ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは?出典 : (注意欠陥・多動性障害)は不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状がみられる発達障害のことです。年齢や発達に不釣り合いな行動が仕事や学業、日常のコミュニケーションに支障をきたすことがあります。人口調査によると、子どもの20人に1人、成人の40人に1人にADHDが生じることが示されています。以前は男性(男の子)に多いと言われていましたが、現在ではADHDの男女比は同程度に近づいていると報告されています。出典:DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル文部科学省はADHD(注意欠陥・多動性障害)を以下のように定義しています。ADHDとは、年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。また、7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。上記の文部科学省の定義では7歳以前に症状が現れるとされていますが、2013年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では、診断年齢は12歳に引き上げられています。。また、ADHDの日本名については、日本精神神経学会の定めた「注意欠如・多動性障害」が用いられることもありますが、現在でも「注意欠陥・多動性障害」を使う場合が多いので、本記事ではこちらを障害名として使っていきます。近年では、子どもだけではなく大人になってからADHDと診断される人も多く、注目を浴びています。日本精神神経学会「DSM-5病名・用語翻訳ガイドライン」 2014年ADHDの3つの症状ADHDの症状は「不注意」「多動性」「衝動性」の3つに分けることができます。それぞれの具体的な特徴を見ていきましょう。Upload By 発達障害のキホン・忘れ物が多い・何かやりかけでもそのままほったらかしにする・集中しづらい、でも自分がやりたいことや興味のあることに対しては集中しすぎて切り替えができない・片づけや整理整頓が苦手・注意が長続きせず、気が散りやすい・話を聞いていないように見える・忘れっぽく、物をなくしやすいUpload By 発達障害のキホン・落ち着いてじっと座っていられない・そわそわして体が動いてしまう・過度なおしゃべり・公共の場など、静かにすべき場所で静かにできないUpload By 発達障害のキホン・順番が待てない・気に障ることがあったら乱暴になってしまうことがある・会話の流れを気にせず、思いついたらすぐに発言する・他の人の邪魔をしたり、さえぎって自分がやったりするADHDの3つのタイプとそれぞれの特徴出典 : 前の章でADHDには3つの症状があることを説明しましたが、人によってその現れ方の傾向が異なり、大きく3つのタイプに分けることができます。また、性別によっても多いタイプが変わってきます。多動と衝動の症状が強く出ているタイプです。次のような特徴が現れることがあります。・落ち着きがなく、授業中などでも構わず歩き回ったり、体を動かしてしまうなど、落ち着いてじっと座っていることが苦手・衝動が抑えられず、ちょっとしたことでも大声を上げたり、乱暴になったりしてしまい、乱暴な子、反抗的だととらえられやすい・衝動的に不適切な発言をしたり、自分の話ばかりをする・全体的にみるとこのタイプは少ないが、男性(男の子)に現れることが多い不注意の症状が強く出ているタイプです。次のような特徴が現れることがあります・気が散りやすくて、物事に集中することが苦手・やりたいこと、好きなことに対してはとても集中して取り組むが切り替えが苦手・忘れ物や物をなくすことが多く、ぼーっとしているように見えて人の話を聞いているのか分からない・幼い子どもの頃は、ADHDではなくとも忘れ物が多い人が少なくないため、ADHDと気づかれにくい。不注意の特性は女性(女の子)に現れることが多い。多動と衝動、不注意の症状が混ざり合って強くでているタイプです。次のような特徴が現れることがあります・多動性-衝動性優勢型と不注意優勢型のどちらの特徴も併せ持っており、どれが強く出るかは人によって異なる・忘れ物や物をなくすことが多く、じっとしていられず落ち着きがない・ルールを守ることが苦手で順番を守らない、大声を出すなど衝動的に行動をすることがあるこれらの分類はアメリカ精神医学会のDSM-4-TRによって規定されたものです。現在でもADHDの分類はこれらの3つのタイプによって分けられることが多いのですが、2013年に出版されたDSM-5においては、新たな診断基準が規定されています。詳しくはADHDの診断方法の章を参照してください。また、ADHDはアスペルガーや自閉症を含む自閉症スペクトラム(ASD)や学習障害(LD)などのほかの発達障害や睡眠障害などと合併することもあります。その場合は上記に挙げた以外の症状が見られる場合もあります。年齢別に見たADHDの症状の現れ方出典 : ■生後すぐから診断ができるの?ADHDは発達障害のひとつですが、発達障害は、言語・認知・学習といった発達領域が未発達の乳児では、症状が分かりやすくでることはありません。ですから、生後すぐにADHDの診断がでることはありません。また、ADHDの症状は他の発達障害の症状と共通するものもあるので、判断には注意が必要です。しかし、ADHDと診断された人たちは、乳児期に共通して特徴的な行動をとっていることが多くあります。・なかなか寝付かない・寝返りをうつことが多く、落ち着きがない・視線が合わない・抱っこされることを嫌がる乳児のADHDは見分けにくいですが、傾向として、後から振り返るとこのような行動が見られたケースも多いと言われています。■必ずしもADHDということではない上記の行動が共通して見られていますが、このような行動は定型の成長過程でも見られることがあるので、一概にADHDと結びつけることはできません。特に多動に関しては、生後まもなくから多動が気になる場合はごく少数です。気になるような場合には児童センターといった身近な相談機関や小児科などで相談してみましょう。ADHDの症状は小学校に入る頃までに現れる子が多いと言われています。■トラブルの原因となる行動をとることが多いこの時期のADHDの子は、以下のような行動をとることが多いです。ただ、前述の通り、ADHDの症状は他の発達障害の症状と共通するものもあります。必ずしもADHDだとは限らないので、特徴はあくまで参考程度にしましょう。・他の子をたたいたり、乱暴をすることがある・落ち着きがなくてじっとしていることができない・我慢ができないので癇癪(かんしゃく)をおこすことが多くみられる・物を壊すなど乱暴・破壊的な遊びを好むことがあるこれらの行動については、いくら言葉だけで注意しても同じ行動を繰り返してしまいます。■言葉の遅れがみられることも幼児期のADHDの子どもは他の発達障害との合併症状として、言葉の遅れなどの特徴が見られることもあります。■しつけの問題なの?幼児期になると、落ち着きがなかったり癇癪を起こしやすいといった行動から、ADHDに気づくことが多いようです。また、保育園や幼稚園でも他の子どもとトラブルを起こしがちになってしまいます。そのような行動が原因となり誤解され、しつけがされていないなど言われることがありますが、ADHDは先天的な脳の機能障害によるもので、しつけや育て方の問題ではありません。出典 : ■症状が顕著に現れてくるADHDの子どもが小学校に入学する頃には、以下のような症状が顕著に現れてきます。・授業中でもじっと座っていることができず、歩き回ったりする・注意力が散漫になって、興味の対象も次々と変化する・物を忘れたり、なくしてしまうことが多い・突然話しかけて他の人の邪魔をしたり、他の人に話しかけられてもぼーっとしてうわの空に見られる・突発的な行動をおこすことがあり、自分の怒りの感情をコントロールできない・友達と仲良くできずトラブルを引き起こしてしまうことが多い・不器用で何度やってもダンスが上手く踊れない、工作が苦手などがみられる■結果的に周りから問題視される何度も同じことを繰り返し注意されたり、授業態度などから周りからは問題視されたり、怠けていると思われることがあります。しかし、本人からすれば悪気があってしていることでもなければ、怠けているわけでもありません。■ADHDの診断がはっきりと下される時期小学校に上がる頃になると、ADHDの症状が顕著に現れるためADHDの診断が下される場合が多くなります。文部科学省の定義では7歳前、DSM-5によるとADHDは12歳前に症状が現れるとされていますが、必ずしもこの年齢で診断が下されるわけでなく、この年齢以前から症状がはっきりわかる場合には診断が下されます。神尾 陽子 「成人期の発達障害の臨床的問題」 2013年出典 : ■思春期のADHDは、合併症状にも注意思春期にはADHDの症状が治まる代わりに、学習障害(LD)などの発達障害との合併症状が目立ってくることがあります。対人関係がうまく築けない場合、自閉症との合併症状がある疑いもあります。ADHDの症状がみられる人は他の発達障害を合併している可能性もありますので、よくチェックして疑いがある場合には診断を受けてみましょう。例えば、・親・教師への強い反抗・友人とうまく付き合えず、トラブルになることが多い・ルールに従うことができないなどの行動がみられることがあります。■他人と自分を比較する思春期になると、他人と自分を比べて悩みやすくなります。ADHDの子どもも例外ではなく、他人と自分をよく比べるようになります。完璧主義の傾向が強いと“できないこと”に過敏になることもあります。そして、他人にはできて自分ができないことにコンプレックスを感じてしまいがちです。コンプレックスから次の行動をとる場合があります。・勉強への意欲の低下、学力の低下がいちじるしくなる・やる気がなく投げやりな態度・自分の世界に引きこもりがちになる場合もある知的機能に問題がない場合でも、不注意の特性が強いと、集団での学習に集中できず、学力の低下に結びつくこともあります。この結果、不登校やひきこもりなどの二次障害が現れることもあります。■薬の服用を嫌がる自分の障害を受け止めることができず、薬の服用を避けたり量を勝手に変えて服用することがあります。思春期の不安定な気持ちに寄り添いながら、家族が上手にサポートしましょう。出典 : ■大人になるとADHDはどうなるの?子どもの頃にADHDと診断された人の中には、成長につれて症状が目立たなくなったり、軽くなる人もいます。自分の特性を理解し、苦手な場面にもどのように対処するかを学ぶことで、日常生活の困難を乗り越えているひともいると考えられます。ですが、ADHDのある大人は、子どもの頃より困難が多いと感じることも多いようです。・親や教師のフォローがなくなる・やることが多くなる・大人としての行動や責任を求められるなど、周囲の環境の変化が大きいことがその理由と考えられます。そのため、大人になると社会生活を送るのが難しくなった、と感じるADHDの人が多くいます。また、大人になってADHDと診断を受けたり、診断を受けていない人でも同じ症状で困っている人も多くおり、大人の発達障害のなかではADHDの割合がもっとも高いと言われています。■大人のADHDに現れる症状大人の場合、ADHDによる特徴にはどのようなものが多くみられるでしょうか。・計画を立てたり、順序立てて仕事や作業を行うことが苦手・細かいことにまで注意が及ばないので、仕事や家庭でもケアレスミスが多い・約束などを忘れたり、時間に遅れたり、締め切りなどに間に合わない・片づけが苦手で乱雑になってしまう・同時に多くの情報を取り入れるのが苦手なので、一度に多くの指示や長い説明をされると混乱する・手間がかかったり、時間がかかったりして、集中が必要なものは後回しにしがち・何かに「はまる」と、ほどほどで止めることができず、なかなか抜け出せない(読書やネットサービス、ゲームなど)・長時間座っていることが苦手で、手足がむずむずしてくるADHDの診断方法出典 : 以下は、アメリカ精神医学会のDSM-5(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)に載っている診断基準です。該当項目が多い場合には、専門機関に一度相談してみるとよいでしょう。(DSM-5や日本精神神経医学会では「注意欠陥」ではなく「注意欠如」の表記に変更されましたが、前者の方が一般的に使われるため、本記事では前者の言葉を使用しています。)DSM-5における注意欠如・多動性障害(ADHD:Attention Deficit Hyperactivity Disorder)の診断基準A.(1)および/または(2)によって特徴づけられる,不注意および/または多動性-衝動性の持続的な様式で,機能または発達の妨げとなっているもの:(1)不注意:以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6ケ月持続したことがあり,その程度は発達の水準に不相応で,社会的および学業的/職業的活動に直接,悪影響を及ぼすほどである:注:それらの症状は,単なる反抗的行動、挑戦、敵意の表れではなく、課題や指示を理解できないことでもない。青年期後期および成人(17歳以上)では、少なくとも5つ以上の症状が必要である。(a)学業,仕事,または他の活動中に,しばしば綿密に注意することができない,または不注意な間違いをする(例:細部を見過ごしたり,見逃してしまう,作業が不正確である)(b)課題または遊びの作業中に,しばしば注意を持続することが困難である(例:講義,会話,または長時間の読書に集中し続けることが難しい).(c)直接話しかけられたときに,しばしば聞いていないように見える(例:明らかな注意を逸らすものがない状況でさえ,心がどこか他所にあるように見える).(d)しばしば指示に従えず,学業,用事,職場での義務をやり遂げることができない(例:課題を始めるがすぐに集中できなくなる,また容易に脱線する).(e)課題や活動を順序立てることがしばしば困難である(例:一連の課題を遂行することが難しい,資料や持ち物を整理しておくことが難しい,作業が乱雑でまとまりがない,時間の管理が苦手,締め切りを守れない).(f)精神的努力の持続を要する課題(例:学業や宿題,青年期後期および成人では報告書の作成,書類に漏れなく記入すること,長い文書を見直すこと)に従事することをしばしば避ける,嫌う,またはいやいや行う.(g)課題や活動に必要なもの(例:学校教材,鉛筆,本,道具,財布,鍵,書類,眼鏡,携帯電話)をしばしばなくしてしまう.(h)しばしば外的な刺激(青年後記および成人では無関係な考えも含まれる)によってすぐ気が散ってしまう.(i)しばしば日々の活動(例:用事を足すこと,お使いをすること,青年期後記および成人では,電話を折り返しかけること,お金の支払い,会合の約束を守ること)で忘れっぽい.(2)多動性および衝動性:以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6カ月持続したことがあり、その程度は発達の水準に不相応で、社会的および学業的/職業的活動に直接、悪影響を及ぼすほどである。注:それらの症状は、単なる反抗的態度、挑戦、敵意などの表われではなく、課題や指示を理解できないことでもない。成年期後期および成人(17歳以上)では、少なくとも5つ以上の症状が必要である。(a)しばしば手足をそわそわ動かしたりトントン叩いたりする。またはいすの上でもじもじする。(b)席についていることが求められる場面でしばしば席を離れる。(例:教室、職場、その他の作業場所で、またはそこにとどまることを要求される他の場面で、自分の場所を離れる)。(c)不適切な状況でしばしば走り回ったり高いところへ登ったりする(注:青年または成人では、落ち着かない感じのみに限られるかもしれない)。(d)静かに遊んだり、余暇活動につくことがしばしばできない。(e)しばしば”じっとしていない”、またはまるで”エンジンで動かされているように”行動する(例:レストランや会議に長時間とどまることができないかまたは不快に感じる:他の人たちには、落ち着かないとか、一緒にいることが困難と感じられるかもしれない)。(f)しばしばしゃべりすぎる(g)しばしば質問が終わる前に出し抜いて答え始めてしまう(例:他の人たちの言葉の続きを言ってしまう;会話で自分の番を待つことができない)。(h)しばしば自分の順番を待つことが困難である(例:列に並んでいるとき)。(i)しばしば他人を妨害し、邪魔する(例:会話、ゲーム、または活動に干渉する;相手に聞かずにまたは許可を得ずに他人の物を使い始めるかもしれない;青年または成人では、他人のしていることに口出ししたり、横取りすることがあるかもしれない)B.不注意または多動性ー衝動性の症状のうちいくつかが12歳になる前から存在していた。C.不注意または多動性ー衝動性の症状のうちいくつかが2つ以上の状況(例:家庭、学校、職場;友人や親戚といるとき;その他の活動中)において存在する。D.これらの症状が、社会的、学業的、または職業的機能を損なわせているまたはその質を低下させているという明確な証拠がある。E.その症状は、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではなく、他の精神疾患(例:気分障害、不安症、解離症、パーソナリティ障害、物質中毒または離脱)ではうまく説明されない。これらの結果から、不注意と衝動性が見られるタイプ、不注意が優位に見られるタイプ、多動性と衝動性が見られるタイプに分類され、さらに重症度が3段階に分かれて診断が下されます。この診断基準は、年齢によって障害の症状の現れ方が変わり、区分も流動的であるということを考慮したものだと考えられます。専門機関での診断は、上で述べたアメリカ精神医学会のDSM-5や世界保健機関(WHO)のICD-10による診断基準によって下されますので、正式に診断を受けたい場合には専門機関でも診断や検査を受けることをおすすめします。ADHDの疑いを感じたらどうすればいい?出典 : もしかしてADHDなのかな?と疑問を持ったら、まずは無料で相談できる身近な専門機関の相談窓口を利用するのがおすすめです。子どもか大人かによって、行くべき機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所・発達障害者支援センター【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所知能検査や発達検査は児童相談所などで無料で受けられる場合もありますし、障害について相談することも可能です。その他、発達障害者支援センターで障害についての相談ができます。自宅の近くに相談機関がない場合には、電話での相談にものってくれることもあります。以下は小児神経学会が発表している、発達障害診療医師の名簿です。この他にも、児童精神科医師や診断のできる小児科医師もいます。まず身近な相談機関に行って、障害の疑いがあればそこから専門医を紹介してもらいましょう。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」ADHDの治療出典 : を根本的に治療することはできません。しかし、ADHDによる困難の乗り越え方を学ぶ教育・療育や、ADHDの症状を緩和する治療薬は存在します。また環境調整をしたり、周囲が普段からの対応法を考えることによって、本人が生きやすい環境を作ることも可能です。療育とは、社会的な自立をめざしてスキルを習得したり、環境を整えるアプローチのことです。この方法ではソーシャルスキルトレーニング、ペアレントトレーニング、環境調整などの手法が用いられ、本人の苦手な行動を調整し、のぞましい適応的な行動や得意な部分を磨いていくことができます。ADHDの治療には薬物療法が用いられることもあります。ADHDの治療薬には不注意・多動性・衝動性の症状を緩和する効果があります。しかし、この効果は服薬している間だけです。薬の効き方は個人によって違いがあり、また副作用の出方もまた同様です。そのため、医師と相談しながら使用する必要がありますADHDで使われる主な治療薬は主に2種類あり、ストラテラ(正式名アトモキセチン)や、コンサータ(正式名メチルフェニデート)などが用いられます■適切なサポートがない場合…ADHDと診断された子どもの経過は、以前は比較的楽観視されていました。しかし、ADHDの人が適切な治療やサポートを受けられない場合、ADHDの主症状とは異なる症状や状態を引き起こしてしまうことがあります。このような合併症を、「二次障害」と言い、下記のような症状・状態が見られることがあります。・うつ病・行為障害・不安障害・反抗挑戦性障害・不登校やひきこもり・アルコールなどの依存症などまた、ADHDの本人を支える人たちへのサポートも重要となります。特にこどものADHDの場合は、親が周囲との対応に追われて疲弊してしまっていることもあるため、心理的なサポートが重要となります。参考:今村明先生に「ADHD」を訊く | 日本精神神経学会,JSPNまとめ昔からADHDの特性がある子どもは多くいましたが、ちょっと変わった子や問題児として扱われていることが多くありました。現在は、ADHD(注意欠陥多動性障害)という名称も広がり、脳の機能障害が原因の発達障害だと広く認識されています。ADHDの子どもの場合、突然道路に飛び出したり、保育所や幼稚園、学校から呼び出されたり、友達とトラブルをおこしてしまったりと。保護者としては、困ってしまうことも少なくないかもしれません。ですが心身の成長や、適切なサポートを受けることによって、すこしずつ改善してゆくこともできます。また、ADHDの症状でいちばん困っているのは「本人自身」ということと「わざとやっている訳ではない」ということを忘れないであげてください。他の発達障害との合併や二次障害に目を配りながら、慎重に見守りサポートしていきましょう。
2017年08月30日知的障害者福祉法とは?出典 : 知的障害者福祉法(旧:精神薄弱福祉法)は、1960年に制定された法律です。知的障害のある人の福祉をはかることを目的とした法律です。2006年の改正前、その目的は「生活支援」という側面だけでしたが、現在は知的障害のある人の自立と社会参加を促進するよう法律で定められています。それでは実際の法律の文言を見てみましょう。(この法律の目的)第一条 この法律は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 (平成十七年法律第百二十三号)と相まつて、知的障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため、知的障害者を援助するとともに必要な保護を行い、もつて知的障害者の福祉を図ることを目的とする。また、この法律は2013年に制定された「障害者の日常及び社会生活を総合的に支援するための法律」、別称「障害者総合支援法」という障害のある人全般に適用される法律とあいまって、その内容が定められています。それまでは、障害種別によって個別の法律に基づき様々なサービスや制度が成り立っていました。その後、総合支援法ができたことにより、「知的・身体・精神」の3つの障害が同じ法律内で扱われることとなりました。そのため、従来の知的障害者福祉法がもっていた独自の法的な意義は希薄化しているのが現状です。それにともない、知的障害のある人へのサービスや制度も、障害者総合支援法に移行しています。知的障害者福祉法の概要出典 : 知的障害者福祉法は以下の4つから構成されています。・総則・実施機関及び更生援護(実施機関等、障害者入所支援施設等の措置)・費用・雑則総則とは、全体を通じて適用される法律のきまりのことです。つまり、法の根幹となる部分です。知的障害者福祉法における総則は、以下の4つの項目から成り立っています。◇目的知的障害のある人の自立と経済活動を促進させるために、知的障害者の福祉をはかることを目的としています。このために、国や自治体、施設などは知的障害のある人を保護し、適切な援助を行うことが定められています。◇自立への努力と機会の確保・知的障害のある人は、そのもっている能力を使って社会活動、経済活動に参加するように努力しなければならないとしています。・社会を構成する一員として、自立し、社会、経済、文化などの活動に参加する機会をもっているとされています。◇国、地方公共団体と国民の責務国や地方公共団体は、上の理念が達成されるために、国民の理解を促し、必要な援助と保護を行うことが定められています。国民は、知的障害のある人の福祉について理解を深め、社会経済活動参加する努力に対して協力することが定められています。◇職員の協力義務知的障害のある人に援助や保護を行う職員は、児童から成人まで一貫して福祉支援を行うことが定められています。このように、知的障害のある人が社会の一員として、社会的、経済的な活動に参加できるように、すべての国民、行政、職員が努めることを義務付けたのが、知的障害者福祉法です。この部分には、知的障害福祉法に関する支援を提供する機関について記載されています。・支援の実施は、市町村が実施の主体となっていること・知的障害者の判定は、知的障害者更生相談所で行うことなどの点が記載されています。この部分はのちの章で詳しく説明します。知的障害者福祉法のこの項では、知的障害のある人のための施設を運営、設立する際の費用を出す義務者が定められています。また、知的障害のある人がサービスを利用するときには、一部または全部の負担が課せられることになっていますが、その負担は、当事者および扶養者の自己負担の能力に応じることが記されています。知的障害者福祉法ができたわけ出典 : 知的障害のある人への総合的な福祉支援は、どのような理由から展開され、本格的に開始したのでしょうか。日本で、最初に知的障害のある人への福祉サービスを規定したのは、1947年の児童福祉法です。ここでは、障害の有無についての言及はなく、すべての児童が等しく、生活を保障されなければならないという理念が述べられています。その後、1953年に「精神薄弱児対策基本法」が策定されました。この法は、のちの1960年に成立する知的障害者福祉法の下敷きとなったものです。この法律の要綱では、成人をも視野に入れており、18歳を過ぎた知的障害のある人にも必要な施策がとられることとなっていました。しかし、この法律には様々な問題点がありました。というのもこの法律では、知的障害のある人の「隔離」と「保護」を前提としていた点です。そのために、具体的にとられた施策は、不良行為を行う知的障害のある人を収用する設備の強化や、優生手術の実施など、知的障害のある人を社会から排除するものでした。また、実際の福祉施策が適用されたのは、18歳未満の知的障害がある子どもだけでした。「隔離」を前提とするような法律の問題点を改善する声があがり、1960年に成立したのが知的障害者福祉法です。この法律でようやく、名実ともに児童から成人までの一貫した支援を提供する事業が整備されました。知的障害者福祉法の改正と障害者総合支援法出典 : 障害者制度は2003年、2006年、2013年と3度の変革を迎えています。これにともない知的障害者福祉法の位置づけや内容も変化してきました。まず2003年には、支援費制度が導入されました。ここでのキーワードは「障害者の選択の尊重」です。この制度の導入により、それまでは行政が定めたサービスしか受けることのできなかった利用者は、自分に合ったサービスを選べるようになりました。そして2006年には、「障害者自立支援法」が成立しました。ここで福祉サービスにおける障害者の位置づけが大きく変わりました。というのも、それまでは障害の種別によって提供されるサービスは分かれていたからです。障害者自立支援法の成立により、障害の種類や年齢にかかわらず、障害のある人たちが必要とするサービスを利用できるように、利用のしくみが一元化されました。そのために、それまで知的障害のある人を対象として提供されていたサービスの多くが障害者自立支援法という共通の制度のもとで一元的に提供されることになりました。2013年には、上記の障害者自立支援法の改正法として、障害者総合支援法が成立しました。ここで、よりよい支援を行うことで施設を退所する障害者が省令で追加されるなど、障害のある人が自立した日常生活、社会生活を営むことが法律の目的として定められいます。障害者総合支援法については以下の記事で詳しくご紹介しています。知的障害者福祉法の中で明確な定義がない「知的障害者」出典 : 「知的障害」という名称は、学校教育法や児童福祉法などの法律で使用されてから、一般的に福祉現場や医療の領域で、日常的に使われるようになりました。一般的には、知的障害とは、金銭管理、読み書き計算など日常生活や学校生活の上で知的機能を使う知的行動に支障があることを指す場合が多いです。しかしながら、肝心な法律においては、どのようなものを知的障害と指すのかを定める規定が見られません。このために、医学、心理学、教育学の領域でそれぞれ定義が定められており、共通した理解が得られていないのが現状です。またその呼び名も、教育分野では「知的発達障害」「知的発達遅滞」、医学関連では「精神遅滞」「精神発達遅滞」などばらばらです。支援の必要性の有無、障害の程度をもって、知的障害者を定義する法令は存在せず、客観的な基準を示していません。厚生労働省においては、知的障害を精神医学の領域における「精神遅滞」と同じものと定めていることから、法令上の用語もその基準にならっていることが多いようです。知的障害(ID: Intellectual Disability)は、医学領域の精神遅滞(MR: Mental Retardation)と同じものを指し、「知的発達の障害」を表します。すなわち「1. 全般的な知的機能が同年齢の子どもと比べて明らかに遅滞し」「2. 適応機能の明らかな制限が」「3. 18歳未満に生じる」と定義されるものです。「知的障害者更生相談所」知的障害のある人がより暮らしやすくなるための機関出典 : 知的障害者福祉法は、知的障害のある人がより暮らしやすくなるためのサポートを行う機関を、都道府県に設置することを定めています。それが知的障害者更生相談所です。主に18歳以上の年齢の人が対象となります。18歳未満の場合には、児童福祉法のもと設置された児童相談所を利用することとなります。知的障害者更生相談所では、以下の3つの取り組みが行われています。この施設では、知的障害に関する高度で専門的な知識や技術を必要とする人のための相談を受け付けています。医師やケースワーカーなどの知的障害者福祉司という専門の知識をもった職員が相談にのってくれます。知的障害者更生相談所では、知的障害の判定と療育手帳の交付を行っています。判定および交付は、医師や心理判定員によるものです。知的障害には、国の法律によって定められている定義が存在しません。そのため、障害の認定区分や基準は自治体により異なっています。おおまかには、知能や生活習慣、行動の特徴などから判定します。その他には、IQ(知能検査などの発達検査の結果でわかる知能指数のこと)や日常生活動作(身辺処理、移動、コミュニケーションなどの能力のこと)などが判定の材料に用いられることもあります。療育手帳の交付の詳しい方法は、以下の記事を参照ください。障害の状況や地理的な理由により、来所相談や定期相談ができない場合もあるかもしれません。そのようなときには、自治体によっては福祉士や心理判定員が、相談受付のため地域の巡回も可能ですので、利用するとよいでしょう。知的障害のある人に関連する制度や利用できる手当て出典 : 知的障害のある人に対する支援の体制にはさまざまなものがあります。現在、障害の種別に関わりなくサービスを一元化する動きのために、本法律を根拠とした知的障害のある人に特化した制度はありませんが、別の法律に準拠やガイドラインに定められた制度や手当をご紹介します。知的障害と判定された人に、一貫した相談や指導を行い、各種の福祉サービスを受けやすくすることを目的とした制度です。交付は、都道府県及び指定都市の長が行います。療育手帳制度は、法律で定められた制度ではなく、「療育手帳制度について(昭和48年9月27日厚生省発児第156号厚生事務次官通知)」というガイドラインに基づいた制度で、都道府県・政令指定都市ごとに要綱などを制定して行われています。療育手帳をもつことで、以下のような支援やサービスを受けることができます。・保育園への入園優待・就労支援・障害者医療費の助成・公共交通機関の割引・各種料金の割引、減免支援費制度とは、障害のある人自らがサービスを選択して、デイサービスや授産施設などの事業者と対等な立場で契約を結び、サービスを受けることのできる制度で、2003年に導入されたものです。当たり前のことだと思われた方もいらっしゃったでしょうが、導入以前は、利用者はサービスを選択することができず、市区町村などの行政が障害のある人の受けるサービスを決定していたのです。支援制度の「支援費」というのは、「利用者が施設を利用するための費用を市区町村が負担しますよ」ということです。ですので利用者は、直接何らかの金銭を受け取ることができるというわけではありません。障害のある人が施設を利用する際には、本来は全額費用を払わなければならないところから、行政がその利用料を負担するために、利用者が支払う費用が軽減されたという意味で「支援費」なのです。支援費制度は、現在障害者総合支援法に移行しています。それまでの支援費制度は、障害種別ごとのものであったり、利用できる施設が障害種別に応じて細分化されているという点から、複数の障害種別のある利用者からするとややこしいものでした。そこで、これらの課題を解決するとともに、障害のある方本人を中心とする個別の支援をより効果的に行っていくために、2005年に障害者自立支援法(のちの障害者総合支援法)への移行が行われました。成年後見制度とは、認知症のある高齢者、精神障害のある人、および知的障害のある人など、判断能力の十分でない人を支援する制度です。1992年に設けられました。この制度では、お金の管理や相続という手続きを、その人に代わって代理人が行うことができます。成年後見制度には二つの種類があります。一つは、法定後見制度といわれ、家庭裁判所が成年後見人などを選任し、すでに判断能力が低下している人に対して行われるものです。もう一つは、任意後見制度といい、あらかじめ本人が任意後見人を選び、近い将来に備え支援者と支援内容を決めておくものです。具体的な利用の方法や手続きについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参照ください。「もしも」のときのために、掛け金を積み立てておく制度です。精神、知的、身体に障害のある人の保護者が、亡くなったり、重度の障害になったときに、本人に終身一定額の年金が支給される制度です。対象は、・将来独立することが困難であると認められる、特に知的、身体障害の1~3級の手帳をもつ者の保護者・65歳未満の保護者・特別な疾病、障害がないなどの条件があります。対象となる保護者は、毎月1口~2口の掛け金を納めます。1口あたりの金額は、保護者の年齢により変わります。支給は保護者が亡くなった、重い障害をもった場合に、1口につき、月額2万円が本人に、終身支払われます。詳しくは、お住いの市区町村の保健所、保健局のHPをご覧ください。障害の等級によっては、以下の手当が支給されます。該当する手当をもらうことで経済的、精神的な負担の軽減することができます。・障害基礎年金・障害厚生年金・在宅重度心身障害者手当・特別障害者手当・特別児童扶養手当・障害児福祉手当など赤塚俊治/著『新・知的障害者福祉論序論』2008年/刊/中央法規出版山内一永/著『図解 障害者総合支援法早わかりガイド』2012年/刊/日本実業出版社まとめ出典 : 知的障害のある人のための法律は、刻々と変化しています。歴史的な背景から起こっている、障害のある人への差別や偏見から派生する社会問題を解決するために、国の施策が展開されています。法律の目的である「自立」「社会参加」という理念に向かう途上で、まだまだ課題点は多く残りますが、その達成に向けて私たちは着々と歩を進める途上にあるともいえるでしょう。
2017年08月30日楽しい夏休み、実は困りごとがいっぱい!出典 : 子どもと一緒にいられるのが楽しくて、遊びに行く計画を立てたり、親子の時間を大切にしたり…夏休みにしたいこと、わくわくすることがたくさんある一方で、夏休みは親子にとって楽しいだけじゃなく、お悩みも多いようです。ずっとお家でお世話をするパパママにとっては、結構ストレスがたまりますよね。特に、こだわりが強かったり、発達障害の特性がある子どもと過ごす夏休みは、やっぱり疲れてしまうことやうまくいかなくて悩むことだってきっとあるはず。そこで、発達ナビでは、と題して、親子の夏のお悩みをご紹介しました。今年の夏を振り返って、思い当たることはありませんか?夏は時間がたっぷりある分、家庭での計画と見通しが何より大切です。そしてそれがうまくいくには、ちょっと工夫がいることも。親子のストレスがたまらない方法、生活リズムを保つコツ、子どもの特性に合わせた環境調整と接し方など、具体的な対処法も合わせて取り上げています。普段の生活に活かせることもたくさんあるので、今年の夏休み、終わってみたら「ちょっと反省…」という親子も是非参考にしてくださいね!夏休みの宿題、うまく進めるポイントは?出典 : 夏休みの宿題、トラブルなく終わりましたか?楽しいイベントがたくさんあって、しかも暑くて集中できない夏休み。発達ナビで行ったアンケートでは、ユーザーさん自身も子どもの頃には追い込む派が多かったようですが…Upload By 発達ナビ編集部いつの時代も、子どもにとってイヤな宿題を計画的に、うまく進めるのは難しいですよね。また、子どもの特性によっても、苦手なことがあると、なかなか一人で進めるのは難しいでしょう。がんばっていてもできないと、自己肯定感も下がってしまいます。せっかくの夏が、終わらない宿題で台無しにならないよう、夏休みの宿題に悩む親子の役に立つ、さまざまな工夫を宿題の種類別に集めました!夏休みの宿題がうまくいくポイントは以下の3つ。1. 子どもの特性に合わせた環境調整&構造整理どんな宿題が、どれだけ残っているか、宿題の見える化をします。その後、工程をスモールステップに分解します。また、勉強机からおもちゃなどを片づけるなどの環境調整も効果的です。2. 怒らないで済む方法で親のストレスも軽減宿題がうまくこなせていないと、保護者としては、つい注意したくなりますね。でも、叱ると逆効果になったり、親子の仲が険悪になるだけ、ということもあるでしょう。そんなときには夏休みの宿題にも「北風と太陽」式のコツをご紹介します。3. 学校の先生に合理的配慮を相談するがんばっているのにできない場合、学校の先生へ相談してみましょう。宿題を単なるつらい失敗体験にしないことも大切です。取り組み方や教材、量や難易度の調節をしたり、デジカメや計算機などのツールを使ったりするとうまくいくこともあります。この3つの基本となるポイントを押さえ、自由研究のネタ探し、読書が苦手な子の読書感想文に便利なツール、不器用さんの工作攻略法など、個別のトラブルに応えるヒントもたっぷりご紹介していますよ!夏の体調管理。気をつけたい病気もいろいろ出典 : 厳しい暑さが続く夏。この時期の子どもたちは夏バテに始まり感染症や熱中症、皮膚炎などにかかりやすく、健康管理に気を配る必要があります。発達障害の特性による困りごともあるでしょう。そんな夏に覚えておきたい健康管理法をご紹介したのがこの記事です!夏休みで生活リズムが崩れがちだと抵抗力も落ちてしまいます。また感覚過敏が皮膚トラブルにつながったりするなど夏の健康上の困りごともいろいろ。また、体調不良に無頓着だったり、具合が悪くても自分でSOSが出せないなどといった場合、まわりの家族の健康管理がとても重要になってきます。夏には熱中症や感染症、食中毒など重症化しがちな夏の病気もあります。命にかかわることもあるので、何かある前にしっかり予習して対策をたてることがとても大切ですね。夏休み明けも要注意!新学期前後にできることは?出典 : 子どもにとっても自由に過ごしていた夏休みから一転、毎日学校や園に通う生活に急に戻るのはつらいもの。新学期を前に、生活・環境の変化に戸惑いや不安を感じ、学校や幼稚園などに行くのを嫌がる子どもが増える傾向にあります。生活リズムが崩れていたり、休み前から人間関係がうまくいっていないなどのストレスがあると、体調不良や不登校などに発展してしまう場合もあります。この記事では、発達障害のある子どもが新学期前後でつまずきやすいポイントをご紹介しながら、スムーズに新学期を迎えられるように夏休み中にできることをまとめました。もし、すでに新学期が始まり子どもが行き渋りを見せている場合も学校生活や人間関係に不安がある場合、親と離れることに不安がある場合、学校へ行くことを面倒がっている場合それぞれについてヒントをご紹介しています。夏休み、みんなの体験談出典 : 発達ナビでは「夏休み」をテーマにさまざまなアンケートを行いました。ユーザーのみなさんからは夏休みの様子が垣間見えるコメントがたくさん寄せられました。実際にみんながどんなことに困っているのか、共感できるお悩みもたくさん。また、それぞれのお家で実践している具体的な工夫には、今すぐ使えそうな実践的なものも。アンケートの回答をのぞいてみてはいかがでしょうか?いくつか抜粋してご紹介します。【アンケート】夏休みに感じた「やっぱりわが子が1番カワイイ!」と感じたエピソードを教えて!みんなのアンケート|夏休みに感じた「やっぱりわが子が1番カワイイ!」と感じたエピソードを教えて!夏休み中、私が帰ってくるとみーんな私に集まってゴロゴロ、ベタベタ。うざったいような、可愛いような。笑夏休みに長男が習得した、褒めて欲しいときに頭を下に下げて言う、『褒めて』とナデナデ要求ポーズは最高に可愛いです(^^)ちくしょー!可愛いなこのやろー!そうそう。そのキャンプで冷蔵庫付きロッジに宿泊していたのですが、バーベキューの時に、長男に冷蔵庫の中にあるものを取ってきてもらいました。一生懸命取って来てくれたのですが、その後でロッジを見ると、ドアは開けっ放し、冷蔵庫の扉も開けっ放し。これが家なら、怒ってしまったのかもしれないのですが、キャンプという環境のおかげか、笑ってしまい、長男らしいなと思っていました。その時に、不思議と可愛いなあという感情に近いものを感じました。もしかすると、同じ行動や言動でも環境が違うと、全く別の見え方が出来るのかなあと、ちょっと感慨深かったです。【アンケート】夏休みのゲーム事情、1日に何時間ぐらいやってる?みんなのアンケート|夏休みのゲーム事情、1日に何時間ぐらいやってる?ルールを守らなかった事をきっかけに、思い切って「夏休みの間はゲーム禁止」にしてみました。キレて暴れたりするかなーと思っていましたが、意外に穏やかに過ごしています。もちろん、ゲームを取り上げた私の責任として、ゲームに代わる遊びに付き合ったり、お出掛けしたりしています。大変ですが、お互いイライラせずに済んでいます。【アンケート】家族全員が休みのときの「息抜き」「癒やしの時間」を教えて!みんなどうやって息抜きしてる?みんなのアンケート|家族全員が休みのときの「息抜き」「癒やしの時間」を教えて!みんなどうやって息抜きしてる?息抜きが無いんです!朝一でご飯して、子供起こして、食べさせて、ゴミ出して、仕事行って、帰りに買い物するんです。「あぁ…このまま帰っても、座る事も出来ず怒鳴られながらご飯かぁ~」って、毎日、毎日、玄関が怖くてツラいです(/_;)/。タマの休みも1日中家事!家事!家事!こんなに家事をしてるのに、一つも終わらないし、なんでもポイポイ平気で投げ捨てられる…あードコか遠くに行きたい!もしくは、ドコまでも遠くに行きたい!なかなか難しい!でも意識して癒しタイムを作ろうとしなかったら、きょうだいでけんかばかりだし、旦那はムスコにダメ出しばかり。なので、最近は寝る前のおしゃべりタイムで笑ってから寝るようにしてます。笑えるネタがない時は、こどものいい所、褒めてあげたい所を歌にしてあげるとゲラゲラ笑ってくれます。不登校の子どもたちは、「みんなが学校に通っているのに通えない」学期中は自分を責める気持ちになってしまうことも少なくありません。長い夏休みはそうした気持ちからも少し解放されて、友達と遊んだり、堂々と外出する貴重な機会なのです。「夏休みにためたエネルギーはきっと将来の力になると私は信じています。」というライターのヨーコさんの言葉どおり、思い出をたくさん作り、普段できない体験を積むことで、子どもたちは大きく成長するのだと思います。不登校の子どもに限らず、そんな子どもの姿を見る、パパママの喜びに気づせてくれる素敵な体験談です。「夏休み作品展」で子どもの作品をご紹介!出典 : 【夏休み作品展】この夏つくった子どもの作品をみんなにシェアしよう!夏休み、子どもが作った作品を発達ナビのアンケートで募集しました!とことん好きな物を作る喜びいっぱいの作品、大人が思いつかない自由なイメージやアイデアが光る作品、親子でいっしょにすご過ごした楽しさが伝わる作品…どれも力作ばかりです。発達ナビのコラムでは、集まった作品の中から、発達ナビに関わる3人が選んだ作品を表彰!どれもこれも、お子さんの個性が詰まった素敵な作品たち、ぜひご覧ください♪夏休みイベント情報まとめ出典 : 夏休みは、普段より子どもと一緒に過ごす時間が増えるため、子どもを連れてどこか遊びに行きたい、夏の思い出をつくってあげたいと考えている親御さんも多いのではないでしょうか?この記事では発達障害のある子どもが楽しめるような夏のイベントと、イベント参加時に気をつけたいことを中心にご紹介しています。毎年恒例のイベントなどもありますので、興味のある方は来年チェックしてみてはいかがでしょうか?そのほかに、2017年の夏に開催されたイベント情報のご紹介も合わせてご覧ください。まとめ出典 : 長い休み期間をスムーズに過ごすには、さまざまなトラブルや困りごとが隠れている場合もあります。でも、それらのトラブルはちょっとした工夫やアイデアで、その子にあった解決法が見つかることもあるのです。今回ご紹介したヒントに活用していただけるものはあったでしょうか?うまくいった、楽しかった夏休みの経験は、子どもを成長させてくれます。もし、夏休み中にうまくいかないことがあったとしても、そのつまずきの理由を振り返ってみて、これからの生活に活かせるヒントがないか、ぜひ探してみてください。
2017年08月30日ナルコレプシーとは出典 : ナルコレプシーとは、日中、場所や状況にかかわらず強い眠気が発生する睡眠障害です。別名「居眠り病」といわれています。学業や職業にも影響がありますが、日常生活での転倒や交通事故などの危険性もあるため、早期の治療が望まれます。ナルコレプシーはそれほど珍しい病気ではありません。欧米では2000人に1人、日本では600人に1人程度がナルコレプシーと診断されており、男女間での差はあまり見られません。15歳前後に発症することが多く、40歳代以降での発症率は低いとされています。ナルコレプシーは思春期のころに発症した場合、重症化しやすく、肥満や性的早熟につながることも少なくありません。症状自体は年齢を重ねるにつれて明らかに軽くなるとされています。単なる眠気と区別しにくいことから、ナルコレプシーの発症時から診断されるまでには、平均的に15年と長期にわたる可能性があります。また、ナルコレプシーは精神障害を伴うこともあり、双極性障害、抑うつ障害、不安症や統合失調症などが認められる場合もあります。大川 匡子/著『睡眠障害の子どもたち』2015年,合同出版/刊日本ナルコレプシー協会ナルコレプシーの症状ナルコレプシーには、4つの代表的な症状があります。ナルコレプシーの人であれば誰にでも見られるのが、日中の強い眠気です。ナルコレプシーであるかどうかに関わらず、急に眠気に襲われるような経験をしたことがある人は多いと思います。しかし、ナルコレプシーの場合、前日に十分な睡眠をとっていたとしても眠気に襲われてしまう点で多くの人とは異なります。また、ナルコレプシーの人は、眠ることが許されない場面であっても、突然の眠気に逆らうことができません。人によっては、学校のテストや大事な会議で眠ってしまったり、車の運転中に眠気に襲われて事故を引き起こしてしまったりすることがあります。ただし、過去3ヶ月間にわたり少なくとも週に3日、この症状が起こっている場合のみナルコレプシーの可能性が疑われます。情動脱力発作とは、大笑いしたり興奮した時など、プラスの感情が強く働いたことがきっかけで、からだの筋肉の緊張が突然消失する発作のことです。ほほが緩む、ろれつが回らない、まぶたが下がるなど周囲の人に気づかれにくいものから、膝ががくんとする、身体が崩れ倒れるなど重いものまであります。このときは意識は保たれており、呼吸困難や失禁などになることはありません。カタプレキシーはナルコレプシー以外の睡眠障害では、ほとんど見られません。入眠時に通常の夢よりも現実的で、また、その幻覚の中で刺されたら痛みを感じる、といった体感幻覚を伴うこともあります。時に恐怖感も伴い、現実とリアルな夢との境目がわからなくなり、うなされることもあります。睡眠麻痺の際、意識はありますが手足を動かしたり声を出すことはできません。ナルコレプシーの原因出典 : ナルコレプシーの原因はいまだにはっきりとはわかっていません。しかし、主な要因としてオレキシン神経系をつくりだす神経細胞のはたらきが低下することが挙げられています。オレキシンとは、欲求達成時の快感を与えたり、睡眠や覚醒を制御するものです。ナルコレプシーに特有なカタプレキシーが生じるときに、オレキシン神経系を作り出す細胞が働かなくなることが確認されています。最近の研究では、オレキシン神経系を作り出す細胞のはたらきの低下は、自己免疫疾患や遺伝が組み合わさって生じていると考えられています。◇自己免疫疾患ヒトの体にとって敵のみを攻撃するはずの自己免疫システムに障害があり、オレキシン神経系を作り出す細胞を誤って攻撃してしまうことがあります。◇遺伝ナルコレプシーを患っている人が家族にいる人は、平均的な人よりも10倍程度ナルコレプシーにかかりやすいという研究データがあります。白血球の血液型であるHLA(ヒト白血球抗原)による遺伝的な要因が関与しているという考えもあります。しかしナルコレプシーとの関連づけには至ってなく、今もなお検討されています。日本ナルコレプシー協会ナルコレプシーと間違えやすいADHDの症状出典 : (注意欠陥・多動性障害)とは、不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状がみられる発達障害です。ナルコレプシーとADHDは似ている症状がみられる場合があります。たとえば、ナルコレプシーの過眠が居眠りとして出現せず、不注意症状や多動症状などのADHDのような症状として出現することも多いです。ナルコレプシーの20%ほどにADHDのような症状があるとされています。ADHDとナルコレプシーの症状の区別は難しく、治療方法も異なるため、専門機関での受診をおすすめします。児童精神科疾患に併存する睡眠障害の特徴|精神経誌ナルコレプシーのセルフチェック出典 : ナルコレプシーには、エプワース眠気尺度というセルフチェック方法があります。エプワース眠気尺度は、医療現場でも用いられている日中の眠気を評価するためのテストです。以下の状況になったことが実際になくても、その状況になればどうなるかを想像してお答えください。(1~8の各項目で、○は1つだけ)すべての項目にお答えしていただくことが大切です。うとうとする可能性はほとんどない:0うとうとする可能性は少しある:1うとうとする可能性は半々くらい:2うとうとする可能性が高い:3問1.すわって何かを読んでいるとき(新聞、雑誌、本、書類など)問2.すわってテレビを見ているとき問3.会議、映画館、劇場などで静かにすわっているとき問4.乗客として1時間続けて自動車に乗っているとき問5.午後になって横になって、休息をとっているとき問6.すわって人と話をしているとき問7.昼食をとった後(飲酒なし)、静かにすわっているとき問8.すわって手紙や書類を書いているとき(または、自分で車を運転中、交通渋滞などで2-3分停車しているとき)【ESSの使用目的に応じてどちらを使用しても可】項目での質問で合計点数が11点以上であれば、ナルコレプシーなどの睡眠障害が原因で強い眠気に襲われている可能性が疑われます。なにか気になることがあれば、お近くの医療機関に相談しましょう。エプワース眠気尺度テスト|総合南東北病院 広報誌こんにちわナルコレプシーの診断・治療はどこでできるの?出典 : ナルコレプシーは睡眠外来で診断を受けることができます。睡眠外来は、不眠症などの睡眠障害を改善するための治療を行っている睡眠治療の専門の医療機関です。いびきや寝相から不眠症や仮眠症まで、その人の睡眠障害の原因を特定し、それに合った治療法を見つけることができます。不安なことや心配なことがある場合は、下記のリンク先でお近くの医療機関を探してみましょう。全国の睡眠障害専門病院|日本ナルコレプシー協会ナルコレプシーの診断方法出典 : 日中の眠気がナルコレプシーによるものなのかどうかを診断するためには、問診や過去の病歴、検査結果が参考になります。ナルコレプシーに特有の症状であるカタプレキシーがあれば、「情動脱力発作を伴うナルコレプシー」と診断されます。カタプレキシーが見られない場合には「情動脱力発作を伴わないナルコレプシー」かどうかを確かめます。ナルコレプシーの検査方法には2種類あります。終夜睡眠ポリグラフィー検査(PSG)では、1泊2日で病院に入院し、脳波や眼球運動などを終夜にわたって連続で記録をします。これらの測定で、夜間の睡眠を検査します。これはナルコレプシー以外にも睡眠時無呼吸症候群の検査にも用いられる検査方法で、睡眠障害の検査手段の中では一番メジャーなものです。健康保険が適用されている検査方法です。反復睡眠潜時検査(MSLT)は、日中の眠気を客観的に調べる検査です。前日に十分な睡眠(6時間以上)を取った後、入眠にかかるまでの時間、レム睡眠までの時間、入眠できた際に15分以内にレム睡眠が出現するかを観察します。現在、ナルコレプシーと特発性過眠症の検査だと保険が適用されるようになっています。ナルコレプシーの治療法出典 : ナルコレプシーの治療には、薬物治療と生活指導の2種類があります。ナルコレプシーは薬物治療をすることで、昼間の眠気を抑えたり、情動脱力発作を防ぐことができる場合があります。しかし、ナルコレプシーの治療薬の中には、副作用があるものも少なくありません。そのため服用の際には、必ず医師の指示に従うようにしましょう。ナルコレプシーは、日常生活を送るうえで工夫すれば、症状を軽くすることができます。・昼寝をする強烈な眠気を感じることが多い時間帯に、習慣的に短い昼寝をとるようにしましょう。・毎日の生活のリズムを同じにする平日・休日にかかわらず、就寝と起床の時間を同じにしましょう。・寝る直前は、カフェインとアルコールを控える就寝時間の数時間前からは、カフェインとアルコールは控えるようにしましょう。・たばこを吸わないようにするとりわけ夜は避けるようにしましょう。・毎日、適度な運動をする就寝時刻の4~5時間前に、少なくとも20分間の運動を毎日するようにしましょう。・寝る直前は食事をとらないようにする寝る直前の食事は、睡眠をとることを妨げます。・寝る前はリラックスする入浴するなどして、リラックスすることは、快適な睡眠をとるうえで役に立ちます。このように規則正しい生活をすることが、ナルコレプシーの症状を抑えることに役立ちます。【参考】Narcolepsy Fact Sheet|National Institute of Neurological Disorders and Stroke【参考】ナルコレプシーの診断・治療ガイドラインまとめ出典 : ナルコレプシーは「居眠り病」と別名があるように、居眠りとの区別が難しいです。そのため周囲の人や本人が昼間の眠気が睡眠障害から生じているものだと考えられないことがあります。授業中や会議中に、うたた寝をしてしまうと、だらしないと批判されたり、やる気がないとみなされてしまうことがあります。本人も、起きていようと思っているのに寝てしまうことから、「自分はだめな人間」だと自分を責めてしまうことも珍しくありません。しかし、ナルコレプシーをはじめとする睡眠障害による眠気は、気合いや根性だけで解決できるようなものではありません。適切な治療や規則正しい生活リズム、場合によっては短い昼寝をすることで改善されていきます。そのため、上記のセルフチェックで点数が高かったり、日々の生活の中で強烈な眠気に困らされていたりする場合には、気軽に専門医を訪ねて相談してみるといいかもしれません。
2017年08月28日私はアスペルガー症候群、ADHDと診断された、26歳男性です。以前、正社員の登用見込みで採用された企業で、発達障害であることをカミングアウトし、退職せざるを得ない状況に追い込まれる経験をしました。今回このコラムを書いたのは、その企業を批判するためではありません。発達障害のある人自らが、現在の社会の現状や、自分たちを守る法律や制度について知ってほしいと思ったことが執筆の動機です。自分の経験がすこしでも役に立てば幸いです。問題なく過ごしてきた学生時代、仕事を始めて問題が表面化出典 : 私は大学までの学生生活で、表面上のコミュニケーションや、日常生活、勉強という面では、これといった支障はなく、毎日を過ごしてきました。自分が発達障害であることにも気づいていませんでした。しかし、社会人になってから対人関係の困り事などが表出したのです。例えば、空気が読めない発言によって商談の雰囲気が悪くなってしまったことや、声の大きさやトーンをTPOに応じて変更することが難しいために、ちょっとしたぼやきが部署内の全員に聞こえてしまうことがありました。学校生活では、対人関係に多少問題があっても、テストで問題のない点数をとっていれば、目をつむってもらえます。ですが、社会人となるとそうもいきません。行く先々で、「常識がない」「もう少し場をわきまえろ」と言われてしまったのです。そうするうちに私は、就職後半年足らずで転職することをくり返してきました。コミュニケーションスキルの低さから「正社員としての基本的なスキルに欠ける」ということを言われ、辞めざるを得なくなってしまうのです。表面的なコミュニケーションスキルという点では問題がないので、面接は突破出来ても、継続的に働くということが難しいと感じていました。確定診断はまだ。そんな状況で向かった採用面接出典 : 人間関係のつまずきや解雇の原因が、自身の発達障害にあるのではないかと考えていた私は精神科を受診し、発達障害の疑いがあるということを主治医から告げられます。しかしこのときは「疑いがある」と告げられたレベル。確実な診断に必要な検査は数ヶ月先まで予約で埋まっており確定診断は下っていない状態でした。そんな状況で私はある小売店の採用面接に応募します。任される仕事は主に接客。採用面接では聞かれない限り、不利になることは話す必要が無いと考え、発達障害の可能性があるということには触れませんでした。そして面接の結果は採用。まずは6ヶ月の試用期間となり、社会保険付きのフリーターのような形で働くことになったのです。職場で生じた困りごとと気づき出典 : 職場での仕事は多岐に渡りましたが、耳から聞いたことを忘れやすい特性や、聴覚過敏から引き起こされる困り事が特に辛く私にのしかかりました。たとえば、こんなことがありました。1. 業務の指示、シフトの交代、口頭で交わされた指示や約束等を忘れやすい。そのため、シフトを変更して、来なくていい日に会社に行き、「あれ?今日は休みだったよね?」という会話になってしまうことがありました。2. 業務の指示が長かったり、一度にされたりすると理解が追いつかなくなってしまう。その会社には、面倒見の良い先輩が多く、丁寧に説明してくださることが多かったのですが、耳から聞いたことを理解すること、長い話を要約することが苦手だったので、理解が追い付かなくなってしまう場面が多くありました。3. BGMなどの雑音がある場所で、電話などの声が正しく聞き取れない。また、私は切り替えやマルチタスクが苦手です。電話がかかってきたときには、電話に出るモードに切り替えなければいけないのですが、人よりも切り替えに時間がかかります。加えて、聴覚過敏があるため、BGMやマイクやスピーカーを使ったイベントなどが近くであると、部署名や社名を聞き取りづらい感じることが多々ありました。4. 一つの仕事に没頭しやすく、周りを見ることが苦手。アスペルガー症候群である私は、細部に注視しやすく、全体が見ることが難しくなる特徴があります。上司から進捗状況を尋ねられるまで、報告をしなかったこともありましたし、他人の迷惑を顧みず勝手に仕事を進めることもありました。譲れない自分のこだわりのために、他人と摩擦が起きてしまうことも少なくはありませんでした。仕事は仕事という考え方ができなかったのです。5. 突然のスケジュール変更などに弱く、探し物がいつもの場所にないと、イライラしやすい。いつもと変わったこと、配置が換わったりするだけで頭の中がパニックになります。こうした予想外のハプニングに対してどうしていいかわからずパニックになり、それが怒りとして感じられるというステップを踏んでいるのです。逆に、できるとわかったこともあります。一般的にアスペルガー症候群を抱える人には、接客業は向かないと言われることもあります。しかし、私の場合、質疑応答のパターンがある程度定まっており、マニュアルがしっかりしていれさえすれば、さほど不自由なく対応できました。その点、今回の職につく前の事務職では、上司の考えていることを察しながら働くことが多く、困難さを感じていました。そういった働き方が苦手だと感じたため、あえて接客業を選んだ経緯があります。また私にとって、見知らぬ人と短時間雑談をするのは、そんなに難しいことではありません。むしろ、何時間も何週間も誰かと一緒にいる方が難しいのです。社会性の弱さが露呈する瞬間が必ずあり、障害を隠し通すことができなくなるからです。上司に障害があることを、上司に伝えることになった理由ときっかけ出典 : 発達障害の心理検査が近づいてきた日、自分が大きなミスをしてしまった事に気付きます。それは、確定診断のために必要な心理検査の日に休みの希望を入れることを忘れてしまったことでした。そのため、上司に「大事な検査があって、この日はどうしても出社する事ができません」と伝える必要性ができてしまったのです。どうするか悩みましたが、「私は自分が発達障害だと思っていて、半年前から心理検査の予約をしていた」ということを正直に話しました。そして結果として診断日にお休みをもらうことができたのです。適当な言い訳をせず、あえて正直に伝えた理由は、シフトの休み希望などの締め切り自体を忘れることが、1回や2回ではなかったことが関係しています。障害特性による困り事が、そのときから既に仕事にも支障を与えていました。このことから、どうせなら正直に伝えてしまおうと思い、事実をありのままに話したのです。判明した診断名は......?出典 : こうして、発達検査を受けた私には、確定診断が下ることなりました。診断名はアスペルガー症候群と、ADHD。言語性IQは平均以上であるが、処理能力、場面の推察力、ワーキングメモリーのいずれも平均より大きく劣るという結果でした。主治医は比喩として、メモリーが極端に少なく処理速度も速くはないパソコンに例えて説明してくれました。25年間、自分が普通だと思って生きてきた私にとって、自身が発達障害であると突然突きつけられた事実は想像以上に重いものでした。「どうして、もっと早く教えてくれなかったんだ」と両親に対して憤りをぶつけてしまうほど、信じたくない気持ちでいっぱいだったのです。「まさか自分が障害者だなんて...」出典 : 診断を受け止めることができなかった当時の私は、思わず母親に詰めよります。「どうしてくれんだ!?アンタが出来損ないに産んでくれたせいで、俺の人生は台無しだッ!!」家の外にまで聞こえるような怒声で母親を罵った事を今でも覚えています。「出来損ない」を突き付けられたような感覚。健常者と比べて能力が欠けているという感覚は自分を苦しめました。他人と比べては、自分に足りないものを見つけネガティブの思考に陥る。そういうループを繰り返していたのです。この頃を振り返ると、仕事が上手く行かない、余暇を楽しむ余裕がない事から生じた怒りだったと思います。また日頃から見ていたSNSも原因のひとつだったのではないかと考えています。仕事で自分なりの居場所を見つけていたり、結婚という次のライフステージを選ぶ人が、同じ大学を卒業した同期から早くも出ていたりする中で、自分だけが社会の中で居場所を見つけることが出来ず、置いていかれている気がしていたからです。そのような言葉にすることが難しい孤独感や焦燥感が私を追い詰めました。また診断が下ってから主治医の勧めでストラテラを服用し始めたのですが、私の実感ではこれといった効き目の実感がなく、喉の渇き、食欲減退、イライラ感、中途覚醒などの副作用に悩まされます。このときは思うように治療が上手く行かない苛立ちを両親にぶつけることも少なくありませんでした。また、後から知ったことですが、ストラテラには、気分変化や不安、攻撃性を引き出すなどの副作用が出る場合があるそうです。その副作用が苛立ちや、すぐに怒鳴ってしまうことに影響していたかもしれません。結局、私の場合、副作用が強く出てしまったため、続ける事が困難だと判断され、現在は服用を中断することになりました。周囲にカミングアウトするか否か。悩んだ末に出した結論は?出典 : 確定診断を受けたものの、発達障害を職場に本格的にカミングアウトするかどうかは非常に悩みました。休み希望を出す段階で、上司に発達障害かもしれないと告げていたとはいえ、同僚や部内に対してカミングアウトすることはわけが違います。しかし一方で、障害特性による困りごとのため、仕事そのものや職場の人間関係に支障があり「もう隠し通すのは限界だな」という自覚もありました。悩みぬいた私は、試用期間にカミングアウトすることが人事面でのリスクであると知りつつも、「結局は受け入れてくれるだろう」という思いで、カミングアウトをすることを決意したのです。カミングアウトをすると決めた、私が取った行動とは?出典 : 発達障害をカミングアウトすると決めた私は、発達障害のことを全く知らない人でも分かるような説明を考え抜きました。その際に発達ナビのカミングアウトの記事を参考にし、自身の特性と、その障害に対して具体的にどうして欲しいかを簡潔に書いたナビゲーション・ブックを用意しました。ナビゲーションブックには、下記の3点を記入しました。1.アスペルガー症候群まとめアスペルガー症候群とはどのような症状なのか、障害を知らない人にもわかるようにまとめました。2.アスペルガー症候群具体例身体的な特徴や、作業面での特徴などをまとめ、どのようなことが自分の中で起こっているかを説明しました。3.自分が抱えている症状と、その対策そして、自分の困りごとに対する対処法と、その配慮を場面ごとにまとめました。ADD女性の指南書とも言われる『片付けられない女たち』サリ・ソルデン著もカミングアウトする際、参考にしました。片づけられない女たちこの本は、障害の当事者の方に、ぜひ読んでほしいと考えているのですが、障害を抱えたまま、どう自分を受け入れ前向きに生きて行くのかが書かれています。特に参考になったのは、騒がしい場所での仕事は苦手なことを明らかにし、落ち着いた環境で効率化を図ることや業務量を減らす代わりに、丁寧な仕事をすることなどです。さらに、障害があるから配慮してもらって当然という姿勢ではなく、自分で工夫できることは自分でする。自分に出来ないことだけ配慮してもらうというトレードオフを本書では提案しており、カミングアウトをどう行うかの道しるべとなりました。また、ナビゲーションブック作成の際には、下記の発達ナビのコラムを参考にして、私の障害特性を分かりやすく説明することを意識しました。職場でのカミングアウト、そして......出典 : カミングアウトをする順番は、影響する範囲などを考え、上司→人事→部署内の同僚のように進めていきました。Upload By ツーちゃんこうして事前にナビゲーションブックを用意して、自分がどのような障害があり、それに対してどうような配慮を望んでいるかをハッキリさせたことで働きやすくなった一面もありました。引き継ぎの際に、同僚が紙を使って視覚的に説明してくれるようになったり、イレギュラーが生じたときには、それをきちんと説明してくれるようになったのです。しかし、中には良く思わない人もいました。障害があり能力が劣る人と同じ給与で働くことに抵抗があり、良く思わない人も少なくなかったのでしょう。障害があることを、噂話のネタに使われてしまい、公開する予定の範囲が当初の想定以上に広がってしまったということがありました。どんな情報をどこまでに公開するかは、カミングアウトを考えるときに、最も慎重に考えなければならない問題の一つだと思います。発達障害は、脳の特性でもあります。この職場で健常者と共に働くということは、自身の特性を言わば矯正して生活をすることに他ならないものでした。カミングアウト1ヶ月後の、実質的な退職勧奨出典 : カミングアウトからちょうど1ヶ月後のことです。その会社では、直属の上司と定期的に仕事での悩みや日々の業務の改善点などについて、1対1で話し合う定期的なミーティングがありました。その日は半年間の試用期間を振り返る日の予定の日でした。いつもは温和な雰囲気のミーティングが、そのときばかりは暗い雰囲気だった事を覚えています。空気を読むことが苦手ではありますが、重苦しい人事考査を何回か経験していたため、その空気感には覚えがありました。人事が慎重を期して、書記として議事録を取っており、直属の上司が社内規定を読み上げ始めたので、不安は確信に変わりました。そして案の定上司から言われたのは、5ヶ月の間、君を見てきたけれども、正社員としてのスキルに欠けるといった趣旨の言葉でした。仕事を続けるために、突きつけられた条件とは?出典 : そして私には雇用継続に新たな条件を突き付けられます。試用期間を1ヶ月間延長しさらに人事部が示した条件を飲む。その条件とは、ナビゲーションブックに書いた、障害特性上難しいと書いたことをできるようにすること。それが達成できない場合は、引き続き雇用する事は出来ないというものでした。さらに、今の部署の仕事を完璧にこなし、他の部署のサポートにも回れるようにする。そして、その仕事ぶりが直属の上司と人事部の代表者から見て、条件を達成したと判断されたときにに改めて正社員としての採用を決定するという内容だったのです。「それが出来ない場合は、今月末で退職することに同意をしてください」いうなれば、特性を克服するか、辞めるか、どちらかを選ぶことを迫られたのです。このとき、つまりは辞めろと言われているのだと悟り、退職書類ににサインをしました。ナビゲーションブックが、このような形で使われるなんて...本当に悔しくてたまりませんでした。こんなことがあっていいのか。これは、障害者差別ではないのか?そう思った私は、法律相談なども赴き、専門家から知見を集めることにしたのです。退職してから知った、発達障害者を取り巻く現状と法律出典 : このような出来事は、法律用語で退職勧奨と呼ばれ、強制的に退職を迫った場合には法律に違反するそうです。これは、訴訟も視野に入れて法律を調べていたときにわかりました。私が知る限りで発達障害者を守る法律は3つあります。1.障害者雇用促進法2.障害者差別解消法3.発達障害者支援法障害者雇用促進法では、36条に障害者差別の禁止が規定されています。障害者の雇用の促進等に関する法律それに拠れば、「事業主は障害者である労働者に対して、配慮することが必要」という旨が書かれています。しかし、合理的配慮の提供は義務付けられているものの、障害者雇用促進法に違反していても罰則は無いという法律の抜け道が用意されています。現在、発達障害のある人は、手帳を持っていなくても医師の診断書などで障害があることが分かっていれば、上記の法律の対象者にはなります。しかし現状、発達障害者は、障害者であると定義されていながら、手帳を持っていない場合、法定雇用率にカウントされません。つまり、手帳を持っていない発達障害者は、単に法定雇用率をクリアしようとする企業によっては、雇用するメリットがない人材と言えてしまうのです。この退職勧奨があった当時、私は、精神障害者手帳を取得していませんでした。訴訟も視野に入れたが、証拠が無かった......出典 : 私は法律にはついては、何も知らなかったので法テラスという場所の無料法律相談を利用しました。法テラスとは経済的な困難を抱えている人が不利益を被ることがないように設けられており、通常弁護士に相談すると1時間4000円程度かかるところを、無料で相談することが出来ます。そこで相談をすることで、法的な自分の状況がのみ込めてきました。退職のきっかけとなった面談時、会社側は人事部の社員を書記につけていましたが、私にはそこでどのような会話があったかを証明する証拠がありませんでした。訴えを起こそうにも、強制的に退職を迫られたという証拠が自分の側になく、会社側に都合の良い解釈が出来る証拠がたくさん残っていたのです。また、退職届けを自ら書いてしまったことが痛手となりました。一度、退職することに同意をしてしまうと、会社側としては、労働者から退職したいとの申し出があり、会社としては、それを受理したまでという主張が通ってしまいます。また私は、今回、会社の所在地を管轄する労働基準監督署にも行きましたが、労働基準監督署は、労働基準法に違反するかどうかをチェックする公的機関のため、相手にしてもらえませんでした。やきもきしている私に弁護士が勧めてくれたのが、労働局の個別労働紛争解決の制度を利用することでした。労働局の調停(個別労働紛争解決制度)とは?出典 : 労働局の個別労働紛争解決の手段として、あっせんと、調停の2つがあります。どちらも無料で活用できる紛争解決の手段です。今回、利用したのは後者の調停です。調停は障害者差別により不利益が生じたと主張する労働者と、会社間の紛争を解決するために行われます。労働相談における紛争調整委員会によるあっせん | 福岡労働局調停は、民事裁判とは性格が異なります。労働者と会社の双方から言い分を訊き、1日で審理が終わります。所要時間は申し出から平均で3ヶ月と、一般的な裁判と比べると短期間で済ませることが出来ます。そして労働者自らが無料で申請することが出来る制度です。また障害者自身が申請書を1人で書きあげることが難しい場合は、代理人が当事者の承諾を得て申請することも出来ます。調停が成立した場合、そこでの決定は民事裁判と同等の効力を持ちます。しかし、裁判のように参加の法的な拘束力がありません。自由参加だということです。また調停は、非公開で行われます。つまり調停の過程や結果については公表してはならないのです。私も調停の申し出を行いましたが、その結果をここに書くことはできません。退職してからというものの......出典 : 僕にとって、辛かったのは「自分が発達障害であるという事実」と会社が自主退職をするように暗に示してきたことの2つがほぼ同時期に起こったことでした。まさに泣きっ面に蜂のような状況。そのため退職してからは、気分が落ち込み、やり場のない怒りや苦しみを両親にぶつける日々が続きました。うつ病とまではいかないものの、抑うつ状態にもなり、心身ともに辛い日々となったのです。また、私はアスペルガー症候群の症状がADHDよりも強く出ており、視覚優位なタイプでもあります。そのため、目で見て、モノを考えるタイプであると同時に、目で見てモノを思い出すタイプでもあります。その企業のコーポレートカラーや、上司の名前、その企業の商品など、色々な刺激を見たり、聞いたりすることで頻繁にフラッシュバックが起こりました。フラッシュバックの辛さを言葉で説明することは難しいのですが、まるで、その場にいるときと同じように、その当時の感情を思い出してしまうのです。また、切り替えが苦手で、マルチタスクが苦手なため、怒りを感じたときはそのことしか考えられなくなり、感情に長く翻弄されてしまうのです。悔しくて堪らなかった。見かねた父が私に掛けてくれた言葉出典 : 上述したように私は、退職してからずっとその企業の行ったことが許せませんでした。やがて、証拠がなく裁判をして白黒をつけたいと考えるようになった私に、父がかけてくれた一言があります。「過去に囚われて、苦しむお前を見たくない。俺が見たいのは、お前の笑顔だ。嬉しそうに笑うお前を取り戻して欲しい。ただ、笑ってくれていれば、それでいいんだ。仮に裁判をしても、思うような結果は得られない。お前も分かっているはずだ、証拠が無いと。つらいことは忘れられなくても仕方がない。それでも視点を変えれば、見えてくるモノも自ずと変わってくる。早くお前に笑顔が戻ればいいなと思っている」この言葉を聞いたとき、感動して涙が出たことを今もちゃんと覚えています。そしてこの父の言葉が一つのきっかけとなり、前を向いて歩きだす機会になりました。自分を責め続けていた私を救った言葉とは?出典 : 父の言葉だけでなく、カウンセラーの方がかけてくれた言葉にも救われることになります。辛い過去を忘れることができずにいるとき、カウンセラーの方が、こう声をかけてくれました。「許さなくてもいい、許せない自分がいてもいい。」このたった一言が怒りに苛まれる心を楽にしてくれました。日々感じていた怒りの感情の認知を、カウンセリングなどで丁寧に取り除くことに時間をかけ、今現在は怒りの感情に支配されることもなく落ち着いて過ごすことができるようになりました。自分の生い立ちを振り返って出典 : 今振り返ってみると、私は、障害のことを10年くらい前に分かっていたら良かったなぁと考えています。今現在26歳なので、中学生とか高校生くらいのときにあたるでしょうか?たとえ、自分に障害があることを知らなくても、人と上手くなじめない感覚や、ほかの人と自分は何かが違うという違和感を幼い頃から感じながら生きています。だから、自分自身に発達障害があるともっと早く知っていれば、その違和感にも納得することができたし、障害特性を理解して、自分に合った道を選ぶこともできたはずです。また、障害の受容に関しては、信頼できる第三者の大人の存在がとても重要だと考えています。障害を受け入れることが出来なかった頃、両親の声はなかなか届かなかったからです。私の場合は、カウンセラーの方だったのですが、小学生や中学生のお子さんであれば、小学校の先生などが信頼できる大人にあたるでしょうか。そうした関係づくりが後々役に立つのではないかと思いました。私の経験から皆さんに伝えたいこと出典 : これまでのことを振り返ると、職場にはカミングアウトしないことも選択肢の一つだと思います。また個人的な見解ですが、私のように途中でカミングアウトをした場合、周囲からは後出しジャンケンをしたような目で見られます。また入社前に障害の有無を伝えていない場合、障害により生じた人間関係の不和はカミングアウトをしたからといって埋まらないような気がするのです。私は、今現在、この反省を活かし障害者雇用で配慮を得られる企業を探しています。私が使用しているナビゲーションブックを公開します。企業へのカミングアウトを考えている方は、参考にしてみてください。この記事が一人でも読者の皆さんの参考になれば、これほど嬉しいことはありません。Upload By ツーちゃん
2017年08月28日発達障害の当事者が出る番組を前に、心に広がるモヤモヤ。出典 : 発達障害に関するテレビ番組が最近増えてきましたね。7月にもTBS系「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」という番組で、発達障害のあるピアニスト、野田あすかさんの特集があったのが記憶に新しいと思います。こうした番組が放送されることはとても嬉しい反面、実際に番組を見るのには少し勇気がいります。それはおそらく、私の心の中で、隣の芝が青く見えてしまう気持ちがあるからなのでしょう。正直なところ「発達障害と診断された我が子にも、キラリと光る才能が一つでもあれば・・・」と思うことがあります。成功されている方やサポート環境が充実されている方を羨ましく思ってしまう気持ちもないわけではありません。そんなときは、落ち着いてこんな考えを頭に思い浮かべるのです。「自分たち家族と番組に登場する方々を比べて悲観する必要は1ミリもない。我が家とは違う苦労があり、今まで試したことのない工夫もしているのだから、自分でできることを探してみる気持ちで見てみよう。」そうやって自分に言い聞かせてから「えいっ」と番組を見ることで、素直な気持ちで見られるようになる気がしています。番組を見て気付いた「代替案に考えが及ばない」という特性出典 : 今回の番組でとても参考になったのが、野田あすかさんが買い物をするシーンでした。「スプーンの絵が描いてある砂糖を買ってきてね」と言われたものの、スーパーにはそのパッケージの商品が置いていなかったのです。あすかさんは「違う砂糖を買って帰る」「母親に電話して聞いてみる」などの代替案を思いつくことができず、「どうしよう」と戸惑い泣いてしまいます。この「代替案を思いつくことができない」という様子が発達障害の診断を受けている息子の日常と重なり、はっと気づいたことがありました。息子は勉強中に字を書き間違えると「あ、間違えちゃった、どうしよう」と言って焦って固まってしまいます。最初は「消しゴムで消して書き直してみたらどうかな?」と丁寧に対応していても、「ママ、どうしよう、どうしよう」と日に何度も聞かれると私もイライラとしてしまい「さっきも言ったよね?自分でちゃんと考えなさい!」と怒ってしまうことがよくありました。しかし、これは息子が考えることを放棄しているわけでも、甘えているわけでもなく「どうすればよいか」という案を思いつくことができない脳の特性に起因することだったのです。また息子は水泳教室で着替えるのが遅く「ロッカールームに取り残されてしまったらどうしよう」と強い不安を抱えおり、水着のまま床に座り込んでしまうこともありました。この理由も、「どうしよう」という考えから抜け出せずに困り果てているために起こるのだと考えるようになったのです。「どうすればよいか」を考えられるようになるために出典 : 息子が困り果てた状態を自ら脱することができるようになるためには、どうすればいいでしょうか。そのためにはまず「字を書き間違えたら、消しゴムで消して書き直す」「座り込まず手早く着替えれば、ロッカーに取り残されることはない」ということを、根気よく、息子にわかりやすい形でインプットして行く必要があると思います。自閉症スペクトラムのある人にはさまざまな特性があります。はっきりと目に見える困難さは他人も気づきやすいですが、気づかれにくい部分は「誰でもよくあること」で片づけられてしまいがちです。私も息子が困っている部分を発達障害の特性だと考えず、「甘えだ」「考える力が足りない」「頭でわかっているのに出来ないわけがない」と切り捨ててしまうところでした。代替案を考えるところまでたどり着けないのは脳の特性の問題だと思いますが、そうであったとしても少しずつ成長はしていくはずです。まずは、息子が困っているときは「こんなときは〇〇してみよう」と次のステップを提示し、それを積み上げてゆくことを続けていこうと思っています。「好き」を伸ばし、「困った」を助けてあげること出典 : 番組中で登場した野田あすかさんはピアニストとしてご活躍されていますが、楽譜を読むことができません。想像を絶するような長い時間をかけ楽譜を分解し、工夫を重ねてそれらを組み合わせ、一曲としてインプットし、それを自分の音楽として奏でていらっしゃいます。あっさりと楽譜を読める人には信じられない世界だと思いますが、彼女がそこまでして楽譜を自分のものにする原動力は、やはり「ピアノが好き」だということなのだと思うのです。発達障害のある子どもたちが、一般の子どもたちに比べて出来ないことが多かったり、出来たとしても時間がかかったりすることがよくあります。そうしている間に自己肯定感が下がり、自分を責めたり無気力になってしまうこともあるかもしれません。特性や個性を認めてあげて、長所を伸ばしてあげるために、私たち親に何が出来るのか。それを考えていくと、やはり「好き」と思えることを増やしてあげることだと思うのです。たとえそれが親の意向に沿わないことであっても、虫なら虫、戦隊モノなら戦隊モノにどっぷりはまる時間を作ってあげることで、図鑑から知識を得る方法、インターネットを検索する方法を覚え、さらにそこで見かけた新しい物にまた興味を持つかもしれません。少しずつ世界を広げて「好き」を増やす環境を整えてあげることが、家庭でできるとても大切なことではないでしょうか。好きなものを否定されない、困っていることを責められずに次の方法を教えてもらえる。そんな子どもにとって安心できる家庭作り。頭ではわかっていても私自身なかなか難しいのですが、それでもあきらめず、日々意識して子どもたちに接していきたいと思います。
2017年08月27日「人の気持ちを想像することが苦手」ってよく言われるけど、うちの場合…出典 : 「発達障害のある子どもは、人の気持ちを想像することが苦手です」発達障害について本や講演会で語られる内容で、こんなことを見聞きしたことがあるのではないでしょうか。確かに、自閉症スペクトラム障害とADHDの診断を受けている小学校1年生の息子も、人の気持ちを汲むことが苦手です。たとえば、必要以上に友達にベタベタしたり、何度も同じことをしつこく言ってしまったりして、友達に嫌な思いをさせていたとしても、相手の気持ちに気づくことができません。私がそのことを説明しても、腑に落ちない様子。これでは、知らず知らずのうちに友達の琴線に触れ、トラブルになってしまうこともあるかもしれません。けれども、私は、息子の本当の辛さは「人の気持ちを想像することが苦手」なことではなく、むしろ「人の気持ちに共感し過ぎてしまう」ところにあるのではないかと思っているのです。そんな息子の辛さが感じられるエピソードを紹介したいと思います。自分は関係ないのに泣いている!?「友達のお母さんのお弁当」事件出典 : 息子が放課後等デイサービスに出かけたときのことです。その日は学校がお休みの日だったので、息子にお弁当を持たることに。偏食のある息子にとって、私が作る苦手なものが入っていないお弁当は、特別嬉しいようでした。その日も私は息子の大好きな物だけをてんこ盛りに詰めたお弁当を持たせました。なので「美味しかったよ~!」と息子がニコニコしながら帰宅する姿を想像していたのですが…なぜか帰宅した息子は青ざめてパニックになっていました。目には涙がたまっています。「どうしたの?」と私が聞くと、息子は耐えかねたように言ったのです。「お友達のひとりが、自分のお弁当を、床に投げちゃったんだよ。その子のお母さんが一生懸命作ったお弁当なのに…。」それを聞いて私は「あらら」と思いましたが、それでなぜ息子が真っ青になって泣いているのか意味が分かりませんでした。その子が投げつけたお弁当の中身が自分に当たったりしたのかな?と思いましたが、そういうわけでもなさそうなのです。息子は続けました。「僕のお母さんは朝の5時30分に起きて、僕のお弁当を一生懸命作ってくれてた。前日にお弁当の材料を一緒に買いに行ってくれて、僕の好きなものを一緒にお話ししながら買ってくれた。そのお弁当を床に投げたなんてお母さんが知ったら、どんなに悲しむと思う?お迎えのときにその子のお母さんを見たら、かわいそうで涙が出てきちゃった。」どうやら息子は、友達のお母さんに私の姿を重ね、「お友達のお母さんがかわいそう」と言って泣いているようなのです。自分が何かの被害を受けたわけでもなければ、そのときに何かを言われたわけでもありません。それでも、床に散らばったお弁当の様子がどうしても頭から離れない様子。私は「おいおい」という感じでした。だって、お友達が投げたお弁当は、私が作ったお弁当ではないのです。「人の気持ちを想像することが苦手」と言われる、発達障害の息子がなぜ、他人の気持ちに過剰なまでに寄り添い、涙まで流してしまうのでしょうか。過度の共感が生きづらさにつながる出典 : 息子はたびたびこういうことがあります。自分とは全く関係のない人のことでも、過度に共感してしまい、パニックになってしまうのです。「発達障害児は人の気持ちを想像するのが苦手」確かにそういう一面もあるかもしれません。けれども、常にそうであると決めつけてはいけないなと思います。少なくとも息子の場合は、人に共感し過ぎて辛いのです。過度の共感するあまり、他者と自分との境界線が曖昧になり、必要以上の精神を消耗してしまうのです。息子はよく「優しい」と言われます。それは、相手の辛さを自分も抱え込むような共感の仕方をするからです。その息子の態度に癒されている人たちがたくさんいるのも、私は知っています。それは息子の「いいところ」なのかもしれない、でも同時に、息子の生きづらさでもあるのです。「人の気持ちを想像するのが苦手」だと決めつけていたら見えない、他人に共感し過ぎる生きづらさ。発達障害の子どもは、人に無関心なのではなく、関心があり過ぎるから辛いのかもしれないと、考えを改めることになりました。今まで、「なんでそんなことになるの!?」と思っていた、理解しがたい子どもの行動や言動も、もしかしたらこうしたことが原因なのかもししれません。よく聞く定説だからといって決めつけてかからず、子ども一人ひとりの声に向き合ってあげることで、子どもの抱える困難をさらに理解することができるようになるかもしれませんね。
2017年08月24日筋緊張とは出典 : 筋緊張とは、体の筋肉が持続して適度な収縮をし、張力を備えている状態のことです。筋肉は本来わずかな張りを備えています。この張りは、1: 筋肉の組成組織そのものの粘りけと弾力によるもの2: 筋組織を支配している末梢神経系によるもの3: 脳や脊髄といった中枢神経系による姿勢制御によるものこの3つのそれぞれが統合された結果として発生しています。出典 : この筋肉の張り具合である筋緊張や、関節の曲げ伸ばしといった自分自身の体を感じ取る感覚を、固有感覚(固有受容覚)といいます。固有感覚は、私たちの身体の外から受け取ることができる刺激である「感覚」のなかのひとつです。ちなみに感覚には「五感」と呼ばれる視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚に加え、「固有感覚」と「前庭覚(平衡感覚)」というぜんぶで7つの感覚があります。固有感覚と前庭覚はほとんど自覚せずに使っている場合が多い感覚で、固有感覚は前述の通り、自分自身の体を感じ取り体の動きをコントロールするときに使う感覚、前庭覚は体のバランスをとるときに使う感覚です。人ひとりの「感覚の特性」を考えよう!よく聞く感覚統合ってなに?固有感覚の受容器は、筋肉の筋や腱の中にあります。この固有感覚は、子どもが生活やあそびの中で経験を重ねることで、少しずつ獲得していくものです。たとえば、定型発達の赤ちゃんは生まれてからおおよそ1年で一人歩きができるようになります。またその頃には、努力しなくても立った姿勢や座った姿勢を保ちながら、興味のあるものの方向へ頭部や体を向けたり、両手を使ってものを掴んだりすることができるようになります。これは、固有感覚をはじめとしたさまざまな感覚情報を、脳や脊椎といった中枢神経系が受け取り統合して、無意識のうちに筋肉に指令を出せるようになるからです。こうして筋緊張が保たれることで、姿勢を維持する、体を動かす、といったことを、ほとんど意識することなくできるようになるのです。姿勢保持と筋緊張の関係出典 : 就学期に達した子どもに、授業中に姿勢が崩れ机に頭を横たえたり、だらりと体を投げだすようにうつぶせたりして、まっすぐに姿勢を保って座ることができない子がいます。また、椅子の背もたれに寄りかかり、下半身を前になげだすように座ってしまう子もおり、その態度が横柄で反抗的な態度だと受け取られてしまうこともしばしばです。しかし、それらの態度は精神的な要因ではなく、筋緊張などに由来する身体的な要因である可能性があります。加えて、姿勢を保つ力が弱いと、体のバランスを保つため無意識のうちに他の筋肉に力が入りすぎてしまい、リラックスをすることがむずかしく疲れやすかったり、じっとしていることが辛く、多動となったりすることもあります。こういった姿勢や態度が悪いように見える原因を、本人の性格のせいにされたり、家庭のしつけの問題として誤解されてしまうことも少なくありません。ですが、その背景には、筋緊張を適切に維持したり変化させたりすることに課題があり、結果、姿勢や身体の動きにつまづきが起こっているという場合があります。自分自身の体を感じ取る感覚である固有感覚が鈍感だと、筋肉や関節の動きを正しく感じることができず、筋緊張を調整することが難しくなり、安定した姿勢を保つことが困難になります。筋や腱で受け取った自分自身の体に関する固有感覚の情報を、脳や脊椎といった中枢神経系が受け取り、今度は中枢神経系から筋肉への指示出しをするという、一連の流れがスムーズにいかないのです。また発達障害のある子どもで姿勢を保つことに困難がある子の中には、自分の姿勢や体の動きを自覚しにくいため、そもそも正しい姿勢のあり方自体を分かっていない可能性もあります。手先の不器用さも筋緊張と固有感覚が関係しているかも?出典 : 手先の不器用さは、プリント類をきれいに半分に折ることができない、ボタンを留めたり靴ひもを結ぶことが苦手といった生活面でのつまづきや、鉛筆をしっかり持ったりコントロールしたりすることができず字がきれいに書けないといった学習面でのつまづきをもたらします。これも原因のひとつに、固有感覚の鈍感さがあげられます。体の末端である手先の筋肉は、脳からの指令がより届きにくくなるので、微細運動が苦手となるのです。また、発達障害のある子どもの困りごととして「手先の不器用さ」がみられることがあります。固有感覚を鍛え筋緊張を制御するには?出典 : 正しい姿勢を維持するためには筋緊張の適切な調整が必要であり、筋緊張を適切に保つためには固有感覚の発達が必要であることが分かったかと思います。ではこの固有感覚について気がかりなことがある場合には、どうすればよいでしょうか。■小児科診断や医学的な診察を受けたい場合には、小児科へいくとよいでしょう。運動発達以外にも心配がある場合には、子どもの発達に関する悩みごとの相談にも乗ってくれます。また、子どもの発達に詳しい療育機関などの情報も持っており、地元の専門機関を紹介してくれる場合もあります。■地域子育て支援センター行政や自治体が実施主体となって行っている事業です。子育て中の親子が気軽に集い、交流や子育ての不安・悩みを相談できる場を提供することを目的として各地域に設置されています。無料で相談をすることができます。リハビリを受けたい場合には、ここに相談をしてみましょう。■児童相談所(こども相談所)0~17歳の児童を対象として、育児の相談、健康の相談、発達の相談など、さまざまな相談を受け付けています。必要に応じて、発達検査を行う場合もあり、無料で医師や保健師、心理士、言語聴覚士などから支援やアドバイスをもらうことができます。基本的に予約制なので、あらかじめお住まいの市町村のHPなどを見て確認するようにしましょう。■児童発達支援施設児童発達支援施設とは、小学校就学前の6歳までの障害のある子どもが主に通い、支援を受けるための施設です。日常生活の自立支援や機能訓練を行ったり、保育園や幼稚園のように遊びや学びの場を提供したりといった障害児への支援を目的にしています。児童発達支援は、支援が必要であると認められた未就学の障害のある子どもが対象の福祉サービスです。利用は有料となりますが、自治体に申請を出し、通所受給者証を取得することで、1割以下の自己負担でサービスを利用することができます。受給者証の取得については、以下で詳しくご紹介しています。固有感覚などの基礎感覚のつまずきへの支援には、感覚統合療法があります。感覚統合療法とは、アメリカの作業療法士(OT)であるエアーズがまとめたもので、作業療法士が子どもに寄り添いながら、子どもが「楽しい!」と思うような遊びや運動を通して、感覚機能の未熟だったり苦手だったりする部分を伸ばしていくことをねらいとしています。「自分の子どものことがちょっと気になる」「どこに行けば感覚統合療法が受けられるのだろう?」といった方は、日本感覚統合学会のホームページに記載されている療育相談窓口メールに連絡をすると、各地の担当者を紹介してもらえるとのことです。日本感覚統合学会公式ホームページ Sensory Integration Global Network日本感覚統合学会公式ホームページご相談は、お住まいの地域の窓口へ感覚統合検査、チェックシートなどでご家庭で自分の子どもの傾向を調べてみることもできます。日本感覚統合学会が紹介しているJSI-R(Japanese Sensory Inventory Revised)という子どもの感覚統合の状態をチェックするための質問紙があり、この質問紙に沿ってチェックすることで子どもの感覚統合の発達状態やどこにつまずきがあるのか確認することができます。ただし、これはあくまでも子どもの行動チェック表に過ぎません。この結果だけで子どもの状態や優劣を判断するものではないので、目安として利用することが大切です。質問紙は以下のサイトから簡単にダウンロードすることができます。日本感覚統合学会JSI-R(Japanese Sensory Inventory Revised)出典 : よじのぼったり、しがみついたり、踏んばったりといった、粗大運動と呼ばれる体を動かす遊びによって固有感覚を鍛えることができます。お外遊びの際は、鉄棒にぶら下がる、ジャングルジムによじのぼるなどといった体全体を使う遊びを促したり、家族の人とすもう遊びをしたりといったことが効果的です。おうちでは、布団を使った巻きずし遊びなどはいかがでしょうか。ふとんの上に寝そベった子どもの体をくるむように巻き、ふとんの上から押して子どもの体に圧を加えスキンシップをとる遊びです。このようにして粗大運動の機能を高めることで、手先の器用さなどの微細運動も向上します。※小さなお子さんの運動に際しては、保護者の方や先生など、周囲の大人が安全に注意して見守りながら行いましょう出典:川上康則/監修 『学校・家庭で楽しくできる発達の気になる子の感覚統合あそび』 ナツメ社/刊まとめ出典 : 姿勢や態度の悪さといった子どもの気になる態度が目につくと、大人は心配や焦りを感じたり、やる気がないと決めつけてかかるなど、気持ちや気合いの問題に終始してしまいがちです。しかしそういった態度の背景には、固有感覚の発達における課題によって筋緊張の問題が起こっているかもしれません。周りの大人は、子どもの態度が悪いという表面的なことに着目するのではなく、できていないことの背景には、感覚の使い方がうまくいっていないことが影響しているのではないか?筋緊張につまづきがあるのではないか?という可能性を考え、知識を得て理解をしたり、感覚を育む手伝いをしてあげることが重要です。理解と環境づくりによって子どもの感覚や身体を育てる手伝いをし、気になる行動を少しずつでも良い方向へ導いてあげたいですね。
2017年08月22日反社会性パーソナリティ障害とは?出典 : 反社会性パーソナリティ障害とは、 規則や社会のルールを守ろうとしない、他人を傷つけたりいじめたりしてもそれを正当化するといった特徴を持つ障害です。精神病質、社会病質、あるいは非社会性パーソナリティ障害とも呼ばれます。そもそもパーソナリティ障害とは、一般の人と比べて偏った考え方や行動パターンのために、家庭生活や社会生活、職業生活に支障をきたした状態です。どんな人にでも性格の偏りはあるものですが、その偏りによって二次障害が現れたり、日常生活に支障が生じることではじめて「障害」と判断されます。現在さまざまなパーソナリティ障害が確認されており、反社会性パーソナリティ障害はそのうちの一つです。18歳以上の人に診断されますが、子どもの頃の素行症が診断基準の一つとなっています。そのため反社会性パーソナリティ障害の前触れとなる子どもの行動についても知っておくとよいでしょう。素行症については記事の後半でご説明します。反社会性パーソナリティ障害を発症している人は全人口のうち、男性が約3%、女性が約1%と言われています。反社会性パーソナリティ障害の人の中には犯罪などの問題行動を起こしてしまう人がいることは事実ですが、反社会性パーソナリティ障害=犯罪者ということではありません。反社会性パーソナリティ障害の人の多くは、まわりと同じように社会生活を送れていながら、実は本人が問題を抱えて悩んでいるという場合も少なくありません。そのため周りの人が本人の悩みに気づいてあげることが大切なのです。出典:岡田尊司/著『回避性パーソナリティ障害いかに接し、どう克服するか』 PHP新書/刊反社会性パーソナリティ障害の特徴出典 : この章では反社会性パーソナリティ障害の特徴をご紹介します。・欲求不満に耐える力が弱い何か欲しいものがあるときはすぐに行動に出たり、スリルを感じることに対してすぐに飛びついたりします。またその行動によってどんな結果になるのかをほとんど考えません。・規則や社会のルールを守ろうとしない規則や社会のルールを破ることを目的とし、それ自体に満足をします。これは常に既存の社会に対する怒りと復讐心を抱いているためです。・自分が自立した強い人間であると考えている自立していることを非常に重んじます。自分なりにやる、自力でやるといったことを大切にしているため、一般的な方法にとらわれず、自分のアイデアによる斬新な解決法を考え出す傾向があります。・自らの不誠実な行動を正当化してしまう自分の中に存在する悪意や攻撃性を他人の中に存在していると感じ、自分は被害者であると考えることで、自分の不誠実な行動を正当化します。反社会性パーソナリティ障害の5つのタイプ出典 : 反社会性パーソナリティ障害は5つのタイプに分けることができます。・貪欲タイプ貪欲タイプの人たちは「自分が何かを獲得するには、すでにそれを所有している人間から奪い取るしかない」といった感情を抱いています。何を獲得しても満足することがなく、常に貪欲さでいっぱいです。得たいもののためには手段を選びません。・評判を守ろうとするタイプ貪欲タイプが物質的なものの獲得をめざすタイプであるのに対し、名声や評判を獲得するためには手段を選ばないのが評判を守ろうとするタイプです。これは名声を獲得することによって、誰も自分を侮辱したり、傷つけたりしたりできないようにするためです。・危険を好むタイプスリルを競ったり、命知らずな行動が好きだったりする人たちのことを言います。このタイプは危険を犯すこと、スリルを感じることによって、生きているという実感を味わっています。直接的に反社会的であるとは言えませんが、周囲の人々に与える悪影響に無頓着であることから、結果的にまわりから見ると反社会的な行動となってしまうのです。・逃避的なタイプ自分は社会から見捨てられている、役立たずだ、などと考えている人たちです。他のタイプと異なり、社会から遠ざかろうとします。夫婦関係や定住的な生活などの束縛によるプレッシャーから逃げようとします。・悪意を持つタイプ人間不信が際立っており、他人が何を言おうともその裏には罠があるはずだと思っている人たちのことを言います。他のタイプよりも特に人間不信が強いです。特に他人に対して権力を振るう立場についた時に、他人を横暴に扱ってしまう時があります。反社会性パーソナリティ障害の原因出典 : 反社会性パーソナリティ障害の原因は、遺伝的要因と環境的要因の2つだと考えられています。反社会性パーソナリティ障害の原因の一つに遺伝的要因の関連が挙げられます。反社会性パーソナリティ障害の方が同じ家族の中で複数人見られる理由について、通常は恐怖反応を引き起こすような刺激に対して反応が鈍い気質や、自己主張が強く挑戦的・略奪的な気質などが遺伝しているからであるという説があります。しかしこれは研究者によってさまざまです。中には、この理由を家族は共通した行動様式を身につけるからであり、遺伝的要因ではないと捉える研究者もいます。遺伝的な要因がなくても、心理的・社会的な影響によって反社会性パーソナリティ障害を引き起こす場合があります。主な環境的要因は、親との愛着が形成されなかったといった発達環境だと言われています。子どもは親が自分に向ける態度を基盤に、他者と関わりを持ちます。そのため親との愛着が十分に経験できていないと他者に対する感受性や愛着行動が欠けてしまい、共感できなかったり、他人の幸福を大切にできなくなったりしてしまいます。親が育児放棄をしていたり、子どもに無関心だったりすると、子どもは「世の中は冷たく、自分に何も与えてくれないんだ」という感覚を持つようになります。そして自分の身の周りに対して常に怒りを抱くようになり、反社会性パーソナリティ障害を引き起こすのです。反社会性パーソナリティ障害は自分で気づきにくい出典 : 反社会性パーソナリティ障害は、本人では気付きにくい障害です。もともとパーソナリティ障害は分かりづらいので、一見普通に社会生活を送っているように見える人も少なくありません。反社会性パーソナリティ障害は、二次障害や社会生活に困難が生じている場合、「障害」と診断されます。中には不安症、抑うつ障害、アルコール依存や薬物依存などの物質使用障害、自覚症状に見合う身体的異常がないのに吐き気などが起こる身体症状症、ギャンブル依存、他の衝動制御の障害を伴っていることがあります。このような症状が表出したことがきっかけで医療機関を受診し、反社会性パーソナリティ障害だと分かるケースもあるようです。多くは「そういう性格の人」として周囲から認識されがちですが、家族や周りの人が本人が抱える問題について気づいてあげることが大切です。反社会性パーソナリティ障害の診断基準出典 : 反社会性パーソナリティ障害の診断基準は医療機関によって異なりますが、主に世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)やアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)に基づいて臨床的に診断が下されます。以下は『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)による診断基準です。A.他人の権利を無視し侵害する広範な様式で、15歳以降起こっており、以下のうち3つ(またはそれ以上)によって示される。(1)法にかなった行動という点で社会的規範に適合しないこと。これは逮捕の原因になる行為を繰り返し行うことで示される。(2)虚偽性。これは繰り返し嘘をつくこと、偽名を使うこと、または自分の利益や快楽のために人をだますことによって示される。(3)衝動性、または将来の計画を立てられないこと(4)いらだたしさおよび攻撃性。これは身体的な喧嘩または暴力を繰り返すことによって示される。(5)自分または他人の安全を考えない無謀さ(6)一貫して無責任であること。これは仕事を安定して続けられない、または経済的な義務を果たさない、ということを繰り返すことによって示される(7)良心の呵責の欠如。これは他人を傷つけたり、いじめたり、または他人のものを盗んだりしたことによって示される。B.その人は少なくとも18歳以上である。C.15歳以前に発症した素行症に証拠がある。D.反社会的な行為が起こるのは、統合失調症や双極性障害の経過中のみではない。日本精神医学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル第5版』(医学書院,2014)p.650より引用反社会性パーソナリティ障害と混同されやすい障害出典 : 現在パーソナリティ障害にはさまざまな種類があります。例えばDSM-5では以下のように分類されています。Upload By 発達障害のキホンこのうち反社会性パーソナリティ障害は、演技的で情緒的に見えるという特徴を持つB群に属しており、B群にあてはまる他のパーソナリティ障害と混同されやすいです。この章ではB群のパーソナリティのそれぞれの共通点と違いをご説明します。・境界性パーソナリティ障害反社会性パーソナリティ障害の人は、境界性パーソナリティ障害の人に比べて情緒的に不安定になることは少なく、攻撃的になることが多いです。・演技性パーソナリティ障害衝動性、表面的、刺激を求める、向こう見ず、誘惑的、操作的といった共通点があります。演技性パーソナリティ障害の人は他人から世話をしてもらうのために操作的であるのに対して、反社会性パーソナリティ障害の人は、利益や権力、物質満足を得るために操作的であるという特徴があります。・自己愛性パーソナリティ障害非情さ、口達者、表面的、搾取的、および共感の欠如といった共通点があります。しかし自己愛性パーソナリティ障害には衝動性、攻撃性、うそつきといった特徴はなく、子どもの時の素行症もありません。また反社会性パーソナリティ障害の人は、他者の賞賛を得ようとはしないという違いもあります。反社会性パーソナリティ障害と発達障害との関係性出典 : 成人になってから反社会性パーソナリティ障害が発症する可能性は、素行症が小児期(10歳未満)で起こっているか、またはADHDを伴っている場合に高くなります。素行症は社会で決められたルールを守らず反抗的な行動を起こし続けてしまうという特徴があり、素行障害とも呼ばれます。具体的な症状には人や物への暴力的な攻撃、窃盗や長期・複数回の家出などが挙げられます。またADHDのある人が人間不信的行動という二次障害として素行症を発症することがあります。 これは自尊心・自己肯定感が低下して「自分はダメな人間かも知れない」と思い、「そんな自分のことを誰も理解してくれない」という気持ちから、周囲の人を信じられなくなったときに起こしてしまう行動のことを指します。反社会性パーソナリティ障害には年齢が低い時の素行症が大きく関係しています。子どもの頃に素行症を発症しないように予防し、また重症化しないようにすることも重要であると考えられています。素行障害について詳しく知りたい方は以下の関連記事を参考にしてみてください。反社会性パーソナリティ障害かな?と思ったときの相談先出典 : パーソナリティ障害の診断は、精神科医や専門医にも難しいものです。もしご自身やご家族に反社会性パーソナリティ障害の疑いを感じた場合は、一人で悩む前にまずは専門機関に相談することをおすすめします。医療機関での受診先は精神科、神経科、心療内科などになります。できるだけ本人を連れていくとよいですが、まずは家族の相談でも受け付けてくれる医療機関もあります。はじめから医療機関に行くことに対して抵抗を感じる場合は、精神保健福祉センター・保健センター・地域活動支援センターなどといった地域の相談窓口を利用してもよいでしょう(名称は地域によって異なることがあります)。反社会性パーソナリティ障害の治療法出典 : 反社会性パーソナリティ障害の治療は精神療法に始まり、その後に衝動性や暴力など具体的な症状に対して薬物治療を行う、というように治療法を組み合わせることが多いです。医師や心理技術者が患者さんの心理面に様々な働きかけを行い、患者さんの認知や思考、行動パターンなどの偏りを改善して少しずつ社会に適応できるようにしていく治療法です。1週間に1~2回、30分から1時間程度、治療者が患者さんと面接する形で行うのが一般的です。内容に関しては個々の治療者の判断によるところが多く、統一のガイドラインはありません。この治療法においては、以下の3点を患者さんと周囲の人々が理解する必要があります。・効果が表れるのに時間がかかる治療法であり、一般的には数年かかる・誰にでも効果が期待できるものではない・治療者との信頼関係がなければ効果は得られない個人精神療法は、精神科医が行うもっとも基本的な治療法の一つではありますが、絶対的な治療法であるという過度の期待を持つと、すぐに効果が出ないと治療を投げ出してしまったり、治療者を疑ったりと逆に治療が困難になってしまうことがあります。その場しのぎではなく問題を根本から改善しようとするものであるため、時間はかかりますが、本人が治療の意思を持って、治療者と信頼関係をしっかり結んで治療を継続していくことが必要です。集団精神療法とは、同じパーソナリティ障害を持つ人が複数人集まり、グループで話し合いをしたり共同で作業をしたりする活動を通して、社会にうまく適応できない原因を見つけて解決する方法です。他の患者さんとコミュニケーションをとりながら、自分と同じ障害を持っている人を見つめることで問題に気付き、それを自分にあてはめて考えることができるようになります。集団精神療法での仲間体験は、患者さん自身の自己肯定感を持たせることにつながり、他人とコミュニケーションの取り方を練習する機会にもなります。患者さん本人だけでなく、家族にも治療を行う場合があります。パーソナリティ障害がある患者は、その家族にも認知や思考のパターンに偏りがあることが多いためです。この偏りのために、家族の努力が患者さんの症状を逆に悪化させていることもあります。具体的には、治療者が家族全員と面接を行ったり、患者さんの付き添いで来院した際に話を聞いたりします。患者さんに思いをうまく伝える言葉のかけ方や、患者さんの気持ちを安定させるための振舞い方など、適切な対応法を治療者から指導します。なお家族療法は、患者さんが未成年のときに行われることが多いです。患者さんがある程度の年齢に達している場合は、患者さん自身が家族から自立する方向で治療が行われる傾向にあります。薬物療法は、強い不安や緊張、抑うつなど、程度の強い精神症状を一時的に和らげる目的で使われます。しかし、あくまで対症療法にすぎず、障害を根本から治すことはできません。治療の中心は精神療法で、薬物療法はその潤滑油としての役割を果たします。反社会性パーソナリティ障害の具体的な治療としては、攻撃性と衝動性を持つ患者に対して、抗うつ剤の用量でSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を使用します。部分的な反応があれば追加の非定型抗精神病薬や気分安定剤を使用します。出典:レン・スペリー『パーソナリティ障害:診断と治療のハンドブック』2012年 金剛出版反社会性パーソナリティ障害の人との関わり方出典 : 反社会性パーソナリティ障害を本人が克服するにあたって、周りの人々が対応を工夫することも大切です。ご家族やご友人に障害のある方がいる時、以下のことに気をつけてみてください。・否定的な対応を避ける前の章でもご説明したように、反社会性パーソナリティ障害の人は発達環境などの影響によって、生まれてから今まで否定をたくさん受けてきている場合が多いです。そのためできるだけ否定的な対応は避けましょう。また反社会性パーソナリティ障害の人は挑戦的な言動をしたり、敵意を示してきたりすることがあります。しかしそれに対して感情的にならず、「どうしたの?」と根気よく聞いてあげることが大切です。・認めてあげること反社会性パーソナリティ障害の人が変わり始めるきっかけとして、誰かに認められるという体験があります。この体験を通して、人と信頼できるつながりが持てるようになっていきます。これは認められることが自分の今までの言動が悪かったと気づくきっかけとなるからです。もちろんすぐに行動が変わることは難しいですが、ゆっくりと自分の生き方を変えていくでしょう。まとめ出典 : 反社会性パーソナリティ障害とは、 規則や社会のルールを守ろうとしない、他人を傷つけたりいじめたりしてもそれを正当化するといった特徴を持つ障害です。反社会性パーソナリティ障害の人は親との関わり方に問題があり、今までに否定をたくさん受けてきている場合もあります。ご家族やご友人に障害のある方がいる際は、本人が挑戦的な態度をとってきても、それを受け止めてあげ、根気よく声をかけてあげましょう。また反社会性パーソナリティ障害は精神療法などの治療法によって、少しずつ治していくことができます。ご家族だけで解決しようとするのではなく、専門家の支援も受けながら、本人と一緒になって向き合うことが大切です。岡田尊司/著『回避性パーソナリティ障害いかに接し、どう克服するか』2004年 PHP新書/刊矢幡洋 /著『平気で他人の心を踏みにじる人々反社会性パーソナリティ障害とは何か』2006年 春秋社/刊ナンシー・マックウィリアムズ/著『パーソナリティ障害の診断と治療』2005年 創元社/刊レン・スペリー/著『パーソナリティ障害:診断と治療のハンドブック 』2012年 金剛出版/刊
2017年08月21日子どものことを理解していても、きつく当たってしまう自分に気づいた。出典 : 夏休み、家族や親戚、お友だちと一緒にお出かけする機会も多いと思います。わが家も先日、身内10名ほどでお出かけと食事をしてきました。といっても、慣れない場所へ行くのは子どもたちが不安になるので、馴染みのあるショッピングモールでおもちゃ屋さんをのぞいたり、本屋さんでゆっくり本を選んだり。そうして、空いているお店で食事をとることにしたのです。その時点で、息子はかなり興奮していました。騒ぎ立てたりするということではなく、日常とは違う刺激的な出来事の連続で、感覚がとても過敏になっていたのです。注文した料理が一つひとつ運ばれるたびに、「僕のが来た!」と椅子から腰を浮かして喜んだかと思うと、「僕のじゃなかった」と机に突っ伏してがっくりし、「おじいちゃんのもまだだから大丈夫だよね?」と私に確認します。お腹が空いて早く食べたい気持ちと、「いつ自分の食事が運ばれてくるか分からない」という見通しの立たなさに対する不安、初めて注文したメニューへ不安、いろいろな気持ちが次から次へとあふれかえってきて、処理が追いつかない状態になっていたのだと思います。ようやく運んでもらった自分のご飯を一口食べるごとに、息子は椅子の上でぴょんぴょん跳びはねていました。「美味しい」「みんなと食べられて嬉しい」「たくさん食べて褒めてもらえた」息子の心の中にはそんな喜びがあふれたのでしょう。しかし、次の瞬間には「とんかつが苦手なソースに触れてしまった」ということに絶望し、目に涙を浮かべています。とにかく息子の心の中は上がったり下がったりの大騒動。その興奮を逃すために、ぴょんぴょん跳ねるという行動が息子には必要だったのです。一緒に出かけた身内は息子のことをよく知ってくれているので、、息子の行動を批判したり、顔をしかめられるようなことはありません。でも、もし「これを通りすがりの人が見たら、どう思うんだろう?」と、ふと考えてしまったのです。落ち着いて座って食べられないわが子は、おかしいと思われるんだろうか?それとも、親のしつけがなっていないと非難の目を向けられるんだろうか?やっぱり、私が責められるんだろうか・・・。そんなことを考えているうちに、具体的に誰に責められたわけでもないのに「世間の目」というプレッシャーに負け、「ちゃんとしなさい!」必要以上に息子にきつく当たってしまう私がいました。世間から冷やかな目を向けられている気がして…。出典 : 後になってみると、「どうしてあんな風に感じてしまったんだろう。息子の不安をゆっくりとを取り除いてあげれば良かった」と、反省しきりでした。とはいえ、子どもが幼い頃は「まだ小さいからね」と許してもらえていたことでも、子どもが成長するにつれ厳しいまなざしを向けられるようになることは、この先ますます増えていくような気がします。子どもに強く当たりたくない。しかし、世間から責められている気がしているのも事実。そこで、まず「世間から責められている気がしてつらい」という自分の気持ちを分解して、掘り下げてみることにしたのです。「私は、世間から『きちんと子どもをしつけることのできない母親だ』と思われたくないんだな」と頭の中で唱え、自分自身に問いかけてみます。そして、その裏にどんな気持ちが隠されているのかを考えてみました。「おそらく通常の子育て以上に身も心もすり減らして育てているのに」「ここまで連れてくるだけでも大変だったのに」そんな気持ちが、私史の中に隠れているような気がします。そしてそのさらに奥にある気持ちを考えます。「疲れきった私にまだ努力を強いるの?」「こんなにがんばっているのに認めてもらうどころか責められなきゃいけないの?」そんな気持ちも見えてきました。そこまで自分の気持ちを突き詰めたとき、はたと気づいたことがありました。これは発達障害のある子どもたちの気持ちを似ているんじゃないかなと思ったのです。子どもたちも、日々、自身と社会の接点について、同じように悩んでいます。「感覚刺激を持たない人よりも何倍も身も心もすり減っているのに」「慣れないお店に入るだけでも不安で胸がいっぱいなのに」「がんばっているのに認めてもらえない」「いつまでがんばればいいの?」なんだ、ママと一緒じゃない。すごくがんばってるじゃない。その頑張りを知っている、私だからこそ、必要以上に自分や子どもを追い詰めずにいたい。たとえ、「しつけができていない」と言われたとしても、謝るべきところは謝るけども、同時に精一杯生きている自分たちもきちんと認めて行こう。そんな風に思えたのです。大切なのは、子どもと自分の頑張りを認めてあげること。出典 : 世間では「普通」という枠組みの中にいることをよしとする風潮が強く、発達障害のある子どもたちにとって生きやすい世界とは言えません。だからこそ、親は子どもがいつか自立できるように、なんとかこの世界で生きて行けるように育てていかなければと、プレッシャーを感じながら過ごしています。でも、そのプレッシャーを子どもにきつく当たるという形で解消してはいけないな、と今回のことで強く感じました。いくら子どもにきつく当たって世間体を取り繕っても、一つも前に進んでいないからです。その場しのぎで無理矢理子どもの行動をコントロールしたとしても、それは子どもが親の不機嫌から逃れたいという一心で親の意に沿っているに過ぎません。本質的に行動を改善したいなら、その子にわかりやすい伝え方で、丁寧に何度も繰り返しインプットを続ける必要があるのです。たとえば、不安が高まってパニックを起こしてしまったのであれば、出掛ける前に「この安心グッズを持って行くから、必要になったら使おうね」とあらかじめ話をしておくことで、次はパニックを回避できるかもしれません。また、椅子の上でぴょんぴょん跳びはねていた息子のように、衝動を抑えられなくなったときは、いったんその場を離れて迷惑にならない場所で抱きしめ、乱高下の激しい心を落ち着かせるなどの手立てが取れるかもしれません。そして、落ち着いた日常の中で「ご飯を食べる時には座席にしっかりと腰をおろします」「食事を楽しむための場所でバタバタすると迷惑だと思う人がいます」など、どうすれば良いのか、なにが問題になるのかをゆっくりと伝えていきましょう。自分もがんばっている、子どももがんばっている。そう認めることで、子どもにきつく当たる回数を減らして、少しずつ前に進んでいけるといいですね。
2017年08月20日こんにちは。『子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』著者の立石美津子です。突然ですが、実験です。出典 : 「白い象を思い浮かべないでください!」…さて、脳裏に浮かんだものはなんですか?「思い浮かべないで」と言われながら、"白い象"を想像してしまったのではないでしょうか?実は人間の脳は“否定形”がわからず、「~しないで」と言われた場合でも、最初のフレーズを素直に想像してしまう傾向があるそうです。さらに、否定形にされるとメッセージが強調され、「~しないで」と言われたことでも、逆にやってみたくもなります。例えば昔、東京タワーにろう人形館がありました。壁に直径3センチほどの穴が開いていて「絶対にのぞいてはなりません」と注意書きが貼ってあったのですしかし、その注意書きはむしろ周囲の注目を引き、たいていのお客さんが興味津々でのぞいていました。これは、「のぞくな!」と禁止されればされるほど、“のぞく”という言葉が印象付けれ、同時に、好奇心が湧くからでしょう。子どもによく言ってしまう言葉出典 : 子どもを叱るとき、ついこんな言葉をかけてしまいます。・「走らないで!」・「売り物のお肉は触らないで!」・「手を使って食べないで!」・「大声を出さないで!」・「席を立たないで!」(学校の先生でも頻繁に叫んでいる人いますよね)でもこれ、“白い象の原理”と同じで、子どもの頭の中は次のような“ややこしいこと”になっています。・「走らないで!」→「走る」→でも「・・・しないで!」と叱られたので「歩く」・「お肉は触らないで!」→「触る」→でも「・・・しないで!」と叱られたので「触らないようにする」・「手を使って食べないで!」→「手を使う」→でも「・・・しないで!」と叱られたので「スプーンを使う」最初に言われたフレーズが印象づけられた後に、それをひるがえす、なんともまどろっこしいことを頭の中でしなくてはならないのです。否定形だけだと「じゃあどうすればいいのか」が示されない出典 : 食事中、「手を使って食べないで!」と否定形で注意されたら、子どもは自分の行動を否定されて嫌な気分になり、反発したくなります。また、この注意の仕方では「だったらどうすればよいのか」の具体的な方法が示されていないので、子どもは良い行動に移りにくいのです。曖昧な指示がわかりにくい発達障害の子どもだったらなおさらでしょう。同じ状況でも肯定形で「スプーンを使って食べようね」「お箸を使って食べようね」と言われたら、字面通り「どう行動すればよいのか」わかりやすくなります。肯定形への言い換え集否定形の呼びかけは、次のように言い換えましょう。×「走るな」⇒○「歩きなさい」×「手で食べないの」⇒○「スプーンを使って食べようね」×「絶対に遅刻しないように起きなさい」⇒○「7時に起きよう」×「席を立っちゃ駄目」⇒○「座りましょう」×「怒鳴ってはいけません。騒がないで」⇒○「小さい声で言いましょう」×「お店の商品は触らないで」⇒○「売り物は見ているだけにしよう」×「散らかさないで」⇒○「元あった場所に片づけよう」×「ピチャピチャ音を立てて食べないの」⇒○「口を閉じて食べよう」×「残さないで食べなさい」⇒○「お皿の上をピカピカにしよう」×「ひじをつかないで食べなさい」⇒○「ひじはテーブルの外側にね」×「独り占めしないで」⇒○「お友達に貸そう」このように言い換えるだけで、子どもは望ましい行動を即座に思い浮かべ実行に移すことができます。更に否定的な言葉ではないので、素直に受け入れます。たとえ肯定形であっても、命令されると不愉快になる昔の公衆トイレには「汚く使うな!」の貼り紙がありました。まだ用を足していないうちから「この人、汚く使うに違いない!」と疑われているようで、気分が悪く感じますよね。Upload By 立石美津子最近のトイレは「きれいに使って下さい」と肯定形で書かれていることが多いですよね。でもこの上から目線の命令形の文章では、「この人、汚すかも…」と疑われていることに変わりありません。そこで、最近はこんな表記も多くなってきました。「きれいに使ってくださり、ありがとうございます。」Upload By 立石美津子これですと、使う前から「この人はきれいに使う人に違いない」と信用されているようで、「きれいに使おう!」と思います。まとめ出典 : アスリートだってメンタルトレーニングのとき「平均台から落っこちないように練習する」とか「失敗しないように練習する」とはしません。「絶対に成功する」「絶対に金メダルをとる」と脳に成功イメージの暗示をかけて、実力以上の力を出そうとするそうです。子育ても「牛乳をこぼさないように運んで!」等の「~しないで」の否定形で言うより、「牛乳をゆっくり歩いて運ぼう」の肯定的な言葉のほうがより伝わりやすくなります。たとえば、公共の場所で走ってしまう子どもに「走るな!」と伝えても、とっさに理解しにくく、子どもはどうすれば良いかわかりません。それだけでなく、嫌な気持ちや言われたことを拒みたくなる気持ちが生まれます。しかし、「歩こう」と肯定的な言葉を伝えれば、どうすればいいのか具体的にわかるので、行動に移しやすいだけでなく、素直に受け入れたくなります。よく考えてみると大人だって「靴のまま入らないで!」とか「土足厳禁!」と貼り紙がしてあるよりも、「靴を脱いでお入り下さい」と書かれていた方がわかりやすく、また気分よく従うことができますよね。親子だけでなく夫婦、上司と部下の場合も同じです。夫が妻に「部屋が汚くするな!」と言うよりも「もっと掃除をしてほしい」と伝える。上司が部下に「遅刻するな!」と言うよりも「9時には必ず出社するように」と言ったほうが、相手にも伝わりやすいです。人間関係を良好に保つためにも言葉のかけ方って大事ですよね。子どもだって例外ではありません。言葉のかけ方一つで、今まで苦戦してきたことが解決するかもしれませんよ。立石 美津子(著)すばる舎『立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』
2017年08月20日虐待とは出典 : 児童虐待防止法の表現を借りると、虐待とは「特定の相手に対して、その人の人権を著しく侵害し、心身の成長及び人格形成に多大な影響を与えること」です。その対象になりやすいのは児童、高齢者、障害者などの社会的な立場が弱いとされる人たちです。平成27年度に厚生労働省が発表した統計によると、虐待の疑いが専門機関に連絡された件数(通告件数)は高齢者が28,328件、障害者7,768件、児童103,260件であり、児童に対する虐待の通告件数が一番多い結果になっています。また、平成29年8月17日に発表された平成28年度の児童虐待相談対応件数は122,578件で、その数も年々増加している傾向がわかります。この記事では最も通告件数が多い児童虐待について説明していきます。児童虐待の通告件数が増加している背景には2つの要因が挙げられます。1つ目はメディアの報道により関心度が高まったこと、2つ目には法律の改正により通報が義務付けられたことです。通告件数の多さからわかる通り、いまや児童虐待は稀な出来事ではありません。子育ての孤立や貧困など、現代の子育て環境は過酷で、かつて考えられていたような「一部のひどい親」だけが行うというものではなくなってきています。つまり誰にでも、虐待という不適切な親子関係に陥る可能性があるのです。いつ自分の身の回りに起きても大丈夫なように、正しい知識を持っておきましょう。虐待につながりそうな親子の存在にいち早く気づき、適切な支援につなげることで、救われる親子がいるかもしれません。参考:平成27年度高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果|厚生労働省参考:平成27年度 「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」に 基づく対応状況等に関する調査結果報告書|厚生労働省参考:平成27年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数<速報値>|厚生労働省参考:平成28年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数<速報値> |厚生労働省虐待の種類出典 : 虐待はその手段によって、いくつかの種類に分類されています。ここでは厚生労働省が「児童虐待の定義と現状」で使っている分類を紹介します。1.身体的な虐待殴る、蹴る、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などで縛るなど2.心理的な虐待言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるうこと(ドメスティック・バイオレンス/DV)など3.性的な虐待子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にするなど4.ネグレクト家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かないなど参考:厚生労働省「児童虐待の定義と現状」これら4種類の虐待は単独で起こるだけでなく、複合的に起こることもあります。また、法律の条文に載っていなくても、子どもの健康的な心身の発達を阻害する可能性がある言動は虐待に値します。次の章で紹介する基準をもとに、柔軟に判断することが子どもたちを救うのです。どこからが虐待なの?出典 : 専門機関が虐待かどうかを判断する指標として、児童虐待防止法の定義が使われます。一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。つまり、前の章で挙げた身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクトの項目に当てはまるような言動が見られる場合に、虐待と判断されるのです。けれども、法律上の定義だけでははっきりと判別できない事例も多いことが事実です。虐待としつけの間には線引きが難しいグレーゾーンが存在し、第三者からは見分けがつきにくいこともあるでしょう。虐待の判断で重要なポイントは、子どもの視点に立って考えることです。親はしつけや教育のためと思っていても、子どもが耐えがたい苦しみを感じ、心身の成長に悪い影響を与えそうなときは虐待として考えるべきという専門家も増えています。また、もし、虐待かどうか判断しかねるときは、児童相談所にまずは相談しましょう。虐待かどうかの判断をするのは児童相談所です。虐待でなかったとしても、故意によるものでなければ通告をした人自身の責任は問われません。なので、通告の段階では主観的な判断であってもよいのです。むしろ、虐待かどうか判断しかねるような段階で早めに専門機関につながることで、支援の手により虐待が未然に防げることもあります。虐待の影響出典 : 虐待は子どもの心身に非常に大きな影響を与えます。この章では、虐待の影響を分類ごとに説明します。身体的影響は、さらに2つに大きく分けられます。一つは、外的な傷害です。外的な傷には打撲、切り傷、やけどなど目に見える傷と、骨折や頭蓋骨内出血などの見えない傷があります。また、目に見える傷であっても衣服に隠れる場所にあるため発見が遅れてしまう場合があります。外傷が重い場合には、重い障害が残ったり死に至る可能性があるため、いち早く気付けるように注意する必要があります。二つ目は発育の遅れです。十分な食事を与えられなかったり、愛情を注がれなかったために栄養障害や発育の遅れが生じることを言います。逆にストレスで過食になったり、感覚が鈍くなり、外傷を負っても気付かないこともあります。虐待を受けた子どもの中には、家庭内が安心できる環境ではないこと、十分に学校に通うことができないこと、また、保護者から知的発達に必要な関わりをしてもらえないために、知的な発達面に異常が生じることがあります。知的な発達の異常は、認知機能(知覚、記憶、思考、判断)の低下、衝動性や多動性により発達障害だと誤解される可能性もあります。本来、最も愛情を注いでくれるはずの保護者から傷つけられることで心理的な問題が生じることも多々あります。親子間の愛着関係を築くことができなかったため、対人関係の構築に問題が生じます。「人を信用できない」「仲良くなってもすぐに関係を壊してしまう」「否定されることが怖くて自分の意見が言えない」などの困りごとが生じます。これらは子どもが大きくなって社会生活を送る上で大きな障害となるでしょう。つまり、虐待の影響はその場限りではなく、子どもが成長してもずっと続くことがあるのです。他にも、自己評価の低下や行動コントロールの困難さが原因となり、暴力的・衝動的な行動や非行に走ることがあります。偽成熟性も特徴的な症状です。精神的に不安定な大人と関わることで自分が大人の役割を果たさなければいけないように思い、大人びた行動にでることを言います。一見成熟しているように見えても思春期頃に問題行動が出てくることもあります。また、強い心理的ストレスによる記憶喪失や解離性障害、不眠など、日常生活に支障をきたしてしまう精神疾患に至るケースもあります。このように、虐待は子どもの心身に多大な影響を残し、その回復のためには長期間の治療やケアが必要になるのです。手遅れにならないように、周囲がよく気を配ることが必要です。なぜ虐待が起こるのか出典 : 虐待が起こりやすくなるリスク要因として、「子どもによるもの」「保護者によるもの」「社会/環境によるもの」という3つの要素が挙げられます。1つ目は、子どもによる要因です。発達障害、身体的な障害、精神疾患など、その子が持つ特性によって、保護者がその子のことを育てにくく感じることもあります。もちろん、これらの要因は子どものせいではありませんが、特別なケアが必要だったり、愛着形成やコミュニケーションをとりにくかったりといった育児の難しさが、過剰なしつけや保護者自身のストレスにつながりやすく、虐待のリスクが高まることがあります。2つ目は、保護者による要因です。様々な要因により、保護者が子どもを受け入れられないことがあります。具体例としては、望まない妊娠、子育てに関する知識不足、保護者自身の発達障害、虐待を受けて育った経験、などです。子育ての途中につらい記憶がよみがえってきたり、子どもに注意を払いたくても気付けないことが多かったり、教育のしかたがわからなくて暴力的な言動やネグレクトを引き起こしてしまうことがあります。3つ目は、社会/環境による要因です。貧困家庭やひとり親家庭などの場合には、保護者が環境に関心を向ける余裕がなく、社会的に孤立してしまう場合があります。このような家庭は保護者が生活を維持することに精いっぱいなため、子どもへの関心が向きづらく無自覚のうちにネグレクトにつながってしまうことがあります。孤立している家庭は周囲とのコミュニケーション、サポーティブな関係、頼れるサービスが身近にあることで家庭内トラブルのリスクが大きく減ると言われます。本人や周囲の人々がリスクを認識しつつ、支え合える関係を築いておくことが重要です。虐待のサイン出典 : 家庭内に虐待が起こっている場合、子どもや保護者の様子に異変が生じるはずです。周囲がその変化にいち早く気づくことで深刻な虐待に至る前に早期発見し、食い止めることができるでしょう。1.身体的な変化□不自然な傷や同じような傷が多い□原因がはっきりしないケガをしている□治療していない傷がある□極端な栄養障害や発達の遅れが見られる2.表情□表情や反応が乏しく活気がない□ボーっとしている□おびえた泣き方をする□養育者と離れると安心した表情になる3.行動□食事に異常な執着を示す□衣服を脱ぐとき異常な不安を見せる□ひどく落ち着きがなく乱暴、情緒不安定である4.他者との関わり□他者とうまく関われない□繰り返し嘘をつく□態度がおどおどしている□親や大人の顔色をうかがう□誰かれなく大人に対して警戒心がうすい(なれなれしい、ベタベタする)□保護者が迎えにきても帰りたがらない□他者との身体接触を異常に怖がる5.生活の様子□衣服や身体がいつも不潔である□基本的な生活習慣が身についていない□予防接種や健康診査を受けていない□年齢不相応の性的な言葉や性的な行動が見られる□夜遅くまで遊んだり徘徊したりしている□家に帰りたがらない1.子どもへの関わり方□子どもへの態度や言葉が拒否的、無関心的である□子どもの扱いが乱暴である□子どもに理想を押し付けたり、年齢不相応な要求をする□体罰の正当化や偏った養育方針(しつけかた)をもっている□きょうだいに対して差別的である2.他者への関わり方□他者に対して対立的、否定的な態度をとる□特に、理由も無く関わりを避けたり、連絡が取りづらい□説明の内容が曖昧でコロコロ変わる□子どもに関する他者の意見に被害的・攻撃的になる3.生活の様子□近隣との交流を拒否し孤立している□不衛生な生活環境である□小さい子どもを家に置いたままよく外出している□夫婦関係や経済状態が悪い□夫婦間の暴力が認められている4.保護者自身のこと□ひどく疲れている□精神状態が不安定である□性格的な問題として、被害観が強い、偏った思い込み、衝動的、未成熟など□いつもお金に困っている様子がある□家族関係のトラブルを抱えている参考:虐待のサインを見つけるには|神奈川県参考:横浜市子ども虐待防止ハンドブック|横浜市参考:教職員・保育従事者のための児童虐待対応マニュアル|埼玉県もちろん、この基準に当てはまるからといって、虐待が起こっているとは限りません。その子どもの特性を踏まえて変化に注目してみましょう。たとえば「今まで活発だった子が急にふさぎこんでしまった」「お友達と遊ぶことが好きだったのに、最近は一人でボーっとしている時間が多い」などです。親子の様子に著しい変化や違和感がないか、確認しましょう。変化に気付くためには、周囲の注意深い観察が必要です。ぜひ、上の項目を意識しながら子どもたちを見守ってみてください。虐待の可能性があるときは?出典 : 虐待から子どもを守るためには、虐待のリスクに周囲が気づき、早期に関係機関に通告することが最も大切です。速やかな通告がされないと、行政機関も虐待の防止に向けた活動を行うことができず、虐待を受ける子どもの生命や心身に大きなダメージを与える危険性が高くなります。そのため、虐待の通告はとても重要な役割を担っており、児童虐待防止法では通告を国民の義務と定めています。児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。「もし違ったらどうしよう」とためらってしまうかもしれません。しかし虐待かどうかの判断は児童相談所が行うので、通告者が虐待であるかどうかを判断する必要はありません。少しでも虐待の可能性がある場合、そのリスクを見落とさないためにも、より多くの情報が必要です。そのため「一般の人の目から見て主観的に子どもの安全・安心が疑われる場合」であればためらわず通告してください。もし仮に通告の後で虐待の事実がないと判明したとしても、虐待の事実がないことを知りながらあえて通告したという場合などを除けば、法的責任を問われることはありません。まずは「189」に電話相談!「189」は、児童相談所や市区町村が「いちはやく」児童虐待に対応できるよう、厚生労働省により設けられた全国の児童相談所の共通ダイヤルです。「189」に電話をかけると最寄りの児童相談所につながります。児童相談所に電話をすると、専門家が子どもの状況や、「いつ、どこで、どのような異変を確認したのか」などの聞き取りを行います。出典 : 「189」への相談は24時間365日いつでもすることができます。電話の通話料金は相談者の負担となりますが、相談料などはいっさいかかりません。また、相談者の氏名や相談内容に関する秘密に関しては口外されないよう定められているため、相談者にとって安心して相談しやすい環境が整えられています。児童相談所に担当者に対して氏名を明かしたくない場合は、匿名での相談もおこなうことができます。虐待の通告への対応を含め、その後の親子への支援は児童相談所が担当します。虐待の疑いがある子どもを見つけても、「自分の子どもなんだから、これ以上のことはしないだろう」「通告したら、親子の関係をより悪化させてしまうのではないか」「親から告げ口をしたと恨まれないか」と不安に感じ、通告に踏み切れないこともあると思います。そう感じるときに思い出してほしいのは「虐待の通告は子どもだけではなく、親も救う」ということです。通告は罰することではなく、必要なサポートや支援につなげるための手段です。前述の通り、虐待が起きている家庭は孤立状態にある場合が多く、困りごとを共有できずにいます。通告によって行政が虐待の存在に気付ければ、保護者が子どもへの向き合い方を見直し、自らの困難さへの対処をすることにつながるのです。通告後はどんなサポートがあるの?出典 : 虐待が発見されたら、近くの児童相談所か行政の相談窓口に通告されます。通告が受理された後、保護者や児童本人にヒアリングして重症度・緊急度の審査が行われます。審査の結果を踏まえて、児童の一時保護を含めた措置を検討します。在宅支援とは、子どもの生活拠点は家庭のままにして、家族への支援を行うことです。在宅支援が行われる場合は、虐待のリスクはあるが「止めたい」という保護者の意思が確認できるときや、保護者を支援することで問題の改善が期待できるときなどです。児童相談所や自治体、民間団体など様々な機関から広い支援を受けることができます。1.ペアレントトレーニングペアレントトレーニングとは、行動療法的な考え方を使って保護者自身が子どもとの関わり方を学んでいく方法です。子どもを自分の思い通りに操作するために暴力や暴言に頼る方法ではなく、より良い関係の中で親子関係を築く方法を学びます。2.ピアカウンセリングピアカウンセリングとは、子育てに困りごとを抱えている保護者同士が話し合うことで困りごとを共有し、支え合う関係性を築くことです。境遇が似ている人と気持ちを共有することで、自分自身の行動を受け止め、許容することができるようになります。3.支援団体と保護者の面談主に児童相談所と行政の担当課による家庭訪問や面談です。話を聞いたり、困りごとの相談に応じることで、保護者が孤立してしまうことを防ぎつつ、子どもに対する行動を客観的にとらえられるように促します。4.幼稚園、学校内での見守り主に教職員によるモニタリングを行います。「ちゃんとご飯食べてる?」などの質問を通して子どもが健やかに育っているか、虐待の再発は無さそうかの変化を観察します。児童相談所から指示があれば、追加の支援も行われます。5.地域での見守り児童委員の人が家庭訪問等を通して、家庭内の状況を見守ります。親子を分離する必要があると判断された場合は、児童福祉施設や里親に預けられます。子どもの保護を保護者が拒否するときは、児童相談所が裁判所に申し立てをし、裁判所の命令によって児童を保護することになります。今までは児童福祉施設に預けられることが多かったものの、2017年8月に厚生労働省が被虐待児の施設受け入れよりも、里親の受け入れを増やす方針を発表しました。この方針は、家庭に近い環境での発育が必要な子どもの選択肢を広げることが狙いです。こういった世相の変化によって、子どもの特徴に合った、支援の幅が広がっていくことになるでしょう。子どもが保護されている間には、保護者に向けた関係機関からの支援が受けられます。支援によって親子関係の再構築が望める場合、家族が再び一緒に暮らすこともあります。子どもに虐待しそうになったときは出典 : 「自分が虐待をしてしまうのではないか」「自分が虐待をしているのではないか」、また「どうしても自分をコントロールできない」などと悩む保護者の方も少なくないようです。そういった悩みを抱える保護者向けのサポートがあります。子育ての悩み相談や地域で受けられるサポートを知りたい場合は、児童相談所のほか各市区町村の役場(役所)にある「児童福祉課」「子育て相談課」で対応してもらえます。情報収集や気軽に話せる相手がほしい場合はサポートをしている団体に連絡してみるとよいでしょう。社会福祉法人子どもの虐待防止センター(CCAP)が、研修を受けた相談員による電話相談を行っているほか、ケースによっては虐待などの悩みをもつ保護者同士が自分の体験を語ることによる治療的グループケアなども行っています。また、社団法人子どもの虐待防止センターでは、電話での相談を受け付けているとともに、育児スキルトレーニングの教室の実施なども行っています。このように信頼できる専門機関とつながることで、育児のストレスを減らすことが期待されます。子どもの虐待防止センター相談電話|社会福祉法人子どもの虐待防止センター (CCAP)参考:「虐待をやめたい」と悩み苦しむ親への支援|社会福祉法人子どもの虐待防止センター自分の感情をコントロールできない人には、アンガーマネジメントを学んでみることもおすすめです。アンガーマネジメントとは、イライラや怒りの感情と上手に付き合うための心理教育です。自分のイライラや怒りの原因を理解し、ポジティブな方向に持っていくための訓練をします。自分や子どもにあるリスク要因を認識し、感情が高ぶったときの対処法をあらかじめ考えておくと自分の感情をコントロールしやすくなります。アンガーマネジメントは日本アンガーマネジメント協会が行っている研修や、関連図書で学ぶことができます。困っているときにどのように対処するか、どこに相談するのかを知っておくことで、解決の糸口が見つかるかもしれません。参考:愛の鞭ゼロ作戦|厚生労働省参考:アンガーマネジメントとは|日本アンガーマネジメント協会参考図書:監修/日本アンガーマネジメント協会,著者/長縄 史子, 篠 真希 , 小尻 美奈『ママのアンガーマネジメント: 子育てのイライラスッキリ 8つのマジック 』(合同出版・2017年)まとめ出典 : 虐待は、保護者が故意に子どもに危害を加えるというイメージがあります。しかし、実際には虐待をしたくてしている保護者は少ないのではないでしょうか。もちろん子どもを傷つける行為自体は決して許されるものではありません。しかし、その背景に目を配ると、実は子育てに悩んでいて、どうすればいいのか分からずに虐待をしてしまっている人も多いのです。子育ての悩みと言っても子どもの問題や保護者自身の問題、社会や環境にある問題など、様々な要素が複雑に絡み合っているために本人では解決が難しい場合がほとんどでしょう。そのような困りごとを抱えている家族を救うためには、周囲の人の通告が一番重要な役割を担っています。通告と言うと、その過程に与える影響が気になりためらってしまう人もいるのではないでしょうか。けれども、通告は”悪い親“を罰するためではなく、困っている家庭を救うための手段です。親子の支援と早期発見が子どもの健やかな成長には必要です。虐待について知り、勇気を持って行動に移せる人が増えてほしいと思います。
2017年08月18日今の時代に求められるコミュニケーション力とは?アナログゲーム療育アドバイザーの松本太一です。私は、150種類以上のカードゲームやボードゲームを使ってコミュニケーション力を身につける「アナログゲーム療育」を開発し、発達障害のあるお子さんや大人の方を対象に実践しています。Upload By 松本太一アナログゲーム療育のコンセプトを一言でまとめれば、下のとおりになります。これまでの教育や療育は、大人が子どもに何かを教えたり命令する上下関係が基本となっていました。つまり「教える側と教わる側」、「命令する側とそれに従う側」という関係です。しかし、IT化やグローバル化が急速に進む現代社会では、多様な立場や価値観を持った人たちと対等な立場で関わる必要があります。そこで求められるコミュニケーション力とは、お互いの尊敬に基づいて、交渉したり合意形成できる力だと考えています。お子さんがこうした力を身につけるためにはどんな経験が必要なのでしょうか?ピアジェやヴィゴツキーといった著名な心理学者たちは、ルールを伴う集団遊びを通じた子ども同士の関わり合いの大切さを強調しています。しかし、発達障害のあるお子さんの場合、障害の特性として、相手の気持ちを察したり集団のルールを理解するのが難しいことがあります。そうしたお子さんが安心して楽しみながらコミュニケーションの練習ができるように開発されたのがアナログゲーム療育です。子ども同士のヨコの関係づくりが難しい出典 : 発達障害のある子たちのことで、今、1つ心配していることがあります。それは、親御さんや先生といった大人との関係は良いのに、同年代の子どもたちとの付き合いを避ける子が多いことです。過去に集団遊びで失敗した経験がもとで、他の子と遊ぶことに不安感を感じているのです。しかし、大人と関わる経験だけでなく、子ども同士の関わりを経験しないと、相手の気持ちや場の状況を「読む」力は中々身につきません。大人との関わりでは、子どもが少々無理なことを言っても大人のほうで合わせてくれます。しかし、子ども同士の関わりでは、相手の意にそぐわないことをすれば関係を絶たれてしまうかもしれませんし、集団のルールを守れなければ、仲間はずれにされてしまうかもしれません。裏を返せば子どもたちは、子ども同士の関わりを通じて、「相手はどうすれば喜んでくれるだろう?」、「この場では自分はどう振る舞うことが求められているのだろう?」といったふうに、相手の立場に立って考えたり、場の状況にあわせて動く練習をするのです。こうした経験が充分でないまま成人すると、社会に出て仕事などを通じて否応なしに人間関係を結んだとき、「相手の気持ちがわからない」「空気がよめない」といったコミュニケーション上の困難が表れやすくなると、私は考えています。アナログゲームを通じて「対等な立場で関わる」経験を積む出典 : お子さんたちに対等な立場で関わりあう経験を積んでもらうのに、アナログゲームは最適なツールです。ゲームでは、全てのプレイヤーが対等の関係にあります。また、プレイヤーたちは勝敗や順位を競い合うライバル同士であるのと同時に、ルールやマナーを守り合ってゲームを成立させるパートナー同士でもあります。ルールを守り合って楽しく遊ぶ経験が、子ども同士で対等に関わる経験となり、ひいては今の社会で求められるコミュニケーション力を身につける練習となるのです。ただし、集団遊びに慣れていなかったり、不安を感じているお子さんには、適度な大人の手助けが必要です。私のウェブサイトでは療育で用いるゲームと大人の関わり方を解説しています。また発達ナビでもいくつかゲームを紹介していますので、参考にしてみてください。アナログゲーム療育のススメ(ゲーム紹介)実際にゲームを使ってどんな風に療育を進めていくのか、文章だけではイメージしにくい方もいらっしゃると思います。そこで、2017年7月に(株)ジャパンライムさんから発売したアナログゲーム療育のDVDから、幼児のお子さん向けの「マイファースト・ゲームフィッシング」、小学生向けの「ベストフレンドS」の映像をご紹介します。なお、DVDには上の2つを含め20近いゲームを紹介しており、その全てについてゲームのプレイ映像と指導ポイントの解説が含まれています。下記の販売サイトでお求めいただけます。(株)ジャパンライム販売ページ実際にゲームを体験してみよう!Upload By 松本太一また、実際にゲームを体験してみたい!という方のために、東京の高円寺にあるアナログゲームショップ「すごろくや」にて毎月一回、講座を開催しています。幼児編・学童編・大人編と年代別に分かれており、各回とも講義とゲーム体験交えてアナログゲーム療育を学ぶことができます。こちらもご興味があればぜひ参加してみてください。まずは一緒に遊んでみよう!アナログゲーム療育で使用するのは、どれも通常のおもちゃ屋さんなどで売られているものです。必要なものは全て箱に入っており、プレイの手順は説明書に書かれていますから、誰でも手軽に始めることができます。アナログゲーム療育にご興味を持たれた方は、これまでご紹介してきたゲームの中から、普段関わっているお子さんに合いそうなものを、まずは1つ購入して一緒にプレイしてみることをオススメします。お子さんと一緒にゲームをプレイする過程で、今まで見えなかったその子の思考や行動の特徴と、成長ぶりが見えてくることでしょう。それはお子さんのコミュニケーション力の向上にきっと役立つはずです。
2017年08月18日熱性けいれんとは?出典 : 熱性けいれんとは、38℃以上の発熱に伴って起きるけいれんのことを指し、「ひきつけ」と呼ばれることもあります。生後6ヶ月~5歳の乳幼児期に発症することが多いとされており、発症率は7~11%ほどと言われています。発熱していた子どもが突然ブルブルとけいれんをはじめたら驚き動揺してしまいますよね。しかし実は、熱性けいれんは多くの場合、正しい知識を持っていれば冷静に対応することができます。本記事では、熱性けいれんが起きた場合の対処法、救急車を呼ぶ判断基準、似た症状を持つ「てんかん」との違いなどについて解説します。参考:「公益社団法人 母子健康協会」参考:「熱性けいれん診療ガイドライン2015(日本小児神経学会,2015)」参考:「すべてわかるこどものてんかん(皆川公夫,2014)」熱性けいれんの原因出典 : 熱性けいれんは風邪や感染症などによって体温が急激に上昇したときに脳がけいれんを起こしやすい状態になるために起こります。どうして熱が上がるとけいれんが起きやすくなるのかについて詳しい原因は分かっていませんが、発達途中の子どもの脳は高い熱に鋭く反応してしまうのではないかと考えられています。また熱性けいれんを発症する体質は、親やきょうだい間で家族性があるともいわれています。ただし家族に熱性けいれんを発症した人がいたとしても必ずしも発症するわけではありません。熱性けいれんの種類と症状出典 : 熱性けいれんには「単純型熱性けいれん」と「複雑型熱性けいれん」の2つの種類があります。ほとんどの例が単純型で、複雑型は1割ほどと言われています。単純型は良性の熱性けいれんなので後遺症が残ることはほとんどなく自然と治ります。一方、複雑型熱性けいれんは後にてんかんが発症する可能性があるので、場合によっては治療が必要になります。そのため、熱性けいれんが起きたときには複雑型かどうかを見極めることが重要です。その際、けいれんの様子、時間、回数が判断のポイントとなります。・全身でけいれんせず、体の一部または左右非対称のけいれんが起きる・発作が15分以上持続する・24時間以内もしくは発熱中にけいれん発作を数回にわたって再発するこのいずれか1つがみられる場合は複雑型熱性けいれんとなります。複雑型の疑いがある場合、検査を受けることが推奨されています。さきほども述べたように、熱性けいれんはそのほとんどが単純型です。単純型の場合、正しい対処を行えば後に大きな後遺症を負う危険性も少ないため、あまり大きな心配をする必要はありません。熱性けいれんが起きたときの対処法は、次の章で解説します。参考:「すべてわかるこどものてんかん(皆川公夫,2014)」参考:てんかん発作とけいれん発作の違い|大塚製薬 てんかんinfo参考:「熱性けいれん診療ガイドライン2015(日本小児神経学会,2015)」熱性けいれんが目の前で起こったときの対処法出典 : 子どもが突然けいれんを起こし、意識を失ったりしたら、驚いてしまう保護者の方も多いのではないかと思います。しかし、正しい知識を持っていれば冷静に対処することができます。子どもが熱性けいれんを起こしたときには、以下のような対処法を実践してください。<けいれん時の対処法>・首の周りなどを締め付けないように衣服を緩めてください・抱きかかえず、平らなところに寝かせてください・嘔吐や口の中に固形物がある場合は、顔を左に向けて吐いた物が気道に詰まらないようにしてください・口や鼻の周りの吐物を拭き取ってください・診察時にそなえて、けいれんの様子(左右差)や持続時間、体温などを確認しておいてください。余裕があれば不謹慎だと思わずに動画などを撮影してください(診察時、てんかんとの鑑別に役立ちます)。<してはいけないこと>・大声で名前を呼んだり、身体を揺すったりしない(刺激となり、けいれんが長引く場合があります)・「舌を噛まないように」と口の中に物を入れたりしない(熱性けいれんで舌を噛むことはほとんどありません。また、噛む力はかなり強いため、ケガをする恐れがあります)多くの場合、熱性けいれんは数分以内に治まります。数分以内で治まるけいれんであれば、ほとんどのケースにおいて救急車を呼んだり病院に行ったりする必要はありません。しかし中には、緊急性が高く救急車を呼ばなければならないケースや、緊急性は高くないが複雑型の疑いがあり検査の必要があるためけいれんが治まったあとに速やかに病院へ行ったほうがよいケースがあります。緊急性を判断する上では以下の目安を参考にしてみてください。【救急車を呼ぶ】・5分以上けいれんが続く・けいれんが終わったが、その後も意識障害が続く(睡眠とは別)【病院へ行く】・38℃より低い熱でけいれんを起こした・全身けいれんではなく、体の一部または左右非対称なけいれんがある【保護者がパニックで判断しにくい場合】・小児救急電話相談(#8000)に電話相談をする小児救急電話相談は厚生労働省がすすめる相談事業です。#8000番に電話すると、お住まいの都道府県の相談窓口つながります。そこで小児科医師・看護師からお子さんの症状に応じた適切な対処の仕方や受診する病院などのアドバイスを受けることができます。熱性けいれん時以外にも使用することができます。#8000番に電話をして状況を伝えることで、医師や看護師の適切な指示を受けることができ、子どもの保護者も、その場の対処や救急車・通院の判断を行いやすくなります。参考:小児救急電話相談事業(#8000)について|厚生労働省熱性けいれんの治療や予防法ってあるの?出典 : 熱性けいれんは一過性のものが多いため、治療をせずに成長とともに自然に治っていくのを待ちます。しかし1度に起こるけいれんの時間が長かったりする場合は座薬による治療をすすめられる場合があります。複雑型熱性けいれんによる部分発作(体の一部だけがけいれんする発作)が24時間以内に2回以上反復した場合やけいれんが5~10分以上続く場合に薬物治療の目安とされています。けいれん状態が長く続くほど危険な状態になっていくため、座薬(ダイアップ)を投与しけいれんを治めます。また家族に熱性けいれんになったことがある人がいる場合や、熱性けいれんの発症前から神経学的異常・発達遅滞がある人の場合は、座薬を使用することが多いです。出典:ダイアップ坐薬|独立行政法人医薬品医療機器総合機構参考:「熱性けいれん診療ガイドライン2015(日本小児神経学会,2015)」熱性けいれんは高熱が出ない限り発症することはありません。高熱が伴う風邪やインフルエンザなどの感染症に感染することを予防してください。日々の手洗い・うがいを徹底することが大切です。なお予防接種などを積極的に受けることもおすすめします。発熱時に解熱剤を使用することも効果的です。しかし解熱剤自体には、熱性けいれんを抑える効能はありません。参考:「熱性けいれん診療ガイドライン2015(日本小児神経学会,2015)」熱性けいれんとてんかんの違い、熱性けいれんと似ている病気って?出典 : 同じようにけいれんを症状とする疾患にてんかんがあります。てんかんとは、大脳の神経細胞が過剰に興奮することで発作が起こる慢性的な脳の疾患のことです。熱性けいれんが起こるのは主に発熱時に限られますが、てんかんの場合は発熱時以外にも発作が起こります。また熱性けいれんは主に乳幼児期に限って発症するのに対し、てんかんは発症してから長く治療し続ける疾患です。てんかんは、意識を失い全身をけいれんさせる大発作、身体の一部がピクッと動く発作、話の途中でぼんやりしてしまう発作などがあり、必ずしもけいれんを伴うものではないことも特徴です。一般的なてんかん発症率の0.5~1%に対して、熱性けいれんが発症した後のてんかんの発症率は2~7.5%程度といわれています。このため、何らかの関係が存在すると考えられていますが、詳しいことはわかっていません。参考:「熱性けいれん診療ガイドライン2015(日本小児神経学会,2015)」髄膜炎や脳症は熱性けいれんのように発熱とけいれんが伴います。髄膜は脳や脊椎を覆っている膜です。髄膜が炎症することによって高熱、激しい頭痛、悪寒、嘔吐など風邪に似た症状が発症し、けいれんや意識障害を引き起こす場合も珍しくありません。年間1000人の乳幼児が感染する疾患です。脳症はウイルスが直接脳に感染し、炎症を起こすことによって発症する疾患です。髄膜炎と同様に高熱やけいれん、意識障害がおこります。多いときには年間500人が発症し、1歳をピークに幼児期に感染者が多い疾患です。参考:細菌性髄膜炎とは|国立感染症研究所 NIID参考:痙攣重積型(二相性)急性脳症|難病情報センター熱性けいれんの検査出典 : 単純型熱性けいれんの場合は自然と治るため特に問題はありませんが、複雑型熱性けいれんの場合はてんかんなどとの合併症の疑いがあるため検査を行います。検査を行うのは大体2回目のけいれんが起こった後だといわれています。初めてのけいれんでパニックを起こしている状態でよく観察できていない場合や、けいれんが1回だけで終わる人もいるためです。・てんかんや急性脳症との鑑別が必要なとき発達の遅れ、発作後のマヒ、複雑型熱性けいれんで部分発作があった場合はCTとMRIを行います。・細菌性髄膜炎との鑑別が必要なとき髄膜刺激症状と30分以上の意識障害が伴う場合には髄膜検査を行います。髄膜刺激症状とは首の硬直や膝を曲げた状態で股関節を直角に屈曲し、そのまま膝を伸ばそうとすると抵抗があることをいいます(ケルニッヒ徴候)などがあります。その他にも医師が必要と認める検査を受けることがあります。まとめ出典 : 熱性けいれんを初めて目の当たりにすると、そのショッキングな症状に保護者や周囲の人はパニックを起こしてしまうこともあります。熱性けいれんの70~85%が一過性のもので再発することはないといわれていますが、保護者は子どもが発熱する度にいつ再発するか分からないという恐怖心が植え付けられます。しかしけいれんは数分で治まり、脳の発達によって5~6歳までに発症しなくなるといわれていますし、熱性けいれんは10人に1人がかかるような日常にありふれた疾患のひとつです。大きな病気ではないので安心して、その都度落ち着いて対応することを心がけましょう。熱性けいれんを起こさないためにも日頃から風邪や感染症を予防することは大切です。子どもだけではなく、周囲の大人たちも予防につとめましょう。もし熱性けいれんが起こった場合には、#8000番を利用するなど冷静な判断で対処・判断をしてください。はじめてけいれんが起こった際や単純型・複雑型どちらのけいれんか判断できない場合などは、迷わず病院へ行くことをおすすめします。
2017年08月17日初めてのことに恐怖を感じる発達障害の息子。出典 : 発達障害のある子どもは、自分が予測できない「初めてのこと」に強い恐怖を覚える傾向があります。初めての場所、初めての人、初めての食べ物、初めてのイベント…発達障害のある小学校1年生の息子に対しても、パニックを防ぐための「事前予告」は欠かせません。なにをするにも徹底的に事前予告をすることが必要なので、どんなことも先回りしてリサーチする必要があります。そして息子に視覚化して分かりやすく伝える事前予告をこれまで続けてきました。しかし、そこまでやっても息子はパニックを起こしてしまうことがあるのです。そんなときは私も、心身ともに立ち直れないぐらい疲れてしまいます。「何も考えずにどこかへ連れていけたらどんなにいいだろう…」と思ったことも、一度や二度ではありません。でもなぜ息子は「初めてのこと」に対してそこまで恐怖感を覚えるのでしょうか。このことについて一般的に「予測できないから」と言われることが多いように思いますが、そもそもなぜ「予測できないこと」がそんなに怖いのでしょうか。私は息子が恐怖感に苦しめられているときの言動から、息子の思考パターンに気付いたのです。それは、息子が「予測できないこと」に対して、「最悪のパターンを予測してしまう」ということ。発達障害のある子どもによく起こりがちと言われる、“0―100思考”のためでしょうか。とにかくありえないような最悪のパターンを予測して、自分で苦しんでいることに気付いたのです。恐怖に埋もれる息子の耳は、いつも「ちくわ状態」出典 : 息子は、まだ見ぬ未来のことを心配し始めると、私のどのような励ましも耳がちくわ状態で全部抜けていきます。例えば、一時期歯医者さんに行くのが怖かった息子。「歯のお掃除に行くだけだからね。お口をあーんして、歯を磨いてもらって、フッ素を塗っておしまいね。」と私が事前予告をしても、「もしも大きな虫歯があったら??そしてそれをひっこぬくんだ。どうしよう。歯を抜かれたらどうしよう。虫歯が何十本もあったら全部抜くんだ。どうしよう。」とありえないような最悪のケースを想像して、部屋の中をぐるぐると回っています。こんな想像をしていて、歯医者さんにまともに受診できるはずがありません。いつも椅子に座る前からパニックでした。こんなとき、私は絵を描いたり、説明をしたりして、必死に息子の過剰な想像をおさめようとしていました。「大丈夫、絶対そんなことにはならないよ」「もう1回状況を復習しよう」ところが、私が息子を落ち着かせようとすればするほど、息子はパニックになっていくのです。息子は最悪のパターンを想像しているときは、私の励ましなんて「雑音」にしか聞こえない様子。もう私にできることは何もない、どう声をかけていいかもう分からない…と、私はほとんど諦めていました。息子の表情を劇的に変えた、一本の電話。出典 : 息子の「初めてのことに最悪のパターンを想像する」という厄介な思考パターンは、小学校に入学しても炸裂していました。そうです。小学校でのどんな勉強もテストも、「初めて」なのです。特に「テストを受ける」ということ自体が息子にとっては経験のないこと。そのテストにどんな問題が書いてあって、どういう形で受けるかも分からないのです。初めてのことが怖い息子が、怖がらないわけがありません。息子は起きている間中、「テストが0点だったらどうしよう。」「みんなにバカにされて、廊下に立たされるかもしれない」と言いながら、思い悩むようになりました。そのうちに、登校中に毎日のように腹痛を訴えるようにまでなってしまったのです。私は、「0点は絶対ないよ」「ドラえもんの見過ぎ。あれは漫画だよ。」「一緒に勉強すれば大丈夫」などといつものように励ましの言葉をかけ続けました。けれども、いつもどおり息子の耳はちくわ状態。息子は0点を恐れ、机にかじりつき必死に勉強しますが、恐怖心を払しょくできません。もはや、どうすればいいのか分からなくなったとき、偶然一本の電話がかかってきたのです。それは息子と同じADHDのある、私の父でした。テストのことが頭から離れない息子は、「おじいちゃん、テストで0点取ったらどうしよう」と電話で必死に訴えていました。しかしここから、驚くべきことが起こります。受話器から私の父の返答を聞いた息子は、それまでのひどく追い詰められた表情が打って変わり、憑き物が取れたかのように明るい表情になったのです。電話を切った息子は、とても穏やかな顔をしていました。テストのことはまだ心配そうではありましたが、それまでとは比較にならないほど落ち着いていたのです。父から学んだ「逆転の発想」出典 : 父は息子になんと声をかけたのでしょうか。息子の不安とパニックを一瞬でおさめた言葉とは、なんだったのでしょうか。息子に聞いてみたところ、こんな言葉をかけられたのだそうです。「いいじゃないか、0点、ぜひ取っておいで!取ったとしても息子くんが怖がるようなことは何も起こらないから!!」聞けば、父も勝ち負けにこだわり過ぎて辛かったときに、自分の母親が「いってらっしゃい。しっかり負けてらっしゃい!」と送り出してくれた途端に、気持ちが楽になったのだそうです。最悪のパターンを想定してパニックになる息子に、「そんなことはない」「大丈夫」と言っても火に油を注ぐだけ。であれば、「そうなってごらん」「そうなったとしても、そんなに怖いことは起こらないから、体験してみてごらん」と声をかけるほうが、息子は不安から解放されたようでした。初めて取り組むことは、思うような結果にならないこともたくさんあります。発達障害のある子どもを育てていると、どうしても先回りして「失敗すること」を減らそうとすることに全力を尽くしがちです。環境調整で失敗を減らして、成功体験を積ませるというのは、発達障害のある子どもの育児においてとても大切なことです。ですが、失敗を恐れて心配する子どもに対して、「失敗しないようにお母さんがなんとかしてあげるから」と言い続けるわけにもいかないのです。そうであれば、「失敗してらっしゃい。きっと何も怖いことは起こらない。」と大きな気持ちで子どもに接していくこともきっと大切なのではないでしょうか。発達障害のある子どもの場合、初めてのことが怖いという特性はなかなか克服できません。であれば、まずは予告、次に環境調整、それでもダメなら「それも経験」と親も腹をくくることが大切なのかもしれません。父と息子のやり取りを見て、私自身も少し気持ちが楽になったのでした。
2017年08月17日夏休みの宿題、ぜんぜん進んでない!親子のストレスはたまる一方…出典 : 夏まっさかり。イベントやお出かけの予定も盛りだくさんで楽しみな一方、夏休みの宿題がなかなか進んでいない…という親子も少なくないのではないでしょうか?「宿題やったの?」「どうしてちゃんとできないの!」夏休みの最終日までにお家できちんと宿題を終わらせないとと、親としてはあせってしまいますね。毎日、顔を合わせて宿題のことを注意していると、お互いストレスもたまります。そんな時についつい親子げんかになってしまうことも…。ですが、日記や作文、ドリル、自由研究、図画工作…夏休みの宿題は発達障害のある子どもにとって、一筋縄ではいかないものばかり。がんばっていてもできない場合もあるのです。そんなとき、どうしたらうまくいくのか、宿題の困りごとについて、うまくいくコツをご紹介します。お子さんの特性やタイプ、困っていることにぴったりな解決策があるかもしれません。せっかくの夏休み、宿題を楽しい成功体験に変えてみませんか?夏休みの宿題がうまくいく3つのポイント出典 : 子どもが宿題に取り組みやすい環境を整えたり工夫をすることで、親の負担も減ります。・見える化する課題がどのくらいあるのか、これから何をすればいいかがわからず、取り組めないことがあります。今、残っている宿題がどれだけあるかを書きだした表や、スケジュールを作って見える化するとよいでしょう。・「宿題に取り組む」場所・時間を決める机の上におもちゃがあったりすると、気が散りやすくなります。宿題をするスペースを決め、宿題をしている間余計なものが視界に入らないように片づけたり、布をかけたりしてもよいでしょう。また、ゲームの前にドリルをするなど取り組む時間を決め、習慣化するのもおすすめです。・宿題をスモールステップに分解する発達障害がある子は、より具体的な指示の方が理解しやすい子が多いようです。「宿題しなさい!」だとどうしていいかわからないことも。もう少し小さくタスクを分解すると取り組みやすくなります。例えば読書感想文の場合は次のようなステップで挑戦してみるのはいかがでしょうか。1.読んでみたいと思う本を図書館や書店で探す2.本を一通り読む(この際も、子どもが熱中して読めるようであれば子どものペースに委ね、どこまで読んでよいかわからない様子であれば1日に○章まで読む、などゴールを設定してあげると良いですね。)3.読んだ本の中でお気に入りの部分(ページ、セリフ、絵など)を書き出してみる4.読んだ本のタイトル、どんな内容だったかを書けるだけ書いてみる5.お気に入りの部分を紹介、またどうして気に入ったのか書いてみるこのように小さなステップを設けて一つずつ子どもに挑戦させてみると、何をやればよいかわからないストレスが解消され、またステップを積み重ねるたびに子どもの自信にもつながります。出典 : 怒るとイライラもたまります。宿題がうまくいかなくて子ども自身も悩んでいます。親子がお互いにストレスをためない工夫をご紹介します。・叱らずに一緒に考える「なんでできないの」と責めるだけでは解決につながらないことも。うまくいくにはどうしたらよいか、一緒に考えていきましょう。・完璧をもとめない「できた!」の基準をどのレベルに設定するかも大切なポイントです。たとえ答えが間違っていても回答欄がうまったらOK、日記は字が汚くても書けたらOKなど、割り切って子どもに合わせてハードルを設定します。まずは取り組めたその子の頑張りに目を向けられるといですね。・ほめる&ごほうびで達成感とやる気アップやる気にさせることが成功への近道です。スモールステップで目標を設定し、できたらほめるを繰り返します。やることを表にして、できたらシールを張るなどのトークンエコノミーを導入するのもおすすめです。また、ルールを決めて取り組み、ドリルを1ページやったらゲームを何分かやっていいなど、楽しいこととセットにするのもよいでしょう。出典 : 宿題の合理的配慮に関しては学校の先生との連携が必要になってきます。・パソコン・デジカメ・計算機などの利用についての合理的配慮パソコンやデジカメ、計算機をつかうことでうまくいく場合もあります。学校側に相談し使用の許可をお願いしてみましょう。・宿題についての合理的配慮をお願いするドリルや学習帳などの難易度や量が合わない場合もあります。本人が頑張っているのにどうしてもできない場合、答えやヒント、解説を見ながらやってもよいかどうか、別のドリルを使ってもよいかなどを聞いてみるのも一つの手です。発達障害のある子の特性や困っていることは一人ひとり違います。では、宿題の種類別の具体的な工夫をご紹介します!ドリル・プリントの困りごと・対処法出典 : ドリルやプリントは、たまってしまうとやる気もダウンしてしまいがち。モチベーションを保ちながらこなしていくには、どんな工夫ができるでしょうか?国語や算数などのドリルやワーク・プリントを進めるうえでまず大切なのは、ドリルやワークのやらなければならない部分がどのくらいあるのか、全体量を見える化して示すことです。全体像を把握することで、これだけの量を夏休み中にこなさなければいけないんだ、と子どもにとっても実感がわくので、取り組みやすくなることが多いです。また、ドリルやワークの場合、1日に取り組む分ができたらシールを貼ってあげるなど、達成した際のちょっとしたご褒美をあげるという工夫もおすすめです。ドリルが難しかったり、こなせない量だったり、がんばっているのにこなせない場合もあるでしょう。そんなときは学校側と相談してみることをおすすめします。プリント1枚全部を一度にやるのが難しい場合、2問ずつ進めるなど、小さく分割するとよいでしょう。また、「全部じゃなくてこれだけ頑張る」「わからないときは飛ばして後で一緒にやる」など取り組む前に子どもと決めるのも一つの方法です。宿題をやらない|親子のヒント日記・絵日記・作文・読書感想文の困りごと・対処法出典 : 毎日の記録を絵や文字で表現する日記は、発達障害のある子にとってハードルが高い宿題の一つです。毎日取り組まないと、夏休みの終わりごろになって、真っ白の日記帳を前に茫然…という事態になってしまうこともありますね。また、作文や読書感想文も、テーマを決める、本を読む、文字を書くなど苦手なことが含まれているので、フォローが必要になります。毎日決まったスケジュールに組み込むとよいでしょう。遊びに行く前につける、夜寝る前につけるなど、習慣にするとうまくいきます。また、毎日書くことの達成感が得られるように、書けたらシールやスタンプを押すなど、トークンエコノミーを使うのもおすすめです。絵や文字がかくのが苦手な場合、事前に学校に合理的配慮をお願いして、デジカメなどで写真を撮って貼ったり、パソコンやタブレットで文字を打ってプリントし、ノートに貼ったりするのもよいでしょう。今は音声認識で入力できるスマホやタブレットもあります。原稿用紙に手書きでないとダメ、という場合は、タイプしてプリントしたものをお手本にしながら写すとやりやすい場合もあります。「自由に何でもかいていい」という状況では、何をかいていいかわからず困ってしまうこともあります。いきなり日記帳に向かう前に、「今日はどんなことがあった?」「何を書こうか」などとパパ・ママと一緒に振り返ってみましょう。写真や動画を撮っていたらそれを見ながら思い出すとよいでしょう。テーマが決まったら、「まず、いつ、誰が、どこで何をしたか書くよ」などと書きだしをフォローしてあげるとよいでしょう。読書感想文の場合、まず本を読む必要があります。音声を聞くと理解しやすい子は、読み聞かせをしてもよいでしょう。音読の音源がついたオーディオブックや、電子書籍などには音声読み上げ機能のあるものも便利です。映画化されている本は、映画を観ると理解が深まることもあります。日記や手紙、作文を書くのが苦手|親子のヒント自由研究の困りごと・対処法出典 : 自由研究は、子どもの好奇心や問題解決の力をはぐくむ大切な宿題ですが、その自由さが発達障害のある子にとっては悩みにつながる場合も多いもの。また、親がどのくらい手伝うかの見極めも難しい課題です。なかなかテーマが決められないこともありますね。そんな時は、テーマを選びやすくするきっかけをつくってあげるとよいでしょう。子どもの興味のあることや好きなことから選ぶと、モチベーションが保ちやすくなります。自由研究のテーマが載っている書籍もたくさんあります。本を見ながらどんなテーマにしたいか親子で話し合ったり、科学館や博物館へ出かけて探したりしてもよいでしょう。子ども向けの実験や観察会などのイベントを開催している施設もあります。自由研究用レポート用紙のついた3Dペンなど、キットもいろいろあります。市販のツールを使うのもおすすめです。自由研究におすすめ!厳選キット特集|LITALICOワンダー オンラインショップいきなり大きな白い紙を前にすると、何を書いたらよいかわからなくなります。そんなときはノートなどに、どこに何を書くかレイアウトをつくります。実際に書く文章もノートに下書きして写すだけにすると簡単です。模造紙に線が入っていない場合は鉛筆で線を書くとよいでしょう。またタイトルや見出しなど、少し大きな字を書く場合は、バランスが崩れやすいので、鉛筆で目安となるようざっくり枠を記すとよいでしょう。また文字を書くのが苦手な場合は、写真などを撮って、大きくプリントして貼ると、文字を書くスペースも少なくてすみます。何にどのくらいかかるのか、どんな作業が発生するかを見える化します。テーマを決める、必要な物を揃えるなどをリストにしてスケジュールをつくります。続けるのが苦手な場合、毎日観察が必要だったり、取り組みに時間がかかるテーマをあらかじめ避けるのもポイントです。図工の困りごと・対処法出典 : 手先のこまかい作業が苦手な子にとって、工作や絵を描くのは、気が重い宿題です。何を作りたいか聞きだしたり、工作のアイデアが載っている書籍から本人に選んでもらったりしてテーマを決めるのを手助けするとよいでしょう。テーマが決まったら、道具や材料を準備する・制作する工程をスモールステップにして書きだし、一つひとつこなしていきます。また、夏休みには工作や絵を描くイベントやワークショップもたくさんあります。お近くで開催されていないか調べてみましょう。写生が苦手な場合、写真を撮って写すとうまくいく子どももいます。ペンや筆が苦手なら、ちぎり絵やコラージュにするなど、苦手を避ける方法を考えてみるのもよいでしょう。道具の使い方に慣れていなかったり、道具が合っていなかったりしていないか子どもの様子を見てみましょう。手に合った道具を使うようにし、練習してみましょう。切れないハサミやカッターの刃はかえって力が入り危ないのでとり変えます。不器用な子どもが使いやすいハサミや定規、カッター、のりなどの文房具もあります。子どもが使いやすい道具を探してみるのもよいかもしれません。以下にいくつか便利な文房具を御紹介します。長谷川刃物 HARAC カバー付きはさみ Castaモチモノ 滑らない 定規 ピタットルーラーアラビックヤマト色消えタイプハサミがうまく使えない|親子のヒントノリがうまく使えない|親子のヒント参考書籍:谷田貝公昭 /著『不器用っ子が増えている―手と指は[第2の脳] 』(一藝社)まとめ出典 : 「頑張りなさい」だけではうまくいかないことも多い夏休みの宿題ですが、ご紹介したヒントのなかに、子どもにあった方法が見つかるかもしれません。また、発達ナビのユーザーの皆さんの工夫やエピソードの中にもヒントがあるかもしれません。発達ナビアンケート|夏休みの宿題を親子でやりきるアイデア大募集!実践の工夫や、エピソードを教えてフォローをしてあげたり、見える化してスケジュールを決めてあげたり、パパ・ママの負担は決して少なくないかもしれません。ですが、小さなステップを一つひとつこなす達成感は子どもにとって大きな成長の糧になるはずです。また、完璧を目指しすぎないことも大切です。出された宿題をやり遂げるのが難しい場合には学校の先生に相談したり、便利なツールを使ってハードルをさげることも、親子のストレスを軽くしてくれます。残りの夏休み、親子で宿題を乗り切って、晴れやかな新学期が迎えられるとよいですね。
2017年08月16日「○○が苦手です」では、発達障害の実情が上手く伝わらないこともある出典 : 発達障害のある子のことを説明する際、よく耳にするセリフに「うちの子は○○が苦手です」というものがありますよね。私も、療育センターでそのように説明することをすすめられていたこともあり、最初は長男の障害名ではなく「〇〇が苦手なのよ」と特性だけを伝えるようにしていました。障害名を言って偏見を持たれるよりは、具体的な得意不得意を話した方が伝わりやすいだろう…そう思っていたからです。実際に、そのように伝える方がコミュニケーションが円滑にいく場合もあるでしょう。ですが、私が直面した現実は真逆だったのです。帰ってきた言葉の多くは「苦手ってことは頑張ったらできるんでしょう?」「甘やかしすぎじゃない?」「しつけの仕方が悪いんじゃない?」といった、息子や私の”がんばり”不足を原因とするかのような反応でした。「トツカさんって、ほんと過保護よねー」知らないところでそんな風に言われることもあり、当時はひどく落ち込みました。しかし、今思えばこちらの伝え方のせいで余計な誤解を招いていたのだと感じます。確かに、「うちの子は○○が苦手です」と突然言われても、それがどの程度苦手かを想像することは難しいですよね。「うちの子だって大変なのに、この人は何を甘えているの?」そう思うのは自然なことだと思います。それが定型発達の世界なのです。こうしたことがあってからは、私はあえて先に「うちの子は自閉症という障害を持っています」と伝えた後に、「障害の特性から○○が苦手なため、ご理解いただけると助かります」というように伝えるようにしました。もちろん「障害があるから迷惑をかけても許してね」という意味ではありません。「本人も家族も努力をしていますが、それでも難しいことが多々あります。そのためご迷惑をおかけすることがあるかと思うので、もし気になったことがあれば遠慮せずお知らせください」という意味です。何かあれば常に対応するという姿勢を示しておくことで、理解し合うための土台作りができることに気がついたのです。発達障害がある子たちにとって“苦手”という感情は生きるか死ぬかのレベルであることも多いです。しかし、ただ“苦手”と伝えるだけでは、その困難の大きさを判断できないのも無理はないですよね。そのために、少しでも相手が抵抗なく受け入れられるようにこちらができる工夫。それが「障害名から伝える」ということではないかと感じました。「障害名を伝える=偏見を持たれる」とは限らない出典 : 障害名を伝えることに関して、多くの保護者の方が悩む問題があります。「障害名を伝えることで障害名が一人歩きして偏見を持たれないだろうか…」ということです。私の結論を言うと、それは違います。悲しい話ですが、発達障害に対して偏見を持っている方は特性に対しても偏見を持っていることが多いため、障害名を伝えても伝えなくても大きく変わらないのです。「子どもが○○をするのは親のしつけのせい」すでにそう思っている方にとって、障害名は重要ではありません。むしろ障害名や詳しい特性を伝えることで「障害があるからそのような行動をすることもある」ということを知ってもらえ、逆に偏見がなくなることの方が多かったのです。そのため、障害名を伝えることでプラスになることはあってもマイナスになることはありませんでした。あえて障害名を伝えることで良い意味で変化が!出典 : とはいえ、実際に障害名を伝えるとなると「お友だちができなくなるのではないか」「偏見を持たれないか」など、どうしてもマイナスのことを考えてしまいがちですよね。ですが、先にお話しました通り、実際はプラスになることも多いのです。なぜならば「正しい知識を伝えられる」からです。恥ずかしながら、私自身も、わが子が自閉症だと知る以前は「自閉症=喋らない障害」だと思っていました。実際はそんな子もいればそうでない子もいますよね。しかし、以前の自分のように誤って認識している方は大勢いらっしゃいます。そのため意図せず傷つけたり傷つけられたりということが起こってしますのです。けっして悪意があるわけではありません。ただ、知らないだけなのです。障害名を伝えた後、そんな方たちによく聞かれることがあります。「自閉症って○○な障害だよね?でも、息子くんはそんな風には見えないよ?」それぞれがイメージしている“自閉症”とギャップがあるのでしょうね。障害のカミングアウトを機にこうした質問をされることが増え、その度に説明をするようになりました。大人が正しい知識を持つことで、子どもにも間接的に障害がある子との関わり方を伝えることができます。逆にこちらは年相応の成長や遊びを教えてもらえ、お互いに知らない情報を知ることができるのです。言わなければ伝わらず歩み寄ることができなかったであろう関係も、こちらから一歩踏み出すことで世界が大きく広がり、この先必要な社会とのつながりを作ることができるのではないでしょうか。また、学校でもある程度オープンでいることで、学級内での配慮が円滑に行えると聞いたことがあります。高学年になると、それまで漠然とゆるされてきた発達障害の子を見て「あの子だけ特別扱いされてずるい!」と感じる子が増えてきます。大人でも理由を聞かされず一人だけ特別に配慮されている状態を快く思うことは難しいですよね?それと同じなのです。なぜその子には配慮が必要なのか、それをある程度示してあげることで、クラスメイトにとっても良い効果があると感じました。伝え方を工夫して否定し合わない関係作りを出典 : 現在長男は特別支援学級と普通学級を行き来しています。特別支援学級に通っている子どもたちは、必ずしも障害の確定診断がある子どもばかりではありません。長男に発達障害があることを知っている親御さんもいれば知らない親御さんもいます。子どもたちも同様です。そのような状況ですが、障害名が足かせになっていると感じる経験をしたことはありません。多くの方は定型発達の子と同様、本人の性格や人間性を見て判断してくれていると私は感じています。見えない障害をカミングアウトすることが正解かどうかはわかりません。しかし、私自身は少なくとも不正解ではないと思っています。障害の有無を問わず、すべての人たちが理解し合って生きることは難しいことです。しかし完全に理解することはできなくても、伝え方一つで否定し合わない関係が築けると思うのです。そんな関係を築いていくことが、将来社会で共存することにつながるのではないでしょうか。障害の種類・子どもの性格・周りの環境などで伝え方は変わってきますが、あえて障害名を伝えるという選択もあるということを知ってもらえたらと思います。
2017年08月14日似た者同士の母と娘、二人揃って図形問題が解けない!出典 : アスペルガー症候群の診断がおりている9歳の娘は、言語IQが150を越えています。日々、ひっきりなしにお喋りをしたり、本を読み続けたり、頭の中にある言葉をパソコンに入力し続けたりしています。彼女の生活は言葉に埋めつくされていると言っても過言ではないほどです。このような状態ですから、言葉で物事をとらえるのは非常に得意なのですが、一方で算数の図形問題で頭を悩ませることが増えてきました。図形問題にはほとんど文字情報がありませんので、まず見ただけで拒否反応を示します。そして、1枚のプリントを終わらせるのに1時間以上かかるうえに、間違いを連発してしまうこともしばしばあります。そんなときは、自分を否定する言葉を吐きながら、目に涙を浮かべて問題と戦っているのです。そんな娘と同じような特性がある私は、昔から図形の問題が壊滅的に苦手でした。算数の計算自体は得意でしたので、図形問題ができなくても、特に成績が悪くなることも問題視されることもなく、なんとかやり過ごしてきました。私そっくりに生まれた娘には図形で苦労をさせまいと、算数のセンスがアップする!と謳われているオモチャや幼児教育の教材を取り入れてきたのですが、残念ながら娘にその効果が表れることはありませんでした。私も苦手な分野なので、解き方を上手く娘に説明することができません。夫に「教えてあげて」とプリントを渡すと「え、これは図を見れば簡単にわかる問題でしょ?」と言われる始末。どうして娘と私は、図形問題をスムーズに解くことができないのでしょうか?空間認知能力が低いと算数にも影響が出る!?出典 : 図形の理解に必要なものの1つに「空間認知能力」が挙げられます。空間認知能力とは、人や物の位置を立体的に把握する能力のことで、方角・距離・大きさ・広さなどを的確に理解し把握する役割を果たします。地図から目的地までの経路を探すのが得意な人や、山登りのルートなどを俯瞰して理解できる人は、この空間認知能力が高いといえるかもしれません。逆に、この能力が低いとどうなるのでしょう?自分と物との距離を上手く測れないため、自分の家の中であっても壁やドアに頻繁にぶつかってしまったり、お店に入って違う出口から出てしまうと帰る方向が分からなくなったりするのです。そして、勉強の面でいえば、字を枠の中におさめて書くことができなかったり、筆算をする時に桁がずれてしまったり、手本を見ながら線を書き写せない、という問題が出てくるのです。娘は、この空間認知能力の低さゆえに、表に出れば道に迷い、筆算をすれば桁がずれ、図形を見ても上手く全体像をとらえられないという問題にぶちあたっているのです。問題を構成するひとつひとつの要素は理解できているのです。平行・垂直、同位角・錯覚、三角形の内角の和、多角形の内角の和の求め方。それぞれはわかっているのに、それがまとまった状態で提示されると、途端に混乱してしまうのです。三角定規の一つひとつの角度は覚えていても、それが重なった状態の問題が出ると、娘の頭はショート寸前となり、自分だけの力で解くには膨大なエネルギーが必要となります。読字障害で、言葉のまとまりを意味としてとらえることが困難なタイプがあるように、私や娘の場合それが図形で起こっているのかもしれないなと思うようになりました。さらに気づいた「ワーキングメモリ」との関係出典 : また私たち親子に共通するこの苦手さには、「空間認知能力」だけでなく「ワーキングメモリ」も関係しているのではないかと考えるようになりました。ワーキングメモリは日本語では「短期記憶」や「作業記憶」と呼ばれています。何かを考えたり、作業を行ったりするときに必要な情報を一時的に置いておく場所であり、この情報を元に人は行動をするのですが、このワーキングメモリには「言語性ワーキングメモリ」と「視覚性ワーキングメモリ」があるそうです。言語性ワーキングメモリ = 言語化できる情報を保持・操作する場所視覚性ワーキングメモリ = 言語化できない情報を視覚イメージとして保持・操作する場所そして、頭の中で映像や画像を思い描いたり操作したり、思考する場所を「視空間スケッチパッド」と呼ぶそうです。私は医者でも学者でもありませんので、すべてをきちんと理解することも説明することもできませんが、脳の中にこのような領域があるのだと知ったことで、娘の困難さの原因が少しわかったような気がするのです。おそらく、娘も私も言語性ワーキングメモリの領域は通常よりも多く、視覚性ワーキングメモリの領域はとても少ないのだと思います。以前のコラムでも書きましたが、私は他人の顔を覚えることができません。大切なわが子の顔さえも、思い浮かべることができないのです。新たに出会った人について記憶する場合は、まずその人の名前を漢字で聞き、頭の中にその名前のラベルがついた文字情報を放り込んでいき、言葉で記憶するのです。娘も他人の顔をおおざっぱにしか見分けられていないようで、「おじいさん」「若い女の人」などのくくりで人を判別しているため、テレビに出てくる人を近所の人だと言い張ったり、逆に道を歩いている普通の人を「絶対にあのドラマに出ていた俳優さんだ」と言ったりします。これはおそらく、視覚性ワーキングメモリの領域が少ないため、視空間スケッチパッドに人の顔をきちんと展開することができないのが原因ではないでしょうか。そして、視覚性ワーキングメモリの働きが弱いために、算数の問題に出てくる図形を全体像として頭に思い浮かべることができず、問題を解くための手立てを探すところまでたどり着けないというのが、図形問題が解けない原因になっているのかも知れません。親子で勉強することで生きるヒントが見つかるかも!出典 : さて、図形の苦手さの原因は努力不足や経験不足ではなく、脳の構造の問題であるらしいというところに辿り着きました。「泣くほど辛いのなら、いったん図形問題から離れてもいいよ」と娘に声をかけたのですが、娘は「普通の4年生が理解できることは私も理解したい」と言うので、工夫をしながら図形問題に取り組むことになりました。図形を見ると少しチックが出るようになったのですが、本人が「やる」と決めたことなので、ストレスがかかり過ぎないように様子を見ながら進めていきたいと思います。娘は学校に行かずに家で勉強をしていますので、教えるのは私か夫ということになります。複雑な問題は夫に任せて、簡単な問題や何度か繰り返している問題は私が教えています。視覚性ワーキングメモリが低いとなると、得意な言語性ワーキングメモリを使って解いた方が娘にとっては楽になるはずですので、図形を見ながら一つひとつ言葉で説明をし、手順を言語化していきます。普通であれば、言語でだらだらと説明するより図にした方がわかりやすいから図にしてあるはずなのに、わざわざ言語に戻して理解するというのもなかなか独特で面白い特徴ですよね。そう考えることができるようになったのは、「できない」ことにフォーカスをあてるのではなく、「どう工夫すればできるようになるか」という思考にシフトチェンジできたからではないかと思います。また、立体的な感覚をつかむため、マインクラフトという三次元の世界でブロックで建物を建てたり、旅に出たりするゲームを始めました。夢中になって遊んでいるうちに苦手な分野のトレーニングができるのはとてもステキなことで、自分の子供時代と比べると、何かを学ぶための選択肢がたくさんあって、よい時代になったなと嬉しく思います。出典 : お子さまの宿題を見てあげるとき、不登校のお子さまに勉強を教えるとき。もし、正解か不正解かだけに注目していらっしゃる方がいたら、少し見方を変えてみませんか?勉強でつまづいてしまったとき、努力だけでは克服できない原因が隠されているかも知れません。どのような工夫をすれば乗り越えられるのかを考えることで、子どもが心地よく生きていくためのヒントが見えてくることもあるのです。親も子も、「勉強する」というとつい構えてしまいがちですが、親が子を知り、子が自分自身の特性を知る良いチャンスだと思って、前向きに取り組んでみるのもいいかも知れませんね。
2017年08月13日アスペルガーでADHDの私に、ついに下った糖尿病の診断。出典 : 今までいろいろ病気をしてきたので健康診断だけは行くようにしていた私。今年も締め切りギリギリの3月に滑り込みで受けることができました。すると、「糖尿病です。病院で診察を受けて下さい。」という結果が送られてきました。実は3年位前から「これ以上数値が上がったら糖尿病になってしまいますよ。くれぐれも節制して下さいね。」とお医者さんから言われていました。「糖尿病になるのは嫌だな」と思ったものの、「まぁ、何とかなるだろう」と根拠なく思い込み、好きなものを食べてゴロゴロする生活を続けていたのです。今振り返れば、真面目に考えることから逃げていたような気がしますだから、ついに糖尿病を宣告されたとき、どこかで「ああ、やっぱりダメだったか」という気持ちもあり驚きは全くありませんでした。来るべきものが来てしまったという感じでしょうか。そして受診したかかりつけの内科で服薬をしながら様子をみたのですが、数値は悪くなる一方でついに大きな病院に行くことになってしまったのです。大病院で検査をいろいろ受け、看護師さんから丁寧な聞き取りも受け、最後の先生の診察では、「2~3週間教育入院したほうがいいですね。出来るだけ早く準備してください。」と告げられました。糖尿病の教育入院とは、病院食で食事療法の加減を覚えたり、医師や看護師、臨床検査技師、薬剤師の講義、栄養士による栄養指導で糖尿病についてしっかり勉強します。あと、血管が詰まっていないかなど、検査もたくさん受けることになります。さらに、1日に4回くらい血糖値を計り、インスリンをはじめとするさまざな薬で血糖コントロールしていきます。だいたい教育入院は10人程度の同期がいるので、先輩患者からいろいろとためになる話を聞くことができました。私は女性と接するのが苦手なので、一回り上くらいの男の人たちとナイターを見ながら「わし、これ以上悪くなったら透析やねん」、「腹減るやろ?飯食ったすぐ後で菓子パン食べるねん。そしたらバレへんで。」なんて話を聞きながら笑っているのがいい息抜きになりました。一方、几帳面で勉強好きなアスペルガーの特性を持っている私は、テキストを何度も読み返し、疑問点を書き出して糖尿病専門看護師や主治医を質問攻めにしては、ノートにびっちりと書き込んでいきました。私が入院生活で困ったこととは…出典 : まず困ったのがすぐ迷子になること。入院してすぐに売店に行ったら自分の部屋を忘れてしまって、違う階のナースステーションで尋ねることに。「入院したてなのですが、自分の部屋がどこかわからなくなってしまいました」と聞くと、電子カルテで探してもらってようやく部屋に戻ることができました。そんな状態なので、検査室に行ったときも、帰り道で方向感覚を失って戻り方がわからなくなり、同じ場所をくるくる回っていたりすることもありました。それから血糖測定の手順を覚えるのも大変でした。みんな3日くらいで覚えて自分の部屋で測るようになるのですが、私は1週間処置室で測り続けることに。やっと部屋で測るようになってからも、もたもたしてばかりいました。今思い返せば、イラストにした手順書みたいなものがあったらよかったんですけどね。入院するときに自分の身体についてのアンケートがあり、私はもちろん「アスペルガー症候群、ADHD」と書いておきました。でも、看護師さんも主治医もどうやら発達障害については詳しくないようです。看護師さんに「ADHDってどう読めばいいんですか?」と聞かれたときは「そこから?」とびっくりしてしまいました。医療従事者の集まる病院だから大丈夫だろうと油断していましたが、どんな配慮をして欲しいのか、どんなことが苦痛なのか書いておいたほうがよかったのかもしれません。自分の特性を踏まえ、これまでの生活を振り返ると出典 : 入院中は、これまでの自身の生活を振り返る契機になりました。私は計画的な買い物がとても苦手です。見た目に惹かれて「おいしそう!」とかごに入れてしまったり、値引きシールを見て「これは安い!」とポンポンと衝動的にかごに入れてしまうのです。冷蔵庫の中身をチェックして、「今必要なものはなにか」と冷静に考えることは、これまでなかなかできませんでした。食事でも、ついそのときの食欲にしたがって食べ過ぎたり、逆に食べなかったり、衝動的に食べたりしがち。「これくらいにしておこう」というコントロールができないのです。運動は「いつ、どれだけ運動する」と決めたらマシーンのように続けるアスペルガー的一面がある一方、そのルールに縛られ過ぎて疲れ果て自暴自棄になり、なにもしなくなるという極端な一面もあったように思えます。例えば、自分の立てた目標がきつすぎてできなかったら「もうだめだ」と、計画の見直しをする前に、運動そのものをやめてしまったこともありました。「少しずつ」とか、「柔軟に」ということが特に苦手だったのです。でも糖尿病になってしまい、教育入院中に糖尿病の恐ろしさ、食事療法や運動療法が命綱になること、薬では根治しない病気だということを知って「これは今度こそ本気で頑張らなければ寿命まで生きられないかもしれない」と思いました。同じ発達障害のある、これからの人生でも困難が待ち受けているであろう娘を残して早く逝くのは嫌だし、生き残っても足を切断したリ、透析になってしまったら迷惑をかけてしまいます。健康を保ちながら平均寿命まで生きるには食事療法や運動療法を一生続けていくしかありません。こんな私にとって食事療法は特につらいものです。始めてからまだ1ヶ月余りですが、まだスーパーのスイーツコーナーを見ると涙が出そうになります。今まで限界がくると衝動的に食べてしまっていたので、いつ理性がプツンと切れるか怖いです。だけど、ヘルパーさんが食事療法のつらさを理解しながらも、励まして薄味でも美味しい料理を作ってくれますし、ソーシャルワーカーさんや相談支援員さんが私の気持ちを理解して支えてくれています。裏切りたくない人たちがたくさんいるのでなんとかやっていけそうな気がします。なにより娘が薄味の料理に付き合ったりして応援してくれるのがうれしいですね。一人だったら到底無理だったと思います。入院生活では、まず食事療法だけはしっかりすること。運動療法は少しずつでいいと主治医に言われたので、まず食事だけは守り抜こうと思います。最近ははたくさんノンカロリーのゼリーや飲料があって、それは取り入れていいと言われているので、ほどほど甘いものも食べています。あとは、日常生活の用事はできるだけ歩く、テレビ体操をするということを実践しています。自分の弱点を知ってそれを補う体制を自ら作るということ出典 : 発達障害のある人は、私のように自己管理が苦手な人も多いように感じます。加えて、二次障害で心の病がある場合、さらに健康管理は難しくなるでしょう。私自身も気分の波が大きく、落ち込んだり、眠れない・起きられないこともあります。これからは規則正しい生活が必須なのですが、それだけはなかなか実現できずにいます。ソーシャルワーカーさんには「もっと早くに支援を受けていたら糖尿病にはならなかったかもしれない」と言われました。確かにもっと早くに家事支援を受けて料理を手伝ってもらったり、買い物に同行してもらっていたら、健康管理ができていたのかもしれません。これからは自分だけで頑張ろうとせずに、福祉サービスを使ってヘルパーさんに料理を手伝ってもらったり、糖尿病食の宅配サービスを使ったりと、いろいろなサービスを使って乗り切っていきたいと思っています。また、私の住む市では糖尿病教室が月に一度開かれているので、それにも参加してモチベーションを保っていきたいです。今回入院して、糖尿病が足の壊死、人工透析、心筋梗塞などにつながること、また食事療法に何度も失敗して何度も教育入院を繰り返す人がいることを知りました。そういう人は「食べたい」という気持ちのコントロールが弱く、「足の具合が悪くなれば手術すればいいわ」という風に考えているようでした。私はそういう人たちを笑う資格はありません。誰にでもそういう弱い気持ちがあると思います。だからこそ、病気についてしっかりと理解すること、自分の弱点を知ってそれを補う体制を作っていくことが大切だと感じました。できないことは無理にするんじゃなくて、「できないからどうすればいいんだろう」とどう自分にとって負担にならないように工夫していくかが大切なのではないでしょうか。病院でも福祉と連携してる部門がありますし、主治医に困っていることを言えば必要なところにつないでくれます。病気との戦いは1人ではあまりにも大変です。どうか無理せずいろいろな人や物の力を借りて乗り切りましょう。そして健康診断だけは年に一度受けることを強くおすすめしたいと思います。
2017年08月11日公認心理師とは?出典 : 公認心理師とは、心理職の国家資格です。これまで心理職の資格は、臨床心理士を始めとする各種民間資格のみでした。そのため近年、心理学系の国家資格をつくろうとする動きがありました。その結果、公認心理師法という法律が2015年9月9日に成立して、9月16日に公布されました。公認心理師法は、公認心理師という国家資格を定めるとともに、国民の心の健康を増進させていくことを目的にした法律です。厚生労働省によれば、2017年9月15日までに施行される予定になっています。また、第1回国家試験は、2018年に実施する予定と発表されています。<厚生労働省引用>公認心理師とは、公認心理師登録簿への登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいいます。(1)心理に関する支援を要する者の心理状態の観察、その結果の分析(2)心理に関する支援を要する者に対する、その心理に関する相談及び助言、指導その他の援助(3)心理に関する支援を要する者の関係者に対する相談及び助言、指導その他の援助(4)心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供国家資格としての「公認心理師」誕生の背景出典 : 国家資格は民間資格とは違って、国が認めた資格であるという信用度があること、法律や制度に組み込むことができるという利点があります。現在、自ら命を絶ってしまう人が年間約2万人もいる社会において、医療・保健の分野だけでなく職場や学校教育の現場においても、鬱状態等に悩む方や発達障害の子どもに対するカウンセリングが必要とされ、司法の分野でも被害者や犯罪者に対し、あるいは自然災害の被災者などに対して心のケアの重要性が高まっています。そのような中で、「数多くある民間資格のどの資格者に依頼すべきかわからない」といった声にこたえるためにも、幅広い年代や状況に対応でき、国家資格である「公認心理師」の誕生は多くの人が待望していた資格といえます。また、公認心理師は、名称独占資格(その資格保持者でなければ、その名称を名乗ったり、紛らわしい名称を用いてはいけない)です。例えば「特定公認心理師」といった一般の資格を作ったり、肩書きを名乗ったりすることで、公認心理師資格を持っているかのような、間違った認識をさせてしまうことを防ぎ、禁止しています。しかし、医師や弁護士のような業務独占資格ではないため、公認心理師の資格所有者でなくても心理職の行うアセスメント、カウンセリングなどを行うことは許されています。公認心理師の「師」が「士」でないのは、名称独占によって既存にある臨床心理士などの民間資格が廃止せざるを得なくなってしまうのを避けるためです。参考:浅井伸彦「あたらしいこころの国家資格「公認心理師」になるには’16~’17年版出典:厚生労働省「平成28年中における自殺の内訳」公認心理師の仕事と活躍の場出典 : 公認心理師の仕事は、公認心理師法では以下の4つが挙げられています。1.心理査定(アセスメント)2.心理面接(カウンセリング)3.関係者への面接4.心の健康に関する教育・情報提供活動1.2に関しては、公認心理師も民間資格である臨床心理士も同じですが、2つの資格についての違いはこの記事の後半「公認心理師と臨床心理士の違いは?」の章でご説明いたします。では、公認心理師が具体的にどのような仕事をするのかをみていきましょう。1.心理査定(アセスメント)心理査定とは、カウンセリングを行う際の、もしくは医師による診察が行われる際のアセスメントです。初対面の際の印象から面接時の表情、態度、話し方、初回面接の内容などから読み取れる情報、心理査定など、広く含めたクライエント(=カウンセリングや福祉での相談者)/患者に対する見立てのすべてを指します。その中でも心理検査がアセスメントの補助として使われることがよくあります。代表的な心理検査は、ロールシャッハ・テスト、バウムテスト、HTPテスト、風景構成法、YG性格検査、MMPI、東大式エゴグラムなどがあります。2.心理面接(カウンセリング)心理面接とは、一般的にいわれる「カウンセリング」の意味です。自分のことや家族のこと、職場や学校での悩みなどを聞き取っていきます。これは医師と公認心理師が連携して数回にわけて行う場合もあります。3.関係者への面接公認心理師などのセラピストは、常に症状を持つ人やなにか問題を抱えている人と直接会えるわけではなく、時には不登校や引きこもりの子どもの両親、発達障害の子どもの保育士、問題行動を起こす生徒の担任など関係者としか会えないことがあります。そのようなときに役立つ代表的な心理療法として「家族療法」があります。家族療法は、人間関係の相互作用に着目し、相互作用の悪循環を切断して良い環境を作っていくなどをすることで”問題”とされていたことが再び起こらないように、変化することを進めていく心理療法です。必ずしも家族全員が来る必要はなく、また対象が家族でなくても2名以上の対人コミュニケーションが少しでも関わるところ(職場、地域、学校など)であれば使うことができます。4.心の健康に関する教育・情報提供活動心の健康に関する教育のことを、「心理教育」と呼びます。友達を作ったり、仲直りするスキルや、怒りの表現やストレス発散に関する知識など、普段学校では学べないようなスキルを教育という形で学ばせることで、社会的に適応できるよう導いていきます。また、地震や台風などの天災による緊急事態が発生した際にも、被害者の心理ケア等で公認心理師は求められていくでしょう。公認心理師は、医師ではないために「診断」することはできません。心理職はクライエント(=カウンセリングや福祉での相談者)から自身の成育歴や環境、生活、人格、症状などをよく聴き取り、どのような人なのか査定してから具体的な助言をしていきます。つまり、診断するのは医師の役割で、じっくり時間をかけてクライエントを全人的に看て理解するのが公認心理師の役割です。公認心理師の働く場は、ほとんどがこれまで臨床心理士が働いてきた領域と重なると考えられます。主に臨床心理士が活躍してきた領域は以下の6つがあります。・医療領域:病院、クリニックなど・教育領域:スクールカウンセラー、教育相談所など・産業領域:EAP(従業員支援プログラム)など・福祉領域:児童相談所、発達支援センター、療育施設など・司法領域:家庭裁判所、少年鑑別所など・私設相談領域:資格をもとにしたカウンセリングルームを独自に開業する公認心理師になるには?出典 : 公認心理師になるには、受験資格を満たし国家試験に合格する必要があります。実際の細かいカリキュラムなどについては、まだ決定してはいませんが、文部科学省・厚生労働省が取りまとめた「公認心理師カリキュラム等検討会」の平成29年5月31日に報告書をもとに、今後省令などによって定められていくと考えられます。そこで今回はこの報告書にもとづいてご紹介します。1.「公認心理師になるために必要な科目」を心理学関係の大学と大学院を出て修了する。2.大学で公認心理師になるために必要な科目を修めて卒業し、文部科学省令・厚生労働省令で定める施設で、規定の期間以上心理関係の仕事に従事する。3.1.2の条件と同等以上の知識・技能を有すると認められる。「公認心理師になるために必要な科目」は・大学での必要な科目合計25科目、実習80時間以上を実施・大学院での必要な科目合計10科目、実習450時間以上を実施となっています。科目などの詳細は以下の2ページ目をご参照ください。参考:厚生労働省「公認心理師のカリキュラム等検討会報告書の概要について」p2参考:厚生労働省「公認心理師のカリキュラム等検討会報告書」1.出題範囲・出題範囲として詳細な科目は定めずに、「公認心理師として具有すべき知識及び技能」について出題されます。2.試験の実施方法・全問マークシート方式・問題数は150~200 問程度・ケース問題を可能な限り多く出題・試験の実施時間は1問あたり1分(ケース問題は3分)を目安・公認心理師としての基本的姿勢を含めた基本的能力を主題とする問題と、それ以外の問題3.合格基準正答率60%程度以上4.試験実施時期・第1回は2018年12月までに実施・第2回以降の試験実施時期は今後検討・試験は年に1回の実施とする経過措置はいつの時点で、誰があてはまるの?出典 : これまで臨床心理士などの心理職を目指し、すでに大学や大学院に入学した人や、心理職の仕事をしている人は、新たに公認心理師資格を取得することはできるのでしょうか?「公認心理師法」は施行(2017年9月)までの間、受験資格の特例があります。これは、大学や大学院において、公認心理師の課程を設置して修了者を出すまでに年月を要することや、現任者として心理職についている者が資格を取得しやすくすることを考慮しています。学生や心理職に勤めている人のための3つの特例についてご紹介します。◇受験資格の特例1:施行前に、大学院を修了した場合施行日の時点で、臨床心理士の指定大学院を修了していることを指します。また、心理学関係以外の4年制大学を卒業している場合でも、2017年9月までに臨床心理士指定大学院に入学していれば、心理学関係の大学に新たに入学する必要はありません。臨床心理士の指定大学院は以下をご参照ください。参考:日本臨床心理士認定協会「指定大学院・専門職大学院一覧」◇受験資格特例2:施行前に、心理系の大学に入学した場合施行日の時点で大学の心理学部・心理学科に所属していて、「公認心理師になるために必要な科目」を大学で修め、その後公認心理師の大学院に入学・修了することを指します。◇受験資格特例3:施行前から、心理系の仕事に従事している場合施行日の時点において、大学を心理学部などで卒業し、一定期間の心理職に従事したことを指します。更に、以下の2つにあてはまる場合公認心理師試験を一部科目免除で受験することができます。・保健医療、福祉、教育関係で心理の仕事を5年以上していた場合・保健医療、福祉、教育関係で心理の仕事についていて、文部科学大臣及び厚生労働大臣が指定した講習会の課程を修了した場合参考:厚生労働省「公認心理師のカリキュラム等検討会報告書の概要について」p5.6公認心理師と臨床心理士は何が違うの?出典 : 簡単に2つの資格の違いを整理すると、・臨床心理士は民間資格で、公認心理師は国家資格・心理学系の大学への進学が必須か否か・アセスメントとカウンセリングの他の場面で、研究を行うか否か3つがあげられます。臨床心理士とは、臨床心理学を基礎とする臨床心理学の専門家としての民間資格です。そこで本章では、公認心理師資格との違いを受験資格と仕事内容の違いについて説明していきます。臨床心理士の受験資格は1.日本臨床心理士資格認定協会によって指定された大学院を修了している者(ただし、大学院によっては1年以上の心理臨床経験も必要になる場合があります)2.諸外国で上記と同等かそれ以上の教育をうけて、日本で2年以上の心理臨床経験がある者3.医師免許取得者で、取得後2年以上の心理臨床経験を有する者現状では、臨床心理士を目指す人が4年制大学を卒業したあとのルートはこのようになっています。Upload By 発達障害のキホンしかし特例として施行日までに、臨床心理士指定大学院を入学・修了した人は「公認心理師」の受験資格を取得できます。公認心理師法の施行後(9月15日までに施行)は、以下のように大学の進学先によって得られる受験資格がわかれていきます。公認心理師の受験資格を取得するには、以下の図の赤の矢印をたどっていく必要があります。Upload By 発達障害のキホンつまり、臨床心理士になるには指定大学院を修了する必要がありましたが、公認心理師はさらにその前段階の大学の学部にも指定があります。そのため、施行日の時点で心理系以外の学部に所属している場合、新たに心理学部・学科に再入学・編入または、通信課程のある大学で必要な必要な単位を修得する必要があります。臨床心理士の仕事内容は1.心理査定や、面接での査定(アセスメント)2.臨床心理学的な面接による援助(カウンセリング)3.地域のこころの健康を守るための地域援助4.査定や面接などを含めた心理臨床実践に関する研究や調査対して公認心理師の仕事内容は1.心理査定や、面接での査定(アセスメント)2.臨床心理学的な面接による援助(カウンセリング)3.関係者への面接4.心の健康に関する教育・情報提供活動とされています。一見すると、3.4に違いがありますが、公認心理師の仕事にある「関係者への面接」も心理面接に含まれることから、実質的にはほとんど仕事内容は同じと考えられます。唯一大きく異なるところとしては、臨床心理士の仕事の一領域としてあった、「研究」が公認心理師の仕事には含まれていないところです。これまでお伝えしたように、試験の内容や認定機関は異なりますが、国家資格を持っていると給与が上がったり、手当てがもらえたりする環境が整わない限り、実質的な違いはないと考えられます。また、元々臨床心理士等の業務を基準に、公認心理師の業務内容が作られてもいるので、業務範囲や活動の場に大きな違いはないといえるでしょう。現在、既に心理職に勤めている人や、臨床心理士を目指していた人の中には、新たに公認心理師資格をとるべきか悩んでいる人も多いと思います。仕事内容には大きな違いはなく、どちらの資格を持っていても活躍できる場はもちろん幅広くあります。ですが、中には公認心理師資格が必要とされるケースもでてくることが予想されます。まず、公認心理師が施行されてからは、以下の4つに分類されていくと考えられます。1.公認心理師資格のみを持つ人2.臨床心理士資格のみを持つ人3.公認心理師資格と臨床心理士資格の両方を持つ人4.いずれも持たない人もちろん、4つのどのパターンでも心理職を勤めることは可能ですが、この中で医療機関で働いている人、公的機関で働いている人、そのどちらかで働きたいと考えている人は気をつけなければならないことがあります。・医療機関で働く場合保険診療を行う医療機関では「保険診療の手引き」に従って保険点数のつく心理検査などを行います。これまでは国家資格がないために「臨床心理技術者」となっていますが、国家資格が施行された後は「公認心理師」と表記される可能性が高くなると考えられます。そうなると、臨床心理士では保険診療にて保険点数を得ることができず、医療機関は公認心理師資格を持つ人を雇わなければ、心理検査などの保険点数を算定できないことになります。・公的機関で働く場合決定事項ではありませんが、公的機関においても、国家資格という明確な基準ができることによって、公認心理師を持っていることが雇入れの要件となる可能性が高いのではないかと考えられます。スクールカウンセラーなど地方で心理職の人手が足りていない現状もあり、臨床心理士資格のみでも活躍できる場はたくさんあります。ですが、様々な可能性を考え、心理職として困っている人へよりよい支援を行うためにも、両方の資格を持っていて損するようなことはないといえるでしょう。公認心理師法の施行日時点で、すでに臨床心理士資格を持っている人の中には、特例措置に当てはまり、一部科目免除で公認心理師試験を受験できる人がいます。施行日の時点で、すでに仕事で公認心理師の専門業務とされる業務をしていて、かつ以下の2つに当てはまる人1.文部科学大臣、厚生労働大臣が指定した講習会を修了した人2.文部科学省令・厚生労働省令で定める施設において、公認心理師業務とされることを5年以上行った人大学や大学院に通い直すことなく、これまでの自分のキャリアを活かして国家資格を取得できるため、臨床心理士でご活躍されている方は、是非公認心理師の取得を目指してみてはいかがでしょうか。まとめ出典 : 公認心理師は、新設された心理職の国家資格です。2017年9月15日までに施行される予定になっていて、第1回国家試験は、2018年までに実施する予定と発表されています。国家資格としての公認心理師は、広い領域で働くことのできる汎用性の高い資格です。しかし仕事の独占部分は持たない名称独占資格であるために、その仕事は一つひとつがどんな時にどんな所で、どのような役割において役に立てるのかを的確に認識して取り組むことがより一層必要になっていくと思われます。資格取得を目指している人にとっては、特別経過措置があったり、他の心理職と似ていたりと複雑に感じるところもあると思います。未確定な要素も多いですが、現段階での決定事項の情報収集に参考にしていただればと思います。施行が2017年の9月ということもあり、随時最新情報が更新されていくことが予想されます。今後も最新情報を追って資格取得を目指していきましょう。参考:厚生労働省「公認心理師」参考:浅井伸彦「あたらしいこころの国家資格「公認心理師」になるには’16~’17年版
2017年08月09日発達障害のある子どもにとって、夏休みの生活は悩みも多い!?出典 : ヶ月近く学校や幼稚園などがない、夏休み。普段できないようなイベントやレクリエーションなどに参加できる楽しみもありますが、学校がない分、生活リズムの崩れや体調の崩れが起こりやすい時期でもありますし、夏休みに出される宿題を自分の力で進める必要もあります。特に発達障害のある子どもにとって夏休みは、自由な時間が多いだけに何をしてよいかわからない、活動の切り替えができない、宿題を上手く進めることができないなどさまざまな困り感が生じやすく、生活パターンが崩れることも多くあるようです。そのため、夏休みとはいえ計画を立てて、メリハリのある生活を送ることが重要です。この先で詳しく、夏休みに起こりやすい発達障害のある子どもの困り事やその対処法、夏休みの計画の立て方についてご紹介します。夏休みがうまくいかない!3つの要因とは出典 : 発達障害のある子どもとパパ・ママが陥りやすい夏休みのトラブルは様々ですが、その背景には大きく以下の3つの問題が挙げられます。まずはその3大トラブルの解決法を考えてみましょう。多くの保護者の方は、夏休み中子どもと接する時間が増え、食事の用意などの育児負担も増えます。子どもと一緒に過ごせる時間が増えることは楽しいことでもありますが、ずっと子どもと過ごすことにストレスを感じてしまう保護者の方もいるかもしれません。そんな時、次のようなことを意識してみましょう。◇完璧を求めず時々手を抜くことも許容する「夏休み、しっかり計画だてて有意義にしよう!」と意気込むのは大切ですが、あまりに完璧な計画を立ててしまうと、計画倒れに終わってしまったり、親自身が疲れてしまったりすることもあります。時にはパートナー、祖父母、ご近所づきあいをはじめとした周りの人に頼るなどして、親もリラックスできるように心がけましょう。◇子どもに元気がありすぎて、家にいるのがストレスな場合、外で発散させる子どもによっては、元気が有り余っていて家にいるのがストレスで、外出したがったり、家の中で騒いでしまったりすることもあると思います。そんな子どものストレスは、やはり外で発散させることが一番です。発達障害のある子どもの場合、その特性を理解したうえで、子どもがのびのびできるような場所を一つでも見つけることが大切です。学校開放や学童、児童館をはじめ、夏なら福祉センターのプールなどもおすすめです。そのような場所を利用する場合、必ずその場所を使うルールやけが・事故の防止についてしっかり伝えるようにしましょう。また、子どもを連れていくにあたって不安がある場合、事前に施設の職員などに相談しておくとよりいっそう安心できますね。◇一人遊びできる時間をつくる子どもが家で過ごす時間が多い場合、何か1人でも遊べるおもちゃや道具を与えることも一つの手段です。読書好きなら興味のある本、絵を描くことが好きなら落書き帳やぬりえ本などを渡し、家の中でも親子それぞれの時間を過ごすことができるようにするのもおすすめです。学校や幼稚園のない夏休みは、睡眠が不規則になったり、運動不足になったりすることから生活リズムが乱れることが多くあります。発達障害のある子どもの中には、生活パターンが決まっていて、それをきっちり守る傾向がある子どももいれば、時間の感覚を上手くつかめず切り替えができないために生活が乱れやすい傾向がある子どももいます。このような生活リズムに関する困りごとには次のように対応しましょう。◇決まっている生活パターンをできるだけ崩さないようにサポートする発達障害の中でも、自閉症スペクトラム障害の場合、生活パターンが決まっている方が安心でき、本人もそれをきっちり守りたがる子どもが多いと言われています。このような特性を持つ子どもに対しては、今まで送ってきた生活リズムを夏休みに入っても維持することが重要です。予定変更がある場合はできるだけ変更内容を事前に伝えたり、変更があるたびに子どもの様子をよく観察したりすることを心がけましょう。不安やパニックが強く現れたら予定変更の伝え方やサポートの方法を変えて、子どもが少しずつでも変化が受け止められるように支えていくことが大切です。◇夏休みも普段の生活リズムを維持できるようにする生活リズムが乱れることによって、体調を崩す原因になったり、新学期が始まった時に元の生活になかなか戻れなくなったりする可能性があります。基本的に、夏休みに入っても学校や幼稚園がある日と同じ生活習慣を続けることが重要です。起床・就寝時間や昼寝の時間など、睡眠は特に生活リズムが崩れるきっかけになりやすいので気をつけるようにしましょう。また、夏は暑いため冷房の効いた室内で過ごす時間が増える子どもも多いと思います。ですが、それがきっかけで運動不足になって食欲や睡眠に悪影響が出ることもあります。暑いからといって家の中に居続けるだけでなく、夏のイベント参加も利用しながら適度に体を動かすことを心がけましょう。上野 一彦、月森 久江著『ケース別 発達障害のある子へのサポート実例集 小学校編』ナツメ社/2010ここでは自閉症スペクトラム障害(ASD)、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、学習障害(LD)の3つに関して、親と子どもが夏休みの時期に抱えやすい困りごとについて挙げていきます。◇自閉症スペクトラム障害(ASD)自閉症スペクトラム障害の特徴として、対人関係・社会性やコミュニケーション能力に障害があり、物事への強いこだわりが挙げられます。また感覚が過敏(または鈍麻)であったり、柔軟に思考することや変化に対処することが難しかったりするという特徴もあります。夏休み期間では、次のような困りごとが起こることがあります。・やるべきこと(宿題など)へ取りかかるための切り替えが難しい・自由な時間に何をしてよいかわからない・好きなことだけをひたすらやり続けてしまうなど◇ADHD(注意欠陥・多動性障害)ADHD(注意欠陥・多動性障害)は、不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状があります。ADHDの子どもは夏休みの間、このような困りごとが考えられます。・夏休みの宿題に取りかかろうとしても集中できない・することがなく、ずっと家にいるとイライラしてしまう・ケガや事故を顧みない行動をしてしまうなど◇学習障害(LD)学習障害は、全般的な知的発達に遅れはありませんが、読む・書く・聞く・計算などのある特定分野における理解・能力取得に極端な困難さがあります。学習障害の子どもは、その特性上、やはり夏休みの宿題に困ってしまうケースが多いようです。・夏休みの宿題を自分の力で進めることができない(計算ドリル、漢字書き取りワークなど)・特性ゆえに不得意な教科の宿題をやる気になれない・絵日記や作文などで上手に物事を整理して書き出すことが難しいなど発達障害がある子どもの場合、上記のような要因から困りごとが生じることがありますが、その子の特性を理解し、なぜその困りごとが起きるのかを考えることで、うまくいくことも多いのです。環境を調整したり、子どもへの接し方を変えたり、スキルトレーニングをしたり、さまざまな工夫をすることで、夏休みの悩みが軽減できるかもしれません。これから、発達障害の子どもとその親が抱えやすい具体的な困りごとと、その対処法を5つ紹介します!発達障害は人それぞれ特性や症状の程度に差があります。また、いくつかの発達障害を合併している人もいるため、全ての子どもにこのような症状・困りごとがあてはまるわけではないということに注意が必要ですが、その子に合う方法をぜひ探してみてください。【困りごと1】夏休みの計画がうまく立てられない出典 : 夏休みは1日のほとんどを子どもと過ごすというと、何かと不安や心配を感じる保護者の方も多いと思います。ですが、夏休みは自由な時間が多いだけに、子ども自身の生活力や自主性をトレーニングするチャンスでもあります。夏休みでもメリハリをつけた生活をするためには、発達障害の子どもに合わせた計画づくりを工夫することがポイントです。計画を立てる際には、具体的に次のようなポイントを心がけてみましょう。発達障害のある子どもは、「いつ何をするのかがわからないと不安」「生活における一つひとつの工程(着替える、顔を洗う、朝ごはんを食べる…)を頭の中で順序立てることが苦手」「時間の流れがうまくつかめず、作業を切り上げることができない」というように、生活のちょっとした場面でも困り感を抱くことが多くあります。そんな子どもたちのために、1日の予定が視覚的にわかるような予定表をつくることをおすすめします。写真やイラストを入れることで1日の中でやるべきことをパッとイメージすることができ、多くの自由な時間がある夏休みも生活リズムを崩さずに暮らすことが見込めます。特に夏休みは学校や幼稚園などへ行く時間などを気にする必要がなくなるので、いつもより時間をかけて、予定表に沿った行動が取れるように見守っていきましょう。目で見てわかりやすい予定表ってどのように作ればいいの?と感じている方は、次のコラムやアンケートの声を参考にしてみてください。【先輩教えて!】夏休み、30日もどうすればいい?起床時間やお手伝い、宿題…みんなの工夫を大募集!発達障害、特に自閉症スペクトラム障害の子どもは、前もって決められていた予定が変更になるとパニックになってしまったり、うまく切り替えることができなかったりすることがあります。予定表をつくったとしても、何かしらの予定変更を余儀なくされることもあるかと思います。その変更を急に子どもに伝えてしまっては、パニックや癇癪の原因になることもあります。ですので、予定変更が分かり次第、できるだけ早く子ども自身がわかりやすい方法で子どもに伝えるようにしましょう。変更点を子どもの目につく場所に書いて貼ったりするなどの工夫もおすすめです。時間のある夏休みに計画を立てることは大事、とは言っても、毎日予定をたくさん詰め込み過ぎていると、親の負担やストレスが溜まってしまうこともあります。また、夏休みの宿題など、家庭である程度の期限を設けたとしても、子どものその日の体調やモチベーションによっては、立てていた計画が崩れることも十分に考えられます。夏休みの計画を立てるうえでは、ある程度余裕をもたせて、無理のない計画を立てるということも大切です。親も子どもも無理のない範囲で夏休みの見通しをもつ、ということを心がけましょう。【困りごと2】自由な時間の過ごし方がわからない出典 : 発達障害の特性を持つ子どもにとって、何もすることがなかったり、何をすればよいのかわからなかったりする時間は苦痛に感じることが多いと言います。自由な時間には自分の好きに遊べばいい、と思ってしまいがちですが、発達障害の特性がある子どもの中には自分の自由に過ごすということがわからず、戸惑ったり苦しくなったりすることが少なくありません。この困りごとには対処法が3つ考えられます。【困りごと1】で紹介したようなスケジュール作りをもとに、することがなくなりそうな時間を事前に把握してみましょう。そしてその時間を読書やお絵描きなど1人遊びの時間、家族とお手伝いをする時間などに割り当てておくと、自由な時間にすることがわからないというような子どもの安心感につながります。子どもの自由な時間にお手伝いをお願いしてみると、自由な時間によって感じる苦痛を減らせるだけでなく、役割や仕事を与えられる嬉しさから積極的にお手伝いしてもらえるかもしれません。そしてそれが生活するための力を伸ばし、自信をつけることにつながることも多くあります。ある程度まとまった時間が空いてしまう場合は、子どもにあった習い事をさせてみるのもおすすめです。発達障害の特性がある子どもには、水泳、ピアノなどの音楽、絵画、習字のような自分のペースで取り組むことができ、勝ち負けがあまり明確でない習い事が向いていると言われています。習い事の教室の雰囲気や先生の性格、子どもの特性に対してサポートしてもらえるかを確認したうえで、子どもに取り組ませてみるのも良いでしょう。田中康雄/著『イラスト図解 発達障害の子どもの心と行動がわかる本』 西東社/2014【困りごと3】夏休みの宿題がスムーズにできない出典 : 勉強への集中力が続かない、夏休みの期間内で計画的に宿題を進めることが難しい、読み書きや計算が苦手でうまく進められないなど、夏休みの宿題に関しては子どもだけでなく親も困ってしまうことが多いかと思います。国語や算数などのドリルやワーク・プリントを進めるうえでまず大切なのは、ドリルやワークのやらなければならない部分がどのくらいあるのかを目に見えるように示すことです。全体像を把握することで、これだけの量を夏休み中にこなさなければいけないんだ、と子どもにとっても実感がわくので、取り組みやすくなることが多いです。また、ドリルやワークの場合、1日に取り組む分をきちんとできたらシールを貼ってあげるなど、達成した際のちょっとしたご褒美をあげるという工夫もおすすめです。自由研究はこれといったテーマが決まっていないことが多いため、子どもが興味を持ち、熱中して取り組めるように子ども自身の特性や関心に合ったものを選択することが大切です。科学や工作の子ども向けワークショップなど、夏休みには各地で自由研究にも生かせそうなイベントが多く開催されています。そのような場に出かけるついでに自由研究のネタ探しをするのもよいですね。読書感想文や絵日記、作文などは「本を読む気になれない」「いきなり書き出しては上手く書けずイライラしてしまう」、などなかなか手をつけづらくなってしまうことも多いかと思います。そのような場合の対策として、文章を書くための工程を細かくわけ、ステップを一つひとつクリアしていくうちに完成できるように子どもに声かけすることをおすすめします。例えば読書感想文の場合は次のようなステップで挑戦してみるのはいかがでしょうか。1.読んでみたいと思う本を図書館や書店で探す2.本を一通り読む(この際も、子どもが熱中して読めるようであれば子どものペースに委ね、どこまで読んでよいかわからない様子であれば1日に○章まで読む、などゴールを設定してあげると良いですね。)3.読んだ本の中でお気に入りの部分(ページ、セリフ、絵など)を書き出してみる4.読んだ本のタイトル、どんな内容だったかを作文用紙の初めに書けるだけ書いてみる5.お気に入りの部分を紹介、またどうして気に入ったのか書いてみるこのように小さなステップを設けて1つずつ子どもに挑戦させてみると、何をやればよいかわからないストレスが解消され、またステップを積み重ねるたびに子どもの自信にもつながります。夏休みの宿題を進める方法に関しても、子どもによって合うものと合わないものがあります。他の保護者の方がおすすめしている方法なども参考にしつつ、自分の子どもに合った方法を見つけていくことも大切です。【先輩教えて!】夏休み、30日もどうすればいい?起床時間やお手伝い、宿題…みんなの工夫を大募集!夏休みの宿題を親子でやりきるアイデア大募集!実践の工夫や、エピソードを教えて【困りごと4】きょうだいげんかが起きてしまう出典 : きょうだいがいる家庭は、子どもたちがみんな家にいることが多くなるため、どうしてもきょうだいげんかが増えることがあります。きょうだいげんかが頻繁に起きてしまうと、その度に親が仲裁に入らなければならなかったり、家の中の雰囲気が悪くなってしまったり、時にはけがの原因になったりすることがあります。きょうだいげんかによる子どもや親のストレスを和らげるためには、次のような工夫が考えられます。きょうだい同士が常に一緒にいると、どうしてもけんかも増えてきてしまいます。祖父母をはじめ、親戚や友達の家にきょうだい一人ずつ遊びに行かせてもらう機会をつくるなど、時にはそれぞれが1人で過ごす時間を設け、のびのびと過ごせるように工夫しましょう。【困りごと5】夏の思い出作りに何をしてあげればよいかわからない出典 : 発達障害の子どもをもつ保護者の方の中には、「せっかくの長期休みだから親子で外に出かけて、一緒に楽しい思い出を作りたい、でもお出かけの道中や目的地で子どもが疲れたり、辛くなってしまったりするかもしれない…」と悩んでいる方も少なくありません。そんな子どもとのお出かけについての不安や心配については、次のようなことを心がけてみてください。発達障害の子どもとお出かけするときは、事前に目的のイベントや施設に発達障害の特性がある子どもへの配慮やサポートがあるのかを確認することが大切です。また、子どもが楽しく元気にお出かけできるよう、子どもの特性から予想される困りごととその対処法を考えておくことも重要と言えます。発達ナビでも、障害のある子どもや、発達が気になる子どもへの配慮・サポートのある夏の子ども向けイベントを紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。また、どこかへ外出することももちろん夏の思い出になりますが、そこまでお出かけする時間・余裕がない…という方は、家の中で思い出作りをしてみてはいかがでしょうか。例えば子どもの食べたい料理やお菓子を一緒に作ってみたり、市販されている科学キットや工作キットなどを一緒に作ってみたりするなど、家の中でもちょっとしたイベントをするような感覚で、子どもとの思い出作りを楽しんでみることもおすすめです。まとめ出典 : 夏休みはおよそ1ヶ月もある、長い休暇期間です。夏休みならではのイベントや長期休みならではの過ごし方を楽しみにしているご家庭も多いのではないでしょうか?ですが同時に、学校や幼稚園がないだけに生活リズムの乱れや、子どもと過ごす時間の長さから、親の負担が大きくなってしまうこともあります。発達障害がある子どもの場合、子どもの特性を把握したうえで、夏休みに生活や体調が崩れないようにどう工夫するか考えたり、対策を知っておいたりすることが重要です。親子で元気いっぱいに楽しく夏休みを過ごせるよう、子どもに合わせた工夫を考え、試してみましょう!
2017年08月07日些細な失敗で「死んでしまいたい」と口走る息子出典 : 先日、自閉症スペクトラムの診断が下りている息子と並んで歯磨きをしていた時のことです。私の真似をして舌磨きをする息子に、「力を入れ過ぎると、舌にある味蕾(みらい)っていう細胞が傷ついて、味がわからなくなったりするかもしれないんだって。だから気をつけてそっとやるんだよ」と声をかけました。「えっ、味がわからなくなるかもしれないの?」と言いながら息子は静かにキッチンへと消え、その直後に娘の「やめてよっ!」という怒鳴り声と、夫が息子を叱る声が聞こえてきました。どうやら、娘が氷を入れて飲もうと準備していたコップの水を、息子が勝手に飲んでしまったようなのです。パニックを起こし、「だって!!!味がわからなくなってたら困ると思って!!!早く確かめなきゃ、味が、味がぁぁぁ!!!」と泣き叫ぶ息子。息子の行動には、どんな気持ちが潜んでいたのでしょうか。一旦キッチンから寝室へ息子を移して気持ちを落ち着かせた後、息子とじっくり話をすることにしました。「いったい、どんな気持ちだったの?」「お姉ちゃんなんか、殴ってやりたいと思った」私にはその怒りの根底には別の気持ちが潜んでいることが感じ取れました。「どうしてそう思ったの?」「だって味が分からなくなったら大変なのに怒るから」どうやら、味が分からなくなるって言われたことを必要以上に真に受け、怖くなってしまったようです。そのため、いてもたってもいられず、娘の用意した水をとっさに飲んでしまったということのようです。「そうか、味が分からなくなったらどうしようと思って怖かったのね。でも、あなたにそんな事情があるってお姉ちゃんもパパも知らないから、突然やって来てお水を飲まれたらやっぱり怒っちゃうよね。先にきちんと事情を話していたら、きっと『早くこれを飲んで確かめてごらん?』って言ってくれてたと思うよ」しかし、その言葉を受けめることはできなかったようで、「もう、僕は、なんてバカなんだ!僕なんて死んでしまえばいい!」と叫んで、息子はまた泣き出してしまいました。終わってしまえば、ささいな間違いなのに出典 : いつもは温厚な性格の息子が、他人を恨んだり、自分自身を傷つける言動をする回数が、ここのところ増えてきたのが気になっていました。いい機会なので、ゆっくり息子と向き合い、失敗の受け止め方について話してみることにしたのです。「朝起きてから夜眠るまで、人はいろんな選択をして、いろんな行動をとっているから、大人でも子どもでも絶対に間違っちゃうことがあるの。何万という行動や選択のうち、たった一つを間違えたからといって絶望したり他人を恨んだりしなくていいんだよ。誰だって間違うの。ママも毎日たくさん間違ってるよ」「間違ったって気がついたときはね、単純に『あ、間違った!』って思えばいいんだよ。そうして周りを見回して、誰かに迷惑をかけたり辛い思いをさせてしまったと思った時は、きちんとごめんなさいの気持ちを伝えよう。たった一つ間違えたからって、誰もあなたを否定したりしないよ。みんなが大切にしている君を、君自身が粗末に扱わないでほしいの」そんな話をして「確かにママも間違ってるね。うっかりさんだもんね」と息子が少し落ち着いた頃に、夫が息子に謝りに来ました。「いつもは『これ飲んでもいい?』と声をかけて了解を得てから飲んでいる君が、どうしてあんな行動を取ったのか、事情も聴かずに怒って悪かった。きちんと君の意見を聞くべきだった。ごめんな」「パパが謝った!」と驚きを隠せない息子に、ようやく笑顔が戻りました。「あ、間違った!」と思ったときには素直にその気持ちを伝えるという良いお手本を見せてもらって、息子もようやく娘に「勝手に飲んでしまってごめんね」と伝えることができました。2年後、3年後の成長を見すえて今が踏ん張りどころ出典 : ここ最近、怒りや悲しみを表現することが増えてきた息子。でもそれは成長の証でもあるので嬉しくも思います。しかし、自分の気持ちや衝動を制御していくことは、自然に何かを学ぶということが難しい息子にとって大きな課題となってゆくはずです。ここからは丁寧にひとつひとつ状況や感情を整理しながら息子と向き合っていく必要があると感じています。我が家ではこれまでも、怒りを抑えることができないアスペルガーの娘と、どうすれば自身が楽になるのか話し合うことを続けてきました。そして2年の月日が流れ、娘は同一人物とは思えないほどの変化を遂げることができたのです。とはいえ、決して平たんな道ではないあの作業をまた繰り返していくのか・・・と思うと少し気が遠くなったりもしますが、おそらくここが踏ん張りどころです。息子が自分自身の気持ちの変化をきちんととらえ、自分も周囲も楽しく過ごすことができるように、私は子どもをよく観察し時間をかけて子どもの気持ちを聞き出し工夫を重ねていくことが必要なのでしょう。その子どもに寄り添いともに歩いていく時間が、きっと子どもたちを安定させてくれると信じて、私は今日も子どもたちと向き合っています。発達障害のある子供にとっては決して生きやすいとは言えない世界。いつか子ども自身がその世界を上手く泳いで行けるように、一緒にステキな泳ぎ方を見つけられるといいですね。出典 :
2017年08月06日障害者総合支援法の自立支援給付とは?出典 : 障害者総合支援法が定めるサービスには、大きく「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の2つの種類があります。自立支援給付は、利用するサービス費用の一部を行政が障害のある方へ個別に給付するものです。具体的には、障害に関する医療や福祉サービス、福祉用具(補装具)などの費用が給付されます。自立支援給付の基本的な運用ルールは、国(厚生労働省)が定めます。これに対し、地域生活支援事業は、国が一律に運用ルールを定めるのではなく、障害のある方がお住まいの各地域で運用ルールを定めて実施した方が実情に応じた対応を期待できる事業や、一般的な相談対応のように個別の給付には当たらない事業をまとめたものです。例えば1人では外出が困難な方への付き添いを提供する「移動支援」や、手話通訳者や要約筆談ができる人を派遣・設置する「コミュニケーション支援」といった事業が挙げられます。詳しい法律の概要やサービスの内容などは次のリンクを参考にしてください。この記事では、自立支援給付の利用申請方法・利用負担額を詳しく解説していきます。障害者総合支援法の給付サービスの申請方法出典 : 自立支援給付の利用手続きはサービスごとに申請方法が異なります。それぞれの申請方法を詳しくご紹介します。障害福祉サービスには「介護給付」と「訓練等給付」の2種類があり、それぞれ申請の流れが多少異なります。介護給付を希望する場合は障害のある方の生活環境を踏まえ、どのような支援をどの程度必要とするかといった度合いを測る「障害支援区分(以下、支援区分)認定」を受けることが必要になります。訓練等給付を希望する場合には原則として支援区分の認定は不要ですが、共同生活援助(グループホーム)を利用する場合には、支援区分認定が必要となります。支援区分は、7段階の区分に分かれ、もっとも支援の必要性が高い区分が「6」、以下「5・4・3・2・1」と続き、もっとも支援の必要性が低い場合は「非該当」となります。支援区分は7段階の区分に分かれ、もっとも支援の必要性が高い区分が「6」、以下「5・4・3・2・1」と続き、もっとも支援の必要性が低い場合は「非該当」となります。この支援の必要性の区分によって、支給されるサービスの時間に違いが出てきます。一部のサービスは支援区分が低いと利用できないこともあります。以下が申請からサービス利用までの流れです。1. 市区町村の障害福祉担当窓口へ申請申請の際には、状況に応じて障害者基礎年金1級の受給の有無や介護保険申請の状況などを聞かれる場合があります。2. 障害者支援区分認定調査市区町村の認定調査員による面接が行われ、全国共通の質問票から心身の状況に関する80項目と状況の調査が行われます。詳しくは次のリンクをご覧ください。参考:障害者総合支援法における「障害支援区分」の概要|厚生労働省3.一次判定認定調査の結果に基づき、コンピューター判定が行われます。4.二次判定一次判定の結果と状況調査、医師意見書などを踏まえ、市区町村が主催する、支援区分や特別な支給決定(必要とするサービス量が基準よりも多い支給決定など)を審議する「審査会」で二次判定が行われます。医師意見書とは、医師が申請した方の心身の状態、特別な医療などに意見を付すものです(市区町村が依頼します)。5.障害区分認定二次判定の結果に基づき、非該当、区分1~6の全7段階で支援区分認定が行われます。各サービスの区分ごとのサービス量は上記のリンクを参考にしてみてください。6.サービス利用意向の聴取・サービス等利用計画案の提出支援区分の認定と並行して、市区町村から福祉サービスの利用等に関する計画(サービス等利用計画、または障害児支援利用計画と呼びます)の案を提出するように求められます。サービス等利用計画案、障害児支援利用計画案は市区両村から指定された特定相談支援事業者、障害児相談支援事業所が作成しますが、申請者自身による作成も可能です(申請した方自身が作成する計画をセルフプランと呼びます)。7.支給決定支援区分や本人の状況、家族・家庭の状況、現在の困りごとや将来に向けた希望、福祉サービスの利用意向、サービス等利用計画案などを踏まえてサービスが支給決定され、受給者証が申請者に通知されます。8.サービス担当者会議申請した方が利用する全サービスの担当者(サービス管理責任者)が出席し、利用する方に適したサービス提供のあり方や、事業所ごとに作成する「個別支援計画」の方向性などについて話し合われます。9.支給決定時のサービス等利用計画の作成市区町村の支給決定やサービス担当者会議での案協議をもとに、最終的なサービス等利用計画を作成します。(セルフプランの場合には、8・9が省略されることがあります)10.サービスの利用開始申請した方はサービスを提供する事業所と利用契約を結び、サービスの利用を開始します。サービスの量や内容については、サービス利用開始後であっても必要に応じて見直すことができます。Upload By 発達障害のキホン自立支援医療には、育成医療・更生医療・精神通院医療があります。育成医療は身体障害のある子ども向け、更生医療は身体障害のある方向け、精神通院医療は精神疾患があって定期的に通院している方向けに、医療の給付を行うものです。利用手続きに関しては市区町村ごとに異なるため、最寄りの市区町村または都道府県窓口に問い合わせてください。申請の際には下記のような事項や持ち物が必要になります。育成医療: 申請書、所得が確認できる書類、医師の意見書など更生医療: 身体障害者手帳精神通院医療: 指定医療機関の中から通院先を決めておくこと車いすや義足、補聴器や白杖などの補装具を製作・修理する際に要する費用の給付を「補装具費」と呼びます。補装具費の給付を受けるためには、障害のある子どもの保護者または障害のある本人が、お住まいの市区町村に申請します。市区町村は医師の意見書による身体障害者更生相談所の判定・意見を依頼し、補装具の製作や修理が必要かどうか決定し、給付が認められると補装具費支給決定通知書、補装具費支給券が発行されます。その後、補装具業者と製作・修理の契約を結び、完成品を受け取るとともに利用者負担(原則1割負担)を支払うことになります。障害者総合支援法の自立支援給付、利用者負担額はいくら?出典 : 障害者総合支援法の障害福祉サービスを利用した際の利用者負担は、原則として「1割」です。ただし、世帯ごとの前年度所得に応じて負担額の月額上限が定められているため、その金額以上の自己負担は生じないことになっています。利用月額が0円に免除される場合もあります。特に、生活保護を受けている世帯や住民税が非課税の世帯については、利用者負担はありません。世帯の範囲には、障害がある大人の場合は利用する本人と配偶者が含まれ、本人と配偶者の前年度所得を参考に負担額を決定します。親の所得は本人の前年度所得には換算されないことになっています。障害がある子どもの場合は、保護者の属する住民基本台帳での世帯が範囲となります。月額上限負担額の目安として、下記を参考にしてみてください。■障害者の利用者負担・生活保護受給世帯・・・0円・市区町村民税非課税世帯・・・0円・前年度所得約300万円以上~約600万円以下の方・・・9,300円・前年度所得約600万円以上・・・37,200円以上が障害のある方に提供している障害福祉サービスの利用者負担額になります。ただし、サービス事業所やグループホームなどで発生する食費、光熱費、交通費などの生活費などは別途に自己負担となります。出典:障害者の利用者負担|厚生労働省出典:障害福祉サービスの利用について|厚生労働省自立支援医療の場合には、下記の条件に当てはまる方であれば、0円~20000円までの月額負担上限となります。下記の条件に当てはまらない場合は原則1割負担となっています。また、入院時の食事療養費又は生活療養費(いずれも標準負担額相当)については原則自己負担になります。・生活保護世帯・・・0円・市町村民税非課税世帯で本人収入が80万円未満・・・2500円・市町村民税非課税世帯で本人収入が80万円以上・・・5000円・市町村民税を33000円以上納めている・・・育成医療の経過措置5000円・市町村民税を33000円未満から23.5万円以下納めている・・・育成医療の経過措置10000円・市町村民税を23.5万円未満以上納めている高額治療継続者・・・20000円自立支援医療における利用者負担の基本的な枠組み補装具費の利用者負担額は原則1割です。ただし世帯の所得に応じて負担上限額が設定されています。・生活保護世帯・市町村民税非課税世帯・・・0円・それ以外の世帯・・・37,200円また、補装具費については障害者本人または世帯が一定所得以上(市町村民税所得割の最多納税者の納税額が46万以上)の場合、給付対象外となります。また、例えば補装具を購入すると世帯の所得状況によっては生活保護の対象になってしまう場合があります。それでは本末転倒ですので、その場合は利用者が負担する費用は生活保護の対象とならない範囲まで減免することになっています。出典:補装具の利用者負担|厚生労働省障害者総合支援法が定める、医療費や食費の免除・減免制度出典 : 障害者総合支援法では条件を満たした方に向けて、生活費や医療費など別途利用料金を超えてかかった費用を免除する制度があります。■障害のある人向けの費用免除と上限・療養介護を利用する場合は、医療費と食費の軽減措置があります・入所サービス、通所サービスを利用する場合、食費・光熱費実費負担に対して減免・軽減する制度があります・グループホームの利用者向けに家賃助成する制度があります■世帯での合算額が基準額を超える場合の高額障害福祉サービス給付費同一世帯に障害福祉サービスを利用する方が複数いる場合や障害児が障害者総合支援法と児童福祉法のサービスを利用している場合などに利用者負担の合計額が一定の額を超えるとき、高額障害福祉サービス給付費が支給され利用者負担額が軽減されます。費用免除や上限、高額障害福祉サービス費についての詳しい内容は次の資料を参考にしてみてください。障害福祉サービスの利用について|厚生労働省まとめ出典 : 障害者総合支援法の給付支援における申請方法は、サービスごとに異なります。また障害福祉サービスの中でも介護給付、訓練等給付によって異なるため、複雑に捉えがちです。とはいえ、ほとんどのサービスは市区町村の障害福祉担当窓口で所定の書類への記入や提出を行えば、その後はある程度まで役所がリードしてくれますから、大まかな仕組みを把握していれば問題ないでしょう。また利用者負担額についても、給付を受ける人や世帯の収入に応じて市区町村が設定しますので、細かいルールまで把握する必要はありません。実際の運用ルールは複雑な総合支援ですが、手続きなどで迷ったらお住まいの市区町村の障害福祉担当課や市区町村から委託されている基幹相談支援センターや委託相談支援事業所へ相談してみましょう。
2017年08月04日障害者総合支援法とは?出典 : 障害者総合支援法とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」の通称で、障害がある方もない方も住み慣れた地域で生活するために、日常生活や社会生活の総合的な支援を目的とした法律です。障害がある子どもから大人を対象に、必要と認められた費用の給付や貸与などの支援を受けることができます。制度の実施主体は市区町村、都道府県などの行政機関となります。参考:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律障害者総合支援法が定めるサービスには、大きく「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の2つの種類があります。自立支援給付は、利用するサービス費用の一部を行政が障害のある方へ個別に給付するものです。具体的には障害に関する医療や福祉サービス、福祉用具(補装具)などの費用が給付されます。自立支援給付の基本的な運用ルールは、国(厚生労働省)が定めます。これに対し、地域生活支援事業は、国が一律に運用ルールを定めるのではなく、障害のある方がお住まいの各地域で運用ルールを定めて実施した方が実情に応じた対応を期待できる事業や、一般的な相談対応のように個別の給付には当たらない事業のことをまとめたものです。例えば1人では外出が困難な方への付き添いを提供する「移動支援」や、手話通訳者や要約筆談ができる人を派遣・設置する「コミュニケーション支援」といった事業が挙げられます。また、障害のある方の日中活動を支援する「地域活動支援センター」や、生活自立度が高い人へ住まいの場を提供する「福祉ホーム」などの運営も、地域生活支援事業の枠組みに含まれています。障害のある方の生活スタイルは地域によってさまざまですので、地域生活支援事業のサービス内容も都道府県・市区町村によって異なります。地域生活支援事業には、相談支援も含まれます。お住まいの地域で提供されているサービスにどんなものがあるのか?給付支援を受けたいけれど条件は満たしているのか?などといった福祉サービスの利用に関することから、一般的な生活上の相談まで、さまざまな相談に応えます。障害福祉サービスの 利用について|全国社会福祉協議会障害者総合支援法に基づくサービスの利用対象は以下のように定められています。障害者手帳がなくても、医師の診断書により障害や定められた疾患のあることが確認されれば、利用対象となるケースもあります。・身体障害者・・・身体に障害がある18歳以上の人で、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けている人・知的障害者・・・障害者福祉法にいう知的障害者のうち18歳以上の人・精神障害者・・・統合失調症、精神作用物質による急性中毒、またはその依存症、知的障害、精神病室などの精神疾患を持つ人(知的障害は除く)・発達障害者・・・発達障害があるため、日常生活や社会生活に制限がある18歳以上の人・難病患者・・・難病等があり、症状の変化などにより身体障害者手帳を取得できないが、一定の障害がある18歳以上の人・障害児・・・身体障害、知的障害、発達障害を含んだ精神障害がある児童、または難病等があり、一定の障害がある児童参考文献:遠山真世,二本柳覚,鈴木裕介/著『これならわかるすっきり図解障害者総合支援法』2014年 日経印刷/刊障害者総合支援法の自立支援給付で受けられる3つの給付サービス出典 : 自立支援給付には大きく障害福祉サービス(介護給付・訓練等給付)、自立支援医療、補装具という3つの給付があります。障害福祉サービスはさらに「介護給付」と「訓練等給付」の2類型へ分類されます。介護給付とは、障害があることで必要となる介護・介助サービス費用の一部を給付するものです。訓練等給付とは、就労に向けた訓練や福祉的な就労、安定した就労を支援するサービス、あるいはグループホームなど費用の一部を給付するものです。■介護給付・居宅介護(ホームヘルパー):食事や入浴、トイレなどの介助を提供します。・重度訪問介護:重度の肢体不自由や重度の障害のために常時の介護や見守り、外出支援などを必要とする方に、長時間の総合的な支援を提供します。・同行援護:視覚障害により自力での移動が難しい方に対して外出時の支援を提供します。・行動援護:行動障害があることで外出時などの支援が必要な方に対して、危険を避ける、先の見通しを立てる、コミュニケーションを仲立ちするなどの支援を提供します。・重度障害者等包括支援:最重度の障害(原則として障害支援区分が最重度の「6」であること)があり、常時の介護を必要としている方に対して、居宅介護や短期入所、生活介護など複数の介護サービスを組み合わせて提供します。・短期入所(ショートステイ): 障害のある方を介護している家族などの病気や所要、一時的な休養などのため、短期間、施設に入所するサービスを提供します。・療養介護:医療的ケアと介護を常に必要とする方に対して、医療機関などで医療サービスや介護、介助などをトータルに提供します。・生活介護: 日常的な介護や見守り、生活支援などを必要としている方(原則として障害支援区分「3」以上であること)に対して、日中の介護、介助や見守り支援を行うほか、創作的活動や生産活動、地域との交流活動などを提供します。・施設入所支援:重度の障害のある方(原則として障害区分「4」以上であること)に対して、施設内での夜間の介護、介助や見守り支援などを提供します。■訓練等給付・自立訓練: 障害のある方が地域で自立した生活を送ることができるよう、身体機能と生活能力の向上を目指した訓練を提供します。自立訓練には機能訓練と生活訓練の2種類があります。・就労移行支援: 一般企業での就労や、自ら企業することを希望する方に対して、就労や企業に必要な知識・能力の向上を図る訓練を提供しています。・就労継続支援: 一般企業などで働くことが難しい方に対して、福祉的な支援を受けながら働く場所を提供し、就労に向けた知識・能力の向上を目指す支援を提供します。就労継続支援には、雇用契約を結び最低賃金の支払いを原則とする「A型」と、雇用契約は結ばずに軽作業などを中心とする「B型」の2種類があります。・共同生活援助(グループホーム):標準的には5名程度(最大でも10名)の共同生活を行う住居において、相談や日常生活上の援助、食事や入浴、トイレなどの介護サービスを提供します。グループホームから一般住宅の生活に移行を目指す人を対象とした「サテライト型」もあります。自立支援医療とは、心身の障害の状態に対応した医療に対して、医療費の自己負担額を軽減する医療費の公費負担制度です。障害者自立支援法の成立以前はそれぞれ身体障害者福祉法に基づく「更生医療」、児童福祉法に基づく「育成医療」、精神保健福祉法に基づく「精神通院医療費公費負担制度(32条)」と、各個別の法律で規定されていました。これらを一元化した新しい制度として自立支援医療制度が創設されました。よって根拠となる法律はそれぞれの法律におきながらも、障害者総合支援法のもとで給付が行われるようになりました。給付には市区町村等で自立支援医療費支給の認定(支給認定)を受ける必要があります。・育成医療:身体障害のある子どもを対象に、障害を改善、軽減することで生活の能力を得ることが期待される治療に対して医療費の自己負担を軽減するものです。・更生医療:身体障害者を対象に、障害を改善、軽減することで生活の改善が期待される治療に対して医療費の自己負担を軽減するものです。・精神通院医療:精神疾患(てんかんを含む)の人を対象に、精神科の通院医療にかかる医療費の自己負担を軽減するものです。日常生活を円滑に送るために、身体の欠損や障害を負った身体機能を補完・代替する車いすや装具、義肢や補聴器、白杖などの用具に対して、補装具費(原則として、購入・修理費用の1割)を支給するものです。障害者総合支援法の地域生活支援事業は地域の実情に応じた支援を提供出典 : 地域生活支援事業は都道府県や市区町村が地域の実情に応じてさまざまなサービスや事業を実施するものです。住民に身近な市区町村で実施する地域生活支援事業には、外出時の付き添いを行う「移動支援」や、福祉用具を給付、貸与する「日常生活用具」、手話通訳や要約筆記を派遣する「意思疎通支援」、判断力が十分ではない人が成年後見人制度を利用しやすくするための「成年後見人支援事業」などがあります。地域生活支援事業には市区町村が主体の事業と都道府県が主体の事業があり、都道府県は人材育成や都道府県内の広域な事業を担うことになっています。Upload By 発達障害のキホン■市区町村事業・障害に対する理解促進・啓発・障害のある方や家族が自発的に行う活動の支援・相談支援事業・補助を受けなければ成年後見制度の利用が困難である方への費用助成・手話通訳者、要約筆談者などの派遣・設置・日常生活具の給付または貸付・手話奉仕員養成研修・移動支援事業・地域活動支援センターの設置・運営・福祉ホームの設置・運営・その他の日常生活又は社会生活支援など■都道府県事業発達障害や重症心身障害、高次脳機能障害など、支援に際して高い専門性や広域性が必要とされる障害について、相談に応じ、必要な情報提供を行っています。また手話通訳士や要約筆記者などの意思疎通ができる人材の育成を行っています。障害者総合支援法の相談支援事業は、困った時の強い味方出典 : 障害者総合支援法の下では、さまざまなサービスを組み合わせて支援プランをつくることができます。しかし、実際に利用するとなると、どのようなサービスがあって、自分はどれを受けられるのか、分からない点や不安な点が出てくると思います。その場合は、市区町村の障害福祉担当窓口や市区町村から委託された基幹相談支援センター、市区町村から指定を受けた特定相談支援事業所で相談支援を受けることができます。■基本相談支援障害がある方の福祉に関するさまざまな問題について、障害のある方や家族からの相談に応じ、必要な情報の提供、障害福祉サービスの利用のアドバイスなどを行うほか、成年後見人制度の利用など権利擁護のために必要な援助も行います。窓口は市区町村や市区町村から委託された基幹相談支援センター、市区町村から指定を受けた特定相談支援事業所になります。■計画相談支援・サービス利用支援障害福祉サービスなど申請を行う際に、障害のある方や家族から生活上の困りごとや将来の希望などをうかがい、サービス等利用計画の作成を行います。また福祉サービスを利用する際には、サービス事業者などと連絡調整を行います。窓口は市区町村の障害福祉課または市区町村から指定された指定特定相談支援事業者になります。・継続サービス利用支援支給決定されたサービスの利用状況の検証や生活上の状況確認(モニタリング)を行うとともに、サービス事業者などとの連絡調整を行い、必要に応じてサービス等利用計画の見直しをします。窓口は市区町村の障害福祉課または市区町村から指定された特定相談支援事業者になります。■地域相談支援・地域移行支援障害者支援施設等に入所している障害がある方や精神科病院に入院している精神障害のある方(原則として1年以上入院している方で、市区町村が必要と認める方)を対象に、地域生活へ移行するための支援計画の作成、生活環境が変わることへの不安の解消、外出への同行支援、住居確保、関係機関との調整などを行います。相談窓口は都道府県から指定された一般相談支援事業者になります。・地域定着支援居宅において単身で生活している障害のある方など、地域における安定した暮らしの実現に支援を必要とする方を対象に、常時の連絡体制の確保と、緊急時の対応などの支援を行います。相談窓口は都道府県から指定された一般相談支援事業者になります。■障害児相談支援障害児相談支援は児童福祉法を根拠に障害者総合支援法で実施しているサービスです。・障害児支援利用援助障害のある子どもが利用する障害児通所支援の申請を行う際に、障害児支援利用計画の作成を行います。また福祉サービスを利用する際には、サービス事業者などと連絡調整を行います。窓口は市区町村の障害福祉課または市区町村から指定された障害児相談支援事業者になります。・継続障害児支援利用援助支援決定されたサービスの利用状況の検証や生活上の状況確認(モニタリング)を行い、サービス事業者などとの連絡調整などを行い、必要に応じて障害児支援利用計画の見直しをします。窓口は市区町村の障害福祉課または市区町村から指定された障害児相談支援事業者になります。以上のように障害者総合支援法では、さまざまな相談に応えることができるよう体制を整えています。しかし、指定一般相談支援事業者、指定特定相談支援事業者、指定障害児相談支援事業者と言われても、どこに行って相談すれば良いのか、少々分かりにくいかもしれません。お住まいの市区町村のホームページなどで情報を得たり、または市区町村の障害福祉担当窓口や発達障害者支援センターなどへ問い合わせたりするとよいでしょう。障害がある子ども向けサービスは、児童福祉法で提供されます出典 : 障害のある子ども向けの各種福祉サービスは、児童福祉法に基いて提供されています。これは、平成24年の児童福祉法改正にあわせ、障害があっても「子ども」である以上は児童福祉の枠組みで支援すべきである、という理念を取り入れ、障害児だけが対象の福祉サービスを児童福祉法へ一元化したことによるものです。そのため、障害のある子どもについては、児童期に限定した福祉サービスは児童福祉法、児童も成人も対象となる福祉サービスは総合支援法が適用法令となります。もちろん、利用申請をして支援決定を受ければ、同時に両方のサービスを受けることができます。児童福祉法は子どもの支援に関する法律です。この法律における障害児福祉サービスの対象は障害のある18歳未満の子どもと定義されており、サービスは障害児通所支援と障害児入所支援の2つに分けることができます。支給決定の主体は、障害児通所支援が市区町村、障害児入所支援が都道府県となります。また、児童福祉法における「障害児」の規定には特に障害者手帳の所持が条件となっていないため、サービスの利用に当たり、手帳の有無は問われません。ただし、医師の診断書により障害があることを確認するケースはあります。■障害児通所支援障害児通所支援とは施設や事業所に通所して、日常生活や集団生活を送るために必要な能力を身につける支援を提供するサービスです。児童発達支援、医療型児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援の4種類があります。Upload By 発達障害のキホン詳しくは以下の記事、「障害児通所支援(児童発達支援・放課後等デイサービス)利用手順・施設選びのポイント・申し込み方法まとめ」を参考にしてみてください。■障害児入所支援障害児入所支援とは、療育などの必要性が認められた障害のある子どもを施設に入所させ、自立した生活を送ることができるよう支援するサービスです。障害のある子どもが入所できる施設は全国的にも限られているため、障害児入所支援については都道府県や大規模な政令指定都市などが所管する児童相談所が支給決定しています。障害児入所施設は医療機関を併設しているかどうかによって福祉型障害児入所施設と医療型障害児入所施設の2種類に分類されます。Upload By 発達障害のキホン障害児通所・入所支援を利用するには、通所受給者証または入所受給者証の交付を受ける必要があります。通所受給者証はお住まいの市区町村の福祉担当窓口・障害児相談支援事業所などに申請を行い、サービスの利用が認められ、支給決定を受けると取得できます。入所受給者証は各都道府県や政令指定都市などの児童相談所に申請し、サービスの利用が認められ、支給決定を受けると取得できます。それぞれ、受給者証が交付されたら、指定障害児通所事業所・入所施設などとサービスの利用契約を結ぶことができます。自治体ごとに申請方法が異なりますので、お住まいの地域に確認しましょう。詳しくは以下の記事、「【障害児通所・入所給付費】受給者証の取得方法、体験談まとめ」を参考にしてみてください。まとめ出典 : 障害者総合支援法では一人ひとりの障害特性や生活環境などを考慮しながら、本人に合ったサービスを提供しています。また平成30年に施行される法改正によって、よりきめ細やかなサービスの提供を図るため、障害福祉サービスを取り巻くさまざまな関係者との連携やサービスの質の向上、サービス内容の情報開示などの努力がなされます。以前と比べれば自分に合ったさまざまな支援を受けられるようになり、サービスが充実していけば家族の負担も少しずつ減ってくるでしょう。障害福祉サービスを取り巻く環境は着実に良い方向へと変化しているのではないでしょうか。また、障害のある子どもに関しては、障害者総合支援法だけでなく児童福祉法に基づくサービスなども並行して利用できます。さまざまな支援サービスを組み合わせるなど工夫し、上手に使うことで障害がある方とその家族の地域生活が充実していくことを期待したいところです。
2017年08月04日言語能力は高く見える発達障害の息子。でもその困りごとは意外にも、出典 : 発達障害のある小学1年生の息子はとにかくよくしゃべる子です。興味のあることはあれこれと調べ、それについて一心不乱に話をしてくれます。息子は、大人が話すような難しい話し方をすることが多いため、一見すると言語能力は高く見えます。けれども息子は、幼稚園時代はずっと言語療法を受けていました。それは、自分の言いたいことを一方的に話すことはできても、相手の話を聞きながら、適切な返答をすることが苦手だったからです。言語療法のかいあって、小学校に入る頃には人の話を聞いてきちんと応答する努力ができるようになりました。ただ、意識しないで自然にふるまえるようになったわけではなく、あくまで常に話し方を意識し続けることが必要のようです。私から見ると、友達とのコミュニケーションも特に問題なくできているように思えました。けれどもある日、私と学校の友達について話しているときに、息子が衝撃的なことを言ったのです。「友達は何を話しているのか全然分からない。僕の分かる言葉で話して欲しい。」先生と話せるのに、クラスメイトの輪に入れないのはなぜ?出典 : 友達の話している言葉が分からないという息子の言葉に驚いて、「分からないってどういうこと?だってママとは普通に話してるでしょう。ママの言葉は分からないの?」と聞いたところ、息子はこう言いました。「ママや特別支援の先生たちの言葉は分かるんだ。でも、クラスの友達がワイワイやってる言葉は分からないんだよ…どうしてなんだろう…」息子の言葉を聞いて私はピンと来ました。私や特別支援の先生は、息子に向けて直接言葉を発します。一対一の慣れたコミュニケーションは、息子にとっては話題の推測もしやすく、理解も容易なのでしょう。けれども、クラスの子供たちがワイワイとみんなで騒いでいる言葉は、息子には推測のしづらい言葉なのです。何が飛び出してくるか分からない、どういう流れかもつかめない。そのような中でのコミュニケーションは、日本語であっても息子には理解がしづらいものだったのです。かつて私自身も、初めて海外で暮らしたとき、同じような経験をしたことを思い出しました。先生や特定の大人が話す外国語は理解できるようになっても、クラスメイトたちがワイワイ盛り上がっている場にいくと、途端に何を話しているのか分からなくなってしまうのです。私はクラスメイトたちがワイワイ盛り上がっている場はずっと苦手でした。気付いたら話題から取り残されていて、どのタイミングで会話に入っていけば良いかまったく分からなかったのです。もしかしたら息子にとって、大人数の中でのコミュニケーションの言葉は「外国語」に近いのかもしれない…!と私はこのとき気付いたのでした。日本語が話せる=コミュニケーションができる、という先入観を捨ててみる。出典 : 息子の言語能力を評価する際に、「これだけ日本語が話せているのだから、コミュニケーションもできている」という先入観があったことに気付きました。私とこれだけ話が出来ているということは、他人とコミュニケーションを取ることだって難しくないはずだ…言語能力が高いのだから、他人の話もきちんと理解できているはずだ…私はこんな思い込みを常に持っていたのです。けれども、息子にとって慣れていない友達同士や、対多数との予測不可能なコミュニケーションは、「外国語を聞く」という感覚に近かった。だから、息子はいつも仲間の輪に入ることに大変な疲れを感じていたのです。「この子は今日は一日、外国語の海の中に身を置いていたのか」という気持ちで接すると、息子が帰宅後にぐったりと疲れてしまうことにも、心から寄り添えることができるようになりました。せめて、私や特別支援の先生方だけでも「分かる言葉」を息子に投げかけることができたら。いつも安心できるコミュニケーションの相手でいることができたら。息子は自信を失うこともなく、さらにコミュニケーションの芽を育む助けになれるかもしれません。私はまた一つ、自分が担える大切な役割に気づくことができました。息子との日常の会話、その一つひとつをこれまで以上に大切にして、日々歩んでいこうと思っています。
2017年08月03日障害者総合支援法とは出典 : 障害者総合支援法とは、障害のある方もない方も住み慣れた地域で生活するために、日常生活や社会生活の総合的な支援を目的とした法律です。正式名称は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」ですが、略して「障害者総合支援法」と呼ばれています。この法律に基づき、障害のある子どもから大人を対象に、必要と認められた福祉サービスや福祉用具の給付や支援を受けることができます。実施主体は主に市区町村、都道府県などの地方公共団体です。障害者総合支援法の概要|厚生労働省障害者総合支援法ができたわけ出典 : 障害者総合支援法が施行されるまでには、障害のある人が利用する福祉サービスの利用方法や負担額の決定方法を改正・改善してきた歴史があります。2003年3月まで、障害のある人が利用する福祉サービスの利用内容や利用できる量はすべて行政(都道府県や市区町村)が決定していました。これを措置制度といいます。しかし障害のある人の暮らしぶりを何から何まで行政が決定する仕組みには批判も多くありました。2000年には、高齢者が利用する福祉サービスについては原則として措置制度をやめて「介護保険制度」へ移行したことも受けて、支援費制度が導入されました。これは市区町村から福祉サービスの支給決定を受けた障害のある人が、サービスを提供する事業所を選択し、事業所との契約によって福祉サービスを利用する仕組み(利用契約制度)を取り入れており、大変に画期的なものでした。しかし、支援費制度の導入によりサービスの利用者が増加したこともあり、財源の確保が困難になったほか、地域ごとのサービス提供格差や障害種別(身体障害、知的障害、精神障害)間の格差が生じる問題が発生しました。(支援費制度は精神障害が対象外でした。)これらの問題を解決するために、、2005(平成17)年11月に「障害者自立支援法」が公布されました。しかし法律の理念がないことや、サービスの必要性を図る基準(障害程度区分)が障害特性を十分に反映していないなど、施行当初から問題が指摘されていました。特にそれまでは障害年金が収入の中心であれば自己負担なしだったところ、自立支援法では、サービス利用者に原則として1割の自己負担を設定しました。そのため、収入よりも自己負担額の方が多くなる人も出てしまい、サービスの利用を減らしたり控えたりするケースも発生しました。そこで2010年には自立支援法を改正し、1割の自己負担額を改め、以前のように利用者の収入に見合った自己負担(障害年金が収入の中心であれば自己負担なし)の設定となりました。さらにその後2013年には、「共生社会の実現」や「可能な限り身近な地域で必要な支援を受けられる」といった法の基本理念を定め、福祉サービスを利用できる障害者の範囲を見直して、難病がある方も対象にするなどの改正が行われ、現在の「障害者総合支援法」が成立したのです。なお、障害者総合支援法については、法の施行後3年が経過した時点で内容を見直すことになっており、2016年にさらなる法改正がなされています。改正された障害者総合支援法は平成30年(2018年)4月から施行されることになっています。 NET独立行政法人 福祉医療機構「障害者福祉制度解説」障害者自立支援法から障害者総合支援法改正への改善点4つのポイント出典 : 障害者自立支援法から障害者総合支援法への法改正が行われたことで、いくつかの改善点がありました。今回はその中でも主なポイントを4つご紹介しながら、障害者総合支援法の概要をご紹介します。法改正前の自立支援法では基本理念は設けられていませんでした。法改正によって、障害のある人を権利の主体と位置づける基本理念を定めました。基本理念の設定により、住み慣れた場所で可能な限り必要な支援が受けられることや、社会参加の機会の確保、どこで誰と暮らすかを選べるなど、障害のある人が保障されるべき権利がより明確に打ち出されたほか、障害の有無によって分け隔てられることのない「共生社会」を目指す方向性が示されました。障害者総合支援法の福祉サービスは、こうした理念に基づいて実施されることとなります。第一条の二 障害者及び障害児が日常生活又は社会生活を営むための支援は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、全ての障害者及び障害児が可能な限りその身近な場所において必要な日常生活又は社会生活を営むための支援を受けられることにより社会参加の機会が確保されること及びどこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと並びに障害者及び障害児にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去に資することを旨として、総合的かつ計画的に行わなければならない。支援費制度から自立支援法、そして障害者総合支援法という法制度の変遷は、支援対象となる人が見直されてきた歴史でもあります。かつて支援費制度下では、精神障害のある人は支援の対象ではありませんでした。それが自立支援法の成立によって支援の対象となりましたが、今度は発達障害のある人の位置付けが不明確であることが課題となり、2010年の自立支援法改正で発達障害も支援の対象であることが明確化されました。総合支援法ではこれまで支援が行き届かなった難病等の疾患のある人についても、支援対象者として新たに加わることとなり、サービスを受けられる方の範囲が広がりました。平成29年4月時点で、対象となる疾病は358疾病が対象になっています。詳しくは次の厚生労働省のサイトを参考にしてみてください。障害者総合支援法対象疾病(難病等)の見直しについて|厚生労働省自立支援法では、福祉サービスの利用に際し、障害の程度を測る指標を導入して、サービスの給付決定をしていました。これを「障害程度区分」と呼びます。ただ、主に日常生活行為が「できる」か「できない」かに着目して障害の程度を測っており、例えば食事が自分でできる/できないかだったり、排泄が自分でできる/できないかだったりで、できる項目が多ければ障害の程度は軽く、できない項目が多ければ障害の程度は重いという考え方が基本となっていました。しかし、一口に障害といっても、その実情は一人ひとりさまざまです。日常生活の中でも、自分でできるけれど時間がかかったり、自発的に行えなかったり、症状の調子が悪い時にはできなくなるなど、条件付きで「できる」という方もいます。どの程度生活に支障があるかは人によって異なりますし、「できる」「できない」で障害の程度を判断することは難しいのです。そこで障害者総合支援法では障害程度区分を改めて「障害支援区分」とし、障害のある人それぞれの生活環境を踏まえ、どのような支援をどの程度必要とするかといった度合いを測ることになりました。コンピュータによる一次判定とかかりつけ医の意見書、市区町村の審査会による二次判定によって、障害支援区分を認定することになっています。支援区分は7段階の区分に分かれ、もっとも支援の必要性が高い区分が「6」、以下「5・4・3・2・1」と続き、もっとも支援の必要性が低い場合は「非該当」となります。この支援の必要性の区分によって、支給されるサービスの時間に違いが出てきます。一部のサービスは支援区分が低いと利用できないことがあります。重度訪問介護とは、日常生活上で常に介護を必要とする方に対して、ヘルパーを長時間(最大で24時間)派遣し、訪問介護や身体的な介護や家事の援助、外出の付き添いや生活を送る上での相談や助言などを行う支援です。従来は身体障害者のなかでも重度の肢体不自由者のみが対象でしたが、その他の障害がある方でも提供されるようになりました。具体的には、重度の肢体不自由・知的障害・精神障害により重度の行動障害がある人(行動援護サービスに該当する程度の人)で、障害支援区分が「4」以上の人です。これにより、行動障害がある人も重度訪問介護を活用して一人暮らしするという選択肢が増えたといえます。障害者総合支援法の2本柱は、自立支援給付と地域生活支援事業障害者総合支援法のサービスは、大きく自立支援給付と地域生活支援事業の2種類があります。どちらも市区町村または都道府県が実施主体となっていますが、位置付けには違いがあります。自立支援給付は、国がサービスの類型や運用ルールを定めるもので、障害のある人が福祉サービスを利用した際に、行政が費用の一部を負担するものです。法律上は全体費用の「9割」を給付しますが、住民税が非課税の世帯であれば全額(10割)を給付します。一方、地域生活支援事業は、都道府県、市区町村が主体となって実施するもので、大まかな枠組みは国から示されていますが、サービスの類型や運用ルールは都道府県、市町村が定めています。障害のある方がお住まいの地域で自立した生活を送るために必要な支援のうち、地域の特性に応じて実施するサービスが位置付けられています。自立支援給付に位置付けられているサービスは、障害福祉サービス(介護給付・訓練等給付)、自立支援医療、相談支援事業、補装具の大きく4つです。たとえば障害福祉サービスでいえば、ヘルパーサービスや施設への通所・入所を利用するサービス、就労支援などが挙げられます。詳しくは以下の図をご覧ください。Upload By 発達障害のキホン地域生活支援事業として提供されるサービスには、障害のある人の外出に付き添う移動支援や、福祉用具である日常生活用具の給付または貸与、手話通訳や要約筆記を派遣する意思疎通支援、成年後見制度支援などが含まれます。地域生活支援事業の中には、市区町村が主体の事業と、都道府県が主体の事業があります。都道府県は手話通訳士などの人材育成や都道府県内の広域な事業を担い、市区町村は障害のある人に身近な自治体として、移動支援や日常生活用具の給付、貸与といった利用者にサービスを提供する役割を担っています。詳しい分類は以下の図をご覧ください。Upload By 発達障害のキホン障害者総合支援法は障害者手帳がなくても使える?利用対象は?出典 : 障害者総合支援法のサービスを使うためには、原則として障害者手帳が必要ですが、一部を除いて医師の診断書があれば手帳がなくても使うことができます。障害者総合支援法のサービス利用対象者は次のように定められています。・身体障害者・・・身体に障害がある18歳以上の人で、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けている人・知的障害者・・・障害者福祉法にいう知的障害者のうち18歳以上の人・精神障害者・・・統合失調症、精神作用物質による急性中毒、またはその依存症、知的障害、精神病質などの精神疾患を持つ人(知的障害は除く)・発達障害者・・・発達障害があるため、日常生活や社会生活に制限がある18歳以上の人・難病患者・・・難病等があり、症状の変化などにより身体障害者手帳を取得できないが、一定の障害がある18歳以上の人・障害児・・・身体障害、知的障害、発達障害を含んだ精神障害がある児童、または難病等があり、一定の障害がある児童参考文献:遠山真世,二本柳覚,鈴木裕介/著『これならわかるすっきり図解障害者総合支援法』2014年 日経印刷/刊ここからも分かるとおり、サービスを受給するために障害者手帳が必要なのは身体障害がある方のみになります。身体障害以外の障害がある方は、本人や家族の希望と医師の診断書があればサービスの利用申請を行うことができます。ただし、医師の診断書については、障害や病名が対象となるかどうかを確認するため、国際的に使われている病名分類コードの記載が必須となります。詳しい情報やサービスの受給を希望する方はお住まいの市区町村の障害福祉課担当窓口へお問い合わせください。平成30年施行の法改正において創設されるサービスなどを紹介します!出典 : ここまでご説明してきた障害者総合支援法ですが、「生活」と「就労」に対する支援をより一層充実させることを目標とした新サービスの創設や、既存のサービスをより充実させるための法改正が行われました。正式名称を「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律」といい、障害者総合支援法と児童福祉法の一部が平成28年(2016年)に改正され、平成30年(2018年)に施行されます。児童福祉法のなかには18歳未満の障害児を対象とする支援が定められています。障害児が障害者総合支援法に基づいている障害福祉サービスを利用する場合もありますが、児童発達支援や放課後等デイサービス、保育所等訪問支援などは児童福祉法に根拠を置いています。今回の法改正では障害児への支援の拡充が盛り込まれました。そのため、今回は総合支援法とあわせて児童福祉法の一部改正についても説明していきます。■自立生活援助の創設現在、障害者支援施設やグループホーム入所・入居している方の中には、賃貸住宅などで一人暮らしを希望する方もいます。しかし知的障害や精神障害によって、生活能力に不安定さがあることなどで一人暮らしを選択できない方がいます。自立生活援助では本人の意思を尊重した地域生活を支援するため、一定期間にわたり定期的な巡回訪問を行い、食事や掃除、公共料金の滞納はないか、地域住民との関係は良好かなどの確認を行います。また定期的な訪問だけではなく、電話やメールなどで随時相談が行うことができるようになります。■就労定着支援の創設就労移行支援などを利用し一般企業へ就労した方で、就労に伴う環境の変化によって生活面に課題が生じてしまう方がいます。たとえば遅刻や欠勤の増加、身だしなみの乱れや業務中の居眠りなどの課題が環境の変化によって新たに生じるなどです。就労定着支援は就労定着支援事業所の方が職場・家族・関係機関への連絡調整を行ったり、職場や自宅に訪問し、生活リズムや体調などの指導や助言などを行ったりすることで、環境の変化に適応できるようサポートします。■重度訪問介護の訪問先の拡大重度訪問介護を利用している人が入院した際、普段利用していたヘルパーに支援をお願いすることが制度上できませんでした。またその人の特性やニーズに合った支援が入院先へ引き継げない場合もあり、利用者が困ってしまうことがありました。この改正によって、重度訪問介護を利用している方が入院中の医療機関においても、利用者の状態を熟知しているヘルパーを引き続き利用したり、そのニーズを的確に医療従事者に伝達したりなどの支援が利用できるようになります。■高齢障害者の介護保険サービスの円滑な利用障害福祉サービスと同様のサービスが介護保険法にある場合は、介護保険サービスの利用が優先されるようになっています。さらに高齢障害者が介護保険サービスを利用する場合、障害福祉制度と介護保険制度の利用者負担上限が異なるため、利用者負担(1割)が新たに発生する場合があります。またこれまで利用していた障害福祉サービス事業所とは別の介護保険事業所を利用しなければならないことがあるなどの課題が指摘されています。この改正によって、たとえば65歳になるまでの長期間にわたり障害福祉サービスを受けていた障害のある方、障害福祉サービスに相当する介護保険サービスを利用する場合、一定程度以上の障害支援区分の方や低所得者に対して、介護保険サービスの利用者負担が軽減されるような仕組みが設けられます。障害福祉サービス事業所が介護保険事業所としても機能しやすくするなどの見直しを行い、介護保険サービスがより円滑に利用できるようになります。■重症心身障害児などに対して訪問型の児童発達支援が創設障害児支援に関しては、複数の児童が集まる通所による支援が子どもの成長に望ましいと考えられていたため、これまで通所支援の充実を図ってきました。しかし現状では、重度の障害のため外出が著しく困難な障害児が発達支援を受けられません。そこで重症心身障害児などの居宅を訪問して発達支援を行うサービスが新たに創設されることになりました。■保育所等訪問支援の支援対象に乳児院と児童養護施設が追加保育所等訪問支援では、これまで保育所・幼稚園、放課後児童クラブ、小学校などに相談支援員が訪問していました。しかし乳児院や児童養護施設の入所者に占める障害児の割合は3割程度となっており、職員による支援に加えて、専門的な支援が求められているため、保育所等訪問支援の対象者を乳児院や児童養護施設の子どもたちにも拡大することになりました。■医療的ケア児に対する支援NICU(新生児特定集中治療室)などに長期入院後、引き続き人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが必要な障害児(以下:医療的ケア児)が増加しています。医療的ケア児が地域において必要な支援を円滑に受けることができるよう、地方公共団体は児童発達支援センター、障害福祉サービス事業所、特別支援学校などの福祉機関と、訪問看護ステーション、小児科診療所、地域小児科センターなどの医療機関と連携を図るために連絡調整を行う仕組みをつくることになりました。また医療的ケア児に対する支援については、すでに平成28年6月に施行されています。■障害児サービス提供体制の計画的な構築これまで市町村および都道府県に対して、障害福祉計画および都道府県障害福祉計画の作成を義務付けていました。法改正によって、障害児を対象にした障害児福祉計画および都道府県障害児福祉計画の作成を義務付けることになりました。また障害児相談支援の提供体制を整備し、障害児通所支援などの円滑な実施を確保するための仕組みも導入しました。障害児福祉計画は障害児通所支援や障害児相談支援の必要なサービス量の見込みを示すなどして、提供体制を確保していく努力を行うための計画であり、整備の指針になります。■補装具の貸与制度の追加補装具費は身体障害者の身体機能を補完・代替する補装具の「購入」に対して補助金が支給されていました。したがって、これまでは補装具本体の「貸与」はありませんでした。この改正によって障害児など成長に伴って短期間で補装具の交換が必要となる場合は「購入」を基本とする原則は維持したうえで、「貸与」が適切と考えられる場合には補装具本体の貸与が行われることになります。詳細は今度、関係者の意見を踏まえた上で検討されます。■障害福祉サービスの情報公表制度の創設障害福祉サービスなどを提供する事業所数が大幅に増加するなかで、利用者が個々のニーズに応じて良質なサービスを選択できるようにするとともに、事業者によるサービスの質の向上が重要な課題となっています。施設・事業者に対して障害福祉サービスの内容などを都道府県知事へ報告し、都道府県知事が報告された内容を公表する仕組みがつくられます。この情報をもとに利用したいサービスを提供している事業所を選択することができるようになります。■自治体による調査事務・審査事務の効率化障害者自立支援法の施行から10年が経ちました。障害福祉サービスなどの事業所数や利用者数は大きく増加しており、自治体による調査事務や審査事務の業務量が大幅に増加しています。この改正に伴い事務の一部を委託可能にするために必要な規定を整備することになりました。 たとえば、利用を検討している方に向けて利用審査に必要な質問や、関連文書の作成などを、許される範囲内で行政から委託された民間法人が担うことができるようになります。参考:「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び 児童福祉法の一部を改正する法律」について(経過) |厚生労働省まとめ出典 : 障害者総合支援法は障害の有無に関わらず、共に住み慣れた地域で暮らすことができる社会(共生社会)を実現するためにつくられた法律です。障害がある子どもから大人まで利用できる、自立支援給付や地域生活支援などのサービスがあります。また具体的にどんなサービスがあるのか、サービスを受けられる対象者に当てはまるかなどの相談に応える相談支援もあります。ただ、サービスも各地域によって特色がありますので、総合支援法の利用を検討中の方はお住まいの市区町村の担当窓口にお問い合わせください。障害者総合支援法は自立支援法を改正して生まれた法律です。しかし自立支援法時代からの課題が全て改善されたわけではありません。障害のある人の支援に関する法律は、今後も議論や改正を重ねながら、その時代や地域、利用者のニーズに適したサービスを提供していくことでしょう。
2017年07月31日共感覚とは出典 : 共感覚は、ひとつの感覚刺激から複数の感覚が呼び起こされることをいいます。例えば、特定の数字を見ると、赤や黄などの色が付いているように感じたり、音楽を聞いたときに色彩が頭に思い浮かんだりします。文字に色がついてみえる共感覚の場合は、文字情報から色覚が呼び起こされています。他にも、辛いものを食べるときに、とげとげの物を掴んでいるかのように感じる共感覚もあり、これは味覚情報から触覚が呼び起こされていることになります。このように、聴覚情報から視覚的情報が呼び起こされたり、味覚情報から触角を感じたりするなど、共感覚を持っている人がいるのです。共感覚には次のような特徴があります。・特定の条件下においてのみ感じるものでなく、意識的にコントロールできない・共感覚は年齢を重ねても変わらない・幼児期から継続して見られる・物や経験と結びついたものではない・好き、嫌いや快、不快のような感情を伴っている【参考】長田典子藤澤隆史「共感覚の脳機能イメージング」ヒトは、視覚や聴覚をはじめとする様々な感覚があり、これらの組み合わせは膨大になるため、共感覚の種類も多く存在します。(より細かい事例は後段の章で見ていきましょう。)共感覚のある人の割合は調査によってさまざまで2000人に1人だとするものもあれば、20人に1人とするものもあります。【出典】リチャード・E・サイトウィックデイヴィッド・M・イーグルマン/著者『脳のなかの万華鏡「共感覚」のめくるめく世界』(河出書房新社・2010)近年では、共感覚がメディアで取り上げられたり、論文に多く取り上げられたりするようになってきましたが、19世紀後期まではほとんど科学的に共感覚が取り扱われることはありませんでした。共感覚が万人に見られるようなものでなかったり、人それぞれ症状が異なっていたりしたために、共感覚の存在自体が疑われていたからです。共感覚は、想像力が豊かで目立ちたい人が作り出した幻想や、ドラッグをやっている人の幻想だとみなされることがありました。しかし、幻想やドラッグという説明だけでは説明しきれないことがあることや、共感覚を科学的にとらえようとする研究の成果によって、共感覚に対する考え方が180度変わりました。その結果、いまでは脳の理解のための一つの方向性として、多くの科学者が共感覚を研究対象とし、仮説とその検証を行っています。【参考書籍】リチャード・E・サイトウィックデイヴィッド・M・イーグルマン/著者『脳のなかの万華鏡「共感覚」のめくるめく世界』(河出書房新社・2010)共感覚の種類出典 : 共感覚には数えきれないくらい多くの種類があります。例えば、以下のような事例が存在します。数字などの順序がある考え方が、あらゆる形状にねじれたり、折れ曲がったりしているかのように感じられることを指します。数字列形の共感覚がある人には、数学の教科書に記載されている数式が立体的に見えたりします。文字を読んだときに色を感じる人よりは少数ですが、会話の最中に特定の単語を聞くと色が思い浮かぶ人もいます。過去の経験や知識に関係なく、言葉そのものに対して味を感じる人がいます。例えば、「刑務所」は冷えたベーコンの味がするように感じる事例が報告されています。色聴は音を聞いたときに、色や形、動きが想像される共感覚です。動物の鳴き声や掃除機の音など日常生活で聞こえる音にも聴覚以外の感覚が引き起こされる人がいます。文字が色を持っているだけでなく、それぞれ個性を持ったキャラクターのようにとらえる共感覚も存在します。ある単語を聞かせると、その単語に合わせてさまざまな姿勢をとる事例です。あまり多くは見られませんが、共感覚の一つだとみなされています。痛みを感じたときに、その痛みを色や形、時には人の歌声のように感じる共感覚です。他にも、物を見たときに音が聞こえたり、音を聞いたときに身体を触られているように感じたりする共感覚もあります。また、他にもミラータッチ共感覚と呼ばれるものがあります。共感覚は、一般的には自分自身の視覚と聴覚がリンクしたりと、自己完結型の事例が多いですが、ミラータッチ共感覚は自分自身の感覚と他人の感覚がリンクします。ミラータッチ共感覚のある人は、目の前で他人が頭をなでられるのをみるとまるで自分もなでられているかのように感じるのです。ここで取り上げた共感覚はあくまで一例であるとともに、似たような共感覚の人同士であっても感じ方は千差万別です。【参考書籍】リチャード・E・サイトウィックデイヴィッド・M・イーグルマン/著者『脳のなかの万華鏡「共感覚」のめくるめく世界』(河出書房新社・2010)【参考書籍】北村紗衣/著者『共感覚から見えるものアートと科学を彩る五感の世界』(勉誠出版・2016)共感覚はだれもが持っている?出典 : 共感覚のない人であっても、複数の感覚が混じっていることを示唆する現象があります。例えば、女性からの声援のことを「黄色い声援」と表したり、香水の香りを「あまい香り」と表現したりします。しかし、声援という聴覚情報が実際に黄色いわけではありませんし、香りが味覚的にあまいというわけではありません。このように、私たちはある感覚の体験を表現するときに、別の感覚に使われる表現を用いることがあります。感覚同士に共通性を見出す作用を心理学では、通様相性(インターモダリティ)と呼んでいます。共感覚のない人でも複数の感覚に共通性を見出しているとすると、共感覚かどうかはどのような違いがあるのでしょうか。共感覚は、誰もが持っている感覚と感覚をつなぐ作用(通様相性)が人一倍強いということになります。人はそもそもそれぞれの感覚を完全に分離して考えることはできず、誰もが無意識に感覚同士をリンクさせています。そのため、「重い」「軽い」という表現を本来重さのない音楽や絵画に対しても使うことができています。一方で、その感覚同士の結びつきが強い場合、本当に重いものを持っているように感じたり、複数の感覚がつながっていることを認識できたりする人がいます。そのような人たちのことを、共感覚者だと言うことができるでしょう。共感覚の地平共感覚は共有できるか共感覚の判断法出典 : 共感覚は、「本人がどのように感じているのか」に重きがおかれてきたため、客観的に測定することが困難だとされていましたが、次第に、共感覚かどうかを客観的に測る手法が確立されてきました。ここでは、もっとも一般的な共感覚である、文字を見たときに色を感じる共感覚を例にして、主な3つの手法を紹介します。共感覚には一貫性があり、時間が経過してもその感覚に変化はほとんど起こりません。検査の日の天候や、本人の調子などに左右されるときには、共感覚の可能性は低いと思われます。そのため、例えば文字に対して色を感じる共感覚があるかどうかを確かめるために以下のような手法が用いられます。膨大な色のパターンがある虹色のパネルから、今まさに見えている色を選択してもらいます。そこから期間をおいてから、また同様に同じ文字を見せて色を選択してもらい、前回選んだ色とどれだけ近いかを調べます。記憶力が優れている人の場合、以前に選択した色を覚えているだけだという批判が考えられますが、「赤」「青」「黄」と答えるのではなくパネルの膨大の色から選んでいるため記憶力だけで答えるのは非常に困難です。共感覚は「bは、なに色に見える?」という問いに対して、「(blueのbだから)青かな」と答えたり、「そう言われると、白っぽく見えるかな」というような考えて出てくるものではなく、無意識に、理由もなく起こる(=同時性)ものだと考えられています。そのため「bはどんな色?」のような質問に対して回答するまでの時間は、共感覚の人は短くなる傾向があります。実際に行われる検査には、この同時性を正確に測るために、わざと色つきの文字を見せてそれがどんな色がついているかを質問するものがあります。共感覚でない人は、そのまま色を答えればいいので回答時間が短くなりますが、共感覚の人は文字に実際についている色と文字から思い浮かぶ色が混同して、答えるまでに時間がかかってしまいます。わたしたちの脳では、文字を読むときに活発になる領域と色を見たときに活発になる領域が分かれています。多くの人は、文字を読むときに、色に関する脳の領域が活発になることはありません。しかし文字に色がついてみえる共感覚の人は、文字を読むだけで色に関する脳の領域も活発になることがあります。文字を読んでいるときに、色を見たときに活発になる領域が反応しているのかどうかを特殊な機械を用いて測定することで共感覚かどうか確かめることができます。共感覚かどうかの区別にあたっては、一貫性があるか、同時性があるか、神経活動はどうなっているのかという観点が大切になってきます。【参考書籍】北村紗衣/著者『共感覚から見えるものアートと科学を彩る五感の世界』(勉誠出版・2016)共感覚の原因出典 : 脳は視覚情報や聴覚情報などを、それぞれ別の領域で処理していますが、共感覚の人はこの領域同士の結びつきが強い傾向にあることがわかりました。この結びつきの強さの理由には、複数の仮説が考えられています。ヒトは様々な情報を脳の別々の領域で処理していますが、最終的には処理した情報を集めなければいけません。たとえば、「りんご」であれば「赤い球体」という視覚情報と「甘くておいしいもの」という味覚情報を合わせて記憶する必要があります。もし、この情報が統合されていないと、りんごを見たときにも、視覚情報から食べられるのかどうかを判断できず、毎回一口食べてから過去の経験に照らし合わせて食べられると判断することになります。ヒトの脳は、多様な情報を処理するために各領域でそれぞれの情報を処理するように発達していきます。しかし、各領域の分化が進み過ぎると情報を統合することができなくなるため、領域同士の結びつきをちょうどよくしなければいけません。共感覚の人は、そうでない人に比べてこの領域同士の結びつきが強いです。共感覚のメカニズムについてはいまだに解明されていないことも多いですが、いくつかの仮説が提唱されています。1つ目の仮説はそれぞれの領域を結ぶ配線の数が多いために、結びつきが強くなっているという考え方です。新生児は、脳の領域同士の結びつきが過剰な状態で生まれてきます。多くの人は、過剰な結びつきを減らしますが、共感覚の人は過剰な結びつきを減らしきれていないのではないかと考えられています。2つ目の仮説は、それぞれの領域を結ぶ配線の数に違いはないが、本来かかるはずの抑制がかかっていないために共感覚が起こるという考え方です。私たちは、脳の領域同士の配線を持ってはいますが、それをオンオフに無意識のうちに切り換えているという考えに基づいています。3つ目の仮説は、一度ついた結びつきがなかなか元に戻らないという考え方です。可塑性とは、一度変化したものの元に戻りやすさのことです。脳の領域の結びつきは、同時に活発になったときに強くなります。そのため「赤色で書かれた2」を見ると、2に対してなんとなく赤のイメージがつきます。しかし、多くの人はその後にさまざまな色のついた2を見たとしても、なにか1つの色に対して強いイメージが残ることはありません。可塑性が少なく、ある特定の結びつきが残ってしまった結果、共感覚になる可能性があります。【参考書籍】リチャード・E・サイトウィックデイヴィッド・M・イーグルマン/著者『脳のなかの万華鏡「共感覚」のめくるめく世界』(河出書房新社・2010)共感覚と自閉症スペクトラム出典 : これまで、共感覚と自閉症スペクトラムを長年研究していた専門家のあいだでは、一般的に共感覚と自閉症スペクトラムには関係がないとされていました。しかし、ケンブリッジ大学のチームが2013年に、「自閉症スペクトラムのある人は定型発達の人に比べて、共感覚のある割合が高い」と報告しました。ケンブリッジ大学のチームの見解では、自閉症スペクトラムと共感覚には、「脳の領域同士の結びつきが過剰である」という共通性があるために、自閉症スペクトラムである人の中に、共感覚である人が多いのではないかとしています。今回の発表チームのメンバーであるSimon Fisher教授は、この発見によって、自閉症スペクトラムと共感覚が発生するメカニズムを探るヒントになると考えています。自閉症スペクトラムと共感覚がどちらも「脳の領域同士の過剰な結びつき」から生じているとすれば、「自閉症スペクトラムと共感覚を同時に引き起こす遺伝子」や、「脳がどのように結びつきを形成するのか決めている遺伝子」を探すという方向性が提示されたことになるからです。このように、自閉症スペクトラムと共感覚はそれぞれ遺伝的な側面があると考えられ、現在どの遺伝子が原因なのか研究されています。しかし、未だ遺伝子の特定には至っていません。【参考】Simon Baron Cohen ”Is synesthesia more common in autism?” | Molecular Autism共感覚は後天的に獲得できるのか出典 : 共感覚は、親子で互いに共感覚が見られるなど遺伝との関わりがあると考えられています。その一方で、目や髪の色とは異なり先天的な遺伝要因だけですべてが決まるわけではなく、教育や幼少期の環境などの後天的要因とも関わりがあると考えられます。それでは、いま共感覚でない人が、共感覚を体験したり、共感覚を獲得したりすることはできるのでしょうか。2014年にトレーニングで共感覚を獲得できるかもしれないことを研究した論文が発表されました。本論文では、共感覚の体験をしたことがない学生を対象にして訓練を行ったら共感覚になるかどうかを調べています。結果、訓練を行った学生の多くは、共感覚かどうかを調べるテストにおいてハイスコアであるとともに、日常生活の中で共感覚的な経験をしました。このことから、論文では共感覚は後天的に身につけられる可能性を示唆しています。これは「共感覚は後天的に身につけられる」と断言できるということではありません。ですが、今後のさらなる研究によって共感覚になるメカニズムや後天的に共感覚を身につけられるのかどうかが解明されるかもしれません。トレーニング以外に、日本で禁止されているLSDと呼ばれる麻薬を服用することで共感覚が疑似体験できたという報告がされています。他にも、統合失調症などの精神障害者がまれに共感覚のような症状を見せます。しかし、あくまで本人が五感が混じると話しているだけで、生まれながらの共感覚と後天的に体験した共感覚が同じかどうかは確かめられていません。【参考書籍】リチャード・E・サイトウィックデイヴィッド・M・イーグルマン/著者『脳のなかの万華鏡「共感覚」のめくるめく世界』(河出書房新社・2010)【参考】Daniel Bor “Adults Can Be Trained to Acquire Synesthetic Experience” | Scientific Reportsまとめ出典 : 共感覚の人は物心つくころから、共感覚の世界で生きているため、自分の生きている世界が他の人の世界とは異なることを気づくことが遅れることもあります。共感覚は歴史的に見ても、なかなか認めてもらえず、目立ちたがり屋の作り話だと思われたり、ドラッグをやっているのだと誤認されたりしてきました。しかし現在、共感覚の存在が科学的に研究されるようになってきました。脳の理解のアプローチの側面として、共感覚が注目を浴びるようになったのはごく最近のことです。そのため共感覚については、まだまだわかっていないことが多くあります。今後、自閉症スペクトラムと共感覚との関係性のように、共感覚の研究を通して、発達障害や脳の発達メカニズムなどが明らかになっていくことが期待されます。
2017年07月31日高校生の進路相談、私の希望を先生が二度見したのは出典 : 「これ、間違いじゃないわよね?」進路相談の場で、担任・F先生は戸惑うように私を見つめた。その高校では2年生から大学進学コースの文系及び理系、専門学校及び就職希望者のためのコース、3通りのクラスに分かれるのであった。1年生の冬に希望コースを決め、それに基づいて進路相談をする。向かい合わせに座った私は、きっぱりと答えた。「間違いじゃないです」私が用紙にチェックを入れたのは「進学・理系コース」。彼女が驚くのも無理はない。なぜなら私は算数障害だからだ。あいまいさのない、数字の世界が大好きだった出典 : 高校1年生の初夏、中間テストの返却時。「人には得意不得意があるとは言いますが、こんなにも差が開く人もいるのか、と驚きましたね」F先生の言葉に、クラス中がどっと笑った。誰なんだろう、どれくらい差があったのだろう。私も笑っていた。成績表を渡され、私の笑顔は凍りつくことになる。“こんなにも差が開く人”は、他でもない私だったからだ。現代国語と古文、英語のリーディング及びグラマーは、ケアレスミスによる1点マイナスで99点。数学は三択問題1問だけが正解して、3点だった。我ながら衝撃的過ぎて、他の教科の点数を覚えていないほどだ。何が衝撃かというと、点数の激しい開きだけではない。私は授業を理解しているつもりでおり、なおかつ家では数学の予習復習ばかりしていたから。そこまでやって、3点。しかも三択問題。解せない。本当に解せない。好きこそものの上手なれというではないか。そう、私は数学や理系教科が大好きだった。出典 : 衝撃を受けてはいたが、自分が計算について不得手であることを、このときに知ったわけではない。小学校低学年のころは、さしたる周囲との差はなかったように思える。「あれ?」と感じ始めたのは、図形の面積、立体の体積の計算を覚えるころだった。計算が複雑になり、情報が増えるにつれ、数字や計算記号そのものを認識しにくいと感じている自分に気付いたのだ。いくら公式や方程式、考え方がわかっていたところで、土台がガタガタなのだから、正解が出せるはずもない。当時は発達障害だなんて思いもしないから、「学習不足であるに違いない」と、算数や数学の勉強ばかりに勤しんだ。断っておくが、私は努力家でも何でもない。なんというか、片思いの相手の気を引こうとして、あの手この手を尽くしているような気持ちだったとでも言うべきか。そしてテストで赤点を取るたびに、こっぴどく振られたかのように落ち込んでいたのだ。それでも理系に進みたかったのは、勉強するのが楽しかったら。後に自閉症スペクトラムと診断される私は、曖昧さのない数字や計算の世界を愛していた。しかし、大学時代は「楽しい」だけで過ごせても、社会ではそうはいかない―先生にそうした現実を突きつけられ、説得された。私はギリギリまで悩んだが、将来を考え、もうひとつの大好きな道、言葉の世界に進むことを決断、文系にコース変更。そこに一抹の寂しさがなかったわけではないが…恋に破れた私と、数字に愛された息子進路変更をした直後、とあるご縁により、私はアルバイトとして原稿納入の仕事を始めた。そして兼業の期間もありつつ、ライターの仕事をしている。訳あって高校を中退、進学はしていないのだが、結局文系の道を歩んでいるというわけだ。そして自閉症スペクトラムとADD(注意欠陥障害)の診断を受け、同時に算数障害であることを知らされる。そう、私は数字に振られていたわけではない。単に住む世界が違っただけ。叶わぬ恋なのは当たり前の話。現在は、慎重に見比べた上で電卓を使うなどの注意や工夫をし、生活に支障がない程度に数字と付き合うことができている。数字や科学等、理系っぽいものは今でも大好きだが、恋というよりただのファン。そう割り切っており、科学館へ遊びに行ったり、実験キットで楽しむ程度だ。Upload By 鈴木希望共に暮らす小学2年生の息子は、数字が好きで、なおかつ計算が得意。絵を描くように計算式をノートに綴る彼を見て、羨ましいような切ないような気持ちになりつつ、私は文系の道を選んだことを、決して後悔はしていない。でも、もし担任教師の反対を押し切って理系の道に進んでいたら、どうだっただろう。たらればの話をしても仕方がないが…うん、それはそれで幸せだったに違いない。多分ね。
2017年07月30日大人の癇癪とは?出典 : 癇癪(かんしゃく)とは、怒りの気持ちを抑えたり、怒りからくる突発的な行動をコントロールしたりすることができない状態を指します。私たちは、時には気持ちをぐっと抑え、実際に相手とのやりとりでは柔らく表現するなど、工夫をしながら生活しています。専門的には、ぐっと気持ちを抑えることを「情動調整」、「本当は怒りたいのだけれど、やわらかく言おうとする」ことを「行動制御」といいます。癇癪は、医学的に明確な診断名として確立されたものではなく、どのような症状や状態を癇癪とするかははっきりとしないのですが、一般的には、【気持ちのコントロール】【行動のコントロール】という2点について難しさがあるという状態のことが、「癇癪」として理解されています。癇癪というと子どもの行動をイメージするかもしれませんが、大人の場合、それとは原因やメカニズムが異なっています。ここでは大人の癇癪について、詳しく見ていきたいと思います。人が生活するなかで、ポジティブ・ネガティブ問わずさまざまな感情が湧き起こること自体は、自然な現象です。ネガティブな感情が起こったときには、状況に合わせてどのくらい感情を出せばよいのか、また起こった感情を上手になだめてあげるというように、ある程度頭で判断をして、感情とうまく付き合っていく必要が生じます。ネガティブ感情のコントロールがうまくできない場合には、頭で冷静に判断をすることができず、怒るとすぐに体が動いてしまったり、湧いてきた怒りのやりどころに困ったりします。具体的には、周りの人や物に激しく当たり散らしたり、攻撃的な言葉を発するなどの行動をとってしまいます。また、行動に出ないまでも、怒りの気持ちが長い時間おさまらず、仕事や勉強がまったく手につかないということもあるでしょう。このように気持ちをコントロールするのが難しいと、体のストレスを解消できなかったり、人間関係を発展させることができないなどの二次的な問題が起こることもあります。怒りが起こるきっかけはさまざまです。たとえば、人とのかかわりの中で相手から投げられた言葉や態度、また物事に対するうまくいかなさなどです。いずれにせよそれらのきっかけは、冷静に考えたらささいなものであり、それほど怒るようなことでもない場合が大抵です。癇癪を起こしてしまう原因は、その場での出来事、つまり物事のうまくいかなさ、相手の態度などではなく、もっと別のところに問題があるということも考えられます。この点については後の章でご紹介します。そもそも、怒りとは何か?出典 : 感情は、人が自分がどのような状況に置かれているかについて知らせるシグナルの役目をもっています。例えば、恐れの感情がその代表といえるでしょう。自分の生命を脅かすようなものに出くわしたときに、「怖い!」と感じることにより、危険を回避することができます。また、感情が起こることにより、周りの人との関係を作ってゆくことができます。例えば、「楽しい」気持ちによって出てきた笑顔が周りの人とのかかわりを生み出して、友好的なコミュニケーションを引き出すということは、誰しも経験があることなのではないかと思います。このように生命を維持したり、人とのかかわりをつくるのに感情は役に立っています。では、今回のテーマである「怒り」についてお話を進めていきます。「怒って暴言を吐く」という怒りの行動があるとします。怒りにはきっかけがありますが、そのきっかけが瞬間的に行動に移るわけではありません。そのきっかけがあったときに、どのようなプロセスを経て行動へと結びついているのでしょうか。怒りのメカニズムには以下の順序があります。1.きっかけとなる出来事が起こる2.反応する3.怒りの感情が起こる4.感情を調整する5.行動・表現する癇癪を起こしてしまう人は、上記のプロセスを経る中で「過剰に反応してしまう」「感情を調整することができない」「行動の調整をすることができない」のうちのいずれかの状況に陥っていると言えます。では、そのような困った状況で、私たちは怒りをどのように抑えていけばよいのでしょうか。癇癪を自分でコントロールしたい出典 : 感情が生じてしまうこと自体は生物学的に自然なものです。ですから、感情の生起自体をコントロールすることは難しく、その感情が起こった後に、どのように対処するかが重要になります。ここでは怒りが起こったときに、どのような対処法が有効かをご紹介します。アンガーマネジメントとは、アメリカで開発された怒りを予防し制御するための心理プログラムです。プログラムの開発の当初は、軽犯罪者に対する矯正プログラムとして確立されていましたが、今では企業や教育現場などにも取り入れられています。怒りの感情を上手に向き合うことで「あのとき、あんなふうに怒らなければよかった」と後悔することが少なくなるでしょう。アンガ―マネジメントはトレーニングですので、すぐには怒りを抑えることができなくても、意識をして何度も行動に移すことで効果が現れてきます。諸説あるものの、怒りが頭にのぼるピークは6秒ほどといわれています。この短い時間をやりすごすことのできる方法についてお伝えします。1.怒りを数値化する怒りは目に見えないものです。だからこそ、振り回されてしまいます。怒りを数値化することによって、感情を客観的に評価することができ、怒り任せの行動を防ぐことができます。ここでは10点満点中、0~10までの数字を思い浮かべます。0 まったく怒りを感じていない状態1~3 イラッとするが、すぐに忘れてしまえる程度の軽い怒り4~6 時間がたっても心がざわつくような怒り7~9 頭に血が上るような怒り10絶対にゆるせないと思うくらいの激しい怒り戸田久美/著『アンガ―マネジメント怒らない伝え方』2015年/刊/かんき出版点数をつけることで、怒りの対象から意識がそらされ、怒りの気持ちにストップがかかります。また、点数をつけることを習慣にすることで、自分が怒りを感じるパターンが把握できるようになります。2.その場から離れるこれは、自分が感情をコントロールできなくなったときに有効です。怒りの気持ちがおこった環境を変えることにより、攻撃的な気持ちをリセットすることができます。怒りを感じたときに相手がいる場合には、「ちょっとお手洗いにいくので席をはずしますね」などと一言断ってから場を離れるようにしましょう。3.深呼吸をする怒りを感じたら深呼吸をするという対処法はよく聞きますが、生理学的にも効果が証明されています。深呼吸をすることによって、副交感神経という心をリラックスさせる自律神経のはたらきが高まります。怒りが湧いてきたら、鼻から大きく息を吸い、いったん呼吸を止めます。そして、口からゆっくりと息を吐きます。これを2~3回行っていきます。「4秒吸って、8秒吐く」など吐くことに時間をかけると効果的です。4.意味づけを行う問題のある状況に意味を見出すこと、またその状況に対してポジティブな解釈をすることです。例えば就職活動の面接に来た場合を例として考えてみましょう。面接官から非常に難しい質問をされたとします。その状況を「意地悪な面接で嫌だなあ」と思うかもしれません。しかし「面接官も好きで意地悪をやっているのではない。業務の一環なんだ」ととらえることもできます。そして面接官がした質問の捉え方によって、私たちの反応は変わってきます。おそらく前者では恐怖を感じる、自信をなくしてそのあとの質問にもうまく答えられないかもしれないですが、後者では、質問に何とか対応しようと冷静さが保てるかもしれません。このように、状況や相手の言葉や態度を見る視点を変えることを心理学では「認知的再評価」といいます。5.いまに意識を集中させるこれは怒りが頭に湧き起こってきたときにも有効ですが、他の方法と異なるのは、以下のようなときにも効果が見られることです。・怒りが長く続いているとき・過去に起こった怒りにとらわれているとき・よくない未来を想像しがちなとき目の前にあるものを観察したり、目を閉じて聞こえてくる音を心の中で描写します。例えば「紙がこすれるカサカサという音がする」「足音がする」「電気がチリチリと鳴る音がする」などです。これはマインドフルネスという瞑想プログラムでも用いられている方法で、今ここに意識をもってくることで、とらわれている感情から解放されることが目的とされます。癇癪が抑えきれない…障害や疾病との関係は?出典 : アンガ―マネジメントを試してみても、怒りの頻度や程度があまりにひどい場合どうしたらいいのでしょうか。もちろん睡眠不足やストレスなどの日常生活上の習慣は怒りの要因として大いに関係していますが、以下のような障害や疾病が関連していることも考えられます。ADHDとは、注意欠陥・多動性障害(または注意欠如・多動性障害)と呼ばれる、発達障害のひとつであり、不注意、多動、衝動性を主な症状としています。ADHDの特性から生じる障害のひとつとして、行動のコントロールの障害があります。ADHDのある人は、刺激と反応の間にワンクッションを入れることが苦手な傾向にあります。つまり衝動性が高く、カッとなったらすぐに手が出てしまうといった行動もこのひとつとして考えられます。また、ADHDの二次障害として、素行障害や反抗挑戦性障害を引き起こすことがあります。幼少期、就学期のころに、周囲から叱責や注意を多く受け、自分の行動が理解されないことから自尊心が下がることにより、反抗的な態度を取ることとなります。幼い頃は反抗的な態度をとるにとどまっていても、年齢があがってくると徐々に攻撃性がエスカレートし、また周囲からの理解が得られず、攻撃性がさらに高まり、暴力行為や非行問題に走ってしまうことがあります。このような負の連鎖をDBDマーチといいます。攻撃性のレベルが非常に高く、また高頻度で続く場合には間欠性爆発性障害である可能性が考えられます。アメリカの精神医学会の発行する『DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル)』には、この障害について以下のように述べられています。A. 下記のいずれかに現れる攻撃的衝動の制御不能に示される、反復性の行動爆発(1)言語面での攻撃性(例:かんしゃく発作、激しい非難、言葉での口論や喧嘩)、または所有物、動物、他者に対する身体的攻撃性が3カ月間で平均して週2回起こる。身体的攻撃性の損傷又は破壊にはつながらず、動物または他者を負傷させることはない.(2)所有物の損傷又は破壊、および/または動物または他者を負傷させることに関連した身体的攻撃と関連する行動の爆発が12カ月間で3回起きている.B. 反復する爆発中に表出される攻撃性の強さは、挑発の原因又はきっかけとなった心理社会的ストレス因とはひどく釣り合わない.C. その反復する攻撃性の爆発は、前もって計画されたものではなく(すなわち、それらは衝動的で、および/または怒りに基づく)、なんらかの現実目的(例:金銭、権力、威嚇)を手に入れるため行われたものではない.D. その反復する攻撃性の爆発は、その人に明らかな苦痛を生じるか、職業または対人関係昨日の障害を生じ、または経済的または司法的な結果と関連する.E. 暦年齢は少なくとも6歳である(またはそれに相当する発達水準).F. その反復する攻撃性の爆発は、他の精神疾患(例:うつ病、双極性障害、重篤気分調節症、精神病性障害、反社会性パーソナリティ障害、境界性パーソナリティ障害)でうまく説明されず、他の医学的疾患(例:頭部外傷、アルツハイマー病)によるものではなく、または物質の生理学的作用(例:乱用薬物、医薬品)によるものでもない。6~18歳の子どもでは、適応障害の一部である攻撃的行動にはこの診断を考慮するべきではない.注:この診断は、反復する衝動的・攻撃的爆発が、以下の障害において通常みられる程度を越えており、臨床的関与が必要である場合は、注意欠如・多動症、素行症、反抗挑発症、自閉スペクトラム症に追加することができる.引用:アメリカ精神医学会/編『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引』2014年/刊/医学書院親が役割を放棄していたり、虐待にあっているなどの過酷な家庭環境にさらされている場合には、情動制御の弱さが見られるケースが多く報告されています。というのも気持ちのコントロールは、他者とのあいだにある多様なやりとりによって、その方法を学ぶという要素が強いからです。人は相手との関係の中で、「気持ちをなだめる方法を教えてもらう」「気持ちをコントロールしてうまくいく」という経験を経て学習していくものです。しかし、虐待や育児放棄をされ、養育環境の中で適切なやりとりが行われなかった子どもだと、その方法を学ぶことができず、気持ちのコントロールをする方法がわからないことがあります。そしてそれが大人になっても続いていくことがあります。自覚できることがある場合、カウンセラーなどの専門家に相談してみることをおすすめします。人に危害を加えてしまうことがある、また対人関係が上手くいかないなどの具体的な悩みごとがあれば、その旨をしっかり伝えるとよいでしょう。癇癪の治療が必要かわからないけれど、一度相談してみたい出典 : 専門家の人に相談してみたいけれど、いきなり精神科やカウンセリングに行くのには抵抗がある…こういった悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。精神科やカウンセリングに行く前に相談に乗ってくれる機関があります。以下の相談機関では、こころの問題を含めた病気や生活の悩み事の相談に乗ってくれます。病院の受信が必要かどうかわからないときや、ご家族や知人の方が相談したいときには気軽に利用してみましょう。電話で相談、受診先を案内してもらったり、場合によっては面接の予約をしての相談となることもあります。これらは各都道府県と政令指定都市に1か所以上設置されています。公的機関であるので相談料金は無料です。・保健所・精神保健福祉センター以下のリンクからお近くの相談機関を調べることができます。保健所一覧|全国保健所長会精神保険福祉センター一覧|厚生労働省癇癪の治療を受けたいと思ったら出典 : 精神科医療機関とカウンセリングでは、問題に対するアプローチの方法が全く異なっています。精神科では怒りを鎮めるための処方箋を、カウンセリングでは根っことなっている認知の問題を解決するための治療が行われます。自分のニーズに合わせた機関へ行くことが重要です。注意したいこととして、「医療機関では長時間のカウンセリングは行われない」ということが挙げられます。逆に、病院でしかできないこととは、薬の投薬と医学的な検査(血液検査や画像検査)の結果をふまえた診断です。これらを求める場合には、是非病院を訪れてください。医療機関では、主に症状そのものの緩和のためのアプローチが行われます。主に投薬と生活指導が基本です。例えば、不安という症状に対しては抗不安薬を、不眠症状には睡眠導入剤や抗不安薬など症状を緩和するための薬剤を処方されます。医療機関では【症状を聞く】→【診断を下す】→【投薬をする】という一連の流れで患者の病状を改善していきます。病院によってはあまり長い時間をとってもらえないこともありますので、以下のような準備をしていくとよいでしょう。◇メモを用意する自分が困っていることとや、確認したいことについて事前に整理をしておきます。例えば、最近の体調、気持ち、仕事や学校のこと、家庭のことなどです。このように事前に自分の身に起きていることを整理したメモは、診察の場面で言いたいことをきちんと伝えるお助けツールになります。しかし苦しいという悩みはあるものの、実際に言葉にできないこともあるでしょう。そのようなときには、以下の質問リストを参考することで、聞きたいことをリストアップしてみることをおすすめします。これは統合失調症の患者さん向けに作られたものですが、精神科を受診するすべてのの人が参考にして役立てることができます。「質問促進 パンフレット」精神科外来での共同意志決定支援ツール|精神科外来における意思決定支援ツール開発・普及委員会また、病院によっては精神科と心療内科が分かれていることもあります。精神科は精神的な症状のみでとどまっている患者を対象としており、心療内科は、身体的な症状が現れており、心理的な要因が考えられる場合に受診するのがよいでしょう。カウンセリングでは、【話を聞く】→【何が問題となっているのか根っこを査定】→【心理的な療法】という流れで治療が行われます。医療的な治療と異なるのは、カウンセラーと相談者がともに問題解決の方法を探っていくという協同型の治療であるという点です。また、病院に併設されていることもありますが、多くの場合は自由診療であるので、診療以外の費用がかかります。カウンセラーは、意識的なものだけではなく、心の無意識的な働きについても考慮し、問題の原因を分析し、よりよい心の使い方や感情の向き合い方ができるような働きかけをしていきます。怒りについては、気持ちや行動の調整を妨げる原因によって、アプローチの方法は異なります。治療者によっても治療の内容は異なります。前の章で紹介したような怒りに対する瞬発的な対処法についても学ぶこととなり餡巣が、怒りとうまくつきあうための心の土壌づくりがメインとなります。例えば、考え方の枠組みを変える認知行動療法や、身体そのものに働きかけるリラクゼーション療法、マインドフルネス療法などが行われます。癇癪を起こす人の周りにいる方へ出典 : 癇癪を起こしてしまう人の周りにいる人もつらいと思います。なぜなら楽しい、うれしい、悲しいなどすべての感情はその場に伝染していきます。特に怒りは強いエネルギーをもつ感情のために、ほかの感情よりも伝染しやすい性質があります。周りの人たちはどのような心構えで本人と関わればよいのでしょうか。怒りが抑えられないと「我慢が足りない」と捉えられがちですが、癇癪と我慢には関係性はありません。これは、空腹な人に対して「根性が足りない」といっているようなものです。癇癪を起してしまう人は、爆発的な怒りをどうにかしたいと思っている一方で、気持ちをコントロールできず当たり散らしてしまう現状に対して葛藤を抱いています。癇癪は自分では「怒りを抑えられない」という状態のために、自分でも怒りの原因や対処法が分かっていないことが多く悩んでいます。また二つ目の問題として、癇癪による二次的な問題があります。すぐに感情的になってしまうために人とうまく付き合えず、家族や恋人、友人との間の人間関係や、職場や学校における適応に問題を抱えていることが多いです。そのような場合に、カウンセリングなど、他の人の支援を受ける方法を知らせるなど、解決したいという本人の支えとなる方法がないかを一緒にさがしてみるとよいでしょう。怒りの感情は周囲に伝染するので、あまりに癇癪がひどい場合には、周りの人も大きな精神的ストレスを受けてしまいます。癇癪が起きているその瞬間には逃げることも考えてください。周囲の人に明らかに非があった場合を除いて、本人の怒りのサンドバックになる必要はありません。大事なのは、周りにいる自分の苦しさがあると伝えた上で、自分の身を守るためにもその場を離れることがあると伝えておくことです。職場などの場合には「逃げる」という選択をすることが難しい場合もありますが、怒っている人のいる場から物理的に離れるという勇気をもってみることも大切です。また、あまりに癇癪が激しく、精神的につらい時や危害を受けている時には、ためらわず専門機関などに相談することも検討しましょう。相談ナビ総合労働相談コーナーのご案内まとめ出典 : 感情とうまく向き合うことができれば、感情を使って建設的な行動をとることができるようになります。怒りをバネにして何かを成し遂げるといったように、怒りは目的に向かって行動するきっかけにすることも可能です。わたしたちを怒らせるものの正体は「譲ることのできない価値観」です。しかし「こうあるべき」という価値観が大きすぎると、現実を受け入れにくくなってしまいます。自分がどのような「こうあるべき」という価値観を、どの程度望んでいるのか、それをお互いに伝え合うことができれば、職場や家庭での人間関係も良好になるかもしれませんね。
2017年07月29日『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』の著者の立石美津子です。「○○さえ出来たら…」親の価値観で子どもに期待を寄せていたあの頃子どもを産んだ瞬間は「元気であればそれでいい」とそんなに高望みはしていなかったのに…。ほかの誰かと比較することなく、我が子の存在そのものに喜びを感じていたのに…。定型発達児であれ発達障害児であれ、親になるとつい周りの子どもと比べてしまいます。「みんなと同じ行動がとれますように…」「お友達のようにお喋りができますように…」「集団行動がとれますように…」無意識のうちに、こんな言葉が頭をよぎることはありませんか?でも、これらは親が持っている独自の価値基準。「ここさえ改善されたら、私もこの子もきっと幸せになるに違いない」と勝手に思っているだけなのです。Upload By 立石美津子もし、親が定型発達で、子どもが発達障害児であればなおのこと、子どもは苦しみます。何故なら親に“共感”してもらえないからです。親が定型発達の場合「みんなと同じことが出来るようになることが幸せだ」「お友達がいることが幸せだ」という考えにとらわれていることも多くあります。私自身もそんなことを感じた出来事がありました。発達障害当事者のママに言われた衝撃の一言私は定型発達で、息子はバリバリの自閉症です。ですから、私も前記のような親の期待と子どもの状態のずれに悩んでいました。これは、14年前、息子が3歳だったときの保育園での写真です。皆と同じように帽子をかぶって合唱することはなく、息子は一人読書をしています。私は保育参観でこの光景を目の当たりにし、もの凄く悲しい気持ちになりました。Upload By 立石美津子当時、息子を病院内の療育施設に通わせていたのですが、そこで知り合ったあるママがアスペルガー症候群の当事者でした。そのママにこの写真を見せたことがあります。そこでの会話私「ねえ、うちの子を見てよ。何度叱ってもみんなと同じ行動がとれないのよ…」当事者のママ「この前列に立っている子ども達、どうしてみんな同じ格好をして歌を歌っているのかしら?後ろで本を読んでいる方が楽しいのにね」意外性のある回答を聞いてびっくりしました。同時に「このママは他人なのに、息子の気持ちがわかるんだ。そんな視点も存在するんだ~」と思ったのです。そして、私が自分の枠組みでしか子どもを見ていなかったことに気付かされました。個性を伸ばしたいといいながら、子ども自身の「世界観」を無視していた出典 : どんな子どもにもそれぞれ個性があります。ところが「個性を伸ばしたい」と口では言いながら、実際にやっていることは人並みを求めたり、平均値を意識する子育ての人が多いように感じます。ダウン症、視覚障害、肢体不自由などの障害は一目見ただけでわかるので、親自身も受け止めざるを得ないですし、いちいち説明して回らなくても周囲の理解を得られやすい場合もあります。でも、見た目が定型発達児と変わらない発達障害の子どもに対しては、まず親自身がなかなか受け入れられないことがあります。中には「このまま私が一生懸命育てれば、いつかきっと普通の子どもになるのではないか」と錯覚してしまう人もいます。また、母親が理解していても、姑から「しつけがなっちゃない!」となじられたり、理解のない夫から「お前の育て方が悪いからこうなったんだ。愛情不足だ」と責められている人もいます。こうなると誰も理解者がいなくなり、母親は更に苦しみます。偉人の母たちの行動から学ぶしかし、自分の育て方が間違っていると、苦しむことはありません。歴史上には学校に匙を投げられても、偉大な人物に成長した人、その人を育てた母の話がいくつも残っています。徹子さんは初めに入学した小学校で問題児扱いされました。教室の机のふたが珍しくて授業中何度もパタパタ開け閉めしたかと思うと、今度は窓際に行き、外を歩くチンドン屋を呼び込んだり…。学校からは迷惑がられて、とうとう退学処分となりました。立派なのはその時のお母さんの姿勢です。徹子さんを変えようとしないで「この子を受け入れてくれる学校を探そう」という視点で転校先を探しました。しかも、本人が傷つくことを恐れて、転校理由(退学について)は本人には絶対に伝えませんでした。この母親の配慮により、徹子さんは“自分の存在を否定された”と感じることなく、その後、転校先で素晴らしい先生に出会うことになりました。転校先で校長先生からかけられた「君は本当はいい子なんだよ」の言葉に元気づけられ、徹子さんの今があると『窓際のトットちゃん』に書かれています。出典 : 粘土を使って“1+1=2”を教える小学校教員。エジソンは「粘土と粘土を合わせたら1」だと言い張りました。これに対して担任は「腐れ脳みそ!」と言い放ったそうです。そのこと知った母親は子どもの発想力をつぶす教師と学校側に抗議し、とっととエジソンを退学させます。母がとった決断の結果、のちにエジソンは人類の生活を変える電球の実用化を果たしました。もちろん、みんながみんな偉人になるわけではありません。でも、こうした偉人のエピソードから親が学べることはあると思うのです。子どもを変えるのではなく、親が変わる。そうすれば、子どもは「この世に生まれてきて良かった。毎日が楽しい、幸せである」と感じます。親が子どもを産んだときに「この子が幸せな人生を歩んでいきますように」と願ったことは、親が子どもの立場に立ち、子ども自身の世界観を大切にすることでこそ、叶うのではないでしょうか。まとめ出典 : 親が定型発達であると、どうしても既成概念で物事を捉えがちです。「友達がいないことは可哀想だ。友達と一緒に遊ぶことが楽しいだろう」と考え、地面の虫や石ころとたわむれる一人遊びをする子どもを「そんなことしていないで皆のところへ行って遊びなさい」と連れ出します。部活を選ぶときも、みんなと協力しなくてはならないサッカーや野球をやらせたくなります。でも、子どものことを考えたら人と関わらないで済む個人プレイの体操、マラソン、テニス、卓球などをやらせた方が楽しめる子もいるはずです。我が子に対しては「こうあってほしい」と願いを託すのは親として自然な感情ですが、子どもを無理に変えようとしたら本人には無用な大きなストレスがかかります。もしかして…変わらなくてはならないのは親なのかもしれませんね。『立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』
2017年07月28日