松田青子さんの最新エッセイ集『ロマンティックあげない』のカバーには、ガーリーなワンピースとチェーンソーの絵。反射的に心がざわつく組み合わせに、はっとさせられ、なぜおかしいのかと延々考えてしまう。何を隠そう、本書の読み心地はそれと相通じる世界だ。「カバー絵は、現代美術家のケリー・リームツェンの<ツイスター・シスター>という作品です。彼女自身、固定観念へのアンチテーゼを作品にしているアーティストで、以前から注目していたんです。ウェブ連載の単行本化が決まったとき、エッセイの内容とリンクしている気がしたので、編集さんに提案してみました」綴られているのは、松田さんの鋭いアンテナに引っかかった日常の違和感だ。常にウォッチングしているからこそ看過できない出来事があり、過剰な熱で語ってしまう偏愛世界がある。それに読者も引き込まれる。また、読者自身も心密かに思っていた違和感を言語化してくれる、松田さんの弁の鮮やかさ、痛快さ!「20代後半までは、気持ち悪いなと思うことがあっても、はっきりと理由がわからず、その気持ち悪さが体内にたまっていました。そうしたしっくりこない感じの原因がわかりはじめて、言葉にできるようになってきたので、私なりに問いかけてみたかったんですよね。特にジェンダーバイアスがかかった問題や、<写真はイメージです><万人受けしないかもしれないが>といった言葉の変な使い方はすごく気になる方です」アニメソング「ロマンティックあげるよ」をもじったタイトルにも、松田さんのそんな思いがにじむ。「<ホントの勇気みせてくれたらロマンティックあげるよ>という歌詞があるんです。勇気を見せる側が男性で、何かをあげる側が女性というのなら引っかかるんですが、そういうジェンダーを刺激しないニュアンスで歌われているので素直にいい曲だなあと。そもそも女性は笑顔だとか優しさだとか“あげる”ことを求められてばかり。言葉尻を逆にしてみたら、何か伝わることがあるかもしれないと思って」デビュー時から見せつけていたユーモラスかつハイセンスな言語感覚。正義を気取っているわけではないのに襟を正されるようなフェアな目線。その一部始終をご堪能あれ。◇外国映画や海外ドラマ、ブログサービス「タンブラー」、フィギュアスケート、文房具。著者のオタク心をかきたてるモチーフをフェミ視点で斬る。新潮社1600円。◇まつだ・あおこ作家、翻訳家。1979年、兵庫県生まれ。デビュー短編集『スタッキング可能』で一躍注目を集める。カレン・ラッセル『レモン畑の吸血鬼』など、翻訳家としても活躍。※『anan』2016年6月15日号より。写真・土佐麻理子(松田さん)森山祐子(本) インタビュー、文・三浦天紗子
2016年06月13日「好きな人を振り向かせるためにはどうしたらいいんだろう…」。そんな恋がニガテな人に読書家の著名人3人から恋の教科書になる本を3冊教えてもらいました。料理家の瀬尾幸子さん、ライター、ブックカウンセラーの三浦天紗子さん、テレビ東京アナウンサーの森本智子さんのみなさんです。男心や悩み相談…。こういった読み方もあるのか!と目からうろこのセレクト作品には、さまざまな方向から彼を振り向かせるヒントが詰まっています。≪瀬尾さんおすすめ!≫■『竜馬がゆく』司馬遼太郎坂本竜馬の波乱に満ちた生涯を中心に、同時代に生きた若者たちを描く長編小説。「これに描かれた竜馬は本当にかわいい。でもかわいいだけじゃなく、破天荒で計算高いところもあって、かなりの女たらしといえるかも。こんな男を女が放っておくはずもなく、竜馬は行く先々で魅力的な女たちに惚れられます。それぞれの女と竜馬の微妙なやりとりや、一途な女の想いを読み取ると、とってもおもしろいのです」。文春文庫(一)650円≪三浦さんおすすめ!≫■『恋愛がらみ。不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』高山 真“知的ゲイエッセイスト”の著者が、不器用な女子たちの悩みに答える。女性誌の連載を書籍化。「著者の視点は、やさしいのにシャープ。言いっ放しじゃなく、読者への愛を感じるので、<恋愛を成果主義で考えるのはつまらない><もらえるモノだけで男を選ぶのは、そろそろ卒業>など名フレーズが素直に刺さります。実践できたら、好きな男に振り向いてもらえそうだし、何よりいい女になれそう」。小学館1300円≪森本さんおすすめ!≫■『冷静と情熱のあいだ』Blu:辻 仁成Rosso:江國香織永遠に忘れられない切ない恋の軌跡を、男女両方の視点で描く純愛物語。「大学生時代にハマり、恋愛に関しては一番影響を受けた本。女性目線で描かれた赤の物語、男性目線の青の物語があり、それぞれの視点から恋愛を見つめることができ、男性の気持ちも勉強になります。恋愛において、冷静と情熱の間には何があるのか、何が一番大切なのか、考えさせられます」。角川文庫480円(Blu)520円(Rosso)◇せお・ゆきこ料理家。小誌の連載ほか、雑誌やテレビで簡単かつおいしいレシピを紹介。『これだけで、ラクうまごはん』(新星出版社)、『これでいいのだ! 瀬尾ごはん:台所まわりの哲学』(ちくま新書)など著書多数。◇みうら・あさこライター、ブックカウンセラー。小誌ほか雑誌やウェブで作家や漫画家のインタビュー、女性の健康などを手がける。著書に『そろそろ産まなきゃ』(CCCメディアハウス)など。ツイッター@asatian◇もりもと・ともこテレビ東京アナウンサー。経済ニュース『WBS』ではゲストがお薦めの一冊を紹介する「スミスの本棚」の進行を務め、現在は『NEWSアンサー』『主治医が見つかる診療所』などを担当する。※『anan』2016年6月15日号より。写真・多田 寛(DOUBLE ONE) 文・熊坂麻美
2016年06月12日こんなに辛いのに、なんで人は恋をするんだろう? と自分を責めたくなったなら、恋とはなんぞや? というところに立ち向かってみるとよいでしょう。それは本が教えてくれます。生きることになぜ恋愛が必要なのかを考える3冊を読書家の著名人がご紹介。教えてくれたのは、演劇作家で劇団「マームとジプシー」主宰・藤田貴大さんと、ライター、ブックカウンセラーの三浦天紗子さんです。≪藤田さんおすすめ!≫■『消滅世界』村田沙耶香人工授精が飛躍的に発達し、生殖と快楽が分離した世界。ここでは夫婦間のセックスは近親相姦としてタブー視され…。未来を予言する衝撃作。「恋愛そのものがなんなのか、悩ましいわけだけれど、これを読むと、恋愛の先の先までわからなくなる。なので、この本はいわゆる恋愛小説よりも恋愛を描いているように思ったし、ここで描かれた性とは、生殖とは。とんでもない真実のようで鳥肌が立った」。河出書房新社1600円■『理不尽な進化 遺伝子と運のあいだ』吉川浩満「絶滅」という観点で生物の歴史を眺め、進化論の秘密を明らかにする“知的エンターテインメント”。「読むたびに、新しい角度を発見して考え耽ってしまう。内容は恋愛のことじゃないし、果てしなく大きなことに打ちひしがれてはグッとくるのですが、読んでいてなぜだか恋愛のことも記されているような気もしてきます。恋愛という未成熟で不完全な機能を人間は持ってしまっている。そして、恋愛をくり返す」。朝日出版社2200円≪三浦さんおすすめ!≫■『白蓮れんれん』林 真理子NHKの朝ドラ『花子とアン』に登場した蓮子のモデル、歌人・柳原白蓮の半生を描く伝記小説。「読みどころは、やはり白蓮が本物の恋を知ると同時に、女性としてどう生きることが幸福かに目覚めていく変化だ。炭鉱王とはいえ野卑な男と結婚した白蓮が、文学に造詣の深い久保博士や、のちに駆け落ち相手となる帝大生・宮崎とのインテリジェンスな愛の交流にどれだけ救われていたかがよくわかる」。集英社文庫667円◇ふじた・たかひろ演劇作家。劇団「マームとジプシー」主宰。8月にワークショップ公演『ドコカ遠クノ、ソレヨリ向コウ或いは、泡ニナル、風景』を予定。「本は、日常に立ち止まる時間を与えてくれます」◇みうら・あさこライター、ブックカウンセラー。小誌ほか雑誌やウェブで作家や漫画家のインタビュー、女性の健康などを手がける。著書に『そろそろ産まなきゃ』(CCCメディアハウス)など。ツイッター@asatian※『anan』2016年6月15日号より。写真・多田 寛(DOUBLE ONE)文・熊坂麻美
2016年06月11日このままじゃいかん!と人生をがらっと変えたいときは自己啓発やノンフィクションが響きます。本好き有名人のみなさんに“ゼロからやり直したいときに読む本”を選んでもらいました。映画監督・山戸結希さん、ライター・三浦天紗子さん、演劇作家・藤田貴大さん、テレビ東京アナウンサー・森本智子さんの面々です。≪山戸さんおすすめ!≫■『日本辺境論』内田 樹「辺境」という視点から、日本人固有の特性や文化、思考をひもとく日本文化論。「自分の立つ場所が中心であるにもかかわらず、私たちは確かに辺境を生きている。その逆説が生み出すねじれを知ると、今見えている世界が反転する。内田先生の本には『この大切な話を届けたい』という願いが潜伏していて、書き言葉の代表作である本書と、話し言葉の集大成である『最終講義』もおすすめです」。新潮新書740円≪三浦さんおすすめ!≫■『捨てる女』内澤旬子溜める暮らしから、捨てまくる暮らしへ。捨てるものがなくなったとき、人はどうなるのか…。「乳がん手術とホルモン治療で体質が変わり、モノがあふれたカオスな部屋に耐えられなくなった著者。断捨離エッセイと思うなかれ。断捨離は不要なモノを捨てる行為ですが、著者は夫も捨て、長年蒐集してきた大切なお宝本まで捨ててしまう。そこまで徹底すると、もう暮らし方も生き方も変わる。圧倒されます」。本の雑誌社1600円≪藤田さんおすすめ!≫■『ぼくは猟師になった』千松信也猟のやり方から自然と向き合い考えたことまで、生命への驚きと発見に満ちた若者猟師の記録。「これは人生の本だと思った。彼が今の僕と同い年くらいのときに、時間をかけてたどり着いた“食べていく”ということが、少しだけ垣間見えた気がします。でもたぶん、全部はわかり切れていない、というか、わからなくていいとも思ったし、そういう余白も含めて、とても興味深い読書体験ができたのがうれしい」。新潮文庫790円≪森本さんおすすめ!≫■『完訳 7つの習慣人格主義の回復』スティーブン・R・コヴィービジネス書のベストセラー『7つの習慣』の新訳版。仕事、家庭、人間関係など、あらゆる側面で充実し、人間らしく営む道を示す。「自分のあり方を変えれば、周囲の環境もプラス方向に変えることができるなど、いつ読んでも得るものがあります。この本は読んで理解するだけでなく、実行に移し習慣化することで完成するライフワークのようなもの。人生は変えることが可能だと教わりました」。キングベアー出版2200円◇やまと・ゆうき映画監督。乃木坂46 のシングルMVを手がけるなど、注目の新鋭。小松菜奈・菅田将暉主演の最新作『溺れるナイフ』が11月公開。「本は私にとって、世界を映すカメラのレンズを増やしてくれるものです」◇みうら・あさこライター、ブックカウンセラー。小誌ほか雑誌やウェブで作家や漫画家のインタビュー、女性の健康などを手がける。著書に『そろそろ産まなきゃ』(CCCメディアハウス)など。ツイッター@asatian◇ふじた・たかひろ演劇作家。劇団「マームとジプシー」主宰。8月にワークショップ公演『ドコカ遠クノ、ソレヨリ向コウ或いは、泡ニナル、風景』を予定。「本は、日常に立ち止まる時間を与えてくれます」◇もりもと・ともこテレビ東京アナウンサー。経済ニュース『WBS』ではゲストがお薦めの一冊を紹介する「スミスの本棚」の進行を務め、現在は『NEWSアンサー』『主治医が見つかる診療所』などを担当する。※『anan』2016年6月15日号より。写真・多田 寛(DOUBLE ONE)文・熊坂麻美
2016年06月10日小さな失敗でいつまでも凹んでしまう。そんなときは、世界レベルを体感できる読書が最適!思いがけない切り口だったり、遠い国の話を読めば、人生観や、価値観を揺さぶるような発見を得られるでしょう。本好き有名人のみなさんに“器の大きな人間になりたいときに読む本”を選んでいただきました。書評家・藤田香織さん、ライター・三浦天紗子さん、演劇作家・藤田貴大さん、ライター・瀧井朝世さんのおすすめです。≪藤田さんおすすめ!≫■『一瞬の雲の切れ間に』砂田麻美痛ましい死亡事故をめぐる人間模様、生の不確かさやきらめきを、映画『エンディングノート』の監督として高い評価を受けた著者が描く。「時間が経過していくなかで、決して拭いきれない痛みや哀しみや苦しみを抱えて、それでも生きていく主人公たちの姿が実に胸に迫ります。安易な“再生”物語ではなく、“払拭”できなくても希望はあるし持っていていいのだと信じさせてくれる。個人的上半期ベスト本です」。ポプラ社1400円≪三浦さんおすすめ!≫■『Because I am a Girlわたしは女の子だから』角田光代 訳各国の作家7人が、教育の不平等や人身売買など、女性差別を抱えた発展途上国を訪ね、現地の少女たちの声を小説やルポに綴ったアンソロジー。「国際NGOが発信している、タイトルと同名のキャンペーン活動の一部として生まれた本書。『トレインスポッティング』の著者アーヴィン・ウェルシュによる『送金』は、“伝統”のひとことで片付けられてきた問題によって、運命を分かつことになった姉妹の物語。傑作」。英治出版1600円≪藤田さんおすすめ!≫■『奇妙な孤島の物語私が行ったことのない、生涯行くこともないだろう50の島』ユーディット・シャランスキー鈴木仁子 訳風変わりなストーリーを持つ50の孤島を、史実を基に綴り、美しい地図とともに収録。「最近いつも持ち歩いています。疲れた帰りの電車でパラパラして、1ページに贅沢に描かれた、世界のどこかに浮かぶ孤島の絵を眺めていると落ち着くし、自分というちっぽけさを心地よく想うことができて、トイレに置いておく用にもう一冊、買おうかなあと考えています。不思議と人生みたいなものを感じる一冊」。河出書房新社2900円≪瀧井さんおすすめ!≫■『人生最後の食事』デルテ・シッパー川岸 史 訳ホスピスの料理長と、入居者たちの日常を追った感動のノンフィクション。「食というものが人生にどんなに彩りを与えるかを再認識。一食一食を大切にしようという気持ちになると同時に、自分も誰かの人生を豊かにしようと心がけたくなるはず。また、死に穏やかに向き合う入居者たちの姿は尊く、人間とその人生を大切に思う気持ちが強まってきます」。シンコーミュージック・エンタテイメント1200円◇ふじた・かをり書評家、エッセイスト。著書に『だらしな日記』シリーズ、杉江松恋氏との共著『東海道でしょう!』(共に幻冬舎文庫)、『ホンのお楽しみ』(講談社文庫)など。ツイッター@daranekos◇みうら・あさこライター、ブックカウンセラー。小誌ほか雑誌やウェブで作家や漫画家のインタビュー、女性の健康などを手がける。著書に『そろそろ産まなきゃ』(CCCメディアハウス)など。ツイッター@asatian◇ふじた・たかひろ演劇作家。劇団「マームとジプシー」主宰。8月にワークショップ公演『ドコカ遠クノ、ソレヨリ向コウ或いは、泡ニナル、風景』を予定。「本は、日常に立ち止まる時間を与えてくれます」◇たきい・あさよライター。小誌をはじめ、雑誌、新聞、WEBで書評や作家インタビュー、対談企画などを担当。TBS系『王様のブランチ』のブックコーナーのブレーンも務める。ツイッター@asayotakii※『anan』2016年6月15日号より。写真・多田 寛(DOUBLE ONE)文・熊坂麻美
2016年06月08日<おもてたんとちがう>それが、初めてマタニティライフを経験したはるな檸檬さんの本音だ。子どもを持つ喜びが、決して幸せだけで構成されてはいないことを、痛いほど味わった。そんな思いを抱きながら描いたのが、妊娠出産のキラキラした虚飾を剥いだリアルマタニティマンガ『れもん、うむもん!-そして、ママになる-』。「『子どもって可愛い~!』という声が大きすぎて、同時並行で押し寄せてきたマタニティの不安や孤独感は、どんな育児マンガにも育児雑誌にも載っていませんでした」とりわけ、分娩時から最初の1週間くらいの情報はまったくと言っていいほど見つけられなかった。「私にとってはまるで未知の領域で、つらい、しんどいが、こんなにずっしりとのしかかってくるものなんだと驚いたんです。たとえば、母乳だってすんなり最初から出るママばかりではないし、赤ちゃんもうまく吸えなかったりする。みんなが普通だと思い込んでいることが意外と違う。だからこそ、いまつらさの渦中にいたり、これから産みたいと思っているママのために、お母さんたちの肩を抱いて一緒に泣くような気持ちで描きたいと思いました」夫は協力的なのに八つ当たりしたことや、お手伝いに上京してくれた母親と大ゲンカしてしまった様子も、ユーモアを交え率直に描かれる。「ホルモンの激変と、何もかもが思い通りにならないふがいなさで、私自身すごく追い詰められました。というのも、妊娠出産育児というのは、“命”を意識する瞬間の連続だからなんですね。出産時は母子ともに絶対の安全の保証はないし、生まれた後はちょっとした失敗も腕の中にいる小さな命に関わってしまうんだと考えて怖い。でも逆に自分の限界を知るから、本当に大事なものを守ればあとはいいと諦めることも覚えます。それですごくラクになったし、『母は強し』って結局それなのかも」はるなさんが包み隠さず吐き出した思いは、見ようによっては愚痴なのかもしれない。だがママになった人たちはずっとずっとそれが言いたかったのだ。甘えていると言われるのが怖くて、自分さえ我慢すればとがんばってきたその気持ちに寄り添ってくれる本書。それは、多くの女性の慰めになるはずだ。◇はるな檸檬『れもん、うむもん!-そして、ママになる-』脳裏にちらつく「こんな自分は母親失格かも」という強迫観念。疲労困憊の妊婦たちが集まる授乳室での孤独感。知らなかったマタニティブルーの真実を赤裸々に描く。新潮社800円。(C)はるな檸檬/新潮社◇はるな・れもんマンガ家。1983 年、宮崎県生まれ。2010 年、宝塚ヲタクを題材にしたウェブ連載「ZUCCA×ZUCA」でデビュー。他の著書に『れもん、よむもん!』などが。※『anan』2016年6月1日号より。写真・森山祐子インタビュー、文・三浦天紗子
2016年05月28日モデルの紗栄子(29)が19日、自身のブログを更新し、SNS侵入した男の逮捕を受け、心境を明かした。紗栄子は「iCloudなどへの不正アクセスで、被疑者が逮捕された件でのニュースが昨日より流れており、皆様にはご心配おかけしております」と書き出し、「私自身、そういう話を聞いたことはありましたが実際に被害にあってみて事の深刻さに正直困惑しております」と吐露した。続けて、「今までももちろんパスワードの設定は分かりにくいものにしていたつもりですが、このようなことになり、自分の個人情報を守ることの大切さと深刻さを痛感しております」とコメント。「今回の件で、警察の方から、パスワードを分かりにくいものにする、定期的に変える、同じパスワードを使いまわさない、ということが1番の不正アクセス対策と教えていただきました」と明かした。そして、「みなさんもどうか自分の個人情報をしっかりと守って頂ければと思います」と注意を喚起。不正アクセス対策について説明している警視庁のURLを掲載し、「是非参考にしてみて下さい」と呼びかけている。
2016年05月19日思わず惹きつけられる、カバーの装画。朝井まかてさんの『眩(くらら)』に使われているのは、江戸のレンブラントとも称される葛飾応為の代表作のひとつ、「吉原格子先之図」だ。朝井さんにお話を伺った。「原宿の太田記念美術館で展覧会が開かれたときに観に行き、この絵の前で立ちすくむほどの衝撃を受けました。奥行きのある大きな空間を描いていますが、想像するよりずっと小さな作品。他の浮世絵師とはまるで違う光と影の表現。真ん中に陣取る花魁は影なんです。すぐに応為の人生に迫ってみたいと思いました」葛飾応為は、葛飾北斎の三女・お栄の雅号。父の右腕として絵筆を執り、代作も引き受けたほどの才能の持ち主だが、時代が時代だけに、彼女をめぐる記録は極端に少ない。「遺っているわずかな手紙や、北斎の弟子たちなど周辺の証言などから、お栄の人物像を読み解いていきました。弟子の証言にもあるように、“侠気に富んだ”気っ風のいい性格。江戸の女性観では“貞女”が褒め言葉ですから、規格外だった彼女は、奇女と見なされていたようです」四六時中絵のことばかり考えているさまや、結婚の失敗、兄弟子であり自分の絵の理解者でもあった善次郎との恋といった虚実ないまぜのエピソードで彩りながら、本書は「なぜ応為は『吉原格子~』のようなすばらしい絵に到達できたのか」という答えに迫る。「北斎と応為との関係は、杉浦日向子さんの『百さるすべり日紅』でも読んではいましたが、いい具合に記憶が薄れていて、イメージに引っ張られることなく消化できていました。目の前の仕事に、寝食を忘れて没頭するようなところが私にもあって、『わかるわかる』とうなずきながら執筆していました(笑)」いまで言うなら、タダで配るチラシの小さなイラスト仕事までも全力でやってしまったという応為。「依頼主が『こんなにすごいものを描いてくれなくても』と言っても、『いつのまにか精密に描いてしまうのだ』と答えたという逸話が残っています。他愛もない仕事も手を抜くことのできない、本当の意味でプロフェッショナルだったと思います」恋にも仕事にもまっすぐに情熱を注いだ応為は、働く現代女性と相通じるものがある女性。時代小説の垣根を越えて、楽しめるはず。◇光と影を艶やかに浮かび上がらせる応為の20代から60代までを、史実を織り込みながら追う。彼女の鮮烈な生き方に触れてみたい。新潮社1700円◇あさい・まかて作家。1959年、大阪府生まれ。2008年に小説現代長編新人賞奨励賞を受賞してデビュー。『恋歌』が、本屋が選ぶ時代小説大賞2013と、’14年の第150回直木賞を受賞。※『anan』2016年5月18日号より。写真・岡本あゆみ(朝井さん)森山祐子(本) インタビュー、文・三浦天紗子
2016年05月17日俳優・三浦翔平に12時間密着する生配信番組『三浦翔平の丸一日完全密着 翔熱大陸』が、23日(10:00~22:00)にインターネットテレビ局・AbemaTVで配信される。三浦が、密着の生放送を受けるのは初めてで、今回の番組では、仕事風景、トレーニングや買い物の様子、友人と酒を飲みながらプライベートトークを繰り広げる場面まで潜入予定。仕事現場での顔と、プライベートな顔まで、三浦のさまざまな表情に迫る。「プライベートだったり、仕事風景だったり、まだわからないのですが、精いっぱい頑張りたい」と意気込む三浦。「1日そのままでいいと言われているので、本当にそのままでいようかなと思います」と、肩の力を入れすぎずに過ごしたいとコメントしている。三浦は、第20回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで「フォトジェニック賞」「理想の恋人賞」を受賞。深田恭子主演のTBS系ドラマ『ダメな私に恋してください』に出演して話題を呼び、放送中にはTwitterのトレンドワードに「三浦翔平」が入るなど注目を集めていた。
2016年04月21日少年愛やSFを題材とする名作で少女マンガに革命を起こした、竹宮惠子さん。『少年の名はジルベール』は、竹宮さんがマンガ家を志して上京、『風と木の詩』(以下、『風木』)を発表して社会に衝撃を与えるまでのほんの5~6年間を綴った自伝であり、青春記だ。’70年に、竹宮さんと萩尾望都さんが、盟友の増山法恵さんによって出会い、東京都練馬区大泉の古い木造アパートで同居生活を送る。竹宮さんたちは、のちに<大泉サロン>と呼ばれるようになるその場所で、「24年組」「ポスト24年組」に名を連ねるマンガ家の山岸凉子さん、ささやななえこさん、佐藤史生さんらと、創作論やマンガ談議に花を咲かせた。「私の一生の中でもいちばんドラマティックな部分ですね。’72年の秋には、萩尾さん、増山さん、山岸さんの4人で45日間の欧州取材旅行にも行きました。とにかく本物を見て、たとえばドアノブの遊びの部分はどんなふうになっているのかなど、リアリティを込めたいという一心で」実は、<大泉サロン>があったのは、わずか2年ほど。才能がせめぎ合うからこその、萩尾さんへの複雑な思いは、読んでいるだけで胸がキリキリしてくる。また、『風木』誕生を巡ってバトルを繰り広げたYさん、布石を打ってくれたMさん、ふたりの編集者とのドラマも熱い。「若かったんですね。感情をうまくコントロールしたりできずに、苦しんだ時期もありました。ただ、私としてはもう終わったことなので、学生たちにも率直に話すんです。若いと、目の前の苦難がいつまで続くのか見えないのがつらいけれど、私の体験を知ると、少し楽になるようです。困難が砂漠に突然現れた壁だとしたら、突破するのに、私は壊すでもなく、乗り越えるでもなく、ずっと壁に沿って歩くタイプなんです。きっとどこかに、ひょいと抜けられる穴があるように思うので(笑)。そういう道もあるのだと、教えたい」また「創作(クリエイション)」の本質に触れている名文もたくさんある。マンガファンでなくても感動必至の一冊だ。◇たけみや・けいこマンガ家、京都精華大学学長。1950年、徳島県生まれ。’68年にデビュー。『ファラオの墓』『風と木の詩』『地球(テラ)へ…』で人気を不動のものに。2014年、紫綬褒章を受章。◇カラーの口絵ページや大泉サロン内部を描いたイラストなども収録。『風木』のジルベール誕生の瞬間など少女マンガの歴史的事件が目白押し。小学館1400円※『anan』2016年4月20日号より。写真・岡本あゆみ(竹宮さん)森山祐子(本)インタビュー、文・三浦天紗子
2016年04月19日ニューヨーク留学に旅立つ日に別れるつもりだった元カレのA太郎とけりをつけられず、彼の地ではアメリカ人のA君と恋仲に。そのくせ、そのA君と将来的にどうするかも決めないまま、3年ぶりに帰国してきてしまったA子。近藤聡乃さんの『A子さんの恋人』は、そんな29歳のアラサー女性マンガ家A子が、自ら招いた三角関係に翻弄されるユニークなラブコメディ。「最初の構想ができたのは、渡米する前の2008年ごろ。ただそのときは、別れるつもりだった恋人からコートを預かってしまい、別れられずに困るという短いネームでした。それを新しい連載のとっかかりにしよう、せっかくニューヨークに住んでいるのだからそれも生かして…と、東京とニューヨークを結ぶ不思議な三角関係を作っていきました」このたび発売された2巻では、A子が帰国せざるを得なくなった理由が明かされる。実はほぼほぼ、結論を先延ばしにしがちなA子の思考のクセが諸悪の根源なのだと、周囲も読者もわかってくるが…。「私も優柔不断ですが、もし自分がA子の立場に置かれたら、さすがに『決めなきゃ相手に悪い』と思うはず(笑)。でも決めないというのは、やっぱりA子は、無神経なところがあって、消極的に人を傷つけているよなと」とはいえ、3人とも案外、恋にクールなところが救い。実はこのマンガに登場するキャラで、100%の善良印はむしろレア。主役級の3人はもとより、A子の悪友でA太郎とも美大の元同級生というK子やU子、A太郎に片思いしているI子、果てはA子の母までがみな、ひとクセあるタイプだったり、いい人そうでも面倒くさいタイプだったりする。だが、それこそが逆にリアル。A子、A太郎、A君の関係のバランスにも大きく影響していく、イキイキとした群像になっている。「具体的なモデルはいませんが、美大の女の子ってこういう感じ…イメージをかぶせているところはあります。私は主人公より、女友だちの方が好きですね。K子やI子など、割を食っている彼女たちを、3巻では幸せにしてあげたいなと思います」何といっても、読者が気になるのは、A子が最後に誰を選ぶのか、だ。「私としては、A太郎なのかA君なのか、きちんと結論を出したいと思っています。私も決めかねている部分もありますが、考え抜いて、それぞれにとって幸せな終わりにしたいですね」最後まで目が離せなさそうだ。◇東京とニューヨークにそれぞれ微妙な関係のボーイフレンドがいるA子の、恋の顛末やいかに。『ハルタ』(KADOKAWA)にて連載中。KADOKAWA620円(C)近藤聡乃/KADOKAWA◇こんどう・あきの漫画家、アーティスト。1980年、千葉県生まれ、ニューヨーク在住。公式サイト他の著作に『ニューヨークで考え中』など。※『anan』2016年4月13日号より。インタビュー、文・三浦天紗子
2016年04月11日三浦春馬と小池徹平が初タッグを組み、挑戦するブロードウェイミュージカル「キンキーブーツ」。この度、“キンキーブーツ”を履いた三浦さんが写る新ビジュアルが解禁された。イギリスの田舎町ノーサンプトンの老舗の靴工場「プライス&サン」の4代目として産まれたチャーリー・プライス(小池徹平)。彼は父親の意向に反してフィアンセのニコラ(玉置成実)とともにロンドンで生活する道を選ぶが、その矢先父親が急死、工場を継ぐことになってしまう。工場を継いだチャーリーは、実は経営難に陥って倒産寸前であることを知り、幼い頃から知っている従業員たちを解雇しなければならず、途方に暮れる。従業員のひとり、ローレン(ソニン)に倒産を待つだけでなく、新しい市場を開発するべきだとハッパをかけられたチャーリーは、ロンドンで出会ったドラァグクイーンのローラ(三浦春馬)にヒントを得て、危険でセクシーなドラァグクイーンのためのブーツ“キンキー・ブーツ”をつくる決意をする。チャーリーはローラを靴工場の専属デザイナーに迎え、ふたりは試作を重ねる。型破りなローラと保守的な田舎の靴工場の従業員たちとの軋轢の中、チャーリーはミラノの見本市にキンキーブーツを出して工場の命運を賭けることを決意するが――。本作は、シンディ・ローパーが全曲作詞作曲を担当し、2013年の「トニー賞」作品賞をはじめとする6部門受賞という快挙を成し遂げた大ヒットミュージカルを、日本人キャストで再上演するというもの。経営不振に陥った老舗の靴工場の跡取り息子チャーリーが、ドラァグクイーンのローラに出会い差別や偏見を捨て、ドラァグクイーン専門のブーツ工場として再生する過程を描いた2005年に公開されたイギリス映画をミュージカル化。シンディのパワフルで最高に魅力的な書き下ろしの楽曲の数々が大きな話題を集め、いまもなおブロードウェイで人気を集める大ヒット作品だ。そして今回の日本人キャスト版は、音楽・演出・振付はオリジナルをそのままに、主演のチャーリーとローラには、高い歌唱力を持つ小池さんと、卓越した歌とダンスで舞台での評価も高い三浦さんが初タッグを組んだ。そしてヒロインのローレン役にはソニン、そのほか、玉置成実、勝矢、飯野めぐみら実力派俳優たちが集結している。先日、小池さんと三浦さんが“キンキーブーツ”と写った新ビジュアルのチラシが解禁されたばかりだが、今回新たに初解禁となる新ビジュアルが完成。なんと今回は、本国ニューヨークからはるばる届いた真っ赤な“キンキーブーツ”を、実際にはいたドラァグクイーン・ローラ役の三浦さんの姿が写し出されたビジュアル。妖艶な赤の醸し出すオーラにも負けず、15cm越えの超ハイヒール“キンキーブーツ”を早くも履きこなし、その傍らでブーツに見入るチャーリー役の小池さんのツーショットが収めている。すでに夏の公演に向けて、高いヒールを履く練習を始めているという三浦さんは、「去年L.A.で、ドラァグクィーンが履く黒の15cmヒールブーツを脚を慣らすために購入しましたが、本国からお借りした真っ赤なブーツを初めて見たときは、妖艶でかつ迫力がありました」とやはり本物は違うと語り、また「このブーツを履くことで背丈が増すということは、それ相応の責任が増し、高揚すると共に、身が引き締まる思いでした。ミュージカルキンキーブーツの魅力を是非とも皆様に届けたい。劇場でお待ちしております」と熱い想いを寄せている。“ドラァグクイーン”三浦さんの全貌が徐々に明るみになり、本ビジュアルの早くも役に徹した三浦さんの表情からも、ますます期待が高まるようだ。ブロードウェイミュージカル「キンキーブーツ」は、7月21日(木)~8月6日(土)東京・新国立劇場にて、8月13日(土)~8月22日(月)大阪・オリックス劇場にて上演。ブロードウェイミュージカル「Kinky Boots」来日版は、2016年10月、渋谷・東急シアターオーブにての公演予定。(cinemacafe.net)
2016年03月28日「アパートの清水」に突如越してきた、さとうコタロー。「わらわは」と殿様言葉でしゃべる奇妙な4歳児と、同じアパートの住人たちとの交流を描く『コタローは1人暮らし』は、2016年のベストコミックに食い込むこと間違いなしの傑作!「甥っ子と同居していたことがあるんです。お気に入りのアニメにすぐ影響されるところとか、キレイな女の人に寄っていく少しませたところとか、その言動が面白かったので、子どもが一人暮らししたらどうなるかというアイデアが浮かびました」見た目は年相応の子どもなのに、並の大人よりずっと生活力があり、気働きもできるコタロー。「ヘタな大人よりちゃんとしている。ダメ人間と組ませたら、しっかり感が引き立つのではと思いました」コタローを取り巻くのは、マンガ家の卵の狩野、キャバ嬢のみづき、ヤクザの田丸。コタローを庇護しているようで、逆に慰められてしまう、持ちつ持たれつの関係性がいい。「引っ越しの日の挨拶まわりなど大人びた社交はできるのに、バッジをつけるとか他愛ないことが案外できないコタロー。それはおそらく、子どもなのに“やらざるを得なかったこと”と“やる機会がなかったこと”の両方があるんだろうなと」コタローが抱える複雑な事情は、少しずつわかってくる。たとえば、公園でひとり遊んいるシーン。表情は淡々としたコタローのままだが、ブランコやジャングルジムなど遊具で遊ぶ間中、握りしめているのは…。駆け寄っていって抱きしめたくなるほど、愛らしい。だが本書はあくまで、しっかりしててけなげなコタローにスポットを当て、読者を幸せな気分にさせる。逆説的だが、だからこそ、涙腺もついゆるんでしまうのだ。津村さんが苦労したのは、よくいる可愛い子どもという造型になっていない、コタローのキャラデザイン。「ふつうは、喜怒哀楽が一目瞭然というのが子ども。でもコタローは子ども離れしているという設定なので、基本的に無表情なんです。表情は抑えめに、けれど心の中には喜怒哀楽があるというふうに、行動やしぐさで表現できたらいいなと思っています。私自身、コタローが可愛い。ずっと描いていきたいキャラなので、応援よろしくお願いします!」◇『コタローは1人暮らし』津村マミアニメ〈とのさまん〉が好きで、星マークアイテムをひそかに愛用しているなど、時折見せる子どもらしさが超可愛い。『ビッグコミックスペリオール』で連載中。小学館552円◇つむら・まみマンガ家。2006年デビュー。Twitterではコタローと著者との1コママンガを不定期に投稿。他の著作に『コンビニの清水』(小学館)がある。(C)津村マミ/小学館※『anan』2016年3月30日号より。写真・水野昭子インタビュー、文・三浦天紗子
2016年03月26日8歳の少年が交通事故で死んだ。事故加害者の夫と不倫中の派遣社員・千恵子、パン工場で働きながら少年を育てていたシングルマザーの吉乃、加害者の夫で編集者の健二、加害者で人気スタイリストの美里。事故によって、それぞれが抱えることになった喪失とかすかな光を描いた連作短編集『一瞬の雲の切れ間に』。ドキュメンタリー映画の俊英、砂田麻美さんが初めて挑戦した完全なるフィクションだ。「最初に決めたのはタイトルでした。たまたま仕事で長崎の原爆資料館に行ったとき、原爆投下の状況を説明した文章の中に<一瞬の雲の切れ間に>という言葉があって、それがすごく印象に残ったんです。ほんの一瞬の出来事で、一生背負わなければいけない罪を犯してしまったり、運命がまるきり変わってしまうような事柄に遭遇したりするんだ、と。それを軸に据えたら、語り手としてどんな人を据えたらいいのかのイメージが一気に湧いてきました」事故から数えて2年ほどの年月。その間に起きたことや、それ以前の過去を、語り手それぞれが回想する形で物語が進む。そのときに浮かび上がるのは、人間というものの善悪入り交じる複雑な多面性だ。「映像は人物に確たるキャラクターを持たせないと伝わりにくいので、多くを語らせずに観客にゆだねる表現をします。だからよけいに、“書く”ことでしかできない表現を意識しました。できるだけ裏の裏までえぐって、その人のいいところも悪いところも余すところなく書こうと」執筆は主にスタバで。1日10枚とノルマを決めてコツコツ書いた。「5枚しか書けなかったら、翌日巻き返して15枚書く。スイッチが入れば周りが見えないほど集中できる方なので、そこまでいくと、脳裏に浮かんでいるイメージを文章に変換させることができるのですが」ちなみに本作には、5人の語り手がいるのだが、そのラストに登場するのは、意外な人物だ。「事件をめぐる人間関係の枠から、少し距離がある人物を1人出そうというのは最初に決めていて、その人物が、この物語を束ねる存在になるだろうという予感はありました」サスペンスフルに展開するエンディングと、その先に見える一条の光。その完成度を、ぜひご覧あれ。◇少年の死亡事故に直接的、間接的に関わった人々の胸の内が語られる連作短編形式。後悔、懺悔、赦し、希望など千々に心乱れる人々を描く。ポプラ社1400円◇すなだ・まみ映画監督。1978年生まれ。是枝裕和監督らの監督助手を務め、初監督作品『エンディングノート』で日本映画監督協会新人賞等を受賞。それをもとに小説『音のない花火』を発表。※『anan』2016年3月23日号より。写真・岡本あゆみ(砂田さん)森山祐子(本)インタビュー、文・三浦天紗子
2016年03月22日クローズドサークル(悪天候で閉ざされた館などの閉鎖空間のこと)、複数の惨劇や密室殺人、内輪にいる意外な犯人…。“新本格”といわれる推理小説のそうしたお約束が詰込まれた『樹液少女』は、どんでん返しの連続で、興奮必至。その著者が、彩藤アザミさん。「中学時代に新本格にハマって読み漁ったので、私自身“ミステリー小説”というとそれをイメージしてしまいます。なので、デビュー作よりもっと謎解きの要素を濃いめに、舞台も『ド直球ですが、嵐の山荘モノがやりたいんです!』と、私から編集さんに持ちかけました」旭川の人里離れた山頂に建つ豪奢な館の主は、磁ビスクドール器人形と陶芸の天才作家、架かがみちよ神千夜。その館でひっそりと暮らす彼女は、年1回だけ得意客のために懇親会を催す。作者秘蔵の最高傑作「樹液少女」も、ひと目見られるはずだった。その日、吹雪によって陸の孤島のようになった架神邸。密室状態の一室で、無残な死体が見つかった。誰が、何のために―。館にいる全員が容疑者という状況で、密室トリックや、架神の作品に刻印されている英数字の意味など、読者はちりばめられた謎に翻弄される。「ハウダニット(どうやって犯行を行ったか)のトリックは出尽くしているともいえるので、むしろどのタイミングで、どれくらいの情報を明かしていくのかという読み物としての面白さに力を入れました。個人的に推理小説では、特殊な知識がなくても正解が導けるのがいいと思っています。暗号にしても、ちょっとしたヒントで誰でも解けるようにしようと、意識して書いています」館での悪夢の5日間が終わり、犯人も犯行も暴かれたと思った後で、すべてが明確になる「後日談」がある。ここで活躍するのが、此代乃春(このよのはる)だ。吹雪のために足止めされ、館にたどり着けなかった彼は、安楽椅子探偵よろしく、鮮やかに推理を披露する。なかなかキャラ立ちした彼ゆえ、シリーズ化の期待も高まる。昨年の4月には初稿を書き上げ、そこから改稿を重ねてきた。「『出版できるんだろうか』と不安になるほどでした(笑)」ビスクドールというミステリアスな芸術品の雰囲気とも相まって、読み応えたっぷりだ。◇さいどう・あざみ作家。1989年、岩手県生まれ。2014年、『サナキの森』で第1回新潮ミステリー大賞を受賞。引きこもり女子が、80年前に起きた密室殺人の謎解きに挑む作品でデビュー※『anan』2016年3月9日号より。写真・岡本あゆみ(彩藤さん)森山祐子(本)インタビュー、文・三浦天紗
2016年03月08日自分の理想の家を求め、マンション見学にいそしむ25歳の居酒屋店員、沼越さん。女ひとりで家を買うという一見高いハードルに対峙する沼越さんは、<大きい夢なんかじゃありません><自分以外の誰の心もいらないんですから>と真剣だ。その姿に心を動かされ、いつしか不動産の販売スタッフまでもが、仕事を超えて応援するように…。家を買うことをめぐり、人生や人とのつながりを考えさせてくれる池辺葵さんの『プリンセスメゾン』。2巻では、沼越さんは、より具体的になってきた“購入可能物件”に案内される。内見中のうっとり笑顔が超かわいい。「連載を始めて、あらためて家とは何だろうと考えるようになりました。私自身はこれまで、2年くらい経つと家移りして気分を変えたくなる方でした。でも年齢を重ねるにつれ引っ越し先の町になじむのが大変になってきたこともあり、沼ちゃんのように、理想の居場所を探したいなと思うようになってきましたね」沼越さんの家探しのかたわら描かれるのが、ミステリアスな老女や若き女性編集者らと、彼女たちの住まいとの関係だ。そのほか、沼越さんが背負っている過去のドラマや、彼女のマンション探しを手伝う<持井不動産>の面々とのふれあいなど、サブストーリーにも揺さぶられる。また、池辺さんのアーティスティックな絵のタッチにも注目。繊細な風景描写にも魅せられるが、登場人物の表情における表現力は特に群を抜いている。ほぼ輪郭とメガネだけしか描き込まれてない<持井不動産>の伊達さんでさえ、微細な感情を不思議と読み取れてしまうのは、池辺さんの画力の賜物だ。本作を描くにあたり、東京でマンション巡りの取材もしているそう。「私自身が沼ちゃんになって、『これぞ運命!』というマンションに出合い、その高揚感も交えて描きたいなと思っているんです」◇来るオリンピックに備えて注目を集める東京で、自分のためにマンション購入を考えている沼越幸。理想の家は見つかるのか?web「やわらかスピリッツ」で連載中。小学館552円◇理想のマンションを求めて、女たちは真摯に人生と向き合う。(C)池辺葵/小学館◇いけべ・あおいマンガ家。2009年デビュー。祖母の洋裁店を継いだ女性を描く『繕い裁つ人』は映画化もされた。老婆の簡素な暮らしを彩る、優雅な夢物語『どぶがわ』など著書多数。※『anan』2016年3月9日号より。写真・森山祐子インタビュー、文・三浦天紗子
2016年03月04日「リーボック(Reebok)」から、「イージートーン(EASYTONE®)」の新しいコレクションとして、モデルで女優の紗栄子とコラボレーションした「イージートーン 紗栄子エディション(EASYTONE®紗栄子 edition)」が登場。2016年3月1日(火)より発売開始。「イージートーン 紗栄子エディション」は、ファッションリーダーであり2児のママでもある、モデルで女優の紗栄子との初めてのコラボレーションモデル。イージートーンは、着地時の衝撃緩和と気持ちの良い履き心地を実現した、多くの女性たちに愛用されているリーボックを代表するウォーキングシューズ。今回発売するコラボレーションモデルは、”日常に可愛く、オシャレに履けるシューズ“をテーマに、紗栄子自身が素材、カラーなど細部にまでこだわった。ラインアップは、春夏シーズンにぴったりなキャンバス素材を使用した「イージートーン 2.0 スィートスタイル」、トレンドのレトロランニングタイプにスエット調の素材を使用したカジュアルタイプ「イージートーン 2.0 レトロ J」の 2モデル、8カラー。また、「イージートーン 紗栄子エディション」の発売に合わせ、紗栄子がイージートーン以外一糸纏わぬ姿で、その美しい身体を披露しているキービジュアルが全国の店頭、リーボックの公式ウェブサイトに登場。紗栄子の美しいボディ、そして内面から滲み出る芯の美しさも表現されたビジュアルとなっている。「イージートーン 紗栄子エディション」は、「リーボック オンラインショップ」のほか、「リーボック フィットハブ 六本木ヒルズ」をはじめとした全国のリーボック直営店舗、その他、全国のリーボック取扱店舗にて展開される。素材や色にこだわり、納得できるまで試作を繰り返して作ったのが、この「イージートーン 紗栄子エディション」です。皆様にお披露目するのに2年弱の歳月がかかってしまいましたが、それだけこだわって作った商品なので、皆さんに気に入って頂けたら嬉しいです♪--紗栄子「イージートーン 紗栄子エディション」製品概要イージートーン 2.0 スィートスタイル左:【カレッジネイビー/チョーク/モーターレッド】AQ9639右:【チャイナレッド/モーターレッド/チョーク/カレッジネイビー】AR1919左:【ブラック/ホワイト/ホワイト/モーターレッド/チョーク】AQ9641右:【チョーク/カレッジネイビー/モーターレッド/ホワイト/ホワイト】AQ9642イージートーン 2.0 レトロ J左:【ペブル/モーターレッド/チョーク】AQ9658右:【DGH ソリッドグレー/ブラック/ホワイト/ホワイト/ソリッドグレー】AQ9660左:【ソリッドグレー/チョーク/アロイ】AQ9661右:【チョーク/ホワイト/ホワイト/ブラック】AQ9659■価格:9,900 円(税抜)■サイズ:22cm~26cm■発売日:2016年3月1日(火)取扱店舗:リーボック オンラインショップ (リーボック直営店舗:「リーボック フィットハブ 六本木ヒルズ」、「小田急百貨店新宿店 リーボック フィットハブ」、「リーボック フィットハブ ららぽーと EXPOCITY」、「リーボック フィットハブ 博多 キャナルシティオーパ」全国のリーボック フィットハブ:スポーツオーソリティ幕張新都心店、MARK IS みなとみらい店、港北ニュータウン店、岡崎店、新ひたちなか店、パークプレイス大分店、四條畷店、広島祇園店その他、全国のリーボック取扱店サイン入りポスタープレゼント期間中、リーボック オンラインショップにて「イージートーン 紗栄子エディション」購入者の中から抽選で3名に紗栄子サイン入りポスターをプレゼント。応募期間:2016年3月1日(火)~ 3月7日(月)23:59▼リーボック オンラインショップ プレゼントキャンペーンページ問い合わせ先・詳細URL▼リーボック アディダスグループお客様窓口0570-033-033 (電話受付 平日 9:30~18:00)▼イージートーン 紗栄子エディションスペシャルサイト
2016年03月02日『悼む人』で、死者の無念に向き合った天童荒太さんが、今度は、生き残った人々の癒えぬ傷に寄り添って描いた小説『ムーンナイト・ダイバー』。「いまの日本社会は短期的な成果にばかり意識を向けていて、悲しみが深すぎて立ち直れない人々を置き去りにしていくような空気がありますよね。そのことへのやるせなさと憤りが、震災から3年を過ぎたころから、むしろ強く湧いてきました。報道や社会があの喪失に関心を向けないのであれば、小説でしかできない形で掬い上げたいと思ったんです」だが、この鎮魂と愛の物語をどう書けば人々に届くのか、答えは容易に出なかった。取材をする中で浮かんだのが、立ち入り禁止の海域で、人目を忍び、近親者が生きるよすがにするための“遺品”を引き揚げるダイバーのイメージ。非合法を承知で危険な任を担う舟作(しゅうさく)に、秘密の会のメンバーである透子が奇妙な依頼をしたことから、物語は動きだす。「行方不明の夫の結婚指輪を探さないで」という透子の真意とは…?その謎を追うページターナー(早く続きを読みたくなるような面白い本)であると同時に、本書にはいくつもの重いテーマが隠れている。「どうしても触れたかったことの一つが、サバイバーズギルトです。愛が深ければ深いほど、生き残った人々が抱える罪悪感や後悔は深くなる。その普遍的な感情を舟作たちがいる小さな世界に込めましたが、期せずして、現代社会が抱える問題のメタファーにもなった気がします」また、何よりも胸を打つのが、舟作がたどり着く愛の真理だ。「経験や苦難を積み重ねていくことによって、文学や映画などにも表現されてこなかった“二人だけの境地”に達することができたら。そのとき、人は舟作のように、愛と呼んでいたもののもっと奥にある世界に踏み入っていけるかもしれないですね」100枚くらいの短編の予定が、筆が止まらなくなり、1冊分に。「いつも最初からぴたりと決まることはないんです。でも今回は特に『形はできているけど、まだ何かある』と、筆を入れるたびに新たな発見があって付け加えていきました。ゲラは都合5回修正。自分史上最速のスピードで書けて(笑)、5年めが来る前に書く約束が果たせた。僕自身、忘れがたい作品になりました」◇『ムーンナイト・ダイバー』震災の爪痕が残るフクシマの海で遺品回収をする舟作の前に一人の女が現れた─。舟作が子どもたちにするおとぎ話さえ愛おしくなる傑作。文藝春秋1500円◇てんどう・あらた作家。1960年、愛媛県生まれ。’96年『家族狩り』で山本周五郎賞ほか受賞歴多数。2009年に直木賞を受賞した『悼む人』は映画化や舞台化もされ、大きな反響を呼んだ。※『anan』2016年2月10日号より。写真・岡本あゆみインタビュー、文・三浦天紗子
2016年02月08日片思いしていた8つ年上の幼なじみ・圭ちゃんに告白し、つき合うことになった佳織。優しくて頼りになって自分と同じで食べることが大好きな圭ちゃんとの恋は、特急で2時間離れた遠距離とはいえ、十分幸せなはず。なのに、恋に不慣れで自信のない佳織は、ちょっとした食い違いで妄想し、心が揺れる。そんな不器用女子のピュアな恋愛模様を描くシギサワカヤさんの『溺れるようにできている。』が面白い。「キレイなロマンスだと思ってくださるのはうれしいですが、たいがいは、互いに言わなくていいことを言って、『たまにコイツいらぬことを言うよな』とか思い合うようなトホホなエピソードが積み重なっていくお話です。恋愛の場面で見聞きした体験をアレンジして『こういうことってありません?』と読者に問いかける感じですね」実際、恋は互いの思惑がズレるもの。たとえば、圭ちゃんは佳織の腹肉を好きだから揉みたがるが、佳織にとってはコンプレックスを刺激されているように感じる。それがふたりの関係を変質させてしまうかもしれないのだが、シギサワさんは、そうしたあるあるネタやそのとき生まれる感情のひだをていねいに描く。「はたから見ればラブラブなカップルだけど、安住したままずっとハッピーなままの恋愛ってないと思う。問題が出てきたときに、『それもいいね』と受け入れるか、『どうしてもいやだ』と解決しようとするか、長続きさせるためにはどちらかが必要です。私の中にはいつも『くっついたからって、油断するなよ』という気持ちがあって、ついそういう展開にしてしまうんですよね」最初、カッコいい大人の男に見えていた圭ちゃんだが、「私、仕事とかデキる人っぽい男性の、ダメさがどんどん露呈してくる感じが好物で(笑)。でも、極端な思い込みで相手を責めたり、逆に相手にステキイメージを勝手にかぶせてあとで幻滅したりしなければ、当人たちにとってはステキな恋になると思うんですよ」佳織と圭ちゃんのいいところと悪いところがぶつかり合うさまはじれったくて、だからこそ恋愛っていいなと思う。恋からすっかり遠ざかってココロが砂漠化しかかっている女子にこそ、読んでほしい一冊だ。◇2008年に刊行された単行本に、後日談2本、番外編5本などおまけを詰め込んで復刊。著書の『九月病』『ファムファタル』で活躍した姉妹ネタもちらり登場。白泉社820円◇しぎさわかやマンガ家。『未必の恋』『ヴァーチャル・レッド』など、著書多数。年3回発行の恋愛系コミック誌『楽園』に「お前は俺を殺す気か」を連載中。同コミックは、現在3巻まで刊行。※『anan』2016年2月3日号より。写真・森山祐子(C)シギサワカヤインタビュー、文・三浦天紗子
2016年01月31日殺し屋なのに先手を取られて殺される役や防波堤に捨てられた河豚を踏んですっ転んで死ぬ役…。文字通り、体当たりの演技で映画界の荒波(?)を泳ぐ亀岡拓次が帰ってきた!前作から約4年。戌井昭人さんの『のろい男俳優・亀岡拓次』の亀岡はまたも、ロケに出向いた先々で、街をうろつき、酒を飲み、さまざまなエピソードに彩られる。「僕自身、このシリーズを書くときは、文芸誌に書くぞというような力み方にはならなくて。僕自身がたまたま仕事で行った場所で、ぽっかりオフができたときに、『亀岡だったらどう動くかな』とふらふら取材する。それをまんま生かしています」亀岡を待つトホホな出来事のいくつかは戌井さん自身の実体験だが、「実はエピソードのモデルは僕だけでなく、結構たくさんいます。周囲の人が面白おかしく話してくれるので、聞いた体験を、その先の妄想とつなぎ合わせて書くことが多いです。だから最近では『戌井に書かれちゃうから、やめとけ』って警戒されるようになっちゃって(笑)。結局はしゃべってくれるんですけどね」顛末の滑稽さもさることながら、映画俳優という設定ゆえにごまんと登場する架空の作品タイトルの無意味さに、思わず笑いがこみ上げる。ちなみに、亀岡のイメージは、「色っぽくない殿山泰司ですかね。あと、マンガ家で鉄割にも出演してもらっている東陽片岡さん。僕は、東陽さんの傑作エッセイ集『シアワセのレモンサワー』にひどく感化されているところがあって、幸せのハードルを下げるというその精神を亀岡に託している部分があるんです。亀岡って、自分の好きなことに全身全霊を賭けていてブレない。それでいて、意固地になって自分のスタイルを守っているのとも違う。飄々とした感じが逆にカッコイイなと」カタルシスは、「なんでもサウダーデ」の章。亀岡はポルトガルに赴き、サウダーデを感じている飲んだくれ作家を演じるのだが、そこでアドリブでしゃべるセリフが、なんと哲学的で哀愁があることか!実際、亀岡という決してイケメンではない男を知れば知るほど、ねじれた愛しさが湧き上がってくるから不思議。すでにファンの方はもとより、未読の方もぜひ、亀岡ワールドに酔いしれて。◇いぬい・あきと作家、パフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」主宰、俳優。2014年に『すっぽん心中』で川端康成文学賞を受賞。1月30日から公開の映画『俳優亀岡拓次』に出演も。※『anan』2016年1月20日号より。写真・岡本あゆみ(戌井さん)森山祐子(本)インタビュー、文・三浦天紗子
2016年01月19日書店員や編集者、その年を象徴する有名人らの投票によってランキングされる『このマンガがすごい!』が10年めに突入。少女マンガに対する深い愛情で舌鋒鋭い評論をする女子マンガ研究家の小田真琴さんに、今年の結果を講評していただいた。「サブカルすぎず、ライトすぎず、たまにはマンガも読みたいといういわゆる浮動票読者をも惹きつけてきた歴史がありますが、今回のオンナ編を見ると異変が。これまでの少女マンガの文脈の外にある『ヲタクに恋は難しい』が1位になってしまったことがちょっと驚きでした」ヲタクを自称する男女のラブコメディは、書店員たちの圧倒的な票を集めた。2位の『東京タラレバ娘』は、第6回アンアンマンガ大賞も受賞している超人気作。「しかし、この世界観に疲れてしまった人にはぜひ10位にランクインした池辺葵先生の『プリンセスメゾン』をお読みいただきたいです。誰かを必要とする幸せを描く『東京タラレバ娘』と、誰の心も必要としない幸せを描く『プリンセスメゾン』は、表裏一体の関係にあります」3位には、『町田くんの世界』が。「多くのマンガにあるように、カッコいい、可愛い、センスがいいなど“スペシャルな何か”がなくても世界は美しいのだと、このマンガは教えてくれるところが素敵です」『町田くんの世界』安藤ゆき著(集英社)各400円現在2巻まで。「絶大な優しさで老若男女に愛される町田くん。この不思議な幸福感は癖になります」。『ヲタクに恋は難しい』ふじた著(一迅社)815円現在1巻まで。「ヲタクを恋愛しない言い訳にしている人は共感しそう」。『東京タラレバ娘』東村アキコ著(講談社)各430円現在4巻まで。「賛否両論ありますが作者一流の語りは一読の価値あり」※『anan』2016年1月20日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子
2016年01月19日洋服屋やファッションビルに行くと異常に緊張する。表参道や代官山などおしゃれな街が怖い。正直、何がおしゃれなのかわからない…。1つでも当てはまる人は要注意。青木U平さんの『服なんて、どうでもいいと思ってた。』に流れる共感と笑いに、大ハマリする恐れありだ。ゆるふわ女子のバイブル的ファッション誌のエディターとなったセンス音痴の花月たちが、慣れぬ現場で苦悩するさまは「こんなことありそう」「こんな人いそう」の連続。「コメディのツボって、カルチャーギャップから生まれることが多いですよね。宇宙人が地球にやって来たとか、神様が地上に降りてきたとか、異質な状況に置かれたときの見方や考え方の違いが、笑いになる。なので、『だれもが持っているであろうファッションの疑問を、ダサい男たちが女性雑誌の編集部でぶつけていくギャップを描くマンガはどうですか』と提案したら、編集さんがすごく乗ってくれたんです。本当は僕自身、ファッションはコンプレックス。後から、なんで自らイバラの道を選んでしまったんだと思ったけれど、後の祭りですよね(笑)」舞台が舞台だけに、女性のイケてる着こなしを、あれこれ描かなくてはいけないのだが、「それは相当、苦労しましたね。おしゃれのレベルまで考え始めると迷宮入りして進まないので、雑誌に出てきたコーディネートを順に、片っ端からキャラに着せていきました」ファッションネタの合間にちょこちょこ挟まれるのが、モテ・非モテのネタだ。イケメンなのに私服がダサすぎてフラれたトラウマを持つ花月など、笑うに笑えないエピソードは、青木さんご自身や友人たちの実体験をアレンジしたものだとか。「どうふるまえばモテるようになるのかわからないという、僕自身の闇が、実は強みなのかなと。やっぱり哀愁やブルースがあるほうが、ドラマは面白いですから」◇あおき・ゆうへい東京都練馬区出身。男性。代表作は異色の(?!)恋愛マンガ『フリンジマン』全4巻(講談社)、『酩酊!怪獣酒場』1巻~以後続刊(小学館クリエイティブ)など。◇赤文字系雑誌『ルイルイ』に配属された花月(かげつ)カヲルら3人。モテ上司の斑鳩(いかるが)九一郎の下でファッションを理解できるか。KADOKAWA全3巻各552円(C)青木U平※『anan』2016年1月13日号より。インタビュー、文・三浦天紗子
2016年01月11日スナック「ころあい」で働く3人のワケあり女子が、しょうもない会話に花を咲かせ、やがて半歩だけ前へ踏み出す。青野春秋さんの『ガールズトーク』には、切なさとドタバタが叙情たっぷりに描かれている。「僕自身がスナックが好きで、舞台にしました。女性のいるお店では、普通はお金を使えばちやほやしてもらえる。けれど現実のスナックって、うんと年上のママにいなされる人生修練の場なんですよね。自分が男としてまだまだなんだと思い知らされ、向上心がわきます。色恋抜きでも、本当にあったら行きたくなる。そんなお店にしてみました」登場するのは、生い立ちが不憫、孤独が友達、いまの境遇に難ありなど、何らかのもの哀しさを背負った個性派揃いの女の子たち。「彼女たちはいつもふざけているんですけど、心の奥底では哀しいことを考えてしまう。僕自身がそうなんです。空気に合わせて楽しそうにはしますけど、我を忘れてはしゃぐことができない。ただ最近は、人とつながってバカ話をして一日一日を楽しむ、自分をいたわる瞬間を大切にしてほしいなという気持ちが強くなった。この本に限らず、僕の現在の大きな創作テーマになっています」青野さんはあまり登場人物に感情移入して描かないそうだが、「この作品では、強いていえば僕がマスターの位置。彼は、女の子たちがヘンなことをしゃべっているととまどうんですが、そこが笑うとこですよ、という目印にもなっています」巻末には、阿川佐和子さんとのディープな対談が収録されている。「阿川さんが聞き上手すぎて、ふだん話さないようなことまで引き出されてしまい、妙に重い対談に。本当は、僕が阿川さんを口説いてたしなめられるという展開にしたかったんですが、話術に完敗しました(笑)」現在、「スラップスティック」「100万円の女たち」など、週刊誌を含む3つの連載を抱える。「『ガールズトーク』のときは、4つの連載をほぼ同時期にスタートさせる荒業に挑戦して死にかけたのに、またやる気を出しちゃいました。いえ、まだ本気は出していません」◇あおの・しゅんじゅうマンガ家。1979年、茨城県生まれ。『俺はまだ本気出してないだけ』で話題に。近著に『スラップスティック』など。お笑い芸人「ブランコ」のプロデュースも。◇菜月(23歳)、琴音(20歳)、加奈(21歳)はスナックのホステス。彼女たちを軸にマスターを巻きこんで進む、コミカルでほろりとする会話劇。KADOKAWA/角川書店980円、(C)青野春秋/KADOKAWA※『anan』2015年12月25日号より。写真・水野昭子インタビュー、文・三浦天紗子
2015年12月22日パリっ子らしいエレガントな物腰に陽気な笑顔、如才ない会話力。昨年、日本のミステリー界の話題をさらった『その女アレックス』で、読者を鬱々とした気持ちにさせた作家・ピエール・ルメートルは、インタビュー中に何度も意外な素顔をのぞかせた。『悲しみのイレーヌ』は、カミーユ・ヴェルーヴェン警部が活躍するシリーズの第1弾。パリ北西部郊外のロフトで、〈悪夢にも出てこないような最悪の〉殺人事件が発生。それを序章とする仰天の犯罪を、カミーユたちパリ警視庁の精鋭が追っていく。全貌が見えたとき、“行き届いた仕事”という原題の意味に、思わず首肯してしまうこと請け合いだ。その面白さの一翼を担っているのが、カミーユの個性だろう。「実はカミーユには、多分に私の父を投影しています。父もカミーユと同じ身長145cmしかなく、いわば生まれたときから悲劇の概念を抱えていた存在ともいえます。それを一生背負って闘う上では、彼を温め、受け入れてくれる、女性の存在は大きい。そうした愛が得られないことは、悲劇の陰を暗くします。私は父を見ることによって、そのことが身にしみてわかりました。このシリーズでカミーユと女性との関係が重要なのには、そんな背景もあるのです。背が並外れて低い彼はふつうの男性のように女性を魅了することはできません。でも、読んでいると魅力的に思えてきませんか?」ミステリー作家としての実力は評価されていたピエール・ルメートルさんだが、なんと『天国でまた会おう』がフランス文学賞の最高峰「ゴンクール賞」を獲得。いまや名実ともにフランス最高の作家のひとりだ。『天国~』の舞台は、第一次世界大戦の終結間際から戦後の混乱期。命からがら戻ってきたアルベールとエドゥアールを待っていたのは、戦地同様に過酷な、元兵士たちに冷たい祖国だった。彼らは生き延びるためにある犯罪計画を思いつく。実際、これまで邦訳された作品に共通するのは「復讐への執念」かもしれない。自分を痛めつけた社会や国家、あるいは個人。それに一泡吹かせてやりたいと、綿密に計画し、実行する人たちが多く登場する。「フィッツジェラルドも言っていますが、作家にはこだわり続けるテーマがあって、それをどう読ませるかを工夫するものだと。私にも2~3のテーマがあります。そのひとつがモラルの問題というか、倫理的な葛藤です。正義だ悪だと単純に断罪できないパラドックスを孕んでいる作品に興味があります」そんなルメートルさんの日常は、「朝から晩まで仕事の職人みたいな毎日です。どこでも集中できるので、タクシーや飛行機での移動中も書きます。書き始めるとずっと物語の中にいて気もそぞろ。しばしば妻に『ねえ聞いてる?』と言われます。カミーユのようにね(笑)」◇ピエール・ルメートル作家。1951年、パリ生まれ。2006年、55歳のとき『悲しみのイレーヌ』でデビュー。在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本の招聘によりイベント「読書の秋2015」に参加するため来日。※『anan』2015年12月9日号より。写真・土佐麻理子(ルメートルさん)水野昭子(本)インタビュー、文・三浦天紗子
2015年12月08日村にとどまり、とっかえひっかえ村の男と寝ることで村に復讐しようとする女子高生の野口、いつか村から出ていく決意を固める同級生の田上や、村から逃げそびれた同級生の友之、いったんは脱出したのに戻ってきた高校教師のヒデジや妙子…。こざわたまこさんの小説『負け逃げ』は、地方の閉塞感から逃れようとあがく人々を描いた連作短編集。「私の故郷は、帰ろうと思ったらすぐ帰れるくらいの中途半端な距離なんですよね。だからなのか、いまでも田舎にからめとられているような感覚が取れないんです」6つの章に登場する語り手たちやその家族が、それぞれに抱えている苦い記憶。だが、みなその出来事をなかったことのようにふるまい、痛みから目を背ける。「そんな欺瞞がキライで、暴いてやりたいという衝動もあったかもしれません。その一方で、周りから浮かないようにという意識は強かった。合わせるふりがヘタだったとは思わないのですが、その分、違和感は澱おりのように溜まっていきました」それを各章の主人公に重ね、ぶつけた本作。出ていける人と出ていけない人の対比がリアルで生々しい。「いつか出ていくという希望を持てる高校生だけでなく、出ようとして出られなかったとか、出戻ってきたとかした大人も書きたかった。1回結果が出ているので、やるせなさを加味できると思ったからです」だが、いまいる場所からおいそれと動けないのは、都会であれ田舎であれ、誰しも同じ。身に覚えがある感情だからこそ、共感してしまう。本書のもう一つのテーマが、ボーイミーツガールだ。「野口と田上の間にある、恋愛とも友情とも違う、けれど深く信頼し合っているピュアな感情にとても憧れます。私は女性ですが、女性を通して女性を書くより、男子高校生や男性教諭を通して女性を書くほうが、すんなりできたような(笑)。女性を美化しがちな男性の妄想フィルターを通すと、女の人がすごくキレイなものに見えるからでしょうか」イヤでしかたなかった故郷。だが、本当は少し愛しかったことに登場人物たちは気づく。だから読んだ後に残るのは、鬱々とした息苦しさではなく、息をぐっとこらえた後に思い切り深呼吸した、あの爽快感だ。◇こざわ・たまこ作家。1986年、福島県生まれ。2012年に「僕の災い」で第11回「女による女のためのR‐18文学賞」読者賞を受賞し、デビュー。演劇鑑賞とマンガが趣味。好きな作家は、窪美澄、重松清。※『anan』2015年12月9日号より。写真・岡本あゆみ(こざわさん)水野昭子(本)インタビュー、文・三浦天紗子
2015年12月08日PEACH JOHNの最新カタログ、表紙は紗栄子11月11日(水)に株式会社ピーチ・ジョンより発行されたカタログ、「PEACH JOHN vol.95 2015 Winter」。表紙を飾るのは、引きしまったボディが眩しい紗栄子だ。実はこのカタログ、ARアプリと連動した「遊べるカタログ」。ARアプリ「PJ-AR3」をダウンロードし、起動させてからカタログにかざすと、表紙でポーズを決めている紗栄子がくるくる回り、様々なポージングや表情を見せてくれる。また、カタログ内では着用しているランジェリーのカラーを変更したり、そのままショッピングカートに移動したりもできる優れものだ。シークレットミューズをシェア!そしてアプリには、シークレットミューズが存在する。その正体は、「ミューズ」のイメージとは遠い、お笑いコンビ・ハリセンボンの近藤春菜だ。彼女が紗栄子を意識したバレリーナ風の衣装で、PJミューズになりきる表情は必見。この表紙をSNS上でシェアすると近藤のARアプリオリジナルコメントを閲覧できるほか、「#PJmuse」をつけてシェアすると、PEACH JOHNからのクリスマスプレゼントが当たるキャンペーンも行う。(プレゼントキャンペーンは11月25日よりスタート)見て、選べて、遊べる「未来のカタログ」は、まだまだ仕掛けがたくさん。あれこれ楽しみながら、PEACH JOHNの新作をチェックしてみては?(画像はプレスリリースより)【参考】・PEACH JOHN・株式会社ピーチ・ジョンプレスリリース
2015年11月21日「人生において、男だとか女だとかのラベリングなく、たましいのまま世界を見ることができる本当にイノセンスな時期は限られています。未性の時期というのかな、誰もがそこにずっととどまることはできないのだけれど、私たちは確実にそこを通ってきた。私自身、当時の幸福な記憶の余韻だけで生きているところがあるんですが(笑)、そんな愛しいひとときへの、私自身の“憧れ”がこの物語を書かせた気がします」川上未映子さんの4年ぶりの長編小説『あこがれ』は、整形疑惑のある個性的な顔をしたスーパーのサンドイッチ売り場の女性に強く引きつけられる10歳の少年・麦彦を軸にした第一章「ミス・アイスサンドイッチ」と、その2年後の第二章「苺ジャムから苺をひけば」からなる。第二章の主人公は、あるとき、半分だけ血のつながった姉がいることを知ってしまった12歳の少女ヘガティー。不思議な存在感を放つ年上の女性への、あるいはまだ見ぬ姉への、素直な憧れがみずみずしく描かれる。「意識したのは、自分が子どもだったときの体験と同化させないこと。今を生きている少年少女たちが、思春期直前の世界をどんなふうにとらえているのか、なにがどれくらい切実なのか、とアクチュアルな世界を織り込んで書くのが課題でした」一方で、文学における普遍的なテーマも垣間見える。「いた人もやがていなくなること。時間は常に流れ、いま過ぎた瞬間は戻ってこないこと。人生は一瞬の夢なんですよね。だから、会いたい人には会っておくべきだという麦くんやヘガティーにはっとさせられたし。また、このふたりについて、『本当に幸せな気持ちになった』『サーガのようにいつまでも続きますように』といろんな世代の読者から言われたんですね。これまでそんなふうに読んでもらえた作品はなかったのでとてもうれしいです。私はあらゆる人間の関係の中で、友情というか、プラトニックな関係がいちばん高尚なもので、信じられるという気持ちが強いのかもしれない。大人になるとそれが困難になっていくがゆえに、いっそう大切に思えるんです」“あのころが、匂い、色、かたちなどテクスチャーたっぷりに描かれ、もう二度と戻れないサンクチュアリへと読者を誘う、幸福な一冊だ。◇かわかみ・みえこ作家。2008年に『乳と卵』で芥川賞を受賞した後も、出版する本のほとんどが何らかの賞を受けるという当代屈指の存在。出産・育児エッセイ『きみは赤ちゃん』も反響を呼んだ。◇『あこがれ』秘密の隠れ家、仲間だけに通じる合言葉、朝が待ちきれない楽しさ。本を開けばすぐにそこに戻れるような美しき世界を、豊かな描写で描き出す。新潮社1500円※『anan』2015年11月18日号より。写真・岡本あゆみ(川上さん)水野昭子(本)インタビュー、文・三浦天紗子
2015年11月17日家族、結婚、女であることのセクシュアリティやコンプレックス。現代女性たちが抱える違和感に光を当て、“常識”を揺さぶる小説を書き続けている村田沙耶香さん。ともすれば、それはディストピアな世界にも通じるが、エッセイでは一転。このたび本にまとまった『きれいなシワの作り方~淑女の思春期病』を読むと、連載時にも感じていたポップな楽しさが蘇ってくる。「よく“お肌の曲がり角”などといいますが、肌に限らず、身体も酒量も、あるいは、結婚や将来に対する願望や悩みなど、30歳を過ぎた頃から曲がってきているなと自覚する出来事がいっぱいあって。そんな“アラサーあるある”が書けたらいいなと思っていました」俎上にのる話題は、美容やファッション、恋愛など女子トークの定番ネタ。どうやら、思春期に卒業したと思っていた煩悩は、アラサーになっても女子を悩ませるらしい。「振り返ってみれば、確かに書くとっかかりは、友達との会話から拾うことが多かったですね。痩せない話、化粧品売り場のカウンターでの話、帰省したときの話など。他愛ないことでも切実なんです」そんな体で書かれたエッセイは、回を重ねるにつれ、「友人からは『最初はあるある話だったけど、だんだんサヤカちゃん特有の世界になってきたね。そこがいいんだけどね』と、とってつけたような褒め言葉をもらうように…」だが、三十路になってから自分の恋愛ブレーキが高性能すぎて恋ができないという悩みや、産むか産まないかにいつまでも揺れていていいのか問題など、女性の共感を誘うテーマもいろいろ。村田さんの素直な心情が綴られているだけに、首をぶんぶんと、ヘッドバンギング並みに振ることになるかもしれない。「実際に、自分が30代の地平に立ってみると、20代に求められるきゃぴきゃぴ感は求められずにすむし、『もう、どう見られてもいいや』と自由になれている面もいろいろある。大人だからこそのチャレンジもできる。少しずつ生きるのがラクになっている気がします。そんな気持ちを包み隠さず書いたので、読んでほっとしてくれればうれしいですね」かつては、憧れの山田詠美さんが書いた小説からだけでなく、エッセイからもさまざまなエールを受け取っていたという村田さん。「私の場合は、そんなステキな姉御感はないのですが…。というか、ついに私の素がバレてしまう日が来たのかと戦々恐々です…(笑)」◇小誌で約1年半にわたり連載されていた好評エッセイ「アラサーからの思春期病」を、書き下ろしも加えて単行本化。共感すること間違いなし!マガジンハウス 1200円◇むらた・さやか 作家。1979年、千葉県生まれ。『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞ほか受賞歴多数。昨年は、『殺人出産』が話題に。※『anan』2015年10月21日号より。写真・内山めぐみ(村田さん)加藤 淳(本) インタビュー、文・三浦天紗子
2015年10月20日ユニット「TrySail」としても活躍中の声優・雨宮天のファースト写真集「雨宮天ファースト写真集ソライロ~青と旅する~」(発行:主婦の友インフォス情報社)。10月2日に発売されて以来、好評な売れ行きの本書だが、TrySailのライブ「The Golden Voyage of TrySail」会場でも「会場限定生写真付き」(2Lサイズ・直筆コメント・サイン入り)で発売されることが決定した。さらに、発売記念イベントが2015年11月29日(日)に都内某所で開催されることもあわせて決定。イベントでは、「未公開の写真やオフショット満載のスライドトーク」「クイズ大会」「Q&Aコーナー」「大抽選会」などが予定されている。イベント応募用紙は、全国のアニメイト、ゲーマーズ(オンラインショップ含む)、TrySailライブ「The Golden Voyage of TrySail」会場にて本書を購入すると配布される。応募締切は2015年11月5日(木 / 当日消印有効)。■店舗別 特典生写真 一覧
2015年10月09日全世界で300万部(2015年3月時点)と超ベストセラーになっている、小説『ワンダー』。作家・R.J. パラシオさんにお話を聞いた。* **生まれつき顔に障がいがある10歳の少年がいじめや差別を乗り越え、彼らしく輝くまでの1年を追った『ワンダー』。いまや国境も言語も年代も超える名著として広まり、驚くべき奇跡=『ワンダー』旋風を巻き起こしている。物語は、オギーことオーガストが学校に初めて通うことになったところから始まる。一種の異端児である彼を取り巻く子どもたちの反応はさまざまだ。最初の構想では、オギーの視点だけで書くつもりだったが、「次第に、なんでも弟第一になってしまう家庭で暮らす姉ヴィアの生き方や、ランチタイムにオギーと一緒に座るサマーの勇気の裏にあるものを知りたくなりました。オギーの完全な物語を補完するために、複数の視点で綴ることにしたのです」それは同時に、オギー以外はみな外見こそ普通だが、実は悩みのない子はいないことを浮き彫りにする。ちなみに、本書で大きな役割を担うのが、オギーが入学する学校のトゥシュマン校長が挙げる格言だ。「校長が引用した<正しくあるより、親切であれ>はアメリカの心理学士、ウェイン・W・ダイアーの言葉で、この物語のテーマにぴったりだと思いました。本の中でもわかりやすいいじめばかりではなかったように、現実においても、いじめと呼べるほどではない“集団での意地悪”をとてもよく見かけます。親たちはなぜか、あの年頃の子どもは意地悪をするものだと訳知り顔で片付けたがるのですが、私には納得できなかったし、とても不満だったんです。『ピーター・パン』の作者ジェームズ・バリーの『小さな白い鳥』の一節<必要だと思うより、少しだけ余分に人に親切にしてみよう>にあるように、みながもうちょっとだけ優しさを選べば、世界はもっといい場所になると信じています」この本にインスピレーションを受けた人たちによって、いじめ反対のキャンペーンが始まったり、親切運動推進団体が組織されたり。そうした社会現象も生まれていることに、パラシオさんは感動しているそうだ。◇R.J.パラシオ作家。夫と2人の息子、2匹の犬とともに、ニューヨーク在住。アートディレクターとして多くの本に関わる。2012年にアメリカで本書が出版され、デビュー。◇『ワンダー』R.J.パラシオ 学校に入ったオギーに起きる、いいことと好ましくないこと。挫けそうになったときに味方になってくれたのは…。感動的な格言が多数織り込まれている。ほるぷ出版1500円※『anan』2015年10月7日号より。写真・加藤 淳インタビュー、文・三浦天紗子
2015年10月06日