誰もが知っている日本の昔話や西洋の童話を、本格ミステリーへと大胆に変貌させたシリーズで人気沸騰。その青柳碧人さんが『ナゾトキ・ジパング』で選んだ題材は、桜やすき焼きなど、いわば「ザ・日本の文化」だ。興味津々。日本文化にちなんだ不可解な事件を、留年生と留学生の凸凹コンビが解決。「日本文化に詳しい外国人が探偵役というのは面白いかなと、まず決めました。あと、エラリー・クイーンの国名シリーズみたいなものを僕も日本の明治以前の国名、つまり藩でやってみたいなと思っていたんですね。伊勢海老とか紀州梅とか地名と名産物が結びついているものが結構あるから。ところが『薩摩芋』で書き始めてみたら、いくらなんでもマニアックすぎた。そこで日本文化にフォーカスすることにしたんです」主人公の長瀬秀次は、やや不出来な留年生だが、男子寮の代表になるほど人望がある。寮で秀次と同室となったもうひとりの主人公ケビンは、日本かぶれと言っていいほどの日本大好きオタク。〈ミョーデス〉と言いながら、深い洞察で数々の難問を解いていく。第1話「SAKURA」は、大学の旧学生会館でOBの遺体が発見され、秀次の後輩が容疑者に。桜に託されたダイイング・メッセージがカギになるミステリー。「この最初の話で、短編で取り上げる題材と結びつく海外の名文などをエピグラフとして提示するという形式にしてしまったので、それを探すのが結構ハードルが高いぞと(笑)、あとから気づきました」収録されているどの短編も、密室やアリバイ等、いくつもの謎とトリックが絡み合って二転三転。そんな本格ミステリーの流儀を踏襲しつつ、文体はポップで軽妙、日本人でも膝を打つような日本文化の再発見ができるのも魅力だ。「コロナ禍に連載していたため、取材などはなかなか進まなかったのですが、第3話に出てくる茶道は、浅草で体験してきました。茶室のにじり口ってトリックに使えるかなあと考えておいたことを確認できたり、それまでぼんやりとした知識しかなかった掛け軸のことや茶道具の棗のことなど、体験したからこそ参考になることも多かったです」事件が解決しても、手放しで喜べない切なさが残る作品が多いのは、青柳さんのミステリーの特徴だが、本作でもその味わいはたっぷり。『ナゾトキ・ジパング』2度目の大学3年生というトホホな長瀬秀次とニッポンが大好きなアメリカ人留学生のケビン・マクリーガルが、コンビで事件の謎に挑む5編。小学館1650円あおやぎ・あいと1980年、千葉県生まれ。早稲田大学卒。2009年、『浜村渚の計算ノート』で講談社「Birth」小説部門を受賞し、デビュー。小説のほか、マンガ原作も手がける。※『anan』2022年8月3日号より。写真・土佐麻理子(青柳さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2022年08月02日誘拐犯の要求は「身代金調達をクラファン(クラウドファンディング)で行え」!?型破りな誘拐劇は、IT企業を巻き込んで事態が二転三転。ページをめくらせるアイデアがぎゅうぎゅうに詰まった『午前0時の身代金』の著者が、京橋史織さん。「クラファンを利用するアイデアは、イスラム国が外国人を拘束して身代金を要求する事件が多発したころに浮かびました。当時スイスに住んでいたのですが、人質事件をめぐる報道の温度が、欧州と日本では全然違ったんです。ヨーロッパの人たちはテロリストに怒っていて、日本では自己責任論が強かった。また、先の米国大統領選でSNSを介して世論の操作が行われ、社会の空気が一変するのも見ました。人にとって、社会にとって、人命がかかったときに何を優先すべきなのか。それが物語の出発点であり、テーマにもなりました」新人弁護士の小柳大樹は、振り込め詐欺に加担させられていた専門学校生・本條菜子から自首したいと法律相談を受けていた。目を離した隙に菜子が拉致されてしまい、深く悔やむ。犯人が犯行声明を送りつけたサイバーアンドインフィニティ社は、大樹の先輩・美里千春が顧問弁護士を務める企業だ。微妙な立ち位置で事件と関わることになった大樹と美里が、事件解決に奔走する。「実はプロットは割と早くできたものの、書く段になって、私自身が法律知識ゼロなことに気づいて(笑)」一念発起し、早稲田大学の法律講座を聴講。執筆に活かした努力家だ。「ITの知識も、一から勉強した身。専門知識にさほど詳しくない人間と同じ目線に立って書いた方が読者にもわかりやすいだろうと思い、生まれたのが大樹です」早々に誘拐犯の目星はつく。だがその情報を、職業上の守秘義務があるため、大樹は警察に漏らせない。「そういうジレンマに葛藤する場面はそれ以外にもかなり盛り込みました。土壇場の踏み絵で何を選ぶか、どう行動するか。そういうシーンこそ、登場人物の人間性が書けると思っているところがあるんです」犯人は誰か。身代金は集まるのか。もっとも、それはこのジェットコースター的ストーリーの入り口だ。この先に待つのは、既存のミステリーでは見たことのない展開。「そうくるか」の連続で、読んで損なし。きょうばし・しおり1972年、徳島県生まれ。第39回創作ラジオドラマ大賞入賞。脚本家として活動したのち、スイスに転居。小説を書き始めて8年目、本作で新潮ミステリー大賞に輝く。『午前0時の身代金』青くさい正義感を持つ主人公の大樹。企業法務中心の「新倉美里法律事務所」でプロボノ(公益性を重んじ社会貢献を行う)部門に配属され…。新潮社1650円※『anan』2022年6月8日号より。写真・北尾 渉中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2022年06月06日“ミステリーの女王”アガサ・クリスティの傑作ミステリーを、ケネス・ブラナー監督が『オリエント急行殺人事件』に続いて映画化する『ナイル殺人事件』。この度、ケネス・ブラナーが創り出す唯一無二の世界観の秘密が明らかとなった。これまで、ディズニーの名作アニメーションを実写化した『シンデレラ』やマーベル作品『マイティ・ソー』、シェイクスピア俳優の真髄を魅せた『ヘンリー五世』『から騒ぎ』『ハムレット』、1818年に出版されたゴシック小説を忠実に映像化した『フランケンシュタイン』など、幾多の世界を描き出してきたケネス。本作でも、ミステリーの女王として文豪史に名を刻む作家アガサ・クリスティが1937年に発表した推理小説「ナイルに死す」の世界を、見事に再現した。ケネスは「セットのスペクタクルや豪華さに加えて、本作のようなミステリーの核となるのは人の心です。ですから、本作のゴールはアガサ・クリスティの世界の中でなるべく自由な演技を取り入れることだと思いました。そのことをクルー全員が理解し、大切にしながら、助け、支えていきました」と、ゴージャスなセットの中で、キャストや製作陣に自由な表現を与える環境づくりを何よりも大切にしたことを明かす。本作で最初に殺害されてしまう美しき大富豪の娘リネットを演じたガル・ガドットは、「ケネスとの仕事は私にとって驚異的に素晴らしい経験でした。彼は準備を整え秩序立っているから、彼がミスを犯す余地なんて少しも残されていませんでした。と同時に演者がやりたいと思ったことを何でも試させてくれる自由をくれるのです」と語り、ケネスの自由な演技へのこだわりを証明する。また、容疑者の1人で、リネットとかつて婚約していた医師ライナスを演じたラッセル・ブランドは、「ケネスはとても優雅に僕らをリードするんです。現場に創造性をもたらし、集中しやすい雰囲気を作りあげながら、とても陽気に振る舞ってくれるんですよ」と語り、監督への絶対的な安心感を明かした。一方ケネスは、本作の世界観を創り上げたキャスト陣について「俳優陣はみな心から素晴らしいと思う役者たちです。彼らと共演したいという思いが実現して、とても光栄です」と絶賛する。監督とキャストたちの信頼関係は、撮影の現場に良い空気を作り、それが作品の世界観にも影響を及ぼす。セットや美術へのこだわりに留まらない、総合的な演出がケネスならではの高い世界観の再現に繋がっているようだ。『ナイル殺人事件』は2月25日(金)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ナイル殺人事件 2022年2月25日より全国にて公開©2020 20th Century Studios. All rights reserved
2022年02月21日菅田将暉演じる主人公・久能整が淡々と自身の見解を述べるだけで難事件や人の心の闇を解きほぐしていく、令和版・新感覚ミステリー「ミステリと言う勿れ」の第8話に、佐々木蔵之介が橘高勝役でゲスト出演することが決定。菅田さんと初共演を果たす。原作は累計発行部数1,400万部突破の超人気コミック。菅田さん演じる整(ととのう)が、これまで巻き起こる様々な事件をその洞察力と膨大な知識で意図せずとも次々と解決へと導いてきたが、ドラマもいよいよ終盤。第8話では、友人の別荘で行う「ミステリー会」に出席しないかと大学の准教授の天達春生(鈴木浩介)に誘われた整は、なぜか大隣警察署の巡査・風呂光聖子(伊藤沙莉)と一緒にその会に参加することに。別荘には天達の学生時代の同級生やミステリー好きの知り合いたちが集まっていた。今回佐々木さんが演じるのは、そんなミステリー会に参加する天達の元同級生の橘高。橘高は学生の頃は文武両道で人気者、現在は市役所に勤めている、ごく普通の公務員。だが、謎の多い役どころとなっており、果たしてこの橘高は何者なのか、気になるところ。佐々木さんがフジテレビの月9ドラマに出演するのは「シャーロック」(2019年10月~12月)以来2年ぶり。抜群の演技力でテレビや映画はもちろん多くの舞台にも出演、数々の役を演じてきた佐々木さんが菅田さんと共演するのは今回が初めて。実際に菅田さんと共演してみて、「僕が作ろうとしている橘高を、セリフのやりとりを通じてきちんと整=菅田君が導いてくれるので、特に後半では随分助けてもらいました(笑)。もちろん、謎解きをしている時も全体を引っ張ってくれるのは流石だなと思います」と語っており、全幅の信頼を寄せている様子。「橘高は、学生の頃はそれはそれはパーフェクトな人間でしたが…どこまで話して良いのか説明が難しい(笑)。橘高と天達(鈴木浩介)、蔦薫平(池内万作)の3人が同級生という設定ですね。学生だった頃から年月が経過して、社会人となった今では状況が違っている。3人の関係性がどうかわったのか?その面白さがあります」と語り、「ストーリーはもちろん、セリフ・視線・仕草。隅から隅まで、是非お見逃しなきよう」とアピールした。「ミステリと言う勿れ」は毎週月曜21時~フジテレビ系にて放送中。第8話は2月28日(月)放送。(text:cinemacafe.net)
2022年02月21日菅田将暉が天然パーマの主人公・久能整を演じるミステリードラマ「ミステリと言う勿れ」。本日2月14日(月)放送の第6話に出演している岡山天音と早乙女太一から、コメントが到着した。ドラマもいよいよ中盤。第6話では、ようやく病院を退院することになった整が、帰り際にやたらと気性の荒い青年・下戸陸太(岡山さん)と出会う。さほど気にとめずにいたが、その後、ライカ(門脇麦)の指示を受けて向かった放火現場で再び出会うことに。下戸役の岡山さんは、菅田さんとは共演歴も多いが、菅田さんと風呂光聖子役の伊藤沙莉が共演していた「大切なことはすべて君が教えてくれた」に同じ高校生役で出演しており、今回は当時同級生を演じた3人が、再び月9ドラマで顔を揃えたことになる。悲しい過去を背負いながら苦しむ下戸。岡山さんは「田村先生が描く陸ちゃんはとてもオリジナリティーに富んでいて、三次元として立ち上がらせるにはどう取り組むべきか迷いもありましたが、彼が根底に抱く、暗く冷たい感触には僕自身も触れた覚えがあったので、原作の陸ちゃんと生身の僕の混色でもって、撮影の日々を過ごさせていただきました」とふり返り、「僕個人が勝手に言語化してしまうにはもったい無いメッセージが秘められた作品だと思います。見た人が静かにそれぞれの“意味”を受け取ってくれたら本望です。菅田くん、早乙女さん、それぞれの場所を、それぞれの走り方で勝ち上がって来たお二人との共演はたまらなく刺激的でした。皆様にもテレビの前で是非、体感していただきたいです」と視聴者へメッセージ。また、早乙女さんが演じる井原香音人は、非常に特殊な設定の役。「不安もあったんですけど、キャラクターには共感できる部分も少しあるので、出演することができてうれしいです」と参加を喜んだ早乙女さんは、菅田さんとの共演について「菅田さんとは目を合わせるシーンがなかったので、そこが残念でした。ここはご覧いただけたらわかっていただけると思います(笑)」とコメント。そして「正義はきれい事ではないというメッセージがすごく強いエピソードです。どうにもできない大きな問題がたくさんあるんですけど、その“大きな問題”はすごく些細(ささい)な心の傷から始まっているんです。子供のころにちょっと変な奴?人と違うと敬遠してしまうことがありますよね?心をわかる思考もできていないから仕方ないのですけど、敬遠された方も同じで…でも、些細(ささい)なことかもしれないけど、それが後々大きな問題になってしまうこともある。ですので、僕も改めて作品を通して、人の心、自分の心を見つめてみようと思いました。外側でしか人を見ない世の中になっていると思うので、心を感じてみようと思っていただく一助になったらうれしいです」と視聴者へ呼びかけている。「ミステリと言う勿れ」は毎週月曜日21時~フジテレビ系にて放送中。(cinemacafe.net)
2022年02月14日重厚な人間ドラマと歴史の悲劇を魂の演奏が彩る音楽ミステリー。映画『天才ヴァイオリニストと消えた旋律』をご紹介します。1951年のロンドン。華々しいデビューコンサートの開演を控えた21歳の天才ヴァイオリニスト、ドヴィドルが忽然と姿を消す。それから35年。彼と兄弟同然に育ったマーティンは、あるコンクール会場でドヴィドルに繋がる糸口を見つけ、彼の消息を追い始める。あの日、リハーサルを終えてホールを後にしたドヴィドルに何が起きたのか。熟年にさしかかったマーティンをティム・ロスが演じるミステリーは、ヴァイオリンの調べに彩られた重厚な人間ドラマでもある。なにしろ、ドヴィドルはユダヤ人。ナチスが台頭するなか、才能を伸ばすべく、わずか9歳でワルシャワの家族と離れてロンドンのマーティンの家で暮らしていたのだ。第二次大戦後という時期の失踪に、彼のルーツが関わっていることは容易に察しがつく。やがてマーティンは、「歌を演奏しに行く」という彼の言葉を知るのだけれど、それにしてもなぜ、姿を消す必要が?深まる謎は、ユダヤの伝統のみならず、宗教の違いを超えて観る者の魂を震わせる深い思いへと繋がっていく。監督は、高名なヴァイオリン職人が妻子を悼んで作った名器の4世紀にわたる旅を描き、アカデミー賞音楽賞に輝いた『レッド・バイオリン』のフランソワ・ジラール。今作ではレイ・チェンが奏でる旋律が重厚なドラマを盛りあげる。後半ためにためて登場するドヴィドル役のクライヴ・オーウェンの演奏姿もいいけれど、少年時代を演じるルーク・ドイルがとにかくいい。自信溢れる天才少年ドヴィドルが、空襲警報下の防空壕で年上ヴァイオリニストを挑発するようにして始める競演のなんとワクワクすること!ルーク自身も8歳でヴァイオリンを始め、ウェールズ国立青年オーケストラに最年少メンバーとして所属しているのだとか。彼の今後にも期待せずにいられません。ドヴィドルの魂の演奏とともに、人間関係そのものもミステリーなのだということを浮かび上がらせるラストの大人な余韻もじっくり味わってね。『天才ヴァイオリニストと消えた旋律』監督/フランソワ・ジラール出演/ティム・ロス、クライヴ・オーウェン、ジョナ・ハウアー=キング、ジェラン・ハウエル、ルーク・ドイル、ミシャ・ハンドリーほか12月3日より新宿ピカデリーほか全国公開。©2019 SPF(Songs) Productions Inc., LF(Songs) Productions Inc., and Proton Cinema Kft※『anan』2021年12月8日号より。文・杉谷伸子(by anan編集部)
2021年12月06日“ミステリのようでミステリでない”、菅田将暉主演の令和版新感覚ミステリードラマ「ミステリと言う勿れ」に、セミレギュラーキャストとして鈴木浩介が出演することが分かった。鈴木さんが演じるのは、大学で心理学を教える准教授・天達春生。まだ主人公・整が幼少の頃に出会っており、少年・整をパートナーの女性と共に温かく見守り、彼のその後の人生を左右するようなアドバイスを与えたり、道しるべを示したりと、大きな影響を与える存在となっていく。しかしパートナーの女性は、整と出会った数年後に事件に巻き込まれ殺されてしまう。成長した整は、天達が准教授を務める東英大学教育学部に通うことに決め、天達を何かと頼りにしている一方で、天達も整の類いまれな観察眼や豊富な知識、そして驚異的な記憶力を認めており、お互いをリスペクトしあっているという、成熟した親子のような関係を築いている。鈴木さんは「整(菅田将暉)に長年寄り添って来ました。整の兄のようでもあり、教授としての顔もあって、時に親のような気持ちも持っているのかな?と思って演じさせていただきました」とふり返り、「見どころはなんと言っても“菅田将暉”が演じる整ではないでしょうか?整が事件を解き明かしていく姿に、みなさんも参加して彼を越えられるのか?打ち負かされるのか?を楽しむのが醍醐味になると思います」とアピールしている。「ミステリと言う勿れ」は2022年1月10日より毎週月曜日21時~フジテレビにて放送予定。※初回90分スペシャル(cinemacafe.net)
2021年11月29日萩野瑛さんがプロット担当、鮎川颯さんが執筆担当。2014年に「女王はかえらない」で「『このミステリーがすごい!』大賞」を受賞し、以降は降田天名義で良質な作品を生み出している。’18年に「日本推理作家協会賞短編部門」に輝いた「偽りの春」は、交番勤務の警察官・狩野雷太が、いわば名探偵的に登場した初めての作品。その狩野が、本書『朝と夕の犯罪』でも活躍する。傷ついた子どもたちは、それでも“大切な家族”を求めた。「前々から兄弟の話を書きたいという気持ちがありました。一度考えたのですが、編集さんからのリクエストもあって、狩野雷太を登場させてすべて作り直すことに。そのときに題材として使っていた無戸籍や虐待の問題は、形を変えて組み込みました」(鮎川さん)さらに、ネグレクト、10代の出産、ひとり親など、現代社会の課題を詰め込んだ、慟哭の物語である。第一部では、アサヒとユウヒの現在と過去が軸になる。ふたりはまったく別の境遇で育ち、10年ぶりに再会。ユウヒは養護施設の改修資金を、地元名士の娘・美織と結託した狂言誘拐の身代金で賄うことを計画。アサヒはある負い目によって、共犯になることを承諾する。「日本では、誘拐は通報されるとまず捕まります。いかに警察を介入させないようにするかを考えるのは、難しかったですね」(萩野さん)だが、誘拐事件は、兄弟にとっても予想外の事態に発展してしまう。そこから8年の月日が流れ、第二部は始まる。市民の通報で、幼い兄妹が発見される。ひとりは餓死、ひとりは極度の衰弱。現場に臨場したのが狩野だ。「この規模の事件になると、誰かひとりの推理で解決させるわけにはいきません。組織捜査で描かなくてはいけないのですが、警察組織のしくみなどをちゃんと知らなくて、調べながらでした」(鮎川さん)本書最大の美点は、安易な同情や共感を許さないフェアな視点だ。「大切な人のために罪を犯す物語を以前にも書きました。しかし、美しい行為として消費してしまうだけでいいのか。本書でそれについて語り直したい気持ちもあったんです」(萩野さん)二転三転していく事態はやがて思いがけない形でつながる。現実と地続きになった社会派ミステリーだ。『朝と夕の犯罪』定職にも就かない父親と放浪生活を送っていたアサヒとユウヒ。彼らの狂言誘拐があぶり出す、虐待の連鎖とサバイバル困難社会の悲劇。KADOKAWA1870円ふるた・てん萩野瑛・写真右(はぎの・えい1981年、茨城県生まれ)と鮎川颯・写真左(あゆかわ・そう1982年、香川県生まれ)による作家ユニット。2018年、「偽りの春」で日本推理作家協会賞短編部門受賞。撮影/小嶋淑子※『anan』2021年11月24日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年11月22日昨年上梓した『楽園とは探偵の不在なり』(早川書房)が、年末恒例の各ベストミステリーランキングに次々とランクインした、注目度上昇中の斜線堂有紀さん。現実とは異なる法則がある「特殊設定ミステリー」を得意としてきた斜線堂さんだが、本書『廃遊園地の殺人』では、魅惑的なトリックを駆使した新本格ミステリーに挑戦している。20年封印されていた遊園地を舞台に、難解な宝探しが始まる。一気読み!事件が起きる舞台が、まずそそる。「廃墟写真集などを眺めていても、錆びた観覧車や動かなくなったメリーゴーラウンドって、ぐっとくるんです。長年放置されてきた遊園地をクローズドサークルにすると決めたときに、不気味さを足したいな、何がいたら怖いかなと考えて、着ぐるみのうさぎを思いつきました」カバー中央に描かれているのが〈イリュジオンランド〉のキャラクター、ギャニーちゃん。物語に漂う謎めいた雰囲気が伝わってくる。富豪の十嶋庵(としま・いおり)に招待され、イリュジオンランドに集められたのは、廃墟マニアの小説家や廃墟好きのOL、廃墟雑誌の編集長など9人のゲストと、十嶋氏の代理人・佐義雨緋彩(さぎさめ・ひいろ)。計10人。十嶋からの伝言は、〈このイリュジオンランドは、宝を見つけた者に譲る〉。この廃園の所有権をめぐって、関係者たちが宝探しを始めるのだが、なんと宝が何かさえわからないのだ。さらに、園内で殺人事件が発生。その真相を、廃墟マニアのコンビニ店員・眞上永太郎(まがみ・えいたろう)が突き止めていく。「彼が事件を整理して問題点をメモする描写を入れているのですが、そうすると『ここまではわかった』と推理してくださる読者さんがいるみたいで。それはうれしいんです」外界との接触が断たれた場所を舞台にする面白さはどこにあるのか。「本当ならそれぞれの人生で関わらないような人たちも、こうした閉鎖状況下では関わらざるを得ない、自分のバックボーンを明かさざるを得ない。否応なしに人間関係が発生するんです。そこが好きですね」謎が解かれてみれば、意外なテーマを内包していたとわかって驚愕。「簡単に善悪を判断できない、抗えない大きな流れって世の中にはあるなと。そんなことを意識しました」だが、多くを語るまい。郷愁の余韻が残るラストまで、謎解きに没頭する快感をどうぞ。斜線堂有紀『廃遊園地の殺人』2001年10月9日、天衝村(あまつきむら)に建てられたテーマパークで銃乱射事件が発生。オープンを待たずに廃園となっていたが…。実業之日本社1980円。しゃせんどう・ゆうき’16年、『キネマ探偵カレイドミステリー』で電撃小説大賞メディアワークス文庫賞を受賞し、デビュー。12月3日、恋愛小説集『愛じゃないならこれは何』(集英社)が発売予定。※『anan』2021年11月10日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年11月08日独創的な世界観と短編ならではの展開を味わい尽くす。それができるのが、深緑野分さんの最新短編集『カミサマはそういない』だ。「当初、編集者さんと話していたのは、デビュー短編集『オーブランの少女』が全部女の子の話だったので、今回は全部、男の人が主人公の短編にしよう、ということでした」幻想的なもの、SF的なものなど切り口も読み心地もさまざま。巻頭の「伊藤が消えた」は同居していた青年3人のうち1人が失踪、ゾッとする結末が待つ話だ。「イヤミスでは女性が描かれることが多いのが気になっていて。それで男性たちのイヤミスを書きました」次の「潮風吹いて、ゴンドラ揺れる」も不気味な短編。少年が、寂れた遊園地でいくつも死体を見つける。「イギリスのポーツマスに行った時、海沿いに寂れた遊園地があって。遊具がきいきい鳴って怖かったんです。これも女性の扱いに対するカウンターという気持ちと、無謬な人間はいないという気持ちで書きました」「朔日晦日(ついたちつごもり)」は書き下ろしの掌編。神無月、とある兄弟に起きた不思議な出来事を描く。「見張り塔」は戦時下の話。人里離れた塔で警備にあたる実直な少年兵士が語り手だ。「連帯主義やそれを成立させる忠誠心に対し警鐘を鳴らしたかった。ここに書いたことは戦時に限らず、いろんなところで起きていると思う」次はがらっと変わって「ストーカーVS盗撮魔」。ネット上のアカウントの本人を特定して観察することが趣味の男が奇妙な状況に陥っていく。「作中にも出てくる映画『フレディVSジェイソン』が好きで、私も『VS』という話を書きたくて(笑)。でも、ストーカーと盗撮魔が一人の女性をめぐって対決する話だと気持ち悪すぎるしコミカルな素材にするものでもない。それで、また別の設定にしました」「饑奇譚(ききたん)」の舞台はアジアのどこかのスラムのような街。年1回の太陽光が“大放出”される日、人々は空腹を満たしておかないと体が消えてしまうという。「街については九龍城や映画『スワロウテイル』のイェン・タウン、アニメ『カクレンボ』のイメージでした。神話などでも食べる・食べないで運命が分かれる話が多いので、それらとリンクさせた感じですね」最後の「新しい音楽、海賊ラジオ」は爽やかだ。近未来的な海辺の街で、少年が海賊ラジオを探す話だ。「以前、大島に魚釣りに行って、楽しかったんですよ(笑)。海賊放送というモチーフも、いつか使いたいなと思っていました」終末的世界の作品が多いが、ご自身は“滅び”は怖いという。「あえて自分にとって怖いものを書くところがありますね。傷口を自分でえぐるタイプです(笑)」本書のタイトルについては、「願ったり祈ったりしても助けてもらえない、カミサマに見つけてもらえない人たちの話が多いなと思って。神様だけでなく、“上位にいる人”という意味合いもあるので、カタカナ表記にしました」実にバリエーション豊かな7編。短編を読む快感を、あなたもぜひ。『カミサマはそういない』失踪した青年の真実、遊園地に現れた殺人ピエロ、見張り塔で過酷な任務につく兵士、未知の音楽を探す海辺の少年…。幻惑される7編を収録。集英社1540円ふかみどり・のわき2010年「オーブランの少女」が第7回ミステリーズ!新人賞佳作に入選、同作を表題作とした短編集でデビュー。著書に『戦場のコックたち』『ベルリンは晴れているか』など。©干川修※『anan』2021年10月6日号より。インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2021年10月04日記憶が呼び覚ますエモーションと愛。映画『レミニセンス』のレヴューをお届けします。温暖化で都市部が水没し、貧富の差が激しくなった近未来。元軍人ニックは相棒ワッツとともに、客に記憶を追体験させるビジネスを営んでいた。ある夜、失くした鍵を探したいという女性が飛び込んでくる。メイと名乗る美女に惹かれたニックは翌日、彼女がシンガーとして働くバーを訪れる。ステージに立つメイがニックの大好きな歌「Where or When」を歌ったのは偶然、それとも運命?結ばれた二人だったが、幸せの絶頂期にメイは忽然と姿を消す。人の記憶を立体映像として再現するSF的な装置が重要な役割を果たすが、雰囲気はネオ・ノワール調。しかも物語を牽引するのが謎解きなのでミステリーに分類することもできる。しかし美しくも切ない愛を描くラブストーリーでもあり、観る人の感情をさまざまに揺さぶる作品だ。物語を展開させる謎解きは、ギャングと戦う検察の証人の登場で加速する。瀕死の男から呼び起こした記憶で、麻薬で荒稼ぎするギャング、セント・ジョーとメイが過去に関係があったことを知ったニックは、恋人の行方を知る手がかりを求めてギャングのアジトに乗り込む。命を危険に晒しながら彼女を知る人々の記憶を再現し、恋人を追跡するニックはやがてメイとの出会いが偶然ではなかったことに気づく。果たして彼女の目的は?ニックは悪女にただ利用されていただけなのか?次々に浮上する疑惑に対し、記憶映像やちょっとした思い出が答えを出していく展開は、製作者ジョナサン・ノーランと兄クリストファー・ノーラン監督の名を有名にしたサイコスリラー『メメント』を彷彿させる。実際、観る前はノーラン的なSFスリラーと思い込んでいたが、観てビックリ。語り口は実にロマンティックだし、ニックとメイの愛情描写や主要な登場人物の心理描写も繊細で、いい意味で女性的なのだ。と感じていたから、エンドクレジットでジョナサンの愛妻リサ・ジョイが監督と知って納得。愛した女性を捜して奔走するニックの姿が、ヒロインをひたむきに愛するロマンス小説のヒーロー風なのも腑に落ちた。ニック役のヒュー・ジャックマンとメイを演じるレベッカ・ファーガソンの相性がこれまた抜群で、運命の恋人にしか見えない。だからこそ二人の間にあったのが真の愛であってほしいと願わずにはいられないし、彼女を知る人間の記憶で明らかになるメイの真実に心打たれた。ハリウッドが作り上げたファム・ファタール(魔性の女)のイメージを大きく変えている。これが劇場長編デビューとなったジョイ監督は、メイやワッツ、そして終盤に登場する富豪妻といった女性キャラクターの描き方が巧みだ。どの女性も弱さと強さを併せ持ち、悲しさを胸に秘めて幸せを求める複雑なキャラクターであり、女性ならば共感できる部分が多いだろう。物語に深みを与える映像美についても触れておきたい。水没したマイアミはヴェニスのような雰囲気を醸し出し、記憶を視覚化するために新たな視覚効果技術も開発されているという。ジョイ監督と夫ジョナサンがショーランナーを務めたTVシリーズ『ウエストワールド』のチームも関わった映像美は、観る人を圧倒するはずだ。『レミニセンス』監督・脚本・製作/リサ・ジョイ出演/ヒュー・ジャックマン、レベッカ・ファーガソン、タンディ・ニュートン、クリフ・カーティス、ダニエル・ウーほかTOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国公開中。©2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved※『anan』2021年9月29日号より。文・山縣みどり(by anan編集部)
2021年09月26日最先端技術を取り入れた斬新なストーリー展開と個性豊かな登場人物で、20年以上にわたって愛され続けている『科捜研の女』シリーズ。つねに新しい挑戦を続ける作品として、幅広い層から絶大な人気を誇っています。そんななか、ファンからの期待に応える形で映画化がついに実現。今回は、その舞台裏についてこちらの方にお話をうかがってきました。渡部秀さん【映画、ときどき私】 vol. 4102017年から本シリーズに参加し、京都府警科学捜査研究所に所属する物理研究員・橋口呂太を演じている渡部さん。誰にでもタメ口で天真爛漫な性格ながら、鑑定では天才肌なところを発揮する甘いもの好きの呂太は、シリーズでも人気キャラクターのひとりです。そこで、科捜研チームの一員である渡部さんの役へのこだわりや意外な一面について教えていただきました。―本作は、シリーズ初の劇場版となりましたが、テレビ版との違いを感じましたか?渡部さんまずは、撮り方も含めてスケール感が圧倒的に違いましたね。あとは、キャストもこれまでのオールスターが勢揃いしているので、僕自身も撮影前からすごくワクワクしていました。とにかく、見ごたえのある作品になっていると思います。―本当に、ファンにはたまらない豪華メンバーが一挙に集結していますよね。現場の雰囲気はいかがでしたか?渡部さん歴代のメンバーの方がいらっしゃるたびに、現場の空気感がどんどん変わっていったので、僕からするとすごく不思議な感覚でしたね。でも、こうやって歴史を積み重ねてきた作品なんだなと改めて感じることができました。そのなかでも印象的だったのは、科捜研の元所長を演じていた小野武彦さんが入られたとき。一気にシリーズの最初のころの雰囲気になり、僕は内心「あのときのメンバーが揃ってる!」と、完全にいちファンになってしまいました(笑)。役者人生においていい分岐点となった―お気持ちよくわかります。これだけ長年愛されているシリーズに参加するうえで、意識していることはありますか?渡部さんレギュラーメンバーとして、新しい歴史を作っていく責任や次の世代に繋いでいく使命みたいなものは感じています。あとは、同じ役をここまで長く演じることは初めての経験だったので、本当にいろいろな勉強をさせていただいているなと。僕の役者人生においても、いい分岐点になりました。―私は『科捜研の女』シリーズのファンであるがゆえに、ほかの刑事ドラマを観ているときでも、「マリコだったら…」とつい考えてしまうことがあります。渡部さんも科捜研メンバーになってから、実生活に影響を及ぼしていることもあるのではないでしょうか。渡部さんそれは僕もありますね。このシリーズに参加してから、物理や科学だけでなく、事件に関するいろいろな単語を聞いてきたので、さまざまなニュースを見ながら自分で勝手に推測してしまうことがあるんです。たとえば、死因がこれなら、この線の事件性はなさそうだなとか。それは、科捜研で得た探求癖がプライベートにまで入り込んでしまった結果だと思います(笑)。―(笑)。では、呂太を演じるうえで大切にしていることがあれば、教えてください。渡部さん呂太は天才肌というか、いい意味でぶっ飛んだキャラクターなので、演じるのはすごく新鮮なんです。そのなかで意識していることといえば、マリコたちからも視聴者のみなさんからも愛される人物であること。誰にでもタメ口で話していますが、それがただの生意気で失礼なヤツで終わってしまうのではなく、どこか可愛げがあって憎めないキャラクターでいたいので、みなさんに認めてもらえるように努力しています。素の自分は、呂太とは真逆のタイプ―実際、視聴者の方からはどのような反響がありましたか?渡部さんこのシリーズを見て僕のファンになってくださる方も多いので、すごくありがたいですね。ただ、そのあとにショックを受ける方もけっこういらっしゃるんですよ……。―というと?渡部さんどうしても呂太のイメージが強いので、「普段はそんなに大人しいの?」と、役との差に驚く方がいるんです。もちろん、素の僕が呂太と同じしゃべり方なわけがないとわかってはくださっていますが、僕としてはちょっと申し訳ない気もしてしまって(笑)。でも、それくらいインパクトのあるキャラクターなんだなと実感しました。あとは、そう感じてくださる方がいるということは、自分がしっかりと役になり切れている証拠でもあるのかなと思うので、ある意味うれしさはありますね。―つまり、ご自身とは真逆のタイプということですか?渡部さんそうですね、真逆だと思います。たとえば、呂太は甘いものが大好物ですが、実は僕は甘いものが苦手なんです……。普段まったくお菓子を食べないので、科捜研の現場で1年分の糖分を摂取しています(笑)。でも、呂太はそういう部分も含めて、自分にはないものを表現できたり、新しいことを発見できたりするので、演じていて楽しいキャラクター。あとは、あの人懐っこさや何も恐れずに進んでいくアグレッシブさは、尊敬しますね。石橋を叩かないでも行けてしまう強さがあって、うらやましいです。毎日、自分の時間は大切にしている―甘いものが苦手だったとは意外でしたが、それを感じさせないのはさすがです。ちなみに、呂太にとってのお菓子のように、渡部さんの生活に欠かせないものといえば?渡部さんまず食べ物なら、とにかく好きなのはお肉。僕は生肉があれば、生きていけます(笑)。そのほかに日常生活で欠かせないものといえば、寝る前の1~2時間で自分の好きなことをとことんする時間。余計なことを考えずに、本を読んだり、テレビや映画を観たりして、一旦仕事のことを忘れるようにしています。そうやってひとりで過ごしているときが、僕にとって大切な時間です。―ご自身をリセットする時間も必要ですよね。では、主演の沢口靖子さんについておうかがいしますが、俳優として影響を受けていることはありますか?渡部さん沢口さんは、本当にプロフェッショナルな方なので、いろいろなことを学ばせていただいています。主役を演じるプレッシャーもあると思いますが、責任感と集中力がすごいですし、沢口さんが現場でミスしている姿を僕はほとんど見たことがありません。以前、「休みの日は何しているんですか?」と聞いたことがあるんですが、そのときに「休みがあれば、次の台本の勉強をしている」とおっしゃっていたほど。やっぱり20年以上トップを務めていらっしゃる方は違うなと思いましたし、僕も沢口さんのプロ意識は見習いたいです。しかも、お忙しいのにキャストやスタッフにもつねに気を遣ってくださるところも、素晴らしいと思います。うれしいのは、沢口さんの笑顔を引き出せたとき―さすがですね。そんな仕事一直線の沢口さんですが、現場で渡部さんだけが知っている素顔があれば、教えてください。渡部さん撮影の合間はけっこうお茶目な方で、プライベートなお話をすることもありますね。時々、ニコッと笑ってくださったりすると、「この笑顔は、僕にしか見せないでほしい」と思ったりすることも(笑)。沢口さんの笑顔を引き出せたときは、うれしいです。―ちなみに、どんなお話で沢口さんの笑顔を引き出したのですか?渡部さん僕は趣味でアクアリウムを作っていて、家にペットカメラを置いているんですが、お魚の映像を「みんなには秘密ですよ」と言って見せたりすると喜んでくださいます。これからも、沢口さんのいい笑顔を引き出せるようにがんばりたいです!―では、渡部さんから見て、マリコの魅力はどんなところだとお考えでしょうか。渡部さん「事件を解明する」という確固たる意志や信念は、すごいところだなとは思います。とはいえ、マリコが“暴走”しているときは、一般社会では受け入れてもらえないかもしれませんが……(笑)。ただ、めちゃくちゃなお願いをされても、ついていきたくなるようなところがマリコの魅力なんですよね。―マリコのように好きなことに夢中な女性はどう思いますか?渡部さんすごく素敵だと思います。自分のルールをしっかり持っている女性には興味が湧きますし、「普段は一体どんな人なんだろう?」と知りたくなりますから。周りに気配りができる女性には見とれてしまう―ちなみに、渡部さんが女性を見るときに注目しているポイントといえば、どんなことですか?渡部さん周りに気配りができて、マナーがきちんとしている方には、見とれてしまいますね。あとは細部にまで気を遣って、時間をかけて努力をされている姿も素敵だなと。と言いながら、ふとした瞬間に見せる気の抜けた感じもいいですよね。―わかる気がします。また、マリコといえば“科学オタク”ですが、いま渡部さんがハマっているものがあれば、教えてください。渡部さん趣味はわりと多いほうかなと思いますが、いまは先ほどお話したアクアリウム、爬虫類、苔、植物など。一度ハマるとがっつりハマってしまうほうなんですよね。最近は家が水族館のような、動物園のような、植物園のような状態になっています(笑)。―楽しそうなお家ですね。それでは最後に、ananweb読者へのメッセージをお願いします!渡部さん僕はもうすぐ30代に入りますが、人としても男性としてもまだまだ未熟な部分が多いなと感じています。若い頃に思い描いていた30代にするために、仕事で成長していくのはもちろんですが、もっと女性のことも理解できるようになれたらいいなと。自分だけだと凝り固まった考えになってしまうので、女性の方々の目線でいろんなことを教えていただきたいですね。おこがましいですが、みなさんの力で僕を素敵な男性に育てていただけたらうれしいです(笑)。インタビューを終えてみて……。ご本人がおっしゃっていたように、どうしてもタメ口で話す呂太のイメージが強いため、丁寧で穏やかな口調の渡部さんに最初は驚きましたが、そのギャップもまたとても魅力的だと感じました。俳優として、男性としてどんな30代を迎えられるのか、ますます楽しみです。スケールもトリックもさらにパワーアップ!豪華キャストが一挙に集結し、シリーズ史上最難関の事件に挑んでいる本作。最新科学を駆使したトリックと立ちはだかる最強の敵によって、まさかの結末へと追い込まれていくことに。困難な状況にこそ力を発揮する科捜研メンバーによる“衝撃の最終実験”をぜひお見逃しなく!写真・山本嵩(渡部秀)取材、文・志村昌美ストーリーある日、京都の洛北医科大学でウイルスを研究する女性科学者が転落死する。榊マリコをはじめとする“科捜研”のメンバーや捜査一課の土門刑事、解剖医の風丘教授は、事件性を疑うも、それを裏付ける証拠を発見できずにいた。ところが、京都だけでなく、ロンドンやトロントでも連続科学者転落死事件が同時に発生。捜査を進めていくなかで、ある細菌の存在を突き止めるのだが、そこに立ちはだかるのは“史上最強の敵”だった。果たして、マリコたちは世界中に広がる死の連鎖を止められるのか……。※榊の字は木へんに神が正式表記謎が深まる予告編はこちら!作品情報『科捜研の女 -劇場版-』9月3日(金)全国ロードショー配給:東映©2021「科捜研の女 -劇場版-」製作委員会写真・山本嵩(渡部秀)
2021年09月02日この夏も話題作が続々と公開を迎えるなか、残暑の厳しさを忘れさせてくれるような1本と出会いたいと考えている人も多いのでは?そこで今回ご紹介するのは、“裏サイト”が立ち上がるほどの盛り上がりを見せている注目作です。『鳩の撃退法』【映画、ときどき私】 vol. 408とあるバーで編集者の鳥飼なほみに書き途中の新作を読ませていたのは、かつて直木賞を受賞したこともある天才作家・津田伸一。原稿に書かれていたのは、うるう年だった1年前の2月29日の出来事だった。神隠しにあったとされる一家失踪事件、津田の元に舞い込んだ大量のニセ札、津田の命を狙う裏社会のドン。多くの人の運命を狂わせた雪の夜に一体何が起きたのか。津田の話が嘘か本当かを調べるために、鳥飼は検証を始めるが、待ち受けていたのは衝撃の真実だった……。原作は2014年に出版され、多くの読者を虜にした佐藤正午の同名小説。かねてより「映像化不可能」とされてきた本作ですが、今回は不可能を可能にしたこちらの方にお話をうかがってきました。タカハタ秀太監督映画のみならず、テレビドラマやミュージックビデオなど、幅広いジャンルで才能を発揮しているタカハタ監督。さまざまな憶測を呼んでいる物語の謎から主演を務めた藤原竜也さんの魅力まで、本作の楽しみ方を教えていただきました。―まずは、この作品との出会いから教えてください。監督旧知のプロデューサーさんから原作を勧められて、読み始めたのがきっかけ。ずっと読んでいたくなるほどのおもしろさだったので、すぐに映画化したいと思いました。ただ、原作は非常に長くて複雑ですし、いままで「実写化不可能」と言われてきた作品ですからね。脚本が完成するまでには、いろいろとありました。―特に苦労されたのは、どのあたりでしょうか?監督一番は、佐藤先生の“筆の妙”とも言える原作のおもしろみを生かしつつ、エンターテインメント性のある作品にしなければいけなかったところ。勝手に何かを足してしまったり、わかりやすくしすぎてしまったりしたら原作ファンに怒られますし、かといって映画としても成立させないといけない。そのさじ加減は、難しかったです。そこで、まずは原作通りに文字を起こして脚本を作るところから始め、脚本家の藤井清美さんと一緒に50稿以上にも上るほど何度も書き直して、ようやくいまの形に。いかに難解な構造を残しながらどうやって観客を最後まで気持ちよく騙し通せるか、ということを念頭に置いて作業していきました。そうやって試行錯誤の末にたどり着いたのが、現在と過去、小説と現実の境をあえて曖昧にすること。結果的に、観る方によって正解や結論が違う作品ができあがったと思います。観た方が自由に謎解きを楽しんでほしい―なるほど。実際、観客の間ではさまざまな伏線が話題になっているようですね。監督映画の宣伝文句に「謎解き」とか「ウソを見破れるか」という言葉があることもあって、かなりみなさんいろいろと探ってくださっているようです。たとえば、僕のところにも「あの車のナンバーは伏線ですよね?」と聞いてきた方がいたり(笑)。でも、実は意外と意味はなかったりするんですよね……。―そうなんですか!?たとえばあるカフェのシーンでも「背後に鳩が2羽飛んでいるのは、物語を暗示しているのでは?」と話題になっているようですが、それに関してはいかがですか?監督実は、あれもたまたま撮影中に鳩が飛んでいただけなんですよ!僕も鳩が飛んでるなとは思っていましたが、まさかそういう見方があるとは考えてもいませんでした。でも、そんなふうに観た方が謎解きとして自由に楽しんでいただけるほうがいいですし、目を凝らして観ていただけることはありがたいです。なので、もしかしたら「本当は伏線だらけですよ」と言っておいたほうがいいかもしれないですね(笑)。―では、好きに解釈していただくということでいいですか?監督そうですね。ちなみに、個人的にオススメしたいポイントを挙げるとすれば音楽。特に、英国少年合唱団「リベラ」の曲と井上陽水さんの「氷の世界」をクライマックスで使えたことは、僕のなかでは大きな意味があるので、この2曲が流れるシーンはぜひ注目していただきたいです。―目だけでなく、耳もフル稼働ですね。また、『鳩の撃退法』という非常にインパクトのあるタイトルに関して、監督はどのように感じましたか?監督最初は「どんな作品かわかりにくいから、タイトルを変えないとダメじゃないか」という話も出ていました。でも、このタイトルのほうがいい意味でわけがわからなくておもしろいとなり、原作のままで行くことに。いま考えると、正解だったなと思います。佐藤先生も「理由はわからないけど、なぜか思いついた」とおっしゃっているそうですが、興味をそそるいいタイトルですよね。初めて会った瞬間から、好きになってしまった―確かに、想像力を掻き立てられます。今回、津田を演じた藤原さんは「この作品で新しい表現に挑戦できた」とおっしゃっているようですが、監督から見た藤原さんはどんな方ですか?監督俳優としての素晴らしさはみなさんもご存じの通りですが、それ以前に人としても魅力的。媚びたり、偉ぶったりすることなく、すごく自然体で地に足の着いた方なので、初めて会った瞬間から好きになってしまったほどでした。―現場では、藤原さんにどのような演出をされましたか?監督これは演出家としてのつねでもありますが、いままで見たことのない藤原さんを引き出したいという思いで挑みました。今回、衣装合わせのときに津田伸一をどんな感じにしたいかと聞かれたので、「早口の男というのはどうですか?」「それはおもしろいかもしれないですね」というやりとりをしたんですが、撮影前に藤原さんと津田について話したのはそれだけ。にもかかわらず、本番までに藤原さんが自分なりにプランを立てて津田を作り上げてきてくれたので、さすがだなと思いました。―それだけで監督の意図をくみ取ってしまうとは……。監督そのほかにも印象に残っているのは、長いセリフをろうろうと早口でしゃべらなければいけないシーンを撮ったときのこと。噛むこともなくすんなりこなしていたので、「気持ちよくお芝居できてますか?」と聞いてみたんです。そしたら、「これでいいのかな?」ともうひとりの自分が演じている自分の姿を見ているんだと。役を演じながら、同時にそれが作品のためになっているかどうかを俯瞰で見ることもできると知り、感心してしまいました。あと、モニター越しに見たときに、やっぱりスターの顔立ちだなと改めて感じたのが忘れられません。「お芝居は生もの」というのが僕の現場の考え方―今回、藤原さんとのシーンが多かったのは、行きつけのコーヒーショップ店員を演じた西野七瀬さんですが、初めは緊張していて藤原さんと仲の良さを出し切れないことがあったとか。そこで、監督が藤原さんからハグとお姫さま抱っこをしてもらうことを提案したそうですね。どういう状況だったのでしょうか?監督西野さんはお芝居をすること自体が久しぶりだったのと、いきなり藤原さんと対面でお芝居をしなければいけないということもあり、すごく緊張されていたんです。でも、2人は軽妙なやりとりをしている間柄だったので、もっと距離感を縮めたいねと。そうやってみんなで相談しているなかで、「ちょっとハグとかお姫さま抱っこしてもらったら?」と提案してみたんです。―西野さんの反応はいかがでしたか?監督一瞬、恥ずかしそうにしてましたが、そこでスッと自然に対応してくださったのが藤原さん。「おかげで距離を縮めることができました」と、おふたりから言っていただきました。でも、これで逆に距離ができてしまったら問題でしたね(笑)。―(笑)。藤原さんのさりげない優しさが、西野さんの心を開いたんだと思います。そのほかにも現場で意識されたことがあれば、教えてください。監督僕は「お芝居は生もの」と考えているので、僕の現場では最初に段取りを確認したら、テストをせずにいきなり本番に行くことが多いんです。役者さんには瞬発力を持ってお芝居していただくことになりますが、そうすることでスタッフも含めた現場の集中力が高まるので、あえてそのような方法を取っています。―ということは、本番で監督が予想しないことも起きたりするのでは?監督今回の現場で言うと、車のなかで津田がメモリーカードのなかに入っている映像を確認するシーンがまさにそれですね。脚本には「映像を見てニヤッと笑う」と書かれていたんですが、本番で藤原さんがいきなり高笑いしたんです。そのときに、そうきたかと。でも、藤原さんは笑い方だけで、津田の上から目線の性格や小説家らしさを表現していることがわかったので、驚かされました。俳優陣の役作りを目の当たりにしてしびれた―そのあたりも注目ですね。本作は、かなり豪華な顔ぶれが並んでいますが、現場の雰囲気はいかがでしたか?監督まずは、“裏社会のドン”倉田を演じていただいた豊川悦司さん。カメラが回っていないところでも、周りから離れて役のままの空気感を維持していらっしゃっていたので、すごみのある近寄りがたい感じにはしびれました。でも、撮影が全部終わったあとは、急に大阪の気にいいお兄さんみたいになっていましたけどね(笑)。そういった豊川さんの役作りの様子を見て、なるほどなと思いました。そのほかには、古本屋の店主役のミッキー・カーチスさんが下ネタのアメリカンジョークばかりを飛ばしていたのがおもしろかったです。藤原さんはときどき呆れていましたが、おかげで現場は和みました。ただ、ミッキーさんもふざけているばかりではなくて、実は本作に重要なひと言を提供してくださっているんです。―どのシーンでしょうか?監督津田が古本屋で「今年はうるう年かぁ」というセリフのあとにもう1行あったんですが、どこかしっくりこないとずっと感じていたんです。そこで、「何かないですか?」と藤原さんとミッキーさんに聞いてみたところ、ミッキーさんが間髪入れずに「余計な1日があると、余計なことが起こるんだよ」と。その言葉がすごくよくて、そのまま使わせていただきました。―耳に残るセリフのひとつだと思いましたが、人生経験が豊富だからこその言葉ですね。それでは最後に、これから観る方へのメッセージをお願いします!監督先ほども少し言ったように、この作品は観る方なりの結末があっていいと思っているので、みなさんがそれぞれの方法で謎解きをして答えを出し、広げていただけたらと。お互いの感想を話し合ってもらったり、何度も観ていただいたりしたらうれしいです。あとは、僕の出身地でもある富山を舞台に撮影しているので、そのあたりも注目していただきたいですね。特に、市の中心部にある神通川やこれから起きることの不気味さを表現している壁のような立山連峰など、ほかの場所ではなかなか撮れない映像もあるのでぜひ見ていただきたいです。ひとつではない“正解”にたどり着くことができるか!?時空を超えてさまざまな“ウソ”と“ホント”が交錯するなか、観るたびに謎が深まる本作。ワケありな登場人物たちに翻弄されながらも、自分なりの“真実”を見つけだす楽しさを味わってみては?取材、文・志村昌美深読みが止まらない予告編はこちら!作品情報『鳩の撃退法』全国公開中配給:松竹©2021「鳩の撃退法」製作委員会 ©佐藤正午/小学館
2021年08月31日「将棋に興味を持ったきっかけは、奨励会の存在を知ったことです」芦沢央さんの『神の悪手』は将棋をモチーフにしたミステリー集だ。奨励会とはプロ棋士の養成機関。入るだけでも狭き門だが、そこからプロになれるのはごくわずか。しかも原則満26歳までの年齢制限もある。夢を見ることのダークサイドと夢だけが与えてくれる一筋の希望と。「“夢”はポジティブに語られることが多いけれど、夢に食い潰されるという恐ろしさもあるのではないかと。私の『書く動機』の核に、怖いものを見つめたい、恐ろしいものの正体を知りたいというのがあるんですよね(笑)。余計に惹かれました」書くと決めてから将棋教室に通い、棋書を読み、詰め将棋にも熱中した。それまでは駒の動かし方さえ知らなかった、と言うから恐れ入る。「せっかく将棋の小説を書くなら、勝負の世界であればスポーツとかに置き換えても成立する話にはしたくなかったんですね。あるとき『同じ棋譜はふたつとない』という特性を活かしたトリックが浮かんで、依頼されてもいないうちに表題作を書き上げてしまった。こんな体験は、作家生活10年で初めてです」各編とも棋士や将棋世界と関わる人々が主役。そこにミステリーとしての面白さや、社会とリンクするテーマが内包されている。たとえば、被災地の避難所に将棋指導に行ったプロ棋士が、将来有望な子どもと触れ合ったことで胸の痛む問題が浮かび上がる「弱い者」には、フェミニズム小説の匂いもある。「将棋界でも、女性の地位などジェンダー問題を感じますね」また、「ミイラ」の謎の始まりは、編集部に投稿された不可解な創作詰め将棋。たどっていくうちに、少年が味わった孤独が見えてくる。読者からの反響も大きかった一作だとか。「詰め将棋は、答えがわかった瞬間に、作者は盤の中にどんな伏線を張り、どんな意図を持ってその世界を構築したのかが迫ってきます。そこが、ミステリーの作者と読者の関係に似ているなと思ったんです。作中でやりとりをする作者とそれを添削する〈検討者〉は、一度も顔を合わせてはいない。なのに生まれる濃密なコミュニケーションにドラマがあるのが面白い」取材のために始めた将棋の勉強。「でも知れば知るほど深いし、自分の経験とシンクロするような。この題材でまだまだ書いてみたいです」あしざわ・よう作家。1984年、東京都生まれ。2012年、『罪の余白』で野性時代フロンティア文学賞に輝き、デビュー。『火のないところに煙は』『汚れた手をそこで拭かない』など話題作を次々と発表している。『神の悪手』どんでん返し、犯人視点で描く倒叙ミステリー、予想を覆す叙述トリック…。収録された5編はすべて、語りも仕掛けも機知に富んでいる。新潮社1760円※『anan』2021年7月28日号より。写真・土佐麻理子(芦沢さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年07月27日「閉じ込めた記憶や時間や骨…。ずっと忘れられていたものが、あるきっかけで呼び起こされる。そんな思いを込めたタイトルに牽引されて、書けた部分も大きかったですね」辻村深月さんの『琥珀の夏』は、残酷な真実が描かれながら、慰撫されるような余韻が残る。物語は、弁護士の近藤法子が〈ミライの学校〉という団体の事務局を訪れたところから始まる。〈ミライの学校〉は、学校教育に疑問を感じていた有志が集い、運営されていた。ある事件をきっかけにカルト集団と批判されたその団体施設の跡地で、女児の白骨死体が見つかったのだ。法子もそのニュースを知り、「自分の娘と孫が〈ミライの学校〉に入ってしまったまま連絡が取れない、白骨死体は孫なのではないか」と案じる吉住夫妻の代理人となった。対応した団体の担当者は、「うちは無関係です」とけんもほろろ。だが、法子の胸の内はざわつく。法子は小学校の4年生からの3年間、〈ミライの学校〉の夏合宿に参加していたことを思い出す。“見つかったのは、ミカちゃんなんじゃないか”。ミカは、当時クラスになじめず孤独だったノリコを、〈友だち〉と呼んでくれた子だった。「法子を弁護士にしたのは、自分の過去を見つめ直してもらうときに、個人としてより、仕事として“関わらなくてはいけない”ようにするのがいちばん自然なのではないかなと思ったからです」いい思い出もある〈ミライの学校〉がカルト的だと言われることに違和感を覚える法子でさえ、調べ、記憶を掘り起こすうちに、自分の中にある無意識なバイアスに気づく。物語の重要なキーとなるのは、大人と別々に暮らす子どもの自立を促す〈学び舎〉や、願いを叶えてくれるという〈泉〉、子どもの自主性を育むという名目でなされる〈問答〉、〈内部の子〉と〈麓の子〉の距離感…。大人になった法子が、数々の思い出とそのころの気持ちを、リアルに細やかに掬い上げていくのも読みどころ。「以前は、大人が子どものころを振り返る形で書くときには、“子ども時代”を別の何かのように見ていた感覚があったんです。それが『かがみの孤城』やこの『琥珀~』を書いた近年、子どもの時間と大人の時間は分断しているわけではないな、子どもの時間の地続きに、私は私のままあるのが大人の時間なんだ、ということが、作家としても私個人としても実感できるようになってきて。すると、実は記憶はとても恣意的なものなのだなと感じたんですね。ならば、自分が真実だと思っていたものにもう一歩踏み込んだらまた違うものが見えるのではないか。あらためて、記憶というものを検証してみたいという気持ちもありました」また、読者から反響が大きかったテーマのひとつが“育児/教育”だ。「現実の中でも多々ある違和感を、〈ミライの学校〉を通じて書きました。子どもが自分の方を見てほしい時期に、親はもっと大きな理想や理念に夢中。子どもの未来のためと言いながら、親が我が子の未来をないがしろにしてしまうとか。よい活動とされていることも、その本当の主体に“子ども”はいるのかなど。そういうことも今回とことん向き合って書いてみたいと思いました」実際、幼いころのミカが両親と離ればなれの寂しさに耐えかね、夜中にこっそり朝一番の水を求めて泉に向かう場面は、胸が痛む。終盤に、読者がそれまで見ていた風景を一変させるようなサプライズが仕込まれている。だが、この名シーンは、さらなるクライマックスへの布石なのだ。辻村深月、恐るべし。「ミステリー的にも大事に書きたかったシーンです。私自身もそこがゴールだと思っていたら、ここがスタートだったのかと(笑)」500ページ超の大作だが、ついページを繰る手が逸る。傑作だ。つじむら・みづき作家。1980年、山梨県生まれ。2004年メフィスト賞を受賞しデビュー。’11年『ツナグ』で吉川英治文学新人賞、’12年『鍵のない夢を見る』で直木賞を受賞。本屋大賞受賞作『かがみの孤城』が文庫に。『琥珀の夏』白骨死体の少女は誰か。事故か他殺か。動機は。守れなかった子ども時代の自分と友を、大人になった本人たちが代わって守る――。ミステリーとしてのリーダビリティも備えた、贖罪の物語でもある。文藝春秋1980円※『anan』2021年7月14日号より。写真・土佐麻理子(辻村さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年07月13日東北の七重町に暮らす高校生の美和は、人ならざるものを幻視する体質。ある雪の日、何かに導かれるように見知らぬ場所に迷い込んだ彼女が見つけたのは老いた男の他殺死体だった――。倉数茂さんの新作『忘れられたその場所で、』は、そこから土地に刻まれた暗い歴史に斬り込んでいく社会派ミステリー。雪降る田舎町で発見された遺体の謎。幻想と社会派小説の美しい融合。架空の七重町を舞台に美和たち滴原兄妹が事件に遭遇するシリーズの第3弾。しかし本作の中心人物は死体の謎を追う若手刑事の浩明で、前2作を知らなくても十分楽しめる。「第1作の『黒揚羽の夏』は新人賞に応募したデビュー作ですから、続編は考えずに書いたんです。でもそこから壮大なストーリーを思いついてしまって(笑)。シリーズで一貫しているのは、美和が不思議なものに出会ったことから、消されてきた記憶が蘇るというパターンです。今回は少年少女たちが事件を解決していくより刑事を据えた方がスムーズにいくと思い、警察小説の枠組みを活用しました。ただ、そこに幻想要素も加え、オリジナリティを出せたかと思います」浩明と、彼とコンビを組む刑事で異端視されているシングルマザーの絵美の地道な捜査を主軸に、所轄と県警の軋轢や、七重町の経済を牛耳る大真知家の闇といったサイドストーリーも進行。冬の七重町の静謐な姿を遠景に、社会的に弱い立場の人々の姿をちりばめながらスリリングに謎解きは進む。記憶をモチーフにする際、忘れ去られた人、見過ごされてきた人を掬い上げるのが倉数作品の特徴だ。「僕は文学研究者でもあるんですが、それも主に大正~昭和をフィールドにしていました。いま自分が生きている社会の中に過去の痕跡を感じて、遡って考えることが多いんです」本作の着想のひとつには、2016年の相模原障碍者施設殺傷事件があったという。「あの事件にはものすごく衝撃を受け、いろんなルポや証言も読みました。“誰でもよかった”という通り魔的な殺人とは違い、論理を持って多くの人を殺あやめたという事実が非常に辛い。あの事件を直接書くのではなく、過去に置き換える形で物語にしようと考えました」浩明が過去に差別されていたハンセン病患者について専門家に話を聞く場面がある。そこで語られることに読者も驚くはずだ。「患者たちが、わりと最近までひどい扱いを受けていたこと、それが知られていないことに驚きますよね。患者の家族も口をつぐみ、社会から見えないようにされていたんです」実は浩明には障碍のある弟がいる。だからこそ事件の核心に迫るうち、自分自身を見つめ直すことになる。「大学時代、障碍者の弟さんを持つ友人がいたんです。彼は“将来自分が弟を養わないといけない”とさらりと言っていた。卒業後も、ふっと彼のことを思い出すんです。二十歳前後の学生がああ考えているなんて重いことだな、って。そういう家族を持ち、若いうちから一生単位で生き方を考えているけれど、口にしない人は現実にたくさんいる。浩明は、まさにそういう人なんです」やがて浮かび上がる真実は予想外のもの。ミステリーとしても、幻想小説としても超一級の読み心地だ。「今回はスピーディに話を進めようとしたので滴原兄妹のことはそこまで細かく書けなくて(苦笑)」と言うが第1弾で夏、第2弾で秋、今作で冬が描かれたのだから、第4弾もあるはず…と、期待が高まる。倉数茂『忘れられたその場所で、』東北の田舎町・七重町に暮らす高校生の美和は、ある雪の日、下校途中に道に迷った末、老人の他殺死体を発見。刑事の浩明は殺された男の過去を探るうちに、町の意外な歴史に行き当たるのだった。ポプラ社1870円くらかず・しげる2011年『黒揚羽の夏』でデビュー。‘18年『名もなき王国』で日本SF大賞、三島由紀夫賞にノミネートされた。他の著書に『始まりの母の国』『魔術師たちの秋』『あがない』。※『anan』2021年7月7日号より。写真・土居麻紀子(倉数さん)中島慶子(本)インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2021年07月05日謎が解かれた後に残る切ない余韻も素晴らしい、重層的なミステリー。道尾秀介さんによる『雷神』とは?「これまでに『龍神の雨』『風神の手』と、タイトルに『神』が入る話を2冊書いているので、いつか雷神を書いて『神』シリーズとして完結させたいと考えていました。どれも本当に神様が出てくるわけではありませんが、今回は現代における『神というものの意味』についても突き詰めています。たまたまなんですが、自分が普段よくいる浅草でも、雷門の両側に風神雷神の像、その後ろ側に龍神が立ってるんですよね」『雷神』の主人公は、ある出来事で妻を亡くし、小料理屋をやりながら男手ひとつで娘の夕見を育ててきた藤原幸人。娘には決して知られたくない秘密を隠し続けてきたが、ある日一本の脅迫電話がかかってくる。そこから、幸人の生まれ故郷の新潟県羽田上村の伝統祭〈神鳴講〉やそのさなかに起きた30年前の事件など過去が呼び覚まされ、家族、村人たち、村の因習が複雑に絡まり合う。「東京出身なので、雷といわれてイメージするのは雨と一緒にやってくる夏の雷なんですね。でも新潟など日本海沿岸部では、冬の到来を告げるものでもあり、常識的に冬季の気象現象らしい。落雷の様子も関東で見るのと違って、日本海側の雷光は本当にヤマタノオロチのように分かれていくんですよね。その違いも楽しんでもらえるなと、物語舞台も決まっていきました」既出作『貘の檻』で登場した郷土史研究家で写真家の彩根が再登場。「なぜかすべてを見抜いて解決をアシストする彼を、どこかでまた出したいなと思っていたんですよね」藤原父娘のみならず、幸人の両親や姉の亜沙実とも関わる、一家を襲った悲劇。その封印は解かれるのか。「初めての試みとして、後半に一枚の手紙の画像を入れています。物語は文章だけで成立しているので、それは素通りしてもらってもいいし、あのページをじっと見ることで真実を言い当てることもできます」小説を書くときは、プラモデルのパーツを組み立てるのではなく、少しずつ手を加えて仕上げていく“粘土細工”のようなイメージだそう。「トリック優先で物語を組み立てると、どうしても動機が甘くなってしまう。ストーリー、仕掛け、テーマを、同時進行で描くことで、3世代を串刺しにする、逃れられなかった何かが描けたかなと思っています」『雷神』幸人は姉とともに父親に連れられ、30年前に羽田上村を逃げ出した。だが娘に乞われ、忌まわしき故郷へと真実を求めて舞い戻る――。新潮社1870円みちお・しゅうすけ作家。1975年生まれ。2011年『月と蟹』で直木賞受賞。ミリオンセラー『向日葵の咲かない夏』ほか著書多数。※『anan』2021年6月30日号より。写真・森山祐子(道尾さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年06月28日青春時代を振り返ったとき、誰にでもひとつはある忘れてしまいたいような思い出。まもなく公開の最新作『Bittersand』では、高校生活で起きた“ある事件”によって時計が止まってしまった男女が運命の再会をするところから物語が始まっています。そんな注目の青春ミステリーの見どころについて、こちらの方々にお話をうかがってきました。井上祐貴さん&萩原利久さん【映画、ときどき私】 vol. 389『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』などで活躍している井上さん(写真・左)や『3 年 A組 -今から皆さんは、人質です-』などで知られている萩原さん(写真・右)といった次世代の人気俳優が集結している本作。井上さんは高校時代に想いを寄せていた同級生の絵莉子にまつわる出来事がきっかけで前に進めずにいる主人公の吉原暁人を演じ、萩原さんは少し空気の読めないところがある、暁人の“悪友”井葉有介を演じています。7年のときを経て、忌まわしい記憶を塗り替えるために奔走する2人の姿を描いた本作で、それぞれの役を好演している井上さんと萩原さん。今回は、撮影現場の舞台裏や青春時代の思い出、そして塗り替えたい“ビターな記憶”について語っていただきました。―まずは、最初に脚本を読まれたとき、どのような印象を受けましたか?井上さんこの作品では18 歳と25歳という2つの時系列が同時に描かれているので、最初は少し難しいと感じるところもありました。でも、読むほどにそれぞれのキャラクターのことが理解できるようになりましたし、特に暁人と井葉の関係性がおもしろいなと思いました。―萩原さんは、どのように井葉を演じようと考えていましたか?萩原さん今回は、井葉のテンションによって左右されるシーンがわりと多かったので、失敗できないなという思いが強かったです。なので、どうやって空気を読まずにぶち壊せるか、みたいなことをずっと考えていました。あとは、同じ役でも異なる年齢を演じるということが、プレイヤーとしては挑戦だったと思います。スイッチを切り替えながら演じ分けた―おふたりとも、高校生と25歳の両方を演じていらっしゃいましたが、演じ分ける難しさもあったのではないでしょうか?井上さんもちろん、簡単ではありませんでした。ただ衣装に助けられたというか、制服を着れば高校生になれて、スーツを着れば社会人になれたので、目に見えるもののおかげでそれぞれの気持ちの“スイッチ”を入れることができたのかなと。演技では、年代によって声の高さを変えたり、そういったことを意識しながら演じました。萩原さん脚本を読みながら、最初はどういうふうに演じ分けようかなと考えていましたが、登場人物のなかで、井葉だけ変わっていないところがあったので、僕の場合は変わらないことがひとつのテーマなんじゃないかなと。なので、細かいところで変化をつけつつ、井葉が持つ適当さや自由さといったベースは変わらないように気をつけました。ある意味、井葉だけ取り残されているようなところもあったので、周りの人たちに作ってもらった部分も大きかったと思います。合宿みたいな楽しい現場だった―劇中で繰り広げるおふたりのやりとりがすごく絶妙でおもしろかったですが、普段のおふたりの関係性は?萩原さん実際も、あんな感じだよね?井上さんあそこまで高いテンションではないとしても、確かに基本的には変わらないかもね。萩原さん現場でもよくしゃべってたしね。井上さんそうだね。あとは、昼休憩とか夜ホテルに戻ってから一緒にゲームしたり。萩原さん今回、男子はみんなで同じ部屋に泊まっていたこともあって、合宿みたいだったからね。大部屋の和室に布団を敷いて、みんなで並んで寝るみたいな。井上さん大浴場しかなかったから、毎日お風呂もみんなで一緒に入ったよね。萩原さんとにかく、みんな仲が良かったから本当に楽しかったです。井上さんキャストのみんなが自分の役どころとキャラクターが似ていることもあったので、それも撮影の延長みたいに感じていた理由かなと思います。利久くんも自分では井葉とかけ離れているとコメントしてたけど、実際は井葉要素満載だったしね(笑)。萩原さんいやいや、本当に僕としては心外でしたよ。というのも、最初に脚本を読んだときに「自分とは違い過ぎるからどうしよう。かなり作って現場に行かないといけないかな」と心配していたのに、みんなから「井葉っぽい」と言われたので、自分で自分のことがわからなくなったこともありました(笑)。でも、みんなと生活をともにすることで、きちんとコミュニケーション取れたのはよかったなと思います。―撮影は1年半ほど前ということで、コロナ禍の前だったからこそ、そういう密なやりとりができたのかもしれないですね。井上さん確かに、いまだったら難しいので、あのときだからこそできたことだなと改めて感じます。いろいろなことをひっくるめて青春だった―そのなかでも忘れられないエピソードがあれば、教えてください。井上さんクラスメート役の柾⽊玲弥くんがムードメーカーとなって、みんなの間に入ってコミュニケーションを取ってくれていた気がします。萩原さん本当にありがたかったですね。井上さんただ、僕はほぼ全部のシーンに出ていることもあって、ひとりだけ撮影が遅くまであったので、みんなといられる時間も少なくて、けっこう寂しい思いをしました。萩原さんそのとき、僕はみんなとまくら投げとかしてましたけどね(笑)。井上さんだから、それも知らないんですよ……。帰ったときにみんなが人狼ゲームで盛り上がっていたときもあったんですけど、僕だけ朝が早かったので、「いいなぁ」と思いつつひとりで端っこで寝ていることもありました。でも、それも含めて青春を感じれたなといまは思います。―ちなみに、自分の青春時代を思い出といえば?暁人のように女の子をかばった経験はありますか?萩原さんいや、そんな思い出はないですね(笑)。井上さん僕もないですよ(笑)。萩原さん映画みたいなキラキラした青春というよりも、思い出すのは高校3年生の午前授業だった月曜日のこと。毎週友達と一番安いうどんを食べながらジャンプを回し読みしていました。1年間、毎週必ず同じことをしてたので、一番の思い出ですね。井上さん確かに、僕も学校が早く終わる日は楽しみだったな。友達とボーリングとかカラオケに行ったりして、遅くまで授業がある日にはできないことをするのが好きでした。いま思うと、あれが青春だったなと思います。基本的に後悔はしないタイプ―では、本作の暁人のように塗り替えたい“ビターな記憶”はありますか?井上さん僕は基本的にあまり後悔しない性格で、楽しいことだけじゃなくて、辛いこともいまとなってよかったかなと思えるタイプなので、特に塗り替えたいことはないかもしれません。ただ、強いて言うなら、もう少しちゃんと勉強しておけばよかったなとは思います(笑)。萩原さんそれは間違いないよね。井上さん両親がせっかく塾に通わせてくれて、整った環境があったのに、「何をしてたんだろう」とふと思うことはあります。萩原さん僕もやらない後悔をするのが怖くて、とりあえずやるほうなので、あまり後悔はないし、もう一度やり直すほうが嫌かもしれないです。ただ、飲み過ぎて二日酔いになるたびに、「なんで、あんなに飲んじゃったんだろう」という後悔はします(笑)。かなり小さいことですけど、やり直したいと思うのはそのときくらいです。―(笑)。これに関しては、多くの方が共感しているかもしれません。また、本作では暁人と井葉の恋愛模様も見どころですが、登場するのは、ひとりで内に抱える絵莉子とつかみどころのない自由な澄子。おふたりは、どちらがご自分の好みのタイプに近いですか?萩原さん僕は絵莉子みたいに何かを秘めている感じの女の子のほうが、何を考えているんだろうみたいなところから興味がわいて、追いかけてしまうかもしれないです。井上さん僕は地に足がついていて尊敬できる人がいいので、ちゃんと仕事をしているという意味でも絵莉子はステキだなと思いました。休みの日は圧倒的なリフレッシュ感をもとめている―おふたりとも絵莉子派なんですね。萩原さん天真爛漫な子もいいなと思うんですけど、観ていただくとわかるように、澄子はちょっと極端ですからね……。井上さん確かに、澄子は情報がなさすぎて怖いかも(笑)。萩原さんそうそう。ある意味、どんな子なんだろうという興味はあるんだけどね。井上さんそれはあるね。ただ、興味はあっても、付き合うとなると、僕はちょっと疲れちゃうかも。―観客のみなさんにも、そんな女性陣に注目していただきたいですね。では、おふたりが最近ハマっていることがあれば、教えてください。井上さん最近DIYをはじめて、テーブルを作りました。きっかけは、正規品で自分がほしいイメージのテーブルがなかったからなんですけど、昔からDIYに関するテレビとか動画はよく見ていて、すぐに始められるくらい知識はあったんです。それがいまは趣味のひとつになっています。―いきなり家具を作ってしまうとは、すごいですね。萩原さんは息抜きでしていることはありますか?萩原さん僕はひたすら寝ます(笑)。たまに、夕方から翌日の昼間くらいまで、一度も起きることなく、15、6時間寝てしまうこともあるくらいです。起きたときに体のなかが全部入れ替わっているような圧倒的なリフレッシュ感がいいんですよね。誰もがどこかに共感できる作品になった―そこまで寝れるのもすごいです(笑)。それでは最後に、読者へのメッセージをお願いします。井上さん自分の過去のなかで、モヤモヤしていることやひっかかっていることに対して、他人から見たら向き合わなくてもいいこともあるかもしれないですけど、暁人たちのように7年越しに真正面から向き合っていく姿を見て、「自分も一歩踏み出してみよう」とか「いままで目を背けていたことに向き合ってみよう」と少しでも思ってもらえたらいいなと思います。誰もがどこかには共感できる作品なので、楽しんでいただきたいです。萩原さんコロナによって世の中がすごく変わってしまいましたが、この作品もようやく公開できることになったので、ぜひみなさんにも劇場で観ていただけたらうれしいです。インタビューを終えてみて……。劇中で見せている息の合ったやりとりは、実際のおふたりから出ているものだと納得してしまうほど仲の良い井上さんと萩原さん。撮影中のことを振り返る楽しそうな姿から、そのときの様子が浮かぶようでした。おふたりにとっても、新たな青春の1ページとなった本作にぜひ注目です。過去を変えて新たな未来をつかむ!些細なことから人生を変えてしまうような大きなものまで、心のなかに残り続けてしまうのは塗り替えたい過去の記憶。カッコ悪くても立ち向かおうとする暁人と井葉の姿は、いまさらどうすることもできないと諦めるのではなく、いつになっても変える力を誰もが持っているのだと教えてくれるはずです。山本嵩(井上祐貴、萩原利久)取材、文・志村昌美井上祐貴 スタイリスト:西脇智代メイク:松山麻由美シャツ¥19,800/SHAREEF、ジャケット¥85,800/ato、パンツ¥5,500/WYM LIDNM萩原利久 スタイリスト:Shinya Tokitaメイク:松山麻由美シャツ ¥23,100、パンツ ¥17,600/ともにワーダー(デザインワークス イチキュウロクゴ トウキョウ03-3406-7669 )ストーリー25歳になった吉原暁人は、さえないサラリーマン生活を送っていた。そんなある日、高校時代に想いを寄せていた石川絵莉子と思いがけないところで再会を果たす。ところが、彼女にとっては、暁人を含めた高校時代の思い出はすべて、忌まわしい“黒板事件”によって、拒絶すべき過去となっていた。そして暁人自身も、その頃から自分が一歩も前に進めていないことに気がつくことに。そこで暁人は悪友で親友の井葉の力を借りて、自分と絵莉子のために「記憶を塗り替える」企てを進めることになるのだが……。胸がギュッとなる予告編はこちら!作品情報『Bittersand』6月25日(金)シネ・リーブル池袋、UPLINK吉祥寺他、全国順次公開配給:ラビットハウス©Bittersand 制作委員会写真・山本嵩(井上祐貴、萩原利久)
2021年06月23日韓国コスメブランドI’M MEME(アイムミミ)日本上陸提供:株式会社サン・スマイル人気と実力を備えた海外のプチプラコスメブランドが、SNSなどで話題となり、続々と日本上陸を果たしています。I’M MEME(アイムミミ)は、自分らしくデイリーメイクが楽しめ、機能性や使い勝手の良さも実現しているブランド。2021春に本格的に日本全国のドラッグストア・バラエティショップ・量販店などで展開されます。韓国ブランドと言えば、キュートでスタイリッシュなコスメデザインも魅力。初ラインアップは、クレジットカードサイズのミニカラーパレット3種、トレンディなシャドウスティック、豊かなバリエーションが揃うティントリップ2種が到着します。(写真は「ミステリー ブラーティント」)春夏カラーやベーシックトーンで、様々なシーンに活躍してくれそうです。2021春新作アイ・チーク・リップ全6アイテム新「I’M HIDDEN CARD PALETTE(アイム ヒドゥンカードパレット)」全3種提供:株式会社サン・スマイル各トランプカードをモチーフとして、パッケージとカラーで表現した10色入りパレットです。パウダーに施されたプレスなど、気分が上がるデザインです。ハイライトや締め色、ベースなど幅広いセットイン。繊細なパールがキラめき、これ1つでゴージャスなアイメイクが完成します。ニュートラルトーンで、1番下の色はチークに、他のカラーはアイブロウにも、と様々な使い方が可能。コスパの良さも期待できますね。ミラーが付いていて、外出時にも便利です。ポケットや財布に潜ませていざという時に、またはマンネリになりやすい普段メイクの切り札になってくれそうです。(写真左から)ラッキーカードスモーキーなベージュ系。幸運を呼ぶと言われる四つ葉のクローバーのように、さり気なく存在感を放って。ラブカードヌーディーなピンク・ブラウン系。愛らしさ漂うルックに。レッドカードディープブラウンにローズ・オレンジをセット。刺激を忍ばせて個性的に。新「COLOR PATTERN PALETTE(カラーパターンパレット)」全3種提供:株式会社サン・スマイルナンバーをプレスした、アイシャドウ6色とチーク1色を詰めたパレットです。半透明なコンパクトの右側にある、パスワードみたいな4つの数字順にカラーを塗っていくと、メイクが完成します。ビギナーさんや、悩まず時短で凝ったメイクがしたい方、ユニークなコスメが好きな方などにおすすめ。簡単にステキな目もと&頬が叶います。お出掛けにも日常使いにもお役立ちな、全3種のバリエーションです。(写真左から)コーラルパターンフレッシュなオレンジコーラル系。ペタルパターンロマンティックな、くすみローズピンク系。サンドパターンシェーディングにも使える、シックなベージュブラウン系。新「MULTICUBE(マルチキューブ)」全4種提供:株式会社サン・スマイルポーチが整理しやすい、小さなスクエア型コンパクトです。上段に異なる質感のアイシャドウ4色、下段にチーク1色が詰められています。こちらはナンバープレス順にカラー2色以上をのせるだけで、ベストバランスの多様なカラーメイクが叶います。指でブレンドでき、キレイに発色します。(写真左から、下写真はメイク例)スウィートピンク可愛さのあるピンク系。ハローピーチ柔らかなコーラルピーチ系。ベイクドジンジャー深みをもたらすブラウン系。グラムローズ血色感をプラスする、ウォームレッド&ブラウン系。新「I’M STICK SHADOW SHIMMER(アイム スティックシャドウシマー)」全5色提供:株式会社サン・スマイル粉飛び・ヨレが防げるクリーミーなテクスチャーで、スルスル描けます。イルミネーションパールとシマーパールをミックスし、上品にキラキラした目もとに。パーツごとにサッと塗れ、全5色から数色または他のパレットやお手持ちのシャドウとの、併せ使いも楽しめそうです。淡いカラーはハイライトとして目頭や涙袋にも。(写真上から)シュガーブリンペールピンクピーチコロネットライトピーチピンクチャームライトピンクローズケープベージュローズトープトリンキットグレイブラウン新「MYSTERY BLUR TINT(ミステリー ブラーティント)」全10色提供:株式会社サン・スマイルふんわりした軽さなのに、しっかりした発色です。油分吸着パウダーとシリコンエラストマー成分がオイル膜を作り、唇の水分をキープ。さらりと密着して、ふわっとした神秘的なソフトマットリップに仕上がります。フルーツやスイーツなどがモチーフのバリエーションも魅力的です。ミステリーアップル/ミステリージュジュブ/ミステリーマンダリン/ミステリーベリー/ミステリープラム/ミステリーモカ/ミステリーローズウッド/ミステリーキャラメル/ミステリーパーシモン/ミステリークランベリー新「MYSTERY FLASH TINT(ミステリー フラッシュティント)」全7色提供:株式会社サン・スマイル鮮明なカラーで、ガラスのような光沢ある唇に仕上がります。リップカラーとツヤグロスの良いとこ取りで、馴染ませるほどにカラーピグメントと水分粒子が交じり合い、浮かび上がります。フルリップやグラデーションリップで。みずみずしいドリンクモチーフの彩りです。ミステリーベリーコーク/ミステリーアップルパンチ/ミステリーキャロットジュース/ミステリーピーチクラッシュ/ミステリーライチソーダ/ミステリーチリポップ/ミステリーローズエイド今回ご紹介した2021春新作コスメの詳細I’M MEME(アイムミミ)4月20日(土)新発売アイム ヒドゥンカードパレット全3種/各2,750円カラーパターンパレット全3種/各2,090円マルチキューブ全4種/各1,870円アイム スティックシャドウシマー全5色/各1,089円ミステリー ブラーティント全10色/各1,320円ミステリー フラッシュティント全7色/各1,320円※全て税込み価格
2021年04月09日使うだけでキュートなトレンド顔になれちゃう韓国コスメ。「やっぱり旅行に行かないと、本場のコスメは買えないのかな」と思ってはいませんか?韓国コスメの中には、プラザやドラッグストアなどで購入できるものも少なくないんです!そこで今回は、身近な場所で気軽に購入できる“おすすめの韓国コスメ”を3つご紹介します。旬顔になれるアイテム揃い!韓国コスメには、毛穴カバーにおすすめのファンデーションからトレンドカラーを取り入れたアイシャドウ、旬リップを作れるティントなど、塗るだけで旬顔になれるアイテム揃い。流行りのメイクは、韓国コスメでさくっと取り入れちゃいましょう!『M クッションファンデーション(プロカバー)ディズニー限定デザイン』¥1,500(税抜)ディズニー×韓国コスメのかわいいコラボアイテムは、今期大注目のアイテムです!シックなディズニーデザインが大人可愛い、『MISSHA(ミシャ)』のクッションファンデーション。パッケージの可愛さはもちろん、肌表面にしっかり密着して、気になる毛穴やくすみをカバーしてくれる特殊なパウダー入り!さらに美容保湿成分配合で、長時間つけていてもしっとり感をキープしてくれます。「デザイン性と機能性、どちらもゆずれない!」という人におすすめのアイテムです。【商品情報】『M クッションファンデーション(プロカバー)ディズニー限定デザイン』価格:¥1,500(税抜)容量:15gカラー:NO.21 明るい肌色/NO.23 自然な肌色販売店舗:全国のバラエティショップ、ドラックストア、GMS(総合スーパー)にて数量限定発売『ロムアンド ベターザンパレット』¥3,190(税込)定番カラーからトレンドカラーまで、捨て色なしの豪華10パレットは旬メイクのマストアイテム!グリッターとマット、2つの質感がセットになった『rom&nd(ロムアンド)』のアイシャドウパレット。10色を自由に組み合わせれば、トレンドメイクから普段のメイクまで応用できる、コスパのいいアイテムです。【商品情報】『ロムアンド ベターザンパレット』価格:¥3,190(税込)カラー:01パンパスガーデン/02マホガニーガーデン/03ローズバッドガーデン販売店舗:全国のプラザおよびミニプラ、プラザオンラインストア『MYSTERY BLUR TINT(ミステリー ブラーティント)』¥1,200(税抜)思わず触れたくなるような、ふんわりリップが作れる『I‘M MEME(アイムミミ)』のティントもドラッグストアやバラエティショップで購入できちゃいます!ティントなのにベタつかず、さらりとした密着感のソフトマットなティントリップ。唇にのせるとオイルの膜が作られて、長時間つけていても唇から水分が抜けにくくなります。自然なふんわりリップを目指したい人におすすめです。【商品情報】『MYSTERY BLUR TINT(ミステリー ブラーティント)』価格:¥1,200(税抜)容量:001~005 3g/006~010 2.9gカラー:全10種類(ミステリーアップル/ミステリージュジュブ/ミステリーマンダリン/ミステリーベリー/ミステリープラム/ミステリーモカ/ミステリーローズウッド/ミステリーキャラメル/ミステリーパーシモン/ミステリークランベリー)販売予定日:2021年4月20日(火)販売店舗:全国のドラッグストア、バラエティショップ、量販店トレンド顔になりたい人におすすめの韓国コスメ、いかがでしたか?ドラッグストアやバラエティショップで売っているものばかりですので、気になる人はぜひ実際に店舗で手に取ってみてくださいね。【参考】累計2,000万個突破*!韓国コスメMISSHAのクッションファンデーションディズニーデザイン第一弾発売記念ミシャ公式Twitterにてプレゼントキャンペーン開始! - PR TIMES大人気の韓国コスメ「rom&;nd(ロムアンド)」待望の新作!トレンド顔になれる10色アイパレット&ハイライターが登場。 - PR TIMESついに日本に本格上陸!キュートでスタイリッシュなデザインとカラーが人気の『I‘MMEME(アイムミミ)』より全6種のメイクアイテムが新登場 - PR TIMES©株式会社ミシャジャパン©プラザスタイル©株式会社サン・スマイル文/Chiaki
2021年03月31日名画『グランド・ホテル』といえば、ホテル内で複数の人間のドラマが同時進行で進む名作映画。下村敦史さんの新作『ヴィクトリアン・ホテル』はまさにこの“グランド・ホテル方式”に則った作品だ。高級ホテルに来た訳ありな人たち。巧妙な伏線に驚愕必至のミステリー。「最初は爆弾テロ計画などの犯罪事件も考えましたが、今回は人間模様を重視することにしました」と言いつつ、巧妙な伏線が仕掛けられる本作。老舗ホテルにやってくるのは悩みを抱えた女優、人生を諦めた老夫婦、宣伝マン、パーティ会場で新人賞の授賞式に臨む若手作家、借金まみれのスリら。彼らの運命が思わぬところで交錯していく。「もちろん、ミステリーとして面白いこと、驚かせることを考えました。と同時に、新しい視点を提示したかった。もとの映画がお金と愛情がテーマになっているようにひとつのテーマで登場人物を結びつけるのも方法だと思って。自分は“優しさ”でいくことにしました。前作『同姓同名』で悪意を徹底的に書いて毒素が全部出されたのか、今回は善意がメインになりました(笑)」だが、ほのぼのした内容なわけではない。たとえば女優は駅で困っていた人を助けた行為がSNSで「騙されたのでは」「犯罪を助長する」と非難されてしまった。「当事者同士は喜んでいるのに関係ない人が批判してくる。そうすると、もう人に親切にするのはやめておこう、となってしまう」作家も、作品内の人物造形について理不尽な批判を受けて悩んでいる。「たとえ多くの人からいい反応を得た小説でも、必ず怒ったり批判してくる人がいる。作中で作家同士が語る場面は、自分なりに答えを導きたいという気持ちで書きました」悩める人たちが交錯する本作。ホテル内で誰がいつどこにいて、どんな影響を誰に与えるのか、タイムテーブルを作るのは至難の業だったという。そのなかで、状況によって同一人物の印象が変わることも。「何か失敗した人を、その一部分だけ取り上げていつまで裁き続けるのかということはよく疑問に思うので、それが小説の中に表れていますね」そんな人間ドラマを堪能しているうちに、終盤、読者は実に巧妙な仕掛けに気づいて唖然とすることに。帯の「一気読み&二度読み必至!」の惹句、これ、本当です!高級ホテルにやってきた訳ありの人々。ロビーや廊下、レストランやパーティ会場で彼らが出会う時、運命の番狂わせが起きることに。実業之日本社1600円しもむら・あつし1981年、京都府生まれ。2014年『闇に香る嘘』で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。以降、社会派ミステリーで人気を博す。著書に『生還者』『コープス・ハント』『同姓同名』など。※『anan』2021年3月31日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2021年03月30日テレビ東京では、ドラマプレミア23枠にて西島秀俊主演のグルメミステリードラマ「シェフは名探偵」を放送することが決定。今回西島さんは、“名探偵シェフ”に扮し、訪れた客たちの巻き込まれた事件や不可解な出来事の謎を解いていく。本作は、累計発行部数29万超えの近藤史恵の人気小説シリーズ「タルト・タタンの夢」、「ヴァン・ショーをあなたに」、「マカロンはマカロン」のドラマ化。西島さんが演じるのは、小さなフレンチレストラン「ビストロ・パ・マル」のシェフ、三舟忍。冷静沈着そして穏やか、一見何を考えているかわからないが、実はお節介焼き。訪れた客の悩みや抱えている問題を解決していく名探偵でもある。本作について西島さんは「台本は、1話で原作の2つのエピソードを扱っていてスピーディーに展開していきます。話ごとに異なるテーマがしっかり描かれていて、読むのも演じるのも楽しいですね」と明かしており、演じるキャラクターについては「お客様の悩みや苦しみを解決し、美味しい料理を楽しんでもらいたいと思っている人です。少し変わった人ですが、共感力のある良い人だと思います」と印象を語っている。また本作のチーフ監督は、「TRICK」シリーズ、『任侠学園』などを手掛けた木村ひさし。脚本は「チーム・バチスタ」シリーズの田中眞一と、『名も無き世界のエンドロール』の西条みつとしが手掛ける。木村監督とは3度目のタッグとなる西島さんは「木村組はみんなで面白い作品にしようという情熱を感じる組です。前作以上に大変な撮影ですがクルー全員、楽しく頑張っています」と撮影の様子を明かし、「『ビストロ・パ・マル』が存在したらフッと行きたくなるお店になるようにスタッフ・キャストで頑張っています。ミステリーとしてもヒューマンドラマとしても楽しめる作品です。月曜の23時台、心も体もほっと休まるドラマですので、ご期待ください」とメッセージを寄せている。そして原作者の近藤さんは「長年書き続けてきた思い入れのあるシリーズですし、ドラマ化という形で世界が広がって、原作者としてうれしく思っています」と喜び、映像化を熱望し5年間温めていたというプロデューサーは「5年前は『料理×ミステリー』という仕掛けが面白くて、『映像化したらヒットする!』と思っていましたが、コロナ禍を経験し、5年前ではなく今やるべきドラマになったと強く感じます。『外食が出来ない』。こんな世界が来るとは誰が想像していたでしょうか。今こそ、束の間、現実を離れて夢を見られるような場所をドラマで描きたいと思いました。料理の味だけでなく、ホスピタリティや内装や働く人々のキャラクターも含めた『味』が多くの視聴者にとって『優しい味』になるようなドラマになると思います」とコメントしている。ドラマプレミア23「シェフは名探偵」はテレビ東京ほかにて放送予定、ParaviとひかりTVにて配信予定。(cinemacafe.net)
2021年03月05日中国で大ブームとなっている体験型推理ゲーム「マーダー・ミステリー」を題材とした、ミステリードラマ『マーダー★ミステリー ~斑目瑞男の事件簿~』が3月19日(金)より放送されることが決定した。「マーダー・ミステリー」とは、その場で渡された設定を読み込み、自分に与えられた役割を即興で演じ、殺人犯を探すという次世代の密室体験型推理ゲーム。自分自身がある人物になりきって参加でき、さらに即興力や推理力が試されると人気を博し、すでに中国市場では10億円を超える人気コンテンツとなっている。日本でも「リアル脱出ゲーム」や「人狼ゲーム」などにつぐ、次世代体験型ゲームとして注目されているとのことだ。そして、ミステリードラマ『マーダー★ミステリー ~斑目瑞男の事件簿~』では、エントリー総勢251名から予選を勝ち抜いた男性4名、女性3名の計7名のファイナリストたちが即興演技と殺人犯探しのミステリーにチャレンジ。 彼らに与えられるのは「キャラクター設定」と「アリバイ」のみ。台本も筋書きも演技指導もなく、ぶっつけ本番で1本のミステリードラマを作り上げていく。「全員容疑者」というシチュエーションの中で、犯人役はいかに自分の犯行だとバレないように演技するか、それ以外の人はどうすれば犯人を特定できるのかを突き詰めていく本作。探偵・斑目瑞男役を劇団ひとり、助手・村城和兎役を剛力彩芽が演じ、ストーリーテラーとしての役割や視聴者の目線付け役となって、一緒に推理をしながら次世代スターとなる役者の演技力に注目していく。台本も演技指導もない、まさにぶっつけ本番の7人の即興演技を見定める審査員は近日発表予定。日本のマーダー・ミステリーのシナリオ界で3本の指に入るという名作『遠き明日への子守唄』を手がけた人気作家AGATAが、本番組のストーリー制作も行い、世界的ヒットゲーム『大乱闘スマッシュブラザーズ』のテーマ曲など、数多 くのゲーム作品やアニメ作品の名曲を生み出してきた坂本英城による楽曲が本作を盛り上げる。■プロデューサー桒山哲治コメント「マーダーミステリーゲームって何なんだ!?」 初めて聞いた方には、説明が難しいですが「とにかくやってみよう、絶対に面白いから!」と誘ってやってみると誰もが「めちゃくちゃ面白い!」と感動してくれます。体験型ゲームなので、やれば絶対に面白いのは間違いないけれど…“観ても面白い”ものにするにはどうすればいいのか?構想2年で我々がたどり着いたカタチが「筋書きのないミステリー」×「即興芝居のガチンコ勝負」というものでした。役者版の「M-1グランプリ」が作れないか?即興力ある未来のスター俳優を生む番組になれないか?やり直しが絶対にきかない“1回限りのぶっつけ本番”に向け、これ以上ないという最高のスタッフと、最良の舞台を用意しました。総勢251名から予選を勝ち抜いた7名の役者さんには、実在する洋館で、まさに「誰にも予測不能な筋書きのないミステリー」をすべて即興で演じていただきました。事件の真相を知らない状態でのリアルガチンコ&ドラマティックな、唯一無二のストーリーを紡いてもらえたと確信しています。令和に誕生した新感覚のミステリーコンテンツ、それが『マーダー★ミステリー 探偵・斑目瑞男の事件簿』なのです。『マーダー★ミステリー ~斑目瑞男の事件簿~』3月19日(金)放送
2021年02月12日直木賞を受賞した大ベストセラー小説『ファーストラヴ』が、待望の映画化。豪華キャストとスタッフが集結して作り上げた“禁断のサスペンス・ミステリー”に、公開前から高い注目が集まっています。そこで、劇中で見せた鬼気迫る演技が話題となっているこちらの方にお話をうかがってきました。女優の芳根京子さん【映画、ときどき私】 vol. 355今回、芳根さんが演じたのは、父親を刺殺した容疑で逮捕された女子大生の聖山環菜。主演の北川景子さん演じる公認心理師の真壁由紀が、環菜との面会をきっかけに心の奥底に隠したはずの“ある記憶”と向き合っていく姿が描かれているため、物語のキーパーソン的存在でもあります。そこで今回は、本作に出演して得た新たな気づきやファーストラヴの思い出などについて、語っていただきました。―まずは、この作品のオファーを受けたときのお気持ちから教えてください。芳根さん堤幸彦監督の作品で北川景子さんや中村倫也さんとご一緒できる喜びとやりがいのある役をいただけて、大きな声で「やったー!」と言ってしまったほどうれしかったです。でも、読めば読むほど本当に重要な役であることに気がつき、ワンテンポ遅れて衝撃が走った感じでした。―複雑なキャラクターでもあるため、演じるうえで難しさを感じることもあったのではないでしょうか?芳根さん私が演じた環菜は周りを翻弄する役どころだったので、役作りの過程で気がついたのは、私の演じ方次第で作品の“色”が変わってしまうかもしれないということ。そう考えるようになってからは、プレッシャーで怖くなってしまうこともありました。でも、監督とたくさん相談しながら環菜を作りあげられたので、普段だったら感情だけで演じていたようなシーンも、見え方を意識して、頭を使って演じることに。これまでとは違う達成感を味わうことができたと思います。北川景子さんは、心が安らぐ大好きな先輩―そんななかでも、忘れられない出来事はありますか?芳根さん印象に残っているのは、北川さんと2人で面会室にいる後半のシーン。リハーサルの前にした段取りの時点で、北川さんの目を見てお芝居をしていたら、下に水たまりができるくらい涙があふれて、ボロボロに泣いてしまったことがありました。そのあと監督に「もう一回同じことをやれる自信がありません」と伝えたら、「ごめん、もうカット割り全部消しゴムで消しちゃったから同じことしてくれないと困る」って言われてしまって(笑)。「困ると言われても困る!」と思ったんですけど、それに応えるのが私たちの役割ですから。内心は不安でドキドキでしたが、北川さんの目を見たら、やっぱりあふれるものがあったので、乗り越えられました。―北川さんとご一緒されてみて、印象に残っていることはありますか?芳根さん実は、その時期は仕事でも私生活でも、モヤモヤして悩んでいたんですけど、特に誰にも言わずに過ごしていました。でも、そんななかで唯一そのことに気がついてくれたのが北川さん。そういう部分は、劇中の役の関係性と重なる部分はあったと思います。―実際、北川さんからはどのような言葉をかけられたのかを教えていただけますか?芳根さん 撮影が終わったあと、お食事に行かせていただいたときに「芳根ちゃん、大丈夫?悩んでるんじゃない?」と声をかけられて、私の心が全部見透かされているのかなと本当に驚きました。それは北川さんの観察力の高さや人柄でもあると思いますが、本当にパワーのある方なんですよね。北川さんにはたくさんのことを引き出していただきましたし、心が安らぐ瞬間を作ってくださる大好きな先輩です。あのときの私以上に、環菜を演じられる人はいない―女優の先輩としても学んだことは多かったですか?芳根さんそれもたくさんありました。プライベートでお会いしたときにも、「こういう女優さんになりたい」とか「こういうお芝居をしたい」とか、いつもいろいろなお話をさせていただいています。北川さんがいまの私の年齢の頃にどうだったかというお話も聞かせていただいたりしたので、おかげで将来に対する不安がなくなりました。―ステキな関係ですね。ただ、今回は精神的につらい役どころだったと思いますが、私生活に影響を与えることはありませんでしたか?芳根さんこの役はけっこう引きずりましたが、同時期にコメディのドラマを撮影していたので、それに救われました。どれだけ環菜でつらい思いをしていても、翌日には別の現場で周りの方たちが笑わせてくださっていたので。そういった感情の差も、今回はすごくおもしろいなと思ったところです。ただ、環菜のことを考えるだけで涙が出てしまうようなことが続いていたので、撮影が終わってから環菜とは距離を取るようにしました。それほどいままでで一番引きずった役だったかもしれないですね。―ご自身の女優人生においては、どのような作品になりましたか?芳根さんもちろん、どの作品も出会えてよかったと言えるものばかりですが、そのなかでもこの作品は特にその思いが強かったと思います。ちょうど悩んでいた時期だったからこそできた部分もあるので、あの時期の私以上に環菜を演じられる人はいないと言いたいくらい。いまの私にもできないかもしれないですね。でも、そういったことも含めていろいろなことを気づかせてくれた役なので、この先も続いていく芝居人生においてたくさんのことを教えていただきましたし、改めてお芝居の楽しさを味わうこともできました。ここから自分の人生が変わると感じられた作品にもなったと思います。これから観客の反応もひとつずつ吸収していきたい―そのほかの共演者の方とのやりとりで、思い出に残っていることはありますか?芳根さんまず中村倫也さんは、本当にこの役にぴったりな方だなという印象でした。監督からは話す相手が女性か男性かで変えてほしいと言われていたので、男性のときには少し媚びを売るような甘ったるい感じを出していますが、中村さんがステキな方だからこそ、演じやすいと感じる部分は多かったです。あと、お母さん役の木村佳乃さんは、現場にいらっしゃるとすぐにわかるくらい本当に明るくてパワーのある方だなと。とても気さくにお話してくださったので、それもうれしかったです。ただ、映像で木村さんを見たときは、あの恐ろしさにゾッとしました。でも、観る人にそういう恐怖心を与えてしまう木村さんの演技がすごく好きですし、私もいつかああいう役をやってみたいです。―法廷のシーンも非常に緊迫感がありましたが、撮影は大変でしたか?芳根さん実はあのシーンでも、面会のときと同様に脚本には泣くとは書いてませんでしたが、それでも込み上げてくるものがあり、独白のシーンでは段取りのときからすごく感情があふれてしまうことも。気持ちが落ちてしまうときもありましたが、監督が私に向かって冗談を言ってくださったりしたので、そういう監督の明るさにとても救われました。―この作品を経て、ご自身で成長を感じる部分などがあれば教えてください。芳根さん特殊な役でしたが、ここまで感情が持っていかれる役に出会えたことは奇跡だと思いました。自分としてはやり切っていても、実際に環菜を見た観客の方々の反応から得るものもあると思うので、それをひとつずつ吸収していきたいです。環菜を演じたことで、すでに自分からにじみ出ている部分もあるかもしれませんが、それが何かを言葉にできるようになるまではもう少し時間がかかるのかなと。それくらい受け止めるのがつらい役でしたし、いまもまだ一緒に生きている感覚なのかもしれません。いつか思い出として振り返れるようになったら、自分でも成長がわかるようになるのかなと思っています。仲良しの母が心の支えになっている―作品が終わると、いつもお母さまとお出かけするそうですが、今回はどのように過ごされましたか?芳根さんいつもだったら、「終わったー!」といって母と外食に行くんですけど、その時期はすごく忙しかったのと、作品が重たかったこともあって、家で母とずっと一緒に時間を過ごしました。物理的にも体力的にも余裕がなかったこともありますが、そういうこともいままではなかったので、この役に出会えたのは運命だったなと改めて感じています。―この作品は、母と娘に関する話もありますが、そういったことについても話されましたか?芳根さん私の母も涙もろいので、原作を読んだときに「環菜ちゃん……」と言って泣いていましたが、私が試写を見たあとに「すごく救われたし、環菜の未来が楽しみに感じられたよ」と伝えたら、また泣いてしまって(笑)。母は私が朝ドラに出演するようになったときくらいから、娘ではなくちゃんと役で見ることができるようになったと言ってくれて、純粋に作品を楽しんでくれているので、この作品もどんな感想を言ってくれるのか楽しみです。私にとっては母が心の支えであり、生きがいと言っても過言ではないほど本当に仲良しなので、母の存在に救われています。私の幼なじみからも、「こんなにポジティブで、パワフルで、明るい人はいままで見たことがない」と言われているくらいの母なんです(笑)。―芳根さんにとって、いま一番幸せを感じる瞬間はどんなときですか?芳根さん最近飼い始めたフェレットと家で一緒に遊ぶのが毎日の楽しみですね。私が出かけるときにいつもかわいい姿を見せてくれるんですけど、それを見るだけで「早く帰ろう!」と思って癒されます。―日常生活で欠かさずにしていることはありますか?芳根さんいままで美容に無頓着で、メイクもスキンケアもほとんどしたことがなかったんですけど、最近はメイクさんや美容に詳しい友達といろいろな情報を共有するようになりました。特に毎日パックをするようになってからは、今日はどのパックにしようかなと選ぶのが楽しくて、「ああ、私って女子だなぁ」と思えてうれしくなります(笑)。自分のファーストラヴって何だろうと考えている―では、「ファーストラヴ」と聞いて思い出すことがあれば、教えてください。芳根さん実は自分の初恋の記憶がないので、母に聞いてみたんですけど、「わからない」と言われ、幼なじみには「多分、小学校6年生じゃない?」と言われたくらい「私のファーストラヴって何なんだろう?」と考えているところです(笑)。というのも、子どもの頃の私は人見知りが激しくて、母の後ろから顔を出しているようなタイプだったので、あまり感情を出すこともなかったんですよね。なので、自分でも忘れてしまいました……。―(笑)。ちなみに、いまラヴなものといえば何ですか?芳根さんいまはフェレットのことしか頭にないかもしれませんね。頼まれてもいないのに、マネージャーさんやメイクさんたちに毎日写真を見せてます(笑)。―かわいいですよね。それでは最後に、理想としている女性像や今後の目標があれば、教えてください。芳根さん私は、北川さんのような女性になりたいと本当に思っています。私が大したことない話をしても毎回ちゃんと答えてくださったり、優柔不断な私に的確なアドバイスをくださったり、あの美しさは心から出ている美しさもあるんだなと感じているからです。しかもそれでいてお母さんでもあるなんて、本当に憧れます。将来、私も結婚して子どもを持つかもしれないですけど、あんなふうになりたいなと。私もがんばろうと思って、最近北川さんと同じジムに通い始めました。ただ、一向に北川さんにはなれないので、次は何をしたら北川さんになれるのかを今度聞いてみたいと思います(笑)。インタビューを終えてみて……。仕事のことからプライベートのことまで、目をキラキラと輝かせて話す姿が印象的な芳根さん。この作品と北川さんとの出会いがいかに大きかったかをひしひしと感じました。誰もが釘づけになってしまう芳根さんの熱演をぜひお見逃しなく!心を揺さぶり、刺激する!先が読めない展開と環菜に翻弄されながら、たどり着く“衝撃の真実”。気がつけば、誰もがさまざまな問いと向き合わずにはいられないはず。あなたも心の奥にある隠し続けてきた“愛の記憶”を呼び起こしてみては?写真・北尾渉(芳根京子)取材、文・志村昌美スタイリスト:藤本大輔(tas)衣装協力:beautiful people(beautiful people 青山店 03-6447-1869)/JIMMY CHOO(JIMMY CHOO 0120-013-700)/talkative(talkative 03-6416-0559)ストーリーアナウンサー志望の女子大生・聖山環菜が、著名な画家である父を刺殺するというセンセーショナルな事件が発生。しかも、「動機はそちらで見つけてください」という環菜の挑発的な言葉が、世間をますます騒がせてしまう。その後、事件を取材することになった公認心理師の真壁由紀は、夫の弟で環菜の弁護士でもある庵野迦葉とともに、彼女の本当の動機を探ろうと面会を重ねることに。二転三転する供述に振り回されながらも、由紀は過去の自分と似た“何か”を感じていた。そして、由紀が封印していた記憶をさらけ出したとき、環菜がついに驚くべき真実を語り始めることに……。胸がざわつく予告編はこちら!作品情報『ファーストラヴ』2 月11 日(木・祝)より 全国ロードショー北川景子中村倫也芳根京子板尾創路石田法嗣清原翔 ・ 高岡早紀木村佳乃窪塚洋介監督:堤幸彦脚本:浅野妙子原作:島本理生『ファーストラヴ』(文春文庫刊)音楽:Antongiulio Frulio主題歌・挿入歌:Uru「ファーストラヴ」「無機質」(ソニー・ミュージックレーベルズ)配給:KADOKAWA製作:『ファーストラヴ』製作委員会制作:角川大映スタジオ/オフィスクレッシェンド公式Twitter @firstlove2021公式Instagram @firstlove2021 #ファーストラヴ© 2021「ファーストラヴ」製作委員会写真・北尾渉(芳根京子)
2021年02月08日凄腕弁護士が奇妙な遺言に遭遇し…超大型新人・新川帆立さんによる、痛快なミステリー『元彼の遺言状』とは?「女性が読んで楽しめるものを書きたかったんです。従来のミステリーで描かれがちな、男性に都合のよい美人ではなく、女性が憧れる女性を主人公にしたかった」精神的にも経済的にも自立、バリバリ働きがっつり稼ぎ、10億円くらいじゃなびかない――突き抜けすぎていて痛快な女性弁護士、剣持麗子。新川さんの「このミステリーがすごい!」大賞受賞作にしてデビュー作の主人公である。新川さん自身も弁護士として働いてきたが、ずっと小説家を志望していたという。「司法試験に受かった後に弁護士事務所に入ったのですが、残業が多くて書く時間がなくて。転職し、2年ほど前から本格的に書き始めました。ジャンルはこだわっていなかったのですが、『このミステリーがすごい!』大賞に応募したものが一次にも通らずに悔しくて、そこからちゃんとミステリーに取り組みました」麗子の元彼で製薬会社の御曹司が死去。その遺言は、「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という奇妙なもの。麗子は知人に依頼され、分け前をもらうべく犯人を仕立て上げようと奮闘。犯人を捜すのでなく作る、というのが斬新な設定だ。「過去の受賞作や選評を読み、ミステリーとして新しい謎を用意する、キャラクターを立てる、といった要素が必要だと考えていきました」強気で聡明な麗子の人物像は、インパクトを狙っただけではない。「自立したいと思ってゴリゴリ働いてゴリゴリ経済を回している女性はたくさんいるのに、エンタメ小説にはあまり出てこない。だからこそ主人公像はそこを起点に考えました」かといって、いわゆる“女を捨てている”タイプではなく、恋愛だってしている。「仕事と恋愛って二者択一じゃないですよね。今は仕事もしつつ女性としても楽しんでいる人が多い。小説に出てくるキャリアウーマンは男勝りで肩ひじ張っている形で描かれやすいけれど、現実はその先をいっている、という思いがあります」元彼の親族やら元カノやら、個性あふれるキャラクターが登場し、物語は意外な方向へ。女性も多数登場するが、安易に麗子と対立構造にならないのも従来のエンタメとは違う。「女の敵は女、という言葉がありますが、私は嘘だと思っています。私のまわりではそんなことは全然起きなくて、みんな立場の違う相手を尊重しています。そうした、私に見えている世界を書きたかった」それにしても遺言の真意は何か。法律上有効なのかも気になるが…。「ありえなくはないギリギリのラインを考えました。ハッタリ芸です(笑)。ただ、一応私も法律家なので、あからさまな法的誤りがないように考えています」発売前から評判だった本作、すでにシリーズ化が決定。「応募した時に続編はまったく考えていなかったんです。なので編集部から提案されて最初は焦りましたが、今は3作目まで構想しています」今年の秋までには2作目を刊行したいという。麗子も大物だが、新川さんも今後、驀進していきそうな予感大。超大型新人にご注目を。しんかわ・ほたて1991年、テキサス州生まれ、宮崎県育ち。東京大学法学部卒業。弁護士として働きながら本作で「このミステリーがすごい!」大賞を受賞しデビュー。『元彼の遺言状』凄腕の弁護士の剣持麗子。学生時代の恋人が奇妙な遺言を残したため、莫大な遺産の分け前をもらうべく行動を開始するのだが――。宝島社1400円※『anan』2021年2月3日号より。インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2021年02月01日「ゲーム・オブ・スローンズ」のユーロン・グレイジョイとして知られるピルー・アスベックが出演する、北欧のクライム・ミステリー「The Investigation」(原題)がAmazon Prime Videoチャンネル「スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-」にて3月より独占日本初配信することが決定。予告映像とピルーからのコメント動画が到着した。本作は、2017年8月にスウェーデンの女性記者がデンマークの発明家を取材するため彼が自作した潜水艇に乗り込み、出港したまま行方不明となり、コペンハーゲン近海で切断遺体となって発見されるという事件をドラマ化。世界を震撼させた、このデンマーク史上最も残酷な”潜水艇事件”を、捜査を担当したベテラン捜査主任の視点で描いた。容疑者の名前すら一切出さず、殺人を立証するために捜査に関わったあらゆる者たちの努力や苦悩にスポットライトを当て、2020年北欧諸国で高い評価を得たクライム・ミステリー。いま注目のデンマーク人監督トビアス・リンホルムの最新作第88回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた『ある戦争』(15)、主演のマッツ・ミケルセンがカンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞した『偽りなき者』(12)、第25回東京国際映画祭コンペティション部門上映『シージャック』(12)、Netflix人気シリーズ「マインドハンター」や「コペンハーゲン/首相の決断』など、数々のヒット作を手がけた新進気鋭の監督トビアス・リンホルムの最新作。本作の制作にあたり、被害者と遺族を尊重し被害者の両親の承諾を得ることを重んじたリンホルム監督は、 彼らの理解と協力を得て、捜査の過程を忠実に再現したという。北欧を代表する役者たちのアンサンブル捜査を指揮するコペンハーゲン警察のイェンス・ムュラー捜査主任を演じるのは、デンマークで数々のTVドラマに出演しリンホルム監督作品の常連でもあるベテラン俳優ソーレン・マリン。そして彼と対立する検察官を「ゲーム・オブ・スローンズ」や『ゴースト・イン・ザ・シェル』などで知られ、彼もまたリンホルム監督作品の多くに出演しているピルー・アスベック。そして被害者の母役を『スター・ウォーズ』シリーズでアナキン・スカイウォーカーの母を演じ、『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』にも出演したペルニラ・アウグスト、父役を『ソニア ナチスの女スパイ』『幸せなひとりぼっち』のロルフ・ラッスゴードというスウェーデンの名優たちが演じ、凍てつくコペンハーゲンの海を舞台に痛ましい殺人事件の捜査過程と遺族や捜査関係者の苦悩をリアルに描いている。デンマークの放送局TV2が2020年9月に放送した初回は74万8,000人(リニア放送)に視聴され、同局のプライムタイム平均を43%上回る最高記録をマーク。夜8時の時間帯シェア42%を集め、2020年デンマークで始まった新作クライムドラマの中で最高視聴率を獲得した。この度、予告映像とピルーからのコメント動画が本邦初公開。凄惨な事件に巻き込まれたスウェーデン女性記者に触れ「彼女のために力を尽くした影の英雄たちの姿を描いた作品」と語っている。「The Investigation」(原題)はAmazon Prime Videoチャンネル「スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-」にて3月配信。(text:cinemacafe.net)
2021年01月24日シアーシャ・ローナンが主演を務める殺人ミステリー映画(タイトル未定)に、エイドリアン・ブロディの出演が決定した。「The Hollywood Reporter」が報じた。今作の舞台は1950年代のロンドン劇場地区。ハリウッドのあるプロデューサーが、ウエスト・エンドの人気舞台を映画化しようと動く中、製作メンバー内で殺人事件が発生。物事を投げやりに考えがちの厭世的な警部補(サム・ロックウェル)とやる気みなぎる新人刑事(シアーシャ)が、犯人探しに奔走する。エイドリアンは、「ブラックリスト入りしているハリウッドの映画監督」を演じるという。また、役柄は不明だが、デヴィッド・オイェロウォの出演も決定している。キャストは、オスカーに4回ノミネートされたシアーシャ、アカデミー賞助演男優賞を受賞したサム、ゴールデングローブ賞に2回ノミネートされたデヴィッド、そして『戦場のピアニスト』でアカデミー主演男優賞を受賞したエイドリアンという名優ぞろい。製作は『スリー・ビルボード』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ジョジョ・ラビット』と賞レースに絡んだ作品を生み出してきた「サーチライト・ピクチャーズ」が行う。監督は「ハンク-ちょっと特別なボクの日常-」のトム・ジョージ、脚本はNetflixドラマ「フレークド」のマーク・チャペル。(Hiromi Kaku)
2020年12月15日2021年3月にABCテレビにて『マーダー★ミステリー ~探偵・斑目瑞男の事件簿~(仮題)』が放映されることが決定した。「マーダー・ミステリー」とは、その場で渡された設定を読み込んで殺人犯を探すという即興舞台の体験型ゲームのこと。中国ではバラエティ番組をきっかけに大ブームとなっており、日本でもすでに数多くのオリジナル作品が制作されている。「リアル脱出ゲーム」や「人狼ゲーム」に続く次世代の体験型ゲームと言われているものだ。『マーダー★ミステリー ~探偵・斑目瑞男の事件簿~(仮題)』では、巷で話題となっているこのゲームをベースに、出演者が即興芝居に挑戦。演者たちは隠れた犯人を探し出し、また犯人役はバレないように嘘をつく。謎解きをしながらという特殊な状況の中で、即興によるドラマが展開していくというスリリングな「ミステリードラマ」であり、ある意味「ドキュメンタリー」ともいえる、かつてない画期的なドラマコンテンツとなっている。番組では、この即興ドラマに挑戦する俳優を募集するオーディションを実施。「有名無名は関係なく、実力ある役者たちの中から新たなスターが誕生する、役者たちのジャパニーズドリームとなる番組を目指している」という。応募の詳細は以下の通り。ぜひチェックしてみて欲しい。【スケジュール】■エントリー期間:10月19日(月)~11月30日(月)締め切り●12月⇒1次選考・応募フォーム( )に各項目を入力し、写真&課題動画を添付してください。●翌1月⇒2次選考@東京・大阪にて開催・オーディション用のマーダーミステリーゲームを体験して頂きます(所要時間3時間程度)・7名1組で東京・大阪で数回開催します。●2月⇒2次選考を勝ち抜いた7名で本番収録@大阪予定●3月中旬⇒地上波放送【応募要項】▼応募資格プロ・アマ、所属事務所の有無、年齢など一切不問です。▼応募方法以下応募フォームからエントリーに必要な項目を入力し、静止画や課題動画を添付してください。※ほか詳細は応募フォームを参照のこと。
2020年11月24日プチョン国際ファンタスティック映画祭で観客賞を受賞した韓国のミステリー映画『真犯人』が、「ワールド・エクストリーム・シネマ2020」内にて1週間限定で上映されることが決定。ショッキングすぎるポスタービジュアルと予告編も到着した。ある夜、ヨンフンの妻のユジュンが何者かに殺害された。容疑者として逮捕されたのは、彼の親友ジュンソン。2人は不倫関係にあったという。事件から半年が経ち、ヨンフンのもとをジュンソンの妻が訪ね「夫の無実を証明したい」と言ってすがる。疎ましく思いながらも、ヨンフンはわずかに心を動かされる。全てを懸けて真実を明らかにする決意をしたヨンフンは、ある男にたどり着く。だが裁判はまもなく終わろうとしている。焦るヨンフンは彼を拉致し、拷問を始める。男の口から語られたのは思いも寄らない真実だった――。ある不可解な殺人事件をきっかけに、運命を狂わされてゆく男女を描き、最後まで先の読めないミステリーとして多くの観客の心を掴んだ本作は、韓国で興行収入ランキング2週連続トップ10入りのスマッシュヒットを記録。監督・脚本を務めたのは、今作が長編初監督作品となったコ・ジョンウク。主演は『花、香る歌』『七年の夜』のソン・セビョクと、『幼い依頼人』のユソン。ほかにもオ・ミンソク、ハン・スヨンらが出演している。到着したスピーディーに展開していく予告編では、妻が殺されたショッキングな場面からスタートし、ジュンソンの妻が夫の無実を訴えるシーンや、「お友達に利用されたんだよ」という気になるセリフも登場している。『真犯人』は11月27日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷「ワールド・エクストリーム・シネマ2020」にて上映。(cinemacafe.net)
2020年10月16日天祢涼さんの『あの子の殺人計画』は、社会派とホワイダニット(犯行の動機を解く)が融合したミステリー『希望が死んだ夜に』のシリーズ第2弾だ。追い詰められる子どもや女性など弱者に光を当てる社会派ミステリー。「『希望~』で事件解決に大きな役割を果たした生活安全課の女性刑事・仲田巡査部長にまた活躍してもらいたいと思い、彼女の再登場は最初から頭にありました。所轄の刑事課・宝生巡査部長とのコンビで一度は書き上げたのですが、誰に事件を語らせるかを考えたときに、前作で仲田と組んだ神奈川県警刑事部の真壁が適任と判断して書き直しました」捜査を進めるうちに、椎名綺羅が一時期、殺された風俗店のオーナー・遠山菫が経営していた〈ラバーズX〉で働いていたことがわかる。だが綺羅はアリバイを主張。娘・きさらの証言もそれを裏付けているのだが…。一方で、きさらは自分が母から受けている〈水責めの刑〉などが躾ではなく虐待ではないかと思い至る。味方になってくれた翔太の言葉に感化され、ある計画を練り始める。「現実にはもっとひどい虐待もあるかもしれない。でも『この程度で、子どもがそんな大それたことを考えるだろうか』と読者に疑問を持たれたら、物語が成立しない。その案配が難しかったですね。なので、小芝くんのような目立つ貧困児童を置いたことも腐心した点のひとつ。それによって、そこそこ普通に見えてしまうきさらのような子の虐待は見逃されやすくなると思ったんです」本作では、謎解きの要素もたっぷり。真壁、宝生、仲田が追うのは、遠山殺しの犯人であり、動機であり、トリックだ。そこに、現代の貧困や貧困からくる虐待など社会問題が絡み合う。重層的な展開が魅力。「『希望~』ではじわじわ追い詰められていく少女たちの境遇や感情に読者は揺さぶられたと思うのですが、その分、大人のつらさにはあまり触れることができなかった。その反省もあったので、今回は大人の事情や問題も盛り込みたいと思いました」ある時期まで、貧困や虐待などの社会問題はノンフィクションのほうが向いていると考えていたそう。だが、本シリーズの反響の大きさから、いまは思いを新たにしている。「フィクションにしかできない伝え方があるとわかりました。これからも書いていきたいテーマです」あまね・りょう1978年生まれ。2010年にメフィスト賞受賞作『キョウカンカク』でデビュー。’19年『希望が死んだ夜に』で本屋大賞発掘部門で最多票を獲得。『謎解き広報課』など著書多数。『あの子の殺人計画』貧しい母子家庭で育つ小学5年生の椎名きさら。ある日、川崎の風俗街の狭い路地で、大手風俗店の女性オーナーの刺殺体が発見される。文藝春秋1650円※『anan』2020年7月1日号より。写真・土佐麻理子(天祢さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2020年06月24日