング・バイアスとは、何か問題が起きて原因を考える際に、自分を高く評価し、外部に原因を追究してしまうこと。自分の手柄ばかりに注目して、他人を怠慢と思い込んでしまうのです。そうすると、「もう、いつも私ばかり食器を洗っている!」なんていうことになってしまいます。―― そうなんですか!? 世の中のママたちから反論を受けそうです。池谷先生:ここはパパの立場として弁解させてください。パパたちも言わないだけで家のことや子どもの面倒をみていることだってあるんですよ。よく思い起こしてみたら、「実はお風呂上がりにお風呂掃除をしてくれていた」「たまっていた段ボールを捨ててくれていた」なんてことがあるかもしれません。冷静に判断してみるといいですね。■夫婦円満…それって必要? 産後は“防御と割り切り”で乗り切る―― なるほど。最後に、夫婦円満になるための秘訣を教えてください。池谷先生:円満になる必要はないですよ。産後すぐの時期はオキシトシンの影響もあって、なかなかうまくいかないもの。ここは、産後をどう乗り切るか考えてみるといいでしょう。―― ええ!? どうすればいいのでしょうか?池谷先生:パパはママから攻撃されない工夫をしましょう。産後、イライラしているママにあれこれ言うだけムダです。パパは具体的に指示されたほうが動きやすいので、ママが何をしてほしいのか率先して聞いてみるのもいいですね。一方のママは、「イライラしている自分」にイライラしないことが大切です。「なんだか私イライラしているな。でもホルモンのせいだから仕方ないか」などと割り切れるといいですね。ママ自身もパパになるべく具体的にやってほしいことを言うといいでしょう。ちなみに、夫をたてようとして、ママたちの輪の中で「うちの夫は家事も育児もよくやってくれて~」みたいな話をするのはやめたほうがいいでしょう。ママ同士で「夫自慢大会」をすると、かえって自分の夫に足りない部分に目がいってしまう傾向があります。実際に「妻が不満に思うかどうかは、友人の夫の手伝いぶりで決まる」というデータがあるのです。夫の良いところはわかっていても、「あそこの家は〇〇やってくれるのに、うちは…」みたいに“あら”が見えてくるようになり、かえって夫婦仲が悪化してしまっては大変です。「自慢も愚痴もなるべくなら言わない」のが一番ですね。
2018年05月20日「子どもが自分に似て、算数が苦手になったらどうしよう」「わが子には、算数嫌いになってほしくない」子どもが成長するにつれて心に沸々と湧き上がる、文系ママたちの悩み、切なる願い…!「“文系脳”の親から生まれた子どもは、やっぱり“文系脳”になるの?」「憧れの“理系男子”や“リケジョ(理系女子)”に育てるのは絶望的?」「親が苦手でも、生活習慣で改善できるものなの?」そんな文系脳のパパママの疑問(もしくは叫び?)を、脳の成長・老化について研究している東京大学・薬学部教授の池谷裕二先生にうかがいました。ご自身もふたりの娘さんの子育て真っ最中の池谷裕二先生の視点・言葉には、子育てのヒントがたくさんあふれています。池谷裕二先生 プロフィール研究者、薬学博士。東京大学・薬学部教授。専門は神経科学および薬理学で、脳の成長や老化について研究している。『海馬』(新潮文庫)、『進化しすぎた脳』(講談社ブルーバックス)など著書多数。近著に『パパは脳研究者』(クレヨンハウス)がある。プライベートでは二児の父。■遺伝だけではない!? 算数が苦手な原因、実は…―― まず、単刀直入にお聞きします。親の「算数苦手」は子どもに遺伝するのでしょうか?池谷先生:たしかに遺伝子の影響はある程度あります。算数だけでなく、絶対音感や読み書き、第二言語の習得、スポーツなどにも遺伝子の影響があることがわかっています。でも、もっと大切なのが、「環境による影響」です。小学校低学年時の担任の先生が「算数苦手」だと、そのクラスの子どもたちは、その後も算数の成績が低迷するといったデータが実際にあります。先生の「算数って難しいよね」などの発言があったと推測されます。―― ええ!? 環境による影響も大きいのですね。遺伝と環境による影響、割合としてはそれぞれどれくらいでしょうか?池谷先生:半々くらいですね。8、9歳くらいまでは感受性が高いので、環境による影響に気をつけてください。特に女の子は「女の子って算数苦手だよね~」といった周囲の何気ない言葉から、「私は算数が苦手」という自己暗示をしてしまいがち。その後、算数が得意な先生にならってもなかなかリカバーできない傾向があります。■何気ない「ママが算数苦手だったから…」発言はNG!―― 親の接し方によっても影響があるということですね。算数が苦手なママはどうすればいいのでしょうか?池谷先生:親が「私は算数が苦手だから…」と思っても絶対に言わないことが大切。少なくとも、幼児や小学校低学年の子どもよりはできますよね。劣等感からはじめると何事もうまくいきません。ここは堂々としていましょう。―― 子どもが計算を間違えたりしたら、「ママが算数苦手だから、あなたもそうなのかもね」と言ってしまいそうです。池谷先生:それだけは絶対にやめましょう(笑)。ぐっとこらえてください。わざわざ幼児教室などに通うことはありませんが、もしママが算数苦手だとしたら、算数が得意な人と子どもが接する機会を持てるといいですね。たとえば、パパが算数得意なら、土日はパパと一緒に積み木や数あてっこ遊びをするとか。算数が苦手ではない児童館の先生やおじいちゃんなどと遊ぶのもいいと思います。 ■算数苦手ママでも今すぐできる「数のかぞえ方」―― なるほど。ママ自身にもできることは何かありますか?池谷先生:小さな子どもと一緒にものを数えるときに、「1個、2個、3個…」と単位をつけるのではなく、「1、2、3…」と数えてみてはどうでしょうか。算数は抽象的な思考を学ぶもの。だから、単位をつけずに「数の概念(ルール)」を教えたほうが、汎用性が高くなります。ものごとのルールをほかに当てはめてみたり応用させたりする「水平思考」が、算数では求められています。例えば、イチゴを1個と数えてしまった場合、「じゃあミカンは?」「1個!」と答えられますが、魚や動物を数えようとなった時に、そのまま1個とは数えないですよね。イチゴやミカンの「1個」と魚や動物の「1匹(頭)」は同じ「1」という概念であることを、まずは教えなくてはいけません。だから、単位をつけずに数えるんです。単位をつけて数えることや単位を覚えることは、大きくなってからでも十分間に合います。■国語も算数も肝心なのは「コミュニケーション力」―― 親としては算数と国語の両方が得意になってもらいたいですが、先生は可能だと思いますか?池谷先生:それはできると思います。学校の勉強における国語と算数とは意味合いが違うのですが、国語力と算数力はコミュニケーションにおいて大事ですよね。知能指数(IQ)テストを考案したフランスの理学者アルフレッド・ビネーは、知能を支える3大要素を「論理力(主に算数や物理で身につくもの)」「言語力(主に国語で身につくもの)」「熱意」としています。適切な時に適切な言葉で伝える、相手が何を言おうとしているのか察知するなどのコミュニケーションには、論理力や言語力、やる気(熱意)が欠かせないわけです。―― そうですね。肝心のコミュニケーション力を高めるにはどうすればいいのでしょうか?池谷先生:親子の会話が大切です。正直、子どもってちょっと面倒な時がありますよね(笑)。何度も同じものを「見て!」と話しかけてきたり。でもそういう時に、親がスマホの画面ばかり見ていて、子どもと会話しないのはいかがなものかと。夕飯の支度をして忙しいなら、「準備が終わったら見せてね」の一言だけでも違ってくるはずです。そうやって親子の会話を通じて、子どもは空気を読むなど言語力を身につけているんです。なるべく誠意や愛情を持って接することができるといいですね。
2018年03月19日サッカーや水泳だけでなく、英語にダンスにプラグラミングと…。多様化する子どもの習い事事情に、息切れしそうなママパパも少なくないのでは? 我が子にどんな習い事を習わせるべきなのか。その1●野球とサッカーどっちをやらせたらいい?スポーツの2大習い事巨頭。それが、野球とサッカー。はたして習わせるならどっち? それぞれのスポーツ別に、メリットとデメリットをまとめました。▼続きはこちら▼その2●習い事の王道 なぜピアノを習うの?ただ単純に音感を養うだけでなく、ピアノには脳の発達にとても良い影響があるそうです。脳科学者の澤口俊之さんに取材。その効果についてお聞きしました。▼続きはこちら▼その3●スイミングスクールって必要なの?なぜママたちは子どもをスイミングスクールに通わせるのか?その人気ぶりの現状や、人気の秘密を、アンケートによる「ママの声」から探ってみました。よくよく聞いてみたら、隠された“本音”もチラホラと見え隠れしてきました。▼続きはこちら▼その4●約5割の子育て家庭が英語教育はすでに導入済み!2020年度から本格的に小学校の英語教育が必修に。子を持つ家庭では、どのくらい英語教育を導入しているのでしょうか ママテナ上でアンケートを行ったところ、約半数の家庭で英語教育を導入していることが判明!▼続きはこちら▼その5●人気英語塾講師に聞いた!安くて効果的な英語教育子どもの英語教育といっても、安価に購入できるテキストから、留学までさまざま。NHKラジオの『基礎英語』で英語を学んだという人もいます。安価で効果的な英語教育や教材ってどれでしょうか?▼続きはこちら▼その6●学び方に違いがあった?スクールに通っても英語が話せない理由中・高、そして大学でも学んだのに英語を話せないという親世代も少なくありません。それは、学び方に問題があったから。英会話スクールに通っても英語が話せないこともあるといいます。はたして、どうしてでしょうか?▼続きはこちら▼
2018年02月20日こんにちは。臨床心理士の今井千鶴子です。寒くなり、からだが芯から冷える季節ですね。こんな時期は、お風呂でゆっくりあたたまりたくなります。小学生以下のお子さんがいるご家庭では、8割以上が親子で入浴しているようです。そこで今回は、親子で入浴するメリット についてご紹介します。●からだを通じたコミュニケーション肌と肌が触れ合うお風呂は、最高のスキンシップの場となります。スキンシップには、気持ちを安定させたり、親子の絆を深めたりする働きもあるので、ぜひ意識したいものです。脳科学的にも、子どもとたっぷり触れ合うことで、愛情ホルモンとよばれる“オキシトシン”の放出がみとめられています 。子どもと過ごす時間が少ないと悩むパパ(ママ)にもお風呂はオススメ です。たとえば、わが家の場合、私にくらべると夫が子どもと過ごす時間は短いのですが、それを感じさせないほどの相思相愛ぶりです(笑)。最近特にパパっ子なので不思議に思っていましたが、この記事を書いていて「もしかしたらお風呂時間に大量のオキシトシンが放出されているのかも…」と思いました。コミュニケーションは“量”と“質”のどちらも大切 です。もし、量に不安があるなら、密度の濃いお風呂タイムを過ごしてみてはいかがでしょうか。●言葉を通じたコミュニケーションお風呂の中では“ゆっくり話せる”と感じるママやパパも多いです。お子さんの学校(園)の様子を聞いたり、ママ(パパ)の1日の出来事を話したり、楽しい会話がはずんでいるご家庭も多い のではないでしょうか。親子での会話は、子どもの心の成長だけでなく、ことばの発達や学力の高さにも影響するといわれていますので、大切にしていきたいですね。また、お風呂では、普段なかなか話せないことでも話しやすいと感じるお子さんもいます。もし、お子さんの元気がない時は何気なく聞いてみるのもよいかと思います(しつこく詮索しすぎるとかえって元気をなくしてしまうこともありますので、注意してくださいね)。そして、お子さんが話してくれた時には、丁寧に話を聴くことからはじめてみてはいかが でしょうか。----------いかがでしたか?今回は、お子さんと一緒にお風呂に入ることのメリットについてご紹介しました。ご家庭によっても異なりますが、特に異性の親子では、一緒に入浴できる期間は限られていると思います。お風呂を上手に活用して、親子の愛情を深めていけたらいいですね!●ライター/今井千鶴子
2017年12月27日自閉症スペクトラム障害の「困難」出典 : 発達障害の1つ、自閉症スペクトラム障害。物事への興味関心やコミュニケーションに関する特異性が強い障害だと言われていますが、実際には一人ひとりが異なる多様な困難に直面し、その困り度合いや表出のしかたもそれぞれ異なります。我が家の7歳の息子は自閉症スペクトラム障害の診断を受けており、好きなことばかりを喋り続けてしまったり、トミカを延々と等間隔で並べ続けてたりしていました。また、少しの乱れも許さず、ちょっとでも間隔がずれてしまったりすると、癇癪(かんしゃく)を起こしていたものです。最近はこのような癇癪は起こさないように自分でコントロールできるようになりましたが、好きなことに対するこだわりの強さはいまだ健在です。これらは自閉症スペクトラム障害の「社会的コミュニケーションの困難さ」や「こだわりの強さ」に起因するのでしょう。そんななか、今年の11月に、なぜこの2つの特徴が発生するかについての研究結果が、日本国内から発表されたのです。リズム同期実験/最新の脳波技術による研究とは出典 : 以前まで、「社会的コミュニケーションの困難さ」と「こだわりの強さ」は、これまでは、それぞれ別のメカニズムから生じていると考えられていました。けれども、最新の脳科学の研究によって、これら2つの特徴が同じメカニズムから生じている可能性があるという見解が示されたのです。研究結果を発表したのは、京都大学、筑波大学、理化学研究所、帝塚山学院大学による共同研究チーム。この研究は、英国の科学誌「Scientific Reports」にもオンライン公開されました。自閉スペクトラム症者のコミュニケーション障害に関する新たな視点 -最新の脳波技術を用いた科学的根拠による理解の促進-| 京都大学 theta activation during motor synchronization in autism (訳:自閉症者のリズム同期課題時の前頭シータ波の活動)この研究は、自閉症スペクトラム障害の当事者が参加し「リズム同期」の課題を行うことで、自閉スペクトラム障害の特徴を明らかにしようとするものです。ここで言うリズム同期とは、タイミングをあわせて音を鳴らしていくようなもので、二者でリズムが一定になるように、交互に音のなるスイッチ(キーボード)を押す実験です。自閉症スペクトラム障害の参加者がキーボードを押すと音が鳴り、続けて相手(PCプログラムもしくは定型発達の参加者)がキーボードを押すと別の音が鳴ります。PCプログラムが相手をする場合は、一定の間隔で音を出すパターン、急に間隔が変わるパターンなどを使用して、それらがどれだけ同期しているか調べるのです。またこの実験中は脳波も測定し、どのような脳波が発されているかも記録していきます。そして自閉症スペクトラム障害の参加者と定型発達の参加者の同期実験の結果を比較してみると、次のようなことがわかりました。・リズムが一定のPCプログラムが相手だと、自閉症スペクトラム障害の参加者と定型発達の参加者で、同期の特徴に差はない。・人および音の間隔が一定ではないPCプログラムが相手だと、定型発達の参加者に比べて自閉症スペクトラム障害の参加者では、同期量が少ない。この同期量の少なさは、主に自閉症スペクトラム障害のこだわり傾向の強さと関係があるつまり、自閉症スペクトラム障害の人たちが、一定ではないリズムへの適応に困難さを抱えていることが示唆されてます。自閉スペクトラム症者のコミュニケーション障害に関する新たな視点 ~最新の脳波技術を用いた科学的根拠による理解の促進~また、この同期実験で、参加していた自閉症スペクトラム障害の人たちの脳波データを解析したところ、定型発達の人たちの脳波と較べて、下記のような特徴があったそうです。・リズム同期において、自閉症スペクトラム障害の人たちにのみ前頭シータ波が増加する(=脳に負荷がかかっている)・自閉症スペクトラム障害者の前頭シータ波は、リズム同期の相手が人であってもPCであっても増加することが分かった前頭シータ波とは認知負荷がかかっていることを示す脳波であり、驚いたことに自閉症スペクトラム障害の人たちは「相手とリズムを合わせる」ということだけでも、脳に負荷がかかっていることが分かったのです。これらのことから、研究報告では次のように記述されています。上記の結果から、自閉スペクトラム症者では、単純なコミュニケーションに含まれる他者のイレギュラーなリズムに適応することに負荷がかかっていること、しかもこれにはこだわり傾向が関係していることが、実験と臨床の両面から発見されました。また、この考え方により、「コミュニケーションの困難さ」と「こだわり傾向」の強さは、他人のリズムに合わせることの難しさから起因するものとして統合的に説明できると、研究では示唆されています。自閉症スペクトラム障害の子どもの毎日を想像してみる出典 : このことを知ってから私は、息子がくたびれて帰ってきて、家に帰って不機嫌だったりすることも、私は少し優しい気持ちで眺めることができるようになりました。大勢の誰かにとっては「ただリズムを合わせるだけのこと」が、脳に大きな負担をかけていること。さらにそれが変則的なリズムであればあるほどストレスが大きい。良く考えてみれば、人とのコミュニケーションは変則的なことだらけです。相手の話に頷くタイミング一つとっても、「一定ではないリズム」です。さらにこれに、相手の話を聞いて適切な答えを言ったり、笑ったりといった「超変則的なリズム」が加わるのです。自閉症スペクトラム障害のある人たちにとって、「一定ではないリズム」の集合である対人コミュニケーションが、いかに難易度の高いことであるかが、より想像しやしすくなりました。学校生活や社会生活は「リズムを合わせる」ことだらけです。他者の行動に合わせて1日行動すると、恐らく自閉症スペクトラム障害の人たちの脳には大きな負荷がかかっているのでしょう。言うなれば、毎日が大荒れの大航海。そう思うと、家に帰ってきた息子を、まずは褒めてあげたくなるのです。
2017年12月22日こんにちは。臨床心理士の今井千鶴子です。旦那さんは毎日何時頃帰宅していますか?帰りが遅く困っているママも多いと思います。そこで今回は、旦那さんの帰宅を早めたいママにオススメの方法 をご紹介します!●行動スケジュールを決める「(いつも帰りが遅いのに)急に帰ってくると焦る…」というママの声をよく耳にします。私も経験がありますが、そういう時に限ってご飯の準備ができていなかったり、部屋が片づけていなかったりするんですよね・・・(苦笑)。そうなると、あたたかく迎えるというよりも「今日はやけに帰りが早いね」などと嫌味を言ってしまったりしませんか?ただ、旦那さんからしてみれば、「せっかく早く帰ってきたのに」「そんな風なら早く帰らなきゃよかった」と思うわけです。そして、その後また帰りが遅くなってしまうこともあります。そのようなすれ違いを防ぐためにできることの1つは、できる限り“毎日同じ生活時間を守るようにする” ことです。子どもの勉強の時間、晩ご飯の時間、お風呂の時間、遊ぶ時間、寝る時間を大まかに決めておくと、旦那さんもその時間に合わせて帰宅することができます 。相手のスケジュールを気にせずに行動できるので、お互いにストレスが減らせる方法だと思います。●食事によるコミュニケーション第一生命経済研究所(2005)の調査では、「普段子どもとよく対話する」と感じているパパは54.4 %、ママは79.6%でした。また、同じく第一生命経済研究所(2014)の調査では、パパよりもママの方が「子どもの状態を把握している」と考えていることが報告されています。中でも、「情緒面の発育や悩み事・心配事」において、パパはママに比べて把握していない と感じているようです。親子の対話を深めるために効果的なことの1つが、食事を共にすることです。永江誠司著『子どもの脳を育てる教育』の中でも、「人間の生きることに直接関わる行為を他者と共にすることで、その関係はますます深くなっていく」などと述べられています。また、食事にはリラックス効果もあり、おだやかな心でコミュニケーションを図ることができます。親子の関係が深まれば深まるほど、お子さんの悩みや心配事に気づきやすくなりますし、パパだから気づくことや、お子さんにとってはパパだから話せることもあると思います。第一生命経済研究所の調査(2005)では、毎日子どもと夕食を食べているパパは20.3 %、ママは78.9%でしたが、仕事が忙しいパパもぜひ家族で食事をすることの大切さをもっと意識してもらえたらと思います。●「パパがいい」があること「パパでもママでもいい」では、なかなかパパの心は動かしにくいです。自分にしかできない役割があると、それに応えたいと思うのが人間の心理 です。つまり、「パパでもいい」ではなく「パパがいい」という状況があることも帰宅を早めるポイントになると思います。たとえば、わが家の場合、息子はパパとのお風呂を楽しみにしており、まさに、「パパがいい」の状態です。息子は夫に「ねえ、今日はお風呂一緒に入れる?」とかわいくリクエストするため(笑)、夫もお風呂の時間に間に合うように必死で仕事を終わらせ早めの帰宅を心がけてくれます。このように、子どもとの生活の中に「パパがいい」という状況があると、もちろんパパにとっては早めの帰宅は大変ですが、それ以上にパパに“喜び”をもたらすのではないでしょうか。ただ、ママのことが大好きで「パパがいい」という状況になることが難しいお子さんもいるかもしれません。そんな場合は、ママが率先して「パパがいい」を心がけていきましょう。たとえば、お子さんに対して、「パパが絵本を読んでくれると面白いね!」「パパとのお風呂は楽しいね!」などと声をかけてみるのもいいですね。ママがそのような声かけを続けることによって、今すぐに「パパがいい」という状況は難しくても、少しずつ「パパがいい」という状況が増えていくと思います。----------いかがでしたか?今回は、旦那さんの帰宅を早めたいママにオススメの方法をご紹介しました。帰りが遅く困っているママの参考になったら嬉しいです!文献第一生命経済研究所(2005)6〜18歳の子供を持つ父母600名に聞いた『親子関係に関するアンケート調査』第一生命経済研究所(2014)小学生以下の子どもを持つ父親694名に聞いた『父親の子育てに関する調査』永江誠司著子どもの脳を育てる教育:家庭と学校の脳科学●ライター/今井千鶴子●モデル/香南・TOYO
2017年11月28日こんにちは。子育て支援を専門にする臨床心理士の今井千鶴子です。夏休みが終わり、ホッとしているママも多いのではないでしょうか(笑)。夏休み明け、お子さんは楽しく園や学校に通っていますか?長期の休み明けですので、まだ生活リズムが整っておらず、登園・登校前にグズグズしてしまうお子さんもいるかもしれませんね。そこで、今回は夏休み明けに試したい、ママができるお子さんのグズグズ対策についてご紹介します。●勉強からのアプローチ夏休みの中の小学生の一般的な家庭学習時間は1時間程度ともいわれています。仮に、夏休みの学習時間が1時間程度だった場合、新学期がスタートするやいなや勉強に向き合う時間が急激に増えることになります。これはお子さんにとってかなりしんどいことだと思います。なかなか授業に集中できないお子さんもいるのではないでしょうか。そんなときにママができることの一つは、お子さんへのある声かけです。どんな声かけかというと、「今日の国語、どんなことを勉強したかママに教えてね」というものです(国語以外のどの教科でもかまいません)。多くの人は、「誰かに教えなきゃ 」と思うと、普段より真剣に(集中して)話を聞こうとするものです。お子さんも「ママに教えよう!」と思ったら、「集中して授業を聞かなきゃ」と思うはずです。また、「ママに教えよう!」と思うだけで、いつもよりも授業内容に興味をもったりワクワクしたりする子もいるでしょう。永江誠司先生の著書『子供の脳を育てる教育』では、人は興味をもったり、ワクワクしたりするときに“シータ波”という脳波が出ていることが指摘されています。そして、この“シーター波”が出ているときは出ていないときに比べて、5〜10倍の速さで効率よく学習できる と述べられています。さらに、この“誰かに教える”という行為は、メタ認知を鍛えることにつながる可能性もあります。このように、夏休み明けの勉強ペースを整えるだけでなく学習効率も高まる可能性があるなら一石二鳥の方法だと思いませんか?この方法で大切なことは、お子さんが説明しはじめたら、ママは真剣(熱心)に話を聞く ことです。ママが真剣に聞けば聞くほど、お子さんは教えることに喜びを感じるはずです。ただ、低学年のお子さんの場合には、明確な説明が難しい可能性もありますので、お子さんには内緒で事前に授業内容をチェックしておくと安心です。また、園に通っているお子さんの場合には、「今日、幼稚園でどんな遊びをしたか、帰ったらママに教えてね!」などの声かけがよいかと思います。ポイントは、お子さんが園や学校での活動に集中したり、興味を抱いたりするサポートをしていくことです。●生活習慣からのアプローチ大川(2010)は、睡眠に問題をもつ子どもたちは、身体症状(昼間に眠い、横になりたい、頭痛、肩こり)とともに、イライラする、物事に熱心になれないなど集中力・記憶力の低下、感情抑制の困難がみられることを指摘しています。また、西出(2007)の園児を対象とした調査では、園児の休み明けの疲労は休日の睡眠習慣に関連することが示唆されています。このことからも、ママはお子さんにとって最適な睡眠を確保 できるよう心がけたいものですね。ある調査では、就寝時間が遅い子どもたちの特徴として、親自身が遅くまでTVを見ていることがわかっています。ですから、もしお子さんの就寝時間が足りないと感じているのなら、お子さんの寝る時間には一度TVを消してみるのもよいかと思います。ちなみにわが家も、子どもの寝る時間にはTVを一度消すことにしています。また、読み聞かせをした後には部屋の電気も消しています。子どもが寝たら起きようと思っていたのに、何度そのまま朝まで寝てしまったことか……翌朝、後悔の嵐です(笑)。それでも多くの専門家が乳幼児期・児童期における睡眠の重要性を指摘していますので、子どもが小さいうちは、子どもの睡眠を第一に考えて生活できたらと思っています。----------いかがでしたか?今回は夏休み明けにママが簡単に試せるお子さんのグズグズ対策についてご紹介しました。お子さんが元気に楽しく学校生活が送れるヒントになったら嬉しいです。【参考文献】・『子どもの脳を育てる教育家庭と学校の脳科学』永江誠司・著・『子どもの睡眠と脳の発達睡眠不足と夜型社会の影響』学術の動向vol15(P34〜39)大川匡子(2010)・『就園児の休み明けの疲労と休日の睡眠に関する調査研究』三重看護学誌9巻(P73〜82)西出りつ子・谷崎美幸(2007)●ライター/今井千鶴子(臨床心理士)●モデル/REIKO(SORAくん、UTAくん)
2017年09月12日あり子のワーママ奮闘記
PUKUTY(プクティ)只今育児奮闘中!
たんこんちは ボロボロゆかい