平成18年度から文部省が「早寝早起き朝ごはん」国民運動を提唱したほど、日本の子どもの睡眠不足は問題となっています。成長期の子どもにとって、生活リズムの乱れによる睡眠時間の低下はどのような影響を及ぼすのでしょうか。眠りの専門家である明治薬科大学の駒田陽子先生にお聞きしました。構成・編集/木原昌子(ハイキックス)取材・文/田中祥子写真/児玉大輔(インタビューカットのみ)寝ない子の脳は発達が悪くなる睡眠時間が足りないことによる影響を「脳の発達」「体の成長」「心の発達」の3つに分けて見てみます。まず1つ目の「脳の発達」についてお話ししましょう。アメリカの高校生を調査したデータによると、成績の良い生徒ほど睡眠時間が長く、寝る時間が遅くなるほど成績が振るわないということが20年前に報告されていました。近年の報告でも、ノルウェーの高校生を対象とした2016年の大規模調査ですが、成績が良い生徒は8時間程度の睡眠時間をとっており、睡眠時間が短いと成績が下がる傾向がありました。睡眠と学習は深い関わりがあるのです。脳にある「海馬」は記憶や学習能力に関わる部分です。睡眠の長さと海馬の体積との関連を調べた東北大学の研究によると、睡眠時間を十分にとっている子どもは海馬の体積が大きいことがわかりました。もちろん頭の大きさには年齢による違いや個人差がありますので、それを調整しても睡眠時間と海馬の大きさには相関がみられるため、寝ない子の脳は発達が悪くなるということが言えるでしょう。一夜漬けで寝ずに勉強すると、なんとか次の日のテストはこなせても、1週間後にはその時に勉強したことを忘れてしまいます。また、勉強に限らずスポーツや楽器の演奏などでも、その日にできなかったことが、翌日なぜかうまくできるようになることがありますよね。それは、脳の記憶の仕組みによるものです。頭の中には多くの神経細胞があり、細胞同士が結びつくことにより学習や記憶が行なわれています。人間は寝ている間に、不要な結びつきや重複した部分を取り除いて効率の良い神経回路を作るほか、感情に関わる記憶を整理するために脳のメンテナンスを行い、脳をより良い状態に導きます。つまり、昼間に勉強したり練習したりしたことをしっかりと脳に定着させるには、十分な睡眠時間が必要なのです。文部科学省の全国学力・学習状態調査では、朝食を食べない生徒は成績が悪いという結果もあります。国語と数学の正解率を調べたところ、毎日朝食を食べる生徒に比べ、まったく食べない生徒は20点近く下がる傾向にありました。朝食を食べない理由のほとんどは起きる時間が遅いからというもの。睡眠時間がしっかりと取れていれば早起きができ、朝食が食べられるという好循環が生まれるのです。睡眠不足と肥満の意外な関係「体の成長」に関しても、睡眠は重要な役割を果たします。体内では、寝ている間にさまざまなメンテナンスが行われているのです。体の機能を正常にコントロールする物質である、ホルモン。その中でも、体を作る働きがある「成長ホルモン」は、子どもが大人へ成長していくために大切な骨や筋肉を発達させるものです。この成長ホルモンは、睡眠の前半に現れる深い眠りのときに集中的に分泌されることがわかっています。睡眠をしっかりとらず成長ホルモンの分泌が不十分な場合、子どもたちの体の発育に影響が出ることが考えられます。また、成長ホルモンは傷ついた細胞を修復し、免疫力を高める力もあり、病気になりにくい体づくりのためにも重要なもの。さらに脂肪を分解する作用もあるので、成長ホルモンが足りないと肥満になってしまいます。同時に、肥満になると成長ホルモンが出にくくなる傾向も。睡眠と肥満の関係には深い関係があるのです。これに関する興味深いデータを紹介しましょう。平成元年生まれの富山県在住の児童1万人を対象として追跡調査を行った研究では、幼少期の睡眠時間と思春期の肥満が関連するということが報告されています。3歳の時に睡眠時間が11時間だった子どもと9時間未満の子どもを比べると、中学1年時での肥満の発生率には1.6倍もの違いが。睡眠が短い子どものほうが10年後に肥満になりやすいことが分かったのです。また、小学1年生から4年生にかけて充分な睡眠時間を確保した子どもは肥満発生リスクが最も少なく、睡眠不足の子どもは肥満リスクが1.4倍に上昇していました。これもホルモンによる影響だと思われます。睡眠をきちんと取っていると、食欲を抑える「レプチン」というホルモンが分泌されます。逆に食欲を高める「グレリン」は睡眠が減ると分泌が増えます。大人を対象とした研究では、8時間睡眠の人に比べて5時間睡眠の人は「レプチン」が15.5%減少し、「グレリン」が14.9%増加したと報告されています。睡眠不足になると、気付かないうちに食欲が旺盛になって、食べ過ぎて太ってしまうのです。不登校のかげにも睡眠の問題睡眠不足による「心の発達」への影響は、親御さんにとっても特に気になるポイントでしょう。睡眠が短い子どもは、「気持ちが落ち込む」「死にたい」といった悩みを訴えるリスクが上がってくるというデータがあります。アメリカで2万人の青年を対象とした調査では、就寝時間を夜11時以降で良いとしている家庭は、夜10時前に寝るようにしつけている家庭に比べて、子どもの睡眠時間が40分程度短く、鬱になるリスクが約1.24倍に上がっていました。また同じくアメリカの研究ですが、6~13歳の健康な子どもを対象に10時間の睡眠を連続5日間とらせた場合と、6.5時間の睡眠をとらせた場合の落ち着きのなさを比較した実験があります。それによると、10時間睡眠を続けると子どもは落ち着いた状態を保つ一方で、6.5時間睡眠になると日を追うごとに落ち着きのなさが増加することがわかりました。現在、不登校の小学生の児童数は3.5万人にのぼり、大きな社会問題になっています。不登校のきっかけの多くは「学校に行こうという気持ちはあるが体の調子が悪い(42.9%)」や「生活リズムの乱れ(34.2%)」です。不登校児童には睡眠専門外来を訪れる方も多く、そこに至る過程をたどると、幼少期から夜型の生活を送っていたという子どもが少なくありません。寝不足になると気分が悪く集中力がなくなります。大人は理性が働き、ある程度抑えることができますが、未成熟な子どもは抑えることができません。これにより、イライラする、友だちと仲良くできない、などの心の問題が表面化してしまうのです。また、睡眠時に記憶が定着することは先程お話しましたが、睡眠不足になると記憶力が悪くなるばかりか、楽しいことに関する記憶が減ってしまいます。一方で、嫌な記憶はあまり減っていきません。さらに、就寝が遅いと「自分のことが好き」と答える割合が低くなり、自己肯定感にも影響するという調査報告もあります。気持ちが落ち込むのはこういった影響もあると考えられます。大人は睡眠不足を解消するために土日に寝だめをするという人もいますが、毎日少しずつ貯まっていった睡眠不足=「睡眠負債」は残念ながら週末の寝だめで解消することはできません。これは子どもも同じことです。寝だめのために週末の就寝時間、起床時間がずれてしまうことは、体内リズムを崩す原因になり、睡眠負債を解消することにはつながらないのです。長年にわたる睡眠不足が脳、心、体に大きな影響を与えないよう、子どものころからしっかりと睡眠時間を確保する生活を心がけましょう。***睡眠不足になることで子どもの体や心にあらゆる影響があり、生活や学習に支障をきたすことがわかりました。日常生活を送っていると睡眠に関わる疑問が多くあります。次回は、カフェインやお昼寝など、普段の生活での睡眠に関するさまざまな疑問に答えていただきます。■ 明治薬科大学准教授・駒田陽子先生 インタビュー一覧第1回:“世界一寝不足”な日本の子ども。「11時間37分」が示す、眠りにまつわる切実な問題第2回:寝るのが遅いと自己肯定感が下がる。デメリットだらけの「子どもの睡眠不足」第3回:「昼寝のせいで夜なかなか寝ない」問題の解消法。朝のグズグズ防止にも効果大!(※近日公開)第4回:「起きる時間」を意識させるだけ!子どもの早起きを楽にするちょっとしたコツ(※近日公開)【プロフィール】駒田陽子(こまだ・ようこ)明治薬科大学 リベラルアーツ准教授。早稲田大学にて博士号(人間科学)取得。日本学術振興会特別研究員、国立精神・神経医療研究センター特別研究員、東京医科大学睡眠学講座准教授を経て現職。日本睡眠学会、日本時間生物学会の評議員を務める。睡眠が心身の健康に及ぼす影響の研究に従事。
2019年04月15日3部構成の講演会で語られた、学校選びと子どもの「好き!」の伸ばし方Upload By 発達ナビ編集部コンベンションホールで行われた講演会は3部構成。まずは第1部、井上雅彦先生の基調講演からスタート。井上先生は鳥取大学大学院 医学系研究科 臨床心理学講座教授、子どもから成人期までの心理臨床が専門。学童期の子育ての悩みに答え、鳥取大学の相談室では大学生のカウンセリングをしています。講演の内容は「学童期の⼦育ての悩みに応える⼦どもの将来に向けて今親ができること」。たくさんの事例も交えて話してくださいました。親にできる大切なことは「子どもの好きなことをたくさん見つけて言葉にしてみること」。大好きなことを続ける中で自己肯定感・自己管理力が育ち、自己肯定感はやる気につながるという話題は、このあと2部、3部のパネルトークの中でもたびたびテーマとして上がりました。「好きなことを見つけてあげて、というと、保護者からは、『好きなことでは食えない』といった否定的な意見が出たりします。でも、好きなことは将来の役に立ちます。気分を変えたいとき、趣味があることが、生きていくエネルギーになるんです。カウンセリングをしていてしんどいと感じるのは、『好きなものはなくなりました、かつてはあったけど』とか『何もしたくありません』という言葉です」(井上先生)たしかにお金を稼ぐことにはなかなか直結しないことだけれど、「好きなこと」があるおかげで、不登校だった中学生が高校へ行き始めたという例もありました。在籍学級は、何度でも選び直しができる。ベストよりベターを選ぼうUpload By 発達ナビ編集部新1年生は、今まさに入学式シーズンですが、7月には、来年度の就学相談が始まります。通常学級なのか、特別支援学級なのか、特別支援学校なのか、どういう選択肢がわが子に合うのか、その選び方で迷う保護者も多いところです。「まず情報集めですが、これは住んでいる地域によっても差があるし、情報を集めれば集めるほど、それぞれにメリット・デメリットがあると分かります。そうすると、かえって追い詰められる気分になってしまうこともあるでしょう。でも、覚えておいてほしいのは『選び直しはできる』ということ。ベストよりもベターを選ぼう、と考えてほしいです。6年間は長いのですが、その間に変えることができるんです。合わなかったら変えてもいい、そんな風に思っていてください。」(井上先生)学校だけでない学びの場や方法について、パネルトークUpload By 発達ナビ編集部講演会第2部は、「発達が気になるお子さまの学習について」と題し、子どもの学習に関する新しいサービスを展開している2社の代表によるパネルトーク。株式会社すららネット佐々木章太さん、株式会社WOODY中里祐次さんが登壇しました。すららネットは、発達が気になる子どもの家庭学習の困りごとを解決するサービス。学習塾や放課後等デイサービスへも教材提供をしています。学年の枠にとらわれない「無学年式」の学習教材がメインですが、それだけでは解決できない問題について、新しいサービスをリリースしたのだそう。それは、学習指導の困りごとを解消し、保護者の方々が子どもとの関わり方を学びながら楽しく子育てができるよう支援する”勉強”におけるペアレントトレーニング(通称:勉強ペアトレ)です。どんな風に関わることで、子どもの自己肯定感を育み、勉強への意欲につなげられるかなどを学ぶことができる、オンライン型のサービスです。すららネットの「勉強ペアトレ」は、子どもだけでなく保護者の自己肯定感にも向き合うプログラムで、第1部の井上先生の話とも共鳴する内容でした。参考:すららネットWOODYは、「好きで自信をつくり、好きで社会とつながる」ために、好きなことを見つけるマッチングサービス「Branch」を提供。好きなことをどう極めていくかを教えてくれる「メンター」と、親子をつなぐのがブランチの役割です。例として、ある小学生のケースが紹介されました。小学校1年生のころに学校の先生に怒られ続けて不登校になり緘黙になったその子は、小学校6年生のころに「メンター」と出会いました。数学、物理、サッカー情報、債券市場などが好きな子で、気になると何時間でも調べているそう。親以外との社会とのつながりがなかったその子は、初めてメンターとつながることにより社会との接点ができ、今は他の国で学校に行っているそうです。学校の成績を上げるということも大切ですが、子どもが「家庭以外にも安心できる場所を作ることも大切」と中里さんは話します。好きなことを言語化する手伝いをしていくのがBranchというサービス。これも、「好き」を軸にしていくことが大切という井上先生の話ともリンクしていました。参考:ブランチインクルーシブ教育を進めるための「戦略」とは?専門家と保護者がディスカッションUpload By 発達ナビ編集部第3部は、発達障害のある子どもを育てている保護者2人と、星槎大学大学院准教授阿部利彦先生によるパネルトーク。まずは2人の保護者の自己紹介から。白砂ゆき子さんは、長男が小学校1年生で通常学級に在籍しながら特別支援教室を利用しています。古山真紀子さんは、中1の長女(ASD・ADHD・LD)、小4の長男(ASD・ADHD・LD)、3歳の次男(グレーゾーン)の3人を育てていて、「どれだけ親子で楽にいられるか」をテーマに発達障害の啓発活動をしています。続いて「発達が気になる子どもの学級選びと進路・小中学生編」と題して、阿部先生の講演。第1部の井上先生の学級選びの考え方の話に、さらに具体的な考え方、行動のしかたについて言及されました。長く相談支援員として活動してきた阿部先生ならではの切り口で、通常学級の担任の先生のタイプによって、合理的配慮をしてもらうための「戦略」をどう練るかといったかなり実践的なことにまで言及されました。Upload By 発達ナビ編集部白砂さん、古山さんは深くうなずきながら聞き、その後ディスカッションに。白砂さんからは「一人だと分からないままで不安だから、同じような悩みを持つ人とつながることが大事だと痛感しています。少し先輩の存在の大切さですね」という意見が。古山さんからは、「ずっと『この子の秀でたところを探さなきゃ』と思っていましたが、そうじゃなくて、この子の好きなことを探せばいいと分かりました。好きなことだったらがまんもできるし、伸びるんですよね。漠然と『この先どうなるの?』と大きな風船を抱えていた感じだったのが、一つひとつ不安の中身が分かったら、小さい風船がいくつもあるような感じになりました。これを一つずつつぶしていこうと思います」という感想が上がりました。展示・販売ブース、ワークショップも充実!Upload By 発達ナビ編集部講演会と別のフロアでは、発達障害のある子どもや、その保護者のニーズに合う商品・サービスの展示や販売、ワークショップが行われました。出展していた7つのブースは、ただ商品を紹介するだけでなく、さまざまな実体験ができるコーナーもあり、親子で楽しめる工夫がいっぱい。コープみらいのプリンやヨーグルトの試食コーナー、睡眠障害が軽減されるというラーゴム社の「チェーンブランケット」を実際に試せたり、書籍販売、デザイン性と軽さ、機能性を両立させた「ふわりぃランドセル」を背負って写真ができるフォトブースも。ピーエーエス社の「pinto」シリーズの商品の展示もありました。学校や家の椅子に取りつけることで正しい姿勢を保つサポートができる座位保持シートの展示コーナーでは、実際に座ってみる親子の姿が見られました。ニューロネット・ジャパンでは、「ニューロトラッカー」をミニ体験できるコーナーを設けていました。ニューロトラッカーは、視覚による知覚認知能力を活性化することで、脳の高次機能注意力を鍛えるメンタルトレーニングツールです。3D眼鏡をかけて、画面のボールを追います。実際には、ボールはただ画面の上下左右に動くだけでなく、遠くなったり近くなったりして見えています。ターゲットに決めたボールを記憶して目で追いかけ、ターゲットを正解して、ステージをクリアしていきます。トライした4歳の男の子は、「面白かった」と話してくれました。会場ではワークショップも。「お金」のセミナーは注目の的Upload By 発達ナビ編集部予約制で開催された5つのワークショップにも多くの方の参加がありました。すららネットによる「ペアトレ」体験、仕事体験テーマパーク「カンドゥー」による、魔法使いになって”ねるねるねるね”をつくる体験、ASDの特徴のひとつ「知覚過敏」を体験できるVRなど、見る・聞くだけでなく体を使って、親子で学び・遊べるワークショップ。tobiraco(トビラコ)のブースでは、子ども向けと保護者向けのワークショップが開催。アロマ粘土を使ったワークショップに参加した子どもたちは、思い思いの作品を自由に作って楽しんでいました。保護者向けには、アロママッサージが行われました。また、保護者にとって気になる話題、「発達が気になるお子さまの『親なきあとのお金』セミナー」では、参加者が熱心にメモをとる姿も。講師の行政書士・渡部伸先生と三菱UFJ信託銀行の小谷亨一氏の分かりやすいお話は、聞くと安心できる内容で、「子どものためにいくらのこすか、よりも、どうのこすかが大切」と、実践的な話題がいっぱいでした。ゆったり広々した会場で、たくさんの人がそれぞれに楽しむことができる「発達ナビ子育てフェスタ」。「子どもの将来へのヒントが見つかりますように。そして日常を離れて少しでもリラックスして過ごしてもらえたらうれしいです。またぜひ、会員同士の交流の場にもしてほしいです」という、開会の言葉通りのイベントとなったのではないかと感じられました。イベントのスポンサー紹介今回のイベントには、多くの企業の皆さまにご協賛いただきました。以下では、スポンサー企業のみなさまのサービスをご紹介します。発達が気になるお子さんにも合いやすい学習・トレーニングサービスや、生活の困りごとを解消するサービスをご提供されています。ぜひご覧ください!Upload By 発達ナビ編集部LIFULL HOME’S 住まいの窓口は、住まい選び・家づくりの無料相談窓口です。発達が気になるお子さまをお持ちのご家族向けにも、住宅購入に関する相談を承っております。ハウジングアドバイザーがご希望の条件を整理し、あなたの要望に沿った会社をご紹介します。店舗は首都圏27店舗ございます(※2019年4月1日現在)。詳しくはサイトよりご確認ください。Upload By 発達ナビ編集部「個別指導のコーチング1」は発達障害・グレーゾーン専門の個別指導塾・家庭教師を提供しています。自立して学習を行うためのコーチングのノウハウを発達障害のあるお子さまの学習指導に応用しています。授業中だけでなく、授業外での週間計画を作成し、お子さまの学習習慣を築き上げていきます。中学受験・高校受験対策を行う発達障害専門の進学塾です。Upload By 発達ナビ編集部「ラーゴム・ジャパン」が手がける、スウェーデン生まれの”チェーンブランケット”は、適度な重みがあり、まるでハグされているような感覚をつくることで、不安感が不眠につながっている人に効果があると言われています。チェーンが内蔵されたこのブランケットには、4キロから14キロまで6タイプの重さのバリエーションや、キッズ向けタイプもあり、好みに合わせて選ぶことができます。Upload By 発達ナビ編集部「ニューロトラッカー」は、北アメリカで生まれた、脳トレ・ツールです。アメリカでは、発達障害がある子どもの注意力・集中力・作業メモリーなどの向上のために活用されているほか、アスリートのメンタル・トレーニングとしても取り入れられています。パソコンを使って、ゲーム感覚でトレーニングに取り組むことができます。上記のサイトをご覧になって、ニューロトラッカーに関心を持たれたご家庭向けの、モニター募集も実施中。以下のフォームからご応募ください。ニューロトラッカー体験モニター応募フォーム取材・文:関川 香織撮影:鈴木 江実子
2019年04月11日「眠育」という言葉はご存知ですか?いま、日本の教育現場において、「眠育」の重要性が叫ばれています。今回は眠育についての解説とともに、規則正しい睡眠が子どもにとってなぜ必要なのか、その理由をご紹介しましょう。睡眠の教育が、今こそ必要なワケとは?「眠育」とは、「睡眠教育」のことを指し、睡眠についての知識と正しい睡眠習慣を身につけることを言います。私たちは知育や体育、食育など、学校でさまざまな教育を受けていますが、睡眠についての授業を受けたことはあるでしょうか。「睡眠なんて単なる休息の時間だから……」と思ってはいませんか?睡眠は人生の3分の1の時間に相当し、もちろん単なる休息ではありません。睡眠は私たちの体を支えて守るという重要な役割を果たすとともに、睡眠中の潜在意識は心のケアも行なっているのです。つまり、眠育は「食育」と同じように、“生きていくために必要な教育”なのです。ところが世界的に見てみると、日本は全体的に睡眠時間が短くなってきていて、きちんと「眠ること」が、大人も子どももできていないのが現状。OECD(経済協力開発機構)が2014年に行った国際比較調査の中で、各国の15歳~64歳までの男女の睡眠時間を比較すると、最も長い南アフリカの9時間22分と比べ、日本人は睡眠時間が7時間43分と、1時間30分以上も短いという結果が出ています。さらに、世界の主要国29カ国の中では、日本は韓国に次いで二番目に睡眠時間が短いことが分かっています。この要因にはスマホやパソコンの普及によって、生活の夜型化が進んでいることが挙げられますが、もうひとつの大きな要因は、日本人の睡眠に対する意識の低さがあると言います。明治以来、教育は「五育」の思想に基づき行われてきました。五育とは体育・知育・才育・徳育そして食育をさしますが、これらはすべて、日中の活動時間になされるものです。睡眠領域については、第六番目の教育として「眠育」が存在すべきあり、老若男女を問わず、すべての世代に伝えられなければいけません。しかし、現在の日本の社会では眠育は全く不十分な状況で、医療関係者にさえ知識がなかったり、睡眠の重要性の認識が薄かったりすることは大問題です。(引用元:日本眠育普及協会|眠育とは)睡眠に対する意識が低く、睡眠時間を十分に取らないことは、心にも体にも影響を及ぼします。そのひとつとして大きな問題になっているのが、小中学校の不登校問題です。2017年度に行った調査によると、小中学校の不登校児童生徒は14万4031人にのぼり、前年度より1万人以上増えていることが分かりました。また、2014年に文部科学省が発表した実態調査では、不登校のきっかけの上位は1位が「友人との関係」、2位が「生活リズムの乱れ」、3位が「勉強が分からない」という結果が出ていて、不登校の原因に生活リズムの乱れが関係しているケースが非常に多いことが分かります。前述のように睡眠は心身のケアをする大事な時間ですから、睡眠時間が削られたり、睡眠の質が低下することは、生活リズムそのものに大きく影響を与えるのです。睡眠不足が子どもの心身に及ぼす影響とは?では、睡眠が足りていなかったり、睡眠のリズムが乱れることは、子どもの心身にどんな影響を与えるのでしょうか。睡眠不足は、成長の遅れや食欲不振・注意や集中力の低下・眠気・易疲労感などをもたらします。子どもの場合、眠気をうまく意識することができずに、イライラ・多動・衝動行為などとしてみられることも少なくありません。また睡眠不足は将来の肥満の危険因子になることも示されています。(引用元:厚生労働省e-ヘルスネット|睡眠不足や睡眠障害、子どもへの大きな影響)成長の遅れや原因不明の体調不良、集中力が続かないなど、体の不調や精神的な問題は、睡眠と切り離して考えがちですが、実は睡眠が大きく関係している場合も考えられます。もし、このように子どもの心身の不調で悩んでいるようなら、しっかりと睡眠が取れているかを一度見直してみることも必要です。たとえば、子どもの睡眠時無呼吸症候群、おねしょ(夜尿)、睡眠時遊行症、いびき、歯ぎしりなど、睡眠障害が原因で睡眠不足になっているケースもあります。その場合は、必要な医療機関に相談・治療することで、症状が改善することもあります。睡眠時の症状は本人では気づかないことですから、親御さんがその症状を見つけてあげ、適切な処置をしてあげることが大切です。また、学習面でも影響があります。健全な生活習慣のある子どもは、そうでない子どもよりも学習意欲が高く、体力・運動能力が高いことがさまざまな調査によって明らかになっています。具体的には、レム睡眠の際に脳内で記憶の整理・定着が行われるのですが、睡眠不足になると学習したことが脳内に定着せず、成績にも関係すると言われているのです。眠育の先進地域では、不登校が減少する成果も!日本では睡眠に関する意識が低く、眠育が遅れていると言われていますが、近年では大阪や兵庫などでは「眠育」がすでに導入されている地域もあります。たとえば堺市の三原台中学校区では、平成27年度から「眠育」をスタートさせました。校区の小中学生全員に睡眠の大切さを説明するリーフレットを配り、年に3回の授業も実施しています。授業では、いつ寝ているのかの「睡眠表」をつけさせ、睡眠の質や量を検討し、問題の多い子どもには、親も交えた面談も行っているようです。ある中学3年の女子生徒は10日出席しては10日休むことを繰り返していた。親が夜も働いており、夕食は午後11時、寝るのは日付が変わった後だったという。親も交えた面談の後、夕食を7時に食べて11時には寝られるようになり、その後は1日も休まず登校した。また、中学2年の男子生徒は連日午前2時ごろまで塾の宿題に取り組み、朝、親が起こすと暴れるように。面談後、塾をやめて夜十分に寝るようになり、家庭内暴力は消えたという。(引用元:SankeiBiz|睡眠の大切さを教える「眠育」って何?規則的な睡眠で不登校予防、家庭内暴力も収まる)このように「眠育」の先進地域では、3年間で不登校率は約37%減るなどの成果が出ています。そして29年度からは、堺市全体で眠育に取り組んでいるのです。家庭で実践したい、規則正しい睡眠のコツいくら学校で眠育が広がっても、実際に睡眠をとるのは各家庭でのこと。子ども自身が睡眠の大切さを知るとともに、親御さんの意識も変えることも必要です。まずは、子どもが快適に眠ることができる寝室の環境を整えたり、バランスの良い食事を用意したりするなど、親御さんが心がけることも必要です。また、質の良い睡眠を取るために、以下のようなことに気をつけましょう。<朝>・毎朝できるだけ同じ時間に起きるように習慣づけ、しっかり朝日を浴びる・朝食は必ずとり、炭水化物、たんぱく質、糖質などバランス良い食事をとる<昼>・しっかり体を動かす・食事はバランスよく、できるだけ同じ時間帯に食べる<夜>・眠る2時間前までに夕食は済ませる。夜は脂質が多いものはできるだけ避ける・眠る30分前にはテレビやスマホなどの画面を見るのは控える・できるだけ毎日、同じ時間に眠る・夜寝ている間は、電気は消す・寝室はこまめに掃除をして、寝具は清潔を保つこのように、睡眠の環境や食事、日中の過ごし方によって、睡眠の質をあげることができます。また、睡眠時間は幼児は10時間以上、小学校低学年は9〜10時間、小学校高学年は9時間、中学生は8時間以上を目安にし、午後7時から午前7時までの間で眠るようにしましょう。****眠りの仕事でもうひとつ大事なことは、「脳を育てる力」です。海馬と言う脳は、新しい知識を蓄えるために最も大事な脳で、唯一細胞分裂して大きくなります。そして、質の良い眠りをすることは、海馬の発育を助けると言われています。お子さんに良い教育を受けさせたいと願う親御さんがほとんどだと思いますが、質の良い睡眠をさせることも同じぐらい大切です。規則正しい睡眠とバランスのよい食事を毎日用意することは、親から子どもへの一番の贈り物ですよ。文/内田あり(参考)西川リビング|眠育公式サイト「キッズの眠育」SankeiBiz|睡眠の大切さを教える「眠育」って何?規則的な睡眠で不登校予防、家庭内暴力も収まるNHK|子どもたちの質の良い眠りが人生を豊かにする日本眠育普及協会|眠育とは日本睡眠科学研究所|日本国内の睡眠事情厚生労働省e-ヘルスネット|睡眠不足や睡眠障害、子どもへの大きな影響
2019年04月09日充実した学びは健全な心身から――。このたびStudyHackerこどもまなび☆ラボでは、子どもたちの学びを心とからだの健康面から応援する連載『まなびの保健だより』がスタート!ベテラン“保健室の先生”の宍戸洲美先生(帝京短期大学教授)が、子どもの心身の状態を月別に解説し、その時期に最適な家庭での取り組みや、子どもへの声かけの仕方などを提案してくださいます。どうぞお楽しみに!子どもが自分らしく元気に育ち、健やかに学べるように……みなさん、初めまして。帝京短期大学の宍戸洲美です。まずはじめに、簡単に私のプロフィールをお話ししたいと思います。私の今の仕事は、大学で養護教諭(保健室の先生)を育てること。この仕事を始める前は、養護教諭として東京都の公立小学校で27年間働いていました。そのもっと前は、病院で看護婦(現在は看護師)をしていました。どの仕事も、人にかかわる仕事です。しかも人の命や健康に深くかかわる仕事で、どの仕事もとてもやり甲斐を感じることができました。とにかく私は「人間大好き!特に子ども大好き!」で、子育てアドバイザー養成の仕事もしています。学校の保健室や養護教諭を知らない親御さんはあまりいないと思います。ですが、養護教諭がどんなことをしているのかをよく知っている人、ましてや保健室に行って養護教諭と話した経験のある親御さん方は、少ないのではないでしょうか。一方で、今の子どもたちの心とからだの問題は深刻です。いじめや虐待を受けた子ども、「自分なんかダメな人間だから生きていてもしょうがないんじゃないか」と悩んでいる子どもなど、心の問題を抱えている子どもが増えてきています。そのせいで不登校になってしまう子は少なくありません。また、アレルギーや喘息、肥満やヤセ、視力の低下などのからだの問題をもつ子どももいますし、「夜眠れない」「朝起きられない」など自律神経の不調を訴える子どもも。性の問題で悩む子もいますね。子どもたちはどの子も、健康でまっすぐ自分らしく生き生きと育ちたいと思っています。親も、子どもには元気にすくすく育ってほしいと願っています。にもかかわらず、ここまで深刻ではなくても、子どもたちの心やからだの健康についてどうしたらよいかわからないと思っている親御さんは多いのではないでしょうか?そんなお父さん・お母さん方に向けて、子どもたちがその子らしく元気に育ち、充実した学校生活を送れるよう、少しでもお役に立てるような情報をお届けしたいと思います。新学期を迎える子どもの心とからだお子さんたちの入学や進級、おめでとうございます。楽しみがいっぱいな一方で、「どんなお友だちがいるのかな?」「担任の先生はどんな人かな?」など、お子さんだけでなく親御さんも、少し緊張しているのではないでしょうか。そんな新学期はぜひ、「早寝・早起き・朝ご飯」を実践することから始めましょう。当たり前のことですが、学校では給食までは何も食べるものはありません。しかし実際は、朝ご飯を食べてこなくて、体育の授業の後におなかがすいて気持ちが悪くなり保健室に来るお子さんがいます。また睡眠に関しては、1・2年生でしたら10時間ぐらいとることが理想ですが、学校では睡眠不足で授業中に寝てしまうお子さんがいます。夜なかなか寝つけず早寝ができないと、早起きもできず、朝ごはんも食べられない。そんな状態で登校したら、勉強に集中できるはずがありませんよね。学校での学びを充実したものにするためには、とにかく「早寝・早起き・朝ご飯」が大切。もしも夜の寝つきが悪いお子さんでしたら、まずは早起きから始めるといいですよ。ぜひこの機会に、睡眠習慣を改めてみてください。それから、多くの親御さんにとって気がかりなトイレと給食について。特に新1年生の子を持つ親御さんは「うちの子は、ちゃんとトイレにいけるだろうか……」と心配なのではないですか?そういった不安を親子ともども解消するために、できればおうちにいる間のいつも同じ時間帯に排便する習慣をつけておくといいですね。学校では、ゆっくりトイレに行って排便する時間がとりにくいものです。入学後トイレに行くのを我慢して便秘になってしまったというお子さんもいるのですよ。もちろん授業中でも、行きたくなったら先生に言ってトイレに行っていいのですが。そして給食のこと。今まで食べたことがないものが出てくると、「食べられない」と言うお子さんがいます。この問題を解消するには、親御さんが給食の献立をみながら子どもが食べたことのない(あるいは苦手な)ものを作り、家族で「おいしい!」と言いながら食べてみるのが一番!アレルギー食品以外は、いろいろなものを食べる練習をしましょう。安心して新生活を送るためには、こうして生活習慣を安定させることがとても大事なのです。「聞く」より「聴く」!親の不安が子どもの不安になるではここからは、この時期の親御さんのお悩みに、“養護教諭の視点から”アドバイスをしたいと思います。親御さんからの質問【1】先日クラス替えがあり、担任の先生も変わりました。親としては「友だちも先生も変わって大変だ」と思ってしまいますが、実際のところ子どもは新しい環境をどれぐらい負担に感じているのでしょう?また、慣れない日々のなかで、子どもなりに新しい環境に適応しようと頑張ってくると思いますが、帰宅後、子どもにどのような声かけをしてあげれば、より子どもの翌日からの頑張りに変えてあげられるでしょうか?「子どもが新しい環境の中で戸惑わないか心配だ」というお気持ち、よくわかります。ですが、子どもは意外に適応力があります。初めはうまくいかなくても、友だちの様子を見たり先生から指導してもらったりして、日々成長していきますから、安心してください。親がいろいろ心配してあれこれ聞くことは、「質問に答えなくては」というプレッシャーを子どもに与え、大きな負担になってしまいます。大人が子どもに「聞く」のではなくて、まずは子どもの話を「聴いて」あげましょう。その中で「頑張ったね!」「大丈夫!」などの言葉かけが大切です。また、子どもにとっては友だちの存在がとても大きいので、低学年であれば一緒に登下校したり、下校後遊んだりできるお友だちを早めにつくるといいですね。声掛けは「できるでしょう!」より「できるかな?」親御さんからの質問【2】ピカピカの1年生になって、モチベーションが上がっている様子の我が子。「これは子どもの自立のチャンスだ」と思い、つい「もう○○なんて一人でできるでしょう?」「1年生なんだからしっかりね!」言ってしまうことが増えています。これって期待のしすぎでしょうか?正直言ってまだまだ甘えん坊なので、プレッシャーを与えていないか心配です。私も以前、小学校5年生の子をもつ親御さんから、こんな相談を受けたことがあります。“朝、私が時間割をそろえ、靴下まではかせています。「自分でやりなさい」というと「じゃあ学校へ行かない」と駄々をこねるので、ついついやってしまう。どうしたらいいのでしょうか?”子どもたちの自立は、発達段階に合わせて少しずつ進みます。子どもは生まれたときから、年齢に応じてクリアしていくべき発達課題をもっていて、年齢相応の課題をひとつずつクリアしながら自分ができることを増やしていくのです。そして、課題をクリアしていくのには適時性があり、最適な年齢でクリアできるとその力が付きやすいという特徴があります。小学校5年生の子の例のように親が手をかけすぎてしまったり、「自立させよう」と思うあまり子どもを放置してしまったりすると、子どもが身につけるべき力をつけさせるのに余計なエネルギーがいります。もちろんこれには個人差がありますから、一概に「何年生だから~~ができるべき」と言い切ることはできません。発達段階に合った課題を子どもがクリアしていくために大切なことは、「自分でできるかな?」など本人のやる気を引き出す声掛けや、できたときに「すごい、さすが!」などと褒める声掛けをしてあげること。時間割の準備をする、上履きを洗う、忘れ物をしない、など「他の子どもができているのに、自分の子どもはできていない!」なんてこともあるでしょう。親御さんは焦るかもしれませんが、できないことがあっても大丈夫です。少しずつ挑戦させながら、失敗しても「大丈夫、そのうちできるようになるから」と自分の失敗談なども話しながら励ましたりするといいですね。「みんなできているのになぜ、あなたはできないの!」は禁句ですよ。自分の想いを人に伝える練習を!親御さんからの質問【3】学校の先生から「自己主張をできるようにしておいてほしい」というお話がありました。特に「分からない」「できない」といったネガティブな自己主張をしっかりできることが大切だ、とのこと。でもうちの子どもは、こうしたことを自ら口に出せずじっと口をつぐんでしまいます。うまく言葉を引き出すコツを教えてください。低学年のお子さんには、「自分が困ったときには、相手にそれを伝えることが大切だよ」と教えてあげてください。実際、「困ったとき、何も言えずにただ泣いてしまう」「トイレを我慢してお漏らしをしてしまう」という1年生はいるものです。一方で、自分の主張ばかりして、相手を受け入れることが苦手なお子さんもいます。人間は社会的動物ですから、集団の中で他者と共にしか生きていけません。その中では、まず自分の考えや欲求をもち、それを他者に伝える必要があります。伝えたらすぐにそれが通るということではないので、時には思い通りいかなくて我慢することも必要。ですから、1年生になったらまずは自分の気持ちや要求を言葉で(文字や他の表現も可)相手に伝えることができるようになるといいですね。家庭では、「お母さん!」と子どもが言うだけで「ああ、お水ね」とお水を出してしまうなど、子どもの要求を簡単に叶えてあげてしまうようなこともあるでしょう。ところが、クラスという集団の中ではそうはいきません。何も言わないと、だれにもわかってもらえないこともあります。自分の想いや要求を言葉で伝えることは必要なのです。それから、「分からない」「できない」などの言葉は、しばしばネガティブな表現と取られます。お家で親から「どうしてわからないの!」「なぜできないの!」などという反応を返された経験があると、子どもはどうしても「分からない」「できない」と言えなくなってしまいます。どんなことでも否定から始めるのではなく、まずは肯定です。肯定されることで、子どもは自信をつけていくのですから。心身ともに健康に育つための「4大栄養素」入学や進級にあたり、親子でいろいろ不安になることもありますが、大丈夫です。できた、できないに一喜一憂するのではなくドーンと構えましょう。「しっかり食べる」「たっぷり眠る」「からだを動かして友だちと群れて遊ぶ」「安心して受け止めてくれる大人がいる」の4つが家庭で保障されている子どもは、少々のことがあっても十分乗り切ることができます。最近は、この4つが崩れていることが多いのですが、これぞ家庭の役割です。4つのことをしっかり満たしてあげれば、子どもは新たなことに挑戦したり、失敗してもまたチャレンジする意欲を持てたりします。これぞまさに、心身ともに健康に育つための「4大栄養素」と言ってもいいでしょう。
2019年04月08日「なんで同じようにできない?」まわりと比べて自信をなくした子ども時代出典 : 私は物心ついたころからまわりと違う自分が嫌いでした。例えば、真夏の晴天の日。元気に外で遊ぶほかの子に対して、まぶしくてほとんど目も開けていられない私。プールで遊ぶときに、楽しそうなほかの子たちと、水に顔をつけるのが怖い私。当時は、みんな自分と同じ感覚なのだと思っていました。なので、「みんなこんなつらい状態で頑張ってるのにどうして自分は同じようにできないんだろう」と考えてしまい、どんどん自分がダメな人間だと思うようになっていきました。小学生で不登校になってからは自分の将来を悲観してしまい、さらに自分を嫌いになっていきました。そんな私も中学校に入ったころに、プログラマになりたいという気持ちを強く持ちました。「こんなに楽しくて、ずっとやり続けたいことが見つかるなんて!」。将来を悲観していた私にとって、大きな前進です。このとき、少し自分を好きになれました。それからは、もう自分を嫌いにならないよう、プログラミングに関してかなりの勉強をして努力してきました。…一見とても前向きな話のようにも思えるかもしれません。でも、今振り返ってみると、「こんなにダメな自分が唯一、人並み以上にできるのがプログラミング。これを頑張らなかったら自分には価値がなくなってしまう」と思い必死になっていた気がします。そんな気持ちでいたためか、相変わらず、まわりと自分との比較は続き、気分が落ち込んだり、ちょっと褒められると嬉しくなって調子に乗ってしまったりを繰り返していました。社会に出てうつ病に…。同業種への転職で「まわりからの評価」に変化出典 : 社会人になって、ずっとやりたかったプログラミングの仕事に就くことができました。でも、同期の人たちや先輩たちとは馴染めず、せっかく鍛えたプログラミング能力を活かすこともあまりできませんでした。当然、会社からの評価も散々でした。その後、うつ病になってしまったこともあり、失意のうちに退職。それでも、中学生のころから努力してきた思いは捨て切れません。しばらくの療養を経て、「これでダメならプログラマをやめよう」と思い、同業種の会社に転職。するとその会社では、それまでの経験からは想像できないくらい高い評価をしてもらいました!私がやっていることはそれほど変わっていないのに、周囲の反応や関係については本当に劇的な変化があったのです。■例1: 自分が最善だと思うプログラムを組んだとき1社目の場合: 「勝手なことをするな!」とか「ほかのところと同じようにすればいいから」と言われた。転職後の場合 : 「おお!その手があったか!」とか「神!」「先生!」みたいなことを言われた。■例2: 飲み会の場であまり話さなかったとき1社目の場合: 「なんだよあいつ、愛想悪いな」と先輩が言っているのを耳にした。転職後の場合: 特に陰口を言うわけでもなく、たまに話をしてくれるくらいでそっとしてくれた。これらの経験から、同じような対応や行動をとっていても、環境によって人が言ってくることや反応が全然違うんだ!ということに気づきました。「不確かなまわりの評価をずっと気にして自分を嫌いになってしまっていたのか…。なんだかバカバカしいな」と思うようにもなりました。それからは徐々に、自分が人と違うことや、どう思われているのかを気にしないようになりました。いつの間にか自分を好きになっていた出典 : 「人の評価を気にしなくていいや」と思えるようになってから、いろんな面で自分がやりたいように振る舞えるようになってきました。(まわりの人を不快にさせる言動を意図的にするようなことはもちろんありませんが。)例えば、職場の人たちからランチに誘われたとき、気分が乗らなかったら断れるように。また、自分の意見を話すとき、堂々と言い出せるようになりました。これらは単に、社会人になってから経験を積んだことで、私自身の振る舞いが、人に受け入れてもらいやすいものになっていったという側面もあるかとは思います。いろいろな歯車がようやく噛み合ってきただけなのかもしれません。でも、こうして自分が自然に振る舞える時間が増えてきたら、いつの間にか、まわりと違う自分を認めることができるようになり、自信が持てるようになっていました。自信を持てた今の私が、かつての私に伝えたいこと出典 : ありのままの自分が受け入れられていると確認できたり、自然なままの自分を誰かに否定されないことで自分は自分のままでいいんだと感じることができました。これが、自分を好きになり、自信を持てるようになった理由だと考えています。自分のことが嫌いで自信も持てなかったころの私に対して、今の私から何か伝えることができるなら、「自分が嫌いでいろいろともがいているかもしれないけど、自分が自然なままに振る舞っても普通に接してくれる人たちはいるよ。今磨いている技術力を高く評価してくれる環境がみつかるよ」と言葉をかけたいです。
2019年02月24日【ニュース】2019年10月から、就学前の障害児の発達支援を無償化へ!出典 : 年10月から就学前の障害児の発達支援が無償化されます。就学前の障害児の発達支援を含む、幼児教育の無償化については、2017年から検討を進められてきました。2018年12月には関係閣僚会合で制度の具体化に向けて「幼児教育・高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針」がまとめられました。対象は、満3歳になった後の最初の4月から小学校入学までの3年間。具体的には、・児童発達支援事業所・医療型児童発達支援事業所・居宅訪問型児童発達支援事業所・保育所等訪問支援事業所・福祉型障害児入所施設・医療型障害児入所施設の利用料が無償化されます。また、幼稚園や保育所、認定こども園をこれらの発達支援と一緒に利用する場合は、ともに無償化の対象となります。認可外保育施設等の場合は上限額があります。就学前の障害児の発達支援には、現行の障害児福祉サービスの制度と同じく、一般財源があてられます。自治体によっては、すでに独自の制度として一部で無償化しているところもありますが、全国的な動きとして、地域間の差がなくなっていくことで、どこで暮らしていても子育てしやすい環境が整えられていくといいですね。幼児教育・高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針 | 文部科学省【ニュース】厚労省が「ゲーム依存」の実態調査を実施中!結果から予防や対策を検討出典 : 年1月17日から「ネット・ゲーム使用と生活習慣」についてのアンケートが実施されています!この調査は、2018年6月に世界保健機構(WHO)が、ゲームのやり過ぎで日常生活に支障をきたす依存症を「ゲーム症・障害」という疾患として認め、2019年5月の総会で正式承認する見通しとなったことを受けて計画されました。WHOは、■ゲームをする衝動を止められず、コントロールできない■ゲームを最優先する■日常生活に支障が出てもゲームを続けるといった症状が、12か月以上に渡って続くことを「ゲーム症・障害」という疾患とみなすとしています。2019年度にはネット使用、ネット依存、ゲーム依存等に関するさらに大規模な調査が行われる予定で、今回はその予備的調査の位置づけとされています。今回の実態調査は、厚生労働省依存症対策全国センター調査研究事業の一環で、久里浜医療センターが実施。無作為に選ばれた全国の6,000人が対象です。事前に依頼ハガキが送付され、調査員が直接訪問して行われます。対象となった人は、調査票に記入後、調査員に手渡すか、郵送、またはオンラインで回答することもできます。調査結果は、厚生労働省の政策企画・立案の基礎資料として活用され、予防や治療対策に役立てられます。【期間】2019年1月17日(木)〜2月中旬ごろ【対象】全国の10〜29歳の6,000人「ネット・ゲーム使用と生活習慣についてのアンケート調査」を実施いたします | 久里浜医療センター【ニュース】専門家に相談できる!オンラインの「育児発達相談窓口」を 経済産業省が福利厚生制度として導入Upload By 発達ナビニュース2019年1月から、株式会社WOODYが提供するオンライン育児サービス「育児発達相談窓口」を経済産業省が従業員向けの福利厚生制度として導入しました。「育児と仕事の両立の難しさ」を抱える従業員をサポートし、退職減に取り組むもので、WOODYでは、福利厚生制度として、年内に30社での導入を目指していくとしています。このサービスでは、従業員が周囲に相談しづらい育児の悩みをオンラインで気軽に相談できる機会を提供。臨床発達心理士、作業療法士、言語聴覚士、療育士、子ども向けワークショッププロデューサーといった専門家のカウンセリングを受けられます。WOODYは、発達障害のある子どもが興味を持っている分野の学生や専門家などをマッチングさせ、対面やオンラインでカウンセリングなどを行い、一人ひとりの可能性を伸ばすWEBサービス「Branch」を運営。これまでの経験をいかして、育児や子どもの発達に悩む従業員を対象に、この「育児発達相談窓口」を開設しました。株式会社WOODYの中里祐次代表取締役のコメント「育児に関してすべて相談できる場所というのは中々なく、一人で悩んでいる方が多いです。このサービスを始めたきっかけは、私個人宛に様々な方から育児や発達に関する相談をもらっていたからです。家庭の中の内容なため勤めている場所には相談しづらく、何も伝えないまま転職してしまったり辞めてしまったりということがこれまで多かったです。そういった一人ひとりの悩みをお聞きして、従業員の方を大切にしたい法人様の課題解決の一助となれば幸いです。」【お問い合わせ】Email: contact@thewoody.jp サービスサイト【イベント】自閉スペクトラム症の知覚をVRで体験できるワークショップが開催出典 : 年3月2日(土)と3月3日(日)に、自閉スペクトラム症(ASD)知覚体験ワークショップが開催されます。ワークショップでは、自閉スペクトラム症(ASD)当事者の知覚を、VR装置を用いて疑似体験できます。また、ASD当事者における知覚過敏・鈍麻のメカニズムについての講義や当事者の体験等に関する映像紹介、座談会を通じて、当事者への理解を深めていくプログラムが組まれています。【日時】3月2日(土)13:00~17:30(12時40分受付開始)3月3日(日)12:00~16:30(11時40分受付開始)※いずれの日程も同一内容です。※いずれか1日のみご参加いただけます。※過去に同一内容のワークショップにご参加いただいた方は、お申込みいただけません。ご了承ください。【場所】大阪府立男女共同参画・青少年センター(ドーンセンター)5F大会議室2京阪「天満橋」駅、Osaka Metro(旧大阪市営地下鉄)谷町線「天満橋」駅 ①番出入口から東へ約350mJR東西線「大阪城北詰」駅下車。②号出口より土佐堀通り沿いに西へ約550m大阪シティバス「京阪東口」からすぐ()【内容】1.講義「自閉スペクトラム症の視覚世界を体験~なぜ対人コミュニケーションが難しいのかを考える~」(情報通信研究機構長井志江 主任研究員)2.ASD視覚シミュレータの体験3.ASD当事者の体験および海外の支援設計事例についての映像紹介4.座談会:学びや気付きの共有、議論【対象】ASD当事者のご家族や支援者、障害者雇用を担当されている方など【参加費】無料【定員】両日ともに60名(抽選)【応募締切】2019年2月11日(月)※当選者の方にのみ、応募期間終了後1週間以内(2月18日(月)まで)にご連絡いたします。【主催】JST CREST「認知ミラーリング」情報通信研究機構脳情報通信融合研究センター東京大学先端科学技術研究センター当事者研究分野株式会社LITALICO【応募方法】下記のフォームよりお申し込みください。参考:CREST特設ページ【イベント】「世界ダウン症の日」「ダウン症啓発月間」直前!キックオフイベントへ参加しよう!(東京都)Upload By 発達ナビニュース3月21日は国連の定めた「世界ダウン症の日」、また3月は日本ダウン症協会(JDS)が定めた「ダウン症啓発月間」です!日本中でさまざまな啓発イベントが開かれるのに先立って、キックオフイベントが開かれます!ステージパフォーマンスやトークセッション、チャリティTシャツのお披露目ファッションショー、さらに関係団体による体験ブースなどなどさまざまなプログラムが予定されています。総合司会は、朝のテレビ番組でおなじみの笠井信輔アナウンサーと、ダウン症のイケメンタレントあべけん太さんが務めます。生き生きと活動するダウン症の人たちに触れながら3月の本番に向けて理解を広げるために、会場へ足を運んでみませんか?【日時】2019年2月11日(月)13:00〜16:00【場所】東京都新宿区立四谷区民ホール(東京都新宿区内藤町87)【対象】どなたでも参加可能【参加費】 1,500円 ※未就学児で大人の膝の上に乗せられるお子さんは無料【内容】・ステージ「TEAM RAMI DREAM TEAM( ゴールデンホークス)」によるチアダンスパフォーマンス玉井邦夫JDS代表理事がダウン症のある人とトークセッションパリコレモデル髙木真理子先生(スマイルウォーキング倶楽部代表)ディレクションのチャリティTシャツお披露目ファッションショー世界ダウン症の日、ダウン症啓発ポスター発表JDSからのアピール文採択・ブースNPO法人アクセプションズハンドスタンプアートプロジェクトによるハンドスタンプ体験東京都自閉症協会による自閉症啓発ブース新宿区手をつなぐ親の会知的障害疑似体験キャラバン「Winds」JDSによる書籍販売、子育て手帳「+Happyしあわせのたね」配布世界ダウン症の日 | 公益財団法人日本ダウン症協会【イベント】障害のある人たちが生み出す作品の"記録"と"伝えること"をゲストと語る座談会「かすかなしるしに耳をすます 」(東京都)Upload By 発達ナビニュースみずのき美術館(京都)、鞆の津ミュージアム(広島)、はじまりの美術館(福島)の合同プロジェクトによる障害のある人の創作物を記録し伝えることについて考える座談会です!各美術館は、障害者支援施設が運営母体となっています。このプロジェクトでは昨年度から、施設利用者の方をはじめ、各地域で生活されている障害のある方や人知れず表現活動を続ける方によって生み出された作品・創作物の調査を三館合同で行ってきました。そして作品をデジタル・アーカイブとして記録・保存・公開しています。これまで三者三様の「アーカイブ」を探りながら合同でプロジェクトを進めてきましたが、よりオープンな議論ができる場として、今回の座談会を開催。ゲストは医学書院で「ケアをひらく」シリーズを編集する白石正明さん。あらゆる領域で「ケア」に向き合ってきた人たちの技法や知を書籍として編み上げ注目されている編集者です。また、プロジェクト設計者である須之内元洋さんがモデレーターを務め、「生きること」の多様さや複雑さを記録し伝えていくための方法や可能性について語ります。【日時】2019年2月16日(土) 14:00〜16:30【場所】日本財団ビル8階(東京都港区赤坂1-2-2)【内容】ゲストスピーカー: 白石正明(医学書院『ケアをひらく』シリーズ 編集者)スピーカー: 奥山理子(みずのき美術館)、津口在五(鞆の津ミュージアム)、 大政愛(はじまりの美術館)モデレーター: 須之内元洋(プロジェクト設計者)【参加費】無料【定員】100 名※要申し込み。定員になり次第締め切り※文字支援のアクセシビリティサービスあり各美術館のアーカイブスは次の通りです。※みずのき美術館は美術館内で「みずのきアーカイブ」として公開福六アーカイブズ | 鞆の津ミュージアムはじまりアーカイブスunico file | はじまりの美術館*みずのき美術館のページに遷移します【ニュース】専門家の講演内容も見られる「サイエンスアゴラ2018公開シンポジウム」開催報告ページを開設!Upload By 発達ナビニュース2018年11月に東京都で開かれた、サイエンスアゴラ2018 公開シンポジウム「地域での発達障害支援を考えよう〜うちの子、少し違うかも...Final」。当日の様子を報告するウェブページが開設されました!当日、会場に行けなかった人も、いつでも専門家の講演やパネルディスカッションの内容を見ることができます!開催報告ページでは、発達障害支援について医療・療育・教育などの様々な視点で、研究者や現場支援者から、エビデンスに基づいた地域支援の実践例が紹介されました。当日の内容を見ながら、さまざまな分野の専門的支援と地域住民の生活支援が、『地域』の中で提供されるための方法について一緒に考えてみませんか。【内容】・講演資料(PDF及び動画)・パネルディスカッション映像及び主な議論・イラストを利用したまとめ(グラフィックレコーディング)・関連情報など*社会技術研究開発センターのページに遷移します【イベント】不登校ライブフェスが開催出典 : 年2月15日(金)、4月の新学期に向けて、「不登校」をキーワードにしたフェスが開催されます。新しい環境で新しい自分に出会うきっかけを、音楽を通して感じてほしいと企画されたイベント。「不登校だったことが、よかった」と思える居場所を見つけた、国立音楽院の生徒たちによる渾身のステージも。生きづらい系シンガーソングライター・風見 穏香さんや、子どものSOSシンガーソングライター・悠々ホルンさんのステージも予定されています。【日時】2019年2月15日(金)15:00開場、 15:30開始【会場】KMAパラダイスホール(〒154-0001東京都世田谷区池尻3-28-8 国立音楽院B1F)【参加費】500円【内容】15:00 開場15:30 弾き語りライブ生きづらい系シンガーソングライター・風見 穏香さん16:05 トーク + ライブ国立音楽院 中等部在校生の本人&お母様16:45 トーク + バンドライブ 不登校経験者としての悠々ホルンさん17:40 参加者全員にプレゼント抽選会 + テーマ曲を合唱【主催】国立音楽院
2019年02月01日我が子の未来が順風満帆で輝かしいものとなるように……親であればそう願っていますよね。しかし実際には、他人からの心ない態度に傷ついたり、自分の能力に限界を感じたりするでしょう。そんなとき、「前を向く力」があれば、もう一度立ち上がることができるのです。いま、どんな困難な状況にあってもめげることなく前を向いていける力が求められています。お子さまの「前を向く力」を育てるために、親ができることを考えてみました。やり場のない気持ちは「切り替える」「やりすごす」子どもは、自分ひとりで解決できない困難を目の前にしたとき、親や先生などの身近な大人に「なぜ悩んでいるのか、苦しんでいるのか」「どうしたいのか」を言葉で伝えられないことがよくあります。原因がいくつも絡み合って、自分の中で整理がうまくできないために言語化できないのです。私たち大人の社会においても、似たようなことは起こります。すべてを白黒はっきりつけて解決できればいいのですが、そうとも限らないのが現実です。傷つき悩む子どもたちは、困難な状況をうまく乗り越えられないでいると、頭痛や腹痛など身体の不調を訴えることもありますし、不登校になってしまうこともあります。または、抱えているストレスをいじめや暴力で発散するケースも考えられます。この時代を生きていくには、困難に立ち向かう方法だけでなく、やり場のない気持ちをうまく切り替える方法ややりすごす方法を身につけて、前を向いて進む力が求められています。この力を「レジリエンス」といいます。海外では40年近く前から「レジリエンス」について研究が進んでいましたが、国内でレジリエンスが注目されたきっかけのひとつは、2011年3月11日の東日本大震災だといわれています。そのため、防災や減災といった意味合いで使われることもありますが、心理学では「逆境やトラウマ、惨事、脅威、もしくは重大なストレス源に直面したときにうまく適応するプロセス」(アメリカ心理学会)と定義されています。前を向く力「レジリエンス」が高い人の特徴「レジリエンス」は、誰もが元々もっている力で、大人になってからでも高めることができます。逆に、心身の疲労によって衰えることもあります。人によってレジリエンスの程度には差がありますが、高めていくには次のようなことがカギになると埼玉学園大学の小玉正博教授は述べています。【レジリエンスを高める考え方や行動】●気持ちや感情をコントロールする力●変化する状況に順応できる柔軟性●自分は大切だという感覚●必要な時に助けを求められる力●自分を犠牲にしない●楽観的であること●嫌なことを割り切る力これらをご覧になっていかがでしょうか。「前を向く力」といっても、困難へ正面から立ち向かうパワーや、限界まで粘り強く向き合うためのガッツではなく、「しなやかさ」「融通が利く」「受け入れる」に近いものが多いですね。困難な状況にあってもパニックを起こさず、また怒りや悲しみ、悔しさを自分でコントロールすること、状況に応じて順応すること、自分のことを大切に思いひとりで問題を抱え込まないことが「前を向く力」をつけるための大切な要素となります。子どものレジリエンスを育てるために親ができること3つ上記にレジリエンスを高める考え方や行動をご紹介しましたが、実際に私たちは、どのようなことを意識すれば、子どものレジリエンスを育てられるのでしょうか。臨床心理学者で東京学芸大学名誉教授の深谷和子先生は、次の5つが大切だといいます。レジリエンスを育てるために大切なこと1.自己肯定感(自尊感情)を育てる2.愛し愛されることができる子どもに育てる3.友だちとのかかわりをもてる子に育てる4.多様な体験をもつ子に育てる5.目標(志)をもつ子に育てる(引用元:Z会さぽナビ|特集 折れない心を育てる(1) 【インタビュー】「レジリエンス」こそ 親が子に残せる最高の資産(1))この中で最も重要なのは「自己肯定感(自尊感情)」で、自己肯定感が育っていれば2~5に連動してプラスの効果があるそうです。自己肯定感とは、「自分ならできる」「自分は愛されている」「ここにいてもいい存在だ」と思える気持ちです。また、自己肯定感が高い子どもは学力も高いという調査結果もあり、子どもの教育を考える上で注目されています。これら5つの観点で子どもを育てるために親ができることを3つご紹介します。それは「結果よりプロセスを褒める」「チャレンジを援助する」「人とのつながり感じさせる」です。(1)結果よりプロセスを褒める「上手にできたね」「やればできるじゃない」といった結果を褒めるよりも、途中でどんなふうに頑張っていたのか、以前に比べてどれくらい成長しているのかというプロセスを褒めます。たとえ、うまくいかず失敗に終わってもそこまでに至る意欲や頑張りを褒めることで、「またがんばろう」という気持ちが芽生えます。【プレセスを褒める声かけ】・「このあいだの日曜日よりも10回も多く縄跳びが飛べたね!」・「毎日漢字の練習を頑張ってるもんね、すごいよ!100点おめでとう」・「(点は入らなかったけど)たくさんパスがもらえるようになったよね!かっこよかったよ」(2)チャレンジを援助するわが子が失敗して傷つかないように、あれこれ先回りして手を差し伸べることを控えます。とても無理なことに無謀なチャレンジをさせるのではなく、ちょっと頑張れば手が届きそうなことに「チャレンジしてみよう」と思わせることがポイントです。子どもが多様な経験をし、必要なときには「助けて」と言える環境を作り、助けを求めてきたら必要な分だけ援助するようにします。【チャレンジをうながす声かけ】・「上り棒、半分登れるようになったんだね。一番上まで登れるようになったら、遠くに何が見えるか教えてね!」・「顔を水につけられるなんてすごい!じゃあ、目も開けられるかな?」・「補助なしでも逆上がりができそうだね。来週もお父さんと一緒に練習しよう!」(3)人とのつながりを感じさせる不安や心配事など何でも話せるように、「私たちはあなたのことをいつでも守っている」というメッセージを子どもに繰り返し伝えましょう。自分が守られていることで安心でき、自己肯定感も高まります。また、周りの人や社会の中で自分が大切にされていることに感謝の気持ちをもつように意識させることも大切です。【人とのつながりを意識させる声かけ】・「お父さんとお母さんは〇〇ちゃんのことをいつも大切に思っているよ」・「どんなことでも相談にのるからね。〇〇くんが大好きだから、いつでも〇〇くんを見ているよ」・「おばあちゃんは〇〇ちゃんのことが本当に大好きなのね。早く会いたいな、って言ってたよ」・「先生が〇〇くんの体調を心配して電話をくれたよ。うれしいね」子どもの前に困難が立ちはだかったとき、その悩みや苦しみを乗り越えるのは子ども自身。親は心配のあまり、つい手を差し伸べたり口を出したりしたくなりますが、励ましや援助を続けることが大切です。子どもが「自分は少しずつ成長している」「失敗しても、また頑張れる」「周りにいる人は自分の味方だ」と思うことが、前を向く力につながります。***失敗したとき、行き詰ってしまったとき、そのままつぶれてしまわず、気持ちを切り替えて感情をコントロールしながら目標に向かって行けるような、しなやかな心を育ててあげたいですね。(参考)Z会さぽナビ|特集 折れない心を育てる(1) 【インタビュー】「レジリエンス」こそ 親が子に残せる最高の資産(1)ベネッセ教育情報サイト|乳幼児期から育む、折れない心【前編】困難に負けない、レジリエンスとはベネッセ教育情報サイト|乳幼児期から育む、折れない心【後編】レジリエンスを伸ばす保護者の働きかけNPO法人 青少年こころの悩み支援センター|困難を乗り越える子どもに久世浩司著(2014),『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?』, SBクリエイティブ.久世浩司著(2015), 『マンガでやさしくわかるレジリエンス』, 日本能率協会マネジメントセンター.ジェシカ・ジョエル・アレキサンダー・イーべン・ディシング・サンダール著、鹿田昌美訳(2017),『デンマークの親は子どもを褒めない 世界一幸せな国が実践する「折れない」子どもの育て方』, 集英社.
2019年01月30日子どもの心身の健康に欠かせない「睡眠」。必要な睡眠時間は、幼児期(3〜5歳)で11〜13時間、学童期(6〜12歳)で10〜11時間といわれています。しかし、不足している子どもが多いのが現状です。みなさんのご家庭ではいかがでしょうか?子どもの睡眠が足りているかどうか、きちんと把握し、十分な睡眠時間を確保してあげられていますか?今回は、子どもの睡眠不足の危険性についてお話ししたうえで、寝不足な子に共通してよく見られる傾向と、十分な睡眠をとらせるための秘策をご紹介します。睡眠不足は「学力」や「人格形成」にも影響する!睡眠不足は健康にはもちろんのこと、学力や心にも影響をおよぼすことがわかっています。具体的には、どんなことが懸念されるのでしょうか。【健康への影響】睡眠不足は、体に様々な症状を引き起こします。その一つが、免疫力の低下です。通常、睡眠中は様々なホルモンが分泌され、それらが体の機能を整えるうえで重要な働きをします。それが、睡眠不足になると少なくなり、体のバランスが崩れてしまうそうです。また、睡眠不足は体温や交感神経、副交感神経の異常を招くといわれています。それらの異常は、朝起きれなくなったり、肥満や高血圧を引き起こしたりする、非常に厄介なものです。さらに、幼少期の睡眠不足は、その後の生活習慣にも影響するといわれています。手遅れにならないうちに改善しないと、大人になってから健康に支障をきたすこともあるのです。【学力への影響】学力への影響も無視できません。ある調査では、成績が上位の子ほど早い時刻に寝ていることがわかっています。睡眠には、レム睡眠(浅い眠り)とノンレム睡眠(深い眠り)があり、およそ90分おきに訪れるレム睡眠の間に、脳が記憶を整理するといわれています。ですから、睡眠時間が短ければ短いほど、そのチャンスが減ってしまうのです。つまり睡眠不足は記憶が定着せず、せっかくの学習努力が無駄になってしまうかもしれません。勉強したことをしっかり身につけるには、十分な睡眠が欠かせないのです。【心への影響】子どもが睡眠不足になると、感情のコントロールが難しくなるということが指摘されています。遊んでいてもイライラしてしまい、友だちと喧嘩してしまうことも。気づかないうちに友人関係を悪化させてしまうかもしれません。昌仁醫修会瀬川記念小児神経学クリニック理事長の星野恭子先生は、「夜型の幼児は攻撃性が高く、不注意が多い。夜型の5歳児は三角形が書けない」と話しています。このように、睡眠が不足すると、心にも影響がおよびます。小さな子どもが、コントロールのきかない感情を抱え、心を痛めてしまうのです。寝不足な子が出している3つのサインさて、こうした様々な危険にさらされている寝不足な子たちは、共通して何かしらのサインを出しています。それを親御さんが敏感に察知することで、早期に睡眠不足を解消させてあげられるかもしれません。そこで、下記に寝不足な子によく見られるタイプや行動、様子を挙げていきたいと思います。【寝不足のサイン1:自己肯定感が低い、イライラしている】子どもの態度や発言に注目してみてください。理由やきっかけもなく常にイライラしていたり、「どうせ自分なんか」「頑張っても無駄だし」といった投げやりな言葉を口にしたりしていませんか?文科省の調査から、睡眠不足の子どもには、自己肯定感が低く、イライラしやすい子が多いということがわかりました。自己肯定感が低いということは、自分の能力に自信がなく、自分の存在価値が見出せないということ。自分で自分のことを好きになれないのです。子どもの態度や発言に「あれ?」と思うような点があれば、それが要注意のサインと考えられるでしょう。【寝不足のサイン2:昼間の居眠りが多い、休日に遅くまで寝ている】日常的な行動にも、睡眠不足のサインは潜んでいます。昼間に居眠りをしていることが多かったり、休日に寝溜めをしたりする行動は、まさに普段の睡眠が足りていない証拠です。授業中も居眠りしてしまい、授業の進度についていけなくなってしまうことも。対応が遅れると、不登校になるケースもあるといわれています。こうした行動は、周囲から「怠け者」と誤解されることが少なくありません。せめて親だけでも、子どもの睡眠が足りていないということに気づいてあげたいところです。【寝不足のサイン3:毎日忙しい、何事にも頑張りすぎてしまう】何事にも真面目に、一生懸命取り組む頑張り屋さんは、睡眠不足になりやすいといわれています。学校や塾、習い事など、忙しい毎日を送る子どもは少なくありません。それらを無理矢理すべてこなそうとすれば、睡眠時間を削るしかない、ということになってしまいます。子どもの様子を見て、「ちょっと頑張りすぎているな」と気になるなら、それが要注意のサインといえるのではないでしょうか。まずは親の睡眠時間を確保するべき我が子の睡眠が足りていない――。その事実に気づいたとき、親はどのようにして、子どもの睡眠時間を確保すればいいでしょうか。実は、親だからこそできる秘策があるのです。睡眠文化研究所が行なった調査「都市生活における家族の睡眠の現状」によれば、親子が同じ部屋で眠る家庭は全体の80%で、子どもの睡眠は親の睡眠と密接に関係しているそうです。そして、「夜型の母親が夜型の子どもをつくる」「両親の睡眠の健康が悪いと、子どもの睡眠健康も悪い」ということが明らかになっています。つまり、子どもの睡眠時間を確保するなら、その前に親の睡眠時間を確保するべきなのです。とはいえ、家事や仕事で忙しい親にとって、睡眠時間を増やすことは大変なことでしょう。その場合は、親子で寝る部屋を別々にしてみたり、夜行なっていた家事を朝に回してみたりと工夫してみましょう。子どもの未来を決めかねない「睡眠」。家族で話し合い、できることから少しずつ試してみてくださいね。***子どもの睡眠不足に気づき、それを改善できるのは、親だということがわかりました。これを機に、ぜひ家族で睡眠について話し合ってみるのはいかがでしょう。部屋の環境を整えたり、就寝時間を調整したりなど、家庭ごとに異なる最適な改善策が見つかるかもしれませんね。(参考)ALL About暮らし|子どもの夜型化には危険がいっぱい!オークローンマーケティング|子どもの睡眠に関する調査結果東洋経済オンライン|「成績のよい子」は、だいたい何時に寝るのかダイヤモンドオンライン|睡眠不足で脳に恐ろしい影響が?子どもの最適な勉強・読書時間とは睡眠屋オンラインショップ|理想の睡眠時間で子供の成長の手助けをヤフーニュース|大人よりも深刻――子どもの「睡眠負債」その実態とは文科省|睡眠を中心とした生活習慣と子供の自立等との関係性に関する調査の結果(概要)産経WEST|「早く起きることが苦痛」塾通い・スマホで体内時計リズム“崩壊”、寝不足の子供続出…睡眠教育の効果は睡眠文化研究所|都市生活における家族の睡眠の現状
2019年01月25日冬休みが終わり、久しぶりの学校。子どもたちもしっかり準備していたものの…。本日は登校初日あるある(!?)なお話です。 休み明けは要注意! 登校初日の出来事今日は4コマです。「あ」じゃない、「あ」じゃ(笑)。こまめはわりと心配性なところがあるので、学校が始まる数日前から「忘れ物大丈夫かな」って不安になってて、何回も持ち物見直ししてたのに(笑)。体操着は初日じゃなくて2日目にもってくるものだったらしく、危うく全部忘れてしまうとこだったよ!
2019年01月12日節電とは無縁の生活冬や夏といえば光熱費がかかるシーズン、頑張って節電に取り組んでおられるご家庭も多いのではないでしょうか?わが家は、娘が学校へ行かず引きこもるようになってから、節電という言葉とは無縁な地球にやさしくない生活をしています。マンションに1台しかないエアコンはよほど快適なシーズン以外は24時間稼働しっぱなし。電力自由化までは、真夏や真冬には2万を超える電気代を払っていました。引きこもりと空調の問題出典 : 不登校や引きこもりに関する講演で聞く話ですが、当事者である子どもたちは親が思っている以上に、引きこもっている自分の存在を否定し親に申し訳ないと感じているのではないかと思います。そんな子どもたちにとって大切なのは「あなたはここにいていいんだよ」と態度で示してあげること。空調もその一つで「寒かったらエアコンをつけてね」と一言かけるだけで子どもの気持ちも変わります。「自分のせいで電気代がかかって申し訳ない」って思っていますので…。娘も最初は「クーラーつけてもいい?」と毎日遠慮がちに聞いてきていました。感覚過敏で洋服での調整が難しい娘は感覚過敏が強く、それは小学校3年生のときに完全に学校に行けなくなってから一気にひどくなりました。肌の感覚が鋭くなり、今まで身につけることができた靴下や靴、長袖・長ズボンをまったく受けつけないようになりました。室内では一年中、ヨレヨレになったTシャツとパイル地の短パンしか身につけません。それでいて、ちょっと寒かったり暑かったりしたらエアコンをつけたがるし、湿度にも敏感になって加湿器を出して欲しいと言うし、正直に言うと腹が立つこともありました。その頃はまだ、娘に発達障害があるとはゆめにも思っていなかったからです。親からしてみれば、「まだそれほど暖かくもないのに、そんな恰好をしていたら寒いに決まっているじゃないか。暖房をつけるくらいなら上に何か着てほしい」と言いたいところですが、発達障害と診断され、娘には感覚過敏という特性もあることを理解してからはイライラすることもなくなりました。娘はわが家のエアコン奉行現在、わが家の空調は娘に合わせて完璧になるよう、「娘が」管理しています。基本的にシーズン中は24時間稼働、マメな調整も欠かしません。エアコンが止まるのは外気が20℃前後、湿度40~55%程度になる快適なシーズンだけです。ちなみに湿度にも敏感で「空気が乾いているから加湿器をつけるね」と素早く調整します。去年の真夏にエアコンが故障したのですが、そのときはすぐに実家に避難したにもかかわらず、環境が変わったのがストレスになったのか体調を崩して病院行きに…。加湿器も故障したので、エアコンと一緒に、できるだけ電気代が安くつき、自分で設定がカスタマイズできるものを選んで購入しました。加湿器の説明書を熟読した娘は、月に一度のフィルターのクエン酸洗浄もやってくれるように。本当に働き者のエアコン奉行です!意外な人たちにも喜ばれた出典 : うちにはヘルパーさんが週3回来てくれているのですが、いつも部屋に入ったとたん喜びます。「ヨーコさんの家は一年中快適やわ~」って。お年寄りの家は夏場は暑いし、冬場は使ってない部屋は寒いしで大変なんですって。しかも、普段ヘルパーさんが来ているときは、加湿器が置いてある寝室のふすまを閉めて閉じこもっている娘も、ヘルパーさんが風邪をひいて咳をしていると、ふすまを開け放して湿度を調整してくれます。自分が喘息で苦しんだ経験があるから優しいんですよね。意外な人にも喜んでもらえて何よりです。
2019年01月11日不登校の親子にとって帰省や親戚づきあいは鬼門不登校当事者やその親からこの時期よく出る話題が「お正月どうするか」ということ。私のまわりでも、不登校の子どもたちは「祖父母や親戚から学校のことを聞かれるのが嫌」「お説教をされるのが苦痛」と語っています。また心身のエネルギーが不足しているので長距離の移動に耐えられない、昼夜逆転している場合が多いので他の人のリズムに合わせるのがつらい、という事情もあります。母親からすると、自分の親や義理の親から「お正月なのに孫の顔も見せに来ないの」と責められ、「行きたくない」という子どもと自分の親の板挟みになるつらい行事となりがちです。シングルマザーであるわが家も例外ではありませんでした。娘と私のお正月お正月に私の実家に集まるのは母と私の兄弟、そして娘と私だけです。小学2年生の2学期から娘が不登校になってからは、せっかく集まっても不登校に理解が全くない兄弟と理解できない母に責められてばかり。特に兄弟が厳しく冷たい口調で、一度にごはんを食べられない娘に「なんだそのごはんの食べ方は!行儀が悪い!」と声を荒げたり、「お前はまだ学校へも行けないのか」とチクチク言うようになってお正月気分どころではありません。娘は食欲も失ってトイレや別室にこもりきりになり、私も怒り狂って喧嘩別れするように娘を連れ帰ることが続くように。それでも我慢して元旦は顔を出していたのですが、娘が中学2年生のとき、ついにはっきりと「お正月、実家に行きたくない」、「お腹の調子が悪い」と言いました。そして、その年のお正月は娘は一度も実家に行きませんでした。私だけ義理を立てるために顔を出したのですが、母と兄弟に娘のことや私たちの生活についてさんざん非難され、帰ってから何日も寝込む羽目になったのでした…。本当にお正月は帰省するもの?みんなでおせちを食べるもの?娘が不登校を始めた当時は、私自身「正月くらい自分も実家でのんびりしたい」という気持ちが強く、「ママ、おうちに帰りたい」という娘を叱り飛ばしていました。今から思うと、食事も喉を通らず、落ち着ける場所もなく、どれだけつらかったでしょう。母子で何度も苦い思いを重ね、娘が中学生になってからようやく「実家にこだわらず娘と二人でのんびり平和にお正月を過ごせたらいいんだ」と気づいてからは、自宅でおせちを用意して自分がのんびりできるような体制を整えるようになったのです。特に凝ったことはせずに娘の大好きなローストビーフを奮発し、後は簡単なお惣菜を作り置くだけのお正月。生活リズムもバラバラなので改まって挨拶することもなく、各自のペースで好きなものを食べるだけだけど、娘はホッとした笑顔で私もなんだか幸せで「これでよかったんだ」と心から思いました。「お正月は帰省してみんなでおせちを食べる」という常識に縛り付けられていたのは私だったのです。一番守らなければならなかったのは娘の心だったのに。現在高1の娘、お正月を語る高校1年生となった娘に「お正月についてどう思う?」と聞いてみました。「お正月って一家集合、一族集合っていうビッグイベントだよね。ママがそれをストレスに感じてることは見てたらわかる。嫌なことがあっても強制的に行かなければならないってつらいだろうなって思う。生きていると情報がどんどん記憶されていくの。自分の嫌な記憶とか、人から聞いて「こういうことが起こるんだな」って思ったこととかが。私にとってお正月は緊張要素として普段は無意識化に置かれている感じ。そして緊張が重なるとバーンってなっちゃう。私の精神科の先生が言っていたよね。『電車が怖い』という症状は『大丈夫』が重なると減っていくけれど、イヤなことの積み重ねだとしんどくなるって。それと正月も一緒だと思う。今までの経験で嫌になるんだよね」とても冷静に分析できていてびっくりしました。そして、「ああ、やっぱり”忘れることができない”特性があるんだな」と心が痛くなりました。これからのお正月は「今年は叔父さんがいても行くよ」という娘。「無理しなくていいんだよ」と思いますが、お年玉などいろいろなことを天秤にかけて娘が決めるのなら任せようと思います。他のご家庭でも、歳を重ねるとともに家族の関係性って変化していくと思いますし、子どもも成長していきます。祖父母とも二度と会えないわけではないし、行事に関係ない時にふらりと自分から会いに行くこともあるかもしれません。わざわざプレッシャーのかかるときに無理をさせるメリットはないのではと私は考えます。本人の気持ちを第一に、細く長く無理なくつき合っていければいいですよね。
2018年12月14日編集部:学研キッズネット編集部人気連載「教えて!陰山先生」で、数々の悩みを解決してくれる陰山先生。その的確なアドバイスに力をもらい、子育てにはげんできた読者の方も多いのではないでしょうか。今回は、みなさんから寄せられた質問を通して先生が感じたこと、子育てにがんばるお母さんたちへの思いを語ってもらいました。母親が「わたしが守らなきゃ」と思いこみすぎている――これまで連載に寄せられた質問から、どんなことを感じましたか。陰山:ずっと気になっていたのは「母親が神経質になりすぎているのではないか」ということ。今の時代は情報過多であり様々なできごとが耳に入ります。一方、子どもの状況が事細かに見えすぎていて、「わたしが子どもを守らなきゃ」という思いが強すぎるように思います。心配するあまり、かえって問題を大きくしてしまっているところもあるのではないかと思っています。――具体的には、どういうことでしょうか。陰山:テレビや本、ネットなどのメディアは、不安や心配事を取り上げることが多い傾向があります。少しでも心配事がある人は、解決策を求めてそれを読みますよね。でも読むことで、余計に不安になってしまう人も多いんです。たとえば、学校でいじめ問題が起きたとします。確かに、保護者が出ていかないといけない場面はあるのですが、決してすべてに関わる必要はないんです。相当レアなケースだからこそメディアに取り上げられている、すべてがそれと同じくらいの内容ではないと考えてほしいですね。自分たちの子ども時代を思い出してもらえばいいと思うのですが、子ども同士、考え方や意見の違いがあるのは当然のことで、トラブルは日常的に起きています。そこで、おたがい言いたいことを言い合ってケンカをしても、数日経てば仲直りするのが普通です。子どもはトラブルをくりかえして成長していくものですから。心配性の保護者は、早い段階で子どもたちの問題に入っていく傾向があるのですが、そうなると子どもたちはどう対応したら良いのかわからずじまいで、戸惑ってしまいます。結果的に、その保護者の子が避けられてしまうこともあり、あまり良いことにはならないのです。――保護者が関わる必要がある場合とそうでない場合とは、どうやって見極めればいいのでしょうか。陰山:子どもの体に異常なあざがあるとか、そういうことを隠そうとするとかですね。あきらかに内緒ごとがあるときは、注意してみておく必要があります。子どもが「○○くんとケンカして、ああしてこうなった」と言っている分には、問題はないと思います。――それでも不安になってしまうときは、どうすればいいですか。陰山:母親が不安に思うと、その不安感は子どもの中で増幅されます。先ほどのいじめ問題のように、早い段階で母親が動いてしまうと、子どもは安心するのではなく、さらに不安になります。母親がどう思うかを基準に行動してしまうからです。そうすると、子どもの心は不安であふれ、自信がなくなり、自己肯定感が低くなってしまいます。それが不登校の原因のひとつにもなっていると、わたしは見ています。――親が心配しすぎると、子どもが不安になってしまうんですね。 陰山:そうです。うまく育てていらっしゃるなと思うお母さんには、朗らかな方が多いですね。一切心配せず、動じないんですよ。毎日みている母親が「この子は大丈夫!」と思ったら、それが正しいんだと思います。「母親が不安になると、子どもはもっと不安になってしまう」と陰山先生心配しすぎると、子どもはどうしても自信が持てなくなるので、情緒不安定になり、お菓子をたくさん食べたり、夜中に目が覚めてしまうなど、生活習慣が不適正になってきます。またその逆で、不適正な生活習慣が原因となって、友だち同士のトラブルや成績不振など、子どものさまざまな問題が起きているケースも多いです。たとえば、中学生が部活で疲れて帰ってきて、いったん眠る。夜に起き出して夕食をとり、12時ごろにまた眠る。こういう生活習慣は、ものすごく子どもの体力を奪うんです。不登校の生徒が多い、ある中学校を調べた結果、睡眠の不適正が原因であることが分かったという事例もあります。――生活習慣って、本当に大事なんですね。陰山:毎日、質の良い睡眠をとることと、食事をきちんととることはとても大事なことです。生活習慣がちゃんとしていれば、心配ごとは減ると思いますよ。子育ては、方向性が明確になると楽になる――たとえば優秀な同級生に対して、「なんでウチの子はできないの?」と劣等感を持つことが、親の心配の一因になっている場合もありますよね。陰山: 誰かの価値観や、社会で用意された価値観にはまってしまうと、どこかで劣等感を持つことになります。でも、自分自身の価値観が定まっていれば、人と比較することが減り、親子ともに劣等感を感じることが少なくなります。ほかの人の価値観をわが子に持ってきてしまうのは、マイナス面が大きい。自分がしたい子育ての方向性がある程度明確になれば、必要以上に不安にならずにすむものです。――方向性を決めるのはなかなか難しいので、とりあえず良い学校に入れたいという考えの人は多いと思うのですが。陰山:それ自体は間違いではないと思いますが、ではいつの時点でその先の進路を決めるのかということですよね。子どもの学力は十分についた。いろいろな職業につく可能性は広がったけれど、何をしたいか分からないという状況は困りますよね。――確かに、それは困りますね。なりたい職業を自分で決められる子に育てるには、どうしたらいいのでしょうか?陰山:小さいころから、自分自身で考えさせる場面を多く持たせることが大事です。ベストな答えを出そうと思うと決められないので、どっちでもいいから、とりあえず決めさせること。正解を探すのではなく、自分自身の心に決めさせるのです。そのためには、いろいろなところへ連れて行って、さまざまな体験をさせることです。博物館に行ったり、旅をしたり、ワクワクするような体験をさせると、やりたいことが増えていって、可能性が広がります。――なかなか決めない子どもを見ていると、つい口を出したくなりますが、親もがまんが必要ですね。陰山:そうですね。子育ては、子どもがなりたい職業につけるようにサポートできたら、合格点だと思うんです。わたしの3人の子どもたちは、それぞれが小さいころの夢を実現させています。だから、自分自身の子育ては、100点満点中110点くらいの感覚を持っていますね。たとえば次女は、就職活動で悩んだこともありましたが、最終的には、小さいころからの夢だった仕事を選びました。これは、自分の価値観がしっかりしていたからだと思います。自分なりの価値観をつくってあげることは、子どもの自己肯定感を高めることにもつながります。子どもを信じることと、笑顔を忘れないこと!――子育てで、大事にすべきポイントは何でしょうか。陰山:この子はきっと良い方向にいく。最終的には絶対なんとかなると信じて、ポジティブでいること。わたし自身の子育てでは、激しく親子で対立したこともありました。でも、必要な場面では、こちらが絶対折れない。ここで子どもとの関係が壊れるんだったら、それもやむなしというくらいの気持ちで立ち向かったこともあります。子どもたちは、親の背中をよく見ていますから、親自身が自分を信じることも大事ですね。もうひとつは、母親の笑顔です。子どもと対立したときも、わたしの妻は「お父さんは、あんなふうに言ってるけど、大丈夫だから」と笑顔で子どもをフォローしてくれていました。何があっても笑顔の妻には、いままで本当に救われてきました。それは妻の性格というより、「笑う努力」「まわりを笑わせる努力」をしていたんだと思うんです。 ――やはり子どもにとっては父親より、母親なんでしょうか。 陰山:一般的に、子どもと長く接しているのは母親なので、母親の影響を受けやすいものです。その場合父親の役割は、そんな母親に安心感を与えることだと思います。そして、母親もたまには独身時代のように、自分が楽しむ時間を持つといいですね。そのときには、父親はもちろん、まわりの人にフォローしてもらえる環境があるとベストです。親だけで子どもは育ちません。子どもがいろんな人とふれ合って、仲良くなることも大事です。わたしの子どもたちが悩んでいたときには、祖父母や叔母、友人たちが的確なアドバイスをしてくれました。いろんなタイプの応援団が身近にいる環境にしておくことも大事です。「父親の役割は母親に安心感を与えること」と語る陰山先生――身近な人たちの存在は、親にも子にも大切だということですね。最後に、子育て中のお母さんにエールをお願いします!陰山: 「わたしがかんばらなきゃ!」と肩に力を入れないことです。「できないことがあるのは当たり前!」と、開き直るくらいでちょうどいいと思いますよ。子どものころの成績が悪くても、多少やんちゃでも、立派な社会人になっている人はたくさんいます。お母さんの笑顔でお子さんを包んであげてください。子育ての期間は思っているよりも短いのです。楽しみましょう。――本当にそうですね!ありがとうございました。子育てでは、他人からみたらなんでもないような小さな悩みもあれば、心が折れそうになるほど大きな悩みに向き合うこともあるでしょう。でも、「信じれば、きっとなんとかなる」という先生の言葉にパワーをもらいました。陰山先生の、子どもたちへのやさしいまなざしから生まれる言葉の一つひとつは、子育て中のわたしたちにとって、深く心に響くものでした。「子どもが18歳になるまでにあと何年だろう?」と考えると、そんなに長くないことに改めて気づきます。実はそれほど長くない年月、子どもたちを見守りながら、子育てをいっしょに楽しみましょう。 (まとめ永瀬紀子/亀井惠美子)学研キッズネット編集部(がっけんきっずねっと)『学研キッズネット』は、1996年にオープンした小・中学生のためのWebメディアです。学研の子ども向け書籍や雑誌の編集ノウハウを活かし、子どもたちが安全に楽しめるサイトとして運営しています。子どもたちのしあわせのために、家族のしあわせのために、有益な情報やサービスをお届けできるよう、いつも精一杯がんばっています。すくすく伸びる子どもたちのために
2018年12月07日ときには3時間も。食事に時間がかかる娘娘は昔から食事に時間がかかる子でした。少しだけ食べては席を立ち、しばらく遊んだりトイレに行ってからまた少し食べるというのを繰り返し、ひどいときには3時間くらいかけて食べていたのです。叱ってみたり、保育園の先生のアドバイスに従ってみたりと、いろいろ試してみたのですがどうしても治りませんでした。16歳になった今では、ヘルパーさんがつくり置いてくれるおかずを、親子それぞれ自分のタイミングで食べるという生活に落ち着いています。娘は冷凍食品や自分で作ったものを食べることもあります。配膳を自分でするわけですから、自分が食べたいものを食べられる量だけよそっているはずですが、今でも食事を中断してパソコンに向かったり、トイレにこもったりする行動は変わりません。どうしてなのか?ふとした会話の中で、その答えを本人の口から聞くことができ、私は自分の考えの至らなさを思い知らされることとなりました。周りのアドバイスで親子ともにつらかった幼児・小学生の頃娘が3歳くらいの時のことです。娘の食事の様子について保育園の先生に相談したら、「お母さん、そんな食べ方を許していたらダメですよ。少しずつよそって、30分たったら片づけてしまって下さい!」ときつい口調で言われてしまいました。ちょっと悲しくなりながらも実践してみたのですが、娘の食べ方は変わらず、後からお腹が空いたとグズグズいうことが続きました。しつけのためだけに毎日何時間も時間をかけるのは私の精神が削られたので、1週間もしないうちにギブアップ。「お腹が空いた」とぐずる娘を見るのがつらかったということも大きかったですね。「私が甘すぎるからダメなのか?」と悩む日々が続きました。小学生になってからは、お盆やお正月に実家で家族が集まって食事するときに、私の弟(娘にとっては叔父)に「お前の食事態度はふざけている!」と怒られて、よけいに食事が喉を通らなくなってしまうことも。そのせいで実家で会食することを嫌がるようになり、高校生になった今でも私の弟とは顔を合わせようとしなくなりました。祖父母にも食事中に何度も席を立って戻らないことはいい顔をされず、「どうしてなのかねぇ」と困惑されていました。私も含め、娘に発達障害の診断がつく小学4年生になるまでは、誰も娘の食事がスムーズにいかない理由を理解できずにいたのです。感覚過敏やこだわりのせいだと思っていた娘が発達障害とわかってからは、感覚過敏やこだわりのせいかと思うようになりました。娘はご飯の食感にとてもこだわりがあり、よそったご飯は「すぐ」食べてしまわなければ気が済みません。冷めたご飯やおにぎり、冷凍ごはんを解凍したものも嫌がり、出来合いのお総菜も「変な味がする」と言い、食べないのです。今でもそれは基本的には変わっていません。だから家ではよそいたてのごはんと主菜だけ食べていったん食事を終えます。そしてしばらくたってからおやつ感覚で副菜を食べるのです。それが、食事に時間がかかる一因にはなっていると私は考えています。でも、原因はそれだけではありませんでした。鍵は"胃腸"にあった!16歳になった娘の口から語られた真実ある日、私が糖尿病の食事指導の一つとしてよく噛むように言われていることを話しているうちに、「あなたは昔から食事に時間をかけすぎると言われていたんだよね」という話題になりました。すると娘は、「私は一度に食べたらお腹が一杯になって苦しくなるねん。そんな状態で食卓に座り続けているのがつらいからパソコンしたりして気を紛らわせているだけど。小さなころのことは覚えてないなぁ」と言ったのです。保育園の頃「30分たったら食事を下げてください」と先生に言われた話をすると、「食事を始めるとすぐに便が出そうになってトイレにこもってしまうんだけど、ママはそんな時に戻ったら食事を下げられていたらどう思う?悲しいやろ?」と言っていました。「でも、給食はちゃんと食べられていたよね?どうして?」と聞くと、「あの頃はなぜか適応できていたんだよなぁ。どうしてかは自分ではわからないけど」とのこと。そういえば小学校の給食試食会で娘のクラスの給食風景を見たのですが、いただきますの前に「減らしてほしい人は来てください」と先生が声を掛け、みんなぞろぞろと配膳のところに並んで食べきれない分を自分で戻しているのです。これにはびっくりしたとともに、「何ていい時代になったんだ」と感動すら覚えました。そういう配慮もよかったのかもしれません。心と胃腸は結びついている思い出してみると、娘は小さなころから排便に難がある子でした。おむつは小は3歳になってすぐに取れましたが、大は5つ近くになるまではいたままでしかできない。おむつがとれても、絵本を読みながら私がトイレのそばにいないと出ない。外出先では個室に一緒に入って物語を語ってやるか、歌を歌ってあげないと出ない。ショッピングセンターのトイレや駅のトイレで歌ったこともありました。小学校に上がってからも、小1のとき先生に「先生、私、本を読みながらじゃないとうんちできない」と自分で訴え、特別に服に隠して本を持ち込ませてもらっていたようです。小学2年生で担任が変わってからは、その配慮を受けられなかったのかも知れないと思って本人に聞いてみたのですが、覚えてないと言われてしまいました。ひょっとしたら、それも不登校の理由の一つなのかもしれないと思ったのですが…。彼女の心は胃腸と常に結びついていて、今も腹痛を安定剤と胃腸科の薬とを使いこなしながらコントロールしています。どちらが効くかは本人にはわかるそうで。それでも、映画に行ったときは両方飲んで真っ青になりながら鑑賞してました。外出用のカバンにはいつもあらゆる薬が入っています。ちなみに娘が通う通信制サポート校の先生も「うちの生徒たちは腹痛持ちの子がすごく多いです」と仰ってました。心のSOSは真っ先に身体に出るもので、特に胃腸にくることが多いように思います。先生の言葉には大きく頷かされるものがありました。最後に私は娘に発達障害の診断がついた時点で思考停止して、「ああ全部発達障害のせいだったのか」と考えてしまっていたように思います。子どもの困った行動は「子どもの困っている気持ち」を表現していることが多いと気づきだしたのは最近のことです。今回のことも発達障害という切り口からだけでは見えてこないこともあると思うのです。確かに根底には発達の凸凹があるのかもしれません。だけど、本人が生まれついた体質や気質、それからきた困り感に周りがどう応えてきたのか、必要な配慮は受けられたのか、ということの方が大切なのではないでしょうか。原因は一つとは限らないし、その時分かるとは限りません。親だって判断を誤ることもあるでしょう。だけど、「まずは目の前の子どもの困り感を減らしてあげること」を一番に考えてあげたいと思いました。
2018年11月27日発達障害がある10代対象のイベントを開催!先日、生きづらさを抱える10代への企画「#withyou」を展開する朝日新聞withnewsとの共催で、発達障害のある10代向けにトークイベントを実施しました。中高生には10代ならではの悩みがありますが、発達障害がある場合、その特性ゆえの悩みやしんどさを、なかなか周囲の友達や保護者と共有できないことも。そこで、同じく発達障害がある「センパイ」たちからのメッセージを、今を生きる10代に伝えよう、という趣旨から、今回のイベントが企画されました。今回は、自分の個性を活かしてそれぞれに活躍する発達障害当事者3名をゲストにお招きし、語っていただきました。会場には、約50名の10代当事者やその保護者が参加、また、Youtubeでのリアルタイム配信では120名以上の方々にご視聴いただきました。熱のこもったイベント当時の様子をレポートします!イベント「10代のハッタツトーク!センパイ当事者3人の『ワタシ』的生き方」当日の動画(YouTube)連載:「できる」を広げる 発達障害を自分らしく(withnews)「苦手」を受け止めてくれる人がそばにいるUpload By 発達ナビ編集部Ayanoさんは、子どもの頃からコミュニケーションに困難を感じていました。「相手の言葉の真意もわからないし、主語が抜けると、そもそも何の話をしていたのかわからなくなってしまう。他意のない表現で相手をひどく傷つけて、自分も傷ついてしまって。自分自身では誰よりも人の気持ちに敏感なつもりだったのに、仲良くなった人もいつの間にか離れていってしまいました」小5から不登校になったAyanoさん。中学校は入学式だけしか参加できず、高校は通信制に通いましたが途中でやはり不登校に。18歳になったAyanoさんは、アスペルガー症候群を取り上げたテレビ番組を目にして、お母さんに「私もアスペルガーかもしれない」と言うも「障害なんてない」と一蹴され、病院に行きたい旨を伝えることができなくなりました。そんなAyanoさんがアスペルガー症候群とADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断されたのは2017年の3月、彼女が28歳のときのことでした。「言葉でのコミュニケーションが苦手」とはっきりわかったことにショックはなく、むしろ大きな転機になったといいます。「障害をフラットに語れる相手がいなかったので、ブログを作って発信を始め、発達障害のある人たちとの当事者会を主催するようになりました。いろいろな人と語り合うことで、悩みを共有できたり、安心感を与え合えることを知ったんです。身体と心を傷つけてまで仕事を続けるよりも、発信や表現の道に生きてみようと素直に思えたので、勤めていた会社は今年の1月に退社、発信を通じて知り合った人からプロポーズを受け3月に結婚と、人生も大きく変わりました」彼女の得意も苦手もそのまま受け止めてくれるパートナーが身近にいることで、安心してYouTubeなどを使った発信活動や、もともと好きだったダンスや絵に打ち込めるようになったとAyanoさんは語ります。この後のトークでも「できないこと」ではなく「できること」でどうやって社会とつながるかが、大きなテーマとなっていきました。「空気読めないね」と言われて…発達障害の私が顔出しできる理由さんのYoutubeチャンネル凹凸の「凸」だけで生きたっていいUpload By 発達ナビ編集部「この会場まで来るの、疲れたでしょ?」参加者へのこんな語りかけから、池田誠さんのトークは始まりました。現在41歳の池田さんは2年前に仕事での過労がたたってうつ病になり、受診した病院で医師からADHDと診断されました。それまでまったく自覚はなかったそうですが、診断を受けて思い返してみると、小学校のときの池田さんの机はいつも教壇の横で、中はプリントでぐちゃぐちゃ。大人になっても「空気が読めない」「言われたことを忘れる」など、周囲から指摘され続けてきたことが、診断を受けたことで一本の線につながったと言います。池田さんは現在、医療系の企業経営に携わりながら、発達障害当事者を支援するNPOを立ち上げ、代表を務めています。団体の理念は、国連で「障害者権利条約」が締結される際の合言葉になった“Nothing About Us Without Us”(私たちのことを私たち抜きに決めないで)。そんな池田さんが「疲れたでしょ?」と問いかけた真意はどこにあったのでしょうか。「毎日、すごく疲れるよね。でもどうしてなんだろう?僕らは凸凹が多い人間だけど、社会は凹の側しか見てくれない。凸の部分への支援が全然ないんだ。でも本当は、凹の部分ではなく凸の部分をどんどん発揮していければこんなに疲れなくてすむし、どの部分で生きていくかは自分たちで決めていいんだよね」この「疲れるよね」という言葉に、Ayanoさんが「感動して泣きそうになった」と応えた姿も印象的でした。凹を埋めようとして疲れ切ってしまうのではなく、凸を発揮するために、当事者とその周囲はどうすれば良いのでしょうか。ここで、3人目のゲスト、岩野響さんのお話へと移ります。「得意だけでも武器だ」大人になって発達障害と知った男性から君へ「小さな成功」を積み重ねるUpload By 発達ナビ編集部15歳でコーヒー屋さん「HORIZON LABO(ホライズンラボ)」を開業した岩野響さんは、小さい頃から研ぎ澄まされた味覚と嗅覚の持ち主でしたが、その反面、教室ではじっとしていられない、黒板に書かれたことをノートに書き写すことができない、そんな子どもでした。 LABO「自分ではできると思っているのに、やってみるとほかの子が当たり前にできることができない。その繰り返しで八方塞がりになっていました」ノートが取れない響さんに、担任の先生は「友だちのノートをコピーさせてもらって貼ればいんじゃない?」と提案します。親の応援だけでは足りず、友だちの手まで借りなければいけない。ショックを受けた響さんは次第にうつ傾向を示すようになり、10歳のときにアスペルガー症候群と診断されました。中学に入学し学校生活に苦しむ響さんに、お父さんが「もう学校に行かなくていいよ」と声をかけ、響さんは不登校の道を選びます。ご両親は何も強制はせず、響さんがやりたいことをするためのサポートに徹してくれたといいます。「自分は何もできないし、どうやって生きていけばいいんだろうとすごく苦しかった。でも自分のできることってなんだろう。お皿一枚洗うことから始めて、家事をするようになりました。お皿一枚でも、何かの役に立てるし人と交流することができる。今振り返れば、ささいな成功を繰り返し積むことで自信が芽生え、徐々に自分の好きなものが見つかり、打ち込めるようになったんだと思います」皿洗いから始まり家族の夕食を作るようになった響さんは、気がつけばタイカレー作りにはまっていました。毎晩タイカレーを食べさせられる日々が1か月以上も続いたときは家族もさすがに音を上げたそうですが、カレーの隠し味にコーヒーを入れたことから、響さんはしだいにコーヒーに没頭していきます。そしてある人との出会いからコーヒー焙煎を始め、自宅内に「HORIZON LABO」を開店します。とはいえ響さんもご両親も、ほかに好きなことが見つかったらコーヒー屋でなくなっても構わないと思っているそうです。実際に現在の響さんは写真を撮ったり、洋服を作ったりと興味あることにはどんどん挑戦しています。凸のタネを「どうせできない」と簡単に捨てるのではなく、軽い気持ちで育ててみることも、「疲れる」生き方から脱けだす一つの道なのかも知れません。歳コーヒー焙煎士として生きる「できない」が多かった中学時代たった一つの答えがないからこそ、語り合うUpload By 発達ナビ編集部実は、イベントに対する感想や質問は、「#ハッタツトーク」のハッシュタグをつけTwitterで投稿を呼びかけていました。3人のトークが熱を帯びていくなか、会場の参加者から「もっと10代どうしで語り合えると思っていた」というツイートが発せられて、急遽10代と保護者に分かれての、それぞれが車座になって語り合うセッションが始まりました。登壇者たちはその輪には入らず、テーマを投げかけることもしません。10代グループが気恥ずかしそうにしていたのは最初だけ、あっという間にそれぞれが自分の経験や思いを語りだします。保護者グループも教育や子どもとの接し方について、率直に話し合っていました。保護者グループのお母さんから10代グループにこんな質問がありました。「ADHDの子どもが中学で授業についていけなくなってしまい、診断を受けたらLD(学習障害)だと言われました。成績が急に落ちて、ノートを見せてもらったら真っ白だったのでわかったんですが、本人は『大丈夫』としか言いません。もしうちの子の気持ちがわかれば教えてもらえませんか?」10代グループからは「僕もなぜか勉強する気が起きない」「私も中学になったら授業中に突然眠ってしまうようになって、ノートが取れなくなった」など、体験に基づいた声が挙がりました。そのなかで、「なんで勉強をさせたいんですか?」とお母さんが逆に質問を受ける場面もありました。「勉強だけでなく人間関係を体験する意味でも、高校までは最低限行ってほしい」というお母さんの答えには、生きていく上での「凹」をなるべく減らしてあげたいと願う親心が滲んでいました。質疑応答だけでなくイベント全体を通して、結論を導き出すことよりもまずは話し合うことを大事にしようという暗黙の了解があった気がします。イベントのスポンサー紹介今回のイベントには、以下の企業の皆さまにご協賛いただきました。それぞれの企業のサービスをご紹介します!◆株式会社リクルートマーケティングパートナーズUpload By 発達ナビ編集部5教科4万本の授業動画が月額980円(税抜)で見放題の「スタディサプリ」。発達に凸凹があるお子さまに嬉しいポイントが、前の学年の戻り学習も、上の学年の先取り学習も自由自在なこと。ご自宅のパソコンやスマホで好きな時間に好きな分だけ利用でききます。分かりやすくて面白い、一流の先生による「神授業」を試してみては?◆イー・エフ・エデュケーション・ファースト・ジャパン株式会社Upload By 発達ナビ編集部世界50拠点以上で語学学校を運営する他、高校交換留学、大学留学を提供するEF。EFでは英語で自分を表現する姿勢を尊重し、間違えることはむしろ歓迎されます。発達障害への理解や合理的配慮の制度が進んでいる国際環境だからこそ、伸び伸びと個性が育めるかもしれません。親子で参加できるプログラムも!ご相談(無料)はお気軽にどうぞ。◆株式会社AXTUpload By 発達ナビ編集部「個別指導のコーチング1」は発達障害・グレーゾーン専門の個別指導塾・家庭教師を提供しています。自立して学習を行うためのコーチングのノウハウを発達障害のあるお子さまの学習指導に応用しています。授業中だけでなく、授業外での週間計画を作成し、お子さまの学習習慣を築き上げていきます。中学受験・高校受験対策を行う発達障害専門の進学塾です。今回のイベントを共催させていただいた朝日新聞withnewsでは、生きづらさを抱える10代への企画「#withyou」を展開しています。発達障害にまつわる特集も組まれているので、ぜひご覧ください。「#withyou」~きみとともに~記事一覧2019年5月頃まで視聴可能ですイベント「10代のハッタツトーク!センパイ当事者3人の『ワタシ』的生き方」当日の動画(YouTube)取材・文/柳瀬徹撮影/鈴木江実子
2018年11月21日発達障害のある人が気をつけたい「二次障害」とは出典 : 発達障害は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)や、自閉症スペクトラム障害(ASD)、学習障害(LD)などの先天的な脳機能の障害のことを言います。これらの障害のある人の中には、その人にあった支援やサポートが受けられない、自分の特性に合わない環境などの影響によって、二次的な合併症や行動の問題に至ってしまうことがあります。心身の症状や精神疾患、不登校や引きこもりなど、どんな二次障害が起きるかは人により異なります。また、大人になってから二次障害がきっかけで発達障害と診断されるという場合もあります。発達障害の二次障害が起きる原因出典 : 発達障害の二次障害は、家庭や学校、職場などの環境とのミスマッチによるストレスが原因で起こるものと考えられています。発達障害のある人は、その特性をまわりに理解してもらえないことが珍しくありません。そのため、発言や行動に対して、叱られたり否定的な対応をされたりすることもあります。また、感覚過敏やコミュニケーションの障害などがある人は、合わない環境で我慢を強いられたり、日常生活でも大きなストレスを感じていたりする場合もあります。このような対応が積み重なると、発達障害のある人が自分に対して否定的な考えを持ってしまったり、自尊心を低下させたりしてしまいます。それが原因で、気分の落ち込みや不安、引きこもり、暴力的な行動などが二次障害として現れることもあるのです。発達障害のある人すべてが二次障害を発症するわけではありませんが、あまりにストレスが大きかったり、ストレスへの対処がうまくいかなかった場合に発症しやすくなります。発達障害の二次障害、具体的な症状は?出典 : 二次障害の具体的な症状としては、引きこもりや暴力といった行動面の問題、不安や抑うつなどの精神的な問題、身体の不調として現れる心身症などが挙げられます。これらの症状は、「内在化障害」と「外在化障害」の2つに大きく分類されます。それぞれ詳しく見ていきましょう。自分に対するいら立ちや精神的な葛藤が、自分に向けて表現される症状のことを言います。分離不安障害、気分障害、強迫性障害などが典型的なケースとしてあり、具体的には、以下のような症状が当てはまります。・不安・抑うつ・引きこもり・対人恐怖・心身症中でも抑うつ症状は、発達障害がある青年にもっとも多い二次障害だといわれています。また、義務教育を終えた年代以降で引きこもりを続ける人には、発達障害が隠れている場合が多いことも指摘されています。これらの精神的な葛藤や問題が不登校などにつながることもあります。精神的な葛藤などが他者に向けられる形で現れる症状のことを言います。反抗や暴力、家出、ときには非行などの反社会的な行動として現れることもあります。特徴としては、思春期になってからこれらの問題を起こす子どもよりも、比較的小さいうちからそうした行動が目立つ子どものほうが多いことです。小学校低学年の頃から、他者への反抗が目立ったり、家出などを繰り返したりする子どもが一定数いるといわれています。発達障害の二次障害は、年代によって出やすい症状が異なるといわれています。・幼児期:軽度な適応行動の問題が見られることもある。・学童期:適応行動の問題が中心。学業面での問題、集団活動や対人行動における問題が目立つようになる。その他、情緒面の不安定さなどが見られることもある。・青年期:情緒面の不安定さ、精神面や行動面の問題、心身症が中心となる。適応行動の問題も見られる。・成人期:適応行動の問題、精神面や行動面の問題が中心。情緒面の不安定さなどが見られることもある。学童期において、対人関係などの問題が現れ始めた時点で適切な対応が得られないと、思春期以降になって二次障害としてさまざまな問題が前面に出やすくなると考えられています。参考書籍:齋藤万比古 (著)『発達障害が引き起こす二次障害へのケアとサポート』(学研プラス,2009)発達障害の二次障害は予防できる?出典 : 発達障害の二次障害を予防するためには、まずはまわりにいる人が発達障害に対して理解をすることが大切です。二次障害の原因となるストレスの多くは、家庭や学校、職場といった環境やそこでの人間関係から発生しています。そうしたストレスを軽減するためには、発達障害そのものの一般的な知識や、その人の特性、対応方法などを周囲が知っておく必要があります。また、本人が過ごしやすいよう環境調整を行うことも大切です。このような周囲の理解が、小学生までの早い段階で得られることによって、二次障害の予防につながるのではないかとされています。小学校に進学すると、学校の教員がどう対応するかも大きな影響を与えます。家庭だけでなく、学校の担任教員にも理解を求めることが重要です。しかし、どんなにまわりが丁寧に対応したとしても、すべてのストレスをなくすことはできません。本人の心の発達をサポートすることも大切です。・まわりの人たちに受け入れられているという安心感や信頼感を持てること・他者と接する中で学びの機会を得ること・トラブルへの対処方法を学ぶこと・自分自身の障害の特性について知ることこれらのサポートを早い段階から周囲が行っていくことで、ストレスに柔軟に対応できるようになり、二次障害も起こしにくくなるといえます。発達障害の二次障害は治るのか?出典 : 発達障害は先天的な脳機能の障害であるため、発達障害そのものを治すことはできません。しかし、生育環境によって引き起こされた二次障害については、症状に合わせて医療機関などで治療を行う場合もあります。抑うつや不安といった内在化障害の場合、認知行動療法や精神療法といった心理療法、家族に対する家族療法、薬を使った薬物療法などが、必要に応じて行われます。また、暴力などの外在化障害に対しても、攻撃性をコントロールするために薬物療法が行われることもあります。状況によっては、入院して治療する場合もあります。しかし、医療機関だけで二次障害をすべて解決できるわけではありません。家庭や学校、児童福祉機関などで連携して対応していくことが必要です。発達障害の二次障害のある人や家族が利用できる相談先出典 : 発達障害の二次障害の症状や対応について、本人や家族が誰にも言えずに悩んでいることも少なくないかもしれません。そうしたときに利用できるサポートがいくつかありますので、ご紹介しましょう。まずは相談先として、以下のような支援機関があります。・精神保健福祉センター・児童相談所・子育て支援センター・発達障害者支援センターなど各機関では、本人や家族から発達障害や育児全般に関する相談を受けたり、必要時には医療機関を紹介したりもしています。このほか、各自治体では、引きこもり・不登校に対して相談や家庭訪問を行っていたり、教育委員会でも不登校に対する教育相談を実施したりしています。また、障害者福祉施設では、強度行動障害に関する研修を終えた相談支援専門員が、相談を受けつけている場合もあります。まだ医療機関にかかっておらず、発達障害と診断を受けていない場合、医療機関に行くのはハードルが高いかもしれません。まずはこのような場所で、困っていることについて相談してみると良いでしょう。また、症状によっては障害者手帳の交付を受けたり、障害福祉サービスが受けられたりする場合もあります。地域によっては、発達障害の当事者の会や保護者の会がありますので、そうした場所で交流したり、情報収集したりするのも良いかもしれません。発達障害の二次障害がある人への対応方法出典 : では、二次障害がある人には具体的にどのように対応したら良いのでしょうか。家庭と学校、それぞれで必要な対応について見ていきましょう。親が子育てに対する自信や、子どもへの愛情を持てなくなる場合もあります。そのまま子育てに対する意欲を失ってしまうと、子どもは親から見捨てられたように感じ、二次障害から不登校などにつながっていくことも考えられます。また、子どもが自分の行動によって親や周囲の大人をコントロールできるという感覚を抱き、それが外在化障害につながる場合もあります。こうした問題に対応する方法として行われているのが、ペアレントトレーニングです。ペアレントトレーニングでは、親が子どもとの関わり方やその子の特性に合った子育ての方法を学びます。これが、子どもの過ごしやすい環境や、人間関係づくりに役立ち、二次障害の防止になるといわれています。学校での対応については、担当する教員だけではなく、他クラス・学年の教員や保健教諭、カウンセラーなど学校全体で連携して、支援を行っていくことが大事です。・本人に対し問題行動以外の部分に注目するつい問題行動ばかりに目がいってしまい、叱責が多くなることも少なくないでしょう。しかし、叱責ばかりが増えると自己評価の低下につながってしまいます。できていることをそのまま伝えたり、ほめたりすることも大切です。それによって、望ましい行動が増えたり、信頼関係を得たりすることにつながります。・本人以外の学級全体にも配慮する発達障害のある子どもが学級にいると、その子にばかり注意が向いてしまいがちになります。そうすると、ほかの子どもが不満を抱き、さまざまな問題が生じるきっかけとなることもあります。ほかの子どもにも、きちんと目を向けていることが伝わるような関わりを普段からしておくことが大切です。・学校全体で取り組む対応方針を教職員全員で共有し、実施していくことが重要です。一部で方針が違う対応をしてしまうと、本人の状態を悪化させたり、関係性が悪くなったりしてしまいます。・いったん対応方針を決めたら、しばらく続ける支援する方針を決めたら、効果を見るためにも2〜3週間は続けることが大事です。まわりの対応方法が変わるということは、本人にとってストレスであり、一時的に問題行動が増えてしまうこともあります。しかし、慣れればそうした行動が少なくなってくる場合もあるので、子どもの状態を見ながら継続するようにしましょう。対応方法について、ときには専門家に意見を求めることも大切です。まとめ発達障害の二次障害は、さまざまな形で現れますが、それらの多くは家庭や学校など周囲の人との関わりの中で生まれるものです。周囲の関わり方によって発生を予防していくことがまずは重要です。また気づいた段階でできるだけ早期に適切な対応を取ることができれば、悪化を防ぐことも可能だといえるでしょう。しかし、なかなか発達障害に気づくことができず、二次障害を発症して診断に至る人もいます。医療機関や支援機関などを利用しながら、日常生活における対処方法を学んだり、適切な生活環境を整えたりしていくと良いでしょう。宮本 信也 (編集), 日本発達障害福祉連盟 日本発達障害学会『発達障害医学の進歩〈23〉発達障害における行動・精神面の問題―二次障害から併存精神障害まで』(診断と治療社,2011)齋藤万比古 (著)『発達障害が引き起こす二次障害へのケアとサポート』(学研プラス,2009)古荘純一 (著, 編集), 磯崎祐介 (著)『神経発達症(発達障害)と思春期・青年期――「受容と共感」から「傾聴と共有」へ』(明石書店,2014)
2018年11月06日こどもを育てるのは、想像以上に大変なもの。子育ての中で、いったい何が原因で、旦那さんと溝が出来てしまうのか、いくつか例をあげたいと思います。母親と父親の赤ちゃんに対する温度差女性は、子育ては赤ちゃんがお腹にいると分かった日から始まっています 。赤ちゃんのために栄養のある物を食べ、来るべき陣痛に備え運動をし、お酒もたばこも控え、つわりにも耐え、出産の日を迎えるのです。妊娠6か月頃からは胎動も感じますし、赤ちゃんの存在を体で感じます。徐々に大きくなっていくお腹をなでて、お腹のなかの赤ちゃんに話しかけ、出産するころにはすでに「お母さん」になっているのです。では、旦那さんはどうでしょうか。奥さんから妊娠検査薬の陽性反応を見せられたり、産婦人科に付き添って医師から「おめでとうございます」と言われたりして、赤ちゃんの存在ははっきりと認識するでしょう。段々と奥さんのお腹が膨らんで、出産間近になると外からも赤ちゃんの動きが分かるようになります。「ああ、自分も父親になるんだな 」と自覚も芽生えてくると思います。ですが、女性のように赤ちゃんを体で感じることはできません。個人差があるとは思いますが、赤ちゃんが誕生する時点で、奥さんと旦那さんにはすでに生理的な温度差があるのです。将来、夫婦のトラブルになりそうな火種がこの時点で発生しているとも言えます。初めての育児はてんてこまいこどもが産まれ出た瞬間から、ハードな子育ての日々が始まります。特に初めてのこどもの場合、親のほうも神経質になりがちです。育児本やインターネットで情報を集めながら、手探りの状態で育てていかなければいけません。夜中の授乳もありますから、奥さんは毎日寝不足の状態で、24時間気が抜けない日々が続くのです。そんな時、旦那さんの対応によっては、その後の夫婦関係に大きな亀裂を生じさせてしまい、これが後々離婚につながってしまう ことがあります。旦那さんが、奥さんの愚痴の聞き役に徹すると、夫婦関係に良い影響を及ぼします 。しかし、赤ちゃんにばかり気を取られている奥さんに不満を抱く旦那さんもいますし、奥さんが愚痴を言っても、そこでお説教を始めてしまう旦那さんもいます。そうすると奥さんのほうも、旦那さんにイライラしたり、旦那さんを当てにしなくなり、ますます赤ちゃんの世話に没頭するという、悪循環に陥ってしまいます。教育方針の違いこどもは日々、確実に大きくなっていきます。この間生まれたと思ったら、もう幼稚園や小学校に入学する時期に。このとき夫婦のどちらかが「こどもにはエリート教育を受けさせたい。」と考えているとします。そしてもうひとりは「こどもは伸び伸びと育てたい。」と考えていたとしたら。夫婦でこどもの教育方針をめぐって対立するのは、火を見るより明らか です。ここまで極端な例でなくても、夫婦の価値観が違う場合、子育てしていくなかで、言い争ったり、お互いの考えていることが分からなくなりがち。子どもが思春期や反抗期を迎えた時の対応の仕方を巡っての対立子育てをしていると、必ず迎えるのがこどもの思春期や反抗期です。場合によっては、こどもがいじめにあったり不登校になったりすることもあるかも知れません。そのときに、夫婦でこどもへの対応の仕方が違うと、こどもも混乱しますし、夫婦の関係にもひびが入ることが。思春期や反抗期は成長過程には必ず訪れるもの 、と大らかに構えて動じない親、昔とはすっかり変わってしまった親、または叩いてでも言う事を聞かせようとする親など、様々なパターンが考えられます。夫婦で真逆の考え方を持っている場合、お互いに不信感を抱く結果になりかねません。こどもが絡むと感情的になりやすいですから、思わぬ大ゲンカに発展してしまう こともあります。まとめこどもを間に挟み夫婦のトラブルになりそうな事例をいくつか挙げました。家庭内別居に陥った夫婦にアンケートを行った結果、原因が「こども」と答えた夫婦が一番多かったのです。お互いに何を考えているのか分からない状況を避け、夫婦で意識的に話し合いの場を持ってください。●文/パピマミ編集部
2018年10月31日子どもの様子に「あれ、なんだかいつもと違う?」と感じたことはありませんか? いつもと同じように見えるけれど、なにかが違う気がする…。それは子どもの心のなかにちょっとした変化があらわれているのかもしれません。もしもそれが親への「助けて!」「気づいて!」というSOSサインだったとしたら? 発見が早ければ早いほど、対応も素早くできるのではないでしょうか。今回は、子どもからのSOSの見つけ方、その対処法について考えていこうと思います。■子どものSOS「心が不安定になりやすい時期は?」助けを求めるSOSサインというものは、そもそも、タイミングが予想できる類のものではありませんよね。けれど、子どもの場合は「変化があらわれやすい時期」というものがあり、この時期に注意深く見守ることでよりSOSに気づきやすくなると思います。変化があらわれやすい時期というのは、「生活環境などが変わった時」。新学期や引っ越しのあとなど、毎日見ていたクラスの顔ぶれが変わる、街の風景が変わるなど「いつもの暮らし」が変化した時、子どもの気持ちは不安定になりやすいんですね。また、夏休みや冬休みなど、長いお休みが終わりを迎える時にも要注意です。大型連休の終わり頃は、大人ですら「ああ、明日からまた仕事か…」と、どんよりした気分になるものですよね。それは子どもも同じ。それも、お休みの期間が長ければ長いほど、休み明けは心が不安定になりやすくなるようです。長期休みが3カ月に及ぶアメリカでは、休み明けにうつを発症する子どもが多くなるともいわれています。■子どものSOS「どんなふうにあらわれる?」では、子どもからのSOSは具体的にどんなふうにあらわれるのでしょうか。実は、その内容によって第1段階、第2段階…と分けられ、だんだん深刻さを増していきます。初期のSOSとなる第1段階を放置してしまうことで、子どもの言動は第2段階へと進行。気づいた時には、対処に時間がかかる状態へおちいっていることも少なくありません。子どもが不安を抱えた時に発せられるSOSの行動について、年齢を2~5歳までの幼児期と、6歳以降の学童期に大きく分けて説明していきましょう。【2~5歳:幼児期のSOSサイン】話ができるようになるものの、まだまだ社会や他人との関わりのなかで「自分」という認識が薄い2歳~5歳の年代は、親との結びつきが強い時期です。この時期に見られるSOSの段階は下記の2つに分けられることが多いようです。第1段階 出かけようとすると「イヤ」とだだをこねる、逃げる。第2段階 泣く。最初はイヤイヤをしたり、逃げ回って自分の感情を表現します。そして、その気持ちを理解してもらえないことで第2段階の「泣く」という行動に変化します。5歳までのこの言動や行動はある意味分かりやすいですが、6歳以降になるとSOS行動は一気に複雑化します。【6歳以降~:学童期のSOSサイン】6歳以降になると、集団のなかで自分の気持ちを言葉にして表現することができるようになります。また、集団生活に慣れることで、ある程度の社会性が培われてくる年齢でもあります。この年齢になるとSOSの言動は下記のような4つの段階に分けられます。第1段階 張りきる、頑張るなどの行動で「見て! 見て!」と自分に注目を集めようとする。第2段階 わざと遅刻したり騒いだりしていたずらをする。第3段階 教室を飛び出す、意地悪をする、極度に反抗する。第4段階 無視する、不登校になる。6歳以降の子どもからのSOSはまず「僕(私)を見て!」という行動が見られます。そして、親や周囲から理解されず放置されると「いたずら」などの行動へと移ります。たいていの場合、第1段階ですでに、いつもと違う様子に気づくケースが多いでしょう。けれど、うっかり見過ごしてしまうと第2、第3段階へと進んでしまう可能性もあるのです。■子どものSOS「深刻度別 親ができること」SOSの発見は、早ければ早いほど素早く親も対処でき、子どもが長く深く悩まずにすみます。しかし、もし段階が進んでしまってから気づいたとしたら、どのような対応をすればいいのでしょうか?各段階に応じてどのような対応をすればいいのか、年齢別に解説していきましょう。【2~5歳:幼児期の対応】2~5歳の子はイヤイヤをしたり、だだをこねたり、逃げたりして親を困らせることで「行きたくない」「ママといたい」という気持ちを表現します。この状態に気づいたら「気持ちを吐き出させること」「楽しいことに転換すること」で対処していきましょう。例えば、わが子が幼稚園や保育園に行くのをいつも嫌がる、とします。事前にできる対処として、30分くらい早めに準備をすませておきましょう。そうすれば時間の余裕が持て、だだをこねられてもきちんと対応できますよね。そして、だだをこねだしたら「行きたくないよね。ママも○○と一緒に遊んでいたいよ」と共感しつつ「外の電信柱のところまで競争しようか」「○○公園で虫を見ていこうか」などと誘い、遊びながら園やバスの集合場所などに向かってみるといいでしょう。第2段階の行動となる「泣く」は、子どもに思う存分泣かせてあげます。と同時に、ギュッと抱きしめてあげてくださいね。そして、子どもが落ち着いて、ある程度話せるタイミングになったら「なにが悲しい?」と聞いてみます。「ママと離れるのがイヤ」なら、だだこねと同じ対応を。もし「幼稚園の○○がイヤなの」といった話が出てきた時は、園の先生に話して様子を見てもらうなどの対応をしましょう。【6歳以降~:学童期の対応】子どもが6歳以降の場合、第3段階のSOS行動である「極度な反抗」になる前に、なるべく早く気づいてあげてほしいですね。この段階までなら、子どもに寄り添う対処で不安を解消できる可能性があるからです。第1段階で「見て見て!」と話しかけてきたら「あとでね」などと後回しにせず、すぐに話をじっくり聞いてあげてましょう。その時「頑張ったね」「うれしいね」といった言葉をかけると子どもは「気持ちが通い合っている」という感覚になり、不安感が落ち着いてきます。わざと遅刻をしたり、目立つ行動をする第2段階の場合は「かまってもらいたい」という気持ちに気付いてあげましょう。「この子はかまってもらいたかったんだな」と受け止め、「勉強時間が減って困るから遅刻しないようにしようね」「騒いでいると先生の声が聞こえなくなるから静かに聞こうか」などと、怒らずに「教える」スタンスを保つようにすると良いでしょう。第3段階に入り、極度に反抗したり意地悪をしたりする場合も「そんなことしちゃダメ」と頭ごなしに否定から入らないようにします。子どもにはどんな出来事があったのか、その出来事があってどんな気持ちになったのかを聞きます。そして「そうなんだね」と一度共感をし、そのあと「どうしようか?」「どうしていく?」と聞いてみたり、一緒に考えたりすると良いですね。不登校などの第4段階となった場合は、親と子どもだけで解決するのは非常に難しくなります。こじれて長期化し、親子ともども傷つき疲弊することもあるので、第三者の力を借りることをおすすめします。すべてに共通していますが、子どもの心の中には「自分のことを気にかけてほしい」という気持ちがあるので焦りは禁物。いちばん大切なのは、時間を十分とって子どもに向き合っていくことです。「学校に行きたくない」「おなかが痛い」などといった子どもからのサインを決して「根性がない」「我慢が足りない」などと否定しないでほしいのです。そのサインは裏には、子どもの「親に認めてほしい、分かってほしい」という気持ちが隠されている場合があるからです。子どもは「行きたくないんだね」「痛いんだね」と認めてもらえると、親は自分の理解者なんだと安心できます。安心できれば「仕方ない、頑張るか」と子どもなりに気持ちを切り替える場合もあります。早急に答えを見つけようとしなくても大丈夫です。子どものSOSにはそれぞれの段階に応じて「ほめる」「教える」「受け止める」などの対処が大切です。なによりも子どもを「勇気づける」。自分は大丈夫なんだと自信を持たせてあげると良いですね。
2018年10月23日フリースクールに通う子どもたち、合宿を計画!?理由は「楽しいIFラボを、もっと知ってほしいから!」2018年4月から発達に個性のある子たちのフリースクール「IFラボ」を開いています。前回までのコラムで、息子が不登校になって素敵な居場所を見つけ、フリースクールをたちあげようという気持ちにいたるまでや、実際にフリースクールを運営するようになってからの子どもたちとの日々を紹介しました。今回は、フリースクール「IFラボ」に通う子どもたちが計画した合宿でのエピソードを紹介します。この合宿は、「楽しく過ごせるIFラボを宣伝したい」という子どもたちの思いからスタートしました。参加者募集開始!でも、申し込みが来ない合宿は2泊3日。子どもたちたっての希望で、1日目はフリースクール泊。屋内でできるワークショップを開いたり、夜ごはんをつくったりして過ごします。2日目からは軽井沢に場所を移して、テントを広げてアウトドアキャンプの予定です!しかし!肝心の参加者が集まりません(汗)不登校の子どもたちのなかには、外出に不安を抱えている子や、母子分離不安のある子など、外泊が難しい子がいることも関係しているかもしれません。合宿に興味はあるけれどやはり外泊はできないと、興味を持ってくれたものの参加を断念する子もいました。それでもIFラボの子どもたちは、どうしても合宿を実行したいと、以前体験に来てくれた子や、他の学外プログラムで出会った友だちを誘うなど、積極的に勧誘。IFラボに通う子のきょうだいや、私の息子のチー坊なども含め、最終的には子ども9人という大人数でキャンプを行うことに決定♪合宿当日の朝、みんな来ないそして迎えた夏の暑~い朝、IFラボ合宿が始まりました!ワクワク!がっ!合宿当日の朝!子どもたちが来ない…時間通りに来た子どもは1人だけ(笑)「オレは行けるぜ」と余裕を見せていたのに、当日朝に「やっぱり行かない。疲れている」と家ですったもんだして、3時間以上遅刻してくる子。「遅刻したから部屋に入りづらいんじゃないか」とお母さんと一緒に心配しながらやってくる子、などなど…。みんなにとって、初めて会う友だちとの合宿。知らないことに飛び込むのには少し時間がかかるようです。計画してくれたYくんとSくんも、家では「俺は準スタッフだから」と準備を頑張っていたようなのですが…やっぱり来ません(笑)実は、YくんとSくんは学校でケンカをしてしまい、IFラボで仲直りの場をつくって解決はしたものの、やはり気持ちの切り替えができないでいるのも原因のようでした。Yくんは「もう一生仲直りはできないから、あいつが来るなら合宿には行きたくない」と、朝どうしても家を出られず、結局夕方から参加することに。Sくんも「俺が行くとYくんがいやがるかも」と不安を抱えていながら、1時間半ほど遅刻してやってきました。本当は仲良くしたいのに「うまく仲直りできなかったら」という心配で、一歩前に踏み出せない2人。実は合宿前の活動日も「あいつが来るならIFラボには行かない」とお互いが来る日にはIFラボをお休みしていたのです。でも仕方なく顔を合わせてみたら、2人の心配はどこへやら!?いつの間にか一緒にいるではありませんか。そっと見守っていると、なんの問題もなく笑い合いながら楽しく遊んでいました。Yくんは「僕は絶交という言葉はもう使わない」とお母さんに話したそうです。ワークショップやみんなで入るお風呂に大興奮だった初日Upload By 赤沼美里初日は、ワークショップにカレーづくりにみんなでお風呂と盛りだくさん。午後には「スペシャルな人に会おう!」ワークショップを行いました。IFラボはシェアオフィスの一角を間借りしていて、オフィスではいろんな業種の方が仕事をしています。今回はデザイナーの方にお願いして美術のワークショップをしてもらうことにしました。ひとつのものも、視点やアイディアを変えればいろんなものになることを学んだあとは、お絵かきタイム。初めて目にする本格的な色鉛筆やペンにみんな興味津々です。いつもの色鉛筆よりずっと塗りやすく、思い思いの絵を描きました。ワークショップ中、Wくんはそばにお母さんがいることに気づきました。するとWくん「なんでお母さんがいるの。早く帰って!」…お母さん、びっくり(笑)1年前のWくんは、お母さんがそばにいないと不安で、お母さんのそばを片時も離れたことがなかったそうです。「キャンプに参加したい」と自分から希望してきてくれたWくん。友だちとの遊びに夢中になって、お母さんが帰っていくのを見送りもせず、お母さんを嬉しくも寂しがらせたのでした。Upload By 赤沼美里とにかくみんな、楽しくて仕方がないみたい!お風呂の順番決めのじゃんけんも大絶叫と大笑いの嵐。最初は新しいことに飛び込む勇気が必要だったけど、今、すごく楽しいんだろうなぁと、こちらまで笑顔になりました。カレーづくりや、お風呂、寝袋での就寝もスムーズ!こんなに計画通りに進むとはスタッフは思っていませんでした。みんな楽しみにしてくれていて、しおりも熟読してくれたのかしらと嬉しい気持ちで合宿1日目が終わりました。しかし興奮しすぎて、眠れない様子。音が気になってしまう子もいるため、寝つきは悪かったよう。これは次回の課題になりそうです…。合宿2日目、みんな朝からハイテンションUpload By 赤沼美里夜寝られずに苦労した子もいたはずなのに、みんな時間通りに目覚めて朝から走り回っています。なんて元気なの…しかも、こちらから伝える前にすでに、2日目の目的地・軽井沢のキャンプ場へ出発するための荷造りが完了している子もいました!駅までの道のり、重い荷物を背負いながら歩きます。小学2年生で、体も一番小さな私の息子・チー坊は、寄り道しながら進むこともあって集団からおくれがち。すると6年生の男の子が、遅れるたびにチー坊のところまで戻って「大丈夫?荷物もってあげようか」と声をかけて一緒に歩いてくれました。チー坊の通うフリースクール(※)の先生は、「異年齢・異質な集団」が教育の大切な要素だと常々おっしゃいます。その良さって、きっとこんなところなんだろうなと胸が温かくなりました。チー坊も優しくされた分、大きくなってこんなふうに誰かに手を差し伸べられるといいな。(※)チー坊は通常、「IFラボ」とは別のフリースクールに通っています。子どもたちは信じられないくらいに元気です。道中の新幹線では、1両目から最後尾まで車内観察に出かけ、しばらく帰ってこない子もいました。キャンプ場に到着しても、その元気は続きます。キャンプ場では、インターハイ出場の学生スタッフDがオニとなりどろじゅん(どろけい・けいどろ)が開始されました。私は、もちろん見学です(笑)。東京よりも涼しくて、段違いにおいしい空気を吸いながらが延々と続くどろじゅん。みんな本当に元気でした!さて、めでたくスタッフDに全員捕まった後は、テント設営です。設営にも個性が光ります。・まず説明書を熟読し、幕をピンと張って見た目もキレイなAチーム・とりあえず広げてみて、試行錯誤を繰り返すBチーム・他のチームの完成を横目で見ながら、効率よく張っていくCチーム・最後みんな面倒くさくなって、幕がゆるくなっているDチーム(私のチームです)無事テントまで完成しました~!「マイペースがいいね」と言ってくれる大人に見守られてUpload By 赤沼美里テントが完成したら、いよいよ今日のビッグイベント「薪のお風呂に入ろう」です。みんな薪のお風呂は初めて!興味津々で薪をくべます。そして男の子全員でザブン!気持ち良さそう~!お風呂というより、芋洗いプールのように1時間近く遊んで、彼らが遊びに遊んだあとのお湯は濁っていました(笑)屋内の活動と違って外では子どもたちの遊びが広がり、時間になってもバーベキューが始まりません…。でもお世話をしてくれた方も、「みんなそれぞれにマイペースなところが良いねぇ。バーベキューの時間だけど放っておいていいんでしょ?」と微笑んでしました。「マイペースが良い」って素敵な表現です。きっと学校ではその「マイペース」でうまく周りに合わせられなかった経験があるはず。チー坊も学校でみんなに合わせられずに怒られてばかりでしたから。でもこうやって、その子の「マイペース」が素敵だと認めてくれる人もたくさんいるのです。いろいろな機会を通じて、たくさんの大人に出会い、成長を見守られる環境を大切にしていきたいなと思っています。友だちがいたから挑戦できたアドベンチャーUpload By 赤沼美里最終日の午前中は、アドベンチャーに挑戦!初めての人も、そうでない人も3人組になって2時間以上のコースをまわります。Sくんは、キャンプ3日前に左手首を骨折。キャンプも来られるか分からない状況でした。ところが、今日のアドベンチャーには左手首を負傷したまま挑戦!友だちに手伝ってもらいながら、無事コース完了しました!いつも少し偉そうにしゃべるYくんが、今朝はちょっと違います。腰が引けて、動きもかなり緩慢(笑)。でもすべてのコースに一生懸命、挑戦するYくんがかわいらしかった。実は3月に家族旅行で別のアドベンチャーに挑戦していたYくん。今回よりも難易度がずっと低く行程も短かったにもかかわらず、怖くて途中でリタイヤしたそうです。今回は前にも後ろにも一緒に挑戦する友だちがいました。後ろから愛あるヤジ「何やってんだよ、早く行けよー!」が飛んできたことで頑張れたそう。Yくんに聞くと「来年はアドバンストコースにチャレンジする」と宣言!来年が楽しみです。子どもたちの個性、「見方」を変えてみるとUpload By 赤沼美里最終日、「あぁ、帰りたくない」と何度も口にする子どもたち。本当だね、すっごく楽しい合宿だったね。みんなの笑顔がキラキラ輝いていたよ。私はみんなを眺めているだけで、なんだか涙が出そうになったよ。帰りの電車に向かう途中、エスカレーターでSくんと話していたら、急に黙るTくん。しばらくすると「ねぇ!今のアナウンス聞いた?〇〇線は7を【しち】って言ってたでしょ。〇×線は【なな】って言ってたんだよ!」と大興奮で教えてくれました。ワタクシ生まれてウン十年、まったく気づきませんでしたよ。Tくんはいつもいろんなことに興味がうつり、実際に行動に移しては新しい発見をしていて楽しそうにしています。残念ながらTくんの好奇心は、学校では座っていられないという問題行動としてとらえられていました。でもIFラボの活動では、ずっと座っていないから問題になることはありません。それに、見方を変えれば、Tくんはほかの人が気づけないことに気づける力があるってこと。合宿中にも、困っている人にすぐ気づいて、さりげなく助け船を出すのは、いつもTくんでした。Tくんに限らず、私たちスタッフは素敵な個性を見逃さず「素敵だよ」って声をかけていきたいなと再確認するきっかけとなりました。来年も合宿したいね!Upload By 赤沼美里子どもたちが声をそろえて「楽しかった!来年も行きたい!」と答えてくれた2泊3日の合宿。1泊をIFラボ、1泊をキャンプ場で過ごした子どもたちに「やっぱりIFラボに泊まっちゃうとテント泊が短かったね。来年は2泊テントが良いんじゃない」と聞くと「IFラボに泊まるのも超楽しかったから、来年はIFラボ1泊、テント2泊にしたらいいんじゃない!?でも3泊4日でも少ないから、5泊6日にしよう」「いいね!いいね!」という答えがかえってきました。来年はどうなっちゃうんでしょうか?大人の体力が持つかしら(笑)今回の合宿で子どもたちはどんな風に成長したんだろうって、ずっと考えていました。とりたてて大きな事件も出来事もなく、みんな笑顔で元気に終えられたキャンプだったから。何か成長はあったかな、といろいろ考えるうち「子どもたちが合宿に参加できたってこと、それ自体が大きな成長だったのではないだろうか」ということに気づきました。IFラボを宣伝したいといって計画を立ててくれたSくん。お母さんから「すぐに興味がうつってやり始めるけど、最後まで頑張れない」と聞いていました。だけど、骨折をおして参加してくれました。怪我をしているから、リュックの紐を結べず友だちに頼むのは恥ずかしいと行きしぶってもいたSくん。最終日には、躊躇せず友だちに頼むことができていました。修学旅行を楽しみにしていたのに、うまく眠れないためにドクターストップがかかって行けなかったTくん。キャンプに参加できるのがうれしくて楽しくて、2日間ともみんなと一緒に寝られました。アドベンチャーで思いっきり体を動かして帰宅した夜も、ぐっすり眠れたそうです。エネルギー不足でほんの1年前にはキャンプなんて考えられなかったWくん。話の合うお兄ちゃんと一緒にいつも笑顔で過ごしていました。本当に元気がなかったのかな、と思えるほど元気いっぱいに走りまわり3日間を過ごしてくれました。IFラボキャンプには、子どもたちのいろんな状況と思いがつまっていました。参加の一歩を踏み出せたこと、笑顔で3日間を過ごせたこと、楽しい気持ちを子どもたちで共有できたこと、気の合う仲間がいるんだって思えたこと、帰りたくないって思えたこと…そんな小さな一つひとつが、IFラボキャンプに参加したみんなの成長だったのではないかなと思っています。
2018年10月16日不登校のきっかけ「よくわかりません」出典 : 私は小学4年生から6年生になるまで学校に行けませんでした。それは中学生になってもたびたび続きました。自分で不登校になった原因について、今でも考えることがあります。集団生活を送ることに苦手意識を持っていたことや、両親の期待がとても大きいと感じていたこと、単純に学校に通う意味を見出せなかったことなど、いろいろと原因になりそうなことは思いつきます。でも、それらが不登校の決定的なきっかけかと言われるといまだに確信を持てません。不登校を経験してから20年近くたちますが、今後もきっとわからないのだと思います。不登校の当事者の中には、私のように自分でも理由がよくわからない方が、少なからずいるのではないかと思っています。出典 : 周りに不登校の当事者がいる方は、本人に対して不登校になったきっかけや原因を聞くことが多いのではないかと思います。実際に私が不登校当事者だったとき、両親・教師・親戚・友人など、さまざまな人から不登校になったきっかけや原因を聞かれていました。社会人になってからうつ病にかかったときにも同様に、いろいろな人から原因について質問され、共通のものを感じました。話を聞こうとしてくれる人たちは、それぞれに「苦しんでいる原因を取り除いてあげたい!」「だからその理由を教えてほしい!」という想いを抱いているのだろうと思います。しかし前述したとおり、私は不登校の原因が自分でもはっきりとはわかっていませんでした。相手の「何とかしてあげたい」という気持ちを感じていても、答えようがありません…。正直に「よくわからない」と答えると、ほとんどの人は、がっかりした顔をしたり、もっと食い下がって質問してきたり…。より気をつかわせてしまっているなと感じることが多かったです。そういうとき、場合によっては、"いかにもそれらしい内容"を考えて答えていたこともありました。出典 : もしかしたらこの記事を読んでくださっている人の中にも、当時の私の両親・教師・親戚・友人などと同じような立場の方がいるかもしれません。不登校の子が原因を話してくれないことについて、自分は信用されていないのではないかと考えてしまったり、いろいろな不安を感じたりしている方もいるでしょう。しかし、私のように理由がわからないから説明できないとう可能性もあるかもしれないので、あまり悲観する必要はないと思います。周囲の人の様子に、本音ではないことも口にしていた当時の私でしたが、うれしかったことがあります。それは、両親から「あなたを傷つける気はなくて、あなたがどんなことを考えていても受け入れる準備ができているよ」と伝えてもらったことでした。両親は私の考えに反論せず、じっくり話を聞いてくれたり、その都度、私の力になりたいと言ってくれたのです。不登校の渦中にいる当事者というのは、自分を守ることでいっぱいいっぱいで、そういった大切なメッセージを受け取る余裕がなかったりします。両親が私にしてくれたことは、じっくり向き合って何度も同じことを伝える必要があるので、とても根気がいることでした。ですが、両親の想いを感じとれるようになったことで、私の生活は少しずつ変化していきました。登校を再開!これで不登校は解決…とはいかなかった出典 : 不登校当時の私も、当時の両親も、おそらく学校の関係者や親族も、学校にさえ行けるようになれば不登校は解決だ!と考えていたように思います。確かに、全く学校に足が向かなかった状態からは区切りがつきますが、実体験からすると、学校に行けるようになってからが本当の闘いでした。この感覚は、一般的にゴールインと言われる結婚が実際には新しい生活の始まりにすぎず、夫婦生活を円満に続けていくことが本当に難しいのとよく似ているのではないかと感じています。さて、学校で次々と襲いかかった問題…。それは、不登校経験があって内申点が低い中、志望校に行くために勉強の遅れを取り戻さなければいけなかったり、同級生とのコミュニケーションもどうすればいいのかまったくわからなくなっていたり…課題は山積みでした。私がそんな問題を乗り越えられたのには、2つの要因があったと感じています。出典 : 粘り強く向き合ってくれた両親が、学校に行くようになった後も私を信頼し応援してくれているという実感があったのは大きかったです。なので、学校で何か困ったことがあったら両親に相談していました。たとえば、同級生とうまくやれなかった日は夕飯を食べながら両親に相談しました。そうすると母親が「私なんかいまだにそうだよ。全員と仲良くなんてしなくていいんだよ」なんて言ってくれたり、父親も「大人の世界だって同じ。誰もがうまくできるわけじゃないから無理しなくていい」とアドバイスをくれたりしました。それで気持ちが楽になり、また次の日から頑張るための勇気になっていました。両親を信頼していろいろ話せる間柄になっていなければ、私は問題に対応できず、また不登校を繰り返していたかもしれません。不登校が始まった当初は言い合いになり気まずい思いをした時期もありましたが、関係はあとからでも築いていけるのだと思います。出典 : 不登校期間中、幸運にも私はプログラマーになってゲームをつくるという将来の夢を見つけることができました。プログラマーを目指すのであれば、地元でも偏差値が高い学校に通い、みっちりと情報系の勉強をする必要があると知りました。これが、最初のうちは勉強についていけなくても、あきらめずに続けていこうという強い動機になりました。志望校に進学してからも、明確な夢があったからこそ自分のペースを保ちながらに勉強を続けることができました。そして今、実際にプログラマーとして仕事ができているのです。実際には不登校の経験がなくても、将来やりたいことを明確に見つけられる人はそれほどいないかもしれません。社会人になってからもいろいろな困難を経験した当事者としては、苦手なことやできないことをどうにかするよりも、好きなことや得意なことを伸ばしたほうが自分の力で道を切り開くための強力な武器になると感じています。文章や物語を書くことも子どものころから好きだったことの一つです。それが社会人になってから技術的な文章を書くときに役に立ち、さらにこうして、この記事を書くことにもつながっています。ちょっと面白いですよね。もし周りにいる不登校の子が将来を思い描けずにいるなら、本人の好きなことや興味を突き詰める道を一緒に考えてみるのはいかがでしょうか。それが直接、将来の職業にならなくても、そのときに出会った人や身につけたスキルが新しい道への突破口になるかもしれません。身近にいる不登校の子に、自分は何をしてあげられるだろうと悩んでいる人へ出典 : 本当に大切なのは学校に通えるかどうかは抜きにして、幸せな人生を歩むことだと私は考えています。そのために、不登校の間はその子とわかり合うことを重要視すると、とても有意義な時間の過ごし方になるのではないでしょうか。社会に出るまでの期間に、幸せな時間を過ごすことはとても大事なことだと思います。それは必ずしも「普通の学校生活」を送らなければ手に入らないというものではありません。もし身近に不登校の子がいて、自分に何ができるか迷っていたら、すぐに学校や同等の施設に通うことを目指すのではなく、その子との信頼関係を強くするために時間を使うのが良いのではないかと思います。強固な信頼関係を築いた人がいることは、本人にとって前に進むための勇気になります。将来、不登校よりも大きな困難にぶつかったとしても、相談できる人がいると思えばどっしりと構えていられるのです。人生で待ち受けている困難にも対応していくために、勇気をくれるような人との関係があることが、不登校の当事者のかけがえのない財産になると思います。
2018年10月12日みんな超絶マイペース。居心地のいい不思議な空間先日、娘が通う、通信制サポート校(※)の個人懇談に行ってきました。一番に聞かれたのが「お子さんはどんな時に体調が悪くなるのですか?」ということでした。体調の悪さが心理的なものからきていることを理解したうえで、具体的にどんな症状で苦しんでいるのか知り、学校で症状が出れば本人の負担にならないようにサポートしてあげたいという配慮からきた質問だったのです。懇談以外でも娘のために配慮してもらったことがいろいろあります。「体幹が弱く椅子に座って勉強するのが苦痛」と言えば、校長の自宅からちゃぶ台を持ってきて娘のためのスペースを作ってくれました。「漢字を書き写すのにスマホで漢字辞典を見ないとやりにくい」というと、「いいよ」とその場で認めてもらえました。今まで学校の先生からそこまで娘に関心や配慮の気持ちを持った質問をされたことはなかったのでびっくりしました。「ここまで娘に心を寄せてくれるのか」と思うと、中学までのつらい日々を思い出して少し泣きたいような気持になりました。娘の通う通信制サポート校は、本校は遠方にある通信制高校で、その分校のような形となっています。授業、レポート、スクーリングといった卒業に必要な全てのことはサポート校で行われます。一対一の指導が基本なので、不登校期間が長く学力に自信がない、娘のような子も安心して学ぶことができます。このサポート校には、フリースクールも併設されていて、施設は共同。広さは小学校の教室2つ分くらいで、サポート校とフリースクールの生徒は混じりあって同じように過ごしています。子どもたちは、登校する時間もまちまちで、過ごし方も自由そのもの。勉強する子もいればオセロに興じる子、好きな模型作りをしていたり、先生に進路相談する姿も。みんなでおやつを買いに行くこともあります。生徒が「ハンバーガー買いに行くけど~」と声をかけると、校長自ら「僕の分も買ってきて」と頼んでいたのには笑いました。人と話すのが好きな子もいれば目を合わすのもしんどい子もいます。だけど不思議なことに誰も居心地が悪くなることもなく共存しているのはなぜでしょうか?(※)通信制サポート校は、通信制高校に通う生徒に対して、3年間で卒業ができるよう単位取得・進級などに必要とされる勉強や精神面での支援を行う役割を担っています。通信制サポート校で勉強したとしても、高校卒業資格を取得することはできません。大半のサポート校は通信制高校と提携し、サポート校入学の際には通信制高校への同時入学が必要です。無理をさせない、追い詰めない娘が通うサポート校の主な教員は、校長・教頭夫婦です。二人とも元小学校の教員で塾講師。自分たちの子どもが不登校になり、無理やり学校に戻そうとして家出されたという経験があります。そのとき、カウンセラーの元で不登校の子ども対応について猛勉強されたので、「無理をさせない」「親子を追いつめない」といった対応は見事なものがあります。生徒たちのことも家庭環境を含めてとてもよく見ています。娘がフリースクールに入学したてのとき、少し勉強しただけで疲れてしまう様子をすぐに見抜いて「よく頑張ったね!今日はもう終わり。帰って家でゆっくりしてね」と声をかけてくれました。なかなか続けて通うこともできず間が空いても、顔を出せば笑顔で「よく来たね」と声をかけてくれ、おやつの時間に誘って他の生徒と話す時間をとったり、ピアノのレッスンに誘ったりと工夫して関わり続けてもらううちに、娘の表情もどんどん柔らかくなって学校での滞在時間も少しずつ伸びていったのでした。先生の目配りの対象は生徒だけに限りません。つき添いの私に「いま、つき添いのお母さんが来てるんだけど話してみない?」と声をかけて親同士の交流を促したり、私がほかの生徒と話せるようにおやつに誘ってくれたりしています。おかげで娘の同級生の親御さんとも親しくなれたり、フリースクール生の親御さんの相談相手になったりと有意義な時間を過ごさせてもらっています。先生が信頼してくれるから、子どもたちは心を開くもう一つ印象深かったのは、先生方が私に生徒を紹介するときは必ず「この子にはこんなに素晴らしいところがあるんです」と本当に嬉しそうに伝えてくれるということ。娘のことも、「お母さん、ほらこのレポート見てください。フリースクール生の頃よりずっとたくさんの文字をきれいに書けるようになっていますよ」という風に伝えてくれるので嬉しくなります。この学校に来ている子どもたちは不登校経験者がほとんどで、入学したての子やフリースクール生を見ていると、大人と目を合わせることのできない子がとても多いです。きっと、それまでにいっぱい傷ついてきたのでしょう。そんな子どもたちが、学年が上がるにつれて先生方にはタメ口で辛辣なことを言ったりすることがあります。ビックリしている私に後で先生がそっと教えてくれたことがありました。「あの子は家では親に決して逆らわないんです。ここで発散できるならいいんですよ」って。先生方は子どもたちのことをよく理解し、深い信頼をもって接しているのだなと感じました。別に勉強するわけでもなく、フラッと立ち寄って先生とひとしきり軽口を叩きあって「また来るわ」と帰っていく子どもたちを見ていると「ここが安心できる居場所の一つとなっているのだな」と腑に落ちたのでした。娘もいつの間にか先生方に信頼を寄せるようになっていました。サポート校1年生になって、最初は私につき添い登校を頼んでいたのに、夏休み前には時々一人で登校するように。怖がりで安心できる場所じゃないと私が一緒でも行きたがらない娘がです。また、こんなこともありました。家で「学校でも年金や社会保障の教育は必要だと思う」という話になったときのことです。娘が「校長に頼んでみようかな」と言ったのです。学校の先生に何かを望むこともなくなり、完全に学校から背を向けていた娘が先生に提案するなんて!本当にサポート校のこと、そして先生方のことを信頼して安心できる存在だと思っているのだなとうれしくなりました。痛みを知っているからお互いに優しくできる先生に頼まれて、先輩が後輩の相手をすることもこの学校ではよくあります。もともと心優しい子どもたちばかりですし、人の痛みに敏感で相手の心を思いやれる力を持っているので、新しく入ってきた子に関わるときは注意深く、その子に負担をかけないよう、怖がらせないように上手に接してくれます。その様子はカウンセラーや教師もかなわないくらい。娘は誘われたらそつなく応対しているようですが、「私はそういうこと(人間関係)に煩わされずに勉強できるからこの学校にきたんだ」とも言っています。その言葉に「この子には友達ができないんだろうか」と心配しましたが、それもまた一つの信念で、尊重すべき考えと思い直しました。この学校には人の輪には入ろうとしない子もいますが、どんな個性を持っていても尊重される校風にはどの子も救われているだろうなと思います。7年間の不登校の末に出合えた、通信制サポート校に思うこと正直、小2から不登校になってしまった娘が通信制高校に進学してちゃんと卒業できるのかかなり不安でした。だけど、月に2回(※)ほど、本校と連携している通信制サポート校に登校して、ちゃんとレポートも提出し1年前期の定期試験も無事クリアすることができました。どうやら今のところ彼女は最小限の省エネモードで卒業を目指しているようです。「月2回しか行けないのか」とがっかりしたこともありましたが、よく考えてみると7年間ほぼ学校に通ったことのない子が月2回も通学していることが奇跡で、それは先生方の寄り添いのおかげだなと感じています。つき添い登校の際にはずいぶん学校の様子も見せてもらいましたし、他の生徒やその保護者とも楽しく交流できたおかげで私も得るものがたくさんありました。私自身、学校にいると落ち着くし楽しいんです。そんな学校に出合えたことを本当に感謝しています。(※)出席日数はスクーリングを入れて普通の高校の約10分の1ですみます。スクーリングに行けなかったり、学校に来られない場合も個別に対応してもらえるので卒業は可能です。
2018年10月12日編集部:学研キッズネット編集部子どもが集まる場所として注目されている「子ども食堂」。どんな子どもたちのための食堂で、何を目的にしている場所なのか?今回は、東京都内にある、まだできたての子ども食堂におじゃまして、その現場を見てきました。取材したのは、東京都中野区にある中野友愛ホーム(特養老人ホーム)で月1回開催されている子ども食堂。取材時(8月下旬)が2回目で、まだ名前が決まっていないくらいできたてホヤホヤの子ども食堂です。みんなで遊んで、食べて、楽しんで!18時スタートということでしたが、15分以上前に到着。玄関を入ると、子ども食堂の看板と、スタッフの方、早くから来ている子どもたちの姿がありました。まずは、受付で参加費(大人300円、子ども無料)を払い、番号札をもらいます。受付で名前と人数を書き、お金を払います食堂の横には遊び場ブースがあり、そこで子どもたちは、ゲームをしたり、絵を描いたり、折り紙を折ったり、ボランティアの方にバルーンアートを作ってもらったりして楽しんでいました。ママたちの明るい話し声も聞こえて、わきあいあいとした雰囲気です。ゲームやお絵描きなどで遊ぶ子どもたち楽しく遊ぶ子どもたち。友愛ホームに入所しているお年寄りで、お子さんとふれ合っている方もいましたみんなで考えた食堂の名前は?受付でもらった番号順に、食堂に入り、好きな席に座ります。メニューは、ソース焼きそば、ポテトのチーズ焼き、中華スープ、あんみつ♪この日集まったのは、子どもと大人合わせて90人ほど。前回は初回とあって、150人近い人たちが来たそうです。スタッフの方のやさしさがたっぷり入ったメニュー食事を楽しむ参加者と、あいさつをする主催者の伊藤由宏(いとうよしひろ)さん食事が終わった子どもたちは、かき氷へ直行!ボランティアのおねえさんがシロップや練乳をかけてくれます食後は、子どもたちはかき氷(無料)、大人は地元の喫茶店のコーヒー(200円)を飲みながら、雑談&遊び。ボランティアの方のバルーンアートや手品も大人気でした。そして、帰る前には「この食堂の名前を考えよう!」というアンケート用紙が配られ、みんなで考えました。「何にしようかなぁ……」。名無しだった食堂の名前をみんなで考えましたさて、その結果は数日後に発表されたのですが「にこにこカフェ」に決定!!小さい子でも覚えやすいいい名前ですね。20時になり閉店となった食堂。みなさん満足そうに、 “にこにこ”笑顔で帰っていきました。老人ホームで子ども食堂を始めた理由この子ども食堂を主催している伊藤由宏さんは、同じ中野区内で「野方みんなの食堂」という子ども食堂も主催しています。ここは2号店ということなのですが、どうして子ども食堂を2カ所で開こうと思ったのでしょうか?こども食堂が終わったあとに、伊藤さんに話を聞きました。伊藤由宏(いとうよしひろ)さんNPO法人ここからプロジェクト代表。日本大学卒業後、障がい者施設職員、養育困難家庭ヘルパー等を経て、現在も一時保護所で働きながら、子ども食堂をはじめ、児童養護施設でのワークショップほか、さまざまな社会活動を行なっている。――いつから子ども食堂を始めたんですか?伊藤:実は、野方みんなの食堂より前の2014年に、別の場所で子ども食堂と無料塾をしていました。そこは別の人に任せて、2016年から「野方みんなの食堂」を始めました。ここはその2号店として、同じ中野区の江古田で友愛ホームさん(特養老人ホーム)の場所をお借りして始めることになったんです。――この2つの食堂の違いは、ありますか?伊藤:野方みんなの食堂は、小学校の近くにある児童館などに声をかけていることもあって、小中学生が多いです。こちらはそれよりも小さいお子さんが多いですね。時間が経つとまた変わってくるかもしれませんが。野方は、区民活動センターを借りて運営していますが、ここは特養老人ホームをお借りしているのも大きな違いです。――どうして、この場所で子ども食堂をすることになったのですか?伊藤:おじいちゃん、おばあちゃんと子どもたちが触れ合ってくれたらいいな、と思ったんです。まだ始めて2回目なのですが、ここのホームのお年寄りの方たちも何人か参加してくださっているので、じょじょに触れ合う機会が多くなってくれるといいなと思っています。地域のコミュニティーとしての「子ども食堂」――伊藤さんが、子ども食堂を始めようと思ったきっかけは何ですか?伊藤:15年くらい前から、引きこもりや不登校、発達障害の子どもたちなどのボランティアをしていました。でも、子ども食堂を始めた直接のきっかけは、2011年の東日本大震災で、福島の児童養護施設でボランティアをしたことです。震災で親を亡くした子どもだけではく、なんらかの事情から親もとで生活できない子どもは、世の中にたくさんいます。そんな子どもたちをみていて、「子どもたちのために、何か自分にできることはないか」と考えました。福島から帰ってきてから、まずは自分が住んでいる地域で、困っている子どもたちの力になりたいと思い、子ども食堂を始めました。「お母さんたちの息抜きの場にもなってほしい」と話す伊藤さん。――子どもたちのためという思いが、ここまで広がったんですね。伊藤:最初は貧困の子どもたちのためだったのですが、今は子どもたちを中心とした、地域のコミュニティーづくりがメインになっています。実際に、ママ友同士で誘い合って来てくださっている方も多いんです。毎日の子育てに苦労しているお母さんが、月1回でもごはんを作らない日として、息抜きの場になってくれるといいと思っています。――ボランティアの方も多いですよね。伊藤:調理は、友愛ホームの方の人脈でこの地域の方たちが担当してくださっています。そのほか、配膳やかき氷などのボランティアは、インターネットで募集を見て、連絡をくれた高校生たちです。今日は高校生だけで10人ほど集まりました。そのほか、地元の喫茶店の方が、東ティモール産のコーヒーを1杯200円で提供してくださったり、手品やバルーンアートのイベントをしてくださる方もいます。とてもありがたいですね。――これからの課題はありますか?伊藤:まだ、ここは2回目なので、今はすべて試行錯誤している状態です。初回は参加者70名の想定でしたが、その倍の150名近い人が来てくださったため準備が足りず、みなさんには、ご迷惑をおかけしてしまいました。今日は、事前に約80名分の食事を用意していると告知していて、実際は90名くらいでした。余分に用意しておいたこともあって、ちょうど良い感じでした。――食事の際の番号札は、今回から導入したのですか?伊藤:そうです。今回は受け付けで番号札を配り、食事のスペースには順番に入ってもらいました。配膳もボランティアスタッフと事前に打ち合わせをして、先にテーブルに置くようにしてもらったことで、みなさんにスムーズに食べてもらうことができました。こうやって、いろいろと試しながら、みなさんに喜んでもらえるように運営を軌道にのせたいと思います。――地域のコミュニティーづくりをメインとして、お年寄りと子どもが触れ合える場所というコンセプトはとてもいいですね。これからどんな場所になっていくのか楽しみです。伊藤:そうですね。みんなが楽しんでくれるような内容を、どんどん企画していきたいと思います。――これからの展開が楽しみですね!今日はありがとうございました。ひと口に「子ども食堂」と言っても、運営の形態はさまざまです。伊藤さんのように同じ人が運営していても、場所が違うと、そこに集まって来る人たちの年齢層などが変わってくるということもあります。今回、実際に子ども食堂を体験して感じたのは、子ども食堂は人々の善意で成り立っているということ。「みんなに何を食べてもらおうか」というメニュー決めから、低価格で食事を提供するために安くておいしい材料を調達したり、早くから料理の準備をし、配膳の準備をするスタッフたち。子ども食堂が開かれる前、そして開店してからも、どれだけの人々が時間と労力を費やしているのかを感じることができました。地域のコミュニティーとして、これからどう発展するかが楽しみです。※「にこにこカフェ」は、現在諸事情によりお休みしています。学研キッズネット編集部(がっけんきっずねっと)『学研キッズネット』は、1996年にオープンした小・中学生のためのWebメディアです。学研の子ども向け書籍や雑誌の編集ノウハウを活かし、子どもたちが安全に楽しめるサイトとして運営しています。子どもたちのしあわせのために、家族のしあわせのために、有益な情報やサービスをお届けできるよう、いつも精一杯がんばっています。すくすく伸びる子どもたちのために
2018年10月11日2018年6月27日から7月16日に、LITALICO発達ナビでは「子どもとゲームのつきあい方についてのアンケート」を行いました。ゲームを使用するお子さんを持つ683名の保護者の方々が回答し、うち618名が「子どもがゲームをすることで困っていること・悩んでいることがある」と回答しました。この記事では、アンケートによる調査結果の一部を抜粋し、専門家による対応策についてのアドバイスも加えて、お伝えします。<調査対象について>「LITALICO発達ナビ」会員へのメールから、アンケートフォームにて回答いただいた発達障害の保護者の中から「子どもがゲームをすることで困っていること・悩んでいることがある」618名の回答を集計しました。(調査期間:2018年6月27日~7月16日)※設問によっては618名全員が回答していないもの、複数回答可のものがあります。※調査結果の構成割合は四捨五入をしているため、合計が100%にならない場合があります。ゲームの使用が心配な子どもの年齢は?Upload By 発達ナビ編集部小学生が約55%、中学生が約29%で多くをしめました。8割以上の子どもが小学校高学年になる以前にゲームを始めているUpload By 発達ナビ編集部8割以上の子どもが小学校低学年や未就学であるときからゲームの使用を始めているとの回答でした。Upload By 発達ナビ編集部また、保護者の半数以上は、小学校高学年になる以前から子どものゲーム使用について問題に思い始めていることが分かりました。7割以上が、問題が1年以上続いていると回答Upload By 発達ナビ編集部ゲームに触れるきっかけとして多いのは、1位周囲の人の影響(親、兄弟、友達など)2位プレゼント3位空き時間(不登校、入院中、移動時など)が挙げられていました。周囲の人の影響では、「親が遊んでいるのを見て」、「学校でみながゲームの話題をし始めたから」、「周りのお友達もゲームを持ち始めて、自分も欲しいと言い出した。」、「上の子が使っているのを見て一緒にやっていた」などがありました。プレゼントでは誕生日やクリスマス、子どもが何かを頑張ったご褒美としてゲームをあげる方が多くいました。さらに、空き時間でのゲーム使用に関しては、不登校や、引っ越しや移動の際の暇つぶし、病院での空き時間などで子どもが手にしているという回答がありました。また、ゲームの種類は、インターネットにつないで使用するオンラインゲームが約70%、ネットを介さない家庭用のゲーム機の使用が約60%と多くの方がこの2つを使用していることがわかりました。ゲーム使用の頻度は8割以上が「ほぼ毎日」、1日あたりの使用時間は「1~3時間以上」が約4割Upload By 発達ナビ編集部Upload By 発達ナビ編集部約85%の子どもたちが、ほぼ毎日ゲームを使用していることが分かりました。さらに使用時間は、■1~3時間が約38%■3~6時間が約33%と、多くの時間を費やしていることが分かります。ゲームへの没頭度合いは?Upload By 発達ナビ編集部1.自分でゲームとの関わりをコントロールできている、2.長時間ゲームに没頭しているが日常生活は送れている、3.ゲームを最優先し日常生活に支障が出ている、いずれの状態かを聞いたところ約55%が「長時間ゲームに没頭しているが日常生活は送れている」、約36%を超える子どもが「ゲームを最優先し日常生活に支障が出ている」というアンケート結果でした。没頭するようになったきっかけ・心当たりとしては、学校でのストレスや不登校、友人関係がうまくいかないことやオンラインでの交流の方を好む傾向があるため、という回答が多くみられました。また、過集中などの発達障害の特性が影響していると考えている保護者もいるようです。ゲームに熱中することで、勉強や生活に問題が出ている子どももUpload By 発達ナビ編集部上記のグラフにある通り、「勉強が手につかない」が383人と最も回答数が多く、朝起きられない、お風呂に入らない、食事をとらない、昼夜逆転など、基本的な生活習慣に影響があるという回答も多く挙げられました。ものに当たる・壊す、家族への暴力などの問題が挙げられている点も無視できません。保護者の悩みごととは?Upload By 発達ナビ編集部子どものゲームの使用に関して、保護者の方々は上記のような悩み・心配ごとを抱えています。具体的なエピソードとしては次のようなものが寄せられました。〇本人に問題意識がない「1年前までは、ネット依存外来に半ば強引に通院させていましたが、本人の否認が強く、医師も治療の手立てが無く、悪化するばかりで、現在大学も休学して、家族とも話さず昼夜逆転でゲームしているので、通院もさせる事も出来ず、途方に暮れています。」「タブレットを触っていると、会話もなくなります。でも本人はそれを問題だとは思っていません。」〇将来が不安「どうやったらゲームの優先順位を下げれるでしょうか。やるべき事を終えればゲームしてもいいと言っていますが、ゲームが最優先で勉強をしなければならないと思っていない様子で心配しています。」「ゲームを生活の最優先にしていることが悩みです。一方で、ネットゲームの仲間とスカイプで楽しそうに会話しているのを見ると、学校にはない、本人にとっては心の許せる大切な友達なのだとも思います。来年は中学3年生で受験と向き合わなければいけませんが、このままでは志望校に合格するのは難しいです。本人の気持ちも大事にしたいですが、どうしたら勉強にも向き合ってくれるかが悩みです。」〇目が悪くなる「家族が寝静まるまで待ってからゲームを始めます。寝たふりをしているので真っ暗な部屋でゲームをしていて、これはマズイと思いました。」〇言葉が乱暴になっている「そろそろゲームをやめる様に声かけすると暴言をはきます。」「ゲームで勝てないと本気で泣いて暴言を吐いて暴れだします。」〇食事睡眠をとらず健康に影響が出ている・出そう「土日になると前日遅く寝ても朝、早く起きてゲームをします。私が何も言わなければ飲食もせずにゲームを一日中続けています。ゲーム時間をどのように減らしていければよいのか悩んでいます。」家庭ではどんな対策をしている?Upload By 発達ナビ編集部約76%が現在ゲームの使用に関して対策や工夫をしています。また、行っている対策は、次のような結果でした。Upload By 発達ナビ編集部具体的な対策の内容として寄せられたものの中から、一部を紹介します。■ルールの決め方の工夫「ゲームの時間を決めても辞められないため、勉強の時間を決めてその時間はやらないようにしました。自分で決めた時間なので、声をかければ何とか時間内に宿題に取り掛かれるようになりました。」「本人も交えて話し合い、守れそうな時間制限をルールにしたので、自分から意識して止めることがほぼ定着しました。」■専門家に指摘してもらう「子どもがゲームをやり過ぎているために、生活の管理ができていない事をカウンセラーの方から話していただき、元々の不登校の原因である起立性調節障害の回復が遅れる事を指摘していただきました。家族からの指摘より、専門家にお話ししていただく方が具体的でピンポイントだったので、子ども自らが進んで生活表を作って頑張ろうとしています。」「病院で決められたことなので、子ども自身がタイマーを使って時間を守っています。」■ゲーム以外に興味を引き出す「学校へはいけないので、放課後等デイサービスで体を動かすようにお願いしています。するとデイサービスが本人にあっていたのか、その時間はゲームから離れられるようになりました。」「月に2回程度スポーツ教室に通い始めました。本人なりに楽しそうに取り組んでおり、体を動かした日の夜は朝まで熟睡しています。」■家族も一緒にやる「一緒にゲームをすることで、親もキャラクターを覚えました。その上でゲームとのかかわりについて注意をしました。親も一緒にゲームを楽しみ、コミュニケーションを取ってから、決まりについて話したところ、徐々に子どもも聞いてくれるようになりました。」■気づかせる「ゲームをしている時間を細かく書き、本人に知らせるとすんなりゲームをやめられました。ただ、1分でも間違えたら怒ったりもします。ゲームを使用している時間を細かく書いて知らせることで、子どもは長い時間使用していると理解し、一定の時間でやめてくれるようになりました。毎回ではないですが、すごい進歩です。」6割以上が相談相手がいるUpload By 発達ナビ編集部7割近くが子どものゲームの使用に関して誰かに相談しています。Upload By 発達ナビ編集部具体的な相談相手としては次のような結果となりました(複数選択あり)。■医者、専門家(235名)■家族(207名)■友達(112名)■スクールカウンセラー(96名)医者や専門家、学校などで子どもを見守るスクールカウンセラーなどの第三者に相談をしている方が多くみられました。専門家によるアドバイスを紹介!「ゲームにまつわる悩み」どう対処する?Upload By 発達ナビ編集部医者や専門家に聞いてみたいこととして、上記のような内容が希望として挙げられました。すでに改善しようと多くの保護者が取り組んでいますが、それぞれのお子さんに合う解決策が分からないという人も少なくありません。そこで、具体的な質問内容から、鳥取大学の井上雅彦先生に対応策を伺いました。時間制限がしづらいスマートフォンとのつきあい方に悩んでいるという場合については「コミック本やテレビと違い、ゲームやスマホは終わりがないので依存が生じやすくなりがちです。依存しすぎる前に、自分の力で管理できるように環境を整える必要があります。ルールの決め方の基本は1. 子ども参加でつくる2. 無理のない具体的な使用時間を決める3. ゲーム機やスマホは親の目の届くところで使う4. (ルールを適用する)期間を設定する(例:1日間、1週間など)5. 守れたらほめるでも、ゲームをやめて、その分勉強をしろというのはハードルが高すぎるかもしれません。まずは、ゲーム以外の趣味を増やす、ゲームと少し距離を持つことができるようにしましょう。刺激を求める子どもの場合は、ゲーム以上にワクワクできる体験(アウトドア体験、映画館で映画を観る、一人旅、高校生以上ならアルバイトなど)の機会をつくるのもいいですね。好きなことが増えることで、ゲームがなくても大丈夫な時間が生まれ、その時間を勉強に向けることもできるようになっていきます。また、頭痛や不眠など、ゲーム依存による身体症状が出てしまっている場合は、それを話し合いのチャンスとし、主治医や専門家の協力を得て、ルールづくりをできるとよいでしょう」ゲームによる勉強への影響に悩んでいる場合については「まず、志望校合格までの計画づくりを一緒にします。そのために、ゲームの時間をどう管理すべきかを考えさせます。ゲームを一方的に取り上げるのではなく、自分で管理できるようにする必要があります。目の前にあるとどうしても手に取ってしまうと本人が考えるのであれば、保護者が管理するとか、子どもの部屋には置いておくけれどカバンに入れて部屋の隅に置くなど、すぐには手に取れない状態にします。少しずつ離していけるようにしてみると、管理ができるようになっていくと思います」子どもに対してだけでなく、夫への対応や、夫から子どもへどう接してもらったらいいかについて悩んでいるという場合については「夫に対して、感情的にコミュニケーションすると、夫はゲームをしている自分を責められているように感じてしまいがちです。”子どもはゲームを毎日○時間やっている”という現状があり、そのため”勉強をまったくしない”というように、何が起きていて、どう支障が出ているのかを具体的に伝えることが大切。父親が子どものゲーム仲間になること自体はいいけれど、子どもが勉強する時間に横でゲームをやるのは控え、自室で楽しむなど、子どもへの影響を考えた具体的な関わり方を話し合う必要があります」また、「母親もゲームをやってみて、”なかなかやめるのが難しい”ことを実感し、子どもの立場に立って”どうしたらやめられるか”を一緒に考え、約束をつくっていくのもいいでしょう」とのアドバイスもいただきました。まとめ今回アンケートをとってみて、ゲームが身の回りにあるのが当たり前な環境にいるお子さんに対して、ゲームとの適切な関わりの示し方に悩まれている保護者の方々が多く見受けられました。LITALICO発達ナビでは、今後子どもとゲームとの関わりについて記事を掲載していきます。専門家の視点やすでに取り組まれている方々の声も取り入れながら、子ども一人ひとりに合った関わり方ができるようになることを願っています。
2018年10月09日専門家・プロ:藤田由美子今回は、特別活動で社会参画する力、安全を守る力をどのようにはぐくもうとしているかに焦点をあてて紹介します。学んだことを成長につなげる特別活動の内容は大きく3つに分かれます。(1)学級(高等学校ではホームルーム)や学校における生活づくりへの参画(2)日常の生活や学習への適応と自己の成長および健康安全(3)一人一人のキャリア形成と自己実現次期学習指導要領では、小学校、中学校での特別活動の内容を下図のように示しています。小学校における特別活動の内容 (出典:文部科学省「小学校学習指導要領(平成29 年告示)解説特別活動編」をもとに作成)中学校における特別活動の内容 (出典:文部科学省「中学校学習指導要領(平成29 年告示)解説特別活動編」をもとに作成)学級活動を通して社会参画を学ぶ「(1)学級や学校における生活づくりへの参画」とはなんのことでしょうか。次期学習指導要領では、特別活動全体を通して、自治的能力※1や主権者として積極的に社会参画する力を育てることを重視しています。具体的には、学級や学校の課題を見いだし、課題を解決するためにみんなで話し合って合意形成すること、主体的に組織をつくり、役割分担して協力し合うことの重要性を明確にしました。この背景には、子どもたちの社会参画意識を高めなければならないという社会的なニーズがあります。※1所属する集団が決定した総意にもとづいて、教師の支援を得ないで行動する力「(1)学級や学校における生活づくりへの参画」は、次の3つの内容に分かれています。ア 学級や学校における生活上の諸問題の解決イ 学級内の組織づくりや役割の自覚ウ 学校における多様な集団の生活の向上「ア 学級や学校における生活上の諸問題の解決」は、たとえば入学や進級のときに新しい学校生活に慣れること、学級での生活を見直す活動、いじめや不登校の未然防止や暴力のない学級づくりなどが想定されます。子どもたちが個々に学級や学校における課題を見いだし、おたがいの意見を認め合いながら、くふうして諸問題の解決に取り組みます。「イ 学級内の組織づくりや役割の自覚」は、次のような活動のことです。子どもたちが話し合って決めた学級の目標をふまえ、目標を実現するために必要な組織をつくる。仕事の役割分担やルールをつくる。学級内の組織の意義や活動について話し合って合意形成を図る。分担した役割の計画や成果を学級で共有する方法について話し合う。活動について振り返り、改善策について話し合う。「ウ 学校における多様な集団の生活の向上」は、生徒会や部活動など、学級の枠を超えた集団での活動や学校行事を通して、学級としての提案を話し合って決める活動のことです。こうした活動を通して、子どもたちは社会に参画し、主権者としてどのように行動したらいいかを学びます。生きる力をはぐくむ「(2)日常の生活や学習への適応と自己の成長及び健康安全」には、防災教育、安全・健康教育、食育、よりよい人間関係の形成などが含まれます。いろいろな内容が盛り込まれているのは、複雑で変化の激しい社会のなかで求められる多様な能力を育成する必要に迫られているからです。特別活動と各教科を関連づけながら、資質・能力を育成します。次期学習指導要領では、事件や事故、災害から身を守ることの重要性について明示しています。災害などから身を守り、安全に行動するためには、具体的な場面を想定した訓練を体験することが重要であると強調しています。防災に関しては、地理で地域の地形の特徴や過去の自然災害について学び、理科で自然災害につながる自然の事物・現象の働きや規則性などを学びます。また、災害からどのように身を守ったらいいのかを実地訓練します。安全に関しては、日常生活に潜むさまざまな危険を予測したり、問題解決の方法を話し合ったりして、安全な生活を送るためにどうしたらいいか、理解を深めます。たとえば、生活習慣の乱れやストレスへの対処、インターネットでのトラブル事例、自転車を運転するときの交通安全、事故の発生状況や危険箇所の調査結果などについて話し合いを通じて学びます。学校での特別活動を通じて子どもたちが生きる力を身につけ、多くの問題を乗り越えられるようになってほしいものです。藤田由美子(ふじたゆみこ)株式会社ユーミックス代表取締役社長。1993年の創業以来、コンピューターリテラシー教育を数多く手がける。「生きる力」「社会力」の育成をめざして、子ども向けICT教育のカリキュラム作りにも力をいれており、大手携帯電話会社のケータイ安全教室の企画立ち上げ、ネット安全利用推進プログラムの開発など、実績多数。
2018年10月08日本に登場する著名人から、不登校の子どもの保護者へ。心のこもったメッセージを話題の本『学校に行きたくない君へ』。日本で唯一の不登校専門紙「不登校新聞」に掲載された著名人への取材記事から20記事を厳選し紹介されています。前回の記事では、「不登校新聞」石井志昂編集長にお話をうかがい、取材の裏側や、不登校や引きこもりへの想いを紹介しました。さらに『学校に行きたくない君へ』に登場し、不登校や生きづらさへのヒントを与えてくれた方々へアンケートを実施。「保護者へ伝えたいメッセージとは」、そして「”不登校”という言葉を、もっとポジティブな言葉につくりかえるとしたら?」――そんな発達ナビからの問いに、不登校新聞の編集長をはじめ、田口トモロヲさん、宮本亜門さん、茂木健一郎さん、山田玲司さんが熱いメッセージを寄せてくれました。また、本書に掲載された心に沁みる「言葉」から、一部をご紹介します。不登校新聞 石井編集長「その子自身の学校に行かない理由を大切にして」Upload By 発達ナビニュース――不登校のお子さんの保護者に向けて、メッセージをいただけますか。石井さん:学校は命がけで通うべきところではないということを伝えたいです。子どもが学校に行けなかったとしても、それはその子が弱いからでも、怠けているわけでもないということ。もしかしたら今は不登校の理由を言えないのかもしれないけれど、その子なりの理由があって学校に行かないんですね。だからその行かない理由を大切にしてあげてほしいなと思います。私の場合は「学校に納得できなかったから」。「納得」を私はすごく大事にしているなという気がします。――「不登校」という言葉を、ポジティブな違う言葉につくりかえるとしたら、どんな言葉にしたいですか。石井さん:確かに不登校って差別用語だなと思いますね。たとえば女性のことを「不男性」といったらどれだけの差別なのかというのが分かりますよね。そうはいっても「不登校新聞」という名前をつけちゃってるんですけどね(笑)。不登校以外の言葉でつくりかえるとしたら、「生徒・学生」でいいんじゃないかな。海外では家で教わっている子はホームスクーラーの子も、イギリスで100年続くフリースクール「サマーヒル・スクール」に通っている子も「student:生徒」って呼ばれているんですよね。だから「生徒」がいいと思う。不登校の子だけを特別な呼び名で呼ぶ必要はなくて、学校に頼らないで生きる生き方が一般化される必要があると思っています。不登校新聞田口トモロヲさん、宮本亜門さん、茂木健一郎さん、山田玲司さんら著名人からの熱いメッセージ!今回、俳優・映画監督の田口トモロヲさん、演出家の宮本亜門さん、脳科学者の茂木健一郎さん、漫画家の山田玲司さんにアンケート取材をしました。4名から、不登校のお子さんを育てる保護者に向けていただいたメッセージをご紹介します。――不登校のお子さんの保護者に向けて一言メッセージを。田口さん:自分なら、たとえ世界中を敵にしても味方だと思える人に近くに居てもらいたいです。生き続けるために一つだけ好きなこと(支え)を見つけて、人生=生活をこじ開けてほしいと思います。田口さんはまた、本書の中で次のように話しています。一番近くにいる保護者が肯定し、味方になってくれることは、とても大切なことです。あきらめると言うと、ネガティブに聞こえますが、肯定することと同じ勇気だと思うんです。僕は自虐的な人間だから「自分を肯定する」という言い方より「ダメなんだから仕方がない」という言い方の方が安心するんで(笑)。『学校に行きたくない君へ』(ポプラ社)、田口トモロヲさんの言葉より田口トモロヲ(俳優・映画監督)――不登校のお子さんの保護者に向けて一言メッセージを。宮本さん:親子であっても、以心伝心はありません。それぞれが違う人格をもった人間なのです。だから、親自身のたどって来た人生で、これが正しい、間違っていると判断したものを言われても説得力がありません。お互い、対等で冷静に、この情報過多の時代を生き抜くために、何を選び大切に生きていくか、考え話し合ってください。――「不登校」という言葉を、ポジティブな違う言葉につくりかえるとしたら、どんな言葉にしたいですか。宮本さん:「その子どもにしかできないオリジナル性の模索」。「個性を生かし、社会に生きていくための大切なブレイクタイム」。――その理由・言葉に込めた想いとは?宮本さん:人は全員違う考えと違う才能を持っています。しかし、学校は知識を入れ込むことで忙しくなかなか教えてくれません。むしろ、それは親だからできる、子どもと親しくなれる素晴らしい役目。焦らず、それぞれの個性や特性を引き出して、将来大きく花開くように、準備をしてください。もう一つ、宮本さんが本の中で伝えてくれた、勇気が出る「言葉」を紹介します。だってこれまで痛みを経験してきたはずです。職種はちがうかもしれませんが痛みを経験してきた役者さんはいい仕事をします。もう一つ、つけ加えるならば、新しいことを始める際に「不安がっている自分」を否定しないでください。「怖いけどやってみたい」、その思いに自分が後押しをされたときには素直に気持ちに従ってみてください。『学校に行きたくない君へ』(ポプラ社)、宮本亜門さんの言葉より宮本亜門(演出家)――不登校のお子さんの保護者に向けて一言メッセージをお願いします。茂木さん:お母さん、お父さんは、お子さんの「安全基地」になるのが一番よいのです。安全基地とは、お子さんが挑戦したいことを、見守り、応援するということです。お子さんが学校に行かないという選択をしたということは、つまり、そのような挑戦をしているということです。その挑戦を、見守ってあげてください。学ぶために、学校に行くことは必須ではありません。今の時代、いくらでも他の方法はあります。もちろん、ふたたび学校に戻るという選択をしてもいい。でも、戻らなくてもいい。「普通」であることと、学びはまったく関係ありません。お子さんは、賢い。自分の人生を、切り開こうとしている。そんなお子さんを、信じてあげてください。――「不登校」という言葉を、ポジティブな違う言葉につくりかえるとしたら、どんな言葉にしたいですか。茂木さん:「もう一つの学びへの勇気ある挑戦」――その理由や、言葉に込めた想いは?茂木さん:学校に行かないことを選択したこと自体勇気あることですし、それは必ずもう一つの学びにつながるのです。茂木さんはまた、本書の中で「多様性に上下はない」と語っています。脳科学の見地から言えば「不登校は脳の個性である」というのが結論です。毎日、学校に通っても苦痛を感じない個性もあれば、1日だって学校に行けない個性もある。脳には多種多様な個性があり、その差に上下はありません。『学校に行きたくない君へ』(ポプラ社)、茂木健一郎さんの言葉より茂木健一郎(脳科学者)――不登校のお子さんの保護者に向けて一言メッセージをいただけますか?山田さん:「不登校」はまともなことで、それで人生がダメになることはありません。「そんなことはない、学校くらい行かないと世の中ではやっていけない」と思う親は明らかな「思考不足」なので、自分がまず「何が正しいのか?」を深く考えてください。学校へ行くのは「絶対的な正解」ではありません。どんな子どもでも無条件に認めてあげてください。狂っているのは大人達の方なのです。――「不登校」という言葉を、ポジティブな違う言葉につくりかえるとしたら、どんな言葉にしたいですか。山田さん:「考え中」「さなぎ期間」「防空壕避難中」「修行中」「自主練」山田さんは、インタビューでも「絶望を知ること」で跳ね上がっていくことについて語っています。本書(※)に登場してくれたみなさんが言っていたのは「絶望に効くのは絶望を知ることだった」と。絶望するとそこを機に跳ね上がっていく。もちろん、そこまでいけないときが本当にきつい。「夜明け前の夜が一番暗い」という言葉もあるぐらいですから、真理でしょう。でも「明けない夜はない」というのもまた真理だと思っています。※編集部注:『絶望に効くクスリ』(山田 玲司著/小学館)のこと『学校に行きたくない君へ』(ポプラ社)、山田玲司さんの言葉より学校に行かないという選択をした子どもたちが経験している「今」だけでなく、その先へのまなざしも感じられます。山田玲司(漫画家)本書に収録、樹木希林さん、西原理恵子さん、リリー・フランキーさんなどの「言葉」を、ちょっとだけご紹介しますUpload By 発達ナビニュース一緒に住んでいる人はホントにたいへんだと思いますが、結局、親はその子の苦しみに寄り添うしかないです。言って治るようならとっくに治っています。最初の話に戻りますが、自分が成熟するための存在なんだと受け取り方を変えるのがいいのではないでしょうか。『学校に行きたくない君へ』(ポプラ社)、樹木希林さんの言葉よりこの先、あなたはなぜ自分がこんな状況になってしまったのか、考えるときがくるでしょう。でも、その原因究明はするべきじゃありません。原因を究明しても、誰かを悪者にして終わるだけ。誰も助からない。明日、どうやって飯を食うかのほうが、よっぽど大事です。だって、立ち止まったらかならずよどむんです。よどむときついんだ。自分を苦しめてきた存在が3Dになって、いつでもよみがえってくる。『学校に行きたくない君へ』(ポプラ社)、西原理恵子さんの言葉より西原理恵子(漫画家)不登校・ひきこもりを生きる、というのはたいへんな苦悩を伴いますが、じつは私が教えている東大生も、内面の苦悩は、ほとんど同じだと感じています。前者は「自分自身じゃないもの」になろうとしてなれずに苦しみ、後者はなりきって苦しんでいる。でも「自分自身じゃないもののフリ」をすることをやめないかぎり、自分の人生は始まらないんです。『学校に行きたくない君へ』(ポプラ社)、安冨歩さんの言葉より安富歩(東京大学東洋文化研究所 教授)不登校もひきこもりも、好きなだけやればいいと思うのは、みんな自尊心も強いんだから、美意識を持ちながらやっていれば、自然と外に出ることも働くことも、なんでもなくなると思います。それに、その時間が糧になるときがきますから。オレなんか、いま物を書いてる内容はそのときに考えていたことばっかり。だから、みんな留学してると思えばいいんじゃない。『学校に行きたくない君へ』(ポプラ社)、リリー・フランキーさんの言葉よりここでご紹介したのは、『学校に行きたくない君へ』に詰め込まれた、心に沁みる「言葉」の、ほんの一部です。そして、一つとして同じメッセージはありません。読者の人それぞれの胸に響くメッセージが、本のどこかにきっとあるはずです。不登校やひきこもりの当事者・保護者だけでなく、生きづらさを抱えるすべての人に読んで欲しい一冊です。リリー・フランキー(俳優・文筆家・イラストレーター等)樹木希林、荒木飛呂彦、西原理恵子、リリー・フランキー、辻村深月ら総勢20名の先輩たちが語る生き方のヒント。企画から取材まで、不登校の当事者・経験者が、人生の大先輩たちに体当たりでぶつかり引き出した本音のメッセージを収録。社会に出たくない人、人生に迷っている人など、中高生からシニア層まで幅広い世代に突き刺さる言葉が詰まった一冊です。2018年8月発行。全国不登校新聞社編、ポプラ社刊。撮影:鈴木江実子取材・文:赤沼美里
2018年10月04日トップライター:やなへい高校生の息子1号、小学生の息子2号との悲喜こもごもを、ゆるいイラストと文章でお伝えしている、トップライターのヤナトモ改め、今回から「やなへい」です!息子たちの成長をつうじて「へえ~」とか「ほお~」とか、ジワジワくる学びを感じることが喜びの、わ・た・し♡そんなジワジワ好きのわたしのところへ、ドドーンと青天の霹靂が!なんと、息子1号が、数カ月の不登校期間を経て、県立の普通科高校から通信制の高校に転入したんですよ。「え?まさか?なんで??どうしたらいいのっ!」そんな衝撃の数カ月間から、「あの子どうすんだろ?(笑)」というボンヤリの極地にたどりついた(かもしれないし、そうでもないかもしれない)現在までの、愛と涙の物語を全7回シリーズ(たぶん)でお届けします!!「オレ、高校やめるわ!」県立高校2年の息子1号が軽く言い放ったのは、冬休み明け、最初の登校日だった。―――その日の朝。遅刻常習犯の息子1号。年明け最初の登校日だというのに、案の定、のらりくらり。彼を残して、わたしが先に家を出た。―――午後。担任教師から「登校していませんが、どうかしましたか?」とメールが。息子の携帯に電話をしてもメールをしてもリアクションなし。心配なので、早めに仕事を切り上げて自宅へ急いだ。「まさか家で倒れて息絶えた!?」という最悪のケースから、「宿題やってなさすぎてバツが悪すぎて学校をサボった?」という想定内のケースまで、何度もリフレインしながら自宅にたどりつくと、上半身制服、下半身パンツ一丁の息子1号が。のんびりと宿題のプリントをやっているではないか……。「無断欠席はダメだよ!休むなら休むって連絡しないと」「ああ」「宿題もやってないんでしょ」「ああ」「そんなんなら、もう高校やめれば!」「・・・オレ、高校やめるわ!」「なに言ってんの。宿題やってないから学校行きたくないだけでしょ」軽く叱咤して相手にしなかったけど、強気の真顔だったのが気になった。正月明けの部活の合宿から帰って以来、妙に元気がなかったし。―――翌日の夕食どき。「オレ、高校やめるって先生に言った」「は?」「親の承諾得てこいって。オレ、高校やめて通信制行く」来た……!不吉な予感が現実に。息子1号いわく、年末年始のほんの数日の休みの中で、これからについて考えたというのだ。年明け、ますます受験へのプレッシャーが強くなること(入学以来、【センター試験まであと○○日】と言われ続けている)。部活動も残り半年で終わってしまうこと。行きたい大学もなければ将来の目標もないこと。そんななか、毎日10時間近く、教室の席に座っているのがもったいない、というのだ。たしかに高校入学当初から、教室の雰囲気が苦手で居づらいと言っていた。数回見学に行ったことがあるが、評判の自由な校風より、「難関国立大学絶対合格!」という張り詰めた空気を感じるところだった。「オレ、部活がなかったら学校行ってない。部活があるから学校に行けてる」ともよく言っていた。「どうしてやめたいの?」「雰囲気がイヤ」「嫌だからやめるの?嫌なものから逃げるために通信制に行くんだ?」「うん」「雰囲気が嫌なだけなら、私立に転校する選択肢もあるんじゃないの?」「いや。私立に行っても受験に追い込まれるのは目に見えてる」「通信制に行きたいのはなぜ?」「さすがに高校卒業してないとダメだと思うし、通信制行ってバイトしたい。通信制ならバイトできるし。あと、動画編集とかしたい」(※我が県の普通科高校は原則としてアルバイト禁止)「本当にバイトがしたかったら学校に隠れてでもすればいい。動画編集がしたかったら今すぐすればいい」「まぁね」「大学はどうするの?行かないの?」「いまのところ、行くつもり」「行きたい大学はあるの?」「とくにない」「じゃ、無理して行かなくてもいいんじゃない?」「まだやりたいこと決まってないから、大学行って考えてもいいかなと」「大学行くなら、いまのままがんばったほうが楽なんじゃないの?」「とにかく嫌。逃げ出したい」息子1の話を要約すると一. 教室の雰囲気が逃げ出したいほど嫌い一. バイトがしたい一. 動画編集してYouTubeにアップしたいということのようだ……。OH、YouTube……。こんなあまくてぬる~い言い分では、高校をやめる必然性が感じられない。「はい、そうですか」とは簡単に言えそうにない。現実から逃げたいだけ?1年ちょっとがんばれば卒業できるのに。成績も悪くないのにもったいない。高校やめたらこの先どうなるの?彼のことだから、一度言ったことを簡単に覆すことはなさそう。わたし、育て方間違ったか。いろんな思いがグルグルグルグルするなか、オットが帰って来た。帰宅後間もなく、仕事部屋で持ち帰った仕事にとりかかるオット(いつもこうなのだ)。父親の帰宅に気がついているはずなのに、話しかける兆しのない息子。落ち着かないわたし。―――それから数時間後。話しかけることなく寝ちまった息子。自宅仕事を続けるオット。眠れないわたし。息子よ。やめたい気持ちが本物なら、親を説得しろ。自ら行動せよ!と心の中で叫んだものの、この突然のヘビーな事件をひとりで抱え込むのは無理。無理ですぅ~。せいぜい4~5時間が限界ですぅ~。こらえきれず、深夜、オットを寝室に呼び出して話してみた。「高校やめるって?めんどくさくなったんじゃねーの」たいして動揺することもなく、涙ながらに語るわたしをなぐさめるでもなく、あっさり受け流して仕事に戻ろうとするオット(あなたが一番めんどくさそうだよ)。「ねぇ、心配じゃないの?」「少しようす見るしかないだろ」「少しってどれくらい?」「え~?1週間……とか?」このあたしが、1週間も待てるわけがない。「パパに言いなさいって言ったら『ああ』って言ったから。朝、向こうから言い出してこなかったら、あなたから話しかけてよ」「ああ」そしてこのふたりは、翌朝以降も話すようすがないのだった。(泣きながら…続く。ああ。)やなへい(やなへい)宮崎県在住/40代高3、小5の男児の母。趣味は哲学。
2018年10月02日『学校に行きたくない君へ』を編集した、「不登校新聞」石井編集長を取材不登校・引きこもりの当事者の声を大切にする日本で唯一の不登校専門紙「不登校新聞」。その「不登校新聞」を発行するNPO法人全国不登校新聞社が編集した『学校に行きたくない君へ』(ポプラ社刊)が出版されました。そこで「不登校新聞」の石井編集長に、取材にまつわる裏話のほか、石井さんの20年にわたる取材を通じて見えてくる不登校・引きこもりについてもお話を伺いました。石井志昂さん:不登校・引きこもりの専門誌「不登校新聞」編集長。1998年の創刊以来、不登校新聞に携わる。中学校2年生から不登校となり、フリースクール「東京シューレ」に入会。不登校・引きこもり当事者への取材のほか、横尾忠則さん、樹木希林さん、羽生善治さんなど多くの識者への取材を重ねる。聞き手(インタビュー・文):赤沼美里赤沼美里取材を通して「私」の人生の相談をしている。インタビュイーとのあたたかな関係Upload By 発達ナビニュース――取材をしているのは子ども若者編集部の記者で、現在130人もいるそうですね。石井編集長(以下、石井):そうなんです。創刊時の子ども若者編集部のメンバーには私もいて7~8人でしたが、5~6年前から助成金を入れて基盤強化をしたので記者が増えました。テレビで特集された番組を観たという人が一番多いですね。不登校していなくて引きこもり、つまり就活や大学受験から引きこもりを始めましたという人もいます。ですから年齢は15歳から39歳くらいまでの幅があって、40代もいます。一番多い年代は20代です。毎月の編集会議には20人強、来ます。ただ、開始時間には6~7人くらいしかいないです(笑)。遅刻、早退、バックレOK。途中から「べてるの家」方式でやろうと思ったんですね。問題はいっぱいあるけれど、その子の問題を直すのではなくて、問題が起きてもよい体制にするのを目指しています。※べてるの家は、北海道浦河町にある精神障害などのある人のための地域活動拠点。理念のひとつに「安心してサボれる職場づくり」がある。問題はおきて当たり前と考え、その人をありのままに受け止められるような仕組みをつくって活動している。石井:だから企画書を出したのに、会いたいのに、緊張しすぎて来られないというのもあります。昼夜逆転の生活をずっとしていると日付感覚がわからなくなって、「あれ、取材って今日だっけ」ということも起きます。――ドタキャンがあった場合に、取材はどのようにしているのですか?石井:現場に来ているみんなで粛々と取材をして、思いの丈を話すだけです。お休みした子には「残念だったね」という感じで終わり。だってこれは別に誰も咎を受ける必要がないですし、来られなかった本人が一番残念に思っているだけの話なんです。でもそういうときに早く起きるための方法や、社会生活で行き詰まったときはこうすれば大丈夫とか、自分のやり方を見つけると思うんです。それは学びですよね。誰も損をしたわけではありません。誰も来られないという状況になっても私やスタッフが行くので取材にはなるんです。――安心感がありますね。取材には複数の部員で行かれるんですね。石井:そうですね。現代美術家の横尾忠則さんへの取材が今の子ども若者編集部の原型になっています。事前にみんなで打ち合わせをして複数の人と取材に行ったのは、横尾忠則さんへの取材が初めてでした。というのも、横尾忠則さんへの取材の企画者は私でした。当時まだ19歳だったので、すごくぼんやりとした理由で取材をしてみようと思って企画書を出したんです。現代芸術の旗手と呼ばれている方だ、それぐらいの認識で取材をオファーしてしまったら、なんと快諾してくれました。すると大人たちから「おまえ取材、本当に大丈夫なんだろうな!?」と、とても驚かれて。これはやばいと思って、不登校の友だちに頼み込んで9人で取材に行ったんです。このときの経験が、他の人と一緒に取材しようと思ったきっかけとなりました。――取材をしていくなかで、編集部にきている子の変化は感じますか。石井:一番感じるのは、1年くらいたつと言葉や喋り方が違うということですね。自分の言葉で語るようになります。最近は、「私は不登校の人のために役立ちたい」と言って来る子が多いんです。でも他の人の役に立つことは必要ない、まずあなたを救ってください、と伝えます。そうしないと自分の本当の言葉が出てこないから。たとえば「不登校の人が行ける高校について記事にしたい」と言ってきても、「それは本当にあなたがやりたいことなの」と、どんどん話をしていくと、結果的には親子関係やいじめの話がでてくるんです。そうなったときは、記事にしよう、こちらが全面的にサポートしてよい記事にしようとします。やっぱり自分の言葉で語り出すかどうかというのが一番の違いです。――みんなで取材にも行かれていますし、子ども若者編集部はコミュニティのような機能も果たしているんでしょうか。石井:月1回の編集会議が終わった後の、懇親会を目的に来る人もいっぱいいますね。ただ、編集部は居場所ではない、フリースクールなどのように、あなたのいる場所を保障する、ケアする場所ではなく、今のあなたの本気を貸してもらう場なんだと伝えています。学校って現実のレプリカみたいだから、学校の中でやっていてもそれは本番じゃない。やっぱり予定調和というか正解があるというか、うまくいくことだけを目的としてしまうんです。でも仕事ではギリギリ滑り込めたらOKみたいなことがいっぱいあるじゃないですか。「それでいいんだよ」ということを伝えたいんです。だから、ここは自己実現の就労支援でも居場所でもないとずっと言っています。編集部を卒業して、バイトや就職、自分のやりたいことが見つかったという人はいます。でもそれはあくまでも結果論だと私は考えています。――本を読むと取材を受けている方の温かさを感じます。編集部員の思いをすべて受け止めているような・・・。石井:取材を受けてくださった方は、全員ノーギャラです。不登校新聞は、今でこそ本になったりネットに公開されたりしていますが、取材を始めたときはメディアへの露出はまったくありませんでした。ですから、出ていただいた方にしてみれば、言ってみれば一番小さい仕事ですよね。それでも、編集部の気持ちに応えてくれるという方なので、みなさん温かいんでしょうね。取材には「本気で質問する!」だけがルールです。「私」が質問したいことを聞いてねと言っています。みんな本気すぎて・・・(笑)。本には載っていませんが、例えば、「全然モテない」とかそんな質問もあります。――質問というか、相談なんですね(笑)。石井:そうですね(笑)。「今度通信制大学に行こうと思うんだけどどうかなぁ」とか。でも、だからこそ取材者も本気なんだなと感じてくれるんです。「これは俺の人生だから」という意気込みで取材するというのがよいと思っています。それを皆さんが受け止めてくれているのが本当にありがたい。横尾忠則さんも取材をとても喜んでくれた方ですね。不登校している9人で取材に行くと、横尾さんが「こんなに。みんな不登校なの」とすっごく喜んでくれたんですよね。そして不登校の理由を聞いてくれたんです「へぇ、おもしろい」と言って。すると9人のうちの1人が小学生から不登校で「理由は分かんない」って言ったんです。「分かんないかぁ!分かんないってすごいなぁ!」って感激していたんです。これが親だったら、不登校の理由が分からないと言ったら普通ショックを受けると思うんですよね。――確かに。分からないと言われたら「なんで分かんないの」とか「なにか理由があるでしょ」とか聞きがちですね。石井:横尾さんは「分からないけど行けないというのは、すごいことだ」とおっしゃった。私はそのやりとりを聞いて、横尾さんはすごく不登校に興味があるのだなと思ったわけです。そこで自分の番がきたら、不登校の数は12万人いて、いじめが多くて・・・と不登校の概要の話をしました。そしたら、横尾さんが椅子にダラーッと座って、ものすごくつまらなそうな顔をして「それは興味ない」と言ったんです。信じられないですよ(笑)。66歳の大人が19歳に向かって、こんなにも興味のない姿勢で話を聞いているのは、私も初めてでした。どうしてよいか分からなくなり、途中で不登校の概要についての話をやめました(笑)。――それは、辛かったですね(笑)。石井:はい(笑)。横尾さんは「みんなの話を聞けて、すごくおもしろかった」とおっしゃいました。私の話以外ね(笑)。「不登校とはこの学歴社会においてハンディを背負うことなんだ。そのハンディを意識的にしろ無意識にしろ自分で選んだということは自立しているっていうことなんだよ。その自立した理由が分からないというのは凄まじすぎる。それはあなたの感性が素晴らしいから。直感でここは違うと思って選んだはずで、その判断は正しいと思います。大人は不登校だということでもしかしたら慌てふためいたかもしれない。それは、その大人が自立していないからですよ」とおっしゃったんです。学校ではない道を選んだということが本当の意味で大事なことなんだと。「あなたの存在に私は感動した」と言ってくれて嬉しかったですね。取材は1時間の予定だったんですが、何時間でもいていいよと言われました。――第一線で働いている大人から話を聞けるのはすごくいいなと思いました。というのも息子が不登校になったときに、周りに不登校だった大人がいなかったんです。これからどうしたらよいのか分からなくて不安でしたから。石井:本には載っていませんが、みうらじゅんさんの取材に行ったときに、本当に良かったなと思ったんですよね。まさに「私はこの先どうやって生きていけばよいのだろうか」という話を聞けたから。不登校をしたときって人生終わった、人生詰んじゃったと思ったんです。なんでそんなふうに考えるのかというと、やっぱり先が見えないからなんです。自分のこの先が、学校に戻ることだったらそんなにつまんない人生はない。でも、もしかしたら…もしかしたら、自分が本やテレビで見ている「あの人」みたいに私も生きることができるのではないか、そんなことが聞きたくて取材に行きました。子ども若者編集部の子たちにも、それを聞いてほしくて今も取材を続けています。石井:映画監督・演出家等として知られる押井守さんの取材では、「もう一生人と関わらなくていいかなぁ」と聞いた子がいます。彼は10年以上引きこもっていたんですけれど、年間を通じて会話をした人が5人しかいなかった。――家族含めて5人?石井:そうです。両親、祖父母、そして私。6人目が押井守さんだった。彼の聞きたいことは「もう人と関わりたくない。10年引きこもっていて外に出ることは考えたくない。だけど、このままの自分でいいのだろうか?」ということだったんです。それを聞いた押井さんは「それでいいんだよ」と答えたんですね。「世の中きっとおもしろくなる。自分も学生のころ引きこもっていたことがあって、だんだんおもしろくなってきて外に出て行った」と。質問した彼はそれを聞いてすごく安心したんですよね。彼は取材のためにわざわざ名古屋から出てきて、押井さんの取材の次の年も取材をしました。だんだんと仲間と出会えたことが嬉しくなり、打ち上げで飲みに行くのも楽しくなり、飲むのも好きになって。そして今年の4月に友達と一緒にバーを開きました。お客さんを招き入れて自分がお酒を注いで話をする。彼が「もうだめだ、人と関わりたくない」と思ったときに「いいんだよ」と背中を押されて、本当にやりたかったことが分かったんだと思うんです。人と関わりたくないというのは、関わりたいけど怖いとか、関わったら楽しいと思うけどできないという思いがあるんです。コントロールしようとするのではなくて、その気持ちを受け入れる。インタビューだけではなく、親子関係でも大事なことだなと思いながら取材をしています。――ステキですね。石井:そうなんです。取材には、ドラマがいっぱい!その隣で興奮しすぎて過呼吸になる子がいて大変なことになったり…(笑)。でもそれって、みんな一生懸命生きているからなんです。だからそれだけインタビュー記事もよいものができているんじゃないかなと思っています。子ども時代は大人になるための準備期間じゃない。子どもは「今」、人生の本番を生きているUpload 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発達ナビニュース――残念ながら、社会にはいまだに「学校へ行かなければ大人になれない」という考えが根強いです。それはどうしてなんでしょうか。石井:命がけで学校に通うべきではない、というところまではみんな納得できているんです。でも「その後、どうやったら大人になれるの?」という問いが浮かんでくる。本当は、不登校の後の選択肢や受け皿が社会にないことが問題なんですが、その問題には目が向かなくて、不登校の子どもを直せばいいという話になってしまう。生まれた子全員学校へ来いと言って、合わないと思っている子に「何を考えているんだ」と問題視するのはハラスメントだと思うんです。コンビニだってファミレスだってしません(笑)。学校だけが「来い」と言っておいて、来なかったら「おまえは将来どうなると思っているんだ」と言うし、まわりはみんな寄ってたかって後押しするでしょ。先日も宿題ができていない子が亡くなったという報道がありました。親はそんな学校にせっせと子どもを送り込むわけじゃないですか。親としては制度がある以上、送り込むしかないんですよね。でも、やっぱりどう考えてもおかしい。――不登校は子どものせいではない、ということは声を大にして言いたいですね。石井:長年取材をしていて感じるのは、学校での同調圧力が強くなってきているんじゃないかということ。モラルや規律など、子どもが守るべきものが多くなっているという実感があります。私が取材をした小学1年生のある教室に、発達障害グレーゾーンの子がいたんです。その学校はユニバーサルデザインの教室を目指していて、担任と副担任が教室の前と後ろにいるんです。それで、後ろから前から怒鳴り散らす。「足をバタバタさせるな!」「喋るな!」と言って。ユニバーサルデザインとは子どもたちを鎮圧することなの?と思いました…。それで、怖くなっちゃって学校に行けなくなっちゃう子どもが出てきた。――ひどいですね…。発達障害の観点から不登校の中身は変化しているんでしょうか。石井:発達障害の子の不登校人数は肌感覚で増えている気がします。ただ増え方は、発達障害やグレーゾーンの子が学校の中でどんどん居づらくなっているという前提が絶対だと思っています。教室から弾き飛ばされてしまう。学校の仕組みに発達障害の子を合わせようと無理をさせると、その無理が子どもたちの中に出てきてしまって人間関係も苦しくなってしまうんですね。――本でも個性的な方々がご自身のことを話されていますね。樹木希林さんとか茂木健一郎さんとか。石井:そうですね、本に出てきている方々はみんな凸凹だらけです(笑)。横尾忠則さんをはじめ、その時代を切り開いた人というのは、かなり自由でどこが凸凹か見えないくらい突き抜けています(笑)。ただ才能があるから認めましょうというのは違うと思っています。そうではなくて、全員がどうやったら楽しく生きていけるかということだけ考えていけば本当はよいわけです。――発達凸凹の子が、無理に学校に合わせるのではなくて楽しく過ごせるようになるにはどうしたらよいでしょうか。石井:たとえば授業中に教室を抜け出し校庭を走っている子がいるとしますよね。本人が苦しくて走っているのなら考える必要がありますが、本人が楽しくて校庭を走っているのになんの問題が起きているのかってことですよね。おそらくなんの問題も起きていないはずなんです。 せめてその子の人権を侵害しなければいい。ただ「元気だね」と声をかければいい。それだけなんです。――こうやってお話を聞いていると、わが家は不登校になって良かったなと思っちゃいますね(笑)。実際に学校がつらいお子さんは、学校を離れると楽ですよ。石井:せいせいしてますね、何よりです(笑)。早いうちに不登校して、環境整備すると子どもはみるみるうちに楽になっていって、楽しくなっていくんですよね。中学・高校と無理していくと、やっぱりつらかった期間が長いからケアするのに同じくらいかかっちゃうんです。無理をしていた期間の倍必要だと考えてもいいですよね。たとえば「死にたい」と思ってしまったということがあったとします。もしそれが外傷だったとしたら全治半年とかかかるじゃないですか。でも、精神的なことだとすぐ頑張れと言われちゃうんですね。でも外傷と同じように半年以上は療養していいはずなんです。――ただなかなか切り替えられない保護者の方も多いと思います。そういった方へのメッセージはありますか。石井:いやぁ、やっぱりそれは経験者の声を伝えるのが一番です。気持ちを切り替えられちゃった方が楽よっていって。子ども時代を大人になるための準備期間だと考えると不安になるんですよ。だけど子どもは「今」、人生の本番を生きているんです。だからそのときに一番いい状態で生きる。その子の「今」に学校が必要ないのであれば、違うところでいいんじゃないかと思えてくるはずです。気持ちを切り替えられたら楽ですし、不登校の当事者の話を不登校新聞や本でたくさん読めば見えてくると思います。子どもの揺らぎを認める、話を最後まで聞く。保護者にできることとは――Upload By 発達ナビニュース――頑張って学校へ行かなきゃと思っている人にメッセージをお願いします。石井:取材で学んで良かったと思っているのは玄侑宗久さんというお坊さんの「揺らいでいい」というお話です。子どもは学校に行きたいって結構言うんです。「行きたいけど行けない」「行かなきゃいけない」って思う子もいます。人間は本来揺らいでいいわけで、気持ちが揺れることはすごく大事なことだと思う。学校に行きたいって子どもが言ったら、その子が本当に行きたい、行かなきゃと思って葛藤している気持ちを支えてほしいです。そして行きたくないときは行きたくないで、その気持ちを支えてほしい。親が先に出すぎないようにサポートしてほしいと思います。――先に出すぎないというのは、どういうことでしょうか。石井:アドバイスや提案はいらないってことです。傾聴するだけで十分です。子どもは必ず最初に不安や心配事を話す。でも本人は気持ちを整理したいだけなので、聞いていれば最後に子どもの方から「これはお願いできないか」って言われるんです。でも普通はそこまで待てないんですよね。極端に言えば、始めと途中は聞かなくてもいい。耳に入らなくても、聞いているフリをすればいいんです(笑)。大事なことは最後に言うし、もし子どもが伝わってないなと思ったらもう一度お願いしてくれるから大丈夫。待っていれば十分なんです。かくいう私も、妻の話を最後まで聞けませんでしたから難しいですけれど(笑)。「普通の未来」が待っているUpload By 発達ナビニュース――ご夫婦といえば、石井編集長が書かれた他の記事で、不登校から得られた結論として、大好きな人と結婚する、2,000円のパフェが食べられる、医師からメタボと言われるなど「普通の未来が待っている」と書かれていました。石井:本当に何でもない未来です。文部科学省調査では小・中学校の児童・生徒のうち約13万人、約1%が不登校です。1%というのは大きな数字です。苗字でたとえれば「田中さん」は全国に1%程度います。もしも全国の田中さんが、みんなふつうの未来を送っていなかったら、本当にたいへんなことになってます。不登校の子たちは怠けているわけでも、弱いわけでも、特別な人であるわけでも、常識がないわけでもない。彼らは常識もあるからこそ学校に行かないということに悩むわけです。一生懸命生きている人たちを、不登校だからといって否定すべきではないと思っています。参考:平成19年度学校基本調査の速報について(調査結果の要旨) | 文部科学省樹木希林、荒木飛呂彦、西原理恵子、リリー・フランキー、辻村深月ら総勢20名の先輩たちが語る生き方のヒント。企画から取材まで、不登校の当事者・経験者が、人生の大先輩たちに体当たりでぶつかり引き出した本音のメッセージを収録。社会に出たくない人、人生に迷っている人など、中高生からシニア層まで幅広い世代に突き刺さる言葉が詰まった一冊です。2018年8月発行。全国不登校新聞社編、ポプラ社刊。撮影:鈴木江実子
2018年09月27日発達障害とは?発達障害とは、「生まれつきの脳機能の発達のアンバランスさ・凸凹と、その人が過ごす環境や周囲の人とのミスマッチから、生きづらさや困難が生まれる障害」です。発達障害は特性やあらわれる困りごとによって、大きくASD(自閉症スペクトラム障害/自閉スペクトラム症)・ADHD(注意欠陥・多動性障害)・LD(学習障害)の3つのグループに分けられます。Upload By 発達障害のキホン発達障害特性が目立ってくる時期は、障害のタイプによっても異なります。比較的就学前から気づかれやすいASDに比べ、ADHDやLDは就学後に気づかれることが多いといわれています。ADHDは、小学校入学後落ち着いて授業が受けられなかったり、忘れ物が多いなどがきっかけで気づかれやすくなります。文部科学省の定義では7歳前、DSM-5によると12歳前に症状があらわれるとされています。勉強において特定の科目が苦手な場合や読み書きに困難がある場合、LDの可能性があると指摘され、気づかれやすくなります。ですが、発達障害と定型発達の境目は明確にはありません。そのため診断基準は満たさない、あるいは未診断だが発達障害の傾向のある「グレーゾーン」と呼ばれる人もいます。グレーゾーンの場合、外見からも分かりにくいので、理解や支援につながりにくいこともあります。通常の学級に在籍する知的発達に遅れはないものの発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする小学生は7.7%いるといわれています(文部科学省調査/2012年)。特別支援学級や特別支援学校に在籍する子どもも含めると、発達障害がある子どもの総数はさらに多いといえます。参考:通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児 童生徒に関する調査結果について |文部科学省発達障害のある小学生に目立つ特徴とは?発達障害による特性は個人差もありますが、ライフステージによって目立ったり問題になりやすい部分などが異なります。そこで次に、小学生のころに目立つ特徴を紹介します。■集団になじむのが難しい・年齢相応の友人関係がない・周囲にあまり配慮せずに、自分が好きなことを好きなようにしてしまう・人と関わるときは何かしてほしいことがあるときなだけのことが多い・基本的に一人遊びを好む・人の気持ちや意図を汲み取ることが苦手■臨機応変に対応するのが苦手・きちんと決められたルールを好む・言われたことを場面に応じて対応させることが苦手■どのように・なぜといった説明が苦手・言葉をうまく扱えず、単語を覚えても意味を理解することが難しい・自分の気持ちや他人の気持ちを言葉にしたり想像するのが苦手で、説明がうまくできないという傾向があります■忘れっぽく、注意力散漫・注意力が散漫で、興味の対象が次々と変化する・物を忘れたり、なくしてしまうことが多い・他の人に話しかけられてもぼーっとしてうわの空に見られる■じっとしていられず落ち着かない・授業中でもじっと座っていることができず、歩き回ったりする■衝動的に行動してしまう・突然話しかけて他の人の邪魔をする・突発的な行動をおこすことがあり、自分の怒りの感情をコントロールできない・友達と仲良くできずトラブルを引き起こしてしまうことが多いという傾向がありますLDがあると、授業を真面目に聞いていても勉強が苦手、ついていけないという状態になりがちです。次に、読字障害・書字障害・算数障害ごとに、LDがある小学生にあらわれやすい特徴を紹介します。■ディスレクシア/読字障害・ひらがな・漢字が読めない・たどり読み・推測読みになってしまう・行を飛ばして読んでしまう・文章を読むのを嫌がるなど■ディスグラフィア/書字障害・うまく文字を書くことができない(線を抜かしたり、鏡文字を書いてしまう)・板書ができない、時間がかかる・行やマス目からのはみ出しが大きい・文字を書くのを嫌がるなど■算数障害/ディスカリキュリア・数が数えられない、とばして数えてしまう・時計が読めない、時間が分からない・計算ができない・筆算をするときに数字がずれて間違えてしまう・計算を嫌がるなどという傾向があります発達障害のある小学生に起こりやすいトラブル集団生活に入り、学習が始まる小学校時代は、それまで目立たなかったトラブルが目立つようになる時期です。具体的には、次のようなトラブルが起きがちです。■友達関係でのトラブル・同世代の子どもたちとうまく遊べない・気持ちをコントロールできず喧嘩になりやすい・空気が読めないことなどが原因でいじめられる■不登校・集団生活になじめず学校生活が苦痛になる・授業についていけず学校に行きたがらなくなる・生活リズムが崩れ登校できなくなる■学習でのつまずき・頑張っても授業についていけなくなる・授業態度が悪いと注意されやすい・忘れ物が多く学習に支障が出る■暴力・嫌なことがあるとかんしゃくを起こして暴れる・衝動的に友達や親に手を出す、物を壊す子どもの発達障害に悩んだときの相談先発達障害がある子どもの保護者・まわりの人が、適切な支援につながることで、子どもに必要なサポートをすることができます。「発達障害かな?」と悩み・不安があるときは、早めに専門機関に相談しましょう。子どもへの支援の方法が分かったり、公的なサポートを受けやすくなります。相談先としては、発達障害がある人が相談できる支援センターや医療機関、学校のスクールカウンセラー・特別支援教育コーディネーター、教育センターなどがあります。■発達障害がある人の相談窓口全国の相談窓口の情報を調べる|発達障害・支援センター■発達障害の診療が可能な医療機関一覧発達障害診療医師名簿|一般社団法人 日本小児神経学会■スクールカウンセラースクールカウンセラーについて発達障害のある小学生へのサポート■分かりやすく伝える具体的に、簡潔に伝えましょう。■頑張りを認める、ほめる苦手なことが多く学校生活では怒られる場面も多くなり、自己肯定感が下がってしまうと二次障害を起こしてしまうことも。できないことではなくできたことを見つけてほめましょう。■叱るときはその場で後から注意されても理解しづらいため、ダメなことはその場で簡潔に注意します。■苦手をサポートするツール耳からの情報が弱い場合は視覚的なツールを併用する、忘れっぽいならチェックリストを用意するなど、子どもの特性に合わせて苦手な部分をフォローするツールを活用しましょう。発達障害がある子どもは、子どもの状況に合った場所で学ぶことで、力を伸ばしたり、二次障害が起きるのを防いだりすることも大切です。通常学級での学び以外にも、さまざまな機会や場所があります。■特別支援学級小学校の中に設けられた特別支援学級で、子どもの特性に合わせた課題に取り組んだり、交流級で学習することもできます。特別支援学校ってどんなところ?教育環境から入学への流れまで■通級普段は、通常学級に所属し、週に何時間かある通級による指導の時間だけ通級指導教室に移動して、それぞれの困りごとや課題に合わせた支援・指導を受けます。通級指導教室とは?対象は?通級による指導の内容や通い方、ほかの特別支援教育との違いを紹介します■特別支援学校特別支援学校とは、心身に障害のある児童・生徒が通う学校です。1クラスの人数は平均3人と手厚く、障害のある児童・生徒の自立を促すために必要な教育を受けることができます。参考:少人数の学級編制 | 文部科学省■フリースクールフリースクールは、主に不登校の子どもたちを受け入れる教育機関です。公的な学校ではないため、その目的により規模や形態、費用はさまざまです。フリースクールとは?不登校の子どものための授業内容、費用や利用方法、在籍校の出席認定について解説■放課後等デイサービス放課後等デイサービスは、障害のある就学児向けの学童保育のようなサービスです。設備、目的、提供されるサービスは多岐にわたり、預かり型のほか、療育や運動に特化したところなどさまざまです。放課後等デイサービスとはどんな施設?サービス・利用方法・費用・受給者証手続きの流れをご紹介発達障害や対処法、体験談をもっと知りたい!リンク集発達障害の原因について知る発達障害の診断・検査について知る子育ての対処法やヒントを知るさんのコラム(広汎性発達障害)シュウママさんのコラム(自閉症)かなしろにゃんこ。さんのコラム(ADHD)林真紀さんのコラム(発達障害)楽々かあさんのコラム(発達障害)
2018年09月18日アスペルガー症候群の娘、不登校がきっかけで小学3年生から睡眠障害にアスペルガー症候群の娘は小学校2年生の2学期から欠席日数が目に見えて増えはじめ、3学期からは全く学校へ行けなくなってしまいました。それでも2年生の間は放課後登校もできたし、そこそこ元気に過ごしていたのですが、担任もクラスも変わった3年生の4月から夜眠れなくなってしまったのです。「布団に一緒に入って」「眠れない」と言っては泣く日々が続きました。現状を打破しようと特別支援学校に転籍して訪問指導を受けたものの、担任の先生によって無理やり元の小学校に登校させられ続け、夏休み明けには完全に心も体も折れてしまいました。娘は完全不登校となり、それと同時に昼夜逆転生活になりました。夜は寝ないでゲーム三昧、夜中にあれこれと食べたがる生活に「この子は将来どうなってしまうんだろうか」と真っ暗な気持ちになったのをよく覚えています。昼夜逆転よりつらい!”昼夜回転”する睡眠障害になった娘Upload By ヨーコ次第に娘の睡眠リズムは、寝つく時刻と起きる時刻が毎日少しずつ遅れていくようになりました。これは、概日リズム睡眠障害のなかでも『非24時間睡眠覚醒症候群』といって、寝つく時刻と起きる時刻が毎日遅れていく病気の症状にぴったりあてはまります。この病気にかかると、眠りにつく時間が毎日30分~1時間ずつ遅れていき、起きる時間も後ろにズレていきます。当時の娘の睡眠リズム表を見ると約1ヶ月で生活リズムがぐるりと24時間一回転していることが分かります。最初はその法則がつかめなくて、「この子の睡眠リズムはどうなっているの?」と混乱したものでした。親としてここがツラかった!娘の昼夜回転生活の日々当時まだ9歳だった娘は自分自身の変化について行けず精神的にも不安定になっていました。寝ている私を起こして「眠れないからママは起きてそばでゲームしていて」と要求したり、「上の部屋の人の物音が怖い。変な物音が聞こえた」と怯えたり。食事も無茶苦茶な時間に取るようになりました。しかも、ジャンクフードや冷凍食品を欲しがるようになったので、食事を用意するストレスは相当なものでした。疲れた体で、せっかく手づくりの食事をつくっても「カップラーメンがいい」と言われたり。朝、昼、晩と献立を立てて盛りつけて出すという、今までの食事の用意の仕方は全く通用しなくなりました。とにかく要求されたときに食べさせるだけで精いっぱい。栄養バランスは気になるけれど、本人に"ちゃんとした"食事をとる意思がないのでどうしようもありません。「今食べさせているのは朝ごはんなの?晩ご飯なの?私が食べているのは何ごはん?」という感じで時間感覚はあっという間に失われ、娘の時間と自分の時間が溶けあってしまうような感覚を味わっていました。他に家族がいなかったのが唯一の救いでした。これ以上生活時間の違う人の世話をするのは、疲れ切った私には無理だったと思います。あっという間に私の生活リズムは娘に支配され、狂ってしまいました。でも、一般的な用事や買い物は昼間にしなければならないので、慢性的な睡眠不足にストレス、疲労で自律神経はズタズタに。頭痛、胃腸炎、発熱は日常茶飯事、加えて元々あったウツ状態が悪化して常に「死にたい」と思いながら過ごす日々が続いたのです。主治医からは「お母さんまでが娘さんの生活を否定したら彼女の居場所がなくなってしまう」と生活に関しては注意しないように言われていました。私自身もツラかったけれど「今、娘が睡眠障害になったのは心を守るためだから」と思っていたので治そうとは全く考えていなかったのです。でも周囲は違いました。不登校に関しては意外と「大丈夫だよ、行かなくても」と理解を示す人が多いわりに、睡眠障害の話をすると「どうしてそんな生活させているの!?だめよ、生活リズムだけはちゃんとさせなきゃ」と口をそろえて言うのです。一方的に責められた私は、自分の考えや主治医の助言を説明する気にもなれず、心を閉ざしてしまったのでした。これは本当にツラかった…。娘に少しだけ自立してもらう。親子で倒れないために…出典 : 睡眠障害になるまで追い詰められた娘の姿を見て「学校へ行かせる」ということをあきらめ、本人も「もう学校へは行かない」と宣言してからは、少しずつ元気を取り戻してきました。最初は私がついていなければカップラーメン一つつくることができなかった娘ですが、小学4年生になるころには、電子レンジや電気ポットの使い方を教えると、一人で冷凍パスタやカップラーメンをつくることができるようになりました。私が寝ていても一人で食事をとれるように成長したのです。そこで私は、自分の寝る時間を決めて「ママは夜は何時に寝るからそれからは一人で過ごしてね」と宣言。娘はすんなり受け入れてくれ、私はやっと自分の生活リズムを取り戻したのでした。娘の睡眠障害は今も治っていません。ですが、娘の情緒も安定して精神的にも自立しつつある今、あのころの苦しみは嘘のよう。今は平和に共存しています。
2018年09月17日専門家・プロ:渡邉純子(コドモット)小宮山利恵子(こみやまりえこ) リクルート次世代教育研究院院長。同研究院はリクルートマーケティングパートナーズにおける次世代の教育を考える調査研究機関で、小宮山さんは立ち上げからかかわり、未来の教育を研究している。超党派国会議員連盟「教育におけるICT利活用促進をめざす議員連盟」有識者アドバイザー。2018年8月より東京学芸大学客員准教授。第2回スタディサプリで子どもの学びはどう変わるのか渡邉:スタディサプリで学ぶことで、子どもたちにはどんな学習効果があるのでしょうか。さきほど「つまずきの防止」(第1回参照)というキーワードがでてきましたが、そのほかにありますか?小宮山:テクノロジーが入ってくることで、楽しいという気もちがわいてくるようです。学びへの興味関心の喚起、これがすごく重要だと思います。わたしたちはスタディサプリを使って、名古屋市と協働して2017年の8月から不登校支援を行なっています。アンケートをしたところ、タブレット学習でおよそ8割の子どもが「勉強が楽しくなった」と回答しています。学ぶことが楽しいと思うようになったことが一番大きいんです。また、学ぶモチベーションを維持するため、主に小学生向けには「サプモン」といって、学習すればするほど自分のモンスターが育つという意欲を喚起する要素を取り入れています。学習すると自分のモンスターが育つ「サプモン」小宮山:小学校・中学校では、学校で使う、または家庭で保護者といっしょに使う場合が多いです。そこで、学校向けにはほかの学校でどう使っているかをまとめた事例をお伝えし、家庭向けには声かけの方法などを講演でお伝えしています。高校生向けだと、合格特訓コースといって、大学生コーチにオンラインで相談できる有料のサービスをご用意しています。渡邉:授業動画自体にもくふうをしているのでしょうか?小宮山:動画の質にはすごくこだわっています。いまの子どもたちはYouTubeなどに慣れているので、つまらないと思ったらすぐに消してしまうんです。わたしたちは動画の視聴ログをデータ分析しています。ある講義で、急に視聴率が下がるところがある、理由を検証したら先生が後ろを向いて無言で板書していた……というように、ログをとって離脱が多い要因を分析し、その都度動画の撮り直しもしているんです。視聴率が高いまま、子どもたちの集中力が続く状態の動画の質を保つよう、こだわって更新し続けています。渡邉:ICTを使ったからできることと、逆に、従来の紙の参考書だとできるけれどICTを使うと難しいことはありますか?小宮山:いままでは情報処理力が重要だった時代と言われています。もちろん、情報処理力は必要ではありますが、これからはその割合が少なくなって、情報編集力が重要になってきます。情報編集力とは、21世紀型スキルと言われている、回復力や創造力、協働などの力です※1。※1回復力とは、失敗を乗りこえる力のこと。レリジエンス。協働とは、複数の人間で目標を共有し、力を合わせて活動すること。それらの力をやしなうことに関してICTは非常に大きな効果があるのではないかと。いままでは知識としてインプットするのが学びのメインでしたが、これからはアウトプットするまでが学びという解釈ができるのではないかと、わたしは思っています。そのアウトプットにあたって、ICTは表現のための道具としてすごく良いと思うからです。小宮山:そのうえで、わたしは紙とICTの両方で学ぶのが良いと思っています。たとえばスタディサプリを導入している渋谷区のある小学校では、動画を見ながらその内容を自分のノートに書いていく取り組みをしています。そうすると手を動かすので、知識の定着率が上がるんですよ。「ふんふん」とただ動画を見るだけでわかることって、あまり多くない。頭で考えつつ、手を動かしたりして五感を使って学ぶのがとても重要だと思います。わたし自身も、子どもがスタディサプリを使うときには、紙と鉛筆を用意してから動画を見るように言っています。それに、まだ保護者のなかには紙のほうが良いという方が多いかもしれません。子どもにもICTだけでやりたいという子もいるし、紙とICTをいっしょに使いたいという子もいる。それぞれの子どもの好みに合わせて使っていったら良いのではないかと思います。渡邉:スタディサプリの利用で、どういった子どもに育ってほしいと考えていますか?小宮山:スタディサプリがすべてではないんですね。スタディサプリを使って、もし学ぶ時間が短縮できたら、そこでできた時間を使っていろいろなところに足を運んで自分で見たり聞いたりする経験をしてもらいたいと考えています。反対に、じっくりゆっくり定着するために使っていただいても良いんです。昔は、小学校5年生6年生になって、小学校4年生の算数を習いたいといっても、親が教えるしかなかった。それが教育にテクノロジーが入ってできるようになったわけです。ひとそれぞれ、で良いんです。 ――授業動画をただ見るのではなく、紙と鉛筆を用意して、ICTと紙の両方で学ぶのが良いという小宮山さん。これからはスマホやタブレットだけで勉強するんだ!と振り切ってしまうのではなくて、手を動かしながら学ぶことが大切だと知りました。次回はスタディサプリが学校に導入されることで、学校での学びがどう変わっていくのか聞きます。 第1回国内外で累計約74万人が利用している動画授業とは第2回スタディサプリで子どもの学びはどう変わるのか第3回スタディサプリで学校はどう変わるのか第4回教育とテクノロジーの融合がひらく子どもの未来とは?渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)株式会社コドモット代表取締役社長。NTT在籍時代の2001年、子ども向けポータルサイト「キッズgoo」を立ち上げ、同サイトでデジタルコンテンツグランプリ・エデュテイメント賞受賞。独立後は小学生向けのコンテンツを中心に、企業の子ども向けWebサイトや公共団体の子ども向けツールなどの企画制作を数多く手がける。一男一女の母。
2018年09月14日人生の大先輩の”不登校”エピソードが聞ける本『学校に行きたくない君へ』不登校の経験者をはじめ、約20人の著名人に、不登校で悩む不登校新聞の「子ども若手編集者」がインタビューをしたお話が詰まっています。当事者本人たちが「自分が話を聞きたい」と思った人にインタビューをしているのが特徴的です。日本で唯一の不登校専門紙である「全国不登校新聞社」は当事者の視点や思いを大切に、不登校や引きこもり本人、保護者や支援者が知りたいこと、体験談、進路情報やフリースクール、不登校関係のニュースや催し、インタビューなどが掲載されています。なかでも人気のインタビューコーナーのなかから選りすぐりの20エピソードが一冊にまとまりました。不登校の若者たちが「自分」が聞きたいと思った人に聞きたい話を聞くということで、両者の想いが詰め込まれています。多くの人に読みやすい書き方で、心にすっと入ってきます。(発行:2018/8/3)子どもと気持ちを話すきっかけになる!『魔法のピットインカード』ピットインカードとは、親しみやすい動物のキャラクターがさまざまな気持ちを表現している「フィーリングカード」、本当はどうしたい?などと的確な問いかけができる「質問カード」、子どものあるあるな悩みを集めた「テーマカード」の3つからなります。これらのカードによって、気持ちを分かり合えたり、子どもの悩みを解決したり、親が子どもの応援者となるきっかけが得られます。著者の原潤一郎さんは、小学3年生のころ、友達をいじめによる自殺で失い、これ以上こんな悲しい思いをする子を出したくないという思いで活動をされてきました。子どもの心の声を聴き、子どもも大人も幸せになれるコーチングをもとに、家庭で子どもが心の充電ができるようなコミュニケーションを生み出す『魔法のピットインカード』を出版しました。本では、子どもに対するコーチングの簡単な理解から、子どもとのコミュニケーションにおける疑問や困りごとをテーマ別にわかりやすく解説しています。ピットインカードをどのようにつかったらよいか、子どもとの会話の例を見ながら今日から実践できるようになっています。(発行:2018/8/28)楽しくみんなと一緒に遊びながら学べる!『アナログゲーム療育』アナログゲームによって子ども同士の関わり合いをつくることで、自らの意思で、場の状況や相手の参加者の意図を読み取って動けるコミュニケーション力を身につける方法が紹介されています。子どもの発達過程に合わせたアナログゲームや、それを通して得られること、その身につけ方までが分かりやすく載っています。この本を書いたのは、アナログゲーム療育の開発者である松本太一さんです。発達障害児の学習支援を行ったのち、発達障害者のための就労支援に携わっていましたが、そのときに企業で求められる障害のある求職者のソーシャルスキルが「状況の変化に合わせて臨機応変に振るまえること」や「周囲の状況に関心を持ち続けること」であることに気が付きました。「落ち着く」ことが目標になってしまう療育の現場に戻り、新たに風を吹かせました。どんなゲームを選べばよいのか判断が難しいですが、この本では子どもの発達の状況に合わせてゲームが紹介されているため、取り組みやすいかもしれません。また、よい指導のしかたも具体例とともに書かれているので、イメージが付きやすくなっています。(発行:2018/7/30)コミュニケーションのなぞを解説!『絵でわかる なぜなぜ会話ルールブック』ジェスチャーや会話のフレーズごとに、いつ、なぜそのようなことを言うのか、どう返したらいいのか、などが絵とともに分かりやすく説明されています。発達障害児に向けた本を多数書いてきた東京学芸大学教育学部教授の藤野博さんと、自閉スペクトラム症の当事者でもあり臨床心理士でもある綿貫愛子さんがタッグを組んで手掛けた一冊です。会話で悩むことが多い子どもが疑問に思うポイントが集まっています。さらに想像がしにくい相手の考えや意図が丁寧に書かれていることから、ただ会話のフレーズの暗記をするのではなく、理解していくステップが踏めるのも特徴です。(発行:2018/8/8)今だからできるサポートを知ろう『障害のある子の「親なきあと」』障害がある子どもを持つ親が抱える、親なきあとの課題に対して、親がいるうちにできるサポートなどをQA方式で説明しています。難しいと敬遠しがちの法制度や行政サービスについても、理解しやすい文言や例を用いて説明されています。著者の渡部伸さんはご自身にも障害のあるお子さんがいるそうです。知的障害や精神障害の子どもを持つ親の悩みに寄り添い、ともに考える「親なきあと」相談室を立ち上げ、日本全国で講演や執筆活動を行っています。もしもの将来を考えたときの漠然とした親の不安に対し、課題を分析し整理した上で、解決に向けたサポート案が丁寧に紹介されています。(発行:2018/9/7)
2018年09月12日育児に遅れと混乱が生じてる !!
ムスメちゃんとオコメちゃん
ドイツDE親バカ絵日記