【音楽通信】第97回目に登場するのは、“ファンクを歌うアイドル”として音楽ファンからも注目を集めているアイドルグループ、フィロソフィーのダンス!想像していなかったアイドル道を突き進む4人写真左から、佐藤まりあ、十束おとは、日向ハル、奥津マリリ。【音楽通信】vol. 972015年に結成し、2020年9月にメジャーデビューした、奥津マリリさん、佐藤まりあさん、日向ハルさん、十束おとはさんからなるアイドルグループ、フィロソフィーのダンス。ファンクやソウル、ディスコなどをベースにした楽曲とクオリティの高い歌とダンスが、アイドルファンだけではなく、音楽通からも熱視線を浴びている異色の存在です。そんなフィロソフィーのダンスが、2021年12月1日にニューシングル「サンフラワー」をリリースされたということで、メンバーから奥津さん、十束さんのおふたりに、お話をうかがいました。ーーananweb初登場となりますので、自己紹介からお願いします。奥津奥津マリリです。グループではグラビア担当ということで、お衣装でも一番布面積が少ない担当をやらせていただいています。好きな食べ物は、ラーメンやモツといった、お酒に合うものですね。十束十束おとはです。映画やアニメ、漫画が好きなので、グループではサブカル担当で、プロゲーミングチーム“魚群”にも所属中。とにかく白米が好きで、毎日白米を食べて、幸せを堪能しています(笑)。でもそのぶん、運動もしているんですよ。好きな飲み物は、カフェラテとコーヒーです。ーー小さい頃に憧れていたアイドルと、アイドルになったきっかけを教えてください。奥津小さい頃は、松田聖子さんやサザンオールスターズさんが好きでした。いまアイドルになってからは、モーニング娘。さんが大好きです。もともとバンドやシンガーソングライターで活動をしていて、フィロソフィーのダンスには、スカウトを経て入りました。だから、アイドルになりたいという強い思いを持ってなったというよりは、どちらかというとロックな女になりたいという夢があって。バンドだとチャットモンチーさんや海外のバンドの曲が好きでしたね。十束子どもの頃は、三次元よりは二次元の『セーラームーン』や『おジャ魔女どれみ』、『プリキュア』のような強くて自分を持っている可愛い子に憧れていました。実在する人物としては、私がこのアイドルになりたいな、と憧れを持ったのは元モーニング娘。の後藤真希さんだったんです。奥津えっそうなの?ゴマキ!?十束そう(笑)。いまは、でんぱ組inc.さんや私立恵比寿中学さんが好きです。そもそもは芸能界に入る気持ちはなく、大学を卒業してから一度OLになって働いていたなか、好きなゲームを応援できる応援団募集というオーディションを知りまして(笑)。やっぱり好きなものに関わりたくてOLを辞めて、そちらの道に進んだことをきっかけに「以前から好きだったアイドルになろう!」と決めていまに至ります。ーー2015年7月に結成され、2020年9月にメジャーデビューされました。アイドルとしては、コンテンポラリーなファンクやR&B、歌詞には哲学的なメッセージを込めるというコンセプトは珍しいですね。十束私と佐藤まりあはオーディションでグループに入ったんですが、奥津マリリと日向ハルはスカウトされて入ったので、最初お互いに感じていたことは違ったのではないかと思います。私はとにかく可愛いアイドルになりたかったので、ファンクを歌うアイドルというのは、予想していませんでした(笑)。でも活動をやっていくうちに、自分たちにしか出せないものだったり、他の人が登っていない山があったり、独自性を突き進めていけるという部分と、何年経っても私たちにしかできない良い音楽をお届けできるところは良いなと。ただ、いつかは可愛いフリフリの衣装を着て、可愛い音楽をやってみたいという気持ちもあります(笑)。奥津私はバンドをやっていたこともあって、このグループをやるにあたってはかなりの覚悟が必要で、ロック魂を売っても良いのかという思いもありました。でも悩んだ末に入ると決めてからは「なんだってやってやる!」という思いで、フリフリの可愛らしいキュンキュンするアイドルグループを予測していたら、そういうことはやらないので、あれ?と(笑)。想像していたアイドル像とは違ったので驚きもありましたが、グループの生みの親で音楽プロデューサーの加茂啓太郎さんから「良い曲を良い形で伝えていく」という壮大なコンセプトを聞いて納得できましたし、こだわりの曲をいただけてうれしいなと思いながら活動しています。たくさんの場面でフィットする味付けの違う4曲奥津マリリ。7月11日、神奈川県生まれ。O型。スイートでメロウなボーカルが特徴。ーー2021年12月1日に4thシングル「サンフラワー」をリリースされました。同曲は福原遥さんやディーン・フジオカさんが声優を務める、12月3日公開のフラガールを目指す新人ダンサーたちの奮闘を描くオリジナルアニメ映画『フラ・フラダンス』の主題歌にもなっていますね。十束主題歌を歌わせていただくと決まったときに、まずは登場人物たちの心情や映画のあたたかい雰囲気をまとった曲を作りたいと思いました。実際に映画の試写会でエンディングを見たときに、曲も歌詞も素敵で、私たちの個性の違う歌声が映画の主人公や仲間たちともぴったりハマっていてメンバー全員号泣してしまったので、映画を観た方の感想もはやく聴きたいです。奥津多幸感があふれていて、私たちにも映画にもぴったりの曲になっているので、これからさらに大切な曲になっていくんだろうなと感じています。ーー同曲のミュージックビデオでは、実際にフラガールのみなさんとステージに立つ様子もありました。奥津事前に別々でフラダンスの練習をしていましたが、当日に会場入りして、みんなで練習をしました。そこで最終調整をして、全体のフォーメーションの確認や、全員で大きなひまわりを咲かせる振り付けなどを細かく決めて、いざステージに立ったんです。フラガールさんたちが大切にしているステージに上がらせていただき、お客さんも私たちのファンの方を呼んだわけではなく、たまたまその日会場に来ていた方に観ていただくかたちとなったので、とても緊張しました。ーージャジーで大人っぽい2曲目「ジョニーウォーカー」は、アメリカ出身の凄腕ミュージシャンで構成されたバンドのGROOVE ASYLUMがアレンジと演奏を担当しています。奥津 GROOVE ASYLUMさんと一緒に演奏してみたら、グルーヴ感が段違いで、いままで体感したことがないような本場のグルーヴを感じました。わたしたちがいままでやってきた音楽はそういうところから来ているので「こういうことだったんだ」と実感できて、本当に良かったです。歌のほうもグルーヴが大事な曲なので、声色や表情のほかにもリズムの乗り方を研究するのに苦労したのですが、ハマってくると気持ち良かったです。この曲のようなテイストの音楽をずっとやってきたからこそわかるグルーヴ感を出せたらいいな、と思いながらレコーディングしましたし、ライブでもはやく披露したいですね。十束1曲目の「サンフラワー」はすごく明るい曲で、キーもすごく高い曲だったのですが、一転2曲目の「ジョニーウォーカー」は大人の曲で、とてもキーが低いところから始まっているので、みんな苦戦してがんばった曲です。わたしたちは年齢を公表していませんが大人という部類に分類されるので、わたしたちにしか出せない色気を出そうと、努力しました。十束おとは。8月9日、神奈川県生まれ。A型。独特のアニメ声が特徴。ーーキュートな3曲目「二人のエクリチュール」は、奥津さんが作詞家のSHOWさんと共作詞されたクリスマスソングですが、どのようにこの曲が生まれましたか。奥津まずSHOWさんが詞の大枠を作ってくださって、それにわたしの色を加えるかたちで参加させていただきました。私が短編小説ぐらいの「ここで待ち合わせして」「彼がこんなことを言ってきた」といった具合に、細かく書いた原案をお送りしてまとめていただいて。わたしらしさを出したくて、ライブで映えるような工夫もしています。曲の最後にあるセリフを入れていて、これも提案させていただいたこだわりポイントのひとつなので、みなさんにも聴いてキュンキュンしていただければ(微笑)。わたしプロデュースだからこその仕上がりになったと思います。ーーこうして奥津さんが仕上げた楽曲を十束さんはどんなお気持ちで歌入れされましたか。十束そうですね、まず本当に最初の原案の短編小説のクセが強くて(笑)、コメディかな?というぐらいのポエムだったんです。受け取ったSHOWさんがきれいに整理整頓して4分に凝縮してくださった感じを受けたので、わたしたちは(奥津)マリリがやりたかったことを汲んで、歌にしなければという使命感で歌いました。ーー4曲目「気分上々」は、2006年にヒットしたパーティチューンをフィロソフィーのダンス流にアレンジしていますが、どのようなイメージで歌われましたか。奥津この曲はもともとノリノリな曲じゃないですか。でも上げて歌うというよりは、声も抑え気味で、グルーヴに身を委ねるといいますか。チルなホームパーティで気持ちよく乗っているイメージをしながら、ニュアンスに気をつけて歌いましたね。十束そもそも「気分上々」を選んだきっかけが、もっとたくさんの方にわたしたちのことを知ってほしいという思いがあり、少し懐かしいカバー曲をみんなで数十曲出し合って決まった曲なんです。オリジナルのmihimaru GTさんは元気いっぱいで、私たちもリアルタイムに聴いていたのでそのイメージがとても強かったのですが、カバーするなら新しい魅力をこの曲に吹き込みたいと思って、あえていったん原曲は忘れて(笑)、自分たちにしかできない歌い方にしました。かなりチルでゆっくりな曲調なので、そのなかにグルーヴを出す歌い方が難しかったです。ーーでは、聴き手には今作がどんなふうに届いてほしいでしょうか。奥津1枚を通して聴くと、夏の曲が表題曲かと思えば、クリスマスの曲もあって、かと思えばすごくチルなカバー曲や、アメリカのグルーヴたっぷりの曲もあり、春夏秋冬を気にしない作品に仕上がりました(笑)。だからこそ、味付けが違う4曲なので、「いまはこれ」「今度はこの曲」というふうに、そのシーンに合った聴き方ができるのではないかなと。みなさんの気分に合わせてトラックをかえていただいて、たくさんのシーンでフィットできたらいいなと思います。老若男女に愛される存在と全国ツアーが目標ーーお話は変わりますが、おうち時間が長引く現在、いまハマっていることはありますか。奥津いまだからというわけではないですが、ずっとお酒が好きなので、お酒に合うごはんを作るようにしています。最近は鍋や牡蠣、白子がおいしい季節なので、旬のものを食べていますね。ーーお酒は何を一番飲むのですか?奥津ビールが一番多いですね。でも「ジョニーウォーカー」という曲を歌ったことで、最近は(同名のスコッチ・ウイスキーのブランドの)ジョニーウォーカーをよく飲んでいます。炭酸で割ってハイボールにすると、さっぱりとして飲みやすいんですよ。十束私は以前から、おうち時間はゲームをたくさんしています。新しい趣味だと、キャンドルにハマっていて。火をつけるタイプのキャンドルは怖いのですが、最近は火をつけなくても、コンセントをつないで電球の熱さでキャンドルが燃えて良い香りがするものがあるので、それをゲットしてからはかなりハマっていますね。ーーおふたりがお好きなコスメもお聞かせください。十束コスメは好きで集めていまして、日本のコスメブランドだととくにSUQQU(スック)のアイシャドウが好きです。最近だと、韓国や中国のコスメも流行っていますよね。韓国コスメだと、最近日本に上陸したhince(ヒンス)も良くて、お値段も手頃なのでおすすめです。奥津わたしはリップが大好きで、いろいろな色味や質感のリップを集めています。最近はブラウン系が流行っているので、ブラウン系リップに手を出してムフムフしている最中です(笑)。秋冬だと、気分が変わってくるので、秋冬コスメの情報をドキドキしながら見ていますね。ーー普段から美容面で気をつけていることはありますか。十束気をつけていることは、日々幸せに生きたいので、とにかくよく食べ、よく眠ることを前提に過ごしています。わたしはかなり太りやすくヤセにくい体質で、筋肉もつきにくいことがわかっているので、ジムに通って運動したり、常にプロテインを飲んだりして、頑張って維持していますね。奥津フィロソフィーのダンスは全員、食べることがすごく好きなので、絶対それをあきらめたくないから(笑)。なので好きなものを食べつつ、幸せに生きていく方法をみんなで探しています。わたしは筋トレが好きなのもあって、おうちで筋トレしていますね。あとはサウナも好きなので、入って、水風呂でしめてと。代謝が良くなりますし、サウナを出たあとはお肌もツルツルになります。初心者の方だと水風呂はちょっと抵抗があるかもしれないのですが、サウナのあと水風呂でしめなくても、少し水シャワーを浴びるだけでも、お肌には良いですよ。とくに女性の方におすすめなのは「塩サウナ」。普通のサウナでも「塩サウナ」をやっている場所もあるので、サウナが苦手じゃなければ、美肌になるのでおすすめです。ーーいろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。奥津今年は東名阪ツアーの名古屋公演が中止になってしまって、悔しい気持ちがあります。グループの目標として、全国ツアーに行けるようになりたいということと、状況にもよりますがこれからは有観客ライブがたくさんできるようになれればうれしいです。十束こうしてananwebさんに出させていただいたら、わたしたちを知ってくださる女性の方が増えるのではないかと思うんです。そうして見ていただいたときに、ちゃんと好きでいてもらえるような魅力をちゃんと身につけていきたいですし、もっと老若男女に愛されるグループになりたいです。取材後記アイドルシーンで異彩を放つ、フィロソフィーのダンス。ananwebの取材では、奥津マリリさん、十束おとはさんに登場していただき、新作や普段のご様子までうかがうことができました。メンバーのみなさんそれぞれが放つ個性を武器に、これからも音楽ファンを魅了してくれるに違いありません。そんなフィロソフィーのダンスのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみりフィロソフィーのダンスPROFILE2015年、スカウトとオーディションにより結成。奥津マリリ、佐藤まりあ、日向ハル、十束おとはの4人からなるアイドルグループ。略称は“フィロのス”。2020年9月、シングル「ドント・ストップ・ザ・ダンス」でメジャーデビューし、オリコンウィークリーチャート2位を獲得。3rdシングル「ダブル・スタンダード」はTVアニメ「魔法科高校の優等生」のエンディングテーマに起用。2021年12月1日、4枚目のシングル「サンフラワー」をリリース。表題曲「サンフラワー」はオリジナルアニメ映画「フラ・フラダンス」主題歌に起用されている。InformationNew Release「サンフラワー」(収録曲)01. サンフラワー02.ジョニーウォーカー03.二人のエクリチュール04.気分上々2020年12月1日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)SRCL-11972(CD)¥1250(税込)(期間生産限定盤)SRCL-11973〜11974
2021年12月03日俳優・鈴木亮平から滲み出る人柄のよさ、サービス精神は、インタビューの冒頭から垣間見えた。机の上に置かれたペン型のICレコーダーを物珍しそうにしげしげと見つめた鈴木さんは、「あ、じゃあ…」とスーツの内ポケットにしまい込む仕草をして、にやりと笑みを浮かべる。茶目っ気あふれる行動はほっこりした笑いを生み、取材場に漂っていた緊張感を瞬時にやわらげた。「実は関西人なんですよ」と言う鈴木さん、ちょっとだけ“ボケたい”思いは、兵庫県西宮市出身の血が騒ぐということか。「最近、自分が“すごくストイックに役作り”みたいに書かれているのを読むと、そんなわけじゃないんだけどな…と思うことがあります(笑)。例えば『HK 変態仮面』だったら、ああいう(コメディの)作品だから“すごく真面目にインタビューで答えたら面白いのかな?”というのも実はちょっとあり、真面目に答えたりしているんですよ。ボケのつもりで答えていたら“こういう役でも、鈴木はすごく真面目にやってる!”みたいに書いていただいて…(笑)」。冗談半分といった口調で話す鈴木さん。過去の記事を引っ張り出すと、確かに、2019年のシネマカフェのインタビューでも「『西郷どん』は俳優人生の第一章を締めくくる作品だったということ。それくらい、強烈だったんです。そう気づいたとき、“第二章はもう始まってる!”となって。がむしゃらに、リスタートする気持ちで、恐れずにやっていく時期が来たなと思いました」と、俳優人生について語っていた。そう振ると「…まずいな。また真面目なことを言ってるな…!」と破顔。しかしながら、始まった俳優人生の第二章でも光彩を放ち、鈴木さんは存在感を見せつけている。正義の人だって、最凶の人だって、鈴木さんの手にかかればお手の物だ。いろいろな顔を見せていくことは、やはり念頭に置いているのだろうか?「それよりも、あるとすれば、まだそんなに守りに入る段階じゃないと思っているんです。いろいろな役をたくさんの人とやり、学んでいきたいという気持ちが強くて。自分がやったことのない役ならもっとやってみたいし、自分にあて書きしてくれた役なら、本来の自分らしさでどこまでいけるんだろうとか、いろいろな挑戦があると思っています」と、あくなき精神全開。「そういうことをやっていかないと、自分の成長がないだろうなとも思います。…ただ、40代になったら、もう少し自分のスタイルを確立していってもいいかなとは思っているんですが」。40代と言えば、あと2年。「“自分はこういう芝居をする俳優です”と、もう少し強く打ち出していきたいかもしれない」と、少し先の未来のイメージについても語る。「今までは、それぞれの監督と脚本に自分が染まることで、新しい自分を発見して、引き出しを増やしていきました。染まることで失敗もしましたし、そこから学ぶことも多かった。けど、40代からは自分に引き寄せて“自分はこの作品だったら、このラインでいったほうが一番いい”と思うところを、ある程度強めに持ってぶつけていこうかなと思っています」。大きな変化の前の武者震い。ずんずんと役者道を突き進む鈴木さんに、どこまで進化していくのだろうと、ときめきを感じずにはいられない。『土竜の唄 FINAL』の轟烈雄、『孤狼の血 LEVEL2』の上林成浩…ヒールがハマる鈴木亮平現在公開中の映画『土竜の唄 FINAL』にて、鈴木さんは原作漫画でも人気の高い最強最悪の敵・轟烈雄を演じた。鈴木さんが24歳のときからの朋友・生田斗真が主演する人気シリーズ。警察をクビになった菊川玲二(生田さん)が潜入捜査官:通称・モグラに任命され、日本から麻薬を撲滅するため最凶のヤクザ組織のドンを逮捕すべく、果敢に挑んでいく物語だ。2014年にシリーズ1作目『土竜の唄 潜入捜査官 REIJI』、2016年に2作目『土竜の唄 香港狂騒曲』が公開され、本作は5年ぶりのシリーズ3作目にして完結編となった。「斗真くんの代表作なので、そういう意味でプレッシャーはすごくありました。大事な友達だし、尊敬する同世代の俳優なので、彼の代表作を失敗させるわけにはいかない」と真剣な表情で、本作のオファーを鈴木さんは振り返る。撮影も終え公開を迎えた現在の心境を問うと、「作品はすごく面白かったですし、斗真くんは本当にすごい!あの軽快な感じやテンポとか、こっちを楽しませてくれる芝居は昔から天下一品なんですよね」と生田さんの演技を絶賛する。ちなみに、プライベートでふたりでいるときは、「お芝居の話とかは…しないです(笑)。お互いちょっと気恥ずかしいというか。褒め合いみたいなのは、聞いてくださる方がいるから(取材場で)言う、くらいですね」と、はにかんだ。轟烈雄としては、原作ファンも興奮するほどのダイナミックな演技を披露し、スクリーンで鮮烈な印象を残す。さらに、鈴木さんと言えば、本年公開した映画『孤狼の血 LEVEL2』ではヤクザの上林成浩となり、極悪非道のキャラクターで映画ファンを震え上がらせたのも記憶に新しい。こうした、いわゆる“悪いやつ”を演じること、ヒールをオファーされることについて、自身はどう感じているのだろうか。「基本的に悪いか・悪くないかは主観だと思っているので、“悪い人”は、そういう意味では、いないと思っているんです。特に自分は自分のことを悪いと思っていないはずなので、僕は“ああ、悪役か!”とは見ないんですよね」と、その人物の視点に立つと説明する。「何をやろうとしている人で、どういう正義を持っている人なんだろう、と考えるんです。だから、轟烈雄も上林も、そんな悪役だと意識はしていないんです」。人物それぞれの正義や思いを役に投影させる。そのやり方は、役によって変わるという。「こう言うと、生真面目な俳優に聞こえるかもしれないですけど…、例えば白石さんの作品なんかでは、本当に人間としての恐怖みたいなものを立たせなければいけなかった。けど、轟烈雄は逆で。もっとわかりやすく“この人は世界の王になりたいんだ!”みたいに捉えていました。作品の中で存在感が軽くはなってはいけない、重しでいないといけないけど、自分より王っぽい生き物がいたら倒しに行くのが轟烈雄。だから巨大マンタが来たら行く!という感じでしたね(笑)」。当該シーンは、ぜひ劇場で!意外な一面「なんか、すごい考えちゃうし、反省しちゃう」ひとつ、ひとつの質問に対して濃淡織り交ぜ興味深いトークを繰り出す鈴木さん。人柄と才能…、その背中に憧れる人は多い。なので、こんな質問をぶつけてみた。「鈴木さんのようになるには、どうすればいいですか?」と。鈴木さんは、即座に「それはもう、僕のいいところだけを見てくれているんですね!大変ですよ、私みたいになったら…!」と苦笑気味。「なんか、すごい考えちゃうし、反省しちゃうんです。“今日のあの表現は、あれでよかったんだろうか”とか“もっとあったかもしれない”と、夜中にずっとひとりで考えたりして」と、やはり生真面目な一面が顔を覗かせる。鈴木さんのようになる、というよりも鈴木さんが生きる上でのヒントとして意識していることを、ここでは教えてもらった。「歴史を知ると、客観的な自分が見えてきますよ!例えば“ある偉人は人生の中で半分ぐらいかけて、こういう準備をしていた”となると、自分の人生を振り返ると“自分はまだこの段階だから焦るべきじゃないな”と、わかるんです。“信長がこうなって秀吉がこういうことをしたから徳永の天下が250年続いたんだ”とかをわかってくると、自分の人生も“あ、あのときのパターンだな”とか“これ、モンゴル帝国のと一緒だな”とかね(笑)」と、淀みないトークが続く。「けど、歴史はやっぱり自分の未来や現在を客観的に見られるひとつの指針になります。そういう意味で、同じような経験をしている人とか、年長者にお話を聞くこともいいと思います!」とアドバイスを送ってくれた。マインドチェンジをしたら、さあ、明日から我々も鈴木亮平になれる…はず?(text:赤山恭子/photo:Maho Korogi)■関連作品:土竜の唄 FINAL 2021年11月19日より全国東宝系にて公開©2021「土竜の唄」製作委員会 ©高橋のぼる・小学館
2021年12月02日【音楽通信】第96回目に登場するのは、今年7月に新体制の12人となり、さらに急成長を遂げているハロー!プロジェクトのアイドルグループ、つばきファクトリー!ハロプロ研修生から「つばきファクトリー」へ写真左から、浅倉樹々、山岸理子、豫風瑠乃。【音楽通信】vol. 962015年4月に結成され、2017年にメジャーデビューした、つばきファクトリー。同年には第59回『輝く!日本レコード大賞』最優秀新人賞受賞を受賞するなど、急成長を遂げている、ハロー!プロジェクトのアイドルグループです。2021年7月には4人のメンバーが加入して新体制となり、10月には、つばきファクトリー コンサート2021「CAMELLIA〜日本武道館スッペシャル〜」と題した、日本武道館での単独公演を開催して大成功を収めました。そんなつばきファクトリーが、11月17日に新体制の12人で初となるトリプルA面シングル「涙のヒロイン降板劇/ガラクタDIAMOND/約束・連絡・記念日」をリリースされたということで、メンバーを代表してリーダーの山岸理子(やまぎしりこ)さん、浅倉樹々(あさくらきき)さん、豫風瑠乃(よふうるの)さんにお話をうかがいました。――ananweb初登場ですので、おひとりずつ自己紹介からお願いします。山岸つばきファクトリーのリーダー、山岸理子、23歳です。趣味は映画鑑賞とカフェ巡り、YouTubeでモッパン(食事動画)やルームツアーの動画を観ることと、ダンスをすること。最近は、ガチャガチャにハマっています。浅倉浅倉樹々、21歳です。趣味はロックを聴くこと、愛犬と遊ぶこと、おいしいごはんを食べることです。豫風今年7月に加入した、豫風瑠乃、13歳です。趣味はお菓子作り、音楽鑑賞、そしてマンガを読むこと。音楽は一日中聴いていることが多いです。――あらためて、みなさんが小さい頃に憧れていたアーティストや、アイドルになろうと思ったきっかけを教えてください。山岸小さい頃、ダンスを一緒に習っていたお友達が芸能のオーディションを受けていて、「私もやってみようかな」と思い、ハロプロ研修生のオーディションを受けました。ハロプロ研修生になれたら、ハロプロメンバーのバックダンサーになれるとオーディション雑誌に書いてあったので、当時バックダンサーになりたかった私は、「これだ!」と思ったんです。浅倉アニメ『しゅごキャラ!』シリーズ(テレビ東京系 2007〜2010年)の主題歌を歌われていたBuono!さんに憧れて、アイドルという存在を知りました。その後、元モーニング娘。の鞘師里保さんのダンスに圧倒されて、「一緒のステージで踊りたい!」と思うようになり、オーディションを受けました。豫風小さい頃から歌って踊ることが大好きで、テレビで歌って踊る人を見るとすぐまねをしていたんです。父はモーニング娘。さんが好きで、よく家でDVDを観ていたことがきっかけで、アイドルになりたいと思いました。小学校5年生のときに、「モーニング娘。’19 LOVEオーディション」があることを知り、オーディションを受けました。――2015年4月に結成、2017年2月にメジャーデビューされ、2021年7月に新メンバー4人が加入し、現在は12人体制となっていますね。結成してからメジャーデビューするまで、そして新体制での現在までを振り返ると、何か心境の変化はありましたか。山岸結成当初は、周りから心配されるような自信なさげなグループに見られていましたが、今年10月にはつばきファクトリー初の単独での日本武道館公演ができるまでに成長しました。一人ひとりが自覚と責任を持ってリハーサルに挑み、本番では新体制のつばきファクトリーとして、みなさんに自信を持ってパフォーマンスを披露することができたのではないかなと思います。成長したつばきファクトリーを感じられる新作山岸理子。1998年11月24日、千葉県生まれ。B型。座右の銘は「みんなちがって、みんないい」。――2021年11月17日に、12人体制で初のトリプルA面シングル「涙のヒロイン降板劇/ガラクタDIAMOND/約束・連絡・記念日」をリリースされました。まず今作ができての手応えからお聞かせください。山岸新メンバー4人の歌声が加わり、また新しいつばきファクトリーが誕生しました。今回の楽曲は、いままでのわたしたちを象徴するような切ないしっとりとした曲調ではなく、スタイリッシュで大人っぽい楽曲になっています。今作で、少し強くなった大人なつばきファクトリーを感じていただけるはずです。――豫風さんにとっては、今作が初参加となりますが、レコーディングは順調でしたか。また、新メンバーが参加したことで、歌やパフォーマンスなど、これまでとは違う変化を感じましたか。山岸新メンバーの歌声が素晴らしくて、音源ができあがって、歌声を聴いたときはびっくりしました!つばきファクトリーの楽曲に厚みも増しましたしパフォーマンスは迫力がアップして、新メンバーはフレッシュさもありつつ、今作の大人っぽさも活かせた表現力もあるので、今後に期待大です。浅倉個人的には感情移入がしやすい楽曲ばかりだったので、曲の世界観に溶け込むのはそこまで難しくありませんでした。ただ、音が低かったり、ピッチの上がり下がりが激しかったりで音程を取ること、喉を痛めない発声で歌うことに苦戦しました。新メンバー4人の歌声を完成した音源で初めて聴いたとき、想像以上のものができあがっていて、かなりびっくりしました。4人それぞれ素敵な声を持っていて、12人体制スタートのシングルから、インパクトのある大きな華を添えてくれましたね。浅倉樹々。2000年9月3日、千葉県生まれ。AB型。座右の銘は「清く正しく美しく」。豫風レコーディング自体はハロプロ研修生のときに経験があり、初めてではなかったのでまだリラックスしてできたのではないかと思いますが、レコーディングとステージで歌うのとはまた違うので、その点は大変でした。でも、とても楽しかったです。――「涙のヒロイン降板劇」は、失恋した女の子が立ち上がる姿を小気味良いテンポで聴かせる大人っぽいナンバーですが、この曲に込めた思いを教えてください。山岸この楽曲は彼にフラれたあとのお話になっているのですが、フラれて悲しくてへこむというよりも、切り替えて前に進もうとしている女の子の歌。なので、恋愛に限らず、仕事や学校などのどんな出来事に置き換えても、その姿に共感できるような歌詞だなと。聴くだけで体がつい動いてしまう、口ずさんでしまうようなグルーヴ感があって、オシャレでノリノリになれるので、テンションを上げたいときに聴きたい1曲です。浅倉自分に自信がなくなってしまい、でも一歩前に進みたいと思っている方の背中を押せるような楽曲にもなっていると思います。豫風この曲は失恋してもジメジメしていなくて、強く生きていくという、前向きなイメージ。そしてオシャレな曲調なので、聴いてくださる方に、未来は明るいんだよという思いを込めて、歌わせていただいています。ーー「ガラクタDIAMOND」は、裏切った恋人を断ち切る潔い女性の歌ですが、この曲でとくに聴いてほしい、注目ポイントはどこでしょうか。山岸新メンバーのフィーチャー楽曲で、一人ひとりの歌声をちゃんと聴けるようになっています。彼の浮気現場を目撃してしまい、ショックを受けながらも、強く芯のある女性を表現していて。サビの最後は「ダイキライよ!」というフレーズなのですが、アイドルが怖い顔をして“ダイキライよ”とはなかなか言わないので(笑)、そこが注目ポイントだと思いますし、とても新鮮だなと思いました。豫風瑠乃。2007年12月20日、大阪府生まれ。O型。座右の銘は「七転び八起き」。浅倉新しく入った河西結心(かさいゆうみ)ちゃんの歌い出しは、情緒あふれる歌い方になっているので、注目してほしいですね。あとはこれまで、たとえば“大好き”というあまい台詞やフレーズを歌うことはあっても、“ダイキライ”という否定的な言葉はなかなかなかったので、また新しいつばきファクトリーが見られるはず。豫風そうなんです、歌詞の中で3回「ダイキライよ!」というフレーズが出てくるのですが、3名のメンバーがそれぞれ素敵な味を出しながら想いを込めて歌っているのが聴きどころです。あと落ちサビ(最後のサビの前に置くボーカルを際立たせるサビ)では、裏切った恋人に対しての儚い、切ない想いを表現しながら歌っているので、その点も注目してほしいですね。ーー「約束・連絡・記念日」は、恋人への本音を吐露するダンサブルなナンバーです。この曲の聴きどころ、ダンスパフォーマンスの見どころはどこになりますか。山岸サビがとても特徴的で、一度聴いたら耳から離れなくなるような中毒性のある楽曲になっています。曲の最後には、一人一文字ずつ歌うところがあるので、誰がどの文字を言っているのか当ててみるのも、ひとつの楽しみかな(笑)。間奏のダンスでは、全員でワックダンスをしていて、12人で踊るととても迫力があるのが見どころです。浅倉サビの変速リズムやタイトルにもあるように、約束、連絡、ふいうち、記念日、と歌詞で単語が多く使われているのも斬新で、お気に入りです。ダンスは12人でカノンになって踊っていますが、これは何度も練習して合わせた部分でもあるので、ぜひ見ていただきたいですね。豫風切なさを表現した今作のダンスの見どころは、各メンバーの切ない表情。12人が数人にわかれてシンクロしているダンスは、ひとりずつではなく、全体を観ていただきたいです。ホールコンサートのリベンジとミニライブを開催したい――12人と大所帯となりましたが、普段はどのように交流を深めていますか。浅倉まだ全員で遊んだことはありませんが、お仕事の合間やお休みの日に予定が合えば、メンバー同士でご飯に行くことがありますね。(山岸)理子ちゃんとは、同じ千葉仲間でもあるので、ディズニーランドに一緒に行くことが多いです。――みなさんは美容やダイエットなどで気をつけていることはありますか。山岸私はとてもむくみやすい体質なので、普段から筋膜リリースローラーや小顔ローラーでコロコロしたり、足のマッサージ器でマッサージしたり、足つぼシートに乗ってむくみをできるだけとったり。そして、お風呂に入ることも好きなので、いつも汗をかくまで湯船に浸かっています。スキンケアに関しては、最新のスキンケア情報を常に見て、今月の売上ランキングや口コミなどをチェックしていますね。浅倉朝起きたら、お白湯をコップ1杯飲んでいます。あと乾燥肌なので、保湿をすることと、適度な運動をすること、湯船に15分は浸かること、これらは毎日しています。豫風寝る前に、よく顔にパックをして保湿しています。また、偏った食生活をすると顔にできものができてしまうので、炭水化物以外のいろいろな食べ物を意識しながら、食べていますね。なかでも、豆腐がおいしくていまは毎日食べています。――では、オフの日の過ごし方を教えてください。最近ハマっているものはありますか。山岸愛犬のマッサージをすることですね。マッサージをすると、うっとりしてとても気持ちよさそうな顔をするのがたまらなく可愛くて、愛犬が寝るまでずーっとマッサージしてあげちゃいます(笑)。私が手を止めると、「もっと」というように足で押してくるので、その仕草も可愛くて、永遠にしちゃうんです。浅倉私は韓国ドラマにハマっていて、自粛期間から20作品くらいは観ました。暇さえあれば、ドラマ観賞会です(笑)。筋トレも、ドラマ同様に自粛期間から続いている趣味なので、負荷を強めたりしながら、下半身をメインに鍛えていますね。あと食べることも好きなので、時間があるとレシピを見ながら、料理やお菓子作りに挑戦したり、カフェ巡りをしたりしています。豫風オフの日は買い物に行くとき以外、家でお菓子作りをしていることが多いです。最近は料理にもチャレンジしていますが、もっと献立の幅を広げられるよう、頑張りたいですね。また、音楽を聴きながらマンガを読んだり、おもしろい動画を観たりして過ごしています。――いろいろなお話をありがとうございました。最後に、リーダーの山岸さんから、今後の抱負を教えてください。山岸今後は、まず昨年中止になってしまったホールコンサートを全国各地でやりたいですね。そして、つばきファクトリーは、結成当初からリリースイベントのミニライブをたくさんやってきています。各地のファンの方にたくさんお会いできるうえ、近くでパフォーマンスをすることで、みなさんの熱量や楽しそうな表情も間近に見ることができて、私は大好き。いまはまだこのご時世で難しいかもしれませんが、リリースイベントのミニライブも、再開できたらいいですね。取材後記新メンバーが4人加わった12人体制となり、新たにスタートした、つばきファクトリー。ananwebの取材では山岸理子さん、浅倉樹々さん、豫風瑠乃さんが登場してくださり、みなさんのグループにかける強い想いが伝わってきました。これからのご活躍も楽しみですね。そんなつばきファクトリーのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみりつばきファクトリーPROFILE2015年4月、ハロー!プロジェクト研修生内ユニットとして結成。2017年2月、シングル「初恋サンライズ/Just Try!/うるわしのカメリア」でメジャーデビュー。同年、第50回日本有線大賞 新人賞、第59回『輝く!日本レコード大賞』最優秀新人賞受賞。2021年7月、河西結心、八木栞、福田真琳、豫風瑠乃の4名が加入し、新体制となる。11月17日、トリプルA面シングル「涙のヒロイン降板劇/ガラクタDIAMOND/約束・連絡・記念日」をリリース。InformationNew Release「涙のヒロイン降板劇/ガラクタDIAMOND/約束・連絡・記念日」(収録曲)01.涙のヒロイン降板劇02.ガラクタDIAMOND03.約束・連絡・記念日04.涙のヒロイン降板劇(Instrumental)05.ガラクタDIAMOND(Instrumental)06.約束・連絡・記念日(Instrumental)*収録曲は全形態共通。2021年11月17日発売(通常盤A)EPCE-7643(CD)¥1,300(税込)*特典:トレーディングカードソロ12種+キラ仕様集合1種よりランダムにて1枚封入(涙のヒロイン降板劇 Ver.)。(通常盤B)EPCE-7644(CD)¥1,300 (税込)*特典:トレーディングカードソロ12種+キラ仕様集合1種よりランダムにて1枚封入(ガラクタDIAMOND Ver.)。(通常盤C)EPCE-7645(CD)¥1,300 (税込)*特典:トレーディングカードソロ12種+キラ仕様集合1種よりランダムにて1枚封入(約束・連絡・記念日 Ver.)。(初回生産限定盤A)EPCE-7635(CD+BD)¥2,200(税込)*特典:BD付。収録内容:01.涙のヒロイン降板劇(Music Video)、02.涙のヒロイン降板劇(Dance Shot Ver.)、03.涙のヒロイン降板劇 メイキング映像。(初回生産限定盤B)EPCE-7637(CD+BD)¥2,200(税込)*特典:BD付。収録内容:01.ガラクタDIAMOND(Music Video)、02.ガラクタDIAMOND(Dance Shot Ver.)、03.ガラクタDIAMOND メイキング映像。(初回生産限定盤C)EPCE-7639(CD+BD)¥2,200(税込)*特典:BD付。収録内容:01.約束・連絡・記念日(Music Video)、02.約束・連絡・記念日(Dance Shot Ver.)、03.約束・連絡・記念日 メイキング映像。(初回生産限定盤SP)EPCE-7641(CD+BD)¥2,200(税込)*特典:BD付。収録内容:01.「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?、02.黄色い線の内側で並んでお待ちください、03.好きって言ってよ、04.初恋サイダー、05.オーディションオムニバス映像。取材、文・かわむらあみり
2021年12月01日【音楽通信】第95回目に登場するのは、『呪術廻戦』ほか大人気アニメの主題歌を務め国内外で話題を呼んでいる、クリエイターズユニット・Who-ya Extended(フーヤエクステンデッド)!バンド活動を経た延長線上にデビューがあった【音楽通信】vol. 952019年11月に、TVアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 3』(フジテレビ系)のオープニングテーマ「Q-vism(キュビズム)」でメジャーデビューした、ボーカリストのWho-ya(フーヤ)さんを中心としたクリエイターズユニット、Who-yaExtended。同曲はiTunes総合チャート第1位など配信チャートを席巻し、ミュージックビデオがYouTubeで公開されるとすぐ100万回再生を突破。2021年には、TVアニメ『呪術廻戦』のオープニングテーマ「VIVID VICE」を担当し、デジタルシングルランキングで1位を獲得。同曲のオリジナルミュージックビデオはYouTubeの再生回数1250万回を突破し、国内外から注目を集めています。そんなWho-yaExtendedが、2021年11月10日に2ndアルバム『WII (ダブリューツー)』をリリースされたということで、お話をうかがいました。――まずはWho-yaさんの音楽的なルーツや影響を受けたアーティストから教えてください。ルーツといえば、母親の影響で、生まれた頃から(アメリカのロックバンドの)リンキン・パークなどのミクスチャーサウンドバンドを自然と聴く環境で育ってきました。同時に、椎名林檎さんの楽曲も、子守唄として小さい頃から聴いていたので、しいてあげるならそのふたつですね。――2019年11月に、新人では異例の大抜擢となったアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 3』(フジテレビ系 2019年)のオープニング曲「Q-vism(キュビズム)」でメジャーデビューされました。同曲はiTunes総合チャートやAmazonデジタル人気度ランキングと各1位を獲得し話題となりましたが、もともとデビューを目指して活動していたのですか。デビューすることを意識していたことはないんです。もともと僕は中学、高校とバンドをやっていて、ライブをしながら「音楽というかたちでどこまで表現できるのだろう」と、自分の限界を探していました。いまはバンドではなく、クリエイターズユニットなのでかたちは違いますが、音楽での追求の延長線上にデビューがあった、というのが一番近い答えかなと思います。――バンドでは何のパートを担当していたのですか。ずっとボーカルを担当していました。そのときは、楽器を担当するよりも「歌うほうが好き」という気持ちが強かったんです。――ご自身で発信していこうと考えたのはいつ頃からなのですか。親の影響で音楽を聴いて育ちましたが、その頃は、音楽は聴く側でしかないと思っていました。その考えが変わったきっかけは、中学3年生のときに最後の文化祭で思い出作りに「バンドやろうよ」と、誘われたことです。それまで音楽は受け取る側だったけれど、「自分から発信してもいいんだな」と思って。そこからは発信していきたいという気持ちが徐々に生まれました。――学生時代から人気があったのではないですか?あまり自分でモテていましたとかは言えないです(笑)。そのときは、ただ「楽しいから」という気持ちだけでバンドをやっていて、まわりからどう見えるということはあまり考えずに、純粋に「音楽が好き」という気持ちだけでしたね。――デビュー以降、ずっとアーティスト写真などもイラストでしたし、Who-yaさんの姿を出さずに活動していたのが、2021年1月に配信された初のオンラインライブ「Sony Music AnimeSongs ONLINE 日本武道館」で初めて顔を出されました。何か心境の変化があったのでしょうか。デビューという大きなタイミングで、今後どういうことをやっていきたいかと考えたときに、まずは音楽とそこから表現できる世界観という、自分たちで作り上げられるものだけで勝負したいと思いました。そのために楽曲を発表していくけれど、キービジュアルだけで活動してみたら、どういう反応をもらえるのか興味があったんです。そこから1年少し経って、ある程度リスナーの方の反応がわかるようになってきたので、今度は自分がステージに立ってみてもおもしろいんじゃないかなと。そこで、今年1月の武道館公演のタイミングで、自分が表に出ることにしました。――実際に出られて反響はいかがでしたか。個人的には、みなさんから反響をいただけていると思います。キービジュアルだけで活動していた1年間と比べると、表に出ることによって、自分が歌っている姿がもっとダイレクトに感じてもらえるというのは、同じ曲を聴いたとしてもリスナーの方の聴こえ方が少し変わってくるところもあるのかもしれません。内外ともに変化の時を経て完成した2ndアルバム――2021年11月10日に、2thアルバム『WII』がリリースされました。まず、仕上がってみての手応えから、お聞かせください。1stアルバム『wyxt.』を昨年4月にリリースしてから約1年半が経って、その間、自分自身も変化して、世界でもコロナ禍となって内外ともに変化の多い期間でした。そのなかでこうして活動を続けられて、音楽を聴いてくれる方がいてというこの1年半を通じてのいまのWho-ya Extendedが感じられる2ndアルバムになっています。――いつも曲作りはどのようにされているのですか。このプロジェクトでいうと、いまも僕ひとりではなく、まわりのいろいろなクリエイターとともに、知見を借りながら曲作りをしています。曲を作るクリエイター、歌詞を書くクリエイター、音楽とは関係のない作業を担当するクリエイターなど、コアなメンバーはいるものの人数は固定せずに、その都度集まっていて。プロジェクトでディスカッションを進めて、最初の楽曲の軸から、より多くの方に響く楽曲としてどう落とし込んでいくか、パズルを組み立てていく感じで作っています。――今作はいつ頃から制作されていたのですか。今年は2月に1stEP『VIVID VICE』、8月に2ndEP『Icy Ivy』を出していて、そこから今作に収録している曲もあります。今回のように1枚のアルバムという構想でいうと、4曲目の「Wander Wraith(ワンダー レイス)」は、夏前ぐらいから制作は始まっていました。――4曲目に収録された「Wander Wraith(ワンダー レイス)」は、疾走感あふれるギターが響く、アルバムのリード曲になっていますね。そうですね。この曲は8月に行った有観客ライブで披露した楽曲なのですが、ライブの配信もありつつそこではアンコールは配信せず、実際にライブ会場に来てくださった方に限定で披露したいと思って作った曲なんです。なので、ライブの空間をイメージして切り取ったときに、映える曲になるよう作りました。この曲はギミック的なところがあるんですが、音声のデータをぶつぎりにした状態で並べたりしているので、ライブで完全再現できないものの、逆に別物としてのおもしろさがあると思っています。――映画の幕開けのようなドラマチックさのある1曲目「WII -prologue-」や、ラストを飾る12曲目「12 WII -epilogue-」があり、アルバムを引き締めつつ彩っていますね。おっしゃっていただいた通り、映画のようなイメージで、最初と最後にこの2曲を追加していて。もともと「WII -prologue-」はライブのSEとして、登場するときに使っていた楽曲なんです。8月のライブでも使用したので、そのライブを経てアルバムをリリースするタイミングで、作品でも1曲目にあったらおもしろいかなと入れてみました。そしてアルバムを11曲通じて聴いていただいたときに、最後の12曲目「12 WII -epilogue-」を入れることで、アルバムとしてのまとまりができるかな、という発想から作っています。――2曲目「VIVID VICE」は、大人気アニメ『呪術廻戦』(MBS/TBS系 2020年〜21年放送)の第2期オープニングテーマで、YouTubeのMusic Videoは再生回数が現時点で約1300万回を突破するほど注目を集めていますね。この曲は『呪術廻戦』と親和性が高くなるように作りました。もともと僕自身、『呪術廻戦』が好きなので、自分が好きな作品の主題歌を歌うというのは、なかなかできないことで新鮮。作品が持っている引力やパワーが強いほど、自分自身も楽曲を通じてより一層いい楽曲になればという、熱量を持って挑めました。――11曲目「Icy Ivy.」はアニメ『NIGHT HEAD 2041』(フジテレビ系 2021年)のオープニングテーマとなりましたが、この曲はどのように生まれた曲ですか。『NIGHT HEAD 2041』の主役が、超能力を持っているために社会から疎外されてきた兄弟という設定で、その能力のせいで国を追われるストーリーなんです。僕は生まれながらに超能力は持っていませんが、僕たちと照らし合わせてみるとベクトルは違いますが、家庭環境や経済的なことでは、自分で選んだわけではないけれど決められているという面は同じだなと共感できるところもあって。たいていのことは生まれたときに、すでに決められているじゃないですか。でもそれに左右されずに生きていかなきゃいけないですし、この作品の主人公だけでなく僕を含めみんなが、運命的なものにのまれないように生きていけたらという思いを込めています。みんなの背中を押すほどではないですが、寄り添う曲になっているのではないかなと。――バラードの10曲目「透明な花」は、唯一の日本語タイトルです。初めて日本語タイトルにした楽曲なんですが、もし本当に「透明な花」があっても目に見えないので、そういった見えないもののたとえ、比喩のような意味で使っていて。楽曲は、祈りや願いが、テーマになっています。たとえば夜は何も悩まずにゆっくり寝たいとか、自分の大切な人が幸せでいてほしいとか、理想や願いのようなものって確度の違いはあるかもしれませんが、みなさんそれぞれ持っているものじゃないかなと。それを「透明な花」というワードにたとえて歌った曲です。歌録りも、細かい言葉のニュアンスまでかなり意識して歌ったので、この曲が一番時間がかかりました。――歌うときはいつもどのようなことを意識して歌っていますか。楽曲ごとのコンセプトやテーマにそって、「こういう思いが伝わればいいな」「この景色が伝わればいいな」というイメージを歌というツールを通じて、聴いている方にダイレクトに思いを感じてもらえるように意識して歌っています。――では聴き手に、どんなふうに今作を聴いてほしいですか。アルバムはライブと似ている気がしていて、それぞれの人たちが受け取ってくれる気持ちのままでいいのかなと思っています。こういうコンセプトだから聴いてほしいという押しつけでなく、それこそ今回は曲ごとにいろいろな顔を持つ楽曲が多いので、ただ受け取って終わりではなくて、作り手と受け取り手の共鳴があるように感じていて。自分たちはこう受け取りましたということを、ファンの方たちはSNSなどで言ってくださっていることも多いので、そういった共鳴を経てやっと、アルバムが完成すると思っています。――アルバムリリース後に、来年はライブの予定もあるそうですね。1月23日に東京の渋谷にあるVeats SHIBUYAで、初めてのワンマンライブを開催します。来年1月でデビューして約2年経つのですが、いま応援してくれている方がいるからこそ、クリエイターズユニットとして成り立っているという思いがあるので、この2年間の思いをワンマンライブの一夜で埋められるような、聴いてくださる方々との“待ち合わせ場所”のような空間にしたいと思っています。アルバムからの曲も披露する予定なので、期待していただきたいですね。ダイレクトに音楽を届ける場所を増やしていく――おうち時間が長引く昨今ですが、いまハマっているものはなんですか。映画がすごく好きなので、家では映画を観ているかゲームをしているかという、夜更かし系のことをしています(笑)。その一方で、キャンプに行ったり釣りをしたりするのも好きなので、自然の多い山や川へ出かけることも。日によって、インドアだったりアウトドアだったり、けっこう両極端ですね。――端正な顔立ちをされていて、ピアスも似合っていますが、普段からアクセサリーやファッションなどで、お好きなものやこだわりはあるのですか。ファンの方からすると意外かもしれないですが、あまり服やアクセサリーは頻繁には買わないんです。このピアスもずっと、デビューしてから同じものをつけていて。サウナに行くとき以外は、ずっとつけているピアスです。――サウナに行くことがあるのですね?すごくよくサウナに行きます(笑)。ピアスをしたまま入ると耳がやけどしてしまうので、サウナ以外はずっと身につけていて。アクセサリーなどは、お店に行ったりネットで見て購入しています。シルバーが好きなので、全部シルバーで揃えていますが、一目惚れというのでしょうか、パッと見て気に入ったものを選んでいます。――ちなみに女性のファッションで好みはありますか。色でいうと、カーキや黒系が好きかもしれません。街でパッと見ていいなと思うのは、日本のモード系ファッションブランドの『TOGA(トーガ)』、ロンドンのブランドの『COS(コス)』あたりの服装に目が留まりますね。いわゆる大人っぽい服装です。――では素敵な女性像というと、どんな人でしょう。性別問わずかもしれませんが、芯がある人ですね。自分で自分を裏切らない人は、いいなと。きちんと自分の意思があって、まっすぐに自分やまわりとも向き合っている人が好きです。――では最後に、今年もあと少しとなりましたが、来年や今後の抱負をお聞かせください。来年は年始から初ワンマンライブもありますし、フェスのようなイベント出演もしたいですし、個人的にはライブをたくさんやりたいです。いままで2年間、楽曲メインで活動をしていたぶん、来年以降はワンマンライブをきっかけに、さらにリスナーの方にダイレクトに音楽を届けられる場所が増えればいいなと考えていますし、足を運んでくださった方が「楽しい!」と思ってもらえる場所にしていきたいと思っています。取材後記これまでその姿は謎のベールに包まれていたところもあった、Who-ya Extended。今回ananwebに登場してくださったボーカルのWho-yaさんは、きらめく才能を感じさせる美男子ながら、あくなき音楽への探究の旅を続けるアーティストです。インタビューの際、つけていたシルバーのマスクチェーン姿もクールでした。そんなWho-ya Extendedのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・安田光優取材、文・かわむらあみりWho-ya ExtendedPROFILE2019年11月、シングル「Q-vism(キュビズム)」でメジャーデビュー。2021年1月、TVアニメ『呪術廻戦』第2クールオープニングテーマ「VIVID VICE」を提供し、 アーティストとして大躍進。5月には、一発撮りのパフォーマンスを鮮明に切り取るYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」にも出演し、その繊細なパフォーマンスが話題に。11月10日、2ndアルバム『WII』をリリース。2022年1月23日、渋谷のVeats SHIBUYAで初ワンマンライブを開催する。InformationNew Release『WⅡ』(収録曲)01.WⅡ -prologue-02.VIVID VICE03.Discord Dystopia04.Wander Wraith05.MESSY WORLD06.Growling Ghoul07.The master mind08.Wasted Dawn09.Absolute 010.透明な花11.Icy Ivy12.WⅡ -epilogue-2021年11月10日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)SECL-2708(CD)¥ 3080(税込)(初回生産限定盤)SECL-2706〜SECL-2707(CD+BD)¥ 3800(税込)*三方背スリーブ仕様。<初回生産限定盤Blu-ray Disc>(DISC2内容)01.Wander Wraith -MUSIC VIDEO-02.Icy Ivy -MUSIC VIDEO-03.VIVID VICE -MUSIC VIDEO-04.VIVID VICE / THE FIRST TAKE05.VIVID VICE Acoustic version写真・安田光優 取材、文・かわむらあみり
2021年11月26日多くの人々が、海外作品を鑑賞する際にお世話になっている日本語字幕。映画業界で働く人々にお仕事について根掘り葉掘り話を聞く【映画お仕事図鑑】。今回、登場してもらうのは先日、公開を迎えたヴィゴ・モーテンセンの初監督作品『フォーリング 50年間の想い出』の日本語字幕を担当した高内朝子 。高内さんと言えば、近年では『20センチュリー・ウーマン』、『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』などの話題の映画、さらに大人気ドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」の字幕を担当。またMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)において、初めて女性ヒーローが単独で主役となった『キャプテン・マーベル』では、女性登場人物のセリフでほとんど“女性言葉”が使われていないことが大きな話題を呼んだ。映画『フォーリング 50年間の想い出』を例に、字幕制作のプロセスや苦労、やりがい、さらに時代と共に変遷する字幕の言葉遣いについてなど、たっぷりと話を聞いた。「なんとなく」で始まった字幕翻訳の仕事――まずは高内さんが字幕翻訳者になったきっかけ、経緯について教えてください。これが結構たまたまというか(笑)、「なろう!」と思っていたわけではなく流れなんですよね…。もともと「お話」や本が好きで、さらに小学生の時に『グーニーズ』に夢中になってからは海外の映画や音楽にも目覚めたものの、それが将来の仕事に結びつくとは考えていませんでした。大学時代には交換留学でイギリスに1年弱行ってたんですが、帰ってきたら周りの就職活動も一段落しているという状況だったんですね。イギリスでは美術史を専攻していて、いまでは珍しくないですが、当時はあまりなかった、従来の白人男性が作った歴史ではない、フェミニズム的な視点であったり、様々な人種の視点も反映した美術史というのを勉強していました。その関連で映画理論のクラスも取った覚えがあります。それが面白くて、大学院で勉強してみようかという気持ちになって、一切、就職活動をしないで卒業してしまったんですが、院試に落ちてしまい(苦笑)、受け直そうか? どうしようか? という感じでアルバイトをしてたんです。いまよりももうちょっとのんびりしていた時代だったんですね(笑)。それで「一度くらい働いてみて、それからまた決めよう」と思って、好きな本や美術に触れて働きたいという気持ちで、なんとなく出版社や美術館で働きたいと思ってたんですが、そんな簡単にうまくいくはずもなく…(苦笑)。結局、小さなアートギャラリーで働くことが決まったんですが、その直後に新聞で見つけたのが、制作会社の「字幕スタッフ募集」という採用記事で、なんとなく面白そうだなとピンときて、そこを受けました。最初に決まってたギャラリーは平謝りで辞退して、字幕制作のスタッフとして働き始めたんです。最初は「ちょっとやってみるか」という気持ちだったんですが、結局そこで11年ほど働いて、それからいまに至るという感じですね。――では字幕翻訳についてはその会社でゼロから学ばれたんですね?そうですね。最初の5年ほどは「字幕ディレクター(演出)」という仕事で、人の翻訳のチェックや、クライアントとの打ち合わせ、スタジオ作業などをしていたんですが、そこで流れを覚えて、自分でも字幕の翻訳をやってみたいと思うようになりました。当時その会社には数人の社内翻訳者がいて、私に対しても「じゃあやってみれば?」という感じで(笑)、それから5~6年、社内翻訳者として仕事させてもらって、その後、独立いたしました。――字幕制作の世界には、字幕制作の会社に属している「社内翻訳者」と「フリーランス」とどちらもいらっしゃるんですか?そうですね。とはいえ、フリーランスが圧倒的に多いとは思います。ただ大きな制作会社であれば「翻訳部」みたいな部署があり常時、何人かの翻訳者を社員として抱えているところもあります。私のように制作会社に勤めて、仕事を覚えて独立する人間もいますし、いまはいろんなスクールがあるので、そこに通って仕事を紹介してもらったりしながら、少しずつ仕事を増やしていくという方も多いと思います。『フォーリング 50年間の想い出』メイキング――字幕翻訳者の需要というのは多いのでしょうか? ずっと以前、ある字幕翻訳者さんが英語の映画の字幕翻訳に関しては、ごく少人数で回っているとおっしゃっているのを聞いたことがありますが、近年はNETFLIXなどの配信サービスも拡大し、劇場映画以外のコンテンツの量も増えていて、こうした需要も変化しているのではないかと…。翻訳者の正確な人数などは私もわかりませんが、NETFLIXなどの作品の数は毎月ものすごいですから、確実に以前と比べて仕事の量は増えていると思います。私は配信サービス以前、ちょうどDVDが流通し出した頃に会社に入ったんですね。翻訳も最初はDVDの特典映像のような仕事が多くて、名前が出ないようなものばかりでした。いまは、配信サービスが増えて、翻訳者名が出るもの出ないもの含め、翻訳の仕事はますます増えていますね。スクールも盛況だと聞いています。――先日、公開を迎えたヴィゴ・モーテンセン初監督作『フォーリング 50年間の想い出』の字幕も担当されていますが、こうした劇場公開の映画の場合、依頼から制作、納品までどのような流れで仕事を進めていくのでしょうか?劇場映画の場合、配給会社から直接、私のようなフリーランスの字幕翻訳者に依頼が来ることもありますが、多くの場合は間に(字幕の)制作会社が入っていて、そこから話をいただきます。今回の『フォーリング 50年間の想い出』も制作会社さんからの依頼ですね。納期も作品によって違いますが、今回は2週間ほどいただきました。まず“素材”と呼ばれる映像とスクリプト(脚本)をもらいます。最近の翻訳者はたいてい持っている字幕制作ソフトというものがあるんですが、そこで映像と自分が入力した文字を出して、どういう感じで字幕が出るかを目で確かめることができるんです。作業としてはまず“ハコ割り”と呼ばれるプロセスがあって、このセリフのまとまりでひとつの字幕にしようというのを決めて、原語を区切っていきます。続いては“スポッティング”という、ハコ割りどおりに字幕を出すためのタイミングを入力していく作業です(制作会社にお願いできるケースもあります)。タイムコード入りの映像と組み合わせながら、字幕制作ソフト上で(字幕の)イン点、アウト点というのを決めていくと、この字幕にだいたい5秒かけられるとか、この字幕は1秒半しか使えないといった秒数や文字数が表示されるんです。それを終えたら翻訳作業に入ります。作品によって訳しながら調べなくてはいけないことが非常に多い場合は交渉して少し翻訳の期間を延ばしてもらうこともあるんですが、今回の『フォーリング 50年間の想い出』に関してはそこまで引っかかる部分もなかったので、わりとスムーズに、10日前後で翻訳の作業ができました。『フォーリング 50年間の想い出』その後、制作会社のチェックが入ります。その過程で例えば「ここは横字幕になっていますが、テロップが入るので縦にしましょう」という修正(※縦の字幕になることで表示できる文字数は減る)が入ったり、「このシーンは字幕が俳優の顔にかかるので、もう少し右に寄せましょう」といった指摘が入ったりします。表記のミスなどについてのチェックもありますし、表現に関しても「もう少しわかりやすく」というリクエストが入ったりもします。その後は“シミュレーション”または“プレビュー”と言われる作業で、制作会社や配給会社の担当者さんと共に少し大きめの画面で字幕をチェックし、気になった部分などを修正していくプロセスがあります。それを経て初号試写(※関係者向けの試写上映)があるんですが、やはり大きなスクリーンで見ると、小さなソフトの画面や作業用映像で気づかなかった部分が見えたり、単純に話者が見えてなかったけど、違う人が喋っていたりと、新たな修正ポイントに気づく場合もあります。そこで必要があれば最終的な修正をして、私の仕事はひとまず終わりとなります。――劇場映画の場合、TVドラマやDVDよりも字幕に費やせる文字数は少ないそうですね?そうですね。DVDや配信のドラマなどの場合、わからなかった部分を戻って見直すことができますが、劇場映画の場合はその1回きりとなってしまうので、ひと目で見やすく、わかりやすい字幕が求められます。大きなスクリーンで映像を堪能してもらうためにも、文字数はなるべく少ないほうがいいのですが、わかりやすさのためにどうしても入れなくてはいけない言葉、情報もあったりして、なかなか難しいところで、そこはいつもせめぎ合いですね。昔から「1秒4文字」ということは言われるんですけど、それもカタカナなのか? それとも漢字なのか? よく見る文字列か? めったに見かけない言葉なのか? ということによって違います。それから(映像を含めた)画面全体の情報量が多いシーンだと、あまり文字を入れすぎると読み終わらないまま終わってしまうので、そういうところでは字数を減らしたり…。幸い、いまはソフトを使って文字数を減らしたり、増やしたりといろんなパターンを確認できるので、様々な要素を考慮しながら制作しています。――そういった字幕制作ソフトなど、ツールの部分の進化で、高内さんが仕事を始められた頃と比べ、仕事が進めやすくなった部分も大きいのでしょうか?そうですね。それこそ昔は、頭の中で映像と字幕の組み合わせを想像しながら翻訳をして、その後、“仮ミックス”という字幕が仮で入った映像を制作会社から受け取って、初めてどんなふうに字幕が表示されるのかがわかったんです。いまはソフトを使えば最初からわかるので、その点は楽ですね。そういう意味では、先ほど説明した“スポッティング作業”というのは、以前は私たちの仕事ではなくて、字幕翻訳者はあくまでも翻訳をするだけだったんです。そこは逆に、ソフトができたことで仕事が増えてしまった部分ですね(笑)。映画を観る人を信頼して翻訳する――高内さんが、字幕翻訳を行なう上で、大切にしていること、特に気をつけていることはどういったことですか?やはり、いかに血の通ったセリフにするか? という点ですね。いまは英語が理解できる方も昔と比べて格段に増えて「字幕が原文と違う!」といった声を聞くこともあるんですけど、基本的には世代を問わず日本語話者に向けて、リアルな日本語で心情を伝えるということを一番大切に考えています。直訳に限りなく近い翻訳もあれば、少しお節介で親切な翻訳もあって、それによって観る方の好き嫌いも分かれると思います。訳し方は作品や観客のターゲット層によって多少、変えることもありますが、私はなるべく読みやすく親切にと…もしかしたらちょっとお節介気味な方かもしれません。もちろん、これはあくまで「どう訳出するか」の問題で、内容を勝手に単純化したり、原文にない要素を加えるという意味ではありません。作品によって、扱っている題材の専門家の方が観ることもあれば、そのジャンルに詳しくはないけれど映画が大好きでよく観ている方もいます。私自身、能力を超えたような作品にやっとの思いで取り組んでいることも多いですし、観てくださる方を信頼して、侮らないで翻訳することを心がけています。難しい専門用語や、微妙で繊細なニュアンスの表現をどうするか?というのは常にあって、もちろん制作会社や配給会社と相談しながら決めていきます。作品と登場人物にぴったりくる言葉を…と言うとごく当たり前のことなんですが、観てくださる方は自分よりもすごいんだ!ということはいつも念頭に置いて臨んでいます。――字幕翻訳者さんによって、訳し方の“個性”というのは出てくるものですか?そうですね。以前、仕事で他の方の翻訳を見る機会が多くありましたが、(人それぞれ)違うものだなというのは感じました。ジャンルごとに得意な分野があったりもして、ドキュメンタリーが上手なのにコメディになると「あれ?」という翻訳をする方もいて(笑)。決して間違いがあるわけではなく、正確な字幕ではあるんですけど。――他の方の制作をした字幕を読んで「このフレーズをこう訳すのか!」と驚いたりも…。ありますね。例えば、俳優がものすごくたくさん喋っていても、字幕で表現できる文字数は本当に少ないので「そうか、こういう思考でこの字幕に到ったんだな…」という翻訳者の思考の回路が同業者だからこそわかるところもありますし。――先ほど、作品によってはリサーチも必要となるとおっしゃっていましたが、言葉の問題というより、社会の制度や法律、文化や慣習の違いで、なかなかぴったり当てはまる訳語がない場合もあるのでは?そうですね。「ハウス・オブ・カード」などではいろんな省庁や部署の名前なども出てきますが、日本で似たようなものがある場合、それを当てはめてしまいたくなるんですが、やはり似て非なるものですから。私自身が、そういう(日本とアメリカの)違いなどを知るのを好きですし、あの作品の視聴者もそういう部分に興味のある方が多いと思うので、そういう場合はなるべく原語の意味、現地の情報がそのままきちんとわかるように訳すようにしています。私自身、何かの専門知識を持っているわけではないですから、例えば理系や金融の知識が必要な場合は、詳しい友人に尋ねたりもします。以前、釣りの用語を釣具屋さんに尋ねたこともありましたし、ネジの種類がわからない時に、東急ハンズまで行って、店員さんにいろいろ伺ったこともありました。中古レコードの用語がわからなくて、アメリカの中古レコード店のサイトからメールで質問させてもらったこともありましたね。とはいえ、あまりに専門知識が全般にわたって必要な場合は、制作会社と相談して、「監修」という形で専門家の方にお願いすることもあります。「ハウス・オブ・カード」でも政治用語はしっかり監修していただきました。「ハウス・オブ・カード 野望の階段」――高内さんがこの仕事をされていて、やりがいや面白さを感じる部分はどういうところですか?言葉にもともと興味があるので、言葉について常に考えられることが面白いですね。あとは自分が担当した作品が話題になったり、大きな劇場で掛かるのはもちろん嬉しいんですが、私自身が地方の出身で、もっといろいろな映画を観たい…という思いで十代を過ごしていたので、自分の担当した作品が地方で上映されているのはすごく嬉しいですね。――最初に「なんとなく」この世界に入って、その後、フリーランスになって続けていこうと思えたのには、特別な喜びや面白さが感じられたからなのでしょうか?そうですね。外国語のセリフでも、やり方しだいで登場人物の細かな感情、心情をいくらでも日本語でリアルに伝えられると思いますし、それがうまくいったときの喜びはすごく大きいです。また私自身はかなり飽きっぽいんですが(苦笑)、そのときどきでいろんな作品に出会えるんですね。駆け出しのころは、ホラー映画に対して苦手意識があったんですけど、ホラーの巨匠たちの新作シリーズみたいなものを担当することになって、過去の様々な名作を観ましたし、仕事でカンフー映画を観まくった時期もありました。アメリカの政治のことは「ハウス・オブ・カード」でさんざん勉強させてもらいました。単語レベルで知らないことばかりだったので、こんなにも自分の能力を超えていると感じる仕事はなかったですが、腹をくくって向き合って、本当にすごい脚本を前に(ケヴィン・スペイシーの件は今も非常に悔しく、怒りが湧いてきますが…)「これをどうしたら日本語で伝えられるのか?」とプレッシャーもすごかったですけど本当に勉強になりました。『MINAMATA―ミナマタ―』最近では、ジョニー・デップ主演の『MINAMATA-ミナマタ-』を担当して、英語のセリフ自体は専門用語というよりも心情を表すような言葉が多かったんですが、それでも関連書籍などで水俣病の背景をできるかぎり勉強することで、選ぶ訳語が確実に変わってくるんですよね。ここ数年、東京国際映画祭の仕事もさせてもらって、今年はコソボの女性監督の『ヴェラは海の夢を見る』という作品(※グランプリを獲得)を担当したんですが、ここでもコソボについていろいろ勉強して…という感じで、飽きずに今までやってきました。――新しい言葉や流行語、若者の言葉などに対してもアンテナを常に張っているんですか?大好きですね(笑)。映画やドラマっていろんな人物が出てくるので、正しい日本語の知識が必要なのはもちろんですが、例えばバラエティやお笑い、ニュースでどういう言葉が使われているのか?ネットでいまどんな言葉が使われているのか?若い子たちが聴く音楽の歌詞はどんな感じなのか?とか、わりと何でもかんでもミーハーに首を突っ込んでいます。それをすぐに訳に取り入れないまでも、押さえておくようにはしますね。流行ってる言葉でも「これなら字幕にも使えるかな?」とか「これはさすがに字幕では無理かな…」などと考えます。“罵詈雑言”セリフをどう訳す? あえて“ゲイ”という言葉を使わなかったワケ――今回、高内さんが字幕を担当された『フォーリング 50年間の想い出』はヴィゴ・モーテンセンが自身の経験を取り入れつつ、父と息子の関係を現代と過去に分けて描いています。本作の字幕制作において、大変だった部分や工夫されたところなどを教えてください。この映画はとても美しい作品ではあるんですが、主人公の父親・ウィリスの言葉遣いが汚くて(苦笑)、罵詈雑言が非常に多くて、訳していく中でネタ切れになりかけましたね…。英語って罵詈雑言のバリエーションがものすごく豊かなんですけど、日本語はそこまででもないんですね。厳密に言えば、もう少しいろんな表現ができなくはないんですが、字幕にしてしまうと読みづらかったり、あまりにも下品になってしまったりということもあって…。とはいえ、主人公をはじめ周りの人たちが毎回、お父さんの言葉に凍り付くので、それなりにインパクトのある言葉にしなくてはいけなくて、その兼ね合いは難しかったですね。『フォーリング 50年間の想い出』ヴィゴが演じた主人公のジョンはゲイですが、このお父さんは「ゲイ」という言葉を使うようなタイプの人ではないので「ホモ」とか「オカマ」とか、本来であれば避けるような攻撃的な言葉が合うんですよね。とはいえ、これらの言葉を字幕で使うべきか…?という思いもあって、制作会社にも相談し、配給会社の判断に委ねましょうということになったんですが、結局は原語のセリフを尊重して、そのまま汚い言葉を使うことになりました。それ以外では、家族関係が複雑な作品ではあるので、関係性を説明するセリフに関して、観客の方がわかりづらくないようにと苦心しましたね。あとは、3世代の物語なので、例えばウィリスが若い頃、1950~60年代に登場する妻・グウェンのセリフではいわゆる“女性言葉”を使っていますが、現代のパートの孫世代のセリフは「おじいちゃん、○○だよ」という感じで、無理に女性言葉を使わずに訳しています。罵詈雑言が多かったのは事実なんですけど(笑)、脚本自体がとても美しくて、それを素晴らしい俳優たちが演じて、心情がこもっていたので、そんなにこちらでひねって何か特別なことをしようというのはなく、そのまま素直に日本語にすれば、良い字幕ができるかなという思いはあり、そこまで苦労なくできたと思います。社会の変化と共に変わっていく字幕翻訳時代背景や文脈を踏まえてあえて女性言葉使う場合も――女性言葉についての話が出ましたが、高内さんが担当された映画『キャプテン・マーベル』の字幕で、女性登場人物のセリフに女性言葉がほとんど使われていないことが大きな話題になりました。社会の変化によって、女性の言葉の訳し方は変わってきているのでしょうか?私自身、この仕事を始める前から「字幕って女性言葉が多いな」というのは感じてはいました。翻訳を始めてからも女性言葉を多用するということはなかったんですが、とはいえそういう文化圏の中にいることで、習慣といいますか、あまり考えずに使っていた部分はありましたね。ただ、やはりここ何年かですかね? 字幕翻訳の世界で、というよりも社会的にそういう機運が高まってきたこともあり、自分の中でも違和感が強くなって(女性言葉を)減らすようになってきたとは思います。『キャプテン・マーベル』で言うと、主人公について考えた時、この人が日本語話者だったとしたら? と想定したら、ああいう言葉遣いが自然だったので、決して苦労して、意識的に女性言葉を減らしたというわけではないんです。今回の『フォーリング 50年間の想い出』もそうですけど、昔の時代設定であったり、保守的な社会が舞台の作品であれば、それは変わりますし、実際、私の母の世代であれば友人と話す時も「○○よね?」といった言葉遣いは自然にすると思うので、そこは大切にしたいですし、「女性言葉は絶対に使わない!」と思っているわけではないです。作品やキャラクター、文脈によっては、女性言葉が話者の皮肉や何らかの意図を表すものになったりもするので、あえて使うという場合もあります。『フォーリング 50年間の想い出』――今回の『フォーリング 50年間の想い出』の主人公はゲイですが、LGBTQの登場人物の日本語字幕は、本人の性自認や話し方次第で、口調やニュアンスを変えたりするのでしょうか?NETFLIXの「クィア・アイ」などでもいろんな人が出てきますよね。例えばあの作品に出ているジョナサンは自分を“ノンバイナリー(※男性・女性の性別二元論にのっとったいずれかの性別を自認しない人)”で、自分の性別が揺れていると言っていて、服もときどきすごくフェミニンな場合もありますよね。LGBTQに限らず、女性でも友達同士だとすごくくだけた調子になることもあるし、男性だって場合によって「俺」と言ったり「僕」となったりしますよね。それと同じで、LGBTQの方に関しても、そんなにきっちりと決めなくてもいいのかなと思っています。トランスジェンダー(※出生時に割り当てられた性とは別のジェンダーを自認する人)ではないゲイの男性でも状況によって口調を使い分ける方もいますし、時にかわいらしさを表現しているようなシーンであれば、柔らかい訳し方にしたりということはあると思います。男性の「俺」とか「僕」といった表記も、ディレクターによっては統一しようとする方もいますし、あまりに登場人物が多い場合など、キャラ付けが必要になってくることもありますが、とはいえ無理に統一しなくてもいいとは思いますね。繊細に、その時のニュアンスを大切にしていけばいいのかなと思っています。『フォーリング 50年間の想い出』メイキング――最後になりますが、字幕翻訳者や映画業界での仕事を志している人に向けて、アドバイスやメッセージをいただければと思います。そうですね…私自身が、たまたまというか、“流れ”でここまで来てしまったので、そんなにたいそうなことは言えないんですが(苦笑)、(進路が決まらなかったりで)いろいろ思い悩んだりしていたこと、ウジウジしながらも見たり、触れたりしたもの、家族や友人たちとの会話、過去の経験が全て今の仕事の糧になっていると思います。私の場合、あまりにもやりたいことや興味がとっ散らかっていたんですが、たまたまこの仕事に出会って、飽きずにここまで続けてこれたのでラッキーだったなと思うんです。ですので、後々、何が役に立つのかわかりませんし、私が最初は美術や出版業界に入りたいと思いながらこっちに来たように、いま、映画や字幕制作の仕事をしたいと思っている人でも、すぐ近くにもっと面白いものや、向いている仕事があるかもしれません。ひとつひとつの縁を大切に、何にでも興味を持って、面白がってみるのが大事なことなのかなと思います。※一部引用元:イラストで学ぶジェンダーのはなし みんなと自分を理解するためのガイドブック/フィルムアート社(text:Naoki Kurozu)■関連作品:フォーリング 50年間の想い出 2021年11月12日よりkino cinema横浜みなとみらい・立川髙島屋S.C.館・天神ほか全国にて公開© 2020 Falling Films Inc. and Achille Productions (Falling) Limited· SCORE © 2020 PERCEVAL PRESS AND PERCEVAL PRESS INC. · A CANADA - UNITED KINGDOM CO-PRODUCTION
2021年11月25日NHK連続テレビ小説『花子とアン』、大河ドラマ『西郷どん』、そして大ヒットシリーズ『Doctor-X 外科医・大門未知子』。誰もが知る人気作を次から次へと生み出す脚本家・中園ミホさんは、いまや日本のドラマ界で不動の地位を築いています。けれど、その成功の裏には「占い」があったそう。実は占い師としてのキャリアも持つ中園さんが、独自の開運哲学をまとめた『相性で運命が変わる 福寿縁うらない』を上梓しました。それを記念し、日常生活にいますぐ取り入れられる開運のコツを訊きます。“悪い時期”は誰にだって訪れるもの――中園さんは脚本家として有名ですが、実は占い師として活動されていた時期もあるんですよね。中園そう、14歳から占いの勉強を始めたんです。私は幼稚園の頃から4月、5月がすごく憂鬱で。桜が咲いてすごく楽しい時期のはずなのに、ゴールデンウイーク明けくらいまでは気持ちが晴れなくて、小学生の頃なんて一時期不登校になっていたくらいなんです。その後、占いの勉強をしてみたら、私にとっては4月、5月が“空亡期”(苦手なことに取り組むことになる、試練の時期)であることがわかったんです。そのとき、「人の運気には流れがある」ことを知りました。1年周期でもあるし、12年周期、120年周期の流れもあるんです。――それを知って、見える景色が変わりましたか?中園私みたいな気の弱い人間は、前もって知っておくことが大事なんです。悪い時期がやって来ることがわかっていれば、「これが過ぎれば必ず元気になれる」と耐えられるじゃないですか。ただ、占いによっては「悪い時期にはなにもしないほうがよい」と語るものがありますよね。私はそう思わないんです。悪い時期というのは、「苦手なことを克服する時期」でもあって。神さまから宿題を出されるので、コツコツ頑張らなければいけない時期とも言えます。この悪い時期、私の占いでは空亡期と呼んでいますが、これまでの人生で5回くらい過ごしてきました。その時期を振り返ってみると、やっぱり苦手な宿題が出る時期だったんです。私は勤勉に生きるのが苦手で、本当はぼんやり過ごすことが好きなんですよ。でもなぜか、空亡期になると忙しくなってしまう。そんなときは「ここで頑張ればステップアップできるはず」と自分に言い聞かせているんです。――中園さんの大ヒット作『やまとなでしこ』も空亡期に書かれたものと知って驚きました。中園『やまとなでしこ』もですし、その次のヒット作『花子とアン』も空亡期に書いた作品です。『やまとなでしこ』を書いているときなんて、本当に苦しかった。トラブルも多かったし、プロデューサーからの要求も高くなっていたし、絶対に妥協できなくなっていて。でも、ちょっと厳し目のことが起きる状況で作ったもののほうが、ヒットするんです。現場のスタッフやキャストを含め、みんなの化学反応によって大勢の人の心を動かす作品ができあがる。だから私にとって、空亡期はすごく大切な時期になっています。どんな人と出会うかで、その後の人生が変わる――空亡期の過ごし方以外に、本書で印象的だったのが「人との出会い」です。生きていると本当に大勢の人と出会いますが、その中に人生を左右するような出会いがあるんですよね。中園さんにとってのそれは、やはり林真理子さんでしょうか。中園林さんはただただ楽に過ごせるような関係ではなくて、ちょっと厳しい先輩のような存在なんです。まだ出会ったばかりの頃、ぐーたらお酒を飲んでいたら電話をいただいて、「中園さん、常に高みを目指さなきゃだめよ」とお叱りを受けて酔いが覚めちゃうことがありました。でも、そんなことを言ってくれる人なんていなかったですし、すごくうれしかった。その後、大河ドラマ『西郷どん』を書けたのも、林さんが私を引っ張り上げてくれたから。「大河、一緒にやろうよ!」と言われたとき、「この人、なに言ってるんだろう…」と思いましたけどね(笑)。林さん自身が常に高みを目指している人なので、側にいると「私ももうちょっと頑張らなきゃ」と思えます。もしも林さんと出会っていなかったら、もっと楽なほうに流されて、書ける作品の幅は広がっていなかったでしょうし、ひょっとしたら脚本家を辞めていたかもしれません。――そういう存在はすごく貴重です。ただ、どうすればそんな出会いに恵まれるかわからない、と思っている人もいるかもしれません。中園憧れの人を見つけたら、その人に近づいてみましょう。とはいえ、無理に親しくなる必要はないですし、そもそも物理的に近づけない存在もいますよね。たとえば好きなアイドルや尊敬する作家なんかとは、親しくなろうと思ってもなれるものじゃないですし。でも、そういう存在を見つけたら、ライブに行ったり講演を聞いたりするだけでも良い運気をもらえるんです。逆に身近な存在だとしたら、挨拶するだけでも良い。素敵だなと思う人に挨拶をするだけでも、良い運気をシャワーのように浴びることができます。――憧れが“嫉妬”に変わってしまうこともあると思うんです。そういうときはどうしたらいいでしょうか?中園もちろん、他人のことが羨ましくて仕方ないこともありますし、ときには悪口を言いたくなることもありますよね。でも、他人を妬むことは自分の運気を下げることにつながってしまう。だから、まずはそこから自分を救い出してあげてほしい。妬むのではなくて、「あの人はどうしてみんなに好かれるんだろう?どうしてあんなに素敵なんだろう?」と前向きの探究心を持って、近づいてみること。そして挨拶をしてみる。それだけで運気が巡ってくるし、気持ちも晴れるはずです。相性の悪い相手こそ、自分が成長するチャンス――人間関係の話でいうと、本書で「苦手な相手はまず占ってみる」ことを勧められていますね。中園そうそう。やっぱり人間関係のストレスって本当にきついじゃないですか。だから人間関係で悩むことがあったら、まずは相手を知るという意味で占ってみることを勧めているんです。その人の生まれ年だけでも聞き出して、どんな人なのかを占う。そうやって占いというフィルターを一枚入れることで、客観的にもなれます。そもそも四柱推命という占いは、戦いのためにできたものなんです。占いで敵のことを知り、それを活かして戦略を立てていたらしくて。現代を生きる私たちに戦はないけれど、人間関係でつらいことがあったとしたら、占いを活用して戦略を立てるために活用してもらいたいんです。――なるほど!それと「金運はお金持ちからもらう」というのも面白い考え方だと思いました。中園これはまた林さんの話になりますけど、私は彼女からお財布を3ついただいています。「財布をください」なんて普通はおねだりできないと思いますけど、林さんは気さくな方なので試しにお願いしてみたんです。そうしたら翌月からガラッと変わって。その頃、マンションを購入したばかりでカーテンを買うお金もなかったんです。でも林さんにお財布をいただいたら収入が途端に増えました。もしも身近にお金持ちの方がいるなら、きちんとお礼をする前提でお財布をねだってみても良いと思います。――つまり「物を介して運気を分けてもらう」ということだと思うんですが、財布以外でも意味はありますか?中園もちろんです。それにもらうことが難しい場合は、その人の持ち物を真似するだけでも良いですよ。私は脚本家の向田邦子さんのファンなんです。でも彼女みたいになれないことはわかっていて。それでも近づくために、向田さんが使っていた鉛筆や鉛筆削りを全部真似して揃えたことがあります。するとやっぱり気分が違いますし、幸せになれますよね。――それならすぐにでも実践できそうです。あと、「マイナス×マイナスの相性はプラスに変える」という発想も面白くて。相性が悪い相手からは離れがちじゃないですか?中園マイナス同士だと傷つけ合って終わると思われがちですけど、決してそんなことはないんです。たしかにちょっとした緊張感は漂うと思います。でも、自分と相性が悪いからといって、その人を敵だと捉えてほしくない。むしろ、そういう人と付き合うことで自分が成長することにもつながりますから。実は『Doctor-X 外科医・大門未知子』の女性プロデューサーと私の相性がマイナス×マイナスなんです。でも、彼女と作ったシリーズはもう10年目を迎えました。もちろん毎回プレッシャーはありますし、ここまで来たら絶対にコケさせられないとも感じています。ただ、彼女がいたからこれだけのヒット作になった。ダラダラしていると叱られちゃいますけど、彼女のことはとても大切に思っていますね。――中園さんの占いに説得力があるのは、誰よりも中園さん自身が身を持って「運気の流れ」というものを体現されているからなんだと思いました。中園実体験からくるお話もたくさん書きましたからね。もしも占いを知らなかったら、私はきっと不満ばかりこぼしていたと思います。気弱だし、ぐーたらだし(笑)。でも、占いの力を借りれば、私みたいに運気が弱い人でも幸せになれる。だからみなさんにも、そんな風に占いを活用してもらいたいんです。【まとめ】自分の人生と重ね合わせながら、占いの力について語る中園さん。でも最後に、「占いに溺れないで」と釘を差します。中園さん曰く、「占いは幸せになるためのもので、盲信して振り回されてはいけない」とのこと。たしかに、占い結果に一喜一憂し、身動きが取れなくなることがあります。でも、人生の舵を取るのは自分自身。占いは羅針盤のように活用しつつ、最終的には自分で決断していくしかないのでしょう。そんなポジティブな生き方を、中園さんは教えてくれました。Information『相性で運命が変わる 福寿縁うらない』(中園ミホ/マガジンハウス)¥1,450私の運気を押し上げてくれたのは、才能でも努力でもなく、「出逢い」と「縁」、それに尽きるのです――。そう語る中園さんが、自身の開運哲学を詰め込んだ一冊。人気脚本家がどのように上り詰めていったのかを知りながら、占いについて学べる。気になる相手との相性を紹介しているページも必読!写真・中島慶子 文・五十嵐 大
2021年11月23日【音楽通信】第94回目に登場するのは、「奏(かなで)」「全力少年」ほか数々のヒット曲を世に送り出している、ソングライターのふたりからなるユニット、スキマスイッチ!バンド活動を経てあるきっかけでユニット誕生写真左から、大橋卓弥、常田真太郎。【音楽通信】vol. 94大橋卓弥さんと常田真太郎さんという、素晴らしいソングライターのおふたりからなるユニット、スキマスイッチ。1999年に結成し、2003年のメジャーデビュー後は「奏(かなで)」「全力少年」「ボクノート」、近年ではドラマ『おっさんずラブ』シーズン1(テレビ朝日系 2018年)や劇場版(2019年公開)の主題歌「Revival」など、数々のヒット曲をわたしたちのもとに届けてくれていますよね。そんなスキマスイッチが、2021年11月24日にコンセプトオリジナルアルバム『Hot Milk』と『Bitter Coffee』を2枚同時にリリースされるということで、音楽的なルーツなどを含めて、おふたりにお話をうかがいました。――あらためて、まずはおふたりが影響を受けたアーティストから教えてください。大橋それは中学生の時にファンクラブに入っていて、一番ハマったアーティストだといえる、ザ・ビートルズです。ただ、学生時代はまわりのみんなが聴いているのと同じようにJ-POPも好きで、ヒットチャートの上位になっていたMr.Childrenやスピッツ、B’zなども聴いていました。常田僕もタクヤと同い年なのですが、早生まれなので学年は違うものの、同じような音楽環境でしたね。カラオケで歌える曲を聴くというのも、当時、音楽を聴く上での指針だったと思います。上位ランキングのアーティストやDEEN、ZARDといったみんなで歌える曲をCDショップで借りてきたり、ワゴンセールで買ったり、というのがひとつの流れというか。まだ洋楽は聴いていませんでした。大橋卓弥(オオハシタクヤ/Vocal, Guitar)。1978年5月9日生まれ。――1999年にスキマスイッチを結成されて、2003年7月にシングル「view」でメジャーデビューされましたね。結成のいきさつから、デビューにいたるまでの経緯をお聞かせください。大橋僕たちは別のバンドをやっていたのですが、おたがいの出身が愛知県で一緒だったので、僕の中学校の先輩に、シンタくん(常田さんの呼称)を紹介してもらいました。もともと僕はこの先輩とバンドを組んでいて上京したんですが、バンド活動がうまくいかなくなって、解散したんです。その後、ひとりで何かできないかなと、20、21歳ぐらいのときは渋谷の公園通りのあたりで、ストリートミュージシャンとして演奏していました。最初は路上で弾き語りをしていても、誰も足をとめてくれる人がいなくて、場所を変えたり試行錯誤していて。そのうち聴いてくださる方も増えてきて、そんな方たちに何か作品を作って、持って帰ってもらいたいなと考えるようになったんです。その頃、シンタくんはアマチュアのバンドさんたちに、アレンジや録音をやりますよ、という募集をかけていました。それを知っていたので、当時お金がないなかでどうやってCDを作るか考えた末、安く制作してもらえないかなと、シンタくんに1曲レコーディングしてもらったんですよ。シンタくんはそういった録音以外にも、いろいろなバンドをかけもちしていたなかで、知り合いのアレンジャーさんに自分の録音した作品などのワークスを持って、売り込みにいくことがあったみたいで。その前日に僕のお願いした曲が完成して、ワークスの最後に僕の曲を一応入れたら、その曲だけが、アレンジャーさんにひっかかったんです。常田真太郎(トキタシンタロウ/Piano, Chorus, Organ, Other instruments and total sound treatment)。1978年2月25日生まれ。そのときに、「この子と一緒に活動してるの?」と聞かれて、シンタくんは「やってる」って言ってしまったみたいで。僕としては一緒にやってなかったんですけど(笑)。これがきっかけで、ふたりの活動もやるけれど自分の活動と並行してやろう、どうせ自然とだめになっていくだろうしなと思っていたんですよ。でも、ふたりで活動しだしたら、シンタくんも曲も歌詞も書くので、自分だけでは作らない曲の広がり方、世界観が面白いなと思って。あるとき自主制作のCDを作ろうとなって、ユニット名をつけることになったんです。バンドを組んでいたときは意気込んで横文字のかっこいい名前にしていたんですが、かっこいいとされるものは時代とともに変わっていくこともあり、ちょっととぼけた感じのものはずっと残っている気がしたんです。ふたつのワードをひっつけて名前にしようと、目についたものをおたがいに言ってみて、糸が垂れて引っ張るタイプの電気を見て「スイッチ」というワードが出て、「響きがいいね」となりました。そのときは下積みの貧乏な時代だったので、アパートもボロボロで窓や襖のたてつけも悪く隙間があいていたので、それを見て「スキマ」というワードも出て、「とぼけた感じでいいね」と。それで「スキマスイッチ」というユニット名が誕生しました。それからはふたりで活動しながら、あるオーディションに参加したときに、僕らを見つけてくれたのがいまの事務所で、その流れでデビューへとつながりました。2枚のアルバムは“入門編”と“いま出したいもの”――2021年11月24日に、約3年半ぶりとなるコンセプトオリジナルアルバム『Hot Milk』と『Bitter Coffee』が2枚同時にリリースされます。コンセプト別の楽曲を収録しているそうですが、それぞれのアルバムの特徴を教えてください。常田もともと複数枚リリースは、前作『新空間アルゴリズム』(2018年)の制作が終わってすぐアイデアとして出ていました。いまは音楽を手軽に聴ける時代になって、端末で配信曲も聴けて、僕らとしてもリリースがはやくなってきてレスポンスもすぐにわかるという利点があるものの、届いたあとのことを考えると、曲を“所有していない感”が強いのかなと。それはCDというかたちになっていないからだと、ずっと思ってきていることで、今後もこだわっていきたいところでもあるんですが、所有感を感じてもらうにはCDが多いほうが面白いかなと。そしてスキマスイッチをあまり知らない人への情報として、複数枚出すことで目に留まることもあるのではということから、今回の2枚同時リリースとなりました。以前は、一度に4枚5枚ぐらいでジャンル分けして、スキマスイッチの魅力をバラード集やアップテンポ集などに分けて、こちらから届けてみようかというアイデアもあったんです。ただ、そうなると曲をたくさん作らないといけなくて、そのなかでもよく聴く曲、聴かない曲と偏りが出てきたらよくないから、何枚出すかは決めないでとりあえず曲をたくさん作ろうとしていたなかで、コロナ禍になって時間ができて、デモがいつもより多くできました。できている曲の中で、先にタイアップがついて世に出ていく曲もあって。あとは新しい作り方で、「こんな曲書いてみない?」という、スタッフが僕たちに希望しているようなテイストで作ってみました。僕たち以外の因子とそうでないもので分けられた感じがあって、でもそこでタイアップ曲やスタッフの意見を取り入れたものは明るい、自分たちのエゴで作った曲は暗い、というのはいやだったので、ちゃんと1枚のアルバムとして確立させてリリースしようと決まったのが、昨年の秋ぐらいです。1枚に7曲ぐらいが聴きやすいですし、それをもう1枚の計2枚のリリースにして、『Hot Milk』はタイアップや引き出してもらったもの。『Bitter Coffee』は、自分たちが「いま出したいね」と話していた曲、自分たちのなかで流行っている音やジャンル。そんなかたちで、分けさせてもらいました。大橋もしかするとananwebの読者のみなさんのなかには、CDやCDプレーヤーを持っていない方もいるかもしれないですよね。便利な世の中なので音楽は手軽に聴けますし、検索すれば無料で聴けることもある。携帯に入っているものもあれば、聴きたいときに検索して聴いたら終わり、という方も多いと思うんです。でも僕らの世代では、音楽やアーティストが作ったものに対して、もう少し大事にする感覚があって。CDショップに行ってCDを買って、帰りの電車のなかで先に歌詞カードを見ようかな、でも家に帰ってからCDを聴きながら見ようかな、というような楽しさをいま少しでも、こちらから提案できたらいいなと。それにはあまりにも内容の濃い作品じゃないほうがいい。『Hot Milk』はもしかしたらどれかはテレビでちょっとぐらい聴いたことがある曲も入っていて、手に取りやすいんじゃないかなと。7曲なら聴くのに時間もそんなにかからないし、もしそこでスキマスイッチに触れてみて、ちょっと好きなところがあるなと思ったら、『Bitter Coffee』も聴いてみてもらったりと、つながっていけばいいなという思いはあったんですよね。それがひとつのきっかけになって、音楽に対するものの考え方が、少しだけ変わったなら、僕たちの世代のやり方として間違っていないのではないかなと。あともうひとつは、アルバムを聴いて僕らは育ってきたので、ザ・ビートルズもそうですが、曲順が変わるだけで違和感があるんですよ、何回もアルバムを聴いてきているので。「この曲の後にこのイントロが鳴ってくれないと気持ち悪い」とか。それぐらい聴きこんだんですよね。それぐらいなるべくCDというもので、僕らが考えたこの曲の並びで聴いてもらって、「どんなメッセージが込められているのかな?」と考えてもらえたら。CDには歌詞カードもついているので、歌詞には書かれていなくても、歌詞カードの行間にこめられた思いがあって。良くも悪くもいまの音楽がファッション的なものになっているところをもう少し、何かのメッセージや表現を感じてもらえたらいいなと思っています。――『Hot Milk』収録曲の7曲目、「されど愛しき人生」の俳優の柄本時生さんが出演しているミュージックビデオが公開されていますね。大橋いろいろなアイデアが出たなかで、登場人物が全部同じ顔をしながら自分はこんな人生でもあり、また違うこんな人生もあった可能性がある、という見せ方をする物語のアイデアがあって、面白そうだねと決まりました。そこでキャスティングとなったときに、物語にも合うどこか哀愁のある人がいいとなって、柄本さんの名前が上がったのでぴったりだと思ってオファーしたところ、快諾してくれました。――おふたりでいつも曲作りはどのようにしているのですか。大橋ふたりでゼロから作るときもありますし、どちらかがベースを持ってきて、「これいいね」となったらそこからブラッシュアップしていくときもあります。『Hot Milk』の1曲目「OverDriver」の場合は、シンタくんがデモとして持ってきたものを聴いて、「これカッコいい」となって、それをふたりでちょっとメロディを変えていったり、構成やサウンドはこんな方向でいこうとか話していったり。常田驚くほど、手作りです。――いいですね。おふたりでじっくり作られた思いは聴き手側にも伝わってきます。大橋なかには、家でパソコン1台あれば曲を完成させるというミュージシャンもいるかもしれませんが、僕らはプロのミュージシャンの方々の力を借りて、作り上げていきます。まずは自分たちだけで、プライベートスタジオでパソコンを使ってシミュレーションをしてみて、そのときから「このギターは〇〇さんに弾いてほしい」というようにイメージしていきます。そこから正式にオファーさせていただいて、スタジオでセッションしながら作っていくんですよ。――『Bitter Coffee』は大人っぽい雰囲気から始まって、4曲目「いろは」のように美しいメロディにのるセンチメンタルなナンバーもあれば、6曲目「フォークで恋して」はまるでドラマのような展開で続きが知りたくなる歌詞、おしゃれなサウンドが印象的です。いつ頃から制作されたのでしょうか。常田古いデモもありますが、昨年の秋からアルバムを見据えて作り始めて、今春から制作をスタートしました。『Bitter Coffee』に関していうと、ほぼ新曲なので、僕たちのテンションもどんどん上がっていっています。『Hot Milk』は入門編かなと。『Bitter Coffee』は、知らない曲でも絶対こっちがいいと言わせてやるという、目に見えないテンションの高さも込められています(笑)。――12月22日には日本武道館公演、2022年2月からは全国ツアーを開催されますが、どんなステージになりそうですか。大橋12月の武道館公演では特別な企画ものをやりたいと思っていて、この日のためだけに書き下ろした音楽と映像をお届けします。アルバムの『Hot Milk』と『Bitter Coffee』を引っ提げたライブは、来年2月から7月まで「SUKIMASWITCH TOUR 2022 “café au lait”」と題して全国をまわるので、楽しみにしていてほしいですね。スキマスイッチのライブに足を運んでみてほしい――新作がコンセプト違いの2作品ということで、おふたりの「オン/オフ」の2面性についても教えてください。大橋2面性というと、僕らふたりはまったく真逆の性格ですが、音楽だけは同じ方向を向いています。僕はAB型なんですが、スタジオに入った瞬間にスタッフは「今日はA型だな」とか、「今日はB型の日だな」とかがわかるらしいです(笑)。僕自身はそんなに違うキャラクターというつもりはないんですが、言わんとしていることはわかるかもしれない、意識してはいないのですが。スキマスイッチがみなさんにどこまで浸透しているかはわからないですが、ananwebの読者のみなさんが思っているよりも、イメージが逆な気がしますね。――イメージというと?大橋シンタくんのほうがなんか……。常田ガサツですね、ズボラだし。大橋それはイメージ通りのはず(笑)!常田その通り(笑)。だとすると、なんか僕は、職人ぽく言われることが多いんですが、全然そんなことはないんです。大橋たぶんですが、パブリックイメージとして、僕のほうが優等生なイメージがあって、シンタくんのほうがちょっと昔ヤンチャしていたようなイメージですが、それは逆ですね。――大橋さんはヤンチャしていたんですか?大橋僕はヤンチャではないです(笑)。常田……してたかなあ(笑)。大橋シンタくんも僕もすごい真面目です(笑)。――続いては、おうち時間が長い昨今ですが、最近ハマっていることはありますか。常田ありますね。壊れたものの修理にハマったんですよ。先日は、コピー機が壊れていたので、自分で直しました。昔から分解癖があって、よく修理していたのですが、直ったら得も言われぬ達成感があって(笑)。けっこう自分で修理できるのが、おもしろいです。大橋僕は家で映画を観ていて、最近は、Netflixを観ることが多いですね。世の中ではいま韓国作品が流行っているじゃないですか。それこそ大ヒットした韓国ドラマ『愛の不時着』とかもありますが、僕はラブロマンスがあまり得意ではないので、観やすいものを探したらけっこうありました。『イカゲーム』や『梨泰院クラス』、『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』や『マイネーム:偽りと復讐』あたりも観ましたね。これまで韓国作品は全然通ってこなかったんですが、最近になって観てみると、独特な雰囲気がおもしろかったです。韓国のドラマって、日本にはない、韓国ならではの慣習のようなものを感じ取れますよね、先輩を敬う感じとか。最初はそこに入り込めなかったんですが、文化がわかってくると、2本目3本目とだんだん観るようになってきましたね。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後になりますが、来年の抱負をお聞かせください。大橋来年は全国ツアーがあります。このままの状態でいけば、お客さんと一緒に会場で楽しめそうなので、もし興味があればananやananwebを読んでいるみなさんにも来ていただきたいです。10代の読者の方の場合、お父さんやお母さんがスキマスイッチを聴いていて、家にはCDがあるという方もいるかもしれないですよね。常田車でスキマスイッチがかかっていたとかもね。大橋最近どこにも外出していないな、という読者の方がいたら、僕らのライブを口実にしてもらっていいので、友達や家族で過ごす時間をスキマスイッチのライブで提供していければいいなと思います。取材後記誰もが耳にしたことがあるであろう、ポップスの名曲を次々と生み出している、スキマスイッチ。ananwebの取材でも、大橋卓弥さん、常田真太郎さんの音楽に対する深い想いをお聞かせくださいました。これから生まれてくる楽曲にもまた期待が募るスキマスイッチの2枚のコンセプトオリジナルアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・安田光優取材、文・かわむらあみりスキマスイッチPROFILE大橋卓弥、常田真太郎のソングライターふたりからなるユニット。2003年7月、1stシングル「view」でメジャーデビュー。「奏(かなで)」「全力少年」「ボクノート」「Revival」など数々のヒット曲を生み出し、全国区での人気を獲得する。2021年11月24日、コンセプトオリジナルアルバム『Hot Milk』『Bitter Coffee』を2枚同時にリリース。12月22日、「スキマスイッチ”Soundtrack”」と題した日本武道館公演を実施。2022年2月10日から、「SUKIMASWITCH TOUR 2022 “café au lait”」と題した全国ツアーを開催。InformationNew Release『Hot Milk』(収録曲)01. OverDriver02.吠えろ!03.青春04.Ordinary05.東京06.スイッチ!07.されど愛しき人生2021年11月24日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)UMCA-10087 (CD)¥2,500(税抜)(初回限定盤)UMCA-19065 (CD+Blu-ray付)¥3,500(税抜)*スリーブケース仕様。<Blu-ray内容>・Hot Milk盤:「Documentary of“Recording”」 レコーディングドキュメント+メンバーインタビュー映像。New Release『Bitter Coffee』(収録曲)01.I-T-A-Z-U-R-A02.G.A.M.E.03.風がめくるページ04.いろは05.SINK06.フォークで恋して07.あけたら2021年11月24日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)UMCA-10088 (CD)¥2,500(税抜)(初回限定盤)UMCA-19066 (CD+Blu-ray付)¥3,500(税抜)*スリーブケース仕様。<Blu-ray内容>・Bitter Coffee盤:「Documentary of “Studio Live”」 *収録曲のスタジオライブを撮り下ろしで収録。写真・安田光優 取材、文・かわむらあみり
2021年11月23日ベビーカレンダーは、多様化している家族のあり方=“新しい家族のカタチ”について発信する取り組みを開始しました。その第一弾として11月22日(月)、一組の同性カップルの妊娠・出産に密着したドキュメンタリー動画を公開しました。動画の公開日である11月22日は、「いい夫婦の日」であり、子どもを家族が育み、家族を地域社会が支えることの大切さについて理解を深めてもらうための「家族の週間(※)」にも該当します。(※)内閣府により2007年に制定され、毎年11月の第3日曜日は「家族の日」、その前後1週間は「家族の週間」と定められています。 多様化する家族のあり方=“新しい家族のカタチ”を発信。もっと、「家族を持ちたい」「赤ちゃんを産みたい」と思える世の中に!昨今、ますます多様化している家族のカタチ。夫婦や家族のあり方は実にさまざまで、大変なことや幸せに感じることも人それぞれ、家族ごとに物語があります。ひとり親、ステップファミリー、LGBTQ+カップル、事実婚・別居婚を選ぶ夫婦、特別養子縁組で子どもを迎えた夫婦、障害児を持つ親、子育てシェアハウスで助け合う人々……。 ベビーカレンダーでは、さまざまな家族のカタチについて情報を発信し、マイノリティゆえの苦悩や、マイノリティだからこそ感じられる幸せなど、当事者のリアルな声をご紹介していきます。多様な幸せを実現できる社会、そして、もっと「家族を持ちたい」「赤ちゃんを産みたい」と思う人が増える世の中づくりの一助となりますように。 「――家族をつくることへの憧れがあった」同性カップルが授かった2人目の赤ちゃん。ドナー(精子提供者)は同じ人に 出産ドキュメンタリー「私が出産を決意した真実(ほんとう)の理由」ベビーカレンダーは11月22日(月)、公式YouTubeチャンネルにて、一組の同性カップルの妊娠・出産に密着したドキュメンタリー動画を公開しました。 現在の日本では、同性婚は法律上認められていません。そして、特別養子縁組は婚姻関係の夫婦のみに認められており、同性カップルには認められていません。 そのような背景があるなか、今回取材した女性同士カップルのおふたりは、それぞれが1人ずつ赤ちゃんを産むという選択をしました。第1子、第2子の妊娠に至るまでの経緯や、第2子となる赤ちゃんの誕生に家族で立ち会う姿などを密着取材しました。 今回、おふたりが第2子となる赤ちゃんを望むにあたり、第1子と同じ方をドナー(精子提供者)に選んだそうです。ドナーが同じであれば、子どもたちはきょうだいになる、それによってカップルのおふたりにも家族のつながりができると考え決断したと言います。 なお、同性カップルの場合、基本的には出産した人しか子どもの親権者になることができません。加えてドナー側からの親権主張など、さまざまな問題が起きる可能性も。 ▲妊娠・出産を互いに経験した同性カップル ▲同じドナーから精子提供を受け、それぞれ出産 さまざまな制約があるなかでもおふたりは、「私たちの赤ちゃんが欲しい!」という強い思いから、人工授精に踏み切ったそうです。6年前に第1子を授かり出産したのは、パートナーさん。今回第2子を妊娠・出産したさちこさんよりも8歳年上であったことから、先に産むことに。 そして待望の2人目の赤ちゃんをさちこさんが妊娠。さちこさんはご自身のお母さんとの関係をうまく築くことができなかったことや、10代でお父さんを亡くした過去があり、家族というものに強い憧れを抱いていたと言います。 ▲パートナーさんと長男くんが出産に立ち会い ▲2人のお母さんと、2人の子どもたち さちこさんの出産には、パートナーさんと第1子であるお子さんも立ち会いました。赤ちゃん誕生の瞬間を共有することで、家族としての絆を深めたいと考えそうです。無事に出産を終えたさちこさんは、自身で出産を経験したことで、第1子に対する気持ちとは異なる想定外の感情が湧き上がり戸惑いもあった様子。 出産後のさちこさんへ送られたパートナーさんからの手紙には「6年前に私が感じた、出産という不思議な体験の数々、ようやく共有できたね。他の人からは、いびつな家族に見えるかもしれないけど、第1子も5年間でこんなにいい子に育ったよ。2人の息子たちは、今以上のたくさんの愛で育てていこうね」と家族への想いが綴られていました。 こうして誕生した新しい家族。未来については、「どうなるかわからない、前人未到だね」と語るおふたり。“お母さん”と“マミー”。2人のお母さんとお兄ちゃんと弟。4人の家族としての歩みは、まだ始まったばかりです。 今後もベビーカレンダーでは、さまざまな家族のカタチをご紹介していきます。幸せの定義や、困難の乗り越え方は家族によって多種多様です。それぞれの家族のあり方を受け入れ、認め合い、より多くの方が家族を持つ幸せを感じ、赤ちゃんを産みたいと思える世の中になることを願っています。
2021年11月22日トム・ホランド、デイジー・リドリー、マッツ・ミケルセンが共演、謎多き斬新な設定で10代の青年の成長を感性豊かに、かつ壮大なスケールで描いた新感覚SFエンターテイメント『カオス・ウォーキング』。『オール・ユー・ニード・イズ・キル』などの大ヒットメイカー、ダグ・リーマン監督が手がける本作の原作者であり、脚本にも参加したパトリック・ネスがインタビューに応じた。「私たちに選択の余地はなく、情報が常にやってくる」時代になる本国で予告編映像が公開されると、原作ファンから「かなり原作に忠実」との声が上がっていた本作。パトリック・ネスが手がけた「心のナイフ」〈混沌(カオス)の叫び1〉(東京創元社)はガーディアン賞、カーネギー賞など、数々の名立たる文学賞を制し、特に若い世代からの熱狂的な支持を集めてきた。本作を特徴づける斬新な設定といえるのが、男性の心の声だけが<ノイズ>となって発せられるという点。知りたくなくても、他人の思考、想像、記憶といったものが<ノイズ>となって彼らの周りを浮遊している。この着想のきっかけとなったのは、「映画館でチケットを買うために並んでいたとき」だったとネスは振り返る。「後ろの人と前の人が電話で話をしていて、彼らに挟まれているから会話に耳を傾けるしかなくて。世界ってこんなふうに常に情報が私たちにやってくるような、そういうところに向かってるんじゃないか、とそのときに思いました」と語る。「論理的に考えると次のステップというのは、私たちに選択の余地がなく、情報というものが常にやってくるし、そして自分たちの考えていることをシェアしなければいけなくなってきてしまうんじゃないか。それはとても興味深い悪夢のような状態だなと思ったのと、あとは特に若い方にとって、そういう状況がどんな意味をもつのか。特に若いときはいろいろとプライベートだけにとどめておきたい感情もたくさんあるので、どういうふうに彼らに影響を与えるのかということも掘り下げたかった。そういうところから、想起しています」と続けた。また、本作ではデイジー・リドリーやシンシア・エリヴォといった女性キャストの力強さも印象的だが、性別によって異なる特徴を持たせたことにはどんな意図が込められているのだろうか。「男性と女性ではコミュニケーションの仕方が違う、ということを表現しようと思ったわけでは全くありません」と、ネスは断言する。「もともと、人間の違いというものをどういうふうに扱うかに対して、ずっと不安を覚えていたんですね。人は優劣、自分たちよりよいと思うもの、あるいは優れていると思うこと、あるいは劣っていると思うこと、そういった違いを見て、それに見合った態度をとってしまうんです」。「もし、全く無視できない違いというものがそこに存在していたら、人はどんなふうに行動するだろうと考えました。たとえば地球であれば、文化的なステレオタイプであったり、あるいは地球の歴史の中で、ある種ふるまいというものがあったと思うんですけど、この新しい惑星ではすべてのやりとりが<ノイズ>によるもので、そこに違いがあるんですよね。そういう状態になったとき、人はどうふるまうのかということを掘り下げたかったんです」と明かす。映画化で最も重視したのは「主人公2人の関係性」では、映画化にあたり、<ノイズ>の映像表現や思考の言語化など、どんなことを重視したのかについて尋ねてみると、主人公のトッド(トム・ホランド)、ヴァイオラ(デイジー・リドリー)の「関係性が大事でした」と語るネス。「というのも、どんなにエフェクトが素晴らしくても、そのキャラクターに思いを寄せることができなければ全く意味がないわけです」と持論を述べる。「例えば、いままで美しいビジュアルだけれども、全く気持ちが動かなかったという経験を、皆さん映画でしていると思うんですね。なので、一番大事なのは2人の関係性だし、2人の役者のケミストリー、それから2人の間で生まれてくる信頼、こういったことが一番大事でした。よく著者はこんなことを言いますが、本当にこれは大事なことなんです」。そうネスが語る、<ノイズ>により10代ならではの心の声が可視化されてしまうトッド役には、『スパイダーマン』シリーズのピーター・パーカー/スパイダーマン役で知られるトム、トッドが初めて出会う女性で<ニューワールド>の運命を握る存在となるヴァイオラ役には『スター・ウォーズ』続3部作で主人公レイ役を務めあげたデイジーが選ばれた。「キャスティングをしたときは、まだこれからという時だったんですけど、大スターになった2人をキャスティングできて本当に嬉しかった」とネス。「最初に言っていたのは、結構オープンな気持ちでキャスティングは進めていってください、ということだったんです。そして、シンシア・エリヴォとかデヴィッド・オイェロウォは、決まっていたキャラクターではなかったので自由にキャスティングをしてもらって最高だなあと思いましたし、たとえばメキシコ系の役者さんであれば、デミアン・ビチルとかもすごいいいキャスティングだなと思ったし、そういうオープンなクリエイティビティというのが、この物語をよくしているんだなと思います。満足しています」と自信を覗かせる。最後に日本のファンに向けて、「おすすめポイントは、なんといっても『犬』です。たぶん原作を読んでいればわかりますよね?それから、原作にはないような、でも映画では成立している要素というものがあるので、そのサプライズもぜひ楽しみにしていただきたいです」と話してくれた。『カオス・ウォーキング』は11月12日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:カオス・ウォーキング 2021年11月12日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2021 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved
2021年11月09日普段優しい父は酒に溺れ、母は家出をして新しい彼氏がいる。その彼もまた問題ありで、頼るべき大人のいない15歳のビリーと11歳のニコの姉弟、そして2人が出会った少年マリクは逃避行に出るーー。その旅路を、映画『スウィート・シング』で16ミリフィルム撮影によるモノクロ&パートカラー映像によって描いたのが『イン・ザ・スープ』や『フォー・ルームス』で知られる米インディーズ界のアイコン、アレクサンダー・ロックウェル監督。今回は、ロックウェル監督と彼の実子で主人公姉弟の姉・ビリーを演じたラナ・ロックウェルのインタビューが届いた。2020年、第70回ベルリン国際映画祭にてジェネレーション部門(児童青少年向け作品)最優秀作品賞を受賞し、第33回東京国際映画祭では『愛しい存在』とのタイトルで上映された本作。ロックウェル監督は本作製作のきっかけについて、「数年前に、娘のラナと息子のニコを主役にして『Little Feet』という映画を撮ったんです。当時、僕たち家族はロサンジェルスに住んでいたんですが、思うように映画を撮れない時期でした。それで、自分の資金で、今一番撮りたいと思うものを撮ってみようと。それがラナとニコを撮ることでした」と明かす。「『Little Feet』は子どもたちのポエトリーをスケッチしたような1時間の映画です。その後、僕らはニューヨークに戻り、ラナの助言もあって、もう一度2人と映画を作ってみたいと思ったのが、最初のきっかけですね」。一方、『Little Feet』撮影時は7歳だったというラナ。「あの頃はまだ、映画撮影と言っても、何か遊びをしているような気持ちでした。その後は、お父さんの学生たち(ロックウェル監督はN.Y.大学大学院で映画を教えている)の短編に出演したことがありますが、撮影は1日か2日だったので、『スウィート・シング』のように演技に打ち込んだのは初めてです」と言う。『スウィート・シング』の撮影時はまさに劇中のビリーと同じ15歳、現在は18歳になった。子どもは「大人が考えている以上に強くて、自分で生きていく力を秘めている」本作は“子どもを育てられない親”の話でもある。ビリーを演じたラナ、弟のニコと、実子と紡ぐにはあまりにも辛辣で、苦く、悲しい物語だ。「『Little Feet』ではまだ子どもたちは小さかったのですが、『スウィート・シング』ではもう子どもたちは何も知らないイノセントのままではいられません。子どもたちの世界が大人の世界と衝突し、摩擦を起こすところを撮りたいと思いました」と監督は言う。「大人の世界には暴力があり、困難があり、そこで負けてしまう人がいる。でも、子どもたちには、それを跳ね返すようなものが彼らの中にある。確かに悲しい物語かもしれませんが、この映画には楽しい瞬間がたくさんあると思いませんか?それが子どもたちの強さや美しさなんですよね。そしてラナやニコの中には、そうしたとても強靭なものをいつも感じていたので、彼らならできると信じました」と、厳しい現実に直面する子どもたちを演じた娘たちへの信頼を打ち明ける。「お父さんが言うように、ビリーもマリクもニコも、大人が考えている以上に強くて、自分で生きていく力を秘めていると思います」とラナが続ける。「私が演じたビリーは、口数は多くないけれど、静かに周りを観察していて、とても強いものを持っている女の子だと思います。でもそれは必要に迫られて、強くなくてはいけないということでもあるのですけど。でも彼女はただ重荷を背負っているのではなくて、例えば、マリクとの友情はビリーに希望をもたらしている素晴らしいものなんじゃないかなと思います」と解説する。髪を切られるシーンは「信頼がないと難しかった」「初めて脚本を読んだ時、ビリーとは環境はまったく違うけれど、自分に似たところもあるなと感じました」と言うラナ。「ビリーという役柄だけでなく、弟のニコやマリクとの関係、そして父親や母親、すべての登場人物と物語が語ろうとしているエッセンス、子どもたちの生命力とか光や希望にすごく感動しました。お父さんが書いたものですが、とても素晴らしい脚本だったと思います(笑)」と、父の観点を絶賛した。家族で映画を作ることについて、ロックウェル監督は「こういう映画を作る時に一番大切なものは信頼感だと思うけれど、それをゼロから作る必要がない。もう信頼しあった関係ですからね。そして、なんでも言い合える関係です」と言う。「家族の団欒の時に『すみませんが、そこにある塩をこちらに渡していただけますか』なんて言わないですよね?『そこの塩をこっちに!』でいい。そんなふうに、思ったことを正直に率直に伝えられるのは素晴らしい点です」と利点が多いという。するとラナも、「私も信頼関係の中で撮影できたのは一番大きな助けになりました。ビリーが、ウィル・パットン演じる父親に髪を切られる場面などは、自分の内側にあるものをさらけ出さなくてはできないので、そういう場面を演じるときは、信頼がないと難しかったと思います」と振り返った。それでは、いつも知っている“父親”と、現場での“監督”に違いを感じるかも聞いてみると、「『今、お父さんは監督なんだ』って意識することは必要でした(笑)」と正直に語り、「でも、家にいる時でも、分からないことがあればお父さんに聞けるので、そういう意味ではやりやすかったですね」と明かした。とはいえ、「今自分がワクワクするのは音楽」と語るラナ。「演技については、自分のペースで少しずつ探っていこうかなと思っています」と語る。怒りや憎悪が渦巻く世の中…「子どもたちの世界は本来その対極にあるもの」こうした子どもたちの多感な日々が映画として残っていくことについて、「実は今、弟のニコはラナより背が高いんですよ(笑)。だからもう、あの時期は二度と戻ってこないと身にしみて感じていますよ(笑)。幼い頃は『お父さん、お父さん』と僕にくっついて離れなかったのに、最近は『親父うっとうしいよ』みたいなことになっちゃって(笑)。そういう意味でも、一つの貴重な“時代”を切り取ることができたと思いますね」と監督も感慨深げだ。そんな本作は、ロックウェル監督にとって25年ぶりに日本で劇場公開される作品となる。日本のファンに向け、「僕たち大人はとても厳しくドライな世界を子どもたちに強いています。しかし、子どもたちの世界は本来その対極にあるものです。五感を使って何かに触れ、ビリーたちのようにアイスクリームを食べて跳ね回ったり、海に潜ったり、踊りまくったり。そうした子ども特有の世界を観客に感じ取ってほしいと思います。希望と喜びをガラス瓶の中の入れて届けるような映画になってほしいと思います」と伝える。「アメリカは今、ネガティブな感情に苛まれていて、怒りや憎悪とかそういうものが世の中に蔓延していて、そんな環境を生きなければならない子どもたちがいます。しかし一方では、この映画の中に登場させたビリー・ホリデイのように、過酷な少女時代を生き延びた希望の星がいます。アメリカのみならず、世界にも”希望”はそこかしこにあるはずだと思ってください」と、映画に込めた思いを語る監督。そして、ラナは「この映画を見てくださる日本の観客の皆さんと心は共にあります、とお伝えしたいです。ビリーの喜びや輝きを感じ取ってくれれば嬉しいですね。そして地球の反対側の日本でこの映画が上映されるのは本当に『COOL』って感じています」と、日本の観客と本作を共有できる喜びを語ってくれた。『スウィート・シング』はヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほか全国にて順次公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:スウィート・シング 2021年10月29日よりヒューマントラスト澁谷、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほか全国にて公開
2021年11月05日2021年10月30日(土)から11月8日(月)にかけて開催される第34回東京国際映画祭。今年からはメインの会場を日比谷・有楽町・銀座エリアに移し、プログラム・ディレクターの変更、部門の改変等が行われるほか、『クライ・マッチョ』『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』『ラストナイト・イン・ソーホー』『ディア・エヴァン・ハンセン』といった話題作がいち早く上映。コンペティション部門の審査員長を、イザベル・ユペールが務める。様々な意味で“変革”の意味合いが強い今年の東京国際映画祭。その“顔”であるフェスティバル・アンバサダーを務めるのは、橋本愛だ。シネフィルとしても知られる彼女に、映画祭への想いや、映画界が変革していくべきことなど、じっくりと語っていただいた。緊急事態宣言が明け、レイトショーの復活や映画館の座席収容率100%が解禁されたいま。橋本さんの映画愛がにじみ出る言葉の一つひとつが、すっと心に染み入るはずだ。芸術文化の重要性や必要性「国、国民全体に広がっていってほしい」――まずは東京国際映画祭との思い出を伺えればと思います。2020年はキム・ボラ監督とのトークショーが開催され、出演映画『私をくいとめて』が観客賞を受賞されましたが、映画祭の参加は2014年の『寄生獣』(第27回)くらいからでしょうか?確かその頃だと思います。出演作が2・3年連続で映画祭に出品されて嬉しいな、ありがたいなと思いながらも、それまではそこまで足を運んではいなかったんです。そういった出来事があって自分の中で存在感が増していき、色々な海外の作品を調べていくうちに、スケジュールが合えば通い詰めるようになりました。出る側としてもそうですが、観る側としても楽しんでいます。――東京国際映画祭で過去に出合った作品のなかで、特に印象に残っているものはありますか?第30回(2017年)の特別招待作品だった『エンドレス・ポエトリー』ですね。人生を救われたような大きな体験だったので、すごく覚えています。東京国際映画祭でやっていなかったら観に行っていたかも怪しかったので、出合えて本当によかったです。――大切な作品との出合いの場でもあったのですね。今回、東京国際映画祭のアンバサダーに就任されて、意気込みはいかがですか?アンバサダーとしてできることはなんだろうと考えて、面白いこと・大事なところはちゃんと伝えていきたいなと思いつつ、きっと東京国際映画祭自体には、色々な“余白”があるんだろうなと思うんです。アンバサダーとしても、一人の映画に携わる人間としても、見極めて、行動していきたいです。――その“余白”というのは、たとえば認知度であったり参加者の層であったり…といったものでしょうか。いまはまだ勉強中でそこまで細かい部分はわからないのですが、海外を見ていると、日本という国の中での映画を含めたすべての芸術の地位が、もっと一人ひとりの心の中に大きく存在していてほしいな、とジレンマを感じます。医療ほど直接的ではなくても、私は本当に「芸術文化は人の命を救う」と思っています。その重要性や、保護する必要性…そういった感覚がもっと国全体、国民全体に広がっていってほしいです。――国際映画祭である東京国際映画祭は、多角的に目を向けてもらえる機会でもありますもんね。同時に、いまお話をお聞きして思ったのは、コロナ禍における「芸術文化の不要不急論」も多少なりとも影響しているのではないかと。このタイミングで就任されたことについても、期するものがあったのでしょうか。確かに、そう考えるとすごく稀有なタイミングですし、大切な役目だとは感じます。ただ同時に思うのは、コロナによって国内の芸術文化や国際交流の場においても壁が立ちはだかってはいますが、それが理由で全てが途絶えることはないんだなということです。それこそ東京国際映画祭もそうですし、様々な方が常日頃から希望を感じさせてくれる“場”を作ってくださっているのは、ありがたいですね。ある映画との出合いが契機「きっかけひとつで動く」――橋本さんは、2015年の第65回ベルリン国際映画祭で初めて海外の映画祭に参加されたと伺っています。その際のご経験も、ご自身の中では大きく残っていますか?そうですね。その際に出品されたのが『リトル・フォレスト』と『ワンダフルワールドエンド』だったのですが、撮影中は、海外の映画祭で上映されることになるなんて思ってもみなかったです。どちらも先鋭的・独創的な映画だったので、文化に対して誇りも感度も高い海外の方々が認めてくれたのかもしれないと思うと、すごく嬉しかったです。『ワンダフルワールドエンド』については、松居大悟監督がご自身で売り込みをされたと伺ったのですが、松居さんの行動力もすごいけどそれを「面白い」と受け入れて下さった方々もすごいですよね。映画を作る人たちを大事にして、映画自体に愛情を持ってくれているんだなと感じた出来事でした。――海外の映画祭の“熱”を肌で体感されて、広い視野で日本映画の現状をご覧になっていることが、ここまで伺ってきたようなお話につながってくるのかなと感じました。俳優としての目線では到底広い視野で見ているとは言い難いですが、一観客として、「寂しい」と感じることは結構多いように思います。自分がすごく良いなと思った作品がそんなに観られていなかったり、いまの国内の興行収入やランキングを見ていても、娯楽性の強い作品が多く、もちろん楽しい映画は私も大好きなのですが、教育的な部分が欠けているようにも感じるんです。それは映画においてだけではなく、社会の中でもそう。自分自身は芸術に携わっているからこそ、人間の本質を見つめたり、優しくなれたり、世界や人生の真理に触れることが当たり前になったのですが、私にとっての当たり前の日常は、“ここ”で生きているからなんですよね。どこかで「みんなもそうなんだろうな」と思っていたら、全然違った、と思い知らされることが多いです。――非常にわかります。芸術文化の業界の内側で止まってしまっている部分も大いにありますよね。心や感性を育てることが芸術文化の大きな役目だと感じますし、そういったものが土台にあるともっと生きやすい社会になっていくんじゃないかと思っています。私は元々映画を全然観ていませんでしたし、映画好きの家庭に育ったわけでもありません。子どものころはほとんどジブリ作品しか見たことなくて。映画全体における教養が全くない人間でした。でもスタートがそこであったとしても、観るもの・触れるものでこんなに人間って変わるんだと自分自身が体感しているので、よりそう感じますね。――石井隆監督の『人が人を愛することのどうしようもなさ』をご覧になったことが一つの契機になった、というお話をお聞きしたことがあります。そうなんです。機会がなかったとしても、きっかけひとつで動くんだ、ということを身をもって知っているからこそ、一つひとつに目を配って、変わっていけたらいいなと思いますね。――そういったメッセージを伝えていくことも、アンバサダーに繋がってきますね。ちなみに、2018年の第31回東京国際映画祭では、親友の松岡茉優さんがアンバサダーを務められましたが、今回の就任に際して何かお話はされましたか?いえ、特には話していないのですが、(松岡)茉優が選ばれたとき、「いいなぁ、私もやりたいなぁ」と思ってはいました(笑)。――なるほど(笑)。では、今回の就任は念願でしたね。そうですね(笑)。嬉しかったです。映画館での映画体験が一番「情報を超えた体験」――映画好きとしてももちろんですが、若年層へのリーチも期待されているかとは思います。「若年層の映画館離れ」については、どのように受け止めていらっしゃいますか?いちばん腑に落ちたのは、例えばスマホだったり家で映画を観る行為そのものは“体験”ではなく、情報を受け取っているに過ぎない、という意見です。私はなかなか家で映画を観る気になれなくて、映画館という空間や、席を立てないという制約が私にとっては大事なんだなと感じます。映画館で観ることで情報を超えた体験になるし、人生の一部のような2時間を過ごせた、という感覚が大きいんだなと。あとは、一つひとつにお金を払うことですね。例えばサブスクのように定額で何本も観られるというのはすごくお財布に優しいし、生活的に厳しい人でも文化に触れられるというのはとても素敵です。でも私自身は何に対しても、対価を払った分しか受け取れないと考えています。だからやっぱり、自分の一番の血肉になるのは映画館での映画体験なんじゃないかと思います。――特に映画祭だと、劇場公開時はミニシアターで上映される作品が、巨大なスクリーンで観られるのも大きなメリットですよね。そうなんですよね。それは本当に大きいなと思います。ミニシアターで映画を観ていて「小さいな…」と思う時もありますし(笑)、独特のにおいや、同じ部族で観るみたいな感じがありますよね。それはそれですごく好きなのですが(笑)。――確かに、ミニシアターだとお客さん同士が顔見知りになることもありますし、妙な連帯感がありますね(笑)。(笑)。あとは映画祭だと、海外の方々と一緒に観る体験が面白いです。反応が全然違いますよね。私はコメディだったり、面白いシーンを観ると結構声を出して笑ってしまうのですが、日本だと静かに観る方が多いから「自由でいいものだと思っていたけど違うんだ。気を付けよう」と思うきっかけがあったんです。そんなときに映画祭で、海外の方と一緒の空間で観たら本当に皆さん自由で、すごく楽しかったんですよね。――今回のアンバサダー就任もそうですし、「THE FIRST TAKE」等も含めて、近年より多角的に活動されている印象があります。ご自身が今後やってみたいことなどはありますか?いま、自分がこの数年間求めていた感覚というか、脱出する感覚があります。今も十分充実しているし幸せなのですが、「出口が近いな」と光が見えてきたんですよね。それは音楽をさせていただいていることも大きくて、音楽をできる時間が、ものすごくお芝居に還元されていると感じます。最近だと、ダンスもやりたいなと思っています。自分にとって、お芝居自体が一番喉から手が出るほどやりたいものというよりも、歌とダンスがそれに近い天然の欲求なんです。その分野で表現できることで、お芝居も肩の力を抜いて最高のパフォーマンスが出せる。そういうサイクルがすごく良いなと感じます。私は、音楽やダンスの教養も元々ゼロで、バレエやピアノを習っていたことは一切ないんです。だからこそ、自分にとっては“魂の解放”のようなところがあります。経験がなくても、環境に恵まれていなくてもできるんだ、ということを自分自身にも教えてあげたいし、私がそれを体現することで「自分も本当にやりたいことをやってみよう」と見てくださった方々にも思ってもらえるなら、すごく幸せです。第34回東京国際映画祭は、2021年10月30日(土)~11月8日(月)より日比谷・有楽町・銀座地区にて開催。(text:SYO/photo:You Ishii)
2021年10月29日永野芽郁と田中圭の朗らかな笑い声が上がると、室内のムードが一段と明るくなった。スチール撮影中、永野さんが以前勧めたという韓国ドラマを「観たよ!」と勢いよく告げた田中さん。しかし、その感想は「普通かな(笑)?」と茶目っけたっぷりで、永野さんは思わず「ええ~!本当にちゃんと観ました!?」と目を丸くしつつ食い下がる。田中さんに熱弁をふるう永野さん、笑顔でやさしく見つめる田中さん。いつまでも眺めていたくなるほっこりな姿は、初共演した映画『そして、バトンは渡された』にて演じた、血のつながりのない親子に重なるようだった。『そして、バトンは渡された』は、これまで4回も苗字が変わった森宮優子(永野芽郁)と料理上手な義理の父親・森宮さん(田中圭)、自由奔放で目的のためには手段を選ばない梨花(石原さとみ)と義理の娘・みぃたん(稲垣来泉)という、血のつながらない2つの家族の物語。優子は、わけあって森宮さんとふたり暮らしを送り、同じ高校に通う早瀬(岡田健史)に恋心を抱いている。一方、梨花は何度も夫を変え自由奔放に生きているが、泣き虫な娘のみぃたん(稲垣来泉)に目いっぱい愛情を注いでいる。ふたつの家族が一体どう交わるのか――。並々ならぬ思いで本作に臨んだ永野さん&田中さんに、たっぷりと話を聞いた。永野さんが思う田中さんと役との共通点「私に向けてくれる優しさ、同じやわらかさがある」――『そして、バトンは渡された』は、第16回本屋大賞を受賞した瀬尾まいこさんの同名ベストセラー小説の映画化です。原作または脚本を読んで、どのようなインスピレーションを受けましたか?永野:原作は元々読んでいました。涙するシーンも感動もあって、すべて「温かい」という感情の中で動くものだな、すごく優しい本だな、と思ったんです。脚本になってもそこは失われずに描かれていたので、原作の良さを自分の中で持ちつつ挑めたらいいな、と思いながらやっていました。田中:僕は、原作は読んでいないです。原作と脚本との違いはあまりわかっていないんですけど、脚本を読んだときに作りとして「本当によくできているな」と思いました。――演じた役とご自身との共通点や、例えば永野さんから見て「田中さんのこういうところが森宮さんっぽい」というところなどはありましたか?永野:私と優子との共通点は、割と何事もポジティブに捉えているところや、笑顔でいることを心がけようと思っているところ、ですかね。田中さんと森宮さんで言うと、森宮さんが優子に対して向ける優しさと、田中さんが私に向けてくれる優しさが、同じやわらかさがある気がするんです。撮影が終わって、今こうしたプロモーション期間でお会いしたときのやわらかさが、森宮さんの優しさとなんだか近いなあ、って。――田中さん、自覚はありますか?田中:そうですね、やっぱり芽郁ちゃんがお嫁にいくまでは、しっかりと!永野:(笑)。田中:僕と森宮さんの一番最初の大きな共通項として、父親である、ということがありました。優子ちゃんとは年が近いとか、血がつながっていないとかはあったけど、大きな括りとして大丈夫だろう、という感じで入ったんです。…けど、自分の実体験は全然参考にならなくて(苦笑)。現場では自分の感覚を忘れて、イチから作り直しました。なので、共通点はあまりなかったかもしれないです。僕は原作を読んでいないのもあって、芽郁ちゃんが生きているから優子ちゃんになっているという感じで見ていました。ポジティブなところ、キラキラしているところも芽郁ちゃんとの共通点というか、芽郁ちゃんからしか優子ちゃんは生まれないなと感じました。永野さんを観察していた田中さん「結構わかりやすい!」――現場で、「あ、本当に親子みたいだな」と感じたときもありましたか?永野:田中さんとの現場の距離感こそが、「あ、親子だな」とずっと思っていました。近すぎず、遠すぎず、ずっと話しているわけでもなく、同じ空間にいてもしゃべらない時間もあって。それは最初から田中さんが森宮さんという父親として、向き合ってくれていたからだと思います。――田中さんは、意識していらしたんですね。田中:最初のほうは、沈黙になるとどうしても「しゃべりかけたほうがいいのかな、コミュニケーションを取ったほうがいいのかな?」と思うんです。けど、まずお芝居でコミュニケーションが取れるなとわかりましたし、芽郁ちゃんを観察していると、結構わかりやすくて(笑)。嬉しそうなときは嬉しいのが出る、眠いときは眠いのが出る、本当に素直な反応をするんですよ(笑)。ふたりでソファに一緒に座ってスタンバイしているとき、何の会話もなくても、ぽーっとした顔をしていると、「あ、本当にぽーっとしてるんだろうな」と思うから放っておけるし、話したければ話せばいいや、という感じでした。今思うと、そのすごく素直な感じは、親子というか、森宮さんとして見ている優子ちゃんの、問答無用の「自分が守らなきゃ、育てなきゃ」みたいなところに数%ぐらいはリンクしていたのかな、と思います。――改めて、完成作をご覧になっての感動や一押しポイントなども教えてください。永野:完成作を観ると、私が観ていないシーンもいっぱいあったので、「あ、このシーン、こうなっていたんだ!」と発見するところがすごく多かったです。登場人物がそれぞれを想い合いながら過ごしているから、人を想う気持ちがこんなに美しいものなんだな、と改めて感じました。それに、ダークさを感じさせない作品ができたことへの達成感と喜びみたいなものもありました。――演じているときは、優子の心情に寄り添いすぎてしまい、苦しかったときもあったのでしょうか?永野:ありました。「本当はこうしたかったのに…」と優子が思っているところは私もそう思っていたので。でも、それは完全に優子の気持ちだけだから、みんなのことを考えたら、もしかしたら自分本位な考え方かもしれないけど…という葛藤もあったりしました。ふたりにとって家族とは?「一番言葉を信じなきゃいけない」「離れていても近くにいる」――田中さんは、完成作をご覧になって特に感動ポイントはどこでしたか?田中:僕はもう、優子ちゃんと森宮さんが初めてケンカをするところですね。ふたりはずっとお父さんと娘でやってきているけれど、血がつながっていなくて、けどふたりの絆はあって、それまではケンカをしたことがなかった。というよりも「ケンカもできないんだね!」なんて優子ちゃんに言われていたけど、初めてケンカができたときに、「あ、ケンカできた!」となりました。ネタバレになるので詳細は言えませんけど、その内容がまた…ね。嬉しいんだか、悲しいんだか、よくわからないぐちゃぐちゃな感情で。優子ちゃんを見ていて、そこで僕は感情が一気に動きました。――あのシーンは田中さんが演じたからか、森宮さんの父性や懐の深さが非常に出ていたように感じます。田中:出ちゃうんですよね~。…出ちゃったんでしょうね(笑)!――(笑)。田中さんから見て、あれだけ愛情を注いで優子を育てている森宮は、どんな風に映りましたか?田中:いや、とても楽しいと思うんです。あんなにかわいい娘と絶妙な距離感でいられて、ずっと彼女を応援できて。きっと、あのふたりはこれから先もずっとあの距離感だろうし、「あー、すごい幸せだな」と思います。森宮自身も、「優子ちゃんが生きる意味をくれた」と言っているじゃないですか。本当にそうなったんだろうなとうなずけるくらい、すごく楽しそうというか、幸せそうだなと思いました。――家族の形が描かれた作品です。おふたりにとって、家族はどういう存在でしょうか?永野:うーん(悩)。田中:一言で言うの、難しいよね。家族って、いろいろな側面があると思うんです。離れていても、一番近くにいるのが家族というか。うちは比較的何でもしゃべる家族なんですけど、今まだチビたちが小さいので「大きくなったら何にもしゃべってくれなくなるのかもな」とも思いますし。家族って、本当に人によっても、歳によっても違うものだと思いますが、近くにいるということは間違いないと思います。永野:そうですね。味方とか、そういうことですかね…?田中:味方だよね。永野:ですよね。もしも私がめちゃくちゃ悪い人間になったらわからないですけど、失敗しても味方でいてくれますし、頑張っている姿を見せても一緒に喜んでくれる存在が家族です。とにかく家族が一番ストレートな意見を言ってくれるので。一番言葉を信じなきゃいけない人たちだな、と思っています。(text:赤山恭子/photo:Maho Korogi)■関連作品:そして、バトンは渡された 2021年10月29日より全国にて公開©2021 映画「そして、バトンは渡された」製作委員会
2021年10月26日「心が癒されて安らぐような体験でした。視聴者の皆さんにも、美しい景色と温かい雰囲気に安らぎを感じてもらえれば」。そう語るのは、Netflix配信中の「海街チャチャチャ」で“歯科医”ユン・ヘジンを演じたシン・ミナ。“ホン班長”ことキム・ソンホと抜群のケミストリー(化学反応)を見せ、回を経るごとにユン・ヘジンという女性もその魅力を増して注目を集めている。イ・ビョンホン主演「美しき日々」で妹役を演じて俳優デビュー、同じく映画『甘い人生』ではヒロインに。チュ・ジフン主演のラブストーリー『キッチン~3人のレシピ~』をはじめ、「アラン使道伝」「オー・マイ・ビーナス」「明日、キミと」など、常に一線で活躍してきたシン・ミナ。今作は「補佐官」シリーズ以来、2年ぶりのドラマ出演となった。「気分転換に心温まるラブコメドラマをやりたいと思っていて、ちょうどそんな時に『海街チャチャチャ』の台本が届きました。台本を読むととても面白く、いろいろな面でヘジンと自分は似ていたので、この作品にぜひ参加したいと思いました」とシン・ミナ。ラブコメへの久々の出演を、楽しみにしていた視聴者は多いだろう。「ファンにラブコメ女優として愛してもらえるのはうれしい限りです(笑)。そうですね、ラブコメは私自身大好きですが、他にも好きなジャンルはいろいろあります。ジャンルに関してはあまり選り好みしないんです。1つのジャンルや役柄にこだわるよりも、キャラクターや脚本に自分が引き込まれるかどうかで作品を選ぶことが多いですね」と話す。「仕事に対して明確な信念を持ち、人生にも一生懸命」“歯科医”ヘジンとの共通点シン・ミナが演じた歯科医のユン・ヘジンは自立した女性で、完璧主義、不確かで曖昧なことは好まないキャラクターだ。「ヘジンはかなり率直にものを言う性格で、明確な人生の目標を持った完璧主義者です。そのせいでやや横柄で冷淡な人間にも思えますが、実際は情にもろく不器用なところがあります」と言う。「そのことを彼女自身は自覚していないのですが、それが可愛らしくて、この役を演じたいと思いました。ヘジンと共通点があるかと言えば…ヘジンは率直で竹を割ったような性格ですが、私は違いますね。でも情にもろくて人懐っこいところは似ていると思います」と明かす。「彼女は自分の仕事に対して明確な信念を持っていて、人生に対しても一生懸命です。彼女のそんなところが本当に好きなんです」とシン・ミナ。不器用で親しみやすく、実は人懐っこい…。“ホン班長”ことホン・ドゥシクともどこか相通じるが、「そういう自分の一面を自覚していないところがまた可愛らしいですよね」と続ける。キム・ソンホ演じるホン・ドゥシクの姿は「自分の生き方を考え直すきっかけになる」では、ドゥシク(キム・ソンホ)とチ・ソンヒョン(イ・サンイ)の一番好きなところは?と尋ねてみると、「ドゥシクは一見おせっかいですが、実は優しい心の持ち主です。あまりスマートな感じではないですが、人生を楽しむ術をよく理解している人です。彼のそんな他人に優しいところや、自由気ままなところは本当に尊敬しています」と言う。「都会でせわしない毎日を送っている私たちにとって、そういったドゥシクの姿は、自分の生き方を考え直すきっかけになると思います。ドゥシクは、コンジン村の住人に何かあったら、それが誰であっても助けに駆け付けるような人なので、きっと誰からも愛されていることでしょうね」と、ヘジン並に “愛の言葉”が止まらない。また、TVプロデューサーのチ・ソンヒョンについても、「自分の仕事を愛していて、仕事の楽しみ方をよく心得ている人」と断言。「だから、彼と一緒に働いたことがある人や、彼と知り合いになった人は、みんな彼のとりこになってしまうんです。彼の仕事に対する情熱や、おおらかな性格は好きですね」と語る。そして、キム・ソンホ、イ・サンイと顔を揃えると「NGをいっぱい出してしまった」そうで、「3人ともこのドラマの撮影を本当に楽しんでいました」と朗らかに振り返った。「とても美しい映像」と振り返るお気に入りのシーンは?さらに、劇中で印象に残っているシーンを「(第6話)灯台歌謡祭のシーンは記憶に残っています。それに(第5話)ドゥシクが雨のなか海辺にいるシーンも」と挙げる。「灯台歌謡祭はお気に入りのひとつですね。キャストが一堂に会するシーンですし、参加者が舞台でそれぞれの特技を披露するので、見ていて楽しいですよ。雨のなかでのドゥシクとのシーンはいまだに忘れられません。天気があまり良くなく、雨が降ってとても寒かったので撮影が大変でしたから。でもモニターでチェックしたら、とても美しい映像が撮れていたので、苦労が報われた思いがしました」と語る。彼女にとっても、ヘジンとホン班長の距離がさらに縮まる(ファンもおそらく大好きな)このシーンは、とても思い入れあるものとなったようだ。そんな本作を手がけたのは、「明日、キミと」でもタッグを組んだユ・ジェウォン監督。かつてシン・ミナは、監督の自然体で気取らない作風が好きだと語っていたことがあるが、「台本にない場面も劇中にはたくさんあって、そういうシーンのおかげで、撮影がますます楽しくなりました。 撮影しているとき、私たちがセリフを言い終えても監督は『カット!』って言わないんです(笑)。 だから間が空かないように、アドリブで何か言わないといけないんです。監督はそういうアドリブの部分を使っちゃうんですけど、そういったシーンによって作品に深みが出て、より面白くなったと思います」と打ち明ける。今作に根付く“温かさ”は、そうした演出からも来ているのかもしれない。「『海街チャチャチャ』が特別なところは、この作品がコンジン村に住むさまざまな人々を描いている点です。そういった人々の物語がメインの登場人物たちの物語に織り込まれることで、作品の深みと面白さが増しているんです」と、ヘジンやドゥシクを取り囲む大切なキャラクターたちにも思いを寄せていた。Netflixシリーズ「海街チャチャチャ」はNetflixにて独占配信中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:【Netflix映画】ブライト 2017年12月22日よりNetflixにて全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】マッドバウンド 哀しき友情 2017年11月17日よりNetflixにて全世界同時配信【Netflixオリジナルドラマ】オルタード・カーボン 2018年2月2日より全世界同時オンラインストリーミング2月2日(金)より全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】レボリューション -米国議会に挑んだ女性たち-
2021年10月16日モーニング娘。OGメンバーの飯田圭織さんは、現在4歳の娘さんと8歳の息子さんのママです。そんな飯田さんに今回は子育てインタビューをさせていただきました! 後編となる今回は、お子さんの小学校受験についてのお話をメインに取材させていただきました。画像出典:飯田圭織さんのオフィシャルInstagramよりー息子さんは小学校受験されたそうですね。受験しようと思われた理由やきっかけを教えてください。 飯田さん:きっかけは、小学校受験するお友達が幼児教室に通っていて、受験は考えていませんでしたが、子どもにどうやって教えるんだろうという興味があり、一度体験に行ったんです。そうしたら、もう私が目からウロコで! やっぱりプロの先生の教え方がおじょうずで、これはすごく子育てにも役に立つなと思いました。あとは、息子がすごく楽しそうだったんです。「僕お勉強楽しい! 行ってみたい! 」と言ったのが第一でしたね。受験するしないは後で決めてもいいから、お教室通ってみようか、というスタートでした。 ー目からウロコだったのは、どのような教え方だったんですか? 飯田さん:子どもと同じ目線で教えてくださるんですよ。例えば、ネコの絵を出して「これはイヌだよね」って先生がわざと間違えるんです。子どもたちは、すっごく楽しそうに「違う違う! イヌだよ~! 」と言って、先生に教えてあげようという気持ちから、たくさん学ぶんですね。あぁ、すごくいいなって。私も家でやってみようと思って、「ママ疲れたから歯磨きしないで寝よう~」ってわざと言ってみると、「え! ダメだよ、虫歯になるよママ! 」って自分で言うから、「はい、言ったよね、じゃあしようね」と。幼児教室が親の成長にもなりました。 ーパパは、幼児教室や受験に対してどのようにお考えだったのでしょうか。ご夫婦で話し合ったりしましたか? 飯田さん:主人はしばらくは、「受験はかわいそうだよ。早いよ」と言っていたんです。でも、息子本人が楽しんでやっているということと、受験するもしないも、結果が良くても悪くても、そこまで頑張ったことは無駄にならないよねっという話をして、やれる範囲でやってみたらとなりました。娘が生まれたばかりだったので、私が連れて行けないときに、主人に連れて行ってもらったら、主人がなんだかすごくノリノリで帰ってきたんです。やっぱり私の報告だけじゃなくて、自分の目で子どもが頑張る姿、できるようになる姿を見て変化していったんだと思います。 負けず嫌いな息子を元気づけるのが一番のサポートー息子さんご自身は、受験をどういうふうに捉えていらっしゃったのでしょう。 飯田さん:息子は5月生まれで、それまでは同学年の中でもできることが多くて、ちょっとお兄ちゃんタイプだったんですね。でも幼児教室に行って、できなかった自分がすごく悔しかったんでしょうね。男の子特有の負けず嫌いな気持ちに火が付いたという感じなのかな。一番になりたい、よし行くぞ! ってやる気が出たんだと思います。 ー諦めたくない、もっとできるようになりたいっていう強さは、ママの印象にも重なりますね。 飯田さん:うちの家庭はすごく息子といっぱい話をするので、私がモーニング娘。で培った諦めない気持ちとか、目標を定めて達成する、達成するまで諦めない! みたいなハングリーな部分は、息子にも受け継いでいるのかな。 ー小学校受験の準備ってどういうことをされるのですか? 飯田さん:私自身はお受験を経験していないので知らなかったのですが、今は素敵な幼児教室がたくさんあるんですよね。私の場合は、すごく信頼できる先生に出会えて、学校もさまざまなタイプがあるので、まずは目で見ることが重要と教えていただきました。娘も小さかったんですけど、いろいろな学校の説明会や学園祭に足を運びました。やっぱり実際に目で見ると、どういう方向性が息子に合うのかわかってくるんですよね。 ー息子さんの受験のサポートで、飯田さんが意識していたことはありますか? 飯田さん:やっぱり、子どもといえどもプレッシャーはかかるし、その数時間で100パーセントの力を出し切れるかというと、なかなか難しいじゃないですか。だから、風邪をひかないようにごはんを食べさせる、あとはとにかく自信をつけさせる。ダメだったことで全部のテンションが落ちちゃうと良くないなと自分も反省したことがあったので、ぐっと言いたいことを堪えて「大丈夫! できるよ! 先生があなたを見たら、この学校に来てくださいって言っちゃうんだから! 」って、子どもを元気づける、これが一番重要だったかなと思います。 自分より大事な存在を守る育児、楽しんで悩もう ー子どもがいるっていいなと思えるのはどんなときでしょう? 飯田さん:。皆さんもそうだと思うんですけど、自分は1日中休めなかったり、エステや美容院やお買い物など、やりたいことをぜーんぶ我慢して子育てをするじゃないですか。私も子どもを持つ前は自分中心の生活で、自分磨きがすごく好きだったのに。今は鏡も見ないで出かけてきちゃった! とか、しょっちゅうですね(笑)。でも、自分よりも大事な存在ってこういうことなんだなって。それを守っていくということは、ものすごくかけがえのないことなんだなと、日々感じていますし、子ども達の存在がすべての原動力になっています。 ー子育ての中で大切にしていることがあれば、教えてください。 飯田さん:お勉強も大事だし、いろいろ大事なことはあるけど、人を大切にすること、人を思いやること、これは子どもたちに第一に言っています。私自身、やっぱりモーニング娘。の仲間やお友達関係から生まれる絆は一生大事にしたいと思っているので。「お父さんもお母さんもお兄ちゃんも妹もお友達も、みんなずっと大事」と何度も何度も言ってますね。でも今、コロナ禍でなかなか直接人と接することができないですよね。お友達を招待して、お誕生日パーティーをしたり、遊ぶ約束もしたいんですけど、一定の距離を保たなければいけない。なんだかちょっとかわいそうだなと思ってしまいます。 ーそうですね。最初仰っていた、娘さんができるようになったときに、息子さんが一緒に喜んであげていたお話は、そういう教えからなのかなと思いました。飯田さん:そうだとうれしいですね。妹もお兄ちゃんのサッカーに一緒に行って、「お兄ちゃん! 頑張れー!! 」って一生懸命応援してます。お互いを大事にして、お互いの頑張りを認め合える兄妹になれているんだったら、私はすごくうれしいです。 ー子育てを始めたばかりの新米ママのころと今では、どのように変わりましたか? ふたり育児も経験されると、肩の力は抜けるものでしょうか? 飯田さん:肩の力は……抜けないですね(笑)。でも、まぁ冷静でいることが重要だとわかってきました。例えば子どもがお熱を出しても、息子のときは夜間救急に電話して相談したり、夜中にちょっと咳をしただけでも目が覚めて、スマホで調べたりという感じだったんですけど。ただ、その時にお母さんも体調を崩してお世話ができないという経験もしたので、今は少しでも寝ておこう! と思えるようになりました。常に冷静に、先々を見て考えようって。経験ですね。あぁ、でもそういう意味では肩の力、少し抜けてきているかもしれないです。 ー最後に、これからママになる方、なろうとしている方にメッセージをお願いします。 飯田さん:私ももう8年目で、いろんな経験をしてきました。ママになって子どもを育てるってすごいことだけど、自分のお母さんも経験しているし、隣のおばちゃんも経験しているし、すごく特別ってことではないと思うんです。悩んだり戸惑ったりすることもたくさんあると思うんですけど、その一つひとつを楽しんで、わが子と向き合っていければ、お母さんとしても良い時間を過ごせると思うので。うん、楽しんで悩んでくださいって思います。私自身も、楽しんで悩めたら素晴らしいなと思っています。 この度はお忙しいところ、インタビューのご協力どうもありがとうございました! お話しを聞いていると、すごく子育ての熱意が伝わってきて、とても聞きごたえのある素敵な取材でした! 最後の「楽しんで悩んでください」というメッセージも飯田さんが言うからこそ説得力があると思いました! 子育ては大変なことも多いと思いますが、飯田さん自身も、かわいいお子さんとの日々を悩みながらも楽しんでくださいね。 PROFILE:飯田圭織さん1981年8月8日生まれで北海道出身。1998年モーニング娘。1期生としてデビューし2代目リーダーを務めた。2005年グループ卒業後ソロに転身し歌手、タレントとして活動。2007年には結婚を発表し、現在は男の子と女の子の2児のママとして育児にも奮闘中!著者:ライター 山口がたこ漫画も描ける主婦ライター。2016年生まれの「ムスメ」と出来すぎた「神ダンナ」との大阪暮らし。Instagramでは、おうちごはんや子育てエピソードを更新中!
2021年10月16日モーニング娘。OGメンバーの飯田圭織さんは、現在4歳の娘さんと8歳の息子さんのママです。そんな飯田さんに今回は子育てインタビューをさせていただきました! ママ歴も長くなってきた飯田さんですが、日々の育児に悩むこともあるそうです。今回はそんな育児の悩みや、皆さんも頭を悩ませているコロナ禍のお家での過ごし方など、お話を聞かせていただきました!画像出典:飯田圭織さんのオフィシャルInstagramよりー8月に40歳のお誕生日を迎えられたそうですね、おめでとうございます。Instagramではお子さんたちからのサプライズプレゼントを投稿されていましたが、うれしい言葉などをかけられたのでしょうか? 飯田さん:ありがとうございます。いつも自分たちがお祝いしてもらっているから、ママのお誕生日はボクたちも何かやりたい! ということで、パパとこっそり相談してくれたみたいです。でも、下の娘は「ママに内緒なんだけど、私、ママのお誕生日のお飾り作ってるんだ~」って言ってきて(笑)。1週間くらい前から、「ママのお誕生日だね。ママを喜ばせたーい! 」ってすごい楽しみにしてくれていましたね。 ー事前にネタバレしてしまったのですね(笑)。それでもうれしいですよね。 飯田さん:そうですね。だから「ママのお誕生日も、ママのお料理食べられると思ってる? その日はお料理しないからねー」と話したら、「そっかぁ! 」って言ってました(笑)。 ーママのお料理が大好きなんですね。Instagramにもおいしそうなお料理やお弁当の写真が多いですね。もともとお料理することは好きだったのでしょうか? 飯田さん:好きですね。15歳から1人暮らしだったので、上京してからずっと自炊しています。15歳ってちょうどぽっちゃりしやすい年ごろじゃないですか。当時はすごく厳しいマネージャーさんで、「自己管理できずに売れなくなったら北海道に帰ってください」と言うような教育だったので、せっかく頑張ってアイドルになれたのにっていう思いで、体型キープのための自炊でした。Instagramでは、私物や私服を見せてほしいというお声もあるんですけど、もう毎日慌ただしくて……。あっ! て気がつくのがお料理が出来上がったときなんです。本当は完成度の高いものを載せたいんですけどね。毎日のことなのでなかなか……。でも日常の雰囲気を見せられて良いのかな。「かおりんのインスタ見てメニュー決めてるよ」ってお声を聞くと、あぁ良かったと思いますね。 ママの真面目さ故に試行錯誤の育児 ーデビュー当時から真面目で努力家のイメージがあったので、子育てに対しても真面目に取り組んでいらっしゃるのかなと想像していました。実際はいかがですか? 飯田さん:子どもときちんと向き合うように心掛けているので、少し口うるさいかもしれないです(笑)。真面目すぎるかなって思う時もあるんですけどね(笑)。特に上は男の子なのですが、私のなかではちょっと手こずっていますね。今朝も家を出るのが少し遅くなって、持ち物も確認しないで走って家を出ようとしていて、忘れ物を3つもしていたんです。なので、「持ち物をちゃんと確認しなさい」って言ったり、「焦って車にひかれないように」って言ったりするのですが、でもあんまり言い過ぎもよくないかなぁ? と考えたりもする日々で……。頭を抱えることが多いです。 ー男の子と女の子では違いますか? 飯田さん:私自身が姉妹の長女ですし、モーニング娘。になってからずっと女の子の世界で活動してきたので、男の子のことは理解不能なんです(笑)。娘の育児は、私も同じ女ですし、後輩たちも育ててきているので、言い方や考え方を理解できてラクに感じているのかもしれないです。息子の子育ては、アクション映画を常に体感している感じですかね(笑)。かわいいところもたくさんあるんですけどとにかくやんちゃで! もうちょっと型にはめずに子育てしてもいいと思うんですけど、抜けているなと感じる部分を今のうちに直しておくのも親の責任なのかな!? って思うと、私の真面目さ故に朝からどんよりしてきちゃいます(笑)。 ー子育てをしていて大変なことはどんなことですか? 飯田さん:今、すごく悩んでいるのは、子どもが困っているときに、どういうふうにアドバイスしたらいいのかなっていうことですね。例えば、お友達と喧嘩しちゃったり、嫌なことを言われたときとか。私たちの時代とは違うから、どんなアドバイスが正しいのか、正直よくわからないんです。私もこういう性格だから、なるべく子どもの力になりたくて、なんて言ったらいいんだろう? って調べたりしちゃうんですけど、主人は、「子どもは子どもなりの力を持っているんだから、自分で改善するから大丈夫だよ」と言うんです。それもそうだけど、親心としては、嫌なことがあったのに、そのままにしておくのも気にかかるんですよ。 ーまさに現在進行形、試行錯誤の最中ということですね。 飯田さん:そうですね。今日は大丈夫かなって後ろをついて行きたい気持ちを、ぐっと我慢したりするんですけど(笑)。子どもの力を信じて任せていいのか、子どものことを理解したうえでアドバイスしてあげたらいいのか、さじ加減がわからないですね。 コロナ禍は家族で有意義な時間を持てるようにー昨年に引き続き、お出かけなども自由にできない夏休みを過ごしたご家庭が多かったと思います。コロナ禍の夏休みはいかがでしたか? 飯田さん:まさに、うちもそうでした。旅行にも行けないので、これはいい機会だと目標を立ててみたんです。息子はサッカー少年で、スイミングを習う機会がなかったんですけど、学校の水泳教室までに何メートル泳げるようになるって目標を決めて、スイミングの夏期講習やプライベートレッスンを入れたんです。元々カナヅチだったんですけど、ガッと集中して通って、23メートル泳げるようになりました! あとは、まず朝起きたらお勉強をして、それが終わってから一緒にサッカーの練習をする計画を立てました。娘は娘で、お兄ちゃんが英語を勉強しているのを横で聞いていたり、隣で動物図鑑を見たりして、この夏休みに英語や動物の名前をすごく覚えたんです。目標を決めてやってみると、塾などに通わなくても、兄妹2人同時に成長できるんだなと実感しました。 ー素晴らしいですね! とても有意義な夏休みです。 飯田さん:なんだかんだ2カ月弱あった夏休み、予定がない日が1日もなく、ハードでしたが良い時間の使い方ができました。またおもしろかったのが、息子に「お兄ちゃん、ちょっと教えてあげて」とお願いして息子から妹に折り紙を教えてもらうようにしたんですけど、妹ができるようになっていくのを見て「わぁ!すごいできるようになってる!」と息子がすごく喜ぶんですよ。そういう兄妹の関係も良いなって。私の自分時間は1ミリもなかったんですけど(笑)、こういう時間の使い方もすごく良いなと思えた夏休みでした。 ー目標や計画を立てて過ごすおうち時間のために、何か工夫したことはありますか? 飯田さん:これは私もそうなんですけど、息子に夏休みが始まる前に、目標を書いてもらったんです。私、野球が大好きなんですけど、大谷翔平選手が高校生のときに、なりたい自分を表に書き出して、そうなれるように1個1個努力していたとインタビューで仰っていたんです。さらに大谷選手のすごいところは、当時のその表に書いてあったことを全てクリアしているんですよ。やっぱりこうして1個1個目標を定めていたからこそ大活躍されている今があるんだなと思い、息子にも「目標を書いてごらん」って言いました。まあ、小学生の息子はまだ、書いて完結してしまったり、「あの紙どっかいっちゃったー」ということもあるんですけどね(笑)。 ーそれではコロナ禍を通して、これまでの家族の生活に変化などはありましたか? 飯田さん:以前は子どもが幼稚園や習い事に行ったら、先生に全て教えてもらえるんだと思っていたんですよね。でも、ずっと一緒にいると、習っているはずのことを覚えていなかったりとか、すごく見えてくるんです。私もリモートのお仕事が増えて、家庭に向ける時間が今までより作れるようになったこともあり、「よし、教えるぞ!」っとやる気がでまして。また、子どもたちも、親の持っている知識を知りたいみたいなんですよね。例えば、息子は食べるのがすごく好きなんですが、食べ物に何の栄養があるのか知りたいようで、「サッカー強くなりたい! 足が速くなりたいから、筋肉になる食べ物教えて」と言ってきたりして。食事って、食べておなかいっぱいになってごちそうさまって、それで終わりといえば終わりじゃないですか。でも、こうやって一緒にいる時間が長くなったことで、食事からもいろいろ会話が生まれるなと気付きましたね。「この食べ物はこんな栄養があって、これで筋肉になるんだね」とひと言プラスするだけでも、かなり違うと思うんですよ。ただ食べるより、そうやって食べ物の知識などを盛り込みつつ、楽しんで食べたほうが楽しいじゃないですか。そういう知識や楽しさを、コロナ禍によって家族みんなで掘り起こしていけるようになりましたね。 飯田圭織さん、この度はどうもありがとうございました! インタビューを通して飯田さんの一生懸命さや真面目さが伝わってきたのと、お子さんからもすごく愛されているんだなと感じました。インタビュー後編となると次回の配信では、息子さんの小学校受験についてお話ししていただきました! ぜひ次回もチェックしてくださいね。 PROFILE:飯田圭織さん1981年8月8日生まれで北海道出身。1998年モーニング娘。1期生としてデビューし2代目リーダーを務めた。2005年グループ卒業後ソロに転身し歌手、タレントとして活動。2007年には結婚を発表し、現在は男の子と女の子の2児のママとして育児にも奮闘中!著者:ライター 山口がたこ漫画も描ける主婦ライター。2016年生まれの「ムスメ」と出来すぎた「神ダンナ」との大阪暮らし。Instagramでは、おうちごはんや子育てエピソードを更新中!
2021年10月15日【音楽通信】第93回目に登場するのは、音楽一家に生まれ育ち、心が洗われるような美しい歌声をわたしたちに届けてくれる天性のアーティスト、坂本美雨さん!母のお腹の中にいるときから音楽に触れる【音楽通信】vol.9316歳のときに「Ryuichi Sakamoto feat. Sister M」名義で歌手デビュー以降、本名で本格的に歌手活動をスタートさせた、坂本美雨さん。その後は音楽活動に加え、ラジオパーソナリティ、執筆活動、ナレーション、演劇といった、さまざまなフィールドで活躍。「東京2020パラリンピック」開会式では、「パラ楽団」の一員として登場し、その美声を世界に届けました。そんな坂本さんが、2021年10月20日にニューアルバム『birds fly』をCDリリースされるということで、音楽的なルーツなどを含めて、いろいろなお話をうかがいました。ーー2021年8月24日から13日間開催された「東京2020パラリンピック」開会式では、式典のために特別に結成された「パラ楽団」のボーカルとして、坂本さんは澄み渡る美声でパラリンピック旗入場曲「いきる」を歌唱されていました。パラ開会式は素晴らしい式典になっていましたね。パラリンピックは障害者の方々が主役であって、わたしたちパラ楽団のなかにも障害者の方もいたんですが、その方々の晴れ舞台という想いで参加していました。ですから最初から、「みなさんのお役に立てば」という気持ちでいたので、プレッシャーを感じることなく全体を楽しむことができましたし、素晴らしいメンバーに加われてとても光栄でした。今回、開会式に関わっただけでも、考え方が変わりました。今回のスローガンとして、世界中で15%の人たちが何らかの障害を持っているという「We The 15」がありました。これからの時代は、障害者の方々がよりわたしたちの生活に溶け込んでいくはずですし、サポートが必要なときに自然にお手伝いできるように、社会全体でなっていけたらと思っています。ーーここでおさらいとして、そもそも坂本さんが音楽にふれたきっかけもお聞かせ願いたいのですが、坂本龍一さんと矢野顕子さんがご両親という音楽一家に生まれていらっしゃるので、もう小さいときから音楽が身近な環境だったのでしょうか。そうですね。無意識のうちに、母のお腹の中にいるときから音楽の中にいて。母は妊娠中も父のYMOツアーのサポートメンバーをしていて、生まれて数か月でまたツアーに出てという環境でした。だから、自分の音楽的嗜好を考えると、お腹の中で聴いていた音の影響が大きいんじゃないのかなあと感じますね。テクノを聴くと、やっぱりなんか懐かしいな、気持ちいいなと思うんです。ーーご両親の音楽はもちろんですが、他にもプロになる前によく聴いていた音楽はありますか。父と母だけじゃなく、そのまわりに素晴らしいミュージシャンたちがいたので、自然とそういう方々の音楽が入ってきました。日本人ですと大貫妙子さんやオフコースが、わたしのルーツになっていますね。自分で音楽を聴き始めて選ぶようになってからは、TMネットワーク、X Japanと、いろいろな音楽を聴きました。9歳からニューヨークに住んでいたので、アメリカでは音楽をむさぼるように聴いていました。(アメリカのロックバンドの)スマッシング・パンプキンズ、マリリン・マンソンとか。それと同時に、テクノの血が騒いで、イギリスのクラブシーンを聴きあさったりと、ゴクゴクと飲むように音楽を聴きました。ーー1997年、16歳で「Ryuichi Sakamoto feat. Sister M」名義で歌手デビューされ、その後本名で活動をスタートされましたが、自然と音楽の道へと歩まれたのでしょうか。14歳ぐらいから「音楽家になる」とまわりには言っていて、学校でも将来の夢としてそう書いたりもしていたんですが、恥ずかしかったんです。まわりに本気で音楽に向き合う人たちがいるなかで、適当な気持ちではそんなこと言えないから、大きな声でやりたいとは、言えなかったですね。音楽家になるには、やりたい気持ちだけではできないことはわかっていましたし、どれだけの才能と努力が必要かは肌で感じて知っていたから。これは、自分は演奏する側ではなくて、ジャケットのデザインを手がけるといったかたちで音楽に携わろうと思って、途中まではデザインの勉強をするつもりでいました。ーーでも坂本さんの歌声を聴かせていただくと心が洗われるような癒しを感じるので、もしデザインの道に進まれていても、音楽業界の方から求められる存在だったのでは?いいえ、最初にSister Mとして歌うことが決まったのも、本当に偶然でした。教授(坂本龍一さん)のスタッフさんと一緒にカラオケに行って、華原朋美ちゃんの歌を歌ったときに「こういう声してるんだね」と聴いてくれた機会があって。たまたまそのとき、父のプロジェクトで探していた声質にフィットしているということで、やることになっただけなんです。求められたわけではなく、偶然、灯台下暗し! ということです(笑)。でもそこから、自分で意識を高めていったところはありますね。なんの発声のテクニックも、教えも受けていなかったので、自分の声を最初から好きなわけではなかったんです。本当に、徐々に開眼していった感じですね。音、歌、呼吸、響きをていねいに封じ込めた新作ーー2021年10月20日に、約5年ぶりのニューアルバム『birds fly』をリリースされます。こちらはドリーミュージックと KSR の共同レーベル「FOLKY HOUSE」第一弾アーティストとしての発表で、8月からビジュアルEP(Music Video付きアルバム)としての先行配信もありました。企画に富んだ印象の今作ですが、いつから制作していたのですか。制作は2月ぐらいから始めました。曲自体は昨年からできているものや、もっと前からの曲も入れています。今作に参加しているピアニストの平井真美子さんと、年明けぐらいに組もうと決めました。そのとき同時進行でレーベルのお話もあって、「FOLKY HOUSE」が発足しての第一弾となるのですが、全部が同時進行で形づくっていった感じなんです。レーベル主催の新羅慎二(にらしんじ)さんとお話しするなかで、「室内楽的な音楽」「人がそこにいるぬくもりのある音」また「それができていく過程をリアルに見せる」というキーワードも出てきて、今回6曲全部を1日でほぼ一発録りでレコーディングするかたちに至ったんです。ーー新羅さんといえば、湘南乃風の若旦那さんですね? レーベル主催が若旦那さんで、坂本さんのリリースに至るのは不思議なご縁ですね。新羅さんとはボイストレーナーが同じ方で、一緒にご飯を食べに行くこともあって、それからは不思議となぜだか気にかけてくださっていて、いまに至ります。ーーコ・プロデューサーも今回担当しているピアニストの平井さんは、もともとお知り合いだったのですか。一昨年から、ライブでご一緒する機会が何度かありました。今作は(平井)真美子さんの他に、チェリストの徳澤青弦(とくざわせいげん)さんとのトリオで演奏したんですが、(徳澤)青弦とは20年来の仲間です。ライブで一緒に演奏するピアニストを探していたときに、青弦が推薦してくれたことがきっかけとなって、一度合わせてみたらすごく化学反応があって、おたがいに「もっと一緒にやりたいね」と息が合ったんです。その後ライブを何度か重ねて、今回2曲目に「shining girl」を収録していますが、もともとこの曲は真美子さんのソロアルバムに収録されている楽曲なんです。ライブでも何度かこの曲を演奏しながら、「オリジナルも作りたいね」という話になって、4曲目の「gantan(birth)」も、そんな感じでできあがっていきました。ーー「gantan (birth)」は、「あぁ かわいいひとよここまでよく来たねあぁ 愛しい子よこれまでよく生きたね」との歌詞が印象的ですが、どのようなイメージで歌っていますか。これは子どもの頃の自分に捧げる歌で、いまはもう大人だから引きずってはいないけれど、小さい子ならではの心の整理の付け方、寂しさ、本当は心にあった気持ちみたいなものをいま認めてあげようという思いで歌っていますね。さらに、いま大人になった自分たちのことも、「よくこれまで生きてきたね」と言ってあげたいと歌っています。ーー収録曲1曲目「birds fly」は清々しい楽曲ですが、アルバムのタイトル曲となっているということは、もっとも今作を表す楽曲ということになりますか。結局はそうなったのかな、と思っています。アルバムタイトルで他にふさわしいものが見つからなくて、みんな馴染んでしまったから(笑)。新曲としては最初にできた曲でもあって、コロナ禍のステイホームとなってすぐに作った曲で、解放されたい、という気持ちがあふれている曲です。ーー3曲目「story」は、一般の方も坂本さんの公式YouTubeチャンネルでMVを視聴することができますが、すでに1万回の再生回数を突破されています。今作は東京の自由学園 明日館(みょうにちかん)で 3 人の生演奏を1日で全曲レコーディングするという画期的な作風ですが、その様子がわかる動画は緊張感がありながらも、美しい歌と演奏に見入ってしまいました。この曲を含めて、全6曲のミュージックビデオをApple MusicでビジュアルEPとして先に配信しているのですが、インスタグラムなどにうれしい感想などをいただきました。今回は、自分の身近な人たちに聴いてほしくて、「新作できました」と、データを友人たちに送ったりしたんです(笑)。信頼する友人たちが「素晴らしいね」と言ってくれたので、自信になりましたね。今作は普段の自分と歌っている自分の乖離がない作品というか、素の私のまま、より個人的な作品を作れた気がします。ーーいつもは完成してもあまりお知らせしないのですか。あまりないですよ、恥ずかしいので(笑)。今回は、自分に正直な作品になりました。ーー今作が収録されたその現場に、観客として行きたかったぐらい、とっておきなものと感じました。今回、いろいろなクリエーターの方々が参加してくださって、一緒に作っていきました。衣装、ヘアメイク、頭の後ろの編み込みは装飾の方が編んでくださった付け毛のアート作品だったり。写真家、映像チームも本当にすごかったです。あの緊張感の中、録音と映像とを両方やるというのが無謀なことだったのですが、あんなにたくさんの機材を動かしながら物音ひとつもたてない。誰もくしゃみも咳もできない、すごい集中力でした。演者の私たち3人は、おたがいの気配に感覚を研ぎ澄ませて、呼吸を合わせて演奏しました。ーー5曲目「hoshi no sumika」は、haruka nakamuraさんとの共作となりますね。以前、『Sing with me』『Sing with me II』(ともに2016年発表)というアルバムを2枚一緒に作って、そのあとも全国ライブしてまわった仲間なんですが、その頃のデモに歌詞をつけました。真美子さんとのライブでこの曲を一緒にやったらすごくしっくりきたので、今回はふたりの曲として収録しました。ーー6曲目「for IO(イオ)」は、悲しみを帯びているように聴こえながらも、最後は顔を上げて希望を感じるような歌詞に思えました。この曲は、友人のミュージシャンの猫沢エミさんと、その猫のイオちゃんに捧げた曲です。春に病気で闘病していたイオちゃんを看取ったんですが、それまでの壮絶な看病やその移り変わりを細かくインスタグラムに綴っていらして。私自身もイオちゃんに会いに行ったりと、すごく通じ合うものを感じていて、離れているけれど一緒に時を過ごしている感覚がありました。いよいよ今日看取るという日に、私もスタジオに入って、遠隔の「音楽葬のつもりで歌うので聴いていてね」と話して、インスタライブでそれをエミさんも聴いていてくれて。そのときに生まれたメロディから、ふくらませた曲です。歌詞も、イオちゃんとエミさんのことを綴りました。ーー坂本さんは動物愛護活動をライフワークとされていますし、猫がお好きなことでも知られていますね。飼い猫のサバ美ちゃんは、お元気ですか。元気ですよ。本当の年齢は保護猫なのでわからないですが、推定2歳からうちにいて、11年になります。まだまだ長生きする予定です!ーーでは聴き手には、今作をどのように聴いてほしいでしょうか。室内楽として建物の会場の響きも大切に、その瞬間にしかない音、歌、呼吸、響きをていねいに封じ込めた作品です。部屋のなかでも、もちろん外でヘッドフォンでも、どこで聴いてもそばに私たちがいるような気配を感じてもらいたいですし、安心や穏やかさも感じてもらえたら一番うれしいです。「自分のなかの小さな女の子を輝かせていく」ーーお話は変わりますが、坂本さんはおうち時間をどのようにお過ごしですか。しいて言うなら、よくお料理しています。でも母親なので必要に迫られてやっているところもありますね。おうちにいると、娘と一緒に料理をする時間は増えました。娘も成長してきて、包丁を上手に使えるようになって、料理を手伝ってくれるようになったんです。この間も、餃子を一緒に作りました。娘が担当する料理もあって、そのときは任せています。ステイホーム中、娘がアメリカの料理番組にハマって、番組で作られていた創作料理をどうしても自分も作りたいと言われたことがありました。どうやって作るのかさっぱりわからないけれど(笑)、見よう見まねで作ってみたりして、すごく楽しかったです。ふたりの趣味ですね。でももともとは、時間があるとすぐ外出して、「とにかく美味しいコーヒーが飲みたい!」とカフェに行ったりするのが好きなんですけどね。ーーおうちで美味しいコーヒーを集めたり、淹れたりしますか。私はコーヒーを淹れるのがヘタなので、夫に「美味しいコーヒーを淹れて」とプレッシャーをかけてみたりはします(笑)。ーーみなさんの仲の良さが伝わってきます。ところで、いつもしなやかで美しい坂本さんですが、普段、コスメや美容面で気に入っているものはありますか。たくさんありますよ。まわりに美容に詳しい人やエキスパートがいるので、日本一の美容情報をまわりから得ています(笑)。最近だと、FEMMUE(ファミュ)の「ソフトクレイ ベルベットマスク」という、ピンクのクレイマスクが最高です。まず香りも色も最高に気持ちよくて、うすいピンクのクレイなんですが、肌がワントーン明るくなりますね。あとは(メイクアップアーティストの)早坂香須子×シンシア・ガーデンによるオーガニックスキンケアブランドのNEROLILA Botanica (ネロリラ ボタニカ)のものは全部信頼していますし、THREE(スリー)もよく使います。新作を試させていただく機会も多くて、いろいろと使いますね。OSAJIも好きで、新作が出るたびに感激しています。ーーたくさんのおすすめ情報を教えていただき、ありがとうございます。では最後になりますが、今後の抱負をお聞かせください。今回のアルバムでも、真美子さんと「自分のなかの小さな女の子を見つけて大事にする」「その子を輝かせる」という話をしていたのですが、それは今作のテーマというよりも、わたしたちのこれからの人生のテーマなんです。たとえばそれはインナーチャイルドと呼ばれることもあるものですが、自分のなかの小さな女の子が感じていることをより大事に生きていくことが、一番幸せなのかなと感じていて。どんな音楽をやっていくのか以前に、どうやって、本当の自分として生きていくのかを考え続けていますし、このアルバムはその第一歩になるものでした。それは今後の音楽人生においても大事な一歩で、この続きがどうなるかはまだわからないですが、自分のなかのそんな声をこれからも大事にしていきたいと思っています。取材後記美しく胸を打つ歌声や楽曲で、わたしたちの毎日を彩ってくれる、坂本美雨さん。その歌声や話し声を聴いていると、癒されるのは、筆者だけではないと思います。音楽活動だけではなくさまざまな表現活動もされ、さらに猫ちゃんや娘さんなど、まわりを大事に愛し愛されている様子がとっても素敵。そんな坂本さんのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・前康輔取材、文・かわむらあみり坂本美雨PROFILE1980年5月1日、東京都生まれ。音楽一家に生まれ育ち、9歳でニューヨークへ移住。1997年、16歳で「Ryuichi Sakamoto feat. Sister M」名義で歌手デビュー。以降、本名で本格的に歌手活動をスタート。音楽活動に加え、執筆活動、ナレーション、演劇など表現の幅を広げ、ラジオではTOKYO FM他全国ネットの「ディアフレンズ」のパーソナリティを2011年より担当。村上春樹さんのラジオ番組「村上RADIO」でもDJを務める。ユニット「おお雨(おおはた雄一+坂本美雨)」としても活動。2020年、森山開次演出舞台『星の王子さま-サン=テグジュペリからの手紙』に出演。2021年、ニューアルバム『birds fly』を8月20日に配信、10月20日にCDをリリース。『Memories of Shelter坂本美雨 feat. 平井真美子』として、12月26日に金沢21世紀美術館 シアター21にて、昼夜二回公演を開催。また、ユニット「おお雨」では、年末にライブを行う予定。InformationNew Release『birds fly』(収録曲)01.birds fly02.shining girl03.story04.gantan (birth)05.hoshi no sumika06.for IO(作詞:坂本美雨 作曲:坂本美雨)2021年10月20日発売(通常盤)MUCK-1001(CD)¥3,300(税込)*特殊仕様パッケージ。(初回限定盤)MUCK-8001/2(CD+Blu-ray+特典)¥6,820(税込)*特殊仕様ボックス。[Blu-ray収録内容]※初回限定盤のみ全楽曲のレコーディング風景を収めたMusic VIdeoを収録。写真・前康輔 取材、文・かわむらあみり
2021年10月13日「ヴィンチェンツォ」や「わかっていても」「賢い医師生活」、そして「イカゲーム」など、今年もヒット作が続くNetflixの韓国ドラマ。その中で、週末に“癒し”を与えてくれるラブコメディとして“沼落ち”する人を続々と生み出しているのが、「海街チャチャチャ」だ。今回は“ホン班長”ことホン・ドゥシク役で熱い注目を集めている、キム・ソンホのインタビューがシネマカフェに到着した。舞台俳優から映像の世界に転身したキム・ソンホは、Netflix配信中の若きIT起業家たちを描いた「スタートアップ:夢の扉」で、ペ・スジ演じるダルミを巡ってナム・ジュヒョク演じる“ドサン派”と彼が演じる“ジピョン派”の論争を巻き起こし、韓国のみならず日本でもブレイク。第57回百想芸術大賞では一般投票による「TiKToK人気賞」を獲得した。本作で彼が演じるホン・ドゥシクは、ソウル大学を卒業しながら、海辺の小さな村コンジンで、いわゆる“何でも屋”・“便利屋”のようなことをしている謎多き青年だ。「ドゥシクは決まった職業や規範に縛られない、自由気ままな人間です。とてもとっつきやすい性格で、誰とでも仲良くなれるんです。知らない人に声をかけて親しげに会話をしたり、困っている人を助けたりするのはそう簡単ではありませんが、ドゥシクはそういうことができてしまう人間なんです。それに何だって器用にこなせるので、うらましい限りですよ!」と、ソンホは愛を込めてキャラクターを語る。「ホン・ドゥシクは私の中に根付いている」では、キム・ソンホ自身、何か得意なことはあるかと聞いてみると、「自分で『これが得意!』と言えるものはありませんね。特技はまだ模索中なんです。得意なことは特にないのですが、演技が大好きということだけははっきり言えます。大好きな演技を特技にできたらなと思っていますよ(笑)」と応じる。また、ドゥシクは多種多様な資格を持っていることも話題だが、「フルーツ盛り付けの資格は取ってみたいですね! 初めて聞いたとき、すごく面白そうだと思いました。そんな資格を持っていたら、もっとたくさんの人を笑顔にできるでしょうね!(笑)」と、語るところはまさしくドゥシクのよう。すると「ドゥシクというキャラクターは私の中に根付いているので、半分は私そのものではないかと思っています」とソンホ。「ちょっとワイルドで無口なところは私とは違いますね。 それに、ドゥシクは他人の心の傷をほじくり返すようなことはせず、そっと肩を貸してあげるような人なんです。簡単なことではないでしょうが、自分もそういう人間になりたいですね」と語る。「私だったらドゥシクのような人生は送らなかっただろうと思います。ドゥシクはコンジン村に帰ってきましたが、私だったらそうはしなかったでしょう。ドゥシクという自分とは違うキャラクターを演じることで、自分なら選択しなかった人生を体験できたと思います。人見知りな性格は2人とも共通しているところでしょうか。ドゥシクは自分のことを自慢するとき、ちょっとウザい感じになりますが、それは彼が恥ずかしがり屋だからなんだと思います(笑)」と、ドゥシクについて次々に言葉が溢れ、キャラクターを追求していることが窺える。さらに、本作では「キム・ソンホのどういった一面が見られる?」と聞くと、「のびのびとしていて、ちょっとずぼらな私の一面が出ていると思います。これまで出演した作品では、職業柄、あるいは他のキャラクターとの関係でお堅いイメージの役が多かったですが、ドゥシクはまったく自由気ままで柔軟な人物なので、そんなキャラクターを演じる私の演技を楽しんでもらえたらと思います」と明かす。「ドゥシクはかなり成熟した人間です。何でも知っていますが、あまりお喋りではありません。人をどう手助けしたらよいかも心得ていて(相手がヘジンのとき以外は)、自分もこんな人間になれたらいいなと思います」と語るソンホ。シン・ミナは「その美しさと愛らしさそのままの人」そんなドゥシクと関係を深めていく、コンジンで歯科医院を開業したユン・ヘジンを演じたのはシン・ミナ。日本にもファンが多い人気女優の1人だ。「彼女の出演作を観たときは、美しいだけでなく愛らしさもあり、明るくエネルギッシュな人だと感じました。実際に会って共演してみると、その美しさと愛らしさそのままの人でしたね!」とソンホ。「いつもとても思いやりがあって、その場のみんなが撮影を楽しめるよう気を配っていました。彼女と共演できて本当によかったと思いました」と振り返る。「何よりもまず、ミナがヘジンを演じたことで、キャラクターの魅力がさらに増したと思います。ヘジンにはある家族の問題があって、それがわかると彼女の行動に共感できるようになるのですが、それがなかったとしても彼女はそのままで魅力的なキャラクターですね。ミナはヘジンを自然体でとても上手く演じてくれたので、私の演技とも良い化学反応が起こっていたと思います。そういった点も楽しんでもらえるとうれしいですね! (笑)」「現場では一緒にたくさん笑いました。ミナとは新しい略語を一緒に勉強したんですが、あのときは 2人で笑ってばかりでした」とソンホ。また、“恋のライバル”チ・ソンヒョン を演じるイ・サンイについては、「一見真面目なんですが、実はとてもウィットに富んでいて楽しい人なんです。2人には大いに笑わせてもらったので、撮影中は本当に楽しいひと時でした」。想像するだけで「心が温まって安らかな気持ちになる」コンジンまた、「海街チャチャチャ」は地域や住民の人間ドラマも描くことでいっそう優しさにあふれた作品となっている。「最近は近所付き合いも難しい時代になりましたが、私が小さい頃は食べ物のおすそ分けもよくありましたし、隣近所の付き合いは当たり前のことでした」と言い、「『海街チャチャチャ』の撮影中は、そういった子供の頃のことをよく思い出しました。コンジン村の人たちと何気ない会話をすることで、ちょっと立ち止まって辺りを見回す時間も増えました」と明かす。温かい撮影の裏側も見えてくる本作。物語の舞台となる海辺の町も大きな役割を果たしている。「(ロケ地の)浦項の景色は本当に素敵です。ただその辺を散歩するだけでストレス解消になりました。浦項での撮影は本当に素晴らしいひと時だったので、ソウルに戻ったら何だか変な感じがしました」とソンホ。「あの街の美しい景色は、心の安らぎでした。時間が空くと、よく美味しいものを食べに行きました。ずわい蟹にコングクス(冷たい豆乳スープの麺)、それにイカ料理も食べましたね(笑)」と大いに楽しんだよう。「本作の台本を読めば読むほど、その美しさが伝わってきました。台本を読みながらその場面を想像すると、心が温まって安らかな気持ちになるのを感じ、こんな素敵な作品に自分も参加したいと思ったんです」とソンホ。「ファンには、コンジン村の素敵な人々や、美しく心安らぐ風景をぜひ見てもらいたい」とアピールしつつ、最も印象に残っているシーンとして「間違いなくサーフィンのシーン」と挙げ、「完成した映像を見たら、実際より上手く見えていて助かりました(笑)」と朗らかに語る。劇中ではドゥシクが抱える“心の闇”も明らかになりつつあり、ユジンとチPDとの三角関係の行方も気になるばかり。これからも新しい魅力を振りまき続けるキム・ソンホ、そしてホン・ドゥシクに注目していてほしい。Netflixシリーズ「海街チャチャチャ」は独占配信中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:【Netflix映画】ブライト 2017年12月22日よりNetflixにて全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】マッドバウンド 哀しき友情 2017年11月17日よりNetflixにて全世界同時配信【Netflixオリジナルドラマ】オルタード・カーボン 2018年2月2日より全世界同時オンラインストリーミング2月2日(金)より全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】レボリューション -米国議会に挑んだ女性たち-
2021年10月02日岡崎体育の連載「体育ですけど、オンガクです」。今回のテーマは「ロングインタビュー」です。アルバムをリリースしたタイミングなどで、雑誌などからインタビュー取材をしていただくことがあります。ときには“2 万字インタビュー”などと銘打ったロングインタビューをしませんか?とお話をいただくこともあります。ロングインタビューをしていただけるなんて、本当にありがたいことです。ただ、ありがたいのですが、とにかくインタビューを収録する時間が長い!通常の雑誌などに掲載される1ページ程度のインタビューは長くても収録は1時間程度です。でも、ロングインタビューは平気で2時間、3時間かかってしまいます。それだけ長い間話を聞いていただけるのは、ありがたいことなのですが…。インタビューは、たぶん取材する側は準備をしてくださっていると思います。インタビュー対象のことを調べたり、過去の記事を読んだり、ミュージシャンだったら過去のアルバムから現在の最新アルバムまで聴き直したり。では、受ける側はどうか?というと、僕の場合はとくに準備をしていません。聞かれたことをその場で考えて思うままに答えています。インタビュアーの方にもいろんな方がいます。ときには「こう答えてほしいのかも…」と、こちらが逆に気になってしまう人もいたり。以前にテレビの某ドキュメンタリー番組に出演した際には、“SNSの寵児”という感じで僕のことを紹介したい雰囲気をなんだか感じ取ってしまい、自分の中に“SNSの寵児”を憑依させてしゃべってしまった感があります。いや、それも本音でないわけではないのですが、僕の性格的に、どんな相手だろうと常に本心でぶつかるというより、その場その場の空気を読んで場に合った答えを言って、気まずい空気を回避してしまうクセが自分にはあると思います。あとは、僕みたいにちょっと“ちょけた”ことを言うタイプは、どこまでそれをシャレとして受け取ってくれるか、というのも気になってしまいます。インタビュアーさんは初対面であることも多いです。本心を言ってどこまで真剣に受け取ってくれるのか、逆にシャレをシャレとわかってくれるのか…そこを見定めるのは正直、難しいです。だったら、インタビュアーさんのノリに合わせてお答えしたほうが場もスムーズですし、記事もうまくまとまるのでは、などと余計なお世話かもですが考えてしまうんです。おかざきたいいく10月20日(水)に約2年9か月ぶりとなる4枚目のオリジナルアルバム『FIGHT CLUB』が発売に。11月23日(火)、横浜アリーナでワンマンライブ「めっちゃめちゃおもしろライブ」を開催。※『anan』2021年10月6日号より。写真・小笠原真紀ヘア&メイク・村田真弓文・梅原加奈(by anan編集部)
2021年10月02日【音楽通信】第91回目に登場するのは、数多くの舞台やドラマ出演などで知られ、ソロアーティストとしても活躍し、甘い歌声とカッコいいパフォーマンスで魅了している、高野洸さん!小6からグループで活躍しソロ活動へ【音楽通信】vol. 912009年11月、小学校6年生のときに、ボーカル&ダンスユニット「Dream5」のメンバーに抜擢されてCDデビューした、高野洸(たかの あきら)さん。2014年、レコード大賞や紅白歌合戦に出演後、2016年にDream5としての活動を終了。同年、俳優として、映画への出演やミュージカルの主演を務めるなど、個人での活動をスタートしました。2019年1月には、1stシングルCD「LOVE STORY」でソロデビューし、アーティストとしても音楽活動に励んでいます。そしてこの度、2021年8月18日に5thシングル「Vacances(ヴァカンス)」を発表し、10月27日にライブ映像作品「高野洸 1 st Live Tour “ENTER”」のDVD&Blu-rayも発売されるということで、お話をうかがいました。ーーそもそも高野さんが音楽にふれたきっかけから教えてください。4歳からヒップホップダンスを習っていて、ダンスをやりながらいろいろな音楽に触れていました。小6からDream5としてグループ活動をやらせていただき、徐々に俳優業にも興味を持ち始めて、グループ活動を終了したときに、俳優一本でやっていくと決めました。ただ、ミュージカルをやらせていただくと歌う機会も多く、結局は歌もダンスもできるステージはすごく楽しくて、好きなんだと実感しました。その頃からいまもずっと向上心は高く持って、歌もうまくなりたいと思っていて、ソロでアーティスト活動を始めたんです。――では普段、高野さんがよく聴いていたアーティストはいますか。小学生のときは、親が運転する車のなかでよく流れていた、Mr.Childrenさんが好きでしたね。コード進行もメロディも好きです。いまは、いろいろなジャンルの音楽を聴くようになりました。――以前、ananwebにはミュージカル『刀剣乱舞』の膝丸役の高野さんとして登場いただきましたが、役での歌唱とご自身名義での歌ですと、意識の違いはありますか。膝丸として、ミュージカル『刀剣乱舞』の世界観を背負って歌うときは、ステージでパフォーマンスすることが前提となりますね。膝丸のキャラクターというのは、武士で力強いものなので、勢いを持って歌うことを心がけています。僕自身で歌う、ソロアーティストとしての作品は、レコーディングのときから自分の良さを出せるのはどれなのかと手探りしながら、時間をかけて進めていくんです。なので、意識は自然と切り替わっていると思いますね。きっと歌のニュアンスや語尾の表現の仕方などに、その違いがけっこう出ているかもしれません。初のソロツアーを経てアーティストとして成長――2021年8月18日にニューシングル「Vacances」をリリースされました。1曲目「サマービーツ」は爽快でキャッチーなナンバーで、高野さんご自身で作詞されていますね。シングル曲に「サマービーツ」を選んだのは、野外ステージで歌っている姿を想像して、明るく元気をもらえるサウンドだったから。それから曲を聴き込んで、突き抜けて爽やかなサビをいかして夏の暑さをエネルギーに変えよう、新しい世界を見てみたいという設定で主人公を描くと決めて、歌詞を作っていきました。――歌詞を書かれるときは、どんなふうに作っていかれるのですか。面白い言葉を見つけたら、メモをとるようにしています。今作は夏をテーマにしたので、夏らしい言葉などをある程度メモしておいて、そのなかでも異彩を放つような面白い単語を選んで、曲にあてはまるか試していきました。そんなふうにして、何段階かにわけて、構成していく感じですね。作詞の作業は、本当に楽しいです。ときどき僕の歌詞は独特だと言われるのですが、それは面白い言葉を集めているからなのかなと思いながら、曲を聴いたみなさんはどう捉えてくださるのか、気になりますね。――2曲目「tiny lady」も高野さんが作詞を担当されていますが、この曲はどのようにして生まれた曲ですか。今回、「Vacances」に収録している3曲は夏をテーマにしていて、「tiny lady」はテーマを決めるのにすごく時間がかかりました。この曲を聴いていると、4つ打ちのリズムが曲調的にも少し若い感じもして、イキイキとした、心が浮かれている様子を描いたほうが良いなと。さらに、ドライブしているときにもこの曲を聴きたいと思ったので、ドライブデートというテーマで、歌詞を仕上げていきました。――歌詞に「ドライブの時くらい 君が俺見てよ」とあって、少し大人っぽい印象の曲です。そうですね。歌詞には英語のフレーズを多く入れたのですが、けっこう苦心しましたね。良いメロディとリズム感だからこそ、中途半端な言葉にするとハマりが良くないので、英語詞にはすごく時間がかかりました。――3曲目「Memory of Sunset」は共作されていますね。デモのときに、すでにある程度テーマが決まっていたので、そのデモに惹かれて選んだ曲です。1番の歌詞のみできていたものを引き継いで、その世界を僕なりにいろいろと解釈しつつ、2番からはオリジナルで作りました。この曲に関しては、歌詞の景色が見えてすごく描きやすく、スラスラといきましたね。ラストのサビ終わりにはラップを入れたら面白いなと思って、「Where we going」というメロディが続くところにラップパートも盛り込みました。そういう意味では、最後の歌詞のブロックではメロディも作っているということになります。そのラップのところにも、注目して聴いてほしいですね。――10月27日には、今年の4月と5月、振替公演が9月に行われた「高野洸 1 st Live Tour “ENTER”」のDVD&Blu-rayが発売されるそうですね。初のソロワンマンライブツアーを振り返って、手応えはいかがでしたか。本当にすごく手応えもありましたし、来ていただいたお客さんのおかげで、達成感がありますね。各公演やりきれた、という経験が自分のなかではとても大きいです。ツアーが始まる前は、ひとりで歌って踊ってステージをやりきることが、例えば足がつったり声を枯らして裏返ったりという、アクシデントの不安もありましたが、そういったこともなく。乗り越えられたことが、自信につながりました。――各公演の様子はいかがでしたか。各会場、熱気がすごかったです。トークでは、各地のご当地ネタをやりました(笑)。福岡公演の場合は地元なので、地元で人気のファミレスの話をしましたし、埼玉の大宮だったら、事前に地元の名物を調べてナポリタンの話をしました。――特典映像には、リハーサルやバックステージなどのドキュメント映像が収録されているそうですね。メイキング映像ですが、かっこよく仕上げていただいています。今回、ライブのリハーサルの日数がそれほど多くはなかったのですが、短い時間の中で急ピッチで仕上げていったところを撮ってくれていますし、悩んでいる姿も入っています。――初のツアーが映像作品として発売されるのは、率直にどんなお気持ちでしょうか。ライブの様子が映像作品となって発売されたものを購入した方が、また家でライブを観ていただけるというのは、ひとつの憧れでした。実際のライブでもめちゃくちゃ良い音質だったのですが、その音源がほぼそのまま収録されていて。きっと大画面で良いスピーカーで聴くと、よりライブの雰囲気が味わえて、臨場感があると思います。――高野さんは、歌はもちろん俳優としてもご活躍されていますが、シンガーと役者とは無意識に切り替えているんでしょうか。自然と切り替わっている気がしますね。でも、実はそれぞれ気をつけるポイントはたくさんあって、細かい部分での違いが多いと思うんです。もしステージ上で立っている場合は、エネルギーを発散しなくちゃいけないので、客席の一番後ろまで届ける、ということが重要。でも、自分のソロライブの場合、スクリーンがステージの後ろにあって、カメラで映してくれているんです。アーティストはマイクを通して音を、エンターテインメントを届けているので、舞台のお芝居とソロライブでは、そういう意味でも、感覚が少し違うのかなと。一番大きなポイントとしては、どの大きさで撮られているかが大事という気がしますね。舞台と映像作品の差はそこで、舞台の大きさで表現が変わってきますし、立ち姿から違いがあるので、ヨリで撮られているのか、どれだけの規模で伝えるかというのが、一番繊細なポイントだと感じて表現しています。こうやって自然と切り替えられるのは、いろいろなエンタメをやらせていただいていることも、大きいかもしれません。ひとつのことを極めようとしているわけではないからこそ、舞台や音楽活動などのさまざまな現場で学んだことが、ほかの現場で活きることが多いのかなと思います。音楽活動では「紅白」、俳優では朝ドラと大河が目標――お話は変わりますが、高野さんはおうち時間をどのようにお過ごしですか。家では小説を読んだり、動画サイトを観たりすることが多いですね。あとは曲をスピーカーから流したり。――ご自身の曲ですか?自分の曲もありますし、人気の曲を聴きながら、「自分の曲をここで流してみるとどんな感じなのかな」と、試してみたり(笑)。あとは最近、アロマキャンドルを灯すことを始めました。香りもあって、落ち着く気がしますね。灯していると、空間がすごく活性化されて、空気もイキイキしている気がします。――楽曲ではラブソングを歌うこともありますが、そういうときは理想の人を思い浮かべていますか。また、高野さんの理想的な女性像はどのようなタイプでしょうか。作詞をするときは、自分が行動に移すかどうかではなく、自分がしないようなことも入れています。ストーリーを作ってから歌詞を書くので、あくまで架空寄りですね。そして僕自身の理想の女性像というと、かわいらしくて、愛嬌がある方です。かわいくなろうと努力をしている女性なら、より魅力的。あとは、リアクションが豊かだと良いですね。――では、かわいいだけ、だとダメなんですね?いや、“かわいい”はすべてを補います(笑)。――高野さんは歌やダンスをされているので、普段から健康面や体力作りには気をつけていたりするのでしょうか。それほど気をつけていることはないのですが、食事はだいたい三食とるようにしています。お腹がすいていなくても、一応夜ご飯はちゃんと食べようと……でも、僕正直なところ、お腹が空いていることがないな(笑)。言いたかったことは、バランスよく栄養素をとるといいということ。僕も足りない栄養をサプリメントなどから補うこともあるんですが、実際の食材にはかなわないので、毎食ちゃんと食べて栄養をとるようにしていますね。――運動もされていますか?僕は筋肉がつきやすい体なので、むしろ逆に筋トレしないようにしているんです。首や肩にすぐ筋肉がついてゴツゴツするから。でも、健康でいるには、運動したほうがいい方ももいらっしゃるでしょうし、人それぞれの体調や環境に合わせて運動するといいと思いますね。あまり食欲がない方だと、運動して汗をかいたほうがお腹が空くので、少し体を動かしてみるのも、健康体につながると思います。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。音楽活動では、音楽番組に出演して、世の中にもっと浸透していきたいですね。やっぱり、目標の番組は「紅白歌合戦」です。Dream5と刀剣男士と、いままで2回紅白に出演させてもらっていますが、どちらも作品の力を借りて出ているので、今度は僕自身の作品で出てみたいですね。俳優としては、朝ドラと大河ドラマの出演を目指しています。実家にいるときや両親も朝ドラと大河ドラマを観ていますし、これまで観る側として楽しませていただいた恩返しとして、今度は出演する側として、作品を届けていくことができたらと思っています。取材後記歌に芝居にご活躍中の高野洸さん。ananwebの取材はまだ夏の日差しを感じる午後に、撮影では瞳がキラリと輝く、きりりとした姿やほんのり微笑した表情も見せていただき、インタビューもテキパキと応えてくださいました。そんな高野さんのニューシングルと映像作品をみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・山本嵩取材、文・かわむらあみり高野洸(たかの あきら)PROFILE1997年7月22日、福岡県生まれ。177cm。特技はダンス、ゲーム。2009年、『天才てれびくんMAX』(NHK Eテレ)での全国オーディションから生まれた、5人組のボーカル&ダンスユニット「Dream5」のメンバーとなる。11月にはシングル「I don‘t obey~僕らのプライド~」でCDデビュー。2014年発売のシングル「ダン・ダン ドゥビ・ズバー!」でオリコンウィークリー1位を獲得。妖怪ウォッチ「ようかい体操第一」エンディングテーマは、全国のお子さんたちに大人気となり、話題を呼びました。同年末には、レコード大賞や紅白歌合戦にも出演し、2016年、Dream5としての活動を終了。同年に映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー』や、ミュージカル「ROCK MUSICAL BLEACH」~もうひとつの地上~ の主演を務める他、2017年にはミュージカル『刀剣乱舞』 ~つはものどもがゆめのあと~ で膝丸役として出演するなど、俳優としても活動。2019年1月、1stシングルCD「LOVE STORY」でソロデビュー。2020年11月には、4枚目のシングルCDがオリコンウィークリーランキング5位を獲得するなど、ソロアーティストとしての活動も行っている。2021年8月18日に、5枚目のシングル「Vacances(ヴァカンス)』をリリース。10月27日に、ライブ映像作品「高野洸 1 st Live Tour “ENTER”」のDVD&Blu-rayを発売。InformationNew Release「Vacances」(収録曲)01.サマービーツ02.tiny lady03.Memory of Sunset2021年8月18日発売*収録曲はA盤とB盤は共通。<CD+DVD (スマプラ対応)A盤>AVCD-61095/B¥2,090(税込)<DVD内容>01.サマービーツ 〜高野洸 1st Live Tour “ENTER”〜 [Live Video]02.tiny lady [Music Video]03.tiny lady [Music Video Making]初回封入特典(全形態共通) :1.トレーディングカード(全6種類中1種ランダム封入)2.特典応募シリアル<CD+DVD (スマプラ対応)B盤>AVCD-61096/B¥2,090(税込)<CD (スマプラ対応)C盤>AVCD-61097¥1,320(税込)New Release「高野洸 1st Live Tour “ENTER”」(収録曲)01.Can’t Keep it Cool02.TOO GOOD03.WARNING04.MY CREATURE05.Untouchable love06.Shining warm07.In the shade08.You’ve Broken My Heart09.モノクロページ10.Way-Oh!!11.COLOR CLAPS12.Poppin’ Groovin’13.Love To You14.BURNING UP15.New DirectionENCOREEN01.Our HappinessEN02.Always on your sideEN03.サマービーツ<特典映像>1st Live Tour “ENTER” Behind The Scenes*収録曲、特典映像は全形態共通。2021年10月27日発売(通常盤)・DVD:AVBD-27430・Blu-ray:AVXD-27431¥6,050(税込)<封入特典>・ポストカード2枚封入(初回生産限定盤)・DVD:AVBD-27428・Blu-ray:AVXD-27429¥8,360(税込)<仕様>・豪華三方背BOX仕様、・ピクチャーレーベル<封入特典>・PHOTOBOOK・レプリカスタッフパス・大判カード(2枚)・バックステージパス風ステッカー写真・山本嵩 取材、文・かわむらあみり
2021年10月01日【音楽通信】第90回目に登場するのは、現在、デビュー25周年というアニバーサリイヤーを迎えている、シンガーソングライターの山崎まさよしさん!アーティストとしての原点は地元のライブハウス【音楽通信】vol. 901995年にデビューし、現在デビュー25周年というアニバーサリーイヤーを迎えている、シンガーソングライターの山崎まさよしさん。音楽活動はもちろんのこと、主演映画『月とキャベツ』(1997年公開)の主題歌「One more time, One more chance」がロングヒットし、近年も主演映画『影踏み』(2019年公開)で俳優としても活躍するなど、さまざまな顔をわたしたちに届けてくれています。そんな山崎さんが、2021年9月22日に、メモリアルとなるニューアルバム『STEREO 3』をリリースされるということで、音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。――おさらいとして、まず山崎さんがデビューする前によく聴いていたアーティストから教えてください。たくさんいますが、基本的にはシンガーソングライターで、楽器を演奏する人の音楽をよく聴いていました。(イギリスのミュージシャン)エリック・クラプトンであったり、(アメリカのシンガーソングライター)スティーヴィー・ワンダーであったり。他にもギタリストの曲や洋楽を聴くことが多かったですね。でもやっぱりザ・ビートルズ、なかでもポール・マッカートニーにすごく憧れていました。僕が洋楽を聴き始めたのは、地元の山口県に住んでいた頃です。アメリカのヒットチャートを紹介する『ベストヒットUSA』(テレビ朝日系 1981年〜1989年/2003年より復活し現在BS朝日で毎週金曜 深夜0時から放送中)という、小林克也さんが司会をされている音楽番組のチャートをよく観ていて、興味を持ちました。――いつ頃から楽器に触れ、シンガーソングライターを目指すようになったのですか。中学3年生ぐらいのときにアコースティックギターを買って、ひとりで弾いていたのですが、高校生になると先輩とバンドを組んでドラムを担当しました。でも結局、高校3年生のときにみんなバンドを卒業していって、ドラムを叩くことがままならなくなって、ひとりでできる音楽はないかと考えるようになりました。その頃、地元に「Boogie House」というライブハウスがあって、そこに「歌わせてくれないか」と交渉しに行ったんです。ほぼブルース専門のライブハウスだったので、ブルースのアナログ盤などが置いてあって、週に1度通うようになりました。マスターと一緒に演奏したりカバーをやったりして、ライブ活動を続けていくなかで、シンガーソングライターを目指すようになりました。――その後、1995年9月にシングル「月明かりに照らされて」でメジャーデビューされてから、昨年デビュー25周年を迎え現在25周年イヤーですね。これまでを振り返ってみての心境をお聞かせください。あっという間だけれど、やっぱり、いろいろなことはありましたね。この歳になると、1年がすごくはやく感じます。デビュー10年目ぐらいのときは「まだ10年か」と思っていたら、知らない間に四半世紀になっていたという感じですね。音楽活動としては、ツアーをやって、制作をやっての繰り返しです。そのときどきでこんなことがあった、あんなことがあったという記憶はありますが、現場で僕についてくれているマネージャーが変わっていったことも、25年の歴史を感じさせますね。25周年記念の「STEREO」シリーズ最新作――2021年9月22日にニューアルバム『STEREO 3』をリリースされます。仕上がってみての手応えはいかがでしょうか。実は、本当に発売延期になるんちゃうかな、というくらい手こずりました(苦笑)。アルバムの制作時は弾き語りのツアーに入っていたので、なかなか制作のほうにベクトルがいかなくて。あと体力的なものもありますし、切り替えが難しいモードのなかでやっと完成できて、良かったです。――今回「3」となっていますが、1996年11月発売の『STEREO』、1997年11月発売の『STEREO 2』から、約24年ぶりの作品を「3」としたのは、特別な意味があるのですか。最初に『STEREO』を出した頃の他のフルアルバムには、『アレルギーの特効薬』(1996年発表)や『ドミノ』(1998年発表)などもあるんですが、これらはサウンドプロデュースも楽器演奏も含めて、他者との関わりで作っているものなんです。この『STEREO』は、全部の演奏を自分でやっているという意味において、『STEREO』『STEREO 2』とともに「プライベートアルバム」という位置づけで制作しているなかでの、今回の『STEREO 3』です。ただ、以前出した『SHEEP』(1999年発表)が、そういう意味では『STEREO 3』だったんですが(苦笑)。だから最近は、ほぼ「STEREO」シリーズなんですよ。今回、タイトルを考えたときに「『STEREO3』ってどうですか?」という提案があって、タイトルを曲からはつけづらいので、それでいいかと。けっして面倒くさかったわけではないです(笑)。25周年という記念的な部分もありますし、「STEREO」シリーズがすでにあるということをファンの方もご存知なので、「3」ならなかなか購買意欲をそそられるのではないかと思います。――収録曲についてもうかがいます。2曲目「Hello ヘヴン」は忌野清志郎さんの声も聴こえてくる楽曲ですが、どのようにこの曲が生まれたのでしょうか。「愛し合ってるかい?」という、ライブで清志郎さんが「スローバラード」(清志郎さんがいたバンドのRCサクセションの名曲)の前に、きまってお客さんをあおる言葉が、この曲の「Boys and Girls」と歌う裏で、入っています。さらに最初の「うかうかしてると見失う」という歌詞の部分では、僕が清志郎さんのものまねをして歌っています。なんでそうなったかというと、「ヘヴン」とは「天国」のこと。清志郎さんが亡くなられてからずいぶん経ちますが、そんな天国にいる清志郎さんに歌っている曲が1曲あればいいなと。それは、僕が所属しているオフィスオーガスタ創始者の森川欣信さん(現・最高顧問)が提案してくれて、清志郎さんの遺族の方に許可をとって、この曲で声を使わせてもらっているんです。――もともと山崎さんは清志郎さんがお好きですよね。はい、高校時代にドラムをやっていたときは、RCサクセションのコピーバンドだったんですよ。プロになってからは、少しだけ、清志郎さんと交流もありました。最初は、この曲全部「清志郎さんのものまねで歌わないか?」と言われたんですが、「それは無理」と(苦笑)。この一部分だけだったら、いけるかもと、「Hello ヘヴン」が完成しました。――4曲目「霧雨」は少しメランコリックな曲です。ラストに鐘が鳴り、雨の音も印象的です。それも森川さんの案ですね(笑)。最初は、雨音が入っていなかったんです。でも最後に鐘の音を入れて、不安をあおるようにしたいとか、そういうアイデアはいっぱい持っている方なんですよ。――制作されるときは、いつも話し合いながら作るんですか?いや、今回は「レコーディングやるから一緒にやらない?」って、僕から誘ったんです。昔は、制作サイドに5人ぐらい人がいて、やいのやいの言いながら制作していました。でも面倒くさくなって、いつからか「STEREO」シリーズのようにひとりで作るようになってしまったんですよ。ただ、よく考えたら、いろいろな人と関わって、切磋琢磨しながら制作していくのもいいんじゃないかなと。とくにいまはコロナ禍で、こういった状況下でひとりでレコーディングしたら、より独りよがりになってしまうのが、ちょっと嫌だったのかもしれません。それで、もともとRCサクセションのディレクターをやっていた経験もある、森川さんをお呼びしました。――では逆に、コロナ禍じゃなかったら、人を立てるとは思わなかったのでしょうか。そうかもしれないですね。いまはないじゃないですか、顔をつきあわせて、ちょっとムカッとしながらも話し合うとか(笑)。全部僕の意見を肯定するわけではなく、何かを否定されることもあるので。例えば、歌詞についての添削をされたりすると、若いときなんてそれだけですごくムカッとしていたんですよね。でも、こういうときだからこそ、他人の意見を生で聞きたくなるんです。おかげで、今回はアレンジも面白くなりました。――8曲目「泣き顔100%」は小粋で弾むような楽曲で、山崎さんの声の後ろに、子どもの声が聴こえますね。これ、娘です(笑)。子どもが楽曲に参加するのは初めてなんですが、家の地下をスタジオにしていて、今作を作っていて。ちょうどリビングで、娘がひとりで留守番していたので、「ちょっと来て」って呼んで作りました(笑)。子どもが泣くときって、悲しみ100%なんです、絶望しているんですよ、世の中に。涙を流して、全力で泣いちゃうんですよね。だから、そういう歌を作ろうかなと。でも、子どもが泣いているところを見るのも嫌いじゃないんですよ、いつも可愛いなあって見てしまうんです。だから、そんな歌にしてみました。――娘さんは、おいくつぐらいなんですか。幼稚園の年長だから、6歳になります。長男は、小学校4年生なので、もう娘ほどは全力で泣かないですね。どちらにしても、この曲には、女の子の声のほうが良いと思って、娘が参加しました。――アルバムのリード曲となる6曲目「サイドストーリー」は、9月15日に先行配信されていますね。この曲は最初、誰かに提供しようと思って作った曲でした。でもそれをやめて、自分のアルバムに入れて。「ENEOS EneKey 2周年キャンペーンソング」になりましたが、僕が25周年でもあるので、そこも意識して書いていますね。――歌詞ですと「どうだい?そろそろまた旅に出ないか」と、前を向いて歩いていく力強さを感じました。大人になったら、冒険しなくなるじゃないですか。仕事でツアーに出て冒険のようなことが実現していてありがたいんですが、家にずっといてくれと言われたら、僕はインドア派なのでずっと家にいられるんです。でも、たまに外に出るのも必要なのかもと。歌詞にある旅というのは、人生の旅なのかもしれないし、実際に外へ出る旅なのかもしれないし、いつもとは違う方面のことに踏み出すということかもしれないし、情報を探ることかもしれない。人それぞれにとっての、旅に出ないか、という意味がありますね。これからも、楽しく探究して、挑戦していきたい――お話は変わりますが、山崎さんはDIYがお好きなことで知られていますが、ご自身のYouTubeチャンネルでも毎週金曜日にDIYシリーズ「craftpapa」を配信されて本格的ですね。けっこう、大変なんですよ(笑)。月に1回、2作品ぐらい作るんです。朝9時から夜8時まで、1日がかり。ちなみに、DIY好きが高じてできた歌が、アルバムの7曲目「斉藤さん」です(笑)。もともと何かを作ることが好きなんですよね。DIYをやり始めたきっかけは、東日本大震災のとき。東京も揺れましたが、僕はそのときツアー中だったんですが、帰ってくると置いていたギターが何本も倒れていました。それで全部のギターを立てかけられるようにと、ギタースタンドを作ったあたりが、最初だったと思います。あとは結婚して、妻からも「棚がここにほしい」というオーダーがあって、なかなかジャストサイズのものがないときに、「だったら作ったらいいんじゃないか」となって。近くにホームセンターや木材を売ってくれるお店を見つけたので、10年ぐらい前からDIYをやっていますね。いまはうちに工具もありますし、丸ノコもふたつありますし、溶接機もありますし、普通の家にないものが揃っていますよ。――今年はバラエティ番組『有吉ゼミ』(日本テレビ系 毎週月曜19時)の人気企画「八王子リホーム」にご出演され、ヒロミさん、SixTONESのジェシーさんともDIYをしていましたが、すでに趣味の域を超えて、プロのような知識と仕上がりでしたね。たぶんみなさんがけっこう引くぐらい、普段からDIYをやっていますからね(笑)。ヒロミさんとジェシーさんが作ってくれたベンチも良かったですし、ヒロミさんには「(事業者向け工業用間接資材の通信販売の)モノタロウのユーザーは、俺と山ちゃんぐらい」と言われましたね(笑)。けっこう、嫌いじゃないんですよね、自分で作るのが。家にも作業場がありますし、車庫の中で狭いスペースですが、そこで何かを作っています。――ではDIY以外だと、おうちではお子さんと遊んだり?そうですね、夏だとプールをやったりと、子どもと遊んでいます。「プールやりたい!」といわれて用意して、実際に入って遊ぶのは子どもですが、家庭用プールに空気を入れて膨らませて水を入れるといった“作業”が僕は好きなんですよ。遊んだら水を抜いてたたむという作業も好きで。あと、卓球台もあるんですが、子どもが「卓球やりたい!」と言ったら、卓球台を設営するんです。そういう作業が、好きなんですよ(笑)。――作る作業というと、お料理もお好きですか?やりますね。妻からも「ごはん作って」と言われたら、晩ごはんを作ったりして、挑戦ですよね、毎回。味付けとか、いろいろ試してみようかな、と。揚げ出し豆腐を作ったことがないから、今日は作ってみようかな、とか。毎年、僕が梅干しもつけていますし、妻は家庭菜園をやっていますね。――素敵なご家庭ですね。いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。僕の活動はデビューしたときから決まっていて、制作と、ライブパフォーマンスですよね。だから、そのやり方は変わらないですし、体力が続く限りは、ずっとやっていくと思います。それとともに、まだ欲求があるんですよ、何かを作りたいという欲求が。これをやろうかな、試してみようかな、というもの。それが料理にせよ、DIYにせよ、ギターを弾くことにせよ、歌にせよ、自分自身のスキルを上げていきたいんです。歳を重ねるごとにできなくなってくることもあるかもしれないですが、上手いやり方を見つけていきたい。力を抜きながらも楽しめて、また探究もできる、ということにこれからも挑戦していきたいと思っています。取材後記1995年のデビューから、25年間、わたしたちの心に響く歌声を届けてくれている、山崎まさよしさん。ananwebの取材では、時に穏やかな笑顔を見せていただきながら、和やかに取材を進めることができました。これからも音楽活動や俳優業など、ご活躍が楽しみな山崎さんのメモリアルアルバム『STEREO 3』をみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・山本嵩取材、文・かわむらあみりヘアメイク・島徹郎(juice)スタイリスト・宮崎まどかプリントシャツ¥20,680(RAGA MAN / HOLLYWOOD RANCH MARKET)、カーゴパンツ¥14,300(REELL / HOLLYWOOD RANCH MARKET)、バングル¥5,500(FACTOTUM / FACTOTUM LAB STORE)ほか スタイリスト私物。<SHOP問合せ先>HOLLYWOOD RANCH MARKET〒150-0033 東京都渋谷区猿楽町 28-17Tel・03-3463-5668/FACTOTUM LAB STORE〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西2-17-16 代官山TKビル1F Tel・03-5428-3434山崎まさよしPROFILE1971年12月23日、滋賀県生まれ山口県育ち。1995年にシングル「月明かりに照らされて」でデビュー。 1997年公開の主演映画『月とキャベツ』の主題歌「One more time, One more chance」がロングヒットし、ブレイク。精力的な全国ツアーを行ってきたほか、全国各地のフェスやイベントへの出演、ミュージシャンとしてのセッション参加なども数多く、音楽ファンのみならず多方面から支持を得ている。2020年9月25日にデビュー25周年を迎え、アニバーサリーイヤーの締めくくりとなる2021年9月22日に、メモリアルアルバム『STEREO 3』をリリースする。InformationNew Release『STEREO 3』(収録曲)01.Prelude02.Hello ヘヴン03.Flame Sign04.霧雨05.虹のつづき06.サイドストーリー07.斉藤さん08.泣き顔100%09.温かい手10.Updraft2021年9月22日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)UPCH-20593(CD)¥3,300(税別)(完全生産限定盤)PDCN-1928(CD+プラモデル)¥7,700(税別)※プラモデル全長約100mm、スペシャルBOX【縦244mm 横190.5mm高さ48.5mm※若干の個体差が発生する可能性があります。】に同梱。写真・山本嵩 取材、文・かわむらあみり
2021年09月21日【音楽通信】第89回目に登場するのは、2019年のオーディションで選ばれて2021年9月にメジャーデビューする、個性豊かな6人組ダンス&ボーカルグループ、WATWING(ワトウィン)のみなさん!ダンス&ボーカルグループのオーディションで結成写真左から、鈴木曉、古幡亮、髙橋颯、桑山隆太、福澤希空、八村倫太郎。【音楽通信】vol.892019年に結成された、髙橋颯(たかはしふう)さん、鈴木曉(すずきあさひ)さん、桑山隆太(くわやまりゅうた)さん、福澤希空(ふくざわのあ)さん、古幡亮(ふるはたりょう)さん、八村倫太郎(はちむらりんたろう)さんからなる、男性ダンス&ボーカルグループのWATWING。2020年1月にインディーズデビューし、これまで4作のデジタルシングルと2枚のEPをリリースしています。個性豊かな6人のメンバーが揃い、日々歌とダンスに磨きをかけるなか、2021年9月22日に、いよいよEP『Take off,』でメジャーデビューされるということで、お話をうかがいました。髙橋颯。1998年5月8日生まれ。172cm。趣味はピアノ、ギター、ドラム。――ananweb初登場ということで、まずは自己紹介から、お願いします。古幡古幡亮です。特技はダンスです。最近は、環境問題にも関心があります。桑山桑山隆太です。最近は、レゴを作ったり、ピアノを弾いたりしていますね。ピアノは3歳からやっていて10歳で1度やめて、いまもう1度やりなおしています。髙橋髙橋颯です。いまはミュージカル『ジェイミー』(2021年8月8日〜9月26日)に出演(取材時)しています。福澤福澤希空です。最近、昔購入した『ウォーリーをさがせ!』という本を久しぶりに見たら、一瞬でウォーリーを見つけることができました。鈴木鈴木曉です。最近、親指だけで腕立て伏せができることを発見しました。他のメンバーはできなかったので、自信満々で、特技だと言うことにしました(笑)。鈴木曉。1998年2月15日生まれ。180cm。趣味は曲作り、筆で文字を書くこと。八村八村倫太郎です。グループでは、メンバーのトークをまわしたり、制作に携わらせてもらったりしています。――WATWINGは「Star Boys Audition」により2019年に結成され、2020年1月にインディーズデビューされています。それまで個人で活動されていた方もいますが、あらためてグループ結成のいきさつを教えてください。福澤もともと小5からダンスをやっていたので、ダンスを活かしたいと思って、できることはないかと探したらこの「Star Boys Audition」があって、受けました。――もともとみなさん同じ事務所に所属されていたわけではないですよね?古幡そうですね。僕は特技のダンスを仕事にしたくて探していたけどなくて。この「Star Boys Audition」は、パフォーマンスチームのs**t kingz(シットキングス)のNOPPOさんがフリをつけて世界的に発信していくというコンセプトだったので、これはぜひやりたいと思って、応募したんです。桑山隆太。2004年1月27日生まれ。174cm。趣味はピアノ、ソフトテニス。八村こうやってそれぞれの決意で6人が集まりました。全員出身地もバラバラで、ちなみに僕は神奈川県出身です。鈴木僕は宮城県だし。みんな見事にかぶっていないよね。福澤愛知県出身です。髙橋僕は埼玉県です。桑山東京都です。古幡長野県です。鈴木……もう、これはWATWINGの特技と言っていいんじゃない?髙橋え?出身地が違うこと?福澤それ、特技なのかな……。八村特徴だね(笑)。古幡ただ、関西出身の人がひとりもいなくて。ツッコミがいないというのが、逆にWATWINGの面白さです。髙橋(鈴木)暁が、最近はひとりひとりとコラボして、このチームにおけるツッコミ役をやってくれています。お笑いのエッセンスが加わるといいな(笑)。鈴木がんばっていきたいですね(笑)。福澤希空。2004年2月22日生まれ。173cm。趣味はダンス、ゲーム。――ここでおひとりずつ、隣のメンバーの「ここがスゴイ!」という長所を教えてください。古幡(桑山)隆太は、気配りがすごくできます。メンバー同士はもちろん、メンバー以外の方にも、そして対バンライブのときも他の出演者のファンの方々の名前を覚えてMCに入れたりもしていて。スケールが広くて、優しいところがスゴイところですね。桑山なんか鼻の下が伸びちゃいますね(笑)。(髙橋)颯は、ギャップを感じるところがスゴイ。普段は、年下の僕や(福澤)希空にも甘えてくれるときもあるんですが、いざステージに立つと別人のように、一気に「WATWING 髙橋颯」になる。切り替えもスゴイと思います。髙橋ありがとうございます(笑)。(福澤)希空は、ずっと元気で、我が道を進んで、すごくポジティブなエネルギーで居続けているところが、スゴイと思いますね。希空の場合は、目を見ると楽しそうにしているときも、心のなかでWATWINGへの思いがしっかりしているのを感じられて、素晴らしいと思います。福澤鈴木くんは、たぶんWATWINGのなかで、一番元気。テンションが高いので、ダンスの練習をして踊って疲れていても、休憩のときもすごくエネルギーを使うんですよ、全然休まない(笑)。古幡亮。1997年11月8日生まれ。174cm。趣味はダンス、海外旅行、料理。鈴木ちょっと、めんどくさいと思われてないかな(笑)!?福澤たまにそのテンションについていけないこともありますが(笑)、ボケてもその上を超えてくるんですよ、いつも。そこがまた、いいなって思うんです。そういうメンバーがひとりぐらいいてもいいなって。鈴木(八村)倫太郎はすごくオールマイティで、僕のこともカバーしてくれて、僕より年下なのにしっかりしていて、毎日勉強になります。それで、いい奴なんです……でも、あんまりホメると調子に乗るので、このぐらいに(笑)。八村(古幡)亮のスゴイところは、悩んでから行動に起こして実際に打破しようとする人は少ないと思うんですが、亮はしっかりとアクションできます。ひとりでできることじゃないにしても、他の人に頼ったりして、なんとかそこを乗り越えようとするから、見習うことが多くて、それが素敵ですね。古幡どうもありがとう(笑)!八村倫太郎。1999年7月28日生まれ。178cm。趣味はクランプダンス、料理、曲作り。――みなさんはプロになる前によく聴いていた楽曲や憧れのアーティストの方はいますか。古幡僕がいまこの活動をやる原点は、BIGBANGの方々で、そのなかでもG-DRAGON (ジードラゴン)さん、SOL (ソル)さんが好きなんです。アーティスト性がすごくかっこいいなと、自分にもっと磨きをかけたいと刺激をもらっている存在ですね。髙橋(古幡)亮はものすごくファンなんですよ。桑山僕はこの活動を始める前は、BTSのみなさんを中心としたK-POPに憧れていました。でもWATWINGに入ってからは、みんなの影響も受けるようになって。WATWINGとしては、自分たちのオリジナルをどんどん作って、みなさんから僕らを目標にしたいと思われるグループになりたいですね。八村(髙橋)颯や僕は、洋楽がすごく大好きで。メンバーそれぞれルーツがいっぱいあるところから始まって、この世界に入って音楽を始めたから、お互いに詳しい音楽などをシェアし合っています。それをWATWINGに落とし込めないかなと探したり。そうやって、WATWINGというひとつのジャンルができたらいいなと思っています。鈴木だから、みんなで音楽の話をするのは楽しいですね。メジャーデビュー作はこれから続く旅の始まり――2021年9月22日に1stEP『Take off,』でメジャーデビューされます。現在のお気持ちをお聞かせください。八村WATWINGのファンの方々を「Windy」と呼んでいるのですが、Windyのみなさんに感謝している気持ちが大きいんです。メジャーという新しいステージを大空ととらえて、そこをWATWINGという翼で羽ばたいていくことになったのも、みなさんからの大きな愛があるからこそで、とても感謝しています。アルバムタイトルの「Take off,」という言葉の最後にカンマをつけているのは、これから続いていく旅の始まり、という決意を秘めていて、今作の楽曲もひとつずつの魅力があります。メジャー1作目としては、十分な手応えを感じていますね。古幡このEPには5曲収録されているんですが、どの曲も僕らがアーティストとして目指すべきものを常に追求しています。いまもゴールは完璧に見えていないなかで、色とりどりの作品が揃っています。――収録曲についてもうかがいます。EPのリード曲となる3曲目「HELLO WORLD」はスケール感のあるキャッチーな楽曲ですね。桑山メロディを聴いたときにもう、忘れられないような楽曲だと感じました。この曲の振り付けは、BTS「Butter」の振り付けに参加した世界的ダンスクルー「GANMI(ガンミ)」さんにやっていただいたんです。視覚的なキャッチーさを意識した振り付けで、踊っている僕たちも楽しくて、観ているWindyの方々も楽しく踊れるという、コンセプトになっています。歌詞に「取り合ってhand in hand」というフレーズがあるんですが、新しく僕たちを知ってくれた方にも、国境や言語は関係なく、音楽ひとつで人と人がつながろうという意味を込めて、今回この曲を完成させました。――「HELLO WORLD」のミュージックビデオ作品のみ、9月6日に先行発売されましたが、登坂淳一アナウンサーも出演する、ユーモアのある内容になっていますね。髙橋面白さや楽しさのあるものもやってみたいね、という話になって、この内容になりました。登坂さん演じるWATWINGのマネージャーが監督にプレゼンに行くところから始まるんですが、僕たちダンス&ボーカルグループなのに監督が勘違いして、不思議なミュージックビデオになっていくという。最後に向けて、徐々にかっこいいWATWINGになっていきます。古幡最後は本来のWATWINGを取り戻していくという内容で、制作の方々とも僕ら会議をしながら決めていきました。いまはきちっとパフォーマンスする完成形のミュージックビデオも多いなか、ありのままの僕らの楽しさやコミカルさも出ていて、新しいものになりました。――軽快でカッコいい2曲目「Sensation」に込めた思いも教えてください。鈴木この曲で、この音楽史上にセンセーションを巻き起こしたいという意味を込めて歌わせてもらいました。歌詞に注目してもらいたいのですが、WATWINGというグループ名にはWING=翼が入っているので、空や翼という言葉も歌詞にうまくはめられていて、僕たちらしい曲になっています。古幡曉がリスペクトしているFLATLINEというクリエーターの方に作っていただいた曲です。インディーズの頃からお世話になっている方なので、これまでの僕らのすべてを知り尽くしているからこそ、こんなWATWINGらしい歌詞とメロディができました。髙橋曲調も明るいですし、歌っていてもとっても楽しいんですよ。福澤歌詞では「翼 広げて Fly away」とあるところにミニフレーズがあるんですが、そういうところをファンの方と一緒に歌えることを楽しみにしています。――EPの最初、1曲目「Spark!!」は、どのようなイメージでみなさん歌っていますか。八村パワフルな曲ですが、僕たちあんまりサビをユニゾンで歌うことがないところ、この曲はユニゾンで歌っています。僕たちのエネルギッシュな一面を出せているんじゃないかな。この曲の振り付けは(古幡)亮が担当しています。古幡インディーズの頃から、WATWINGの曲は何曲か、僕が振り付けを担当しています。このメジャーデビュー作でも、ありがたいことに大切な作品のなかでこうして振り付けを担当させていただけるというのも、とても幸せです。鈴木今作では、2曲、振り付けをしてくれたよね。髙橋「Spark!!」と「HERO」の2曲を振り付けしてくれました。――「HERO」のミュージックビデオも、初回生産限定盤BのDVDに収録されています。八村はい。このミュージックビデオでは、素の僕らが出るようにと考えて作って、個々のキャラクターに合わせた衣装になっているんですよ。鈴木全員、大満足の出来でした。古幡「HERO」は、インディーズ時代の「Shooting Star」という曲でお世話になった監督に撮っていただきました。僕らと同世代の若い監督なのですが、以前からさらに進化して、かつ僕らの魅力を最大限に引き出してくださるプランを立ててくださって、最高の作品になっています。――クールなイメージの5曲目「Turn it up」はいかがですか。古幡まだ振り付けはされていないんですが、この曲だけダンスパートが入っていて、そこが気持ちいい曲です。福澤WATWINGの曲に、初めてこういうテイストの曲がきました。振り付けがどんなふうになるか楽しみです。八村この曲で、新しい僕たちの顔を見せることに挑戦した気持ちがあります。EPのラストにこの曲がくるので、聴いてくださった方が、これでWATWINGの魅力にトドメを刺されたと思ってほしいですね。髙橋僕ら、実はこういうテイストの曲も得意です。古幡レコーディングも楽しかったよね。桑山すごくフリーダムにレコーディングをやらせてくださいました。八村どうすれば音楽に対するグルーヴが出せるのか、イン・シンクやマイケル・ジャクソンといった素晴らしい人たちの歌い方をみんなで研究して、挑みました。髙橋僕はこの曲の歌に、パワフルなメッセージを込めました。僕たちときどき人狼ゲームをやるんですが、この曲を初めて聴いたときに、人狼ゲームのような狼と、誰もいない荒廃とした夜の雰囲気や力強さ、生命力を感じたんです。そこをすごくコミットしました。歌に苦労したので、そのぶんダンスで発散したいと思います。鈴木イントロで狼が鳴いとるもんね。古幡狼っぽく聴こえるやつね。――今後、「WATWING Major Debut EP『Take off,』リリース記念ワンマンライブ〜Departure〜」が、有観客で9月23日に東京・Veats Shibuya、26日に大阪・Live House ANIMAで開催されます。どのようなライブになりそうでしょうか。八村初めてこのEP『Take off,』の全5曲を披露できるので、ワクワクしています。最近、WATWINGとWindyのみなさんとのつながりがどんどん深くなっていることを感じています。髙橋そして、関西に初上陸します。古幡大阪のライブでは、きっと初めましての方もいると思うので、そこもまた新鮮でうれしいなって思っています。世界へ羽ばたくため東京ドームのライブを目指す――みなさんは「おうち時間」をどのようにお過ごしですか。古幡家ではけっこうゆっくりしていて、Netflixでアニメ『ワンピース』を観ていますね。昔からアニメや漫画にはあまり興味がなかったのですが、家にいる時間で名作を観るようになってから、楽しいです。桑山僕はピアノを弾いたり、レゴを作ったりしています。最近は、レゴでスター・ウォーズのヨーダを作りました。キットがあったので買ってみたら、見事にハマっちゃいましたね。それ以外は、日本の映画を観るのが好きで、最近だと『きみの瞳が問いかけている』や『糸』を観て泣きました。髙橋僕は、YouTubeを観ることが多いですね。例えば、きれいな部屋でいい感じのお兄さんが、顔は写っていないけれど、キャンバスに絵を描いている様子とか。朝に聴きたいBGMが流れているようなものとか。でも、一番はタイトル一覧を見るのが好きです。テレビ番組表の一覧とか。その作品を表す見出しをつい、目で追ってしまいます。福澤つい先日iPadが届いて、いまはまだゲームのアプリしか入っていないんです。でも、画面が大きいので、映画が観たいときにiPadで観てみたいと思います。鈴木僕は、いま曲作りが楽しいですね。ワンマンライブやリリースイベントが始まる前に流す、踊れるビートだけのメロディが入ってない音を作るのが好きで。昨年のライブでも、独学ですがパソコンの「ロジック・プロ」というフォーマットで自分で曲を作って、WATWINGで踊りました。自分で作った曲をみんなで踊れるのが楽しくて、これからも曲作りを続けていきたいと思っています。八村僕はひとり暮らしを始めたので、QOLを上げたくなって、まったく育てたことのない観葉植物を置いてみました。これまでインテリアに凝ったこともないのに、ちょっとレコードも買って置いてみて、部屋の雰囲気を上げたいなと。あとは料理をしています。ストレス解消にもなっていて、疲れていても料理したくなるときは、夜な夜な野菜炒めを作ったりしています。鈴木好みの味にできるから、自分で作ったほうがおいしいよね。八村そう、そう。メンバーと曲を作ったりもありますね。いまもアイデアがいっぱいあるので、またいつかそれを形にしたいと思っています。――楽曲ではラブソングを歌うこともあると思いますが、みなさんが魅力を感じる女性像はどのような方でしょうか。古幡やっぱり、波長が合うのに越したことがないかな。一緒にいて楽な人、居心地がいい人ですね。桑山魅力的なのは、自分の活動を理解して、応援してくれる人ですね。髙橋いいギャップを感じられるような人です。例えば、いつもはおろしている前髪をある日、ちょっと上げているとか、そういうことでもいいんです。普段とは違う一面を見せてくれる人ですね。福澤僕と一緒にいて、よく笑ってくれる子がいいです。それとよくしゃべる人も魅力ですね。鈴木僕は、何かをがんばって成し遂げようとしている人です。仕事をがんばっていたり、目標を持って努力していたりするといいですね。八村愛があれば、それがすべてです(笑)。自分にも、まわりにいる人たちにも、愛のある人が好きですね。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、メンバーを代表しておひとり、WATWINGとしての今後の抱負をお聞かせください。古幡まずは、東京ドームを目指していきたいです。これからどう進んでいくのかというところで、常にWATWINGを自分たちでも追求していきたい。この6人で、WATWINGというジャンルを作っていきたいと思っています。そのためにも、Windyの方たちとは変わらずに、そしてたくさんの人たちにも僕たちのことを知ってもらうために、どんどん魅力を磨いていこうと。世界へ羽ばたくために、まずは東京ドームでライブができるよう、がんばります!取材後記映えあるメジャーデビューのタイミングで、髙橋颯さん、鈴木曉さん、桑山隆太さん、福澤希空さん、古幡亮さん、八村倫太郎さんからなるWATWINGのメンバー全員が、ananwebに登場。取材中も、和気あいあいとした仲の良さを見せてくれました。そんなWATWINGのEPをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・山本嵩取材、文・かわむらあみりWATWINGPROFILE2019年「Star Boys Audition」により結成された、髙橋颯、鈴木曉、桑山隆太、福澤希空、古幡亮、八村倫太郎からなる、男性ダンス&ボーカルグループ。2020年1月、デジタルシングル「Only One Life」でインディーズデビュー。これまで4作のデジタルシングルと2枚のEPをリリース。2021年9月22日、EP『Take off,』でメジャーデビュー。「WATWING Major Debut EP『Take off,』リリース記念ワンマンライブ〜Departure〜」を9月23日に東京・Veats Shibuya、26日に大阪・Live House ANIMAで開催。2022年、初のZeppツアー<WATWING TOUR 2022>を4月23日に大阪・Zepp Osaka Bayside、24日に東京・Zepp DiverCity(TOKYO)で予定している。InformationNew Release『Take off,』(収録曲)01.Spark!!02. Sensation03. HELLO WORLD04. HERO05. Turn it up2021年9月22日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)TFCC-86781(CD)¥2,200(税込)*初回プレス特典:メンバー撮影ランダムトレーディングカード(通常盤ver.)※全6種のうちランダムで1種封入+WATWING Zepp TOUR 2022プレミアムエリアチケット最速先行シリアルナンバー封入(初回生産分のみ)。(初回生産限定盤A)TFCC-86777~86778(CD+DVD)¥3,500(税込)<初回プレス特典>スペシャル紙ジャケット仕様、メンバー撮影ランダムトレーディングカード(初回生産限定盤Aver.)※全6種のうちランダムで1種封入+WATWING Zepp TOUR 2022プレミアムエリアチケット最速先行シリアルナンバー封入。<DVD収録内容>「HELLO WORLD」Music Video & Music Video Making映像収録。(初回生産限定盤B)TFCC-86779~86780(CD+DVD)¥3,500(税込)<初回プレス特典>スペシャル紙ジャケット仕様、メンバー撮影ランダムトレーディングカード(初回生産限定盤Bver.)※全6種のうちランダムで1種封入+WATWING Zepp TOUR 2022プレミアムエリアチケット最速先行シリアルナンバー封入。<DVD収録内容>「HERO」Music Video& Music Video Making映像収録写真・山本嵩 取材、文・かわむらあみり
2021年09月21日【音楽通信】第88回目に登場するのは、これまでに8度のワールドツアーを成功させ、音楽活動以外にも俳優としてハリウッドデビューを果たし、ワールドワイドに活躍している、世界的ギタリストのMIYAVIさん!バンドの花形であるギターを選んだ理由【音楽通信】vol.88エレクトリックギターをピックを使わずにすべて指で弾く、独自の“スラップ奏法”でギタリストとして世界中から注目を集め、これまでに約30か国 350公演以上のライブとともに、8度のワールドツアーを成功させている、MIYAVIさん。音楽活動の一方では、アンジェリーナ・ジョリー監督の映画『不屈の男 アンブロークン』(2016年日本公開)で俳優としてハリウッドデビューを果たし、2017年には日本人として初めてUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の大使に就任。そんなさまざまなかたちでワールドワイドに活躍するMIYAVIさんが、2021年9月15日にニューアルバム『Imaginary』をリリースされるということで、お話をうかがいました。ーーおさらいとして、まずギターを始めたきっかけから教えてください。もともと小学生の頃からサッカーをやっていて、プロを目指していました。大阪にあるプロチームのジュニアユースに入ったのですが、14歳ぐらいのときに怪我で挫折して。そこから地元の友人たちとバンドでもやるか、となって。ーーいろいろと楽器はありますが、なぜギターだったのでしょうか。やっぱギターはバンドの花形、ある種ロックの象徴。バンドといったらギターだろう! と単純な思考で選びました。ーーユースチームに入るほどの才能もあり、そこからさらにこうして音楽活動などでもご活躍されていてすごいですね。サッカーのほうはそんな才能ないですし、とはいえ音楽のほうも才能ではなく、これは僕に限らずですが、一つの物事にどれだけの熱量と時間をかけているか、ということだと思うんです。サッカーでは僕よりも才能のあるプレーヤーはいましたし、だから僕はキープアップできなかった。そういう意味では、その挫折で得たものを音楽活動に活かしている部分はあると思います。ーー当時よく聴いていたアーティストの音楽はなんでしょうか。(アメリカのブルースギタリスト)スティーヴィー・レイ・ヴォーンですね。他とは違う、一度音を聴いたら「あっ、スティーヴィーだ!」とわかる音の強さと、唯一無二の存在感が好きでした。(エリック)クラプトンや、ジミ・ヘンドリックスも好きでしたね。アルバムを聴いて「未来を感じてほしい」ーーMIYAVIさんは9月14日が40歳のお誕生日ということで、おめでとうございます。ありがとうございます。ーーお誕生日の翌日、2021年9月15日に13枚目のアルバム『Imaginary』をリリースされるということで、30代最後の作品となりますね。仕上がった手応えから教えてください。実は、このアルバムはもともと去年4月に発表した前作『Holy Nights』に続けてすぐリリースしようと思っていた作品なんですが、コロナでツアーなどが延期になり、やっぱり自分にとっては、こういった音楽作品ってライヴでオーディエンスの皆に届けてはじめて完成する部分もあるので、改めて2021年に発表することになりました。前作は『世界に目を向けると世界は燃えている、この時代で何を歌えるのか、歌うべきなのか』というテーマで制作して、今作では『その後の世界、どんどん価値観がシフトしていく中で僕たちの新しい在り方、存在意義』をテーマに作りました。今、このコロナ禍でこの時代に生きていて思うことは、『音楽家として何ができるのか』僕たち音楽家は少なからず影響力を持っていて、その力を持って作品を通じて、救える人がいるとしたら、少しでも未来への希望を持てるものを作りたい。僕たちの持つ想像力や創造性、これこそが未来へのキーなんじゃないかと。『Imaginary』というタイトルをつけたのも、未来を指し示すためです。ーー昨年リリースするつもりだったということは、制作期間は長かったのですか。はい、昨年の段階で作り上げていました。でもリリースするタイミングを延ばすとなって、そのまま一度冷凍保存したんです。やっぱり時代が変わると、言いたいことの温度感も変わってくるので。そして今年の2月ぐらいから制作を再開しました。ーー収録曲についてもいくつかうかがいます。2曲目「Imaginary (feat. Kimbra)」は9月1日に先行配信された楽曲で、アルバムのタイトル曲でもあります。もっとも今作を表す楽曲ということになるのでしょうか。そうですね。Imaginary、想像力、イマジネーション、これこそが、僕たちの未来を切り拓いていくうえでの武器だと強く感じています。1曲目「New Gravity」も、アルバムのタイトルにしようかなと思っていたくらいの曲で。新しい重力、既存のルールや在り方、自分たちが作ってきたもの自体が自分たちを縛り付ける重力そのものだったんじゃないかと。そこから解き放たれて、新しい価値観、新しい世界の中で、僕たちがどう飛べるのか、を歌っています。ーー6曲目「Hush Hush (feat. Kang Daniel)」は韓国の男性アイドルグループのWanna Oneの元メンバーである、韓国の歌手、カン・ダニエルさんとの楽曲ですね。MIYAVIさんが、コラボのお声をかけたということですか。そうです。コロナ禍での制作期間だったので、直接会わずにリモートで制作していって。会わずしても、こうしてつながって、完成できたのもご縁だと思います。自分だけでは出せない表現をしてくれたと思いますし、曲の世界観が広がったので、すごくうれしいです。ーー4曲目「Smells Like Teen Spirit」はニルヴァーナのカバー曲です。7曲目にもカバー曲はありますが、このニルヴァーナの曲を選んだ理由はなんでしょうか。カラオケで得意なんで……というのは冗談ですが(笑)、やっぱり歴史を変えた楽曲ですから。同じギターミュージックとして、新しい解釈で挑ませていただきました。7曲目「Youth Of the Nation (feat. Troi Irons) 」(P.O.D.の「Youth of the Nation」カバー)は、ちょうどアメリカで学生運動が盛んになっていた時期に作りました。やはりいつの時代も未来を作るのは、若い世代。これもオリジナルと全然ニュアンスが違うし伝え方は違うけれど、現状を打破する、熱量の大きさという意味では負けていない曲になっています。ーーすでにアルバムから先行配信された楽曲もありますし、みなさんの反響も楽しみですね。そうですね、やっぱり、自信はありますよね。歌うべきことを歌っている自信はあるし。マイナーチェンジですけど、自分のなかでの成長というか。エクスプレッションの部分、表現力やコンポーズ能力は上がってきていると感じていますーー9月30日から10月は、アメリカ合衆国とカナダで19都市をまわる北米ツアーを予定されていますね。現在の状況下ではライヴを行う際、大変なこともありませんか。正直、コロナで先が見えないところもありますが、やるしかないですし、何よりやれることに感謝したいです。日本では、アルバム『Imaginary』のリリース前日が誕生日なので、節目を祝うバースデーライブをUSEN STUDIO COASTで開催します。そのあと、もうひとつ、京都の清水寺で新たなバーチャルライヴを行う予定で、その後に北米ツアーとなります。ーー清水寺でのライヴは、配信されるのですか。配信します。とくにオリンピックの開閉会式を観て強く思ったこともあったので、僕だったら、日本のライヴをこうしますよ、ということを表現したライヴになる予定です。日本から世界に対して、メッセージを発信します。ーー日本から発信されるというのは、日本人としてもうれしいですね。清水寺でロックするのは、初めてのことみたいです。何より神聖な場所ですし、僕たちも気を引き締めて臨みたいと思います。「目の前にいる人たちに音楽を届けたい」ーー音楽活動以外では、2021年9月10日から配信されたデヴィッド・リーチ製作総指揮による、アメリカのアクションスリラーでNetflix映画の『KATE』にもご出演されていますね。日本人キャストとしては、他に浅野忠信さん、國村隼さんもご出演されています。『KATE』は監督と出会って、オーディションを受けて、役柄がハマったというのもあって、参加させていただきました。タイで撮影しましたが、他の日本人のキャストの方とはシーンが別だったので、そんなに絡んでいないですね。作品自体は、初めてのガチアクションなので、面白かったです。なかなかギタリストで、アクションもやれる人はいないと思うし、こんな挑戦をさせてもらえること自体、とても光栄でした。ーーその一方で、9月3日から配信された新しい音楽バラエティ番組、Amazon Prime Video「ザ・マスクド・シンガー」では、パネリストとしてご出演しています。全米で大ブームだった人気番組の日本版だそうですね。この日本版は大泉洋さんがMCで、パネリストは他にPerfume、水原希子ちゃんたちも一緒に出演しています。マスクをかぶったパフォーマーが歌い競い合い、僕たちは誰もその正体を知らずに観るんですが、今回日本の曲がほとんどで、70〜90年代の邦楽の強さをあらためて感じました。NetflixやAmazon Prime Videoといった新しいメディアの台頭もあって、世界中で観ることができる。作品の作り方も変わってきていますよね。こういったメディアを通じて、今この瞬間に地球の裏側の人にコンタクトできる。これは、文明のパワー。それを良い形で使うのか、そうじゃない形で使うのかは、僕たち次第だと思っています。ーーではお仕事以外で、おうちにいる間はどのようにお過ごしですか。キッズたちと遊ぶことが多いですね。生まれたばかりのベイビーもいるし。ーーお子さんにはギターを教えることも?ギターも教えますし、歌も一緒に歌います。皆でファミリーバンドもやります。夏はプールも行ったりキャンプに行ったりしました。いまは日本にいるので、できるだけ日本の文化を経験させてあげたいですね。ananwebをご覧の方のなかには、僕と同じようにお子さんがいる方もいるかもしれないですが、子を持つというのは、やっぱり大変だし、もう一度自分の人生をやり直すような不思議な感覚もあります。自分のDNAが入っている子どもたちの軌跡を見ながら、うまくガイドしていくのは大変だけど、自分たちもまた人として成熟していく、その過程だと感じます。ーーMIYAVIさんは日本だけでなく、海外でもご活躍されていますが、そのエネルギーの源はどこからきているのでしょうか。うーん、どうだろう。小さいときから、人が驚いたり喜んだりする顔を見るのが好きなので、「ワオ!」という体験を共有したい、という思いからかなと。「ワオ!」を感じたときに、未来を感じる。人を喜ばせたくて、自分もエネルギーが湧いてくるのかもしれません。ーーいろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。9月のバースデーライブをやったあと、日本から世界に届けるプロジェクトにチャレンジします。それはきっと(VRを使用したリアルとバーチャルをつなぐパフォーマンスイベントの)「Virtual LIVE」の延長線上になるはず。そして、いよいよアメリカツアーがはじまります。年内には、日本でもツアーをしたいですね。いまはライヴに行きたくても行けない方もいるじゃないですか。ライヴをやることだけが正解ではないと思うんです。だけど僕のやれることはやっぱり、目の前にいる人たちに音楽を届けること。なので、また早くライヴで皆に会いに行きたいですね。取材後記その志の高さで、ギタリストとしてはもちろん、俳優としても、ボーダーレスに国内外でご活躍されているMIYAVIさん。ananwebの取材では、未来を見据える力強い瞳が印象的でした。そんなMIYAVIさんのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・山本嵩取材、文・かわむらあみりスタイリスト・櫻井賢之[casico]<スパンコールセットアップ>ジャケット¥869,000、シャツ参考商品、パンツ¥385,000、ソックス参考商品、スニーカー参考商品/グッチ(グッチ ジャパン クライアントサービス 0120-99-2177)MIYAVIPROFILE1981年9月14日、大阪府生まれ。バンド活動を経て、2002年からソロ活動を開始。以降、コンスタントに作品を発表し、国内外でのライブも成功に収めている。2019年7月、アメリカのドジャースタジアムで行われた大リーグ始球式での国歌演奏で観客を魅了し、日本、アメリカで話題騒然となった。アンジェリーナ・ジョリー監督映画『不屈の男 アンブロークン』(2016年日本公開)では俳優としてハリウッドデビューも果たした他、国内では『BLEACH』『ギャングース』(ともに2018年公開)、国外では『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年日本公開)、『マレフィセント2』(2019年日米同時公開)などにも出演。2020年6月、GUCCIがグローバルに展開する「Gucci Off the Grid」コレクションの広告に起用される。GUCCI創設以降、約100年の歴史のなかで広告に日本人の著名人が起用されるのは初の快挙となった。2021年9月15日、アルバム『Imaginary』をリリース。アルバム発売前夜の誕生日となる9月14日、バースデーライブを東京・STUDIO COASTにて、9月18日、京都・清水寺でライブを開催。9月30日からは、カナダ・アルバータ州カルガリーを皮切りに、ロサンゼルス、ニューヨークを含む北米19都市を巡る、北米ツアー「MIYAVI North America Tour 2021」を行う。InformationNew Release『Imaginary』(収録曲)01.New Gravity02.Imaginary (feat. Kimbra)03.Warrior04.Smells Like Teen Spirit05.Living In Fire06.Hush Hush (feat. Kang Daniel)07.Youth Of the Nation (feat. Troi Irons)08.I Swear09.Are You With Me?10.Dance With Me11.Super Hero2021年9月15日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)TYCT-60176(CD)¥3,080 (税込)(完全生産限定盤A)TYCT-69206(CD+DVD)¥4,400 (税込)(完全生産限定盤B)TYCT-69207(CD+DVD)¥4,400 (税込)(UNIVERSAL MUSIC STORE 限定セット)通常盤+Tシャツ¥5,500(税込)*サイズ:Lサイズ(ワンサイズのみ、身丈 73cm,身幅 55cm,肩幅 50cm,袖丈 22cm)。写真・山本嵩 取材、文・かわむらあみり スタイリスト・櫻井賢之[casico]
2021年09月14日恋に奥手な『建築学概論』の大学生、過去と繋がる「シグナル」の捜査官、悪を成敗する「模範タクシー」の運転手、遺品整理業に関わる「Move To Heaven:私は遺品整理士です」のボクサー。イ・ジェフンには様々な顔がある。けれど、モニター越しにニコニコと微笑む彼は、どの役とも印象が異なる。その理由は、「この作品なくして、今の僕はいません」と言い切る1作、『BLEAK NIGHT 番人』の中にあるようだ。遡ること10年以上前に製作された『BLEAK NIGHT 番人』は、イ・ジェフンの出世作とも言える映画。この作品で彼は各映画賞を受賞し、トップ俳優への道を歩み始めた。その日本初配信がWATCHAで実現したのを記念し、韓国からリモート取材に応じることに。出世作は「演技人生の基盤を作ってくれた」「演じる姿勢というものを僕に教え、演技人生の基盤を作ってくれたのがこの作品です。カメラが回っているときだけ演技をし、カットがかかった途端に元の自分に戻るのではなく、常に役のまま生きていく。撮影期間中はそうあるべきだと学びました。言ってしまえば、メソッド演技というやつですね。役にできるだけ近づき、なりきる努力こそが大事。以降、どんな作品でどんな役を演じるときも、役になりきってきました」さらっと語る表情からは信念と強さすら感じられるが、その演技法が俳優、とりわけ若い新人俳優にとってどれほど過酷だったかは、『BLEAK NIGHT 番人』の物語を知れば容易に分かる。イ・ジェフンが同作で演じたのは、自ら死を選ぶ高校生。物語が進むにつれ、生前の彼に何があったのかが浮き彫りになってくる。「正直、本当に不安で、つらくて、大変でした。その感覚を維持するよう、ユン・ソンヒョン監督は撮影中の僕を導いていたのだと思います。完成した作品を見たときも、僕が演じたギテにその不安やつらさが投影されているのを感じました。俳優としてどうあるべきか、その宿命を学ばされた気もしています。技術だけでもある程度の演技はできますが、より深みのある演技をするには役として経験し、感じなくてはならない」(C) COMPANY ONギテにはかけがえのない友人が2人いた。けれども、友人との幸せな時間は続かなかった。彼らの青春には若さゆえの痛みが詰まっていて、ギテの抱える問題も若さゆえにひどく重い。年齢を重ねた現在のイ・ジェフンは、物語をどう捉えているのだろうか。「おっしゃる通り、“若さ”ですよね。この年齢になるまで人間関係を構築してきた僕には、経験があります。でも、高校時代は未熟さとともに、人間関係を保っていかなくてはならない。幼いですしね。だから、友人との間でも思いやりが欠如してしまう。相手を大事にできず、それに気づくことすらないまま学生時代を過ごしがち。大人になったいまは人間関係の大切さを実感できていますが、僕自身、学生時代には仲のいい友人もいれば、それほど仲のよくない友人もいました。けれど、当時の交友関係が僕という人間の成長や人格形成に大きく影響しているのは事実。誰かに関心を持ってほしい、誰かに愛情を持ってほしいという若さゆえの焦燥もまた、自分の一部なんです」常に挑戦的な役柄に「見せたことのないイ・ジェフンをお見せしたい」“あのころ”から時間を経たことは、痛みからの脱却だけでなく、イ・ジェフンにさらなる喜びをもたらした。2020年、Netflix映画『狩りの時間』でユン・ソンヒョン監督と再タッグ。『BLEAK NIGHT 番人』ではギテと心が通わなくなる友人を演じたパク・ジョンミン、ギテの死を悔やむ父親を演じたチョ・ソンハとも再共演を果たした。「そうです。今度はずっと仲のいい役です(笑)。『狩りの時間』の撮影中は、『BLEAK NIGHT 番人』当時の話に花を咲かせていました。何せ、撮影状況が全く違いますから。かたや低予算の独立系映画で、真冬の撮影現場に暖房器具すらない。『(日本語で)寒い~。寒い~』と嘆いていました。一方、『狩りの時間』も実は冬の撮影でしたが製作費は潤沢で(笑)、俳優たちが演技に集中できるような環境が整っていました。でも、笑いながら苦労話ができる仲間との再共演はうれしいものです。彼らは“映画の同志”ですから」(C) COMPANY ONそんな『狩りの時間』を含め、イ・ジェフンのフィルモグラフィーがバラエティに富んでいるのは前述の通り。メソッド演技法で身を捧げるのが困難な役も、決して少なくない。「日本でもリメイクされた『シグナル』は、大変だった役の1つと言えるかもしれません。過去と交信しながら事件を追うプロファイラーの役ですから。実際に事件を感じつつ、冷静に捉えなくてはならない。感情を抑えながら、理性と感性を衝突させるんです。精神的な苦痛がないとは言えませんね。しかも、視聴者に感情移入させないといけませんから。現実的にアプローチしようとはするけど、ファンタジー要素は消せない。リアルに演じたからと言って、リアルに受け止められるか。すごく不安でした。様々な要素が絡み合う中、様々な感情と向き合わなくてはならなかったんです」(C) COMPANY ONそれでも、様々な感情に進んで身を置き、挑戦的な役柄を好んでいるようにも。役柄ごとのイ・ジェフンを存在させながら。「何よりも大事なのは、脚本です。僕は面白く感じたけど、皆さんはどうだろう?そんなことを考えます。できれば、すでに演じた役柄と重ならない役がいいですね。今までの演技を生かす方法も有効だとは思いますが、個人的には、別の領域に足を踏み入れ、新しい自分に出会いたい。いつもそんな気持ちでいます。ご覧いただく方にも、見せたことのないイ・ジェフンをお見せしたいですから。それが、僕にとっての探求心ですね」「対面でお目にかかれる日を楽しみにしています。(日本語で)ありがとうございました~」と、冒頭と変わらない朗らかな調子でインタビューは終了。そんな状況が訪れるころまでに、彼の顔はいくつ増えているだろうか。(text:Hikaru Watanabe)
2021年09月14日夫婦や不倫をテーマにした作品は数多くあれど、夫婦間の心理戦にぐぐっと迫った映画として、『先生、私の隣に座っていただけませんか?』は一線を画す。W主演で夫婦役を務めた黒木華&柄本佑も、「とにかく脚本が面白くて!」と、巧みな心理描写&あっと驚くストーリーに舌を巻いたとインタビューで伝えてくれた。売れっ子漫画家の佐和子(黒木さん)は、優しい夫の俊夫(柄本さん)をアシスタント代わりに、仕事を手伝ってもらう日々。結婚5年目、夫婦生活は順風満帆に見えた。…が、俊夫は佐和子の担当編集者・千佳(奈緒)と不倫関係にあった。ふたりの仲を知った佐和子は、新作のテーマを現実そっくりの不倫漫画にすることを思いつく。果たして、その漫画は創作なのか?復讐なのか?――真意を読み取らせないままどんどん書き進めていく佐和子、まさかの展開が続く内容に恐怖が止まらない俊夫。ふたりの息の合った演技バトルが物語をリードする本作、共演経験を振り返ってもらった。気持ちよく騙される本作、「俊夫は黒木さんに引き出してもらった」――『先生、私の隣に座っていただけませんか?』は、「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM」の2018年準グランプリに輝いた作品です。脚本を読まれての印象から教えていただけますか?黒木:ホンがとても面白くて!佐和子が本当はどう思っているのか、俊夫さんの振り回され加減まで全部が面白かったので、「佐和子という役をやってみたい」と思いました。それに、漫画パートと現実パートが映像になったときにどうなるのだろう、と気になりました。完成した作品を観たとき、想像していた以上に流れがよく見え、わかっていたはずの私でもいろいろ気づかされることが多く、本当に面白かったです。柄本:僕も、初めてホンを読ませてもらったとき、展開の面白さをすごく感じました。何よりも偏りのない、観る人を選ばない、老若男女が楽しめる王道のエンターテインメント作品を監督がやろうとしてるんだ、と感じたんですよね。コメディ要素あり、ミステリー要素もあり、で、楽しく気持ちよく騙される作品だと思ったので、やってみたいなと思いました。――本当に、いろいろな要素が混じって引き込まれ、ハラハラしながらも楽しめる作品ですよね。柄本:入り口は“不倫映画”と謳っていますけど、なんかね、観終わった後、「あれ?これ不倫だったよね!?」ぐらいの爽やかさがあって(笑)。とにかく映画の中での黒木さん演じる佐和子の、何か確信めいたときの女性の強さみたいなもの、突き進んでいく姿は、観ていて非常に気持ちがいいと思うんです。女性の格好良さがとっても目立った映画じゃないかな、と思います。身を任せていただければ、非常に気持ちよく騙されますから。――素晴らしい脚本を体現したおふたりの演技合戦もあまりに秀逸で、鳥肌が立ちました。ご一緒されてみて、いかがでしたか?黒木:私、もともと柄本兄弟(柄本佑&柄本時生)がすごく好きで、映像作品も観ていますが、ふたりでやられている舞台が特に大好きで。今回、現場でご一緒してみて、柄本さんは最初からとても優しい方で、どっしりと、そして常にフラットに構えてくださり、待ち時間も気負わず、お互いにいい距離感でいられました。柄本:本当!?それを言われるのはうれしいなあ。ここまで同じシーンをやるのって、ほぼほぼ初めてなんだよね。黒木:はい、そうですよね。柄本:なんだけど、初めてな気がしないというか。勝手にですけど、僕は近しい距離感を感じていて。だから自然と夫婦感というところには入っていけたし、同じくふたりで黙っていても全然平気というか。それに今作に関しては、黒木さんの持つミステリアスさがあったからできたんです。僕が何かをやったというより、黒木さんの表情なり声のトーンなり、その場で素直に反応さえしていれば、このホンの面白さが自然に出るようになっていたような気がします。俊夫は黒木さんに引き出してもらっているところが、すごく多かったです。心理戦は得意?黒木さんは“ハイブリッドタイプ”柄本さんは…――おふたりの“不倫相手”に位置する金子大地さん、奈緒さんもぴったりでした。共演されて、いかがでしたか?柄本:金子くん、めっちゃいいやつなんですよ!なのに、抜け感もあって、寡黙だけじゃない、みたいな。すげえやついた、なんか欠点見つけたいな…って(笑)。黒木:金子さん、本当にいい子でチャーミングですよね。お芝居に対しても、すごく真面目ですし。奈緒さんもですが、年下のみんなが可愛く見えてしまって(笑)。「みんな可愛い、頑張れ、頑張れ!私も頑張ろう!一緒に頑張ろうぜ!!」みたいな感じでした。柄本:それは偉いよ。俺は14のときからこの仕事をやっているけど、いつも一番年下で。そのときは別に話す必要もないし、黙っていてもいい、みたいな感じだったの。後輩が出てくると、段々黙っているだけではいけなくなってきて。でも俺、そういうのをやってきたことがないから、本当に後輩とどう接していけばいいかわからなくて(笑)。変わったのは結婚して子どもが生まれてから。何となく現場で年下のこと接することが大丈夫になってきたんですよね。――そうだったんですね。奈緒さんは、いかがでしたか?柄本:奈緒さんは、俺、割と「ベテラン感あるなあ」と思っていました!非常にチャーミングな悪女をやってくれたんですよね。黒木:安心感ありましたよね。俊夫さんの不倫相手だけど、スカッとしていてカッコいいな、と見ていて思いました。悪女ではあるんですが、「しょうがないか、俊夫さんだったら、引っかかるかな」とさえ思えてくる(笑)。――本作は心理戦が見どころのひとつですが、おふたりとも、心理戦は得意なほうですか?計画的なタイプです?柄本:僕は割と先に先にって考えられるタイプじゃないな。黒木:私も、得意なほうではないですね。柄本:しょっちゅううちの奥さんに言われるんだけど…、「一緒にあそこに行こう」と家を出るじゃないですか。玄関を出て、右に行くか左に行くかのルートなんだけど、俺、本当に何も考えないで歩くから、そのとき思った方向に行っちゃうんです。そのときの足の運びによって行っちゃう、みたいな。だから、よく「そっち全然遠回りじゃん!」とか言われる(笑)。着くからいいじゃん、とこっちは思っちゃうんだけど。…女性のほうが気にするのかな!?黒木:私はあまり気にしないかもです。――黒木さん、計画的だったり、せかせかしていないタイプなんですか?黒木:私は計画的ではないところと、せっかちなところが両方あるハイブリッドタイプです(笑)。人がそこに入ってくるとどちらでもいいと自由になれるんですが、自分自身だけだとせっかちです。柄本:一番いいと思う!結婚後は「自分が一番じゃない」「お互いを尊重していければ」――「夫婦の数だけ、【事件】がある!」というキャッチコピーも踊りますが、ご結婚されている柄本さんは「そうそう」と同意するところはありますか?柄本:おそらく、あるんじゃないですか。いい事件も、悪い事件も。まず「結婚」自体がある種、事件ですから。それに、子供がいたら日々事件だらけですよね。――先ほど、お子さんが生まれてから変わったというお話もされていらっしゃいました。柄本:思いましたね。僕が意外だったところなんですけど、結婚して子供もいると、明らかに自分が一番じゃなくなるんです。人との接し方が変わったのが明確になったのは、自分がどこかで一番じゃないと思っているから「人にどう思われてもいいや」と思うようになったからなんですよね。それまでは、かっこつけとか自意識がすごい高かったんです。「人見知り:6、自意識過剰:4」ぐらいで、よく思われたいと思って生きてきた部分があって。そういうのが今まったくなくなったので、まずはバーンと出す!みたいな。すごく楽になりました。黒木:それ、すごくいいですね。柄本:もちろん見栄とか、かっこよく思われたい、みたいな思いのベースはあるけど、その順位がすごい下のほうになったから、結構意外でした。自分の中でのいい出来事です。――黒木さんも、もし今後、結婚などをされたら自分にとっては「いい事件!」となりそうですか?あくまでも想像のお答えで。黒木:もしも、誰かと一緒に歩んで行くとしたら、楽しいほうがいいと思っているので。いい事件が多いほうが、嬉しいですよね。「面白いよね」と言いながら生きていければいいな、というのが理想ではありますが、人と一緒に住んだことがないので未知です(笑)。育った環境が全然違う相手と一緒に住んだり、同じ姓を名乗ったりするんですもんね。今は「結婚」という形だけでなく、籍を入れずにパートナーという形もありますし、自分がどういう選択を取るにせよ、お互いをちゃんと尊重していければいいなと思います。(text:赤山恭子/photo:You Ishii)■関連作品:先生、私の隣に座っていただけませんか? 2021年9月10日より新宿ピカデリーほか全国にて公開(C)2021「先生、私の隣に座っていただけませんか?」製作委員会
2021年09月06日初めてのデートで行った劇場、講義をさぼって通ったミニシアター、子供の頃、大好きなアニメの劇場版をいつも観ていたシネコン…。映画好きであればきっと、忘れられない思い出の映画館・劇場がある。高畑充希にとって、忘れられないその場所は地元・大阪の梅田芸術劇場だという。「小っちゃい頃、そこでしょっちゅうミュージカルを観てましたし、楽屋の出待ちをしたこともありました。演じる側として初めてあの舞台に立たせてもらったのは10代の頃でしたが、楽屋から舞台に通じるエレベーターに特有の“匂い”があって忘れられないんですよ。あれは何の匂いなんだろう…(笑)? その後も何度も立たせてもらってますけど、あの匂いは変わらないし、私にとっては特別な劇場ですね」。高畑さんが主演を務める映画『浜の朝日の嘘つきどもと』は、福島県南相馬市にある、経営が傾いた小さな映画館「朝日座」を立て直すために現れたヒロインと彼女の熱意に心を動かされていく周囲の人々の姿を描いた作品。観終わった後に、自分の心の中の思い出の映画館…いや、映画館に限らず、大切な場所や存在に思いを馳せる――そんな作品に仕上がっている。高畑さんは、どのような思いを持ってこの作品に臨んだのだろうか?破壊されてから気づく「すごく貴重なこと」撮影が行われたのは昨年の夏のこと。高畑さんにとっては最初の緊急事態宣言の解除後、1本目の仕事であり、コロナ禍という唐突にやってきた“非日常”の中で感じたことが、作品と強く結びついたという。「みなさん、そうだったと思うんですけど、あの当時、明日がどうなるかわからない状況で、いままで当然だったものが急に消えたり、人間関係も急に変わっていった時期だったんですね。台本の中で個人的に好きだったセリフに『みんな、なくなるとわかってから騒ぐ』というのがあって、朝日座がなくなると決まってから、みんなあれこれ言うけど、それまで普通に(映画館が)あったときはありがたがらないんですよね。それって本当にその通りだなと思いました。ちょうど、いろんなものが破壊されていった時期で、破壊されてから騒いでいるけど、普段、普通にそれがあったことが実はすごく貴重なことだったんだなぁということを感じました」。本作の脚本、監督を務めたのは『百万円と苦虫女』『ロマンスドール』で知られるタナダユキ監督。コロナ禍や東日本大震災から10年を経て、いまなお復興の途上にある福島の姿など、社会や個人が抱える決して軽くはない現代進行形の課題に鋭く切り込みつつ、それを哀しみだけで染めるのではなく、笑いやユーモアをもって描き出しているのが本作の魅力といえる。「明るい題材じゃないし、私が演じた役もすごくハードな人生を歩んでいるだけど、絶対に暗くしたくない、“かわいそう”には見せたくないというエネルギーを脚本からも強く感じました。人が死ぬシーンですら、単に悲しい“お涙ちょうだい”にしたくないっていうエネルギーは、文字から浮き出るくらいに感じました」と語る高畑さん。タナダ監督と仕事をしてみて「一度、タナダさんと仕事をした俳優さんがみなさん『またやりたい』とおっしゃるのがすごくわかりました」と目を輝かせる。“継いでいく”ということに意義を感じるように本作で、高畑さん演じるヒロインの魅力を引き出す存在として2人のジャンルの異なる“笑いのプロ”が大きな存在感を放っている。ひとりは朝日座の支配人を演じた落語家・柳家喬太郎。もうひとりが回想シーンで登場し、震災によって心に深い傷を負った莉子を映画好きに染めながら導いてゆく恩師・茉莉子を演じた大久保佳代子である。喬太郎師匠、大久保さんとの会話劇では、高畑さんはそれぞれとお笑いコンビを組んだような、全く異なる笑い、そして活き活きとした表情を見せてくれる。「私自身、10代の頃は(学生時代の莉子のように)すごく閉じてて、殻に閉じこもって他人とコミュニケーションを取りたくないというタイプで、学生時代を演じる時は、その頃のことを思い出しながら演じてました。人の目もあまり見られないし、全てを自己完結しちゃうんですよね。いろんなことを心の中で思ってても、いくつも先回りして『じゃあ、これでいいや』ってひとりで完結しちゃう。そういうところはわかるなと思いながらやっていました」。「喬太郎師匠との会話劇は楽しかったですけど、一発で撮ったので緊張もしました。師匠は師匠で『僕は普段、ひとりでしゃべっているので迷惑をかけるかも』とおっしゃってたんですが、わたしの方が胸を借りてばかりでした。そういう意味で、(喬太郎師匠も大久保さんも)普段のお仕事とはやっていることが違っていて、面白いですね。いろんな方が出てくださって、その方々との会話で物語が転がっていくのが楽しいなと思いました」。恩師である茉莉子の言葉に導かれ、朝日座の再建のために奮闘する莉子。誰かの思いを受け継ぎ、繋いでいくというのも本作の描くテーマのひとつだが、高畑さん自身、そこに感じる部分があったという。「私は“受け継ぐ”みたいな概念はいままでの人生であまりなかったんです。というのは、私は親の職業を継いだわけではなかったので…。本来は私が継ぐべきだったのかもしれないけど、家を飛び出して芸能の世界に入ってしまったので、ある意味で自分は(自分で道を切り拓いていく)初代というか、“受け継ぐ”という立場ではないので。ただ最近、特にミュージカルで、クラシックな作品を後世に伝えていくためにやるということがあって、そのためのひとつのピースになるというチャンスをいただくことが多くて、そこに意義を感じている自分がいるんですね。これまで、何かを“生み出す”ことの美学を感じていたけれど、“継いでいく”という美学もあるんだなと感じています」「傷は消えることはない」その上で大切なこと受け継ぎ、伝えていくという意味で、この作品で重要なテーマのひとつとして描かれているのが今年で発生から10年を迎えた東日本大震災である。撮影は被災地であり、原発事故の爪痕がいまなお深く残る南相馬市で行われた。この作品への参加を通じて、高畑さんは何を感じたのか?「あの震災が起きたとき、私は地元の大阪にいたんです。健康診断のために母と病院にいて、TVで津波の映像を見たんですけど、TV画面を通じて見ていると、どうしても“TVの中の出来事”になってしまっていて。東北に親戚がいるわけでもなく、ニュースではいろんな情報が流れてきて、悲惨な状況を知ってはいましたが、どこか自分のこととしてとらえられる“距離”ではなかったんだなと」。「今回、この作品の現場に入って、津波で全てが流されていまは樹が生えている海辺や、原発事故による立ち入り禁止区域の柵を見て、震災が自分のことになった気がします。(1995年の)阪神大震災は私も実際に経験して、実感を持っていましたが、3.11に関してはこれまでそうじゃなかった――この作品を通じてそこに向き合いたいという思いはありました」。「(実際に被災地を見てみて)10年が経ちましたが、まだ癒えてないんですよね。もちろん、再生・復興してお店も再開されてはいるけど、傷跡の上に希望が乗っかっている感じがしました。これは新型コロナについてもそうだと思いますが、今後、良くなっていくけれど(傷は)消えることはないんですよね。消そうとしても、忘れようとしても無理で、それを踏まえてどう作っていくのか? それが大事なんだなと。完全な修復なんてない――大きく傷つくってそういうことなんだと実感しました」。(text:Naoki Kurozu/photo:Jumpei Yamada)■関連作品:浜の朝日の嘘つきどもと 2021年9月10日より全国にて公開※8月27日福島県先行©2021 映画『浜の朝日の嘘つきどもと』製作委員会
2021年09月01日「僕は“勝手口”からこの世界に入った人間なので…(笑)」――。そう語るのはミュージシャンの牛尾憲輔。ソロユニット“agraph(アグラフ)”として活躍する一方、「LAMA」としてのバンド活動、「電気グルーヴ」のライブサポートやDJプレイなど、多方面で精力的に活動している。もうひとつ、牛尾さんの音楽活動の一面として、忘れてはならないのが“劇伴(げきばん)”と呼ばれる、映画やTVシリーズ作品の音楽の仕事。冒頭の「勝手口」発言は、この劇伴の仕事を指したもの。20代の頃から仕事として音楽に携わり、ソロアーティストとしても十数年のキャリアを誇る牛尾さんだが、劇伴を担当するようになったのはこの6~7年のこと。2014年のアニメシリーズ「ピンポン THE ANIMATION」を皮切りに、アニメーション映画『聲の形』、『リズと青い鳥』、さらに『麻雀放浪記2020』など、この6~7年ほどの間で次々と話題作の音楽を手がけてきた。昨年末にアニメ化が発表された「チェンソーマン」の音楽も担当しており先日、公開された音楽が入ったティザー映像も大きな話題を呼んだ。そんな牛尾さんが音楽をつけた最新の実写映画『子供はわかってあげない』が公開を迎えた。この機会に牛尾さんにインタビューを敢行。映画の世界で働く人々にその仕事について話を伺う【映画お仕事図鑑】連載第11回のテーマは「劇伴」!映画の音楽ってどうやって作るの? 普段の音楽活動との違い、その魅力は? たっぷりと話を聞いた。「ピンポン」で初めて担当した劇伴それまでの音楽活動とは「全く別物だった」――牛尾さんが最初に劇伴を担当されたのは2014年にフジテレビのノイタミナ枠で放送された「ピンポン THE ANIMATION」(湯浅政明監督)ですね?そうですね。メインで劇伴の全てを手掛けたのは「ピンポン」です。ただ、その前に知り合いのアーティストの方に「劇伴に参加してみないか?と声を掛けていただいて、ちょっとだけ参加したことありました。――「ピンポン」のオファーが来て、劇伴をご自身で手掛けることになったときの心境は?最初は不安でしたね。「できるのかな…?」と。そもそも劇伴というのは特殊な世界なので、ちゃんと劇伴のことを学ばないとできないと思っていましたし、僕はそれまで、基本的に自分のアーティスト活動しかしてこなかったので、白羽の矢を立てていただいたものの「僕(=音楽)がコケてしまったら、何百人という人が関わっている作品そのものにケチをつけてしまうことになるんじゃないか…?」とすごく緊張したこと覚えていますね。――アーティストとしてもともと劇伴に興味はおありでしたか?アーティストとしての活動の中で、テクノロジーをベースにした音楽を作っていたので、映像に音楽をつけるという部分で、技術的にトライしてみたいことはあるなという思いは持っていましたね。「こういう技術を使ってこういうことをやれば、きっとこんなことができるなぁ…」と挑戦してみたいという気持ちはありましたね。――実際「ピンポン」で劇伴を担当されてみていかがでしたか? それまでの音楽制作とはやはり違いましたか?全然違いましたね。とはいえ「ピンポン」の時にそれがきちんとできていたかどうかは怪しいですが…(苦笑)。とにかく全く別物でした。劇伴の場合、作った音楽を「これでOK」とジャッジするのが自分じゃないんですよね、それまでセルフプロデュースでクオリティを研ぎ澄ましていくということしかやってこなかったのですが、劇伴の場合「いかに作品にフィットするか?」ということが評価軸になるので、それはすごく新鮮だったし、そこで自分の足りない部分が見えてきたりもしました。――その後も京都アニメーション制作の映画『聲の形』、『リズと青い鳥』(いずれも山田尚子監督)など、次々と話題作の劇伴を担当されました。こうした活動を通じて、改めて感じた普段の音楽活動と劇伴の違い、劇伴ならではの面白さなどについて教えてください。先ほども言いましたが、これまでソロでアーティストとして活動してきて、単に自分の世界観とか自分のクオリティを研ぎ澄ますということであれば、自由に作れるんですよ。例えば、普段からダンスミュージックや電子音楽をベースにしていると、どうしても2のべき乗(※1,2,4,8,16…という2の累乗数)のリズムで作りたくなるんですね。でも映画ってそんなリズムとは関係ない。「このシーンは20秒と2コマ」と言われても、それは4小節にはならないわけです。音楽って時間軸をコントロールするものだと思いますが、映画の場合、音楽以外のものに主従関係の“主”があるわけで、それは普段の音楽活動とは全く違うものでしたね。そういう意味で、普段からのアーティスト活動も劇伴もどちらも「音楽」という言葉で表現されているけど、全く違う言葉で表さなくてはいけないものなんじゃないか? と思うくらい違うものだったし、それは発見であり、劇伴での経験から自分の活動へのフィードバックもあったし、すごく面白かったですね。――いま、ジャンルの話が少し出ましたが、agraphとしての活動でやられているのは電子音楽ですが、劇伴では作品に合わせて全く異なるジャンルの音楽を手掛けられています。牛尾さんが手掛けた複数の劇伴とagraphとして発表された作品を並べたとき、同じ人が作ったと知って、驚く人もいるのではないかと思います。いやぁ、そう感じていただけるのはすごく嬉しいです。最近、 “牛尾節”的な言い方をしてくださる人もいて、僕としてはそれはあんまり嬉しくないんですよね(苦笑)。賞味期限が短そうじゃないですか? 細く長くやりたいと思っているので…(笑)。それぞれの作品のジャンル的な違いについて、比喩的な言い方をしますと、真ん中に僕が音楽を手掛けてきた“作品”があるとして、僕が“作り手”の側にいて、作品を挟んで反対の側に“視聴者・観客”がいるとします。“視聴者・観客”側から見ますと、作品ごとに異なる様々なジャンルの音楽に見えると思うんですよ。「ピンポン」のようなテクノ系もあれば『聲の形』のような繊細なもの、今回の『子供はわかってあげない』のように、音楽というよりも映像に合った“音”が並んでいるような作品まで、様々な見え方がしていると思います。でも作り手の側の僕からしたら、制作のプロセスというのはほとんど一緒なんですよ。つまり、もともとの僕が音楽をやる上でのベースになっている“思想・哲学”みたいなものがあって、ほとんどの作品はそのフィルタを通って作られているんです。簡単に言葉にできないけど、ある哲学や思想が最初にあって、それをベースに個々の作品に寄り添いながら「こういう音楽にしよう」「こういうフレージングをして…」という感じでそれぞれの作品ごとの音楽を作っていく感じなんですね。そういう意味で、あんまりジャンルの違いで戸惑うようなことはないんです。同じスタートラインから始まって、4小節を「ドン! ドン! ドン!ド ン!」という強いリズムで均等に分割にすればテクノになるし、そうではなく、作品のゆっくりした雰囲気に合わせて、4小節を均等にではなく、例えば「ドン! ドーン…ドッ」というリズムにして有機的な音を組み合わせれば、また違ったジャンルの音楽になるんですね。創作の最初の一歩目に関しては、同じ部屋で同じコンピュータに向かって同じソフトを使ってやっているので、僕にとっては同じなんですね。ただ、作品ごとに向き合っていく“角度”が少しずつ違っていて、その角度の違いは最初の時点では1°とか2°くらいのすごく小さなものなんだけど、それが劇伴として観客・視聴者のみなさんに届く頃にはすごく大きな差になって見えてくるんですね。――いまおっしゃった「哲学・思想」というのは、担当する各作品のということではなく、あくまでも“牛尾さん自身が、音楽を作る上での”ということですね?そうです。おこがましい言い方ですが、それが例えば今回、沖田監督が僕を選んでくださった理由の部分でもあると思います。“作家性”と言い換えてもいいと思います。――その作家性と関連するかもしれませんが、これまで劇伴のオファーが届いたときに「え? この作風の監督が自分に音楽のオファーを?」と驚かれたことはありますか?ビックリすることはあります。それこそ今回の沖田監督の作品は以前から大好きで、『南極料理人』が公開されたのはちょうど大学生くらいだったかな? 世代的にもドンピシャで、お声がけいただいてすごく嬉しかったです。白石和彌監督(『麻雀放浪記2020』)もそうですね。僕は電気グルーヴとご一緒させていただいてきて、ピエール瀧さんからも白石監督について話を伺っていて「すごいな」と思っていたので、そういう監督からお声がけいただいたのはビックリしましたし、嬉しかったですし、面白いですよね。あえて全ての効果音をミュートして書き上げた、上白石萌歌と千葉雄大の車のシーン その意図は…?――アニメーション作品と実写作品で劇伴制作に違いはありますか?それはありますね。実写は基本的には“ピクチャーロック”と言われる、CGや色はまだ粗い状態だけど、基本的な画が出来上がっている「だいたいこういう映画ですよ」というのがわかる状態の映像が送られてきて、そこから劇伴の制作がスタートします。実写であれば、その段階で登場人物たちは動いているし、色も乗っているし、生音の効果音が乗っているんですね。でも、アニメーションだと、最初に頂く映像はバラバラだし、最後の最後……試写の前日くらいまで出来上がってなかったり、なんなら試写も回せない状態だったりするんですね。――なるほど、音楽をつける段階での映画そのものの完成度が実写とアニメでは全然違うんですね。加えてアニメの場合、当たり前ですけど、生の効果音がなくて、足音も衣擦れの音も、全てつけない限りは無音なんです。その差による違いはすごく大きいですね。影響を受ける部分も多いです。映画の中にセリフや環境音といったロゴス(=論理・意味)的なものが存在するときに、それを「支えるのか?」、「邪魔するのか?」、それとも「引くのか?」 ということをこちらでやらないといけないわけです。だから、元の映像に効果音があるかどうかというのはすごく大きいですね。例えば怒っている人が机を叩いた「ドンッ!」という音があったとして、実写であればピクチャーロックの段階でその音が既に存在していて、聞こえるわけです。なので、音楽をつける際に、その音にかぶらないようにしたりするんですけど、アニメの場合、その効果音が最後のダビングの段階まで鳴らないわけで、それはこちらが仕事をする上ではすごく難しいんですね。今回の『子供はわかってあげない』だと、美波(上白石萌歌)と明(千葉雄大)が、お父さん(豊川悦司)の家に向かう途中の車に乗ってるシーンで、まさにいまお話したような音楽の作り方をしています。僕のほうから沖田監督にお願いして、あのシーンの実景の音や車の音を全てカットしてもらったんです。というのは、僕があのシーンの曲を書いた時、効果音をミュートして、完全に画に合わせて書いたんですね。そうしたら“夏の予感”みたいな、すごくメロウな雰囲気の曲ができたので監督に「もしよかったら、これを聴いてみてくれませんか? 僕自身が効果音のない環境で画だけを見て書いたので」と説明して、それでOKをいただきました。――ここからさらに今回の『子供はわかってあげない』に即して劇伴制作についてお聞きしていきますが、その前に映画そのものについて、牛尾さんの感想をお聞かせいただけますか?もう沖田さんらしい“間”とかが、すごく面白くて…。沖田さんって本当にこういう奇跡みたいなフィルムを作るんですよね。先ほども言いましたが、音楽を作る上で、ある程度の映像をいただいた上で曲を作り始めているので、ずっと自宅のサブディスプレイに映像を流し続けてたんですけど、(細田)佳央太くんがすごくかわいくて好きになりましたね(笑)。「みんな! とにかく佳央太くんを見てくれ!」って思いました。「音が並んでいる」――“何も起こらない”のが魅力の沖田修一監督作品に寄り添ってできた劇伴――今回の劇伴に関して、先ほどのお話の中で「音が並んでいる」という表現をされていました。実際、映画を観ると、牛尾さんの制作された音楽だけでなく効果音やセリフも含めて、“音”がすごく印象的でした。今回の劇伴の制作の過程について振り返っていただけますか?今回の作品で最初に沖田さんと顔を合わせたのは……渋谷の焼肉屋だったはずなんだけど…(笑)、何を話したかなぁ? あぁ、たしか最初に「ハバネラ」の話があったんじゃなかったかな?――序盤の美波ともじくん(細田佳央太)の会話の中で、ゆったりしたリズムで流れる「ハバネラ」(※オペラ「カルメン」で歌われるアリア。本作の予告編でも使用)ですね。ということは、あの「ハバネラ」は監督の提案で?そうなんです。すごく申し訳なさそうな顔をしながら沖田さんが「すいません、牛尾さん。なぜか頭の中に『ハバネラ』が鳴り響いていまして…』って(笑)。こちらは「???」という感じだったんですけど(笑)、いま考えると、言っていただけてよかったなと思います。監督の話を聞いて「ハバネラ」バージョンと、そうじゃないバージョンを作ってみたんですけど、「ハバネラ」のメロディって聴けば誰でもわかる強いメロディだけど、ゆっくりにするとスカスカになるんですよ。音が落っこちてくるような感じというか…本来はすごくハーモニー豊かな曲なんですけど、それが一音、一音に寄っていく感じになるんですね。最初にゆっくりの「ハバネラ」を聴いた時、音が“密”ではなく“疎”になっていくのを感じて、それが大きな発見だったというか「これを劇伴全体を通してやってみようかな」と思いついたんですね。こういう言い方が正しいかわからないけど、それってすごく沖田作品に合う気がしたんです――「ハバネラ」によって、劇伴の方向性が決まったと?この映画、もちろん美波をはじめ、何人かにとっては、人生におけるすごく大きなことが起きる映画ではあるんですけど、とはいえ、それでも沖田監督の映画って何も起きないことが魅力なんですよね。相対的に、例えば宇宙大戦争的な作品と沖田作品を並べたとき、沖田作品って格段に“何も起きない”じゃないですか(笑)? そういう何も起きないけど、でも繊細で些細なことがすごく意味を持ってくる――そんな視点・視野を持っているんですよね今回の映画の中でも、お父さんと美波がご飯を食べている時、食べ物が飛んじゃって「ごめん」「いいよ」ってやりとりがあったんですけど、あれはアドリブなんですよね。でも、あそこにちゃんと視点があるっていうのは、沖田さんの作品ですごく大事なことだと思うんです。あの関係性を描いているってことは、あらすじに太字で書くべき重要なところなんじゃないかって(笑)。それくらい本当に一見すると何も起きてないような状態であっても、でも注目したものが繊細な動きで情感豊かなものになるっていうのは、僕が沖田さんの作品の中でも大好きな部分で、そこに向けて、さっきお話した自分の“哲学・思想”を発射させると、結果ああいう音楽になるのかな? と思います。――他に音楽に関して、沖田監督からリクエストなどはなかったんですか?そこまで大きなリクエストみたいなものはなかったと思います。ただ、こまごまと「ここはどうしましょうか?」という話はいろいろとしましたね。例えば、美波とお父さんが浜辺で歩いているロングショットのシーンとか。あのシーンの劇伴は果たして音なのか? それとも音楽なのか――? 僕自身、あれが曲なのかどうかもわからないんですけど、あれが「ありやなしや?」という話なんかはたくさんしましたね。ドラムの音だけが響き渡るクライマックスの“挑戦”――終盤の美波ともじくんの重要なシーンで、ドラムの音だけをバックにドラマが進んでいくところも印象的でした。冒頭で美波がもじくんと出会ったシーンでは、2人が屋上から校舎を降りてくるんですけど、あの終盤のシーンは、逆にのぼっていくんです。沖田さんからは「もう、しっちゃかめっちゃかでワケがわかんなくなっている美波でありたい」と言われて、それはどんな感じなのかな? とずっと考えていたんですが「フリージャズみたいな」という言葉を沖田さんからヒントとしてもらって、それならドラムで、リズムもだんだんメチャクチャになっていくような感じがいいかなと思いました。それで、冒頭で2人が降りてくるところのセリフのやりとりを使用して、“ダブ(※)”というんですけど、ワーッとエコーを重ねていく手法でやってみたいなと沖田さんに相談したら、最初は「うーん…」と考え込んでいたんですけど、最終的には「それでいきましょう」ということになりました。※リズムを強調してミキシングし、エコーなどのエフェクトを過剰に施し、原曲とは全く異なる作品に作り変えてしまう手法。――沖田監督は、牛尾さんのそうしたアイディアを積極的に取り入れていってくれたんですか?いや、笑顔で譲らないんですよ、沖田さんって(笑)。何より作品のことを第一に考えて、ダメな時はダメとハッキリと言うので、その中で僕は「こんなのどうですか?」「じゃあこれは?」と次々と球を投げるというのを繰り返していました。――改めて今回の劇伴において、本作ならではの新たな部分、いままでにない挑戦をした部分はどういったところですか?やはり、先ほどお話した、ドラムのソロでセリフがグルグル回るという終盤の部分ですね。ダビングステージという映画館のようなスタジオなんですけど、そこで実際の映像を流しながら、ミキシング・コンソールという機材を使って、その場でDJのように卓を演奏して、あのシーンの音楽を聴いてもらったんです。あれはセッションみたいですごく面白かったですね。――最後に牛尾さんが感じる劇伴の魅力、面白さについて教えてください。なんでしょうね? 勝手口からこの世界に入っておいて、その視点で好き勝手なこと言うと、他のちゃんと劇伴を学んで活躍されている作家さんたちに失礼ですけど……でも劇伴って楽しいなって思います。やってて楽しいですよ(笑)。ミュージシャンってつい手癖でやってしまったりするし、アーティスト活動をやってても、結局、いつも同じことの繰り返しになっている部分もあって悩むんですけど、劇伴って自分にない引き出しや忘れていた引き出しを引っ張り出さないといけなかったりするんです。さっき「フリージャズのような」という話が出ましたけど、僕自身は電子音楽畑の人間なので、ジャズは全く通ってないし、フリージャズなんてできないんですよ。でも、おそらく沖田さんが「フリージャズ」という言葉で表現したものは、本当のフリージャズじゃなくて、もっと衝動的な何かだったり、グチャグチャになっていく何かだったんだと思うんですよね。そこで、自分の引き出しの中にあるものをあれこれと組み合わせて、沖田さんの求めるものを狙って曲を作っていくんですけど、そういうことをしていると、今度はアーティスト活動のとき、それまでの自分では思いつかなかったようなことを思いついたりするんです。例えば普段の音楽活動でもドラムの打ち込みをすることはあるし、それで生っぽいものを表現したり、先ほども話に出た“ダブ”という手法でエコーを重ねるようなこともするけど、それらを組み合わせて何かを作るっていうことは、リクエストがないと自分には思いつかないですよね。そういう意味で、劇伴の制作が自分の中の面白い発見につながるなと感じています。僕のような者がお名前を出すのも本当におこがましいんですけど、武満徹(※)先生が、「ノヴェンバー・ステップス」という世紀の名曲を書かれる前に、その着想を得たのは劇伴だったそうです。それは『切腹』(1962年/小林正樹監督)という映画で、そこでオーケストレーションの中に邦楽器を取り入れたことで、そちらに意識が向いたということをおっしゃっていたのを以前、拝見しました。※ほぼ独学で音楽を学び、西洋音楽に東洋の伝統的な楽器や手法を取り入れるなどして、映画や舞台の劇伴から電子音楽、オーケストラまで幅広いジャンルで名曲を残した世界的作曲家。代表作に「ノヴェンバー・ステップス」など。1996年没。そうやって劇伴での経験を自分の作品にフィードバックして、そこからまた新しいものが生まれていくというのはすごくポジティブなスパイラルだなと思いますし、楽しいです。「劇伴と普段の音楽は全く別物」と言いましたが、とはいえ、そんなことを意識せず、楽しめる素敵なお仕事だなと感じています。(text:Naoki Kurozu)■関連作品:子供はわかってあげない 2021年8月20日より全国公開©2020「子供はわかってあげない」製作委員会©田島列島/講談社
2021年08月30日【音楽通信】第87回目に登場するのは、音楽界とお笑い界の才能が集結した、小籔千豊さん、くっきー!(野性爆弾)さん、中嶋イッキュウさん、川谷絵音さん、新垣隆さんからなる5人組バンド、ジェニーハイ!番組をきっかけに才能豊かなメンバーが集結写真左から、新垣隆(Key)、くっきー!(野性爆弾/B)、中嶋イッキュウ(Vo)、川谷絵音(Gt)、小籔千豊(Dr)。【音楽通信】vol.87バラエティ番組『BAZOOKA!!!』(BSスカパー! 2011年〜2019年)発のプロジェクトとして、2017年に誕生した小籔千豊(Dr)さん、くっきー!(野性爆弾/B)さん、中嶋イッキュウ(Vo)さん、川谷絵音(Gt)さん、新垣隆(Key)さんからなる5人組バンド、ジェニーハイ。お笑い芸人さん、ミュージシャン、現代音楽家と、さまざまなジャンルのジェニー(フランス語で天才の意)が集結。バンドの全面プロデュースを「ゲスの極み乙女。」や「indigo la End(インディゴラエンド)」などのバンド活動も行っている川谷さんが兼任する、才能豊かで個性あふれるメンバーが揃っています。そんなジェニーハイが、2021年9月1日に、2ndアルバム『ジェニースター』をリリースされるということでメンバーから、小籔さん、川谷さん、中嶋さんの3名にお話をうかがいました。――あらためて、それぞれ初めて会ったときの印象から、お聞かせください。小籔川谷P(川谷プロデューサーの呼称)のことは、すでに「ゲスの極み乙女。」の音楽を聴いて認識していました。いざ番組でバンドを作るとなったときに、曲を作っていただく先生を決めることになり、第一希望で「川谷さんが良い」と話していたんです。ご快諾いただいて、実際にお会いすることになったのですが、ミュージシャンではなく、例えば演歌歌手における曲を作ってくれる先生にお会いするような感覚でしたね。そこから初対面の感想は……意外と、普通やったなと(笑)。ミュージシャンて「僕は空がパープルのときじゃないと曲が思いつかないから」とか、もっと前衛的なことを言うのかと思ったらそういうこともなく(笑)。川谷わはは、普通ですよ(笑)。初めて会ったときは確か番組の収録現場だったので、深くは話さず、その後ご飯に行きましたね。小籔さんは、テレビで観ている印象よりも、だいぶん優しい人だと思いました。小籔それはよう言われます。この間は、坂下千里子さんに「小籔さんて飲んでいるときは全然怒らない、ジェントルマンですよね」と言われましたし(笑)。中嶋私は(川谷)絵音さんの第一印象をあまり覚えていなくて。昔、渋谷にあるライブハウスのeggmanで、私がボーカルとギターをやっているtricot(トリコ)というバンドとindigo la End la Endが対バンしたときが初対面なんです。覚えているのは、その後に全国ツアーを一緒にまわらせてもらったときのことですね。絵音さんはライブのMCがすごく長くて面白くて、淡々と話し続けるんですが、演奏しているときとのギャップがスゴイから、ユニークな人なのかなと感じました。――今日はご不在のくっきー!さんと、新垣さんの印象は?小籔ガッキー(新垣さん)は、いろいろな騒動後にメディアに初めて出たのがこの番組だったんですが、えらい上品な方やなと思いました。よく「僕は『BAZOOKA!!!』で救われました」と常々おっしゃるし、ジェニーハイに誘っても「恩があるのでやらせていただきます」と快諾する、何に対しても男気のある方です。マネージャーをされているお兄さんいわく、「『BAZOOKA!!!』のお話じゃなかったらバンドは組んでいないはず」と。それに、才能のある川谷Pの存在も大きかったようです。くっきー!は芸歴が一個下なんですが、吉本興業の養成所のNSCの同期に情報通がおって、「一番面白いのは野性爆弾です」と聞いていて。下には次長課長、チュートリアルやブラマヨとかおるんですが、「一番面白いの誰や?」と聞くと、ダントツ1位が野性爆弾。ただ、あの見た目だしと思ったけど、会ったら気のええやつでしたね。とにかく、ジェニーハイはいいバンドです。――そもそも川谷さん、小籔さん、中嶋さんが、プロになる前に憧れていた歌手やアーティストの方などと、初めて購入したCDなども教えてください。川谷これまで音楽の変遷はいろいろとあるんですが、もとは小学生のときに、T.M.Revolutionの西川貴教さんに憧れていました。初めて買ったCDは、EXILEです。中学1年生ぐらいのとき『EXILE ENTERTAINMENT 』(2003年)というCDを買いました。当時は楽器が弾けないので、鼻歌で曲を作っていて、最高のメロディが出来た! と思った鼻歌のメロディが完全にEXILEのアルバムの曲と一緒だったこともありました(笑)。聴きすぎていたんですね。「あっ俺、音楽の才能無いかも」って当時思いました。小籔まあ、子どもやったらそうなるわなあ(笑)。僕は、親が音楽を好きすぎて、母親は「大阪球場にマドンナのライブ行ってくるわ」「ジェームス・ブラウン行ってくるわ」とか。掃除機をかけるときもよくレッド・ツェッペリンとか、洋楽を爆音でかけていました。僕が小さいときにおばあちゃんから「ファミコンのカセットを買うたるからギターを習いに行け」と言われることも。うちは自転車屋やったんですが、自転車が好きと思ったこともないですが、すでに自転車に囲まれていたという状況に近いというか、無意識のうちに音楽のシャワーを浴び続けていたような感じです。車に乗るようになってからは、FMラジオを聴くようになって、TOKYO No.1 SOUL SET、ピチカート・ファイヴ、スチャダラパーとか、車に乗っていた時期に一番音楽を聴きましたね。中嶋小学校のときに、モーニング娘。にハマったのが最初ですね。中学高校とバンドをしたので、また好きな音楽も変わっていきました。一番好きなロックバンドは、システム・オブ・ア・ダウンです。川谷ギターが弾けなくて、コピーするのをやめたやつ?中嶋そう、難しくて、まだ全然弾けないんです(笑)。絶妙な曲がいっぱいある飽きないニューアルバム――2021年9月1日に2ndアルバム『ジェニースター』をリリースされますね。川谷前作が約2年前のリリースなのですが、僕がやっている各バンドでは毎年アルバムを出しているので、2年ぶりというととても期間が空いた感覚もあります。ただ、ジェニーハイはすごくレコーディングに時間がかかるので、そのぶん準備できて良かったなと。練習の時間もできるので、だんだんと曲のレベルが上がっていっています。そういう意味では、早く作らなくて良かったなって(笑)。いろいろなジャンルの曲が入っていて、バンドの成長記録としては、やっと世に出せるものになったかなという感じ。老若男女が聴けるアルバムになりました。――6月に先行配信された収録曲1曲目「華奢なリップ feat.ちゃんみな」では、実際にラッパーのちゃんみなさんと組んでみていかがでしたか。中嶋ちゃんみなさんとは今回初めてお会いしました。レコーディングは別々だったのですが、MV撮影のときに一緒になって、そのときに表現力が圧倒的だなと。コラボさせてもらって、刺激を受けました。川谷コラボ作品でも基本的に、いつもは僕が歌詞を書くのですが、この曲は最後のラップの歌詞をちゃんみなに書いてもらってコライトをして、新しい刺激をもらいましたね。こういう書き方もあるんだな、こういう譜割りもあるんだなと。歌もちゃんみなが自分で録ったものを1トラックのみ送ってきて、たぶんコレという歌のバランスやこだわりが強く本人のなかにあるようで。ジェニーハイって、良くも悪くもふわっとしているので、彼女のようにストイックな人が入ってくると、バンドの空気も良くなると思いました。小籔川谷Pもイッキュウさんも、ちゃんみなに刺激をもらったんですね。僕は、『BAZOOKA!!!』内の企画「高校生RAP選手権」にちゃんみなが出ていて、「あの子はみんなを惹きつける子」やなとその当時から言っていました。出演の翌年(2017年)にその子がデビューして、パーティに歌いにきてもらったり、彼女のミュージックビデオに出たり、ご飯に行ったり。高校生のときから知っているから、僕のなかでは東京の娘、親戚の子という感じ。うちの娘もちゃんみなが好きですし。ある日、突然、川谷Pが「ちゃんみなとコラボしようと思うんです、知ってますか?」と言われての今回です。みんなで串カツを一緒に食べに行ったら、ちゃんみなが串カツを上品に食べていたんですよ。僕は、そんな串カツの食べ方に刺激を受けましたね(笑)。――2曲目「夏嵐」は7月配信の軽やかなサマーナンバーです。川谷ジェニーハイの曲はシンプルな曲もあるんですが、わりと複雑な曲も多いので、この曲はシンプルに作ろうと思って。アルバムのスパイスになるよう、疾走感のある曲を作ろうと考えました。夏の曲にしようとは思っていなかったんですが、あとから歌詞で夏らしさを入れ、J-POPとして広く聴いてもらいたいので、イントロから耳なじみの良い曲を作りました。中嶋今作のなかで「夏嵐」が一番意外で、これまでになかった感じの曲でした。歌うときもどういう感じなのか想像できなかったというか、できあがって聴いてみたら、すごく爽やかでずっと聴いていられる曲に仕上がったと思いましたね。小籔イッキュウさんの声が一番可愛らしいな、合ってるんやろうなと。僕はドラムのところから聴いて、だんだんマスターして余裕が出たら、歌を聴いて、楽しくなってきました。たくさんの人に聴いてもらいたいなと思いますね。――6曲目「良いんだって」や、8曲目「ジェニーハイボックス」もみなさんで歌うラップ曲ですが、バンドの演奏曲とラップ曲とのバランスが絶妙ですよね。「ジェニーハイボックス」は自己紹介があって、聴いていて楽しくなります。川谷ラップを作っていると、自己紹介する感じになっちゃうんです。「良いんだって」は全然自己紹介の曲じゃないですが、こんな曲もラップでできたりしますし。新垣さんのソロラップも「ジェニースター」には入っていて、新垣さんは最初いやがっていたんですが、最近は「ラップの王になる!」と言うまでになっているので(笑)。わりとラップの曲は増えてはいますね。ジェニーハイにしかできないことがやりたいので、普通のバンドだったらこんなことやったらただ寒いだけかもしれないんですが、新垣さんは真面目にやっているだけで面白いじゃないですか。あれはもう天性のものですし、この5人のバランスだからできることです。小籔ライブではガッキーのラップがすごい盛り上がるんですよ。女の子からの声援のあとに、めちゃくちゃ下手なラップが聴けるという(笑)。僕が見ていても、この人がメンバーでいてくれて良かったです。ーーアルバムのタイトル曲となる11曲目「ジェニースター」は、一番今作を表すということでしょうか。川谷表すと言えば表すんですが、ちょっとふざけた曲なので(笑)。ジェニーハイがもともと、「天才を超える」という意味なので、まだまだみんなスターじゃないんですよね。だから本当はスターじゃないけれど、例えばいきなり自分が超人になる夢を見るような、「スターになったらいいな」という思いを自虐的に表している曲なんです。――川谷さんはindigo la End、ゲスの極み乙女。、ichikoro(イチコロ)その他複数のプロデュースにも携わっていますが、ジェニーハイの楽曲制作にあたり心がけていることや、他のバンド制作の際と違う面があればお聞かせください。ジェニーハイはインディゴやゲスのように、いい意味で深く考えすぎないというか。ゲスとかインディゴとかは「べつにわかりづらくなってもいいや」と作り込んでしまうことも多くて。でも、ジェニーハイは、わかりやすさ、ポップさみたいなものを優先しています。――小籔さんは「よしもと新喜劇」の座長として、そしてお笑い芸人さんとして活動されている一方、2003年にラップユニット「ビックポルノ」(2014年に解散)、2016年にバンド「吉本新喜劇ィズ(よしもとしんきげきぃず)」を結成、音楽フェスティバル『コヤブソニック』を開催など、音楽活動にも積極的な印象です。小籔お笑いに関しては、努力したことがないんです。ぐうたらなんで、新喜劇に入って最初の2年間だけです、努力したのは。新喜劇も、いまはそれほど気を張ってやらんでも、目配りをすることもないですし。台本はだいぶん手間をかけて真剣にやっていますが、それ以外はそうでもないから。でも、いまはそれ以外のお仕事をさせていただくことが多くて、ドラマに出演させていただくときも、セリフだけはきちんと入れます。役者さんのほうが絶対に芝居がうまいし、僕は絶対下手やけど、セリフは覚えているから許しといたろうか、と思ってもらいたいと。音楽をやるときも、新喜劇でデビューする前ぐらいに、最初はスチャダラパーを聴いたときに面白くてカッコいいけど、逆に芸人がラップやったら面白いかもと。それでふとしたきっかけでラップをやることになって。新喜劇ィズのメンバーには、いつも言うてることがあって、例えばフェスで僕らが出るとなったら、絶対に裏で舌打ちしてるやつはおると。なんでお前と一緒に出なあかんねんと思う人が、言ってけえへんだけでおる。そこで、芸人がフェスに出てすみませんと思うんやったら、あいつめっちゃ下手やけど練習はちゃんとしてるな、下手やけど音楽に対しては真面目やなと思ってもらうのが大切や、と言っているんですよね。――イッキュウさんは、2010年からロックバンド「tricot」としても活動されていますが、ジェニーハイのシンガーのときは意識の違いはありますか。中嶋 tricotでは、長い間自分で作って自分で歌うことしかしていなかったので、ジェニーハイのデビュー曲「片目で異常に恋してる」が地獄のように難しかったんです(苦笑)。絵音さんの曲は一筋縄ではいかないとは予想していましたが、レコーディングでもすごく苦戦した記憶があって。でも、最終的にはその作業が自分の実になっていて、他の人が想像するゴールに向かって考えるというのはとても楽しくて。自分のなかでまた違う扉が開いた感じがあって、tricotのときとは違う脳みそを使っている感じですね。川谷「片目で異常に恋してる」は、コンピューターが歌うようなメロディなんですよね、ボカロのような譜割りで。人間が歌うには限界の速さに近いんです(笑)。これが1曲目だったから、そのあとはスムーズに受け入れられるというか。この曲は変拍子だし、ドラムとギターも全然違う譜割りで弾いてもらうような難しい曲をやっていたから、あれ以上に難しいものはいまやってないですね。自分で演奏するのもいやだから(笑)。小籔難しいものばっかりになったら、こちとら、ヒィヒィ言わなあかんから、難しい曲をやりたいときはその気持ちだけにしておいてください(笑)。――では今回のアルバムをどんなふうに聴き手に聴いてほしいでしょうか。川谷楽しいアルバムですが、全曲に切なさもあって、ただ明るいだけのアルバムでもない。絶妙な曲がいっぱいあるので、好きなときにいつでも聴いてほしいですね。クリスマスの曲もありますし、飽きないアルバムになっています。中嶋私は家でも聴いていて、楽しくてワクワクする感じがわいてきます。歌詞自体は両手放しで楽しいです、という話ではないのもあるんですが、音がすごいワクワクするので、音楽を聴いて楽しんでもらえたらと思います。小籔全部通して聴いていただきたいですし、1曲だけ鬼聴きする感じでもいいですし。わりと長いこと、聴いていただけるようなアルバムちゃうかなと。ぜひ買っていただきたいなと思います。――9月25日には初のアリーナ公演が控えていますが、どのようなライブになりそうでしょうか。川谷けっこう効果的な演出にもなりそうで、かなりバラエティ豊かなステージになると思います。小籔芸人がおるバンドのライブじゃないような、「めっちゃアーティストやん」っていう感じのライブになります。曲がいいのはもちろんですが、きっと12回は笑うと思います、そのうち8回は、ガッキーで笑うでしょうけど(笑)。「65歳までジェニーハイを続けたい」(小籔)――よろしかったら普段のご様子もお聞かせくだい。みなさんはおうち時間をどのようにお過ごしですか?川谷以前は映画を観ることもありましたが、最近はずっと観れなくて。曲を作るときは集中しているんですが、きっと人間は脳の容量があって、いろいろな曲を作っているとそれ以外のことは端から忘れていくんじゃないかなと。映画を観た直後しか内容を覚えていないぐらい、集中できないんです。だから、2、30分で終わるようなアニメをずっと流して、部屋の掃除をしたりしていますね。(新旧のアニメが鑑賞できる)バンダイチャンネルで視聴できる『わがままフェアリーミルモでポン!』(テレビ東京系列シリーズは2002年〜2005年放送)という、ほのぼのアニメなんかを観ています。BGM代わりにちょうどいいんです。それ以外のときは基本曲を作ったり、あんまり休みという休みはないですね。前はご飯を食べに行ったりしていましたが、いまはできないですから。小籔よう働いてはりますもんね。1回、沖縄の砂浜を携帯も持たずに裸足で歩くような日が、1年に1回ぐらいは必要かもしれないですね。川谷そうかもしれないですね、デトックスしないと。デトックスといえば、いまは以前は飲んでいたコーヒーもやめて、お酒も飲まないので、寝起きもよくてすごく調子がいいですね。なんとなくやめてみたんですが、カフェインにおかされていたんだなと(笑)。曲を作っていても、以前とは違う気もします。小籔諸説ありますけど、昼の14時以降にコーヒーを飲んだら、夜の睡眠に影響があるって、言いますもんね。川谷一番長いと、14時間ぐらいカフェインがきいちゃうという説も。小籔僕はいま、ドラムと(オンラインゲームの)「フォートナイト」の2本をやっていますね。ドラムもゲームも、基礎練習が必要なものですが、ドラムで好きな曲を叩いているときと「フォートナイト」をやっているときが、何も考えなくていい楽しい時間です。それ以外は、社会の闇に怒っていたり、子どもたちの将来が心配だったりして……僕も沖縄に行って、裸足で歩かなあかんかな(笑)。中嶋私も家では、曲を作るか、服を作るか、絵を描くかですね。仕事でもあるけど趣味でもあるので、これをやっているときは一番癒されます。自分でブランドをやっているので、カバンなど持ち物にどういう機能をつけようかな、とか考えるのが楽しいので、家ではそういうことをしていますね。――美容面では気をつけていることは?中嶋健康的な生活が一番いいと思っていて、犬を飼っているので、早寝早起きを心がけています。川谷めちゃくちゃ早朝に散歩に行ってない?バンドマンぽくないよね。中嶋そうですよね(笑)。いま暑いので早朝に犬の散歩に行っています。散歩しているときは携帯も見ないですし、1時間ぐらい散歩するので、脳がクリアになりますね。それが一番美容にも、結果的に良さそうかなという気がします。――では最後に、バンドを代表して小籔さんから、ジェニーハイの今後の抱負をお聞かせください。小籔「紅白歌合戦」に出て、日本の三大フェスにも出て、全国ツアーも毎年開催して、それが65歳まで続けばいいなと思っています。僕が65歳になるまで、ジェニーハイを続けたいと思っていますので、目標を達成するために、みなさんさまざまなご支援をお願いします。取材後記まさにスターが集結した、ジェニーハイのみなさん。ananwebのインタビューの際は、川谷絵音さんの音楽の感性や秀逸さ、中嶋イッキュウさんのシンガーとしての魅力、小籔千豊さんの音楽や人生に対する真摯さを実感。とくに小籔さんは、筆者やスタッフの方にもお菓子を自ら配るなど、気配りが素晴らしい方。大阪出身の筆者としては、ジェニーハイの音楽もお笑いもたくさんの人たちに届いて、笑顔が広がることを祈っています。そんなジェニーハイのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみりジェニーハイPROFILE小籔千豊(Dr)、くっきー!(野性爆弾/B)、中嶋イッキュウ(Vo)、川谷絵音(Gt)、新垣隆(Key)からなる5人組バンド。バラエティ番組『BAZOOKA!!!』(BSスカパー! 2011年〜2019年)の知名度をあげるため、2017年にプロジェクトとして誕生。音楽番組や音楽フェスなどへの出演を目標に、当初は番組MCの小籔千豊、レギュラー出演のくっきー!、中嶋イッキュウの3人で結成。その後、3人からのアプローチにより、川谷がプロデューサー&ギターに就任。さらに小籔の推薦で新垣をメンバーに迎える。2018年3月、1st配信シングル「片目で異常に恋してる」でメジャーデビュー。2021年9月1日、2ndアルバム『ジェニースター』をリリース。9月25日、ぴあアリーナMMにてアリーナ単独公演「アリーナジェニー」を開催。InformationNew Release『ジェニースター』(収録曲)01.華奢なリップ(feat.ちゃんみな)02.夏嵐03.バイトリーダー典子04.BABY LADY05.コクーンさん06.良いんだって07.ルービックラブ08.ジェニーハイボックス09.卓球モンキー10.クリスとマス11.ジェニースター12.シャンディー2021年9月1日発売*収録曲は全形態共通。*トールサイズデジパック仕様、オリジナル漫画掲載「ジェニースター」ZINEを封入。(通常盤 CD)WPCL-13323¥3,300(税込)(初回限定盤 CD+DVD)WPZL-31892/3¥4,950(税込)(初回限定盤 CD+Blu-ray)WPZL-31894/5¥5,500(税込)*初回限定盤2形態には下記公演映像を付属。・ジェニーハイ ONEMAN TOUR 2020「みんなのジェニー」(2020.2.18@Zepp Divercity Tokyo)・ジェニーハイ無観客ワンマンライブ「ベイビージェニー」(2020.10.27@Zepp Tokyo)・ジェニーハイ1stフルアルバム『ジェニーハイストーリー』リリース記念フリーライブ(2019.11.27@六本木ヒルズアリーナ)・ジェニーハイ ONEMAN TOUR 2020「みんなのジェニー」Behind the scenes取材、文・かわむらあみり
2021年08月29日第74回カンヌ国際映画祭にて、日本映画初となる脚本賞をはじめ、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞の4冠を達成した『ドライブ・マイ・カー』。本作のメガホンおよび、大江崇允氏と共に共同脚本を務めた濱口竜介監督に、制作秘話や作品へのこだわりなどを語った。短編の映画化、意識したのは「村上春樹さんの物語であること」原作は、村上春樹さんの小説集「女のいない男たち」に収録された一つの短編。長い原作を映像化する際は、そぎ落とす作業が必要だが、今回は付け加えていくことが必須となる。「意識したのは村上春樹さんの物語であること。その核となるものは踏み外してはいけない。村上春樹さんだったらどうするのか…ではないですが、原作はもちろんですが特に村上さんの長編作品を参考にしながら、脚本化していきました」村上さんに許諾を取る際、ほぼ映画化された脚本に近い、セリフも入ったプロットを送り、意図を伝えた。「かなり詳細なプロットを送ったので、そこで許諾をいただいてからは『自由にやってください』というスタンスでした。脚本段階になって、現実の撮影に即して変更せざるを得ない部分もあったのですが、その都度村上さんにもお送りしてお伺いを立てても、特に何も言われることはありませんでした」三浦透子には「撮影が決まってから免許を取ってもらった」以前のイベントで「車内での会話劇が物語のキーとなる」と話していた濱口監督。西島秀俊さん演じる主人公・家福と、ドライバーとして雇われた三浦透子さん扮するみさきの、微妙な距離感は、作品の肝となる。「みさきが運転席、家福が後ろの席という位置関係は脚本で指定していましたし、本読みの段階で、細かくコミュニケーションを取っていましたが、役の解釈や本番の演技に関しては役者さんたちにお任せしました。本番になれば役柄を理解している役者さん同士の相互反応が、もっとも信じられるものになる。その意味では、演出的にどうこうというよりは、二人が作り出した空気感が映像に出ていると思います」西島さんの作品を好きでずっと観ていたという濱口監督。「西島さんは、居住まいの力強さがある」と評していたが、そんな西島さんと相対するみさきという役を三浦さんに託した。「三浦さんとは『偶然と想像』という作品のキャスティングで初めてお会いしたのですが、そのときにこの映画の企画も進んでいて、みさきという人はどんな人がいいのか考えていたんです。三浦さんと会ってお話しするうちに『みさきがいた』と感じるようになりました」劇中、三浦さんは手慣れたハンドルさばきで真っ赤なサーブ900を操るが、オファーした段階では、運転免許を持っていなかったという。「実はこの作品のオファーをしてから、三浦さんには免許を取りに行ってもらったんです。そこから運転の特訓してもらいました。結果的にすごく上手くなったと思います。もともと三浦さんは運転が上手そうな顔だなと思っていたんですが(笑)」多言語演劇「ワーニャおじさん」に込めた思い舞台演出家である家福は、原作にも出てくるアントン・チェーホフの戯曲「ワーニャおじさん」を多言語演劇として演出するシーンがある。「人は意味を通じてコミュニケーションをするのが普通です。言葉を使って意味を細分化できるぶん便利ですが、意味の陰に隠れてしまうこともたくさんあるんです。相手の言語が分からないなかでお芝居すると、言葉の意味以外でやり取りをしようとする。それが大事であり、作品の本来の意味にも通じると思ったんです」「ワーニャおじさん」で登場する言語は、日本語、韓国語、韓国語手話、タガログ語、北京語と多種多様だ。演じる俳優さんたちも、強烈な個性を発揮する。「みなさん俳優として活動されている方たちを、オーディションで選ばせてもらいました。演技力というよりは、演じる役に合っているかどうかが大前提。あとは、20~30分と短い時間でしたが、人柄の良さと、会話をしたときの理解力が高いなと感じた方にお願いしました。みなさんとても魅力的なお芝居をしてくださいました」劇中、何度も何度も本読みのシーンが登場する。濱口監督自身も、映画監督として本読みは重視しているのだろうか。「ここ数年の作品はそうですね。本読みをしていくと、言葉の意味が希薄化していくんです。最初はセリフの意味をダイレクトに受け取り『このセリフを言うのが恥ずかしい』という気持ちが声のなかにも感じられることがあるのですが、本読みを繰り返すことによって、言葉の意味に囚われず、言葉が自動的に出てくるようになる。本番では予期せぬ思いが入ることもあり、言葉の多い映画を撮る上では、有効な方法であるのは確かだと思います。ただ、今後もこういう映画を撮り続けるかは分からないので、やり方は変わるかもしれません」良いものを作るために譲れない部分と、変化していく必要があるもの本作のカンヌ国際映画祭・脚本賞をはじめ、第71回ベルリン国際映画祭で短編集『偶然と想像』が審査員グランプリ(銀熊賞)、第77回ヴェネチア国際映画祭では共同脚本を務めた『スパイの妻<劇場版>』が銀獅子賞(監督賞)を受賞するなど海外でも高い評価を受けている濱口監督。作品を作る上で大切にしていることは、良いものを作るために妥協せず、こだわるところはしっかり“我を通すこと”。「この作品でもこだわった部分は二つありました。一つは本読みの時間をしっかり取ること。普通の映画作りのなかでは、なかなか時間をとれない部分であり、そこはスケジュールを組む人の理解が必要になります。あともう一つは、車をちゃんと公道で走らせるということ。街中で車に照明を付けて走らせるというのは、制作的にもかなり体力が必要な部分なんです。いまは室内で走らせて合成しても、多くの人は分からないほど技術は向上していますが、実際に走らせないと、俳優さんの演技に影響すると思うのでお願いしました」“良いもの”を作ろうという強い意志のもと、キャストとスタッフが強固な絆で作品に向かうことで珠玉の作品ができあがる。しかし、本作も撮影中断を余儀なくされたように、コロナ禍が映画界にも大きな影を落とす。「前向きに捉えるなら、根本的な作り方を考え直すいい機会かもしれません。これまで良いと思っていた慣習が、もしかしたら無駄なことかもしれない。いまできる状況で、一番良いと思うものを作るというシンプルな考えによって見えてくることもあると思います」濱口監督は「役者さんの演技に尽きると思います」と作品の見どころを語る。この言葉通り、179分という時間いっぱいに、俳優たちの見逃してはならない、言葉や仕草、吐息や空気が映し出されている。『ドライブ・マイ・カー』は全国にて公開中。(text:Masakazu Isobe)■関連作品:ドライブ・マイ・カー 2021年8月20日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開(C)2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
2021年08月27日【音楽通信】第86回目に登場するのは、今年“リアル中学生”メンバーを含む新メンバー3名が加入し、新9人体制となった「誰もが永遠に中学生」というコンセプトのアイドルグループ、私立恵比寿中学!アイドルやアニメの影響から“エビ中”の道へ写真後列左から、真山りか、安本彩花、星名美怜、柏木ひなた、小林歌穂、中山莉子。前列左から、桜木心菜、小久保柚乃、風見和香。【音楽通信】vol.862009年8月に結成されたアイドルグループ、私立恵比寿中学。真山りかさん、安本彩花さん、星名美怜さん、柏木ひなたさん、小林歌穂さん、中山莉子さんの6名に、2021年5月、応募総数約7,000人のオーディションを経て桜木心菜(ここな)さん、小久保柚乃(ゆの)さん、風見和香(ののか)さんの3名の新メンバーが加わりました。新9人体制となった通称「エビ中」が、2021年8月18日にニューアルバム『FAMIEN’21 L.P.』をリリースされたということで、メンバーから真山さん、桜木さん、小久保さん、風見さんにお話をうかがいました。ーー今回は真山さんと、新メンバーの方が3名いらっしゃいますので、まずはおひとりずつ自己紹介からお願いします。真山出席番号3番、真山りかです。声優さんと、アニメを観るのが大好きです。特技は声優の田村ゆかりさんの「イントロドン」のまねですが、披露したことはまだないです。桜木出席番号13番、桜木心菜です。特技はジャズダンスを踊ることと、I字バランスで、頭の横に足がつくぐらいに体が柔らかいこと。あとは辛いものを食べることも得意です。小久保出席番号14番、小久保柚乃です。特技は竹馬と長距離走と、公式プロフィールには書いてあるのですが、それほど特技ではないかもしれません(笑)。最近の特技はシャボン玉を上手に作ることができたことです。風見出席番号15番、風見和香です。一番の特技は、バースデーカード作りです。ーー自己紹介ありがとうございました。ではあらためまして、そもそもみなさんが音楽にふれたきっかけや憧れていたアイドルの方からお聞かせください。真山家庭では、父の趣味でジャズやレゲエぐらいしか聴いたことがなかったのですが、小さい頃にモーニング娘。さんをテレビで観て、「アイドルの音楽はこんなに明るくて楽しいんだ!」と惹きつけられました。そのモーニング娘。さんがきっかけで「歌を歌いたい」とアイドルを志すようになって、とくに初期メンバーの石川梨花さんが好きで、同じ「りか」という名前もうれしいですし、いまも憧れています。桜木小さい頃は、アニメのプリキュアに憧れていました。毎年プリキュアはシリーズとキャラクターが変わるのですが、私は『Yes!プリキュア5』(2007〜2008年テレビ朝日系)の世代だったんですが、なかでも「キュアレモネード」の春日野うららちゃんというキャラを推していました。うららちゃんは、学校に通いながら新人アイドルとしても活動するという設定なんです。いまの私たちと状況が重なって、学校とアイドルを両立しながら頑張っているから応援したいなって。実際のアイドルでは、AKB48さんも好きでよく曲を聴いていました。なかでも、板野友美さんが一番好きで、アイドルグループのなかでひとりだけ茶髪のギャルだったところに惹かれて、私もアイドルになりたいと思いました。小久保私もAKB48さんが大好きで、よく聴いていました。なかでも渡辺麻友さんに憧れて、アイドルになりたいと思いました。あとは、『クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!』(2009〜2013年NHK総合)のまいんちゃん役の福原遥さんにも憧れて、芸能界に入ろうと思いました。風見私も(桜木)心菜と一緒で、プリキュアに影響を受けました。私は『ドキドキ!プリキュア』(2013〜2014年テレビ朝日系)の世代です。アニメのエンディングに流れる歌を小さい頃はずっと歌っていて、プリキュアが踊っているのに合わせて踊っていました。姉がふたりいてチアダンスをやっていたので、姉の様子を見ていて、ダンスは面白いなって。あと、姉がカラオケでAKB48さんの「ヘビーローテーション」を歌って踊っていたので、そこでアイドルにも興味を持ちました。音楽が好きですし、歌って踊ることが仕事になったら楽しいだろうなと思って、エビ中に応募したんです。ーー2021年の今年は、病気療養中だったメンバーの安本彩花さんが復帰され、YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」で歌う姿が公開3日で120万回再生と反響を呼びましたね。そして新メンバーとしてみなさんが加入し、9人体制になって新たなスタートを切りました。真山3人が入って、早くも3か月経ちました。(安本)彩花も寛解をして、グループとしても、ようやく9人で歩き始められたという感覚があります。仕事によっては全員ではなく、何人かで動くこともありますが、9人でパンフレット撮影や生写真撮影をする機会があって、9人のグループになった実感がわきました。新しいかたちでの「FAMIEN e.p.」シリーズ最新作真山りか。1996年12月16日、東京都生まれ。身長154.2cm。A型。ーー2021年8月18日にニューアルバム『FAMIEN′21 L.P.』をリリースされます。2015年より配信限定でリリースされてきた「FAMIEN e.p.」シリーズの最新作となる、今作に込めた思いから教えてください。真山だいたい年に1度、夏の恒例野外ワンマンコンサート「エビ中 夏のファミリー遠足」略して「ファミえん」といって、ファミリー(ファンの方の呼称)が会場に遠足のようにバスツアーなどで集まってくださって「帰るまでがファミえん」ですと言って、楽しんでいただく大きなライブがあるんです。そこで毎年テーマソングを作っていまして、今回はいままでの楽曲と、9人での新曲も含めて、この『FAMIEN′21 L.P.』というアルバムでのCD発売になりました。「ファミえん」では明るい楽曲が多いので、そんな曲たちがまだCD化していなかったということにあらためて驚きましたが、こうして3人が入ってきてくれて新しいかたちでみなさんにお届けすることができて、とってもうれしいですね。初期から中期までの楽曲はわたしたち先輩メンバーも再レコーディングしまして、3人の歌声プラスいまの歌声が聴けるので、楽しめると思います。「THE FIRST TAKE」に出させていただいて知っていただいたファンのみなさんにも、エビ中といえばアイドルらしからぬ楽曲というイメージだとしたら、今作にはアイドルっぽい楽曲が詰まっているので、新しい発見もあるのではないかなと感じています。桜木心菜。2005年9月14日、茨城県生まれ。身長160cm。AB型。桜木わたしたち新メンバーは初めてレコーディングをさせていただいて、初めて自分たちの声が入っている楽曲を聴いて、新鮮でした。明るい曲もかっこいい曲もゆったりした曲も収録されていて、聴いていただける方に楽しんでいただける作品になっているんじゃないかなと思います。小久保いろいろな方に聴いてほしいですし、6人体制のエビ中で歌っていた曲にも、新たにわたしたちの声を再収録して入れているのですごくうれしいです。風見ボイストレーニングの先生にもたくさん教えていただいて頑張ったので、ぜひ私たち“新メンバーはこんな声だよ”というのも覚えてくださるといいなと思います。ーー収録曲についていくつかおたずねします。新体制初の新曲で、残念ながら中止となりましたが、2021年の「ファミえん」テーマソングでもあるキャッチーな11曲目「イヤフォン・ライオット」は、どのようなイメージで歌っていますか。真山初めて聴かせていただいたときに、エビ中ではデビュー曲「仮契約のシンデレラ」などを書いてくださっている作曲者の杉山勝彦さん、そして児玉雨子さんの歌詞がすごく心に突き刺さって。イヤフォンで音楽を聴くと、コロナ禍で溜まってしまうフラストレーションがパッと忘れられて発散できて、耳だけでモヤモヤが完結できるんだという感動を覚えました。その感動が、聴いてくださるみなさんにも伝わればいいなと思っています。桜木最初に聴いたときは、元気でパワーのある歌だと感じましたし、初めて9人で制作した「イヤフォン・ライオット」は思い入れのある曲なので、ぜひ聴いていただきたいです。いまはコロナ禍で不自由に過ごしている部分もありますが、それに打ち勝つぞー!壁を壊すぞー!という感じで、思春期だったり反抗期だったりするいまの学生時代のもやもやを発散したい意味でも、私たちにぴったりな曲だと思っています。レコーディングでも、思いをこめて歌うことができました。小久保柚乃。2007年3月20日、愛知県生まれ。身長157cm。AB型。小久保「イヤフォン・ライオット」は、明るくていい曲なのでたくさん聴いてほしいですし、私と同じ中学生の方や、高校生といった学生の方ならより共感できる歌詞だと感じました。風見「君らしさなんだった!」という歌詞があるのですが、ハッとさせられてとても心に響きました。聴いてくださるみなさんの心にも残る歌詞だと思いますし、気持ちを込めて歌いました。ーー歴代のファミえんテーマソングを完全網羅している今作ですが、みなさんの思い入れのある曲といえば、どの曲になりますか。真山私は収録曲最後を飾る「いい湯かな?(2021 ver.)」ですね。毎年「ファミえん」で歌い続けてきた曲で、8分もあって長すぎるということでワンマンライブのときしか歌えない曲なんです。「おじいちゃん いい湯かな?おばあちゃん いい湯かな?」と歌う、あったかい気持ちなれるすごくいい曲です。こんなにもたくさん曲があるなかで、今作の収録曲の最後がこの曲で、また歌えたという喜びが大きくて。最後にこの曲がくると、味わいがさらに深くなる、最高の配置になっています。ぜひいろいろな方に聴いていただいて、優しい気持ちになっていただきたいですね。桜木私は、2曲目の「ラブリースマイリーベイビー(2021 ver.)」という曲です。とてもかわいらしい曲で、自分の声が高くないから合わないんじゃないかと、レコーディングのときに少し苦戦しました。でも、苦手意識を持たずに楽しく明るく歌うよう意識して、完成したものを聴いてみたら、自分の声が明るく聴こえてきて「高い声も出せるんだ」とうれしくなって、頑張ったぶんの思い入れがあります。3曲目の「誘惑したいや(2021 ver.)」も、合宿で急遽覚えないといけなくなった曲で、聴くとその合宿を思い出しますね。ーー合宿というのは?真山新メンバーオーディションの最終の合宿審査がありまして、3泊4日の合宿をやらせていただきました。みんなが「誘惑したいや」を最終日に披露してくれまして、3人3組でチームを組んでもらって、わたしたちとレコード会社の人と事務所の人の前で、歌ってくれたんです。小久保合宿はすごく緊張しました。そして私の思い入れのある曲は7曲目の「朝顔 (2021.ver.)」です。私たちがセリフを言う部分があるのですが、新しいメンバー用に、作詞の(元チャットモンチーの)高橋久美子さんが朗読詩を加筆してくださって、今回9人全員の朗読詩が楽しめるようになりました。そのセリフ部分を録り終えたときに、レコーディングをしてくださった方が、「すごい」と言ってくださって、すごくうれしかったです。風見和香。2007年8月25日、東京都生まれ。身長158cm。風見真山さんと同じく「いい湯かな?(2021 ver.)」に一番思い入れがあります。サビの最後の部分を歌わせていただいたので、聴いてくださる方の印象に残るようにしないとと頑張りました。ボイトレの先生にもたくさん質問して、何テイクも録ったので、注目して聴いてほしいですね。3曲目の「誘惑したいや(2021 ver.)」では、合宿のときと同じ部分を歌わせてもらっていて、合宿で大変だったことを思い出しながら歌っています。レコーディングで苦戦したところもありましたが、できなくて悔しかったところはまた「ファミえん」などのライブでも、しっかり歌えるようになれたらと思っています。ーー5曲目「summer dejavu」のアップデートとミックスを、作曲、編曲、プロデュースを担当した大沢伸一さん自らが今回務めていますが、ハワイアンな印象でゆったりとした楽曲です。真山もともとオールユニゾン曲で、新メンバーは歌入れしていますが、今回はわたしたち先輩メンバーはレコーディングしていない、2016年の楽曲になります。4年前のわたしたちの歌声と、いまのみんなの歌声が合わさっていて。昔のわたしたちの歌声と新メンバーの歌声とのフュージョンという、不思議な感覚がありますね。新メンバーの3人の歌声が入ると、ユニゾンがどこか変わった気がしますし、いまの私たちが歌っても大人っぽい楽曲なので、この曲の魅力であるユニゾンと歌詞とのアンバランスさがさらに増しています。ーー以前の曲は先輩メンバーの方は新たに録り直していない曲もあるけれど、新メンバーの方は全曲録っているということですよね。真山 そうです。初期から中期までの楽曲を再レコーディングしていますが、わたしたち先輩メンバーが再録したのは、1曲目「ご存知! エビ中音頭(2021 ver.)」と2曲「ラブリースマイリーベイビー(2021 ver.)」と4曲目「ナチュメロらんでぶー(2021 ver.)」と12曲目「いい湯かな?(2021 ver.)」になります。あとはパートごとで、増えたところは録っていたりしますね。「9人のエビ中はいいね」となったら明治神宮球場へーーお話は変わりますが、おうち時間が長引く現在、みなさんがいまハマっていることを教えてください。真山けっこう前からなんですが、ピクルス作りをしています。もともと酢の物が好きで、いまの時期は夏バテもしますし体力を落とさないためにも、何かいい案がないかなと思っていたら「ピクルスがある」と気づいて(笑)。自分で漬けています。お酢の分量やスパイスなどの調味料の分量によって、味もいろいろと変わってくるので、どんなお野菜でも漬けられるんですよ。いま漬けているのは、オクラのピクルスです。一度湯通ししているので、多少ふにゃっとしていますが、ピクルスにすると粘り気と酸味がすごくおいしいです。桜木私は特技でも言ったんですが、激辛料理にハマっています。以前は全然食べられなくてカレーも甘口でしたし、歯磨き粉も辛いのはダメだったんですよ(笑)。でも、あるとき突然、辛い料理が好きになって、純豆腐を激辛にしたうえで、スパイシーな唐辛子の粉を入れて食べたりもできるようになりました。あとは小説を読むことにハマっています。とくに、お風呂上がりのゆったりした時間に小説を読むと、心も体もリラックスできますよ。最近だと『みんな蛍を殺したかった』(木爾チレン著/二見書房)という小説を読みました。ハッピーエンドではないんですが、後半にいくにつれてすごく盛り上がっていって、本当は小説を読むのに時間がかかるんですが、この小説はすぐ読んでしまいました。小久保私はアニメを観ることが多いですね。前は漫画のほうを読んでいて、いまはアニメのほうを観てハマっているのが、『魔法少女サイト』(2018年MBSほかアニメイズム枠/現在はアマゾン・プライムビデオでも配信中)です。すごく面白いです。あとは1年中ですが、入浴剤にもハマっていてバスボムがすごく好きなので、毎日湯船に入れています。石鹸の香りが一番好きです。お湯に溶けると、中から何かが出てくるバスボムも好きで、サンリオのキャラクターが中から出てくる大きな「キャラボム」というのも集めていて、昨日やっと好きなキャラクターが出てきたので楽しいです。風見私はバランスボールにハマっていると言いますか、バランスボールに乗りながら、テレビを観たりスマホを使ったりしています。そうすることで、知らないうちに体幹がついたりするので、遊んだり正座して乗ったりしていますね。あとYouTubeで、声優の花江夏樹さんがやっているゲーム実況にもハマっています。『バイオハザード ヴィレッジ』という最新作のゲーム実況を何本かにわけて実況されていて、怖いシーンもあるんですが花江さんの叫び声が聴けるので、どのシーンも楽しく観ています。ーー続いては、みなさんの美容法があればお聞かせください。真山実は、小学6年生からずっと体重が変わっていなくて、体型維持を心がけています。いま24歳で今年25歳になるんですが、大人の女性らしい体型になると思うので女性らしいラインは残しつつ、鏡を毎日見てどこが自分にとって余分かそうじゃないかちゃんと見極めて、自分に合ったストレッチや筋トレをするようにしています。あとは、お水をしっかり摂るようにしていて、普段のお水も常温にして、体を冷やさないように心がけていますね。桜木いま15歳にしては気を遣っているほうなのかなと思うのは、毎日こまめに日焼け止めを塗ったり、化粧水に混ぜて使うビタミンCの粉があるので使っていたら肌もきれいになって、思春期だとできやすいニキビもおさえられています。そして食後にも、ビタミン剤を飲むのですが、内側からも外側からもビタミンを摂っています。以前、無理な筋トレをして腰を痛めたことがあったのですが、真山さんも言っていたように、自分にあった筋トレをやって、腰痛にならない筋トレやストレッチを意識してやっていますね。小久保私はみんなほど美容に気を配ってはいないんですが、学校に行くときは長袖を着たり、通学で半袖のときは上にカーディガンを羽織ったりしています。スカートも脚が日焼けしないようにスカート丈を絶対折らずに、膝丈をちゃんと守って履いていますね。少しでも日焼けしないように、だいたい日陰にいます。風見けっこう食べ物には気をつけていますね。ついお菓子を食べちゃうので、食べる前に最初から「今日はこれとこれとこれしか食べない」と決めて、1回袋からお菓子を取ったら、取ったぶんしか食べないと決めています。ダンスのレッスンのときにいただくお弁当はお肉が多いので、そのぶん家では母がお魚のメニューを考えてくれたりと、バランスの良い食事をしています。あとは野菜も入っているし、味噌は塩分もあって良いことがたくさんあるので、お味噌汁は絶対飲むようにしています。ーーみなさん、いろいろとお話をありがとうございました。では最後に、代表して真山さんから、今後の抱負をお聞かせください。真山6人体制のときに、エビ中でどこに向かっていきたいのかという「目標会議」をみんなでしまして。そのときに、エビ中は(所属事務所の)スターダストプロモーションの中でもライブを多く行っているアイドルですし、私たちもライブを大切にしてきたアイドルグループですので「いつか明治神宮球場に行きたい」とそのときに決めました。そのためにも、今年も来年もできれば精力的にライブ活動やグループ活動を頑張って、「9人のエビ中はすごくいいね」と言ってもらえるようになった暁には、明治神宮球場でワンマンライブができたらいいなと思っています。取材後記新たに9人体制となった私立恵比寿中学から、今回は真山りかさん、桜木心菜さん、小久保柚乃さん、風見和香さんにリモートインタビューさせていただきました。先輩メンバーである真山さんはテキパキと、新メンバーのみなさんは一生懸命インタビューに応えてくださる姿が初々しく、こうしてみなさんが一丸となって、新たなエビ中を盛り上げていかれるのだなと実感。そんな私立恵比寿中学の魅力が伝わるニューアルバム、みなさんもぜひチェックしてくださいね。取材、文・かわむらあみり私立恵比寿中学PROFILE2009年8月結成。真山りか、安本彩花、星名美怜、柏木ひなた、小林歌穂、中山莉子、桜木心菜、小久保柚乃、風見和香からなる、9人組アイドルグループ。通称「エビ中」。初期活動イメージは「king of 学芸会」。「誰もが永遠に中学生」というコンセプトのもとに活動をスタート。2012年5月、1stングル「仮契約のシンデレラ」でメジャーデビュー以降、すべてのシングルがオリコントップ10入り。2013年12月、初のアリーナ単独公演をさいたまスーパーアリーナで開催。当時の日本人アーティスト史上デビュー最速記録を打ち立てる。2017年、4thアルバム『エビクラシー』を発売、自身初のオリコンウィークリーチャート1位を獲得。結成10周年の2019年は『MUSiC』『playlist』という怒涛の2枚のオリジナルアルバムをリリース。オリコン、Billboard両チャートで1位を獲得。2021年8月18日、ニューアルバム『FAMIEN’21 L.P.』をリリース。9月25日、26日に秩父ミューズパーク 野外ステージにてエビ中 秋声と螻蛄と音楽の輝き 題して「ちゅうおん」2021開催予定。InformationNew Release『FAMIEN’21 L.P.』(収録曲)01.ご存知! エビ中音頭(2021 ver.)02.ラブリースマイリーベイビー(2021 ver.)03.誘惑したいや(2021 ver.)04.ナチュメロらんでぶー(2021 ver.)05.summer dejavu(2021 ver.)06.HOT UP!!!(2021 ver.)07.朝顔(2021 ver.)08.イート・ザ・大目玉(2021 ver.)09.青い青い星の名前(2021 ver.)10.23回目のサマーナイト(2021 ver.)11.イヤフォン・ライオット(ファミえん2021 テーマソング)12.いい湯かな?(2021 ver.)2021年8月18日発売(初回仕様限定盤)SECL-2684¥3,300(税込)*トレーディングカード2種封入。スペシャル・ペーパーケース。取材、文・かわむらあみり
2021年08月26日【音楽通信】第84回目に登場するのは、とびきりの笑顔や元気とともに歌やダンス、圧倒的なライブパフォーマンスを届け絶大な人気を誇る、ももいろクローバーZの高城れにさん!アイドルを目指したのはテレビアニメの影響【音楽通信】vol.84歌はもちろん、アクロバティックなダンスも披露するライブパフォーマンスが絶大な人気を誇るガールズユニット「ももいろクローバーZ」、通称“ももクロ”のメンバー、高城れにさん。高城さんは、2015年から毎年ソロコンサートを開催し、2020年にはドラマで初主演を果たすなど、ももクロとともにアイドルシーンにおいて、トップを走り続けています。そんな高城さんが、2021年8月18日に1stソロアルバム『れにちゃんWORLD』をリリースされたということで、お話をうかがいました。ーーまずは、高城さんが幼少期に憧れていたアイドルや聴いていた音楽からお聞かせください。小さい頃から、いろいろな音楽を聴くことが大好きで、モーニング娘。さんに憧れていました。「アイドルになりたい」と思ったきっかけは、テレビアニメ『きらりんレボリューション』(テレビ東京系 2006〜2009年放送)です。アイドルを目指す主人公の月島きらりちゃんが大好きで、このアニメでアイドルという職業を知ったんです。でも、もともと歌がすごく得意だったわけでもなく、どちらかといえば苦手だったんですが、自分ひとりで歌うことは好きでした。そこから私自身もアイドルを目指すようになって、中学2年生のときにスカウトされて、その頃「月島きらりちゃんのようなアイドルになれたらいいな」と思っていたタイミングで、ももクロをやらせていただくことになりました。いまも音楽はジャンルにこだわらずに、アイドルソングやロック、洋楽も邦楽も聴いています。もともとソロコンサートを始めるにあたって新曲を作ったり、歌詞を作ったりする機会もあって、これまでに聴いてきたいろいろな音楽や歌詞から、影響を受けていると思います。ーーでは、ももクロとしての活動状況は現在、いかがでしょうか。2019年にリリースした5thアルバム『MOMOIRO CLOVER Z』以来、2年ぶりになるオリジナルアルバムを今年の冬にリリースすることが決まっていて、いまはそのアルバムの制作も始まっています。ソロ作は“心の味方”としてそばにおいてほしいーー2021年8月18日に、1stソロアルバム『れにちゃんWORLD』をリリースされましたね。実は今年、ソロアルバムが出せるとは思っていなかったんです(笑)。でも、ありがたいことに、ソロコンサートもたくさんやらせていただいていて、ソロ曲もアルバムが1枚できるぐらい作っていただいていて。昨年、うちのグループの佐々木彩夏がソロアルバムを出させていただいたんですが、ファンの方からちらほら「次はそろそろ、れにちゃんのソロアルバム出さないかな?」というお声をいだだいていました。「いつかみなさんのお声にお応えしたいな」とはずっと思っていて、自分でもアルバムを出せたらいいな、そしてソロ楽曲も増やしたいなと思っていたんです。ちょうど今年のソロコンサートが終わったタイミングで、今回のソロアルバムのお話をいただいて、本当に夢のようでしたね。普段はグループで活動しているので、ソロでアルバムを出すというのはまた違った感動があって、それこそアルバムは形として一生残るもの。ジャケットや楽曲など、いろいろなことにこだわって作りたいなと思い、制作しました。ーー今回、新曲が3曲あります。リード曲で1曲目となる「SKY HIGH」は爽快な夏曲ですね。自分自身で聴く曲はポジティブな歌詞と曲調のものが多くて、元気がないときはそういう曲に元気づけられてきたので、やっぱり自分で曲を出すときも明るい雰囲気にしたいと思って作ったものです。いまはとくにコロナ禍でみなさん元気がないときでもあるので、この曲で少しでも元気になってもらいたいということと、発売が8月で夏なので、夏らしい前向きな曲にしたくて。そしてイメージとしては、飲料系のCMソングに使われているような爽やかなものがいいなと、曲を作る段階でスタッフの方に相談しました。ーー新曲の7曲目「Voyage!」はシティポップ風な印象もあります。この曲は、「SKY HIGH」に比べたら、大人っぽい感じのかっこいい曲にしたかったんです。ポジティブな印象の曲というところは変えたくなくて、でもそれだとテイストが似てしまうので、ポジティブのなかにもみんなが少し持っているであろうネガティブな気持ちも入れてみました。歌詞でいうと、元気が出ない日もあるよねと落ち込む気持ちを肯定しつつも、どんなときも笑顔でいたいというニュアンスも入っています。みなさんにもきっと共感してもらえるような歌詞になったのではないかと思います。未来へ舵を切ろうという、人生を船旅にたとえたような感じで、この曲のミュージックビデオも航海風なものになっています。ーー新曲の11曲目「何度でもセレナーデ」は、アニメ『鬼滅の刃』主題歌「紅蓮花」を作曲した草野華余子さんが作詞作曲したミディアムバラードですね。そうなんです。他の新曲2曲がけっこうアップテンポな楽曲なので、この曲はしんみりしすぎない程度のバラードがいいなとお伝えして、いただいた曲です。恋人や友達、家族といった大切な人へ向けた、さまざまな状況の方に共感してもらえるような歌詞になっていて、それぞれの立場で受け取っていただければといいなと。そして歌詞の1番には、いまのコロナ禍で私が思ったことも入っていて。あまり会えないみなさんへ向けて、何度でも歌にのせて想いを奏でるよ、というメッセージや気持ちがこもっています。ーー過去のももクロのアルバムに収録されていた高城さんのソロ曲や、配信既発曲などもソロアルバムに収録されていますね。3曲目「恋は暴れ鬼太鼓」と4曲目「津軽半島龍飛崎」は、「-NEW RENI ver.-」となっていますが、以前との違いはどのあたりでしょうか。ニューバージョンになっている2曲は演歌なのですが、正直、そこまで変わってないんです。でも、もう10年以上前に録ったものですから、自分の中では声が変わっていたり、表現の仕方が変わっているんじゃないかなという意味で、新しく録り直したいと相談しました。自分自身でも未知なる挑戦でしたが、どんなふうに変わっているか、その成長過程の聴き比べも、みなさんに楽しんでいただきたいですね。ーージャケ写はどのようなコンセプトなのでしょうか。実は私のソロコンサートにしても“その年の等身大の私を見せる”ということが、しいて言えばコンセプトなので、ソロアルバムについても、いまの私をお見せする感じです。ポップな歌やかっこいい歌、演歌とジャンル問わずなので、そういう楽曲たちをおもちゃに例えて、おもちゃ箱をひっくり返したようなイメージ。夢の国があるとして、行けるとしたら、大人も子どもも関係なく、ワクワクした気持ちになるじゃないですか。そのおもちゃ箱とワクワク感をこのアルバムで表現したいと思っているんです。ーーボーナストラックに、お笑い芸人の永野さんと歌詞を共作され、ヒャダイン(前山田健一)さんが作曲された「ユーアノッアロン」も収録されています。以前、千鳥さんの番組で、永野さんと高城さんがコントをしている場面も観させていただきましたが、おふたりで組んだきっかけはなんですか。私がお笑い好きなことはもちろん、もともと永野さんが私たちの初期からやっているレギュラー番組『ももクロChan~Momoiro Clover Z Channel~』(テレビ朝日の動画サイトのオリジナル番組)に、ゲストとして来ていただいたことがきっかけですね。実はあまり覚えていないんですが、番組で永野さんがネタを失敗して凹んでいたときに、私が「元気出して、笑顔だよ」と話しかけたことで永野さんも私のことを気にかけてくれるようになって。永野さんからお誘いいただいて、アイドルと芸人さんのコントライブはいままでないですし、面白いんじゃないかと思ってコントをすることになりました。年に1回、永野さんとふたりでコントライブをさせていただいて、もう、4、5回になりまね。ーーお忙しいなかでコントに挑戦というのは、なかなかハードルが高そうな印象もありますが。でもすごく、普段とは違うことをやっていて新鮮ですし、もとをたどれば見せ方や表現の仕方の追求にもなって、永野さんとのライブは勉強になることばっかりなので、毎年私楽しみにしています。ーー―『れにちゃんWORLD』は、どのように聴き手に届いてほしいですか。いまはこういう時期なので、私自身もそうですが、凹むことやうまくいかないことが、例年よりあると思うんですね。そんなときに“心の味方”として、このアルバムがそばにあってほしいなって思いますね。「いろいろなお仕事に挑戦してお芝居もやりたい」ーーお話は変わりますが、普段、プロポーションをキープするためにしていることはありますか。スタイルキープは私自身、あんまりできていないところがあるんです。やっぱり食欲には勝てないじゃないですか(笑)。疲れちゃった、失敗したというような日はめちゃくちゃ食べちゃいますし、スタイルキープできているかいなかというと、ちょっとアヤシイところ。でも、一応気にしているのは、食生活です。カロリーをとりすぎないように、家では0カロリーのお砂糖を使っていたり、お米には「マンナンごはん」という、コンニャクのお米をとりいれていたり。お米を炊くときに、白米とマンナンごはんを半分ずついれて、カロリーハーフのごはんを食べていますね。ーー美容面ではいかがですか。私、美容が大好きで、情報を共有するのも好きなんです。いろいろなものを自分で試してみて、よかったもの、ちょっと合わなかったものと、確かめてみたり。私が合うものでも他の人には合わないことやその逆もあって人それぞれだと思うので、お友だちと美容情報を交換しています。でも、まわりから私に一番多い質問というと、髪の毛なんですよね。このロングヘアをどうやってキープしているのかという。本当に、髪だけは恵まれているなって感じるので、髪のケアにはこだわっています。ーーどのようにケアをされているのですか。自分に合うこだわりのシャンプーをずっと使っています。そのシャンプーをした後に、シャンプーとトリートメントの間にやるトリートメントがあるのでそれをやって、5分おいて。さらにそこからトリートメントをして、その後はさらにヘアパックをします。ーーそれを毎日?毎日やっています(笑)。お風呂から出たら、洗い流さないトリートメントを髪全部につけて、乾かしたあとに、さらにオイルをつけています。ーーすごいです、アイドルの鑑ですね。ちなみに、今回のアルバムは夏の発売ですが、高城さんが“夏に必ずすること”があったら教えてください。季節もの、王道なものは、必ずやっています。夏だと、花火や、おうちで家族でバーベキューしたり。昨年は、おうちで夏祭りごっこをするために、屋台みたいな雰囲気を出して、打ち上げ花火の音だけかけてみたり。外出自粛中でも楽しめますよ。もしコロナ禍じゃなければ、夏は海へ行ったり、それこそ小学校の頃は毎年、キャンプに行っていたり。でもキャンプに行く前は、必ず、熱を出すんですが(笑)。ーーかわいいです(笑)。高城さんはけっこうアクティブなんですね。わりとそうですね。小さい頃は、夏に登山もしていました。最近はYouTubeで、海の定点カメラを観ることにハマっています。おすすめですよ。ーーでは最近ハマっているものといえば、定点カメラの映像ですか?定点カメラと、映画やアニメ鑑賞ですね。映画は、おしゃれな『キューティ・ブロンド』とか『ココ・シャネル』、アクションスリラー映画の『イコライザー』とか『デンジャラス・ラン』とか、いろいろなジャンルを観ますね。観た作品はほぼ全部、ストーリーがどうだったか、一番印象的だったセリフは何かなど、メモをとっています。ーーそして、6月21日で28歳、おめでとうございます。この1年で今後、プライベートでやってみたいことはありますか。いっぱいありますが、美容について極めたい、勉強したいですね。あと介護福祉にも興味があるので、その勉強もしたい。これはプライベートになるのかどうかわかりませんが、モノノフ(ももクロのファンの方の呼称)さんの女の子たちと、ゆるっと美容のことについて、配信だったりチャットだったりしてみたいです。あとは御朱印帳を集めているので、緊急事態宣言があけたら、歩ける範囲のお寺や神社を全制覇して、御朱印を集めたいですね。ーーこれまでに参拝して印象深かった神社仏閣はありますか。私がずっとお世話になっている神社があって、神奈川県の江の島にある、芸能の神さまがいらっしゃる、江島(えのしま)神社です。地元が横浜で神奈川県なんですが、小さいときから江ノ島方面に行くことも多くて、いまの事務所に入る2、3年前から江島神社に行き始めたんです。そこからことあるごとに、例えば大きなライブの前などは、必ず江島神社に「成功しますように」とお参りに行っていて。ライブが終わったら、お礼参りに行くということを毎年恒例でやっています。ーーいろいろなお話をありがとうございました。では最後に、高城さん個人として、ももいろクローバーZとして、今後の抱負をお聞かせください。個人としては、いろいろなお仕事に挑戦したいですし、まずはこのソロアルバムをたくさんの方に聴いていただきたいなと思います。そして個人的には、お芝居のほうもやってみたいなという願望があります。グループとしては、私たちの売りでもあるライブが昨年はあまりできなかったぶん、今年はもっとやりたいなと。ももクロとして冬にアルバムもリリースする予定なので、いろいろな方に、私たちの想いを届けたいですね。取材後記国民的アイドルグループ、ももいろクローバーZのメンバーであり、初めてのソロアルバムをリリースされた、高城れにさん。今回はリモートインタビューをさせていただきましたが、その際につけていたマスクが高城さんのイメージカラーの紫色だったのでそのことをたずねると、「今日たまたま紫色なんですよ」と、(見えている瞳が)ニッコリ笑顔ではにかむ姿がとってもキュートで素敵でした。そんな高城さんの1stソロアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみり高城れにPROFILE1993年6月21日、神奈川県生まれ。百田夏菜子、玉井詩織、佐々木彩夏、高城れにの4人によるガールズユニット「ももいろクローバーZ」、通称“ももクロ”の最年長メンバー。イメージカラーは、紫色。2015年から、毎年3月9日に高城のソロコンサートを開催。2016年より、文化放送のラジオ番組「高城れにの週末ももクロパンチ!!」(毎週土曜17:00)をレギュラー担当中。2020年、よるドラ『彼女が成仏できない理由』(NHK総合)で初主演(森崎ウィンとともにW主演)。2021年8月18日、高城の1stソロアルバム『れにちゃんWORLD』をリリース。ももいろクローバーZは、次世代の新人プロジェクトとして2008年春に結成。ストリートライブを出発点に活動を開始し、2009年8月にシングル「ももいろパンチ」でインディーズデビュー。2010年5月にシングル「行くぜっ!怪盗少女」でメジャーデビュー。以降もコンスタントに作品を発表し、メンバーの身体能力を活かしたアクロバティックなダンスやバラエティタレント顔負けのトークによってライブ会場を盛り上げ、次第に個性的なグループとして頭角を現す。2021年冬、6thアルバムのリリースを予定している。InformationNew Release『れにちゃんWORLD』(収録曲)01.SKY HIGH02.じれったいな03.恋は暴れ鬼太鼓-NEW RENI ver.-04.津軽半島龍飛崎-NEW RENI ver.-05.Dancing れにちゃん06.Tail wind07.Voyage!08.しょこららいおん09.まるごとれにちゃん10.『3文字』の宝物11.何度でもセレナーデ12.spart!13.everyday れにちゃん14.一緒に<ボーナストラック>15.ユーアノッアロン*以下、初回限定盤のみ収録。[Blu-ray]新曲MUSIC VIDEO「SKY HIGH」「Voyage!」2曲「CongratuRenichan~The 02 season 2020~」-LIVE VIDEO-01.Dancing れにちゃん02.Ride on time03.キューティーハニー04.ダンシング・ヒーロー(Eat You Up)05.VALENTI06.タマシイレボリューション07.everyday れにちゃん「まるごとれにちゃん0202スプリングツアー2021」-LIVE VIDEO (Edit ver.)-01.一緒に02.まるごとれにちゃん03.春夏秋冬04.spart!05.しょこららいおん06.笑―笑 ~シャオイーシャオ!~07.GODSPEED08.全力少女09.未来へススメ!10.everyday れにちゃん11.Tail wind[れにちゃんWORLD SPECIAL BOOKLET(44P)]Special Photo100 Questions!!-Fromモノノフ-What’s in Renichan’s bag?DiscographyInterviewRenichan Playlist2021年8月18日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)KICS-4016(CD)¥3,080(税込)(初回限定盤)KICS-94016(CD+Blu-ray)¥9,000(税込)取材、文・かわむらあみり
2021年08月19日