《担任によって学力、存在価値、生きがい、性格etc.私の人生全てを壊された》 2月6日、愛知県一宮市の中3男子が大阪市内の商業ビルから飛び降り自殺した。生徒が友人に託した携帯ゲーム内のメモ機能には「遺言」と題して冒頭の言葉が。学校側は12日に会合を開き、自殺の原因を「担任によるいじめ」と説明。だが翌13日に一転し「担任によるいじめの有無は不明。遺族の気持ちをくみ取っていじめという言葉を使った」と翻した。 今回、Aくんの母親は女性自身で90分にわたりその胸中を語ってくれた。発端はAくんが中学3年生に進級した昨年春。問題の教師が担任を受け持つことになったという。 「最初に担任から電話があった際、応対した主人に何も名乗らずいきなり『本人(Aくん)かお母さんいますか』と言ったそうです。息子も『先生は生徒を叱るときもすごくヒステリックで。その声が教室中に響き渡るほどだった』と言っていました。先生の癖なのか生徒の背中をすぐ触ってくるそうで、『すごくイヤだ』とも言っていましたね。教科書をうつむいて読んでいて、顔を上げたら間近に先生の顔があったという話も聞きました」 そんななか、Aくんの運命を左右する事件が起きる。昨年9月24日の体育祭で組体操をしていたAくんは激しく転倒。その際、両手親指を骨折してしまったのだ。 「息子は学年主任の先生に指の状態を見せたそうですが、スルーされたそうです。息子が帰ってきた後、私は担任に電話で『指を骨折したようなので、病院に連れて行きます。後ほど診断結果をお電話しましょうか』と伝えました。すると『今日は用事があるので』と断られたんです。耳を疑いました。当然、『連絡ください』と言ってくれると思ったのに」 実はその夜に体育祭の打ち上げがあり、担任は飲み会に参加していたというのだ。骨折の診断がされた後、母親は不信感を抱えて学校へ赴いた。体育祭から2日後のことだった。 「教頭先生がいたので『うちの子が体育祭で指を骨折したのを知っていますか?』と尋ねたところ、『えっ、何のことですか?』という返答が返ってきました。担任は、学校内の誰にも事故を報告していなかったんです。もう、信じられませんでした」 治療を続けていたAくんだが、親指は変形してしまう。その間はペンを持つこともままならず、成績も急降下。工業高等専門学校への進学を望んでいたが、厳しい状況に陥った。しかし母親が問題にしているのは、ケガやその影響による成績不振ではない。 「私たちが何に憤りを感じているか、間違わないでほしい。骨折やペンが持てずに勉強できなかったのは、後から言っても仕方のないこと。担任が打ち上げで飲み会に行ったことも、怒ってはいません。でもケガをした生徒を前に、担任としてすることはいくらでもあったはず。応急処置をするとか、対応した後で飲み会に遅れて参加するとか。でも彼らは何もしてくれなかった。この学校はすべて生徒のことを後回し。それが許せないんです」 今回、本誌は担任の自宅を訪ねた。Aくんの自殺についてどう考えているのかと尋ねたが、彼は玄関越しに「それは第三者委員会で話しますので」と一言。その後も声をかけたが「生活があるので」と言葉を濁すばかりだった。Aくんの母親は、断腸の思いでこう語る。 「今、私は後悔でいっぱいです。息子の命が守られるなら、学校なんか行かせなくてもよかった。むしろ不登校のほうがよかった。そう心から悔やんでいます」
2017年02月23日こんにちは、親子でADHD(注意欠陥・多動性障害)をやっています、ママライターの木村華子です。息子の発達障害を疑ったのは、小学校へ入学してすぐのこと。夏休み前に行われた担任と保護者の二者面談で、私は息子の発達障害を疑っていること、 そして受けることのできる支援や相談窓口があれば教えてほしい旨を伝えました。ところが担任の口から発せられたのは、「発達障害だなんて!お母さん、そんなに思いつめなくても大丈夫ですよ」という慰め(?)の言葉。結局その後一年間、何のアプローチもないまま息子の不得意は放置 されてしまいました。当時の私は、「どんな支援があるのか分からない」「どこに相談すれば良いのか分からない」「そういう機関を利用する際には、学校を介さなければいけない気がする」などの疑問や思い込みから、「担任が気付いてくれなければ何もできない……」と動き出せずにいたのです。今考えると、その時点で親としてしてあげられることがあったのだと分かります。今回は、早期療育の大切さと、発達障害の相談窓口についてをお話しします。「うちの子もしかして……」と思い始めたパパ・ママへ、いち早くお子様へのアクションを起こすヒントにお役立てください。●早期療育の大切さ〜放置は二次障害の原因に!〜2年生になったばかりのころ、新しい担任から療育センターへ行くことを勧められ、ようやく息子への支援が行われるようになりました。発達障害を受け入れ支援に踏み切ることは、多くの親にとって勇気のいる決断ですが、息子の凹凸を考慮したアドバイスや指導により、私たち親子がこれまでの育児で乗り越えられなかった課題や問題が日々改善されていく様子 には、「もっと早く相談すれば良かった!」と思わせるだけのメリットがありました。と同時に、カウンセリング・検査・相談等の過程で相談員の方や支援学級の先生から何度も聞かされた「早期療育が大切」という言葉に、親としての反省と後悔も感じています。発達障害を放置し、適切な対応をせず過ごしていると、・できないことを友人になじられたり・先生や両親から怒られたり・いくら頑張っても成功しなかったり……という失敗経験を重ねて自己評価が低くなり、高い確率で別の障害(不安障害やうつ病、統合失調症など)を引き起こす原因になってしまう のだそうです。これを“二次障害”と言い、思春期の引きこもりや不登校、家庭内暴力、犯罪行為などにもつながると言われています。カウンセリングで「“もう手遅れ”ということはないけれど、療育をはじめるのは早いに越したことはありませんよ」というアドバイスを受け、私は子どもが1年生の段階で気が付いていたのに……と少し後悔しました。きっと、担任の動きを待つあいだにできることがあったはずです。発達障害の特性でつらい思いをするのは本人。二次障害を予防するためにも、ぜひ「うちの子もしかして……」と気が付いた段階で適切なアクションを起こしてあげたいものですね。●「うちの子もしかして……」と感じたときに相談できる窓口4つ「発達障害の支援を受けるには学校との連携が不可欠なのだから、相談も学校を介さなければいけない気がする……」と、特に行動をしないまま息子の1年生を過ごしてしまった私。しかし後になって、ダイレクトに相談できる機関がいくつも存在していることを知りました。もちろん、普段の様子を知っている学校や幼稚園、保育園の担任に相談することも大切です。しかし、私のように不安がうまく伝わらなかった場合や、「どこに相談すべきか……」とお悩みであれば、ぜひ以下の窓口で支援や相談の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。●(1)発達障害者支援センター発達障害を持つ大人や子どもへの支援を総合的に行う専門機関。“発達障害”と名が付いていますが、「まだ診断されたわけじゃないんだけど……」という方でも相談や支援を受けることができます。●(2)児童相談所虐待児保護の印象が強い児童相談所ですが、業務には“児童に関するさまざまな問題について、家庭や学校などからの相談に応じる”という項目があり、0〜17歳の児童 を対象に発達障害の心身障害相談も行われています。●(3)市町村保険センター地域の母子保健・老人保健の拠点を担う施設。未就学児や小学生だけでなく、高校生や大人の発達障害にまつわる相談 も行われています。相談は予約制となるケースが多いので、利用の際は前もって問い合わせを。●(4)子育支援センター乳幼児(0歳〜就学前)のいる親子の交流や育児相談、情報提供などを行う子育支援センターでは、教育不安などの相談・指導を受けることもできます。発達障害児のサークル活動が行われているケースも。●早期発見で、二次障害を食い止めて!お子様の様子を誰よりも見ているパパ・ママが感じる「もしかして……」には、わが子からのSOSが隠れているのかもしれません。もしそうなら、一刻も早く最適な対応を施してあげたいものですよね。お子様を取り巻く環境をより良いものにするためには、周囲の大人が動きだすこと が必須です。ぜひ早期発見・早期養育をして、二次障害の予防につなげてあげてください。【参考リンク】・相談窓口の情報 | 発達障害情報・支援センター()・平成28年度全国児童相談所一覧 | 厚生労働省()●ライター/木村華子(ママライター)
2017年02月22日「’01年に発覚した薬物事件では、全校生徒約560人中79人が大麻などに手を染めていたことがわかり、翌年の入学志願者は激減しました。それから再発防止のためにわれわれ教師ががんばってきましたが、生徒の数は減少を続け、赤字は1億円を超えるまでに。そして理事会は、この4月に『70人以上』の入学者がいなければ’19年度いっぱいで“廃校”にすることを決定しました。2月10日現在で志願者は62人。もう後がない……」 困り果てた表情で話すのは、北海道・北星学園余市高等学校の安河内敏校長(51)。北星余市と言えば、TBSドラマ『ヤンキー母校に帰る』(’03年)の舞台となった高校。竹野内豊が演じた主人公のモデルは「ヤンキー先生」こと義家弘介氏(45)、現在の文部科学副大臣である。 北星余市は’65年に開校、’88年より全国の高校中退者を受け入れる転・編入制度を実施して注目された“名門”だが、まさか存続の危機とは―。本誌はさっそく、10代の少年少女の心理に詳しい精神科医で立教大学教授の香山リカさん(56)と現地に飛んだ。 校舎で香山さんの到着を「いまかいまか」と待っていた安河内校長が、北星余市への思いをアピールする。 「かつては生徒会長までボンタン(太い学生ズボン)をはいていたぐらいですから、完全に“ヤンキーの高校”というイメージが強かったと思います。しかし最近は、アスペルガー症候群やADHD、学習障害などさまざまな発達障害のある生徒を受け入れています。ひきこもりや不登校、いじめられた経験などで心に傷を負っている子もいる。別の高校を中退していたりして年齢もバラバラ……。そんな多様な生徒たちが同じ教室で過ごすことになります」 香山さんが「それほど多様な生徒を受け入れるには、専門の心理カウンセラーなどが必要では?」と質問すると、「お願いしていません。外部からカウンセラーなどを呼ぶと、任せっきりになってしまうので、全18人の教員がチームとして、責任を持って生徒たちをケアしています」 同校に赴任して12年になる本間涼子先生(36)が話す。 「ここの生徒は、私たち教師に“タメ口”で話していいことになっています。私のニックネームはだいたい“ホンマちゃん”ですね。それでいて、卒業して大学生や社会人になってから会いにくると、『本間先生、お元気ですか?』などと、しおらしく敬語になっていたりする。なんか距離を置かれているみたいで、逆にこっちが寂しくもあり、順調に成長しているなとうれしくもあり……」 北星余市は約6割が道外出身者で、全校生徒の8割近くが寮で下宿生活を送っている。教室で、下宿先で見守る大人たち―。しかし、生徒たちは、北星余市での生活で何か変わったのだろうか。香山さんが生徒たちに話を聞いた。 「ここに来るまでは、大人って“きたない”と思っていた。でも、やっさん(校長)、トオル(田中亨教頭)、平野(平野純生先生、来年度より校長)とかといるうちに、だんだん信用できるようになった」(3年生の渡邊佳緒里さん・19) 「前の高校で友達関係や部活でうまくいかず、ひきこもっていたけど、親にも迷惑かけたので、このままじゃダメだと。ここを選んだのは、『一人でやっていける』ところを親に見せたいと思ったから。最初は不安もありましたが、いまは楽しいですね。下宿では、ときどき寮母さんが私の悩みを聞いてくれるし」(2年生の熊崎千紗さん・17) 最初は表情が硬かった生徒たちも、香山さんと話すうち、笑顔も見られるようになり、香山さんとスマホ撮影したり、アドレス交換したりしていた。先生たちが“タメ口”を許すのも、生徒と同じ目線だよという大人の意思を示すためなのかもしれない。 香山さんが、帰路の車内でこう話す。 「校長先生が言う『自分たちだけで責任を持って管理する』というシステムは、昨今の学校が外部からカウンセラーを呼び寄せたりする流れとは真逆のもの。先生にものすごく負担がかかるのが心配です。でもたぶん、子どもを育てるって、こういう非効率的なことかもしれない。先生や下宿のお母さんの“おせっかい”があって、何十人の子どもがようやく、自立できるようになる。利便性が重視され、システム化されてしまった時代に、北星余市の存在意義は必ずあると思う」 果たして4月、北星余市は、70人以上の新入生を無事に迎えることができているのだろうか―。
2017年02月20日「お腹が痛い」「頭が痛い」子どもの訴え、あなたは信じる?出典 : 学校に行けない子どもたちがよく訴えることがあります。「お腹が痛い」「頭が痛い」「しんどい」・・・初めのころはそう言う子どもを心配していても、ずっと続くと「学校に行きたくないから仮病を使ってるんだ」、「やりたくないことがあるとすぐそう言う」と聞く耳を持たなくなってしまうことってありませんか?実は私も娘がひんぱんにそう言って学校を休むようになったとき、小児科の先生に「仮病じゃないんですか?」と聞いたことがあります。でも先生は「喉を見ると本当に風邪をひいた形跡がありますよ」と娘の訴えを否定せず、風邪の薬を出してきました。「先生が本当だというんだからそうなのかな」としぶしぶ納得していたのですが、これは娘からの身体を張ったSOSだったということが後にわかったのです。小さなころから神経質だった娘。時にはこんなことも言いだして…出典 : 娘は赤ちゃんの頃から神経質な子でした。ちょっとした物音や気配でも目を覚まし、ミルクもほんの少ししか飲まずに2時間ごとくらいに泣き…離乳食もなかなか食べてくれずに苦労したものです。3歳になったばかりの頃は、初めて保育園でしたおむつ外しに失敗しておもらしをしてしまいました。先生が「大変、大変」と拭いて回っただけで大ショックを受け、それから1週間家でも保育園でもおまるから離れず、ひきはがすとパニックを起こしたり。他にも娘は、先生が他の子を叱っただけで自分まで顔面蒼白になり、固まってしまいます。先生からは「この子はガラスの心の持ち主ですね。」と言われたほどです。そんな娘は保育園でも泣いてばかりいたらしく、「ママ、みんなりさのこと泣き虫って言うねん」と言ってはまた泣いていました。その頃くらいから「ママ、お腹痛い」「心臓が痛い」「りさ、死んじゃうの?」とよく訴えてくるように。最初はうろたえて小児科に連れて行っては検査を受けていたのですが、心電図は異常なし。胃腸は胃腸炎をおこしていることもたびたびありましたが、どうもそれだけとは思えませんでした。「どうしてそんなことばかり言うのだろう」、いつもつらい訴えを聞かされる私は参ってきていたのです。娘への見方が変わった、看護師さんのある言葉出典 : 娘が通っていた保育所には保健室があり、ベテランの看護師さんが勤務していました。保育所には自閉症のお姉さんと一緒に子どものお迎えに来るお母さんがいたのですが、その看護師さんは一言も発しないその子にいつも「今日も会えたね」って満面の笑顔でハグしていたのです。その様子を見て「この人なら相談にのってくれるかもしれない」と思った私は、ある日思い切って一人で保健室に相談に行きました。「娘がしょっちゅうお腹が痛いとか心臓が痛いとか言うんですけど、なんだか納得できないっていうか…、どう接したらいいのかわからないんです。」そう相談した私に先生は言いました。「お母さん、りさちゃんが『痛い』といったときは本当に痛いんです。たとえ身体に病気がなかったとしてもです。『痛いんやねぇ。しんどいねぇ。』と共感してあげて、痛いところをやさしくなでてあげてください。それだけでずいぶん楽になるはずですよ」「病気じゃなくても本当に痛い」看護師さんのこの言葉は、私の目を覚まさせてくれた言葉でした。身体の痛みは、心の痛み出典 : 先生のアドバイスのおかげで、その後は娘の「痛み」にもだんだん寄り添えるようになってきました。だけど、小学校に入学してから月曜日が来るたびに「しんどい」「お腹痛い」と訴える娘を見ると、また「本当は仮病じゃないの?」という思いがムクムクと湧いてきてしまいました。学校に「今日は休ませます」と電話したらウソみたいに元気になるのですから。だけど、看護師さんの話が頭に残っていたこと、そして私自身が神経症になったとき原因不明の熱が出続け、通勤電車でパニック発作に苦しんだ経験から「そうだ、この子は本当につらいんだ。心がつらいから体もつらくなるんだ」と、次第に心にストンと落ちるようになりました。不登校になるとき、子どもは意外と自分では「学校に行きたくない」という意思を自覚していないこともあります。なんだかわからないけど、学校に行こうとしたら気分が悪くなる、無理に登校したら倒れそうになってしまうという症状が先に出ることが多いのです。大人も会社に行こうとしたら体が動かなくなって、「これはひょっとして」とメンタルクリニックに駆け込み「うつ病」などと診断され、どれだけ自分が追いつめられていたか初めて気づくことがありますよね。先に身体がサインを出すのは大人も子どもも一緒だなと思いました。子どもの言葉を、まずはありのまま受け止めよう出典 : 身体のことだけではありません。娘は不安になると、奇想天外なことを考えて心配になってしまうことがあるようです。最近、「夜になると、なんだかママが他の人と入れ替わっていて、本当はママじゃないんじゃないかって思ってしまう。しゃべっていたら『やっぱりママだ』と思うんだけど、それでもなんだか心配になって。こんなこと思うなんて変なのかな?」と打ち明けてくれました。私にも経験があるので分かるのですが、神経質な人は、不安や精神的負担などが積み重なるといろいろとヘンなことを考えてしまうことがあります。大人でもそんなことが思い浮かぶようになったら不安だろうに、子どもだったらどれだけ怖いことでしょう。口に出して打ち明けることができたらまだいいですが、黙って悩んでいるのならどれだけつらいかと胸が痛くなります。私は、そのときはこういう風に言いました。「誰でも頭の中では変なことを考えてしまうことはある。『そんなことはない』とその考えを打ち消そうとしたり、認めなかったらよけい考えてしまうものなの。『ああ、いま私はこんなことを考えているな』とそのまま認めて、そのまま生活していけばいいよ。ただ、それでどうしても怖かったり、眠れなかったりと生活で困るようになったら病院に相談に行ったほうがいいね。そんな時は『もしかしたらママじゃないママ』に言ってくれてもいいし、そのママが怖かったらおばあちゃんに言ってもいいよ。」これは不安神経症、強迫神経症でさんざん誰にも言えない考えに取りつかれた私の実体験から出た言葉です。不安でいっぱいの子どもに、親ができることは?出典 : もし子どもが「あれ?」と思うようなことを言ってきても、絶対に否定したリ、バカにしたり、笑わないであげて下さい。不安に思うこともあるかもしれませんが、とりあえず「あなたはそう思うのね」と引き受けてから、専門家に相談すればいいと思います。言っている本人も、自分がヘンなことを言っていることはどこかで分かっています。だからこそ、突き放されたらもう立ち直れなくなってしまうのです。そして、心身の不調があまりに続くときは、まずは病院で一通り身体に本当に異常がないか検査を受けたうえで、子どもの心がSOSを出しているのではないか?と考えてみるといいと思います。決して問い詰めるのではなく、「何か辛いことがあったら話してくれてもいいよ」と待っていることを伝えると。子どもも話しやすいかもしれませんね。
2017年02月17日家庭内暴力とは出典 : 家庭内暴力は、家庭内で起きる暴力のことで、一般的に子どもが親に対して暴力をふるうことを指します。また、同様に家庭内で起きる暴力であっても、親が子どもに暴力をふるう場合を“児童虐待”、夫が妻に暴力をふるうものを“DV”(ドメスティックバイオレンス)と呼ぶことが通例となっています。この記事ではこうした用法にならって、子どもが親に対して暴力をふるう「家庭内暴力」について解説します。警視庁は家庭内暴力について以下のように定義しています。少年が、同居している家族等に対して継続的に暴力を振るう事案をいい、家庭内暴力を止めようとした第三者に対して暴力を振るう事案や他人の所有物を損壊する事案については含まない「平成27年中における少年の補導及び保護の概況」(警察庁生活安全局少年課)より引用ここでの少年とは20歳未満の者を指しています。つまり、家庭内暴力とは20歳未満の子どもが家族に対して行う暴力行為を意味します。ここでいう暴力には、身体的な暴力や、暴言、家具や家財の破壊なども含まれます。家庭内暴力の特徴としては・暴力が家庭内でのみ行われる・暴力の対象が人である場合、暴力をふるう本人より弱い者が対象となりやすいことが挙げられます。事実、暴力の対象のうち約6割が母親であることが警視庁によって報告されています。参考:「平成27年中における少年の補導及び保護の概況」警察庁生活安全局少年課家庭内暴力は、1960年代から顕著に現れるようになりました。警察庁生活安全局少年課による報告書「少年の補導及び保護の概況」によれば、平成27年度現在、家庭内暴力の認知件数は2,531件にのぼります。また、この数字は平成18年の1294件と比べて約2倍となっており、近年も増加傾向が続いています。実際に家庭内暴力をおこなうのは中学生がもっとも多く、次に高校生、小学生の順となっています。さらに、性別でみると男子が圧倒的に多く、女子と比べて2~3倍多く報告されています。同報告書によると、家庭内暴力の動機は1番多いのが「しつけ等親の態度に反発して」(1,636件、全体の65%)、2番目が「理由もなく」(261件、全体の10%)、3番目が「物品の購入要求が受け入れられず」(225件、全体の9%)となっており、以降「不明」「勉強をうるさく言われて」「非行をとがめられて」といった動機が続いています。非行をとがめられた際に反発して起こる家庭内暴力が実は意外と少なく、親の態度への反発から生まれる家庭内暴力が圧倒的に多い結果となっています。実際、おとなしい性格で、学校での成績もよい子どもがある日を境に家庭内暴力を行うようになるケースも多く報告されています。こうした、家庭内暴力を行いやすい子どもの特徴・傾向は次章で解説します。出典:「平成27年中における少年の補導及び保護の概況」警察庁生活安全局少年課家庭内暴力を引き起こしやすい子ども・家庭の特徴出典 : 家庭内暴力をする子どもには、本人の性格や家庭環境に一定の共通点が存在するといわれており、具体的には以下のようなものが挙げられます。ただし、様々な組み合わせがあり、また例に挙げた要因に当てはまらない場合もあります。・真面目、内気、おとなしい・家庭外では他人に対して従順で、自己主張が乏しい・神経質である・比較的友人が少なく孤立的である・非行に走ってはいないが、生活習慣の乱れなどがある家庭の外において反社会的な言動をおこなう非行少年・少女とは対照的に、家庭内暴力を行うのは比較的おとなしく、学校でもあまり多くの友達を持たない子どもが多いようです。・母親が過干渉で父親が無関心である(もしくはその逆)・親子分離が少なく、子どもの親への強い依存心、甘えがある家庭内暴力が起きている家庭は、経済的に豊かで、親も教育熱心ということが少なくないようです。そんな家庭で家庭内暴力が起きてしまうのには、中学生や高校生で挫折して、学力が低下したり、親が期待しすぎたり、干渉しすぎるなどの理由で不登校になり、親への反抗から暴力をふるうようになってしまうというパターンが多いといわれています。また、ときには世代間の考え方の違いが意見の違いをもたらし、その表面化が子どもの親不信の引き金となることもあるようです。参考:「研究紀要第42号 教育相談における心理検査の活用」福島県教育センター家庭内暴力の原因出典 : 家庭内暴力は、様々な要素が複雑に絡み合って起きるため原因の特定は困難であるといえます。親の育て方が悪かったという見方をされがちですが、そうとは言い切れないこともあります。なぜなら、家庭内暴力の原因には社会的な要因、心的外傷、精神疾患などといった、親にはどうしようもないさまざまな要素が複雑に関連している可能性があるからです。親への反発が暴力を誘発しているケースが存在するのは事実ですが、だからといって親がそもそもの原因であるとする考え方は解決を図る上で有効ではありません。本章では、以上に挙げた社会的影響・心的外傷・精神疾患といった家庭内暴力の原因となりうる3つの要素を解説します。・都市化社会における対人関係の疎遠・両親の離婚・共働き・転勤などによる家族間の感情的交流の希薄化・インターネット・スマートフォンの普及による過剰刺激・暴力シーンへのアクセスの簡易化・受験競争や立身出世志向など、社会的な影響が要因となり家庭内暴力へと結びつくことがあります。・親に虐待された・学校でいじめられた・事故に遭った・進学に失敗したというような経験を通して得た親への反抗・復讐心、恐怖心、挫折感などの感情が家庭内暴力へとつながってしまうことがあります。家庭内暴力は統合失調症、強迫性障害、精神遅滞、広汎性発達障害、多動性障害などさまざまな精神疾患が背景にあることが少なくありません。次章ではそれらの中でも主な例を紹介します。家庭内暴力と二次障害ー精神疾患や発達障害との関連は?出典 : 行為障害・素行障害(Conduct Disorder)とは別名「素行症」と呼ばれる精神疾患であり、社会で決められたルールを守らず反抗的な行動を起こし続けてしまうという特徴があります。具体的な症状には人や物への暴力的な攻撃、窃盗や長期・複数回の家出などが挙げられます。詳しくは以下の関連記事をご参照ください。国際連盟の専門機関の一つであるWHO(世界保健機関)が作成する疾患の分類である『ICD-10』により定められた行為障害の中でも「家庭限局性行為障害」の症状は家庭内暴力に対応しています。家庭限局性行為障害とは家族が精神的に追い込まれ疲弊してしまうほどの激しい家庭内暴力をおこしてしまう疾患です。この暴力的な行動は家庭内だけでみられ、学校生活や友人間では問題なくうまくやっていくことができることも特徴です。家庭限局性行為障害がある場合、精神科医への相談をおすすめします。家庭内暴力は発達障害の二次障害として発症する場合もあります。発達障害が背景にあり、失敗経験を重ねて子どもが自信を失ったり落ち込んでしまったりした結果現れる二次的な情緒・行動の問題を二次障害といいます。二次障害は周囲への反抗や家庭内暴力、非行など問題行動が外に出るタイプと、うつや対人恐怖、引きこもりなど内面に向かうタイプがあります。二次障害の中でも、反抗挑戦性障害(ODD)は、別名「反抗挑戦症」とも呼ばれ、親や教師など目上の人に対して拒絶的・反抗的な態度をとり、口論をしかける、暴言を吐くなどの挑戦的な行動をおこしてしまう疾患です。反抗挑戦性障害とADHDは強い関わりがあるといわれており、年齢を重ねるとともに合併する可能性が高くなると言わています。そのような場合、元々ADHDがある人が“人間不信的行動”という二次障害として反抗挑戦性障害を発症する場合が多いです。人間不信的行動とは、自尊心・自己肯定感が低下して自分はダメな人間かも知れないと思い、そんな自分のことを誰も理解してくれないという気持ちから、周囲の人を信じれなくなったときに起こしてしまう行動のことを指します。この反抗挑戦性障害を発症している場合も、精神科・心療内科の専門医への相談をおすすめします。反抗挑戦性障害の子どもへの対応方法・接し方などに関しては、以下の関連記事を参考にしてください。家庭内暴力を行う子どもの心理出典 : 思春期の子どもが家庭内暴力をふるう理由のひとつとして、感情の抑制が効かなくなってしまうことが考えられます。イライラや不安、悲しみ、憎しみなどといったネガティブな感情が湧き出てきて、それを抑えることができなくなったとき、感情の鬱積(うっせき)が暴力となって現れるのです。家庭内暴力をふるう子どもの心理としては、だめな自分のやりきれなさを暴れることによって発散しようという気持ちと、そのような自分をつくった親に対する反抗という、二つの側面があります。ほとんどの場合、外でおとなしくて家族にだけ暴力をふるう子どもは、「暴力が悪いことだ」とは自分でも理解しています。なので、「本当は暴力をふるいたくない。でもやってしまう」という罪悪感に苦しんでしまうことも珍しくありません。暴力行為をどんなに繰り返してもモヤモヤした感じが残ってスッキリしないのは、罪悪感から自己嫌悪に陥ってしまうからなのです。暴力をふるうことで自らも傷つき、暴力をふるう自分が許しがたく、しかしそのような「許せない自分」を育てたのはやはり両親なのだ、という自責と他責の悪循環に苦しんでいる場合があるのです。参考:「研究紀要第42号 教育相談における心理検査の活用」福島県教育センター家庭内暴力の解決を目指すうえで親が持つべき心構え出典 : 家庭内暴力は様々な偶然などにより、どんな家族にも起こりえます。だからこそ、暴力が起こってしまったときや、起こりそうになったときの対応策が重要となります。本章では、家庭内暴力の根本的な解決を目指すうえで重要となるであろう、5つの「心構え」を紹介します。『暴力は親に向かう』では問題解決に向かううえでの5つの心構えとして以下のようなポイントが挙げられています。1. 現実逃避をしない2. 過去の話はしない3. いたずらに悲観しない4. 「特効薬」を求めない5. 「リスクのない解決策はない」ことを知るこれらのポイントをそれぞれ詳しく見ていきましょう。1. 現実逃避をしない子どもが家庭内暴力をふるう前段階として、ひきこもりがちになるケースがあります。そうやって子どもがつまずいてひきこもり始めたときや暴力をふるい始めたときに、根拠のない楽観論にすがって、子どものひきこもりを放置したり子どもの暴力を受容してしまうのは、解決を目指すうえでは得策でないといえます。状況を受け入れてしまうのではなく、問題の根源と向き合う努力が必要となるでしょう。2. 過去の話はしない子どもが暴力をふるう原因を過去に探ろうとして、自分を責めてしまう傾向にある親御さんも少なくありませんが、「過去の話をしない」というのも重要な心構えです。なぜなら、過去に起きてしまったことは、誰にもコントロールできないことだからです。「親も子も不完全なんだ」と受け入れ、未来のために今できることに目を向けることが重要といえます。3. いたずらに悲観しない暴力は、子どもにとっての「正当防衛」ということができるかもしれません。なぜなら、暴力は子どもが求めているものを伝えるための、自己主張の一つの手段といえるからです。意外かもしれませんが、実は、暴力もふるわずおとなしく何年もひきこもってしまうほうが解決は困難ともいわれています。子どもが自己表現の一部として暴力をふるっていることを良い機会と捉え、暴力の裏にある主張に向き合っていくことは、問題の解決に結びつく姿勢であるといえます。4. 「特効薬」を求めない家庭内暴力が瞬時におさまり、問題を根本から解決できる「特効薬」は残念ながら存在しません。子どもの隔離などの方法による、表面的・一時的な解決であれば短期間でも可能ですが、それはまだ根本的な解決とはいえません。子どもの不安や親子関係自体を解決するのには時間がかかるという覚悟を持つことは、解決を目指すうえで重要な心構えとなるでしょう。5. 「リスクのない解決策はない」ことを知るどのような解決策にもリスクというのは存在します。外に連れ出してみる、外部の機関に相談してみるなど、リスクを恐れて実行を躊躇するばかりでは、現状を打開する機会を失ってしまうことになりかねません。なにより親にとって最大のリスクは、家庭内暴力が長期化してしまうことのはずです。リスクのない解決策はないのだと知ることは、勇気を持って解決策を打つための助けとなるはずです。参考:二神能基『暴力は親に向かう』2007年、東洋経済新報社家庭内暴力に悩んだ時の相談先は?家庭内暴力は、複雑かつ対応を誤るとエスカレートしやすい傾向にあるため、家庭内で抱えこんで暴力の現場を密室化させてしまうのではなく、外に助けを求めることも重要です。家庭内暴力にお困りの場合、以下のような機関・施設が相談先となります。「子どもの養育に関する相談」、「障害に関する相談」、「性格や行動の問題に関する相談」などの育児に関する相談ができる機関となっています。各県、政令市にはほぼ一か所ずつ設置されている窓口であり、精神保健福祉に関する相談をすることができます。相談については、予約制、健康保険の適応があるところがあります。詳細は、それぞれのセンターにお問い合わせください。全国の精神保健福祉センター一覧心の症状、心の病気を扱う科です。心の症状とは具体的に不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想などのことです。心療内科は心と体の不調だけではなく、ほてり、動悸などの身体的症状とその人の社会的背景、家庭環境なども考慮して治療を行います。エスカレートする暴力行為を前に、身の危険を感じた場合は警察に相談することをおすすめします。警察に通報することで子どもの復讐心を煽ってしまう可能性がないとはいえませんが、自分の身を守るためには毅然とした態度で通報する勇気も必要となるでしょう。まとめ出典 : 家庭内暴力とは子が親に向けて行う暴力的行為(暴言や物の破壊も含む)を指し、暴力は家庭内限定で行われます。比較的おとなしい子どもが、ある時点を境に始めるケースが多く報告されており、突然の息子・娘の変化に驚き、苦悩する親御さんは多くいます。家庭内暴力の原因はとても複雑で、必ずしも親の教育やしつけが原因というわけではありません。社会的な影響や過去のトラウマ、精神疾患が原因であることも多いのです。そうした事実を踏まえ、ときに家庭外の第三者の協力も得ながら、対話による意思疎通をベースに解決を目指していくという方法を参考にしてみてはいかがでしょうか。
2017年02月15日やっと固まった、娘の不登校と向き合う決意出典 : 不登校の子どもや、障害のある子どもを育てていると、世間一般的な子育てをするだけではうまくいかず、悩んだり、選択を迫られたりする場面が多いと思います。自分の子育てに対する考え方を問われるようなこともあるかもしれません。私の娘は小2で不登校になり、小4でアスペルガー症候群と診断されました。娘を育てていく中では、「学校とどうやって付き合うか?」「勉強はどうするか?」「昼夜逆転、パソコン・ゲーム漬けをどうするか?」「発達障害の療育はしなくていいのか?」など悩むことばかりでした。問題とぶつかるたびに、主治医と相談したり、本やブログを読み漁ったり、相談機関にかかったり、親の会で話を聞いてもらったりと必死で手掛かりを求めました。ときには失敗して娘も自分も傷つきましたが、だんだんと「私はこういう考えで娘を育てていく」という気持ちが固まっていきました。私の考え方は、「学校も勉強も無理しなくていい。昼夜逆転でもいい。娘の心が元気であることを第一にして本人を信じて、任せて、待つ」です。発達障害については発達障害者相談センターで「今のままの育て方で問題ありませんよ」と言われたので、特別なことはしないでおこうと決めました。こうやって自分なりの考え方をしっかり持っていれば、迷わず娘を育てて行けると思っていました。しかしそれでも、周りの声や世間の常識、自分のなかに巣食っている価値観に、何度も迷い自分を見失いそうになったのです。そんなときにどうやって対処してきたのか、私の経験を書きたいと思います。私の育児は間違っているの…?周りの声に気持ちは揺れ動く出典 : 私が仕事をしていたときのことです。お昼休みはどうしても職場の人と話す機会が多いですよね。そこで子どもの話になったとき、私は嘘をつきとおすのも疲れるので「娘は学校に行ってないんですよ」と正直に話すわけです。すると、年上の先輩お母さんには、「のんきなお母ちゃんやねぇ」と言われ、高卒すぐの子には「学校だけは行っといた方がいいですよ」と言われ…周りからの言葉に、「私は怠慢なのかなぁ、もっと娘にとっていい方法を探さなくてはいけないのかなぁ」と心がかき乱されて、どっと疲れてしまったのです。そして、突然焦って塾を探したり、居場所を探したり、福祉サービスを探してみたりと、すっかり自分を見失ってしまいました。そのときだけではありません。例えばブログなどで、「不登校だったけど親がしっかり支えて学校に通えるようになった話」を読んだときや、新聞で引きこもりの記事を読んだとき。私の中の「子どもは学校へ行って就職して独立して一人前。それは親の義務。」という刷り込まれた価値観がムクムクと顔を出し、「本当に子どもに任せていて大丈夫なの?」「このまま引きこもりになったらどうするの?」と不安でいっぱいになってしまいます。そして「うちの子は簡単な計算もできないし、雑談もうまくできないし、家の中で好きにさせていたら本人のためにならないんじゃないのかな…。私が何もしないのは努力不足なのかな?」と自信がなくなってしまうのです。大事なことを思い出させてくれたのは、同じ悩みを持つ仲間たちだった出典 : そんな私に大事なことを思い出させてくれたのが不登校の親の会の仲間たちでした。「娘さんにはね、今は『世界は安心なところだ』ということを確認してもらうのが先ですよ。この前、編み物カフェにいったでしょ?それだけでもすごいことなんだから、できたねって一緒に喜んだらいいんです。無理に新しいことをしなくていい。」「娘さんは『ちゃんとやらなければいけない』と思い込んで、外に出られない状態なんだと思います。何かできた、気持ちよく体を動かせたとかいう『今はこれが気持ちいい』という体験を積み重ねていくことが大切なんですよ。」「勉強はいつでもできます。全然あせらなくていいんですよ。」そう言われて目が覚めました。私は何を焦っていたのだろうって。もう少しで、一番大切なことを見失ってしまうところでした。私たち親子にとって、いちばん大事なことは何だろう出典 : 親の会の仲間たちの言葉を聞いて、思い出したのです。娘が不登校になった当初、よく「死にたい」「私なんていない方がママが楽になる」といって泣いてばかりいました。だけど、私が娘が学校に行かないこと、勉強をしないことを受け入れて、「本人の力で立ち上がるまで待つ」と決めてからは、娘もすっかり落ち着いて家で楽しそうに過ごしていました。一番大切なことは、「生きていてよかった」と娘自身が思えること。そして、家で安心して心を休ませて、「楽しいな」と思えることが一つでも増えていくこと。それだけでいいんです。娘もこの春には中3になります。また私の心が揺れ動いてしまうこともあるでしょう。だけど、私たち親子に寄り添ってくれる親の会の仲間や教育相談の先生、支援者の方たちがいれば大丈夫だと確信しています。「お母さん、それでいいねんで。よくやってるよ」と言ってくれる人がそばにいてくれたら私は頑張ることができます。この記事を読んでくださっている方も、私のように心揺れ動きながら奮闘されているのかもしれません。しんどい育児を家族だけで乗り切っていくことは、とても難しいと私は感じています。つらい時にはためらうことなくSOSを出して、一人でも多く自分たちを応援し支えてくれる人たちとつながっていくことを願っています。
2017年02月10日通信制高校とは?出典 : 通信制高校とは、テレビやインターネットなどの通信手段によって教育を行う高校のことです。学校教育法第4条において、通信制課程は「通信による教育を行う課程」とされています。さらに、通信制課程における教育の方法等については、「高等学校通信教育規定」に定められています。通信制高校と一口に言っても、通学日数や通学時間によってさまざまな学習スタイルがあり、自分のペースで勉強に取り組むことができます。さらに全日制高校と同じように高校卒業資格がもらえる、比較的入学が簡単であるといった点から、高校進学の選択肢の一つとして注目されているのです。もともと通信制高校は、家庭や職場の事情などで毎日学校に通うことができない子どもに対して、高等学校の教育を受ける機会を与えるという目的でつくられました。しかし現在は、対人関係に問題を抱えて不登校になってしまった、勉強中心の生活になじめなかった、発達障害があるなどといった、さまざまなお子さんが通信制高校に通っています。参考:定時制・通信制課程について|文部科学省通信制高校の分類出典 : 通信制高校は公立と私立があり、さらに単位の取り方や通学頻度によって分類できます。◇公立通信制と私立通信制全日制の高校と同じように、通信制高校にも公立と私立があります。公立の通信制高校のメリットは、私立の通信制高校よりも学費が安いことです。それに対して私立の場合は、公立よりも学費はかかりますが、卒業するためのサポートが手厚いなど、独自の取り組みを行っていることが多いです。◇単位制と学年制通信制高校の単位の取り方は、単位制と学年制の2種類があります。単位制であれば、最終的に必要な単位を3年間で取得していれば卒業することができます。それに対して学年制の場合は、進級に必要な単位を取得しなければ次の学年に上がることができません。現在の通信制高校は単位制が多く、ほとんどが3年間で卒業できるようになっています。前後期制を採用している単位制の通信制高校では、10月に入学し9月に卒業するといったこともできるようです。◇通学頻度による分類通信制高校では、定期的に登校して先生から直接指導を受ける日があり、これをスクーリングと言います。スクーリングのほかに、登校して授業を受けることができる通信制高校もあります。・集中スクーリング型自宅学習が基本で、年に数回、3日~1週間程度、スクーリングを受けます。泊まりがけで登校日があるというケースもあるようです。・週1日型週に1回、土曜日または日曜日に通学します。毎日通学するのには不安がある、あるいは平日に仕事をしているといった生徒が多く通っているようです。・週3日型毎日ではありませんが、1週間のうち決まった曜日に定期的に登校します。自分の時間を取りやすい、週5日型に比べ生活リズムを保ちやすいといったメリットがあります。・週5日型全日制高校と同じように平日に通学する通信制高校であり、最近増えている通学スタイルです。授業内容は緩やかであり、午後からは好きなことを学べる学校もあります。一般的な高校の勉強のほかに資格取得を目的とした授業や、実習・体験授業などが多いのも特徴です。・その他の通学型登校日は不定期で、一定のスクーリングを消化すれば単位を取得することができます。受講の仕方次第でスケジュールが変わってきます。通学日数が多いからと言って、単位修得につながる授業が多くあるとは限りません。学校を好きになるような特別活動を増やしている場合も多いようです。どんな活動をするか、どんなスタイルで勉強をするかは、学校ごとに異なるので、資料請求をするなど前もって調べておくと良いでしょう。通信制高校の学習スタイル出典 : 通信制高校を卒業するためにはスクーリング、レポート、試験の3つが必要です。スクーリングとは、登校して先生の指導を受けることです。科目によって出席する日数が異なります。また入学式や卒業式などの行事に参加することもスクーリングとしてカウントされます。スクーリングの出席日数に加え、定期的なレポートと期末試験によって、単位の認定がされます。通学型の通信制高校では、レポート指導の時間が設けられていることが多いため、無理なく取り組むことができるようです。ご家庭において、お子さん一人でレポートに取り組むことが難しい場合は、サポート校と組み合わせると良いでしょう。サポート校は、通信制高校におけるレポート提出や期末試験に合格するための指導をしてくれる学校であり、学習塾のようなところです。レポートや試験対策以外に、学校の楽しさを学べる、自分の興味に合った授業を受けられるという魅力もあります。サポート校にも通うかは、お子さんの学習ペースや通学日数、学校が勉強のフォローをどのくらいしてくれるかなどによって決めましょう。通信制高校と他の進学先との違いは?出典 : 中学校卒業後の進学先は、通信制高校以外にもいくつかあります。この章では、通信制高校とその他の進学先のメリット・デメリット、さらに通信制高校と合わせて通える学校をご紹介します。◇通信制高校先ほどご説明したように、テレビやインターネットなどの通信手段を中心に使って教育を行う高校のことを言い、高校卒業資格を取得することができます。<メリット>・自宅で学習できる・対人関係のトラブルが少ない・卒業までの期限がないので、自分のペースで卒業できる・入学しやすい<デメリット>・通学日数によっては、学校生活を通した交友関係ができにくい・自宅学習が中心のため、自分で学習のペースを管理しないといけない◇全日制高校平日の昼間に授業を受ける高校のことを言い、高校卒業資格を取得することができます。<メリット>・普通高校、工業高校、商業高校、農業高校などがあり、選択の幅が広い・進学、就職など卒業後の進路の幅が広い・友人ができ交友関係が広がる・部活動などを通して社会性が身につく<デメリット>・授業の進みが早い・個別支援が受けにくい・人間関係のトラブルが起きやすい◇定時制高校全日制とは開講している時間帯が違う高校であり、高校卒業資格を取得できます。夜間のみの定時制高校の他に、昼間定時制と呼ばれる全日制に準じたスタイルの学校も増えてきています。<メリット>・午前、午後、夜間など開講以外の時間が好きな時間に使える・授業以外の時間を自由に使うことができる・さまざまな年代の人と交流することができる<デメリット>・卒業まで4年かかる(3年で卒業の場合もある)・生徒の年代が違うことによるトラブルが起きやすい・自由な時間が多いので、自分でしっかり時間の管理をしないといけない◇高等専門学校高等専門学校は中学校卒業後、技術者になるための必要な教養や専門的な知識を身につけることを目的とした高校です。5年間勉強するのが特徴です。<メリット>・得意分野を伸ばすことができる・卒業後、大学に編入することができる<デメリット>・入学してからは基本的に学科を変えられない◇高等専修学校専門学校・専修学校の高校版であり、専門学校高等課程と呼ぶこともあります。職業に関する専門的な知識・技術・技能や社会生活に役立つ教養を身につけるのが目的です。<メリット>・得意分野を伸ばすことができる・私服で通えるなど自由な校風の学校が多い<デメリット>・高校卒業資格を取得できないため、資格を得るためには技能連携制度などの制度を利用しなければならない◇高卒認定予備校高卒認定試験に向けて、勉強をサポートしてくれる予備校のことを言います。<メリット>・大学受験資格を取得できれば、将来的な進路を広げることができる<デメリット>・あくまで大学受験資格のための認定試験の対策をする学校であり、高校卒業資格を取得することはできない◇技能連携校定時制・通信制高校の教科のうち、専門科目の一部を分担して教えてくれる施設です。通信制高校に平行して通うことになります。不登校や高校を中退したお子さんなども積極的に受け入れているようです。◇サポート校通信制高校におけるレポート提出や期末試験に合格するための指導をしてくれる学校です。通学日数がさまざまであり、柔軟な通い方ができます。通信制高校のほかにもさまざまな進路の選択肢があり、さらに学校ごとに雰囲気が異なります。それぞれについて理解し、お子さんの特性と適性を考えて、進学先を選ぶと良いでしょう。またどんな環境で学ぶか、どんな先生や仲間と学ぶか、などを確認するために、お子さんと一緒に実際に学校を見学してみることをおすすめします。通信制高校にかかる費用と奨学金出典 : 通信制高校の学費は私立か公立か、サポート校にも通うか、通学日数などによって差があります。全体としては、卒業までのサポートの手厚さによって学費が変わるようです。私立の通信制高校の場合でも、私立の全日制高校に比べれば学費は安いです。公立の通信制高校であればより学費はかかりませんが、卒業までのサポートは私立の通信制高校よりも少ないです。サポート校に通う場合はさらに学費がかかるので、全体としてかかる費用は変わってきます。さらに私立か公立かどうかに関わらず、通学日数が多いとそれだけ学費は高くなります。通学日数が多いのがその理由で、卒業までしっかりと面倒を見てもらうことができます。奨学金を利用することで、学費の負担を軽減できる場合があります。さまざまな方法がありますが、奨学金を検討する場合は志望校の先生に相談してみると良いでしょう。・高校奨学金世帯所得が各自治体が定める基準以下であり、修学が困難な方に支給される奨学金制度です。現在は各都道府県の教育委員会などの管轄になっています。高校奨学金を利用する場合は、各自治体に問い合わせてみてください。・学校の奨学金制度通信制高校の中には、独自の奨学金制度で学費の援助をしてくれる学校もあります。学校と連携する企業で働く生徒に対して、学校または企業がその授業料を負担するなどの制度がよく見られます。・その他の奨学金制度高校奨学金とは別に各都道府県や市区町村でも奨学金制度を設けている場合があります。また民間企業による奨学金制度を利用する方法もあります。通信制高校に入学するには?出典 : 通信制高校の入学手続きの方法は、基本的には全日制高校と変わりません。入学するためには試験に合格する必要があります。全日制高校との違いは、入学試験のハードルが比較的低く、入学時期が柔軟であることが多い点です。入学試験の内容は学校によってさまざまですが、一般的には面接や作文、書類選考で選考が進められます。入試で学科試験を課すところは非常に少なく、その結果で不合格になるケースはさらに少ないです。「この高校へ入学し、きちんと勉強したい」という気持ちを、言葉や文章でしっかりと伝えることが大切です。入学時期は学校や入学のルートによって異なります。入学ルートには新入学の場合、他の高校からの転入する場合、高校を中退するなど除籍になったあとに編入する場合の3つがあります。新入学と編入は4月または10月入学、転入は随時入学となります。事前に学校に問い合わせて、確認しておくことが大切です。またどんな学校に行けば良いのか迷っている場合でも、通信制高校で指導している先生に直接話を聞きに行くなどして、悩みを相談してみましょう。全日制高校から通信制高校への転校はできるの?出典 : 全日制高校からでも通信制高校へ転校することができます。「前の学校が合わなかった」「最初に入学した学校を中退してしまった」などの理由も、通信制高校の入学には影響しません。しかし安易に通信制高校に行くことを決めるのではなく、本人の状態や悩みを把握したうえで、慎重に進路を決めることが大切です。お子さんが今通っている学校へ行くことを嫌がっている場合は、無理に学校に行くことをすすめるなどせず、まずは話を聞いてあげ、不安や悩みを取り除いてあげましょう。通信制高校に転入する場合は、その時に在籍している学校から書類を送付してもらう必要があります。転入する学校が決まったら、早めに担任の先生に相談しましょう。通信制高校の卒業後の進路出典 : 通信制高校を卒業すると、高校卒業資格を取得することができます。そのため卒業後の進路は、大学進学や就職といった広がりがあります。文部科学省の「平成26年度学校基本調査」によると、通信制高校卒業後の進路は、大学進学が約16%、専門学校進学が約23%、就職が約17%、その他が約44%となっています。出典:学校基本調査-平成26年度(確定値)結果の概要-(初等中等教育機関、専修学校・各種学校)以前は通信制高校卒業後は就職というイメージが強く、実際に通信制高校から大学へ進学するケースはあまり多くありませんでした。しかし最近では学習カリキュラムの充実や大学進学予備校を母体とする学校、サポート校の増加により、大学進学を目標とする学校が増えてきています。また特別授業や補習などのサポートも行われているようです。参考:高等学校教育の現状|文部科学省障害がある子どもの進路選択と通信制高校出典 : 障害がある子どもの場合も、その障害・特性や困りごと、子ども本人の希望や状況に応じて様々な進路が考えられます。上で紹介した高校・専門学校以外にも、進路の一つとして特別支援学校というものがあります。特別支援学校では、個々人の障害や特性に合わせたプログラム・学習ペースで勉強することができます。個別の支援を受けやすいという点もメリットです。文部科学省の「平成26年度学校基本調査」によると、特別支援学校卒業後の進路は、大学等進学者が2.1%、専修学校が0.3%であり、さらに就職者の全卒業者数に占める割合は28.4%となっています。出典:学校基本調査-平成26年度(確定値)結果の概要-(初等中等教育機関、専修学校・各種学校)そうした障害のある子どもの場合でも、通信制高校のようなカリキュラムや利用方法が本人に適している場合は、通信制高校も有力な選択肢の一つとなるでしょう。文部科学省の「高等学校における特別支援教育の現状と課題について」によると、平成21年3月時点では、発達障害等の困難のある生徒の、各高等学校進学者全体に対する割合は、全日制高校が1.8%、定時制高校が14.1%、通信制高校が15.7%となっています。出典:高等学校における特別支援教育の現状と課題について|文部科学省進路を選ぶ際には、さまざまな進学先について理解をし、子どもの特性や本人の意思も尊重して考えていきましょう。また中学校の先生との進路面談に積極的に参加する、支援担当の先生に相談する、実際に候補先の高校の先生に支援体制などについて聞くといったことも大切です。さまざまな進路のうち、通信制高校への進学を検討している場合は、発達障害はじめ、その子の困難・障害に対して理解がある学校を選ぶと良いでしょう。発達障害の知識を持つカウンセラーが配置されている、ソーシャルスキルトレーニング(SST)を受けられるといった学校もあります。また進路選びについて悩んでいる場合は、以下の公的機関に相談することもできます。・小児神経科や児童神経科などの医療機関・児童相談所・発達障害者支援センター・精神保険福祉センターお子さんと一緒に相談に行く時は、相談先がどんなところか、何をするところかをしっかり説明して、お子さんの不安を取り除いてあげましょう。参考:定時制課程・通信制課程高等学校の現状|文部科学省まとめ出典 : 通信制高校と一口に言っても、最近では通学日数や学習スタイル、通っている生徒など学校ごとに違いがあります。さらに通信制高校以外にも、中学校卒業後の進学の選択肢がいくつかあります。どの高校に進学するかは、将来の選択肢にも関わってきます。それぞれの進路先について理解し、お子さんの特性や適性を把握して、慎重に決めることが大切です。またお子さんとしっかり話し合い、進路の選択に悩んだ時は高校の先生や相談機関に相談して、進学先を探していきましょう。最終的にはお子さんの意志を尊重し、悩みや不安を取り除きながら進学先を考えることで、お子さんが「この学校で勉強したい」と心から思える高校に進学することができるでしょう。高島俊文/著「通信制で見つけよう!―全国通信制高校案内〈2013~2014年版〉」2012年学研教育出版/刊高橋良臣、織田孝裕/著「悩みすっきり不登校・高校中退からの進路選択」2008年北樹出版/刊鈴木慶太/著「親子で理解する発達障害進学・就労の進め方」2016年河出書房新社/刊
2017年01月31日フリースクールとは?出典 : フリースクールは法や制度などによって定められた学校でないため、その定義はさまざまですが、文部科学省は以下のように定義しています。「フリースクール(フリースペースを含む)」とは、不登校の子供を受け入れることを主な目的とする団体・施設を指す。つまりフリースクールは社会において「不登校の子どもたちの居場所」という役割を果たしています。それぞれの施設の運営は個人や民間の企業、NPO法人によって担われおり、様々な規模や形態のフリースクールが存在します。フリースクールは学校教育法上の公的な学校とは認められていないため、義務教育課程の子どもであれば、もともと通っていた小中学校に籍をおいたままフリースクールに通うことが通常です。フリースクールの最大の特徴としては・入学資格を設けていないこと・異なる年齢・年代の子どもが集まっていること・決まったプログラムやカリキュラムを持っていないことが挙げられます。授業内容は学校教科の学習ばかりではなく、他者との交流を行いながら自分の好きなことを自由に学ぶことができる場所であることが多いです。「もちつき大会」のような季節に合わせた行事を自分たちで企画したり、ハイキング、潮干狩りなどのレジャー活動、運動会、劇や合唱の発表会、料理、旅行などを行ったり、その活動内容は実に様々です。また、自由や個性を重んじながら、施設のスタッフやほかの子どもと接することのできるフリースクールは、不登校の子どもたちにとって社会との接点をもつ場所であり、ソーシャルスキルのトレーニングの場ともなっています。参考:フリースクールが担う不登校支援の可能性についてフリースクールは、1975年頃から増加していく不登校を背景に80年代半ばから徐々に市民の手で広がっていきました。1992年には国も「不登校は誰にでも起こりうること」という認識を示し、フリースクールに通う日数も学校の出席日数として認められる事例も増えていきました。今日、フリースクールは、2015年に行われた文部科学省の調査によって把握されているだけでも、北海道から沖縄まで全国474ヶ所が確認されています。出典:「小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う民間の団体・施設に関する調査」その数を見てもわかるように、フリースクールは今や子どもが学び育つ場として必要不可欠な場となっています。また、不登校の子どもを預かるフリースクールは、子どもたち本人のみならず、彼らと24時間ともに過ごす保護者や家族の精神的疲労を軽減する役割も果たしています。2015年度現在、不登校児童生徒数は、小学校27,581 人、中学校98,428 人、小・ 中の合計では126,009 人にものぼります。その数は前年度と比べ3,112人も増加しており、 フリースクールのニーズは今後も増えていくと考えられます。出典:平成 27 年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」以上のように社会的なニーズはあるものの、社会におけるフリースクールへの理解や支援は未だ不十分といえます。以下で説明する出席認知と通学定期以外の公的支援はほとんどないため、運営の財源探しに苦心するフリースクールが多いようです。国も、フリースクールで学ぶ子どもや保護者への支援を検討しはじめています。フリースクールにはどんな子が通えるの?主として、何かしらの理由で学校に行っていない子どもが通います。理由は様々で、いじめに遭って学校に行くのが怖くなってしまった子や、学校生活にうまく馴染めない子、学校の授業についていくことが難しい子、受験競争のストレスで疲弊してしまった子などがいます。それぞれ、自分の目的に合った形態のフリースクールに通っています。また、上記のような例の中には広汎性発達障害(PDD)やADHDなど、発達障害のある子どももいます。広汎性発達障害やADHDの子どもは共同生活におけるコミュニケーションを苦手と感じることも少なくなく、発達障害のない子どもよりも不登校になる可能性が比較的高いと言われています。同じように学校に籍をおきながら通える形態として「サポート校」の存在があります。フリースクールが主に精神面のサポートを行い、広く不登校の子供たちを対象としているのに対して、サポート校は主に学習支援に軸足を置いており、学習塾という色合いが強いです。そのためサポート校の対象は高等学校通信教育を受けている者(高等学校における「通信制の課程」に在籍している者、または、中等教育学校の後期課程における「通信制の課程」に在籍している者)や高等学校卒業程度認定試験合格を目指す人に限られる傾向にあります。フリースクールへの出席は学校への出席日数として認定されるの?出典 : フリースクールに通う子どもの出席認定は、小・中学生については1992年から、高校生についても2009年から実施されています。フリースクールに通うことを在籍校の出席扱いとするかどうかは在籍校の校長先生の判断に委ねられ、校長先生がそのフリースクールが「不適切」だと判断しない限り出席扱いになります。児童の不登校の問題に関して、文部科学省は以下のような姿勢を示しています。不登校児童生徒の中には、教育支援センター(適応指導教室)やいわゆるフリースクールなど、学校外の施設において相談・指導を受けている者もおり、このような児童生徒の努力を学校として適切に評価し、学校復帰などの社会的自立を支援するため、小・中・高等学校の不登校児童生徒が学校外の機関で指導等を受ける場合について、一定要件を満たすとき校長は指導要録上「出席扱い」にできることとしている。日本国憲法では義務教育について以下のように示されています。憲法第26条第2項で「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。」と規定されており、また、教育基本法第5条第1項に「国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。」一般的に義務教育といわれているものは、保護者が負っている「教育を受けさせる義務」(教育義務)によって子どもが受ける教育のことをさします。保護者は、児童を小中学校などに通学するように取り計らう「就学義務」という義務を負っています。一方、子どもには、基本的人権の一つである教育を受ける権利があります。しかし義務教育は「子どもが学校に行かなくてはいけない」という義務があるということは意味していません。フリースクールの費用はどのくらい?出典 : フリースクールは学校教育法上で公的に認められた学校ではないため、費用は自己負担となります。また、費用は施設によって金額差があります。平成27年3月に行われた文部科学省による調査では、1~3万円・3~5万円とする団体・施設がそれぞれ4割弱、平均額は約3万3千円でした。無料から5万円以上まで施設ごとに大きく異なり、入会金で10万円以上必要な場合もあります。1~3万円とする団体・施設が約3割で、平均額は約5万3千円です。出典:「小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う民間の団体・施設に関する調査」現行の制度では、政府によるフリースクールへの助成はおこなわれていません。そのため、不登校の子どもが高校生である場合、保護者は在籍している高校とフリースクールの両方に学費を納めなければならず、経済的負担は少なくありません。今後、公的支援の導入によってフリースクールの費用が下がる可能性はありますが、現時点でははフリースクールを検討する上で家庭の経済状況の考慮も必要となります。フリースクール卒業後の進路は?学歴はどうなるの?出典 : フリースクールに通う子どもたちは、義務教育期間中はもともと通っていた学校に籍をおいたままフリースクールを利用することになります。在籍校の校長による許可が出ればフリースクールへの登校も義務教育上の出席日数として承認される場合もあり、卒業に必要な単位が出席日数単位を満たすことができれば、義務教育上の小中学校の卒業資格を得ることができます。籍をおいている高校の卒業資格については、高校卒業程度認定試験(高認)を取る、フリースクールと定時制高校や通信制高校を併用するなど、様々な方法で取得することができます。フリースクールを検討する際のポイントは?出典 : 不登校の子どもを支援する施設やサービスは数多く存在します。その中で、親子にとって最善の居場所はどこか?と悩みながら情報収集されているご家庭も多いかもしれません。ここでは、そんな不登校の子どもの居場所のひとつとしてフリースクールを検討する上で、どのようなことができるかを紹介します。フリースクールとひとことで言っても、授業内容や雰囲気はさまざまです。さまざまな施設の情報を集めるとよいでしょう。インターネット検索や資料請求によって各フリースクールの具体的な費用や概要について知ることができます。参考:発達ナビ > 地域情報 > フリースクール参考:NPO法人フリースクール全国ネットワーク実際に子どもをフリースクールに通わせていたり、通わせた経験がある保護者、あるいはフリースクールで働くスタッフの話をきくことで実情を知ることができます。参考:「登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク」多くのフリースクールが、入学前の見学を歓迎しています。実際にフリースクールを訪れ、そこに通う子どもたちの様子を見たり、指導員の話を直接聞くことで雰囲気を知ることができます。また、お子さんにポジティヴな刺激を与えられる可能性もあります。まとめ出典 : フリースクールは主として不登校の子どものための居場所です。全国に約474ヶ所あり、規模や形式、提供する授業内容、費用などはそれぞれ異なります。公的な学校ではありませんが、在籍校の校長による許可が出ればフリースクールへの登校も義務教育上の出席日数として承認される場合もあります。社会からの理解は未だ不十分ではあるものの、フリースクールを必要とする人が多いことは確かで、今後公的支援の拡充がおこなわれる可能性も大いにあります。本人に合っているというのが大前提ですが、不登校の子どものためのさまざまな選択肢のひとつとして、フリースクールを検討してみてはいかがでしょうか。
2017年01月30日総務省による、発達障害者の支援に関する実態調査。その結果は?出典 : 年1月20日、総務省は、文部科学省と厚生労働省に対し、発達障害者支援に関する行政評価と監視の結果に基づく勧告を行いました。この調査は、保育所・学校現場を含む、都道府県・市町村における発達障害者支援の実態を初めて調査したものとなります。前回の記事では、早期発見に関する実態の調査報告と総務省の勧告内容についてお伝えしました。今回の記事では、発達障害がある子どもへの支援状況と情報の引継ぎに関する調査・勧告内容についてご紹介します。発達障害児に対する支援「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」とは出典 : 発達障害を含む障害のある児童生徒の指導について、学校等では、児童生徒それぞれに「個別の教育支援計画」(以下「支援計画」)と「個別の指導計画」(以下「指導計画」)を「必要に応じ」作成し、指導と支援を行っていくこととされています。(4) 関係機関との連携を図った「個別の教育支援計画」の策定と活用特別支援学校においては、長期的な視点に立ち、乳幼児期から学校卒業後まで一貫した教育的支援を行うため、医療、福祉、労働等の様々な側面からの取組を含めた「個別の教育支援計画」を活用した効果的な支援を進めること。また、小・中学校等においても、必要に応じて、「個別の教育支援計画」を策定するなど、関係機関と連携を図った効果的な支援を進めること。(5) 「個別の指導計画」の作成特別支援学校においては、幼児児童生徒の障害の重度・重複化、多様化等に対応した教育を一層進めるため、「個別の指導計画」を活用した一層の指導の充実を進めること。また、小・中学校等においても、必要に応じて、「個別の指導計画」を作成するなど、一人一人に応じた教育を進めること。特別支援教育の推進について(通知)なお、2016年の改正発達障害者支援法においても、発達障害児が年齢及び能力に応じ、かつその特性を踏まえた十分な教育を受けられるようにするために必要な措置として、これらの支援計画及び指導計画の作成を推進することが具体的に明示されています。法律第六十四号(平二八・六・三) ◎発達障害者支援法の一部を改正する法律支援計画や指導計画、実際にどれくらい作成されているの?その効果は?出典 : しかし支援計画に関していうと、必ずしも発達障害のある児童全員に作成されていないのが現状のようです。この度の総務省の調査で調査対象となった111の保育園および幼小中高校において、発達障害児(発達障害が疑われる児童生徒を含む)は計2,431人でした。そのうち支援計画作成が「必要」と判断された児童生徒は829人であり、さらにそのうち支援計画を作成済みの児童生徒は690人でした。支援計画作成が「必要」と判断されたものの、未作成の生徒が139人いることが明らかになりました。未作成の理由としては、教員の業務が多忙で作成する時間の確保が困難であるため、保護者の同意が得られないため、などとされています。また、支援計画作成が「必要」と判断する範囲に関して、111の調査対象のうち19の保育園および幼小中高校では、医師の診断がある児童生徒のみなど、計画の作成対象をかなり限定した範囲にとどめている例がみられました。そしてこうした計画作成対象が限定されていたことの結果として、支援計画や指導計画が作成されていなかった生徒の中には、不登校等の二次障害が生じている例がみられたとのことです。問題行動の度合いが高くない生徒には支援計画及び指導計画を作成することとしていないため、発達障害の診断を受けているにもかかわらず、両計画とも作成されず、結果として、学習障害等で授業についていけずに、平成22年度から26年度までの間に、不登校4人、休学1人、退学1人が発生した。一方、調査した保育所及び学校において、支援計画又は指導計画を作成したことにより、特別支援学校など関係機関による助言や保護者との連携等が図られ状態が改善するなど効果的な支援が行われている例が30事例みられました。総務省は文部科学省と厚生労働省に対し、保育所及び学校において、一律の基準によって支援計画及び指導計画の作成対象を限定するのではなく、個々の児童生徒の特性や状態を踏まえ、支援が必要な児童生徒に対して着実に作成されるよう、作成対象とすべき児童生徒についての考え方を示すことを勧告しました。継続的な支援のために欠かせない、進学先等への情報の引き継ぎ。しかし現状は…出典 : 支援計画や指導計画の作成だけでなく、支援の前提となる子どもに関する情報の引き継ぎ共有も重要です。こうした情報共有の実態についても調査がなされました。具体的には、・乳幼児健診の結果として発達障害の疑いがあるとする情報を保育所へ渡す取り組み・保育所や幼稚園で作成された支援計画等に適宜資料の追加等を行った上で、障害のある児童生徒等に関する情報を一元化し、支援計画や相談支援ファイル等として小・中学校等に引き継ぐ取り組みなど、関係機関同士の情報の引き継ぎ・共有が十分ではないという勧告がなされています。しかし、情報共有が十分に進まない背景には、個人情報保護の観点からの障壁もあるようです。そのことが明らかになったのは、調査対象となった31市町村が実施した乳幼児健診結果の引き継ぎ状況の調査からです。平成26年度に実施した乳幼児健診の結果の、進学先(保育所、幼稚園等)への引き継ぎ状況をみると、30市町村で「引継ぎを行うこと」という方針を立てているものの、個人情報保護の観点から、保護者の同意が得られた場合であって、保育所等から情報提供の依頼があった児童のみ引き継ぐとしている自治体が14市町村にのぼりました。つまり、半数近くの市町村では、保育所等からの働きかけがなければ引継ぎが行われない状況であるということです。調査した市町村の中には、乳幼児健診の結果の進学先への引継ぎ時における保護者の同意取得については、次のような取組を行っている例がみられたとのことです。乳幼児健診の問診票の中に、健診結果等について、保育所等の関係機関と連絡を取り合う場合がある旨をあらかじめ記載し、これに同意するか同意しないかを選択させることとしている。児童が幼稚園に入園する前に、心配事のある保護者に「保護者との連携シート」の記載を依頼しており、同シートにより、幼稚園が保健師等の関係機関等から情報を入手する旨の同意を得ている。また、乳幼児健診の結果が引き継がれなかったことにより、対応が困難になった例もみられたとのことです。市外からの転入により入所した児童について、転出元の市町村での乳幼児健診結果(発達障害の疑いあり)を把握できなかったため、支援計画の作成、個別の配慮、小学校への引継ぎ等を行わなかったところ、小学校で集団行動になじめない状況となり、急遽支援が必要となった歳児健診及び3歳児健診で紹介された親子教室において、軽度な知的障害を伴う発達障害の疑いを指摘されたが、それらの結果が、入園先の幼稚園に伝わらず、児童の知的障害の把握が遅れた。その結果、児童は、特別支援学級へ入級したが、知的学級ではなく、自閉・情緒学級へ入級することとなり、児童に対する教育的配慮や課題設定を行うのに数箇月要した同様に、進学の際や転校の際における引き継ぎの不備も指摘されており、総務省は厚生労働省に対して、市町村に乳幼児健診の結果等の進学先への引継ぎの重要性を周知し、積極的な引継ぎを促進することを勧告しました。他にも総務省は、厚生労働省と文部科学省に対して、保育所・幼稚園から大学・就労先までの各段階において、発達障害児に対する必要な支援内容等が文書により適切に引き継がれるような呼びかけを行なっています。都道府県、市町村、都道府県教育委員会及び市町村教育委員会に対しては、・具体例を挙げて支援内容の引き継ぎを周知すること・支援計画及び指導計画については、引継ぎまでの適切な保存・管理を求めるとともに、具体的な引継方法を提示し、確実に引き継がれるよう徹底を図ることを勧告しました。「切れ目のない支援」を実現するための課題は出典 : 情報の引き継ぎは、切れ目のない支援を推進する上で不可欠だと言われています。そして文部科学省でも障害のある子どもに対して小学校から高校まで一貫した支援ができるよう、進学先の学校へも引き継げる「個別カルテ(仮称)」の作成を学校に義務付ける方針を固め、推進しています。また逆に保育所から専門機関に相談するようすすめられる場合もあるようです。現在、4歳の男の子を持っていますが、引越しして、2ヶ月前ほどから、転園した先の、保育園の先生から、落ち着きがなく、みんなと一緒のことができない、話す単語が少ない、との指摘を受けて、療育センターに問い合わせをするように、言われました。保育園で発達障害を疑われました。3歳1ヶ月の男児です。保育センターの心理相談の結果、問題はなさそうでした。しかしモヤモヤと心配が晴れず、何か息子のためにできることはないかなと焦っています。親や支援者が発達障害をどう理解するか、そして個人情報保護や当事者、家族の不安に配慮する仕組みの構築が、実際に切れ目のない支援を実現するためには必要なのではないでしょうか。
2017年01月30日不登校児が家にいるということ。それは私にとって、息の詰まる時間でもありました出典 : 不登校になり、自宅で過ごす子どもたち。私の参加する親の会でもよく聞くのですが、彼らが自宅で過ごしていて辛かったことに「親がキレるのが怖かった」「親の機嫌が悪かったり、悲しまれたりした」という意見があるようです。こうした子どもたちが1番望んでいることは、親は親で勝手に幸せになってくれること。テレビを見て笑っている姿でもいい、楽しそうに過ごしてくれるのが嬉しいのだと、私は思うのです。そんな私も、娘が不登校になってからしばらくの間は、しょっちゅうキレていました。そのたびに泣く娘を見ながら「これではいけないのに…」と、情けない気持ちでいっぱいだったのです。私がどんなふうに、自分のイライラと向き合ってきたのか、ご紹介したいと思います。また娘を叱ってしまった…もう同じことを繰り返さないために考えたこと出典 : そんなある日のことです。私はまた些細なことで、娘にキレてしまいました。娘はポロポロと声も立てずに泣いています。もう、こんな光景を見たくない!と思った私は、いつもと違う行動をとることを決意しました。娘と話し合いながら、娘が泣くに至った出来事と自分のそのときの気持ちをメモ書きすることにしたのです。その時の出来事を時系列に書いていきます。()は私の気持ちです。①娘が夕飯を残した(悲しくなった)②娘に「後で食べる?」と聞いたら「いらん」と言った③1時間後、娘が「袋ラーメンあったっけ?」と探しに来た。自分では見つけられず、私が在宅仕事を中断して探してあげた(なんで夕飯は食べないのにラーメンは食べるの?腹が立った)④「ラーメン頼んだら作ってくれる?」と娘が言ったので、笑って「うん」と答えた。(こんな夜中に何で作らなあかんの。仕事中だったのに腹が立った。でも耐えなければと、あえて笑った)⑤「やっぱり冷凍スパゲティ食べる。気持ち悪いけど」と言われたとたん、ブチ切れした私。(前もスパゲティ食べてほとんど残して気分が悪くなったくせに。そしてまた私が残飯処理をしなければならないのか!キレた。)こうして文字に起こして、娘と話し合いながら自分の気持ちを丁寧に振り返ってみると、色々と見えてくるものがありました。イライラの爆発は、自分の感情に気づかなかったことが原因だった出典 : 娘に対し、突然怒りを爆発させてしまう私ですが、子どもの頃は「いつもニコニコしてるね」「癒されるわ」と言われてきました。だけど、心から笑っている訳ではなかったのです。むしろ「嬉しい、楽しい」という感情が湧くことはめったになく、どちらかというと「悔しい、腹が立つ」というマイナスの感情の方が感じやすい性質です。どういう表情をしたらいいのかわからないから、誰からも攻撃されないように笑顔を選んだだけなのです。今回気付いたことですが、「もうダメ」とキレるまでに、途中で何度も怒りを感じているはずなのに、自分では見えていないというか、心にフタがされているような感じがするのです。そうして怒りが心の中に積み重なり、何かのきっかけで溢れ出したときにキレてしまうのです。つまりキレたときには、すでに精神的には限界を迎えているのです。母親から怒られることに対し、娘はどう思っているのだろう出典 : 自分の気持ちを振り返った後、私は娘の正直な気持ちも確かめることにしました。私「怒られたら怖い?」娘「うん、そりゃ怒られるのは怖い。特にママ怒るとむちゃむちゃ怖いから。」私「他の人に怒られるのも怖い?」娘「怖いに決まってるやん。ママはその場では怒らないのに、後でいきなり一気に怒りをぶつけてくるからびっくりする。例えば私が掃除手伝えなかった時でも『いいよいいよ』って言ったのに、後で急に怒りだすから『え!?』ってなる。その場で怒っているなら言ってほしいし、本当の気持ちを話してほしい。今日なら、夕飯を残したときに『悲しかった』って話し合ったときに言ったやろ。それをその時に言ってほしい。そうしたらわかるし、びっくりしないし」そうした娘の言葉に、私のどういう行動に違和感を抱いていたのか、そしてどうして欲しいのかという気持ちが分かり、話し合って良かったと思いました。また、娘の言葉のおかげで自分のキレ方の癖に気づくことができたのです。イライラすることは誰にでもある。だからこそ、大切にしたいのは…出典 : 娘のおかげで自分のキレ方に気づいた私は、「とにかく我慢しないように心がけよう」と決めました。ちょっとムッとしたとき、「あれ、私怒ってる?それとも疲れてる?」と自分に問いかけるようにしたのです。そして、無理している自分に気づいたらできるだけ休むようにしました。合わせて、娘に正直に「いま機嫌が悪い」と申告するように。そうすると、娘もいろいろと推測して胸を傷めることが減ったようです。こうして私がキレることも、少しずつですが減っていきました。もしキレてしまっても、後で必ず娘に謝るようにしました。すると娘も、「ママも人間だもんね。しょうがないね」と許してくれるようになっていったのです。しんどい子育てをしていると、自分の感情を後回しにし、疲れを溜め込むことが多いと思います。ときには自分の気持ちに目を向け、自分に優しくしてあげる時間を持てたらいいですね。
2017年01月27日総務省による初の発達障害者支援実態調査出典 : 年1月20日、総務省は、文部科学省と厚生労働省に対し、発達障害者支援に関する行政評価と監視の結果に基づく勧告を行いました。この調査は、保育所・学校現場を含む、都道府県・市町村における発達障害者支援の実態を初めて調査したものとなります。約12年前となる2005年4月、「発達障害者支援法」が施行され、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などの「発達障害」のある児童生徒が乳幼児期から切れ目なく適切な支援が受けられるよう、国、都道府県及び市町村の責務や求められる取組が定められました。この発達障害者支援法が制定されるまで、発達障害は、身体、知的及び精神の各障害者制度の谷間に置かれ、必要な支援が届きにくい状態となっていました。しかし同法の施行により、発達障害の早期発見、発達支援(医療的、福祉的及び教育的援助)サービスの提供、学校教育における支援、就労の支援、発達障害者支援センターの設置などが進められてきました。法の施行後、発達障害に対する理解や支援の取組が進展したとの一定の評価がなされています。一方、今回の総務省勧告では、・発達障害の早期発見の不十分さや市町村による発見状況の差・障害児に対する「個別の指導計画」「個別の教育支援計画」の未作成・進学過程での支援の途切れ・専門的医療機関の不足などの課題が残っていることが指摘されました。発達ナビでは、この総務省による発達障害者支援に関する行政評価・監視の結果に基づく勧告について、「早期発見に関すること」「発見後の支援と引継ぎに関すること」「専門的医療機関の確保に関すること」の全3回に分けて詳しくお伝えします。発達障害早期発見の重要性と早期発見の場としての健診出典 : 現在、適応困難、不登校や引きこもり、反社会的行動等といった二次障害を未然に防止するという観点から、発達障害の早期発見と適切な支援の実施はとても重要だと考えられています。発達障害者に対する適切な支援がなされない場合、その特性により生じる問題に周囲が気づかずに、無理強い、叱責などを繰り返すことで失敗やつまずきの経験が積み重なり自尊感情の低下等を招き、更なる適応困難、不登校や引きこもり、反社会的行動等、二次的な問題としての問題行動(以下「二次障害」という。)が生じることがあるとされている。(生徒指導提要」(平成22年3月文部科学省)こうした二次障害を未然に防止する上で、発達障害者を早期に発見し、早期に適切な発達支援につなげていくことが特に重要であることから、国及び地方公共団体は、発達障害の早期発見のため必要な措置を講ずるものとされている。(発達障害者支援法第3条第1項)また、早期発見の機会としては、1歳6か月児健診、3歳児健診、5歳児健診などの乳幼児健診や、就学時健診が該当します。市町村は、母子保健法(昭和40年法律第141号)第12条及び第13条に規定する健康診査(以下「乳幼児健診」という。)を、市町村教育委員会は学校保健安全法(昭和33年法律第56号)第11条に規定する就学時の健康診断(以下「就学時健診」という。)を行うに当たり、発達障害の早期発見に十分留意しなければならないものとされている。(発達障害者支援法第5条第1項及び第2項)調査で分かった早期発見の取り組みにおける課題点出典 : 厚生労働省は乳幼児健診において、広汎性発達障害を早期に発見するためのツールとして、2歳前後の幼児に対して自閉症スペクトラムのスクリーニング目的で使われる、親記入式の質問紙であるM-CHATや、広汎性発達障害の支援ニーズを評価するための評定尺度であるPARSの活用・普及を図っています。そして就学時健診を行うにおいて、市町村教育委員会に対し発達障害の早期発見に十分留意するよう求めてはいますが、具体的な方法は特に示してはいません。今回の調査の結果、健診時に発達障害が疑われる児童を見逃しているおそれが指摘されています。というのも調査対象となった31市町村で、市町村ごとの発達障害が疑われる児童の発見割合をみると、1歳6か月児検診では0.2%から48.0%まで、3歳児検診では0.5%から36.7%までと、市町村ごとで発達障害が疑われる児童の発見割合にかなりのばらつきがある検診で発達障害が疑われる児童の発見割合が1.6%を下回る市町村については、発見に漏れがある可能性が高いのではと考えられます。また、厚生労働省が早期発見ツールとして普及を図っているM-CHAT及びPARSの活用がされている市町村は、31市町村のうち5市町村にとどまりました。総務省は厚生労働省に対し、乳幼児健診における発達障害が疑われる児童の発見のための市町村の取組実態を把握するとともに、発達障害が疑われる児童を早期発見する有効な措置を講ずることを勧告しています。文部科学省に対しては、就学時健診時における発達障害の発見の重要性を改めて周知徹底するとともに、就学時健診における具体的な取組方法を示すことを勧告しています。発達障害早期発見のための保育所・学校の取り組み出典 : 保育所や学校も発達障害の早期発見の場としてとらえられています。文部科学省は、都道府県教育委員会及び市町村教育委員会に対し、各学校において発達障害等の障害は、早期発見・早期支援が重要であることに留意し、実態把握や必要な支援を着実に行うことなどを求めています。今回の調査の結果、調査した23保育所では、保育士等による日々の行動観察を通じて発達障害が疑われる児童の発見に努めていました。このうち、4保育所では、行動観察に当たって、着眼点や項目を共通化し、できるだけ客観的に判断できるよう、所内共通のチェックリストを用いてました。また、調査した23幼稚園、23小学校、23中学校及び24高等学校の計93校のうち、91校においては、教諭・教員による日々の行動観察を通じて発達障害が疑われる児童生徒の発見に努めていました。このうち、35校(4幼稚園、14小学校、11中学校、6高等学校)では、行動観察に当たって、校内共通のチェックリストを用いていました。チェックリストの活用をしている学校では、「教諭・教員が行う行動観察の習熟度が向上する」「発達障害児の特性が把握でき、その後の支援方法の検討に参考となる」「客観的な尺度であるため、保護者の理解が得られやすい」などの意見がみられたとのことです。教育委員会の学校に対する支援状況出典 : また、教育委員会の学校に対する支援の実施状況の調査も行われました。調査した50教育委員会(19都道府県教育委員会、31市町村教育委員会)のうち、36教育委員会(19都道府県教育委員会、17市町村教育委員会)において、文部科学省の「小・中学校におけるLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥/多動性障害)、高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)」や「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」(平成24年12月)における質問項目を活用するなどし、学校に対し、チェックリストを示していました。しかしながら、上記ガイドライン(試案)は、小学校及び中学校を対象としたものであり、また、上記調査の質問項目は、学習面に関しては小学校3、4年生までに表面化する困難や障害を意識して作成されたものとされ、元々の調査対象も小学校及び中学校となっていることから、幼児や高校生に関しては、そのまま用いることは必ずしも効果的とは言えません。総務省は、厚生労働省と文部科学省に対し、発達段階における日々の行動観察に当たっての着眼点や項目を共通化した標準的なチェックリストを、活用方法と併せて示すことを勧告しています。発達障害の早期発見はなぜ重要なのか、そしてその難しさ出典 : このように現在、発達障害の早期発見と適切な支援の実施は、適応困難、不登校や引きこもり、反社会的行動等といった二次障害を未然に防止するという観点から重要とされ、国として取り組みが行われています。しかし市町村によって取り組み具合にばらつきがあることも今回の調査で明らかになりました。発達ナビとしては今後の国の取り組みを注視しつつ、情報発信を続けていく予定です。
2017年01月26日なかなか周囲に理解されない子どもたち。そんな子どもたちの気質とは出典 : かつて東京都内の中学校で、心障学級・通級情緒障害児学級などを受け持っていた森薫(もりかおる)先生。2012年には、通信制高校等のためのシンクタンク『学びリンク総合研究所』の所長に就任され、非行や不登校で悩む当事者・家族への支援を行っています。森先生は、周囲の人からなかなか理解されることがない子どもたちに特有の気質を「スペシャルタレント気質」と名付けました。今回は、「スペシャルタレント気質」な子どもたちに対する森先生の考え方や、そんなお子さんの子育てへの思いを伺います。発達障害ではなく、特別な才能を持ったスペシャルタレント出典 : ―発達障害のある子どもたちや、集団生活に馴染めず引きこもりや登校拒否になってしまった子どもたちのことを「スペシャルタレント」と呼ぶ理由について教えてください。日本で発達障害という名前が世の中に広まり始めたのは、1995年頃のことでした。当時、中学校の教師をしていた私は発達障害に関する様々な勉強会に参加しましたが、どうしても“障害”という呼び方に抵抗があったのです。発達に偏りがある子どもたちは人に合わせることが苦手です。しかし、誰よりも優れた“ひらめき”と“こだわり””豊かな五感力”を持っていました。こういった才能を伸ばしていくためには、その子たちに合った学びの場が必要であると思い、通信制高校の立ち上げに参加しました。そして、これまでに私が関わってきた特別な才能を持つ子どもたちに尊敬の意を込め、彼らの特別な気質を「スペシャルタレント(”ST”)」と呼ぶことにしたのです。―こだわりが強かったり、人とは違う感受性を持っている子どもたちの特徴を、障害ではなく、彼らの良さとして捉えたのですね。集団生活に馴染めない子どもたちは、「困った子」として捉えられがちです。そして、発達障害という見方により、その子の足りないところばかりに着目してしまいます。学校の先生が「困った子」という見方をすれば、生徒たちも同じような目線でその子のことを見るのは当然です。こうしていじめが始まり、スペシャルタレントの子どもたちは学校に居場所を失ってしまうのです。教育現場にいる教師や支援者がこの子たちを、素晴らしい才能の持ち主としてリスペクトできたら、いじめは起こらないでしょう。現在の日本の教育は同質化を求めるあまり、バランスよく育っていない子は否定的に捉えられてしまいます。こういった構造的な問題がある限り、学校はスペシャルタレント気質の子どもたちにとって、居心地の悪い場所でしかないのです。シンプルなコミュニケーションが、才能を育てる鍵出典 : ―スペシャルタレントの子どもたちが、困っていることはどんなことですか?彼らは思春期を迎える頃になると、一生懸命周りの友達に合わせようと努力します。しかし、必死で気を遣ってついていこうとしても、安心できる場所を見つけることができません。学校の中では「そんなこともできないの?」といった言葉もいじめに直結します。空気が読めない、人並みにできない、コミュ障だなどと言われ続ければ、どんどん自己肯定感が低くなっていきます。―みんな同じ方向を向くことを求められる場では否定され、その結果、いじめや登校拒否に繋がっていくということですね。スペシャルタレントの子どもたちは、複雑なコミュニケーションが苦手です。特に同級生とのコミュニケーションは、実はとても複雑で難しいのです。例えば、相手が年上であれば敬語だけを使えばよく、コミュニケーションの仕方はシンプルですよね。しかし、同級生となるとそうはいきません。親しさによって丁寧な言葉を使ったり使わなかったり、距離の取り方も一人ひとり微妙に違います。そして、同級生は協力する仲間であると同時に、競争する相手でもあります。気持ちの切り替えが難しい子にとって、同級生との関係づくりは非常に厳しいものなのです。自分の生活の場をなるべくクリアに保ちたいと感じるスペシャルタレントの子にとって、曖昧で分かりづらいコミュニケーションは不安を煽るものであり、合わせようと努力をすることはとてもしんどいことなのです。―なるほど…そんなスペシャルタレントの子どもたちに合ったコミュニケーションが出来る環境はあるのでしょうか。年上や年下の人と関わることのできる場所に連れていってあげると、シンプルなコミュニケーションだけ求められるので、スペシャルタレントの子は安心して関係作りができるでしょう。もしくは、海外留学をすることもおすすめです。例えば英語圏では、日本ほど間柄によって呼び方を変えたり敬語を使ったりする必要がありません。友人でも年長者でも小さな子でも、ファーストネームで呼び合えば良いのですから。自分の意思表示も“Yes”“No”の二択で求められます。日本のように気を遣って言葉を選ぶ必要はありません。さらに欧米では、人といかに違っているかが逆に評価されます。みんなが個性的で他人と変わった能力の持ち主だからこそ、素晴らしい芸術や技術が生まれるのではないでしょうか。たとえば、“変人国家”なんて呼ばれるイタリアでは、人と変わっていることが当たり前で、その変わった人々によって優れた芸術やファッション、映画、音楽が数多く生み出されています。これは、人とは違う特別な才能をリスペクトし合ってきた証拠ですね。合言葉は「あ・し・た・あ・お・う・よ」出典 : ―学校での関わりに悩む、スペシャルタレント気質の子どもたちに対して、家族はどんなことができるでしょうか?お子さんが学校でいじめに遭ったり不登校になったりすると、お母さんたちは不安になると思います。しかし、子どもたちの豊かな才能に目を向けて、不安ではなくわが子の「ファン」になってあげてください。家族みんなが、その子の応援団になるのです。私のところに相談にいらっしゃるお母さんたちに対して、「あ・し・た・あ・お・う・よ」という言葉を紹介しています。「あいしている」「しあわせ」「たのしい」「ありがとう」「おかげさま」「うれしい」「よかった」この言葉を、お子さんにたくさんかけて、抱きしめてあげてください。すると、お子さんのエネルギーはみるみる回復していきますよ。―子どもがパニックになった時や、自傷行為をする時はどうしたら良いですか?自傷行為をしていたら、そのことを否定せず黙って抱きしめてあげてください。自傷行為は、うまく自分の思いが伝わらないという負の感情が蓄積して起こるものです。突然起こるものではありません。まずはしっかりとお子さんの気持ちに向き合い、丁寧に受け止めてあげることが大切です。大好きなお母さんに否定されることほど悲しいことはありません。通常、私たちは5歳くらいからの出来事を記憶していると言いますが、スペシャルタレントの子どもたちは記憶力が良いため2~3歳頃から記憶をしているようです。そのため、親に否定された経験も明確に覚えているのです。パニックが長時間続くこともほとんどありません。物を壊したり怪我をしたりしない限りは、止めずに見守ってあげましょう。落ち着いてから、「暴れるほど悲しかったんだね」と受け止めてあげてください。Upload By 佐藤 愛美(ライター)―自傷行為やパニックが起こっても、否定の言葉をぶつけるのではなく、まず子どものことを受け止める。とても大切だと思います。でも、お母さんたちが「子育てを正しくやらなければ」というプレッシャーに日々さらされていると、難しいですよね。そうですね。かつての日本には地域の中にたくさんの子どもたちがいて、未婚の若い女性でも子守り体験を通して将来のリハーサルをする機会が多かったのです。お母さんのお乳が出なければ地域の人が代わりにお乳を与えてくれたし、産後すぐに働きに出ても、おじいちゃんやおばあちゃんが子守りをしてくれるのが当たり前でした。そのため、現在のようにお母さんが子育ての責任をすべて一人で背負うことはなかったのです。この時代は、「子どもなんて少し変わっていて当たり前」と思われていたし、思春期の早い時期に社会に出ることが多く、18歳まで同級生の集団の中に身を置く必要もありませんでした。思春期のストレスも少なくて済んだのではないでしょうか。スペシャルタレントの気質を持った人たちも、周りに合わせることなくのびのびと生活できていたんです。しかし現在は、社会全体が評価主義によって動いています。小さい頃から偏差値や内申点で評価され、高学歴が求められ、大企業に就職する人々がエリートと呼ばれています。子育てすら、自分を評価するための材料になってしまっているのです。お母さんたちは人並みに育児ができなければ評価されず、公園デビューをする時もマニュアルが必要になっています。このような社会背景の中で、集団に馴染めない子どもを育てるのは非常に苦しいことでしょう。頑張り屋さんのお母さんは、自分で自分にOKを言おう出典 : ―評価主義社会の中に立たされたお母さんたちは、どうしたら心の余裕を持って子育てができるでしょうか。私は、相談に来たお母さんたちにまずこう言います。「よく頑張ってきましたね、お母さん。本当に頑張り屋さんですね」評価主義社会の中で認めてもらおうと必死になってきたお母さんたちは、「頑張っているね」という言葉をずっと求めているんです。しかし、大人になってしまうとなかなか褒めてもらえる機会はありませんよね。だから、「I am OK!」と自分で自分を褒めてあげることが大切です。洗濯物の干し方がうまい、畳み方なんか最高!って。自分はこんなふうに頑張っている、こんな良いところがあると、自分に「OK」を与えてあげてください。すると子どもに対しても「あ・し・た・あ・お・う・よ」の言葉を与えられるようになります。―お母さん自身が、まず自分に「OK」を…大切な視点ですね。一方で一つ気になるのが、スペシャルタレントと呼ぶと、「天才児」のようなニュアンスで捉える人もいるのではないかということです。そうなってしまうとやはり評価主義の中でプレッシャーに感じるお母さんも出てくるような…優れた才能を持っている子はたくさんいますが、「天才児」というニュアンスとは少し違いますね。私は面談の中でよく保護者に対して「この子が何をしている時がいちばん幸せそうでしたか?」と聞いています。すると、これまでの我が子の姿を思い返しながら、絵を描くことや人形を作ること、小さい頃はダンスに興味を持っていたなど、色々な話が出てきます。実はこれが、未来に繋がる資源(リソース)なんです。中には「うちの子には何も才能がない!」と嘆く方もいます。しかし、一つの物事にとことんこだわり、嘘がつけなくて優しいという素晴らしい資源にもっと気づいてほしいのです。この気質はスペシャルタレントの子だけが持った、特別な才能ではないでしょうか。不登校児が学校生活に戻らなくても良いルート作りを目指して出典 : ―スペシャルタレントの子どもたちが個性を伸ばせる進路には、どのようなものがありますか。不登校の子がいちばん苦しむのは、「いつかは学校に戻らなければいけない」というプレッシャーです。学校の先生も、スクールカウンセラーも、教育相談所も、そして親ですら彼らが早く学校へ戻るように促します。この子たちは、心身ともにぼろぼろになりながらやっとの思いで学校を抜け出したのに、こんなに辛い要求はありません。今の日本に必要なのは、“学校に戻らなくても良いルートづくり”なのではないかと私は考えています。具体的には、家庭でパソコンやタブレットを使って勉強ができるホームスクールや、通信制の高校、フリースクール、そして先ほども紹介した、海外留学が当たり前に選べるようになるといいですね。―スペシャルタレント気質を持った子が大人になった時、自分の特性を活かせる仕事に辿り着くためには、周囲の大人はどんなサポートをすれば良いでしょうか。その子たちの個性を潰さず、スペシャルタレントとして尊重することです。現在活躍しているスポーツ選手の多くが「小さい頃に自分のやりたいことをやらせてくれたから今がある」と語っています。普通科の学校や目の前の成績ばかりに囚われることなく、その子が夢中になれるものを一緒に発見し、色々な体験をさせてあげてください。苦手なことを人並みにしようと何十年も努力するより、自分の得意なことを活かして活躍したほうが幸せではないでしょうか。苦手なことは、他の人に任せたり手伝ってもらったりしても良いのです。私が今、老眼鏡を使って文字を読んでいるように、便利な道具を使えばできるようになることもあります。Upload By 佐藤 愛美(ライター)―最後に、森先生が今後取り組んでいきたいと考えていることがありましたら、教えてください。スペシャルタレントの子どもたちと一緒に農業体験ができる場所づくりをしていきたいと考えています。田んぼで自由に走り回り、泥を投げ合い、ありのままの自分を認めてもらえる場所です。農業をしている大人の手伝いをし、自分の得意なことや不得意なことに向き合っていく中で、自分に対する肯定感を育めるのではないでしょうか。親や教師が“普通の”進路に固執せず、可能性を広げる場所を作ってあげることで、この子たちの活躍の幅はきっと広がるはずです。―ありがとうございました。集団生活を苦手とする子どもたちの気質を「神様からもらったプレゼント」と言う森先生。苦手を克服する従来の教育から、得意なところを伸ばす新たな教育へのシフトを目指し、一人ひとりが自分を大好きになれる場所づくりが進んでいます。(佐藤愛美)Upload By 佐藤 愛美(ライター)『未来に輝け! スペシャルタレントの子どもたち 不登校・ひきこもりの解決方法』2013年、学びリンクUpload By 佐藤 愛美(ライター)『子どもと夫を育てる 「 楽妻楽母」力‐不登校・引きこもり・夫婦のすれ違い、すべて解決!‐』 2015年、学びリンク
2017年01月26日今やすっかり世間に定着した“ママタレ”という言葉。一度人気が落ち込んだ女性芸能人でも、ママタレに転身することで再び一流芸能人として返り咲くことも少なくありません。しかし、一方ではママタレが増えすぎて一種の飽和状態にあることも事実。 “子どもを産めばとりあえずママタレと名乗る人たち”にうんざりしている人も多いでしょう。そんな競争率の高いママタレ界において、一番の成功を収めているのは一体誰なのでしょうか?今回は、パピマミ読者の皆さんに「ママタレ転身に成功したと思う芸能人」についてアンケートを取ってみました!●ママタレ転身に成功したと思う芸能人は?・1位:辻希美……20%(45人)・2位:木下優樹菜……18%(40人)・3位:くわばたりえ……15%(35人)・4位:北斗晶……15%(34人)・5位:藤本美貴……9%(20人)・6位:蛯原英里……6%(14人)・7位:東原亜希……5%(12人)・8位:小倉優子……4%(10人)・9位:後藤真希……3%(5人)・10位:東尾理子……2%(3人)※11位以下は省略※有効回答者数:222人/集計期間:2017年1月20日〜2017年1月24日(パピマミ調べ)●1位:辻希美『元アイドルってぱっとしない人が多いけど、辻ちゃんは完全にママタレに転身して成功したと思う』(34歳女性/主婦)『やたら炎上しているイメージしかないけど、収入という面においては辻ちゃんが一番成功しているんじゃないかな』(32歳女性/保育士)第1位に輝いたのは、『辻希美』さんで20%(45人)という結果になりました。辻さんといえば、『モーニング娘。』の主要メンバーとして活躍していたことが記憶に新しいですね。現在では3人のお子さんを育てる立派なママさんになっています。辻さんは2009年からアメーバでブログを始めていますが、子育ての様子を読者に公開し多くの反響を呼ぶ人気ブログとなりました。そんな辻さんのブログはたびたび炎上することでも話題となっていますね。そのおかげでブログのアクセス数が伸び、一説では1か月に500万円を稼いでいる とも言われています。夫の杉浦太陽さんとの夫婦仲も睦まじいようで、たしかにママタレに転身してから一番順調な人生を送っている人かもしれません。辻さんの今後の活躍に要注目ですね!●2位:木下優樹菜『ヘキサゴンでバカキャラとして活躍していたころは正直好きじゃなかったけど、フジモンと結婚して子どもを産んでから見直すようになった。実際、ママタレになってからの方が人気出たよね』(39歳女性/販売)『育児論とかがしっかりしてるからママから支持されてるよね。そのせいでことあるごとに炎上してるけど笑』(36歳女性/広告)第2位にランクインしたのは、『木下優樹菜』さんで18%(40人)という結果に。元々は『クイズ!ヘキサゴン!!』で里田まいさんやスザンヌさんらと“おバカキャラ”として活躍してた木下さん。その中でも歯に衣着せぬ物言いが評判を呼んでいました。その後お笑い芸人の藤本敏史さんと結婚し、2児のママとなりました。木下さんはInstagramで子どもの写真を多く載せており、そのどれもが子どもへの愛情を感じられるものばかり。今ではフォロワーが300万人を超す 大人気アカウントとなっています。また、木下さんは『Avan Lily』というブランドもプロデュースするなど多方面で活躍しています。2016年は“調子こき女”を不登校にしたというエピソードが発端で炎上してしまった木下さんですが、2017年は順調に活躍していってほしいですね。●3位:くわばたりえ『元々モテない芸人として活躍していたのに、結婚・出産を機に勝ち組になったよね。少し上から目線なところが鼻につくけど、ママタレとしては成功していると思う』(33歳女性/主婦)『子育て本を何冊か出してるし、今や芸人ではなく“ママタレ”として活動してるよね』(29歳女性/通信)3位は『くわばたりえ』さんで15%(35人)となりました。くわばたさんはお笑いコンビ『クワバタオハラ』のボケ担当として活躍していましたが、2009年に結婚してから3人の子どものママとなりました。ママとなったくわばたさんは、出産の動画を公開したり子育て本を数冊出版したり するなど、芸人というよりはママタレントとしての活動を精力的に行っています。中にはくわばたさんが芸人だということを知らなかったという人もいるようですが、そのぐらいくわばたさんがママタレとして活躍しているという証拠でもあります。これからも子育てとタレント業の両立を頑張ってほしいですね。----------いかがでしたか?女性は子どもを産むと独身のころとは違った魅力が備わるものです。ママタレはなにかと炎上しがちな人が多いですが、これからも世のママ代表として頑張ってほしいですね。【参考リンク】・【アンケート結果(1〜13位)】ママタレ転身に成功したと思う芸能人は?()●文/ぶるーす(芸能ライター)
2017年01月25日私の娘は、22歳の時にアスペルガー症候群と診断されました。そんな娘が小中学生だった当時は、まだまだ発達障害についての世間の認識が薄かった時代。娘の特性に対する理解や支援を得られず、小学校高学年から続いたいじめの影響で、神経性食欲不振症、不登校、被害妄想、幻聴幻覚、解離などの二次障害が現れていきました。そして、いま現在も入院治療が続いています。今回は、前回記事の小学生時代に続き、娘の中学生時代についてお話します。これは今から、15年ほど前の出来事です。現在では信じられないような出来事に、親子で随分と苦しめられてきました。障害や教育に対する支援・態勢が、現在と比べてどのくらい異なっていたのか、その点も含めて読んで頂けると嬉しいです。入学した中学でもいじめが待ち受けていた出典 : いじめの事態が改善されないまま小学校を卒業した娘でしたが、期待を持って入学した中学でも、再びいじめが待ち受けていました。三校の小学校から生徒が集まる中学だったので、娘の名前はすぐに知れ渡ってしまい、新しい仲間にも打ち解ける事ができないようでした。学校に行く事が苦痛になっているのではないかと感じましたが、頑張って登校している娘を見ると何も言えず、ただ楽しく過ごせるようにと祈る事しか出来ませんでした。加えて同じ頃、重度知的障害のある四年生の次男が、担任が変わり環境が変わった事で落ち着かなくなり、些細な事でも大声を出しパニックを起こすようになりました。私は、娘の事が気になりつつも、目の前の次男の対応に追われていました。2泊3日の学年行事から帰宅後、言葉を話せなくなった娘。出典 : 娘に変化が起きたのは6月下旬でした。新1年生の行事である2泊3日のふれあい合宿を終えて帰宅した時のことです。「お帰り〜!」と、私は声をかけましたが、娘は何も言わずに黙って下を向いたまま。出かける前には、「行きたくない」と口にしていたので、いろいろあったのだろうなと思い、私はそれ以上は何も言いませんでした。夕食の時間になっても、娘は何も話さず、食事も口にせず、下を向いたままでした。私は娘の様子が気になったものの、「合宿で何かあったのだろうか。話したくないなら仕方がない、明日になれば、少しは元気になるだろう…」と考え、事態をあまり重く受け止めていませんでした。ところが事態は、私の想像をはるかに超えたものでした。翌日以降も、何を聞いても、返事をするどころか、顔を上げる事すらせず黙ったまま。言葉を発するのが困難なように見えました。ただ事ではないと感じた私は、担任に相談し、言葉が出ないまま学校に通うのは無理だろうと、夏休みまでの1ヶ月間、学校を欠席させると決めたのでした。娘の言葉は、その後の2ヶ月間も出る事はありませんでした。児童相談所の医師の言葉に、親としての自信を失くしてしまい…出典 : その後学校からは、娘を児童相談所に連れて行くように勧められ、私は娘と次男と出かけて行きました。相談所に行くと、女性職員との簡単なやり取りの後、「精神科の医師に診て貰います」と言われ、その場で待つように指示されました。しばらくして現れた若い医師は、私と娘と次男をチラリと見ていきなり、こう告げました。「お母さんが悪いです!」驚いて、言葉も出ない私に、医師は続けて言いました。「お母さんの育て方が悪いから、子どもがこうなったのですよ!」私は、あまりの言葉にショックを受けました。この時、医師とはまだ一言も言葉を交わしていません。何も話していないのに、なぜ断言するの?なんとひどい言い方。話も何も聞かないで、何が分かると言うの?私はただただ驚き、自分の子育てを全否定されたショックで、やりきれなさと悔しい気持ちでいっぱいでした。医師との面談の後、女性職員が申し訳なさそうに言いました。「こういうケースは、ものすごく多いのですよ。関東から九州に引っ越して来た人は、カルチャーショックで、子どもと母親は耐えられなくて関東に帰ってしまい、父親だけが残って単身赴任になるんです。」私は、この女性職員の言葉に救われたような気がしました。けれども、若い医師の言葉はずっと心に引っかかり、自分の子育ては間違っていたのだろうかと、母親としての自信を失いかけてしまったのでした。神経性食欲不振症(拒食症)と診断されて出典 : その後も娘は、下を向いて顔も上げられない状態が続き、歩くのもおぼつかなく、食事も取れなくなり、164cmで42kgだった体重が30kgを切るまでになりました。私たちは、次男の主治医に娘の診察をお願いしました。児童相談所のあの若い医師とは違い、娘の様子をしっかりと診てくれました。娘に下りた診断は、神経性食欲不振症(拒食症)。体力を回復させる内科治療をしながら臨床心理士のカウンセリングを受ける事に決まり、娘の治療が始まりました。週に一度、1時間の女性心理士のカウンセリングと並行して、次男の言葉の教室でお世話になっている言語聴覚士にもお願いをして、娘の指導をしていただきました。娘の言葉はすぐには出ませんでしたが、言語聴覚士の指導で行われた私と娘が身体を密着させて行う運動療法は、お互いの不安を解消させてくれました。二人で向かい合って座り、手を繋いで引っ張り合いをしたり、その手をお互いの背に回し、ギューッと抱きしめたり、背中合わせでおしくらまんじゅうをしたり…言葉はなくても、お互いの心が一つにならないと出来ない運動でした。何回か通ううちに、娘は、「うん…」と声が出るようになりました。絞り出すような娘の声を聞いた時、私は嬉しくて心から感謝をしました。それからようやく、少しずつ娘の言葉が出てきたのでした。ところがそのうちに、また別の奇妙な出来事が起きるのです。娘は「お母さん大好き」と言って、私の顔をじーっと見つめ、異様な笑みを浮かべ、それから、私の行く先々に着いて回り、トイレの中まで入ってくるようになったのです。いわゆる赤ちゃん返りでした。娘は、私のそばを片時も離れなくなり、「抱っこ!」と言って膝に乗って来ます。私は一晩中、私よりも身体の大きな娘を抱っこして座ったまま状態で過ごすことになり、朝まで眠れない日々が続きました。一瞬たりとも、心が休まる事はありませんでした。4,5日経つと、さすがに娘も辛くなったのでしょう。夜は布団で寝る…と言って、添い寝をするようになりました。日中も夜も、私は娘のそばを離れる事もできない状況でしたが、次第次第に、娘の様子も安定していきました。そして、夏休みも終わろうとする頃、娘はようやく無言状態から脱出したのでした。不思議なもので、娘が安定してくると、あれほど不安定だった次男も落ち着いてきました。2人が不安定になって、私ひとりでは手に負えない状態でしたが、少しずつ事態は進展していったのです。自らカウンセリングをストップさせ、再び学校へ…娘の家での様子はこのように変化していきましたが、その間も週に1度のカウンセリングは続けていました。カウンセリングは1時間ほど、心理士と娘だけで行われました。たわいもない話をしたり箱庭療法をしたりして過ごしながら、私たちには話さない学校での出来事を話していたようでした。何回目かのカウンセリングを受けた後、娘は自分から心理士に「もうこれ以上続けていても意味がないから、自分の気持ちに蓋をして、学校に行きます。」と言って、突然にカウンセリングを終了させました。私は驚きましたが、娘の決断は揺るぎませんでした。そして、10月の終わり頃、娘は休んでいた中学に再び通い始めました。私たちは、もう少しゆっくり休むようにと伝えましたが、娘は私たちを押し切って、学校へと戻って行ったのでした。体調はまだ戻っておらず、調子の良い時だけ登校する形で、通院しながら頑張って登校しました。以前は、男子生徒からの悪口が酷かったのですが、担任教師のお陰で、娘の悪口を言う生徒は減っていきました。若い教師でしたが、何度も家庭訪問をして下さり、娘や私の気持ちを親身になって考え、支えてくださいました。娘は、カウンセリングを終了しても、困った時には心理士に電話をかけていました。カウンセリングという形を取らなくても、いつでも深夜でも相談に応じてくださる心理士の存在は、娘にとって、どんなにか心強かった事でしょう。この心理士と担任教師の二人を味方につけて、娘は学校という孤独な場所に立ち向かって行ったのでした。出典 : 中3になった娘の高校受験対策出典 : 中1の10月から登校を始めた娘は、中2も同じ担任教師のクラスとなり、生活を変える事なく、体調の良い時だけ登校しました。無理のない登校で、だんだんと落ち着きを取り戻し、笑顔も見られるようになりました。けれども、中3では担任も変わり、娘への理解も得られませんでした。自分の考えを押し通す担任に、私は不安を覚えました。高校受験も控えているので、体調の良い時だけ登校する訳にもいかず、悪口を言われても、嫌がらせがあっても娘は我慢して登校を続けたのでした。担任教師が理解してくだされば、なんとか頑張れるものなのに、担任は娘の訴えを否定し続けます。クラスの生徒に悪口を言われて我慢できずに、娘が担任に相談に行くと、まるで娘のほうが告げ口をしているかのように思われて「どうして、いちいち言いに来るんだ。」と突っぱねて、少しも娘の気持ちを理解しようとしないのです。私自身も何度も学校に行き担任に話をしましたが、私の話など聞く耳を持ちません。そこで、小学校の時と同じように主人と2人で学校に出かけ、夫婦揃っての校長面談を取り付けることにしました。ですが、いざ学校に行ってみると、現れたのは校長ではなく学年主任。私たちの話を「はい、はい」と笑顔で頷いて聞くばかりで、全て分かっているかのように応答したのでした。私は、この表面的な応対に人としての温かさの微塵も感じず、失望したのでした。推薦入試で高校合格へ… 卒業への思い。出典 : 担任教師にも学年主任教師にも理解を得られず、修学旅行や体育祭、文化祭など行事があるたびに辛い思いをしながらも、娘はどうにか、残りの学校生活を乗り切っていきました。中3の2学期になって高校見学や説明会が始まると、私は娘と私立の美術科のある高校見学に行きました。私たちだけのために応対してくださった美術科主任教師は、とても穏やかな優しい方でした。私はその誠実なお人柄に惹かれて、初対面であったにも関わらず、心を開いて話が出来たのでした。「毎日一緒にいる担任教師よりも、この初対面の教師のほうがよほど理解してくださるではないか…こんな出会いはそうそうない」私は、この教師になら娘を安心してお任せ出来ると確信し、この高校の美術科の推薦入試を娘に受けさせ、無事に合格通知を頂いたのでした。九州に転居してからずっと、娘はひとりで耐えて来ました。転勤とはいえ、住みたくもない街で暮らし、行きたくもない学校に行かなければならない事は、辛く苦しいものだったに違いありません。苦しんでいる我が子に、してやれることは何なのか。親として出来る限りの事は、してきたつもりです。ですが、果たして、これで良かったのでしょうか。発達障害への認識が、現在のように進んでいたのなら、娘はこんなに苦しまなくても良かったはず。療育や支援を受けて、もっと娘自身を輝かせる事が出来たはずです。医師ですら、発達障害の認識がない時代では、支援も療育も受けられず、当事者だけが苦しみの中にいたのです。現在なら、学校に行かない選択も出来たでしょうし、必要な支援も療育も受けられるでしょう。時代のせいにはしたくありませんが、そんな時代であったのは事実です。卒業式の日、娘は立派に卒業証書を頂きました。晴れ晴れとした娘の顔を見て、私はホッとしていました。本当によく頑張ったね。卒業おめでとう…私は、娘のこれからの道が明るく光り輝くものとなるようにと、願ったのでした。
2017年01月25日幼いころから続いた、娘の「足が痛い」という訴え出典 : 歳の娘にはアスペルガー症候群の診断が出ています。ある日「学校をやめる」と宣言してから、毎日家で過ごしています。そんな娘ですが、不登校になる前はよく、足の痛みを訴えていました。そのたびに「成長痛かな?」「きっと身体が大きくなろうとしているんだよ」と軽く聞き流していました。しかし、ピアノの練習や宿題の最中など、「どうして今?」という場面でも痛みを訴えるため、不思議に思っていた私。足の病気かな?と不安に思ったりもしましたが、遊びの時間になると「もう治った!」と走り回っているので、病院へ行く程でもないのかな…と様子見を続けていたのです。本当に痛いの?どのくらい痛いの?あまりにも辛そうな娘を前に出典 : 足の痛みが子どもの心と繋がっていると気がついたのは、娘が登校を嫌がるようになってからのことでした。毎晩「足が痛い」「動かせない」と訴えるようになり、ベッドで娘の足をさすってあげる時間が増えました。学校をお休みすると痛みは引いていき、また夜になると痛みを訴えるのです。登校のストレスが、娘の体に痛みをもたらしていたのですね。学校を休みがちなお子さんの中には頭が痛い、お腹が痛いと訴えるケースが多いというのは知っていましたが、まさか足にくるとは!気がついたときは、目からウロコ状態でした。このような話をすると、「そう言えば休ませてもらえるから『痛い』って言ってるだけじゃないの?」「親が甘やかすから図に乗る」などと言われることがあります。確かにそのようなケースもあるのかも知れません。それでも、子どもがそこまで追い詰められているのならば、休ませてあげるのも大切な選択肢の1つなのかも知れないなぁ…と、個人的には思っています。娘と一緒に、痛みが現れるタイミングを洗い出してみた出典 : さて、子どもが足の痛みを訴えてきたとき、それが本当の痛みなのか?本当ならどの程度の痛みなのか?他人である私にはわかりません。それでも、涙目で痛みを訴えてくる子どもの言葉を信じることから始めてみることにしました。そして娘と一緒に、「どんな時に痛みが出るのか」を観察してみることにしたのです。観察を続けて行くうちに、少しずつ痛みの出るタイミングが見えてきました。前日から学校を休むと決めている場合は、痛みが出ることはありません。行けそうなら行ってみよう!と言ってベッドに潜ると痛みが出てきます。学校だけではなく、新しい習い事の体験日が迫っている時なども、痛みが出ることが分かりました。そうして長期間観察した結果、「安心できる場所以外へ出かける予定がある場合、足に痛みが出る」という結論に達しました。極度に緊張する場面で、手に汗をかくなどの反応が出る人もいますが、娘の足の痛みもそのような反応なのだと考えることで、少しずつ娘の不安を探る手段にもなっていきました。観察や分析を繰り返すことで知った、子どもが抱えている漠然とした不安出典 : ある日の会話です。娘「ママ、ここのところずっと足が痛いんだけど、どうしてかな?」私「あれ?特別なところに行く予定はないはずだけど...」娘「そうなの。でも痛いからどうしてかなぁと思って。」母「そうねえ・・・。あ!もしかして、この間水泳教室でテストに合格したから、次から平泳ぎに入るでしょ?それでちょっと水泳教室に行くのが不安に思えるのかも?どうかな?」娘「確かに!平泳ぎはやったことがないから、怒られたらどうしようってずっと怖かったんだ!ママ、ありがとう!それだ!」母「そっか。じゃあ少しでも不安を軽減させるために、パソコンで平泳ぎの基礎を調べてみたらどうかな?いろんな動画もあると思うよ!」娘「なるほど!やってみるね!」母「きっと、一度水泳教室で平泳ぎを教えてもらえば足の痛みは取れるから、それまではマッサージしたりして乗り切ろうね。」娘「そうだね!次の水泳教室までの我慢だね!」出典 : こんな風に会話することで、娘の中でよく見えていなかった不安を洗い出せるようになっていきました。生活の中で漠然と抱えている不安要素を、足の痛みをきっかけにきちんと捉えることができるようになり、娘自身理由が分からないまま機嫌が悪くなったり、他人にきつく当たったりすることが減っていきました。一時は娘が足の痛みを訴えるたびに「何がいけなかったのか」と、鬱々とした気分になる私でした。でも今では、「足が痛い」と相談されると、「いいサインを出してくれたね!何が不安なのか、一緒に考えてみよう!」と、プラス方向に捉えられるようになりました。子どもの訴えを信じることで、見えてくるものがある出典 : 「足が痛い」「頭が痛い」「お腹が痛い」…。子どもからいろいろなサインが出たとき、「気のせいだよ」「頑張りなさい」と痛みを無かったことにしてしまうのは、実はとてももったいないことなのかもしれません。まずは一旦痛みを受け止め、子ども自身がきちんと掴み切れていないストレスの原因を探るチャンスに変えてみても、よいかもしれませんね。
2017年01月24日多動が続き、抑制できない小学4年生の場合出典 : こんにちは、國學院大學教授の池田行伸です。私はこれまでスクールカウンセラーとして、定期的に学校の教育相談室に勤務し、カウンセリングにあたってきました。今日のお話は、15年程前、新年度になり新たな小学校にスクールカウンセラーとして赴いた時のエピソードです。教育相談担当教員に紹介されて、担任教師が相談に来ました。4年生にもなるのに5分と椅子に座っていられない男子生徒がいるという相談でした。放っておくと立ち上がり、後ろの黒板に絵を描いて遊んでいる。教師が手を引いて椅子に座らせると抵抗せず素直に従う。しかしまた数分後には立ち歩く、と言うのです。教師が椅子に座っている生徒の手を握っていると立ち歩かないのだが、四六時中手を握っているわけにもいかず困っているとのことでした。ちょうど、このような多動が顕著な子どもに対して薬物療法が開始された時期でしたから、医療との連携も選択肢に入れた支援を検討することにしました。まずは生徒の親と話す機会を設けて欲しいと担任にお願いし、母親との面会を実施します。すると母親は、開口一番に、「実は子どもが万引きして悩んでいます。」と、学校での問題行動以上にもっと深刻な悩みを打ち明けてきました。友人と店に入り代金を払わず店外に出て、出たその場で商品を開けるのだと言うのです。そのためすぐ店員に見つかります。親が弁償し、父親が万引きがどんなにいけないことかを深夜に及ぶまで教え、懇々と諭しました。生徒も泣きじゃくり、「もうしません」と何度も何度も繰り返したそうです。母親の目にも本当に改心したのだと映ったのですが、次の日また、同じことをやってしまうということでした。この話を聞き、私は専門医への受診を勧めました。しかし母親は「それを考えているのですが父親が受診、服薬に反対しているのです。」と答えましたが、「このまま放置しておくと、改善する方向には向かわないだろう。専門医の支援を受けた方が良いと思う」と説得しました。しばらく経った勤務日、朝登校するなり教育相談担当教員が喜々とした表情でやってきて、「病院で薬を処方され、医師の指示に従い、朝に服薬して登校したら1時間立ち歩くことなく椅子に座っていたと、担任が驚いていました。魔法の薬です。」と伝えてきました。この時は、薬物療法の効果を実感することができました。その後私は勤務校を離れることとなり、その生徒の状況を直接最後まで見届けることはできませんでした。ですが、数年経った頃に「あの生徒はどうなっているのだろうか」と思い、進学先の中学校の養護の先生に連絡したことがあります。生徒はあれからしばらくして服薬を中止した、父親が「これは麻薬だ」と言い、服薬させないようにしたとのことでした。学校は薬を続けて落ち着いてもらいたいと考えているのだが、父親が「学校のために子どもに麻薬を飲めと言うのか」と言い、話が噛み合わないと嘆いていました。この学校の担当を外れた私はそれ以上かかわることができませんでした。最初の試みはこのように大失敗でした。学校の教師も驚くような行動の変化は、父親をそれまでの我が子とはまったく異なる別人に出会った感じにさせたようです。元のやんちゃな我が子はどこに行ったんだと。それが飲んでいる薬のせいだとすれば、人を陥れる麻薬に思えたのでしょう。服薬の意味とはなにか?という問い出典 : その後、私事ですが、入院しなければならないほどの病を患い、カウンセラーの職を休職していた時期があります。病床でふと「服薬の意味とはなにか?」という問いが去来しました。例えば、だれでもいきなり髪が抜け落ち、つるつる頭の我が子を見たら驚愕するでしょう。それが薬のせいであれば、そんな薬は飲むなと叫ぶでしょう。しかしそれが白血病の我が子を救う唯一の方法だと分かれば目に涙を浮かべながらも一緒に頑張ろうと子どもを抱きしめるでしょう。本人もですが、幼い子どもの場合は特に、「薬を飲む意味」を親が十分理解していなければ、薬物療法による成果は得られないだろうと思うようになりました。低学年からソーシャルスキルトレーニングを積み重ねてきた子どもの場合出典 : これまでの経験から薬物療法が効果的であると思われる経過を紹介します。幼稚園、保育園の頃から多動傾向があり、順番を守らない、他の子どもが遊んでいるおもちゃを勝手にとるなどの問題行動を指摘されている子どもが小学校に入学しました。早速担任から問題行動が指摘されますが、まだ1, 2年生のうちは他の子どもも幼児期の特徴を残しており、一人ひとりばらばらの思いで発言したり、行動したりするのでそれほど問題行動が目立ちません。ですがこの時期にもできる支援はあります。・消しゴムが欲しいからといって近くに置いてある別の子の消しゴムを勝手に使わないように、使うときは「貸してね」と断ること・使い終わったら放り投げないで借りた子に「ありがとう」と言って返すことなど、学校生活でのクラスメイトとの基本的な関わり方を教えるソーシャルスキルトレーニングを、学校でも辛抱強く行うのです。これは担任だけでできることではないので、補助教員、支援員の助けを借りる必要があります。3,4年生にもなると子どもは成長し、いわゆるギャングエイジに入ります。友人が固定され、集団活動が活発になり統制のとれた動きができるようになります。子どもたちはサッカーや野球のようなチームプレーを好んで行うようになります。大人と同じように、気の合った者同士の集団ができるのです。このような時期に入ると、勝手な行動をする子どもは集団に入れてもらえなくなります。班活動してものけ者にされることが増えていき、そうなるとその子は学校やクラスが嫌になります。結果、わざと人が嫌がることを行うようになり、それを見て周りの者はさらにその子を避けるといった負のサイクルが生まれやすくなり、時にいじめや不登校に発展することもあります。幼児の頃、1年生のころからずっと見てきた上でこのような状況に直面すると、ソーシャルスキルトレーニング等の薬物療法以外の方法が限界であることが見えてきます。親も、他の子に暴力をふるった、他の子の持ち物を故意に壊したなどと、担任や保護者から苦情が寄せられ困り果てます。腕力も強くなります。このタイミングでは特に、薬物療法を含めた医療との連携をもちかけることが重要になります。子供の未来、可能性はなるべく広く持たせてあげたい出典 : 悩める親に専門医の受診を勧める際、私は次のような言い方をします。「ほとんどの人が小学生時代に身に着けた知識で生きています。読み書きや計算です。次に進むためにも小学校で学ぶ知識は必要です。成長し、将来多動傾向が改善したとしても小学校時代の学びは行う必要があるでしょう。大人になって学ぶことに自尊心が傷つけられたら先に進めません。今だからやれることがあります。一度医療の支援をうけてみませんか。少しでも集中でき、学校での学びが進めば先が見えます。」薬物療法の役割を理解し、ほかに良い方法がないと感じた親は、この提案を受けてくれます。時には父母で話しに来られます。提案を受けていただけたら、信頼のおける専門医選びを行い、薬物については医師に詳しく尋ねて下さいと言います。スクールカウンセラーは日ごろの心配に寄り添います。タイミングを一緒に考えましょう出典 : 年前と違い最近は新しい薬が用いられています。服薬すると行動が改善し、「取り合いになりこの場合は必ず喧嘩になる」という場面で問題の生徒が相手に譲ったと言って教師が驚くことがあります。年齢相応のトラブルは残るものの、大きな事故や事件は起こりにくくなります。行動の変化に気づいた級友がいぶかしがってちょっかいを出すことありますが、「○○君も成長したんだ。」と教師が言ってくれると、2,3ヶ月後には違和感なく教室で過ごせるようになったりします。もちろん、薬には副作用があります。それを気にする親もいます。詳しいことは医師に相談してもらうとして、日ごろの心配などは、カウンセラーや担任が十分聞いてあげることが大切です。親の不安には絶えず寄り添う必要があります。特に、小学校の高学年、中学生になってから薬を使うとうまくいかないことが多いです。子どもはすでに自分はのけ者、仲間外れだという意識を強く持ってしまっているので、まず薬物療法に素直に従おうとしません。自我も発達しているので、薬を飲んだ時の違和感を感じたら子どもが勝手にやめたりします。この時期になると強制的に飲ませようとしても困難です。母親以外の家族や学校から薬を勧められても飲まない生徒に、母親が「自分しかこの子を守れない」と母子で服薬を拒否し、あちこちでぎくしゃくが生じることもあります。このようなことを経験して私は次のような考えに行きつきました。どこでも叫ばれている早期発見・早期療育です。幼い頃からその子をよく観察し、その時々の支援のあり方をアドバイスすること。薬物療法にせよ、それ以外にせよ、まずはこの原理原則を守ることが重要です。ソーシャルスキルトレーニングが効果的であると思えばそれをアドバイスし、他の方法ではなかなか効果が上がらず、遅すぎないうちに医療の支援を考えさせたいと思えば、そのことをアドバイスするのです。ですから、支援に入ってから薬物療法を選ぶまでに数年かかることもあります。それくらい丁寧にコミュニケーションを続けてこないと、親は薬物療法に向かってくれないでしょうし、結果、問題解決に向けた効果も得られにくくなると思います。子どもの療育をめぐって、薬物療法が効くか・効かないか、といった二項対立の議論になることもありますが、そうではなく、親が納得して支援方法・療法を選び、選んだ療法で狙った効果を出せるよう、どのようなコミュニケーションを取るべきか。そう言った観点も忘れてはいけません。
2017年01月18日もともと勉強嫌いだった娘。不登校になると…出典 : 娘は小2のときに指で計算しているのをクラスメイトにとがめられ、すっかり勉強嫌いになり不登校になってしまいました。勉強嫌いで不登校になってしまった子に、勉強を教えるのは大変です。特に親が教えると、反発してしまって親子関係にヒビが入ることも。これでは、子どもが勉強でどんなことにつまづいているのか、さっぱりわかりません。でも、あることがきっかけで、計算について母娘で話し合うことができました。その後、支援者の助言と照らし合わせ、娘がどうして計算に困難を感じていたのかがわかったのです。お小遣いを渡すときに沸き起こった、ある疑問出典 : ある日のことです。娘には1ケ月に1,000円ずつお小遣いを渡しているのですが、その時はたまたま2ケ月分まとめて渡すことになりました。でも、財布には5,000円札しかありません。「ごめん、5,000円札しかないからお釣りくれる?お釣りは3,000円だよ」と伝え、娘の持ってきた3,000円をもらい、5,000円札を渡しました。すると、娘は5,000円札をじっと見つめ「納得できない」と言ったのです。娘「この5,000円の中の2,000円しか使ったらダメなの?残りはママのお金なの?」私「いや、りさはお釣りくれたでしょ。だからそれはりさのお金だよ(お釣りの額については納得していたのになぁ?)」娘「説明されたらわかったような気がするけど、なんかまだ納得できない」そう言って、紙に1人で計算し始めました。そして、「うん、何かわかったような気がするんだけど、次またこういう機会があったらもっと考えてみたい」と言ったのです。お釣りの概念を理解していなかったのはショックでしたが、こうして教える機会が自然とできてよかったです。娘はどんなふうに数を計算しているの?その答えは、本人が教えてくれたUpload By ヨーコ先日、また娘と計算の話をしました。今度は13+19をどう計算するか?についてです。娘は「筆算はわかりにくいから嫌」と言い、自分なりの方法を教えてくれました。①まず10の位を見て、10が2つあるから、10×2=20②20にややこしそうな9を先に足し、これで29③29+3をするわけですが、娘は繰上りができないので、3を1と2に分解④29に1を足して30⑤30に残った2を足して32娘は言います。「簡単な方を先に始末して、ややこしいのを分解していくねん。そして繰上りしなくていいように、私の10本の指にパズルのように数字をはめていくの。私は忘れん坊だから書いた方がわかりやすい。テストとかだったら書けないから、どこまで計算したかわからへんようになる。」ちゃんと数の概念も理解しているし、分解もできています。時間はかかるけど、丁寧に考え抜かれた計算に、私は面白いと感じました。計算が苦手なのは、特性が関係していた?出典 : なぜ、このような計算の仕方をするのでしょうか?「繰り上がりができないから」以外に理由があるのでは?と考えた私はこれまでの様子を振り返ってみました。娘は言語理解は高いものの、ワーキングメモリーが低く、単純な暗記が苦手です。また、最近支援者にこんなことを言われました。「小学校の計算は初めにサクランボ算をします。そしてそのパターンを叩きこんで暗記させ、次第に計算に慣れていくわけですが、娘さんは短期記録が苦手なため、計算が頭の中でできなくて指で計算していたのではないでしょうか?」なるほどな、と思いました。娘の計算方法を紐解くと、サクランボ算は意識せずにできていますが、それを頭の中だけで処理することができないようです。忘れてしまうんですね。10の位から計算を始める様子を見ていると、独特な理解の仕方をする癖があって、教室で教えられたことが納得できなかったのかもしれないな…と思いました。そのあたりのことを先生や私が見抜けていたら…。彼女の運命も変わっていたかもしれませんね。指があかんなんておかしい!中2の娘の主張出典 : 一通り自分の計算方法を説明した後、娘は言いました。「みんなラクするために計算してるのに、紙に書いたり、指を使うのがダメなんておかしい。みんなは頭の中で覚えているんだろうけど、私はラクするために指を使っているだけなのに。」指で計算することを恥じ、何年も計算しようとしなかった娘からこの言葉が出てきて、本当に嬉しかったです。苦手だったことと向き合おうとする姿に、成長を実感しました。また、最近は九九を覚えたことによって効率的な計算方法にも興味が湧いたようで、「だけど、みんなが学校で習うような楽な計算方法も勉強したい」と言うようになりました。苦手なことも、生活と密着した行動であれば、興味を持てるようになるんですね。とても遠回りをしている娘ですが、その遠回りは決して無駄にはならないと思います。
2017年01月13日授業の内容は理解できるけど、文字を書きたがらなかった息子出典 : 年ほど前に発達障害の診断を受けた息子は、現在13歳です。小5から不登校となった息子ですが、小学校の学校生活、主に学習面の道のりは平坦なものではありませんでした。担任の先生方に「授業中に質問するとしっかり答えて内容は理解しているようなのですが、テストに何も書かないので点数がつけられません」と、毎年のように言われていました。また、先生の説明を聞きながら板書をするのが苦手だったのでノートをまったくとらず、息子は先生に何度も注意を受けたそうです。他にも息子は直線がうまくひけなかったり、コンパスで正確な丸が描けなかったりしてイライラしていることもよくありました。私自身は、息子は少し不器用で意地っ張りなところがあるからしょうがないなあ…という程度にしか思っていませんでした。息子の学習面での困難さは本人の性格の問題だと思っていたのです。発達障害の診断をきっかけに、息子が苦しんでいた本当の理由が分かった出典 : 学校での困難を解消できないまま、息子は小学5年生から全く学校に通えなくなりました。そしてその後、専門家に相談し、息子は発達障害と診断されました。息子が12歳のときのことです。診断をきっかけに、小学校での困りごとや学習上の困難さを明確に認識した私は、診断をしてくれた発達障害専門の児童精神科で「視覚認知」の検査をしてもらいました。視覚認知とは、目で見たものを正しく理解する力のこと。視覚認知に障害があると、文字を読んだり書いたりするのがうまくできない、図形の理解がしづらい、手先の細かい作業が苦手、距離感がわからない…などの困りごとがあります。学校生活の中では、漢字の形がなかなか覚えられない、うまく字を書けない、図形が正確に理解できない、ボールなどの道具を使う競技が苦手…などの困りごとが起こりやすくなります。検査の結果、息子にはこの視覚認知に障害があることが分かりました。あとで息子に聞いてみたところ、「漢字の練習をしてみたけど何回やっても形が覚えられなかった」「自分がイメージしたところに線を描こうとしても、どうしても描けないから腹が立つ」「書きたいことはいっぱいあるけど、字がうまく書けないから進まない。書かないでいると先生に怒られる」と話してくれました。本人の努力が足りないせいではなかったのに、息子の困難を性格のせいだと思い込んでいたことをとても申し訳なく思いました。そして始まった、息子の進学先探し出典 : 医師は「この年齢だと療育で治していくのはもう難しいので、板書にICT機器を使えるとよいのですが」という提案をしてくれました。そこで私は、不登校であり、かつICT機器の使用が必要な息子を受け入れてくれる中学校を探すことにしました。「自由な校風」「少人数制」「個性を大切にしてくれる」「面倒見がよい」といったキーワードで、いくつかの私立中学をピックアップし、説明会に行ったり電話やメールで問い合わせをします。そしてまずは「そちらでは不登校の子どもを受け入れていただけますか」と聞いてみて、「今、不登校でも中学から頑張ってくれればいい」と言ってくれる学校を絞り込んでいきました。不登校でも受け入れてくれるという中学校をピックアップしたら、それぞれの学校に実際足を運んで個別相談で詳しく話をする、という段階になります。入学した後に学校と息子との間でお互い「こんなはずじゃなかった」となることを避けるため、学校へ●小5から全く学校に行けていないこと●視覚認知に障害があるので板書用のICT機器を使わせてほしいことを話しました。私の説明がいけないの?ルールや協調性を重んじる学校の方針に私は…出典 : ところが、候補にあげていたすべての私立中学でICT機器を使うことは認められない、という返事が返ってきました。理由として出たのが以下です。・みんなが手書きでノートをとっている中、1人だけ機械を使わせるわけにはいかない・他の子との間に不平等感が生まれる・テストのときに機械を持ち込まれては困る…中には「入学するまでに字の練習をして、書けるようにしておいてください」という学校までありました。この言葉を聞いたとき、教育の現場には障害への理解がこんなにないんだ…と、本当にがっかりしてしまいました。それでも気持ちを立て直して、「目の悪い子がめがねをかけたり、足の不自由な子が車いすに乗ったりするのと同じで、字が書けないのは障害であって練習してできることではありません」と、食い下がりました。しかし学校には「めがねや車いすとは違います」と、けんもほろろに言われ、全く相手にしてもらえませんでした。今思えば、理解のない相手にいきなりICT機器の話をした私のやり方は間違っていたのかもしれません。でもその時の私は、障害による苦労をわかってもらえないやりきれなさとともに、母親として、息子のために何もできない自分が悔しくて仕方ありませんでした。障害を理解してもらうことは難しい。しかし、希望はゼロではなかった出典 : しかしその一方で中には、「機械を使うのは無理ですが、本人ができるだけ過ごしやすいようお母さんと協力しながら工夫していきましょう」「授業時間内に課題が終わらなかったら、配慮するようにしましょう」と言ってくれた中学もありました。もし合格していたなら、こんな中学校に行かせたかったと思います。現在息子は、地元の公立中学に在籍してフリースクールにお世話になっています。中学・高校は、「書く」という作業がとりわけ多い年代です。最近、公立の大学では受験の際に視覚認知障害への配慮をしてくれるところもあると聞きますが、一般的な理解はまだまだと感じています。「字を書くことが苦手」というだけで子どもの可能性が狭められてしまうのは、子どもにとっても社会にとっても、とてももったいないことだと感じています。異質なものを排除するだけでなく、その中には大きな可能性があるのだと、学校や社会にも気づいてもらえるよう、私にもできることをしていきたいと思います。
2017年01月12日不登校にまつわるさまざまな不安、どう取り除く?出典 : 何らかの事情で学校に通えなくなった場合、様々な不安がお子さんにも保護者にも湧き上がってくることと思います。・学校に通わずに社会性は身につくのか・学校に通わずに友だちはできるのか・学校に通わずに勉強はどうなるのか・学校に通わずに将来はどうなるのかわが家の場合は子どもたちの不登校を前向きに捉え、「学校という環境が合っていないなら家で学べば良い」というスタンスで過ごしていますが、そんな私にも不安はあります。そこで、1つでも不安を取り除くことができれば、親も子も心に余裕ができるのではないかと考えてみました。すると、上記項目の中で解決できそうな項目が「学校に通わずに勉強はどうするのか」だったのです。「学校のお友だちは、どんどん先に進んでいるんだろうな。私は勉強しなくていいのかな?」と娘が不安を口にした時から、なんとかこの不安を払しょくしてあげたいと思っていました。「親子で勉強するとケンカになる」という話をよく耳にしていましたので、「国語と算数は教科書の内容を全てクリアできます」と説明のあった学研教室に通わせてみたりもしました。しかし、これでは他の教科がカバーできません。理科実験教室なども探してみましたが、なかなか良い場所が見つからず悩んでいました。先生から誘われた2学期のテスト。それは、友達と同じ範囲を勉強するチャンスだった出典 : そんな折、学校の先生から「みんなと同じ2学期のテストを受けてみませんか?」というお話をいただきました。(娘は不登校ですが籍は学校に置いています)娘と相談した結果、教科書を使って親子で勉強し、テストにチャレンジしてみることに。先生からテスト範囲を教えていただき、娘とともに教科書を開いてみました。一瞬、「本当に教えられるのかな?」とひるみますが、私が不安に思うと娘にも伝わってしまいますので、一緒に勉強をし直すつもりでどっしりと構えていました。初めに手をつけた算数は、小数点の計算や図形の問題、コンパスで円を描くなどの部分がテスト範囲に入っていました。娘はまだ小学3年生。落ち着いてゆっくりと向き合えば、まだついて行けそうな内容です。「へ~!これはこういうことだって!知ってた?」と聞いてみると、案外簡単なことがわかっていなかったり、逆にそんなことを知っていたの?と驚くことも出てきたり、わが子の思いがけない一面を発見でき楽しくなってきました。テストに向け、いざ勉強!使用教材と勉強手順は…出典 : 教科書をざっと確認した後で、テスト勉強に使えそうな問題集を書店で探すことにしました。学校へ通っていた頃には意識したことがありませんでしたが、いろいろな教材が並んでいるものですね。その中でわが家が選んだのは、「教科書ワーク」と「教科書ぴったりテスト」というものです。株式会社文理が、各教科書出版社の内容に準拠して作っているものなので、内容はもちろんぴったりと合っていますし、教科書の範囲に対応した目次がついていて、とても使いやすい問題集になっています。地区によって使用している教科書の出版社は教科ごとに異なりますので、お手に取る際はお子さまの教科書をしっかりとご確認ください。試行錯誤の末、わが家ではこのような手順で勉強を進めることにしました。① 問題集をいきなり解いて丸付けをし「わからない」部分を認識する② ①で認識した「わからない」部分を意識しながら教科書を読む③ 不正解だった問題に再度取り組む④ テストに取り組み「わからない」部分への理解度を確認する問題集は書き込む前に、あらかじめコピーを取っておくと、何度も挑戦できていいかもしれませんね。文理の教科書ドリル子どもと勉強をするとき、私が肝に銘じていること出典 : テストは児童の下校終了後に学校で受けさせてもらいました。結果はまだ返ってきていませんが、「学校の勉強についていけなくなる不安」を払しょくするために始めたことですので、「教科書でお友だちが習ったところは自分も勉強した」という満足感を得られたことで、目的は達成できたように思います。今回、親子で勉強をする上で強く意識していたことがあります。「理解が進まない場合、子どもに問題があるのではなく、伝える側に工夫の余地がある」ということです。これは以前の子育てからの教訓です。我が家は娘のほかにADHDの息子がいます。息子は聞いて理解することが苦手だったのですが、そのことに気付かなかった私は、口頭で何度説明しても理解できなかった息子に呆れ果てていました。その後、息子が「視覚優位(見て理解する力が優位)」だったことを知り、絵に描いて説明したとたん、できることがどんどん増えていきました。このとき、「伝え方を工夫するだけで、理解できることもある」と知り、息子を責め続けていたことを反省したのです。わが子を1番よく知っている立場だからこそ、できることがきっとある出典 : 誰かに何かを伝える時、自分が1番得意な方法で相手に伝えることが多いのではないかと思います。しかし、相手にとっては、それがベストな方法とは限らないのです。「どうしてわからないの!」という言葉は絶対に子どもに言うまいと決めていました。その代わり、子どもがつまずいた時には「この説明だったらどう?」「ちょっと違う方法で説明してみるね」と何通りかの方法で説明をしながら、子どもに合う方法を探っていくようにしました。先生でもない私が勉強を教えることができるのだろうか?という不安から始まったお勉強タイム。終わってみれば、共通の話題が増えたり、子どもが理解しやすい方法を見つけられたことで、生活の中にも活用できたりと、プラスの面が多かったように思います。同じような不安をお持ちの方がいらっしゃいましたら、まずは1教科からでもお子さんと一緒に勉強に取り組んでみてはいかがでしょうか?お子さんの特性をより深く知っている保護者の方だからこそ、もしかすると「世界でいちばんわかりやすい先生」になれるかもしれません。私もそれを目指して頑張ろうと思います!
2017年01月10日不登校児の親がぶつかる壁。それは、子どもの成長が実感できないこと出典 : 皆さんが子どもの成長を実感するのは、どんなときでしょうか?私の娘は小2から不登校のまま中学生になり、その間学校の勉強はほとんどしてきませんでした。このため、子どもの成長を実感する機会が、他のご家庭より少なかったのではないかと思います。そんなとき、あることをきっかけに娘の成長を実感することとなりました。今回は、ちょっと視点を変えることで実感できる、子どもの成長についてご紹介したいと思います。娘は、不登校になってから2年間ほどは、「家にいても休んだ気がしない」「ママが怒るのが怖い」と言うばかりで、学校にも行かずに家にこもり、何を考えているのかよくわかりませんでした。その後何年たっても、勉強は一切せず、平仮名は鏡文字、お金の概念もわかっていない、これでは社会に出るどころか日常生活も無理ではないかと思うと不安で仕方ありません。不登校児は何を考えているの?講演会に参加し、気づいたのは出典 : 不登校について勉強し、不安を解消したかった私は不登校の講演会に参加することに。そのとき講師を担当されたのは、私が娘のことで教育相談をお願いし、ずっとお世話になっていた先生でした。講演会では、これまでに先生が関わってきたご家庭の様々な手記や、子どもたちの言葉を紹介しながら、「家族との関係づくり」について語られました。このとき、娘の言葉も事例として紹介されました。先生:「さて続いては、小学生で不登校になったお子さんです。小さいからといって子どもが何も考えていないわけではありません。その子は小2から不登校です。4年生の9月『このままだとネットゲーム廃人になる』、5年生の5月『私だって働きたい』…」先生を通じ、改めて娘の言葉を聞いた私は涙が出そうになりました。次々と時系列に紡がれる言葉が、娘の心の葛藤、成長を生き生きと伝えていたからです。子どもから無理に言葉を引き出さない。傾聴することで現れた娘の変化出典 : 娘の紹介事例は続きます。先生:「その子は『東大に行きたい』って母親に言ったんです。普通だったら『あんた、学校にも行ってないのに何言ってるの』ってなるでしょう?でもそのお母さんは黙って聞いているんです。これは親の立場では、なかなかできません。」そう、私は娘がどんなことを言ってきても言い返したりせず、傾聴してきました。その理由は、私が長い間カウンセリングを受けてきた影響です。カウンセラーは私に言いました。「僕をテープレコーダーだと思って好きなことを話してください。僕はテープレコーダーだから何も言わないし、誰にも話さないから。」この言葉にとても安心しました。どの先生も、私が言うことに黙って真剣に耳を傾け、認知が歪んで生活に影響を及ぼしているときだけ、さりげなくものの見方を教えてくれました。それが本当に心地よく、心を支えてくれるものだったから、私も娘に対し、そうありたいと思うようになったのです。出典 : どうやらそれが、娘には合っていたみたいです。娘の言葉をジャッジすることなく聞くうち、だんだんと「あの時はこんなことが嫌だった」と学校であったこと、家であったことなど、素直に自分の気持ちを話してくれるようになっていきました。不登校児というのは、学校に行けないことで悩み苦しんでいます。それはときに、自己否定に繋がることも。すると、自分を客観視することができずに、どんどん内に引きこもっていきます。娘がこうして自分のことを話せるようになったのは、大きな成長の1つだと私は思っています。このときの講演会に参加したことで、自分が取り組んできたことやそれまでの子育てに対し、自信が持てた気がします。親が焦るほど、成長は実感しにくいのかもしれない出典 : 振り返ってみると、娘が学校に行っていた頃、そして不登校になってから始めの数年は、私は子どもの気持ちより自分の気持ちを吐き出し、押し付けることばかりしていたように思います。学校に行くことができなくなった娘は、どれだけ辛かっただろうと思います。それが、娘が過去に言っていた「家にいても休んだ気がしない」という言葉に表されていたのでしょう。子どもは否定されると口を閉ざしてしまいます。子どもの成長を実感できる、貴重なつぶやきを聞き逃さないためには、親は相づちを打つ程度でちょうどいいのだと思います。
2016年12月30日今、ようやく思える「自分の人生に意味があった」ということぼくは今まで、本当にたくさん人に迷惑をかけてきた。不登校だけじゃなく、周囲の迷惑になることもしてきた。でも、変わらず僕を心配し愛情を注いでくれる人達がいた。「あなたはあなたで大丈夫」「生きていてくれてありがとう」そう言ってくれる人がいた。同じ言葉を、今苦しんでいる子どもたちにも届けたい。想いを繋いでいきたい。講演ライブをはじめたばかりの頃、過去の経験を話すたびに胸が苦しくなって涙が溢れた。今でも涙が溢れてくることがある。それでも活動を続けたいと思うのは、「不登校について考え方が変わりました」と言ってくれたり、「死にたいと思っていたけど、生きていこうと思えました」と言ってくれる、子どもたちと出会えるから。自分の経験にも意味があったんやなって、思えるようになった。「逃げる」ことはときに、生きるために闘うことだと伝えたい出典 : 僕の不登校のきっかけになったのは、クラスメートの女の子へのいじめだった。そのいじめの対象だった女の子は16歳で自殺して亡くなった。あの時なにもできなかった自分をものすごく責めた。ぼくは逃げてしまったけど、彼女は我慢して我慢して、そして最後には命を絶った。今振り返っても、苦しくなる。彼女の死を僕は忘れない。今現在、あの時の彼女のように1人で踏ん張っている人がいたら、「一人ぼっちでどうにも出来ない時は、逃げていい」と伝えたい。「逃げる」ことはときに、生きるために闘うことだと伝えたい。いじめの話を学校でしていたとき、生徒さんの中で、倒れてしまい保健室に運ばれた女の子がいた。彼女は自分自身のいじめの経験がフラッシュバックして倒れた。講演を終えすぐに、彼女がいる別室にいくと過呼吸になって泣いていた。僕は彼女に、「生きていてくれてありがとう」と伝えながら、隣にいることしかできなかった。どうしてこの子がいじめにあわなくちゃいけないのか、とても苦しくなった。彼女は周囲に相談していじめから逃れることができた。後日、「生きていこうって思えました」という手紙を送ってくれた。僕たちは、経験を伝えることで誰かを傷つけたいとは思っていない。けれどあの頃の僕らのように、誰にも相談できず、未来も見えず真っ暗闇の中で今日を生きている人がいること。そんなみんなに僕らが元気な姿を見せることで伝えたい。「生きていればいつか、そんな日があったと笑える日が来るよ。大丈夫。」講演ライブも続けながら、今後は小さい子どもたちへむけて、絵本をつくってメッセージを伝えていきたいとも思っている。昔から絵本が好きだった。ことばじゃなくて、感覚で子どもたちに伝わっていくような絵本を作れたらいいなと思っています。親の笑顔は、何よりも大きな希望になる学校でも家でも、悩みはどこでもうまれるから、「不登校=家が過ごしやすい」ということではないと思う。学校にも家にも「居場所がない」と感じる子どもも沢山いる。僕の場合は、【不登校の親の会】という居場所があった。学校や年齢も関係のない、ごちゃまぜのコミュニテイの存在は、僕にとって大きな意味を持っていた。不登校を気にしないでいてくれる大人たちの存在も大きかった。「お前ら不登校か、それがどうした!キャンプいこうぜ!」みたいな、人の心にズケズケ入ってくる人達の存在も頼もしかった(笑)ただ、大人になるまで、自分の親と不登校についてじっくり向き合って話すことはなかった。今になってようやくわかること、あの当時親も苦しんでいたこと。僕らと同じかそれ以上に。親は今でも「幸せで笑っていてほしい」と言ってくれる。だけど僕はそれと同じくらい、「親にも幸せで笑っていてほしい」と願っている。苦しい時期、悩みの渦中にいた僕に、親は共感し泣いてくれた。そのことはとても嬉しかった。けれどそれ以上に僕を救ってくれたのは、親が笑ってくれた瞬間。今悩んでいる親御さんには、ぜひ自分の人生を大切に生きてほしい。まずは親御さん自身が「幸せだ」と思える人生を送って、笑顔を、幸せでいる姿をお子さんに見せてほしいと思っています。
2016年12月29日音楽療法とは?出典 : 音楽療法とは、音楽のさまざまな力を利用して、対象者が抱えている困りごとの改善を促したり、よりよい生活を送ったりすることができるようにアプローチする療法です。日本音楽療法学会では、次のように定義しています。音楽療法とは、音楽のもつ生理的・社会的・心理的はたらきを用いて、心身の障害の回復、機能の維持改善、生活の質の向上、行動の変容などに向けて、音楽を意図的・計画的に使用することです。ここでいう「生理的・社会的・心理的はたらき」とは、以下のことを指します。・生理的働き:音楽を通してリラックスしたり興奮したりする状態をもたらすはたらき・社会的働き:コミュニケーション手段(言葉・表情・身振り・まなざし)を引き出すはたらき、人間関係の形成を促すはたらき・心理的働き:ストレスや不安を軽減するはたらき音楽療法は、音楽療法士という資格をもった音楽療法の専門家が行います。対象者の目的に合わせたプログラムを組み、音楽を演奏したり対象者が音楽に触れる手助けをしたりします。音楽療法では、対象者が音楽を学ぶことを目的としているわけではありません。音楽療法の目指すところは、音楽をきっかけにソーシャルスキル(コミュニケーション・社会性など)を習得できるよう促したり、心身の発達を援助したりすることです。音楽療法の現状出典 : 現在の日本では、音楽療法は未だ発展途上の段階です。保険の適用や法整備はまだ実現されておらず、資格も国家資格ではなく、日本音楽療法学会をはじめとしてさまざまな団体や自治体が民間資格として打ち出しています。加えて音楽療法士の資格のみで就職するには難しく、非常勤での雇用が常勤より多いのが現状です。一方、現在の音楽療法の発祥の地と言われるアメリカでは、音楽療法は日本より普及しています。民間の保険が導入されているため、保険会社の了承を得られれば保険給付を受けることもできます。アメリカでも音楽療法士の資格は民間資格ではありますが、日本と違ってアメリカ音楽療法学会American Music Therapy Association (AMTA)が資格を一括管理しているため、音楽療法士という社会的地位は日本と比べるとしっかりと確立されています。音楽療法士の資格を取得しても、就職枠をめぐる競争は激しいですが、就職形態は常勤の形態が多いようです。参考:音楽と人間との新しい関わり~音楽療法とその周辺~資格や制度ではアメリカと差異がありますが、日本における音楽療法そのものは、高齢者施設、児童施設、病院などの、福祉・教育・医療分野などを中心に積極的に取り入れられてきています。ほかにもメンタルヘルスケアや、精神保健、健康の維持のためにも応用されるなど、幅広い分野で活用されています。音楽療法の対象は?出典 : 音楽療法はだれが受けられるのでしょうか。音楽療法では心身の障害の回復だけでなく、機能の維持改善、行動の変容、生活の質の向上を目的としています。それゆえ、その対象者は幅広くいます。・身体・発達障害児(者)・精神障害者・認知症を患う高齢者・終末期の患者・不登校、引きこもりの児童や生徒これは一例であり、音楽療法はさまざまな場面で、さまざまな人に利用されています。とくに子どもにとって音楽は親しみを持ちやすく、また非言語表現であるために受け入れられやすい傾向にあります。発達障害のある子どもも、楽器の音やさわり心地、リズムに合わせて動くことに興味をもつことが多く、そのため療育の一環として音楽療法を取り入れることは子どもにとって良い刺激となるかもしれません。そこでここからは、発達障害のある子どもが音楽療法を受ける場合の目的、また具体的にどんなことをするのかに関してご紹介します。発達障害のある子どもが音楽療法を受ける目的は?出典 : 音楽療法を受けることは、発達障害のある子どもにとって、どんなスキルの成長、症状の改善が見こまれるのでしょうか。ソーシャルスキルとは、人が社会で生きていくうえで必要な技術のことを言います。例えば、ルールを守る、あいさつをする、他の人の気持ちを考えながら会話をする、などが挙げられます。通常、このソーシャルスキルは人との出会いや関わりの中で無意識に身につけていくことが多いのですが、発達障害のある子どもの場合、ソーシャルスキルのスムーズな獲得が難しい場合があります。音楽療法においては、音楽療法中の音楽療法士とのやりとり、その場で一緒に音楽療法を受けている子どもとの関わりの中で、他の人との関わり方や協調する必要性などを肌で感じられるような環境をつくり、ソーシャルスキルの獲得を促します。発達障害のある子の中には、運動機能の発達がゆっくりであったり、年齢相応の運動機能の獲得につまづきがある子どももいます。運動機能でのつまづきといっても、姿勢を一定時間保つことができない、手と手、手と目、足と手などの個別の動きを一緒に行う協調運動ができない、変化にすぐ反応して動く即時反応がうまくできないなど、子どもによってどんな動きが苦手なのか異なってきます。音楽療法では、子ども一人ひとりを見つめ、何ができるようにするかという目標設定と振り返りを細やかに行うことで、子どもそれぞれの苦手を伸ばしていけるようなプログラムづくりをします。運動機能に関して困りごとのある子どもに対しては、歌詞に合わせた振りをつけながら歌を歌う、リズムに合わせて簡単なダンスをするというような活動をプログラムに組み込み、運動機能が伸びるよう促します。歌ったり、楽器を演奏したり、ダンスをしたりと、音楽は自己表現力が求められる場面が多くあります。音楽療法を通して、自分から何かを表現することへの苦手意識を減らしていく、想像力を豊かにしていくことが期待できます。発達障害のある子どもの中には、なかなか発声・発語がうまくいかない子どももいます。そのような子どもに歌や楽器の音を聞かせることで、子どもへの刺激となり、発声や発語を促すきっかけになると考えられます。このように、発達障害のある子どもへの音楽療法には、たくさんの目的があります。また、実際に発達障害のある子どもの療育に音楽療法を取り入れて、はさみの使用やひも結びなどの細かな手先の運動能力が向上したり、発語回数が増えたりしたという結果が出た事例もあります。自閉症児における音楽活動を介した支援の効果について―自閉症児に対する行動療法的音楽療法の事例を通して―倉田裕子・安部博史著知的障害児における音楽療法の事例研究―音を使用したケアデザイン―長田 有子著ただここで注意したいことは、子どもそれぞれの特徴や性格、また音楽療法に何を望むかによって、変化が出るまでの期間や変化の程度が変わってくるということです。音楽療法を始めてすぐ、子どもに目に見える変化が表れるということはなかなかありません。保護者としては、音楽療法に子どもがどのように取り組んでいるかをよく理解し、音楽療法士とも細かく情報共有をすることで、子どもの成長を長い目で見守ることが重要です。音楽療法って具体的にどんなことをするの?出典 : 音楽療法には活動内容や一緒に受ける人数によって以下の種類に分けられます。音楽療法が行われる施設や音楽療法士の数、そして音楽療法の対象となる子どもにあった方法が適用されます。・能動的音楽療法能動的音楽療法では、子ども自身が音楽活動を行います。例えば歌を歌う、楽器を演奏する、ダンスなどの身体を使って音楽に触れる、作詞・作曲をしてみる、といったことをします。・受動的音楽療法受動的音楽療法では、音楽鑑賞、つまり子どもに音楽を聴かせることを主な活動としています。リズム性の強い音楽を聴かせることで子どもの感情表出を促したり、反対にゆったりとした音楽を聴かせることで緊張をほぐしたりします。・個人音楽療法子ども1人に対し、音楽療法士1人が向き合い、音楽活動を行います。子ども一人ひとりがこれまでどのように音楽とかかわってきたか、どのように生活していてどんな困りごとがあるのか、好き嫌い、ニーズなどを考慮して、その子どもにあった療法内容を検討できるうえに、 きめ細かい対応が可能です。・集団音楽療法5人以下の小集団から、50人以上の大集団などさまざまな人数で行います。集団音楽療法では、他の子どもと一緒に音楽活動をすることで、集団の中で行動するときに必要な社会性や協調性を育てることが期待できます。実際の音楽療法の現場では、個人音楽療法×受動的音楽療法、集団音楽療法×能動的音楽療法などのように、子どもに合わせて、一緒に音楽療法を受ける人数と活動内容との組み合わせを決めます。・リトミックを取り入れた音楽療法また、「リトミック」という音楽教育方法を音楽療法に応用して使っているケースもあります。リトミックとは、リズム運動を音楽活動に取り入れ、子どもに音楽を体感させることで感受性や想像力を高めることを目的としている教育方法です。あくまでもリトミックは教育方法、音楽療法は治療法です。この点を正しく理解したうえで、子どもに合う音楽療法を選択しましょう。『音楽療法総論』渡辺恭子著風間書房出典 : では、音楽療法は実際どのように行われるのでしょうか。音楽療法を実施するうえでは、「子どもが興味を持たないことを無理やりはさせない」ということを基本的な考え方としています。子どもが「やってみたい」と思えるような音楽活動を音楽療法士が提案し、子どもの興味に寄り添って実践しているのです。◇音楽療法の流れ1. 情報収集、子どもの今の状態を知る・対象の子どもを細かく観察し、どのような困りごとを抱えているのかを把握したり、保護者から子どもの普段の様子などの情報を得たりすることで、子どもの現状を把握します。また、幼稚園や保育園の先生、学校の先生、主治医からの情報提供、医学的・心理的検査などの実施を通して、対象の子どもに対する情報を集めていきます。2. 目標設定子どもの現状や集めた情報を総合的に判断し、音楽療法を通して子どもに何を実現させるか、何を育ててあげたいかといった目標を設定します。合わせて、目標達成のための手段や手順も考えます。3. 音楽療法の実施情報収集や目標設定などの事前準備ができたら、実際に音楽療法を対象の子どもに行っていきます。音楽療法では、現場で対象者と行う音楽療法活動をセッションと呼びます。設定した目標のもと、音楽療法士はセッションを円滑に進めつつ、個人・集団に関わらず子ども一人ひとりをしっかり観察します。そして、ちょっとした変化も見逃すことなくほめてあげるよう心がけます。また、セッションの様子はビデオなどで記録したり、筆記で残したりします。4. 振り返りセッションを通して子ども一人ひとりの目標設定や与えた課題が適切であったかを振り返ります。1セッションでの反省などをどう生かすか、どう改善していくかを念頭に今後の取り組みを考え、次のセッションへの準備に取りかかります。音楽療法を受けるには出典 : では、音楽療法を受けたい場合、どうすればよいのでしょうか。実施施設や実施までの仕組み、費用についてご紹介します。◇音楽療法を実施している施設社会福祉法人や特定非営利活動組織(NPO)が運営する障害児入所・支援施設や発達支援施設、デイサービスセンターなどで音楽療法を実施している施設があります。参考:音楽療法を実施している施設◇音楽療法を実施している病院病院では、小児科、精神科、リハビリテーション科で音楽療法が受けることができます。webサイトで受診科など明示している病院もあります。参考:音楽療法を実施している病院施設・病院どちらを選ぶにしても、音楽療法士が常勤なのか非常勤なのか、ボランティアとしての実施者がいるのかどうか、受けられる頻度、1回の療法時間などを確認したうえで施設や病院に連絡をしてみましょう。とりあえず見学してみたい、という希望があれば受け付けている施設・病院もあります。また、音楽療法を実施する前に、会員登録や子どもの状況把握のための面接といった機会を設けている施設や病院もあります。どの施設・病院で、どの種類で音楽療法を受けるかによってかかる費用は異なってきます。例として、福祉施設・病院それぞれでの音楽療法に具体的に必要な費用を紹介します。ある福祉施設では、1回あたり700円~1030円で利用できます。MOYO【音楽療法推進センター/児童発達支援多機能型事業所】18才『未満』の方は児童発達支援事業所の下記3事業を利用することができます。◎児童発達支援事業利用料:約845円/1回◎放課後等デイサービス利用料:約700円/1回◎保育所等訪問支援利用料:1030円/1回*利用者さんの所得状況により、利用者負担額に上限が設けられています。*その他変更や加算により料金が変更になる場合があります。18才『以上』の方は研究事業として音楽療法を受けることができます。個人セッション3500円から(1セッション30分)障害のある子どもが福祉施設で音楽療法を受ける場合は、児童福祉法に基づき、障害児給付費の対象として、国や自治体から費用負担が受けられます。各市区町村ごとにサービス利用料の月額上限を定めている場合が多いため、世帯収入などによっても自己負担額が変わってきます。加えて教材費、施設外活動費などの活動に必要な実費がかかる場合もあります。以下のサイトにて、福祉施設で音楽療法を受ける一例として、放課後デイサービスで実施されている音楽療法に参加する場合に、障害児給付費がどのように適用されるかを紹介しています。そのほかにも、音楽療法はさまざまなサービス・事業の一環として行われていて、それぞれ費用補助が異なってきますので、実際に音楽療法を利用する前によく確認しましょう。障害者福祉:障害児の利用者負担厚生労働省また、病院では自由診療の項目として「音楽療法は1回いくら」等と明示しているところもあります。病院ごとにそれぞれで費用は異なってきますが、個人で利用するのか、集団で利用するのかなどで細かく料金設定をしている場合があるようです。事前にホームページで調べてみたり、直接医師や音楽療法士に聞いてみたりすることをおすすめします。参考:筑波こどものこころクリニックホームページ音楽療法を受けた体験談出典 : 現状、日本ではまだまだ音楽療法は普及段階にあります。それゆえ、音楽療法に興味はあるけど受けるかどうか迷っている保護者の方もいらっしゃるかもしれません。ここでは実際に音楽療法を受けた、という保護者の体験談をご紹介します。次男が自閉症で、月二回程度音楽療法を受けてます。次男のような典型的な自閉症の子から、高機能の子、ダウン症の子、自閉症でもダウン症でもない知的障害の子で運動機能面の発達の遅れもある子等が一緒に受けていて、年齢も様々で、次男は年中の終わり頃から通い始めこの四月から三年生ですが、年中の頃から上は小学六年生の子まで一緒に受けてます。次男が受けているものは、見た感じとしては一般的なグループ療育の課題が、全て音楽に関わったものといった感じです。先生(音楽療法士)が楽器を演奏してそれに合わせて体を動かしたり声を出したりといったことと、楽器を演奏するといったことを組み合わせて課題になっていて、障害の状態や年齢に合わせて課題を若干変えたり、子供同士の組み合わせを工夫したりといった形でやってます。数を数えながら楽器を叩いたり、フリップに書かれていることを読んでそのとおり演奏したりもします。太鼓やマラカスのような良く見る楽器から、普段あまり見慣れない外国の楽器、ちょっと特殊な楽器、洗濯板やコップのような楽器以外のものなんかもつかっています。セッションでは毎回息子の行動に関する目標を立て、それを達成するために音楽療法士の先生方がセッションをアレンジしてくださっています。目標は様々で、例えば「気持ちの切り替えができるようにする」「先生の真似をしてみる」「順番を待てるようにする」「アイコンタクトをしてみる」などです。「話すときは顔を見なさい!」と頭ごなしに叱ったところでパニックを起こしてしまうだけ。音楽療法のセッションの間は、音楽を演奏したりゲームをしたりする中で、ふっと子どもが音楽療法士の顔を見る瞬間を作るのです。その瞬間を療法士は見逃しません。すぐに褒めてくれるのです。こういったセッションを繰り返すことで、息子は自然にアイコンタクトが出来るようになりました。まとめ出典 : 音楽療法とは、音楽という非言語的アプローチを用いて心身の発達を援助したり、より豊かな生活を送ることができるようにしたりする療法です。音楽という楽しみながら参加できる活動なので、子どもにとっては遊びの延長のような感覚でさまざまなスキルを身につけることができます。音楽療法という療育方法は、日本ではまだまだ発展途上にあることも事実です。ですが、音楽療法によって発達障害がある子どもの困りごとが改善されたという声も多くあり、これからもっと利用されていくであろう療法の一つでもあります。保護者が音楽療法について理解することで、子どもによりよい療育機会を提案することができ、療育の選択肢を増やすことにつながります。そのうえで、子どもの「やりたい」という気持ちに寄り添うことを大切にしながら子どもの成長をサポートしていきたいですね。
2016年12月27日不登校のまま中学生になった娘は、この先将来どうなるのだろう…出典 : 娘が全く学校に行かなくなったのは小学校3年生の9月からです。家では勉強を一切せず、パソコンとゲーム三昧の日々。長い間、鉛筆を握ることすら嫌がり、2ケタの計算やお金の概念もよくわかっていない、字はひらがなもおぼつかない…という状態が小学校時代は続きました。お金の概念は、お小遣いのやり取りや、ネットショッピングの代金引き換えを娘に払ってもらうことで、中学生になる頃には次第についてきました。その後、中2になって支援を受けられるようになり、日記を書くこと、九九を覚えることを始め、字もしっかりして進歩は見られるようになりました。だけど言語能力は高いものの、書くこと、計算することが極端に苦手な娘を見ていると、「この状態で本当に高校に進学できるのだろうか?」「進学したとしても仕事をすることができるのだろうか?」と正直不安でした。娘は、「高校へ行きたい」「できれば大学へも行きたい」「あまり無理しない程度に働きたい」と言っています。ただ、それは私を気遣って言っているのか、本心から望んでいるかはよくわからないな…と感じるのです。本当のところ、娘は将来についてどう思っているの?出典 : パソコンを持っていた娘は、パソコンで様々なニュースを見ていました。そして小6くらいから「働くこと」について、ネットでいろいろな情報を得るようになりました。そして不安から、こんなことをふとつぶやくようになりました。「コンビニの店長が借金苦に自殺したって。コンビニってブラックやんなぁ。バイトしようと思ってもブラックなとこばっかりやなぁ。でも私も考えてるんやで。高校入学の時までには計算できるように勉強しようと思ってるねん。バイトするには計算できなあかんもんな。プログラマーだけにはなりたくないけど、私にはこんな仕事しか無理かもしれない。」ブラック企業のことを知って、「学校に行っていない自分にはブラック企業しか行くところがない」と言っていたこともあります。出典 : そして今年、中2になって働いている人と話す機会を持つようになった娘は、ますます「働く」ということについて、自分の考えをしっかり持ちながら考察するようになっていきました。先日のことです。娘「来年、中3になるの?嫌やなぁ。もう1回中学生やりたいな。」私「え、6年間中学生やりたいわけ?」娘「そう。だって働きたくないねん。」私「小学校のときは働きたいって言っていたのにね」娘「何も知らなかったあの頃と、ブラック企業のことや、『どうやら自分はこの社会で楽しく働けそうにない』ってわかってしまった今と一緒にせんといて」この頃は、「自分には9時5時という働き方ができるとは思えない」「もっと短い時間で働きたい」と自分を分析したうえで、仕事のことを考えていた娘。「働きたくない」と言うのも無理はないなぁと思いました。振り返ってみて、娘はとても現実を正確にとらえているな、と感じました。そして、今の社会の生きにくさをしっかりと感じ取っています。それは思考停止状態でとりあえず前へ進むよりも、辛いけれど素晴らしいことだと私は思っています。母娘2人きりの家庭。不安を抱く娘を前に、親としてできることとは出典 : 娘が働くことやブラック企業のことを意識し始めてからは、「勉強はいくつになってからも挽回できる」、「いったん就職したからすべてが決まるわけじゃない。ダメだと思ったら何度でもやり直せばいい」と伝えていました。ただ、不登校の娘は、母である私の姿から社会を見ているところがあります。私はアスペルガー症候群の診断を受け、それは娘にも伝えています。どの職場でもイジメに遭い、だんだんと追い込まれてうつ状態になった末に退職する私の姿を、娘は側で見ているのです。それでは働くことに希望を持つことも難しいでしょう。だけど、発達障害者にとっての現実を見るのも大切なことだと思っています。社会が変わらない限り、同じような困難が待っているのは本当なのですから。そのかわり、失敗して終わりではなく、障害者職業センターに行って学んだことを娘に話したり、障害者雇用について「普通の働き方が辛い人には、こんな働き方があるよ」とさりげなく伝えています。娘自身にも障害があることはまだ本人に告知していませんが、同じ障害を持つ娘が抵抗なくそういう生き方もあると肯定的にとらえられるように気を配っています。不登校の子どもに親として与えるなら、不安ではなく安心を出典 : 私の娘にはアスペルガー症候群の診断がおりていて、小2から不登校になりました。同じような境遇の親御さんもおられることでしょう。「この子はこのままで大丈夫だろうか?」と思う気持ちは痛いほどわかるつもりです。でも、その不安を直接お子さんにぶつけるのはやめてあげて欲しいのです。なぜなら、不登校の子どもも「このままで将来どうなるんだろう」「自分が生きている意味はあるんだろうか」と真剣に悩んでいるからです。そして、その答えを親に求めてくることがよくあります。そんなとき、「だから学校に行かなければならないよ」「もっと勉強しなさい」「世間は甘くないんだよ」とつい言いたくなるのが親心ですが、そうした「やらなくてはならないこと」は子ども自身が一番よくわかっているのです。それができずに悩んでいるのです。ですから、そうした言葉は親からは決して聞きたくないと思うのです。ただただ、子どもの言葉に耳を傾け「あなたはそう思うんだね」としっかりと受け止めてあげて欲しいと思います。私も娘のつぶやきにはただ「そうか…。」と話を聞くだけに留めるようにしています。親としては焦りや不安もあると思いますが、子どもたちの不安をまずは払拭してあげたいものです。できるだけのことはしてあげて、口は出さない。それが自立への早道になると私は考えています。
2016年12月23日不登校の親の会で、仲間に出会う出典 : 誘われて参加するようになった【不登校の親の会】で出会ったのが、一緒にJERRY BEANSを始めることになる八田くんだ。八田くんや、ほかの不登校の仲間をみて、「自分だけじゃなかった」「同じように学校に行けない人がいるんだ」と知ることができた。八田くんは家が近所だった。出会ってすぐに仲良くなり、翌日からは毎日会うようになる。僕と双子の兄弟、八田くんの3人でいつも一緒にいた。それまで家に籠もりきりだったのが自分でも嘘のようだった。思い切り遊び、思い切りぶつかれる仲間みんなが学校へ行っている時間に、山で探検したり琵琶湖に釣りにいったり、山の中の公園で野球したり、と今までやりたかったことが溢れだした、本当に楽しい毎日。それでも常に、僕らの心の中にはうしろめたさがあった。だから、学校が終わる時間までには絶対帰っていたし、人に会わないようにと自然にそういう場所を選んだ。わざわざ言わなくても3人は同じ気持ちを共有していたんだと思う。当時の僕らは、コミュニケーションで相手に気を遣うことができなかった。嫌なことがあったらすぐに爆発していたし、穏やかだったのに、一瞬で顔色が変わって険悪になったり。空気を読むのがとても苦手だった。でも、共通の趣味である音楽を聴いている時や、楽器を合わせている時は、言葉がなくても自然と打ち解けていた。音楽にのめり込んだのは、親が背中を押してくれたから出典 : その頃、八田くんがギターを習っていて、それに憧れてみんなで音楽をやり始めた。楽器がほしいからと、新聞配達のアルバイトを始めたりもして。「仲間とバンド活動をする」ということが、僕たちの生活に希望を与えてくれた。夢中で楽しんでいる、その気持ちが親たちに伝わったのか、なんと自宅の部屋をスタジオみたいに改良してくれた!「のびのびできるものを見つけたんだから、思い切りやったらいい」、そう言って背中を押してくれた。不登校で困らせていたはずの親が喜んでくれた。そのことが嬉しくて嬉しくて必死で練習した。ある時、「自分はこれで生きていくんだ!」と決意した。自分にも存在価値がある、と思えるように自分なんて大嫌いで、存在価値もないと思っていたけれど、そんな考えを変えてくれたのは、自分と本気で向き合ってくれる周りの人たち。例えば、ずっと部屋から出られず、ご飯も食べられない時期に、リビングでご飯を食べただけで、本当に喜んでくれたり。そうやって1つひとつの小さな変化を喜んでもらえることで、「自分も生きていていいんやな」って思えるようになった。バンドを始めたら、どこから聞いたのか、同級生が文化祭の時期に「楽器を教えてほしい」と言って訪ねてきてくれたことがある。「ずっと学校行ってないのに、同級生が会いに来てくれた。褒めてくれた。」こんな嬉しい気持ちになったことはなかった。「僕らでも、何か出来る事が1つあれば、コミュニケーションしていけるんや」、「こうやって認めてもらえるんだな」と、少しずつ自信を持てるようにもなった。道徳の授業や特別授業の一貫として、生徒たちに過去の経験や未来への思いを伝えるという「講演ライブ」を行っている山崎さん。不登校に悩み苦しむ子どもたちやその親御さんに、いま伝えたいことを語っていただきました。
2016年12月22日息子にADHDがあるとまだ知らなかった頃。夫は息子にとても厳しく…出典 : 我が家にはADHDがあり、現在不登校の小学4年生の息子がいます。昔、息子にまだ発達障害があるとわからなかった頃、言うことを聞かず、動き回る息子に対して夫はよくブチギレていました。公共の場所で、皆が振り向くような大声を出して怒鳴り散らしたり、時には手を上げたりすることもありました。そこに来客がいようが、大勢の人が行き交う場だろうが関係ありません。夫は基本的に柔和な性格ですが、プライドが高い一面もあります。夫が息子を叱る様子を見ていると、どうやら息子の「行動そのもの」ではなく、「自分たち家族がどう見られているか」という世間体を気にして叱っているようでした。私は夫の態度について諭すこともありましたが、夫は私の話を受け入れる様子はありませんでした。「息子は発達障害かもしれない」そう話したとき、夫の反応は出典 : そんな夫に、「息子は発達障害かもしれない」という話をしたとき、どうだったと思いますか?ご想像の通り全く受け付けませんでした。「ワシの息子が頭おかしい言うんか!」「息子を頭おかしい奴らと一緒にするんか!」こんなことを言うのは日常茶飯事で、もっと聞いたこともないような差別用語のオンパレード。世間体を気にする性格ゆえに、「障害」という二文字に過剰に反応してしまったのだと思います。それにしても、認めないにもほどがありました。私はそんな夫の様子をみて、心底呆れました。私は発達障害の息子の頭の中がどうなっているか知りたい気持ちが大きかったのですが、自分の子どものことを受け入れられない夫を「心が狭い」と完全に軽蔑してしまっていました。無理に理解を得る必要はないかもしれない。そんな葛藤を抱えながらも出典 : そんなとき、前に幼稚園の親の会で園長先生が、「お父さんの理解が得られるに越したことはないけれど、そんなことに神経すり減らして費やしている間に、子どもはどんどん成長してしまいます。理解が得られないなら、もうお父さんを無視してお母さんだけで前に進むのも1つの手だと思います。」とおっしゃっていたことを思い出しました。この言葉は何度も私の脳裏をかすめました。確かに、それも1つの方法ですし、子どもの成長は待ってくれません。ですが私はやっぱり夫の理解を得ることにこだわりました。将来まで息子のことを1人で抱え込むことはやはり辛かったですし、自分たちの子どもは2人で育てていきたいと思っていたからです。夫には色々なタイミングで、さまざまな角度から何度も何度もあきらめずに話をしていきました。夫が息子の障害を受け入れるきっかけになったのは、義母の言葉だった出典 : 実は、夫と息子には似ているところもあります。すぐ癇癪を起こしたり、忘れ物が多くて言われたこともすぐに忘れたり、片付けができなかったり…もしかすると自分と似ている息子に「障害」があるのだとしたら、自分にもその可能性があるかもしれないという恐怖が、夫の中にあったのかもしれません。そのせいか、息子の優秀なところを素直にほめられなかったり、息子と張りあったりする場面もありました。しかしそんなとき、我が家の場合は幸運にも、義母が私の救世主となってくれました。義母は、仕事柄子どもと接する機会のある方で、息子と同じように困っている子どもたちを目にすることもあったようです。夫が息子の発達障害を受け入れないことを伝えたとき、義母は私と同じように憤慨してくれました。そして夫との電話で「早く気づいて良かったじゃない!父親のあなたが認めてやらないでどうするの!?」と仰ってくださったのです。その頃から、夫は少しずつ私の話に聞く耳を持ってくれるようになりました。ある日、夫から届いた1通のメール。そこには…出典 : 先日、夫からこんなメールを受け取りました。「私も〇〇(息子)が学校に行かない事が最初は不安だったけど、最近はあまり心配してない。〇〇は私よりも優秀で才能ある。また、私と違いしっかりしている。いつまでも彼は息子で愛おしい。彼が進みたい道に行けるよう、精一杯やる。産まれた時に初めて抱き上げた時の事を今でも覚えている。〇〇には特別な思いがあるのよ。同性で、しかも私によく似たところもある。自棄を起こすところとか。しかし彼は私みたいなところがあっても、しっかり芯を持っていって欲しいし、多分その辺は大丈夫と思うの。どちらにせよ、ヘタに学校行ってこじんまりとして欲しくないのね。学校行くのに納得して行くならいいんだけど、行くのがイヤだからとかそういうので無く、なんか学校に違和感みたいなのを感じたなら別に行かなくとも良いのね。皆が行くから、って違和感感じながらも学校行って大学行って、っていう私みたいにならなくとも良いのよ。あの誰にもない感性は大事にしたいデス。」夫の理解を得ようと悩み続けた2年間。いま振り返って思うことは出典 : この問題は、家庭ごとに千差万別ある本当に難しいことだと思います。我が家の場合、夫の理解を得るまでには2年程かかりました。子どもの日々を考えると2年というのはとても大きいですが、夫の無理解に直面してからの期間としてはとても短い方だという実感です。私の場合も、義母と連携が取れない状態だったらまだ悩みの渦中にいて、もしかすると離婚を考えていたかもしれません。私は夫に一緒に相談機関や医療機関などに出向いて欲しかったわけでなはく、積極的に発達障害や療育について勉強したり、口出ししてほしかったわけでもありません。ただそこにいる我が子のありのままを、当たり前のように正面から認めて欲しかった。その気持ちが伝わったからこそ、こんなメールを受け取ることができたのだといま振り返って思っています。
2016年12月18日不登校児は全国で11万人!もはや他人事ではありません出典 : 近年、不登校の子どもは小中学校だけで全国に11万人以上いると言われています。私の息子も現在中学2年生ですが、登校渋りがあり常に不登校と隣り合わせです。そこで、私が運営する発達障害児の保護者のコミュニティにて、不登校に関する勉強会を開くことにしました。講師は、定時制高校などで不登校から立ち直ろうとする生徒たちと、長年関わってこられた元教員の方です。私だけでなくみなさんの関心が高いテーマなのでしょう。参加者も多く充実した勉強会となりました。勉強会に集まった、あるママの発言です。「子どもが学校へ通えなくなる覚悟はできている。」この言葉を聞いた私は、「不安なのは私だけじゃない」と深く共感したのを覚えています。不登校の状況(内閣府成育環境)保護者が学ぶ「不登校の勉強会」、その内容とは?出典 : 勉強会での様子を1. 保護者からの質問2. 講師の先生からの回答この順番で、詳しくご紹介したいと思います。出典 : 保護者:「登校を再開しても、またすぐに休んでしまいます。そんな時どう対応したら良いのでしょう?」先生:「高校入学を機にやり直しを図る子どもたちを例にお話します。不登校からやり直しを図る子どもたちのほとんどが、『勉強をやり直したい』と言います。しかし、もともとは不登校だった子ども。2~3週間すると息切れして学校を休んでしまうケースが多いのです。息切れの原因は勉強だけではありません。コミュニケーションもストレスの原因の1つ。友達に何十通もメールを送り、返信が無いと『避けられている』と悩んでしまう子。友達ができたことが嬉しくて、衣類から文具までお友達と同じものを買い揃えてしまう子。一方的な正義感から、周囲への要求が大きすぎる子。生徒たちのアンケートによると、「学校へ来る支え」も「学校で苦労すること」も、どちらの原因も「友達」が圧倒的に多いのです。」出典 : 先生:「入学から数ヶ月は、『友達を作りたい』という意欲の大きさに比べ、それまでの経験不足からトラブルが発生しやすい時期で、不慣れなコミュニケーションから休んでしまうのは、むしろ必然と言えるのです。この、最初に休んだ時の大人の対応がとても重要で、ガッカリした素振りを見せず、『休めてよかったね』と声をかけてあげる事が大切です。心が疲れたら体は動きません。不登校の子が学校へ通えるためには、自分で自分の調子を掴み自分とうまく付き合えるようにしていかなくてはなりません。」息子にも、人にストレスを感じつつも関わりたい気持ちが見えます。そして限界を感じると時おり学校を休みます。押したり引いたりしてなんとか学校へ連れて行こうと頑張るよりも、「充電が切れちゃったね」「切り替え日だね」と、気持ちよく休ませたほうが回復も早い…そんな実感が私にもあります。出典 : 保護者:「同じような環境下でも、不登校になる子とならない子がいますが、その違いは何でしょうか?また、立ち直っていくポイントは何だと思いますか?」先生:「不登校になる子は『外からの評価』を気にし過ぎる傾向が強く、自分で自分をがんじがらめにした結果、不登校になるケースが多い。それは誰かに責められた経験の有無とは関係しないと思われます。そういう子どもたちは、環境を変えて高校に進学しても、『1度休むと通えなくなるのでは?』『単位を落としたら、もう通えない!』と、『オール オア ナッシング(0か100かの極端思考)』になってしまいがち。でも、不登校から立ち直る子を見ていると、何かができるようになったから学校に通える、という訳ではないのです。不登校から脱する鍵は、今のままの自分で良いと思える自己肯定です。その鍵を得るためには、『やらせる』とか『教え込む』のではなくて、自分から立ち直るまでとことん付き合ってくれる、そんな大人が必要なのです。」私もかつては「やらせよう」と頑張って登校渋りを悪化させてしまった経験があります。今は良い意味で諦め、良い意味で割り切っています。学校へ行けなくなっても死ぬわけじゃない…それくらいの大らかさの方が、実は上手く行く。根拠はありませんが、経験からそう思います。出典 : 保護者:「子どもではなく、不登校児を抱える親と関わる上でのアドバイスはありますか?」先生:「現代の親子関係は間違いが許されない雰囲気がある。(親の)無理は子どもに伝わる。無理はウソをつくことと同じで、親が失敗を恐れて頑張りすぎることは、必ずしも良い結果に結びつかないのです。不登校児の親は、すでに充分過ぎるほど頑張っています。良かれと思った激励やアドバイスも、実は重たく感じることもあるのです。」頑張り過ぎず失敗に大らかな子育て…このことは、スクールカウンセラーを始め、様々な講演会で聞いたお話でもあります。これは、発達障害児ママにも同じ事が言えるかもしれません。充分頑張っているけれど、上手く行かない。そんな時にホッとするのは、激励やアドバイスではなく「わかるよ」という共感の言葉かもしれません。出典 : 保護者:「最後に、不登校児やその保護者が進路を考える場合、どんな選択肢があるのでしょう?」先生:「不登校児の節目の1つである高校進学を例に考えてみましょう。高校には全日制の他に、定時制や通信制があります。それ以外にもフリースクールやチャレンジスクールなどがあります。ですが、これらの学校はあくまで不登校や中退の人がやり直せる学校であって、不登校や中退の人のための学校ではありません。入れる学校を選ぶのではなく、通える学校を選ぶことが重要なのです。」言われてみると当たり前の事ですが、登校に不安を持つ親子はともすると視野が狭くなり、見落としがちな視点ではないかと思います。「やり直す」ための様々な配慮は、全日制の高校に比べ遥かにあるけれど、卒業するためには最低限の日数でも通い続けなければならないことを忘れてはなりません。チャレンジスクールは、小・中学校での不登校や高校での中途退学を経験した生徒など、これまで能力や適性を十分に生かしきれなかった生徒が、自分の目標を見つけ、それに向かってチャレンジする学校です。(チャレンジスクール「夢をかなえる学校選び」)勉強会を終えて出典 : 来年は息子も高校受験です。デコボコの波が大きい息子は、できることとできないことの差がとても大きい子です。学校で不安定になったり、イライラが治まらないときは保健室へ行って落ち着く措置を取ってはいますが、息子は「学校へ行くだけでストレスを感じることがある」と言います。「不安の元が何か?言葉にできない」とも。親としてはどうしても、「できることを基準に考えたい」と思ってしまいます。ですが、私は心に固く決めています。「入れる学校ではなく、通える学校を探す」と。「通える」という基準で選択するって、何も高校だけではありません。進学や就労だけでなく、サークルや部活動、アルバイトなど、小さな選択に至るまで実は、この先ずっと大切にできる基準だと思います。
2016年12月17日悩ましい子どもへの性教育。他の家庭ではどうしてるの?出典 : 発達障害児の子育て、特に多感な思春期の頃というのは、いろいろ苦労されている方も多いと思います。その中でも親として悩ましいことの1つは、性教育についてではないでしょうか。そもそも子どもたちは、自分たちの性についてどう考えているのでしょうか?先日、発達障害の親の会で性教育について話し合う機会がありました。そこでは、発達障害や知的障害のある子どもに対し、どうやって「自分の身を守ること」「人を傷つけないこと」を教えるか?ということが話題になりました。私たち親の世代は小学校5年生頃に男女別に分けられ、スライドや映画を視た後に先生からの話を聞く、というのが性教育でした。なんだか通り一遍の話で本当に知りたいことはわからないという感じ。それがきっかけで友達同士でコソコソと情報交換し合って、徐々にいろんな知識を得ていくというパターンが典型的なものでしたね。しかし、アスペルガー症候群の診断が出ている娘は小2から不登校で、中2の現在まで学校には通っていません。これでは性教育を受ける機会もありませんし、発達障害を持った子どもたちは、友達同士でそういう情報交換をするのが苦手な傾向にあるように思います。親の会ではいろいろな情報や体験談を聞くことができましたが、「こうしたらいい」という明確な答えは出ませんでした。娘は性について、どこまで知っているのだろう出典 : 我が家の場合、小4で娘にパソコンを与えたときに「これで性についても知ることになるだろうな」という覚悟がありました。自由にネットの世界を楽しんでほしかったのでフィルタリングもしませんでしたし、プライバシーを尊重するために娘が何を見ているかということには一切関知しませんでした。ただ、「ネットに書いてあることが本当とは限らない」「女の子は被害に遭いやすい存在である」「ネットの中の人の性別や年齢は信じてはいけない」ということは最初に言い聞かせ、もし不安なことがあればすぐに相談することを約束していました。娘は自由にいろいろな情報を取り入れているようで、性についても「ああ、ひと通りのことはわかっちゃったみたいだな…」ということは何となく日頃の会話で理解できました。だけど、生理が始まったときなどは信頼できるサイトの情報をプリントアウトして私から渡したりしましたし、直接手当てのアドバイスもしました。そうしているうちに、自分の身体の変化が気になるときは直接相談してくれるようになったのです。「フィルタリングについてどう思う?」とあるとき聞いたら、「どんなことでも信じちゃう子にはいいかもしれないね」と言ってました。なんか大人な意見ですね。娘に直撃インタビューしてみることに出典 : そうは言っても、娘に正しい情報を伝えるためにはきちんと性教育をする機会が必要だなと感じていました。「そうだ!直接本人に聞けばいいのでは?」とあるときふと思って、娘にインタビューしてみました。私「性教育って学校でやるんだよね」娘「行ってないから知らん」私「じゃあ、誰から教えてほしい?」娘「親だけは絶対に嫌。ママ、おばあちゃんと性について話したい?」私「それは嫌すぎるな。じゃあ誰ならいい?」娘「人からは嫌。ちゃんとした知識が書かれた本で、生々しくないデザインのやつを読みたい」私「それは本棚に並べておけばいいのかな?」娘「嫌。だってマンガ読もうかなぁと思って本棚を見たら性教育の本が並んでるなんて、エロ本が本棚に交じってるみたいだから。別の部屋にある本棚に入れておいてくれたら読むよ」私「トイレに置いておくっていうのは?」(そういう意見をどこかで読んだのです)娘「トイレしながらそんな本読むなんて嫌」親からそんな話を聞きたくないというのは想定内でしたが、性教育の本が娘の中ではエロ本扱いということにビックリしました。目につくところにおいてほしくない、ましてや読んでるところを人に見られるなんて言語道断という娘に、「思春期の子どもというのは好奇心と恥じらいが混じり、難しいものだな」と感じました。さまざまな誘惑や犯罪に巻き込まれないよう、私の経験から知ってほしいこと出典 : 私が娘に望むことは、●自分は唯一の大切な存在であると知ること●自分を傷つけるものに対しては「No!」と意思表示できることです。そう確信しているのには理由があります。同じアスペルガーと診断を受けている私は自己肯定感が低く、自分のことが大切な存在だと意識したことがありませんでした。そして性被害に遭っても、なかなか「自分はひどいことをされたのだ」と意識できず、「私の勘違いなのかな?」と思っていました。その場でとっさに逃げられなかったり、その後も「考え過ぎなのかな…」と自分の考え方のせいにしたりし、その結果フラッシュバックに悩まされるようになったからです。娘には、私と同じ苦しみを味わってほしくはありません。子どもが自分の身を自分で守れるように。CAPのススメ出典 : フラッシュバックに悩んだとき、私が受けたのがCAPというプログラムでした。その内容は、●自分の大切さを知る●自分を守るためのにはどうしたらいいのかを知るというものです。それまで「自分を尊重する」ということを知らなかった私ですが、プログラムを受講後は「私は尊重されていいんだ」ということを知りました。人にはそれぞれ人権があり、自分を犠牲にしてまで周囲のために頑張らなくてもいいんだということを理解できるようになったのです。CAPには知的障害を持った子どもたちのためのプログラムもあります。もし、私が子どもの頃にこのプログラムに出会っていたら、性被害に遭ってもすぐ大人に相談できたと思います。また、逃げるための実践的な訓練もあるので、防げていた被害もあるでしょう。娘にもいずれ、また全ての子どもたちにもぜひ体験して欲しいな、と思っています。子どもワークショップでは、最初に「権利」(基本的人権)について学びます。「生きるために絶対に必要なもの」と説明します。さらにその中でも特に大切な“子どもの特別に大切な3つの権利「Safe(安心)、Strong(自信)、Free(自由)」“について学びます。大切な自分を守るための行動の選択肢は、「No(イヤという)」「Go(その場を離れる)」「Tell(誰かに話す)」です。自分は大切な存在と思う感覚(人権意識)があってこそ、「いや」と感じることができ、自分を守るための行動を選ぶことができるのです。
2016年12月16日不登校の間に抱えていたのは「元気なのに行けない」罪悪感不登校になる前の学校生活は、いたって普通。むしろ、元気な子どもだった。勉強は苦手で遅刻もよくしていたけれど、人間関係に苦手意識はなくて、友だちもたくさんいた。学校は好きでも嫌いでもなく当たり前に行く場所だった。けれど、クラスの女の子へのいじめを止められない自分、「次は自分がいじめられるのでは」という恐怖から学校を休むようになった。「学校に行かなければ、楽になれる」と思っていた。けれど、それは間違いだった。いじめの恐怖はなくなったけれど、今度は「学校に行けない自分」に対する罪悪感を感じるようになる。友達や先生、近所の人にも会えない。外に出られない。健康な子が休むのはありえない、なぜ行かないんだ、なぜ行けないんだ、ということが頭の中でぐるぐると回りパニックになった。クラスでの悩みを思い返す余裕はなかった。何1つ解決をできず、自分の気持ちを誰にも相談することもできない。本当に辛い日々が続いた。自分のせいで、家族までしんどくなっていく母の「学校に行ってほしい」という気持ちが、痛いほど伝わってきた。毎朝ランドセルを持って起こしに来てくれて。母が僕のことで悩んでいるのはわかっていたけど、「僕はどうしてあげることもできない」。親の願いに応えられない状況は本当に苦しかった。顔を合わすことも辛くなっていた。それが原因で、不登校から引きこもり状態に。そのとき僕は、元気な姿を人に見せてはいけないと思っていた。病気でもないのに学校に行かないなんてダメだと思っていた。元気な姿を見られたら「学校いけるやん!」って思われ連れていかれる、と。そうやって過ごしているから気持ちも暗くなり、体調も悪くなった。家族にも重たい空気が伝染していくのを感じていた。「ぼくのせいで家族がしんどくなっていく」家族の中で笑える空気がなくなっていく状況を見ながら、自分を責めてばかりいた。罪悪感を和らげてくれた母の一言出典 : そんな時期に、同じように不登校になった双子の兄弟が自殺をしようとした。それをみつけた母が、「学校に行かへんって、死ななアカンほど悪いことなんか!お母さんはあなたが元気で生きていてくれたらそれだけでじゅうぶんや!何があってもお母さんは味方やで!」と言い切ってくれた。ずっとずっと行けない自分を責めていた僕たちに、この言葉は本当に嬉しくて救われた。そこから、家族の雰囲気も、自分も少しずつ変わっていった。同級生に遭遇しないような学区外の場所に連れていってくれたり、カウンセリングに出かけたりと、少しずつ外出を始めるように。外出すると、気持ちも開放された。元気な気持ちになると体調もよくなっていった。カウンセリングを受けに行くところも小児病棟だった。そこにはおもちゃや卓球台があったりして楽しかった。不登校の親の会に誘われて参加するようにもなった。家から遠いところにあるから、周りの目を何も気にしなくてよかった。普通の子どものように元気に思いっきり遊んで過ごしていい場所に連れてってくれたのは、本当に嬉しかった。山崎さんが音楽活動を始めたきっかけや、そこから生まれたご自身の変化についてお話を伺います。
2016年12月15日戸惑いを隠せなかった診断結果。この子に一体何が起きているの?出典 : 我が家で行っている、「ゆらゆら」体操。その動きは、両足をゆらゆら揺らすという、簡単なものです。もともと身体の感覚が過敏だった長男の、緊張をほぐしてくれたこの体操を、今回はご紹介したいと思います。幼稚園の時から個性的だった長男。小学校入学をきっかけに大混乱し、登校を渋るようになりました。このままでは完全に不登校になってしまう…と考えた私は、長男の登校に付き添いながら、ゆっくりと学校に慣れていきました。そんな中、先生の勧めで学習支援を受けることに。支援を受けるため医療機関を受診したところ、「自閉症スペクトラムおよび知的障害」という診断が出たのです。この診断結果には正直戸惑い、「自閉症スペクトラムって何?」と、我が子をどう捉えていいのかがわからなくなりました。いうなれば、自分と長男の間に訳のわからないモノが挟まり、我が子が見えなくなってしまった感じがしたのです。戸惑いの中出会った1冊の本。自閉症への理解が深まった、その内容とは栗本啓司 (著), 聞き手 浅見淳子 (編集), 『自閉っ子の心身をラクにしよう!』, 花風社, 2014年その頃からでした。自閉症について気になることを本で調べるようになったのは。さまざまな本を読むうちに、「もしかして、息子もこんなふうに世界を見てるのかも?」と思ったのを覚えています。医師に聞いてもはっきりと答えてもらえなかった、「自閉症スペクトラム」の世界観に触れ、息子との間に感じていた壁が初めて少し薄れたように感じたのです。そんなとき出会ったのが『自閉っ子の心身をラクにしよう!』という本でした。感覚に過敏さを持ち合わせる自閉症の人たち。この本は、少しでもその感覚を和らげ、睡眠の質を高めたり生活の質を向上させたりするコツが載っています。この本によると、発達に遅れのある子は足裏にある「拇指球(ぼしきゅう)」というところが弱く、立ったり歩いたりするだけでとても疲れやすいのだそうです。出典 : さっそく妹と長男の足裏を触り、本の内容がすぐ腑に落ちました。妹と比べても長男の「拇指球(ぼしきゅう)」の存在感が薄かったのです。立ったり歩いたりするのにも、いちいち踏ん張る―頑張る必要があるんだ…。そりゃ、毎日背骨がカチカチに固まるよな。日常生活でも疲労度は他の子どもたちより倍になるだろうな…と、思い至りました。その他、触覚過敏があるからいつも身を縮めているような感じなのでしょう。赤ちゃんのように反射的な動きに優れ、自分で自分の体を十分にコントロールできてない段階なんだということなどが見えてきました。拇指球が育てば、もっと日々の動きがラクになるのではないか。そしたら色々なことにもチャレンジできるようになるかも…。そう考えました。本を参考にしながら、足に触れる。いざ実践!出典 : やるタイミングですが、短くてもいい睡眠をとって欲しいという思いから寝る前に「ゆらゆら」と「足裏さわり」をやっています。手順はこんな感じです。私「じゃあ、ふとんに寝転んで~。手をパーにして思いっきり伸びよう。伸びて、伸びて、はい、ゆるめて。じわ~っとした?」長男「ちょっときた」私「いいやん。じゃあ、次、”ゆらゆら”します」。足首を持って、自分の腰のあたりに軽く当て、腰を気持ちよくゆすります。「どう、振動、キミのアタマの先まで伝わってる?」長男「きてる、きてる」私「いい感じ。では、足の裏をさわるね」親指の付け根の下、正式には「拇指球(ぼしきゅう)」といわれる部分をそうっと触ります。「拇指球よ、しっかり育てよ」と心の中で声をかけます。触る時の力はほんの少し「赤ちゃんを抱くぐらい、そっと」でいいそうです。私は刺激しながら「育てよ~」と念じています。こわばっていた心と体をゆるめる「ゆらゆら」。そのコツは出典 : 実践は毎晩こんな感じです。基本はこの流れですが、その日の長男の様子を見て、足の指の間に手の指を入れて少し広げてみたり、足裏全体をなでることもあります。背骨、背中をリラックスする、頭に集中している意識を全身、特に下半身に下ろすことが狙いです。1番大事にしているのは一緒に「心地よさを感じる」ことです。自分があまりにくたびれすぎている時は「また明日ね」。足首を持った時にくすぐったがったりして「やめて~」と言ったりしたときもやめます。ちょうどこの時期はイヤイヤ期でもあったのですが、布団に入った後自分から「そろそろゆらしていいよ」と声をかけてきたり、逆に「今日はやってあげるわ」と揺らしてくれたりするようになりました。幼い頃は絵本の読み聞かせも行っていましたが、「ゆらゆら」の方が入眠効果があるように感じます。気付けば2年も続けているゆらゆら。その効果は子どもだけではないようで…出典 : 足首を持って腰に当て、腰を揺らして揺れを伝える「ゆらゆら」は、本では「金魚体操」という名前で載っています。他にもいろいろな親子の動きが載っていて、「いいな」と思ったら試しています。気が付けばこうした身体のスキンシップは2年程ほぼ毎日続けています。小3の今も、登校はスムーズにはいきませんが、これまでは「理解できない行動」だったものが、「こういう理由で、そうしてるんだね」と理解できるようになりました。そして、ゆっくりでもいいから発達を積み重ねていけば、きっと大丈夫…!と、子どもを信じられるようになりました。
2016年12月13日教育相談とは出典 : 教育相談とは、子どもの発達と教育にかかわる問題について、子ども本人、保護者、学校の教員などに対して行われる、心理的・教育的援助のことです。教育相談というと、学校からすすめられてはじめて相談に行くことが可能となる、というイメージがある方もいらっしゃるかもしれませんが、学校からすすめられなくても悩みごとがあれば相談できます。相談できるのは、18歳までの子ども本人のほか、保護者、学校の教員など、子どもの教育・養育に関わる全ての人です。相談を受けているのは、学校や、校内のスクールカウンセラー、地域の教育相談センター、特別支援学校などです。教育相談は今、非常に広い概念として捉えられています。「何らかの問題が起こったときに悩みを抱えた人が、学校の教員や専門家に相談をすること」これが以前まで、教育相談という言葉が指していた意味合いでした。ですが、近年子どもの問題が多様化、深刻化するにつれ、教育相談に求められる役割は多岐にわたっています。求められる役割の広がりに伴い、「相談」という言葉から連想されにくい事柄についても教育相談の担う範囲とされています。教育相談の内容は、主に2つに分けることができます。一つ目は、問題を解決するために、問題を抱えた人が専門家に対して相談する、問題解決型の教育相談です。例えば・学校以外の機関が行う、匿名での電話相談サービス・特別支援学校や教育委員会が行う、発達が気になる乳幼児の保護者への子育て相談などがこれにあたります。二つ目は、問題が起こる前に、学校の教職員などによって行われる予防的な教育相談です。例えば、教師が学級活動の中で、児童生徒に対して行うロールプレイングや感情コントロールのトレーニングなどです。このように、教育相談が担うのは、問題が起こったときのみに行われる相談業務だけではありません。何か問題が起こったときに保護者や子どもが自ら課題を突きとめ、主体的に問題解決をできるように、これらの支援や活動は日ごろから行われています。教育相談の事業を通して、困りごとがあるときにも、子どもに関わる誰もが気軽に相談をできるような体制づくりが目指されています。学校を中心として、教育センターや特別支援学校、NPOなど、地域全体を通して、そのような体制づくりが行われています。教育相談ではどんな相談に乗ってもらえるの?出典 : 教育相談が取り扱う事柄はさまざまです。例えば、いじめや不登校、学習に対する不安などの学校生活に関わることから、就学や進路、子どもの発達のことなど、子どもの教育、養育上の問題に関するあらゆる内容を取り扱っています。心配ごとがあるときに、教育相談では以下のような相談を行うことができます。例えば、◇学校生活のこと・クラスでいじめにあっています。もう学校に行きたくありません。・子どもが朝になるとお腹が痛いと言って学校を休むようになりました。無理矢理、学校へ連れていった方がよいでしょうか。・学級に不登校の児童がいます。どのように対応したらよいでしょうか。◇子育てや家庭のこと・子どもが発達障害ではないかと心配しています。・忘れ物が多くて困っています。・子どもが自傷行為をしているようです。・子どもが反抗的で親の言うことを聞きません。◇就学先のこと・障害が重くても、地域の学校で学ぶことができますか。・小学校や特別支援学校に就学したあとに、転学の相談はできますか。◇情報関係・SNSに子どもの悪口が書かれています。どうしたらよいでしょうか。教育相談では、相談者の意見を尊重し、肯定的に受けとめながら、相談者にとって最適な解決方法を一緒に考えていきます。教育相談はどこで誰がしてくれるの?出典 : では、教育や養育に関する悩みごとがあり教育相談を受けたいと思ったら、どこへ行ったらいいのでしょうか。教育に関する相談を扱っているのは、学校の教職員、学校内の相談室、教育センター、特別支援学校などです。それぞれの相談先の特徴と、ご自身の悩みごとの内容に合わせて、相談先を選ぶことが大切です。出典 : 教育相談の活動で中心的な役割を担っているのが学校です。学校では、学級担任や管理職をはじめとして、養護教諭などの全ての教職員が協力をして、子どもの悩みを解決する体制が作られています。学校では、通学する児童生徒本人や保護者が教職員に対して相談することができます。いじめや不登校などの問題の他にも、子どもの気になる行動や、学習についての不安を中心に相談ができます。学校は子どもが毎日通うなじみのある場所であり、そこにいる教職員は毎日子どもに接しています。相談を行うことは、教員が子どもに対してより配慮のある対応をしてくれることにもつながります。学校における教育相談に特徴的なのは、教職員の側から子ども、保護者に対し、相談できる機会を積極的に設けていることでしょう。通称、呼び出し相談や定期相談といわれています。教職員が積極的に子どもや保護者に声をかけていくことにより、問題が起こる前に、その火種を発見でき、問題を未然に防ぐことが可能となります。学校における教育相談には、もう一つの側面があります。それは、悩みごとを抱える一部の子どものみを対象とするのではなく、全ての子どもを対象とする予防的な教育相談活動です。いじめを例にして考えてみましょう。いじめの被害者に対する心のケアは重要ですが、いじめに対して「やめてほしい」と主張をする力や助けを出すための力が必要な場合もあります。また、いじめの加害者側が高いストレスに晒されていることもあります。そのような子どもが加害者にならないようにするために、事前の予防的な教育が行われています。具体的には、授業やホームルームの中で、自分の言いたいことを適切に主張するためのアサーション・トレーニング、自分の怒りの感情をコントロールし、衝動的な行動に出ることを防ぐためのアンガーマネジメント、相手の立場になりきるロールプレイングなどが取り入れられています。出典 : 学校内に設置されている心の相談室・カウンセリングルームでは、スクールカウンセラーに相談することができます。学校の教職員に言いづらいことは、学校内の相談室で相談をするのがよいでしょう。スクールカウンセラーとは、臨床心理士、精神科医、心理学系の大学の常勤教員などの心の専門家です。また学校によっては、「子どもと親の相談員」というスタッフが相談に乗ることもあります。平成25年には、スクールカウンセラーが派遣または配置されている学校数は、20,310か所であり、平成7年に比べ、その数は約130倍となりました。これは、いじめや不登校問題の多発に注目した文部科学省が、教育相談に専門的に携わるスタッフを増やす施策をとったことによる変化です。学校内の相談室で相談をするメリットは、学校の教員とも保護者とも違う立場から話を聞いてもらえることでしょう。これらの相談員は、保護者や他の教職員とも利害関係がないために、客観的で中立な立場から冷静に話を受け止めてくれます。注意点は、相談者により話された秘密は原則として守られますが、問題解決のために事実関係の整合性を取る場合などに限って、相談から得られた情報を学級担任や管理職に共有することがあるということです。最終的な目的は問題の根本的な解決なので、相談員だけではなく、学級担任から見た子どもの姿や保護者から見た子どもの姿など、多角的な視点を用いた判断が必要とされる場合があるためです。また、相談員は外部の機関との連携を密に行っています。ですので、相談員や学校のみでは問題解決ができないと判断した場合には、児童相談所や医療機関などの機関と連携することもあります。スクールカウンセラーや子どもと親の相談員は、各学校に配置されている場合と教育委員会から派遣されて学校へやってくる場合があります。週に1~2回、学校内、あるいは学校の近くにある心の相談室・カウンセリングルームなどの場所で勤務を行っています。出典:スクールカウンセラー等配置箇所数|文部科学省スクールカウンセラーについて|文部科学省「子どもと親の相談員」について|文部科学省出典 : 教育に関する相談の受け付けを行っているのは学校だけではありません。教育相談センターや、教育センターという施設でも子どもの育ちや教育に関する悩みごとの相談をすることができます。例えば、不登校やいじめの問題について、学校が対応しきれず困りごとの解決が難しいときもあると思います。学校に言いづらい悩みごとは、学校以外の機関に相談するという選択肢があると知っておくことで、新しい問題解決の道が開けることもあります。これらのセンターは都道府県・市区町村が設置している施設であり、さまざまな専門をもつ相談員が相談に乗ってくれます。相談をすることができるのは、18歳までの子どもとその保護者、および教員です。相談には、心理相談を専門とする相談員が対応し、必要に応じて、継続的な面接やプレイセラピー、心理検査などを行います。またこれらのセンターでは、定期的に不登校に特化した相談会や、学校復帰・社会参加に向けた講演会が開かれていたりします。学校では得ることのできない情報を知ることができる場としても活用できるでしょう。相談者の状態や、何らかの事情によりセンターに来所することが困難な場合には、メールや電話でも相談をすることができます。相談内容によっては、児童相談所や医療機関などの関係機関を紹介される場合があります。例えば、相談員のみでは解決ができない、医学的な診断の必要である、また福祉的・法的な措置が必要な場合などです。また、相談の内容によっては、保護者の方にあらかじめ確認をとった上で、相談の内容を学校に伝えることがあります。というのも、学校の教職員と保護者が子どもの状況を共通理解することにより、柔軟で充実した対応を行うことができ、結果的に問題の解決への近道となることもあるためです。これらの機関は、学校や教員に対して直接的な指導を行うことはできません。ですので、以下に挙げるような対応の難しい相談事に関しては、あらかじめ相談先が断る場合もあります。・学校の運営・教員による子どもへの指導の内容・教職員の人事学校の運営や教員に対する意見がある場合には、まずは学校の管理職へ相談して、それでも解決しない場合は管轄の教育委員会へ相談を行うのがよいでしょう。出典 : 特別支援学校には、学校に在籍する子どもへの教育の他に、大切な役割があります。それが地域の障害のある子どもたちへのサポートです。この役割の一つとして、特別支援学校では、地域の子どもたちや保護者、小中学校の教職員から相談を受け付けています。以下のような相談を受け付けています。・子どもの発達についての相談・特別支援学校への入学や転学への相談・小中学校での教育についての相談相談には、特別支援学校の教員が対応してくれます。子どもの発達とその支援に関する知識や経験のあるスタッフが対応してくれるので、就学のことや、子どもの発達で心配がある場合には気軽に相談してみるとよいでしょう。特別支援学校で行われる教育相談は、就学以後の子どもに限らず、乳幼児やその保護者に対しても行われています。これは、平成23年に改正された障害者基本法を受けて、障害のある、または支援の必要な乳幼児とその保護者に対し、就学前から情報の提供の機会をより増やそうという国の動きによるものです。相談対応の他にも、特別支援学校では以下のように障害のある子どもに関わる大人や、本人を手助けするさまざまなサポートを行っています。例えば、・学校への巡回訪問・心理検査の実施・研修会の講師の派遣・授業や教材の工夫・個別の教育支援計画、個別の指導計画の作成のサポートなどです。保護者や教師など、子どもに関わる大人は、子ども発達や障害に専門とする教員やコーディネーターとともに、遊びの工夫や、子どもとの適切な関わり方などを一緒に考えていきます。教育相談にはどんな方法があるの?出典 : 相談の内容や、相談者の状態によっては、来所により話をすることが困難な場合もあります。教育相談では、来所に限らずさまざまな方法で相談をすることができます。ここではそれぞれの相談方法の特徴をご紹介します。全ての相談機関で、来所による相談を受け付けています。継続的に担当の相談員に対応してもらえるのが来所による相談の特徴です。相談者一人につき担当の相談員が一人つくことが多いので、来所するごとに、前回から変わった点や新たに加わった困りごとなど、問題解決までの間、その道のりを長期的に支援してもらえます。初回面接の際には、電話で相談内容を話した上で予約をする必要があります。電話による相談の特徴は、現在いる場所に関わらず、相談ができる点です。電話相談だけでは解決の道が見つからない場合には、実際に相談機関に来所することが可能です。匿名でも相談にのってくれる他、電話により相談員の対応を知った上で、来所による相談へ安心して移ることができます。電話相談では、相談員を指名しての継続相談は受け付けていないことがありますので注意が必要です。スマートフォンやPCの普及とともに、メールで相談を受け付ける機関が増えています。メールによる相談の特徴は、名乗らない限り、相手から相談者の身元がわからない点や、時間や場所に関わらず24時間メッセージを送信できる点です。一方、相談の返信が返ってくるまでに、ある程度の時間がかかったり、文字だけのやりとりのために、細かいニュアンスや表現が伝わりにくい場合があることには注意が必要です。機関によっては、文字数の制限があったり、メールの返信の回数制限があったりする場合もあります。詳しくはそれぞれの機関のウェブサイトをご参照ください。学校では通常、メール相談の受付は行われていませんが、教育センターや教育相談センター、NPOなどはメールによる相談を受け付けていることが多いです。学校や相談機関等に通うことが難しいお子さんを対象として、相談員が家庭・学校を訪問し、子どもへの支援や、その保護者の方との相談を進めます。学校や相談機関に通うことが難しい子どもでなければ利用できないことがあります。教育相談をしたいときには何をすればいい?出典 : 学校に相談を希望する場合には、学級担任のもとに連絡して実際相談をしますが、学校の教職員以外に相談をしたいときには、どのような手順で相談をすればよいのでしょうか。相談の流れやそれぞれの相談先の注意点についてご紹介いたします。学校の教職員ではなく、スクールカウンセラーや「子どもと親の相談員」に相談したいときの窓口は、学校により異なります。学級担任・養護教諭を通じて予約をする場合と、直接相談員に声をかける場合や、相談室の前にホワイトボードが置いてあり、誰にも知られずに予約をするシステムがある学校などさまざまです。また、通っている学校にスクールカウンセラーが配置されていない場合、近隣の学校に配置されているスクールカウンセラーに相談することになります。スクールカウンセラーが配置されている近隣の学校については都道府県教育委員会、もしくは市町村教育委員会に問い合わせ、その学校を通じて勤務されている日やスケジュール等を確認し、予約の上、相談室へお越しください。教育相談センターでは、希望する相談の方法により予約が必要な場合とそうでない場合があります。来所相談は、予約制となります。センターの業務時間内に電話で予約をとる必要があります。予約の際には、相談の概要を聞かれるので、子どもの様子や相談の内容についてまとめておくとよいでしょう。市区町村により、相談の受付時間や予約方法が異なります。1回の面接は50~90分間で相談費用は無料です。継続相談を行ったり、相談内容によっては他機関を紹介してくれることもあります。ご参考までに、東京都教育相談センターの申し込みから相談までの流れを以下に示します。申込みは、保護者からのお申込みをお願いいたします。電話相談にてご相談のうえ、お申込みください。↓初回日時のご連絡担当相談員が決まり次第、お電話等でご連絡差し上げます。↓初回面接※原則、1回の面接は50分間です。相談費用は無料です。以後、継続相談を行いますが、ご相談内容によっては、他機関を紹介する場合もあります特別支援学校での相談は、学校へ足を運んで直接相談をすることができます。FAXまたは電話で予約を入れ、相談日を設定する必要があります。詳しくは、お住まいの近くの特別支援学校のウェブサイト等をご覧ください。まとめ出典 : この記事では、教育相談を扱う機関や相談の流れや、内容などを具体的にご紹介しました。教育相談とは、悩みをもつ子ども、保護者、教員の、悩み事の解決に向けて行われる相談活動のことです。教育相談が担う役割は大きく分けて2つあります。一つ目は、問題を解決するために、問題を抱えた人が専門家に対して相談する、問題解決型の教育相談です。二つ目は、悩み事や問題が起こる前に教職員などによって行われる、予防的な教育相談活動です。物事の捉え方、人との関係づくりなどを子どもが学ぶ機会を日常的に設けることで、子ども本人が主体的に問題解決に取り組める力を育む役割があります。子どもと関わる保護者や教員は、問題が大きくなる前に、子どもから発せられるサインを見落とさないことが大切です。子どもの様子や子育てのことで少しでも心配ごとのある場合には、一人で抱え込まずに、気軽に相談にいってみましょう。悩みの解消に向けて、一緒に考え、共に解決策を探してくれるスタッフが必ずいるはずです。
2016年12月11日