すでに多くのメディアが取り上げているのでご存知かと思いますが、2016年4月から、電力自由化がスタートしました。簡単にいえば、これまでとは違い、一般家庭でも電力会社を自由に選ぶことができるようになったわけです。ただ、「そこでなにが変わるのか?」については、詳しいことがわからないという方も少なくないはず。そこで目を通しておきたいのが、『電気の選び方-わが家の電力自由化ガイドブック-』(電気新聞著/編集、日本電気協会新聞部)。一般家庭を対象に、失敗しない電気の選び方を紹介した書籍です。電気を選べるようになったのだとしたら、いちばん気になるのはやはり料金。そこで本書から、電気料金について覚えておきたいことを抜き出してみましょう。■電気料金が規制料金から自由料金へ!2016年3月まで、一般家庭の電気料金は、国のチェックを受けた料金だったのだそうです。これは一般的に「規制料金」と呼ばれているもの。一方、電力小売全面自由化が決まった2016年4月以降、新しい電力会社や、地域の電力会社から提供される電気料金は、国の規制を受けない「自由料金」。自由料金の特徴は、料金を上げるのも下げるのも電力会社次第で、国のチェックが入らないということ。そのため、多くの会社が参入し、さまざまな電気料金メニューをアピールしているわけです。■とくに切り替えない場合は従来のままでは、2016年4月以降も電力会社や電気料金メニューを変更しなかったとしたら、どうなるのでしょうか?その場合は、自由化前まで地域の電力会社と契約していたメニュー(従量電灯Bなど)が、自動的に継続されることになるのだといいます。なお自動的に継続される自由化前の電気料金メニューのうち、従量電灯などの標準的な規制料金メニューは、競争が進むまでしばらくの間は維持されることになっているのだそうです(正確には、地域の電力会社の「特定小売供給約款」に記されたメニュー)。これらのメニューでは新たに電気を使いはじめるときに選ぶこともできますし、電力会社を切り替えたあとで、再度戻ることも可能。ただし特定小売供給約款には、自由化前にあったオール電化住宅用の料金メニューや、季節別時間帯別料金メニューなどはないそうです。自由化前に契約していた人はそのまま継続利用できるものの、新たに契約を結ぶ場合は、自由化後にできた電気料金メニューのなかから自分の使い方に合ったものをチョイスすることになるわけです。■把握しておきたい電気料金の基本とはところで新しい電力会社の多種多様な料金メニューも、実は従来の電気料金をベースに設計されているのだといいます。そこで、まずは電気料金の基本的なしくみを把握しておくことが大切。月々の電気料金は、地域によって使用する電気の容量(アンペア=A)で決まる「基本料金制」か、一定の使用量まで定額の「最低料金制」に分かれます。一般に電気料金は、この「基本料金(最低料金)」と、電気の使用量(kWh)によって計算される「電力量料金」との組み合わせで計算されるのだそうです。電力量料金は、使用する電力量に応じて料金単価が3段階に分かれ、使用量が多くなるにつれて単価が高くなっていきます。つまり、経済的に余裕のない人でも電気を利用できるようにしているわけです。なお電力量料金では、使用量に応じて「燃料費調整額」が加算または差し引かれるのだといいます。さらに、使用量に応じた「再生可能エネルギー発電促進料金」も加算されることに。■新しい電力会社の多種多様なサービスまた電力自由化後に登場した電気料金メニューではまったく同じしくみのもののほか、電力量料金単価が2段階になっているものや、基本料金がないものなど、異なるしくみのメニューも登場しています。他業種の参入や企業間の提携により、多種多様なサービスも生まれているとか。安さで勝負する電気料金メニューはもちろんのこと、セット割引、ポイント付与などのメニューが豊富に揃い、新しい体系の電気料金も登場。それだけでなく、ガス、通信、石油元売りなど異業種の参入により、各社の強みを生かした「セット割引も。さらには「Tポイント」「Ponta」「dポイント」など各種のポイントカードと提携し、電気料金の支払いによってポイントを貯められるサービスも登場しています。当然のことながら、ポイントの還元は電気料金の割引とも考えられるので、意識しておいて損はないかもしれません。いずれにしても、ライフスタイルを振り返ったうえで、自分に適した電力会社およびメニューを選ぶことが重要だということです。*他にも電気の選び方や使い方について覚えておきたいことがコンパクトにまとめられているため、きっと役立つはず。電力自由化のメリットを得るためにも、ぜひ読んでみてください。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※電気新聞(2016)『電気の選び方-わが家の電力自由化ガイドブック-』日本電気協会新聞部
2016年08月06日ただいま、空前のハンドメイドブーム!ハンドメイド作品の展示・販売イベント『ヨコハマハンドメイドマルシェ』には、約26,000人が集まりました。初めて開催された2013年とくらべ、ハンドメイド作家の参加数も2倍以上。ハンドメイド作家として、自分の好きなこと・得意なことが活かせるって素敵ですよね。ハンドメイドマーケットの最大手『minne』を運営するGMOペパボ株式会社のプレスリリースによると、10万円以上の売上げのある作家が約1,200人いるとのこと。でも、登録作家数は約25万人。つまり、10万円以上稼げている作家は0.48%なんです。ハンドメイド作家として生活するのは厳しい世界?それとも、チャンスでしょうか。ハンドメイドに関わる方々に、お話を伺いました。■現役ハンドメイド作家が明かす様々な苦労まずは、ハンドメイド歴10年になるkouさん。最近『minne』などのハンドメイドマーケットを利用して、レジンアクセサリーの販売をはじめました。「1ヶ月あたり30から50件ぐらいの注文があります。はじめるのにかかった機材や材料費分(約20,000円)は、カバーできたかなと思います。コメントをいただいたときや、お気に入りにされたときはうれしいです」「また、作品を見ていただく機会を増やしたいと、下北沢のレンタルショーケース『素今歩(すこんぶ)』にも出品しはじめました。ひとりでつくっているので、発送も宣伝も全部やらなくてはいけません。大変ですが、ハンドメイド作家として、もっと成長したいです」初めての方向けには、簡単なハンドメイド作品をつくるキットも販売されていますし、ワークショップも行われています。「オリジナルの作品をつくれるようになる」がハンドメイド作家としての第一歩です。続いては、『minneのアトリエ 世田谷』の作家活動アドバイザー 和田真歩さんにお話を伺いました。人気作家として活躍するには、どうしたらよいのでしょうか?■人気ハンドメイド作家が心がけていること「最近テレビや雑誌でハンドメイドが取り上げられる機会が増えましたが、流行っているからという気持ちで始めても、売れません」ご自身も物づくりの経験がある和田さん。つくり手の視点で作家へアドバイスをしています。ひとつも売れないと悩み、相談されることもあるそうです。「人気作家さんは試行錯誤し、試作を繰り返して制作しています。作品が完成したら、SNSを使って、作品情報を発信することも大切ですね」とのこと。とはいえ、販売するだけがハンドメイドの魅力ではありません。なかには、ハンドメイドで人生が変わった人も……。「minneハンドメイド大賞2016で篠原ともえ賞を受賞したMOLA yasuyoさんは70代。ずっと刺繍を趣味にされていたのですが、ハンドメイド大賞に応募したことをきっかけで、多くの方と知り合えるきっかけになったそうです」(和田さん)。同じ趣味を持った人と出会えるのも楽しいですよね。■成功したいなら流行に振り回されちゃダメ海外では、「自分がつくった作品を売りたい!」という意志の強い作家さんが多いのですが、日本では控えめな方が多いそう。和田さんは「もっと作品を広めたい」、「ハンドメイド作家としてがんばりたい」という方の背中を押したいそうです。流行のデザインは人気が高いのですが、移り変わりも早く、同じ作品をずっとはつくれません。対して、自分の作品をじっくりと作る方法もあります。「作品を自分のブランドとして考えることが大切です。自分の好きな物を追求して、手に取っていただけること、さらにファンになっていただけることを想像してみてください。ハンドメイドのよさは、個性や想い入れが作品に反映した、唯一無二のものであることだと思います」(和田さん)。一過性のブームではなく、長くハンドメイドという文化を支えていきたいという気持ちを感じました。*ハンドメイド作家として生活するには、やはり努力が必要です。ワークショップの講師や本の出版と活躍の場は広がっており、自分がどうありたいのか具体的に考えることも求められます。しかし、いちばん大切なのはハンドメイドを好きだという気持ち。ずっと続けられる好きなことがあるって、幸せなことですよね。(文/マチコマキ) 【取材協力】※kou・・・ハンドメイド作家。ギャラリー「hellheaven’S GALLERY」。 【参考】※国内最大のハンドメイドマーケット「minne(ミンネ)」 登録作家数20万人突破! ~“ハンドメイド作家”という新たな働き方を支援~-GMOペパボ株式会社※minneハンドメイド大賞2016※ヨコハマハンドメイドマルシェ
2016年07月14日パートで家計を支える主婦の方からよく聞くのが、「働くのであれば、主人の扶養範囲内がいいんですよね?」という質問です。多くの奥様は「扶養の範囲内で働きたい」と希望されますし、みなさんもそう思っていらっしゃるかもしれません。でも問題は、この「扶養の範囲内」が一体いくらのことなのかという点です。■103万円以上でも税金は2万円程度そもそも、扶養の範囲という定義があいまいです。よく出る金額は103万円なのですが、どうしてこれが扶養の範囲内なのかご存知でしょうか?実は103万円は、所得税がかからない収入の上限なのです。言い方を変えれば、これ以上働くと税金を払わなくてはいけないということです。仮に103万円を超えて120万円まで働いたとします。その場合、支払うべき税金は、所得税と住民税を合わせて3万2,000円程度です。つまり、税金を差し引いても月額14万円程度は手取りが増える計算になります。こうご説明すると、次のように思う方もいらっしゃるかもしれません。「でも103万円を超えると、旦那の税金が増えるんじゃないですか?」そのとおりです。でも、この金額もそれほどのものでありません。ご主人の収入によっても違いますが、1~2万円程度です。この点から見ても、たしかに払う税金は増えますが、手取り額は増えるのです。「なら、扶養の範囲って関係ないの?」という話になりそうですが、そうでもありません。重要なのは130万円の壁なのです。■年収130万円の壁に注意すべき理由130万円に壁があるという話はあまり聞いたことないかもしれませんが、この壁がとても大きいのです。なぜなら収入が130万円を超えると、奥様自身で国民年金・国民健康保険を払わなければならないからです。130万円未満であれば「ご主人の扶養家族」という扱いですから、保険料を払うことなく、健康保険に加入し、国民年金も払っているとみなされます。しかし130万円以上になると、考え方が変わってくるのです。年金と健康保険の額は、約30万円。つまり手取り額は129万円のときにくらべ大幅に減ってしまうのです。だから、130万円の壁に気をつけなければいけないのです。もし130万円を超えるのであれば、160~180万円くらいの収入にならないとうまみがありません。しかも今年の10月から、一部の人は130万円の壁が106万円に引き下がります。【2016年10月施行の社会保険適用対象】(1)勤務時間が週20時間以上(2)1ヶ月の賃金が8.8万円(年収106万円)以上(3)勤務期間が1年以上見込み(4)勤務先が従業員501人以上の企業(5)学生は対象外ご自身のお勤め先はどうなのか、一度ご確認ください。■130万円の壁のもうひとつの注意点また、他にも気をつけなければならないことがあります。それは、ご主人の会社の家族手当の基準。もしご主人が会社から奥様分の家族手当の支給を受けている場合は、その家族手当の基準がどこなのかを調べておくべきです。会社によっては、奥さんの年収が103万円を越すと家族手当が打ち切られる場合もあります。手当の金額次第では、103万円に留めておいたほうが、トータルで手取りが多くなる可能性もあるからです。噂話に惑わされることなく、一度ご自分で計算してみましょう。(文/ファイナンシャルプランナー・岡崎充輝)
2016年07月14日実現したい素敵なアイデアがあるにもかかわらず、資金が足りないと躊躇しているなら、“クラウドファンディング”も選択肢のひとつに入れてみませんか?日本で唯一、「寄付型」「購入型」両方のクラウドファンディング・サイトを運営する、佐藤大吾氏が監修する『ぼくらがクラウドファンディングを使う理由(わけ) 12プロジェクトの舞台裏』(学芸出版社)から、クラウドファンディングでの資金調達成功の秘訣に迫ってみましょう。■クラウドファンディング市場が急成長中!クラウドファンディングとは、“群衆・大勢の人々”という意味のクラウドと“基金”を意味するファンドを合わせた造語。インターネット上などで画像や動画を使ったプレゼンテーションを展開し、友人・知人を巻き込んで共感を広めていくことで不特定多数の人々から少額ずつ積み重ね、数十~数百万円規模の資金を集めるものです。日本における先駆けとなるサイト『JustGivingJapan(現・JapanGiving)』がオープンしたのは2010年のこと。その後3年で同サイトは調達総額10億円以上を記録。その間にも新たなクラウドファンディング・サイトが次々と誕生するなど、着実に浸透してきています。ちなみに「寄付型」は非営利の団体が運営するプロジェクトを対象とし、支援が税制上の寄付になるもの。一方、「購入型」はそうした厳格なルールはなく、税制上の優遇もない代わりに“お返し”として商品などのリターンを手にすることができるという特徴があります。■開始後1週間で目標の30%集まれば成功とはいえ、「ネットを使って資金を募集して、そんなに簡単にお金が集まるものなの?」と半信半疑の方も多いでしょう。本書の監修を務め、JapanGivingの代表理事でもある佐藤氏によれば、プロジェクト成功の秘訣は「スタートダッシュ」。最初の勢いが大切だということです。具体的には、開始後1週間で目標額の30%を集めることなのだそうです。JapanGivingのデータでは、この条件をクリアしたプロジェクトで最終的に目標金額に到達できなかったものはひとつもないというのですから驚きです。佐藤氏は、スタートダッシュが成功に結びつく理由を、「申請者が本気だということが支援を検討中の人たちにも伝わるから」だといいます。■プロジェクトを成功させる4つのポイント自分が「応援したい」と思ったプロジェクトに、できる範囲で資金を提供する。これがクラウドファンディングの大枠です。では、人はなぜ「誰かを応援するために」お金を出すのでしょうか。じつは、ここを知っておくことがクラウドファンディングで資金調達を成功させる上での大きなカギ。そこには、押さえておきたい4つの“心情”がありました。(1)純粋な利他性相手が喜んだり、相手を助けたりすることが自分自身の満足感になるという心情。寄付による資金調達を考えるときは、まずこの心情がクローズアップされます。(2)暖かな光他人を支援できる立場にある自分を誇らしく思う心情です。寄付するという行為そのものに満足感を覚えるタイプ。これも、支援者自身の内面にもともとある動機です。しかし、プロジェクトの中盤以降、支援者をもっと増やしたいときにポイントになるのは、これ以外の2つの心情です。(3)互恵性相手がお返しをくれたり、自分がお返しをしたりすることで満足感を得る心情。これについて、本書でおもしろい実験が紹介されています。コスタリカの国立公園で、お土産を渡したグループと渡さないグループに「公園のサービス向上のために寄付を」とお願いしたところ、お土産を渡したグループのほうが寄付した人が8%多かったそう。「購入型」クラウドファンディングでは、製品やオリジナルグッズなどをリターンとして提供することが通例。お返しを上手に活用することが、支援者を増やすためのポイントです。ただし、コスタリカの実験では、お土産を渡さないグループのほうが一人あたりの寄付金額は多かったそう。プロジェクトの肝は、活動の魅力と主催者の熱意。リターンで“釣る”発想は危険です。(4)同調性ほかの人たちと同じようにふるまうことで安心し、満足感を得る心情です。他人が寄付しているのを見て、その団体なら信頼できる、と同調するパターンが多いのもこのタイプ。「〇%のお金がすでに集まっています」「目標達成率〇%」といったカウントダウンは、この心情にうまく訴求するため有効です。*クラウドファンディングは、楽にお金を集めるシステムではありません。より多くの人々にプロジェクトを知ってもらい、共感してもらうことが必要です。多くのプロジェクトでは、実際にイベントも行って周知・PR活動を行っています。それでも、自分のアイデアを多くの人に賛同してもらう喜びはクラウドファンディングならでは。本書では、実際にプロジェクトを成功させた12組の体験談からそのメリットとデメリットを知ることができます。もし「資金がない」という理由で二の足を踏んでいるのであれば、本書を手に取ってクラウドファンディングの可能性を探ってみてはいかがでしょうか。(文/よりみちこ) 【参考】※佐藤大吾監修、山本純子・佐々木周作編著(2016)『ぼくらがクラウドファンディングを使う理由(わけ) 12プロジェクトの舞台裏』学芸出版社
2016年07月13日どんな業界にも、表向きには明らかにされていない裏事情があるもの。知らず知らずのうちに、お店が仕掛けた戦略に引っかかっていることもあるでしょう。そこで注目したいのが、『お客に言えないまさかのウラ事情』(丸秘情報取材班編、青春出版社)。さまざまな業界の商売のカラクリやタブーを取り上げた書籍です。「なぜあの店で衝動買いしたくなるのか」「なぜカット野菜はいつまでもパリッとしているのか」などという身近な話題から、「景気と赤い車の法則」や「モンスーンが服と金が値上がりする」など、知っていると雑談にも使えそうなネタまで盛りだくさん。今回はそのなかから、金融業界や経済にまつわるウラ事情をご紹介します。■1:銀行員は同期が出世したら全員出向しなくてはいけない銀行には、古くから特殊な人事の慣習があるそうです。それは、「同期から役員が誕生したら、その世代の行員は全員出向しなければならない」というもの。銀行では出世競争が激しく、昇進レースを勝ち抜けることができるのは同期のなかでせいぜい2~3%。40代半ばで支店長や部長に昇進する人が出はじめ、50代くらいで役員に昇進する人が現れます。ですから、新たに抜擢されたの役員の同期は他人事ではいられません。出向先は関連会社や取引先がメインで、待遇は出向前のポストによって異なります。そのため、銀行で働く人は出世レースはもちろん、途中で脱落したとしても出向先での高待遇を得るための努力が必要なのです。こういった慣習があるため、銀行においては支店長や部長が役員より年上になることはありえないということになります。■2:銀行のクレーム対応者はなにがあっても席を立たない!どの業界でも、避けて通れないのが顧客からのクレーム。最近では、理不尽なクレームをつけるモンスタークレーマーに悩まされるケースも少なくないでしょう。特に金融業界や銀行ではトラブルが起きやすいため、クレーム対応のための独自のルールが決められています。その大原則は、話し合いの途中で決して席を立ってはいけないということ。理不尽なクレームには、毅然とした態度で臨むのが大切。しかし話し合いの途中で何度も席を立ってしまうと、相手に次の一手を考える隙を与え、話し合いがこじれてしまいます。ですから、とにかく相手が引き下がるまでは、なにがあっても席を立ってはいけないのです。そのため、話し合いが決まっている日は、水を飲むのを控えたり、前日のお酒をやめたりする用意周到な担当者もいるそうです。これは他の業界でも使えそうなテクニックですね。■3:証券マンは相手が損しても決して自ら謝ってはいけない証券マンにとって、「すみませんでした」と謝ることは命取りになりかねないといいます。事実、どんなに株価が下がっても、クライアントに激しく責め立てられても、彼らは決して謝りません。非を認めてしまえば相手は責任を証券会社に押しつけ、裁判に持ち込むこともあるからです。たとえ自分が勧めた商品で相手が損をした場合でも、証券マンはその責任を負わないのが業界の譲れぬ方針なのです。だから証券マンが営業をする際は、「絶対~ですよ」というような断定的な表現はしないのだとか。「期待できると思いますよ」や「リスクは少ないですよ」という、曖昧な表現で通しているわけです。ただ、いくら責任がないからといっても、自分の勧めた商品で顧客の財産が目減りするということは精神的にきついもの。それだけが原因ではないでしょうが、証券マンの離職率はいまも昔も高いままです。■4:わずか20%の大口顧客が企業の主な売上を支えている世間がどんなに不景気でも、高級車を乗り回し、ブランド品で身を固める人たちは必ずいるもの。そういう人を見ると、どうして自分のところにはお金が回ってこないのかと嘆きたくなるかもしれません。しかし、これはれっきとした経済の法則。イタリアの経済学者であるヴィルフレド・パレート教授が100年も前に提唱したように「世の中の富の80%は20%の人に集中する」のです(パレートの法則)。経済学者の間では「80対20の法則」とも呼ばれ、20%の顧客が売上の80%をつくるとも解釈されています。どこの会社でも大口の取引先は20%程度。いくら取引先の数がたくさんあっても、その20%の中の1社と取引がなくなるだけで、あっという間に業績が悪化することもあるのです。ですから、営業マンが必死で開拓した取引先も大口取引でない限り、あまり会社に貢献しているとはいえないのです。*自分が働いている業界では当たり前のことが、周りから見れば驚きの対象だということもあるでしょう。いずれにせよ、ウラ事情を知っていると、買い物や大きな契約の際など、有利になることもあるかもしれません。(文/平野鞠) 【参考】※丸秘情報取材班(2016)『お客に言えないまさかのウラ事情』青春出版社
2016年07月13日『潜在意識を使いこなす人 ムダにする人』(井上裕之著、フォレスト出版)の著者は歯学博士ですが、他にも経営学博士、コーチ、セラピスト、経営コンサルタント等、さまざまな肩書きを持っています。歯科医師と並行し、ジョセフ・マーフィー博士の「潜在意識」と経営学の権威ピーター・ドラッカー博士の「ミッション」を総合させた「ライフコンパス」を提唱。また、セミナー講師としても活躍しており、著者のセミナー会場は常に満員。1,000名規模の講演も成功させてきているそうです。つまり本書ではそんな実績を軸として、潜在意識を使いこなす人とムダにする人の違いを明らかにしているわけです(これは、「成功する人」と「そうでない人」にも置き換えられそうです)。きょうはそのなかから、お金についての両者の考え方の差を見てみたいと思います。■お金は使う人の品性次第で変わる日本人の根底には多かれ少なかれ、「お金のことを口にするのは卑しい」「お金をたくさんもらうことは不誠実である」というような考え方があるもの。しかし、著者はそうした考え方に疑問を呈しています。お金がいちばん大事だとはいわないけれども、お金がないと心は豊かになりにくく、人生の選択肢を狭めてしまうこともあるから。そう考えると「お金がありすぎる苦労」より、「お金がない苦労」のほうがはるかに問題だというのです。「貧しくても心が豊かならば」というけれど、やはりお金はあるに越したことはないということ。ユダヤ人の格言のなかに、次のような一節があるそうです。「貧乏は恥ではない。でも、名誉だと思うな」いうまでもなく、「貧乏を清いと思い、名誉だと思うことは危険だ」という意味。世の中の万物はエネルギーであり、お金自体もまた、本質はエネルギー。いいとか悪いとかの問題ではないわけです。あくまでも使う人の品性次第で、よいエネルギーにも悪いエネルギーにもなるということ。だから、「貧乏」=「清い」、「お金持ち」=「悪」ではないという考え方。ユダヤ人はこうした格言を通じて「お金の本質をよく理解しているからこそ、ためらうことなくお金に執着し、お金儲けをするのだろうと著者は分析しています。■お金に対する偏見を取り除こうそこで、もしも「お金に不自由したくない」「お金持ちになりたい」と思うのであれば、まずはお金に対する偏見を取り除くことからはじめなければいけないともいいます。では、潜在意識を使いこなす人とムダにする人とでは、お金に関する考え方にどれほどの違いがあるのでしょうか?著者によれば、潜在意識を使いこなす人は、「お金の本質」をよく理解しているのだそうです。一方、潜在意識をムダにする人は、そのあたりがよくわかっていないのだとか。心のどこかに「お金は卑しい」というマイナスのイメージを持ち、否定的な思いを抱いているというのです。だからこそ、いつまでたっても「お金が寄ってこない」=「貧乏」だというわけです。だとすれば、果たして著者自身はどう考えているのでしょうか? このことについて、著者は興味深いことを書いています。「いま、なにが欲しいですか?」と聞かれたとしたら、「いろいろあるけど、お金もそのなかのひとつ」だと即答するというのです。そしてそれは、著者自身が「お金の本質」と「資本主義社会におけるお金の価値」を正しく理解しているからだとも断言します。なぜなら誤解を恐れずにいえば、資本主義社会においては、お金を持っていれば勝てることが多いのも事実だから。■お金持ちになるには目標設定をでも、もし「お金持ちになりたい」と思ってはいても、実際にお金持ちになれる人はほんのわずか。では、なぜお金持ちになれないのでしょうか?著者によればそれは、多くの人が「お金持ちになりたい」と願ってはいるけれど、なにをもってお金持ちなのか、その定義が曖昧だから。そこで、「なぜ、お金持ちになりたいのか」「具体的にいくらくらいを持つお金持ちになりたいのか」「そのお金をどのようにして稼ぐのか」「そのためにどういう自分であるべきなのか」などを見つめなおし、具体的な目標に落とし込んでいかなければならないといいます。「お金がないからビジネスをはじめられない」という人がいますが、そういう人は「いま、持ち得ているお金でなにをすべきか」を必死に考えるべき。もしも「自分にはビジネスのセンスがない」と思うのならば、いままさに稼いでいる人から学んだり、本を読んだりして、必死に勉強をすることが重要。ところが、お金持ちになれない人は、こういう作業を「労力」と捉えてしまい、「必要な作業である」という認識がないのだと著者は指摘します。でも、そのような作業を面倒くさがってやらないから、お金持ちになれないのだそうです。*潜在意識を操れるようになれば、常に正しい「選択」と「行動」ができるようになるのだと著者はいいます。お金に対するこうした考え方も、そのひとつなのでしょう。潜在意識をさまざまな角度から操れる人になるために、目を通してみてはいかがでしょうか?(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※井上裕之(2016)『潜在意識を使いこなす人 ムダにする人』フォレスト出版
2016年07月07日子どもを授かると、親としていちばん最初に考えるのが「教育費の準備」ですよね。できる範囲で希望の教育を受けさせてあげたい。親ならば誰もが思います。そこで最初に検討されるのは「学資保険」ではないでしょうか?学資保険は、いろいろある生命保険のなかでは、比較的好印象な保険ではないかと思います。しかし、この学資保険、本当に教育費の準備になるのでしょうか?なぜ日本人が学資保険に対して好印象なのかといえば、学資保険が積立代わりだと思っているからでしょう。■学資保険でいくら戻ってくるのか計算すべしその昔、郵便局で学資保険に入ると、満期の時に倍ぐらいになって戻ってきた時代がありました。インフレ率等を考えてきても相当な戻り率です(そのぶん住宅ローン金利も高かったので、差し引きしてどれくらい恩恵を受けている人がいるかは微妙ですが)。そのイメージがついてはなれないのか、「学資保険は得だ」と思ってしまうようです。しかし実は、ご相談に見える方の実の70%以上は、得にならない学資保険に入っているといったら、みなさん驚かれるのではないでしょうか。もしすでに学資保険に加入しているのであれば、一度計算してみてください。「いくら払って」「いくらの満期で戻ってくるのか」を。210万円払って、200万円の満期なんてケースは結構あります。なかには、払った以上に戻ってこないことをわかった上で加入している人もいるかもしれません。そんな人は決まって、「保険がついているから仕方がない」なんていい方をします。たしかに、学資保険・こども保険という名称の保険のなかに、育英年金などの保険機能がついているものもあります。学資保険払込中に契約者(ほとんどのケースで父親)が死亡した場合に遺族に教育費の援助ということで育英年金が支払われるという内容です。内容の話を聞くと、とってもいいような気がします。しかし、よーく考えてください。なぜなら、教育費等必要な保障額は、ご主人の生命保険できっちり計算してリスクヘッジさせてあるはずです。■200万円もらえる学資保険じゃないとダメつまり、わざわざ学資保険でプラスしてその部分にお金を払う必要はないはずなのです。その他に、子どもの医療保険がついていることを理由にあげられる方が多いのですが、それもいかがなものでしょうか?乳幼児医療制度が整っている今、ある一定の年齢まで、医療費は無料です。自治体によって違いますが、長いところですと中学校卒業するまで、医療費無料なんていう自治体もあるほどです。そのなかで、どれだけの保険料をそこに払うのが適当なのか、考える必要がありそうです。学資保険は、純粋の貯蓄であるべきではないかと思います。180万円ぐらいの払い込みで200万円の満期がもらえる。最低でもこれくらいでないと、月々積立預金をしたほうがマシなことになってしまうのではないでしょうか?現段階で、払ったより戻ってくる金額が少ない学資保険に入っている方は、がっかりしてしまったかもしれません。でも、あきらめずに、計算することをお勧めします。現在加入中の学資保険を解約すると、いくら損をするのか。そのことについて計算するのです。ほとんどのケースで保険の途中解約は損が出ます。しかし、いまやめた損のほうが、満期まで払い続けたときの損にくらべて少ない場合は、思い切って解約をすることをお勧めします。その上で、貯蓄性の高い学資保険に入りなおして損が少しでも埋まるのであれば、入りなおしを検討してみてもいいのかもしれません。(文/ファイナンシャルプランナー・岡崎充輝)
2016年07月05日クリスチャン・ベイル、スティーブ・カレル、ライアン・ゴズリングらが出演し、“リーマンショック”の裏側を軽妙なテンポで描いた『マネー・ショート華麗なる大逆転』。そのブルーレイ&DVDが7月6日(水)にリリースされることに合わせ、本作でプロデューサーも務めたブラッド・ピットの特別映像がシネマカフェに到着した。本作は、『マネーボール』の原作者マイケル・ルイスによる金融系ビジネスマンのバイブル「世紀の空売り 世界経済に破綻に賭けた男たち」に基づく物語。『俺たちニュースキャスター』などコメディ作品を多く手がけてきたアダム・マッケイ監督が、世界経済を襲ったリーマンショックの裏側でいち早く経済破綻の危機を予見し、ウォール街を出し抜いた実在の人物たちを豪華キャストで描き出し、評論家の圧倒的な支持を獲得。第77回ゴールデン・グローブ賞で3部門ノミネート、第88回アカデミー賞では5部門ノミネートされ、見事、脚色賞を受賞した。今回いち早く到着したのは、世界の崩壊を信じる変わり者を演じたブラッドの即興シーンや、ブラッドの出演に関するマッケイ監督のインタビューなど、ブルーレイ収録の特典映像の一部。ブラッドは、住宅バブルを好機と捉え、ウォール街で一旗揚げようと野心に燃える若き2人の投資家から相談を持ちかけられる元銀行家で、いまは一線を退いた実在の人物ベン・リカートを演じている。映像では、監督は当初ブラッドの出演は考えておらず、製作陣が真顔で“報告がある”とやってきたときは、ブラッドの出演決定ではなく「製作中止かと思った」というヒヤヒヤの裏話を明かしている。また、ブラッドが演じた伝説の銀行家・ベンは、気候変動や経済崩壊が自然破壊を促すと信じている変わり者として知られているが、彼の演技には説得力があった様子でスタッフたちも太鼓判。しかも、ブラッドがベンについてリサーチを進め、キャラクターを掘り下げた結果生まれた、遺伝子組み換えを批判する“タネ”のシーンは即興というから、要チェックだ。エンターテインメントとして楽しみながら、世界経済の動向についても知ることができる本作。ブルーレイ&DVDには、ほかにも実在の人物が登場したカットになったシーンや、クリスチャン・ベイルなどキャストのインタビューも収録される。『マネー・ショート 華麗なる大逆転』ブルーレイ+DVDは7月6日(水)より発売(同日レンタル開始)。(text:cinemacafe.net)
2016年07月04日「太陽光発電って儲かるんですか?」これから家を購入・建築しようと検討している人から、きまって聞かれる質問です。そうでなくとも、一戸建てに住んでいる人であれば一度は「せっかく屋根があるんだから、太陽光発電で稼げないかなあ」と考えたことがあるはず。でも、本当に太陽光発電は儲かるのでしょうか?■太陽光発電に注目が集まりはじめた理由そもそも太陽発電が注目されはじめたのは、東日本大震災のときの福島原発事故以降。輪番停電や脱原発などが理由にあげられるのでしょうが、いちばんの理由は、2012年7月に施行された、「再生可能エネルギー特別措置法」です。この法律は、(1)電力会社に対して、再生可能エネルギー発電事業者から政府が定めた調達価格およびその期間による電気の供給契約の申し込みがあった場合には、応じるよう義務化。(2)制度運用に伴い電気事業者が電力の買い取りに要した費用は、原則「賦課金」(サーチャージ)として国民が広く負担する。という、おもにこの2つが柱になっている法律。簡単にいえば、(1)太陽光発電で発電した電力に関しては、一定の金額で電力会社は買い取らないといけない。(2)そのかわり、買取にかかった費用は、毎月の電気料に上乗せして国民全体に支払ってもらう。という制度です。つまり太陽光発電をしている人は、少し高値で電力を買い取ってもらい、していない人は、その買い取り費用だけを負担させられるという制度なのです。こう説明されただけだと、やはり太陽光発電をした方がいいと感じますよね。しかし、シミュレーションをしてみるとそれほど有利ではないことがわかるのです。■太陽光発電をシミュレーションした結果太陽光発電を買い取ってもらう方法は、大きく分けて、10kw未満(住宅用)の「余剰買取」と10kw以上(産業用)の「全量買取」があります。今回は、10kw未満(住宅用)で一度どれぐらいメリットがあるのかを計算をしてみましょう。10kw未満(住宅用)の場合買い取ってもらえる価格は、1kwh当たり31円か33円。今回は東京電力管内の31円で計算します。一般的な住宅に搭載できる太陽光パネルは、4kw前後の大きさものが主流です。問題は、4kwの太陽光パネルで年間どれだけ発電できるのかです。発電量は地域によっても違いますし、太陽光パネルのメーカーによっても多少の違いがありますが、全国的に平均1kwあたりの年間発電量は1,200kwh程度です。つまり4kwであれば、年間発電量は4,800kwh。ということは、4,800kwh×31円=148,800円が年間に太陽光発電で発電できた金額になるわけです。しかし、これはあくまでも発電金額であり、儲けではありません。10kw未満の場合は余剰電力の買取りですから、自家消費した電力は買い取ってもらえないのです。発電量のどのくらいが余剰電力として買われていくかは、生活スタイルによって異なりますが、多くても3分の2程度だと思われます。つまり、4,800kwh×2/3=3,600kwh、3,600kwh×31円=111,600円が実際に買われる金額です。しかし残りの1,200kwh分も使った電力から差し引かれますから、節電できたことに変わりありません。電気料が28円/1kwhだとすれば、1,200kwh×28円=33,600円節約できたことになります。すると、売った分の電力と節約した分を合計すると、年間に得した分は111,600円+33,600円=145,200円になりますね。■太陽光発電をはじめるためにかかる費用次に、太陽光発電をするためにどれだけの費用が必要なのかについて。昔にくらべて随分安くなったといえ、1kwあたり30万円から40万円。メーカー次第ですが、おおよそ120万円前後初期投資がかかると思われます。そうすると、1,200,000円÷145,200円=約7年4ヶ月。つまり7年と4ヶ月以降やっとお得となるわけです。ただし、これはあくまでも現金で初期費用を支払った場合。ソーラーローンを使うと(金利1.5%、10年返済)金利が10万円ほどかかるので、投資の回収期間は8年程度になります。もちろん8年以降は儲けが出るという考え方もありますが、買取りの保証期間は10年。10年後の買取り金額はどうなるかわかりません。10年後以降も、支払っている電気代の単価程度を買い取ってもらえるのであれば、パワコンの取替費用や発電効率の劣化を考慮してもある程度得にはなりそうです。でも、「だから太陽光発電が爆発的に儲かるのか?」と言われれば疑問が残ります。(文/ファイナンシャルプランナー・岡崎充輝)
2016年06月21日スリリングにスピーディに展開するクライム・サスペンスかと思いきや、拝金主義を風刺し、勝者と弱者の格差を増幅させる社会問題にまで鋭く切り込んだ『マネーモンスター』。ジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツという2大スターの競演も話題だが、娯楽性と知性派ストーリー、エモーショナルな人間ドラマが見事に融合した良質なハリウッド映画としても注目を集めている。監督は、名女優としても知られるジョディ・フォスター。8年ぶりの来日を果たし、作品に込めたフィルムメーカーとしての想いをシネマカフェに語ってくれた。取材部屋に入ると、ブルーのパンツスーツに身を包んだフォスター監督が、「ジョディよ、よろしく」とにこやかな笑顔とともに手を差し出して迎えてくれる。子役としてデビューを果たしてから50年以上、ショービジネスの第一戦で活躍し続けているトップスターだが、とても気さくだ。立ったままのスタッフに、「あそこにも椅子があるから座ったら」と気配りも見せる。いざインタビューという段になると、するりとパンプスを脱ぎ、カウチに胡坐をかいて、リラックスした表情を見せてくれた。まず、最初に脚本を見せたのが主役を演じたジョージ・クルーニーだったという話からスタート。「役にぴったりだと思ったの。観客はジョージが演じるリー・ゲイツに最初に出会った時、きっと彼を好きになれない。エゴが強いし、惰性で生きているし、酒グセも悪いし、人への思いやりがない。自分を見失っている状態の人だから。番組をジャックされると、臆病な反応を見せるしね。でも、観客は段々と彼の状況を理解していくの。いくら有名なTVパーソナリティでも、人生で失敗しているから自己評価が低いんだなと。ところが、それが事件をきっかけに変化していくの。ある意味、彼は映画の最後でふたたび人間である自分を取り戻すことができる。だからこそ、最初は嫌われるかもしれないけれど、変化し、観客を引きつけ続ける、そんな役者が必要だったの」。ジョージがTVパーソナリティとして番組の頭で滑稽なダンスを披露するのだが、それは彼のアイディアだったそう。「今回はジョージがダンスしたいと言ってくれたのが嬉しかった。何しろ、100%コミットしてくれて、自ら笑いものになるぐらいのショーマンシップを見せてくれたことが、映画のためにもなったの。ただ、常にアドリブを取り入れるかどうかは、映画の種類によるわね。プロットがはっきりしていて、セリフが多いと脚本がしっかり詳細まで書き込まれているから、アドリブ自体取り入れにくいし。でも、監督として私自身は、役者のアイディアを頼りにしているところがあるから、こういう提案は大好きよ」。共演には、ジョージとの相性が良いジュリア・ロバーツだ。「彼女は“AMAZING JULIA ROBERTS”なの!彼女以外にこの役は考えられないぐらい素晴らしいの。ジュリアのキャスティングが決まってから、より役を掘り下げることができ、よりヒロイックなキャラクターにすることができたわ。もともと、2人が演じたキャラクターは強い絆で結ばれている必要があったの。劇中では、実際に一緒に登場するのは冒頭と終りだけ。撮影でも2人が同じ現場で演技をしたのは2日ほどなの。とてもバーチャルな共演だったから、強いケミストリーがなければいけなかったの。だから、2人から生まれるマジックが必要だったのよ」。大スターである2人が共演しているというだけでなく、幅広い観客が楽しめる良質な社会派娯楽作であるこの作品は、最近ではハリウッドであまり見られなくなったジャンルの映画とも言える。「そうね。こういうタイプの映画は、もうあまりハリウッドで作られなくなったわね。それは、スタジオが商業的な戦略としてシリーズもの、スーパーヒーローものを多く作っているから。今後はもっと観られなくなるかもしれないわ。でも、インテリジェントでチャレンジングでユニーク、オリジナルな映画を観たい観客が多くいると信じているの。作品を作るとき、観客がそれを観るのが大きいスクリーンか、アイフォーンか、ケーブルかなんて気にしない。私は映画を観てもらえればいいと思っているの。『マネー・モンスター』は一般向けのペースの速いスリラーでもあるけれど、キャラクターの心理描写も丁寧にしたし、意味深い作品だと思うわ。観客に観たいと思ってもらえれば嬉しいけれど」。本作のモチーフであるお金というものは、人の本性、価値観を如実に見せるものだとつくづく感じられる。社会的成功者として、映画監督として、お金の価値というものをどう感じている?「今回登場する男性キャラクターは、みな自分の人間としての価値を見いだせずに葛藤しているの。いまの文化では、自分の価値をはかるときに、ものさしとしてお金や知名度を意味深いものとして使っているところがあるわよね。ジョージ演じたリーに関しては、少なくとも冒頭ではそう。確かにお金にはそういう側面はあると思う。アメリカや日本のような先進国で生きていると、自分がどんな人間であるか見えにくくなる。そのときに、最初に自分が勝者なのか敗者なのかをお金や地位、名誉で測りたくなる気持ちは分かるわ。でも私にしてみれば、いままでいろいろな人とふれあってきた経験というものが最も人の価値として重んじられるべきだと思うの。それは、金銭的な財産や仕事、ましてや賞などで測れるものではないわ」。ショービズ界といえば、知名度やギャランティで重要度が測られがちな世界。そこで人生におけるほぼすべての時間を生きてきた監督が、いったい健全な価値観をどのように育んできたのだろう。「どうかしら。とにかく、やりたかったことは昔から変わらないの。映画を作るということよ。映画を作るアーティストとして生きることで、地に足を付けていられる。私の場合、小さいときから公の目にさらされる立場だったから、なるべくリアルでありたいと思ったし、リアルであることに目が向くのかもしれないわね。子どもとして、自分の実人生を奪われそうになることが多かっただけに、自分が大切にするもの、矜持の持ち方を自然に身に付けたのかもしれない。これは仕事、これは私の人生というふうに、わけて考えることでそういう感覚を保っているのかもしれないわ」。先日、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェイムにも名前を刻んだ監督。名実ともに、ハリウッドスターとして映画史に名を刻んだわけだ。今後は、女優業との割合はどのようになっていくのか。「いまは、監督業に専念したいの。27歳で初長編を撮って、それから4本の映画を作ったけれど、決して数としては多くない。もちろん、その間も休んでいたわけではないし、役者としてのキャリアも積んだし、2人の子育てもしているから、とても満足している。でも、監督をするなら100%コミットしなければいけないの。企画と出会って、“さあ、今だ”というタイミングが来たときに、チャンスを逃がしたくない。ただ、これまで50年以上も演技をしてきた自分にとって、演技をすることはほかと比較することはできないぐらい素晴らしいことだから、止めることはないわ」。監督業にますますの意欲を見せるジョディ・フォスター監督。小さい頃から慣れ親しんできた日本文化が大好きだと話し、いつかこの独特な文化を作品に反映させられたらと考えているとか。その“いつか”も心待ちにしつつ、今後のジョディ・フォスターの活躍に注目したい。(text:June Makiguchi/photo:Kyoko Akayama)
2016年06月08日ジョディ・フォスターが監督を務めるリアルタイム・サスペンスに、ジョージ・クルーニー、ジュリア・ロバーツという豪華キャストが集結した『マネーモンスター』。本作で、全米高視聴率の人気番組を突然占拠する謎の男カイルを演じた、ジャック・オコンネルの特別映像が到着。生放送番組をジャックしながら、実はちょっぴり“ダメ男”というキャラクターを好演した彼の魅力に迫った。本作は、司会者リー・ゲイツ(ジョージ・クルーニー)の軽快なトークと財テク情報で高視聴率を稼ぐ、TV番組「マネーモンスター」の生放送中に起きた衝撃の事件を描く緊迫のリアルタイム・サスペンス。製作も兼任して主演したジョージと、敏腕番組ディレクター、パティ役のジュリアが、『オーシャンズ12』(05)以来、実に11年ぶりの共演を果たしていることでも話題だ。そんな中、番組をジャックする謎の男カイルを演じたのは、アンジェリーナ・ジョリー監督作『不屈の男アンブロークン』にも抜擢された25歳の英国俳優ジャック・オコンネル。今回解禁となる映像では、ゲイツが番組で指南したとおりに、母親の遺産をまるごと投資してしまい、文字どおり全財産を失ってしまうカイル役を好演した彼にフィーチャーしている。まさにダメ男なキャラのカイル。その一方で、自分が行動することで「ほかにも大損した人が大勢いるはず。真実を明らかにする」という、強い信念をもっている部分が映し出されていく。ただのダメ男ではなく、なんだか憎めない魅力を発揮しているのは、ジャック・オコンネルの演技力の成せるところ。そんな彼の演技を、フォスター監督は「才能あふれる俳優」と絶賛、共演者のジョージも「確かに危険だが、救いの手を差し伸べたくなる男だ」と語るキャラクターを見事体現した彼には、製作陣も太鼓判を押している。ジョニー・デップやヒュー・グラントも、かつて魅力的なダメ男を演じたことで高い評価を得てきた。この世代きっての演技派ジャック・オコンネルが演じる、ダメ男・カイルにもぜひ注目してみて。『マネーモンスター』は6月10日(金)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年06月08日社会現象ともなった『おそ松さん』は、赤塚不二夫原作の『おそ松くん』をもとにしたオリジナルアニメ。「成人した6つ子全員がニート」という設定なので、ファンがグッズや関連商品にお金を使うことを「養う」と表現することをみなさんはご存知でしょうか。アニメ放送終了後も人気は加速するばかりですが、実際に6つ子を養うとしたらいくらかかるのでしょうか?住居費、水道光熱費と項目はさまざまですが、わかりやすい食費について考えてみました。算出・アドバイスをいただいたのは、ファイナンシャル・プランナーのヨースケ城山さんです。■6つ子の食費は月52万円以上まず8人家族の食費は、いくらぐらいで考えるのでしょうか。「通常食費の目安に関しては1人2万円/月として想定します。父母と6つ子の8人で通常ならば16万円あれば充分です」(ヨースケさん)食費が16万円という数字だけでもオドロキですが、大家族ですから仕方がありません。問題なのは、6つ子の食生活。朝食こそ6人そろって自宅で食べるシーンがありますが、その他は居酒屋を中心とした外食の割合が高くなっています。おやつもよく食べていますし、嗜好品のコストが気になりますね。これらを踏まえて松野家の食費を算出すると、なんと合計で6つ子1人あたり2,300円/日となることがわかりました!朝食費(自宅):200円昼食費(自宅):300円夕食費(外食):1,000円お菓子(嗜好品):300円飲料代:500円両親は外食をしている様子がないため、夕食費を自宅500円で計算します。よって松野家での1日の食費は、2,300円×6人+1,800円×2人=17,400円。月30日計算すると、522,000円!とんでもない金額ですよね。食べ盛りのころはどうしていたのでしょうか……。食費だけでこの金額ですから、生活費も考えると「早く働け」といいたくなりますね。■単身世帯なら月平均5万円未満次に、家計における平均的な食費を見ていきましょう。家計調査報告(家計収支編)平成27年(2015年)平均速報によると、以下の調査データが出ています。<2人以上の世帯>年額:937,712円月平均:78,142円※2人以上の世帯については3人、4人、5人と増えていくごとにこれ以上の金額がかかります<単身世帯>年額:542,443円月平均:45,203円「平均とくらべて、我が家の食費はどうだろう?」と見なおしをしてみましょう。特にチェックすべきは、外食の割合です。■食費は外食を減らして抑えよう家計調査報告(家計収支編)平成27年(2015年)平均速報によると、単身世帯の外食費は平成25年(2013年)~27年(2015年)年で年平均142,200円、月あたり11,850円となるそう。2人以上の世帯の場合は、平均167,203円になります。しかし、大都市圏ほどこの金額が高い傾向があるのだとか。東京都区では年243,890円と平均を多く上回っており、家族で月2万円の外食費がかかっている計算になります。単身世帯での外食費は年平均142,200円、月あたり11,850円となるようです。ヨースケさんいわく、家計のやりくりを考えるなら「外食回数を見なおすべき」だそう。お弁当をつくっていったり、食べ歩きが趣味の人なら、ディナーよりもコスパのよいランチにしたりする工夫もできますね。また、アルコールメインの外食が多い場合、“家飲み”に変更するという手も。うっかり飲み過ぎ、終電を逃してしまってのタクシー代が浮く……などの効果があるかもしれません。*松野家の食費が月52万円以上かかってしまうのは、外食回数が多いから。自宅で食事していれば、6つ子でも月16万円で済むはず。3倍以上もかかっているなんて、大問題ですよね。しかし、アニメのなかでは行きつけの“チビ太のおでん屋”には未払い、ほとんどがツケている状態。ということは、松野家の食費はチビ太が支えているといっても過言ではなさそうです。6つ子の父母は、チビ太に感謝したほうがいいのかもしれませんね。(文/マチコマキ) 【取材協力】※ヨースケ城山・・・節約アドバイザー、ファイナンシャルプランナー、AFP、住宅ローンアドバイザー、年金アドバイザー。著書は『給料そのままで「月5万円」節約作戦!』(ごま書房新社)。本の内容は、『らくらく貯蓄術。住宅ローン地獄に落ちない為の家計防衛のススメ。』にもまとめられている。ブログ『節約アドバイザーヨースケ城山ブログ』では、節約だけではなく転職活動、著書、社労士、FPのことを配信中。
2016年06月07日いま注目されている、フリーランスという働き方。インターネットの発達で、働き方に大きな変化が起きています。ランサーズ株式会社が2015年に行った調査によると、国内労働人口における日本の広義のフリーランスの割合は19%。日本国内で1,228万人がフリーランスとして働いていることがわかりました。また、同調査で行ったアンケートから、これからもフリーランスが増えると予想されています。ただ、魅力的な働き方である一方、フリーランスには「報酬が不安定」というイメージがありませんか?そこで今回は、なりたいが見つかる職業紹介サイト『CareerGarden』を参考に、フリーランスのメジャーな職種の報酬を調べてみました。これからフリーランスになることを考えている方は参考にしてみてください。■1:イラストレーターデザイン会社等に勤めているイラストレーターの年収が300~500万円といわれる一方で、フリーのイラストレーターの多くがアルバイトをしながら生活しているといわれています。一方で、人気が出てくると一枚の絵に何万もの価値が出るようになります。辛い下積み時代を耐え抜いて、実力と個性を磨くことで花開く、夢のある仕事です。■2:フリーライタークラウドソーシングサイトの登場などで、フリーライターの年収は人によって大きな差が見られるようになりました。駆け出しのころは月数万円~10万円の人がもっとも多いといわれています。名前が売れてくれば報酬も上がりますが、そういった人はひと握りです。最近はウェブでの仕事が増え、多くの人がライターとして活動しています。なかでもクラウドソーシングサイトでは、主婦や学生が副業としてライターをやっており、1記事数百~数千円で記事を書いていることもあります。プロのライターの報酬もこのあおりを受けて下がってきており、厳しい業界となっています。■3:個人タクシー全国ハイヤータクシー連合会によると、個人タクシーの平均年収は342万とのことです。個人タクシーの売り上げは地域により差が出てくるので、住んでいる地域によって年収に差が出ます。都内では、年収は500万円以上の方が多く、高い人では年収が800万円を超えます。都内のほうが有利な仕事ですが、観光地で個人タクシーが観光案内をして利益を得るところもあります。■4:フリーカメラマンフリーカメラマンの収入にはばらつきがあり、副業をしながら食べている人も多いため、はっきりとした平均年収はわかりません。仕事が来ない人は月収0円、有名カメラマンは数千万以上稼いでいるといわれています。雑誌の撮影は、1ページ1万円~、スタジオ撮影は1カット5,000円~が相場です。企業勤めのカメラマンの年収がサラリーマンとほとんど同じ。フリーカメラマンは狭く厳しい道なのです。■5:通訳意外なことに、フリーで通訳をしている方の多くの方が時給制で働いています。その場合、時給2,000~4,000円、年収だと300~600万円くらいが相場になります。通訳に常駐してほしいという企業は少ないため、会社に勤務している方は少なく、多くの方が派遣会社や通訳エージェントに勤務している方が多い職業です。■6:キャリアカウンセラーキャリアカウンセラーも契約社員やパートタイマーとして働いている人が多い職業です。三菱UFJリサーチ&コンサルティングが平成23年3月に発表した「キャリア・コンサルティングに関する実態調査結果」によれば、直近1年間の収入が「300万~400万円未満」と答えた人がもっとも多く18.5%、次いで「200万~300未満」が15.8%。「1,000万円以上」と回答した人は8.0%となっていますが、この層はおそらく企業の人事などに勤める人であると想定されており、フリーの方の多くが200~400万円の間で働いていることになります。海外では個人と契約してキャリアカウンセリングを行うことは当たり前ですが、日本では学校やハローワーク、NPO団体などでしか仕事がないため、大きな収入は見込めません。■7:フリースタイリスト実力世界の厳しい業界ですが、3年ほど経験のあるスタイリストであれば、平均的な年収として200万円~500万円くらいに落ち着きます。実力がついて来れば有名人や大企業からのいらいがくるようになり、大金を稼ぐことができます。スタイリストは、仕事量が増え、一人でこなすのが厳しくなってきたところでアシスタントを雇う人が多いです。スタイリストアシスタントの平均年収は、0円~150万円程度が一般的です。アシスタントに給与を払うかどうかは個人の判断に委ねられていますが、報酬が安すぎるとアシスタントにも逃げられてしまいます。■8:グラフィックデザイナー会社員・フリーランス合わせてのグラフィックデザイナーの年収の平均値は300~430万円。大手に勤める方は1,000万円以上稼ぎますが、中小代理店の場合は初戦度300万円を切ることもあります。経験を積んで独立しても厳しい業界で、初年度の年収は企業勤め時代のものを下回ることが多く、営業に追われることになります。もちろん、実力がある方が独立することが多い業界なので、厳しい期間を乗り切れば年収700~800万くらいになり、最終的に制作プロダクションやデザイン事務所を立ち上げる人もいます。■9:プログラマープログラマーの平均年収は350~500万円といわれおり、他業種と比べても一般的な平均年収と変わりません。フリープログラマーとして働いている人は多いですが、派遣社員として厳しい生活を送っている人がいる一方で、独立して1,000万円以上稼いでいる人もいます。独立しない限り、残業が多く体力的に厳しい仕事だともいわれています。残業代だけで年収が100万円以上違う場合があるほどです。■10:フリーアナウンサーフリーアナウンサーは人気がある方がなることが一般的なため、定収入ということはほとんどあり得ません。テレビ局で働くアナウンサーの初任給が23万円~25万円程度、年収は350万円程度が相場で、そこから高くても年収2,000万円程度に上がります。フリーアナウンサーはそれよりも高い報酬をもらっており、高い人では1億円以上を稼ぐ人もいます。しかし、テレビ局は休日休暇や福利厚生がしっかりしているところが多く、フリーになることはそれを捨てるということなので、リスクがないわけではありません。*フリーランスは実力世界で、ほとんどの業種が営業努力を怠れば月収0になってしまいます。その代わり、仕事で得られる達成感なども多く、リスクがある分やりがいのある仕事なのではないでしょうか?だからこそ、新しい働き方としてフリーランスが注目されているのかもしれません。(文/堀江くらは) 【参考】※CareerGarden※フリーランス実態調査-ランサーズ株式会社
2016年06月05日『年収1000万円以上のNYキャリアが教える 仕事も恋愛もキレイもすべてを手に入れる女性のワークルールズ50』(バーバラ・スタニー著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、2003年に『ミリオネーゼになりませんか?』というタイトルで出版された翻訳書の新装版。原題は『SECRETS OF SIX-FIGURE WOMEN』ですが、“SIX-FIGURE”とは「6桁」のこと。日本円でいえば年収1,000万円以上というわけで、「ミリオネーゼ」とは、そこから着想した造語なのだそうです。ミリオネーゼの定義は、「仕事も恋(家庭)もおしゃれに楽しみ、1,000万円稼ぐ女性」というもの。また、「すべてをあきらめなくていい。わたしたちは、すべてを手に入れることができる」というメッセージも込められているのだといいます。ちなみに年収1,000万円である必要はないものの、収入に対するこだわりこそが女性たちにもっとも欠けていることだと著者。そこで、その数字を女性たちの経済的自立、精神的自立の象徴としたのだそうです。ところで、本書が初めて出版されたときには「一部のキャリアウーマンにとっての課題」だった事柄が、13年を経たいま、「ほとんどすべてのワーキングウーマンたちの課題となってきている」といいます。そこで改めて、「自分に自信を持つこと」「八方美人になろうとせず堂々と意見を述べること」「チャンスがきたら『とりあえずやる』と考えること」「自分の能力と業績に応じた正当な権利を主張すること」などの心得を訴えかけるために本書が復刊されたというわけです。きょうはそのなかから、お金に関するルールをいくつか引き出してみます。■お金に関する3つの法則を守る経済的自立は、頭で考えるよりもはるかに簡単だと著者はいいます。お金を賢く増やすのに、時間はそんなにいらない。お金がたくさんなければ財産をつくれないわけでもない。それどころか、現在の収入額がいくらであろうと、数千万を貯めることは可能だというのです。若いうちからはじめるに越したことはないけれど、歳をとっても遅過ぎることはない。もっとも危険なのは、年齢にかかわらず「なにもしない」こと。そして財産を築くためには、お金に関する3つの法則を守る必要があるのだとか。[法則1]支出を収入より少なくする[法則2]なによりもまず貯蓄する[法則3]お金を運用して増やす大切なのは、「なにを持っているか」ではなく、「持っているものでなにをするか」。それこそが、経済的安定を手にできるかどうかの決め手だということ。(1)支出を収入より少なくするミリオネーゼたちはたいてい、自由気ままにお金を使わないように自制しているのだそうです。ケチっているわけではなく、“贅沢”と“倹約”とを上手に使い分けているということ。いってみれば富の大きさは「どれだけ稼いだか」ではなく、「どれだけ使わないか」で決まるというわけです。(2)なによりもまず貯蓄する“お金を貯めるのが上手な人”は、収入の一部を定期的に貯蓄にまわすもの。ただし忘れるべきでないのは、貯蓄はいざというときに備えるもので、バーゲンセールのためにしているのではないということ。銀行に預けたお金は、借金や大きな損失に対する緩衝材になるだけではなく、予期せぬ出来事が起こったとき、あるいは夢を実現させるときのための賢明な備えになるということです。(3)お金を運用して増やす難しそうに感じはするものの、実はお金の運用はそんなに面倒なことではないもの。一般的な原則は次のとおりだといいます。1.臨時の出費や近い将来に買いたいものを買うためのお金など、今後5~7年以内に必要なお金は、現金か、MMF(マネー・マネジメントファンド)、CD(譲渡可能定期預金)などにしておく。2.今後8~10年以内に必要なお金は、株式や債券、現金に分散しておく。3.11年以上使う予定のないお金は、大半を株式に投資しておく。■いい投資家になれる4つの秘訣そして、お金の運用にもっとも有効なのは投資。そこで、誰でも腕のいい投資家になれる4つの秘訣も紹介されています。(1)自動化する一定の金額を、銀行口座や給料から自動引き落としで証券会社の口座に入れる契約をするということ。自分で銘柄を考えながら投資すると、意図に反する結果になることがあるためです。(2)プロに任せる専門家は投資のやり方を詳細に検討し、ポートフォリオのバランスを考え、定年後の生活に必要な資金計画を立てるようにサポートしてくれるというのです。(3)勉強する投資銘柄をむやみに怖がったり、無知なまま、あるいは習慣的に投資したりするのではなく、知識の裏づけを持って参加することが大事だという考え方。(4)人の話を聞く金融についてなんらかの知識がある人に会ったら、その知恵を借りるために質問をする習慣をつけるということ。*当たり前に思えることばかりですが、つまりは「当たり前のことをきちんとやる」ことが、なにより大切なのかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※バーバラ・スタニー(2016)『年収1000万円以上のNYキャリアが教える 仕事も恋愛もキレイもすべてを手に入れる女性のワークルールズ50』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年06月02日「買い替えるなら、今度はハイブリッド車かな」自動車を選ぶにあたって、そう考えている方も多いはず。自動車関連の税金を見ても、いかにも国から「エコカー車にしなさい」といわれているような気分になります。ところで「エコカー車」の代表格である「ハイブリッド車」は、本当にお買い得なのでしょうか?ハイブリッド車の家計的な魅力は、なんといっても「燃費」のよさと「税金」の安さ。しかしメリットばかりではなく、もちろんデメリットもあります。燃費がよく税金が安いぶん、「自動車本体の値段が高い」という点です。というわけで、最初に支払う金額以上のメリットがあるのかについて検証してみましょう。■シエンタは21万km以上走行すればお得今回は、TOYOTAの『シエンタ』で比較してみましょう。2015年に新型が発売され、ハイブリッド車とハイブリッドではないタイプの2グレードがある人気のファミリーカーです。金額差はおよそ35万円。燃費の差は7km/Lです。ただご存知のとおり、燃費はあくまでもカタログ値で、実際とは異なります。そこで実際の燃費を、『e燃費』というサイトで調べてみました。実際に自動車を購入して乗っているオーナーさんたちが、自分の車の燃費を投稿しているサイトです。もちろん乗り方によって燃費は大きく変わりますが、平均を見ればおおよその参考にすることはできます。さて、調べてみると、2タイプの燃費差は「3.67km/L」だということがわかりました。ハイブリッドグレードは「17.51km/L」、そうでないグレードは「13.84km/L」という結果だったのです。レギュラーガソリンの価格が1l@108円だとすると、ハイブリッドグレードは1km@6.16円。そうでないグレードは1km@7.82円です。1kmあたり1.66円ハイブリッドグレードの方がトクになります。購入時の差額35万円を1.66円で割ると、210,843km。つまり燃費だけ計算すると、21万km以上走行してはじめておトクになるのです。でも、1台の車を21万km以上も乗るでしょうか?ほとんどの方は、乗っても10万km前後であるはず。でも計算上、それではハイブリッド車がトクだということにはならないのです。■税金で比較しても大してメリットはない?しかし「燃費」だけではなく、「税金」面での優遇もあります。そこで、税金面でどれくらいおトクになるのかも計算してみましょう。ハイブリッドグレードは、自動車取得税・自動車重量税は免税、自動車税が75%減税です。一方のノーマルグレードは、自動車取得税が60%、自動車重量税が50%の減税となっています。そこから計算すると、<自動車取得税>1,980,327円×1.2%=23,764円<自動車重量税>新車登録時3年 11,200円+初回継続車検 15,000円=26,200円合計49,964円だけ税金を多く支払う計算になります。自動車税は同じ75%減税ですから税金的にはイーブンです。つまり税金面では約5万円支払いが少なくなりますから、35万円-5万円=30万円。30万円÷1.66円=180,722kmですから、約18万km以上乗るのであればハイブリッド車がおトクということになります。いずれにせよ、ハイブリッドグレードだからといって、なかなかトクすることはできないようです。もちろん、これはあくまでもこの車種のケースです。とはいえ、一度はこうして計算してみることは必要かもしれません。(文/ファイナンシャルプランナー・岡崎充輝)
2016年06月01日2015年から相続税が増税されました。基礎控除額の切り下げにより、相続税を納めなくてはならない人が増え、最高税率が50%から55%に引き上げられたのです。土地や建物などの資産を保有する富裕層はもとより、これまで「相続税なんて他人事」ですませていた一般市民も、今後は税金対策で頭を悩ませることになります。■相続税の可能性は誰にでもありうること相続税は2014年までは「5,000万円+1,000万円×相続人の数」を下回っていれば、相続税はかからないようになっていました。たとえば、相続人が被相続人(亡くなった人)の奥さんと子ども一人だけなら、「5,000万円+1,000万円×2人=7,000万円」以下なら相続税はかからなかったわけです。7,000万円というと、あとちょっとで「億万長者」のラインを超えるので、かなりの資産額になります。つまり、これまでは対象者が少なかったのです。しかし、2015年からこれが一転し、「3,000万円+600万円×相続人の数」を下回っていないと相続税は納めなればならないことになったのです。先ほどの例で考えてみると、「3,000万円+600万円×2人=4,200万円」。土地と住宅で合わせて3,000万円、そして投資信託や株、預貯金で1,200万円を故人が持っているケースは、団塊世代が相続の対象となる今後は少なくないでしょう。相続税をとられすぎないようにするには、なるべく相続する財産のトータルの金額が「3,000万円+600万円×相続人」となるようにしておくことがポイント。そのためには贈与税の制度を利用し、税金がかからないようにして生前に贈与をしておくべきでしょう。おもな手法は次のとおり。■相続税をとられすぎないようにする方法(1)毎年110万円以内の贈与を子や孫にしておく~暦年贈与課税制度の活用暦年贈与課税制度では、1年間あたりの贈与の金額が110万円以内なら税金がかからないことになっています。そのため、預貯金や有価証券、宝石類などについては、この枠内で毎年少しずつ贈与をしていくとよいでしょう。ただし、注意点が2つあります。一つ目は、きちんと毎年「贈与契約書」を作成し、贈与の事実をきちんとつくっておくこと。贈与は基本的に、贈与する側とされる側の両方が「あげます」「もらいます」とお互いに確認し合っていることが条件となります。そして日本では口約束はほとんど認められず、文書の証拠が圧倒的に効果的。そのため、お金や贈与財産そのものも、子や孫に渡すだけでなく、毎年きちんと正式な贈与契約書を作成しておくことが必要になるのです。なお、「贈与の申告書は契約書の代わりになる」という風説を耳にすることがありますが、あくまでも申告書は税務上のものでしかなく、民法上の契約書の代わりにはならないので注意しましょう。また、「名義預金はバレない」という都市伝説を聞くこともありますが、これはウソ。相続時、不自然なお金の流れがあればすぐに目をつけられます。さらに、2018年からはじまるマイナンバーと銀行口座等の紐づけが本格化すれば、名義預金は一網打尽。バレた場合には、贈与税だけでなく、さらに無申告加算税など重いペナルティが課されることになります。生前贈与の効果を法的に発するためにも、形式的にも実質的にも、きちんと贈与の証拠を残しておきましょう。二つ目は、相続開始時、つまり、贈与者が死亡した場合には、そのときからさかのぼって3年以内に贈与された財産は、税務上、相続財産としてカウントされるということ。民法上は贈与であっても、相続税の計算上の対象となってしまうということです。そのため、贈与は親世代が高齢になってからではなく、なるべく若いうちにはじめておくことが賢明です。(2)トータル2,500万円までは贈与税ゼロ!~相続時精算課税制度の活用相続時精算課税制度は、親や祖父母がその子や孫に対し、生前中に贈与しても総額2,500万円までは非課税となる生前贈与の制度。2,500万円という金額は、暦年贈与課税制度を20回繰り返してもまだ余るくらい大きな額。土地や建物などについては、この制度を利用して贈与するのも対策のひとつとなります。ただし、この制度の活用にも注意点があります。ひとつは、いったんこの制度を選択したら、同じ贈与者・受贈者の間ではもう暦年課税制度は使えなくなってしまうこと。もうひとつは、贈与額が2,500万円を超えたら、一律20%の税率がかかってしまうことです。この二つの制度を上手に活用して、相続税がかからないようにしてみましょう。(3)教育資金や結婚・子育て資金の信託贈与をしておこう~贈与信託の活用相続対策として注目したいのは、教育資金や結婚・子育て資金の非課税贈与制度の利用です。「祖父母や両親から子や孫へ贈与する」という点では通常の贈与と同じなのですが、この制度については直接相手に贈与するのではなく、信託銀行などの金融機関の口座を通すのが特徴。具体的には次のようになっています。<教育資金の一括贈与制度(非課税)>・1,500万円まで非課税で贈与することが可能・1,500万円のうち、500万円までの枠については、学校以外の塾やおけいこごと、資格受験のための通学費用などでも利用可能・受贈者が30歳未満であることが条件<結婚・子育て資金の一括贈与制度(非課税)>・1,000万円までは非課税で贈与することが可能・1,000万円のうち、300万円が結婚資金として利用可能な上限額・受贈者側が20歳以上50歳未満であることが条件現役世代で一番お金がかかり、かつ収入のない時期に親や祖父母から贈与を受けられれば、相続税の節約だけでなく、よい形で子どもの自立や将来を応援することになります。これはぜひとも活用すべき。ただし、いくつか注意点もあります。・受贈者側が条件となる年齢の上限に達してしまった場合や、死亡した場合に口座に未利用の残高があったときは、その残高については通常の贈与税の対象となること・贈与者が死亡した場合に、その時点で口座残高があるときは、その残高は相続税の対象となること・この制度の期限は現時点で平成31年3月31日までとなっていることそのため、それぞれの家庭の事情を鑑みて、ムダなく利用できるかどうかをあわせて考えてながら計画をたてるとよいでしょう。*相続は、財産額が少なければ少ないほど争いになりやすいもの。財産が少ないがゆえに「ウチは関係ない」と思いこんでいるため、生前に対策を立てていないからです。同時に、「相続=死について語るなんて不謹慎」という体裁のブロックが強いため、いい出したくても家族の空気を乱したくなくていい出せないという事情もあります。一方、財産のある富裕層は、相続争いの可能性を理解しているため、あえて空気を乱すリスクを冒してでも、きちんと家族内で話合い、こういった制度を上手に活用しながら生前に対策をたてているのです。残された家族が末永く協力し合い、かつ、しこりを残さないためには、あえて「人間はいずれ必ず死ぬ」という事実と向き合い、冷静にきちんと話し合い、生前に対策をたてておいたほうがよいでしょう。(文/税理士・鈴木まゆ子)
2016年05月31日『あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』(野口真人著、ダイヤモンド社)で著者が訴えているのは、「ファイナンス理論」の有効性。それは本当の価値を見抜き、正しい選択をするために人類が産み出した究極の実学なのだといいます。著者の言葉を借りるなら、ファイナンスとはすべての価値をお金に置き換える“現金な”学問。その証拠に、ほとんどの金融商品・ギャンブル、あるいは詐欺までもが、「現金(キャッシュ)が持つ魔力」をうまく利用することによって成り立っているのだそうです。つまりファイナンス理論は、それらのまやかしを見破り、“本当の価値”を見極めるためのシステム。そして驚くべきは、ファイナンスの価値体系において、現金は「もっとも価値の低い資産のひとつに位置づけられているということ。■お得なビールはどっち?ところで著者は、読者に対してある質問を投げかけています。「同じ銘柄のビールがコンビニAでは400円、隣のコンビニBでは350円で売られていたとしたら、この場合、お得な買いものは?」というもの。当然のことながら、お酒好きの方は「コンビニBに決まっている!」と思うことでしょう。しかし、ビールを飲まない人にとっては、「どちらも買わない」が正解であるはず。どうせ飲まないビールなら、買わないほうがマシだからです。また、このビールが普段から300円で売られている商品だとすれば、どちらのコンビニで買っても損することになります。この例からもわかるとおり、私たちは買いものや取引をする際、価格を見比べて損得を判断しようとするものです。「こちらのほうが価格が安いからお得だ」「あっちのほうが価格が高いから、価値も高いに違いない」というように、価格同士の比較が価値判断の基準になっているということ。しかし、価格だけを見くらべても、正しい判断はできないと著者はいいます。これは、ビールを株式に置き換えて考えてみると分かりやすいのだとか。■株の「買い時」はいつ?Q:昨日1,000円で取引されていたC社の株式が、きょうは700円で取引されている。きょう、この株は買うべきか?株価だけを見れば、1,000円だったものが700円で買えるのですから、C社の株は「まさに買い時」ということになるでしょう。とはいえ株式投資の経験がない人でも、ここで「買い」の判断をすることはないはず。なぜならC社の株は、700円よりももっと下がる可能性があるから。では、どうすればいいのでしょうか?この問いに対して著者がいいたいのは、「価格と価格を見くらべている限り、まっとうな意思決定はできない」ということだそうです。700円、500円、100円のどの時点で買うにせよ、あるいは買わないにせよ、目に見えている株価だけを根拠にして判断する人は、単なるヤマ勘を頼りにしている点においては「同じ穴の狢(ムジナ)」だということ。■「価格と価値」を分けるだとすれば気になるのは、「正しく意思決定をするためにはどんな情報が必要なのか」ですが、いうまでもなく、C社株の本当の価値がわかればいいのです。たとえば、「この株には本当は150円の価値しかない」とわかっていれば、1,000円から700円に下落した時点でも手を出そうとは思わないはず。逆に100円にまで下落したなら、迷わず購入を決めるはずだということです。私たちはどうしても、価格という“目に見えるもの”に惑わされてしまいがちです。しかし本当の意思決定は、「価格と価格」を比較する世界から抜け出したところ、すなわち「価格と価値」の両方を見渡す視点からしか生まれないのだと著者は主張しています。だからこそ、ファイナンス的な思考の第一歩は、価格と価値を分けて考え、価値の見極め(価値評価)に軸足を移すことなのだといいます。原価や市場価格に注目する従来の考え方は、あくまでも「目に見えるもの」、端的にいえば価格に注目していることになります。「価格が価値を決める」という発想であり、いいかえれば価格中心の世界観。対して、ブランドのような「目に見えないもの」を価値の源泉だと考えるのがファイナンス。「価値が価格を決める」という、“価値中心”の世界観でとらえようとするわけです。お金が単なる尺度であり、それ自体が価値を決めるものではないのだとすれば、ファイナンスのほうが現実に即していると著者はいいます。*「数字は苦手」だという方も、抵抗を感じることなくすんなりと読める内容。未来に向けて新たな価値観を身につけておくためにも、必読の書といえそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※野口真人(2016)『あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』ダイヤモンド社
2016年05月31日ジョディ・フォスター監督のもと、ジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツという2大スターがそろった『マネーモンスター』。このほど、第69回カンヌ国際映画祭での正式上映のため、“全員アカデミー賞受賞者”のこの3人がカンヌ入りし、レッドカーペットほか公式イベントに参加。ジュリアにとっては、今回が初めてのカンヌ体験となった。現地時間5月12日(木)に同映画祭のメイン劇場である、2,300席もの規模を誇るリュミエール大劇場にて盛大にガラ上映が実施された本作。実はジュリアの主演作品がカンヌ映画祭で上映されるのは、長年のキャリアで今回が初めて。この夜は、ジュリアにとってカンヌ・レッドカーペット初体験となった。一方、ジョディのカンヌ初体験は、1976年パルム・ドールを受賞した『タクシードライバー』で、自身の監督作がカンヌで上映されるのは2011年のメル・ギブソン主演『それでも、愛してる』以来、5年ぶり2回目となった。初カンヌのジュリアは、レッドカーペットに「Giorgio Armani Prive」のブラックのオフショルダー・ドレスに「Chopard」のエメラルドとダイヤのネックレスに身を包み、颯爽と登場!しかも、そのジュリアのドレスは、『プリティ・ウーマン』のオペラ観劇のシーンで彼女が着ていた有名な赤いドレスを彷彿とさせると話題に。ベストフレンドにして、劇中でも息の合ったところを見せたジョージらとレッドカーペットで喜びのビッグスマイルを見せ、数多くの報道陣やファンに盛大に迎えられた。ジョージはもちろん、アマル夫人を伴って登場。途中アマル夫人とジュリアという2人の美女を“両手に花状態”でレッドカーペットを闊歩し、歓声を浴びていた。また、正式上映終了後は、約4分にわたる盛大なスタンディングオベーションを受けたという。ジョディ監督は涙をこらえた表情を見せ、ジュリアも目に涙を浮かべ“カンヌの洗礼”に感激の様子だった。さらに本プレミアには、ジェシカ・チャステインやスーザン・サランドン、ナオミ・ワッツ、ジュリアン・ムーアら、ハリウッドのスター女優たちも駆けつけており、監督・出演者らを祝福した。この正式上映に先立って行われたプレス用スクリーニングでも、1,000席の劇場が満席状態となり、立ち見が出るほどの盛況ぶり。この時点で、カンヌで「最も話題にされている」(most talked about film at Cannes)映画と太鼓判を押されている。<記者会見コメント>■ジョージ・クルーニー財テク番組「マネーモンスター」司会者リー・ゲイツ役ジョディは信じられないほど才能のある監督だけでなく、信じられないほど才能ある俳優でもある。だから、彼女は俳優たちとどういう風に話すかを心得ているんだ。ジョディは俳優たちが色んなことにチャレンジする安全な場所を作ることに長けているんだ。例えば、すごくかっこ悪いダンスシーンとか(劇中、ジョージはダンスを披露!)。ジョディの仕事の仕方は考えられ得る、最もプロフェッショナルなやり方だ。俳優でもあり監督でもある人との仕事は、素晴らしい経験だった。■ジュリア・ロバーツ「マネーモンスター」ディレクター パティ・フェン役カンヌに来るのはこれが初めてよ。本当にここはクレイジーね。そして素晴らしいわ。映画の祝典ですもの。すぐ隣には親愛なる友人ジョージがいて、私がどこにでもついて回りたくなるようなジョディがいて。夢が叶ったわ!素晴らしい以外の何ものでもないわ。ジョージが脚本を送ってくれて、すごく気に入ったの。そしたら、ジョージが「OK、だったらジョディと話してくれ!」って。ジョディと私は電話で話して、2人ともとても興奮したわ。それから実際に、TV局のスタジオやコントロールルームで素晴らしい仕事をすることになったの。すごくハードワークだった。それが映画の中に現れているかわからないけど(笑)でも私の心の中にはそう刻まれているわ。しかもジョディはそれを知っててくれている。私はただ、いつもジョディにいいところを見せたくて頑張っていたようなものね(笑)■ジョディ・フォスター監督カンヌにいるのは特別な時間だわ。初めてここに来たときはまだ12歳(『タクシードライバー』にて)だった。あのころはもっとカオスだったわ。フォトグラファーがあちこちにいて。長いこと俳優をやってきて、たくさんの映画を作ってきたけれども、俳優としての人生のまさにスタートだった。パルム・ドールも受賞したの。あれから40年たって、監督としてここカンヌに戻って来られたことは素晴らしく名誉なことだわ。ここは作家主義の映画監督の場所だから。自分が尊敬する素晴らしい映画監督たちとこの場に立てて、ファンタスティックだわ!この映画を好きなところは、山ほどあるわ。最も好きなのは、キャラクター同士の関係性よ。パティ(TV ディレクター)とリー(司会者)、そしてカイルというジャック犯(ジャック・オコンネル)の3人の人生が交錯し、ある午後に人生が一変してしまうような奇妙な関係性よ。監督をしたことのある俳優(ジョージ・クルーニー)と仕事をすることほどラッキーなことはないわ。『マネーモンスター』は6月10日(金)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年05月13日『カール教授のビジネス集中講義 金融・ファイナンス』(平野敦士カール著、朝日新聞出版)の著者は、実務家、経営コンサルタント、著者、大学教授とさまざまな経験を経てきた人物。本書は、「経営戦略」「ビジネスモデル」「マーケティング」に続くシリーズ第4弾で、「金融・ファイナンス」をテーマに設定しています。と聞くだけで、「難しそう」という印象を持たれる方も少なくないはず。しかし著者は、そうではないと強調しています。そればかりか、金融やファイナンスは、企業人としても個人としても、これからの時代にもっとも学ぶべき学問だと断言しているのです。なぜなら、ファイナンスを学ぶことによって、お金を増やし、減らさないようにするための知恵が身につくから。金融初心者でも理解できるようなアプローチが貫かれた本書から、最近の気になる話題である「マイナス金利」に焦点を当ててみたいと思います。■金利は「お金のレンタル料」のこと去る2016年2月、日本でも史上初となる「マイナス金利」が開始されました。そこでまずは、金利についての基本を知っておきたいところです。著者の表現を借りるなら、金利とは、お金を貸し借りした際に発生する「レンタル料」のことなのだとか。金利の利率は、ローンの種類によっても異なってきますし、同じローンでも「変動金利型」の場合には、借りる時期によって変動するのだそうです。なぜ利率が異なるのかといえば、ひとつは、需要と供給の関係。お金を借りる人が多い場合、金利を高くしたとしても借りる人がいるからこそ、金利は上がります。しかし借りたい人が少なかったとすると、金利は下がることになるわけです。■なぜ消費者金融は金利が高いのか?また、貸し手が元手をどのように調達したのかによっても、事情は変わってくるのだそうです。たとえば銀行は、多くの人から集めた預金を原資にしてお金を貸しています。ところがノンバンク(銀行のようにお金を預かることはできないものの、企業や個人への融資を手がける金融会社)やその代表的存在である消費者金融は、銀行からお金を借りて、いってみれば「また貸し」をしている立場。それで、貸し出す際の金利も、銀行より高くなるわけです。最終的に、世の中のさまざまな金利を決めるのは、民間の銀行同士がお金を貸し借りし合う短期金融市場のコールレート、つまり「政策金利」となります。いうまでもなく、金利は経済を大きく左右する要素です。金利が高いとお金を借りる人が減るため、企業の設備投資、あるいは個人の住宅購入などが減り、経済が冷え込むわけです。しかし金利が低すぎたとすると、貸し手にメリットはありません。また、借り手が増えて経済が活性化するかというと、必ずしもそうでもありません。■マイナス金利だと現金保有が合理的さて、ここでマイナス金利について。マイナス金利政策は、ヨーロッパ中央銀行(ECB)が2014年に実施したもの。通常であれば民間銀行が中央銀行にお金を預ければ利息が得られるわけですが、マイナス金利の場合は、お金を預けた民間銀行側が逆にお金を徴収されることになります。預金すると損をするので、銀行は余ったお金を企業や個人への貸し出しに回すものだと期待されていました。事実、一部の国では銀行の貸し出しが増加しましたが、効果は限定的だといいます。マイナス金利だと、銀行に預金をするよりも、現金を保有するほうが合理的になります。とはいえ大量の現金の保有は危険であり、保管場所やセキュリティ、保険が必要になるはず。■マイナス金利によって個人はお得?では日本はどうかといえば、日銀の金融緩和も株や不動産が値上がりしただけ。つまり効果は上がっていないのです。それどころか、借金をしたほうが得をするという、常識では考えられない自体を引き起こしているのだとか。そんななか、日本の金融機関は政府の意向とは逆に、中小企業などリスクのある企業への融資に対して厳しくなると著者は読んでいます。一方、マイナス金利によって個人は、住宅ローンを借りると国からの補助もあり、むしろ得をしてしまうという逆転現象も。しかし金利は安くても、価格そのものが上昇してしまっている可能性が高いので注意が必要。今後は「いかに資産を増やすか」よりも、「いかに資産を守るか」という視点が重要になってくるといいます。*他にも多くの人が知りたかったであろう問題をわかりやすく解説しているため、とても役に立つ内容。金融やファイナンスの基礎を固めたいという方には最適です。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※平野敦士カール(2016)『カール教授のビジネス集中講義 金融・ファイナンス』朝日新聞出版
2016年05月05日学生時代にスクールカーストに悩まされた人は少なくないでしょう。実際、約半数の人がスクールカーストを感じていたことを、以前「20代の半数以上が感じていた“スクールカースト”の悲惨な実態」でご紹介しました。でも、学校を卒業すればカースト社会から逃れられると思いきや、そういうわけではないようです。社会人になってから身を投じることになるのが「社会人カースト」。株式会社オウチーノが行った調査によると、実に80%の人が社会に出てからカーストを感じているようです。スクールカーストよりもはるかに多くの人が、社会人カーストを意識しているんですね。では、社会人カーストはどのようにして生まれ、どのように階層が決まってしまうのでしょうか?■「自由」が生んだカースト社会戦後の社会はそれまでと違い、自分で働き方を決めることができる自由な時代です。平成に入ってからは、正社員以外にもフリーランスや契約社員として働く人が増え、より一層自由度が増したといえるでしょう。しかし、自由な社会に競争はつきものです。誰もが望んだ形で働けるわけではなく、なかにはやりたくない仕事や不安定な形で働く人も少なくありません。なんでも選べる自由は「この選択でよかったのか?」という迷いを、競争は「蹴落とされるかもしれない」という不安をそれぞれ生みます。こうした悩みが自分と誰かをくらべる原因であり、社会人カースト誕生の根幹にあるものではないでしょうか?スクールカーストの根底にも「誰かと一緒でなければ安心できない」という不安がありました。大人になっても、不安や悩みを解消するため他人と自分をくらべてしまう人が多いのかもしれません。さらに、昨今の不況がそのような傾向に拍車をかけているのでしょう。では、カーストを決定するものはなんなのでしょうか?スクールカーストは外見やコミュニケーション能力で階層が決まっていましたが、社会人カーストでは異なる基準が存在するようです。■お金と安定でカーストが決まる冒頭で触れた株式会社オウチーノの調査で「自分はどの層にいると思いますか?」と質問したところ、「最上層」と回答した人が12.8%、「上層」が 13.4%、「中層」が 32.1%、「下層」が 14.8%、「最下層」 が 7.0%、「『社会人カースト』はないと思う」が 19.9%という結果が出ました。それぞれ理由を聞いたところ、すべての階層で「給与」という声がもっとも多かったそうです。具体的に、上層と答えた人は出世の早さや高収入を、下層の人は収入が安いことや昇給しないことをそれぞれ理由に挙げたようです。下層の人からは、不安定な生活に対する不安の声も聞かれました。また、中層の人からは「平均的な生活を送っているから」という声が最も多く聞かれたとのことです。社会人カーストは「お金」と「安定」というステータスで決まるようです。他にも役職や肩書、会社名、仕事ができるかどうか等も階層を決める要因になっています。上層部に位置する人は人よりも豊かな生活を送ることができ、他人に会社名や肩書をいえば「すごい!」と思われます。一方で下層と答えた人はそんな上層の人と自分をくらべてしまい、コンプレックスを感じてしまうのでしょう。社内でも同期との昇進のスピードの違いや、成果の大小などを比較してしまうことがあるのではないでしょうか?社内・社外問わず、ついつい自分と他人のステータス比べてしまうことが社会人カーストの原因だとういうこと。しかし、ひとつ疑問が残ります。社会人カーストは働いてお金を稼いでいる人の間だけに存在するのでしょうか?■社会人カーストは主婦にもある社会人カーストは働きに出ていない主婦などのなかにも存在するようです。ドラマなどでよく見る光景が現実にも起こっているんですね。カーストを決めるのは夫の収入や子供の成績、どんな場所に住んでいるかまでも格づけに使われるそうです。家族のステータスが自分のステータスになるという、不思議な世界です。下位層の人に対してイジメを行うなど、深刻なトラブルに発展することもあるようです。主婦の方にも不安や悩みがあるのは当然ですが、それを自分と他の人とくらべることで解消しようとするのは働きに出ている人と同じであるようです。*自分と他人のステータスを見くらべて一喜一憂することに意味はありません。にもかかわらず、「他人より優位に立ちたい」という気持ちに負けてしまった結果、自分の周囲で社会人カーストが生まれているのかもしれません。調査で「社会人カーストはない」と回答した人はその理由として、「人それぞれだから」「自分なりの生き方を知ったから」 「相手に干渉しないから」などを挙げていました。自分の人生は自分だけのもの、誰かとくらべる必要はありません。ステータスに縛られることなく「自分らしい生き方」を見つけることが、無益な社会人カーストを抜け出す術ではないでしょうか。(文/堀江くらは) 【参考】※「スクールカースト・社会人カースト」実態調査-株式会社オウチーノ
2016年04月30日退職金は、会社が知らないところで準備しているもの。それはきわめて一般的な解釈だと思いますが、『誰でもできる 確定拠出年金投資術: ほったらかしで「年率10%」を目指す方法』(山崎俊輔著、ポプラ社)の著者によれば、そうともいいきれないようです。なぜなら会社員の6~7人にひとりは、自分の残高を毎日チェックできる退職金制度になっているから。その制度の名前は「確定拠出年金」で、簡単にいえば自己責任型の退職金制度。お金は会社が出すけれど、運用は自分で方法を決定するというものです。その増減が、自分の退職時の受取額に直結する仕組みだというわけです。■確定拠出年金のメリットとデメリット確定拠出年金には、多くのメリットと、少しのデメリットがあるとか。まずひとつ目のメリットは、「月々の積立額」と「いまいくら積立額があるか」を常に確認できること。ふたつ目のメリットは、会社の倒産や金融機関の破綻から、自分の老後の財産を保全する仕組みが整っていること。そしてもうひとつのメリットは、(制限はあるものの)自分の財産分については好きな運用方法を選択できること。一方、「原則60歳までもらえない」「運用の責任は自分で負う」というデメリットもあるものの、注目に値するのは間違いないようです。そんな確定拠出年金の適切な運用方法は、著者にいわせれば「ほったらかす」こと。とはいえ、ただ定期預金に預けてほったらかしておくのでは、当然のことながら無意味。より効率的な運用を行うためには、次の手順を踏まえる必要があるそうです。1.最初に毎月の投資金額を決める2.次に投資割合を決める3.投資信託のなかからマシなものを選ぶ4.具体的な運用指図を行う5.あとはほったらかすそれだけ!それぞれの手順の詳細については以下の通り。■ほったらかし確定拠出年金5つの手順(1)最初に毎月の投資金額を決める企業型確定拠出年金の場合、会社が退職金制度の一環として定期的な積立金額を拠出するため、金額は個人で選べないのだとか。しかし、確定拠出年金に入るか入らないか選べる場合は、必ず入るべきだと著者はいいます。入らない場合、給与課ボーナスに現金化して上乗せしてもらってしまうため、退職時はゼロになるからです。個人型確定拠出年金の場合は、自分のお金から積立金を出していくため、家計に支障のない範囲で、毎月の積立額を5,000円以上1,000円単位で決めるのだそうです。(2)次に投資割合を決める確定拠出年金に投資する資金のうち、何割を投資し、何割を安全資産に置くか考えるということで、これがいちばん肝心だといいます。できれば60%以上は投資してほしいと著者は主張していますが、儲かるチャンスと値下がりする可能性のバランスを考え、自分がチャレンジできる投資割合を決めるわけです。(3)投資信託のなかからマシなものを選ぶ投資信託については、2つのポイントからフィルタリングして「ベターなもの」を選ぶべきで、このとき「ベストの選択」などと考えないことが大切。なぜならベストの選択をする努力は、労力がかかるわりに実効性が高まらないから。なおフィルタリングのポイントは、「運用方針はインデックス(パッシブ)のもののみを選ぶ」「手数料がもっとも安いものを選ぶ」の2点。(4)具体的な運用指図を行う実際の購入指示(注文)を出すということ。その後は毎月自動的に積立金が引き落とされ、注文どおりの購入が行われる仕組みなので、「ほったらかし」をしたければ注文は最初の一度ですむといいます。このとき、以下の2パターンからどちらかを選ぶといいそうです。[パターンA]:バランス型ファンドをひとつだけ選んでまとめ買い国内の株式、国内の債権、外国の株式、外国の債権の4種をブレンドして購入したことになるのがバランス型ファンド(投資信託)。ほったらかしをして分散投資をしたければ、これが基本になりますが、バランス型ファンドなら1つ買うだけで4種類の投資を組み合わせたことになるといいます(大前提は、手数料が安いこと)。[パターンB]:自分で4資産の投資信託を買う国内の株式、国内の債権、外国の株式、外国の債権の4種に投資する4本の投資信託を選び、購入の指示を出します。(5)あとはほったらかすそれだけ!ここまでの作業ができれば、「ほったらかし投資」はスタート。少なくとも1年くらいは、そのままほったらかしておいてもOKだといいます。最初のうちは株価が上がったか下がったかが気になるでしょうが、なにもせずにほったらかしておけば大丈夫。*こうした基本ルールを軸に、以後はこの方法の有効性などが詳細に明かされます。将来のためにも、目を通しておいて損はなさそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※山崎俊輔(2016)『誰でもできる 確定拠出年金投資術: ほったらかしで「年率10%」を目指す方法』ポプラ社
2016年04月25日真面目で頑張り屋の人ほど、お金が貯まらない 節約よりも確実にお金が貯まる方法 貯蓄を始める前に知っておきたい、お金の使い方の3つのタイプ 90日プログラムで貯金力を10倍アップ【準備編】 90日プログラムで貯金力を10倍アップ【実践編】 の続きです。家計再生コンサルタントの横山光昭さんは、苦しい家計を再生させていくことを得意とするファイナンシャルプランナーで、これまで約9,000人の家計を「再生」させてきた。そんな横山さんのメソッドを紹介した「年収200万円からの貯金生活宣言」も今回が最終回。これまでを振り返りながら、真の貯蓄力をつけるためのポイントを教えてもらった。■習慣化させるためにプログラムを繰り返す仮に今、90日プログラムの第1回目が終わったとしよう。もしかしたら第1回目ではたいした成果が得られなかったかもしれない。でも、それでも問題ないと安心してほしい。「貯金ができるようになる成功パターンは、90日貯金プログラムの1回目ではなく、2回目、3回目の挑戦で大きく表れ始めることが多いのです」なぜなら、お金についての知識や考え方といった基盤を、90日間だけでなくもっと時間をかけて習得させたほうが強い土台となり、本当の貯金力に繋がるからだ。■「意思が弱いからこそ」仕組みづくりが大切このプログラムだけでなく、勉強であっても筋トレでもダイエットでも、実は一番難しいのは「続けること」。続けられる人というのは、どんな人なのだろうか? 「『お金が貯められる人は、私とは違って、きっと意思が強いのだろう』と嘆く人がいますが、実はプログラムの成果をうまく得られている人は『自分の意思だけでは限界がある』ということを理解して、『意思が弱いからこそ仕組みづくりが大切だ』という自覚からスタートできる人なんです」●途中でギブアップしないための仕組みづくり例ご褒美型の人は「貯めたお金でこれを買おう」と頑張ってみる自己満足むっつり(!?)型の人は口座にお金が貯まっていくのを見て幸せを感じてみようムチ型の人は第3者に監視されることで、モチベーションを維持しよう(出典:「年収200万円からの貯金生活宣言」より抜粋)■数字で自分をコントロールする「何回も90日貯金プログラムをこなしている人は、『数字で自分を把握する』から、『数字で自分をコントロールする』に変化していきます」(横山さん)『数字で自分を把握する』と『数字で自分をコントロールする』とは、どう違うのだろう?たとえば、「今月は食費の消費ペースがより早い」という感想。これは、大ざっぱであっても数字をコントロールしていなければ、出てこない感想だ。「だから食費を節制しよう」と行動する、これが数字で自分をコントロールすることの始まりだ。「自分の消費の数字を素直に受け入れ、ストレスもなく行動に反映させられるようになれば、しめたものです」(横山さん)■お金を貯めるには気持ちが大切貯蓄プログラムの最後の到達点は、「家計簿やお金のことをあまり気にしていなくても、自然と必要なお金を捻出できるようになること」だと横山さんは言う。たとえば別に所得がぐんと高い訳でもないのに、趣味である旅行費用を自然と捻出できる人がいたとしよう。「そのような人は、バランスをとるのが上手なんです。大好きな旅行が優先順位のトップにあるので、ほかの支出を抑えることが自然にできる。自分軸がしっかり形成されていて、そこに価値観がある。だからこそ、無理なく自然にお金のコントロールをすることができるのです。この例からもわかるように、お金を貯めるには何より自分の気持ちが大切なんですよ」(横山さん)お金を貯めるためには、自分を知ることがスタートでありゴールでもある。今回の特集を通じて、横山さんにそう教えてもらったような気がした。■今回取材にご協力いただいた横山さんの著書 年収200万円からの貯金生活宣言 (横山光昭著/ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)
2016年04月19日2012年4月、衝撃的なニュースが新聞の片隅にそっと掲載されました。2011年末の段階で、住宅金融支援機構が貸し出しているローンのうち8.48%が不良債権になっているというのです。■8.48%が住宅ローンを返済できていない「住宅金融支援機構」とは、昔の住宅金融公庫のこと。いまは住宅ローンといえば、銀行で借りるのが一般的。しかしほんの20年ほど前までは、住宅金融公庫から借りることが多かったのです。事実、住宅を建てる人の大半がここからお金を借りていました。そんな、多くの人々が住宅ローンを借りていた旧住宅金融公庫の8.48%が、不良債権になっているのだとすれば、とんでもないことです。不良債権と聞いても、遠い世界のことのように思えるかもしれません。しかし簡単にいえば、住宅ローンを3ヶ月以上返済できていない人が8.48%もいるということ。しかも、この中身を読み込むとさらに恐ろしいことがわかります。平成16年以前にお金を借りた人だけを見ていくと、返済できていない人の割合は10%を超えているのです。住宅関係の衝撃でいえば、衝撃の事実をもうひとつ。これは、2010年8月の朝日新聞の記事です。「ローン破綻増加、競売6万戸~甘い審査が落とし穴~住宅ローンを返せなくなり、家を手放す人が急増している。不動産競売流通協会の全国調査によると、銀行などが強制的に売るために裁判所の競売にかけられた一戸建て住宅とマンションは、2009年度には08年度の1.3倍の約6万戸に達した。一方、09年度に新築された住宅は約80万戸。新たにマイホームの夢をかなえた人がいる陰で、多くの“住宅ローン破綻(はたん)”が起きている。(2010年8月14日、朝日新聞)」しかし、この記事にも正確ではない部分があります。それは、「新築された住宅は約80万戸」という箇所。たしかに2009年度の住宅着工件数は、約80万戸でした。でもこの数字には、アパート用や貸家用に建てられた家の数も入っています。純粋に「マイホーム」として建築された数は、60万戸程度なのです。■住宅ローン返済できない人が10年で5倍につまり、どういうことか?毎年約60万戸の家が建てられているその陰で、毎年「6万戸の家」、つまり6万家族が家を手放さなくてはいけないということ。これが現実なのです。もちろん、裁判所に差し押さえになった原因のすべてが住宅ローンだったとはいい切れません。しかし、差し押さえになる以上、なんらかの「借金」を返済することができなくなったことは間違いありません。住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の資料から見ても、「住宅ローンを借りた人の10人に1人は住宅ローンを返していけない」。決してオーバーな話ではないのです。そんな実感はないかもしれませんが、先ほどの住宅支援機構(旧住宅金融公庫)の話でいえば、この10年で約5倍になっているのです。これは、2008年に起こったリーマンショックの影響が色濃く反映されているから。現在はこの時より状況は改善していますが、それでもマイナス金利の影響を受けた低金利の結果、身の丈以上のオーバーローンを借りている人たちは多く見かけます。その人たちは、低金利が終了したときにどうなるのでしょうか?もしかしたら、2010年や2011年の比にならないローン破綻になるかもしれません。(文/ファイナンシャルプランナー・岡崎充輝)
2016年04月18日真面目で頑張り屋の人ほど、お金が貯まらない 節約よりも確実にお金が貯まる方法 貯蓄を始める前に知っておきたい、お金の使い方の3つのタイプ 90日プログラムで貯金力を10倍アップ【準備編】 の続きです。「強い貯蓄力をつけるには、まず『実行』です」と言うのは、家計再生コンサルタントの横山光昭さん。苦しい家計を再生させていくことを得意とするファイナンシャルプランナーで、これまで約9,000人の家計を「再生」させてきた。そんな横山さんに、いよいよ貯金力を10倍アップする90日プログラムの内容を教えてもらおう。■プログラム実行中にする7つのこと気持ちと道具の準備が整ったら、いよいよプログラムのスタートだ。90日間でやるのは、次の7つの項目。●プログラム実行中にする7つのこと本を読む家計簿をつける 新しいモノサシ で使い道を把握する夢のノートに3行日記をつけるクレジットカードは使わないキャッシングがあれば、それを洗い出す自分との小さな約束をする(出典:「年収200万円からの貯金生活宣言」より抜粋)今回の記事では、上記の7つの中から、代表的なもの3つについて、横山さんに説明してもらおう。 ■家計簿をつける「家計簿の目的は、自分のお金の全体像とその流れを把握することです。すべてきっちり管理し、不明なお金を出さないようにするためではないのですよ(横山さん)」始めた月は、「家計簿=お金のメモ」程度にとらえるだけでOK。自分がイメージしていた数字と現実の数字との差に、愕然とすることがあるかもしれない。でも、その思いをベースに新しい目標を立てればいいだけの話だ。つまり、家計簿をつけるということは現実を知ること。「これくらいだろうか」とか「きっとできるだろう」といった精神論から脱却することで、これまでいかに希望的観測でお金を使っていたかを気付くことになる。■新しいモノサシで使い道を把握する家計簿をつけられるようになったら、次は「新しいモノサシ(消費・浪費・投資)」で自分のお金の中身を計ってみよう。横山さんのおすすめは、蛍光マーカーペンを使って、色分けをすること。モノサシを色分けしておくと、パッと見て一目で分かる。「マズい! 今月は赤が多い!」などと、一瞬で判断できるのだ。「家計簿をつけるメリットは、『消費』『浪費』『投資』のバランスを、自分の目で理解することと言っても過言ではありません」(横山さん)●蛍光マーカーペンを使っての色分け消費:黄浪費:赤投資:青(出典:「年収200万円からの貯金生活宣言」より抜粋)■夢ノートに3行日記をつけるその日感じたことを思うまま、飾らずに自分の言葉で書く、いわゆる「日記」をつけてみよう。夢ノートに2~3行書くだけでOK。「コンビニで買い物しなくなった。そうしたら、やせられた!」「仕事に目標が持てないのがイヤだ」「不安ばかりが目につく」など思うままに。弱音も含め、思いをこのノートに吐き出してみよう。数日間書き続けることで、自分の気持ちの動きが見えてくるほか、思いを吐き出すことで気持ちのリセットにもつながる。3行日記で気持ちをリセットすることによって、また頑張ろうという原動力にもできるのだ。次回は、いよいよ最終回。これまでの連載を振り返ってみよう。■今回取材にご協力いただいた横山さんの著書 年収200万円からの貯金生活宣言 (横山光昭著/ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)
2016年04月18日真面目で頑張り屋の人ほど、お金が貯まらない 節約よりも確実にお金が貯まる方法 貯蓄を始める前に知っておきたい、お金の使い方の3つのタイプ の続きです。「強い貯蓄力をつけるには、まず『実行』です」と言うのは、家計再生コンサルタントの横山光昭さん。苦しい家計を再生させていくことを得意とするファイナンシャルプランナーで、これまで約9,000人の家計を「再生」させてきた。■目的をハッキリ意識し、実行する期間を決める横山さんが提案するやり方や考え方を頭で理解するだけでは、「貯める」力には繋がらない。これまでのことをベースにして、「実行」をしてこそ貯蓄力がつくのだ。そのための最初のポイントは、次の2点となる。実行する期間を定める(理想は90日)目標や願望、やりたいことをハッキリ意識する「90日=3ヶ月」と期間を決めているのは、変化を実感しやすいのと、貯められなかったころの自分との比較がしやすいから。もちろん、90日を過ぎても、さらに続けていってOK。90日がひと区切りというだけで、繰り返すことで効果は上がっていく。そして目標や願望は、とにかくハッキリ意識することが大切。「貯金できるようになる人はみな、目標の描き方が現実的なのです」(横山さん)■スタート日とゴール日を設定上記が決まったら、次にスタート日とゴール日の具体的な日付を決める。スタート日=収入が入る日、つまりお給料日ゴール日=3ヶ月後の給料日の「前日」共働きで給料日が違う場合は、家計のメインの収入となるほうに合わせる。ゴールも給料日の「前日」なので、キッチリ90日間である必要はない。 ■プログラムに取り組む前にする4つのことこの記事を読んで、「よし、早速やってみよう!」と思ったとしても、すぐに始めるのではなく、数日待って必ず給料日からスタートさせるのがよい。その間、「プログラムに実際に取り組む前にすること」があるので、ご紹介しよう。●プログラムに取り組む前にする4つのこと(1)目標、願望をハッキリと具体化させる目標として設定しておきたい項目は次のとおり貯めたい金額使い方の内容の割合をどう変化させるか(消費、浪費、投資)生活上、改善したいこと挑戦したいこと(2)夢ノートと家計簿を用意する家計簿はできるだけシンプルなものを。「お金の流れをメモしておくためのもの」程度のゆるいとらえ方で。横山さん監修の家計簿もある。目標や願望を自由に書くことができる「夢ノート」は、特に決まりはないが、B5サイズの大学ノートを使っている人が多いそう。(3)貯金箱と貯金用口座を用意する貯金箱はインスタントコーヒーの空きびんなど、中身が見えてわかりやすいものがおすすめ。わざわざ買う必要はなく、手元にあるもので用意してみよう。貯金用口座は新しく開設して、90日貯金プログラムで貯めた分だけをそこに入れよう。(4)気がかりなことを書き出すたとえば、「何だか最近、楽しくないし、やる気も沸かない。しっかり休んでみよう」「会社のデスク周りがぐちゃぐちゃ。使いやすいように片付けよう」など、何でもいい。とにかく心に思い浮かんだ気がかりなことを書き出してみよう。(出典:「年収200万円からの貯金生活宣言」より抜粋)準備ができたら、いよいよ次回は横山メソッドの真髄「90日貯金プログラム」【実践編】です。■今回取材にご協力いただいた横山さんの著書 年収200万円からの貯金生活宣言 (横山光昭著/ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)
2016年04月17日真面目で頑張り屋の人ほど、お金が貯まらない 節約よりも確実にお金が貯まる方法 の続きです。「貯蓄体質になるためには、これまでの家計管理の視点を変えなければなりません」と言うのは、家計再生コンサルタントの横山光昭さん。苦しい家計を再生させていくことを得意とするファイナンシャルプランナーで、これまで約9,000人の家計を「再生」させてきた。そんな横山さんが考える、貯蓄体質になるためのコツとは?■「自分の軸」を持つのが貯蓄の早道同じくらいの収入であっても、堅実に貯めていく人と、いつもお金を使いきってしまい、カツカツな気分で暮らしている人がいるのはなぜなのだろうか? 「その差は、自分の軸があるか、ないかなのです。貯蓄体質になるうえで、大切なのは、あなた自身の価値観です」と、横山さんは言う。自分の軸を作り上げるためにも、ぜひとも知っておいて欲しいことがある。それは、「お金の使い方には3つのタイプがある」ということだ。■「消」「浪」「投」で使い方をイメージ3つのタイプとは、以下の表の3つをいう。「消(ショウ)」「浪(ロウ)」「投(トウ)」と覚えると、覚えやすい。お金を使うときには、この3つのどれに当たるのかを考えながら使うようにしてみよう。●お金の使い方の3つのタイプ(1)消費生活するのに必要なものの購入や、使用料としての支払い全般。生産性はさほど伴わない。【例】食料や住居費、水道光熱費、教育費、被服費、交通費など(2)浪費生活に必要でないもの、今をひたすら楽しむためなどの、無意味な使い方のこと。いわゆる無駄づかいで、もちろん生産性もない使い方。【例】嗜好品(タバコやお酒、珈琲)、程度を超えた買い物など(3)投資将来の自分にとって有効なお金の使い方。資産運用のことだけを指すのではなく、何かを学ぶ、本を読むなどもこれに当たる。【例】習い事、本代など学ぶための費用、投資信託、貯蓄など(出典:「年収200万円からの貯金生活宣言」より抜粋) ■「いくら使ったか?」より、「何に使ったか?」が大切まずは表を参考にして、家計の支出をあなたなりに「消費」「浪費」「投資」に3つに分けてみよう。なかには同じ項目内であっても、内容が分かれることもあるだろう。たとえば、携帯電話代は、生活や仕事に使っている部分は「消費」だが、過度なゲームの課金や電子書籍の購入は「浪費」。食費も基本部分は「消費」だが、料理をするのが面倒だという気持ちでする外食は「浪費」。こんなふうに同じ項目でも、複数に分かれてもいい。「これだけでも十分、お金が貯められる体質作りへと繋がります。要するに、『いくら使ったか?』より、『何に使ったか?』が大事なのです」(横山さん)■新しいモノサシで、今までの自分を疑う次に、「消費」「浪費」「投資」の割合を適切に把握するため、3種類の内訳が支出全体の中でどれだけの割合を占めているかを計算してみよう。その計算方法は以下の通りだ。各項目(消費、浪費、投資)の金額 ÷ 支出合計たとえば、手取り収入が21万円で、消費が16万5,000円だった場合、16万5,000円÷21万円=0.785…。つまり、毎月の支出のうち78.5%が消費となっている計算となる。横山さんが現場で、「お金とのつき合い方が上手だなぁ」と感じる人の数値をもとに割り出した「消(ショウ)」「浪(ロウ)」「投(トウ)」の目安は以下の通り。●横山さんが考える消費・浪費・投資の理想の目安消費 : 70%浪費 : 5%投資 : 25%(出典:「年収200万円からの貯金生活宣言」より抜粋)「3つの項目ごとの割合を知るという新しいモノサシを手に入れることで、人は今までの自分の常識を疑い始めます。そして、お金の使い方の中身に意識を向けられるようになるのです」(横山さん)お金の使い方の中身に意識を向けられるようになったら、貯蓄力を始める準備をしよう。次回は横山メソッドの真髄「90日貯金プログラム」の【準備編】です。■今回取材にご協力いただいた横山さんの著書 年収200万円からの貯金生活宣言 (横山光昭著/ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)
2016年04月16日いま、所得格差が社会問題になっています。国税庁の平成26年度調査では、民間の企業に勤める人のうち年間給与所得300万円台の層が17.3%で最多。女性に限って見ると年間給与100万円台が26.2%で最も多く、年間給与300万円台までの層が女性全体の8割を占めるなど、まさに“年収300万円時代”といえます。多くの人が「幸せになるために、もっと豊かになりたい」と願うなか、「生活の豊かさを最優先課題にすると、幸せにはなれません」と警鐘を鳴らす人がいます。哲学者・ソクラテスの思想を下敷きにしたフィクション『ソクラテスに聞いてみた人生を自分のものにするための5つの対話』(日本実業出版社)の著者・藤田大雪さん。京都光華女子大学で教鞭をとるかたわら、訳書『ソクラテスの弁明』(kindle版)がAmazon kindleの哲学・思想部門で1位を獲得するなど第一線で活躍する古代ギリシア哲学の研究者です。『ソクラテスに聞いてみた』でもお金と幸せの問題を取り上げている藤田さんに、幸せになるための「お金とのつきあい方」をお聞きしました。■「幸せ」には魂の健康が欠かせない「じつは、最初に“お金”が人々の生活に不可欠なものになったのは、ほかでもないソクラテスの生きた時代なんです」と藤田さん。ソクラテスが生まれる200年ほど前にリュディア(今のトルコ)で発明されたお金(貨幣)が、紀元前5世紀ごろのアテナイで歴史上初めて一般市民に普及したのだそう。やがて「もっとお金を手にして豊かになりたい」という思いにとりつかれる人も出はじめ、ソクラテスはそんな人々を“金銭愛好家”と呼びました。「プラトンの『国家』という本のなかで、ソクラテスは金銭愛好家の心理について詳しく語っています。金銭愛好家はとにかくさもしくて、どうすればお金が増えるかということにしか頭を使わない。富める者しか尊敬せず、財貨の所有にしか名誉心の満足を覚えない、と。ソクラテスはそんな心の状態を“魂の病気”と呼んでいます」“魂の病気”といわれるとドキッとしてしまいますが、現代でもお金が価値観の中心になってしまうことはあります。では、魂の健康とは?藤田さんによれば、ソクラテスの答えはこうです。「人間の心には、本来優れた能力がたくさん備わっているもの。それらが本来の役割を果たし、善いものを善い、美しいものを美しいと感じられる状態が“魂の健康”で、魂が健康でないかぎり幸福はありえない、とソクラテスは考えました。彼の哲学的問答は、魂を健康にする治療のひとつだったんです」■豊かな生活はあくまで“おまけ”!そして、ソクラテスの時代から2400年後の現代。日本では雇用が不安定だったり、老後の生活資金が不安だったりとお金に関する悩みが尽きません。「もっと生活を豊かにしたい」という願いも、多くの人が持つ切実な思い。それでも、豊かさを願うことで魂は傷ついてしまうのでしょうか。藤田さんにそう伺うと、「私も30歳を過ぎるまで大学の非常勤講師で年収200万円台の期間が長かったので、もっと生活を豊かにしたいという思いはすごくよくわかります。だけど、わかるからこそ、その思いは危険だと、あえていわせていただきたいのです」とのこと。ソクラテスの思想の根幹をなすのは“自分はどういう人生を生きたいか”という問いかけ。藤田さんは「豊かな生活とは、その問いかけに答えて真剣に生きたときについてくる“おまけ”であるべきなんです。もっと生活を豊かに、という願いにつき動かされて人生を組み立てることは、やっぱり優先順位を間違えてしまっているんじゃないかと思うんです」と指摘します。魂を健康に保ち、幸せに生きるには、人生の基準を「お金」ではなく、善いものや美しいものに置いてみること。貧しい人を蔑んだり、“お金持ち”という理由で誰かをあがめたりせず、お金以外の価値を理解できる人と交流して、お金では量れない価値にたくさん触れること。それらが大切だと藤田さんはいいます。そのことを忘れさえしなければ、魂を傷つけることなく生活の豊かさを追い求めることも、不可能ではないのです。■プラトンが伝える“ソクラテス像”ソクラテス研究者として活躍する藤田さんがソクラテスに興味を持ったきっかけは、プラトンの著作だったのだとか。「じつは、ソクラテスは1冊も本を書いていません。私たちが知ることのできるソクラテスとは、おもに“プラトンの本に登場するソクラテス”のことです。プラトンの著作『パイドン』は、裁判で死刑判決を受けたソクラテスが最後の一日に友人たちと哲学の対話をするというフィクションですが、そのソクラテスのかっこよさに完全にノックアウトされてしまいました。誰もが心の中にヒーローを持つものだと思いますが、私にとってのヒーローはソクラテスで、そのソクラテス像をつくったのが『パイドン』でした」著書『ソクラテスに聞いてみた』は、現代の若者とソクラテスを名乗る老人とのやりとりを描いたフィクション。気軽にソクラテスの哲学のエッセンスに触れることができます。本書をきっかけにソクラテスに興味を持った人へのおすすめの哲学書を伺うと「プラトンの『ゴルギアス』がおすすめです」と藤田さん。「ゴルギアスというのは当時の有名な知識人の名前で、プラトンの『ゴルギアス』には、このゴルギアスをはじめ、3人の知識人が順番に登場して、主人公のソクラテスとガチンコ対決をします。とくに、最後に登場するカリクレスというキャラクターが強烈で、“哲学なんてなんの役にも立たない”とか、日本の財界のお偉いさんみたいなことをいうんです(笑)。このカリクレスとソクラテスの対話が本当におもしろいんですね。プラトンの本は難しい哲学用語がなくて誰にでも読めるものです。ぜひ本家本元のプラトンの本も読んでみてほしいと思います」*とっつきにくいと敬遠されがちな哲学ですが、本来は“よりよい人生”を考えるためのもの。『ソクラテスに聞いてみた』を入り口に、よりよい人生について、豊かさと幸せについて考えてみませんか?(文/よりみちこ) 【取材協力】※藤田大雪・・・1980年京都府生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程を修了。日本学術振興会特別研究員、京都大学非常勤講師、大阪体育大学 学習支援室主任を経て、現在は京都光華女子大学キャリア形成学部専任講師。専門は古代ギリシア哲学。博士(文学)。主な論文に「プラトン『パイドン』における自然学批判について」(『西洋古典学研究』2011年)、訳書に『ソクラテスの弁明』『クリトン』『大ヒッピアス―美について』(いずれもkindle版)。 【参考】※藤田大雪(2016)『ソクラテスに聞いてみた人生を自分のものにするための5つの対話』日本実業出版社※平成26年分 民間給与実態統計調査―国税庁
2016年04月15日真面目で頑張り屋の人ほど、お金が貯まらない の続きです。お金を貯めるとなると、すぐに思いつくのが節約だ。けれども、家計再生コンサルタントの横山光昭さんは、こんなふうに言う。「実はケチケチ節約するよりも確実にお金が貯まる方法があります。それは、固定支出をカットすることです」■「固定支出」と「流動支出」お金を貯めるには、出ていくお金(支出)を抑えなければならない。この時に、最初に覚えるべきことは、支出の内容は2種類あるということ。支出には、毎月決まった支出のある「固定支出」と、月に応じて支払い額が変わる「流動支出」があるのだ。よく雑誌などに載っている節約や、やりくり術は、食費や光熱費など「流動支出」に目を向けたものが多い。でも、これらは節約の「出来」で結果が左右されるので、安定した効果は望めない。一方で、固定支出は毎月決まった金額だけに、一度そぎ落とせば、その分は安定した結果が伴う。見落としがちになるからこそ、固定支出を見直すことで得られるメリットは大きいのだ。●「固定支出」と「流動支出」の例固定支出 : 家賃、生命保険料、新聞代、など流動支出 : 食費、日用品費、光熱費 など(出典:「年収200万円からの貯金生活宣言」より抜粋) ■あなたの生活をむしばむ固定費ワースト3今回の記事では、厳密な意味の会計用語としての「固定」や「流動」という支出分けではなく、毎月必ず払う必要があるものを「固定費」と考えてみる。横山さんに多くの人が抱えがちなムダな固定費をランキングしてもらった。第1位 ムダな会話やメールのもととなる携帯電話代第2位 意味のないおつき合いに費やされる交際費第3位 保障内容も知らない高額の生命保険料(出典:「年収200万円からの貯金生活宣言」より抜粋)「ある、ある」「これって、私のことだ」と、心当たりのある人も多いのでは? 解決方法を横山さんに教えてもらった。 ■抑えたい固定費第1位、携帯電話代を抑えるには?「格安スマホがおすすめです。ネット検索などで、大まかな格安スマホの棲み分けなど概要をつかんだら、電気量販店に行って相談してみましょう。機種によっても違いがあるので、『携帯コンシェルジュ』のような存在の店員さんに、個別で自分に適したプランを教えてもらうのが近道です」(横山さん)■合計すると意外と多い!? 交際費を抑えるには?「交際費の回数と金額を書き出してみましょう。たとえば、ママ友とのお茶会。1回1回の金額は小銭程度でも、あらためて書き出してみると結構な金額になっていることも多いものです。『このお金があれば、あれが買えたのに』というふうに、金額を自覚するとムダな交際費を減らすことに繋がります」(横山さん)■保険は大事、でも払い過ぎはNG 生命保険料を抑えるには?「生命保険には、『死亡保障』『医療保障』『貯蓄』の3つの効果があります。もちろん全部に入っていれば安心ですが、それで保険貧乏になってしまうのは問題です。あなたは、3つのうち、どの効果を優先したいですか? つまり、何に対しての備えが欲しいですか? 保険の見直しは、そこを軸に考えてみると、わかりやすいですよ」(横山さん) このムダな固定費ランキング、実は10位まであるのだが、いずれも思い当たることばかり。書籍には詳しく書いてある。次回は、貯蓄体質になるための方法を紹介します。■今回取材にご協力いただいた横山さんの著書 年収200万円からの貯金生活宣言 (横山光昭著/ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)
2016年04月15日「真面目で頑張りすぎる人ほど、お金が貯まらないんですよ」と言うのは、家計再生コンサルタントの横山光昭さん。苦しい家計を再生させることを得意とするファイナンシャルプランナーで、これまで約9,000人の家計を「再生」させてきた。■「生活下手」と「お金」は密接にリンクするこれといった不満はないが、どこかで気持ちが満たされず、不安や寂しさ、ストレスを感じて、その人らしく生きられない…。最近、このような人が増えていないだろうか?「このような方々は、思いどおりの生活が実現できていないのと同時に、お金の面でも自由ではありません。『生活下手』と『お金』は密接にリンクしてしまうのです。充分な収入があっても、月末になるとお金がない人や貯金ができない人は、生活自体を見直す必要があるかもしれません」(横山さん)。■自分の「お金のステージ」を知ろう生活自体を見直すためには、まず自分の「お金のステージ」を知ることが必要だ。「私が家計相談で目にする現実を平たく言うと、家計をスリム化したり、キャッシングを減らさなければいけない人が、投資関連の本を読み漁り、実際に挑戦してのめり込み、成果に一喜一憂するケースが多いのです。でも、人はそれぞれに合った『お金のステージ』をこなさないと、必ず失敗します」●3つのお金のステージ 第1ステージ お金を管理する実生活に関わるお金をマネジメントしていく段階。家計簿を使ってお金の流れを把握する、ムダな支出は抑える、貯金を少しずつするなど、お金と向き合ってコントロールができるようになるための大切な基礎の時期第2ステージ お金を学ぶ第1ステージでできたお金をどう活用するかを学ぶ段階。知識や情報が足りないと進歩はないので、本を読んだりセミナーに参加したりと時間をかけて「お金」をつかんでいく時期第3ステージ お金を活かす実際にお金を「活かす」段階。興味本位で楽しむ、学ぶためのアマチュア投資から、長期や分散投資による揺るがない組み立てを意識するものまで色々ある(出典:「年収200万円からの貯金生活宣言」より抜粋) 多くの人は、第1ステージにいる。それなのに、憧れや夢、はたまた勘違いでレベルの違うステージへの向かってしまいがち。抜け道やマジックはない。そのことに気づいたことがいちばんの近道となる。「これからの貯金生活を順調に進めるためは、常に自分は今どのステージだろうか? 何をすべきなのか? を意識してください」(横山さん) ■すべての始まりは、「貯める理由をハッキリさせる」こと「自分は今、何をすべきなのか?」を考え始めたのなら、その第一歩は、「貯める理由をハッキリさせること」。「『何となく』で貯められるほど、貯金はカンタンではないのです」(横山さん)多くの人は、限られた収入で家計をやりくりし、家族みんなで生活していかなければいけない。たっぷりと余裕がある人など、ほんの一握りだ。加えて、人間はお金があれば使いたいし楽しみたい、ラクをしたいと思う生き物。要は、ほとんどの人がお金を使いたい気持ちをコントロールし、自分なりの考え方や価値観を持ち、それを家計に反映させる必要があるということ。だからこそ、「何のために貯めるのか?」が、とても重要になってくる。そうは言っても、貯める理由が今は特に見つからないという人もいるのでは? そんな人はどうしたら良いのだろうか?「今はこれといった目的がない人も、貯金があることで、未来の可能性や選択肢が広がります。だから貯金はして欲しいですね」(横山さん)「貯める目的」にフォーカスできたら、次回からは具体的な方法論について触れていこう。■今回取材にご協力いただいた横山さんの著書 年収200万円からの貯金生活宣言 (横山光昭著/ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)
2016年04月14日こんにちは。深沢真太郎です。ビジネスパーソンを数と論理に強くする「ビジネス数学」を提唱する、教育コンサルタントです。いきなりですが、500円と600円はどちらが安い金額でしょうか。もちろん、500円です。「なにを当たり前のことを」と思われたかもしれません。でも「当たり前」と感じるのは、500と600という2つの数字だけを単純比較しているからです。では、もうひとつ質問です。「500円と600円では、600円のほうが安い」と思わせるためにはどうしたらよい?今日は、そんなお話です。■紙版とセットで電子版の雑誌を売るには?あなたが、ある雑誌のマーケティング担当者だとしましょう。読者にその雑誌の「紙版」と、新たにリリースが決まった「電子版」をセットで購入してもらうため、どうプロモーションしようかを考えています。ちなみにこの雑誌の「紙版」と「紙版&電子版」の価格は以下の通りです。紙版のみ:500円/月【NEW!】紙版&電子版:600円/月さて、あなたならこれらの金額を広告で見せる(魅せる)ことで、どのように「【NEW!】紙版&電子版」をPRしますか。仮にこのままで広告を出すと、おそらく見た人は単純にこの2つの金額を比較しただけで、「紙版のみ」を選ぶケースが多くなってしまいそうです。しかし、それでは困るわけです。表記を工夫することで、どうにか「【NEW!】紙版&電子版」が安い買い物であることを訴求したいですね。■あえて選ばれない選択肢を入れてPRする私であれば、このような表記でPRするでしょう。紙版のみ:500円/月【NEW!】電子版のみ:600円/月【NEW!】紙版&電子版:600円/月本質をご理解いただくために少し極端にしましたが、要するに「【NEW!】紙版&電子版」がおトクであるという理由をこちらがつくってあげればいいわけです。もちろん、こんな価格設定にしたら「【NEW!】電子版のみ」は売れないでしょう。でも、それでいいのです。なぜなら、私はあくまで「【NEW!】紙版&電子版」を売りたいのですから。このエッセンスは、ビジネスでよく利用されています。たとえば、なにかを学ぶ講座(10,000円)を売りたいとします。ビギナープラン:5,000円レギュラープラン:10,000円これでは単純に5,000円と10,000円の比較をされてしまいます。ですから、ちょっとだけお試し!ビギナープラン:5,000円すぐにマスターできる!レギュラープラン:10,000円目指せ上級者!アドヴァンスプラン:50,000円このように、あえて選ばれない選択肢「アドヴァンスプラン」を見せることで、こちらが選んで欲しい選択肢をおトクに見せることができます。*私たちが消費者の立場のときは、このような売り手の思惑も理解したうえで、数字の駆け引きに勝ち、自分にとってもっともおトクな選択をしたいですね。賢い消費者とは、「アタマのいい人」のことではなく、「勝負に勝った人」のことを指すのです。(文/深沢真太郎) 【参考】※ビジネス数学の専門家深沢真太郎〜数字が苦手な人の救世主〜-YouTube※ビジネス数学ブログ※深沢真太郎(2015)『そもそも「論理的に考える」って何から始めればいいの?』日本実業出版社
2016年04月13日東京マウントガールズ
兄の連れてきた婚約者は…
いきすぎた自然派ママがこわい