ロゼレムとは出典 : ロゼレムは、不眠症で入眠に難しさを抱えている成人に処方される睡眠改善薬です。不眠症とは、睡眠問題が1ヶ月以上続き、日中に倦怠感や意欲低下、集中力低下、食欲低下などの不調が現れる病気のことです。不眠といっても症状はひとつではなく、4つのタイプに分けられます。眠りに就くことが難しい「入眠障害」、寝ている途中で何度も起きてしまう「中途覚醒」、朝早くに目が覚めてしまう「早朝覚醒」、睡眠時間は十分なのに睡眠の質が悪く休んだという実感が得られない「熟眠障害」です。睡眠に問題があると、日中に眠くなってしまって勉強や仕事に集中できないなど、日中の活動にも影響を与えてしまいます。さらに、発達障害のある人は幼少期から睡眠に問題を抱えることが多いことが分かっています。ADHDのある人の85%が日中の眠気か睡眠に問題を抱えていることも報告されています。睡眠の問題はADHDのある人だけでなく、自閉スペクトラム症のある人も同様に睡眠の問題を併せ持つ場合が少なくありません。発達障害のある人の睡眠問題には、体内で分泌されるホルモン「メラトニン」が特に有効であると考えられており、ロゼレムはメラトニンと同じ働きで睡眠を改善する効果があります。 Young Rosalia Yoon et al.(2013). Sleep and daytime function in adults with attention-deficit/hyperactivity disorder: subtype differences. Sleep Med . 14(7):648-55.厚生労働省『e-ヘルスネット不眠症』どのような仕組みで効果があるの?それではメラトニンは、睡眠にどのように作用するのでしょうか。睡眠には2つのメカニズムが関わっています。ひとつめは「脳が疲れたから眠くなる」メカニズムです。起きて活動すればするほど脳は疲れ、老廃物の一種である睡眠物質が蓄積されていきます。この睡眠物質がたまってくると、脳神経に働きかけて催眠鎮静作用が発揮されて眠くなるのです。もうひとつは「夜だから眠くなる」メカニズムです。私たちは普段寝ている時間になると、自然と眠くなりますよね。これには、脳の視床下部の視交叉上核というところに存在する体内時計が関わっています。夜になると体内時計が指令を出すことで、メラトニンが分泌されます。メラトニンが分泌されると、体の内部の体温や血圧が少しずつ下がり、眠りやすい状態に導き睡眠を促してくれるのです。反対にいつもと同じような時間に目覚めるのも、この体内時計の働きによるものです。体内時計の指示でメラトニンの分泌が止まって体の内部の体温が少しずつ高まり、一定レベルを超えると目覚めます。つまり、メラトニンが分泌されると自然な眠りを誘い、メラトニンの分泌が止まると目覚めるようになるんですね。このようにメラトニンは睡眠に大きく関わっていることから、睡眠ホルモンとも呼ばれています。人は目覚めて朝陽を浴びると体内時計がリセットされ、目覚めから14時間~16時間くらい経つと、体内時計が指令を出してメラトニンを分泌し、自然な眠りにつくことができます。ところが、光を発する電子メディアの見過ぎなど何かの理由でこのメカニズムがくずれてしまうと、睡眠に問題が生じて不眠症を引き起こしやすくなってしまうのです。メラトニンは光によって抑制されます。ロゼレムの有効成分ラメルテオンは、メラトニンを受け取るタンパク質の「メラトニン受容体」にくっついて作用し、メラトニンと同じ働きをします。つまりロゼレムを服用すると、体内時計の針を調節することができるわけです。たとえば望ましい就寝時刻よりも前にロゼレムを服用すると、体内時計の針が早まって体内での夜が早く訪れます。結果として、いつもよりも入眠時刻が早まり、眠りにつくのを改善します。眠りのリズムを整えることで睡眠の問題を改善するのです。武田薬品工業株式会社『体内時計と睡眠の仕組みメラトニンとは』ロゼレムの使用方法・用量は?・用量:1錠(ラメルテオンとして1回8mg)・用法:1日1回就寝前に経口投与・成人※監修者注:通常15歳以上からの適応となるが、18歳以上からが望ましい以下に該当する人には、ロゼレムは使用できません。・ラメルテオンに過敏症となってしまったことのある患者・高度な肝機能障害のある患者(肝臓で代謝されるため、有効成分の血中濃度が上昇してしまい、作用が強くあらわれる恐れがある)・フルボキサミンマレイン酸塩(SSRI)を服用している患者(販売名:ルボックス、デプロメール)また使用するにあたっての注意事項は、以下の3つです。・服用開始から2週間後をめどに、効果があるかを医師が確認します。効果が認められない場合には、服用を中止するかどうか医師が判断することとなっています。・服用は、必ず就寝前です。寝たい時間の直前に服用することで効果がみられます。なお、少しだけ寝たら起きて仕事をするなど、途中で起きる予定のある場合には服用を控えます。・服用する際は、食事と同時・食事直後は避けることです。食事と同時、もしくは食事直後にロゼレムを服用してしまうと、有効成分の血中濃度が下がり効果があまり出なくなってしまうからです。独立行政法人 医薬品医療機器総合機構『ロゼレム錠8mg』ロゼレムの副作用と注意点出典 : ロゼレムは、国内で販売されてから一定の期間が経過しているため、その安全性と有効性を確かめる再調査が行われています。ロゼレムを1回(ラメルテオンとして8mg)投与された3,223例のうち、109例(3.4%)に副作用が認められました。確認された主な副作用は、傾眠(1.2%)、浮動性めまい(0.7%)、倦怠感(0.3%)です。ロゼレムを服用した翌朝以降にも、薬剤の影響が残る場合があります。眠気、注意力・集中力、反射運動能力が低下する可能性があるため、車の運転など危険を伴う作業は行わないようにすることが必要です。海外でアナフィラキシーショックが起きたとの報告があります。出現回数がとても低く極めてまれであることから、頻度は不明ではあるものの注意が必要です。服用後に、じんましんや血管が浮き出てくるようなことがあれば、すぐに使用を中止し、医師に相談してください。他の睡眠薬とどう違うの?睡眠薬には、大きく分けて3つの種類があります。1.ひとつめは、先ほど説明したひとつめの睡眠のメカニズム「脳が疲れたから眠くなる」に働きかける薬です。これまで多く使われてきた薬の多くは、このメカニズムを利用しています。高い効果が認められる一方で、依存性があることから長期使用では注意が必要と言われています。2.ふたつめは、今回ご紹介するメラトニンによって体内時計を調節することで、入眠の困難を改善する薬です。ロゼレムの他には、「メラトベル」があります。メラトベルは、2020年に発売された、6歳から15歳までの神経発達症のある子どもに対して処方される入眠改善です。メラトベルは、その有効成分がメラトニンそのものである一方、ロゼレムはメラトニン受容体作動薬であり、メラトニンそのものではありません。 一般に受容体作動薬は小児には適用されません。3.最後は、睡眠と覚醒を調整する神経伝達物質「オレキシン」を受け取るタンパク質である「オレキシン受容体」に作用する薬です。過剰に働いてしまっている覚醒を抑えることで、睡眠を促します。比較的早くに効果があらわれ、依存性は少ないと考えられています。鹿児島市医報『ベンゾジアゼピン受容体作動薬について』(2020)59(10): 7-8まとめ今回は、不眠症で入眠に困難のある15歳以上の成人に対して処方される睡眠改善薬「ロゼレム」をご紹介しました。日本で発売されてから10年以上にわたって使用実績のある薬で、再調査でもその安全性と有効性が確認されています。ロゼレムは睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンの受容体に働きかけることで、体内の時計の狂いを調節して睡眠リズムを整えます。薬の服用にあたっては、生活習慣を改善させることもとても大切です。
2021年05月07日みんなが楽器の演奏を楽しんでいるときに息子は…!?Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。みなさん、こんにちは。今回はADHDと広汎性発達障害がある息子、リュウ太が保育園に通っていたときの困りごとをお届けします!5歳のとき、リュウ太は園生活の中で一番気持ちが荒れていた時期でした。リュウ太は大勢の中に混ざって生活することが嫌いではないのですが、周りに合わせて行動することができませんでした。みんなが先生の伴奏に合わせて楽器の演奏を楽しむ時間も、床に寝そべって自由に一人遊びをします。自分がやりたいことが最優先でムリに周りに合わせるとイライラしてしまう特性があるため、先生はリュウ太の特性を理解していてか演奏に参加させず好きにさせてくれていました。Upload By かなしろにゃんこ。このように一人で遊んでいるときは穏やかに落ち着いて過ごせるのですが、周りの子に自分の遊びを干渉されることがとても苦手で、遊んでいる最中に話しかけられたりするとイライラしてしまったり、しつこくちょっかいを出されるとパニックになってオモチャを投げてしまったりすることもありました。Upload By かなしろにゃんこ。息子が自分の気持ちを人に話せるようになった小学校高学年のときに、保育園時代の話をしたことがあります。「ボクに話しかけたり遊びの邪魔をしたりしないでくれたら、お母さんがお迎えに来る時間までなんとか頑張って教室にいられるけれど、たまにどうしようもなく教室にいたくないときがあった。そんなとき、先生が特別に廊下に出てもいいよと言ってくれた。廊下にいると楽だった」とリュウ太は話してくれました。保育園では教室から出てはいけない決まりでしたが、リュウ太は教室にずっといると周りの子とどうしても争いが生じてしまい、先生に何度も注意されても勝手に廊下に出てしまうことがありました。そんな息子に先生がつくってくれたのは…Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。そんな先生が根負けしてか?「ここがリュウ太くんの場所です」と仕方なくお昼寝布団が積んである廊下の半畳ほどの場所を、特別にカームダウンスペースとしてつくってくれたのでした。リュウ太は周りの子たちから逃げてきたときに、一人で過ごす時間と場所ができて楽だったようです。私も先生がリュウ太を他の子と引き離して過ごさせてくれたことでホッとしました。保育園に通っている期間は、周りの子とケンカしたらどうしよう、パニックになってオモチャを投げて誰かをケガさせたらどうしよう…と毎日ドキドキしていましたからリュウ太が一人で落ち着いて過ごせる場所をつくっていただけたことは感謝でした!悩んでいた私を励ましてくれた園長先生の言葉Upload By かなしろにゃんこ。その他にもリュウ太がイライラしたときに、気分転換できるようにたまに職員室にいさせてもらうこともありました。園長先生や事務の先生と話したりして(女の人が大好きなリュウ太のことだから多分べったり甘えていたに違いないと思います)かわいがってもらっていました。担任の先生は常に忙しそうでしたので相談がしにくかったのですが、迎えに行ったときにリュウ太が園長先生にかまってもらっているときは園長先生とお話しができました。園長先生は「リュウ太くんは今はとても手がかかる子かもしれないけれど、何をしたいのか主張がハッキリしているから分かりやすくていいのよ。自分の欲求をきちんと伝えられなくて思春期に急にキレてしまう子もいるけれど、イライラしたりする主張ができることは悪いことじゃないんですよ」と教えてくれました。Upload By かなしろにゃんこ。リュウ太と周りの子の度重なるイザコザで通園に疲れ、「保育園やめようかな…」と落ち込んでいたときだったのでこの園長先生の言葉にはとても励まされました。集団生活の中で周りと歩調を合わさず、先生の指示にイヤ!とハッキリ言ったり、自分は今コレをやりたいと勝手に一人で遊んだりする息子のことを私は『協調性がなくて困る』と感じ、『子どもの主張=わがまま』だとしか思っていませんでした。しかし、『主張=自分らしさの表現』こういう見方もあるんだと教えてもらったのでした。この自分らしさの表現は、成長や自立に欠かせないエネルギー。生涯にわたって他者と交流する際に必要な力であると気がついたのはそれから更に数年後になるのですが、大切なことなんですね♡その後もたびたび園長先生に「卒園まで頑張って通いましょうね」と引っぱってもらって通園を続けることができたのでした。リュウ太の主張を受け入れ、カームダウンスペースをつくってくれた担任の先生の配慮にも感謝感謝でございます。
2021年04月27日配信するための条件をきちんと決めたことUpload By スガカズわが家の発達凸凹の長男と次男は、半年ほど前からパパの管理の元YouTube配信をしています。 私は「子どもたちが余計なひとことを話すのでは」と心配で仕方がありませんでした。そこで、前回のコラムでお話したように、発達凸凹の息子たちがYouTube配信を始める前に「配信するためのルール」をきちんと決めることにしました。親子で決めたルール・親が必ず配信を管理、同伴・ゲームの前は必ず勉強(習い事もがんばる)・配信、ゲームに使う時間を守る・言葉遣いや個人情報に気をつける・親子で継続する保護者として「やらなければいけないこと」がおざなりにならないようにしてほしかったからです。いよいよ配信スタート!最初は心配していたけれど…Upload By スガカズUpload By スガカズADHDとLDのある小4次男はゲームとYouTubeが何より大好き。そんな彼は配信を始めてから帰宅してすぐ宿題に取り掛かったり、習い事にもすんなり行くようになりました。もともと小2のころから、「将来YouTuberになりたい!」と強く思っていたため、配信できることが本当にうれしかったようです。今まであんなに苦手なこと(主に勉強)に対して気持ちがのらなかったのに…あんなに私が苦労して行動を促していたのに…。「本当にこの子はうちの子なの?」と思うほどの変化に、私は非常に驚きました。一方、ADHDとASDのある中一長男はというと、YouTube配信は少し気になっていた程度だったので、分かりやすい行動の変化はありませんでした。ですが、YouTube配信を続けるうちに、長男・次男にやらせて良かったと思える機会ががたくさんありました。SNS(YouTube)で得られた3つのことUpload By スガカズ最初のうちは視聴者がいなかったので親子でなにげないトークをしていましたが、続けていくうちに初めての人や常連さんも来るようになりました。気に入ったらチャンネル登録してくれるので、継続していくうちにライブ配信のチャット上で常連同士の会話が繰り広げられます。配信者(パパと子どもたち)は、ゲームをしながらチャットの内容を確認し、視聴者と会話することが多いです。管理者のパパが率先して話しているのですが、その様子を見て「知らない人と話すことの難しさ」と「わざわざ見に来てくれることへのうれしさ」を感じ、「これからも見に来てほしいから頑張って喋りたい」という意欲につながっていました。Upload By スガカズ投稿された動画を確認すると、自分自身の話し方や場の雰囲気を振り返れたり、そのとき取った行動の理由を私に説明する機会が増えます。うまく喋れなかったとしても、保護者が管理しているためパパがフォローしてくれますし、本人も「人が嫌な気持ちになる発言はしない」というルールを意識するため、初めての人との会話をするにはちょうど良い環境でした。Upload By スガカズYouTubeに限らず、SNSでは時々、「会ったことがない相手にいじわるをする人」に遭遇することもあります。そういった場面は子どもたちは直接経験しませんでしたが、パパが経験したときの様子を後日動画を見せて説明し、対処方法を教えることもできました。子どもたちは、「こんな人もいるんだ」と理解できます。この先子ども1人でSNSを利用する前に指導できたことは良かったのだろうと思います。配信を半年以上続けて現在は…Upload By スガカズ半年以上続けて現在は、親子で違うゲームをする機会が増えたり、タイミングが合わないこともあって、可能なときに配信している状況です。当初頻繁に配信していた次男よりも長男が細く長く継続しています。今回の経験で、発達凸凹の子どもたちは、ゲームやYouTubeに行動を妨げられやすいからこそ、教育に利用しやすいのかもと思いました。特に、わが家の次男のように、YouTuberにあこがれているお子さんには合っているのかもしれません。ですが、そもそも配信を始めるのが難しいという家庭も多いのではないかと思います。そんな場合でも、配信者ではなく視聴者側として…例えばYouTube(SNS)のチャットで知らないだれかとつながって会話するのも立派なSSTになると思いました。
2021年04月10日【今週の悩めるマダム】私の夫はADHD(注意欠如・多動性障害)の疑いがあり、片付けができません。仕事もできて穏やかな人なのですが、なかなかものを捨てられず、指摘したり手伝おうとすると怒鳴られます。部屋が汚なすぎてこの10年は友人どころか両親すら呼べません。あと30年もこの家で暮らすのかと思うとゾッとします。(50代主婦)ADHDはなかなかデリケートな病ですからね。根本的に治ることはないと言われていますし、ご家族の苦労もよくわかります。これは非常に難しい問題ですね。手伝おうとすると怒鳴られるということですが、たしかに苦しい状況ですね。しかし、ご主人が病気の疑いがあるなら、正攻法では厳しいでしょう。奥様はこれまでとは違うアプローチでご主人と向き合ってみる必要があるかもしれません。少し話が逸れますけれど、奥様がここに書かれた相談内容、実は、僕にも当てはまるのです。片付けはやろうと思えばできますが、好んでやらないので、部屋は散らかりっぱなし。まぁ、ある意味、僕は仕事も好きですし、どちらかというと穏やかな性格です。でも、なかなかものを捨てられず、家は謎のもので溢れかえっています。とくに箱が捨てられず、部屋の一角に木箱が積み上がっているのです。例えば、お茶の入った木箱とか、湯呑みの入った木箱とか、ワインの木箱とか、絶対捨てられないのです。息子に「なんでこんな意味のないもの、集めているの?」と聞かれ、「お前にはわからないんだ。もったいないし、いつか使えるかもしれないじゃないか」と答えている自分、たしかにちょっとおかしいですね。もっとも怒鳴り散らすことはありませんけど、息子には呆れられています。と、ここまで書いて気がつきました。僕の周りの同世代の男性はこの傾向に当てはまる人が多いです。なので、ご主人はADHDの疑いがあるのかもしれないですが、僕とそれほど変わらないということにもなります。僕も病院に行ったらADHDと診断されてしまうかもしれないですね。知り合いに、「辻さんは、多動症の気がありますよね」とよく指摘されています。ご主人も自分のどこが病気なのか、わかっていない可能性があります。そうだとしたら、まずはしっかり話し合って、理解し合うことが重要です。その上で、お医者さんのアドバイスをもとに、日常生活のなかで病と向き合う生活へとシフトしていくのがよろしいかと思います。人間の心というのは、とてももろく、わかりづらいものです。この10年という歳月のなかで、ご主人の心にどんな変化があったのでしょうか。詳しい状況はわかりませんが、奥様一人ですべてを抱えて頑張っていくのはあまりに過酷じゃないでしょうか?ご両親が健在ならば相談し、ご家族やご親戚の力を借りて、もしくは医師や専門家の力を借りて、ご主人の心に寄り添ってみるという方法もあります。楽しかった日々もあるわけですから、そのことを心の支えに、もう少し頑張ってみてもいいかもしれません。別れる・別れないの最終的な結論はその後でもいいように思います。とにかく一人で背負わないようにしましょう。【JINSEIの格言】奥様一人ですべてを抱えて頑張 っていくのはあまりに過酷じゃないでしょうか?ご両親が健在ならば相談し、ご家族やご親戚、もしくは医師や専門家の力を借りる方法もあります。
2021年03月30日今年度は友達がグンと増え、穏やかに過ごせた一年でしたUpload By スガカズADHDの次男は、小3までクラスメイトや先生との関わりでハラハラすることばかりだったのですが、今年度の小4は先生やクラスメイトにもとても恵まれており、穏やかな時間を過ごせました。お陰で、クールダウンがとても上手くなり、友達を想いやる姿を見られた1年だと感じています。少し前のことです。次男に、「小学5年生になるの楽しみ?」と聞くと、「楽しみじゃない」と…。「どうして?勉強が難しくなるから?」とさらに聞くと、「違うよ。だって今の先生じゃなくなるし、友達とも別々になるから。次の担任の先生と合うかわからないから。自分は怒られたら逃げたくなってしまう。だから優しい先生が良い」という次男。自分を客観的に見られる様になってきたなぁと感心しました。発達障害のある子どもたちに必要な「合理的配慮」わが家の次男の場合次男が通う小学校は、1学年の人数が120名程度。年度の人数によって3クラスか4クラスに分けられます。1クラス30~40人程度の生徒を先生1人で受け持っており、おそらく学校側の配慮があり、毎年慎重に編成が行われているのだろうなと感じます。【気づき その1】次男と似ているタイプのお友達とは同じクラスにしない方が良さそうUpload By スガカズ次男は白黒思考で、自分の意に反したことを指摘されることを嫌います。自分なりの正義感をもっており、「これは良くないぞ」と思ったときに、人に指摘してしまいます。一度、似た特性をもったお友達とクラスメイトになった年があり、お互いの意見がぶつかり合ってしまいケンカが絶えませんでした。Upload By スガカズケンカが多いなら離れることも方法の一つなのだろうと思いますが、意見がぶつかり合うとき以外は気が合うので、いつも一緒にいます。ケンカする程仲が良いとはいいますが、親としては「いつ何が起こるのか分からない」と、ハラハラ続きでした。相手のお母さまとなかなか会えるタイミングがなかったのですが、初めてお話できた日は、お互い謝り続けていました…。【気づき その2】仲が良いお友達も場合によってはクラスが別の方が良いUpload By スガカズもともと仲の良い友達と同じクラスだと、話したいことがあったときに、友達のところへフラフラ~と向かってしまいます。また、次男を好いてくれている友達(定型発達のお子さんです)もいたりして、次男の後にいつもついてくる、なんてこともありました。そのときは、保護者会でお母さまに会った際、挨拶させていただき、お互いの家庭で子どもへの指導を合せる様にしました。【気づき その3】優しい女性か、若い男性の先生が合っているUpload By スガカズ次男は人の感情を敏感に察知するところがあり、怒られていると感じた際に、自分を守るために怒りで対抗していました。特に大人から言われると、威圧感を感じるようで、怒りが倍増します。小1、小2のころは、強めに注意される経験があったのですが、クールダウンのために頻繁に校庭や廊下でうろうろしたり、悪態をついたり物にあたる行為が目立ちました。友達に近い関係を築ける男性の先生か、物言いが穏やかな女性の先生だとそのような結果にはなりませんでした。きっと次男とは反対で、優しくされるよりも怒られる方が成長するお子さんもいるのだろうと思うので、相性は人それぞれで、難しいなと感じます。ここまでざっと振り返ってみましたが、改めて自分の息子の気難しさを感じました…。毎年配慮してクラス替えをしていただいていると感じ、本当に学校の先生方に感謝しかありません。何かあったときに逐一学校に報告、相談する大切さUpload By スガカズ私は、次男に関して何かあったときは、逐一学校に報告・相談をするよう心がけています。トラブルの背景なども詳しく伝え、相談をしているからか、先生から「お子さんたちそれぞれが落ち着いて学校生活を送るためにも、クラスメートへの影響を考えても、〇〇君や●●君と違うクラスにしたほうがよさそうですね」とおっしゃっていただくことがあり、私の考えと同意見であることが多くあります。もちろん「みんな違ってみんないい」ですし、子どもに対して大人の都合を押し付けているのではないか、と心苦しくなることもあります。でもトラブルを避け、落ち着いて学校生活を送れるようにするための環境整備は、子どもの育ち、学びのためにも大切な合理的な配慮ではないかと感じています。本当に仲の良い友達であれば、クラスが違っていても放課後一緒に遊ぶでしょうし、放課後であればわが家に呼んでやりとりを見守れます。来年は小学5年生、その次は最終学年の小学6年生…と、小学校生活も残り少なくなってきました。来年度もハラハラ、ドキドキ…だけど次男にとって楽しい学校生活になると良いなと願っています。
2021年03月15日いじめが続いて気づいた「これは私に問題がある」東京・目黒に生まれたコッピーさんは、研究者の父と専業主婦の母、それに姉の4人家族。「外交的だった」小学生の頃から、生きづらさを抱えていたという。「小4ぐらいのときに、お腹が痛くなることが増えました。今思えば仮病のようなもので、保健室によく行っていました。無理矢理休もうとしていたんですよね。友達もいたし、なんなら中心的な存在で楽しかったんですけど、今思えばその空間がつらかったというか……。朝から夕方まで椅子に座ってじっとしているっていうのがつらかったんじゃないのかなって。たぶん教室にいられなかったのかな」(コッピーさん)Upload By 桑山 知之女性のASDは男性よりも分かりづらいという。コッピーさんはその正義感の強さから、廊下を走る上級生などにも物怖じせず注意していた。「今考えれば、ASD特性も出ていたのかな」と当時を振り返る。さらに都内にある中高一貫の私立女子校に進学すると、いじめの標的にされてしまう。「中1の春からいじめに遭いました。仲良かったグループから仲間外れにされることがあって。なんか話しかけても無視されたり、目の前でヒソヒソ言われたり。仲良くなった別の子もいじめの主犯格で、その子にもガッツリいじめられました。廊下ですれ違うと舌打ちされたり、ブスって言われたりしました。それを相談してた相手も実はいじめっ子とつるんでいて、『裏でアイツこんなこと言ってたよ』って面白がっていたみたいで……それを最終的に知って人間不信になりました」(コッピーさん)Upload By 桑山 知之その後も、グループに所属しては仲間外れにされることがあった。「これはたまたま失敗したのではなく、私に問題がある」――。そう気づいたコッピーさんは、そこからどうしたら人間関係をうまく結べるのかを考えるようになった。悪目立ちをしないように、無難に会話をやり過ごすといった“暗黙の了解”を学び始めたのだった。マルチタスクができない夢のために受験へ中高一貫校だったが、高校2年の頃に週に4日通えばOKだという単位制の私立高校に編入した。ADHDの症状として多くみられる過眠症はコッピーさんも例外ではなかったが、授業のコマも好きに組むことができることで朝もゆっくり過ごせるようになった。クラスメイトは「ギャルみたいな子」がいて怖かったものの、コッピーさんも髪を染めるなどして適応。そして、アルバイトをやってみたいと思い立つ。Upload By 桑山 知之「コンビニバイトが簡単だって聞いたからやっていたんですけど、意外と覚えることが多くて、マルチタスクなんですよ。それが致命的にできなかったんですよね。年上のお姉さんとかにすごく怒られて。品出し(商品を陳列すること)している最中に列ができちゃっていて、だけどまったく気づかなくて。ハッとして走っていくんですけど、そのあとめっちゃ怒られる。あとお金の勘定ミスがすごくて、マイナス5000円とか出しちゃうんですよ。けっこう深刻に悩んでいたんですけど、フリーターの上の人に自腹を促されて、泣く泣く支払ったりしていました」(コッピーさん)その後、制服がかわいいということでカフェでのバイトに切り替えたが、結局マルチタスクをこなさなければならない状況は変わらなかった。そんな17歳という悩み多き頃、気になった邦画を片っ端からレンタルしていたとき、とある映画に出会う。舞台はタイ。臓器移植や人身売買などを描いた『闇の子供たち』(監督:阪本順治、原作:梁石日)だ。「子どもたちが人身売買されている現状が描かれていて、売春のシーンもあったり、めちゃくちゃ衝撃的なんですね。私は人間関係とかしょうもないこととかで悩んでいるけれど、こんな壮絶な状況の人がいるんだって衝撃を受けました。私の悩みは贅沢な悩みだったんだなって。今思えばそれぞれの立場があってそれぞれの悩みがあるんだって思うんですけど。当時はすごく罪悪感に近いものを感じたんですね。普通に暮らしていることに不満を持って、途上国支援がしたいと思いました」(コッピーさん)国際協力や途上国支援ができるような仕事に就きたいと志すも、それには大学を出る必要があると感じたコッピーさんは、死ぬ気で受験勉強に励んだ。友達付き合いも一切やめ、インターネットはすべて遮断。集中力などとっくに切れているのに、1日に十何時間も机にへばりついていた。精神的に病みかけながら臨んだ受験当日、周囲の他の受験生が気になった。「第一志望の受験の日に覚えているのは、近くの人が貧乏揺すりをしていたんですよ。それがずっと気になっちゃって。あと、ページをペラペラめくる音が気になったり、試験官がどこにいるかとか、些細な刺激が気になって、ずっと集中できませんでした」(コッピーさん)Upload By 桑山 知之自分と向き合うということ行き着いた「マイノリティの尊重」カンボジアやミャンマーなど、東南アジア諸国を実際に自分の目で見た。しかし、“この人生を歩んできた私”がそこで働く必然性をなかなか見出せなかった。大学のカリキュラムに加え、児童養護施設でのボランティアや、雑誌『ビッグイシュー』のインターンシップにも自主的に参加した。国内の貧困問題を学んだ末、「貧困」と「人間関係」には密接な関わりがあると感じた。不登校児を専門に対象とする『東京家学』で家庭教師も経験した。こうして“自分が関わるべき必然性”を追求していった結果、日本での社会問題に目を向けること、さらに当事者と研究者両方の視点での発達心理学にたどり着いた。Upload By 桑山 知之「心理学で『アタッチメント理論』っていうものがあって。簡単に言うと、初期にお母さんと言うか主な養育者との間に築いた関係性は、生涯に渡って人間関係に応用されていくよって言うこと。それぐらい1番最初の人間関係って大事だと。家庭環境でつまずくと、その後の人生にまで影響があるって衝撃だったんですよね。家庭環境のように、自分にはどうにもできないのに人生に影響してしまう要因がたくさんあるのに、世の中ではほとんど考慮されていないことに大きな違和感を覚えたんです。それって貧困とか障害に関してもそうですが、『みんな頑張っているんだからあなたも文句言わずに頑張れ』という世の中のスタンスに、それはおかしいぞって思うようになって、心理学的観点から自分の障害についても向き合っていきたいと思うようになりました」(コッピーさん)Upload By 桑山 知之修士論文のテーマは「成人期のADHD者の質的研究」。レジリエンス(逆境から適応に至る現象)について、ADHDの人はどういうプロセスで適応するのかを当事者へのインタビューを通してまとめ上げた。現在、コッピーさんは東京大学大学院で心理学博士課程の1年。一般就労をしているADHDのある人に適応状態や働き方をヒアリングし、論文にまとめている。「社会に出たADHDのある人ってどうやって生活しているんだろう?というのがすごくあったんですね。でも、スティグマ(負のレッテル)のせいで公表しながら生活している人にまったく出会えない状態だったので、じゃあみんなコソコソどうやって生活しているんだ?というのが、疑問のスタートでした。正直怖さもあって向き合ってこなかった部分で、感情移入しすぎてしまわないかと思ったんです。なんかもう世の中ひどい、辛いみたいな気持ちになるかなって避けていたんですけど、それをテーマにすることで発達障害に関する知識が深まりました。私自身、ASDだったかもしれない、かつてその傾向が強く出ていたかもしれないってことも、そこまで深くやらないとわからないことだったと思うので、結果的にたどり着いてよかったなと思います」(コッピーさん)Upload By 桑山 知之「しっくりきた」両親マイノリティ尊重する働きかけをコッピーさんは発達障害について研究を続ける傍ら、「ブラインド当事者会」と題しTwitter上で当事者同士が情報を交換するハブになるなど、少しでも生きやすい世の中になるように活動している。「多様な立場の人のことをインプットする。自分が想像できないぐらい違う感じ方の人がいて、それも網羅できないぐらいいるんです。発達障害に限らず、マイノリティを尊重することであったり、想像力を働かせる方向に、そういうことができる人を育てるような働きかけができたらいいなって思っています」(コッピーさん)Upload By 桑山 知之コッピーさんが自らを障害者だと名乗ることについて、「両親はきっと当初、自分たちの子育てが否定されたように感じ、抵抗があったのではないか」と言う。しかし、時間をかけて説明した。過去のコッピーさんの行動が発達障害の特性として体系的に説明されていくにつれ、「しっくりきている」のが目に見えてわかった。今となっては両親とも、コッピーさんの取り組みの社会的意義を理解した上で応援してくれていると言う。将来的には、心理学の授業を通じてあらゆる社会問題を考えていくような授業ができるようになりたいと語るコッピーさん。多様な立場の人のことをインプットできる授業を通して、自分が想像できないくらい違う感じ方をする人達が網羅できない程いるんだという感覚を持つことで、相手のことを決めつけずに思いやりを持って接することができるような人が増えて欲しいと願っているそうだ。Upload By 桑山 知之平成元年愛知県名古屋市生まれ。慶應義塾大学経済学部在学中からフリーライターとして活動。2013年に東海テレビ入社後、東京支社営業部を経て、報道部で記者/ディレクター。2018年から公共キャンペーンのプロデューサーとして「いま、テレビの現場から。」や「見えない障害と生きる。」、「この距離を忘れない。」といったドキュメンタリーCMを制作。主な受賞歴は、日本民間放送連盟賞CM部門最優秀賞、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSゴールド、JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール経済産業大臣賞、ギャラクシー賞CM部門優秀賞、広告電通賞SDGs特別賞など。取材・文:桑山知之取材協力:若者支援ネットワーク研究会in東海
2021年03月09日「お母さんにだけ内緒の話があるんだ」秘密を打ち明けた次男…その内容に驚愕Upload By スガカズ通常学級に在籍しているADHDの次男。小4の2学期のある日に、次男は私に「お母さんにだけ内緒の話があるんだ」と、言いました。「正直に話すから…怒らない?」という意味深な言葉に、「これは何かあるぞ」と不安になりました。内容がまだ分からないので、絶対に怒らないとは約束できません…。私は次男に「正直に話してくれることが大事だから、怒らないようにがんばるよ」と伝えました。すると、次男は仲の良いEくんからゲームソフトをもらったと話しました。もらったゲームソフトは数ヶ月前から次男が「欲しい」と言っていた物ですが、「欲しいなら自分のお小遣いで買おうね」と私は伝えていました。それに対して次男は「頑張って貯金する!」と意気込んでいたのですが、なかなかうまくいかず…。「頑張って貯金をする」と意気込んだものの、目標の前にADHDの特性が邪魔をして…Upload By スガカズ大きな目標を前に、「やる気を維持しづらい」「興味の対象が次々に変わる」「我慢することに対してエネルギーが必要」などの特性が邪魔をします。そんな中、仲良しのEくんに「ほしいゲームソフトが買えないからプレイできない」と話したそうです。Eくんは、そのゲームソフトをお小遣いで買ったものの、あまり遊ばなかったそうで、「もう必要ないからあげる」と次男に言ったのだそうです。正直に打ち明けた次男にどう対応すれば良い?Upload By スガカズ私は親としてどういう対応をすれば正解なのか、非常に悩みました。Eくんに、もらったゲームソフトを返すのは当たり前ですが、次男にはどう言えば良いのだろう?高価なソフトを安易にもらったことに対して叱ると、せっかく正直に私に打ち明けたのに本人にとっての失敗体験になってしまいます。ゲームソフトをEくんに返しただけで終わらせることもまた、失敗体験になりそうです。次男の性格を考えると「言うんじゃなかった」と後悔する可能性が高いです。また、正直に言ってくれたからといってご褒美のように買い与えてしまうのも良くないと思いました。Upload By スガカズ正解だとはハッキリ言えないですが、「正直に言ってくれて助かったけど、ゲームソフトはすぐに返そう。人から物をもらったり交換をしたりしてはいけないよ。今回だけ特別にお母さんが買うけど次からは自分のお小遣いで買おう」と言いました。その後無事にEくんにゲームソフトを返し、お母さまにも謝罪しました。一安心…とはいきません。同じことを繰り返さないように、対応する必要があります。自分がしたいことを我慢する機会を増やしたり子どもとの関わり方を見直すUpload By スガカズ今までは「時間通りにお風呂に入る」「寝室では小さい声で話す」など、自分の良い行動に対してお小遣いをあげていましたが、条件を見直すことにし、家のお手伝いを中心にお願いすることに。そうすることで自分のしたいことを中断してお手伝いをするという状況をつくれるので、我慢する機会が増え、自分中心ではないことを教えることが可能です。小4になって情緒の面が成長していると感じることが増えたため、見直すタイミングとしては丁度良さそうでした。Upload By スガカズまた、私は今までは家のことを中心に動いていたので、子どもたちとゲームをすることがほとんどありませんでした。一緒に趣味を共有することで「ゲームって面白いな」と思えるようになりましたし、次男が「このゲームが欲しいから買って」と言ってきたとしても「面白そうだね」と気持ちに共感する事ができます。ただし、次男が欲しいゲームは買いません。本当に欲しい物は、やっぱり自分の力で得てほしいからです。その代わり、私が欲しいゲームソフトは、私が働いたお金(お小遣い)で買って次男と一緒に遊ぶので、「欲しいゲームは違うけど、一緒にやりたい」と、不満に思う回数は減らせるのではないかなと期待しています。物の価値観を学ぶのは大人でも難しいこともあります。ですが、欲しい物をただ我慢するだけでは辛い経験ばかりが大きくなるので、我慢を小さくしながら、物の価値観を理解して行動できるといいなと思います。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年03月04日発達障害当事者の視点から描かれた夫婦のものがたりーー漫画『僕の妻は発達障害』2巻月刊コミックバンチにて連載中の『僕の妻は発達障害』は、「大人の発達障害」をテーマにあつかった作品です。漫画家のアシスタントとして働く夫と、発達障害のある妻の日常生活が描かれています。本作では、発達障害がある人の生きづらさを描くと同時に、支援者にもスポットを当てています。悪意がないとわかっていても、発達障害のある妻・知花の行動にストレスを感じてしまう、夫・悟の描写もあり、決して良いことばかりではない、リアルな2人の生活がわかります。2巻では、結婚生活を送る中で衝突や理解のズレが多くなり、少しずつ疲弊していく2人の様子や、妻・知花が発達検査をうけたエピソードなどが描かれています。ぜひ幅広い方に読んでいただきたい一冊です。保護者のサポートにフォーカスした『育てにくい子の家族支援 親が不安・自責・孤立しないために支援者ができること』保育園、幼稚園、小学校、学童保育の先生など、子育て支援に関わる方に向けて書かれた本、『育てにくい子の家族支援 親が不安・自責・孤立しないために支援者ができること』。著者は、NPO法人えじそんくらぶ代表で、臨床心理士をつとめる高山恵子さんです。長らくADHDを中心とした発達障害の子どもとその家族、支援者をサポートする活動を続けています。本書の前身は、2007年に出版された『育てにくい子に悩む保護者サポートブック』(学研)。今作では主に幼児期の支援者向けだった前著の内容を大幅に加筆修正し、小学生の保護者支援にも活用できる1冊にまとめています。本作では、多様な子ども、保護者がいることを前提に、それぞれにどういうサポートをしたら最適な支援になるのか具体的な事例とともに紹介しています。支援者はもちろん、「わが子の育てにくさ」に悩む保護者の方にもおすすめの1冊です。発達障害当事者の高校生が描く『発達障害の私の頭の中は忙しいけどなんだか楽しい』本書の著者のなずなさんは、2001年生まれ。5歳で高機能広汎性発達障害(ADHD傾向)と診断され、中学時代には不登校も経験。現在は、通信制高校を卒業し、体力の回復を目指しながら夢に向かって進んでいます。なずなさんが自身の世界を描いたこの本では、なずなさんが、自分の世界をマンガと文章で説明し、「フラッシュバック」などの困りごとについて、独自の対処法を紹介しています。そこに、なずなさんの主治医である精神科医の松本喜代隆先生が、キーワードごとに一般的な解説や対処法のヒントを挙げています。当事者による貴重な記録を読める本作。書いてあることはなずなさんの個人的な経験ですが、松本先生の解説・ヒントとともに、誰が読んでも参考になることがあふれています。子どもと大人の境目にある思春期の見守り方も教えてくれる1冊です。自閉症の娘と家族の愛と成長の記録ーー『ムーちゃんと手をつないで』4巻筆者のみなと鈴さんが自身の経験をもとに、自閉症子育ての経験を描いた漫画『ムーちゃんと手をつないで』。『ムーちゃん』ことむつみの成長と、家族の愛について描いています。「他害」がテーマとなった4巻。周りの人に噛み付くなど他害してしまうムーちゃんに悩む母の彩は、どうにか解決したいと療育施設の先生に相談します。しかし、そこで先生に言われたことは、「他害行動はそうそう簡単に消失しない」というものでした。4巻では、ムーちゃんの他害について何ができるのか葛藤する母・彩とそれを懸命にサポートする周囲の様子が描写されています。発達障害のある子どもを育てる親と子の成長を描いた本作。ぜひ子育てに関わる方に読んでいただきたい一冊となっています。お母さんが楽に、元気になれる本ーー『ママのピンチを救う本』本書は2005年に出版された『のび太・ジャイアン症候群5 家族のADHD・大人のADHD お母さんセラピー』の改訂版です。発達障害のある子どもの支援者にフォーカスした本書。なかでも保護者であり、家庭の調整役になることが多いお母さんに寄り添い、お母さんたちの毎日が楽に、幸せになるようなアドバイスを豊富に掲載しています。発達障害がある子どもがいる家庭では、お父さんやお母さんにも似た特徴が少しずつ見られることがあります。本書では、発達障害がある子どもや大人、診断がつくほどではないけれど発達障害の傾向がある人が、家庭でどのようにすれば過ごしやすくなるかについて考察しており、日々の暮らしを快適にするヒントがたくさん詰まっています。ぜひ参考にしてみてください。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月06日「ついにこの時が来てしまった…」次男がクラスメイトを傷つけた日の事Upload By スガカズ小3の1学期のある日、学校から電話がありました。電話に出ると担任の先生が申し訳なさそうな声で「次男くんが怒って机を倒してしまい、机がクラスメイトの女の子の足(膝)に当たってアザができてしまいました。」と話しました。私は「サーッ」と血の気が引いたのを覚えています。まず先生に謝罪し、その日の内に被害を受けたお子さんや保護者の方に面と向かって謝罪したい旨を伝えました。保護者の方は毎日仕事の後お子さんを学童に迎えに行くとのことだったので、その際に先生と話し合い、その後私と次男が合流して謝罪をすることになりました。次男なりの正義感があった様だけど…Upload By スガカズUpload By スガカズ事の発端は休憩時間(先生がいないとき)子ども同士の遊びで、「虫を触った手」を「ムシキン(菌)」と名付けて冗談でつけあっていたのだそう。それに対して次男は注意をしたのですが、遊びは続き、前の席に座っている女の子に回ってきたようです。女の子はとっさに他の子と同じように次男につけてしまったようでした。次男は「人が嫌がることをしちゃいけない」と言ったのに自分に回ってきて、さらに頭につけられたことが本当に嫌なことだったので、思わず机を蹴って倒してしまったのだそうです。小3のころはというと、物にあたる行動自体は、クールダウンする場所を確保する等でかなり減っていたのですが、急なことでクールダウンしに行くより先に怒りが湧いてきてしまったようです。確かに次男が嫌がる気持ちは分かります。だからと言って物を蹴ったりしてもいけませんし、人を傷つけるのはもってのほかです。被害を受けたお子さん(女の子)は自分の番が回ってきたのを、とっさに他の子と同じように次男に回しただけです。もちろん、〇〇菌と名付ける行為は心を傷つけるきっかけにもなるため、良くないことだとは思いますが、小3という時期を考えると、そうなるのは自然な流れだとも思いました。本人にはどう言えばいい?叱る?叱らない?私は発達凸凹の長男や次男が「他の子に迷惑をかけた」と判断した事案で把握しているものは、できる限り保護者の方を交えて謝罪していました。もちろん今回のことも、お子さんと保護者の方にはとにかく謝罪し続けようと思いました。ただ、次男に対してどう言えば一番良いだろうと悩みました。学校生活での許しがたい行動ですが、指示を出せる状況でありませんし、被害を受けたお子さんとまだ話ができていない状況です。また、次男は怒られたり否定されたりしたことに対して、事実より過剰に受け取るところがあります。そのため、本人の気持ちを否定して叱ることは、反省する場を奪う結果になるだろうと思いました。悩んだ結果、叱りはしないが低い声で、真剣な目をして話し合うことにしました。Upload By スガカズ私は、学校から帰って来た次男に目線を合わせ、肩に手を当てながら(こうすると落ち着いて話を聞いてくれやすいから)伝えました。・どんな理由があっても人を傷つけることはしてはいけない・怒りそうな時はすぐにその場から離れること・私と次男でもう一度謝る事が大事(すでに次男は学校で一度謝っている)私は「繰り返してほしくない」という一心だったため、おそらく怖い顔をしていたのかもしれません。この時期の次男は自分の気持ちや周りの状況を上手く伝えることが難しかったのですが、「(自分にとって)嫌なことをされた」「つい机を倒してしまった」「傷つけるつもりじゃなかった」と話し、「謝りに行こう」と話す私に対して「わかった」と答えました。夜、約束の時間になり次男と学校に向かいました。被害を受けたお子さんと保護者の方、先生に会いました。お子さんの足を見せてもらい「痛い思いをさせてごめんなさい」と言った後、再度全員に向けて謝罪しました。※謝罪した際の言葉は長いため、割愛しますUpload By スガカズUpload By スガカズ保護者の方は初めて直接お話した方なのですが、次男にADHDがあるということを知っており、気を遣っていただいていたのかもしれません。私からの謝罪の後「私は次男くんのことを知っていますし、娘からも次男くんとのやり取りを昔から聞いています。理由がないのに一方的にやる子じゃないのはわかってますよ」と思ってもいなかった言葉をいただきました。「相手のお母さまが謝る必要なんてない」(と私は思っている)のに…と思いつつ、その後は何故かお互い謝罪をしつづけるという状況に…。周囲の方の厚意に生かされているなと痛感しました。暫く気まずそうにしていた次男ですが、最後にお子さんと保護者の方に「ごめんなさい」と言うことができました。「お互いが事実を隠さない」ことが解決のカギUpload By スガカズその後先生から、子ども同士のトラブルは時々、「自分に都合の悪い事実は隠す」こともあるのだと聞かされました。そういったときには両者の言い分が違って起こったことの辻褄が合わなくなるため、今回のようにすんなりいかないこともあるのだとか…。加害者側としては、同じことがないようにしないといけませんが、今後の為に「自分(子ども)に都合の悪い事実を隠す」ことがないように、普段から「自分(子ども)の気持ちを否定された」と感じさせないことや、好ましい行動を見つけることが重要なのだと改めて思いました。Upload By スガカズ後日学校で女の子に会い、膝のアザが消えたことを確認しました。その後、何度かわが家に遊びに来てくれる程次男と仲良くしてくれるようになったので、彼女の存在は、本当にありがたかったです。お母様とは保護者会で再び会えたので、そのことを伝え、「いつも遊んでくれてありがとうございます」と感謝の気持ちを伝えました。発達ナビライターによる小学校生活での困りごとエピソードをあつめたまとめコラムはこちらです。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月02日今週はどこを?今日の担当は?毎回混乱していた「掃除」の時間Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。ADHDと広汎性発達障害がある息子リュウ太は小学4年生まで掃除に困っていました。みんなが当たり前にやる掃除当番なのに、リュウ太は自分はどの場所を掃除する係なのかがわからず、毎回誰かに聞かないとできなかったと言います。当番表は教室の掲示板にあり、どの班がどこを担当するのか一目でわかるようになっていますよね。でも、リュウ太は掲示板をほとんど見たことがなかったのです。興味がなかったこともあり、クラスのルールや目標など学校生活に必要なことはだいたい掲示板を見ればわかるようになっていることを知らなかったのです。班の親切な女の子に質問して「うちの班は今週は廊下だよ」と教えてもらっていたそうです。でも「今週は」と言われていても、次の日にはまた忘れてしまいます。間違ったら注意されるし、やりたくなくなる...「やっているフリ」をして教室をウロウロUpload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。リュウ太は2年生~4年生の期間は人に否定されることに恐怖を感じていたそうで、わかっているつもりで勝手に行動して「違うよ」と後から注意されたり文句を言われたりすることを恐れていました。そのため、毎回誰かに聞いてからでないと動けなかったようです。リュウ太(22歳)「学校のルールがイマイチわからなくて、戸惑うことが多かった。みんなはわかっているみたいだけど、オレは知らないことが多くて大変だった。例えば掃除も雑巾担当なのか、ほうき担当なのかわからないし、ほうき係はどこから掃いていったらいいのか?どこまでやるのか?こんなこともわからない」Upload By かなしろにゃんこ。リュウ太(22歳)「雑巾係も、オレは雑巾をすぐになくしちゃうから、できないことが多かった。明日になればまた汚れるんだから、掃除なんてしなくていいと思うようになって、掃除の時間に別の場所をウロウロ歩いて掃除をしなくていい状態にしてた。やり方が違うと周りから文句を言われるし、やりたくなくなる。だんだん掃除が苦痛になっていって、4年のときはやってるフリをしてさぼった。掃除のやり方が学校できちんと決められていないことが苦手だったのかも!?個人が担当する区域はどこからどこまで、道具がない場合はどこに相談するべきか、いろいろなルールに気を使いながら行動することや、決まりごとに対しての「?=はてな」が多すぎて疲れちゃうんだよね。それで掃除が本当に嫌になったんだ。別にオレが掃除をやらなくてもいいかって」という掃除にまつわる困り感の一通りを話してくれましたが、母は「掃除どんだけキライだよっ」とツッコミましたよ(笑)困っていたのは、「掃除そのもの」ではなく...?Upload By かなしろにゃんこ。掃除がキライという感情が息子の中にあるのは知っていたのですが、学校のルールにはてな?がありすぎて困っていたことは知りませんでした。確かに掃除だけでもたくさんのやり方があります。トイレ掃除は水を撒いてブラシでこすること!など初めて行う作業だと戸惑うこともあります。ほうきでの掃き掃除や雑巾がけでも、教室の前から後ろに向かって履く、一列になって拭く...など、決まりごとがたくさんありますよね。おそらく先生や上級生が最初に手本を見せてくれて、みんなはそのやり方を見て覚えたのでしょうが、リュウ太は細かいルールや手順が把握できていなかったのでしょう。「こうでいいの?」とやり方を確認してもらいながら進めることができたら安心なのでしょうけれど、息子リュウ太はクラスの中で浮いている存在でしたから周りが手取り足取り教えてくれることもなく、苦手な分野ではとことん臆病で消極的になっていたことがわかりました。Upload By かなしろにゃんこ。実は困っていたのは掃除という作業ではなくて、作業サポートが得られないことだったんですね。「困ったときに質問をする、相談する、お願いすることができて、SOSが出せたとしても、周りがいい対応をしてくれるわけじゃないってことが一番困ったことなのかもしれない。学校生活のほうが社会よりも大変だったかも!?給食のルール・プールのルール・図書室のルールでしょー。ルールについては意外と覚えること多かったかもなー」とリュウ太はいいます。社会に出てからは、「質問したらみんな答えてくれるし、丁寧に教えてくれる。それに社会人になってからすごくイヤな人って周りにいないかも。学校よりも社会はオレにやさしい」ということなんだそうです。それなりに学校の中で一人でどうにかしようと踏ん張っていたんだな、母に相談しないでわからないものと戦っていたんだな~と思ったのでした。学校生活を母も振り返って、本当に覚えることたくさんあったんだな~って思いました。そりゃ大変だったかも!LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年01月14日「計画通り」はあり得ない。そもそも計画が立てられない!5秒後には違うこと考えているからUpload By 発達ナビ編集部牟田暁子編集長(以下――)双雲さん、ADHDの特性があるとお聞きしました。ご自身の特性について、教えてください。武田双雲さん(以下、双雲):じっとしていませんね、とにかく。それと、どこかに行こうと思っても、すぐ行方不明になります。なんでも衝動的にやるから、計画通りに物ごとが進んだことが人生一度もない。計画することが無理というか、計画したとしても5秒後に違うことをしてる。書道もお手本通りに書けないし、書こうとしても、二画目から違うことをやっちゃう。――お話を伺っている今もですか?双雲今は大丈夫、喋ってるからね。しゃべりながらめっちゃ動いてるでしょ。――それは、子どものころから今まで変わらず?双雲:変わらないですね。小学生のころ、授業中にカーテンが揺れているのを見て、カーテンとシンクロしてゆらゆら動いていたんです。風はまっすぐに吹いてくるのに、カーテンにぶつかると曲線になるのが不思議じゃないですか。だからカーテンの動きを真似て理由を考えていた。そうすると、「何をやってるんだ!」って先生に怒られて、「カーテンになってます」と答えたりしていました。――もっと小さいころは?双雲:幼稚園時代の記憶は一個もないですね。その瞬間の感情のまま動いてたんじゃないですかね。ひたすら明るい子だったらしいです。小学校5年生ぐらいまでは、記憶がないぐらい、多分、本当に楽しかったんだと思う。――そうですか。中学時代以降はどんな感じでしたか?双雲:高校でハンドボール部の試合の真っ最中に、「ああ、雲がきれいだなぁ」ってボーッと空見ていて、レギュラー外されたりだとか。一番怖い先輩に「何見てんだこの野郎!」ってからまれたときに、その人の目が茶色系であまりに綺麗で、「目がすっごく美しいです」って感動を伝えたら、気に入られたのか、何を言っても無駄だと思われたのかは分からないですが、それからもう全員に絡まれなくなっただとか、そんなことがありました。大学受験も、家庭教師と一緒に賭けみたいにして勉強したヤマが当たって、模試ではずっとE判定だった東京理科大学に受かっちゃった。運がいいんですよね。――学校を卒業されてからは企業勤めされていましたよね。双雲:そうです、NTTで2年半ぐらい法人営業やってました。もう、トラブルだらけでしたよね。上司にめちゃめちゃ怒られてましたから。今だから言えるけど、営業に行くと言って1人で海で遊んでたこともありました。でも、運だけはいいから、営業成績は後半でガーッと上がったりしているんです。たまたま出会った人と宇宙の話をしていたら気に入られて、その人が実は会社経営者だったので大きな仕事を受注できたりだとか。ただひたすらニコニコしているだけで、いろんな部署へフラフラ行くし、「報・連・相」もできないし、とにかくウロウロしてる。もう上司からしたら全く意味のわからないやつですよね。――ご退職され、書道家となった経緯を教えていただけますか?双雲:小さいころから書道をやっていたこともあって、簡単なメモ書きでも結構きれいな文字を書いていたんですよ。あるとき、同僚の名前を手書きで書いたら、その人がぽろぽろと涙して。「私は自分の名前が嫌いだったけれど、こんなにきれいに書いてもらうことができて、自分の名前が少し好きになれたように思う」と。そんな風に言われたら、うれしくて。それで、こんな風に喜んでもらえる仕事をしよう、書道の道に進もうと思って会社を辞めたんです。人に喜ばれることがなにより好きだったからだと思います。書道なら、喜ばせることができると。40歳のころ、「なんだ、ADHDって自分のことだった」と気づいたUpload By 発達ナビ編集部――ご自分に、ADHDの特性である多動性、衝動性があるんだなと気づいたのはいつごろですか?双雲:気づいたのは、40歳ごろかな。あるとき、スティーブ・ジョブスや偉人と言われてる人たちが、発達障害だったというニュース記事があって、「なんだそれ?」と思って調べたんです。そこではじめてADHDという言葉を知って、リンクにあったADHDチェックテストをやってみたけど……まず質問項目を読んでいられない。2問目から飽きちゃう(笑)。それで、書道教室の生徒さんに読み上げてもらったんです。口頭テストならできたので。そしたら、満点だったんですよ。妻はね、もっと前から気づいていたんですって。僕には内緒で。どうも困ることが多いからと、本を読んでいたそうです。――ADHDがあると気づいたことで、何か変わりましたか?双雲:変わったというか、僕はいろんな人から、「なんでそんなに執着がないの?」とか「そんなふうに明るくなりたい」というようなことをよく言われるんです。そこで逆に、興味がわいたんですよ。みんなはいろいろ深く考えてるのかも、って。それで、自分のことを研究してみた。自分とほかの人たちとのギャップを調べたんです。そしたら、どうも僕はポジティブらしいとわかったんです。なんか、やたらと感謝しまくって生きていると。それが普通だと思ってたんですけどね。繊細で、苦手なところからはひたすら逃げる。そういう意味ではネガティブUpload By 発達ナビ編集部――そこまでポジティブだと、苦手だなとか生きづらいなと感じたことはこれまでの人生ではない?双雲:いやいや、いっぱいありますから。敏感だから、自分と合わない人とかコミュニティからは一瞬にして逃げます。僕が合わないところにいても人に迷惑をかけるだけだし、落ち込むことが怖いので、動物的な感覚でそういう場所を避ける。そういう意味で、めっちゃネガティブですよ。ウロウロされると困る場所で僕がウロウロしちゃうと、みんな困るでしょ? だから、葬式も出たことがないんです。どうしても人に迷惑かけるのはわかっているので、人をすごく振り回して迷惑をかけるようなことはしないようにしています。暴れん坊ではないし、人に嫌われるようなことはできるだけしたくないと思っています。――気を遣っているんですね。双雲:小学5年生くらいのころから、友達や学校の先生とどんどん合わなくなっていったんですよね。高校3年生くらいまでが、人間界から離れていく感じだった。高校時代、最初は友達も僕を誘ってくれたんですよ、休日に街へ遊びに行くとか。でも僕、いなくなるんです毎回。僕が「きれいだなぁ」って、風に揺れる葉っぱを見てる間にみんないなくなっちゃう。そんな風だから、だんだん呼ばれなくなっていく。そうして、だんだん友達が離れていくっていうのを、もう何回も繰り返しているんです。嫌われているというよりも「もうあいつはいいや」「よくわからないやつだ」と思われるのが多いよね。みんなが離れていく夢、今でも見るんです。その時はつらいと思ってなかったけれど、今思うとたぶんつらかったんだと思います。1人で、友達をつくらずに、宇宙のことを考えていたから宇宙にのめり込めたんだと思う。――そういうネガティブな気持ちを、ご自分ではどう扱うんですか?双雲:ネガティブな感情が出たときも、「へー、自分はこういうときは怒るんだ」とか、「今、機嫌悪いんだ」とか、ちっちゃい自分が頭の上のあたりに浮かんでいて、自分を客観的に見ているんです。そいつが、僕を何のジャッジもせずにニコニコ見てくれる。自分を客観的に見る自分が、自分を全肯定してくれる。だから安心して怒れるし、安心して落ち込めるっていうか。そのおかげでかなり楽ですよ。ほめてほめてほめまくる両親に育てられ、ほめられネイティブになったUpload By 発達ナビ編集部――ご両親は、そんな双雲さんをどんなふうに育てられたんですか?双雲:とにかくほめまくるんです。「天才!」とか「すごかー!」しか言われない。今もそうですよ。もう、45歳なのに(笑)。会ったら1時間でも2時間でもずっと、さすがだ、すごいすごいって僕をほめ続けるんですよ。――それは嬉しいですよね。双雲:嬉しいもなにも、僕にとってはそれが普通のお父さんお母さん。これが日常で、「ほめられネイティブ」というか。でも、家庭の外では、学校時代も会社でも、怒られたりしましたけどね。――そこまでほめられていたら、怒られても動じないんじゃないですか?双雲:根底のところで「これでいい」と思っているから、全く平気ですね。怒られても、その時は「怒られちゃったー、シューン…」となるんですけど、根っこが太いから大丈夫。自信があるというのとも違って、自己肯定感がすごく高くて自分が大好きなだけ。誰かと比べてすごいとか優れているとか、思ったことはないです。勝とうとも思ったことない、勝ち負けにそもそもこだわらないし。――誰かよりもすごいというよりは、自分は大丈夫、という感じですか?双雲:そう、自分は大丈夫。それは何とかなるから大丈夫、というのとも違って、もう絶対的なものですね。――こうして根っこがしっかりしたまま生きてこられたから、自分が輝ける道を見つけて、歩んでこられたんでしょうね。双雲:そうですね。発達障害の話って、凸凹の話じゃないですか。この凸凹が激しめで、凹の部分はドコーンと凹んでいて、どうやってもできないことがある。僕も、自分ができないほとんどのことは、全部周りの人がやってくれる。スケジュールや作品の管理は秘書がしてくれています。凹っている部分が激しいことを「発達障害」というのならば、そこを平均的にしていくことなんてできない。できるところを伸ばすしかない。必ずどこか、凸っているところがあるから、欠点を補おうとしない方がいいですよ。僕は、しゃべるか書くかだけしかしない。作品の制作だけ。将来のために頑張れ、はおかしい!双雲:今のこの武田双雲の基礎は、両親がつくってる。もう間違いなく、両親が「すごかー」と言い続けてきたことの賜物です。――今のご活躍ぶりは、すごいですもんね。双雲:いや、今みたいな活動をするずっと前から、生まれたときからですよ。ひたすらほめてくれるし、これまで怒られたことも注意されたことも一度もない。もちろん、「飛び出したら危なかばい!」とかはあったけれど。うちの両親は、僕に将来の話をしたことがまったくないんです。こういう大学に行けとか、こんな人間になって欲しいとかも言われたことがない。僕のことを信じ切っているんです。――「将来、幸せになってほしいから今頑張れ」などということも言われなかった?双雲:将来のために今頑張ろうって、矛盾だらけですよね。頑張れっていう漢字は、”頑なに張る”って書くんですよ。ピーンと張ってたら、すぐに切れちゃいそうじゃないですか。これでどうやってなりたい人になるの?って思う。将来のために今を犠牲にするなんて、おかしいって絶対。富士山を見て感動したときに、富士山にこうなって欲しいとか思わないでしょう?何分後に雪が降ってほしいとか思わないでしょ?それと同じ。両親も全く僕を変えようとしたこともないし、将来についての言葉を聞いたことは、一切ないですね。幸せは、今、この瞬間に感動し続けることしかないUpload By 発達ナビ編集部――ところで、「すぐに飽きてしまう」と言いながらも、書道だけはずっと続いているんですね。双雲:とにかく好きなんです。筆とか墨とかの道具、その匂い。書道の全部が好きなんです。好きなもので、人に喜んでもらえるとやっぱ一番続くじゃないですか。書道は、3歳からやっているからもう40年以上。唯一飽きないのが書道だけ。飽きっぽい僕がこれだけやってるから、相当好きなんだと思うんです。――好きなこと、飽きないことを見つけるって大事ですね。5秒後にはほかのこと考えちゃう双雲さんなのに、40年以上も。双雲:集中力が続くのは短いです。普通の書道家の方の100分の1くらいしかない。その代わり集中力は高いです。逆転の発想で、人が100時間集中して努力する分を、1分間に凝縮して、エネルギーがその100時間分にならないかと考えます。――なんだか宇宙的ですね。でもそのコツ、知りたいです!双雲:一番はね、感動することです、あらゆることに。自分の目が動いてることに感動して、生きてることに感動して、空気があることに、空に風に感動して、葉っぱの揺らぎに感動して、見境なく感動する。――そういった感動のエネルギーをためておくと、いざ書く、というときに出てくる?双雲:そうそう、だから書くそのときの心の動きだけじゃなくて、1回1回の感動を味わい尽くしてそれを繰り返すと、エネルギー値は高まります。見境なく感動することって、実は小学校低学年ころまではみんながやっていたことですよね。これは価値があるとかないとか、レッテルは貼らない、ジャッジもしない。見たもの感じたものすべてに感動していく。小さいころは、石ころを蹴るだけで楽しかったじゃない?落ち葉を見るだけでちょっとワクワクしたよね。そのときに、落ち葉という名前も知らなかった。大人になるといろんな思想や文脈が入り込みすぎちゃうけど、子どもってそういうことは思わない。そのまま大人になるのはまずいと思われるけれど、たまたま僕は発達できないまま、無邪気でいられたのが、今はアーティストとしてはそれがいいと言われる。僕は正しいわけじゃないんだけれど、共感してるくれる人が多い、ということなんだと思う。――今を感じて、感動し続けるんですね。双雲:大人になって、幸せを獲得するためにお金を稼いだり、人から評価をもらったり、いい大学に行ったり会社に就職したりということに、みんながいいというレッテルを貼っている。でも、もし収入・地位・名誉みたいなものを獲得するのが幸せになることなら、何も得てない子どもは不幸だということになってしまう。逆に、評価されてる人は皆、心が満たされているのかというと、満たされてないじゃないですか。社会的に大活躍している人が壮絶な精神病になったり自殺したりするでしょ、昔から。だから社会的評価とか実績とかは幻で、幸せとは関係ない。社会的評価や成功はゲームなんだというくらいに思っておけばいいんです。いつか幸せになる、は絶対ないです。今、石ころを見て幸せな方がいいじゃないですか。――ひとつひとつ今身の回りにある環境に感謝していくと、幸せになる、そういうことなんでしょうね。ひたすら「かわいい、大好き」と思って育てる。それが一番!Upload By 発達ナビ編集部―ー双雲さんご自身と似たようなタイプのお子さんを育ててる保護者へのアドバイス、ありますか?双雲:たとえば、とても真面目な「ちゃんとしなきゃ」と思ってる人が、ADHDのお子さんを持ったら大変なことだということはわかります。だって、全部裏切るもん。コントロールしようとしている人がいたら絶対コントロールできないし、「こうあってほしい」と思ったようには絶対ならないし。できれば、世間の指標ではないところで、ほめるっていうよりも、その子のことをすごく好きでいることが一番いいと思います。「かわいいかわいい」「大好き」っていうのが、一番いいと思います。――うちの子は、最重度の障害が心身ともにあるんです。でも、笑い上戸でいつも楽しそうで、「今、このとき」を全身で楽しんでいますね。双雲:お子さんには、劣等感ってある?――ない、でしょうね。うまく話すことができないので、音楽の授業でみんなが歌ってるのに自分は歌えなくて「つまんないの」くらいには思ってるみたいだけど。双雲:自分を客観的に見て、劣っていると思うようなことがないのはいいよね。――自分も子どももまるごと認めて、今を幸せに生きていくってことなんでしょうね。双雲:一緒にいて、楽しいっていうのが一番いいですよね。一緒にいる時間が好きとか、楽しいとか安心感があることがすべて。それだけでいいと思う。楽しいよね~って。さまざまな失敗談も朗らかに語り、他者との比較や勝ち負けは関係なく、ただただ「自分が大好き」と言い切る武田双雲さん。小さなころからご両親がどんなときも肯定し、賞賛してくれたことが、その自己肯定感につながっている様子が感じられました。多くの人を惹きつける書についても、「集中が続かないぶん、1分に100時間分のエネルギーを込める」と、ご自身にあった方法で熱量の高い作品を生み出し続けているようです。アートに活きる考え方から、あたたかな親子の関係まで、発達が気になる子と向き合うヒントもたくさん詰まったインタビューでした。取材・文:関川香織撮影:CowfilmsLITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年01月12日親はもううんざり!同じDVDだけ見る息子Upload By かなしろにゃんこ。わが家の息子リュウ太はADHDと広汎性発達障害があります。好きになったものはマニアックに追い求める特性があり、そのせいでしょうか?幼少期から同じDVDをくり返し毎日見る!というルーティンぶりに母は少し(いや…だいぶ)うんざりしたのでした。歩きはじめて軽くダンスができる程度になった1歳から、大好きな電車の歌と映像がいっぱい入ったDVDを見ては、TVの前でリズムをとって踊っていました。「運動にもなるしね!」と思い、そのDVDをくり返し見せていました。最初の3か月はよかったのですが…………。2年経過した3歳になっても「電車のお歌の見る!」と要求します。「今日は見ません」と拒否すると、この世の終わりかってくらいに「見る――――うぎゃぁぁぁ――――」とエグイ駄々こねが始まるため、「金切り声を聞くぐらいならDVDを見せよう!」と折れるのでした。自分弱っ!Upload By かなしろにゃんこ。私は「エー―――また!?もう聴き飽きたよ~」と違うDVDも用意して、他のものも見ようと促すのですが、ダメでした。違うDVDを見た後に、やはりお気に入りのDVDを見るのです。私の中に同じものをくり返し見たいリピート願望がないので、息子のこの欲求が謎でした。このころはまだ息子が発達障害であると気がついていないので、普通飽きるよね?見飽きてイヤになるよね?と息子の行動を不思議がる程度でした。およそ1000回近い視聴、しかし息子は平気なのです。そのこだわりは小学生になっても、そして大人になっても...?Upload By かなしろにゃんこ。小学生になっても好きな番組の好きな回をくり返し見ていました。「同じものばかり見て飽きないの?」と聞いてみると、「好きだから飽きないよ!何度見ても楽しさは変わらないから」ということです。私の子どもの頃と違ってアニメも映画もたくさんの種類があるから選び放題なのに、もっといろいろな作品に触れてほしいと思ってしまいますが...Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。22歳となった今でも毎日同じ番組を見ます。ここ数年、飛行機事故の原因を究明するメーデーという番組をくり返し見ています。自動車整備士の仕事をしているので、飛行機であっても事故原因が気になるそうで、全シーズン全話を制覇しています。「1回目では専門用語などわからなかったことがあったけれど、2回目、3回目と繰り返すことで理解ができるようになってくるんだよ。それに日課になっちゃってるんだよね」と言います。それは小さかったときに見ていたアニメなども同じようで、見る度に何か発見があるそうです。「冒険して刺激を得るのもイイけど、だいたいは安定した楽しさがほしいんだよね。同じものを見ているときは癒しに近い感覚なんだよね」とも言うリュウ太。安定かー、変わらない安らぎがイイのですね!変わらない安らぎを求める息子、なんと某アイスショップでも!?Upload By かなしろにゃんこ。安定といえば某アイスチェーン店でトリプルアイスフェアをしていた際に、友人は3種類のアイスを楽しむ中、リュウ太だけはそのアイスショップに行く度に絶対頼む好きなフレーバーを3つのっけて味わい、友人はポカーン……だったそうです。「なぜ他の味を楽しまないの?」とリュウ太に聞いたら「他の味はどうでもいい、オレが好きな味だけを3つ食べたかった」と言いました。うーん変わった子、でもコレがリュウ太の普通!こんなところがおもしろい子だと思いました。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2020年12月25日特別支援教室はどうやったら通えるの?長男の友達からの率直な質問にタジタジ…Upload By スガカズ特別支援教室に通うようになってしばらく経った頃、長男の友達(幼馴染)がわが家に遊びに来ました。友達は私に「特別支援教室ってなに?」「どうやったら通えるの?」「何で途中から通い始めたの?」と私に質問しました。突然の質問に私は戸惑ってしまいました。どうやら長男から「特別支援教室でみんなでゲームをしている」と聞いていた様です。Upload By スガカズ私はこの時、「長男は発達障害があるんだよ」と言うべきではないと思ったので、「友達の作り方を勉強する所」「親が通わせたいと思って学校にお願いする」「学校からOKが出たら通える」と伝えました。友達は「ふーん…うちは(親が)通っちゃダメって言いそうだなぁ。」とひと言。友達とは家族ぐるみの付き合いで、両親には、「長男は発達障害なんだ」と伝えているし特別支援教室について理解しています。定型発達であろう友達が「ボクも通いたい!」と思うのも避けたいので「うーん…そうだね。多分ダメって言うだろうね。」としか言えませんでした。Upload By スガカズ後々考えると、友達が疑問に思うのは当然だと思いました。今まで通っていなかったのに急にクラスメイトとは違う授業に参加する様になったのですから。長男は小2から療育センターに通っていますが、行動や興味に偏りがあります。そのため私は「何で病院に通っているのか」「何でお薬を飲んでいるのか」などの質問を長男からされた事はありません。興味のない事は聞いてこない事が多かったのもあり、小5まで障害告知をしませんでした。ですが、友達からの質問を聞いて、「そろそろ自分の障害について知る時期が来たんだな」と思いました。とは言え、障害告知をする事で「本人が落ち込むかもしれない」「(周囲へ)情報が独り歩きするかもしれない」などの不安があった為、言うタイミングや上手な伝え方について悩みました。障害告知をする日は突然にUpload By スガカズそんなある日、長男が本棚から、かなしろにゃんこ。さんの漫画(うちの子はADHD)を見つけて読んでいました。話すならこのタイミングしかありません!何しろタイミングを間違えるとうまく伝えられない可能性があるのです。Upload By スガカズUpload By スガカズUpload By スガカズ長男は数字や絵を交えて説明すると理解しやすいため、過去に受けたWISC-IVの結果を見せて説明することに。「この凸凹してるのはIQと言って、長男の脳がもっているチカラを表しているよ。」「山ができているのは能力が高いって意味だよ。だけどその分できない事もハッキリしているし、苦労する事も多いよ。」「谷ができている(IQが低い)ところを頑張ることも大事だけど、得意な事を伸ばすと谷(苦手)をカバーできる場合もあるよ」など、出来るだけ本人が理解できそうな言葉で説明しました。Upload By スガカズ説明を聞いた長男は、目をキラキラ輝かせて「工作をやっちゃうのはADHDだからだったのか!」と言っていました。「え?そんな喜ぶことだったのか!」と私は面食らいました。「本人が落ち込むかもしれない」と心配していましたが、単純というか幼いと言うか…。とにかく自分の行動の理由が分かったことに非常にスッキリした様子でした。落ち込む事もなく案外すんなり(というか嬉しそう)障害告知できました。これで一件落着…と思いきや…!クラスメイト全員の前で、「自分の障害」について公表…?ひと安心…もつかの間、クラスメイトのママ(以前デイジー教科書を教えてくれた友達)から後日思いも寄らない話が…。どうやら長男がクラスメイトの皆の前で、自分の障害を公表した様なのです。これには驚きました。さて、どんな状況だったのか、次回のお話で説明しようかと思います。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2020年12月13日行動は似ている私とコウ。でも、結果に違いが…?Upload By 丸山さとこADHD・ASDである息子のコウは、子どものころの私と同じく”片付けられない子ども”です。物の管理が雑で、用が済んだらその辺に放置するところはかつての私とよく似ています。「凸凹の数値が似ているから、やることも似ているのかな?」と言うコウですが、性格はあまり似ていない私とコウだからなのか、私とは違うところも色々とあるようです。同じ「片付けられない」子どもではあるけれど…前回のコラムで書いたように「母の言う通りに収納するとどこに何があるか分からない」と感じていた子どものころの私は、自分の思うように置くのであれば”どこに何があるのか”は分かるため、困ることはありませんでした。Upload By 丸山さとこ置いた場所の記憶があるというよりは、「大体この辺りを探せばある」ということを経験則で分かっていただけなのですが、当時の私にとっては「下手にしまうとなくす。しまわなければなくさない」ということがハッキリしていました。そのため、母が言うような”収納するタイプの片付け”に対してはメリットが見いだせなかったのです。一方、コウの場合は「自分の思うままに物を扱う」となくし、「母(私)の言う通りに物を扱う」となくさないため、私の言う通りに片付けた方がメリットは高い状態です。そのことはコウ本人もよく知っています。Upload By 丸山さとこただ、それ以上に片付けをする面倒さや作業を中断することへの拒否感が大きく、”用があるもの以外は意識が向かない”特性もあって、片付けをすることは中々難しいようです。(私がコウに言うことは主に「出したらしまう・使ったら戻す」の2つで、どこにどう収納するかは相談しつつコウが決めています)「作業を中断するのが嫌だったり、用が済んだものを忘れてしまったりするのなら、割り切って定期的な片付けをするのはどう?」と勧めてはみるものの、言われたときにしぶしぶ片付ける状況から抜け出せないでいます。「分かってる」けど「できない」片付けの壁!「今1つあるだけでも『面倒だな』と思うことを溜め込むと、5とか10とかの面倒になってやってくるよ。1つでも苦戦する相手が束になってかかってきたら、そりゃ大変だろうと思うよ」Upload By 丸山さとこ…とコウには言ってはみるものの、私だって「ジョギングとかジムに行くとか大変でしょ?隙間時間にこまめな運動をしたり、ながら運動を取り入れたりしなよ」と言われたとしたら、納得はしてもやる気は出ないだろうな~と思います。しかも、コウの場合は見落としや記憶のすり替えも多いため、私のコートのように”確実に物を管理できた経験”をしない限り、難しいかもしれないなと思っています。コウは、片付けに関して分かっていることやできていることもたくさんあります。・「掃除機をかけたいから片付けて」と言われれば片付けられる・片付いた部屋の状態を快適であると感じられる・どこに片付ければ良いのかは記憶できている・管理できる物の量には上限があることは理解できているという状態で、それでも片付けられないのが現在のコウです。であれば、親の私としては「サポートしつつ時期を待つ」のが、コウの片付けに対して”私ができること”なのかな?と思うこのごろです。Upload By 丸山さとこコウにとっての”1着のコート”が何なのかは分かりませんが、彼にもそんなきっかけがあれば嬉しいなと思いつつ、今日も「床を見てー」「上着が落ちてるよー」と言っている私でした。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2020年12月07日ADHD息子は16歳でスマホデビュー!でも、昔から物の管理がとにかくニガテで...Upload By かなしろにゃんこ。ADHDと広汎性発達障害がある息子は16歳でアルバイトをするようになってから自分でスマホを維持するようになりました。小さいときから物の管理が苦手で、過去に水筒を3つなくしたり、財布をなくしてしまったりとおっちょこちょいな子でした。物もよく壊していて、小5のときにはランドセルの肩ベルトを本体に繋ぐ背カンという金具が壊れて修理に出したことも...物の扱いに注意できないのも息子の特性でした。そんな子がスマホを持つとどうなるのか!スマホ歴7年で、画面割れ4回に水没4回!Upload By かなしろにゃんこ。落下破損防止のカバーを付けたり、画面保護のシートを付けたりと工夫はしていましたが、息子のうっかりを補えるものではありませんでした。現在22歳、スマホ歴7年ですが、落下の回数は数知れず、画面がバキバキに割れること4回、水没4回と事故が多い多い!トホホホです。「スマホを落としちゃいけない場所で、ふと『今やっちゃいそうだな~…なんてネ☆』と思うと、ナゼか本当に落としちゃうんだよね~、これがADHDあるある」と笑いながら言います。やってしまいそうだと考えると不思議とそう導かれてしまうことは確かにあります。このドジエピソードを『少し先の未来を予知する男』というタイトルで親子で笑い話にしています。Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。他にも「オイルの中に落としたときはオイルまみれになっちゃったから急いで水で洗わなきゃ!って、いやいやいや精密機械を水で洗ってどーする!...と自分にツッコんで冷静に布で拭いて復活させたよ」など、数々のスマホ武勇伝を持っています。自動車整備士として働く息子、仕事中に洗濯をする作業では、胸ポケットに入れていたスマホがスルリと水にダイブしてしまったこともあるそうです。「スマホは活きのいい魚のように水に落ちる(笑)」と言います。うっかりを何度も繰り返すことでさすがに注意するようになり、スマホを持つ手に力を入れることや置く場所を気をつけることなどが多少できるようになりましたが、やっぱりうっかりはあるようです。"うっかり"はどうしようもないから...慌てないために重要なことは?Upload By かなしろにゃんこ。息子は「注意することを忘れるときがあるADHDだからどうしようもない!大切なのはくり返してしまうことを受け入れることだ」と言います。修理等々経済的にキツイけれど、故障したときにパニックにならないような気持ちをつくっていくしかないということでした。そんなことから新品は避け、中古の機種を2台とiPadを持ち、不測の事態に備えているそうです。こんなことがあっても私が怒らないのは、リュウ太の場合は自分でバイト代やお給料からスマホ使用料を支払っていたからですが、親が支払う場合は頻繁に買い替えはツライですよね。とはいえ若いと収入も少ないので、息子も買い替えでお金がないときは「マネー貸してくれ~」と泣きついてきます。自分で維持すれば操作や管理に気をつけると思ったのですが、ADHDの特性ではそういう気持ちの持ちようはあまり関係なく壊します!(泣)注意できない特性なのだから、"うっかり"を責めても仕方がないですよね…うん、諦めよう。お子さんにスマホを持たせているご家庭では防水仕様の機種や落下防止のアクセサリーを使いながら破損リスクを減らしているご苦労があるかと思います。Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。私の知人の会社員のADHDの男性も、会社の中で財布と携帯電話を頻繁になくすと言います。「これは治るものではなく一生付き合っていくしかない、だから2つずつ所持して紛失した際に業務に支障が出ないように工夫している」と言っていたことを思い出しました。どんなときも慌てないために備えることはADHDのある人のライフスキルなのだと思いました。
2020年12月02日発達障害のあるお子さんがいる家族対象!白馬の人気宿を家族で貸し切りできるユニークキッズデイをご紹介!Upload By 発達ナビニュース長野県白馬村にある、「ゲストハウスジャパン白馬」は、有名旅行サイトBooking.comで10ポイント満点中9.6と非常に高い評価を得ている人気の宿です。また、この「ゲストハウスジャパン白馬」は、発達障害のある方々が、将来自信を持って働けるように、というコンセプトのもとで運営されている宿泊施設です。そんな「ゲストハウスジャパン白馬」では、2021年冬季の特定期間限定で、ユニークキッズデイを設けて運営します。全7室(26名まで宿泊可)あるゲストハウスジャパン白馬の客室を、ユニークキッズプロジェクト期間中は、1家族限定の貸切り(希望があれば知り合い同士の場合に限り、2家族以上の同時宿泊も可能)で宿泊が可能です。一棟貸し切りとなるため、周りに気兼ねなく過ごすことができます。また、スタッフはそれぞれ発達障害のあるお子さんを育てているので、特性についての知識や理解があるので安心です。【宿泊施設】ゲストハウスジャパン白馬長野県北安曇郡白馬村北城4980−7【対象期間】2021年2月21日〜4月11日(宿泊予約がある日は、貸切りのためクローズするので、早めの予約が安心です)【貸切り宿泊料金】1泊大人1名12,000円、小学生までは1泊1名6,000円食事:朝食付き(パン・スクランブルエッグ、ハムまたはソーセージ、シリアル、ヨーグルト)【申し込み・お問い合わせ】email: info@theguesthousejapan.com (メールの件名に「ユニークキッズ」と記載し、本文にお問い合わせ内容を記載してください。)<※感染症予防対策>スタッフの体温検査などの健康管理、換気とアルコール洗浄をはじめとした清掃業務のほか、ゲストの皆さまにもチェックインの際に体温検査の協力をお願いしています。【12/5生配信】パラ競泳日本代表選手と話そう!Speedo主催のオンラインキッズイベントをご紹介!Upload By 発達ナビニュースパラリンピックで活躍する競泳選手のサポートを行う水着ブランドSpeedoが、水泳に取り組む障害のある子どもたちとパラ競泳日本代表のトークセッションを開催!当日オンラインで生配信します。本イベントは、「障がいを持っている子ども達がアスリートと直接関われる機会はまだ少ない。そんな中でアスリートになる夢の一押しに、アスリートへの思いを抱くきっかけになってほしい」との想いから企画されました。当日は、選手の対談の様子をオンラインで視聴できるほか、チャット機能にて、出演する日本代表選手に生で質問もできます。ぜひ親子でご視聴ください!【日時】2020年12月5日(土)18時~19時【出演者】パラリンピック競泳日本代表選手・鈴木孝幸 選手・成田真由美 選手・木村敬一 選手その他一般募集で選ばれた水泳に取り組むキッズたち5名【参加方法】スポーツエンターテイメントアプリ、Player!で視聴できます。「チェーンブランケット」でうつやADHD等がある人の不眠が78%改善!スウェーデンの医科大学研究発表Upload By 発達ナビニュースカロリンスカ医科大学附属病院のエークホルム・ボーディル作業療法士と、マッツ・アドラー医師らの研究グループによって、重り付きの「チェーンブランケット」が重度のうつや双極性障害、全般性不安障(GAD)、注意欠如・多動症(ADHD)のある患者の不眠に対して効果的かつ安全であり、また日中の症状や活動レベルも改善することが発表されました。スウェーデンで開発されたチェーンブランケットは、国内でもすでに全国の精神科病院や療育センター、放課後等デイなどで導入が進んでいますが、不眠症にチェーンブランケットが効果的であるという科学的根拠はこれまでほとんどありませんでした。今回の研究では、不眠症に悩む120人の被験者に対して実証実験が行われ、その結果、1年間チェーンブランケットを使用した最終的な被験者112人のうち、78%の人の不眠重症度指数が睡眠障害として分類されない段階まで低下しました。この研究は、チェーンブランケットが不眠症に対して有効であると示した、明確なエビデンスとなります。チェーンブランケットは国内でもお求めいただけます。
2020年12月01日”片付けられない子ども”だった私を変えたきっかけは…?Upload By 丸山さとこ今ではコウに対して日々「出したらしまう、使ったら戻す」と言っている私ですが、かつては”片付けられない子ども”でした。今振り返ると、ASD・ADHDの特性によるところもあったのだろうと思います。物を管理することの必要性や収納の使い方自体は知っていましたが、「知らないうちに物が移動する」「母の言う通りに収納すると、(見えなくなったものは)どこに何があるか分からない」と感じていました。そのため、理屈では分かっている収納の意義も、実感は持てない状態でした。そんな私でしたが、少し高いコートを買ってもらったときに「どうしよう、床に置いたらシワになる」と扱いに困ったことで、初めて”その辺に置かずにハンガーにかける”ことを行いました。Upload By 丸山さとこいつも着ている上着と違い、高いコートは自宅では洗えないのではないか?と考え、「大切に扱わないといけない」と思ったのです。(礼服のような感覚でとらえていました)自分に合った”片付け”を探して試行錯誤する中で…1人部屋をもらったころだったので、勝手に物が動くことがなかったのも”物がある“ということへの理解を深めたのだと思います。私はその1着のコートをきっかけに「明確な意思を持って置いたものは動かない」という認識を得ていきました。Upload By 丸山さとこそうして物を管理しようとすると、次第に、見えないものは分からなくなりがちな自分に気づくようになりました。そのことから「母と私は向いている収納スタイルが違うのでは?」と考えるようになり、私は少しずつ”自分の収納方法”を獲得しようと試行錯誤していきました。最初はオープン収納やカゴ収納から始めていき、私の中にある”物のカテゴリーの基準”がはっきりしてきてからは”見えない収納”も扱えるようになってきました。Upload By 丸山さとこ現在では持ち物の量を管理できる量に抑えることで、ある程度片付いている状態を保っていられるようになりました。食事の量や走れる距離が人によって違うように、”把握管理できる物の量”は人それぞれなのだろうなと思います。また、同じ個人の中であっても、コンディションによってその量は変わることもあるのだろうと思います。Upload By 丸山さとこ私はキャンプに行くのが好きなのですが、1箱に納まるキャンプ道具を見ていると「これだけでも生活そのものはできてしまうのだな」と感じます。一方、毎日の生活は”一定の拠点を構えて構築する暮らし”なわけで、「便利な物や心を潤す物は大切なのだろうな」とも思います。Upload By 丸山さとこ「管理第一!」にならないように、生活に豊かさを取り入れつつ、”私の片付け”を続けていこうと思っています。次回は、折り紙を無限増殖させがちな、現役の“片付けられない子ども”である息子コウの片付けについて書いていきます。
2020年11月29日床に寝そべり、協調性ゼロだった保育園時代Upload By かなしろにゃんこ。ADHDと軽度の広汎性発達障害がある息子のリュウ太が保育園のころと学童期は、保育士や先生から日中の様子を聞くと、多くはケンカや揉めごとの報告で、聞くたびに「あちゃー」と情けない気持ちになっていました。保育園のころ、好きなオモチャを他の子に取られて遊べない日は調子が出なくて、オモチャを巡ってケンカをしていました。お友達をオモチャで殴りましたとか、外遊びでは滑り台を階段から登らず滑る方から登ってルールを守りませんなど、悪い報告が多かったのです。日中の子どもの様子を影からこっそり見てみませんか?と先生に促されて、黒幕の影から子どもたちにバレないように覗くということをしたことがあります。Upload By かなしろにゃんこ。先生のピアノ伴奏に合わせてみんなで簡単な楽器演奏をする時間に、リュウ太は一人で床に寝そべってミニカーで遊んでいました。この覗きによってリュウ太は集団行動が取れない、協調性ゼロの問題児だったことを知ったのです!うわーん(泣)就学してからもすぐに、教室で座っていられない、ノートや教科書を準備せずに授業がはじまっても工作やお絵かきを続行するなど、自由な振舞いが目立っていました。トホホ……。就学後も集団のルールが守れない状態は続き...Upload By かなしろにゃんこ。勉強を無理に強制すると、工作やお絵かきを邪魔されたとパニックになります。先生は発達障害がある子の指導に慣れている方だったので、学校生活に馴染めないリュウ太をある程度自由にさせてくれていて、クールダウンスペースもつくるなど、息子の気持ちに寄り添った対応をしてくれて、ルールを守れないことも大目に見てくれました。リュウ太がアルバイトをはじめた16歳のころ、息子に「リュウ太はルールに従えなかったのに、働けるようになるまでに成長して良かった~」と話していたときに、「なんで昔はルールを守ることができなかったの?」と聞いてみたんです。ルールを守る同級生たちを見て「それ、本心でやってんの!?」Upload By かなしろにゃんこ。「保育園のときはいろいろルールがあるって気にしてなかったから、実はよく知らなかったんだよね。自分がやりたいことを今やりたいから、できないと体の中にストレスがドンドン溜まっていっちゃうから、気持ち悪くなっちゃうんだよ。だからルールよりも自分が大事!」とリュウ太は言います。「小学校に入ってからは、なんでルールに従わなくちゃいけないんだろう?って思った。ルールって誰かがつくったもので、人の気持ちをムシした規則じゃん。みんなは真面目に従っていてエライな~っていうよりも、先生の指示に反発もなくってマジ?それ本心でやってんの?って思った。」Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。自分を大事に生きていたリュウ太の考えに、思わずナットクみんながやるからやるとか、一人だけ目立つのがイヤだから合わせるとかバカバカしいことにこだわっていないで、やりたくなければやらなくていい!勉強とかやらなきゃいけないこともあるけれど、いやいややるならやらない方がマシ!という持論なんだそうです。それに、指示されると余計にやりたくなくなる!とも言います。指示の言い方に悪意を感じると絶対に従いたくなくなる、従うくらいなら戦う!なんだとか。私が「明日の時間割準備しなさいよッ」って半分怒りながら言うと絶対やらなかったのは、そういうことか!と気がつき、トホホ…。リュウ太が言うことをまとめると...人間は我慢が多すぎる。人からどう思われるか気にしたり、一日24時間の中で自分らしく生きている時間が少ないよね、日本人は特に我慢ばかりしている気がするから、もっと自由な感覚を持ったほうがいい。ということでした。なるほどね~、リュウ太はいつでも自然体で生きていたんだとわかりました。自分を大事にすることを忘れていた私。うん、なんとなくわかる。ルールって秩序を保つのに大事だったりもするけど、確かに従いたくないものも中にはある!大人は我慢して従っちゃうけど…そうやってルールに縛られて自分らしさをなくしていたな~。って気づかされました。Upload By かなしろにゃんこ。こんなことを言っていたリュウ太ですが、今では自分も我慢しながら生きる大人の一人として就労先のルールを守って働いています。幼児期や学童期にルールに従えない子でも、遅れてルールを守れるようになることがあると分かりました。徐々に「そのくらいは付き合ってやるか、ルールを守ってもいいよ!」という気持ちになるんだそうです。あくまでも「やってもいいけど」という上からの気持ちだそうです。何様?笑
2020年11月23日刺激がなさ過ぎて気が散る!?一筋縄ではいかない環境調整Upload By 丸山さとこ私と息子はADHDです。集中する先を意識的に選んだり、丁度良いレベルで集中したりすることが苦手です。気が散りやすい反面過集中も起きやすいため環境調整が必要なのですが、”静かで視覚刺激も少ない環境”であれば上手くいくかというと、案外そうでもなかったりします。私もコウも”強すぎない快適な刺激”があることで集中しやすくなる傾向があります。「集中できるように」と刺激を排除し過ぎることで、かえって集中力が発揮できなくなるのです。Upload By 丸山さとこ音楽や独り言など、”一見よそごとにしか見えない何か”を取り入れることで作業が捗ったりするのが不思議です。それでいて、集中が深まっていく過程では急に「微細な刺激が邪魔だな」と感じるときもあり、そういうときには”静かな環境で黙って集中”することになります。微細な刺激は集中の導火線みたいなものなのかもしれません。導火線の段階で作業が終わることもあれば、深い集中という”集中力の爆発”まで至ることもあるのかな?と思います。人それぞれな環境調整。コウの場合は…?”強く興味を引き過ぎない刺激”が集中に対して有効な一方、強く興味をひくものは、やはり集中の妨げになります。ゲーム機・読みかけの本・タブレット端末などは、”目につかない・手が届かない”場所に置くようにしています。Upload By 丸山さとこ「ADHDのある孫みたい」加齢で集中力がダウンしたと言う母の言葉に一瞬ナットク…でも息子コウとは違う?起こりがちなパターンに対してはそれぞれに対応方法を考えます。例えば、コウは学校から借りてきた本に夢中になって宿題や支度を後回しにしがちなので、「宿題や支度が終わるまで本はランドセルの中」というルールをつくったりして対応しています。私が家事などで長時間リビングダイニングを離れるときにも集中が乱れがちなので、宿題などを行っている際はできる範囲で同じ空間にいるようにしています。(同じ部屋でゲームをしたりしていても、コンディションが悪くなければ気にならないようです)Upload By 丸山さとこコウが好む状況を私なりに分析してみると、どうやら彼は自分とは関係のない作業をしている人がいて、なおかつその人が「あまり動かないで同じ場所に座っている」状況で落ち着いて宿題などができるようです。「カフェや図書館で作業をするとはかどる」と言う人は珍しくありません。そう考えると、案外、コウの持つ環境の好み自体は珍しいことではないのかもしれません。(隣でゲームをしていてOKなのは、少し珍しいのではないかと思いますが)将来的にはカフェや図書館などで勉強をするのが向いているかもしれないということで、最近は「それらの場所を静かに利用するために、独り言は段々と頭の中で行えるようになるといいかもしれないね」と提案しています。Upload By 丸山さとこ「音読を黙読に変えていくようなものだと思う。だから、それができたコウなら、いつかできるようになると思うよ。お母さんは、静かにしているときでも頭の中では結構おしゃべりだったりするよ」と言うと、「そうなんだ…全然分からない!」とコウは目を丸くしていました。今は主に薬と母親のサポートを受けている彼が、成長にしたがって”自分のコンディションやそれにあった環境”を色々と覚えて、便利に選べるようになるといいなと願っています。
2020年11月19日専修学校最後の年、周りはどんどん内定をもらっていくけれど...?Upload By かなしろにゃんこ。ADHDがある息子リュウ太が専修学校に通っていた最後の年、20歳ときのことでした。専修学校では来年度就職希望の学生向けに就活サポート授業というのがあって、ビジネスマナーやソーシャルスキル検定の授業、面接の練習時間などがありました。卒業する者の大半が就職を希望して就活をし、ほとんどの人が就職していくような学校でした。夏季に学校を通して企業面接や企業実習をスタートさせ、うまくマッチングしたら改めて面接試験を受けて内定が決まるという流れで、自動車整備の学校ですから多くの人が自動車関連の会社に就職していきます。少子化問題や後継者不足、人手不足の業界ということもあって就職率は99%です。秋にはほとんどの人の内定が決まり、後は卒業後に受ける整備士国家試験の勉強に打ち込むだけ。なのに息子のリュウ太は一向に就活をしようとしませんでした。先生からの電話で発覚!リュウ太の「就職はしません」宣言Upload By かなしろにゃんこ。「就活はどうするの?」と聞かれても、「まだ学校や企業側が始まってない」とか「今考えてる」とか、ウソをついてはのらりくらりとかわしていたリュウ太でしたが...実は、学校の先生に「就職はしません!絵の専門学校に行く予定です」と報告していたのでした。秋のある日、学校をさぼっていたリュウ太のことを心配して先生が連絡をくれたことで分かった事実でした。勝手に決めちゃってまったくもう、プンプン!息子の将来はどうなることやらと心配しました。息子は絵を描くことが趣味で、中学生のころから同じ趣味の仲間と繋がりたいという思いもあり、絵の専門学校に行きたがっていました。Upload By かなしろにゃんこ。専修学校でせっかく自動車整備の技術を学んだのに、就職しないなんて意味がないじゃないのーーーー!と呆れてしまいましたが、就活をどうするか⁉親子で話し合ったときに息子から「就職をしたくない理由」が他にもあることを教えてもらいました。ネットを開くと毎日目に入ってくる、働く人たちの不幸なニュースを見て、リストラやパワハラ自殺、過労死などを知れば知るほど社会に出ることへの希望が持てなくなったというのです。上司の命令に逆らうといじめられる、契約を超えるようなみなし残業を要求される!などなど、息子の社会へのイメージが強烈にダークだったのです。確かに親は子どもに多少は「社会は甘くないぞ!」と言ったりするかもしれませんが、そんなに強烈な闇を教えたりはしません。ネットに流れる情報の悪い部分だけにフォーカスして受け取ってしまっていたようでした。そんなの社会人になれば当たり前!という思いを、グッとこらえてUpload By かなしろにゃんこ。「就職しても、どうせ安い給料で一生こき使われる、そんなのイヤだ!整備士になるのがイヤなわけじゃなくって、自由な時間が持てなくなって絵が描けなくなるのがイヤなんだよっ」とやっと本音を吐き出すようになりました。そんなの社会人になったら当たり前じゃない?社会に出たらみんなそんなもんなのよ、ツライことも飲み込んでいくのよ!と言いたいけれど、発達障害がある子は心が育つのに時間がかかるから3割幼く見積もって計算するお約束を思い出しました。体は大人でも心はまだ成熟していない子どもの部分があり、働くってどういうことか、イマイチわかっていないのです。本人が言うには「社会人の心構えとか理解できないし、わかりたくもない」のだそうです。もうすぐ成人式を迎えるという時期でしたが、「わお、正直だし尖がってますな!まだ反抗期なのかしら?笑」と思ったのでした。何度か話し合いましたが、リュウ太自身に就活するヤル気が見えてこなくて、親がお尻を叩いても無理な気がしたんです。卒業3か月前の年末に「じゃぁいいよ就職しなくても」と伝えたら、すごくホッとした顔をしたのでした。Upload By かなしろにゃんこ。高いお金を払って学校に通わせたのに車業界に就職しないなんて残念で親は複雑な思いですけど、ヤル気がないのに就活しても面接官に見破られてしまって採用されないでしょうし、アルバイトでも社会で数年揉まれて「やっぱり就職したほうが生きやすい!」と気がついたときにやり直せばいいと思いました。失敗してすぐに軌道修正するのは得意のようなので、迷いながら未来の進路を探っていけばいいのかな?と捉えるようにしました。ADHDがある人は狩人特性といいますから、自分がコレだ!と思う目標が見つかると猪突猛進して努力します。でも目指す目標が大きくて手が届かないとわかると、ターゲットを変更して次の目標を探すことが得意だったりもします。子どもの頃には多動や衝動性が障害だったことでも社会に出ると、障害ではなく能力に変わることもありますから、就職だけにこだわらずに能力を発揮できる分野があるのではないか?とも考えました。就職して安定した社会人生活をスタートしてくれたら安心なんですけど、親が思うようにはいかない!ということも覚悟しました。これまでも周りの子と肩を並べて歩んでほしいと、リュウ太ができないことも無理をさせてきました。でも、できないことがあるから発達障害なんだから、できるようになるまで(本人が就職したいと思うまで)成長するのを待つしかないと思ったのでした。その後リュウ太は学校をズル休みしすぎて単位が取れておらず卒業が危ないという状態に陥り...だははは!就活どころではないじゃないのっ(笑)結局、卒業後に就活することになったのでした。♪ちゃんちゃん♩ADHDリュウ太の人生はいつもギリギリの綱渡り的なところがあります、予測不能で危うい道なんですよね、トホホ(涙)初めての就活での失敗談もいつかお話したいと思います。
2020年11月10日老化による認知機能の低下と、発達凸凹は似ている?Upload By 丸山さとこ私もコウも一般的に”集中力に欠ける”もしくは”好きなことにだけ集中する”と言われるタイプです。宿題など、気が乗らない作業をするときには終始気が散っている状態になります。一方、私の母は”必要な作業であれば集中してさっさと終わらせる”タイプだったのですが、そんな彼女も「集中力が落ちてきたのを感じる。年ね…」と言うようになりました。母は、先日電話をした際にも「(集中力がない)コウの気持ちが分かるなぁ。年をとると、皆ADHDのようになっていく」と言っていました。「そうかもね。お客さんからも似たような話を聞くことがあるよ」と相槌を打った後で、「…ん?そうかな?」と少し首を傾げました。母のそれとコウのそれは、少し違うような気がしたのです。”集中力がない”と言われるのに”過集中”する人たち母の老化と、コウや私のADHDの要素は、行動自体は似ているなと思います。母が言うように、”集中力に欠け・記憶がすり替わり・うっかりミスが起きる”点はかなり近いものがあります。Upload By 丸山さとこけれど、私はコウを見ていて集中力がないとは感じません。趣味に没頭する時は過集中になることも多く、苦手な宿題であってもコウが乗っていればすごい速さで終わらせることもあります。私自身も過集中が起こりやすい方です。作業に夢中になりすぎて休息や水分補給を忘れ、体調を崩すことすらあります。私は仕事でご年配の方からお話を伺うことが多いのですが、そこで言われている”集中力がない”状態とは、”集中しようとしているが上手く集中できない”もしくは”集中するための気力体力がない”状態なのではないかと思います。Upload By 丸山さとこ一方、コウが”集中力がない”と指摘されるときの様子を見ていると、集中力がないというよりも”気が散っている”状態なのかな?という印象です。集中力を向ける方向を意識的に選ぶことが難しいようなのです。もしもご年配の方が”集中するための力が低下した状態”になっているのだとしたら、コウの場合は”集中をコントロールする力がない状態”なのかもしれません。環境調整や薬でサポートしつつ…母に上記の考えを伝えると、「分かる!」と頷いていました。「確かに、コウもさとこも集中力あるよね。気が散る要素を減らすと上手くいきやすいのも分かる。私は、気力体力の衰えから来てる感じあるわ…」とのこと。Upload By 丸山さとこ母の場合は、集中を向ける先をコントロールする方法は既に分かっていても、それを実行する力が衰えてきているということなのかもしれません。コウの場合は、集中する力そのものはあってもコントロールする力が弱いということで、そこを環境調整や薬の服用などで補いつつ、練習(療育)をしていくことが大切ということなのかな…?と、改めて思いました。
2020年11月07日私には現在小学3年生の長男がいるのですが、発達障害であるADHD(注意欠陥・多動性障害)の診断が下りたのは小学校2年生のときでした。さらに3年生になった今年、自閉症スペクトラムの診断が下りたのです。私は、小学生になるまで長男の障害を見つけてあげられなかったことを後悔。乳幼児健診のとき、こうしておけばよかった! と思ったことをお話しします。 1歳半健診では育てにくさを伝えられずハイハイをし始めたころから活発な長男でしたが、1歳になるころには多動が目立ち始めていました。他の子とちょっと違うなと感じつつも、気にするほどでもないと思うなかで、1歳半健診の日を迎えました。 1歳半健診の質問項目に「育てにくさを感じますか?」とあったのを見て、一瞬戸惑う私……。買い物先や支援センターでよく脱走し、かんしゃくがひどいことに悩んでいたからです。 しかし育てにくいレベルに入るのかわからず、悩みながらも「いいえ」にマルをしたのです。このとき「はい」または「わからない」にマルをしていれば、支援に繋がったのかなと思います。 3歳児健診でも育てにくさを伝えられず!その後長女が生まれ、育児に奮闘しているうちに年月が経ち、長男の3歳児健診の日を迎えました。3歳になるころにはお喋りもじょうずになり、手先も器用になってきていた長男。一方で相変わらずかんしゃくが酷く、2歳下の妹を叩いてしまうこともしばしば……。 しかし私は3歳児健診での問診票でも、「育てにくいですか」の質問に悩み、「いいえ」にマルを付けてしまったのです。さらにあらかじめ相談内容を固めていなかったため、悩みをどう伝えたらいいのかわからず健診は終了。私はまたもや悩みを伝えられないまま、健診をスルーしてしまったのです。 次男のおかげで保健師さんに相談でき…3歳児健診を過ぎると、市の乳幼児健診の場はありません。仕事が忙しくなったこともあり、日々の家事、育児をこなすだけで精一杯の私……。そして長男が小学校に入るころ、転機が訪れました。わが家に次男が生まれたのです。 育てやすい次男ですが体が小さく、4カ月健診で経過観察となってしまいました。おかげで市の保健センターから、よく電話がかかってくるようになりました。長男のかんしゃくに悩んでいた私は、すがるように保健師さんに相談することに! すぐに専門的な相談施設を紹介され、小学2年生になったころにADHDの診断が、さらに1年後に自閉症スペクトラムの診断が下りました。 長男の幼児期を振り返ると、後悔するのはやはり乳幼児健診で悩みを伝えられなかったことです。伝えるべきか迷う程度の悩みでも、困っているなら相談するべきだと思いました。今では主治医や臨床心理士さんに相談しています。次男が3歳児健診を迎えるときには事前に悩みをリストアップし、細かく相談したいと思っています。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 ベビーカレンダーでは、赤ちゃん時代を卒業して自己主張を始めた2~6歳までの子どもの力を伸ばし、親子の生活がもっと楽しくなる【キッズライフ記事】を強化配信中。今よりもっと笑顔が増えてハッピーな毎日なりますように! 監修/助産師REIKOイラストレーター/みいの著者:河津明香2男1女の母。旅行代理店勤務をしながらの育児を経て、フリーランスのライターへ転身。現在は発達障害の長男のサポートをおこないながら、旅行・育児・生活雑貨などの記事を中心に執筆。
2020年10月12日おもちゃや工作、うまくできているのに「全然ダメ!」Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。ADHDと広汎性発達障害がある息子リュウ太は小さいころからカンシャク持ちでした。幼少期はプラレールの線路がうまく作れないだけでプッツン!オモチャをバラバラにしていました。工作をしていても、うまく作れているのに気に入らないとプッツン!怒って暴れて道具を散らかします。息子が突然に怒り出すことが分からず、また、機嫌よくしていたかと思うと直後に怒り出すことが頻繁にあって、私は恐怖を感じることもありました。とにかく怒らないでほしい。怒る姿を見たくないし、怒る声も聞きたくない...そう思っていました。プラレールの線路も工作も、うまくできているように見えるので、「上手にできているじゃない、なんで怒るの?」と聞くのですが、「やだやだ!もうっ全然ダメ!」と泣きながら怒るばかりです。自分の気持ちをうまく言葉にできない年齢ですから、詳しい原因は聞いてもよくわからず、かんしゃくが起こるタイミングがつかめないことも続き、私は困っていました。小学生になり、回数は減ったものの...Upload By かなしろにゃんこ。小3小4の頃、癇癪の回数は減ったものの、行動は激しくなり、ひどいときは私を蹴ることもありました。普段私に暴力をふるうことはないので「おかしいぞ?精神的にヤバイのかも?」と心配したときもあります。Upload By かなしろにゃんこ。小4の春、ちょうど半年前に予約した児童精神科のクリニックをようやく受診できることになって、発達障害の検査を受けて診断してもらい、ADHDの気性が荒い子どもをうまく育てるためのペアレント・トレーニングを受けることもできて、かんしゃくを起こしたときの対応も教えてもらいました。暴力にはきちんと抵抗して止める指示を明確に出すように助言を受け、家でも実践するようになりました。「蹴られるとお母さんは悲しいし、痛いからイヤだ!」という気持ちを息子に伝え続けました。相手の気持ちを推し量ることができない特性ですから、こんなこともいちいち伝えないといけないのか~大変だわ~(泣)と発達障害がある子の育児に挫折しそうになることもありました。でもハッキリ伝えるようにしてからは、は少しずつ蹴ることはなくなっていきました。あのときかんしゃくが起きていたのはなぜ?!本人に聞いてみるとUpload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。息子が17歳くらいのときに、なぜ工作中などに突然かんしゃくを起こしてしまっていたのか聞いてみました。すると息子は、「お母さんにうまくできているよ、と言われても自分の中のこだわりなんだよね」と言います。つまり、考えていた理想が高いだけに、そこに到達できないことで全てイヤになってしまい、メチャクチャに壊したくなるということ。Upload By かなしろにゃんこ。私は孤高の芸術家が頭に浮かびました。あぁ…なるほど、駄作だと壺を割る陶芸家ってこういう気持ち?こだわって作っているからこそ、良いものができないと全て「これでは世に出せない!」と壊してしまう的な?周りに褒めてもらえたら満足できるというものではなく、あくまでも自分の中の評価が大事だったのだと分かりました。周りの人間は、このかんしゃくに対応するのは大変ですが、このタイプは物づくりを突き詰めていけると思うのです。かんしゃくのとき、どうしてほしかったの?Upload By かなしろにゃんこ。かんしゃくを起こしたときにどうしてほしかったかも息子に聞いたところ、「ほっといてほしい!自分で壊してリセットしてスッキリするんだから、そういうときは悪いけど話しかけないでほしい」とのことでした。でもね、家の中で「くそー!ムカつくんだよ!」ドカドカ☆って金切り声が聞こえてきたら、やっぱり「どうしたの?」って声かけちゃうと思う、心配だから。22歳になった現在はだいぶ治まっています。暑い、空腹、眠い、オーバーワークなど、体や脳の疲れや緊張が続いたときなどはストレスを大きく感じてか、着火が早く、プッツン☆するときもありますが、趣味の絵を描く創作活動をはじめてからは感情のコントロールができるようになってきたといいます。成長するにつれて、徐々に気持ちの揺れ幅も穏やかになってきているようです。次回は子どものイライラする気持ちや傷ついた気持ちを引き出すためにわが家で取り組んでいた、「お家カウンセリング」についてお話したいと思います。コラムをもっと読みたい!無料会員登録はこちらから※発達ナビに無料会員登録をしていただくと、2コラム目や2ページ目もお楽しみいただけるようになります。
2020年10月09日忘れ物が異常に多く、些細なことでキレ、列に並んでいることもできなかった息子が、東大大学院に。母は「私の子育ての何がよかったの?」というが、実は数々の工夫と、何より息子への変わらぬ愛と信頼があった――!「いろんな人からよく聞かれるんですけど……、正直、なんであの子が東大に入れたのか、母親の私にもわからないんですよね」秋田県潟上市在住の美容師・菊地ユキさん(51)は苦笑しながら、何度もこう繰り返した。菊池さんは、地域で初めて発達障害(ADHD)の診断を受けた長男・大夢(ひろむ)くん(23)を、女手一つで育て上げたシングルマザーだ。母の苦労の甲斐もあって昨年春、大夢くんは見事、北海道大学を首席で卒業。そして、東大大学院に入学を果たした。先日、子育ての思い出をつづった手記『発達障害で生まれてくれてありがとうシングルマザーがわが子を東大に入れるまで』(光文社)を出版した菊地さん。冒頭のコメントは「どうして息子さんは東大大学院に入れたのか?」という記者の問いに答えたもの。「いったい私の子育ての、何がよかったんですかね~」と、何度も首をひねる菊地さんだが、著書を手に大夢くんの幼少期を振り返ってもらうと、いくつかの特徴的な子育て法が見えてきた。■「わが子は発達障害」と公に「保育園時代から、とにかく忘れ物が異常に多くて。それに、些細なことでキレては友達に手をあげる。団体行動も苦手で、列に並んでいることもできなくて。発表会では大騒ぎした揚げ句、1人だけ退場させられたこともありました」小学校に進んでも、状況は一向に改善しなかった。「授業中、じっと席についていることができなくて、私はしょっちゅう、学校に呼び出されていました。ほかのお母さんからも苦情や嫌みを言われっぱなしでした」菊地さんは1年生になった息子を連れ病院を受診。そこで大夢くんは「ADHDの疑いあり」との診断を受けるのだ。「ショックというか、私自身、ADHDや発達障害について何も知らなくて。すぐに専門書を何冊も取り寄せて勉強したんです」さっそく、学校にも出向いた。「担任の先生に本を何冊か持参しました。大夢に近い特性が紹介された箇所や、どんなとき困ったことになるかが解説された部分にペンで線を引いて、『ここだけでも読んでください』とお願いしました」担任から「クラスの子にも公表していいですか?」と聞かれ、菊地さんはこう即答した。「いいですよ、恥ずかしいことじゃないですから」包み隠さず公にしたことで、大夢くんを取り巻く状況は、少しずつ好転していった。菊地さんの著書には、当時の担任教諭が次のようなコメントを寄せている。《お母さんが大夢くんに診断を受けさせて、それを学校や保護者に報告、公表されたことで、私たち教師や学校は、大夢くんが学校生活を有意義に過ごせるよう配慮することが可能になりました》子どもたちも彼の特性を変わった個性と認め、「大夢はああいうやつだから」とクラスの一員として受け入れるようになったのだという。■「1人で生きていく術を教えるだけでいい」と主治医は言った小学校2年生のとき、県立の療育センターを受診した大夢くんは、脳波測定などを経てADHDの診断が確定。「といっても、大夢の状態が急によくなるわけもなくて。相変わらず授業はまともに受けられないし、落ち着きをなくすと、ところ構わずゴロゴロ寝そべるし……」長男の将来を悲観ばかりしていた菊地さんは、’97年に神戸で発生した連続児童殺傷事件の犯人・少年Aの両親の手記を読み、彼もADHDだったと知り、絶望のどん底に突き落とされた気分になった。「大夢を残して先に逝けない、ならば、2人で死んじゃったほうが……、そう、思い実行に移しそうになったこともありました」なんとか、思いとどまった菊地さんは、療育センターの主治医につらい思いをぶつけた。「ちょっとしたことでキレて手をあげる大夢には、友達ができません。勉強だって授業をまともに受けられないから、きっとダメです。そんな子にこの先、生きていく価値なんてあるんでしょうか?」すると、主治医は諭すようにこう教えてくれたという。「たいがいの悪いことは、友達から学ぶもの。だから友達なんていなくたっていい。お母さんは勉強も教えなくていい。友達と遊ぶことも教えなくていい。ただ1つ、将来彼が1人で生きていけるように、その方法だけを考えて、教えてあげればいいんです」菊地さんは当時をこう述懐する。「先生の言葉に、どれだけ救われたか……。だから私は、あの子に勉強を教えたことは、ただの一度もありません。そのかわり、お米の研ぎ方など家事全般を、小さいころからきっちり覚えさせました」菊地さんは、「私はなんにもしていないのに、気づけば東大大学院生になった」と笑う。だが、母の愛、それに数々の工夫が、彼の才能を花開かせたことだけは、間違いない。「女性自身」2020年9月22日号 掲載
2020年10月04日「いろんな人からよく聞かれるんですけど……、正直、なんであの子が東大に入れたのか、母親の私にもわからないんですよね」秋田県潟上市在住の美容師・菊地ユキさん(51)は苦笑しながら、何度もこう繰り返した。菊池さんは、地域で初めて発達障害(ADHD)の診断を受けた長男・大夢(ひろむ)くん(23)を、女手一つで育て上げたシングルマザーだ。母の苦労の甲斐もあって昨年春、大夢くんは見事、北海道大学を首席で卒業。そして、東大大学院に入学を果たした。先日、子育ての思い出をつづった手記『発達障害で生まれてくれてありがとうシングルマザーがわが子を東大に入れるまで』(光文社)を出版した菊地さん。冒頭のコメントは「どうして息子さんは東大大学院に入れたのか?」という記者の問いに答えたもの。「いったい私の子育ての、何がよかったんですかね~」と、何度も首をひねる菊地さんだが、著書を手に大夢くんの幼少期を振り返ってもらうと、いくつかの特徴的な子育て法が見えてきた――。「保育園時代から、とにかく忘れ物が異常に多くて。それに、些細なことでキレては友達に手をあげる。団体行動も苦手で、列に並んでいることもできなくて。発表会では大騒ぎした揚げ句、1人だけ退場させられたこともありました」小学校に進んでも、状況は一向に改善しなかった。「授業中、じっと席についていることができなくて、私はしょっちゅう、学校に呼び出されていました。ほかのお母さんからも苦情や嫌みを言われっぱなしでした」菊地さんは1年生になった息子を連れ病院を受診。そこで大夢くんは「ADHDの疑いあり」との診断を受ける。「ショックというか、私自身、ADHDや発達障害について何も知らなくて。すぐに専門書を何冊も取り寄せて勉強したんです」小学校2年生のとき、県立の療育センターを受診した大夢くんは、脳波測定などを経てADHDの診断が確定。「といっても、大夢の状態が急によくなるわけもなくて。相変わらず授業はまともに受けられないし、落ち着きをなくすと、ところ構わずゴロゴロ寝そべるし……」■けむたがられても何度でも学校に。親の意見をしっかり伝える小学校3年生になった大夢くん。その担任となったのは、昔かたぎのベテラン教諭だった。「その先生は『甘えはダメ』『怠けているだけ』と、大夢の特性を理解しようとしてくれませんでした」さらに不安定になった大夢くんは教室で失禁してしまったり、体育の授業中に失踪してしまったり。「以前の私なら、また悲観することしかできなかったかも。でも、このときはその頭の固い先生の態度に、どうにも反発心が芽生えてきて。『負けてたまるか』って(笑)」全校集会など大勢の人が集まる場所が大夢くんは苦手。じっと座っているのが苦痛なのだという。「だから、学校に行って先生に『全校生が集うイベントの日は休ませます』って宣言したんです」教諭は「親が諦めてどうするんですか?」とあきれ顔だ。しかし、母はひるまず、こう続けたという。「あの子にとって大勢の人のなかで椅子に座っているのは、先生のような普通の人が椅子の上で逆立ちするのと同じぐらい大変なんです。先生、校長先生のあいさつが終わるまで、椅子の上で逆立ちを続けること、できますか?」菊地さんは「モンスターペアレントと思われてたかも」と笑う。それでも、この決してあとには引かない母の姿勢が、頑なな教諭の気持ちをも動かしていった。「先生も、本当に少しずつですが大夢の特性に理解を示し、配慮してくれるようになったんです」■何事も予行演習が大事「大夢をよくよく観察して気がついたのが、あの子が失敗するきっかけの1つが『初めて』ということ。初めて行く場所、初めて会う人、初めてすること……初めては極端に落ち着きをなくすんです、とにかく大夢にとって何事も初めては、鬼門だとわかったんです」そこで菊地さん、忙しい美容室の仕事の合間を見つけては、息子の「初めて」に付き合うことに。「何でも予行演習をしたんです。学校の音楽鑑賞会の前には、たまたま入手したチケットでコンサートに連れて行きました。『今日2時間、我慢できたら鑑賞会も大丈夫』と。遠足も事前にコースを教えてもらって、2人で歩きました。『ここを見学して、あそこでみんなでお昼を食べるから』と教えながら」運動会も予行演習は欠かせない。「見知らぬ大勢の保護者が応援に来ますからね。それだけであの子が落ち着きをなくすのは目にみえてる。だから、前日までにグラウンドに2人で行って。みんなでここに並んで、先生の『ヨーイ、ドン!』であそこまで走るんだよ、と」幼いころから記憶力だけはよかったという大夢くん。小1、小2……と予行演習と本番を経験していくうちに、運動会そのものに慣れていった。小学校高学年になると、予行演習は不要に。「徒競走で、よその保護者は『目指せ、1等賞!』と声援を送りますが、私は大夢に前の晩『頑張って、ちゃんとビリになれるかな?』って。実際、大夢は足も遅く毎回最下位でしたけど。それでも、予行演習なしで参加できるようになった大夢のことが誇らしかった。私たち親子は、みんなとは違う競技に参加してた、そんな気がしてます」こうして大夢くんは、多難な小学校時代を乗り越え、徐々に勉強に打ち込めるようになり「私はなんにもしていないのに、気づけば東大大学院生になった」と、菊地さんは笑う。だが、母の愛、それに数々の工夫が、彼の才能を花開かせたことだけは、間違いない。「女性自身」2020年9月22日号 掲載
2020年10月04日発達障害のある子どもが抱えがちな困りとは出典 : 発達障害とは、生まれつきの脳機能の発達の偏りによる障害です。得意・不得意の特性と、その人が過ごす環境や周囲の人との関わりのミスマッチから、社会生活に困りごとが発生します。発達障害は外見からは分かりにくく、その症状や困りごとは十人十色です。特性や現れる困りごとによって、大きくASD(自閉症スペクトラム)・ADHD(注意欠陥・多動性障害)・LD(学習障害)の3つのタイプに分けられます。●自閉症スペクトラム障害(ASD)自閉症スペクトラム障害は、自閉症やアスペルガー症候群、広汎性発達障害などが統合されてできた診断名です。英名のAutism Spectrum Disorderの頭文字をとってASDと略されることもあります。主な特徴として、以下のようなものがあります。・言葉のコミュニケーションが難しい(言葉の裏にある意味を汲み取るのが難しいなど)・人と関わることが苦手(目を合わせない、空気を読むのが苦手など)・こだわりや興味に偏りがある(予定が変わるとパニックになってしまう、同じ動きを繰り返すなど)また、感覚に関する過敏性や鈍感性を伴うこともあります。●ADHD(注意欠如・多動性障害)ADHDは、注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害とも呼ばれ、以下のような特徴があります。・不注意…物事に集中できず、忘れっぽい・多動性…落ち着きがなく、じっとしていられない・衝動性…自分の感情や行動をコントロールできず、衝動的に動いてしまうこれらの要素の現れ方の傾向は、「不注意優勢に存在」「多動・衝動優勢に存在」「混合して存在」というように人によって異なります。●学習障害(LD)学習障害(Learning Disabilities:LD)とは、全般的な知的発達に遅れがないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力に困難が生じる発達障害のことです。主に以下のような特徴があります。・ディスレクシア(読字障害):文字を読むのが苦手など・ディスグラフィア(書字障害):文字を書くのが苦手など・ディスカリキュリア(算数障害):計算や算数が苦手などと呼ばれることもあります。発達障害のある子どもには、その特性から困りごとが生じることが多くあります。発達障害のある子どもが抱えやすい困りごとの例を紹介します。●自閉症スペクトラム障害(ASD)がある子どもの困りごと・言葉の遅れ周囲の大人や同年代の子どもたちと言葉でやりとりすることができず、自分の希望を伝えたり、相手が何をしてほしいのか理解することが難しい。・周囲とのコミュニケーションが苦手周りの子どもとコミュニケーションを取ることが苦手で、一人遊びをしていることが多い。そのため周りの人から仲間外れにされたり、集団で活動をすることが上手くできずに注意されたりすることがある。また相手が何をしてほしいのか理解できずにケンカになったり、自分の気持ちが分かってもらえないためにかんしゃくを起こしたりして対人トラブルが生じることもある。・こだわりが強い・変化が苦手同じおもちゃでないと遊ばない、スケジュールが急に変わると活動できないなど、日常生活に支障が出るような強いこだわりがある。周囲の人からどれだけ注意されてもこだわりを直すことは難しいので、わがままだと誤解されたり、無理やりこだわりをやめさせられそうになってパニックを起こしたりすることもある。・癇癪・自傷行動思いがけないことや気に入らないことがあるとパニックになったり、激しい癇癪(かんしゃく)を起こしたりする。また、頭を壁などにぶつける、髪の毛を抜く、手や爪を噛むなどして自分を傷つけてしまうこともある。・感覚過敏光や音に敏感で、そういった刺激を嫌がることがある。感触にこだわりがあり、決まった服以外着られなかったり、食べ物の好き嫌いが多くて偏食があったりする。過敏であるがゆえに刺激を避けようと活動範囲が狭くなったり、人との関わりを避けることもある。・感覚鈍磨感覚の反応が鈍くて刺激や痛みを感じにくいことがある。そのため声をかけられても気づかなかったり、ケガをしても気にしないことがある。また、自分からより強い刺激を求めて危ない行動をとったりすることもある。●ADHD(注意欠如・多動性障害)がある子どもの困りごと・課題に集中できない話を聞いたり、本を読み続けたりすることが苦手。やるべきことがあっても、少ししたら他のことを始めるため、周囲の人から注意されることがある。・忘れ物や不注意が目立つ忘れ物や、うっかりミスが多い。片付けや整理整頓も苦手で、どこに何をしまったのかも忘れてしまうことがある。約束や課題の〆切なども忘れてしまうことが多いため、対人トラブルや周囲から叱責されることが多くなりがちである。・我慢ができず、感情がコントロールできない:じっと座っていることが難しかったり、順番を待つことが苦痛である。そのために周囲の人とケンカになってしまうこともある。感情のコントロールが苦手で、カッとしたりイライラしたりしやすくて、些細なことでもつい手が出てしまうことがあるので、対人トラブルになりやすい。・行動がコントロールできない刺激に敏感ですぐ気が散ってしまったり、おしゃべりがやめられない。先生の指示で動いたり周りと合わせて行動したりするのが苦手なので、集団行動をとったり、周りと同じペースで物ごとに取り組むことが苦手である。●学習障害(LD)がある子どもの困りごと・読むことが苦手読み間違いの多さや、読むことの遅さ・たどたどしさがある。また、読めたとしても非常に疲れてしまうことがある。・書くことが苦手文字の形を正確に書くことができない。文法やマルや点の打ち間違いが多い。文章で表現することが苦手。・算数が苦手数を理解したり、覚えたりするのが難しい。計算ミスが多かったり、計算が遅かったりする。数式を用いて考えるのが苦手なので、複雑な計算などがなかなかできない。・なぜできないのか理解してもらえない学習障害の子どもは苦手なこと以外はそれなりにこなせることが多く、「なぜ他のことはできるのに、これだけできないのか?」と困りごとを周囲の大人に理解されにくい。怠けているのではと誤解されて注意されることで、ますます意欲が低下するという悪循環が生じやすい。※リストは行動の一例です。その障害があるすべての子どもに該当するとは限りません。発達障害とは?種類・症状・進路・発達支援の重要性について発達障害のある子どもには、どんな関わり方が必要とされている?出典 : 発達障害のある子どもは、特性が理解されないまま、「困った子」「できない子」として誤解され、叱られることで、やる気や自信をなくしてしまいがちです。不登校や引きこもり、うつ、反抗挑戦性障害といった二次障害を防ぐためにもこれらの兆候を見逃さないことが重要です。その子の困りごと・発達状況や障害特性に合わせた関わり方をすることにより、できることを増やしたり、隠れている力を引き出したりすることができます。「困った子」ではなく「困っている子」と考え、早期にサポートしていきましょう。その際、発達障害のある子ども自身のスキル獲得を求めるのみでなく、環境を整えたり、支援をする側の対応を工夫することが大切です。発達障害のある子どもへの声かけでは、以下のことに気をつけてみましょう。①否定語を使わず、肯定語を使った声かけ「〜しないで!」「〜はダメ!」といった否定語を使った声かけは、人には伝わりづらいと言われています。また発達障害のある子どもの場合、その特性による困りごとから周囲に注意されたり否定されたりする頻度が高く、自信ややる気をなくしてしまうこともあります。「その行動の代わりにどんな行動をしてほしいのか?」を考え、否定語ではなく肯定語を使った声かけに変換して伝えるようにしてみましょう。(肯定語を使った声かけ・例)「走らないで!」→「歩いてね」「一人で机を運んじゃダメ!」→「友達と一緒に運んでね」②具体的で、短い指示を出す何度伝えても、子どもの行動が変わらない…そのようなときは、指示が本人に伝わっていないのかもしれません。発達障害のある子どもは、空気を読んだり、口頭指示を理解したりすることが苦手である場合も多く、指示はできるだけ具体的に、短く伝えることが大切です。(具体的で短い指示・例)「ちゃんと片付けて」→「ブロックを、あそこの箱にいれてね」「ランドセルと水筒と帽子を片付けて、宿題をやるまでゲームはなし」→「(指示を一つずつ分解する)ランドセルをしまってきて。(できたら)水筒と帽子も片付けてね。(できたら)宿題をやろうね。(始めたら)終わったら、ゲームしようね」特性による困りごとが生じている場合、特性に応じた環境がないと、いつまでも失敗を繰り返してしまうことになります。怠けたりふざけたりしているわけではないのに、失敗して叱責を受けることが多いと、子どもは次第に自信ややる気をなくしてしまいます。そのため、発達障害の特性に応じて「失敗しづらい環境」を大人が設定することが必要です。(特性に応じた環境設定・例)こだわりが強く、いつもと違うスケジュールになると癇癪を起こしてしまう。また、口頭指示を理解することが苦手な子どもの場合→予定の変更がある場合は、事前に伝えておく。その際、表や写真を使って視覚的に伝えるようにする衝動性が強く、宿題をしていてもすぐに離席して別の遊びを始めてしまう子どもの場合→あらかじめ、気になってしまうものを視界から除いておく。机は、壁など他のものが目に入りづらい場所に設置する例えば宿題のプリント3枚を仕上げられるよう、子どもをサポートするとします。最終的な目標は「プリント3枚を綺麗に仕上げること」ですが、初めからそこをゴールにして子どもと関わっていると、「字が綺麗に書けていない」「まだ半分しか終わっていない」など注意ばかりになってしまい、「もうやりたくない」と子どもが取り組まなくなってしまうことも。そこで「スモールステップ」の考え方で子どもと関わることで、少しずつ子どものできることを増やすことができます。「まずは3問解く」「10分は集中する」など小さく分解した目標を設定し、それができたらほめたり息抜きの時間を取り入れたりする。その後も少しずつ高い目標を設定していくことで、子どもの「できた!もっとやりたい」という気持ちを引き出しながらゴールに向かうことができます。このように、ひとり一人異なる子どもの発達状況や特性、困りごとに応じて関わり方を変えることで、困った行動が減り、できることが増えていきます。しかし、これらの関わり方を家庭のなかで実践しようとしても、親の忙しさや余裕などの状況によって難しい場合もあるでしょう。また、保育園や幼稚園・小学校ではこういった個に合わせた関わりをしてもらえないというケースもあるはずです。そこでおすすめなのは、家族だけで困りごとを抱えず、さまざまな専門機関やサービスを利用してみることです。家族だけで抱えず、専門機関やサービスを利用することが大切出典 : 世の中には、子育てや発達障害のある子どもをサポートする、さまざまなサービスがあります。上手に活用することが子どもの力を育み、家庭での生活の質向上にもつながります。家族だけで抱えず、専門機関やサービスを利用してみましょう。発達障害者支援センターとは発達障害のある子ども、大人、またその関係者をサポートするための専門機関です。現在は全国に67個のセンターがあり、保健・医療・教育・福祉などの機関と連携を取りながら、発達障害のある方やご家族からの相談に応じています。全国各地にある施設に直接通うことで、発達障害のある子どもが必要なサポートを受けることができます。原則的に、小学生未満の未就学の子どもが通うことができるのが児童発達支援、小学生~高校生の就学児童が通うことができるのが放課後等デイサービスです。自立支援や、遊びや学びの場の提供、習い事に近い活動を行っている施設もあれば、専門的な療育を受けることができる施設もあります。また、民間の幼児教室や学習教室で、発達障害やその傾向のある子ども向けの療育を行う場所もあります。保健センターは、地域住民に対し、総合的な保健サービスを提供する施設です。乳幼児健診で保健センターを利用する方が多いようですが、そのほかにも子育てに役立つさまざまなサービスを受けられます。児童相談所は、子育ての悩みや障害児福祉といった、子どもに関わるあらゆる相談に応じる機関です。子育て支援センターは、主に乳幼児の子どもと子どもを持つ親が交流を深める場です。気軽に遊びに行くことができ、子育てについての不安や悩みも相談することができます。発達障害のある子ども向けの幼児教室・学習教室や、オンラインサポートも利用できる出典 : ジュニアの幼児教室・学習塾では、発達の気になる子どもへの指導を行っています。その特徴を紹介します。・完全個別指導:お子さまだけのオリジナルカリキュラムを作成し、徹底サポート・発達の専門家が監修の教材:10,000点以上の充実教材とプログラムをベースに、お子さまの特性や興味に合わせたプログラムで支援・学習面、ソーシャルスキル面いずれもにアプローチする授業・科学的理論に基づくアプローチ:お子さまと関わる指導員による、科学的理論に基づいた最適なアプローチ・ペアレントトレーニング講座:ペアトレや面談等により、教室と家庭の両輪でサポートする体制LITALICOジュニアの幼児教室・学習塾では、「マンツーマン特化型」の9ヶ月コースを開講しています。このコースは、子どもたちへの指導だけでなく、保護者向けペアトレや面談も充実しています。9ヶ月を一区切りとしてゴールを設定し、教室と家庭の両輪でサポートしながら、スモールステップで「できた!」を積み重ね、子どもが無理なく楽しく力を育めるよう支援をしています。・問合せ先LITALICOジュニア幼児教室・学習塾(※)は、関東を中心に展開しています※LITALICOジュニアの幼児教室・学習塾は、診断の有無にかかわらず利用可能な教室です。福祉サービスではないため、通所受給者証は必要ありません。電話でのお問合せ:0120-901-835受付時間:月~金(祝日除く)10:00~17:00発達ナビPLUSは、 発達障害や凸凹に関する専門家チームによる、オンラインサポートサービスです。「発達ナビPLUS」の会員になると、4つのサービスラインナップすべてにアクセス・参加することができます。勉強会や教材でさまざまな知識・情報を得られたり、悩みをメールで相談することができます。・ 質問もできる!オンライン勉強会(毎週開催)・専門家にメールで個別ケース相談・ペアトレの考え方を取り入れた子育てヒント動画・専門家監修!支援のプロも活用する特別支援教材オンラインなので、お住まいの地域に関わらずご自宅でサービスを受けることができます。まとめ発達障害がある子どもは、得意・不得意の特性と、その人が過ごす環境や周囲の人との関わりのミスマッチから困りごとが発生します。環境を調整し、特性に合った学びの機会を用意することで、困りごとは軽減されると言われています。家庭のみで困りごとを抱えず、専門機関やサービスを利用しながら、その子に合ったサポートをしていくことが大切です。
2020年10月03日わかりやすく事例や対処法を紹介!ーー『ADHD 注意欠如・多動症の本』本書では、「落ち着きがない」、「衝動的に行動する」、「不注意で忘れ物が多い」といった特徴をもつADHDの子どもとの付き合い方を紹介しています。ADHDの子どもは、特性ゆえに学校や家庭での生活で失敗やトラブルを経験することも多く、ストレスを抱えることが多くなりがちです。ときには、そういったストレスが学業不振や、うつ病、いじめなどの重大な事態につながることもあります。本書は、漫画と豊富なイラスト、読みやすい文章で、症状から対応策まで徹底的にわかりやすく解説しています。生活リズムの整え方や、やる気の育み方、ゲームやスマホとの付き合い方といった日常生活に即した具体的なアドバイスが盛りだくさん。子どもたち本人のメッセージも掲載しており、保護者や教育関係者の方にぜひともおすすめしたい一冊となっています。書いてみると子育てがラクになる!『発達障害の子どもの行動が変わる魔法の子育てノート』発達支援の専門家として長らく子どもを育む仕事をしてきた、藤原里美さんによって書かれた本書。「これまでにたくさん自分も失敗をしてきた」と著者の藤原さん。しかし、失敗を繰り返す中で、「こうしたらうまくいく」方法をたくさん見つけることができたと言います。本書にはそんな、失敗から学んだ子育ての工夫がもりだくさん。この本は、「知る」、「理解する」、「行動する」、「評価する」、「できる」といった5つのステップを想定して作られています。本の中には、実際に自分で記入できるスペースが豊富に設けられており、志向を整理しながら本を読み進めることができます。ぜひ、発達障害のあるお子さんをお持ちの保護者の方に読んでいただきたい一冊です。幼稚園や学校で話したいのに話せない「場面緘黙」の子どもの支援がわかるーー『イラストでわかる子どもの場面緘黙サポートガイド~アセスメントと早期対応のための50の指針』家庭ではしゃべることができるのに、幼稚園や学校などの集団の中ではことばを発することができない、「場面緘黙」。小児科で院長をつとめる金原洋治さんと、長野大学社会福祉学部准教授の高木潤野さんの共著である本書は、そんな場面緘黙の子どもたちの理解を深め、具体的にどう支援・指導したらいいかを書いた本です。学校の先生向けに書かれた本ですが、保護者にとっても、学校と連携して子どものサポートをするために役立つことがたくさんある本です。理解して見守るというだけでなく、実際にどういう方法で子どもと向き合ったらいいか、場面ごとのサポート方法が書かれている本書。場面緘黙の子どもが、話したいのに話せないつらさから楽になるために役立つ一冊です。ほめて伸ばすってどうやるの?がわかる!ーー『マンガでわかるペアトレ』ペアレント・トレーニング(ペアトレ)とは、子どもの行動に焦点を当て、好ましい行動を増やしたり、好ましくない行動を減らしたりする接し方を保護者が学び、練習するプログラムです。本書は、著者である、らせんゆむさんが自身の体験をベースに、ペアトレはどういうものかを漫画で楽しく分かりやすく描いた一冊です。「保護者が子どものために頑張る」イメージがあるペアトレ。しかし、らせんゆむさんはペアトレの理解を深めていく中で、「もっと力を抜いて子育てをしてもいいんだ」という穏やかな心境に変わっていったといいます。本書は難しいと思われがちなペアトレについて気軽に楽しんで実践できる本となっており、発達障害などの診断のあるなしにかかわらず、親子の関係をもっとよくしたいと望んでいる方に幅広く読んでもらいたい一冊です。発達障害の困りごとをすべて網羅!--『発達障害サバイバルガイド 「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』本書は、自身も発達障害がある著者の借金玉さんが、自らの経験から得た「生き抜くコツ」を解説しています。キャッチコピーは「世界一意識が低くて、世界一役立つ本」。その名の通り、暮らしを楽にするハックがこの本には満載です。本書では、「ものを片づけられない」、「集中が続かない」といった特性的な悩みにも触れながら、「貯金ができない」、「マルチタスクが無理」といったADHD当事者が実生活で抱えがちな悩みにも、対処法を提示しています。借金玉さんはタイトルにもなっている「サバイバル」について、「サバイバルとは、より快適で、ラクで、優雅な生活」と語っています。発達障害のある成人の方に読んでいただきたい一冊です。
2020年09月29日人付き合いが大の苦手だったリュウ太も、女の子と出かけるように!Upload By かなしろにゃんこ。ADHDと広汎性発達障害がある息子リュウ太は現在22歳、たまに女の子と出かけることがあります。彼女以外の女の子の友だちと食事やお茶をすることもあるそうで、仕事が終わったあとにルンルン♪機嫌よく出かけていくときは、女の子と会うんだな!と母はピーン☆とくるんです。小学生の頃から周りと衝突、ケンカしたりして孤立する時期もありました。周りとうまくいかないことから小1ではリュウ太専用のクールダウンスペースを用意してもらって、学校では一人で過ごすなんてこともありました。Upload By かなしろにゃんこ。とにかく人づきあいがヘタで、相手にズバズバひどいことを言っては敵をつくる男です。そんなリュウ太がナゼ?…ナゼ女子と?出かけるまでに?母も不思議でなりません。そこで22歳になった息子に聞いてみました。「コミュニケーションで気をつけていること」息子が得意げに話した内容は...Upload By かなしろにゃんこ。女の子とつき合い方やコミュニケーションで気を付けていることが3つあると言います。聞いてみると、“女の子との”つき合いの中では特に気をつけているけれど、その前に、人づき合い全般で気をつけていることがあって、それが土台になって女の子と話せるようになったといいます。それは、●相手の趣味に合わせて話してみる。(わからないことは質問する)●人の趣味は否定したり、けなさないようにする。●自分の趣味のマニアックな話は避けるようにする。というものでした。この人づき合いのポイントに気を付けてコミュニケーションをとることで、中学校や専修学校では友人を増やすことができたそうです。なんだか自慢げに話す息子に、心の中で「オイ!そのポイントは私が教えたんだって」とツッコミました(笑)息子が中1か中2の頃に伝えた、私が発達障害の自助会のコミュニケーションの勉強会で聞いた内容だったのです。当時反抗期だったので、母の言葉や助言には「うるせーな」や「どーでもいい」など投げやりな言い方しかしなかったものですが、息子はきちんと話を覚えてくれていたんだとわかりました。反抗期の息子に嫌がられても、繰り返し伝えて良かったかもしれません。Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。そのことに気を付けてコミュニケーションをとっていくうちに、自分の話よりも相手の話を聞いたり、相手の好きな話題を中心に話したりすると仲良くなれる!ということに気がついたといいます。もともと自分のことや趣味の話をするのが大好きな息子。本当はどんどん話したい気持ちもあるはずですが...「多くの人は自分の話を聞いてほしいと思っている、理解者が欲しいと思っている。それは自分も同じだったから、『こんなふうに自分の話を聞いてくれたらな~』や『否定しないで聞いてほしいな~』という気持ちがわかる」と、相手の気持ちを考えられるようになり、初めて話す人とは肯定的な話し方で、まずは相手の話しをたくさん引き出すことで、よい関係を築けるようにしたんだそうです。Upload By かなしろにゃんこ。「女の子と会うときも同じように気をつけるだけで仲良くなれた。例えばSNSでは軽快にやり取りしていても、実際に会うと、大人しい子もいる。そういう子は全然話し出さないから、こっちから何線に乗って来たの?とか飲み物はどんなもの飲む?とか話して、和ませるような質問をしながら、自分の話も織り交ぜていくよ」といいます。ムムム…私が若い頃よりも異性との会話は上手かもしれん…コイツやるわね☆と思ったのでした。他にも「女の子と接するとき」に特に気をつけていることがあって...Upload By かなしろにゃんこ。好きな音楽は?とか、普段の私生活のことや家族のことなんかをどんどん質問していって、気軽に話してくれる関係性を築く...この辺りは、仲良くしたい相手に対して男女問わず気をつけているようですが、女の子と会うときには、これ以外にも気をつけていることがあるのだとか。「それ以外には、女の子が重そうなカバンを持っているときは「持つよ」と言って持ってあげたり、車で送り迎えするときは運転席から助手性にササッと回ってドアを開ける!」「彼女じゃなくても女の子には丁寧に接することで少なくても嫌われることはなくなると思うんだ」と言います。Upload By かなしろにゃんこ。あらあら…気遣い頑張っているんだな~母には一度もやってくれたことがないけど(涙)息子なりに、これまでの人づき合いの中で学んできたポイントがたくさんあるのでしょうね。そんなことで何人かの女友だちができて、そこからまたつき合いを学ぶことができているようです。
2020年09月28日むっくんの通う特別支援学級についてむっくんはADHDと自閉スペクトラム症の診断を受けていますが、発達検査上は大きな凸凹はなく、数値的にも通常学級に通えると言われていました。しかし、感覚過敏や感情のコントロール、対人コミュニュケーションの苦手さが親として心配だったことから、小学校と相談の上、特別支援学級の情緒級に在籍するに至りました。むっくんの通う小学校の特別支援学級は全部で4クラス。1クラスの定員は8名で先生は各クラス2人です。むっくんのクラスには1年生3人と5年生3人が所属しています。1年生3人は交流学級でも同じクラスです。運営上の理由もあってのクラス編成だと思われますが、移動教室の多い特別支援学級生活の中で、同じ友達と行動を共にできることがむっくんの安心に繋がっているように感じます。Upload By ウチノコまた、5年生も同じクラスなので、授業以外の場面でずいぶん上級生に面倒を見てもらっている様子。異なる学年の子と日常を一緒に過ごすというのは、刺激も多くおもしろいなぁと思いながら見守っています。むっくんの小学校生活特別支援学級では主に算数と国語の授業が行われています。先生1人で3人の1年生を指導しており、子どもの状態によってはヘルプの先生が来てくれることもあるようです。むっくんは情緒級なので、教科書、ノートなどの教材は全て通常学級と同じものを使用しています。また、各教科の授業回数、授業内容も通常学級と同じです。ただ、課題プリントなど、先生がオリジナルで作成する教材は交流学級とは違うものを使用しているようです。授業中の様子については、せっかちで課題を終えるのが早いむっくんはみんなの課題が終わるまで待つことが苦手だそう。待つのは嫌だと怒り、機嫌が悪いと課題の間違いをやり直すことも難しく、先生の指導に反発することも多いようです。今は無理にやらせるのではなく、先生との信頼関係を築きながらゆっくり本人のペースで進めてもらっています。おかげさまで夏休みには怒りながらも、指摘された間違いを直せるようになっていました。また、注意深く文章を読むことが苦手なむっくんが、文章にえんぴつを当てて、読み飛ばしを防止している姿には感動しました。個人の得意不得意を考慮しての指導が伺えます。Upload By ウチノコ特別支援学級に所属する子どもは、通常学級にも所属することになります。これは、交流学級と呼ばれる特別支援学級から通常学級に戻って授業を受ける時間があるためです。交流学級での科目は、体育、音楽、図工、生活など。むっくんの小学校では交流学級の時間には、必ず特別支援学級の先生が付き添う仕組みになっています。むっくんは集団の中でスムーズに授業を受けることが難しいときもあるので、この仕組みは親としてはとても安心です。Upload By ウチノコそんな交流学級についてむっくんは、「人が多くて疲れるから嫌だ。」と愚痴ることもあれば、「楽しい!」と話すこともあり、本人のペースで学んでいるようです。ただ、音に敏感なためか音楽の授業は辛いことが多いようで、どうにも参加することが難しいときは授業を受けずに特別支援学級に戻り、休ませてもらったこともあります。辛いときに静かに過ごせる場所が確保されているという安心感があるからこそ、少し疲れても交流学級を頑張れているのかもしれません。Upload By ウチノコUpload By ウチノコ特別支援学級の友達とはとても仲良く過ごしている様子です。特に同級生に対しては「一番仲良しの友達!」と嬉しそうに話してくれます。積極的に人と関わるタイプではないので、また、長時間過ごさない交流学級では友達を作ることが難しいかと思っていたのですが、意外とむっくんの名前を覚えて声をかけてくれる子もいてホッとしています。Upload By ウチノコ次回に続きますさて、ここまではいかにも学校らしい部分についてのお話となりました。とは言っても学校によって、様子やシステムには違いがあると思います。全ての小学校に当てはまるわけではないと思いますが、少しでも生活をイメージする参考になればと思っています。さて、次回は学校生活に付属する登下校や給食、休憩時間などについて詳しくお届けします。Upload By ウチノコ
2020年09月14日着慣れた服がいちばん!新しい洋服には興味ナシUpload By かなしろにゃんこ。ADHDと広汎性発達障害がある息子リュウ太は現在22歳。昨年、車の整備士の資格を取得して車の販売店に就職しました。整備士として働いています。休みの前日や休日は、疲れていても誘われると友だちと遊びに行くなどして過ごし、人と関わることがわりと好きな性格です。女の子とも気軽に会ったりドライブをするのですが、息子は女の子と会うのにテキトーな服ばかり着ていきます。以前デートに毛玉だらけの服をチョイスしようとしたコラムを書きましたが、ファッションに関しては数年経った成人後でも成長がないままでした。Upload By かなしろにゃんこ。肌の感覚過敏があって、幼少期から中学卒業頃までは服の素材によっては痒みが出たり、肌と服がこすれる感覚を気にしたり、ストレッチ素材でないものは体の動きが阻害されるようで着ていてツラくなったり、色物の服では素材とインクによって汗をかいた際に化学変化で体臭が臭くなることを気にしていたり...と問題がいろいろありました。そのため、着るものでパフォーマンスを下げたくないという気持ちが大きく、結局は着慣れた服を着ることが一番落ち着くことから、新しい洋服への興味も、流行りのものに惹かれることもなかったのでした。Upload By かなしろにゃんこ。17歳くらいから母が買ってきた服で「カッコイイんじゃね」と気に入ったデザインの物は着ていましたが、ゆったり感がないものや綿以外の素材のものだとイヤがって絶対に着ませんでした。ところがそんな息子が今年になってはじめて、「こういう服が欲しい」と主張したのです。そんな息子が突然オシャレに目覚めた!?「80年代風の服が欲しい!」Upload By かなしろにゃんこ。80年代風のロゴデザインがあるTシャツや夏用の短い丈のパンツなどがほしいとのこと――そこで、一緒に買いに行くことになりました。成人したんだから一人で買いにいけば?とも思うのですが、上下をどう合わせていいのかなど分からないことがあるし、店員に聞きにくいというので母が合わせてあげることにしました。母は、女の子と出かけるのにオシャレしたいんだな…ふふふ大人になったわね♡と思って心の中でニヤニヤしていたのです。ファッションに興味を持ったことは成長なので、母の意見をグイグイ押し付けるのではなく、欲しいシャツに合わせてパンツや履物をいくつか候補に挙げて自分で選ばせることにしようと思いました。タグや襟首などの素材が肌にソフトな物を選ばせるようにアドバイスしながら選ばせ、お気に入りの物が手に入りました。早速新しい服で出かける息子。「もしかして、デート?」と尋ねると...Upload By かなしろにゃんこ。早速出かけるときに着ていたので、「女の子に会いに行くの?」と聞いたら...「違うよ、80年代旧車のイベントに行くんだ!参加する人はみんなオシャレだからオレも服を合わせたんだよ。女の子と出かけるときは普通のTシャツにGパンでよくね?」と。いやいや逆だろ!女子と会うときこそオシャレしろよ!とツッコミました。どうも「いいね♡」と思われる対象が同じ趣味の少し大人の人らしいのです。承認されたい相手が憧れの人というのはわからなくもないです。他人の目を気にせずに自由に振舞ってきた子でしたが、やっと社会の目や見た目に気を配るようになったのでした。次回は女の子と出かけるときに息子が気を付けている3つのことをお話したいと思います。
2020年08月27日