「人は努力と訓練によって、何者にでもなることができる」と言われたら、あなたはどう思うだろうか。きっと多くの人は、「さすがにそれは楽観的すぎるのでは?」と感じるに違いない。しかし、このような楽観主義を基本的な考え方として心理学の体系を創りだした人がいる。オーストリア出身の心理学者、アルフレッド・アドラーだ。アドラーの創始した「アドラー心理学」はいま日本でちょっとしたブームになっている。本屋に行けば、アドラー心理学の本がズラリと並んでいる。もしかしたら既にアドラー心理学に関する本を読んだことがあるという人がいるかもしれない。読んだことがなくても、名前ぐらいは聞いたことがあるという人が多いのではないだろうか。今回紹介する『1分間アドラー 人間関係の悩みをゼロにする77の原則』(桑原晃弥/SBクリエイティブ/2015年2月/952円+税)もそんなアドラー心理学に関する本のうちの一冊だ。もっとも、本書は既に数多く出版されているアドラー心理学の入門書とはちょっとだけ違う。本書はいわゆるアドラー心理学の解説書ではなく、語録集に近い。節のタイトルとしてアドラーの言葉が引用され、その言葉について見開き1ページ程度で解説がなされる、というのが本書の基本的な構成だ。言葉は全部で77個掲載されている。書名が示すように1節は1分程度でサクッと読める。通勤電車の中や待ち合わせの空き時間など、細切れ時間に読むのに適した構成だと言えるだろう。もちろん、時間をとってまとめて読むのも悪くない。○アドラー心理学はアドラー自身の体験に基づいているアドラー心理学は非常に前向きで、時には理想主義的すぎると言われることも少なくないが、アドラーは別に机上の空論といてこのような楽観主義的な心理学を提唱したわけではない。実はアドラー自身が、楽観主義によって人生を切り開いてきたという経緯がある。そういう意味では、アドラー心理学は彼自身の経験に基づいた理論なのだとも言える。アドラーは幼少期、様々な困難に直面していた。数々の持病に悩まされ、勉強では優秀な兄と比較されることが多くコンプレックスを感じることも少なくなかった。学校の授業は退屈で、数学は落第寸前だった。しかしアドラーは負けなかった。周囲のサポートによってアドラーは持病を克服し、病気で死にかけた経験から医師になることを志す。落第寸前だった数学は、最終的には得意教科に変わっていた。このようにアドラーは幼少期の困難を乗り越えたが、それができたのは彼が「できることをしよう」という楽観主義的な考えを持っていたからだ。物事を楽観視せずに冷静な目で批判的に分析することも時には必要だが、そうやって批判ばかりしているだけでは前には進めない。基本的に、自分を取り巻く世界を変えようと思ったら行動する以外の方法はない。あれこれ悩んで行動できないという人は、きっとアドラー心理学からヒントを得ることができるはずだ。○行動はすべて目標によって確定されるまた、アドラー心理学は「行動」だけでなく、その前提となる「目標」についても触れている。単に「行動しろ」と言われただけでは、何をすればいいのかわからない。行動はすべて目標によって確定される。言われてみればあたりまえだが、この点を意識できていないばっかりに迷走している人は数多くいる。毎日、漫然と生きているだけでなんとなく不安な気持ちを抱いているという人は、往々にして目標を見失っている。行動するにも何をすればいいかわからないという人は、一度自分の目標について考えてみるとよいだろう。また、その時には「共同体感覚」を意識してみるとよいかもしれない。「共同体感覚」は、アドラー心理学を語る上での重要なキーワードだ。「共同体感覚」の詳しい説明は本書に譲るが、ざっくり言えば他者について「私たちはみな仲間だ」と感じ、そこが自分の居場所だと感じられることである。このような「共同体感覚」を意識した上で目標が設定できれば、有用で意義のある行動へとつなげることができるだろう。○「前向き」になるためのヒントをさがす本書を読むと、アドラーがフロイトやユングといった分析的な心理学者と比べてかなり目的志向であり、前向きであることがわかる。そういう意味では、アドラー心理学は実践的な心理学だと言えるかもしれない。生きていれば、誰だって落ち込むことがあるはずだ。そんな時には、本書をパラパラとめくってみると、前向きな気持ちになれる言葉を見つけることができるかもしれない。気持ちが後ろ向きになってしまった際には、本書で「前向き」になるためのヒントをさがしてみてはいかがだろうか。日野瑛太郎ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)がある。
2015年02月27日○社内外を問わないシームレスなコミュニケーション改革の実現スピードが要求されるビジネスでは、スマートフォン・携帯電話と固定電話、内線と外線といった違いを問わず、いつでも、どこからでも、つながりたい相手と直接会話ができることが重要だ。そこで求められるのが、社内コミュニケーション基盤のFMC化(Fixed Mobile Convergence:モバイル通信と有線通信の融合)である。ネクストジェンの「U3 Voice(ユーキューブ・ボイス)」はこのほど、auスマートフォンとオフィスの電話が内線ダイヤルでつながるKDDIのFMCサービス「KDDIビジネスコールダイレクト」の中堅・中小企業向けクラウド型PBX(Private Branch eXchange:構内交換機)ソリューションとして採用され、提供が開始された。この新サービスの市場拡大にかける思いを、両社のキーマンが語り合った。○ビジネス領域のコミュニケーションで最も重要なのは“会話”による意思疎通――モバイルがビジネスに変革を起こしていると言われますが、その動向をどのようにとらえていますか。牧野氏:おっしゃるとおり、スマートフォンや携帯電話の爆発的な普及、LTEを含めた通信環境の改善によって、企業におけるモバイル活用が本格化してきました。これまで分離していたパソコンと電話、コンピュータネットワークが融合し、ワークスタイル変革やテレワークを推進する原動力になっています。――そこで最も重要なことは何でしょうか。牧野氏:高品質で利便性の高い音声通話をサポートすることです。確かに昨今の高機能なスマートフォンを使えば、メールの送受信やファイル共有なども簡単に行えますが、ビジネス領域のコミュニケーションはそれだけでは不十分です。お客様からのお問い合わせに早急にお答えしなければならない、上司と対処を打ち合わせるといった際に、直接的な会話でなければ伝わらないような細かいニュアンスもあります。そこに“電話”機能をうまく活用していくことの大きな意義があると考えています。室橋氏:私たち通信キャリアの立場からも、その点に関しては大きく共感するところです。実際、コミュニケーションの主流がメールやソーシャルメディアに移ってきたと言われる中でもビジネスコールのトラフィックはまったく減っておらず、常に一定の需要があります。特にIPベースの通話に関しては、現在も増加傾向にあるほどです。五十嵐氏:そこにモバイルと固定電話の両方をワンストップで提供できるKDDIの強みを発揮できると考えています。auスマートフォンとオフィスの電話が内線ダイヤルでつながる「KDDIビジネスコールダイレクト」は、まさにその強みを体現したものです。モバイルと固定電話を問わず、マルチデバイスで利用可能な“ボイスクラウド”として本格的なFMCサービスを展開し、大企業から中堅・中小企業まで、すでに約4,000社(2014年10月時点)のお客様にご利用いただいています。林氏:これまでモバイルから固定電話への発信は割高になるため、どうしても通話を控えてしまう場面がありましたが、内線ダイヤルでつながるとなればコストを気にする必要がなくなり、社内と社外をシームレスに統合したコミュニケーションが活性化します。ビジネスのアジリティ(俊敏性)を高めていく、大きな効果が期待できます。○中堅・中小企業のコスト要件に応えるシンプルなクラウドPBX――“ボイスクラウド”というキーワードをいただきましたが、これがKDDIとネクストジェンの接点となったのですね。室橋氏:現在、「所有から利用へ」という時代の流れのなかで、ICTを支えるさまざまなインフラのクラウド化が進んでいます。PBXも例外ではなく、そのニーズにお応えするべくKDDIとしても準備を進めてきました。ただ、私たちが提供しているクラウドPBXはかなり本格的な高機能を搭載したもので、大企業のお客様の要件にはフィットするのですが、中堅・中小企業のお客様にとってはコストが見合わないという事情がありました。そこに登場してきたのが、ネクストジェンの「U3 Voice」だったのです。牧野氏:ネクストジェンでは通信キャリア様向けのさまざまなソリューションを提供してきた実績を活かしたクラウドサービスに注力しています。U3 Voiceはその一環として開発したので、単なるIP電話のアプリケーションではなく、クラウドPBX機能と連携したFMCソリューションです。U3 Voiceを商品化するにあたり、繰り返しマーケティングリサーチを行ってきたのですが、そこで一番引きが強かったのが中堅・中小企業のお客様でした。具体的には従業員数300名から1000名以下の企業です。この層のお客様は、大規模ユーザーのような高機能やカスタマイズはあまり求められないのですが、ビジネスフォンの延長線でクラウドPBXの導入をとらえており、室橋さんがおっしゃるようにコストが非常に重要な要件となります。シンプルさを追求してきたU3 Voiceは価格面でも強い競争力を持っていると自負しており、KDDIビジネスコールダイレクトの拡販にも貢献できると考えています。五十嵐氏:KDDIにとっても、従業員数300~1000名規模のお客様にKDDIビジネスコールダイレクトのマーケットをさらに広げていくことはかねてからの大きな課題であり、そこに向けてU3 Voiveは高い訴求力を持ったツールとなります。単なる商材の1つとしてKDDIビジネスコールダイレクトにU3 Voiceを組み合わせるだけでなく、ボイスクラウドの世界でシナジーを発揮するトータルコミュニケーションとして、業界の一歩先を行く付加価値サービスを提供していけたらと考えています。○共にテクノロジーとサービスの融合を進め日本企業の“働き方”を変えていく――KDDIビジネスコールダイレクトにU3 Voiceを組み合わせることで、ユーザー企業にどんなメリットを提供していくのでしょうか。林氏:先述したモバイルからも内線電話を使えるといった利便性の向上はもちろんですが、固定電話と同等のセキュリティを担保できることが大きいと考えています。IPをベースにした一般的な音声通話のアプリケーションでは第三者に傍受されるリスクがありますが、KDDIビジネスコールダイレクトでは同じIPを使っていても、インターネットとは異なる回線でパケットをやりとりしているため、盗聴の心配はありません。また、IT管理の専任者を置けない中堅・中小企業の場合、オンプレミス型のIP-PBXの自社運用に比べて、セキュリティ対策が施されたデータセンタで運用するU3 Voiceのほうが、安心してご利用頂けるのではないでしょうか。五十嵐氏:セキュリティに加え、通信キャリアが提供するソリューションとして音声品質にもこだわりました。可能な限り遅延を抑える配慮もその1つです。U3 Voiceを介していったんセッションを確立した後は、ポイントツーポイントで直接パケットをやりとりして通話することができる仕組みを、ネクストジェンと共同で実現しました。林氏:KDDIのご要望を受けながら、ネクストジェンとしても今後さらに、さまざまな新技術の開発にチャレンジし、U3 Voiceに実装していきたいと考えています。室橋氏:それはとても心強いですね。実はKDDIでは、現在FMCという呼び方はあまり行っておらず、「Multi-Use(マルチユース)」「Multi-Network(マルチネットワーク)」「Multi-Device(マルチデバイス)」の3つの頭文字からなる「3M戦略」を前面に打ち出したビジネスを推進しています。スマートフォンやタブレットなどお好みのデバイスから、よりつながりやすい、最適なネットワークを介し、魅力的で多彩なサービスやコンテンツをシームレスに利用いただける通信環境をお届けするというものです。この3M戦略をさらに強力に推進していく上でのパートナーとして、ネクストジェンの今後の取り組みに期待しています。牧野氏:少子高齢化の進展によって労働力が低下していく日本において、ホワイトカラー層をはじめとするビジネスマンの生産性向上やダイバーシティ(多様性)への対応は、もはや不可欠です。こうしてKDDIと連携できることは、ネクストジェンにとって大きなビジネスチャンスでもあり、一緒になってボイスクラウドを舞台としたテクノロジーとサービスの融合を進め、日本企業の“働き方”を変えていきたいと考えています。
2015年02月25日35歳以上の結婚・出産が増えています。人生の持ち時間は長くなったけれど、生涯収入の手取りは減少傾向、社会の変化も激しい時代です。常識にとらわれ過ぎないお金との向き合い方を考えます。○老後の生活設計は、やはり公的年金がベース?アラフォー世代にとって、気になることのひとつは、老後生活をするようになったとき国の年金制度がどれくらい頼りになるか、ではないでしょうか?結論から言うと、正社員の共働き夫婦にとっては、100%公的年金に寄りかかることはできないけれど、そこそこ頼りになると言えます。片方がパート、無職、自営業だと、正社員の共働きよりは厳しくなるので(夫婦合わせた受給額か少ない)、ある程度の自助努力が必要です。どちらも自営業なら、今からしっかり自助努力で準備しておかないと公的年金だけでの生活は難しいと言わざるをえません。老後生活のため準備しておきたい金額は、働き方や暮らし方などにより違いますが、それぞれの状況に合わせて事前の準備が必要なことは同じです。また、公的年金が崩壊するのではないかと考える人もいるようですが、多分、その心配はいりません。公的年金制度を維持するためにこそ、痛みを分け合って、つまり一人一人の受給額を減らそうという制度改正が行われているのです。公的年金がゼロになって、老後資金の100%を自助努力で準備するのと、今より減っても、ある程度は公的年金がもらえるのはどちらがいいでしょうか?今後も公的年金は、制度の手直しを行いながら続いていくはずです。つまり、老後のマネープランを立てるときは、公的年金がどれくらいもらえるかを予測し、足りない部分を自助努力で補うというのが基本的な考え方です。また制度変更の情報をしっかり確認していくことも重要です。では、現在、公的年金をもらっている人の状況から見てみましょう。○厚生年金の平均月額は14万8000円厚生労働省のデータによれば、現役時代に会社員だった人がもらっている厚生年金の平均月額は14万8000円です。一方、専業主婦やパート、自営業の人がもらっている国民年金の平均月額は5万5000円です。(いずれも平成25年度厚生年金保険・国民年金事業の概況より)。厚生年金の受給額は現役時代の収入と加入期間により違ってきますし、国民年金の受給額は加入期間により決まります。国民年金を満額もらえるのは40年間納めた人ですから、加入期間が短いと満額より少なくなります。自分の年金加入記録は「ねんきん定期便」で確認できますから、確認しましょう。ここでは単純に平均値から計算をしてみます。受け取ることができる公的年金の月額共働き正社員夫婦→14万8000円×2人=29万6000円正社員+パートまたは無職または自営業→14万8000円+5万5000円=20万3000円夫婦ともに自営業→5万5000円×2人=11万円ここで、「公的年金制度を維持するために痛みを分け合う」と最初に書いたことを思い出してもらいたいのですが、アラフォー世代がもらう頃には、これよりも減っている可能性が高いということです。○「ねんきん定期便」は必ず見よう「ねんきん定期便」は、毎年お誕生月に送られてきます。記載されているのは加入記録です。50歳以上になれば、このままの状況で60歳まで加入したときに受け取れる見込み額が記載されます。アラフォー世代の場合は、これまで払った保険料から計算した年金額が記載されます。「えっ、こんなに少ないの?」と思う人もいるでしょうが、今後も働いて加入し続けることで増えていきます。2人合わせた受給額が実際にどれくらいになるかは、今後の収入と働き方、制度改正などによります。1年に一度は、その年のそれぞれの「ねんきん定期便」を突き合わせて、その時点での受給額を確認しておきましょう。○企業年金もチェック勤務先によっては退職給付を受けられるところもありますね。退職給付は、一時金で受け取る退職金と、年金形式で受取る企業年金があります。退職給付があるなら、これも公的年金と合わせて老後資金に使えます。勤務先の退職に関する規定などを確認して調べてください。○自助努力の金額は?お金の価値は相対的なもので、インフレになればお金の価値は減ってしまいます。現時点で老後の詳細なシミュレーションをしても、その通りに行くとは限りません。それでも、この金額を貯めよう! という目標があった方が気合が入りますから、次の計算式で目標を立ててみてください。老後資金は65歳から95歳までの30年間を想定しました。○正社員の共働きの場合収入:公的年金と退職給付の合計公的年金の予測額の年額を2人分で30年間例えば、1人月額12万円なら年額144万円で30年では4320万円、2人分では8640万円退職給付:2人分例えば1人1000万円なら、2人分で2000万円合計額は1億640万円支出:老後の生活費と特別支出の合計生活費は、現在の生活費の7割として30年間。例えば現在の生活費が月額40万円なら7割は28万円、28万円×12カ月×30年=1億80万円特別支出は、自宅のリフォーム費や医療費、介護費用、旅行、子どもへの資金援助など日常の生活費以外にかかる支出これをどう見積もるかは生活により違いますが、例えば1000万円とします。合計額は1億1080万円老後の収入と支出の差額は、1億640万円-1億1080万円=-440万円つまり500万円弱を自助努力で準備する必要があります。これくらいなら大丈夫そうでしょうか?ここで、受取る年金額と生活費を比べてみましょう。年金額8640万円に対し生活費は1億80万円ですから、1420万円の不足を退職給付で補っていることがわかります。退職給付がない、もしくは少ない、退職金で残りの住宅ローンを返済する予定だと、足りなくなります。また、老後の生活費が現役時代の7割である28万円を超えると、特別支出用のお金を取り崩すことになります。また、この試算が成り立つには、老後に教育ローンなどを抱えていないことが条件です。とはいえ、正社員の共働きはやはり有利で、きちんと家計管理をしていけば、老後生活の辻褄を合わせられそうだということが確認できますね。試算では約500万円となりましたが、貯蓄目標額は多めの1000万円にしても、もちろんかまいません。片方が国民年金だけ、両方とも国民年金だけという場合は、生活費にもよりますが、正社員夫婦の約500万円にプラスして自助努力で貯めておく必要があるというわけです。紹介した数字は例えばの試算ですから、ご自身の数字を入れて計算し、貯蓄目標を立ててください。老後は高級老人ホームに入居したいなどと思っているなら、もっと上乗せする必要があります。老後の生活をどう思い描くかによっても、目標額は違ってきます。公的年金が少ない自営業も、現状では30年間で約4000万円を受け取ることができます(現在の平均受給額5万5000円×12カ月×30年×2人=3960万円)。これに現在持っている資産と、老後の生活費を想定して目標額を設定しましょう。イメージや思い込みではなく、自分で電卓をたたいて老後のマネープランをたて、目標額を設定すれば、貯蓄への意欲も高まります。制度改正の情報もしっかり確認しながら、着実に準備を進めてください。(※写真画像は本文とは関係ありません)<著者プロフィール>ファイナンシャルプランナー坂本綾子20年を超える取材記者としての経験を生かして、生活者向けの金融・経済記事の執筆、家計相談、セミナー講師を行っている。著書『お金の教科書』全7巻(学研教育出版)、セミナー『子育て力のあるお金の貯め方、使い方』『小さな消費者へのお金の教育』など。
2015年02月23日マイナビはこのほど、2016年卒業予定のマイナビ全会員を対象に実施した「2016年卒マイナビ大学生のライフスタイル調査」の結果を発表した。調査は2014年12月15日~2015年1月13日に行われ、有効回答数は3,555名(文系男子614名、理系男子673名、文系女子1,572名、理系女子696名)。○大学生65.7%が、自分たちは「安定した生活を求める」世代「自分たちの世代についての言葉で当たっているもの」を「ゆとり世代」「さとり世代」の特徴などの選択肢から3つまで選んでもらったところ、前年比5.3pt増で「安定した生活を求める(65.7%)」と回答した人が圧倒的で、2位の「ハングリー精神に欠ける(31.6%、前年比4.5pt減)」の2倍以上となった。また、「理想とする『将来の自分』像」を17個の選択肢の中から選んでもらったところ、男女ともに、「愛する人と結婚して子供ができ幸せに暮らす(男子25.6%、女子39.6%)」が最多となった。以下男女ともに、2位「自分の好きな仕事を一生続ける(男子18.6%、女子22.1%)」、3位「一生食べていける安定した仕事を持つ(男子17.2%、女子17.9%)」、4位「新卒で就職した会社で出世して社長・役員になる(男子13.7%、女子3.2%)」と続いた。「起業して社長になって成功を収める」「自分の店(ペンションなど含む)を持つ」「世界的に有名なクリエイター・アスリートになる」など、「野望」を抱くような選択肢もある中、将来的な「安定」を求める選択肢に票が集中する結果となった。○男女ともに、結婚後は「共働き」希望次に、結婚後の仕事(収入源)について、「共働き」「主に自分の収入」「主に相手の収入」「結婚せず自分の収入」の4つの選択肢から選んでもらった結果、「共働き」希望の割合は全体で56.2%(男子47.0%、女子68.6%)となった。その理由を聞いたところ、男子は「結婚相手が仕事を続けたいならその意思を尊重したいので(29.0%)」が最も高く、女子は「仕事を続けることが生きがいになると思うから(24.9%)」が最多だった。また、女子の24.3%が「主に相手の収入のみで生活するのが望ましい」と回答。およそ4人に1人が専業主婦志向であることがわかった。○「時間内に仕事を終え、積極的に子育てする」男性が高好感度学生が「残業」や「育児休暇」に対してどのようなイメージを持っているか調査するため、「同性」「異性」の働き方に対するイメージを聞いたところ、最も好感度が高かった働き方は「時間内に仕事を終え、積極的に子育てする」で、特に女子は、この働き方をする女性を「すごくかっこいいと感じる」が70.6%、男性を「すごくかっこいいと感じる」が63.8%と高い割合だった。また、「子育てに専念するため育児休暇を取得する」でも女子の好感度は高く、そんな女性を「すごくかっこいいと感じる」が47.0%、男性を「すごくかっこいいと感じる」が41.8%となった。
2015年02月04日2014年12月、とある企業が公開した1本の動画がインターネット上で話題となった。サイボウズ OfficeやGaroonなど、グループウェアの開発・販売・運用を行うサイボウズのプロモーションだ。まだご存じでない方は、まず一度通してご覧いただきたい。ワーキングマザーの現実をありのままに描き、同じような経験をした、もしくは現在している女性たちから、非常に多くのかつ深い共感を集めた。自分自身を振り返る男性のコメントも多い。だが一方で、「企業としてのソリューションがない」や「何を伝えたいのかわからない」など、動画そのものの意義を問う声も上がっている。この作品はどのような意図で、誰に向けて作られたのだろうか。プロジェクトの全体像について、同社ビジネスマーケティング本部にてコーポーレートブランディング部長 サイボウズLive プロダクトマネージャーを務める大槻幸夫氏にお話をうかがった。○問題提起による情報発信大槻氏によると、動画制作の目的は、一般の人に向けたサイボウズの認知拡大にあるという。同社では、その目的で毎年エープリルフールにユーモアあるプロモーションを展開し話題を集めていたが、2014年は、これまでと異なる方向性によるコミュニケーション手法を探ることになった。そのテーマにワーキングマザーを挙げたのは、社長の意見によるものだ。「私たち自身が働き方の改革にずっとチャレンジしてきたので、自信をもって伝えられるテーマであり、社会的にも関心度の高い話題。その点から、みなさんに問題提起のできる情報発信が可能なのではないかと考えました」(大槻氏)だが、大槻氏はその問題提起を自社のプロダクトに直接結び付けることはしなかった。「解決方法は家庭の数だけあります。決まった答えを提示すると、ひとごとと思われてしまうかもしれない。子供がいない人にも、同僚や部下などいろいろなシチュエーションに応じて考えてほしい。だからあえて答えを入れず、現状をリアルに描くことで、ディスカッションのきっかけになればいいと思いました」(大槻氏)グループウェアの導入で安易に解決できる問題ではないことを、長年ワーキングマザーの働き方に取り組んできた同社は理解している。共感を呼ぶシチュエーションは同じでも、解決や改善は一人ひとりの多様性に対応するものでなくてはならない。大事なのは『自分事』化してもらうこと。それを伝えるものにしたかったと大槻氏は言う。○共感というコミュニケーションからこうした訴求の手法に、制作チームからも当初は戸惑いの声があったという。動画制作に携わったのは、これまで数々のナショナルブランド企業のプロモーションを手掛けた経歴をもつクリエイティブのプロたち。プランナーやプロデューサー、監督・脚本と現場に最も近い役職は、ワーママが担当した。「『答えを入れなくていいんですか』『商品名を入れなくていいんですか』と何度も聞かれましたが、それでいいと言い続けました。これまでCMは『答え』を提示するメディアだったと思いますが、これに関してはそういうフェーズではないんです」(大槻氏)機能訴求やソリューションの提示ではなく、問題提起によるコミュニケーションは、成熟市場のマーケティングにおいてしばしば見られる。先端層にはまず機能が重要だが、成熟市場になるとまず企業を知ってブランドに共感してもらう必要があるからだ。だが、大槻氏は今回のやり方に最初から自信があったわけではないと言う。同社にとっては今までにないチャレンジだ。大槻氏は、選挙に例えて説明する。「多くの人たちは政策のプロではないけれども、誰か1人を選ぶ。そのときに根拠となるのは政策よりも、経験的に『信用できる』と思える要素がその人にあるかどうか。だから、グループウェアに詳しくない人たちに対して、機能ではなくサイボウズをこうした課題に真剣に取り組んでいる企業だと知ってもらうことが大事だと考えました」(大槻氏)○ネット時代に動画で伝えるということ公開してみれば、その反響は予想を超えるものだったという。ニュース系Webサイトやテレビ番組で紹介されたことをきっかけに再生回数は跳ね上がり、その後は口コミだけで拡散し、1本目の動画は約1カ月半で67万PVを超えた。年末年始のテレビCMや、映画「妖怪ウォッチ」にシネアド(映画館での本編上映前に流れる広告)を打ち、そこからも反響があった。動画の特設サイトにはSNSのコメントを表示できる仕組みを設け、批判も含めて逐次流しこんでいる。また、自社メディアに掲載した社内のさまざまな取り組み事例やインタビューも公開する。「動画で描いたような現状が良いと言っているわけではなく、これを変えたいと思っている。完成品ではなくきっかけとして作ったものなので、批判も意見の一つ。だから区別せず掲載しています」(大槻氏)「同社の取り組み」という裏付けがあるからこそ、問題提起も説得力を持つ。批判を含め多数の意見が集まったことで、動画は期待した役割を果たしてくれたと言えるだろう。2分半という長めの動画がどこまで視聴されるか不安はあったが、再生完了率は7割に達した。アクセスの約8割がスマートフォンからであることも特徴的だ。「中身が良ければ見てもらえる。共感を呼ぶ手段として、可能性を感じました。企業姿勢を知って頂くため、今後も力を入れたいと思います」(大槻氏)今回のプロジェクトは、土台となるメッセージと、それを最も強く伝えられる表現手法、そして反応を受け止める姿勢があって成立したものだった。大槻氏は、今回の手法を試みて得た知見を、今後のマーケティングに活かしていきたいと話す。そして、ワーキングマザーの働き方というテーマについて、同社の取り組みは今も続いている。
2015年02月04日現代において、「個性」は重要なキーワードだ。ビジネスの世界では、企業の個性である「らしさ」が競争力の高い企業を作るための要素として注目されつつあり、個性を重視する傾向が強くなってきている。一方で、教育の世界では、個性重視を謳った「ゆとり教育」が学力低下を招いたという反省から、個性よりも学力を重視する「脱ゆとり」に方針転換がなされて久しい。個人レベルで言えば、やはり「個性が大切だ」という意見をよく耳にする。個性に対する考え方は、それが語られる文脈や分野によって様々だ。○個性とはいったい何なのか?そもそも、個性とはいったいなんなのだろうか。なんとなく個性が重要だと思っている人は多いにもかかわらず、個性とは何かを説明できる人は実はそんなに多くない。個性が本当に現代社会で必要なものなのか考えるためには、まずは個性の意味を明らかにする必要がある。今回紹介する『「個性」はこの世界に本当に必要なものなのか』(博報堂ブランドデザイン・東京大学教養学部/株式会社KADOKAWA アスキー・メディアワークス/2014年12月/750円+税)は、個性の意味を問いなおすためのよいきっかけを与えてくれる。もっとも、本書には「個性とは◯◯のことである」といった明確な定義や答えそのものが書かれているわけではない。本書は、東京大学教養学部の研究者10人による個性についての談話から構成されており、そこで出される個性についての見解はあくまで話者それぞれのもので、明確な1つの「正解」があるわけではない。「とりあえず答えを知りたい」という人には向かないが、「いろんな意見に触れて自分なりの考えを深めたい」と思っている人には最適な本になりうるだろう。○9つの学問分野から見た「個性」本書で「個性」について意見を述べている研究者の専門領域は非常に多岐に亘っている。具体的には、認知神経科学、文献学、生態学、哲学、物理学、統計学、政治学、天文学、言語学の9つの学問分野が対象になっており、当然ながら各研究領域によって視点に大きな違いがある。たとえば、認知神経科学の研究者は個性を「脳の使われ方の違い」として上で、遺伝や環境因子がどれだけ個性の形成に影響しているかという視点で個性について語っている。統計学の研究者は「統計学は個性を切り捨てる学問ではない」と前置きをした上で、個性を測定するためのコストが高いことについて説明している。天文学の研究者は、天体の個性は基本的に初期条件によって決定されることを説明し、個性を理解するためには似ているものとの比較の視点が不可欠であると主張する。「個性」と一言で言っても、研究者の専門領域次第で、注目するポイントが多様なのは面白い。○個性は「固有性」と「共通性」の関係の中で理解されるこのように学問分野によってそれぞれ視点には違いがあるものの、一方ですべての学問に通底するものも見出だせる。それは、個性が「固有性」と「共通性」との関係の中で理解されるということだ。これは言語学を例にとってみるとわかりやすいかもしれない。言語は、基本的に他人とコミュニケーションをするために使われる記号の体系であるから、おのずから「共通性」が求められる。言語における個性は、この共通性を完全に欠く形では存在しえない。方言や若者言葉など個性を有した言語はたしかに存在するが、あくまでそれは共通性との関係の中で理解される。この話は他の学問分野や、あるいは現実社会で個性について考える際にもあてはまる。単に「個性的になろう」とだけ思っても、同時に「個性的でない、共通するもの」についても理解していないとそもそもどう個性的なのかわかりようがない。ただお題目のように「個性重視」とか「個性を伸ばす」といった言葉を並べても、結局は何を目指せばよいのかわからず迷走してしまう。○各学問分野へ入門する前準備として読む以上のように、本書のテーマは基本的には「個性」なのだが、必ずしもこのテーマだけにこだわって読む必要はないと思う。本書に登場する研究者はいずれも各学問の最先端研究者であるから、各章の談話は純粋に知的興味を刺激する。しかも、語り口は非常に平易でわかりやすい。各学問への入門書と言うにはさすがに情報量が足りない気がするが、各学問へ入門する前準備として読むのはありだろう。そういう意味では、進路選択に迷っている中学生・高校生あたりが読んでもいいかもしれない。もちろん本書のテーマに沿って個性の意味を自分なりに考えるために読んでもいいし、9つの学問分野の「思考方法の違い」を知るために読むというのもいい。本書の読み方はひとつではない。各人の個性にあった読み方を試してみていただければ幸いである。日野瑛太郎ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)がある。
2015年01月30日アジア10カ国に拠点を持つマーケティング・リサーチ会社のシンガポール支社で働くイロナ・ルーさん。日本のクライアントも多く、昼休みに日本語のプライベートレッスンを受けるほどの勉強家。34歳にして社長直属の4人の幹部のうちの1人に抜擢された彼女に話を聞きました。■これまでのキャリアの経緯は?大学では社会学と心理学を学びました。卒業後、メガバンクに就職し、投資部門の営業として1年働いた後、10年前に今の会社に入りました。現在はオペレーション・マネージャーとして、チーム全体を統括しながら、私自身もセールスを担当しています。クライアントには日本の企業も多く、食品、化粧品、銀行からショッピングモールまで、多岐に渡ります。アジア各国や欧米などへの海外出張も年に4~5回あり、多忙な毎日です。■現在のお給料は以前のお給料と比べてどうですか?一般的に、前職の銀行の方がマーケティング業界より給料は高いです。今のサラリーは同年代のビジネスマンと比べたら、それほど良くはないかもしれませんが、非常にやりがいのある仕事とチャンスを与えてもらっていることに満足しています。■今の仕事で気に入っているところ、満足を感じる瞬間は?私の裁量に任されている部分が大きいので、自分で仕事のやり方をコントロールできるところが気に入っています。突然、ディレクターに抜擢された時は、まったく未知の分野で戸惑いも大きく、売上目標は到底達成できない途方もない数字に思えました。でも、チームの皆と力を合わせて取り組んでいくうちに、予定よりも数カ月早く目標をクリアすることができたんです。さらなる上の目標も達成し、そのごほうびとして、全員で日本の北海道と東京へ社員旅行に行けることになりました!! うちの社員はみんな日本が大好き! 初めて雪を見る人も多く、みんなワクワクして冬服を買い込んでいます。私もスノーボードに初挑戦することを楽しみにしています。■逆に今の仕事で大変なこと、嫌な点は?クライアントは様々な種類の問題を抱えていて、この時はこうすればいいという決まった答えはありません。誰かがやり方を教えてくれるわけではないので、自分の経験や知識を総動員して、答えを導かなければいけないのが大変なところです。でも、よい成果を上げられたときは、その分喜びも大きいですね。個人的なことですが、去年、乳ガンの摘出手術を受け、その1週間後には職場に復帰しました。当時はまだ体からチューブが出ていて、出血もしていたので、会社でも血液のバッグを肩からかけて持ち歩いていました。もちろん布のかばんに入れて、中が見えないようにはしていましたが、みんな中身を知るとギョッとしていましたね(笑)。手術の後は乳房再建をして、AカップからBカップになりました。このあとCカップに増やすことも可能です。ガンという立派な理由があるので、コソコソせずに胸を大きくすることができてラッキーですね(笑)。■ちなみに、今日のお昼ごはんは?会社の近くでシンガポールの鍋料理「バクテー」を食べました。骨付きの豚のあばら肉を漢方やスパイスで煮込んだもので、滋養たっぷり。ごはんとの相性も抜群です。■日本人のイメージは? あるいは、理解し難いところなどありますか?日本のもの作りは素晴らしい! 日本の製品はただ性能がいいだけではなく、とても上質です。ハイテクな電化製品に限らず、例えばこの日本製の傘。どこが違うと説明するのは難しいのですが、他のものより使いやすいし、見た目もかわいい。ヒューマン・テクノロジーというのでしょうか、ソフトエンジニアリングに優れていると感じます。日本人と仕事をするのは簡単ではありません。彼らは勤勉で仕事も早く、きっちり時間通りに仕事をこなします。細部にまで徹底的にこだわるので、私たちもそうでなければならず、いい加減にやって結果だけ出せばよいというわけではありません。日本人はpolite(礼儀正しい)といわれるけれど、それ以上に周囲の人を気遣い、敬意を持って接していると思います。私のクライアントもこちらのやり方を尊重し、信頼してくれるので、私たちも期待に応えなければと、モチベーションが上がります。■休日の過ごし方を教えてください。ローラーブレードが趣味なので、週末はビーチパークを10kmくらい走ります。運動のためというより、1人で何も考えずに無心で何かをする時間が必要なのかもしれません。ただ音楽を聞きながらローラーブレードしていると、頭がクリアになって、リフレッシュできるんです。先々月は夫とその家族と一緒に3週間アメリカを旅行しました。有給休暇は年間18日ですが、私はもう長く働いているし、旅先でもパソコンで仕事をするので、ちゃんと自分の任務さえ終わらせれば、あとは自由にさせてくれます。ありがたいですね。■将来の仕事や生活の展望は?まずは現在30人いる社員を40人に増やしたいです。また、2年以内に売り上げを5~10%は伸ばしたいですね。現在の社長がリタイアしたら、いつか私がシンガポール支社のトップに立ってみたいという夢もあります。プライベートですか? 私の頭の中は仕事だらけで(笑)。あと5kg痩せることができたら満足です!
2015年01月27日会社員にとって、「働きやすさ」はほとんど職場の人間関係が良好かどうかで決まる。特に、上司との関係を良好に保つことは重要だ。上司に気に入られれば仕事はずっとやりやすくなる。一方で、上司に疎まれるとどんなに優秀な人でも仕事はやりづらい。仕事上の知識を増やしたり仕事に役立つスキルを習得することも重要だが、それ以上に上司の攻略は重要だ。この点を疎かにすると、会社員生活は一気につらいものになる。そうは言っても、上司に気に入られるのは簡単なことではない。上司と一言で言っても、タイプは様々で人によって攻略法が異なるからだ。単に仕事で結果を出しさえすれば認めてくれるサッパリした上司もいれば、徹底的にヨイショして持ち上げることで態度が柔らかになるちょっと困った上司もいる。上司とのつきあい方についての悩みは尽きない。今回紹介する宝島SUGOI文庫『正しい太鼓のもち方』(トキオ・ナレッジ/宝島社/2015年1月/680円+税)は、そんな上司とのつきあい方についてひとつの解決法を教えてくれる。もしかしたらタイトルを見て、「俺は上司にゴマをすって生きるような人生はゴメンだ」と思った人もいるかもしれないが、ちょっと待って欲しい。タイトルこそ『正しい太鼓のもち方』になっているが、本書には太鼓もちをするつもりでない人にとっても結構役立つことが書いてある。ゴマをするつもりがなくても、上司とのつきあい方に悩んでいるなら読む価値は十分にあると言える。○上司への媚び方を正面から伝授上司とのつきあい方を扱ったビジネス書は多数あるが、「いかに上司に媚びへつらうか」だけにフォーカスした本はおそらく本書だけだろう。本書では「憧れを伝える太鼓のもち方」「感謝を伝える太鼓のもち方」といったシチュエーション別に、上司に媚びるためのフレーズが全部で35個紹介されている。各フレーズの項目では、どのようなタイミングで言うべきか、特にどのようなタイプの上司に効果的かといったような詳細な説明がついており非常に実践的だ。社交辞令の難しいところは、使用すべきタイミングやシチュエーションを正しく判断しないと、容易に嫌味や悪ふざけに転化してしまうところだ。本書では、そのような社交辞令の微妙なニュアンスについても事細かに説明されている。たとえば、上司に憧れを伝えるフレーズとして、「芸能人以外でサインがほしいと思った人、◯◯さん(上司の名前)が初めてです」といったものが紹介されているが、注意点として「あまりのすごさにギャップがある場合は悪ふざけにとらえられる」「言うなら本気で書いてもらうつもりで行くべき」といったことも同時に挙げられている。このようなコミュニケーションにおける微妙なニュアンスや空気感について、本書から学べるものは少なくないだろう。○上司の詳細な分類と分析本書のもうひとつの特徴は、上司のタイプが事細かに分類・分析されていることだ。マニュアル上司、無責任上司、ワンマン上司、七光り上司、エセインテリ上司などなど、本書で紹介されている上司のタイプは30種類を超える。これだけあれば、今の自分の上司も、どこかのタイプにあてはめることができるだろう。どんなに困った相手でも、タイプにあてはめて考えると対処法はある程度システマティックに決めることができる。「こういうタイプの上司に苦労してるのは、自分だけじゃないんだなぁ」と知るだけでも、だいぶ気が楽になるだろう。特徴的なのは、すべての上司について「学ぶところは、こんなとこ」という項目がついていることだ。どんなにポンコツで人格に問題がある上司であっても、何かしら学べるところはある(本当にどうしようもない相手でも、反面教師として学ぶことはできる)。この項目は、上司との関係を前向きに捉える上で、きっと役に立つはずだ。○コミュニケーションの参考書として本書を読んでいると、本書で扱われている内容があてはまるのは実は会社だけではないということに気づく。困った上司への対処法はそのまま困った友人や親戚への対処法としても使えるし、本書で紹介される社交辞令をプライベートに応用して使うことも可能だろう。そういう意味では、本書はコミュニケーション全般についての参考書としても機能しそうだ。もちろん、純粋に楽しみのために読むのもいいだろう。各項目はそんなに長くないので気軽に読めるし、イラストがポップで面白いのでパラパラと眺めているだけでも楽しめる。会社の人間関係に疲れた時に、息抜きとして読んでみるのもいいかもしれない。ぜひ、本書の自分なりの活用方法を見出していただきたい。日野瑛太郎ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)がある。
2015年01月23日人間であれば誰だって、他人から好かれたいと思っているはずだ。社会の中で生きていく以上、他人と関わることは避けられない。他人とうまくやっていくためには、自分の利益だけではなく相手の利益にも気を配り、時には自分の意思を押し殺して相手の希望を優先させることも必要だ。自分のことばかり優先しすぎて、嫌われてしまうとコミュニティの中では生きづらくなる。しかし一方で、他人から嫌われないようにと気を使いすぎるのも問題だ。他人から嫌われることをおそれるあまり、他人のいいなりになって自分がやりたいことをすべて我慢してしまう人がいる。他人から依頼された仕事はすべて引き受け、行きたくない飲み会にも誘われたら必ず出席する。周囲からは「いい人」だと思われているが、自分の人生を生きている感じがあまりしない――。今回紹介する『もう「いい人」ぶるのはやめて楽になりなさい』(ジャキ・マーソン/SBクリエイティブ/2014年9月/1400円+税)は、そんな「いい人」であり続けることに疲れてしまった人にぜひ読んでいただきたい一冊だ。○「いい人の呪い」のせいで、骨折を10日間我慢本書の著者であるジャキ・マーソンも、かつては「いい人の呪い」にかかっていたという。本書の冒頭に彼女自身のエピソードが挿入されているが、読んでみると彼女がいかに「いい人の呪い」に苦しめられていたことがわかる。ここで、エピソードの内容を簡単に紹介してみよう。ある日、彼女はいとこの娘の誕生日パーティに参加する。ダンスの最中に誤って転倒して腕を痛めるが、周りの人に心配をかけてはいけないと考え、その場は笑顔で「大丈夫」と答えてしまう。翌日になっても痛みはひかないが、救急外来のスタッフを煩わせてはいけないと考えて病院にも行かない。それどころか、腕を痛める前にした約束どおり子供をつれて友人の家を訪ね、痛みを我慢しながら笑顔で子供たちと一緒にボートを漕ぐ(友人には「腕が痛いなら漕がなくていい」と言われるが、彼女は自分だけ漕がないのは申し訳ないと考えて痛みを堪えて一緒に漕いだ)。いよいよ我慢できなくなって救急外来を訪れた時には、最初に腕を痛めた誕生日パーティから10日が経過しており、そんなに長い期間痛みを我慢しつづけていたことに呆れられる。ちなみに、腕は見事に骨折していた。この一連の彼女の行動の裏には、つねに「自分のことで他人に迷惑をかけるのは申し訳ない」という考えがある。彼女のように骨折を10日間放置するというのは行き過ぎな気もするが、彼女と同じように考えてしまい自分の意思をうまく他人に伝えられず、モヤモヤとした気持ちを抱えている人は少なからずいるのではないだろうか。そう考えると、必ずしも他人事だとは言い切れない。彼女はこの骨折事件がきっかけとなり、自分が「いい人の呪い」にかかっていることを自覚して、いい人をやめる決意をする。本書で紹介されている「いい人をやめるためのトレーニング」は、そんな彼女自身の経験が反映されている。○「いい人の呪い」は過去の経験によって形成されるジャキ・マーソンの考えによると、「いい人の呪い」にかかってしまうかどうかは、DNAによって生まれながらにして決められているわけではなく、過去の経験によって形成されたルールによって決まるそうだ。このルールを、認知行動療法の分野では「硬直した個人ルール」と呼ぶ。ジャキ・マーソンの場合の「硬直した個人ルール」は、「大げさに騒がない」というものだった。彼女は子ども時代、たびたび母親から「大げさに泣くんじゃありません」という注意を受け、それを守ることができると「偉いわね」と言って褒められた。この過去の経験が大人になってからの彼女の行動を無意識的に支配し、彼女は骨折をしても他人に助けを求めることができなかった。大切なのはこの「硬直した個人ルール」を無意識の領域から意識の領域まで引き上げて、意識してルールを破るトレーニングをすることだ。時には、他人の期待に背いてNOを言わなければならないこともある。その選択ができるようになって、はじめて人は「いい人の呪い」から解放される。○豊富なケーススタディとトレーニング本書の大きな特徴は、ケーススタディとトレーニングの量が豊富であることだ。「いい人の呪い」と一言で言っても、悩みのパターンは人によって様々である。それでもこれだけ様々なケースが載っていれば、きっと自分と似ているケースを発見することができるだろう。「他人の期待に応えようとして逆に疲れてしまっている」という人は、読んでみてはいかがだろうか。日野瑛太郎ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)がある。
2015年01月16日日研総業は13日、「モノづくりニッポンe仕事×ReVALUE NIPPON」プロジェクト発表会を行い、元サッカー日本代表の中田英寿氏らが登壇。同プロジェクトの第2弾として、漆芸家で人間国宝の室瀬和美氏と関西ペイントが参画し、「塗師」を育成するキャンペーンをスタートさせることを発表した。○ニッポンのモノづくりを世界へ「モノづくりニッポン e仕事×ReVALUE NIPPON」とは、モノづくりによって日本の若者の働き方を豊かにするためのプロジェクト。製造業専門の求人サイト「e仕事」を運営する日研総業と、日本文化を再発見していく「ReVALUE NIPPON」を立ち上げた元サッカー日本代表・中田英寿氏のコラボにより実現したものだ。若い世代がモノづくりのスキルを身につけ、「会社に就く」のではなく「職に就く」という、主体的で自由な働き方を提案・提供していくことを目的としている。同プロジェクトの第1弾として、2014年6月にブラジルで期間限定カフェ「nakata.net Cafe 2014@サンパウロ」をオープン。働くモノづくりPRスタッフを募集・派遣を行い、国内外に日本のモノづくりの魅力を発信した。そして第2弾となる今回は「ジャパンクオリティを継ぐ」をテーマに掲げ、一流の「塗師」を募集・育成する。監修には中田氏のほか、漆芸家で重要無形文化財(人間国宝)の室瀬和美氏ら塗装分野のスペシャリストが携わり、日本が誇る「塗り」の技術を学習。研修の一環として、ミラノ万博にあわせて開催される現地でのイベントで、「塗り」をテーマにしたジャパンクオリティの魅力を発信する試みも予定されている。○サッカーのトップ選手から教わるようなもの同発表会の席で、日研総業 代表取締役社長の清水浩二氏は「次世代に日本のモノづくりの魅力、カッコよさ、面白さ、新しい価値を伝えていきたい」とプロジェクト主旨を強くアピール。続いて登壇した中田氏は、数ある日本の技術から「塗り」を選んだ理由について「全国の工芸を見て回った中で、蒔絵(漆芸の装飾)に惹かれた」と明かし、「サッカーで言えば、世界のトップ選手に教わるようなもの。貴重な機会なので、技術だけでなく文化の重さも学んでほしい」と、応募者に呼びかけた。室瀬氏は「日本の精密機械にも、実は漆塗りの技術が隠れている。天体望遠鏡のレンズの磨き方は、漆の磨き方と同じなんです」と、伝統工芸が決して旧世代の技術ではないと話す。実は、室瀬氏は藝大サッカー部出身。中田氏は「初めてお会いしたときから、サッカーつながりで良くしてくださった。たまにサッカー談義もしますよ」と、笑顔を見せた。○職人はいつから“職人”か?後半には、日本の塗料メーカーのトップシェアを誇る関西ペイント 執行役員の宮武啓次氏と、板金塗装の塗装職人でベストペインターコンテスト2011で日本代表に選出された菅原健二氏が登壇。「塗るという仕事」について、トークセッションが行なわれた。トークの中で、中田氏が「いつから“職人”と呼ばれるようになるのか」と疑問を挙げると、塗装職人の菅原氏は「先輩に追いつきたい、とがむしゃらでいるうちに、いつのまにか“職人”と呼ばれていた」と話した。続けて室瀬氏は、定義は難しいとしながらも「“作家”は名乗れるけれど、“職人”は、名乗ってなれるものではない。周りが決めていくこと」と話し、“職人論”が熱く語られた。関西ペイントの宮武氏は「日本は四季があり、寒い地域から暑い地域までいろいろある。それに応じて、塗料を使い分ける幅広さは日本ならでは」と、「塗り」で日本が世界に誇れるポイントをアピールした。なお、今回のプロジェクト「塗師への道」では、塗装業の経験者はもちろん、製造業に興味がある人、研修プログラムのみの希望する人など、広く募集する。募集期間は1月31日まで。
2015年01月14日代官山 蔦屋書店は1月17日、蔦屋書店1号館 2階 イベントスペースにて「仕事と文脈とアタシ トークイベント」を開催する。フリーペーパー「しごととわたし」は、2012年春に創刊。仕事と女性の人生をテーマに、職業も年齢もさまざまな女性へインタビューを行い、2013年9月までに14号を発行している。昨年11月には過去のインタビューを再編集したものが同名の書籍として発売された。今回、同フリーペーパーの梶山ひろみさんを中心に、2冊の雑誌の編集長をゲストに迎えてトークイベントを開催する。一人は"気になる働き方、ないようである仕事、なんとかなる生き方"を特集する「仕事文脈」の宮川真紀編集長、もうひとりは美容師の働き方や生き方に迫る美容文藝誌「髪とアタシ」のミネシンゴ編集長。イベントでは、これまで各誌の取材を通して出会った「生き方/働き方」についてトークを繰り広げる。これからの日々の生活や、仕事において新たな視点を持ち、「あ、こんなふうに働いて、生きてもいいんだ!」など、新たなヒントを得て動き出すことができるよう願いが込めて開催する。参加対象者は、対象商品(「しごととわたし」1,600円・税別、参加チケット1,000円・税込)を予約・購入の先着70名。店頭または電話にて受け付ける。
2015年01月08日2014年12月17日、「Tokyo Work Design Week 2014」オーガナイザーの横石崇と「WIRED」編集長の若林恵が、「Rethink_Work」と題して、独立系ヴェンチャーキャピタルファンド「ANRI」創業者の佐俣アンリと、デジタルクリエイティヴ集団「バスキュール」プロデューサーの西村真里子をゲストに新しい働き方についてのトークセッションを実施した。Tokyo Work Design Week 2014は、“働き方の祭典”と称し2014年11月19日から7日間にわたって開催されたイベントで「デジタルテクノロジーの発展によって、若者の働き方はどう変わっていくのか」がテーマのひとつとなっていた。また、WIREDは以前から新しい働き方について着目しており、2013年3月に発売されたVOL.7では「未来の会社 これからの『働く』を考える」という特集を掲載。「メールも上司もいらない!?未来の企業のための新ルール15」「シリコンヴァレーで大人気の空間設計事務所のデザイナーが語る、21世紀のオフィス」「シリコンヴァレー系 『ひらめくオフィス』のつくりかた:Studio O+Aの空間デザイン」「21世紀のナレッジワーカーの常識。『BYOD』と『ワーカー・アプリ』」「仕事の悩みをスマホで解決!2013年注目のワーカー・アプリ15」「注目の社会起業家8組が語る『成功』の定義」といった内容で展開した。まず、若林さんはWIREDで「働き方」の特集を組んだことについて「9~17時で安定して働くというオフィスの姿が崩れてきている。“会社”というのを見直したいと考えた」と、そのきっかけについて語った。リクルートに入社し、その後ベンチャーキャピタルの仕事に転身した佐俣さんは「もともとベンチャーキャピタル大手に就職する予定だったのが、詳しくなりすぎて内定辞退しました。リクルートでは楽しく仕事できたのですが『やりたいことが合致していなかった』」と振り返る。IBMのSEとして活躍した西村さんは、転職を繰り返しながら2015年に独立を目指すという。転職を繰り返した理由のひとつとして“憧れの先輩がいなかった”ことを挙げている。○自分の「やりたいこと」に固執する必要はない自分の「やりたいこと」が明確にある人が独立するのかというと、佐俣さんは「そんなにガチガチする必要はない」とし、西村さんも「世の中は変わっていくので、ひとつの職種に固執するよりかは“ミーハー”でよいから、いろいろな職種を体験するべき」と続けた。今は職種にこだわるべきではないというのが、2人の共通した意見だ。また、西村さんは「フリーならば今は得意分野を持ち寄ってユニオンを組む感じ」と最近の働き方のトレンドについて語り、両名とも「現在は肩書きにとらわれない時代であり、自分の強みを生かしながら働き方を選ぶ時代」と分析する。一方、自分がフリーに向くのか企業人に向くのかといった議論も展開された。佐俣さんは「“世界戦争の兵隊”になりたいのか、“竹槍を持った村一揆の中心人物”になりたいのか」というユニークな持論を披露。フリーにせよ企業人にせよ「新しいものを世の中に生み出す」にあたり、“どこから”発信するのか、自分で選ぶことができる時代だという。西村さんも「何かをやりたいっていうよりも、“何か面白いこと”を生み出す人になりたい」と付け加えた。両名によると「今は働き方にとらわれない時代」であり、重要なのは“客観視する力”と“セルフプロデュース能力”だという。クリエイターとして“自分がなりたいもの”が明確にある場合は別だが、今は自分が働く“場”を見直すことも大切だとした。なお、同イベントはサンフランシスコ発の「Ploom」がサポート。この「Ploom」は、煙ではなくVapor(ベイパー:蒸気)を楽しむ新しいたばこのスタイルを提案する商品で、スタンフォード大学でともにデザインを学んでいた学生たちが卒業後、喫煙者と非喫煙者が共存して働くことを目指してたばこを「Rethink」してつくったものだという。
2015年01月08日エン・ジャパンが運営する求人サイト「エンチャレンジ!はた☆らく」では、29歳以下の利用者を対象に「仕事を辞めたいと思った瞬間」について調査を実施した。調査は9月25日~10月22日に実施し、517名から有効回答を得た。○非正規雇用者の95%が「仕事を辞めたいと思ったことがある」同調査は、アルバイト・派遣・正社員の求人情報を探している非正規雇用者を中心に実施した。まず、仕事やアルバイトを辞めたいと思ったことはあるか尋ねたところ、95%が「ある」と回答した。その理由について聞くと、トップ3は「人間関係」(40%)、「給与の安さ」(39%)、「働き方(残業や勤務日数)」(37%)となった。辞めたいと思った理由を職種ごとに見ると、オフィスワーク系と医療・介護系は「人間関係」、クリエイティブ系とIT・技術系は「働き方(残業や勤務日数)」、販売・サービス・フード系と軽作業・製造・清掃系は「給与の安さ」、テレマ・テレオペ・コールセンター系は「仕事内容(自分に向いていない)」が多くを占めている。○73%が、実際は辞めずに踏みとどまった経験あり辞めたいと思ったことがあると回答した人に、実際は辞めずに、踏みとどまった経験があるか聞くと、73%が、「ある」と回答した。理由の1位は「次の仕事・アルバイトが決まるまで我慢した」(37%)、2位は「自分で努力して、状況を改善した」(31%)で、無責任に投げ出したり、周囲へ相談するのではなく、忍耐や努力で乗り越えていることがわかる。次の仕事・アルバイトを探すことになった場合、教訓にしたいことについて尋ねたところ、51%が「妥協せずに希望条件に合う仕事を探す」と回答した。2位は「希望条件の優先順位を変える」(39%)、3位は「企業・仕事のことを自分でよく調べる」(36%)で、自分自身が努力する姿勢を感じさせる結果となった。
2014年12月30日会社員をやっていれば、誰でも一度や二度は心が折れそうになったことがあるはずだ。性格が合わない上司の下で理不尽を強いられたり、高すぎる目標に追い立てられて疲弊してしまったり、働くことで感じるストレスの例には枚挙にいとまがない。現代社会において働くこととストレスの問題は切っても切り離せない。このようなストレスに対してどのぐらい耐性があるかは人によって大きく異なる。少しのストレスでもすぐに心が折れてしまう人から(僕も明らかにこちら側に属する)、どんなに強いストレスを与えても結果を出し続けるタフな人まで、いろいろな人がいる。外資系投資銀行や戦略コンサルティングファームでハードに働く人たちの多くは、ストレス耐性が非常に高い。僕の知り合いにも何人か投資銀行やコンサルティングファームでハードワークをしている人たちがいるが、彼らのストレス耐性の高さが何に由来するのかは昔から気になっていた。今回紹介する『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?』(久世浩司/SPBクリエイティブ/2014年10月/1,300円+税)を読めば、その理由の一端が明らかになるかもしれない。本書は、ハードワーカーのストレス耐性の高さを「レジリエンス」という概念によって説明している。折れない心を身につけたいと思っている人はもちろんだが、「ストレス耐性」って簡単に言うけど何を意味してるんだろう? という疑問を抱いたことがある人も、読めば得るものがあるだろう。○「レジリエンス」とは何なのか多くの人にとって「レジリエンス」という言葉はそれほど聞き慣れた言葉ではないと思うが、実はこの概念が最近注目されつつある。2013年度の「世界経済フォーラム」(ダボス会議)ではこの「レジリエンス」について議論が行われ、NHKの「クローズアップ現代」でも取り上げられた。「レジリエンス」は企業からも注目されており、ロイヤル・ダッチ・シェルやゴールドマン・サックスなどではレジリエンスに関する研修が行われているらしい。全米心理学会の説明によると、レジリエンスとは「逆境や困難、強いストレスに直面したときに、適応する精神力と心理的プロセス」のことを指す。逆境や困難を「避ける」のではなく、「避けられないもの」と捉えたうえで前向きに対処し適応する方法を模索するところが従来のストレスに対する考え方に比べて新しい。本書では、レジリエンスが高い人には以下の3つの特徴があると説明されている。1つ目が「回復力」で、これは逆境や困難に直面してもすぐに立ち直り元の状態に戻れる力のことを指す。2つ目は「緩衝力」で、外的な圧力に対する耐性、いわゆる打たれ強さのことを指している。3つ目が「適応力」で、予期せぬ変化を受け入れて合理的に適応する力のことを指す。このような力をどのような訓練で育めばよいのかを、本書ではいくつかの事例を交えて提案している。○振り返りの時間を持つ重要性レジリエンスを鍛えるためには、3つの習慣を身につけることが必要だと本書は提言している。3つの習慣とは、(1)ネガティブ連鎖をその日のうちに断ち切る習慣、(2)ストレス体験のたびにレジリエンス・マッスルを鍛える習慣、(3)ときおり立ち止まり、振り返りの時間をもつ習慣だ。これら3つの習慣はどれも大切だが、個人的には(3)の振り返りの時間をもつ習慣が1番印象に残った。現代はビジネスの変化が早い時代なので、のんびり振り返っている時間なんてまったくないと考える人は多いかもしれない。しかし、変化が早いからと言ってじっくり考える時間を持たずに、ただ現実に追いつこうと焦るだけではいい意思決定はできないし、レジリエンスも育てられない。本書ではこのような「振り返りの時間」を持つことが、「自分はこれからも今いる『場』にい続けるべきだろうか」という問いかけを発するきっかけになるという点も指摘している。レジリエンスとは理不尽な環境に自分を無理やり適応させるプロセスのことを指すわけではない。「場」(会社員の場合、この「場」とはたいていは"職場"のことを指すだろう)が間違っているというのであれば、「場」を変えることも検討にいれるべきだ。正しい場を選択するところまで含めて「適応」と考えられている点には非常に共感できる。○逆境やストレスを前向きに捉える第一歩に「レジリエンス」という考え方で一貫しているのは、本来はネガティブなものでしかない逆境やストレスを、何らかの形で前向きに捉えようとしている点だ。「前向きに」と言葉にして言うのは簡単だが、実際にやってみると困難は多い。それでも、ネガティブな感情から脱するためにはどこかで前向きになる必要がある。本書が、そうやって前向きになるための手助けをしてくれるかもしれない。日野瑛太郎ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)がある。
2014年12月26日厚生労働省は22日、年明けから取り組む長時間労働対策を発表した。厚生労働省は9月に厚生労働大臣を本部長とする「長時間労働削減推進本部」を設置。同本部では、「過重労働等撲滅チーム」「働き方改革・休暇取得促進チーム」「省内長時間労働削減推進チーム」が組織され、それぞれ過重労働対策を行っている。○各都道府県労働局に「働き方改革推進本部」を設置「働き方改革・休暇取得促進チーム」が年明けより実施する取り組みは、都道府県労働局に労働局長を本部長とする「働き方改革推進本部」の新設。設置目的は、企業経営陣への働きかけ・支援及び地域における働き方改革の気運の醸成。同推進本部では、労働局長や労働基準部長による、地域のリーディングカンパニーの訪問や、企業における先進的な取り組み事例の収集・周知を行う。○過重労働が行われている事業場の徹底調査も「過重労働等撲滅チーム」が実施予定の取り組みは3つ。1点目は「月100時間超の残業が行われている事業場等に対する監督指導の徹底」。長時間の過重労働が行われている事業場に対し、労働基準監督署による立ち入り調査を徹底する。違反が認められた事業場に対しては、是正勧告書等を交付し、指導を行う。是正が認められない場合、送検も視野に入れた対応を行うとのこと。2点目は「インターネットによる情報監視」。厚生労働省がインターネット上の求人情報等を監視・収集し、その情報を労働基準監督署による監督指導等に活用する。同項目は、高収入をうたうものや求人を繰り返し行うなど、過重労働等の労働条件に問題があると考えられる事業場に対して試験的に実施する予定。3点目は「メンタルヘルス対策の強化」。都道府県労働局において、ストレスチェック制度の周知、ストレスチェック及び面接指導等を行う医師・保健師に対する研修などを実施する。※画像は本文とは関係ありません。
2014年12月25日2016年10月、パートタイマーなどの働き方に影響を及ぼす法律の改正があることをご存知でしょうか。2014年8月、「短時間労働者に対する厚生年金・健康保険の適用拡大」が決定し、2016年10月から施行されることになりました。実はこの改正のため、パートタイマーとして扶養内でいくら稼ぐかを検討する際に目安とされる「年収103万円の壁」や、「年収130万円の壁」に続き、新たに「106万円の壁」というものが出現することになります。コラム「年収103万円の壁が崩れるってホント?」に続いて、今回は、この新たに出現する「106万円の壁」について解説していきましょう。103万円・130万円の壁とは会社員の妻がパートタイムなどで働いて年収が、103万円または130万円を超えると、税金や、夫の会社からの配偶者手当の支給の打ち切り、また社会保険料支払いが発生するなどして、世帯としての手取り額が減ってしまうことがあります。そのため、「働いても手取りが減ってしまうなら103万円(または130万円)以内で働こう」とする人が少なくなく、この金額が一種の壁になっていることを表した言葉です。具体的には、103万円を超えると働く妻自身の所得税が発生する夫の所得税の配偶者控除が受けられなくなる(代わりに配偶者特別控除を受ける)夫の会社からの配偶者手当が受けられなくなることがあるという影響があります。さらに、130万円を超えると、妻自身の社会保険(年金・健康保険)の保険料納付の義務が生じます。106万円の壁とは冒頭でも触れましたが、2016年10月から、短時間労働者のうち社会保険(厚生年金・健康保険)の加入対象者が拡がる見通しで、年収130万円に満たないパートタイマーでも、拡大対象となった場合は、社会保険の保険料納付の義務が生じます。どのように厚生年金の加入対象が拡大されるのか、以下にまとめてみましょう。図表1 厚生年金・健康保険の加入対象となる条件資料:厚生労働省ホームページ「年金制度の改正について(社会保障・税一体改革関連)」より執筆者作成現在は「正社員の4分の3以上の時間」勤務すると社会保険に加入することになります。改正後は、「月額賃金8.8万円(年間106万円)以上、週20時間以上勤務」で加入することになり、これが新たに出現する「106万円の壁」となるわけです。当面は、従業員数501名以上といった大企業のみが対象ですが、将来的にはそれ以外の企業へも広がる可能性が高いため、加入対象となるパートタイマーの方は増えていくと思われます。夫が会社員か自営業かでその影響は異なる厚生年金の加入対象となった場合、目先の支出は増えますが、将来もらえる年金も増えますので、有利か不利か、分かりづらいですよね。実は、夫の働き方によって有利か不利かが変わってきます。ここでは、月収10万円(年収120万円)のパートタイムで働いている40歳の妻が、厚生年金加入の対象となった場合にどのような影響を受けるか、夫が会社員と自営業の2つのケースに分けて試算しましょう。<夫が会社員のケース>夫が会社員の場合、妻の年収が130万円以内であれば、妻は第3号被保険者となり、現行では、夫が加入している厚生年金や共済組合が妻の分も負担していますので、保険料の自己負担はありません。しかし改正後は、年収106万円を超えているため、社会保険料の支払いが生じます。このケースでは、厚生年金保険料・健康保険料を合わせて、約1万4,300円が天引きされ(下記図表2)、60歳まで加入した場合20年間でその総支払額は約340万円となります。図表2 社会保険に加入適用された場合の保険料と受取年金額(第3号被保険者)※金額はあくまで例です。お住まいの地域などにより異なりますのでご参考程度にお願いします。※資料:日本年金機構ホームページ・協会けんぽホームページを参照し執筆者作成さて、65歳から24年間(65歳女性の平均余命まで)年金を受け取った場合、厚生年金部分の受取合計額は約329万円と、健康保険料と合わせて支払った保険料合計額を下回ります。つまり、会社員の妻の場合、月収10万円を得る働き方では、社会保険料の負担で現行から増える金額と、年金として現行から増える金額を単純に比較すると、負担の方が大きくなるのです。ただし、厚生年金部分を抜き出して比較した場合、厚生年金保険料(総支払額約206万円)を納付することで約329万円受給できるので、有利といえます。<夫が自営業のケース>夫が自営業の場合、妻は第1号被保険者となり、現行でも妻自身が国民年金保険料を納付し、国民健康保険料は世帯主がまとめて支払っています。この例の場合、妻は月約2万1,700円の保険料を負担していましたが、改正による加入対象となって厚生年金に加入した場合、年金保険料の半額は企業が負担するため、健康保険料と合わせた社会保険料は月約1万4,300円となり、約7,400円も支払額が減ります。図表3 社会保険に加入適用された場合の保険料と受取年金額(第1号被保険者)※金額はあくまで例です。お住まいの地域などにより異なりますのでご参考程度にお願いします。※資料:日本年金機構・協会けんぽ・東京都江東区各ホームページを参照し執筆者作成厚生年金に60歳まで加入した場合、20年間で約180万円負担が減る上に、厚生年金も支給されるので、この改正は自営業の妻にとっては、うれしい内容といえるでしょう。働き方を考えるポイント国の発表によれば、この制度改正の影響を受ける短時間労働者は約25万人。改正にあたり、働き方をどのように考えていけばよいでしょうか。「106万円の壁」を詳しく見ると、会社員の妻は不利であり、自営業の妻は有利となる改正と映るでしょう。しかし、厚生年金や健康保険に加入できるメリットも大きいため、一概に損得だけで働き方を考えるのは早計です。厚生年金加入によって、老後の年金額も増加しますし、また障害を負った時の年金額・亡くなった時の遺族保障など、受けられる保障は増えます。また健康保険には、病気やケガで仕事を休んだ場合、4日目から最大1年半の間、標準報酬月額の3分の2が支給される「傷病手当金」という、国民健康保険ではほとんど実施されていない制度があります。こうした社会保障を理解した上で、これからの自分自身の働き方をどうしていきたいか、検討するとよいですね。どうしても社会保険料を払わずに働きたいという方が取れる対策は3つ。1つは、働く時間を週20時間未満に減らすこと。2つ目は収入を減らすこと。3つ目は従業員数が501人未満の企業に転職すること。しかし前述のように、今後は従業員数が少ない企業にも広がっていく可能性は高いでしょう。まずは、何のために仕事をするのか一度、心に問いかけてみましょう。お金のためであれば、手取り額が社会保険料の負担増を上回るまで仕事量を増やす。また、もし自分の夢をかなえるためであれば、子どもが小さく長時間働けないなどの理由での収入減は仕方ないと目をつぶり、将来を見据えながらキャリアを地道に積み重ねていくとよいと思います。お金の損得以上に大切にしたいものが見つかるかも知れません。コラム執筆者プロフィール 鈴木 さや子(すずき さやこ)(株)ライフヴェーラ 代表取締役/mamaTanoマネーサロン 代表/CFP(R)/1級FP技能士/住宅ローンアドバイザー/キャリアコンサルタント(CDA)家族が笑顔になれるための生活に役立つお金の知識を、主に女性向けに、セミナーやコラム記事などを通じて情報発信。保険などの商品を一切販売しないファイナンシャルプランナーとして活躍中。専門は教育費・ライフプラン・保険・住宅ローン・マネー&キャリア教育。女性の心に寄り添う個人相談にも定評がある。企業講演の他、小・中学校や地域コミュニティなどでの講演やワークショップなど、保護者や親子向けイベントも行っている。コラム監修者プロフィール 柳澤 美由紀(やなぎさわ みゆき)CFP(R)/1級ファイナンシャルプランニング技能士関西大学社会学部卒。大学時代に心理学を学び、リクルートグループに入社。求人広告制作業務に携わった後、1997年ファイナンシャルプランナー(FP)に転身する。相談件数は800件以上。家計の見直し、保険相談、資産づくり(お金を増やす仕組みづくり)が得意で、ライフプランシミュレーションや実行支援も行っている。家計アイデア工房 代表※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
2014年12月24日マイクロソフトは12月18日、10月27日から31日の5日間に実施した「テレワーク推奨強化週間2014」の参加者調査とその結果を発表した。テレワーク週間は、日本マイクロソフトだけではなく、32の法人(企業、自治体、社団法人など)の支援、賛同を得て連携。同社社員と合わせて、合計3000名規模で行われた。この活動は、日本マイクロソフトが積極的に推進する「多様な働き方」や「ワークスタイル変革」の実証経験を公開することで、政府の目標である日本のテレワーク推進に貢献したいという構想によるものだ。調査の対象者の属性は、男女比(男性74%:女性26%)、年代(40代 50%、30代 32%、それ以外 19%)、職種(内勤系 約38%、外勤系 約45%)、業務特性(チームワーク型 53%、個人作業型 35%)。調査によると、今回のテレワーク推進強化週間においては、回答者の83%が少なくとも7日チャレンジ、7割以上が1日あたり1時間以上時間を削減したという結果となった。テレワークに期待する効果の上位3要素は、「時間の有効活用」「働きやすさの向上」「仕事の効率化」となり、導入・利用の阻害ポイントとしては、「制度がない」「さぼり誘発などのマイナスイメージ」「オンライン会議の仕組みがない」などがあげられた。テレワークの必要性に関しては、「今現在の仕事や生活」に対して76%、「将来の社会での必要性」に対して83%という結果で、テレワークを含めた働き方の見直しが必要と言う回答が目立った。「テレワーク」は必要かという質問を「今現在の仕事や生活」に対して、また「将来の社会での必要性」について確認した結果それぞれ76%、83%とテレワークを含めた働き方の見直しは必要と言う回答となった。
2014年12月22日企業向けSNSを提供するビートコミュニケーションは12月17日、「ビジネス環境と我々の働き方の変化」に関する慶應義塾大学 総合政策学部教授 竹中 平蔵氏のインタビューを公開した。竹中 平蔵氏は著書の中で「これから世界はフラットな世界とスパイキーな世界に分かれていく」と語っており、今回のインタビューではこの発言を中心に、これからのビジネス環境がどのように変化し、働き方もそれに連れてどのように変わるかについて尋ねている。同氏によると、モバイル通信やクラウド技術を始めとするデジタル技術の革新によって「課長・部長などの管理職が不要になり始めている」という。これは、デジタル技術の活用で「一部の意思決定者と作業担当者がいれば事足りる」ことによるもので、働き方が大きく変わり、職場へ行くことなく仕事ができるようになっていくとのことだ。これは、時間による労働管理の終焉に繋がり、「成果で労働を計る必要が出てくる」と竹中氏。テクノロジーの変化だけではなく、それに伴う価値観の変化が働き方をも変えて行く未来がやって来る。ビートコミュニケーションによると、2025年頃にはホワイトカラーに就く社会人の1/3がオンラインワーカーになるといい、個人の置かれている状況や価値観に合わせて働き方が選べる時代になる可能性がある。そうした時代の変化に合わせるには、様々な働き方をサポートするコミュニケーションのプラットフォームとして、社内SNSが効果的のようだ。
2014年12月22日今はもう新卒で入社した会社にそのまま一生勤め続けるような時代ではありません。会社員をしていて、転職や独立のことを一切考えたことがないという人はもはや少数派でしょう。現時点では積極的に会社を離れることを考えていないという人でも、ある日状況が変化して会社を辞める日が訪れる可能性は十分あります。そういう意味で、「会社の辞め方」は誰もが知っておくべき知識です。ところが、会社の辞め方は入社時のガイダンスでは教えてはくれませんし、社内のマニュアルを漁ってもあまり詳しくは書いていないのが普通です。法律的には原則として2週間前に退職の意志を労働者が事業主に対して表明すれば辞められることになっていますが、このことだけ知っていても具体的にどうやって手続きを進めればよいかはわかりません。僕も以前勤めている会社を辞める際に、どういう手順で事を進めればよいのかわからず少し困った経験があります。会社の辞め方には、暗黙の型が存在します。基本的にはこの型に沿って事を進めていけば円満退職できます。円満退職することは、気持ちよく前に進むためにはとても重要です。「どうせ辞める会社なんだからどんな辞め方だって構わない」と思う人もいるかもしれませんが、退職時に話がこじれてムダなエネルギーを使っても損をするだけです。辞めると決めたら円満退職を第一目標に「大人な対応」で粛々と事を進めたいものです。○一番最初に退職の意思を伝える相手は直属の上司退職の意思が固まったら、最初にそれを伝える相手は自分の直属の上司です。間違っても、いきなり退職届を人事部に提出してはいけません。上司に伝える前に他の同僚などに伝えるのもNGです。外国の場合はわかりませんが、少なくとも日本では直属の上司を最初の窓口にするのが、退職の際の暗黙の型になっています。切り出し方ですが、「お話したいことがあるので、お時間をいただけませんか」といったような言い方をするのがよいでしょう。「相談したいこと」ではなく「お話したいこと」という言い方をおすすめするのは、これが「退職の相談」ではなく「退職の意思表示」だからです。細かいですが、この違いには意味があります。上司に告げる時点で既に退職の意思は固まっているはずですから、本来であれば相談することなどないはずです(もちろん、引き継ぎの方法などは相談が必要なので、そういう意味では相談という表現も正しいのですが)。ここを「退職の相談」にしてしまうと、「辞めようかどうか悩んでいる」という意味に捉えられ、話が慰留の方向に流れがちになり辞めづらくなります。細かいですが、これは「相談」ではなく「意思表示」なんだということを自分でも確認する意味を含めて「お話したいこと」という言い方をすることを僕はおすすめします。○退職の理由をホンネで答える必要はない上司に退職の意思表示をすると、ほぼ間違いなく退職の理由を聞かれます。人それぞれいろいろな退職理由があると思いますが、それを正直に答える必要はありません。特に、ここで会社の不満を口にするのはやめるべきです。言っても意味がないだけでなく、退職日までの人間関係をギクシャクさせるリスクすらあります。どうせ辞めれば不満とはサヨナラできるのですから、「一身上の都合です」とか「個人的な事情です」という形で具体的な退職理由には言及しないようにするとよいでしょう。○転職先や、退職後に何をするかは言わなくても大丈夫また、「辞めた後どうするつもりか?」といった質問も高確率でされると思いますが、これも正直に答える必要はありません。「私個人の問題ですので、お答えしません」とキッパリ言ってしまうのもよいですし、「新しい分野で自分の可能性を試してみようと思っています」といったような前向きかつ曖昧な表現でお茶を濁すというのもよいでしょう。転職先や退職後に何をするかについて会社に話す・話さないの決定権は自分にあります。相手がいくら知りたいと言ってきても、こちらが言いたくないのであれば言う必要はありません。特に言っても問題がなく、積極的に知らせたいと思うのであれば言ってもいいでしょうが、少しでも嫌な予感がする場合は伏せておくのが無難です。○引き継ぎはしっかりと、ただし線引きも必要退職の意思表示をしても、それですぐに次の日から会社に来なくていい、というようにはなりません。普通は仕事の引き継ぎを行うことになります。引き継ぎはいい加減にやるべきではありません。伝えられることは漏れなく伝達し、必要なものはしっかりと文書化します。もっとも、「会社に残っている人に一切迷惑をかけない」というレベルを目指してしまうと、やることは無限に拡大するおそれがあります。そういう意味では「線引き」も必要です。基本的に、退職の意思が受理された時点から「新しく何か仕事をする」ことを要求されたら、それは引き継ぎの範囲を超えています。断っても問題ありません。線引きをした範囲内の引き継ぎをしっかりと行い、気持ちよく前に進みましょう。日野瑛太郎ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)がある。(タイトルイラスト:womi)
2014年12月12日仕事にプライベートを侵食されることほど嫌なことはありません。せっかくの休みの日なのにトラブルで呼び出されたり、平日にできなかった仕事を自宅に持ち帰って片付けたりしていると、どんな人でも気が滅入るものです。平日に気持ちよく仕事をするためにも、プライベートは死守したいと思っている人は少なくないことでしょう。「仕事とプライベートでしっかりとメリハリをつけたい」というのは、本来であれば当然の要求です。しかし、日本の会社の一部には、このような考え方を嫌う人たちがいます。彼らは若者がプライベートを要求するたびに眉をひそめます。彼らはしばしば、以下のような乱暴な物言いをします。「若いうちはプライベートを全部仕事に捧げてはじめて一人前になれる」「見習いのうちはワーク・ライフ・バランスなんて必要ない。必要なのはワーク・ワークだ」「仕事でまだ一人前になっていないのに、プライベートを要求するなんてありえない」はっきり言いますが、これらの言い分は完全に間違っています。プライベートは、仕事で一人前になることではじめて付与されるようなものではありません。人間は仕事のためだけに生きているわけではないのですから、仕事とは別にプライベートの時間があるのは当然です。一人前になってはじめてプライベートが確保できるといったような意見は、人生の最大の価値を仕事に置く考え方から発せられているものにすぎず、結局は社畜の理屈でしかありません。○メリハリのない働き方では仕事の質も低下するそもそも、プライベートを一切考えないような働き方は、仕事の質自体も低下させます。人間は時間が潤沢にあると思うと、ついついそれをギリギリまで使ってしまいます。「この仕事は土日を使って片付ければいい」といったようなプライベートを犠牲にする働き方が癖になってしまうと、結果的に効率の悪い働き方しかできない「仕事ができない人」になってしまうおそれすらあります。仕事の質を担保するためにも、「プライベートを死守する」気持ちはつねに持ち続けなければいけません。プライベートを死守するために、いくつか気をつけておきたいことがあります。今回はそれらを3つ紹介したいと思います。○会社の「外」の人間関係を大切にするまず1つ目は、会社の外の人間関係、つまりプライベートの人間関係を大切にすることです。たまにプライベートでも会社の同僚とばかり遊びに行っている人を見かけますが、これはあまり褒められたものではありません。会社の人とはどうせ仕事でたくさん会うのですから、プライベートでは会社の外とのつきあいを広げることを優先すべきです。特に意識をしていないと、人間関係は会社の内側に閉じこもりがちになります。大学時代の友人とも気づくと疎遠になり、同期や同僚とばかりつるんで休みの日まで仕事の話ばかりするようになってしまいます。そうならないためにも、会社の「外」への人間関係は意識して伸ばしていかなければなりません。○自宅では仕事のメールを見ない2つ目は、自宅では仕事のメールを見ないように気をつけることです。今は自宅でも仕事のメールを見られるような環境を整備している会社が多いので、ついつい帰宅後や休日もメールが気になって見てしまう人が少なくないようですが、これはおすすめできません。これをすると、メリハリがなくなってしまうからです。見るのもよくないのですが、それ以上によくないのがプライベートの時間を使って返信をしてしまうことです。このように休日にメールをやりとりしていると、周囲から「あの人は休日も関係なく働いているんだ」と思われてしまいます。いったん周囲からそう思われてしまうと、本当に休日に仕事を振られたりするおそれがあります。そうなったら悲惨です。むしろプライベートの時間は一切仕事のメールを返さずに、「あの人はプライベートを大事にしている」というキャラを確立したほうが、ヘンな仕事を振られずに好都合なのでそちらを目指すべきでしょう。○会社の近くに住みすぎない3つ目は、会社の近くに住みすぎないことです。会社の近くに住めば通勤時間が短縮されていいようにも思えますが、自宅があまりにも会社の近くにありすぎると「生活が仕事の延長」になりがちです。終電という概念がないので逆に働き過ぎてしまったり、何かあった時に真っ先に会社への呼び出し候補にされてしまいます。時間短縮のために会社の近くに住んだのに、逆に会社にかける時間が増えすぎてしまったという例を僕はいくつも知っています。わざわざ通勤が大変な遠方に住む必要はもちろんありませんが、仕事とプライベートの線引ができる程度には会社から離れた場所に住むことを僕はおすすめします。日野瑛太郎ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)がある。(タイトルイラスト:womi)※毎週金曜更新
2014年12月05日上司・先輩のようないわゆる「上の立場」の人の意見に納得することができずに、モヤモヤした気持ちを抱えた経験はないでしょうか。こういう時に即座に反論できる人ならいいのですが、相手が上司や先輩だとどうしても気後れしてしまって、何も言い返せずに終わってしまうという人が少なくないと思います。一部では「上司の言うことは絶対服従」、「上司が『カラスは白い』と言ったら、『はい、まっ白です』と賛同しろ」なんていうひどいビジネス格言も出回っているようですが、これは間違った考え方です。上司や先輩は確かに「上の立場」であることには違いありませんが、別に全能というわけではありません。当然ながら間違ったことも言うはずです。些細な間違いであれば放っておけばいいのですが、間違いを指摘しなかったばっかりに、相手だけでなく自分や組織全体が不利な状況に陥ってしまうこともあります。「反論を一切しない」ことのリスクはバカにできません。相手がどんな立場であろうと、反論すべき時にはしっかり自分の意見を伝える必要があります。これができないと、最悪の場合上司や先輩の命令に唯々諾々と従うだけの「奴隷社員」になってしまうおそれさえあります。○会社で「言われっぱなし」の人は損をする基本的に、会社では「言われっぱなし」の人は損をします。その場その場の状況だけで考えると、反論をしなければ相手の機嫌を損なうことがないので安全なように思えますが、どんな時でもつねにそういう態度でいつづけると、いつしか「あいつは何を言っても反論しない」「どんな理不尽なことを押し付けても文句を言わない」という印象が形成されてしまいます。つまり、上司や先輩からナメられてしまうわけです。いったん会社でナメられてしまうと、相手の要求は際限なく加速し、内容もどんどん理不尽なものになっていきます。上司や先輩に対して攻撃的な態度をとる必要はまったくありませんが、受け身すぎてもいけません。上司や先輩とは「言いすぎ」でもなく「言われすぎ」でもないような、ニュートラルな人間関係を築くよう心がけるのがおすすめです。上司が「あいつにいい加減なことを言うと怖いんだよなぁ」と思うような部下になれると、一番気持ちよく働けます。○相手に敵意がない場合は、尊敬の気持ちを忘れずに反論する反論をする際には、2つのシチュエーションがありえます。1つ目は、まっとうに意見具申をする場合です。たとえば、上司があなたに「今やっている仕事は後回しにして、◯◯という仕事を至急やってほしい」と指示してきたとします。ところが、あなたは今やっている仕事のほうが優先度も緊急度も高いと考えており、上司の指示してきた仕事を至急やる必要がなぜあるのか理解できませんでした。これはつまり、仕事の優先度・緊急度の認識が上司とあなたで噛み合っていないわけです。このような時には、「わかりました」と何も考えずに引き受けるのではなく、なぜそのような優先度になったのか上司に一度聞いてみるべきです。上司の説明次第では納得することもあるでしょうし、逆にあなたが正しくて、上司が優先度を考えなおすこともあるでしょう。この場合、上司は別にあなたに敵意があるわけではありませんから、反論をする際には相手に対する尊敬の気持ちも忘れてはいけません。「なんで今それをやる必要があるんですか?」とキレ気味に反論するのではなく、「ちょっと背景が理解できていないので、優先度変更の理由を説明していただけますか?」といったようにあくまでニュートラルに意見を言うようにすべきです。敵意がない相手については、「言いすぎ」でもなく「言われすぎ」でもない言い方を考えましょう。○不遜な相手には、時にはキレることも必要一方で、明らかに不遜な態度で部下や後輩に接してくる上司・先輩もいます。2つ目のシチュエーションは、このような不遜な態度に対して反論をする場合です。このように相手が敵意を持って接してくる場合は、こちらもある程度強い態度で出るべきです。ポイントになるのは、「越えてはいけないライン」を絶対に越えさせないことです。たとえば、上司があなたに仕事上の指示や意見を超えて「お前は使えないやつだ」「お前のようなクズは今すぐ辞めろ」といったようなパワハラまがいのことを言うようであれば、それは明らかに「超えてはイケないライン」を超えています。相手がラインを越えてきた場合には、あえてキレることをおすすめします。相手が不適切な発言をした瞬間に「失礼ですが、クズとはなんですか? あなたにそこまで言う権利はないんじゃないですか?」とスイッチが入ったように態度を豹変させると、こちらのペースに巻き込むことができます。もちろん、継続的に相手からこのような不適切発言がなされるようであればそれは正真正銘のパワハラですので、証拠を集めて内外の相談機関などに相談する可能性も視野にいれるべきでしょう。日野瑛太郎ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)がある。(タイトルイラスト:womi)※毎週金曜更新
2014年11月28日「年収103万円を超えないように働きたい」パートやアルバイトで働いたり、働いた経験のある方なら、こう考えている方も多いのでは?働く時間を調整して年収を103万円以下に抑える「働く妻」は多く、ある調査によると、パートタイマーの実に34.5%もの人が就労調整をしています。以下にその理由を見てみましょう。<就労調整している理由(複数回答)>配偶者控除の適用を受けるため103万円以下に抑えるようにしている:42.4%配偶者の社会保険に被扶養者として加入するため130万円未満に抑えるようにしている:42.4%自身の収入に所得税がかからないよう103万円以下に抑えるようにしている:41.7%出典:「短時間労働者の多様な実態に関する調査」/独立行政法人 労働政策研究・研修機構 2013年5月「年収103万円の壁」とはなんでしょうか。会社員の妻がパートタイムなどで年に103万円以上働くと、税金や、夫の会社からの配偶者手当の支給の打ち切りなどから、世帯としての手取り額が減ってしまうことがあります。そのため、「働いても手取りが減ってしまうなら103万円以内で働こう」とする人が少なくなく、103万円が一種の壁になっていることを表した言葉です。ところが、この「年収103万円の壁」が崩れる可能性が出てきました。どのようなことか解説していきましょう。そもそも年収103万円を超えるとどうなるの?現行制度では、年収103万円の壁を超えて働くと、どのような影響があるのでしょうか。(1)働く妻自身の所得税が発生する働く妻自身の所得税を計算する上で、パート収入から控除することができるのは、「給与所得控除」と、どの納税者も受けられる「基礎控除」の2つ。パート年収が103万円で他に収入がない場合、「給与所得控除」の65万円と「基礎控除」の38万円を控除することができます。結果、働く妻自身の所得は0円となり税金はかかりません。しかし103万円を超えると、他に受けられる控除(生命保険料控除など)がない場合は所得税が課税されます。ちなみに、働く妻自身の住民税については、年収100万円を超えると課税されます(なお、パート収入が100万円以下でも、お住まいの地域によっては住民税がかかる場合があります。詳しくはお住まいの市区町村の窓口でおたずねください)。(2)夫の所得税の配偶者控除が受けられなくなる「配偶者控除」とは、配偶者の合計所得金額が38万円以下の場合に受けられる控除です。夫が「配偶者控除」を受けるためには、妻の年収が103万円以下である必要があります。妻の年収が103万円であれば、「給与所得控除」の65万円を控除すると合計所得金額が38万円となるからです。(3)代わりに「配偶者特別控除」が受けられるように103万円を超えると、「配偶者控除」の代わりに「配偶者特別控除」(※)を受けられるようになります。もし妻のパート収入が104万円になった場合、合計所得金額は104万円から「給与所得控除」の65万円をひいた39万円となります。合計所得金額が38万円超40万円未満の場合、夫は38万円の「配偶者特別控除」を受けられますが、妻の収入が上がっていくにしたがって、夫が受けられる特別控除額は次第に減っていく仕組みとなっています(図表1参照)。この「配偶者特別控除」は、妻の収入が141万円未満まで受けることができます。(※)「配偶者特別控除」は夫の合計所得金額が1,000万円(給与収入金額が約1,231万円)を超えると受けられなくなります。図表1:配偶者特別控除の所得ごとの控除額資料:国税庁ホームページをもとに執筆者作成(4)103万円を超えると夫の会社から手当がもらえなくなることも多くの企業では、配偶者手当の支給条件を、国の配偶者控除に合わせて妻の年収が103万円以下の場合としているため、手当がもらえなくなることがあります。以下、年収103万円以下と超えた場合の違いについて、まとめます。図表2:年収103万円以下と超えた場合との違い資料:執筆者作成「103万円の壁」が崩れるとは?現在、国は上記(2)で触れた「配偶者控除」の見直しに向けて議論しています。安倍内閣は、女性がもっと働ける世の中にするためにさまざまな女性活躍推進施策を打ち出し、配偶者控除の制度が女性の働く意欲を阻害しているのではないかという考えなどから、見直しに向けて動いているのです。しかし世論では、反対の声も少なくありません。女性が安心して働く環境が十分に整っていないうちに早計ではないかという意見などです。103万円以上に働きたくても、子どもや介護の依頼先がないなどの事情で働けない妻がまだたくさんいるからです。「130万円の壁」の影響はさらに大きいさて、現在議論されている「配偶者控除の見直し」以上に、家計への影響が大きく、多くの妻が働くことを制限せざるを得ない壁があります。それが「130万円の壁」です。働く妻の年収が130万円を超えると、妻自身の社会保険(年金・健康保険)の保険料納付義務が生じ、家計に大きな影響を与えます(年間約25万円の負担増)。しかも、2016年10月からは短時間労働者に対する厚生年金・健康保険適用の基準が拡大される見込みで、一定の条件に当てはまる場合、年収106万円(※週20時間以上で月額賃金8.8万円以上、勤務期間1年以上、学生は除く)を超えると社会保険料負担が生じます。当初は従業員501人以上の企業での実施になりますが、「103万円の壁」どころか、さらに影響が大きい「106万円の壁」がもうすぐ出現するのですね。以下、まとめてみましょう。図表3:働く妻の年収と税金・社会保険料・夫の配偶者控除等の関係資料:執筆者作成もし廃止されたらどうしたら良い?現在、年収を103万円以下に抑えている方にとって、配偶者控除が廃止・縮小された場合以降の働き方は悩むところかと思います。次の2つのポイントについて考えてみましょう。<1> 103万円以上働くことによる家計への影響は?上記図表2で触れたように、103万円以上働いた場合、妻自身が所得税を支払うことになり、さらには夫の会社から支給されていた配偶者手当がもらえなくなる場合があります。手当が大きい場合は、少し年収が増えても、手当がもらえなくなる損失分の方が上回る場合もあるので注意が必要です。<2>自分自身の今後の働き方について今は子どもに手がかかるので、短時間でしか働けないが、手がかからなくなったらフルタイムで働きたい、将来に向けてキャリアを積み重ねたいなど、働く妻自身が、今後どのように働いていきたいか、長期的な視点で考えることが大切です。「配偶者控除の見直し」について、現在国は検討をしている段階ですので、ニュースなどをチェックして、今後の動向に注目しましょう。と同時に、家計に与える影響や、ご自身の今後の働き方について、もう一度じっくり考えるきっかけとされてはいかがでしょうか。コラム執筆者プロフィール 鈴木 さや子(すずき さやこ)(株)ライフヴェーラ 代表取締役/mamaTanoマネーサロン 代表/CFP(R)/1級FP技能士/住宅ローンアドバイザー/キャリアコンサルタント(CDA)家族が笑顔になれるための生活に役立つお金の知識を、主に女性向けに、セミナーやコラム記事などを通じて情報発信。保険などの商品を一切販売しないファイナンシャルプランナーとして活躍中。専門は教育費・ライフプラン・保険・住宅ローン・マネー&キャリア教育。女性の心に寄り添う個人相談にも定評がある。企業講演の他、小・中学校や地域コミュニティなどでの講演やワークショップなど、保護者や親子向けイベントも行っている。コラム監修者プロフィール 柳澤 美由紀(やなぎさわ みゆき)CFP(R)/1級ファイナンシャルプランニング技能士関西大学社会学部卒。大学時代に心理学を学び、リクルートグループに入社。求人広告制作業務に携わった後、1997年ファイナンシャルプランナー(FP)に転身する。相談件数は800件以上。家計の見直し、保険相談、資産づくり(お金を増やす仕組みづくり)が得意で、ライフプランシミュレーションや実行支援も行っている。家計アイデア工房 代表※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
2014年11月25日しゅふJOB総研は、働く意欲のある主婦層を中心に「派遣法改正」についてアンケート調査を実施した。調査は、11月4日~11日にかけて実施し、613名から有効回答を得た。○労働者派遣法「改正すべき」は35.7%同調査は、臨時国会で審議されている「労働者派遣法の改正」について、既婚女性505名、未婚女性41名、既婚経験あり独身女性58名、男性9名を対象に実施した。まず、今の派遣法を改正すべきだと思うか尋ねたところ、「わからない」(45.9%)が約半数を占めた。「改正すべき」は35.7%。「非正規雇用をもっと保護してほしい」「派遣労働者にも保障があるといいと思うので」といった派遣労働者の保護を期待するものや、「派遣=使えない人材というイメージを払拭した方がいい」「働く人が働き方を選択できる制度にも変えてほしい」など"派遣"という働き方に対して改善を求める声が寄せられた。「改正すべきでない」は18.4%。「働く環境が整ってないのに、法制だけ改正されても意味がない」「前回の改正で3年縛を理由に契約が切られた人が報われない」と改正自体に疑問を持つ声や、「今まで以上に使い捨てになる」と今後の雇用に対する不安のほか、「雇用される側にとって、有益になるように改正すべき」といった要望のコメントも見られた。約半数を占めた「よくわからない」については、「仕組みが変わりすぎてついていけない」「改正内容がわからない」「改正のメリットが明確ではない」などのコメントが寄せられた。労働者派遣法は、働く側の今後を左右する法律であるが、わかりづらい法律であることがうかがえる。
2014年11月18日世の中には、自慢話や自分の武勇伝を語るのが大好きな人たちがいます。極々たまに聞かされるというのであれば素直に関心することもあるかもしれませんが、いつもいつも自慢話ばかり聞かされているとさすがにうんざりしてきます。こういった「自慢話が大好き」な人たちとは極力関わらないようにしておくのが精神衛生上一番よいのですが、たとえば自分の上司や先輩がこのタイプだった場合には邪険に扱うわけにもいきません。「もうその話は何度も何度も聞きました! とりあえず黙ってください!」と心のなかでは叫んでいても、現実にはそんなこと言えるはずがありません。結局は、自慢話が終わるまでじっと耐え忍ぶことになります。こういった上司や先輩の自慢話から逃げられないことが、大きなストレスになっているという人も意外と多いのではないでしょうか。こういったストレスを軽減するためには、自慢話ばかりする人への対処法を学ぶのが近道です。○自慢話ばかりする人はかわいそうな人そもそも、なぜ彼らは機会さえあれば自慢話ばかりしようとするのでしょうか。ポイントになるのは自尊感情(自己肯定感)です。自尊感情は仕事や生活に前向きに取り組むためには欠かせないものです。自分のすることに自信が持てる人は、仕事でもプライベートでもよい結果を残しやすいですし、余裕が生まれ他人にも気を配ることができます。自分に自信がある人は、自分がどんなすごいことをしたとしてもそれを自慢話としてしつこく語るようなことはありません。わざわざ自慢話をして他人から褒めてもらわなくても、自分で自分を肯定できているからです。一方で、自尊感情が低い人の場合、「自分はすごい」「自分は他の人よりも優位である」ということを他者を通じて確認する行為が必要になります。そのため、何度も何度も自慢話をすることになります。自慢話ばかりする人は、結局は自分に自信がないのです。そういう意味では、自慢話ばかりしている人は「かわいそうな人」だと言うこともできるでしょう。○さっさと昇華させて次の話題に進めるのが正解このように、自慢話は結局は自信のなさの裏返しですので、相手が自慢話をしようとするのを露骨に嫌がって反発するのは相手の自尊感情をさらに傷つけることになり、逆効果です。「その話は前にも聞きましたよ」なんて正直に言おうものなら、相手の自尊感情はズタズタになります。ヘタすれば復讐として仕事上で不利益な扱いを受けることになるかもしれません。ここで必要なのはやはり大人の対応です。自慢話が始まってしまったら、自慢話を切り上げさせるのではなく一秒でも早く最後まで話してもらうことを目指すとよいでしょう。合いの手をいれる場合には「それでどうなったんですか?」「早く先を聞かせてください」といったように自分がその話に強い興味を抱き、早く続きを聞きたいと思っているように振る舞えれば相手は喜んで先を話してくれます。こうやって相手の自尊感情さえすばやく満たしてしまえば、話題は他のものへと進みます。このように、自慢話には「褒めておだててサッサとその話題を終わらせる」ように対処するのが王道です。○それでもイライラしてしまう人へそうは言っても、相手が自慢話をするのはイライラするしモヤモヤするという人もきっといることでしょう。そういう人は次のようなやり方で自慢話に接してみるといいかもしれません。1つ目のやり方は、「哀れみの気持ち」を持って自慢話を聞くことです。前述のように、自慢話をする人は基本的に自分に自信を持つことができない「かわいそうな人」です。会社で自慢話ばかりしているあの上司も、もしかしたら家庭では奥さんや子供からも疎まれ続けていて、会社で自慢話でもしないことには自分を維持できないのかもしれません。このように「ああ、かわいそうだなぁ」という哀れみの気持ちを持って自慢話を聞くようにすると、不思議とイライラやモヤモヤも湧いてこないものです。2つ目のやり方は、自慢話をする人を「観察」してみることです。自慢話のレパートリーにはどのようなものがあるのか、朝・昼・晩ではいつが一番自慢話がなされる頻度が高いのか、今月に入ってからこの話が出たのは何回目か、相手が男性か女性かで自慢話の内容に変化はあるかなど、科学者にでもなったつもりでアレコレと観察して傾向を研究してみるとイライラせずに自慢話を楽しむことができます。「そろそろあの自慢話が来そうな気がする……!」と予想できるようになれば、かなりのものです。いずれのやり方も、自慢話をする人よりも心理的に一段上がった状態で自慢話を聞くようにするという点が共通します。自慢話をする人と同じレベルに立ってまともに相手にしようとするから、イライラしたりモヤモヤしてしまうのです。自慢話をする人とは同じレベルに立たないことが、自慢話で心を乱されないためのコツです。日野瑛太郎ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)がある。(タイトルイラスト:womi)※毎週金曜更新
2014年11月14日ライフネット生命保険は5日、保険代理店大手の豊通保険パートナーズと代理店契約を締結し、フリーランスなどの顧客に向けた保険加入機会の提供を開始すると発表した。その第一弾として、5日よりクラウドワークスが提供するクラウドソーシングサービス「クラウドワークス」に登録するフリーランス23万人へ、イントラネット(会員ページ)を通じた保険商品販売を開始したとしている。○傷病手当金、団体保険などのセーフティネットが不十分なフリーランスに対する保障の提供を目指して多様な働き方が認められつつある昨今、特定の企業や団体、組織に専従せずに働くフリーランス(個人事業主・自由業)という新たな働き方が増加傾向にあるが、一方でフリーランスは、「傷病手当金」「厚生年金」などの保障がないことに加え、一般的に大手企業グループや官公庁に福利厚生制度として導入されている「団体保険(従業員・家族を対象とした割安な保険制度)」も、フリーランスなどの個人には適用できないなど、会社員などに比べセーフティネットが乏しいという課題が存在する。このたびの取組みは、そのようなセーフティネットが不十分なフリーランスの支援を目的として、保険代理店大手で団体保険の運営ノウハウを保有する豊通保険パートナーズと提携し、フリーランス向けに保険サービスの提供を開始するとしている。○クラウドワークスに登録のフリーランス23万人へ保険加入機会を提供フリーランスの「仕事」「教育」「保障」を支援する日本最大級のクラウドソーシングサービス「クラウドワークス」に登録する188業種、23万人のフリーランスへの福利厚生サービスとして、イントラネット(会員ページ)を介して手頃な保険料である同社保険商品への加入機会を提供。また、豊通保険パートナーズによるフリーランス向けのお金や保険のセミナーを開催し安心して仕事に向き合ってもらうための環境づくりを支援していくとしている。
2014年11月10日毎日毎日残業ばかりで、平日にはほとんど自分の時間を持つことができない、と悩んでいる人は多いのではないでしょうか。夜にオフィス街を歩くと、22時、23時になっても煌々と明かりが灯っているビルを多く見つけることができます。終電で、仕事帰りらしきサラリーマンがぐったりしているのを見ることも少なくありません。これらのことからも、毎日遅くまで残業をしている人たちが数多くいるであろうことがわかります。統計によると、日本人の一般労働者は年間約2000時間ほど働いているようです(日本生産性本部『日本の生産性の動向 2013年版』より)。これは国際的にも高めの数字です。もっとも、この数字にはサービス残業は含まれていませんから実際にはもっと多いと考えたほうがよいでしょう。「残業なんてほとんどない」と言える日本人は、あくまで少数派です。○長時間働いているが生産性はものすごく低い問題なのは、こんなにも長時間働いている人が多いにも関わらず、必ずしもその残業が報われていないということです。前述の日本生産性本部の調査資料によると、日本人の1人あたり労働生産性はOECD加盟国34か国中21位と非常に低水準です。つまり、日本人はたくさん働いてはいるが生産性はものすごく低く、残業が仕事の成果に直結していないのです。これは実感としてもよくわかるのではないかと思います。毎日深夜まで残業している人の多くは、あまり効率のよい働き方をしていません。人間の集中力はそんなに長く続きませんから、朝からずっと働き続ければ当然夜にはフラフラになり作業効率は激減します。中には、朝出社した時点でもう定時に退社することはあきらめて、ダラダラと仕事をしながら深夜まで会社に残っているような人までいるようです。これでは生産性が上がらないのもあたりまえです。○人間は締め切りギリギリまで時間を使ってしまう基本的に、「今日は別に定時に帰れなくてもいいや」というあきらめの気持ちが生じた時点で、もうその人は定時に帰ることはできません。これはイギリスの政治学者シリル・ノースコート・パーキンソンが提唱した「パーキンソンの法則」(第1法則)を適用して考えてみるとよくわかります。パーキンソンの法則とは、「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」(第1法則)というものです。たとえば、まったく同じ仕事でも「3日でやってください」とお願いすれば3日間かかり、「1週間でやってください」とお願いすれば1週間かかってしまうというわけです。どんな仕事であっても人間は締め切りギリギリまで時間を使ってしまう、と言い換えてもいいかもしれません。「今日は絶対に残業しないで定時に帰る」と決意している人にとって、締め切りは定時の夕方ということになります。一方で、「今日は別に定時に帰れなくてもいいや」と残業を受け入れている人にとって、締め切りは残業することを見込んだ深夜です。パーキンソンの法則によれば、仕事の量は締め切りまでの時間すべてを満たすまで膨張します。「今日は絶対に残業しないで定時に帰る」という覚悟で仕事をしている人は定時に帰れるかもしれませんが、「残業してもいい」と残業を受け入れている人は、自らの予想どおりしっかりと残業をしてから帰ることになります。このことから、残業をしないために大切なことは、定時という締め切りを自分でしっかりと設けそれを守ろうと努力することだということがわかります。「定時に帰る」意志がない人は、定時に帰ることはできません。「終電までに帰れれば別にいいや」というような気持ちでは、本当に終電でしか帰れなくなります。○残業の有無で人を評価するのは完全に誤り誰だって本当は残業をしたいなんて思ってはいないはずです。それでも残業をしてしまうのは、「遅くまで働いていると上司のウケがいい」「自分だけ残業をせずに帰るとサボっていると思われてしまう」といったように、残業と評価が結びついていると感じていることにあるのではないでしょうか。現実問題として、たしかにこのように残業の有無によってその人を単純に評価しようとしている職場は存在します。しかし、それは評価の方法としては間違っています。残業で人を評価するのは、仕事の「結果」ではなく「姿勢」を評価していまっている点で完全に誤りです。このような勘違いの結果、日本人は「たくさん働いているのに、生産性が低い」国民になってしまったのです。「たくさん働いているのに、生産性が低い」国民を脱するためにも、「残業しないで定時には帰る」という意志は忘れずに持ち続けたいものです。日野瑛太郎ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)がある。(タイトルイラスト:womi)※毎週金曜更新
2014年11月07日日本マイクロソフトは11月4日、パートナー企業と連携し、従業員1~300名規模の中堅中小企業を対象に、クラウドサービスやタブレットを活用した柔軟な働き方を支援する「テレワーク&モバイルワーク推進期間」を、11月4日~12月31日まで実施すると発表した。推進期間では、新たなOfficeやOffice 365の提供やパートナーと共同で支援策を実施する。新たなOfficeやOffice 365の提供では、10月1日よりすでに提供している、Office 365 Business Plan(Office 365 Business Premium, Office 365 Business, Office 365 Business Essentials)や年内提供を予定しているOffice for iPadの導入促進を図る。支援策としては、賛同する28社のパートナーから約50のソリューションやキャンぺーンを展開するほか、マイクロソフト自身が行うキャンペーンとして「タブレット+Office 365 Officeを持ち歩こうキャンペーン」を実施。タブレット(iPadやSurface含む)やOffice 365を導入した企業にグッズやペア宿泊券をプレゼントする(抽選のケースあり)。そのほか、導入支援セミナーやマテリアルも提供する。 なお、パートナー各社によるソリューションはこちらを参照。米Microsoft ワールドワイド SMS&P担当 バイスプレジデント バヘ トロシアン氏は、「IDCによれば、2015年にはモバイルワーカーの人口は13億人(総労働人口の37.2%)になり、従業員が2カ所以上で作業するSMBは全体の43%で、特にアジアの比率は高い。SMBにおいては新しい働き方の二ーズが増加しており、会社もそれを認めている」と、モバイルワーカの最近のトレンドを紹介。その上で、「マイクロソフトはクラウドファースト、モバイルファーストを掲げており、これらのトレンドと大きな関わりある。日本市場に関しては、『ModernBiz』キャンペーンを展開し、4つのシナリオを考えている。マイクロソフトは、4つそれぞれに対して、ソリューションをもっているので、こういったトレンドに対応することができる」と述べた。また、日本マイクロソフト 業務執行役員 ゼネラルビジネス SMB営業統括本部長 佐藤亮太氏はこのようなキャンペーンを国内で展開する背景を「日本でのテレワーク/モバイルワークの普及率は20~30%で、米中の50~60%%に比べて低い。ただ、ニーズ自体は高く、今後急速に加速していく。 中堅中小企業のテレワーク、モバイルワーク導入を推進するためには、低価格なサービス、デバイス、最適化するソリューションが必要だ」と語った。同社ではこれらキャンペーンによって、2015年6月までに中堅中小クラウドサービス(Azure&Office 365)の浸透率を前年比の300%を目指していくという。また、同社では今後、レストランなど業種・業界にフォーカスしたキャンペーンを実施するという。
2014年11月05日会社に就職すると、学生時代とは比べものにならないくらい「責任」という言葉に接する機会が多くなります。「学生と社会人の違いは、責任の違いだ」という持論を展開する人に以前遭遇したことがありますが、これはある側面においては事実だと言えるかもしれません。会社で働くということは、労務を提供してその見返りとして給料をもらうことなので、もらってる給料にふさわしいだけの労務をきちんと提供する責任が生じます。割り当てられた仕事を放り投げてサボってばかりいたとしたら、「無責任だ」と批難されるてもしかたがないでしょう。もっとも、この「責任」はどこまでも背負わなければならないものではありません。経営者ならともかく、一介の雇われ従業員の立場であれば、少なくとも給料にふさわしいだけの労務を提供すれば十分に責任は果たしていると言えます。巷では「社会人は自分の責任をしっかり果たさなければいけない。学生気分ではダメだ」ということを言う人が多いですが、僕の見た限りでは、ほとんどの人は給料にふさわしいだけの責任を十分に果たしています。むしろ、本来であれば背負わなくてもよいはずの責任を背負いすぎて、それでつぶれかけている人のほうがはるかに多いのではないでしょうか。○失敗した新規事業に関わっていた友人の話例えば、僕の大学時代の友人にこんな人がいます。彼はとあるインターネット系の会社に就職したのですが、入社時からずっと新規事業に関わりたいという思いを抱いていました。思いが通じたのか、入社して数年後についに新規事業の立ち上げを行う部署に異動になります。希望が叶った彼はそこで精いっぱい働きました。そしていよいよ新規サービスがリリースされる日が来たのですが、いざリリースしてみると初動の数字は計画を大きく下回り、半年ほどさまざまなテコ入れ策を試したものの効果がなく、結局そのプロジェクトは解散することになりました。ここまではまあよくある話だと思うのですが、問題はその彼が新規事業の失敗に大きな「責任」を感じていたことです。彼は何度も何度も「会社に申し訳ない」と言っていました。自分が関わったサービスが失敗したことを残念に思う気持ちはよくわかるのですが、「会社に申し訳ない」とまで思ってしまうのは、明らかに行き過ぎです。○新規事業に失敗しても従業員に責任はないそもそも、新規事業の成功・失敗は、現場の働き以上に経営者の意思決定によるところが大きいものです。そういう意味では、失敗の責任は従業員ではなく経営者にあると言えます。現場の従業員は、経営者が立てた方針に従って自分たちがなすべき仕事をしていた以上、責任は十分に果たしています。彼も仕事をサボっていたというならともかく、立ち上げのために精いっぱい働いていたわけですから、「会社に申し訳ない」などと責任を感じる必要性はまったくありません。経営者が背負うべき責任を従業員が背負ってしまうと、働き方は容易にブラック化します。彼の場合も、部署異動後はほとんど休みも取らずに、ひたすらその新規事業に尽くしていたそうです。このように過度に責任を背負い込む社員がいることは経営者から見れば都合がいいでしょうが、従業員の側から見れば得はほとんどありません。実際、彼の同僚でもリリース後の炎上に耐え切れずに、休職や退職を余儀なくされた人が何人かいたようです。別に新規事業の立ち上げに成功したところで儲かるのは自分ではなく会社なのですから、自分の責任の範囲を一歩引いて見極める姿勢は持っておきたいところです。○有休を取ることも「責任感がない」ことではない他の例だと、「責任」を感じすぎてしまって有給がまったく取得できないという人を見ることがあります。「自分が休んでしまったら、仕事がまわらなくなってしまう」と思ってしまうのです。これも、必要以上に責任を背負いすぎてしまっています。仮に、誰か1人が休んだぐらいで仕事がまわらなくなってしまうとしたら、それは休んだ人が悪いというよりも、そのような人員配置や組織づくりを行った経営者や上司の責任です。繁忙期があって一時的に休めない時期が出てくるというのであればともかく、仕事がまわらなくなることに責任を感じて一年中休むことができないというのであれば、それは責任の背負いすぎです。会社が果たすべき責任を果たしていないという問題を、個人の責任に還元してしまうと、状況は一向に改善しません。○背負い込む責任には必ず一線を設ける「社畜」のような働き方に陥ってしまっている人の中には、責任感が強すぎるという人が多くいます。責任感が強いことは普通は長所ですが、必要以上に責任を背負うことを強要される日本の会社では弱点にもなりえます。背負い込む責任には必ず一線を設け、会社が背負うべき責任まで個人で背負ってしまわないように気をつけましょう。それが結果的に、自分を守ることにつながります。日野瑛太郎ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)がある。(タイトルイラスト:womi)※毎週金曜更新
2014年10月31日その日の東京・品川にある日本マイクロソフト本社ビル。月曜日だというのに、案内されたフロアはガランとして、まるで休日のオフィスであるかのように人がいなかった。普段なら何百名もの社員が活気にあふれて働いている姿のあるフロアだ。10月27日からのこの週は「テレワーク推奨強化週間2014」として、できるだけオフィス以外の場所で仕事をするとされていたからだ。日本マイクロソフト執行役常務、パブリックセクター担当の織田浩義氏(テレワーク推奨強化週間2014担当役員)は、本社ビルの会議室に一部のプレスを呼んだこの日の説明会で「今日、この本社各フロアの中でいちばん人口密度が高いのはここでしょうね」と前置いて説明を始めた。新しい働き方にもっともパッションをもって取り組んでいるという日本マイクロソフトだが、テレワークはイコール在宅勤務ではないと織田氏。いつでもどこでも働けて、さらに最適な形で働けることがテレワークであるという。それは、いつでもどこでも誰でもが活躍できるということでもあるという。テレワークというと、すぐに育児と仕事が両立できるような事例がイメージされがちだが、そうした特別な人の働き方ではなく、全社員にとっての働き方をさす。同社がテレワークに取り組み始めて今年で3年目になる。今年は、マイクロソフトだからこそできるのかということを立証するために、マイクロソフト以外の企業といっしょにできないかが議論され、賛同の企業をつのったら32社が集まったという。強化週間の目的は、社内のさらなる経験蓄積とデータ収集だ。そして、テレワークの外部への波及をもくろみ、日本のテレワークの推進に貢献しようというのがマイクロソフトの姿勢だ。今週のマイクロソフトは、社長室から全社員に、部門単位で月曜日か火曜日のどちらかを全員出勤しないコア日として設定、その他の日も「できる限りオフィスに出勤しない」を呼びかけた。本来はかなり忙しい時期であるともいう。もちろん休日ではないので、どこかに働く場所を探す必要がある。もちろん自宅だってかまわないのだが、そうもいかない職種もある。そこで、賛同企業と交換するかたちで、連携チャレンジ企画をたて、ワークプレース交換によって、マイクロソフト社員はパートナーのオフィスで、パートナーはマイクロソフト本社のスペースで働けるような融通も組み立てた。今後の展開として、この1週間をそれで終わりにするのではなく、活動結果の報告や意識調査などを経て、政府への提案提言の準備をすすめるという。そして、個人の働き方のみならず、思いもかけないビジネスが生まれてくる可能性を探る。たとえば、自宅にオカムラの高級事務椅子を買っている人が意外に多いといった状況も把握できた。高級椅子を買うのは、自宅でのデスクワークをオフィスと同じくらい快適に行うためだ。あるいは、外で携帯電話を使って連絡をとるときにどうしてもまわりの人に聞かれたくない話は、個室やカラオケボックスが便利と、そんな場所で仕事をしている社員もいる。今回の賛同企業の中には第一興商といった名前もあり、昼間のカラオケボックスとテレワークのビヘービアを観察しながら、その場所で何かできないかといったことを模索しているのだそうだ。同社代表執行役社長の樋口泰行氏は立場上この日も出勤していた。記者説明会に社長室から会議ソフトのLyncで出演し、強制的に会社にこれない状況を作り、それでもきちんと仕事が動くという実感をもってもらいたいし、災害、家庭の事情などがあっても、こうしたことができるのだという練習ができればという。マイクロソフトがめざすのは、新しいテレワークのカルチャーを作ることだ。今は笑い話にすぎないが、一昔前に電子メールを各社が導入し始めときに、そんなものが役に立つのかといった時代があった。テレワークも同じだとマイクロソフトはいう。「アッという間に市民権を得て、ど真ん中の一般名詞になっていくのではないか(織田氏)」。こうした取り組みを経て、テレワークリテラシーを推進していきたいということだ。ぼく自身は、個人的にテレワーク的な仕事のスタイルを始めて30年以上がたつ。当たり前だ。フリーランスのライターの仕事は、アポイントと取材、そしてそれを原稿にまとめることだからだ。紙の時代はどこでも原稿は書けたが、何軒もの取材先のアポどりは、比較的静かな場所で、じっくりとダイヤルを繰り返す必要があった。電話ボックスを占有するわけにもいかず、自宅で電話機に向かうしかなかった。〆切間際は編集部に泊まり込み、デスクを借りて原稿を書き入稿した。書く道具がコンピュータに代わってからは、原稿がどこでも書けるのはもちろん、アポどりも電子メールになり、どこでも仕事ができるという点ではフレキシブルになった。それでも、もっとも仕事をしやすいのは、ネットワークやデバイス、モニタといったコンピュータリソースがもっとも充実している自宅兼オフィスであるというのは紛れもない事実だ。ここで原稿を書くのがもっとも効率がいい。公共交通機関での移動中、取材と取材の間の空き時間をつぶすコーヒーショップ、出張先のホテルなど、どこでも仕事はできるが、小さなモニタのノートパソコン一台だけでは効率がよくない。会社員も同様だろう。会社が望む装備を供給してくれず、自分の必要な装備を自前で揃えてでも自宅の方が効率よく仕事ができるというケースもあるにちがいない。このテレワークという取り組みは、オフィスのありかた、そこでの働き方という漠然としたものが抱える問題点やニーズをあぶり出すことができるだろう。マイクロソフトでは今の日本の生産性を高めるには、ホワイトカラーのそれを高めることが急務だと考えている。2020年の東京オリンピックまであと6年。半世紀前、1964年の東京オリンピックを機に日本が大きく変わったように、再び日本は変わろうとしている。その変革に、テレワークのコンセプトがどのような影響を与えるのかを見守りたい。(山田祥平 @syohei)
2014年10月29日「努力」は重要なことだとよく言われます。成功している人が、大変な努力家であるということは少なくありません。マルコム・グラッドウェルによれば、「天才」と呼ばれる域に達するには、どんな分野でも1万時間ぐらいは練習の時間が必要なのだそうです(いわゆる「1万時間の法則」)。1万時間に達するためには、毎日3時間ずつ練習しても10年、毎日8時間を費やすことができても4年は必要ということになります。これは一朝一夕でどうにかなるようなものではありませんので、この法則が正しいとすれば、やはり継続的な「努力」は重要ということになりそうです。もっとも、会社で仕事をする場合には、安易に努力に走ってしまうのも問題です。僕がまだ会社員をしていた頃、安易に努力に走ってしまったために、連日の残業や休日出勤を繰り返していた同僚を何人か見たことがあります。実際、努力が苦にならない人は、「社畜」になりやすい人でもあるので注意が必要です。○会社での仕事に努力は向かない基本的に、会社での仕事に努力はあまり向きません。これが受験勉強のようなものであれば愚直な努力を続けることでそれに見合うだけの成果が上げられるかもしれませんが、仕事では必ずしも努力が成果に結びつくとは限りません。会社での仕事には多くの「ムダ」がつきまといます。本当はやらなくてもいいような仕事を振られることは少なくありませんし、どうでもいいことばかり何時間も話し合っている会議は山ほどあります。会社は人が何人も集まって仕事をする場所なので、どうしてもコミュニケーションの分だけ仕事は複雑性を増し、ムダが大量に生まれます。そういう場所で成果を上げていくためには、努力よりも「効率」を重視する必要があるのです。問題に直面した時に、安易に努力によって切り抜けようとしてしまうのは、仕事の進め方としては間違った姿勢だと言えます。○「頑張る」ことで「あいつならやってくれる」というイヤな期待が生じるもっとも、日本の会社では必ずしも努力よりも効率を重視した人が評価されているとは言えません。むしろ、多くの会社ではまだまだ「頑張っている」という姿勢だけで周囲からいい評価が受けられるという場合が少なくないでしょう。テキパキと仕事をすばやく片付けて定時退社をする人が「頑張っていない」と非難され、ダラダラと残業をしてからゆっくり退社した人が「いつも遅くまで残って頑張っている」と評価されてしまうような職場は、残念ながらまだまだたくさんあります。「頑張っている」という姿勢だけで周囲から評価を受けられるとすれば、努力が苦にならない人はすぐに「頑張る」ことによって問題を解決しようとしてしまいます。深夜残業や徹夜によって仕事を片付け、時には休日をつぶして働きます。こういう働き方を続けていると、「あいつなら多少は無理なお願いをしてもやってくれる」という周囲の期待のようなものも生まれてしまいます。夜の10時ぐらいに「まだ終電まで時間あるよね?」と言われて新しく仕事を頼まれたり、金曜日の夜に「これ、月曜日までにお願いできる?」とむちゃぶりをされたりするようになります。こういったイヤな期待に応えてしまうと、ますます仕事は集中し、悪循環に陥ります。いずれ完全な社畜に転落してしまいます。○脱社畜には意図的に「怠惰」になることも必要周囲から「あいつならやってくれる」という迷惑な期待をかけられないためにも、会社での仕事で安易に努力をしてしまうのは避けるべきです。そのためには、意図的に「怠惰」になることも必要です。誰でも多かれ少なかれ「めんどくさいなぁ」「やりたくないなぁ」という気持ちを持っていると思いますが、この気持ちを押し殺すのではなく最大限尊重するように心がけましょう。上司から仕事を振られて「やりたくないなぁ」と感じたら、それを我慢するのではなく、「どうすればやらないで済むだろうか」を真剣に検討するべきです。このような気持ちが逆に仕事の効率を高め、時には発明につながります。僕は元々はプログラマーをやっていたのですが、プログラミングの世界には「怠惰は美徳」という箴言のようなものがあります。プログラミングでは、本来ならばやらなくても済んだことにムダに労力をかけることはよくないこととされています。これは別に、プログラミングの世界だけに限ったことではありません。ムダな努力はいかなる場合も避けるべきです。基本的に、努力をするのは最後の手段だと考えなければいけません。安易に努力によって解決しようとせずに、なんとかラクして済ませることはできないか、常に考えることを忘れないようにしたいものです。日野瑛太郎ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)がある。(タイトルイラスト:womi)※毎週金曜更新
2014年10月24日体調悪い詐欺夫
義父母がシンドイんです!
うちのダメ夫