おかんがつくるアート、その名も「おかんアート」を紹介する展覧会『Museum of Mom’s Artニッポン国おかんアート村』が来年1月22日(土)より、東京都渋谷公園通りギャラリーにて開催される。同展のキュレーターを務めるのは、作家・編集者・写真家の都築響一とおかんアートのスペシャリスト「下町レトロに首っ丈の会」。ヒモや軍手、空き箱、ビーズ、ボタンなど、身近で安価なもの、捨てずに取っておいた不要品などを材料に、おかんが作る創作物、それが「おかんアート」だ。同展では、都築響一が2000年代以降、日本各地で追い続けてきた「おかんアート」を大小合わせて1,000点以上、これまでに取材したおかんアートの達人たちの姿を捉えた写真とともに紹介。「おかん」とは、関西方面の方言で「母」を指す愛称だが、今回は、広く性別や立場を越えて「おかん」の感覚を持った様々な作り手が紹介されるという。さらに、都築響一が近年注目する、おかんアートの感覚にかぎりなく近くありながら、独自の表現を展開する孤高の表現者、荻野ユキ子、嶋暎子、野村知広の3名による「おかん宇宙のはぐれ星」も特別展示される。「おかんアート」というユニークな視点を切り口に、多様な人々の表現方法や創造性を取り上げ、「アール・ブリュット」という概念を現代的に捉え直す試み。独特のかわいらしさとゆるさを醸し出す「おかんアート」の世界をぜひ体験してみてほしい。■都築響一のコメントおかんの辞書に断捨離はない。荷物のヒモは丸めて引き出しにしまっておく。輪ゴムは水道の蛇口にかけておく。デパートの紙袋は冷蔵庫の脇に差しておく。とりあえず。そしてある日、おかんにひらめきの瞬間が訪れる——アレをああやったら、かわいいのできるやん!こうしておかんアートは生まれた(たぶん)。おかんアートとは、文字どおり「おかんがつくるアート」のこと。メインストリームのファインアートから離れた「極北」で息づくのがアール・ブリュット/アウトサイダー・アートだとすれば、正反対の「極南」で優しく育まれているアートフォーム、それがおかんアートだ。見るひとを困惑させ、おしゃれ空間を一発で破壊し、勢いと熱さだけはあふれるほどあり、プロのアート作品にはもちろん、いまや「インサイダー」になりつつあるアウトサイダー・アートやアール・ブリュットにすら存在しない、おかん独自の破壊力。単一の価値観に収まりきらないことが現代美術の特質であるならば、おかんアートはもっとも無害に見えて、もっとも危険なアートフォームなのかもしれない。【開催概要】『Museum of Mom’s Artニッポン国おかんアート村』会場:東京都渋谷公園通りギャラリー展示室1、2及び交流スペース会期:2022年1月22日(土)–4月10日(日)時間:11:00~19:00休館日:月曜日(ただし3月21日は開館)、3月22日(火)料金:無料左から《あみぐるみ》作者不詳、《毛糸犬》後藤知恵子、《ロールちゃん人形》新居光子、《ロープ海老》作者不詳いずれも撮影 都築響一左から、荻野ユキ子、嶋暎子、野村知広都築響一下町レトロに首っ丈の会
2021年11月17日数年前から続く縄文ブーム。火焔土器やハート形のかわいい土偶など、縄文時代につくられた造形物の美しさに魅了されている人も多いと思います。現在、両国の江戸東京博物館で開催中の特別展『縄文2021―東京に生きた縄文人―』では、東京エリアの縄文人にフォーカス。遺跡から見つかった道具類や復元模型などの展示を通し、縄文人たちのリアルな暮らしに迫っています。圧巻の“東京産”土偶100点もご紹介!縄文人の道具がすごい!【女子的アートナビ】vol. 225この展覧会では、1万年以上続いた縄文時代に、東京の縄文人たちがどんな暮らしをしていたのか、最新の調査結果をもとに、多くの出土品や模型などを用いて紹介しています。まず第1章「東京の縄文遺跡発掘史」では、3800か所以上もある都内の縄文遺跡より、大森貝塚をはじめ著名な7つの遺跡から発掘された土器などが展示されています。続く第2章のタイトルは「縄文時代の東京を考える」。お墓や精緻な土器、さまざまな道具類を通して、東京の縄文時代を紹介しています。ここでの見どころは、縄文時代のキッチン道具である「植物加工具」。石皿と磨石を使って、縄文人たちはクルミやクリなどの木の実をすりつぶし、蒸したり焼いたりしてパン状にして食べていたそうです。石皿は、使いすぎて真ん中がへこんだり、割れてしまったりしています。クルミパンを食べる東京の縄文人……彼らがどんな生活をしていたのか、道具類を見ながら考えてみるのも楽しいです。縄文人ネットワークがすごい!縄文人たちの交流がわかる展示「ヒスイロードとコハク」も見どころのひとつ。美しく希少価値のあるヒスイには、縄文人も魅了され、ステイタスシンボルとしても使われていたそうです。日本国内で唯一ヒスイがとれるのが、新潟県の糸魚川。そのヒスイが、各地の遺跡から発掘されているため、日本全国に出回っていたことがわかります。都内でも70点以上が出土。糸魚川産のヒスイが、長野や山梨を通る「ヒスイロード」で関東に入ってきたようです。代わりに関東からは、千葉産のコハクや海産物が山梨や長野に運ばれていたとのこと。モノが流通し、当時の縄文人ネットワークが広範囲に広がっていたことがわかります。土偶100点がすごい!第3章「縄文人の暮らし」では、縄文時代のムラの様子を再現。縄文人が舟をこいでいたり、土器をつくっていたり、あるいは埋葬している人たちもいて、当時の暮らしぶりがよくわかります。集落のモデルとなったのは、縄文時代中期の多摩ニュータウンNo.107遺跡です。ムラは平坦な場所につくられ、日当たりも水はけもよさそう。近くには川があって、移動にも便利。縄文人たちにとっても、やはり暮らしやすい土地が人気で、そんな場所に人が集まりムラになったようです。この章では、東京産の土偶100点も展示されています。ずらりと並ぶ姿は圧巻!祭祀や安産祈願など、土偶には祈りや願いが込められていたと考えられています。太古の東京で暮らしていた縄文人たちが、どんな気持ちでこの土偶をつくっていたのか。ぜひ、いろいろ想像しながらご覧になってみてください。特別展『縄文2021―東京に生きた縄文人―』は12月5日まで開催。Information会期: ~12月5日(日)※休館日は毎週月曜日会場:東京都江戸東京博物館1階特別展示室開館時間:午前9時30分~午後5時30分(土曜日は ~午後7時30分)※入館は閉館の30分前まで観覧料:特別展専用券一般¥1,300、大学生(専修・各種専門学校含む)¥ 1,040、小学生、中学生・高校生・65歳以上¥650※日時指定予約を推奨しています。最新情報などの詳細は公式サイトをご覧ください。
2021年11月10日東京の現代アートを気軽に楽しめる新しいプロジェクト「アートウィーク東京」が開催される。これは国立美術館から国際的なギャラリー、小さなアートスペースやプライベートミュージアムまで、現代アートを牽引してきた都内50のギャラリーと美術館がタッグを組んだ、かつてない規模のアートイベントだ。海外からも注目される東京の現代アートシーンをバスで巡る秋のイベント!期間中はパスを手に、4つのルートを巡回するバスを自由に乗り降りして50のスポットへ気軽にアクセスできる。これなら足を運びにくかったギャラリーなどにも短時間でたどり着け、東京のアートとカルチャーを効率よく満喫できる。期間中巡回する「アートバス」では、ルートごとにアーティストの高山明、毛利悠子、塩見允枝子(みえこ)、グループ・音楽の4組による、車内だけで体験できる“都市を巡る声”をテーマにした作品も楽しめる。初心者からプロまで、アートファンなら誰もが気軽に参加できる、またとないチャンスだ。「コロナ禍で国際的にギャラリー同士のネットワークが盛り上がり、新しい取り組みを他の画廊と一緒に行う機会が増えたことが開催のきっかけとなりました。ならば東京でもコミュニティを盛り上げることができるのではと」とアートウィーク東京共同設立者・ディレクターの蜷川敦子さん。東京の現代アートの歴史は100年にも及ぶ長さで、世界に誇る作品を数多くのアーティストが生み出してきた。ギャラリーでは気に入った作品を購入することもできる。海外でも注目されるそんな東京アートシーンの魅力をこの期間にぜひ満喫して。ART WEEK TOKYO 巡回バスマップ美術館&ギャラリーを結ぶ4つのルートを巡回する「アートバス」は15分に一本の頻度で発着し、どのルート、どのバスにも乗り降り自由。2名用のペアパス(1800円)や4‐DAYパス(2000円)などお得なパスもあり。パスを提示すれば美術館で割引なども受けられる。購入は下記ウェブサイトより。ART WEEK TOKYO美術館6館、ギャラリー44軒で開催。11月4日(木)~7日(日)10時~18時(東京オペラシティアートギャラリー、ワタリウム美術館は11時開館)AWTパス1000円(1日有効)ほか。AWTインフォメーションセンター(東京都港区南青山5‐4‐30)info@artweektokyo.comROUTE Aアーティストに縁深い会場がある天王洲、品川、恵比寿方面を巡るルート。世界的に有名なアーティストが拠点としたギャラリーや画廊も多いのも特徴。【A4】カイカイキキギャラリー「Event Horizon」開催中~11月11日(木)予定アルミニウム、ガラス、ブロンズ、粘土といった素材を探求し彫刻への考察を深める仏人アーティスト、ジャンマリ・アプリユの日本初個展を開催。ジャンマリ・アプリユ《Callisto》2020©Jean-Marie Appriou, courtesy of the artist, photo by Benjamin Baltis【A9】ギャラリーサイド2「三井淑香新作展」開催中~11月26日(金)アーティスト三井淑香の日常や事物、思い出などを通し、現代のポップなイメージと隣り合わせで表現される伝統文化へのオマージュを描く。三井淑香《壺の間》2020ROUTE B新進から歴史的評価の高い作家まで、日本の実験的アートに注目した会場が集中するルート。新橋、京橋から両国までの歴史を感じられる風景も。【B7】ギャラリー小柳「I saw it, it was yours.」開催中~10月30日(土)、11月4日(木)~7日(日)膨大な作業量によって描かれた鉛筆画のインスタレーションを展開する橋本晶子の個展。2020年の個展「Ask him」に新作10点を加えた新たな内容。橋本晶子《Ask him》2020Installation view of Akiko Hashimoto’s exhibition “Ask him” at the 14th shiseido art egg, Shiseido Gallery, 2020制作協力:資生堂©Akiko Hashimoto, photo by watsonstudio【B11】Take Ninagawa「大竹伸朗『残景』」10月30日(土)~12月18日(土)コロナ禍に取り組んだ連作を紹介。様々な素材を組み合わせた分厚い油彩画の堆積物から成る三次元構造の作品を通して、“記憶の最後に残る景色”を探求。大竹伸朗《残景 1》2019 ©Shinro Ohtake, courtesy ofTake Ninagawa, Tokyo, photoby Kei OkanoROUTE C上野、池袋、渋谷までと広範囲をカバー。コンテンポラリーアートの中でも、今もっとも先鋭なセンスを満喫したい人がはずせないルートがこちら。【C9】ナンヅカ アンダーグラウンド「SOME DAYS ARE DIAMOND」開催中~11月7日(日)ナイジェリアを拠点に活動するワハブ・サヒードの日本初個展。印象的なマークやパターン、色鮮やかな背景と木炭で描かれた作品は人間に不可欠な出来事や心理とは何かを問う。ワハブ・サヒード《Secret in Scars》2021©Wahab Saheed, courtesy of NANZUKA【C4】4649「カルビン・ミシェリ‐ネルソンと清水将吾」11月4日(木)~12月19日(日)ロサンゼルスをベースに活動する画家カルビン・ミシェリ-ネルソンと「4649」のディレクターでもある清水将吾による二人展。本展はネット上での自助的な交流によって実現。カルビン・ミシェリ‐ネルソン 2021Courtesy of the artist and 4649, TokyoROUTE D新宿、渋谷、六本木、神楽坂など都心を中心に巡るルート。映像関連やアートフェア、トークショーまで、自主企画の展覧会が面白い個性派ギャラリーが集中。【D1】タカ・イシイギャラリー「YAKIMONO」開催中~11月7日(日)ポリウレタンやブロンズなどを用いた立体作品で有名なスターリング・ルビーをはじめ、リズ・ラーナー、ルシア・ビダレスなどのグループ展を開催中。スターリング・ルビー《CLUB(7689)》2021 ©Sterling Ruby, courtesy of Sterling Ruby Studio and TakaIshii Gallery, photo by Robert Wedemeyer【D1】シュウゴアーツ「わたしはどこに立っている」10月30日(土)~11月27日(土)森村泰昌と三嶋りつ惠の二人展。森村は自画像の美術史シリーズよりゴッホ、ダ・ヴィンチなどを取り上げ、三嶋はその人物に捧げる新作を発表。森村泰昌《青春の自画像(松本竣介/わたしはどこに立っている1 )》 2016 発色現像方式印画160×124cm ed.5 ©the artist, courtesy of Shugo Arts※『anan』2021年11月3日号より。取材、文・山田貴美子(by anan編集部)
2021年10月31日最新作『シン・エヴァンゲリオン 劇場版』が興行収入100億円を超える大ヒットとなった映画監督・庵野秀明氏。2016年には『シン・ゴジラ』が大ヒット。アニメはもちろん実写映画でも大きな実績を残し、今や国民的映画監督となったのはご存じの通り。そんな彼の仕事を網羅した初の展覧会『庵野秀明展』が好評だ。「『エヴァンゲリオン展』を主催していた朝日新聞社と、『館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技』を主催していた日本テレビから、偶然にもほぼ同じタイミングで展覧会のオファーをいただきました。ならば共催しようと、今回はかつてない規模の展覧会が実現したのです」(株式会社カラー文化事業担当学芸員・三好寛さん)本展では、庵野氏がアニメーター時代に参加した過去作品から、監督&プロデューサーとして活躍する最新の仕事までを網羅し、その創作の本質に迫る。アマチュア時代から現在までの作品の原画やミニチュア、直筆のメモやイラスト、脚本、イメージスケッチ、画コンテに至るまで膨大な制作資料を余すところなく展示しているのが本展の大きな特徴だ。「今回は、彼がこれまで敬愛してきた作品の資料が一堂に会しました。これが庵野に影響を与えたという、いわば“庵野秀明をつくったもの”も紹介しようという趣向です」会場では『ウルトラマン』『仮面ライダー』『宇宙戦艦ヤマト』『機動戦士ガンダム』など、庵野氏が幼少期から敬愛する漫画、アニメ、特撮作品にまつわる貴重な資料の展示のほか、縦3m×横15mの巨大LEDスクリーンを駆使した映像作品を公開。また、これまで門外不出とされてきた関連資料だけでなく、「僕らがいなくなってもアニメや特撮が残るようにしたい」と庵野氏が立ち上げたATAC(特定非営利活動法人アニメ特撮アーカイブ機構)をはじめ、未来へ向けたプロジェクトも紹介。さらに『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』『シン・仮面ライダー』の大型立像など、最新の仕事も紹介している。「注目はコンテや模型などの中間制作物。作品が完成するまでに作られた膨大な中間制作物を目撃できるのは展覧会ならでは。映像の魅力を探るヒントとなる存在ですし、一枚の絵、一つのオブジェとして見ても非常に面白いものが多いんですよ」『シン・エヴァンゲリオン劇場版』2021年公開 ©カラー2007年公開の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』から14年を経て今年3月公開された完結編。モーションキャプチャやミニチュア&ロケーション撮影などで作った素材を基に構図を決める技法も採用している。『ふしぎの海のナディア』1990年放送 ©NHK・NEPジュール・ヴェルヌのSF小説『海底二万里』と『神秘の島』を原案に、庵野氏が総監督を務めたテレビアニメ。少年ジャンとナディアの冒険物語は1990年から1年間NHKで放送された。『式日』2000年公開 ©2000 F&A・STUDIO KAJINO2000年に公開された実写映画。スタジオジブリの実写作品レーベル「スタジオカジノ」第1回作品。原作は、主演でもある藤谷文子の小説「逃避夢」。映画監督の岩井俊二が、“カントク”を演じている。『庵野秀明展』国立新美術館 企画展示室1E東京都港区六本木7‐22‐2開催中~12月19日(日)10時~18時(金・土曜は~20時。入場は閉館の30分前まで)火曜(11/23は開館)休一般2100円ほか事前予約制TEL:050・5541・8600(ハローダイヤル)※『anan』2021年10月20日号より。取材、文・山田貴美子(by anan編集部)
2021年10月19日和田誠と聞けば、ある人は絵本を、ある人は似顔絵を、またある人は映画を思い浮かべるかもしれない。「人それぞれ印象が違っているのも、和田さんの多才ぶりを表していますね」と学芸員の福島直さん。和田さんは、初めてイラストレーターという肩書を用いた先駆者。そして挿絵、似顔絵、ポスターなど広告芸術の分野で多くの人に愛される仕事を残した人。また、雑誌の表紙や本の装丁のアートディレクションまで手がけるデザイナーとしての顔も持ち、映画やアニメーション制作では、アーティスティックな一面ものぞかせる。「和田誠展」はこうした和田さんの仕事の全貌に迫る。なんと4歳の頃の絵に始まる約80年分の資料、作品が展示されるというから驚きだ。映画日記や先生の似顔絵入りの時間割など、映画と絵が大好きだった少年の姿が浮かんでくる「和田誠になるまで」。世界観を深く理解し、作家から全幅の信頼を集めた「装丁」の仕事。ユーモアあふれる「パロディ」「漫画」。動物好きの一面がのぞく「猫」など、30のトピックに分けて展示される。「印刷所で声をかけられて9年間、新宿の日活名画座のポスターを無償で描き続けたというエピソードもあるほど、好きなことを好きなだけする仕事ぶり。『僕は僕』。だから幸せな仕事人生だったでしょうね。普遍的でかわいいのが和田作品の魅力ですが、若手の現代美術家から『クリエイターとして尊敬している』という声を聞くこともあります。まだまだ知らない和田さんがいるということを、発見して帰ってくださいね」右・映画『怪盗ルビイ』は小泉今日子主演。絵コンテなどを展示する。「快盗ルビイ」映画ポスター 1988中・広告会社ライトパブリシティ入社1年目、無償で描き始めた日活名画座のポスター。「新宿日活名画座」ポスター 1959左・ジャズ愛好家の和田さんにとってレコードジャケットは特別な“舞台”。『PIANIC PIANISM』ジャケット 1977 日本コロムビア職人芸ともいわれた似顔絵。シンプルな線が人物のたたずまいを見事にとらえて、ひと目で誰なのかがわかってしまうのが見どころ。そのほかジャズピアニスト、デューク・エリントンらを油彩で描いたシリーズも。右・「ありふれた生活」(著・三谷幸喜)挿絵 朝日新聞 2013.8.22左・『「徹子の部屋」の30年』表紙 2007 講談社上左・40年以上携わり、現在も旧作がリピートされている『週刊文春』の表紙。タイトルのフォントも和田さんオリジナル。『週刊文春』表紙 2017上右・小説家・村上春樹さんの翻訳シリーズの装丁。『グレート・ギャツビー』(訳・村上春樹)装丁 2006 中央公論新社下・一緒に飛んでいる気分に。詩人の谷川俊太郎さんとのタッグは数々の名作絵本を生んだ。『とぶ』(文・谷川俊太郎)1978 福音館書店 多摩美術大学アートアーカイヴセンター蔵わだ・まこと1936年生まれ。多摩美術大学図案科在学中よりポスターの制作を始める。広告制作会社ライトパブリシティを経て独立。イラスト、グラフィックデザイン、映画監督など多才に活躍。2019年没。©Wada Makotophoto:吉田宏子「和田誠展」東京オペラシティ アートギャラリー東京都新宿区西新宿3-20-2東京オペラシティタワー3F開催中~12月19日(日)11時~19時(入場は18時30分まで)月曜休一般1200円ほかTEL:050・5541・8600(ハローダイヤル)©Wada Makoto※『anan』2021年10月20日号より。取材、文・松本あかね(by anan編集部)
2021年10月17日英国のシャーロット王妃が愛したアートが集まる展覧会が、東京・目黒にある東京都庭園美術館で開かれています。美しい植物の絵やウェッジウッドの陶磁器、さらに激動の時代を生きた王妃の人生もご紹介!どんな展覧会?【女子的アートナビ】vol. 224『キューガーデン英国王室が愛した花々シャーロット王妃とボタニカルアート』では、キューガーデン所蔵の貴重なボタニカルアートコレクション約100点のほか、王妃が愛したウェッジウッド社の陶磁器なども展示。美しい植物画を見ながら、17~18世紀当時の歴史や時代背景なども知ることができる展覧会です。キューガーデンとは、ユネスコ世界遺産に登録されている英国王立植物園のこと。ロンドン南西部に位置し、3万種以上の植物と、約1万4000本の樹木が植えられている世界を代表する植物園です。キュー王立植物園が誕生したのは1759年。そもそもヨーロッパの植物園は、医療のための薬草園としてスタートし、それが植物園に変わっていきました。17~18世紀には、イギリスやフランスなどの権力をもつ君主が植物学や博物学を重視。世界各地の珍しい植物を記録するため植物画家が起用され、ボタニカルアートも発展していきました。この展覧会では、18~19世紀に制作されたボタニカルアートの原画や手彩色銅版画をたっぷり楽しめます。花を愛したシャーロット王妃ところで、本展のタイトルに出てくるシャーロット王妃(1744-1818)とは、どんな人なのでしょう?王妃の夫は、イギリス国王ジョージ3世(1738-1820)。1760年、父王が亡くなり即位したジョージ3世は、信頼する部下にお妃探しを命じ、見つけ出されたのがドイツのメクレンブルク=シュトレリッツ公女、シャーロットでした。二人は結婚当日に初めて会ったといわれていますが、相性はとてもよかったようです。ともに音楽好きで、一緒に音楽を奏でたり、演奏会に出かけたりしていました。また、シャーロットは植物を心から愛し、娘たちと一緒にボタニカルアートを習ったり、庭園で国王とともに外国の植物を育てたりして、楽しんでいました。さらに、王妃は1759年に創業したウェッジウッド社の陶磁器に注目。国王も関心をもち、ウェッジウッドは王室御用達となりました。展覧会の会場では、王妃お気に入りのクイーンズウェアも見ることができます。スキャンダルに悩まされ…ジョージ3世は浮気もせず家庭を大事にし、夫妻は15人の子どもにも恵まれ、シャーロットは幸せな結婚生活を送っていました。ですが、幸福そうに見える家庭にも悩みはあります。シャーロットの場合、まず成長した子どもたちにスキャンダルが頻発。さまざまな事件や問題が発生します。世継ぎとなる長男も愛人問題などでトラブルを抱え、国王と息子の関係も悪くなっていきます。さらに夫が精神疾患を発症。たびたび発作を起こし、正気を失うこともあったようです。シャーロットは1818年に74歳で死去。その後、1820年にジョージ3世が81歳で亡くなりました。アメリカ独立戦争やフランス革命など激動の時代に君臨した夫を支え、キューガーデンや植物画の発展の立役者となったシャーロット王妃。庭園に咲く花々が、彼女を支えていたのかもしれません。おすすめのボタニカルアートは?最後に、ボタニカルアートを長年学んでいる筆者が特におすすめしたい作品をご紹介します!まずは、シャーロット王妃や王妃に植物画を教えたキューガーデン最初の王室付き画家、フランツ・アンドレアス・バウアーの作品群。ゴクラクチョウカ科の植物の姿が非常に美しく鮮やかに描かれています。豪華な植物図鑑『フローラの神殿』の手彩色銅版画も必見作のひとつ。華やかに描かれた植物と、少し不気味な背景の絶妙なバランスが魅力的です。女性の植物画家が描いた作品群も、ぜひご覧ください。18世紀、裕福なイギリスの家庭では、女性たちが教養として植物学や水彩画を学んでいました。そのなかで植物画家となっていった女性たちの作品を、会場で見ることができます。シャーロット王妃の娘、マチルダの作品も展示されています。ちなみに、一部のボタニカルアート作品には写真がついています。これは、美術館と同じ敷地内にある庭園や、隣接する国立科学博物館附属自然教育園で実際に見られる植物の写真です。展示を見たあと、庭園や自然教育園を散歩して同じ植物を探してみるのも楽しいですよ。展覧会は11月28日まで開催。※本記事の写真は主催者の許可を得て撮影しています。Information会期: ~11月28日(日)※休館日は毎週月曜日会場:東京都庭園美術館(本館+新館)開館時間:10:00–18:00(入館は閉館の30分前まで)観覧料:一般¥1,400、大学生(専修・各種専門学校含む)¥ 1,120、中学生・高校生¥ 700、65歳以上¥ 700*小学生以下および都内在住在学の中学生は無料※日時指定予約制です。詳細は公式サイトをご覧ください。※高校生以下無料(日時指定予約が必要)問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)※最新情報は、展覧会公式サイトをご確認ください。
2021年10月16日東京都美術館で『ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント』が開かれています。本展では、オランダのクレラー=ミュラー美術館のコレクションから選りすぐりの作品が来日。さらにファン・ゴッホ美術館からの特別出品作もあり、あわせて52点のゴッホ作品が展示されています。16年ぶりの来日となる糸杉の傑作や、日本美術から影響を受けた美しい作品《草地》もご紹介!ゴッホをメジャーにした女性、ヘレーネ【女子的アートナビ】vol. 223本展のタイトル『ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント』にあるフィンセントとは、画家フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)のこと。では、ヘレーネとはいったい誰でしょう?ヘレーネ・クレラー=ミュラー(1869-1939)は、ゴッホ作品における世界最大の個人収集家で、クレラー=ミュラー美術館の初代館長をつとめた女性です。まだ世の中であまり知られていなかったゴッホの作品を1908年から集めはじめ、90点以上の油彩画と約180点の素描・版画を収集しました。東京都美術館学芸員の大橋菜都子さんによると、ゴッホの作品に高い精神性を感じたヘレーネは、自ら楽しむためではなく、同時代の人々や後世の人にも芸術を伝えていくというビジョンをもって作品を購入。収集するだけでなく、公開・継承することでゴッホの評価形成に大きな役割を果たしたそうです。日本の芸術家に憧れて…では、いくつか展示作品をピックアップしてご紹介していきます。まずは、日本が大好きだったゴッホが、日本美術などからインスピレーションを受けた作品《草地》。春の花が咲く草地を描いた明るく美しい油彩画です。ゴッホは、「ただ一本の草の芽を研究する」日本の芸術家たちに憧れていました。シンプルなものに本質を見いだす日本美術に触れたことで、自身も素朴な草地の魅力を見つけ、作品に昇華させました。研究熱心だったゴッホは、印象派やパリの前衛芸術なども調べていたそうです。結婚25周年のプレゼント《悲しむ老人(「永遠の門にて」)》は、ゴッホが昔描いた自身の版画をもとにした油彩画です。両拳で顔を覆い悲しみに暮れる人の姿は、胸に迫るものがあります。この作品は、ヘレーネの夫アントンが妻に内緒で購入。結婚25周年のとき、サプライズでプレゼントしました。ヘレーネの喜びの手紙には「驚いて気を失いそうになった」と書いてあったそうです。糸杉の傑作!最後にご紹介するのは、糸杉の傑作《夜のプロヴァンスの田舎道》。ゴッホは糸杉をモチーフにした絵をいくつか描いていますが、本作品はそのなかでも傑作のひとつです。死を象徴するともいわれる糸杉ですが、まっすぐ天に伸びる木の姿から強いエネルギーも感じられます。現実の風景だけでなく、記憶と想像力を駆使して描かれたもので、南仏滞在のおそらく最後に描かれた集大成です。この作品を描いた約2か月後、ゴッホはピストル自殺をはかり亡くなりました。生前はほとんど作品が売れなかったゴッホですが、死後に弟のテオや、その妻ヨー、さらにヘレーネのような収集家たちが大事に管理し、公開してくれたおかげで遠く離れた日本でも彼の作品を楽しむことができます。ゴッホが現代まで愛される基盤をつくった立役者のひとり、ヘレーネにも思いをはせながら、ゴッホ作品を楽しんでみてはいかがでしょう。Information会期: ~12月12日(日)※休室日月曜日、ただし、9月27日(月)、11月8日(月)、11月22日(月)、11月29日(月)は開室会場:東京都美術館企画展示室開室時間: 9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)観覧料:一般¥2,000 / 大学生・専門学校生 ¥1,300 / 65歳以上 ¥1,200※日時指定予約制です。詳細は公式サイトをご覧ください。※高校生以下無料(日時指定予約が必要)問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)※最新情報は、展覧会公式サイトをご確認ください。
2021年09月29日ハローキティ、ポムポムプリン、シナモロール……どんなときも心を温かくしてくれるサンリオのキャラクターたち。彼らはどこから来て、なぜ誰からも愛されるのだろう?サンリオ創立60年の歴史をたどりながら、『サンリオ展 ニッポンのカワイイ文化 60年史』ではその秘密に迫る。「サンリオの歴史は日本のファンシー文化の歴史。そして日本が世界に発信するサブカルチャー、“カワイイ”文化がどのように発展していったかという歴史でもあります」とサンリオ展製作委員会の高桑秀樹さん。会場には当時のグッズや貴重な手描きの原画など800点あまりが勢揃い。1960年代に人気を博した「いちご」シリーズに始まり、最初期のオリジナルキャラクター、パティ&ジミーなど人気者を中心に、誕生秘話や知る人ぞ知る設定ストーリーを紹介。懐かしいキャラやマイナーなキャラも登場し、スケッチや時代背景をもとにキャラクターデザインの特徴を掘り下げる。海外にも広がったハローキティブームをデザインから読み解く試みにも注目だ。「大人の目線で当時のキャラクターやグッズを考察すると、子どもの頃には気づかなかった発見があるのでは。制作側の裏事情的な要素も含めて楽しんでいただけたら」そのほか、機関紙「いちご新聞」の紙面、その読者を招待する「いちごメイトパーティー」の模様など、ファンサービスの記録も興味深い。「サンリオの原点は世界中が仲良くなってほしいという創業者の願い。だから未来を担う世代へのメッセージを大切にしてきたのです」ファンを育てファンがキャラクターを育てていく、そんな幸せな関係がサンリオの秘密なのかもしれない。奇跡のフォトスポット“Unforgettable Tower”会場のエントランスは地上52階の展望台。迎えるのは原宿カルチャーを代表する美術作家、増田セバスチャンさん作の「Unforgettable Tower」。夜間はライトアップされた東京タワーと並んで写真が撮れるフォトスポット。サンリオキャラクターズ、大集合!これまで誕生したオリジナルキャラクターはなんと450以上!メルヘンチックなタイプだけでなく、おとぼけキャラ、多人数編成のチームキャラなど、時代の気分や流行を反映して、幅広いタイプが登場した。その変遷をたどる。ハートがときめく“ギフト”の秘密キャラクターグッズを“ギフト”と呼ぶのは、「感謝や思いやりを伝える小さな贈り物」という発想から。特に’80年代までは実用性よりかわいさを追求。左はタキシードサムのミニ扇風機、右はハンギョドンの貯金箱。オリジナルキャラクター、誕生秘話左・パティ&ジミーは当初はパティだけ。「後ろ姿が寂しそう」と作家が男の子の友達を描いたのがジミー誕生のきっかけだとか。右・“シンプルな線”は重要な要素。1つのキャラクターを何代もの描き手が受け継いでいく。ハローキティブームは仕組まれた革命!?2000年頃から欧米のセレブの間でハローキティが人気に!「それをきっかけに大人がかわいいものを持ってもいいという価値観の変化が起きたのです」(高桑さん)。写真・レディー・ガガが着用したドレスを再現展示。「いちご新聞」のメッセージとは?1975年創刊の「いちご新聞」はファンとの交流の場。“友情”をテーマに紙上で熱い討論を交わしたり、ペンフレンドを募ったり。年1度のキャラクター大賞、創刊号から続く「いちごの王さまからのメッセージ」も健在。『サンリオ展 ニッポンのカワイイ文化 60年史』東京シティビュー東京都港区六本木6‐10‐1六本木ヒルズ森タワー52F開催中~2022年1月10日(月)10時~22時(入館は21時30分まで)無休一般2100円(平日)、2300円(土・日・祝日)ほかTEL:03・6406・6652情勢により開館時間等、変更になる場合があります。©2021 SANRIO CO., LTD. APPROVAL NO. SP610376※『anan』2021年9月29日号より。取材、文・松本あかね(by anan編集部)
2021年09月27日東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで『ポーラ美術館コレクション展甘美なるフランス』が開かれています。本展では、日本屈指の人気を誇る箱根のポーラ美術館から、選りすぐりのフランス絵画74点が集結。内覧会で取材した会場の様子をレポートします!ポーラ美術館とは?【女子的アートナビ】vol. 222箱根の国立公園内に位置するポーラ美術館は、自然に囲まれた美しい環境のなかで本格アートを楽しめる人気の美術館。フランス印象派をはじめとした西洋絵画を中心に、現代絵画や化粧道具など約10,000点もの作品を所蔵しています。今回の展覧会では、ポーラ美術館のコレクションより印象派からエコール・ド・パリの時代(19世紀後半から20世紀初頭)にフランスで活躍した人気画家たちの作品が集結。モネ、ルノワール、ピカソ、シャガールなど巨匠の名画を一気に見ることができる貴重な機会です。「甘美なるフランス」の意味は?展覧会のタイトルにある「甘美なるフランス」には、どんな意味が込められているのでしょう?Bunkamura ザ・ミュージアム上席学芸員の宮澤政男さんによると、「甘美なるフランス」という言葉は11世紀後半、フランス最古の叙事詩に出てくる表現で、その後ルイ14世の時代にも使われたもので、要はフランス人が自国を「良い国・ステキな国」と自慢する言葉であるとのこと。19世紀になると、整備されて美しくなったパリには多くの画家が集まり、芸術作品も次々と誕生。芸術文化だけでなく、女性の化粧道具なども発展し、ファッションの中心地にもなっていきます。「甘美なるフランス」という言葉で、さまざまな作品がひとつの考え方につながることから、本展のタイトルとなったそうです。アートに合わせた化粧道具も必見!この展覧会の見どころは、人気画家の描いた豪華な名画の数々。例えば、メインビジュアルにもなっているルノワールの《レースの帽子の少女》は、頬を赤く染めた少女の甘美な表情が魅力的で、白い帽子とドレスの描写もとても美しいです。さらに注目したいのは、絵画の横に飾られている化粧道具。ポーラ美術館では、古今東西の化粧道具を収集しているので、会場にも絵の雰囲気に合った美しい作品が展示されています。化粧品を扱うポーラならではの化粧道具コレクションも、ぜひじっくりご覧ください。甘美な雰囲気を味わって!本展では、「甘美なるフランス」の雰囲気を味わえるよう、会場デザインも工夫されています。大邸宅に絵が飾られているイメージでゴージャスな壁紙が使用され、そのほかの壁面も優しいパステルカラーで構成。この空間にいるだけで、フランスの優雅な雰囲気を体感できます。なお、展覧会の会期中、Bunkamura館内のレストラン「ドゥ マゴ パリ」や、近くの「ラデュレ 渋谷松濤店」などでコラボレーション企画も実施されています。ぜひ、食やアートでフランスの空気を味わってみてください。Information会期: ~11月23日(火・祝)※9/28(火)、10/26(火)は休館会場:Bunkamura ザ・ミュージアム開館時間: 10:00-18:00(入館は17:30まで)毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)※金・土の夜間開館につきましては、状況により変更になる可能性もあります。観覧料:一般¥1,700、大学生・高校生¥ 1,000、中学・小学生¥ 700※最新情報は、美術館のウェブサイトをご確認ください。
2021年09月27日六本木ヒルズの東京シティビューで『サンリオ展ニッポンのカワイイ文化60年史』がはじまりました。この展覧会では、日本発の「カワイイ文化」の成長をサンリオ独自の視点で紹介。サンリオ史上最多となる800点以上のキャラクター商品や原画などが展示され、昭和レトロなグッズも登場します!「カワイイ」タワーがお出迎え【女子的アートナビ】vol. 221まずエントランスでは、高さ8メートル以上もある迫力のアート「Unforgettable Tower」がお出迎え。この作品は、増田セバスチャン氏が本展のために制作したものです。近づいてみると、おなじみのサンリオキャラクターだけでなく、ちょっと昔の懐かしいキャラクターたちもいます。増田氏によると、このタワーは“記憶の積み重なり”をイメージしてつくられたもので、4,000 個以上のぬいぐるみが使われているとのこと。どの世代の人が見ても、ワクワクする作品です。ちなみに、52 階にあるガラス張りの展示室からは、東京の景色も一望できます。写真撮影OKなので、夜に訪れてライトアップされた東京タワーと「Unforgettable Tower」のダブルタワーを一緒に撮影すれば、“映える”こと間違いなしです!創業時からカワイイを追求!ZONE1では、「カワイイのはじまり」をテーマに、昨年創業 60 周年を迎えたサンリオの文化の秘密が紹介されています。サンリオは、創業当時から「売れるか、売れないか」ではなく、「カワイイか、カワイくないか」にこだわっていたそうです。その理由は、子犬などを見て「カワイイ」と思う感情は万国共通だから。カワイイを追求し続け、1974年に誕生したキャラクターがパティ&ジミー。この二人はアメリカに住むラブラブカップルという設定で、昭和世代には懐かしのキャラクターです。同年、サンリオを代表するハローキティも誕生。翌75年には、キキ&ララ(リトルツインスターズ)とマイメロディも生み出されました。会場には、マイメロディの貴重な原画も展示されています。シナモロールはウサギだった…!ZONE2では、シナモロールやポムポムプリン、ハンギョドンなどたくさんの「サンリオキャラクターズ」が紹介されています。例えばシナモロールのコーナーでは、プロフィールやグッズなどのほか、キャラクターの世界観を作り上げるために作者が書いた設定書なども展示。シナモロールのプロトデザイン(原案)を見ると、最初は子犬ではなくウサギだったことがわかります。人気キャラクターが生まれるまでの試行錯誤が見られて楽しいです。いちご新聞第一号は、まさかのスヌーピー!ZONE3では「いちご新聞」が登場!「いちご新聞」とは、おもにサンリオキャラクターの情報やグッズが紹介されている読者参加型の機関紙。子どものころ愛読していた人も多いと思います。会場では、1975年に発刊された第一号が展示されています。その表紙は、なんとスヌーピー!実は、サンリオがアメリカに進出したとき、スヌーピーの作者チャールズ・M・シュルツさんと懇意になったそうです。スヌーピーを日本に紹介し、グッズなどを売っていたというつながりもあったので、表紙にも起用されたのですね。会場には、ハローキティも登場!歴代のいちご新聞が展示されているコーナーで、カワイイポーズをとってくれました。キティちゃんに口がない理由は…?ZONE4では、みんな大好きなキティちゃんにフォーカス。さまざまなイラストやグッズが展示され、世界で愛されている人気キャラの基本情報から秘密までも明かされています。例えば、キティちゃんのフルネームは「キティ・ホワイト」。出生地はロンドン郊外、特技はクッキーづくりで、いろいろなスポーツもできてピアノも弾けます。また、キティに口が描かれていない理由は、楽しいときは笑っているように、悲しいときは泣いているように見え、感情移入しやすいから。子どもたちのそばで常に優しく寄り添ってくれる存在だったのです。キティちゃんが少女だけでなく、なぜ大人の女性たちも魅了しているのか、その詳しい理由も明かされています。ぜひ会場でパネル解説などもご覧になってみてください。キティを愛するレディー・ガガが着用して話題となったドレスも再現されています!さらにZONE5では、各アーティストによる、オリジナルのサンリオアートを展示。ZONE6では、未来に向けたサンリオのメッセージが紹介されています。昭和グッズにしびれる!最後に、展示されていた昭和レトロなキティちゃんグッズをまとめてご紹介します。まずは、貴重なハローキティの第一号グッズ「プチパース」。小銭しか入らない小さなお財布は、子どものころ持っていた人も多いはず。昔のビニールっぽい素材が昭和な感じです。キティのレコードや電卓、さまざまな文具も展示されていました。昭和世代には懐かしいものばかり。平成世代には、レトロさがおしゃれに感じるかもしれません。ちなみに、ミュージアムショップもかなり充実しています。限定グッズもあるので、ぜひ立ち寄ってみてください。展示を楽しんだあとは、同フロアにあるカフェ&レストラン「THE SUN & THE MOON」でコラボメニューをどうぞ。食べるのがもったいないくらいカワイイスイーツがいっぱいあります。会期は2022年1月10日まで。期間中、ハロウィンやクリスマス、お正月といったイベントに合わせた展開も予定されているので、ぜひ公式サイトをチェックしてお出かけくださいね。©2021 SANRIO CO., LTD. APPROVAL NO. SP610376Information会期: ~2022年1月10日(月・祝)※会期中無休会場:東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52 階)開館時間:10:00~20:00(最終入館 19:30)※当面、時間を短縮して営業いたします。※情勢によりやむを得ず、営業時間に変更が⽣じる場合や、休業となる可能性もございます。観覧料:【平日】一般 ¥2,100、高・大生 ¥1,500、4歳~中学生 ¥850、シニア(65歳以上) ¥1,800【土日祝】一般 ¥2,300、高・大生 ¥1,700、4歳~中学生 ¥1,050、シニア(65歳以上) ¥2,000※最新情報は、美術館のウェブサイトをご確認ください。
2021年09月25日既成概念をふっとばす。描く楽しさが観る人をも自由に。『塔本シスコ展 シスコ・パラダイス かかずにはいられない! 人生絵日記』をご紹介します。熊本に生まれた塔本シスコさん(1913~2005)が初めて大きなキャンバスに絵を描いたのは53歳のとき。事故で夫を亡くし、失意から立ち直りかけたある日のこと。かつて画家を志した息子の油絵を包丁で削り落とし(!)、その上から庭の草花を描いた。「私も大きな絵ば描きたかった」。その日から91歳で亡くなる前年まで描き続けた絵の中から、200点余りを展示する。好んで描いたのは身近な自然や生き物、家族など。キャンバスは鮮やかな色彩で埋め尽くされ、遠近や天地左右、時には時間すら超えてしまう。例えば着物姿のシスコさんとその姉妹が、2人の孫と遊ぶ様子を1つの画面に描くといったように。「『私にはこがん見えるったい』という本人の言葉が残っていますが、シスコさんの絵には自分が見たように、感じた通りに描こうとするエネルギーが詰まっています」と学芸員の池尻豪介さん。それは正規の美術教育を受けていないことが関係しているとも。テクニックより、自分の目に映った生命の輝きをキャンバスに表すことの方がシスコさんには大切だったのかもしれない。会場には丹念に描かれた大型作品が並び、まさにめくるめく“シスコ・パラダイス”。同じ学芸員の橋本善八さんは「画家と呼ぶのも違う、シスコさんはシスコさん」と話す。「自分らしく生きていいんだよ、というメッセージが伝わるのではと思います」塔本シスコ《秋の庭》1967年世田谷美術館蔵息子の賢一さんの油絵を包丁で削り落として描いたという最初期の作品。はじめは怒った賢一さんも、その出来栄えに母の画業をサポートすることを決意したとか。塔本シスコ《桜島》1970‐1988年個人蔵星のように広がるドットは火山灰を表現。18年間にわたり描き続けられ、初期の頃とはまったく違う絵に。描くことを愛したシスコさんの制作姿勢がよく表れている。塔本シスコ《野外彫刻展を見に行く》1995年個人蔵小柄なシスコさんは自宅の団地の外壁に立てかけたキャンバスを回して大きな絵を描いた。よって縦横も自由。本作裏側には「どっちを上にしてもよかです」とメモが。『塔本シスコ展 シスコ・パラダイス かかずにはいられない! 人生絵日記』世田谷美術館1階展示室東京都世田谷区砧公園1‐2開催中~11月7日(日)10時~18時(入場は17時半まで)月曜(9/20は開館)、9/21休一般1000円ほかTEL:050・5541・8600(ハローダイヤル)※日時指定制※『anan』2021年9月15日号より。取材、文・松本あかね(by anan編集部)
2021年09月14日1 趣旨「あまがさきアート・ストロール~Produced By 六甲ミーツ・アート芸術散歩~」を次の日程で開催することを決定いたしました。2 概要(1)会期令和4年3月19日(土)~27日(日)(2)会場阪神尼崎駅周辺(3)主催あまがさきアート・ストロール実行委員会(尼崎市、尼崎信用金庫、阪神電気鉄道株式会社、六甲山観光株式会社、尼崎商工会議所、尼崎中央・三和・出屋敷商業地区まちづくり協議会、一般社団法人あまがさき観光局)3 あまがさきアート・ストロール~Produced By 六甲ミーツ・アート芸術散歩~とは「あまがさきアート・ストロール~Produced By 六甲ミーツ・アート芸術散歩~」は、「六甲ミーツ・アート芸術散歩」のコンセプトを基に、尼崎の街に展示された現代アート作品を自由に歩きながら鑑賞していただく試みです。六甲山の「自然」の中とは対照的な、尼崎という「街」の中に置かれたアート作品はどのように見えるのでしょうか……。尼崎のことをあまり知らない方も、普段は電車で通り過ぎるだけの方も、アート作品と一体となった尼崎という「街」の中でのストロール(散歩)をお楽しみください。4 今後の情報発信についてあまがさき観光局公式ホームページ: あまがさき観光局公式Instagram: あまがさき観光局公式Twitter: 5 問合せ先あまがさきアート・ストロール実行委員会 事務局(尼崎市経済環境局経済部観光振興課)電話:06-6489-6675FAX:06-6489-6491阪神電気鉄道株式会社 リリース 発行元:阪急阪神ホールディングス大阪市北区芝田1-16-1 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2021年09月10日明治期の洋風建築の傑作といわれる東京国立博物館・表慶館。その重厚かつ優美な空間で、日本美術と乃木坂46のコラボレーションが実現!心を“花”に託してパフォーマンス。メンバーの新境地を見逃すな。テーマは“花”。乃木坂46の9人のメンバーが「桜」「菊」「梅」など7つの古典作品に描かれた花に化身。そのパフォーマンスを気鋭の映像作家が撮り下ろし、モチーフになった日本美術作品(複製)と共にインスタレーションとして展示する試みだ。「乃木坂46の表現する世界観と日本文化のコアな部分が、実はつながっていることを知ってもらいたくて企画しました」と東京国立博物館学芸員の松嶋雅人さん。「西洋や中国の芸術の方向性がリアリズムだとするなら、日本の場合はファンタジー。日本文化の根源といえるのは和歌ですが、古来人々は、山河や花々に自分の心情を託して、歌にしてきたのです。自然災害が多い日本では、悲惨な現実を目の前にしたとき、生き延びるためにポジティブにならざるを得なかった。明日への希望や理想を歌い舞うことで乗り越えようとしたのでしょう」そうした「ファンタジー」は乃木坂46の楽曲や世界観に通じるものがあると松嶋さん。この展覧会では、古(いにしえ)の人が花に託した思いを受け取ったメンバーが、今度は自分自身が花となって思いを表現する。パフォーマーとしての真摯な姿を目の当たりにすることになりそうだ。制作には7人の映像作家が携わる。多くが乃木坂46のミュージックビデオの制作を手掛けてきた名だたるクリエイター。オリジナルグッズや公式図録などラインナップも充実だ。Performer:齋藤飛鳥、Theme:桜No1.「花下遊楽図屏風」Artist:大久保拓朗桜と海棠が咲き誇る中、貴婦人や貴公子が歌舞伎踊りを見物するシーン。世情が荒廃した戦国時代に描かれており、当時の人々が夢見たフィクションの世界を齋藤飛鳥さんはどう表現する!?花下遊楽図屏風 狩野長信筆 東京国立博物館蔵※本展覧会では複製を展示※右隻中央は原品では消失。複製は、ガラス乾板の画像から復元し合成した。Performer:賀喜遥香、Theme:菊No5.「見返り美人図」Artist:横堀光範江戸市中を歩く美少女はなぜ振り返ったのか?「男性に呼び止められたから」と松嶋さん。モニターが左右入れ違いに並び、雑踏にいるような感覚で鑑賞できる。見返り美人図 菱川師宣筆 東京国立博物館蔵※本展覧会では複製を展示Performer:梅澤美波、Theme:梅No7.「振袖 白縮緬地 梅樹衝立鷹模様」Artist:伊藤衆人春先に凛と咲く梅。華やかな振り袖に描かれたその花を演じるのは梅澤美波さん。モチーフにあるスクリーンに似た衝立から発想し、コラージュのような映像を演出。振袖 白縮緬地梅樹衝立鷹模様 東京国立博物館蔵※本展覧会では複製を展示春夏秋冬/フォーシーズンズ 乃木坂46東京国立博物館 表慶館東京都台東区上野公園13‐99月4日(土)~11月28日(日)9時30分~17時(金・土曜は~20時。入館は閉館の60分前まで)月曜(9/20は開館)、9/21休一般・大学生1800円ほか※事前予約制TEL:03・5809・0725※『anan』2021年9月8日号より。取材、文・松本あかね(by anan編集部)
2021年09月05日姿カタチがおしゃれでかわいく、種類も豊富で、インテリアにもぴったりなエアプランツ。花屋だけでなくインテリアショップや100均でも買える手軽な植物ですが、意外に育てるのが難しいという一面も。植物好きライターがエアプランツの楽しみ方をご紹介!アートな植物、エアプランツエアプランツの学名はチランジア。パイナップル科の植物で、おもに中南米の乾燥した土地で木や岩などに根を張って自生しています。この植物の魅力は、土や鉢がいらない、手間がかからないなどいろいろありますが、人気の理由は何といっても姿カタチの美しさ。葉がくるんとカールしたキセログラフィカや、線状に長くのびたうねりのあるシルバーグリーンの葉が美しいウスネオイデス(スパニッシュモス)など、存在そのものがまるでアート作品のよう。窓辺にさりげなく置いておくだけでも、ステキなインテリアになります。おしゃれ部屋になる!特に、家で過ごすことが多くなったコロナ以降、エアプランツなど植物を部屋に飾る人が増えてきたようです。家の中にグリーンがたくさんあると癒されますし、工夫次第で自分好みの空間をつくることもできます。例えば、リモートワークの人なら、仕事用のデスク周辺にエアプランツを置いてもいいですし、また部屋の別コーナーにまとめて飾り、休憩やカフェタイムに眺めるのもおすすめ。美しい造形のエアプランツたちを見ていると、仕事の息抜きや気分転換になりますし、家にいるのが楽しくなります。ただし、エアプランツは生きています。インテリアのイメージが強く、放置していいと思われがちですが、呼吸もしているし、水も大好き。光、風も必要です。筆者は一応マニュアル通りに育てているのですが、それでも以前大事な株をダメにしてしまったことがあります。また、本記事を書くため、植物好きの友人たちに手持ちのエアプランツについて聞いてみたところ、「全滅!」「冬を越せなかった」「腐った」「干からびた」等々の悲報が続々届き、意外に育てるのが難しいことがわかりました。大切に育てながら、インテリアとして楽しむには、どうすればいいのでしょうか?花屋さんたちから得た情報などをもとに、「飾り方」「水やり」「愛し方」の3つのコツにまとめてみました。飾り方のコツは?エアプランツは風が大好き。なので、風通しが悪い場所に飾ると、だんだん元気がなくなってきます。例えば、小さなエアプランツを透明のガラス瓶に入れて楽しむ場合、できれば瓶の中ではなく、上に乗せるように飾ってあげると、風が全方向から当たってムレを防げます。もし風がない場所であればサーキュレーターなどで適度な風を当ててあげたり、水やりのあとであればエアコン(冷房)の風を離した場所で当てたりしても大丈夫だそうです。ただし、エアコンでも暖房の風は植物が乾燥しすぎるので避けてください。ちなみに、エアプランツは光も大好き。室内管理でインテリアとして楽しむ場合でも、日当たりのよい場所に飾ってあげてください。ただ、強い光に当たると葉焼けして茶色くなりますから、レースのカーテン越しなどのやさしい光のある場所に飾りましょう。水やりのコツエアプランツは水も大好き。この植物はおもに「トリコーム」と呼ばれる葉の表面にある白い器官から水分を吸収。自生している場所では、雨や霧、夜露などで水分をとって生きています。「乾燥に強い植物」というイメージが先行して、水やりしなくていいと誤解されがちですが、ぜひ水は与えてあげてください。厳密には種類によって水やりの仕方も異なるようですが、一般的には週に2、3回、霧吹きで頭からお尻まで全体を濡らすようにしてあげればOK。ただし、水やりだけで終わらせてはいけません!ビショビショにするのはいいのですが、葉の内部などに水が溜まった状態で風のない場所に放置するとエアプランツはムレてしまい、最悪の場合、腐ります。適度に内部の水をきってから、しっかり風にあてて乾燥させるのが水やりで一番大事な作業です。また、「ソーキング」といってバケツなどに水をはり、エアプランツ全体を水に浸す方法もありますが、しっかり水やりができていればソーキングは必要ない、というのが花屋さんたちの一致した意見でした。特に初心者は失敗しやすいので、まずは定期的な水やりで管理することを基本にしたほうがよさそうです。愛し方のコツ風・光・水を与えてあげながら育てていると、単なるインテリアではなく、生きている植物としてエアプランツに愛着がわいてくると思います。この段階にきたら、成長する楽しみを味わってみませんか?エアプランツ(チランジア)はもともと木や岩などに根を使って着生する植物なので、流木などに固定して同じような環境にしてあげると根が出てきて成長し、うまくいけば開花して子株が増えるかもしれません。ちなみに、エアプランツの花は、基本的に一株で一生に一度しか咲きません。開花後、子株ができると彼らに栄養をあげて、やがて親株は枯れる運命……。ピンクや紫の鮮やかな花が咲くので、ぜひ開花も楽しみにしながら育ててみてください。毎日エアプランツを眺め、愛情がわいてくると、「のどが渇いた」「ムレて暑いよ~」という植物たちの声も聞こえてきて、いいタイミングで水やりをしたり、風通しや日光浴をさせたりというお世話ができるようになると思います。エアプランツたちをインテリアとして楽しむだけでなく、生きている植物として愛してあげてくださいね。写真・文:田代わこ
2021年08月23日絵画の見方が変わる!クローン文化財で創作の秘密に迫る、「東京藝術大学スーパークローン文化財謎解き『ゴッホと文化財』展つくる文化∞つなぐ文化」が開催!会場にずらりと並ぶゴッホの傑作、オルセー美術館が誇るセザンヌやゴーギャンの名画の数々……実はこれらはすべて複製品。東京藝術大学のチームが最新テクノロジーを使って作品を分析、色の配合からテクニックまで再現した「スーパークローン文化財」と呼ばれるもの。とはいえ、なぜ、こうした高精細複製品が作られることになったのだろう?そもそも世界中の文化遺産、芸術作品のうち、博物館や美術館に収蔵、保護されているのはごく一部。古代遺跡や石仏などの中には、自然災害や盗難、最近では紛争による破壊などで失われたものも少なくない。一方、収蔵されている作品でも、展示による劣化を防ぐため、保存を優先し一般公開されない例もあるとか。こうした実際に目にすることが困難な文化財も含めて、その価値を広くシェアするためにスーパークローン文化財が注目されているのだという。本展の見どころは、なんといっても複製技術の高さ。ゴッホを中心にしたオリジナルのDNAを受け継いだ“クローン”を見比べる面白さに加え、ゴッホ独自の波打つような筆のタッチ、厚塗りの技法を3Dで再現した展示を見れば、作品の秘密により迫ることができる。そのほか歌川広重らの浮世絵をCGでアニメーション化したり、マネの《笛を吹く少年》を立体的に再現したり。浮世絵の世界が動き出し、絵画から登場人物が原寸大で飛び出してくるのは新鮮な驚き。作品鑑賞に新しい体験を吹き込んでくれるクローン文化財の数々と、ぜひリアルに向き合ってみて。作者の試行錯誤が浮かび上がる!?左・ゴッホは色を混ぜず並べて描くことで、網膜上で色彩が混じり、鮮やかに見える「視覚混合」を狙っていた!右・歌川広重の《名所江戸百景 亀戸梅屋舗》をトレース。完全に重なり合うゴッホの模写。左・フィンセント・ファン・ゴッホ《自画像》(再現)原本所蔵オルセー美術館原本年代1889年右・フィンセント・ファン・ゴッホ《ジャポネズリー梅の開花》(再現)原本所蔵ファン・ゴッホ美術館原本年代1887年名画の登場人物が三次元に。左・印象派の先駆者といわれるマネの油彩画《笛を吹く少年》を、平面で複製。右・オリジナルの絵画を計測してデータ化、三次元で再現。等身大の少年が飛び出してきたかのよう。左・エドゥアール・マネ《笛を吹く少年》(再現)原本所蔵オルセー美術館原本年代1866年右・エドゥアール・マネ《笛を吹く少年》(立体再現)原本所蔵オルセー美術館原本年代1866年「スーパークローン文化財」とは。伝統的な模写・模造技術と最先端のデジタルテクノロジーを組み合わせ、高精度に複製された文化財のこと。例えば壁画を再現する場合は同じ素材を用い、質感の表現はもとより、技法も元の様式に則って再現。時代背景やスピリットまで反映させるという。芸術家の専門知識と感性が必要とされるプロセスである。大正時代に実業家が購入。1945年、神戸空襲で焼失したゴッホの幻の作品、通称“芦屋のひまわり”がスーパークローン文化財として甦る!東京藝術大学スーパークローン文化財謎解き「ゴッホと文化財」展つくる文化∞つなぐ文化そごう美術館神奈川県横浜市西区高島2‐18‐1そごう横浜店6F開催中~8月31日(火)10時~20時(入館は閉館の30分前まで。8/18は19時閉館。※そごう横浜店の営業時間に準じ、変更になる場合あり)会期中無休一般1100円ほかTEL:045・465・5515※『anan』2021年8月11日‐18日合併号より。文・松本あかね(by anan編集部)
2021年08月14日東京・上野の東京国立博物館で特別展『聖徳太子と法隆寺』が開かれています。日本の紙幣にもっとも多く使われ、生前から現在にいたるまで1400年以上も尊敬され続けてきた偉人、聖徳太子。奈良・法隆寺からおでましになった太子の珍しいお像や貴重な国宝をご紹介します。どんな展覧会?【女子的アートナビ】vol. 217聖徳太子1400年遠忌記念 特別展『聖徳太子と法隆寺』では、法隆寺に伝わる太子の肖像や遺品とされる宝物、奈良からめったに出ることのない国宝の仏像など、貴重な文化財を展示。厳かな空間で聖徳太子1400年の歴史を感じることができます。聖徳太子とは、どんなお方だったのでしょう?謎の部分も多いようですが、一般的な説によると太子は574年に用明天皇の子として生まれ、仏教を深く学び、推古天皇の時代に政治を補佐。冠位十二階や憲法十七条を制定して日本の仕組みを整え、遣隋使の派遣、法隆寺の創建などにより仏教を広めるなど、文化的な基盤も築いた偉人といわれています。生前から人々に敬われていた太子は、622年に薨去されたあと崇拝の対象となっていきます。平安時代に入ると、太子は観音菩薩の生まれ変わりとされ、そのお姿が絵画や彫刻で表されます。その後も「太子信仰」はさまざまな形で現代まで受け継がれています。奈良にいても見られない…必見の秘宝会場では、聖徳太子のお姿を表した作品がたくさん展示されています。例えば《聖徳太子立像(二歳像)》は、太子がかぞえで二歳のとき、お釈迦さまのご命日に東方を向いて合掌され「南無仏」と唱えた…という伝説にちなんでつくられたお像です。太子のお像のなかでも代表作といわれるのが、聖徳太子の500年遠忌につくられた国宝《聖徳太子および侍者像》。ふだん奈良にいてもなかなか拝観することのできない秘仏で、法隆寺以外で公開されるのは27年ぶりという貴重な作品です。聖徳太子は威厳に満ちたお姿で表されていますが、左右に配されている侍者たちの顔はちょっとユーモラスでほのぼのとした雰囲気。この機会に、近くでじっくりと拝みたい作品です。神秘的なお姿が美しい…!もう一点、見逃せないのが飛鳥時代を代表する仏像で、国宝にも指定されている《薬師如来坐像》。こちらは単体で展示されているので、正面だけでなく後ろ姿も含めて全面を見ることができます。目を見開き、口元には微笑みを浮かべ、お顔立ちはとても神秘的。裳懸座 ( もかけざ ) という台座にかかる着衣の文様が鮮やかで、飛鳥時代の様式美を感じられるお像です。日本を見つめ直す奈良に行ってお寺巡りをしていても、特別公開日などでない限り、秘宝とされる仏像にはなかなかお目にかかることができません。今回の展覧会のように、寺外公開として博物館などにおでましになったときが拝観する絶好のチャンスです。1400年以上も人々に敬われ、心のよりどころとなっていた聖徳太子。その美の世界に触れることで、日本の文化やこの国のあり方について、改めて見つめ直すきっかけとなるかもしれません。特別展『聖徳太子と法隆寺』は9月5日まで開催。取材・文:田代わこInformation会期: ~9月5日(日)会期中展示替えあり前期:2021年7月13日(火)~8月9日(月・休)後期:2021年8月11日(水)~9月5日(日)※休館日:月曜日ただし、8月9日(月・休)は開館し、8月10日(火)は本展のみ休館会場:東京国立博物館平成館(上野公園)開館時間: 9:30~17:00※いずれも入館は閉館の30分前まで観覧料:日時指定予約による事前予約制【前売日時指定券】一般 ¥2,100、大学生¥ 1,300、高校生¥ 900【当日券】一般¥ 2,200、大学生¥1,400、高校生¥ 1,000※中学生以下無料※最新情報は、美術館のウェブサイトをご確認ください。
2021年08月08日東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで『マン・レイと女性たち』が開かれています。写真や絵画、オブジェなど、さまざまなジャンルで優れた作品を残した芸術家マン・レイ。彼の“ミューズ”となった女性たちの作品とともに、作家の生涯をご紹介します!どんな展覧会?【女子的アートナビ】vol. 219『マン・レイと女性たち』では、20世紀を代表する芸術家マン・レイ(1890-1976)の写真を中心に、絵画やオブジェ、ジュエリーなど約250点を展示。マン・レイのモデル兼恋人にもなった美しい女性たちに焦点をあて、その当時のアートやファッションのスタイルにも触れながら、さまざまな作品が紹介されています。人気モデルと熱愛!アメリカ・フィラデルフィア生まれのマン・レイは、ニューヨークの美術学校で学んだ後、芸術活動を開始。油彩画を展覧会に出品したり個展を開いたりしますが、作品はなかなか評価されません。1915年にフランス出身の芸術家、マルセル・デュシャンと知り合い、共同プロジェクトにも参画。その後マン・レイは渡仏し、パリでシュルレアリスム(超現実主義)の前衛作家たちと親交を深め、自らもシュルレアリストとして創作活動にはげみます。また、記録写真などを撮るようになり、写真焼付作業中にカメラを使わず画像を焼き付ける技法を発見。「レイヨグラフ」と名付け、さまざまな写真を制作します。1921年末、パリのカフェで人気モデルのキキ(本名:アリス・プラン)と出会い、即恋に落ちて同棲を開始。キキは藤田嗣治やキスリングなど当時の芸術家たちのモデルとして活躍していた美しい女性で、マン・レイは彼女の肖像写真や裸体写真を撮り続けます。代表作《アングルのヴァイオリン》のモデルもキキ。女性の魅力を最大限に引き出すマン・レイの写真は評判となり、キキの名声も高まります。ただ、奔放で移り気だった彼女とは喧嘩することも多く、1929年、二人は同棲を解消しました。再びモデルと交際…!キキと別れて数か月後、マン・レイはリー・ミラーと出会います。リーは『ヴォーグ』誌のモデルをしたこともある知的で美しいアメリカ人女性。写真家を目指していた彼女は、マン・レイの助手兼モデルとなり恋人にもなります。リーは「ソラリゼーション」という露光過度の状態を効果として使う写真技法を発見。マン・レイも、この技法で多くの作品を生み出します。魅力的なリーは男性にモテモテで、ジャン・コクトーの映画にも出演。またもやマン・レイは嫉妬にかられます。さらにリーは別の資産家男性に惹かれはじめ、結局二人は1931年に別れました。スキャンダルを巻き起こした衝撃ヌードこのころ、マン・レイは女性芸術家たちの裸体写真も多く撮影しています。そのひとつが、スイス人画家メレット・オッペンハイムを撮った作品《エロティックにヴェールをまとう(メレット・オッペンハイム)》。版画インクでモデルの手と腕を黒く汚して撮影された写真は官能的で、当時スキャンダルを巻き起こします。展覧会の監修者、巖谷國士さんは同作品について図録で次のように述べています。「スキャンダルを呼んだほど鮮烈な連作ですが、ポルノグラフィー的な要素はなく、冷たく硬い機械に対比された裸体像に、マン・レイ特有のクールで客観的なエロティシズムがあらわれています」会場には、ほかにもメレットの裸体写真がいくつか展示されています。どれも嫌悪感をもよおすいやらしさはなく、クールで幻想的な美しさを感じる作品ばかり。マン・レイに撮ってもらいたいと思う女性も多かったのではないかと思います。実際、マン・レイは画家としての仕事よりも肖像写真の依頼のほうが多く、ファッション写真も手がけるようになります。展示室では、モード界の著名人、ココ・シャネルの肖像写真やシャネルのドレスなども見ることができます。ダンサーと交際、妻となる女性との出会い1934年、マン・レイはパリのダンスホールで若く美しいダンサーのアディ・フィドランと知り合います。明るく快活で野心のないアディとの交際は順調だったようですが、戦争が二人を引き裂きます。1940年6月、パリにとどまる選択をしたアディを残し、マン・レイは船でニューヨークに脱出。しかしアディと離れてわずか数か月後、50歳のマン・レイは、ハリウッドで29歳のジュリエット・ブラウナーと出会い、恋に落ちます。その後二人は結婚。ジュリエットとは最期まで添い遂げることになります。晩年は再びパリに渡り、写真家や文筆家、画家として活動。最後まで絵のほうは売れませんでしたが、写真家としてヴェネチア・ビエンナーレで金獅子賞を受賞。さらにフランス政府から芸術功労賞を受けるなど、高く評価されました。最後はパリで死去。享年86歳でした。女性が見たくなるアートマン・レイは恋人だけでなく、女性芸術家やファッション・モード界の女性、映画女優など多くの女性の姿を作品に残しました。モノクロで撮られたヌードや肖像写真はどれもクールビューティで、女性が見たくなるものばかり。オブジェやジュエリーもあり、展示室にいると当時のパリにいる気分になれます。20世紀アートの世界を存分に味わえる『マン・レイと女性たち』は9月6日まで開催。取材・文:田代わこInformation会期: ~9月6日(月)※全日程日時予約制会場:Bunkamura ザ・ミュージアム開館時間: 10:00-18:00(入館は17:30まで)毎週金・土曜日は20:00まで(入館は19:30まで)観覧料:一般¥1,700、大学生・高校生¥ 800、中学・小学生¥ 500※最新情報は、美術館のウェブサイトをご確認ください。
2021年08月06日六本木の東京ミッドタウン・ホールで特別展『北斎づくし』がはじまりました。この展覧会でアンバサダーを務める町田啓太さんが取材会に登場!展示の感想や見どころ、北斎にちなんだ楽しいエピソードなども語りました。町田啓太さんがアンバサダー!【女子的アートナビ】vol. 220生誕260年記念企画 特別展『北斎づくし』では、葛飾北斎(1760-1849)の代表作である『北斎漫画』、「冨嶽三十六景」、『富嶽百景』の全ページ・全点・全図が集結。北斎漫画コレクター・浦上満さんが所蔵する世界最高水準の北斎コレクションが一挙に公開されるなど、いまだかつてない大規模なスケールで開かれる展覧会です。また、展示方法も豪華です。フランス・パリを拠点に活躍する建築家、田根剛さんが展示空間を設計し、会場グラフィックはアートディレクターの祖父江慎さんが担当。展示解説は、日本美術に詳しいライターの橋本麻里さんが手がけ、北斎の魅力を存分に楽しめる空間になっています。このゴージャスな展覧会でアンバサダーと音声ガイドを務めているのが、町田啓太さんです!話題のドラマや映画に登場され、いつも眼福なお姿を見せてくださる町田さんが、北斎ブルーの鮮やかな衣装で合同取材会と記者発表会に登場。感染対策のため取材記者のやり取りはリモート経由でしたが、当日撮影された見目麗しい写真とともに、町田さんのお話をご紹介します!北斎さんにワクワク!――アンバサダー就任のお話を聞いたとき、どう思われましたか?町田さん誰もが知っている葛飾北斎さんの特別展でアンバサダーになれて、しかも音声ガイドにも携われるとのことで、うれしかったです。もともと展覧会が好きですし、しかも北斎さんなので、すごくワクワクして、どんな世界観を僕自身が体験できるのが楽しみだと思い、即「ありがとうございました!」という感じで引き受けさせていただきました。入った瞬間から圧倒!――展示をご覧になったご感想は?町田さんもう、受け止めきれないぐらい本当に圧巻でした。僕自身、勉強不足だったこともありますが、北斎さんといえば「冨嶽三十六景」、『富嶽百景』の富士山や波というイメージだったのですが、この展示を見ると、作品に描かれている人物たちも魅力的なのです。例えば富士山を見ている人々なども描かれているのですが、その人たちと同じような気分になりながら見られる展示です。また、会場のつくりが本当にすばらしいです。まさに、北斎づくし。入った瞬間から圧倒されます。北斎のダイナミックさ、大胆さ、繊細さも垣間見えて、どんな方なのかと想像が膨らみました。さらにすごいなと思ったのが、展示物の数。北斎が生涯つくった作品の数がとんでもないのです。本当に好きで、探求し続けないと描き続けられないと思います。――心ひかれた作品は?町田さん決めるのが大変だなぁ。すごく印象に残っているのが、『富嶽百景』で波が鳥に変わっていく作品があるんです。これはすごいな、と。富士山と波があって、よく見たら波の先に鳥がいるのです。水しぶきかと思いました。鳥も、一羽一羽表情があり、僕のなかで印象に残っています。――北斎にあまりなじみのない人でも楽しめますか?町田さん僕も詳しくなかったですし、教科書で見たことがあるなとか、おぼろげなイメージしかなかったのですが、逆にそういう方のほうが、いっぱい発見があると思います。だからちょっとでも気になったら、ぜひ一度足を運んでみられたらどうかな、と思います。進化をとめない北斎はすごい!――町田さんがもつ北斎のイメージは?町田さん当初、感覚的に描く作品が多いのかと思っていたのですが、見れば見るほど繊細で、構図も富士山にしっかり目がいくよう緻密に計算されているのです。また、動物の描き方などが載っている絵手本も展示されていて、それが本当に簡潔でわかりやすく描いてあり、その技術がすばらしいと思いました。北斎は、70歳を越えてもまだまだと言いながら向上心をもって活動していました。進化をとめなかったのはすごいことだと思います。自分に置き換えてみると、同じようなことが生涯できるのか……。やはり北斎はすばらしいし、だからこそ長い間みなさんの心に残る作品になっているのだと思います。音声ガイドは途中で切った…?――音声ガイドのお仕事は、はじめて担当されたのですね。町田さん実は、美術展の音声ガイドを聴くのが好きで、展覧会に行くとよく聴かせてもらっていました。いつか挑戦させてもらいたいと思っていたら、こんな素敵な北斎の展覧会で初挑戦できるなんて、このお話を聞いたときは心が躍りました。――ご自身でガイドを聴かれてみて、いかがでしたか?町田さん途中で切りましたね(笑)。自分のガイドを聴いていたのですが、今回、展示作品を見たとき、特別にスタッフの方にガイドをしていただいたので、それがとんでもなくうますぎて、僕のガイドではなくそちらのお話をもっと聴きたいなと思い、夢中になって聴いていました。――音声ガイドで聴いてほしいポイントは町田さん音声ガイドは通常ですと、あまり感情を入れたりしないと思うのですが、要所要所少しだけ北斎の絵にある遊び心と同じような感覚で、僕も気持ちを感じながらセリフ調にしたところもあるので、そういったところも楽しんでいただけたらと思います。でも、邪魔だなと思ったらすぐ切ってください(笑)。関口さんとの仰天エピソード――北斎は引っ越し魔で93回転居しています。町田さんの引っ越しエピソードはありますか?町田さん大学に入ったとき東京に出てきて、はじめて独り暮らしをしたのですが、僕の家がたまり場になっていて、誰かしら家に毎日いました。当時、だいたい家にいたのは関口メンディー。あるとき、彼が家にいて、僕が先に家を出て、「あとでゆっくり出てきてね」と鍵を渡して、日中鍵を返してもらい、それで夕方家に帰ってみたら、家の中がとんでもない湿気とひんやり感があったのです。「なんだこれ」と思ったら、お風呂場のお湯が出しっぱなしになっていました。もうお湯が水に変わっていて、ガスも止まっていて。真冬でしたが、その日は真水で僕は風呂に入ることになりました。その時のことを関口はいまだに「本当にごめん、本当にごめん」と言っています(笑)。酔いしれてください!――最後に、メッセージをお願いします。町田さん数々の作品を残されている北斎さんの作品がたくさん集まり、見れば見るほど引き込まれ、圧倒され、見る方によっていろいろな視点で楽しめるすばらしい展覧会です。ぜひご覧になって、酔いしれていただければと思います。お楽しみください!町田さんが大絶賛する特別展『北斎づくし』は9月17日まで開催。取材・文:田代わこInformation会期: ~9月17日(金)※休館日:8月10日(火)、8月24日(火)、9月7日(火)会場:東京ミッドタウン・ホール開館時間: 11:00~19:00(最終入場18:30)観覧料:一般¥1,800、大学生・専門学校生¥ 1,200、高校・中学・小学生¥ 900※事前予約制※最新情報は、美術館のウェブサイトをご確認ください。
2021年08月06日東京・上野の国立科学博物館で特別展『植物地球を支える仲間たち』が開かれています。草木や花、果実など植物は身近な存在ですが、その詳しい生態や起源などについては知らない人も多いはず。巨大な花や危険な果実、クサすぎる花など、大人もびっくりする植物たちをご紹介!どんな展覧会?【女子的アートナビ】vol. 218特別展『植物地球を支える仲間たち』では、地球上にある多種多様な植物を、標本や模型、映像、インスタレーションなどで展示。最新の科学研究によって明らかにされた驚きの生態も紹介され、植物の魅力を存分に楽しめる展覧会です。植物たちにも五感がある!第1章「植物という生き方」では、植物のアクティブな生き方を紹介。植物は30億年以上前、光合成という能力を手に入れたことで自ら動く必要がなくなり、晴れの日も雨の日も同じ場所で生活するスタイルに変化。移動はしませんが、その場にいながら成長して花粉を飛ばしたり、虫や動物に食べられないようトゲなどで身を守ったりと、アクティブな毎日を送っています。また、植物には人間と同じように視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚があり、常に変化する周囲の環境を感じ取っています。例えば、光を感じる視覚は光合成をする植物にとって一番大切なもの。でも、人間のように眼という特定の器官を使うのではなく、全身の細胞で光の方向を感知しています。同展監修者の三村徹郎さんは、最新の研究について、図録のなかで次のように解説しています。「最近では、昆虫などに襲撃されていることをその天敵である他の昆虫や、あるいは他の植物に知らせることもできるらしいということがわかってきた」植物が自分の仲間や虫たちとコミュニケーションをとるとき、音声ではなく身体から発する化学物質を使って働きかけているようです。どんな対話をしているのか、想像をかきたてられます。巨大なクサい花が登場!第2章「地球にはどんな植物が存在しているか?」では、巨大、極小、長生きなどさまざまな特徴をもった植物を展示。ここで一番目を引くのが、ショクダイオオコンニャクの実物大模型です。インドネシア・スマトラ島に自生し、コンニャクの仲間であるこの植物は、世界最大級の「花」が咲くことで知られています。(この「花」は、正確には小さな花が集まった「花序」です)ショクダイオオコンニャクは「世界でもっとも醜い花」とも呼ばれています。その理由は、開花時に強烈な異臭を放つから。腐った肉のような、ゴミのようなニオイともいわれるこの香り、展示室を出たところの通路で嗅ぐことができます!本物ではなく化学成分を調合して再現されたものですが、夏場の腐った生ゴミのようなニオイがしました。植物の起源は…?第4章「植物はどのように進化してきたか?」では、植物の歴史を紹介。46億年といわれる地球の歴史のなかで、植物が陸上に進出したのは約5億年前。海中で生活していた緑藻(りょくそう)類のなかから淡水で生活するものが進化し、そのなかから陸上植物が進化したと考えられているそうです。会場では、前期デボン紀(約4億1000万年前)時代の植物の化石標本や復元模型などを展示。筆者は植物オタクなので、珍しい古代植物の姿に興奮しました!怖い植物になった理由は…最後にご紹介するのは、第5章「本当は怖い植物たち」。花や草木は癒しを与えてくれるイメージがありますが、凶暴な性質のものや、人間が死に至る毒をもった危険な植物もあります。例えば、食虫植物。虫などを殺して食べるなんて残酷だと思いますが、植物たちにも事情があります。食虫植物は栄養分が不足している土地に自生しているため、生き残りをかけて自分たちに必要な栄養源として虫などを捕獲しています。また、トリカブトのような植物の猛毒は、動物や虫に葉が食べられないようにするために必要な成分ですし、果実や種子にあるトゲは、動物にくっついて別の場所に種子を散布してもらうために必要なもの。毒もトゲも植物が次世代以降も生き残るために備わった大切な力なんですね。植物が愛おしくなる…!同じ地球に暮らす仲間として、植物は人間にとってとても大切で身近な存在です。そんな植物の美しいだけではない多様な側面を知ることで、この先出会う植物たちがさらに愛おしく思えるようになるかもしれません。特別展『植物地球を支える仲間たち』は9月20日まで。取材・文:田代わこInformation会期: ~9月20日(月・祝) ※会期等は変更になる場合があります※休館日:9月6日(月)会場:国立科学博物館(上野公園)開館時間: 9:00~17:00※入館は閉館の30分前まで観覧料:一般・大学生¥1,900、小・中・高校生¥ 600※事前予約制※最新情報は、博物館のウェブサイトをご確認ください。
2021年08月06日東京・渋谷にJTが主催する期間限定のアート空間が登場。「ライゾマティクス」から派生した「フロウプラトウ」が手がけるインスタレーション作品を体感できる施設『X_VISION inspired by Ploom X』を取材しました。期間限定で登場!『X_VISION inspired by Ploom X』は、JTの高温加熱型たばこ用デバイス「プルーム・エックス(Ploom X)」の発売を記念して、その世界観をアートで表現した体感型の展示イベント。喫煙者の方はその場で新発売の「プルーム・エックス」を試用できます。開催期間は8月3日から11月14日までの約3か月。場所は、渋谷駅のハチ公前からスクランブル交差点を渡ってすぐ、渋谷センター街のメイン通りに面した便利なところにあります。1階では五感を刺激されるインスタレーション空間が広がり、2階のショップエリアでは「プルーム・エックス」をゆっくり試せるラウンジスペースや商品説明のカウンターを併設。こちらでは、8月17日の全国販売に先駆けて「プルーム・エックス」デバイスが先行販売されています。最新のジェネラティブアート楽しめる!本イベントのインスタレーション作品は、ジェネラティブアートの手法を用いて制作されています。ジェネラティブアートとは、コンピュータのアルゴリズムなどにより生成された芸術作品のこと。今回作品を手がけたのは「フロウプラトウ」です。フロウプラトウは、国内外で注目されているクリエイティブ集団「ライゾマティクス」から派生したデザインアート系の企業。コミュニケーションデザインやウェブデザインなどを手がけ、渋谷で人気の展望施設「SHIBUYA SKY(渋谷スカイ)」の総合演出やブランディングなども担当。今回は、自然の感性からインスピレーションを得てつくられた「プルーム・エックス」の世界観をアートで表現しています。それでは、実際に施設の様子をご紹介していきます。まず1階に入ってすぐの空間では、壁面のインスタレーション作品《Nature Breath》を展示。タイトル通り、まさに自然界の生き物が呼吸するかような映像が流れています。ここには商品のトライアルエリアもあるので、喫煙者の方は幻想的なアートを感じながら自分の好きな「プルーム・エックス」用のたばこスティックを選ぶことができます。没入できるインスタレーション1階奥にあるのは、体感型インスタレーション作品《Primitive Sense》。3方向の大型スクリーンに囲まれた空間で、サラウンド音響に包まれながら壮大な映像を楽しめます。「プルーム・エックス」のデバイス本体に装着されているフロントパネルは、自然をテーマにした7つのカラーバリエーションで展開されています。今回のインスタレーション作品では、「プルーム・エックス」のフロントパネル7色と紐づいた7種のテーマと、来館した当日の外部環境データ(天気、気温、気圧、湿度、風速)を掛け合わせた5,040通りのデザインが用意されているそうです。例えば、来館された喫煙者の方が赤いフロントパネルの「プルーム・エックス」を選ぶと、そのデバイスと、当日の外部環境データや時間に合わせた映像が流れます。選ぶデバイスによって映像が変わるので、3方向で異なる画像を出すことも可能。流れてくるサウンドもリアルタイムに変化するので、「プルーム・エックス」の世界観にマッチした没入感の高いアートに包まれながら、最新デバイスを試用できます。ちなみに、「プルーム・エックス」は1回のたばこスティックの加熱で約5分間喫煙可能とのこと。それに連動してこちらのアート作品も5分間楽しめます。喫煙者の方は、ふらりと気軽に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。筆者は非喫煙者なので、デバイスの色を選んで作品だけ楽しませていただきました。そのとき流れた映像は、宇宙から見た地球のような美しいもので、流れている音響も神秘的。とても幻想的な気分を味わえました。以上、『X_VISION inspired by Ploom X』取材レポートでした!取材・文:田代わこInformation「X_VISION inspired by Ploom X」概要[開催期間]2021年8月3日~11月14日[住所] 〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町23-10 VIVEL渋谷1F~2F[営業時間]11:00~20:00※入店できるのは20歳以上の方です。※「プルーム・エックス」の詳細については、公式サイトをご覧ください。
2021年08月05日あの名作絵本の生みの親・馬場のぼるの人間像に迫る展覧会、「没後20年 まるごと馬場のぼる展描いた つくった 楽しんだ ニャゴ!」をご紹介します。絵本「11ぴきのねこ」シリーズなどで、今も幅広い世代に根強い人気を誇る漫画家・馬場のぼる。1927年に3人姉弟の末っ子として青森県三戸町で生まれた彼は、リンゴの行商人や開墾農民、代用教員など職を転々とする傍ら絵の勉強を始め、劇団や映画館のポスター、看板を描いていた。21歳の時に漫画家を志して上京。翌年には少年誌で早くも連載漫画を手がけるようになり、一時期は手塚治虫、福井英一とともに「児童漫画界の三羽ガラス」と呼ばれるほどの人気を博した人物だ。漫画家としての才能にあふれた彼だったが、次第に少年漫画の仕事に対して思い悩むようになる。当時の少年漫画はアクションものが主体となり、次第に自分の体質に合わなくなったと感じていたのだ。24歳の頃、島田啓三を中心とした「東京児童漫画会」の会員となり、手塚治虫や古沢日出夫などと知り合い、刺激を受ける。次第に「漫画と本質的に同じであるうえに絵をたっぷり見せることができる」と絵本の制作にやりがいを覚え、徐々に活躍の場を絵本の世界へと移してゆく。やがて誕生したのが、1967年刊行の『11ぴきのねこ』だ。11匹のやんちゃな猫たちが繰り広げる物語は、子供はもちろん大人をも虜にし、一大ロングセラーに。絵本のみならずキャラクターグッズや人形劇なども幅広く展開され、世代を超えて愛される存在になっていった。そんな馬場が自宅に残していた約50年分の膨大な資料も活用し、本展では彼の漫画や絵本の業績、スケッチブックや個人的に描いた絵画、立体作品、交友関係などにも焦点を当て、馬場のぼるの人間像を紹介する。展覧会は彼の代名詞「11ぴきのねこ」シリーズからスタート。1作目から最後の6作目までラフスケッチや色指定の記録などと合わせ、当時の絵本の制作過程もわかるような、貴重な校正用リトグラフを紹介する。さらにアトリエに残されていた1951年から2001年までの約50年分のスケッチブックから発見された取材メモ、猫のモチーフなど、様々な資料を7つに分類して紹介。また故郷の風景画や小学校時代の絵や作文、旧制中学時代のノートなどを展示し、馬場の原点も探る。なかでも印象的なのは彼がプライベートで楽しんでいた創作の数々だ。猫たちの様々な姿をキャンバスに描いたり、自ら土をこねて鬼瓦をつくったり…。おなじみのキャラクターたちが思い思いに動く姿は、ファンにとっては興奮モノ。これまでこうした私物を紹介した機会はなく、今回初出しの見どころといえるだろう。口ひげと目深にかぶったチューリップハットがトレードマークだった馬場のぼるは、手塚治虫と仲が良かったという話も有名。なぜ彼が大人に響くメッセージを絵本の中にも描き続けてきたのか、この展覧会を見ればきっとわかるはずだ。『11ぴきのねことぶた』こぐま社、1976年刊 印刷原稿特色刷り校正用リトグラフ・紙こぐま社蔵「ブウタン」『幼年ブック』集英社、1954年掲載漫画原稿墨、水彩等・紙こぐま社蔵『ぶどう畑のアオさん』こぐま社、2001年刊 原画水彩、墨・紙こぐま社蔵『きつね森の山男』こぐま社、1974年刊 印刷原稿特色刷り校正用リトグラフ・紙こぐま社蔵「没後20年 まるごと馬場のぼる展描いた つくった 楽しんだ ニャゴ!」練馬区立美術館東京都練馬区貫井1‐36‐16開催中~9月12日(日)10時~18時(入館は17時30分まで)月曜(8/9は開館)、8/10休一般1000円ほかTEL:03・3577・1821※『anan』2021年8月4日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2021年07月30日東京・六本木のサントリー美術館で、『ざわつく日本美術』が開かれています。タイトルだけ見てもおもしろそうなこの展覧会、展示内容もかなり濃厚で、期待を裏切りません。同展を企画された学芸員さんたちのお話も聞いてきましたので、展示風景とあわせてご紹介します!どんな展覧会?【女子的アートナビ】vol. 216『ざわつく日本美術』は、サントリー美術館が所蔵する絵画や工芸品などの名品や珍品をとおして「見ること」を楽しみながら、日本美術の奥深さを存分に味わえる展覧会です。会場では、展示方法や空間演出、章タイトル、さらに作品解説に記されたキャプションに至るまで、さまざまな工夫が凝らされています。ちょっと堅苦しそうな日本美術のイメージがガラリと変わる展覧会、その見どころをご紹介していきます。学芸員さんも驚いた…!生々しい絵まずプロローグで登場するのが、展覧会のメインビジュアルにも使われている《尾上菊五郎》です。明治初期につくられた石版画の役者絵ですが、なんとも言えない存在感があります。展示方法もインパクト大。夢に出てきそうな異質な雰囲気です。同展企画者のひとり、学芸員の久保佐知恵さんは、はじめてこの作品を見たとき「うわっ、なんだこれは…!」と思い、心がざわざわしたそうです。「役者絵は浮世絵のイメージがあると思いますが、これは江戸時代の浮世絵版画とは全然違います。写真のようだけど写真とも違う、そんなあいまいな作品です。私が感じた心のざわめきは、作品が作られた当時(明治初期)の人も感じていたようで、江戸時代以来の浮世絵に見慣れた人にとって、この生々しさには抵抗感があったようです。シリーズものだったのですが、不評に終わってしまったと伝わっています」(久保さん)うらうらする…!続いて、第1章「うらうらする」をご紹介。この章では、ふだんなかなか見られない作品の裏側がしっかり見えるような展示方法になっています。例えば、《色絵五艘船文独楽形鉢》には器の内外にオランダ人とオランダ船が描かれています。江戸時代後期の人にとって、オランダ船は海を越えて宝物をもってきてくれる「宝船」と考えられていたそうで、その吉祥性が描かれているため、裏側には「寿」の文字も見えます。ちなみに、この章の展示方法は久保さんが「ウユニ塩湖のようにしてほしい」と造作担当者に依頼されたとのこと。展示室では、さまざまな美しい器が浮いているように見えます!はこはこする…!第5章「はこはこする」の展示方法もユニークです。「はこ」とは、作品を保管している箱のこと。展示室では、なんと美術品の箱が展示されています!もちろん、箱だけでなく中身も展示されていますが、あえて箱とは離した場所に置かれて、床に矢印で中身のある場所が示されています。「作品の持ち主は、作品を大事にしたいという思いから豪華な美しい箱をあつらえています。箱には、作品に関わる重要な来歴も含まれています。ぜひ箱を含めて作品を見ていただきたいです」(久保さん)5章のタイトルは、久保さんと一緒に同展を企画された教育普及担当の関香澄さんが考案されたそうです。「このコーナーはタイトルで悩みましたが、そのまま『はこはこ』にしようと造語を使いました。箱イン箱で、見た目もおもしろいと思いますのでご注目ください」(関さん)ざわざわする…!第6章では、美しいだけではない、ちょっとお下品だったり卑猥だったりするような、心がざわつく日本美術が登場。冒頭でご紹介した《尾上菊五郎》もざわざわ系アートですが、ほかにもあります。例えば《放屁合戦絵巻》では、裸の男性たちが自分のおならの強さ(?)を競い合っているシーンが描かれています。とても美しいとはいえない、ちょっと汚らしいとも思える絵巻です。「《放屁合戦絵巻》は、もともと平安時代に描かれたものを室町時代に写したものです。おならを競い合う絵を大切に描き継いで楽しむという、当時の人たちの心の余裕も感じられる作品です」(久保さん)もうひとつ、《袋法師絵巻》も超ざわざわ系アートです。いわゆる「春画」で、ある屋敷の女主人の寝床に好色のお坊さんが潜んでいるところが描かれています。赤い大きな袋に隠れたお坊さんの顔はインパクトがあり、一度見たら忘れられません。ちなみに、このお坊さんはその後、袋に入れられたまま、ほかの女性の慰み者になるそうです……。心のざわめきに耳を傾けて!おならや春画の絵巻で心がかなりざわついたあと、最後のプロローグではレースで区切られた静寂な空間が待ち受けています。ここには、仏教彫刻がポツンとひとつだけ、飾られています。「この作品は、平安時代の女神像でしかも頭部だけです。表情があまりありませんが、よく見ていると、鑑賞者の心の変化に合わせて少女のように見えたり赤ちゃんに見えたり、目まぐるしく変化します。見る人の心の状態が変わることで、作品との出会いが一度きりでは終わらない、その時々の自分だけの大切なものだと改めてわかるような彫刻です。この作品を見たときの“心のざわめき”に耳を傾けて、展示室を後にしていただきたいです」(久保さん)熱量に感動…!サントリー美術館のコレクション企画展に行くたびに日本美術が好きになっていく……そういう声をよく聴きます。その理由は、「見せ方」がとても親切だから。美術の知識がなくても楽しめる、見ているだけでワクワクするような展示になっているからだと思います。例えば、単に茶碗が並んでいるだけではスルーしてしまうかもしれませんが、「裏もおもしろいですよ~」と鏡で見せてくれると、がぜん興味がわいてきます。美術の見方やポイントを押しつけるのではなく、さりげなく教えてくれる、そんな絶妙な匙加減のおかげで楽しく見ることができ、日本美術の魅力にハマっていくのかもしれません。今回の展示では、学芸員さんたちの熱量の高さにも感動しました。『ざわつく日本美術』は8月29日まで開催。取材・文:田代わこInformation会期: ~8月29日(日)※会期中展示替えあり ※休館日:火曜日※8月24日は18時まで開館会場:サントリー美術館開館時間: 10:00~18:00(金・土は10:00~20:00)※7月21日(水)、22日(木・祝)、8月8日(日・祝)は20時まで開館※いずれも入館は閉館の30分前まで観覧料:一般¥1,500、高校・大学生¥1,000、中学生以下無料※最新情報は、美術館のウェブサイトをご確認ください。
2021年07月28日1960年代からつねに第一線で活躍し、世界を魅了し続けてきたアート界のレジェンド横尾忠則。彼の60年以上にわたる創造の全貌を一望できる展覧会「GENKYO 横尾忠則[原郷から幻境へ、そして現況は?]」が始まった。85歳にしてなお挑み続ける横尾氏の画業に迫る。’60年代にはグラフィックデザイナー、イラストレーターとして一世を風靡した横尾氏。しかし1980年にニューヨーク近代美術館で開催されたピカソ展を観て衝撃を受け、以降「画家」としての活動を開始。その後から具象的な作品を継続して制作するようになる。そんな彼の激動の人生を表すかのような本展。今回は彼自身が総監修者となり、絵画を中心に初期のグラフィック作品を加えたアートワークを500点以上出品&展示する。なかでも注目は、彼がコロナ禍に制作した新作だ。全世界がコロナ禍に見舞われる状況の中、横尾は外出も来客も制限しながら、日々アトリエにこもって絵画制作に没頭。昨年から今年にかけて制作された新作は、大作ばかりが20点以上。横尾作品の中で最大級の問題作ともいえるこれらの新作の数々は必見だ。さらに館内には自身の作品などにマスクをコラージュした「WITH CORONA」のコーナーも登場。2020年5月から、横尾はこの「WITH CORONA」シリーズをツイッターとブログで発信し始める。コロナ禍でのネガティブなイメージをポジティブに変換するこの試みは、現在600点以上制作され、撮影可能としているのもユニーク。また、横尾が滝の絵を描くために収集した1万枚以上の絵はがきのコレクションが、インスタレーションへと展開している滝空間も見どころのひとつ。天井や壁面を覆い尽くす滝の絵はがきは、ダイナミックな体感空間になっている。「何を作ったかではなく、制作のプロセスが大事」という一貫したメッセージを打ち出し続ける横尾忠則。そんな彼の展覧会は、85歳になっても実験的で挑戦的。アイデアが枯渇することのない柔軟な頭の中を覗き見るような展示は、熱量を伝えつつふと笑みがこぼれる内容だ。横尾忠則《高い買物》2020年作家蔵横尾忠則《T+Y自画像》2018年個人蔵横尾忠則《Wの惑星》2005年作家蔵横尾忠則《暗夜光路赤い闇から》2001年東京都現代美術館よこお・ただのり1936年、兵庫県生まれ。唐十郎、寺山修司らの舞台芸術のポスターなどを手がけ、’69年にパリ青年ビエンナーレ版画部門大賞を受賞。2012年に横尾忠則現代美術館、’13年に豊島横尾館を開館。横尾忠則近影(角南範子撮影、2020年)GENKYO 横尾忠則[原郷から幻境へ、そして現況は?]東京都現代美術館 企画展示室1・3F東京都江東区三好4‐1‐1開催中~10月17日(日)10時~18時(入場は閉館の30分前まで)月曜(7/26、8/2、8/9、8/30、9/20は開館)、8/10、9/21休一般2000円ほかTEL:050・5541・8600(ハローダイヤル)※『anan』2021年7月28日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2021年07月27日東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで、ポップカルチャーの巨匠、KAWS(カウズ)の大型展覧会『KAWS TOKYO FIRST』が開かれています。ペインティングや巨大彫刻、さらに最新のAR作品など約150点が集結。2年ぶりに来日したKAWSさんのコメントもご紹介!どんな展覧会?【女子的アートナビ】vol. 215『KAWS TOKYO FIRST』では、世界が注目するアーティストKAWSの初期から最新作までの絵画や彫刻、プロダクトなどを展示。さらに作家が所有するプライベートコレクションも紹介され、創作の源泉も知ることができる展覧会です。KAWS(本名:ブライアン・ドネリー)さんは1974年アメリカ生まれ。ニューヨークの美術学校で学び、アニメーターとして3年間勤務。1990年代前半にグラフィティライターとして注目されはじめ、バス停や電話ボックスの広告にキャラクターを描いた作品などが人気となり、アメリカだけでなくヨーロッパや日本でも知られるようになります。彼の代表作は、目の部分が×印になっているキャラクターたち。みんなが知っている「ねずみ」や「犬」などのキャラクターを書き換えた遊び心いっぱいのパロディ作品を次々と生み出し、世界中の人たちを魅了しています。また、ユニクロやア ベイシング エイプ、ディオールなどブランドともコラボ。絵画や彫刻から、ストリートアート、グラフィックデザイン、プロダクトデザインまで、幅広いジャンルで活躍されています。報道内覧会では、来日中のKAWSさんが登壇。展覧会への想いや日本とのつながりについて語りました。日本で得られたものは…?KAWSさんの初来日は1990年代の半ばごろ。それ以後40~50回は来日しているというかなりの親日家です。90年代後半は日本のストリートカルチャーが発展していった時期。KAWSさんは裏原系のファッションリーダーNIGO®さんなど多くの方々と交流を重ね、作品やプロジェクトを生み出していきます。日本のストリートカルチャーが自身に与えた影響について、次のように語りました。KAWSさん日本に来ることで、さまざまなインスピレーションを得ることができました。日本は、私がそれまで知っていた世界とはランドスケープが違っていました。当時は新しいものが始まっていく時代。日本の友人たちとワクワクを共有でき、いつもとても楽しくて、実験的なこともいろいろできました。日本のストリートカルチャーが活動の場を広げ、ファッションブランドに影響を与えていくのを見ることができ、その時代に関われたことを幸せだと思っています。展覧会名に込められた想い今回の展覧会名「KAWS TOKYO FIRST」は、20年前に渋谷で開かれた初個展と同じタイトルです。なぜ同じものにしたのか、その想いを語りました。KAWSさんこのタイトルに落ち着いたのは、私のなかでひとつのサイクルが終わったと感じたからです。2001年に東京で初個展をしてから多くの変化がありました。その個展がベンチマーク的な意味をもっており、今回同じタイトルにすることで、原点に戻れるのではないかと考えたのです。プライベート空間を披露した理由会場では作家のアトリエの一部が再現され、プライベートコレクションも展示されています。その理由を次のように述べています。KAWSさん私は常々ほかのアーティストのことをもっと知りたいと考えていました。私が毎日どういったものと暮らしているのか、何に興味があるのか、見ていただきたいのです。自分の個人的なスペースをみなさんと共有する場をもちたいと考えたのです。私の所有するコレクションを見て、ほかのアーティストの作品を気に入ったら、ぜひ調べてみてください。特に見てほしいところは?最後に、展覧会で見てほしいところを語りました。KAWSさんこの展覧会では、私の全体のストーリーを来場者の方と共有できるのが意義深いところです。私がこれまでどんな点に興味をもっていたのか、作品はどこから始まり、どこまで来ているのか、その変遷もご覧いただきたいです。20年間の興味の変遷と洞察を、ぜひ受け取っていただければと思います。また、コロナの状況であっても展覧会に来てくださる方に感謝の気持ちを伝えたいと思います。日本に来るのは毎回おもしろい体験で、日本にいられることも光栄で、これからも来続けたいです。そして友人である横尾忠則さんの美術展も都内でやっているので、ぜひそちらにもお出かけください!グッズも注目!展覧会の特設ショップでは、限定商品やブランドとのコラボ商品など注目商品が並んでいます。特に目を引くのが、「名菓ひよ子」とのコラボ。ひよ子ちゃんの目が×印になっていてかわいいです!一部の商品はKAWS TOKYO FIRSTオンラインストアでも販売される予定なので、ぜひ公式サイトをのぞいてみてください。『KAWS TOKYO FIRST』は10月11日まで開催。取材・文:田代わこInformation会期: ~10月11日(月) ※休館日:8月5日(木)会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)開館時間: 10:00~20:00※9月9日(木)は~17:00※入館は閉館の30分前まで観覧料:平日一般¥2,500、高校・大学生¥2,000、小・中学生¥900、土日一般¥2,800、高校・大学生¥2,300、小・中学生¥1,200※全日日時指定制※未就学児無料※詳細は公式サイトをご確認ください※最新情報は、美術館のウェブサイトをご確認ください
2021年07月25日クリエイティブな発想で絵を描く、『スタンプアート』を知っていますか。スタンプアートは、身近なものをスタンプのように使って、絵や模様などを作っていきます。売られているスタンプを利用して、絵を描いていくこともあります。『おもちゃと手作り・遊び・英語絵本』をInstagramで発信しているさとこさんが、家にあるものでできるスタンプアートを紹介しています。※画像は複数あります。左右にスライドしてご確認ください。 この投稿をInstagramで見る さとこおもちゃと手作り・遊び・英語絵本(@littlestarsenglish_sapporo)がシェアした投稿 今回、さとこさんがスタンプとして使用したのは以下の5つです。使用したもの:・フォーク・レゴ・気泡緩衝材(通称:プチプチ)・指・トイレットペーパーの芯普段よく使うものばかりですね。トイレットペーパーの芯は、そのまま使ってもスタンプとして利用できそうですが、さとこさんは、ひと工夫加えています。同じ道具を使っても、道具の使い方、押す時の力加減や、道具のスタンプとして使う部分を変えてみることで、違った表現を楽しめそうです。また、道具だけではなく、スタンプを押す際に使う塗料も選ぶこともできます。今回のさとこさんの投稿では、水性絵具を使用していますが、ほかにもスタンプ用のインクやクレヨンなどを水に溶かして使うこともできそうです。アイデア次第で身近なものをスタンプにして、さまざまなものを描けそうですね。絵には自信がないという方でも、スタンプアートなら面白い絵が描けるかもしれません。まだ絵を描けない小さな子供でも、スタンプを押して楽しむことならできるので、年齢の違う兄弟でも一緒に楽しめる遊びになりそうです。[文/AnyMama(エニママ)・構成/grape編集部]
2021年07月24日“包むこと”を通じて日本人の生活や社会を考える。展覧会「包む-日本の伝統パッケージ」とは?アートディレクターが稀有だった戦前から、日本の伝統的なパッケージの収集と研究を続け、「TSUTSUMU(包む)」という言葉とともにその美しさを海外に広く知らしめた、デザイナー岡秀行。「最初は形の見事さに惹かれた。けれど次第に形の奥に呼吸している人間の暮らしへと関心が移っていった」と生前、収集の動機を語っている。彼は、現代社会においてのパッケージを、商品を売るためのテクニックであり広告産業の一部と考えた。つまり新しい包み方は新しい生活を意味し、包み方の変化は生活自体の変化だというのだ。彼にとって、日本人とは何か、生活とは何か、社会とは何かを考える上で「包む」ことの意味は広く、重大。そんな想いから岡氏が見出したのは、それぞれの伝統パッケージに脈打っているのは日本人特有の自然観であるということだった。日本人はすべての自然に神様が宿ると考え、それに包まれるものは大切なもの、清らかなものであると捉えている。だからこそ伝統パッケージには一種の折り目正しさがあり、見る者をハッとさせるほどの格調があるのだと断言している。そんな岡氏の意思を反映した今回は木、竹、笹、藁など日本の風土に育まれた自然素材や陶器、和紙、絣かすりなど、日本人に馴染みある素材別にデザインを紹介。デザイン的な観点からいえば「生活の知恵として生み出されたシンプルな造形」を紹介した作品と、日本人の職人技というべき「職人のプライドと手技の美を持つ品」の2種に大別される。プラスチック容器全盛の昨今、本物の自然が宿る日本の伝統パッケージは、心に潤いを与えてくれる。サステナブルが叫ばれる今こそ、再びこうしたパッケージに目を向ける時が来たのだと考えさせる内容だ。《卵つと》山形県撮影:酒井道一(岡秀行著『包』毎日新聞社、1972年 所収)農民生活の長い歴史から生まれた、卵を安全に運ぶ入れ物「卵つと」。生活の知恵が洗練され、見事な造形となった。藁素材の特性をフル活用している。《岡山獅子》岡山県/中尾正栄堂撮影:酒井道一(岡秀行著『包』毎日新聞社、1972年 所収)古い須恵器(陶質土器)の伝統を受け継ぐ由緒ある備前焼のお菓子パッケージ。岡山ではメジャーな商品で、中にはきびだんごが入っていた。現在はもう製造されていない。《釣瓶鮓》奈良県/釣瓶鮓弥助撮影:酒井道一(岡秀行著『包』毎日新聞社、1972年 所収)釣瓶鮓(つるべずし)は奈良の郷土料理で、曲げ物桶に鮎の熟れ鮓を詰めたもの。1000年以上の歴史を誇る由緒ある逸品で、現地でも長く愛されてきたが、現在は製造されていない。《ささらあめ》宮城県/熊谷屋撮影:酒井道一(岡秀行著『包』毎日新聞社、1972年 所収)仙台の郷土菓子であるささら飴を竹ひごの先に付け、筒に差し込んだシンプルなデザインが見事。熊谷屋の商品であったが、現在この形での販売は終了している。包む-日本の伝統パッケージ目黒区美術館東京都目黒区目黒2‐4‐36開催中~9月5日(日)10時~18時(入館は17時半まで)月曜(8/9は開館)、8/10休一般800円ほかTEL:03・3714・1201※『anan』2021年7月21日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2021年07月16日いつも美術館や展示会などの場では、どのように鑑賞していますか?最近ではオンライン展示など楽しみ方の幅も広がっています。そこで今回は、アート作品のキュレーターが、リアルとオンライン展示をもっと楽しむためのヒントをご紹介します!この夏、リアル・オンライン展示を鑑賞するなら要チェック!もうしばらくすれば、アートを美術館や展示会など、リアルの場で鑑賞する機会が増えるかもしれません。最近ではオンラインでの展示会も増えており、リアルとオンライン両方で存分にアートを楽しみたいものですよね。アートは自由に鑑賞するものですが、もうちょっとレベルアップして味わってみたい、という人もいるでしょう。そこで今回は、アートのプロである、展示会の作品を収集するキュレーターという職業の方に、アート鑑賞をいつもとは違う角度から楽しむヒントを教わります。こんな楽しみ方もある!アートの鑑賞方法4つ今回、教えてくれたのは、今年7月16日から千代田区で開催されている「ポコラート世界展『偶然と、必然と、』-障害のある人、 ない人、 アーティストの生の表現を世界に解き放つ-」という展示で、世界各国から作品を集めてきたキュレーターの嘉納礼奈さん。まずは、展示会や美術館など、リアルの場での鑑賞をより楽しむ方法を4つ教えていただきました!1.入口から出口までストーリーを楽しむ嘉納さん展覧会では、ただ「もの」が陳列されているのではなく、入口から出口まで、ひとつのアトラクションのように流れの中で作品を体感する仕掛けがあります。まるで音楽のようにリズムがあり、ゆっくりと始まり、速くなったり、止まったり。映画のストーリーのように伏線があり、楽しい場面、激しい場面、辛い場面などさまざまな場面の展開を経て、クライマックスに辿り着く。そんなストーリーを感じてみましょう。2.自分の身体で作品を測ってみる嘉納さん作品の前に立って、自分の身体で作品を測ってみます。自分の手のひらの大きさと比べたり、腕の長さと比べたり、腰の高さや身長でとらえたり。すると、後で作品の写真や画像を見たときに、作品の大きさや規模感を思い出すこともできますよ。3.自分の興味や好き嫌いで作品を見る嘉納さん自分の興味で作品を見ましょう。作品の色彩、形、描かれているもの、技法、素材、意味、作家の人生あるいは作家自身、作品の時代背景など、誰がなんと言おうと、自分の好き嫌いで見て良いのです。例えば、日本の絵巻物の放屁合戦を見て「この時代のユーモアはこんな感じだったのか」、フランスの画家アンリ・マチスが描く部屋の壁紙は「かわいい」、初期ルネッサンスのイタリア絵画の画家フラ・アンジェリコの作品は「マリアとキリストの衣装のピンクとブルーの配色がたまらんな」などという具合に。作品をどう見るかには答えがなく千差万別です。むずかしく考える必要はなし!4.自分だけのアングルを決めて作品を見る嘉納さん毎回、どんな展覧会でも自分だけのアングルで作品を見ると新たな発見があることも。例えば、キャンバスに描かれた絵画で、額装されていないものであれば、抽象画でも具象画でも、必ずキャンバスの「へり」を見ることに決めます。すると「草間弥生さんはヘリには描かない。モンドリアンはヘリまで堂々とはみ出して描いている」など、作家によって、どこまでを画面と捉えているのかを感じることができます。オンライン展示を楽しむヒント3つ続いては、オンライン展示を楽しむためのヒントを嘉納さんに教えていただきましょう。嘉納さんオンライン展示は、作品を自分の体でとらえることができないのが難点。一方でオンライン鑑賞のメリットは、ひと言でいうと、より自分なりの鑑賞にカスタマイズできるということ。それを踏まえて、オンラインならではの楽しみ方のヒントをご紹介します。1.ズームをして作品のディテールを楽しむ嘉納さん実際は至近距離に近づけない作品も、オンラインではまるで作品の中に入り込むかのように、ズーム機能を利用すれば間近に近づくことができ、作品のディテールを楽しめます。2.自分の鑑賞リズムで見る嘉納さん実際の展示では、全部見ようと欲張って最後のほうは疲れ果ててしまいませんか。オンラインだと、自分の鑑賞のリズムをカスタマイズできます。好きなところで立ち止まったり、ディテールを見たり。また、一度ざっと一周してみて、じっくり見て見たいところに立ち戻るのも良いですね。3.ツッコミや解説を入れながら鑑賞する嘉納さんオンラインでは、鑑賞が受け身ではなく、より能動的になります。展覧会場では大きな声で話すことはできませんが、オンラインでは声を出して作品にツッコミを入れながら鑑賞することもできます。自分なりの解説を入れながら楽しむのも良いのでは。世界各国の興味深い作品が集められたポコラート世界展「偶然と、 必然と、 」2021年9月5日までアーツ千代田 3331で開催されるポコラート世界展は、日本初上陸のものも含めた世界22か国の作家50名の興味深い作品が240点余も集まっている展示です。例えば、自らの身体を使ってさまざまな人物に扮して撮影したポートレートや、ただその行為が好きという理由だけで割り箸をひたすらかごに刺すことによって作られたオブジェなど、国籍、年齢や性別、障害の有無、美術の枠組みさえも飛び越える創作物がいっぱい。そんな貴重で面白い作品を世界中から集めてきた嘉納さんは、実際に現地に赴き、作家や施設、美術館、コレクター、作家の創作活動の支援者などに会いながら、少しずつ情報を集めたそう。もし機会があれば、この夏、今回紹介された鑑賞方法を試しに、足を運んでみるのも良いのでは?Information嘉納礼奈(かのう・れな)さんキュレーター、美術史家。国内外でアートとその周縁、人間の創作物のカテゴライズなど芸術人類学の研究、展覧会、展示企画、シンポジウムなどに携わる。展示概要ポコラート世界展「偶然と、 必然と、 」-障害のある人、 ない人、 アーティストの生の表現を世界に解き放つ-会場:アーツ千代田 3331 1階メインギャラリー会期:2021年7月16日(金) 〜 9月5日(日)©PeopleImages/Gettyimages文・椎原茜
2021年07月16日森美術館で『アナザーエナジー展』が開かれています。世界14か国出身の50年以上のキャリアをもつ女性アーティスト16名による代表作や新作など約130点が集結。88歳の現役アーティスト、三島喜美代さんのしびれる生コメントもご紹介!どんな展覧会?【女子的アートナビ】vol. 214『アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人』では、現役で活躍する71歳から106歳までの女性アーティスト16名による作品を展示。絵画をはじめ、彫刻、映像、大型インスタレーションなどさまざまな作品が紹介されています。森美術館館長の片岡真実さんによると、本展は「ジェンダーや年齢、ダイバーシティの意識を高く喚起するものでありながら、そうしたアイデンティティからも解放され、個々のアーティストの芸術性、個々人の尊厳に意識が向かうような展覧会を目指した」とのこと。16名の参加アーティストは、近年国際的な評価が高まっている人や、それぞれの国や地域で長年高い評価を得ながらも国際的な評価が待たれる人たちで、世代やテーマの多様性などのバランスを考慮して選ばれたそうです。入り口から圧倒…!それでは、展示品をいくつかピックアップしてご紹介していきます。まず入り口を抜けると、フィリダ・バーロウさん(1944-)のインスタレーション《アンダーカバー 2》が登場。空間いっぱいに広がる巨大な作品に度肝を抜かれます。28本の柱の上に34枚の布と77個の玉が乗っているこの作品は、詳細な設計図があるわけではなく、現場で素材と向き合いながら組み立てられているそう。ご高齢のアーティストたちによる展覧会と聞いてイメージしていたものとは真逆の、とても力強い作品に最初から驚かされます。美しい作品に描かれているものは…ミリアム・カーンさん(1949-)の油彩画《美しいブルー》も見逃せない作品のひとつ。タイトルどおり、鮮やかな青色が目を引く美しい絵なのですが、よく見ると右側に両手をあげた人影のようなものが描かれています。実は、この人たちは難民。自国から逃げていく難民が海に沈んでいくところを描いた作品です。ユダヤ系であるカーンさんは、戦争や人権、社会問題などに関心をもち、その強い思いが作品にも投影されています。命を削って仕上げた作品最後は三島喜美代さん(1932-)の迫力ある作品群をご紹介。うずたかく積み上げられた新聞の束や、ドラム缶からあふれた新聞……これらはすべて陶でつくられた焼き物です。三島さんは1960年代に新聞や雑誌の切り抜き、チラシ、蚊帳や着物などを使ったコラージュ作品を制作。70年代には、社会に氾濫する膨大な情報に対し不安感や恐怖感を覚え、新聞を独自の技法で焼き物に転換し、進展する情報化社会への危機感を表現していきました。取材会に登壇された三島さんは、88歳になる現在も「毎日朝起きるとすぐに仕事(作品制作)をしている」といい、「命がけで作品をつくって遊んでいます」と笑顔でコメント。さらに次のように語りました。「命を削って仕事をしていますが、苦になりません。自分のつくりたい作品ができあがったときのほうが喜びが大きいからです。今回もずっと立ったまま新作をつくっていたので足が動かなくなりましたが、リハビリをすればいつか足は動きます。仕事をとるか体をとるか。私は仕事をしていると自分の気持ちが落ち着いて、楽しいのです」「好奇心を失わず、おもしろいと思ったらすぐにやる」と語った三島さんの作品からは、「現代社会への警鐘」といった重いテーマだけでなく、ふわっと温かいユーモアも感じられます。何より、88歳になっても毎日体を張って楽しく仕事をしているという生き方がカッコよく、しびれました。女性アーティストたちのパワーを感じられる『アナザーエナジー展』は9月26日まで開催。取材・文:田代わこInformation会期: ~9月26日(日) 会期中無休会場:森美術館開館時間: 10:00~20:00(最終入館 19:30)※火曜日のみ17:00まで(最終入館 16:30)※当面、上記の通り時間を短縮して営業いたします観覧料:※事前予約制(日時指定券)を導入、詳細は公式サイトをご確認ください平日 一般 ¥2000 / 65歳以上 ¥1700 / 大学・高校生 ¥1300 / 4歳~中学生 ¥700土日祝 一般 ¥2200 / 65歳以上 ¥1900 / 大学・高校生 ¥1400 / 4歳~中学生 ¥800※7月31日(土)まで、学生および子供料金が一律ワンコインの¥500で入館できるキャンペーン中※最新情報は、美術館のウェブサイトをご確認ください
2021年07月11日三菱一号館美術館で『三菱創業150周年記念 三菱の至宝展』が開かれています。三菱を創業した岩崎家が4代にわたり守り育ててきた美術工芸品など約100点が一堂に集結。世界に3碗しかない“奇跡の茶碗”も登場します!どんな展覧会?【女子的アートナビ】vol. 213『三菱創業150周年記念 三菱の至宝展』では、三菱を創業した初代の岩崎彌太郎(1835-1885)から4代社長の小彌太(1879-1945)までの岩崎家4代の社長たちが築き上げ、現在は静嘉堂、東洋文庫所蔵となっている国宝12点、重要文化財31点を含むコレクションと三菱経済研究所の所蔵作品をあわせた約100点を紹介。完品は世界に3碗しかない“奇跡の茶碗”、国宝《曜変天目(稲葉天目)》をはじめとした美術工芸品から、絵画、刀、歴史書に至るまでの幅広いジャンルにわたる貴重な作品を見ることができます。日本の文化を守った…!岩崎家が本格的に美術収集をはじめたのは、2代目社長、彌之助(1851-1908)のとき。彼は若いころから学問や研究、芸術文化に興味をもち、アメリカにも留学。帰国後は兄の彌太郎が築いた三菱商会に入り、事業をさらに発展させながら、芸術家や研究者たちとも交流していきます。当時、明治維新後の日本では西洋文化をさかんに取り入れ、日本や東洋の文化は軽んじられていました。廃仏毀釈の影響を受け、日本の重要な文化財が海外に流出していたのもこの時期です。芸術文化を深く愛していた彌之助は、日本の文化財が散り散りになってしまうことを防ぐため、自ら積極的に美術品を収集し、保護していきます。また、彌之助は、経済的に余裕のある人間が文化や学術を保護し、社会に還元していく使命があるという考えをもっていました。単なるお金持ちの道楽ではなく、社会貢献活動のひとつとして美術品を集めていき、それらを収蔵するために静嘉堂文庫を創設。息子の小彌太がコレクションを拡充させ美術庫を築き、財団法人静嘉堂を設立しました。現在、静嘉堂には国宝7点、重要文化財84点を含む6,500点の東洋古美術品が収蔵されています。鳥肌が立つほど美しい…!奇跡の国宝そんな彌之助父子がつくりあげた静嘉堂のなかで、もっとも有名なのが国宝《曜変天目(稲葉天目)》。茶碗の中がまるで宇宙空間のようで、鳥肌が立つほど美しい作品です。中国福建省の建窯でつくられ、焼成のとき“偶然に”青色や虹色に輝く光彩が現れた茶碗を曜変天目といいます。完全な形で存在するものは世界に3碗しかないという大変貴重な作品です。(ちなみに、3碗とも日本にあり、すべて国宝に指定されています)静嘉堂の曜変天目が「稲葉天目」と呼ばれているのは、この茶碗が3代将軍徳川家光から乳母の春日局に下賜され、その後稲葉家へ伝えられたため。歴代の所有者が超一流という点も、この作品の魅力のひとつです。アジア最大級の研究図書館もつくった…!本展には、東洋文庫の所蔵品も出展されています。東洋文庫とは、彌太郎の息子で3代社長の久彌(1865-1955)が1924年に設立した、東洋学分野の研究図書館。若いころから読書家だった久彌は、東洋の古典にも親しんでおり、美術品ではなく文献資料を収集し活用することで社会貢献する道を選んだのです。現在、東洋文庫は約100万冊を所蔵するアジア最大級の東洋学術研究図書館となっています。社会貢献活動を明治のはじめから実践してきた岩崎家。彼らが守り、現代まで大切に受け継がれてきた至宝の数々をぜひご覧になってみてください。取材・文:田代わこInformation会期: ~9月12日(日) *展示替えあり前期:8月9日(月・振休)まで/後期:8月11日(水)から会場:三菱一号館美術館開館時間: 10:00〜18:00※入館は閉館の30分前まで※夜間開館日あり。開館日、営業時間は変更の可能性があります。詳細は公式サイトをご確認ください。休館日:月曜日展示替えの8月10日(火)(ただし、祝・振休の場合、7月26日、8月30日、9月6日は開館)観覧料: 一般¥1,900、高校・大学生¥1,000、高校生¥900、小・中学生無料※マジックアワーチケット:毎月第2水曜日17:00以降に限り適用 :¥1,200
2021年07月09日1956年から続く「世界報道写真コンテスト」の入賞作品展覧会が今年も始まった。この写真展「世界報道写真展2021」は国内外の約120会場を巡回し、約400万人を動員する世界最大級の写真展だ。今回は、計7万4470点の中から選ばれた入賞作品約160点を紹介。「現代社会の問題」「一般ニュース」「環境」「スポーツ」など全8部門の受賞作品が集結する。世界中で起きた現実を捉え、観る人の心に迫ってくる一枚。「観る人が物事を考えるきっかけとなる作品であることが重要な選考基準。2020年は、やはりコロナ禍を様々な視点から捉えた作品が数多く受賞しています」(朝日新聞社企画事業本部文化事業部主催者)例えば世界報道写真大賞に選ばれた〈初めての抱擁〉は、「コロナ禍で一変した人々の暮らしの中で、脆さ、喪失と別れ、死、そして生き延びることの大切さが表現された一枚」「最前線で働く人の努力と困難を伝えつつ、コロナ禍を前向きに捉えた作品」と高く評価された。日々報道されるニュースだけでなく、世界中で起きている現実のミクロな一面に触れられるのが報道写真の魅力。嘘のない現実だからこそ伝わる作品は衝撃的で、誰もがきっと心を揺さぶられるはずだ。1.世界報道写真大賞一般ニュースの部単写真1位マッズ・ニッセン(デンマーク、ポリティケン/パノス・ピクチャーズ)初めての抱擁2020年8月、サンパウロにある介護施設で、新型コロナウイルス感染防止の「ハグカーテン」越しに看護師に抱きしめられる85歳の入所者ローザさん。2.ポートレートの部単写真1位世界報道写真大賞ノミネート作品オレグ・ポノマレフ(ロシア)ジェンダー移行:イグナット2020年4月、サンクトペテルブルクにてガールフレンドのマリアと座るトランスジェンダー男性イグナット。「世界報道写真展2021」東京都写真美術館 地下1階展示室東京都目黒区三田1-13-3恵比寿ガーデンプレイス内開催中~8月9日(月)10時~18時(入館は閉館の30分前まで)月曜(7/19は開館)、7/20休一般1000円ほかTEL:03・3280・0099滋賀・京都・大分でも順次開催。※『anan』2021年7月7日号より。取材、文・山田貴美子(by anan編集部)
2021年07月06日