12月19日、覚せい剤取締法違反(使用)の疑いで逮捕されていた歌手のASKAさんが「嫌疑不十分」で不起訴となり、釈放されました。理由としては、本人の尿として任意提出された液体が、本人の尿であると立証できなかったためと報道されています。皆さんの中には、この「嫌疑不十分」という言葉にあまり馴染みがない方も多いかと思いますので、今回はこの法的解釈について、解説していきたいと思います。*画像はイメージです:■不起訴処分の理由には「嫌疑不十分」の他にも「嫌疑なし」「起訴猶予」が存在この「嫌疑不十分」というのは、犯罪の疑いはあるものの、公判維持ができるほどの証拠が不十分という理由で、不起訴処分となる場合に使われます。報道によれば、尿が本人のものではないというASKAさんの主張を警察が覆せなかったとのことで、この点の証拠が不十分ということでの不起訴となった模様です。ちなみに不起訴処分には、「嫌疑不十分」の他、「嫌疑なし」というものと、「起訴猶予」というものがあります。「嫌疑なし」というのは、例えばアリバイが証明されたなど、犯罪の疑いが晴れた場合をいいます。また、「起訴猶予」とは、公判維持が可能であったとしても、例えば、示談が成立した、本人が反省している、身元保証人が付いたなど、敢えて前科者にする必要がない、あるいは、社会内での更生が期待できるような場合に、検察官の裁量により不起訴にする場合を言います。 ■今回の再逮捕におけるメディア報道のあり方について「逮捕=有罪」と決めつけた報道が多数見られた現状については、通常は、尿検査で「陽性」反応が出たら「有罪」推定が働きますので、その意味ではやむを得ないのではないかと思います。とはいえ、傍目から見てメディアからのバッシングが強すぎ、ASKAさんの逃げ道を残してあげたら良かったかなと思ったりしました。再犯率の高い覚せい剤事犯において、ASKAさんがこれまでどのような努力をされてきたのか、一般的にはどのような治療施設があるのか、などの再犯しないための周りの援助について、もっと報道しても良かったのかなと思います。 *著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)【画像】イメージです*twinsterphoto / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月21日お笑いコンビ・極楽とんぼの加藤浩次(47)が、20日に放送された日本テレビ系情報番組『スッキリ!!』(毎週月~金8:00~10:25)で、覚せい剤取締法違反(使用)の疑いで逮捕されていた歌手・ASKA(58)が嫌疑不十分で不起訴処分となったことを受け、コメントした。ASKAは先月25日、「盗聴されている」と自ら110番通報。任意の尿検査で陽性反応が出たことから同月28日に逮捕されたが、ASKAはその直前に投稿したブログで「尿から、覚せい剤反応が出るわけなんてことは、あるわけがない」と否定した。その後、提出した尿は「お茶」だったと主張。警視庁が本人の尿と立証できなかったことから、不起訴処分となった。この話題がトップニュースとして取り上げられ、加藤は菊地幸夫弁護士による解説を聞き終えると、いくつかの疑問点は残るとしながらも、「ASKAさんの逮捕が2度目ということもあって、さらに覚せい剤反応が尿から出たという発表が警察からあった」と振り返りつつ、「僕自身も起訴の方向になると思っていて、発言した部分はある。この部分に関しては僕自身もしっかり考えないといけないなと思った」と番組司会者としての反省の弁を述べた。一方の菊地弁護士は「尿鑑定で陽性反応が出たという段階で、それが有罪のほぼ唯一の"最強の証拠"なんですよね。これで、有罪判決が将来出るんだと私も考えてしまいました」と同調し、「いろんな理由でこういうケースになるんだということを踏まえて、これから考えてコメントしていきたいと思います」と語った。
2016年12月20日高速道路などで速度を超過した車を自動で撮影するシステム、オービス。一般道では30km/h以上、高速道路では40km/h以上の速度超過があった場合、違反者を撮影します。これは「一発免停」以上の違反基準となります。動かぬ証拠を掴んだ警察は、後に違反者に対し呼び出し状を送付するなどして、警察への出頭を促します。素直に応じた場合、行政罰の反則金ではなく、刑事罰の罰金となります。これは交通裁判にかけられる、いわゆる「赤キップ」を切られる対象となり、それだけ重い違反レベルとなります。要請を受けたほうにしてみれば、わざわざ警察に出頭するのは億劫なもの。なかには罰金を払いたくないがために無視し続けるという行動に出る人もいます。そのような行為をすると一体どうなるのでしょうか?Q.オービスの呼び出し状を無視し続けるとどうなる?*画像はイメージです:逮捕されます!一般的に無視していると何度か呼び出し状が送られ、電話がかかってきたり、刑事が訪ねてきたりするようです。これは複数回行われます。それでも無視した場合、ある日突然刑事がやってきて逮捕となります。この場合立派な犯罪となりますので、前科がつきます。「たかがオービス」と考えてしまいますが、されどオービス。罪にはかわりありません。今年の6月には、オービスの呼び出し状を無視し続けたうえ、刑事の訪問などでも一切協力せず逃げ切ろうとした39歳の男性が逮捕されています。逃げ切れたと思っても、結局は逮捕されてしまいます。素直に出頭したほうが身のためではないでしょうか。 *記事監修弁護士:竹内 省吾(弁護士法人サリュ 銀座事務所。 交通事故分野のパイオニア。民事刑事問わず無料相談 メール受付対応。おもな著作に「交通事故裁判和解例集」(第一法規)などがある。)*取材・文:佐藤俊治(複数メディアで執筆中のフリーライター。真面目な話題からくだけた話題まで手広く記事を執筆中。趣味は将棋、好物はカツカレーとパインアメ)【画像】イメージです* むーさん / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月19日株式会社DeNAの医療サイト『WELQ(ウェルク)』が無断転載や誤情報を拡散した問題を口火となり、キュレーションメディアのトラブルが世間を騒がせています。その流れで、LINE株式会社が運営する『NAVERまとめ』に対して、記事を無断転載された側からの削除依頼への対応がどうなのか疑問を呈する記事「なぜ無断転載された側に手間を要求?「NAVERまとめ」の“トンデモ”削除対応、理由を聞いた」を『ねとらぼ』が配信し、話題になっています。LINE社の対応に具体的にどのような問題があったのか検討してみましょう。*画像はイメージです:■本人確認は必要不可欠記事では削除依頼をしたところ、LINE社から下記2点を求められたと報じられています。(1)権利を侵害しているNAVERまとめの画像・テキストのURLを指定すること(2)出典のURLに、「このページ内の画像をNAVERまとめに転載することを禁止します」など、転載禁止の旨を追記することまず、(1)については、削除依頼を受けた側としても、どこが問題の記載があるか分からない以上、極めて正当な要求でしょう。ただし記事によると、削除をLINE社に依頼した側としては、最初から「出典URLと無断利用されたNAVERまとめのURLも添えた」ということなので、この点を改めて要求されるのはおかしいといえます。次に、(2)については、「申告者が本人かを確認するため」にしていたようですが、本人確認の方法はこれ以外の方法でも十分可能であり、なぜNAVERまとめだけ特別扱いするような記載をしなければ行けないのかという点で、必ずしも適切とは言えないと言えると思います。もっとも、著作権者以外からの請求に応じる理由はないため、確認は必要不可欠であり、何らかの本人確認のための手間を惜しむことはできないといえます。“侵害された側が負担を負うことが不当”という素朴な感情は理解できるのですが、自分の権利を守るためには、自分からきちんと主張立証をしていくことが必要なのです。 ■削除依頼ステップが明示されていない?また記事によると、削除依頼フォームの場所が分かりづらく、「出典ページ上に確認番号を記載する」ということは明記されていないと指摘されています。個人的な感想と経験を言えば、削除依頼フォームはまとめの一番下に表示されているので、必ずしも分かりづらいとはいえないのではないかなと思っています。他方で、「出典ページ上に確認番号を記載する」という点はたしかに明記されておらず、また、どのような流れで手続きが進むのかも一般の方には分かりづらいと思います。この点を踏まえて、一般の方から見てももっと分かりやすい案内をした方が、双方にとって余計な手間が減って良いのではないでしょうか。 *著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)【参考】ねとらぼ:なぜ無断転載された側に手間を要求?「NAVERまとめ」の“トンデモ”削除対応、理由を聞いた【画像】イメージです*sabelskaya / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月19日先月29日にキュレーションメディア「WELQ」が全記事を非公開にしたことを口火に、「NAVERまとめ」でも無断転載が問題になったりと、インターネット上の記事等に関する著作権に関し、注目が集まっています。いわゆる“コピペ”をしたら著作権侵害になるだろう、といった想像はつくかと思いますが、実際、著作権というものに対して、なんとなく抵抗を感じる方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、著作権についての基本的な考え方について解説していきたいと思います。また、日常生活でやってしまいがちな著作権侵害についても触れたいと思いますので、ご覧ください。*画像はイメージです:■著作権の法的な定義とは?「著作権」という言葉は日常生活でもよく耳にすると思いますが、法律上の定義を確認しておきましょう。「著作権法」という法律に、以下の規定があります。 著作権法17条著作者は、次条第一項、第十九条第一項及び第二十条第一項に規定する権利(以下「著作者人格権」という。)並びに第二十一条から第二十八条までに規定する権利(以下「著作権」という。)を享有する。 「第二十一条から第二十八条までに規定する権利」というのは、具体的には、複製権、上演権及び演奏権、上映権、公衆送信権、口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻訳権・翻案権、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利です。色々とありますね。ただし、何にでも著作権が認められるという訳ではなく、著作権が認められるのは「著作物」にあたるものだけです。著作物についても著作権法に規定があり、法2条1項1号に「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と規定されています。ちょっと、抽象的で分かりにくいかもしれません。法律というのは社会を規律するためのルールであり、様々なケースへの適用が前提となりますから、ある程度抽象的にならざるを得ないところはあるのですが、著作権にはちゃんと「例示」があって、10条で以下のとおり規定されています。 第10条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物二 音楽の著作物三 舞踊又は無言劇の著作物四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物五 建築の著作物六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物七 映画の著作物八 写真の著作物九 プログラムの著作物2 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。3 第一項第九号に掲げる著作物に対するこの法律による保護は、その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない。この場合において、これらの用語の意義は、次の各号に定めるところによる。一 プログラム言語プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系をいう。二 規約特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての特別の約束をいう。三 解法プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法をいう。 ■著作物であるかの判断となるポイントは?著作物であるかどうかを判断するポイントになるのは、「思想や感情が創作的に表現されているかどうか」ですが、中にはそれが微妙なものもあるでしょう。しかし、インターネット上に投稿されている「記事」や「画像」(写真、イラスト、CG等)については、基本的には「著作物」にあたると考えたほうが無難でしょう。そうした他人の著作物を無断で使う(自分のブログに載せる等)ことは、著作権を侵害する行為になりますから、差止め(著作権法112条)や損害賠償請求がなされる可能性があります(著作権法には罰則もあり、著作権侵害については10年以下の懲役、500万円以下の罰金(またはこれらを併科)というかなり重いものが規定されています(法119条1項))。ただし、著作権法には「公表された著作物は、引用して利用することができる。」(法32条1項)という規定がありまして、著作権を持っている人の承諾を得ていなくても、著作権法が定める「引用」にあたるときは、著作権侵害にはありません。 ■適切な「引用」はどういった要件を満たす必要がある?では、どういう利用方法ならば「引用」といえるのかですが、著作権法32条1項では、上にあげた条文に続けて「この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」と規定されています。具体的には、たとえば論文を執筆している場合に、その論文の中で他人の論文に言及し、それについて考察するために文章を掲載する、といったケースが考えられるでしょうか。そして、適法な「引用」と認められるためには、以下の条件を満たす必要があるとされています。 (1)引用する必然性があること(2)他人の著作物を引用した部分が明確に分かるよう、括弧をつける等して自分の著作物と区別されていること(3)自分の著作物が「主」、他人の著作物を引用した部分が「従」という関係にあること(4)引用した部分の出典(著作者、著作物のタイトル、サイト名、URL等)が明示されていること(著作権法48条) ちゃんと「引用」するためには、けっこう色々な点に気をつける必要がある、ということがお分かりいただけるでしょうか。例えば、「インターネット上で見つけた記事を自分のブログに転載する」場合には、上に述べた「引用」の条件を満たすよう必要がありますから、記事を全文コピペして「こんな記事がありました!」など申し訳程度のコメントを付記した程度では、「引用」とは認められないと考えたほうがよいでしょう。 ■SNSアイコンでの使用やブログへの画像アップロードも注意また、「漫画やアニメのキャラクター画像を自分のブログに載せること・SNSのアイコンとして使用すること」については、「引用する必然性がある」ということを示すのが難しく、やはり、「引用」とは認められない可能性が高いと思われます。なお、「私的使用」(他人の著作物につき、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする場合。著作権法30条)にあたるときも著作権侵害にはなりませんが、インターネット上の記事・画像は不特定多数が閲覧可能なものですから、「個人的に又は家庭内といった限定的な範囲での利用にとどまる」とは言い難く、「私的利用」にもあたらないと考えられます。インターネット上では、容易にデータのコピー、転載ができることから、ついつい「このくらいなら問題ないだろう」などと考えて他人の著作物を承諾なく載せてしまいがちですが、「引用」の条件がちゃんと満たされているか、考えてみることが必要でしょう。 *著者:弁護士 櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。ブログ「ネットイージス.com」)【画像】*Ushico / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月18日忘年会が盛んに行われているこの時期は、飲酒運転を取り締まる検問も多く行われます。酒を飲んだ状態での運転は重大事故を引き起こしす可能性が高いにもかかわらず「大丈夫だろう」と考える人も存在しているため、事故を未然に防ぐという意味では重要な行為です。また、爆発物や薬物を自動車に隠す人間も多いことから、各国の要人などが来日した際に犯罪防止などを理由に検問が行われることがあります。ほとんどの人は言うとおりにしてやり過ごしていると思いますが、やましいことが全くないにもかかわらず、警察官からあれやこれやといわれ、車内を調べられるのは気分の良くないもの。しかし車内の検査を拒否すると、不審者として扱われてしまうことはほぼ確実のよう。なかには「逃さん!」とばかりに実力行使として自動車の外から手を伸ばし、スイッチを切ってくることもあるようです。これは違法ではないのでしょうか? Q.「窓から手を入れスイッチを切る」自動車検問は許される?*画像はイメージです:具体的に異常な挙動などが外から検知される場合、許される。検問中の車に明らかで具体的な異常を警察官が検知したと感じた場合は、警察官職務執行法2条1項で定められる職務質問をするために「停止」させる方法として必要かつ相当な行為として許されることになっています。また、運転者が泥酔していたりして運転させるには危険な場合などには、道路交通法67条4項に基づく「交通の危険の防止を防止するため必要な応急の措置」として認められることになります。ほかにも、ドアに手をかけて自動車を止める行為や、刑事ドラマのように挟み撃ちで動きを止めることも、場面次第では「必要な応急の措置」として許される場合もあるでしょう。やましいことがない場合に揉めること自体は無益だと思いますが、納得のいかない検問がないともいい切れません。そのときは「任意」を強調することや、相手の警察官の名前を聞き出す、録画・録音を取るなどすることで、後に不当であるか否かを弁護士に相談し、不当であれば監察室に抗議するなどして対応することも考えられます。やはり「動かぬ証拠」はどの世界でも大事になってくるのです。 *記事監修弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:佐藤俊治(複数メディアで執筆中のフリーライター。真面目な話題からくだけた話題まで手広く記事を執筆中。趣味は将棋、好物はカツカレーとパインアメ。)【画像】*Dachs / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月17日photo by 伊藤あきらインターネットに関するトラブルを中心に、様々な問題や悩みを抱える相談者のサポートをしている四谷コモンズ法律事務所の渡辺泰央弁護士。今回は実生活でも役に立つ、弁護士が実践している「論理的思考」について伺いました。渡辺 泰央(わたなべ やすひろ)弁護士四谷コモンズ法律事務所代表弁護士。2012年に弁護士登録を行う。ITやWebに関する法律に強く、数多くのインターネットトラブルに関する事案を取り扱っている。運営サイト「WEBに関わる法律講座」 ■弁護士に求められる論理的な思考とは?___一般的に弁護士と聞くと、非常に論理的なイメージがありますが、実際に弁護士業務をする上で論理的な思考は求められているのでしょうか。弁護士の仕事として、論理的な思考は欠かせないですね。普段の生活など、法律論以外のシーンであれば、感情論で決着がつくことも少なからずあるとは思います。ただ、弁護士というのは法律を元に仕事をしなければなりません。一旦法の議論に乗せてしまうと、論理的でなければ相手を説得する主張ができなくなってしまうので、やはり弁護士の業務に論理的な思考は求められていると考えるべきでしょう。___論理的な思考をする上で重視していることはありますか。主軸をしっかりと通してから、細かいところを詰めるようにしています。例えば仕事で相談者の方をヒアリングするときなどは、時系列を主軸と捉え、時系列を整理しながら話を聞くようにしています。相談者の方は慣れないヒアリングに緊張してしまうケースや、トラブルを思い出して感情的になってしまうことも少なからずあります。そのため、話が飛躍することや、頭の中がうまく整理できず、話がまとまらないことも多いのです。そのような場合、客観的な事実をしっかりと把握するために、こちらで時系列を整理してから詳細な内容を聞くようにしています。時系列を整理しながら話をすると、トラブルの経緯を思い出してもらう大きな手助けになることも多く、相談者も話しやすくなります。主軸を通してから考えるというのは論理的な思考をする上で、非常に大事だと思いますね。 ■ビジネスでも役に立つ、論理的思考術___論理的な思考はビジネスなどにも役に立つのでしょうか?役に立つと思います。例えば交渉の場面をイメージしてみてください。そこで、とても不利な条件を相手が提示してきたとします。それに対して、感情的に対応するというのは論理的ではありません。「なぜ相手がこのような条件を提示するのか」しっかりと考えて、深掘りをすることが論理的な思考です。提示する条件がこちらに不利であるほど、相手は論理的な理屈をつけて説明する必要があります。「上司が言っているから」とか「こちらが大企業だから」という非論理的な理由は(本音であったとしても)交渉の過程ではなかなか言いづらいものです。そうすると、たとえば「○○のリスクを排除するため」とか「××の達成を確実なものとするため」などといった理屈づけが必要になります。そして、ここに交渉の糸口があります。「○○のリスクの排除」や「××の達成」ができる別の条件をこちらが提示できれば、こちらが不利な条件を飲むべきとする相手の理屈を崩すことができます。それに加え、「相手の提示する条件を飲むとすれば、こちらに(又はお互いに)△△の不利益が生じることになって不合理」という理屈づけもできればより良いでしょう。ここまで理屈を掘り下げられると、相手の要望も踏まえつつ、こちらにとってより不利でない別の条件をお互いに探っていくことができ、議論を前に進めることができます。このように、相手の主張を基礎づける論理的理由の中に、交渉の糸口が隠されていることが多いのです。その糸口から妥協案や落とし所を探っていく、これが論理的思考に基づく交渉といえるでしょう。___論理的な思考を身につけるためにはどうしたらよいでしょうか。論理的思考を鍛えるためのひとつの方法として、ひとつの主張に対して「なぜ?」と深掘りしていくことがあります。例えば新聞の社説などを見て、「なぜそのような主張になるのか?理屈や根拠は?それらの理屈や根拠は正確なのか?」と深掘りするのです。ただ、他人の主張をあまり深堀りしても、最終的に推測の域を出ないことも多いです。また他人に対して面と向かって「なぜ?」と深掘りしてしまうと人間関係がギクシャクしてしまいかねません。そこで、論理的思考を鍛えるために私が一番良いと思う方法は、“自分の”主張に対して「なぜ?」と深掘りしていくことです。自分で掘り下げていくとわかるのですが、自分がなぜそのように考えたのかというのは、自分でも理解していないことが意外と多いのです。前提が正しいのか、どうしてそのように考えたのか、自分の考えをしっかりと掘り下げていくことで、論理的な思考力は身につけられます。自分の主張の掘り下げに慣れてくると、他人の主張に対してもより精度の高い論理的考察ができるようになってきます。まずは自分の主張をしっかりと深掘りして、訓練することから始めるのが良いと思います。 *取材協力弁護士:渡辺 泰央(わたなべ やすひろ)弁護士四谷コモンズ法律事務所代表弁護士。2012年に弁護士登録を行う。ITやWebに関する法律に強く、数多くのインターネットトラブルに関する事案を取り扱っている。運営サイト「WEBに関わる法律講座」*取材・文:伊藤あきら(AFP、クラシックカメラアンドアンティークカンパニー株式会社代表取締役。同志社大学卒業後、日本生命相互会社、HIPHOPダンサー、税理士法人を経て、現職。会社経営の傍ら、フリーライターとしても活動している。)【画像】伊藤あきら
2016年12月17日刑事ドラマなどでは、緊急車両で現場に乗り付けた刑事がエンジンを切ったかどうかもわからない状態でその場を離れ現場に急行するシーンを目にします。そのたびに、「よくパトカー盗まれないな」と思ってしまいますが、そこはドラマの世界だけに何事もなく物語が進んでいきます。実際にあんなことをする人はほとんどいないと思いますが、なかにはせっかちな人がエンジンをかけっぱなしにしながら、車を離れてしまうことも稀にあるようです。しかし、そんな行動を一般人がすると交通違反になるらしいのです。本当でしょうか?Q.エンジンをかけっぱなしで車を離れると交通違反って本当?*画像はイメージです:違反です!他人が運転できるような状態で車を離れてはいけない道路交通法第71条5号の2に「自動車又は原動機付自転車を離れるときは、その車両の装置に応じ、その車両が他人に無断で運転されることがないようにするため必要な措置を講ずること」と明記されています。したがってエンジンかけっぱなしの状態で自動車を離れることは道路交通法違反となります。颯爽と登場し、「そのまま現場に急行」という行為はかっこよく思えますが、一般人の場合は法に触れています。なおこの状態で自動車を盗まれた場合、持ち主にも責任が問われます。エンジンを止めしっかり施錠することは、運転者の義務なのです。年末年始は自動車に乗る機会も増えるものですが、車を安全に止め施錠し降りるまでがドライブということを忘れないでください。 *記事監修弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)*取材・文:佐藤俊治(複数メディアで執筆中のフリーライター。真面目な話題からくだけた話題まで手広く記事を執筆中。趣味は将棋、好物はカツカレーとパインアメ)【画像】イメージです*ridia / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月17日12月3日、愛知県豊川市のマンションで職務質問を受けていた男性がそのまま飛び降り死亡するという事件が発生しました。警察官は同マンションに住む女性からストーカー行為の相談を受けていたため警戒にあたっていたそう。不審な男性と判断したため、職務質問し任意同行を求めたところ、飛び降りたそうです。警察は、正当な職務だったと話しています。職務質問は犯罪を防止するために警察官職務執行法によって認められた警察の権利です。「何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足る相当な理由のある者」、「既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者」に対し質問することができます。必要性は理解しているものの、受ける側としては不愉快極まりなく感じます。かなり高圧的に質問されることも多いうえ、「任意ですから断ります」と突っぱねると怪しまれ、なかなか返してくれないこともあります。面倒くさいから立ち去ることも可能なはずですが、警察官が腕を絡めて「逃がさなくする」こともあるようです。あくまでも任意であればこのような行為は違法なはずですが、実際のところどうなのでしょうか? Q.「腕に手をかけて呼び止める」は職務質問で許される?画像はイメージです:職務質問の要件が揃っていれば許される警察官職務執行法2条1項に規定されている、職務質問の要件が揃っている場合には、仮に犯罪への関与が明確とまではいえなくとも、警察官は逃走しようとした人間の腕に手をかけて呼び止めることができます。条文上、「停止させて質問することができる」とされているため、「停止」させる行為として不相当でない限りは、多少の実力行使も許されるとされています。納得できない人もいるかもしれませんが、逃げた者に対して何もできないというのでは、職務質問の実効性に欠けるため、やむを得ないと言えるでしょう。しかし、最近は警察官絡みの事件も多く、後に違法と認定された職務質問があるのも事実です。自分に後ろめたいものが一切なく、不当であると感じた場合は警官の言いなりにはならず、拒否するところは拒否すべき場面もあると思います。もっとも、職務質問を拒否することで、嫌疑をかけられるリスクは増すことになりますので、早々に終わらせたければ、むしろ素直に応じたほうが早く終わる場合が多いでしょう。なお、違法不当な職務質問に対して、スマートフォンのムービーなどで動かぬ証拠をとっておくのも有効。後に抗議をしたり、裁判で違法性を争う場合などで役立ちます。自分の身は自分の身で守るしかないのです。 *記事監修弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:佐藤俊治(複数メディアで執筆中のフリーライター。真面目な話題からくだけた話題まで手広く記事を執筆中。趣味は将棋、好物はカツカレーとパインアメ。)【画像】*Bennian/Shutterstock
2016年12月16日映画『モン・ロワ愛を巡るそれぞれの理由』が2017年3月25日(土)より順次公開される。スキー事故で負傷した女性弁護士トニーが、リハビリに励みながら、心から愛したジョルジオとの過去について振り返る本作。パリで運命的な再会を果たした男と女の恋愛と結婚、別れようとしても離れることができない情熱的な深い愛の絆。「愛し合っているのに、なぜ男と女はすれ違うのか」そんな普遍的な男女の愛の問題を描く、官能的な大人の恋愛映画となっている。さらに、劇中に登場するトニーやジョルジオのシンプルで洗練された、パリジェンヌらしいファッションスタイルも見どころの1つだ。エマニュエル・ベルコが、情熱的な愛の喜びと激しい愛ゆえにつきまとう不安に揺れながら、ケガによる痛みからも立ち直っていく主人公を体当たりで演じ、『美女と野獣』や『ブラック・スワン』『たかが世界の終わり』のヴァンサン・カッセルが、セクシーで魅力たっぷりなジョルジオを熱演。さらに『サンローラン』のルイ・ガレルなど若手キャストが脇を固める。監督は、現在のフランス映画界をリードする若き才能として注目が高まっているマイウェン。なお本作は、第68回カンヌ国際映画祭において、主演のエマニュエル・ベルコが女優賞を獲得したほか、第41回セザール賞主要8部門にもノミネートされるなど、本年度フランス映画祭で高い評価を得た。■ストーリー弁護士のトニーはスキー事故で大けがを負いリハビリセンターに入院する。リハビリを続ける中、ジョルジオとの波乱に満ちた関係を振り返る。これほどまでに深く愛した男はいったい何者だったのか。なぜ、ふたりは愛し合うことになったのか。10年前、トニーはかつて憧れていたレストラン経営者のジョルジオとクラブで再会し、激しい恋に落ちる。瞬く間に意気投合したふたりは、電撃的に結婚を決め、トニーは妊娠するが…。【詳細】映画『モン・ロワ愛を巡るそれぞれの理由』公開日:2017年3月25日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国順次公開監督:マイウェン出演者:エマニュエル・ベルコ、ヴァンサン・カッセル、ルイ・ガレル、イジルド・ル・ベスコ原題:MON ROI© 2015 / LES PRODUCTIONS DU TRESOR – STUDIOCANAL
2016年12月16日DeNAが運営する医療・健康情報サイト「 ウェルク(Welq)」への、不確かな情報を元にした記事を大量公開していたことに対する批判が発端となり、一般ユーザーが投稿した記事を掲載するいわゆる「まとめサイト」や「キュレーションサイト」と呼ばれるWEBメディアへの法的責任に注目が集まっています。またこの批判を受けて、12月に入ってからは、DeNAをはじめ「まとめサイト」や「キュレーションサイト」を運営する企業では、記事を非公開化する流れを拡大させつつあります。これらのもっとも重大な問題点として、「他者コンテンツを盗用した」ということが挙げられます。自分が作ったコンテンツが、無断で使われている…しかも、それでお金を儲けている…コンテンツホルダーとしては、許せないですよね。そこで、自分の著作権が侵害された場合に、どういう対処法があるのか、解説していきます。*画像はイメージです:■盗用された著作物の「削除と損害賠償」を請求する方法自分のコンテンツをパクった者に対して、盗用コンテンツの削除や損害賠償を請求することが考えられます。とはいえ、削除は分かるけど、損害賠償と言われても、いくら請求していいのか分からないと思われるかもしれません。しかし、著作権法では、著作権を侵害した側が、それによって利益を得ていた場合には、相手方の利益額を損害賠償できるという規定があります。また、相手方の利益額が分からなくても、いわゆる著作権のロイヤリティ金額を損害賠償できるという規定もあります。なので、そのような法律に基づいて、自分に有利な金額の損害賠償請求をしましょう。具体的な請求方法は、下記のような流れが想定できます。①侵害している者に対して、内容証明を送付し、金額などの交渉をする②相手方が交渉に応じない、又は返答がない場合には、訴訟する ■盗用コンテンツが別のウェブサービスに拡散されたときに「削除要求」する方法盗用されたコンテンツが、ブログサービス(アメブロ、ライブドアブログなど)やECサイトに掲載されるといった例は多いです。このような場合には、サービス運営事業者に対して、自己の著作物が侵害されている旨を通報し、盗用コンテンツの削除を要求することが考えられます。このようなサービスには、権利侵害を通報するフォームがあることが通常なので、 そこから入力して通報することが出来ます。また、事業者に対して、内容証明などの方法で、削除要求するなどの方法もあります。 ■「警察へ刑事告訴」するための準備方法著作権侵害があまりにひどい(コンテンツを丸々パクられた)ようだと、著作権法違反で警察に刑事告訴という手段もあります。刑事告訴する場合には、必ずを次の3つを準備して、警察にいきましょう!①これまでの経過②自社が著作権者であることの証拠③著作権侵害の証拠(ネットの画面をプリントアウトするなど)警察も数多くの事件を抱えているため、手ぶらでいってもほぼ相手にされません。きっちり証拠を見せて、事件化してほしい旨を警察官に伝えることが大事なのです! ■コンテンツがパクられたら「Google」へ削除の申し立てまた、自分のコンテンツが盗用された場合には、上記のように法的に様々な方法がとれますが、Googleに申請して、検索結果から削除してもらう方法もあります。これは、削除や損害賠償などのように、直接的なものではないですが、検索結果から削除されるため、自分のコンテンツ盗用の影響を最小限にとどめるという意味が有用です。「削除申し立てフォーム」は以下になります。著作権侵害の報告: ウェブ検索 *著者:弁護士 中野 秀俊(グローウィル国際法律事務所。弁護士になる前、システム開発・インターネット輸入事業を起業・経営。IT・経営・法律に熟知していることから、IT・インターネット企業の法律問題に特化した弁護士として活動している。ブログ「IT・インターネット法律ブログ」)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月13日先日、大手保険会社が「いい夫婦の日(11/22)」にちなんで、夫婦のへそくりに関するアンケートを実施したというニュースがありました。その平均はなんと116万円!これは、2013年の調査以来、最高額なのだそうです。へそくりとはつまり「配偶者に内緒でためているお金」のことですが、法律的には、一体誰の財産になるのでしょうか?■へそくりはいったい誰のもの?結婚してから離婚するまでの間に夫婦が協力して築き上げた財産を「共有財産」といい、それ以外の財産、すなわち夫婦の一方が結婚前から所有していた財産や、夫婦の協力とは関係なく取得した財産を「特有財産」といいます。特有財産は、それを取得した本人のものであり、離婚の際にも財産分与として配偶者に分け与える必要がありません。へそくりが特有財産として認められるかどうかについては、捻出元によって結論が異なります。■家計が別の場合、同一の場合まず、共働きで家計を別にしている場合です。たとえば、家計を全く別にしている、あるいはお互いの収入からそれぞれ決まった金額を家計に入れ、残りは自由に使って良いなどというとり決めをしている場合に、自身の収入の余剰分からためたへそくりは、特有財産として認められる可能性が高いでしょう。次に、共働きではあるが家計は同一という場合や、専業主婦の場合です。夫婦の生活費をやりくりしてためたへそくりは、夫婦で協力して築いた財産と考えられるため、共有財産となる可能性が高いです。しかし、小遣い制を採用していて、生活費とは別の小遣いの中からへそくりをためていた場合には、夫婦間の取り決めにより本来好きに使って構わないとされているものなので、特有財産として主張できる可能性があるといえます。■結婚前からの貯金や、宝くじが当選した場合は?独身時代にためていた貯金や、親からの贈与や相続によって取得した財産などは、夫婦の協力によって築いた財産とはいえないので、特有財産になります。また宝くじの当選金は、偶然によって得られるものであり、夫婦の協力によって築いた財産とは言い難いため、基本的には共有財産には該当せず、購入した者の特有財産になるでしょう。しかし、夫婦共同で積み立てたお金を使って購入した場合など、宝くじの購入経緯によっては、共有財産と認められる可能性はあります。■まとめコツコツとためたへそくりの全額を、自分のために使いたいと思うこともあるかもしれません。しかし、そうした使い方が原因で、夫婦げんかに発展してしまうリスクも考えられます。へそくりに関して、法律上の解釈は今回ご説明した通りなのですが、夫婦円満のためには、日頃から協力してがんばってきた自分たちへのご褒美として、家族で旅行に出かけたり、おいしいものを食べにいったりするために使うのも良いかと思います。監修協力:弁護士法人アディーレ法律事務所 (東京弁護士会所属)
2016年12月13日*画像はイメージです:先頃、東京・吉祥寺にある「水口病院」にて人工妊娠中絶手術受けた女性が、術後6日に亡くなったというニュースが報道されました。この女性は、2016年7月6日に夫と結婚したが、8日後に23歳という若さで亡くなったとのことです。今回問題となっているのは、手術を行った医師が中絶手術に必要な資格を所持していないと報道されている点で、法律では「母体保護法指定医」という資格を持った医師でないと中絶手術を行えないとされています。手術との因果関係は不明とされていますが、妻を亡くした夫としては真実を明らかにしたいはず。もし、手術と女性の死に因果関係が認められた場合は、どのような罪になるのでしょうか。和田金法律事務所の渡邊寛弁護士に見解を伺いました。*取材協力弁護士:渡邊寛(和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。個人事案は子どもいじめ事件から相続争いまで、企業事案は少額の債権回収から渉外買収案件まで、あらゆる案件に携わる。) ■そもそも「母体保護法指定医」とは?今回、無資格の執刀が問題となっていますが、そもそも中絶手術は資格が必要なのでしょうか。「人工妊娠中絶は、中絶することも中絶させることも刑法上堕胎罪になり得ます。母体保護法は適法に人工妊娠中絶ができる場合を定めていますが、中絶を行なえる医師を都道府県医師会の指定する医師に限定しています。」(渡邊寛弁護士)つまり、適法に人工妊娠中絶を行なえる医師は母体保護法指定医だけということになります。 ■無資格で手術を行うことはどんな罪になる?では、今回のケースのような無資格の医師による執刀が行われた場合、どのような罪となるのでしょうか。「母体保護法指定医でない医師が人工妊娠中絶を行うと、妊婦本人の同意があっても、業務上堕胎罪になります。医師や薬剤師等による「業務上」堕胎は、そうでない者(医師・助産師・薬剤師・医薬品販売業者以外の者)の堕胎(同意堕胎罪)より重く処罰されます。法定刑は3か月以上5年以下の懲役です。」(渡邊寛弁護士) ■もし、因果関係が認められた場合は?もし、手術と女性の死との因果関係が認められる、つまり手術によって女性が死亡したと認められた場合はどうなるのでしょうか。「中絶手術と死亡との因果関係が認められると、“業務上堕胎致死罪”となり、法定刑が6か月以上7年以下の懲役に加重されます。業務上堕胎(致死)罪に問われるのは執刀医個人です。」(渡邊寛弁護士) それでは、病院に責任はないのでしょうか。「病院(医療法人)は刑法上の責任は負いませんが、一般的な監督を超えて、上司が母体保護法指定医でない医師にあえて中絶手術を指示していたような場合は、上司個人が共犯となる可能性はあります。」(渡邊寛弁護士) 行政処分についてはいかがでしょうか。「行政処分も通常は執刀医個人に対してなされます。もし業務上堕胎(致死)罪で有罪となると、執刀医は、戒告、医業停止又は医師免許取消の行政処分の対象となり得ます。執刀医個人や病院には民事上の損害賠償責任も生じ得ますが、母体保護法指定医でなかったことだけではなく、施術自体に過失があったかどうかなどが問題になります。」(渡邊寛弁護士) 語弊が無きよう繰り返しますが、手術と死亡の因果関係は不明とされています。ただ、無資格での執刀自体は許しがたいものであることに変わりはありません。お亡くなりなられた方のご冥福をお祈りいたします。 *取材協力弁護士: 渡邊寛 (和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。東京築地を拠点に、M&A等の企業法務のほか、個人一般民事事件、刑事事件も扱う。)*取材・文:編集部【画像】*freehandz / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月11日11月23日、北海道美瑛町でタクシーに乗っていた日本ハムファイターズの斎藤佑樹投手と有原航平投手が、雪道を走る対向車がスリップして横転する事故に遭遇。事故車両は路肩に転落しており、2人がドアを開けるのを手伝い見事に男性を救出。幸い、運転手に怪我などはなく、命に別状はなかったそうです。この件については「不幸中の幸い」となりましたが、雪国に住む人にとって冬は交通事故が多発する時期。当然、事故を防止するためノーマルタイヤからスタッドレスタイヤに履き替えていることだと思います。ですが、なかには「大丈夫だろう」とそのまま車を走らせている人もいるよう。非常に危険な行為ですが、これは交通違反となるのでしょうか?また、積雪が多いエリアかどうかは地域性によって異なりますが、法律の規定も異なっているのでしょうか? Q.ノーマルタイヤで雪道を走ったら違反になる?地域によって法律が異なるの?*画像はイメージです:違反です!地域によって多少規定が異なり、雪国ほど規定が厳しい違反になります。その内容については道交法71条6号に基づき各公安委員会が義務規定を定めています。そのため、多少地域によって異なっているのが現状です。基本的に北海道や東北地方など雪が多く降る地域ではスノータイヤを取り付けることが義務付けられています。これに違反した場合、5,000円から7,000円の反則金が課せられます。一方雪が降らない地域については、積雪時にチェーンやスノータイヤを取り付けるよう定められており、絶対にスノータイヤを履かなければならないとは定められていません。当然のことですが、やはり雪の多い地域ほど自動車のタイヤに対する規定も厳しくなるようです。命を守るためですから、忘れずにスノータイヤを装着しましょう。 *記事監修弁護士:竹内 省吾(弁護士法人サリュ 銀座事務所。 交通事故分野のパイオニア。民事刑事問わず無料相談 メール受付対応。おもな著作に「交通事故裁判和解例集」(第一法規)などがある。)*取材・文:佐藤俊治(複数メディアで執筆中のフリーライター。真面目な話題からくだけた話題まで手広く記事を執筆中。趣味は将棋、好物はカツカレーとパインアメ。)【画像】イメージです*eugenesergeev / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月11日年末年始は、高速道路の交通量が大幅に増加します。今年は帰省ラッシュのピークが30日と31日、Uターンラッシュが1月3日の見通しだそうです。2017年は1月4日が平日であることから、3日は公共交通機関など、混雑が予想されています。高速道路の渋滞も、かなりのものになりそうです。なかなか動かない渋滞を抜けると、ついついスピードを出しがちです。つねに追い越し車線を走行し、ほかの車をごぼう抜きにしている人もいるかもしれません。もちろんその行為は、立派な交通違反。スピードの出しすぎは命に関わりますから、警察の取り締まりの対象になります。「そんなことは知っているよ」と言いたくなることでしょうが、追い越し車線を法定速度でずっと走っているだけでも違反になることをご存知でしょうか?「まさかそれだけで違反になるわけないだろう」という声も聞こえてきそうです。 Q.高速道路で追い越し車線を走り続けると違反になるの? *画像はイメージです:違反です!走行してOKな距離の目安は2キロメートル道路交通法第20条の「通行帯違反」に抵触するため、立派な違反になります。明確な規定はありませんが、一般的に目安として2キロメートル以上走行すると、違反とみなされます。ただしその場が車線変更できない状況とみなされた場合は、その限りではありません。2キロという距離は、あくまでも「目安」です。この通行帯違反は仮に法定速度で走っていたとしても適用。普通車の場合、違反点数1点、反則金6.000円が課せられます。6,000円を支払うくらいなら、走行車線でゆっくり走ったほうが良さそうですね。 *記事監修弁護士:竹内 省吾(弁護士法人サリュ 銀座事務所。 交通事故分野のパイオニア。民事刑事問わず無料相談 メール受付対応。おもな著作に「交通事故裁判和解例集」(第一法規)などがある。)*取材・文:佐藤俊治(複数メディアで執筆中のフリーライター。真面目な話題からくだけた話題まで手広く記事を執筆中。趣味は将棋、好物はカツカレーとパインアメ)【画像】イメージです*ABC / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月10日ここ最近、悪質な訪問販売が増えているようです。11月には高齢者に布団の違法な訪問販売をしたとして、業者に行政処分が下る事件が静岡県でありました。また、神奈川県では「悪質な訪問販売をやめさせる」とウソをつき、現金をだまし取るという事件も発生しています。このような悪質な業者から身を守るための法的手段を、4つご紹介いたします。*画像はイメージです:■悪質訪問販売業者の代表的な3つのやり口とは?悪質な訪問販売業者のやり口としては、次のようなものがあります。① 扉を閉めようとするとドアに体を挟んでドアを閉めさせない② 「今日は忙しいです」と伝えると、「それならいつならご予定が空いていますか」と言い、「話を聞かれるつもりがないならなんでドアを開けたんですか?ドアを開けたということは何か話を聞こうと思ったんでしょ」「大きな声を出されるとご近所迷惑ですよ」などと会話をつなぎ、いつまでも立ち去らない③「お住まいについて話をするためです」と訪問目的を明示せず、いつまでもだらだらと話をするこのような悪質な業者に出会うと根負けして、話を聞いてしまうことになるかもしれせんが、それでは彼らの手口に乗ってしまいます。根負けをせずに次のような毅然とした態度をとってください。 ■悪質業者から身を守るための4つの「法的な追い払い方」(1) 不退去罪で警察に電話すると伝えるまず、悪質業者から身を守るために有効な法的な「追い払い方」は、「不退去罪(刑法130条)」で警察に電話すると悪質な業者に対して伝えることです。どのような行為について不退去罪が成立するか簡単に説明すると、住んでいる人から「帰ってください(退去命令)」という要求を受けてそれがわかっているのにその要求を無視してその場所から退去しない行為について成立します。だから、いつまでも軒先や玄関先に居座る業者に対しては、携帯電話等で警察に電話を素振りを見せれば悪質業者も帰ると思われます。(2)特定商取引法3条の違反と、60条を利用する意思があることをはっきり伝えること悪質な訪問販売業者は、訪問目的を明示せず、いつまでもだらだらと話をしてくる場合にはどうしたらいいのでしょうか?販売業者が訪問販売をしようとするときは、その勧誘に先立って、次の3つを明らかにしないといけません(特定商取引法3条)。1)会社名2)売買契約の勧誘目的3)勧誘に係る商品名したがって、訪問目的も明かさない悪質な訪問販売業者に対しては、その行為が特定商取引に関する法律(以下、「特定商取引法」という。)3条の違反であることを伝えることが考えられます。それでも業者名を名乗らない場合は、訪問販売員の名前を聞いた上で、主務大臣申出制度(特定商取引法60条)を利用することが考えられます。主務大臣申出制度というのは、「このような悪質な訪問販売がありましたよ。お役人さん調べてください」ということを申し立てる制度です。役所は、調査をした上で必要があれば、悪質な訪問販売業者に対して、業務改善の指示(特定商取引法7条)業務改善命令(特定商取引法8条)を出すので、主務大臣申出制度には一定の意味があります。したがって、悪質な訪問販売業者に対する対処法としては、その訪問販売員による訪問販売について記載した申出書を都道府県の特定商取引法担当課に対して提出する旨を伝えるという方法が考えられます。(3) 消費者契約法における契約の取消がある旨を伝える消費者契約法4条3項1号には、消費者宅から事業者が退去しない場合、消費者の困惑に基づいてした契約の申し込み・承諾の意思表示の取消しができると規定されています。したがって、このまま居座られて契約を締結することになっても、消費者契約法4条3項1号を利用して契約を取り消しますよと悪質訪問販売業者に伝えることが考えられます。(4) 事後的な手段としてクーリング・オフもある仮に訪問販売業者の圧力に押されて契約を締結してしまった場合でも、申込みまたは契約の後8日間は無条件で解約することができます。 ■弁護士からのアドバイス訪問販売業者の圧力に押されて契約を締結してしまったので、クーリング・オフをしたいと考える場合には、訪問販売業者に対して弁護士から内容証明郵便を送るのが有効です。その際には弁護士鈴木謙太郎にご相談ください。 *著者:弁護士 鈴木謙太郎(1972年の設立以来40年以上の歴史がある、虎ノ門法律経済事務所の池袋支店で支店長を務める。注力分野は遺産相続、不動産取引、交通事故、債権回収、労働問題、債務整理、刑事事件、離婚等。「皆様の人生の一大事を共に解決するパートナーとして、真摯に業務に取り組んでまいります。」)【画像】イメージです*ワンセブン / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月10日年末年始、自動車で帰省するという人は多いのではないでしょうか。クルマ好きにとっては、高速道路を快走することは、実に気分の良いものです。もちろん、法定速度を守っている人がほとんどだと思いますが、なかには追い越し車線を猛スピードで疾走する、けしからん自動車も存在します。そんなときは、かつてF1で繰り広げられたアラン・プロスト対アイルトン・セナのように、追い越す車を妨害して「ブロック」したくなってしまいます。しかし、そのような行為は交通違反になるらしいのです。無法者へのささやかな抵抗なのに…。本当に違反になってしまうのでしょうか? Q.追い越しを妨害してスピードを上げると減点されるって本当?*画像はイメージです:本当です!反則金と減点1点追い越そうとしている車を妨害する行為は、事故を誘発することになりますので違反となります。速度を上げて並走することも同様です。(道路交通法第27条 1項 2項)追い越しを受けた場合はスピードを保ち、静かに抜かれなくてはなりません。違反した場合は減点1点と反則金の対象となります。自分が抜かれることに対して不愉快な感情を持つ人も少なくないと思いますが、事故で命を落としては元も子もありません。先を急ぐ者には道を譲り、安全に目的地にたどり着くことを考えましょう。 *記事監修弁護士:竹内 省吾(弁護士法人サリュ 銀座事務所。 交通事故分野のパイオニア。民事刑事問わず無料相談 メール受付対応。おもな著作に「交通事故裁判和解例集」(第一法規)などがある。)*取材・文:佐藤俊治(複数メディアで執筆中のフリーライター。真面目な話題からくだけた話題まで手広く記事を執筆中。趣味は将棋、好物はカツカレーとパインアメ。)【画像】イメージです*hallucion7 / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月09日Googleストリートビューに映ったハトが、未確認飛行物体ではないかと話題になったものがあったようです。Googleストリートビューについては、プライバシー侵害になるのではないかという議論がされることがあり、実際にそれで裁判になったこともあります。実際、Googleストリートビューはプライバシーを侵害するものといえるのでしょうか。解説していきたいと思います。*画像はイメージです:■プライバシー侵害の要件プライバシー侵害が成立するためには、一般的に以下の要件を満たす必要があるとされています。 1. 私生活上の事実または事実らしく受け取られる事柄であること2. 一般人の感受性を基準にして、当該私人の立場に立った場合、公開を欲しないと認められるものであること3. 一般の人々に、未だ知られていないことがらであること(非公知性) これは「宴のあと」事件(東京地判昭和39・9・28)が示した基準です。もっとも、必ずしもこの要件が厳格に適用されてプライバシー侵害が認定されているわけではないのが実際です。 ■“プライバシーとして保護するか”が争点だと上記3要件が重視されるただし、“そもそもプライバシーとして保護するべきか”という点が争われる場合、この要件の充足の有無がかなり問題になってくることがあります。私見ですが、「宴のあと」事件判決は単なる地裁判決であり、私生活上の事実等に対象を限定すること、また、非公知性を要求する点で、現在では不適切な要件になっているのではないかと考えています。特に、非公知性については、昭和39年当時は、情報の発信者はもっぱらマスコミであり、個人が社会に物事を公表することは著しく困難で、「一般の人々に未だ知られていない」という状況が容易に観念することができました。しかし、現在はインターネットを通じて誰でも気軽に情報発信ができるようになっており、インターネットに投稿されれば、その情報は誰でも閲覧できる以上、「一般の人々に未だ知られていない」ということを観念することができない状況と思います。その結果、「宴のあと」事件の要件を用いれば、インターネット上に掲載された事項については、プライバシーとして保護されない、ということになってしまいます。これは明らかに不当でしょう。つまり、プライバシー侵害成立の要件は、現代の状況とは全く合致しないものになっているのです。 ■Googleストリートビューはプライバシーを侵害するものかでは、Googleストリートビューはプライバシーを侵害するものでしょうか。Googleストリートビューは、プライバシーに一定の配慮をして、顔、表札、車のナンバープレートなどにモザイクをかけています。また、ストリートビューでは公道からの撮影がされているのが通常であり、公道において撮影する際、周囲の様々なものが写ってしまうことはしばしばあることです。そのため、一般的にはプライバシー侵害とは言えないと思われます。裁判でも、同じような判断で、プライバシー侵害が否定されています。もっとも、塀の中が撮影されていたり、モザイクがかかっていない人の顔が掲載されているといったケースもあるようであり、個々の状況によってプライバシー侵害と評価できる場合もあるだろうと思われます。 *著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)【画像】イメージです*Lolostock / Shutterstock
2016年12月09日年末年始の休みは普段運転をしない人がハンドルを握ることが多く、危険を感じることが少なくありません。特に事故につながりやすいのが、マナーを知らないドライバーが増えること。交通社会に生きるものとして当然守るべきことを無視するため、職業ドライバーを中心に「イラ」っとしてしまうことが多くなります。そんな事例の代表格が、左折後2車線の道路の右側に入る車。近くを走る車としては非常に腹の立つ行為ですが、交通違反ではないのでしょうか。また、右側に入った車が接触事故を起こした場合過失割合も気になります。 Q.左折後2車線の道路の右側に入る車は交通違反になる?事故を起こした場合、過失割合はどうなる?*画像はイメージです:マナー違反だが、交通違反にはならない。ただし過失割合は加算されることがある。道路交通法第34条1項に「車両は、左折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り道路の左側端に沿つて徐行しなければならない。」とあります。「できる限り」であるため、この場合交通違反にはあたりませんが、マナー的にはありえないということになります。危険であることは変わりがありませんので、避けるのが無難です。また事故を起こした場合についてはケースバイケースですが、割合が加算されることもあります。これは、留意していたほうが良いと思われます。交通違反ではなくても、マナー的にはアウト。ドライバーの倫理が問われる法律と言えるかもしれませんね。 *記事監修弁護士:竹内 省吾(弁護士法人サリュ 銀座事務所。 交通事故分野のパイオニア。民事刑事問わず無料相談 メール受付対応。)*取材・文:佐藤俊治(複数メディアで執筆中のフリーライター。真面目な話題からくだけた話題まで手広く記事を執筆中。趣味は将棋、好物はカツカレーとパインアメ。)【画像】イメージです*yerbluesky / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月08日女優・小雪が、来年1月期放送のフジテレビ系新ドラマ「大貧乏」で主演を務めることが決定。小雪さんがシングルマザーに扮し、権力者の欲により無一文に追い込まれたシングルマザーが、理不尽な社会に立ち向かう奮闘劇を描く。また主人公を支えるエリート弁護士を伊藤淳史が演じる。物語は、主人公・七草ゆず子が勤めていた会社が突然倒産し、給与も貯金も全てを失い、文字通り“大貧乏”に大転落してしまったところから始まる。職ナシ、金ナシ、子どもアリ。崖っぷちに立たされ、途方に暮れていたゆず子に、縁もゆかりもないエリート弁護士・柿原新一から連絡がくる。実は柿原はゆず子の元同級生。非常に小柄で、人が良さそうな風貌から一見頼りなさそうに見えるが、年商107億を稼ぐ敏腕弁護士の柿原。高校生時代からゆず子に憧れ、思いを募らせてきたが、ゆず子の置かれた状況を聞きつけ、助けたい(会いたい)一心で勇気を振り絞って連絡してきたのだ。「会社の倒産には裏がある」と柿原は助言するものの、ゆず子は、そんなことよりも生活を安定させるために働き口を見つけることの方が大切だと、柿原の提言を断る。しかし、「一番大切な家族の穏やかな生活が奪われたことに、疑問を持たないのはどうして? 何も理解しようとせずにただ不利益を被るの?」と本質をつく柿原の言葉、そして母親を気遣う子供たちの姿に心を打たれ、ゆず子は強い母になろうと決心。柿原の粘り強い調査の結果、倒産を引き起こした一端と考えられる謎の大金「30億円」がプールされている可能性が発覚。その核心に迫るにつれ、さらなる大きな渦に巻き込まれていくことに…。ゆず子と柿原、見た目も中身も全くもってチグハグで凸凹なこの2人だが、敵はひとつ。果たして、彼らは悪の正体を突き止め、反撃することができるのか――?実生活でも3人の子どもの母として、仕事と家庭の両立に奮闘する小雪さんが本作で演じるゆず子は、ひとつ年下の夫に裏切られ、以来女手ひとつで8歳の息子と6歳の娘を育ててきたシングルマザー。苦労もあったが、2人の子どもたちの成長を何よりの励みとして、3人での暮らしを大切にしている人物だ。今回役作りについて小雪さんは「作品によって準備することは違いますが、今回はリサーチをしています。自分で調べたり、シングルマザーの知り合いにインタビューしたり…」と明かし、「コメディーではありますが、面白おかしく演じようとは思っていません。主人公のゆず子は頑張り屋さんで、人に頼れなくて、勝ち気な面もあって…、ゆえに不器用な部分がかなりあります。その真面目で一生懸命空回りしている姿をはたから見たら面白い、と思っていただけたら、と思います」とコメント。そして、伊藤さんが演じる敏腕弁護士・柿原新一は、大手企業のM&Aや大型訴訟問題を多く抱え、年商107億、個人事務所として業界3位の実績を持つ柿原法律事務所のトップ。頭がキレて、交渉力も高く、異常に仕事が早いスーパーエリート。しかし、恋愛においては超奥手。そんな彼が高校時代の憧れの同級生・ゆず子再会して…。柿原の恋の行方にも注目だ。自身もいままでに経験したことのない役柄に、すごく楽しみと話す伊藤さんは「ただ“仕事がデキる人”というだけじゃなく、人としての優しさや温かさを持っている誠実な人なので、小雪さん演じるゆず子や子どもたちに対する思いをきちんとみせて、人間味のある役柄にしていきたい」と意気込み。小雪さんとの共演には「本当に楽しみにしています。物語の中にもドキドキするシーンがあるのですが、“小雪さんと一緒にお芝居できる”というドキドキする思いが、リアルにいい感じに僕の中にあるので、うまくミックスして出していけたらと思っています」と語った。「大貧乏」は2017年1月8日より毎週日曜21時~フジテレビにて放送。※初回15分拡大(cinemacafe.net)
2016年12月07日評論家の池田信夫氏がインターネット上で発信した表現に対し、弁護士の伊藤和子氏が名誉毀損等を理由とする損害賠償を求めた裁判につき、平成28年11月24日、東京地方裁判所で判決が言い渡されました。裁判を担当した手嶋あさみ裁判長は、伊藤弁護士に対する名誉毀損等が成立することを認めて、約57万円を支払うよう池田氏に命じました。*画像はイメージです:■「スラップ訴訟」とは何か?池田氏は、伊藤氏が提起したこの裁判に関し、自身のブログ記事「伊藤和子のスラップ訴訟について」で、「このように他人を脅迫して言論を封殺するための訴訟をスラップ訴訟(Strategic Lawsuit Against Public Participation)と呼ぶ。こういう訴訟を許すと、ネット上の言論に対する萎縮効果が大きい。まして「人権派」を自称する弁護士がこのような人権侵害を行なうことは弁護士の職業倫理に反するので、彼女が訴訟を撤回しなければ、弁護士懲戒請求も検討する。」などと批判していました。「スラップ訴訟」とは、ウィキペディアでは「大企業や政府などの優越者が、公の場での発言や政府・自治体などの対応を求めて行動を起こした権力を持たない比較弱者や個人・市民・被害者に対して、恫喝・発言封じなどの威圧的、恫喝的あるいは報復的な目的で起こす訴訟である。」と説明されているように、本来、「大企業等の経済的・社会的に個人を圧倒する力を持つ存在」が、「個人」に対しておこなうものを指します。伊藤氏が池田氏に対して提起したような、「個人」が「個人」に対しておこなう訴訟は、(訴えを提起した個人が高い社会的地位にあるといった例外を除けば)スラップ訴訟にはあたらないと考えるべきでしょう。訴えられた方が、(本来はそうでないのに)「スラップ訴訟だ」という言葉で非難することは、「正当な被害の救済」を妨げるという(負の)効果を生じさせるものだと思います。なお、伊藤弁護士は、池田氏が「スラップ訴訟だ」と非難したことに対して、自身のブログ記事「【ご報告池田信夫氏を名誉棄損で提訴しました】」で、「この訴訟はスラップ訴訟に該当しないことは明らかです。不当な名誉棄損を受けた個人が裁判手続きを通してこれを是正することは、個人の基本的人権であり、憲法でも“裁判を受ける権利”として保障されています。訴訟による法的解決自体を糾弾する姿勢にははなはだ疑問です。」と述べています。私も同感です。 ■名誉毀損が成立するために必要な要素とは?ところで、池田氏は「スラップ訴訟だ」などと伊藤氏を非難しながら、裁判においては、自分が投稿した記事が「真実であること」について、何ら主張立証をしなかったそうです。名誉毀損とは、不特定多数に向けて、人の社会的評価を低下させるに足る事実を摘示(または、意見ないし論評を表明)することです。しかしながら、摘示された事柄(意見ないし論評の表明の場合は、前提とされた事柄)が、(1)公共の利害に関わる事実であること(2)専ら公益を図る目的であったこと(3)真実であること(または真実であると信じたことに相当の理由があること)という要件を満たす(と表現者が主張立証した)場合には、違法性が阻却され、名誉毀損は成立しません。これは、一定の要件を満たす場合には、名誉毀損にあたる表現であっても法的な責任を負わないとすることで、「表現の自由」の保障と、表現によって人格権(名誉権)を侵害された者の救済とのバランスを図ったもの、と理解されています。しかるに、名誉毀損にあたる表現について池田氏が「真実であること」を主張も立証もしなかったということであれば、違法性が阻却されることはなく、名誉毀損が成立するということになりますね。 *著者:弁護士 櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。ブログ「ネットイージス.com」)【参考】池田信夫氏ブログ:伊藤和子のスラップ訴訟についてWikipedia:スラップについての記述伊藤弁護士ブログ:【ご報告池田信夫氏を名誉棄損で提訴しました】【画像】*Andrey_Popov / Shutterstock
2016年12月06日photo by 編集部大学在学中の2002年に、友人と共にIT系のベンチャー企業を設立した経験を生かして、現在でもIT企業のサポートを多くこなしている中野弁護士。弁護士になるまでの苦労や失敗が、今の業務にどう結びついているのか伺いました。中野秀俊(なかの ひでとし)弁護士グローウィル国際法律事務所は、元IT企業経営者であり現在も会社の経営者である中野秀俊弁護士が、クライアントにとって理想の法律事務所を実現したいという思いから設立。 ■学生時代に立ち上げたベンチャー企業が倒産…その失敗から学んだものとは?___弁護士を目指したきっかけについて教えてください。私は、2002年に早稲田大学の政治経済学部経済学科に入学したのですが、入学して間もなく友人と二人でIT企業を立ち上げました。事業内容は、システム開発の受託から始まって、Webサービスを自分たちで立ち上げたりしました。友人と二人で共同代表をしながらエンジニアも営業も行うといった感じです。その学生ベンチャーは、一時期上手くいっていたのですが、大学4年のときに、倒産してしまいました。倒産の一番のきっかけになったのが、インターネットを使った輸入事業の失敗です。これは、ネットで海外の商品を仕入れて売ると行ったサービスだったのですが、先に商品を売ってしまってから後から仕入れるというシステムをとっていました。しかし、このシステムが仇となり、結局品物が入ってこないことによって、取引相手との間で、違約金が発生してしまったのです。当時は、きちんと契約書などにも目を通していなくてハンコを押していました。契約書の中には、かなり高額な違約金の条項もあって、それが払えないことでキャッシュフローがおかしくなり、事業が回らなくなったのです。この失敗は、最初の時点で、契約書をしっかりと見ておけば防げたことでした。また、今思えばトラブルになった後も、法律を知っていればいろいろと対策できることもあったと感じます。この倒産は、法律がわからなくてダメになってしまった部分も多々あったので、今度は法律面でベンチャー企業を支える側になろうと思ったのが、弁護士を目指すきっかけです。 ___経済学部から法律の世界への転身で、苦労したことはありますか?ちょうど当時はロースクール制度が始まったばかりで、制度移行の過渡期でした。私は、学習院大学のロースクールに通ったのですが、その後、司法試験の合格までには4年ほどかかりましたね。最初、法律は全くわからない状態だったので、正直なところ、本当にしんどい思いをしました。しかし、そのときの経験から、一般の人には法律用語はさっぱりわからないということが身にしみてわかっているので、専門用語を使わずにクライアントに説明するという今の基本姿勢は、あの時の経験がいきているかなと思います。 ■会社経営の経験から身についたスピード感を弁護士業でも活かす___仕事における信条、ポリシーについて教えてください。よくクライアントに言われるのは「対応が早いですね」ということです。弁護士は、スピード感がない方も多いですからね。私は会社経営をしていたので、スピード感は非常に大事だなと、実感しています。IT企業のクライアントは特にスピードが重視されるので、法律相談だったら24時間以内に回答する、契約書のチェックだったら基本的には1日~2日くらいで回答するといったことは、心がけていますね。今も法律事務所とは別に、会社も経営していますし、ITベンチャー企業の経営者だった経験があるので、単なる法律論で終わらせないようにしています。法律ではダメなのですよというのは、とても簡単なのですが、経営者は、それは求めていないだろうなと考えています。ダメということではなくて、それでは、どうしたらいいかという解決法や、代替案も必ず模索し提案するところまで、サポートするように心がけています。 ___大学で経済学を学んでいたそうですが、今でも役立っていることはありますか?私は、あまり大学に行っていないので(笑)そこは、なんとも言えません。ただ、学生ベンチャーをやっていたという経験によって、経営者の気持ちもすごくよくわかるというのはありますね。綺麗事だけでは、ビジネスは立たないということも、肌で感じています。経営者にアドバイスするときは、自分が経営者だったら、どういうアドバイスを受けたいかなという視点でいつも回答していますね。経営者は「法律はこうなっています」といった通り一辺倒の回答は絶対聞きたくないと思います。また、レスポンスが遅いといったことも、絶対嫌なので、経営者の立場になって対応するように常に考えていますね。 *取材協力弁護士:中野秀俊(なかの ひでとし)弁護士1984年生まれ。埼玉県出身。城北埼玉高校卒業。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。学習院大学法科大学院修了。大学在学中の2002年に、友人と共にベンチャー企業を設立。その事業の失敗を契機に、弁護士を目指す。グローウィル国際法律事務所代表弁護士。みらいチャレンジ株式会社代表取締。SAMURAIINNOVATIONPTE.Ltd(シンガポール法人) CEO。東京弁護士会インターネット法部会会員。著書に「ここをチェック!ここをチェック! ネットビジネスで必ずモメる法律問題」「有利な契約・利用規約を結ぶためのビジネス契約書 つくり方とチェックポイント」(いずれも、日本実業出版社)などがある。「グローウィル国際法律事務所」一門一答Q&A___事務所の理念を教えてください。法人のクライアントに関しては、企業の「攻め」と「守り」を支援しますということを理念としています。「攻め」の部分は、「みらいチャレンジ株式会社」のほうで、資金調達や人災採用とか、M&Aの仲介などを行っています。「守り」の部分は当事務所で、法律の部分を支援しています。事務所名に「国際」という名称を入れているのは、国際的な案件にしても対応できるということを伝えたいからです。私は、シンガポールでも会社を持っているのですが、IT企業だけではなく、日本企業は、近年、東南アジアなどに進出しているケースが多いです。そうすると、契約書のレビューで英文契約書も見るといった対応も必要になってくる。知財の問題なども、海外の法律に関して精通しておく必要があります。海外の弁護士とのネットワークもあるので、例えばタイで新しいサービスを展開したいという案件に対しては、タイの弁護士と一緒に法律の調査をして、マーケットの調査もするといった対応もしていますね。___一番依頼が多い分野は何ですか?IT企業のシステム開発の法律関係、著作権などの知的財産権関係、労務問題が多いですね。もちろん。他にも債権回収や、契約書のチェック対応などもあります。___一番依頼が多い相談内容は何ですか?2つあって、一つは例えば契約書など、ビジネスモデルの法的なチェックをしてくださいという予防面の相談です。もう一つは、紛争になりかけている事案に関する相談です。ビジネスチェックのときに、行政の相談窓口に一緒にいきましょうというケースもありますね。___初回の相談料はいくらですか?基本、法律相談は、1時間1万円をいただいています。相談料は法人も個人も一緒です。具体的に訴訟をしてくださいとか。交渉してくださいということになれば、ちゃんと事前に見積もりをして、よければ契約といった流れですね。値段も顧問契約だったら、例えば5万円だったら、ここまでやりますという感じでホームページに明確に出していますので、あとから追加料金ということはないです。個人の案件も、旧弁護士会の基準が基本に算定しており、費用説明書を作り、なぜこの金額になるのかを分かりやすく説明しています。もちろん、追加料金はありません。___着手金と報酬金の目安は?訴訟になった場合は、いくら請求しているのか、または請求されているのかによって異なります。だいたいですけど、着手金が、請求する・された金額の5〜10%ぐらいのイメージです。もちろん、これは金額によります。報酬金は、訴える側だったら実際に回収した額の10〜15%くらいの、訴えられた側は、減額した額の10~15%くらいのイメージですね。 *取材・文:塚本建未(トレーニング・フットネス関連の専門誌や、様々なジャンルのWebメディアを中心に活動するフリーランスライター。編集やイラストも手がける。塚本建未Website 「Jocks and Nerds」)【画像】*編集部
2016年12月05日photo by 編集部奨学金を貰いながら高校・大学を卒業した苦労人である北弁護士。ちょうど転換期を迎えつつあるという弁護士業界が、相談者のためにどのようなサービス提供を目指していくべきかについて、北弁護士独自の見解を伺いました。北 周士(きた かねひと)弁護士東京都千代田区、最高裁に隣接する平河町にオフィスを構える。離婚・相続といった問題はもちろんのこと、ベンチャー企業の若手経営者の支援や士業の開設・運営支援などに注力していることで注目されている。北周士弁護士は、奨学金を貰いながら高校・大学を卒業した苦労人なだけに、困難な状況にいる人を支援したいという熱意に溢れている弁護士である。 ■弁護士業界には人材難の波が押し寄せている!?___事務所として注力している取り組みについて教えてください。1番目はベンチャーないし中小企業の支援で、2番目は離婚問題や相続問題といった感じですね。パートナーの長谷見峻一弁護士は、相続や信託に注力しています。私個人としては、士業の開業と経営の支援に力を入れています。いままで士業のサポートは、弁護士がメインだったのですが、今後は会計士、税理士、社会保険労務士、司法書士、行政書士など他の士業の方々も、開業とか経営の支援をしていければなと思っていますね。士業は、他人を助ける仕事ですが、他人を助けるためには、自分が経済的・精神的に余裕がないといけないと思います。ですので、私が開業して経験した事柄を、うまく伝えていければ良いなと思っています。 ___今後、弁護士業界はどうなっていくでしょうか?今後、弁護士業界は、人材難が起こると予想しています。そう考える理由は、弁護士になりたがる人がすごく減ってしまったことと、一時的に増やした層が、弁護士登録から5年以上立ち、採用側に回り始めているので、需要と供給のバランスが崩れると考えられるからです。あとは、弁護士一人の事務所の比率は減っていくということも予想しています。現在、東京には、全弁護士の約3万7,000人のうち、約1万7,350人がいます。さらにその1万2,000人が、千代田区、新宿区と、港区、中央区にいるのです。統計局による売上統計を見ると、儲かっている事務所と、そうでない事務所の二極化が起きていますね。そうした中では、経営的な視点をもって、事務所を運営していく必要性が出てくるのではないかと思います。一人事務所は経費的な負担が相対的に重いことや対応できる業種が限られることから、相対的な比率としては減少していくのではないかと思います。 ■法律トラブルも医療と同じく早期発見、早期治療が大切___今、弁護士に相談しようか迷っている方にメッセージをお願いします。弁護士に相談にいくというのは最後、というイメージはいまだに存在します。法律トラブルは、医療と同じで早期発見、早期治療が本当に大切です。早い段階であれば、打てる手はいっぱいあるのですけれども、時間がたってしまうと手の打ちようがなくなります。法律問題は、自分でなんとかしようとして失敗し、問題が重篤化してから助けを求めてくるケースが少なくないのです。最初に問題が起こった時点で、相談に来てくれれば、本人も弁護士も負担が軽く、費用も安く押さえられる可能性が極めて高くなります。例えば会社をたたむのにも、費用がかかります。弁護士の法律相談は、なんとなく料金が高いというイメージで敬遠しているのであれば、今は初回無料相談の事務所も多いので、気軽に助けを求めに来てほしいですね。どの弁護士が良いかといったことを考えなくても、大都市圏の法律事務所の場合、自分の専門外だと思ったら、その分野のエキスパートを紹介してくれることが多いです。弁護士が担当する事案でなくても、怒る人はいませんので、どの士業に相談すればいいかわからないときも同様です。「Yahoo!知恵袋」などの掲示板で、法律相談をする人がいますが、ベストアンサーは、質問者に気持ちの良い回答をした人ですという意味でしかなく、それ以上の正確性は担保されていません。ですので、ネットだけに頼らずに、私でなくても良いので早めに弁護士に、相談することをおすすめします。 *北弁護士のインタビュー記事母子家庭で育った弁護士が語る「離婚問題で相談者のストレスを軽減させる」ことの重要性ベンチャー支援を続ける弁護士が「労務・法務のリスクマネジメント」を重視する理由とは *取材協力弁護士:北 周士(きた かねひと)弁護士(1981年生まれ、静岡県出身。本籍地は佐渡。長野県立上田高等学校卒業。中央大学法学部法律学科卒業。大学在学中の2005年に、司法試験に合格。青山総合法律事務所、安藤武久法律事務所を経て、きた法律事務所を開設。事務所名を北・長谷見法律事務所に変更し現在に至る。企業・個人を問わず困難な状況にいるクライアントの利益を最大化することを目標にしたサポートを行なっている。ベンチャー企業支援や、士業の開設支援などを得意分野にするほか、母子家庭で育った自身の経験をもとに、離婚問題や相続問題などに関する親切なアドバイスが評判の弁護士である。著書に『弁護士-独立のすすめ』(第一法規株式会社)、共著本に『弁護士 独立・経営の不安解消Q&A』(第一法規株式会社)などがある。)*取材・文:塚本建未(トレーニング・フットネス関連の専門誌や、様々なジャンルのWebメディアを中心に活動するフリーランスライター。編集やイラストも手がける。塚本建未Website 「Jocks and Nerds」)【画像】*編集部
2016年12月04日photo by 編集部企業が個人情報を流出するという不祥事を起こすと、大きく報道されることの多い昨今ですが、つい先日も佐川急便が近畿大学に在籍する学生約100名の「名簿」を紛失したとして各種メディアで報じられました。現在のところ直接の被害は発生していないようなのですが、紛失した名簿には学生の氏名や住所、電話番号などが記載されていたため、悪用される危険性は非常に高く、紛失した佐川急便側の責任は重大であると考えられます。ただ、自分の個人情報は流出してしまったものの、実際に被害がない場合、流出させた側に損害賠償は請求できるものなのでしょうか。また、もし実際に被害があった場合にもどの程度の損害賠償を請求できるのでしょうか。今回の記事ではこれらの疑問点について民事法務に詳しいピープルズ法律事務所の森川文人弁護士にお話を伺いました。*取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。) ■名簿紛失した学生は佐川急便に損害賠償請求は可能?まず、今回の事案について、学生は佐川急便に損害賠償を請求することは可能なのでしょうか?「個人情報漏洩のケースでは、これまでの判例からみますと、実際に実害が生じない場合でも流出自体の慰謝料として一人当たり3万円程度が最高額で認められる場合はあります。実際に「個人情報を悪用された」場合については、その悪用によってどの程度損害が生じたかによって責任を追及できる限度は異なってくるでしょう。」(森川弁護士)実際の被害がない場合、請求できる金額はそこまで大きくないのですね。また、仮に損害があったとしても、どの位の損害賠償が行われるかは被害の大小によってケースバイケースになるようです。 ■個人情報が悪用された場合、責任は重くなる?現在のところ被害は確認されていないようなのですが、もし今回の紛失が原因で個人情報が悪用されてしまった場合、佐川急便が負うべき責任はより重くなるのでしょうか?「個人情報の紛失→その個人情報が悪用される→実際に損害が発生する、という因果関係が証明されることが前提となりますが、その紛失した情報が“悪用”されたことが原因で直接損害が発生した場合は、その額を請求できると思います。よって佐川急便が負うべき責任はより重くなると言えます」(森川弁護士)現状、まだ被害は確認されていないため仮定の話にはなりますが、もしも紛失した個人情報が悪用されてしまう結果となった場合、佐川急便の責任は重大化する事になりそうですね。 ■誰に対して損害賠償が可能になるのか?最後に、仮に今回のような個人情報流出の被害者になってしまった場合、誰に損害賠償を請求できるのでしょうか?「誰に請求できるかですが、まずは、その個人情報を悪用した人に対して損害賠償を行う事になります。ただ、それが誰なのか判明しないときに、今回の事件であれば流出元である佐川急便に対して損害賠償請求をできるかどうかということですが、上記で解説したように情報流出によって損害が発生したという因果関係を証明することができれば可能になると思います。」(森川弁護士)まず損害賠償請求をすべきなのは悪用した人物が先になる、というのは意外に感じる方も多いのではないでしょうか。ただ、個人情報流出被害の場合、悪用者を特定するのは難しいため、やはり森川弁護士の解説通り因果関係を証明した上で流出元に損害賠償請求を行うことが確実な方法だと言えるのではないでしょうか。 *取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)*取材・文:ライター松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。在学中に社労士試験に合格し、大手社労士法人に新卒入社。上場企業からベンチャー企業まで約10社ほどの顧問先を担当。その後、IT系のベンチャー企業にて、採用・労務など人事業務全般を担当。並行して、大手通信教育学校の社労士講座講師として講義サポートやテキスト執筆・校正などにも従事。現在は保有資格(社会保険労務士、AFP、産業カウンセラー)を活かしフリーランスの人事として複数の企業様のサポートをする傍ら、講師、Webライターなど幅広く活動中。【画像】編集部
2016年12月04日photo by 編集部実家がお寺という経歴を持つ八坂弁護士。東京都中野区にある「野方」で「マチベン」として活躍する彼に、和解という解決方法が難しいといわれる「行政トラブル」をどのように勝訴へと導いたのかを語ってもらいました。八坂 玄功(やさか もとのり)弁護士東京都中野区、西武新宿線「野方」駅にある「しいの木法律事務所」は、地元に密着した法律事務所で、現在、経験豊富な3名の弁護士が在籍している。所長の八坂玄功弁護士は、いわいる“マチベン”として地域住民のために弁護活動を行う傍ら、行政事件のエキスパートとして数多くの難事件を解決。自身の利益よりも、依頼者の利益を優先する人情派の弁護士である。 ■「行政トラブル」は訴訟を当事者以外の人をいかに巻き込むかがカギ___これまでに解決した事件の中で、もっともやりがいを感じたのはどんな時ですか?私は、行政事件や行政を相手とする事件を比較的多く請け負っています。比較的最近の事件では、千葉県松戸市が原告、NPO法人「コミュニティ・コーディネーターズ・タンク」が被告となった補助金相当額の損害賠償請求事件の弁護活動があります。この事件は、千葉県が厚生労働省の雇用創出助成金制度を利用するかたちで、県内各地に事業を募集。そこに応募し委託事業を行っていた松戸市の同NPO法人が、補助金を出していた松戸市から訴えられた事件です。千葉県のほうから助成金の要件などに間違いがあると指摘を受けた松戸市は、NPO法人側に詳しい事情を聞かないまま、すぐに3,000万円の助成金を県に返還してしまいました。それで即、 NPO法人に3,000万円返せといってきた乱雑な事件だったのです。私のほうに依頼があったのは、NPO法人側が一審で負けた後です。 NPO法人側は、高裁で過去の膨大な資料を証拠として提出し、やむをえない事情があったことなどを、相当丁寧に主張したことで、最終的には、ほぼ逆転勝訴で法人側に責任がないという判決を得ることができました。思い入れのある事件は色々ありますが、この事件は、なかなかやりがいがありましたね。 ___この事件を解決するために、どのような工夫をされましたか?住民訴訟や、行政相手の訴訟の多くは、支援者や応援団が沢山いて、裁判の傍聴人も多くの人数が集まってくれます。そういう人たちに、少し語弊があるかもしれませんが、有意義なかたちで裁判に向き合えるように工夫して弁護活動をしています。 事件の争点について、説明会や報告会をしばしば開催するなどして、直接の当事者だけではなくて、それを応援している人々に、事件の流れや争点、裁判で争う意義などを分かってもらい、一緒に力を合わせて戦うという雰囲気を醸成していくことが注意した点でもあるし、こうした事件をサポートする面白いところでもありますね。 ___行政事件を扱う件数は、他の弁護士事務所に比べると多いですか?多いと思います。行政事件というのは、和解で解決するということがめったにありませんので、ほぼ全ての事件が判決までいかなければいけません。したがって、かなり負担が重いのですが(笑)、勝つとうれしいですね。刑事事件で無罪判決を取るのに近いような感じがあるので、やりがいや面白みがあります。この分野は、これからも一生懸命やっていきたいと思っていますね。 ■制度認知が進んでいる「成年後見」はじめ、高齢者の法トラブルに注力___ほかに相談が増えている事案はありますか?高齢化社会が進んでいるので、やはり相続問題、高齢者の財産管理、成年後見などの件数が増えていると感じます。「成年後見(※)」については、制度の利用が普及してきて、だんだん認知されてきたことや、あるいは金融機関などが、企業におけるコンプライアンス強化によって、認知症の疑いがあるという人に成年後見を使うようにアドバイスせざるをえなくなってきていることも背景にあると思います。こうした増えている事案は、ニーズがあるということだと思いますので、今後もそういった事案に対しては力を入れていきたいと思っています。※成年後見…認知症などで判断能力が十分ではない方を法律的に支援・援助するための制度 *八坂弁護士のインタビュー記事解決が困難な「派遣社員の雇い止め」裁判…実家がお寺の弁護士が和解できた理由とは?相談者にはどんなメリットが?小さな法律事務所が「他士業と連携」する理由とは *取材協力弁護士:八坂 玄功(やさか もとのり)弁護士(1968年生まれ、大分県出身。岡山県立岡山芳泉高校卒業。東京大学理科2類入学。東京大学教育学部中退。東京弁護士会所属、司法修習第52期終了、2000年4月弁護士登録。2000年4月~2005年7月、代々木総合法律事務所に勤務し、2005年8月に「しいの木法律事務所」を開設して現在に至る。宅地建物取引主任者資格も保有。民事・刑事・家事・税務・経営・労働・相続問題など、どのような問題でも対応する弁護士として活動している。)*取材・文:塚本建未(トレーニング・フットネス関連の専門誌や、様々なジャンルのWebメディアを中心に活動するフリーランスライター。編集やイラストも手がける。塚本建未Website 「Jocks and Nerds」)【画像】*編集部
2016年12月03日2016年1月10日にこの世を去った唯一無二の表現者にしてアーティスト、デヴィッド・ボウイ。ミュージシャンとしてだけでなく、俳優としても数々の作品に出演した彼が初主演を務めた映画『地球に落ちて来た男』が、2017年の誕生日(1月8日)と命日(1月10日)の週を中心に全国にて追悼上映されることが決まった。アメリカの作家ウォルター・テヴィスの同名SF小説を、『美しき冒険旅行』『赤い影』のニコラス・ローグ監督が映画化し、新天地を求めて地球に降り立った宇宙人トーマス・ジェローム・ニュートンをボウイが演じる本作。1月の訃報を受け、7月にリバイバル上映されたが、来たるボウイの70歳の誕生日と一周忌に再び全国で上映される。ある日、地球に宇宙船が落下する。砂漠に降り立った宇宙人は、あまりに美しい容姿を持っていた。その後、弁護士のもとを訪れた彼は、人知を超えた9つの特許を元に弁護士とともに巨大企業を作り上げていく。アメリカのかつての大富豪ハワード・ヒューズなどを思わせる、彼の奇妙な暮らしが始まり、彼は全米の注目の的に。いった彼は何をしようとしているのか?彼は何者なのか?もちろん、そんな彼の勢威を恐れる者たちも出てくる。彼の秘密の計画は思わぬ妨害を受け、彼の暮らしは一変。果たして彼は、故郷の星に戻ることができるのか…。本作の主人公は歳をとらない。実際には、地球人よりはるかに遅く歳をとるという設定なのだが、劇中のボウイもまた歳をとらない。人々やあらゆるものの変化を見ることはできるが、それを止めることはできない不老ゆえの憂鬱が、映画全体を覆っていく。その憂鬱は、現実のボウイに重ねられる。劇中で流れるロイ・オービソンの「ブルー・バイユー」、アーティ・ショウの「スターダスト」などの古い楽曲は、この映画のなかでは単に懐メロとしてではなく、不老のまま未来をも生き抜く誰かが聴いた懐メロのように、過去からではなく未来から聞こえてくるようかのよう。劇中には、現実のデヴィッド・ボウイの歌は一切使われていないが、しかし、それらはまるでボウイが彼らに作らせた曲のようにも聞こえてくる。また、本作への出演の後に発表した『ステイション・トゥ・ステイション』『ロウ』の2枚のアルバムジャケットをはじめ、2015年にはオフブロードウェイのミュージカル化を自らプロデュースするなど、本作の影響は色濃い。一周忌追悼上映にあたり、本作配給のboid主宰・映画評論家の樋口泰人氏は、「ここにきてまるでアメリカの『現在』そのもののようにも見えてくるこの映画のアメリカと現実のアメリカを、そのねじれた視線で幻視する、そんな力技が求められているのだと思う。これは過去に作られた映画かもしれないが、まさに未来に向けて、そして未来の視線によって、いつかくるだろうその日のために作られた映画でもある。わたしたちはそれが今であることを知っている。――第45代アメリカ大統領が選出された日に――」という序文を寄せている。ボウイがこの世を去った日から1年が経とうとしている。7月の本作の再上映、9月にはサントラが制作40年後にして初リリース。2017年1月8日のボウイ誕生日からは「DAVID BOWIE is デヴィッド・ボウイ大回顧展」が開催、そして二見書房から原作「地球に落ちて来た男」が1月10日に刊行予定、1月14日からは1973年のロンドン、ハマースミス・オデオンで行った歴史的ライヴを収録したドキュメンタリー『ジギー・スターダスト』の劇場公開も控えており、まだまだ話題が尽きない。デヴィッド・ボウイ一周忌追悼『地球に落ちて来た男』は2017年1月7日(土)よりシネマート新宿ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年12月01日11月20日、福岡県北九州市の病院で、穴の開いた点滴1袋がみつかったことが判明。同病院では10月にも同様の事件が3件発生し監視体制を強化していましたが、まったく効果がありませんでした。医療機関としては致命的な事態であるだけに、不安が広がっています。*画像はイメージです:■事件当時は休診日だった警察の調べによると、事件が発生したのはいずれも9階のナースステーション。点滴袋に小さな穴が開けられており、何者かが針のようなもので差したものとみられています。病院側は監視カメラを設置するなどして再発防止に務めていましたが、事件当時は休診日で停電していました。穴のほかに薬品保管庫から鎮痛剤の容器2本と鍵束がなくなっていることも判明しており、事情に詳しい内部の犯行である可能性が高い状況です。病院はさらなる監視体制の強化と再発防止策をまとめて九州厚生局と北九州市に報告していますが、同じことが繰り返されているだけに、不安の声も多いようです。 ■病院に法的責任はないのか?今月見つかった穴が開いた点滴袋については、看護師が点検中に発見したため患者に投与されることはありませんでしたが、10月の事件では投与中に発見されたものもあったそうです。直接的な被害は報告されていませんが、同じ事件が頻発しており、患者に不安を与えている状況であることは確実です。このような場合医療従事者サイドには法的な責任はないのでしょうか?医療問題に詳しい三宅坂法律事務所の伊東亜矢子弁護士に見解を聞いてみました。*取材協力弁護士:伊東亜矢子(三宅坂総合法律事務所所属。 医療機関からの相談や、 人事労務問題を中心とした企業からの相談、離婚・ 男女間のトラブルに関する相談、 子どもの人権にかかわる相談を中心に扱う。) ■誰が損害を被ったかが賠償責任の争点に「今回の件では看護師2名のチェックにより患者さんへの投与前に見つけられたとのことなので、その点はよかったと思います。ですが10月から同種の事件が続いているので、病院としては一旦講じた再発防止策が十分でなかったのでは、との視点でさらに検討する必要があると思われます。病院関係者、入院患者、見舞客が出入り可能な状態だったようなので、穴が故意に開けられたのか、過失によるのか、故意であるとして、“誰が、何のために”行ったのかなど、全く不明な状態ではあります。何者かが、故意に穴を開けたとすれば、そのことによって生じた損害について当該人物が賠償責任を負うこととなりますが、本件では患者さんに害は生じていません。したがって現時点で考え得る“損害”とすれば、“当該点滴袋が使えなくなったこと”すなわち点滴袋の所有者である病院の損害ということになります。故意行為であるとすれば病院側の予防にも限界はあると思われ、事実の解明が待たれるところです。」(伊東弁護士)病院側に道義的責任はあると思われますが、現状患者に直接的な害が出ていないため、病院側が「損害を受けた側」ということになるようです。患者さんに被害が出ていないことが不幸中の幸いですが、今後出ないとも限りません。早期の真相究明と犯人逮捕が望まれます。 *取材協力弁護士:伊東亜矢子(三宅坂総合法律事務所所属。 医療機関からの相談や、 人事労務問題を中心とした企業からの相談、離婚・ 男女間のトラブルに関する相談、 子どもの人権にかかわる相談を中心に扱う。)*取材・文:佐藤俊治(複数メディアで執筆中のフリーライター。真面目な話題からくだけた話題まで手広く記事を執筆中。趣味は将棋、好物はカツカレーとパインアメ)【画像】イメージです*Ushico / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月01日photo by 編集部実家がお寺という経歴を持つ八坂弁護士。彼が所長を務める、東京都中野区「野方」にある地域密着型の「しいの木法律事務所」では“税理士”や“社労士”といったほかの士業と、業務の連携を進めているといいます。まだまだ珍しいというこのような取り組みは、相談者にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?八坂弁護士の考えを伺ってきました。 八坂 玄功(やさか もとのり)弁護士東京都中野区、西武新宿線「野方」駅にある「しいの木法律事務所」は、地元に密着した法律事務所で、現在、経験豊富な3名の弁護士が在籍している。所長の八坂玄功弁護士は、いわいる“マチベン”として地域住民のために弁護活動を行う傍ら、行政事件のエキスパートとして数多くの難事件を解決。自身の利益よりも、依頼者の利益を優先する人情派の弁護士である。 ■なぜ近隣トラブルを扱わない? 地域密着型の法律事務所ならではのルール___事務所で注力している取り組みについて教えてください。当事務所のホームページを見てもらうとわかるように、地域の人が問題としていることに対して、幅広くなんでも対応できるようにしています。来るものは拒まずといった感じですね。事務所名の「しいの木」も、地元中野区の区の木に由来しています。クライアントは、当事務所近隣の地域の方が多いです。もちろん、地域の人だけに限定しているわけではなく、遠方から来てくれる方もいます。以前携わった行政事件では、松戸のNPO法人が、当事務所のウェブサイトで、私が行政事件を数多く担当してきた実績を見て、探して来てくださったみたいです。このように、なんでもやっているのですが、一つだけ決めたルールがあって、当事務所の近所の人の近隣トラブルはやらないことにしています。両方とも潜在的な顧客なので、近隣紛争は最低10キロくらい離れていないとやらないですね(笑)。それは、地域に密着した事務所でありたいという思いが強いからなのです。 ■他士業との連携でお互いの短所をカバーしあう___事務所のホームページには「他士業との連携」を掲げられていますが、この取り組みをはじめたきっかけを教えてください。当事務所は、もともと税理士事務所と同じ建物のフロアーで活動していました。そのフロアーには、税理士の他にも、社会保険労務士がいて、それら他士業の方々とも連携して依頼者をサポートしていたのです。弁護士資格を持っていれば税理士登録もできることになっているので、弁護士が税理士業務もやっているというケースはありますが、当事務所のように、税理士と弁護士が緊密に連携しているのは、それほど多くないのではないかと思いますね。現在も当事務所の近くに、税理士事務所がありますし、広い物件があったら、近いうちにまた再統合しようといった話もあります。税理士、社会保険労務士以外にも、司法書士などの他士業の方々との協力関係は緊密に築いています。他士業との連携は、双方にメリットがあると思っています。例えば、税理士のクライアントの多くは、会社経営者や個人事業主です。これらのクライアントが、ちょっとした法律的な問題について相談したいという時に、気軽に同じ場所、あるいは近くで、すぐに相談できるというメリットがあります。税理士は、法律の専門家ではありますが、民法や会社法といった法律について非常に詳しい訳ではない部分もありますから、弁護士に相談できれば安心です。また、弁護士の方としても、事件の解決に関わって税金の処理をどうするのかといったことを、すぐに税理士に相談できるのもメリットです。事件解決の時に、和解金を貰ったり支払ったり、さらには財産を分割する、ということになると依頼者は「変な税金を後でかけられたりしないか」といったことが心配になってくるものです。例えば、不動産に関係する事件だったら、事前に法務局や司法書士によく相談しないと、判決が下った後に、法務局で受け付けてもらえないということや、登記ができないといったことも起こりえます。そんなときに、すぐに税理士や行政書士に相談できるのはメリットですね。さらに、お互いにクライアントを紹介し合うことができるというメリットもあります。もちろん、これはクライアントである相談依頼者にとってもメリットのあることなので今後も、そうした協力関係は進めていこうと思っています。 *八坂弁護士のインタビュー記事解決が困難な「派遣社員の雇い止め」裁判…実家がお寺の弁護士が和解できた理由とは? *取材協力弁護士:八坂 玄功(やさか もとのり)弁護士(1968年生まれ、大分県出身。岡山県立岡山芳泉高校卒業。東京大学理科2類入学。東京大学教育学部中退。東京弁護士会所属、司法修習第52期終了、2000年4月弁護士登録。2000年4月~2005年7月、代々木総合法律事務所に勤務し、2005年8月に「しいの木法律事務所」を開設して現在に至る。宅地建物取引主任者資格も保有。民事・刑事・家事・税務・経営・労働・相続問題など、どのような問題でも対応する弁護士として活動している。)*取材・文:塚本建未(トレーニング・フットネス関連の専門誌や、様々なジャンルのWebメディアを中心に活動するフリーランスライター。編集やイラストも手がける。塚本建未Website 「Jocks and Nerds」)【画像】*編集部
2016年12月01日今月中旬から今月25日の間に覚せい剤を使用した容疑で11月28日に逮捕されたASKA容疑者ですが、報道陣に対して「不法侵入ですよ!」と声をだしていたようです。マスコミは警察の制止を無視してガレージ内に侵入したほか、ベンツのエンブレムを折るなどしたようです。今回のマスコミの取材に対して、インターネット上では「不法侵入では?」「器物損壊でしょ」といった声が上がっているようです。そこで、このような行為が実際に上記の罪に該当するのか、解説していきたいと思います。*画像はイメージです:■住居侵入罪、器物損壊罪が成立する可能性は高いまず、冒頭で書いたことが真実だと仮定してお話しを進めたいと思います。先に挙げたような、ガレージ内に侵入したり、ベンツのエンブレムを折ったりといった行為をしていた場合は違法なことと言えます。ガレージへの侵入については、インターネットでも声が上がっている通り、不法侵入(正確には住居侵入罪:刑法第130条前段)が成立します。住居侵入罪は、その住居の管理者の意思に反する侵入を罰する罪ですので、本件の場合、マスコミのガレージ内への立ち入りがASKAさんの意思に反するのであれば、同罪が成立するといえます。 次に、器物損壊罪(刑法261条)についてですが、この罪は他人の物を壊した場合に成立する罪ですので、ベンツのエンブレムを折った場合には成立する余地は十分にあります。罪自体が成立しないという可能性があるとすれば、エンブレムを折ったことが故意ではないという場合でしょうか。原則として、犯罪は故意犯のみを罰し、過失は罰しないということになっています。要するに、故意とは「わざとやった」ということです。当時のマスコミの状況は具体的にわかりませんが、人が大挙押し寄せ、揉みくちゃになりながら、圧力に耐えられず不可抗力で体の一部がエンブレムに当たって折れてしまったというような場合、故意の認定が少し難しくなる余地はあろうかと思われます。当然、住居侵入罪の成立にも故意の要件は必須ですが、「ガレージに入るつもりはなかったけど間違えて入ってしまった」という弁解は通る可能性が低いと思います。なお、器物損壊罪は親告罪といって、被害者つまりベンツの所有者(具体的には車検証の名義人)の告訴が無ければ罰せられることはありません。 ■マスコミの行動について思うことこういった注目事件の際のマスコミの他者の迷惑を顧みない行動は目に余ると個人的には考えております。僕のよく知っている弁護士も、とある有名事件を担当された際、裁判所から車で帰るに際し記者に追いかけられ、車(BMW)に無数の傷が付いていたことがありました。身近な人がそういう被害に遭ったということを聞き、非常に驚きました。また、自分としても、ある事件を担当した際に、事務所にアポも無しに次々と記者が来て、一方的に「話を聞かせてくれ」と言われ、断ってもなかなか帰ってもらえず困惑したことがあります。向こうも仕事だということは分からなくはないのですが、僕の業務や事務所のほかの人たちへの迷惑を顧みない態度は異様に見えました。価値観が違うと言ってしまえばそれまでですが、大袈裟に言えばちょっと洗脳されているような、そういう怖さを感じる一面を垣間見ました。もし、「犯罪者(容疑者)なのだからこれくらいされても仕方ない」というような意識があるのであれば、それは絶対に間違っていると思います。どういう価値観を持つかは勝手かもしれませんが、社会生活を営む上で必要な最低限のマナーやルールは守っていただきたいと思います。 *著者:弁護士 河野晃 (水田法律事務所。兵庫県姫路市にて活動をしており、弁護士生活6年目を迎える。敷居が低く気軽に相談できる弁護士を目指している。)【画像】イメージです*Brian A Jackson / Shutterstock
2016年11月30日和歌山県富田町に住む無職の男性A(26)とB(27)が、共謀したうえで故意に車を衝突させ、事故として保険金約380万円を騙し取る事件が発生。昨年9月に発生。この2人が11月21日に逮捕されことが、新聞などのメディアで報じられました。この詐欺事件の内容としては、Aが運転する軽自動車にBがわざと追突し、保険会社にAの責任であると報告。慰謝料名目で金を受け取り、私腹を肥やしていたようです。このような事件はほかにも発生しているだけに、厳罰に処してほしいところ。容疑者は容疑が確定した場合保険会社にお金を返す必要があると思われますが、法的にみて、いくら返済する義務があるのかでしょうか。道義的には、ある程度色をつけて返済するべきなようにも思えますが…。三宅坂法律事務所の伊東亜矢子弁護士に見解を伺いました。 Q.事故を自作自演し保険金を騙した取った犯人はいくら返済する義務がある?*画像はイメージです:.全額賠償する必要がある 「黙秘しているとのことなので事実かどうかはまだわかりませんが、仮に事実だった場合、2名が共謀して保険会社を騙し、保険金を詐取した『共同不法行為』になります。したがって2名が連帯して、保険金380万円全額の賠償する義務があります。また、この件に起因して保険会社側にさらに損害が生じていれば、その分も連帯して賠償しなければならないこととなります。(民法719条1項)」(伊東弁護士) *取材協力弁護士:伊東亜矢子(三宅坂総合法律事務所所属。 医療機関からの相談や、 人事労務問題を中心とした企業からの相談、離婚・ 男女間のトラブルに関する相談、 子どもの人権にかかわる相談を中心に扱う。)*取材・文:佐藤俊治(複数メディアで執筆中のフリーライター。真面目な話題からくだけた話題まで手広く記事を執筆中。趣味は将棋、好物はカツカレーとパインアメ)【画像】イメージです*タカチン / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月30日東京マウントガールズ
兄の連れてきた婚約者は…
いきすぎた自然派ママがこわい