小学校から不登校だった娘のフリースクールでの過ごし方出典 : アスペルガー症候群の診断を受けている中学校3年年生の娘は、小学校2年生のときから学校には通っていません。自宅でもほとんど勉強をしてこなかった娘ですが、「高校には行きたい」と自ら訴え、特別支援コーディネーターの先生にも相談し、来年からは通信制高校に行くことが決まりました。合わせて、自宅から通える場所にある、技能連携校にも通うことに。技能連携校というのは、通信制高校の分校のようなところで、通信制高校と技能連携校の両方に入学することで、技能連携校の方で卒業に必要な出席日数、レポート提出、試験をすべて済ませることができるそうです。娘が通う予定の技能連携校では、フリースクールとしての機能も持っており、高校入学までのあいだは、ここに通うことになりました。フリースクールでの1日はというと出典 : 娘の行くこのフリースクールでは、ピアノ教室と提携していて生徒は無料でレッスンを受けることができます。好きな曲をピアノの先生に聞いてもらって、 それを先生が聴き取って、弾き方を教えてくれます。先生のモットーは「音楽は楽しむもの。 譜面も見ないで自分の好きな曲をまずは弾いて楽しむ」なんだとか。だから、みんなピアノの時間が大好きだそうです。娘もまずは15分ほど先生とピアノを弾きます。特にピアノに興味がなかった娘ですが、自分の大好きなゲーム音楽を弾けるようになるのは楽しいようです。それから学習スペース(特に決まってないのですが)で、校長先生か教頭先生と一緒に勉強します。2人とも元小学校の先生で、塾講師のキャリアも長いので教え方が上手。学校と比べて生徒の自主性を重んじ、いくらできなくても決して声を荒げるようなことはありません。なので、怒られることが怖くてたまらない娘も安心して教わっています。小学校2年生で学力が止まっている娘は、レベルにあったプリントを1枚ずづ取り組んでいきます。たとえば、1桁 + 1桁の計算問題、また別の日は4年生くらいの漢字の読み問題。時間にしてわずか20分くらいで終わってしまう内容です。時にはほかの生徒さんも交えておやつタイム。ジュースとお菓子を頂きながらホッコリと休憩。そして1日は終了。滞在時間は全部合わせて1時間程度です。1回20分の勉強って効果があるのだろうか?出典 : 娘は満足そうなのですが、親としてやはり気になるのが勉強時間。「え、こんなちょっとでいいの?」と思うのが正直なところです。「ただでさえ人より遅れてるのに」って。でも、校長先生が言うには「学校のように、1日6時間も座って興味のないことも勉強するより、こうやって少しずつ集中して勉強したほうが効率がいいんですよ。」この言葉に疑いを持ったわけではありませんが、どうしても腑に落ちず、娘の主治医である思春期外来の先生にも勉強時間について聞いてみたのです。すると、「娘さんのような子どもたちは、普通の学校のようにカリキュラムを組んで、これをこなさないと次にいけないとなると絶望的な気持ちになります。 今のやり方がいいと思いますよ」とのこと。そういえば、以前娘の支援に関わってくれた先生にも同じようなことを指摘されたことを思い出しました。その人が言うには、ただ漫然と課題を与えられても、いつまでやり続ければいいのかわからず、不安になってしまう。だから、全体図を見せて今はここをやっているんだよと教えてあげることが大切だと言うのです。確かに、今の娘の学習の遅れは大きく、どれくらい勉強したら追いつけるのか本人も分からず不安になっている様子が見受けられます。だからこそ、フリースクールでの小学校1年生レベルから徐々に始められる環境、先生が「大丈夫、ちゃんと追いつくからね」と言ってくれる環境があることで、過度な負担や不安に悩むことなく学習を進めることができるのだと気づくことができました。在校生・卒業生たちとの交流も!出典 : フリースクールも技能連携校も、スペースやスタッフはみんな同じです。なので、娘が勉強している側で高校生や、遊びに来た卒業生が娘に勉強を教えてくれることもあります。また、先日は卒業生に仕事の体験談を聞いたりして、とても話が盛り上がっていたそうです。そうして世代を超えた交流ができるのも魅力の1つだと感じました。また、そうやって高校生たちと交流することで、実際に通うことになる技能連携校に馴染んでいくことができるのも、校長先生の狙いだけあって、さすがと思います。実際、娘はフリースクールに入ってから「学校(フリースクール)の予定表ちょうだい」と言ってくるようになり、すっかりフリースクールに所属意識を抱いているようです。思い返せば、小学校を卒業するときには、中学生になる不安で体調も悪かった娘。でも中学を卒業する今回は、気持ちもすこぶる安定していており、私もホッとしています。あきらめないでよかった出典 : このフリースクールに出会うまでには、さまざまな機関を頼り、そして失敗を繰り返してきました。今回やっと娘に合うところに出会うことができ、あきらめずチャレンジを続けてきたことは間違いではなかったと思うことができます。娘に起こったなによりの変化は、「私には行くところがある」という安心感による気持ちの安定だと思います。また、同時に、来春から通う技能連携校の様子を内部からまじまじと見て、見通しがたったことも大きな理由でしょう。こうした要素が合わさったことによって、娘は希望を持って、春を迎えることができると思います。小学校から中学校に進学する際、不安から体調やメンタルを大きく崩した経験があるだけに、中学3年生になるのが怖かった私。でも、笑顔でいつも通り過ごしている娘を見て、本当によかったと胸をなで下ろしています。
2017年10月23日我が家には、自閉症スペクトラムの診断が下りている9歳の娘と7歳の息子がいます。同じ診断名がありながらも、娘はアスペルガー症候群、息子はADHD不注意優勢型の要素が強く出ており、それぞれ異なる困りごとに直面していることも珍しくありません。そんな2人は幼いころからピアノを習っているのですが、発表会に向けての練習の姿勢もまったく違うものでした。3ヶ月間、練習を重ねる間に、2人の違いが浮き彫りになってきました。アスペルガーの娘に色濃く映る「完璧主義」出典 : 娘は課題曲が決まってからというもの「本当に自分に弾けるのか」「本番で失敗したらどうしよう」という不安が強く、その反動から苦手な譜読みを必死でこなす日々が続きます。大好きな曲をなんとかイメージ通りに弾きたい、でもピアノから響いてくる音は自分の想像しているものとはかけ離れている。そのジレンマから、数小説弾くたびに泣いたり怒ったりを繰り返していました。ピアノに関わらず、絵を書くときも勉強をするときも、娘の頭の中には100点万点の完成図が思い描かれています。そして始めたばかりであるにもかかわらず、完璧にできない自分を呪い、自責の念に駆られているのです。これは、娘の持つ「完璧主義」という特性が作用しているせいだと思います。娘がこの完璧主義という特性を持っているがゆえに困ることは2点あります。・ 娘が自分自身を責めて癇癪(かんしゃく)を起すため、本人も周囲も辛い・ 周囲の人にも完璧さを求めてトラブルを起こすことがあるまた、これを放置してしまうと、・ 失敗を恐れて行動できなくなる・ 完璧に出来ない人を見下してしまうといった弊害が出るのではないかと危惧していました。娘の成長。その第一歩。そこで幾度となく、紙に階段や山の絵を描いて「あなたはまだ登り始めたばかり。頂上にいないのは当たり前だよ?一歩一歩登っていけばきっと目標地点に辿り着けるよ」と話してみるのですが、娘はなかなか受け入れられません。それでも、繰り返しこの考え方を伝えていくことで、他人に対しては完璧を求めることは少なくなってきました。なかなか上手く弾けずに落ち込んでいる息子に「大丈夫だよ、今はまだ階段を登り始めたばっかりでしょ?少しずつ完成に近づいていくから、ね?」と声をかけられるようになってきたのです。この調子で成長してくれれば、他人を見下すことによって歓びを感じるような大人にはならないかな、今まで声をかけ続けてきたことは無駄ではなかったかな、とほっとしながら見守っています。しかし、まだ自分自身に対してはその考えを適用することができず、あっさり癇癪を起こします。今は私がそれを受け止めていますが、あきらめずにその都度「今すぐ100点じゃなくていいし、最終的に100点でなくてもいい」というメッセージを娘に発信し続けています。この考えを伝えていくことで、娘の頭にも完璧でないことを許容する回路ができてくれればいいなと思います。出典 : また、完璧主義であることは、マイナス面が捉えられがちですが、とても良い面もあると思うのです。完璧でありたいという子どもの願いを否定せず、とことん付き合ってあげると、時として驚くべき成長を遂げることがあります。娘の場合は、鞠つきに始まり、二重跳びや逆上がりなど、出来ない自分を罵り泣きわめきながらも着実にマスターしてきました。それこそ、手の皮がめくれても、夜中になってもひたすらずっと練習を重ねるのです。そうして人より随分長い時間をかけてマスターしたことは、何となく出来てしまったお友達よりも形や方法が正確で、がんばってマスターしようとしているお友達をバカにすることなく、的確なアドバイスを送ってあげることができるのです。完璧主義も使いよう、というと語弊があるかもしれませんが、癇癪や他人への攻撃をコントロールすることができるようになれば、とっても良い方向に作用するのではないかと期待しています。いつか娘が私の手を離れるまでに、自分の特性の活かし方をマスターしてくれればと切に願っています。コツコツ努力が苦手な息子が自分で見つけたモチベーションUPの方法!出典 : 一方、不注意優勢型の息子は、過去や未来ではなく「いま目の前にあること」にしか、なかなか注意を向けることが出来ません。ですので、何ヶ月か先のことを話されてもイメージが湧かない様子。「発表会でカッコよく弾くためにしっかり練習をしようね」と声をかけても、「もう弾けるから、大丈夫大丈夫」とあまり本気で練習をすることはありませんでした。そんな息子に変化が訪れたのは、リハーサルの日。リハーサルとはいえ大勢の人が聴いている中での息子の演奏は、ぼろぼろで間違いだらけでした。人前で弾くことを体験し、本番はもっと大勢のお客さんの前で弾かなくてはならないと身を持って知った息子は、それから大慌てで練習を開始しました。日々の私のアドバイスよりも、たった1回の体験が息子には強烈な学びの場となったのです。注意があちこちに向いてしまったり、衝動性が邪魔をしてひとつのことをコツコツと積み上げていくのが苦手なADHDの息子。ですが、リハーサル以来、YouTubeで同じ曲を演奏しているお子さんの動画を自分で観るなど、視覚優位の息子らしいモチベーションの保ち方が見られ、少しずつ自分に合った方法が身についてきていることに気付かされたのです。息子が手に入れた思わぬ「副産物」そして、思わぬ副産物を手に入れていることもわかりました。協調性運動障害を併せ持つ息子は、鉛筆で書く文字がどうしてもガクガクと震えてしまったり、文字の書き始めや書き終わりにいくつも関係のない細かい線が入ってしまいます。しかし、普段より多くピアノの練習をしたおかげで指の筋肉が付き、線がしっかりとしてきたのです。自分の体を上手くコントロールするのが苦手な息子にとって、「筋肉を鍛えればできることが増える!」という発見は、とても大きな自信となり、ピアノの練習にも熱が入るようになりました。ADHDの方の中には、継続した努力が難しく、他の方から怠けているように思われてしまう方も多いとも聞きます。視覚優位の息子がYouTubeを見てモチベーションを持続させたように、「こんなことができたらいいな!」と思える刺激を日々与えていくことが効果的なのかもしれません。親子で目標に向かうことは「生きるヒント」を探し出すこと出典 : ピアノに限らず、スポーツでも勉強でも遊びでも、親子で目標に向かって挑戦することは、子どもたちにとって大切なことだと思います。特に周囲の状況から何かを学び取っていくのが苦手な子どもたちが成長するためには、今の状況を冷静に判断して伝えてくれたり、計画の立て方や実行するサポートをしてくれる大人の存在が必要不可欠だと思うのです。ひとつの目標に向かって親子で進むうちに、親は子の特性をより深く知り、子は嫌でも自分自身と向き合うことになります。目標である頂上を目指して一歩一歩どのように進めばよいのか。どのように休息を取ればよいのか。共に行く家族とどう励まし合えばよいのか。面倒なことから逃げたくなったときはどうすればよいのか。努力の先には何があるのか。練習を重ねてテクニックを磨くことはもちろん大切なことですが、わが家の場合は、テクニックの向上よりもむしろそんな「生き方のヒント」を親子で探る旅をしていたような気がします。そうして目標を達成できたとき、子どもは自信を持って次のステップに進むことができると思うのです。他の子から遅れててもいい、目標を達成するのに時間がかかってもいい。目標の達成はゴールではなく、子どもたちの成長の通過点にしか過ぎない。そんなふうに考えて、お子さまと一緒に何かに挑戦してみませんか?「どうしてできないの!?」ではなく、「どうすればできるようになるかな?」と家族で作戦会議をしてみませんか?ご家族と一緒に取り組んで「できた!」という経験の積み重ねが、きっと「ひとりでできた!」に繋がる日が来るはずです。そんな日を楽しみにしながら、ぜひ小さなチャレンジをしてみてくださいね。
2017年10月22日発達障害のある子どもの歯科治療の大変さは世界共通!?出典 : 発達障害のある子どもを歯医者さんへ連れてゆくのは並大抵のことではない…そんな声を聞くことも珍しくありません。私の息子(自閉症スペクトラム障害・ADHD診断済)も、あちこちドクターショッピングを重ねましたが、長いこと歯科治療への恐怖が克服できませんでした。触覚過敏で口の周りや顎を触られる苦痛に耐えられなかったり、味覚過敏でフッ素の味にすら吐き気がしてしまったりします。さらに聴覚過敏の息子にとって、歯医者さんが使う器具の音は耐えがたいものだったのです。長い間、親子ともども泣きたいような思いをしましたが、我が家の場合は、障害児専門歯科に行きついたことで、ようやく静かに治療が受けられるようになりました。それまでは、歯科に連れていくたびに大暴れし、大声で叫び、抵抗の限りを尽くしてきた息子。最後には疲れ果てて汗びっしょりになった歯医者さんから「君みたいな子は初めてだよ!!」と怒られてきたのです。息子は歯科治療に行くたびに、帰りの車で泣いていました。みんなに迷惑をかけているのは分かっていたけれど、自分ではどうやってもコントロールができなかったのです。そんなとき、ある海外ニュースが私の目に飛び込んできました。そのニュースの見出しにある写真が私の目を奪います。なんてことでしょう、歯科治療を受けている男の子の足の上に、大きなラブラドールレトリバーが座っているのです!自閉症のディエゴくんと介助犬のズッカ海外には、自閉症児向けに訓練された介助犬がいることは、以前発達ナビの記事でも取り上げました。それだけでも海外移住したくなってしまうほど羨ましかった私ですが、なんと南米チリには、自閉症児の歯科治療に特化した介助犬を養成・派遣している団体まであるというのです。そのことを私に教えてくれた記事がこちら。(英語の記事です) Chile, Dogs Help Kids with Autism on Their Dentist Visits (南米チリー自閉症児の歯科治療に介助犬を活用)今回のニュースで取り上げられたのは、自閉症児のディエゴ・ロサレスくん(9歳)と、介助犬のラブラドールレトリーバー「ズッカ」です。自閉症児にとって歯科治療は強い恐怖を喚起させるものです。眼前に煌々と照らされたライトや、治療器具から発せられる音に、パニックになってしまう自閉症児もいます。ときには治療に鎮静麻酔が必要な場合もあるのです。息子が通っている障害児専門歯科でも、パニックが強いお子さんには全身麻酔が施されます。ディエゴくんも例に漏れず歯科治療に対する恐怖心が非常に強く、4歳の頃は治療をする歯科医の手を噛み続けて抵抗したと言います。ところが、記事の中で紹介されていたこちらの動画を見てみてください。ディエゴくん、とっても楽しそうです。歯科治療も落ち着いて受けており、麻酔の注射を前にしても、動じていません。全ては、介助犬ズッカのおかげです。ディエゴくんはズッカを膝の上に乗せながら治療をするようになってから、歯科医の手を噛んだり、叫んで抵抗したりすることがなくなりました。この日もディエゴくんは歯を抜くという難易度の高い治療をしたようですが、歯を抜かれた後もずっとズッカのことを穏やかに撫で続け、抜いた歯をケースに入れてもらって、ご機嫌に治療を終えたようでした。専門の訓練を受けた犬たちの活躍ズッカを含め、ディエゴ君が通う大学病院付属の歯科に介助犬を派遣しているのは、「フント・ア・ティ(Junto a Ti:あなたのそばで)」というNPO団体です。こちらの動画を見て頂くと分かるように、子どもたちは犬を優しくなでながら、穏やかに治療を受けている様子がわかります。こうした犬達には、子どもの叫び声だけではなく、治療器具の音などに耐え、さらに子どもが耳や毛を引っ張ったとしても、ジッと動かずにいる忍耐力が必要となるそうです。日本でも取り入れて欲しい!歯科治療の介助犬出典 : 歯科治療の介助犬について調べると、アメリカなどでは歯科クリニックに介助犬を常駐させているようなところもあることがわかりました。また、アメリカでは、大きな事件などが起きて多数の犠牲者が出た場合などでも、NPO団体がセラピードッグを病院に派遣する場合があるようです。このような介助犬に関する取組みは、海外のほうが進んでいることが見て取れます。今回のように、介助犬の助けによって歯科治療がスムーズになるのであれば、自閉症の子どもにとっても、その親にとっても、もちろん治療をする歯科医師にとっても、こんなに幸せなことはありません。日本ではまだまだ歯科治療に介助犬を同伴するというのは難しいと思いますが、こんな海外の事例があるということが少しでも広まっていけばいいなと願っています。
2017年10月21日発達障害における薬物療法とは出典 : 発達障害の症状に対する治療法の一つとして、医師の判断によって薬が用いられることがあります。しかし、発達障害を根本治療する薬は現在ありません。そのため、発達障害で薬を処方する時は、発達障害の特性をなくすという目的ではなく、その症状を抑えることや二次障害を治すことが目的になっています。薬を処方することは医師にしかできません。薬によっては、医師の中でも限られた一部の医師にしか処方することが許されていないものもあります。また、発達障害だと診断されたら、必ず薬を服用するというわけではありません。医師の判断によって、必要に応じて薬を服用していくため、薬を処方されるタイミングで医師から薬に関する説明を受けることになります。発達障害のある人への支援で、お薬に期待されることは?出典 : この章では、発達障害のある人が、薬を服用することによってどのような効果が期待されるのかを紹介します。現在では、発達障害のある人への支援方法の一つとして、薬物療法はある程度の効果があると考えられています。しかし、服用する上で気をつけなくてはならないのは、発達障害における薬はすべて対症療法であることです。そのため、薬に期待されることは、発達障害そのものをなくすためのものではなく、発達障害の症状を和らげることになります。主な発達障害を例に、どういった症状に対して薬を服用していくのか見ていきましょう。◇自閉症スペクトラム自閉症スペクトラムを根本的に治療していく薬はありません。また、このあとで紹介するADHDの場合とも異なり、現在、自閉症スペクトラムの特徴である「社会性・対人関係の障害」 「コミュニケーションや言葉の発達の遅れ」「行動と興味の偏り」といった中核症状を直接軽くするような目的で薬が使われることはあまりありません。しかし、自閉症スペクトラムに伴う以下のような関連症状に対しては、薬の効果が期待されています。・かんしゃく・こだわり・不注意・多動性/衝動性・チック・抑うつ気分・睡眠障害など参考書籍:『精神科治療学Vol.30増刊号』(星和書店・2015)◇ADHDADHDでは、不注意・衝動性・多動性といったADHDに特徴的な症状そのものを緩和させることが期待されています。しかし、薬物療法でADHDを根本的に治療できるわけではなく、薬を服用しながら環境調整やソーシャルスキルトレーニングなどの療育を行っていくことで、困りごとを減らしていくことになります。ADHDにおける薬物療法は、「ADHDをなくす」ためではなく、「社会生活や学業での困りごとを解消する」ための手助けをしてくれるものだと考えるといいのかもしれません。発達障害のある人に処方されるお薬の種類出典 : 発達障害の症状に対して効果があるかもしれないと考えられている薬は多くあります。日本では未認可であっても、海外では認可されている薬や、ADHDで用いられる薬が他の精神疾患のある人に対して効果が見られるようなケースがあります。また日々、発達障害の薬は研究が行われており、オキシトシンなどさまざまな物質が薬として利用できないか調べられています。数多くの薬がありますが、人によって合う薬と合わない薬もあり、副作用などもあります。現在のところ、すべての人に必ず効果があるような薬はありません。そのため、薬物療法を進めるときは医師の判断のもと、その人の症状や状態を慎重に見ながら行うことになります。ここでは、自閉症スペクトラムやADHDの治療において認可されており、比較的用いられることの多い薬についてまとめました。◇自閉症スペクトラム小児の自閉症スペクトラムの易刺激性に対しては、リスパダール(リスペリドン)、エビリファイ(アリピプラゾール)といった薬が認可されています。易刺激性とは、自傷行為やかんしゃく、攻撃的になりやすいなどの性質のことです。これらの薬は、脳内の伝達物質のバランスを整える作用があります。◇ADHDADHDに対しては、中枢神経刺激薬であるコンサータ、非中枢神経刺激薬であるストラテラ、インチュニブが認可されています。それぞれの薬の詳細については関連記事を参照ください。参考:リスパダール錠|独立行政法人医薬品医療機器総合機構リスパダール患者向医薬品ガイド|特別行政法人医薬品医療機器総合機構参考:エビリファイ錠|独立行政法人医薬品医療機器総合機構エビリファイ患者向医薬品ガイド|特別行政法人医薬品医療機器総合機構また、コンサータと同じく中枢神経刺激薬であるリタリンは、昔は認可外ではありましたが、ADHDに処方される場合もありました。しかし、今ではADHDに処方されません。リタリンとコンサータの違いについては、以下の関連記事内で詳しくまとめてあります。発達障害のある人がお薬を服用するときの注意点は?出典 : 薬を服用するときには、「副作用があるのではないか」や「本当に効果があるのか」など多くの不安がつきまといます。そのような不安を解消するためにも、精神薬を服用する時には、医師と相談したり協力したりすることが必要不可欠です。薬の服用に関しては、具体的に以下のことに気をつけるといいでしょう。発達障害に処方される薬の多くは、対症療法を目的としたものです。そのため、服用する薬が具体的にどんな行動・症状を抑えるための薬なのかを知っておくことが大切です。主治医や薬剤師の方に薬について説明をしてもらったり、不明なことや不安なことは相談するとよいでしょう。また、副作用と、副作用が起きたときの対処法も事前に理解しておくとよいでしょう。発達障害に処方される薬の副作用として生じる症状のうち、早急に対処しなければいけないものはそれほど多くはありません。そのため、心配しすぎる必要はありませんが、急に発疹がでたり、呼吸が乱れたりしたときにどのような行動をとればいいのかは理解しておきましょう。薬の使い方を誤ると、重大な副作用が生じる可能性もあります。基本的に、医師の指示にしたがって服用するようにしましょう。症状が軽くなったからといって、個人の判断で勝手に量を減らしたり服用を中止したり、逆に薬が思った通りに効かなかったからといって、勝手に量を増やしたりしてはいけません。しかし副作用がひどい場合には、いったん服用を中止して医師に相談するようにしてください。精神薬は、効果に個人差があることも多く、最適な量についてもバラバラのため、様子を見ながらその都度修正していく必要があります。副作用が見られる場合もあります。どんな些細なことであっても、なにか気になることがあれば医師に報告し相談するようにしましょう。副作用として、次のような症状が見られることが多いため、このような症状に気を配っておくとよいかもしれません。・食欲不振/食欲減退・軽度な不眠症・体重減少・頭痛・腹痛など参考書籍:太田昌孝 永井洋子 武藤直子/著者『自閉症治療の到達点第2版』(日本文化科学社・2015)また、薬を服用するときに気になることに、薬をいつやめるべきかということがあります。児童精神科医の吉川徹先生は薬のやめどきについて発達ナビのコラムで以下のように述べています。常にやめることを考えながらお薬を使う、というのがおそらく正解であると思います。減薬や中止のチャンスを常にうかがっていないと漫然とお薬を使うことになってしまいます。・標的となっていた症状が改善してきたとき・環境との不適合が小さくなってきたと感じられるとき・他の支援がうまく回り始めたときなどが、お薬を減らす・やめるチャンスです。薬のやめどきについても、医師と相談しながら決めていくようにしましょう。上記や下記のコラムでは、薬のやめどき以外にも、発達障害と薬について詳しく紹介しているので参考にしてみてください。薬物療法と併せて療育的支援を行うことが大切出典 : 発達障害の症状は薬物療法によって軽減することがありますが、これは決して薬任せにすればいいというわけではありません。発達障害の治療においては、薬物療法のみを行うことはなく、薬物療法で症状が落ち着いている間に並行して教育的・療育的なアプローチをすることが重要です。例えば、ADHDの子どもに対して行われる療育には、ソーシャルスキルトレーニングやペアレントトレーニングなどがあります。ソーシャルスキルトレーニングは様々な特性をもつ本人が社会や生活での適切な行動をうまくできるようにトレーニングするもので、ペアレントトレーニングは保護者の方々が子どもとのより良いかかわり方を学びながら、日常の子育ての困りごとを解消し、楽しく子育てができるよう支援する保護者向けのプログラムです。また、自閉症スペクトラムのある人に対してはTEACCHと呼ばれるアメリカ発祥の当事者とその家族を対象とした生涯支援プログラムなどがあります。ここに挙げた以外にも、本人がより生活しやすいような環境を整備したり、本人にあったやり方を模索していったりすることも大切です。療育的支援の詳しい内容については、それぞれまとめてありますのでそちらを参照ください。医療費の助成について出典 : 発達障害の日々の困りごとを解消する手助けをしてくれる薬ですが、実際に服用するとなるとお金がかかることになります。薬の服用頻度や、薬の種類によって金額は異なるため、薬を服用するにあたって、一概にいくらかかるとは言うことができませんが、家計への負担を少しでも軽くするために、薬にかかる費用も含めた医療費を少しでも減らす方法についてまとめました。日本全国どこにいても、受けられる支援に自立支援医療があります。発達障害や精神疾患が原因で、精神科に通院する時にかかる費用の一部を国が負担する制度です。調剤、往診、デイケア、訪問看護が対象となっており、自己負担額が1割になります。しかし世帯の所得などに応じて、窓口負担額の上限金額が定められています。こちらの支援を受けるためには、区市町村の窓口から申請する必要があります。実際に申請するときの流れなどについては、こちらを参考にしてみてください。各地方団体では、それぞれが独自の支援を行っていることがあります。例えば、乳幼児にかかる医療費への助成であったり、自立支援医療での自己負担額をさらに軽減したりするような制度があります。これらの支援は、各地方自治体で受けられるサービスが異なります。また、申請方法についても異なるため、お住いの地方自治体のホームページを見たり、役所に足を運んだりしてみてください。また、医療費以外にも受けられる支援があります。受けられる支援の内容や申請方法に関する詳細はこちらにまとめられています。まとめ出典 : ここまで、発達障害のある人に処方されるお薬にまつわることをまとめてきました。発達障害の薬に限らず、すべての薬は、正しく利用できれば大きな味方になりますが、使い方を誤ると思わぬ副作用をもたらします。発達障害や精神疾患の薬は、風邪薬などに比べると、副作用のでる確率が高かったりと繊細で扱いにくい一面があります。また、効果が現れるかどうかも人によって差があります。そのため、普段以上に使い方を間違えないように注意したり「こんな些細なことを相談してもいいのかな」と思うようなことを含めて、すべて医師に相談するようにしましょう。薬に頼りっきりになることなく、薬で症状が落ち着いている間に療育を行ったり、少しでも本人が生活しやすいような環境を整えたりすることも大切です。
2017年10月20日「こんな顔だったっけ?」とある俳優さんの顔が覚えられない私Upload By 鈴木希望どうしてもお顔を覚えられない俳優さんがいる。何度見ても「あれ、こんな顔だったっけ?」と思ってしまう。テレビや映画、雑誌等では滅多に見られない役者さん、というわけではない。名は秘すが、あらゆる作品に引っ張りだこ、イケメン俳優として人気を集めている。そう、私はいわゆるイケメンの顔が覚えられない。軽度の相貌失認なのだ。相貌失認とは、簡単に言ってしまえば、人の顔を認識するのに困難が生じる疾患のことだ。俳優のブラット・ピットが明らかにしたことで、数年前に話題となった。人の顔が覚えられない……相貌失認の症状・対処法Upload By 鈴木希望当事者の方のブログや症例などを拝見すると、全く覚えられないわけでもない私は、比較的軽度であるようだ。とはいえ生活に支障がないわけではない。前職では、1週間ほぼ毎日顔を合わせていた人に、毎日「初めまして」と挨拶をし続けた。またプライベートでは、とある講座を一緒に受け、一緒に修了した同期生に数日後対面し、やはり「初めまして」と挨拶をしてしまった。前者の場合、発達障害を明らかにして入社したため、「そういうこともあるんだね」と笑って流してもらえたが、後者は大層嘆いていらした。それもそうだろう、共に学び、仲が良いと思っていた相手に、たった数日で忘れられてしまっていたのだから。「関心がないから覚えられないのでは?」と誤解されがちなのだが、決してそうではない。関心があっても覚えられないのだ。これが辛い。お付き合いしていた男性の顔を、家に帰ったら全く思い出せないなんてこともあった。とはいえ、顔以外の声や仕草を覚えていることがあるので、次に会ったときは「こっちを見ている。あ、この声。そうだ、この人だ」といったかたちで確認するわけだ。覚えやすい顔と覚えにくい顔。その違いは一体なんだろう?出典 : 相貌失認の概要については前述のリンクをご覧いただくとして、ここからは私の話。前述したように、誰もの顔を全く覚えられないわけではないし、何度か会えばいずれ覚えられる。中には1度会っただけで覚えられることもある。そうした経験を通して、私には「覚えやすい顔」と「覚えにくい顔」があるということに気づいたのだ。ただ、その差がなんなのか、長年わからなかった。そのヒントになったのが、イラスト描きを生業としてる知人の、「美形を絵に描くのは難しい」という言葉だった。曰く、「整った顔立ちは特徴が捉えにくい。少しバランスが狂っただけで美しさが削がれてしまうし、似顔絵の場合だとデフォルメがしにくいから、似せるのが本当に難しい」と。相貌失認のない人でも、美形は認識しにくいのか!―目からうろこだった。後日、冒頭の俳優さんを雑誌で見かけた際、「こんな顔だったっけ?」と思いながらじっくりと確認する。うん、美形だ。そうか、私は美形であればあるほど覚えられないのか……「イケメン嫌いのブサイク好き」?違う!断じて違う!!出典 : そんなこんなで、私はいわゆるイケメンに関心がない。というか、覚えるのが苦手だから関心の持ちようがないのだ。しかし、「ノゾミちゃんってブ専(ブサイク専門)なんだね」などと言われたら、烈火のごとく逆上する。「私の大好きなあの人やあの人に土下座しろ!」と。まぁ、逆上は大げさだが、正直いい気分はしない。自分にとって愛しいもの、心地いいものを、あたかも美しくないかのように言われるのだから。現に、私にとって覚えやすい顔の美形もいる。パーツやバランスが特徴的であればあるほど認識しやすいので、いわゆるこってり顔の方は早い。俳優さんで言えば、阿部寛さんとか伊勢谷友介さんとかね。なので、「スズキに好かれた、もしくはすぐ認識された=ブサイク」というのは大きな間違いなのだ。上記のような話を友人にしたところ、「相貌失認の方は、あっさり顔が苦手なのかな?」と聞かれたのだが、そうとは限らないからややこしい。やはり軽度の相貌失認を持つ別の友人は、「こってり顔の人がみんな同じ顔に見える」というのだ。彼女にとっては、顔のパーツがあっさりしている方が特徴的に感じられるのだとか。どうしてこうした違いが生じるのかについては、私は専門家ではないから何とも言えないし、「まぁそういうこともあるんだね」としか言い様がない。もちろん覚えようと努力はしている。しているけれど…出典 : 顔を覚えるのが苦手であるぶん、お会いした方に失礼がないよう自分なりに尽力している。まず、可能であれば、自分が相貌失認であることをあらかじめ相手に伝えるようにしている。それから、お会いした当日に交わした会話やエピソードがあれば後でそれを記録して、エピソードと顔を結びつけて記憶しやすいようにする。顔以外のパーツや骨格、動き、声などに注意を向けるのも、私の場合は記憶の定着に一役買うらしい。―というか私は、自然に相手のパーツや骨格などに注意が向きやすいようだ。そちらの方が覚えやすいためか、なかば癖になっているのかもしれない。余談だが、その癖のせいで、他の方の目で見たら全く似ていない二人を「(骨格が)似ていますね」と判断したり、「素敵な手首と手の動きですね」と、マニアックな賞賛を口にしてしまうことがある。我ながらちょっと気持ち悪い。しかし上記のような方法も完璧ではない。コラムで何度か触れているが、いかんせん私はADD、注意欠陥障害を持っている。メモすることを忘れたり、その場でメモすることを先方が許してくださったにも関わらず、そのメモを紛失したり、お名前を忘れたり、下手をすれば自分が相貌失認であることさえ忘れて、対策を講じることさえ不可能になってしまう場面もある。最悪だ。バカなのだろうか?いや、バカではない。そう信じたい。私が「あなた、誰だっけ?」状態になってるときに、覚えておいてほしいことこんな私だから、関心を持っているあなたやあなたやあなたの顔を覚えられず、再度お会いした折には「誰だっけ…?」と言いたげな表情で見つめてしまうかもしれない。そんなときは「そうか、自分はあっさりした美形なのだな」と思っていただきたい。そして逆に、わたしにすんなり認識されたあなたは、”はっきりした”美しいお顔立ちなのだ。うん、断言する。世の中にはこんな人間も存在する、ということを頭の片隅にでも置いていただけたら、スズキ、嬉しい。
2017年10月13日精神的にほんの少し余裕が出てきた頃に気がついた衝撃の事実出典 : 自閉症スペクトラム&ADHDの診断が下りている9歳の娘と7歳の息子を抱え、日常生活を送るだけで精一杯だったこの数年間。何かをしようと思っても、すぐにヘルプが必要になる子どもたちに呼ばれ、洗い物も掃除も洗濯も最後までできた試しがありませんでした。我が家では娘も息子も、小学校に籍はあるものの、日常的に通学はしていません。代わりに、自宅でホームスクールを行っています。子どもたちの絶え間ない呼びかけに対応していると、思考は常に分断され、ゆっくりと頭の中を整理する時間はほとんどありませんでした。精神的にも肉体的にもゆとりのない状態が続きましたが、昨年、ようやく毎日麦茶を沸かすことができるようになりました。普通に家事をこなされている方からすると「麦茶を沸かせるようになるってどういうこと?やかんに水とお茶パックを入れて火にかけるだけでしょう?」と思われるかも知れません。ですが、たったそれだけのエネルギーを絞り出すことすらできないほど、いっぱいいっぱいの日々だったのです。そして、ついに今年の夏は日に3度、麦茶を沸かせるようになりました。書いてしまえば他愛もないことで自分でも笑ってしまうのですが、家事にまわす余力が出てきたということは子どもたちが成長した証でもあるので、なんだかとっても嬉しいのです。こうして少しゆとりが出てきたところで、ふと気がついたのです。「そういえば...これまで息子の爪を切った記憶が1度もない!」起こす、食べさせる、着替えさせる、お風呂に入れる、歯磨きをさせる、寝かしつける。それをこなすのに精一杯で、すっかり爪のお手入れのことが頭から抜け落ちてしまっていたのです。息子の爪をチェックしてみると...出典 : 慌てて息子の爪をチェックしてみると、なんと白い部分が一切なく、えぐられたような状態になっていました。考えてみれば、息子は幼い頃からずっと指を口に入れており、手をグーにしてすべての指が口に吸い込まれていることもありました。不潔だからやめるように注意をしてはいたのですが、アスペルガーの娘がタオルを手放せないのと同じように、安心感に繋がっているのかも知れないと強制的にやめさせることは考えていませんでした。とはいえ、こんなになるまで爪を噛んでいたとは......一番近くにいる私がなぜこんなことにも気づけなかったのかと落ち込んでいる間も、息子は口で爪を削り続け、ついには足の親指から出血も化膿してしまったのです。(もちろん足の爪も口で削っていたのです!)いくら悔やんでも過去は変えられませんから、後は改善あるのみ!まずはどうして息子が爪噛みをやめられないのかを考えてみることにしました。やめられないのは足りない刺激を補うため!?出典 : 爪噛みについて調べてみると、親の愛情不足や欲求不満という文字が踊っていて、落ち込んでいる私にさらに追い打ちをかけてきます。しかし、息子の爪噛みは生まれたときからずっと続いています。愛情不足や欲求不満ならムラがあってもいいような気がするのですがそれもありませんし、1日中いつでも、気がついた時にはずっと口に指を入れているのです。そこで発達障害の特性が原因なのかと思いを巡らすと、ADHDの息子は刺激を求め続ける傾向が強いことに思い当たりました。「爪を噛む」という口腔内への刺激と「指の痛み」という二重の刺激を手軽に得られる爪噛みは、息子にとって常に刺激を得られる手段として定着しているのかもしれない。そんな私なりの仮説を立ててみました。ならば手軽に別の方法で刺激を得られれば、爪に向かう意識が薄れるかもしれません。そこで役に立ちそうないろんなグッズを試してみることにしたのです。息子の爪噛み防止グッズをご紹介今話題のハンドスピナーは、自閉症スペクトラムやADHDの方と相性がいいと聞いて試してみました。確かにある程度の刺激は与えられますし、情動行動を好むタイプの子どもたちにはピッタリのアイテムです。しかし、以下の理由からあまり効果は得られませんでした。・ 幼い息子の手には少し大きい・ 読書中などの爪噛みには効果がない・ 飽きるとその辺にポンと置いてしまって、その存在をすぐに忘れるおもちゃとしてはとても気に入っていますので、今はおもちゃ箱にしまってって遊びたいときに遊んでいます。そこで、次に常に手元に携帯できるものをと思い、くるくる回せる指輪を購入してみました。息子の小さな手に合うのは8号サイズしかありませんでしたが、これなら置き忘れることなく常に指にはめておけるのでとっても便利です。しかし、さすがは年季の入った爪噛み癖!指輪をクルクル回しながら爪を噛むという合わせ技を繰り出されてしまいました。私もつけてみましたが、例えば歩きながら、読書をしながらもくるくると回すことで不思議な安心感が得られます。とてもよいグッズだと思いますので、小さなものを飲み込んでしまうお子様がいらっしゃらないご家庭にはおすすめです。こうなったら、こちらも合わせ技で対抗するしかありません。今度は片手いっぱいで握れるフィジェットパッドというものを購入してみました。カチカチなるスイッチや、ゲームコントローラーの様にくるくる回せる仕掛けなどがあちこちに施されているものです。これも、購入当初はあちこちにポンと置いて探し回ることが続いたので、百円均一のネックストラップを買ってきて、首からぶら下げておくことにしました。刺激が欲しいとき、読書など片手が余ってつい口に入れそうになってしまったときなどはこれを利用するよに。でもこれだけでは、くるくる回せる指輪と同じように、この仕掛けを触りながら指を口に入れてしまう可能性もありました。なので、息子が幼いころに使用していた「マヴァラバイターストップ」という苦い味のするマニキュアを爪に塗っておくことにしました。この苦さを知っている息子は「もう噛まないから大丈夫!」となかなか塗らせてくれませんでしたが、「もう噛まないんだったら苦くないよ?おまじないみたいなものだから塗っておこうね。早く爪が伸びてきますように」と話しながら塗っています。そして1週間の月日が流れ…出典 : こうして、さまざまな対策を講じてから1週間。息子の爪にはようやくうっすらと白い部分が見えてきました。とはいえ、毎日チェックしていると、ときどき特定の爪がきれいになくなっているので、苦さをこらえて噛んでしまっているのだと思います。それでも、爪を噛まないためにどうすればよいかを息子と話し合いながら試行錯誤することで、不思議な連帯感が生まれ、うっすらと生えてきた爪に2人で感動しています。爪がないと指先に力を入れにくくなったりすることもあるそうなので、爪が伸びきったあかつきには、不器用な息子の震える文字が少しでも改善されればいいのになと淡い期待も抱いたりしています。完全に爪噛みから卒業するにはまだまだ時間はかかりそうですが、爪を噛む欲求を別の方法で代替することができれば、息子のストレスを最小限に抑えながら進めていけるのではないかと思っています。発達障害のある方には、こだわりや独特の癖を持つ場合も珍しくありません。それが安全な行動なのであれば、できる限り自由にさせてあげることも大切だと思いますが、息子のように身体に害が出てしまったり、危険が及ぶことのあるような行為はなるべく避けてもらいたいと思ってしまいますよね。そんなときはどうか無理にそれを取り上げてしまうのではなく、他に代用できるものがないか、少しでも安全なものに変えられないか、お子さまと一緒に相談し、いろんなものを試してみることが近道なのかもしれません。一方的な指示を受けるのではなく、大人の方が一緒に取り組むことで、子どもが安心して次のステップに進む勇気がわいてくるといいですね。
2017年10月11日自閉症のある子どもとのストレス…「家事手伝い」をさせたら減らせた?出典 : 自閉症のある息子は現在、特別支援学校高等部1年生で、療育手帳のB2判定を受けています。幼少期は超多動で本当に大変でしたが、小学校高学年ぐらいから、イタズラや行方不明などの問題行動はだいぶ減り、おしゃべりもできるようになってきました。すると今度は「どうでもいい内容の長時間マシンガントーク」に、私は始終イライラして悩まされることになりました。放課後等デイサービスなどの利用で息子から離れる時間を作っても、ひとりの時間は一瞬で終わってしまうような感覚でした。息子は友達と遊びに行くことがほぼないので、総じて家の中で一緒にいる時間が長くなります。息子はDVDやゲームもしていましたが、そればかりしているのを見ると、私は「これでいいのだろうか…」と、将来が心配になりました。「家の中で一緒にいても、息子から離れる時間がほしい。自立に欠かせない”家事”を毎日させたら、それが叶うかもしれない…」と思い、息子に家事を教え始めました。実際、トイレ掃除などの家事を息子がしている間は、息子のマシンガントークから解放されました。精神的にも楽になっただけでなく、家の中もキレイになり、私は本当に楽になりました。息子には将来、家族から自立してほしい気持ちがあります。そのためには、「障害のある本人が家事スキルを上げること、また本人が自主的に家事をする習慣付け」が必要となります。それには、多少、親の工夫と根気も必要ですが、結果的に家族全員が、どんどん楽になっていく方法があるのです。我が家流「パパ・ママの気持ちをもっと楽にさせる!?ストレスの少ない子どもの家事手伝い」の一例をご紹介します。先ずはゴミ出しから出典 : お手伝いの最初は「ゴミ出し」などの簡単なお手伝いでした。息子は、簡単なお手伝いであれば、手順表を必要としないでやることができます。彼は素直に自分の役割として、今も習慣的にやってくれます。【食】たべるのが好き!子どもの料理教室へ息子は食べることが大好きです。それで近所の子ども料理教室に通っていました。最初の半年は付き添いましたが、先生に「息子の教え方のコツ」を教えてから、1人で月1回通っていました(小4~中3まで通いました)。配慮としてお願いしていたことは、1週間前に料理のレシピをFAXしてもらうことです。そして、ネットでその料理を検索して「何を作るのか、小口切りとはどう切るのか」など、画像等で事前に予習をしてから行きます。おかげで問題なく長年通えて、簡単な料理ならできるようになりました。Upload By 阪神間のアッキー小5の頃からは、手間の多いお手伝いもしてほしくて【食器洗いの手順表と食洗機の食器の入れ方】を作りました。今では食器洗いも食洗機の使い方も上手になり、休日は時々やってくれます。「掃除機、トイレ掃除などの手順表」も作り、今ではほぼ任せられます。手順表は、透明の「硬質カードケース」などに入れ、ラミネートはしません。後から息子の様子を見て、いくらでも修正することがありますので、すぐに書き込めるようにするためです。お手伝いトークンと予定表で「お金」も管理、金銭感覚も少しずつUpload By 阪神間のアッキー小3頃から息子はお手伝いも板に付いてきました。金銭感覚も身につけ生活力をあげてほしい気持ちから、お手伝いの料金として「リアルなお金」もちょっとずつ登場させています。これも自立を視野に入れた取り組みのひとつです。【お手伝いトークンと2週間の予定表】が一緒になった表をExcelで作り、本人が毎晩お金シールを表に貼って、私は2週間ごとにお給料をまとめて払っています。シールを貼ってモチベーションを上げながら、取り組ませました。お金の計算も筆算で自分でやっていて、その時に、両替の練習もしています(最初は妹も一緒にやっていましたが、今は息子のみやっています)。Upload By 阪神間のアッキーそして、小5の1月から息子用の【市販カレンダー】に移行しました。よりシンプルになっています。お金は大事に使い、中3から「お小遣い帳」を付け始め、将来海外旅行に行く事を目標に、旅行資金を貯めています。ちなみに息子のお小遣いは「お年玉+お手伝いのお給料」だけです。お手伝い1回で10~30円もらえます。だいたい毎月、2000円ぐらいのお給料になります。16歳の今でもお金がもらえるのを励みに自発的に続いて習慣化しています。わかりやすい貯金箱お金が貯まっていくのが日常的に見えるように【半透明の貯金箱(銭別銀行とりだし君 ブルー)】を小3からずっと使っています。必要なお金が出しやすく、やはり中身が見える方がモチベーションが上がるようです。(お札は彼の引き出しの財布に入っています)【住】粘着ローラーの掃除の工夫Upload By 阪神間のアッキー小5から、リビングのセンターラグの掃除を、粘着ローラーで息子にさせてみました。スタートがわからなければ、ぐるぐる真ん中あたりを掃除していて、いっこうに進みませんでした。そこで、たて線のたくさん入ったセンターラグを探して購入しました。「このはしっこがスタート」と決めて、まっすぐ進み、突き当りで横の3列のすじに進みます。そうすることで、最後まで無駄な動きも少なく粘着ローラー掃除ができるようになりました。【視覚的な工夫】今日のお手伝い ホワイトボードUpload By 阪神間のアッキー小5くらいから、できるお手伝いが増えてくると、息子は汚れが気になる所を選んで、自発的に掃除をする時も増えました。そこで「階段・廊下掃除は週1回」など決め事を作り、本人が予定をたてやすいように、【今日のお手伝いホワイトボード(A4)】も作りました。表面のよくする家事のマグネットシートは、1日5枚まで貼れます。(たくさん貼りすぎて疲れて家事がイヤになるのを、物理的に防ぎます)チェック✔ や開始時間、合計金額も息子が書き込めるようにしました。裏面は20枚以上の「お手伝いマグネットシート」が「メッシュケース(A6)」にストックされています。裏面には「お手伝い一覧」もあり、「掃除とその他の家事」を下地色で分類しています。何のお手伝いをするか息子と相談するため、お互いが選びやすいです。Upload By 阪神間のアッキーごみ出しなどのすぐ終わる(マグネットシートに無い)他のお手伝いも多いので、数えやすいように他に【平日・休日のお手伝いチェック✔表(1回10円)】も紙で作りました。彼はそれも毎晩「今日したお手伝い」にまとめてチェック✔を入れて「ホワイトボードとチェック表」両方の合計金額を合算し、カレンダーにお金シールを貼ります。子どもに家事をしてもらうポイント出典 : ここでは、私が息子に家事手伝いをしてもらう上で意識していたことや、決めていたマイルールをご紹介します。・私は、息子がお手伝いをしてくれたら、すぐ「ありがとう!」と笑顔で喜んで、できるだけ言うようにしています。お子さんがお手伝いをしてくれたら、以下の3つの「受け取る言葉」どれかをすぐ言うようにしましょう。「ありがとう」「うれしい」「助かる」特に、簡単なお手伝いをしてもらう最初の頃は、私は大げさに喜んでこの3つの言葉をよく言っていました。・お手伝いで失敗があっても、物覚えが悪くても、私は息子を叱りません。手順表を作り、わかりやすいマークを付けたり工夫して「どうしたら良いのか」を具体的に教え続けます。・できたら「そう!それでいい、OK!上手にできてるよ。」などと言って、息子に「このやり方でいいんだ」と自信をもってもらいました。・息子のできる家事は少しずつ増やしていきました。例えば息子が浴槽掃除が一人でできるようになります。私は風呂場まで見に行き「すご~い!ツルツルだね~。私よりも掃除上手だね!この調子で排水溝の髪の毛取りもしてくれるかな?そうしたら10円アップだよ。」とほめながら彼のやる気を促し、できる家事を増やしていきます。・息子のやる家事が多すぎて家事嫌いにならないように、例えば「洗濯物干し・取り込み」は男物だけ分担してもらうなど、家事量を調整しています。・「早く!」も最初から要求すれば、負担になります。手順と早くできる具体的な方法を教え続けて、完全に「トイレ掃除」などマスターしてから、目標時間を相談し本人に決めさせ、(キッチンタイマーなどで)早くする練習を始めます。・「やりなさい」と命令されると、誰でもやりたくなくなってしまうのが、人間の心理です。「ちょっと○○してくれない?」と子どもができる簡単なことをお願いをしてみることから、お手伝いを始める方が良いと思います。・いきなり「今から草むしりしてくれない?」など急に頼むのはやめましょう。特に自閉症の人は急な予定変更ばかりだと、辛くなります。「土曜日の午前中にお願い」など、早めに本人に伝えた方が、本人の心の準備とやる気につながります。・完璧を目指さず、息子が疲れているようなら休ませます。「自立のために家事をたくさんやらせなくちゃ!」と、毎日お手伝いボードを持って母が子どもの帰りを待ち構えるのは、やめた方がいいです。(自閉症児は疲れて帰宅することが多いですから)また、多くの自閉症児は真面目で疲れやすいので「今はしんどくて無理です」などの断り方も教えます。息子とわたしたちの未来のために出典 : 息子が小学生の頃は、はっきり言って、家事を教え続けるのはとても面倒でした。でも「息子と一緒に家事ができたらいいな~♪ 息子の自立に役立つし、家の中もキレイになるし、一石二鳥!」と思い続けていました。子育てで、こういうことをしていると私が言うと「お金がもらえなくては動かない人になるのでは?」と心配する保護者もいます。でも、うちの場合は全然そんなことはありません。「はさみ取って、窓閉めて~。」など周囲のお願いは、息子は(お金に関係なく)よく動いてくれます。「周りの人達の苦労やお金の価値もわかり、金銭管理もしてほしい。家事ができる息子は(将来の就労先や、グループホームなどでも)きっと周りの人たちの役に立つ、助けられる人になる」と思うのです。私は息子の頑張りをいつも気分よくほめているし、息子に感謝の言葉をよく言っています。それで息子からも「ありがとうございます。よろしくお願いします。」の言葉が自然と増えました。確かに療育手帳B1以上でないと、多くの家事はできないかもしれません。でも、お子さんにゴミ出しなど、簡単なこと一つだけでもやらせて下さい。それが習慣化するだけで、母は気持ち的にとても楽になるでしょう。うちの息子は幼少期、超多動児でした。私は希望もなくうつ病になったりで大変でした。しかし自閉症児は真面目で几帳面な子が多く、息子は掃除をし続けていると、どんどん長所が「キレイ好き」に変わっていきました。一般的に多動児の方が家事能力など、伸びやすいようです。多動児は「動いている方が楽な人たち」が多いので、今は「多動はプレゼント」だと思えるようになりました。※私の「発達障がい児には 家事をさせよう!」のブログには(上記の詳細記事以外にも)お手伝い記事などをたくさん掲載しています。『発達障がい児には 家事をさせよう!』
2017年10月08日新生児けいれんとは?出典 : 新生児けいれんとは、生後28日未満の新生児に起こるけいれん症状のことを指します。出生体重3000グラム以上の成熟児での発症率は1000人のうち2~2.8%、2500グラム未満の低出生体重児では9.37~13.5%となっており、低出生体重児に多く発症します。けいれん発作は、広義には体を強張らせて震えることを指します。「けいれん」と聞いて、まず「大発作」などの突然倒れてしまうイメージを浮かべる方も多いでしょう。しかし、新生児けいれんの特徴的な発作は「微細発作」です。まばたきの繰り返し、もぐもぐ口を動かす、自転車をこぐような動きなど、一目でけいれんとは分かりにくい発作が特徴的です。いつもと違う、違和感のある動きをしていれば微細発作の可能性があります。新生児けいれんの原因は低酸素性虚血性脳症や頭蓋内出血、脳梗塞、感染症などが原因でけいれんが発症するため、早期治療が必要です。また新生児けいれんの発症をきっかけに、その後てんかんが発症する可能性もあります。新生児けいれんに関わらず、けいれんが長く続くと後遺症が残りやすいと言われています。適切なけいれん時の対処や、必要ならば救急車を呼ぶなど、瞬時に判断できるように知識を身につけておくことをおすすめします。出典:新生児けいれん|日産婦誌57巻7号研修コーナー新生児けいれんの症状出典 : 新生児けいれんには、頻度の高い順に微細発作、強直性けいれん、間代性けいれん、ミオクローヌスけいれんの4つのけいれんの種類があります。最も多いとされている微細発作は、発作症状が分かりにくく、見つかりにくいといわれています。<微細発作>・眼球運動の異常水平眼球偏位(眼球が水平に動くがまばたきがない状態)・口や頬(ほほ)、舌の異常運動舌を出す、しかめっ面を繰り返す、ウインクの様な動き・四肢の異常行動自転車こぎ、水泳のクロールのような動き・自律神経症状血圧上昇、チアノーゼ(体内の酸素濃度が低下し、唇などが青紫色になること)、紅潮、多呼吸など・呼吸運動の異常無呼吸発作、発作性過呼吸<強直性けいれん>・突然意識を失い白目をむく・身体が急に強張り手足をピーンと突っぱる・口を固く食いしばり呼吸を止める・チアノーゼを起こすこともある<間代性けいれん>・膝を折り曲げる格好をしながらバタバタと手足をばたつかせる・あごがガクガク震える・一定のリズムでけいれんが起きる<ミオクローヌスけいれん>・全身または手足の一部分の筋肉が一瞬ピクッと収縮する・光によって誘発されるため、寝起きや寝入りに起こりやすい・症状を自覚することは少ない新生児けいれんの原因出典 : 新生児けいれんの原因は新生児期にかかりやすいさまざまな疾患が原因となっています。けいれん症状はおおむね、大脳の神経細胞の異常興奮によって、不必要な神経回路にまで情報が伝達され引き起こされます。新生児けいれんの原因疾患もほとんどが脳に関わる疾患となっています。ここでは新生児けいれんの原因疾患を紹介していきます。・低酸素性虚血性脳症妊娠中や出産の際に、何らかの原因で赤ちゃんの脳に酸素を十分に含んだ血液が回らなくなり、低酸素、虚血がおこります。それによって、けいれんや意識障害などの神経症状を伴うさまざまな脳神経障害を起こします。新生児けいれんの原因として最も多いとされています。・頭蓋内出血頭蓋内出血は頭蓋骨の内部に出血が起こった状態を指します。出血が起こった場所によって、くも膜下出血や硬膜外出血などに分けられています。分娩外傷や仮死が原因で起こりますが、けいれんが起こる前の全身状態は良好であることが多いといわれています。・脳梗塞脳の血管が詰まるなど、何らかの原因で脳内の血液のめぐりが低下し、一部の脳組織が壊死することをいいます。仮死、多血症、血栓などができることによってけいれんが起こります。・中枢神経感染症細菌性髄膜炎やウイルス性脳炎などが原因で脳の中枢神経に異常をきたし、けいれんが起こります。・発達異常・奇形先天的な遺伝子変異が原因の疾患によって、大脳皮質の形成異常がみられることから、新生児けいれん、てんかん、発達障害などの症状を併発します。・代謝異常代謝活動あるいはこれを調節する機能が、何らかの原因で妨げられて生じる異常状態のことを言います。低血糖や低カルシウム血症などの代謝異常は糖尿病母体児や低出生体重児などに多く、先天性代謝異常がある子どもが新生児けいれんやてんかんなどのけいれん症状を起こしやすいと言われています。・新生児てんかん新生児てんかんは乳幼児期に発症するてんかんのことで、2つに分類されます。良性家族性新生児けいれんは遺伝性のてんかんです。約4割は生後3日目前後に発作が起こり、そのうちの約7割は生後6週間以内に発作がおさまるといわれています。無呼吸発作が起こることもあります。良性突発性新生児けいれんは、生後5日目前後に間代発作や無呼吸発作を何回も繰り返すものの、明らかな原因がないてんかんです。この時期を過ぎると発作は再発しません。新生児けいれんとてんかんなどとの関係は?出典 : 新生児けいれんを発症した子どものうちの56%は、てんかんが発症する可能性があるといわれています。てんかんとは慢性的な脳の疾患(障害)で、大脳の神経細胞が過剰に興奮することで発作症状を引き起こす疾患です。年齢・性別・環境に関わらず発作は発症します。てんかん発作は突然倒れて意識を失い、けいれんを起こすといったいわゆる大発作と体の一部が勝手に動いたり、会話の途中にぼんやりしたと思ったら意識を失っていたりといった小発作などがあります。てんかん発作はほとんどが完治することはなく、長年付き合い続けなくてはいけない疾患です。現在、新生児けいれんを発症した子どもにてんかんが多い原因は研究中で解明されていません。他にも、子どもに起こりやすいけいれん症状に、熱性けいれんや急性脳症などがありますが、新生児期に発症することはまれです。熱性けいれんは高熱によってけいれんが起こり、急性脳症は代謝異常などによってけいれんが起こります。表出する症状はけいれんですが、原因疾患などによって鑑別され、それぞれに合った治療を行っていきます。出典:新生児けいれん|日産婦誌57巻7号研修コーナー新生児けいれんの診断・検査方法とは出典 : 新生児けいれんの診断にはいくつかの検査を行います。次の検査は新生児けいれんの診断において、一般的に行われている検査になります。◇頭部画像検査(CT、MRI)新生児けいれんの原因疾患があるかどうかを確認するために行います。どちらも検査服に着替えて、ベッドに横たわり筒状の機器の中に入るだけで検査は行えます。MRIは電波を使って身体の断層を撮影する方法です。CTスキャンはX線を用いて身体の断層を画像にします。◇髄膜検査髄膜刺激症状と30分以上の意識障害が伴う場合には髄膜検査を行います。髄膜刺激症状とは、首の硬直や膝を曲げた状態で股関節を直角に屈曲し、そのまま膝を伸ばそうとすると抵抗があることをいいます(ケルニッヒ徴候などがあります)。これは新生児けいれんと似た症状がある髄膜炎との鑑別のために行います。◇血液・髄液検査血液検査で血糖、カルシウムやナトリウムなどの電解質、感染徴候などを確認し、その他に必要と認められた項目の値を検査します。さらに髄膜炎などとの鑑別を図るために、髄液検査も行います。◇脳波検査脳波検査はけいれんの診断や後遺症の予測に非常に有用な検査です。しかし、けいれんの種類によっては必ずしも脳波で診断が行えない場合もあります。この他にも医師が必要と認めた検査を受けることがあります。新生児けいれんが起こったら出典 : 子どもに突然けいれんが起こったら、しかも生まれたばかりの新生児期に起こった場合、驚いてしまう保護者の方も多いのではないかと思います。しかし、正しい知識を持っていれば冷静に対処することができます。子どもが新生児けいれんを起こしたときには、以下のような対処法を実践してください。<けいれん時の対処法>・首の周りなどを締め付けないように衣服を緩めてください・抱きかかえず、平らなところに寝かせてください・嘔吐や口の中に固形物がある場合は、顔を左に向けて吐いた物が気道に詰まらないようにしてください・口や鼻の周りの吐物を拭き取ってください・診察時にそなえて、けいれんの様子(左右差)や持続時間、体温などを確認しておいてください。余裕があれば不謹慎だと思わずに動画などを撮影し記録してください(診察時、てんかんとの鑑別に役立ちます)。<してはいけないこと>・大声で名前を呼んだり、身体を揺すったりしない(刺激となり、けいれんが長引く場合があります)・「舌を噛まないように」と口の中に物を入れたりしない(けいれんで舌を噛むことはほとんどありません)けいれんの持続時間によって、その後に後遺症が残る可能性の割合が変わってきます。新生児けいれんの場合は原因疾患が早急に治療を必要とするため、救急車を呼ぶか、病院での診察が必要なケースがほとんどです。そうはいっても、けいれんを起こす疾患は他にもたくさんあります。救急車を呼んだり、病院に連れていったりする基準として下記を参考にしてみてください。Upload By 発達障害のキホン【救急車を呼ぶ】・5分以上けいれんが続く・けいれんが終わったが、その後も意識障害が続く(睡眠とは別)【病院へ行く】・初めてけいれんを起こしたとき・全身けいれんではなく、体の一部または左右非対称なけいれんがある【保護者がパニックで判断しにくい場合】・小児救急電話相談(#8000)に電話相談をする小児救急電話相談は厚生労働省がすすめる相談事業です。#8000番に電話すると、お住まいの都道府県の相談窓口につながります。そこで小児科医師・看護師から、お子さんの症状に応じた適切な対処の仕方や、受診する病院などのアドバイスを受けることができます。新生児けいれん以外にも使用することができます。#8000番に電話をして状況を伝えることで、医師や看護師の適切な指示を受けることができ、子どもの保護者も、その場の対処や救急車・通院の判断を行いやすくなります。参考:小児救急電話相談事業(#8000)について|厚生労働省新生児けいれんの後遺症が心配…。治療法はあるの?出典 : 新生児けいれんの治療は正式なガイドラインが設けられているわけではありません。原因疾患によって治療方法が異なってくるため、それぞれの疾患に必要とされる医療が行われることになります。原因疾患の治療は、薬物治療を主として行われています。新生児けいれんを発症した子どものうち、25~35%が知的障害や運動障害を発症するとされています。新生児けいれんは原因疾患の種類やけいれんの持続時間などによって、後遺症の発症率や程度が異なります。けいれん症状は長ければ長いほど、後遺症の発症率や障害の程度は重い傾向に引き上げられます。医療の進歩によって新生児けいれんの死亡率は改善されてきています。以前は約40%あった死亡率ですが20%と減少し、今後も死亡率は減少していくでしょう。ここでは、あくまでこれまでの研究による統計的な数値をもとに紹介しました。新生児けいれんを発症した子どもの中にも、定型的な発達を歩む子どもは多くいます。出典:新生児けいれん|日産婦誌57巻7号研修コーナーまとめ出典 : 新生児に起こるけいれんは、良性で2週間~半年ほどで完治するものもあれば、原因によっては後遺症を残すほど重度化するものもあります。またてんかんを引き起こしやすいのも特徴的です。実際にけいれんが起こった際は、保護者がパニックになってしまうこともあるかもしれません。できることならば事前に情報収集などを行っておくことと、緊急性が高く、その場に頼れる人がいないときは#8000に電話し、落ち着いて最善の判断を行えるとよいですね。このコラムがいざという時のお守り代わりになることを願います。
2017年10月05日双極性障害(躁うつ病)とは?出典 : 双極性障害は、気分が高まる「躁(そう)状態・軽躁状態」と気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返す精神疾患です。この特徴から、かつては「躁うつ病」と呼ばれていました。他に、双極性感情障害と呼ばれることもあります。躁状態のときには、短い睡眠時間でも活発に活動できたり、普段より自信を持って行動できたりと仕事で成果をあげることもあります。その反面、集中力に欠けたり、高額な買い物をしたりしてしまうことがあります。うつ状態になると、一変して、すべてのことに対して無気力な抑うつ状態になってしまいます。症状には個人差があり、程度や現れ方によっていくつかのタイプに分類されます。双極性障害のうち、躁状態とうつ状態を繰り返すものをI型、軽躁状態とうつ状態を繰り返すものをII型といいます。Upload By 発達障害のキホン双極性障害は、およそ100人に1人がかかる病気で、20代から30代前後に発症することが多いとされています。また、女性の発症率が高いうつ病とは異なり、男性と女性の間での発症のしやすさに大きな違いはありません。双極性障害は本人に躁状態の自覚がない場合も多く、さらに発症当初はうつ病との識別が難しいため、正しく診断されるまでに比較的長い期間を要します。しかし、双極性障害は気づかずに放置してしまうと、社会的地位や信頼を失ったり、最悪の場合、自ら命を絶ってしまったりする危険性があります。そのため、周囲ができるだけ早く異変に気づき、適切なサポートをすることで早期発見・早期治療につなげることが重要です。また、双極性障害は完治するのが非常に困難とされているうえ、再発率もとても高い病気です。症状をコントロールし、再発のリスクを低く抑えるためには、周囲の理解と規則正しい生活の維持が不可欠となります。出典:躁うつ病/双極性障害|前田クリニック参考:厚生労働省HP双極性障害の症状出典 : 初めの章で触れたように、双極性障害は、躁状態(軽躁状態)とうつ状態を繰りかえす疾患です。躁状態とうつ状態は、ある日を境に突然切り替わるわけではなく、症状が落ち着いている「寛解期(かんかいき)」を経てから切り替わります。この寛解期は、初めのうちは平均して5年程度だと言われています。寛解期になり、双極性障害が治ったと勘違いして、治療を途中でやめてしまうと、次第に寛解期が短くなり、場合によっては、1年の間に4回以上気分の変動が起きる「急速交代型」へと発展することもあります。症状の現れ方と継続期間に関しては、躁病エピソード(病相)は急に発症することが多く、2週間から5ヶ月間ほど持続すると言われています。一方、抑うつエピソードは徐々に発症し、躁病エピソードに比べて発症期間が長い傾向にあります。ここからはそれぞれの状態について説明します。躁状態になると、気分が著しく高揚した状態が持続します。陽気で開放的・活動的になる、すぐに興奮する、怒りっぽくなるなど、普段とは違った状態が続きます。自分を最高の人間と思い、「自分ならなんでもできる」という「万能感」を感じ、他人を見下すような態度が見られることもあります。具体的な行動面では、ほとんど寝ることなく動きまわったり、多弁になって周囲の人に次から次へと様々な話題についてしゃべり続けたりします。さらには買い物やギャンブルに大金を使うなど、周囲からすると異常な行動が見られますが、本人は無自覚であることが多いです。この状態の問題は、気分が高揚して様々な活動を行うものの、それはあくまでも病的な気分高揚によって引き起こされている行動であるため、内容に乏しく、活動の結果が良いものにならないということです。また、気分が大きくなった結果、暴力行為や性的逸脱行為のような法的な問題を起こしてしまうなど、社会生活に甚大な支障をきたすこともあります。軽躁状態は、読んで字のごとく「軽い躁状態」を指します。躁状態ほどの明らかな高揚感はないものの、やはり気分は高めで、普段と比べて人間関係に積極的になったり、やや高圧的になったりといった症状が見られます。躁状態と比べると症状は軽いため、周囲の人は「今日は機嫌がいいね」「最近テンション高いね」程度にしか感じず、病気とは気づかないことも多いようです。躁状態と共通して言えることは、多くの場合、本人は自分の症状に対して無自覚であるということです。そのため、自分の言動によって周囲が困惑していても、そのことに気づきません。 College of Psychiatrists HPうつ状態は、気分が高揚する躁状態の対極にある症状です。異常に気分が沈んだ状態が続き、何をやっても「楽しい」「嬉しい」という気分が持てなくなります。双極性障害の人が具合が悪いと感じるのはこの状態のときです。憂うつな気分になり、やる気や気力を失います。過剰な心配症になったり、自分を責めたりします。行動面の変化としては、口数が減る、なにもせずごろごろすることが増える、など明らかに元気のない状態が見られます。さらに、睡眠時間・食欲が減少し、苦痛を訴えたり、簡単に疲労感を感じたりするようになります。注意力・集中力も低下し、仕事の能率も悪くなります。うつ状態のときには、自殺願望を口にしたり、実際に自殺を試みることもあります。最初に現れる病相は人によってさまざまで、躁、軽躁状態であったり、混合状態やうつ状態であったりしますが、男性の場合、躁状態から始まることが多いと言われています。全体的には、うつ状態から始まるのが割合としては高いとされています。双極性障害とうつ病の違いは?出典 : 双極性障害もうつ病も、同じようなうつ症状があり、誤診されることも少なくありません。けれども、2つはまったく異なる病気です。双極性障害かうつ病なのかによって、後に解説する治療法も異なるため、違いを知っておくとよいでしょう。もっとも大きな違いは、気分が高まる「躁状態」「軽躁状態」があるかどうかです。病状がうつ状態で始まる場合、双極性障害であると見分けることは困難なため、経過を見ていく必要があります。うつ病と比べて、双極性障害のうつ状態には「急激に発症する」「比較的重症である」「妄想や幻覚などの精神症状を伴う」といった傾向があると言われています。日本国内において双極性障害の患者数の割合は約0.7%とされており、この数字はうつ病と比べておよそ10分の1です。発病しやすい年代は、うつ病が平均40歳であるのに対して、双極性障害は20歳前後で、10歳での発症も見られます。双極性障害のほうが若年齢で発症しやすいのは、遺伝的な影響を受けやすいためです。また、双極性障害とうつ病では発症率の男女比にも違いがあります。うつ病は女性に多く男女比が1:2である一方で、双極性障害の発症率には男女間でほとんど差はありません。男女の間でうつ病の発症率にこのような差が生じるのは、女性ホルモンの増加、妊娠、出産など女性に特有の事柄が理由でないかと考えられています。参考:双極性障害|みんなのメンタルヘルス(厚生労働省)双極性障害と間違えやすい病気出典 : うつ病以外にも双極性障害は、統合失調症や境界性パーソナリティ障害など他の病気と間違って診断されやすいと言われています。「躁」と「うつ」という二面性を持つうえ、躁状態では本人に自覚がないことが多い双極性障害は正確に診断するのがとても難しいといわれています。そのため、症状によって生活に支障が出て医療機関を受診しても、ほかの精神疾患と診断されることが少なくないのです。以下では、双極性障害と間違えやすい3つの病気について詳しく解説します。統合失調症には「陽性症状」と「陰性症状」という2つの型があります。発症当初は陽性症状が現れ、少しずつ陰性症状へと変わっていく傾向があります。この二面性が双極性障害との大きな共通点です。陽性症状では幻覚・妄想・興奮状態が起きるのに対して、陰性症状では自発性が乏しくなる・感情表現が鈍くなる・人づきあいが苦手になるといった状態になり、うつ症状にも見えます。自己愛の強い人たちの行動は、ときに躁状態に見えることがあります。芝居がかった言動の数々で周囲の人たちに迷惑を及ぼすという特徴も躁状態の人に見られる傾向の1つです。自己愛性パーソナリティ障害の人は、自分の才能や業績を誇張し過剰な称賛を求めます。他人に嫉妬したり、尊大かつ高慢な態度で振舞います。このような症状は、躁状態の人が「自分にはなんでもできる」と万能感を感じて行動するのと似ています。「境界性」とは、もともと神経症と統合失調症の「境界」を意味していました。神経症をはるかに超える症状が現れるけれども、統合失調症ほど重症ではないと診断されてきた障害です。不安定な対人関係という特徴が双極性障害と似ています。はしゃいでいたのに急に落ち込むといった症状が典型です。ほかにも、過食・過量服薬・リストカットなどを繰り返す重大な障害です。以上で紹介した病気はいずれも双極性障害とは治療法が異なります。そのため、症状を回復させるためには正しい診断に基づいた適切な治療が重要になります。児童期の双極性障害を診断するうえでの大変さは、その症状がADHDの症状の多くと重なっている点にあるでしょう。じっとしていられない、衝動的、不注意、注意がそれやすい、などの特徴は、双極性障害のある子どもにも見られる傾向ですが、これらの様子が観察された場合には双極性障害よりもADHDと診断されてしまうこともあるようです。参考:「子どもの双極性障害―親と専門家のためのガイド 」ディミトリ パポロス双極性障害の原因出典 : 過去の研究から、双極性障害の発症には「遺伝」と「ストレス」が関連していることが指摘されていて、これら2つの要素が重なった結果として双極性障害が発症するという「ストレス脆弱性モデル」が双極性障害の原因の一つとして考えられています。ストレス脆弱性モデルとは、「その人の病気へのなりやすさ(脆弱性)と、病気の発症を促す要因(ストレス)の組み合わせにより、精神疾患は発症する」という仮説です。ここでいう脆弱性とは、遺伝などの先天的な要素と、どのような環境でどのように対応してきたかという後天的な要素により決まるといわれています。ですが、中にはこのモデルに当てはまらない患者さんもおり、双極性障害の原因のすべてを説明することはできてはいません。もともとの性格が要因となるのではと考えている研究者もいますが、明らかにはされていません。さまざまな研究が進められているものの、双極性障害の原因に関してはまだわかっていないことが多いようです。参考:躁うつ病(双極性障害)の原因|前田クリニック College of Psychiatrists HP双極性障害かもと思ったら?出典 : 双極性障害は、誰でもかかる可能性のある病気です。気分が上がらず憂鬱な気分のまま数週間が経ってしまったり、逆にテンションの上がり下がりにムラがあり不安を感じる場合は専門機関に相談するか、医療機関の受診をおすすめします。医療機関を受診する場合、精神科が第一候補になります。総合病院の精神科よりは精神科クリニックなどが受診しやすいでしょう。ただし、激しい躁状態の場合には入院が必要となる可能性もあるため、はじめから精神科救急の設備を備えた専門病院がよいでしょう。精神科に似た診療科に心療内科があります。本来は心身症が専門の心療内科ですが、近ごろは精神科という診療科名に抵抗を感じる人を受け入れるために、あえて心療内科としている場合があります。精神科医がいるのかどうか、事前に調べてみるとよいでしょう。いきなり医療機関を受診するのに抵抗がある場合、どの病院のどの診療科に行けばいいのか迷ったり、そもそも受診すべきか迷ったりすることもあるのではないでしょうか?そんな時は、お近くの精神保健福祉センターや保健所に連絡すると、専門家が相談に乗ってくれますので、気兼ねなく連絡してみましょう。以下のリンクで、全国の精神保健福祉センター、保健所を検索できます。また、お子さんに双極性障害の疑いがある場合には児童相談所などに相談してもよいでしょう。全国の精神保健福祉センター一覧|厚生労働省HP保健所一覧|全国保健所長会HP全国児童相談所一覧 l 厚生労働省厚生労働省HP双極性障害の診断基準は?出典 : 米国精神医学会の診断基準『DSM-5』(精神疾患の精神疾患の診断・統計マニュアル)では次のような特徴を挙げて、・双極I型障害・双極II型障害という2つの型に区別して診断されます。(i) 躁状態が少なくとも7日間つづく場合はI型、4日間つづく場合はII型とする。(ii) II型の軽い躁状態では、社会生活の機能はあまりそこなわれないですむ。しかしI型の躁症状は、社会生活の機能を必ず障害し、問題になっていく。・以下で引用する「躁病エピソード」A~Dのうち、少なくとも1つ以上に該当すること・躁病エピソードと抑うつエピソードの発症が、その他の精神性障害によるものでないことが双極I型障害の診断基準となります。・現在または過去の軽躁病エピソードの以下の基準を満たすこと・現在または過去の抑うつエピソードの以下の基準を満たすことが双極II型の診断基準となります。●躁病エピソードA.気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的または易怒的となる。加えて、異常にかつ持続的に亢進した目標指向性の活動または活力がある。このような普段とは異なる期間が、少なくとも1週間、ほぼ毎日、1日の大半において持続する(入院治療が必要な場合はいかなる期間でもよい)。B. 気分が障害され、活動または活力が亢進した期間中、以下の症状のうち3つ(またはそれ以上)(気分が易怒性のみの場合は4つ)が有意の差をもつほどに示され、普段の行動とは明らかに異なった変化を象徴している。自尊心の肥大、または誇大睡眠欲求の減少(例:3時間眠っただけで十分な休息がとれたと感じる)普段より多弁であるか、しゃべり続けようとする切迫感観念奔逸、またはいくつもの考えがせめぎ合っているといった主観的な体験注意散漫(すなわち、注意があまりにも容易に、重要でないまたは関係のない外的刺激によって他に転じる)が報告される。または観察される。目標指向性の活動(社会的、職場または学校内、性的のいずれか)の増加。または精神運動焦燥(すなわち、無意味な非目標指向性の活動)困った結果になる可能性が高い活動に熱中すること(例:制御のきかない買いあさり、性的無分別、またはばかげた事業への投資などに専念すること)C. この気分の障害は、社会的または職業的機能に著しい障害を引き起こしている、あるいは自分自身または他人に害を及ぼすことを防ぐため入院が必要であるほど重篤である、または精神病性の特徴を伴う。D. 本エピソード、物質(例:薬物乱用、医薬品、または他の治療)の生理学的作用、または他の医学的疾患によるものではない。注:抗うつ治療(例:医薬品、電気けいれん療法)の間に生じた完全な躁病エピソードが、それらの治療により生じる生理学的作用を超えて十分な症候群に達してそれが続く場合は、躁病エピソード、つまり双極I型障害の診断とするのがふさわしいとする証拠が存在する。● 軽躁病エピソードA.気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的または易怒的となる。加えて、異常にかつ持続的に亢進した活動または活力のある、普段とは異なる期間が、少なくとも4日間、ほぼ毎日、1日の大半において持続する。B. 気分が障害され、かつ活力および活動が亢進した期間中、以下の症状のうち3つ(またはそれ以上)(気分が易怒性のみの場合は4つ)が持続しており、普段の行動とは明らかに異なった変化を示しており、それらは有意の差をもつほどに示されている。自尊心の肥大、または誇大睡眠欲求の減少(例:3時間眠っただけで十分な休息がとれたと感じる)普段より多弁であるか、しゃべり続けようとする切迫感観念奔逸、またはいくつもの考えがせめぎ合っているといった主観的な体験注意散漫(すなわち、注意があまりにも容易に、重要でないまたは関係のない外的刺激によって他に転じる)が報告される。または観察される。目標指向性の活動(社会的、職場または学校内、性的のいずれか)の増加。または精神運動焦燥困った結果になる可能性が高い活動に熱中すること(例:制御のきかない買いあさり、性的無分別、またはばかげた事業への投資などに専念すること)C. 本エピソード中は、症状のない時のその人固有のものではないような、疑う余地のない機能的変化と関連する。D. 気分の障害や機能の変化は、他者から観察可能である。E. 本エピソード、社会的または職業的機能に著しい障害を引き起こしたり、または入院を必要としたりするほど重篤ではない、もし精神病性の特徴を伴えば、定義上、そのエピソードは躁病エピソードとなる。F. 本エピソードは、物質(例:薬物乱用、医薬品、あるいは他の治療)の生理学的作用によるものではない。注:抗うつ治療(例:医薬品、電気けいれん療法)の間に生じた完全な軽躁病エピソードが、それらの治療により生じる生理学的作用を超えて十分な症候群に達して、それが続く場合は、軽躁病エピソードと診断するのがふさわしいとする証拠が存在する。しかしながら、1つまたは2つの症状(特に、抗うつ薬使用後の、易怒性、いらいら、または焦燥)だけでは軽躁病エピソードとするには不十分であり、双極性の素因を示唆するには不十分であるという点に注意を払う必要がある。● 抑うつエピソードA.以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在し、病前の機能からの変化を起こしている。これらの症状のうち少なくとも1つは、(1)抑うつ気分、または(2)興味または喜びの喪失である。注:明らかに他の医学的疾患に起因する症状は含まない。その人自身の言葉(例:悲しみ、空虚感、または絶望感を感じる)か、他者の観察(例:涙を流しているようにみる)によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分。 (注:子どもや青年では易怒的な気分もありうる)ほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての活動における興味または喜びの著しい減退(その人の説明、または他者の観察によって示される)食事療法をしていないのに、有意の体重減少、または体重増加(例:1ヵ月で体重の5%以上の変化)、またはほとんど毎日の食欲の減退または増加(注:子どもの場合、期待される体重増加がみられないことも考慮せよ)ほとんど毎日の不眠または過眠ほとんど毎日の精神運動焦燥または制止(他者によって観察可能で、ただ単に落ち着きがないとか、のろくなったという主観的でないもの)ほとんど毎日の疲労感、または気力の減退ほとんど毎日の無価値感、または過剰であるか不適切な罪責感(妄想的であることもある、単に自分をとがめること、または病気になったことに対する罪悪感ではない)思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日認められる(その人自身の言葉による、または他者によって観察される)死についての反復思考(死の恐怖だけではない)。特別な計画はないが反復的な自殺念慮、または自殺企図、または自殺するためのはっきりとした計画B. その症状は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。C. そのエピソードは物質の生理学的作用、または他の医学的疾患によるものではない。注:診断基準A~Cにより抑うつエピソードが構成される。抑うつエピソードは双極I型障害でしばしばみられるが、双極I型障害の診断には必ずしも必須ではない。 注:重大な喪失(例:親しい者との死別、経済的破綻、災害による損失、重篤な医学的疾患・障害)への反応は、基準Aに記載したような強い悲しみ、喪失の反芻、不眠、食欲不振、体重減少を含むことがあり、抑うつエピソードに類似している場合がある。これらの症状は、喪失に際し生じることは理解可能で、適切なものであるかもしれないが、重大な喪失に対する正常の反応に加えて、抑うつエピソードの存在も入念に検討すべきである。その決定には、喪失についてどのように苦慮を表現するかという点に関して、各個人の生活史や文化的規範に基づいて、臨床的な判断を実行することが不可欠である。引用:『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)双極性障害の治療法出典 : 双極性障害の治療には、躁状態やうつ状態の治療と、再発を防ぐための治療があります。それぞれ見ていきましょう。双極性障害の治療において第一の大きな柱となるのは、薬物療法です。薬は、気分安定薬と非定型抗精神病薬が第一選択となりますが、患者さんによって効く薬が異なるため、他にも多くの種類の薬があります。気分や意欲が周期的に変化し、高い再発率で知られる双極性障害の患者さんが安定した生活を送るためには、症状をコントロールしながら再発予防に努めることが双極性障害を治療するうえでのポイントとなります。そこで、再発を防ぐ維持療法の段階に入ると、もう1つの柱として心理社会的治療が重要になります。以下では薬物療法と心理社会療法のそれぞれについてもう少し詳しく紹介します。◇薬物療法双極性障害の薬物療法では人によって効く薬が違うため、さまざまな選択肢がありますが、気分安定薬の一つであるリチウムの使用が基本中の基本とされており、双極性障害の患者の約7割から8割に対してはっきりとした効果があるとされています。躁とうつは対極の症状なので、薬も正反対の作用のものを用いると思われることが多いです。しかし、躁・うつはどちらも気分が大きく乱れた状態です。そのため、薬で気分を安定させることで両方の症状に対して効果が見込めるのです。これを気分安定薬といいます。気分安定薬の他にも抗精神病薬・抗うつ薬が用いられることはあり、それぞれ以下のような効果がありますが、ほとんどの場合、気分安定薬が第一選択となります。気分安定薬・・・躁状態の改善・予防、自殺予防に有効抗精神病薬・・・躁状態、幻聴・妄想に有効抗うつ薬・・・基本的に用いられないが、気分安定剤と併用することでうつ状態に有効な場合もより詳しい薬の情報については、以下のガイドラインをご参照ください。参考:「日本うつ病学会治療ガイドライン」参考:「双極性障害の診断と治療」◇心理社会的療法(精神療法)心理社会的治療は広い意味での精神療法で、再発を予防する上では薬と同じように重要な役割を果たします。心理社会療法では、患者さんが療養に取り組む上での精神面をサポートしていくことが目的になります。双極性障害の精神療法の中でも中心となるのは心理教育です。患者さんは心理教育を通して双極性障害に対する知識を深めるとともに、その「再発しやすい」性質を理解し、日々の生活の中で再発のリスクを減らす方法について医師と話し合っていきます。再発率の高い双極性障害はの治療においては、薬物療法によって症状を改善してからが本番であるとも言われます。症状が落ち着いた後も、毎日をどう過ごすのかがとても重要です。服薬を継続しながら、運動や睡眠、ストレスへの対処法などを工夫することで気分の波をコントロールすることができます。参考:文部科学省HP参考:よくわかる双極性障害(躁うつ病) (セレクトBOOKS) 貝谷 久宣再発を防ぐ治療は、症状が落ち着く寛解期に行います。双極性障害の治療において、再発を防ぐことは非常に大切です。というのも、双極性障害を再発すると、同じような症状が繰り返されるわけではなく、症状が重くなることが多く、何度も再発をしているうちに、社会的にさまざまなものを失ってしまう可能性があるからです。再発を防ぐ治療といっても、なにか特殊なことをするわけではありません。最大の再発を防ぐ治療は、今までどおり薬を飲み続けることです。症状が治まってきたからといって、自分で薬を減らしたり、飲むことをやめたりしてはいけません。医師の指示に従うようにしましょう。双極性障害の人に対して周囲はどのように接するべき?出典 : 序章で触れたとおり、双極性障害の完治はとても難しいと言われています。また、最悪の場合には自ら命を絶つ可能性もある病気です。そして双極性障害は、誰でもかかる可能性のある病気でもあります。家族や結婚相手、恋人、親友など、大切な人が双極性障害であるとわかったとき、どのように支えていくべきなのか、必要な心構えと注意すべきポイントについてお話します。このような認識の違いは家庭内でストレスを生み、それが病気の再発へとつながってしまう可能性があります。そうならないためにも、本人と話し合うことによってこのような認識のギャップについて、互いに把握しておく必要があります。また、再発の際にどのような症状が現れるのかを周囲の人が知っておくことも大切です。過去に躁状態になったときのことを振り返り、最初にどんな症状が現れたのかを共有しておくことで、早くから再発の兆しを発見し早期対処できるようになります。躁状態のときには、普段のその人とは全く違う態度や言動を取ったり、信じられない額の浪費をしてしまったりします。そのため周囲も驚いたり、困惑したり、ときには感情的になってしまったりすることもあるのではないかと思います。しかし、そうした普段とは違う態度・言動はいずれも病気によって引き起こされている「症状」であるため、できるだけ早期に受診あるいは担当医に相談することが望まれます。ですが、躁状態の場合、本人の自覚が乏しく、病院へ連れていくのが難しいことがあります。そのようなときには、できるだけ刺激しないように心がけながら、「あなたのことを心配している」という事実を伝えましょう。その人が信頼・尊敬している人から説得してもらうという方法もうまくいくことがあるようです。他にも様々な手段が考えられますが、本人を騙して病院に連れていくことは避けましょう。騙されたと知ることでさらなるストレスがかかり症状の悪化へとつながったり、以降の関係にわだかまりが残り治療が困難になる可能性があります。うつ状態は、本人にとって最も辛くて厳しい期間です。まずはそのことをしっかりと理解しましょう。うつ状態のとき周囲の人が注意すべきポイントは、・責めるようなことを言わないこと・自殺の予兆に気づき、予防することの2点です。繰り返しになりますが、うつ病で一番苦しい思いをしているのは患者さん本人です。そのため、「ダラダラするな」「甘えるな」など怠け者扱いするような言動や、「がんばれ」「いつ治るの」といった元気になるのを無理に急かすような発言はしないようにしましょう。さらに、悲しいことに双極性障害の症状によって自殺をしてしまう人もいます。・「死にたい」「消えたい」と口にする・遺書を書く・周囲の人にお礼や別れを告げる・身辺整理をする・お酒を暴飲するなどのサインが見られたら早急に主治医に相談し、予防策を取ることが求められます。参考:加藤忠史先生に「双極性障害」を訊く|日本精神神経学会参考:躁うつ病の人とのつきあい方(友人・家族)|特定非営利活動法人地域精神保健福祉機構(COMHBO)双極性障害の人が受けられる可能性のある支援出典 : 双極性障害の症状が原因で働くことができないと収入が減ってしまうだけでなく病気の治療代も支払わなければならないため、経済的に苦しい思いをしてしまう患者さんもいます。以下では、そのような方々が利用できる可能性のある公的支援を紹介します。◇障害年金年金の障害給付、障害基礎年金ともいいます。障害が認められれば、年金が早期から支払われます。◇精神障害者保健福祉手帳税金の減額や、自治体によっては公共交通機関が無料で利用できるようになります。患者さんの状態に応じて等級が決まり、その等級にあった福祉サービスが受けられます。◇自立支援医療精神科の病院やクリニックなどに通っている場合、支払った医療費の一部が補助されます。また、低所得世帯に対しては医療費負担軽減措置が設けられていいます。高額治療継続者であれば、一定の負担能力がある場合でもひと月の上限が設定されます。◇生活保護精神疾患に限らず病気やけがなどを理由に働くことができず、収入がない、もしくは不十分である場合に最低限度の生活を保障する制度です。また、双極性障害の患者さんやその家族によって成る互助団体もあります。当事者同士でしか話せない悩みの相談をしたり、治療や支援を受ける方法についての情報交換なども行われているようです。法人ノーチラス会関東ウェーブの会東京うつ病友の会また、以下のリンク先では、上記で紹介した以外の地域で活動を行う双極性障害患者の互助会の情報のほか、そうした互助会によるイベントをまとめたカレンダーを見ることができます。「双極性障害(双極症)全国自助会カレンダー」まとめ出典 : 双極性障害はその症状がわかりにくく、本人に自覚がない場合があったり、他の疾患と間違えやすい障害です。ですが、双極性障害は今まで築いてきた社会生活や、時には命にまで関わる重大な病気もあります。それでも、薬物治療に加え、双極性障害とうまく付き合っていく方法は確かに存在し、世の中には双極性障害でありながらも社会生活を送っている人がいるのも事実です。本人だけではなく、周囲も一緒になって病気の性質についてよく理解することで、双極性障害との上手な付き合い方を見つけ、さらに、予兆を感じた時にはすぐに担当医に相談することが大切です。気分の波をうまくコントロールし、再発のリスクを抑えながら毎日楽しい生活を送れるように、本人も、周囲も、互いを思いやりながら治療を進めていけるといいですね。
2017年10月02日児童福祉法とは出典 : 児童福祉法とは、児童福祉を保障するためにあらゆる児童がもつべき権利や支援が定められた法律です。初めて児童福祉法が制定されたのは、戦後間もない1947年です。 戦争により親を亡くした戦争孤児たちは家もなく、路上での生活を余儀なくされていました。そんな社会背景から、子どもの健やかな成長と最低限度の生活を保障するために、児童福祉法が制定されたのです。それから半世紀以上が経過し、子どもたちのよりよい暮らしの実現に向けた改正が行われてきました。子育てに関する支援の中には、児童福祉法によって定められているものもあります。また、障害児の福祉サービスや基本的な考え方などを定めているので、お子さんの発達が気になる保護者の方々や、発達支援・障害福祉に携わる方々にとっても重要な法律です。今回は、児童福祉法とはどんな法律なのか、わかりやすく解説します。参考:厚生省児童局『日本における児童福祉の概況』児童福祉法の構成出典 : 法律は、総則・実体的規定・雑則・罰則の4つで構成されています。児童福祉法は8章あり、そのうち第一章が総則、第二章から第六章が実体的規定、第七章が雑則、第八章が罰則です。それらの8つの章により、児童福祉の大まかな枠組みが定められています。まずは簡単にそれぞれの章でどのようなことが定められているのかをご紹介します。総則とは、児童福祉法全体に共通する規定のことを指します。たとえば、国や地方自治体が保護者と共に児童の生活を守り、健やかな成長に対する責任があることが述べられています。児童の福祉を保障する上で、重視されている児童相談所の役割も定義があります。他にも、都道府県の児童福祉を保障するための児童福祉審議会の役割についても触れられています。さらに、児童の定義や児童に関する福祉施設や資格に対する規則も定められています。資格の中には、保育園で働くために必要になる保育士、児童相談所に配置される児童福祉司、市町村に配置される児童委員の3つの資格が規定されています。この章では、小児慢性特定疾病児童や身体に障害のある児童への療育の実施などについて記載されています。たとえば、小児慢性特定疾病医療費の支給であれば、その該当児童の保護者が都道府県が定める医師に診断書と共に都道府県に申請することが明記されています。このように、支援をだれが行うのか、何が必要なのか、などといった全体像が提示されています。詳しくは、後の「児童福祉法によって定められている支援とは」でご紹介します。章のタイトルにある「事業」には、放課後等デイサービスなどの障害児通所支援事業や保育園などの保育事業に代表されるような児童福祉に関連する事業が含まれています。これらの事業は、地方自治体が中心となっているため、自治体がその事業を行う権利を認めている規定が多くなっています。加えて、「養育里親」についても、詳しくまとめられています。里親制度は、家庭での養育が困難又は受けられなくなった子ども等に、温かい愛情と正しい理解を持った家庭環境の下での養育を提供する制度です。家庭での生活を通じて、子どもが成長する上で極めて重要な特定の大人との愛着関係の中で養育を行うことにより、子どもの健全な育成を図る有意義な制度です。この章では、それぞれの支援や事業の運営の予算をどこからだすのかを定めています。大きく分けて予算の出所は3つです。国、都道府県、市町村にわかれています。国の予算から都道府県、市町村の費用を負担している場合もあります。限られた予算でより良い児童福祉を実現するために細かく負担者が決められています。日本では、国民は何らかの健康保険に加入することが義務付けられています。保険に対してお金を支払っている以上、その保険は加入者にとって公平公正でなければなりません。国民健康保険団体連合会は、国民健康保険を通して社会保障を向上させるための法人として各都道府県に設置されています。児童福祉法の中では、この国民健康保険団体連合会が障害児通所や障害児相談支援などの支払に関する業務を行うことが定められています。参考:神奈川県国民健康保険団体連合会ー国民健康保険団体連合会とは?参考:国民健康保険法審査請求とは、行政による決定に対して不服がある場合に、再度その決定が適切であるかどうかを再審査する手続きのことを指します。児童福祉法では、市町村の障害児に関する給付費に不服がある場合に、保護者が審査請求を行う権利を明記しています。参考:総務省ー1.「行政不服審査制度」とは?第六章までに明記されてきた内容に関する細かい規則が定められています。総則ほどは重要ではない部分でも、児童福祉を保障する上で必要になる規定がここにまとめられています。児童福祉法で制限されている規定や禁止されている行為などを行った場合の処罰がまとめられているのがこの罰則です。児童福祉法によって定められている支援とは出典 : ここでは、児童福祉法によってどのような支援が定められているのかをご紹介します。おもに第二章「福祉の保障」と第三章「事業、養育里親及び施設」に規定されている、給付金や支援事業となります。児童福祉法では、児童の健やかな成長のために放課後児童健全育成事業なども定められており、地域での居場所つくりにも役立っています。子育て支援に関する事業を児童福祉法では「児童自立生活援助事業」と呼んでいます。その中には11個の事業が含まれており、子育ての中での困りごとに対する支援が行われています。今回は児童福祉法に記されている支援のなかから、特に障害児や小児慢性疾病などのサポートや子育てにおいて必要不可欠な支援をまとめました。・養育にまつわる事業児童福祉法では、保護者が何らかの理由で日常的な養育や保育が行えない場合に「子育て短期支援事業」や「一時預かり事業」として一時的な施設などでの保護を行う事業を定めています。自治体によってはショートステイと呼ばれることもあります。ほかにも「乳児家庭全戸訪問事業」は原則として、すべての乳児がいる家庭に訪問することで、保護者が悩みを相談することや、乳児の養育環境が適切かどうかを確かめる事業だと定められています。この事業によって、さらに支援が必要だとされた保護者向けに「養育支援訪問事業」があります。また、保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童がみつかった場合には、「小規模住居型児童養育事業」により保護環境を届けることと定めています。・保育にまつわる事業乳児や幼児を対象にした「一時預かり事業」のほかにも、困りごとや特性に合わせていくつかの保育事業が規定されています。自分の家庭に保育士を呼び、面倒を見てもらうことを認める「居宅訪問型保育事業」や、保育園の中でもさまざまな理由から少人数での保育を提供する「小規模保育事業」があります。保育が必要な場所や理由もさまざまなために、保育士の家で保育を行う「居宅訪問型保育事業」や勤務先での保育を可能にする「事業所内保育事業」、病気に対するケアが充実している「病児保育事業」が規定されています。できるだけニーズに合わせた子育てを実現するために、多様な保育支援が用意されているのです。しかしながら、現状では整備しきれていない制度もあるため、決められた制度の中でどのような支援を行っていくのかは難しく課題でもあります。それらの支援に対する悩みなどを共有する場として、「地域子育て支援拠点事業」を児童福祉法では規定しています。乳児又は幼児をもつ保護者が相互の交流を行う場を用意し、子育てについての相談、情報の提供、助言その他の援助を行う事業になっています。悩みを抱え込まずに相談できる支援も、子育ての支援事業の中で保育と同じぐらい必要な支援として位置付けられています。児童福祉法では、虐待が見つかった場合の措置や、虐待を受けていた児童に対する支援を規定しています。虐待に関する基準などは下記の記事をご覧ください。また、虐待を受けた児童を保護する里親に関する規定も児童福祉法が規定しています。この虐待に関する支援や、措置に関しては平成28年度に改正が加えられました。この改正に関しては「児童福祉法の改正について」の章にまとめています。ここで紹介する事業は、施設に通うか、入所するかの障害児通所・入所支援とそれらの支援に対する給付金に関する事業の3種類です。・障害児通所支援事業障害児通所支援事業については以下の記事にまとめられています。法律の中では、児童発達支援、医療型児童発達支援、放課後等デイサービス及び保育所等訪問支援が障害児通所支援であると明記されています。4つの支援についてそれぞれ簡単に紹介します。・児童発達支援障害のある未就学(~6歳)の児童が通う。生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進その他の便宜を供与する。・医療型児童発達支援(医療型児童発達支援センター)上肢、下肢又は体幹の機能の障害(肢体不自由)のある児童が通う。児童発達支援及び治療を行う。・放課後デイサービス6~18歳の就学児童(※場合によって20歳まで)が通います。授業の終了後や学校が休みの日に、生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進などを目的とした多様なプログラムを設けています。・保育所等訪問支援専門知識を持つ児童指導員や保育士、理学療法士などが、障害のある児童が通う保育園・幼稚園を訪問します。障害のある子どもや保育園・幼稚園のスタッフに対し、集団生活に適応するための支援や支援方法の指導を行います。・障害児入所支援何らかの施設に入所して、支援や治療を受けることを障害児入所支援と呼びます。施設の利用に関しては、児童相談所が主に相談することが多いといいます。医療機関からの紹介や、身体的なリハビリなどを行うなど目的や理由もさまざまです。児童福祉法の中で、定義されている児童福祉施設に関しては、後ほどご紹介します。・障害児通所/入所給付費などの支給障害児通所給付費あるいは障害児入所給付費として国と自治体から利用料の9割が給付されることにより、自己負担1割でサービスが受けられるように定められています。詳しくは下記の記事をご覧ください。・小児慢性特定疾病医療費の支給特定の医療機関からの診断によって、医療費を支給することが厚生労働省によって定められています。詳しくは以下の記事をご覧ください。・小児慢性特定疾病児童等自立支援事業この事業では、小児慢性特定疾病児童をはじめ保護者や関係者に対する相談事業を行っています。具体的には、療育相談指導 、巡回相談、ピアカウンセリング 等などの支援が含まれています。上記の記事の中に、相談事業についてのまとめも掲載しています。そちらもご参考ください。参考:厚生労働省ー小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の取組状況について・結核にかかった児童に対する支援児童福祉法では、結核にかかった児童のために療養とあわせて学習支援を行う制度を定めています。療育の給付と呼ばれており、この中には学習面はもちろん生活必需品の支給など物品面でのサポートも定められています。児童福祉法によって定められている児童相談所とは出典 : 児童相談所とは子どもに関するあらゆる問題の解決のために設置される専門的な相談機関です。児童相談所には、スタッフとして児童福祉司(ソーシャルワーカー)、児童心理司、医師などの専門家から構成され、すべての都道府県と政令指定都市に設置されています。詳しくは下記の厚生労働省ページから各自治体の設置情報をご覧ください。児童相談所は、18歳未満の子どもに関することであれば、本人・家族・学校の先生・地域の住民等、どんな立場からでも相談することができます。相談することで、周辺の機関との連携によって必要な援助を行っていきます。相談される内容は、親の事情や子どもの問題行動等による子育ての悩み、障害児福祉、虐待の対応などの問題などが主になっています。それらの問に対して、専門家による助言や治療の補助、さまざまな手当ての案内などの支援を行います。いきなり学校や病院に相談することは気が引けるが自分だけでは解決が難しい時、誰かに相談に乗ってほしい時には、児童相談所に相談してみることをお勧めします。参考:全国児童相談所一覧|厚生労働省児童福祉法によって定められている児童福祉施設とは出典 : 今回は、児童福祉施設を3種類にわけてご紹介します。・保育所幼保連携型認定こども園幼稚園と保育園の両方の機能を持った施設です。就学前の児童に対する教育から、0歳からの保育を行うことができます。詳しくは以下の内閣府ページをご覧ください。Upload By 発達障害のキホン内閣府ー認定こども園とは・助産施設主に産科病院や助産所が「助産施設」と認定されている場合が多いです。経済的な理由により、入院などが難しい場合、妊産婦から申込みがあったとき助産施設は助産を行わなければならない、と規定されています。・乳児院何らかの理由で保護者の養育を受けられない乳幼児を養育する施設です。一般的な養育だけではなく、被虐待児・病児・障害児などに対応できる専門的養育機能を持っている場合もあります。・母子生活支援施設何らかの理由で一般的な生活を送ることが困難になった母親と児童がともに入所して生活を送ることができる施設になります。施設では、利用者の安定した生活のための相談や援助を行っており、自立した生活を目指しサポートを行っています。・児童厚生施設児童館や児童センターなどの施設を児童厚生施設と呼びます。児童が安全に遊べる場所であり、発育には欠かせない大切な機能を持っている施設です。・児童養護施設児童養護施設は、保護者のない児童、虐待されている児童などの養護を目的とした施設です。退所した児童に対しては相談を行うことや、自立のための援助も行っています。・児童自立支援施設及び児童家庭支援センター児童に関係する人からの相談に応じ、必要なサポートの提案を行う施設です。また、児童相談所など実際の支援につながる機関への紹介を行っています。この施設は、児童相談所の機能をサポートするために児童福祉施設等に設置されていることもあります。児童福祉法で定められる、障害のある児童の支援に関する施設出典 : ・障害児入所施設障害のある児童を対象に、医療や保護などを行う入所施設です。障害種別ごとに作られていた入所施設が障害者総合支援法の改正に合わせて一元化されました。・情緒障害児短期治療施設(児童心理治療施設に改名予定)軽度の情緒障害を有する児童を対象にした施設です。情緒障害とは、精神的なコントロールが難しく生活に困難が生じることを指します。この施設に短期間、入所もしくは通所することで、その情緒障害を改善することを目的としています。さらに、自閉症や発達障害の児童も利用可能なため、治療を受けることができます。・児童発達支援センター障害のある児童に対しての療育や、相談事業を行っています。詳しくは下記の記事をご参照ください。参考:児童福祉施設の設備及び運営に関する基準児童福祉法の改正について出典 : 平成28年度に児童福祉法が改正されました。児童によりよい発育を届けるために、法律も社会背景にあわせて改正が行われているのです。今回の改正で主に着目されたのは以下の4つです。今回の改正により、すべての児童が適切な療育をうけることが改めて強調される形に改正されました。また、都道府県・市町村の役割と責任も再整理され、より児童の養育環境が地域単位で充実するように改善が行われました。母子家庭に対する母子健康包括支援センターの設置を市町村に命じたり、虐待を起こさないための改正が行われました。虐待に関する情報を市町村にどのように共有するかという課題を改善するための取り組みが行われています。自治体単位での児童相談所の増設や、児童福祉司などの専門的な職員の増員が決まりました。そもそも虐待に関する業務を行う人員を増加する流れもあるといえるかもしれません。里親に引き取られた児童の自立支援の充実を目的としています。それに合わせて里親の認定を推進していくことも児童相談所の業務として位置付けることで、援助の充実につながる改正となっています。参考:厚生労働省ー児童福祉法等の一部を改正する法律案の概要まとめ出典 : 子どもの健やかな成長のためには、保護者の養育はもちろん地域単位での支援が必要不可欠です。児童福祉法では、児童と保護者の支援をもとに、地域社会に対する責任や支援内容も規定しています。これからも児童のために法律が改正されることでしょう。市民の声が法律に反映されていることも少なくありません。児童福祉法で新たな支援が決まることで社会に与える影響はとても大きいのです。どこまで児童福祉法の支援が影響を与えるかは人それぞれ異なりますが、子どものためにはなくてはならない法律なのです。さまざまな支援がある中で、どのような支援を利用するのかを知ることや、地域での取り組みを知ることでこれまでとは違った子育ての方法が見えてくるかもしれません。児童福祉法の理念を知れば、保護者の皆さんがわが子を大事に思うように、社会全体で児童という存在がいかに大切な存在なのかに気づかせてくれるはずです。
2017年09月30日共同注意とは出典 : 共同注意とは、人がひとつの空間の中で、他の人と同じように物体や人物に対して注意を向けることです。さらに厳密には、他の人と自分とが同じように、その対象に対して注意を向けているとを知っている状態を指します。「バナナを見ること」を例にして考えてみます。共同注意が成立しているということは「お母さんがバナナを見ている」そして「お母さんとおなじように私もバナナを見ていると気づいている」という状態のことです。子どもの発達には、ある決まったひとつの順序があります。他の人とのコミュニケーションのひとつの形である共同注意は、まだ言葉を話すことができない乳幼児期の子どもにとって言葉を覚える前に身につける大切な力です。共同注意は子どもにとってどんな意味があるの?出典 : 共同注意の力を獲得することは、子どもにとってどのような意味をもつのでしょうか。この力を身につけることによって、・他の人の意図(気持ちや考え方)を理解する・言葉を話すという力の獲得へと繋がっていきます。そのため、共同注意が成立していることは、子どもの発達におけるひとつの指標となります。いきなり共同注意をできるようになる子どもはいません。子どもは生まれてきてから、時間を積み重ね、人との関わりの経験を積んでいくことにより、徐々に共同注意の力を獲得していくものだからです。以下では、子どもが共同注意をできるようになるまでに、どのようなステップを経験しているのかについてお伝えします。Upload By 発達障害のキホン・「わたし」と「あなた」の関係子どもは生まれたとき、その発達の初期を大人たちの視線の中で過ごします。そして大人と視線が合って、笑いかけられたり、呼びかけられたりする中で、まず「自分」があることに気が付きます。そのあと、アイコンタクトを行い視線を交わし合う中で子どもは大人との関係を結びます。具体的には、・笑いかけられたときに、笑い返す・イナイイナイバーを喜ぶこれは子どもにとってのはじめてのコミュニケーションの形といえます。さらに発達が進んでいくと、いつも育ててくれる養育者を見分けることができるようになります。これが人見知りです。・「わたし」と「この物」の関係徐々に子どもは、興味の範囲を広げていきます。人と関係を結んでいくのとはまた別に、「物」との間に関係を結んでいくようになります。例えば、・おもちゃに手をのばす・ガラガラを振って音を楽しむ・つかんでいた物をわざと落とすなどです。これらの「わたし」と「あなた」という「人と人」の関係、「わたし」と「この物」という「人と物」関係のことを専門用語で「二項関係」といいます。二項関係は、共同注意が成立するために必要な発達的な土台となります。・「わたし」と「あなた」と、そして「もうひとつ」人との間、そして物との間で二項関係を結ぶことのできるようになった子どもはやがて、二つを統合させることができるようになります。Upload By 発達障害のキホンやがて子どもは、他の人が自分以外の対象を見ているとき、その視線の先を追っていくようになります。例えば、大人と子どもの前にバナナがある光景を考えてみましょう。子どもがふと見上げて目に入った大人が、自分とは違う空間に目線をやっているようだと、顔を見て気が付いたとしましょう。大人はバナナの方向を見ているとします。すると、子どもは大人が見るのと同じようにバナナを見るのです。これが共同注意が成立した状態です。二項関係しかできない発達の段階では、大人が別の方向に目線をやっているとしても、その目線の先のバナナを見ることはありません。ここには、バナナを中心として、「大人」「子ども」「バナナ」という三角形ができます。大人の目と子どもの目が、同じバナナに注目している状態です。これを「三項関係」といい、子どもが発達しているかどうかを見るときの大切なパラメーターとされています。共同注意の発達のステップと種類について出典 : 共同注意の成立は、言葉や社会性を発達させていくための通過点であることをお伝えしました。その通過点の中にもさまざまなステップが存在しています。共同注意には、大きく分けて4つのステップがあります。他者の注意を感じ取って、その注意の方向を自分も追いかけることです。乳幼児が追いかける注意の対象は「視線の先」「指さしの先」という二つの種類に分けることができます。1. 視線の先を追う他者が見た目線の先にあるものを、同じように目で追うことです。これを視線追従といいます。他の人が注意をわかるための手掛かりは、実は視線だけではありません。顔の向きや、体の向き、他には声なども大切な意味をもっています。子どもはこれらの複数の情報を合わせて、他者が何かを見ていることを判断し、その視線の先を追いかけます。ただ視線追従については、研究者の間でいくつかの意見が分かれています。ひとつめは、動くものに焦点を合わせて、無意識に同じ行動をとっているのではないかということです。例えば、お母さんが首を右に回したとき、その動きに焦点を合わせ、同じように首を回すことがあったとします。その子どもが「首を回した」という動作が大人からすれば、「同じものに注意を払っている」かのように見えているだけという意見です。この場合、他者に意図があることを感じているわけではありません。このように発達の過程で開花した生物的に備わっているものを生態学的メカニズムといいます。ふたつめは、他者の意図を感じとった最初の段階であるという意見です。この「他者の意図を感じとること」とは、共同注意の本来の意味でしたね。ちなみにこれを幾何学的(きかがくてき)メカニズムといいます。2. 他者が指さしをした方向を目で追う「動くものを追う」という生態学的メカニズムが際立っている段階であれば、大人が指さしを行った際、子どもはおそらく手や腕そのものを見るでしょう。その次のステップへと進んだ子どもは、大人が指をさしたときに、指をさした先の方向に目をやることができるようになります。まずは、もともと子どもの視野の範囲内にある物体に目をやることのできるようになります。そのあとには、自分の今見ている視野の範囲にない物体、例えば後方に指をさされたときにも、振り向いて、その方向を見ることができるようになります。これは今まで、自分の目でとらえられる空間をすべてだと思っていた子どもが、今自分の目でとらえられない空間にも、世界があることをわかってきたことを意味します。後方の指さしを理解できたときには、またひとつ発達の段階をのぼったと理解することができるでしょう。さらにそれは、三次元の空間の中に自分の身を置く身体能力や、自己とモノの空間の理解ができるようになったことのあらわれでもあります。はじめて立って歩いていくことができるようになる時期と「後方の指さしを理解する」時期はほとんど同じです。「他者には他者の意図があるのだ」と知った子どもは、その意図を自分の行動へと反映させていきます。あるいは、大人の注意を自ら引くようになります。これが次の段階です。1. 単純な動作模倣相手の動作を目で見て認知し、自分の行動に取り入れることです。例えば、大人が積み木をひとつ積んだら、それを見た子どもも同じように積み木をひとつ積むことを動作模倣といいます。2. 行動の際に他者の反応をうかがうこれは、他者の反応をうかがって自分の行動を決定する行動です。例えば、子どもが新しいおもちゃに手を出そうとしているときに、大人が怒った顔をしているならば手を伸ばすのをやめて、笑顔でいればおもちゃに手を伸ばすということです。これを専門用語で社会的参照といいます。次は、他者の注意を操作する段階を迎えます。「指さし」とは、興味のあるものや、欲しいものに対して人差し指を向ける子どもの行動です。それまでの子どもは、他者の注意を察知し、読み取るのみでした。しかしこのステップで、自ら他者に対して注意を共有しようと働きかけていく姿が見られはじめます。1. 自発の指さし自分の興味関心のあるものを見つけたときに指をさすことを、「自発の指さし」といいます。それまでは「相手と自分」という2つの関係だけで満足していた子どもが、周囲の環境や物に対して関心をもつようになると、この指さしが出るようになります。2. 要求の指さし自分の欲しいものに対して「あー」などと声を出しながら、しきりに指をさすことを、「要求の指さし」といいます。3. 相手に注意を共有する「感動の指さし」興味のある物を見つけたときや心を動かされたときに、指さしを使って「僕の好きなものがあるよ!見て!」と大人に教えることがあります。これを「感動の指さし」といいます。このとき子どもは、「あー」「うー」などと声を出したり、大人のほうを見たりしてアピールをします。叙述の指さしや定位の指さしとも呼ばれます。感動の指さしをするときには、「好きなモノ」という対象を「共有する」力を身につけている状態だといえるでしょう。共同注意はいつから始まる?出典 : 共同注意は、子どもの発達のサインとして多くの人々により研究されてきました。それらの研究によれば、他者の指さしをした方向を見るようになるのは、だいたい生後8~10ヶ月ごろであることが明らかになっています。子どもの発達を長らく研究してきたTomaselloというアメリカの心理学者がいます。彼は、子どもの発達の大きな節目であるとして、このあたりの時期を「9ヶ月革命」と名づけました。というのも、自分ではない別の人が、自分が「○○したい」「○○したくない」というように、意図をもっていることを感覚的に分かり始める時期であるからです。そして、12~14ヶ月ごろになると「他者が自分の意図とは異なる生き物である」とはっきりとわかるようになります。他の人と何かを共有することで、その子どもの世界はより広がりを持つようになります。共同注意は、子どもが「体験を共有する相手」として他者の存在を認識するための第一歩であり、そして子どもが言葉を身につけ、人とのコミュニケーションをしていくための通過点です。また、注意していただきたい点があります。ここでお伝えした共同注意の発現の生後8~10ヶ月という時期は、あくまで目安です。乳児期の発達のスピードは特に、その後の幼児期、児童期の時期と比べても、個人によって差があります。共同注意を促すためにできること出典 : それでは、私たちが子どものためにできることは何なのでしょうか。子どもの発達は「環境に対して自ら働きかけていきたい」と思う気持ちが起こることにより進みます。子どもの能動性を呼び起していく関わりをすることが大切です。ですので、ここでは「共同注意を出させる」という点に目的を定めてしまうのではなく、発達を促していく働きかけは何だろうという視点から、大人ができる工夫についてお伝えします。共同注意は、物体や人の存在を相手と共有している状態でしたね。そのためには「共有する相手」の存在を認知しているかどうかが肝となってきます。共同注意の発達がゆっくりな子どもは、人との関係を結びにくい代わりに、物との関係を結びやすいという特徴があります。そのようなときには、視点を切り替えて「物と子ども」という世界の中に、大人が入らせてもらうのです。例えば、ミニカーを一列に並べている子どもがいるとします。たとえ、大人の方が「その遊びの楽しさがわからない」と思ったとしても、まずは一緒に同じことをしてみてください。楽しさそのものがわからなくても、お子さんは、保護者の方が同じことをしていると気がつきます。ミニカーを「はい、どうぞ」と言いながら手渡すなど、やり取りの中で積極的に声をかけることも効果的です。このように子どもの遊びに積極的に関わっていくと、最初は一方的だったとしても、次第にコミュニケーションが生まれていきます。自閉症スペクトラムのある子どもをはじめ、人よりも物に対する興味が強い子どもにとっては、楽しい活動を共有しあうことが人間関係の最初の一歩。物の世界を介しても、大人との活動が心地いい刺激であるならば、子どものほうから答え返す力が強まってきます。物との関わりに加えて「共有できる楽しさ」が加わると、「また〇〇してみよう」という活動の積み重ねができていくはずです。人とのやり取りの中で活動を積み重ねていくことによって、発達は進んでゆきます。自閉症スペクトラムと共同注意の関係出典 : 共同注意は、子どもの発達を確かめるためのひとつの指標とされています。そのため、子どものための1歳半健診でも、検査項目として取り入れられています。読者の方の中には、乳幼児期健診を受けたとき、共同注意が見られないといわれ、このサイトを見てくださっている方もおられるのかもしれません。発達が遅れていると、障害があるのではないかと心配される場合もあると思います。ここでは、自閉症スペクトラムのある子どもの発達的な特徴についてお伝えします。自閉症スペクトラムはコミュニケーションの面で特有の特性がある発達障害です。自閉症スペクトラムのある人の中には、乳幼児期の頃を振り返ってみると共同注意の発達の難しさがあった場合もあるといわれています。自閉症スペクトラムの乳幼児期の特徴としてほかに以下のようなものが挙げられます。・養育者と目が合いにくい・名前を呼んでも振り向きにくい・「あうー」「まむまむ」などの喃語が出にくい・物に対する興味関心がとても強いなどです。また、このような場合もあります。視線の追従、命令の指さしなどはできるけれど、感動の指さしをしないことがあるということです。途中までは順調だった発達が、途中からゆっくりになることがあります。自閉症スペクトラムの診断はアメリカ精神医学会による『DSM-5』という診断基準を使い、問診や知能検査、心理検査、子どもの行動観察などを行い慎重に判断されます。また、子どもの発達のスピードには個人差があります。ですので、医師が確定診断を下すことのできるのは、だいたい生後18ヶ月から24ヶ月になってからといわれています。それ以前の月齢に確定診断のために病院を訪れても、経過観察になる場合がほとんどです。そのため、共同注意が見られないからと言って、それだけで乳幼児が自閉症スペクトラム症と診断されることはありません。ですが、もし、コミュニケーションがとりづらく、本人やパパ・ママが困っているとしたら、早期に専門機関や医療機関に相談することが重要です。必要な支援につなげてくれたり、発達を促す方法を教えてくれる可能性もあります。もしも気になる点があれば、地域の子育て支援センターや児童相談所、児童発達支援センターなどに相談するとよいでしょう。アメリカ精神医学会/編/『精神障害のための診断と統計のマニュアル 第5版』2013年/医学書院/刊共同注意、子どもの発達について相談をしたいときには出典 : 地域にはお子さんの発達をサポートしてくれるたくさんの機関があります。それぞれの機関によって、できることが異なるので、お子さんとご自身の要望にあわせて行く先を選んでいくことが大切です。病院は基本的に、障害の有無の確定診断と薬の処方などを行うところです。病院によっては、施設の中に「発達センター」が併設されている場合もありますので、ホームページからお問い合わせください。また先ほどお伝えしたように、障害の確定診断を医師が下すことのできるのは、子どもが一定の月齢になってからとなります。確定診断を求められている場合には、だいたい生後18~24ヶ月以降になってから行かれることをお勧めします。子育ての不安・悩みを相談できる場です。そのため、子育て中の親子が気軽に集い、交流することができたり、専門職による相談受付も行われています。行政や自治体が実施の主体となって行っているため、無料で相談をすることができます。0~17歳の児童を対象として、育児の相談、健康の相談、発達の相談など、さまざまな相談を受け付けています。必要に応じて、発達検査を行うこともあります。無料で医師や保健師、心理士、言語聴覚士などから支援やアドバイスをもらうことができます。ほとんど予約制のことが多いので、あらかじめお住まいの市町村のHPなどを見て確認するようにしましょう。乳幼児健診は、子どもの心身の発達状態の確認や、病気の早期発見や予防をするための検査です。各市町村の保健センターなどで行われているものです。普段の子育てで疑問に思っていることや、なかなか話す機会がない不安などを専門家に相談できる場でもあります。また、乳幼児健康診査は、同じ月齢期の赤ちゃんを育てる保護者も来ています。子育てを同じくする人と情報交換できる場所でもあるので、上手に活用しましょう。児童発達支援は、支援が必要であると認められた、未就学の障害のある子どもが対象の福祉サービスです。自治体に申請を出し、受給者証を取得することで、1割の自己負担でサービスを利用することができます。6歳までの障害のある子どもが支援を受けることができます。日常生活の自立支援や機能訓練を行ったり、保育園や幼稚園のように遊びや学びの場を準備してくれています。以下のリンクから、全国の子どもの発達支援を専門に行っている施設や機関を検索することができます。発達支援施設検索|発達ナビまとめ出典 : 共同注意をするまでの子どもは、自分という存在が他者と別のものであることを認識はしています。しかし、一人ひとりが別々の意図をもっているということを知りません。人が、それぞれ別々に意図をもった生き物であることを知ることは発達にとってひとつの大きな転機となります。この機能を獲得したサインとして、共同注意が出始めようになります。共同注意の発達とともに、分かち合うことへの喜びを知った子どもは、ものや出来事などの、「あなた」と「わたし」以外の「もうひとつ」という世界を介して、世界を広げていくようになるのです。大藪泰ら/著『発達144:他者のこころの理解と発達 』2015年/刊/ミネルヴァ書房
2017年09月29日摂食障害とは出典 : 摂食障害とは、体重や体形へのこだわりや自己評価の低さなどの心理的要因によって引き起こされる、食行動に関する障害をいいます。その症状は人によりさまざまですが、代表的に極度に食事を取りたがらない拒食(神経性過食症)と過剰に食べ物を摂取する過食(神経性過食症)、特定不能の摂食障害の3つにわけられます。摂食障害の特徴として、体重や体型に関する認知(考え方)が歪んだり、自分で食欲がコントロールできず、極端なやせ願望や太ることに対する恐怖心が強くなったりすることがあります。また、見た目に現れるくらいの体重の変動、過度な運動や下剤の使用といった代償行動が表れることもあります。代償行動とは、一度に大量の食べ物を食べてしまい、そのことを非常に後悔し、食べた分だけ体重が増えないように、下剤をたくさん使ったり、自分で吐き出したりすることです。摂食障害は、身体面だけでなく、精神面にも影響を及ぼします。例えば極度な不安や気分の落ち込み、怒りっぽくなるなど心の動きの異変がありえます。その関係から、精神疾患とも深く関わっていることが多くあり、抑うつや不安症状などが現れ、時には自傷行為や自殺に至ることもあります。このようなさまざまな症状が一時的ではなく、繰り返し発症する可能性があることも摂食障害の大きな特徴です。次から摂食障害の具体的な症状や治療法、サポートの方法を順に見ていきましょう。参考文献: 日野原 重明、宮岡 等 /編 『脳とこころのプライマリケア4子どもの発達と行動』 2010年 シナジー/刊摂食障害の分類出典 : 摂食障害は拒食症、過食症、特定不能の摂食障害の大きく3つに分けられます。それぞれを詳しくご説明します。一般的に知られる拒食症は、医学的に神経性無食欲症または神経性やせ症と呼ばれます。特徴としては極端なやせ願望と肥満恐怖があり、ダイエットや食欲不振などをきっかけに発症することが挙げられます。発症時期は10~19歳に最も多く、拒食症の90%が女性であると言われています。神経性無食欲症は食べることを拒否する"制限型"と、一度は過食をした後の無理な嘔吐・下剤の大量使用によって、食べた分を排出し、低体重を維持する"むちゃ食い/排出型"に分けることができます。特に後者は、過食・自己嫌悪・無理な排出を繰り返してしまい、悪循環してしまいがちです。過食症は、医学的には神経性過食症または神経性大食症と呼ばれます。過食症の人は食べることをやめられず、人よりも明らかに多い量を摂取することが特徴です。これは食べることを自分でコントロールできないことから起こります。また摂食行動とは反対に嘔吐・利尿を行い、体重を減らすような代償行動も行います。むちゃ食いし、健忘を伴うケースも報告されています。そのため、過食症は"過食と嘔吐を繰り返すパターン"と、"過食のみを繰り返すパターン"の2つのパターンにわけることができます。過食症は20~29歳に多く、90%の患者が女性と考えられています。発症前にダイエットをしたことがあり、拒食症から移行するケースも多くあります。過食や体重の急激な増減、下痢や嘔吐などが症状として挙げられます。日本精神神経学会/監修 『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』 2014年 医学書院/刊生活習慣病予防のための健康情報サイトl厚生労働省特定不能の摂食障害という診断は、拒食症、過食症いずれの診断基準にも当てはまりませんが、摂食の障害のために何かしらの診断名をつける必要がある場合に使われます。例えば女性で拒食症の診断基準にほぼ当てはまりますが、月経は問題なくあるという状態の場合、特定不能の摂食障害の診断になります。摂食障害を引き起こす要因出典 : 摂食障害を引き起こす要因としては体型に関する周りの見方、風潮といった社会的要因と性格や考え方の癖、対人関係などから来るストレスといった心理的要因が関連していると考えられています。「痩せていることが美しい」「痩せているほうが望ましい」という風潮があります。これにより、痩せていることは自己実現や成功の証として考えられがちです。テレビや雑誌、インターネットなどマスコミなどの影響が大きく、ダイエットの流行も摂食障害の要因として考えられています。性格や考え方、ストレスは摂食障害に大きな影響を及ぼすといわれています。そのストレスを引き起こす要因として下記の5つが要因として考えられます。◇自尊心が低い摂食障害になる人には自尊心が低い人が少なくありません。過去に太っていることを指摘された、痩せることで褒められたといった経験があることや、周囲の人から認めてもらいたいという気持ちが強い場合が多いです。また、ありのままの自分を肯定することが難しく、努力が結果として数字であらわれるダイエットにのめりこみがちです。◇完璧主義あらゆることに対して完璧であることを求め、自分に要求します。それは時に過度なストレスとなり、ダイエットのきっかけになることもあります。体型に対して不満がある場合は極限まで食事制限などをしてしまうことがあります。◇八方美人他人から良く思われたい、嫌われたくないと強く思う人は、自分の希望や気持ちを抑えてしまう傾向にあります。周囲の人の顔をうかがうことに気を遣い、知らないうちにストレスをため込んでしまうことがあります。◇家族関係保護者が過干渉あるいは支配的な場合、子どもは自分の気持ちを主張できないことがあります。そのとき、子どもは伝えたいことを伝えられず、ストレスを感じてしまうことがあります。◇決めることが苦手幼少期に過保護な生育環境におかれた場合、何も自分で決められなくなってしまうことがあります。自分は何をしたいのか分からず、心の中に葛藤を抱えることがあります。切池 信夫/著 『拒食症と過食症の治し方 (健康ライブラリーイラスト版)』 2016年 講談社/刊参考文献: 切池 信夫/著 『拒食症と過食症の治し方 (健康ライブラリーイラスト版)』 2016年 講談社/刊摂食障害と関連のあるこころの病気出典 : 摂食障害にはその他のこころの病気が併存しやすいと考えられています。その中でもうつ病や不安障害、強迫性障害、パーソナリティー障害が高い確率で併存するといわれています。それぞれのこころの病気に関してもっと知りたい方は、下の発達ナビコラムもご覧ください。◇うつ病うつ病とは軽症を含めると最も多い精神病で、繰り返し気分が落ち込んだり、意欲がなくなったりすることが特徴です。うつ病の症状は精神面だけではなく、身体面にも影響を及ぼし、その一つとして拒食や過食につながることがあります。◇不安障害不安障害とは、状況や具体的なものに対して、過剰に不安、恐怖を感じ、それによりさまざまな影響が身体と精神に現れ、社会生活を送ることに支障が出てしまう疾患です。不安障害と摂食障害が併存している場合、他者と一緒に飲食する場面において強い不安や恐怖を感じることもあるそうです。◇強迫性障害強迫性障害とは自分の意思に反して不安・不快な考えが浮かび、抑えようとしても抑えられない、もしくはそのような考えをなくそうと無意味な行為を何度も繰り返すことで日常生活に支障が出てしまう、こころの病気です。強迫性障害と摂食障害が併存している場合、「食べてはいけない」という強い強迫観念を持つことが多くあります。◇パーソナリティ障害パーソナリティ障害とはパーソナリティの著しい偏りにより社会生活を送る上で不適合や困難が生じる状態のことをいいます。奇妙で風変わりなタイプ、感情的で移り気なタイプ、不安で内向的なタイプの主に3つに分けられます。特に、境界性パーソナリティ障害では、不安からの逃避・他者の興味を引きたい思いから摂食障害の症状が現れることがあります。摂食障害がもとで生じる精神疾患の多くは、体重や栄養状態の回復により改善します。しかし症状が特に強い場合や摂食障害が快方に向かっても改善しない場合は個別に薬物療法が必要になることがあります。摂食障害を疑うサインは?出典 : 摂食障害には、急激な体型・体重の変化、食生活の変化、心理的・身体的な変化といったいくつかのサインがあります。発症に早く気づき適切な治療を施すと、回復が早くなると考えられています。次のようなサインを見逃さないようにしましょう。◇拒食症拒食症の場合は特に、体重が急激に減少します(嘔吐などの排出行為を伴わないと、目に見えて身体的な変化が見られない場合もあります)。本人が異常なほどに体重計に乗ったり、鏡で体型を気にしたりする場合は注意が必要です。拒食症の場合、体重÷(身長×身長)で求めるBMI(Body Mass Index)という指標から肥満度合い・重症度を判断します。BMIが17kg/㎡を下回るようになると、軽度の拒食症と診断され、15kg/㎡を下回ると最重度の拒食症となり、入院の可能性も出てきます。日本精神神経学会/監修 『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』 2014年 医学書院/刊◇過食症過食症の人は多くが体重は平均的な値を取っていることが多いです。そのため拒食症より体重や体型の変化が目で見てわかりにくい傾向があります。過食症の場合は食事量や食欲にわかりやすい変化が表れることが多いので、その点を先に見つけることで過食症による体重・体型の変化が見つかるかもしれません。◇拒食症拒食症の食生活の変化として、急激な食事量の減少や偏った食事内容があげられます。拒食症はダイエットが極端化して発症することが多いので、食事量を異常に減らしたり、食欲がなかったり、特定の飲食物しか食べなかったりする様子が見られることがあります。◇過食症過食症は拒食症とは反対に、明らかに多い食事量、食欲コントロールの不制御が食生活の変化として表れます。また、過食と不適切な代償行動(過度な運動、服薬、嘔吐など)が週に1回以上、3ヶ月間以上続いていると過食症の可能性があります。◇拒食症拒食症の場合、他に次のような身体症状が表れることがあります。・低血圧、低体温・無月経・便秘・皮膚の乾燥◇過食症一方過食症はこのような症状が見られます。主に嘔吐の繰り返しによる二次的な身体症状が多いです。・歯が弱くなる、歯の表面が溶ける・唾液腺の腫れ・不整脈・吐きダコ吐きダコとは摂食障害の身体的特徴の一つで、手の甲あたりの皮膚がただれている状態をいいます。これは口の中に手を入れて刺激し、前歯が手に当たることできます。周囲の人が摂食障害に気づく一つのサインとして考えてよいでしょう。摂食障害情報ポータルサイト‐摂食障害について心理的な変化としては、拒食症・過食症ともに以下のような症状があげられます。・ちょっとしたことでイライラする・精神的に不安定になる・体型の変化(特に太ること)に対して異常な恐怖・不安を感じる・体型や体重に過度なこだわりを持つなど摂食障害は心と密接な関係があるので、心理的にもかなり不安定になる人が多くいます。摂食障害かも?と思ったら、まずは内科、子どもの場合は小児科に相談することをおすすめします。摂食障害の治療を担当する診療科は他にも、精神科や心療内科、児童精神科などがあるので、必要に応じて紹介してもらうとよいでしょう。これらの診療科に受診すると、多くは患者自身と、患者が子どもの場合その親にも食行動や普段の生活、心身の諸症状を聞き取ります。会話をする中で目や歯、皮膚の状態を観察します。また体重測定も行いますが、摂食障害の傾向がある人は体重測定に関して敏感な人が多くいます。そのため数値が見えないようにしたり、強制的に行わないようにしたりと配慮しながら行います。摂食障害情報ポータルサイト‐摂食障害のサイン医療社団法人雅会前田クリニック摂食障害の治療って?出典 : 摂食障害は再発することが多く、慢性化してしまう方が少なくありません。身体的・精神的な症状は人によりさまざまなので、一人ひとりにあった治療が求められます。状況に応じて、入院か通院を決定しますが、体重の減少が極めて著しく重症な場合、緊急入院することもあります。本人の意思を尊重し、医師と相談しながら治療方針を決定しましょう。以下では、摂食障害に効果的な治療方法をご紹介します。特に体重の減少が著しい場合は、食生活の指導や栄養補給を行い、標準的な体重への回復を目指します。最低限必要な体重を定め、治療を行います。治療が進むにつれて体重が増加し、不安を感じる方が少なくありません。治療とともに、拒食・過食、不適切な代償行為を行わないよう、注意が必要です。体重の増加に加えて、心理的な治療も併せて行う必要があります。心理社会学的治療とは、食生活に対する理解を深め、摂食障害の原因となるものを取り除くことなどを目的とした治療です。体重が増加し始めると、この治療方法が開始されます。薬物療法とは身体症状・合併症を治し、不安や抑うつなどの情動面の改善を図ることをいいます。これはあくまでも対症療法であり、いまの段階で摂食障害を根本的に治療する薬はありません。体重に対する考えのゆがみや摂食障害のもととなる、こころの問題に向き合うことが最も重要になります。カウンセリングを通して自分は太っているという思い込みなどの認知の歪みを改善します。また適切な食習慣をおくることができるよう、指導を行います。健康体重の20~30%を下回るような体重が著しく減少している場合は、入院することもまれではありません。入院にはいくつかの判断基準がありますので、ご紹介します。・著明な、もしくは急激な体重減少が認められる・外来治療努力にも関わらず体重増加がない、あるいは、むちゃ食い/嘔吐/下剤乱用が持続している・重篤な身体合併症(低カリウム血症、心臓異常所見、糖尿病の合併)がある・重篤な精神疾患の合併を伴っている(うつ病、強迫性障害、境界性人格障害、自傷行為など)※・治療環境として問題のある家族環境あるいは心理社会的に不適切な環境である(摂食障害 | 厚生労働省)参考文献: 日野原 重明、宮岡 等 /監修 『脳とこころのプライマリケア4子どもの発達と行動』 2010年 シナジー/刊入院の場合、食生活の改善を図りながら栄養補給を行います。摂食障害の人をサポートするには?出典 : 摂食障害と付き合うには周囲の理解とサポートが欠かせません。摂食障害という病気を正しく理解し、あせらず長い目でゆっくり見守りましょう。摂食障害の治療をしていく、また支えていくためには以下のような考え方を意識することが大切です。・安心でき、十分に休養できる家庭環境をつくる・ありのままを受け入れ、自己肯定感を高める・否定するようなことはせず、話を聞き、共感していることを伝える・言葉や行動で愛情を表現し、サポートしていることを伝える・適切な距離を保ち、コミュニケーションをとる・完璧主義や白黒思考など、本人の考え方の癖を本人も周囲も把握できるようにする・日常生活の背景にあるストレスの解消法を幅広く探してみるなどファミリーサポートの会「摂食障害の理解と治療のために」厚生労働省‐みんなのメンタルヘルス「摂食障害患者さんへのアドバイス」摂食障害の人は「治したい・治さなければならない」自分と「治せない・治したくない」自分の間で葛藤したり、少し治療に失敗すると全てうまくいかないというような考え方に陥ったりすることが多くあります。また治療が進むにつれて、摂食障害の裏にあった、不安や憂うつ感、自尊心の低さ、ストレスなどが強く出てくることもあります。摂食障害と精神疾患を併発している場合、精神疾患への公的サポートを受けられることがあります。精神疾患の診断がある場合、このようなサポートを利用するのも一つの手段です。◇精神障害者保健福祉手帳精神障害者保健福祉手帳は、なんらかの精神疾患があり長期にわたり日常生活又は社会生活への制約がある場合に取得できます。摂食障害はICD-10の「生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群」に含まれるため、障害の程度によって取得が可能です。精神障害者保健福祉手帳を取得していると、税金の控除や福祉サービスを受けたり公共料金の減免といった支援を受けることができます。参考:自立支援医療|厚生労働省参考:精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準◇自立支援医療(精神通院)自立支援医療制度は、心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度です。摂食障害の治療のため通院による精神医療を継続的に必要とする場合、その通院医療にかかる自立支援医療費が支給されます。通常の医療保険では3割の自己負担ですが、この制度を利用することで1割に軽減されます。また世帯の所得に応じて1か月の1割負担額の上限も定められており、それ以上の負担がかからないようにもなっています。受給するには精神疾患があるという医師の診断を受け自立支援医療受給者証(精神通院)を申請・取得する必要があります。◇障害者総合支援法の支援精神障害のある人は障害者総合支援法による支援の対象となります。摂食障害も以下に該当する場合、精神障害があると認定され、必要な障害福祉サービスを受けることができます。・精神障害者保健福祉手帳を持っている・精神障害を事由とする年金を受けている・自立支援医療受給者証(精神通院)を持っている・18 歳未満の場合で、保護者が特別児童扶養手当等を受給しているそれぞれの支援の利用方法や対象になるかどうか、またどのような支援が受けられるか、詳しくはお住まいの市区町村の福祉担当窓口でご確認ください。障害福祉サービスの内容|厚生労働省摂食障害に関連したホームページや当事者の集まりである自助グループを、いくつかご紹介します。同じ悩みを持った人との交流は憩いの場となることもあるので、活用してみてはいかがでしょうか。@メンタルヘルス「摂食障害(拒食症・過食症)診断チェック」摂食障害治療おすすめクリニック・病院 「摂食障害のセルフチェック」つばめの会(摂食・嚥下に問題のある小児の親の会)医療法人菅野愛生会摂食障害の相談室NABA(ナバ)日本アノレキシア(拒食症)・ブリミア(過食症)協会未来蝶.net「摂食障害回復助け合いサイト」摂食障害自助グループ情報Eating Disorders Group Information「「摂食障害自助グループ情報」のページへようこそ!」オーバーイーターズ・アノニマスJAPANファミリーサポートの会「摂食障害の摂食障害の理解と治療のために」まとめ出典 : 摂食障害は不安やストレスなどに基づいて現れる食行動の障害です。他のこころの病気とも関連があることが多いことから、治療には長い時間が必要なこともあります。摂食障害は、ただ食生活の不全から健康を損なうだけではなく、心もどんどん疲れていってしまいます。重症化すると自傷行為や自殺につながることもあります。単なるダイエットと楽観視せず、周囲の人は変わったことがあれば気にかけ、精神科などの専門機関に相談しましょう。参考文献参考文献: 日本精神神経学会/監修 『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』 2014年 医学書院/刊参考文献: 中根允文、山内俊雄/監修 『ICD-10精神科診断ガイドブック 』 2013年 中山書店/刊参考文献: 切池 信夫/著 『拒食症と過食症の治し方 (健康ライブラリーイラスト版)』 2016年 講談社/刊参考文献: 日野原 重明、宮岡 等 /監修 『脳とこころのプライマリケア4子どもの発達と行動』 2010年 シナジー/刊
2017年09月29日児童相談所は悩める親子のための相談機関出典 : 児童相談所は、子どもに関するあらゆる問題の解決のために、児童福祉法に基づいて設置された専門的な相談機関です。18歳未満の子どもに関することであれば、本人・家族・学校の先生・地域の住民等、どんな立場からでも相談することができます。児童相談所のスタッフは児童福祉司(ソーシャルワーカー)、児童心理司、医師などの専門家から構成され、すべての都道府県と政令指定都市に設置されています。児童相談所の仕事は、子どもに関するあらゆる問題の相談窓口として相談に応じ、周辺の機関との連携によって必要な援助を行っていくことです。具体的には、親の事情や子どもの問題行動等による子育ての悩み、障害児福祉、虐待の対応などの問題に対して、助言や治療の補助、さまざまな手当ての案内などの支援を行います。いきなり学校や病院に相談することは気が引けるけれど、自分だけでは解決が難しいという時、誰かに相談に乗ってほしい時には、相談先の一つとして児童相談所を検討してみてはいかがでしょうか?次の章からは、児童相談所が取り扱う相談内容と支援方法を具体的に説明していきます。子どもの性格・行動、健康、進路など...子育てに関するお悩みへの児童相談所の支援出典 : 子育てをしていると、たくさんの悩みが出てきますよね。児童相談所では、子どもの性格や行動、健康管理、進路など幅広い困りごとに対応した支援が用意されています。・保健相談未熟児、虚弱児、内部機能障害、小児喘息、その他の疾患(精神疾患を含む)等がある子どもに関する相談・育成相談悪癖(チック、夜尿)や生活習慣、困った行動(家庭内暴力など)、不登校、性格上の問題(内気、友達と遊ばない、わがまま)への対処の相談・育事、しつけの相談遊び、性教育などに関する相談継続的な支援によって状況の回復が見込める場合は、在宅のまま支援が行われます。訪問型の相談や助言や施設の紹介、施設利用の際のアセスメントを行ったりします。他にも、子育ての情報に関するセミナーをしているところもあるので、ぜひチェックしてみてください。その他にも、メンタルフレンドというサービスがあります。メンタルフレンドとは、心に傷を負った子どもを、遊びや学習の手伝いをしながらケアをする青年ボランティアのことです。児童相談所の運営指針について:図表|厚生労働省HPメンタルフレンドとは?|東京都福祉保健局カウンセリングや手当、施設の紹介など、障害のある子どもに対する児童相談所の支援出典 : 子どもに知的発達の遅れ、肢体不自由、ことばの遅れ、虚弱、自閉傾向があるのではないかなどと気になったときには、児童相談所に相談してみましょう。児童相談所に相談すると、所属の児童福祉司や医療機関等が協議し、障害の疑いがあるかどうか、重軽度などを調べます。支援が必要とされる障害が認められた場合は、児童相談所から様々な支援を受けられるようになります。・1歳6ヶ月、3歳の健康診査において知的発達面に詳しい検査が必要だと診断された場合は、児童相談所が助言と指導を担当します。・医師、児童福祉司などによる訪問相談、発育相談会、親子へのカウンセリングが行われます。・「子どもの困った行動にどう対応すればいいのか分からない」「周りからの理解が得られず子育てがつらい」などの相談について専門家が具体的な提案をしたり、心理的なケアを施します。知的障害などの都合を配慮した金銭的な手当のことを特別児童扶養手当と呼びます。この手当を受けられるかの判定は役所の児童福祉課か児童相談所です。認定請求を行う本人または都道府県等児童福祉主管課のいずれかから診断書の作成を求められた児童が対象となります。療育手帳とは、知的障害のある方に付与される障害者手帳です。知的障害のある方が一貫した療育・援護を受けられるよう、様々な制度やサービスの利用をしやすくすることを目的にしています。児童相談所では、療育手帳の申請受付、調査、交付を担当しています。ただし、療育手帳は自治体によって名称が変わることがあるので窓口で確認してみましょう。子どもに必要な支援に合わせて、近隣の施設を紹介します。ここで紹介される施設は、就学中の子どもの学習をサポートする放課後デイサービスや、必要な日常生活の支援や技術の指導をする社会福祉施設等があります。また、どうしても保護者が育てることが困難だと判断した場合には障害児福祉施設が引き取り、18歳までは生活の援助をしていく場合もあります。虐待問題に対する児童相談所の支援出典 : 虐待の疑いのある家庭が近くにある、自分が虐待の被害者である、虐待してしまっているのではないかと悩んでいる、など虐待に関する相談に対応します。児童相談所が持っている役割をいくつか羅列していきます。虐待の疑いがある場合や、SOSを出したい場合には児童相談所に通告をしましょう。全国の児童相談所共通ダイヤルである「189」(イチハヤク)に電話をかけると近隣の児童相談所に繋がります。通話料は通告者の負担となりますが、相談は無料です。通告を受けた後は、児童相談所の専門的なスタッフが、行政や民生委員、学校などの関係機関を巻き込んで家庭の様子を調べます。虐待の有無や重軽度を調べて必要な措置を検討した後、関係機関を巻き込んでの支援を開始します。調査の結果に応じて、在宅支援と社会的養護の2種類の支援が施されます。在宅支援の場合、民生委員による定期的な訪問相談、ペアレントトレーニング、カウンセリングなどの保護者向けサポートや、学校・保育施設での子どもへのヒアリングなどを通して、虐待の再発を防ぐと同時に、家族関係を改善することを目指します。社会的な養護とは、子どもを分離する必要性が認められた場合に児童養護施設や里親に預けることです。一時保護の第一の目的は、子どもの安全を守るためです。他にも保護者も子どもと一時的に離れることで落ち着いたり、援助を受けるきっかけになったり、子どもにも安全な環境にいることでより正確な情報を聞き取ることが期待されます。このような理由から、必要がある場合は児童相談所が子どもを保護することが認められています。親子の関係修復が望める時は、再び家族が統合されることもあります。虐待は子どもの生命に関わる問題であるため、調査から行動措置において児童相談所は強い権限を持っています。子どもを育てることが難しい家庭のための養護相談出典 : 虐待と同様、様々な事柄によって子どもを育てることが難しい家庭があります。養育困難とみなされる場合には、以下のような事例が挙げられます。・父または母等保護者の家出、失踪、死亡、離婚、入院をした子ども・稼働及び服役等による養育困難な子ども・棄児、迷子、虐待を受けた子ども、親権を喪失した親の子、 後見人を持たぬ児童等環境的問題がある子どもこのように、やむなく家庭での育成が難しくなった子どもを一時保護所や児童養護施設で保護したり、または里親に預けたりします。一時保護、里親制度って?子どもが健やかに育つための制度とは出典 : 虐待をはじめ家庭内で問題が生じ、かつ子どもと保護者の分離が必要だと判断された場合には、社会的養護という措置が取られます。一時保護とは、児童相談所が必要を認めた時に子どもを一時保護所に一時保護するか、警察署、福祉事務所、児童福祉施設、里親などに保護を求めることを言います。一時保護の必要がある場合について、厚生労働省は次のように定義をしています。(1) 緊急保護ア棄児、迷子、家出した子ども等現に適当な保護者又は宿所がないために緊急にその子どもを保護する必要がある場合イ虐待、放任等の理由によりその子どもを家庭から一時引き離す必要がある場合(虐待を受けた子どもについて法第27条第1項第3号の措置(法第28条の規定によるものを除く)が採られた場合において、当該虐待を行った保護者が子どもの引渡し又は子どもとの面会若しくは通信を求め、かつこれを認めた場合には再び虐待が行われ、又は虐待を受けた子どもの保護に支障をきたすと認める場合を含む。)ウ子どもの行動が自己又は他人の生命、身体、財産に危害を及ぼし若しくはそのおそれがある場合(2) 行動観察適切かつ具体的な援助指針を定めるために、一時保護による十分な行動観察、生活指導等を行う必要がある場合(3) 短期入所指導短期間の心理療法、カウンセリング、生活指導等が有効であると判断される場合であって、地理的に遠隔又は子どもの性格、環境等の条件により、他の方法による援助が困難又は不適当であると判断される場合つまり、子どもを身の危険から守る場合と問題行動について詳しい調査が必要な場合、集中的なケアが必要な場合に一時保護が行われるということです。一時保護された子どもは、保護施設の中で勉強、遊び、スポーツなどをしたり、年齢や成長に応じた生活習慣が身につくような生活指導を受けたりしながら過ごします。他にも、様々な事情により家庭で生活することができない子どものための里親制度があります。子どもが家庭的な環境の下で成長できるように、官民連携で制度を進めています。児童相談所に助けを求めるときは?出典 : 児童相談所は全ての都道府県と政令指定都市にあります。地域によっては「児童相談所」の名称ではない場合もあります。なにか児童相談所に相談したいことがあるときは、最寄りの相談所に電話をするか訪問してみましょう。訪問するときは、事前に電話で予約をすることもできます。下の一覧表から最寄りの児童相談所を探すことができます。全国児童相談所一覧|厚生労働省また、児童相談所には虐待かもと思った時などにかけられる全国共通ダイヤル「189(いちはやく)」があります。この番号に電話をかけて音声案内に従うと、最寄りの児童相談所につながります。出典 : 児童相談所はなぜ強い権限を持っているのか出典 : 児童相談所は仕事の性質上、強い権限を持っています。その仕事内容から、措置についてあまり明らかにされないこともあります。それはなぜなのでしょうか。児童相談所の特性から考えてみましょう。・子どものプライバシーを扱う仕事児童相談所は子どもとその家族をめぐる問題を扱うため、プライバシーの扱いは最も重要な事項の一つと言えるでしょう。そのため、具体的な仕事内容をあまりオープンにしていないと同時に、虐待で一時保護をされた場合には、たとえ保護者であっても子どもの状況を教えることはできません。・子どもの命や健やかな育ちをを守る役割を担う児童相談所は子どもの命に関わる問題を扱っており、一時保護をする最終的な決定権限を与えられています。そのため、子どもの命が危ないと判断された場合には、保護者の了解が無くても子どもを連れていくことも許されています。「児童相談所一時保護所の現状と課題」|和田一郎児童相談所の措置に納得できない...そんな時はどこに頼る?出典 : 前の章の通り、児童相談所は子どもを守るための強い権限を持っています。一方で昨今は子どもに関する問題の増加に伴い、児童相談所の慢性的な人員不足や、せっかく児童相談所に情報があっても警察や学校など他の機関との連携システムが整っていないことなど、さまざまな課題が問題点として挙げられることもあります。これらの問題のために、すべての人にとって納得できる判断や対応ができているとは言い切れない面があるかもしれません。もし、児童相談所での相談ができなかったり、児童相談所の決定や支援内容に不服があったりする場合、どうすればよいのでしょうか?・対応が間に合わないとき「相談をしたいのに対応が遅い...」児童相談所に相談が立て込んでいたりすると、相談をしてもなかなか対応してもらえないことがあります。そのようなときは市区町村の子育て支援課や地域の子育て支援センターでも、同様の支援を受けられます。・障害児療育の対応ができる職員がいないとき障害児の療育など、専門性が求められる相談には、対応できる職員がいない場合もあります。そのような場合には、各市区町村の障害福祉課、地域の障害児等療育支援事業所、相談支援事業所にて、施設の紹介や療育を受けられます。・事実が無いのに疑いをもたれてしまったとき子どもの特性や保護者の特徴によっては、虐待の事実が無くても疑いがあるという理由で一時保護措置がなされる場合がないわけではありません。不服申し立てという制度があり、児童相談所による一時保護の正当性について第三者に審査をしてもらうことができます。審査にあたっては、第三者機関が一時保護を決定するにあたって使用された資料や子どもの言動の記録、保護者に関する情報などを使います。ここに挙げている支援のほかに、自治体ごとに提供される支援の種類もあるでしょう。自分が持つ悩みごとにはどのような支援が受けられるか、児童相談所のほかにどこで相談できるのかなどを確認しておくと、もしもの時にもあわてずにすむのではないでしょうか。このように、児童相談所の判断に納得できない場合にも他の相談所や不服申し立て措置をとるなどの手段が考えられるでしょう。まとめ出典 : このコラムでは、児童相談所の役割や、具体的な支援の内容、困った時の相談・利用方法について紹介しました。児童相談所という名前は一度は聞いたことがあるものの、何をしているのかは今イチわかりにくい、と感じる人もいるかもしれません。児童相談所の役割としては、子どもの権利を守り、健やかな育成のため、専門性をもって相談や支援にあたるということが第一に挙げられます。具体的な業務内容としては、子どもの健康管理や障害児福祉、虐待の対応など多岐に渡っており、子育てに関するあらゆる相談口の窓口としての役割を担っています。一人では解決が難しいことでも、専門機関の力を借りれば解決の糸口が見つかるかもしれません。困った時は、ぜひ一度、些細なことでもいいので相談してみてはいかがでしょうか。
2017年09月26日厚労省が「精神・発達障害者しごとサポーター」の養成を決定出典 : 精神障害や発達障害のある人が働きやすい職場作りを促すべく、厚生労働省は今秋から「精神・発達障害者しごとサポーター」の養成講座の開催を決定しました。企業の経営者や管理職、人事部といった人材に限らず、広く一般従業員を対象にした講座です。実際に職場の同僚となる人たちに、精神・発達障害に関する知識や必要な配慮について学んでもらうことで、より身近で具体的な支援体制を作ることを目的としています。「今年度内に2万人の受講およびサポーターの養成を目指す」(厚生労働省)とのことです。毎年、厚生労働省が発表している「障害者雇用状況の集計結果」によると、精神・発達障害者の雇用は2006年から年々増加しています。そのような中、厚生労働省は精神障害者の雇用義務化に伴ない、今年5月に民間企業に義務付けている障害者の法定雇用率の段階的な引き上げを決めました。今まで以上に精神・発達障害者の雇用機会が増え、その人数も増えることが予想されています。一方で、厚生労働省が行った2013年の障害者雇用実態調査によれば、精神障害者の平均勤務年数は約4年。身体障害者のそれが約10年であることと比べても、職場の定着率は高いとは言えません。主な理由は「職場の人間関係」にあると考えられています。例えば、同調査では、精神障害があり、転職を経験した人のうち、半数以上は転職の理由を「個人的理由」だと回答しています。さらに具体的な理由を複数回答で選択してもらうと、「職場の雰囲気や人間関係」と答えた人が33.8%と最も多い結果となりました。こうした状況を受け、「職場の同僚がその人の障害特性について理解し、共に働く上での配慮をしていくことが重要であろうと考え、人事担当者や障害者雇用担当者を中心に行っていた従来のセミナーに加えて、一般の従業員の方を主な対象に、精神障害、発達障害に関して正しく理解いただき、職場における応援者=精神・発達障害者しごとサポーターになっていただこうと考えました」(厚生労働省障害者雇用対策課)とのことです。厚生労働省は約4,300万円の予算を拠出し、今秋から随時、講座を開催していく予定です。誰が講座を受けられるのかこの講座は、企業の雇用者であれば、誰でも受講可能です。受講時間は2時間程度で、特に企業は受講や受講人数を義務付けられてはいません。有志による受講となっています。修了者には「精神・発達障害者しごとサポーター」として、パソコンにはることができるステッカー(写真)や首からかけるストラップなどの「精神・発達障害者しごとサポーターグッズ」の進呈が予定されています。Upload By 発達ナビニュース精神・発達障害者しごとサポーター養成講座では、具体的に「精神疾患(発達障害を含む)の種類」、「精神・発達障害の特性」、「共に働く上でのポイント(コミュニケーション方法)」を学びます。これらの内容について75分程度の講義で学んだ後、15分から45分程度の質疑応答を行う構成となっています。養成講座の講師は普段から、精神・発達障害のある方の就労支援をしているハローワークの職員が担当します。精神・発達障害者サポーターの役割は?出典 : ここで、改めて理解しておかねばならないのは、「精神・発達障害者しごとサポーター」は特別に何かの義務や責任を負う資格ではないということです。サポーターになったら、「○○をしなければならない」といったことは決まっていません。また、しごとサポーターは障害のある特定の同僚を一人で支援しなければならないといったものでもありません。確かに、精神・発達障害者しごとサポーターがいることで、職場で精神障害のある人や発達障害のある人が働く上で、周囲から正しい理解や配慮が受けられるようになり、より働きやすい職場に変わっていくことが期待されます。しかし、障害の有無にかかわらず、共に働くことができるような職場の実現のためには、精神・発達障害者しごとサポーターに特別な役割を求めるのではなく、講座を受けていない方も一緒に職場の雰囲気作りにかかわっていくことが大切です。精神・発達障害者サポーターに関する問い合わせ先企業に勤めている方であれば、勤務先や身近身近に精神・発達障害者で働いている方がいなくても、誰でも講座に参加できます。「ぜひ参加したい」と思われた方はお住まいの地域の都道府県労働局にお問い合わせください。講座は、厚生省があらかじめ指定した会場で行われるものだけでなく、講師が事業所を訪れて行う「出前講座」も用意されています。出前講座に関しても、問い合わせ先は地域の都道府県労働局となっています。養成講座では、精神・発達障害について学ぶだけでなく、精神・発達障害者を雇用する上での実際の困りごとについて質問したり、ハローワークの精神保健福祉士や臨床心理士などの専門家に相談するきっかけを作ったりできます。以下のサイトで、養成講座に関する各地域の問い合わせ先を確認できます。より詳しい情報や、なにかわからないことがあれば、気軽に問い合わせてみましょう。障害者雇用対策施策紹介事業主の方へ|厚生労働省しごとサポーター養成講座リーフレット
2017年09月25日強度行動障害とは?出典 : 強度行動障害とは、人を傷つけたり物を壊したりするなど、周囲の人の暮らしに影響を及ぼす行動が高い頻度で起きるため、特別な支援を必要としている状態のことです。家庭で通常の子育てをしていても、かなり努力をしてもなかなか困難な状況が持続してしまいます。厳密には医学用語ではなく、行政・福祉において使われている用語です。1989年の行動障害児者研究会による報告書において、初めて「強度行動障害」という言葉が登場しました。この報告書では、以下のように定義されています。精神的な診断として定義される群とは異なり、直接的他害(噛みつき、頭突き等)や、間接的他害(睡眠の乱れ、同一性の保持等)、自傷行為等が通常考えられない頻度と形式で出現し、その養育環境では著しく処遇の困難なものであり、行動的に定義される群。家庭にあって通常の育て方をし、かなりの養育努力があっても著しい処遇困難が持続している状態。出典:特定非営利活動法人全国地域生活支援ネットワーク/監修『行動障害のある人の「暮らし」を支える: 強度行動障害支援者養成研修[基礎研修・実践研修]テキスト』中央法規出版2015年強度行動障害がある人は日本全国に約8,000人いると言われています。この中には知的障害のある人や自閉症スペクトラムのある人も多く、障害の特性と環境のミスマッチが行動の問題を引き起こしてしまうことがあるとされています。強度行動障害が起こる年齢は人それぞれですが、中でも中学生・高校生の時にこだわりや落ち着きのなさが目立つようになり、顕在化する場合が多いです。環境の変化によっては成人している方でも激しい行動が見られることもあります。障害がある人たちの中で激しい行動を起こしてしまう人に対し、専門的な支援を受けられるようにするために強度行動障害という言葉が使われています。障害特性に合った治療はもちろん、さまざまな福祉サービスと医療を組み合わせて、一人ひとりにあった支援を見つけていくことが大切だといえるでしょう。出典:強度行動障害リーフレット|厚生労働省強度行動障害の特徴出典 : 強度行動障害は自分や人を傷つけるなど激しい行動が特徴です。具体的には以下のような行動が挙げられます。・ひどい自傷爪を切る必要がなくなるほどの爪噛み、自分で顔を引っ掻く、膝や肘を壁に打ち付ける、変形してしまうほど頭部を叩くなどの行動をとります。・強い他傷周りの人に対し、噛みつく、殴る、叩く、髪を引っ張る、頭突きをするなど、相手が怪我をしかねないような行動をとります。・激しいこだわり気になるものがあると動くことができない、強く指示を出しても拒みとおすなど、周りが止めてもその行動をやめません。・激しい物壊しガラス、家具、ドア、茶碗、椅子、眼鏡などを壊し、その結果自分にも周りにも大きな危害を及ぼします。また服を破ってしまうなどの行動も含まれます。・睡眠の大きな乱れ昼夜が逆転していたり、寝床についていられず、人や物に危害を加えたりします。・食事関係の強い障害特定のものしか食べず体に異常をきたしている、食べられないものを口に入れる、椅子に座っていられず周りと一緒に食事できないなどが挙げられます。・著しい多動目を離すとじっとしていられず走り回ったり、ベランダの上など高く危険なところに上ったりします。・著しい騒がしさ大声を出したり、一度泣き始めると何時間も続いたりします。強度行動障害の原因出典 : 強度行動障害は、コミュニケーションの苦手さや感覚の過敏性といった障害特性に環境がうまく合ってないことにより、人や場に対する嫌悪感や不信感を高めてしまうことが原因です。特に重度の知的障害や自閉症スペクトラムがある人に発生すること多いと言われていますが、必ずしも障害の重さに関係があるわけではなく、特性と環境によっては、知的障害・発達障害の度合いが軽度の場合でも強度行動障害が見られることがあります。知的障害や自閉症スペクトラムがある人は、刺激や情報が分かりにくい独特な形で入ってきたり、伝えたいことを言葉ではない独特の表現や行動を通して伝えようとしたりする傾向があります。例えば、普段から身振りなど限られた手段でコミュニケーションをとっている、使える単語の幅が限られているなどが挙げられます。「分からない」ことに対する不安や不快感があってもそれがうまく「伝えられない」ことから、環境に対する嫌悪感や不信感が高まり、強度行動障害が起きると考えられています。強度行動障害は障害がある本人の困っているサインだと捉えて、本人の特性や周囲の環境などをきちんと把握し、行動の原因を探っていくことが大切です。参考:強度行動障害リーフレット|厚生労働省強度行動障害の判定基準出典 : 先述の通り、強度行動障害は医学的な診断名ではありません。そのため医師による診断基準ではなく、行政・福祉的な支援を行う上での判定基準があり、主に支援者の間で使われています。強度行動障害の種類や程度、頻度を評価することで、一人ひとりに合った支援につなげることが目的です。実際に支援対象者の基準として、以下に紹介するような判定基準項目が使われています。例えば行動援護は障害程度区分が3以上、行動関連項目の点数が8点以上の場合、支援を受ける対象となります。この章では強度行動障害の判定基準のうち、厚生労働省が定めている代表的なものをご紹介します。いずれも項目ごとに、得点を算出する仕組みになっています。1. 強度行動障害判定規準項目強度行動障害を「ひどく自分の体を叩いたり傷つけたりする等の行為」「激しいこだわり」といった項目において、行動の頻度と強度から評価するものです。11項目において、得点(1点・3点・5点)を付け、合計得点 が10点以上を強度行動障害と定義しています。現在は制度改正を受けながら、福祉型障害児入所施設において、強度行動障害児特別支援加算にかかる判定基準として使われています。参考:強度行動障害の評価基準等に関する調査について|厚生労働省2. 行動関連項目2014年度に開始された障害支援区分の認定調査項目のうちの「行動関連項目」は、行動援護、重度訪問介護、重度障害者等包括支援などの支給決定の基準点を算出するものです。突発的な行動、コミュニケーションなどの12項目において0~2点で評価し、10点以上が対象とされます。参考:行動援護、重度訪問介護、重度障害者包括支援などの支給決定などの基準点を算出するもの|熊本県障がい保健福祉ホームページ強度行動障害の支援について相談したい時は?出典 : 強度行動障害の支援について知りたい時は相談支援事業所などで相談できます。強度行動障害のある人の場合、自分自身で相談に行くことが困難な状態にあるため、通常、本人の家族・保護者が相談に行きます。相談支援事業所では、まず日常生活における本人や家族の困りごとについて、相談支援専門員によるヒアリングが行われます。そのうえで、困りごとを解決するためにどんな支援があると良いのかを一緒に考えます。場合によっては相談支援専門員とサービス事業所に見学に行くこともあるようです。また実際に支援を受けることになった場合、サービス等利用計画が必要になります。これはチームで1人を支援をする際、周りの人がそれぞれどのような役割を果たして支援をしていくのか、本人やご家族がどんな生活を記入したものです。この計画書を作るのも相談支援事業所なので、手続きや支援を受ける流れについて不安がある場合も、ここで聞くとよいでしょう。参考:相談支援事業所(計画相談支援)とは|就労移行支援事業所LITALICOワークス参考:障害のある人に対する相談支援について|厚生労働省強度行動障害に関係する支援サービス出典 : 障害者総合支援法の数ある支援のうち、強度行動障害がある方がよく利用する支援サービスについてご紹介します。・行動援護行動する際に生じ得る危険を回避するために必要な援護です。移動中の介護、衣服の着脱介護、排泄や食事などの介護を行います。・重度障害者等包括支援重度の障害者等に対し、居宅介護、同行援護、重度訪問介護、行動援護、生活介護、短期入所、共同生活介護、自立訓練、就労移行支援及び就労継続支援を包括的に提供します。・重度訪問介護居宅における生活全般を援助します。また移動時の支援や日常生活に関する相談および助言も行います。・施設入所支援主として夜間において、入浴、排泄及び食事等の介護、生活等に関する相談及び助言、その他の必要な日常生活上の支援を行います。・短期入所短期間の入所を必要とする障害者等につき、当該施設に短期間の入所をさせ、入浴、排泄及び食事その他の必要な保護を行います。・共同生活援助(グループホーム)地域で共同生活を営むのに支障のない障害者につき、主として夜間において、共同生活を営むべき住居において相談その他の日常生活上の援助を行います。どの支援を利用するか、どのように支援を組み合わせるかは人それぞれです。まずは相談支援専門員に相談しましょう。障害者総合支援法におけるその他の支援について知りたい方は、以下のページを参考にしてみてください。参考:障害福祉サービスの内容|厚生労働省強度行動障害のある人が支援を受けるまでの流れ出典 : この章では、相談支援事業所での相談後から支援を受ける流れについてご説明します。家族・保護者などが相談支援相談所での相談を行った後、強度行動障害のある本人に対して支援を行うことになった場合は、まずサービス等利用計画案を相談支援専門員と一緒に作成します。それを市町村に提出し、障害支援区分が認定されたうえで、サービスの種類・量が決定され、受給者証が発行されます。その後、サービス等利用計画が作成され、関係する事業所などが集まって会議が行われます。これは支援に関わる人どうしで役割を確認したり、情報を共有するためです。さらに市町村にもサービス等利用計画が提出されたうえで、サービスの利用が可能となります。いざサービスを開始する際には、サービスの利用が決定した事業所がサービス等利用計画をもとに個別支援計画を作成します。これは支援の内容、期間、目標など、支援に関する具体的なことが書かれている計画書です。さらに個別支援計画に加えて、支援手順書が作成される場合があります。これは本人に関わる支援者が共通の支援方法をとるための手順書です。強度行動障害がある人は支援者の接し方が少しでも違うと混乱するといったように、周りの人に影響を受けやすいため、支援方法を統一する必要があるからです。このように本人に関わるさまざまな人たちの間で情報共有がされ、一人ひとりに合った支援ができるような仕組みづくりがされています。強度行動障害の治療法出典 : 福祉サービスによって強度行動障害がある人の生活全般を支援し、そのうえで検査、薬物療法、入院治療などの医療を組み合わせることがあります。まずは本人の生活環境や過ごし方、周りの人たちの関わり方を工夫することが大切であり、そのうえで環境調整だけでは改善が見られない場合は、医療機関による治療が検討されます。以下が医療機関でできる治療法です。強度行動障害の治療は、一般的に精神科で3ヶ月以内の短期入院が行われるケースが多いです。入院治療において具体的にできることをご紹介します。・検査による身体状態の評価強度行動障害がある人は、じっとしていられないことが多く、外来では検査が受けづらい場合があります。入院をすれば普段できない検査ができ、さらに医師の診察を受けて、身体の状況を把握できます。・行動や情緒に対する状態評価施設や在宅での普段の様子を聞いても、かかりつけの病院が本人の様子を十分把握できない場合があります。強度行動障害は周りの環境が大きく関わる障害であり、診察室にいるときは日常生活と様子が異なることがあるからです。入院治療を行うことで、24時間の中で本人がどの程度激しい行動を起こすのか、情緒はどう変化するのか、病院側が把握できます。・環境変化によるこだわり行動などのリセット強度行動障害の特徴の一つであるこだわり行動を治すために、入院治療を行う場合があります。効果は人それぞれですが、外部や家庭の刺激をいったん減らすことで特別な治療を行わなくても改善する人もいます。入院期間が終わったらまた在宅や施設での生活に戻るため、他の支援機関などと連携を取りながら利用しましょう。・家族や施設スタッフのレスパイトレスパイトとは家族や支援者が一時的に休養をとるため、ケアを代替してもらうことを言います。また身の安全に関わる状態など周囲の人たちの負担が大きい時にも、緊急的に入院治療を行う場合もあります。退院の時期や退院後の在宅支援・施設での生活の調整を入院時から見据えて利用することが大切です。・行動療法環境による刺激のコントロールは入院環境の方が行いやすく、そのうえで退院後の生活を想定して、行動障害が出にくい活動やTEACCHなどのプログラムを導入します。強度行動障害の特徴である興奮やパニックなどの激しさを抑えたり、やわらげたりする目的で、薬物療法が行われることがあります。しかし薬物療法は本来の障害特性に有効なものではなく、あくまで強度行動障害の特徴である行動を少し抑えるためのものです。そのため、他の治療法と組み合わせて行います。ライフステージごとの強度行動障害に関係する支援出典 : 記事の前半でもご説明したように強度行動障害は中学生・高校生に多いですが、環境の変化によっては成人している方でも激しい行動が見られることもあります。強度行動障害が現れやすい年齢になる前にできる限り本人にとって適切な環境を整えること、また発生しやすい時期を見越して支援を組み立てていくことが大切です。この章ではライフステージごとの支援についてご紹介します。・幼児期児童発達支援における支援、幼稚園・保育所の支援、地域の療育事業を利用する方が多いです。障害受容への支援やそれに伴う情報提供・相談支援・親グループのカウンセリング等のペアレントトレーニングが行われます。またこの時期にはきょうだいが生まれるなど、本人よりも他の家族の要因により、支援が必要になる場合もあります。一時的に支援の補助をしてもらうために、「居宅介護事業」「移動支援事業」「短期入所事業」などを使うとよいでしょう。・学齢期強度行動障害のある人は特別支援学校に通うことが多いです。学校外の支援としては、「放課後デイサービス」「行動援護事業」「短期入所事業」が挙げられます。行動援護事業の判定が出ない場合には「居宅介護事業」または「移動支援事業」を使います。「行動援護事業」と「移動支援事業」の違いについては、以下の記事を参考にしてみてください。・成人期成人期の支援は、日中活動では訓練等給付として「就労継続支援事業B型」、介護給付の「生活介護事業」が、生活支援として「行動援護事業」「短期入所事業」が中心となります。地域生活を希望すれば施設入所支援でなく「共同生活介護(グループホーム)」を利用することもできます。まとめ出典 : 強度行動障害は知的障害や自閉症スペクトラムのある人たちに発生することが多く、障害の特性に対し環境が合わない時に起こります。「分からない」ことに対する不安や不快感があっても、「伝えられない」ため、人や場に対する嫌悪感や不信感を高めてしまうことが原因です。強度行動障害は、本人が困っているサインです。そのため、周りの人たちが特性や周囲の環境などをきちんと把握し、行動の原因を探っていくことが大切です。環境が変わるだけで、改善されるケースもあるからです。また、家庭での対処が難しい場合もありますので、家族で抱えこまず、それぞれに合った支援を見つけることも必要です。施設や病院など関わっているさまざまな人たちとこまめに連携をとり、本人と一緒になって強度行動障害と向き合っていきましょう。参考:強度行動障害リーフレット|厚生労働省参考:特定非営利活動法人全国地域生活支援ネットワーク/監修『行動障害のある人の「暮らし」を支える: 強度行動障害支援者養成研修[基礎研修・実践研修]テキスト』中央法規出版2015年
2017年09月25日テストに合格したのに自分を否定する娘出典 : アスペルガー症候群の診断が下りている9歳の娘は、「0か100か」「善か悪か」「失敗か成功か」など物事を極端に捉えてしまう両極思考の特性が強く出ています。自分自身を評価する際に「0」「悪」「失敗」といった悪い方へ偏ってしまうため、すぐに自分を否定してしまうのです。先日、水泳教室で行われた進級テストで、娘は2ヶ月でバタフライを習得。見事、次の級に上がることになりました。バタフライをマスターするには半年ぐらいかかるかな?と思っていた私は、大喜びで教室から出てきた娘を迎えたのですが、本人はどうも浮かない顔をしてています。「おめでとう!がんばった甲斐があったね。すごくキレイに腕も上がっていて、いい泳ぎだったよ」と声をかけても、作り笑顔が返ってきました。そして、不機嫌なまま夜を迎え、ベッドでお喋りをするリラックスタイムになると、娘はついに泣き出してしまいました。娘の感じていたこととは…出典 : 「どうしたの?せっかく合格したのにあまり嬉しそうじゃないから気になってたんだけど、なにかあった?」「別になにもないんだけど、1ヶ月でバタフライに合格した子がいたの」「そうなの?すごいね!でも、あなたもたった2ヶ月でマスターしちゃって、ママはびっくりしたよ」「でも、あの子は1ヶ月でマスターできたのに、私は2か月もかかって!おまけにあの子のほうが泳ぎも上手で、私なんて全然ダメ!」「えっと、あの子がどうかじゃなくて、ママはあなたが合格したことを一緒に喜びたいんだけどな。それに、あの子は週に2回通ってるから、1ヶ月だと8回練習したってことでしょ?あなたは週に1回だから、2ヶ月で同じ8回の練習じゃない?卑屈になることないと思うけど」「同じ8回の練習かも知れないけど、私なんかの泳ぎよりよっぽど上手だったのっ!」とにかく何を言っても「あの子はすごい、私はダメ」のオンパレードで泣くこと数十分。なるべく娘が納得行くように寄り添おうとは思っていましたが、私の方に限界がきました。「あのね、いい加減にしないとママ怒るよ?いつも言ってるけど、他人と自分を比較して何かいいことある?今日はせっかくあなたの努力が実ってステキな日だったのに、今どんな気分?嬉しい?楽しい?ママは哀しくなってきたよ」「私もちっとも嬉しくない...」「ついつい人と比べてしまう気持ちもわかるけど、その人と自分とはまったく違う人間で、環境もそれにかける意気込みも努力の仕方も全然ちがうの。結果だけを見て人を羨んだり自分を貶めても何の意味もないのよ?」「お友達のことをすごいなと思ったのなら、素直に『あの子はすごいな』って思えばいいよ。自分に足りない部分が見つかったのなら、『ここが足りてないな』って思えばいい。そこで足りない部分をどう工夫していくかを考えれば前に進めるけど、卑屈になるだけだと何にも成長しないよ?」「さあ、お説教はこれでおしまい!後は思う存分あなたを褒めるから、あなたもちゃんと自分を認めてあげてね」こうして長い夜はようやく終わりを迎えたのでした。私のお説教より娘の心に響いたもの。それは…。出典 : そんな話をしてしばらく経ったある日のこと。娘が「そういえば、この間ママと話したことがこの本に載ってたよ。縦の比較と横の比較があるんだって」と言って1冊の本を持ってきました。それは『10代のうちに知っておきたい折れない心の作り方』という本。いろいろな心の持ち方が子供にもわかりやすいように噛み砕いて説明されているのですが、その中に「他人と自分を比べてしまう」という項目があって、「横の比較ではなく縦の比較をすると楽になるよ」というお話があったのです。それは、お友達と自分を比べてどちらが先に進んでいるかに「横の比較」注目するのではなく、昔の自分と今の自分を比べてどれだけ成長したかに注目する「縦の比較」をするようにしましょう!という内容でした。一緒にその本を読んで以来、「あ、それは横の比較だから縦で見てみよう!」と声をかけるだけで、比較のポイントを修正できるようになってきました。学齢で言うと小学4年生になった娘。私が「こういう考え方はどう?」と話しても素直に受け入れられないことが増えてきました。自分で解決策を見つけ出したい、親の意見をそのまま受け入れたくないという態度は、成長の表れでもあるのでしょう。そんな娘でも、本に書かれている考え方は受け入れやすいようです。本ならば、自分が直接批判されているわけではないという安心感から、素直に良いと思ったことを受け入れられるのでしょう。他人と比較をする気持ち。それは子どもだけの問題ではなく、出典 : 横の比較ではなく、縦の比較。それは親にとっても大いに関係ある話です。私は「他人と自分を比べても、いいことなんて一つもないんだよ」と、子どもたちが幼いころから伝え続けてきました。しかし、私自身は「うちの子はクラスで何番目に背が低い」とか「あの子はとても絵が上手、それに比べてうちの子は…」と、些細なことで他の子どもたちと比べてばかりいた気がします。その結果、どこかで子どもに余計なプレッシャーを与えてしまい、成長に見合わない成果を求めていたことも、知らず知らずのうちにあったのかもしれません。去年、子どもたちは学校へ行くのをやめ、ホームスクールを始めたことで、同学年の子どもたちとわが子を比べる機会がなくなりました。そのせいでしょうか。これまでよりもずっと素直な目で子どもたちを見られるようになりました。背が低くても、毎年少しずつ伸びている。誰かと比べて子どもの絵を見るのではなく、純粋にわが子の絵を見てみるとステキな線や色が見えてくる。横の比較ではなく、縦の比較。そのキーワードを胸に、親も子も他人を見下したり自分を否定する、辛いループから抜け出せるといいですね。
2017年09月24日習いごとには、苦い思い出ばかり出典 : 息子の習いごと探しは、私にとっての黒歴史ナンバーワンです。小さな頃から手が不器用で、身体の動かし方も不器用だった息子。苦手なことだらけの息子の将来を心配するあまり、「発達障害に良い」とか「発達を促す」とか言われる習いごとを、次から次にやらせたことがあります。しかしどんな習いごとも長続きはしませんでした。さらに悪いことに、息子にとって「習いごと=苦手なことを無理やりさせられる」という認識になってしまい、息子は習いごとに連れて行かれるたびに自信を失っていくという結果になってしまったのです。やりたくないことをさせられるとき、息子はよく奇声を発したり、その場から逃げ出したりしていました。そのたびに、先生にも周りの父母にも「あちゃ~…」「あの子は毎回大変だよね…」という白い目で見られているのを感じ、いたたまれなくなったものです。この失敗経験を経て、私は3つのことを心に強く決めました。1つ目は、「息子が十分に成長して、自分の意思でやりたいと言うまでは、習いごとはさせない」2つ目は、「苦手なことを克服させるために習いごとをさせることはしない」3つ目は、「『発達に良い』『発達障害に良い』といった文言に振り回されない」一生習いごとをやらないことになっても、後悔はしない。もう習いごとに飛びついて、息子を傷つける結果になるのだけは絶対にしたくない…!失敗から学んだ決心は固かったのです。同級生のお友達がダンスやサッカーを習って楽しそうにしている姿を見ていても、私に焦る気持ちはまったくありませんでした。初めての息子の「やりたい」出典 : もう「習いごとは一生やらなくても良い」と考えていた私。ところが、息子はある日突然「スイミングスクールに通いたい」と言い出したのです。私にとっては青天の霹靂(へきれき)もいいところです。息子の動機はよく分かりません。学校のプールで顔をつけられず、苦戦したことが悔しかったのかもしれません。しかし、私は動機よりもむしろ、息子のこんな言葉に注目しました。「サッカーとか野球は怖いけど、スイミングなら僕でも出来るような気がする」運動が苦手で、運動の時間になると不機嫌になってしまう息子。そんな息子が、「これなら出来るような気がする」と思えたことがどれほど貴重なことか私には分かります。それでも息子の気持ちを試したくて私は2週間ほど、いいともダメとも答えを出しませんでした。すると2週間の間、息子は毎日「お母さん、スイミング申し込んでくれた?」と聞いてくるようになりました。「苦手なことを克服させるために習いごとをさせることはしない」と決めていた私ですが、息子の自発的な挑戦の意欲を感じ取り、スイミングスクールへ通うことを本気で考え始めたのです。スイミングに伴う数々の困難息子は突然新しい場所で新しい経験をすることが苦手なので、まずは短期教室に通って様子を見ることにしました。そして、全部で4日間の短期教室を見ているだけでも、息子の発達障害の特性がいろいろと困難をもたらしている様子が見て取れたのです。Upload By 林真紀まず、触覚過敏。息子は、自分の身体に突然触れられるのが苦手です。触覚過敏があるため、くすぐったくて我慢ができなくなってしまうのです。スイミングのコーチは、泳ぎのフォームを教えるために、どうしても身体に触る必要があります。息子は泳いでいる最中に突然触られると、パニックになってしまいます。Upload By 林真紀また、息子はボディイメージが弱いという特性があり、自分の身体のどこがどういう風に動いているのかを感じることが苦手です。特に水の中に入ってしまうと身体の感覚が鈍るようで、手足の動きがバラバラになってしまいます。そして交わした約束とはUpload By 林真紀4日間の短期教室でも数々の困難が判明した息子。その困難については、本人もしっかりと理解していました。しかし、そのうえで息子は私に「それでもやりたい」と言ったのです。触覚過敏については先生にお話しして、予告をしてから触るようにしてもらえばだいぶ楽になること、ボディイメージの弱さについては、風呂場や部屋でイメージトレーニングをすれば頑張れそうだということ。本人のこの言葉を聞いて、私は息子を引き続きスイミングスクールに通わせることに決めました。そしてスイミングスクールに通うと決めたときに、息子と固く約束したことがあります。それは、「進度は気にせず、長く続けることを目標にすること」「周りの子たちと進度を比較しないこと」の二つでした。それが守れるのであれば、スイミングスクールに通っても良いよ、と言いました。これは、習いごとに限らず、発達障害のある子どもを育てるうえで大切なことかもしれません。息子としたこの約束は、実は私が自分自身と約束していることでもあります。息子を育てながら、周囲と比較して、泣きたくなるようなことがたくさんありました。けれども、この約束を自分自身としたときから、私は息子を育てることが楽しくなりました。だから、私は息子が新しいことを始めるようなときには、都度この約束を息子と一緒に確認しています。自分自身の中でも約束を結び治し、笑顔で息子を見守れるように、決意を新たにしているのです。
2017年09月21日学校へ行かなければ、どうなるんだろう?出典 : いつの頃からか娘は小学校へ行くのを渋るようになりました。学校から帰ると疲れ果てて荒れ狂い、登校前日には足の痛みを訴えて泣くようになりました。学校へ行かすのはもう限界かな、と私が感じていた小学校3年生の2学期の初め、娘は自ら「学校をやめる」という決断を下しました。今でも学校に籍はあり、先生との交流を続けてはいますが、一般的には不登校と呼ばれる状態が続いています。わが家では学校に行かないことを後ろ向きに捉えるのではなく、「学校に行けないなら家で楽しく学ぼう!」と前向きに考えています。なので「不登校」という言葉ではなく「ホームスクール」という言葉を使うようにしています。そして、娘に続いて息子も幼稚園をやめることになり、365日親である私が子どもたちと共に過ごすホームスクールをはじめてから、ちょうど一年が経ちました。その中で、子どもたちにも私にも大きな変化がありました。ホームスクールを始める前、学校生活を楽しんで育った私の頭にあったのは学校へ行かないデメリットばかりでした。・ 小学校にも適応できない子が、社会に適応していけるのだろうか・ 同学年の友達に揉まれることでしか学べないこともあるのではないだろうか・ 365日子どもが家にいることに、自分は耐えられるのだろうか・ 勉強はどうすればいいんだろう・ いつか子どもが学校に行きたいと思ったとき、戻る場所はあるのだろうかそんなことばかりを考えていたような気がします。しかし、少しずつ子どもたちが365日家にいる生活に馴染んでゆく中で、学校に行かずに過ごすメリットも見えてきたのです。「自分と他人の違い」は家の中ならじっくり学べる!出典 : わが家は『安心して過ごせない場所には行かなくてもよい』という方針で子どもたちを育てて来ましたので、ホームスクールを始めるにあたって、まずは家の中を「子どもたちが安心できる場所」にする必要がありました。もちろん、それまでも子どもたちにとって一番安心できる場所は家だったのですが、ずっと家族が家にいると、親も子も一人になる時間がほとんどなくなり、そのストレスから摩擦が増えてしまいます。時間はたっぷりありますので、問題が起こった時は、親子でゆっくりと話し合いました。私が一方的に指図をするのではなく、「どうすればいいと思う?」とみんなで考えるところから始めたのです。そうやって、1つ問題を解決すると、また次の問題が発生します。でも、問題に対して皆で工夫しながらストレスの少ない暮らしを模索してゆくことで、今まで受け身だった子どもたちも、徐々に時間の使い方を自分で決め、必要なときには助けを求められるようになりました。自閉症スペクトラム+ADHDの診断がおりているわが家の子どもたちは、その特性から他人の動向に注意を払ったり、他人の気持ちを推察することが苦手です。なので、トラブルが起こるたびに話し合い、どういうケースでどういったコミュニケーションをすればいいかを一つひとつ学んでいきました。「自分の物を使われるのは、お姉ちゃんにとってはとても辛いことだ」「弟にはこういう風に接すればパニックを起こさずに意思疎通ができる」このように、身近な人でも自分とは違うこだわりや、苦手があるということを学べる時間を作れたことは、子どもたちにとって、大きなメリットとなっています。学校ではできないような、子ども達に合わせた勉強法!勉強は私が見ることで、それぞれの特性に沿った学び方を考えられるようになりました。言語優位のアスペルガーである娘には、とにかく興味のある分野の本をたくさん図書館で借りてくることで、飛躍的に知識量が増えました。自分に自信が持てない娘の場合、努力の成果が目に見える形であらわれる方が向いていることがわかり、学年を越えた漢字検定などにチャレンジしています。ADHD要素が強く、すぐに注意が逸れてしまう息子にはドリルを少量ずつ与え、目標時間を決めてタイマーを使います。終わったらすぐに丸つけをして、間違った問題は一緒に解くことで「やりとげる」ことができるようになってきました。視覚優位の息子には文字から学ぶよりも、iPadのアプリやDVDなどを使った学習の方が正確な情報を速くインプットできることがわかり、デジタル機器も積極的に活用しています。また、発達性協調運動障害を併せもつ息子は上手に文字を書くことができません。そこで、計算問題では読みずらい文字を書いたとしても不問とし、文字を書く練習は別ですることにしました。どの教科でもキレイな字で書くことを求められる学校の宿題には、きっと耐えられなかったことでしょう。子どもの特性に合わせて学習を進められるのも、ホームスクールの大きなメリットだと考えられます。こうして安心して過ごせる場所を作り、楽しく学習できる環境を整えることで、子どもたちは精神的にとても安定しました。学校や幼稚園に行っている間は疲れ果て、心を荒し、どんどん表情がなくなっていっていた子どもたち。しかし、今では毎日のびのびと笑いながら、嬉しいときにはくるくると踊りながら過ごしています。心に余裕が生まれたことで、いろんなことに意欲的に取り組めるようになってきました。「レールから外れてしまった」ことに対する不安を払しょくすることはできませんが、何よりも大切なことは子どもたちが楽しく健康に生きることだと、子どもたちの笑顔に励まされる日々です。「学校に行きたくない」という選択は、身を守るためのSOSかも知れない出典 : 残念なことに、9月1日は子どもたちの自殺が最も多い日だといわれています。「学校をやめる」と決断する前の娘も、顔中にチックが出て、絶えず足が痛み、全身からSOSが出ている状態でした。「普通は学校へ行きたくないと言っても『行きなさい』って言われるでしょ?私は『行かなくてもいいよ、ここにいればいいんだよ』って言ってもらえて救われた。あともうちょっとで、心が死んでしまうところだった。」「本当に学校に行かなくなっても責められなかった。学校から逃げてダメな人間だと思っていたけど、毎日幸せだからこれでいいんだなと思えるようになった。」娘は今、そんな風に話しています。学校生活を楽しめる人にとって、学校はとても素敵な場所でしょう。でも、心が苦しくて張り裂けそうになっている子供には、「行かなくてもいいよ」「体が辛いときと同じように、心が辛いときも休めばいいんだよ」という選択肢を示してあげることは、とても大切なことだと思うのです。そして「行かない」という選択をした子どもたちが自分を責めることなく、安心して過ごせる環境を整えていくことが、親にできる最大のサポートではないでしょうか。子どもたちが命をかけてまで行かなければならない場所など、一つもありません。同時に「行かない」という決断を下すことも、とても勇気のいることです。子どもたちが、ギリギリのところで必死に出したSOSを受け止めてあげませんか?「なぜ行けないんだ」と子どもを責めるのではなく、ゆっくりとお茶を飲んだりお喋りをしたりして、お子さまを安心させてあげることから始めませんか?大切なのは、どこで生きるかではなく、どう生きるか。私はそう思います。学校に行かなければすべてが終わるわけではありません。ホームスクールで心を回復させたわが家の子どもたちは、習いごとを増やしたり放課後等デイサービスに通うことで、新しい居場所や友達を見つけて、新しい一歩を踏み出しはじめています。いろんな状況のご家庭があると思いますが、今一度、親としてお子さまに「どんな風に生きてほしい」のかを考えてみませんか。そして、お子さまが「どう生きたいのか」を聞き出してみてください。そうやって言葉にすることで、大切にすべきものが見えてくるといいですね。
2017年09月17日洗濯の手伝いを頼んだら...出典 : ある日、アスペルガー症候群のある中学3年の娘に洗濯を頼む場面がありました。普段は私が洗濯をしているのですが、この日は体調が悪く、娘にお願いすることにしたのです。掃除や皿洗いは難なくこなす娘ですし、洗濯のしかたは何度も教えたことがありました。サクッと片づけてくれると思っていたのですが…予想に反し娘は洗濯機の前で立ち尽くしています。どうやら洗濯のやり方をすっかり忘れてしまったようです。泣きそうな顔で立ちすくむ娘。その口からこぼれた「バカでごめんね」という言葉に、私も辛い気持ちになりました。とはいえ、1つひとつ教えていかなければ前には進めません。私が側について教えながら、娘はなんとか洗濯機を回すことができました。ここまでくればできたも同然だろう。私は娘に、「あとは干しといてね」と頼んでその場を離れたのです。ところが、それから約6時間後。寝込んでいた私が起きだしてみると、洗濯物はなぜか下着だけ干されており、それ以外はカゴに突っ込まれたまま廊下に放置状態。「どうして干してないの!?」と娘に言うと「え?だっていつもお手伝いのときは下着しか干してないもん」「下着を干したら終わりだと思ってあとは全部忘れた」との答えが返ってきました。しまいには「こんな娘でごめん」と言い、泣き出してしまいました。娘は怒られると、声もたてず静かにはらはらと涙をこぼして泣きます。「どうして怒られたら泣いちゃうの?」と聞くと「怒られたらとても怖い気持ちになるから泣いちゃうの」と言ってました。そこから見えてきた娘の特性出典 : この洗濯の1件で、以下のような娘の特性が浮かび上がりました。・手順が複雑なことを覚えることが苦手・自分の思い込みで作業してしまう・報告も相談もしない・何度教えられても自分流のやり方を貫こうとする・怒られたらいてもたってもいられず泣いてしまう最後以外は私とそっくりです。学校に通っていたら、自身の特性もいろいろな場面から見つけることができるかもしれません。ですが、小2から不登校で家にこもっている娘は、行動パターンもワンパターン。しかも苦手なことはなるべく避けようとするので、特性がなかなか見えてこないのです。まさか、洗濯のお手伝いでこれだけ課題となる特性が見えてくるとは思いませんでした。就労の場でこの特性が出てしまったら...出典 : この娘の状況には危機感を覚えざる得ませんでした。というのも、私も同じ特性を持っているので、さんざん職場でやらかしてきた過去があるからです。同時に、この特性はとても嫌われます。「どうしてそんなに覚えが悪いの?」「人の話聴いてるの?」「やる気あるの?」と言ったような言葉でさんざんなじられた過去の記憶が頭をよぎります。もし、同じ仕打ちを娘が受けたら、おそらく耐えられないでしょう。そんな辛い目にはあってほしくありません。知り合いのところやなじみのあるところでアルバイトをすることも考えたのですが、字がゆっくりとしか書けない、計算ができないことを気にして気が進まないようです。発達障害者支援センターで相談したときも、「おそらく普通の就労は難しいでしょう。手帳を取って障害者枠で働くことを考えた方がいいです。」と言われたこともあり、将来的には就労移行支援事業所などで訓練を受けたほうがいいだろうと思っています。でも今回はせっかくのチャンス。家庭で苦手なことをカバーする練習はできないだろうかと考えたのです。ピンチはチャンス!今のうちにカバーする術を教えたい出典 : 失敗を恐れる娘なので、しばらくは洗濯機には近寄らないかもしれません。ですが、直接自分でやらなくても私がやっているところを見せたり、簡単な干す作業を手伝ってもらったりしながら、再チャレンジの機会を狙うことができます。そうやってスモールステップを本人のペースで踏めるのが家庭のいいところでしょう。お手伝いという気楽さもありますし。いま私がやっているのは、・洗濯機の前にマニュアルを貼る。・使う洗剤の量を実際に見せながら教える・前回のお手伝いで気になった干し方を「こうしたほうがよく乾くよ」と教える・教えてもらったときはメモを取ったほうがいいことを教える(「字が書けない」と言われたので「スマホでメモしたらいいよ」といったら大発見って顔をしてました。)少しずつ「分からないことは聞く」、「どこまでしなければならないのか確認する」という風にステップアップしていけたらと思っています。また、今度頼むときは完璧にこなすことを目指すのではなく、チャレンジできたことを自体をしっかり褒めたいと思います。「親子」であり「お手伝い」であることを忘れないで出典 : 今回のケースのように繰り返される失敗は娘の特性を知るチャンスであり、 直すことはできなくてもカバーするにはどうしたらいいか教え、それを実践するいい機会になると思います。ただ、先々を考えた訓練であることを意識するあまり、小言を言うだけにならないように、私自身注意しています、あくまで私の立場は親であり、お手伝いとしてやらせているという大前提を崩してしまっては、娘は心を閉ざしてて聞く耳を持たなくなってしまうと思うのです。私が高校生くらいの頃でしょうか。私の母が「結婚したとき困るから、お母さんが料理するときは横で手伝いなさい。」と言いだし、ことあるごとに家事についてとやかく言われるようになりました。その母の態度に私は嫌悪感を抱き、意地になって手伝おうとはしませんでした。お手伝いは今回のように苦手をカバーする練習をしたり、生活能力を身につけたり、働くことの大切さを教えることもできるでしょう。ただ、その目的が「お手伝い」の範囲から逸脱すればするほど、子どもは嫌になってしまうだけではないかと思うのです。私にとってお手伝いとは、子どもの年齢、能力に合わせて家事を負担してもらうものであり、その子の状況に合わせて無理なく、柔軟にやってもらえばいいものです。その過程で、娘自らが気づきを得て、苦手や困難を乗り越えるヒントを学ぶことができればと考えています。確かに時間こそかかると思いますが、娘と二人三脚で、マイペースに進めることを忘れないようにしたいです。
2017年09月15日ヘルプマークとは?Upload By 発達障害のキホンヘルプマークは、援助や配慮を必要としていることが外見からは分からない方々が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることで、援助を得やすくなるよう作成されたマークです。義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、妊娠初期の方のほか、発達障害、精神障害や知的障害がある方などは、外見からは障害の有無がわからないことが多いです。疲れやすいために優先席に座っていたら白い目で見られたり、元気そうに見えるのに突然倒れてしまって驚かれたりするようなことがありえます。このような方々は、援助や配慮を必要としていることが外見からは分からないため、周囲の人の理解が得られずに苦しい思いをしていたり、体調の急変時や災害時に、適切な対応を受けられるかどうかを不安に思っていたりします。そこで、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることで、援助を得やすくなるような意思表示のかたちとして、ヘルプマークが導入されたのです。「ヘルプマーク」は、赤地に白色で十字マークのハートが描かれているデザインそれ自体を意味しますが、地方自治体が配布する手のひらサイズの長方形のストラップも、同じ名称で呼ばれています。ストラップの裏面には、任意で必要な支援を記載したシールを貼ることができます。この記事では、ヘルプマークを利用することの意義や、誰がどのようにしてヘルプマークを利用することができるのかを具体的に解説します。東京都では、平成24年から、かばん等につけられるストラップタイプの「ヘルプマーク」を作成し、配布しています。同時に、都営地下鉄の優先席にステッカーを掲示し、「ヘルプマーク」を身につけた方が優先席に座りやすいようにする取組みを実施しています。このような取組みは、他の都道府県にも拡大し、平成29年8月現在、京都府・和歌山県・徳島県・青森県・奈良県・神奈川県・滋賀県・大阪府・岐阜県・栃木県でもヘルプマークの配布が開始されています。Upload By 発達障害のキホン平成29年7月20日、経済産業省において、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、JIS Z8210(案内用図記号)が改正され、「ヘルプマーク」が追加されました。案内用図記号とは、不特定多数の人が出入りする施設で、言葉によらず、目で見るだけで案内を可能とする図記号です。今回の改正により、「ヘルプマーク」が配慮や支援を必要とする方々を示す記号として、全国共通で標準化されたマークに認定されるため、多様な主体が多様な場所で活用・啓発できるようになり、認知度の向上や、今後の全国的な普及も期待されます。出典:ヘルプマーク|東京都福祉保健局参考:日本工業規格(JIS)を制定・改正しました(平成29年7月分)~案内用図記号などのJISを制定・改正~|経済産業省ヘルプマークのJIS(案内用図記号)への追加について|厚生労働省ヘルプマークの対象者は?どんな人が持っているの?出典 : ヘルプマークの対象者は、義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、妊娠初期の方など、援助や配慮を必要としていることが外見からは分からない方々です。身体機能等に特に基準を設けているわけではなく、発達障害、知的障害や精神障害がある方も、対象者として想定されています。このような方々は、障害等が外見上わからないからこそ、トラブルにあうおそれがあったり、不安を抱えていたりするため、ヘルプマークが有効なのです。また、ヘルプマークの入手にあたり、障害者手帳等、書類の提出は一切必要ありません。ヘルプマークを必要な方々が円滑にマークを利用できるようにするため、配布に際しても配慮がされているのです。出典:助け合いのしるしヘルプマーク(企業・事業者向け)よくあるご質問|東京都福祉保健局ヘルプマークの使い方Upload By 発達障害のキホンストラップタイプのヘルプマークには、裏面に緊急連絡先や必要な支援内容等を自由に記入して、かばん等の人目につきやすい所につけるのが一般的な使い方です。外見からわからない障害等がある人は、ヘルプマークをつけることで、何らかの事情があって配慮を要することを伝えることができます。以下では、ヘルプマークが役に立つケースをいくつかご紹介します。・電車内で、優先席を利用する事情がある時外見からわからない障害や病気があって、疲れやすかったり、立っていられない方がいます。このような方々が、電車で優先席に座っていると、「若いのにけしからん!」といって注意されたり、けげんな目で見られるなどの誤解から、つらい思いをすることがあります。このような場合には、ヘルプマークをつけていることで、何らかの事情があると視覚的に伝えることができます。・障害のある子どもが迷子になった時知的障害・発達障害がある子ども等が迷子になった時、本人の力だけでは家族のもとへ帰るのが困難な場合があります。このような場合に、駅員さん等の周囲の人が、ヘルプマークに気づいて、声かけしながら見守ってくれたり、裏面に記載された緊急連絡先に連絡をしてくれたりという配慮を期待できるかもしれません。・緊急時ヘルプマークに、緊急時の連絡先として、かかりつけの病院の電話番号や必要な支援内容を書いておくことで、緊急時にも適切な処置を受けられる可能性もあります。発作で倒れて意識がない時等には、本人が自力で意思疎通をすることができない一方で、対応を誤れば、生命の危険があります。そんな時にヘルプマークを目立つところにつけておけば、通行人や救急隊員が見つけて対処に役立ててくれるかもしれません。・災害時危険の察知が苦手な人、パニックで動けなくなる人、通常の手段では的確な情報を得ることが困難な人にとって、災害時に自力で状況を把握し、安全に避難することは困難です。そこで、ヘルプマークをつけておくことで、災害時に周囲の人の支援を受けて安全を確保しながら避難することが期待でき、災害時の備えとなります。このように、ヘルプマークは、わかりやすく目立つデザインであり、裏面には、障害・病気の特性・症状に合わせてその人にとって必要不可欠な内容を厳選して書き込むことができるため、保護者にとっては「何か起きた時に必要な対処をしてもらえるはずだ」という安心にもつながります。ヘルプマークは、電車で席を譲ってもらうためだけのマークではなく、様々な場面で役に立つのです。Upload By 発達障害のキホン出典: ヘルプマークリーフレット|東京都福祉保健局ヘルプマーク(ストラップ)の入手方法出典 : ヘルプマークを導入している都府県では、各都府県の配布場所でストラップタイプの「ヘルプマーク」を無料で配布しています。ヘルプマークの受取りを希望するためには、お住まいの都府県の配布場所を直接訪れて申し出る必要があります。原則として、郵便等による送付は行われていません。この時、書類の記入や、障害手帳の提示などの特別の申請は必要なく、マタニティマークと同様に、ご家族等の代理人による受取りも可能です。各都府県のヘルプマークの配布場所をご紹介します。配布している都府県によって対応が異なる可能性があるため、ヘルプマークが必要な方は、まずは気軽にお問い合わせをしてみましょう。出典のリンクには各都府県のお問い合わせ先が含まれていますので、ご活用ください(都府県の記述の順番は、順不同です)。●東京都都営地下鉄各駅(押上駅、目黒駅、白金台駅、白金高輪駅、新宿線新宿駅を除く)駅務室、都営バス各営業所、荒川電車営業所、日暮里・舎人ライナー(日暮里駅、西日暮里駅)駅務室、ゆりかもめ(新橋駅、豊洲駅)駅務室、多摩モノレール(多摩センター駅、中央大学・明星大学駅、高幡不動駅、立川南駅、立川北駅、玉川上水駅、上北台駅)駅務室(一部時間帯を除く)、東京都心身障害者福祉センター(多摩支所を含む)、都立病院、公益財団法人東京都保健医療公社の病院等出典:ヘルプマーク|東京都福祉保健局●京都府京都府庁、各広域振興局、家庭支援総合センター、精神保健福祉総合センター、難病相談支援センター、京都ジョブパーク、北京都ジョブパーク等出典:ご存じですか?ヘルプマーク|京都府出典:平成28年4月1日から、「ヘルプマーク」の配布を開始します|京都府●和歌山県和歌山県庁障害福祉課、各振興局健康福祉部保健福祉課、和歌山市障害者支援課及び保健対策課出典:ヘルプマークをご存知ですか|和歌山県出典:わかやま県政ニュース「ヘルプマークの交付について」|和歌山県●徳島県県内24市町村窓口、障がい者相談支援センター(障がい者交流プラザ)、発達障がい者総合支援センターハナミズキ、発達障がい者総合支援センター、県内保健所(徳島・吉野川・阿南・美波・美馬・三好)、精神保健福祉センター、徳島県庁障害福祉課・健康増進課出典:☆「ヘルプマーク」を市町村窓口でも配付します☆|徳島県●青森県お住まいの市町村の障害福祉担当窓口出典:ヘルプマークの普及に取り組んでいます|青森県●奈良県お住まいの市町村の障害福祉担当課出典:ヘルプマークの普及に取り組みます|奈良県●神奈川県各市町村障害福祉担当窓口等出典:ヘルプマークを知っていますか|神奈川県出典:ヘルプマークの配布を開始します|神奈川県●滋賀県滋賀県庁障害福祉課、大津市保健所、草津保健所、甲賀保健所、東近江保健所、彦根保健所、長浜保健所、高島保健所、各市町の障害福祉担当部署出典:ヘルプマークを知っていますか?|滋賀県●大阪府大阪府福祉部障がい福祉室障がい福祉企画課、大阪府内市区町村(詳しくはそれぞれの市町村にお問合せください。)出典:ヘルプマークについて|大阪府●岐阜県各市町村障害福祉担当課、県事務所福祉課(西濃、揖斐、中濃、可茂、東濃、恵那、飛騨)、岐阜県庁障害福祉課出典:ヘルプマークを見かけたら「思いやりのある行動」をお願いします|岐阜県●栃木県栃木県庁総合案内、各健康福祉センター、とちぎリハビリテーションセンター、精神保健福祉センター、とちぎ難病相談支援センター、各県民相談室、各市町、とちぎ福祉プラザ出典:ヘルプマークを知っていますか|栃木県出典:ヘルプマークの導入について|栃木県出典 : ・ヘルプマークのデザインを用いて、自分でカード等のグッズを作ることができます。お住まいの地方自治体でヘルプマークが配布されていない、配布場所が遠くて取りに行けない、災害時で緊急を要する時など、ヘルプマークのストラップを入手できない場合もあると思います。しかし、配慮を必要としていることを周囲に知らせるためにヘルプマークを利用したい方もいることでしょう。このような場合、ガイドラインに従って、ヘルプマークのデザインを使用したグッズを作成することが可能になりました。ヘルプマークがJIS登録され、全国統一の意味を持つマークとなったからです。具体的には、ヘルプマークが入った、個人が携帯するためのカードやステッカー等を作製することができます。ただし、行政が作成する場合には申請が必要となります。また、会社や事業者が使用する場合には、東京都にご相談ください。・使用上の注意ヘルプマークを活用する時は、色を遵守してください。拡大、縮小は可能ですが、縮尺を厳守してください。 カードケースやネームホルダー等に入れる場合は、安全なものを使用するようにしましょう。参考:「ヘルプマーク作成・活用ガイドライン」|東京都福祉保健局ヘルプマークと合わせて使える!ヘルプカードとはUpload By 発達障害のキホンヘルプカードとは、ヘルプマークの入った緊急連絡先や必要な支援内容などが記載されたカードで、障害のある方などが災害時や日常生活の中で困った時に、周囲に自己の障害への理解や支援を求めるためのものです。現在、区市町村において、ヘルプカードの他、SOSカードや防災手帳など、地域の実情に応じたさまざまなカードや手帳などが作成されています。参考:ヘルプカード|東京都福祉保健局かばん等の人目につくところにつけることが想定されているヘルプマークは、外見上わかりやすく目立つことが特徴です。他方、緊急時や災害時には支援が必要となるためあらかじめ何らかの対応をしておきたいけれど、日常生活の上では体は健康なので席を譲ってもらう等の支援は必要なく、マークをつけ続けることに抵抗を感じるという方もいます。このような場合に、ヘルプマークの代わりとして所持することが有効なものが、ヘルプカードです。また、ヘルプマークに緊急連絡先を記載することは、個人情報を人目にさらすこととなってしまい、抵抗を感じる方もいるでしょう。その場合、ヘルプマークには「手帳にヘルプカードが入っており、緊急連絡先と必要な支援内容が書いてあります」等の記載にとどめ、ヘルプカードに詳細を記し、2つを併用するという使い方もあります。なお、ヘルプマークが配布されていない都道府県であっても、区市町村でヘルプカードの作成・配布が行われている場合があり、ストラップが入手できなくても、ヘルプカードは入手できる場合があります。ご自分の地域やニーズに合わせて、ヘルプマークとヘルプカードの使用をご検討されてはいかがでしょうか。参考:ヘルプカード|栃木県まとめUpload By 発達障害のキホン優先席で席を譲ってもらえるイメージが強いヘルプマークですが、実際はそれだけでなく、その人の障害等の特性に合わせて様々な状況で効果的な使い方ができるものです。ヘルプマークをつけた方の安心のためや、ヘルプマークを実効的なものにするためには、街でヘルプマークをつけた方を見かけた際に、電車・バスの中で席を譲る以外にも、困っている場合には声をかける、見守りをするなどの配慮ある行動ができるとよいですね。また、東京都が平成24年にヘルプマークを導入してから約5年が経ちますが、マタニティマークに比べると、いまだ認知度が高くないかもしれません。もっとも、平成28年以降、全国へ取組みが拡大し、平成29年7月にはJIS登録されため、今後、多くの地域で認知度の向上が期待されています。今後、ヘルプマークをつけた人が増えることで、周囲の人の目につくようになれば、認知度が向上することが期待されます。ヘルプマークをつけているひとを見かけたら、配慮するということを心掛けるだけでも、身の回りの環境を変えていくことができるでしょう。社会みんなの協力のもとヘルプマークへの理解が進めば、援助や配慮が必要な人がいることへの気づきや思いやりのある行動を促進し、援助が必要な方が日常的に様々な援助が得られる社会となっていくのではないでしょうか。
2017年09月14日防災についての発達ナビのアンケート、結果は?8月30日~9月5日の防災週間に、発達ナビの「みんなのアンケート」コーナーにて、「【9/1は防災の日】家でも防災のために何か取り組んでいる?」というテーマでアンケートを行いました。Upload By 発達ナビ編集部みんなのアンケート330件もの回答が集まり、下記のような結果になりました。・YES…39%・NO…46%・どちらでもない…15%ご協力いただいたユーザーの皆さま、ありがとうございました!ご家庭に合わせて工夫や準備をされているアイデアを共有してくださった方もいらっしゃいました。特に発達障害の特性に合わせた準備や対策は、とても参考になります。一方で、NOの回答が46%と一番多かったことにも注目です。中にはやらなきゃとは思いつつも、後回しになりがちなんですよね(;^^)引っ越してから、避難場所とかわからないや~~~震災直後は防災グッズを準備したけど、今は何もしてない。何かあった時にどうするか…家族で話し合うだけでもやっていかなきゃなという声もちらほら。災害があった直後は非常用持ち出し袋などの震災グッズを準備していても、日々の中でなかなか意識し続けることはむずかしいもの。イメージがわかず何をしていいかわからないということもあるのかもしれません。しかし、いつ起こるかわからないのが災害です。今回は、発達ナビユーザーの皆さんが災害の時に、どんな困りごとが出てきそうか、またどんなことが不安かという声と、今工夫されている方のアイデアを合わせてご紹介します。ぜひ、この機会に、家族で防災について考えるきっかけにしていただければ嬉しいです。みんなはどんなことを不安に思っているの?出典 : 発達ナビユーザーのみなさんは、災害に対してどんなことを不安に感じているのでしょうか?食べ物は多少用意していますがいざとなると行動出来るか不安です。避難訓練は出来ても本番が弱いタイプだと思うので。大きな音が苦手な、長男小1パニクらないと良いけど、地震の後やサイレンの音がすると不安が増えそうです。災害時は誰でも不安になります。安全を確保しながら、落ち着いた行動を、と言われてもとっさに判断して動ける人は多くないのではないでしょうか?発達障害のある人の中にはいつもと違うことや、見通しが立たないことが苦手な人もいます。そのような特性がある場合、地震の揺れそのものだけでなく、避難する他の人の様子や音に強い不安を感じ、避難行動が困難になってしまうかもしれないと懸念する方が多いようです。避難所生活はパニックになりそう。耳栓とか必要!?考えるいい機会になりました。人ごみの声に耐えられるのかが不安。避難生活は集団で暮らす場となります。不慣れな体育館などのスペースや大勢の人の生活音、炊き出しの食事や避難グッズなど限られた物資を用いた生活……これらは、発達障害のある人にとっては、かなり過酷な環境の変化と言えるのではないでしょうか。聴覚過敏症のため、避難所にとどまる事は厳しいとおもっていて、本格的なテントを用意するかで悩みすぎて、未だに結論が出てません( ̄▽ ̄;)また、避難所には地域の様々な人が集まります。日ごろ交流がない人と同じ空間で生活することもあるでしょう。みなそれぞれ、先行きの見えないストレスを抱えているはずです。そのような場合、もしかしたら特性への理解や配慮が得にくい状況となるかもしれません。もし災害によって住む場所が奪われてしまったら、自宅が危険だったら、避難所での生活を余儀なくされるかもしれませんが、はたして環境に耐えられるか、集団での生活になじめるか心配する声も多くありました。我が家の防災グッズ、こんな準備をしています!出典 : 非常用持ち出し袋、用意していますか?定期的に非常食の賞味期限が切れていないか、我が家に必要なものは揃っているか、確認する習慣をつくっておくとよいかもしれません。また独自の工夫や防災グッズを準備されているという方にアイデアを教えていただきました。各ご家庭の防災に生かせるヒントがあるかもしれません。これを機に、「我が家の防災グッズ」を見直し準備してはいかがでしょうか?出典 : 災害時、まず心配になるのが食べるもの。電気やガス、水道といったライフラインが止まったら、調理や食べ物の保存は困難になります。また物流や販売店が被害を受けたら、好きなものを買って食べるという生活は、またたく間に不可能になります。偏食がある子の場合、持ち出し用の非常食や救援物資の食料がスムーズに食べられない可能性も想定しておいたほうがいい、という意見も多く見られました。自治体の備蓄品をそもそも食べられない(であろう)➡缶に入った備蓄パンを会社で入れ替えだったからとパパが軽い気持ちで貰ってきたとき、まさかの味が駄目で嘔吐しまして(笑)これは、うちの子に食べられる物を用意しなきゃとなったのですお菓子もいろいろ試しながら消費備蓄中です備蓄する食料も家族の口に合わなければ意味がありませんし、場合によってはショックで数日間も食べられなくなる人もいるかもしれません。止むを得ない場合は、お菓子とビタミン剤で暫く過ごすと言う方法もありかもしれません。娘が食べれるもので日持ちする種類のものは多めに備蓄しています。飲み物も。東京在住なので、災害時には混乱が大きく、食料の支給なども遅れるのではと想定してます。比較的醤油煎餅は食べてくれるので、備蓄缶のお煎餅も買いました。非常食・飲み物は必ず年に2回いろんな種類を試しながら子供が食べられるものを確認しながらの確保非常時に食べられるものがなくてあわてないよう、事前に試食しておくことも、ご家庭での防災訓練の一つとなるのかもしれません。出典 : 避難場所での音や光など感覚過敏への対策をはじめ、苦手なものへの対策をしている人もいました。ふだん公衆トイレに近寄れないので、簡易トイレたくさん!耳栓、アイマスクが必須アイテム。パニックで迷惑かけてしまう、または本人が拒絶することで、避難所に居られない可能性を考えて食料たくさん!出典 : お子さんでしたら「安心毛布」みたいに手放せないもの、コレがあったら不安が解消されるもの等、把握しておくのも良いかもしれません。もしかしたら避難所に居られるかもしれない可能性を考えて、気をまぎらすためのボードゲームも。。不慣れな環境で過ごす子どものため、安心できるお気に入りグッズや、ゲームなどを持ち出し用に準備しておくとよいかもしれませんね。出典 : 自宅付近ならともかく、出先で災害にあった時の為に(天候で電車が止まって帰宅できない等)持薬と不安・不眠の際に飲む薬を数日分、常に携帯してます。息子の精神科の薬や持病の薬はすぐに持ちだせるようにしてます。防災グッズを揃えて子供用のリュックサックに知的障害を伴う自閉症であると書いたカードと療育手帳のコピーを入れてあります。持病などがある場合、薬を持ちだせるように携帯しておくことも大切ですね。また健康保険証のコピーなどといっしょに療育手帳のコピー、ヘルプマークやヘルプカード、特性についての説明などがあると支援を受ける際にスムーズになるかもしれません。LITALICOジュニアでは、お子さんのことを周囲の人に説明・共有するための「サポートブック」をインターネットで無料配布しています。これを機会にぜひご利用してみてください。災害があったらどうするか家族で考えてますか?出典 : もし災害があったらどうするか、どこに避難するか、家族で話し合って具体的にシミュレーションをしたり、想定しておくとよいかもしれません。あ!何より用意しなきゃいけないのは、息子に向けた避難のマニュアルみたいなものだ!あらかじめ、必要な物資を用意するのも大切かもしれませんが、家族と話し合うのが一番かもしれません。災害対策は地域によって違いますし、避難場所や家族以外の方との緊急連絡先を把握した方がいいと思います。家庭内の災害マニュアルみたいなものを、夫がつくりました。思いつく限りの、あらゆる問題を想定して、その問題の解決のためのマニュアルなのですが…。ADHD息子には、家以外で地震があったら周りの大人の言うことをちゃんと聞く。独りで道の場合は、何もない所を探す電柱電線、頭上注意なるべく近くの公園か学校へ。って言っています。集合する避難場所を決めてあります。学校にいるか、近い場合は学校から動かないこと。緊急連絡先を紙に書いてカバンに各自入れてあります。見通しが持てないとパニックになりやすい特性がある場合、本人への説明用のマニュアルを作って説明しておくと、理解しやすくなります。地震や台風、水害などの災害について、イラストや写真などを使って説明しましょう。避難経路、避難のしかたなども視覚的にわかりやすいマニュアルがあると、いざというときに役立つかもしれません。出典 : 実際に避難経路を歩いてみる、実際に避難グッズを試しておくなど普段からトレーニングしておくとよいでしょう。子どもが小さい場合、遊びの一環として取り入れるなどしながら、慣れるようにするのもいいですね。防災のイベントや地域での防災体験など、様々な機会を上手に生かしている体験談が目を引きました。保育園と同じやり方で「だんごむしのポーズ」を時々させたり、廊下を歩いている時に「家では地震の時にここが一番安全なんだよ」と教えたり、玄関に懐中電灯を置いて、使い方を教える程度です。5歳は全部理解しているでしょうが、2歳はダメそうなので、ちょっと悩みますね。怖がりの息子くんのために、大きな地震を一度体験させてみたら…と思って地震体験車のイベントに参加しました。息子くんは車が揺れているだけで怖いと固まってしまいました。気持ちが落ち着けば…と思い1時間くらい待ちましたが怖くて乗れませんでした。消防士さんも苦笑い。でも息子くんにはいい意識付けにはなりました。私達夫婦も息子くんがパニックになることを想定しておく必要があると実感しました。紙食器にラップを使ったりして、出来るだけ災害を想定して過ごしますストレスは半端ないだろうけど、こだわりがある我が子には…たまに夜ランタンだけで過ごしたり、エアベッドも普段から時々使って、いざというときに出来るだけいつも通り適応出来るように~おうちキャンプと称して(笑)実際は予想を遙かに上回る大変さがあるのだと思います起きないことを願いつつ準備してますパニックなどの心配はありませんが予定が変わることに、困惑することがある息子。震災当時年長さんだったので、避難や防災を楽しい体験に紐付けたくて、私も念願だったファミリーキャンプを始めました。最初の頃はみんながご飯の支度をしていても一人でフラッと、どこかへ行って好きなことをしていましたが、6年生の今は母の私と二人でテントを張れる様になり、一番重い荷物を率先して運んでくれます。ウチは避難所生活は絶対無理と思っているので、テントやその他諸々、キャンプ用品一式持っています。防災の日はそれのチェック兼ねて、妻に使い方をレクチャーするのが、毎年恒例になってます。いつもと違う環境で生活し、眠る経験も重要です。キャンプなど、楽しみながら非常時に備えた訓練をしてみるのもよいですね。まとめ出典 : 今回のアンケートからは感覚過敏や偏食などといった特性からパニックや避難所での生活に不安を感じる意見が多く見られました。誰でも災害時には不安で強いストレスを受けるでしょうが、いつもと違うことが苦手な発達障害の子どもの場合、なおさらです。ご家族の特性に合わせ、工夫をこらした災害への備えはとても参考になります。災害はいつやってくるかわかりません。想定外のことも多いかもしれません。ですが近年は異常気象による災害も多く発生しています。避難しなくてはいけないシチュエーションは誰の身にも起こりうると考え、日ごろから一人ひとりが考えておくべきではないでしょうか?発達ナビでは今回のアンケートをはじめ、これからも防災に向けた取り組みを続けていきたいと考えています。みなさんも、防災への工夫や体験談、不安に感じていることや知りたいことがあったら是非、ご意見をお寄せ下さい。参考:災害時マニュアル「災害と発達障がい」参考:災害時の発達障害児・者支援エッセンス|国立障害者リハビリテーションセンター参考:防災・支援ハンドブック|自閉症協会
2017年09月14日息子の日々の生活の流れ。平日の過ごし方がどうしても単調に…出典 : 息子には、重度の知的障害があります。身体は健康ですが、言葉は二語文程度で、意思表示はできるものの、人との会話やコミニュケーションが難しい状況です。特別支援学校を卒業し、就労継続支援B型事業所に8年間通所していましたが、3年前に東京都から九州に転居したのを機に、生活介護事業所に移りました。朝9時過ぎに、事業所の送迎車に乗って家を出て、夕方4時半に帰宅するまで、事業所内で活動して過ごしています。現在は、大好きな刺繍や、刺し子、織り機を使って、作品を仕上げています。事業所から帰宅すると、夕食までの間、息子はiPadを使いネット動画を見たりして過ごしています。その後は、夕食を食べて就寝まで、日々の生活に追われる毎日です。休日には、家族で外出し、買い物や食事に出かけます。息子も買い物が大好きで、いろいろな店に行くのを楽しみにしています。息子の帰宅後の生活をもっと充実させたい出典 : 買い物が大好きな息子。でも、休みの日以外は、特別に用がある場合でなければ、施設から帰宅後に出かけることはありません。夕飯の支度や家事がある私は、息子と出かける余裕もなく、毎日が過ぎていってしまいます。この空いた時間に、何か習い事や運動などを入れることはできないかと考えたりもしましたが、送迎や待ち時間などを考慮すると、我が家の現在の状況では難しく、断念せざるを得なかったのでした。大好きな買い物に移動支援が利用できるかも!出典 : 私は、このことを相談支援事業所に話してみました。施設から帰宅後の2, 3時間を、もっと息子の喜ぶような時間にできないものか。息子の大好きな買い物に付き添ってくれるような支援はないだろうか……すると、地域生活支援事業の一つである移動支援を受けられると教えてくれました。息子の外出も、移動支援を利用すれば、ヘルパーさんに付き添って貰うことができるとのことです。すぐに息子の支援計画に移動支援を利用することを加え、区役所の障害福祉課に申請をしました。こうして、息子は移動支援を受けられるようになったのでした。初めてのヘルパーさんとの外出は、徒歩で行ける場所息子に割り当てられた移動支援の月の時間数は、20時間。週に一度、買い物に出かけたとしても、一回に5時間は利用できる計算です。付き添ってくださる事業所のヘルパーさんも決まり、いよいよ、買い物に出かけることになりました。家族や、施設の職員さん以外の人との初めての外出です。ヘルパーさんは、予定時間に家まで迎えに来てくださり、息子と一緒に外出し、買い物を終えると自宅まで送ってくださいます。息子にも、ヘルパーさんにも負担にならないように、最初は家から徒歩で行ける場所を選びました。自宅から徒歩で 約10分のコンビニに出かけ、買い物をし、大好きなアイスクリームを食べて帰宅する計画にしました。出典 : 当日、息子は、少し緊張した面もちでしたが、ヘルパーさんと元気に出かけて行きました。ヘルパーさんのお名前や、当日の行動の予定は、前もって息子に繰り返し説明をしています。事前に、どんな事をするのか息子に説明をすることで、息子も状況を理解し、不安も少なくなります。ヘルパーさんにも、息子の行動の様子や性格など、できるだけ詳しくお話ししました。さて、どんな顔をして帰ってくるか…私は、期待と心配の入り混じった気持ちで、帰りを今か今かと待ちわびました。30分後、息子は息を切らし、少し顔を赤らめて、ヘルパーさんと帰宅しました。手には、コンビニで買ったフライドチキンの包みを持って…「お帰り!どうだった?」と尋ねる私に「楽しかった…」と小さな声で、恥ずかしそうに息子は答えてくれました。移動支援は息子の生活に潤いと成長の機会をつくってくれた出典 : あれから、9ヶ月…息子は、ヘルパーさんとの外出を元気に続けています。月に2回、近い場所での買い物と、少し離れた場所での外食を楽しんでいます。買い物は場所が近いので、1時間以内で帰宅しますが、外食は、食事時間が長い事もあって、3時間くらいで帰宅しています。ヘルパーさんにも慣れて、今では外出を心待ちにしていて、「次はどこに行こうかな…」と、とても楽しみにしているようです。移動支援を利用するようになり、息子の生活は楽しみが増え、充実感のあるものへと大きく変化しました。また、家族や施設の職員ではない、ヘルパーさんとの新しい関わりが増え、コミュニケーションの力も少しずつ育っているように感じます。現在は、月に2回のペースですが、いずれは回数や場所、行動の計画も増やして、20時間を有効に使いたいと考えています。重度知的障害のある息子は、将来的には、家族と離れて入所生活を送る事になると考えていますが、その近い将来のためにも、多くの人との関わりを持ち、コミュニケーション能力を高めていく機会を増やすことが大切だと思います。手探りで始まった移動支援でしたが、息子の毎日の生活を潤し、喜びと楽しみが増えたことで、とても有意義なものになっていることに感謝しています。
2017年09月12日子どもが「やればいいんでしょ!」とふて腐れてしまうことありませんか?出典 : 我が家では電車で習い事に通う事が多いので、「外出前のトイレ・支度をする時間」「家を出る時間」「電車の時間」の3つを紙に書いて子どもたちに提示することにしています。発達障害のある小学1年生の息子と小学4年生の娘が、出発の時間に合わせて行動できるように行う、我が家の習慣です。ある日、子どもたちが玄関先で支度を整えているのを確認し、「靴を履いておいてね」と伝えて私はその場を離れました。しばらくして聞こえてきたのは、リビングでの話声とピアノの音。慌てて様子を見に行ってみると、玄関には荷物が放り出され、子どもたちはリビングで遊んでいます。「何をしているの!?出かける時間は伝えてあるでしょ?」「ちょっとピアノが弾きたくなっただけ」「今本を読んでいるからちょっと待って」と一向に慌てる様子がありません。こんなこともあろうかと、いつも余裕を見て一本前の電車を利用しているので遅刻することはありません。とはいえ、「わかったよ、行けばいいんでしょ」とふて腐れてしぶしぶ靴を履く子どもたちを見ていると、私も怒りを抑えきれず声を荒げてしまいます。結果、何とも言えぬ重い雰囲気のまま駅までの道のりを進むことになりました。案の定、駅に着いたのは乗る予定だった電車が出発した後。次の電車まで少し時間があったので、落ち着いて話をすることにしました。子どもたちに伝えたこと「ママはどうして怒ったと思う?」「出発する時間なのに遊んでたから?」「靴を履いてって言われたのに、本を読んでたから?」娘と息子が答えます。この言葉から、出発前に準備をせず別のことをしていたことはいけないことと理解はしているようです。私は続けます。「そうだね、その行動は確かにおかしいよね。でもママが一番引っかかっているのは、違うところなの。この習い事をしたいって言ったのはあなたたちで、絶対にやめたくないんだよね?」「そうそう!絶対にやめたくない!」「だってすごく楽しいもん!やめろって言われたらイヤ!」子どもたちは習いごとに行きたくないわけではないのです。むしろ、「行きたい!」という意思を持っています。それでも、自分から率先して準備をして家を出ることはできないようなのです。自分たちの意思を行動でも示してほしい。私はこう続けました。「そうだよね。ママはそんなあなたたちのために、時間とお金を使って応援しているの。だから『行けばいいんでしょ!?』っていう態度をとられたら、『ママのために行ってもらうんじゃないんだけど』ってカチンときちゃうの」「う~ん・・・」「確かにママのためじゃなくて、私たちのためにママが協力してくれてるのよね・・・・・・」「やりたいことができるのはすごくステキなことだけど、練習も努力も必要だし、面倒な時もあるよね。でもそこを誰かに委ねてしまったら『やらされてる』感じがして、いつか嫌になっちゃうよ。自分たちの人生は自分たちのもの。ママはあなたたちの一番の応援団。そこを間違えずにいこうね。」「だからママ、いっぱい応援してね」「わかった!これから面倒くさいって思った時は、ママにその気持ちをぶつけるんじゃなくて、やりたいのは自分だって確認することにする」毎日を「自分でデザインする」という意識を持ってもらうために出典 : こうして話し合いは終了しましたが、この「ママにやらされている感」は、習い事に向かう時だけの問題ではなく、普段の生活すべてにおいて子どもたちと衝突する材料になっていたのです。「一日は24時間しかないんだよ!やるべきことを後回しにしていたら、1日が終わっちゃうよ!」と何度声をかけても「後でやるから大丈夫だって!」と平気な顔をし、結局夜になると焦って半泣きになる子どもたち。子どもたち自ら1日の過ごし方を上手に選択してゆく方法はないかと、手帳を使ったり、やることリストを作ったりしていたのですが、先を見越して行動するのが苦手な子どもたちには、なかなかしっくりときませんでした。よい機会でしたので、今回は月間スケジュール用のホワイトボードを購入し、子どもたちが自分たちで1日の過ごし方をデザインできるように工夫してみることにしたのです。Upload By GreenDaysそのままのホワイトボードは1日~31日までの日付が書いてあります。これを1日の予定表として使用するため、日付の部分を時間に読み変えます。25~31日の日付を隠して、24時間の予定表の完成です!100円均一のお店で買ってきたマグネットシートを、予定表の幅と後で貼るマスキングテープの幅を考慮して15mm幅にカットしたら、くるりとマスキングテープを巻きます。突発的な予定はマスキングテープの上から直接油性ペンで記入し、予定が終了すればまたテープを貼り直して新しい予定を書くことができます。毎日の生活で必ず行うこと、お勉強の内容、習い事は、マスキングテープの色をわけ透明のテプラでシールを作成して貼り付けました。また、習いごとのマグネットには、家を出る時間と電車の時刻も記入しておきます。これで毎回紙に書かなくても、子どもたちが自分で予定を確認することができます。毎朝、自分が今日1日をどんな風に過ごすのかを、マグネットを移動させながら決めていきます。これが案外子どもたちは楽しいようで、ああでもないこうでもないと、自分の1日を想像しながら予定を埋めていきます。「ママ、この時間に勉強を見てほしいんだけど大丈夫?」「この時間にピアノをしたいけど、お姉ちゃんもこの時間?じゃあどうしようかな?」「ねえ、夜8時から一緒に映画を観ない?それなら夕食までに全部終わらせておこうよ!」今までは自分以外の行動にあまり注意を払っていなかった子どもたちでしたが、家族が共通で利用するものは予定がぶつからないように、家族の協力が必要ときはあらかじめお願いできるようになってきました。そして、自分で決めた時間通りに行動することで、「ママにやらされている感」はほぼゼロになり、私のストレスもずいぶんと減りました。なにより子ども自身がすんなりと次の行動に移れるようになってきたのです。自分の世界を壊された!邪魔された!と感じさせないために出典 : 発達障害のある子どもの中には、自分の世界に没頭している時間に安らぎを覚え、その世界に誰かが介入してくると「邪魔をされた」「大切な時間を壊された」と感じてしまう場合もあります。私の子どもたちも、読書やぬいぐるみ遊び、マインクラフトなどに没頭し、予定の時間を告げるととても不機嫌になることが多くありました。頭では分かっていても、反射的に「邪魔をされた!」と感じてふて腐れていたのだと思います。自分で自分の1日をデザインするようになってから、子どもたちのその反応はかなり少なくなったものの、なくなったわけではなく、私が声掛けをすると時々「あ~~~、もうっ!」などと声を上げることがあります。もちろん、時計はすぐ見られる場所に置いてあるのですが、なにかに没頭してしまうと自分で時計を確認するというのは、自閉症スペクトラム障害のある子どもたちにとっては、とても難しいことのようです。そこで、30分ごとに鳴いてくれる鳩時計をスケジュールボードの隣に設置しました。鳩時計は家族で一緒に選んだものなので、子どもたちは鳩が鳴くのをとても楽しみにしています。音につられて鳩を見ると、自然に時間を確認することができます。そうすれば「誰かに邪魔をされた!世界を壊された!」と感じることはなく、「あ、もうそんな時間か。予定を確認しよう」という流れができて、とてもよい方法だったと思います。今は小学生の子どもたちも、大きくなるにつれ、親の知らない世界に足を踏み入れることが増えてくるでしょう。大学生になったり、アルバイトをしたり、就職をしたり…どんな道に進むか想像もつきませんが、自分でスケジュールを組み立ててこなしていく力というのは、どこに行っても必要になってくると思います。そのときになってから焦るのではなく、今のうちからそれぞれの特性にあった方法を模索し、試行錯誤を繰り返して「こうすればタスクをこなせる」という自信を持つことができれば、社会に出るときの大きな足掛かりになるかもしれません。我が家の場合は、学校に行かずに家で過ごしていますので24時間単位でスケジュールを管理できるようにしましたが、他にも学校から帰宅した後の時間の過ごし方、休日の過ごし方など、目的に合わせた活用方法がありそうです。時間や予定を目に見える形にすることで、子どもは自分で自分の毎日をデザインしやすくなります。そうすることで、家族みんなが穏やかに過ごせる時間が増えるといいですね。
2017年09月10日私を苦しめた「かわいそう」という言葉出典 : 自分の子どもが発達障害であることをカミングアウトすると、やや的外れなコメントを向けられることがあります。カミングアウトするたびに「天才児なんでしょ」とか「ぜんぜん普通じゃん」とか言われることに、もはや慣れたと言えるくらいです。もちろん相手には全く悪気はありませんし、世の中の人がみんなが発達障害について深い知識があるわけでもありません。必要以上に理解あるコメントを相手に求めるのは、あまりに酷なことだと思います。ですから、私は必要以上に息子の障害のことを周りに話していません。それはカミングアウトしたときに、相手に背負わせてしまうことがあまりに大きく、それは自分にとっても相手にとってもあまり嬉しいことではないからです。私がカミングアウトを慎重にするようになったのは、いくつかの失敗経験がもとになっています。それは、一度カミングアウトをしたときに、こんなことを言われたからです。「息子くんかわいそう。お母さんもかわいそう。家族みんなかわいそう。でも、お姉ちゃんはまともだったんでしょ?それだけが救いだね。」その一言を聞いた瞬間に、私は頭にカーっと血がのぼるのを感じました。けれども、何に対して怒っているのか、自分でも理解ができません。相手は、私のことを心から思って言ってくれている、息子のこともいつも可愛がってくれている、なのに、なんでこんなに悔しいんだろう…。私の頭は混乱状態です。結局、何が嫌だということを表現できぬまま、その人と会うことは二度とありませんでした。「かわいそう」という言葉に憤る気持ちはどこから…出典 : 知り合いに「息子くんかわいそう。お母さんもかわいそう。家族みんなかわいそう」と言われたときに、どうして私はあそこまで頭に血がのぼったのか。その人と二度と会うことができなくなったのか。悶々としながらずっと考え続けました。どうやら私は、「かわいそう」という言葉にものすごく抵抗があったようです。息子はかわいそうなのか?自分はかわいそうなのか?私は「かわいそう」と思って、この子を育ててきたのか?そして何よりも、発達障害ではない上の娘は「まとも」で、発達障害のある息子は「まともではない」のか?じゃあ「まとも」ってなんだろう。グルグルと考え始めると止まらなくなり、そのとき何も言い返せなかった自分に対するいら立ちも募ってゆきます。でも、じゃあどう言い返せば良かったんだろう?悲しいことに、答えは簡単には浮かんできません。自分の選択を肯定できない日々出典 : それ以降も、ずっといら立ちを感じ続けてきた私。気付いたら、息子は小学校に入学する年になっていました。息子が小学校に入学する前、私は息子に対して感じる罪悪感で、気持ちが沈みっぱなしになっていました。それは、私が周囲の反対を押し切って、息子の小学生生活に通級を選んだからです。お風呂に入りながら、一緒に眠りながら、私は何度も何度も息子に言いました。「ごめんね。お母さんを許してね。通級を選んで本当にごめんね。かわいそうなことをしてしまったね。」「みんな、息子くんは通常級で大丈夫だよって言ってくれたのにね。あなたに恨まれたら、ずっと背負って生きていくよ」息子の進路を自分が決めてしまったことに対する罪悪感。取り返しのつかないことをしてしまった恐怖。今思えばそこまで悩み苦しむ話でもなかったのに、私は息子に申し訳なくて、ずっと顔向けができませんでした。さらに、ネット上の言葉も何度も自分に突き刺さりました。一番痛かったのは、「わずか6歳で『自分は違う』ということを突き付けられる残酷さを分かっていますか?」という言葉。それからというもの、ネットの意見を見るのも怖くなりました。息子の言葉に救われて出典 : 通級を選択していたものの、小学校に入学して間もない間、息子は通常級のみで過ごすことになりました。最初は楽しく通っているように見えましたが、みるみる息子の体力は削られていったようでした。ただでさえ新しい環境でいっぱいいっぱいの状態なのに、通常級は息子にはとても不快な刺激の多い場所だったようです。朝になっても疲れが抜けない日が続き、登校中に腹痛を訴えて戻ってくる日も増えました。そのうちに、息子は帰宅してから学校の話ができなくなりました。「思い出そうとすると疲れる」「まとまらない」と青ざめた顔で横たわるようになりました。明らかに、息子の頭の中のメモリは多々の情報でオーバーワーク状態でした。しかし、ゴールデンウィーク明けぐらいからでしょうか。息子の様子に変化が訪れます。帰宅したときの息子に笑顔が増え、学校の話をいろいろとしてくれるようになり、頭痛や腹痛の訴えもなくなったのです。どうしたのかと学校側に聞いてみたところ「特別支援学級での授業が開始されました」とのお話でした。息子に話を聞いてみたところ、教室内の刺激が通常級と特別支援級では全く違うということ、そして何よりも、特別支援級の先生はよく褒めてくれると話してくれました。また、情報の洪水に頭が疲れてしまったときは、クールダウンスペースがあって、本当に助かるとのこと。何よりも驚きだったのが、特別支援級に通うようになってすっかり元気を取り戻した息子を、なんと同級生たちがみんなで羨ましがるのだそうです。「いいなあ~、〇〇学級僕も行きたい」とみんなに言われて、息子は「君たちも頑張れば、僕みたいになれるよ!!」と言ったというではありませんか!これは本当にびっくりで、息子にとっても息子の同級生たちにとっても、特別支援級に通っていることは「かわいそう」でもなんでもなく、「羨ましい」ことだったのです。息子を「かわいそう」にしていたのは、出典 : 無事一学期が終わり、通常級と特別支援級と特別支援員の先生方みんなに可愛がられた息子は、小学校が大好きになりました。特別支援級に行くことは、息子にとっては「違う人間だと選別される」ことではなく、自分を見てくれる先生方を複数の場所に持つということだったのだと分かりました。この一件を通して私は気付いたのでした。息子を「かわいそう」と思っていたのは自分であったこと、そして、そんな自分自身に対して怒りを覚えていたからこそ、友人に「息子くんかわいそう」と言われた途端にどうしようもない怒りが湧いてきたのだとも…。多くの場合、誰かに対して意味もなく怒りを感じるときは、自分自身が抱える何かに怒りを感じている場合が多いのかもしれません。発達障害のある息子を「かわいそう」にしていたのは誰か?それは紛れもなく、私自身だったのです。
2017年09月07日自律神経失調症とは?出典 : 自律神経失調症とは、検査しても身体に明らかな異常がみられないのに、肩こり、めまい、頭痛などの自律神経の乱れが関係する身体の不調がある状態のことです。実は「自律神経失調症」は日本独自に定着した疾病概念で、国際的・医学的な病名としては、その定義や診断基準は確立していません。そのため医師によって捉え方が違うだけでなく、自律神経失調症の存在自体を認めない医師もいます。また、医師によっては、原因不明の症状に診断名を与える場合に便宜的に診断する場合もあります。このように、自律神経失調症を取り巻く言説は、未だ整理されていません。しかし、実際に自律神経失調症と診断された方がおり、「自律神経失調症」という名称は多くの方に認知されています。そこで、この記事では日本心身医学会の暫定的な定義に基づき自律神経失調症を説明していきます。参考文献:福永伴子/監修『図解すぐできる! 自律神経失調症の治し方 』2015年ナツメ社/刊日本心身医学会における暫定的な定義は以下の通りです。種々の自律神経系の不定愁訴を有し、しかも臨床検査では器質的病変が認められず、かつ顕著な精神障害のないもの(引用:心身症と自律神経失調症の違い|医療法人中沢会上毛病院HP)自律神経失調症の症状出典 : 自律神経失調症は、人によって症状の現れる箇所や度合いがかなり異なり、身体面にも精神面にも影響を及ぼす可能性があります。ここでは、自律神経失調症の症状の一部を紹介いたします。■全身に現れる症状・だるい、疲労感・多汗あるいは汗が出ない・食欲増加もしくは低下・睡眠障害・立ちくらみ・めまい・微熱・発熱・血圧の異常(低血圧・高血圧)など■特定の箇所に現れる症状・頭痛・動悸・耳鳴り・咳・肩こり・手足のしびれ・息苦しさなど■精神面・情緒不安定・不安・パニック症状・集中力の低下・イライラなど参考文献:筒井末春/著『月刊「医学と薬学」』――自律神経失調症1985年10月自然科学社/刊参考文献:大塚邦明/著『月刊医道の日本』―ー自律神経失調症に対する鑑別、診断、治療2015年1月号医道の日本社/刊自律神経失調症の原因出典 : 自律神経失調症は自律神経が乱れることにより生じますが、その最大の原因はストレスであるとされています。職場環境、人間関係や生活リズム、災害、気圧などのその人を取り巻く環境と、その人自身が持つ体質や性格、持病などの要因が複雑に絡み合ってストレスとなります。そのため、治療においてもストレスをいかに軽減するかが重要になってきます。出典 : 参考文献:伊藤克人ら/編『専門医が治す!自律神経失調症―ストレスに強い心身をつくる、効果的な療法&日常のケア (「専門医が治す!」シリーズ) 』2001年高橋書店/刊参考ページ:自律神経失調症とうつ病・パニック障害・心身症の違いとは?|せせらぎメンタルクリニックHP自律神経失調症かもと思ったらどこを受診すればいい?出典 : 自律神経失調症に心当たりがあるときは、頭痛なら内科、肩こりなら整形外科など、まずは身体的な症状にあわせて受診する科を決めましょう。自律神経失調症には明確な診断基準がありません。そのため医師によって診断の仕方は異なりますが、1.からだの病気がないことを確かめる検査2.こころの病気がないことを知るための面接や心理検査3.自律神経系の検査この3種類の検査をして診断の材料とすることが多いとされています。受診の結果、別の診断名がついたとしても、まずは医師の指示に従った上で、様子をみましょう。それでもなかなか治らない場合や以前にも何度か同じ症状がでている場合には、総合病院や大学病院などで検査を受けることを検討する必要があります。検査で原因が見つからなかったり、再発を繰り返す、精神的な症状が現れてきた場合は、身体面からだけでなく心理面からも診療する心療内科を受診することをおすすめします。参考文献:伊藤克人ら/編『専門医が治す!自律神経失調症―ストレスに強い心身をつくる、効果的な療法&日常のケア (「専門医が治す!」シリーズ) 』2001年高橋書店/刊自律神経失調症の治療法は?出典 : 自律神経失調症の治療には、以下の4つの療法を中心に行われます。■薬物療法めまい、頭痛などの身体症状や、不安感などの心理的な症状を取り除くために、薬を用いる場合があります。自律神経調整薬や抗不安薬、ビタミン剤、漢方などが処方されることがあります。参考ページ:自律神経失調症|前田クリニックHP・漢方の留意点自律神経失調症により現れる症状を和らげることを目的として漢方薬が処方される場合もあります。ただし、個人の体質や抵抗力などにより調合される薬も異なるので、漢方薬を試してみたい場合は必ず医師に相談することが必要です。漢方外来などの専門外来だけでなく、心療内科の医師も漢方を処方してくれる場合があり、保険が適応される可能性もあるので、気になるときは医師に相談してみるのもひとつの手です。■心理療法(精神療法)心理療法では、医師との会話を通じて心理的なケアをしていきます。認知行動療法や簡易精神療法、自律訓練法など様々な種類があるので、患者一人ひとりに合わせた療法をすることになります。■理学療法肩こりやなどの身体の痛みや手足のしびれをやわらげるために、指圧、マッサージ、鍼灸(しんきゅう)、温熱治療、電気治療などの理学療法が取り入れられることがあります。その場合、病院などにおいて医師の指導のもとに理学療法士が行うことになります。・心理療法、理学療法を受ける際の医療費における留意点理学療法や心理療法を医師が治療の一環として認め、病院内で受ける場合なら、ほとんどの場合保険適応になります。しかし、それ以外の場所で治療を受ける場合は保険適応にならず全額自己負担となる場合が多いため、注意が必要です。その他にも、専門の治療院で症状の改善を目的とした施術が行われていることもあります。中には自律神経失調症を治療対象とした保険適応の施術を行う治療院もありますので、一度お近くの治療院を調べてみるのもおすすめです。ここで注意したいのは、理学療法によって一時的に身体が楽になることはあるとはいえ、根本治療ではないので、他の治療法と合わせて行う必要があるということです。■生活指導食生活や睡眠時間、運動などの生活リズムを見直し改善するためのアドバイスを受けます。自律神経失調症を改善したいとき、自分で出来るセルフケアは?出典 : 乱れた生活スタイルは自律神経が乱れる大きな要因の一つです。この章では、自分でできる生活スタイルの改善方法の一部を紹介します。ポイントとなるのは、できる範囲で少しずつ改善していくことです。生活リズムを改善しようと気を張りすぎると、それが逆にストレスとなることがあるからです。気を楽にして、一歩一歩生活を改善していきましょう。■食事時間を一定にする食事をできるだけ決まった時間にとることで、自律神経失調症と深い関係をもつ体内時計が正常になります。■朝食は抜かずに1日3食食事は1日3食とるようにしましょう。朝食をとることで、心身の活動に必要なエネルギーを得られます。また、朝食をとることにより交感神経への切り替えが行われ、身体を目覚めさせます。■栄養バランス自律神経失調症のある方は、食事のバランスが崩れがちであることもあります。健康維持のためには、日頃からバランスのよい食生活をすることが大切です。ご飯やパンなどの主食、肉や魚などの主菜、野菜や海藻などの副菜、スープや味噌汁などの汁物の4構成を意識した食事をすることで、バランスの良い食事をとることができます。参考ページ:「食事バランスガイド」について|厚生労働省HP■早寝早起きをする自律神経のバランスと深い関わりがあると言われる体内時計を整えるためには、昼は活動、夜は休息という生活リズムを整えることが大切です。朝に光を浴びることで体内時計がリセットされるので、体内時計の狂いを修正していくには、早寝早起きを続ける必要があります。早寝早起きをするためには、あらかじめ就寝時間と起床時間を決めておくことや、就寝前に入浴やストレッチなどをして十分リラックスすること、寝る前の飲酒を控えることが効果的です。それでもどうしても眠れない場合は担当の医師に相談してみることや、睡眠外来に行くのもひとつの手でしょう。参考ページ:体内時計と睡眠のしくみ|武田薬品工業株式会社HP参考文献:大塚邦明/著『月刊医道の日本』―ー自律神経失調症に対する鑑別、診断、治療2015年1月号医道の日本社/刊まとめ出典 : 自律神経失調症は、症状を説明しづらいため、なかなか周囲の理解を得ることができずにつらい思いをされている方も多いでしょう。適切な治療を受けることに加え、食生活や睡眠など、自分でできる改善方法を意識することが大切です。あせらず、気持ちに余裕をもって療養しましょう。
2017年09月05日今、何をしていたのかを覚えておけない息子出典 : わが家には自閉症スペクトラムと診断された小学1年生の息子と小学4年生の娘がいます。息子は不注意優勢型ADHDの特性が強く、娘はアスペルガーの特性が強いという特徴があります。さて、先日息子の勉強を見ていたときのことです。文字を書き間違え、「あ!間違えちゃったから、えーっとどうしよう...。そうだ!消しゴムで消せばいいんだった!」と言いながら、息子が筆箱から消しゴムを取り出しました。今までは文字を書き間違えるだけで「ママ、どうしたらいいの?」と半泣きで助けを求めていた息子。そんな息子も自分で解決策を見つけられるようになったんだなと、私は微笑ましく見守っていたのです。ところが、消しゴムを手に取った息子はそれをじっくりと眺めた後、何を思ったか紙のカバーをはずしました。そして匂いを嗅いで満足げにうなずいたかと思うと、今度はカバーを消しゴムに装着し、ゆっくりと筆箱に戻したのです。えっ!?間違えた文字を消すんじゃなかったの!?という衝撃と共に観察を続けていると、息子は間違えた文字には見向きもせず、何事もなかったかのように、続きのマスに文字を書き出しました。驚きを隠せぬまま「いやいやいやいや、何のために消しゴムを出したの?」と息子にたずねてみると…「え?消しゴム?う~ん、そうだった!文字を消そうと思ったんだった・・・でももう続きを書いちゃったし、まあいいや!ね?」と朗らかな回答で押し切られてしまいました。結局消しゴムが本来の目的で使われることはなかったのです。これは、お姉ちゃんである娘とは正反対。文字を一つ書き間違えただけで激怒し、自分を罵る娘の姿を見てきた私にとって、対照的な息子の朗らかさは少し微笑ましかったりもします。しかし「今どんな目的で何をしていたのかを覚えていられない」という特性は、今もこの先も息子の人生に大きな影響を与えていくことになるのだろうなと不安な気持ちに駆られます。過去の出来事がフラッシュバックし忘れられずに苦しむ娘出典 : 一方、アスペルガー傾向の強い娘は、過去の出来事を忘れることができずに悩んでいます。何年も前に〇〇君に押されたことが許せない、あの時〇〇と言い返せば良かった、できなかった自分が許せない、など、数年前の出来事であっても、さも今目の前でその出来事が繰り返されているように感じてしまうのです。そして、その記憶が頭をよぎった途端に激高し、再び傷つき恥をかき、怒りを噴出させるのです。これは同じような特性を持つ私自身も長年苦しめられてきました。今でも30年以上前の記憶に縛られ、思いだすたびに「どうして忘れられないんだろう」「忘れることができればどれほど楽だろう」と苦しい気持ちにさいなまれていました。そんな特性を持つ娘と私とは正反対の息子。しかし、息子の「覚えられない」という特性もまた、日常生活のさまざまな場面でトラブルを生んでしまい、彼を苦しめる要素になるかも知れないなと感じています。正反対の娘と息子。2人を見ていて思うこと出典 : 息子は、忘れ物を取りにいったはずなのに気がつけばピアノを弾いていたり、ズボンを半分はいたまま本を読んでいたりすることがあります。さらには、喋っている間に自分が何を話そうとしていたのかを忘れることもあります。周囲の人には「大丈夫!そんなこと、普通の人でもあるよ!」と言われることも多いのですが、不注意優勢型ADHDの特性が優位な息子の場合は、朝起きてから夜眠るまでずっと、これが続いているのです。息子を観察していると、彼の世界では過去や未来というものがあまり認識されておらず、「今目の前にあるものが世界のすべて」という捉え方をしていることに原因があるような気がします。先程の消しゴムの例でいうと、「文字を間違えた」ことは「消しゴムを取りだす」という動作を行ったことですでに過去のものとなり、今現在の彼の世界にあるのは「手に持った消しゴム」だけなのです。それを眺めているうちに「カバーを外したい」「匂いを嗅ぎたい」「カバーをつけたい」という欲求が次々と湧き出て、それをこなして行くことで世界は進んでいきます。やがて「手に持った消しゴム」への興味はなくなり、筆箱に戻したところでノートと鉛筆に気づくと「何かを書かなくては」と焦り手を動かし始めます。しかしそのときにはすでに「文字を間違えた」という過去はきれいさっぱりと彼の世界から消えているのです。「今、目の前にあるものが世界のすべて」という捉え方をする息子と、「過去が現在進行形で繰り返される」娘。タイプの異なる二人を育てていると、同じ自閉症スペクトラムという診断がおりていても、表出する特性はこうも違うものなのかと驚かされることがとても多くあります。娘に効果のあった工夫のしかたが、息子では混乱の原因になってしまうことも珍しくありません。兄弟といえど、一人ひとりの様子をよく観察しながら、その子に合ったサポートの方法を考えることの重要性をひしひしと感じます。子どもたちが自分の特性を理解できるように出典 : いずれ子どもたちが自分の力で歩き出すときに、どんなことが必要になるでしょうか。身の回りのことを自分でできるようになっておくこと、お金の使い方を知ること、他人とのコミュニケーションの取り方を身につけておくこと。いろいろあると思いますが、私は「自分の特性を理解し、工夫する術を知っている」ということがとても重要だと考えています。私自身も長い間、他人も自分と同じような感じ方・捉え方をしていると当然のように思っていました。そして、自分は他人より能力が低いために、人と同じように振るまえない出来損ないの人間だと思っていました。でも、子どもたちが発達障害と診断されて学んでいくうちに、情報の認知の仕方も処理のしかたも人それぞれで、同じやり方で同じ結果が残せなくても、それは自分がダメな人間だからではないと知ったのです。自分がどんなタイプで物事をどう処理しているのかを知る、苦手を工夫で補えることを知る、というのは、自分を否定せずに生きていくうえでとても大切なことだと思うのです。そんな思いから、私は普段から子どもたちとそれぞれの特性についてお話しをすることにしています。「お姉ちゃんは過去のことが忘れられなくて苦しんでるんだよ。でも、いつも細かいことをたくさん覚えていてくれて、すごく助かっちゃうよ!頼りになるよね!」「弟は覚えられなくていつも面白いことになっちゃうよね~!困ることも多いけど、気分をケロッと切り替えられるからそこはとってもいいところだよね!」こうすることで、娘が辛い過去を思い出してるときに息子が頭をなでてあげたり、息子が今何をすべきかを忘れた時は、娘がさりげなくヒントを出してあげたり、お互いに助け合うことができるようになってきました。ダメなところを否定するのではなく、苦手な部分はさり気なくサポートをし合える。家族でそれができるようになれば、今度は親しいお友だちや親戚と手を差し伸べあう。そんな風に子どもたちの世界が広がって行ってくれればいいなと思います。皆様のご家庭でも、お父さん、お母さん、お子さま、おじいちゃん、おばあちゃん。それぞれどんなタイプで、どんなおもしろい面やちょっと困った面があるのか話し合ってみませんか?自分を知る、身近な家族を知ることが、子どもたちの世界が広がる第一歩になるといいですね。
2017年09月03日不登校の子どもたちの高校進学事情出典 : 不登校の親の会でこんな話を聞いたことがあります。不登校の子どもたちは「高校には行きたい」と希望するものの、なかなかパンフレットを見ようとしなかったり、学校見学に行っても門の前でUターンしてしまことがあるそうです。だから進学が決まるのがギリギリになるケースが多いと言います。我が家のアスペルガー症候群の診断を受けている娘も小学校2年生から不登校。中学校2年生まではほとんど勉強もすることなく毎日を過ごしてきました。そんな娘も中学校3年生になり進路を考える段階にさしかかっています。実は中学2年生のとき、特別支援コーディネーターの先生が、娘に合いそうな高校を3つセレクトしてくれていました。しかし、その頃の娘は、進学を現実のこととして考えるのは難しい様子で、自分からパンフレットを見ることはありませんでした。時期が早かったというのもあったでしょうが、「ああ、親の会で聞いた通りだな」と思った私は、「高校のパンフレットはここに置いておくよ」と声だけかけて、しばらく待っていました。親の会の先輩お母さんたちからは、「親は早めに準備しておくといいけれど、逆に子どもたちはそっとしておいた方がいい。」「進学したいと口では言っていても、気持ちが追い付いていないことがあるから、子どもに言われたときにすぐ資料を用意できるようにしておいて、あとは見守る方がいいよ」と聞いていました。だからパンフを開こうとしない娘を深追いしても、余計に心を閉ざしてしまうと思い、そっとしておくことにしたのです。進路を決めるまでの気持ち出典 : つの学校を提案された時点では、「せっかく先生が選んでくれた学校だから信頼できる。全部見てみたい。」と積極性を見せていた娘。そんな言葉とは裏腹に、自らのパンフレットを開くのは、かなりのパワーが必要だったようです。ひとたびパンフレットを見てしまったら、それまで漠然としていた未来が急に現実味を帯びて、ありありと迫って来るように感じられたのでしょう。娘の「ちょっと待って、もうちょっとだけこのままでいさせて」という気持ちがうかがえます。「そのうち見るから」といいながら憂鬱そうにパンフが入った袋を置く娘。その姿を見て「高校のことを考えるのって、この子にとってはこんなに負担のかかることなんだ。」と思い知りました。「パンフレットを見るだけなら簡単でしょ」と無理やり娘に見せようとする気持ちがわき起こらなかったわけではありません。それをしなかったのは、脳裏に浮かぶ先輩ママの体験談の数々があったから。不登校ならではの葛藤、本人たちも精一杯頑張ろうとしているのにうまくいかないつらさあることを知っていたので、「私も気長に頑張ろう」と思ったのでした。そんなとき、ソーシャルワーカーの方と面談中の「娘の高校の件で悩んでいる」と言うと、「梅雨までに一緒に見学に行ったほうがいいですよ。梅雨に入ってしまえば動きにくくなりますし。」とアドバイスされました。ソーシャルワーカーは娘とも面識があり、我が家の内情をよく知っています。娘をそっとしておこうという気持ちはあったとはいえ、信頼している福祉のプロからのアドバイスなら試してみようと、思い切って私は娘に期限を提示することにしたのです。「梅雨までに一つだけでも見学に行きたいから、どこに行ってみたいか5月中に決めてくれる?」すると、娘もお尻に火が付いたのか5月後半から学校案内のパンフレットを見始め、末日までに「この高校を見に行きたい」と言ってきたのです。いざ見学へ出典 : 娘が選んだその学校は自宅から自転車で通うことができます。そこはもともと塾だったところで、今は通信制高校の技能連携校になっています。技能連携校というのは、通信制高校の分校のようなところで、通信制高校と技能連携校の両方に入学することで、技能連携校の方で卒業に必要な出席日数、レポート提出、試験をすべて済ませることができるそうです。とてもアットホームな雰囲気で、小さな教室がいくつかあり、授業は昼から行われていました。制服もなく、生徒さんが好きなときに来て、自分のペースで学習している、そんな様子でした。学校は頻繁に出かけるなじみのある地域にあったので、娘はいつものTシャツにジャージ素材の半パン、草履といった格好で、気負った様子もなく家を出ました。ただし、非常用の腹痛の薬はしっかりかばんにいれていたところを見ると、不安の気持ちがなかったわけではないのでしょう。学校の入り口についても、「入り口はここだよ~」「お~」という感じでリラックスしています。2人で雑居ビルのワンフロアにある学校に入ると、校長先生がニコニコして応接スペースに案内してくれました。ここの校長先生は息子さんの不登校を経験しており、不登校に理解の深い方です。在校生が入れてくれたお茶を飲みながら、さりげなく校長先生と娘の面談が始まりました。「ここは昼から1時間だけ授業があります。できれば週5日来てくれたらいろいろな勉強ができますが、しんどかったらもっと少なくても大丈夫。」という話を聞いて娘もホッとしたようです。応接スペースからも、教室の様子をうかがうことができ、学校の雰囲気がよくわかった娘は安心したようです。あまり学校らしくないというか、小さな塾といった雰囲気なのもよかったのでしょう。学習室も見せてもらいました。棚にはカリキュラムに沿ったプリントと、それを理解するための教科書や参考書がセットで置いてあって、来ている子は順番に黙々とこなしていました。娘が「私は勉強していないから小1からやらないといけないかもしれない」というと、「大丈夫。みんな小学校の勉強から始める子がほとんどだからね。」と言われました。実際、小1レベルから対応しているそうです。また話の最中にびっくりしたことがありました。面談中に「体育の時間はテーマパークに行ったり、 ボウリングに行ったりするんだよ」という話が出ました。すると、娘は「それは行かなくてもいいですか。 人が多くてザワザワしていたり、トイレにすぐに行けないようなところに行くのは嫌なんです。」 とはっきり答えました。初めて会った先生に、はっきり自分の気持ちを言葉にした娘を見るのは初めてで、その様子から娘がいかにリラックスしているかわかりました。また、そこの学校に入る予定の人には、慣れるためと少しずつ勉強を始めるために付設するフリースクールに入ることを勧めていると聞かされました。どうやら普通のフリースクールというよりここの学校の補助的な役割をする塾みたいなもので、スタッフも場所も、この学校と一緒ということです。校長先生の「学校に入るまでここで少しずつお勉強してみませんか?」というお誘いに、「どうする?」と娘に聞いたら「行く」と即答。結局、その日のうちにフリースクールに入学することになりました。帰ってから、「どこが気に入ったの?」と聞くと「うーん、なんとなく。 ママもそんな感じやろ」と最初は言っていましたが、しばらく経つと「あのゆるい雰囲気がいい」「電車に乗らなくてすむのがいい」とポツリポツリと語っています。彼女にとって安心できる場所だと判断したのでしょうね。進路が決まってから出典 : それからすぐに週1回フリースクールに通うことになったのですが、1回行くととても疲れるようで、次週はお休みすることが多いです。だいたい月3回ペースでしょうか。私も本人が「もういいよ」と言うまで続ける覚悟で毎回付き添っています。毎回疲れ果てているものの、雰囲気はやっぱり合っていたようで、リラックスして過ごしているなと感じます。ことあるごとに「ママ、高校の予定表ある?」と聞いてきたりして、積極的に高校のことを意識しているようです。心はすでに高校に行ってますね。親としては、中学を卒業しても行くところができて一安心といったところです。フリースクールに行くようになったのもうれしいですね。あとは体力と学力が少しずつでもついてくれればいいのですが、それこそ気長に待とうと思います。不登校の子どもの進路について娘の場合、早いうちから進学する学校の候補を知れたことが大きな助けになったと思います。それによって余裕を持って娘の気持ちが熟すのを待つことができました。また親の会で不登校の子どもの傾向を知っていたことで、無理強いはせず、大切なことは面と向かって本人と話し合うことにつながりました。これらの経験から、早めに学校の先生と進路について話し合うことをお勧めしたいと思います。また親の会などで口コミ情報を聞くのもおすすめです。そうすることで将来のことがイメージできて、親も落ち着いて受験生となった子どもと向き合うことができます。また、この時期には本人の気持ちの揺れも起こることがあると思います。余裕を持って準備をしておけば、子どもも入学に備えて心構えをすることができるので、自分の希望やライフスタイルに合った学校を落ち着いて選べるメリットがあると思います。不安な気持ちに押しつぶされそうなのは親だけではありません。不登校の本人も不安と戦っています。葛藤のさなかにいる子どもを叱咤するのではなく、認めてあげながら次の一歩を一緒に考えてあげることが、進学という大きな節目を乗り越える力になるのかもしれません。
2017年09月01日避難行動要支援者って?災害時に避難しにくいのはどんな人?出典 : 地震や津波、水害などの災害が起きたとき、自力で避難が難しかったり、避難に際して特別な配慮が必要な場合があります。阪神淡路大震災や東日本大震災の時などにも、高齢者や障害のある方の中には自ら避難するのに何らかの困難を抱えた方も多くいました。たとえば以下のような人は一人では避難しにくいと考えられます。・視覚・聴覚障害があり、災害発生時に周りの状況の把握がむずかしい。災害情報が得にくい・高齢者・身体に障害がある人で、自力での避難が困難な人・知的障害や精神障害などがあり、地震や災害が起きた時に、どう行動したらよいかわからない障害のある人・重度心身障害者、人工呼吸器や温度調整が必要な人そのため、このような人を避難行動要支援者とし、名簿を作成してスムーズな支援ができるように平成25年6月、災害対策基本法が改正されました。またこれらの周知のため、今年(平成29年)パンフレットや事例集も作成されました。リーフレット「災害時に備えて今できること」|厚生労働省避難行動要支援者の避難行動支援に 関する事例集|内閣府災害対策基本法改正によりできた「避難行動要支援者名簿」の制度出典 : この法律で、市町村に避難行動要支援者名簿の作成が義務付けられました。簡単に言うと、上記のような一人では避難が困難な人が、災害時にサポートを受けられるように事前に登録しておくという制度です。自治体が特に支援が必要な人を把握するとともに、災害時にスムーズに支援ができるよう、消防機関や警察、民生委員などの避難支援に関係する人に情報が共有できるようにすることが定められました。名簿には個人情報が含まれるため、災害対策基本法で個人情報漏えい防止のための規定もあります。実際に名簿をつくり、運用するのは市町村です。具体的な支援や制度については、自治体によって異なる場合があるので、お住まいの市町村に問い合わせることをおすすめします。発達ナビのユーザーの皆さんの中には、療育手帳や精神障害者福祉手帳の取得時などに名簿への登録や、情報提供の同意などを求められる場合があるかもしれません。また、災害があったときに一人で避難することが難しそうだと感じている人もいるかもしれません。避難行動要支援者がどのような支援を受けられるのかを知り、必要に応じて名簿に登録することで、災害への備えの一つとしてはいかがでしょうか?災害対策基本法避難行動要支援者名簿の作成等に係る取組状況の調査結果どんな支援をしてくれる?出典 : ・避難のための情報伝達情報を得ることが難しい人のために、その人が情報を得やすい方法で災害情報を得られるようにサポートします。・避難支援災害時、避難行動を支援します。また、要支援者の特性に合わせた個別の避難計画の作成や防災訓練をする場合もあります。平常時も支援者による声かけや見守りにつなげておくことも含まれます。・安否確認名簿が災害時の安否確認に活用できます。・避難場所以降の避難行動要支援者への対応避難した後も、避難場所での支援者への引き継ぎがスムーズに行えることがあります。名簿への登録は?出典 : 災害対策基本法では、以下を避難行動要支援者と定め、市町村に把握と名簿の作成を義務付けています。当該市町村に居住する要配慮者のうち、 災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合に自ら避難する ことが困難な者であつて、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため 特に支援を要するもの具体的な対象者の範囲はお住まいの市町村によって異なります。以下に千葉市の場合をご紹介します。名簿に掲載される方65歳以上のひとり暮らしの方で、介護保険の要介護認定区分1・2の方、または要支援認定区分1・2に該当する方要介護認定区分3~5に該当する方次に該当する障害がある方視覚障害(1級又は2級)、聴覚障害(2級)、上肢機能障害(1級又は2級)、下肢機能障害(1級又は2級)、体幹機能障害(1級、2級又は3級)、乳幼児期以前の非進行性の脳病変による運動機能障害のうち上肢機能障害(1級又は2級)、乳幼児期以前の非進行性の脳病変による運動機能障害のうち移動機能障害(1級、2級又は3級)、呼吸器機能(1級)、小腸機能(1級)、精神障害(1級)、知的障害(AまたはⒶ)難病患者で身体障害者手帳1・2級の方及び小児慢性特定疾病等で療養負担過重患者の方制度の運用も自治体によって異なります。自分が名簿に登録されているか確認したいときや、定められた対象ではないが一人での避難が困難な場合などで、名簿への登録を希望するときはお住まいの自治体に問い合わせてください。制度の運用方法は市町村によって異なりますが、以下に大まかな流れをご紹介します。1. 市町村が支援が必要な人の情報を集め、避難行動要支援者名簿を作成します。避難行動要支援者名簿には、掲載者の氏名、生年月日、性別、住所、電話番号その他の連絡先、避難支援等を必要とする事由、その 他避難支援等の実施に必要な事項が掲載されます。参考:災害対策基本法49 条10 第 2 項2. 名簿情報を平時から支援者に提供していいか、確認がされ、問題なければ同意します。3. 同意した人の名簿情報が消防、警察、民生委員などの支援者に提供されます。4. 支援者が日常の声かけなどの見守りや避難訓練などの支援を行います。5. 災害時には市町村や支援者により避難行動に関する支援や安否確認などが行われます。個人情報が支援者に提供されることに不安を感じる人もいるかもしれません。災害対策基本法によって、避難行動要支援者名簿を提供した支援者には守秘義務が発生します。また各自治体で名簿情報の漏えいの防止のため必要な措置を講ずることも定められています。参考:避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針|内閣府名簿に登録がなくても避難行動に配慮が必要な人もいます出典 : 避難行動要支援者として名簿に登録していない人でも、災害時の避難に困難を抱える要配慮者の人がいます。たとえば発達障害のある人は、自閉症などの特性から、いつもと違うことに強い不安を感じたり、パニックになってしまうことがあります。学習障害がある場合、電光掲示板や掲示物などから情報を得るのが難しいかもしれません。障害が軽度で、名簿に登録していない人でも避難時に思わぬ困難が生じる可能性があることを覚えておきましょう。また外国の人は、日本語での緊急避難速報や避難誘導の声かけが理解できないかもしれません。このほかにも外見からは障害があることがわからない人もいます。もちろん妊娠している人や乳幼児、高齢者なども避難の際に配慮が必要です。全ての人が一人ひとり日ごろから、防災意識を持ち準備することが、地域に住むさまざまな人を災害から身を守ることにつながります。また災害時には、まず自分の身を守ることが第一ですが、周りに困っている人がいないかどうかにも目を配るように心がけたいですね。参考:要援護者の特性ごとの避難行動等の特徴|大阪市住吉区まとめ出典 : 避難行動要支援者というと、高齢者や身体に障害がある人をイメージすることが多いかもしれません。ですが、その他にも避難に際して支援が必要な人もいます。知的障害や精神障害のある方の中には非常時の状況判断が一人では難しい場合もあるでしょう。言語障害のある人は見た目からはわかりませんが、緊急事態を言葉で人に伝えることが難しい場合も考えられます。災害はいつ発生するかわかりません。まわりに様々な困難のある人がいること、そして災害が起きたときのことを想定して事前に対策をすることが、もしもの時の大きな備えとなります。避難行動要支援者名簿への登録はその一つです。行政や避難支援者に受けられる支援にはさまざまなものがあり、避難時のサポートだけでなく、もし避難生活がはじまっても引き継がれます。情報の共有をすることで、日ごろから地域の支援者ともつながりが持てます。また、名簿への登録がない人でも、避難時に支援を必要としている人がいるかもしれないことを心に留めておきましょう。
2017年09月01日発達障害の子どもの療育にも用いられる音楽療法。その最新の動向をお届けします!みなさんは、「音楽療法」という言葉を聞いたことがありますか?音楽療法とは、音楽のさまざまな力を利用して、対象者が抱えている困りごとの改善を促したり、よりよい生活を送ったりすることができるようにアプローチする療法です。この音楽療法を、発達障害のある子どもの療育に取り入れる試みが世界的に広がっていることをご存知でしょうか。まだ日本では音楽療法の保険適用や法整備が実現されておらず、音楽療法士の資格も国家資格となっていないため、療育としての普及には多くの壁が存在しています。しかし、今回茨城県つくば市で5日間に渡って行われた「世界音楽療法大会」への取材を通して、すでに日本でも医療や教育の現場で発達障害児の療育に音楽療法を取り入れようとする試みがなされていることが分かりました。今回の記事では、世界音楽療法大会への取材を通して学んだ、音楽療法の実践・研究の様子をお伝えします。Upload By 林真紀世界中から音楽療法士が集まる「世界音楽療法大会」とは?Upload By 林真紀「世界音楽療法大会」とは、世界中から音楽療法士が集まり、世界レベルでの音楽療法の発展をサポートするために行われているイベントです。第15回世界音楽療法大会 公式サイト世界音楽療法連盟によって3年に1度、世界各地で開催されてきました。現在では、世界約50カ国から約2,500人が参加する、非常に大きな大会となっています。Upload By 林真紀音楽療法が用いられる場面は、世界的には非常に広く、プログラムをざっと見るだけでも「認知症患者」「末期がん患者」「未熟児」「ホームレス」「DV被害者」等々、多様な人々を対象とした音楽療法の研究がなされています。そしてその中でも、「発達障害児と音楽療法」というテーマは、国内での注目度の高さが感じられ、同様の発表は常に満席で立ち見が出る賑わいでした。その様子から、音楽療法はまさにこれから日本の療育分野で、飛躍的に活用されてゆくのではないかと感じることができました。今回、この大会の中で、実際に発達障害のある子どもの療育に音楽療法を取り入れる活動をされている方々にお話しを聞くことができました。この先進的な取り組みについて、詳しくご紹介していこうと思います。1. 放課後等デイサービスや特別支援学校での音楽療法の取り組みUpload By 林真紀まず最初に取材したのは、兵庫県の特別支援学校や放課後等デイサービスなどで音楽療法のセッションを担当されている音楽療法士の、松﨑聡子さんです。兵庫県では、阪神淡路大震災後、県民の心のケアに音楽が有効であるということから、震災から4年後の1999年に県独自の音楽療法士養成講座をスタートさせました。そして兵庫県知事から認定を受けた第一期生が中心となり、2002年に「兵庫県音楽療法士会」が発足。現在では、約250名の会員が音楽療法の普及・発展を目指して活動を行っています。2011年に発生した東日本大震災でも、復興支援活動として、被災地支援活動、県内避難者支援活動を行ったそうです。兵庫県音楽療法士会多方面で活躍する音楽療法士ですが、残念ながら国家資格ではないため、医療現場や教育現場に入っていくことは、現状ではなかなか難しいといいます。そのような背景から、松﨑さんをはじめ多くの音楽療法士は放課後等デイサービスでのセッションを行うことが多いそうです。松﨑さんは定期的に放課後等デイサービスや特別支援学校でセッションの時間を持ち、楽器や音楽を使って、発達障害のある子どもの社会性を伸ばす療育に取り組んでいます。「音楽は、発達障害児の療育に用いる上で数々の優れた面がある」、と松﨑さんは言います。「音楽」は「言葉」と異なり、「感じるもの」という側面が大きく、子どもの心にダイレクトに訴えかけることができます。また、「始めと終わりがはっきりしているため見通しが立てやすい」「繰り返しがある」等、自閉傾向の強い子どもが好む構造になっているのも特徴です。その他にも、楽器を使うことにより、子どもは五感を刺激され、感覚統合訓練の役割も果たしてくれるとのことです。また、何よりも大切なのは、音楽を通して、セラピストと子どもがコミュニケーションを取ることです。これこそが、音楽療法のなかで一番大切な部分であると言っても過言ではありません。音楽療法士のピアノに合わせて楽器を鳴らす、音楽療法士と順番に楽器を鳴らす、出来たら音楽療法士とハイタッチをする…子どもたちは、このように音楽を通してコミュニケーションを学び、社会性を獲得していくのです。その他にも、松﨑さんが子どもたちに音楽療法を実施する際、とても大切にしていることがあります。それは、その子が音楽療法のセッションの中で学んだことを、日常の生活でも実践できるようにサポートしていくことです。音楽療法のセッションのなかで、子どもは社会性やコミュニケーションなどのさまざまな部分で成長を見せてくれます。しかし、それがセッションの中だけで終わってしまっては意味がない、と松﨑さんは考えます。そのためにも、保護者の協力は必須であるとのこと。松﨑さん含め、音楽療法士は、長いスパンでその子の成長を見ており、その子の長い人生の中の大切な一時期を自分たちが担っているという気持ちでセッションに取り組んでいるそうです。2. 医療現場での音楽療法の取り組み音楽療法は、作業療法や言語療法のように保険が適用されるものではありません。よって、日本の医療現場では音楽療法を取り入れることについてあまり積極的ではないようです。しかし、そうしたなかでもいち早く、発達障害のある子どもに対する音楽療法の療育効果に注目し、治療計画の一環として取り入れたクリニックがあります。筑波こどものこころクリニックの院長、医学博士の鈴木直光先生です。鈴木先生のクリニックでは、2015年より、通常の診察と並行して、別室で音楽療法士によるグループセッションを行っています。Upload By 林真紀筑波こどものこころクリニック鈴木先生は、そこで録画された様子を、診察でも役立てています。 「音楽療法のセッションの中での子どもの様子を観察していると、発達障がいのある子どもに特有の、さまざまな症状を見出すことが出来ます」と言います。例えば、ADHDの子どもは、音楽が止まることを合図にその場で静止することができなかったり、ASDの子どもは音楽に合わせて左右交互に 腕を振ることが難しかったりします。また、ADHDの子どもは音楽に合わせて片足立ちをする際に、体幹が弱いため膝が前にこず、床を蹴るような動作をしてしまうことも特徴だそうです。しかし、そのような兆候は、音楽療法のセッションをこなすごとに改善していくと言います。それだけではなく、言語的な発達、衝動性の抑制、社会性の伸びなど、広い範囲の発達を促すことができると言います。鈴木先生は、診察と並行して音楽療法を行うことで、診察室では見られない子どもたちの発達の状態をより深く理解することができると話してくださいました。例えば、選択緘黙症の子どもなどは、診察室などでは何も話すことができないケースが多く、診察室だけでその子を判断してしまうと、どうしても「出来ない部分」が目立ってしまうと言います。だからこそ、音楽療法のセッションルームで何かが出来るようになっていく姿を見ることは非常に意味があることであり、音楽療法をクリニックで取り入れることにより、「出来ない部分」ではなく「出来る部分」を引き出していくことが出来ると語ってくださいました。このように、「診察室では見えない成長を見る」ために、音楽療法を取り入れている先生もいます。3. 発達障害児/者の音楽療法の研究音楽療法は、さまざまな特性の子どもに合わせたオーダーメイドの要素の大きい療育です。よって、発達障害のある子どもの、それぞれの特性に合わせた選曲も非常に重要になってきます。Upload By 林真紀二俣泉先生(東邦音楽大学准教授)と二俣裕美子先生は、発達障害のある子ども向けの音楽療法で、実際にどのようなプログラムを組んでいけば良いか、どのような曲を使い、どのように楽器を活用していけば良いかを研究されています。また同時に、発達障害のある子どもに合わせた音楽療法のための作曲もされています。二俣先生は、発達障害のある子ども向けの音楽療法で使う曲は、次の4つのタイプがあると言います。1. 自由に演奏する曲2. 演奏に際して緩やかなルールがある曲3. 音が空白の部分で演奏する曲4. 演奏のタイミングが厳密に定められている曲例えば、1の「自由に演奏する曲」は、セラピストの指示が入りにくい子どもに使われます。自由に演奏することで、とにかく楽器に触れること、他の子どもと一緒の活動に慣れること、音楽のなかで活動する楽しさを味わうことなどを目指しています。Upload By 林真紀タイプ2では、曲の中で音を鳴らすタイミングを待つところがあります。これにより、機会を待つということや、自分の役割を果たすという体験をすることができるようになっています。タイプ3の「音が空白の部分で演奏する曲」は、「幸せなら手を叩こう」などのように、空白の部分で楽器を鳴らす、あるいは手を叩くような曲です。このような曲を使うと、当初は集中力が持たず、混乱していた子どもたちが、集中して取り組むようになったと言います。また、特定の空白で音を鳴らすまで「待つ」ことや、「周囲に合わせる」というようなソーシャルスキルの獲得にもつながります。そして、最後のタイプ4は、セラピストの合図に応じて音を鳴らすことで、自分が果たす役割をより明確に実感できるような曲です。実際の現場では、子どもがセラピストの指示を受け入れられるか、複雑な指示を理解することができるかどうかなど、子どもの特性に応じて、1~4の曲を組み合わせていくそうです。また、能力差の大きい子どもが一緒の場に集まるグループセッションでは、個々の子どもの能力に合わせて、障害が重い子どもには 1 のスタイルで演奏してもらい、指示が通る子どもには3や4のやり方で演奏してもらうなど、役割分担をすることで、全員が集中できる活動にしていくと言います。Upload By 林真紀Upload By 林真紀会場では、実際に上の4つのパターンの曲を使い、ピアノに合わせて自由に演奏するパターンから、先生の指示する場所で楽器を鳴らすパターン、交互に演奏する役割分担があるパターンなど、実際の発達障害のある子ども向けのセッションを体験させてもらうことができました。Upload By 林真紀Upload By 林真紀4. 教育現場での音楽療法の取り組み出典 : また、ある公立小学校で音楽療法を取り入れ、効果が目に見える形で現れたケースもあります。公立小学校の教育課程で音楽療法のセッションを取り入れることは難しいため、あくまで 「音楽療法の視点と技術」授業を行った例です。 この取り組みを行ったのは、音楽療法士の資格を持った小学校の音楽の先生です。この先生は、公立小学校の通常学級と特別支援学級の両方で、音楽療法の視点と技術を取り入れた授業を実施しました。通常学級の授業では、暴力・暴言・立ち歩き等の問題行動が見られる児童が1人おり、この児童がいる学級において和太鼓などを使った音楽療法のセッションを20分間取り入れたそうです。その結果、この児童の問題行動が減ったと報告がなされていました。また、特別支援学級では、「自立支援活動」の時間に、歌唱、手遊び、簡単な合奏、リコーダー奏などを音楽療法の視点と技術を使って行ったところ、普段姿勢が悪く、授業中も机に寝そべるような態勢をしていた児童の姿勢が改善し、授業に対するモチベーションの向上が見られたと報告がなされていました。5日間の大会に参加して出典 : 日間の大会で、音楽療法を発達障害児の療育に活用している沢山の方々にお話しを聞くことができました。音楽療法は療育としてはまだまだ発展途上と言われていますが、まさにこれから注目されていく分野ではないかと思いました。大会の中で見ることのできた音楽療法のスライドや動画などをここで共有できないことが残念なほどです。初めは床に寝そべって自分の世界に入っていたり、セッションの部屋に入ることすらも拒んでいたり…そんな子どもたちが、回を追うごとに、音楽に合わせて音楽療法士やグループのお友達と協力できるようになる姿に、私は都度心を打たれました。かくいう私の7歳の息子も、自閉症スペクトラム・ADHDと診断を受けた3歳の時から、継続的に音楽療法のセッションを受けています。音楽療法について知らなかった時分は、「う~ん、なんだか怪しい…」と思っていたことは事実です。けれども、息子は音楽療法を受けて、確かに変わっていったと実感しています。息子が以前大嫌いだった「順番を待つ」「模倣をする」ということも、セッションを重ねることで難なくできるようになったのです。データやエビデンスベースで見ると、まだまだ研究は発展途上なところもありますが、現場ベースで見たときに、「確かに効果がある」と感じている人は多いようです。今後、音楽療法を用いた療育が日本で広がりを見せ、一人でも多くの子どもが、自分に適した支援を受けられるようになることを、願ってやみません。
2017年08月31日緊張病(カタトニア)とは?出典 : 緊張病(カタトニア)は、長時間動きが止まってしまう、動作が遅くなってしまう、同じ動作を繰り返してしまう、自発的な動きができなくなるといった体の動きが低下する症状を起こす症候群です。あがり症や緊張症といわれるような、人前で緊張してしまうこととは異なり、医療機関での治療が必要な疾患/症候群です。緊張病は15歳から19歳頃に発症することが多いといわれています。様々な原疾患(カタトニアの病態の原因となる個別の病気)がありますが、緊張病の症状自体は一定の治療法が有効とされていて、数か月で症状が消失することが多いといわれています。ですが、中には症状が何年も続いたり、治療後も自発性がなかなか改善されないケースもあります。2012年までカタトニアは、緊張型として統合失調症(思考や感情、行動などの脳の機能がうまくまとまらない)の一亜型に分類されていました。参考:DSM-IV-TR精神疾患の分類と診断の手引しかし統合失調症だけでなく、むしろ気分障害や器質性疾患に合併することが多いことが報告されるようになり,2013年に 改訂された最新版の『DSM-5』(米国精神医学会が発行する『精神障害の診断と統計マニュアル第5版』)からは緊張病という一つの疾患分類となりました。記事の後半で詳しく説明していきますが、カタトニアの過程で発熱や自律神経失調症を合併する悪性カタトニアといった、より症状が深刻になってしまうケースもあるため、早期治療がとても大切になっていきます。緊張病(カタトニア)の原疾患は?出典 : 緊張病(カタトニア)には様々な原疾患があります。「原疾患」とは病態の原因となる個別の病気に使われる言葉で、緊張病(カタトニア)は病態の進行や予後が原疾患によって異なることがあります。カタトニアの原疾患は主に精神疾患、神経疾患、身体疾患の3つに分類されています。1. 精神疾患: 急性ストレス障害、自閉症、双極性障害、気分障害、統合失調症、PTSD2. 神経疾患: てんかん、パーキンソン病、ハンチントン病、プリオン病、進行性核上性麻痺、進行性多巣性白質脳症、可逆性 後頭葉白質脳症、脳腫瘍3. 身体疾患: 自己免疫性疾患(SLE)、代謝障害(ファブリー病、テイ=サックス病)、薬剤性(シクロスポリン、セファロスポ リン、コカイン)、感染症(結核、梅毒、HIV)原疾患の中で総合失調症が占める割合は5%以下であるのに対して、気分障害で3~31%(特に双極性障害に関連して認められる)で、特に双極性障害に関連して認められることが多いということが分かっています。出典|カタトニア(緊張病)症候群の診断と治療大久保善朗(疫学調査より)参考|統合失調症の治療中に悪性カタトニアを来たした1例p890緊張病(カタトニア)の症状は?出典 : 緊張病(カタトニア)には様々な症状と、それぞれに応じた名称があります。また、これらの症状は日によっても変化していきます。DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)では以下の12の症状のうち3つを満たす場合に緊張病と診断できるとしています。◇カタレプシー誰かに受動的に取らされた姿勢のまま、抵抗したり姿勢を変えたりせず全く動かない症状です。腕をあげたり、首を曲げたらずっとそのままの姿勢を保ちます。◇蝋屈症(ろうくつしょう)一定の姿勢から自分の意思で動かせず、ろう人形のように固まってしまう症状です。◇昏迷(こんめい)身動きせず、周りが話しかけても無反応な状態です。通常の昏迷の場合意識はあるため、周りがどのような状況か理解しています。対して、意識が無くなってしまう状態を昏蒙・昏濛(こんもう)と言います。◇焦燥理由もなく苛立ったり焦ったりする症状です。◇無言症言語障害が無いのに、発語などの言語反応が無かったり、わずかな発声しか見られなかったりする症状です。◇拒絶症外部からの支持や促しや刺激に対して理由も無く拒絶などの反対をする、または全く反対をしないといった症状です。拒食してしまうこともあります。◇不自然な姿勢天井に向けて手や足を上げ続けたり、体が辛いであろう姿勢を自発的または受動的に保持し続けたりする状態です。◇わざとらしさ - 衒奇(げんき)症不自然だったりわざとらしい表情や動作などを取る症状です。大きなリアクションや芝居がかった話し方や身振り手振りをする事もあります。◇常同症特定の行動や発生を何度も長時間にわたって繰り返して行う症状です。同じ動作を繰り返す、同じ姿勢をとり続ける、同じ言葉を繰り返す、同じ場所から離れようとしないなどの症状が見られます。動くまでに時間がかかる分、止めることにも時間がかかります。◇しかめ面特に理由も無くしかめ面を取ってしまう症状です。◇反響言語他人がの言葉を繰り返して発声することです。エコラリアやおうむ返しと呼ばれることもあります。◇反響動作他人の動作や動きや表情や仕草をまねる症状です。これらの症状は一日のうちでも変化すると言われています。基本的に他者からの働きかけや言葉による指示に対し拒否的になってしまうなど、自発性を持って行動することが難しいです。他の精神疾患に関連する緊張病(緊張病の特定用語)A.臨床像は以下のうち3つ(またはそれ以上)が優勢である.(1)昏迷:すなわち、精神運動性の活動がない。周囲と活動的なつながりがない(2)カタレプシー:すなわち、受動的にとらされた姿勢を重力に抗したまま保持する(3)蝋屈症:すなわち、検査者に姿勢をとらされることを無視し、抵抗さえする(4)無言症:すなわち、言語反応がない。またはごくわずかしかない(既知の失語症があれば除外)(5)拒絶症:すなわち、指示や外的刺激に対して反対する、または反応がない(6)姿勢保持:すなわち、重力に抗して姿勢を自発的・能動的に維持する(7)わざとらしさ:すなわち、普通の所作を奇妙、迂遠に演じる(8)常同症:すなわち、反復的で異常な頻度の、目標指向のない運動(9)外的な刺激が影響によらない興奮(10)しかめ面(11)反響言語:すなわち、他者の言葉を真似する(12)反響動作:すなわち、他者の動作を真似する緊張病(カタトニア)の治療法出典 : 緊張病(カタトニア)は原疾患の如何にかかわらず、一定の治療法が有効とされています。主に薬物療法と電気けいれん療法(ECT)の2つの治療法があります。緊張病の治療に用いられる代表的な薬物としてベンゾジアゼピン系のロラゼパムがあげられます。ロラゼパムは以下の4つの作用を持つといわれています。・強い抗不安作用・中等度の筋弛緩作用・弱~中等度の催眠作用・弱い抗けいれん作用カタトニア症候群の原因疾患の場合、様々な精神疾患や身体疾患で80%を越える効果がみられますが、統合失調症のカタトニアに対しては20~30%にとどまるという研究結果も報告されています。ロラゼパムは抗不安作用が強く、即効性も期待できたり肝臓への負担も少ないですが、効果を実感しやすい分、耐性・依存形成を起こしやすいといったリスクもあります。医師と相談してご自分の症状に適した薬物療法を行うことが大切です。出典|ロラゼパム電気けいれん療法(ECT:Electro Convulsive Therapy)は、頭の左右のこめかみに電極を当て、電気を流す治療法です。麻酔を使って痛みや苦しみを感じず、また危険な状態にならないように呼吸や循環をしっかりと管理して行っていきます。大きな副作用が生じる可能性はほとんどなく、一時的なせん妄や頭痛などは生じることがありますが、後遺症が残ることはありません。電気けいれん療法は、基本的に1回だけでなく、継続的に行います。疾患や症状によって異なってきますが、週2~3回、合計で6~15回ほど行われます。電気けいれん療法の特徴には以下の3つがあります。・治療効果は高い・即効性がある・効果は短期しか続かないことが多いまた、研究でETC治療において統合失調症における緊張病は71%、気分障害では96%の寛解率(症状が落ち着く度合い)が報告されています。さらに最終章で説明する悪性カタトニアには薬物治療(ベンゾジアピン治療)よりも電気けいれん療法のほうが効果が高いという報告もあります。悪性ではないカタトニアの場合は、まずは簡便なベンゾジアゼピンを低用量で服用していき、高用量→ECT治療と移行していくケースが一般的です。ですが身体疾患に伴うカタトニア症候群の場合は、身体疾患に対する治療が必要であったりと、それぞれ原疾患によって適切な治療が異なります。悪性カタトニアの場合はあくまで本章で紹介した治療法は代表的なものにすぎないということを留意して、医療機関で相談してみましょう。これらの治療についての相談先としての「精神科」医療機関には、精神科専門病院、総合病院の精神科、精神科クリニックなどがあります。入院の可能性がある場合は、入院施設のある精神科専門病院がいいでしょう。また、身体の病気を併発している時は、内科などがある総合病院が便利です。出典|カタトニア(緊張病)症候群の診断と治療 p398参考|せせらぎメンタルクリニック身体合併症を伴うことも?悪性カタトニアって?出典 : 悪性カタトニアとは、カタトニアの経過で、発熱や自律神経失調症を合併する場合をいいます。これまでは治療が難しく致死性カタトニアと呼ばれていましたが、現在では適切な治療法と身体管理によって救命できることから悪性カタトニアと診断されるようになりました。カタトニア症候群の原疾患が統合失調症や気分障害の場合、原疾患の治療としては非定型抗精神病薬が有効なためそれらを投与することもあります。ですが、その抗精神病薬にドーパミンが遮断されることが原因となって悪性カタトニアが誘発されてしまうと考えらています。悪性カタトニアになってしまった場合は、抗精神病薬を使用するのではなく、ベンゾジアゼピン高用量の服用と同時に電気けいれん療法も同時に開始することがすすめられています。おわりに出典 : 緊張病はかつて統合失調症の一亜型として捉えられていましたが、統合失調症だけでなく、むしろ気分障害や器質性疾患に合併することが多いことが報告されるようになり、今日では緊張病という一つの疾患分類として扱われています。動けなくなってしまったり、動作を繰り返してしまったり、それに対して指示をしてもそれを拒絶してしまうこともあります。それに対して無理に言葉や動作で行動を促しても治療にはなりません。緊張病は一定の治療法が確立されており、予後良好と言われています。原因疾患の違いによって有効な治療法にも違いがあり、合併症を伴うケースが多いことからも、早めに医師に相談し適切な治療を受けることが大切です。参考|緊張病(カタトニア)症候群の診断と治療
2017年08月30日