『勝ちつづけるチームをつくる勝負強さの脳科学 「ピットフォール」の壁を破れ!』(林成之著、朝日新聞出版)の著者は脳神経外科医。しかも、競泳、女子サッカー、女子バレー、フィギュアスケート、柔道など、さまざまなスポーツの日本代表監督、チーム、選手を脳科学的指導でメダル獲得に導いてきたという実績を持っている人物です。つまり本書ではそのようなキャリアを軸として、チームとメンバー個々の力を同時に伸ばすための組織論を、脳科学的な観点から展開しているわけです。そして、その視点とともに、内容の方もなかなかにユニーク。■はたして100点は満点なのかたとえば著者は第1章「成果をあげるチームとは? 目的を達成する『勝負脳』のチーム理論」のなかで、ひとつの疑問を投げかけています。それは、「はたして100点は満点なのか?」ということ。たしかに日本では、100点満点を取ることが美徳とされており、100点を目指すことが当たり前のことのように思われています。だから必然的に、「あと何点足りない」という「引き算思考」で物事を判断しようという考え方が定着してしまっているわけです。しかし、このような考えで試合に臨んだとすると、「試合当日にようやく100点の状態に到達させることができた」「なんとか間に合った」というような考えが生まれてきてしまっても無理はありません。そうなると、「試合をしながら強くなる」とか、「敵の想定外の実力を発揮する」といった、100点を超えていく力を発揮することができなってしまうわけです。でも、それでは意味がありません。■意識のたるみが結果に影響するまた、ここには「人間の脳は、結果を達成すると無意識のうちに気持ちがたるむ」という現象も含まれてくるのだと、著者は脳科学的に指摘しています。ゴール(終わり)を意識すると無意識のうちに気持ちがたるんでしまうので、気持ちと一体で機能する脳の働きまでが低下することに。だから結果的には、逆転負けをしてしまうというのです。また同じ原理で、優勝したあとの脳のなかの気持ちのたるみによって、連続優勝することが難しくなることも考えられるとか。「強いチームになかなか勝てない」とか、「相手が予想以上に強かったので負けた」という現象も、ここに原因があるようです。■働き方にマッチングする考え方だとすれば、本能的に気持ちがゆるむことをなんとかする必要があるでしょう。そのために、私たちはどうすればよいのでしょうか?著者はこの問いについての解決策として、「人間の行動を決める脳の働き方にマッチングする考え方」を導入することを勧めています。少しわかりにくいですが、つまりはこういうこと。人間の考えは、脳のなかのいくつもの異なる機能を持った神経核の連合によって生まれるのだそうです。そのことによって具体的になにが起こるかといえば、たとえば最初はチームメンバー同士の協力体制が悪かったとしても、繰り返し一緒に考えているうちに、変わっていくものがあるというのです。すなわち、いつも「自分たちにはなにかが足りない、欠けている」と考えるのではなく、そのレベルがどんどん上がっていく「足し算思考」に進化していくということ。■引き算思考から足し算思考へ!このように考えれば、100点がいまの条件においての頂点であったとしても、そこから先は、100点は単なる通過点になるはずです。そこで100点を満点とする「引き算思考」から「足し算思考」へと切り替えることが可能になるということ。すると目指す目標は100点ではなく、120点、130点となっていく。だから、そこを目指すことによって、驚くようなパフォーマンスが可能になっていくわけです。事実、強いチームや勝ち続けるチームの選手は、優勝して100点を取ったとしても、「自分たちには、まだまだ課題がある」と達成すべき目標を持っているものなのだとか。いつまでも舞い上がってはいないということです。「いまはレベルが低くても、最後には誰にも追随を許さない高いレベルになってやる」と考えることによって、人に感動を与える。そして人が感動してくれることに対して「同期発火」し、勝つ能力をさらに高め、連戦連勝できるすばらしい成果を見せてくれるというわけです。*スポーツの最前線で選手たちを指導してきただけあり、話題の中心にあるのは選手たちのエピソードです。しかしおわかりのとおり、ここに示された組織論はスポーツの世界だけではなく、あらゆるビジネスシーンにもそのままあてはまるはず。だからこそ、特に組織のリーダーにとっては、読んでみる価値のある内容だといえそうです。(文/書評家・印南敦史)【参考】※林成之(2015)『勝ちつづけるチームをつくる勝負強さの脳科学 「ピットフォール」の壁を破れ!』朝日新聞出版
2016年02月18日●「普通の人間」が両立するために「働くママ」として世の中で紹介されるのは、仕事も育児もバリバリこなすスーパーママのような存在が多いけれど、誰もがみんなそうやって働けるわけじゃない。ママ社員のリアルな悩みや乗り越え方、会社にどういうことを望んだのかなど、様々なWEBサービスを手がけるGMOペパボの社員に話をきいた。○「会社を辞めてもメリットはない」――お二人共、入社されてからお子さんが誕生されているんですね。子供ができて会社を辞めたいと思ったりはしなかったんですか?杉村:全然考えなかったですね。ちょうど同時期に妊娠した社員が2人いたのですがて、よくみんなで一緒に育休から復帰できるといいねと話していました。――戻ってきて一番大変だったことはなんですか?杉村:子供が思った以上に熱を出すことです(笑)。特に保育園入園後は、園で病気をもらってくることもあるので。あとは、10時~19時という勤務だと、保育園のお迎えに間に合わないんですよね。GMOペパボで初めて子供を産んだのが私だったので、人事に相談して勤務時間を8時~17時にして、18時半のおむかえに間に合うような時差勤務制度を取り入れてもらいました。――馬居さんはいかがでしょうか? 辞めたいと思ったことは馬居:1人目のときは正直なにもわからなくて、辞めるという選択肢すらありませんでした。会社の先輩ママ達に「仕事をつづけたほうがいいよ」とアドバイスをもらっていました。金銭的にも精神的にも「辞めるメリットはない」って。杉村:たとえば働いている人だったら、「育児休業給付金」などの雇用保険制度があるので、辞めるとこうした給付も無くなるよ、と(笑)。精神的にも、ずっと家に1人で子育てをするのは大変です。馬居:会社に先輩ママがいると、いろいろ教えてもらえるし、愚痴も言い合えたり、相談もできるのでとてもよかったです。――馬居さんが大変だったことは馬居:私は産後4カ月で復帰したのですが、そのときの役職はマネージャーでした。周りも支えると言ってくれてたし、自分も問題ないんじゃないかと思っていたのですが、産前と全く同じ仕事の仕方をしていたら、私自身が40度を超す熱を何度も出したり体調を崩すようになってしまって。そんなことは初めてで、それまで自分は無理ができる人間だと思っていましたが、普通の人間だと気がつきました。杉村:馬居さんのときは、ちょうどGMOインターネットグループが提供する託児所「キッズルーム GMO Bears」ができていましたよね。馬居:会社に託児所があるのはすごく心強かったです。復帰したのが、まだ授乳期中だったので、仕事の合間に託児所にいき、子供にもちょくちょく会えるし、不安なことも託児所で相談できたので。本当に助かりました。でも、授乳をしながら働いたことが、体調を崩してしまった一つの理由だったのかもしれません。特に私が担当していたのは、新規事業だったこともあり、マネージャーである自分がこんな状態ではいけないと思い、信頼できるメンバーに託して、マネージャーは辞めさせてもらいました。それからは、いちディレクターとして働いています。○ものごとが思い通りにならない前提で動くように――お子さんがいると、「話が通じるだけいい」と、会社の人に怒らなくなるといった話をきいたことがありますが、社内のコミュニケーションに変化はうまれましたか?杉村:たしかに、子供を産む前より寛容になった気がします。「5歳児よりは話が通じる!」って思うし(笑)。馬居:若い後輩たちがみんなかわいく思えてきます。ちょっと失礼な話ではあるのですが、年上の男性たちも、「皆赤ちゃんだったんだな」と思うとかわいく見えることもあります(笑)。――人の育て方がわかったんでしょうか?馬居:子供を産むまでは、自分の人生を良くも悪くも思った通りに動かそうとしていたのですが、子供は全く私の思い通りにはならないので「今、目の前にあることをいかに円滑にすすめるか」と考えるようになりました。相手が若くても年上でも、仕事ができてもできなくても、みんなでいい方に向かうにはどうしたらいいかと考えて動くようになりましたね。――実はお母さんはマネージャー向きなんでしょうか?馬居:子育てを経験したことがある人はマネジメントに向いているかもしれません。ただ現実問題、マネージャーは自分の時間を犠牲にしないといけない事もあるので、難しいことが多いとは思います。子供を育てていると、確かにいろいろなことに寛容にはなるのですが、何かが進まない時に、倍追いつめられるというか。ひとつ歯車が狂うと、全部が狂ってきてしまうんです。でも誰にも迷惑をかけたくなくて、更に追い詰められる。なので今は、日々自分を追い詰めてしまわられないようにバランスを取りながら考えて動いています。杉村:復帰した当初は、締め切りのある仕事は1人でもたないように、当時の上司が配慮してくれました。上司は子育ての先輩でもあったので、子供に急な発熱が起きることなどに理解があり、万が一その日仕事ができなくなっても、大丈夫なようにと。馬居:子供は本当に急に熱を出しますからね。でもたぶんそれも2歳くらいまでなんですよね。1歳半くらいから急に風邪をひかなくなるので、そこまでガマンすれば……。それがわかるだけでずいぶん気持ちが楽になります。わからないと、「どこまで続くの!?」と不安になってしまうので。●世の中は絶対良くなっているはず○お父さんも子育てが楽しくなれば――世の中の働くスーパーママを見て、思うところはありますか? 「無理だよ」といったような気持ちは馬居:子育てって、その人がどんなに優秀だろうが、そうでなかろうが、仕事をしていようがしていまいが、フラットだと思っています。スーパーウーマンに見えるママでも、結局はそれぞれ子供に喜怒哀楽を抱く、いちママであることは同じでしかないと思うんです。かっこよくてキラキラしているママを取り上げた雑誌なんかを見ても、もうその通りには見えません。悩んでないママなんか、絶対に世の中にいないと思う。杉村:みんな絶対子供に振り回されてる。馬居:スーパーウーマンががんばるのは素晴らしいことだと思うけど、その周りの人たちが、ちゃんと支えてあげてほしいなと思います。――そんなにママが悩んでいる時、お父さんはどうなんでしょうか?馬居:私達が思っているよりは、お父さんも悩んでいるみたいです(笑)。自分が子供のころの"お父さん"世代とは、「父親」って違う生き物になっていますね。保育園にお迎えに行って、週末も子供とすごすのは当たり前だし、奥さんの仕事も忙しい……。杉村:「自分のお父さんは土日も家にいなかったし、かまってもらった思い出もないのに、どうして自分はこんなにがんばらなきゃいけないんだろう?」という気持ちはあるみたいですね(笑)。馬居:男の人の方が、私たちよりもっとお手本がいないですもんね。お父さんたちは、昔の世代と環境が全く違うし。「イクメン」とかも、理想像があやふやというか。ちゃんとしていないじゃないですか。杉村:よく言われるイクメン像をやろうと思ったらもたないですよね。馬居:難しいですよね。何かが壊れますよね。本人なのか、家族なのか。――例えばネット上で、「僕は子育てを手伝ってます」と言った人が、「手伝うとはなんだ!」と怒られたりしているのをよく見ますが……馬居:うちの夫はエンジニアで、WEBをすごく見ているので、何をいったら妻が怒るかという地雷は把握しています(笑)。杉村:うちの夫もWEBエンジニアなので、なんだかんだネットの情報は見ていて「こんなことでみんな怒るんだね」と言っています(笑)。――情報は大事ですね。今は男性も仕事と育児が両方できなければいけない、ある意味オールマイティにならなければいけないことへの戸惑いは馬居:夫を見ていると、「仕事も子育てもやらなければいけない」という使命感があるというより、子供と関わっていたら子育てが楽しくなってきちゃったから、頑張ってる感じだと思うんですよね。私たちは妊娠している時からママになっていってるんですが、お父さんたちは子育てをしながら少しずつお父さんになっていっている気がします。杉村:子供は3歳を超こえてから急に人間らしくなるので、さらにかわいくなったと言っています(笑)。息子が自分の趣味を理解してくれて一緒に遊べるようになったのがうれしくなったらしくて。新しい友達ができたみたいな感じなのかもしれないですね。馬居:子分みたいな存在なのかもしれません(笑)。○「産んだのは自己責任」と思ってしまうことも――もっと会社が、あるいは社会がこうなってほしい、と思うことはありますか?馬居:ママたちって、働いていても働いていなくても、実は全員みんな追い詰められてしまうことがあると思うんですよね。今は色々な価値観があって、どんなライフプランを選択するかは自分やパートナーで考える潮流があると思います。どれもいいよね、となっているから、なおさら「子供を産んだのは自己責任」と、自分に帰ってきてしまう。――「好きで産んだんだろう」みたいな……馬居:誰に言われたわけでもないのに、自分で自分に言ってしまうんです。仕事があっても「産もう」と選択をしたから、「自分でやらなきゃ」って追い詰められてしまうので、誰かに助けてほしかったという思いはあります。私はもちろん周りのみなさんに助けてもらったんですが、もっと世の中が「みんなで子育てをする環境」になってくれたらいいなと思います。――実際、今は会社には色々な要望を反映してもらっているのでしょうか杉村:そうですね、うちは人事にも働くママが2人いますし、かなり働くママの実情を把握して、要望が通る方だと思います。最近だと、"小1の壁"に直面するスタッフが実際にいたので、そこはなんとかならないかと相談し、対応してもらいました。具体的に言うと、子供が小学校に就学すると時短勤務や時差出勤制度が利用できなくなり、制度上、通常勤務時間での勤務スタイルに戻らなくてはならない状況でした。小学校は、保育園よりも早く下校時間を迎えるのに、一方で私達の勤務時間は長くなってしまうんです。こうした背景から、小学校3年生まで時短・時差勤務ができるようにしてもらいました。でも理想を言えば、子供を育てている人たちだけじゃなくて、みんなが勤務時間を自由に選べるといいのかなとは思います。その人にあった生活のリズムがあったりするので。ただ、完全に自由にしちゃうと、みんなが揃う時間が少なくなるのでミーティングを開催しにくいといった問題も出てくるとは思いますが。馬居:あとは会社の利益が下がって悪循環になるのは困るので、子供がいても、利益に寄与できる働き方をしたいとは思っています。――会社に望むだけではなく馬居:そうですね。私たちは会社が制度を導入してくれて、働きやすい環境で仕事できているから、会社の利益のことも考え全力をつくしていますが、「子供がいることで、みんなと同じ働き方ができないなら、言われたことだけやっていればいい」と言われてしまうような環境だったら、会社への愛着もなくなってしまいますよね。ママになると違う人間になるんじゃなくて、たまたまそういう期間なんだよ、という認識が広がってくれたら嬉しいですね。――この数年でいろいろな変化を感じますか?馬居:振り返ってみると、1人目の時より2人目の時の方が予防接種の助成金が増えていたりとか、一生懸命子育てがしやすい社会になるよう進めてくれている誰かがいるんだなと思います。確実に、働きながら子供を育てやすい世の中になる希望はありますね。ただ、実際のGMOペパボのママ達たちは、みんな3年後、5年後の展望に向かっているというよりは、目の前のことに一生懸命なんじゃないかな、と思います(笑)。よく、子育てと仕事の両立は短距離走だね、と言っているのですが、あと何カ月走ろう、次は1歳半まで、その次は3歳になるまで、と「目の前のここまで頑張ろう」ということしか考えられないんです。それ以上考えると不安になるので、目の前のことだけ見るようにしています。――キャリアプランを立てる、などは馬居:キャリアプランを立てるのは難しいですね(笑)。でも子供を産んで後悔することはまったくないし、絶対皆が世の中を良くしてくれているから、そこは信じて産もう! とは言いたいです。杉村:会社に、「このままだと働けなくなりますよ」とSOSを出したときに「それじゃ困るから変えよう」と言ってもらえるのは嬉しいですよね。馬居:そう言ってもらえるように私達も頑張らないといけないですね。
2016年02月12日●テレワーク推進に必要な要素日本マイクロソフトは昨年、8月24日から28日にかけて「テレワーク週間 2015」を実施した。このテレワーク週間は「日本におけるテレワークの推進への貢献」を目指したもので、今回は651の法人が賛同。テレワークを「実践する」「学ぶ/議論する」「応援する/協力する」という3つの観点から、各法人がそれぞれの立場に応じて取り組みを行った。「テレワーク週間 2015」の実施後、同社が賛同法人のテレワーク推進担当者に対して行ったアンケートでは、意識面の成果として「前向きな活動になった」が88%、「今後のテレワーク推進の助けとなった」が86%という結果に。また、全体の約3割以上が10%以上の経費削減効果を、過半数が時間の削減効果を実感しており、売上・利益への将来期待に関しては全体の25%が「20%以上の実ビジネス効果を期待」と回答しているという。今回の取り組みで、同社はどのような成果を得たのか? 「テレワーク週間 2015」プロジェクトの推進メンバーであった、日本マイクロソフト コーポレートコミュニケーション部 部長の岡部一志氏に話を聞いた。○テレワーク推進には社内の制度や文化も必要「テレワーク週間 2015」では実に多くの賛同法人でプラスとなる成果が見られたが、この点について岡部氏は「テレワークは、社内における制度や文化から、弊社が推進しているようなIT分野まで、さまざまな"環境"が影響します。この環境は企業によって異なりますから、それぞれの立場に応じた最適なテレワークへの取り組み方法を考えていただければと思います」と語る。制度では、人事や在宅勤務制度の有無など企業としての体制が大きく関係してくる。文化については、社風とスタッフの意識が重要な鍵となるそうだ。例えば、テレワークが許可されていても「自分だけ会社に行かなくて良いのだろうか」という周囲への後ろめたさを感じて、なかなか実行に移せないケースは多い。また、上司がテレワークをまったく実施しなかったり、表向きは賛成でも「仕事は会社でやるもの」という固定概念を崩さないような場合、その部下はどうしても遠慮がちになるだろう。さらに意識の面では、仕事に対するモチベーションも関係してくる。多くの人にとって、会社では緊張感を持って仕事に取り組む場所、自宅はリラックスできる場所、といったメンタル面の区分があるもの。この区分を超える際、特定の行動によって“スイッチが入る”といった感覚はないだろうか。スーツを着る、化粧をする、通勤電車に乗る、会社の建物に入るなど、ポイントは人によってさまざまだが、テレワークにより自宅で業務を行う場合、こうした切り替えがしづらくなる可能性もある。また、在宅勤務では公私のけじめをつけることも重要といえる。例えば幼い子どもがいる家庭の場合、けがや病気などがあってもすぐに対応できるのは良いのだが、どうしても育児優先になってしまい、気が散って仕事に集中できないといった事態に陥りがちだ。しかし勤務時間内である以上、業務効率の低下は抑えなければいけない。このように、テレワークを支えるのはITインフラだけではない。社内の制度や文化が整ってこそ、初めて実現できるものなのである。文化に関しては社員への事前アンケートなどにより、考えられる課題や解決ポイントの洗い出しを行っておくと良いだろう。○テレワーク週間実施のきっかけは東日本大震日本マイクロソフトがテレワークをより強く推進するに至った経緯のひとつに、2011年に発生した東日本大震災が挙げられる。同社では2011年2月に東京都内5カ所(当時)のオフィスを統合・本社移転し、「品川本社オフィス」を開設した。フリーアドレス制の新たなワークプレイスを構築したが、3月に東日本大震災が発生。3営業日は全社員を自宅待機とする一方で、迅速に顧客支援および災害対策本部を設置し、会議や業務をすべてテレワークで行うと決定したという。岡部氏は「当時はまだテレワークの事前準備がそこまで整っておらず、社内も混乱を極めていました。しかしそれでも、通常業務とは異なる数多くの緊急対応をテレワークでこなしていったのです」と、当時の様子を思い出しながら語る。同社ではこうした経験を風化させないためにも、BCPの観点から2012年3月に初となる「テレワークの日」を実施。2013年は3日間、2014年は1週間の「テレワーク週間」へと規模を拡大し、その中でBCPだけでなく業務効率化も主目的に採り入れていったのである。そして2015年、同社はテレワーク週間で「派遣スタッフの在宅勤務のトライアル」「カスタマーサポート部門のテレワークトライアル」「滞在型テレワーク検証」という3つの新たな試みを実施した。●テレワークに限界はあるのか?○派遣スタッフの在宅勤務まず派遣スタッフの在宅勤務は、パソナの「テレワーク労務管理ツール with Skype for Business」を用いて、全社の約1割の派遣スタッフが在宅勤務のトライアルを行うというもの。派遣スタッフがテレワーク週間に参加するのは、今回が初の試みとなる。実施後に行ったアンケートによると、参加者の92%が「時間の有効活用になる」、56%が「業務効率向上の効果あり」と回答。管理者を含めて8割以上が「今後も利用したい」と答えたそうだ。「実施に際しては、社内向けの端末しか持っていない派遣スタッフもいましたので、新たにテレワークで利用可能な端末を支給するといった環境面の整備も行いました」と岡部氏。さらに「在宅勤務においては、"出社しているのと同様の業務をこなせる状態"が創り出すことが必須です。さらに業務効率を向上できれば100点満点ですね。そこに、通勤がないため時間を有効活用できる、といった効果がプラスされます」と続けた。○カスタマーサポート部門のテレワークトライアルカスタマーサポート部門のテレワークトライアルは、カスタマーサポート部門の1グループ11名が岐阜県飛騨市の古民家で、寝食をともにしながら業務に携わるというもの。同社内では約7割がフリーアドレス制を採用しているが、製品開発チームとお客さまサポートの2部門については特殊な環境を要することから、固定席での業務が基本となっている。そうした中で、今回のトライアルに参加したのは「Office 365/Exchange/Skype for Business」などのサポートを行っているチームだ。これらはいずれもテレワークに必須のツールであり、サポートを行う自分たちがテレワーク経験を持つ必要がある、という観点で挑戦することとなった。ただし、チームとして同じ空間を共有する必要があるため、個別に在宅勤務を行うのは難しい。そこで考え出されたのが、古民家を使った合宿タイプのテレワークトライアルである。今回はトライアル場所の選定から機材の搬入まで、スタッフたちが自ら積極的に動いて実現したそうだ。実施後のアンケートでは、通常のオフィスでの業務と比べて、62%が「効率化の向上」を感じた、38%は「通常のオフィスと同じ効率で業務ができた」と回答。また、フレキシブルな働き方の実践により地元住民と交流ができるなど、カスタマーサポート部門の新しい可能性を見いだせたという。岡部氏は「テレワークとして成功を収めただけでなく、今後の業務をより効率化するためにはどのような環境作りが必要かを理解できたり、チームワークの重要性が再確認できたりと、目に見えない副次的な学びの効果も得られたようです」と語る。○北海道別海町での滞在型テレワーク検証北海道別海町での滞在型テレワーク検証は、総務省「ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業」の委託先候補として選出された、日本マイクロソフトが行っている「地方創生テレワークプロジェクト」の一環として実施したもの。テレワーク週間中に開催した第1期から10月末まで4期に渡り、社員19名、家族を含めると合計55名が参加した。滞在場所は、旧光進小中学校跡地を有効活用し、2015年8月24日にオープンした「別海町テレワークセンター」だ。検証の結果について岡部氏は「参加者からは、社内と同様に業務がこなせたことに加えて、リフレッシュできたり、周囲の雑音がないため仕事に集中できるなど、メンタル面のプラス効果が大きかったという声が聞かれました」と語る。施設の隣には広大な牧場が広がっており、休憩時間に牧場を眺めてリフレッシュするなど、普段都心で仕事をしている社員にとっては大きな癒やし効果となったようだ。また、単身で移動する出張と違い、業務時間が終わったら家族と一緒に過ごせるのもポイントのひとつ。社員が働いている間、家族は別海町で観光などを楽しむことができる。参加者からは「滞在型のテレワークで、朝、昼休み、夕方と自然に囲まれながら家族と過ごせ、有意義な滞在だった」とワークライフバランス向上にも役立ったと、満足の声が多数聞かれたという。***こうして「テレワーク週間 2015」は大きな成果を残したが、同社では今後もテレワーク週間を通じてさまざまな取り組みを実施していく予定だ。賛同法人の拡大はもちろん、未経験分野へのチャレンジも積極的に行うという。「テレワークの推進は、業務効率の向上や競争力強化など、企業にとって大きなプラスになります。そこで弊社では日本のビジネス環境を変えるだけでなく、自分たちの働き方をより変革させ、生産性の向上や事業の拡大をする、そしてツールをより多くの企業に使っていただくという、事業の柱としても捉えています」と岡部氏。「テレワーク週間 2016」ではどのような新しい取り組みが行われるのか楽しみだ。
2016年02月09日●NPSが実現するAWSからAzureへのフェイルオーバーネットアップは2月2日、ANAインターコンチネンタルホテル東京において、年次イベント「NetApp Innovation Tokyo 2016」を開催した。同イベントでは、同社が提唱するデータ管理のビジョン「Data Fabric」の概念を紹介するため、さまざまな分科会セッションや展示が行われた。基調講演は、「Building Data Fabric Together ~ネットアップのData Fabricがもたらす新たなビジネス価値~」というテーマの下、代表取締役社長の岩上純一氏をファシリテーターとして進行した。岩上氏の簡単なあいさつの後、米国NetApp プレジデント兼Go-to-Marketオペレーション責任者 ロブ・サーモン氏が登壇したサーモン氏は冒頭「ネットアップの成功には『イノベーション』『パートナーシップ』『文化』という3つのポイントがある。今日のイベントではこの3つのポイントを感じてほしい」と語った。続いて、世界的にビジネスの課題は売上向上やコスト削減といったものから変化していない一方で、世界では、デジタルの変革が進んでことを指摘。「われわれの仕事のやり方も家庭での生活もデジタル変革によって変わりつつある。デジタル変革は、ビジネスで重視されるスピードやアジリティを達成するポイントにもなっている」さらに、サーモン氏はハイブリッドクラウドにおいてネットアップがリーダーシップをとっていることを強調した。エンタープライズの分野でプライベートクラウドの構築を多くサポートしてきた経験を踏まえ、「プライベートクラウドを使う企業の課題は、システムがサイロ化していることにある」として、その状態を打開することがネットアップの役割であると述べた。サーモン氏の話を引き継いだのは、米国NetApp クラウド・ビッグデータCTO ヴァル・バーコビッチ氏だ。「今や、世界最大のホテル会社はホテルを持っていないAirbnbであり、世界最大の運輸業者は車を持たないUber。彼らはデジタルイノベーターだ。彼らは従来のITを使わずに、アプリケーションに開発者をイネーブルさせたことで、イノベーションを起こした」と語ったバーコビッチ氏は、こうしたデジタル変革を可能にするData Fabricがすでに企業で利用できる状態にあることを強調した。Data Fabricでは、ローカルにあるデータやクラウド上のデータなど、さまざまな場所でデータの自由度を高めて、シームレスはデータ管理を実現する。バーコビッチ氏は、同社のストレージOS「clutered Data ONTAP」が同社のハードウェアに加えて、他社製品やクラウドでも利用可能なソフトウェアになっていることを紹介し、クラウド環境にも対応した「Cloud ONTAP」となったことで、弾力性というメリットが得られるようになったことをアピールした。「Data Fabricを使うことで、ロックインされることなく、複数のクラウドのデプロイメントを享受することができる」(バーコビッチ氏)デモンストレーションは、ネットアップ 常務執行役員CTO 近藤正孝氏とネットアップ ソリューション技術本部SE4部 システムズエンジニア 田端秀敬氏の掛け合いで行われた。近藤氏が企業のIT担当者が持ちそうな疑問を発し、田端氏が答えるという形で進められたデモンストレーションでは、「NPS(NetApp Private Storage)」を使ったマルチクラウド環境における障害対策が紹介された。デモでは、待機系のSQLサーバがAzure上に、アクティブ側のSQLサーバがAWS上で動いている環境で、AWS側のインスタンスを止めた場合に5秒ほどで切り替わる様子が披露された。近藤氏はこうしたデータベースの切り替えが容量にかかわらず、同じ時間で実現可能であることを紹介し、「データがNPSの中にあり、クラウド内を移動していないから可能になる動き。実行環境だけを動かしている。マルチクラウド環境でシステムを瞬時に移動させて完全なデータ保護を行えるのがNPS」と語った。「Cloud ONTAP」についても「オンプレミスのclutered Data ONTAPと機能はまったく同じ。動く環境は変わるけれど、すべて同じ管理画面、すべて同じAPIで動作します」と田端氏が語り、同一管理画面でクラウド上のものとオンプレミスのONTAP、NPSをすべて管理できることを見せた。さらに、バックアップソリューション「NetApp AltaVault」でAWS上のデータをAzure上に展開するデモンストレーションも実施。まだ製品化されていない機能だというが、実際にデータが2つのクラウドをまたいで移動される様子が紹介された。●JVCケンウッドのワークスタイル変革を支えるネットアップのストレージ講演では、近く完了するSolidFireの買収の話も飛び出した。SolidFire CEOのDave Wright氏のメッセージ動画が紹介された後、ネットアップの各製品が堅調に成長していることも語られるなど、リーディングカンパニーであることが繰り返し強調された。そうした製品を採用した成功事例として、ユーザー事例が2件紹介された。それのうち、「~グローバル企業でワークスタイル変革を成功させるには~ IT部門がリードするインフラからの変革加速」と題した講演を行ったのは、JVCケンウッド サプライチェーン・マネジメント部 IT部長 兼 コーポレート・マネジメント部 ダイバーシティ推進部シニアスペシャリスト 梶谷ひとみ氏だ。2007年からネットアップのファイルサーバを採用してきたというJVCケンウッドは、Windows XPのサポート終了に伴いクライアントPCへの膨大な投資が必要となったことを契機に、ワークスタイル変革に取り組むことになったという。「役員が社内を回った時、外回りの多い部署では使用されていないPCが数多くあることを指摘しました。その割には新規のPCを導入したいというリクエストが絶え間なく出ていました。なぜPCが必要なのか、PCに依存する働き方でよいのか、そもそも働き方から考えようということになり、方針として働き方そのものを変えることを目指しました」と梶谷氏。VDIを導入するにあたって、影響力の高い部署へのパイロット導入を行いながら、全社導入に向けた現状・ユーザー分析を実施。業務タイプごとのワークスタイルを分類し、生産性を上げるグループと営業部門と、1人1台のPCが必要または専有PCが不要な従来型の働き方を継続する部門、それ以外の働き方改革の対象となる部門に分けた。その分類をさらに分析して割り当てるべきデバイスを判断。最終的にマスターイメージを1種に絞りこみ2カ月で段階的なリリースを実現したという。「ネットアップのフラッシュストレージを利用していますが、2月1日、月初の月曜日の朝9時に何のストレスもなくVDIが利用できました。ネットアップのストレージを高く評価しています。CADのCDI化にも取り組みましたが、こちらもネットアップのストレージで何のストレスもなく利用できています」と梶谷氏は満足度を語った。クロージングを担当したのは、米国NetApp アジア太平洋地域プレジデント 兼 シニア バイス プレジデントを務めるリック・スカーフィールド氏だ。「世界を変えるために必要なのはデータ、データがなければ世界は始まりません。そして最も重要なデータに関わる事象は、システムが背景にあって、きちんとデータとして管理されているということです。生成されたデータが管理され、そこからどういう価値が生まれるかが重要です。それがData Fabricの真髄になります」と語ったスカーフィールド氏は語った。
2016年02月05日子育てしながら仕事を続けていくためには、職場環境は重要なテーマです。子育てしながら働く人が、組織内で(特に日々の業務で接する人たちの中で)どう受け止められているかによって、働きやすさや居心地の良さは変わってくるでしょう。そして、これに強く影響してくるのが、チームをまとめるリーダー・管理職の考え方です。上の立場の人間がどのような雰囲気を作り出しているかによって、チーム内の受け止め方は大きく違ってくるでしょう。この手の会話で度々トピックに上がるのが、上司が女性で、しかもストイックな働き方をしている独身女性だと、子育て中の女性部下はやりづらいという話。やはり「女の敵は女」なのでしょうか?○部下も上司も実は同じ悩みを抱えている!?「結婚や出産といったライフイベントを経ても女性が働きやすい職場のイメージは? 」と聞くと、女性がたくさん働いていて女性管理職も当たり前のようにいる会社、という答えが大半の人から返ってきます。このように、女性がたくさんいた方が働きやすいとイメージする一方で、女性の上司だからこそ「やりづらい」と感じてしまうのは、自分の中に働き方像が確立されていないからではないでしょうか。女性はこんな風に働くものだ、こんなキャリアパスを目指すべきだと、どこかの雑誌やネットで見たイメージをなんとなく描いていて、それが自分の思いだと思い込んでいる人が案外多いと感じています。自分自身に問いかけて、自分の中から出てきた「こう働いていきたい! 」という思いが見いだせていないと、他人の働き方に翻弄(ほんろう)されたり、自分と他人の働き方が違ったとき、不安を感じやすくなったりします。先ほどの例でいうと、ストイックな働き方の独身女性を上司に持った時に「私も彼女みたいな働き方をしないといけないんじゃないか」というプレッシャーをより強く感じてしまうのです。そして、同じことが上司側の女性にも言えるのですが、上司自身も自分の働き方に自信がなかったり迷っていたりします。だからこそ、自分と他人(部下)の働き方が違うことに不安を感じてしまい、結果的に「私のように働きなさい」という無言のプレッシャーを部下に感じさせてしまうのです。もしかしたら、あなたの身近な上司だって、実際には弱気な面を隠しつつ無理して頑張る日々と実力のギャップに悩んでいるのかもしれません。そして、その姿にどこか引け目を感じてしまうあなた自身にも、似たような悩みがあるのではないでしょうか? そんな風に、上司も部下も同じ悩みを抱えているのだと知ると、お互いイライラして対立していること自体がなんだか滑稽な気もしてきます。※画像は本文と関係ありません。○著者プロフィール株式会社ここるく 代表取締役 山下真実「わが子を大切するために、ママが自分自身を大切にできる子育てスタイル」を提案し、人気のレストランが託児付きで楽しめるサービス「ここるく」を運営するママ起業家。投資銀行や金融系コンサルなど金融業界でキャリアを積みつつ、2011年に第一子を出産。初めての子育て中に「今まで気にもとめていなかった当たり前の事が、産後は一 気にできなくなるんだ! 」と感じたことがきっかけとなり、現代に合った子育て支援を実現するため2013年に株式会社ここるくを設立。同サービス運営を通じて得られる働くママ達のリアルな視点とコンサル経験を活かして、企業に対する女性活躍推進コンサルティングを行う。全プラン託児付き! 新しい子連れランチ・おでかけスタイル「ここるく」
2016年02月03日子育てしながら仕事を続けていくためには、職場環境は重要なテーマです。子育てしながら働く人が、組織内で(特に日々の業務で接する人たちの中で)どう受け止められているかによって、働きやすさや居心地の良さは変わってくるでしょう。そして、これに強く影響してくるのが、チームをまとめるリーダー・管理職の考え方です。上の立場の人間がどのような雰囲気を作り出しているかによって、チーム内の受け止め方は大きく違ってくるでしょう。この手の会話で度々トピックに上がるのが、上司が女性で、しかもストイックな働き方をしている独身女性だと、子育て中の女性部下はやりづらいという話。やはり「女の敵は女」なのでしょうか?○部下も上司も実は同じ悩みを抱えている!?「結婚や出産といったライフイベントを経ても女性が働きやすい職場のイメージは? 」と聞くと、女性がたくさん働いていて女性管理職も当たり前のようにいる会社、という答えが大半の人から返ってきます。このように、女性がたくさんいた方が働きやすいとイメージする一方で、女性の上司だからこそ「やりづらい」と感じてしまうのは、自分の中に働き方像が確立されていないからではないでしょうか。女性はこんな風に働くものだ、こんなキャリアパスを目指すべきだと、どこかの雑誌やネットで見たイメージをなんとなく描いていて、それが自分の思いだと思い込んでいる人が案外多いと感じています。自分自身に問いかけて、自分の中から出てきた「こう働いていきたい! 」という思いが見いだせていないと、他人の働き方に翻弄(ほんろう)されたり、自分と他人の働き方が違ったとき、不安を感じやすくなったりします。先ほどの例でいうと、ストイックな働き方の独身女性を上司に持った時に「私も彼女みたいな働き方をしないといけないんじゃないか」というプレッシャーをより強く感じてしまうのです。そして、同じことが上司側の女性にも言えるのですが、上司自身も自分の働き方に自信がなかったり迷っていたりします。だからこそ、自分と他人(部下)の働き方が違うことに不安を感じてしまい、結果的に「私のように働きなさい」という無言のプレッシャーを部下に感じさせてしまうのです。もしかしたら、あなたの身近な上司だって、実際には弱気な面を隠しつつ無理して頑張る日々と実力のギャップに悩んでいるのかもしれません。そして、その姿にどこか引け目を感じてしまうあなた自身にも、似たような悩みがあるのではないでしょうか? そんな風に、上司も部下も同じ悩みを抱えているのだと知ると、お互いイライラして対立していること自体がなんだか滑稽な気もしてきます。※画像は本文と関係ありません。○著者プロフィール株式会社ここるく 代表取締役 山下真実「わが子を大切するために、ママが自分自身を大切にできる子育てスタイル」を提案し、人気のレストランが託児付きで楽しめるサービス「ここるく」を運営するママ起業家。投資銀行や金融系コンサルなど金融業界でキャリアを積みつつ、2011年に第一子を出産。初めての子育て中に「今まで気にもとめていなかった当たり前の事が、産後は一 気にできなくなるんだ! 」と感じたことがきっかけとなり、現代に合った子育て支援を実現するため2013年に株式会社ここるくを設立。同サービス運営を通じて得られる働くママ達のリアルな視点とコンサル経験を活かして、企業に対する女性活躍推進コンサルティングを行う。全プラン託児付き! 新しい子連れランチ・おでかけスタイル「ここるく」
2016年02月03日女性の「活躍」の必要性が、今盛んに叫ばれている。2014年6月に改訂された『日本再興戦略』では「2020年に指導的地位に占める女性の割合30%」が掲げられ、2015年8月には「女性活躍推進法」が成立した。この法律により、大企業は自社の女性の活躍の状況を分析し「行動計画」をつくることが義務付けられることになった。こうして国を挙げて女性の活躍を掲げるようになった背景には、日本であまりにも女性の活躍が進んでいなかったという事実がある。2013年10月に世界経済フォーラムが発表した「ジェンダーギャップ指数」では、日本の順位は136カ国中105位と諸外国とくらべてかなり低いことがわかる。僕の周囲を見回しても、子育て・出産と仕事の両立という課題で悩んでいる女性は少なくない。なぜ、こんなにも日本では女性の活躍が難しいのだろうか?本書『働く女子の運命』(濱口桂一郎/文藝春秋/2015年12月/780円+税)によると、女性の活躍が日本で進まない一番の原因は、日本企業の多くが採用するメンバーシップ型雇用システムにあると論じられている。政府でなされている議論を見ていると、どうしても「活躍」という言葉だけが一人歩きしてどこに向かっているのかわからない印象を受けてしまうが、本書を読めば女性の活躍が進まない理由について構造的な理解が可能になるだろう。○メンバーシップ型社会で仕事と家庭の両立はかなりきつい日本の場合、新卒で会社に就職すると最初にどんな仕事をやらされるのかはわからないことが多い。入社後はじめて配属が知らされ、その後も数年ごとにジョブローテーションという形で部署異動を繰り返し、スキルをまんべんなく身につけていく。賃金は仕事の内容ではなく勤続年数に応じて決まる。会社によって多少の差異はあるものの、概ね「正社員」として働いている人はこのような形でキャリアを積み上げていくことになるだろう。日本企業では、社員は特定の職務に紐付いているわけではなく、会社に紐付いていると考えることができる。だからまったく経験のない職務への配置転換も行われるし、時には転勤もありうる。今ある目の前の仕事をこなせるかということよりも、数十年に渡って会社の一員として、理不尽な命令にも従ってくれるかという全人格的判断が重視される。このような労働社会のあり方を、本書では「メンバーシップ型社会」と呼んでいる。このようなメンバーシップ型社会で活躍するためには、ある程度私生活を犠牲にして会社に尽くす必要があるが、それができたのは今まで主婦に家事と育児をほとんどすべて任せた男性たちだった。この事実上の男性コースに入れてもらった少数派の女性たちは、男性と同じように私生活を犠牲にするというルールの下で戦っていかなければならない。そこでさらに育児・子育ても両立しようと考えると、超人的な体力・精神力が必要になる。活躍している女性のインタビューなどを見るとこういった超人的な人たちばかりがフィーチャーされるが、それは一部の人の特殊ケースであって、すべての人にこのような超人的なライフスタイルを求めるのは現実的ではない。必要なのは社会構造そのものの見直しではないだろうか、と本書は提言しているように見える。○ジョブ型社会の男女平等日本がメンバーシップ型社会なのに対して、欧米はジョブ型社会だと言われている。ジョブ型社会では、企業の中の労働をその種類ごとに職務(ジョブ)として切り出し、その各職務を遂行できる技能(スキル)のある労働者をはめ込む。ジョブ型社会ではメンバーシップ型社会のように突然無関係の部署に配置転換されたり、転勤を強制されることは基本的にない。賃金もそのジョブのスキルに対応して払われるので、会社の在職期間が伸びれば自動的に上がるというようなこともない。会社と労働者の結びつきがそれほど強くないので、ワークライフバランスの追求も現実的になる。ジョブ型社会で男女平等を実現する場合、ジョブへの就労自体の男女平等を促進すればいい。男性の占める割合が多いジョブなら、時には女性を優遇して(アファーマティブアクション)男女比の適正化をはかる。また、男性の多いジョブと女性の多いジョブの付加価値が同様で賃金格差があるというなら、「同一価値労働同一賃金」を適応して賃金の適正化をはかる。メンバーシップ型社会における男女平等よりも話はずっとシンプルになる。○働く男子も必読日本がメンバーシップ型社会であることから生じている問題は、何も女性の社会進出に限った話ではない。たとえば、日本人が働きすぎていてワークライフバランスが改善しないという問題も、結局は「会社と労働者の結びつきが強すぎる」ことに原因がある。そういう意味では、本書は働く女子に限らず、男子も読む必要があると言えるだろう。本書をもとに「働きづらさ」の正体について考えてみるというのはいかがだろうか。日野瑛太郎ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)がある。
2016年01月29日茨城県警察はこのほど、所轄署の署長や本部の刑事部長ら78名の幹部職員全員が「イクボス宣言書」に署名したと発表した。同県警察は、いつ起こるかわからない事件・事故の対応に追われるなか、どのようにワークライフバランスを実現しようと考えているのか。担当者に聞いた。○幹部職員の意識改革が子育てしやすい職場作りにつながる「イクボス宣言書」は、ワークライフバランスが実現できる職場作りを目的として、同県警察が作成したもの。宣言書には、「職員が仕事と家庭を両立できる働きやすい職場環境を作り…(中略)…自らも仕事と私生活を充実させる『イクボス』となります」と書かれている。なぜこのような取り組みを実施したのか。この点について警務部の担当者は、「この年代の職員には、これまで仕事一筋に打ち込んできた人が多い」と指摘。ワークライフバランスを推進するためには、職員が休暇を取りやすいよう、幹部職員の意識改革を徹底する必要があると考えたという。宣言書の署名にあたっては、幹部職員全員が、イクボスのアドバイザーによる講義を受講。ただ署名するだけではなく、イクボスについての資料を自分の机に掲示して、意識づけるところまで徹底している。○出産前後の休暇、男性の取得率100%を目指すそれでは子育てしやすい職場作りに関して、具体的にはどのような目標を定めているのか。警務部担当者によれば、最も力を入れているのが男性職員による「配偶者出産休暇」と「育児参加休暇」の100%取得だ。「配偶者出産休暇」とは、配偶者の出産前後に3日間の範囲で休暇を取得できるというもので、現在でも、2015年1月1日~11月5日までに配偶者が出産した男性職員の97.8%が取得している。一方、配偶者の出産前後に育児を目的として5日間の範囲で取得できる「育児参加休暇」の取得率については、同期間で49.6%にとどまっている。担当者は、「まだまだ制度の周知が不十分。子どもがうまれる予定の職員を把握して、積極的に制度を紹介していきたい」と話した。同県警察ではこのほかにも、中学校就学前の子どもを持つ職員については、深夜・時間外勤務を免除できる制度を平成26年4月、独自に創設している(県職員に適用される条例の定めでは、子どもの年齢上限が、小学校就学前までとなっている)。出産時だけでなく、その後の子育てにおいても頼りになる制度が充実しつつあるようだ。○メリハリのある働き方だからこそ、仕事に全力投球できるしかし、事件・事故の対応に追われる警察という組織で、ワークライフバランスを実現していくことは難しいのではないだろうか。この問いに関して担当者は、「緊急事案にしっかり対応するために、逆に必要な働き方だ」と答えた。「何もないときには早く帰宅し、休暇も取得してもらう。ムダを省き、業務の効率化を進めることで、仕事に全力投球できる」という。さらに、育児だけでなく、病気やけが、家族の介護など、多くの職員がさまざまなライフイベントに直面することを想定しているという同県警察。職員が1人欠けても仕事が回るような業務力をつけるという目的からも、今回の取り組みは有効とのことだ。県民の安心・安全を守るという職務を全うしてもらうためにも、これらの取り組みが推進されていくことを望みたい。
2016年01月26日近年は結婚しても働き続ける女性が多いといいます。共働きは当たり前のような世の中ですが、問題は子どもが誕生してからの働き方です。妊娠・出産を経験しても、まだまだ働きたいと考える女性は多いもの。しかし、会社の受け入れが整っていない場合も少なくありません。化粧品会社の株式会社ランクアップの代表取締役でもある、岩崎裕美子さんの著書『ほとんどの社員が17時に帰る10年右肩上がりの会社』(クロスメディア・パブリッシング)では、女性に優しい会社のつくり方などが語られています。著者は、いまでこそ超ホワイト企業社長ですが、以前は終電帰宅のブラック会社取締役だったそう。今回はそのなかから、働き方をガラリと変えた「7つの働き方革命」をご紹介したいと思います。■1:全社員に定時退社を徹底もともとは著者が41歳で出産、その後体調を崩したことがキッカケで決めた制度。特に女性が多い会社では社員の妊娠出産ラッシュの時期が来ることも想定できます。復帰する社員のことを考えたら、定時退社を徹底するべきと判断されたそうです。■2:毎月の業務の棚卸でやる・やらないを決める定時退社を決めても仕事の量が多すぎて、「残業をさせてほしい」の声もあったとのこと。そこで、仕事が多すぎる社員には仕事の棚卸をさせて「なぜ帰れないのか」をひとりずつ確認していったそう。昔からの慣例で続けていたあまり意味のない作業を徹底的に洗い出し、減らしたというのです。■3:取引先を巻き込む理念共有型アウトソーシング「餅は餅屋に」ということで、アウトソーシングを活用し自分たちはやるべきことに集中できる環境にしたといいます。採用活動、ホームページ作成、コールセンター、配送業務、PR活動などをお願いしているそうです。また、アウトソーシング会社にも理念共有し、効率を上げています。■4:ルーティンワークはシステム化事務作業はシステム化。時間短縮することで自分たちがいちばん考えなくてはならないことに集中でき、結果として生産性の高いビジネスのしくみをつくっています。■5:事務職の廃止それでも減らない事務作業は、アルバイトや派遣社員の方にお願いをしているとのこと。人事評価制度を採用し、社員全員にスキルアップの階段を上ってほしいと考えたそうですが、事務作業にはその限界があると感じたそうです。■6:業務スピードを上げる社内ルール仕事の効率を上げるために6つの社内ルールを決めたそう。(1)社内資料はつくり込まない、(2)会議は30分、(3)社内メールで「お疲れ様です」は使わない、(4)社内のスケジュールは勝手に入れる、(5)各部署の協力が必要な業務などはプロジェクト化、(6)企画の初期段階からの社内各部署の根回し。これでかなり効率化ができています。■7:「17時に帰っていいよ」制度定時は17時半ですが、17時退社もよし。集中して効率良く仕事をする癖がつけば、17時ピッタリ退社でも業績は上がり続けたとのこと。これはいいことづくめ、プライベートも充実させることができます。*著者の会社は東京都に、通信業界初「東京ワークライフバランス認定企業の育児・介護休業制度充実部門」に選ばれたそう。これからは、産休や育休明けの女性が長く働けるような会社がさらに増えてほしいです。この本は会社経営者のみならず、自身の働き方や働く会社について考えている女性にも読んでみてほしいと思います。(文/齊藤カオリ)【参考】※岩崎裕美子(2015)『ほとんどの社員が17時に帰る10年右肩上がりの会社』クロスメディア・パブリッシング
2016年01月24日昨年末、リクルートホールディングスが、雇用形態に関わらず全従業員を対象に上限日数のないリモートワークを導入すると宣言し、話題になった。場所や時間にとらわれないこの働き方が広く普及すれば、人口減少による労働力不足を補えるだけでなく、妊娠・出産を機に職場を離れてしまう女性に勤続してもらえるなど、多様な働き方を実現できると期待を集める。「大企業が全社でただちにリモートワークに切り替えるのは難しいでしょうが、2020年をめどに大きな変化が現れてくると見ています。昨今の人材不足の状況は、企業が耐え切れる範囲を超えており、"必ず通勤しなければならない"といったこだわりを持ち続けるわけにはいかなくなっています」こう語るのは、IT企業を中心に50社強(2016年1月時点)が契約するオンラインアシスタントサービス「CasterBiz(キャスタービズ)」を運営するキャスターの代表取締役社長 中川祥太氏。2015年12月には、日本初のオンライン人材派遣サービス「在宅派遣」も開始した。非正規雇用の社員が増える中、彼らの受け皿となる派遣業界では登録者数が伸び悩み、ほぼ横ばいの状態だとも言われる。「人的リソースを増やしたい企業は、何らかの手段を使って対応しようとしています。そうなると、従来よりも多様な働き方を取り入れていく必要が出てくるので、リモートワークに切り替えるのは必然の流れなのではないでしょうか。僕たちはリモートワークという働き方が当たり前の選択肢になる世の中にしたいと本気で思っています」(中川氏)2013年ころ、前職のイー・ガーディアンにてBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)業務をアウトソースしたいクライアントとそれを請け負うクラウドワーカーの間に立って、クラウドワーカーのマネジメントとオペレーション業務を担当していた中川氏。当時の経験が起業の大きなきっかけになったと振り返る。○時給は100円程度……優秀な人材に適切な仕事が供給されていない現実中川氏 : クラウドソーシングサービス提供社にBPO案件を依頼したいクライアントとクラウドワーカーの間に立って、そのBPO業務のディレクションを担当していました。信じられない話ですが、実作業を請け負う方の時給はその当時100円程度でした。極端に低賃金な案件しかない状況が普通だったんです。今、東京エリア・時給1000円で求人をかけても、人材がなかなか集まりません。そうなると地方に目を向けるしかありませんが、場所を設けるためのコストがかかります。とはいえ、巨額の初期投資ができるのは上場企業くらいで、中小企業だと地方でも人材を集められない。この問題は大きいなと感じていました。一方で、クラウドソーシング業界には直近3~5年で数十万人と、かなりの規模感で人材が集まっています。ほかと比較すると異常な集まり方だなと思いますが、裏返せば、業界全体が期待されているということです。当然、その中には優秀な方が多くいらっしゃいます。でも、並んでいる案件が時給100円程度のものばかりだと、そこに集まる人たちにとって救いがないですし、大きな歪でしかないと思ったんです。そんな問題意識を抱えながら解決策を考えていたとき、現在の株主と出会う機会がありました。その際にキャスタービズの構想を話したところ、「ビジネスチャンスがある」とのっかってくださったんです。そこで2014年9月に会社を設立し、同12月にサービスをリリースしました。―― 資金が最初からあったのはすごいことですね資金調達を狙って売り込みにいったわけではなかったので、とても幸運でした。ただ、特定の領域で名前を売っておくこと、知られておくことは大事だと感じましたね。僕の場合は、株主から「(クラウドソーシングの領域で)いいプレイヤーはいないか」ときかれた知人が、「それなら中川という人間がいますよ」と仲介してくれました。結果、株主側から「自分たちはこの業界(クラウドソーシング)にチャンスがあると思っている」と寄ってきてくれて、創業者に近い感覚で僕たちに理解を示し、資金を提供してくれたという経緯があります。起業時にどの業界に目をつけるかは、その業界が大きくても小さくても、どちらでもいいと思います。僕の場合、本当に偶然ですが、クラウドソーシングという当時生まれたての業界を選択しました。とくに2014~2015年にかけて、業界大手のクラウドワークスが上場するなど市場が盛り上がった絶好のタイミングでもありました。起業があと1年遅ければ、サービスリリース前に資金調達できていただろうか……とは思います。なので、起業したい分野の「波」は正確に把握しておきたいですね。○チーム・キャスターは全員が"リモートワーク"―― キャスタービズは「オンライン秘書サービス」と呼ばれることもあります。秘書に目をつけた理由は?とくに秘書にフォーカスするつもりはありませんでした。ただ、近しいサービスを探すと在宅秘書や秘書代行会社など、いくつか「秘書」と掲げたプレイヤーがおり、伝わりやすいしイメージもしやすいと感じました。僕たちはこの言葉を「バックオフィス業務全般を担えるオンラインアシスタント」と定義しています。秘書業界自体は大きくはありませんが、能力の高い方が妊娠・出産・子育てなどで第一線から離れ、スキルを持て余しているケースが多く見られます。在宅で働きたくても環境がない、という方の声も聞いていました。そんな元秘書の方々がオンラインアシスタントとして、キャスタービズに参画してくれています。海外では「オフィスマネージャー」とも呼ばれる秘書は、経営層と意思疎通する機会が多いため、総じてコミュニケーション能力の高い方ばかりです。経営層の言葉を翻訳して、その下にいる人に伝えるのが秘書の役割ですから、コミュニケーションスキルはオンラインアシスタントにとって非常に重要な要素でもあるんです。―― 今現在、どんなメンバー・体制でサービスを運営していますか?業務委託を含めると全員で40~50人のスタッフがおり、約30人はオンラインアシスタント、約10人はサービス管理部門です。一応拠点はありますが皆リモートワークで、東京エリアに僕ともう1名、名古屋に1名、海外に10名、そのほか全国各地に人材が散らばっています。東京エリアだけで人材を探そうとすると、通勤の可否によって採用基準が限定されてしまいます。実際、自宅から半径15km圏内がストレスの無い通勤距離の限界と言われているんです。でも、通勤できるかどうかといった基準を重視して、一緒に働く仲間を選択することはベストだと言えないのではないでしょうか。能力やマインド、ビジョンへの共感度などを指標にする方が、全国に求人をかけられるだけでなく、結果的により優秀な人材を発掘できると思います。―― とても順調にサービスを成長させている印象ですが、挫折や失敗をしたことはありますか?設立3~6カ月のタイミングで、初期メンバーが抜けてしまったことでしょうか。弊社では、全員がリモートワークのため、オフィス勤務のように直接顔を合わせることがありません。でも、それが裏目に出てしまいました。通勤がないことで何かから解放された一方で、彼らがイメージしていた働き方と違い、「自宅でたった一人きりで働く」というこれまでと正反対の働き方に戸惑ってしまったのだと思います。そのことで、フリーランスではない一企業の社員がリモートで働いたり、突然あまりにも大きな自由を与えられたりすると、逆に混乱してしまうこともあるのだなと学びました。定時が決まっていて、毎日出勤して誰かに相談しながら物事を進められる環境の方がよりパフォーマンスを出せる人もいるんだということを、この経験を通じて気付くことができました。○特定の分野で自分の強みを作っておく―― 今後の展望を教えてください昨年11月に有料職業紹介事業、ならびに労働者派遣事業の許可を取得し、オンライン人材派遣サービス「在宅派遣」を開始することを発表しました。1月中には在宅派遣の販売をスタートします。業界からも歓迎されているようですし、さまざまな課題をいろいろなやり方で共に解決していけたらと思っています。直近の話ではありませんが、海外展開も視野に入れています。とくにシンガポールや香港、ベトナムなどのアジア地域で、人件費が急騰している都市が対象です。どこも中心地に事業所を設置すると考えると、オフィス賃料がバカにならなかったり、通勤が足かせになったりもしますから。東京だけではなく、世界各国の都市が抱える問題は同じです。その課題に対し、リモートワークの力を活用して、アプローチしたいと考えています。―― 最後に起業家を目指す人にアドバイスをお願いしますやりたいことがあるなら、特定の分野で自分の得意なことにフォーカスし、まずは実力をつける必要があると思います。たとえば営業を1年本気でやりきって、「営業なら任せて!」と言えるようになるのでもいい。とくに学生から起業家を目指す人なら、何もできないのに社会に足を踏み入れるのには、やや厳しいものがあります。何でもいいので、自分の強みを作ることです。自分の得意なものがわかれば、逆に不足しているものもわかりますしね。また、僕がこれまでやってきた習慣が2つありまして、1つは人に会い続けること。基本的に毎日夕方以降の予定は、勉強会や交流会、飲み会などで埋めています。「遊べばいい」というわけではなく、人との出会いがなければ何も始まらない、と考えているためです。2つ目は情報を把握すること。仕事に割く時間の3割くらいは、情報をチェックする時間に充てています。「把握」は自分の役に立つ情報だけを取り入れる「インプット」とは全然違います。「興味のある情報以外も目の端になんとなく捉えておくこと」が僕の考える「把握」です。そうすると、興味がないものであっても全体の1~2割吸収することで情報を俯瞰できるようになりますし、勘も養われるのではないでしょうか。
2016年01月20日●男性議員の育休に批判が出る「窮屈な国」NPO法人ファザーリングジャパンは1月18日、「どうなる? 議員の育休~永田町が変われば、日本の子育て・WLBが変わる~」と題した緊急フォーラムを東京都・日本橋にて開催した。フォーラムには、育休の取得を宣言している自民党・宮崎謙介衆議院議員をはじめとして、過去に男性として育休を取得してきた成澤廣修・文京区長、青野慶久・サイボウズ代表取締役社長らが出席。国会議員の育休取得が社会にどのような変化をもたらすのかについて議論を交わした。○目立つ人が育休を取得すれば空気が変わる「少子化が進んで、女性の社会進出も進む中で、男性の育児参加をやっていかなくてはいけない。私が目指すものは、日本の風土を変えること、雰囲気を変えること、制度を充実させていきたいということ」。冒頭の宮崎議員のあいさつを皮切りに、この日開かれた緊急フォーラムは始まった。「国会議員の育休の是非を問う会ではない」という今回のフォーラムでは、参加者が、宮崎議員の育休取得宣言とその反響から読み取れる社会の現状や課題について語った。司会者からはじめに意見を求められたのは、2010年に育児休業を2週間取得した経験を持つ成澤廣修・文京区長だ。成澤氏は「育休の取得を宣言したとき、"男は外で仕事、女は家を守るべき"と批判されたことがあり、性別役割分担意識がまだこの国に根付いているのかと思った。宮崎さんの問題提起については大賛成で、子どもとママにしっかり向き合ってほしい」とエールをおくった。一方で、「大事なのは、男性議員の育休を制度化することが目的ではなくて、働き方の見直しをしっかりやって、どうしたら男性も女性も家事に取り組むことができるのか議論をすること」とも提言。子育てしやすい柔軟な働き方を考えることが大事だと訴えた。また、これまでに3度の育休を取得しているサイボウズの青野慶久・代表取締役社長は「目立つ人が育休を取得すれば空気が変わる」と自らの経験をもとに、宮崎議員の育休取得宣言を評価。「3人目の子どもがうまれた去年、半年間16時退社をしていた。社長が最初に帰宅するので、時短で働いている社員も元気良く退社できる。この会社では子育てをしてもいいんだという空気ができる」とその効果を語った。○女性はずっと直面してきた問題だ会場では、野党である民主党の議員も議論に加わった。選挙で落選し、浪人中に育児を経験したという民主党の寺田学衆議院議員は、「宮崎さんが育休を取りたいと言ったことに国会内や世の中から批判が来るのをみて、窮屈な国だなと思った。その根底に何があるのかと思うと、育児に対する社会的な地位がものすごく低くて、男性が取りたいなんていうと、そんなの女性にやらしとけばいいだろうっていう全体の空気があると思う」と分析。その上で「1カ月どっぷり育児に専念してほしいし、歳費は堂々ともらってほしいと思う。歳費をもらわなかったら、育休を取ることに対する後ろめたさの現れになってしまう」と主張した。これらの男性の意見を受けて、女性の立場から発言したのが経済ジャーナリストの治部れんげ氏だ。「日本はこれから人口を増やしたいんでしょ? 子どもを育てることが大事なことだと認められるべき。国会議員という大事な仕事より、自分の子どもの方が大事に決まっている。こんな簡単なことを議論しなければいけないということに腹が立った」と憤りをぶつけた。そして、「女性はずっと直面してきた問題だ。私より少し上の世代は、産むか仕事かの選択を迫られた。仕事を辞めるか、マタハラにあうか、子どもを産まない、家族を持たないという選択をしてきた。その立場に今、男性がさらされるようになってきた。だから男性にがんばっていただきたい。絶対に育休を取ってください」と訴えた。さらに、病児保育サービスなどを運営しているNPO法人フローレンスの駒崎弘樹・代表理事は、「試されているのは宮崎議員だけじゃない。ここで、宮崎議員の苦闘を高みの見物をして面白いねと笑っているだけでは社会はアップデートされない。男性も子育てに参加し、社会で子どもを育むことができる未来がほしいんだということを高らかに言っていきたい」と、この出来事を人ごととして捉えるのではなく、当事者意識を持ってほしいと語った。●議論を受けた宮崎議員の決意とは○育休取得は乗り越えられるリスク議論の中では、男性議員の育休取得に対するバッシングについて、登壇者から多くの意見が寄せられた。経営者としての目線でサイボウズの青野氏は、「今回の問題について批判している経営者がいるが、勘のいい経営者は(育休に理解を示す)方針転換をしている。子育て環境を整備することで人を採用しないと、事業を縮小しないといけないって気づいている。これからは頭の切り替えられなかった会社が沈没していくのをみていくことになると思う。だから今育休を取得することは、乗り越えられるリスクであると確信しています」と理解を示した。またNPO法人マタハラネットの小酒部さやか・代表理事は、「マタハラの被害者として顔や名前を出したときもすごいバッシングがあった。しかしそれ以上に応援メールも届いたし、無言の賛同がたくさんある。黙っているけれど心の中で賛同している人がたくさんいると思うので、バッシングをばねにがんばってほしい」と励ました。同じ衆議院議員である寺田氏は本質的な国会議員の仕事について意見を述べ、「国会議員はそれぞれが抱えた問題意識を解決することが求められていると思う。宮崎さんが育休をとって、育児のつらさや当事者意識を持って、制度を考えていこうと進めていくのが本質的な議員の役割だ」と訴えた。○育休取得は働き方改革の中の1つ最終的に、育休取得の議論は「子育てをしやすい働き方を考えるべき」という方向へと移っていった。少子化ジャーナリストの白河桃子氏は「日本は進撃の巨人の世界のように、3つの壁に囲まれている。性別役割分業、長時間労働、仕事こそが一番尊いという3つがあって、その中で窒息しそうになっている」と指摘。成澤文京区長は「東京都の認証保育所は13時間以上保育。そういう子育てを日本は引き続き求めていくのか。延長保育や早朝保育を使わなければ、結果的に可処分所得も増える。子育てにとって幸せな社会になるように、働き方の見直しが必要だ」と訴えた。これらの議論を受けて、駒崎氏は「男性の育休は、働き方改革のコンテクストの中の1つ。多様な働き方ができる社会を考える上で育休がある。時代時代に合わせた働き方をデザインしていくという発想がすごく必要だし、あるべき働き方は何なのかっていう議論につなげていきたい」と話をまとめた。最後に「育休を取得すると宣言したという中で、知らないこともいっぱいあった。多くの方からいろんな意見をもらい、重たい議席を預かっているということを再確認しつつ、どんな仕事をしなければいけないのかっていうことはしっかり考えてやっていきたい。皆さんと共に日本の未来につながることをやりたい」と話した宮崎議員。今回の問題が1つの騒動として終わるのではなく、子育てしやすい環境づくりにつながる機会になることを切に願う。
2016年01月20日「リモートワーク」という言葉をご存知でしょうか?クラウドソーシングの急速な発展に伴って注目されるようになったそれは、オフィスに通勤せずに働ける新たなワークスタイルのこと。これまでは、事前に決められた仕事やプロジェクトをフリーランサーが請け負うというかたちが一般的でしたが、ここにきてその可能性が組織にまで広がっているといいます。つまり会社やチームに所属していたとしても、住みたい場所に住んで、通勤せずに働けるようなワークスタイル「リモートチーム」が可能になったということ。そこで、ぜひ読んでおきたいのが、きょうご紹介する『リモートチームでうまくいく マネジメントの“常識”を変える新しいワークスタイル』(倉貫義人著、日本実業出版社)。■どこにいても仕事ができる著者は、リモートチームを取り入れることによって、組織ならではの安定した仕事、仲間と助け合える環境、そして好きな場所で働ける自由をすべて実現できると主張しています。なぜなら、自らが代表を務めるソフトウェア開発会社のソニックガーデンが、まさにリモートチームの有効性を立証しているから。たとえば東京のオフィスに通勤して働いているメンバーがいる一方、全国各地で在宅勤務をしているメンバーも数多く存在しているというのです。しかも在宅勤務だったとしても、仕事内容や働き方、雇用形態も本社勤務の人たちと違いはないのだとか。だとすれば、スキルさえあればどこにいても仕事ができることになり、たしかに可能性のあるワークスタイルだといえるでしょう。■ノンストレスで仕事できるリモートチームを採用することによって得られる最大の効果は、いうまでもなく時間の節約による生産性の向上。なぜなら在宅勤務をすれば、通勤時間がゼロになり、移動時間や待ち時間など、どうしても削ることができなかった時間を削ることが可能になるからです。つまり、その分の時間を生産的な仕事のために利用できるのです。そればかりか、ゼロになるのは時間だけではありません。通勤時間がなくなるということは、通勤時に避けて通れなかった満員電車内での疲労、電車の遅延、車の渋滞などによるストレスもなくなるということ。疲労やストレスとは無縁の状態で1日の仕事をスタートさせることができるのですから、そこには大きな精神的効果が期待できるはずです。■オンラインで会議ができるところで組織やチームなどで仕事をする場合、当然のことながら会議やミーティングは必須です。でも従来のようにオフィスで仕事をする場合、チーム内や顧客とのミーティングを開くためにはいくつものハードルを越える必要がありました。事前に出席者の都合のよい日時を調整し、そのうえで会議室を予約するなど、さまざまな調整が必要だったわけです。でもリモートチームでのミーティングは、各人がパソコンを持っていて、インターネットにつながる環境さえあればOK。オンラインを通じての会議が可能になるため、会議室の予約も必要ないのです。■無駄な時間の節約もできるちなみに会議室を予約して使う場合、仮に1時間の予約をしていたとしたら、要件が早めに終わったとしても、なんとなく時間いっぱいまでミーティングをしてしまうということになりがち。逆に時間がオーバーして次の予約者が来てしまったら、改めて別の場所を探さなければならなくなります。いろんな意味で無駄が生まれるわけですが、オンラインでのミーティングなら、用件が終わった時点でサッと終えることが可能。次の人たちが集まってくることもないので、時間を節約でき、ストレスも軽減できるでしょう。■さらに出張の概念も変わるまた、リモートチームワークが当たり前のものになってくると、出張の概念すら変わるといいます。出先でもインターネットにつなげば、そこには普段のオフィスと同じ労働環境が生まれることになります。つまり出張に行くからといって、チームの仕事に待ち時間などの支障が出ることもなくなるのです。■仕事に対する意識も変わるそしてリモートワークをはじめると、働く人の意識も変わってくるといいます。つまり、「オフィスに行きさえすれば仕事をしているとみなされる」という従来の状態ではなくたるということ。成果を出さない限り、仕事をしていないのと同じだということになるので、“働いているふり”が通用しなくなるのです。それはデメリットのようにも聞こえますが、そうではないというのが著者の考え方。結果的にはよりいっそう成果を意識した働き方をメンバーに促すことになるため、チーム全体の生産性を高めることになるということです。*現代の労働環境は、被雇用者にやさしくないものであると認識されています。それは否定しようのない事実であり、特にあおりを受けやすいのは、シングルマザーなど時間に制約のある方々でしょう。しかし、もしもリモートチームによって自らのスキルを生かすことができるのであれば、そこには従来になかった新たな可能性が生まれることになります。より効率的な働き方へのシフトを実現させるためにも、本書には読むべき価値があると思います。(文/書評家・印南敦史)【参考】※倉貫義人(2015)『リモートチームでうまくいく マネジメントの“常識”を変える新しいワークスタイル』日本実業出版社
2016年01月19日2016年の年頭にあたり、サイボウズの代表取締役社長を務める青野慶久氏は、以下の年頭所感を発表した。クラウドの力で日本社会の働き方変革に貢献謹んで新年のお慶びを申し上げます。昨年は格別のご厚情を賜り、誠にありがとうございます。働き方改革の声が大きくなってきている昨今。その声に後押しされるように国や企業も姿勢を変えつつありますが、まだ歩みは遅々として進まない状況ではないでしょうか。サイボウズでは多様なワークスタイルを推進し自らを変革したことで、多くのメディアから取材を受け、日本企業のワークスタイル改革を訴え続けてきました。2014年12月に公開した働くママを主人公にしたムービーは、YouTubeでの再生回数が160万回を記録。TwitterやFacebookで様々な議論を呼び、TV番組でもニュースとして取り上げられるなど非常に大きな話題となりました。2015年12月より公開した新作では、視点を母親から父親に移し、全6話の連続ドラマ形式で展開、引き続きこのテーマについて問題提起を行っております。また、東京・大阪で4125名のお客様にご来場いただいたカンファレンスでも「働き方改革」は最も重要なテーマとして位置づけ、多くの著名人とも議論を重ねました。2015年12月には、これまでのサイボウズの試行錯誤の集大成として、サイボウズとして初めて組織の考え方をまとめた書籍を出版しました。働く環境を変えるためにサイボウズが貢献できること。それはクラウドを通じて働く環境を改善させることです。弊社クラウドサービス「cybozu.com」は、2011年11月に提供を開始して以来、すでに有料契約社数は1万2000社を超え、パートナー数も昨年の170社から223社(2015年9月末)へと増加、順調に拡大を続けております。4年前の立ち上げ当初、「cybozu.com」では中小企業がお客様の多くを占めておりましたが、昨年から1000名を超える大規模な契約企業様も増えてまいりました。また、社会を支えなくてはならない存在、NPO法人向けの支援プログラムも昨年8月に開始。すでに80団体近くに導入いただきました。PTAやマンション管理組合など様々なプライベートグループでご利用いただいている無料ツール「サイボウズLive」も昨年12月にご登録者数が140万名を突破。クラウドの勢いをさらに加速することが出来ました。サイボウズだけで働く環境を変えていくことはできません。多くのお客様、パートナーとの"つながり"が最も重要な事だと捉えております。そこで、2016年のサイボウズは、"Connect"をキーワードにかかげ、展開してまいります。クラウドの普及によって、サイボウズの事業環境は大きく変化しました。2016年はシナジーを生み出す段階へと進む重要な時期です。パートナーの数が増えただけでなく、地域、領域、業界とも多様になりました。そのネットワーク化が、"Connect"の一つの取り組みであり、各パートナーの特色を生かしてパートナー同士をつなぎ、サイボウズのご提供する価値を広げていきたいと思っております。昨年7月の東京日本橋タワーへの本社移転も、そうした取り組みの一環でした。「Big Hub for Teamwork」をコンセプトとする新オフィスは、異業種の人々が集い、新しいアイデアを出し、共同で価値を創造する中心拠点になることを目的としております。さらに、昨年は仙台、松山に営業拠点を開設、大阪には営業所と開発拠点を統合した新たな事業拠点を開設しました。また、グローバル展開においても、今年で設立2年目のサイボウズUSAでは体制確立を実現、2016年の活動に確かな手応えを感じております。また、中国市場でのシェア拡大を目指し、展開を続けるサイボウズ中国でも導入実績が580社(2015年10月末)と大変好調な結果を残すことが出来ました。その他、開発拠点のベトナムオフィスも更なる強化・発展のため、2016年に移転を予定しております。国内外の拠点強化により、 "Connect"をクラウドの力で後押ししてまいります。2016年は"Connect"のキーワードのもと、集まった点を線へ、そして面にしていく活動に注力し、つながった多くの力を集結して日本企業の働き方改革に一層貢献してまいります。本年も、さらなるご支援、ご鞭撻を宜しくお願い申し上げます。
2016年01月05日○ノー残業や時短でも能力開拓はできる!働く親たちの年末は目が回るような忙しさ! それでも年末が近づいてくると、この1年を振り返って自分を褒めたり反省したりと「総まとめ」することが増えますよね。働き方に制約が生まれやすい子育て時期には、結果や成果で仕事の出来栄えを測ってしまうと反省点ばかりが目に付くかも知れません。残業ができない、時短勤務で働いている、急な休みが発生する……。そういった働き方への制約がどうしても生まれやすいので、制約なしに働いている人と結果だけを比べると満足いかない人も多いことでしょう。でも、制約があるからこそ鍛えられた能力って結構あるのではないでしょうか。この1年であなたが努力や工夫をしてきたことを振り返ると、新たに獲得した能力が見えてくると思います。例えば、処理能力の向上。同じ時間でも、処理できる業務の量がアップしていませんか。以前はタスクに着手するまでにだらだらと時間がかかっていたけれど、復帰してからは気持ちの切り替えが早くなってテンポ良く仕事をこなせるようになり、集中力を高めてより効率的に処理できるようになったという実体験はよく耳にします。これは、時間的に制約のある働き方をしているからこそ得られた能力でしょう。そして、これまで頼り下手を自覚していた人でも、時間内に業務を回していくために上手に周囲を巻き込む努力をして、個人戦ではなくチームで戦う力が身についたかもしれません。こういった経験はマネジメント能力やリーダーシップ力を鍛えるのにぴったりで、将来的なキャリアの道を開くことにもつながります。また、子どもという難解な人物と日々過ごす経験をしたことで、職場でのコミュニケーションがやりやすくなったと感じる人も多いようです。例えば上司に仕事を振られた際、以前なら「指示が曖昧でどうすれば良いか分からないよ」といら立っていたようなシーンでも、「もう少し具体的に指示してもらえますか。○が分かればすぐに処理できると思うのですが」と返せるようになったり、伝え方に苦心している相手の立場で考えられるようになったりと感じることがあるのではないでしょうか。このように、子育て中に制約がありつつ働くことは決して悪いことばかりではなく、そういう状況だからこそ得られるものがあるのだと思います。この1年で獲得した力を確認できれば、新年からの仕事にもより前向きな気持ちが高まります。自分と向き合う振り返りの時間をもって、皆様よい年末年始をお迎えください。※画像は本文と関係ありません。○著者プロフィール株式会社ここるく 代表取締役 山下真実「わが子を大切するために、ママが自分自身を大切にできる子育てスタイル」を提案し、人気のレストランが託児付きで楽しめるサービス「ここるく」を運営するママ起業家。投資銀行や金融系コンサルなど金融業界でキャリアを積みつつ、2011年に第一子を出産。初めての子育て中に「今まで気にもとめていなかった当たり前の事が、産後は一 気にできなくなるんだ! 」と感じたことがきっかけとなり、現代に合った子育て支援を実現するため2013年に株式会社ここるくを設立。同サービス運営を通じて得られる働くママ達のリアルな視点とコンサル経験を活かして、企業に対する女性活躍推進コンサルティングを行う。全プラン託児付き! 新しい子連れランチ・おでかけスタイル「ここるく」
2015年12月30日●持たれがちな「テレワーク」の勘違いこれまで「テレワーク」というと、「在宅勤務」というイメージが持たれてきた。また、そうした働き方の対象となるのは、子育て中の女性に限定されているケースが多く、多くのビジネスパーソンは一定の時間を会社で仕事することが求められてきた。現在、ICTの進展に伴い、テレワークによって実施可能な業務範囲は拡大している。また、安倍政権が掲げる一億総活躍社会の実現に向けて、「仕事=決まった時間に決まった場所(会社)で働く」という考え方を変えていくことが求められている。12月17日に経団連で開催された「一億総活躍社会に向けた働き方改革」セミナーでは、ワイズスタッフ兼テレワークマネジメントの代表取締役 田澤由利氏によるテレワークの最新動向に関する講演が行われた。田澤氏は現在、内閣府の政策コメンテーターや総務省のふるさとテレワーク推進会議委員なども務め、テレワークの普及活動を行っている。24年間、テレワークに関わってきたという田澤氏は、よく「テレワークについて勘違いを持たれていることがある」という。○勘違いその1:「テレワーク」は電話の仕事「テレワーク」という言葉に対して、「いまだに『コールセンターの仕事をしているの?』と聞かれることがよくあります」と田澤氏は言う。とは言え、テレワークの「テレ」は、テレフォンの「テレ」と一緒で、「離れた」という意味である。テレワークとは、「ICTを活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」を意味している。これまでは、決まった時間に決まった場所で働けないと、仕事をやめなければいけないということが多くあった。しかし、「テレワークができると、働きたくても働けなかった人が、働けるようになる」と田澤氏は説明する。○勘違いその2:「テレワーク」はもう古い「テレワークという言葉は1980年代からある言葉で、その頃を知っている人は古い印象を持たれていることがあります」(田澤氏)現在は当時と比べて、企業も社会もICTも、大きく変化している。「女性の活躍推進」や「地方創世に資するIT利活用の促進」など、政府の政策方針ではテレワークが推奨されている。また、政府はテレワークの具体的な数値目標も示しており、2020年までにテレワーク導入企業を2012年度比で3倍、週1日以上終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワーカー数を全労働者数の10%以上と、設定している。現在、テレワークの導入企業・利用者割合は増加傾向にあるものの、まだまだ少ない状況である。総務省の「平成26年通信利用動向調査」によると、在宅勤務導入企業は、資本金50億円以上の企業では12.2%、資本金1000万円未満の企業では1.9%。テレワーク(在宅勤務以外も含む)を利用する従業員の割合は「5%未満」が48.6%となっている。○勘違いその3:「テレワーク」なんて必要ない「『うちは必要ない』『私は必要ない』『世の中的には大事だけど…』という声が多くあります」(田澤氏)しかし、少子高齢化社会の日本において、生産年齢人口が少なく、支える高齢者が多い状況は、今後30年は続く見込みとなっている。この問題を打開するためにも、なるべく多くの人が働ける環境をつくり出す必要性に、日本は迫られている。一方、日経ウーマン2015年6月号の「女性が活躍する会社」ランキングでは、上位10社中6社が在宅勤務制度を導入している結果となった。田澤氏は、「このランキング10社の中でみると、60%の企業が在宅勤務制度を導入していることになります。なぜか? それは、まだ導入している企業が少ないので、在宅勤務制度を導入しているかどうか聞かれた時に○がつくと、こうしたランキングで上位にランクインしやすいから。さみしい理由ではありますが、それでよいと思っています」と言う。「数年前、『うちは在宅勤務はやりません』と言っていた大手企業がありましたが、その後導入したいと相談してきたことがありました。理由を聞いたところ、『導入するつもりはないと思っていたんだけど、最近いろいろなアンケートや取材で在宅勤務制度の導入状況をよく聞かれるようになった。うちは導入していませんと答えてきたけれど、このままではちょっとまずいかなと思うようになってきた』というような話もありました。これから、人材を獲得するためには、柔軟な働き方が絶対に必要となってきます」(田澤氏)また、人材獲得だけが重要なわけではない。人材をつなぎとめる必要もある。「会社を支えてきた40代・50代の社員が、親の介護のため突然離職してしまうと、企業にとって大きな痛手となります。新しい人を雇おうと思っても、新しい人はなかなか入ってこない世の中です。毎日朝から晩まで、会社に来ることができる人しか雇わないような企業は、重要な人がやめ、新たな人材を採用できず、人材を失うことになります」(田澤氏)このような問題に対して、現在政府は「ふるさとテレワーク」というものを提唱している。これは、例えば介護などで地方へ帰る人が、地方(ふるさと)で暮らしながら、ICTを活用して、都会と同じ「いつもの仕事」ができるようにすることを推奨したものだ。●テレワークで見直す必要のあるものは?○勘違いその4:「テレワーク」は難しい「実際、テレワークを導入済みの企業でも、さまざまな課題があります」と田澤氏は話す。企業からは「在宅でできる仕事が足りない」といった声や、管理職からは「部下がデスクにいないことによって、電話受付など、自分の仕事が増える」といった声、同僚の社員からは「子育て中の人だけ実施できて不公平」といった声があがっているという。また、在宅勤務をしている社員からも、「在宅勤務をしたら『出世をあきらめたのか』と言われた」「肩身が狭い。さぼっていると思われるかもしれないので、ついつい仕事をしすぎてしまう」といった声が寄せられている。このような問題の背景には「在宅でできる仕事は限られている」という考えを持たれていることを、田澤氏は指摘する。「"テレワークは仕事が限られる"という概念を変え、"テレワークでもできるように仕事のやり方を変える"ことが必要。そうでないと、これからテレワークをしないといけない社員が増えていく中、生産性は上がらなくなります」(田澤氏)これまでは、「一人でやった方がはかどる仕事」や「切り分けて持って帰れる仕事」「重要なデータがない仕事」などが、テレワークでの仕事として選ばれることが多かったが、IT・クラウドを利用することによって、「いつもの仕事がどこでもできるようになる」と田澤氏は言う。「なぜ会社に行くのか? その理由は、会社に仕事道具や仕事仲間があるから。この会社に行く理由をクラウド上に置いておけば、どこからでも使うことができるようになります」(田澤氏)また、仕事の仕方もこれまでと変えていく必要があるという。例えば営業職の場合、情報収集・資料作成・会議・顧客訪問・報告書作成といった業務があるとする。「情報収集」「資料作成」「報告書作成」などは、情報伝達をIT化し、資料作成のための情報をデジタル化することによって、会社にいなくても業務を行うことができるだろう。「会議」についても、WEB会議化することによって、どこからでも参加できるような状態にすることができる。さらに、同じような職種の社員が、在宅勤務でないと働けないような状況になってしまった場合、「会議」や「顧客訪問」以外の業務を在宅で行ってもらい、その分担当できる人が「会議」「顧客訪問」を行うなど、業務を分担をすることによって、これまでは退職しなければいけなかった社員の雇用を継続でき、さらに個人の頭の中にあった情報を、見える化・共有化できるようになる。「テレワークは企業を強くする」と田澤氏は言う。田澤氏は普段、「バーチャルオフィス」を利用して、社員とコミュニケーションを取っているという。同じ空間にいなくても、このバーチャルなオフィスの中で、社員それぞれが何をしているのか、わかるような状況になっている。顔を見て話すことや、チャットで話しかけることができるなど、離れていてもコミュニケーションに困ることはないという。また、テレワークマネジメントでは、「家にいるとさぼってしまうのではないか」といった、経営者の不安を解消するような、在籍管理システム「Fチェア」を提供している。同システムは、在宅勤務者が着席/退席を選んで、現在の状態を知らせることができる。細切れの時間を合計して、その日の在籍時間を集計することも可能だ。「でも、自己申告だと正しく着席/退席を押さない人もいるのでは…」といった懸念に対しては、着席中の人のデスクトップ画面を指定した回数、ランダムにキャプチャし、管理者が一覧で確認できる機能も搭載されている。「こうしたツールを在宅勤務者は嫌がるかと思いきや、逆でした。自分が仕事をしていることを上司に伝えることができるため、安心して在宅勤務ができると言っています」(田澤氏)グループウェアやストレージなど、現在多くの無料や低価格のツール・システムがあり、テレワーク環境をつくりやすくなっている。しかし、「システムやツール、制度だけではなく、いつもの仕事を見直すことが、テレワークには重要です」と田澤氏は言う。少子高齢化社会に突入している日本では、これまでと同じ働き方を続けていくことは、もはや現実的ではなくなってきている。働き方の選択肢を増やすことが、喫緊の課題となっていることを認識しなければいけない。
2015年12月25日○生産性は高く、残業はほとんどない諸外国に比べて日本人の労働時間は長い、とよく言われる。サービス残業が常態化しているブラック企業の労働時間が長いのは当然として、普通の企業であっても残業がまったくないということは珍しい。有給休暇をほとんど消化できないという悩みもよく耳にする。残念ながら、多くの労働者にとって日本の労働環境はよいとは言えない。労働基準法という法律はあるものの、厳密に運用されているとは到底思えない。一方で外国に目を向けてみると、日本よりもずっと労働時間が短く、有給休暇もほぼ100%消化できるという国がいくつかある。たとえば、ドイツではほとんどの会社員が毎年約30日の有給休暇をほぼ100%消化し、1日10時間以上は働かない。ではその分ドイツの人たちの仕事のアウトプット量が少ないのかというと、決してそういうわけではない。むしろ、彼らは日本人よりも高い生産性で仕事をこなしている。経済だって好調だ。本書『ドイツ人はなぜ、1年に150日休んでも仕事が回るのか』(熊谷徹/青春出版社/2015年8月/880円+税)では、このような「ドイツ流の働き方」や「ドイツの経済成長を支える政策や法律」が紹介されている。日本企業で働くことに慣れてしまっている人にとって、ドイツ人の休暇に対する考え方や会社についての考え方はきっと奇異に映るだろう。中には「そんな非常識な!」と怒り出す人すらいるかもしれない。しかし、冷静に考えてみるとドイツ人の働き方や休暇についての考え方には、僕たち日本人も見習ってもよいものが数多くある。この本をきっかけに、日本人の働き方が今のままでいいのか考えてみるのは有益に違いない。○ドイツの年間休日は150日、残業もほとんどない本書のタイトルにもあるが、多くのドイツ人は1年に約150日程度休みをとっている。1年は365日であるから、1年の約41%は休みだという計算になる。これは驚異的な数字だ。日本の場合、会社で長期休暇を取ろうとすると長くて1週間程度しか取れないが、ドイツでは多くの人々が少なくとも2週間の休暇を取る。しかも、休暇中は会社のメールを見たり電話に出たりする必要は一切ない。では休暇が多い分を平日の残業で補っているのかというと、決してそんなことはない。午後6時には、たいていの企業のオフィスはガランとしているという。ドイツ人の働く時間が短いことは統計にもはっきり現れている。2012年の就業者一人あたりの労働時間は、日本が1,745時間だったのに対し、ドイツは1,393時間である。その差は歴然だ。しかも、日本の場合サービス残業のような統計に現れない数字があることまで考えると、差はさらに開くことになる。○ドイツ人にとって休暇は神聖なものドイツの労働時間が日本よりも短い理由にはいくつかあるが、まず挙げられるのが休暇に対する考え方の違いだ。多くの日本の会社では、休暇を取ることは基本的には後ろめたいものとされている。(本当にバカげていると思うのだけど)有給を申請するときには「申し訳ありませんが」と枕詞をつけるし、休みをとって旅行に行ったのであれば職場にお土産を買っていくのは常識とされている。会社によっては、休暇中にメールに返信したり、電話に出たりしなければならないこともある。仕事が忙しくなれば、休暇がなくなることだってある。日本では、仕事と休暇のどっちが大事かと問われれば、(本心でどう思っているかはともかく)仕事と答えなければいけないような空気がある。一方で、ドイツ人にとって休暇は神聖なものだ。仕事と休暇のどっちが大事かと問われれば、多くのドイツ人は「休暇」と即答するに違いない。本書の中に、あるドイツ人裁判官が「我々ドイツ人にとって、休暇とは、人生の中で最も重要なものです」と語ったというエピソードが出てくるが、このような考え方がドイツでは社会の本流であり、企業も法律もこのような価値観の下で動いている。だから当然有給休暇は100%消化するし、休みの日に会社のメールや電話に出ることもない。この神聖な休暇を守るために、労働者は自分が休んでも仕事が回るように日頃から情報共有を心がけるし、効率的な仕事のやり方を模索する。多くの日本人が残業をする代わりに私用でネットサーフィンをしたり、無意味な会議に時間を浪費するのと対照的だ。果たして、どちらが賢いやり方だろうか。○日本人が取り入れるべきドイツ流の働き方もちろん、ドイツ流の働き方がすべてにおいて日本に優っているというわけではない。たとえば、サービス業の提供するサービスの質はドイツより日本のほうが圧倒的に高いという。すべての面で従業員の休暇や業務効率を優先すべきかは、議論の余地があるだろう。本書の第6章では、筆者がドイツ流の働き方のうちどれを取り入れるべきであり、どれを取り入れるべきでないかのひとつの案が提示されている。僕自身も、すべてを取り入れればよいとは思わない。本書を読んで、ドイツに見習うべき点はどこにあるのか、考えていただければ幸いである。
2015年12月18日ライフネット生命保険はこのほど、「パート主婦の働き方に関する意識調査」の結果を発表した。調査は9月19日~28日の10日間、ネットエイジアリサーチのモバイルモニター会員を母集団とする、夫と中学生以下の子どもがおり、パート・アルバイトをしている20~59歳の主婦を対象に、モバイルリサーチにて実施。有効回答数は1,000サンプルだった。○現在、パート主婦の8割弱が「年収を制限しながら働いている」まず、夫と中学生以下の子どもがいて、パート・アルバイトをしている20~59歳の主婦(以下、パート主婦と呼ぶ)1,000名に、年収が103万円の壁や130万円の壁などを超えないように、働くことを制限しているか聞いたところ、「年収が103万円以下になるように制限している」が56.5%、「年収が130万円未満になるように制限している」が19.8%、「年収が141万円未満になるように制限している」が1.1%となった。「制限はしていない」は22.6%で、裏を返すと、7割半(77.4%)のパート主婦が、自身の収入を制限していることがわかった。○9割が「手取り年収を増やしたい」、希望増収額は平均68万円本当は今より手取り年収がいくら増えるように働きたいと考えているか聞いたところ、「10万円~50万円未満」が35.4%、「50万円~100万円未満」が18.1%、「100万円~150万円未満」が19.0%となり、平均額は67.9万円だった。「0円(増やしたいと思わない)」との回答は1割(10.0%)にとどまり、大多数のパート主婦は、本当は手取り年収を増やしたいと考えていることがわかった。○パート主婦の半数以上が、2016年10月以降「手取りが増えるように働く」2016年10月に、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大があり、パート・アルバイトを含む短時間労働者の社会保険の適用基準が拡大される。社会保険を適用されるにはいくつかの要件があるが、そのうち、年収に関する要件である"130万円の壁"(年収130万円以上が適用対象)が、"106万円の壁"(年収106万円以上が適用対象)へと引き下げられる。社会保険の適用対象を広げ、年収130万円を超えて働く人の"働き損"解消が目的とされているもの。以上の説明をしたうえで、2016年10月にパート・アルバイトの社会保険の適用基準が拡大されたら、働き方をどう変えるか聞いたところ、「手取り年収が増えるように働きたい」が52.7%で半数以上となった。また、この改正の影響を直接的に受ける、現在の年収が106万円以上130万円未満のパート主婦層では、「手取り年収が増えるように働きたい」が64.0%で3人に2人と、より割合が高い結果となった。2016年10月の改正によって新たに社会保険料を支払うことになるパート主婦層は、これを契機に、年収の壁を気にしない働き方に変えるのかもしれない。○もしも収入が増えたら娯楽や自分磨きは二の次、1位は「貯蓄」にもしも収入が増えたら何に使いたいか聞いたところ、1位は「貯蓄」(67.6%)となった。2位は同じく6割台で「子どもの養育費・教育費」(62.5%)となり、収入が増えるなら子育て費用に回したいと考える人も多い。それらに次いで、3位から5位に、「旅行」(34.5%)、「レジャー」(28.5%)、「美容・ファッション」(23.8%)といった娯楽や自分磨きに使うとの回答が並んだ。6位から10位は、「住居費(家賃・ローン返済)」(21.7%)、「外食」(19.8%)、「家電の買い替え」(16.8%)、「自動車購入(新車購入、買い替えなど)」(14.9%)、「雑貨・日用品」(13.9%)となり、住まいや生活に関連する消費が多くなった。○パートでの労働時間を増やして働くとしたら、「家事との両立が問題」収入を増やすためにパートでの労働時間を増やして働くとしたら、問題点は何か聞いたところ、もっとも割合が高かったのは「家事との両立ができるか」(67.2%)で、3人に2人の割合となり、2番目は「自分の体力がもつか」(58.2%)だった。働く時間を増やすとなると、家事と仕事の両立や、自分の体力に不安を抱くパート主婦が多い様子がうかがえる。また、学生が違法労働を強いられているなどとしてブラックバイトが問題になっているが、「新たな職場を探す際、ブラックバイトに当たらないか」を10人に1人(11.5%)が挙げており、新たな勤務先がブラックバイト、という事態を心配する人もみられた。次に、子どもの学齢別にみると、乳幼児の子を持つパート主婦層では「子どもとの時間を確保できるか」(54.9%)、「子どもの預け先があるか」(46.5%)が、他の層よりも高くなった。まだ幼い子どもがいる主婦にとっては、これまでよりも仕事を増やすのであれば、子どもと触れ合う時間を確保できるかどうかや、仕事の間に子どもを預ける先があるかどうかが、課題となってくるようだ。○病気やケガで働けなくなったら、不安は「日々の生活費」そこで、もしも自身が病気やケガで長期間働けなくなったら、不安なことは何か聞いた。最多となったのは「日々の生活費」(71.1%)で、自身のパート収入がなくなってしまうことで生活が苦しくなるのでは、と考える人が7割を超える結果となった。次いで多かったのは「自分の治療費」(57.3%)となり、病気やケガで働けなくなった場合は、生活費に加えて治療費がかかることもあり、それをきちんと支払っていけるのかを不安に感じる人が少なくない様子がうかがえる。パート主婦の年収別にみると、年収が高いパート主婦層ほど「日々の生活費」の割合が高くなり、106万円未満の層では67.2%、106万円以上130万円未満の層では78.0%、130万円以上の層では83.7%となった。同社では、「年収が高い層ほど、家計への貢献度が高く、自身が病気やケガで長期間働けなくなることによって家計が受けるダメージが大きいのではないか」と分析している。
2015年12月10日地道にマジメに、やりがいを求めて仕事をしたい――このように考えている20代半ばの若者にとって、現代日本の労働環境は必ずしも適しているとは言いがたい。法令無視のブラック企業、常態化する長時間労働・サービス残業、低賃金、パワハラなどなど、現代の日本では労働を巡る問題が百出しており、本人がいくら地道にマジメに働こうと思っていても、環境がそれを許容してくれないことが多々ある。むしろマジメになればなるほど苦しくなっていくような気がして、未来が見えずに絶望的な気持ちになってしまう人もいるかもしれない。本書『ワーキングピュア白書 地道にマジメに働く25歳世代』(プロジェクト25実行委員会/日経BPコンサルティング/2015年10月/1500円+税)は、そんな「地道にマジメにやりがいを求めて働く若者世代」(本書では、彼らを「ワーキングピュア」と呼ぶ)のための本である。ワーキングピュアと本書で定義された若者たちは、その名が示す通り純粋な若者たちで、それゆえに傷つくこともある。そんな時にどのようにして立ち直り前に進めばよいのか、本書には多くの事例やアドバイスが載っている。「自分ではマジメに働きたいと思っているのに、どうもうまくいかない」という人は、ぜひ本書を手にとってみてほしい。自分のいま抱えている問題をストレートに解決できる答えはなかなか見つからないかもしれないが、解決のヒントはつかめるかもしれない。○先輩世代の体験に学ぶ本書は大きく3つのパートで構成されている。パート1では、様々な業種で実際に働く25歳世代の若者たちの仕事にまつわる生の声が紹介されている。彼らが働いている業界は人材開発会社、大手商社、介護福祉施設、美容室と非常に多岐に渡っているが、いずれの人たちも何らかの点で問題を抱えている。パート2では、若者世代よりもさらに上の世代(30代~50代)の体験談が紹介されている。過去にどのような壁にぶつかり、どうやってそれを乗り越えたかといった形式で、仕事との向き合い方や若者世代へのアドバイスが語られる。パート3は映画監督の周防正行氏、元プロ野球選手・監督の古田敦也氏、小説家の朝比奈あすか氏の鼎談である。多様な分野の第一線で活躍するプロ3人が自らの若者時代を振り返り、さらに現代の若者世代へのアドバイスやメッセージが語られる。パート2以降のアドバイスは、いま自分が抱えている問題に必ずしても合致するとは限らない。今の30代~50代と25歳世代では時代の違いもあるし、業種による違いもあり、アドバイスがすべてそのまま使えるというわけではないからだ。それでも「仕事との向き合い方」という面ではいずれも参考になる部分があるに違いない。○ベンチャー企業で体を壊し、会社の悪い面に気づく本書のパート1のエピソードで僕がもっとも興味深く感じたのは、休日出勤が常態化しているベンチャー企業で体を壊し、最終的には転職をした25歳の高山さん(仮名)の話だ。高山さんは大学在学中にアルバイトをしていたベンチャー企業にそのまま就職し社会人としてのキャリアをスタートさせるが、日々営業目標達成のプレッシャーに晒され、月100時間を越える残業を薄給で強いられた末、体を壊して異動することになる。異動した先でも人間関係で悩み、最終的には転職をすることになった。普通の感覚なら会社が月100時間を越える残業を強いてきた時点で「おかしい」と気づきそうなものだが、高山さんがそれを「おかしい」と気づくことができるようになったのは、体を壊して土日休める部署に異動して気持ちの余裕が出てきてからだという。休日返上でノルマに追われていたころは、特におかしいということに気が付かなかったそうだ。休日出勤も上司に命令されてやっていたわけではなく自主的に行っており、いま振り返ると「明るい宗教団体」のような会社だったと高山さんは回想する。この高山さんのエピソードから、僕は「あえて立ち止まり、一歩引いて自分の今の状況を客観視する」ことの重要性を強く感じずにはいられなかった。一生懸命に何かに打ち込むことは決して悪いことえではないが、あまりにもひとつのことに囚われすぎると視野はどんどん狭くなる。本書の想定読者である「ワーキングピュア」な人たちは地道でマジメなので、特にそのような傾向が強くなってしまうのではないだろうか。高山さんが自身の体験を通して気づいた「体を壊してまで働くことはない」という事実は、すべての若者世代が忘れずに覚えておかなければならないものなのだと僕は思う。○社会や制度のありかたを考えるきっかけにも本書は基本的にマジメに働く若者たちにエールを送るという趣旨の本なので、現代日本の抱える労働環境の問題をどう解決していくべきか、といった提言は含まれていない。それでも本書を読めば(特にパート1を読めば)、社会や制度がこのままでよいと思う人ほとんどいないはずだ。地道にマジメに働く若者が理不尽なことで苦しまないためには、どのような社会や制度が必要なのか、本書をきっかけに考えてみるというのもよいだろう。いろいろな読み方だできる一冊だと思う。日野瑛太郎ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)がある。
2015年11月27日意外と知らない社会的なテーマについて、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは、「新しい働き方」です。* **まもなく勤労感謝の日。働き方もだいぶ多様化してきましたね。ビジネス界で「BYOD」が注目されていることをご存じですか?BYODとは、「BRING YOUR OWN DEVICE」の略。私物のパソコンや携帯端末で仕事をすることを可能にするという意味です。基本的に日本の会社、とくに情報を扱ったり、高度な研究をしているところは、私物のパソコンを持ち込むことを禁じています。僕がNHKに勤めていたころも、PCはデスクにがっちりとしばりつけられて、持ち出されないようになっていました。情報の漏洩やウイルスの侵入を防ぐためにも私物のデバイスを使うことは御法度でした。ところが、仕事と私生活の程よい調和(ワーク・ライフ・バランス)の重要性がうたわれ、過労死を防ぐためにも、時短勤務、自宅勤務を増やそうという流れに変わってきました。そこで、IT関連企業が前面に押し出したのがBYODです。仕事のデータは、コンピューターの端末には入れずにクラウド上で管理する。それによって、どこにいようと私物のPCを使ってデータセンターにアクセスすれば仕事ができるというシステム。グーグルの調査結果では、国内の会社員7080人のうち、BYODを実施しているのは48. 5%。会社に行かずにお気に入りのカフェで仕事ができたり、家で子育てをしながら仕事もできるようになります。生活に合わせて働く時間をコントロールできますし、通勤ラッシュにあわずにすむというだけでも、だいぶストレスが減りますよね。新しい働き方の話題でもうひとつ。「2枚目の名刺を持とう」という提唱があるんです。1枚目は会社の名刺。2枚目はこれからやっていきたい仕事やボランティアなど、現段階では収入にはつながらないけれど自発的にやりたいことを名刺にする。たとえば僕は「8bitNews」が本業ですが、「みんなの戦争証言アーカイブス」というプロジェクトの名刺も持っています。2枚目の名刺で積みあげた人脈と経験によって、将来1枚目の名刺に変わる可能性も。あなたなら、どんな2枚目の名刺を作りますか?◇ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2015年11月25日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2015年11月22日高度成長期と比べて、日本は大きく変化してきた。少子高齢化時代となり、年金や医療費が高騰するなど、財政状態が危機的な状況となっている。また、企業の年功序列制度は崩壊しつつあり、経営自体も持続的な成長が難しい状況だ。このような状況下で、夫婦共働きは当たり前の時代となっており、これまでの日本の働き方では、さまざまなひずみが生まれてきている。こうしたさまざまな問題を抱える日本で、これからどのような働き方をしていけばよいのだろうか? 11月6日に開催された「cybozu.comカンファレンス2015」で、サイボウズ 社長室 フェローの野水克也氏は、これからのワークスタイルについて講演を行った。○なぜワークスタイルの見直しが必要なのか?まず、野水氏は"いい会社"の定義を3つ挙げた。1つめは、持続的に成長している会社。2つめは、働き続けたいと社員が思える会社。3つめは、地域や業界の模範となる会社。この"いい会社"になるためには、3つの要素が必要だという。要素の1つめは、オンリーワンであること。2つめは、働く社員が幸せな環境が整っていること。3つめは、社員が自発的に働いていること。これらの3つの要素を支えるものが、チームワークとなってくるという。野水氏は、現在の日本が抱える課題について次のように指摘した。「もはや日本は、儲けるモデルが変わってきている。昔は同じ価値観の人たちに同じ行動をさせ、長時間労働をさせればよかったが、これは低所得時代の働き方。若い人材が不足し、低所得でもない今の日本では、付加価値で勝負しなければいけない。しかし、『皆で同じ視点で、同じことをやろう』という姿勢のまま『個性を出せ』と言っており、矛盾が生じている。皆で同じことを一斉にやるチームワークは日本のよいところではあったが、もはや限界だ」(野水氏)○クラウドが実現するチームワーク野水氏は、これからのチームワークのつくり方について、クラウドの活用を推奨する。「クラウドを使えば、情報を共有することができ、労働を分配することもできる。また、いつでもどこでも取引することができる。これによって、日本が抱える課題を解決することができる」(野水氏)「ITが発達する前の時代では、働き方が固定化されるさまざまな障害があった」と野水氏は述べる。例として、朝の出勤が挙げられた。「いつでもどこでも仕事ができれば、朝9時に皆が会社へ出勤する必要はないはず。全員が朝9時に出社することによって、電車の本数などにも無駄が生じている」また、人材活用の面での課題にも触れられた。フルタイマーは知識労働者、パートタイム労働は単純労働、といった概念がつくられていることに対し、「1日3時間だけ働く有能な人を見たことがない。しかしそれは、3時間の労働時間に、有能な仕事が与えられていないことが課題。スキルの高さと働ける稼働時間には関係ない」と野水氏は語る。そして、年功序列制度の"最大の弊害"として、野水氏は「一度落ちたら上がれないこと」と指摘した。「一度会社をやめたりすると元のランクに戻れなくなるから、無理をして働き続ける。これが自殺につながっている。これからは夫婦交代交代で働いていけばよいのではないか? そうすることによって、成長しながら収入を確保していく道が開けていく」(野水氏)では、どうすればそのような働き方ができるのか? サイボウズでは、自分の働き方について選択できるようになっているという。クラウドで業務の見える化を行い、年間計画で誰がどのくらい働くのかを決めていく。また、クラウドでコミュニケーションが取れることから、場所や時間を選ばない働き方ができるようになっている。さらに、育児休暇・介護休暇が6年ずつ取得できる。"育自分休暇"という自分に対して取得できる制度も用意されている。「当社の社長は『ワークスタイルはスキルではなく、覚悟。決意すれば誰でもできる』と話している。やるかやらないか。ただし、チームワークでカバーする仕組みが重要。ワークスタイルの改革とは、会社のチームワークをリデザインすることだ」(野水氏)
2015年11月17日育児と仕事を両立するための働き方のひとつとして注目されている「在宅勤務制度」。導入する企業も増え始め、自動車大手のトヨタ自動車もこのほど、終日の在宅勤務を育児中以外の社員にも幅広く認める制度創設の検討を開始。政府も「2020年までに、週1日以上終日在宅で就業する人の数を全労働者の10%以上にする」という目標を設定し、普及に力を入れている。しかしその数は約220万人と、全労働者の3.9%にとどまっているのが現状だ(国土交通省「平成26年度テレワーク人口実態調査」)。「在宅勤務制度」の導入には何が必要なのか。そして、課題と効果はどのような点にあるのか。2007年から導入を開始している日本HPの人事・総務本部長、羽鳥信一氏に話を聞いた。○業務効率化のために導入日本HPが8年前に導入した在宅勤務制度は「フレックスワークプレース制度」と呼ばれるもの。システム保守などの業務を除くほぼ全ての職種の社員に、週に2回、月に8回に限り、在宅で仕事をすることが許されている。なぜ他社に先駆けてこのような制度を導入するに至ったのか、羽鳥氏はその目的を「業務の効率化」と主張した。例えば営業職の場合、取引先の企業が会社よりも家から近ければ、家で仕事をしてから営業に行ったほうが、時間を節約できる。羽鳥氏は、「制度の導入で、顧客と会う時間が増えたというデータも出ている」と指摘。結果として生産性を上げることにもつながっているようだ。そうはいっても、新しい制度の導入に反対の声はなかったのだろうか。これについては、「フリーアドレス制の素地があったので比較的、理解を得やすかった」と話す。同社では2001年に社員が自席を持たない「フリーアドレス制」を導入。1人1台ノートPCを持ち歩き、社内のどこにいても仕事ができる環境が既に整っていた。その延長線上に在宅勤務があったのだ。「海外の同僚や上司とのやりとりはほぼリモート。会議システムや決済の認証ツール、共通資料のファイリングなどもオンライン上で全て可能だった」と語った羽鳥氏。グローバル企業でありかつ、IT企業であったという同社の特色がいち早い制度の導入につながったのかもしれない。○震災が大きな転機に一方で、制度が定着するまでには課題もあった。登録はするものの、実際に制度を利用する人の数がなかなか増えなかったのだ。社内には、「本当に活用できるのだろうか」という不安の声があったという。そんな社員の意識を変えるきっかけとなったのが、くしくも東日本大震災だった。震災の影響で出社できない、オフィスの節電が必要などの理由で、必然的に在宅勤務を行う社員が増加。結果として、働き方の変化に「慣れた」ことで、震災以降、登録をした社員の9割以上が制度を利用するようになった。同社で定着が進んだ在宅勤務制度。ほかの企業でも導入は可能なのか。また、育児中の社員にとってはどのようなメリットがあるのか。後編でお伝えする。
2015年11月16日●変わりゆく世界と日本2015年を振り返ると、世界を大きく揺るがすニュースが数多く報道された。めまぐるしく変化していく世界。その中で、これから日本はどのように生き抜いていくべきなのか、変わるために今必要な覚悟とは何か。ジャーナリストの池上彰氏が「cybozu.comカンファレンス2015」で語った。○なぜ、ヨーロッパへ難民が押し寄せているのか?現在ヨーロッパへ押し寄せる大勢の難民たち。なぜこのような事態になっているのか。「ニュースではこの夏以降、"大勢の難民たちがヨーロッパへ押しかけるようになった"という報道があるだけ。なぜかということについては報道されていない」と池上氏は語る。そして、池上氏は自身が続けてきた難民取材によって「はっきりとわかったこと」があるという。「この夏以降のヨーロッパへの難民たちによる奔流は、スマホが普及したからだ。2年前にシリア難民を取材した時には、一部の人が携帯電話を持って、国外に逃げた家族と連絡を取り合っているような状況だったが、今では皆がスマホを持っている。これによって何が起きているのかというと、一昨年や昨年に逃げている人々が、『ドイツに行って難民申請をすると、アパートの世話をしてくれるし、生活費も出される。6カ月たつと働く場所も用意してくれて、ドイツはいいぞ』とスマホで連絡してくるようになり、残っていた人々は、『それならヨーロッパへいこう』と目指すようになった」(池上氏)現在、難民支援を行っているボランティアの人々は、スマートフォンの充電ステーションを設置し、難民たちに提供している。そのため、スマートフォンが充電切れする心配はないという。また、スマートフォンにはGPS機能がついているため、難民たちは道に迷うこともなく、目的地へ向かっていける。「スマホを持つことによって、難民たちはヨーロッパへ押し寄せるようになった。これは、大勢のイスラム教徒が、キリスト教であるヨーロッパへと押し寄せているということ。かつて、ゲルマン民族の大移動によって、西ローマ帝国は滅び、今のヨーロッパがつくられた歴史がある。ヨーロッパは今、民族だけでなく、言葉や宗教も異なるアラブ民族をどのように受け入れればよいのか、ヨーロッパの覚悟を問われている」(池上氏)現在、ヨーロッパでは難民受け入れができなくなっており、先進国が手分けをして受け入れていこうということになると、日本も関係のない話ではなくなってくる。その時、日本社会はどのような対応をとるのだろうか。●メディアが歴史に及ぼしてきた影響「メディアや技術開発が進むことによって、思わぬかたちで世の中は動いていく」(池上氏)これまでの歴史を振り返ると、メディアの変化によって、「思いもよらないことが起きてきた」という。池上氏は、活版印刷の登場から、歴史を振り返った。○活版印刷によって宗教改革「活版印刷ができるまでは、聖書はラテン語で書かれていたため、市民は聖書を読むことができず、神父さんの教えを聞くしかなかった。当時カトリックでは、贖宥状(免罪符)が発行されており、"協会に寄付をすることによって、罪が免除される"という教えを広めていた。これに対してマルティン・ルターが激しく批判をする文書を発行する。それまでは、この文書を市民に広げることができなかったが、活版印刷によって、ヨーロッパ中に広がっていくことになった。また、聖書もドイツ語やフランス語など各国語に翻訳され、多くの信者たちが読めるようになり、市民は何が書かれているのかを知ることができるようになった。これにより、『これまで神父さんが伝えていたことは間違っているのではないか』という疑問が生まれ、宗教改革が広がっていた。このように、活版印刷という新しいメディアによって、プロテスタントが生まれたのである」(池上氏)その後、ラジオやテレビの登場によっても、歴史に大きな影響を与えている。「第二次世界大戦中、ルーズベルト大統領はラジオを通して、アメリカの国民に団結を呼びかけた。これによって、多くのアメリカ人が励まされ、団結して戦うエネルギーとなった。その後、テレビの登場によって、これまでラジオで行われていた大統領選挙の公開討論がテレビで開かれるようになった。当時、ジョン・F・ケネディの陣営は、テレビをよく理解していたことから、白黒映像でパワフルに見える服装や汗をかかないようにドーランを塗るなどして、大統領の座を勝ち取った。この時、ラジオだけで討論を聞いていた人々は、ケネディではなく、ニクソンが勝ったと判断し、テレビを見ていた人々はケネディが勝ったと判断している。ケネディ陣は、テレビをうまく政治に利用したのである」(池上氏)また、政治だけでなく、戦争の局面でも、テレビは影響を与えてきた。「自由な報道が許されていたベトナム戦争では、悲惨な戦争の様子が報道されていた。死体が散乱する様子、アメリカ人がベトナム人を残虐に扱う様子、アメリカ人の兵士が負傷して苦しんでいる様子など、悲惨な状況がテレビで流された。これによって、アメリカ国内でベトナム戦争に対する反対運動が広がっていった。結果、この世論に押されて、アメリカはベトナムから撤退することになった。このように、メディアの持つパワーに政治がついていかなったケースもある」(池上氏)アラブの春のきっかけは、FacebookやTwitterだったという。「2010年12月にチュニジアで、家族を養うために路上で野菜を売っていた青年が、『許可がない』と警官に没収され、殴られる事件があった。その後、青年は市役所に行って『野菜を返してほしい』と訴えたが相手にされず、青年は絶望して焼身自殺をして抗議する。この時、青年は友人に、自殺する瞬間を撮影してもらい、その映像がFacebookに流れたことがアラブの春のきっかけとなった」(池上氏)その後、内戦状態となったシリアで、スマートフォンが使われるようになり、今日のヨーロッパへの難民問題につながっている。「アラブ世界だけの話だと思っていたものが、いまやヨーロッパが難民危機のような状態となってしまった。こんなことは誰も予想していなかった。グーテンベルクも活版印刷によって、宗教改革が起こるとは思っていなかったし、テレビによって大統領選挙が変わり、ベトナム戦争が終わるとは考えていなかった。スマートフォンもそう。それが今、世界を大きくゆるがしている。開発者の意図とは関係のないかたちで、世界が大きく変わろうとしている」(池上氏)●これから必要な覚悟それでは、今後どのようなメディア・技術が生まれてくるのだろうか。その問いに対して、池上氏は「わからない」と述べたうえで、自身の見解を示した。○変わりゆく時代を生きていくには「開発者が陥りがちなのが、『今ある技術の中の延長線上に、どのような技術があるのか』ということを考えてしまうことだ。しかし、そういったことを考えていたのではうまくいかない。スティーブ・ジョブズのような、とんでもない発想をする、異質な存在が出てきて、初めて世の中が大きく変わるのではないか。これまでの既存の発想にはとらわれないような考え方、働き方を認めることで、可能性が生まれてくるのではないだろうか」(池上氏)講演の最後には、サイボウズ 代表取締役社長の青野慶久氏も登場。青野氏も、自社製品の使われ方の変化に驚いているという。「これまで、会社の中の情報共有ソフトを作り続けてきたが、クラウドによって、情報共有のされ方が、会社内だけでなくなり、外からアクセスできることから働き方も変わってきた。会社を超えた変化が起きていることに驚いている」(青野氏)加速度を増していく、テクノロジーの変化。どんどん変化していく時代に対して、池上氏は次のように語った。「これからは、どれくらい柔軟に考えられるかが重要。最初から拒否するのではなく、一見ばかばかしい提案も、柔軟に受け入れるやわらかさが大切。このやわらかさはゆとりがあるからこそできること。ゆとりのある働き方によって、柔軟な発想ができる。ダーウィンの進化論もそう。突然変異した中で、環境が変化した時に、適応できるものが残ってきた。環境の変化に合わせて変化してきたわけではない。たまたま適応したものが残ってきた。将来は予測できからこそ、突然変異ができるような組織が、変化に対応していけるのではないか」(池上氏)
2015年11月13日●Skylake搭載や筐体の小型化など大幅リニューアルデルは11月5日、法人向けデスクトップPCとなるVostro、OptiPlexについて、新モデルを発表した。スペックなど概要に関しては別記事に譲り、ここでは発表会の様子をお伝えする。まずはデルの山田氏が、働き方の変化とデスクトップPCの立ち位置をまとめた。「デル入社から20年を振り返ると、当時のオフィス環境と今のオフィス環境や働き方もはまるで別物となっている。以前の(オフィスワーカーの)仕事は9時から5時まで自分の席で自分のパソコンを使うことであり、食堂やコーヒーショップで仕事をするというのは論外だった」(山田氏)という。インテルとの共同で調査した結果も引用し、公共スペースで仕事を行う平均時間が2時間、在宅の方が生産性が高いと感じる割合は59%に達する。こうした流れを受け、オフィスのスペースも減っているそうだ。この変化はITの進化によって生まれた。働き方の多様化に伴い、オフィスワーカーが必要とするクライアントPCにも変化が生まれており、デルはすべての用途に応える多彩なラインナップを提供していると強調する。エンドポイントの重要性が失われることはなく、新モデルの中小企業向けエントリデスクトップPC「Vostro」、および長いライフサイクルや管理性、セキュリティにフォーカスした「OptiPlex」を刷新したと、その背景を説明した。ちなみに、デルの調査によれば、オフィスにおけるデスクトップPCの使用率は非常に高く(77%)、デスクトップ+ノートPC(2-in-1、タブレット)という併用のケースが多いそうだ。●「Vostro」と「OptiPlex」の違い○中小企業向けの「Vostro」次に、コマーシャルブランドリーダーの文氏がVostroシリーズを紹介。Vostroは主に中小企業での使用を考え、シンプルな法人向け機能を搭載したモデルと総括し、ロードマップを紹介。すでに提供を開始しているノートブックに加えて、ミドルタワー型と小型筐体の製品をリニューアルした。旧製品からの刷新ポイントは、第6世代Intel Coreプロセッサ(開発コードネーム:Skylake)を搭載するとともに、本体を小型化したこと。ミドルタワー型で27.5L、小型筐体で15.9Lだった容積を、ミドルタワー型で15.0L、小型筐体で7.8Lと大幅に削減。合わせて重量も最大30%ほど軽量化している。○ライフサイクル・管理性・セキュリティにフォーカスした「OptiPlex」OptiPlex/Chromebookブランドマネージャーの飯塚氏は、新しいOptiPlexを紹介。OptiPlexは従来、エッセンシャルの3000番台、メインストリームの7000番台、プレミアムの9000番台という型番を採用していたが、他のラインナップと歩調を合わせるためにメインストリームを5000番台、プレミアムを7000番台に変更した。これに合わせて新製品のラインナップをチャートで示した。OptiPlexもSkylake世代のCPUを採用し、性能向上と電力消費の削減を図り、筐体サイズも小型化。なお、VostroとOptiPlexの筐体は同一ではなく、Voltroでは通常のネジ、OptiPlexでは大型のネジやワンタッチオープン、電源もEPRAT対応など、細かい差異があるという。また、企業向けの液晶一体型デスクトップPCとなるOptiPlex 7440AIOでは、このタイプとしてはあまりない23.8型ディスプレイを採用し、オプションで4Kにも対応する。「日本市場では他社にないサイズで提案を行っていきたい」という攻めのコメントがあった。●ゲストのインテルは新しいコラボツール「UNITE」をデモ○インテルからはvPROならではとなるUNITEの提案もゲストとしてインテルの小澤氏も登壇。インテルもまた新しい働き方や今後増大する「デジタルネイティブ」への対応として、各種の提案を行っている。その中でも、インテルvPROテクノロジー採用機種に用意されている新しいコラボレーションツール「UNITE」をデモを交えて紹介していた。UNITEは1台のUNITE Hubマシン(vPRO必須)に対して、最大4台のクライアントPCを接続。これら4つのマシンを表示することで、リアルタイムなコラボレーションと共有が行えるツールだ。複数台のディスプレイをひとまとめに表示するため、(部下が)表示したものに(上司が)コメントを入れて修正し、結果を他のPCに送信する、といったことができる。インテルの江田社長もお気に入りだそうだ。
2015年11月06日ビデオ会議システムや音声会議システムなど、世界中で40万以上のユーザーがソリューションを利用しているポリコム。その日本法人であるポリコムジャパンでは、制度改革やオフィスの効率化などをふまえて自社製品を活用したテレワークを実践している。テレワークを支援するソリューションの提供を本業とする同社の取り組みについて取材した。○震災後、テレワークを全社員対象に自社の製品自体がテレワークを可能とするものだけに、ポリコムジャパンでは以前から海外とのやり取りや、営業スタッフ、地方にいるスタッフなどとはテレビ会議をはじめとする自社のユニファイド・コミュニケーション製品を用いてテレワークを行っていた。しかし同社が全社員規模にまでテレワークを拡大したきっかけは、2011年3月11日に発生した東日本大震災だった。震災の直後、社員全員が自宅に待機することとなったが、そうした状況下で各社員は自主的に自分のパソコンに入っているビデオ会議アプリケーションや内線を受けられるIPフォンなどを駆使して業務を継続させていった。一週間、一人も出社することなく事業を継続できたことで、テレワークの意義を改めて認識した同社では、翌4月には全社的にテレワークが行える環境を整えたのである。ポリコムジャパン ビジネスオペレーションズのシニアマネージャー、藤井浩美氏は「震災以前からテレワークを拡大したいという意向はあったのですが、オフィスにいない社員との連絡のとり方や人事面での評価をどうするのかなど課題もあってなかなか全社員を対象にするまでには踏み込めませんでした。それが震災後にいざ実践してみると、業務の滞りもなく、またオフィスにいなくても社員のプレゼンスやステータスが確認できるため、全員が“見えている”状態にできることが実感できたことから、全社展開が決まりました」と言う。社員のスケジュールはOutlookのカレンダーで社内に公開されているため、お互いに確認しながら動きを同期させることも容易に行えたという。○テレワークのための制度改革を実施ポリコムジャパンでは、全社員がテレワークを行うための制度改革として、テレワーク・フレックス制度や育児サポート関連、介護サポート関連といった3つの制度を新たに整えた。このうちテレワーク・フレックス制度は、以前から実施していたフレックス制度にテレワークに必要な要素を盛り込んだもの。全社員を対象にテレワークを許可し、上長の許可を得ることで誰でも利用が可能(総務・特定技術職は状況に応じて)としている。またコアタイム(11時~15時)以外の時間は、開始時間と終了時間について8時間の間で自由に設定可能とした。育児サポート関連の制度としては、最長1年間、育児休業を取得可能とするとともに、産前・産後の休暇や子どもの看護のための休暇も実施。このうち育児休暇と子どもの看護のための休暇は男性でも取得することが可能だ。こうした整備の拡充により、現在、育児休業からの復帰率は100%となっている。そして介護サポート関連の制度では、まず最大93日まで介護休業の期間を設け、配偶者や父母、子ども、配偶者の父母、その他会社が認めた人への介護に対して申請可能とした。これと合わせて別途時短勤務制度も整えている。○オフィススペースも50%削減ポリコムジャパンにおける、こうしたテレワークを軸とした多様な働き方の実践は、同社の「ダイバーシティ推進戦略」に基づいたものだ。「生産性の向上と業務の効率化、事業継続・リスクマネジメント、経費の削減をきっかけに、テレワーク活用を中心戦略とした柔軟な職場環境の構築を目指すのがダイバーシティ推進戦略です」と藤井氏は説明する。また同戦略に基づきテレワークを推進するための3つの柱として、先に挙げた制度改革と合わせて、インフラ・運用ルールの整備、オフィスの最適化を掲げている。このうち運用ルールとしては、Microsoft Lyncによる労働時間中のプレゼンス表示、Outlook利用でのスケジュール開示、セキュリティに関する社員の意識向上など6項目が必須として定められている。そしてオフィス最適化を象徴するのが、2014年6月9日に移転した東京・東新宿の新オフィスである。新オフィスでは、必要時のみオフィスに出勤する「テレワーク特化型」の仕事環境へとシフトするべく、フリーアドレス型のオフィスとして個々の固定デスクを廃止(技術職などの専門職を除く)。また資料など私物保管用のロッカーを設け、社員のニーズに対応しながら、仕切りのある席やオープンスペースなど用途に合わせて利用できる設計とした。「さまざまなライフステージにいる社員の自由な働き方を支援するために、これまで当社で培われてきたノウハウをベースにしながら新たなオフィス環境を構築しました」(藤井氏)社長室についても、社長が不在の際は会議室として利用可能とするなど、徹底的なオフィススペースの最適化を図った結果、前オフィス比で約50%ものスペースを削減することができた。そうして、顧客やパートナーへのサポートを強化するための「東京カスタマーエクスペリエンスセンター(TCEC)」を同オフィス内に新設することができたという。○テレワークが自然と可能になる技術の提供をポリコムジャパンの代表執行役社長、三ッ森隆司氏は、自社でのテレワークの取り組みについて次のような見解を示す。「われわれ自身が離れた場所にあるPCやモバイルからでもコミュニケーションを行うための技術手段を提供しているわけですが、それがあることで自然とテレワークやモバイルワークが実践可能なのだといった効果や意義を実感することができました。それとともに、テレワークを活用する社員自身のプロフェッショナルな業務遂行と高い意識も、テレワークを成功させるポイントであることも再認識しました」「お客さまを見渡すと、出張旅費の削減など、最初は目に見える効果を動機として当社の製品を導入いただき、その後、効果を実感しながらワークスタイル変革へと広げていくケースが多いようです。自社でテレワークを実践することで、ワークスタイルの部分に拡大していく際のサポートも充実できればと思っています」(藤井氏)今後ポリコムジャパンでは、さまざまな場所で働くことができるワークスタイルを普及していくというミッションのもと、自ら製品を活用し実践しつつ、自然とそうした働き方が浸透していくような展開を目指していくという。
2015年11月05日妊娠・出産という女性特有のライフイベント時に「休めること」はもちろん大事ですが、その後、長く続く「子育てしながら働く数年、数十年」がどうなるか、あまり議論になっていないためです。これまで2回のコラムで、仕事と育児の両立を望む20代女性は「長い育休」ではなく、復帰後の「柔軟な働き方」を重視した方がいい、とお伝えしました。妊娠・出産という女性特有のライフイベント時に「休めること」はもちろん大事ですが、その後、長く続く「子育てしながら働く数年、数十年」がどうなるか、あまり議論になっていないためです。○子育てを終えた女性でも、キャリアアップが望める環境を前回のコラムで紹介したアメリカのワーキング・マザー・メディア社の調査は、子育て期に柔軟に働くことだけでなく、そういう経験をした人が、役員まで昇進している企業を評価しています。出産・子育て期にキャリアをスローダウンしても、その後、再び出世街道に戻って来られることが、男女平等の観点からは非常に重要だからです。日本では、今、出産後に仕事を辞めず会社に戻る女性を増やすため、努力している段階です。今後、10年、20年経ったとき、そういう女性達が会社の経営に関わる仕事ができるのか。問われてくるはずです。では、今の日本企業で出産後も平等な扱いを受けたい、と考える女性は、どうしたらいいのでしょうか。女性役員や女性部長はまだ少ない。子どもを持って上級管理職の仕事をしている女性はうんと少ない中では……。○「男性の働きやすさ」は「女性の働きやすさ」私はやっぱり「男性の働き方」に注目したいと思います。男性が休みを取れているかどうか、特に有給休暇をどのくらい取っているか気になります。たとえ普段は忙しくても、旅行や家族の行事、個人的な趣味や看病、介護などのために男性が休みを取っている。そういう職場なら、女性が妊娠・出産で休むことへの違和感は少ないでしょう。仕事以外の個人的な事情は、育児中の女性だけに生じるものではありません。ただ、女性の妊娠・出産は見た目に分かりやすいだけです。私がこれまで取材してきた例を振り返ると、男性のワーク・ライフ・バランスが取りやすい職場は、子育て中の女性も働きやすいことが多いのです。趣味のスポーツをするため早く帰りたい男性管理職が、部下の女性管理職の働き方を大らかに見守っていた例。若い男性が鬱病になった際、会社の制度を駆使して数カ月休職後に復帰をサポートした管理職のもと、出産した女性部下も次々復職していた例。男性が介護や子育てや趣味に関わりやすい職場ほど、子どもを持つ女性も違和感を持たずに仕事を続けていました。これから就職や転職で「女性が働きやすい職場」を探そうとしている方は、ぜひ「男性の働き方はどうですか?」と質問してみて下さい。そこに、ワーク・ライフ・バランスの本質が見えるはずです。○著者プロフィール●治部れんげ豊島逸夫事務所副代表。1974年生まれ。1997年、一橋大学法学部卒業。同年日経BP社入社。記者として、「日経ビジネス」「日経マネー」などの経済誌の企画、取材、執筆、編集に携わる。2006年~2007年、フルブライト・ジャーナリスト・プログラムでアメリカ留学。ミシガン大学Center for the Education of Woman客員研究員として、アメリカ男性の家事育児分担と、それが妻のキャリアに与える影響について研究を行う。またツイッターでも情報発信している。○【連載】25歳のあなたへ。これからの貯”金”講座25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫とウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。
2015年11月02日オフィスという枠に縛られず、いつでも、どこにいても効率的に仕事ができるようなワークスタイルが、インターネットやスマートデバイスなどの普及によって注目を浴びている。このような新たなワークスタイルを実現する働き方は「テレワーク」とも呼ばれており、国や関係団体の支援のもと、先進的な国内企業を中心に盛り上がりを見せ始めている。そこで本稿では、テレワーク推進に関する高度情報通信基盤の整備や利活用促進などを進める総務省の担当者に、テレワークとはどのようなもので現在どのような取り組みが行われているのかなどについて話を聞いた。○在宅、モバイル、サテライト──テレワークの3つの形態まずは「テレワーク」の意味についておさらいしておこう。テレワークとは、「情報通信技術を活用した、場所にとらわれない柔軟な働き方」を指しており、「tele=離れたところで」と「work=働く」を合わせた造語である。テレワークの形態としては大きく3つが挙げられる。まず1つ目が、通常勤務しているオフィスに出勤せずに自宅で仕事を行う「在宅勤務」であり、2つ目が、顧客先や移動中、出張先のホテル、交通機関の車内、さらにはカフェなどで仕事を行う「モバイル勤務」、そして3つ目は、自社のサテライトオフィスや共同利用型のテレワークセンターで仕事を行う「サテライトオフィス勤務」である。いずれの勤務形態にも共通しているのが、本社オフィス以外の場所でICTを活用しながら働くという点だ。このように、ICTを利用していつものオフィス業務を実現できるテレワークは、その導入によって新たなワークスタイルを実現するメリットが期待できる。社会・企業・そして就業者のそれぞれに大きなメリットが期待できるのだ。例えば社会にとっては、労働力人口の減少緩和や環境負荷の軽減、地域活性化といったメリットが享受でき、企業にとっては、生産性の向上や優秀な人材の確保、コスト削減、事業継続性の確保などが期待できる。そして就業者にとっては、家族で過ごす時間や自己啓発の時間の増加といったワークライフバランスの実現、育児・介護との両立やより自由な居住地の選択など多様で柔軟な働き方の確保、通勤時間の削減による時間の有効活用といったメリットが見込めるのである。総務省 情報流通行政局 情報流通振興課 情報流通高度化推進室の室長、吉田宏平氏は次のように説明する。「実はテレワークの試み自体は90年代から続いていて、意外と歴史があるんです。ネットワークの高速化やモバイルデバイスの普及など当時とはかなり環境が変わってきましたが、ICTを使って場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を実践するという基本コンセプトには変わりありません。最近だとノマドワーカーやクラウドソーシングなどが話題となっていますが、これらもそのコンセプトを見ればテレワーク全体の枠組みの中にあるものと言えるでしょう」○注目度の割に低い導入率、その理由は?このように、企業からも働く人々からも、それに地域社会からも注目を集めるテレワークだが、現状では大きな課題も存在している。それが、まだまだ実践する企業が少ないという点だ。わが国におけるテレワーク人口およびテレワーカー率の推移を見ると、2005年が1000万人/15.2%だったのに対し、2014年には1070万人/16.4%とほとんど横ばいといっていい推移を示している。また総務省が2014年に実施した調査によると、テレワークを導入している企業(従業員数100人以上)の割合は11.5%にとどまっており、テレワーク制度を利用する従業員の割合も5%未満という企業が多い。ただし、企業での導入率には組織の規模によって大きな開きがあるようだ。例えば資本金50億円以上の企業の場合には、その導入率は50.9%にも及んでいる一方、資本金1000万以下の企業となると2.5%でしかない。そしてテレワークの導入を阻害する一番の要因と言えるのが、「テレワークに適した仕事がない」、「導入のメリットがよく分からない」、「情報漏えいが心配」、「業務の進行が難しい」などの意識面の問題だ。中でもテレワークを導入しない理由として、適した仕事がない点を挙げた企業の割合は、7割を超えているのである。このような課題を抱えるテレワークだが、先の調査結果のとおり大企業を中心に先進的な事例も数多く存在している。事実、女性が活躍することで知られる企業ほど、在宅勤務などのテレワークを実践している比率は非常に高い。今後、社会での女性のさらなる活躍や地方創生などの追い風を受けて、テレワークの導入は加速度的に推進していくと期待される。「これまでは都会での働き方を柔軟に変えようというコンセプトのテレワークがメインでしたが、これからは地方に人材を送り込んで人の流れを変えていこうという『ふるさとテレワーク』の推進も重要なテーマになっていきます」(吉田氏)○国民の機運を高める「テレワーク月間」こうしたなか、政府は2020年までに、「テレワーク導入企業を2012年度比で3倍」、「週1日以上終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワーカー数を全労働者数の10%以上」といった高い目標を掲げている。そこで、この目標の実現に向けて、内閣官房(IT室)が総合調整役となり、総務省が情報通信政策や地域活性化支援、厚生労働省が労働政策、国土交通省が国土交通政策、経済産業省が産業政策といったように、関連省庁による連携体制が強化されている。また今年度には、新設の「地方における企業の拠点強化を促進する特例措置」や継続制度である「生産性向上設備投資促進税制」を活用することにより、東京圏などに本拠地を構える企業が地方へサテライトオフィスを設置する場合の税制上の支援など、テレワーク導入を促す各種支援施策も拡充されている。さらには、全国でのテレワーク推進の機運を高めるべく、総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、学識者、民間事業者などによるテレワーク推進フォーラムが今年11月を「テレワーク月間」として設定。11月25日にはテレワークに関するシンポジウムを、そのほか各種イベントや学会などが各地で開催される予定だ。「現状の課題を解決するために、テレワークについてもっとよく知ってもらい心理的なハードルを下げつつ、効果的な事例を紹介することで自分たちもこうすればうまくいくんだと自信を抱いてもらうことが、現在のわれわれに課せられた役割の1つだと考えています」(吉田氏)
2015年10月20日ランクアップは6日、「長時間労働と女性の働き方に関する意識・実態調査」の結果を発表した。対象は、働く女性600名。○会社も上司も残業をなくす努力をする企業の女性、79%が働き方に「満足」「会社や上司は、残業を無くす努力をしていると思うか」と「今の働き方に満足しているか」という質問の関連性を調査した。「会社も上司も努力している」と回答した人に、「今の働き方の満足度」を聞いたところ、満足と答えた割合は、「満足している」(65.2%)「とても満足している」(13.8%)の計79%だった。不満があると回答した割合は、「満足していない」(18.6%)「不満」(2.4%)を合わせて21%となった。一方、「会社も上司も努力をしていない」と答えたのは、今の働き方に「とても満足している」(40.3%)、「満足している」(5.7%)を合わせて45.8%。「満足していない」(44%)、「不満」(10.1%)の合計54.1%が「不満がある」となった。「職場に理想のワーキングマザーはいるか」を聞いたところ、「いる」が44.8%となり昨年から7.4pt増加した。「いない」と回答した人に理由を聞いたところ、1位は「いつも余裕がない」(30.5%)だった。次いで、2位は「新しい仕事や大きな仕事を任されない」(24.5%)、3位は中途半端に仕事をしているように見える」(24.2%)となった。年代別において各1位は、20代が「身なりが適当」(25.8%)、30代が「いつも余裕がない」(34%)、40代が「中途半端に仕事をしているように見える」(27.8%)となった。
2015年10月09日グローバルに活躍する企業が世界的に増えているが、会計基準の違いや人材確保など、現地法人の立ち上げには多くの労力がかかるのも事実。メキシコ人のレニさんは、企業が海外で会社を設立するためのサポートが仕事。成長著しいアジア諸国、とくにシンガポールや中国へと進出を考えているイベロアメリカ(かつてスペインとポルトガルの植民地だった国々)企業の、スムーズなビジネスの船出を後押しするのが仕事だ。南米とアジアに横たわる15時間の時差を物ともせず、少しの工夫で子育ても仕事も充実させる彼女に話を聞いた。■これまでのキャリアと今の仕事について教えてくださいメキシコのクエルナバカ市で生まれ育ち、大学ではコミュニケーションを専攻しました。大学在学中の夏休みに、何となくイタリア語を学んでみたいとペルージャに2カ月半滞在。これが後に私の人生で大きな意味を持つことになりました。大学卒業後、修士号を取るためにフランス・ボルドーへ。必修だった1年間のインターンシップ先として、パリの広告代理店を選びました。そこでクライアントから、中国や香港のマーケットの話を毎日聞かされ、アジア文化を体験したいという思いが強くなり、インターンの残りの半年は交換留学制度を使って香港で過ごすことに決めました。卒業後、そのまま香港で海外での会社設立コンサルティングを行う「CWCC」に勤務。ラテンアメリカの企業が、中国で事業をスタートさせるためのサポートが主な仕事です。とても充実した日々を過ごしていましたが、香港で出会ったオランダ人の夫が2011年にシンガポール転勤を命じられ、中国を離れることに。シンガポールでの就職先は決まっていませんでしたが「イタリア語が話せる」ということが決め手になり、現在勤務しているPeople & Projects(P&P)にヘッドハントされました。P&Pの設立者3人が全てイタリア人で、従業員やクライアントにもイタリア人が多かったんです。前の会社と同様、イベロアメリカのクライアントがシンガポールや中国でビジネスを始めるためのサポート役を、マネジャーとして担当しました。しかし、本気で南米のクライアントを増やしたいなら、現地に支社を置く必要があると考え、上層部を説得。2014年にその提案が認められ、メキシコへ異動となりました。今度は夫が私に同伴する形で、今は息子と共に3人で故郷メキシコで暮らしています。■現在のお給料はどうですか?以前の会社と比べて、お給料は上がりました。というのも、今はP&Pの共同経営者として働いているため、基本給の他に会社の利益の一部も給与としてもらっているからです。イベロアメリカ唯一の支部のトップとして働いているため、責任も増しましたがそれがモチベーションにもなっていますね。■今の仕事で気に入っているところ、満足を感じる瞬間は?現在の私のボスは私自身。トップとして働いているので、時間の使い方などに融通がつけられることが気に入っています。デスクワークよりも外に出てクライアントを増やしたり、コネクションを作ったりする方が得意なので、今は南米を飛び回っています。現在20カ月になった息子も、1歳までは一緒に泊りがけの出張にも連れて行っていたんですよ。イベロアメリカに関わることなら、成長戦略や事業計画まで全て任せてもらえることも気に入っていますね。■逆に今の仕事で大変なこと、嫌な点は?イベロアメリカに住む人々は、何事ものんびり。しかし他の国でビジネスをするためには、その国のルールに合わせる必要があり、会計資料の提出などは期限厳守が鉄則です。「いつ出せますか_」と何度も確認し、やっと提出された書類も不備が多くて「早く直して下さい!」とまた催促。クライアントを追いかけまわしているような気分なり、それがストレスでした。今は部下がその業務を担当してくれているので、大分楽になっています。■日本人のイメージは?前に勤めていたCWCCでは、日本デスクとラテンアメリカデスクを除いて全てが中国人でした。そのため、日本人とは「外国人同士」というくくりで親しくなり、お酒を飲みに行ったり、香港の美味しい日本食レストランに連れて行ってもらったのも良い思い出です。ただ、根から明るくオープンマインドなラテンアメリカ人とは異なり、日本人は「同僚」と「友人」を分けて考えているようで、みんなとても親切ですが、常に目には見えないバリアがあり、真の友人になるのは難しいように感じていました。仕事面では日本人はみんな規律正しく勤勉で、ラテンアメリカデスクは良く比較されて怒られていましたよ(笑)。例えばクライアントに「火曜日までに必要書類を提出して下さいね」と指示をすると、日本は締め切り前の週の金曜に、ラテンアメリカは締め切りを過ぎた金曜に提出してくるといった具合です。■最近TVやラジオ、新聞などで見た・聞いた日本のニュースは何ですか?9月11日に関東を襲った台風のニュースをテレビで見ました。家や家族を失った方々に心からお悔やみ申し上げたいです。また東北の震災から力強く復興を続けている様子は、いつ見ても心打たれます。■ちなみに、今日のお昼ごはんは?ブロッコリーのスープと「アラチェラ」という牛ハラミ部分のステーキ。それにメキシカンビーンズを添えたものです。アラチェラは柔らかく美味しい上に安いので、メキシコではとても人気があるんですよ。値段は200メキシコ・ペソなので、米ドルで11ドルくらいですね。■休日の過ごし方を教えてくださいメキシコとシンガポールや中国では15時間の時差があるので、少し変則的な働き方をしています。平日は午後5時前に一旦仕事を切り上げて、息子が寝るまで一緒に過ごします。彼が寝たメキシコ時間午後8時頃、中国は午前11時なので、そこから2時間ほど現地と電話やメールなどをやり取りします。基本的に土日が休みですが、金曜の午後はアジアでは既に週末なので、よりリラックスした感じ。反対に日曜の午後は仕事をすることも多いです。休日は近くの公園で家族に出かけて、そこで走ったりヨガをしたりと汗を流してリフレッシュするのが好きです。■将来の仕事や生活の展望は?いつか社会貢献ができる会社を持つのが夢です。メキシコには美しいビーチが沢山あるので、ビーチの近くでヨガや瞑想などスピリチュアルなトリートメントを提供できるセンターを作れたら素敵だなと考えています。また、来年会社が日本支部を立ち上げる予定なんです。イベロアメリカの国にとって日本は重要な貿易相手国なので、日本でのビジネス拡大に弊社が少しでもお手伝いできたら嬉しいですね!
2015年10月08日長い間「働きすぎ」といわれ続けてきた日本人。ことし1月に発表された日本労働組合総連合会の調査によると、日本の正規労働者の1日の平均的な労働時間は8.9時間。一般社員の6割が「残業を命じられることがある」と答えています。そんな状況を打開する方法のひとつが時短勤務ですが、日本ではなかなか定着していないのが現状です。そんななか、賃金はそのまま勤務時間だけを短くする試みが、早くから行政や各地の企業で試験的に行われてきた「時短勤務先進国」がスウェーデンです。イギリスの報道機関『ガーディアン』を参考に、スウェーデンの事例から時短勤務の可能性を考えてみましょう。■時短勤務は「高い給料より魅力的」だった!?スウェーデンのとある公営老人ホームで6か月前、看護師たちに対して時短勤務が導入されました。給料は減らすことなく、1日あたり8時間勤務だったシフトを6時間に短縮したのです。給料がそのままというところは、福祉に厚い北欧ならでは。6か月後、看護師たちのストレスは減り、より精力的に仕事をするようになりました。入居者へのケアの質も向上し、スタッフの生産性もアップ。離職率も著しく低下するなど、効果はいろいろなところに現れています。人材獲得の面でも、時短勤務のメリットは大です。スウェーデンのあるインターネットプロバイダ企業では、3年前から時短勤務制を導入し、より優秀な人材を採用しやすくなったといいます。経営者は「能力の高い人材を惹きつけ、留まらせることは企業にとってとても重要なこと。職を探す人々にとって、ワークライフバランスの観点からこの1日6時間労働制は高いお給料よりも魅力的であることが多々ある」と指摘します。■時短勤務の課題はスタッフ増によるコストいいことづくめに思える時短勤務。雇用する側にとって、もっとも大きい課題はコスト面です。1例目の老人ホームのケースでは、この時短シフトで仕事を回すため、14人の新たなスタッフが雇い入れられ、人件費が増加しています。こうしたコスト増が原因で、時短勤務を導入しても継続できないケースが少なくありません。しかし、スウェーデンではコスト面での課題を克服した事例も報告されています。イエーテボリにある自動車メーカーの事業所では、13年前に6時間勤務が導入されました。朝7時から夕方4時まで実働8時間(休憩1時間)のフルタイムシフトから、給料はそのままに休憩時間を減らし、朝6時からと昼12時からの交代制シフトに変更。導入以前は仕事中のミスが多く、スタッフのストレスになっていたり顧客をより長い時間待たせたりしていたのが、時短勤務を導入してからは効率がアップ。機械を効率的に稼働させることができ、結果、利益が導入前より25%増に。時短勤務制度は現在も継続中です。■いまだ認知度の低い「短時間勤務制度」導入されれば労働者へのメリットは多いけれど実現にはハードルもある、というのが実のところ。実は、日本の厚生労働省でも時短勤務を推進しています。育児や介護、自己啓発や心身の健康、モチベーション向上を目的として、フルタイム社員よりも1週間の労働時間が短い働き方を推進する「短時間正社員制度」の導入を呼びかけていますが、導入している事業所は14.8%(平成26年実績)。平成26年に行われた実態調査では、「自社の働き方になじまない」(46.2%)、「従業員にニーズがない」(39.3%)、「内容をよく知らない」(30.3%)といった理由で、ほとんどの企業で導入に至っていません。日本では、『earth music&ecology』を展開する株式会社クロスカンパニーが2011年から短時間正社員制度を導入し、話題になりました。育児目的で1日4時間勤務が可能な「キッズ短時間」と、結婚・妊娠・産前・育児・介護・傷病目的で1日6時間勤務となる「短時間勤務制度」の2種類で実施していますが、そうした取り組みはまだごく一部に限られています(このほかの事例は厚生労働省・短時間正社員制度導入支援ナビで見ることができます)。*導入した企業からはさまざまなメリットが報告される時短勤務。労働者が気持ちよく働ける環境づくりに有効な方法であることは間違いありません。先進事例を参考に日本でも、一人ひとりがワークライフバランスの面から望ましい働き方を選択できる社会の実現を目指したいものです。(文/よりみちこ)【参考】※Efficiency up, turnover down: Sweden experiments with six-hour working day―theguardian.com※労働時間に関する調査―日本労働組合総連合会※短時間正社員の導入実績:平成26年度雇用均等基本調査結果概要―厚生労働省※短時間正社員制度に関する実態調査結果報告書(概要)―厚生労働省
2015年10月07日前回に続いて、働きながら子育てしたい20代女性向けに、会社選び、職場選びのポイントをお伝えします。転職や異動先を考える際の参考にして下さい。○産後も仕事を続けたい女性におすすめの働き方育児しながら、やりがいのある仕事を続けたい……という方には、フレックス勤務ができる会社や職種を選ぶことをお勧めします。フレキシブル=柔軟に働けるというのは、場所や時間を自分で選べる、ということです。具体的に言うと「場所の自由」とは、在宅勤務やサテライトオフィス、外出先のカフェなどを使って仕事ができるということです。通勤時間を短縮したり、顧客訪問した際に近くで事務作業をすませることができたりと、効率的です。「時間の自由」とは、仕事を始める時刻や終える時刻を自分で選べることを指します。通勤ラッシュを避けて早めに出勤する代わりに夕方早めに帰るとか、勤務日数を週4日にする代わり毎日10時間働く、といったことが考えられます。○海外の「ママが働きやすい会社」が持つ特徴とは9月初旬、アメリカのワーキング・マザー・メディア社が「ワーキング・マザー・ベスト100社」を発表しました。同社は毎年「ママが働きやすい会社」を調査、結果を公表しており、今回が30回目。子育てを経験した女性が企業内で昇進できていることも重視しています。今年ベスト入りした会社では、「従業員の4人に3人がフレックス勤務を利用している」そうです。(参考:)私は8年前、アメリカの共働き夫婦の先進事例を取材しました。子育てをしながら管理職や専門職に就いている人の多くが、男性も女性も在宅勤務などの「フレックス勤務」を使っていました。テクノロジーを活用し、時間と場所にとらわれない働き方をすることで、最大限の成果を上げる、という発想が根付いていたのです。○楽しみながら育児も仕事もこなせる環境を探そう日本でも、IT機器を活用すれば、多くのオフィスワークは自宅で行うことができます。日本の場合、課題は技術ではなく文化でしょう。技術的には柔軟な働き方が可能なのに、長く会社にいるほど「頑張っている」と評価する古い文化が邪魔をしているのです。日本企業の管理職や役員から、フレックス勤務導入を嫌がる理由を聞く機会もありました。しかしながら、情報漏洩リスクを除いてほぼ全てが、これまでのやり方を変えたくないための言い訳と映りました。皆さんの今の職場や上司は、出産・育児をしながら働き続ける人を、正当に評価できているでしょうか。「オフィスの机の前に座っていること」ではなく「その人が上げた成果」をちゃんと見ているでしょうか。ここが、将来、皆さんがやりがいをもって働きながら育児も楽しめるかどうかの見極めポイントです。もしそうではないなら、フレックス勤務ができるような仕事を、社内外で探すことをお勧めします。20代なら、まだ遅くはないはずですから。○著者プロフィール●治部れんげ豊島逸夫事務所副代表。1974年生まれ。1997年、一橋大学法学部卒業。同年日経BP社入社。記者として、「日経ビジネス」「日経マネー」などの経済誌の企画、取材、執筆、編集に携わる。2006年~2007年、フルブライト・ジャーナリスト・プログラムでアメリカ留学。ミシガン大学Center for the Education of Woman客員研究員として、アメリカ男性の家事育児分担と、それが妻のキャリアに与える影響について研究を行う。またツイッターでも情報発信している。○【連載】25歳のあなたへ。これからの貯”金”講座25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫とウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。
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モラハラ夫図鑑