私が抱いていた不登校のイメージは、ネガティブなものだった出典 : 皆さんは「不登校」という言葉にどのようなイメージをお持ちでしょうか。私はとても暗いイメージを持っていました。人の目を気にし、暗い部屋でじっと息を殺して暮らしているような、そんな勝手な想像を漠然と抱いていました。しかし実際に子どもたちが「不登校」になり、家で過ごす様子を見ていると、その言葉のイメージとのギャップに戸惑いを覚えるようになりました。不登校の様子は以下の記事をご参照ください。子どもたちの様子に「不登校」という言葉は似合わない学校や幼稚園に行かなくなってから、子どもたちはとてもよく笑うようになりました。毎朝必死で登校し、疲れ果てて帰宅していた頃には1度も見たことのなかった、のびやかな笑顔です。こんなに明るい「不登校」があったのか!と、自分でも驚いています。現在2万5千人ほどいると言われる小学生の不登校児。もちろん、その家族の数だけさまざまな過ごし方がありますので、私が抱いていたイメージのようなご家庭もあるのかも知れませんが・・・。実態を知らずに勝手なイメージを抱き、それを固定させるのは本当によくないな、と自分に言い聞かせています。とにかく、とても明るく家で過ごしている子どもたち。私たちは、学校や幼稚園に行かずに家で過ごすことをマイナスイメージの強い「不登校」ではなく、ポジティブなイメージの「ホームスクール」と呼ぶことにしました。不登校児童生徒数の推移(文部科学省)それでも娘の不安は尽きないようで…出典 : 小学3年生の娘が学校に行かなくなって初めの半月ほどは、何も言わずにやりたいことをやらせてみました。読書が好きな娘は1日中本を読み、人目が気にならない時間帯に庭で遊び、自由を満喫していました。学校へのストレスが原因でチック症状がたくさん出ていたので、自由に過ごすことで少しでもそれが軽減されればと思っていたのです。そうしているうちに、娘が自分から「お勉強をしなくてもいいのかな?」「お友だちはどんどん先へ進んでいるのに」と言うようになりました。それならばと、国語・算数・理科・社会・音楽・図工・体育の7教科を毎日30分ずつ時間を決め、勉強することにしました。これは、元来自由時間を過ごすことが苦手な娘には、とても良いやり方でした。「何をしてもいいよ!」と言われると、何をすればいいのか決められず、ただただぼんやりとした時間が過ぎていき、娘自身もそれに焦りを覚えていたからです。30分ごとに鳴るアラームに合わせて予定表を確認し、「よし!次は社会だからあの本を読んでみよう!」「あ、次は体育だからDVDを観ながらダンスをするね!」とくるくる動き回る娘は、本当に楽しそうでした。ルールに厳しいアスペルガーの娘。「ホームスクール」は特性への対応を学ぶいい機会に出典 : ある日、図工の時間に「絵の具で絵を描きたいけどいい?」と尋ねられました。私「もちろん!それがホームスクールの醍醐味だからね!」娘「でも、絵の具を使ったら30分で終わらないと思うんだけど・・・」私「それだったら、予定を変更してみてもいいんじゃない?やりたいことが見つかったら、思い切りやったらいいよ。ここは学校じゃないから、絶対にスケジュール通りに動かないといけないことなんてないんだよ。臨機応変にね!」娘「わかった!」娘はその後の予定を2つキャンセルし、たっぷり1時間半、画用紙に向かって絵の具で絵を描き続けました。こうして、たとえ予定を立てていても、やりたいことが見つかった時には少しずつ予定を変更しながら毎日を過ごせるようになりました。出典 : 「急な予定変更に弱い」「決めたルールは頑なに守る」という特性を持つアスペルガーの娘ですが、これを機に「まあいいか!」と割り切れる瞬間が少しずつ増えてきたように思います。今はまだ、自分で決めたスケジュールの変更を許せるようになった段階。これが少しずつ広がって、他人の都合でスケジュール変更が行われた時も、怒ったり泣いたりせずに「まあいいか!」で乗り切れるようになってくれればいいな…と思います。時間を自由に使えるのも、ホームスクールならではの良さ出典 : そうこうしているうちに、「今日は1日絵を描いて過ごしたい」「今日は1人になって読書に専念したい」「今日はずっとアイロンビーズをやりたい」と言うようになり、いつの間にか30分区切りのスケジュールを立てることはなくなってきました。学校に行かなくなってすぐは、学校のお友だちに遅れないように、学校の進捗に合わせて勉強しておかなくては!という意気込みが私にも娘にもあったように思います。でも最近は、せっかく思い切ってレールを踏み外したのだから、学校の進捗にこだわることはなく、思い切り好きなことに没頭するほうが人生が豊かになるんじゃないかな?と思うようになりました。ただしテレビやゲームといった、誰かが作ったものを一方的に受け止めるようなものに時間を費やすのはもったいないので、ゲームは1日30分、テレビも決まった時間に親と一緒に観るようにしています。今は芸術の秋・読書の秋ということで、1日中LaQで何かを作ったり、本を見ながらひたすら新しいおりがみに挑戦したり、アイロンビーズであらゆるモチーフを作ったり、テーマを決めて図書館で借りた本をたくさん読んだり、同じ映画を何十回も観たり・・・。そんな風にしながら毎日を過ごしています。勉強もしないと!という気持ちは、漢字検定に挑戦したり、算盤や学研などの習いごとに通うことで解消するようにしています。まだまだわが家のホームスクールは始まったばかり。これからどんな風に変化していくのか、私自身の楽しみでもあります。 (ラキュー)ルールから外れて1番不安なのは子どもたち。だからこそ、楽しい時間を大切にしたい出典 : 不登校になって、どのように過ごせば良いのかわからない、というお声をよく耳にします。わが家では「子どもの笑顔が引き出せることかどうか」を最優先に考えています。その時にやりたいことが見つからなければ、「こんなのがあるけどやってみる?」「こんなイベントがあるけど行ってみる?」と声をかけ、子どもが興味を持ったものだけを一緒にやってみるようにしています。そうすることで、少しずつではありますが、子どもたちの世界を広げていくことができるのではないかと思います。そして、親子が一緒に没頭できる何かを見つけることができれば、喜びを共有できる瞬間や会話が増え、子どもは「この家にいていいんだ」「学校に行かなくても楽しんでいいんだ」「お母さんは私の気持ちを分かってくれるんだ」という安心感に包まれて過ごすことができるようになるのではないでしょうか。子どもだけに合わせるのではなく、親も一緒に楽しめる何かを見付けることができるといいですね。
2016年11月15日この子に一体何が起きているの?出典 : 子どもの発達が気になったとき、そして「もしかして何か障害があるのではないか」と疑い始めたとき、みなさんはどんな心境だったでしょうか?我が子に障害があると考えたくないという保護者の方もいると思いますが、私は「必要なら早く子どもをサポートしてもらえる場所に繋がりたい…」という気持ちでいっぱいでした。私の住んでいる地域では、3歳にならないと発達障害の診断は出ないということでしたが、1歳半健診を受けた際に紹介された「療育センター」で相談に乗ってもらうことにしました。療育センターと聞いても、知識のなかった当時の私には、何をする所か全くわかっていませんでした。とにかく子どもの今の状態が知りたい一心だった私。うちの子は発達に問題があるの?他の子と何か違うの?そんな気持ちが渦巻きながら、療育センターの予約日までの数ヶ月を過ごしていました。待ち遠しかった療育センターでの相談。最初に面談したのはソーシャルワーカーさんだった出典 : 初めて療育センターを訪れた日、息子は2歳になっていました。最初に話を聞いてくれたのは、ソーシャルワーカーと呼ばれる人でした。「 医師と私たちを結ぶ、『何でも屋』と思って頂きたい。」そう言われたのを覚えています。あらかじめ書いてきて下さいと貰っていた問診票や生活記録表を渡しながら、私たち親子(夫、私、息子)とワーカーさんとの4人で和やかな4者面談を行いました。生活記録表には、生まれてからの成育歴を記しました。また、問診票には睡眠が乱れていることや、偏食、衝動性でどれほど苦労しているかなど、母親目線での育てにくさを記入しました。面談では問診票の確認のほか、夫から見た息子の様子も聞かれました。そのあいだ息子は、用意されていたオモチャや私が用意していたお気に入りグッズでその場を過ごしました。面談が終わると、ワーカーさんから「それでは医師の診察になりますね」と言われました。いよいよ始まった息子の診察。医師の分析、視点の違いに驚き!出典 : その後、医師の待つ別室へと息子と入室しました。部屋に入ると医師が1人、他にもう1人女性の保健師さんがいました。医師は初めに主人と私に笑顔で挨拶をした後に、「お子さんの様子を少し拝見しますね。簡単なテストのようなものもします。」と言い、1歳半健診でやるような型はめや絵本、クレヨンでお絵かきなどをしました。検査に使う道具や絵本、絵の描いてあるカードなどは、医師が指示を出すタイミングまで、白い布に覆われた棚の中に隠してありました。整理された環境…それはまさに、子どもが落ち着いて目の前のことに集中できるよう工夫された部屋でした。こうして、検査段階から既に療育への第一歩が始まっていたのです。その後、一通り息子の課題や検査が終わり、先生が言いました。「実はドアを開けた瞬間から息子さんがどこに注目するのかを見ていました。息子さんの場合は、真っ先に物に注目していましたね。通常というと語弊があるかもしれませんが、このくらいのお子さんであれば、入る時点で周囲を警戒する子がまぁ、一般的には多いんですよ。息子さんはそうですね…人ですね。人への関心が少ないお子さんではありますね」私は、先生のこの言葉に衝撃を受けました。なぜなら、これまでの子育ての中で私が気になっていたことは、落ち着きがないとか、偏食・不眠という「目に見えて気になるところ」だけだったからです。発達の遅れというのは行動だけではなく、目に見えないこと(感受性)にも注目するのですね。やっと子育ての相談ができる…身構える私。そして下された診断名は出典 : いよいよ、医師と私たち夫婦との面談です。特に私は身構えていました。「やっとこの子に起きていることがわかる…!」この日が来るまで、何度眠れない夜を過ごし、何度涙を流したか…。医師から告げられたのは、以下でした。●注意関心の向け方に偏りがある・人より物に関心がある●発達に凸凹がある・目で見て理解する力はある(視覚優位)・意図、意味、気持ちや状況、ルールや人との距離など、見えないものをイメージする力が弱い●コミュニケーションの困難さ・相手の意図を理解してコミュニケーションする力が弱い「この、3つの観点から総称して『自閉症スペクトラム障害』と言えます。そこに交わるカタチで、様々な障害が関わってきていたりもするのですが、お子さんの場合はADHDの傾向が既にあります。ただし、未就学児に対する診断は下せないことになっていますから、ADHD(仮)と思ってください。」医師は時おり穏やかに、でも強くきっぱりと言いました。「この子にはきっと何かある…」わかってはいた。でも現実を突き付けられたショックは大きくて出典 : うちの子は自閉症スペクトラム障害なんだ…。障害と名のつく診断を貰ってしまった…。その直後、しばらく呆然としたのを覚えています。そして、気付いた時に私は泣いていました。声もなく、ポロポロ涙が止まりませんでした。主人も冷静を装いながら、私の背中を一生懸命さすってくれていました。医師は更に続けました。「診断名というのは、あくまで名前です。総称のようなもの。これから先、診断名としては一生取れることはないかもしれないけれど、息子さんはまだ小さい。これからの関わり方次第で、とても伸びるお子さんだと思いますよ。賢いのね、彼。とても賢いわ。将来が楽しみ。だから、一緒に向き合っていくお力になれればと思います。」そう締めくくりました。支えになった夫の存在。そして始まったのは新しい未来だった出典 : 「診断名としては一生取れることはないかもしれないけれど」医師のこの言葉は、悪意からではなく「大丈夫。我々もサポートします。未来をみよう!」という気持ちからだったのだと思いますが、この時の私は、この言葉だけがずっと頭から離れませんでした。主人は、滅多に動じない人ですが、流石に悲しそうな表情でした。私が感情のまま泣いてしまったことで、それをどうにかしてあげなきゃ。家族を支えなきゃ。という気持ちでいっぱいだったようです。こうして私たち家族の、療育と向き合う日々が始まるのでした。その様子は次の記事で書きたいと思いますので、宜しければお付き合いください。
2016年11月14日ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは?出典 : ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは、人が社会で生きていくうえで必要な技術を習得するための訓練のことです。人は生まれてからたくさんの人と出会います。その関わりの中で無意識的に、「してはいけないこと」、「した方がいいこと」などの暗黙のルールを身につけていくのです。ところが発達障害のある場合などは、それらをスムーズに身につけられないケースがあります。たとえば、「ゲームのルールが守れない」というのも一つの例でしょう。「周りの人がこうしているから自分もこうしよう」と自然に判断できたり、「ルールは守らなければいけない」と注意をされてすぐに改善できるようであれば、SSTは必要ありません。その集団内での行動の善し悪しを周りの様子から推察したり判断することが苦手で、注意をされてもなお同じことを繰り返してしまう場合においてSSTは有効な改善手段となりうるのです。SSTでは、ゲームのルールが守れるようになるという目標に対して「ゲームは負けることもあるということを知る」「負けても楽しいという感覚を身につける」「悔しくても自分の感情をコントロールする」といった小さなステップを作ります。その一つひとつの過程を丁寧に踏み、ゆっくりと社会性を身につけさせていくのがSSTなのです。ソーシャルスキルトレーニング(SST)はどこでだれが行ってくれるの?出典 : は病院や療育センターで専門家から受けることもできますが、学校や家庭など、どんな環境でも行うことができます。そのため、 SSTを実施できる人もトレーナーやセラピストなどに限られません。学校の教師や保護者など、日頃から子どもと接している人でも、日常的にSSTを取り入れることは可能なのです。しかし、子どもの特性や支援の内容によっても、最適なトレーニング方法は変わってきます。それぞれのケースに合わせて実施場所、実施者を適切に選択していくと良いでしょう。ちなみに民間企業・団体で受講するときの相場は、運営形態にもよりますが、1回あたり4500円~10000円程度のことが多いようです。特定非営利活動法人広島クリニカルソーシャルワーク研究所ripple(リプル)ソーシャルスキルトレーニング(SST)の対象出典 : は、社会で人と関わりながら生きていくことに困難を伴う人全般を対象としています。たとえば、・指示を理解したり、判断したりするのが苦手・得意なことと不得意なことに大きく偏りがある・自分の行動をコントロールするのが苦手・人とのコミュニケーションが苦手・運動が苦手・情緒が不安定などがこのSSTの対象です。ここでは主に子どもに対するSSTを取り上げていきますが、SSTは子どもだけではなく大人が受けられるものもあります。ソーシャルスキルトレーニング(SST)の方法出典 : の中には多くの実践方法があります。今回はそのうちのいくつかをご紹介します。ゲームには「ルールを守る」「勝ち負けの結果を受け止める」「仲間と相談や協力をする」などの多くのソーシャルスキルの要素が含まれています。子どもが楽しみながら社会性を身につけることができるのでとても有効な手段です。指導の担当者は、それぞれの子どもにとって何が目標なのかを常に意識しながらゲームを進めていくことが重要となります。ディスカッションやディベートは、相手の意見をしっかりと聞きつつ、自らの意見を述べる必要があるため、言葉のキャッチボールをする訓練としてすぐれています。子どもが興味をもてるテーマ選びや、参加人数、時間などを考えながら行うと良いでしょう。どんな場面でどんな振る舞いをすればいいのかということを、指導担当者や子ども同士が実際に演技したり、人形を用いて演じることで、実際の場面での適切な振る舞いを学んでいきます。対象となる子どもにとって、現在課題となっている言動や場面を、多少アレンジしながら行うのがより効果的です。工作、調理など、「何かを作って遊ぶ」「何かを作って食べる」といった楽しいゴールに向かう過程で、ほかの人との相談、役割分担、助け合いといった、社会生活に必要なスキルを学んでいきます。ワークシート、絵カード、「ソーシャル・ストーリー」などを用いることで現在の子どもの課題になっている言動を、意識化していくこともSSTの方法の一つです。ソーシャル・ストーリーとは、絵と、その絵が表す出来事が短い文章として書かれたテキストで、その文章を子ども自身が読むことで(文字の読めない小さい子どもの場合は大人が読んであげることで)、その場面での振る舞いを学べるというものです。これらで扱う場面や題材は、目の前の子どもの行動に合わせてきちんとアレンジし、オリジナルなものを作ると効果的です。このように、SSTはさまざまな手段を通して実践をすることができます。次はさらに具体的なSSTの例について日常生活と対人関係とに分けてご紹介します。日常で取り入れられるソーシャルスキルトレーニング(SST)出典 : あいさつは、人とのコミュニケーションには欠かせないものです。ところが子どもの中にはどこでどのようにあいさつをすればよいかが分からなかったり、あいさつの言葉を口に出すのが恥ずかしかったりと、さまざまな理由からあいさつができない子どもがいます。適切なタイミングで適切なあいさつの言葉を発することができるようになるためには、「大人が積極的にあいさつをする」こと、「あいさつを強要しないように気をつけること」が大切です。「あいさつをすることは気持ちがよいこと」「相手の気持ちが嬉しくなること」ということを子どもが肌で感じられるような環境を作っていくとよいでしょう。公園の遊具に乗るとき、バスに乗るとき、お店に並ぶときなどに、つい並んでいる人の間に入ってしまったり、「一番」じゃないといやだと駄々をこねてしまったりする子どもがいます。一番であろうとすること自体は決して悪いことではありません。しかし順番を守ることができないと、そこからけんかに発展してしまったり、相手から嫌な印象を持たれてしまったりとトラブルになってしまう可能性があります。そうならないために大人ができることは、「日頃から自分が順番を守り、その姿を子どもに見せる」、「子どもが順番を守れたときに褒める」、「一番じゃなくても大丈夫だということを伝える」などです。順番を守れなかったからといって叱るのではなく、自然に順番を守れるようになるために日々の生活から習慣を身につけていくことが重要です。対人関係におけるソーシャルスキルトレーニング(SST)出典 : 子どもの中には、相手の気持ちを理解することが苦手な子どもがいます。相手の表情から気持ちを読み取ることが苦手だったり、共感するということが苦手だったりと理由はさまざまですが、時にはそれが人とのかかわりにおいてネガティブに働いてしまうことがあります。そんな子どもがうまく相手の気持ちを読み取れるようになるために、多くのSSTの方法が考えられています。たとえばゲームを用いたもの、ロールプレイを用いたもの、絵カードを用いたものなどです。「嫌なことをされたとき自分はどう思うか、その嫌なことを実際にされている相手はどんな気持ちか」を考えたり、今相手が考えていることを意識的に想像したりする訓練をすることで、実際の生活でも自然と相手の気持ちを理解できるようにサポートをします。上記に挙げたように、相手の気持ちを理解することが難しい場合などは、相手を傷つける言葉を言ってしまったり、相手にとって興味のない話をひたすら話し続けてしまったりという言動につながってしまうことがあります。相手の気持ちをくみ取り、適切な話題・話す時間・使う言葉を選んで進めていく会話は、多くのステップを含んだソーシャルスキルなのです。多くの要素を含む会話だからこそ、その訓練は「決められた質問(自分の名前など)に答える練習をする」というものから「「シナリオに従って言葉のキャッチボールの練習をする」というもの、「おしゃべりタイムを設けて振り返りを行う」というものなど多岐にわたります。ソーシャルスキルトレーニング(SST)で大切にしたいポイント出典 : 多くの所でさまざまな指導者によって実践されているSSTですが、SSTを行うためには気をつけたいポイントがあります。ここではそのうちの2つをご紹介します。社会性を身につけている大人から見ると、社会のルールに従うことのできていない子どもの行動は目につくものとしてとらえられるかもしれません。しかし、子どもにとって叱られたり注意をされたりすることは嬉しいことではありません。それどころか、叱るという行為は社会性を鍛えるのに逆効果の場合もあるのです。できないことを叱るのではなく、できたことを認めて褒めるということが子どもが楽しみながら自然に社会性を身につけていくのに重要なポイントなのです。冒頭でも述べたようにSSTを必要とする子は、生まれてから育っていく中で自ら周りの人を観察して、社会性を身につけていくのが苦手な子どもです。そのため、一般的に当たり前だと思われる会話や行動・思考が自然にできないケースが多く見られます。同時に、その子がそれまで積み上げてきた「当たり前」も存在します。その当たり前を変えるのには長い時間と、多くの小さなステップを踏まなければなりません。指導する側に立つ人は、長い目で物事をとらえ、ゆっくりと成長を見守っていく姿勢が必要なのかもしれません。まとめ出典 : 今回は子どもの社会性を訓練するSSTについてご紹介しました。SSTには多くのトレーニング方法があるため、今回紹介したものはごく一部です。しかしSST全体において言えるのは、一つの目標に対して多くのステップを作り、一歩一歩進んでいくことが大切だということです。上で少しふれたように、たとえば「会話が苦手」という一つのケースの中には、「相手の気持ちを読み取ることができない」「相手の言っていることの意図が汲み取れない」「自分がどんな言葉を使って返答したらよいかが分からない」というような多くの要素が含まれています。最初から「会話がうまくなる」という急激な変化を求めるのではなく、苦手なことを一つひとつ解消しながら本人の感じる「生きづらさ」に対応していけると良いでしょう。
2016年11月13日うつ病(大うつ病性障害)とは?出典 : うつ病とは、繰り返し気分が落ち込んだり、意欲がなくなることが特徴の精神疾患です。これらの症状がただの気分の落ち込みではなく病的なうつ状態であることを意味しています。人間は誰しも、身の回りで起きる出来事によって気分の落ち込みを感じたり、やる気がなくなってしまったりすることがあります。しかし何もないのに気分が落ち込み、感情を自分自身でコントロールできないときはうつ病を発症している場合があります。軽症を含めると日本の人口のうちの15人に1人がうつ病を発症したことがあると考えられており、現代社会では珍しい疾患ではありません。しかしながら、うつ病は自然治癒が難しく、治療が必要な障害という認識が重要となります。うつ病は、2013年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)の診断基準においては、双極性障害(そううつ病)とはっきり区別するため、大うつ病性障害という診断名に分類されています。本記事では、一般に普及しているうつ病という表記で説明していきます。うつ病の症状出典 : うつ病の症状には精神症状と身体症状に大きく分けられます。それぞれ代表的なものを中心に紹介します。■持続的な抑うつ気分:うつ病の代表的な症状です。症状として、気分がひどく落ち込む、憂うつ、ひどく不安になる、落ち着かない、イライラするなどの抑うつ気分が持続的に生じます。症状の多くは朝方が最もひどく、夕方になると少し良くなるという傾向があります。症状が進むにつれて、罪悪感などを感じ自分を責めてしまうようになり、悪化すると自殺願望を起こしてしまう場合もあります。■意欲の低下:何事にもやる気をなくしてしまいひきこもりがちになったり、趣味などに対してこれまでと同じような興味がもてなくなります。意欲の低下が進行すると日常生活に支障が出るようになり、外出や家族以外の交流をしなくなる傾向があります。■思考・行動の抑制・抑止:物事に集中することができなくなり、注意力・判断力が低下し、決断したり行動したりすることが難しくなります。これにより、・感情の動きが小さくなる・自己評価の低下・自分を責めてしまう・不安・焦燥感・妄想・自殺願望などの症状が現れやすくなります。■全身のだるさ・疲れやすさ:激しい運動をしていないのに、全身がだるく感じられ、疲れやすくなります。この疲労感は休憩しても回復せず、慢性化することが特徴です。■睡眠障害:うつ病のほとんどの人が睡眠障害になります。代表的な症状としては、不眠(眠ってもすぐに目が覚めるなど)が全体の8割、過眠(眠っても眠り足りない)が2割を占めます。特に、いつもより早く目が覚める人が多いようです。■食欲低下とそれに伴う体重低下:食欲低下もほとんどのうつ病がある人が経験します。味覚が分からなくなることで、食事の楽しさを感じることができなくなるなどの症状を発症します。食欲低下に伴い、人によっては体重が大幅に減少することがあります。こちらではうつ病を体験された方の経験を紹介します。うつ病で休職中の会社員です。私の経験では脳がつかれる感覚がすごくわかります。睡眠でも疲れが取れないようなら軽いうつの可能性もあるかもしれません。精神科にかかるのでしたらしっかりと医師に相談するのがいいと思います。かりにうつ病でも必ず治りますし早い段階で治療を開始するのはいいことだと思います。人によっていろいろな症状から現れます。まず不眠になる人や、憂鬱感が酷くなる人、拒食、不安、出社拒否、酷い倦怠感など、うつ病になるきっかけは個人によって違います。これらの症状が一度に出る人もいますし、「ただ泣きたくなる」とだけ言う人もいたりしますよ。上記のように、うつ病の症状は人により大きく異なります。長期間気持ちの落ち込みが続き、日常生活に支障をきたす場合は、一度うつ病を可能性を考えてみましょう。そして、うつ病かもしれないと思った場合は、早めに医療機関を受診しましょう。うつ病に伴う身体症状l ヤンセンファーマ株式会社うつ病症状チェックシートl シオノギ製薬ライフステージごとのうつ病出典 : ■学童期(6~12歳):子どもがうつ病を抱えてしまう可能性は低いですが、まれに発症する場合があります。学童期のうつ病では頭痛や腹痛、吐き気・嘔吐、チック症、おねしょが特徴となります。また、ひねくれたり、反抗的な態度を起こしてしまったりする問題行動が現れることもあります。■思春期・青年期(11~20歳):思春期や青年期は精神的な葛藤を抱えやすく、うつ病の症状も成人とあまり変わりません。身体とこころの成長バランスが崩れやすいので、突然の発症・症状の進行が一気に進むことがたまにあります。また、登校拒否やひきこもりの状態、アルコールや薬物に手を出してしまうなどの問題行動を起こすこともあります。■青年期・壮年期(21~64歳):青年期・壮年期は、仕事や人間関係、夫婦・親子関係など、生活のあらゆる場面でプレッシャーを感じやすいため、比較的うつ病にかかりやすくなる時期です。そうした背景もあり、うつ病の平均発症年齢は20歳台となっています。またホルモンバランスの崩れにより、更年期障害の症状としてうつを発症することもあります。女性の場合は、女性ホルモンの増加、妊娠、出産をはじめとする女性特有のうつ病があります。■老年期:老年期になると、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害、アルツハイマー病などの疾患からうつ病を合併することが多くあります。その他にも退職や家族・友人との死別などの喪失体験から来る精神的ストレスも、発症の原因となります。老年期のうつ病は、身体の不調などの身体症状が前面に出ることが特徴ですが、妄想などがみられることもあります。発達障害の二次障害としてのうつ病出典 : (注意・多動性障害)、アスペルガー症候群や広汎性発達障害(PDD)などの発達障害がある人は、うつ病が合併する確率が比較的高い傾向があります。そのときは、“人間不信的行動”という二次障害としてうつ病を発症する場合が多いです。人間不信的行動とは、自尊心・自己肯定感が低下して「自分はダメな人間かも知れない」と思うようになり、また、そんな自分のことを周りは誰も理解してくれないという気持ちから、周囲の人を信じられなくなったときに起こしてしまう行動のことを指します。発達障害がある人は、自身が発達障害であることを認識していないケースも多く、周りから理解が得られていない場合も多いです。その結果、人間不信になり、身の回りの環境に対してストレスを感じてしまい、知らない間にうつ病を発症しているということも少なくないのです。二次障害にうつ病が多い理由とはl 朝日新聞デジタルうつ病の原因出典 : うつ病の発症には、主に性格、ストレス、生物学的要因が大きく関与しているといわれています。かつてはうつ病は性格や遺伝の問題であるとされていました。しかし近年患者数が急増するとともに研究が進み、性格や遺伝の問題だけではないことが徐々にわかってきました。近年ではストレスや生物学的要因がうつ病に深く関与していると言われていますが、まだはっきりと解明されたわけではなく、研究が進められている過程にあります。■性格:主にきまじめな性格や、社交的な反面気が弱い性格の人がうつ病になりやすいと言われています。熱心に仕事に打ち込み、責任感が強くすべてのことに対して正直に取り組む人や、親しみやすくいい人として周囲からは見られるが、実は気が弱いために他者を優先させてしまう一面を持つ人が例として挙げられます。性格がうつ病の原因となる理由として、きまじめな性格により身の回りに起こる出来事をより重く受け止めてしまう傾向があることが挙げられます。深く考えすぎてしまうために、その出来事がストレスとなったり、対処しきれなくなるまで抱え込んでしまうのです。■ストレス:近親者の死亡、病気、家庭内のトラブル、出産、結婚・離婚、会社の人事異動や転勤、仕事上のトラブル、過労などさまざまなストレスがうつ病の発症の大きな誘因となっているという研究結果が出ています。■生物学的要因:上記の性格やストレス要因が当てはまる人のなかで、うつ病を発症する人としない人の違いは、主に生物学的要因によると言われています。脳の中で重要な情報伝達の働きをしているセロトニンやドーパミンなどの異常が、うつ病の発症と深く関わっているのではないかという有力な説があります。うつ病の診断基準出典 : アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計のマニュアル』第5版)による診断基準は以下の通りです。A.以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在し、病前の機能からの変化を起こしている。これらの症状のうち少なくとも1つは(1)抑うつ気分、または(2)興味または喜びの喪失である。注:明らかに他の医学的疾患に起因する症状は含まない。(1)その人自身の言葉(例:悲しみ、空虚感、または絶望を感じる)か、他者の観察(例:涙を流しているように見える)によって示される。ほとんど一日中、ほとんどの毎日の抑うつ気分注:子供や青年では易怒的な気分もありうる。(2)ほとんど一日中、ほとんど毎日の、すべてまたはほとんどすべての活動における興味または喜びの著しい減退(その人の説明、または他者の観察によって示される)(3)食事療法をしていないのに、有意の体重減少、または体重増加(例:1ヶ月で体重の5パーセント以上の変化)、またほとんど毎日の食欲の減退または増加。注:子どもの場合、期待される体重増加が見られないことも考慮せよ。(4)ほとんど毎日の不眠または過眠(5)ほとんど毎日の精神運動焦燥または制止(他者によって観察可能で、ただ単におちつきがないとか、のろくなったという主観的感覚ではないもの)(6)ほとんど毎日の疲労感、または気力の減退(7)過剰であるか不適切な罪責感(妄想的であることもある、単に自分をとがめること、または病気になったことに対する罪悪感ではない)(8)思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日認められる(その人自身の説明による、または他者によって観察される)。(9)死についての反復思考(死の恐怖だけではない)、特別な計画はないが反復的な自殺念慮、または自殺企殺、または自殺するためのはっきりとした計画B.その症状は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を起こしている。C.そのエピソードは物質の生物学的作用、またはほかの医学的疾患によるものではない。注:基準A~Cにより抑うつエピソードが構成される注:重大な喪失(例:親しいものとの死別、経済的破綻、災害による損失、重篤な医学的疾患・障害)への反応は、基準Aに記載したような強い悲しみ、経済的破綻、災害による損失、重篤な医学的疾患・障害)への反応は、基準Aに記載したような強い悲しみ、損失の反芻、不眠、食欲不振、体重減少を含むことがあり、抑うつエピソードに類似している場合がある。これらの症状は、喪失に際し生じることは理解可能で、適切なものであるかもしれないが、重大な喪失に対する正常な反応に加えて、抑うつエピソードの存在も入念に検討すべきである。その決定には、損失についてどのように苦痛を表現するかという点に関して、各個人の生活史や文化的規範に基づいて、臨床的な判断を実行することが不可欠である。D.抑うつエピソードは、統合失調感情障害、統合失調症、統合失調症様障害、妄想性障害、またはほかの特定および特定不能の統合失調症スペクトラム障害およびほかの精神病床がイ軍によってはうまく説明されない。E.躁病エピソード、または軽躁病エピソードが存在したことがない。注:躁病様または、軽躁病エピソードのすべてが物質誘発性のものである場合、またはほかの医学的疾患の生理学的作用に起因するものである場合は、この除外は適応されない。診断名を記録する際、各用語は以下の順に記載する:うつ病、単一または反復エピソード、重症度/精神病性/寛解の特定用語、そしてその後に現在のエピソードに当てはまる、以下に列挙するコードのない特定用語が来る。不安性の苦痛を伴う、混合性の特徴を伴う、メランコリアの特徴を伴う、非定型の特徴を伴う、気分に一致する精神病性の特徴を伴う、緊張病を伴う、周期発症、季節型などに分類される。うつ病に関する相談先出典 : うつ病かもしれないと思ったり、不安を感じる場合は専門機関などに相談することをお勧めします。■精神福祉保健センター:心の健康相談や医療機関への受診に関する相談、社会復帰相談や精神疾患の相談などを行っています。心の問題や病気で悩んでいる方そのや家族向けに無料で相談を受け付けているほか、電話にてこころの健康相談も行っています。全国精神保健福祉センター一覧l 八千代病院■保健所うつ病の治療や社会復帰に関する相談に、医師などの専門医がアドバイスを行います。お住まいの地区の保健所へ電話し、場合によっては家庭訪問を行うこともあります。■日本産業カウンセラー協会働く人のホットラインという無料電話相談をおこなっています。相談料金は無料です。職場、暮らし、家族、将来設計など、働くうえでのさまざまな悩みなどを相談することができ有料のカウンセリングも受けることができます。相談・カウンセリングをご希望の方へl 日本産業カウンセラー協会■U2plus:認知行動療法をベースにした無料のうつ病コミュニティです。無料のうつ病コミュニティl U2plus■いのちの電話自殺予防を目的として、日本いのちの電話連盟が運営しています。各都道府県ごと設置され、相談員が応対します。一般社団法人日本いのちの電話またうつ病の診断の際には、主に精神科や精神神経科で受診が一般的です。また、心療内科やメンタルヘルス科、メンタルクリニックなどの医療機関でも受診することができます。よく分からない場合は事前に電話やインターネットなどで確認することをおすすめします。うつ病の診断・治療の流れ出典 : 診断の際には、まず軽い問診を行います。うつ病を発症している可能性があると判断されると、身体検査から心理検査の流れで症状の程度などを検査し、うつ病かどうかを特定し定期ます。1.問診:うつ病の診断基準と照らし合わせ、どのような症状があるのか、どのような人なのかを聞いていきます。必要に応じて家族や周りの人にも質問し、さまざまな角度から本人と向き合っていきます。2.身体検査:その後身体の状態と他の合併症の有無を確認するために、必要に応じて身体検査を行います。代表的なものとして、尿検査、血液検査、画像検査(頭部CT・MRI)、心電図検査、脳波検査などが挙げられます。3.心理検査:心理検査は、うつ病の重症度を数値化するときに用います。ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)という質問表に従って質問が行われます。質問にはそれぞれ3~5個の答えが用意されいて、その中で一番当てはまるものを選択します。検査には15~20分ほどの時間を要し、重症度を5段階に分類します。うつ病は一人ひとりの症状に合わせて薬物治療、精神療法や電気けいれん療法などを行っていきます。■薬物療法:薬物療法の場合、うつ病に対してはうつ症状を改善する「抗うつ薬」が用いられたり、不安を抑える「抗不安薬」が処方されたりすることがあります。代表的な抗うつ薬として三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)などが挙げられ、十分な量を十分な期間服用することが重要であるとされています。うつ病は再び症状が出現することの多い病気です。回復後1年の間に約20パーセントの患者さんに再び症状が出現する上に、その後の再発も含めると、その割合は約40~50パーセントに上がります。薬物療法は継続することが大切であり、途中で治ったと感じて治療することをやめてしまうと半年後に再び症状が出現する危険性は2倍になるという研究結果がでています。しかし、治療法には個人差があり薬物療法に関してはことさら注意が必要です。■精神療法:現在様々な精神療法が開発されていますが、うつ病に有効であると考えられているのは認知行動療法と対人関係療法です。精神療法では、医師やカウンセラーとの対話を通して、自身がどのタイミングで不安や心配を感じるのか、物事をどのように捉えているのか自身の思考のクセを把握していきます。そして、不安を感じる状況をどのように捉え、対処していけばいいかを考え、自身の感情をコントロールできるようにしていくことで治療を進めます。また対人関係療法は、うつ病を抱えている人だけではなく、その人の家族や恋人などの重要な他者との関係に焦点を当てて、他者との関わり方を考えていく精神療法です。最終的には身近な他者との関係だけではなく、より広い範囲の人々に対してもよりよい関係を築けるようになることを目的とします。■修正型電気けいれん療法(m-ECT):頭皮から電流を流すことで意図的にてんかん発作を発生させ、抑うつ症状を改善します。この治療法が用いられるのは薬物療法をはじめ、認知行動療法、その他の治療では効果が認められない場合、あるいは妄想をしてしまうなど症状が非常に重く治療の緊急性が高い場合です。軽、中度のうつ病の場合、あるいは他の治療法によって効果が認められている場合には原則使用されません。電気けいれん療法がなぜうつ病や、双極性障害の症状に効果があるのかについては未だ解明されていません。しかし、多くの医療機関においてその有効性が確認されており、日本においても保険の適応となっています。以前は治療の過程で生じる全身のけいれんが骨折などの怪我につながるリスクがありました。しかし、1980年代頃から施行されるようになった「修正型電気けいれん療法(m-ECT)」では麻酔科医の同伴のもと麻酔薬及び筋弛緩剤を投与し、けいれんを防ぐことができます。治療を受けることができる医療機関は必要な薬剤や人員の確保ができる病院に限られるようです。うつ病l 慶應義塾大学病院出典 : うつ病の治療には時間がかかることも多く、場合によってはそれなりのお金もかかってしまいます。医療費については、個人の症状に合わせて治療が行われるため、一概には言えませんが、うつ病で初診の際にかかる費用は、診療費と薬代を合わせ、大体1万円前後というのが平均的です。ということは、保険を使わず自費負担の場合は、その全額を支払うことになります。保険を使った場合には、健康保険(健保)では本人は2割負担(2003年4月より3割負担(3~69歳))なので2000円前後、健保家族と国民健康保険(国保)では3割負担なので3000円前後を支払うことになります。平均的な通院ペースは2週間おきで、薬も2週間分処方されることが多いようです。2回目以降(再診)は、初診の頃より、薬の処方量が増えることも多く、その分薬代はかかりますが、初診料はかかりませんので、合計の支払金額は若干安くなるようです。このような治療費の負担を抑えるために、経済的な支援をおこなう制度があります。■自立支援医療制度:障害のある患者さんに必要な医療を確保し、継続して治療を受けられるように支援することを目的として定められたものです。医療費の自己負担額が原則として1割に減額されると同時に、所得に応じて1ヵ月あたりに支払う金額に上限が設けられます。■健康保険の傷病手当金(健康保険加入者向け):病気・ケガのために勤務先を連続して3日間休んだ場合、4日目以降から支給されます。支給金額は日割給与(標準の報酬日額)の100分の60であり、最長1年半間受け取ることができます。受給条件や受け取れる金額は場合により異なる場合があるので加入している保険組合に確認しましょう。また、国民健康保険の場合は任意支給となり、傷病手当金制度がない場合がほとんどです。■精神障害者保健福祉手帳:税制上の優遇措置をはじめ、さまざまな支援サービスを受けることができます。交通機関の運賃や公共施設の料金が割引となるサービスもあります。■精神障害労災:これは労働者災害補償保険法に基づく制度で、仕事中にケガや病気、後遺症もしくは死亡した等の場合、本人や遺族に対して一定の保険給付を行う制度です。うつ病になった時の、本人・周囲の人々の対応法出典 : うつ病の治療には十分な休養と休息を取ることが、最も重要となります。早く治そうと焦らず、規則正しい生活を送りましょう。栄養バランスのとれた食事、適度な運動・睡眠時間を取ることが望ましいです。また、うつ病を抱えている人は自分自身では気持ちをコントロールすることをすることを難しいと感じ、自身が思うように行動することができていない場合が多いです。そんな中、周囲の人がうつ病を抱えている人に”頑張れ”などの声をかけたとき、更にその人を追いつめてしまう恐れがあります。そのため、うつ病を抱えている人に対しては励ますより、少し休んでみるなどの提案を行い、その人がリラックスできる環境づくりをすることをおすすめします。まとめ出典 : うつ病は日本において、15人に1人が発症したことがあるといわれている、決して珍しくはない疾患です。一度うつ病を経験すると、ストレスのもととなる要因が多い現代社会において、他のストレス要因も敏感に感じ取るようになり悪循環に陥ってしまう場合も少なくはありません。そのため、悪循環に陥る前の初期治療、そして症状が治まった後の再発予防がとても大切になっています。近年研究が進んでいることにより治療法の種類も増えてきています。そのため疾患や症状の程度を考慮した上での一人ひとりに合わせた治療法が選択できるようになっています。最近気分が晴れず、ずっと暗いまま自分をコントロールできないなど、不安を抱えている場合はうつ病を抱えている可能性があります。気になることがある場合は、専門家に相談しながら、症状の見極めや対応方法を検討すると良いでしょう。
2016年11月12日私の障害が娘にバレた!でもちょっと誤解しているようで…出典 : 娘がアスペルガーと診断されたのは小4のとき。その2年後に私も同じアスペルガーと診断されました。不登校でもあった繊細な娘には、ショックが大きいだろうと思い、告知はまだしていません。私は、自分がアスペルガーの診断を受けた後、張り切ってアスペルガー症候群の関連本を何冊か買い込んできては、部屋に思いっきり放置していました。それを見つけた娘がビックリした顔で「ママってメンヘラちゃんやったん!?」と詰め寄ってくるではないですか。私「ちょっと待て。メンヘラちゃんってなに?」娘「ママ、手首切ったりしてない?大丈夫!?」どんな斜め上の誤解なんだ(笑)。娘の解釈に驚きつつも、アスペルガーにそんな印象を持っていたことにショックを受けました。よく考えてみると、こういう誤解の仕方ってインターネットのサイトを見てる人にありがちなことなんですよね。そして内心「参ったなぁ、君も一緒なんだよ。こんな誤解してちゃダメだよなぁ」とため息をついたのでした。そう、娘への告知をのばし延ばしにしているうちに、自分の方が先にバレてしまったのです。これはどうしたものか…と、けっこう悩みました。そうだ!私の体験談を娘にシェアしてみよう!出典 : そこでまず私が思いついたのは、「そうだ、私を通してアスペルガーのことを理解してもらおう。そうすればいつか告知したときも自分のことを理解しやすくなるはず」というアイデアでした。それからというもの、特性がらみの困りごとを、日常会話にさりげなく取り入れるようになりました。「会社で上司に次々とやることを言われたんだけど、覚えきれなくて困った」「仕事で話しかけられても、周りがうるさいとその人の声だけじゃなくて全部聞こえるからわからなくなる」「一緒に買い物行ったとき、目の前にあったものをママは見つけられなかったでしょ?あれも特性なんだよ」「2つ以上のことを一緒にやろうとすると混乱する」人間関係の困りごとも話しました。「どうしてかわからないけど、いつも何ケ月か勤めると周りの人に嫌われてるんだよね」「嫌われていると思ったら、心のシャッターが下りるのよ」「空気が読めなくて変な人と思われてるみたい」解決法は教えてあげたくてもなかなか教えられませんでした。だって私自身、何も解決していないから。ただ、障害者職業センターで習ったことや、感動したことは「落ち着いて練習したら、失敗したことを上手に謝ることができたよ」などと伝えていました。娘は「ふーん」と聞き流しているように、そのときは見えました。今度は娘が自分を疑いだし…しかしそこで思わぬ本音が。出典 : そんなある日、突然娘が「ママ、私ってアスペルガーなの?」と聞いてきたのです。私の話にいろいろ思うところもあったのでしょう。嘘がつけない私は、あたふたとして「うーん、そうかもしれないなぁ」と言ってしまいました。でも、娘はそれ以上突っ込んできませんでした。「ねぇ、もしアスペルガーだったらどう思うの?」と私が聞くと「障害者にはなりたくない」と言ったのです。私自身は障害者手帳も取って、障害者として生きていく決意を娘にも明らかにしていたのに、この言葉はショックでした。気になりながらもよくよく聞いてみると、娘にとっての障害者は「言葉で意思の疎通ができない人」のことだったようです。彼女は保育所の年長のとき、保育所の先生がボランティアでやっているダンス教室で、予告なしに重度の障害を持った子と引き合わされました。話しかけても反応してくれない、無言で笑いながら抱き付いてくる、その様子に強い恐怖を感じてしまったようでした。このことを私の支援者に相談したのですが、「その引き合わせ方に問題がありましたね。言葉で言い聞かせるよりも、これからの人生での中でゆっくり理解していくしかないと思いますよ」と言われました。そして、娘の支援者・主治医などと相談した結果、もう少し彼女の自己肯定感が上がってきて、アスペルガーだということを冷静に受け止められる時期が来るまで、告知はしないことになったのです。これから娘に聞かれたら、「お医者さんに聞かないとわからない」と答えるよう、アドバイスされました。障害名は関係ない。1人の人間をあるがまま受け止める素直さに感動出典 : 娘はきっと、自分がアスペルガーだとわかっている気がします。時には疑い、時には否定しながらも、心のどこかではわかっている。でも認めたくないという風に見えます。そんな彼女ですが、ある日私のことをこう言ってくれました。「ママは自分のことアスペルガーって言うけれど、私にとっては『ママはこういう人』というだけで、『ママはアスペルガー』だとはいちいち思わないよ」障害名が付いた特性持ちの人ではなく、1人の人間として見てくれている…。この言葉は涙が出るほど嬉しかったです。今では誰よりも私の特性を理解し、さりげなく助けてくれるようになりました。その力を活かし、いつか自分の特性を深く理解して、助けを求められるような人に育ってくれたらいいな、と願っています。
2016年11月11日「疲れた…」楽しいはずの場所やイベントも、息子にとっては頭の痛くなる場所になっていた出典 : 音に敏感に反応する、と聞くとどんなイメージを抱きますか?特定の音にすぐ反応してしまう、いつもイヤーマフをしている、などでしょうか?息子にも音に対する過敏さがあるのですが、どうやらちょっと違うようなのです…。発達障害児の息子とお出かけをすると、1時間も経たないうちに「疲れた」「もう帰る」と真っ青な顔をして座り込んでしまうことがよくあります。そのたびに、「ええ!?まだ1時間も経ってないんだけど!!」と、家族の怒りが爆発することもしばしば。息子のこの疲れやすさには、聴覚過敏が大きく関係しているということに、途中で気付きました。疲れてくると、いつも耳を塞いで路上に座り込みます。ぐったりと脱力してしまった息子の顔を見ると真っ青で、しきりに頭痛を訴えるのです。後で落ち着いてから話を聞いてみると、「太鼓の音で頭が割れそうだった」「人の歌声のせいで頭痛がした」「機械の音が嫌だった」など、音のせいで頭が痛くなっているということがわかってきました。かと思えば、ケロッとしたりゲラゲラ笑ったり…他にも大きな音やうるさい場所はたくさんあるのになぜ?出典 : 息子は耳が敏感で、それがお出かけ先で彼を疲れさせてしまうということがわかったため、私はいつも耳栓やイヤマフなどのグッズを欠かさず携帯しています。少しでも大きな音が周りにしていたら、息子に「耳栓する?」と聞いています。また、その場にいることを決して強要しないようにもしています。特に、お祭りや花火などは危険です。ただでさえ人が沢山いて、視覚・触覚の刺激が息子にとって辛いことに加え、太鼓やお囃子、花火の爆発音などは9割アウトです。お祭りはまず楽しめない前提で、なるべく行かないか、すぐに帰れる体制を整えてから出かけています。ところがこんなに聴覚過敏に悩まされている息子ですが、とんでもない大音量でもケロッとしていたり、むしろゲラゲラ笑っていたりすることもよくあるのです。例えば、目の前を駆け抜ける救急車や消防車のつんざくようなサイレン音。工事現場の重機の音。映画館の大音量の音楽を聞いても疲れる様子は見られません。また、公文の教室で周りの子どもがワイワイ騒いでいる環境でも、あまり気にせず集中して勉強ができます。周囲の音を気にしてオロオロしているのは私だけ。息子は大人でさえもうるさく感じる音を、全く意にも介していないことがよくあるのです。一体これはなぜなのでしょう。えっ!?そうだったの?息子が嫌がるのは特定の音じゃなかった出典 : どうも息子の聴覚過敏は音量そのものが問題ではないような気がする…、そう思った私は、ある日息子に聞いてみたのです。「息子くんはどんな音を聞くと頭がガンガンするのかな。教えておいてもらえると助かるな」すると、息子はこう言ったのです。「どの音がダメ、とかじゃなくて、不安な気持ちになったときに、周りの音で頭が痛くなる」これ、実は私にとってすごい発見でした。息子は特定の音が嫌だったわけでもなく、音量が大きいことが辛かったわけでもなかったのです。聴覚過敏は、「不安な気持ちでいっぱいいっぱいになっている」ときに生じるパニックの一形態だったのですね。ですから、息子の聴覚過敏への対応は、「嫌いな音・大きな音を取り除くこと」ではなく、「不安になる状況を取り除くこと」が大切なのだとわかったのでした。排除すべきは「音」じゃなく「不安」だった!出典 : 聴覚過敏は不安が高まったときに出てくる症状なので、まずどこかに出かける際は不安要因を特定することが大切です。例えば、息子が9割方座り込んでしまうお祭り。これは、人の多さや屋台で並ぶことなどのストレスが積み重なっているのが原因で、聴覚過敏が発動します。コンサートや発表会などは、「じっとしなければならない」というストレスが限界にまで達し、ステージ上の音に耐えられなくなります。また、次の見通しが立たないような状況でも、聴覚過敏が発動しやすくなります。病院などに連れていくと、受付の放送の音すら嫌がることがよくあります。これは、病院という場所で何をされるかわからないため、極度の不安状態に陥っているためだと思われます。聴覚過敏に対応するためには、まず不安要因を特定すること。不安な気持ちが和らげば、少々の音も耐えられることが多いです。それでも不安やストレスでいっぱいになってしまうことはあるでしょうから、外出時は必ず耳栓やイヤマフは忘れないように携帯しましょう。
2016年11月10日発達の遅れがあった息子を保育園に入れたい!でも心配事は尽きなくて…出典 : 保育園や幼稚園にお子さんを通わせるとき、「みんなと一緒に過ごせるだろうか?」「問題を起こさないだろうか」と不安になったことはありますか?そんなとき、助けとなるのが加配の先生です。加配とは:生まれつきの発達障害などで、他児と同じように保育園の生活を送ることが難しい子に、配慮を加え、生活を支えること。我が家では息子が年少の時から加配の先生を付けて頂きました。今回はその経緯と息子の成長、頼む時の注意点などをご紹介したいと思います。現在小2で支援級に通う広汎性発達障害の息子は、年少(3歳)のときから年長まで、公立の保育園に加配(介助)の先生のサポートを受けながら通っていました。息子は指示が通りにくく、気が散りやすい特性があります。周りとのコミュニケーションをとるのが苦手なので、療育の先生方からも「集団生活を送るには介助の手が必要」というご意見をもらっていたのです。保育園について療育の先生に相談したところ、「医師の意見書や書類があれば、公立の保育園などでは介助の先生を希望すれば申請ができる」とのことだったので、加配の実績がある園を探し、見学してから申し込むことにしました。入園申し込みの際は、かかりつけの精神科の医師に「集団保育が可能なこと、介助が必要である」という書類をいただき、申請書類に添付をしました。うちの場合は愛の手帳(療育手帳)も持っていたので、手帳のコピーもあわせて添付しました。認可保育園では加配保育は本来「障がい児3名に付き加配保育士1名」といわれています。ですが、(中略)グレーゾーンの子ども達が現場に増えてきて、もはや厳密にそんな基準が守れなくなってきています。加配の先生がいてくれて良かった!成長の助けとなった3つのポイント出典 : その後、ご縁あって4月から保育園への入園が決まり、園生活が始まりました。実際に加配の先生についてもらったことで、良かった点を3つご紹介します。出典 : 入園当初はオムツをはずせなかった息子。フォークやスプーンも上手に使えないなど、生活に困ることがいろいろありました。介助の先生は、トイレの時間になると声かけをし、時間排泄への誘導を促してくれました。その後も息子の成長に合ったトイレトレーニングを根気よく考えてくださり、担任の先生の協力もあって園・家庭の双方で協力した結果、4歳の時にはやっとオムツが外れました。また、入園当初は物にしか興味がなかった息子も、加配の先生との関係作りからスタートし、先生を介したお友達との関係作り、お友達と息子の関係作りと、スモールステップを経て、人との関係が楽しめるようになっていきました。他のお子さんとのトラブルがあった際も間に入り、相手の気持ちを想像するのが苦手な息子と、気持ちを一緒に考えたり、謝る練習をしたり、丁寧にコミュニケーションのやりとりの練習を繰り返し行い、成長を援助してくださいました。Upload By たっくんママ園での様子を共有してもらうときは、連絡帳を使ってやりとりしていました。他のお子さんは、園であったことを家に帰ってからママにお話するようですが、言葉の遅れがあった息子は、思いだして話すことが難しかったので、連絡帳を見ることで園生活の把握をしていたのです。息子にはこちらから「今日は○○公園までお散歩にいって、滑り台をしたんだね」「鉄棒頑張ったんだね」など私のほうから連絡帳をみて息子に話しかけ、一緒に振り返りをしていました。連絡帳のおかげで、息子の頑張りを家でも褒める機会ができたのは良かったです。また「週末は○○に家族で行きました」「おまるでのおしっこが1回が成功しました」「祖母の家に帰ったときに悪いことしても謝れませんでした」…などの、家庭や外出先での様子を私も連絡帳に書き、情報の共有を図っていました。Upload By たっくんママ手先を使った細かい動作などが苦手な息子は、同世代の園児のお友達よりも苦手なことやできない事がたくさんあったのですが、こうした劣等感を持ちやすい場面でも、加配の先生がいてくれたおかげで、できる範囲からちょっとずつチャレンジさせてもらいました。例えば工作の時間では、息子のできる範囲で始めは作り、できた部分を褒めてくださいました。そして、回を重ねるごとに少しづつできる範囲を広げながら、その都度褒めてくれるので、達成感や自己肯定感を育むことができました。それを実感するエピソードがあります。運動会でのかけっこに参加していた息子。レースではビリだったのですが、戻ってくるなり「お母さん、僕早かったでしょ~」とニコニコの笑顔で報告してくれたことがありました。これは息子が、自分を周りと比較せず自分が頑張ったのか、そうでないのかという基準で物事を考えられるようになった証だと思いました。加配の先生を付けてもらうときのコツ、把握しておいた方がいいこと出典 : 我が家の場合は、翌年4月からの枠にむけ、自治体の一斉申し込み締め切りの12月に申請をしました。もし加配を付けてもらいたい場合は、医師からの書類が必要だったので申請にあわせたスケジュールを組むことが大事だと思います。申請の順番は、①診察予約②診察・相談・書類申請③書類発行という流れだったので、病院の混み具合や定期診察のタイミングによっては診察予約自体で数ケ月待つことも考えられます。もし仕事と合わせて4月からの入園を希望する場合は、それぞれの自治体に沿った保育園の申請時期に間に合うよう、病院にかかる時間や書類発行までに余裕を持ってスケジュールを組むと、安心だと思います。ちなみに、うちの自治体は12月が申請時期でした。また我が家の場合は、保育園の申請理由が就労であったため、ファミリーサポートの一時保育なども利用して、就職活動をし、12月の申請時期に就労内定をいただくことができました。年齢や自治体の状況によって変わってくるとは思いますが、保育園の入園要件には「保育に欠ける」という部分が大前提なので、申し込む場合は自分がどの要件で申請になるのか、窓口などで相談してみてもいいかもしれません。保育園に入園できる条件(保育園情報BOX)出典 : 私立の保育園・幼稚園の場合は加配について方針がバラバラなようです。ちなみに、公立の保育園のほか、公立の幼稚園でも加配を付けられるところもあります。園の考え方や、その年に在籍するお子さんの状況によって変わることもあるので、とにかく希望の園には事前に見学に行って、●園全体で今まで加配の付いていたお子さんはいるのか●いるとしたらどのような感じでついているのか?ということを確かめておくと安心できると思います。園によって、マンツーマンだったり、数人に1人もしくはクラス全体に1人だったり、加配はいないなど、色々なケースが考えられます。電話で見学予約のときに、「介助の先生つきで、園に通っているお子さんはいますか?」と伺ってみて、「そいういうお子さんはうちの園にはいません」と回答するところは、選択肢から外してもいいかもしれません。最後に、入園してからも加配の先生との関係は全てお任せではなく、積極的に連絡帳などでコミュニケーションをとることをお勧めします。迷っていたら、相談だけでも!出典 : いかがでしたか?我が家の場合は、加配の先生と担任のおかげて楽しい園生活を送ることができ、とても感謝しています。もし、お子さんが苦手なことなど困りごとがある、園など集団生活に入れたいけど、不安も大きい…とお考えの方は、療育やかかりつけの先生に相談するなど、1度検討してみてはいかがでしょうか?
2016年11月10日学校でのストレスが思わぬ方向で現れた息子。どうしよう…出典 : 小学校入学直後から「学校いかれへん!」となったショックで、まるで赤ちゃん返りしたかのように母親から離れられなくなった息子は、気に入らないことがあると、暴れるようになりました。「学校に行ってみようよ」「あかんで!」「お風呂に入ろう」「いらん!」「もう寝る時間だよ」「起きてる!」…何を言っても反抗、途方に暮れる日々が夏休みまで続きました。学校には付き添い通学で少しずつ慣れることにしましたが、ゼロ歳の妹の世話や家事もあり、日々を過ごすだけで精一杯です。少し気力があれば学習のフォロー、また2年生からの特別支援学級入級への手続きをしなければ…と、くたくたで笑顔も出ない状態でした。そんなとき、9月に家族と訪れた病院の待合室でふと目についたのが、花風社の『自閉っ子、こういう風にできてます!』という本でした。この本を見て、「もしかして、息子もこんなふうに世界を見てるのかも?」と思ったのを覚えています。児童精神科の医師に聞いてもはっきりと答えてもらえなかった、「自閉症スペクトラム」の世界観に触れ、その謎が初めて少し解けたように感じたのでした。私はそれから少しずつ、自閉症について気になることを、本で調べるようになりました。1冊の本が、息子とのコミュニケーションを変えてくれた出典 : 夢中になって読んだ本の1つが、『伸ばそう!コミュニケーション力―不器用でも、体力なくても、友だちいなくても、今日からできるワクワクトレーニング』(花風社)です。このを読んだとき、息子を観察してうっすら感じていた「言葉のやりとりも学習も、全て『身体が動くかどうか』がキモかもしれない」という思いを強くしました。中でも「ボールの投げ合いっこ」という遊びにピンときました。私はさっそく息子と試すことに。「投げるでー、取ってや!」と声をかけて、投げてみました。すると、反抗的だった息子がこちらを向いて取ってくれたのです。今度は「お母さんに向かって投げ返して。」と言うと投げ返してくれました。息子と向き合えている、考えるより先に体が動いてる、いいかも!と直感で思いました。だんだん慣れてきたら「今から100回、投げ合いっこしよう」と伝え、始まりと終わりをくっきりさせました。狙いはコミュニケーション力で、ボール投げの上達ではありません。「お母さんがつかみやすいように投げ返してね。」こちらも子どもの真正面に、とりやすい球を投げるようにしました。このように、「やりとりする経験」がただただ楽しくて、夢中で積み重ねられる。遊び×スポーツにこんな力があったのかと、目からうろこでした。まずは「楽しさ」を大事に!ってことであんなモノもこんなモノも投げてみる出典 : ボール投げで使うのは、ボールだけではありません。投げるものはその時々で決めます。百円ショップのボール、ビーチボール、タオル、赤ちゃん用のやわらかい布のボール、ムササビのぬいぐるみ、紙飛行機というときもあります。いろいろ面白がって投げてるうちに、「次はこれ」と、息子自身が自分でボールを決められるようになってきました。テレビを見るのをやめてほしいな、宿題をやってほしいなというときも、とりあえず投げてみる。まずは楽しく、注意をこちらに向ける。それから話をすると、少しこちらの話を聞いてくれるようです。小3の現在、ペットボトルをバットに見立てて打ち返すことを思いつき、やってみるようになりました。うまくできなくてもパニックにならずに「次投げて!」と言えるようになった息子。クラスメートとのチームプレーにはまだまだほど遠いですが、コミュニケーション力は伸びてきていると感じています。コミュニケーション力がついてきたら、いろいろな力が伸びてきて…出典 : 九九の暗唱の宿題も、キャッチボールを組み合わせ、交互に言いながら投げ合いっこをする、というスタイルにアレンジ。これは大人も脳トレになります。他のアプローチもいろいろ試したので、これだけのおかげとは言えませんが、だんだん本も読めるようになりました。おそらく眼球コントロールに慣れたのだと思います。以前は読み飛ばしが多く、意味が理解できずイライラしていたのですが、正直ここまで成長するとは、想像できませんでした。また、1度だけ怒りながら投げ合いっこしたこともあります。その日はどうしても私の気持ちが収まらないことがありました。一緒に遊んで切り替えようと思ったものの、やはり言いたいことを言わずにはいられなかったのです。私:「どんなに嫌なことがあっても、暴れれば『やらなくて済む』って思ったら、間違いだからね!」と思いっきり強いボールをなげます。息子:「アタマではわかってるけど無理やねん」ボールが返ってきました。私:「それでも自分で自分を止められるようにならなきゃ」とまたバシッ。半泣きになりながら全力で投げ返す息子。ずいぶん強い球を受けられるようになったな、叱ってるのに褒めたくなった、不思議な時間でした。身体を使ったコミュニケーションは、親子だけのものじゃない出典 : キャッチボールを通じて、息子と少しずつコミュニケーションが図れるようになってきた私は、進級時に新しく担任になった先生にもこのことを伝えました。「時間のあるときに、息子とボール遊びしてもらえませんか?言葉じゃなく身体で感じるほうが、ぐっと関係を結びやすいタイプです」と。その後、ゴム縄くぐり、片足立ち、押し相撲など他の遊びも、思い立ったらすぐ、いろいろやるようになりました。遊ぶときは親も本気で競います。お互い運動音痴なので、笑えます。できないこと、困ることはまだまだたくさんありますが、1つひとつ積み上げていけばなんとかなるかも。難しいボールが取れた時の息子の「どや顔」を見ていたら、そんな気がしてきます。
2016年11月08日自分の物を使われると激しく怒る娘。それは食卓の座席ですら許されない!出典 : わが家には8歳の娘と6歳の息子がいます。共に自閉症スペクトラムの診断が下りていますが、娘はアスペルガー、息子はAHDHの傾向が強く、そのタイプは全く違います。娘と息子の関係は、最近とても良好になってきました。両極思考の激しい娘が、今まで「敵」に分類していた息子を「味方」に入れてくれたことで、家の中に2人の笑い声が響くようになったのです。もちろん、お互い余裕がない時には罵り合い、ケンカになる事もあります。その中でも、娘の口からよく飛び出すのが「お姉ちゃんの物に触らないで!!!」という言葉です。例えば娘が勉強している最中、息子が食卓の娘の座席にちょっと腰をかけたときなどは、その瞬間に「そこはお姉ちゃんの席!自分の席に座ってちょうだい!」と怒りモードに突入してしまうのです。娘の怒りの対象は息子だけでなく、母親である私以外の人物が娘の物を使用したときに、強いストレスを感じます。「これ使わせてね」ときちんと断りを入れてからだと、何とか許そうとはするのですが、「いいよ」と答える時の娘の顔はひどく歪んでいます。「今使っていないんだからいいでしょ?」と諭してみますが、「そういう問題じゃない」という答えが返ってきます。どうして自分の物に他人が触れるということに、そこまでストレスを感じるのでしょうか?思考回路がそっくりな私と娘。そして、思い当たった2つの答え出典 : ちなみに、私と娘は思考回路がそっくりで、なにか物事が起こった時に、同時に同じ言葉を発することがよくあります。そこでまず私が、自分の物を他人に使われて猛烈に嫌だと感じるのはどんな時なのか?、想像してみました。思いついた答えは2つありました。出典 : まず1つ目は、物に対する思い入れが強すぎるということです。私も娘も色に対するこだわりが強いので、全く同じものでも色が違うだけで、その物の扱いが変わってきます。例えば色違いの毛布が2枚あるとします。気に入った色の毛布に包まれると、それだけでとても幸せな気分になりますが、気にいらない色の毛布は、包まれることを想像するだけでとても居心地が悪く、手に取ろうとも思いません。両極思考が激しいので例え同じ毛布でも、色によって大切な宝物になるか?どうでもいい存在になるのか?が、決まってきます。そして宝物となった毛布は、それが目に入るだけで自分を幸せにしてくれる大切な存在となるのです。娘にとって、その気持ちを理解してくれるのは思考回路が似た私だけであり、自分と同じように大切に毛布を扱ってくれる母親に使われるのは構わないようです。しかし自分と同じように、大切に毛布を扱ってくれない他人に手を伸ばされるのは、とても心配なことなのだと思います。出典 : 警戒心が強く、嗅覚過敏も合わせ持つ娘。大切な毛布が元の状態で返してもらえるのか、汚れたり傷つけられたりしないか、いつもと違う匂いがついてしまわないか、常に見張っていなければなりません。色にこだわりのない人からは「どっちでも一緒でしょ」とよく言われますが、私たちにとっては雲泥の差があるのです。毛布の例を挙げましたが、私と娘は、家にある全ての物にこの「大切な宝物」か「どうでもいいもの」なのかの判定を行っています。色、形、匂い、思い出…。様々な要素が判定材料となり、他人に触れられたくない「大切な宝物」は山のように存在します。私は子育てをしているうちに、自分のことより子ども優先の生活になったので、最近マシになりましたが、娘は宝物に囲まれて幸せな反面、常にそれが壊されないか気にかけなければならず、苦しいだろうな…と思います。出典 : つ目に、自分の安全地帯を他人に侵されたくない、という気持ちがあります。警戒心が強いタイプの私は、ここなら大丈夫という「安全地帯」を常に探して生きているような気がします。例えば、ショッピングモールでトイレに行く必要があったとき。特にこだわりのない方なら、1番近いトイレに入り、その時に空いている個室を何のためらいもなく使われることでしょう。しかし、私にとっては1度利用した経験のあるトイレこそが安全地帯で、その他のトイレはよくわからない不安に満ちた場所です。よほどのことがない限り、いつも決まった場所のトイレに足を運び、右から何番目の個室を使う、というのも決まっています。当たり前のことですが外とは違い、自分の家というのは全て知った場所、全て使ったことのある物ばかりなので、私の人生の中で最大の安全地帯です。私も娘も極力外出を避ける傾向にありますが、それは安全地帯である家の中で過ごすことで、未知の場所に対するストレスに左右されず、のびのびと息ができるからだと思います。出典 : 家の中でも、「自分の場所」「自分の物」というのはきちんと決まっています。お風呂上りに使うバスタオルも家族で色分けしてありますので、洗濯が追いつかずに誰かのものを使わなければならないときは、それが例え大切なわが子のタオルであっても、かなり躊躇します。自分がいつも座っている定位置というのは、家の中でもとりわけ安心できる場所です。そこから見える景色、その椅子に座った感触、右側にあるもの、左側にあるもの、全てをきちんと把握してあるからです。私と娘にとっては大切な「安全地帯」ですが、夫や息子にはもちろんその境界線が見えるはずもなく、「今は使っていないのだから構わないだろう」とあっさり侵略してきます。大切な安心できる場所が誰かに荒らされている(ように私たちの目には映る)のを見た瞬間、やはり大きなストレスがかかり、怒りに直結してしまうのだと思います。2つの理由は娘にも当てはまっていた。では、どうすればその辛さは楽になるのだろう?出典 : 理由に見当がついたところで、さりげなく娘に「こんな風に思うことある?」と、私が思いつく2つの理由を例に出し、聞いてみました。すると娘は「よくぞわかってくれた!やっぱりママは私の唯一の理解者だ!」と満面の笑顔でしたが、このままでは周りも娘自身も生き辛く感じることでしょう。長時間一緒にいる家族だからこそ、理解し合い、譲り合って過ごせたら、お互いが楽になるはずです。まずは私が架け橋となり、息子には「これはお姉ちゃんが大切にしているものだから、触らないようにしようね」と、どれがお姉ちゃんにとっての宝物なのかを教えるようにしています。他人の感情をくみ取るのが苦手な息子にとっても、一番身近なお姉ちゃんの感情を学ぶことはとても良い経験になってくれると思います。いずれは人と共有できるように…出典 : そして娘には、●この感覚は、皆が持っているわけではないということ●物を大切にし過ぎるあまり、大切な人を傷つけてしまわないようにすること●「これは私にとってとても大切なもの」と自分で他人に伝えられるようになれればいいことを話している最中です。これから少しずつ娘が許容範囲を広げ、自分の「安全地帯」に誰かを招き入れることができるように、「ここは絶対に人を入れたくない場所」を1つに絞り、皆と共有できる場所を増やせるよう、工夫を重ねていきたいと思います。
2016年11月08日「伝えたい!」子どもの指差しが言葉につながる出典 : 「指差し」とは、興味のあるものや、欲しいものに対して人差し指を向ける子どもの行動です。指差しの仕方は、子どもによりさまざまで、子どもによっては人差し指ではなく中指を使ったり、手全体を使ってものを指し示したりする場合もあります。指差しには、子どもが育っていく上で大変重要な役割があります。まだ十分に言葉を話すことのできない子どもにとって、指差しは大切なコミュニケーションの道具です。指差しは、発語と深いかかわりがあります。言葉が出る前から始まるので、「ことばの前のことば」と言われる場合もあります。指差しは、子どもがさまざまな力を獲得したことを示す目印となります。例えば、何かに興味をもつ力や、共感する力、他人の意図を読み取る力などです。相手と目を合わせて笑う、という二者間の関係しか持つことのできなかった子どもは、指差しを使って「自分と相手ともうひとつ」という三者の関係を持てるようになります。そのような関係の広がりは、その後の子どもの育ちにも大きく関わってきます。Upload By 発達障害のキホン身につける力とともに変わる指差しの意味出典 : 子どもは生まれたその瞬間から、さまざまな力を身につけていきます。指差しが出始めてからも、子どものコミュニケーション力は育ち、それととともに、指差しの種類も増えていきます。あまり細かい分類にこだわる必要はありませんが、指差しのステップについて知っておくことで、子どもが指差しをしたときに、どのような力を身につけているのかを知る手がかりになります。赤ちゃんを抱っこして「○○だよー」と声をかけると、大人が視線を向ける物に自分も目を向け、一緒に見ることがあります。これは、相手が興味を持っている方向を察して、その方向には何かがあると推測する力が身についたことのサインです。これができるようになると、もう少しで指差しが出るようになります。自分の興味関心のあるものを見つけたときに指をさすことを、「自発の指差し」といいます。それまでは「相手と自分」という2つの関係だけで満足していた子どもが、周囲の環境や物に対して関心をもつようになると、この指差しが出るようになります。自分の欲しいものに対して「あー」などと声を出しながら、しきりに指をさすことを、「要求の指差し」といいます。子どもが自身の興味のある物を見つけたときや心を動かされたときに、指差しを使って、「僕の好きなものがあるよ!見て!」と大人に教えることを、「感動の指差し」といいます。このとき子どもは、「あー」「うー」などと声を出したり、大人のほうを見たりしてアピールをします。叙述の指差しや定位の指差しとも呼ばれます。感動の指差しをするとき、好きなものという「対象」を相手と「共有する」力を身につけている状態だといえるでしょう。その説明については下に述べます。「○○はどれ?」と聞かれたときに、その答えを指すことを、「応答の指差し」といいます。これができる頃には、「~持ってきて」などの言葉による簡単な指示を理解して行動できるようになります。対象物が目の前にないときにも、そちらの方向を指差すことができるようになります。例えば、「お母さんはどこ?」と聞かれると、目の前にいない母親の方向を指差すなどです。指差しの習得とともに育つ、「共有する」力子どもは、人や物などの他者とのかかわりの中で育っていきます。乳児期のはじめの段階では、「物と自分」、「大人と自分」という2つの関係でしかやりとりをすることができなかった子どもは、やがて「自分と大人ともうひとつ」というように3つの関係をつくることができるようになります。Upload By 発達障害のキホン例えば、大人と子どもの前にバナナがある光景を考えてみましょう。大人がバナナだね、と言いながらその方向を見ます。すると、子どもは大人が見たのと同じようにバナナを見ます。ここで、バナナを中心として、「大人」「子ども」「バナナ」という三角形ができます。大人の目と子どもの目が、同じバナナに注目している状態です。これを「三項関係」といい、子どもが発達しているかどうかを見るときの大切なパラメーターとされています。感動の指差しをする頃には、この三項関係が成立している状態です。「あっ、ちょうちょがいたよ」と言うかのように指差しを使い、自らの心を動かされたものを大人と共有しようとします。他の人と何かを共有することで、その子どもの世界はより広がりを持つようになります。指差しが出ないときに確認したい4つのポイント出典 : 乳幼児健診の検査項目にもあるように、指差しは子どもの発達を確かめるための指標とされています。この記事を読んでおられる方の中には、1歳半健診などでお子さんの指差しが出ないと指摘され、心配されているご家族もいるのではないでしょうか。先ほどの章で、指差しが出るために必要な力について述べました。さまざまな力が獲得されてこそはじめて出る指差しですが、この章では、指差しが出ないときに確認したいポイントについてお伝えします。聴覚機能に問題がある場合には、音がよく聞こえていないために、相手からの呼びかけに応じる指差しが出ないということが考えられます。聴覚機能に問題がある場合には、聞こえを改善する治療のほかに、視覚的な手段を使ったコミュニケーションをとる方法についてサポートを受けるといった対応が望まれます。1歳半、3歳の乳幼児健診のときにも、耳の聞こえのチェックが行われますが、耳の聞こえは家庭生活の中で見つかることも多いです。心配なときには、以下のチェックリストを参照して、聴覚に問題がないか確認してみるとよいでしょう。赤ちゃんの耳のきこえ チェックリスト|栗原市ホームページお子さんが指差しをできず悩まれている方は、大人が指をさした方向を見るかどうかを確認してみましょう。これは、相手が「そちらの方向を見ている」という意図を感じ取って、大人が見る視線の先に何かがあると期待する力です。言いかえれば、相手が何に関心をもっているのかを理解する力です。この力がある場合には、大人が指をさした方向に目を向けたり、大人が見ている方向を同じようにして見ることができます。この力がまだ弱い場合には、大人が指をさしたとき、大人の指のさす方向に目を向けずに、指そのものを見たり、大人が何かを見ているときにも、それに気がつかなかったりします。子どもが何かを発見したり、何かに興味関心をもっているときの行動に注目してみましょう。自分の興味関心のあることを他の人に伝えたいという気持ちが指差しとなって現れます。しかし、子どもの中に「相手に何かを伝えたい」「相手と何かを共有したい」という気持ちが弱いと指差しが出ないことがあります。言葉の意味の理解が弱い場合には、「りんごはどっち?」など相手からの呼びかけに対して応じる指差しが出ないことがあります。子どもが、身の回りの言葉をどれくらい理解できているかどうか、生活の中で注意してみてください。例えば、子どもの興味関心のあるおもちゃや絵本、食べ物などを「持ってきて」などと簡単な指示をして、子どもの反応を見てみるとよいでしょう。そのときに、実際に何かを持ってきたり、探す素振りをする場合には言葉の意味は理解できていると考えられます。指差しが出ないことと、発達障害の関連はあるの?子どもの指差しが出ないことで、発達障害ではないかと心配されることもあるかもしれませんが、指差しをしないからといって必ずしも発達障害であるわけではありません。発達障害の一つである自閉症スペクトラム障害の子どもの中には、周囲にあまり興味を持たない傾向があり、指差しがなかなか出ないという子どももいます。しかし、実際に発達障害があると診断されるかどうかは、他者とのコミュニケーションがとりにくい、人と気持ちを交わすことが難しい、活動の対象や興味の幅が限られるなどといった、複数の診断項目にどの程度該当するかによって決まるため、指差しの有無だけで直ちに発達障害と診断されるわけではありません。子どもの指差しがなかなか出ない場合でも、発達障害だとすぐに自己判断するのではなく、前述の4つのポイントを意識して子どもの発達状態を探り、必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら子どもとの関わり方を工夫してみましょう。指差しを引き出すための工夫出典 : ここでは、子どもの指差しを引き出すための工夫についてお伝えします。周囲の環境を整える方法と、お子さんへの関わり方を工夫する方法の、大きく2つがあります。◇テレビの長時間視聴は避け、子どもが他人と関わる時間を増やすテレビをつけていると子どもが集中して静かになるので、子育て中の親にとってテレビは便利な道具でもあります。しかし、だからといって、テレビをあまりに長時間見せていると、子どもの発達が妨げられるおそれもあると言われています。テレビからは一方的な情報が流れてくるので、子どもは受け身になってしまいます。テレビから受動的に情報を受け取っているときには、人とやりとりを行うのは難しいです。子どもがテレビを長時間視聴することは避け、他人と直接やりとりする機会を増やすことを意識しましょう。他人と一緒に楽しい時間を過ごすことで、愛着関係が形成され、より相手に何かを伝えたいという気持ちを促すことができます。ただ、テレビ番組を見ながら、歌や踊りを覚えることもあります。絶対にテレビを見せてはいけないと、かたくなになるのではなく、一緒に踊ったり、歌ったりしながら、親子がともに楽しむコミュニケーションのツールとして活用すると良いでしょう。◇五感を使った体験ができる環境を作る具体的にものにふれたり、身体を使った遊びや活動を行ったり、見たり、聞いたり、味わったりと、五感の器官を十分に使って世界にふれあうことのできる環境を作り、子どものやりとりや遊びを豊かで楽しいものにすることを意識しましょう。豊かな生活体験の中で引き起こされる、相手に自分の感じていることや考えを伝えたいという思い、それが指差しを引き出していくきっかけになります。◇指差ししながら声かけする絵本に描かれている絵を、人差し指でさしながら読んであげましょう。そのときに、りんごや車などのモノの名前や形がはっきりと描かれている絵本を選ぶことがポイントです。はっきりと子どもの耳に届きやすい声で、スキンシップを交えながら読んであげてください。大人の動作を真似して、指差しをしやすくなると言われています。◇子どもの好きな遊びを一緒にやってみる誰かに何かを伝えたいという気持ちを育てるためには、人と一緒に遊ぶ楽しさを味わうことが一番です。子どもの作る世界に大人が入っていってみることを心がけましょう。例えば、ミニカーを一列に並べている子どもがいるとします。たとえ、保護者の方が「その遊びの楽しさがわからない」と思ったとしても、まずは一緒に同じことをしてみてください。楽しさそのものがわからなくても、お子さんは、保護者の方が同じことをしていると気がつきます。ミニカーを「はい、どうぞ」と言いながら手渡すなど、やり取りの中で積極的に声をかけることも効果的です。このように子どもの遊びに積極的に関わっていくと、最初は一方的だったとしても、次第にコミュニケーションが生まれていきます。また、他には、子どもの様子から思っていることを予測して声かけをしてあげたり、ボディタッチなど体のふれあいを通した遊びを取り入れましょう。信頼関係を築くことは、やりとりを行いたいという前向きな気持ちを促し、指差しを引き出すきっかけとなります。◇2つのものの中から選ばせる2つのものを示して子どもが主体的に選択できる機会を作ってあげるといいでしょう。例えば、りんごとみかんを見せて「りんごとみかん、どっちがいい?」「大きいクッキーと小さいクッキー、どっちがいい?」などです。選ばせるときには、「どっちがいい?」「どちらで遊ぶ?」などと、好きなものを指を使って選びとるような課題がよいでしょう。2つの差し出されたものから自分の指を使って、ひとつを選ぶという経験は、大きい小さい、高い低い、長い短いという対比の概念の理解にもつながっていきます。指差しが出なくて心配なときは、専門機関に相談してみましょう出典 : 乳児期の子どもの発達には個人差があります。時間がたてば、指差しが出てくることもあり、心配が取りこし苦労だったという場合もあります。しかし、専門機関に相談してみることで、子どもの発達に関するアドバイスをいただいたり、より専門的な支援が必要と判断された場合に適切な専門機関を紹介してもらえたりします。気になることがあるときには、以下のような専門機関を訪れてみるとよいでしょう。小児科は子どもの病気の診療だけではなく、子どもの発達に関する悩みごとの相談にも乗ってくれます。より子どもの発達に詳しい専門機関などの情報も持っており、地元の専門機関を紹介してくれる場合もあります。行政や自治体が実施主体となって行っている事業です。子育て中の親子が気軽に集い、交流や子育ての不安・悩みを相談できる場を提供することを目的として各地域に設置されています。無料で相談をすることができます。0~17歳の児童を対象として、育児の相談、健康の相談、発達の相談など、さまざまな相談を受け付けています。必要に応じて、発達検査を行う場合もあり、無料で医師や保健師、心理士、言語聴覚士などから支援やアドバイスをもらうことができます。基本的に予約制なので、あらかじめお住まいの市町村のHPなどを見て確認するようにしましょう。乳幼児健診は、各市町村の保健センターなどで行われているもので、、子どもの心身の発達状態の確認や、病気の早期発見や予防をするための検査です。保護者が普段の子育てで疑問に思っていることや、なかなか話す機会がない不安などを専門家に相談できる場でもあります。また、乳幼児健康診査は、同じ月齢期の赤ちゃんを育てる保護者も来ており、子育てを同じくする人と情報交換できる場所でもあるので、上手に活用しましょう。児童発達支援とは、小学校就学前の6歳までの障害のある子どもが主に通い、支援を受けるための施設です。日常生活の自立支援や機能訓練を行ったり、保育園や幼稚園のように遊びや学びの場を提供したりといった障害児への支援を目的にしています。児童発達支援は、支援が必要であると認められた、未就学の障害のある子どもが対象の福祉サービスです。自治体に申請を出し、受給者証を取得することで、1割の自己負担でサービスを利用することができます。以下のリンクから、全国の子どもの発達支援を専門に行っている施設や機関を検索することができます。児童発達支援事業所の施設一覧 | LITALICO(りたりこ)発達ナビ専門機関に相談する前には、普段の生活の中でのコミュニケーションの様子や好きな遊びなど、子どもの様子をメモしておくとよいでしょう。普段の子どもの様子を伝えることは、専門家が子どもの発達段階を把握するために役立ちます。そうすることで、生活の中で取り入れられる工夫や気をつけるべきことについて専門家から教えてもらいやすくなります。まとめ出典 : 子どもの指差しの役割や種類、また指差しが出ないときに確認したいことや、引き出すための工夫についてご紹介しました。指差しは、言葉を話すことのできない子どもにとって大切なコミュニケーションの道具です。指差しを使って、「自分と相手ともうひとつ」というように関係を広げ、自分の想いを他者に伝えていきます。子どもの指差しが出るためには、物や人とのかかわりの中からさまざまな力を得ていることが必要となります。指差しが出ないときには、まずは子どもがどのようなことに興味があるのか、好きなのものは何か、と子どもの世界に寄り添いながら、その経験を豊かなものにしてあげましょう。
2016年11月07日小学生になると出される宿題。一体何のためにやるもの?出典 : みなさんは「宿題」と聞くとどんなイメージを抱きますか?嬉しいもの?イヤなもの?イヤだけどやらなくちゃいけない?我が家は長男の宿題に本当に悩まされました。嫌がる子どもに、無理に取り組ませる宿題。そのたびに子どもも親もヘトヘトになると、「一体何のためにここまでしなくてはいけないのだろう…」と思うことも。今回は1冊の本をご紹介しながら、子どもに合った家庭学習のありかたについて、考えてみたいと思います。現在小5の長男は、読み・書き・計算に困難さを持った「学習障害」と診断を受けています。それでも就学相談の時点では、IQが平均以上ということ、言語性が高くおしゃべりが達者だったことなどから、普通級への就学を勧められ入学しました。学校では、音読や漢字の書き取り練習、計算の宿題が毎日出されます。読み書きと計算が苦手な長男は宿題を前にするたび大泣きし、自分の頭を自分で叩きながら取り組んでいました。このように、私たち親子が学校生活の中で1番苦しんだのが、宿題だったのです。親の思い込みが、子どもを追い詰めていた出典 : このままではいけない…と思った私はその後、就学相談や担任の先生と相談をしたり、通級学級に入級したり、宿題の量を減らしてもらったりなどの対策を取りましたが、状況は一向に変わりませんでした。当時の私は、「宿題はみんなしなくてはいけないものなのだ。」と考えていました。担任の先生からも「量は減らしていいので、みんなと同じものをやってください。」と言われたこともあり、「みんなはもっとやってるんだよ、減らしてもらったのだからわがまま言わずにがんばりなさい!」と、大泣きする長男叱り、やらせていたのです。しかし、心の中ではずっと思っていました。音読や漢字の書き取り・計算は本当に彼にとって、毎日しなくてはならないものなのだろうか?もっと、彼に合ったやり方、彼に合った課題や目標でもいいんじゃないだろうか…?と。そんなとき出会った運命の本。私たち親子を救ったその内容とは…出典 : そんなとき、出会ったのが『宿題なんかこわくない』という本でした。『この世から宿題がなくなったら、親も子もどんなに楽しい時間を過ごせるだろう。宿題が引き起こす親子バトルの相談を受けるたびに思います。勉強が子どものストレスでなく、楽しいものにするために、我が子に合った方法をこの本から手に入れてください。』(NPO法人福祉広場理事長池添素さん)図書館で手に取った1冊の本。その裏表紙にあったこの一文に、理解者をやっと見つけたような救われた気持ちになりました。本に教わったのは「子どものための」学習のありかた出典 : 私はすがる思いでこの本を読み込みました。内容を一部ご紹介します。『宿題ができないからといって、その子が怠けているとは限りません。宿題ができないのには、理由があります。そして宿題ができなくても、勉強がまったくできないわけではありません。宿題のことを、そんなに重大に考えないでください。』『苦労して宿題をさせても、それに見合うほどの学習効果があるわけではないし、苦しいイメージばかりが増えて、子どもをますます勉強から遠ざけてしまうことさえあります。』では、なぜ先生は宿題を出すのでしょうか。『お母様方は先生に当然の要求のように「学力をつけてください」とお願いします。(中略)先生もまた「学校としての成績を上げよ」と教育委員会や校長から命令されて、さらに宿題を課していきます。その結果、親も先生も「宿題をやらなければならない」と子どもを追い込んでしまうのです。』本来なら、子どものために、子どもに合わせて用意されるべき家庭学習が、大人の都合で「宿題」として出されているのかもしれませんね。出典 : もしそうなら、子どもに合わせた形で用意してあげてもいいのではないでしょうか?この本では、学校でよく出されている漢字/計算/音読の宿題について、子どもたちが苦手意識を持つのはなぜか?を、丁寧に解説しています。そして、学習のやり方次第で、子どもたちが「できた!」という満足感を持ち、学習効果をあげることができる、ということも教えています。さらに、「学習障害的な傾向の子どもたち」「ADHD的な傾向の子どもたち」「自閉症スペクトラム障害の子どもたち」それぞれの特性に合わせた課題の設定の仕方、支援の方法も説明されています。『勉強をその子ができる形にしてやることで、子どもは自然に力を伸ばすことができます。また、時期がくれば自然と力を伸ばすこともあります。だから、子どもを勉強に合わせるのではなく、勉強を子どもに合わせてやればよいのです。小学校に入学し、気を張って1日を過ごして帰ってきた子どもに追い打ちをかけるのではなく、家に帰ったらほっこりさせてやりたい。だから、まずは「宿題なんかできなくても大丈夫」と考えてあげてほしいのです。』宿題への考え方を変え、長男に合った方法を試すことに。すると大きな変化が出典 : この本に勇気付けられた私は、宿題に対する考え方を変えました。そして、教育相談や検査機関の医師と相談を重ねた結果、長男に合う学習方法や環境を見つけることができたのです。その様子については、以下の記事をご参照下さい。その後、特別支援学級へ転学した長男は、彼のペースに合わせた学習を用意してもらい、自信をもって毎日取り組んでいるようです。宿題についても、担任の先生と相談をして「タブレット学習」「漢字の読みカード」「ビジョントレーニング」をさせてもらっています。始めるときも以前のように大泣きせず、「おやつの前にさっさとやっちゃうね~!」と、自分から取りかかるようになりました。当時は長男に無理をさせてしまいましたが、努力ではカバーしきれないことを無理にさせるのは、足が不自由な人に「みんなは100メートル走なのに、あなたは50メートルにしてもらったのだから、がんばってみんなと同じように走りなさい!」と言っているのと同じことなのだと、今は反省しています。「子どもを勉強に合わせるのではなく、勉強を子どもに合わせてやればよい」それがこれほどの効果をあげるとは、正直驚くほどです。もちろんそのためには「学校に全部おまかせ」ではなく、「先生とよく相談をする」「家庭で用意できることは用意する」といった、家庭での努力も必要です。学校では、大勢のそれぞれ個性の違った子どもたちをまとめながら、先生方は日々努力して下さっています。そのことに感謝をしながら、自分の子どもに合った学習方法や支援について相談・お願いをしていく姿勢が大切だと思います。親として大切にしたいのは、子どもの頑張りを理解すること出典 : 先日、私のブログでこの本の紹介をしたところ、あるお母さんからこんな嬉しいコメントを頂きました。「宿題なんかこわくない。今読んでます!息子の事をわかりたいと思っていても、やはりどこかで自分基準でしかわかってあげられてないなぁ~と、つくづく感じます。今日もなんやかんやありましたが、なんだかとても息子が愛おしい!息子はこんな風に生活してるんだ!と抱きしめてあげたい気持ちになりました。素敵な本を、紹介していただき、ありがとうございます!」子どもなりに頑張っていることに気が付くことで、愛おしさが募ってくることってありますよね。たくさんの親子が、毎日をストレスなく楽しく過ごせるように。この本が、その助けとなることを祈ります。
2016年11月07日4月からの就学先、親子の願い通り特別支援級に決定!でも周りの反応は…出典 : 我が家の娘は来年から小学生になります。就学先を決める就学相談の結果、「特別支援学級固定制が望ましい」との判定を受け取りました。娘はもともと、「人が少ないクラスがいい」と強く希望していました。私は娘の兄が過ごしていた通常学級を例に出しながら、・支援学級は、通常学級とは違った形の少人数のクラスだということ・支援学級でも、通常学級で一緒に過ごす機会などもあることなどを何度も聞かせ、意思の確認を行っていました。希望通りの結果になり、娘もホッとした様子でした。しかし私たちが喜んでいる一方で、特別支援学級へ就学になったことを周囲の人に伝えると、中には「え?!そうなの…(お気の毒に)」といった感じの反応をもらうことが何度かありました。どうも「特別支援学級に行く」ということは、「みんなと一緒では勉強についていけないかわいそうな子」というイメージでとらえられているようです。特に娘の場合は、「そんな風には見えないのにそれまた何で?」「やっていけそうなのに、どうしてわざわざそんな所に入れるの?」と疑問に思われているようでした。確かに一見すると問題なさそうに見える娘。でも本人に希望を聞いてみると出典 : 確かに娘は一見何の問題も「無さそうに見える」タイプかもしれません。発達検査の数字を見ると、大きな凸凹がありますが総合値は107と知的能力は平均的です。生活面も自分のことは自分でそれなりにできていますし、問題がないというよりむしろしっかりしているように見えます。たぶん、就学相談で私が特に何も言わなければ、通常学級への就学が決まっていたことでしょう。でも、そんな娘に、どんな学校に行きたいか聞いたときのことです。私「どんな学校がいい?」娘「人が少なくて、静かな学校がいい。」私「どうして人が少ないほうがいいの?」娘「だって、うるさいと疲れるでしょ?それに、お友達がいっぱいだったら困っても先生に言えない。」私「そうなんだねー。あと、先生が『〇〇してください。』って言ったときはどうかな?言われたとおりにできそう?」娘「んー。私は言われたことと違うことをしたり、何を言われたか分からなかったりするでしょ?いっぱい人がいたら教えてもらえなくて嫌だ。…ねえママ、いっぱいって何人くらい?幼稚園のクラスより多いの?」私「30人とか、35人とかかな?今のクラスより多いねぇ。」娘「人が少ないクラスは?」私「多くても多分8人くらいかな。」娘「8人!?そんなら絶対少ないクラスの方がいい!」迷いがなかったわけではない。それでも「娘を支援級に」と考えた理由出典 : 娘は、自分が大勢の中にいるとき、時には一対一でも指示が受け取りにくいことやうるさいのが苦手なことなど、自分がどんなことに困っているのかを幼いながらも自覚していたのです。私はそんな娘を頼もしく思いましたし、こうして一緒に確認することができたのは、私が支援級を希望する大きな動機にもなりました。私はそんな彼女が出来るだけ楽しく、心を壊すことなく通学できるということを最優先に考えました。そして娘が個性を持ったまま伸び伸びと成長するためには、通常級は厳しい環境になるというのが私の結論でした。娘は独特な感性を持っていると同時に、とても繊細な一面があります。ちょっとユニークな彼女が周りに溶け込めなかったとき、その自覚と感情などが言葉に繋がって、私に伝えられるようになったときはもう傷は相当深いものになることや、ちょっとしたことが二次障害に直結するだろうということは、私も主治医も予想するに難くありません。もちろん私も決して迷いがなかったわけではありません。「考えすぎかも」「過保護で心配性すぎかしら」と思ったこともありました。支援級だと送り迎えが必要だったり、自立活動などの時間が入るため勉強が遅れがちになるであろうことや、中学でも支援級だと内申がつかない可能性なども耳にします。それでも私が「娘を支援級に入れたい」と思ったのは、そこが娘にとって一番居心地のいい環境だと考えたからです。大切なのは、「子どもにとって」一番過ごしやすく、能力を最大限発揮できる環境を選択するということだと思います。子どもにとって過ごしやすい環境であれば、それだけトラブルや問題を回避することができ、親のストレスもそのぶん減らせるのではないでしょうか。支援級や支援学校に入ることは、本当に「かわいそうなこと」なのだろうか?出典 : おそらく私と同じように色々な心配をし、さまざまな葛藤や思いの中をグルグルと彷徨いながら、たくさんの考えを経て就学や進路を決めている保護者の方はたくさんいると思います。これだけの思いを経て出した選択なのに、「支援級」や「通級」「支援学校」などに通うことは本当に「かわいそうなこと」なのでしょうか?残念ながら、周囲の方々の中には「支援級」「通級」というものをご存じない方や、正しく理解していない方もまだまだ多数いらっしゃるかと思います。私も、私の親世代の方にはなかなかどういうものかを伝えることができず、最終的に「昔でいう障害児学級みたいなものだよ。」と説明したことがあります。でもそうすると「この子たちは『障害児』ではないでしょう?昔はこんな子いっぱいクラスにいたのに…」などとまた一から堂々巡りの説明に疲れてしまいました。他にも、その必要性を感じていながら我が子を支援学級や支援学校にへ入れることをためらい、家族の理解も得られず、ひとり我が子や学校と向き合い続けてる方もいらっしゃるでしょう。私のように周りの反応にモヤモヤしてしまったり、凹むこともあるかもしれません。ですが、それぞれに考え抜いて出した結論に、自信を持って良いと思うのです。私たちの結論や期待に十分沿えることができる教育環境であって欲しいのはもちろん、通級・支援級・支援学校に対する正しい理解や認識が広まり、子どもたちが、そしてその親たちが何の引っかかりもなく当たり前の選択としてそれらを選べる社会であってほしいと思います。
2016年11月06日「切り替え」が苦手な子は何に困っているの?出典 : アナログゲーム療育アドバイザーの松本太一です。欲しい商品が売り切れだったり、急に雨が降ってきたり…私たちの日常は予期しないアクシデントであふれています。そんなとき「まぁいいか」と諦めたり、次の行動に気持ちを切り替えたりすることで私たちは対応していますが、この切り替えがとても苦手なのがASD(自閉症スペクトラム症候群)の人たちです。特にASDと診断されているお子さんと関わる場合は、見通しが立たないことによる不安やパニックの恐れから、「急な予定変更をしてはいけない」と言われています。親御さんの多くは、その言葉に従ってできるだけ急な予定変更が起きないようにしていますが、実際には時間がないなどの理由で予定変更せざるを得ないこともしばしば。予定を変えられてしまったお子さんは、見通しが急に立たなくなりパニックを起こしがちです。こうなってしまうと後が大変。落ち着かせるのに一苦労です。ちょっとしたお出かけや集団行動のたびにパニックになっていては、行動範囲や選択肢も自ずと限られてくるのではないでしょうか。では、どうすればお子さんがパニックを起こさずに、楽しく外出や集団行動を楽しめるようになるのでしょうか?不安の原因は「次にどうしたらいいのか?」がわからないこと出典 : そもそも、なぜ急な予定変更をしてはいけないのでしょうか?それは、変更によって予め意識していた先の見通しが崩れてしまうからです。ASDのお子さんは特にそのことに強い不安を感じる傾向があります。見方を変えれば、急な予定変更があったとしても、変更後に何が起きるのか?お子さんが明確な見通しを持つことができれば、不安感を減らすことができるのです。見通しを補ってくれるのが具体的な事前の説明出典 : お子さんに見通しを持ってもらうために必要なのは説明です。「なぜ変更をするのか」「変更した後はどうするのか」を丁寧に説明します。例えば、当初遊ぶ予定だったゲームが、途中で時間が足りなくなって遊べなくなるとします。その時は、「今日はすごろくで遊ぶ予定でしたが、時間がなくなってしまったので、代わりにパズルで遊びます。このパズルは、ヘビの体をつなげていって、たくさんカードを集めた人が勝ち、というゲームです。」と言った風に、変更の理由と変更した後に何をするかを具体的に伝えます。言葉の説明に加え、実際にゲームのパッケ-ジを見せるなど、変更後に使う課題や道具などを見せてあげると、より理解しやすいでしょう。具体的に見せられるものがなければ、新たな予定や次に行う行動を表に書いて見せるのも効果的です。Upload By 松本太一こうした説明により、変更後の見通しが明確になるためお子さんが不満を抱いたり、不安を感じる可能性は減ると思います。それでも納得できないときは、子どもたちに選んでもらおう出典 : 具体的な説明をしても、お子さんが納得しなかったときには、次の手段としてお子さん自身に判断を任せてみましょう。「すごろくをやると時間が足りないので、ゲームの途中で終わってしまいます。パズルなら最後までできます。どちらにしますか?」といった風に、選択肢を示した上で、それぞれの選択をしたときに予想される結果も説明しておきます。多くの場合、お子さんは当初の予定にこだわって、最初にプレイするはずだったゲームを選ぶと思います。結果的にはゲームの途中で終了時間が来てしまいますが、予めお子さん自身に判断させるステップを踏んであるので、ゲームが途中で中断するという見通しが立っており、納得しやすいのです。自分で見通しを立てられるようにするためには?出典 : 急な予定変更に直面することは、社会に出ればもっと増えてくるでしょう。上で紹介した、お子さん自身に判断を任せるというやり方は、お子さん自身が急な予定変更に直面したとき、自分自身で新たな見通しを立て、不安にならずに済む力を身につけてもらうことも狙いとしています。そうした意味から、個人差はあるものの、自分の置かれた状況を客観的に把握できる小学生中学生以上のお子さんに対しては、最初にご紹介した大人が丁寧に説明をする方法より、むしろ本人に判断を任せてしまう方法をお勧めしています。
2016年11月05日不登校のまま中学生になった娘。熱心なA先生の行動は娘に伝わらず…出典 : 小2から不登校の娘は現在中学2年生で、アスペルガー症候群の診断が出ています。小学生の頃からずっと不登校なので、中学へ入学するときには「登校するよう本人に促さないでほしい」「学校からの連絡は月に2回程度にしてほしい」などの依頼を、事前に私からお願いしていました。ところが入学してからすぐに、担任のA先生が自宅に訪ねてきました。30歳くらいの熱心な数学の先生で、毎日発行している手書きの学級通信や宿題のプリントを持参し、月に何度か私と1時間くらい話をして帰るようになりました。「学校に来てください」とは言わないものの、「何かきっかけがあったらいいんですけどね」「外出できましたか?」と、グッドニュースばかり期待する一方的な姿勢に、私はだんだん疲れてきました。また、クラスの子が書いてくれる連絡プリントに「待ってるよ!」「どうして来ないの?」という言葉があるのも気になりました。こちらは行く気がないのに、こうして毎日書いてもらう負担を考えると「そのうちクラスの子に不満が生まれるのでは?」と気がかりですし、娘に見せても心が重くなるだけだろうと考えると、正直気が進みませんでした。連絡プリントも最初は「生徒の教育のためですので」と言われたものの、なんとかお願いしてやっとやめてもらうことができました。娘はA先生が来ている間、寝室に閉じこもって出てきませんでした。そして、4月の終わり頃「もうA先生が家に来るのが辛い」と言ったのです。私は、「申し訳ありませんが、娘がA先生に来ないでほしいと言っているので、私が学校に行かせていただきます」と申し出ました。A先生は残念そうでしたが、その後は距離が遠ざかり、3ケ月に1度学校で話す程度になったのでした。その印象はまるでイノシシ!?言葉と態度でまっすぐぶつかってくれたB先生出典 : 娘が中1のとき、もう1人印象に残っている先生がいました。その先生は体育のB先生です。見た目も性格も豪快ですが、女性の先生です。新しく中学校に入学した生徒の中に、いまだ1度も学校に登校していない生徒がいる、ということで気にかけて頂いたようです。B先生は、学校で問題を起こしやすいやんちゃな子など、いろんな生徒をよく気にかけていました。私が学校で初めて会ったときも、「ああ、お母ちゃん、会えてよかった!りさ(娘)は元気?あの子だけ1回も会ってないから気になってるねん」と強烈な陽のパワーを感じさせてくれました。私は学校で会ったのか人や話したこと、帰ってからいつも娘に報告していました。その日、B先生の印象が強烈だったことを伝えましたが、娘の反応は「あ、そう」と薄いものでした。出典 : ところがその後、地元のお祭りで偶然B先生とお会いしたのです。B先生は私を見つけるなり、側にいるのが娘だとすぐ気付いたようでした。そしてすぐ駆け寄ってきてかと思うと「りさ~!やっと会えた!!」と満面の笑顔で娘をハグしてきたのです。娘はビックリしていましたが、まんざらもない様子でした。後に、「ママ、あの先生面白いな」とニコニコしていました。B先生は家庭の事情もあって娘が2年になるときに退職されました。その後も、私のスマホにはよくメッセージを送って下さり、私とお茶したり、そのついでに家に寄ってもらったりしていました。娘はそのたびにとても喜びましたが、B先生は長居もせず「今日は帰るわな」といつもさっと帰っていきました。娘は「B先生にまた会いたい」と今でも言っています。これだけ特定の先生と信頼関係を築けたのは初めてで、先生の本音丸出しの態度に安心したのかな…と思います。娘の抱いていた「先生」へのイメージが変わるきっかけになったのも、B先生のおかげかもしれません。そして中学2年生。B先生のおかげで少し先生と距離が近くなった娘は…出典 : 先生との関わりで、ほんの少しだけ「先生」というイメージに対して肯定的になっていた娘。中学2年生になり、担任の先生はC先生になりました。娘は中学2年生になるとき、学校にお願いして「個別の教育支援計画」を作って頂きました。その際、C先生にも同席してもらいました。C先生は静かでおとなしい先生でしたが、支援計画では一生懸命取り組んで下さいました。娘は、C先生が若い女性だったので親しみを持ったようです。たびたび学校に足を運び、満足そうな表情で帰ってくる私を見ていたのでしょうか。娘も担任が変わったのを機に、家庭訪問を受け入れるようになっていきました。今でも仲良しな担任のC先生。一緒に料理をしたのは、いい思い出に!Upload By ヨーコC先生ともなじんできたある日のことです。自宅に訪問に来てくれていた先生に「最近娘が料理にハマっているんです」と伝えると、「じゃあ、私と一緒に何か作ろうか?」とC先生のほうから提案してくれました。ラッキーなことに先生は家庭科の先生だったのです。それを聞いた娘は喜んで、たくさんある料理本をめくりながら、「あれがいい、これがいい」と盛り上がりました。その日、先生とパンを作ることを決めた娘。先生はレシピ本のコピーを持って帰りました。Upload By ヨーコお待ちかねの料理を作る日です。先生は家で1度予習して指導のポイントを考えてきてくれていました。粉をスプーンで測る方法、現在の時間から10分後は何分なのか計算する方法、弱火ってどれくらいか、火にかけるとき鍋の柄は自分が立つ方向と逆に向けることなどなど…。パン生地のこね方も丁寧に教えてもらい、娘の目は尊敬の色でいっぱいでした。そうして出来上がったパンは、みんなで頂きました。とてもおいしかったです。娘は先生に「学校の家庭科では、どんな料理してる?」と聞いていました。学校と同じメニューを家で作ろうか?と考えているようです。その後も、2か月に1回程度、先生から私あてで連絡が来るようになりました。そのたび、娘は「先生と料理楽しかった。またいっしょにやりたいなぁ。先生次いつ来るの?」と楽しそうに聞いてきます。不登校のままでも大丈夫。そう思えるようになってきたのは、先生方のおかげ出典 : 娘は、現在も不登校のままです。しかし、先生方の柔軟な対応や温かな姿勢により、信頼関係を結ぶことができつつあります。これは大きな変化であり、社会とのつながりにもなっています。こうして娘は、関わりが増えるたびだんだんと、先生に心を開くようになっていきました。不登校であっても、自分の学校があるというのは娘の心の支えになっていると、感じています。
2016年11月04日パニックを起こしませんように…息子との外出は緊張しっぱなし!出典 : 発達障害と診断の出ている6歳の息子にとって、「初めての場所」は1番緊張感の高まるシチュエーションです。行動の見通しが立たない場所に突然連れて行かれると、パニックになって支離滅裂なことを言い出したり、大きな声をあげてその場にいる人たちを困らせたりしてしまうのです。私はいつの間にか、息子を初めての場所に連れていくとき、とても緊張するようになりました。「どうか大声をあげませんように…」「走り回って収拾がつかないことになりませんように…」「あの状況にパニックを起こすかもしれない、先に予告しておこうか…」出かける前は、前日から様々な状況を考え、1人でうんうんと唸るのが常です。ですから、息子といざ外出する頃には、私は疲れ果てています。目は血走り、緊張で汗ばんだ手で息子の手をぎゅうっと握っているような状態なのです。周囲に迷惑をかけてはいけない…息子が失敗するたびについ手が出てしまう私出典 : ふと気付いたら、習い事や療育先でもつい先回りしていた私。先日、公文に行った時のことです。教室のドアを開けたとたんいつも騒ぐ息子に、「ドアを開けたらしゃべらない、大声出さない、走らない。お約束だよ」と事前に言い聞かせました。息子はパニックのとき、周囲のお友達から白い目で見られると、余計パニックがひどくなるので、教室に入っても落ち着いて過ごして欲しかったのです。ところが、ドアを開けた瞬間キャーッと騒ぎ出す息子!とっさに止めに入ろうとしたら「お母さん大丈夫ですから!」と先生に止められてしまいました。「そんなにしなくても大丈夫。私たち、プロですから」「お母さん、ちょっと外に出ていて大丈夫ですよ。息子くんは落ち着いたらちゃんとできますよ。」先生からはこう指摘されましたが、私は「息子が教室で騒ぎ、パニックになれば授業は進行できない。そうなればみんなの迷惑になる…。」という思いが拭えませんでした。しかも、パニックになった息子を止められるのは私しかいない。みんなが授業に参加できるように私が動いているのだ、とすら思っていたのです。正義感でいっぱいの私、息子を厳しく見つめる目は徐々に変化し…出典 : 習い事や外出先でいつも息子の行動を監視していた私を見て、あるとき息子がいいました。「お母さん、こっち見ないで」「見ないでってば!!」「こっち見るな!!!」と、パニックを起こすようになりました。なぜなのか本人に聞いてみると、「お母さんの目がどんどん怖くなる」と言うのです。発達障害の子というのは、そもそも人の目を見ることがあまり好きではありません。息子も、療育を受けるまではなかなか視線が合わず、今でも人の目を見るのが怖いために挨拶することが苦手です。そんな息子が「どんどん怖くなる」と言った私の目。「息子がパニックになってしまったらどうしよう」「みんなに迷惑をかけたらどうしよう」と緊張するあまり、私の目は息子をじっと監視する目になっていたに違いありません。周囲からの言葉で気付かされたのは、「人を信頼する」ということ出典 : こんな風にガチガチに緊張し、血走った目で息子を監視する…そんな私を見て、これまで沢山の方々がいろいろな言葉をかけてくださいました。「子どもなんてこんなものだよ~」「よくいるよ、こういう子」こうした言葉は、息子が発達障害ではないかと悩んでいたときは、とても辛く感じました。けれども今は、なぜかこの言葉が、ガチガチになっている私をその都度救ってくれるのです。それから、「私はプロなんだから、こっちに任せて。お母さんはその辺でゆっくりしていて」という言葉も本当にありがたいと感じるようになりました。それまでは「私しかこの子を止められない!」と自分を過信していましたが、親は人を信用する力を養うことも大切だな、と最近は感じます。習い事や療育先で親が先生を信頼できるようになると、子どもも先生を信頼する傾向があるようです。息子は、先生が信頼できるようになることで、パニックも起こさずに落ち着いて過ごすことが増えてきました。親ができる範囲は限られているのだから、プロを信頼して委ねよう…と、少し解放された気持ちになりました。大変な毎日の中で、ついつい怖い目になっていた私。いろいろな人に気付きをもらったおかげで、少しずつ子離れの必要性を感じ始めています。
2016年11月03日初めまして、この記事に目を留めて下さりありがとうございます。これを読まれている皆様は発達障害との縁が多少なりともある方だと思います。お子様への接し方が分からない。学校などの集団生活になじめない。他人と考え方・感じ方が異なるため誤解されやすい。抱えていらっしゃる悩みごとは様々だと思います。そこで発達障害当事者である私が、自分の障害とどのようにして付き合い、受け入れ、いまの仕事をしているかについて書かせていただきました。今回は、私の幼少期の学校生活についてです。「障害」を周りの大人たちが認識したのは小学生のとき出典 : 小学生のころ、私は自分自身に障害があることを認識しておりませんでした。私の異常を最初に気づいたのは周囲の大人達で、小学1年生のときでした。この時期になっても未だに私だけ読み書きができなかったためです。私は文字の形を認識することができず、平仮名が書けませんでした。ようやく書けるようになっても、文章を書くことはとても難しかったです。作文の宿題が出ると、机に向かって書こうとするのですが、2~3時間頑張ってやっと2~3行書けたぐらいでした。読解については、文字を1文字ずつしか読めず、意味も理解できませんでした。例えば「がっこう へ あるいて いく」なら「が、つ、こ、う、へ、あ、る、い、て、い、く」か「が、つこう、へある、いていく」としか読めず、単語の認識ができなかったようです。さらに算数も、数字の意味や計算の仕組みを理解する事ができませんでした。1+1すらできなかったそうです。自分の努力と適切な支援のおかげで、勉強ができるようになった出典 : 私の様子を担任の先生から指摘され、手を尽くして原因を調べた母は、「発達障害」の存在を知りました。当時はまだあまり知られていない障害でしたが、運よく発達障害を研究している機関を見つける事ができました。そこで私に下された診断は学習障害(LD)。でもこのとき私はまだ、自分に障害があるということをきちんと認識できていませんでした。研究機関に通って母と医師が何やら話しているものの、私は内容が自分に関することだとは思いもせず、退屈だったので同じ部屋内で遊んでいました。しかしこの診断があったことで、母は「根気よく繰り返し、できなくてもイライラせずに、できた事があれば必ず褒める」という教育方針のもとで私を勉強させてくれました。最初なかなか進歩は見られませんでしたが、学校の授業で漢字が出てきてから変化が見られました。例えば「つき」という平仮名だけだとその意味がわからなかったのですが、漢字の「月」は三日月の絵が崩れて漢字になったという成り立ちを見ながら教えてもらうことで、漢字の形と意味を理解できました。漢字を覚えたことがきっかけで、「文字を組み合わせて単語をつくる」ということもだんだんと理解できるようになり、これをきっかけに文章も徐々に読めるようになりました。作文はやはりかなり苦手で、宿題はいつも母が隣で手助けをする必要がありました。しかし、私が強く「書きたい」と思ったことについては、周囲が驚くほど筆が進んだそうです。算数については、数を数字以外のもので視覚化する事で分かるようになりました。例えば先ほどの1+1は、りんごを用意して実際に数える事で理解できました。ただし、文章問題は問題を読み解く必要があるため、できるようになるまでかなり時間がかかりました。このように私は、苦手なことを他の子どもたちとは違う方法で勉強することで、学習の遅れを補うことができました。いじめもあった。でも得意なことをがんばることで、周りに認めてもらえた出典 : 同級生達を始めとした人間関係ですが、小・中・高のどこでも入学してから数ヶ月の間よくいじめられていました。幸い私の周りには助けてくれる大人たちがたくさんおり、大事には至りませんでした。ただ、担任の先生は私の扱いに困っていたようで、よく怒られていたのを覚えています。でも私自身は何が問題で怒られているのかさっぱりわかりませんでした。何が原因だったのか、はっきりとした事は不明ですが、私は授業中に逃げ出して行方不明事件になる一歩手前まで大騒ぎになった事がありました。このように、後先考えず衝動的に行動するところが、恐らく周りから見て異質に見えたのではと思います。このように書くと「発達障害のある子どもは学校になじめないんだ」と思われるかもしれませんが、そんな事はありません。そして、私自身の得意分野が周りに認められたことも、同級生たちとの関係が良くなった一因でした。小学校3~4年生のころ、クラスメイトの誕生日カードを作る宿題がありました。私はこの宿題に夢中になり、夜中の12時頃まで絵を描き続けて、本来は作る必要のない表紙の絵まで描いたそうです。そのとき母は「学校の成績ではあまり重要ではないことに時間を割いて…」と思ったそうですが、夢中になって完成させたカードはクラスメイトの間で好評になり、同級生たちと仲良くなるきっかけになりました(ちなみに誕生カードを贈ったクラスメイトとは、特に親しい間柄ではありませんでした)。何かを作りだすと夢中になり、図工や美術の科目で良い評価を受けることは、その後もたくさんありました。こういった経緯で、周りから見た私は「変わり者だが、すごいやつ」という認識になっていき、次第に同級生たちから認められるようになっていきました。周囲には「障害は完治した」と思われた。でも自分の心の中には違和感があった出典 : 多くの支援と私自身の努力により、学校の成績や友達関係などの問題は解決していきました。これにより、先生も母も「学習障害は完治した」と思ったそうです。特に母は、障害に対する忌避感も重なって、私に「障害がある」とハッキリと伝えることはしませんでした。これでめでたしめでたし…のように見えて、実はそうではありませんでした。確かに目に見えて明らかな問題は解決しましたが、私は他人と打ち解けることが苦手で、周りとは何とも言えない壁を感じ続けていました。例えるなら私と他人の間には常にガラスの壁があり、わかり合えず、私の声は向こう側に届いていないようでした。この壁に、長い間私は1人で悩まされていました。「障害は完治した」という周囲の認識は、成人してからの私の生活にも大きな影響を与えることになります。障害を受け入れた今、保護者や学校に思うこと出典 : 障害があっても、今後も社会で生きていく以上、学校など何かしらの社会的な集団に所属しておく必要はあると思います。でも自我が確立していない幼少期に、所属している集団で自分の存在を認めてくれる人がいないと、本人が自分を認められず、社会で生きていくことは困難になってしまうかもしれません。ありのまま生きる姿を、「障害」としてではなく「個性」として接してくれる人がいれば、その子にしかない才能を発揮して力強く生きてくれるでしょう。私はいじめも経験しましたが、個性の一部として周囲の人に受け入れられていたため、自分を異常だなどと追い込んだり、できないことや失敗したことを障害のせいにすることはありませんでした。そこで、発達障害のお子さんを持つ親御さんへ、発達障害の当事者としてお願いがあります。どうか皆さんには、お子さんの最大の理解者になって欲しいと思います。良くいわれている事だとは思いますが、発達障害=悪いことではありません。だから、悔やむことも、恥じ入ることも、責められることも何一つありません。悪い方向に傾くのか良い方向に傾くのか、それはこれからの行動次第です。いじめや学習障害を乗り越えた私ですが、自分自身に障害があるとは認識しておらず、障害と向き合うことをしていませんでした。このことが将来に影響を及ぼすこととなります。次回は私が大人になってから仕事をするにあたり、ぶつかった困難についてお話します。
2016年11月02日ストレスがチックになって出る長男。でも、今年の春から始まったチックはいつもと違い…出典 : 新学期や行事の前後など、周りの様子が普段と違うようなとき、大人でさえもストレスを強く感じるケースがあるかと思います。ましてやストレスに敏感な発達障害の子どもたちは、日々思いがけないストレスに晒されていることが少なくありません。保育園に通っている長男も例外ではなく、ナイーブな性格も手伝ってか、だいたい「そろそろかな」という時期には毎年「チック」が現れるようになりました。長男のチックは主に、口でいろいろな音を立てるタイプと、首をすくめるタイプが合わせて出ていました。ひっきりなしに音が出ているものですから、何か話しかけているのかと間違われ、周囲の人から「何?」とよく聞き直されることもしばしば。そんな状態であっても普段は1ケ月、長くても2ケ月もすれば自然に治まるので、あまり気にせず「今はストレスを多く感じているんだな…」とだけ認識し、見守るようにしていました。しかし、春に出はじめたチックはなかなか治まらず、秋まで半年間続きました。私は、できるだけストレスの原因を取り除こうとしましたが、その原因が何なのか?察するのは難しく、やはりただ見守ることしかできなかったのです。療育の先生が誘ってくれた絵本作り。自由な発想から生まれるそのストーリーとは出典 : そんなある日、いつもの療育先で個別の指導を受けていたときのことです。長男が紙で本を作っている様子見てピンと来た先生が、ある提案をしてくださいました。先生「ねえねえ、今日は絵本を作ってみない?」先生からの提案に、嬉しそうに応じる長男。1枚の紙に切り込みを入れ、先生があっという間に3ページの本を作ってくれました。そして「タイトルは何がいい?」「この本は誰のお話?」など、長男のイメージを引き出しながら本を作ろうとしています。長男は主人公を猫に設定し、猫には自分の名前を付けました。タイトルは『しろねこのAくんの本』。「最初は森から始まる?海から始まる?」という先生からの質問に答えたり、ときには自分から「公園に行きたい」などとストーリーを提案したりしながら話を進めていきます。自由な発想で構成されたそのストーリーは、突然家でごはんを食べるシーンになったり、急に宇宙の話になったり、かと思えば次のページで「ぎゅうにゅうをのみました。 おしまい」なんていう展開もありました。こうして、読み聞かせも絵本も大嫌いだった長男は、意外なところで絵本との接点を得ることができました。話を想像してそれを相手に伝えることに一生懸命取り組んだ長男。その姿は本当に楽しそうで、とても印象的でした。絵本作りがすっかり大好きになった長男。それと同時にある変化がUpload By OKASURFERその後、すっかり絵本作りにハマってしまった長男。自宅でも出先でも、紙とペンを持ち歩き、時間を見つけては「えほんかく」と言うようになりました。「かく」とは言っても、実際に書くのはほとんど周りの大人で、私たちは長男大先生のイメージ通りに作品を起こす、アシスタントに徹しています。「ねこ 15にん かいて」など、アシスタント泣かせの大先生ではありますが(笑)。彼がイメージをがんばって言語化しているのだから…と、私たちもできるだけ彼の思う絵を描けるよう、無い画力を振り絞る日々です。さてこの頃、思いがけず不思議なことに気付いたのですが、あれだけ長く続いていたチックがピタッとなくなっていたのです。絵本との因果関係はさすがにわかりませんが、全てではないにしろ、彼の中にあったものを絵本という形で吐き出すことで、ストレスを発散できていたのかもしれません。長男をストレスから救った魔法出典 : いまだ自作以外の絵本が嫌いで、読んでも聞いてもくれない長男ではありますが、思わぬところでストレスを減らす『魔法の本』に出会うことができました。思いを吐き出す、イメージを膨らませるひとつの手段として、これからも楽しく取り組んでいけたらいいな、と考えています。
2016年11月01日年長に進級した息子。間もなく登園を渋るようになり…出典 : 歳の息子にはADHDの診断が出ています。これまでは毎日元気に幼稚園に通っていたのですが、登園を渋り出したのは進級後、しばらくしてからのことでした。幼稚園に行く時間になると私にしがみつき、「ママと一緒にいたい」と泣くようになったのです。1学期の間は、なんとかなだめて登園させたり、時々休ませたりすることが続きました。「担任の先生が怖い」それが、息子が登園を渋っている理由でした。何度か担任の先生とお話しをしましたが、「息子さんを特別きつく叱ったりはしていません」「むしろよくできる方なので叱る原因がありません」という回答でした。先生とあまり相性が良くないのかな?合わない人と過ごすのも人生経験、そこから何かを学べればいいかな?と思い、息子にもそう言って聞かせましたが、「怒られるかもしれないから行きたくない」と、相変わらず登園渋りは続くのでした。息子の様子を見に授業参観へ。そこで見えたのは、家庭の方針に応じて対応を変える先生の姿だった出典 : そんな中、幼稚園の授業参観がありました。私は息子の登園渋りの原因を探ろうと、先生とのやりとりを観察することに。息子は先生の話を一語一句聞き逃すまいと、必死でお話しを聞き、うなずき、返事をしています。工作の課題を与えられると、自分の行動が間違っていないか必死に周囲のお友だちを見回し、「このやり方で合っている」と確信すると、遅れないように必死に作業を行っていました。失敗を極端に恐れる、という特性を持っている息子らしい行動だな…と思いながらその様子を眺めていました。一方、行動がゆっくりなお友だちもクラスにはいて、先生は彼らに声をかけていました。「いつまでやってるの!?もうみんな終わってるよ!」「早く〇〇しましょう!みんなが待ってくれてるでしょ!」「まだこんなところをやっているの?間に合わないよ!」そのお友だちのご両親は、「みんなと同じ速度で行動ができるよう、きちんと躾けてほしい」という方針だそうで、事あるごとに先生から注意を受けるのです。そのお友だちと席が近かった息子は、先生の言葉をずっと聞いていました。私はこの様子を見た瞬間、息子がなぜ「先生が怖い」というのかがわかりました。お友達が怒られるたびに苦しんでいた息子出典 : 発達障害を抱える人の中には、他人との境界が曖昧なため、知らない人が怒られていても、自分が怒られているかのように恐怖を感じ、悲しみ、怒りを覚える特性を持つ人がいます。わが家の娘や息子も、そのタイプに当てはまります。進級してからずっと、お友だちが怒られる姿を見て、自分が怒られているかのように受け止めていたのです。息子が登園を渋る理由が腑に落ちました。話を聞いてみると、頭では「自分が怒られているのではない」とわかっているようですが、「次は自分が怒られるかも知れない」「早くしないと怒られる」という恐怖から、必死に気を張って過ごしていたのです。一日中注意を受けているお友だち、それを隣で聞いている息子…私が想像するよりも、うんと苦しかったのかもしれません。私は息子の登園渋りの原因を、担任の先生にお伝えしました。その後、そのお友だちと席を離してもらうなどの策を講じてもらいましたが、息子の登園渋りがなくなることはありませんでした。いろんな習いごとに挑戦し、その中でたくさん怖い先生にも出会ってきましたが、これほどの拒絶は初めてでした。園をやめることを決意した息子。怒られることがそんなに嫌だった?出典 : 学期に入ると、家を出る足が動かなくなり、ついに息子は幼稚園へ行くのをやめました。毎日家で穏やかに過ごしている息子と、時々幼稚園の話をします。私「家にいたって、ママにたくさん怒られるのに怖くないの?」息子「そりゃ怖いよ!ママは鬼みたいだもんね~!」私「幼稚園の先生よりママの方が怖いんじゃない?」息子「う~ん、ママは僕のことを大好きだって知ってるからいいの。僕のために怒ってくれてるんでしょ?幼稚園の先生はそうじゃなかった。あのクラスにいるのは厳しかった。2度と行かない。」きちんと言葉にはできませんが、息子なりにいろいろと感じていたのでしょう。もし、進級後からきちんと先生との信頼関係が築けていたら、「この先生が言うのなら」と思えていたら、事態は変わったのかもしれません。レールから外れることは怖い。それでも私が子どもたちの笑顔を大切にする理由出典 : 現在、息子はまだ幼稚園に籍を置いています。幼稚園との交渉はまだ続いていて、先生方はなんとか息子が以前のように幼稚園に通えるようにとあれこれ策を講じ、「今幼稚園を辞めてしまったら、この先どうするんですか!?小学校は?中学校は?」と心配して下さっています。進学、就職…そのレールから外れずに、何とか耐えていくこと。それが正しい道なんだと、園の先生方は口を揃えておっしゃいます。確かにそのレールから外れた先に何があるのか、私にもわかりませんし、わからないから怖い。それでも、子どもたちの心を殺してまでもレールにしがみつくことは、私にはできませんでした。先生に請われ、渋る息子を1度だけ幼稚園に連れて行ったことがあります。笑顔で駆け寄ってきてくれるたくさんのお友だちを眺めていると、この子たちのように息子も幼稚園生活を満喫できたら、どんなに幸せだっただろうと思います。それでも、教室の片隅に目を向けると無表情で佇んでいるお友だちもいて、息子もきっとこんな風に過ごしていたんだろうと胸を締め付けられる思いがしました。息子は黙って私にしがみつき、俯いたまま顔をあげようとしませんでした。親の理想と子どもの現実。うまく行かないことだらけ。それでもきっと、心地よく過ごせる場所が見つかるはず。合わない場所から離れるのは悪いことではない。笑って過ごせる場所を探していけばいい。それが“自分らしく生きる”ということなんだよ、そう信じて、子どもの笑顔を見守りながら前に進んで行きたいと思います。
2016年11月01日みなさんの周りにも、こんな人いませんか?出典 : 「うっかりさん」それは…いつも探し物に追われ、忘れ物をしてはあたふたとして、貴重な人生の時間を「あれがない、これがない」と言って浪費してしまう。なんだか大変そうにしていたかと思えば、ぽわ〜んと考え事をして、上の空で壁や電柱に頭をぶつけたり、電車で駅を乗り過ごし、いつの間にか知らない土地に降り立っている…そんな不思議人間です。もしかしたら、「うっかりさん」は、いつもうっかりミスや失敗ばかりで、親や先生・上司からの注意や叱責が続いたり、自分でも「なんでこんな簡単なことができないんだろう」なんて落ち込んで、自信を無くしがちかもしれません。でもね、本当はそんな「うっかりさん」は人間味溢れる、豊かな世界観を持った魅力的な人物でもある可能性が高いのです。そんな愛すべき「うっかりさん」の、長所やいいところに気づき、ミスや失敗を減らすために、親や周りの人達ができる接し方のコツと、うっかりを予防する、自分でも簡単にできる自己管理の工夫はあるんです今回は、「うっかりさん」の魅力を引き出すポイントを、自分自身のうっかりとつき合いながら、「うっかりさん」な子ども達を子育て中の、楽々かあさんこと大場美鈴がお伝えします。うっかりさんの短所を長所に「凸凹変換」すると…?Upload By 楽々かあさんそもそも、「うっかりさん」って、なんでうっかりしてしまうのでしょう?それは、こうした理由があるからかもしれません…。・頭の中がいろんな雑多で膨大な情報でいっぱいで、処理が追いつかない(いわば、「脳のメモリ不足」状態)・目や耳から入って来る情報を、そのまま無選別に受け取り過ぎてしまう・今するべきことの優先順位がつかない・あれも、これも、それも、同じように気になってしまうから、ついつい手元がおろそかにでもこれは、見方を変えれば「好奇心旺盛」とも言えるんです。「うっかりさん」の長所をみてみましょう。●要る情報と要らない情報の区別は苦手だけど、一見無関係な情報同士が結びついて、アイデアやひらめきを得やすい●発想力や想像力が豊かで「クリエイティブ」そして、ミスや失敗ばかりの「うっかりさん」の最大の魅力は、その「親しみやすさ」です。思い出してみて下さい。「うっかりさん」の代名詞、マンガ「ドラえもん」の主人公、のび太君を…!彼は、できないことが多くて、失敗ばかりだからこそ、世代も国境も超えて幅広く愛され、親しまれる人気者になれたのではないでしょうか。「うっかりさん」は、そんな不思議と憎めない、人間味溢れる魅力が満載なのです。出典:Facebook記事「凸凹変換表」(初出:2015.12.25)「凸凹変換表」の無料ダウンロードは、楽々かあさん公式HPより。上の空のうっかりさんを「今、現在」に戻す、接し方のコツと声かけUpload By 楽々かあさんでは、そんな「うっかりさん」の子育てをしたり、学校や職場で上手にフォローしながらつき合っていくには、どうしたらよいでしょう?いつもお空にぽわ〜んと浮かんでいる「うっかりさん」が、地に足をつけて現実の世界でやっていくためには、「今、現在」に気づかせ、何を優先して行動すれば良いのか、具体的に思い出せるようにするのがポイントです。【気づかせる声かけの例】●「今、何してたんだっけ?」「今◯時だけど、大丈夫?」●「どうすればいいんだっけ?」「こういう時、いつもはどうしてるの?」●「今やることはAと、Bと、Cだけど、どれから始める?」こんな声かけで、うっかりさんはハッと我に返ったり、大事なことを思い出したり、優先順位をつけて具体的な行動に移ることができます。そして、ミスや失敗の多い「うっかりさん」なので、親や周りの人は、つい小言を言いたくなってしまいますが、周囲からの注意や叱責が続いてしまうと、余計にうっかりが増えてしまいます。出典 : 「うっかりさん」は、同時にあれもこれもとテキパキ処理するのが苦手かもしれませんが、ひとつひとつ順番に確実にやってゆくことは得意だったり、全体像を把握してから具体的な部分に入ることで、頭の整理整頓ができて動きやすくなります。●1つのことが終わってから、次の指示を出す●やることを順番に、箇条書きやリスト、チェック表にして、伝言メモ、ホワイトボードなどに書いてあげる…などで伝える情報を絞って整理し、伝え方を工夫すると、落ち着いて行動することができます。また、最初に完成図やお手本を見せてあげると、イメージしやすいタイプもいます。うっかりミスや失敗続きで、成功体験が少ないと、本人は「なんでこんな簡単なこともできないんだろう」と、落ち込んでしまって、自信がなさそうにしているかもしれません。ほめるハードルを少しだけ下げ、「ここまではできているね」と、できている部分に気づかせたり、「忘れ物がなかった」「遅刻しなかった」と、頑張れた部分を褒めたりすると、自信につながります。「うっかりさん」は、一見他の人ができて当たり前のようなことも、本人にとっては、ものすごく努力が必要なことがあるからです。例えギリギリセーフでも、なんとか時間どおり目的地に着けた時などには「間に合って助かったよ」など、さり気なく感謝を伝えてあげると「次も頑張ってみよう」という意欲が出てきます。もう忘れない!記憶力を道具で補い、うっかりを予防Upload By 楽々かあさんそして、「うっかりさん」が自分自身でもできる、「うっかり忘れを予防する簡単な工夫」があります。つい忘れてしまうのは、先述の通り感性豊かな「うっかりさん」が受け取る、圧倒的な情報量に対して、脳のメモリが不足気味だからです。道具を工夫して、外部メディアにデータを移し、「覚えなくては」「気をつけなくては」という負担を減らせば、情報処理が追いつき、スッキリ動きやすくなります。【やることを把握する工夫】●カレンダーやスケジュール帳に、やることを書き出したふせんを貼る●スマホアプリのTODOリストなどで、優先順位をつける【記録する工夫】●買い物メモなど、メモ魔になる●書くことが負担の場合には、スマホやデジカメで写真を撮って記録する習慣をつける【思い出す工夫】●スマホや家電製品のアラームやキッチンタイマー、リマインダーをセットして活用する出典 : 【ミス・失敗の対処への工夫】●もし失敗しても「こうすればOK」という対処法を書いたカードや、手順表・工程表を作って貼っておく【なくしもの、探し物を減らす工夫】●よくなくすものにはヒモをつける●大事なものだけを入れる専用のBOXを作る●「習い事セット」や「打ち合わせセット」など、用途別に専用バッグをそれぞれ用意し、必要なものは入れっぱなしにしておくうちの子ども達には、登校時刻や宿題開始のアラーム、「OKカード」や手順表、ヒモ付きのハサミや連絡帳のタグなどを使って、学校や日常生活の工夫をしてきました。自分の「うっかり」と上手につき合うことで、「せっかくいいこと思いついたのに、紙と鉛筆が見つからなくて忘れちゃった」なんて勿体ないこともなく、クリエイティブな長所も活かすことができます。参考情報:「WatchMinder」海外にはADHD等の子・方のための、メッセージ付きバイブレーション機能のある腕時計型リマインダーなどもあるそう。出典:Facebook記事「OKカード」(初出:2013.11.9)うっかりは最大の魅力!?人間味あふれる愛すべき「うっかりさん」出典 : こうして、自分でも工夫しながら、周りの人の理解や協力を得られると、うっかりミスを少しでも減らし、ひとつひとつ宿題や仕事をこなして、小さな「できた!」の成功体験を積み重ねることができます。そして、親や周りの人たちが、「うっかりさん」の当たり前の頑張りや、できていることに気づいて認めてあげることで、失っていた自信を回復することができます。すると…自信がついた「うっかりさん」は、最大の魅力を発揮することができるんです。それは、うっかりしていて、ミスや失敗が多いという、自分の欠点を長所として受け容れられるということ。「うっかりさん」のうっかりは、実は、欠点であるにも関わらず、一番素敵なところでもあるのです。どんな人でも長所と短所はセットで持っているものですが、一見完璧そうで、誰にも隙を見せない人の前では、大抵の人は緊張してしまって、心を開くことができません。そこへゆくと、人間味溢れる愛すべき「うっかりさん」は、周りの人の気持ちを和ませ、安心させ、話しかけやすい親しみを感じさせます。できないことも多い「うっかりさん」が、自分なりに一生懸命がんばっている姿は、人に勇気や希望を与えることができます。でも、自分に自信がないと、せっかくの素敵なうっかりを隠し通して、完璧を演じようと頑張り過ぎてしまうかもしれません。「うっかりさん」は、そのままでも充分素敵なんです。「うっかりさん」のうっかりを、周りの人も、そして、「うっかりさん」自身も、家宝のように大事にしてあげて下さいね。次回の楽々かあさんコラムは「あわてんぼさん」編の予定です。お楽しみに!参考書籍:著書「発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母の毎日ラクラク笑顔になる108の子育て法」記事で使用のイラストは、「楽々かあさん公式HP」より無料ダウンロードできます
2016年10月31日絵本との付き合い方はさまざま。自由に作れば、なお楽しい!Upload By 荒木まち子Upload By 荒木まち子絵本に全く興味のなかった娘。それが変化し…出典 : 高2の娘には、発達障害の診断が出ています。今回は、3,4歳の頃のお話。娘はもともと絵本に全く興味を持たなかったのですが、療育センターでの読み聞かせがきっかけとなり、3,4歳の頃にはすっかり「本好きの子ども」になっていました。この頃の娘のお気に入りがコチラ。出典 : 出典 : 出典 : 子どもが夢中になる絵本がもう1つ!手作り絵本のつくりかたUpload By 荒木まち子もう1つ、絵本をご紹介します。これは保健師さんに教えてもらったもので、牛乳パックを使って作るオリジナルの小さな絵本です。スマホやiPadなどもなかった当時、娘と公共交通機関を使っての移動に、私はとても苦労していました。外の眺めを楽しめるバスや電車はまだ良いのですが、窓が真っ暗な地下鉄や長時間拘束される飛行機などでは退屈し、暇を持て余す娘。乗客のいる中で泣いてぐずる子どもを相手にするのは、周囲の目もありとても辛いですよね。お菓子や飲み物でごまかすのにも限界があります。移動中、タイミング良く寝てくれたときなどは、本当にラッキーでした。そんな時、娘を夢中にさせたのがこの「手作りマイ絵本」でした。雪印メグミルクのHPで詳しい作り方がご覧になれます。牛乳パックで作ろう!ミニ絵本出典 : これは丈夫で小さく持ち運びにも便利なので、電車の中や飛行機の中でとても重宝しました。・お気に入りのキャラクターの絵を描いて眺めるもよし・好きな図鑑のページをチョイスして貼ってもよし・シールを貼って遊ぶもよし・スケジュールボードとして使ってもよし…などなど、使い方は自由自在!字が書けなかった娘も、自分なりにストーリーを考えて楽しそうに作っていました。好きなものを集めたマイ絵本、皆さんもお子さんと一緒に作ってみてはいかがでしょうか?
2016年10月30日転校を機に変化に戸惑う小4の娘。大きな壁となったのは方言だった出典 : 歳でアスペルガー症候群と診断された娘は、小学校高学年から続いたいじめにより、神経性食欲不振症、不登校、被害妄想、幻聴幻覚、解離などの二次障害が現れ、現在は入院中です。今回はこの二次障害のきっかけとなった、小学生時代のお話です。娘は赤ちゃんの頃から元気がよく、明るくて三枚目タイプ。いつも楽しい事をして、家族を笑わせてくれていました。ところが、幼稚園に通う頃になると、お友達との関わりが少し苦手なように見えました。けれどもずっと1人で過ごすことはなく、小学校低学年の頃までは、お友達と遊ぶこともできていました。仲の良いお友達もいて、いじめられた事はありませんでした。娘が小3を終えた3月末に、主人の転勤で関東から九州へ引っ越しをしました。転居してまず驚いたのは、方言でした。その口調は怒っているように思え、なんだか叱られているような気がするのです。言葉に慣れるのには、かなりの時間がかかりました。そんな中、引っ越し後に初めて登校した小4の始業式で、みんなの前で自己紹介をした娘は、「言葉が変っちゃ!」と笑われてしまいました。出典 : しかし、標準語が変だと言われても、どうしようもありません。みんなが方言で話す中、方言を知らない娘は標準語をからかわれ、その上なぜか「組長」とあだ名をつけられ、それ以来いじめの対象になったのでした。まもなく、娘は、「学校に行きたくない!」と言いだしました。理由を聞くと、「言葉が変だと言われるし、給食の量が多すぎて食べられないから嫌だ」と言うのです。どうやら、毎日給食が食べられず、昼休みまでかかって食べている様子。この学校では給食を完食しないといけない規則で、時には5時間目まで食べているそう。前の学校では、食べられない時は残しても良かったので、給食が嫌いではなかったのですが…。以前の学校でも、言葉で表現する事が苦手な娘でしたが、からかわれても言いたい事が言えず、加えて給食の時間も嫌で仕方なく、事態は深刻でした。私は毎朝、祈るような気持ちで娘を学校に送って行きました。どうか、娘がみんなと仲良くなれますように…今日1日、楽しく過ごせますように…。あのときの、とても寂しくて辛そうな娘の後ろ姿は、今でも忘れられません。2週間くらい一緒に登校すると、そのうち娘は1人で登校できるようになり、私はホッとしました。けれどもそれは、すべての事の発端(神経性食欲不振症、不登校、被害妄想などのきっかけ)であった事を、当時の私は知る由もありませんでした。漢字練習で気づいた、担任の厳しさ。相談を持ちかけるもその返答は…出典 : 不安な1年が過ぎ、娘は5年生になりました。担任の先生は教育にはとても熱心で、毎朝10分間テストから、1日が始まるようでした。ある日帰宅した娘が、必死になってノートに何か書いていました。よく見ると、朝の漢字テストで間違えた漢字を書いているようでした。その夜、寝る時間になっても、娘はまだ漢字を書いていたので驚きました。「どうしたの?」と尋ねると、「漢字を1000回書かないといけない…。」との返事。聞くと、明日までに間違えた漢字を1000回書いて提出しなければいけないようです。しかも、間違えた漢字1文字ごとに1000回なので、2文字間違えると2倍の計算です。娘は、徹夜で間違えた漢字を1000回書き、翌朝眠そうに登校しました。私は、どうしても納得できず後日、連絡帳に「いくらなんでも多すぎるのではないか?」と書いて担任に訴えましたが、何の返答もありませんでした。出典 : 他にも娘の事で相談したかった私は、その後担任との面談を申し出ました。面談では、漢字練習の目的や、前の学校では給食は残しても良かった事、クラスの子どもたちにからかわれている事などを相談しました。しかし担任の言葉は、私の期待と全く異なるものだったのです。「漢字を1000回書くのが嫌なら、間違えなければ良いのです。給食は、この学校では完食しなければいけない規則になっています。いじめられるのは、いじめられる側に問題があるのです。」この冷たい言葉に驚きを隠せませんでした。教育熱心なのはわかりますが、子どもの側に立って考えず、自分の理念だけを押しつける態度に、私は打ちのめされ失望したのでした。担任は6年生も持ち上がりだったために状況は改善されず、娘はますますクラスから孤立していきました。私は、その後何度も担任に相談をしましたが、状況は変わりませんでした。母親1人の意見など通らないのだと、このとき痛感した私は、出張先の主人に相談しました。すると主人は、すぐに東京から市の教育相談室に電話をかけてくれたのです。教育相談の方からは、「担任のしている事はおかしいから、直接校長に話をして下さい」とアドバイスされ、やっと校長との面談が決まったのでした。夫婦で校長と面談。話し合いで見られた変化は、担任教師の態度だけだった出典 : 校長との面談は、放課後に校長室で行われました。母親の私だけでは話も聞いて貰えないだろうと考え、当日は 東京から主人にも来て貰い、2人揃っての参加です。娘の担任は、出席するか分からないと聞いていましたが、部屋に入ると、校長の後ろに立っていました。その様子は、普段私に見せている態度とは うって変わって、とても小さくなっているように感じました。私たちはこれまでの経緯を、校長に伝えました。校長は頷いて私たちの話を聞いた後に、担任にそのような話があったのかどうかを確認しました。すると担任は、まるで私たちの話を今初めて聞いたかのような顔をして、驚いて見せたのです。これには呆れてしまいました。これまで何度となく相談してきたにも関わらず、私の訴えはなかったことにされたのでした。校長との面談後も、大きな状況の変化はありませんでした。漢字練習は改善されましたが、給食は全校生徒が頑張って食べているので、娘にも完食するようにして欲しいと念を押されたのです。いじめについては、標準語をからかわないようにクラスの児童に注意するとの事でしたが、結局、娘にとっては 仲間はずれにされたり、陰でいじめられ、辛い思い出ばかりの学校生活となりました。小学校の卒業式を迎え、子どもたちに願うこと出典 : 月、娘は小学校の卒業式を迎えました。慣れない土地で、言葉や方言に戸惑いながら、校則の違いにも翻弄され、同級生の中にもうまく入れずにいましたが、娘なりにとても頑張ったと 私は心の中で拍手をしていました。「辛かった経験をバネにして、どうか今後も力強く生きて欲しい。あなたの頑張りは、きっと道を開くはず。大丈夫!人生で役に立たない事は、何1つないのだから…。」卒業証書を受け取る娘に、私はエールを送っていました。教師が、クラスの子どもたち1人ひとりをきちんと受け入れて理解し、その子に合わせて対応をする事は、とても容易な事ではありません。教師と生徒、お互いの心が繋がり、信頼関係を築く事は、更に難しい事だと思います。子どもが十人十色なら、大人の教師だって同じこと。教師によって、考えや指導の仕方も異なる事でしょう。けれども、教師の偏った考えで、数10人の子どもたちを支配する…そんな事があってはならないと思います。親として、大切な我が子を学校に預けている以上、楽しく元気に学校生活が送れるようにと望むのは、当たり前だと思います。出典 : 子どもたちが自分の力を発揮でき、それぞれの道を進んで行けるよう、私たち親だけでなく、学校や教師も変化していかなければならないと思います。娘のように、自分が辛くてもその気持ちをうまく表す事ができない子どももいます。こうした子どもたちは、抑えていた気持ちが身体や心に様々な症状として現れてしまいます。そうなる前に、周りの大人が変化に気づき、症状が大きくならないうちに、子どもたちを守らなければならないと思います。それは、学校に行きたくないと言えない子も言える子も、どちらも。娘は、現在 二次障害で入院しています。どうか、娘のように二次障害で苦しむ事のないよう、いま辛い気持ちを抱えたまま闘っている全ての人たちが、大切な存在として守られることを、願ってやみません。
2016年10月29日不登校の娘が中学へ進学。さて、何から準備すればいい?出典 : アスペルガー症候群の診断が出ている娘は、小2から不登校です。6年生の夏休みが終わり、もうじき卒業を考えなくては…と思った私は、早めに中学校へ見学に行こうと考えました。小学校の先生に「娘が小学生のうちに、中学を一緒に見学したい」と希望したところ、なぜかスクールカウンセラーと面談することになりました。9月になり、娘が通う予定の中学校に、まずは私だけで伺いました。ちなみにそこは私の母校でもあります。スクールカウンセラーの方はとても話しやすい雰囲気で、不登校の経緯、肌の過敏性のために制服は着られないかもしれないこと、本人に通学の意思はないけれど「1日だけ行ってみたい」と言っていること、私もそれで了承していることを話しました。娘が行く気になったときに、すぐ受け入れてもらえるよう、登校した場合の打ち合わせを、今度は保健教諭や生活指導の先生とすることに。カウンセラーの方の話によると、空いた教室を使って別室登校している生徒がいること、その子たちは休み時間を外して登下校しているとのことでした。不登校の子たちの様子やスクールカウンセラー室の様子がわかり、なかなか有意義な訪問となりました。いよいよ中学の校長先生と面談。これまでの経緯を伝えると、思いもよらぬ言葉が…!出典 : その後、卒業式を目前に控えた2月に、私1人で中学校の校長と面談をすることになりました。不登校の経緯、発達診断の結果、学校への要望をまとめた資料を持参して、以下のことを話しました。●小学校3年のときに支援学校に転籍したけども、それが決定的な心の傷になって学校へ完全に行かなくなったこと●勉強は全くしていないこと●心が辛いと身体症状が出ること●本人には通学する意思がなく、私もそれを認めていることすると、校長先生からこんな言葉を投げつけられました。「子どもはどんどん成長するからねぇ、刺激を与えないとこのままではだめだね。お母ちゃん、1人で考えてない?市の教育サポートセンター行ってる?勉強はさせてないの?まったく?そりゃあかんわ~。でもお母さん、学校に通わせる義務はあるんですよ。まぁ、子どもさんが無理なときはしょうがないですけどね。通信制っていいはるけど、そんな簡単に入れませんよ。学校への希望に、勉強や学校の話はしないでくれって書いてますけど、これは無理ですなぁ。小学生じゃないんだから、ちゃんと刺激も与えないといけませんし。甘いことは言ってられませんよ。小学校じゃないんですからね。本当は支援学級に入ってもらった方がいいんやけど。欠席連絡はね、担任と話し合ってください。担任が納得せんと、私らは何も言えませんから。」出典 : そして、最後に感覚過敏があって着られる服に限りがあることを話すと、「それはお母ちゃん、甘やかしすぎやわ。週に1回くらいは靴下と靴履かせてどこか通わせなぁ」こうして、校長先生のあまりにも一方的な言い方に、私はすっかり落ち込んでしまい、それから3日間寝込んでしまいました。その後、すがる思いで普段相談に乗ってもらっている親の会へ、校長先生との話を相談しに行ったのです。私が参加しているのは「登校拒否を克服する親の会」です。参加して4年ほどですが、ここには大阪府の組合に参加している教員、現役の先生なども参加し、親たちを支援してくれているのです。娘のことをよく知る教育相談のA先生に、中学校での話をするととても驚き、「これはひどい。僕も同席してまた一緒に話しに行こう」と言ってくれました。2度目の話し合い。すると、中学校側の態度に変化が出典 : 中学校の始業式の前日に、A先生についてきてもらい、中学校へ話し合いに行きました。前回、校長先生と話したのがよかったらしく、学年主任をはじめ、学年の先生全員が出席する中での話し合いとなりました。小学生のときから私が更新しながら作っている、「不登校の軌跡と娘の特性、学校へのお願い」という資料を回覧してもらいながら、資料の内容を口頭でも説明しました。この資料には時系列で以下の内容を書いています。【生育歴】・家庭環境(幼少期〜現在まで)・人生の大きな節目(離婚やいじめなど)、その時の娘の気持ちなど・娘の学校との関わり(小1~現在まで)【学校に把握しておいて欲しいこと、お願い】・発達障害の診断が出ていること、神経症で通院していること・欠席の連絡はしない(行くことがあれば連絡する)・学校からの連絡は月2回程度にしてほしい・子どもと会ったときには登校刺激をしないように・役員の仕事はできない(親も障害があること、コミュニケーションが苦手で繊細であること)出典 : この資料は、毎回説明するのが大変なので、娘が小学生の頃からずっと私が書き溜めていたものです。子どものことや家庭環境を1から説明し、理解してもらうことは、大変な労力が必要です。先生方は、口をはさむこともなく、時々質問を挟みつつも黙って真剣に私たちの話を聴いてくれました。校長先生と最初に話した時には、「単なる甘えでは?」という否定的な印象がありましたが、この資料と話し合いにより、少しだけ理解が深まっているようでした。学校の方針としては、私の希望通り娘のペースで、娘が会いたいときに担任やスクールカウンセラーなどに会ってみる、登校刺激、勉強刺激はしないということで、小学校と同じようなペースで過ごせそうでひと安心しました。A先生は、私が学校への希望を言い忘れていることを指摘したり、先生方に「お母さんとの間に誰か立つ必要があれば私がやりますし、みんなでこの子のことを考えていきたいと」言ってくれました。A先生のおかげで、落ち着いて話すことができて、本当によかったです。学校との連携は、1人で抱え込まないで。早めの相談でスムーズな入学準備を出典 : 我が家は母子家庭ですが、こうした学校との連携の際は、親の会の情報によると「学校は母親の話を割引いて聞くから、親の会の支援員や夫と一緒に話し合いの場を持つと良い」のだそうです。その理由は、「母親は子を思うあまり、感情的で大げさに話をする傾向がある」と思われているからだそう。また学校にもよると思いますが、話し合いの場では主に付き添いの人(夫や支援員)の方が、話が通りやすいそうです。中学進学については、主治医からもアドバイスをもらいました。「学校の先生は、学校に来てもらうことを前提に考えているので、娘さんの辛さがどこから来ているのか?丁寧に説明しないとわかってもらうのは難しいでしょう。学校から要望があれば、私が学校の先生と直接話します。」と言ってもらい、ホッとました。A先生は、小学校と中学校の引継ぎについても教えてくれました。以下は、私の住んでいる地域の場合の例です。●小学校と中学校の引き継ぎが行われるのは、小学校の卒業式の次の日●中3の担任がそのまま中1の担任になる●この場で、いわゆる問題のある児童などの報告も行われ、それを踏まえてクラスや担任を決める●正式なクラス分けは4月3日頃に決まる●この時期に小学校へ「中学校と話し合いの場を設けたい」と依頼すると学校側もタイミングが良いこれからこうした話し合いに行く親御さんは、覚えておくと役立つこともあるかと思います。最初にしっかり話し合っておくことが、トラブルを防ぎ、親と子の不安軽減にも大きく役立ちます。辛いこともあるかもしれませんが、しっかり準備して臨みたいものですね。
2016年10月28日次男の抱えていた困難と、勧められた投薬次男がADHDと診断を受けたのは小学校3年生のころでした。年度が替わった頃から教室での離席や他害が目立つようになり、色々と調べたりあちこちに相談したりしている中で「発達障害では」という可能性が浮上しての診療予約、発達検査と医師による診断でした。診断結果を聴きに行った場で医師が提示した色々な対応策の中のひとつが、治療薬の投与でした。我が子への投薬、「大丈夫なのかな…」という不安出典 : 子どもに対する精神薬の投与、という難題を前に、不安や怖さが募りました。「もしやってみて、なにか息子に重大な問題が起こったらどうしよう…」ネットで色々と情報を探してみましたが、子供への投薬を強く否定するものがどんどん目に入ります。ホメオパシーやサプリメントなど、投薬以外の選択肢を勧めるものもたくさん。情報が多すぎて混乱して悩んでいたときに、相談に乗ってくれた友人がかけてくれた言葉がありました。「納得いくまで、聞けばいいんだよ」友人はこう言いました。「不安なら、飲ませるにせよやめるにせよ、とにかく納得がいくまで医者にちゃんと話を聞いてごらん。聞ける医者に出会うまで病院を替えてもいいんじゃない」ハッとしました。素人の私が、つたない知識や偏った情報だけで一人で全部決めるなんてそもそも無理だったんだ。それをやろうとしてたから混乱していたんだなぁと。次の診察のときに、医師とゆっくり話す時間を取ってもらいました。ネットで調べたことや本で読んだことをベースに、不安に思う部分やわからないことを聞き、最後に一番知りたかったことを尋ねました。「先生、もし飲ませてみて子供や私が『いやだ』と感じたらやめてもいいんですか?」お薬はいつでも止められる、支援の方法は何度でも変えられる出典 : 医師は即答してくれました。「もちろんです、副作用や違和感があったり、合ってないとか違うと感じたらいつでもやめていいです。その時にはまた違う方法を考えましょう。」先生のその言葉が、私の決断の最後の決め手になりました。自然療法と呼ばれたりする、標準医療とは違う方法で、体をメンテナンスすることを目指す考えや手法はたくさんあります。そのひとつひとつの善し悪しは私にはわかりません。手当法やマクロビオティック、ホメオパシーなどなど…私もこれまでいろいろな療法の本を読んだり、試してみたりしたことがありましたが、その中で感じていた違和感のひとつが、極端な選択肢の無さでした。選ばなくていい安心感と、「たったひとつ」に身を委ねることの危険性自然療法とされるものの多くに共通する傾向として、「その療法以外の選択肢が極端に少ない、または排除されている」というものがあります。特定の自然療法を勧める方の中には、標準医療とされるものを否定し、薬やワクチンの接種を拒否する傾向が強いものも多いです。次男の投薬を勧められたときの私は、とても不安でした。将来への不安も強く、現状の困難に対処するために奔走して疲弊しきった状態で、次男の今後の健康に関わる選択の責任が自分たちにのしかかる。またそんな重い荷物を背負わせるのか…そんな気持ちになったのを覚えています。心が弱っているとき、選択肢は少なければ少ないほど安心するものです。自分の代わりに、自分が不安に思っている何か(お薬もそのひとつ)を否定し、「こちら側が正解だよ」と導いてくれる存在に出会ったなら、心強く感じることもあるでしょう。しかし、そんな「心強い存在」たった一人、「救ってくれそうな療法」たった一つに身を委ねてしまったら、どうなるでしょう。息子の当時の主治医が言ったような「ダメだったら違う方法をやってみましょう」といった、状況を見ながら柔軟に対応を変えていく可能性が閉ざされることになります。目の前にある「○○療法」の中でだけで解決していく道しか、残されていないことになってしまうのです。私は夫や周囲の友人に相談して負担を軽くすることができたし、医師の言葉でさまざまな選択肢を落ち着いて比べて選べるようになったけれど、もし自分一人で抱え込んでしまっていたらどう転んでいたかわかりません。そのときどきのベストを模索する環境と、それを求めることの大切さ出典 : 発達障害児との暮らしは、試行錯誤の連続です。生活の中でもいろいろな工夫をやってみては本人に合うものを探していく。医療もそのなかのひとつだと私は思います。ライターのなないおさんがこのサイトで以前、サプリメントと薬の併用について医師と相談した経緯を書かれています。娘に対して私がサプリメント(ビタミンB群と亜鉛)を試してみたいと相談してみました。先生は、サプリメントの効果に関しては明言されませんでしたが、試してみること自体には否定はされませんでした。ただし、試す場合には薬との飲み合わせが大丈夫か確認し、子どもの体に合った量をきちんと計算した上で飲むほうがよいとアドバイスをくださいました。(中略)薬剤師の先生からも説明を受ける機会を作っていただきました。いつも薬は院内処方で出してもらっているので、薬剤師の先生にも気軽に相談することができました。お医者さんの性格や診療時間などで限界はあるかもしれませんが、こんなふうにゆっくり相談ができる病院を求めて私も転院を経験しました。今は最初の主治医より更に長い時間、薬についても細かく相談しながら調整をしてくれる病院にかかっています。なないおさんのように医療のなかにサプリメントを組み込んでいくような柔軟な対応も可能でしょうし、さまざまな療法と標準医療を両立しながら最適な方法を模索している方もいらっしゃると思います。大事なのは「そのとき何を選ぶか」ではなく「そのときどきのベストを模索できる環境を求める」ことだと思うのです。いつかは子どもたちが「自分で選ぶ」ことになる。それまでに親が出来ること出典 : 親だけが判断するのでもなく、医師が一方的に決めるのでもなく。子どもに関わるそれぞれの大人が希望や診断内容や知見について情報を出し合い、相談し、コミュニケーションを深め、その子に合ったそのときのベストな方法を模索していくことができる環境。それを整えることが、発達障害を含むハンディのある子たちのために大事なことだと私は思います。いずれは子どもたちが、私たち親が培ってきたその環境で、親に代わり自分で自分の方針を決めていくことになる。そのときに選べる道が少なくなってしまわないように、自分だけで抱え込まないように、可能性を潰さないように、選択肢のない未来にならないように……岐路に立たされ迷ったときにはいつもそれを意識するようにしています。
2016年10月27日アスペルガーだと公表してから、「困っていること」ばかり聞かれるようになった出典 : みなさんこんにちは、高校教師のゴトウサンパチです。36歳でアスペルガー症候群と診断を受けてから10年が経ちました。社会全体としても、発達障害に対する認知や関心が高まり、その間、ボクも著書を出したり、発達障害関連の学会での発表をやらせていただいたり、講演依頼もいただくようになりました。そうした場でお願いされることのほとんどは、発達障害への支援を充実させるために、ボクが何に困っているのかを話してほしい、というものでした。ボクが当事者の1人として話すことで、発達障害への研究や支援が進み、それでたくさんの方が救えるならありがたいことだと思い、ボクは一生懸命お話してきました。他にも大勢いる発達障害当事者たちの代弁者のつもりで、自分が何に困っているのかを発信してきたのです。でも、話しているうちに、何かが違うのではないかという感覚になってきました。当事者の代弁者になんてなれるのか。ボクの困り感をみんなに伝えることが、いったい何になるのか。今日は、そんな逡巡から始まった、ボク自身の内面の変化についてお話します。どれだけ話しても、自分の感覚を他人と分かち合うことはできない出典 : 多くの人からの相談に答え、講演などで話し続けるなか、ある時ボクは気づいてしまったんです。ボクには、「発達障害当事者」の代弁や代表なんてできないということに。そんな風に思ったのは、どれだけ話しても、当事者の代弁はおろか、ボク自身の気持ちを理解してもらえることは決して来ないのだということを知ったからです。ボクの感覚は、ボクだけの感覚なのでいくら説明しようと試みても伝わりませんでした。ボクが絵を描いて説明しても、こうして文章を書いても、それを見る人読む人のその時の感覚や知識に任せざるを得ないのです。つまり、全く同じ気持ちを、2人の異なる人間が分かち合うことはできないのです。それを言っちゃあおしまいよ、支援者の方々はそう思われるかもしれませんが、どうしようない事実です。他の多くのみんなの感覚と、自分の感覚は決して同じではないこと。当事者の方には一刻も早く気づいてほしい。でもボクはこのことをネガティブには捉えていません。決して絶望なのではなく、むしろスタートラインだと思っています。自分と他人は違うのだということを受け容れて初めて、ボクはボク自身の幸せを追求できるようになるからです。他人と比較すればするほど、「困り感」は増幅していく出典 : アスペルガーだと公表してから、周りからいただく質問は「何に困っているか」という話題がほとんどだとお話しました。でも、そもそもボクたちが抱く「困り感」とは、いったいどこから生まれるのでしょう?思うにボクらは、自分と何かを比較することで、差を見つけ、そこからやり場のない困り感を生み出している気がします。わかり合えるはずなのに戦ってみたり、できないことをしようとしてみたり、必要以上に不安に感じたり。できることだけをすればいいのに周囲と合わせなくちゃいけないからとか、仕事だからとか、成績だとか、これができなきゃ将来困るからだとか…そんな風にして周囲と比べ、差を埋める努力を重ねれば重ねるほど、良くも悪くも自分らしさを認めることが減っていく。ボクはそんな自分に疲れたんです。何をやっても上手くいかない日々、悲しくて泣いた日々を思い出すことさえ嫌なんです。実は未来に期待することも嫌です。それより今、幸せでいたい。自分らしく生きていたい。ボクの内側からそんな声が溢れていることに気づきました。そこからボクは、考え方を少し変えてみることにしました。困った時は、困っていることに注目するのではなく、「世界に自分1人であれば、こんなに困ることはないはず」「いつだって1人ぼっちになってもいいように、自分にできることを追求してみよう」そうやって考えることにしたのです。別に何かを始めることではなく、そんな風に意識を変えただけです。驚くことにそれだけで、徐々に葛藤が減り、トラブルが減り、心が穏やかになり、格段に楽しい日々を送れるようになりました。なぜか以前より友達も増えたんですよ。それからは、“他人”との差ではなく、“ボク自身”の内面の変化に気付けるようになりました。自分を観察し昨日とは違う自分を発見するのは楽しいことです。いろいろな実験をしてみることも楽しいです。例えば、散歩したり、食事の内容を変えたり、そんな些細なことで、今日という日は昨日とは違う展開を見せるのです。それは、社会でも、周囲でもなくボクが変化しているからに他なりません。「困っている人の支援」という発想から抜け出そう出典 : ボクに質問や相談をしてくれる人のなかには、発達障害のある人の支援をしたい、という人も多くいます。彼らと話していると、実は「支援したい人も困っている」のだということに気づきました。「困っている人を支援したいけど、どうしたら良いかわからない。彼らが何を感じているか分からない」そのことが彼ら支援者自身の「困り感」を招いていることがしばしばあります。ボクはそういう人たちにも、まずは自分の幸せを第一に考えてほしい、と伝えたい。困っていることを解消するというのは、お互いの間にある「差を埋めようとする」ことです。そもそもそんな期待を持つことを、やめてしまってはいかがでしょうか。あなたにできることだけをしてあげる。それしかありませんし、できないことを前もってハッキリ伝えてあげる方がいいと思います。抱えきれないことを引き受けると、支援者であるあなた自身の困り感が増えてしまいますし、困り感を抱えたもの同士のやり取りはお互いがより困るだけです。できないことをできないと言うと、その時はたしかにギクシャクしますが、大丈夫、正直な行動は時間がしっかり解決してくれます。ですから、あなたは自分の幸せを第一に考えてください。ボクは、他人に合わせることをやめ、自分の幸せを第一に考えるようになってから、不思議と相手の変化にも敏感に気付くようになりました。もしかすると、お互いの変化を認め合い、伝えることが本当の支援なのかもしれません。きっと、ボクもあなたも、お互いが正直に向き合うことで、すでに支援し、支援されているんですよ。さて、今回言いたかったことは言えました。最後まで読んでくださってありがとうございます。
2016年10月27日発達障害児を育てているといつも言われる、「子どもの得意を伸ばそう」という言葉出典 : 我が家には6歳になる発達障害の息子がいます。小さい頃からちょろちょろと動き回り、他人の気持ちもお構いなしに自分の好きなことを喋り続け、家族や集団の中にいてもどうしても叱られる回数が多くなります。そんな彼を育てることに行き詰まるたび、言われること…それは「発達障害児は、叱られることが多くて、どうしても自己肯定感が低くなりがちです。この子の好きなこと、得意なことを伸ばしてあげましょう」という言葉です。そして親戚やママ友に、息子が発達障害であることをカミングアウトしたときにも、同じことを言われます。「発達障害の子って、好きなことにはめちゃくちゃ集中しちゃうんでしょ?」「好きなこと、得意なことを伸ばしてあげればいいんじゃない?」極め付けは、いつも最後に聞かれるこの質問。「この子の好きなことって何?」これにはいつも答えが見つからず、私は絶句してしまうのです。気付けば、息子を天才児にしようと奔走していた私…出典 : 「発達障害の子は、好きなことを伸ばせばいいんだよ。で、何が好きなの?」と聞かれるたびに口ごもってしまう私は、いつしか必死に息子の才能探しをするようになってしまいました。ちょっと何かに夢中になっている姿を見れば、「もしかしたらこの子は、これに才能があるかもしれない!」と思って、習い事や道具を探してしまう毎日。そして周囲の目を気にするあまり、私は次第に息子を天才児に仕立て上げることを望む自分がいることに、気付いたのです。さらに、私を追いつめたのは、「好きなことを極めさせ、それを仕事にさせればいいんじゃない?」という周囲の言葉でした。発達障害児を育てていると、必ず頭をもたげてくるのは「この子は果たして自立することができるのだろうか」という遠い将来のこと。私は毎日考えるのです。自分の思いついたことを一方的に話し、相手の質問にまともに答えなかったり、そうかと思えば、相手の気持ちも考えず、思っていることをズバズバと言ってしまったり…。こんなにズレた会話ばかりしている息子は、将来まともに働いて食べていけるのだろうか、こんなすぐに大切なことを忘れてしまう息子は、自活ができるのだろうか…。毎日こんな風に将来のことで頭を悩ませていると、つい「好きなことを仕事にさせれば…」という言葉にすがってしまう自分がいました。そして訪れた、「好きなもの探し」への憤りとむなしさ出典 : 息子に発達障害という診断が下ってから、「この子の好きなことは?」と探し続けた数年間、私には焦りしかありませんでした。けれども、息子の苦手を支援することに追われるばかりの毎日。息子の「好きなこと」「才能」なんて、私にはちっとも見えてきませんでした。次第に、「好きなことを仕事にすれば?」と言われるたびに、「なんで発達障害児ばかり、小さい頃から好きなこと探しをしなければならないんだ」「息子の仕事のことまで、他人に心配されるいわれはない」という風に、イライラするようになってしまったのでした。息子は「好きなこと探し」につき合わされ、新しい本、新しいイベントを次々に私から突き付けられていました。しかし、「新しいこと」が苦手な息子は、そのたびに疲労で座り込んでしまいました。疲れ果てた息子をおんぶして帰宅するたびに、「私は一体何がしたいのだろう…」と思うのでした。好きなことって、こんなに躍起になって探すものなの?出典 : 息子の好きなもの探しをして追い詰められるあまり、次第に息子の何もかもがダメなように思えてきてしまった私。でもある日、ふっと気付いたのでした。「別に、将来の仕事に繋がるような、特別な『好き』でなくてもいいんじゃないか…」と。息子の将来の自立や自己肯定感の低下を心配するあまり、私は息子の飛びぬけた才能を探し続けました。でも、「好きなもの」ってそんな大げさなものじゃなくて良いのです。毎日の生活の中で、ちょっと子どもが楽しいな…と思うことを、否定せずに一緒に楽しんであげる、それが1番大切なのです。親の不安や焦りで見失っていたのは、子ども本来の姿だった出典 : 息子は車が好きです。車の種類はいくらでも覚えます。絵を描くことが好きです。毎日何時間でも絵を描いていて飽きないです。テレビアニメを観ることが好きで、セリフを全部覚えてしまいます。犬が大好きです。そして何よりも、幼稚園のお友達が大好きです。生活の中に沢山散らばっていた息子の「好き」を、実は私は1つも大切にしていなかったことに気付いたのでした。将来の仕事に繋がらないようなことでもいい、他人に誇れるようなことでなくてもいい、極めようなんて思わなくていい、小さな「好き」を大切にし、積み重ねることが大切なのです。発達障害児の「好き」は、別に何か特別なものではないのです。小さな「好き」を大切にしてもらった経験が、大人になってからのこの子たちを支えるのではないでしょうか。
2016年10月27日気分障害とは出典 : 気分障害とは常に気分が落ち込んだり、逆に高まることで日常生活に様々な支障をきたしてしまう心の病気です。この障害名は世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)により定められています。気分障害とは気分に関する障害がある病状・疾患を一群としてまとめたものをさしますが、主に以下が含まれます。・うつ病エピソード・躁(そう)病エピソード・双極性障害(躁うつ病)・反復性うつ病性障害・持続性気分障害「エピソード」とは、症状が現れている状態であるということを表す用語です。上記の分類に当てはまらない場合は、その他の気分障害や特定不能の気分障害と診断されます。人は生活を送っていると少なからず嬉しいことや悲しい出来事に直面しますが、その際に気分が上がったり、気分が落ち込んだりしてしまうことは当たり前のことです。しかしこのように発生した感情を、自分でコントロールできなくなることがあります。こうした状態が一定期間以上続いて仕事や私生活など普段の生活に支障がでている場合は、気分障害の可能性があります。参考文献: 『ICD-10』 2013年 中山書店/刊気分障害の種類と症状出典 : 『ICD-10』によると気分障害は大きく分けて5つに分類することができます。うつ病エピソードは気分の持続的な落ち込みを主体とした症状が現れている状態のことです。医師によってうつ病エピソードが確認されると、いわゆるうつ病と診断されます。うつ病エピソードが当てはまると診断された場合は、他の細かい基準が用いられ障害の程度が判断されます。厚生労働省のデータによると、日本においては「一生のうちにうつ病になる頻度は約15人に1人と考えられている」とされるとてもメジャーな疾患ですが、その中の4分の3の人は治療を受けたことがないと言われています。症状としては、・通常なら快楽を感じる活動に対して興味または喜びを感じなくなる・喜怒哀楽などの感情の変化が顕著に無くなってしまう・通常より2時間以上早く起床する・重度の抑うつ気分が午前中に現れる・食欲が激しく低下する・体重の減少・様々な欲求への著しい減退が挙げられます。現れる症状は人それぞれですが、『ICD-10』によるとこれらの症状のうち4つ以上の症状が2週間以上つづくとうつ病の基準を満たしていると診断されます。また、うつ病が重症になると妄想の症状が出ます。代表的なものは体の過度な不調があると妄想する心気妄想、自分はまずしいと思い込んでしまう貧困妄想、自分は犯罪など悪いことを行ってしまったと確信してしまう罪業妄想です。1990年のWHOの研究では「健康な生活を障害する疾患」の4位として発表されていましたが、2020年には虚血性心疾患に次いで2位に上昇すると言われています。その理由として社会のストレス要因が増えてきていることがあると言われています。また慢性疾患を抱えているとうつ病が合併しやすいといわれていることも挙げられます。例えばがんを発症している人のうちの20~38パーセント、糖尿病は25パーセントの人がうつ病を合併していると言われています。こころの耳l 厚生労働省気分障害l 慶応義塾大学病院躁病エピソードは爽快感、身体の快調感、幸福感があり、自信に満ち溢れ楽観的な考えに支配される症状が現れている状態のことです。医師によって躁病エピソードが確認されると、いわゆる躁病と診断されます。躁病エピソードが当てはまると診断された場合は、他の細かい基準が用いられ障害の程度が判断されます。躁病の症状としては、・活動的になる・口数が多くなる・注意不足、集中力低下によるミスが増える・睡眠欲求の低下・性的欲求が高まる・リスクを考えない浪費や無謀な運転などの常識をはずれた行動を起こす・社交的になる、または過度に馴れ馴れしくなるが挙げられます。『ICD-10』によると躁病の診断には上記の症状のうち3つの症状が4日以上持続していること、日常生活に本人が感じる程度のトラブルを起こしてしまっていることが条件となります。多くの場合、躁病の症状は徐々に始まり、何となく元気がみなぎってきたり、仕事の能率が上がったりすることで調子がいいと感じていきます。症状が重くなっていくと活動性が増加し、多くのアイデアを実行しようと一日中活動し続けます。この場合に睡眠時間が短くなってしまったとしてもあまり疲れたと感じません。当初は意識的に活動量を調整するように気をつけることができます。しかし、次第に調子が出すぎているという認識がなくなり周囲の人を考えない言動をするようになります。最終的には口数が多く、自己主張が強くなり、しきりに他人の世話を焼こうとし、対人関係トラブルを起こしてしまう傾向にあります。生涯にわたって躁病の症状しか発症しない単極性躁病はとても珍しく、躁病エピソードを発症している人のほとんどは双極性障害を発症しているといわれています。うつ病エピソードのみを2週間以上継続し、2回以上繰り返すと反復性うつ病性障害と診断されます。反復していると診断される基準として、先述したうつ病を発症した後2ヶ月以上同じような症状が現れない期間が存在することがあげられます。反復性うつ病性障害の一例として季節性感情障害が挙げられます。季節性感情障害とは主に秋から冬にかけて抑うつ状態となり、春には症状が改善するなど、抑うつ症状になる期間と回復する期間の転換が1年のうちの特定の時期に起こる疾患です。双極性障害とは一般的に躁うつ病と呼ばれる疾患です。双極性障害はうつ病エピソードと躁病エピソード両方を反復する場合、基準に当てはまると診断されます。初めのエピソードを発症してから次のエピソード発症するまで平均5年程度かかるといわれますが、エピソードを繰り返すごとに再発までの期間は短くなり、一つ一つのエピソードの継続期間はながくなるといわれています。躁病エピソードは急に発症することが多く、2週間から5か月程度持続します。一方うつ病エピソードは徐々に発症し、躁病エピソードに比べて発症期間が長い傾向にあります。双極性障害によって気分が高揚し、いらいらしたり、注意散漫になったり、誇大的になったりするなど対人関係などにも様々な障害を引き起こすことがあります。双極性障害は再発率が高いと同時に、自殺をしてしまう確率が精神障害の中で最も高い精神疾患の一つといわれています。双極性障害(躁うつ病)l 前田クリニック主に気分循環症・気分変調症をまとめて指す疾患です。躁病やうつ病の症状は当てはまらないけれど、明らかに気分が変わっていることが分かる状態をさします。■気分循環症通常は成人早期までに発症する双極性障害の軽症型です。うつ病エピソードと双極性障害の症状すべての条件を満たさない程度で、数日単位で落ち込んでいる状態と気分が良い状態が不規則に反復する期間が2年間以上続きます。気分循環症の症状としては、うつ病期間と気分高揚期間にそれぞれ3つ以上の症状が当てはまることが条件となります。うつ病期間:・エネルギーあるいは活動性の低下・自信が急に無くなるなどの自己評価の激しい変化・不眠・集中ができなくなる・引っ込み思案になり、社会からひきこもる・欲求の低下、喜びの感情の喪失・口数が少なくなる気分高揚期間:・エネルギーがありあまり、活動性が高くなる・睡眠欲求がなくなる・自己評価が過大になる・頭の働きがとてもよくなる・社交的になり、人付き合いがとてもよくなる・口数が多くなる・欲求を追い求めるようになる・過剰に楽観的になったり、過去に成し遂げたことに対して過大評価をしてしまう軽うつエピソードが優位の抑うつ型、軽うつエピソードと軽躁(そう)エピソードが同じ頻度で出現する定型的な気分循環症、軽躁(そう)エピソード優位の軽躁型の3つのパターンがあります。抑うつ型を発症している人が一番多く、割合としては気分循環症を発症している人の50パーセントを占めていると言われています。■気分変調症うつ病の診断基準を満たさない程度の軽度の抑うつ状態が2年以上持続する疾患です。うつ病と違い比較的短期間であれば気分が落ち込まない正常な期間が存在しても診断内容に影響がないと言われています。気分変調症の症状としては、気分循環症のうつ病期間に発症する症状に加えて、・涙もろい・物事に対して絶望感を感じる・日常生活でこなさなければいけない課題を対処しきれないという考えに陥る・将来や過去の出来事に対して考え込んでしまうなどの症状を発症します。これらの症状のうち3つ以上が当てはまると気分変調症を発症していると診断されます。持続性気分障害を発症している人自身は無気力感や気分の大きな落ち込みを感じていますが、社会的・職業的にはトラブルが発生していない場合が多いです。そのため本人も周囲の人も疾患を発症していると認識できず、本人は不調をそのままにしてしまう傾向があります。参考文献: 『ICD-10』 2013年 中山書店/刊気分障害を発症しやすい年齢出典 : うつ病はいかなる年齢においても発症しますが、発症率は思春期以降に大きく増加します。平均発症年齢は20歳代ですが、高齢者になって初めて発症する人も少なくはありません。厚生労働省研究班のデータによると、日本においては「一生のうちにうつ病になる頻度は約15人に1人と考えられている」とされています。女性のほうがかかりやすく、有病率は男性の1.5倍~3倍であると言われています。これは女性ホルモンの増加、妊娠、出産など女性に特有のトラブルが多いことが原因の一つであると考えられています。うつ病をしっていますか?l 厚生労働省双極性障害の発症年齢をみてみますと、15~19歳が最も多く、20~24歳がそれについで多く、それ以上では50歳以上も稀にあると言われます。発症平均年齢は30歳と言われています。5、6歳くらいの子どもについても双極性障害の発症が認められていますが、ADHD(注意欠陥・多動性障害)との識別が難しく、まだ研究が進められている段階です。双極性障害l 前田クリニック気分循環性障害は通常青年期または成人期早期に始まる疾患です。性別関係なく発症すると言われており、子どもの気分循環性障害では症状発症の平均年齢は6.5歳です。気分循環性障害がある人が双極性障害を発症する可能性は15~50パーセントです。気分変調症は小児期、青年期、あるいは成人期早期に発症し、慢性化する場合が多いです。『DSM-5 』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)2014年医学書院/刊気分障害の原因出典 : 気分障害が発症してしまう理由として遺伝子、ストレス、環境、性格などの様々な要因が複雑にかかわりあっていることが挙げられます。主な要因は抑うつ症状の強いうつ病・気分変調症、もしくは躁うつ症状がでる双極性障害・気分循環性障害のどちらかによって異なります。しかしまだはっきりとした原因は解明されておらず、今後更なる研究が必要とされています。うつ病・気分変調症は主に性格、ストレス、生物学的要因が大きく関与しているといわれています。かつてはうつ病や気分変調症は性格や遺伝の問題であるとされていましたが、近年患者数が急増するとともに研究が進み、性格や遺伝の問題だけではないことが徐々にわかってきました。近年ではストレスや生物学的要因がうつ病に深く関与していると多く言われています。■性格:主にきまじめな性格や社交的な反面気が弱い性格の人がうつ病になりやすいと言われています。熱心に仕事に打ち込み、責任感が強くすべてのことに対して正直に取り組む人や、親しみやすくいい人として周囲からは見られるが、実は気が弱いために他者を優先させてしまう一面を持つ人が例として挙げられます。■ストレス:近親者の死亡、病気、家庭内のトラブル、出産、結婚・離婚、会社の人事異動や転勤、仕事上のトラブル、過労などさまざまなストレスがうつ病の発症の大きな誘因となっているという研究結果が出ています。■生物学的要因:上記の性格やストレス要因が当てはまる人のなかで、うつ病を発症する人としない人の違いは主に生物学的要因にある傾向があります。脳の中で重要な情報伝達の働きをしているセロトニンやドーパミンなどの異常が、うつ病の発症と深く関わっているのではないかという有力な説もあります。しかし、この生物学的要因もまだ解明されたわけではなく、研究が進められている過程にあります。双極性障害・気分循環性障害の発症要因と考えられるものは遺伝子、ストレス、性格、生物学的要因で、もっとも深く関与していると言われているのが遺伝子です。■遺伝子:双極性障害は同じ家系に発症する確率が高いことから、何らかの遺伝子が発症にかかわっているのではないかと指摘されています。しかし、ある特定の遺伝子ではなく、いくつかの遺伝子の組み合わせによって発症するのではないかと推測されています。■ストレス:身の周りで起こることを本人がストレスに感じてしまうことも大きな原因の一つであると言われています。例として結婚や引っ越し、出産などのライフイベントに対する受け止め方や重なり具合、職場の人間関係などが挙げられます。このような生活環境の変化がストレスとなり、こころの安定の成分をつかさどるセロトニンに影響がでてしまったり、様々な支障が発生します。■性格:うつ病・気分変調症を発症する人と違い、双極性障害・気分循環性障害を発症する人は社交的で明るい、ユーモアのある性格という傾向があります。このような性格を一般的に循環気質と表現します。気配りも上手で、常に周囲の人の中心的役割を果たしていますが、気分が高揚しているときと沈み込んでいるときが周期的に訪れるため、状況に応じながら気分や思考がポジティブになったり、ネガティブになったり変化します。しかし、現在では循環気質の性格だけではなく様々な気質の人も発症することが分かっており、執着気質がその一つです。執着気質とは一つのことにたいして徹底的に自分を追い込む頑張り屋さんのような人です。「疲れてなんかいない」といって自分自身を鼓舞し、さらに頑張り過ぎることを継続することで双極性障害を知らない間に発症している場合があります。■生物学的要因:近年双極性障害には生物学的要因もあることが明らかになってきています。それは、脳細胞内にあるミトコンドリアの機能異常です。ミトコンドリアはエネルギー物質を生産する働きの他に、情報伝達にかかわるカルシウムの濃度を調整する機能をもつ物質です。ミトコンドリアの異常によってカルシウム濃度の調整がうまく行われなくなると細胞内の情報がうまく伝わらず、双極性障害の発症を誘因するものと考えらます。しかし双極性障害は発症する確率も低くはっきりとした原因はまだ解明されていません。研究が今後進んでいくことが期待されます。気分障害l 前田クリニック気分障害の相談先と治療先出典 : 気分障害に区分される疾患はストレスが多い現代社会ではいつ、誰が発症してもおかしくない疾患です。気分が上がらず憂鬱な気分のまま数週間が経ってしまったり、逆にテンションの上がり下がりにムラがあり不安を感じる場合は以下の行政機関に相談するか、医療機関の受診をおすすめします。■児童相談所:児童相談所は、すべての都道府県と政令指定都市に最低1つ以上設置されている児童福祉の専門機関です。主に、「子どもの養育に関する相談」、「障害に関する相談」、「性格や行動の問題に関する相談」などの育児に関する相談ができる機関となっています。全国児童相談所一覧l 厚生労働省■全国精神保健福祉センター:各県、政令市にはほぼ一か所ずつ設置されている、保健・精神保健に関する公的な窓口です。精神保健福祉に関する相談をすることができます。精神科医、臨床心理技術者、作業療法士、保健師、看護師などの専門職が配置されています。相談については、施設によって予約が必要な場合や健康保険の適用が可能なところがあります。詳細は、それぞれのセンターにお問い合わせください。全国の精神保健福祉センターを探すl 厚生労働省■精神科:精神疾患をはじめ、精神障害や睡眠障害、依存症を診療する科です。具体的には不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想などの症状を扱います。■心療内科:心と体、それだけでなく、その人をとりまく環境等も考慮して扱う科です。前述の精神症状だけでなく、ほてりや動悸などの身体症状、また社会的背景及び家庭環境なども考慮して治療を行います。精神科、心療内科どちらに行ったらいいか迷う方もいらっしゃるかもしれませんが、気分障害の場合は精神科を受診しても、心療内科を受診してもどちらでも大丈夫です。気分障害の治療出典 : 気分障害の治療法として現在主に効果的であると考えられ、用いられているのは薬物療法、精神療法、そして電気けいれん療法です。発症している疾患により細かい治療法は異なるので詳しい情報は専門家に相談することをおすすめします。薬物療法の場合、うつ病に対してはうつ症状を改善する「抗うつ薬」が用いられます。一方、双極性障害に対しては激しい移り変わりがある感情を安定させる「気分安定薬」が中心的に用いられます。いずれの場合も、不安を抑える「抗不安薬」が同時に処方されることがあります。代表的な抗うつ薬として三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)などが挙げられ、適切な量と期間で服用することが重要であるとされています。抗うつ薬は主にうつ病・気分変調症に処方されています。双極性障害・気分循環障害を発症している人が抗うつ薬を服用するとかえって気分が不安定になったり、躁状態になってしまったりすることがあるため、躁うつの症状に対しては抗うつ薬は基本的に使用されせん。気分安定薬には気分が上がりすぎる躁状態を抑える効果、沈みすぎてしまう抑うつ状態を改善させる効果、いったん安定した気分を維持させる効果があります。現在、双極性障害・気分循環障害の薬物療法は気分安定薬が中心となっていますが、飲み始めてからしばらくは重い副作用を防ぐために血液検査が数回必要です。また検査後も一定期間ごとに採血をすることで効果と安全性が確かめられるため、継続して受診することが大切です。うつ病は再び症状が出現することの多い病気です。回復後1年の間に約20%の患者さんに再び症状が出現する上に、その後の再発も含めると、その割合は約40~50%に上がります。また、途中で治ったと感じて治療することをやめてしまうと半年後に再び症状が出現する危険性が2倍になるという研究結果もでています。しかし、いずれの場合も治療法の効果や必要な量・期間には個人差があるため、自分だけで判断することは危険です。治療の際には、専門家の指導を受けながら用量・用法を守って行うことが大切です。気分障害l 慶應大学病院気分変調症l前田クリニック現在様々な精神療法が開発されていますが、気分障害に有効であると考えられているのは認知行動療法と対人関係療法です。一般的には医師やカウンセラーとの対話を通して、自身がどのタイミングで不安や心配を感じるのか、物事をどのように捉えているのか自身の思考のクセを把握します。そして、不安を感じる状況をどのように捉え、対処していけばいいかを考え、自身の感情をコントロールできるようにしていく治療法です。また対人関係療法は気分障害を抱えている人だけではなく、その人の家族や恋人などの重要な他者との関係に焦点を当てて、他者との関わり方を考えていく精神療法です。最終的には身近な他者との関係だけではなく、より広い範囲の人々に対してもよりよい関係を築けるようになることを目的とします。頭皮から電流を流すことで意図的にてんかん発作を発生させ、抑うつ症状を改善します。うつ病、双極性障害に有効といわれています。この治療法が用いられるのは薬物療法をはじめ、認知行動療法、その他の治療では効果が認められない場合、あるいは妄想をしてしまうなど症状が非常に重く治療の緊急性が高い場合です。軽、中度のうつ病の場合、あるいは他の治療法によって効果が認められている場合には原則使用されません。電気けいれん療法がなぜうつ病や、双極性障害の症状に効果があるのかについては未だ解明されていません。しかし、多くの医療機関においてその有効性が確認されており、日本においても保険の適応となっています。以前は治療の過程で生じる全身のけいれんが骨折などの怪我につながるリスクがありました。しかし、1980年代頃から施行されるようになった「修正型電気けいれん療法(m-ECT)」では麻酔科医の同伴のもと麻酔薬及び筋弛緩剤を投与し、けいれんを防ぐことができます。治療を受けることができる医療機関は必要な薬剤や人員の確保ができる病院に限られるようです。気分障害l 慶應義塾大学病院まとめ出典 : 気分障害がある人は少なくとも世界に3億5000万人以上もいると言われており、世界的に増加傾向にあります。日本も例外ではなく厚生労働省によると、平成26年度時点で約112万人の人が発症していると言われています。気分障害の症状により日常生活に悪い影響をきたしてしまうと、何かとうまくいかないことがストレスにつながり悪循環に陥ってしまう場合も少なくはありません。そのため気分障害は悪循環に陥る前の初期治療、そして症状が治まった後の再発予防がとても大切になっています。近年研究が進んでいることにより治療法の種類も増えてきています。そのため疾患や症状の程度を考慮した上での一人ひとりに合わせた治療法が選択できるようになっています。最近気分が晴れずずっと暗いままであったり、気分の上がり下がりが激しく自分をコントロールできない時があるなど、不安を抱えている場合はこころの風邪である気分障害を抱えている可能性があります。気になることがある場合は、専門家に相談しながら、症状の見極めや対応方法を検討すると良いでしょう。平成26年度患者調査の概要l 厚生労働省
2016年10月26日子どもが学校でいじめられている…親として正直な気持ち出典 : 娘は現在小学校6年生。広汎性発達障害の診断が出ていますが、小1からずっと普通級に在籍し、苦手な授業だけ支援級へ通っています。これは1年前、娘がいじめに遭っていたときのお話です。ある日、大好きなおばあちゃんと2人で遊びに行くことがあり、その時にふと「学校でいじめにあっている」と娘が話したのだそうです。「まさか娘が…!?」この話を聞いた直後、私は正直信じられませんでした。娘の様子について、妻は「最近元気がなさそう」と言っていましたが、私は異変に全く気付かなかったからです。これまで娘は、登校を嫌がったり体調が悪くなったりすることもなく、普通に学校に通っていました。驚きつつも、学校でどんなふうにいじめられるのか聞いてみたところ、「お友達から避けられる…」とのことでした。学校に問い詰めた事実。見えてきたのはいじめの実態だった出典 : いじめを知った私は、事実を確かめるために学校に連絡を取りました。まず私は、娘のことについては何でも連絡して欲しい、と伝えていたので「なぜいじめについて、こちらが問い合わせるまで何も連絡がなかったのか?」と問い詰めました。担任の先生は「すみませんでした」と謝罪していました。そして、これまでのことを確認すると、以下のような状況がみえてきたのです。●いじめは夏休み明けから始まっていた(この時点で、約2ヵ月間続いていたことになる)●学校はいじめを把握していて、学級会を2度開き、クラスで話し合っていた●最初関わっていた生徒は数人、アンケートを取ると、いじめに実際に関わっていたのはクラスの半数の人数だった●いじめは、娘に対して「気持ち悪い」と言う、無視する●話し合いをしたにも関わらず、まだ何の変化もない学校と同じ方向を向き、整えていったいじめへの態勢出典 : 起こってしまったことは仕方ありません。私は担任に、2度も学級会を開いてくれたことについて感謝を伝えました。いじめがあったのは事実ですが、ただ一方的に学校を責めるよりも、それまでの学校の対応を評価すべきと考えていました。こちらも歩み寄りの姿勢を示すことで、学校側も柔軟になり「親と学校が共にいじめに対処していこう」という雰囲気ができたような気がします。その直後から、約2ケ月ほど学校を休ませました。娘にいじめについて詳しく聞くと、「みんなと話すのが嫌。戻るのが嫌」と言っていました。また、自宅ではリラックスしてもらいたかったので、できるだけ普段通り接することにしました。親と学校、双方が建設的になることで出てくるアイデア出典 : それからは、月2回ほどのペースで学校側と話し合いを行いました。学校では校長先生のアイデアで、学年全体にアンケートを取り、いじめを見聞きしたか?どんないじめがあったのか?など、詳細な調査をしてくださいました。また、「いじめに関わっていたクラスに影響力のある子は、クラス委員にさせるのはどうですか?」と、私から学校側へ対策を提案することもありました。学校に全てをお任せするのではなく、親も自分の意見をはっきり主張することが大事なのでは?と思います。しかし、感情的に我を通すのではなく、建設的な姿勢で誰もが納得できる策が提案できると、学校も意見を受け取りやすくなるかもしれません。アンケートの結果で見えてきた原因。これがきっかけで子どもたちにも変化が出典 : その後、アンケートの結果が出てきました。多かったのが、「授業中、なぜ一部の子たちは支援級に抜けていくのか?」「支援級ってどういう子が行くところかわからない」という回答でした。このことから私は、「娘だけではなく他の支援級に行っている子は、周りの理解が得られていないのでは?」と校長先生に話しました。すると校長先生は、「支援級について、支援級の先生から個々のクラスに説明する機会を設けましょう」と言ってくださいました。説明会の後、児童からは「支援級に行っている子について事情がよくわかった、これからは優しくしようと思う」という声が増えました。この時点で学校は3学期を迎えていました。いじめが発覚してから約半年です。娘はまだ、クラスには通えていませんでした。しかし、支援級にだけは通えるようになっていました。1日に1時間だけ支援級に通い、学校には徐々に馴染めるようにしていきました。また、当時から仲の良いお友達に協力してもらい、支援級に遊びに来てもらっていました。その後まもなく春休みとなり、6年生にあがるときにはクラス替えがあったため、このタイミングで通常どおり登校できるようになりました。いじめを悪にすることは簡単。しかし、理由を探れば解決策も見えてくる出典 : あれから1年が過ぎ、娘は元気に学校に通えています。その後、いじめられている様子はありません。実は、娘をいじめていた子どもたちからは説明会の後、娘あてで手紙や絵をもらっていました。子どもたちには反省の色が窺え、娘に対しての理解も深まったようでした。この一件で特別仲の良いお友達が増えた訳ではありませんが、それでいいと思っています。娘には、何の問題もなく安心して学校に通える環境があれば、それでいいです。子どもがいじめに遭っているというのは、親としては衝撃だと思います。相手の子やその家庭、学校に対して憤りを抱く方もいるかと思います。私自身も、学校の最初の対応には納得がいかず、感情的になりました。しかしこうした問題は、いじめっ子本人や自分たち親、学校が成長するチャンスでもあると思うのです。学校との連携では冷静になり、子どもの自己肯定感や自尊心を守るためにも、建設的な話し合いや提案ができるといいですね。
2016年10月26日言語療法・言語聴覚療法とは?出典 : 言語療法とは、言葉を話したり聞いたりする機能に障害がある人に対して、日常生活を円滑に送るために行われるリハビリテーションのことです。言語療法は、英語ではspeech and language therapyと表記され、しばしばSTと呼ばれています。言語療法が対象とするのは、言語機能の障害、話し言葉の障害ですが、食べたり飲み込んだりする嚥下(えんげ)機能の障害もリハビリの対象とされます。聞こえに関する障害のリハビリも行われる場合には、言語聴覚療法ともいわれます。言語療法を受けられるのはどんな人?出典 : 言語療法が対象とするのは、言語障害、言語発達性遅滞(子どもの言葉の遅れ)、発音・発声に関する障害などがあります。言語療法ではこれらに対して検査を行いその結果から個々人にあったリハビリの計画を立てて、改善していきます。ここでは、言語療法が対象とする障害や状態には具体的にどのようなものがあるかを紹介します。言語障害とは、発語や発声や運動器官に問題がないものの、脳の言語機能・高次の認知機能の障害が起こることにより、聞いた言葉を理解できなかったり、言いたい言葉が口から出なくなってしまう障害のことです。主に以下のような疾病が関わっています。■失語症失語症とは「言葉の記憶喪失」のような状態であり、いったん獲得された言語知識が脳の損傷により失われてしまうことです。失語症では、言語中枢に障害が現れるため、話すことのほか、相手の言ったことを理解することにも障害が現れます。■高次脳機能障害高次脳機能障害とは、見たり聞いたりしたことを把握し理解する脳の認知の機能の障害のことです。その結果、記憶や注意や認知において障害が起こります。例えば、注意力が削がれやすかったり、集中力が長く続かなかったり、新しいことを覚えられなかったりします。そのため言葉が出てこないのです。認知症や記憶障害なども、高次脳機能の障害のひとつです。言語発達遅滞とは子どもの言葉の遅れを指し、生活年齢から予測される平均的な発達状態よりも、言葉の表出や理解が大幅に遅れていることをいいます。その原因は、耳の聞こえに関する問題や、言葉の理解に関する問題、または、発達障害や知的障害など脳の機能に問題がある場合、または、ただ言葉が出るのが遅れているだけなどさまざまな場合があります。言葉が遅れるパターンは大きく分けて2通りあります。ひとつ目は、その子の言葉を獲得するスピードが「ただ遅いだけ」というものです。子どもの成長のスピードは個人差が大きく、その場合、乳児期の時点では言葉が遅れていても、年齢が進むにつれて、遅れが目立たなくなることも多くあります。もうひとつは、発達や聴覚に障害のある可能性があり、その兆しとして言葉が遅れる場合です。この場合には、治療や発達を促す療育的なトレーニングを受けることになります。言語療法では、発音や発声に関する障害もリハビリの対象とします。声帯や舌、唇などを使う動作や、音を作り出す体の器官がうまく機能しないことにより起こります。これらの障害は、身体の部位が物理的に損傷を受けて起こる後天性のものと、先天性のものがあります。発声や発音の問題は、子どもの言葉の遅れに関わることもあります。■声の障害大きな声が出なかったり、かすれ声になってしまったります。■発声の障害例えば、「さかな」というところを「しゃかな」と言って、「さ」が「しゃ」という別の音に置き換わってしまったり、呂律(ろれつ)が回らなくなったり、音が省略される状態を指します。■吃音(きつおん)の障害同じ音を繰り返したり、言葉が円滑に出ずに詰まったりすることを指します。例えば、「みみみみかん」と同じ音を繰り返したり、「みーかん、」音が引き延ばされたり、「・・・・・みかん」など、言う言葉がとっさに出てこず、詰まったりします。言語療法では、口腔の機能、つまり食べることに関する障害も改善できます。食べることに障害があると、食べ物が肺に入っておこる肺炎や食べ物による窒息など生命に危険を及ぼす可能性のほか、低栄養による体力・免疫力の低下が起こった結果、食べる喜びも失われます。また、言語聴覚療法の場合には、難聴などの「聞こえ」に関する疾病や障害のリハビリも行います。言語療法科|社会医療法人 愛仁会 リハビリテーション病院言語療法は具体的にどんなことをするの?出典 : 言語療法は、主に専門家である言語聴覚士(ST/Speech-Language-Hearing Therapist)により行われます。言語聴覚士は、文部科学省または厚生労働省が指定する養成校で学び、言語聴覚士国家試験に合格している「話す」「聞く」「食べる」のリハビリに関するスペシャリストです。また、言語療法は、言語聴覚士を中心としながらも、医師・歯科医師・看護師・理学療法士・作業療法士などの医療専門職、ケースワーカー・介護福祉士・介護支援専門員などの保健・福祉専門職、教師、心理専門職などと連携し、チームで連携しつつ行われます。■個人の言語療法専門家から1対1で直接、言語療法を受けることをいいます。個人のセッションの場合には、基本的に20~60分ほどの面接・訓練を、1週間~1ヶ月に1度行います。移動が困難な場合には、在宅によるリハビリテーションが行われることもあります。■集団の言語療法集団の言語療法とは、患者さんの社会性やコミュニケーション能力の向上を目的とします。似たような状況にいる人が集まることで助け合いながら治療を行うことができるとともに、他の人の意見を聞くことで客観的な視点を養うことができます。集団における言語療法は、歌を歌う能力を利用したり、体操をしたりしながら、言葉の出やすい身体づくりをします。言語療法は、大きく分けて、発声、発話能力の獲得と、意思疎通を支えている高次脳機能の獲得を目指すという、2つのアプローチがあります。これらは、それぞれにリハビリの内容や注意点が異なります。1. 発音や発声の機能の獲得構音障害、発声に関する機能に障害がある人に対して、声を出すための基礎となる姿勢や呼吸を意識しながら、口の運動を通して、発声・発音の練習を行います。例えば、発声のために必要な姿勢についての指導や、全身の運動、深呼吸を行います。重度の障害の場合は、発声や発音の練習だけでなく、字を書いたり、50音表を指さしたりするなどコミュニケーションの補助手段も用いるようにします。2. 言語をつかさどる脳の機能の獲得脳は、言葉を理解したり言葉を発する指示を出すなど、他人とのコミュニケーションを支える大事な機能をつかさどっています。トレーニングの中では、本など一般に用いられる教材に加え、タブレット機器が用いられることもあります。■失語症の場合知能・心理検査によって、「聞く」「話す」「読む」「書く」のすべての言語的な検査、評価し、状態を分析します。そして、本人の状態に合わせてトレーニングのプログラムが組まれます。失語症のトレーニングの一例を以下に挙げます。・耳で聞いたり、目で見せたりして、言葉の理解力を伸ばす練習・絵や文字を見て、その言葉を言う練習・日付・名前など、自分にとって身近なものを紙に書く練習・言葉以外の方法でコミュニケーションをとる練習■高次脳機能障害の場合知能・心理検査によって、障害の状態や問題点を挙げ、本人の状態に合わせてトレーニングのプログラムが組まれます。高次脳機能障害トレーニングの一例を以下に挙げます。・注意力を強化する練習・新しく体験したことを覚える力を伸ばする練習・物事を計画し、順序立てて実行する力を伸ばす練習・疲れやすい、またはやる気が出ないなどの社会的行動障害に対する対応また、その他にも、家族に対する症状の説明、本人が社会生活を営むための家族への援助や、本人への心理的ケアなど様々な側面からも行われます。言語療法 | リハビリテーション科 | 医療法人ガラシア会 ガラシア病院脳卒中の言語リハビリテーション | 国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス子どもの言語療法出典 : 子どもの言葉の遅れには、年月を経るごとに自然と言葉が追いついてくる場合と、発達障害や聴覚障害の兆しとして言葉が遅れているという2つの場合があります。子どもが幼い段階ではその違いに判別がつきにくいことが多いですが、言語療法のトレーニングを受けていると、後から何らかの障害があるとわかった場合にも、専門家を通して適切なサポートを受けることができます。子どもの言語療法では、言葉に対してだけではなく、運動やコミュニケーションなどその子どもの発達全体に働きかけるようなトレーニングが行われます。子どもへの言語療法の流れは、以下のようになります。保護者への問診、遊びを通した行動評定、聴力検査、発達検査、言語学習診断検査などにより、言葉の遅れや偏りの原因を見極め、支援の目標やトレーニングが決められます。子どもの言語療法の支援は、個人へのアプローチ、環境へのアプローチ、家族へのアプローチの3つの観点から行われます。■個人に対して子どもが楽しみながら社会性を伸ばし、日常生活で使える言葉を獲得することを目指して、個別、または集団で遊びを取り入れたトレーニングが提供されます。子どもの言語の発達レベルに合わせて、聞く、読む、話す、書くことという言葉全般に働きかけてトレーニングを行っていきます。その他には、コミュニケーションの面を伸ばすトレーニングも豊富に行われます。個々人によって原因は異なるものの、言葉に遅れや偏りがみられるときには、コミュニケーションの面にも偏りがみられることが多いためです。楽しんで取り組めるような課題に取り組む中で、子どもは自発的な言葉を話すことができるようになっていきます。例えば、「それ、とって」「もう1回」「どこ?」など、相手へ発信する言葉や、自発的なコミュニケーションなどです。保護者が付き添ってよいこともあれば、保護者と離れて別の部屋で行うこともあります。■環境に対して発達段階や本人の状況に合わせて、トレーニングに集中して取り組むことのできるように、環境にも配慮を行います。例えば、部屋の中に集中を妨げる刺激物を最小限にし、スケジュールを黒板に書いて視覚的に伝え時間に見通しを持たせることで、子どもが過ごしやすい環境をつくるなどです。■ご家族に対して子どもの発達について理解ができるように、検査の結果子どもの発達段階や、トレーニングを経たことによる子どもの言葉の変化について説明が行われたり、環境への配慮、日常生活の中でできるトレーニングなど、子どもの発達を伸ばすための工夫を教えてくれます。また、子育てや、子どもの学校生活について家族の抱えている悩みや心配事を相談することもできます。言語療法を受けるためには?出典 : 言語療法を受けるためには、医師の診察および処方箋が必要な場合があります。まず、かかりつけの病院で症状や困りごとなどを相談した上で、言語療法が必要かどうか判断しましょう。日本言語聴覚士協会のホームページから、全国の施設検索が可能です。所在地や施設名や障害の種類で詳しく検索できるので、お住まいの近くの言語療法が受けられる施設を調べてみてはいかがでしょうか?また、自治体によっては言語聴覚士による療育や在宅訪問サービスなどを行っていることもありますので、福祉などの担当窓口で相談してみるとよいでしょう。以下のHPから、言語療法を行う専門家である言語聴覚士のいる施設を検索することができます。一般社団法人 日本言語聴覚士協会■医療機関病気やけがの治療やリハビリが目的の場合、担当医から紹介・指示を受けることになります。この場合、健康保険が適用となります。また、子どもの場合も医師の診断・指示があれば医療機関で言語聴覚士の指導を受け、健康保険が適用となることもあります。病院のリハビリテーション科を訪れてみましょう。■教育・療育のサービス子どもの場合、「言葉の教室」「きこえの教室」といった小学校などの支援級、特別支援学校、療育施設で言語療法を受けられる場合もあります。園や学校に相談したり、自治体に問い合わせましょう。健診や就学前健診で個別に相談・進められる場合もあるようです。その後、面談や審査など、所定の手続きに従います。地域によっても制度が異なりますので、お住まいの自治体に問い合わせましょう。■福祉施設施設・地域によって異なりますので、各施設や自治体の定める手続きをとります。訪問リハビリテーションなど介護保険の適用になる場合もありますので、福祉窓口、ケースワーカーや民生委員に相談してもよいでしょう。■言葉の教室など民間が行っている言語に関する指導を行う教室です。その場合には、施設に直接申し込みを行います。■医療機関医療機関で治療・リハビリの一環として言語療法を受ける場合、費用は治療内容などによっても異なりますが、健康保険が適用されます。一例として、辻みみはなクリニック(兵庫県)の場合の費用をご紹介します。言語療法の費用3割負担の方3単位(1時間)2,420円2割負担の方(未就学児)1,690円各種医療券(乳幼児・障害児・母子)も適用となります訓練時診察をされたり、知能検査・聴力検査などを行った場合は負担額が追加となります。■教育機関、民間学校や療育センターなどで言語療法を受ける場合、無料から有料まで、自治体や施設により異なります。年会費などが必要になる場合もあります。例えば、兵庫県の子ども発達支援センター(ひょうご子どもと家庭福祉財団)の場合の費用は以下の通りです。子ども発達支援センターは、民間の福祉団体の「ひょうご子どもと家庭福祉財団」が運営しています。そのため、訓練やプログラムに参加していただく際には、保護者の皆様に費用の一部をご負担いただいています。個別訓練費用●月4回の場合:15,000円+消費税(月2回の場合:7,500円+消費税)グループ訓練費用●月4回の場合:9,000円+消費税(月2回の場合:4,500円+消費税)上記の料金は一例です。施設によって、また受ける回数や時間、サービスの内容によっても異なりますので、ご利用前に問い合わせることをおすすめします。言語療法の体験談出典 : 言語療法について関心があるけれど、通うかどうかを迷っている方もおられるかもしれません。ここでは、実際に言語療法を行ったことのある方や、その保護者の体験談をご紹介します。脳梗塞リハビリセンターで評価を受けた結果、失語症ということでした。軽度なのでなかなか周りが気づかないけれど、言葉がうまくしゃべれない、伝えたいことを頑張って言葉にするのだけど周りがうまく理解できない。文字がうまくかけない、短期記憶がうまくとどめられない、雑音などがイライラとしてしまうということでした。(中略)ちょっとした雑音なんかも気になるともう気になってダメだったんですけど、そういったことも少しずつ慣れてきたように思います。 先生からは、文字の書きやすさや記憶に関するところは少しずつ良くなったと言われています。(40代、男性、失語症)言語療法を継続的に行っていくことで、言葉だけでなく、記憶についての機能の向上も期待できます。初めての本格的なST指導に、お父さんは目を見張りました。「石川STは、その子がどこまで理解しているのか、何が足りないのか、ひとりひとりの状態を明確に把握している」と感じたからです。(中略)「ストローを吹く練習をしましょう」と教わったことも。「目的は口をすぼめた発音ができるようになることだったと思います。伸明は、意識的に息を吹くことができなかった。“ウーウー”になったり、“フ・ウ・フ・ウ”」と一語一語発声したりしていましたね。でもそういう練習をするといいだなんて、われわれには思いつかないですよ!」お母さんも、「“熱い食べ物をフーフーしましょう”とかね。そんなふうに生活の中で取り組めるヒントをくださる。それがさすがだと思いますし、親にはとてもありがたいんです」とおっしゃっています。中川信子/著『発達障害とことばの相談子どもの育ちを支える言語聴覚士のアプローチ』2009年/小学館/刊思い通りに息をふきだすために、子どもが楽しみながら取り組むことのできるトレーニングを提供してくれます。家庭でも簡単に取り組むことのできるトレーニングを専門家に直接教えてもらえる場合もあります。まとめ出典 : 言語療法とは、日常生活を送る上で欠かせない言葉や聴覚、嚥下(えんげ)に障害のある子どもや成人に対して行われるリハビリテーションのひとつです。言葉を使って私たちは生活をしています。阻害されていた言葉や聞こえの問題を解決することは、単に言葉を話す、聞くことができるようになるという機能面の向上に留まらず、言葉を使って人とやりとりや、人とのふれあい通した安らぎというコミュニケーションをとることによる心の安定をもたらします。障害のある人が、思い通りに言葉によるコミュニケーションを通して人とやり取りを行い、自分らしい生活を送ることのできるように手助けを行うのが言語療法です。
2016年10月25日音楽室への移動時間、長男は突然涙目になり…出典 : 小学校入学直後から「学校いかれへん!」となった大混乱から、私との付添い登校により少しずつ学校に慣れてきた長男でしたが、小3になって新たな壁になったのが、専門教室への移動が増えたことでした。これまで音楽は音楽室、図工は図工室へ移動するときには、支援級の先生につき添いをしてもらっていました。しかし、支援級の先生1人で2人以上の子を担当する体制になったことで、常時サポートが難しくなり、私の付き添い登校時間を再び増やさざるを得なくなりました。その日の4時間目は音楽。クラスメートが列をつくって移動し始める中、長男は「行かれへん!」と叫び、教室に戻ろうとしました。なおも進もうとする先生や私を押し戻そうとするので、廊下で相撲をとっているような感じになりました。「どうして行かないの?」という先生の問いかけにも、涙で目を赤くして「とにかく行かへん!」と言い続けるばかりです。音楽を学校で習いたいと思えない。目的が見出せないと納得できない長男出典 : なぜ音楽室に行きたくないのか理由を聞いてみました。私「しっかり聞くから考えていることを言葉で説明してほしい」長男「だって、行く意味がわからへんもん…図工は、その日にその作業をしないといけないって理解してるから行ける。陶芸だったら、みんないっしょに窯に入れないといけないとか。でも音楽は、自分はぜんぜんやりたくないし、今日絶対にそこにいないといけないってことが理解できへん」先生「音楽も一緒。今日は〇〇っていう曲を始めて鍵盤ハーモニカで吹いてみる日だから、聞いておいてほしいなって思ってるの」長男「自分は、ぜんぜんふけないし、みんなのをただ聞いててもしんどい。絶対暴れるか、床に寝てるしかできない!」手と目の協調運動が極端に苦手な長男は、聞くことにも集中しなくてはならない楽器の演奏が、ものすごく苦手なのです。長男「無理や!」そう言うと、と先生から逃げて私の方にきて、手をひっぱってその場を離れようとします。私「そんなにひっぱったら痛いよ!」その後の先生との話し合いで、先生には先に音楽室へ行ってもらうことにしました。どうして行けないの?ゆっくり話すことで出てきた本音出典 : その後私と2人だけになったので、落ち着ける場所へ移動して話すことにしました。植物が大好きな長男が落ち着ける場所は菜園です。冬野菜が育ち始めている学校の畑のへりに、とりあえず2人で腰をおろしました。長男「なんで自分は音楽室に行かれへんのやろう」私「予想だけど、音楽室へ行くことが自分の中から湧き出してきた考え、行動じゃないからだと思う。自分でやりたい!と思ったことなら難しいことでもできるけど、しなさい!と言われたことはかなり簡単なことでもできない。キミにはそういう特徴がある」長男「それって、先生とかに理解してもらう必要ある?」私「半分ぐらいは、あるかなあ」長男「なんで?」私「それがわからないと、今みたいにお互いに嫌な思いしなきゃいけないから。行きましょう、行けません、の繰り返しで平行線。音楽室に行くだけなら、普通そんなに難しいことじゃない。理由がわからなくて先生や周りの人もイライラしてしまうでしょう」出典 : 長男「自分は、理解してもらわんでもいいと思ってる」予想通りの反応。でも、言葉の奥には葛藤がありそうな気もしました。私「まあ、正直、完全に理解してもらうのは難しいし、必要はないかもしれないと思ってるよ」長男「なんで?」私「理解してくれたとして、『じゃあ、〇〇くんはもう音楽室に行かなくてもいいよ』って言ってもらう?そしたら、音楽室に行く力が身につきにくいと思う。できれば、大きくなるころには音楽室に行ける体質になれるほうがいいと思わへん?」長男「そう…やろな。やけど、やっぱり無理やわ」私「今はね。けどいつか、いろいろやってるうちに、ひょっと行けるようになると、お母さんは思ってるよ」その後、2人で音楽室へ。先生は来てくれたことを喜んでくれたけれど…出典 : 私が「そろそろ行こか」と言うと、長男はゆっくり歩きはじめました。音楽室に着くともうすぐ授業が終わる時間で、何も楽器はできませんでした。先生「気持ちを落ち着けて、よく来てくれたね」私「どうして音楽室へ移動できないのか?2人で話しながら理由を考えていました」先生「音符を読みながら吹くのが難しいと感じているのかなと思い、カタカナで書いておきました。支援していきますから、頑張ってほしいです」私「先生、楽譜にドレミを書きこんでおいてくれたよ」と長男に伝えました。話しながら、先生は本当に理解してくださっていないかもしれない…と、頭の隅で思いました。長男の特性では、「難易度を下げる」ことは「がんばり」のエンジンになりにくいのです。それよりも「音楽をやることが腑に落ちる」「音楽をやるのが楽しく思えるアタマとカラダになる」のが行動を変える早道なのです。どうアプローチすれば、長男の行動は変わるのだろうか?出典 : 今のところ、私を含めて他人の指示をキャッチし、カラダを動かすのがとても難しい長男。彼自身のアタマがカラダに「音楽室、行ってみたら。行ってみてもきっと大丈夫だよ。それどころか、もしかしたら楽しいかもしれないよ」と命令できるようにするのがポイントかな、というのが私の推論です。他者の指示を聞いてすぐに動けるアタマとカラダの持ち主である先生には、想像しにくい特性だと思います。言えばわかってくれる、動いてくれると私自身もずっと思っていましたが、ずっと観察してやっと「こういうことかも」と思うようになりました。家では替え歌を作ったり、楽器を作ってみたり、また知り合いの音楽の先生のおうちに遊びに行ってピアノを触らせてもらったり、アタマとカラダを耕す感覚でいろいろ試しています。思ったよりはノリがいいので、心の底から音楽が嫌いではないんだとわかり、ちょっと安心もしました。しんどさはなくならない。でも、現場でしかわからないことがある出典 : 我が子が暴れたり、他の子ができてることができない姿を見るのは、「しんどいな…」と感じる時も多いですが、やっぱり学校は、できること、できないことを見わける機会として活用できるように思います。「あー、がっこうって、ほんまに、しんどいわ」と、毎日口ぐせのように言っていますが、今のところは「そやなー、けど、ぼちぼちでOKだから登校を続けてみたら」と言っています。
2016年10月25日小学校と園をやめた姉弟。その後増えていったのは、子どもたちの笑顔だった出典 : 我が家には8歳の娘と6歳の息子がいて、それぞれアスペルガー症候群とADHDの診断が出ています。「学校をやめる」と宣言し、毎日家で過ごしている娘。後を追うように息子も「幼稚園をやめる」と決断し、のんびりと家で過ごしています。子どもが毎日家にいると大変では?と、聞かれることがありますが、実は私にとっては、子どもたちが学校や幼稚園へ行っていた時の方が大変でした。学校や幼稚園に通っていた頃は、帰宅後ぐったりと疲れていたりストレスで荒れたりと、子どもたちをフォローすることで精一杯。お互い心に余裕がなく、日常生活をなんとかこなすだけの日々で、何かを楽しむという時間は全くありませんでした。家で過ごすようになり、私は子どもたちが行きたくない場所へ送り出すエネルギーと、罪悪感から解放されました。そして、ストレスのなくなった子どもたちはとても明るく、元気になりました。うちの子たちって、こんなによく笑うんだな、と毎日とても新鮮な気分で眺めています。子どもたちをゆっくりと観察することもできるようになり、凸凹のタイプが異なる2人の違いも、より一層明確になってきました。一緒に過ごす時間が増え、子どもたちの得意なこと苦手なことがよくわかるようにUpload By GreenDays娘と息子の思考の違いに気付いたのは、娘とアイロンビーズに取り組んでいたときでした。以前、人によって物事を認知する能力が違う、というコラムを書かせていただきました。娘の場合、目で見る言語・耳で聞く言語にとても強く、頭の中も言語で埋め尽くされている状態です。アスペルガーの娘曰く、頭の中にはたくさんの引き出しがあって、きちんとインデックスがついており、全ての情報がしかるべき場所にきちんと言語化して収納されているそうです。ADHDの息子は視覚優位で、映像から物事を理解するタイプ。例えば「今日の午前中は何をした?」と聞いても「えっと何だっけ?」「思いだせない」と思いだすこともなく、考えることをあっさりやめてしまいます。娘に息子と同じ「今日の午前中、何をしたかな?」という質問をすると、「今日の朝は〇時〇分に目が覚めて、ママは起きていたけど弟はまだ寝てたよね。朝ごはんを食べている時に…」と、とても細かい部分まで正確に答えが返ってきます。娘とアイロンビーズを整理していたときです。綺麗に並べられたビーズを見ていてふと、「これは娘と私の頭の中みたいだな」と思いました。では、息子の頭の中をアイロンビーズで例えると、どんな風になっているのだろう?という疑問が湧いてきました。それから数日間、息子の言動を追いかけ、頭の中がどうなっているのかを想像してみました。娘とは違う方法で情報を記憶していた息子。大変なのは、その情報を取り出すときUpload By GreenDaysそして辿りついたのは、息子の記憶は1つひとつが細かく分かれていて、それが整理されることもなくどんどん放り込まれ、山積み状態になっているのでは?という考えでした。それは、色分け途中のアイロンビーズのようなイメージです。息子は何の脈絡もなく、突然昔のワンシーンを語り出すことがあります。数々の情報が整理されないまま記憶されているので、膨大な記憶の山から必要な情報を探し出すのに、途方もない労力が必要なのだと思います。そして、息子の記憶は言語化されておらず映像のまま残っているようなので、それを言語化して人に説明するためには、また多くの力を注がなくてはならないのでしょう。この分析が正解かどうかは、息子がもっと大きくなってから聞いてみないとわかりません。でも、「こんな感じなのかもしれないな」と想像するだけでも、息子が苦手なことにも理由があるのだ…と、イライラせずに済むので、子どもの特性を知ることは、大切な作業だと思います。努力では補いきれないときはどうすればいい?模索する中…出典 : さて、バラバラの情報が山積みになっている息子に、「お姉ちゃんのように、きちんと情報を整理しなさい」と言っても、脳の構造が違うので無理なものは無理です。これから息子に合ったやり方を一緒に見つけて行かなければなりません。とりあえず、「今日の朝からお昼まで」の情報を思い出す練習を、お昼ごはんの後に行うことにしました。毎日、手帳に箇条書きで書き出していきます。でも、お昼ごはんの前に何をしたかさえ、思い出せない息子。それでも毎日続けているうちに、「今日はこれを手帳に書いてみようかな」という言葉が息子から出てくるようになりました。もちろん、手帳を前にした時にはその出来事をすっかり忘れてしまい、「あれ?何を書こうと思ってたんだっけ?」ということの方が多いですが、それでも「今日の出来事を手帳に整理する」という意識が、少しずつ芽生えてきたことは大きな進歩です。子どものタイプによって苦手なことは違う。支援のコツは「その子が生きやすくなるかどうか」出典 : 自分が簡単に情報を引き出せるタイプではないことを理解した上で、いつかはその対処法として、必要なことはメモを取ったり、予定を忘れないようにアラームを設定するなどの行動をきちんとできるようになれば、息子自身が生きやすくなるのではないかと思います。子どもたちの色々な特性に気がつき、それで子ども自身や周囲の人が困っているのならば、こんな方法もあるよ、あんな方法もあるよ、と一緒に試しながら、その子にあった方法を見つけられるといいですね。
2016年10月25日