あえてジャンル分けするなら、グルメ漫画になるのだろうが、すご~くおいしそうな食べ物が出てくるわけでも、料理シーンが多いわけでもない。「お品書き」と題された目次に並ぶのは、ちくわぶ、甘食、かんぴょう、すあま、そば湯……。はっきり言ってしまうと地味だし、「その食べ物、何?」と思う人もなかにはいるだろう。『局地的王道食』というタイトルの定義は、松本英子さんいわく、「地域的な意味での局地的ではなく、心の片隅に巣食っているような食べ物」とのこと。「あまり注目されない食べ物ばかりですが、どぶろくは別として私が子どもの頃から好きなものばかりで、情が移っている感じなんです。おいしい、おいしくないでは括れない、大事な食べ物にスポットライトを当てて、知らない人に伝えたいという気持ちと、数少ないだろうけどきっといるはずの同志と愛を分かち合いたい気持ちがありました」関東圏以外の出身者は魅力を理解しにくいうえに、おでん以外ではなかなかお目にかからないちくわぶを称えてやりたい一心で、新しい食べ方を研究してみたり。アメリカンドッグを求めて、真夏の上野動物園をさまよったり。そう簡単には報われない涙ぐましい努力が、松本さんの分身だという謎の生物“モグさん”を相棒に繰り広げられる。「細胞に浸透させるように日々食べながら描いたものもありましたが、爆発的においしいわけじゃないのだとしみじみ感じました(笑)」それでも描かずにいられないのは、やはり愛情があるからこそ。「なぜかトントン拍子で出世しちゃう人っているじゃないですか。ハムカツとかがそうなんでしょうけど、ちくわの磯辺揚げは要領が悪くて波に乗れないタイプ。そういうヤツを擁護したかったんです」◇ちくわぶ、冷凍みかん、ぎゅうひなど、大好物ではないけど、心の局地にいつもいる食べ物を幼い頃の記憶や切ないエピソードとともに綴ったエッセイマンガ。講談社740円◇まつもと・えいこイラストレーター、マンガ家。『謎のあの店』1~2巻発売中。『プロジェクト松 ステキな東京魔窟』、日常を描いたエッセイマンガ『荒呼吸』全5巻の電子版配信中。※『anan』2016年9月14日号より。写真・森山祐子(本)インタビュー、文・兵藤育子
2016年09月10日ランスルーとは、本番と同じように通しで行うリハーサルのこと。『西荻窪ランスルー』は、上京して西荻窪のアニメスタジオでアニメーターとして奮闘する女子の物語だ。作者のゆき林檎さんはマンガ家になる前に、アニメ業界で働いていた。「個性的な人がたくさんいて面白かったのが印象に残っていて、いつかアニメ業界を舞台にしたマンガを描けたらいいなと思っていたんです」主人公の江田島咲は、一人前に仕事ができるようになるためには少しでも早く始めるべきだと思い、合格していた大学を辞退してしまう。「その辺りの考え方は、自分が10代だった頃の引き出しを開けるみたいな感覚で描きました。生き急いでいるって言われていたので(笑)」スキルはゼロだけど、やる気だけはある主人公や同僚たちの姿に、働き始めた頃を思い出して、くすぐったくなる人も多いはず。彼女たちが憧れる先輩も決して万能なわけではなく、キャリアを積んだなりの悩みや壁もリアルに描かれている。「自分が先輩と同じ年齢になって、あのとき言っていたのはこういう意味だったんだ、と気づいたりすることも結構あるんですよね」アニメの現場に限らず、仕事に苦労はつきものだけど、つらさ以上に楽しさが伝わってくるのがいい。「共感していただけるようなマンガを描きたいというのは、最初から思っていることです。どこかしら『この気持ちはわかる』と思っていただけたら嬉しいですね」ちなみに、著者が仕事をするうえで一番大事にしているのは、誠意。「人と人とのつながりでお仕事をさせていただいていると思っています。アニメ制作は大勢の人が関わるチームワークなので、この作品でもそこを上手く描けたらいいですね」◇ゆき・りんごマンガ家。主な作品に『玉響』『マジックメールチョコレート』『初恋は群青に溶ける』『グッドバイライラック』。「西荻窪ランスルー」は『月刊コミックゼノン』で連載中。(C)ゆき林檎/NSP 2015◇絵を描くことが得意だった江田島咲は、高校卒業後、周囲の反対を押し切ってアニメ会社に就職。個性的な大人たち(上司)の下で一喜一憂しながら夢を模索していく。徳間書店580円※『anan』2016年9月7日号より。写真・森山祐子インタビュー、文・兵藤育子
2016年09月03日好きな彼との距離を縮めたいなら、まずは血液型からアプローチしてみては。フォーチュン・カウンセラーの三田モニカさんに、AB型男子の性格を解説します。AB型男子の意見として、お笑い芸人の山里亮太さんも直撃しました!■AB型男子は…「クールでドライ。非合理的なことを嫌う」コミュニケーション能力が高くて、少々理屈っぽい、合理主義アーティストタイプのAB型。「人当たりがよく、誰とでもうまく付き合えるのでモテるのですが、八方美人といわれることも」自分がいちばん賢いと心のなかで思っているうえ、センスがよいので、上から目線で周りの人や物事を観察する傾向が。「分析力抜群ですが、批判精神も旺盛で、よく嫌みを言います。ただし争いごとは苦手なので、あまり口を挟もうとしません」男女平等主義者で、女性にも常に対等であることを求める、現代的価値観の持ち主。「恋人同士になっても、相手を尊重して、いいパートナーでい続けることができるでしょう」■AB型男子に直撃!お笑い芸人・山里亮太さんAB型の少々厄介な性格を、自分でも熟知している山里さん。「合理主義アーティストタイプって、すごく聞こえがいいですけど、単に心に余裕がなくて時間にケチくさい、勘違い野郎なんですよ!オブラートに包んだこの表現は、僕らの悪いところを助長するだけだと思うんですけどね」効率重視ではあるけれど、あくまでも自分のものさしで効率の良し悪しを測るから、人の意見を受け入れがたいのだと、分析好きのAB型らしい論理を展開する山里さん。そんなAB型をいい気分にさせる手っ取り早い方法は、やはりセンスをほめること。それもちょっと角度の違うほめ方だとなおよし、なのだそう。「見る目が違う人にほめられる俺ってやっぱりセンスがいいなって結局、全部自分に返ってくるんですけどね(笑)」女性に知性を求めるというAB型の特徴にもドンピシャで、山里さんの場合はインテリジェンスな肩書にとにかく弱い。「この人と付き合ったり、結婚したときに、メリットがあるかどうかを常に考えちゃうんです。自分にない目線を持っている人と付き合ったら、もうひとつ武器が増えるっていう考え方ですね」好意的に言い換えれば、自分を成長させてくれる女性、ということなのかもしれないけれど…。「だから『仕事よりもデートを優先して!』などと、僕が大事にしていることを妨げるようなワガママを言う子はちょっと…。優先順位が僕よりも仕事であってほしい。僕のことを最優先するような人は、安っぽく思ってしまうんです。おこがましいですけどね!」AB型男子を落とすのはやはり難しそうだけど、それ自体が見かけ倒しで、しかも思い込みが激しいからこそ騙されやすく、実はとっても簡単らしい。その言葉、信じちゃっていいですか!?◇やまさと・りょうた南海キャンディーズのツッコミ担当。『JUNK山里亮太の不毛な議論』(TBSラジオ)、『スッキリ!!』(日本テレビ系)などレギュラー多数。◇三田モニカフォーチュン・カウンセラー。主な著書に、『A型人間の頭の中』シリーズ(青志社)。無料サイト「三田モニカの占いカフェ」運営中。※『anan』2016年8月3日号より。写真・小笠原真紀文・兵藤育子
2016年07月30日好きな男の子を落としたいなら、血液型から攻めてみるのも手。今回はフォーチュン・カウンセラーの三田モニカさんが、O型男子の性格を解説します。O型男子のひとり、ミュージシャンで俳優の浜野謙太さんにも、恋愛観を聞いちゃいました。■O型男子は…「陽気でバイタリティ抜群!」さっぱりとした親分肌で、「オレについてこい!」と威張っていても、どこかかわいげがあって憎めない。そんなところが母性をくすぐる、永遠のガキ大将タイプ。「大雑把な部分がB型と混同されがちなんですが、O型は人情に厚く、人間関係を重視します」家族や仲間を大切にして、すぐに団結したがる、“ファミリー感”大好き人間。「信頼」や「絆」という概念にめっぽう弱く、ケンカをしても尾を引かないのは、心を許しているからこそ。「一方で約束を破られたり、プライドをつぶすようなことを言われると、自分を否定されたような気持ちになり傷ついてしまいます」個性を重視して、自己主張が強いという一面も。■O型男子に直撃!ミュージシャン・俳優・浜野謙太さん「頼られる人でありたいです!」O型らしく、男気たっぷりの浜野さんは、女の子から恋の相談をされると俄然張り切ってしまうところがある。男女問わず、好きな人とベタベタしたがる性格も、まさにO型そのもの!「メンバーの村上啓太とは高校の頃からバンドをやっていたんですけど、俺はこいつと一緒にいれば大丈夫、と思える友だちで、いつもベタベタしてたんです。そしたらある日、『ちょっと距離取らない?』って言われて(笑)。ふてくされてその後は星野(源)くんとベタベタするようになりました」O型といえばロマンティストなのが特徴だが、浜野さんも例外ではなく、デートのコースは念入りに計画。サプライズも大好きだそうで、とっておきのこんなエピソードを披露してくれた。「結婚前、妻の誕生日に部屋から東京タワーの見えるホテルを予約したんです。プレゼントは、彼女が好きだと言っていた『ドラえもん』の『のび太の結婚前夜』というDVDでした。それを一緒に観ながら、0時近くなって『東京タワーを見ようよ』と誘ったんです。そして彼女が感動している隙に金庫から指輪を取り出して、0時を回った瞬間、『結婚しよう!』って言おうと思ったら、節電で東京タワーの電気が消えて真っ暗になっちゃいました(笑)」最後のアクシデントはご愛嬌だが、これだけ一生懸命考えるわけだから、相手の反応が薄いとそれなりに凹んでしまうそう。「ロマンティックな演出が好きなだけに、実は女の子からサプライズされたらイチコロですよ!」O型男子に贈り物をするときも、「思いつかないから、好きなものを教えて!」とストレートに尋ねるのは、むしろ逆効果。彼のことを思っている気持ちをアピールすることが、いちばん喜ばれるプレゼントなのかもしれない。◇はまの・けんた在日ファンクのリーダー。ドラマ『好きな人がいること』(フジテレビ系)出演中。映画『ディアスポリス-DIRTY YELLOW BOYS-』が9月3日公開。◇三田モニカフォーチュン・カウンセラー。主な著書に、『A型人間の頭の中』シリーズ(青志社)。無料サイト「三田モニカの占いカフェ」運営中。※『anan』2016年8月3日号より。写真・小笠原真紀文・兵藤育子
2016年07月30日片思い中の彼ともっと距離を縮めたい!デートはするものの、ここからどうツメていったらいいのかわからない…。そんな悩める女子に向けた、タイプ別の男子攻略法を伝授。今回はB型男子の攻略法を、フォーチュン・カウンセラーの三田モニカさんが解説します。B型男子代表として、ゴールデンボンバーの鬼龍院翔さんにも話を聞きました。■B型男子は…「マイペースのお天気屋」自分の力でいろんなことを成し遂げてきたという自負があり、結構強気な中小企業の社長タイプ。しかしながら、型にはめられるのが嫌いで、どこまでも自由を愛するポジティブくん。「好奇心旺盛で興味の対象が広く、凝り性の面もあります。ただし、熱しやすく冷めやすいところも。ざっくばらんで、明るくエネルギッシュな性格は親しみやすく、友だちは多いほうです。また、マイペースの気分屋で、けじめがあまりないので、周囲を困らせてしまうこともあります」お調子者&お天気屋で、周りのことを振り回しながら、実は周囲の反応を気にしている繊細さも。単純なようでいて、なかなかつかみにくいところが魅力といえそう。■B型男子に直撃!ミュージシャン・鬼龍院翔さん「今の事務所に所属が決まったとき、社長にまず血液型を聞かれたんです。僕と喜矢武豊がB型なんですけど、『同じプロジェクトにB型がふたりいると成功しない』って言われまして。今となっては、あの発言をぜひ撤回してほしいと思っています!(笑)」そんなこともあって(?)、血液型はあまり気にしないという鬼龍院さん。しかしながら独創的なバンドのボーカルにはB型が多いらしく、「常識的でなくてもいい」と背中を押されている気持ちになれるのだそう。「自分のやりたいことを表現するっていう意味では、マイペースだと思います。型にはまるのが大っ嫌いなんですよ。明日はどうなるかわからないジェットコースターみたいな毎日のほうが、濃い人生を送れると思っているので」安定嫌いは恋愛にもいえることで、B型らしく「振り回されたい」願望が。「なんか僕、騙されたいんですよね。コントロールのきかない存在のほうが、ドキドキできますし。小悪魔系とか、どこに行ってしまうかわからない、野良猫みたいな人が好きなんです。ひょいと簡単に手に入っちゃうとつまらないし、円満になると、無意識にほかのことを考えだしてしまうような気がします。だから家に好きな人がいる必要がない。できることなら会いたくないときは、彼女の電源を切って、押し入れに入れておきたいくらい」付き合う時間が長くなるほど、マンネリは避けがたいものだが、安定させないための努力も怠らないところは、さすが!「ドラマティックに結ばれると、下り坂が急激になってしまうので、告白は特別すぎないほうがいいし、恋愛にはなるべくピークを作らないようにしています。って僕、B型の特徴にめちゃくちゃ当てはまっているのかも…!?」◇きりゅういん・しょうゴールデンボンバーのボーカル。8月29日、「お台場みんなの夢大陸2016 めざましライブ」に出演予定。全国ツアーを展開中。◇三田モニカフォーチュン・カウンセラー。主な著書に、『A型人間の頭の中』シリーズ(青志社)。無料サイト「三田モニカの占いカフェ」運営中。※『anan』2016年8月3日号より。写真・小笠原真紀文・兵藤育子
2016年07月30日気になる彼にアプローチしたいなら、血液型から攻めてみるのも手かも。今回はA型男子の特徴を、フォーチュン・カウンセラーの三田モニカさんに聞きました。A型男子代表として、プロレスラーの本間朋晃さんのコメントもご紹介します!■A型男子は…「場の空気を読むのがうまく忍耐力抜群」学級委員、あるいは管理職のような真面目タイプで、曲がったことが嫌いな四角四面のA型くん。「人付き合いでは細やかな気づかいができて、場の空気を読むのが上手な人です。察しがよくて、さりげない思いやりもあるでしょう。マメなタイプですし、律義で誠実なので、恋人になっても安心してお付き合いできると思います」(三田さん)ただし、緻密で忍耐力抜群な完璧主義者であるため、本人としては気苦労が絶えず、ストレスを溜めやすい弱点も。「付き合うときはこちらのペースを強要せず、秩序を重んじる彼のスタイルを尊重して、リラックスさせてあげる工夫が必要です」■A型男子に直撃!プロレスラー・本間朋晃さん「ずっとO型だと思って生きてきたんですけど、18歳で上京して初めて献血をしたときにA型と言われたんです。途中で血液型が変わったんだと思うんですけどね」…という笑撃告白から始まった本間さんのインタビュー。途中で変わったかどうかは別として、A型とO型の性格を兼ね備えていると自覚しているそう。計画性がなくて飽きっぽい部分はA型の典型から外れているが、詳しく話を聞いてみると、その飽きっぽさにも、どうやら偏りがあるようで。「同じものをずっと食べていられないんですよ。ひと口ふた口食べると、すぐに飽きてしまって…。結局我慢して食べるんですけどね。だけどプロレスは20年続けていますが、まったく飽きない。キャリアを積むとしんどいと思ったりするらしいのですが、僕は毎日でも試合をやりたいくらい」細やかな気配りができるところにも、A型らしさが表れている。「僕自身は普通に接しているつもりなんですけど、気づかいができるとはよく言われます。日常で気苦労を感じることは…、出かけるときに鍵をかけたかどうか心配になることくらいですかねえ(笑)」意外にも、恋愛ドラマ好き。ただしハラハラドキドキのかけひきは、見るだけで十分なのだそう。「基本的に積極性がないので、ある程度仲よくなって、お互いを知ってから付き合うのが理想です。脈がありそうだと思えたら、グイグイ行きますけど、そこまでは結構よそよそしいかもしれません」思いがけず告白された場合も、いきなり付き合ったりせず、まずはお友だちから始めたいタイプ。そんな折り目正しいA型を落とすのに効果的なのは、やはり…。「相手が満足している姿や感謝の言葉に、グッときます。試合もそうですけど、自分よりも相手、つまりお客さんが喜んでくれれば、それが一番なんですよね」◇ほんま・ともあき新日本プロレス所属。独特のハスキーボイスで、バラエティ番組などでも活躍。新日本プロレス真夏の祭典「G1CLIMAX26」にも出場中!◇三田モニカフォーチュン・カウンセラー。主な著書に、『A型人間の頭の中』シリーズ(青志社)。無料サイト「三田モニカの占いカフェ」運営中。※『anan』2016年8月3日号より。写真・小笠原真紀文・兵藤育子
2016年07月30日『溺れるナイフ』『ピース オブ ケイク』などでおなじみのジョージ朝倉さんが、青年週刊誌で連載している『ダンス・ダンス・ダンスール』2は、クラシックバレエに情熱を傾ける男子中学生が主人公。バレエがテーマの現代版スポ根物語とは、ちょっと意外な気もするが…。「私も意外です(笑)。好きな作家さんでも、バレエマンガは読み飛ばしてしまうくらい興味がなかったので。だけど娘が習っているバレエ教室に男の子が入ってきて、この子はどういうメンタリティでバレエを始めて、この先、思春期をどう乗り越えていくんだろうってところから興味を持つようになったんです」幼い頃バレエにひかれながらも、父を亡くした潤平は、男らしくあろうとあきらめた。そんな彼がバレエと再び出合い、ピタピタのタイツ姿で舞う独特の美意識や、「女の子の習いごと」というイメージに反発しながらも、取り込まれていく。「やりたいことを見つけた人は羨ましいなって、自分の青春時代を走馬灯のように振り返って気づいたんです。オレの分まで羽ばたけ、潤平!と思いながら描いてます(笑)」本作のためにバレエを習い始めた朝倉さんは、うまく踊れないストレスで一時的に激ヤセ(!)してしまったほど。迫力あるダンスシーンも、そんな努力の賜物といえる。『溺れるナイフ』で実証済みだが、思春期の危なっかしい心のうちを描く手腕は本作でも際立っているし、男性目線なところも新鮮だ。「私のなかの中2男子を出しているだけ。潤平はお調子者だからフワッと生きてこられたけど、自分で人生を選ばなければいけない時期に差し掛かった感じを表現したいんです」いじめやスクールカーストなど、バレエ以外の部分も読み応えあり。人生をかけるべきものと出合った愛すべきおバカ中学生がどう成長していくのか、先物買いのファンのような気持ちで応援したくなるはず。◇幼い頃に出合ったバレエへの未練を隠しながら、男らしく振る舞う村尾潤平の前に、転校生の美少女と、孤高の天才少年が現れる。著者初の青年週刊誌連載。小学館各552円。◇(C)ジョージ朝倉/小学館「ビッグコミックスピリッツ」連載中。◇じょーじ・あさくらマンガ家。代表作に『恋文日和』『ピースオブ ケイク』『溺れるナイフ』『テケテケ★ランデブー』など。『溺れるナイフ』の実写映画版が11月公開予定。※『anan』2016年7月13日号より。写真・森山祐子インタビュー、文・兵藤育子
2016年07月12日今をときめく著名人の方々に、何度も読み返したお気に入りの本を教えてもらいました。今回は、テレビ、ラジオで活躍中のラブリさんの“私の一冊”です。***子どもの頃からミヒャエル・エンデの『モモ』が好きだったラブリさん。同じ作者の『はてしない物語』もいつか読もうとずっと気になっていて、3年ほど前に本屋で偶然見かけて「今だ!」と直感的に手に取ったのだそう。「『モモ』もそうですが、時間について改めて考えるきっかけになりました。私がいなくなっても時間は流れていくけれども、今の私が見るものや感じることを大切にしようって思えたんです」少年が一冊の本と出会い、現実と虚構を行ったり来たりするうちに、本の世界に吸い込まれてしまうファンタジー。少年と同じように物語に没頭して、現実との境界が曖昧になるような読書の醍醐味を体験できる。児童文学の名作として知られるが、大人だからこそ響く部分も多いと力説する。「ファンタジーだけど、日常のいろんなことに置き換えられる考え方がたくさんあります。たとえば妄想について書かれた部分で、怖いっていう感情は自分の頭の中で作り出しているから、ポジティブに転換することも可能なんだと気づいて、心が楽になったりして」日常で迷ったときや悩んだときこそ、本を読みたいというラブリさん。赤ペンと付箋が必須で、心が動いたところに細かくチェックを入れるため、はたからは勉強しているように見えるのだとか。「本を開いた瞬間、現実とまったく違う世界が広がって、言葉が直接入ってくる感覚は、読書でしか味わえない。作者と会話しているような気持ちになれるんです」◇『はてしない物語』ミヒャエル・エンデ上田真而子、佐藤真理子 訳いじめられっ子のバスチアンが古本屋で見つけた一冊の本。ファンタージエン国の騒動に、少年自らが巻き込まれていく物語。岩波少年文庫上760円、下840円◇らぶり『Re:EDIT』のイメージモデルとして活躍。DJを務める『lovelism』(FḾ‐FUJI)は、毎週土曜23時~23時半にオンエア。スタイルブック『LOVE』(光文社)発売中。◇オールインワン¥20,000(BULSARA/BULSARA 渋谷ヒカリエ店 TEL:03・6427・4334)ブラウス¥18,000(RINASCIMENTO/三欧通商TEL:06・6202・7772)ピアス¥27,000(art jewelry moco/プリマクレール・アタッシュプレスTEL:03・3770・1733)その他はスタイリスト私物※『anan』6月15日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・津野真吾ヘア&メイク・青山理恵(nude.)文・兵藤育子
2016年06月09日ミュージシャン・渡辺俊美さんによる大反響のお弁当エッセイ『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』がコミックに。コミック版の作者、荒井ママレさんにコミック化に際し、工夫した点をお聞きしました。***「私は独身で、女のひとりっ子なので、男だけの家庭の空気を出せるか多少不安もありました。だけど原作を読んだら愛情に溢れていたので、これなら描けると思ったのです」そう語るのは、コミック版の作者である荒井ママレさん。同名の原作はTOKYO No.1 SOUL SETなどで活躍するミュージシャンの渡辺俊美さんによるエッセイなのだが、シングルファーザーの彼は、息子の登生(トーイ)くんとふたり暮らし。高校入学を機に、息子の希望で父が3年間、毎日弁当作りをすることに。「原作は俊美さんの視点なので、息子思いのいいお父さんといった印象が強いのですが、トーイさんから直接お話を聞いて印象が変わった部分も大きくて。距離が近くてお互いを必要としているけど、ひとりの人間として見ているところがステキで、マンガに出せたらと思いました」仕事で慌ただしい日々を送りながらも、父は弁当で毎日しっかり愛情を示し、多感な時期の息子もそれを素直に受け止める。一緒に過ごす時間や交わす言葉が決して多くないときも、弁当が豊かなコミュニケーションになっているのだ。しかも俊美さんの作る弁当が、いちいちおいしそうで、グルメマンガとしての楽しみも。ただしそこは、マンガ家泣かせでもあったようで……。「お弁当は冷めているもので、しかも箱の中に整然と並んでいるので、シズル感でおいしさを表現できない難しさがありました。だから料理シーンではなるべく素材に寄るなどして、臨場感を意識したんです」原作モノを手がけるのは、初めてだったという荒井さん。「キャラクターも空気感も、読んで素直にニコッとできるお話は、自分からあまり出てこないので、今までにない描き方ができたと思います」思わず笑みがこぼれるだけでなく、読んだらきっと、大切な人に弁当作ってあげたくなる(あるいは作ってもらいたくなる!)はずだ。◇ミュージシャン・渡辺俊美さんによる人気エッセイのコミカライズ。息子トーイくんの視 点で描いたコミック版オリジナルエピソードが奥行きを与えている。弁当作りのヒントがより詰まった原作(マガジンハウス 1500円)も併せて読みたい!小学館552円(C)荒井ママレ・渡辺俊美/小学館◇あらい・ままれマンガ家。第63回小学館新人コミック大賞に入選して、デビュー。著作に『おもいでだま』(全4巻/小学館)がある。現在は次回作に向けて準備中。※『anan』2016年4月20日号より。写真・森山祐子(本)インタビュー、文・兵藤育子
2016年04月19日毎日の生活の中で、これってマナーとして大丈夫!?ということは多々あります。正解ルールを心にメモれば、違反への恐れもゼロ!リアルマナーで心の余裕を身につけましょう!『しぐさのマナーとコツ』(学習研究社)著者の井垣利英(としえ)さんに話をうかがいました。Q.<お呼ばれしたときの玄関でのマナーを教えて!>A.<コート類は脱いで入り、訪問先の方にお尻を向けずに靴を脱いで>「コートやマフラー、手袋などは玄関の前で外してチャイムを押し、コートは手に持って入るのが基本。靴は入ったままの方向で脱ぎ、上がってから膝をついて靴の向きを入り口のほうに向けて、揃えておきます。帰り際は靴を履いてから、スリッパのつま先を室内に向けて揃え、上がり口の端に置きます」Q.<トイレの使い方に特別なマナーはある?>A.<トイレットペーパーは三角折りにせずミシン目でカット>「トイレットペーパーが三角折りにされている光景を見かけますが、あれは業務用でお掃除が終わったという印。使うときはミシン目できれいにカットしましょう。洋式トイレの場合は、終わったら必ずフタを閉めて。手を洗ったら、備え付けのペーパーなどで水がはねたところを拭くのもエチケットです」◇いがき・としえ総合マナースクール(株)シェリロゼ代表、マナーコーチ。13万部突破の『しぐさのマナーとコツ』(学習研究社)など著書多数。※『anan』2016年4月13日号より。イラスト・すやまゆうか文・兵藤育子
2016年04月08日毎日の生活にこそ、こんなときどうするの!?という瞬間が。「マナーは大人になれば自然と身につくものではないので、勉強することが不可欠です」と話すのは、マナーコーチの井垣利英(としえ)さん。ただし形を暗記するだけでは、まったく意味がない。「私は、人と人の心をつなぐリボンという表現をしていますが、他者への思いやりや感謝の気持ちが、すべてのマナーのベースにあります。お互いに良い人間関係を築くためにも、ぜひマスターしておきましょう」今どきのマナーを井垣さんにお聞きしました。Q.<友人が離婚しました。どう接するのがよい?>A.<元気になれそうなお誘いを心がけて。 新しい人生を応援しましょう>「一緒にごはんを食べに行ったり、習い事に誘うなど、元気になりそうなことを提案しましょう。離婚を経て、もし一見落ち込んでいても、一日も早く前向きに進みたいはずです。『これからが楽しみだね!』『絶対にうまくいくよ!』などと笑顔でプラスの言葉を添えて励まし、応援しましょう」Q.<授かり婚の場合、お祝いを贈るタイミングは?>A.<結婚と出産をセットで祝っても。ただし出産前にベビー用品はNG!>「授かり婚など結婚と出産が近い場合は、お祝いもセットで考えてよいでしょう。ただし間違いがちなのが、贈るタイミング。ベビー用品などをプレゼントする場合は、万が一を考慮して、出産前には贈らないこと。元気に生まれてきて、少なくとも1週間経ってから贈るようにしましょう」◇いがき・としえ総合マナースクール(株)シェリロゼ代表、マナーコーチ。13万部突破の『しぐさのマナーとコツ』(学習研究社)など著書多数。※『anan』2016年4月13日号より。イラスト・すやまゆうか文・兵藤育子
2016年04月08日若いときは参列する機会の少ないお葬式。いざというときに慌てないよう、昨今のお葬式事情と心がけるべきことを知っておこう。礼儀作法への考え方も変わってきているなか、改めて出席への心構えから振る舞いまでを、エンディングプランナー・古家崇規さんに話をうかがいました。Q.<遺族の方に話しかけてもOK?どんなお話をすればよいでしょうか?>遺族が近くにいらっしゃったら、挨拶をしないのも不自然だし、悲しませるような会話もしたくない。どんなお話が無難でしょう?A.<故人の思い出を語ってあげましょう>「たとえば会社関係の方のお葬式の場合、職場の方々はご遺族の知らない故人の一面を知っていることがよくあります。状況にもよりますが、故人との思い出話をしてあげると、癒されると思いますよ」式場に、故人の写真や趣味のものが飾られていたりなど、思い出コーナーが設けられていることも。「故人の思い出を共有する場なので、じっくり見てぜひ話題に。友だちのお父さんなど面識のないような方のお葬式でも、小さい頃の友だちとのツーショットを見たら、親近感が湧くでしょうし、感想を伝えてあげると遺族は喜ぶはずです」Q.<お通夜は小声でしゃべるのがマナーでしょうか?>しんみりしているお通夜の席。やっぱり小さな声で、コソコソと話すほうがよいのでしょうか?A.<普通の大きさで話して大丈夫です>「お葬式は小声で話さなければいけないような雰囲気がなんとなく漂っていて、『お悔やみ申し上げます』というお決まりの文句も聞き取れないほど消え入るようになってしまいがちです。しかしよくよく考えれば、小声で話さなければいけないことなどないのです。むしろコソコソ声が妙に響いて気になることも。わざと明るい声や大きな声で話す必要はありませんが、声のボリュームはあくまでも普通でよいと思います」恐縮しすぎてしまうのも不自然だが、参列者と久しぶりに再会したからといって、関係のない話で盛り上がるのは言うまでもなく失礼なので、くれぐれも注意を!◇ふるや・たかのりエンディングプランナー。東京・神奈川・埼玉・千葉でさまざまな葬儀をサポートする、葬儀社アーバンフューネス所属。※『anan』2016年4月13日号より。イラスト・すやまゆうか文・兵藤育子
2016年04月07日冠婚葬祭のマナーは、なかなか難しいもの。特にお弔いは若いときは参列する機会が少ないだけに、いざというときに戸惑う人も多いのでは?エンディングプランナーの古家崇規さんに教えていただきました。本来、葬式は親族などが故人のそばで過ごす「通夜」と、故人を葬る「葬儀」、最後のお別れをする「告別式」に分かれている。「現在は葬儀と告別式が一緒に行われるだけでなく、通夜と告別式の差もなくなり、友人・知人は告別式ではなく通夜に参列するのが主流になっています」(古家さん)ただ、葬式事情がどんなに変化しても、故人をしのぶ時間であることは変わらない。「家族葬という小規模な形式が増え、明るい雰囲気の葬式も少なくありません。あのときいろんな思い出話をしたよねと後々話せることは、故人が記憶のなかで生き続けていることを意味します」お別れの時間を遺族と共有する時間だからこそ、マナー違反で不協和音をたてないことが最も大切です。では、具体的なお葬式マナーQ&Aを見ていきましょう。Q.<喪服を持っていません!どんな格好で行けばいいですか?>訃報を受けたのですが、今までお葬式に行く機会がなかったので、ブラックフォーマル(喪服)を持っていません……。A.<仕事で着ているスーツでも黒い服装であれば大丈夫です>「ブラックフォーマルがない場合は、仕事で普段着ているような黒で光沢のないワンピースやスーツで代用している方が多いです。光るものをつけていたり肌の露出が多くなければ変に目立つこともありません。昔はお亡くなりになった直後の通夜では、用意していたように見える“黒”は避けて、紺やグレーなどのダークな色といわれていました。しかし現在は、親族以外の方々はお通夜への参列がほとんどとなっています。黒い服装がベターです」正式さを突き詰めるより注意すべきは、外しさえすればよいものをつけたままなこと。金属のネックレス、イヤリング、結婚指輪以外の指輪、飾りのついた髪留めなどのアクセサリー類は、外しておこう。また、ネイルはオフし、ジェルネイルなどは黒い手袋でカバーを。「多少崩れたスタイルでも、正式な喪服ではないからと咎められるようなことはほとんどありません。それよりもわざわざお別れに来てくれたことを、ご遺族は喜んでくださるのではないでしょうか」◇ふるや・たかのりエンディングプランナー。東京・神奈川・埼玉・千葉でさまざまな葬儀をサポートする、葬儀社アーバンフューネス所属。※『anan』2016年4月13日号より。イラスト・すやまゆうか文・兵藤育子
2016年04月07日“今どきのお式”といえども、マナーが問われる式場でのお作法。守るべきところはちゃんと押さえていないと、ただのだらしない人!?礼儀作法への考え方も変わってきているなか、改めて出席への心構えから振る舞いまでを、現場に立つプロフェッショナルがレクチャー!ウェディングプランナー岡村奈奈さんに話をうかがいました。Q.<メールで招待が来た場合、予定が見えないし即レスしなくてOK?>メールで気軽に招待されたのだけど、半年も先のことなんてまだわからないし、予定が見えてから返事をしたほうが親切なのでは?A.<招待状と同じくらい真摯に答えて!>メールやLINE、Facebookのイベントページなどを通じて招待されることが珍しくない昨今、返事をする際に注意すべきことは?「正式な招待状を送る前に、出席者の人数を把握したいという意図もあるので、適当に答えるのはやめましょう。どうしても予定がわからない場合は、『ぜひ出席したいけど、会社の異動があるかもしれないから、いつまでに返事をすればいい?』などと理由をきちんと伝えて、好意的な返事を。どんなカタチでも、出席と伝えたのであれば、よほどの事情がない限り出席がマナーのうち」Q.<当日撮った写真、SNSに今すぐアップしたい!これっていいの?>友だちのきれいな花嫁姿や感動的な様子をSNSで実況中継したいのだけど、許可なしでもOK?A.<基本的に新郎新婦からOKをもらってから>「SNSをよく利用している新郎新婦であれば、喜ばれることもあり必ずしもダメではないのですが、日常とは違う場であることを忘れずに。集合写真で自分だけ写りが良かったり、許可を取っていないからといって新郎新婦の顔をぼかしたり、目線を隠してまでアップをするのは、考えもの。二人のベストショットや、中座していて見ることのできなかったであろう参列者たちの風景を後日送って、許可をもらってから載せるのがマナーです」。どうしても早くアップしたいなら、お花や料理、式場の外観などイメージ的な写真を。◇おかむら・ななウェディングプランナー。伝統的な和婚からカジュアルなアウトドアウェディングまで手がける。『WEDDING IDEAS BOOK』(誠文堂新光社)が発売中。※『anan』2016年4月13日号より。文・兵藤育子(C)bombuscreative
2016年04月06日結婚式に招待されるのは、とても喜ばしく、誇らしいこと。その人の人生で最も大切な一場面に列席する際に心がけるべきこととは?ウェディングプランナーの岡村奈奈さんに聞きました。結婚式で一番大切にしたいのは、やっぱり「おめでとう」という心の表現。「新郎新婦を祝福したいのなら、参加者としての役割をマナーで表現してあげることが大事です」(岡村さん)自分が何を着たいかではなく、ハレの日にふさわしい服装で出席するのもそのひとつ。「わかりやすいのは、特別感を出すこと。その点、若い女性の振り袖などの和装はわざわざ着てきた感じがあるので、両家の親族も喜ばれます」最近の風潮は「新郎新婦が主役」でも「ゲストが主役」でもなく「シェア」。「ゲストも観客に徹することなく、一体感を楽しむ形式が増えています。何より積極的に参加して心から楽しむことが、祝福につながります」では、最近増えている“1.5次会”でのマナーなどを岡村さんに教えてもらいました。Q.<披露宴や1.5次会…。形式で服装は変えるべき?>レストランを会場にした1.5次会は、ホテルウェディングよりも何となくカジュアルな気がするから、それほどドレスアップしなくてもOK?A.<会場やスタイルで判断する必要はありません>最近は会場やスタイルが多様で、披露宴と二次会の間とされる1.5次会にもいろんなパターンが。その都度服装で迷う人も多いはず。「基本的にはどんなウェディングでも、一般的な披露宴と変わらない装いでOKです。むしろ招待された側が、1.5次会だからと勝手に引き算をするほうが危険。心配なら本人に相談を。色や素材で季節感を出したり、友だちと相談してドレスの色を合わせると、一体感を演出できて喜ばれます。長袖&パンツスタイルでも、ヘアメイクやアクセサリーの使い方次第で華やかに。パーティ用にシルバーやエナメルのパンプスを1足持っておくと重宝しますよ」◇おかむら・ななウェディングプランナー。伝統的な和婚からカジュアルなアウトドアウェディングまで手がける。『WEDDING IDEAS BOOK』(誠文堂新光社)が発売中。※『anan』2016年4月13日号より。文・兵藤育子(C)amoklv
2016年04月06日小説でも短編と長編では楽しみ方が異なるように、4コママンガにはいわゆるストーリーマンガとはひと味違った楽しみ方がある。どちらかというと男性向けのものが多いなか、辻灯子さんの『敗者復活戦!』は女性のファンも多い4コママンガとして注目したい作品だ。作者の辻さんにお話を聞いた。***舞台は商店街の一角にある古本屋。祖父母の営むこの店を手伝っている30代の月穂さんは、外資系の優良企業に勤めていた過去を持ち、ちょっとミステリアスな雰囲気を漂わせている。脳天気な女子高生がそこでアルバイトをすることになり、彼女の親友とともに月穂さんとのちぐはぐなやり取りが描かれていく。「30代って、自分としてはあくまでも20代の延長なのに、世間がそれなりの扱いをしてくるので、違和感を抱きがちなんですよね。今までみたいに勢いで走れないところが、30代の女性を描く面白さだと思います」一見クールビューティな月穂さんにも、実は子どもっぽくてわがままなところがあり、女子高生たちのイメージする大人の女性像が崩れていく過程も、なんだか妙にリアル。自らの経験に置き換えればわかることだが、それぞれの年代や立場になってみなければ見えない景色があることに、改めて気づかせてくれる。「4コママンガなので、ドラマ性において物足りないところもあると思うのですが、良いドラマよりも良いオチを、と思ってその切れ味にはこだわっています。3コマ目まで描いて真っ白なコマをじいっと眺めたり、トイレに行ってみたり(笑)。いつものたうち回ってますよ」◇つじ・とうこマンガ家。主な作品に『ただいま勤務中』『ただいま勉強中』『ただいま独身中』『よゆう酌々』(すべて芳文社)など。“アラサー女子の名手”として男女問わず人気。◇激務のエリートOLから足を洗った月穂さん。半リタイア状態で祖父母の古本屋を手伝うなか、アルバイトを探す女子高生がやって来る。『まんがホーム』で連載中。芳文社619円(C)辻灯子/芳文社※『anan』2016年4月6日号より。写真・森山祐子インタビュー、文・兵藤育子
2016年04月05日2014年の連載開始時から注目されている柏木ハルコさんの『健康で文化的な最低限度の生活』。生活保護という難題に挑んだ意欲作だ。柏木さんに話を聞いた。「以前は恋愛の話を描くことが多かったのだけど、東日本大震災を機に視点が外へ向き、社会の問題を描きたいと思うようになりました。そういう意味でも生活保護って世の中の矛盾が出やすい場所なんですよね」新米ケースワーカーの義経えみるは、右も左もわからないまま現場を任されてしまう。荒れ放題の家を訪問したり、自殺予告の電話がかかってきたり、これまでの人生で会ったこともないような人たちを相手に、無力さを痛感する日々。貧困、虐待、うつ病など重いテーマを扱っているのに、読んでいて苦しさよりも前向きな気持ちが先に立つのは、どの立場にも寄りすぎない作者のフラットで優しい視点のおかげだ。「誰かを断罪するような描き方をしたくないんです。弱い部分は誰にでもあるし、責めてもしょうがないところだと思うから。意見の異なる読者を切り捨てるのではなく、一緒に考えられるかたちが理想です」「どうして働かないの?」「生活保護でパチンコなんてあり得ない」「親戚がいるなら彼らに養ってもらうべきだ」などどれも正論かもしれないが、それぞれの“やんごとなき事情”を丁寧に描くことで、制度の枠内で解決することの難しさを浮き彫りにする。描き進めるほどに新たな疑問や問題が出てきて、テーマが減る気がしないという柏木さん。キャリアを積んでも、この作品からはさまざまな発見があるようだ。「これまでマンガは自己表現だと思っていたけれど、今回は取材などをして大部分をインプットしながら描いているので、チャレンジが多く楽しいです。小手先で演出するよりも、現実のほうがよっぽど興味深いなという気持ちで今は描いています」◇柏木ハルコ『健康で文化的な最低限度の生活』(C)柏木ハルコ/小学館◇新卒公務員として福祉事務所に配属された義経えみるが、同僚と生活保護の現場で奮闘するドラマ。3巻では、不正受給と扶養照会の問題が取り上げられている。現在、『週刊ビッグコミックスピリッツ』で連載中。小学館552円(C)柏木ハルコ/小学館◇かしわぎ・はるこマンガ家。1994 年、女性の性欲を描いた『いぬ』でデビュー。映画化された『ブラブラバンバン』や闘牛がテーマの『も~れつバンビ』、短編集『失恋日記』などが。※『anan』2016年3月23日号より。写真・森山祐子インタビュー、文・兵藤育子
2016年03月19日どこに潜んでいるかわからない運命の“そのとき”…。どうやって見つけたらいいの?そのヒントは経験者たちの声のなかにつまっていました!あの出会いが私を変えた! これが運命だと感じた瞬間を人気脚本家の森下佳子さんにお聞きしました。* **雑誌の仕事をしながら、脚本家の道を模索していた森下佳子さん。脚本作りの下働きといえるプロットライター時代にチャンスが巡ってきた。「人気脚本家の遊川和彦さんが担当するドラマで、プロットライターが4人集められ、『北の国から』を全話見てどこでなぜ泣いたのか、レポートを提出することに。そのブレスト会議で、遊川さんがみんなの意見を聞きながら、『こんなに一生懸命やっているのだから、ひとりくらいデビューさせようよ』と言ってくれて。たとえ落選しても爪跡を残さなければと挑んだ結果、コンペで自分の作品が選ばれました。あのひとことがなかったら今ここにはいなかったかもしれないと思うし、ダメ出しされた原稿は今でも持っています」運命の出会いは振り返ったときにわかるからこそ、逃さないためには本当にやりたいことや自分にとって必要なものを常に考えておくことが大切。森下さんはそうすることによって、なんと旦那様までゲット!「出会って結婚を決めるまで、1週間かかっていないんです。友だちの結婚式の三次会へ行くお金がなく、幹事だった見ず知らずの彼に『お金を貸してくれませんか?』とお願いしたら貸してくれて。常々、だらしない私には面倒見の良い人が必要だと思っていたので、1週間後に『結婚してくれませんか?』と言ったら、ほんとに結婚してくれたんです。まぁ何でもチャレンジです(笑)」◇もりした・よしこ18日に最終回を迎えるTBS系ドラマ『わたしを離さないで』の脚本を担当。2017年の大河ドラマ『おんな城主 直虎』の脚本も担当する。※『anan』2016年3月23日号より。イラスト・naohiga文・兵藤育子
2016年03月17日自分にとっての運命の “そのとき”って一体いつなんだろう…。“そのとき”を経験し、活躍している方に運命を感じた瞬間を教えて頂きました。リアルに熱く語ってくれたのは、話題のマンガ家・山本さほさん。運命の瞬間には、幼馴染みの存在がありました。* **会社員からマンガ家になれたことが、人生で一番の転機だという山本さん。ただし、ふたりの幼馴染みの存在がなければ、その夢は絶対に実現できなかったと思っている。「岡崎さんという女の子と、杉ちゃんという男の子には、小学生のときに出会いました。私は子どもの頃から絵を描くことが好きで、マンガ家になりたいと思っていました。一時は美大を目指したこともあったのだけど、ずば抜けてうまいわけでもなく、現実を知って違う道を選んでしまったんです。以来、絵を一切描かなくなり、マンガ家になりたかったことさえ口にしなくなった時期が長くあって……。だけど子どもの頃の私を覚えていたふたりに、またマンガを描きなよと背中を押してもらい、道具を買うところからやり直して、2年前に再開しました」山本作品の読者なら説明するまでもないが、岡崎さんは『岡崎に捧ぐ』にメインで登場する女の子。マンガに描かれているのと同様、山本さんのことならすべて肯定して、ヨイショしてくれるようなタイプだ。一方、杉ちゃんはウェブの編集者をしていて、ブレイクするきっかけになったnoteというサイトやTwitterにマンガの投稿を勧めてくれたプロデューサー的存在。「大げんかをしたり、お互いに環境が変わって疎遠になった時期もあったけれど、大人になるまでしつこく付き合い続けて(笑)、縁を大切にできてよかったと思っています」◇やまもと・さほ会社勤めをしながら「岡崎に捧ぐ」や「ひまつぶしまんが」をウェブ上に掲載してブレイク。『無慈悲な8bit』1巻が発売中。※『anan』2016年3月23日号より。イラスト・naohiga文・兵藤育子
2016年03月16日悩めるオトナ女子の感情を丁寧にすくい取る西炯子さん。2巻完結の本作『カツカレー』は『姉の結婚』に続いて、またしても結婚がテーマの物語だ。「結婚のことは前作でやり尽くした感があるけど、あと1回考えてもいいかなと思って描きました。大卒で働き始めた場合、主人公のような30歳手前の女性って、結婚について考えざるを得ないんですよね」斉藤美由紀は28歳の会社員。売れない劇団員の同棲相手と潔く別れて、結婚相談所で婚活を始めるのだが、なかなか思うような人と巡り会えず、どんな人と結婚したいのかさえもわからなくなってくる。「私自身も描いていてわからなくなりました(笑)。普通の人でいいとは言うけど、普通の人なんていないっていう常套句があるじゃないですか。本当にその通りで、自分で選べるからこそ軸がどんどんずれてきて、結婚する意味を見失いそうになる瞬間が必ず来るんですよね」美由紀は思い通りにいかない鬱憤を読書カフェの筆談用ノートに書き綴るのだが、ある日、見知らぬ男から辛辣な返事を書き込まれてしまう。「男性でも女性でも一歩踏み込んでくれる人って、大人になるとなかなかいないですよね。SNSなんかとはまったく別のところで、そういう人がいたらいいのになっていう気持ちもちょっとありました」そもそも美由紀は、結婚に恋愛感情はいらないと考えて恋人と別れたのだが、自分の決断は間違っていないと思いつつ、周りの意見を気にせずにはいられない弱さもある。「私はストーリーマンガを描くと、どうしても自分が嫌いなタイプの主人公になってしまうんです。そういう面倒な女性が幸せになるのが、私の物語では一番いい構造らしく、自分が好きになるような女性をなかなか幸せにできないんです(笑)。女の子のちょっと汚い部分を描くのが好きなのかもしれないですね」はたして美由紀は、お見合いの末に幸せをつかむことができるのか。西さんが見聞きした婚活ネタを盛り込んでいるというだけあって、ためにもなる一冊。そして今回も渋くて色気のあるオジサマが登場します!◇婚活中の美由紀は、思い通りにいかない不満と迷いをカフェのノートに書き綴っていた。辛辣な返事を書き込んだ中年男と思いがけない交流が生まれ……。小学館各429円◇結婚について何度でも考えよう。迷える婚活女子の必読書。(C)西 炯子/小学館フラワーコミックスα◇にし・けいこマンガ家。高校在学中にデビュー。『娚の一生』『姉の結婚』など大人の恋愛を描いた作品が人気。アラフォー女性が主人公の「初恋の世界」を月刊フラワーズで連載中。※『anan』2016年2月24日号より。写真・森山祐子インタビュー、文・兵藤育子
2016年02月23日小林裕美子さんが描く、コミックエッセイのタイトルは「産まなくてもいいですか?」。なんともドキッとする問いかけ。出産は、言うまでもなく女性にとって人生の一大イベントだ。結婚していても、いなくても、はたして自分は子どもを産むのかと誰だって考えたことがあるだろう。著者の小林裕美子さんは、結婚から10年以上経て一昨年に第一子を出産。これは自身の出産を挟んで制作された物語だ。「結婚してから、子どもをほしいと思えない時期が4~5年ありました。仕事が楽しくて、当時は何を言われても耳に入ってこなくて。だけど周りの人が徐々に産みだして、いつまでも仕事優先でいいのかなと悩むように。そのときの不安定な気持ちを描いてみようと思ったのです」主人公のチホは結婚2年目。夫婦仲は良く、共働きで気ままな生活を送っている。しかしながら双方の親からは、孫の誕生を期待され、友人・知人からもときに露骨に、ときに遠慮がちに「子どもはまだ?」と言われる日々。当の本人はというと、子どものことについて夫と腹を割って話したこともなく、そもそもほしいのかどうかもわからない。そのため、いろんな立場の人と話をすることで、自分の抱えているモヤモヤをクリアにしていこうとする。小林さんは物語を作るにあたり、結婚しているけれども子どものいない女性たちにインタビューを行った。「働いている方は特に、ゆくゆくはほしいけれども今ではない、というふうにタイミングを計っているところがありました。産むかどうかを女性に任せてもらえるのはありがたいのですが、自分で決めたら背負わなければいけないものもそれだけ多くなる。そう考えると、居心地のいい今の生活をわざわざ変えなくてもいいのかなって思っちゃいますよね」一方で、「産むことが当たり前」な人には、産まないことが理解できなかったりもする。たとえそれが「産めない」のだとしても。多様なライフスタイルや価値観が認められているかのように見える世の中だが、産む人と産まない人、そして産めない人の間にはいまだ深い溝があることを思い知らされる。とはいえ、「胸に刺さる」あるいは「耳タコ」のようなシビアなエピソードさえ素直に受け入れられるのは、ほのぼのとしたタッチのなせる業といえるだろう。「産むかどうかを悩むのは、決して自分勝手なわけではなく、当たり前のことなのだと伝えたいですね」悩んだぶんだけ、責任感と他者への優しい視点が生まれることを、チホの導き出す答えが教えてくれる。◇出産することに踏ん切りがつかない31歳のチホが、なぜ迷っているのか、自分の心と真摯に向き合う様を描いた、悩める女性のためのコミックエッセイ。幻冬舎1000円◇こばやし・ゆみこマンガ家、イラストレーター。不妊治療について描いた『私、産めるのかな?』、親の介護を扱った『親を、どうする?』など、身近な問題をテーマにした著書がある。※『anan』2016年2月10日号より。写真・森山祐子インタビュー、文・兵藤育子
2016年02月09日役者として味のある演技で魅了し、さらにはロックというフィールドで音楽エンターテインメントを謳い、独特の存在感を放つマキタスポーツさん。多彩な活動に共通するのは一筋縄ではいかない捻りのある面白さ。いろんなところで見るけど一体全体どんな人?* **――最近は俳優としてもさまざまな場で活躍していますが、ミュージシャンや作家業の活動とは違う位置づけなのでしょうか?マキタ:以前よりはそれほど分けて考えなくなりました。いろんなことをしているけれど、全部ひっくるめて“自分”なのだと思いたいというか。たとえば大昔のコメディアンが、タップを踏めて、ピアノもギターも弾けるのが当たり前だったみたいに、パフォーマーとしていろんなことができたほうがいいだろうとも思いますし。誰も望んでいないのに「俺はここにいるぞー!面白いことやってるよー!」とずっと言い続けているのが、自作自演家としての基本姿勢だと考えているんですけどね。だけど人の要求するものに応えることで形作られていく役者の体験は、大きかったと思います。まさか自分に労働者役が似合うなんて、思ったことがなかったですから。方言も似合うんですって。地方顔なんですよね、僕。――地方顔ですか(笑)。マキタ:コントロールしているつもりはないのに、僕がしゃべると栃木の人になったりするらしいです。「マキタさん、ほんとにいるわ、そういう酪農家!」なんて言われたら、10年前ならムッとしていたかもしれないけど、今は面白いですね。昔はこう見られたいという思いが強すぎたけど、第三者の評価や望むものは別のところにあるのだと改めて気づきました。僕はいろんな表現活動をするなかで、一部の理解してくれる人を相手することの充足感を信じて疑わなかったんです。一見それは居心地がよさそうだけど、どん詰まりで、結局満足できないんですよね。だから今は、誰もが楽しめるものを追求するという最も難しい命題に取り組みたくなっています。誰もが楽しめるだなんて、はっきり言って矛盾だと思うけど、エンターテイナーだったらそれを目指すべきなんじゃないかなって。――矛盾とわかっていても、挑まずにはいられないわけですね。マキタ:何かと白黒をつけたがるけど、解決だけをよしとする考え方は、非常に危なっかしいと最近思うんです。世の中そんなに単純じゃないし、もっと未解決のままでもいいんじゃないかなって。僕のことをミュージシャンなのか俳優なのか芸人なのか、はっきりさせたがる人が多いんですけど、わかりやすくフォルダ分けしてほしくないという思いもあります。あなたのフォルダ分けはとりあえず置いておいて、まあじっくり見てみてくれよと。アルバムのタイトルにもなっている『矛と盾』というリード曲は、矛盾しているものやグレーゾーン、非合理的なものを受け入れるのが重要なんじゃないかってことを歌っている曲なんです。正論だけの世の中は息苦しいし、僕はなるべく真ん中に立って、不寛容な世の中をからかって笑いにしたり、切実に歌ったりしていたいんです。◇1970年1月25日、山梨県生まれ。28歳のときに芸能界デビュー。「マキタ学級」という音楽エンターテインメントバンドを率いて活動するかたわら、’13年、アルバム『推定無罪』でメジャーデビュー。映画『苦役列車』、ドラマ『花子とアン』『みんな!エスパーだよ!』などで俳優としても活躍。◇マキタスポーツ presents Fly or Dieのファーストアルバム『矛と盾』が発売中。収録されている11曲のうち2 曲を除いて、全作詞・作曲を彼自身が手がけている。ポップで耳に残るメロディとユーモア溢れる歌詞が秀逸で、音楽センスを改めて感じさせる仕上がりに。マキタスポーツさん扮するダークネス様のビジュアルにも注目!※『anan』2016年1月27日号より。写真・森滝 進(まきうらオフィス)インタビュー、文・兵藤育子
2016年01月25日仕事も恋も全力で生きる女性を描くことにかけてはピカイチの、おかざき真里さん。連載中の「阿・吽」では、なんと日本仏教界の二大ヒーローである最澄&空海を主人公にした歴史マンガに挑んでいる。「『サプリ』と『&-アンド-』という長い連載をやってみて、自分の周りの狭い足元を掘って描く癖があるのがようやくわかったんです。次に連載をするとなると、もう掘るところがなくなってしまう気がして、普段使わない部分の筋トレをしたいと思っていたときに、声をかけていただいたのがこの物語でした。始めてみたら、すごく大変なトレーニングになっちゃったんですけど(笑)」仏教や歴史について特に詳しかったわけではないので、受験生のごとく一から勉強。その新鮮さが「歴史上の偉人」として揺るぎないものとなっている人物像に、生身の人間らしい魅力をプラスしている。「調べていくと、空海は意地悪でちょっとひねくれているようなところがあったり、最澄に関してはマザコン説があったりもするんです。信者の方の思いを裏切らないようにしつつ、自分がつかんだ感覚を素直に描きたいと思っています」青年誌に連載しているため、表現そのものもチャレンジの連続だ。「女性向けのマンガは『こういう言葉が効くだろうな』などとコントロールしてしまうのですが、この作品は何もかもわからないから毎回全力を出しています。だから描いていて楽しいし、気持ちがいいんです。歴史好きの方が読んでくれるのは嬉しいのですが『最澄と空海、どっちが好み?』なんて会話をしながら気軽に読んでいただければ!仏教の教えって難しいけど、なんかかっこよいし身に沁みますよね。そのありがたい感じを出せればいいかなって」ふたりの生い立ちから始まり、最新刊の3巻では空海の厳しい修行がメインに描かれる。伝説となっている人物が生きることに苦悩し、葛藤している様は、小難しいことを抜きにして素直に感動してしまう。この先どんなドラマが待っているのか、現代に蘇ったかっこよすぎるヒーローたちから目が離せない。◇天台宗の開祖である最澄と、真言宗の開祖である空海。宿命のライバルといわれる天才たちの生き様を描いた壮大な歴史ドラマ。『月刊!スピリッツ』で連載中。小学館648円。◇野性味溢れる空海(上)と、ドロップアウトした最澄(下)。(C)おかざき真里◇おかざき・まりマンガ家。長野県出身。『サプリ』『&-アンドー』など女性の心情を細やかに描いた作品が人気。『ずっと独身でいるつもり?』(祥伝社)が『阿・吽』3巻と同時発売。※『anan』2016年1月27日号より。写真・加藤 淳インタビュー、文・兵藤育子
2016年01月21日こんなお店があったら通いたい。いやむしろ働きたい!物語の舞台は、ホステスの平均年齢が60歳を超える高齢バー。昼間は大手スーパーの倉庫で肉体労働に従事する、恋人なし、貯金なしの40歳独身・笛吹新は「アララ」という源氏名で、新米ホステスとして働き始める。「たとえば40歳を越えると、30代がすごく若く見えるもの。30歳になったから好きな人に告白するのを諦めたなんて話を聞くと、何やってんの!って思います。自分の立ち位置しか見えていないと、女として終わりだとか、世の中にもう必要とされていない、などと悲観してしまう。そんなことはないですよっていうことを描きたかったんです」将来に希望を見出せずにいたアララは、お店でまさかのギャル扱いされることで年齢の枷が外れ、自分の居場所と感じるように。タイトルのジルバとは店を創設した伝説のママの名前で、日本に帰国したブラジル移民。彼女とともに酸いも甘いも噛み分けてきた5人の現役ホステスが実に愉快で、なかでもジルバ亡き後の店を守るくじらママに癒される。「アララのように親元を離れてひとりで暮らしている女性は、すぐに泣きつくことのできる場所がありませんよね。だからくじらママは、ちょっとやりすぎなくらいアララを受け入れて、見守って、甘やかすような存在にしようと思ったのです」戦後の貧しい時代を助け合って生き抜いてきたママたちは、本当の家族以上に結束が固い。擬似家族は、有間さんがずっと興味を持ち続けてきたテーマのひとつでもある。「他人だから嫌なら別れられるのだけど、補い合ったり支え合ったり、ときには放っておいたりなど、人間関係の自由さに惹かれます」他愛ないやり取りにケラケラ笑ったかと思いきや、人間味溢れるエピソードにほろりと泣かされ、ジルバをはじめとするママたちの誇り高い生き様に感服する。本を閉じる頃には、年をとるってステキだなあと元気と勇気と得体の知れぬ万能感が!◇高齢バーを舞台に繰り広げられる人間賛歌。最新刊は、伝説のママ・ジルバの人生が徐々に明かされる重厚な展開に。ビッグコミックオリジナル増刊で連載中。小学館552円◇ありま・しのぶマンガ家。福島県出身。代表作に『モンキー・パトロール』『ホテルポパン』など。ビッグコミックオリジナルで連載中の「あかぼし俳句帖」の原作も担当している。(C)有間しのぶ/小学館※『anan』2015年12月30日‐2016年1月6日合併号より。写真・森山祐子インタビュー、文・兵藤育子
2016年01月05日グルメマンガ隆盛の昨今だが、かねもりあやみさんの描く『サチのお寺ごはん』のテーマは精進料理。肉や魚はもちろん、玉ねぎやにんにくなど刺激の強い野菜も登場しないグルメマンガってどうなの…!?と思うかもしれないが、これが実に豊かなのだ。原案協力は『孤独のグルメ』や『花のズボラ飯』で知られる久住昌之さん、監修はレシピ本を多数出版している料理僧の青江覚峰さんという、なんとも贅沢なコラボ。主人公の臼井幸(うすい・さち)は名前が示す通り、ハズレくじばかり引いている27歳のOL。好きでも嫌いでもない仕事に追われ、毎日コンビニごはんで済ませていたが、近所のお寺で精進料理を食したことがきっかけで、食生活だけでなく考え方や人生も少しずつ変わっていく。「季節のお料理を青江さんに提案していただき、それをもとにプロットを組んで、久住さんにアドバイスをいただくという流れで描いています。私自身、グルメマンガは初めてなのですが、料理の描き方や食べたときの表情やセリフなど、毎話勉強させてもらっています」(作者・かねもりあやみさん、以下同)登場する料理の一例を挙げると、大豆でだしをとった「利休汁」というナスとごまのお味噌汁、肉の代わりにお麩を使った肉じゃがならぬ「お麩じゃが」など。かねもりさんはこうした料理をすべて自分でも必ず作るそうで、マンガ制作の大事な一工程となっている。「実際に作ってからネームを書くと、キャラクターのセリフが全然違ってくるんです。お寺で青江さんが作ってくださった味となぜか異なるのも不思議で、サチが自宅で作り直すシーンなどに投影させています」サチはお寺に通ううちに、若い住職に日頃抱えている些細な悩みや不満をこぼすのだが、含蓄のあるアドバイスにも癒される。「お寺ごはんを食べると、丁寧に生活しようって思うんです。食材ひとつとっても、これでなければ絶対にダメというわけではないので、考え方も柔軟になります。サチの精進料理に対する発見や驚きを、一緒に楽しんでもらえると嬉しいです」1巻で扱われた料理を集めると、ひとつのお膳ができあがるという粋な仕掛けも。素朴で温かなお寺ごはんのようにじんわり沁みる作品だ。◇“薄幸女子”サチと、お寺に集う個性の異なる3人の男子を軸に展開する、精進料理のグルメコミック。実際に作って食べてみたくなる、お手軽レシピが満載。秋田書店 619円◇かねもり・あやみマンガ家。広島県出身。’11年、『ネペンテスの恋』で「金のティアラ大賞」銀賞を受賞してデビュー。「サチのお寺ごはん」は『エレガンスイブ』(毎月26日発売)で連載中。※『anan』2015年12月2日号より。写真・水野昭子文、インタビュー・兵藤育子
2015年11月26日実に40年以上「日本の心」を歌い続けてきた八代亜紀さん。流行歌手と呼ばれていたデビュー当時、プロであればどんなジャンルも歌えるのが当たり前だったそう。ジャンルが細分化された現在も、演歌にとどまらずジャズやロック、ポップスなどあらゆる音楽を「八代節」で歌い上げる彼女が、初のブルースアルバム『哀歌 -aiuta-』をリリース。プロデューサーに寺岡呼人さんを迎え、日米の名曲カバーだけでなく世代の異なる個性豊かなミュージシャンが新曲を提供した充実の内容だ。ブルースの魂が八代さんに脈々と息づいていることを感じさせてくれる、濃密なインタビューをどうぞ!――まずは、なぜこのタイミングにブルースアルバムをリリースしようと思ったのでしょう。八代:日本人である私にとってのブルースは、浪曲なんです。浪曲はひとりでセリフを言ったり歌ったりするんですけど、寝るときいつも父に聴かされて、その声音というか音の魂を感じて2歳のアキちゃんは意味もわからないのに「カワイショウだね」って泣いていたんですって。今の時代は、仕事がないといっても選んでいるだけで、本当はいっぱいあるでしょう?私たちの若い頃は仕事を選べなかったし、両親が若い頃はもっとそうだった。日本が戦争に負けてものすごく貧しかったけど、どん底から少しずつ豊かになっていったから、些細なことにも幸せを感じたんですって。今はなんでも揃っているけれど、幸せもつらさも感じにくいと思うの。だからこそ、八代亜紀の歌うブルースを伝えたいんですよね。――小さい頃から歌がお好きだったそうですが、人前で歌うのは苦手だったそうですね。八代:本当に嫌いでした!歌うときって顔を歪めたりするでしょう。それを見られるのが嫌だったの。週に1回、近所のおじいちゃん、おばあちゃんが私の歌を聴きに、座布団を持ってうちへ集まってきたんだけど、子どもながらにそれが苦痛でね。渋っていると、父がだんだん怖い顔になってくるんです。さすがにもう怒られるっていう瞬間、母に10円玉を「はいっ!」って渡されてね。それが私のギャラ(笑)。だけどやっぱり顔を見られるのは嫌だから、ふすまの向こうで歌ってました。――歌うことが楽しさに変わるきっかけは、あったのでしょうか。八代:その後、父が独立して会社を作り、お金の工面で苦労するようになりました。「従業員の給料を優先して、余ったお金がうちのだからな」と母に話している姿をよく見かけ、なんとかして父を助けなければと思ったんです。それで憧れだったジュリー・ロンドンのプロフィールが「クラブシンガー」となっていたから、一流はクラブで歌うのだと思い込み、私もそうならなきゃ!と決心したの。友人に連れられて行った地元のキャバレーで年齢をごまかして歌って、フロア中に私のハスキーな歌声が広がった途端、騒がしかったお客さんやお姉さんたちがスッと立ち上がって、フロアに出てきてダンスを始めたの。キャバレーで歌い始めて、3日目で父にはバレましたけどね。「不良はいらん」とものすごく叱られて勘当されました。それで東京へ出てきたの。――それでも歌手になりたい気持ちは揺るぎませんでしたか?八代:そうね、でも追い出されてしまったから、父に私が本気だと証明しなければいけないという意地もありました。母が段取りしてくれて、東京のいとこ夫婦のところに居候しながら音楽学院に通い、レコードデビューする寸前までいってダメになったこともありました。4年経って銀座のクラブで歌うようになるんだけど、その間、父は電話にも出てくれませんでした。アキは勘当されたのに、悲しんでいるどころか、東京でルンルンしてるって思っていたみたい。――銀座のクラブで歌うのは、まさに憧れだったわけですよね。八代:銀座で歌っていると、いろんな人がやって来て「レコードを出しなさい」と言われるのだけど、「クラブシンガーは一流だから!」と全然相手にしなくて、すごく生意気だったの。そしたらね、お店で働いていたお姉さんたちが「アキちゃんの歌を毎日ただで聴けるのは本当に嬉しいけれど、世の中にはつらい思いを抱えている歌のなかのような女性がたくさんいるの。レコードを出さないと、その人たちに歌は届かないんだよ」と言ってくれて、ハッと我に返ったんです。それでレコードを出すには芸名を考えなければということで、八代亜紀が生まれました。地方回りをして、スーパーの前とかで箱の上にマイクを置いて歌い、レコードを手売りするようなキャンペーンを2年間やりました。父がそのことを知って、アキは本気だったとようやく認めてくれて、私を支えるために母と一緒に東京へ出てきてくれたんです。――八代亜紀として軌道に乗ることができたのは、ご両親の支えがあったからこそなんですね。八代:昭和47年の暮れに、東京の小さな一軒家で両親とおこたに入りながら、「来年はどうなるんだろうね」って話をしていたの。ラジオもテレビの仕事も一本も決まっていなかったし、48年のスケジュールは真っ白だったから。だけど「私、頑張るからね、絶対に売れるよ!」と言って、新しい年のカレンダーの12月31日のところに「紅白歌合戦出場」とそっと書き込みました。そしたら年が明けて2月に発売した『なみだ恋』という曲が大ヒットして、スケジュールが真っ黒になったの。――唯一の“予定”だった紅白歌合戦出場も実現したわけですね。八代:だからね、自分のなかでけじめをつけるべきときっていうのは、誰にでもちゃんとあるの。10代だろうが50 代だろうが、年齢は関係なくね。大事なのは自分で決めて行動すること。そしたら、違う道が必ず拓けるから。それを私は若い人に強く言いたい。人生はブルースなんですよ。◇やしろ・あき熊本県八代市出身。1971年デビュー。1973年に出世作『なみだ恋』を発売。『愛の終着駅』『舟唄』『雨の慕情』など多数のヒット曲を持つ。2012年にはジャズアルバム『夜のアルバム』をリリース。邦人アルバム史上最大級となる世界75か国で配信された。◇自身にとって初のブルースアルバムとなる『哀歌 -aiuta-』が発売中。日本の「歌謡ブルース」とアメリカの「BLUES」の名曲カバーに加え、THE BAWDIES、横山剣(CRAZY KEN BAND)、中村 中が楽曲を提供。プロデューサーは寺岡呼人。まさに老若男女がしみじみと味わうことのできる、名盤に仕上がっている。※『anan』2015年11月25日号より。写真・小笠原真紀インタビュー、文・兵藤育子
2015年11月18日微笑みがわき起こるトークに、さらにウェーブをおこす自虐ネタやたとえ話…。“達人”に会話を盛り上げるテクニックを聞きました。自分の欠点や失敗を面白おかしく表現する自虐ネタは、高度なスキルが必要なように思いがち。だけど「そんなに難しく考えなくても大丈夫!」とLiLiCoさん。「『私は結構きれいかも…』って、みんな自分のことを美化しすぎているんじゃないですかね。だから自虐ネタができないのだと思いますよ。コンプレックスは誰だって持っているもの。思い切ってそれをネタにしちゃえば、自分も楽になるし、相手も笑えて、さらにはかわいがってもらえる。こんなにいいことはないですよ!」持ち前の明るさとノリで芸能界をサバイブしてきたLiLiCoさんが、自虐ネタの鉄則をアドバイスしてくれました!■自虐は勇気いじったりいじられたりという、笑いを伴うやり取りには何よりも勇気が必要。自分のコンプレックスを受け入れることもそうだし、「傷つくかも…」と思っていたら自虐ネタは披露できない。「たとえば顔の欠点を指摘されたら、変顔ができるくらいの勇気がないと。そういう勇気を持って乗っちゃったほうが勝ち。等身大の自分が受け入れられているという感覚を持てると、より会話が楽しめますよ」。勇気を出せば、それだけ大きな見返りがあることを信じてGO!■堂々といじってほしがろうピントのずれた自虐ネタは、そもそもギャグとみなされない危険性もある。相手を笑わせるような自虐ネタは、自分のことをきちんと理解してこそ言えるもの。「自虐ネタに限らずですけど、まずは客観的に自分をとらえることが大切です。そうすれば長所や欠点にも気づくはずですから。欠点はラッキーな個性と受け止めて、自分から言っちゃえばいいんです。周りの人も、そこはいじっていいんだってことがわかりますしね」。恥ずかしがらず、堂々とやるのがポイント。■他人の自虐にはマッハで食いつけ!自虐ネタを披露される側として、最もやってはいけないのはスルーすること。「自虐ネタはいじってほしいというシグナル。食いつきが悪いと、冷た~い感じになってしまいます。スルーが一番ダメですが、『いえいえいえ…』っていう中途半端な返しも、これ以上会話が続かなくなるのでタチが悪い。『そんな◯◯さんが好き!』とひとこと言うだけでもいいんです。上司にハゲネタを披露された時も、きっちり返してあげるべき。出されたら乗っかるのが礼儀ですよ!」■表現ボキャブラリーを豊かにいくら自分のことを下げるとはいえ、きつかったり下品なワードは避けたいところ。言葉選びや表現のしかたも重要なポイントなのだ。「たとえば“デブ”とか“ブス”という言葉を、かわいらしい子やおとなしい子が言っちゃうと、周りは笑うよりも先に引いてしまいますよね。“ぽっちゃり”とか“残念なルックス”など柔らかくしたり、ちょっと声色を変えるなど品の良さを心がけることが大切です。どんな内容であれ、話し方はきれいなほうが好感が持てますから!」◇りりこスウェーデン出身。映画コメンテーターなどマルチに活躍。プロレスラーやボディビルダーとしても活躍。北欧雑貨のWEB ショップ“リリココ”もスタート。※『anan』2015年11月18日号より。写真・中島慶子文・兵藤育子
2015年11月14日直木賞作家・桜木紫乃さんの短編小説を映画化した『起終点駅 ターミナル』で共演した、佐藤浩市さんと本田翼さん。消せない罪を抱える国選弁護人と、彼を頼る身寄りのない女性。複雑かつ繊細な関係を演じたふたりの、息がピッタリな対談をお届けします。* **佐藤:共演が本田翼だと最初に聞いたときは、「大丈夫か?」って正直思ったよ。結果的に大丈夫だったから、こうやって言えるんだけどな。本田:私は、こんなチャンスを逃すわけにはいかないと思いました!佐藤:そう言いながら、今、アンアンの記事読んでたね(と、机の上のアンアンを指さしながら)。本田:だってほら「体が生まれ変わる!」って書いてあるから(笑)。…もちろんプレッシャーもあったけど、ワクワクのほうが大きかったです。佐藤:僕が演じた完治は、25年間十字架を背負ってきたような男で、日々の生活で唯一起伏のあるところが、自分で料理を作って食べる時間なんです。こういうシーンでは通常、プロが料理を用意してくれるんだけど、やっぱり「気は心」だから、本当に自分が作ったものを翼に食べさせたかったんだよね。本田:ザンギ(北海道のからあげ)もイクラの醤油漬けもすごくおいしくて、愛情を感じました!佐藤:ザンギは前日に下味をつけて、セットの冷蔵庫に入れておいたし、イクラの醤油漬けも前々日くらいからスジコをほぐして下ごしらえをしておいたからね。原作や脚本のようないわゆる二次元の世界だと、完治は何をきっかけに敦子を受け入れるようになったのか、はっきりとした理由がないと成立しにくい。だけど三次元の世界で演じてみると、25年間自分のためだけに作ってきた料理を初めて食べてくれた女だってことだけで、理由は十分なんだよね。本田:それまで人にもてなされることが少なかっただろう敦子にとって、完治さんが作ってくれた料理は大きかったと思います。最初は警戒心の塊だったのに、もてなされることがどんどん楽しくなって、食によって完治さんへの思いもほぐれていくんですよね。佐藤:僕は翼の魅力を、いい意味で色がなくて何者でもないところだと思っているんだけど、もし敦子をいかにも陰のあるような若い子が演じていたら、この映画は逆に成立しなかったかもしれない。本来、それぞれの人が抱えている傷痕は、洋服の上からは見えないもの。服の上からでも傷が見えてしまうような女優さんが演じるよりも、翼みたいな子のほうが僕としてはすごく面白かったし、映画にとっても彼女が来てくれてよかったなと思うんです。本田:自分の色なんて自分ではわからないものだけど、こんなふうに浩市さんが見てくださっていることが嬉しいですね。現場でも常に私がいやすいように気を使ってくださるのが感じられて、本当に優しい方なんです…よ!佐藤:なんだよ、その「ほめ返してあげたわよ」みたいな言い方は(笑)。こいつは男女の壁を感じさせないというか、単純に後輩として扱える不思議なタイプ。実際はブロックが堅いのかもしれないけど、ふっと油断してそうじゃないところを見せてくれたから、僕は気楽に接することができたんだよね。本田:私、こう見えて普段はすごく堅いですよ!だけど浩市さんは、役者としてはもちろん、人としても全部任せてしまえるような安心感があったので、自然と完治と敦子のような関係になれましたね。佐藤:こちらが百の言葉で云々言うのではなく、観た人が自分なりの経験や尺度からいろんな答えを出せる映画だと思います。だからどんな人にも安心して観てほしいですね。本田:私くらいの世代の方でしたら、この映画を通して人生の歩み方を少し勉強できるというか、自分の将来と重ねて観ることができると思います。そういう意味でも、ぜひ観ていただきたいです。◇「起終点駅 ターミナル」 法で裁かれない罪を抱えた弁護士と、未来をあきらめた被告人が出会い、二人の人生が動き始める。監督/篠原哲雄 音楽/小林武史 出演/佐藤浩市、本田翼、尾野真千子ほか 11月7日より丸の内TOEIほか全国公開。◇(C)2015桜木紫乃・小学館/「起終点駅 ターミナル」製作委員会◇ほんだ・つばさ 1992年生まれ。中学時代にモデルとしてデビュー。現在は女優としても活躍し、『恋仲』で初めて月9ヒロインに。出演映画に『ニシノユキヒコの恋と冒険』『アオハライド』など。◇さとう・こういち 1960年生まれ。2015年は『愛を積むひと』『HERO』『アンフェア the end』と話題の映画に立て続けに出演。主演を務めた本作が、今年公開作の大トリに。※『anan』2015年11月11日号より。写真・小笠原真紀文・兵藤育子
2015年11月10日日本を代表する俳優・佐藤浩市さん。54歳とは思えないスラリとしたスタイルは、洗練の佇まいだ。全てを受け止めてくれそうな包容力と、どこか破天荒な印象が同居する雰囲気。その大人の魅力を大解剖。佐藤さんが考える大人の男とは。「仕事柄か、大人にならなければということをあまり考えず、この年まできてしまいました」意外にも、自嘲気味にこう切り出した佐藤さん。たとえば警察官や医師のような職業に就いている人は早く大人になるけれど、役者みたいに人の生死に直接的に関わらない仕事をしている人は、どこか大人になりきれないところがある、というのが持論。そもそも大人とは何なのか、佐藤さんなりの解釈がまた面白い。「分別があって正しい行動をとるのが大人だという考え方は、たしかにわかりやすい。でも、そういう人間なんて実際はほんの少ししかいない。要するに、まともな大人はわずかで、大部分は普通の大人と、ろくでもない大人なんです。僕はどれかって?そりゃあ、ろくでもない大人でしょ!」若い頃は、“正しい人”こそが大人だと信じて疑わなかった。しかし自分が大人と呼ばれる年齢になってみて、憧れていたのはむしろ、ろくでもない大人のほうだったということに気がついた。「そういう人たちは普段はどうしようもないんだけど、土壇場のときの底力がある。それこそが大人力だと僕は思うんです。大人力のないやつは、若い人が何かしようとすると、頭ごなしに『やめとけ!』と抑えこんでしまう。ぎりぎりまで手綱を緩めてあげられるのが大人力なんじゃないかな」◇さとう・こういち1960年生まれ。スペシャルゲストとして出演した映画『HERO』が公開中。『アンフェアthe end 』『起終点駅 ターミナル』『64 ロクヨン』の公開も控えている。スーツ¥135,000ポケットチーフ¥7,000靴¥50,000(以上ボス/ヒューゴ ボス ジャパンTEL:03・5774・7670)シャツ、ベストはスタイリスト私物※『anan』2015年7月29日号より。写真・三部正博スタイリスト・藤井享子ヘア&メイク・及川久美(六本木美容室)文・兵藤育子
2015年07月23日キヤノンマーケティングジャパンは、写真家・鶴巻育子氏による企画写真展「3[サン]」を東京都港区南青山のスパイラルガーデンにて開催中だ。会期は4月29日まで。展示時間は、11時~20時。入場は無料。2015年3月末に発売されたキヤノンのレンズ交換式ミラーレス・デジタルカメラ最新機種「EOS M3」で撮影した作品が展示されている。○心地よいスナップ作品に触れる、幸せなひととき展示作品は、写真家の鶴巻育子氏がEOS M3でドイツ、ニュージーランド、ハワイの3カ国にて撮影したものだ。EOS M3のカタログ掲載用に、実機を使って撮影された作品から選り抜いた、計33点を展示。どれもEOS M3の高画質、チルト式液晶、高速AF、デュアルアクシス電子水準器表示など、その特長を十分に生かした上で、彼女の視線が捉えた優しい光が溢れる作品に仕上がっている。ちなみに、写真展のタイトルである「3[サン]」とは、EOS M3の3、3カ国の3、写真の中に写されているSUN(太陽)など、写真に関係する「サン」を総称して「3[サン]」と表現しているとのこと。EOS M3で鶴巻氏が見つめた一瞬の数々を美しいプリントで、ぜひ味わっていただきたい。鶴巻氏に、今回の写真展の見どころについてお話を伺った。鶴巻氏「作品それぞれももちろん見ていただきたいですが、展示全体の雰囲気も感じていただけたら嬉しいですね。会場が大きいので、大きな一面に不規則にパネルを配置したり、特に好きな作品は大判にして吊るしたりと、ここでなければできない展示に挑戦しています」展示方法といえば、3カ国で撮影された作品を撮影地別や時系列といった順番、区切りの順なく並べているのも面白い。鶴巻氏「ドイツ、ニュージーランド、ハワイという、文化や歴史の異なる3つの地で撮影はしていますが、私が表現したい気持ちや感動は、時間や場所という概念では区切れません。すべての写真がひとつの世界観の中にあるんです。そんな理由から、パネルのサイズや縦位置、横位置なども含めて、感じるまま自由に配置してみました」また、鶴巻氏の作品のほか、EOS M3の設計時に使用したデザインスケッチやモックアップ、EOS M3の製品、アクセサリーなどが展示されている。会場であるスパイラルガーデンの最寄り駅は東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線「表参道駅」B1出口前。もしくはB3出口より渋谷方向へ1分。詳細はスパイラルガーデンのWebサイトを。●鶴巻育子プロフィール東京生まれ。写真を本格的に学びはじめたのは、社会人になってから。広告代理店に勤めながら写真学校へ。その後、ブライダル写真事務所、カメラマンアシスタントを経て、写真家の道を歩む。カタログや雑誌の撮影、写真雑誌の執筆・撮影の他、ワークショップやセミナーなども行っている。写真関係の著書多数出版。○EOS M3が当たる!来場記念キャンペーン実施中!!写真展「3[サン]」に来場のうえ、写真展の感想をTwitterまたはFacebookに投稿すると、EOS M3が抽選で1名にプレゼントされる。詳しくは別記事『キヤノン、写真展「3[サン]」来場者から1名にEOS M3をプレゼント』を参照いただきたい。
2015年04月27日