イギリスの最長寿SFドラマ「ドクター・フー」に出演した国民的スター、ビリー・パイパーと、エミー賞受賞のHBO人気ドラマ「メディア王 ~華麗なる一族~」などを手がけてきたルーシー・プレブルがタッグを組んだドラマ「超サイテーなスージーの日常」のシーズン1&シーズン2<字幕版>が「スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-」にて独占配信中。シーズン1では、この2人が肌で感じたエンタメ業界で働く女性のジレンマや経験を盛り込み、シーズン2ではメンタルヘルスの問題にも切り込んだリアルなドラマを構築。女性の本音や欲求、固定観念に対する不満、性差別などを率直に、かつ辛辣なユーモアをまぶしながら描き、“ただのコメディではない深みを感じさせる作品”として、英・Skyや米・HBO Maxで大ヒット。シーズン1が批評サイト「Rotten Tomatoes」で95%フレッシュを記録したことに続き、キャリアも家庭も失った主人公スージー・ピクルスがダンス・リアリティ番組に出演して起死回生を目指したシーズン2は100%フレッシュという高評価を獲得。ビリー・パイパーはシーズン1、2続けて英国アカデミー賞(BAFTA)主演女優賞にノミネートされた。ルーシー・プレブル photo credit: William Kennedyこの度、ビリーとともに本作を手がけた共同クリエイター、ルーシーのインタビューが到着。シーズン2をどんな思いで作りあげたのか語っている。Q:前回のスージー・ピクルスから、状況はどのように変化しましたか?ルーシー・プレブル(以下、R.P):「超サイテーなスージーの日常2」は、前作の終わりから数か月後に始まります。人生を投げ出したスージー・ピクルス(ビリー・パイパー)は、姉の家に身を寄せ、世間の目から逃れようとしていて、離婚を乗り越え、キャリアを立て直す方法を見つけ出そうとしています。スージーの女性としての経験はテレビのタレント・コンテストから始まりました。そしていま、彼女は自分がよく知っていて理解している世界に戻ることを決意します。「ダンス・クレイジー」という国民的人気を誇るダンス番組です。セレブたちがテレビで大衆の愛を競い合います。いまこそ彼女はステージに立ち、本当の自分を世界に示そうとするのです。Q:シーズン1の反響は、今回の脚本に反映されましたか?R.P:(反響の大きさは)かなり奇妙で強烈で、おかしな感じでした。愛と同じくらいヘイトも期待していましたし、自分が特別な存在だと思えば思うほど、人々は自分自身を受け入れるようになるということを学びました。これは驚くべきことです。また、悲しいことに、本当に人々の心を動かし向上させる脚本とは、ページ上に血がにじむような脚本なのです。自分自身の向き合いたくもない、隠しておきたいような部分をさらけ出し、解剖するようなもの。それは非常に疲弊する作業ですが、それこそが真実です。そして、これほど多くの番組があるいま、あえて一般的ではない番組を作ることを楽しんでいました。その意図は、見慣れた番組を作るのではなく、TVというメディアを使って、人生とは本当はどんなものかを思い出させ、お決まりの展開の裏に隠されたものを探らせることでした。Q:今回はどのようにストーリーを進めたのですか?R.P:3話にわたって、スージーがダンス・コンペティションに出場し、彼女の私生活がどのようにダンス大会と絡み合い、影響を与えていくのかが描かれます。クリスマスに3夜にわたって放送されるBBCの時代物ような、大きなコンセプチュアルなアイデアなんです。あなたが歴史劇を観たくないときに観る番組ですね。親と一緒に見る番組ではありません。前シリーズは、エピソードごとに異なる感情を持つというコンセプトでした。でも今回は序盤、中盤、そして終盤の3幕構成になっています。Q:クリスマスを舞台にすることで、何が生まれるのでしょうか?R.P:クリスマスは、喜びと同じくらい苦痛と騒乱に満ちた魅力的な時期です。特に女性は、この時期に多くのプレッシャーと混乱を感じると思います。 感情的に高まる時期です。このシリーズは両極端で、相反するものをテーマにしています。ステージ上のきらびやかさと舞台裏のたたずまい。1年で最も素晴らしい時期であり、人々が離婚を決意しやすい時期でもあります。多くの芸術作品には、クリスマスは魔法のように、甘くて、気取ったものとして見せなければならないというプレッシャーがあるようですが、それが悪夢になることもあります。この作品は、クリスマスの華やかさと激情を描いた楽しい作品であり、1年で最も素晴らしい時期に、ある種の“仮面”を保ち続けなければならないと感じているすべての人にとって、かなりのカタルシスを感じられると思います。Q:ビリーの演技はどのように進化したのでしょうか?R.P:ビリーは国宝級の並外れた俳優だと思います。もちろん、あのダンスをすべて自分でこなすというすごいことを含めて。トレーニング、パフォーマンス、演技、そして振付師として、また編集者として、そして彼女はエグゼクティブ・プロデューサーとして、すべてのことに携わっています。印象的だったのは、このキャラクターが関心を集めたいわけではなく、どれほど一生懸命なのかということです。初めてラッシュ(編集前の映像)を観たとき、この作品が持つ怒りに驚きました。Q:今シーズンのスージーの軌跡は、実話に触発されたのでしょうか?R.P:もちろんそうです。ブリトニー・スピアーズやアンバー・ハードがビリーに近いとみんな言いますが、ビリーはこうしたことを理解できる素晴らしい役者です。出発点はもっと政治的で文化的なものです。Q:テレビ界の内輪ネタになりすぎないように気をつけなければいけませんでしたか?視聴者は舞台裏を見るのが好きだと思いますか?R.P:そういうことはあまり考えていませんでした。「メディア王 ~華麗なる一族~」の脚本と製作総指揮から学んだことですが、この業界の裏側について忠実であればあるほど、より多くのリサーチを行えば行うほど、視聴者はそれを感じ取り、信頼し、傾倒していく。一般的で分かりやすい視点から書こうとすればすぐに、見下されていると感じ取るのです。これらの番組を見ている人たちは、仕事を持っていて、これらの世界が本当はどんなものかを知っています。それが正直に描かれているのを見ると、ホッとすると思います。※以下、シーズン2の内容に触れている表現があります。Q:スージーが妊娠中絶をするシーンは、動揺を感じさせると同時に、現実のように感じられます。女性の権利に対する現在進行形の攻撃に照らして、このシーンを見せることはどれほど重要だったのでしょうか?R.P:中絶をスクリーンで一度も見たことがないなんて、どうかしています。もちろん、様々な形で中絶が取り上げられてはいますが、多くの場合、東欧の圧政や、ヴィクトリア朝時代の路地裏の体験など、悲惨な視点から取り上げられることが多いものでした。まるでそれが、いまではまったく起こってないかのように。実際にはほとんどの中絶には正当な理由があって、女性たちが見届けるなかで現実的で管理的な方法で行われています。女性たちは、子宮外妊娠という医学的理由から、妊娠を継続することが受け入れられないという理由まで、中絶が必要になる事情がたくさんあることを知っています。妊娠を継続できるかどうかは、生殖に関する一般的な文化的理解とはまるで異なる毎月の“現実”があります。毎月の出血にはむらがあるんです。ときには、それが受精卵であることさえわからない場合もあるのです。妊娠、流産や中絶を理解するための会話は、特にアメリカ合衆国では、不愉快なほどに狭視野で家父長的で、女性蔑視の無知で恐ろしい恥ずべきものとなっています。(本作のスージーのような)中絶の経験の真実味のある思慮深い表現は貴重なのです。Q:エンディングは、多くの人にとってショックかもしれないですね。特に、クリスマス・スペシャルであることを期待すると、この結末は、多くの人にとって衝撃的かもしれません。R.P:この結末は、ビリーと私の話し合いから生まれました。ここ数年、女性に関する衝撃的で受け入れがたい現実がありました。私たちは、それを正直に表現しないまま番組を終わらせたくはなかったのです。体裁よく整えられた結末が正しいとは思えません。私は自分の悲劇にうんざりしています。女性にまつわる悲劇が、男性にまつわる悲劇よりも低く評価されることにうんざりしています。私が書いたものは怒りに満ちたものなのに、面倒くさいものと言われることにもうんざりしているんです。もうこれ以上、笑顔を振りまいてなんていられないんです。Q:シーズン2の見どころは?R.P:カオスでした。カオスです。カオスを見てほしいです!<海外ドラマ「超サイテーなスージーの日常 シーズン1」(全8話)><海外ドラマ「超サイテーなスージーの日常 シーズン2」(全3話)>【配信】スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-<字幕版>独占配信中<吹替版>シーズン1:全話配信中、シーズン2:10月2日(月)より全話配信開始【放送】BS10スターチャンネル【STAR1字幕版】10月10日(火)より放送開始 毎週火曜23時ほか【STAR3吹替版】10月12日(木)より毎週木曜22時ほか▼シーズン1(全8話)再放送【STAR1字幕版】9月26日(火)&10月3日(火)23時より4話ずつ放送 ※第1話は無料放送【STAR3吹替版】10月5日(木)22時より全話一挙放送(シネマカフェ編集部)
2023年09月28日2000年代にワインブームを日本で再燃させた伝説的漫画「神の雫」が、国際連続ドラマのHuluオリジナル「神の雫/Drops of God」として、9月15日(金)よりHuluで独占配信される。原作の主人公・神咲雫をフランス人女性カミーユに置き換えるという大胆なアレンジがなされた本ドラマでは、もうひとりの主人公・一流ワイン評論家の遠峰一青との、カミーユの父の遺産をかけたワインバトルが華やかに展開される。フランス、日本、イタリアと国を横断して描かれる国際ドラマならではのスケール感が、独特な世界観に没入させてくれる。そして、要となる遠峰一青を演じるのが山下智久だ。これまでいくつもの国内外の作品に携わった山下さんだが、海外ドラマでは初主演を飾ることになった。2021年8月にフランスでクランクインし、その後、各国へ渡りながら約10か月に及ぶ撮影を実施した山下さんは、充実の表情でインタビューに応えてくれた。人気の高い原作の実写映像化へ臨むための高い意識からはじまり、役を深めるための手段、さらにガストロノミー(美食学)の世界を描いた本作にかけ、山下さんの最近の「美食」事情まで、多面的にいまの山下さんを見つめる。国際色豊かな現場「本当にいいチーム」――国内外で人気の高い「神の雫」を国際連続ドラマ化し、山下さんは海外ドラマ初主演となりました。オファーがきたときは、どのような気持ちになりましたか?うれしかった部分もありますし、実写化するときは原作のファンの方がたくさんいらっしゃるので、そういう意味ではプレッシャーと緊張感もすごくありました。ただ、ドラマの脚本を読んだとき「これは漫画『神の雫』のDNAを持った別の作品だ」と理解したんです。そこからは原作へのリスペクトは忘れないようにしつつも、脚本の世界観に忠実に掘り下げていこう、と意識が向くようになりました。――国際色豊かな現場は、多言語が飛び交うような感じでしたか?現場はすごく和気あいあいとしていましたね。監督はイスラエルの方ですけど英語はほぼネイティブに近い感じなので、基本は英語でやりとりしていました。監督からは、演技についてがっつり指導をされる感じではなく、「今、一青はこういう状況でこういう感じだと思うんだけど、それでやってみてもらっていいかな?」という感じで進めていっていました。脚本家の方も何人かいらっしゃって、本当に皆さん、毎日練りに練って考えに考えて真剣に取り組んでいる熱があるんです。それがどんどんこっちにも伝わってきて。だからこそ、ぎりぎりまでセリフが変わる現場でもありました。一青が生きていた感じがすごくありましたし、新鮮な環境だったので、僕もとにかく楽しもうと思ってやっていましたね。監督もすべての時間をここに費やしてくださっていたし、本当にいいチームでした。――ワインがもうひとりの主人公とも言えるストーリーですが、山下さんは本作きっかけでお好きになったとか?そうなんです。作品がきっかけで勉強して好きになりました。いろいろなワインをピンからキリまでちゃんと飲んでおかないと、と思ったので、もう…いくら使ったんだろう、って感じです(笑)。――コストのかかる役作りでもあったんですね(笑)。飲んでみて発見はありましたか?ありがたいことに、ものすごく高いワインも飲ませてもらったりしたんです。もともとは「高い=おいしくて当たり前」という気持ちがあったんですけど、作り手さんの気持ちや思いを感じながら飲むと、より深みが出るものだとわかりました。一方で、安くてもめちゃくちゃおいしいワインもいっぱいあるんですよね。自分の好みは、飲んでいくうちにわかっていったので、その感覚はちょっとアートに近いかなと思いました。アートも見ていくうちに自分の好みが見えてくるじゃないですか。その背景も含めてロマンや哲学があったりするので、大人の趣味にはいいかもしれない、という発見もありましたね。アクティングコーチは「自分ひとりで考えるよりも幅が広がる」――ワインの知識を深めていくこと以外で、役作りでされたことはありましたか?一青のライバルとなるカミーユは、人並み外れた味覚や嗅覚があるという特殊な能力を持っているんです。なので、監督と「一青は味覚、嗅覚を最大限研ぎ澄ますことをするべきだよ」という話になりました。痩せると飢餓状態になるから、味や香りにすごい敏感になるんですよね。だから、カロリーをほぼ摂らないようにして、めちゃくちゃ痩せました。何事もやるとなったらいろいろなものが見えなくなって、やりすぎてしまうタイプなので死にそうになりましたけど(笑)。命がけでした。あとは今回、役を深めるために、アメリカ人のアクティングコーチの方に指導をお願いしました。――アクティングコーチとは、どのような役割なんですか?簡単に説明すると、役者に演技指導を行う専門家です。台本を送って、そのシーンをコーチに解析してもらう、という形なんです。コーチの視点で「この部分はこういった心情だから、ちょっとこんな雰囲気でやってみて」と提案をしてもらえるです。例えば、「“愛している”という言葉を“殺したい”という気持ちで言ってみて」とか。自分の演技の幅をすごく広げてくれる存在なんです。チューニングしていく過程は、やっていてすごく面白かったですね。――アクティングコーチをつけるのは、今回が初めてで?同じくHuluオリジナル「THE HEAD」をやったときに、現場にアクティングコーチが来てくれていました。それが初めての経験でした。自分ひとりで考えるよりも幅が広がるから、大事なことだなと思います。――日本だと、まだあまり浸透していない文化でもありますよね。そうかもしれません。日本にもおそらくアクティングコーチはいらっしゃるとは思うんですけど、まだあまり定着していない感じですよね。僕がまだ出会えていないだけかもしれないけど…。演技の広がり、深みが出てくると思うので、すごくいい文化だと思っています。ライバルに年齢は関係なし「勝手に闘志を燃やしています」――カミーユと遠峰はライバルに当たりますが、山下さんにとって“ライバル”に当たる存在はいますか?ライバルは、その都度、その都度やっぱりいっぱいいます。ライバル的な存在がいると、自分がより強くなるとは思います。「負けないぞ」という気持ちはすごい大事だと思うんです。ライバルがいてくれるのは、ある意味すごく幸せなことだなと思いますね。――どんなときに「ライバルかも」と相手を意識するんですか?昔は年代が近い、同年代の人をライバルというふうに思うことが多かったかな。けど、今は年齢は関係ないです。自分がなりたいと思っている存在に近いようなことをしている人に対しては、まだまだ全然追いつけていないという気持ちで、勝手に闘志を燃やしています。――ライバルに奮起することもそうですし、ほかにも山下さんがご自身でステップアップを実感するために意識していることは何でしょう?自分を高めていくこと、自分の感覚をグローバルスタンダードに持っていくのは、すごく大事だと思っています。自分の知識や経験が増えたりすると、波長が合う人が変わってくるじゃないですか。そうやってどんどん高め合っていく作業が、たぶん一番近道なのかなと思います。日本の方でも、海外の方でも、一流の人たちの話を見たり、聞いたり、読んだりして、自分の感覚値を上げていく作業をしています。やっぱり内を広げていかないといけないな、とすごく感じているんですよね。これまで外に外に意識が向いていたんだけど、今はどちらかと言うと自分の内の質量を、どんどん大きくしていきたいなと思っています。――最後に、最近の山下さんについてもいくつか教えてください。カミーユは父との「ふたりだけの場所」を持っていましたが、山下さんにとっての特別な場所、落ち着けるような場所はどこになりますか?僕は海が好きですね。海は定期的に見に行きたくなるんです。国内でも海外でも、どこというわけじゃないんですけど。やっぱり広がりとあの音を聴いたり感じたりすると、すごい心が楽になるから。ヒーリング効果があるのかなあと思いますね。直近だと、近いのでお台場近辺の海を見ました。――ありがとうございます。本作の世界観・ガストロノミー(美食学)にかけて、最近、山下さんが感じた「美食」エピソードを知りたいです。ええー、何だろうな?この間、コンサートで名古屋に行って、ひつまぶしを食べたらすごくおいしかった(笑)。――食はツアーの楽しみでもありますよね。ちなみに、自作の美食レシピもありますか?美食というほどでもないし、最近全然やっていないですけど好きなレシピはあります!鶏ひき肉と玉ねぎを塩コショウで炒めて、それをご飯の上にのっけて、卵かけごはんにするというやつ。玉ねぎと一緒に炒めるとくさりにくいですし、冷蔵庫に入れておくと食べたいときに食べられるのでいいですよ。たんぱく質もしっかり摂れるし、安いし、簡単だし、お気に入りのレシピです。(text:赤山恭子/photo:You Ishii)
2023年09月12日【音楽通信】第145回目に登場するのは、ダンサー史上初めて日本武道館単独ダンスライブ公演を即日完売させた、結成15周年の世界的ダンスパフォーマンスグループ、s**t kingz(シットキングス)!ダンスに出会った4人が「s**t kingz」になる写真左から、NOPPO、shoji、kazuki、Oguri。【音楽通信】vol.145アメリカ最大のダンスコンテスト「BODY ROCK」で、2010年と2011年に連続優勝した、世界が注目するダンスパフォーマンスグループ、通称「シッキン」ことs**t kingzのみなさん。世界各国からオファーが殺到し、これまで20か国以上を訪問したほか、三浦大知さん、BLACKPINK、BE:FIRSTなど国内外のアーティストの振付楽曲はなんと400曲以上という引っ張りだこのコレオグラファーとしても知られるなど、国内外から絶大な支持を得ています。日本ダンス界のパイオニアとして、常に表現者として挑み続けるs**t kingzが、2023年9月8日に“見るダンス映像アルバム”の2作目となる『踊救急箱(オドキュウキュウバコ)』をリリースされるということで、みなさんにお話をうかがいました。――まずおひとりずつ、ダンスを始めたきっかけとともに自己紹介からお願いします。OguriOguriです。小学校の頃、安室奈美恵さんやSPEED、DA PUMPといった歌って踊るアーティストの人気が高く、僕も好きになって振り付けのまねをしていました。ただ、そこからダンスに踏み出すには、身近にダンスをやっている人もいない時代だったこともあり、そのままになっていたんです。高校1年生の時に、小学校のときにはなかったインターネットが出てきて、そこでダンスを習いたくて検索してみたら、近くにスタジオがあることがわかり、行ったらどハマり。ダンスには、出会うべくして出会いました。影響を受けたダンサーはいっぱいいますが、しいて言うならs**t kingz結成のきっかけにもなったショーン・エバリストというアメリカのダンサーのダンスは当時、ものすごく新鮮で「こういうダンスしたい」という目標でしたね。shoji僕は大学からダンスを始めて、誰かに憧れるというよりは、踊れることそのものに憧れていました。さまざまなクラブなどにダンサーを見に行ったり、少しずつネットでいろいろなダンサーを検索したり、発見するとワクワクして。当初はとにかく僕も「踊れるようになりたいな」という気持ちだけで、ダンスを始めました。shoji/s**t kingzのリーダー。類まれなる発想力と実行力はダンス界だけでなく、多くの業界関係者に影響大。俳優「持田将史」として2020年にTBS日曜劇場『半沢直樹』、NHK連続テレビ小説『エール』に出演。――なぜそんなに踊れるようになりたいと思われたのでしょうか。shojiそもそも音楽が好きなんですが、当時はまわりもそんなにダンスをやってきたことがない世代で、みんなで手探りで練習すること自体が、すごく楽しかったんですよね。お互いに刺激しあって、練習して、みんなで頑張ってできるようになろうという環境そのものがすごくワクワクしたんです。NOPPOダンスも、入りやすいヒップホップやジャズでもなく、レゲエから始めたんでしょう?振り切り方がすごい(笑)。shojiそうだね(笑)。当時少しずつレゲエがクラブでもかかり始めていて、レゲエだけのイベントも開かれるようになって、その盛り上がり始める流れに入って開拓している感じも楽しかったというか。日本の中でまだ完成しきっていない世界に入っていく感じがあったかもしれないね。kazuki僕は兄もダンサーなんですが、兄が小学生の頃にダンスをやりたいと言い出したことが、ダンスをするようになったきっかけです。地元が神奈川県にある湘南の田舎町で、近くにダンススタジオがなく、両親が隣町ぐらいまで踊れる人を探して、公民館でダンスのクラスのようなものを兄のために開いたんですよね。みんな踊れないんですが、最低5人はいないとクラスを開けないので、親と兄と兄の友達といった具合に人を集めて、身内だけでレッスンしているのを見ていました。僕も踊りたかったんですが、年齢制限があったので入れなくて。その間、ダンスしたい気持ちがどんどん大きくなって、その後参加できるようになってからは、兄のまねをしてダンスを始めました。みんなで踊ることが楽しくて、毎週レッスンの日は楽しかったです。kazuki/幼少の時期から才能を発揮、ジャンルの垣根を超えたダンススタイルに定評あり。群を抜く振付力・演出力でK-POPアーティストや木村拓哉、Nissyなどの大規模ライブの演出を数々担当。――お兄さん以外にkazukiさんが影響を受けたダンサーの方はいるのでしょうか。kazuki小中学生の頃はまだYouTubeもなかった時代なので、テレビで芸能人が踊っている姿ぐらいしか見る機会はなくて、東京のダンス状況も知りませんでしたね。ただ、ダンスをするようになってNOPPOと出会った頃ぐらいからは、ダンサーっていっぱいいるんだなとわかったときがあって。僕は湘南の中でも田舎町に住んでいるというお話をしましたが、NOPPOは湘南の中でも都会のほうに住んでいて(笑)。その都会のダンススタジオ主催のコンテストに僕は仲間と出て、NOPPOはそのスタジオのレッスン生としてコンテストにも出ていて、いろんな世界があるんだなと子どもながらに思って、それからはNOPPOと同じスタジオに通うようになりました。NOPPO僕は妹が先に家の近くのダンススクールでダンスを始めて、僕もやってみようかなと、小学校からダンスを始めました。当時はスタジオというものがなく、公民館を借りてレッスンをしていたんですが、習うというよりも遊ぶ感覚でしたね。ダンス以外の時間も友達と一緒にいると楽しくて、ずっと続けていました。その公民館で教えてくれていたダンスの先生はパワフルかつ社交的で、どんどんそのスクールは大きくなっていって、先ほどお話していたようにあとからkazukiが入ってきたり、いろいろなジャンルの先生に出会えたり、ダンスの大会でアメリカへ行ったりとさまざまな経験をさせてもらいました。その先生はいまもダンスをやっていて、湘南では有名なダンススタジオの設立者になって、BE:FIRSTのSOTAもそのダンススタジオ出身です。その設立者の先生のパワーのおかげで、僕も何も考えることなくダンスに夢中になれましたね。NOPPO/恵まれた長身、静と動を兼ね備えた緩急のあるダンススタイルで国内外のファンも多い。俳優「増田昇太」として、Eテレ『天才てれびくん Hello,』に得意のパントマイムで敵役として出演。――みなさんそれぞれの志のもと、kazukiさんがショーン・エバリストのような作品を作るユニットをやろうと2007年に「s**t kingz」を結成されて、今年結成15周年を迎えられました。この15年でとくに印象に残っている出来事はありますか。shojiなんだろうな、いっぱいあるよね?kazukiそうだね、難しいね。Oguriやっぱり海外での活動は、一番印象的ですね。まさか自分たちが海外でも活動するようになるとは結成当初は思っていなかったんですが、アメリカや憧れていたダンススタジオでワークショップをしたり、しかも憧れていた先生がそれを受けに来たり。シッキンのみんなで見ていたYouTube動画のダンスレッスンを受けに行ったら、そこでショーに誘われて一緒にショーに出演したこともあって、これまで信じられないことばかりの海外活動でした。shoji本当、海外は行ってみないとわからないことだらけだったね。Oguri/ロック、ジャズ、バレエ、タップなど幅広いジャンルをカバー。スキルだけでなく、見るものを惹きつけるグルーヴが魅力のダンサー。表現力を活かした演劇の舞台でも俳優「小栗基裕」として活躍中。Oguriあとは10年前に自分たちの舞台を初めて公演したことが、すごくシッキンとしての在り方を大きく変えた、印象に残った出来事です。ダンサーがダンスイベントにただ出演するだけではなく、自分たちで公演を企画して、舞台で自分たちだけの作品をやるということが、すごく大きな活動となりました。――では、15周年を迎えた率直なお気持ちは?shoji実は15年経ったという感覚はまったくないんです。気づいたら15年経っていて、いろいろなことを毎日やっていると、たとえば最初の5周年なんていっさい気づいていなくて(笑)。かろうじて10周年は写真を撮ってイベントもやったんですが、そのぐらいの感じです。ただ、節目があると、あらためて自分たちの活動を振り返ることができるのはうれしいこと。今年は15周年の終わりに武道館公演も決まって、きっと思い出に残るものになって、あとでこの公演があったからこそとまた思える日が来るんだろうなと思うと、いまからもう楽しみです。アニバーサリーだからさらに応援したいと思ってくださる方もいらっしゃるので、そういう意味でもすごく15周年はうれしいですね。ただ、メンバーで「もう15年やってるよね」という話をすることは一度もないです(笑)。NOPPOそう、今度の休みはいつかな? ぐらいしか話していないかも(笑)。ライブがもっと華やかになるための最新作――2023年9月8日にリリースされる『踊救急箱』を作ろうと思った理由はなんでしょうか。kazuki昨年は舞台をやっていたんですが、舞台で披露するための新曲をたくさん用意して挑んでいて。その都度、ライブではやりたいパフォーマンスが変わってくるので、ライブがもっと華やかになるように多彩なパフォーマスができる曲たちを作ろうという話から“見るダンス映像アルバム”の2作目を作ろうということになりました。shojiライブに向けての作品ですね。――収録曲の「No End feat.三浦大知」は、10月に開催されるs**t kingz 日本武道館単独ライブ「THE s**t」のテーマ曲で、3年ぶりの三浦大知さんとのコラボ曲ですね。Oguri大知とはずっと一緒に曲を作りたいと思っていたんです。大知とシッキンの付き合いは10年以上で、まわりの方は「盟友」と言ってくださるんですが、一緒に走り抜けてきて、年齢も近くて。今回、シッキンにとって特別なタイミングでコラボできたのは、僕たちにとっても非常に大きなことです。「これからまだまだ行くぞ!」というようにさらに先を見た攻めた楽曲ができて、それもシッキンや三浦大知らしい。どこでも満足できない、「もっと」と刺激を求める姿勢がそのまま曲に表れているので、すごく好きな曲。毎回、パフォーマンスをするときも気合が入ります。――映像では、闘志が燃えているようなマグマの間から、シッキンのみなさんが降臨するカッコいい作品ですね。Oguriこれまでの世界をぶち壊して、さらに新しい世界を作ってやる、という壊す力と生み出す力が共存した世界を表現しています。少し退廃的ながらエネルギーにあふれている熱量をダンスに、映像に落とし込みました。――アルバムに収録された新曲は、メンバー4人それぞれがプロデュースされている楽曲です。まずOguriさんがプロデュースされた「Bright feat.渡辺大知」は、バラードで、おひとりずつ衣装も設定も違って踊るというよりもお芝居されているような印象の新鮮な映像ですね。Oguriそうなんです。いままでやっていないような楽曲を映像にしたいと思って作りました。小さい頃からバンドサウンドやフォーキーなサウンドにグッとくることがあって、たとえばウルフルズのような世界観も好きで、ボーカルは強いよりはいい意味で弱さや情けなさや愛らしさがあるボーカルがいいなと思ったときに、渡辺大知さんがすごくいいなと。以前、渡辺さんが出演された舞台を拝見したとき、歌声に聴き惚れて、自分の楽曲を作る機会があれば歌ってほしいと声をかけさせていただきました。負けをテーマにしている楽曲なんですが、負けている人はすごく魅力的。負けたことを全面で受け止められる人がすごくかっこいいから、そういうキャラクターのある映像にしたいと考えて、曲や映像のテーマを渡辺さんとたくさん話し合って、完成しました。――kazukさんがプロデュースされた「KID feat. LEO(ALI)」はどのようなことを意識して作りましたか。kazukiこの曲は「ライブで一番輝く曲にしたい」と思って作りました。そもそもライブで映えるためには、どうしても僕らを照明で照らさなくてはいけないですよね。暗がりの中で歌っていても響くけれど、ダンスは視覚的なものなので、暗がりの中で踊っても見えなかったら意味がないシーンが多いから、どうしても照明のパターンが似たり寄ったりになることが腑に落ちない部分も。そのバリエーションの少なさを払拭するためにも、そしてお客さんとダンス以外でシンプルに盛り上がれる楽しい曲を作りたいと“タオルをまわす楽曲”として、作っていって。LEOさんとは面識がなかったんですが、魂で歌っているような歌声やパフォーマンスがかっこいいとSNSで知っていて、今回オファーをするとすぐOKの返事をいただきました。1度目に仕上げてくれた楽曲があったのですが、説明が足りなくてもう1度となって、僕の抽象的な説明にもすごく理解をしてくれて、この楽曲ができました。それからさらにブラッシュアップして、最終的にはイメージしていた通りの楽曲になっています。大事なサビのパフォーマンスでは、いっさい踊らずにタオルをまわしているだけで、それ以外のパートもタオルを使ってうまくダンスできないかと思って作ったので、ライブで披露することが楽しみですね。――shojiさんがプロデュースされた「Get on the floor feat.MaL, ACHARU & Dread MC」はどのような点を意識して作られましたか。shoji今回、ライブを見据えて作ったアルバムでありながら、一番ライブを見据えていない楽曲を作ったのが僕なんですけど(笑)。昔、クラブでシッキンが踊るときは、出番が5分といった短い時間だったので、その5分で体力を使い切るような作品をずっと踊っていた時期がありました。でも、最近そこまで激しい曲はなかったかもとふと思い、あらためて「5分で体力を使い切るような踊りを作ろう」と思って作ったのが「Get on the floor」なので、みんながライブで踊りたくないと言っています(笑)。Oguri・kazuki・noppo笑。shoji約2時間あるライブのどこにこの曲を入れれば、みんなが最後までステージに立っていられるんだろうと心配になるぐらい、激しい曲ができました。もともとアフリカの音楽が好きなので、大好きなリズムに乗って、こうして体力を使い切る曲ができて、僕は大満足です(笑)。――ではライブでどこにこの曲が入るのか楽しみにしています(笑)。shojiはい、最後まで全員が立っていられたら奇跡だと思って、みなさん見届けていただけたらうれしいです。――NOPPOさんがプロデュースされた「Live like you’re dancing feat.ZIN」はいかがでしょうか。NOPPOこれもライブを見据えて作った楽曲で、この曲を聴いてきてくださるみなさんもカラダが揺れてしまうような楽曲にしました。当初、実はZINくんともうひとりボーカルを依頼する方を悩んでいて、最終的にOguriにも相談して「ZINくんのほうが低音とファルセットの高音の感じがすごく色気があって、高低差も素敵でいいのでは」と言ってくれたことが決め手になりました。ZINくんにお願いさせていただくと、こころよく受けていただいて。ZINくんはシッキンのことも知ってくれていて、この曲のミーティングをしたその3時間後には、もう歌入りの曲を仮ですぐ出してくれました。――はやいですね!NOPPOそう(笑)、そのスピード感もかっこよくて、ほぼ仮と変わらないぐらいの楽曲が完成しました。ZINくんは天才肌で、思いを音楽に作り上げる精度の高さを感じています。映像は、ソロで全部プロデュースできる曲であれば、普段は僕らができないようなチャレンジをひとつ入れたくて、鏡を使うような手のかかるものを入れてみたり。もともと物を使いながら踊るのも好きだったので、パントマイムみたいなものも入れてみたりと、チャレンジした楽曲でもあります。ダンスの新しい楽しさを発見し続けたい――9月8日からは、全国7都市をまわる『s**t kingz Dance Live Tour 2023「踊ピポ」」ツアーを行い、10月25日には『s**t kingz Dance Live in 日本武道館「THE s**t」』公演が開催されます。Oguri「踊ピポ」は“とにかく楽しい”を掲げてやり通したいです。日本武道館公演では、15年間僕らが積み上げたものを一度、全部吐き出す場所。未来はいろいろなことが待ち受けているけれど、次に進むためにもこの武道館という特別な場所で、s**t kingzと僕らを応援してくれているみんなと全部を出し切って、次に進めたらいいなと思っています。shoji最近s**t kingzを知ってくださった方も多いなか、まだ僕らのライブへ来たことがない方もたくさんいらっしゃるんですよ。この間『音楽の日』というイベントのテレビ出演をさせていただいたことをきっかけに、s**t kingzを知って「踊ピポ」のライブチケットを買ったという方とかもいらっしゃるようで、すごくうれしくて。そういう初めてライブに来る方々にとっても最高の入り口になる、ダンスのいろんな楽しみ方が味わえる場所が「踊ピポ」なので、気楽に遊びに来てほしいですね。日本武道館は“祭り”。最高の“打ち上げ花火”をぶちかましていきたいです!kazuki「踊ピポ」は久しぶりの生バンドを引き連れての全国ツアーで、アルバム『踊救急箱』が出るタイミングなので、この曲たちを中心にいろいろな演出を広げていきたいなと。そして多くの方が知っているような曲はやるつもりですし、期待を裏切らない内容なので、楽しみに来てほしいですね。武道館公演は……(しばらく悩んでから)打ち上げ花火です(笑)!Oguri・shoji・noppo笑。NOPPO「踊ピポ」は3人と同じ気持ちですし(笑)、僕らのダンスをみんなに知ってもらえるツアーになりますし、みんなでカラダを動かして踊って楽しむライブになります。武道館は……打ち上げ花火(笑)!――では最後に、リーダーのshojiさんから「s**t kingz」の今後の抱負を教えてください。shojiきっと今度は20周年を迎えたときには、まったく違うことをしていたら楽しいだろうなと思っていて。もちろんダンスを軸に活動をすることは変わりませんが、いままでも舞台をやったり、10周年で初めて生バンドを引き連れてビルボードでライブをやったり、15周年は日本武道館の単独公演だったり。節目ごとにいろいろな挑戦をしてきましたが、次に20周年となったときには「s**t kingzはこんなこともやってるんだな」と感じてもらえるように、常に形を変えながら、ダンスの新しい楽しさを発見し続けていけるグループでいたいと思っています。取材後記日本のダンス界を牽引してきた、世界が注目するダンスパフォーマンスグループのs**t kingzのみなさん。撮影する際、少し動きのある写真も撮りたいんですと相談すると、「いいですよ!」と快く引き受けてくださり、いろいろなポーズをとってくださったカットも。笑顔でインタビューに応えてくださるときは穏やかに、ひとたびポーズをとればビシッとカッコよくキメてくださる瞬発力と大人の魅力に脱帽です。そんなs**t kingzのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・園山友基 取材、文・かわむらあみりs**t kingzPROFILEshoji、kazuki、NOPPO、Oguriの4人からなる、世界が注目するダンスパフォーマンスグループ、s**t kingz。オリジナルの舞台公演は毎回大好評で、2018年秋の第4作目となる「The Library」では、全国7都市、全30公演を実施。2020年6月には初のオンラインライブを成功させ、世界12の国と地域からの視聴で話題となる。2021年1月には、ダンサー発としては異例の全曲オリジナル楽曲で作り上げる「見るダンス映像アルバム」となる『FLYING FIRST PENGUIN』(Blu-ray)を発売、歌唱しないダンスアーティストとしてテレビ朝日「MUSIC STATION」に出演した。2023年9月8日に“見るダンス映像アルバム”の2作目となる『踊救急箱』をリリース。9月8日から全国7都市をまわる『s**t kingz Dance Live Tour 2023「踊ピポ」」ツアー、10月25日は『s**t kingz Dance Live in 日本武道館「THE s**t」』公演を開催。InformationNew Release『踊救急箱』(収録曲)1.「えがお! feat.PES」2.「TRASH TALK feat.Novel Core」3.「衝動DO feat.在日ファンク」4.「Get on the floor feat. MaL,ACHARU & DREAD MC」shojiプロデュース5.「KID feat.LEO(ALI)」kazukiプロデュース6.「Bright feat.渡辺大知」Oguriプロデュース7.「Live like you’re dancing feat.ZIN」NOPPOプロデュース8.「心躍らせて feat.上野大樹」9.「No End feat.三浦大知」2023年9月8日発売(通常盤)GTCG-0787(Blu-ray)¥6,050(税込)発売・販売元:アミューズ【内容】Blu-ray収録曲(本編9曲+特典映像)、歌詞カード【特典映像】120分を超える豪華内容を収録1/1.5年分のシッキン密着映像2/ディレクターズカット版ダンス映像(完全数量限定盤)GTCG-0786(Blu-ray)¥16,500(税込)発売・販売元:アミューズ*豪華BOX仕様。【内容】1.Blu-ray(本編9曲+特典映像)※通常盤と同じ2.歌詞カード3.フォトブック(36P)4.オリジナルカセットプレイヤー5.カセットテープ(A面:踊救急箱メガリミックス/B面:シッキンベストメガリミックス)6.オリジナルアイマスク7.ポストカード(5枚)8.オリジナルカレンダー(2024年1月〜12月)9.オリジナルBOX【特典映像】120分を超える豪華内容を収録1/1.5年分のシッキン密着映像2/ディレクターズカット版ダンス映像写真・園山友基 取材、文・かわむらあみり
2023年09月02日「映画、芸術、メディアを通して女性を勇気づける」をスローガンに掲げる非営利映画製作会社「We Do It Together(WDIT)」が企画制作したアンソロジー映画『私たちの声』。多様化が叫ばれながらも、今もジェンダーギャップに苦しみ、社会の中で孤立してしまいがちな女性たちを支え、応援するストーリーが、世界各国の女性監督、女性俳優たちによって7つの短編映画として集結した。日本からは「国際映画祭で評価されている女性監督」「主演は日本で5本の指に入る女優」として、呉美保監督と杏の二人に白羽の矢が。日本版ストーリー『私の一週間』では、2人の子供を抱え、育児に家事に、お弁当屋の経営にと超多忙なシングルマザーの一週間が淡々と描かれている。そこにこそ、日本の女性たちが抱える大きな問題があり、なかなか社会に届かない「声」があると考え、リアリティ溢れるごく普通の日常を通して丁寧に現代をあぶり出した呉監督と主演の杏さん。日本代表として本作を世界に届けた二人に、本作の魅力について聞いた。淡々と描かれているからこそドラマチック――監督、今回「私たちの声」に参加されようと思った理由を教えてください。呉監督:最初にお話をいただいた当時、下の子が0歳だったんです。そんなときに映画なんて作れるのかなと思いました。でも、ジェンダーギャップというテーマを聞いた時に、「今、映画なんて撮れるのか」と思っていること自体が、まさにジェンダーギャップなんだと気づいて。上の子は5歳(現在8歳)で、つまり5年間も長編映画を撮っていなかったんです。今頑張って作らなくて、私はいつ頑張るんだと思いましたね。――杏さんへ。一週間の日々が繰り返される中で、頑張りつつも、日を追うごとに徐々に疲弊して行く母親の様子が、強く心に訴えてきました。杏:あれは、子を育てる者が毎日行っている作業であり、どれだけ疲れていてもどれだけ調子が悪くても、仕事が忙しくても必ずやらなければいけない最低限の行為。もっと手厚くやっている方もいっぱいいると思います。そんな様子を淡々と作業として映像で積み上げていくと、現実を描けるのかなと思いました。――確かに力強いリアリティがありました。杏さん演じるシングルマザーと子供たちの日々が積み上げられていくなかで、助けがない親たちが直面している苦労、言葉にならない戦いのようなものが凄く感じられました。杏:今回、問題提起とか、「大変なんだよね」「どうにかしてよ」とか、そういうことは強調しないようにしようと、最初に監督と話をしました。それを言ってもねっていうところもあるし、淡々と描かれているからこそ私はこの作品をドラマチックに感じました。ですから、この物語の受け取り方はきっと見た人それぞれ、引っ掛かるところが違うのではないかとも思います。そういう余白がある作品。短編の中で1週間を描ききったということも本当に素晴らしいと感じます。――監督も、杏さんも、母親ですが、主人公にはどんな言葉をかけてあげたいですか。杏:お疲れ、ですね。頑張れは言えないですし、休んでと言ってもしょうがない。休むのも難しいですしね。呉監督:本当にそう、お疲れ、ですね。ほんのささやかな言葉をもらうだけでいい。子供に「ママいつもありがとうね」とたまに言われるんです。別にそんなに深く考えて言っていないと思いますが、それだけでも報われる感じありますね」コロナ禍を経て再び他者を認め合う時代へ――このアンソロジー映画では、ジェンダーギャップをテーマにしていますが、全7作品とも共通して、理解者とか手を差し伸べる存在の重要性も描いていますね。呉監督:いろいろな国で、女性たちが今置かれている状況、抱えている問題を知ることができるので、すごく大事な、そして必要な映画だと感じました。それこそジェンダー問題だけじゃない。多様性という意味で、もっともっと世の中が開けていくといいなと思っています。新型コロナウィルスの蔓延をテーマにした作品もありましたが、世界各国がコロナで閉鎖的になったこともありました。そこでもう一度、自分を見つめ直せたからこそ、みんなが再び他者を認め合おうとしている。この映画からはそれを強く感じました。杏:各作品それぞれ、女性キャラクターをはじめ、登場人物の多くがどこかしら閉塞感を抱えています。そこに風穴が開いて、差し込んできた光が心地いいなとか、ちょっと救われるという展開が、どの国の作品にも含まれていますよね。それぞれの国には、異なる事情や違った背景があるとは思う。それでも、同じ光のようなものを感じられた気がしました。――「WDIT」の主旨についてはどう思われますか?杏:寄り添うことの大切さや難しさが、今、注目されていますよね。 核家族化していたり、ネットワークの発達によりコミュニケーションの形が変わってきたり。SNSのように以前は無かったツールが生まれて、これまでとは違ったコミュニケーションの感覚も生まれている。そんな時代だからこそできることはあると思います。「We Do It Together」のように。変わるチャンス、変えられるチャンスがやってきていると感じます。こういった意義のあるメッセージ性を持つ作品に参加できたのはとても嬉しいです。呉監督:少し前に、#MeToo運動がありましたよね。声を上げる、共鳴することのひとつの代名詞になっています。「WDIT」も、一緒に頑張ろうというひとつの大きな共通認識。声を上げるのはとても勇気がいることで、特に日本人、ましてや著名人が「私もです」と言うのは難しい。周囲に忖度してしまう瞬間もあると思うんです。でも、個人の権利や、日本を始め世界に対してどういう社会になって欲しいかという希望、どういう人が増えてほしいかという未来を考えて、ちゃんと声を上げるのはすごく大事。そこを素直に言える社会にどんどんなって欲しい。本作もそのきっかけになると嬉しいですね。――#MeToo運動は、告発や告白を主としたものでしたが、WDITはここから一緒に新たな世界を創り出そう、前に進んでいこうという次の段階。前向きなムーブメントですね。杏:最近、母親としてインタビューを受けることもあるのですが、そういう立場で話をするときには、「がんばらない」とは声高に言いますね。それこそ家事と育児と仕事なんて、WDIT。つまり、もう皆でやっていかなくては本来成り立たないものだったのだと思います。今は何とかやっていても、それが本来のあるべき姿や自然なことではないかもしれない。もちろん、いろいろな形があるし、人によって理想も価値観も違いますが。だからこそ、「私、大変なの」と言う人に、「もっと大変な人もいるよ」と言うのではなく、その声をちゃんと受け止めることも大切だと思うんです。私は、取材だとつい取り繕う部分もある。でも、家庭について語るときは、肩肘を張りすぎず、「実は…」というところは積極的に、素直に出していきたい。それも、WDITに繋がるのではないかと思っています。――最後にお2人が目指したい共生社会、それを目指すにあたりどうあったらいいなという希望はありますか?呉監督:私は子供を産まなければ気づかなかったことが多く、この映画にもそういったことをいっぱい描きました。子育てについて言えば、保育士さんや学校の先生たちにすごく助けられて来ましたが、同時に、日本の子供教育に関わる人に対する待遇や評価の低さを強く感じています。良い先生なのに辞めていく人も多いんです。もっと高待遇だったら、続けてくれていたかもしれないのに。今、気になることと言えば、そういった社会の未来に大きく関わる教育問題ですね。杏:日本では、他者の介在がとても難しい気がしています。困っている人に他人が手を差し伸べにくいというか。二つの国で暮らしをしていると、違う国の違うやり方を知ることができます。ならば、二つのいいとこ取りをしていきたいと思っています。情報が発達したこの世界では、同じ事柄に対して極論も見えやすくなるし、良いアイディアもあまり良くない考えも見えてきたりする。だからこそ、古今東西の違う文化や昔のいいところ、これから起こる未来のいいところを選べる状況にもなってきている。それなら、いろいろな国の良い部分を取って行くという考えもありだと思うんです。習慣や文化にとらわれすぎず、少しでもみんなが意識して自分の手で自分のやり方を選びやすい社会になったらいいと思います。(text:June Makiguchi/photo:Jumpei Yamada)■関連作品:私たちの声 2023年秋、新宿ピカデリーほか 全国ロードショー©2022 ILBE SpA. All Rights Reserved.
2023年09月01日直近で放送されたドラマにおいて「観ないクールはないのでは?」と驚いてしまうほど、躍進目覚ましい俳優の坂東龍汰。「王様に捧ぐ薬指」では山田涼介の恋敵役を、「リバーサルオーケストラ」では一途なフルート奏者を、「ユニコーンに乗って」ではコミュ障な天才プログラマーを立て続けに好演している。数年前までは顔を指されることもなかったが、近ごろは「あっ、あの作品に出ている…!ですよね?」と声をかけられることも珍しくなくなったと、インタビューで朗らかに話した。多種多様な役を柔軟に渡り歩き、自分のものにする坂東さんの最新出演作は、津軽塗がつむぐ家族の映画『バカ塗りの娘』。通称“バカ塗り”と言われる津軽塗の職人を目指す美也子(堀田真由)と寡黙な職人の父・清史郎(小林薫)の物語において、坂東さんは美也子の兄・ユウを演じた。ユウは父と祖父に期待されながらも家業を継がず、美容師として独り立ち、さらには将来を見据えて花屋の尚人(宮田俊哉)と付き合っている人物。奔放さと繊細さを絶妙に織り交ぜた、坂東さんの演技に魅せられる。青森県弘前市で全編撮影したという本作、坂東さんに撮影中のエピソードや深部まで考え抜かれた役への思い、息抜きの仕方や価値観の変化に至るまでインタビューで聞いた。撮影も心地よく進んだ最新作――最初に『バカ塗りの娘』への出演が決まったときの気持ちから、教えてください。鶴岡(慧子)監督の映画は今まで観ていたので、ご一緒できることが素直にすごく嬉しかったです。物語は、津軽塗というものを軸に伝統工芸をやられている家族のお話。津軽塗がきっかけで家族が離ればなれになってしまい、またその津軽塗を通して元に戻っていくという再生物語なんです。脚本を読みながら画が浮かぶようで、すごく美しい作品になるだろうし、静かで心地のいい空気感の映画になるのかなという印象をまず受けました。――坂東さんは主人公・美也子の兄ユウを演じています。どのような人物という印象で臨んでいかれたんですか?ユウは、お父さんとの関係がだいぶぎくしゃくしていて本音で話し合えない状況にあるけど、美也子のことはすごく気にかけていて、いい関係でいられている…そんな家族との関係性だと思っていました。丁寧に演じていけたら、と意識していました。――ユウは美也子、父、恋人の尚人と3人に見せる顔がそれぞれ少し違いましたよね。その表情がリアルさを帯びていました。脚本を読んだときに、映画に映っていないときの時間…どういうことがあって、みんなそれぞれ何を考えていたのかが、すごく大事な作品だと思っていたんです。映っていないときに人間はいろいろなところでいろいろなことがあって、悩んで、葛藤したあげく、やっと話せる瞬間だけを映画(映るところ)は切り取っていたりするものかなと。相手によって見せる顔が違うのは、僕も普段生活していて同じだなと思うんですよね。マネージャーさんと話すとき、友達と話すとき、親と話すときは違うので。本質は一貫しているけど、そこには別の自分がいるというか。その本質さえちゃんと捉えていれば、ユウもいろいろな表現の仕方があるのかなと思っていました。――その4人が一堂に会す、ユウが尚人を連れて父と美也子に挨拶に行くシーンは印象的でしたね。美也子が「津軽塗をやる」と決意するきっかけにもなるシーンなんですよね。印象的にしたいなと思っていたので、すごく大事に演じました。現場では、いつもみんなすごく話すんですけど、あのシーンに向けてのときだけは口数が自然と減っていました。待ち時間も映画そのままの空気がずっと流れているような感じで、心地よかったです。共演者、その土地との空気感を大切に――坂東さんはユウと尚人の状況について、どう感じていましたか?宮田さんとの空気感も絶妙でしたが、ふたりでお話もされたんでしょうか?特に話し合うことはしませんでした。弘前で撮っているという場所の力と、監督にゆだねている部分があり、そこにすごく信頼を置いていたんです。純粋に「尚人と一緒に生きていきたい」気持ちを大事に、自然体で演じられたらとやっていました。――劇中ではぎくしゃくした親子関係でしたが、小林さんと共演していかがでしたか?僕、薫さんのことが大好きなんです!薫さんは現場で本当にムードメーカーでいてくださって。お芝居をしているとき以外、ずっとしゃべっているんです(笑)。役柄とのギャップがすごくあって、もうギャップ萌えでした。現場ではお芝居の話はせずに、「昨日何を食べたよ」、「あのお酒がおいしい」とか本当に他愛もない話をしていました。――そうした会話や現場での雰囲気は、演じる上で大きく影響するものなんですよね。今回の作品に必要なコミュニケーションだったと、僕は思いました。薫さんと「役者とは」とか「こう演じると、こうなって」という話をしなかったのも、作品と地続きな感じがすごくしていて。現場の空気を薫さんと一緒に吸えているだけでも、本当に学びをもらうばかりなので、お芝居しているときにどれだけこの人のことを感じられるか、というのが今回の僕の勝負でした。――空気を感じてお芝居をするということ、つまり、その土地で撮影することも坂東さんにとって重要な意味を持つし、演技にも響いてきますか?はい。地方で撮影するとき、その土地で撮るということは、そこの街になじんだり、そこの街のものを食べたりすることに意味があるのかな、と思うタイプなんです。この作品に限らず、地方での撮影のときは率先していろいろな居酒屋に行って、地元の人と話すようにはしています。その土地でどういう風に生きているのかがわかる気がするので。弘前で撮ることの意味は、そこで生まれてくるのかなと思いました。「そのとき周りにないものを見つめたりして、価値観は逆転していたり」――ちなみに、オフにどこかに行ったというエピソードもあります?あります!クランクアップしてから、青森を2日間ぐらい車で旅しました。地元の人に「ここに行ったほうがいいよ」とたくさん教えていただいたので、いろいろ行きました。県立美術館に行って、おいしい弘前の天ぷらとおいしい蕎麦屋さんに行って、山の上にも登りましたし、パーキングでソフトクリームも食べた…(笑)。――満喫されたんですね!出演作品も多い中、自分なりの息の抜き方みたいものは芸能生活で身についてきましたか?だいぶ身についてきました。そして、僕にとっては自然の中にいることがすごく必要だということもわかりました。今思い返すと…自然が足りていないと思うときは、よく代々木公園や明治神宮外苑、井の頭公園という自然がある大きな公園に行って、お昼寝したりしていたな(笑)。思い返すと、それはプチ自然充電でしたね。今は休みがあったらすぐ車で地方に行くような感じです。僕、もともと海外に行ったり旅をしたり、知らない土地の人と話したりすることが大好きだったんです。あと、北海道の大自然の中で育ったので、都会にどこか息苦しさみたいなものを感じて生きているんだろうなって、今も感じるんですよ。今、自分がやりたいことを東京でできているということにはものすごく感謝していますし、本当に恵まれた環境に身を置いていると思っています。東京が嫌いということではまったくなく。――自然を摂取されに行く、と。そう、自然を感じに行っています。でも…僕自身、すごい驚いています。北海道に住んでいたときは、そんなことは全く考えなかったんですよ。ないものねだりじゃないですけど、そのとき周りにないものを見つめたりして、価値観は逆転していたりするんだろうな、と最近感じています。(text:赤山恭子/photo:Jumpei Yamada)■関連作品:バカ塗りの娘 2023年9月1日より全国にて公開※青森県先行あり(C)2023「バカ塗りの娘」製作委員会
2023年08月29日取材・文:瑞姫撮影:稲垣佑季編集:錦織絵梨奈/マイナビウーマン編集部日々生活する上で、健康な身体は何よりの資本。年齢を重ねるにつれて、これまで以上に健康に気を使い、食生活などを意識することが多くなったという方もいるのではないのでしょうか?元サッカー選手・鈴木啓太さんが代表を務めるヘルスケア事業の会社、AuB株式会社の広報を務める上田麻実さんはまさに、健康を第一に考えることをプライベートでも仕事でも大切にしている一人です。元々は臨床検査技師の資格を取得し、新薬開発のための治験に携わるような会社におよそ6年半勤務していたという上田さんですが、さまざまな縁が重なって現在の仕事に行き着きます。THE 理系のような研究職から、未経験だったという広報へのキャリアチェンジには、一体どんな経緯があったのか?そして、全く違うように思える二つの職種に通ずるものとは?詳しく聞いていくと、奇跡のような縁が紡いだストーリーがありました。■点と点がすべて繋がった。「ここしかない!」と思えた今の仕事上田さん、本日はよろしくお願いいたします!まずは簡単にこれまでの経歴を教えてください。大学卒業後、新薬開発のための治験に携わるヘルスケア事業の会社に勤務した後に語学留学を経験し、そこから再び同じ仕事に戻ったものの、現在のAuB株式会社に入社しました。AuB株式会社はアスリートの腸内細菌の研究成果をベースに、一般のお客さまに向けたフードテック事業、サプリメントなどの栄養補助食品の販売を行う会社です。現在は、「どうやったら商品やサービスが世に認知されるか」を意識しながら部門長としてPRに注力し、さらにアスリートの方のサポートも行っています。AuB株式会社を選んだ理由を教えてください。昔からの夢と、ヘルスケア業界で働いていた経験を生かせる場所が、ここにはあるんじゃないかなと思ったところが一番大きいです。私は埼玉県の浦和出身で、小さい頃から両親が熱烈な浦和レッズのサポーターだったんです。土曜日は学校が終わると両親が迎えにきてくれて試合を見にいくというのが日課だったので、日常生活の中で当たり前のように「スポーツ」「サッカー」「浦和レッズ」というキーワードが入っていて……。それで、何となく将来の夢を考え始める高校生ぐらいのタイミングで、最初はスポーツに関わる仕事がしたいなと思ったのですが、そのとき私が調べられた範囲ではトレーナーやドクターというような職種しか見当たらなかったんですね。たしかに、私もパッと思いつくスポーツ関連の職種だとその二つでした。けれど、当時の私はそれにはあんまりピンと来なかったので、次にやりたいことを考えました。医療系のドラマを見るのもすごく好きだったので、じゃあ医療の分野に行こうと思って選択したのが臨床検査技師という資格でした。それで大学も選択しました。そこからどういった経緯でAuB株式会社に?ヘルスケア業界で働いて数年経った頃にはそのスポーツに関わるっていう夢は忘れていたんですけど、ある時うちの代表の鈴木が引退記者会見で「アスリートの腸内細菌を研究するベンチャー企業立ち上げます」と言っていたのを見たんです。それを聞いたときに「今までやりたかったアスリートに関わる仕事と、自分が経験してきたヘルスケアの仕事、両方ができる場所はここしかないんじゃないか!」と思い、代表の鈴木にInstagramでDMを送ったのがきっかけです。点と点が一気に繋がった感じがありますね。でも、すぐに連絡が帰ってきたわけではなかったんです。当時Instagramが流行り始めたばかりの頃だったので、鈴木はDMの見方を知らなくて……(笑)。ただ、その1カ月後ぐらいにたまたま私の前職の会社の社長を通じて、鈴木と会食をする機会がたまたまセッティングされて、そこで「実はこういうメッセージを送ったんです」「帰ったら見てください」とコンタクトを取ることができました。今思い返しても、最初に勇気を出してDMを送っておいて良かったなと思います。■社員一号として入社、未経験だった広報職に就いたきっかけは?これまでの研究職から、広報という職種になぜキャリアチェンジしたのでしょう?実は最初から私がPRをやりたくて入ったわけではないんです。そもそもアスリートのもとに行って便検体を集めなきゃいけない時期だったので、アスリートのところへ行って「便ください」とお願いしたり、研究費を稼ぐために企業さんのもとに行って受託研究を取ってくる、みたいな営業のような仕事をしてみたり……。社員第一号だったので、本当にいろいろな仕事をしました。スタートアップならではですね。そうですね。そうこうしているうちに、徐々にいろいろと専門的なメンバーが入ってくる中で、役割として今のPRの仕事を与えられたっていう形なので、どちらかというと自分で選択したというよりは、自然とこの広報のポジションに就いたっていうところです。長年やられていた研究職から離れることに抵抗はありませんでしたか?どちらかというと、今この会社に求められていることや、この会社で実現したいことの方が気持ち的には強かったので抵抗は無かったですし、今まで頑張ってきたことが生かせていないと思ったことはありません。ヘルスケアには携われていますし、完全に離れているわけではないので。実際働いてみていかがですか?どういう雰囲気の会社でしょうか。一言で言うと健康オタク的な人が集まるところですね。それこそみなさん仕事上で「今日どんなうんちでた?」なんて会話を絶対にしないと思うんですけど、割と日常的に「なんか今日こんなうんちが出たんだけど、それって何でだと思う?」みたいな話をします。ランチタイムにコンビニにいくときも「これ食物繊維量これだけ入ってるよ!」とか、「組み合わせはどれがいい?」「何する?」みたいな、マニアックな話をしょっちゅうする、少し変わった人が多いですね。入ってからより一層健康を意識するようになるんでしょうか。上田さんも元からそうでしたか?今の会社に入ってかなり加速したと思います。さすがに自分の便の状況を人に伝えることはこれまでありませんでした(笑)。でも、みんな健康を意識しているからか、体調を崩して休む人はそんなにいないような気がします。さすがです。健康第一ですよね。あとは、健康に良いとされているものを試すことが趣味のようになってきました。楽しみながら毎日の体調管理ができています。毎日の食事にも気をつけて、職場の人が教えてくれた食べ合わせを意識してみたりするのが楽しいです。■健康は全てのライフステージの基盤健康を意識することが仕事であり、プライベートにもつながっているってすてきです。元々、仕事を仕事として捉えていないというのはありますね。入社した経緯が「プライベートで自分が好きだったアスリートのサポートがしたい」だったこともあるんですけど、入社して8年もいれば、結婚して家族ができたり、子どもを授かったり、自分のライフステージがどんどん変わっていくと、思うことも感じることもどんどん変わります。けれど、健康って赤ちゃんからおじいちゃんおばあちゃんまで誰もが絶対に大切なことじゃないですか。たしかに!どのライフステージにおいても変わらない大事な基盤ですよね。なので、今自分がいるライフステージによって「何かもっとこういうサービスがあったら良いな」とか、「こういうふうに伝えたら、届けたい人に届けられるんじゃないかな」と日々感じることがすごく多いです。普段から仕事とプライベートを分けず、日々の生活の中でも「これ、AuBにとって良いかもしれないな」ということは、会社に戻ってからフィードバックしますし、仕事で得た健康情報があれば家に持ち帰る……みたいな感じです。わりと私の中で、仕事とプライベートの切り分けはないのかなと思います。すてきです。今後こうなりたいというような展望はありますか?現在妊娠中でまた新しいライフステージがやってくるので、その経験もAuBに還元できたら良いなと思っています。2月に子ども向けのブランドを新しく立ち上げたんですが、同じぐらいの世代の親御さんに向けていろいろな情報発信することが増えていく中で、もっと妊娠中の自分や、生まれた直後の赤ちゃんに対するサービスや情報の提供など、やれることがあるんじゃないかなっていうのは思っていて……。でも、やっぱり実際に自分が母になることでしか分からない気持ちもあると思うので、まずは自分で体験したことを会社に持ち帰って、商品やサービスに生かせるように考えたいというのが産休後の目標です!
2023年08月26日【音楽通信】第144回目に登場するのは、俳優としても歌手としても活躍し続け、デビュー10 周年というアニバーサリーイヤーを迎えた、大原櫻子さん!母の誕生日に歌を贈ったことで歌が好きになる【音楽通信】vol.1442013年に映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の全国ヒロインオーディションで5,000人の中から抜擢され、スクリーンデビューと同時に、劇中バンドとしてCDデビューを果たした大原櫻子さん。2014年にはシングル「サンキュー」で、本格的にシンガーとしてデビュー以降、歌手活動とともに役者としても数々のテレビドラマや舞台へ出演。2013年の俳優&歌手デビュー、2014年のソロデビューからそれぞれ10周年となります。そんな大原櫻子さんが、2023年8月30日にミニアルバム『スポットライト』をリリースされるということで、音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。――あらためて、音楽に出会ったきっかけから教えてください。子どもの頃、家族は松田聖子さんを聴いていて私も好きになったり、家族でカラオケに行って初めて私が歌ったのは「青い珊瑚礁」だったり。なかでも、いまもよく覚えているのは、小学生のときに初めて「歌で人は感動してくれるんだ」と実感したときのことです。母の誕生日に、「今日は誕生日プレゼントに歌を歌います」とBoAさんの曲「Every Heart -ミンナノキモチ-」(2002年)を歌ったら、「いいねえ」と母が言ってくれたことがきっかけで、歌を歌うことが好きになりました。――大原さんが芸能の道を志したのは、小学校の頃に観た海外版のミュージカル『アニー』に影響を受けたそうですが、親しみやすい日本の作品ではなく外国のミュージカルに惹かれたのはなぜなのでしょうか。不思議なんですが、小さい頃からアメリカの映画が大好きだったんです。当時、たまたまテレビをつけたら、海外版のミュージカル『アニー』が放送されていて。すぐに録画をして、その後もビデオを何度も観るようになりました。アニーが歌っていたテーマソング「トゥモロー」を歌いたい! と思ってまだ英語がよくわからないなりに、歌詞を聴きながら全部カタカナに直して、歌えるように練習していました。――まだ子どもの頃に、英語の歌を聴いて歌詞をカタカナにして書いて、自分で歌ってみるとは賢いお子さんだったんですね。いえいえ、わからないなりにまとめていただけなんですよ。でもそれ以降、ミュージカルの英語の歌は全部自分なりに訳して歌っていましたね。あとはBoAさんの曲もそのときよく聴かせていただいていたので、韓国の曲も聴いてカタカナに直して、韓国語の歌にも頑張って挑戦していました。――すごいですね。その後、2013年には映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』で俳優とCDの同時デビューをされました。劇中バンド「MUSH&Co.」として、ボーカルを大原櫻子さん、ギターを吉沢亮さん、ドラムを森永悠希さんというメンバーでしたね。そうです。このときのこともすごく覚えていて、まだ人前であまり歌うことがなかったんですが、映画の撮影で野外のステージで歌うシーンがあって。初めて1500人ぐらいのお客さんの前で歌ったんです。しかも、雨もちょっと降っていて、寒くて手がかじかんでいたので、カットがかかる度に吉沢さんと森永さんと一緒に、お湯に手をつけたりしてほぐしていました。――印象深い出来事だったんですね。もともと歌でもデビューするとは聞いていなかったから、より印象深くて(笑)。映画のオーディションに受かって、さらに3人で本当にデビューするとは思っていなかったんです。CDのジャケット撮影をしたときも自分の顔が前面に出たデザインで、吉沢さんと森友さんは私の頭の後ろからちょこっとのぞいているというデザインで驚きました(笑)。発売されたときに、タワーレコードで1日店長をさせていただいたんですが、ショップにCDとして自分の顔が並んでいて…。――「MUSH&Co.」のCDのジャケット写真は、大原さんのお顔のアップなのでインパクトがあったのですね。そして、2014年11月にシングル「サンキュー」で本格的にシンガーとしてデビューされました。俳優と歌手デビューから、10周年となりますね。はい、あっという間の10年でした。ただ、17歳から20歳までは記憶がないぐらい、駆け抜けていたように思います。唯一初めてのレコーディングは全部覚えていますが、初めての映画、初めてのドラマ、初めてのラジオ…と初めての経験がいっぱいで、力の抜き方もわからない。だから、毎日全力でやっていましたね。――最初の3年間は覚えていないぐらい忙しかったということは、4年目ぐらいからオンとオフのメリハリがついてきたんですか?そうですね、映画、歌、ドラマと携わらせていただくなかで、20歳でやっと舞台にも出演させていただくようになって。岸谷五朗さんと寺脇康文さんの演劇ユニット、地球ゴージャスさんの演劇が初舞台となり、公演期間に20歳を迎えたので、この頃からは初めてのことが少なくなって落ち着いてきました。「シンプルな大原櫻子になった感覚」の新作――2023年8月30日に、ミニアルバム『スポットライト』をリリースされます。まず1曲目「寂しいの色」は、7月に先行配信されたピアノから始まるしっとりとしたナンバーですね。「寂しいの色」は、これまであまり歌ったことのないメロディで、ミニアルバムのためにさまざまな曲を聴かせていただいた中でも突出して「この曲を歌ったら新しい自分が見えそうだな」と感じた楽曲です。仮歌を歌った段階で、自分のカラダへの染み込み方がいままでとちょっと違う感覚もありましたし、新しい私を発信できる曲なので、収録しました。――2曲目「Hello My Fave」は、一転してアップテンポなナンバーです。すごく元気な曲ですし、最初に曲を聴いた段階で、私が歌ったらのびやかな曲になるなあと思いました。ライブでみんなと一緒に踊る曲もたくさんあるんですが、コロナ禍を経て、いまどんどん声出しが解禁していて、またみんなで歌う喜びをすごく感じているんです。そこで、またライブで盛り上がるような曲が欲しくて、この曲を選びました。――3曲目「どうして」は、片想いの心情が伝わる楽曲です。これも最初に仮の曲が来たときにほかの候補曲をいろいろと聴くなかで、この曲のサビの「どうしてこんなにも」というフレーズがずっと頭の中でまわっていて、気がついたら口ずさんでいるような楽曲でした。歌詞はその「どうして」というフレーズが頭に残っていたのもあり、片想いの歌詞をもっと広げて作っていって。切なさがありながら、でもメロディラインはネガティブな感じじゃないところも、この曲の好きなところです。――4曲目「JUMP」は、今年6月に配信リリースされたデジタルシングルのポップな曲です。「JUMP」はライブでも解禁をしまして、今回も歌詞を(元チャットモンチーのメンバーで作家の)高橋久美子さんに書いていただいています。10周年となると、これまで楽しいことも苦しいこともさまざまなことがあるなかで、いつもライブに行けばファンのみんなが笑顔をくれて、ファンのみんなが私を照らしてくれる太陽のような存在だと伝えたい気持ちを高橋さんにも伝えて、歌詞を書いていただきました。――5曲目「星の日」は、昔の出来事に思いを馳せる曲ですね。最初に曲を聴いたときに、大切な人との思い出を振り返る曲だと感じて、聴く方にとっても友達や大切な人との思い出をあらめて振り返るような曲になればと。(元ねごとのメンバーでシンガー、作詞家の)蒼山幸子さんに歌詞を書いていただいたんですが、うまく言葉にできないけれど思っていたことをちゃんと歌詞で言ってくださる方。この曲の歌詞だと「あの頃のばかな季節」とあって、それだけで友達とわいわい過ごしていた日々をすごく思い出すように感じています。――6曲目「bitter sweet cinéma」はミニアルバムのリード曲ですね。ミュージックビデオもストーリー性のあるものでした。タイトルにもシネマとありますが、ミュージックビデオでも映画館で撮影するなど、少し映画っぽく撮影しているシーンもあります。私がデビューしたのが、それこそ映画のオーディションで、映画という存在がまず大きくて。この曲を最初に聴いたときに、すごくキラッと明るいメロディに、切なさや悲しさも含まれている歌詞を見て、なんだか人間の人生を描いているなと感じました。私のお仕事も、キラキラして見えるかもしれないけれども、裏では毎日の努力があって、それこそ悲しい日も苦しみもあるという人間くささこそが、人生。まさに映画は、ひとつの物語があって、そういった人間模様を歌でもミュージックビデオでも表現できたんじゃないかなと思います。この曲は、映画の主人公になったような気持ちで歌いました。10年後の私だからこそ、歌える曲になりました。――聴き手にはどのように今作を聴いてほしいでしょうか。今回は、J-POPの最前線で活躍する制作陣が参加してくださっていて、新しい方との曲という部分で、歌の表現もこの1枚ですごく変わった感覚がありました。だからこそ、難しかった部分もあるんですが、出来上がりを1曲ずつ聴いてみると、私らしさが引き出されたと思いました。いままでずっと聴いてくださっている方には、「こんなふうにも表現するんだ!?」という驚きももしかしたら感じられるんじゃないかなと。10年間にやってきたいろいろな技術や考え方があったうえで、いままでもしかすると必要のないことも歌に入ってしまっていたところが、今回は、そういった余計なものが削ぎ落とされて、シンプルな大原櫻子になった感覚ですね。――2023年10月からは、Zeppツアー2023「大原櫻子10(点)灯式」を全国で開催されます。前回のツアーではシングル曲を多く演奏していたのですが、今回はミニアルバムの曲も絶対やりたいですし、新しい楽曲を歌うことになりそうという部分では、お客さんは新鮮だと思います。このミニアルバムが10周年イヤーのスタートになる作品なので、前回とはガラッと構成を変えていきたいですね。10周年以降も感謝を伝えながら楽曲を届けたい――8月3日から、松田元太(Travis Japan)さんとW主演されているドラマ『結婚予定日』(MBSほか毎週木曜深夜0時59分ほか)が放送されていますが、撮影は順調ですか?とても順調に進んでいます。ただ、松田さんとは、息が合わないようにするための息の合わせ方をすごく勉強しています(笑)。というのも、同じ会社に務める関係性の役なのですが、松田さんはエースだけどミステリアスな役どころで、私は恋に不器用なOLという役。なので、同じテンションの関係性ではない役というところがすごく難しくて。監督いわく「会話のリズムが成り立たないほうが正しい」というふたりなので、あえて息が合わないように意識しています。――ドラマでしっかり拝見しますね。撮影や歌手活動などご多忙だと思いますが、おやすみの日はどんなふうにお過ごしなのでしょうか。やすみの日でもだいたい8時か9時ぐらいには起きていますね。朝ご飯を作って、食べて、運動して、お昼ぐらいから「何しようかな?」という感じになります(笑)。それからは友達と会ったり、マッサージなどカラダのメンテナンスに行ったり、映画を観たり。あとはコロナ禍以降、家でできることをしようと料理が好きになったので、何かしらの料理を作っていますね。――最近作った料理はなんでしょうか?タモリさんの生姜焼きです。――あ! 『タモリ倶楽部』(1982年〜2023年放送)の最終回で披露されていた料理ですね?そうです(笑)。作ってみたら、おいしかったですよ。最近だとあとは麻婆カレーを作りましたね。――お料理もされていて、健康管理もしっかりされているんですね。健康オタクです。――最近美容面で気をつけていることは?毎朝、たくさんアボカドを食べています。ビタミンが摂れて、むくみも取れるんですよね。とはいえ、いまはアボカドですが、自分の体調によって食べるものを変えています。体重が増えたときは、エノキ茸をひたすら食べたりして。栄養素を調べることが好きで、エノキ茸の場合だとエノキタケリノール酸というものがあって、脂肪を燃焼するといわれていることなどを調べて、食べていますね。でも…忙しくなると、なんにもできないです(笑)。あとは運動していますね。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負を教えてください。10周年イヤーということで、“大原櫻子の物語”をファンの人と一緒に作っていきたいです。みなさんに楽曲を届けながら、ライブも一緒に作っていきたいなと。そして10周年にとどまらず、その先もみなさんに感謝を伝えながら、寂しさに寄り添えたり人生を楽しめたりするようなイベントや楽曲を届けていきたいですね。取材後記歌手活動に、俳優活動に、ジャンルレスに大活躍されている、大原櫻子さん。今年は10周年というアニバーサリーイヤーに突入されたということで、今後さらに歌でもドラマでも舞台でも、さまざまな姿を披露してくれるに違いありません。そんな大原さんのミニアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみり ライブ写真・タマイシンゴ大原櫻子PROFILE1996年1月10日、東京都生まれ。日本大学藝術学部映画学科卒業。2013年、映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』全国ヒロインオーディションで5,000 人の中から抜擢され、スクリーン&CD 同時デビューを果たす。2014年、女優として『日本映画批評家大賞 “新人賞”』、歌手として『第56 回輝く!日本レコード大賞” 新人賞”』を受賞。2015年には第93回全国高校サッカー選手権大会応援歌「瞳」で『第66回NHK紅白歌合戦』に出演。以降、歌手活動と並行して、数々のテレビドラマや舞台へ出演中。2023年 第30回読売演劇大賞 杉村春子賞、受賞。8月30日、ミニアルバム『スポットライト』をリリース。InformationNew Release『スポットライト』(収録曲)01.寂しいの色02.Hello My Fave03.どうして04.JUMP05.星の日06.bitter sweet cinema2023年8月30日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)VICL-65871(CD)¥2,420(税込)(初回限定盤A)VIZL-2223(CD+Blu-ray)¥8,250 (税込)【Blu-ray収録内容】・「bitter sweet cinéma」Music Video・「bitter sweet cinéma」メイキング映像・「10( 天) まで届け!!」2023.05.11@EX THEATER ROPPONGI収録曲:明日も / Jet Set Music! / 真夏の太陽 / 無敵のガールフレンド / 泣きたいくらい / 初恋 / 瞳 / STARTLINE / Door / Fanfare / JUMP / Joy&Joy / Ready Go!! / 青い季節 / 踊ろう / 遠くまで(初回限定盤B)VIZL-2224(CD+フォトブック)¥4,620(税込)取材、文・かわむらあみり ライブ写真・タマイシンゴ
2023年08月16日1959年に生まれ、世界で最も有名なファッションドール“バーバラ・ミリセント・ロバーツ”、愛称バービー。デビュー以来、多くの人々を魅了してきたのは、彼女がファッショナブルだったからだけではなく、多くの人々にとってアイコニックな存在だったから。64年にわたり、女性を取り巻く社会環境の変化を体現し、多様性を映し出してきたバービー。さまざまな可能性を秘めた彼女の物語が、誕生65周年を前に実写化された。メガフォンを執ったのは『レディ・バード』『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』などを手がけたグレタ・ガーウィグ。女性の自立を描いた作品で評価が高いガーウィグ監督に、“バービーを撮る”ということについて話を聞いた。バービーの変化を通して「人間のもろさや変わっていく部分を逆に祝福したい」――バービーのイメージを壊さず、その魅力を掘り下げ、現代性を与えるに当たり、最も意識したのはどんなことでしょうか。バービーが64年間存在し続けているということです。そこをどう捉えるかが、ひとつの挑戦でした。1959年に生まれて、バービーには今まで色々なバージョンがありました。そんなバービーが持つ意味というのは、時代によって違います。ブランド自体が、そのときどきの時代や文化に発信したものも変化してきた。時代に先んじているというときもあれば、ちょっと時代に遅れたこともあったと思う。その64年間のいろいろあった歴史にまず踏み込むことで、バービーとは何なのかという答えを自分の中で出さなければいけないと思い、そこから制作を始めました。――バービーに感情が芽生えていく様子はとても感動的でした。バービーの変化を描く上ではどんなことを意識したのでしょうか。バービーは静物、動かないものです。人形ですからね。だからこそ、手の届かない完璧な存在でもある。一方で、私たち人間には体があって衰えていく。ある意味で壊れていくわけです。でも、バービーの映画を撮るにあたっては、人間のその部分をどうにかして祝福する方法はないかと考えました。バービーの経験する目覚め、変化というものを見せることによって、人間のもろさや変わっていく部分を逆に祝福したいと。それはバービーが今まで象徴してきたものと逆ですよね。でも、実写版を撮るにあたっては、そういう表現をしたいと思いました。表現の可能性を感じるために「映画といつも向き合っている」――バービーが体現する女性の目覚めという視点からすると、歴史の中でファッションから女性の自立をサポートした「CHANEL(シャネル)」を衣装として際立たせたことは、とても意味のある演出だと感じました。まさにその通りです。いろいろなデザイナーにインスピレーションを与えてきたバービー。多くのファッションデザイナーと話をしてみると、子供の頃、バービーのために作った服が人生で最初のデザインだったという話をよく聞きます。主演のマーゴット・ロビーは、もともと「CHANEL」と仕事をしていました。今回のコスチューム・デザイナーであるジャクリーヌ・デュランは、クリスティン・スチュワートが主演の『スペンサー』で、メゾンとコラボレーションをしていたんです。彼女は、「CHANEL」のアーカイブ担当者と仕事をした経験があり、クリスティンのための多くのルックはそのアーカイブを参考にしながらデザインしています。今回、素晴らしいと感じたのは、バービーの歴史と「CHANEL」の歴史という両方を衣装作りによって持ち込めたこと。それはやはり、マーゴットとジャクリーヌ、2人の存在があってこそでした。――本作では、様々な名作が引用されていますね。男性優位社会の価値観を表するものとして、『ゴッド・ファーザー』や『ロッキー』なども登場しています。私はシネフィルなんです。いつも映画を観ています。私にとって1番のインスピレーション源は映画。自分が映画制作において、視野が狭くなってしまったり、表現の可能性をもっと追求したりしたくなったときに映画館に行くんです。そうすると、必ず自分が解放される。自由になることができるんです。映画って何でもありなんだと改めて感じることができる。素晴らしいフィルムメーカーの才能、素晴らしい作品を観ることによって、クリエイティブ・マインドが再びオープンになって開けていくんですよね。映画作りに関して、正しい道なんてあるわけじゃないし、道もひとつじゃない。もちろん作品にはある種の品格と、それから美しさを与えたいし、優れたものにしたいとは思うけれど、そのための道のりは本当に沢山あるんだと、映画を観るとしみじみ思い出せる。常に表現の可能性を感じるためにも、映画といつも向き合っているんです。(牧口じゅん)
2023年08月11日最近の夏はとにかく暑すぎる……。昨年ごろから電気代の高騰が始まり、暑さ対策と節電の両立に悩む人も多い中、注目されているのが電気を使わない冷感グッズ。外出時に何かしらの冷感グッズを持ち歩く人を街でよく見かけるようになりました。F・O・インターナショナルから発売されている「アイスリング」もそのうちのひとつ。首に装着するだけという手軽さで発売するやいなやSNSで話題になり、入手困難になる時期もあったようです。今回はF・O・インターナショナルのネット販売部クリエイティブチームの藤井光さんに「アイスリング」の“バズりの裏側”について伺いました。■「バズり商品」を生み出したのはまさかの子ども服メーカー首元を冷やすことで全身の熱をクールダウンさせてくれる「アイスリング」は、直接肌につけることで身体の熱を吸収し、身体にこもった熱を逃してくれるアイテムです。その特徴は、28℃以下で自然に凍結し、屋外屋内どこでもくり返し使うことができます。そんな「アイスリング」を2021年6月に発売したのが、兵庫・神戸を拠点とし、全国で子ども服やベビー服ブランド「ブリーズ」「アプレ レ クール」「アルジー」など複数展開するF・O・インターナショナルです。なぜ子ども服メーカーから夏には欠かせない冷感グッズが生まれたのか、藤井さんに聞いてみると意外にも企業との出会いがきっかけだったのだそう。「コロナ禍はいろいろなマーケットに変化が生じていたと思うのですが、弊社としてはアパレルだけでなく、ベビーや子供の総合企業を目指しているので、新コンテンツ開発に力を入れていました。そんな中、担当者が展示会で『SUO_クールリング』という名前で売り出していた株式会社WIZさんのブースに立ち寄り、商品の説明を聞いて面白かったので、すぐにやりたいと思ったのがきっかけです」「SUO_クールリング」との出会いから発売までに与えられた時間はわずか4カ月。その間に限定のデザインを発注しながら、まずは新しく不思議な商品の特性を、お客さまに自信を持って伝えられるよう、社内に理解してもらうところからスタートしたのだそうです。「店舗数が200以上あることから、まずは商品を理解してもらうことに時間をかけました。社内の理解を深めることと並行して行っていたのがプロモーション。一年目ということでプロモーション費用をかけられなかったことから、SNS訴求に注力しました。Instagramでアンバサダーを募集するなど、明らかに『この商品を強化している』という事を認知してもらうためにいろんなことをしました」夏本番に向けて販売を予定していたことから、短期間で準備を進めていた藤井さんは、「4カ月もあったっけ?という感じでした。」と話すほど目まぐるしい日々を送っていたのだそうです。■最初の「バズ」は発売後わずか1カ月。たった約4カ月で販売本数は4万本近くに口コミを集めることや商品を知ってもらうために募集をしたInstagramのアンバサダー。その口コミが投稿されるとすぐに拡散されて話題になったのだそうです。「発売を開始し、1カ月後の7月にはバズり始め、本格的な夏シーズンということもあり、完売と再入荷をくり返し、同年9月には約4万本を売り上げるヒット商品となりました。商品が品薄で大変で……。一年目でここまでヒットするとは思いませんでした」購入者の反応を聞いてみると「一番は結露しないことが良い、そして不思議だというお声が多いですね。あとは水より30%比重が低いので肩こりにもならないし、軽くて良いと言ってくれる方もいらっしゃいます」との答えが返ってきました。■二年目はターゲットを拡大、掲げた目標を達成した年に発売して1カ月で話題になり、大ヒット作となった「アイスリング」は、一年目は子ども用とママ用だけの展開でしたが、二年目からはペット用や男性用も増やし、プロモーションやブランド化にも力を入れたのだそうです。「二年目は、一年目の4万本から一気に10倍以上の本数を販売する目標になりました。この時点で類似品が出てくると分かっていたので、いかに『アイスリング』が本家かを伝えるために、まずはブランド化を提案して実行しました。ロゴをキャッチーなものに刷新し、全てのクリエイティブに入れ込んでいくこと、あとはウェブサイトの作り込みや、あえて説明せずとも『この丸いのは一体なに?』という興味から『アイスリング』を知っていただけるような動画を作成しました。さらにバリエーションも増えたことから、プロモーションにも力を入れたのが二年目です」二年目ではテレビなどで取り上げられ、その影響力の強さを実感したと話す藤井さん。どのような影響があったか聞いてみると、驚きの答えが返ってきました。「翌日の売り上げが変動したり、私たちが目標としていたスポーツ系やフェス、キャラクターとのコラボ、ヒット商品に選ばれるなどの事柄が全部達成できたりしたんです。スポーツ系だと、ヴィッセル神戸さんの別注商品を作らせていただいたり、『TREASURE05X(トレジャー)』というフェスで別注商品を売らせていただいたり、一年の最後には日経トレンディのヒット商品で3位に選ばれるなど、テレビの力はやっぱりすごいなって思いました」さまざまなアクションから子どもやママに限らず、多くの人からの認知を獲得した二年目では、今までになかった購入者からの意外な使用方法も届いたのだそうです。「介護士さんからは入浴介助に使えるというお声がありました。暑くて閉めきった場所で介助対象者の体を支えながら洗うため、電気を使用できない環境だからこそ『アイスリング』が役に立っているといったお声や、アラフィフ世代からは更年期の症状のホットフラッシュの時に使えるといったこれまでのターゲット層でない方からレビューをいただけたことがうれしかったです」その他にもお年寄りからは体調管理や温度管理のためにも使用しているという声があったと話してくれた藤井さん。そんな幅広い年代から支持される「アイスリング」ですが、若年層への定着が今後の課題になっているのだそうです。「若者層に話を聞くとただの便利グッズというイメージがまだあるらしく、なかなか若い世代が使ってくれる機会が少ないので、年齢性別問わず、便利グッズから夏のファッションアイテムのひとつになってくれれば良いなと思っています」3年目を迎えた今年は、SNSでのスタイリングキャンペーンやポップアップストアを去年よりも行い、「アイスリング」を冷やすための保冷バッグなどの周辺雑貨を特に強化しているF・O・インターナショナル。ヒットまでの経緯を聞いてみると、驚くべき速さで冷感グッズの新定番となったことが分かりました。課題にしている若年層への施策や今後の展開にも注目です。(取材・文:吉川夏澄、撮影・編集:錦織絵梨奈/マイナビウーマン編集部)back number美容のプロ愛用品が口コミで話題に!「タカミ美肌コットンクロス」が広告ほぼなしでも“バズった”ワケ連載一覧はこちらから
2023年08月07日名探偵ポアロやミス・マープルなどの名キャラクターを生み出してきた“ミステリーの女王”アガサ・クリスティ。そのミステリー小説の中でも、誰もが知るような著名な探偵は登場せず、ウェールズの幼なじみ2人が思いがけずコンビを組み、ある事件の謎を追うことになる痛快なミステリーが、現在スターチャンネルEXにて配信中の海外ドラマ「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」だ。今回の映像化で監督・脚本・製作総指揮を務めたのは、「Dr. HOUSE/ドクター・ハウス」や「ナイト・マネジャー」で知られ、生粋のクリスティファンだという俳優のヒュー・ローリー。偶然から事件に巻き込まれる元海軍の実直な青年、ボビイ役に『ミッドサマー』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』など幅広い役柄をこなすウィル・ポールター、そしてボビイとともに事件を調べる伯爵令嬢、フランキー役に『ボヘミアン・ラプソディ』や「ハリー・パーマー国際諜報局」(8月5日からBSにて再放送)のルーシー・ボイントンを迎え、ときに勇敢で、ときに無謀な(?)探偵コンビを描き出している。この度、好奇心旺盛で行動力抜群、ボビイとともに冒険に飛び込んでいくフランキーを演じたルーシーのインタビューが到着。映画『オリエント殺人事件』に出演したこともあるルーシーが、ヒュー・ローリー監督の脚本について、クリスティ作品の魅力について語っている。Q:あなたにこの作品に参加したいといわせたヒュー・ローリーの脚本の魅力を教えてください。ルーシー:ヒュー・ローリーの名前があれば、それが何であれ良いものであることは間違いないと察しがつきますし、脚本を読んでさらに確信できました。彼に会う前に脚本と原作を読みました。こう言っては良くないかもしれませんが、私は脚本のほうが好きでした。というのも登場人物たちと一緒に長い時間を過ごしましたし、彼ら自身や彼らの関係性、世界をより細かく深いところまで考察したからです。ヒューの原作の解釈は愛情が滲み出る素晴らしいものでした。アガサ・クリスティの魅力の輝きはそのままに、そこにさらにヒューのウィットとアイデアが込められているのです。もう好きにならずにはいられない脚本でした。Q:脚本の第一印象を教えてください。ルーシー:最初に脚本を読んで、次に原作を読みました。第一印象としては、とにかくフランキーに惚れこみました。もちろん演じるわけなのでフランキーの気持ちに寄り添って読みましたが、そこにヒューが描いた生き生きとした躍動感、斬新さ、軽やかさに惚れこんでしまったのです。役者としてフランキーのようなキャラクター、彼女のような人と出会えることは滅多にありません。そんなキャラクターを演じる機会が訪れてとても興奮しました。Q:以前にもアガサ・クリスティの作品にご出演されていますが、再び演じた理由を教えてください。ルーシー:それはアガサ・クリスティの大ファンだからですよ!彼女の作品は紛れもなく魅力的です。文体もウィット溢れるセリフも見事ですし、常に彼女の作品は読者の3歩先を行っているのです。登場人物は知的で十分すぎるほど魅力的です。しかも悪役たちの中には純粋さという幻想があり、知的センスのある狡猾さが物語の中に編み込まれているのです。アガサ・クリスティの作品の登場人物を演じられるチャンスがあるなら絶対にNOとは言いませんし、ましてやヒュー・ローリーが脚色したとなればなおさらです。わざわざ検討してみることなんてありません。Q:レディ・フランシス・ダーウェント、通称“フランキー”について教えてください。ルーシー:ヒューとフランキーについて話し合っている際に、“エネルギッシュ”と“度胸”という二語が頻繁に出てきました。このふたつは私がフランキーの中でもっとも気に入っている部分でもあります。彼女は予測不能で周りにいる人々や自身の人生にも存在感を示す人です。ある種の自信にも満ちていますが、何よりも存在感と強引さ――あらゆる喧騒の中に身を置きたいし、すべてを最前列で体験したい、という強い信念があるのです。ヒューの描き出す彼女のエネルギッシュさ、愛らしさ、人生を楽しむ姿は私にとって最も魅力的でした。Q:フランキーは素晴らしい女性主人公ですが、あなたが彼女を演じてみたいと思った魅力は何でしたか?ルーシー:アガサ・クリスティの描く女性たちは知性があり、ユーモアのセンスも知識もあります。フランキーはバイタリティと瞬発性があり、さらに人生に好奇心と緊張感、ハングリーさと刺激を求めています。そんな女性を演じることは私にとって大きな学びの機会となりました。彼女は決して自分本位ではなく、自分のことをより理解し、当たりやすい直感を信じて良心のままに行動する人です。それが彼女にとっては自分を解放するということなのですが、私自身もそんな彼女を演じることが自分を解放することにつながりました。フランキーは自分の力をよく理解していて、存在感もあり、自分を見失うこともない、まるでお手本のような人だと思います。私たち誰もがもっとフランキーのようになれると良いですね。これからも生き方のお手本として、きっとこの脚本を読み直すと思っています!Q:フランキーの登場シーンについて教えてください。ルーシー:教会でボビイの視点から見たフランキーから彼女の幕が開きます。ふたりにとっては子どもの頃以来の久々の再会です。互いに別々のタイミングで相手に視線を送るのですが、共に成長してきた人が「ああ、あの人がこんなに変わったとは!」とそれぞれに驚く様子はとても愛しくて、素敵な瞬間でした。あの時代の多くの女性は生活に縛られ、思うように生きられないか、想像していたのとは違う人生を歩んでいます。ところがフランキーは少し違っていて、この点においては自由に生きています。アガサ・クリスティがフランキーのことを目の前に立ちはだかる制約を押しのけていくような女性として描写している点はとても素晴らしいと思います。フランキーには反逆心がある。そして気まぐれな部分もあるのですが、ボビイとフランキーのふたりはまるで互いにウィンクを交わすように、それぞれの良さを引き出しあう関係になります。まだどちらも人生を真面目に考え過ぎず、ある意味どこか気楽に楽しんでいる段階なのです。フランキーは相手の良さをうまく引き出す持ち前の明るい性格でボビイをからかうのですが、ふたりのそんな姿はとても素敵でした。Q:ドラマの中で両親役を演じるのは、エマ・トンプソンとジム・ブロードベントでしたが、どんなお気持ちでしたか?ルーシー:エマ・トンプソンとジム・ブロードベントが私の両親です、と言うなんて、まるで現実離れしていますよね!ふたりとの共演はとても楽しいものでしたし、ふたりのエネルギーに触れることもできました。ふたりの演技を通じて、フランキーがどうして今のような女性になったのかを知る多くの答えを得ることもできました。とても素敵な一家です。かなりエキセントリックですが、それは家族の中心に強い愛情がある一家だからです。フランキーと母親が時折、気難しくてぶつかり合うのは、お互いへの愛情と相手を守ろうという強い想いがあるからです。Q:ボビーとフランキーは事件の裏に潜む怪しい空気を感じているのでしょうか?ルーシー:フランキーとボビーはまず謎の人物の死について捜査しようとしたところで、不穏な空気を感じ取ります。それからすぐに、これは本当に危険な捜査になることに気付くのです。アガサ・クリスティ作品には数多くの魅力がありますが、素晴らしいのは彼女が常に読者の3歩先を進んでいて、最初はさりげなく、やがて読者が青ざめるような展開を用意しているところです。驚くような展開に持ち込むためには、具体的なテクニックが必要ですがヒューの脚本をそれを的確に捉えてアドベンチャーとコメディのバランスを見事にとっているのです。おかげで視聴者は気楽に登場人物の人間関係を楽しんで見ていられたと思うと、次の瞬間には急にシリアスで手に汗握るような緊張感を味わうことができるのです。Q:様々なロケーションでの撮影はいかがでしたか?ルーシー:ボビーとフランキーが博覧会を訪ねていくシーンの撮影は、実際にあちこち移動しては撮影をして撮り終えることができました。そして最終日にカーニバルの撮影ができたこともこのドラマの撮影にふさわしい最後だったと思います。乗馬のシーンの撮影では美しいアルコーブや並木道を馬と一緒に走ることができて……とても静かで濃密な時間でした。ストーリーに沿ってとてもエネルギッシュでハイペースな撮影が続く中で緩急のついた非常に美しいシーンになったと思います。Q:「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」の見どころを教えてください。ルーシー:これはラブストーリー、ロードトリップ、犯罪スリラーといった要素が見事なバランスで混ざり合った、見どころが満載のドラマです。ほかにもボビイ、フランキー、ノッカーたちが主に繰り広げるコメディ色のあるアドベンチャーでもあります。さらにストーリーの闇の部分から漂ってくる恐怖や迫りくる危機も体感することができて、非常に洗練されたストーリーが繰り広げられています。このローラーコースターのような目まぐるしい展開が満載のストーリーとキャラクターたちの織り成す人間模様、ユーモアから急転直下のスリルと恐怖をぜひ視聴者の方々にも楽しんで頂きたいです。私たちも大いに楽しんで作った作品ですから、視聴者のみなさんにも楽しんで頂けると嬉しいです。<ストーリー>ウェールズの海外沿いの村に暮らすボビイは、ある日崖から転落した男を発見する。重傷を負った男は最後に「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」という謎めいた遺言をボビイに伝え、息を引き取る。その不可思議な言葉と、男のポケットに入っていた写真を手掛かりに、ボビイは幼なじみの伯爵令嬢フランシス・ダーウェントと共に事件の解決に挑むことに――。「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」<字幕版>はスターチャンネルEXにて全話配信中(全3話)。(シネマカフェ編集部)
2023年08月05日A24が配給を手掛けた『インスペクション ここで生きる』が、8月4日(金)に劇場公開を迎える。ゲイであることで母親に捨てられ、16歳から10年間ホームレス生活を送る青年が唯一の選択肢として海兵隊に志願。しかしそこは差別や暴力の温床で――。俊英エレガンス・ブラットン監督の実体験が基になった本作では、2000年代初めの米国社会の一側面を映し出しつつ、主人公フレンチ(ジェレミー・ポープ)があまりにも過酷な環境に屈せず、偏見を乗り越えていく過程をエモーショナルに描き出す。自身の過去をふり返り「透明だった」と語るブラットン監督は、いかにして這い上がっていったのか。その一端を明かしてくれた。自分の経験を基に映画を製作――改めて、ご自身の経験をベースにした映画を作ろうと考えた契機や理由を教えて下さい。私は16歳から25歳まで10年間ホームレスとして生活し、その後海兵隊に入りましたが、当時は「自分には何の価値もない」と感じていました。多くのホームレスの仲間は若くして亡くなったり刑務所に入ったりしていて、黒人でゲイの彼らがそういった結末を迎えるなら、自分も同じ道をたどるに違いないと思っていたのです。しかし、幸運なことにブートキャンプ(新兵訓練施設)で出会った教官が「君の命には価値がある」と教えてくれました。海兵隊員には両隣にいる仲間を守る義務があって、それは生きる目的になるんだと。教官がくれた信頼は私の意識を大きく変え、その言葉はいつまでも心に残ることとなりました。あの言葉があったから僕はホームレスシェルターを抜け出せて、いまこうして話せています。そしてこれこそが、僕が『インスペクション ここで生きる』を作った理由です。いま、世の中は二極化してきています。右派と左派、保守と自由、男と女、黒人と白人――全てにおいて極端に立場が分かれつつありますよね。でも、そんなことはどうでもいい。大切なのは、我々はいまこそ結束して互いを守らなければいけないということです。海兵隊に入り、僕はバックグラウンドが全く違う人々と友情を築くことができました。それぞれに考え方は異なるけれど、海兵隊員として「世界には目の前の問題より大きな戦いが存在している」と認識しているから、大切なことは必ず議論して、相手の意見に耳を傾けられるのです。もちろん同意に至らないこともありますが、議論をやめることはしません。この映画を観て、どちらか一方の側に付くべきではないと気づいてほしいし、議論の外にいる人も大切にすべきだと気づいてもらえたらと思います。作品完成までの様々な苦労――完成に至るまで――例えば資金繰りやクリエイティビティの保持など、どのような苦労がありましたか?実現に至るまでのプロセスは、全てが大変でした。脚本の初稿を書いたのは、2017年のことです。当時、僕にはA24にジュニア・エグゼクティブとして入った友人がいて、彼に「君のキャリアを一変させるような脚本がある。君はイエスと言えばいいだけだ」とメールを送りました。でも彼の返答は「これはA24向きの映画じゃないからもう一度練り直してほしい」というものでした。そこで脚本を書き直し、ラボ(脚本開発のためのワークショップ)に応募したものの選ばれたのは数か所で、ほとんどはNOを突き付けられました。そこから約5年かけてハリウッドを回り、話を聞いてくれる人全てに売り込みましたが、とにかくNOと言われ続けた日々でした。そんな折、ハリウッドで70人の重役の前でプレゼンする機会を得られたのですが、そのうち12人が興味を示してくれたのです。ようやく風向きが変わった瞬間でしたね。そこで、先ほどのA24の友人に再度連絡を取りました。9と4分の3番線からホグワーツ特急に乗って手を振るハリー・ポッターのGIFと共に「列車が出発するから乗り遅れない方がいいよ」とね。そうしたら彼も映画化に乗ってきてくれて、いまに至ります。――そこまで大変だったとは…。ところが、撮影はわずか19日間しかありませんでした。猛暑のなかミシシッピ州で撮りましたが、毎日気温が40度くらいあって倒れる人も出てきてしまい…。そのうえ、コロナ禍で4か月の中断を強いられました。ようやく撮影が再開できたとき、残された時間は1週間。母親役のガブリエル・ユニオンが登場する重要シーンをその期間で撮り終えなければならなくなったんです。コロナの保険で想定外の出費もありましたし、大変なことばかりでした。こうして日本での公開が叶い、作品が完成してからは順調に進んでいますが、人生何事も楽なことはないなと思います。でも、たとえ壁にぶち当たっても耐え抜けば、必ず大きな喜びが待っているはずです。僕自身がそうでしたから。観終わった後には「自分には価値がある」とわかる――主人公フレンチの「どんな逆境でも他者からの理解を諦めない」意志に胸を打たれる方は多いかと思います。ご自身の経験も踏まえ、なぜ折れずにいられたのでしょう?僕自身においては、自力でつかみ取らないと誰も与えてくれなかったからです。何の保障もないからこそ、信じるしかありませんでした。そして『インスペクション ここで生きる』においては、希望や不安という意味では100%自伝です。むしろ、言いたかったことややりたかったことという心の中の願望においては、実際に僕の身に起きたこと以上にリアルですらあります。フレンチは、自分がゲイだから弱く、それが理由で本物の男として認められていないとずっと信じていて、現状を変えるために海兵隊に入ります。でもブートキャンプを体験し、隊員の誰もが「自分は本物の男になれないかもしれない」という不安を抱いていると気づくのです。そして「自分は独りではない」と知った彼は、“ラディカル・エンパシー(革新的な思いやり)”を用いてある種、戦略的に優しさを見せていきます。移民やリベラル(自由主義)寄りの白人の海兵隊員を選んで、相手の繊細な部分に触れて寄り添おうとするのです。軍服を着ていなければフレンチのことなど相手にしなかった仲間に対して、不可欠な存在になろうと努めること――その体験を通して彼は「自分には実は何の問題もなく、問題なのは自分を変えないと馴染めない社会だ」と考えを深めていきます。こうしたプロセスは、虐げられてきた僕自身の経験が基になっています。誰かに虐げられると「原因は自分にある」と思いがちですが、良い出会いや正しい導きがあれば、「それは違う」と気づけるのです。もしかしたら相手は、自分らしく自由に生きる僕に嫉妬して、虐待することで自信を喪失させようとしているのかもしれません。でもこちらがそこで諦めてしまえば、壁の向こう側を知る機会は永遠に失われてしまいます。だからこそこの映画は、周囲に無視されたり「不十分だ」と言われ続けたりしてきた人たちに観ていただきたいです。観終わったころには、きっと「自分には価値がある」とわかるでしょうから。次回作以降の活動にも期待「全て順調」――次回作『Hellfighter(原題)』はジェイムス・リーズ・ヨーロップ(ジャズの先駆者で、メインストリームに進出した最初のアフリカ系アメリカ人ミュージシャンの一人)を描く伝記ものと伺いましたが、今後の活動について教えて下さい。ジェイムス・リーズ・ヨーロップは黒人として初めて、国外の戦争で米陸軍の将校を務めた人物です。第369歩兵連隊、通称“ハーレム・ヘルファイターズ”を率いていて、1919年フランスにラグタイムの音楽を紹介しました。いわば、フランスとアフリカ系アメリカのカルチャーが恋に落ちるきっかけを作ったわけです。にもかかわらず、彼の存在はこれまで忘れられてきました。だからW・E・B・デュボイスが説いた“二重意識”(アメリカ系アフリカ人は、黒人としての意識と、白人から見た黒人という意識の両方がある)のレンズを通して、彼の人生を描くことにしたのです。映画では、奴隷解放後の第一世代として社会に参加し、道を開拓してきたヨーロップの生涯を追っています。とても実験的な作品で、ベースはドキュメンタリーですがミックスメディアになっていて、当時の状況を体感できるように各時代のアーカイブ映像も多く用いています。観ていただけたら、きっと驚くと思います。ウィントン・マルサリス、コリン・パウエル、ジョン・バティステほか著名人も多く出演してくれて、ヨーロップの物語を伝えるために協力してくれました。あとはまだ発表できないのですが、フィクション映画も2本動き始めています。うまくいけば、そのうち1本は今年秋に撮影を開始できる予定です。公開されたら、日本に行って、みんなの前で作品について語れたらと思っています。また、これも話していいのか分かりませんが…テレビドラマも1本完成したばかりです。才能あるすばらしい製作陣やクリエイターたちが揃っている企画です。全て順調に進んでいて、あとは“上がる”だけですね。マーティン・スコセッシ、スパイク・リー、ペドロ・アルモドバル、黒澤明など、尊敬する監督たちのように輝かしいキャリアを築いていきたいと思っています。その野望を実現するために、いまは必死に頑張っているところです。(SYO)
2023年08月04日人気漫画「今際の国のアリス」の原作者・麻生羽呂が高田康太郎(作画)と組み、2018年に連載開始した「ゾン100 ~ゾンビになるまでにしたい100のこと」が、Netflix映画として実写化された。『シン・ゴジラ』(2016)C班の監督を務めた俊英・石田雄介がメガホンを取った本作は、ゾンビパンデミックで混乱に陥った世界で、逆に活力を取り戻していくブラック企業社員・アキラの冒険を描く物語。ディストピアで底抜けに明るく振る舞うという特徴的なキャラクターを任されたのが、飛ぶ鳥を落とす勢いの人気俳優・赤楚衛二だ。新宿・歌舞伎町や青梅街道にゾンビがあふれかえる世界基準の映像が展開する作品の舞台裏や、大の漫画好きである赤楚さんが語る『ゾン100』のオリジナリティについて、語っていただいた。発想や見方の転換を教えてくれた『ゾン100』――赤楚さんのお好きな漫画は「サンクチュアリ」と「ザ・ワールド・イズ・マイン」だそうですね。なかなかハードな2作かと思いますが、いつ頃出合ったのでしょう?2作品とも20歳過ぎてからです。ただ、ハードな作品は昔から好きでした。元々は少年ジャンプ系の作品を読んでいましたが、小学校6年生のときに「バトル・ロワイアル」の1巻を読んで衝撃を受け、中学時代には漫画喫茶やゲームセンターの漫画コーナーで「ドラゴンヘッド」や「多重人格探偵サイコ」といった大人向けの漫画を読み漁っていました。その中で出合い「本当に面白いし、考えさせられる」と感じたのが「サンクチュアリ」と「ザ・ワールド・イズ・マイン」です。――筋金入りの漫画好きである赤楚さんが考える、『ゾン100 ~ゾンビになるまでにしたい100のこと』の独自性を教えて下さい。ゾンビの世界を描いた作品は悲壮感が漂っていて、哀しさや息苦しさを感じさせるものが多いですよね。映画『ゾンビランド』などはちょっとコメディチックになっていますが、『バイオハザード』や『ウォーキング・デッド』『新感染 ファイナル・エクスプレス』など、哀しくてシリアスな話が多いなか、『ゾン100』を読んだときに「ここまではっちゃけている作品は新鮮で滅茶苦茶面白い」と思いました。元々、弟から「面白いよ」と薦められて読んでいた作品だったので、出られると決まったときは嬉しかったです。ちょうど実写化のお話をいただいたときはコロナ禍で、やりたいことができない鬱屈した状況が続いていて「まさに今の状況が『ゾン100』の世界と似ている」と感じました。本作は「陰鬱になるんじゃなくて、こういう状況でもできること、楽しめることはあるんじゃないか」という発想や見方の転換を教えてくれます。人生において何が大事なのか、豊かさにつながるのかを伝えてくれる作品だと思います。――おっしゃる通り、漫画「ゾン100」は「どう楽しんで生きるか」がテーマになっていて、アキラたちがお遍路さんに挑戦するエピソードなどもじっくり描かれています。ゾンビものの中でも珍しい作品ですよね。そうですね。漫画自体に専門的な説明も多くて、読んでいくと知識が増えるのも面白いです。実写版もハッピーな気持ちになれるエンタメ性が強い作品になると感じていたので、自分自身のアプローチも「全力で楽しむ」を軸に考えていきました。全シチュエーションで思いっきり楽しみ、ブラック企業で死んだ目をして働いているシーンでは、とことんしんどく見えるようにコントラストを付けていきました。つまり、「楽しむ」と「苦しむ」の差を目一杯広げていこうと意識していました。撮影時から「早く完成版が観たい!」――漫画「ゾン100」には具体的な地名も頻出しますし、街中がゾンビであふれかえるシーンなども「実写化できるんだろうか」と思っていたのですが、本編を拝見して驚かされました。新宿の歌舞伎町のシーンはオープンセットで撮影しました。その時点で「すごい」と思いましたが、完成した映像を観たら歌舞伎町のまんまで「どうやって撮ったんだろう」と自分でも感じてしまうくらいびっくりしました。歌舞伎町のドン・キホーテのシーンも、再現度が凄まじかったです。実際に働いている方がポップを書いてくださって、商品も全てドン・キホーテに陳列されているものをご用意いただきました。あとはやはりゾンビです。台本を読んでいるときは動きが想像できなかったのですが、現場で見たときに「気持ち悪い!怖い!」となってしまうほどの完成度でした。石田雄介監督自身がとにかくエネルギッシュでアキラみたいな人ですし、森井輝プロデューサーもそうで、映画好きで情熱的な人ばかりが集まった楽しい現場でした。ライティングや装置一つひとつへのこだわりが強く、目の前のカットをどう撮っていくか丁寧に話し合いもできて、撮影時から「早く完成版が観たい!」と思っていました。――赤楚さんが提案したアイデアなどはございますか?基本的に僕は、自分の中に生まれた違和感を解消するためにアイデアを出すことが多いです。例えばケンチョを助けに行くシーンでは、僕が「シー!(静かに)」と指を立てるシーンがありますが、そうすることで「『ゾン100』のゾンビは目が見えず音に反応する」を改めて説明できるんじゃないかと思ったのと、その前のシーンで僕と柳くんが大声でセリフを喋っているので(そこでゾンビに気づかれないことが)ご都合主義にならないようにしたい、とは話した記憶があります。プライベートで見たい作品は?――インタビューの冒頭で漫画について伺いましたが、赤楚さんは普段漫画をどのような時に読んでいますか?いまは移動時が多いです。小説などは集中しないと読めないので撮影期間中は難しいのですが、漫画はペラペラとページをめくっているうちにどんどん頭に入ってくるからすごいですよね。僕にとっては簡単に現実逃避できるツールであり、しんどくならないようにしてくれるものでもあります。――ご多忙の中で自分自身のペースを保つにも、漫画が効いているのでしょうか。漫画に救われているところは多々ありますが、それだけではどうしようもないところがあって、まさにいま「どうしましょう」という感じです(苦笑)。ちょうどテレビドラマ「こっち向いてよ向井くん」を撮影中なのですが、会話劇でセリフも多いのでここ2週間くらいはセリフ覚えに追われまくっているんです。僕自身、セリフを覚えるのがあまり得意じゃないので前もってしっかり準備していく必要があるのですが、「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」がクランクアップした直後にこちらの撮影が始まったので、なかなか大変で。ただようやく「うわ、ヤバい」と言えるくらいの余裕は持てるようになりました。――連続してドラマ出演が続いていますもんね。Netflixの「悪霊狩猟団:カウンターズ」がお好きと伺いましたが、いまはなかなか映画やドラマを観ている時間もなさそうですね。そうですね。僕はできることなら365日動き続けていたいタイプなのでモチベーション自体はずっと高いのですが、ただただセリフ覚えが苦手なぶん心の底から「ドラえもん」の“アンキパン”が欲しい!と思っています(笑)。ただ、何かしら息抜きの場所は持っていたいとも思うので、ちょっと余裕ができたら観たい作品を探すところから始めたいです。最近の作品だと、公開したばかりの『君たちはどう生きるか』は気になっています!【赤楚衛二】スタイリスト:壽村 太一/ヘアメイク:廣瀬瑠美(text:SYO/photo:You Ishii)■関連作品:【Netflix映画】ブライト 2017年12月22日よりNetflixにて全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】マッドバウンド 哀しき友情 2017年11月17日よりNetflixにて全世界同時配信【Netflixオリジナルドラマ】オルタード・カーボン 2018年2月2日より全世界同時オンラインストリーミング2月2日(金)より全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】レボリューション -米国議会に挑んだ女性たち-
2023年08月03日第一印象最悪で「この人とは絶対にうまくやれない!」と思っていた人が発する言葉に、思いも寄らない新たな気づきを与えられたり、逆にずっと一緒にいてお互いにわかり合えている近い関係の人だからこそ、本当の気持ちをなかなか伝えられなかったりという経験は誰しもあるはず。ディズニー&ピクサーの最新アニメーション『マイ・エレメント』はまさにそんな物語。火・水・土・風のエレメントたちが暮らす世界を舞台に、異なるエレメントの2人が起こすピクサー史上最も“ロマンティックな奇跡”のドラマを描き出す。主人公である火のエレメントの女の子・エンバーの声を演じるのは川口春奈。そして、玉森裕太がひょんなことからエンバーと出会う水のエレメントの青年・ウェイドの声を担当する。正反対の2人が織りなす物語の魅力について、川口さん、玉森さんに語ってもらった。演じた役の魅力は「真っすぐさや正義感」「愛らしいキャラクター」――この物語からおふたりはどんなメッセージを受け取りましたか?川口:「自分はこうでなくてはいけない」ということだったり、「自分らしさ」ってなんだろうか?と考えるきっかけになる作品だと思うし、新しいことやいままで経験したことのない環境に足を踏み入れる時って、誰しも悩んだりすると思うんですけど、そういうのを取っ払って、前に一歩踏み出す勇気をくれる映画だなと思います。自分と全然違う人、自分にはない感覚を持っている人と付き合うことの大切さ、家族愛、恋愛も描かれてますけど、軸となる部分にすごくメッセージ性が詰まっている作品だなと思います。誰にでも当てはまる、共感してもらえるメッセージが詰まった作品です。玉森:川口さんがおっしゃった通りで、自分だけじゃ気づけなかった可能性というのが一番伝えたいメッセージなのかなと思います。自分の中で「こうでなきゃいけない」とか「自分はこうなんだ」と思いがちだけど、誰か違う人と触れ合うことで「こんな可能性も自分にはあるんだ!」と気づかされたり、自分の可能性を広げさせてもらえる、そんな物語だなと思いました。――ご自身が演じた役柄の魅力や共感できる部分、お互いの役柄の印象について教えてください。川口:エンバーは真っ直ぐであるがゆえに熱くなりすぎて後悔してしまうようなところがあって、でもその真っすぐさや正義感が魅力でもあるし、コンプレックスでもあると思います。でも熱くなっちゃう気持ちもわかるし、「自分がいなきゃ」とか「こうしなきゃ」っていう責任感の強さは理解できるなと思いました。――川口さんご自身もコンプレックスをお持ちですか?川口:コミュニケーション能力がすごく低いです(苦笑)。人見知りというか、人づきあいが上手にできないところですかね…。――玉森さんが演じられた水のエレメントであるウェイドについては、どんな印象を持たれましたか?川口:こういう人が近くにいてくれたら最高だなと思います。自分の周りにはあまりいないようなキャラクターだと思うし、彼の突拍子のないコミカルな部分も、ちゃんと人のことを見て意見を言ってくれるところも、面白いところもありつつ、しっかり芯が通っているキャラクターだと思うし、すごくかわいらしいなと思います。玉森:水らしい、物腰が柔らかい青年ですけど、すごく涙もろくて、ちょっとしたことでも感動する愛らしいキャラクターですよね。共感できるところ…? ウェイドって、エンバーに何度か突き放されるんですけど、それでもあきらめないでちゃんとそばにいて寄り添うんですよね。それはすごいなと。俺はあんなに突き放されたら耐えられないなと思っちゃうけど(苦笑)、やっぱり優しいウェイドなので、そこは魅力的でいいなと思いました。――川口さんが演じられたエンバーに関しては、どんな印象を持たれましたか?玉森:エンバーは本当にエネルギッシュな女の子ですよね。見習いたいなと思うし、こういう人がいてくれると付いていきたくなるし、ウェイドと同じように「支えてあげたい」と思いますね。――声でキャラクターに命を吹き込むというお仕事はいかがでしたか?川口:私は本当にまるっきり初めてで、事前に準備しようがないところもあって、実際、収録に行ってモニターを見て「今日はここをやります」という感じだったので、毎日不安絶頂のままスタジオに行く感じでした。録り方も、てっきり玉森さんがいて、会話をしながらやるものだと思っていたら、全然そうじゃなくて…。いつも、こういう状態で収録されている声優さんって本当にすごいなと思いましたし、もちろん難しさ、大変さを感じながら、最後まで慣れずにやっていました。玉森:本当に難しいことばっかりでした。いかに自分が普段、表情や身振り手振りに助けられていたのか…。声だけで全てを表現しないといけないというのは本当に大変で、収録期間中は家に帰ったら、気絶レベルで寝ていましたね(笑)。集中もするし、普段あまりやらないことなので体力も使ったし、「声優さんってすごいな」と思いました。新たな可能性を気づかせてくれた出会いとは?――エンバーやウェイドのように、誰かとの出会いで新たな可能性や自分らしさに気づいた経験はありますか?玉森:僕はやっぱりSMAP兄さんかな?異次元な人たちだなと思って。デビューしたその日に「BISTRO SMAP」にメンバーと一緒に出たんですけど、食事の味をひとつも覚えてないです(苦笑)。もうオーラがすごすぎて、自然と一歩、二歩下がってしまう迫力を間近で感じて「ヤバイ! この人たちはすごすぎる」と直感で感じました。と同時に「カッコいいな」、「こういう人たちになりたいな」と思いました。終わった後、メンバーで話しましたもん。「すごかったね!」みたいなことを。――その後、少しずつ共演する機会が増えたりして、親しくもなったかと思いますが、少しは近づけたという感覚は…?玉森:全然(苦笑)! 知れば知るほど、遠ざかっていくような…。本当にいろんなすごさを知って「かなわない!」と思ったりしますね。いまだに目標でもあり、いつか超えられたらいいなとも思いますし、すごい人たちです。川口:私も、初めて木村(拓哉)さんとお仕事をさせていただいた時、いろんなことが衝撃的過ぎて…。こんなにも目標に対して、チームに対して熱量をもって、全力でいる姿を見て「(自分に対して)こんなんじゃダメだ!」と思ったり。すごく面倒見の良い方なので、作品が終わった後も、連絡を下さったりもするし、あそこまで全身全霊でものづくりをし、チームを大切にする姿がカッコいいな、偉大だなと思いました。――お会いしてイメージ通りでしたか? それとも意外な姿が見えてくる部分もあったんでしょうか?川口:どちらもありましたね。その時の役柄がすごく怖い役柄だったこともあって、現場ではメチャクチャ厳しくしていただいたんですけど、現場が終わったり、帰り道でお会いすると普通の“おにいさん”という感じで、いま思うと、私たちにとってもすごくやりやすい環境にしてくださっていたんだなと。――言われて印象に残っている言葉などはありますか?川口:別のバラエティ番組で、一般の方の夢をかなえるという企画をやられていて、本当にこの人は、とんでもない数の人の人生とかを変えたり、とんでもない影響力を持っているんだということを再確認して、それにすごく感動したんです。こちらから連絡してお伝えしたら「俺らの仕事はそういうことだから。人に夢を与えるのが仕事だし、それを信念を持ってやってるから生半可な気持ちじゃできないし、それがエンターテイナーだよね」とおっしゃって「あなたも頑張って」ということを言ってくださって、背筋がしゃんとしました。ひとつひとつのこと、人に対して誠実にちゃんとやらなきゃと改めて感じました。身近にもいる、気づきや発見を与えてくれる存在――映画では異なるエレメントの交わりが描かれるだけでなく、親子の関係性――同じエレメントであっても別々の人間であり、かなえたい夢と「親の期待に応えなきゃいけない」という思いの間の葛藤も描かれています。こうした部分に共感を抱いたり、周囲の期待に押しつぶされそうになったり、そこから解き放たれた経験はありますか?玉森:僕は逆にというか、事務所に入った時は、自分が入りたいと思ったわけではなく、それこそ親の夢というか「やってみたら?」という感じで、勝手に(書類を)送られてたんですが、知れば知るほど向上心というか「もっともっと」という気持ちになりました。最初は部活感覚で「何でもいいや」という思いもあったんですけど、仲間ができて、夢を語り合って、そこに向けて頑張ろうという気持ちになったりという、気持ちの切り替えはありました。――逆に親御さんが、新たな可能性、扉を開いてくださったんですね。玉森:そうですね。最初は「ふざけんな」くらいの気持ちだったんですけど(笑)、いまとなっては感謝していますね。川口:私はあんまり親に厳しく怒られたこともなくて、三姉妹の末っ子で、みんなに甘やかされながら、放任されながら「どうぞ好きなことをやってください」という環境でのびのびとやらせてもらってきたので、(周囲の期待に応えなきゃと葛藤するような)そういう経験はないんですけど…。ただ、この仕事をやるとなって、きっとたくさん心配もしただろうし、地元から通っていたこともあって、そこでどう思っていたのかは知らないですが、きっといろんな思いがあったなかで「とにかくやりたいことをやれば」と見守ってくれていたのかなと思います。――逆に「もっと厳しく言ってほしい」と思ったり、反抗するような気持ちが芽生えたりすることもなかったんですか?川口:寂しかったですね。お姉ちゃんたちはすごく厳しく育てられていたんですけど、私は歳も離れていたので怒られたこともなかったし、それが寂しいなと思う時期もありました。大人になってからのほうが、きちんとコミュニケーションも取れて、お互いに言いたいことも言えて、ケンカもできるという関係性になれましたね。――エンバーとウェイドのように、身近に自分とは正反対でタイプが全然違うけど、気付きや発見を与えてくれる存在はいますか?玉森:やっぱりメンバーですかね?同じものを見て、同じ方向に向かっているけど、その中でも少しずつやりたいことも思ってることも違うし。自分と違う意見が出たりすると「なんでだろう?」と思ったりする反面、「そんなこと思ってくれてたんだ?」とか「俺にはそういう発想はなかったな」とか、いろんな感情にさせてくれます。乗っかってみると新しい気づきがあったり。信頼している人たちでもありライバルでもあるし…。――メンバーに言われてハッとしたりしたことも…?玉森:メチャクチャありますけど、例えば宮田(俊哉)さんはメチャクチャ“アイドル”なんですよね。自分はそこまでは行けないかも…と思うこともあって。宮田さんを見ていると「アイドルってこうじゃないとダメだな」と思わせてくれたりしますね。川口:気づいたら、同じ感覚、価値観の人が(周囲に)多いですよね。「マジで合わないな」と思っても、言っていることは的を射ていたり、筋が通っているなと感じるという経験はわりと日常であるので、ちゃんと聞くということ――「この人はこういう人なんだ」「なるほどな」と思うことはわりとありますね。(text:Naoki Kurozu/photo:Maho Korogi)■関連作品:マイ・エレメント 8月4日(金)全国ロードショー©2022 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
2023年07月31日取材・文:ameri撮影:大嶋千尋編集:鈴木麻葉/マイナビウーマン編集部どんな瞬間を切り取ってもかわいらしく、女性たちが憧れる人生を送っている唯一無二の存在。ライフスタイルブランド「Her lip to」の運営をする株式会社heart relationの創業者・代表取締役CCOを務める小嶋陽菜さんだ。2017年にアイドルグループ・AKB48を卒業してから1年後にブランドをローンチ。グループ在籍中は“神7”の一員として人気を集め、卒業後は会社を経営し、“社長”としてさらに活躍の場を広げている。今回は、そんな彼女の人生観を深掘りしてきた。■ブランドローンチからは「密度の高い、すごく刺激的な5年間」2018年にブランドをローンチし、2020年に会社を設立、2022年にコンセプトストアをオープンと順調に見える5年間を振り返り、小嶋さんは「本当に密度の高い、すごく刺激的な5年間でした」と語る。しかし、「まさかこんな規模になるとは思っていなくて……」とも話す。「最初は、自分の好きなものを少し作って、ファンの方にシェアできたらいいなと思いスタートしたので、大きなアパレルブランドを作りたいとか会社を創りたいとかも当時は全くなく。なので、こうなるとは思っていませんでした」彼女にとっても予想外の5年間だったそう。そして、表面上はきらびやかで華やかに見えるものの、彼女は「毎日が大変でした」と振り返る。「初期は芸能事務所のマネージャーを含めた2〜3人で運営していたので、本当に人がいなかったんです。でも、どんどんお客様の数や期待が大きくなってきたので、このままでは期待に応えることが難しいということで、メンバーを集めるために会社を設立しました。設立してからも毎日大変で、華やかな裏側では泥くさくいろいろなことを自分でやっています」■大切にしているのは「決めたことをやり切って正解にしていくこと」「会社を作ったことが大きかった」とターニングポイントを挙げた小嶋さん。「まさか社長になるなんて思っていませんでしたね。社長になりたいと思っていたわけではなく、お客様に求められていることを実現するためには専門的な知識を持つメンバーが必要。そのためには会社を作り、自分が中心となって人を集めることが必要でした。期待に応えたい、より良いものをお届けしたいという思いが自然につながったことではあるんですけど、そこが環境やブランドが変わった大きなポイントだったかなと思います」と話す。トップに立つ人間は特に、さまざまなことを自分で決めていかなくてはならない。彼女はどんな軸で決断をしているのだろう。「決め切る、やり切ることかなと思います。自信のない人には周りはついてこないし、『自分で決めてこういう結果が出た』という実績を、小さいものから大きいものまで自分で貯めていくことが大事だな、と。答えが分からないこともいっぱいあるけど、決めたことをやる。やり切って正解にしていく、みたいな」芸能界、そして社長業と、荒波の多い世界を生き抜いてきた彼女だからこその強い信念を教えてくれた。■悩んでいる友人には「成功体験を積み上げる」アドバイスをしかし、彼女のようにブレない意思を持って突き進める人は多くないだろう。私たちはいつも、ちょっとしたことで立ち止まったり、迷ったりしている。柔らかながら強い芯を持つ小嶋さんに「もし周りに悩んでいる友人や会社のメンバーがいたら、どんな声をかけますか?」と尋ねてみた。すると「一番身近に、峯岸みなみっていう友達がいるんですけど……」と実体験を明かしてくれた。「昔から『これってにゃんにゃん(小嶋さんの愛称)が決めたの?』『なんで決められたの?』と聞いてくるんですけど、『一回自分で決めてそれを成功させるっていう、成功体験を積み上げるといいよ』と昔から伝えていて。そんな彼女が自分の卒業コンサートを自分で全部プロデュースして。それがファンの方にとても好評だったみたいなんです。その時に『やっと言っている意味が分かった』と話していました」説得力のある言葉に、思わず大きく頷かずにはいられない。■“セルフラブ”な生き方がブランドのベースにそして、そんな小嶋さんが大切にしているのは“セルフラブ”な生き方だという。では、具体的にどんなことをしているのだろうか。「私自身は、職業柄もありますが自分を知ることや自分を大切にすることを一番大事にしています。ですが、周りにいる女の子やSNSを見ていると、自己肯定感が低い人が多く『もったいない』『もっと自分を大切にしてほしい』と感じることがあります。“Her lip toのドレスを着て誰かに褒められて自信がついた”とか、“毎日が特別になった”というのもセルフラブにつながると思いますし、Her lip toのプロダクトを通して少しでも自己肯定感を高められたら 、セルフラブが身近になり、より人生が豊かになるのではないかと思ってもの作りをしています」“セルフラブ”を大事にすることが、彼女のブランドへの思いとつながっていたのだ。■オフィシャルブックのこだわりを明かす6月28日に、ブランド初のオフィシャルブックとなる『Her lip to 5th Anniversary Book』を発売。付録とは思えないハイクオリティのバッグ、バニティポーチに全40ページにわたる誌面と、見応えが抜群だ。「アニバーサリーなので特別なことがしたいな、ということで実現しました。こういうのはやはり付録が話題になるけれど、付録だけではなく全体でHer lip toのブランドを感じてほしいと思い、本は別冊にして、本だけでも読み応えのある、ブランドを振り返れるものにしました」ブランド設立から5年間の歩みやロングインタビューなど、さまざまなこだわりが詰まっている中でも、彼女のお気に入りは過去のビジュアルが並んだページ。「ECブランドに留まらないクリエイティブにしたいというのは初期から思っていました。アートブックのような、写真集のようなものを毎回撮影していて、それを年代ごとに並べたページになっています。『あの時こうだったな』と自分もお客様も振り返られるところがお気に入りです」■「反応をもらうこと、うれしい声を聞くことが原動力」仕事にプライベートに突き進んでいる彼女。女性にとってのミューズになっているといえるだろう。では、仕事もプライベートも頑張れる原動力は何なのだろうか。「見てくださる方がいて反応をもらうこと、うれしい声を聞くことが原動力です。アイドル時代も、ファンの方が反応してくれて『あ、これが好きなんだ。じゃあもっとやりたいな』と思っていましたし、今は形は違いますが、やっていることや感じていることは一緒かなと思います」「今も、お客様からお洋服を着て誰かに褒められてうれしかったという声や、旅がより良くなったという声を聞くのがうれしいですし 、会社のメンバーには、その人のキャリアに何か大きいインパクトを与えられたと感じられることが原動力になっています」そんな彼女にこれから楽しみにしていることを聞いてみた。「会社のことで言うと、日々が明るくなるような、豊かになることをお客様にお届けすることを軸に、いろいろな変化をしていけたらと思います。あとは、たくさんのメンバーがいるので、社員に楽しく長く続けてもらえるような環境作りや、その人のキャリアに繋がる価値を提供できたらいいな」そして、社長としての目標とともに、個人的にやりたいことも明かしてくれた。「個人的にはインプットの時間を増やしたいと思っています。コロナ禍でなかなか外に出ることが出来ずにずっとデリバリーばかり食べていたので(笑)、予約の取れないお店に行ったり、海外にいっぱい旅行したりしたいです!」自分のことを大切にしながら、応援してくれている人の期待にも応え続ける。小嶋さんが当たり前のように話してくれたことは、簡単なことではないだろう。そんな簡単ではないことを、まっすぐな目で語れる人柄に、多くの人が惚れこんだのだと気づく。彼女がファンのことを思い続ける限り、ファンは彼女を思い続け、これからも“小嶋陽菜”は、女性たちのミューズとして君臨し続けるだろう。『Her lip to 5th Anniversary Book』(宝島社)Her lip toの5周年を記念して作られたブランド初のオフィシャルブック。特別アイテムには、プロデューサー小嶋陽菜さんが監修した「One Handle Bag」と「Vanity Pouch」の2種を展開でお届け。
2023年07月21日5歳で芸能活動を始め、6月に18歳となった俳優・山時聡真。中村倫也・松坂桃李・菅田将暉・杉野遥亮といった人気俳優が多数所属する芸能事務所トップコートに所属し、次世代を担う期待を寄せられている彼が、連続ドラマでレギュラー出演を果たす。7月15日からスタートする日本テレビ系新土曜ドラマ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」(毎週土曜22時放送)だ。「3年A組 -今から皆さんは、人質です-」のプロデューサー×監督が再び組み、松岡茉優が主演を務めた本作。卒業式の当日に担任生徒の誰かに突き落とされた教師が、1年前の始業式の日に時を遡り、容疑者=生徒たちと再び向き合う。山時さんは本作で、いじられキャラの瓜生陽介を演じている。過去に戻る本作にちなみ、現時点での心境と、ここに至るまでの道のりをじっくりと伺った。――山時さんは「夢だった学園ドラマにレギュラーで出演できるということが、飛び跳ねるくらい嬉しかった」とおっしゃっていましたが、どんな学園ドラマがお好きだったのでしょう。僕が最初に観た学園ドラマは「タンブリング」(2010)でした。当時は6歳くらいでしたが、未だに記憶に残っています。そして事務所の先輩・菅田将暉さんも出演されている「35歳の高校生」(13)。学園モノでありつつどの世代の方も共感できる話だなと思って観ていました。学園ドラマというジャンルには、年齢を問わずに伝わる想いがちゃんと込められている印象があります。――今回の「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」も、ひねった設定によって生まれるメッセージ性がありそうですね。「最高の教師」は、松岡茉優さん演じる教師がタイムリープして過去に戻る作品です。先生はこれから何が起こるか知っているからこそ、生徒たちの人生を変えていけるし、どうすることもできなかったとしても、生徒たちを支えていきます。そして生徒自身も変わっていき、自分の想いを主張するようになっていくんです。エピソードごとにフォーカスを当てる生徒も変わりますし、それぞれに違った悩みや想いがあって、その人に応じたストーリーが展開していくのを楽しんでいただけるんじゃないかと思います。――先の山時さんのコメントですと「レギュラー」というのも大きかったのではないかと思います。ゲストで出演するときとは、どのような違いがありますか?ゲスト出演のときは短期集中型です。台本の中には様々な情報がありますが、途中参加の場合は自分が経験していない部分も多く、どうやって馴染ませて演じていくかを考えます。今回僕はドラマのレギュラー出演が初めてなのでまだ探り探りではありますが、関わる人数や時間が増えるぶん、「どういう役なのか」や「どういう想いでこういう言葉を使うのか」、または相手役との関係性に応じた声の出し方など、役に対してじっくりと考えることが多くなっています。役として生きている感覚があって、自分の中でも「成長できているのかも」と思えています。――山時さんは5歳から芸能活動をされていますが、10年以上ものキャリアを経て今現在はひと味違う新しさを感じていらっしゃるのでしょうか。正直に言ってしまうと、これまでは演じているときに山時聡真という自分が常にちょっとだけいたんです。「ミスしないようにしよう」だったり、山時として考えて動いている瞬間がありました。でも今回は、セットに入ったら「役として生きる」ができるようになってきたように感じます。プロデューサーの福井雄太さんや鈴木勇馬監督からの助言などももちろんありますが、「役として生きる」という気持ちが強くなったなかで、プライベートの山時聡真が抜けて、芝居中のアドリブも自然と出せています。いままでそうできなかったことに対しての後悔はありますが、成長を実感しています。――「相手役に合わせて芝居を変える」をアプローチの一つとして語っていらっしゃいましたが、演技の仕方自体はいかがですか?相手に適応していくやり方はずっと大事にしていることですが、最近意識していることだと「自然の中でも面白さを求める」があります。例えば笑い方ひとつとっても、「こういう人いるなぁ」という笑い方ってなかなか出せないんです。でも「最高の教師」の台本を読んでいると「ガハハと笑う」という役の人がいて、それをうまくできたら面白いし、役の特長にもなりますよね。僕も今回は吹き出すような笑い方だったり、観ている方が「こういう人いるな。面白いな」と思ってくれるようなところを目指しています。――見え方から逆算するアプローチといいますか。そうですね。“自然”を大事にすると、”自分”も出ちゃうんです。だからあくまで「役としての自然」を意識して、それが観てくれる人にとっての「面白さ」にもなるように意識しています。それができたのは、この現場だからだと思います。スタッフの皆さんが役者発信の考えや演技をすごく大切にしてくれて、その雰囲気にすごく支えられています。僕は2話にしっかりと役目があるのですが、芝居が新鮮に出るように「こういう風に撮っていきます」「こういう段取りでやっていきます」と事前に伝えて下さって、すごく有り難かったです。――山時さんは『死刑にいたる病』で白石和彌監督、『流浪の月』で李相日監督、『ラーゲリより愛を込めて』で瀬々敬久監督の現場を経験されています。いま名前を挙げた方々以外にも錚々たるメンツが並びますが、いまの自分につながった出会い等はございますか?僕は中学1年生で東京に越してきたのですが、当時は同世代の俳優だと同じ事務所の中川翼くらいしか知らない状況でした。そんななかで、様々な現場で経験を積む時間を与えていただき、たくさんの方々との出会いがありました。僕の中で「グッと成長したな」と感じられた作品は、映画『約束のネバーランド』(20)です。僕はドンというキャラクターを演じたのですが、漫画の実写化作品ということもあり見せ方によってキャラクターの印象が全く変わってしまうので、すごく大変でした。撮影前の稽古でも平川雄一朗監督から厳しい言葉をいただいてしまい、最初は落ち込んで「稽古に行きたくない…」と思ってしまっていたのですが、頑張って参加するうちに言われていることがだんだんわかってきたんです。しかもどんどん平川監督が褒めてくださる回数が増えてきて「成長できているんだ」と明確に感じられるようになりました。撮影期間が長かった作品なので体力面や精神面でも力が付きましたし、平川監督が「キャラクターとしてどう生きるのか」を教えて下さったような気がしています。当時は14歳でしたが、その年頃は心身が大きく成長するらしく、タイミング的にも平川監督との出会いは大きな出来事でした。――『約束のネバーランド』にはトップコートの先輩・松坂桃李さんも出演されていますが、同事務所の先輩方と芝居について話す機会もこれまでありましたか?松坂さんとは『約束のネバーランド』では同じシーンがなかったのですが、『ラーゲリより愛を込めて』の現場では色々とお話ができました。僕は舞台「アナザー・カントリー」の出演を控えていたのですが、初舞台はどんなものか、どういう風に進んでいくのかがわからなくてとにかく不安だったんです。「もうちょっとで舞台が来る…迫って来る」と怯えてしまうくらいに。でも松坂さんが「舞台はすごく面白いから、全然不安に感じなくていいよ!」と言ってくださって、すごく勇気づけられました。実際にやってみたら本当に楽しくて、松坂さんのおっしゃる通りでした。また菅田将暉さんは『CUBE 一度入ったら、最後』(21)で共演させていただいたときに「最高だった!」とすごく褒めて下さいました。また、つい最近ですが僕の誕生日(6月6日)にスニーカーをプレゼントしてくれたんです。トップコートの先輩たちにはお芝居以外でも、人として大切なところを教えてもらえている感覚があります。自分も将来こうなりたい!と思えるような背中をいつも見せてくれるんです。――素敵なお話です。事務所のメンバーが一堂に会する「トップコート夏祭り」の開催も近づいてきましたね(「TopCoat夏祭り2023 ~いい夏にしようぜ!~」は8月19日生配信)。去年はキャンプでした。皆さん集まるので、普段なかなか会えない方々とお話しできるのはすごく楽しいです。去年はゲーム形式で食材の争奪戦もあって、「ここでミスしたら先輩に怒られるかも…」と責任重大でした。皆さん絶対に怒りませんが(笑)これはもう事務所の企画が素晴らしいからなので、僕はいつも全力で乗っかって楽しませていただいています。――先ほどお話に挙がった中川翼さん・大西利空さんとの企画「星道。(スターロード)」もありますね。「事務所のセンパイたちのようなスターを目指し、あらゆることに挑戦する」シリーズです。2022年の4月からかれこれ1年以上続いていて、3人の絆も深まっています。僕たちはライバルでもありますが、仲間としての意識も強くて。例えば同じオーディションを受けて僕が落ちたとしても、翼くんや利空が勝ち獲ってくれればいいという気持ちがありますし、ふたりにはいつも感謝しています。――僕自身もトップコートランドの会員ですが、山時さんがおっしゃるトップコートのメンバーの仲間意識の強さは傍から見ていても感じます。年に1回事務所の忘年会があるんです。そこで先輩・後輩が交流する機会を作って下さることでいい関係性を築けているのではないかと思います。企画等もそうですが、事務所の中で出来ることがたくさんあると気づかせてくれますし、僕も最大限色々なことにチャレンジしたいと思っています。――自分から企画会議に参加されることもある、と伺いました。はい。「星道。」のなかで翼くんと利空がしたいことの企画はもう行ったので、次は僕の番なんです。「こういうことをやってみたい!」と企画を提案すると、事務所スタッフの皆さんが聞いてくださるだけでなくちゃんと実現してくれて、優しさや心強さを感じています。――本日は貴重なお話、ありがとうございました。「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」から山時さんの新たなフェーズが始まりますね。ドラマ放送期間に「TopCoat夏祭り2023」もありますし。自分の中では、今までなかったくらいの追い上げを見せられる気がしています。僕自身も役の想いをこれまで以上に持ったままお芝居ができていますし、「最高の教師」もきっと多くの方に観ていただけると信じています。このドラマを通じて自分のことを知って下さる方が増えたら嬉しいですし、反響を楽しみにしています!(text:SYO/photo:Maho Korogi)
2023年07月13日【取材・構成/叶 精二】オランダの長編ストップモーション・アニメーション『愛しのクノール』が公開中だ。第42回オランダ映画祭で最優秀映画賞・最優秀監督賞・最優秀プロダクションデザイン賞をトリプル受賞し、第1回新潟国際アニメーション映画祭の長編コンペディション部門にもノミネートを果たした快作だ。主人公は子犬を飼いたい少女バブス。しかし両親は反対。そこへアメリカに行ったきりだったおじいちゃんトゥイチェスが突然帰って来る。おじいちゃんは、バブスに子豚の「クノール」をプレゼント。子豚をしつけていくことで、家族の関係は穏やかに改善してゆく。しかし、おじいちゃんには隠れた野望があった…。家族と子豚の物語を丁寧に綴った愛らしい作品だが、決して無害なファミリームービーではない。大胆なシーンや予想外の展開も待ち受けており、スピーディなアクションシーンも秀逸だ。長編第1作となる新進気鋭のマッシャ・ハルバースタッド監督に本作の演出意図から次回作についてまで、広範に伺った。低いカメラでリアルな世界と人間関係を撮る──クノールはアニメーションでよく見られる「トーキングアニマル(しゃべるマスコット動物)」ではありません。人間の言葉を離さず、モノローグで話すこともしません。人語を解さない動物らしい動物という設定にこだわりを感じました。マッシャ仰る通り、意図的にそのような演出をしています。原作小説でもクノールは人語を話さないのです。この映画はクノールよりも、バブスとおじいちゃんやお母さんたちの人間関係を中心に描いた作品です。クノールが話し出すと映画は全くうまく行かなかったと思います。ただし、クノールが肉屋に行くシーンだけは、意図的にクノールの主観で描いています。このシーンでは彼の思いを大切にしたいと思ったからです。──ストップモーション作品では、ミニチュアセット舞台の大きさの制約からカメラを自由に配置出来ない、自在に動かせないという制約がありがちです。しかし、この作品ではカメラが子供たちや子豚の視点に合わせて大変低く設定されていますね。マッシャ実写映画のような形で撮影したかったのです。カメラを高い位置に設置すると世界観が失われてしまうのです。私自身も小柄なのですが、カメラを低い位置に設置するとリアルな世界観を表現出来るのです。低いカメラで登場人物を近距離で撮影することによって、心理的にも近づくことを意識しています。私はカメラを大きく動かすアニメーションは好きではありません。大きなカメラワークは、アクションシーンのみで採用しています。必要な時だけ動かすことを心掛けています。──あくまで生活のリアリズムを基調としているということですね。どこにでもありそうな小さな家族の物語。しかし、ファンタジーでもある。そのバランスが絶妙だと思いました。一方、アクションシーンではカメラが縦横無尽に動いて人物を追いかけます。お得意ではないのかも知れまませんが、バブスの自転車、車やトラクターチェイスのアクションは素晴らしいと思いました。マッシャトラクターチェイスのシーンの撮影には1年半かかりました。カメラマンのピーターが設定を行い、トラクターのクローズアップを撮っています。実はカメラ自体は動かしておらず、トラクターの方を少しずつ動かしているのです。ミニチュアセットの制作にも時間がかかり、組み合わせが大変でした。全てが上手く行き、完成したものは最高でした。この映画の中で最も誇らしいシーンです。個人的に面白いと思ったのは、通常はゆっくり動く筈のトラクターがチェイスするという点です。手作りのパペット(人形)の魅力──クノールのふわふわした産毛、母やバブスのカールした髪の毛が光に揺れて質感が見事でした。パペット(人形)の素材は羊毛でしょうか。マッシャはい、素材に羊毛を使いました。母に関しては特殊なウィックのような物を作り、上から羊毛を糊付しています。髪に動きが出るし、質感もすごく良い感じでした。──最近は3Dプリンターで出力したツルツルのパペットが多用される傾向にあります。本作の手作りの温かみを感じるパペットがとても良いですね。マッシャありがとうございます。3Dプリンターは使用していません。登場人物の頭部は硬質プラスチック製で、瞼や口は別のパーツで付け替えられるように出来ています。しかし、おじいちゃんだけは眉毛や顎が動かせる特殊な仕組みのパペットを使っています。彼はアウトサイダーなので、他の登場人物とは造詣から明確に変える必要がありました。髭を付けたりしているのも、本性を隠すために意図的にやったことです。ロアルド・ダールの影響と「悪いままのおじいちゃん」──おじいちゃんのエネルギッシュで懲りない性格は、確かに強烈な印象を残します。マッシャ監督は幼い頃からロアルド・ダールの愛読者だったと伺いました。ダールの小説に登場する大人たちに共通するものを感じました。演出の際にダールの作品を意識されたのでしょうか。マッシャええ、大変意識しました。私はダールの作品を読んで育ちました。原作と出会った時におじいちゃんのキャラクターは、完全にダールのキャラクターだと思いました。彼は周囲の評価を裏切って、途中から豹変します。この物語はハッピーエンドではあるけれども、おじいちゃんは悪いままです。そこが大好きになりました。子供たちにはお伽噺らしいお伽噺だけを与えれば良いとは思いません。今の子供向け映画は健全なものだけを描こうとしているように感じるのですが、大人のいやらしさを描くことも同じように必要だと思うのです。──ダールの原作は過去にヘンリー・セリック監督『ジャイアント・ピーチ』(1996年)、ウェス・アンダーソン監督『ファンタスティック Mr.FOX』(2009年)と2作品もストップモーションの長編になっています。どちらも名作です。3作目に挑戦するお考えはないですか。マッシャ私は元々ダールの作品を映画化したかったのです。もしダールの作品の映画化の企画があれば、今すぐにでも快諾しますよ!──アニメーションではずっと避けられて来た「動物の排泄」を物語に組み込んで、きちんと表現されていました。抽象的な表現に逃げていないと思いました。マッシャははは(笑)、ありがとうございます。スピンオフ短編と次回作の構想マッシャ・ハルバースタッド監督──本作のスピンオフ短編『Koning Worst(ソーセージ王)』が既に完成していると聞きましたが。マッシャバブスの両親や二人の肉屋が登場します。『ウェスト・サイド・ストーリー』を思わせるミュージカルのラブストーリーです。(『愛しのクノール』と)同時上映されている国も多いようです。日本でも観る機会があると良いですね。──マッシャ監督は現在長編第2作『FOX AND HARE SAVE THE FOREST(キツネとウサギが森を救う)』を制作中だと伺いました。こちらもストップモーション作品なのでしょうか。マッシャいいえ、ストップモーションではなく3DCGアニメーションです。アムステルダム・ベルギー・オランダの合作となる予定です。『愛しのクノール』とは全く違うテイストのハートウォーミングな笑える作品になる予定です。──本日はありがとうございました。今後の作品にも期待しております。(叶 精二)
2023年07月12日【音楽通信】第142回目に登場するのは、グループとして主要音楽チャートで1位を獲得し続け、メンバー個人でもドラマや映画で活躍し、飛躍を続けるグローバルボーイズグループ、JO1!一番影響を受けたのはK-POPアーティスト木全翔也(きまたしょうや)。2000年4月5日、愛知県生まれ。A型。身長172cm。【音楽通信】vol.142サバイバルオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN』発のグローバルボーイズグループ、JO1。2020年3月に発売したデビューシングル『PROTOSTAR』以降、これまでに発売した7作のシングルすべてが主要音楽チャートで1位を獲得し、昨年末には「第73回 NHK紅白歌合戦」に初出場を果たすなど、その人気は加速するばかり。グループとしての音楽活動はもちろんのこと、メンバー個人でのドラマや映画の出演など、ジャンルレスで活躍の幅を広げるJO1が、2023年7月24日にニューシングル「NEWSmile」をリリース。今回、メンバーを代表して、木全翔也(きまたしょうや)さんに、お話をうかがいました。――11人のメンバーからなるJO1ですが、そもそも木全さんご自身が影響を受けたアーティストから教えてください。いろいろなアーティストの方の音楽を聴いてきましたが、一番影響を受けたのは、K-POPのアーティストさんたちです。オーディションを受けようと思ったのも、韓国発のサバイバルオーディション番組「PRODUCE 101」の日本版ですし、もともとWanna One(ワナワン)さんなど韓国のボーイズグループのダンスミュージックに魅了されていたことがきっかけでした。――音楽の道を志して、すぐにオーディションを受けたのですか。はい、僕は初めて受けたのがこのオーディションなので、運が良かったです。――JO1が結成され、2020年3月にデビューされて今年は全国アリーナツアーやアジアツアーの開催もするなど、快進撃を遂げていますね。コロナ禍で大変な時期もあったのですが、もうずっと駆け抜けてきている感じがあります。ただ、個人的なところで言うと、4月に23歳になったので、今後は貯金を頑張りたいと思っているんですよね。――貯金するのは堅実で良いことですが、欲しいものを買いたくなることはないんですか?もう欲しいものはだいたい買いました(笑)。だから、今後は貯金がしたいな。新曲は「爽やかなポップナンバーで聴き飽きない」――2023年7月3日から先行配信されていますが、7月24日にシングル「NEWSmile」がリリースされますね。「NEWSmile」は、ハッピーな曲に仕上がっています。まずメンバーで曲選びをするところからは初めて、セルフプロデュースをさせていただきました。――どのような点を意識して、曲を完成させていったのでしょうか。今年の4月から、『めざまし8』さん(フジテレビ系 毎週月〜金曜 午前8時)のテーマ曲として起用していただいているので、朝の番組だということを意識しました。曲を選ぶ段階でどの曲が一番いいかな、合うのかなと、話し合いましたね。曲を決めてから、メンバー5人で詞を作っていって。明るい朝感のある、ハッピーになるイメージで作詞していきました。――番組とマッチしている爽やかな楽曲だと感じました。具体的にどのように作詞されたのですか?書けるだけ書いてきて、と伝えられていました。フルで書いたのは、僕と(河野)純喜くん。他のメンバーもやりたいところを書いてきて、それぞれが歌詞を持ち寄っていい感じに分けてって感じですね。――では、作詞をご担当されたのは、木全さん、河野さん、あとは?あと與那城奨、金城碧海、大平祥生の5人です。――持ち寄ったものをひとつの作品にするのは、難しくなかったですか?みんなの曲のイメージが合っていたので、そんなに大変ではなかったです。ここにあった歌詞を別に移動させる、というようなちょっとした入れ替えだけありました。――木全さんは作詞をされる際、どのように形作っていかれたのですか。僕は、テーマをもとに考えていきました。この曲は3時間ぐらいで歌詞を書いて、その日に終わらせました。でも、本当に歌詞が思い浮かばないときもあって、そんなときは何時間やってもできないです。そういった意味においては、今回タイミングがちょうど良くて、「こんなワードが出てきた!」というように、すぐにフレーズが浮かんできました。――コンディションもばっちりだったんですね。では、完成した楽曲にどんな印象をお持ちになっていますか。先日ミュージックビデオも撮影されたそうですね。すごく爽やかなポップナンバーになっています。何回聴いても、聴き飽きないですね。ミュージックビデオは、大きな施設を貸し切って撮影しました。全体的にポップな世界観に仕上げていて、色合いも爽やかで曲に合っています。――今回、楽曲の新しい楽しみ方の提案ということで、“音楽が聴けるグッズ”が発売される期間限定ショップの展開がありますね?そうなんです。日本では、新曲を発売するというと、CDとして発売することが多いですよね。でももしかしたらいろいろなアーティストさんも、CD以外の形で、曲を出したいと思っている方もいると思うんですが、現状ではあまりそういった発売方法はメジャーではないんですね。それを僕らがこうしてショップを展開させてもらえるのは、すごく貴重だしうれしいことだなと。今回はこのグッズが音楽のCD代わりになります。――グッズから音楽が聴けるというのは具体的にどのように?グッズにQRを付けているので、それを読み取ると、新曲が聴けます。韓国ではけっこうスタンダードな音楽の発売方法なんですよ。いまはサブスクで聴く方も増えていますよね。なので今回は、CDを買うのではなく、音楽も聴けて日常使いができるグッズも手に入るという、サステナブルなものを展開しようとなりました。――日本では面白い試みですね。グッズは、メンバーそれぞれのキャラクターに合ったドアノブカードや、マグカップ、メモ帳、トイレットペーパー、ジャムといった趣向を凝らしたラインナップになっています。どれもおうちに飾るだけでもけっこう映そうなグッズなので、インテリアグッズを買いに来るような感覚で来てもらってもいいのかなと思いますね。――画期的です。そういえば最近、2023年5月に韓国で開催された「第29回 DREAM CONCERT」に、ITZYら19組のK-POPアーティストが一同に会すなか、JO1は唯一の海外アーティストとして出演されましたし、同イベントの日本版が6月にさいたまスーパーアリーナで開催されましたね。釜山は会場が野外で天気も良かったので、遠くのお客さんまで全部見えました。僕らの名前を書いたボードを持ってきてくれている方もいて、うれしかったですね。韓国では、ライブ中のカメラ撮影がOKだったので、みなさんが撮影している様子も全部見えて、レンズに向かってちょっとアクションしたりも楽しかったです。――日本の会場には、MCとしてユク・ソンジェさんや、豪華な参加アーティストが集結しました。僕、ソンジェさんがボーカルのグループBTOB(ビートゥービー)が好きなので、MCでいらしてびっくりしました!日本ではやっとライブで声出しがOKになったので、集まってくださったお客さんも曲に合わせて掛け声をしてくださって、うれしかったです。JO1として「ずっと走り続けていきたい」――お話は変わりますが、木全さんは、多趣味でいらっしゃるんですよね?はい、音楽を聴いたり、作曲をしたり、バイクに乗ったり。いろいろなことに興味がありますね。――では、最近新たにハマったことはありますか?料理ですね。わざわざレシピを見なくても、一度食べたことがある料理だったら「あ、これが入ってるんだな」と、ある程度は感覚的に調味料もわかると言いますか(笑)。――食べただけで、レシピを見ずに自分でも同じ料理が作れるなんて、すごいですね。普段から食べることが好きで、好き嫌いもないから、味を覚えてしまうのかもしれません。――最近作った料理はなんですか?たこ焼きを作りました!高校時代、たこ焼き屋さんでアルバイトをしていたので、作るのは得意なんです。――たこ焼き、いいですね! お友達と一緒に食べたんですか?ひとりです(笑)。自分のたこ焼き器があるので、食べたくなって、作りました(笑)。――いいですね〜。ちなみに今日はお衣装ですが、普段こだわりのファッションなどありますか。こだわりといえば、靴ですね。その日のファッションは、服からではなく、靴から考えてコーディネイトします。今日はこの靴を履きたいから、こんな服を着ようかなって。プライベートでは、今日の衣装ほど派手ではないですが(笑)、こういう感じも好きですね。ひじまであるオレンジ色の長い手袋を持っているんですが、気に入っていて冬には普段、つけるときもありますね。――ステージではダンスパフォーマンスも披露されますが、カラダ作りやコンディションをキープするために心がけていることはありますか。太らないように夜ご飯をちょっと少なくしたりはしますね。あとはプールによく行きます。最近、筋力アップできる負荷のついた水泳グローブを買いました。このグローブをつけて泳ぐと、ものすごく良い筋トレになるので、効率良く水の抵抗を重くして、筋力を上げていますね。――そのグローブをつけて、どのぐらいの距離を泳ぐんですか?25メートルはふつうに泳ぎますね。でも、疲れたな、と感じるぐらいまでいつも泳ぐようにしていて。水の抵抗が強いので、全身運動になっています。――いろいろなお話をありがとうございました。では、今後の抱負といえば?JO1としては、小さくてもいいので、いろいろなところでライブをたくさんやりたいですね。僕個人としては貯金を……(笑)。――最後に、J-POPとK-POPの良さを両方持ちあわせているJO1ですが、木全さんにとってグループはどんな存在でしょうか。これまでもこれからも、JO1は良い意味で突っ走っている存在です。ずっと走り続けていきたいですね。取材後記国内外で活躍の幅を広げている、グローバルボーイズグループのJO1。今回、新曲の作詞をメインで手がけたメンバーの木全翔也さんがananwebにご登場くださいました。ビタミンカラーのお衣装に負けない快活さで、元気に撮影やインタビューにトライ。23歳になり、貯金にご興味があるというお話も印象的でした。木全さんをはじめとして、今後もますます飛躍される姿を見せてくれそうなJO1のニューシングルを、みなさんもぜひチェックしてみてくださいね。写真・園山友基取材、文・かわむらあみりJO1PROFILE©LAPONE Entertainmentサバイバルオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN』で、約3か月にわたる熾烈な競争を繰り広げ、番組視聴者となる“国⺠プロデューサー”累計約6,500万票の投票により選ばれた11人による、グローバルボーイズグループ。2020年3月に発売したデビューシングル『PROTOSTAR』以降、これまでに発売した7作のシングルすべてが主要音楽チャートで1位を獲得。海外では、アジア最大級の音楽授賞式「2022 MAMA AWARDS」にて“Favorite Asian Artist”を日本人アーティストで唯一受賞。さらに「WEIBO Account Festival 2022」にて“優秀男性グループ賞”を受賞。2022年の年末には「第73回 NHK紅白歌合戦」に初出場を果たす。2023年7月24日、ニューシングル『NEWSmile』をリリース。メンバー個人でのドラマや映画の出演など、多方面での活躍を広げるなか、8月からは全国6都市13公演 のアリーナツアー、さらにはアジアツアーの開催が決定している。Information©LAPONE EntertainmentNew Release「NEWSmile」2023年7月24日発売写真・園山友基 取材、文・かわむらあみり
2023年07月11日映画や演劇などの芸術作品を“誰もが楽しめる”ように取り入れられてきた、多言語翻訳や音声ガイド、バリアフリー字幕。最近では、岸井ゆきのがろう者のボクサーを演じて第46回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した映画『ケイコ 目を澄ませて』が、話者や情景、音楽などを可能な限り音声情報や文字情報で表す音声ガイド、バリアフリー字幕付きで劇場上映されていた。“誰もが”こうしたエンターテイメントに出会うことができるよう、“アクセシビリティ”に特化したオンライン劇場として知られるのが「THEATRE for ALL」だ。「THEATRE for ALL」では新たな取り組みとして、今年5月~6月に東京のリアル会場とオンラインにて「TRANSLATION for ALL」を開催。歌手の小林幸子とラッパーの鎮座DOPENESSが歌う楽曲「文明単位のラブソング」をAR(拡張現実)と手話によって伝える、という試みがなされた。この「文明単位のラブソング」手話版の制作に関わった小林さん、鎮座さん、そして手話翻訳を担当した手話エンターテイナー・那須映里の対談インタビューが到着した。「歌」をARと手話で伝える…身体表現での翻訳に挑む「TRANSLATION for ALL」は、作品に込める思いを、障がいや言語の隔たりなくわかち合い、さらなる表現へとつなげていく挑戦の数々を結集させた“身体表現の翻訳”を考えるフェスティバル。アーティストたちはワークショップや公開稽古を行いながらクリエーションを進行していくが、その公式作品の1つが、最新のAR技術を活用した楽曲「文明単位のラブソング」の手話版。「バーチャル身体図鑑」などで知られる開発ユニット「AR三兄弟」川田十夢が作詞に参加し、蓮沼執太が作曲を手掛けた本楽曲は、360度の方向から立体的に楽しめるAR技術を活用した立体的なパレード。その先導を、「バーチャル身体図鑑」にも登場する小林さんが務め、文明ごとの変遷に思いを馳せる鎮座さんのラップが重なり合っていく。小林幸子「こういうことだったのか」これから先のエンターテイメントへ那須映里小林幸子鎮座DOPENESS――まずは小林幸子さん、鎮座DOPENESSさん、「文明単位のラブソング」AR作品をご覧になって試してみましたか?いかがでしたでしょう?小林:とても新しいものですよね。これから先のエンターテインメントにいろんな形で影響を及ぼして、皆が楽しめるものへと繋がっていくのではないかと感じました。鎮座:様々な場所で再生できる面白さがありますね。縮小したり、いきなりデカくもできるし、いろんなサイズでパレードを進行するのは楽しそうですね。小林:家から出られなくても遠くに住んでいても同じ条件で楽しめる、自分のやり方で、さあ、遊んでっていうのがいいですよね。川田十夢さんって、天才?といいますか、最初はわけがわかりませんでしたよ。おっしゃることは聞こえるんですが、理解ができなくて。もう随分昔にお会いしたんですけど、時間が経つにつれ、おっしゃっていたのは、ああこういうことだったのかと。――歌ができていく過程でどんな風に感じましたか?小林:メインの歌詞とメロディーはあったのですが、スキャットのあたりはほとんど白玉音符でした。ラップを先に聴いて、イメージ画を見て、あとは幸子さんの感性でおねがいします、という感じでした。「何でもありですか?」「何でもありです」というやりとりの中で、わからないながら、やってみましたが、歌い手として長く歌ってきているので、絶対NGってあるじゃないですか、今回はそれを超えるかな?と思う表現でも「それは面白いですね」って言ってもらえて。歌い手って褒められると本気で喜んじゃうものですから。とにかくわからないことだらけでしたけど、自分なりに解釈して挑戦してみました。最初は、ラップを聴いたときも「なんだこれ?」って思いましたけれど。3Dデータの収録風景より撮影:菊池友理小林:歌詞も繋がっているようで繋がってなくて、その行間を埋めるための想像力が必要でした。ものすごく刺激になりましたね。何回も聴いてるうちに、世界が伝わってきて、やってるときは「大丈夫かな」と思ったんですけど、終わったときにたいへん面白いなって感じました。鎮座:同じくです。(笑)ラップを録音したときも、まだ全体像が見えてなかったので、自分なりに想像して。これ、どうなるんだろうって思いながら、ARありきで作ったっていうところがありますね。小林:やりながら見えてくるんですよ。でも、それが十夢さんの狙いだったのかもしれないですね。鎮座:自分がパーツになってる感じはありました。小林:そうそう、きっと十夢さんの頭の中ではもう出来上がっていたのかもしれないですね。モーションキャプチャーとラップの収録風景より撮影:高木美佑“こぶし”&ラップを手話の言語感覚で表現対談の様子(鎮座DOPENESS) 撮影:加藤甫――鎮座DOPENESSさん、歌を手話に翻訳していく作業を見て、いかがでしたか?鎮座:手話の言語感覚、身体で表現するという、特徴や違いを改めて感じました。あと、自分的には歌詞を結構削って整理してきたつもりでしたが、手話を音楽の時間にあてはめていくと、まだまだ…(笑)ラップの情報量が多いのがたいへんそうでしたね。那須:日本語の特徴と手話の特徴は違うんですね。だから語順や文章の順番を入れ替えたり、なるべく日本語の情報を欠落させないように、意味を重ね合わせた掛け言葉のようにしてまとめて出すという方法をとりました。鎮座:情景、言語、リズムをどう表現していくのかということで、まだ全然理解しきれていないですけど。少しずれると意味が変わってしまうし、タイミングが遅れてもばっちりハマらないという、非常にセンシティブなものですね。小林:微妙なところをどうやって手話にするか、難しいですね。“こぶし”はどう表現するんですか?那須:手話で表すときに歌の様子を真似ました。(首を振る身振り)小林:(笑)表情がすごく大事ですね。那須:初めはもっと大袈裟にやっていたんですが、鎮座さんのラップを手話表現してもらったダンサーのかのけん(鹿子澤 拳)さんにくどいって言われて(笑)抑えめにしました。対談の様子(小林幸子) 撮影:加藤甫小林:私は手話を専門に勉強したことはないですけど、自分の歌で「さよならありがとう」って『クレヨンしんちゃん(嵐を呼ぶジャングル)』の主題歌があるんです。その歌をちょっとだけ手話でやらせてもらったんですね。「何度も」「この世の果てまで」「ありがとう」とかいくつか教えていただいて。手話を歌いながらやるのはすごく難しかったですけど、やってみたら、ファンの方にすごく喜んでもらえてうれしかったです。ろう者が見て楽しい「手話歌」を作りたい対談の様子(那須映里) 撮影:加藤甫小林:歌を手話にするのはどんな難しさがあるんでしょう。那須:まず手話歌で、日本で多いのは日本語の語順に合わせて声を出しながら手話をやるものです。声を出しながらろう者にも楽しめるように手話をやるのは不可能です。それに、ろう者から見ると楽しくない、面白くない、意味がわからないから嫌いだって言う方が多いんです。今回、依頼を受けるときに私ができるかどうか自信がなくて正直すごく迷ったんですけど、もし私が断った場合、新しいチャレンジができる機会をなくすんじゃないかと思って、とにかくチャレンジさせていただきました。本当に難しいんです。ラップの内容を見たとき、何を伝えたいのか、と。小林:ラップは膨大な言葉の量ですよね。鎮座:時代を現代から昔へ行くという、そのキーワードになる映像が4行ずつ表現されていて、ARの映像ありきだからそのイメージを伝えるのが難しいですよね。那須:4行ずつ歌うときのリズムがきれいでわかりやすいので、その気持ちよさを少しでも翻訳したいと思いました。韻を踏んだり、ろう者が見てラップだ、楽しいと一緒にノレるようなものにしたいと思って、ダンサーでもあるかのけんさんに相談して、翻訳を確定させて手話表現を決めていきました。ラップの韻を踏むところに手話をどうやって入れていくかというのを考えるのが工夫した点です。たとえば、「安室奈美恵になりたかった女子たちはガングロ」という歌詞のところで、同じ手の形を応用しながらリズムに合わせていくことで、韻を踏むようにしました。鎮座:手話的な韻ということですよね。興味深い。那須:それからリズムの強弱を上下にしてわかりやすく手話を作ってほしいとお願いしたんですけど、「天下分け目~」のところは手話通訳では「日本」「治める」「誰」という3つの単語の動きをリズミカルに体を下に下げていく感じで表しました。小林:凄いですね。鎮座:変換作業!手話撮影の収録風景(左:かのけん右:那須映里)撮影:加藤甫那須:難しかったのはリズムもそうですが、手話の場合は具体的な表現が多いローコンテクストな言語なので、日本語の持つ綺麗で抽象的な感じを綺麗で抽象的な感じをどう表現するか、すごく考えました。鎮座:それが情景表現になってくるんですね。那須:たとえば「津軽海峡冬景色」なら想像して情景を表現しやすいんです。ただ、今回は抽象的だったので、具体的に表現するとあまり綺麗に見えないので、どうやって想像に任せて余白を残すかを考えるのが大変でした。――那須さんにとって歌というのはどういう存在ですか。那須:ロック系が好きなんです。中学生のときに尾崎豊が好きだったんです。ビデオで見て、ミスチルとかサカナクションとか。たぶん私が聴きやすい声というのがあると思うんですね。で、ラップもずっと好きなんです。高い声は聴きにくい、楽器でもフルートとかホルンとかヴァイオリンはちょっと聴きにくいかもです。歌は自分で楽しむもの、聴者の世界の遊び、別の世界の遊びという感じで見てます。自分の世界にはない遊び。実際、自分の世界には歌みたいな遊びはあるんですけど、まだ開発途中みたいな感じです。聴者の世界のなかでの歌は5000年位昔から、積み重なっていまの技術でいまの音楽、芸術があるわけですが、ろう者の場合、手話は比較的新しい言語です。芸術と手話がいま、同時に発展はしていますが、歌を見るとラップやこぶしを私が手話でどう表現すればいいのかなと、改めて勉強になりました。小林:手話ってそんなに歴史がまだ浅いんですか?那須:いろいろな見方があるのですが、フランスで300年前くらいに誕生したと言われてます。ろう教育的にも、社会的にも、手話が禁止されていた時代が長らくありました。だから今ようやく手話人口が少し増えて、手話が言語として認められてきたところです。そして芸術として聴者と一緒に楽しめる時代が来るということですね。鎮座:いまだに新しく言語が作られている、表現が増えているということですよね。那須:手話も日本語と同じ自然な言語なので、自然に起こるし、使いやすいものが広まっていきますね。小林:時代によって少しずつ変わって行くんですかね。那須:そうですね。たとえばテレビ。昔はチャンネルを回す動作で表現していましたが、今は画面を表す動作で表現します。垣根をつくらず、遭遇した相手との出逢いを大切に対談の様子(小林幸子) 撮影:加藤甫――小林さんは、これまでも既成概念を良い意味で壊しながら、多くの人にメッセージを届けていらっしゃるかと思います。我々のテーマ、アクセシビリティを切り開いていく、という視点で考えたときに今後何かやってみたいことはありますか。小林:いま、あることを一所懸命やっていると必ず、新しい誰か、何かと遭遇するんですね。そのときに垣根を作らない。そうすると、そこから次の局面が展開していくんです。ボーカロイド曲を歌ったのも、Youtube番組「YouTuBBA!!」もそうですけど、これはできないというのでなく、やってみようと思っています。それは障がいのある方でもそうでない方でも、その巡り合いやその出会いを大事にしたいからです。興味を持ったら、実は何でもできるんですよね。私の原点は、生まれて初めて飛び出す絵本を見たときの、衝撃的な体験でした。こんなに面白いものがあるんだって。紅白歌合戦の衣装のルーツでもあります。皆を驚かせて自分も楽しく、相手も楽しませるには一体どういう方法があるかなと考えるんです。だめだったらやめればいいんですから、やってみて自分が面白がれることを見つけることです。原点を大事にしていくといろいろ展開していきます。手話から歌をつくってみたい対談の様子(那須映里) 撮影:加藤甫那須:手話から歌詞をつくっていくような歌の作り方をしてみたいです。手話を日本語の歌に合わせて表すことが多いので日本語が先になることがほとんどですが、逆バージョンのを作ってみたいです。歌いながら手話を表すのは、なんだろう?ダンスの振りとしてやってるのかな。ろう者が見て本当に楽しむには日本語音声と手話を一緒に出すのがNGで、手話をやって別にアフレコ的な感じで音声を後から入れる方法で作っていかないといけないんです。いつも歌が先にあって、その後に手話に翻訳するんですけど、その逆の順番で作られるような歌があると面白いかなと思います。VV(ビジュアル・バーナキュラー)という視覚的に描写できる手話アートがあるんですけど、それを見てもらって。小林:手話に合わせて歌詞って、たとえばどういう言葉になるんですか?那須:歌のイメージですととたとえばこんな感じで(手話表現中)鎮座:ああ、高いところから落ちていって水に入るっていう表現、ですね。いまの動きのリズムと合わせて歌詞を当てていくってことですかね。小林:情景ですね。鎮座:闘争劇で、走っていって崖から飛び降りて水に潜る、みたいな。そしたら竜宮城だったとか(笑)小林:(笑)浦島太郎?那須:そういう話し合いをしながら作っていくと面白いかなと思います。小林:そっか、そんな作り方は誰も思いつかなかった。詞先なのかメロ先なのかっていうのはあったとしても。鎮座・小林:手話先!鎮座:それ、新しいじゃないですか。小林:いいわー。私、歌ってみたい。手話先ラップ、難しそうですね。やりましょうよ。それ、十夢さんが歌詞書いてくれるの?鎮座:皆で歌詞を書くところからやると、より勉強になりますね。複合的に作って行くとどういう世界観が現れるのか、手話先だとどういうリズムが出来上がってくるのか、どういう旋律になるのか。その過程も面白い。那須:手話を固めたあとに、曲を作るって感じですね。小林:歌います!AR作品「文明単位のラブソング」はTHEATRE for ALL YouTubeにて公開中、各種音楽サイトで配信中。※この鼎談は2人の手話通訳(発話→手話・手話→発話)を介して実施された。(シネマカフェ編集部)
2023年07月10日年齢を重ねていく中で、人間の感性や好みは変わっていくもの。以前はおいしいと思わなかったものが好物になったり、学生の頃はさほど仲良くもなかった知人となぜか意気投合したり。映画の見方も然り。10代の頃は見向きもしなかったジャンルの作品に惹かれたり、若い頃であれば何気なく聞き流していたかもしれないセリフが心に刺さったり…。今年、34歳を迎える岡田将生も、そんな変化を自らの内に感じつつ、それをポジティブに捉えている。20代の頃はプライベートで恋愛映画を観ることはほとんどなかったというが、30を超えて、期せずして恋愛映画に心を揺り動かされことが増えたという。台湾で大ヒットを記録した映画『1秒先の彼女』もそんな作品のひとつ。何をやるにも他人よりワンテンポ早いヒロインと、常にワンテンポ遅いバス運転手の恋模様を描いたこの作品に岡田さんは深く感動したという。そして、同作を男女の設定を反転して京都を舞台にリメイクした『1秒先の彼』が制作され、岡田さんは他人より常に1秒早い郵便局員・ハジメを演じている。岡田さんにとって本作が特別なのは、まず日本版リメイクの脚本を、映画『謝罪の王様』、ドラマ「ゆとりですがなにか」など、コメディ作品における岡田さんの新たな魅力を引き出してきた宮藤官九郎が執筆しているという点。そしてもうひとつ、監督を務めるのが、岡田さんにとって10代で初めて映画のオーディションを経て参加した『天然コケッコー』の山下敦弘監督であるということ。実に16年ぶりとなる山下組は岡田さんに何をもたらしたのか――? 16年前の思い出と合わせてたっぷりと語ってくれた。台湾版とは男女の設定が逆「日本的な笑いみたいな部分が含まれて」――オリジナル版の台湾映画『1秒先の彼女』をご覧になった感想をお願いします。感動しました。設定は奇抜なんですけど、それを映画に全て収めていて、これは脚本そのものもきっと素敵だったんだろうなということがすごく伝わってきました。純粋に映像も美しくて、台湾に行ってみたいなと心の底から思えるような映画で、それこそロケ地巡りツアーみたいなのがあったら、回ってみたいなって思うくらい素晴らしかったですし「これをどうリメイクするんだろう?」という思いもありました。僕は最初、男女の設定を逆にするということを聞いていなくて、男性の方を中心に見ていたので、その後に、(男女を反転させると)聞いて「そうだったんだ!」と思ってちょっとびっくりしました。でも本当に素敵な映画でした。多分、20代のときに観ていても、いまぐらいの感動はなかった気がして、純粋にあの2人の思いに30代になってグッときてしまって。それは監督ともそういう話をして「なんかちょっとウルッときてしまったんです」と。20代のときって、なんかちょっとひねくれてて、あんまりそういう映画を観てなかったせいなのか、最近、そういう作品を観ると、また見え方が変わってきたなと思います。――台湾版と男女の設定を逆にして、宮藤官九郎さんが執筆された『1秒先の彼』の脚本を読まれての印象は?まず設定を京都にしたっていうのが絶妙で素晴らしいなというのがあって、ハジメくんも京都弁でやらせてもらってるんですけど、これを標準語でやるとちょっと浮いてしまう可能性があったけど、京都弁でやることによって、より一層、ハジメくんがちょっと憎たらしいけど愛せるキャラクターになっているなと思います。それには、京都の方が聞いても違和感のないように滑らかな京都弁でやらなきゃいけないという大きな壁はあったんですが…(苦笑)。あとはやっぱり宮藤さんの笑いというか、リメイクすることによって日本的な笑いみたいな部分がものすごく含まれてて、やっぱり宮藤さんのホンは面白いなと思いながら読ませていただきました。映画デビュー作以来、16年ぶり山下敦弘監督作品への出演――映画デビュー作『天然コケッコー』以来、実に16年ぶりの山下敦弘監督の作品への出演となりました。感慨深いです。本当に感慨深くて、あんなに緊張した現場もないですけど(笑)。巡り合わせでまた、しかも宮藤さんの脚本でやれるなんて、こんなに嬉しいことはないなと思いながら、その中で、成長した姿を見せるというわけではないですけど、ひとりの俳優として監督と真摯に向き合うことで、より緊張感を増すというか…。ひとつひとつ言葉を自分の中で選択しながら、会話をしていったんですけど、やっぱりどこかで「がっかりされたくない」という思いもあって、それはすごく複雑な感じなんですけど…。でも、監督の演出の意図を感じながら映画を作るということに関しては、他の映画とは全然、思いが違うというのはありますね。――山下監督とは今回、どんな会話をされたんでしょうか?桜子役のオーディションがあって、そこに呼ばれて、ハジメくんとして相手役の方と演技する時間があったんですけど、最初の30分くらいはそこでハジメくんの演出を受けてました(笑)。それはそれで初めての経験で山下監督に「オーディションに来てほしい」と言われて行ったものの、自分の中でまだキャラクターが固まっていなかったんですが、でも、その時間がすごくよくて、みなさんとお会いしてお芝居する時間が楽しかったですし、ハジメくんの新しい一面がどんどん出てきました。あの時間が今回の映画で活きた気がします。――改めて、当時10代で、映画の現場に足を踏み入れた『天然コケッコー』の現場は岡田さんにとってどういう経験だったんでしょうか?たくさんの諸先輩方のお話を聞くと「デビューの頃の作品を超えることはできない」とみなさん、口を揃えておっしゃるんです。その意味がなんとなく、わかってきたところがあって、純粋な気持ちでカメラの前に立つことがなかなかできなくなってくるんですね。回数を重ねるたびによこしまな気持ちがわいてきて(苦笑)、見せ方とかを考えている時点で絶対的に(デビュー当時の気持ちに)勝てないんです。僕は(『天然コケッコー』を)見返すことができてないんです。どこか構えてしまって、公開時に映画館で観て以来、観てないんです。ありがたいことに何回か、(リバイバルで)流してくださる劇場があったんですけど、行こう行こうと思いつつ、行けなかったんです。山下監督とも「何かイベントがあればお声を掛けてほしいです」という話もしたんですけど、それくらい自分にとっては“原点”と言える作品で、ずっと超えられないもの、死ぬまで身体に残っていく作品のような気がしています。――当時、山下監督に言われて心に残っている言葉や忘れられない思い出があれば教えてください。当時、まず“映画監督”という存在を僕は知らなかったんですが、山下監督はだいたい現場でカメラ横で、なぜか口を隠しながら芝居を見てるんですね(笑)。モニターではなく自分の目で僕らの芝居を見てくれていて、その安心感は今回の現場でも感じましたが、『天然コケッコー』の時もそうだったので、僕にとって “監督”というのは、そうやってカメラ横で見る人なんだと思っていたんですけど、他の現場に行ったら、そういう監督はあまりいなくて…(笑)。もちろん、現場でモニターではなく、自分の目で芝居をジャッジする監督はいらっしゃいますけど。今回、この映画が始まった時、カメラ横にいる監督を見てなんだか嬉しくなりました。当時はまだデジタルではなくフィルムだったので「お前、フィルムだぞ!」と言われても、何のことか僕はわからなくて…。「デジタルと違って何回もやり直しが利かない」という、一発、一発の重要性をあの現場で教えていただきました。その後、デジタルが増えて「フィルムで撮ったことある?」とよくいろんなスタッフさんに聞かれるんですけど「デビュー当時に、フィルムで撮っていただきました」と言うと、みなさん「そうか、よかったな」とおっしゃってくださるんです。そういう時代を知っていることがいまにも活きていると思います。その後も何度かフィルムで撮っていただいた作品はありましたが、やっぱり緊張感があるし「フィルムっていいなぁ」って思いますよね。あの時は、季節が移り変わるのを待って、1か月空けて、また秋に撮影するということをやったんですけど、そういう撮影方法も、いまではいろんな事情でなかなかできないことだし、あんなに恵まれた環境で撮影をさせていただいてもらっていたことは、いまでも経験として良かったなと思いますね。今回もやっぱり、山下監督とのお仕事は何にも替えがたいもので、やってよかったなと思いました。一瞬、迷ったんです。監督とこの作品をやること――果たしてこの作品でいいのか? この役でいいのか? など思うことがあって、でもこの作品とこの役でもう一度、山下監督と出会って、映画をつくることは、僕にとって今後に活きていく経験になったんじゃないかと思います。歳を重ね、感じる変化「求められることのレベルも変わってきて…」――何をするにも周りよりも“1秒早い”ハジメを演じましたが、岡田さん自身は同じようにせっかちなタイプですか? それとも“1秒遅い”レイカのようにのんびりしたタイプですか?僕はどちらかというとせっかちなタイプですね。仕事の時はわりとゆったりやりたいんですけど、プライベートの時はスケジュール通りに進まないとダメで(笑)、友達と待ち合わせするにも早く行ってしまいます。――昨今、映画を早送りで視聴する人が増えたり、“タイパ(タイムパフォーマンス)重視”ということが叫ばれがちです。一方、映画の中で、登場人物のひとりが「世の中のスピードについていけなくて…」ということを言いますが、効率化の波にせきたてられて生きる中で、その言葉に共感する人も多いのではないかと思います。そうですよね。僕自身、台本を読んで共感する部分ではありました。生活のいろんな部分で効率化によってすごく助けられているし、快適さを感じるんですけど、全てが効率化されていってしまう中で「ついていけない」と感じる部分もあります。だからこそ「丁寧な暮らしをしよう」というのは日々の中でなるべく心がけていますね。朝食の時間、お昼の時間、掃除の時間、映画を観る時間――余裕を持って生活できるようにと心がけていますし、ちょっとアナログな生活をしてもいいんじゃないかと思いますね。――オリジナル版を観ての感想で、もし20代の頃に観ていたら、印象が変わっていたかもということをおっしゃっていましたが、10代、20代の頃と比べて、感性や考え方の変化を感じますか?ちょっとずつ感じるようになってきましたね。そもそも観る作品も、20代の頃はプライベートで恋愛映画を観ることがほとんどなかったんですけど最近、たまにそういう作品を観ると、人が人を想う気持ちが、より鮮明に自分の体の中に入ってくるのを感じます。今回、台湾のオリジナル版を見ると、主人公の家族たちが父親がいない生活をしていて、前面に明るさを押し出しつつも、どこか根底に「父の不在」という哀しみを共有しているところがあって、そんな家族の姿を見ているだけでウルッと来ちゃったんですよね。日本版でもレイカちゃんが、手紙でハジメくんに想いを伝えようとする部分でグッと来たんですけど、それは20代では感じられなかったことかもしれないなと思いますね。恋愛映画って、いろんな面が見えてくるんですよね。登場人物たちがいろんな表情を見せてくれて、それを面白いって思えるようになったのかなと思います。――仕事面でも30代になって、変化を感じますか? 岡田さん自身ももちろん、周囲に求められることや役柄も変わってきている部分はあると思いますが…。すごく変わったと思いますね。求められることのレベルも変わってきて、毎回「超えられるかな?」と心配になりながらやってますけど…(苦笑)。ここ最近、関わる作品ひとつひとつに重みを感じるというか、責任という意味でもそうですし、この作品における自分の役割やポジション、任せられる幅が20代とは全然違うと思うし、単に主人公というだけでなく、物語のキーパーソンとなる役や、周りを動かす役だったり、変わってきたなと感じています。――今回、この作品への出演を「一瞬、迷った」とおっしゃっていましたが、本作に限らず、作品への出演を決断する上でどんなことを大切にされていますか?絶対的に大事なのは脚本のクオリティなんですけど、最近は少しずつ“人”になってきました。「誰と」という部分がすごく重要で、今回は山下監督との縁がありましたが、そういう縁は大切にしたいなと思います。どの作品でも人との出会いがありますが、誰と一緒にやるがで、自分がどんな影響を受けるか、ということを以前よりも考えるようになったと思います。ヘアメイク:小林麗子/スタイリスト:大石裕介衣装クレジット:ジャケット、シャツ、パンツ、ミュール(全てNEEDLES)(text:Naoki Kurozu/photo:Jumpei Yamada)■関連作品:1秒先の彼 2023年7月7日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開©2023『1秒先の彼』製作委員会
2023年07月04日ロングセラーアイテム“角質美容水®”「タカミスキンピール」で大人気のドクターズ スキンケアブランド、タカミ。“角質ケア”にとにかくこだわったアイテムぞろいであり、その中でも2020年12月に発売された「タカミ美肌コットンクロス」の“バズり”で、ブランドの注目度がさらに高まっています。今回はタカミのPRマネージャーである三浦佳子さんにインタビュー。「タカミ美肌コットンクロス」の「バズりの裏側」について伺いました。■20万人以上の“生きている肌”を見てきたクリニックから生まれたブランドそもそも「タカミ」は、東京・表参道の美容皮膚クリニックの知見から生み出されたスキンケアブランド。毎日の”正しいスキンケア”の積み重ねで、肌は誰でも美しくなれると考えるタカミが、ご自身で自宅でも毎日使える製品を提供するために誕生したそう。公式サイトや店舗などで誰もが買うことができるものの、クリニックで20万人以上の“生きている肌”を見てきたことが大きな強み。「肌がすごく丈夫な方もいれば、くすみや赤み、にきびなどで悩みが絶えない方もいたりと、お肌のお悩みはさまざま。『タカミ』は一人ひとりの肌を見て、その方に何が一番必要かを考えて生まれた、ドクターズ発想の視点を盛り込んだスキンケアブランドなんです」と三浦さんは語ります。■角質ケアにこだわったアイテムを展開タカミは美肌のカギをにぎる肌表面の「角質層」に着目し、角質ケアにこだわったアイテムを展開しているのが特徴。さらに、即効性のある化粧品を提供するという観点とは異なり、良い意味で流行りに乗らず、シンプルなケアを継続して角質を育てることにより、肌の土台から整えることを提唱していることもポイントです。その理由は「28日周期といわれている肌のターンオーバーを整えることを意識して、根本から良い状態をキープしてあげるためには、角質の生まれ変わりのリズムをケアするための正しいお手入れを毎日の習慣にしていただくことがとても大切です。例えば歯磨きと同じように、当たり前のように毎日の習慣として肌表面の角質をケアしていただくことの大切さを、日々皆さんにお伝えしています」とのこと。ロングセラーアイテムである「タカミスキンピール」はまさにブランドの顔となる製品で、多くのお客様が定期便で毎日使い続け、無いと困るという声もあるほどの“お守りコスメ”になっているのです。■医療用に使うガーゼの素材を使い、肌への負担を最低限にタカミがこだわり抜く“角質”ケアアイテムのひとつが「タカミ美肌コットンクロス」。2020年12月に発売した、タオルで顔を拭くという固定概念を覆す、美肌のための顔拭き専用クロスです。発売のきっかけについて、三浦さんは「タオルでゴシゴシと拭いている行為が、美しい角質を育むためには肌に負担になっている、ということを知っていただきたく……何か、それをリアルに体感できるものを作れないかということで、このコットンクロスにたどり着きました」と話します。なんと言っても、その触り心地の良さに驚いた方は多いのではないでしょうか。素材には医療現場で使用される衛生品質でつくられたクロス素材をチョイス。肌との接点を極力なくすためのメッシュ構造が、肌表面の角質への負担を最低限にしながら水気を拭き取ることが可能です。さらに、吸水性も抜群。水分を拭き取ってもティッシュのようにびしょ濡れにならないところもうれしいポイント。サイズ感はちょうど顔をしっかりと覆えるほどで、クロスを広げて優しく押さえるだけで“摩擦レス”なケアがかなうのです。■“バズり”のきっかけは美容家さんやプレスの方による紹介しかしながら、こんなに「バズっている」人気アイテムなのに、現在タカミで広告を打っているのは「タカミスキンピール」のみ。「美肌コットンクロス」に関しては、広告を打ったことがほとんど無いというのです。そんな「美肌コットンクロス」がなぜバズったのか。そのきっかけは、美容家さんや美容メディアによる継続的な紹介でした。美容感度の高い方によるSNSや雑誌で“おすすめ”し続けてもらえたことが売り上げに火をつけたのだそう!「ジワジワと口コミが広がり、おかげ様で、ここ1年弱でパッと売り上げがアップしました」今やタオルではなくペーパーで顔を拭く習慣が広まりつつあるものの、タカミがそこに着目して発売したのはおよそ2年半前。いち早くタオルでゴシゴシと拭くことでの角質への負担に着目し、製品を発売していたということで、時代の最先端を走っていると言っても過言ではないでしょう。■絶妙なバランスの素材開発には難しさも「顔を拭くことまでもが、角質ケア」と捉え、アイテム開発を行ったタカミ。長年構想はあったものの、実際、具体的に動き始めてからは約半年ほどで発売に漕ぎ着けたそうです。スムーズに進んだかと思いきや、開発中には難しかったこともあったと言います。「とにかく角質に優しくないといけない。メッシュ感の目が粗すぎると、思ったようにしっかりと水分が取れないですし、目が細かすぎるとタオルやティッシュペーパーと変わらなくなってしまうので、“水分はきちんと拭き取れて、摩擦の負担を限りなく減らしつつも、肌に優しい柔らかさを”……というぴったりの素材にたどり着くまでには苦労したと、開発担当から聞いています」と、上手で絶妙なバランスの実現にまつわる苦労を明かしてくれました。そして最後に三浦さんは、こう続けます。「角質の大切さは、ご自身で理解して納得しないと、タカミがお伝えしている“角質ケア”の必要性がそこまで感じられないと思うので、コットンクロスのような小物にまで手を出しにくいですよね。ですが、そこまでしてこそやはり肌はきれいに保てるものという、私たちがずっとお伝えし続けていきたい思いがしっかりと込められたアイテムになっています。角質を整えるには、毎日の正しいスキンケア習慣を身につけることが大切。その意識があれば、美肌コットンクロスの良さも分かっていただけるはずなので、ぜひその上で愛用していただけたらうれしいです」自分への美肌のための投資として、タカミの角質を大切にするアイテムを取り入れてみてはいかがでしょうか。◇Information「角質で、人生が変わる」伊勢丹新宿店 POP UP SHOP2023年7月5日(水)~7月13日(木)に、伊勢丹新宿店 本館1階 化粧品フロアでPOP UP SHOPが期間限定OPENします。今回で10回目を迎えるPOP UP SHOPのテーマは「角質で、人生が変わる」。肌表面の角質について楽しみながら“見て・触れて・学ぶ”「角質美容」メソッドを体験できる他、通常は銀座路面店「TAKAMI GINZA」のみで実施されているプライベート「角質美容」レッスンをパーソナルに個室で受けることができます(要事前予約)。店舗情報伊勢丹新宿店本館1階化粧品/プロモーション所在地東京都新宿区新宿3丁目14-1営業時間10:00~20:00(状況に応じて順次変更する場合がございます)期間7月5日(水)~7月13日(木)電話注文03-3352-1111(伊勢丹新宿店 大代表) labo.com/shop/isetan/shinjuku/(取材・文:ameri、撮影:三浦晃一、編集:錦織絵梨奈/マイナビウーマン編集部)back number小林製薬「ナイトミン 耳ほぐタイム」がバズったわけ連載一覧はこちらから
2023年06月28日稲森いずみを主演に迎え、毎回反響を呼んできた金曜ドラマDEEP「夫婦が壊れるとき」がまもなく最終回を迎える。見逃し配信では、6月16日(金)の第11話放送終了後に「TVer」での全話累計再生回数が2,500万回を突破(※6月17日現在、第1話~11話、スピンオフ第1~3話の全話合算)。また、公式TikTokでもドラマの切り出し配信が総再生回数4,500万回を超えており、多くの視聴者が不倫された妻の壮絶な復讐劇を見守ってきた。最終回の行方が気になるなか、本作のメインライターを務めた脚本家・鹿目けい子さんにお話を伺った。世界的大ヒットドラマのリメイク「一番話し合ったのは主人公・陽子のキャラクター」まず、ドラマの反響について伺うと、「反響の大きさは率直に嬉しいです、が、正直『嬉しさ<安堵』という気持ちが強いです。金曜深夜の新枠、第一弾の作品なので、皆さん結果を残したいという思いが強かったです」と鹿目さん。金曜ドラマDEEPは大人がハマれる沼ドラマを目指した新枠だが、今作は十分な結果を残したといっていいだろう。原作となったのは、英BBCの「女医フォスター 夫の情事、私の決断」。韓国ほか各国でリメイクされた世界的ヒットドラマだ。「海外ドラマが好きなこともあり、『女医フォスター』は随分前に観ていて、その後、韓国版も観ました。BBC版も韓国版も、とにかく一気に見たことを覚えています。どの登場人物にもあまり共感は出来ないのに目が離せない(笑)。復讐する妻の狂気と、クズな夫、スピーディな展開に圧倒されました」。「女医フォスター 夫の情事、私の決断」 (C)APOLLOそして今回のドラマ化も、「タイトルを聞かずに、枠のコンセプトと海外ドラマリメイクで不倫ものという情報を聞いただけで『もしかして女医フォスターですか?』と、こちらから訊ねたくらいだったので(笑)」とすぐにピンときたよう。「同時にオリジナル版、韓国版の大ヒットはもちろん知っていたので、プレッシャーが大きかったんです」とも打ち明けた。日本オリジナル版の脚本を創りあげるにあたり「一番話し合ったのは主人公・陽子のキャラクター」だったという。「イギリス版の主人公は野性的で直情型、韓国版で描かれる主人公は、抑制の効いた理性的なキャラクターです。それは文化の違い、国による夫婦の在り方にも関係していると思います」と話しつつ、「日本版ではやはり日本の視聴者に共感をしてもらえる主人公を作ろうと、話し合いを重ねました。夫以外の男性と関係を持つことや、父の浮気を知ってしまった息子と対峙するシーンは、陽子にも観た人にも納得できるよう、そこに至る経緯を丁寧に積み上げました」と鹿目さん。プロデューサーや監督、脚本家(三國月々子さん・上野詩織さん)ら女性スタッフから参考になる意見をもらえた、と続ける。「複数の脚本家で作業する場合は、始めにメインライターが全体構成を考えます。今回なら13話の展開を先に考え、どこで話を区切るか、各話のクリフハンガーとなる出来事や、その回での主人公の心情の変化を明確にして情報を共有し、他のライターさんと同時に作業をしていきます。担当回以外の打ち合わせにも極力参加して、流れを掴めるようにしていました。コロナ禍以降リモートでの打ち合わせ参加が出来る環境が整ったこともあり、その辺りはフレキシブルに対応出来て良かったと思います」。稲森いずみが体現した感情移入できる主人公「本当にそこに陽子がいて」鹿目さんはこれまでにも、映画版から30年後を舞台に女子相撲を主軸にしたDisney+オリジナルドラマ「シコふんじゃった!」や、中国の大ヒットドラマを原作としたAmazonOriginalドラマ「ホットママ」など、既存の人気映像作品にオリジナル要素を加えて再構築する作品に携わってきた。「シコふんじゃった!」では「設定は映画の世界を踏襲していますがストーリーはオリジナルでした。ただ、映画で愛されたキャラクターも多く出てくるので、キャラクターの描き方には細心の注意を払いました」と言い、「ホットママ」も「“働くママ”という中国版の設定は生かし、話は日本オリジナル要素が強いです。予期せぬ妊娠をした女性に共感をしてもらい、愛されるキャラクターにすることを心がけました」とふり返り、「どの作品でもとにかくキャラクター造形には気を遣います」という。今作では主人公・陽子のキャラクターが「日本の女性に感情移入してもらえるか」が最重要となった。「例えば、話のロジック的には、陽子が夫以外の男性と関係を持つことは必要な出来事ですが、そこまでの感情の積み上げ方次第では、観る側が『あり得ない』となる危険性もあります。そうならないために感情を丁寧に積み上げました」と、説得力を持った心情描写で共感を得られるよう構築してきたことを明かす。「また、稲森さんを初めて現場でお会いした時には、本当にそこに陽子がいて、ぞくっとしました。改めて素晴らしい俳優さんだと思いました」と、感情移入できる陽子を見事に演じ切った稲森さんに称賛を贈る。“完璧”な陽子が「そもそもどうしてあんな人と結婚したのか」今作では吉沢悠が演じている不倫夫だが、そのクズっぷりは相変わらず。むしろ昂太は若々しい雰囲気で人懐こさがあるため、不誠実な言動とのギャップが際立ち、稲森さん演じる陽子には「とにかく幸せになってほしい」「報われるラストでありますように」といった応援の声がSNSに上がるほど。「昂太は、本当にダメな夫ですよね。そうなると、どうして陽子のような完璧な女性が、昂太と結婚したのか、視聴者が気になるのではないかと思いました。言葉で多くを語らずとも愛される男と考えると、吉沢さんのようなそこにいるだけで癒してくれる男性でなければいけなかったと思います」と鹿目さん。確かに、周囲から同情されることを嫌い、医師となり、母となり、副院長となってからも、何事も全力で打ち込んできた陽子にとって昂太は癒しとなる存在だったはず。その点では、日本オリジナルである「スピンオフストーリーでキャラクターの強化が出来たことも良かった」という。スピンオフは「主人公に共感してもらうことを目的としているところが大きい」と言い、「本編の23分では収まり切れなかった過去のエピソードを知ってもらうことで、いかに主人公にとって夫の存在が大切だったかということを描くためのストーリーにしました。また3本のうち2本は夫側のエピソードですが、本編では描かれない不倫に至る経緯が見えたほうが、より複雑な感情を持てるのではという狙いがあります」。「本編だけを見るとクズ男で、視聴者の中には、そもそもどうしてあんな人と結婚したの?と思うのではないかな、と。なので夫のキャラクターがこれまでのどんな出来事に裏打ちされたものなのかを描きました。ただ、あれを見て、さらに許せない!となるか、情状酌量、となるかはお任せです(笑)」。果たして、陽子はクズ夫と決別し息子・凪(宮本琉成)と自分の人生を守りながら幸せになることはできるのか。もしかしたら、原作とは違った結末が待ち受けている可能性も…?「同じラストであってもより共感してもらえるように、そこまでのエピソードを重ねていきました。違うラストであったら、それは、より最善のものを選んだということで…楽しみにして頂ければ、と思います」と、意外な結末も匂わせつつ自信を覗かせる鹿目さん。「原作にはシーズン2があり、夫の逆襲も描かれるのですが、それも日本でもやれたらいいな、という思いもあります」と、“続編”の可能性についても語っていた。第12話あらすじ夫を自分の人生から排除しようとする陽子(稲森いずみ)は、離婚の条件が書かれた書類と離婚届を昂太(吉沢悠)の元に送りつける。家も財産も息子・凪(宮本琉成)も全て陽子のもの…その要求に、昂太は納得できずにイラ立ちを募らせる。一方、芽衣(結城モエ)は睡眠薬を服用していることを康生(犬飼貴丈)に気づかれてしまう。「お前、あの医者に使われてるんだな」…陽子への仕返しを考えていた康生は、ほくそ笑んで理央(優希美青)と昂太の元に押しかけ、陽子と芽衣の関係を暴露する。また、離婚の条件をひっくり返そうと昂太が陽子のクリニックに乗り込んでくる。離婚書類へのサインを求める陽子に対し、「家も出て行かないし凪も渡さない」と反論する昂太は…。「夫婦が壊れるとき」は第12話は6月23日(金)深夜25時05分~日本テレビにて放送。放送後よりTVer、Huluにて配信。「女医フォスター 夫の情事、私の決断」と「夫婦の世界」(韓国リメイク版)はHuluにて配信中。(上原礼子)
2023年06月23日同じ監督の同じ作品なのに、国ごとにポスターのデザイン、そこから伝わってくるニュアンスが驚くほど違うことがある。それはまさに、各国の配給・宣伝会社が、そして何よりもデザイナーがその映画から何を感じ、どこを切り取り、何を観る者に伝えようとしているか? というクリエイティブの発露に他ならない。今回の【映画お仕事図鑑】は、ホン・サンス監督の最新作『小説家の映画』の公開を記念して、同作を含め、日本でホン・サンス監督の近年の作品のポスターデザインを担当してきた若林伸重、同じくアメリカ版のデザインを担当してきたBrian Hung(ブライアン・ホン)のオンラインでの対談をお届けする。6月16日(金)からは、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺、特集上映が決定したStrangerや代官山 蔦屋書店などで、2人が手がけたホン・サンス監督の4作品(『小説家の映画』(22)、『あなたの顔の前に』(21)、『イントロダクション』(21)、『逃げた女』(20))の日米ポスターを展示する、ポスター展も開催される。2人はどんなアプローチでホン・サンスの世界を切り取り、1枚のポスターに仕上げたのか? 日米クリエイター談義をご覧あれ!【プロフィール】若林伸重グラフィックデザイナーとして映画のポスターをはじめ、演劇や美術展のポスター、本の装幀のデザインなどを行なう。『花様年華』、『CURE』、『愛のコリーダ 2000』、『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』はじめ、ヴィスコンティ、ソクーロフ、ダルデンヌ兄弟、アルモドバル、侯孝賢、大島渚、鈴木清順、石井輝男など錚々たる監督たちの作品のポスターを手がけてきた。 Hung(ブライアン・ホン)独立系配給会社Cinema Guildのポスターデザイナーとして働く一方で、プロの料理人としての一面も持つ。ホン・サンス監督作品やジャ・ジャンクー監督『海が青くなるまで泳ぐ』(20)、ワン・シャオシュアイ監督『Chinese Portrait』(18)など、アジアの映画監督たちとの一連のコラボレーションで知られ、『逃げた女』のポスターは、定額配信サービス「MUBI」が選ぶ「2021年のベスト・ムービー・ポスター」に『LAMB/ラム』や『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』、『スペンサー ダイアナの決意』といった話題作と並び選出された。――お2人がデザインの世界に足を踏み入れることになった経緯、特に映画ポスターのデザインに携わるようになったきっかけについて教えてください。ブライアン:そもそも業界に入るきっかけは、映画の配給会社への入社でした。そこで映画に関するいろんなことを学んでいたのですが、ある時ふと、もう少し情熱をもって何か新しいことができないか? と考えたんです。映画の配給会社でしたので、そこにデザインの仕事もあることを知り、上司に「僕にもトライさせてもらえないか?」とお願いしたんです。そうしたら「いいよ。でも会社の仕事とは別にきちんと自分でそのための時間をつくりなさい」と言われました。それから自分でチャレンジした仕事が幸運なことに評価してもらえました。それがこの仕事をすることになったスタートでした。ブライアン・ホン(Brian Hung)氏イラスト若林:僕は映画会社の宣伝部で宣伝の仕事をしてたんです。とはいえ、もともと自分は美術畑の人間で、宣伝の才能がないことを自覚して、それで一からもう一度デザインの勉強をし直すために、デザイン会社に入社しました。映画会社の宣伝部にいたくらいですから映画は大好きで、ミニシアター系のポスターの仕事を自分で営業して受けるようになって、30年近くこの仕事をやらせてもらっています。若林伸重氏――デザインをされる上で、これまでに影響を受けた映画作品や印象深いポスターなどはありますか?ブライアン:ひとつ挙げるのは難しいんですが、私は上海で育って、当時はDVDレンタルのお店がたくさんありました。そこで何を借りるか? 映画の内容はわからなくても、パッケージのビジュアルを見て、面白そうなものを選んでいました。タイトルは覚えてないんですが、男性がひとりでイスに座っていて、彼の影が床に伸びているデザインを見まして、それはすごくシンプルなんですが、強烈な印象があって、何も知らないその映画を「観てみたい!」と思ったんです。その体験は、デザインというものに影響された最初の経験だった気がします。若林:映画のデザインを手がけるにあたって、自分は映画の作品を参考にしたことは一切なくて、むしろ横尾忠則さんや田中一光さん、井上嗣也さんといった、映画ではないデザイナーたちのデザインを研究し、どういうフォント、どういう色、どういう紙を使っているか? といったことを勉強し、それを映画に持ち込んでやってきた部分が大きいと思います。なので、自分の映画ポスターはあんまり映画らしくないデザインだと思うし、むしろそういうものをつくっていこうという思いでやっています。――映画のポスターの制作のプロセスについて、お聞きします。最初にオファーが届いて、その後、どのようにポスター制作を進めていくのか教えてください。若林:最初にオファーをいただいて、試写でその作品を観るんですが、そこで感じた自分の気持ちを心に留めておきつつ、打ち合わせをしながら先方が何を求め、自分はどんなデザインにしたいのか? すり合わせていきます。これはごく普通にみなさん、やってらっしゃることだと思います。僕はデザインにおいて、タイポグラフィを非常に大切にしているので、そこをガッチリと固めた上で、写真を触っていくという感じですね。正直に言いますと、デザインの過程で観客の存在というのはあまり考えないですね。自分がやりたいことを大切にしつつ、クライアントさん(=宣伝・配給会社)が喜んでくれればそれでいいというスタンスでやっています。ブライアン:いまのお話を聞いて、僕の仕事の進め方とよく似ているんじゃないかと感じています。最初に映画を観て、その時の第一印象をしっかりと心の内で忘れないようにして、クライアントとの打ち合わせに入るわけですが、基本的には自分が何を感じたか? ということを大切にしています。もうひとつ、クライアントの要望を聞きながら、彼らがなぜこの仕事を僕に頼んだのか? という部分について、理屈ではなく“ニュアンス”的なところでできるだけ理解して、仕事を進めるようにしています。若林さんもおっしゃったように、全くとは言いませんが、見た人がそれをどう受け止めるかというのは、どうでもいいことだと思っています。自分がやりたいことができたのか? それが唯一で絶対だと思っています。少なくとも、しばらく経ってから自分が見た時に、幸せに感じないようなデザインをしたくはないので、自分が好きなものをつくるということはとても大切にしています。――今回、お2人がデザインされたホン・サンス監督の『小説家の映画』のデザインに関して、具体的にどういったことを考えてデザインされたのか教えてください。ブライアン:決して“簡単な仕事”と言うつもりはないですが、作品によって、思いがけずとても多くの時間を要するデザインの仕事もあれば、ポンっと方向性やデザインが決まっていく仕事もあります。この『小説家の映画』に関していえば、間違いなく後者でした。物語を見ながら、重要なポイントをピックアップしていきましたが、白黒映画でありながらも、とても温かい印象を受けたんですね。この“温かみ”をポスターの中にどう取り入れていくか? ということがデザインのポイントでした。既に何度か一緒に仕事をしている配給会社だったということもあり、何度も打ち合わせや確認をすることもなく、非常にスムーズに進んだ仕事でしたね。『小説家の映画』アメリカ版ポスター――公園で向かい合って話をする作家のジュニと女優のギルスの姿を階段の下の方から引いて捉えています。どういう意図でこうした構図にされたんでしょうか?ブライアン:この映画の物語の中でも重要な部分は、やはり彼女たち2人の関係性だと思います。ホン・サンス監督は普段、あまり同じようなシーンを繰り返すことはしないのですが、この映画に限っては、階段が非常に多く出てくるんですよね。昇ったり、降りたりということが、幾度となく表現されます。そこに何か意味があると感じたので、これをポスターにも取り入れました。――若林さんは、2人がレストランで机を挟んで向き合うシーンをデザインに取り入れました。若林:ホン・サンス監督の作品を担当するのは4回目になるんですが、作品を重ねるごとに監督は非常により“とがった”ことを試していくので、それに付いていくのが大変ではあり、面白くもあります(笑)。僕の中で、ホン・サンス監督の作品のデザインは「デザインしてやるぞ!」と入れ込み過ぎるとダメなんですね。常にニュートラルに構えつつ、力まずにフッとうまく力を抜くということを心がけています。今回の『小説家の映画』に関しては、モノクロで長回しを多用し、会話も多く、カットも少ないので、場面が限られています。そういう意味では楽なんですけど、その中からいかにこの2人が良い表情をしているところをチョイスするか? といった、なかなか伝わりづらい部分で努力はしていますが、最終的にできあがったデザインを見た人が肩に力が入らないようなものにしたいなと思いました。『小説家の映画』日本版ポスター――タイポグラフィに関しては今回、どのようなことを大切に?若林:モノクロ作品であり、ある意味で「何も起こらない」映画なので、タイポグラフィも凝り過ぎず、一番シンプルでスタンダードなものを使いました。先ほども話しましたが「どうですか!」みたいな感じで見る人に訴えるようなものではないデザインを心がけました。タイポグラフィに関しては、読ませるべきことを読ませないといけない――写真などが邪魔して文字が読めなくなってしまっては本末転倒なので、情報を伝えるためにきっちりと固めた上で、空いた部分で写真を処理するというやり方をしています。写真は僕自身が撮ったものではないですが、タイポグラフィは自分で考えて作り上げていく部分なので、ある意味、自分の“信念”みたいなものなんですね。――おふたりとも、これまで同じホン・サンス監督の作品をいくつも担当されていますが、『逃げた女』のポスターを見ると、同じ作品のものと思えないくらい、印象が異なります。どんなことを大切にし、このデザインに至ったのかを教えてください。ブライアン:あのデザインは結構、苦労しました(苦笑)。当時、ポスターデザインの仕事に決して飽きたというわけではないんですが、同じようなことの繰り返しをしている気持ちになっていたんですね。ちょうどその時期にあの映画を観て、これまでにやったことのないデザインを試してみたくなって、やってみたんですが、クライアントからは即「ダメ」と言われまして…(笑)。そこでもう一度、自分のデザインを見直して、「この映画はこういう作品なんじゃないか?」と考えて、映画に寄り添いつつ、自分がつくっていて楽しいものをつくろうとやり直しました。その時、自分が感じていた停滞感は、新しいことをやろうとしてこなかったから感じたものなんだとわかりました。自分自身を楽しませて(=entertain)、デザインすることができたんです。それを見せたらクライアントはすぐに「これはいいね」と言ってもらえました。『逃げた女』アメリカ版ポスターその後、いくつか修正を加えて完成品になったんですが、黄色いラインが入っているのは、最後の最後になってふと思いついて入れてみたら、非常にうまくハマってくれました。あのデザインはいろんな意味で、自分に新しい方向性をもたらしてくれた楽しい仕事でした。若林:さっきブライアンさんがおっしゃったことですが、自分自身が満足できなくては他人を納得させることはできないので、いかに自分がつくったものに自信と愛情をもってプレゼンテーションできるか? ということが非常に大事だと僕も思います。『逃げた女』に限らずですが、ブライアンさんのデザインは空間、余白を多くとっていて、広がりを感じます。ホン・サンスの世界ってこういうものだなと僕も思います。ただ日本では、どうしてもメインキャストの人たちの顔が見えるくらいにしないといけないところもありまして、人物を小さく扱うというのはなかなか難しいんですよね。無名の俳優が主演の作品であればそれもできるかもしれませんが、世界に名を知られたキム・ミニですから、それなりに顔がわからなくてはいけないし、その上でホン・サンスが作り出すニュートラルな世界を表現したいということで、この『逃げた女』のポスターでは、上にキム・ミニが演じた主人公を置いて、下は大きく空間を入れるというデザインにしました。『逃げた女』日本版ポスターブライアン:若林さんと比べると、私はキャリアが短いので、ちょっと厚かましい質問になってしまうかもしれませんが、デザインに捧げる時間や労力と“効率性”についてお聞きしたいです。どんなに一生懸命、時間をかけてデザインをしたとしても、予算が少ない仕事もありますし、自分が捧げたものが報われるとは限りませんよね? それだけの時間を費やすことに意味があるんだろうか? と考えてしまうことがあります。そういう部分について若林さんはどんなふうに考えて、仕事をされていますか?若林:僕はどんな作品であっても、それが自分の仕事であることは変わりませんので、予算がある映画か否か? 規模の大きさに関係なく、常に同じスタンスで、効率ということについてもあまり考えません。僕の生活は仕事が中心で、仕事をする部屋に布団も置いてある状態で、疲れたらそこで寝て、起きてまたパソコンに向かうという生活を送っていて、仕事と日常を切り離してもいません。遊びも仕事の一部という感じです。そういう意味でも“効率”ということを考えることが一切ないんですね。『逃げた女』のブライアンさんのデザインを見ると、キム・ミニの姿をたくさん散りばめていますよね。これをやるのってすごく労力も時間もかかるので大変だったと思います。これを試したとして、もしNGになったら、その虚しさというのは本当に耐えがたいものがあると思うけど、それでもこのデザインにチャレンジして、形にしたということにうらやましさを感じています。日本でもこういうことができないかな…と思うくらい、素晴らしいと思うし、それはやはり、効率を考えず、それだけの時間と労力を掛けたからこそ生まれたんだと思います。ブライアン:僕は料理人としても仕事をしていまして、いまの段階で料理人のほうを本業として感じていて、その意味でデザインの仕事はプロでありつつも半分アマチュアのような、すごく中途半端な立場にいるなと感じています。台所で仕事をする上では、常にいかに効率的な動きで多くの料理を作っていくかということを考えなくてはいけないこともあります。それもあって、失礼かもしれませんが、そんな質問をしてしまいました。――映画の世界における映画ポスターのデザイナーという仕事の役割について、どのようなことをお考えですか?ブライアン:先ほどの話とも重なりますが、主演の俳優の顔を大きく見せなくてはならなかったり、クレジットを大きく出さなくてはならないなど、様々な縛りはあるとは思いますが、正直、自分にとってはあまりそれは重要ではなく、大切なのは映画の中からどこをハイライトとして抜き出すか? ということです。考えてみれば、ポスターが表現しているのは、その映画のごく一瞬を切り取ったものに過ぎないわけです。それがどういうふうに観る人に伝わるかをコントロールすることは不可能です。もちろん、制作会社のリクエストも含め、いろいろありますが、多くの要素を入れれば良いというものではなく、そんなポスターは何も伝えることはできません。私の役割は、映画の中のどこにフォーカスするか? その一瞬をとらえるということだけです。若林:おっしゃる通りで、お客さんというのは不特定多数なので、全ての人たちの好みに合わせるデザインをすることは不可能です。なので、まず自分がそのデザインを気に入る、そしてクライアント(配給・宣伝会社)の担当者が気に入ってくれる――この2つで僕は「よし」としています。ブライアン:同意です(笑)。若林さんは、デザイン案をプレゼンテーションする中で、ご自身の“エゴ”をどこまで出すべきか? ということについて、どうお考えですか?若林:プレゼンテーションする上で、自分のエゴを通したものを必ずひとつは提案すべきです。たとえ通らなくてもそうすべきだと思います。まあ、だいたい通りませんが…(苦笑)。デザイナーとしてそれをやらなきゃ楽しくないですよね。具体的に言うと、「クライアントが望むであろう」デザインを1点、「でも、自分はそうは思わない。こう思う」というデザインを1点、「その中間の」デザインを1点用意します。でも、それをやっているうちに、それらとはまた違った、「ちょっとぶっ飛んだ」アイディアがもうひとつくらい、浮かんでくるものなんです。なので、最終的には4点くらいを提案し、決めてもらいます。たまに最後のぶっ飛んだアイディアが採用となる場合もありますが、“エゴ”を通したデザインが採用されることは、なかなか難しいですね(苦笑)。ブライアン:いまのお話に出てきた4つ目の「ぶっ飛んだ」デザインの例を教えていただけますか?若林:以前、ウォン・カーウァイ監督の『花様年華』のポスターをデザインさせていただいた時、それこそ何十パターンものデザインをプレゼンテーションしました。クライアントさんのやりたいことが決まってないのか? それとも間に入る関係者の数が多すぎてなかなか統一できないのか? 詳細はわかりませんが、とにかくたくさんつくったんですが、なかなか通らないわけです(苦笑)。最終的に、僕自身が「この映画はこういうものなんだ!」と思って作ったのが、当時の35ミリフィルムを拡大して、トニー・レオンとマギー・チャンが寝そべっているものでした。「もうこれだけでいいじゃないか!」と(笑)。「これがダメならこの仕事は降りますよ」というくらいの思いだったんですが、そうしたらこれが通ったんです。こういうことがあるから、この仕事は楽しいんですね。『花様年華』ポスターブライアン:『花様年華』のポスターはいろんなものを見ましたが、若林さんのデザインは本当に大好きですし、本当に素晴らしいです! もうひとつ、質問させてください。黒沢清監督の『CURE』のポスターも素晴らしいです。若林さんが手がけたデザインの中でも最も好きなデザインのひとつです。まさにポスターを見て「この映画を観たい」と思いました。映画自体は暗めのトーンの作品ですが、映画に登場するいろんなアイテムが並べられたあのデザインは、間違いなく映画のハイライトであり、かつ楽しさを感じさせてくれます。どのような制作のプロセスであそこにたどり着いたのか教えてください。『CURE』ポスター若林:ありがとうございます。アメリカのAshley Bickertonというアーティストの「Bad」という作品で、世の中の“武器”――拳銃、ライフル、ミサイル、戦車、毒薬、爆弾など、ネガティブなモチーフを白い画面いっぱいにちりばめている作品があったんです。それを見て「あぁ、こういうデザインこそ映画でやってみたいな」と思ったんです。そうしたらちょうど『CURE』のお話をいただいて、あの作品がたまたま、古い病院にある注射器や古い本、拷問道具などが出てくる作品だったので、それを並べたら、日本では誰もやったことのないような映画ポスターになるなと思ったんです。やってみたところ、ちょうど黒沢清監督がそのデザインを気に入ってくださって一発OKが出たんです。ブライアン:そのアイディアが一発で通るというのは一番嬉しいことですし、すごいことですね。若林:監督の一発OKという形でなかったら、おそらく通らなかったんじゃないかと思います。監督のひと声が効きましたね。こんなに細かくアイテムを切り抜いて並べるって、デザインとしてはすごく大変なんですよね。これがダメだったら、労力すべて水の泡なんですけど、どこかで「黒沢監督はこれを気に入ってくれるんじゃないか?」という妙な自信がありましたね。――そろそろお時間になります。貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。若林:最後にひとつだけ。また『小説家の映画』の話に戻りますが、私のデザインした2人がレストランで向き合っているカットですが、実はこれは同一のシーンのカットではないんですね。このシーンは定点カメラで長回しで撮っているんですけど、それぞれがちょうど良い表情をしている瞬間を切り取って、合成してるんです。ただ2人の距離も離れすぎていたので、テーブルの幅も狭めて、近づけているんです。そういう裏話って、言われなきゃわからないものだと思いますし、もちろん、本来はお客さんは知らなくて良いことなんですけど。ホン・サンスの映画ってまさに優雅に泳いでいるように見える白鳥が実は水面下では足をバタバタと漕いでいるようなもので、水面下でデザイナーはなかなか大変な思いをしているんですけど(苦笑)、それが今回、良いデザインに仕上がり、とても満足しています。そこに至るまでに、ブライアンさんの空間を用いた階段のポスターを見て、良い刺激をいただいて「負けたくない」「じゃあ、日本のデザインはこういうものを見せよう」と思った部分がありました。ブライアン:そう言っていただけて嬉しいです。いろんなお話が聞けて楽しかったです。若林:僕もこういう機会は初めてで、緊張しましたが、もしまた次の機会があればさらに腹を割っていろんなお話ができたら嬉しいです。ブライアン:ぜひお願いします。若林さんのデザインのファンなので、これからも常にお仕事を見ています!『小説家の映画』は6月30日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほか全国にて順次公開。(photo / text:Naoki Kurozu)
2023年06月22日取材・文:ミクニシオリ撮影:稲垣佑季編集:錦織絵梨奈/マイナビウーマン編集部年齢とともに、どこからか湧いてくるキャリアへの不安。結婚、出産、引っ越しや実家へのUターンなど、まだ何か起こったわけじゃなくても「もしこうなったら、今の仕事は続けられないかも」なんて杞憂が止まらなくなる夜だってありますよね。そんな不安を漏らしたら、大阪の老舗家庭用品メーカー・タイガー魔法瓶株式会社の東京支店で、広報として働く林優紀さんは「意外となんとかなるものですよ」と笑ってくれました。双子を出産し、育休から復帰して2年になる林さん。結婚を機に東京への移住が決まり転職を考えていたものの、上司や先輩との交流がきっかけとなって、東京支店への異動が決まったそう。自分のライフスタイルに合わせて、働き方を柔軟に変えている林さん。そんな彼女が働く上で一番大切にしていることは、自身が「笑顔になれる瞬間」でした。■風通しの良い会社で新卒から手を上げ続け、興味のあった広報宣伝チームへまずは、林さんのキャリアについて教えてください。新卒でタイガー魔法瓶に入社して、今年で社会人10年目になります。入社時から3年は営業職としてお客様の声を直接聞くことができて良い経験を積むことが出来ましたが、当時からマーケティングや広報に関わる仕事がしたいと思っていました。もともとインターネットやSNSが好きで、学生団体でも広報業務を担当していたので、いつかはその興味関心を仕事に活かしたいと思っていました。では、現在の広報宣伝チームには社内異動されたんですね。そうです。1年目の時からずっと希望を出し続けて、4年目に広報宣伝の部署に異動することができました。そんなことで部署異動できるのかな、と思ってはいたのですが、新卒時お世話になった先輩にも背中を押されて挙手し続けていたら、タイミングよく異動できたんです。やりたいことに声を上げる大切さも感じますが、新卒社員の声を受け入れてくれる会社側もすてきですね。そうですよね。本社が大阪ということもあり、東京支店も関西の人が多いのですが、アットホームで風通しのいい職場です。社内の空気も明るく、コロナ前はみんなでスポーツ観戦やゴルフに行くことも多かったですね。コロナ禍ではテレワークも導入され、状況に合わせて働けるようになりました。私自身、コロナ禍で産休・育休を取ったのですが、そういった制度も使いやすかったです。東京支店は林さんが一人で広報業務を行っていると聞きましたが、それでも産休取得が可能だったんですね。もともと新卒の時に東京支店に営業で配属されていたのですが、広報宣伝チームに異動になって、大阪本社で働くことになったんです。その間に結婚したのですが、パートナーが東京で働くことになり、私も会社を辞めて東京で転職活動するしかないと思っていました。しかし、そのことを上司に相談したところ、上司もちょうど「メディアの方が多い東京に広報が常駐できればより効率がよいのでは」と思い描いていたようで、タイミングよく、東京支店にも広報宣伝チームができることになって、転職せずに東京で働けることになりました。そういうことだったんですね。タイミングが良かったのもあると思いますが、会社の柔軟さにも驚きます。本当にその通りで、私も会社にもチームメンバーにも感謝しています。相談しづらくて上司に言えていなかったら、転職して別の道を歩いていたかもしれません。タイガー魔法瓶は知名度はあるのですが、実際は社員750名ほどの中小企業なんです。だからこそ社員同士の距離感も近く、気づけばいつも先輩や上司の後押しがあって、キャリアと人生のバランスを取りつつ働けています。■時短勤務でもチームメンバーとのコミュニケーションを大切に林さんは現在、どんな仕事に携わっているんですか?主に企業に関わる広報やSNSの担当をしており、今は100周年関連の広報活動が中心となっています。最近では、100周年記念の「レトロ柄復刻シリーズ」などの商品に関わっていました。うわあ、かわいいですね!レトロ柄復刻シリーズは予約期間から大きな反応をいただけています。うちの自信作なのですが、土鍋圧力IH炊飯器「土鍋ご泡火炊き(ごほうびだき)」で炊いたご飯もすごくおいしいんですよ。今日は実際に「土鍋ご泡火炊き」でご飯を炊いてみたので、もしよろしければいかがですか?え!いいんでしょうか……。それではぜひ!……(お米を食べながら)めちゃくちゃおいしいですね。お米一粒一粒がたっているし、お米の甘味を感じます。そう言っていただけてうれしいです!この商品のように、関わる商品は自分でも良いと思えるものばかりなので、やりがいに繋がっています。小さなお子さんがいると思うのですが、フルタイムで働いているんですか?子どもはまだ2歳で、双子ということもあり子育てにも七転八倒しており……夫とうまく協力し合っているのですが、今は時短で働いています。支店に同じ部署メンバーがいないということは、終わらなかった仕事は持ち帰ることも多いのでしょうか?本社の広報宣伝チームメンバーとは、普段からチャットやビデオ会議でやり取りしているので、仕事があぶれてしまう時は本社メンバーにお願いする時もあります。本社勤務の時は毎日顔を合わせていたメンバーなので、頼みづらさを感じすぎることもなく、お互い手が空いている時は助け合っています。離れた場所で働いていてもチーム仲が良いなんてすてきですね。今はリモート環境に助けられることもありますが、出社することや飲み会などでコミュニケーションを取っていた時期が長かったことも大きいと思います。だからこそ、出社の際は積極的に声がけしたり、雑談もしたりして、支店のメンバーとのリアルコミュニケーションも大切にしています。そういったコミュニケーションがあるからこそ、仕事と子育ての両立が実現できているのでしょうか。そうですね。広報担当は社内の色々な方と関わりますし、コミュニケーションがあるからこそ、自分の働き方を理解していただけていると思います。子育ても、パートナーとコミュニケーションすることでうまく分業できています。林さん自身も、子育てと仕事の両立のために工夫していることはありますか?今年は会社が100周年を迎えたこともあり、広報の業務も繁忙期ではあったのですが、スマートフォンでできることなら移動中など時間を見つけてこなすようにしています。また、夫がリモートで働ける日は家事や育児に時間を割きやすいので、パートナーとも出社日を調整し合って、出社日に関してはコミュニケーションをとって、どちらかが育児しやすい状態を作れるようにしています。■食に関わる仕事で生まれた「笑顔」が、キャリアの主軸に実際に10年働いている林さんから見て、タイガー魔法瓶の魅力ってなんですか?風通しの良い社風もそうなのですが、自分にとっても身近な食に携わる仕事ならではの温かみを感じるところでしょうか。タイガー魔法瓶の主力商品は、ポットや水筒、それに炊飯器など。新しい製品をPRする時には、営業メンバーや私もキッチンフロアに集まって実際に調理をしてみて、試食して商品の良いところを見つけていきます。会社でも何回もお米を炊いているんですけど、そんな環境が社員同士の結束を深めているなとも感じます。自社の商品でおいしいご飯を食べながら、新入社員などまだ関わったことのない社員と話ができることもあります。飲み会や社員旅行も良いですが、社内で交流できるのも良いですね。お米の炊き比べをしたり、時にはホットプレートでたこ焼きを焼く練習をしたり……仕事の合間に、ふと笑顔になれる和気あいあいとした時間が流れるのは、タイガー魔法瓶ならではの空気だと思います。林さんは今後もタイガー魔法瓶に務め続けたいですか?これからのキャリアをどう考えているのか教えてください。参考になるか分かりませんが、私はあまり先の将来のことは考えない方なんです。会社もメンバーも大好きだし、広報の仕事が楽しいと思っています。一方で、10年後に全然違うことをしている未来が無いわけではないと思っています。将来の見通しを立てないことに、不安を感じることはありませんか?そもそも、私が今タイガー魔法瓶で働いているのは楽しいからなんです。目の前の楽しいことに没頭しながらも、興味の方向が変わる時が来たら、また楽しい方向に向かって進みたい。そのタイミングがいつかは分からないけれど、そのことを不安に感じたことはないですね。林さんが子育てや仕事を楽しめている理由はなんですか?好きなことをやっているということがすごく大きいと思います。でも、働く中でも子育てする中でも「よく考えたら、大変かも」と思うことってたくさんあるんです。でも、それと同じくらい楽しいと思える瞬間があるから、自分の中では楽しい方にフォーカスを当てているんだと思います。一番のやりがいは、子どもが自分の関わる商品を知ってくれていることですね。自然と(タイガー魔法瓶の)虎のモチーフを好きになってくれたり、自社の子供向けの水筒をうれしそうに持っていたりする姿を見ていると、私も笑顔になれるんです。もしこれから先大変なことが起こっても、つらいという気持ちより「笑顔の時間」を大切にしていきたいと思っています。
2023年06月22日“運命の分岐点”は誰の人生にも訪れる。あのとき、こうすればよかった。このとき、こちらを選択すればよかった。『ザ・フラッシュ』の主人公であり、幼いころに母親を亡くしたスーパーヒーロー、フラッシュことバリー・アレンも、運命の分岐点と選択がもたらしたものに苛まれる。そんな彼を見守り、ともに戦うことになる仲間として、劇中にはスーパーガールことカーラ・ゾー=エルが登場。その吹き替えを担当した橋本愛に、役柄と声の演技について、さらには自身の“運命の分岐点”について聞いた。「“後悔はしないけど反省はする”の気持ちで行きたい」という橋本さん。その真意は…?イメージとは全く違う役への挑戦「徐々にいろんな表現をしていきたい」──スーパーガールことカーラ・ゾー=エルのキャラクターをどう捉えましたか?スーパーマンのいとこであるカーラは強さやかっこよさ、たくましさを持つ一方、繊細で儚く、弱さも持ち合わせている人。けれど、弱いからこそ人の痛みが分かるし、人を助けたい気持ちもあるんですよね。そういった彼女の愛情深さや温かい人間味を感じながら演じました。──声を演じるにあたり、気をつけたところは?演じられているサッシャ・カジェさんの声質やトーンと全く同じにするのは難しくて。ですが、限りなくにじり寄る気持ちでやりました(笑)。声って、ある程度は骨格や体格で決まってくるものですよね。でも、「この体からこの声は出ないよな」とは思ってほしくなかった。サッシャさんの表情を見て、声を聞いて、何を感じながら演じていらっしゃるのか、なるべく汲み取りながら演じたかったんです。リスペクトを持って演じるという意味でも、彼女の表現からかけ離れることはしたくありませんでした。──劇中では、カーラのすべてが描かれるわけではありません。彼女の過去などについて、想像を巡らせたりもしましたか?私自身の解釈でしかありませんが、1つ想像したのはクリプトン星が滅んだときのこと。カーラとカル=エル(スーパーマン)は唯一の生き残りとして、故郷が滅びる瞬間を見ているわけですよね。それってものすごい体験だし、想像しようもないほど壮絶な心境になったと思うんです。と同時に、何かが滅んだ瞬間を知っているからこそ、何かを守るという気持ちの強さが彼女の中に芽生えた気もしていて。そのあたりの心の変遷は自分の中ですごく想像しました。──声だけでなく、カーラのようなスーパーヒーローを演じたい願望はありますか?可能であれば、もちろん演じたいです!体はまだ硬いんですけど、アクションが好きなので。実はプライベートでキックボクシングやダンスを習っていたりもするんですが、そういったイメージが私にはあまりないかと…。機会があれば、ぜひよろしくお願いします(笑)。──パブリックイメージから離れた役柄を演じて驚かせたい気持ちも?なんて言うか、私の中にはいろんな人格があって。しかも、対極の人格がいっぱいあるんです。でも、今はまだその中の2つか3つぐらいしか認知されていない気がして。これまでのイメージとは全く違う役をいきなり私に託すのも難しいとは思いますが、徐々にいろんな表現をしていきたい気持ちはあります。──人格はいくつぐらいあるんですか?いっぱいあるんですよ、本当に(笑)。幼稚園児みたいな自分もいれば、大人びた自分もいる。上品な人がいるかと思えば、ヤンキーみたいな人もいる(笑)。優等生もいるしギャルもいる。盛りだくさんで楽しいですけどね。そんな子たちをいつか解放してあげたいです。過去のすべての選択とともに生きる──ぜひ(笑)。さて、本作では“運命の分岐点”が物語の鍵を握りますが、橋本さん自身、「あの瞬間があったから、今の自分がある」と思えるような出来事はありますか?たくさんあります!それこそ声に関して言うなら、(『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』で)成島出監督とご一緒したとき、「昔の日本女優のような声を出してほしい」という演出を受けたことがあって。当時の私の体の使い方では、監督の要望に応えられなかったんです。けれど、「君の骨格なら出せるはず」と粘り強くおっしゃっていただき、トレーニングを重ね、新しい声を出せるようになりました。自分の声に興味を持ち始めたのもそのときからですね。「あっ、こんな声も出るんだ」って。そういった発見が面白かったし、成島監督との出会いがあったからこそ、自分の中に広がるものを感じました。──逆に、過去をやり直したいと思ったことは?そういった気持ちを持ったことがないと言えば嘘になりますが、この『ザ・フラッシュ』やタイムループを題材にした作品たちのおかげで、過去を変えてもあまりいい結果にならないと学んで(笑)。結局、「今が大事」という結論にたどり着きますよね。もちろん、失敗した直後は「もう、変えたい…」と思います。でも、その失敗がないと学べないし、学べていないからミスが起こる。だから、「後悔はしないけど反省はする」の気持ちで行ければ。──もともと前向きなタイプですか?もともとなのかな?少なくとも今はそうです。私の好きな言葉に、「そのときにした選択は、それしか選べなかったから選んだ」というものがあって。どんな選択もそのときの自分の限界であり、そのときの自分の最善だったと考えるようになってからは、いい意味で仕方がないと思えるようになりました。それが未熟な自分にとっての頂点だったということは、その頂点をこれからいくらでも突き破っていけるという伸びしろを意味しているとも言えます。そう考えることで、過去のすべての選択を許せるようになりました。──「過去のすべての選択を許す」のは、なかなか難しいことでもあります。「許す」というより、「ともに生きる」と言ったほうがいいのかも。これも言葉の話になりますが、深田晃司監督の『LOVE LIFE』という映画で、主人公が経験した過去の過ち、喪失に対して、「君だけは乗り越えるな」といったような台詞があって。例えば大切な人の死を周りがどんなに乗り越えようとも、私だけは乗り越えなくていい。悲しい気持ちを無理になくさなくても、それと一緒に生きればいい。そういった考えが、私の姿勢の基本になっているのかもしれないです。──最後に、ご自身の俳優人生を変えた“運命の映画”についても聞かせてください。15歳のときに出演した『桐島、部活やめるってよ』です。当時はまだ、この仕事に対して何の覚悟も誠実さもなくて。そんな中、同年代の共演者さんたちが信念を持ってお芝居に取り組んでいる姿を見て、「このままではこの人たちに失礼だな」と思うようになりました。自分はこの道から降りるのか、続けて頑張るのかを考えたとき、彼らに追いつきたいなと思ったんです。あの映画によって自分の基盤みたいなものが形成されましたし、日本映画の至高に携わることができたという意味でも思い入れのある作品ですね。(text:Hikaru Watanabe/photo:Maho Korogi)■関連作品:ザ・フラッシュ 2023年6月16日より全国にて公開© 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved © & TM DC
2023年06月20日仕事終わりやおいしい料理のおともに、友人たちとのひと時に、お酒を飲みたくなる人も多いのではないでしょうか。ライフスタイルの変化から、健康面を気にかける人が増え、お酒を飲むタイミングや頻度はもちろん、ノンアルコール飲料(以下、ノンアル)を好んで選ぶ人も増えてきているのだとか。日本コカ・コーラ株式会社(以下、コカ・コーラ社)は、2018年に『檸檬堂』でアルコール飲料に参入。2022年には、レモンサワーテイストのノンアルコールブランドとして、『よわない檸檬堂』を発売しました。『よわない檸檬堂』は、どのようにして誕生したのでしょうか。ブランドマネージャーの岸田卓真さんに、ノンアル商品の開発についてお話をうかがいました。日本コカ・コーラ株式会社マーケティング本部岸田卓真さんお酒が好きな岸田さんも、リモートワークになった時に、ノンアルを日常的に飲むようになった一人。「『檸檬堂』で培ったおいしさというものを、ノンアルコールで酔うことなく提供できるのではないか。飲まなくても楽しみたい、楽しめているという人たちに喜んでもらえるものをノンアルコールで届けていく」という想いから、『よわない檸檬堂』を開発したのだそうです。左から『よわない檸檬堂』、『よわない檸檬堂すっきりレモン』ノンアルコールとは思えない、お酒らしい余韻SNS上では、お酒が好きな人や飲めない人、飲みたいけど飲めない人から「うまい」「箱買いしたい」「ロング缶も発売してほしい」という声もあるほど人気な『よわない檸檬堂』ブランド。より多くの人がノンアルを楽しむ味にするには、一筋縄ではいかなかったそうです。岸田さんに、味開発の担当者とともにこだわった点をうかがうと…。当たり前のことですが、味づくりで一番気にかけたのは、おいしさです。『よわない檸檬堂』をお酒くさくすることはできるんですけど、やっぱりおいしいものを楽しんでいただきたい気持ちがありました。『檸檬堂』の時は果汁感など、レモンサワーとしておいしいとはなんだろう、と…。『檸檬堂』と『よわない檸檬堂』は別ブランドですが、その時に培った、おいしいレモンサワーを作った経験から、おいしいノンアルのレモンサワーを追求するとどうなるのかと、追求しましたね。おいしさとお酒らしさの両立が一番苦労しました。ノンアルのレモン味の炭酸飲料といえば、レモンスカッシュを思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。レモンサワーとレモンスカッシュの違いが気になった筆者。岸田さんに尋ねると…。この議論はよくありますよね!レモンスカッシュはリフレッシュ、スッキリという感じが強いと思います。一方で、ノンアルコールのレモンサワーテイストでは、お酒を飲んだような余韻や、お酒を飲んだような気持ちになれるリラックス感を、味や香りで楽しんでもらえるというのが、すごく大事だと思っています。すっきり感だけではなく、お酒感を味わいたいときにノンアルのレモンサワーを手にする人にとって、納得の答えではないでしょうか。開発に関わった担当者たちが、お酒らしさにこだわったからこそ、お客さんの期待を超える『よわない檸檬堂』が誕生したのですね。『よわない檸檬堂』が醸し出す居心地のいい雰囲気さまざまな食材と食べ合わせがいい『よわない檸檬堂』。その中でも、特に合うおすすめのおつまみを、岸田さんが用意してくれました。2022年2月に発売したオリジナルの『よわない檸檬堂』には、カットフルーツをチョイス。『よわない檸檬堂』はジューシーなレモン感と甘さ、そしてお酒の余韻を感じるほどよい苦みがあり、ひと口ひと口をじっくりと楽しむことができます。レモン味の飲み物に、フルーツとは一見不思議な組み合わせですが、フルーツの甘さとレモンサワーの甘さや苦みが合わさって、満足感が味わえます。カットフルーツのほかにも、ヤンニョムチキンなど、ガツンと濃いめなおつまみにも、マッチしそうです!早速、2本目を空けようとする岸田さん2023年4月に発売した『よわない檸檬堂』ブランドの新フレーバー『よわない檸檬堂すっきりレモン』には、特にお漬物がピッタリとのこと。お漬物の甘さと塩味に、合わないはずがないレモンのすっきり感と、味をキュッと引き締める苦み。パクパクとお箸を進めながら、缶を持っているほうの手がとまりません!『よわない檸檬堂すっきりレモン』は、オリジナルよりも甘さが控えめで、苦みが引き立ち、すっきりとした味わいなので、暑くなるこれからの季節には、より一層飲みたくなりそうです。食事と合う『よわない檸檬堂』ブランド。味だけではなく、食卓に並べたときのビジュアルも楽しんでもらおうと、パッケージにもこだわりがあるのだそう。このパッケージは、食卓に置いてもさまになるようにしているのですが、身近に感じてもらうようにも工夫していて、さまになるけど親しみやすいんですよ。お客さんからも評判がよくて、SNSでも缶と食事を一緒に載せてくれる人を見かけると、担当としてはすごく嬉しいですね!いい晩酌、いい食事、休みの日の旅行先とかでも。例えばハンドルキーパーの人は飲めないけど、楽しみたいじゃないですか。そんな時にも、ノンアルコールだけど飲めるという瞬間を演出できると思っているので、みなさんの飲む瞬間を写真に撮っていただけると嬉しいです。『よわない』と平仮名表記にしているのも、肩ひじ張らずにカジュアルに楽しんでもらいたいというちょっとしたこだわりが込められています。愛おしそうに『よわない檸檬堂すっきりレモン』を眺める岸田さんコカ・コーラ社だからこそできた『よわない檸檬堂』カシュッと缶を開けて、口元に缶を運んだ時に新鮮なレモンの香りと、さわやかな炭酸がふわっと香ってきたのも印象的だった同商品。 缶を開けたところから、コカ・コーラ社がつくったものだと分かります。果汁飲料をずっとつくってきている会社なので、果汁と炭酸を組み合わせるのは強いと思うんですよ。そこにさらに『檸檬堂』の経験があって、「お酒らしいおいしさってこうだよね」というのがある。だから、ノンアルコールができたと思うんですよね。一足飛びに、『よわない檸檬堂』には行きつけなかったと思います。アルコールブランドの『檸檬堂』をやったからこそ、「我々のノンアルコールってこうだよね」というところに行きつけたのかな。それでも、さらなる探求は続けていきたいですね。「ノンアルコール業界が面白くなってきている」と、感じている岸田さん。「『よわない檸檬堂』もより面白くなれるよう、ノンアルコール業界のみなさんと一緒に楽しんでいきたい」と語ります。にこやかに話す岸田さんからは、ノンアルコール業界の躍進に燃える熱い気持ちと、『よわない檸檬堂』を愛する気持ちがあふれていました。これからも『よわない檸檬堂』の動向に注目です!『よわない檸檬堂』が緊張感をほぐす[文・構成/grape編集部]
2023年06月12日初めて“岸辺露伴”に触れた者は、その奇妙さと比類ない面白さの融合にいささか戸惑うことだろう。高橋一生が主演を務め、飯豊まりえが共演する「岸辺露伴は動かない」が最初に放映されたのは、2020年のことだった。「ヘブンズ・ドアー」の言葉で人の顔が本になり、その人物の経歴や考えが読める特殊能力を持つ、人気漫画家の岸辺露伴。実写映像にするには、あまりにもトリッキーな露伴先生を、飄々とやってのけたように見える高橋さんの稀有な存在、そしてそんな露伴を「先生~!」と明るくタックルする担当編集・泉くんを演じた飯豊さんの潔さ。「一体これは何を見ているのだ…」という不思議な気持ちが、容赦ない面白さとディテールまで完璧な演出と美術にいつしか夢中になり、「もっと見たい」の興奮へと相成る。中毒になる独特の世界観は、荒木飛呂彦の原作の映像化の最高峰と言っていいだろう。映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』は、高橋さん、飯豊さんというキャストのほか、渡辺一貴監督、脚本を担当した小林靖子らドラマの製作陣が再集結。ルーヴル美術館でこの世で「最も黒い絵」を見るべくパリに向かう露伴と泉が描かれるかたわら、その絵にまつわる露伴の青年期パートも展開され、新たなストーリーで魅了する。露伴と泉という稀代のバディを演じた高橋さん、飯豊さんのふたりに、撮影にまつわるエピソードなどをインタビューした。チームでの撮影は「幸福な現場」――1~3期までのドラマを作り上げたメンバーで『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の製作となりました。このチームワークでの撮影は、いかがでしたか?高橋:実は、1期のときからあくまで夢の話として映画の話をしていたんです。(渡辺)一貴さんから「一生さん、その動きは『ルーヴル』のときに残しておいてもらえませんか?」などと言われたり。だからか、『ルーヴル』のお話をいただいたときは、とても自然に受け入れることができました。実際、現場でフランスのスタッフの方々を見ていても、特段、日本のスタッフと変わりないんです。「全世界共通なんだな」とわかって面白かったです。ですから、映画を撮るんだ!という気負いのようなものは、ほとんどなかったかもしれません。――フランスで撮ったから特別どうこうではなく、これまでやってきたことを地続きでできたということですね。何とも『岸辺露伴』らしいお話です。高橋:『岸辺露伴』のチームは、海外に来たからといって何かが変わることなく、いつも通りの感覚で撮影をしてくださいました。シーンの頭から最後まで一連で通して撮り、余韻を残しながら撮影が進んでいく。その流れは非常に一貴さんらしい、まったく地崩れしていない作品への思いのようなものをスタッフワークとともに感じました。とても楽しい、幸福な現場だったと思っています。――飯豊さんはこれまでも『岸辺露伴』の現場は最高だとおっしゃっていたそうですが、本作の撮影も同じでしたか?新たな感慨も生まれたんでしょうか?飯豊:今、一生さんがおっしゃられていたみたいに、一貴さんは一連で撮ってくださるので、これまでと変わらずいい緊張感の中、泉くんを演じさせていただくことができました。それに加えて、初号を観させていただいた時に、人のいないルーヴル美術館の静けさを、そのまま体感できるような、堪能できる感覚がありました。すごく見どころだと思いますし、余白が楽しめる作品になっていて、改めて今作に参加させていただけた喜びをかみしめています。菊地(成孔)さんの音楽も本当に素晴らしくて。いろいろな楽器で演奏されているのですが、クラシックや日本的な音楽、様々なものが織り交ぜられているところや映像美と音楽の融合が本当に格好よかったです。本当に早く皆さんに観ていただきたいです。『ルーヴルへ行く』は露伴が能動的に動いていく――飯豊さん演じる泉くんは、1期からずっと露伴先生を傍で見てきています。『ルーヴルへ行く』の撮影で、改めて発見した露伴先生のすごさ、演じた高橋さんのすごさなど、どう感じていますか?飯豊:映画を観ていただけたら露伴先生の魅力は存分に感じていただけると思います!今回で言いますと、冒頭、骨董品屋さんで露伴先生が取材しているシーンがあるのですが、そこの店主たちが「ヘブンズ・ドアー」をされるところから、圧倒的でした。――反対に高橋さんからご覧になって、露伴先生を通しての泉くんの魅力はどう感じますか?高橋:1~3期を通して、泉編集が一番の強敵だということを(露伴は)だいぶ理解してきたのではないでしょうか。なぜならば、泉編集が何か問題を持ってこなければ、露伴も怪異に対峙することはありませんから。また面白いのが、彼女自身には悪意がまったくないということ。それが大体わかってきて、ある意味感心する、という感覚になっているんじゃないかと思います。泉編集は露伴の能力を一度たりとも見ていなくて、それが3年続いていますから、その時点でかなり不思議なバディだと思います。露伴のことをすごい漫画家ではあるとは思っているけれど、その漫画をちゃんと評価できているかどうかは…(笑)。飯豊:「偏屈だなぁ、一筋縄ではいかないなぁ~」みたいに思っているかもしれませんよね(笑)。高橋:その不思議なバディ感が熟成されてきていて、露伴自身も「次は何を持ってくるんだろう」という気持ちを抱いているんだとは思うんです。――露伴先生的にも楽しんでいらっしゃるといいますか。高橋:ただ、好奇心で顔をつっこむと痛い目に遭うということはわかっているので、その覚悟のようなものは持っていると思います。もともと「岸辺露伴は動かない」は、露伴が能動的に動いていくことはなく、受動的に事件が舞い込んでくるんです。けれど、今回は『ルーヴルへ行く』と能動的になっている。自分が何かを感じて初めて能動的に動くので、そこで泉編集がどういう風に立ち回っていくか、そのあたりも注目してもらえるといいのかなと思います。泉編集と岸辺露伴、それぞれの過去の話が出てくるので、人間的な奥行きは、より深まるんじゃないかなと思います。露伴の声は「17歳ぐらいのときから、ずっと脳内でイメージしていた声」――そもそもの話になってしまいますが、高橋さん演じる露伴先生の声は非常に独特でぴったりですよね。どのようにあの声を生み出していったのか、製作秘話を伺いたいです。高橋:1期の初日のファーストシーンは2話の「くしゃがら」で(森山)未來と共演するシーンだったのですが、そのときにはもうできあがっていました。ですから…1話の冒頭、(中村)まことさんと増田(朋弥)さんと一緒のシーンのリハーサルのときだったのかもしれません。――露伴の家に強盗が入ってくるところでしょうか。高橋:そうです。撮影に入る前にリハーサルをさせていただいて、そのときに一貴さんが「すごくいい」と言ってくださって。僕が17歳ぐらいのときにはじめて露伴と出会ってから、ずっと脳内でイメージしていた声を出しました。――その声で原作を読まれていたということですよね。高橋:はい、そうです。第一声から“その声”が出たのは、自然だったかもしれません。――最後に、おふたりがお気に入り&お勧めの映像作品を、何か1本ご紹介いただけますか?飯豊:すごく迷います。何回も観ているものなど…何にしましょう!高橋:なかなか思いつかないですね、こういうときは。飯豊:今パッと出てきたのは、ディズニーの『ソウルフル・ワールド』という作品です。「人生のきらめきとは何か」が描かれていて、何回も観ているくらいすごく好きです。お勧めなので、観られたことのない方はぜひ観ていただきたいです。高橋:僕は『ライムライト』です。最近ブルーレイも買い直しました。ちゃんと残しておきたいものは、何とかして所持したい欲求にかられてしまうんです。『ライムライト』はたまに「ああ、そういえばあれを観なきゃいけないな」という気になるんです。バスター・キートンの作品もそうなんですけれど、最近それらの映画を深夜に観ることが多いです。飯豊:そうなのですね。魅力は何ですか?高橋:『ライムライト』は(チャールズ・)チャップリンの人生そのものが集約されていて、喜劇役者としてのあり方が、どこか自分に重なってしまうと感じるときがあるんです。俳優の悲哀というか、道化として生きていくことの悲哀のようなものを。これだけ有名なチャップリンでさえ、今、知っている人は少なくなっているかもしれません。そう思うと、何ともいえない感覚になってしまうんです。「忘れちゃダメだな」という作品は、ちゃんと観ておこうと思います。【高橋一生】ヘアメイク:田中真維(MARVEE)/スタイリスト:秋山貴紀[A Inc.]【飯豊まりえ】ヘアメイク:笹本恭平/スタイリスト:高木千智(text:赤山恭子/photo:You Ishii)■関連作品:岸辺露伴 ルーヴルへ行く 2023年5月26日より公開© 2023「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会 © LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
2023年05月26日【音楽通信】第139回目に登場するのは、音楽を始めて1年でデビューし、飛ぶ鳥を落とす勢いでいまや国内外でティーンを中心に大人気の新世代アーティスト、imase(イマセ)さん!趣味で始めた音楽がいまや韓国でも大人気に【音楽通信】vol.1392020年11月、20歳のときから音楽活動をスタートした、新世代アーティストのimaseさん。2021年5月にはTikTokに初めてオリジナル曲を投稿してバイラルヒットし、約半年後の12月にはデジタルシングル「Have a nice day」でメジャーデビューを果たしました。2022年には「ポカリスエット」や「JT」などのCM曲やドラマタイアップにも抜擢され、現在、TikTokでの総再生回数は20億回超えに。さらに、2022年8月に配信リリースした「NIGHT DANCER」は韓国のボーイズグループ「Stray Kids」などのアーティストがダンスチャレンジしたことからより浸透。最近ではBTSのジョングクさんも、公式ファンコミュニティサービスで歌を披露するなど、韓国をはじめとした世界各国へとバイラル中です。そんなimaseさんが、2023年5月26日に、ニューシングル「Nagisa」を配信リリースされるということで、お話をうかがいました。――20歳から音楽を始めたimaseさんですが、そもそもどのような音楽環境に育ったのでしょうか。小さい頃は、歌うことが好きな子どもでしたね。とくに音楽に興味を持ったり、楽器をやったりしたこともなかったです。聴いていた音楽も、そのときに流行っているJ-POPだったと思いますね。岐阜県の田舎に住んでいたので、近くにカラオケ店もなかったですし、音楽に触れるといえば親が運転する車の中で聴くことがあったぐらいでした。小学校、中学校、高校とずっとサッカーをやっていたので、スポーツ少年でしたね。――サッカーに打ち込まれてきて、その後、高校を卒業後は、一度就職されていたんですよね。音楽の道を志したのはいつぐらいだったんですか?趣味で音楽をやり始めたのが20歳のときです。友達がギターを購入しているのを見て、もともと歌うことは好きだったので、「僕も弾き語りしてみたいな」と思ってギターを買って。それからTikTokを観ていると、ショート尺で投稿されている方がたくさんいらっしゃって、ショート尺の楽曲を投稿し始めました。ーー友達の影響でギターを購入されて、弾き語りもお好きで、最初からオリジナル曲を投稿していたんですか。まだフル尺は難しいけどショート尺だったら「僕もオリジナル曲が作れるかな」と、曲を作って投稿するようになりましたね。最初は簡単なコードで弾ける楽曲をネットで探して、弾き語りカバーをしてみたり。そのうち、自分の声に合った曲でやってみたいと考えて、オリジナル曲を作り始めました。――それからデビューまであっという間の印象がありますが、レコード会社の方からお声がけがあったのはいつ頃だったのでしょうか。TikTokに2曲めの動画を投稿し始めたぐらいのときに、お話をいただきましたね。――2021年12月にはテレビ東京系オーディション番組『Dreamer Z』に参加されて話題となりました。テレビ出演は、さらにimaseさんの認知度を高める契機のひとつにもなりましたね。そうですね。いままでやったことがないことにチャレンジするきっかけにもなるかなと思って参加しました。でも、番組は、弾き語りのオーディション企画だったので、当初どう表現していいのか悩んで。僕はもともと楽器をやっていたわけではないですし、ギターも経験年数が浅くてまだ上手に弾けないので、そこでドラムパッドを使おうと。ドラムパッドは、ドラムを打ち込む機器ですが、好きな音をサンプリング(録音)して、パッドを叩くことでいろいろな音が出せるので、それで弾き語りをして歌って出演していました。――いまやTikTokの総再生回数が20億回数など、急速にブレイクしている実感はありますか?先月、上京してきたのですが、地元に戻ると友達から「imaseの曲をいろんなところで聴くよ」と言ってもらったり、最近は海外の方にも聴いていただけていたり。この間も韓国に行っていて、道を歩いていると「imaseさんですか?」と声をかけられて、本当に海外の方にも僕の音楽が届いてるんだな、ということを実感しました。――代表曲の「NIGHT DANCER」は、日本だけでなく韓国でも「Stray Kids」などのボーイズグループや、「Kep1er」らガールズグループなどの数々の人気アーティストが踊ってみた動画を投稿していますね。さらに韓国の配信サイト“Melon”で J-POP初のTOP100(最高位17位)入りをしていて、とくに韓国の盛り上がりを感じます。「NIGHT DANCER」は、勝負曲だと思って作った楽曲だったので、日本だけでなく韓国をはじめとした海外にも広がっていったのはうれしいですね。韓国のアーティストさんでは最初にStray Kidsさんが踊ってくださって、なかなか言語だけでは超えられない壁があっても、ダンスと音楽がSNSによって言語の壁を超えて楽曲が届くんだなと実感しましたし、日本語でも海外に挑戦できる可能性があるんだなと。――韓国のバラエティ番組や歌番組に出演されたYouTubeを拝見しました。一般の方もそうですが、韓国のメディアの取材もあるなど、注目されている現状を率直にどう感じますか。本当に言語の壁を越えて知っていただけたことは、率直にうれしいですし、僕自身も韓国のいろいろなアーティストの楽曲をよく聴くので、同じように僕の楽曲が韓国の方に受け入れていただけて、すごくうれしいです。――韓国で印象的だったことはありましたか。やっぱり、韓国で声をかけてもらったことが一番印象的ですね。曲を聴いていただけていることはチャートやSNSなどを見てもわかりますが、顔まで覚えていただけているんだな、とそのときに実感できて、うれしかったです。韓国では、ショーケースイベントも実施して。会場に集まってくださった韓国のみなさんが、日本語の楽曲なのに歌ってくださっていて、さらに、みなさんがすごく上手な発音で感動しました。――「NIGHT DANCER」は、3月にTeddyLoid Remixを配信され、5月15日には韓国のヒップホップアーティスト、BIG Naughtyさんとのコラボレーション作も配信されていますね。はい、曲への反響が大きくて、それぞれ新しい「NIGHT DANCER」が生まれてよかったです。BIG Naughtyさんとのコラボ作のほうには、「NIGHT DANCER」の“Korean Ver.”として、僕が韓国語で歌っている楽曲も入っています。ありがたいことにコメントでも、「歌ってくださってうれしいです」と韓国の方にも言っていただけて、やってよかったなと思いますね。80sのリバイバル的なものをテーマにした新曲――5月26日に爽やかなポップチューンのデジタルシングル「Nagisa」を配信リリースされます。作詞作曲はimaseさんが手掛けられていますが、どのようなことをテーマにして作ったのですか。この楽曲は80sのリバイバル的なものをテーマにして、作りました。タイトルの「Nagisa」という言葉も、この楽曲を作るうえで80sのシティポップの曲を聴きあさっていたときに、80年代の曲の歌詞によく出てくる単語だなと思って、歌詞にも入れてタイトルにもしていて。あと「Nagisa」とローマ字表記にしたのは、海外でも“渚”は“Nagisa”と言われているようで、海外の方にも「Nagisa」というフレーズを覚えていただきたいなという思いを込めています。――今回は80sを意識されたということですが、いつも曲作り自体はどのようにされているのですか。そのときどきに作りたい系統の楽曲をたくさん聴いて、テイストをインプットしてから作っています。もともとこの楽曲のメロディは昨年の10月ぐらいにはできていて。そのときはパッと思いついたメロディだったので、そこに80sっぽいトラックにメロディをつけて、楽曲を作っていって、あとはインスピレーションで仕上げていきました。――歌詞は女性目線のものになっていますね。女性アーティストが歌詞の一人称を「僕」にして歌う曲はありますが、男性アーティストが「私」として歌う曲はそれほど多くない印象です。「Nagisa」は、男女ふたりの物語で、強気な女性をイメージしていまして。ただ、最後のサビの部分では、少し弱さが見える面も描いています。歌詞の中では「ネオンをまとい」ですとか、僕が思う80年代と、当時の強い女性をイメージして作りました。――曲ごとにいろいろなチャレンジをされているんですね。自分のなかにある、いろいろなバリエーションを出したいと思っていますし、そのなかでも今回はいままでやっていなかった女性目線の歌詞というところが挑戦した部分です。サウンドでは、シンセブラスの音もあって、いなたい雰囲気も持っていて。80年代に曲を聴いていた世代の方には、この曲を聴くと懐かしい気持ちにもなってもらえると思いますし、逆に僕ら世代の10代や20代の方には、真新しく聴こえるんじゃないかなと思います。――タイトルからなのか、どこか夏をイメージさせるようなところもありますね。とくに夏を意識して作ったわけではないんですが、僕も夏を感じます(笑)。歌詞の最後に、「うつりぎな花の香り」と入れたんですが、それは紫陽花をイメージしていて。紫陽花って、土壌がアルカリ性か酸性かで色が変わる花なので、それを「生ぬるい肌も火照り 涼しげな青も赤に変わるの」という比喩にした歌詞にしたんです。――紫陽花というと、夏の季語ですね。そうですよね、夏の曲です(笑)。――では、歌唱されるときに意識されているポイントはありますか。この楽曲に限らず、リズムを立てるための歌い方を意識しています。あとは母音を柔らかく歌うことはすごく意識していますね。母音を柔らかくすることによって、個人的にはちょっと他言語に聴こえるのかなとすごく思っていて。歌っていて自分でそう気づいたり、日本のR&Bのアーティストの方の楽曲を聴いていても、けっこう母音が柔らかいイメージがあるんです。日本語で歌うときも、基本的に英語の曲でも韓国語でも、みなさん母音が柔らかい印象。なので、日本語で歌っている部分も、母音を柔らかくして歌ったほうが、海外の方も聴き馴染みがあるのかな、と思い意識しています。――驚くべきスピードで音楽の才能を開花していますが、ご自身ではどのように感じていますか。音楽をやり始めた頃は、実はこういった楽曲の聴き方や作り方を全然していませんでした。最初から自分のできることを探っていって、いまに行き着いているところがあります。もともとは自分の歌声が好きではなくて、SNSに投稿していた楽曲も、いまのように裏声1本で作らず、裏声と地声を混ぜて自分の声がわからないようにしたりして。テレビ番組のオーディション企画のときもそうなんですが、どうやったら聴いてもらえるか、聴き心地がよくなるのかをひたすら探って、できることを探していまに至ります。そういった意味では、けっこう絞り出してきました(笑)。――きっと音楽の探求の旅みたいなところもあるんですね。音楽をやり始めて2年半というところで、imaseさんが音楽で大事にしているところはどこでしょうか。どの楽曲も、メロディとキャッチーさをすごく大事にしています。自分でもそういうキャッチーな楽曲、耳に残るものが好きなんですよ。楽曲を作るときはキャッチーさを意識していますし、覚えやすいメロディで、クセなるリズム、口ずさんでしまうフレーズを念頭に置いて制作しています。――この間はワンマンライブがソールドアウトしましたね。ライブパフォーマンスにおいても、研究しているんでしょうか。どうしたら自分のパフォーマンスが映えるのかな、と探っています。パフォーマンスも、MCも、まだまだ拙いところがありますし、歌唱で見せるタイプのアーティストでもないなと思っていて。どういったパフォーマンスをするのが、自分のキャラクターにも合うのかな、ということはずっと探していますね。――実際に、ライブでお客さんを目の前にして、どう感じましたか?これまでSNS上でしか活動していなかったので、聴いてくださっている方と直接対面する機会がなくて、ライブで本当に直接会えて、まず率直にすごくうれしいなって。自分の楽曲を聴いてくださっている方が、さらにチケットまで購入してライブに来ていただけて、すごく幸せです。――10月からは、初のツアー『imase 1st Live Tour』で東名阪をまわりますが、どのようなステージになりそうでしょうか。いま考えている途中です。これまでのワンマンライブでは、そこでしかできない特別なことをしようと、これまでSNS上で発表したショート尺の楽曲をメドレーにして披露したり、弾き語りをやったり。今回のツアーでも、そういったライブならではの何かができたらなと思います。国内外問わずたくさんの方に楽曲を届けたい――お話は変わりますが、最近ハマっていることや趣味はありますか。コロナ禍も落ち着いてきて、外出できるようになってきたので、ご飯を食べに行ったり、遊びに行ったりすることがあります。あとは、フットサルをやっていますね。――好きなサッカーのチームはありますか?(イングランド・プレミアリーグの)ブライトンというチームが好きです。日本代表の三笘薫選手が所属されているチームです。全試合観ることができないときもあるので、時間がないときは、よくハイライトを観たりしていますね。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。日本の方はもちろん、いま海外の方にも曲を聴いていただいているので、これからも言語の壁を越えて聴いていただける曲を作っていきたいです。国内外問わず、これからもたくさんの方に楽曲を届けていきたいですね。取材後記瞬く間にJ-POPシーンを揺るがすニューカマーとして注目を浴びている、imaseさん。華奢でしなやかなスタイルと、表情豊かなルックスで、その場を明るくさせる存在です。朝の取材だったこともあり、すぐに腹ペコになるようで、インタビューの合間もおやつを美味しそうに食べていた無邪気な姿が印象的でした。そんな急成長中のimaseさんのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・園山友基取材、文・かわむらあみりimasePROFILE岐阜出身、22歳の新世代アーティスト。音楽活動を開始してわずか1年でTikTokで楽曲をバイラルさせ2021年12月にデジタルシングル「Have a nice day」でメジャーデビュー。2022年にはCM主題歌やドラマタイアップにも大抜擢されるなど、ティーンから圧倒的な人気を獲得。2022年8月に配信リリースした「NIGHT DANCER」は、韓国配信サイト“Melon”でJ-POP初のTOP100(最高位17位)入りを果たし、SpotiifyバイラルチャートTOP50に31カ国ランクインするなど、世界各国でもバイラル中。2023年3月、初の有観客ライブを行い、追加公演もすべてチケットが即完売した。5月26日、デジタルシングル「Nagisa」をリリース。10月、自身初の東名阪ツアー「imase 1st Live Tour」を開催予定。InformationNew Release「Nagisa」2023年5月26日 配信リリース写真・園山友基 取材、文・かわむらあみり
2023年05月25日映画業界で働く人たちに仕事の裏側やその魅力についてじっくりと話を伺う【映画お仕事図鑑】。今回、ご登場いただくのは、日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した『新聞記者』、興行収入30億円の大ヒットを記録した『余命10年』など近年、次々と話題作を世に送り出している藤井道人監督。最新作『最後まで行く』(5月19日公開)では、岡田准一と綾野剛をメインキャストに迎え、同名の韓国映画のリメイクに挑戦している。スマートフォンひとつで「映画を撮る」こと自体、誰にでも可能になったいま、藤井監督が考える“プロ”の映画監督の仕事、映画づくりの醍醐味とは――?映画監督への道のりは「消去法で選んだ進路」から――子どもの頃、どんなふうに映画と関わり、どういった経緯で映画監督を志したんでしょうか?地元の映画館は近くにあったんですけど、そんなに足しげく映画館に通ったという感じでもなく、映画を教えてくれたのはTSUTAYAでしたね。ビデオやDVDをレンタルして観るのが僕にとっての映画体験で、お金もそんなになかったので、映画館に行くのは特別な時だけでした。学生時代はずっと剣道しかやってこなかったので、高校3年生の進路選択の時、紆余曲折あって、英語と国語だけで受験できる「映画学科」というのがあるらしいと聞いて、日本大学芸術学部の映画学科の脚本コースを受けました。脚本家を目指す脚本コースに在籍はしていたんですけど、大学でみんなで自主映画をつくる中で、自分が監督をするターンが回ってきて、実際に監督をやってみるといろんなことが見えて楽しくなって、20歳の頃には監督に魅力を感じていましたね。――高校の進路選択の時点で「将来は映画に関わる仕事がしたい」という思いはあったんですか?当時、マイケル・ムーアの映画(『ボーリング・フォー・コロンバイン』、『華氏911』など)が流行っていたこともあって、どちらかというとドキュメンタリーが好きでした。もともと、推薦で受けた大学もメディア系の学科だったし、そこまで「映画」とか「監督」というものを意識していたわけでもなかったですね。大学に行ったらまた剣道をやって、普通に就職するのかな…くらいの感じのことしか考えてなくて、自分の将来について楽観的でしたね。ところが推薦に落ちちゃって「ヤバい! どうしよう?」となって(苦笑)、それまで英語と国語しか勉強してなかったので、それで入れる大学という、消去法で選んだ進路でした。――大学の脚本コースの講義というのはいかがでしたか? 実際の“映画のつくり方”や“脚本の書き方”といった実務的なことを学ばれたのでしょうか?どちらかというと理論的なことの方が多かったです。モノクロ時代からどんな変遷を経て、いまの映画技術が生まれたのか? みたいなことだったり、昔の名画を観たり、ギリシャ悲劇から脚本について学んだり。脚本コースに関しては、あまり実践的なことは教わらなかったですね。自主制作映画で実際の映画のつくり方を学んでいったという部分が大きかったです。――仕事として“映画監督”というのを意識されたのは?当然ですが、大学の先輩で映像系の仕事に就いている方も多いので、あちこちの現場にお手伝いに行ったり、その先輩のツテでお仕事をいただいたりという感じで、大学2年生くらいから、学校に通うよりも、現場で仕事する比率のほうが多かったんですね。大学卒業を迎えて、みんなそのままフリーターをしながら映像の仕事をするのかな? と思っていたら、みんな普通に就職していて、フリーターになったのは僕だけで…、「え? みんな就活してたんだ!?」という感じでした(苦笑)。――そこで「この世界で生きていこう」と?その頃は「俺、いけるな」と勘違いしてた時期だったんですね(苦笑)。「俺はこの仕事で飯が食っていける」と。全然、そんなことなくて、社会人1年目は全く仕事がなかったです。それまでは学生という立場だからこそ、いただけていた仕事があったけど、学生ではなく“プロ”となると、同じ土俵にもっとすごい人たちがたくさんいるんですね。そうなると、自分のところに来る仕事の依頼というのがなかなかなくて…。そこからは営業の日々でした。「BABEL LABEL」という屋号を名乗って、あたかも映像集団に所属しているように見せつつ(笑)、あちこちに営業して仕事をいただいていました。――現在も所属されている映像制作会社「BABEL LABEL」の設立にはそんな経緯があったんですね。もともとは“フリーター”と名乗るのがイヤで、勝手に屋号をつけたんです(笑)。そこで細々と自主映画などをつくったりもしてたんですが、社会人になって3年くらい経つと、普通に働いていた同級生たちが次々と会社を辞めて、「BABEL LABEL」に集まるようになったんです。そこで「俺たちで面白いことをしようぜ!」という感じになりまして。最初は会社組織ではなかったんですが、数が増えていくにつれて「会社にしてもらわないと制作費の振り込みができません」といったこともありまして。「1円で会社が作れる」という情報を耳にして「じゃあ会社にしよう」と。実際には35万円くらいかかって、当時は36万円しかなかったんですけど(苦笑)、なけなしの貯金をはたいて作ったのがいまの会社です。――ご自身の中で、職業として「映画監督になれた」と思えた瞬間は?形式上のことで言えば、(商業映画デビューの)『オー!ファーザー』(2014年公開)になるんでしょうけど、映画だけでご飯が食べて行けるようになったのは『新聞記者』(2019年公開)以降ですね。以前は自分のことを“映像作家”と名乗っていたんですけど、最近はMVやCMのディレクターをやることもほとんどなくなりましたし、自分で“映画監督”と言うようになったのは三十を越えてからですね。――お話に出た『オー!ファーザー』で初めて商業映画の監督を務めたのは、監督にとってどういった経験でしたか?自分の実力のなさを実感したというのがすごく大きかったですね。それまでは同世代の仲間たちと自主映画を作っていただけでしたが、『オー!ファーザー』の現場では僕は年齢的に下から3番目くらいでした。40代や50代のベテランのスタッフさんと一緒に映画をつくる中で、彼らを導く“言語”を持っていないことを痛感しました。『オー!ファーザー』以降、僕は再び自主映画に戻るんですけど、あの人たちと渡り合って、一緒にお仕事ができるような実力をつけないと、この先、通用しない、職業としての映画監督にはなれないなと思いました。河村光庸プロデューサーとの出会い――その後、『青の帰り道』や山田孝之さんのプロデュースによる『デイアンドナイト』を監督され、2019年公開の『新聞記者』は日本アカデミー賞最優秀作品賞に輝きました。同作で製作・配給会社スターサンズの河村光庸プロデューサーと出会い、その後も河村プロデューサーと共に『ヤクザと家族 The Family』、『ヴィレッジ』などを作ってこられました。そもそも、どういった経緯で河村さんとお仕事をされることになったんでしょうか?いろんな理由が複合的に絡まっているんですが『新聞記者』という映画はもともと、僕が監督する予定ではなかったんですね。クランクインの直前に、監督をされるはずだった方が降板となってしまい、「どうする?」となって、河村さんは周りの人たちに「誰かいないか?」と声をかけていたんです。ちょうど僕は『デイアンドナイト』を撮った後で、そのラッシュを見た河村さんから突如、電話がかかってきまして「明日、会えませんか?」と言われて「会えます!」と。「スターサンズからのオファーだ!」と思って待ち合わせの宮益坂のパン屋に行ったら、なんかいかがわしい感じのおじいちゃんがいて(笑)、「おーっす! これ一緒にやろうよ」ってタイトル『新聞記者』と書いてある企画書を自信満々に見せられたんです。帰りにマネージャーさんに「ちょっとこれはやりたくないです」って言いました(笑)。そんな出会いです。――河村さんは2022年に亡くなられましたが、藤井監督にとって河村さんとの出会いはどういうもので、作品をご一緒されて、どんなことを教わりましたか?本当に僕の人生における、一番大きなターニングポイントだったと思います。人間、大人になると大人なりの“距離感”というものができるじゃないですか? 人のパーソナルスペースにまで踏み込んできて、映画を作ってくれる人なんて滅多にいないんですけど、河村さんは自分のパーソナルスペースを周りのみんなのパーソナルスペースだと思っているというか、良く言うとすごくフレンドリーな方なんですね。毎日電話がかかってきたし、毎日一緒に過ごしてました。親子ほど歳が離れているけど、この人は何かを俺に伝えようとしてくれている――70年もの人生で培ってきたものを自分に伝えようとしてくれているのをひしひしと感じました。その中で企画の作り方から宣伝の取り組み方まで、本当に全てを教わった気がします。映画監督としての作品選び、向き合い方――藤井監督の作品を語る上で、“ジャンルレス”という言い方をされることが多いかと思います。『青の帰り道』のような青春群像劇から『余命10年』のような恋愛映画、そして『新聞記者』のような社会派に『ヴィレッジ』のようなサスペンスまで、ジャンルを飛び越えて、様々な作品を監督されていますが、ご自身にとって“ジャンル”というのはどういうものですか?やっぱり、気にしないというか、ジャンルにとらわれずにいたいとは思っています。別格というか、神様みたいな存在ですけど、スピルバーグだってジャンルレスですよね。僕は、いちコックと言いますか、映画制作の中での技術者のひとりという側面で見た時、「人間を描く」ということさえ通底していれば、ジャンルというものは、まず誰よりも僕らが壊していかなくてはいけないと思っています。恋愛を描いても人間、人生を描くし、もし僕がホラーを撮るとしても、そこに登場する人たちがどういう時代にどんな思いで生きているのか? という部分をきちんと描くことができればと思っています。社会派ではなく、いつも 映画の中に社会が入っているだけです。もちろん、ひとつのものを人生をかけて磨き続ける人もいますし、ひとつのジャンルでつくり続ける方も素晴らしいと思いますが、自分はジャンルというものよりも、プロデューサーとのセッションを楽しんで、映画をつくるという側面を大事にしています。――藤井監督にとって、プロの「映画監督」というのはどういう仕事ですか?映画づくりにおける、いち部署ですね。決定権のあるいち部署だと思っています。責任という点で考えると、もちろん組織における重要なポジションであると思いますが、「監督だからえらい」とか、「監督の言うことは絶対である」といった思いで映画をつくったことはないですね。――ここ数年、次々と監督作品が公開されていますが、オファーが届いた際にその企画を「やりたい」と思う判断基準や企画選びで大切にしていることはありますか?どんな企画と出会うかは「運」と「縁」と「恩」の部分が大きいと思います。たとえば、今回の『最後まで行く』のリメイクも、10年前であれば僕には来なかったと思うし、10年後だったら僕はやってないかもしれない。『新聞記者』、『ヤクザと家族』、『余命10年』という作品をやった上で、自分が好きなアクション、そして喜劇に挑戦してみたいなと思っていた時期にこの企画をいただけたので、まさに縁ですね。「脚本は映画づくりの精密な設計図」――今回も含め、ご自身で脚本の執筆もされますが、脚本を書く上で大切にされていることはどんなことですか?(脚本は映画づくりの)精密な設計図であるべきということですね。小説ではないので、具体性を大事にして、読み物として全スタッフがその内容を認識し、この船がどこに向かうのかを明確に書いたコードであるべきだと思っています。――藤井監督は毎作品、必ず登場人物たちの経歴や嗜好、どんな人生を送ってきたかなどを記したキャラクターシートを作成されるそうですね? その意図やどのように活用されるのかを教えてください。さきほど脚本を「設計図」と言いましたが、作品という船のエンジンがあったとして、そのエンジンがどんな部品でつくられているのか? 知りたい人は知っておいた方が良いと思っています。キャラクターシートはまさにそのための存在で、細かく映画に登場する人物のことを理解し、描いていくために活用するものですね。どうしても、現場で撮影に費やせる時間は限られています。俳優さんたちに迷わずに「こういう思いでこのキャラクターは存在していて、それをあなたに委ねています」ということを伝えなくてはいけない。「はじめまして」とお会いして、現場で芝居をしてもらった時に、その芝居がこちらのイメージと「全然違う!」という状況になった時、キャラクターシートがあることによって、共通認識を持って「もっとこうしてみるのはどうですか?」「これは必要ないんじゃないですか?」と話すことができるのかなと思います。「絶対に読んでください」ということではなく、(より深くキャラクターについて)知りたい人は見てくださいという感じですね。――このキャラクターシートはどの段階で作成されるんですか?基本的には脚本を書き進めながらつくっていく感じですね。初稿を書き終えた段階でできていることもあるし、改稿を重ねて脚本が完成してつくる場合もあります。どういう家庭環境で育って、どんなスポーツをやってきたか? 家族構成、年収、好きな言葉など…今回、岡田准一さんが演じた工藤で言うと「なぜ彼は自堕落な生活を送るようになったのか?」といったことも書いてあります。パーソナルカラーや好きな音楽などもあるので、部屋の美術や衣装でも活用できます。韓国映画を新たにリメイク、日本版ならではの面白さとは?――ここから、映画『最後まで行く』の制作について、より掘り下げて話を伺ってまいります。大ヒットした韓国映画を新たにリメイクするという作業はいかがでしたか?今回の企画は、本当にプロデューサー陣に恵まれていたと思います。「リメイクだからといって、塗り絵をしてほしいわけではない」「日本映画として、藤井さんらしい『最後まで行く』にしましょう」と言ってくださったので、脚本を大胆に解釈し、アレンジを加えることができました。韓国版のオリジナルの美しいプロットラインがあったので、それをベースに自分たちで新しい映画に作り直すという思いで臨みました。なので、オリジナル版を何度も見直すといったこともなかったですね。――リメイクに際してルールや制約などはあったんでしょうか?特になかったです。韓国のオリジナル版の最大の魅力は、開始5分で物語に引き込まれるプロットラインの面白さだと思っていて、そこはしっかりと拝借しつつ、でも、その後の展開を全く同じにするのであれば、韓国版を観ればいい。そうじゃなく、自分たちなりの新しいストーリーとして、工藤と矢崎という2人の男がどこまで行くのか? というのを純粋に楽しみながら脚本づくりができたと思います。――誤って人をひき殺してしまった刑事・工藤がそれを隠蔽しようとするも、窮地に陥っていくさまを描く本作ですが、韓国版に比べて、綾野剛さんが演じる県警本部の監察官・矢崎の存在が、もうひとりの主人公とも言えるくらい、より深く描かれています。韓国版では(矢崎に当たる男の)バックボーンが描かれるのは1分くらいでしたよね。その割り切り方も面白いと思いますが、やはり自分が映画をつくるときは、何よりも「人間をちゃんと描きたい」という思いが強くあります。“A面とB面”といいますか、人間の愚かさみたいな部分を(表に見える部分との)対比で見せたいなと思いました。『最後まで行く』という物語が、主人公の工藤ひとりで最後まで行くのではなく、2人の運命が絡まり合いながら、最後まで行くという構成になったら面白いんじゃないかと。――今回、平田研也さんと共同で脚本を執筆されていますが、共同脚本ならではの魅力や面白さはどんなところにあると感じていますか?やはり複眼的な視点で構成していけるというのは共同脚本の面白さですよね。監督として「これをやりたい」ということは伝えますが、逆に脚本家の方からしか出てこない構成の妙みたいな部分は確実にあります。30年そこそこしか生きていない自分から出るアイディアだけでなく、平田さんのような円熟した脚本家さんのアイディアが加わることで、本に広がりが生まれるんですよね。僕はできることなら常に共同脚本という形で映画づくりを進めていきたいなと思っています。――改めて日本版『最後まで行く』ならではの魅力、面白さというのはどこにあると思いますか?そうですねぇ…、オリジナル版をリスペクトをしつつも、そこまで意識しなかったので、オリジナルとの“区別化”みたいなこともあまり考えてなかったんですよね。自分の中では、喜劇や転落劇というものが、いまの日本映画にはあまりないと感じていて、笑いながらハラハラして楽しめる映画に、いまの日本映画の現在地で、僕らがどれくらいトライできるか? という部分が挑戦だったので、そこに関しては満足のいく作品になったと思っています。――激しいアクションがあり、痛みを描きつつ、思わず笑ってしまうシーンがたくさんありました。岡田さんと綾野さんの2人が素晴らしかったというのが大前提にありますが、ベースにあるのが“愚かさ”なんですよね。2人とも愚かしい(笑)。でも、奇をてらったりはしてないし、「笑わせてやろう!」という意識もない。「あぁ、この人たちは、這いつくばってでも生きようとしてるんだな」というのが伝わってくるし、2人のお芝居によって脚本を大きく超えた物語になったなと思います。――ひき逃げの被害者・尾田(磯村勇斗)の携帯にかかってきた電話に工藤が出るシーンが面白かったです。韓国版でも同様のシーンがありましたが、緊迫したやりとりになっているのに対し、日本版のほうはちょっとしたやりとりでくすりと笑ってしまうシーンになっていました。コミカルなシーンの演出で大切にされたのはどんなことですか?もともと、コメディは大好きなんですけど、自分が映画をつくる上では、一発ギャグではない笑い――人間の愚かさや、どうしようもない人間らしさが感じられるものがコメディだと思っています。そのためにも、2人にも“状況”をきちんと与えないといけないなと思っていました。様々な受難が振りかかり、そこで慌てたり、怒ったりしていろんな表情を見せてくれて、それが喜劇としての面白さを生んでくれたなと思います。今後の目標は「映画を取り巻く環境の変化、それを日本の映画界にどう取り込んでいけるか」――映画監督としての目標、今後、実現したいことなどはありますか?いま、配信プラットフォームが増えたり、映画を取り巻く環境が加速度的に変わっているので、海外などの環境を勉強して、それを日本の映画界にどう取り込んでいけるか?というのが、この数年の目標ですね。凝り固まった概念をたたき壊していかないと、永久にこのままじゃダメなので、システムを含めて、変えるべきところは変えていかないといけないと思っています。――最後に映画業界を志す人たちに向けて、アドバイスやメッセージをお願いします。僕から言えるのは3つくらいですね。まず「横のつながり」の大切さ。一緒に仕事をする仲間たちや出会いの縁を大事にして、その人たちがどうしたら楽しんで仕事をしてくれるかを考えてほしいということ。それから、仕事がない時期に「オファーは絶対に断らない」ということ。「こういう仕事はしない」と言ってる人は永久にやらないので「自分が適任だと思われてるんだな」と受け入れてやりましょう。最後に、自分の人生なので「自分が納得できることを仕事にする」ということ。そこに関しては、僕自身、昔から変わらないですね。(photo / text:Naoki Kurozu)■関連作品:新聞記者 2019年6月28日より全国にて公開©2019『新聞記者』フィルムパートナーズi-新聞記者ドキュメント- 2019年11月15日より新宿ピカデリーほか全国にて順次公開©2019『i –新聞記者ドキュメント-』最後まで行く(2023) 2023年5月19日より全国にて公開©2023映画「最後まで行く」製作委員会
2023年05月22日【音楽通信】第138回目に登場するのは、シンガーソングライターとしての活動が7年目を迎え、20代最後となるニューアルバムをリリースする、山本彩さん!いろんなシチュエーションに合う楽曲が揃うアルバム【音楽通信】vol.138コンスタントに作品を発表し、ライブ活動も展開してきたシンガーソングライターの山本彩さん。最近では、バラエティ番組などでも元気な姿を届けています。そんな山本さんが、2023年5月17日に4thアルバム『&(アンド)』をリリースされるということで、お話をうかがいました。――前回、2020年10月にこのananwebで取材させていただきましたが、シンガーソングライターとして活動されてから今年で7年目となりますね。昨今は少し休養されたり、個人事務所を設立されたり、いろいろと整えられて。最近はバラエティ番組でもご活躍で、リフレッシュされてパワーアップされたように感じます。休養させていただいた際は歌っていなかった期間も長かったので、そのブランクを取り戻すのと、休む前よりは良い状態で今後も続けていきたいので、また一から歌のトレーニングや勉強をしました。まだ進化した感じはしないのですが、少しずつ自分のベストがわかってきて。あとは、もともとすぐ考え込んでしまうタイプだったのですが、いまはだいぶん気楽に物事をとらえられるようになりました。――2023年5月17日には、4枚目となるアルバム『&』をリリースされます。いつ頃からアルバム制作を始めていたのですか。一昨年から、アルバムを作ろうという話をしていました。新曲「劣等感」と「Bring it on」の2曲を収録しているのですが、まず「劣等感」を途中まで作り始めながらも完成はせず。休養のタイミングで一度制作を中断して、復帰してから「劣等感」を仕上げて、復帰後に「Bring it on」を書き終えました。――新曲は2曲とも山本さんが作詞と作曲を手掛けられていますね。そうです。「劣等感」は、もともと書きたい歌詞のテーマとしてあったんです。自分の中にある劣等感と戦っている葛藤みたいなものを描いていて、劣等感を抱きながらも自分が作られていく、戦っていく思いを込めた楽曲です。アレンジは(ボカロPやアレンジャーとして活動中の)100回嘔吐さんにお願いしたので、ギターロックとは違うテイストでのロックを表現できました。――もうひとつの新曲「Bring it on」はどのようなイメージで作っていかれたのですか。「劣等感」が“陰”の部分が強かったぶん、その反動もあってか、真逆の曲が書きたくなって。ツアーも決まっていたので、ツアーに向けて「やってやるぞ!」という気持ちも活かして“陽”なイメージで作りました。自分ならライブだったり、聴いてくださる方にとってはこれから挑んでいく何かだったり、そういったものに対して無敵にさせてくれるような強い曲になっています。――「Bring it on」のミュージックビデオもカッコいいですが、ライブでのパフォーマンスのことも考えながら作ったんですか。比較的、普段の自分のライブスタイルに近い形でミュージックビデオの撮影をさせていただきました。あとは、自分が楽屋で準備している状態から、ステージに上がっていくようなストーリーや背景をそのまま映像として出させていただきましたね。――あらためてアルバムタイトルの意味も教えてください。別人格ぐらいの楽曲ができたなと思うくらい、この新曲2曲だけでもすごく対照的なんです。ほかの収録曲に関しても、そのときどきで歌いたいことや考えも全然違う自分がいて、でもどれも全部あわせて自分ができているな、と。矛盾しているけれど両立してつながっているという意味を込めて、『&』というタイトルになりました。――1曲目「ドラマチックに乾杯」は、東海テレビ・フジテレビ系ドラマ『その女、ジルバ』(2021年)主題歌の軽快でラテンな楽曲ですね。ドラマ主題歌のお話をいただいて、台本を読ませていただいてから、曲を書かせていただきました。主人公が自分とも重なるところがあって、うまくいかないときも、ちょっとした人との出会いや自分が輝けるような場所との出会いによって、そういう小さなきっかけの連続で人生が変わっていくということが、すごくわかる気がして。そこを書きたいなと思ったので書かせてもらいながら、台本の中で印象的だった場面をイメージしながら歌詞にさせていただきました。――主題歌などのタイアップ曲とそうではない曲では作り方も違いますが、意識するところも違う点はあるのでしょうか。タイアップ曲は、たとえばドラマなら観ていると感情移入はするので、まったく自分の思いではないわけでもないんです。なので、自分の思いと誰かの思いを背負って曲作りをしているという、特別感があります。ある意味、自分の思いをそのまま歌にするのは自分勝手でもいいんですが、タイアップ曲だとそうじゃない側面もありますね。歌うときも、自分の思いだけを込めてというよりも、そのドラマを観てくださっている方に思いを馳せながら歌っています。――4曲目「ぼくはおもちゃ」は、NHK『みんなのうた』のために、山本さんが作詞作曲された曲ですね。『みんなのうた』ということで、番組を観てくださる方も、親御さんから小さなお子さんまで年齢層が幅広いなと。お子さんの耳にも残るようなサウンドにしたいなと思って、おもちゃの音を入れたり、身近な音を入れたりしているんですが、歌詞は少し大人も考えさせられるような内容にしたくて。歌をリアルタイムで聴いてくれていた子が大人になったときに、「こういう歌詞だったんだ」とあらためて考えてくれるような曲になったらいいなと思って、子どもらしさと大人っぽさを混ぜ合わせた楽曲にしました。――7曲目「あいまって。」は、大人っぽくアンニュイな印象です。どちらかというと山本さんはロックな楽曲のイメージがありますが、この曲でまた違った表情を見せています。この曲は、作詞作曲ともに(プロデューサーでシンガーの)yonkeyさんと共作させていただいて、アレンジもしていただいて。歌詞は、本当に会話の延長という感じなんです。「こういう歌詞にしたい」「こんな単語を使いたい」というように、その場でラリーをして、そのままプロットを立てて、自然と楽曲ができていきました。歌についても、この曲自体がyonkeyさんの成分がけっこう強めの楽曲なので、言っていただいたような自分のロックな成分をほぼ消すぐらいの感覚で、レコーディングもやらせていただいて。ビブラートは全部なしでとか、こぶしもなしでとか、そういうふうにディレクションをしていただいたので、この曲に合わせた歌唱をしています。――多彩な楽曲が収録されていますが、とくに7曲目以降、曲調やニュアンスなど、山本さんの多様な表情がうかがえる曲順になっているように感じました。9曲目「ラメント」もまったく雰囲気の違う楽曲です。とくに「ラメント」はアルバムの中でもちょっとジャンルが違うような楽曲なので、アルバムを通して、この曲はキーになるなとは思っていて。それを考えたうえで、この位置になった感じですね。――聴き手にはどんな風にアルバムを聴いてほしいでしょうか。喜怒哀楽が詰まっているアルバムなので、いろいろなシチュエーションに寄り添える曲が集まっています。たとえば、やる気になりたいときは「Bring it on」を聴いてほしいですし、ちょっとまだ進むほどの気力はないけどもう少ししたら頑張りたいなというときは「愛なんていらない」とか「あいまって。」を、ゆっくり始めようかというときは「ゼロ ユニバース」をおすすめしたいですし。そういうタイミングごとにきっと力になれる曲があるんじゃないかなと思うので、いろんなシチュエーションで聴いていただきたいです。――アルバムのジャケ写は、山本さんが合わせ鏡のようになっていますね。アルバムのコンセプトとしてもあったんですが、どれも違うけれど自分という意味を込めての多様性や二面性を、衣装の違いや目線の有り無しで違いを出して、このジャケ写でもそれを表現しています。――6月からは「SAYAKA YAMAMOTO LIVE TOUR 2023 -&-」と題した全国ツアーを開催されますね。はい、1年半ぶりの全国ツアーでライブハウスをまわります。よりみなさんと距離が近いうえに、いま声出しも解禁されてきているので、ようやく本来のライブの形ができるかなと。さらに、今回はバンドでのライブ構成にしているので、バンドのライブに来た感じで楽しみにしていただきたいなと思っています。――アルバムはコロナ禍やお休みの期間を挟んで制作をされましたが、これまでの変化の心境が楽曲に反映されたところはありましたか。10曲目の「oasis」は、コロナ禍に差し掛かって、どうなるかわからない葛藤を書いた曲だったんです。でも、どんどん環境が良くなっていたからこその「Bring it on」みたいな楽曲が生まれたのかなと。状況が前進していないと、なかなかライブもどうしていいかわからない期間が続いていたので、いまやっと声が出せるようになって。それだけでも全然違いますし、少し前進したからこその心境が詰まっています。「山本彩といえば、この曲」という曲を作りたい――お話は変わりますが、2023年の現在、ハマっていることはありますか?最近はもっぱら仕事以外はオンラインゲームをしています。よくやっているのはFPS(ファーストパーソン・シューティングの略)という、一人称視点のシューティングゲーム『APEX LEGENDS』を友達と会話しながらやったり、謎解きのゲームをしたりしていますね。ストレス発散にもなりますし、楽しいです。――地元のお友達とゲームしているんですか。いえ、グループ時代の友達ですね。ゲームをしながら、電話をするような感じで、普段の話もしながらやっています。――おうちでゲームをしているとき以外は、お出かけされることも?わりと外出していますね。犬を飼っているので、そのおかげでけっこうフットワークが軽くなりました。毎月のようにどこかしらでワンちゃんのイベントをやっているので、そこへ出かけて、そこでしか出店されてないお店でグッズを見たり、散歩に行ったり、ドッグランに行ったりしていますね。――ワンちゃんの種類はなんですか。ヨークシャテリアです。実家ではトイプードルを飼っています。いてくれるだけですごく癒やされるので、仕事から疲れて帰っても、ワンちゃんがいると思ったら、もうどうでもいいみたいな気になります(笑)。――ワンちゃんのお散歩に行かれるのも健康的ですね。ツアーではけっこう体力を使うことがあると思いますが、何かコンディションを維持するためにやっていることはありますか。最近は、最低限の衣食住の生活基準みたいなものを上げようと、規則正しい生活をするようにしています。当たり前の話ではありますが、遅くなっても12時までにはベッドに入って、朝8時までには起きて、1日3食ちゃんと食べて、しっかり寝る。そのうえで、毎日犬の散歩をしているので、すごく良いリズムが自分の中でできています。そのおかげもあって、夜はちゃんと眠くなりますし、良い生活リズムに整いました。――生活リズムは大事ですよね。そういえば、阪神タイガースがお好きでしたね。以前、始球式をされたこともありました。そうなんです。過去に始球式は5回ぐらい、やらせていただきました。阪神が好きなので、この間は久しぶりにお仕事で甲子園に、プライベートでは神宮球場に野球観戦に行っていました。――いろいろなお話をありがとうございました! 最後に、今後の抱負を教えてください。いまは音楽を軸にさまざまなことやらせていただいます。これからもやりたいことを積極的にやっていて、音楽やほかのお仕事にもつなげていけるように頑張りたいですね。今年の7月で30歳になるので、より濃い音楽を作っていって、「山本彩といえば、この曲だよね」と言っていただけるような曲が1曲でも多く作れたらいいなと思っています。取材後記約2年半ぶりにananwebにご登場くださった、山本彩さん。以前は爽やかなショートカットだったのが、今回は艶やかなロングヘアになって、大人の女性の魅力がさらにアップ。「昔から髪型はロングとショートを繰り返していて、いまはロングの周期なんです」と笑顔で取材に応えてくださいました。そんな山本さんのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・園山友基取材、文・かわむらあみり山本彩PROFILE1993年7月14日、大阪府生まれ。2010年に発足したNMB48に1期生として8年間キャプテンを務め、中心メンバーとして活動。2016年、自身の目標であったシンガーソングライターとしての活動を始動させ、10月にデビューアルバム『Rainbow』をリリース。2018年10月27日、万博記念公園東の広場で卒業コンサート『SAYAKA SONIC ~さやか、ささやか、さよなら、さやか~』を開催。NMB48史上最大規模、約3万人を動員した初の野外コンサートとなった。11月4日、この日の卒業公演をもってNMB48を卒業。2019年2月、ユニバーサルミュージックへ移籍、ライブハウスツアー「I’m ready」を24会場27公演開催。4月17日に移籍第1弾シングル「イチリンソウ」をリリース。以降もコンスタントに作品を発表し、ライブ活動を展開。2023年5月17日、4thアルバム『&』をリリース。6月から全国14都市14公演をまわるツアー「SAYAKA YAMAMOTO LIVE TOUR 2023 -&-」を開催。InformationNew Release『&』(収録曲)01.ドラマチックに乾杯02.against03.愛なんていらない04.ぼくはおもちゃ05.ゼロ ユニバース06.yonder07あいまって。08.劣等感09.ラメント10.oasis11.Don’t hold me back12.Bring it on2022年5月17日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)UMCK-1743(CD)¥3,300(税込)(初回限定盤)UMCK-7210(CD+DVD)¥4,950(税込)※三方背ケース仕様【初回限定盤の特典】・Music Video Clips(ゼロ ユニバース / against / ドラマチックに乾杯 / yonder – Lyric Video – / Don’t hold me back / Don’t hold me back – Dance Performance Video – / あいまって。- Lyric Video – / Bring it on)・Behind the Scenes of “&”(新曲レコーディング風景 / ジャケット写真撮影 / Music Video撮影などのメイキング映像)(FC限定盤)PROS-1927 (CD + DVD + Photo Book)¥9,900 (税込)※豪華BOX仕様【FC限定盤の特典】・SAYAKA YAMAMOTO LIVE 2022 “now” at EX THEATER ROPPONGI 2022.12.27(SAYAKA YAMAMOTO LIVE 2022 “now” at EX THEATER ROPPONGIのライブ映像を収録)・Documentary of SAYAKA YAMAMOTO 2022-2023(昨年8月に活動復帰として行われた SAYAKA YAMAMOTO SPECIAL LIVE STREAMINGから、昨年末のSAYAKA YAMAMOTO LIVE 2022 “now” に密着したオフィシャルドキュメンタリー&独占インタビュー収録)・Exclusive Photo Book -Album “&” and SAYAKA YAMAMOTO LIVE 2022 “now”-(アルバム『&』フォトセッション / SAYAKA YAMAMOTO LIVE 2022 “now” ライブフォト)写真・園山友基 取材、文・かわむらあみり
2023年05月15日2021年日本公開劇場実写映画No.1となる興行収入45億円を記録した大ヒット作『東京リベンジャーズ』。その続編が、前後編の2部作で帰ってきた(前編『-運命-』が公開中、後編『-決戦-』は6月30日に公開)。かつての恋人・ヒナタ(今田美桜)を現代で凶悪化した犯罪集団の東京卍會(東卍)に殺された主人公のタケミチ(北村匠海)。ひょんなことからタイムリープ能力を手に入れた彼は、過去に戻ってヒナタが殺される未来を変えようとする。しかしそのミッションには幾多の試練が立ちはだかり…。凶悪化する以前の東卍と接触し、総長のマイキー(吉沢亮)らの信頼を得たタケミチ。しかしマイキーの旧友ながら憎悪を募らせる一虎(村上虹郎)が少年院から出所し、彼の誘いで壱番隊の隊長・場地が敵対する芭流覇羅に移籍するなど東卍に亀裂が走る。様々な陰謀と思惑が絡み合う中、タケミチの新たな戦いが始まる――。本稿では、物語のキーマンとなる場地を演じた永山絢斗と、彼を慕う壱番隊副隊長・千冬に扮した高杉真宙にインタビュー。『東京リベンジャーズ』の独自性から日本映画界の“未来を変える”提言まで、熱く語っていただいた。永山絢斗、原作を読み「とんでもねぇ役をやることに」――おふたりは「東京リベンジャーズ」というコンテンツがマンガ→アニメ&実写映画と人気を獲得していく過程を、どうご覧になっていましたか?(※原作の正式名称は「東京卍リベンジャーズ」。本稿では「東京リベンジャーズ」で統一)高杉:僕は元々、原作者の和久井健さんの作品(『新宿スワン』ほかで知られる)を読んでいて、「新しい作品を作っているんだ」と思って読んだら面白くて…というのが「東京リベンジャーズ」との出会いです。それで兄弟や父親に薦めたら僕よりハマって…。永山:原作って、何年くらいに始まったんでしたっけ?――2017年に連載が開始され、2022年に完結しました。全31巻です。永山:約5年で30巻分…。そう聞くと、凄いペースで描かれていたんですね。高杉:そうなんですよ。僕はまだ「血のハロウィン編」までしか原作を読めていなくて、完結したら一気読みしようと思っていました。家族が僕を追い越してドハマりしちゃったから、原作が実家に全部そろっていて(笑)。――高杉さんは「じゃりン子チエ」から「PSYCHO-PASS サイコパス」まで幅広くマンガ・アニメに精通していらっしゃいますが、「東京リベンジャーズ」の独自性をどう分析されていますか?高杉:やっぱり、ヤンキー漫画とファンタジーを組み合わせたことだと思います。ヤンキー漫画はいわゆる少年漫画に比べてより上の世代が好きな印象がありますが、「東京リベンジャーズ」は世代や性別問わずに幅広くキャラクターが愛されていますよね。そこもほかのヤンキー漫画にはあまりない特徴かと思います。永山:「東京リベンジャーズ」はタイムリープする設定が上手いですよね。それによって昔の不良スタイルになっても違和感がないし、それが幅広い年代の読者をつかみやすいキーにもなっている。独特のアイデアが詰まった作品だと思います。実は僕はお話をいただくまで「東京リベンジャーズ」に触れてこなくて、まず映画(第1作)を観て、「そういえば甥っ子が読んでいたはず」と思って連絡を取ったら…断られました(笑)。高杉:えぇ!?永山:「絶対折り目とか付けるでしょ」って(笑)。俺、そんなことしないタイプなのに…。そこで所属事務所のスタッフに原作を借りて、10巻くらいまで読んで「とんでもねぇ役をやることになったな」と感じました。アクションシーン撮影は苦労の連続――永山さんは『クローズEXPLODE』にも出演されていますね。永山:『クローズEXPLODE』は監督が豊田利晃さんなので、とにかく試されまくる現場で今回とは全く別物でした(笑)。『東京リベンジャーズ』はエンタメ色も強いですし、今回は2部制の大作。とにかく赤点を出さないようにという意識で芝居をしていました。場地って動いた瞬間にぶっ壊れちゃうような危うさがあるので、そのイメージで演じつつ、過去パートはとにかくみんなで楽しそうにしている空気感が出せたらなと考えていました。細かく動きを付けるというよりも、そういったところに意識を置いていました。――『東京リベンジャーズ2』の最大の見せ場となるのが、廃車場の決戦です。相当なボリュームでしたが、撮影は相当大変だったのではないでしょうか。画面の手前も奥も、終始乱戦状態でしたから。高杉:このパートの撮影全体で10日間以上はかけているんじゃないかな?そうじゃないとおかしいくらいの分量ですよね。映像を観ながら「大変だったな…」と思い出しました。高崎で撮ったのですが、ロケ地に行ったらフラッシュバックしそうなくらいです(笑)。――土埃もずっと舞っていましたし…。高杉:実は、土埃じゃなくて画面映えするようにキラキラ光る特製のものを使っているんです。あれが舞う中で戦うのはきつかった…(苦笑)。永山:俺は下で戦ってないからみんな大変そうだなって…(笑)。(※劇中では千冬たちは地面で、場地は廃車の上で戦う)あの大人数が、朝からずっと取っ組み合いをしていますからね。でも役者さんはみんな気合いが入っていました。――永山さんも、足場がかなり悪いなかでのアクションだったのではないでしょうか。永山:そうですね。でもみんな殺陣が上手ですごく助けられたし、僕自身も足場を気にしないくらいアドレナリンが出まくっていました。そうじゃないと「早くこの殺陣終われー!」ってなって続かなかったかも(笑)。目的にたどり着くまでに、色々な敵が立ちふさがってきますから。高杉:俺らは特攻服でしたが、永山さんが着ていた芭流覇羅のジャケットも暑そう…。永山:MA-1だったからね。綿を抜いてもらっていたけどそれでもある程度の重さはあるし、暑かった…。高杉:映像だと全然そんな風に見えないから、つらいですよね(笑)。永山:そうそう(笑)。年を感じた…(笑)。高杉:そんなの一切感じませんでしたよ!永山:編集でどうにかしてもらったんだと思う(笑)。まぁでも、アクションシーンの撮影は俺らは苦労続きだったけど、お客さんにはそんなこと気にせず楽しんで観てもらいたいです。これからの映画界に思うこと「人生を少しでも変える作品を」――永山さんは2007年、高杉さんは2009年に俳優デビューされ、同じ時代を役者として生き抜いてきた間柄でもあるかと思います。映像・映画界の歩みをどうご覧になっていますか?永山:このままだと海外で戦える作品が生み出せないなとは思います。コンプライアンスに縛られすぎなんだと思います。この前、映画祭で韓国の映画人と話して「低予算でもガツガツ作っていかないと。このままだとヤバいよ日本」と言われて悔しかったです。実際韓国は勢いがありますよね。高杉:どこにも配慮しないで言うと、もうちょっと時間をかけて作りたいですよね。永山:単純にお金がないんでしょうね。でも、お金がなくてもいいものを作ることができるでしょうし、諦めたくはないです。夢を持って仕事していますから。先ほど韓国の話をしましたが、本来は勝負事じゃないんですよね。芸術というものを日本の中で生み出せるかどうかの話ですから。ただまだまだ水商売というか色物というイメージが強いとも思うので、変わらなければいけない部分は多々あると感じています。高杉:僕はこれまで、作品を観た人たちに変化が起きることがあまり好きじゃなかったんです。永山:そうなんだ。高杉:だって怖いじゃないですか。自分の仕事で、どこかの誰かの人生が変わってしまうって。その責任を負えるのか?とも感じてしまって。この仕事は自分の評価でなく、他人の評価で判断されることが多いですし。永山:でも俺も「この映画を観て人生変わった」とか言うけど、それはこっちが勝手にそうなっただけだから。それでいいと思うよ。高杉:そうですよね。でも今は、もう少しその責任を負いたいという気持ちに変わってきました。その人の人生を何か少しでも変える、糧になるような力を持った作品を一個一個作っていかないと、1時間半や2時間を費やして観る価値は生まれないと思っています。(text:SYO/photo:Jumpei Yamada)■関連作品:東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命- 2023年4月21日より全国にて公開©和久井健/講談社 ©2023映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編」製作委員会東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦- 2023年6月30日より全国にて公開©和久井健/講談社 ©2023映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編」製作委員会
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