障害のある子の「親なきあと」への備えって?出典 : 子どもに発達障害などの障害がある場合、その子の特性をよく理解している保護者が、子どもの生活を全面的に支援しているケースも少なくありません。では、保護者に万が一のことがあり、サポートが難しい状態になった場合、どのようなことが起こるのでしょうか?保護者がサポートできなくなったときに向けて備えておくべきこととして、大きくは次の3つがあげられます。・支援者への備えー障害特性を理解し、サポートできる人はいるのか・生活費への備えーお金の管理はどうするのか・居場所への備えーどこに住むのか、どこで働くのかこの記事では、自立に向けた準備、障害年金などの経済的支援、財産を子どもが適切に受け取るための方法、成年後見制度など、親が元気なうちに準備しておきたいことを紹介していきます。親なきあと、「支援者」への備え出典 : 親が元気なうちは、子どもの障害特性の一番の理解者として生活を全面的にサポートしたり、学校や社会との橋渡し役をすることもできます。しかし、親に万が一のことがあった場合に備えておかなくてはいけません。子どもの特性を踏まえつつ、子どもの自立を見据えた準備をしていく必要があります。少しずつ、自立に向けた力をつけていくことが大切です。ここでは、子どもの自立に向けた取り組みをしているご家庭の体験談をいくつか紹介します。発達障害のある子どもをもつシングルマザーの多原美加さんは、親なきあとに備えてのこしたいものとして、人に相談する力、頼りになる支援者、子どもたち一人ひとりにむけたメッセージ、自分を認めて生き抜く力の4つをあげています。kaoruさんは、ある講演会で聞いた「重度の自閉症児でも、教えればたいていの家事はできるようになる」という言葉をきっかけに、家庭で生活力アップのための取り組みをはじめ、少しずつ「困難を自分で解決する力」を身につけられた体験記を書いています。その子の特性に合わせて、生活力を上げるための実践を日々の生活から意識すること、親子で楽しみながら実践を積み重ねていくことの大切さが学べます。のこされた子どもがスムーズに支援を受けられるよう、次の支援者に向けて子どもの特性理解のために必要な情報を伝える準備をすることも大切です。子どもの特性や健康状態、支援に関する希望などを書きのこしておくことは、子どもだけでなく、親なきあとにサポートをする人にとっても助けになります。その際、助けになる本やツールを紹介します。■『精神障害をもつ人のための親なき後に備える』認定NPO法人地域精神保健福祉機構が制作した、親なきあとに備えたい保護者向けの本です。親なきあと対策の、入門書的な位置づけとなります。実際に、親なきあとにのこされた子どもや、準備を始めている保護者の体験談、今から備えるべきこと、家族での話し合いに役立つ項目リストなどが掲載されています。■「親心の記録」一般社団法人日本相続知財センター制作の「親心の記録」は、支援者に対して、子どもについての情報を過不足なく伝えるために作成されたものです。障害福祉サービス受給者証の番号や利用している医療機関や施設など、支援を受けるために必要な情報から、本人の特性まで記録できます。次の支援者への情報伝達にこのような冊子を活用して書き残しておくことも、ひとつの方法となります。※「親心の記録」は団体向けに寄贈されています。個人で希望する方は、下記HPよりお問い合わせください。参考:「親心の記録」について・お申し込み|日本相続知財センターHP成年後見制度とは2000年4月より開始した制度で、知的障害や発達障害を含む精神障害などにより、判断能力が十分でない人の法律行為を支援する制度のことをいいます。対象となる法律行為とは、銀行の手続きや遺産分割、不動産の売却などです。成年後見制度には、家庭裁判所が成年後見人等を選任し既に判断能力が低下している人に対して支援する法定後見制度と、あらかじめ本人が任意後見人を選び近い将来に備え支援者と支援内容を決めておく任意後見制度があります。後見人には本人の親族や、弁護士や司法書士、社会福祉士などの第三者や、福祉関係の公益法人が選ばれることがあります。成年後見制度については、以下の記事をご覧ください。参考:いざという時に 知って安心成年後見制度 成年後見登記|法務省HP親なきあと、「生活費」への備え出典 : 親なきあとの経済面での準備としてまずは、どのような支援制度があり、利用するためにはどのような準備をしておくとよいのかについて知ることが大切です。まずは、受け取れるお金について整理してみましょう。■障害年金障害年金とは、病気やケガなどの障害により生活や仕事が制限されている方が受け取れる年金のことで、国から委託を受けている日本年金機構により運営されている制度です。通常、障害年金を受ける条件は、その障害の原因となった病気やけがについて初めて医師の診療を受けた日(初診日)に、国民年金あるいは厚生年金に加入していることです。初診日に国民年金に加入していた方は障害基礎年金、厚生年金に加入していた方は障害厚生年金が受け取ることができます。初診日が年金加入前の20歳未満の場合は、障害基礎年金を成人後に受け取ることができます。その場合、障害年金の申請や受給は成人してから可能になります。申請書類に、どの病院でどのような治療を行ったかなどの病状の経過を書いた書類や、幼少期からの成育歴を踏まえた診断書が必要になります。詳しくは以下の記事をご参照ください。■自立支援医療(精神通院医療)自立支援医療(精神通院医療)とは、知的障害、発達障害を含む精神障害がある方で、かつ、通院による継続的な治療が必要な場合、その通院医療にかかわる医療費負担が原則1割になる制度です。詳しくは以下の記事をご覧ください。自立支援医療には、精神通院医療を対象にしたもののほか、身体障害がある人を対象にした自立支援医療(更生医療)、身体障害がある児童を対象にした自立支援医療(育成医療)もあります。参考:自立支援医療|厚生労働省HPなお、障害者手帳を所持していると、税金の控除のほか、公営住宅の優先入居、公共施設利用料の減免などが受けられる場合があります。自治体によっても受けられる支援は異なるので、お住まいの地域にどのような制度があるかを知っておくことは、親なきあとに向けての備えとして大切です。障害者手帳についての詳細は、以下の記事をご覧ください。もらえるお金や、出ていくお金を減らす仕組みの次に考えておきたいのはお金ののこし方です。■お金を渡す仕組み障害のある子を持つ保護者に知っておいて欲しいものの一つに、信託と呼ばれる制度があります。信託とは、自身の財産を人や機関に託し、自分または他人のために管理・運用してもらう制度です。信託の中に、特定贈与信託という制度があります。これは、特別障害者(重度の心身障害者)や特定障害者(中軽度の知的障がい者および障害等級2級、3級の精神障害者など)の親なきあとの生活を支援するための信託制度です。この制度を利用すると、最大6,000万円まで贈与税が非課税となったり、定期的にお金を給付できるため、子どもの生活が安定するというメリットがあります。信託制度についての詳細は、以下の記事をご参照ください。■お金をどう作るか預貯金のほか、生命保険の死亡保障などに加入しておくと、親なきあとへの備えとなるかもしれません。また、発達ナビで実施した保護者向けアンケートからは、預貯金や保険のほか、確定拠出年金を利用したり、投資信託などで資産を殖やしている方もいることが分かりました。親なきあと、「居場所」への備え出典 : まずは、親なきあとの子どもの居場所にはどのような場所があるのか、どのようなサービスが受けられるのかについて紹介します。一人暮らしや親族・きょうだいの家の他にも、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一部として、精神障害者居宅介護等制度(ホームヘルプサービス)、施設入所支援、共同生活援助(グループホーム)、短期入所(ショートステイ)などがあります。その他のサービスや詳しい情報については以下の記事をご参照ください。障害のある人の場合、一般企業で働くことも考えられますが、障害者向けの就労支援のサービスを利用することもできます。ここでは就労支援サービスの代表的なものとして、就労移行支援事業所、就労継続支援、地域障害者職業センター障害者就業・生活支援センターを紹介します。就労移行支援とは、障害がある方の就労をサポートする障害福祉サービスです。就労を希望している障害・難病がある方に対して、働くために必要な知識・能力を身につけるトレーニングや、その人に合った職場探しのサポート、就労後の職場定着までのアフターケアを行います。企業などでの就労または開業を希望する方で、就労が可能であると見込まれる65歳未満の方が対象です。利用期間は原則2年です。■就労継続支援一般企業等への就職ではなく、就労継続支援を利用して事業所で働くという選択肢もあります。就労継続支援には、A型と、B型があります。■地域障害者職業センター各都道府県に設置されています。障害者の就労を支援するために、ハローワークや病院、福祉施設などの関係機関との連携を行いながら、地域に密着した職業リハビリテーションを行う施設です。具体的には、職業能力などの評価や支援計画の作成、就職活動の相談、短期間の作業体験や事業所見学などが行われます。■障害者就業・生活支援センター就業や、それに伴う日常生活上の支援を必要とする障害者を対象に、相談や職場・家庭訪問などを行い支援する機関です。就労支援の面では就職に向けた準備支援や、求職活動支援、職場定着支援から関係機関との連絡調整などをし、生活支援の面では生活習慣の形成、健康管理、金銭管理などの日常生活の自己管理に関する助言、関係機関との連絡調整などをします。福祉施設利用者や特別支援学校卒業者などのケース別の支援の流れは以下のページをご参照ください。参考:障害者が就職・定着するまでの標準的な支援|厚生労働省HPまた、ジョブコーチ支援実施機関や、その他の就労支援サービスについては以下の記事をご参照ください。いざという時の頼みの綱出典 : 生活保護制度とは、資産や能力など全てを活用しても生活が困難な方を対象としたもので、健康で文化的な最低限度の生活ができるような保護を行い、自立を奨励する制度のことです。障害の程度にもよりますが、精神障害のある方が生活保護を受給した場合、受給費に加算される可能性があります(障害者加算)。加算額は、現在住んでいる場所と障害の程度で決められます。親なきあと、支援の網の目からこぼれ落ちないために出典 : 何から始めたらいいのか分からないという場合、まずは、さまざまな情報が入ってくるように、また何かあった時に助けてもらえるように、人や機関とのつながりをつくることからはじめてみましょう。発達ナビライターの立石美津子さんは以下のコラムで、支援は受け身ではなく自発的に求めないといけないと書いています。どのような支援制度が受けられるのか自発的に調べることや、ママ友や当事者会などの助け合いの場とつながることの大切さについて発信しています。支援制度も法律も変化していくため、一人で最新情報を追っていくのは結構大変なものです。ママ友や当事者会などさまざまな人や機関とつながることで、保護者だけでなく本人の負担を減らしていくことにもなります。まとめ出典 : 親なきあとの備えとして、まずは将来に向けて、どんな制度やサービスがあるのか知ることから始めましょう。そして、少しずつ第三者の支援を受けられる体制をつくり、お子さんが社会と触れ合う機会を増やしていきましょう。子どもが社会から孤立してしまわないように、一歩一歩、親なきあとへの準備を進めることが大切です。参考文献:山根俊恵(2014)/著「障害者の親なき後の課題と支援について」『地域リハビリテーション』第9巻第5号三輪書店/刊参考文献:平野方紹(2014)/著「親なき後の生活の実態をどうとらえるのかー障害者実態調査から見えてくるもの」『地域リハビリテーション』第9巻第5号三輪書店/刊
2017年12月27日みなさんこんにちは!元記者ママライターの高村由佳です。本格的な寒さが厳しくなってきましたが、赤ちゃんのいる家庭ではどのような暖房器具を使えばいいのでしょうか?赤ちゃんの過ごす環境を温かく快適に保ちながら、安全性についても重視したいですよね。今回は、赤ちゃんのいる家庭でおすすめの暖房器具についてお伝えしたいと思います。●赤ちゃんの過ごすベストな環境は?はじめに、赤ちゃんが過ごす部屋の室温や湿度はどれくらいがベストなのでしょうか?「保育所における感染症対策ガイドライン」によると、冬期の温度は20度から23度、湿度は約60%を保つことが適切 だとされています。また、換気の必要性についても言及されています。さらに、暖房器や加湿器の清掃の大切さについても記されていて、衛生面での管理の重要性もうかがえますね。●器具の安全性について暖房器具による赤ちゃんのやけどやけがには、十分注意したいところです。消費者庁では、暖房器具による6歳以下の子どもの事故情報をまとめています。2016年までの約7年間で、357件の情報が寄せられていて、そのうち約7割がやけどの事故だったそうです。特に事故情報が多かったのはストーブやヒーターによるもの で、全体の約6割を占めていたということなのです。その中の事例としては、「0歳の子どもが石油ストーブにつかまり立ちをしてしまい、やけどをしてしまった」ものや、「0歳の子どもが背ばいで近づいたことで、ヒーターの人感センサー機能が働いてしまい、頭をやけどしてしまった」ものなどがあります。他にも、こたつや加湿器、湯たんぽやあんかによる事故の情報も複数件寄せられているため、これらの暖房器具にも注意が必要です。●おすすめの暖房器具3選以上のことを踏まえて、赤ちゃんのいる家庭におすすめの暖房器具を3つ紹介したいと思います。(1)エアコンエアコンは、器具自体が高いところにあるため、やけどなどの可能性が低く、赤ちゃんにとって安全です。ただ、温度や湿度を適切に保つために対策が必要そうです。エアコンは風の当たる場所が集中してしまうと乾燥しやすく、その風が不潔だと体への影響も懸念されます。加湿器や空気清浄機を合わせ使いすれば、これらの心配が軽減されるでしょう。また、エアコン自体に空気清浄機能がついているものも発売されている ので、子育て家庭にはおすすめです。また、赤ちゃんのことを考えて作られたエアコンもあります。シャープでは「ママと赤ちゃんにやさしいエアコン」として、ママの声から新しいエアコンの機能を考えるという取り組みをしているそうです。例えば、「風クリーンシステム」という機能は、エアコンの中に発生するカビの原因となるホコリを減らす ことができます。さらにエアコンを使用していないときでも、カビの発生しやすい環境を見張ってくれる というのです。エアコンが季節と温度状況に適した運転と設定温度を選択してくれるという機能もあります。その機能において、通常よりも1度ゆるい設定にしてくれる「エコ自動ゆるめ」という設定があります。赤ちゃんには大人が快適と思う温度よりも、1度ずつゆるい設定がおすすめだということで、この機能が生まれたそうです。エアコンを選ぶときに、赤ちゃんに優しいかどうかを基準に選んでみるのもいいかもしれません。(2)温水式床暖房床暖房には電気式と温水式の2種類がありますが、赤ちゃんのいる家庭には温水式の床暖房がおすすめです。その理由は、低温やけどになるリスクが低いこと。床暖房の上に人や物が乗り続けると、床暖房が上から塞がれる状態になってしまい、その温度が上昇してしまいます。東京ガスのデータによると、電気式では約44度から46度まで達するのに対して、ガス温水式は約39度で留まるということです。赤ちゃんは、寝転がったりハイハイしたり、床との距離が非常に近いため、低温やけどのリスクが低い温水式を選んだ方がいい でしょう。床暖房のメリットは、器具やコードが出ていないこと。赤ちゃんが触る心配がないため、安心して使うことができそうです。また風が出ないため、乾燥やホコリや花粉などの巻き上げを防ぐことができます。部屋全体をムラなく温めることができる のも大きなメリット。赤ちゃんが部屋のどこにいても温かいというのは、ママにはありがたいポイントになりそうです。(3)オイルヒーターオイルヒーターは、器具の中の密閉されたオイルを電気であたためて循環させ、パネルから放熱させる暖房器具です。床や壁だけでなく人の体にも直接熱を伝えるので、穏やかな温かさが実感できると言います。温風を出さないため、床暖房と同じく、乾燥やホコリや花粉の巻き上げを防ぐことができます。さらに電気を使っているので、赤ちゃんがうっかり倒してしまった場合にも火事の心配は必要なさそうです。表面温度はメーカーによって異なるため、しっかりと調べてから使用することをおすすめします。例えば、国内で一番多くオイルヒーターを販売しているデロンギでは、やけどしにくい約60度の表面温度にしている そうです。赤ちゃんが触ってしまっても、その瞬間にやけどをしてしまうという可能性は低そうですね。燃料の補充が必要なく、ママにとってはその手間が省けるのは大きなメリット です。ただ、電気代が高くかかる、温まるのに時間がかかるなどの声もあるので、注意が必要そうです。冬を乗り切るには暖房器具は必須のアイテムです。赤ちゃんにとって過ごしやすい環境を作り、安全性も満たせるような暖房器具をぜひ探してみてくださいね。【参考リンク】・厚生労働省保育所における感染症対策ガイドライン・消費者庁暖房器具等の子供のやけど及びけがに注意しましょう・シャープ赤ちゃんとママに優しいエアコン・東京ガスガス温水式床暖房・デロンギヒーター●ライター/高村由佳●モデル/藤本順子
2017年12月19日児童指導員とは?出典 : 児童指導員とは、児童福祉施設に勤務し、施設を利用する子どもたちが健やかに成長できるようサポートする「児童指導員任用資格」保持者のことです。具体的には、以下の福祉施設で、児童指導員の配置が義務付けられています。・児童養護施設・放課後等デイサービス・児童発達支援センター・児童心理治療施設(情緒障害児短期治療施設から名称変更)・障害児入所施設その他、乳児院や児童相談所、児童家庭支援センターといった施設でも、児童指導員として働くことができます。参考文献:『ケアマネージャー・児童指導員・手話通訳士・義肢装具士-福祉の仕事職場体験完全ガイド3』(平尾小径/ポプラ社)p16参考:児童福祉法(昭和二十二年法律第六百十四号)参考:児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和二十三年厚生省令第六十三号)参考:児童福祉施設最低基準(昭和二十年三年厚生省令第六十三号)|厚生労働省参考:第2章児童相談所の組織と職員|厚生労働省参考:児童養護施設等について|厚生労働省児童指導員の仕事内容とは?出典 : 児童指導員は、子どもたちが健全に成長できるよう、日常生活や自立に向けた指導を行っています。子どもたちをさまざまな側面からサポートします。具体的な業務は勤務する施設によっても異なり、それぞれに合った専門性が求められることもあります。児童指導員の活躍の場は、主に児童福祉法で定められた児童養護施設、放課後等デイサービス、児童発達支援センター、児童心理治療施設(情緒障害児短期治療施設から名称変更)と障害児入所施設です。これらの施設では、児童指導員の配置が義務づけられています。■児童養護施設児童養護施設は、保護者の病気や死亡、経済的な理由、虐待など、さまざまな理由で保護者と暮らせない子どもが生活する施設です。支援計画を立てたり、勉強の指導や自立に向けた手助けや、関係者と協力して精神状態のケアを行ったり、問題があれば解決したりします。■放課後等デイサービス障害のある就学児童(小学生・中学生・高校生)が、学校の授業終了後や長期休暇中に通うことのできる施設です。生活力向上のためのさまざまなプログラムが行われています。トランポリン、楽器の演奏、パソコン教室、社会科見学、造形など習い事に近い活動を行っている施設もあれば、専門的な療育を受けることができる施設もあります。■児童発達支援センター小学校就学前の6歳までの障害のある子どもが主に通い、支援を受けるための施設です。日常生活の自立支援や機能訓練を行ったり、保育園や幼稚園のように遊びや学びの場を提供したりといった障害児への支援を目的にしています。■児童心理治療施設(情緒障害児短期治療施設から名称変更)心理的な苦しみを抱え日々の生活に生きづらさを感じている障害児を対象に、医療的な観点から生活支援を基盤とした心理治療を行う施設です。学校との連携も行います。■障害児入所施設日常生活の指導やさまざまな知識・技能を教えること障害児の自立を促す施設です。福祉サービスを行う「福祉型」と、医療的な支援を行う「医療型」の2つがあります。・福祉型障害児入所施設障害児の自立を目標に各々に適した支援プランを提供することを目標にしている施設です。・医療型障害児入所施設福祉と専門医療の両方の視点から、その障害児に最適な支援を提供している施設です。参考:社会的養護の施設等について|厚生労働省参考:障害児及び障害児支援の現状|厚生労働省参考:情緒障害児短期治療施設(児童心理治療施設)運営ハンドブック|厚生労働省参考:障害児入所施設|独立行政法人福祉医療機構参考:障害児入所支援 | 厚生労働省児童指導員の仕事の魅力は?出典 : 児童指導員の仕事の一番の魅力は、施設を利用する子どもたちの成長に携われることでしょう。また、施設でのプログラム等を通して、子どもたちと徐々に関係性を築いていく過程に、達成感や充実感を感じられるという点も挙げられます。加えて児童指導員が配置されている施設には、さまざまな専門家が配置されています。彼らと力を合わせて、子どもたちが抱える問題を解決できた時の喜びは、非常に大きいものとなるでしょう。また、保護者から子育てに関する悩みごとや困りごとの相談を受けることもあります。子どもにとどまらず、困っている人たちのサポートができる、やりがいのある職業です。児童指導員になるためには?出典 : 児童指導員として働くための任用資格を取得するには、以下の条件のいずれかを満たす必要があります。1. 児童福祉施設職員養成機関を卒業した者2. 社会福祉士または精神保健福祉士の資格を有する者3. 大学・大学院で社会福祉学、心理学、教育学もしくは社会学を修得した者4. 小学校・中学校または高校の教員免許を取得する資格を持っている者、かつ厚生労働大臣または都道府県知事の認定を受けた者5. 福祉事務所で2年以上の実務経験(高卒以外は3年以上)を経て、厚生労働大臣または都道府県知事の認定を受けた者任用資格を満たした後は、希望する施設の採用試験を受けることになります。公立施設の場合は公務員試験、民間施設の場合はそれぞれの施設の採用試験を受験します。その採用試験に合格したら、児童指導員の職に就くことができます。参考:児童指導員及び指導員の資格要件等|厚生労働省児童指導員の今後出典 : 年4月1日でに省令が改正されたことを受けて、厚生労働省は、放課後等デイサービスの事業所における職員配置基準を「置くべき従業者を児童指導員、保育士又は障害福祉サービス経験者とし、そのうちの半数以上を児童指導員又は保育士としなければならない」としました(既に指定を受けている指定放課後等デイサービス事業者については、2018年3月31日までの経過措置が認められています)。2012年に放課後等デイサービスの制度が設立されてから、年々利用者・事業所の数も増えており、この基準改定を満たすため、今後一層児童指導員のニーズが高まることが予想されます。参考:「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」等の一部改正について |厚生労働省参考:放課後等デイサービスの見直しについて|厚生労働省まとめ出典 : 年4月より、放課後等デイサービスでも児童指導員の配置が義務づけられたことなどを受けて、児童指導員の需要、認知度ともに高まってきました。子どもの貧困問題などの影響により、児童福祉施設に求められる役割は大きくなっています。また、障害のある子どもや保護者の支援も必要とされています。子どもたちをめぐるさまざまな問題や課題に向き合い、子どもや保護者に寄り添ってサポートをする児童指導員は、今後さらなる活躍が期待される職務です。
2017年12月18日療育とは出典 : 療育とは障害のある子どもの発達を促し、自立して生活できるように援助することをいいます。療育という言葉はもともと、東京大学名誉教授の高木憲次氏(1888-1963)が提唱した概念です。肢体不自由児の社会的な自立を目標に、医療と教育を並行してすすめることを指しました。高木氏の後には高松鶴吉氏(1930-)が療育の対象をすべての障害のある子どもに広げて、育児支援の重要性を強調しました。後に療育の概念をさらに発展させて「発達支援」という概念が生まれました。厚生労働省では「児童発達支援」という言葉として以下のように定義しています。児童発達支援は、障害のある子どもに対し、身体的・精神的機能の適正な発達を促し、日常生活及び社会生活を円滑に営めるようにするために行 う、それぞれの障害の特性に応じた福祉的、心理的、教育的及び医療的な援助である。(児童発達支援ガイドライン|厚生労働省より引用)療育という言葉や概念は時代の変遷とともに意味合いを変えており、現在定まった明確な定義は示されていません。また必ずしも医療行為を含むものではない場合もあります。定義や実践内容の移り変わりはあるものの、概ねの理解としては、療育とは障害のある子どもの発達を促し、自立して生活できるように援助する取り組みを指すと考えるとわかりやすいでしょう。参考:発達支援の指針(CDS-Japan 2016 年改訂版)|全国児童発達支援協議会参考:『脳と発達 第43巻 第6号』「療育とは…」再考「療育とは…」再考(一般社団法人 日本小児神経学会)参考:『佛教大学大学院紀要社会福祉学研究科篇第37号(2009年3月)』子どもの権利条約における「療育の権利」の位置づけ(佛教大学)療育の対象となる児童は?出典 : 療育は基本的に18歳以下の児童を対象としています。身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)の3障害のいずれかに該当する障害のある児童が療育の対象となります。参考:児童福祉法第19条発達障害のある子どもの場合、療育を受けるために療育手帳や精神障害者福祉手帳は必須の条件ではありません。障害者手帳を取得していない、もしくは取得のための認定基準を満たしていない場合でも、療育を受けることができる場合があります。児童発達支援を利用して療育的な支援を受けたい場合、行政から発行される「受給者証」の申請が必要になります。受給者証の交付を受けると、国と自治体から施設利用料の9割の給付を受け、自己負担1割で児童発達支援を受けることができます。また、児童が属する世帯の市町村民税額により、負担上限月額が定められています。利用月の1割負担額と負担上限月額を比較し、安い方の金額が利用者負担となるため、場合によっては1割以下の金額になります。負担上限月額は、通所受給者証に記載されています。参考:障害児支援の強化について|厚生労働省療育ってどこで受けられるの?出典 : 療育という言葉の定義は明確ではなく、家庭でのトレーニングや私費で受けられる療育的支援を指して「療育」ということもあります。ここでは、公的に受けられる療育的支援についてご紹介します。障害児への支援として療育が受けられる施設について、以前は障害ごとに細かな分類がありましたが、現在は複数の障害がある場合にも対応できるように一元化されています。療育を受けられる施設を児童福祉法にしたがって分類すると、通って療育を受ける「通所支援」型と、自宅で生活するのが難しい子どものための「入所支援」型の2つに分けられます。そこからさらに、福祉サービスとして行われる「福祉」型と医師による治療を併せて行う「医療」型に分かれます。Upload By 発達障害のキホン参考:児童福祉法の一部改正の概要について|厚生労働省施設によって対象としているお子さんの年齢が違ったり、提供しているサービスが違います。保育園のように通い、療育を受けられるような施設もあります。詳しくはこちらの記事に説明がありますのでご覧ください。こちらからお近くの施設も検索できます。施設検索|LITALICO発達ナビ療育ってどんなことをするの?出典 : 障害のあるお子さんが社会的に自立できるように、身辺自立や苦手なことを伸ばすことを意識した働きかけをしたり、コミュニケーションなどの社会的スキルを得られるように助けます。お子さんごとに必要な支援が違うので、一概に内容を説明することはできませんが、発達障害のあるお子さんによく用いられるアプローチをいくつか紹介します。人間の行動は周囲の状況との相互作用によって生まれると考え、状況を変えることで困った行動を減らし、より望ましい行動を身につけてもらうことを目的とした、理論と実践の体系を、応用行動分析学(ABA)といいます。TEACCHとは、アメリカ・ノースカロライナ州発祥の、自閉症スペクトラム障害(ASD)の当事者とその家族を対象とした生涯支援プログラムです。自閉症スペクトラム障害がある人の特徴を「世界の捉え方が一般の人とは異なる」ととらえて、彼らの特性が社会に適応できるように助けるという考え方がTEACCHの特徴です。具体的なアプローチとしては、生活・学習環境を分かりやすく整理したり、今後の見通しがつきやすいようにスケジュールなどはカードを使って視覚化したりといった方法があります。また、コミュニケーションについては、耳から聞くよりも目で見るほうが理解しやすい場合が多いので、絵カードなどを使って伝えるようにします。感覚統合とは、複数の感覚を整理したりまとめたりする脳の機能のことです。感覚統合ができるようになると、状況に応じた感覚の調整や注意の向け方ができるようになります。つまり、自分の身体を把握する、道具を使いこなす、人とコミュニケーションをとるというような周囲の状況の把握とそれをふまえた行動ができるようになるのです。発達障害がある子どもには、感覚統合が難しい子どももいます。感覚統合療法では、そうした子どもたちへのアプローチとして、主に作業療法士(OT)が中心となり、遊びや運動を通して感覚統合を伸ばしていくプログラムを行われます。PECSは、言葉によるコミュニケーションが難しい場合などに行われるアプローチです。絵カードを使って、自発的なコミュニケーションをとれることを目標にしたプログラムです。療育にはどんな効果があるの?出典 : 療育の効果は、その子どもに生じている困難・障害や、療育の目的・プログラム内容に応じて異なります。たとえば、食事、排せつ、身支度などが一人でできるようになったり、認知、言語、運動などの発達が促されて、受け答えや挨拶、表情や感情の理解をして他者とコミュニケーションが取れるようなったりと、さまざまな効果が期待されます。実際の療育現場では、子ども一人ひとりの特性や発達段階に合わせて、個別に目標とプログラムが設定されます。ですが、療育を始めてすぐに目に見えて効果が出ることは極めてまれです。特に、発達障害のある子どもの発達は、ゆっくりと進んでいくことが多いです。目立っている苦手な部分がすぐには改善されない場合もあります。それでも、働きかけを続けることで子どもは着実に成長していきます。苦手な部分はそのままでも、得意なことでそれをカバーできるようになっていくこともあります。また、療育を通して子どもとのかかわり方を学ぶことで保護者の対応が変わっていき、より豊かなコミュニケーションが可能となる場合もあります。療育の体験談もありますので、こちらも参考にしてみてください。みなさんの療育体験談を教えてください|LITALICO発達ナビ早期療育はどうして大切なの?出典 : 発達障害のある子が周囲や本人に特性の理解のないまま成長していくと、叱られたり非難を受ける機会が増え、傷つき自信をなくしていくことが多くなりがちです。そこから、自尊心が育たない、抑うつ、激しい反抗などの問題が生じることもあります。障害そのものによってではなく、ストレスなどから起こる問題を、二次障害と呼びます。このような二次障害を防ぐためには、早期から周囲が特性を理解し、対応することが必要となってきます。また、3歳までの幼いうちに療育に取り組み始めることができると、体も小さいので身体的な支援がしやすく、療育の中で子どもがパニックなどを起こした際も抱き上げたりなだめたりなどの対応がしやすいというメリットがあります。参考:『発達障害の子どもとつき合う本―どう関わればいいかわからずに困っているおかあさんや先生方へ』(浅羽珠子/主婦の友社)子どもが小さいうちから特性を把握し、心を安定させながら育てる環境を作ることによって、その子が持っている能力をさらに伸ばしていける可能性が広がります。発達障害への早期支援については発達障害者支援法の中にも述べられています。市町村は、発達障害児が早期の発達支援を受けることができるよう、発達障害児の保護者に対し、その相談に応じ、センター等を紹介し、又は助言を行い、その他適切な措置を講じるものとする。(発達障害支援法 第六条より引用)発達相談から、療育を受けるまでの流れ出典 : 保護者から見て言葉や発達の遅れが気になったり、健診で「発達の遅れがみられる」と指摘された場合は、行政などの相談機関に行ってみましょう。子育て・発達支援室や療育センター、児童相談所などで相談をすることができます。ここで、その地域の検査機関を紹介してもらえます。年齢に応じてさまざまな検査方法があり、複数を組み合わせることでより的確な結果がでます。地域によっては順番待ちが長く、すぐに検査がしてもらえない場合もあります。急ぎたい場合は、病院の外来などで自費診療という形で検査してもらうこともできます。行政が運営しているものから研究機関が運営しているもの、NPOや民間のものなど、多様な施設があります。対象にしている年齢や受けられるサービスなどもさまざまなので、子どもの検査結果に合わせて選びましょう。役所の福祉窓口で療育施設の紹介をうけることもできます。施設によっては見学や体験もできます。利用する施設によって交付される受給者証の種類が違います。通所型施設の場合は「通所受給者証」を市区町村の窓口から申請します。入所型施設の場合は「入所受給者証」を児童相談所などから申請します。必要な書類は行政によって異なる場合があるので、事前に確認をしておきましょう。支給の有無やサービス内容の決定のための調査や審査が済むと、受給者証の交付を受けることができます。受給者証の交付を受けたら、受給者証の内容に合わせて障害児支援利用計画を作成します。受給者証、障害時支援利用計画など必要な書類がそろったら、施設との契約、利用のスタートができます。まとめ出典 : 「療育」というと、少し敷居が高く感じるかもしれませんが、実際は療育手帳などがなくても受けられる場合もあり、発達が遅れていたり生活に困りを感じている子どもをサポートするためのものです。子どもの成長を手助けし、自分でできることを増やせるよう、療育を活用していきましょう。参考書籍:『発達障害のある子と家族のためのサポートBOOK 小学生編』(岡田俊/ナツメ社)
2017年12月15日放課後等デイサービスの送迎加算、廃止の方向へ出典 : 現在、厚生労働省では、平成30年度の障害福祉サービス等報酬改定に向けて検討チームを設け、議論を進めています。11月27日には、居宅介護に係る報酬・基準について論じられたほか、「横断的事項」の論点のひとつとに”送迎加算”の取扱いが取り上げられ、見直しの方向での提案がされました。なかでも、発達ナビユーザーに大きな影響がありそうなのが、放課後等デイサービスでの送迎に関する提案です。検討チームは「放課後等デイサービスについては、送迎サービスがついて利用料の自己負担が軽いこともあって、連日夕方遅くまで預けられることや、送迎車に自宅まで送られ、生徒の公共交通機関を使う能力が落ちていることなどが指摘されている」と指摘しました。そして「放課後等デイサービスについては、障害児の自立能力の獲得を妨げるような形での利用を防ぐことができるよう、障害の程度や公共交通機関がない等、自主的な通所ができない特段の事情がある場合を除き、送迎加算の対象外としてはどうか」とし、加算見直しの提案がされました。第15回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」資料現在は、全国で9,153カ所、約87%の事業者で送迎加算が算定出典 : 現在、放課後等デイサービスを行う指定事業者は10,492カ所あり、そのうち障害児については9,153カ所、約87%の事業者で送迎加算が算定されています(重症心身障害児については333カ所、約3%で送迎加算が算定されています)。(2017年4月時点)「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」では障害の程度や公共交通機関がないなど、自主的な通所ができない特段の事情がある場合を除き送迎加算の対象外とする方針が示されていますが、公共交通機関がないことの基準をどう決めるのかなど、「特段の事情」の範囲が明確でないと、混乱がおこるかもしれません。放課後等デイサービス利用者への影響9,000カ所以上の放課後デイサービスの事業所で実施されている送迎で、加算が算定されなくなると、送迎ができなくなったり、利用者が送迎費用を負担するようになることも考えられ、障害のある子どもを持つ家庭に影響がでる可能性があります。今後、どのように議論が進むのかについて、注視していく必要があります。
2017年12月08日発達障害当事者による、発達障害当事者のための居場所「Necco」Upload By 発達ナビ編集部東京の高田馬場にある「Necco」は、大人の発達障害当事者による、大人の発達障害当事者のための居場所です。高田馬場にある雑居ビルの1室にあり、18時までは一般のカフェとして発達障害の当事者によって営業され、18時以降はフリースペースとして発達障害の当事者のために場が解放されます。スペースでは茶話会やゲーム大会といったイベントも頻繁に開催されており、発達障害の当事者が気軽に集まれる居場所づくりがなされています。大人(成人)の発達障害当事者のためのピアサポート Necco(ネッコ)取材に訪れた日もたくさんのお客さんで賑わっており、別フロアではフラワーアレンジメント講座が開かれていました。Upload By 発達ナビ編集部本棚には発達障害関連の本が多数並んでいます。Upload By 発達ナビ編集部Neccoは自由に集まれる居場所としては2010年、カフェとしては2011年に活動をスタートしており、大人の発達障害当事者のための常設の居場所としては、日本で最初に出来た場です。今回の記事では、このNeccoを立ち上げた方であり、ご自身も発達障害の当事者である金子磨矢子さんに、活動を始めたきっかけや、長年続けていく中での苦労、活動を続けるモチベーションや今後の展望についてお話をお聞きしました。金子さんは平成28年度厚生労働省より「発達障害者の当事者同士の活動支援のあり方に関する調査」を受託し、その報告会である「発達障害当事者会フォーラム2017」を開催された主催者のおひとりでもあります。この報告会は、1月にも「発達障害当事者会フォーラム2018」として大阪で開催する予定とのことです。金子さんのインタビューから見えてきたのは、当事者活動を続けることの大切さと、当事者活動としてどう外の社会と関わっていくかという問題意識でした。ずっと自分はちょっと変な子だと思っていたUpload By 発達ナビ編集部―金子さんがご自身の発達障害について知ったのは、どういったきっかけだったのでしょうか。金子さん: 子供のころからずっと、自分はちょっと変な子だとは思っていました。しかし本格的に自分のADHDを知るきっかけとなったのは、子育てに悩み、本屋で調べ物をしていたときですね。子どもが2才の時にプレイグループに参加させたんですけど、どうにもよその子と何かが違ったんです。なかなかうまく他の子どもと交わることが出来ず、自分のやり方で自分なりの遊びをつくるのを好む傾向があって。プレイグループには、参加している子供の他にその子たちの弟や妹にあたる赤ちゃんも何人かが場にいたのですが、赤ちゃんの泣き声を極端に嫌がるそぶりも見せました。うちの子はよその子となにか違うのかしら?という答えが知りたかったんですが、当時はインターネットも普及していなかったので、しょっちゅう本屋に入り浸っては答えを探し求めていました。その時に出会ったのが『のび太・ジャイアン症候群』という本です。落ち着きがない・忘れ物が多い・後先を考えずに行動する・いじめられる…この本を読んで、子どものことはひとまずそっちのけで「これは私だ!」って叫びそうになりましたね。その場で立ちつくし、購入して帰り、何度も何度も読みました。それまでも自分自身に対する違和感はずっと持っていたんですが、こんな変わった人は自分だけじゃない、特性というものなんだと知り、この本にとても励まされたんです。よその子とは何かが違うと感じていた子どもに関しては、その後、2004年ごろですかね…テレビ番組がきっかけで、アスペルガー症候群だということに気付きました。自分が発達障害だと気づいてから起こした私の行動Upload By 発達ナビ編集部―ご自身の発達障害特性に気付いた金子さんですが、当事者としてNeccoの活動をはじめるきっかけは何だったのでしょうか。金子さん: 最初は活動というまでのものではなかったんです。SNSが普及した頃に、そのSNSの発達障害コミュニティのメンバーでリアルでも会ってみようということになり、定期的にオフ会をするようになったのがはじまりです。そうやって集まるようになっていた中で結束が強くなったのは、リタリンの処方が制限されるようになったのがきっかけです。(編集部注:現在リタリンはナルコレプシーにのみ適応)メンバーの中にはリタリンなしではADHDの症状がしんどい人もいて、これはなんとか訴えないと!ということで、厚労省の会議に傍聴に行ったり、ネット上で活動を行ったりしました。結局私たちの訴えは聞き届けてはもらえなかったのですが、この活動がきっかけで2つの願いが強まりました。ひとつは、いつでも私たち発達障害の当事者が集まれる場所がほしいということ。当時は私の家のリビングに集まってミーティングをしていましたので。そしてもうひとつは、自分たちが集まる居場所を得るだけではなく、社会に対して働きかけを行い、当事者発信で発達障害を広く知ってもらうことです。リタリンの処方うんぬん以前に、当時の発達障害の認知度の低さを思い知らされましたね。私自身、自分の発達障害を知ることが出来てよかったと思っているんです。だから今度は私が、まだ自身の発達障害に気付かずひとりで悩んでいる人の気付くきっかけになったり、居場所になれたらいいなと思って、啓発や居場所づくりの活動を続けています。また、最近でこそ「発達障害」という名前だけは知られてきましたが、「それでは発達障害とはいったい何なのか」という本質的なことは、まだほとんどの人に理解されていないのではないでしょうか。発達障害の啓発活動の動機として、生きづらさを抱えながらも自分が発達障害だと気付かずに生きている方本人に、自分自身のことを気付いてもらいたいというのもありますが、本人だけじゃなくてもっと多くの人にも発達障害についてちゃんと知ってもらいたいと思っています。というのも、発達障害に対する無理解によって苦しんでいる当事者の人がたくさんいることを知っているからです。この人たちはこういう人たちなんだよっていうことを、目に見えないのでむつかしいとは思うのですが、発達障害じゃない人たちにも分かってもらいたい。学校の先生、役所の方、会社の上司…出来ないことは出来ないんだと分かってもらえないと、当事者の方はつらいばっかりです。わざとやらない、怠けたくて障害のせいにしている、そういう風にとられてしまいがちなんですが、本当にそんなことないんですよ。むしろ精一杯努力している真面目な方が多いと思います。必要としてくれている人がいる限り、続けていきたいと思ってるUpload By 発達ナビ編集部―Neccoを続けてきた中で、印象に残っていること、大変だったことはありますか。金子さん: もう、大変なことだらけです(笑)まずNeccoをはじめるにあたり、場所探しから大変でしたね。「借りた場所を発達障害の人の居場所にしますので物件を貸してください」と言って、理解してくれた上で快く貸して頂ける場所を探すのに1年ぐらいかかりました。現在Neccoの運営母体は一般社団法人としており、非営利で運営しています。カフェの店員はボランティアで、費用の持ち出しも発生しています。とはいえNeccoを必要としてくれている人がいる限り、なんとかして運営を続けていきたいと思っています。「Neccoという居場所があるから今、学校や会社に頑張って行けている」、そういう方がたくさんNeccoにいらしているんです。なかには毎週末、長野から夜行バスでNeccoに来ている方もいます。月から金までなんとかお仕事を頑張り、金曜の夜の夜行バスで東京に来て、日曜の夜の夜行バスで長野に帰っていくんですね。また以前は40才前後のいわゆる団塊ジュニアといわれる世代の方が多かったのですが、最近は高校生や大学生といった若い方も増えてきました。当事者としてどう社会と関わりを持つかUpload By 発達ナビ編集部―今後、Neccoの将来の展望はありますか。金子さん: Neccoに関していえば、"来たかったらいつでもここに来ていいんだよ"という居場所がある状態をこれからも維持していくだけだと思っています。発達障害の人は、かつての私がそうであったように、いろんな場所で苦労している方が多いと思います。そういった人たちの誰もが気軽に来れるような居場所を準備しておきたい。欲を言えばここだけじゃなくて、もっと日本中のいろいろなところにたくさんNeccoのような居場所ができたらいいなとは思いますね。また最近力を入れていたのは、大人の発達障害当事者会に関する調査報告書の作成ですね。これは厚生労働省から依頼を受けた調査事業で、私は事業責任者をしていました。長年Neccoに関わってきて、自分たちで自分たちの居場所をつくることももちろん大切だと思っていますが、当事者たちだけでやっていくのはなにかと限界があります。というのも、当事者の生きづらさは、自分の努力や行動で解消出来る部分もありますが、当事者の周りにいる発達障害ではない人や社会の理解、配慮や助けがとても重要です。また先ほどお話したように、私は私自身が発達障害だと分かったことですごく人生が楽になった経験から、まだ自分の特性に気付かず生きづらさを感じている人に発達障害というものを知ってもらいたい。ですから発達障害の啓蒙のため、まず私が出来ることとして、当事者や当事者会の情報を取りまとめ、私たちの生きる困難さや活動を社会に向けて発信し、知ってもらう必要があると考え行動しています。長年発達障害の当事者活動に関わってきましたが、課題はまだまだ山積みです。当事者同士の活動に関して言えば、とにかくいろんな特性を持った方が集まるので、運営のむつかしさがあります。こだわりの強い特性の人同士の意見が対立して分裂してしまったり、正直当事者同士での連携のむつかしさは感じています。なんとか意見をまとめてルールをつくってみると、今度は逆にそのルールを文字通りにとらえてしまって、ルールからちょっとずれる人がいるとこだわりから許せない人がいたり。たとえばNeccoでいうと、かつてはフリースペースのクローズ時間は22時だったのですが、スタッフが大変だということで21時に変更したんですね。たまに場が盛り上がってクローズが21時を過ぎてしまうことがあったのですが、そのことに対して「ずるい」と腹を立てる方がいたこともありました。同じ発達障害の当事者同士とはいえ、特性は本当に人によってさまざまなので、いろんな国の外国人同士が集まっていっしょに何かやろうとしているような困難さを感じています。当事者活動をどうしたらいいか、ずっとそればかり考えています。しんどいと思うことも多々あります。だけど続けている、それは、私は子供の頃からずっと自分のことをダメな人間で、人の役に立つことが出来る人間ではないと思っていたんですね。そんな私が今、活動を通して、目の前の人の支えになったり、社会に働きかけを行ったり出来ている。そのことが生きがいであり、生きるよろこびだからかもしれません。見えない障害とどう向き合うか「私は私が発達障害だと気付けて心から良かったと思っています」これは取材中に金子さんが繰り返しおっしゃっていた言葉です。この記事を掲載している発達ナビのユーザーさんからは、病院へ行き診断を受けることへの心理的抵抗感や、障害受容のむつかしさなど、日々さまざまなお悩みが寄せられています。自分や自分の子どもの生きづらさ・育てにくさをどうとらえるかについて、それぞれに多様な悩みを抱えられているのだと思います。「見えない障害」であり、また「ここからこっち側は障害です」と線を引くように切り分けることは難しいからこそ、その悩みは尽きないのかもしれません。いろんな考え方があって当然で、答えはないのかもしれません。金子さんの場合、彼女は子どもの頃からずっと「自分はちょっと変な子だ」「自分は努力不足でダメだ」と思い悩んでいたそうですが、一冊の本との出会いをきっかけとして発達障害を知ったことで、自分は努力不足でもなく、親の育て方のせいでもなかったということが分かり人生が前向きに進んだと語っています。今、人知れずしんどい思いをしている人、一人でつらい思いを抱えている方が、もしこの記事を読んでくださっていたら、こういった考えや経験をもとに活動をしている人がいることや、その人がつくった居場所があることを、選択肢のひとつとして心の片隅にとどめておいていただけるとうれしいです。大人(成人)の発達障害当事者のためのピアサポート Necco(ネッコ)
2017年12月01日気分変調症/気分変調性障害とは?出典 : 気分変調症とは、比較的軽度の気分の落ち込みが慢性的に続く病気のことを指します。成人期早期に発症することが多く、短くても数年間、ときには一生続くこともある慢性的な経過をたどりやすい病気です。症状があっても、本人は病気ではなく性格的な問題であると考えていることもあり、適切な治療が早期に受けられないこともあります。この病気の症状自体は比較的軽度ですが、就学や就労、家事などの社会的な役割や人間関係など、日常生活に及ぼす影響は、うつ病と同等あるいはそれ以上と言われています。男性と比べると女性のほうが約2倍の確率で発症しやすく、うつ病(大うつ病性障害)や不安障害、パーソナリティ障害などの他の精神疾患と併存する可能性があります。「気分変調症」という名称は世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)診断基準におけるものです。一方、アメリカ精神医学会の『DSM-Ⅳ-TR』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第4版テキスト改訂版)では気分変調性障害、『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では持続性抑うつ障害という名称となります。これらは名称こそ異なりますが、症状などの内実はほとんど共通します。この記事では、ICD-10とDSM-Ⅳ-TRをひきながら説明致します。参考文献:中根允文ら/監『ICD-10精神科診断ガイドブック 』2013年中山書店/刊気分変調症/気分変調性障害の症状出典 : 気分変調症/気分変調性障害の症状はどのようなものでしょうか?アメリカ精神医学会の『DSM-Ⅳ-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』を参考に、気分変調性障害の方が訴える症状を紹介します。・抑うつ気分がほぼ一日中ある日が多い・食欲の異常(食欲減退か過食)・睡眠障害(不眠か過眠)・気力の低下や疲労感・自尊心の低下・集中力低下や決断困難・絶望感参考文献:高橋三郎ら/訳『DSM‐IV‐TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』2003年医学書院/刊これらの症状はうつ病とかなり類似しているため間違えられることもあります。気分変調症/気分変調性障害と併存しやすい病気出典 : 気分変調症はうつ病やパニック障害、境界性パーソナリティ障害などの病気と合併することが多い病気です。以下において、それぞれの病気を簡単に紹介します。うつ病と気分変調症は、症状は非常に類似していますが、うつ病のほうが症状が重いことと、症状が持続する期間がより短い点において異なります。気分変調症とうつ病が合併した状態は「二重うつ病」「重複うつ病」とも呼ばれ、再発率が高く、治療が難しいとされています。気分変調症の診断を受けた患者がうつ病を併発し二重うつ病になる確率は、だいたい40%とかなり高いため、注意が必要です。出典:ハロルド・I・カプランら/編『カプラン臨床精神医学テキスト DSM−4 』2001年メディカル・サイエンス・インターナショナル /刊参考文献:中根允文ら/監『ICD-10精神科診断ガイドブック 』2013年中山書店/刊パニック障害は突然の動悸やめまい、発汗とともに恐怖を感じる精神障害です。また、発作を繰り返すにつれて、「また発作が起こるのではないか」という不安と、「発作が起こる状況に対する恐怖」とを感じるようになります。詳しくは以下の記事をご参照ください。境界性パーソナリティ障害(Borderline Personality Disorder:BPD)は、対人関係や自己に対するイメージなどの広い範囲において、激しく考え方や感情が変化していく特性がある障害です。自己イメージの混乱や見捨てられ不安などの特性があります。詳しくは以下の記事をご参照ください。気分変調症/気分変調性障害は性格なの?出典 : 以前は、抑うつ神経症、抑うつ性パーソナリティなどと呼ばれ、性格的なものであると考えられていました。しかし現在は、性格ではなく病気であり薬物療法の対象であるという考え方が主流です。この病気の症状自体は比較的軽症のため、患者さんにとって日常の一部となってしまい、病気であることに自分ではなかなか気づけないこともあります。そのため、うつ病以上に隠れた疾患であるとも言われています。参考文献:黒木俊秀(2017)/著「持続性抑うつ障害とうつ病の慢性化」『臨床精神医学』第46巻第5号アークメディア/刊性格と間違われやすい「慢性のうつ病気分変調性/参考:性格と間違われやすい「慢性のうつ病(気分変調症)」について|三田こころの健康クリニック新宿HP気分変調症/気分変調性障害の診断基準のポイント出典 : 公的な申請に必要な診断書にも使われる、ICD-10における気分変調症の診断基準のポイントを紹介いたします。・慢性的な気分の落ち込みが2年以上続いていること・数日から数週間程度の回復期間があることもある・気分の落ち込みは比較的軽症であること・以下の項目のうち、3項目以上の症状が存在すること(1)エネルギーあるいは活動性の低下(2)不眠(3)自信喪失あるいは不全感(4)集中困難(5)涙もろさ(6)セックス及び他の快楽をもたらす活動に対する興味あるいは喜びの喪失(7)望みのない感じ,あるいは絶望感(8)日常生活上の日課に対処できないという自覚(9)将来に関する悲観,あるいは過去についての思い煩い(10)社会からの引きこもり(11)会話量の減少(引用:中根 允文ら/訳 『ICD-10精神および行動の障害-DCR研究用診断基準 新訂版』 2008年 医学書院/刊p.98−99)参考文献:中根允文ら/監『ICD-10精神科診断ガイドブック』2013年中山書店/刊気分変調症/気分変調性障害はどのように治療するの?完治はするの?出典 : 気分変調症には画一的な治療法はありません。その人自身の人生の歴史や性格、今置かれている環境などを考慮して、ケースバイケースに対応して行く必要があります。気分変調症の治療では、一般的には抗うつ薬などの薬物療法と並行して、カウンセリングなどの精神療法が行われれるようです。参考文献:黒木俊秀(2006)/著「気分変調症―精神療法が無効な慢性“軽症”うつ病?―」『精神療法』第32巻第3号金剛出版/刊参考文献:阿部隆明(2006)/著「気分変調症」『臨床精神医学』第35巻増刊号アークメディア/刊気分変調症を含め、精神疾患はかなり再発しやすい傾向にあります。そのため、基本的には完全に病気が治ったという意味の完治という言葉を使いません。代わりに、症状が一時的に良くなったり、消えたりした状態を「寛解」と表現し、これを治療の目標とします。わざわざ「寛解」という言葉を使うのは、たとえ服薬などにより調子がよくなったとしても、無理をしすぎず、焦らず今の状態を維持するために気遣う必要があるためなのです。とくに、慢性的な経過をたどりやすい気分変調症は、長い目で経過を見守るという心持ちでいることが大切です。気分変調症/気分変調性障害のある人の生活や仕事をサポートしてくれる制度出典 : 気分変調症は慢性的な疾患で、日常生活や働くうえでも影響が出てくる場合があります。就労で困ったときに使えるサービスとしては、公共職業安定所(ハローワーク)や就労移行支援、就労継続支援などがあります。これらの就労支援サービスについては以下の記事をご覧ください。自立支援医療(精神通院医療)とは精神疾患がある方で、かつ、通院による継続的な治療が必要な場合、その通院医療にかかわる医療費負担が原則1割になる制度です。詳しくは、以下のリンクをご参照ください。自立支援医療(精神通院医療)について|厚生労働省HP気分変調症の方が受けられる自立支援医療以外の経済的な支援などについては以下の記事をご参照ください。仕事や生活などで困った時は、精神保健福祉センターに相談してみることをオススメします。精神保健福祉センターとは各都道府県及び政令指定都市に設置されている精神保健や精神障害者の福祉に関する機関です。こころの悩み全般に専門家がこたえてくれますので、気兼ねなく連絡してみましょう。以下のリンクで全国の精神保健福祉センターを検索できます。全国の精神保健福祉センター一覧|厚生労働省HPまとめ出典 : 気分変調症はたしかに症状としては軽度であるとはいえ、気分の落ち込みなどのつらい症状が長引く病気です。また、その症状が日常生活に及ぼす悪影響は決して軽度ではなく、見過ごして良いものではありません。少しでも気になる症状がある方は、少し勇気を出して、お近くの精神保健福祉センターや精神科・心療内科に相談してみてはいかがでしょうか?自分だけでは見えてこなかった解決策が見つかるかもしれません。
2017年11月25日発達障害支援研究・実践の最前線を学ぶシンポジウム出典 : 発達障害の原因や治療法、支援方法に関する研究は、様々な分野の専門家が取り組んでいる領域です。発達障害のある子どもを育てている保護者や、その周辺の支援者にとって、最新の研究成果は今と未来の生活にどのような影響をおよぼすのでしょうか?誰もが多様で豊かな人生を送ることのできる社会を形成していくためにできることとはなんでしょうか?そんな疑問に応えるシンポジウムのお知らせです。11月26日(日)、「うちの子、少し違うかも...II~エビデンスに基づく発達障害支援をみんなで考える~」と題されたシンポジウムが、東京・お台場のテレコムセンターで開催されます。(主催:国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 社会技術研究開発センター(RISTEX))家庭・学校・地域・行政等における支援のしくみや最新の取り組みを紹介しながら、様々な支援の場面に横たわる障壁を乗り越え、改善していくための具体的方法について、分野・領域を超えて考えるシンポジウムです。サイエンスアゴラ2017 公開シンポジウム11月26日(日)「うちの子、少し違うかも...II~エビデンスに基づく発達障害支援をみんなで考える~」シンポジウム概要出典 : 日時2017年11月26日(日)10:15~12:30 (開場 10:00)場所テレコムセンタービル 8階 会議室B※新交通ゆりかもめ「テレコムセンター駅」直結参加費無料対象発達障害療育・子育て支援等に携わる方(医療・福祉関係等)学校・教育機関関係者の方行政(国・地方自治体)関係者の方発達障害児支援に関心をお持ちの一般の方、保護者・ご家族の方プログラム:10:00受付開始10:15開始10:20講演■神尾 陽子 氏(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・思春期精神保健研究部 部長)■船曳 康子 氏(京都大学大学院人間・環境学研究科/総合人間学部 准教授)■山野 則子 氏(大阪府立大学大学院人間社会システム科学研究科 教授/スクールソーシャルワーク評価支援研究所 所長)11:15パネルディスカッション■モデレーター:熊 仁美 氏 (特定非営利活動法人ADDS 共同代表)■パネリスト :上記講演者3名、外岡 資朗 氏(鹿児島県こども総合療育センター 所長)12:20フロアとの対話(質疑応答)、まとめ12:30終了出典 : 京都大学医学部卒業、ロンドン大学付属精神医学研究所児童青年精神医学課程終了。京都大学医学部精神神経科助手の後、米国コネティカット大学(フルブライト研究員)で自閉症研究に従事した後、九州大学大学院人間環境学研究院助教授を経て、2006年より国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所児童・思春期精神保健研究部部長、2010年より山梨大学客員教授、2017年よりお茶の水女子大学客員教授を併任。出典 : 年京都大学医学部卒業。京都大学医学部付属病院、京都市立病院にて研修後、京都大学大学院医学研究科に入学し、認知症の臨床研究を行った。2000年からは、カリフォルニア工科大学行動生物学教室に留学し、小鳥の歌を用いた音声発達の臨界期の研究に従事。2003年に帰国し、こころの発達、発達障害の分野の臨床と研究に従事。日本学術振興会特別研究員、京都大学医学部付属精神科助教を経て、2015年より現職。出典 : 関西学院大学社会学研究科後期博士課程修了、博士(人間福祉)。内閣府:子どもの貧困対策検討委員会委員・有識者会議委員、文部科学省:中央教育審議会生涯学習分科会委員、企画調整部会委員、家庭教育支援の推進方策に関する検討委員会座長、教育相談等に関する調査研究会議委員、厚生労働省:社会保障審議会臨時委員、ほか国の委員多数。大阪府子ども施策審議会会長、子どもの貧困部会部会長、大阪府スクールソーシャルワーク配置事業スーパーバイザー、ほか多数。出典 : 年、慶應義塾大学大学院社会学研究科修士課程修了。2011年、自閉症児に効果的な早期療育が届くことを目指し、NPO法人ADDS設立。2013年、同大大学院後期博士課程を単位取得退学、同大先導研究センター研究員。自閉症児のコミュニケーション研究や、早期療育の実践研究に携わる。NPO法人では、保護者が家庭療育に取り組むためのペアレントトレーニング、セラピスト認定制度等を実施し、現在までにセラピストを約100名養成、ペアレントトレーニングを約200家庭に提供してきた。出典 : 小児科医師。1988年、熊本大学医学部卒業、熊本大学大学院医学研究科へ入学後、同大医学部附属病院発達小児科にて勤務し、1996年、熊本大学大学院単位取得終了。1999年より鹿児島市立病院小児科(小児神経科)で医師、医長、科長を歴任後、2007年より鹿児島県児童総合相談センター療育指導部長、2010年より現職。鹿児島県こどもの虐待問題研究会副会長を併任。主催者からのメッセージ「国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の社会技術研究開発センター(RISTEX)では、「社会のなかの科学・社会のための科学」の理念のもと、社会の具体的な問題の解決を目指す研究開発を推進しています。今回のシンポジウム(入場無料)では、RISTEXにおける関連プロジェクトの成果も踏まえながら、家庭・学校・地域といった場面での発達障害支援における課題を改善し、のりこえていくための具体的なとりくみ等についての情報提供・共有や議論を行うことを目的としています。」昨年度も実施し、好評を博したシンポジウムの第2弾。様々なプロジェクトの成果の紹介や、必要とされる支援についての議論が行われます。本人や保護者はもちろん、教育や支援に関わる方に幅広く、足を運んでいただきたいシンポジウムです。イベント申し込みはこちら以下のリンクから申し込みが可能です。定員200名(予定)、氏名の登録は必須ではありません。お問い合わせは、下記のページの「主催・お問い合わせ」に情報が記載されておりますので、そちらからお願いいたします。サイエンスアゴラ2017 公開シンポジウム開催(入場無料) - 社会技術研究開発センター
2017年11月11日こんにちは。子育て支援を専門にする臨床心理士の今井千鶴子です。教育相談では、多くのママから“しつけ”に関するご相談を受けます。厚生労働省における平成16年度全国家庭児童調査でも、小学校低学年以下の子育てにおける不安や悩みの中で、「しつけに関すること」が最も多くあげられています。このように、私の臨床心理士としての経験だけでなく、研究結果からも多くの方がしつけに悩んでいることがわかります。そこで今回は、“しつけが自分の手に負えない”と感じた時の対処法について考えていきます。●しつけに悩むのは普通のこと先ほどご紹介したように、しつけに悩むママはとても多いです。一見するとしつけに関する悩みがなさそうなママも、「うまくいかないな…」「どうしたらいいんだろう」と感じているケースもあります。ですから、“しつけが自分の手に負えない”と感じた時には、『しつけに悩むのは自分だけでなく、一般的なことだ』と考えてみましょう。真面目なママほど、「自分はダメな母親だ」「自分の育て方が悪いから」とすべてを自分のせいにして、落ち込んでしまいがちです。でも、よくよく考えてみると、これだけ多くのママが悩んでいるわけですから、子どもをしつけるのは思った以上に難しいということ です。ですから、“自分のせい”だと必要以上に落ち込む必要はありません。●しつけに完璧を求めすぎない“しつけが自分の手に負えない”と感じているママの中には“完璧を求める傾向 ”が強いことがあります。たとえば、9割できていても残りの1割ができていないと、“まったくできていない”ととらえ、不安や怒りを感じていることもあります。河野(2011)によると、このような完璧主義は、育児不安を抱えるママの特徴の1つともされています。もちろん完璧を目指すことはすばらしいのですが…、ママが100%満足のいくしつけをすることは神業に近いほど難しいと私は思います。ですから、“完全主義”の傾向が強いママは、全てを完璧にやろうとせず”これだけは守ってほしい”という優先順位を立てましょう 。また、完全主義なママほど、ハードな目標を立ててしまいがちです。これだと、お子さんもだんだん苦しくなってしまいます。心理学的にいうと、“少しがんばったらできた”くらいの目標がよいとされています。ですから、周りの基準に合わせた目標よりも、お子さんの発達に合わせた目標を意識していきましょう。●しつけに悩んだら相談する限界まで誰にも言わず、深刻な状況になってようやく明るみになるといったケースは少なくありません。深刻になればなるほど解決が難しくなってしまいます。ですから、しつけが自分の手に負えないと感じた時には、自分だけで抱えこまずに信頼できる誰かに相談しましょう。三菱UFJリサーチ&コンサルティング(2014)によると、子育てについての相談相手(母親)としては『配偶者・パートナー(74.1%)』『自分の母(70.5%)』『保育士や幼稚園の先生(31.3%)』が上位にあがっています。また、近年の特徴として、家族以外の近所で子育てについて相談できる相手が減っていることが指摘されています。さらにこの調査では、”地域における子どもを通じた付き合いと子育ての楽しさ”の関連についても検討されています。それによると、地域の中で『子どもを通して関わっている人はいない』と回答した人は『子どもを預けられる人がいる』や『子育ての悩みを相談できる人がいる』と回答した人にくらべて、子育てを楽しい(「いつも楽しい」+「楽しいと感じる時の方が多い」)と回答する割合が低い傾向にあることを報告しています。こうしたデータをふまえると、家族以外にも地域の中に子どもを通じた関わり合いをもつ ことの大切さがわかります。私自身の経験からも、地域の中に子どもを通じた関わりを持つことの大切さを痛感します。実は、わが家は長男が1歳の頃、関東から東海へ引っ越しました。引っ越し前は子どもを通じて仲良くさせていただいていた方がいたのですが、引っ越し後には知り合いがまったくおらず孤独な育児を経験しました。また、欧米に比べてわが国での利用は極端に少ないのですが、家族や知人に相談しても気分がはれない時には、専門家に相談してみるのも1つです。たとえば、私が専門にする認知行動療法では、カウンセラーの経験だけでなく科学的に裏打ちされたデータやプログラムをもとにクライエントをサポートしていきます。ご相談に来られた多くのママから「早く相談すればよかった」といった声をいただきますので、日本も欧米のようにもっと気軽にサポートが受けられる環境を整えていく必要があると感じています。----------いかがでしたか?今回は、“しつけが自分の手に負えない”と感じた時の対処法について考えてみました。皆さんの子育ての参考になったら嬉しいです!ライター:今井千鶴子参考文献河野順子(2011)母親が抱える育児不安に関する要因:子どもの育てにくさ、母親の認知様式、父親の育児参加をめぐって東海学園大学研究紀要人文科学研究編 16, 55-64.参考リンク厚生労働省平成16年度全国家庭児童調査三菱UFJリサーチ&コンサルティング(2014) 子育て支援策等に関する調査2014
2017年10月31日『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』の著者の立石美津子です。「どこに出しても恥ずかしくない子でいなさい!」「人に迷惑をかけない子でいなさい!」幼い頃からこんな風に言われ続けて育った人が、やがて母になり、生まれた子に障害があると知ったら…。子どもの障害について、幼稚園の先生やママ友などになかなか言えない人もいます。「障害があることは恥ずかしい」という気持ちがどこかに潜んでいるのかもしれません。Upload By 立石美津子ダウン症候群であったり、障害が重い場合は、理解を得られやすいためか、周りに伝えたり相談したりできる人も多いようですが、自閉症児の場合は見た目でわかりにくいこともあり、わが子の障害を周りに伝えず、知的発達の遅れがあっても療育手帳を取らないで隠し通そうとする人もいます。けれども、これでは親一人で孤軍奮闘して頑張らなくてはならない事態に陥ってしまいます。福祉は自己申告制、役所からの案内を待たずに行動を障害のある子のいる家庭に、役所から「3歳になったら療育手帳を取り、必要な支援を受けてください」といった連絡は来ません。税金の滞納があれば督促状が送られてきます。障害基礎年金は年収が一定額越した時点で段階的に支給停止になります。けれども、税金の戻し(例えば、確定申告時に医療費控除を受け、還付金を受け取ること)などは、自分から申請する必要があります。これと同様に、親が自分から動かないと、障害のある子に必要な支援については、役所からの案内はこないのです。療育手帳や身体障害者手帳などを持っていると…・ヘルパー派遣を受けられる・特別支援学校への入学許可が出やすい・法定雇用率の中で就労できるなど、様々な支援を受けることができます。「診断を受けて療育手帳を取得して、障害者のレッテルを貼られてしまうと伸びるものも伸びなくなる」という考えでいると、かわいそうなのは子どもだと私は思います。療育手帳がないために、支援の網の目からこぼれ落ちてしまう可能性が高まるからです。手帳を持っているだけではダメ、使える支援制度について知ろうけれども、療育手帳を持っているだけでは実は不十分なのです。なぜなら手帳取得者に対して、「お子さんに合った、こんな支援がありますよ。あんな支援がありますよ」と親切に細かく連絡は来ないからです。そうなると、受け身の状態で待っていればよいのではなく、自ら役所に出向くなど、受けられる支援を調べる姿勢が必要になってきます。その一つの例が「自立支援医療制度」です。私の住んでいる自治体では中学3年生までは医療費は無料です。しかし、高等部になると3割負担となります。実は、「精神障害や発達障害などで、それに関わる医療機関に係る場合、自立支援医療受給者証を発行してもらうと薬や診察代は1割負担」になります(所得に応じた、月当たりの負担上限額も設定されています)。でも、これを知らない人がたくさんいます。参考:自立支援医療制度の概要 l 厚生労働省Upload By 立石美津子東京都の場合、交通費は愛の手帳を提示すれば割引になります。また、都営交通(都営バス、都営地下鉄、都電など)は本人は無料になります。しかし、これは区役所に行き「都営交通無料乗車券」を申請し、受け取らなければ無料にはならないのです。Upload By 立石美津子私も上記2点は友達から教えてもらい役所に申請に行きました。これ以外にも自己申告によって受けられる支援がたくさんあります。親だけで頑張りすぎないで、周囲にSOSを出すことも視野に入れてつまり何が言いたいのかと言うと…我が子に障害があるとわかったら、隠したり、「親の力だけで何とかしよう!」と頑張るのではなく、「うちにこんな子が生まれました。皆さん気にかけてください。助けてください」とSOSを出す姿勢が大切だと言うことです。多くの場合、親が子どもより先に死ぬことになります。親亡き後は、様々な支援に頼らなくては生きていけない子ども達です。幸いにわが国は、社会と接点があれば、どこかで救ってもらえる体制が準備されています。でも、そのつながりは親が作っておかなくてはならないのです。だから、子どもを囲い、隠すのではなく、発信してほしいと思います。先日、読んだこの二冊の本には、障害のある人が受けられる支援や、親が元気なうちにしておくべき準備にについて具体的に書いてあります。とても役に立ちましたので是非皆さんお読みくださいね。Upload By 立石美津子
2017年10月24日こんにちは、ママライターのましゅままです。子どもにとって初めての集団生活となる園。同じ園でも、保育園と幼稚園が存在していますが、教育面以外での違いがよくわからない箇所が多いですよね。筆者も保育園=遊び、幼稚園=お勉強という教育面で方針の違うイメージがありましたが、そのほかは殆ど同じと思っていました。ですが、実は教育面ではさほど差はなく他にも意外と知られていない違いがいくつかあるのです。今回は、意外と知らない幼稚園・保育園の違いについてご紹介します。●保育園と幼稚園のちがい●<保育園>厚生労働省の管轄の元運営されている福祉施設です。**********保育園(保育所)”日々保護者の委託を受けて、保育に欠けるその乳児又は幼児を保育することを目的とする施設(児童福祉法第39条第1項)。(1)「公営保育所」経営主体が都道府県、市区町村及び一部事務組合(都道府県・市町村・特別区の事務の一部を共同処理するための地方公共団体の組合)の保育所。(2)「私営保育所」公営保育所以外の保育所”**********保育に欠ける、というのは母親が働いていて、子供を保育できる状態にない ことを指します。預けられる子供の年齢:0~6歳児給食(自園調理施設):義務あり自園調理施設を持つ園が9割ほどで残りは外部委託の給食保育時間:原則8時間延長保育11時間先生:保育士子供と先生の割合:3歳児は3歳児で子供20人に対し保育士1人、3歳以上で30人に対し1人、という配置お昼寝:~年少さんまではありの園が多く、年中さん以降もお昼寝の時間をとっている園も。年中さん以降はプールの季節のみお昼寝させる園もあるようです。●<幼稚園>文部科学省の管轄の幼児の通うはじめての「学校」です。母親が「保育にかけている」状態でなくとも、年齢を満たせば入園を希望することができます。**********”「学校」というと小学校からと思っていませんか。幼稚園も学校教育法に基づく「学校」です。3歳から小学校入学前までの子どもは,全国どこでも共通の教育課程(「幼稚園教育要領)に基づく教育が受けられます。”**********自由保育と認定保育の2系列に別れ、私立の幼稚園では各園によって教育方針を定めて、それに基づいたカリキュラム が組まれています。預けられる子供の年齢:3~6歳児給食:義務なし外部業者のフル給食の園もあれば、オールお弁当、月に数回お弁当の日を設けている園もあります。保育時間:4時間メインの養育は保護者が行う、というスタンスですが16~17時ごろまで「預かり保育」として延長保育してくれる園も増えています。先生:幼稚園教諭子供と先生の割合:子供35人以下に対し先生1人お昼寝:なしまれに年少さんのみお昼寝させる園もあるようです。●幼稚園と保育園、教育面は大差はない幼稚園では、小学校に上がるための準備として、独自の園風にこだわったカリキュラムが目立ちますが、保育園は自由な遊びや食育を通し、幼児期に形成される心や体づくりを促しているところがおおいようです。幼稚園は、文部科学省の定めたカリキュラムに基づき、お勉強をさせる園と、一切お勉強をしない園、遊びと勉強バランスよく取り入れる園など分かれています。工作に力を入れる園、英会話や音楽に力を入れる園、自園調理で食育を重んじる園、少人数、マンモス園など特色は様々 です。しかし最近は、保育園でも保育のみでなく独自に幼稚園と大差ないお勉強を取り入れている園もみられますので、教育に関する差や違いはほとんど無いものといえます。保育園・幼稚園、どちらを選んだとしても子供を育てる役割はあくまで親。親との過ごし方が一番大切だということは変わらなのです。監修川本あずさ(保育士)参考URL●ライター/ましゅまま
2017年10月16日仮面夫婦という言葉があります。これはその名の通り、お互いに愛情が残っていない状態であるにも関わらず、外面だけは“夫婦”として振る舞っている人たちのことを指します。愛情がないなら別れればいいんじゃないの?と思うところですが、実際には離婚のハードルは割と高いのが現実です。生活面・精神面・子どものこと……など不安要素を挙げればキリがありません。離婚して苦労したり子どもに迷惑をかけたりするよりは、このまま夫婦のフリをしたほうがマシ。そういう打算のもとで家族を営んでいるわけです。厚生労働省が平成28年に発表した『人口動態統計の年間推計』によると、同年の婚姻件数は62万1,000組、離婚件数は21万7,000組となっており、単純比較で約3分の1の割合の夫婦が離婚していることが分かります。これが近年よく囁かれる“3組に1組が離婚する”と言われる所以でありますが(この計算には異論あり)、愛情が尽きている仮面夫婦を入れるともっと数字は跳ね上がるでしょう。今回は、仮面夫婦の特徴や対処法についてお話ししたいと思います。●(1)相手のことが嫌い、もしくは無関心これは仮面夫婦の前提となる要素ですが、パートナーに対して嫌悪感を抱いていたり無関心であったりします。理由はさまざまで、子どもが生まれたことや不倫、毎日のすれ違い、マンネリ、モラハラ・家事ハラetc……といった感じです。心の中では今すぐ離婚したい、あるいは一緒にいてツラいと思っていながらも、いろいろなしがらみに頭を悩ませながら 夫婦という仮面を被りつづけます。●(2)離婚できない事情を抱えているこれも仮面夫婦に共通する特徴。普通であれば興味を失ったパートナーと一緒に生活をするのは苦痛なので離婚という選択肢をとりますが、仮面夫婦にはそれができません。大きな要因として挙げられるのは、世間体や子どものこと。あるいは経済的な問題です。「離婚したら周囲から笑われる」「ひとり親になったら子どもがかわいそう」「共働きじゃないと暮らしていけない」……などなど、切実な問題を抱えていることが多いです。とくに“子ども”を理由にしている夫婦は、子どもが成人すると同時に“熟年離婚 ”する可能性が高いといえます。●(3)人前では“おしどり夫婦”を演じる家の中ではほとんど会話をしないのに、実家に帰ったときや友人たちとの飲み会のときなど、公の場では“おしどり夫婦”を演じます。心の中でどう思っているかはさておき、離婚の気配を嗅ぎ取られたくないためお互いに演技に務めます 。芸能界でもおしどり夫婦と言われていた人が突然離婚して世間を驚かせることがありますが、これはテレビの前では完璧に演技をしていたためです。公の場でラブラブの演技をして、家に帰ったときに夫婦間にどういう空気が流れているかはちょっと想像したくないですね。●仮面夫婦にならないために上述したように、仮面夫婦になるキッカケにはさまざまなものがあります。しかし、元を辿っていけば同じ一つのところから発生していることが分かります。それは“相手への配慮の欠如 ”です。たとえ不倫でも産後クライシスでもDVでもモラハラでも全部同じ。恋人から“夫婦”になるということは、当たり前ですが家族になるということです。独身だったころは自分一人を中心にした生活でも良かったですが、夫婦になると人生の最小単位が“二人”になります。どんなときでも常に相手のことも考えている……それが家族です。そのことに気づかず、あるいは忘れてパートナーへの配慮を欠かしていると、関係に亀裂が生じてしまい、いつしか愛情も冷めてしまいます。配慮というと漠然としている感がありますが、基本的には簡単なことで、毎日の挨拶や感謝の言葉を欠かさない、当然不倫はしない、相手の心を踏みにじるような態度はとらない……などといったことです。人間ですから時には過ちも犯しますが、その都度相手への配慮を忘れずに真摯に向き合うことが大切です。「最近仲が悪くて仮面夫婦になりそう」と悩んでいる方は、まずそこから始めてみてはいかがでしょうか。【参考リンク】・平成28年(2016) 人口動態統計の年間推計 | 厚生労働省(PDF)()●モデル/TOYO、香南
2017年10月10日新生児けいれんとは?出典 : 新生児けいれんとは、生後28日未満の新生児に起こるけいれん症状のことを指します。出生体重3000グラム以上の成熟児での発症率は1000人のうち2~2.8%、2500グラム未満の低出生体重児では9.37~13.5%となっており、低出生体重児に多く発症します。けいれん発作は、広義には体を強張らせて震えることを指します。「けいれん」と聞いて、まず「大発作」などの突然倒れてしまうイメージを浮かべる方も多いでしょう。しかし、新生児けいれんの特徴的な発作は「微細発作」です。まばたきの繰り返し、もぐもぐ口を動かす、自転車をこぐような動きなど、一目でけいれんとは分かりにくい発作が特徴的です。いつもと違う、違和感のある動きをしていれば微細発作の可能性があります。新生児けいれんの原因は低酸素性虚血性脳症や頭蓋内出血、脳梗塞、感染症などが原因でけいれんが発症するため、早期治療が必要です。また新生児けいれんの発症をきっかけに、その後てんかんが発症する可能性もあります。新生児けいれんに関わらず、けいれんが長く続くと後遺症が残りやすいと言われています。適切なけいれん時の対処や、必要ならば救急車を呼ぶなど、瞬時に判断できるように知識を身につけておくことをおすすめします。出典:新生児けいれん|日産婦誌57巻7号研修コーナー新生児けいれんの症状出典 : 新生児けいれんには、頻度の高い順に微細発作、強直性けいれん、間代性けいれん、ミオクローヌスけいれんの4つのけいれんの種類があります。最も多いとされている微細発作は、発作症状が分かりにくく、見つかりにくいといわれています。<微細発作>・眼球運動の異常水平眼球偏位(眼球が水平に動くがまばたきがない状態)・口や頬(ほほ)、舌の異常運動舌を出す、しかめっ面を繰り返す、ウインクの様な動き・四肢の異常行動自転車こぎ、水泳のクロールのような動き・自律神経症状血圧上昇、チアノーゼ(体内の酸素濃度が低下し、唇などが青紫色になること)、紅潮、多呼吸など・呼吸運動の異常無呼吸発作、発作性過呼吸<強直性けいれん>・突然意識を失い白目をむく・身体が急に強張り手足をピーンと突っぱる・口を固く食いしばり呼吸を止める・チアノーゼを起こすこともある<間代性けいれん>・膝を折り曲げる格好をしながらバタバタと手足をばたつかせる・あごがガクガク震える・一定のリズムでけいれんが起きる<ミオクローヌスけいれん>・全身または手足の一部分の筋肉が一瞬ピクッと収縮する・光によって誘発されるため、寝起きや寝入りに起こりやすい・症状を自覚することは少ない新生児けいれんの原因出典 : 新生児けいれんの原因は新生児期にかかりやすいさまざまな疾患が原因となっています。けいれん症状はおおむね、大脳の神経細胞の異常興奮によって、不必要な神経回路にまで情報が伝達され引き起こされます。新生児けいれんの原因疾患もほとんどが脳に関わる疾患となっています。ここでは新生児けいれんの原因疾患を紹介していきます。・低酸素性虚血性脳症妊娠中や出産の際に、何らかの原因で赤ちゃんの脳に酸素を十分に含んだ血液が回らなくなり、低酸素、虚血がおこります。それによって、けいれんや意識障害などの神経症状を伴うさまざまな脳神経障害を起こします。新生児けいれんの原因として最も多いとされています。・頭蓋内出血頭蓋内出血は頭蓋骨の内部に出血が起こった状態を指します。出血が起こった場所によって、くも膜下出血や硬膜外出血などに分けられています。分娩外傷や仮死が原因で起こりますが、けいれんが起こる前の全身状態は良好であることが多いといわれています。・脳梗塞脳の血管が詰まるなど、何らかの原因で脳内の血液のめぐりが低下し、一部の脳組織が壊死することをいいます。仮死、多血症、血栓などができることによってけいれんが起こります。・中枢神経感染症細菌性髄膜炎やウイルス性脳炎などが原因で脳の中枢神経に異常をきたし、けいれんが起こります。・発達異常・奇形先天的な遺伝子変異が原因の疾患によって、大脳皮質の形成異常がみられることから、新生児けいれん、てんかん、発達障害などの症状を併発します。・代謝異常代謝活動あるいはこれを調節する機能が、何らかの原因で妨げられて生じる異常状態のことを言います。低血糖や低カルシウム血症などの代謝異常は糖尿病母体児や低出生体重児などに多く、先天性代謝異常がある子どもが新生児けいれんやてんかんなどのけいれん症状を起こしやすいと言われています。・新生児てんかん新生児てんかんは乳幼児期に発症するてんかんのことで、2つに分類されます。良性家族性新生児けいれんは遺伝性のてんかんです。約4割は生後3日目前後に発作が起こり、そのうちの約7割は生後6週間以内に発作がおさまるといわれています。無呼吸発作が起こることもあります。良性突発性新生児けいれんは、生後5日目前後に間代発作や無呼吸発作を何回も繰り返すものの、明らかな原因がないてんかんです。この時期を過ぎると発作は再発しません。新生児けいれんとてんかんなどとの関係は?出典 : 新生児けいれんを発症した子どものうちの56%は、てんかんが発症する可能性があるといわれています。てんかんとは慢性的な脳の疾患(障害)で、大脳の神経細胞が過剰に興奮することで発作症状を引き起こす疾患です。年齢・性別・環境に関わらず発作は発症します。てんかん発作は突然倒れて意識を失い、けいれんを起こすといったいわゆる大発作と体の一部が勝手に動いたり、会話の途中にぼんやりしたと思ったら意識を失っていたりといった小発作などがあります。てんかん発作はほとんどが完治することはなく、長年付き合い続けなくてはいけない疾患です。現在、新生児けいれんを発症した子どもにてんかんが多い原因は研究中で解明されていません。他にも、子どもに起こりやすいけいれん症状に、熱性けいれんや急性脳症などがありますが、新生児期に発症することはまれです。熱性けいれんは高熱によってけいれんが起こり、急性脳症は代謝異常などによってけいれんが起こります。表出する症状はけいれんですが、原因疾患などによって鑑別され、それぞれに合った治療を行っていきます。出典:新生児けいれん|日産婦誌57巻7号研修コーナー新生児けいれんの診断・検査方法とは出典 : 新生児けいれんの診断にはいくつかの検査を行います。次の検査は新生児けいれんの診断において、一般的に行われている検査になります。◇頭部画像検査(CT、MRI)新生児けいれんの原因疾患があるかどうかを確認するために行います。どちらも検査服に着替えて、ベッドに横たわり筒状の機器の中に入るだけで検査は行えます。MRIは電波を使って身体の断層を撮影する方法です。CTスキャンはX線を用いて身体の断層を画像にします。◇髄膜検査髄膜刺激症状と30分以上の意識障害が伴う場合には髄膜検査を行います。髄膜刺激症状とは、首の硬直や膝を曲げた状態で股関節を直角に屈曲し、そのまま膝を伸ばそうとすると抵抗があることをいいます(ケルニッヒ徴候などがあります)。これは新生児けいれんと似た症状がある髄膜炎との鑑別のために行います。◇血液・髄液検査血液検査で血糖、カルシウムやナトリウムなどの電解質、感染徴候などを確認し、その他に必要と認められた項目の値を検査します。さらに髄膜炎などとの鑑別を図るために、髄液検査も行います。◇脳波検査脳波検査はけいれんの診断や後遺症の予測に非常に有用な検査です。しかし、けいれんの種類によっては必ずしも脳波で診断が行えない場合もあります。この他にも医師が必要と認めた検査を受けることがあります。新生児けいれんが起こったら出典 : 子どもに突然けいれんが起こったら、しかも生まれたばかりの新生児期に起こった場合、驚いてしまう保護者の方も多いのではないかと思います。しかし、正しい知識を持っていれば冷静に対処することができます。子どもが新生児けいれんを起こしたときには、以下のような対処法を実践してください。<けいれん時の対処法>・首の周りなどを締め付けないように衣服を緩めてください・抱きかかえず、平らなところに寝かせてください・嘔吐や口の中に固形物がある場合は、顔を左に向けて吐いた物が気道に詰まらないようにしてください・口や鼻の周りの吐物を拭き取ってください・診察時にそなえて、けいれんの様子(左右差)や持続時間、体温などを確認しておいてください。余裕があれば不謹慎だと思わずに動画などを撮影し記録してください(診察時、てんかんとの鑑別に役立ちます)。<してはいけないこと>・大声で名前を呼んだり、身体を揺すったりしない(刺激となり、けいれんが長引く場合があります)・「舌を噛まないように」と口の中に物を入れたりしない(けいれんで舌を噛むことはほとんどありません)けいれんの持続時間によって、その後に後遺症が残る可能性の割合が変わってきます。新生児けいれんの場合は原因疾患が早急に治療を必要とするため、救急車を呼ぶか、病院での診察が必要なケースがほとんどです。そうはいっても、けいれんを起こす疾患は他にもたくさんあります。救急車を呼んだり、病院に連れていったりする基準として下記を参考にしてみてください。Upload By 発達障害のキホン【救急車を呼ぶ】・5分以上けいれんが続く・けいれんが終わったが、その後も意識障害が続く(睡眠とは別)【病院へ行く】・初めてけいれんを起こしたとき・全身けいれんではなく、体の一部または左右非対称なけいれんがある【保護者がパニックで判断しにくい場合】・小児救急電話相談(#8000)に電話相談をする小児救急電話相談は厚生労働省がすすめる相談事業です。#8000番に電話すると、お住まいの都道府県の相談窓口につながります。そこで小児科医師・看護師から、お子さんの症状に応じた適切な対処の仕方や、受診する病院などのアドバイスを受けることができます。新生児けいれん以外にも使用することができます。#8000番に電話をして状況を伝えることで、医師や看護師の適切な指示を受けることができ、子どもの保護者も、その場の対処や救急車・通院の判断を行いやすくなります。参考:小児救急電話相談事業(#8000)について|厚生労働省新生児けいれんの後遺症が心配…。治療法はあるの?出典 : 新生児けいれんの治療は正式なガイドラインが設けられているわけではありません。原因疾患によって治療方法が異なってくるため、それぞれの疾患に必要とされる医療が行われることになります。原因疾患の治療は、薬物治療を主として行われています。新生児けいれんを発症した子どものうち、25~35%が知的障害や運動障害を発症するとされています。新生児けいれんは原因疾患の種類やけいれんの持続時間などによって、後遺症の発症率や程度が異なります。けいれん症状は長ければ長いほど、後遺症の発症率や障害の程度は重い傾向に引き上げられます。医療の進歩によって新生児けいれんの死亡率は改善されてきています。以前は約40%あった死亡率ですが20%と減少し、今後も死亡率は減少していくでしょう。ここでは、あくまでこれまでの研究による統計的な数値をもとに紹介しました。新生児けいれんを発症した子どもの中にも、定型的な発達を歩む子どもは多くいます。出典:新生児けいれん|日産婦誌57巻7号研修コーナーまとめ出典 : 新生児に起こるけいれんは、良性で2週間~半年ほどで完治するものもあれば、原因によっては後遺症を残すほど重度化するものもあります。またてんかんを引き起こしやすいのも特徴的です。実際にけいれんが起こった際は、保護者がパニックになってしまうこともあるかもしれません。できることならば事前に情報収集などを行っておくことと、緊急性が高く、その場に頼れる人がいないときは#8000に電話し、落ち着いて最善の判断を行えるとよいですね。このコラムがいざという時のお守り代わりになることを願います。
2017年10月05日「みんな#保育園に入りたい~子育て・キャリア・待機児童…このモヤモヤを解決しよう」が、10月4日(水)に衆議院第1議員会館地下1階 大会議室で開催されます。昨年2月に「保育園落ちた日本死ね」で注目された待機児童問題。9月に厚生労働省が発表した数字によると、2017年4月の待機児童数は2万6081人で、前年から2528人増加し3年連続で増え続けています。そこで、待機児童問題を本気で解決したいと考える現役子育て世代の有志グループ「希望するみんなが保育園に入れる社会をめざす会」が、10月4日(水)に保育園に入りたいと思う親たちと有識者を集めて、問題を考えるイベントを開催。政府へ待機児童対策予算アップを求めるアクションも開始します。20年以上当事者たちが苦しんで来たこの問題を、そろそろ解決したい。そう思った現役子育て世代が集まり、当事者と経験者をつなぎ、悩みを共有。有識者のパネルディスカッションで理解を深めます。また、ウーマンエキサイトが展開している「WEラブ赤ちゃんプロジェクト」を応援してくれているこのイベント。当日は参加者に「WEラブ赤ちゃん-泣いてもいいよ!」ステッカーが配布されます。※数に限りがあります。■イベント概要開催日時:10月4 日(水) 11時30分受付開始、11時45分講演開始、15時00分終了予定開催場所:衆議院第1議員会館地下1階 大会議室参加費:資料代 500円★第一部:パネルディスカッション・ファシリテーター:ジャーナリスト 治部 れんげ氏・ゲスト:世田谷区長 保坂 展人氏・ゲスト:甲南大学マネジメント創造学部教授 前田 正子氏3人のゲストを招いて、みんなで子どもを育てていく社会の実現に向けて、現在の待機児童問題や子育て、働き方などについて語っていただきます。★第二部:ワークショップイベントに集まった皆さんで、グループになり、ワークショップを行います。待機児童問題や仕事と育児の両立のヒントなど、日々生きていく上での知恵を探ります。夫婦間での家事育児分担についてのトークには、厚生労働省認定「イクメンの星」も加わります。イベントFacebookページ Change.org キャンペーンページ希望するみんなが保育園に入れる社会をめざす会では、子ども子育て予算にプラス 1.4 兆円追加して、待機児童を解消できるよう、賛同者を募っています。
2017年10月02日双極性障害(躁うつ病)とは?出典 : 双極性障害は、気分が高まる「躁(そう)状態・軽躁状態」と気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返す精神疾患です。この特徴から、かつては「躁うつ病」と呼ばれていました。他に、双極性感情障害と呼ばれることもあります。躁状態のときには、短い睡眠時間でも活発に活動できたり、普段より自信を持って行動できたりと仕事で成果をあげることもあります。その反面、集中力に欠けたり、高額な買い物をしたりしてしまうことがあります。うつ状態になると、一変して、すべてのことに対して無気力な抑うつ状態になってしまいます。症状には個人差があり、程度や現れ方によっていくつかのタイプに分類されます。双極性障害のうち、躁状態とうつ状態を繰り返すものをI型、軽躁状態とうつ状態を繰り返すものをII型といいます。Upload By 発達障害のキホン双極性障害は、およそ100人に1人がかかる病気で、20代から30代前後に発症することが多いとされています。また、女性の発症率が高いうつ病とは異なり、男性と女性の間での発症のしやすさに大きな違いはありません。双極性障害は本人に躁状態の自覚がない場合も多く、さらに発症当初はうつ病との識別が難しいため、正しく診断されるまでに比較的長い期間を要します。しかし、双極性障害は気づかずに放置してしまうと、社会的地位や信頼を失ったり、最悪の場合、自ら命を絶ってしまったりする危険性があります。そのため、周囲ができるだけ早く異変に気づき、適切なサポートをすることで早期発見・早期治療につなげることが重要です。また、双極性障害は完治するのが非常に困難とされているうえ、再発率もとても高い病気です。症状をコントロールし、再発のリスクを低く抑えるためには、周囲の理解と規則正しい生活の維持が不可欠となります。出典:躁うつ病/双極性障害|前田クリニック参考:厚生労働省HP双極性障害の症状出典 : 初めの章で触れたように、双極性障害は、躁状態(軽躁状態)とうつ状態を繰りかえす疾患です。躁状態とうつ状態は、ある日を境に突然切り替わるわけではなく、症状が落ち着いている「寛解期(かんかいき)」を経てから切り替わります。この寛解期は、初めのうちは平均して5年程度だと言われています。寛解期になり、双極性障害が治ったと勘違いして、治療を途中でやめてしまうと、次第に寛解期が短くなり、場合によっては、1年の間に4回以上気分の変動が起きる「急速交代型」へと発展することもあります。症状の現れ方と継続期間に関しては、躁病エピソード(病相)は急に発症することが多く、2週間から5ヶ月間ほど持続すると言われています。一方、抑うつエピソードは徐々に発症し、躁病エピソードに比べて発症期間が長い傾向にあります。ここからはそれぞれの状態について説明します。躁状態になると、気分が著しく高揚した状態が持続します。陽気で開放的・活動的になる、すぐに興奮する、怒りっぽくなるなど、普段とは違った状態が続きます。自分を最高の人間と思い、「自分ならなんでもできる」という「万能感」を感じ、他人を見下すような態度が見られることもあります。具体的な行動面では、ほとんど寝ることなく動きまわったり、多弁になって周囲の人に次から次へと様々な話題についてしゃべり続けたりします。さらには買い物やギャンブルに大金を使うなど、周囲からすると異常な行動が見られますが、本人は無自覚であることが多いです。この状態の問題は、気分が高揚して様々な活動を行うものの、それはあくまでも病的な気分高揚によって引き起こされている行動であるため、内容に乏しく、活動の結果が良いものにならないということです。また、気分が大きくなった結果、暴力行為や性的逸脱行為のような法的な問題を起こしてしまうなど、社会生活に甚大な支障をきたすこともあります。軽躁状態は、読んで字のごとく「軽い躁状態」を指します。躁状態ほどの明らかな高揚感はないものの、やはり気分は高めで、普段と比べて人間関係に積極的になったり、やや高圧的になったりといった症状が見られます。躁状態と比べると症状は軽いため、周囲の人は「今日は機嫌がいいね」「最近テンション高いね」程度にしか感じず、病気とは気づかないことも多いようです。躁状態と共通して言えることは、多くの場合、本人は自分の症状に対して無自覚であるということです。そのため、自分の言動によって周囲が困惑していても、そのことに気づきません。 College of Psychiatrists HPうつ状態は、気分が高揚する躁状態の対極にある症状です。異常に気分が沈んだ状態が続き、何をやっても「楽しい」「嬉しい」という気分が持てなくなります。双極性障害の人が具合が悪いと感じるのはこの状態のときです。憂うつな気分になり、やる気や気力を失います。過剰な心配症になったり、自分を責めたりします。行動面の変化としては、口数が減る、なにもせずごろごろすることが増える、など明らかに元気のない状態が見られます。さらに、睡眠時間・食欲が減少し、苦痛を訴えたり、簡単に疲労感を感じたりするようになります。注意力・集中力も低下し、仕事の能率も悪くなります。うつ状態のときには、自殺願望を口にしたり、実際に自殺を試みることもあります。最初に現れる病相は人によってさまざまで、躁、軽躁状態であったり、混合状態やうつ状態であったりしますが、男性の場合、躁状態から始まることが多いと言われています。全体的には、うつ状態から始まるのが割合としては高いとされています。双極性障害とうつ病の違いは?出典 : 双極性障害もうつ病も、同じようなうつ症状があり、誤診されることも少なくありません。けれども、2つはまったく異なる病気です。双極性障害かうつ病なのかによって、後に解説する治療法も異なるため、違いを知っておくとよいでしょう。もっとも大きな違いは、気分が高まる「躁状態」「軽躁状態」があるかどうかです。病状がうつ状態で始まる場合、双極性障害であると見分けることは困難なため、経過を見ていく必要があります。うつ病と比べて、双極性障害のうつ状態には「急激に発症する」「比較的重症である」「妄想や幻覚などの精神症状を伴う」といった傾向があると言われています。日本国内において双極性障害の患者数の割合は約0.7%とされており、この数字はうつ病と比べておよそ10分の1です。発病しやすい年代は、うつ病が平均40歳であるのに対して、双極性障害は20歳前後で、10歳での発症も見られます。双極性障害のほうが若年齢で発症しやすいのは、遺伝的な影響を受けやすいためです。また、双極性障害とうつ病では発症率の男女比にも違いがあります。うつ病は女性に多く男女比が1:2である一方で、双極性障害の発症率には男女間でほとんど差はありません。男女の間でうつ病の発症率にこのような差が生じるのは、女性ホルモンの増加、妊娠、出産など女性に特有の事柄が理由でないかと考えられています。参考:双極性障害|みんなのメンタルヘルス(厚生労働省)双極性障害と間違えやすい病気出典 : うつ病以外にも双極性障害は、統合失調症や境界性パーソナリティ障害など他の病気と間違って診断されやすいと言われています。「躁」と「うつ」という二面性を持つうえ、躁状態では本人に自覚がないことが多い双極性障害は正確に診断するのがとても難しいといわれています。そのため、症状によって生活に支障が出て医療機関を受診しても、ほかの精神疾患と診断されることが少なくないのです。以下では、双極性障害と間違えやすい3つの病気について詳しく解説します。統合失調症には「陽性症状」と「陰性症状」という2つの型があります。発症当初は陽性症状が現れ、少しずつ陰性症状へと変わっていく傾向があります。この二面性が双極性障害との大きな共通点です。陽性症状では幻覚・妄想・興奮状態が起きるのに対して、陰性症状では自発性が乏しくなる・感情表現が鈍くなる・人づきあいが苦手になるといった状態になり、うつ症状にも見えます。自己愛の強い人たちの行動は、ときに躁状態に見えることがあります。芝居がかった言動の数々で周囲の人たちに迷惑を及ぼすという特徴も躁状態の人に見られる傾向の1つです。自己愛性パーソナリティ障害の人は、自分の才能や業績を誇張し過剰な称賛を求めます。他人に嫉妬したり、尊大かつ高慢な態度で振舞います。このような症状は、躁状態の人が「自分にはなんでもできる」と万能感を感じて行動するのと似ています。「境界性」とは、もともと神経症と統合失調症の「境界」を意味していました。神経症をはるかに超える症状が現れるけれども、統合失調症ほど重症ではないと診断されてきた障害です。不安定な対人関係という特徴が双極性障害と似ています。はしゃいでいたのに急に落ち込むといった症状が典型です。ほかにも、過食・過量服薬・リストカットなどを繰り返す重大な障害です。以上で紹介した病気はいずれも双極性障害とは治療法が異なります。そのため、症状を回復させるためには正しい診断に基づいた適切な治療が重要になります。児童期の双極性障害を診断するうえでの大変さは、その症状がADHDの症状の多くと重なっている点にあるでしょう。じっとしていられない、衝動的、不注意、注意がそれやすい、などの特徴は、双極性障害のある子どもにも見られる傾向ですが、これらの様子が観察された場合には双極性障害よりもADHDと診断されてしまうこともあるようです。参考:「子どもの双極性障害―親と専門家のためのガイド 」ディミトリ パポロス双極性障害の原因出典 : 過去の研究から、双極性障害の発症には「遺伝」と「ストレス」が関連していることが指摘されていて、これら2つの要素が重なった結果として双極性障害が発症するという「ストレス脆弱性モデル」が双極性障害の原因の一つとして考えられています。ストレス脆弱性モデルとは、「その人の病気へのなりやすさ(脆弱性)と、病気の発症を促す要因(ストレス)の組み合わせにより、精神疾患は発症する」という仮説です。ここでいう脆弱性とは、遺伝などの先天的な要素と、どのような環境でどのように対応してきたかという後天的な要素により決まるといわれています。ですが、中にはこのモデルに当てはまらない患者さんもおり、双極性障害の原因のすべてを説明することはできてはいません。もともとの性格が要因となるのではと考えている研究者もいますが、明らかにはされていません。さまざまな研究が進められているものの、双極性障害の原因に関してはまだわかっていないことが多いようです。参考:躁うつ病(双極性障害)の原因|前田クリニック College of Psychiatrists HP双極性障害かもと思ったら?出典 : 双極性障害は、誰でもかかる可能性のある病気です。気分が上がらず憂鬱な気分のまま数週間が経ってしまったり、逆にテンションの上がり下がりにムラがあり不安を感じる場合は専門機関に相談するか、医療機関の受診をおすすめします。医療機関を受診する場合、精神科が第一候補になります。総合病院の精神科よりは精神科クリニックなどが受診しやすいでしょう。ただし、激しい躁状態の場合には入院が必要となる可能性もあるため、はじめから精神科救急の設備を備えた専門病院がよいでしょう。精神科に似た診療科に心療内科があります。本来は心身症が専門の心療内科ですが、近ごろは精神科という診療科名に抵抗を感じる人を受け入れるために、あえて心療内科としている場合があります。精神科医がいるのかどうか、事前に調べてみるとよいでしょう。いきなり医療機関を受診するのに抵抗がある場合、どの病院のどの診療科に行けばいいのか迷ったり、そもそも受診すべきか迷ったりすることもあるのではないでしょうか?そんな時は、お近くの精神保健福祉センターや保健所に連絡すると、専門家が相談に乗ってくれますので、気兼ねなく連絡してみましょう。以下のリンクで、全国の精神保健福祉センター、保健所を検索できます。また、お子さんに双極性障害の疑いがある場合には児童相談所などに相談してもよいでしょう。全国の精神保健福祉センター一覧|厚生労働省HP保健所一覧|全国保健所長会HP全国児童相談所一覧 l 厚生労働省厚生労働省HP双極性障害の診断基準は?出典 : 米国精神医学会の診断基準『DSM-5』(精神疾患の精神疾患の診断・統計マニュアル)では次のような特徴を挙げて、・双極I型障害・双極II型障害という2つの型に区別して診断されます。(i) 躁状態が少なくとも7日間つづく場合はI型、4日間つづく場合はII型とする。(ii) II型の軽い躁状態では、社会生活の機能はあまりそこなわれないですむ。しかしI型の躁症状は、社会生活の機能を必ず障害し、問題になっていく。・以下で引用する「躁病エピソード」A~Dのうち、少なくとも1つ以上に該当すること・躁病エピソードと抑うつエピソードの発症が、その他の精神性障害によるものでないことが双極I型障害の診断基準となります。・現在または過去の軽躁病エピソードの以下の基準を満たすこと・現在または過去の抑うつエピソードの以下の基準を満たすことが双極II型の診断基準となります。●躁病エピソードA.気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的または易怒的となる。加えて、異常にかつ持続的に亢進した目標指向性の活動または活力がある。このような普段とは異なる期間が、少なくとも1週間、ほぼ毎日、1日の大半において持続する(入院治療が必要な場合はいかなる期間でもよい)。B. 気分が障害され、活動または活力が亢進した期間中、以下の症状のうち3つ(またはそれ以上)(気分が易怒性のみの場合は4つ)が有意の差をもつほどに示され、普段の行動とは明らかに異なった変化を象徴している。自尊心の肥大、または誇大睡眠欲求の減少(例:3時間眠っただけで十分な休息がとれたと感じる)普段より多弁であるか、しゃべり続けようとする切迫感観念奔逸、またはいくつもの考えがせめぎ合っているといった主観的な体験注意散漫(すなわち、注意があまりにも容易に、重要でないまたは関係のない外的刺激によって他に転じる)が報告される。または観察される。目標指向性の活動(社会的、職場または学校内、性的のいずれか)の増加。または精神運動焦燥(すなわち、無意味な非目標指向性の活動)困った結果になる可能性が高い活動に熱中すること(例:制御のきかない買いあさり、性的無分別、またはばかげた事業への投資などに専念すること)C. この気分の障害は、社会的または職業的機能に著しい障害を引き起こしている、あるいは自分自身または他人に害を及ぼすことを防ぐため入院が必要であるほど重篤である、または精神病性の特徴を伴う。D. 本エピソード、物質(例:薬物乱用、医薬品、または他の治療)の生理学的作用、または他の医学的疾患によるものではない。注:抗うつ治療(例:医薬品、電気けいれん療法)の間に生じた完全な躁病エピソードが、それらの治療により生じる生理学的作用を超えて十分な症候群に達してそれが続く場合は、躁病エピソード、つまり双極I型障害の診断とするのがふさわしいとする証拠が存在する。● 軽躁病エピソードA.気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的または易怒的となる。加えて、異常にかつ持続的に亢進した活動または活力のある、普段とは異なる期間が、少なくとも4日間、ほぼ毎日、1日の大半において持続する。B. 気分が障害され、かつ活力および活動が亢進した期間中、以下の症状のうち3つ(またはそれ以上)(気分が易怒性のみの場合は4つ)が持続しており、普段の行動とは明らかに異なった変化を示しており、それらは有意の差をもつほどに示されている。自尊心の肥大、または誇大睡眠欲求の減少(例:3時間眠っただけで十分な休息がとれたと感じる)普段より多弁であるか、しゃべり続けようとする切迫感観念奔逸、またはいくつもの考えがせめぎ合っているといった主観的な体験注意散漫(すなわち、注意があまりにも容易に、重要でないまたは関係のない外的刺激によって他に転じる)が報告される。または観察される。目標指向性の活動(社会的、職場または学校内、性的のいずれか)の増加。または精神運動焦燥困った結果になる可能性が高い活動に熱中すること(例:制御のきかない買いあさり、性的無分別、またはばかげた事業への投資などに専念すること)C. 本エピソード中は、症状のない時のその人固有のものではないような、疑う余地のない機能的変化と関連する。D. 気分の障害や機能の変化は、他者から観察可能である。E. 本エピソード、社会的または職業的機能に著しい障害を引き起こしたり、または入院を必要としたりするほど重篤ではない、もし精神病性の特徴を伴えば、定義上、そのエピソードは躁病エピソードとなる。F. 本エピソードは、物質(例:薬物乱用、医薬品、あるいは他の治療)の生理学的作用によるものではない。注:抗うつ治療(例:医薬品、電気けいれん療法)の間に生じた完全な軽躁病エピソードが、それらの治療により生じる生理学的作用を超えて十分な症候群に達して、それが続く場合は、軽躁病エピソードと診断するのがふさわしいとする証拠が存在する。しかしながら、1つまたは2つの症状(特に、抗うつ薬使用後の、易怒性、いらいら、または焦燥)だけでは軽躁病エピソードとするには不十分であり、双極性の素因を示唆するには不十分であるという点に注意を払う必要がある。● 抑うつエピソードA.以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在し、病前の機能からの変化を起こしている。これらの症状のうち少なくとも1つは、(1)抑うつ気分、または(2)興味または喜びの喪失である。注:明らかに他の医学的疾患に起因する症状は含まない。その人自身の言葉(例:悲しみ、空虚感、または絶望感を感じる)か、他者の観察(例:涙を流しているようにみる)によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分。 (注:子どもや青年では易怒的な気分もありうる)ほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての活動における興味または喜びの著しい減退(その人の説明、または他者の観察によって示される)食事療法をしていないのに、有意の体重減少、または体重増加(例:1ヵ月で体重の5%以上の変化)、またはほとんど毎日の食欲の減退または増加(注:子どもの場合、期待される体重増加がみられないことも考慮せよ)ほとんど毎日の不眠または過眠ほとんど毎日の精神運動焦燥または制止(他者によって観察可能で、ただ単に落ち着きがないとか、のろくなったという主観的でないもの)ほとんど毎日の疲労感、または気力の減退ほとんど毎日の無価値感、または過剰であるか不適切な罪責感(妄想的であることもある、単に自分をとがめること、または病気になったことに対する罪悪感ではない)思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日認められる(その人自身の言葉による、または他者によって観察される)死についての反復思考(死の恐怖だけではない)。特別な計画はないが反復的な自殺念慮、または自殺企図、または自殺するためのはっきりとした計画B. その症状は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。C. そのエピソードは物質の生理学的作用、または他の医学的疾患によるものではない。注:診断基準A~Cにより抑うつエピソードが構成される。抑うつエピソードは双極I型障害でしばしばみられるが、双極I型障害の診断には必ずしも必須ではない。 注:重大な喪失(例:親しい者との死別、経済的破綻、災害による損失、重篤な医学的疾患・障害)への反応は、基準Aに記載したような強い悲しみ、喪失の反芻、不眠、食欲不振、体重減少を含むことがあり、抑うつエピソードに類似している場合がある。これらの症状は、喪失に際し生じることは理解可能で、適切なものであるかもしれないが、重大な喪失に対する正常の反応に加えて、抑うつエピソードの存在も入念に検討すべきである。その決定には、喪失についてどのように苦慮を表現するかという点に関して、各個人の生活史や文化的規範に基づいて、臨床的な判断を実行することが不可欠である。引用:『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)双極性障害の治療法出典 : 双極性障害の治療には、躁状態やうつ状態の治療と、再発を防ぐための治療があります。それぞれ見ていきましょう。双極性障害の治療において第一の大きな柱となるのは、薬物療法です。薬は、気分安定薬と非定型抗精神病薬が第一選択となりますが、患者さんによって効く薬が異なるため、他にも多くの種類の薬があります。気分や意欲が周期的に変化し、高い再発率で知られる双極性障害の患者さんが安定した生活を送るためには、症状をコントロールしながら再発予防に努めることが双極性障害を治療するうえでのポイントとなります。そこで、再発を防ぐ維持療法の段階に入ると、もう1つの柱として心理社会的治療が重要になります。以下では薬物療法と心理社会療法のそれぞれについてもう少し詳しく紹介します。◇薬物療法双極性障害の薬物療法では人によって効く薬が違うため、さまざまな選択肢がありますが、気分安定薬の一つであるリチウムの使用が基本中の基本とされており、双極性障害の患者の約7割から8割に対してはっきりとした効果があるとされています。躁とうつは対極の症状なので、薬も正反対の作用のものを用いると思われることが多いです。しかし、躁・うつはどちらも気分が大きく乱れた状態です。そのため、薬で気分を安定させることで両方の症状に対して効果が見込めるのです。これを気分安定薬といいます。気分安定薬の他にも抗精神病薬・抗うつ薬が用いられることはあり、それぞれ以下のような効果がありますが、ほとんどの場合、気分安定薬が第一選択となります。気分安定薬・・・躁状態の改善・予防、自殺予防に有効抗精神病薬・・・躁状態、幻聴・妄想に有効抗うつ薬・・・基本的に用いられないが、気分安定剤と併用することでうつ状態に有効な場合もより詳しい薬の情報については、以下のガイドラインをご参照ください。参考:「日本うつ病学会治療ガイドライン」参考:「双極性障害の診断と治療」◇心理社会的療法(精神療法)心理社会的治療は広い意味での精神療法で、再発を予防する上では薬と同じように重要な役割を果たします。心理社会療法では、患者さんが療養に取り組む上での精神面をサポートしていくことが目的になります。双極性障害の精神療法の中でも中心となるのは心理教育です。患者さんは心理教育を通して双極性障害に対する知識を深めるとともに、その「再発しやすい」性質を理解し、日々の生活の中で再発のリスクを減らす方法について医師と話し合っていきます。再発率の高い双極性障害はの治療においては、薬物療法によって症状を改善してからが本番であるとも言われます。症状が落ち着いた後も、毎日をどう過ごすのかがとても重要です。服薬を継続しながら、運動や睡眠、ストレスへの対処法などを工夫することで気分の波をコントロールすることができます。参考:文部科学省HP参考:よくわかる双極性障害(躁うつ病) (セレクトBOOKS) 貝谷 久宣再発を防ぐ治療は、症状が落ち着く寛解期に行います。双極性障害の治療において、再発を防ぐことは非常に大切です。というのも、双極性障害を再発すると、同じような症状が繰り返されるわけではなく、症状が重くなることが多く、何度も再発をしているうちに、社会的にさまざまなものを失ってしまう可能性があるからです。再発を防ぐ治療といっても、なにか特殊なことをするわけではありません。最大の再発を防ぐ治療は、今までどおり薬を飲み続けることです。症状が治まってきたからといって、自分で薬を減らしたり、飲むことをやめたりしてはいけません。医師の指示に従うようにしましょう。双極性障害の人に対して周囲はどのように接するべき?出典 : 序章で触れたとおり、双極性障害の完治はとても難しいと言われています。また、最悪の場合には自ら命を絶つ可能性もある病気です。そして双極性障害は、誰でもかかる可能性のある病気でもあります。家族や結婚相手、恋人、親友など、大切な人が双極性障害であるとわかったとき、どのように支えていくべきなのか、必要な心構えと注意すべきポイントについてお話します。このような認識の違いは家庭内でストレスを生み、それが病気の再発へとつながってしまう可能性があります。そうならないためにも、本人と話し合うことによってこのような認識のギャップについて、互いに把握しておく必要があります。また、再発の際にどのような症状が現れるのかを周囲の人が知っておくことも大切です。過去に躁状態になったときのことを振り返り、最初にどんな症状が現れたのかを共有しておくことで、早くから再発の兆しを発見し早期対処できるようになります。躁状態のときには、普段のその人とは全く違う態度や言動を取ったり、信じられない額の浪費をしてしまったりします。そのため周囲も驚いたり、困惑したり、ときには感情的になってしまったりすることもあるのではないかと思います。しかし、そうした普段とは違う態度・言動はいずれも病気によって引き起こされている「症状」であるため、できるだけ早期に受診あるいは担当医に相談することが望まれます。ですが、躁状態の場合、本人の自覚が乏しく、病院へ連れていくのが難しいことがあります。そのようなときには、できるだけ刺激しないように心がけながら、「あなたのことを心配している」という事実を伝えましょう。その人が信頼・尊敬している人から説得してもらうという方法もうまくいくことがあるようです。他にも様々な手段が考えられますが、本人を騙して病院に連れていくことは避けましょう。騙されたと知ることでさらなるストレスがかかり症状の悪化へとつながったり、以降の関係にわだかまりが残り治療が困難になる可能性があります。うつ状態は、本人にとって最も辛くて厳しい期間です。まずはそのことをしっかりと理解しましょう。うつ状態のとき周囲の人が注意すべきポイントは、・責めるようなことを言わないこと・自殺の予兆に気づき、予防することの2点です。繰り返しになりますが、うつ病で一番苦しい思いをしているのは患者さん本人です。そのため、「ダラダラするな」「甘えるな」など怠け者扱いするような言動や、「がんばれ」「いつ治るの」といった元気になるのを無理に急かすような発言はしないようにしましょう。さらに、悲しいことに双極性障害の症状によって自殺をしてしまう人もいます。・「死にたい」「消えたい」と口にする・遺書を書く・周囲の人にお礼や別れを告げる・身辺整理をする・お酒を暴飲するなどのサインが見られたら早急に主治医に相談し、予防策を取ることが求められます。参考:加藤忠史先生に「双極性障害」を訊く|日本精神神経学会参考:躁うつ病の人とのつきあい方(友人・家族)|特定非営利活動法人地域精神保健福祉機構(COMHBO)双極性障害の人が受けられる可能性のある支援出典 : 双極性障害の症状が原因で働くことができないと収入が減ってしまうだけでなく病気の治療代も支払わなければならないため、経済的に苦しい思いをしてしまう患者さんもいます。以下では、そのような方々が利用できる可能性のある公的支援を紹介します。◇障害年金年金の障害給付、障害基礎年金ともいいます。障害が認められれば、年金が早期から支払われます。◇精神障害者保健福祉手帳税金の減額や、自治体によっては公共交通機関が無料で利用できるようになります。患者さんの状態に応じて等級が決まり、その等級にあった福祉サービスが受けられます。◇自立支援医療精神科の病院やクリニックなどに通っている場合、支払った医療費の一部が補助されます。また、低所得世帯に対しては医療費負担軽減措置が設けられていいます。高額治療継続者であれば、一定の負担能力がある場合でもひと月の上限が設定されます。◇生活保護精神疾患に限らず病気やけがなどを理由に働くことができず、収入がない、もしくは不十分である場合に最低限度の生活を保障する制度です。また、双極性障害の患者さんやその家族によって成る互助団体もあります。当事者同士でしか話せない悩みの相談をしたり、治療や支援を受ける方法についての情報交換なども行われているようです。法人ノーチラス会関東ウェーブの会東京うつ病友の会また、以下のリンク先では、上記で紹介した以外の地域で活動を行う双極性障害患者の互助会の情報のほか、そうした互助会によるイベントをまとめたカレンダーを見ることができます。「双極性障害(双極症)全国自助会カレンダー」まとめ出典 : 双極性障害はその症状がわかりにくく、本人に自覚がない場合があったり、他の疾患と間違えやすい障害です。ですが、双極性障害は今まで築いてきた社会生活や、時には命にまで関わる重大な病気もあります。それでも、薬物治療に加え、双極性障害とうまく付き合っていく方法は確かに存在し、世の中には双極性障害でありながらも社会生活を送っている人がいるのも事実です。本人だけではなく、周囲も一緒になって病気の性質についてよく理解することで、双極性障害との上手な付き合い方を見つけ、さらに、予兆を感じた時にはすぐに担当医に相談することが大切です。気分の波をうまくコントロールし、再発のリスクを抑えながら毎日楽しい生活を送れるように、本人も、周囲も、互いを思いやりながら治療を進めていけるといいですね。
2017年10月02日児童福祉法とは出典 : 児童福祉法とは、児童福祉を保障するためにあらゆる児童がもつべき権利や支援が定められた法律です。初めて児童福祉法が制定されたのは、戦後間もない1947年です。 戦争により親を亡くした戦争孤児たちは家もなく、路上での生活を余儀なくされていました。そんな社会背景から、子どもの健やかな成長と最低限度の生活を保障するために、児童福祉法が制定されたのです。それから半世紀以上が経過し、子どもたちのよりよい暮らしの実現に向けた改正が行われてきました。子育てに関する支援の中には、児童福祉法によって定められているものもあります。また、障害児の福祉サービスや基本的な考え方などを定めているので、お子さんの発達が気になる保護者の方々や、発達支援・障害福祉に携わる方々にとっても重要な法律です。今回は、児童福祉法とはどんな法律なのか、わかりやすく解説します。参考:厚生省児童局『日本における児童福祉の概況』児童福祉法の構成出典 : 法律は、総則・実体的規定・雑則・罰則の4つで構成されています。児童福祉法は8章あり、そのうち第一章が総則、第二章から第六章が実体的規定、第七章が雑則、第八章が罰則です。それらの8つの章により、児童福祉の大まかな枠組みが定められています。まずは簡単にそれぞれの章でどのようなことが定められているのかをご紹介します。総則とは、児童福祉法全体に共通する規定のことを指します。たとえば、国や地方自治体が保護者と共に児童の生活を守り、健やかな成長に対する責任があることが述べられています。児童の福祉を保障する上で、重視されている児童相談所の役割も定義があります。他にも、都道府県の児童福祉を保障するための児童福祉審議会の役割についても触れられています。さらに、児童の定義や児童に関する福祉施設や資格に対する規則も定められています。資格の中には、保育園で働くために必要になる保育士、児童相談所に配置される児童福祉司、市町村に配置される児童委員の3つの資格が規定されています。この章では、小児慢性特定疾病児童や身体に障害のある児童への療育の実施などについて記載されています。たとえば、小児慢性特定疾病医療費の支給であれば、その該当児童の保護者が都道府県が定める医師に診断書と共に都道府県に申請することが明記されています。このように、支援をだれが行うのか、何が必要なのか、などといった全体像が提示されています。詳しくは、後の「児童福祉法によって定められている支援とは」でご紹介します。章のタイトルにある「事業」には、放課後等デイサービスなどの障害児通所支援事業や保育園などの保育事業に代表されるような児童福祉に関連する事業が含まれています。これらの事業は、地方自治体が中心となっているため、自治体がその事業を行う権利を認めている規定が多くなっています。加えて、「養育里親」についても、詳しくまとめられています。里親制度は、家庭での養育が困難又は受けられなくなった子ども等に、温かい愛情と正しい理解を持った家庭環境の下での養育を提供する制度です。家庭での生活を通じて、子どもが成長する上で極めて重要な特定の大人との愛着関係の中で養育を行うことにより、子どもの健全な育成を図る有意義な制度です。この章では、それぞれの支援や事業の運営の予算をどこからだすのかを定めています。大きく分けて予算の出所は3つです。国、都道府県、市町村にわかれています。国の予算から都道府県、市町村の費用を負担している場合もあります。限られた予算でより良い児童福祉を実現するために細かく負担者が決められています。日本では、国民は何らかの健康保険に加入することが義務付けられています。保険に対してお金を支払っている以上、その保険は加入者にとって公平公正でなければなりません。国民健康保険団体連合会は、国民健康保険を通して社会保障を向上させるための法人として各都道府県に設置されています。児童福祉法の中では、この国民健康保険団体連合会が障害児通所や障害児相談支援などの支払に関する業務を行うことが定められています。参考:神奈川県国民健康保険団体連合会ー国民健康保険団体連合会とは?参考:国民健康保険法審査請求とは、行政による決定に対して不服がある場合に、再度その決定が適切であるかどうかを再審査する手続きのことを指します。児童福祉法では、市町村の障害児に関する給付費に不服がある場合に、保護者が審査請求を行う権利を明記しています。参考:総務省ー1.「行政不服審査制度」とは?第六章までに明記されてきた内容に関する細かい規則が定められています。総則ほどは重要ではない部分でも、児童福祉を保障する上で必要になる規定がここにまとめられています。児童福祉法で制限されている規定や禁止されている行為などを行った場合の処罰がまとめられているのがこの罰則です。児童福祉法によって定められている支援とは出典 : ここでは、児童福祉法によってどのような支援が定められているのかをご紹介します。おもに第二章「福祉の保障」と第三章「事業、養育里親及び施設」に規定されている、給付金や支援事業となります。児童福祉法では、児童の健やかな成長のために放課後児童健全育成事業なども定められており、地域での居場所つくりにも役立っています。子育て支援に関する事業を児童福祉法では「児童自立生活援助事業」と呼んでいます。その中には11個の事業が含まれており、子育ての中での困りごとに対する支援が行われています。今回は児童福祉法に記されている支援のなかから、特に障害児や小児慢性疾病などのサポートや子育てにおいて必要不可欠な支援をまとめました。・養育にまつわる事業児童福祉法では、保護者が何らかの理由で日常的な養育や保育が行えない場合に「子育て短期支援事業」や「一時預かり事業」として一時的な施設などでの保護を行う事業を定めています。自治体によってはショートステイと呼ばれることもあります。ほかにも「乳児家庭全戸訪問事業」は原則として、すべての乳児がいる家庭に訪問することで、保護者が悩みを相談することや、乳児の養育環境が適切かどうかを確かめる事業だと定められています。この事業によって、さらに支援が必要だとされた保護者向けに「養育支援訪問事業」があります。また、保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童がみつかった場合には、「小規模住居型児童養育事業」により保護環境を届けることと定めています。・保育にまつわる事業乳児や幼児を対象にした「一時預かり事業」のほかにも、困りごとや特性に合わせていくつかの保育事業が規定されています。自分の家庭に保育士を呼び、面倒を見てもらうことを認める「居宅訪問型保育事業」や、保育園の中でもさまざまな理由から少人数での保育を提供する「小規模保育事業」があります。保育が必要な場所や理由もさまざまなために、保育士の家で保育を行う「居宅訪問型保育事業」や勤務先での保育を可能にする「事業所内保育事業」、病気に対するケアが充実している「病児保育事業」が規定されています。できるだけニーズに合わせた子育てを実現するために、多様な保育支援が用意されているのです。しかしながら、現状では整備しきれていない制度もあるため、決められた制度の中でどのような支援を行っていくのかは難しく課題でもあります。それらの支援に対する悩みなどを共有する場として、「地域子育て支援拠点事業」を児童福祉法では規定しています。乳児又は幼児をもつ保護者が相互の交流を行う場を用意し、子育てについての相談、情報の提供、助言その他の援助を行う事業になっています。悩みを抱え込まずに相談できる支援も、子育ての支援事業の中で保育と同じぐらい必要な支援として位置付けられています。児童福祉法では、虐待が見つかった場合の措置や、虐待を受けていた児童に対する支援を規定しています。虐待に関する基準などは下記の記事をご覧ください。また、虐待を受けた児童を保護する里親に関する規定も児童福祉法が規定しています。この虐待に関する支援や、措置に関しては平成28年度に改正が加えられました。この改正に関しては「児童福祉法の改正について」の章にまとめています。ここで紹介する事業は、施設に通うか、入所するかの障害児通所・入所支援とそれらの支援に対する給付金に関する事業の3種類です。・障害児通所支援事業障害児通所支援事業については以下の記事にまとめられています。法律の中では、児童発達支援、医療型児童発達支援、放課後等デイサービス及び保育所等訪問支援が障害児通所支援であると明記されています。4つの支援についてそれぞれ簡単に紹介します。・児童発達支援障害のある未就学(~6歳)の児童が通う。生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進その他の便宜を供与する。・医療型児童発達支援(医療型児童発達支援センター)上肢、下肢又は体幹の機能の障害(肢体不自由)のある児童が通う。児童発達支援及び治療を行う。・放課後デイサービス6~18歳の就学児童(※場合によって20歳まで)が通います。授業の終了後や学校が休みの日に、生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進などを目的とした多様なプログラムを設けています。・保育所等訪問支援専門知識を持つ児童指導員や保育士、理学療法士などが、障害のある児童が通う保育園・幼稚園を訪問します。障害のある子どもや保育園・幼稚園のスタッフに対し、集団生活に適応するための支援や支援方法の指導を行います。・障害児入所支援何らかの施設に入所して、支援や治療を受けることを障害児入所支援と呼びます。施設の利用に関しては、児童相談所が主に相談することが多いといいます。医療機関からの紹介や、身体的なリハビリなどを行うなど目的や理由もさまざまです。児童福祉法の中で、定義されている児童福祉施設に関しては、後ほどご紹介します。・障害児通所/入所給付費などの支給障害児通所給付費あるいは障害児入所給付費として国と自治体から利用料の9割が給付されることにより、自己負担1割でサービスが受けられるように定められています。詳しくは下記の記事をご覧ください。・小児慢性特定疾病医療費の支給特定の医療機関からの診断によって、医療費を支給することが厚生労働省によって定められています。詳しくは以下の記事をご覧ください。・小児慢性特定疾病児童等自立支援事業この事業では、小児慢性特定疾病児童をはじめ保護者や関係者に対する相談事業を行っています。具体的には、療育相談指導 、巡回相談、ピアカウンセリング 等などの支援が含まれています。上記の記事の中に、相談事業についてのまとめも掲載しています。そちらもご参考ください。参考:厚生労働省ー小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の取組状況について・結核にかかった児童に対する支援児童福祉法では、結核にかかった児童のために療養とあわせて学習支援を行う制度を定めています。療育の給付と呼ばれており、この中には学習面はもちろん生活必需品の支給など物品面でのサポートも定められています。児童福祉法によって定められている児童相談所とは出典 : 児童相談所とは子どもに関するあらゆる問題の解決のために設置される専門的な相談機関です。児童相談所には、スタッフとして児童福祉司(ソーシャルワーカー)、児童心理司、医師などの専門家から構成され、すべての都道府県と政令指定都市に設置されています。詳しくは下記の厚生労働省ページから各自治体の設置情報をご覧ください。児童相談所は、18歳未満の子どもに関することであれば、本人・家族・学校の先生・地域の住民等、どんな立場からでも相談することができます。相談することで、周辺の機関との連携によって必要な援助を行っていきます。相談される内容は、親の事情や子どもの問題行動等による子育ての悩み、障害児福祉、虐待の対応などの問題などが主になっています。それらの問に対して、専門家による助言や治療の補助、さまざまな手当ての案内などの支援を行います。いきなり学校や病院に相談することは気が引けるが自分だけでは解決が難しい時、誰かに相談に乗ってほしい時には、児童相談所に相談してみることをお勧めします。参考:全国児童相談所一覧|厚生労働省児童福祉法によって定められている児童福祉施設とは出典 : 今回は、児童福祉施設を3種類にわけてご紹介します。・保育所幼保連携型認定こども園幼稚園と保育園の両方の機能を持った施設です。就学前の児童に対する教育から、0歳からの保育を行うことができます。詳しくは以下の内閣府ページをご覧ください。Upload By 発達障害のキホン内閣府ー認定こども園とは・助産施設主に産科病院や助産所が「助産施設」と認定されている場合が多いです。経済的な理由により、入院などが難しい場合、妊産婦から申込みがあったとき助産施設は助産を行わなければならない、と規定されています。・乳児院何らかの理由で保護者の養育を受けられない乳幼児を養育する施設です。一般的な養育だけではなく、被虐待児・病児・障害児などに対応できる専門的養育機能を持っている場合もあります。・母子生活支援施設何らかの理由で一般的な生活を送ることが困難になった母親と児童がともに入所して生活を送ることができる施設になります。施設では、利用者の安定した生活のための相談や援助を行っており、自立した生活を目指しサポートを行っています。・児童厚生施設児童館や児童センターなどの施設を児童厚生施設と呼びます。児童が安全に遊べる場所であり、発育には欠かせない大切な機能を持っている施設です。・児童養護施設児童養護施設は、保護者のない児童、虐待されている児童などの養護を目的とした施設です。退所した児童に対しては相談を行うことや、自立のための援助も行っています。・児童自立支援施設及び児童家庭支援センター児童に関係する人からの相談に応じ、必要なサポートの提案を行う施設です。また、児童相談所など実際の支援につながる機関への紹介を行っています。この施設は、児童相談所の機能をサポートするために児童福祉施設等に設置されていることもあります。児童福祉法で定められる、障害のある児童の支援に関する施設出典 : ・障害児入所施設障害のある児童を対象に、医療や保護などを行う入所施設です。障害種別ごとに作られていた入所施設が障害者総合支援法の改正に合わせて一元化されました。・情緒障害児短期治療施設(児童心理治療施設に改名予定)軽度の情緒障害を有する児童を対象にした施設です。情緒障害とは、精神的なコントロールが難しく生活に困難が生じることを指します。この施設に短期間、入所もしくは通所することで、その情緒障害を改善することを目的としています。さらに、自閉症や発達障害の児童も利用可能なため、治療を受けることができます。・児童発達支援センター障害のある児童に対しての療育や、相談事業を行っています。詳しくは下記の記事をご参照ください。参考:児童福祉施設の設備及び運営に関する基準児童福祉法の改正について出典 : 平成28年度に児童福祉法が改正されました。児童によりよい発育を届けるために、法律も社会背景にあわせて改正が行われているのです。今回の改正で主に着目されたのは以下の4つです。今回の改正により、すべての児童が適切な療育をうけることが改めて強調される形に改正されました。また、都道府県・市町村の役割と責任も再整理され、より児童の養育環境が地域単位で充実するように改善が行われました。母子家庭に対する母子健康包括支援センターの設置を市町村に命じたり、虐待を起こさないための改正が行われました。虐待に関する情報を市町村にどのように共有するかという課題を改善するための取り組みが行われています。自治体単位での児童相談所の増設や、児童福祉司などの専門的な職員の増員が決まりました。そもそも虐待に関する業務を行う人員を増加する流れもあるといえるかもしれません。里親に引き取られた児童の自立支援の充実を目的としています。それに合わせて里親の認定を推進していくことも児童相談所の業務として位置付けることで、援助の充実につながる改正となっています。参考:厚生労働省ー児童福祉法等の一部を改正する法律案の概要まとめ出典 : 子どもの健やかな成長のためには、保護者の養育はもちろん地域単位での支援が必要不可欠です。児童福祉法では、児童と保護者の支援をもとに、地域社会に対する責任や支援内容も規定しています。これからも児童のために法律が改正されることでしょう。市民の声が法律に反映されていることも少なくありません。児童福祉法で新たな支援が決まることで社会に与える影響はとても大きいのです。どこまで児童福祉法の支援が影響を与えるかは人それぞれ異なりますが、子どものためにはなくてはならない法律なのです。さまざまな支援がある中で、どのような支援を利用するのかを知ることや、地域での取り組みを知ることでこれまでとは違った子育ての方法が見えてくるかもしれません。児童福祉法の理念を知れば、保護者の皆さんがわが子を大事に思うように、社会全体で児童という存在がいかに大切な存在なのかに気づかせてくれるはずです。
2017年09月30日児童相談所は悩める親子のための相談機関出典 : 児童相談所は、子どもに関するあらゆる問題の解決のために、児童福祉法に基づいて設置された専門的な相談機関です。18歳未満の子どもに関することであれば、本人・家族・学校の先生・地域の住民等、どんな立場からでも相談することができます。児童相談所のスタッフは児童福祉司(ソーシャルワーカー)、児童心理司、医師などの専門家から構成され、すべての都道府県と政令指定都市に設置されています。児童相談所の仕事は、子どもに関するあらゆる問題の相談窓口として相談に応じ、周辺の機関との連携によって必要な援助を行っていくことです。具体的には、親の事情や子どもの問題行動等による子育ての悩み、障害児福祉、虐待の対応などの問題に対して、助言や治療の補助、さまざまな手当ての案内などの支援を行います。いきなり学校や病院に相談することは気が引けるけれど、自分だけでは解決が難しいという時、誰かに相談に乗ってほしい時には、相談先の一つとして児童相談所を検討してみてはいかがでしょうか?次の章からは、児童相談所が取り扱う相談内容と支援方法を具体的に説明していきます。子どもの性格・行動、健康、進路など...子育てに関するお悩みへの児童相談所の支援出典 : 子育てをしていると、たくさんの悩みが出てきますよね。児童相談所では、子どもの性格や行動、健康管理、進路など幅広い困りごとに対応した支援が用意されています。・保健相談未熟児、虚弱児、内部機能障害、小児喘息、その他の疾患(精神疾患を含む)等がある子どもに関する相談・育成相談悪癖(チック、夜尿)や生活習慣、困った行動(家庭内暴力など)、不登校、性格上の問題(内気、友達と遊ばない、わがまま)への対処の相談・育事、しつけの相談遊び、性教育などに関する相談継続的な支援によって状況の回復が見込める場合は、在宅のまま支援が行われます。訪問型の相談や助言や施設の紹介、施設利用の際のアセスメントを行ったりします。他にも、子育ての情報に関するセミナーをしているところもあるので、ぜひチェックしてみてください。その他にも、メンタルフレンドというサービスがあります。メンタルフレンドとは、心に傷を負った子どもを、遊びや学習の手伝いをしながらケアをする青年ボランティアのことです。児童相談所の運営指針について:図表|厚生労働省HPメンタルフレンドとは?|東京都福祉保健局カウンセリングや手当、施設の紹介など、障害のある子どもに対する児童相談所の支援出典 : 子どもに知的発達の遅れ、肢体不自由、ことばの遅れ、虚弱、自閉傾向があるのではないかなどと気になったときには、児童相談所に相談してみましょう。児童相談所に相談すると、所属の児童福祉司や医療機関等が協議し、障害の疑いがあるかどうか、重軽度などを調べます。支援が必要とされる障害が認められた場合は、児童相談所から様々な支援を受けられるようになります。・1歳6ヶ月、3歳の健康診査において知的発達面に詳しい検査が必要だと診断された場合は、児童相談所が助言と指導を担当します。・医師、児童福祉司などによる訪問相談、発育相談会、親子へのカウンセリングが行われます。・「子どもの困った行動にどう対応すればいいのか分からない」「周りからの理解が得られず子育てがつらい」などの相談について専門家が具体的な提案をしたり、心理的なケアを施します。知的障害などの都合を配慮した金銭的な手当のことを特別児童扶養手当と呼びます。この手当を受けられるかの判定は役所の児童福祉課か児童相談所です。認定請求を行う本人または都道府県等児童福祉主管課のいずれかから診断書の作成を求められた児童が対象となります。療育手帳とは、知的障害のある方に付与される障害者手帳です。知的障害のある方が一貫した療育・援護を受けられるよう、様々な制度やサービスの利用をしやすくすることを目的にしています。児童相談所では、療育手帳の申請受付、調査、交付を担当しています。ただし、療育手帳は自治体によって名称が変わることがあるので窓口で確認してみましょう。子どもに必要な支援に合わせて、近隣の施設を紹介します。ここで紹介される施設は、就学中の子どもの学習をサポートする放課後デイサービスや、必要な日常生活の支援や技術の指導をする社会福祉施設等があります。また、どうしても保護者が育てることが困難だと判断した場合には障害児福祉施設が引き取り、18歳までは生活の援助をしていく場合もあります。虐待問題に対する児童相談所の支援出典 : 虐待の疑いのある家庭が近くにある、自分が虐待の被害者である、虐待してしまっているのではないかと悩んでいる、など虐待に関する相談に対応します。児童相談所が持っている役割をいくつか羅列していきます。虐待の疑いがある場合や、SOSを出したい場合には児童相談所に通告をしましょう。全国の児童相談所共通ダイヤルである「189」(イチハヤク)に電話をかけると近隣の児童相談所に繋がります。通話料は通告者の負担となりますが、相談は無料です。通告を受けた後は、児童相談所の専門的なスタッフが、行政や民生委員、学校などの関係機関を巻き込んで家庭の様子を調べます。虐待の有無や重軽度を調べて必要な措置を検討した後、関係機関を巻き込んでの支援を開始します。調査の結果に応じて、在宅支援と社会的養護の2種類の支援が施されます。在宅支援の場合、民生委員による定期的な訪問相談、ペアレントトレーニング、カウンセリングなどの保護者向けサポートや、学校・保育施設での子どもへのヒアリングなどを通して、虐待の再発を防ぐと同時に、家族関係を改善することを目指します。社会的な養護とは、子どもを分離する必要性が認められた場合に児童養護施設や里親に預けることです。一時保護の第一の目的は、子どもの安全を守るためです。他にも保護者も子どもと一時的に離れることで落ち着いたり、援助を受けるきっかけになったり、子どもにも安全な環境にいることでより正確な情報を聞き取ることが期待されます。このような理由から、必要がある場合は児童相談所が子どもを保護することが認められています。親子の関係修復が望める時は、再び家族が統合されることもあります。虐待は子どもの生命に関わる問題であるため、調査から行動措置において児童相談所は強い権限を持っています。子どもを育てることが難しい家庭のための養護相談出典 : 虐待と同様、様々な事柄によって子どもを育てることが難しい家庭があります。養育困難とみなされる場合には、以下のような事例が挙げられます。・父または母等保護者の家出、失踪、死亡、離婚、入院をした子ども・稼働及び服役等による養育困難な子ども・棄児、迷子、虐待を受けた子ども、親権を喪失した親の子、 後見人を持たぬ児童等環境的問題がある子どもこのように、やむなく家庭での育成が難しくなった子どもを一時保護所や児童養護施設で保護したり、または里親に預けたりします。一時保護、里親制度って?子どもが健やかに育つための制度とは出典 : 虐待をはじめ家庭内で問題が生じ、かつ子どもと保護者の分離が必要だと判断された場合には、社会的養護という措置が取られます。一時保護とは、児童相談所が必要を認めた時に子どもを一時保護所に一時保護するか、警察署、福祉事務所、児童福祉施設、里親などに保護を求めることを言います。一時保護の必要がある場合について、厚生労働省は次のように定義をしています。(1) 緊急保護ア棄児、迷子、家出した子ども等現に適当な保護者又は宿所がないために緊急にその子どもを保護する必要がある場合イ虐待、放任等の理由によりその子どもを家庭から一時引き離す必要がある場合(虐待を受けた子どもについて法第27条第1項第3号の措置(法第28条の規定によるものを除く)が採られた場合において、当該虐待を行った保護者が子どもの引渡し又は子どもとの面会若しくは通信を求め、かつこれを認めた場合には再び虐待が行われ、又は虐待を受けた子どもの保護に支障をきたすと認める場合を含む。)ウ子どもの行動が自己又は他人の生命、身体、財産に危害を及ぼし若しくはそのおそれがある場合(2) 行動観察適切かつ具体的な援助指針を定めるために、一時保護による十分な行動観察、生活指導等を行う必要がある場合(3) 短期入所指導短期間の心理療法、カウンセリング、生活指導等が有効であると判断される場合であって、地理的に遠隔又は子どもの性格、環境等の条件により、他の方法による援助が困難又は不適当であると判断される場合つまり、子どもを身の危険から守る場合と問題行動について詳しい調査が必要な場合、集中的なケアが必要な場合に一時保護が行われるということです。一時保護された子どもは、保護施設の中で勉強、遊び、スポーツなどをしたり、年齢や成長に応じた生活習慣が身につくような生活指導を受けたりしながら過ごします。他にも、様々な事情により家庭で生活することができない子どものための里親制度があります。子どもが家庭的な環境の下で成長できるように、官民連携で制度を進めています。児童相談所に助けを求めるときは?出典 : 児童相談所は全ての都道府県と政令指定都市にあります。地域によっては「児童相談所」の名称ではない場合もあります。なにか児童相談所に相談したいことがあるときは、最寄りの相談所に電話をするか訪問してみましょう。訪問するときは、事前に電話で予約をすることもできます。下の一覧表から最寄りの児童相談所を探すことができます。全国児童相談所一覧|厚生労働省また、児童相談所には虐待かもと思った時などにかけられる全国共通ダイヤル「189(いちはやく)」があります。この番号に電話をかけて音声案内に従うと、最寄りの児童相談所につながります。出典 : 児童相談所はなぜ強い権限を持っているのか出典 : 児童相談所は仕事の性質上、強い権限を持っています。その仕事内容から、措置についてあまり明らかにされないこともあります。それはなぜなのでしょうか。児童相談所の特性から考えてみましょう。・子どものプライバシーを扱う仕事児童相談所は子どもとその家族をめぐる問題を扱うため、プライバシーの扱いは最も重要な事項の一つと言えるでしょう。そのため、具体的な仕事内容をあまりオープンにしていないと同時に、虐待で一時保護をされた場合には、たとえ保護者であっても子どもの状況を教えることはできません。・子どもの命や健やかな育ちをを守る役割を担う児童相談所は子どもの命に関わる問題を扱っており、一時保護をする最終的な決定権限を与えられています。そのため、子どもの命が危ないと判断された場合には、保護者の了解が無くても子どもを連れていくことも許されています。「児童相談所一時保護所の現状と課題」|和田一郎児童相談所の措置に納得できない...そんな時はどこに頼る?出典 : 前の章の通り、児童相談所は子どもを守るための強い権限を持っています。一方で昨今は子どもに関する問題の増加に伴い、児童相談所の慢性的な人員不足や、せっかく児童相談所に情報があっても警察や学校など他の機関との連携システムが整っていないことなど、さまざまな課題が問題点として挙げられることもあります。これらの問題のために、すべての人にとって納得できる判断や対応ができているとは言い切れない面があるかもしれません。もし、児童相談所での相談ができなかったり、児童相談所の決定や支援内容に不服があったりする場合、どうすればよいのでしょうか?・対応が間に合わないとき「相談をしたいのに対応が遅い...」児童相談所に相談が立て込んでいたりすると、相談をしてもなかなか対応してもらえないことがあります。そのようなときは市区町村の子育て支援課や地域の子育て支援センターでも、同様の支援を受けられます。・障害児療育の対応ができる職員がいないとき障害児の療育など、専門性が求められる相談には、対応できる職員がいない場合もあります。そのような場合には、各市区町村の障害福祉課、地域の障害児等療育支援事業所、相談支援事業所にて、施設の紹介や療育を受けられます。・事実が無いのに疑いをもたれてしまったとき子どもの特性や保護者の特徴によっては、虐待の事実が無くても疑いがあるという理由で一時保護措置がなされる場合がないわけではありません。不服申し立てという制度があり、児童相談所による一時保護の正当性について第三者に審査をしてもらうことができます。審査にあたっては、第三者機関が一時保護を決定するにあたって使用された資料や子どもの言動の記録、保護者に関する情報などを使います。ここに挙げている支援のほかに、自治体ごとに提供される支援の種類もあるでしょう。自分が持つ悩みごとにはどのような支援が受けられるか、児童相談所のほかにどこで相談できるのかなどを確認しておくと、もしもの時にもあわてずにすむのではないでしょうか。このように、児童相談所の判断に納得できない場合にも他の相談所や不服申し立て措置をとるなどの手段が考えられるでしょう。まとめ出典 : このコラムでは、児童相談所の役割や、具体的な支援の内容、困った時の相談・利用方法について紹介しました。児童相談所という名前は一度は聞いたことがあるものの、何をしているのかは今イチわかりにくい、と感じる人もいるかもしれません。児童相談所の役割としては、子どもの権利を守り、健やかな育成のため、専門性をもって相談や支援にあたるということが第一に挙げられます。具体的な業務内容としては、子どもの健康管理や障害児福祉、虐待の対応など多岐に渡っており、子育てに関するあらゆる相談口の窓口としての役割を担っています。一人では解決が難しいことでも、専門機関の力を借りれば解決の糸口が見つかるかもしれません。困った時は、ぜひ一度、些細なことでもいいので相談してみてはいかがでしょうか。
2017年09月26日厚労省が「精神・発達障害者しごとサポーター」の養成を決定出典 : 精神障害や発達障害のある人が働きやすい職場作りを促すべく、厚生労働省は今秋から「精神・発達障害者しごとサポーター」の養成講座の開催を決定しました。企業の経営者や管理職、人事部といった人材に限らず、広く一般従業員を対象にした講座です。実際に職場の同僚となる人たちに、精神・発達障害に関する知識や必要な配慮について学んでもらうことで、より身近で具体的な支援体制を作ることを目的としています。「今年度内に2万人の受講およびサポーターの養成を目指す」(厚生労働省)とのことです。毎年、厚生労働省が発表している「障害者雇用状況の集計結果」によると、精神・発達障害者の雇用は2006年から年々増加しています。そのような中、厚生労働省は精神障害者の雇用義務化に伴ない、今年5月に民間企業に義務付けている障害者の法定雇用率の段階的な引き上げを決めました。今まで以上に精神・発達障害者の雇用機会が増え、その人数も増えることが予想されています。一方で、厚生労働省が行った2013年の障害者雇用実態調査によれば、精神障害者の平均勤務年数は約4年。身体障害者のそれが約10年であることと比べても、職場の定着率は高いとは言えません。主な理由は「職場の人間関係」にあると考えられています。例えば、同調査では、精神障害があり、転職を経験した人のうち、半数以上は転職の理由を「個人的理由」だと回答しています。さらに具体的な理由を複数回答で選択してもらうと、「職場の雰囲気や人間関係」と答えた人が33.8%と最も多い結果となりました。こうした状況を受け、「職場の同僚がその人の障害特性について理解し、共に働く上での配慮をしていくことが重要であろうと考え、人事担当者や障害者雇用担当者を中心に行っていた従来のセミナーに加えて、一般の従業員の方を主な対象に、精神障害、発達障害に関して正しく理解いただき、職場における応援者=精神・発達障害者しごとサポーターになっていただこうと考えました」(厚生労働省障害者雇用対策課)とのことです。厚生労働省は約4,300万円の予算を拠出し、今秋から随時、講座を開催していく予定です。誰が講座を受けられるのかこの講座は、企業の雇用者であれば、誰でも受講可能です。受講時間は2時間程度で、特に企業は受講や受講人数を義務付けられてはいません。有志による受講となっています。修了者には「精神・発達障害者しごとサポーター」として、パソコンにはることができるステッカー(写真)や首からかけるストラップなどの「精神・発達障害者しごとサポーターグッズ」の進呈が予定されています。Upload By 発達ナビニュース精神・発達障害者しごとサポーター養成講座では、具体的に「精神疾患(発達障害を含む)の種類」、「精神・発達障害の特性」、「共に働く上でのポイント(コミュニケーション方法)」を学びます。これらの内容について75分程度の講義で学んだ後、15分から45分程度の質疑応答を行う構成となっています。養成講座の講師は普段から、精神・発達障害のある方の就労支援をしているハローワークの職員が担当します。精神・発達障害者サポーターの役割は?出典 : ここで、改めて理解しておかねばならないのは、「精神・発達障害者しごとサポーター」は特別に何かの義務や責任を負う資格ではないということです。サポーターになったら、「○○をしなければならない」といったことは決まっていません。また、しごとサポーターは障害のある特定の同僚を一人で支援しなければならないといったものでもありません。確かに、精神・発達障害者しごとサポーターがいることで、職場で精神障害のある人や発達障害のある人が働く上で、周囲から正しい理解や配慮が受けられるようになり、より働きやすい職場に変わっていくことが期待されます。しかし、障害の有無にかかわらず、共に働くことができるような職場の実現のためには、精神・発達障害者しごとサポーターに特別な役割を求めるのではなく、講座を受けていない方も一緒に職場の雰囲気作りにかかわっていくことが大切です。精神・発達障害者サポーターに関する問い合わせ先企業に勤めている方であれば、勤務先や身近身近に精神・発達障害者で働いている方がいなくても、誰でも講座に参加できます。「ぜひ参加したい」と思われた方はお住まいの地域の都道府県労働局にお問い合わせください。講座は、厚生省があらかじめ指定した会場で行われるものだけでなく、講師が事業所を訪れて行う「出前講座」も用意されています。出前講座に関しても、問い合わせ先は地域の都道府県労働局となっています。養成講座では、精神・発達障害について学ぶだけでなく、精神・発達障害者を雇用する上での実際の困りごとについて質問したり、ハローワークの精神保健福祉士や臨床心理士などの専門家に相談するきっかけを作ったりできます。以下のサイトで、養成講座に関する各地域の問い合わせ先を確認できます。より詳しい情報や、なにかわからないことがあれば、気軽に問い合わせてみましょう。障害者雇用対策施策紹介事業主の方へ|厚生労働省しごとサポーター養成講座リーフレット
2017年09月25日強度行動障害とは?出典 : 強度行動障害とは、人を傷つけたり物を壊したりするなど、周囲の人の暮らしに影響を及ぼす行動が高い頻度で起きるため、特別な支援を必要としている状態のことです。家庭で通常の子育てをしていても、かなり努力をしてもなかなか困難な状況が持続してしまいます。厳密には医学用語ではなく、行政・福祉において使われている用語です。1989年の行動障害児者研究会による報告書において、初めて「強度行動障害」という言葉が登場しました。この報告書では、以下のように定義されています。精神的な診断として定義される群とは異なり、直接的他害(噛みつき、頭突き等)や、間接的他害(睡眠の乱れ、同一性の保持等)、自傷行為等が通常考えられない頻度と形式で出現し、その養育環境では著しく処遇の困難なものであり、行動的に定義される群。家庭にあって通常の育て方をし、かなりの養育努力があっても著しい処遇困難が持続している状態。出典:特定非営利活動法人全国地域生活支援ネットワーク/監修『行動障害のある人の「暮らし」を支える: 強度行動障害支援者養成研修[基礎研修・実践研修]テキスト』中央法規出版2015年強度行動障害がある人は日本全国に約8,000人いると言われています。この中には知的障害のある人や自閉症スペクトラムのある人も多く、障害の特性と環境のミスマッチが行動の問題を引き起こしてしまうことがあるとされています。強度行動障害が起こる年齢は人それぞれですが、中でも中学生・高校生の時にこだわりや落ち着きのなさが目立つようになり、顕在化する場合が多いです。環境の変化によっては成人している方でも激しい行動が見られることもあります。障害がある人たちの中で激しい行動を起こしてしまう人に対し、専門的な支援を受けられるようにするために強度行動障害という言葉が使われています。障害特性に合った治療はもちろん、さまざまな福祉サービスと医療を組み合わせて、一人ひとりにあった支援を見つけていくことが大切だといえるでしょう。出典:強度行動障害リーフレット|厚生労働省強度行動障害の特徴出典 : 強度行動障害は自分や人を傷つけるなど激しい行動が特徴です。具体的には以下のような行動が挙げられます。・ひどい自傷爪を切る必要がなくなるほどの爪噛み、自分で顔を引っ掻く、膝や肘を壁に打ち付ける、変形してしまうほど頭部を叩くなどの行動をとります。・強い他傷周りの人に対し、噛みつく、殴る、叩く、髪を引っ張る、頭突きをするなど、相手が怪我をしかねないような行動をとります。・激しいこだわり気になるものがあると動くことができない、強く指示を出しても拒みとおすなど、周りが止めてもその行動をやめません。・激しい物壊しガラス、家具、ドア、茶碗、椅子、眼鏡などを壊し、その結果自分にも周りにも大きな危害を及ぼします。また服を破ってしまうなどの行動も含まれます。・睡眠の大きな乱れ昼夜が逆転していたり、寝床についていられず、人や物に危害を加えたりします。・食事関係の強い障害特定のものしか食べず体に異常をきたしている、食べられないものを口に入れる、椅子に座っていられず周りと一緒に食事できないなどが挙げられます。・著しい多動目を離すとじっとしていられず走り回ったり、ベランダの上など高く危険なところに上ったりします。・著しい騒がしさ大声を出したり、一度泣き始めると何時間も続いたりします。強度行動障害の原因出典 : 強度行動障害は、コミュニケーションの苦手さや感覚の過敏性といった障害特性に環境がうまく合ってないことにより、人や場に対する嫌悪感や不信感を高めてしまうことが原因です。特に重度の知的障害や自閉症スペクトラムがある人に発生すること多いと言われていますが、必ずしも障害の重さに関係があるわけではなく、特性と環境によっては、知的障害・発達障害の度合いが軽度の場合でも強度行動障害が見られることがあります。知的障害や自閉症スペクトラムがある人は、刺激や情報が分かりにくい独特な形で入ってきたり、伝えたいことを言葉ではない独特の表現や行動を通して伝えようとしたりする傾向があります。例えば、普段から身振りなど限られた手段でコミュニケーションをとっている、使える単語の幅が限られているなどが挙げられます。「分からない」ことに対する不安や不快感があってもそれがうまく「伝えられない」ことから、環境に対する嫌悪感や不信感が高まり、強度行動障害が起きると考えられています。強度行動障害は障害がある本人の困っているサインだと捉えて、本人の特性や周囲の環境などをきちんと把握し、行動の原因を探っていくことが大切です。参考:強度行動障害リーフレット|厚生労働省強度行動障害の判定基準出典 : 先述の通り、強度行動障害は医学的な診断名ではありません。そのため医師による診断基準ではなく、行政・福祉的な支援を行う上での判定基準があり、主に支援者の間で使われています。強度行動障害の種類や程度、頻度を評価することで、一人ひとりに合った支援につなげることが目的です。実際に支援対象者の基準として、以下に紹介するような判定基準項目が使われています。例えば行動援護は障害程度区分が3以上、行動関連項目の点数が8点以上の場合、支援を受ける対象となります。この章では強度行動障害の判定基準のうち、厚生労働省が定めている代表的なものをご紹介します。いずれも項目ごとに、得点を算出する仕組みになっています。1. 強度行動障害判定規準項目強度行動障害を「ひどく自分の体を叩いたり傷つけたりする等の行為」「激しいこだわり」といった項目において、行動の頻度と強度から評価するものです。11項目において、得点(1点・3点・5点)を付け、合計得点 が10点以上を強度行動障害と定義しています。現在は制度改正を受けながら、福祉型障害児入所施設において、強度行動障害児特別支援加算にかかる判定基準として使われています。参考:強度行動障害の評価基準等に関する調査について|厚生労働省2. 行動関連項目2014年度に開始された障害支援区分の認定調査項目のうちの「行動関連項目」は、行動援護、重度訪問介護、重度障害者等包括支援などの支給決定の基準点を算出するものです。突発的な行動、コミュニケーションなどの12項目において0~2点で評価し、10点以上が対象とされます。参考:行動援護、重度訪問介護、重度障害者包括支援などの支給決定などの基準点を算出するもの|熊本県障がい保健福祉ホームページ強度行動障害の支援について相談したい時は?出典 : 強度行動障害の支援について知りたい時は相談支援事業所などで相談できます。強度行動障害のある人の場合、自分自身で相談に行くことが困難な状態にあるため、通常、本人の家族・保護者が相談に行きます。相談支援事業所では、まず日常生活における本人や家族の困りごとについて、相談支援専門員によるヒアリングが行われます。そのうえで、困りごとを解決するためにどんな支援があると良いのかを一緒に考えます。場合によっては相談支援専門員とサービス事業所に見学に行くこともあるようです。また実際に支援を受けることになった場合、サービス等利用計画が必要になります。これはチームで1人を支援をする際、周りの人がそれぞれどのような役割を果たして支援をしていくのか、本人やご家族がどんな生活を記入したものです。この計画書を作るのも相談支援事業所なので、手続きや支援を受ける流れについて不安がある場合も、ここで聞くとよいでしょう。参考:相談支援事業所(計画相談支援)とは|就労移行支援事業所LITALICOワークス参考:障害のある人に対する相談支援について|厚生労働省強度行動障害に関係する支援サービス出典 : 障害者総合支援法の数ある支援のうち、強度行動障害がある方がよく利用する支援サービスについてご紹介します。・行動援護行動する際に生じ得る危険を回避するために必要な援護です。移動中の介護、衣服の着脱介護、排泄や食事などの介護を行います。・重度障害者等包括支援重度の障害者等に対し、居宅介護、同行援護、重度訪問介護、行動援護、生活介護、短期入所、共同生活介護、自立訓練、就労移行支援及び就労継続支援を包括的に提供します。・重度訪問介護居宅における生活全般を援助します。また移動時の支援や日常生活に関する相談および助言も行います。・施設入所支援主として夜間において、入浴、排泄及び食事等の介護、生活等に関する相談及び助言、その他の必要な日常生活上の支援を行います。・短期入所短期間の入所を必要とする障害者等につき、当該施設に短期間の入所をさせ、入浴、排泄及び食事その他の必要な保護を行います。・共同生活援助(グループホーム)地域で共同生活を営むのに支障のない障害者につき、主として夜間において、共同生活を営むべき住居において相談その他の日常生活上の援助を行います。どの支援を利用するか、どのように支援を組み合わせるかは人それぞれです。まずは相談支援専門員に相談しましょう。障害者総合支援法におけるその他の支援について知りたい方は、以下のページを参考にしてみてください。参考:障害福祉サービスの内容|厚生労働省強度行動障害のある人が支援を受けるまでの流れ出典 : この章では、相談支援事業所での相談後から支援を受ける流れについてご説明します。家族・保護者などが相談支援相談所での相談を行った後、強度行動障害のある本人に対して支援を行うことになった場合は、まずサービス等利用計画案を相談支援専門員と一緒に作成します。それを市町村に提出し、障害支援区分が認定されたうえで、サービスの種類・量が決定され、受給者証が発行されます。その後、サービス等利用計画が作成され、関係する事業所などが集まって会議が行われます。これは支援に関わる人どうしで役割を確認したり、情報を共有するためです。さらに市町村にもサービス等利用計画が提出されたうえで、サービスの利用が可能となります。いざサービスを開始する際には、サービスの利用が決定した事業所がサービス等利用計画をもとに個別支援計画を作成します。これは支援の内容、期間、目標など、支援に関する具体的なことが書かれている計画書です。さらに個別支援計画に加えて、支援手順書が作成される場合があります。これは本人に関わる支援者が共通の支援方法をとるための手順書です。強度行動障害がある人は支援者の接し方が少しでも違うと混乱するといったように、周りの人に影響を受けやすいため、支援方法を統一する必要があるからです。このように本人に関わるさまざまな人たちの間で情報共有がされ、一人ひとりに合った支援ができるような仕組みづくりがされています。強度行動障害の治療法出典 : 福祉サービスによって強度行動障害がある人の生活全般を支援し、そのうえで検査、薬物療法、入院治療などの医療を組み合わせることがあります。まずは本人の生活環境や過ごし方、周りの人たちの関わり方を工夫することが大切であり、そのうえで環境調整だけでは改善が見られない場合は、医療機関による治療が検討されます。以下が医療機関でできる治療法です。強度行動障害の治療は、一般的に精神科で3ヶ月以内の短期入院が行われるケースが多いです。入院治療において具体的にできることをご紹介します。・検査による身体状態の評価強度行動障害がある人は、じっとしていられないことが多く、外来では検査が受けづらい場合があります。入院をすれば普段できない検査ができ、さらに医師の診察を受けて、身体の状況を把握できます。・行動や情緒に対する状態評価施設や在宅での普段の様子を聞いても、かかりつけの病院が本人の様子を十分把握できない場合があります。強度行動障害は周りの環境が大きく関わる障害であり、診察室にいるときは日常生活と様子が異なることがあるからです。入院治療を行うことで、24時間の中で本人がどの程度激しい行動を起こすのか、情緒はどう変化するのか、病院側が把握できます。・環境変化によるこだわり行動などのリセット強度行動障害の特徴の一つであるこだわり行動を治すために、入院治療を行う場合があります。効果は人それぞれですが、外部や家庭の刺激をいったん減らすことで特別な治療を行わなくても改善する人もいます。入院期間が終わったらまた在宅や施設での生活に戻るため、他の支援機関などと連携を取りながら利用しましょう。・家族や施設スタッフのレスパイトレスパイトとは家族や支援者が一時的に休養をとるため、ケアを代替してもらうことを言います。また身の安全に関わる状態など周囲の人たちの負担が大きい時にも、緊急的に入院治療を行う場合もあります。退院の時期や退院後の在宅支援・施設での生活の調整を入院時から見据えて利用することが大切です。・行動療法環境による刺激のコントロールは入院環境の方が行いやすく、そのうえで退院後の生活を想定して、行動障害が出にくい活動やTEACCHなどのプログラムを導入します。強度行動障害の特徴である興奮やパニックなどの激しさを抑えたり、やわらげたりする目的で、薬物療法が行われることがあります。しかし薬物療法は本来の障害特性に有効なものではなく、あくまで強度行動障害の特徴である行動を少し抑えるためのものです。そのため、他の治療法と組み合わせて行います。ライフステージごとの強度行動障害に関係する支援出典 : 記事の前半でもご説明したように強度行動障害は中学生・高校生に多いですが、環境の変化によっては成人している方でも激しい行動が見られることもあります。強度行動障害が現れやすい年齢になる前にできる限り本人にとって適切な環境を整えること、また発生しやすい時期を見越して支援を組み立てていくことが大切です。この章ではライフステージごとの支援についてご紹介します。・幼児期児童発達支援における支援、幼稚園・保育所の支援、地域の療育事業を利用する方が多いです。障害受容への支援やそれに伴う情報提供・相談支援・親グループのカウンセリング等のペアレントトレーニングが行われます。またこの時期にはきょうだいが生まれるなど、本人よりも他の家族の要因により、支援が必要になる場合もあります。一時的に支援の補助をしてもらうために、「居宅介護事業」「移動支援事業」「短期入所事業」などを使うとよいでしょう。・学齢期強度行動障害のある人は特別支援学校に通うことが多いです。学校外の支援としては、「放課後デイサービス」「行動援護事業」「短期入所事業」が挙げられます。行動援護事業の判定が出ない場合には「居宅介護事業」または「移動支援事業」を使います。「行動援護事業」と「移動支援事業」の違いについては、以下の記事を参考にしてみてください。・成人期成人期の支援は、日中活動では訓練等給付として「就労継続支援事業B型」、介護給付の「生活介護事業」が、生活支援として「行動援護事業」「短期入所事業」が中心となります。地域生活を希望すれば施設入所支援でなく「共同生活介護(グループホーム)」を利用することもできます。まとめ出典 : 強度行動障害は知的障害や自閉症スペクトラムのある人たちに発生することが多く、障害の特性に対し環境が合わない時に起こります。「分からない」ことに対する不安や不快感があっても、「伝えられない」ため、人や場に対する嫌悪感や不信感を高めてしまうことが原因です。強度行動障害は、本人が困っているサインです。そのため、周りの人たちが特性や周囲の環境などをきちんと把握し、行動の原因を探っていくことが大切です。環境が変わるだけで、改善されるケースもあるからです。また、家庭での対処が難しい場合もありますので、家族で抱えこまず、それぞれに合った支援を見つけることも必要です。施設や病院など関わっているさまざまな人たちとこまめに連携をとり、本人と一緒になって強度行動障害と向き合っていきましょう。参考:強度行動障害リーフレット|厚生労働省参考:特定非営利活動法人全国地域生活支援ネットワーク/監修『行動障害のある人の「暮らし」を支える: 強度行動障害支援者養成研修[基礎研修・実践研修]テキスト』中央法規出版2015年
2017年09月25日公認心理士法が施行されました!出典 : 年9月15日 公認心理師法が施行され、心理職初の国家資格「公認心理師」が誕生しました!これまで日本国内の心理職は「臨床心理士」という民間資格が信用度の高い心理職の資格とされてきました。新たに生まれた公認心理師は、広い領域で働くことのできる汎用性の高い資格となることが予想されます。公認心理師 |厚生労働省大学で公認心理師となるために必要な科目や、国家試験の方法について記された「公認心理師法施行規則」も公開されています。公認心理師法施行規則公認心理師についての詳細は、下記のコラムを参考にしてください。現在、自ら命を絶ってしまう人が年間約2万人もいる社会において、医療・保健の分野だけでなく職場や学校教育の現場でも、カウンセリングをはじめとする心のケアの重要性が高まっています。そのような中で、国家資格である「公認心理師」の誕生は多くの人が待望していた資格といえるでしょう。今後の動向に、注目してゆきたいと思います。
2017年09月15日ヘルプマークとは?Upload By 発達障害のキホンヘルプマークは、援助や配慮を必要としていることが外見からは分からない方々が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることで、援助を得やすくなるよう作成されたマークです。義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、妊娠初期の方のほか、発達障害、精神障害や知的障害がある方などは、外見からは障害の有無がわからないことが多いです。疲れやすいために優先席に座っていたら白い目で見られたり、元気そうに見えるのに突然倒れてしまって驚かれたりするようなことがありえます。このような方々は、援助や配慮を必要としていることが外見からは分からないため、周囲の人の理解が得られずに苦しい思いをしていたり、体調の急変時や災害時に、適切な対応を受けられるかどうかを不安に思っていたりします。そこで、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることで、援助を得やすくなるような意思表示のかたちとして、ヘルプマークが導入されたのです。「ヘルプマーク」は、赤地に白色で十字マークのハートが描かれているデザインそれ自体を意味しますが、地方自治体が配布する手のひらサイズの長方形のストラップも、同じ名称で呼ばれています。ストラップの裏面には、任意で必要な支援を記載したシールを貼ることができます。この記事では、ヘルプマークを利用することの意義や、誰がどのようにしてヘルプマークを利用することができるのかを具体的に解説します。東京都では、平成24年から、かばん等につけられるストラップタイプの「ヘルプマーク」を作成し、配布しています。同時に、都営地下鉄の優先席にステッカーを掲示し、「ヘルプマーク」を身につけた方が優先席に座りやすいようにする取組みを実施しています。このような取組みは、他の都道府県にも拡大し、平成29年8月現在、京都府・和歌山県・徳島県・青森県・奈良県・神奈川県・滋賀県・大阪府・岐阜県・栃木県でもヘルプマークの配布が開始されています。Upload By 発達障害のキホン平成29年7月20日、経済産業省において、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、JIS Z8210(案内用図記号)が改正され、「ヘルプマーク」が追加されました。案内用図記号とは、不特定多数の人が出入りする施設で、言葉によらず、目で見るだけで案内を可能とする図記号です。今回の改正により、「ヘルプマーク」が配慮や支援を必要とする方々を示す記号として、全国共通で標準化されたマークに認定されるため、多様な主体が多様な場所で活用・啓発できるようになり、認知度の向上や、今後の全国的な普及も期待されます。出典:ヘルプマーク|東京都福祉保健局参考:日本工業規格(JIS)を制定・改正しました(平成29年7月分)~案内用図記号などのJISを制定・改正~|経済産業省ヘルプマークのJIS(案内用図記号)への追加について|厚生労働省ヘルプマークの対象者は?どんな人が持っているの?出典 : ヘルプマークの対象者は、義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、妊娠初期の方など、援助や配慮を必要としていることが外見からは分からない方々です。身体機能等に特に基準を設けているわけではなく、発達障害、知的障害や精神障害がある方も、対象者として想定されています。このような方々は、障害等が外見上わからないからこそ、トラブルにあうおそれがあったり、不安を抱えていたりするため、ヘルプマークが有効なのです。また、ヘルプマークの入手にあたり、障害者手帳等、書類の提出は一切必要ありません。ヘルプマークを必要な方々が円滑にマークを利用できるようにするため、配布に際しても配慮がされているのです。出典:助け合いのしるしヘルプマーク(企業・事業者向け)よくあるご質問|東京都福祉保健局ヘルプマークの使い方Upload By 発達障害のキホンストラップタイプのヘルプマークには、裏面に緊急連絡先や必要な支援内容等を自由に記入して、かばん等の人目につきやすい所につけるのが一般的な使い方です。外見からわからない障害等がある人は、ヘルプマークをつけることで、何らかの事情があって配慮を要することを伝えることができます。以下では、ヘルプマークが役に立つケースをいくつかご紹介します。・電車内で、優先席を利用する事情がある時外見からわからない障害や病気があって、疲れやすかったり、立っていられない方がいます。このような方々が、電車で優先席に座っていると、「若いのにけしからん!」といって注意されたり、けげんな目で見られるなどの誤解から、つらい思いをすることがあります。このような場合には、ヘルプマークをつけていることで、何らかの事情があると視覚的に伝えることができます。・障害のある子どもが迷子になった時知的障害・発達障害がある子ども等が迷子になった時、本人の力だけでは家族のもとへ帰るのが困難な場合があります。このような場合に、駅員さん等の周囲の人が、ヘルプマークに気づいて、声かけしながら見守ってくれたり、裏面に記載された緊急連絡先に連絡をしてくれたりという配慮を期待できるかもしれません。・緊急時ヘルプマークに、緊急時の連絡先として、かかりつけの病院の電話番号や必要な支援内容を書いておくことで、緊急時にも適切な処置を受けられる可能性もあります。発作で倒れて意識がない時等には、本人が自力で意思疎通をすることができない一方で、対応を誤れば、生命の危険があります。そんな時にヘルプマークを目立つところにつけておけば、通行人や救急隊員が見つけて対処に役立ててくれるかもしれません。・災害時危険の察知が苦手な人、パニックで動けなくなる人、通常の手段では的確な情報を得ることが困難な人にとって、災害時に自力で状況を把握し、安全に避難することは困難です。そこで、ヘルプマークをつけておくことで、災害時に周囲の人の支援を受けて安全を確保しながら避難することが期待でき、災害時の備えとなります。このように、ヘルプマークは、わかりやすく目立つデザインであり、裏面には、障害・病気の特性・症状に合わせてその人にとって必要不可欠な内容を厳選して書き込むことができるため、保護者にとっては「何か起きた時に必要な対処をしてもらえるはずだ」という安心にもつながります。ヘルプマークは、電車で席を譲ってもらうためだけのマークではなく、様々な場面で役に立つのです。Upload By 発達障害のキホン出典: ヘルプマークリーフレット|東京都福祉保健局ヘルプマーク(ストラップ)の入手方法出典 : ヘルプマークを導入している都府県では、各都府県の配布場所でストラップタイプの「ヘルプマーク」を無料で配布しています。ヘルプマークの受取りを希望するためには、お住まいの都府県の配布場所を直接訪れて申し出る必要があります。原則として、郵便等による送付は行われていません。この時、書類の記入や、障害手帳の提示などの特別の申請は必要なく、マタニティマークと同様に、ご家族等の代理人による受取りも可能です。各都府県のヘルプマークの配布場所をご紹介します。配布している都府県によって対応が異なる可能性があるため、ヘルプマークが必要な方は、まずは気軽にお問い合わせをしてみましょう。出典のリンクには各都府県のお問い合わせ先が含まれていますので、ご活用ください(都府県の記述の順番は、順不同です)。●東京都都営地下鉄各駅(押上駅、目黒駅、白金台駅、白金高輪駅、新宿線新宿駅を除く)駅務室、都営バス各営業所、荒川電車営業所、日暮里・舎人ライナー(日暮里駅、西日暮里駅)駅務室、ゆりかもめ(新橋駅、豊洲駅)駅務室、多摩モノレール(多摩センター駅、中央大学・明星大学駅、高幡不動駅、立川南駅、立川北駅、玉川上水駅、上北台駅)駅務室(一部時間帯を除く)、東京都心身障害者福祉センター(多摩支所を含む)、都立病院、公益財団法人東京都保健医療公社の病院等出典:ヘルプマーク|東京都福祉保健局●京都府京都府庁、各広域振興局、家庭支援総合センター、精神保健福祉総合センター、難病相談支援センター、京都ジョブパーク、北京都ジョブパーク等出典:ご存じですか?ヘルプマーク|京都府出典:平成28年4月1日から、「ヘルプマーク」の配布を開始します|京都府●和歌山県和歌山県庁障害福祉課、各振興局健康福祉部保健福祉課、和歌山市障害者支援課及び保健対策課出典:ヘルプマークをご存知ですか|和歌山県出典:わかやま県政ニュース「ヘルプマークの交付について」|和歌山県●徳島県県内24市町村窓口、障がい者相談支援センター(障がい者交流プラザ)、発達障がい者総合支援センターハナミズキ、発達障がい者総合支援センター、県内保健所(徳島・吉野川・阿南・美波・美馬・三好)、精神保健福祉センター、徳島県庁障害福祉課・健康増進課出典:☆「ヘルプマーク」を市町村窓口でも配付します☆|徳島県●青森県お住まいの市町村の障害福祉担当窓口出典:ヘルプマークの普及に取り組んでいます|青森県●奈良県お住まいの市町村の障害福祉担当課出典:ヘルプマークの普及に取り組みます|奈良県●神奈川県各市町村障害福祉担当窓口等出典:ヘルプマークを知っていますか|神奈川県出典:ヘルプマークの配布を開始します|神奈川県●滋賀県滋賀県庁障害福祉課、大津市保健所、草津保健所、甲賀保健所、東近江保健所、彦根保健所、長浜保健所、高島保健所、各市町の障害福祉担当部署出典:ヘルプマークを知っていますか?|滋賀県●大阪府大阪府福祉部障がい福祉室障がい福祉企画課、大阪府内市区町村(詳しくはそれぞれの市町村にお問合せください。)出典:ヘルプマークについて|大阪府●岐阜県各市町村障害福祉担当課、県事務所福祉課(西濃、揖斐、中濃、可茂、東濃、恵那、飛騨)、岐阜県庁障害福祉課出典:ヘルプマークを見かけたら「思いやりのある行動」をお願いします|岐阜県●栃木県栃木県庁総合案内、各健康福祉センター、とちぎリハビリテーションセンター、精神保健福祉センター、とちぎ難病相談支援センター、各県民相談室、各市町、とちぎ福祉プラザ出典:ヘルプマークを知っていますか|栃木県出典:ヘルプマークの導入について|栃木県出典 : ・ヘルプマークのデザインを用いて、自分でカード等のグッズを作ることができます。お住まいの地方自治体でヘルプマークが配布されていない、配布場所が遠くて取りに行けない、災害時で緊急を要する時など、ヘルプマークのストラップを入手できない場合もあると思います。しかし、配慮を必要としていることを周囲に知らせるためにヘルプマークを利用したい方もいることでしょう。このような場合、ガイドラインに従って、ヘルプマークのデザインを使用したグッズを作成することが可能になりました。ヘルプマークがJIS登録され、全国統一の意味を持つマークとなったからです。具体的には、ヘルプマークが入った、個人が携帯するためのカードやステッカー等を作製することができます。ただし、行政が作成する場合には申請が必要となります。また、会社や事業者が使用する場合には、東京都にご相談ください。・使用上の注意ヘルプマークを活用する時は、色を遵守してください。拡大、縮小は可能ですが、縮尺を厳守してください。 カードケースやネームホルダー等に入れる場合は、安全なものを使用するようにしましょう。参考:「ヘルプマーク作成・活用ガイドライン」|東京都福祉保健局ヘルプマークと合わせて使える!ヘルプカードとはUpload By 発達障害のキホンヘルプカードとは、ヘルプマークの入った緊急連絡先や必要な支援内容などが記載されたカードで、障害のある方などが災害時や日常生活の中で困った時に、周囲に自己の障害への理解や支援を求めるためのものです。現在、区市町村において、ヘルプカードの他、SOSカードや防災手帳など、地域の実情に応じたさまざまなカードや手帳などが作成されています。参考:ヘルプカード|東京都福祉保健局かばん等の人目につくところにつけることが想定されているヘルプマークは、外見上わかりやすく目立つことが特徴です。他方、緊急時や災害時には支援が必要となるためあらかじめ何らかの対応をしておきたいけれど、日常生活の上では体は健康なので席を譲ってもらう等の支援は必要なく、マークをつけ続けることに抵抗を感じるという方もいます。このような場合に、ヘルプマークの代わりとして所持することが有効なものが、ヘルプカードです。また、ヘルプマークに緊急連絡先を記載することは、個人情報を人目にさらすこととなってしまい、抵抗を感じる方もいるでしょう。その場合、ヘルプマークには「手帳にヘルプカードが入っており、緊急連絡先と必要な支援内容が書いてあります」等の記載にとどめ、ヘルプカードに詳細を記し、2つを併用するという使い方もあります。なお、ヘルプマークが配布されていない都道府県であっても、区市町村でヘルプカードの作成・配布が行われている場合があり、ストラップが入手できなくても、ヘルプカードは入手できる場合があります。ご自分の地域やニーズに合わせて、ヘルプマークとヘルプカードの使用をご検討されてはいかがでしょうか。参考:ヘルプカード|栃木県まとめUpload By 発達障害のキホン優先席で席を譲ってもらえるイメージが強いヘルプマークですが、実際はそれだけでなく、その人の障害等の特性に合わせて様々な状況で効果的な使い方ができるものです。ヘルプマークをつけた方の安心のためや、ヘルプマークを実効的なものにするためには、街でヘルプマークをつけた方を見かけた際に、電車・バスの中で席を譲る以外にも、困っている場合には声をかける、見守りをするなどの配慮ある行動ができるとよいですね。また、東京都が平成24年にヘルプマークを導入してから約5年が経ちますが、マタニティマークに比べると、いまだ認知度が高くないかもしれません。もっとも、平成28年以降、全国へ取組みが拡大し、平成29年7月にはJIS登録されため、今後、多くの地域で認知度の向上が期待されています。今後、ヘルプマークをつけた人が増えることで、周囲の人の目につくようになれば、認知度が向上することが期待されます。ヘルプマークをつけているひとを見かけたら、配慮するということを心掛けるだけでも、身の回りの環境を変えていくことができるでしょう。社会みんなの協力のもとヘルプマークへの理解が進めば、援助や配慮が必要な人がいることへの気づきや思いやりのある行動を促進し、援助が必要な方が日常的に様々な援助が得られる社会となっていくのではないでしょうか。
2017年09月14日PTSDとは出典 : Traumatic Stress Disorder:心的外傷後ストレス障害)は、ショック体験や強いストレスをきっかけに、こころにひどく傷を負うことで発症します。発症すると、そのできごとに関わる人・場所を過度に避けたり、常に気を張ったり、考え方が否定的になったりと、日常生活を送る上で支障が出てしまいます。時間が経つにつれて症状が軽くなることもありますが、数ヶ月、症状が長引くようであれば、専門家に相談することも必要になります。また、PTSD患者は、他の精神疾患を合併することが多いとされています。PTSD患者が、精神疾患を合併する割合は80%近くになります。合併することの多い精神疾患としては、うつ病、不安障害、アルコール中毒や薬物中毒といった物質使用障害です。出典:日本精神神経学会/監修『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)PTSDは、誰しもがかかりうる疾患です。アメリカでの調査によれば、約15人に1人は一生のうちにPTSDを発症します。また、PTSDを発症しないにしろ、約半数の人は、PTSDにつながる可能性のあるショック体験や強いストレスを経験しています。出典:友田 明美、杉山 登志郎、谷池 雅子/編集『子どものPTSD-診断と治療-』(診断と治療社、2014年)PTSDの原因出典 : はショック体験や強いストレスがこころを傷つけ、トラウマになることで引き起こされる疾患です。人それぞれトラウマになるできごとはバラバラです。しかし、アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)によって、PTSDにつながるショック体験や強いストレスが定義されています。PTSDにつながる経験は、以下の条件を満たしています。A.実際にまたは危うく死ぬ、重傷を負う、性的暴力を受ける出来事への、以下のいずれか1つ(またはそれ以上)の形による曝露:(1)心的外傷的出来事を直接体験する。(2)他人に起こった出来事を直に目撃する。(3)近親者または親しい友人に起こった心的外傷的出来事を耳にする。家族または友人が実際に死んだ出来事または危うく死にそうになった出来事の場合、それは偶発的なものでなくてはならない。(4)心的外傷的出来事の強い不快感をいだく細部に、繰り返しまたは極端に曝露される体験をする。(例:遺体を収集する緊急対応要員、児童虐待の詳細に繰り返し曝露される警官)注:基準A4は、仕事に関連するものでない限り、電子媒体、テレビ、映像、または写真による曝露には適用されない。出典:アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)例えば、上の条件を満たすような経験には、次のようなものがあります。・自然災害・殴られる、蹴られるなどの暴行・性的な虐待・手術中に意識を取り戻してしまうなどの医療事故・いじめられた経験や見て見ぬふりをした経験・ネグレクトなどの親からの虐待これらの経験は、本人に失態があり、振りかかるようなものではありません。PTSDの原因になる経験は、日常生活を送る上で頻繁におこるものではなく、非日常的なできごとであることが多いです。参考:アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)出典:明鏡国語辞典 第二版 (大修館書店)PTSDの症状出典 : は、過去に悲劇的なできごとがあれば必ず発症するものではありません。過去にショック体験や強いストレスがあったことと、以下に挙げる特徴的な4つの症状が1ヶ月以上持続することを共に満たす場合にのみ、PTSDだと診断されます。・トラウマが突然、思い出される・トラウマに似た状況を避けようとする・否定的になる・いつも緊張状態にある特徴的な4つの症状について、一つずつ詳しく見ていきます。つらい記憶が、無意識のうちに突然思い出されることがあります。この記憶が思い出されることは1回だけでなく、繰り返し何度も起こることが特徴的です。記憶が急に思い出されて、さまざまな反応を引き起こすことをフラッシュバックと言い、場合によっては、短い時間のあいだ意識を失うことさえあります。子どもの場合、つらい記憶に似た状況に置かれたときに、記憶が急に思い出されるケースがあります。例えば、東日本大震災がトラウマになった子どもは、比較的小さな地震が起きたときに、東日本大震災での記憶が呼び起こされます。PTSDの人は、トラウマとなったできごとに関係する刺激を、ほとんど常に避けようとします。多くの人は、トラウマを思い出さないように、つらい記憶について考えたり、会話したりすることや、トラウマに関係する場所、人を意図的に避ける努力をします。PTSDになると、否定的な感情を抱いたり、認知がゆがんだりすることがあります。例えば、「私がすべて悪い」、「誰も信用できない」と考えてしまうこともあります。また本来、本人には一切の責任がないようなことであっても、原因が自分にあると思いこんでしまったりすることも少なくありません。PTSDの人は、いつも気を張り詰めていることがあります。日常の中で、ささいなことに苛立ちを覚えたり、電話がなると飛び上がるなど、予期しない刺激に過剰に反応してしまいます。このような症状が発症したとしても、短期間でおさまればPTSDの可能性は低いと考えられます。しかし、1ヶ月以上にわたり症状が見られる場合には、病院で相談してみるといいかもしれません。参考:アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)参考:PTSD|みんなのメンタルヘルス厚生労働省ADHDとPTSDの類似性出典 : (注意欠陥・多動性障害)とPTSDの症状には、実は似ている点が多くあると言われています。そのため、ADHDだと診断されている子どもの中には、実はADHDではなくPTSDである子がいるかもしれません。ADHDの子どもは、不注意、多動性、衝動性の特性があります。ADHDのあるの子どもに見られる行動として、・大人しく座っていられない・すぐにかんしゃくを起こす・診察中に突然、病室から飛び出すといったことがあります。ですが、PTSDの症状としても、これらと似たような症状が見られることがあります。そのため、子どもの行動から、その原因がADHDの特性によるものなのかPTSDの症状として出ているものなのかを区別することは、専門家であっても難しい場合があります。ADHDとPTSDを正しく見分けるためには、子どもの過去にどのようなことがあったのかや生育歴・発達歴の情報が大切になってきます。子どもと一番長い時間を過ごしてきたのは、医師でも学校の先生でもなく家族です。少しでも気になるできごとがあったり、ある日を境に急にADHDと思われるような症状・傾向が見られるようになったと感じたときは、医師に伝えるといいでしょう。参考:友田 明美、杉山 登志郎、谷池 雅子/編集『子どものPTSD-診断と治療-』(診断と治療社、2014年)自閉症スペクトラムとトラウマ出典 : 自閉症スペクトラム(ASD)の子どもは、PTSDだと診断されなくとも、こころの傷によって苦しんでいることがあります。過去のできごとを突然思い出す、「タイムスリップ現象」と呼ばれる症状が自閉症スペクトラムの子どもに多くみられます。タイムスリップ現象とは、いじめや暴力を受けた時の記憶を急に思い出して、まるで今その経験をしているかのように振る舞う現象です。自閉症スペクトラムの子どもが、タイムスリップ現象に関して抱えている問題には、・トラウマになるような経験をしやすい・自分の身体に起こっていることを説明することが難しいといったことが要因として挙げられます。自閉症スペクトラムの子どもは、定型発達の子どもに比べるとストレスを感じやすい環境で生活しています。感覚過敏のある子どもにとっては、普段の教室にいるだけでもストレスがたまっていくことが珍しくありません。また、興味関心の偏りなどといった特性から、友だちとコミュニケーションをうまくとることができず、結果としていじめにつながってしまうこともあります。自閉症スペクトラムの子どもにとって、自分の身体で起きていることを正確に周囲に伝えることは困難を伴うことが多いです。子どもからのSOSがなく、親や学校の先生であっても、子どもがタイムスリップ現象で困っていることに気づけないことがあります。過去にいじめられたり、人間関係でうまくいかなかったりしたことを克服したように見えても、子どもが未だにその経験によって苦しんでいることもあります。自閉症スペクトラムの子どもが次のような行動をとったときには、トラウマが関連している可能性があるので、子どもに最近なにかあったか聞いてみるといいでしょう。・新たに、攻撃的・破壊的な行動をするようになったとき・夜、寝られなくなるなどの身体に変化が起きたとき・社会性、コミュニケーションにおいて、症状が悪化したとき・常同行動が増えたとき常同行動とは、手をひらひらしたり、体を揺らしたり、奇声を上げるなど、一見無目的に同じ行動を繰り返すことです。自閉症スペクトラムの子どもは、トラウマになるような経験をすることが多く、場合によってはタイムスリップ現象につながることがあるかもしれません。しかし、ふだんからソーシャルスキルトレーニングなどを通して子どもが自分の考えや感覚を表現するスキルを向上するための支援を行ったり、ペアレントトレーニングなどを通して保護者が子どもの行動の見極め方や関わり方を学んだり、子どもが親や先生に相談しやすい環境を整えたりすることで、タイムスリップ現象やPTSDを未然に防いだり、発生した際にも早期発見・早期支援に繋げやすくなります。参考:友田 明美、杉山 登志郎、谷池 雅子/編集『子どものPTSD-診断と治療-』(診断と治療社、2014年)PTSDの治療大人編出典 : 治療において、大切になるのは本人のペースに合わせて回復していくということです。周囲が無理に今すぐ治そうとしても、思い通りにはなかなかいきません。そうではなく、本人が少しでも安心して、安全に生活できるような環境を整備することを意識するとよいかもしれません。PTSDの治療法について、紹介していきます。大人と子どもでは、PTSDになるできごとが異なったり、大人のほうが精神的に発達していたりと、同じPTSDでも異なる点があります。この章では、大人に対するPTSDの治療法について紹介します。PTSDの治療には、その症状や原因をよく理解することが重要です。PTSDは、トラウマ体験をした人であれば誰でも起こることがあります。しかしPTSDになる人の多くは、PTSDについて正しい知識を持っていません。そのため、PTSDになったことに対して罪悪感を感じてしまうことがあります。治療の第一段階としては、PTSDについて正しく理解することで、罪悪感を軽減したり、自分の感情をコントロールする術を身につけたりすることが多いです。PTSDの研究の中で、薬による治療が効果的であることがわかっています。PTSDの薬物療法は、それぞれの症状が見られたときに対症療法的に行われます。例えば、不眠や抑うつ状態などが見られたら、それを解消できるような薬が処方されます。PTSDはうつ病や強迫症などさまざまな精神障害と併せて発症することがあります。そのようなときには、合併している疾患への治療も踏まえて、薬を使用していくことになります。精神疾患の薬は使い方を誤ると、重篤な副作用がでることもあります。そのため、医師の指示のもと、綿密に相談しながら、薬と正しい付き合いをしていくようにしましょう。集団療法は、PTSDの主な治療法の一つであり、PTSD患者の持つ孤独感を軽減させたり、周囲の人を信頼したりする効果があります。集団療法には、トラウマについて各々が向き合う必要のあるものから、トラウマについて触れないようにするものからさまざまな種類があります。参考:エナド・B・フォア、テレンス・M・キーン、マシュー・J・フリードマン、ジュディス・A・コーエン/編集飛鳥井 望/監訳『PTSD治療ガイドライン 第2版』(金剛出版、2013年)参考:PTSD の薬物療法ガイドライン:プライマリケア医のためにPTSDの治療子ども編出典 : の治療の大枠は、大人と子どもで変わりません。しかし、子どもだと自分の感じていることを言葉で表現することが難しいため、トラウマやどのような症状があるのかを適切に知るために工夫が必要になることがあります。例えば、子どもたちの遊んでいる様子や描いた絵から心情を推測します。治療を開始するときには、大人と同様にPTSDがどのような病気であるのかを理解できるようにします。その後、薬を用いたり、認知行動療法をしたりして治療していきます。ここでは、子どものPTSD治療において有効性が実証されているトラウマフォーカスト認知行動療法について紹介します。TF-CBTの目的は、トラウマに関連した症状や問題のある子どもと保護者が社会生活をするにあたり、トラウマを適切に処理することを支援することです。個人療法として行われることが多く、週に1回、60~90分、8~16週かけて行います。TF-CBTには3つの段階があります。1.トラウマに向き合う準備をするTF-CBTでは、トラウマ克服だけでなく、教育的な面も多く含まれています。はじめの段階では、ストレスマネジメントや感情を表に出すこと、ものごとの捉え方などの学習を行います。これらの教育的要素が十分身についたら、次の段階へと移行します。2.トラウマ記憶に向き合う少しずつトラウマと向き合えるようにしていきます。そのために、子どもが主体的にトラウマの体験を言葉で表したりできるようなプログラムになっています。また、いきなりトラウマに向き合うことができなくても、不安の少ないものから徐々に慣れさせていき、最終的にトラウマに向き合えるような工夫がされています。3.定着と統合親子で学んだことを復習したり、子どもがトラウマに対して感じたことを親と共有するような時間になります。この段階では、プログラムの成果の定着を図るとともに、親子の絆が一層強くなることも期待されています。TF-CBTは、子どものPTSDに対して有効だとされていますが、まだ新しい取り組みであり日本でそれほど普及しているわけではありません。PTSDは患者さん一人ひとりで症状に幅があります。そのため、医師と相談しながら、一人ひとりにあった治療をしていくことになります。普段からトレーニングや治療をしていても、パニックになることがあります。そのときにどのような声かけや対応をすればいいのか子どもの年齢別に説明します。適切な声かけや対応をすることで、PTSDが悪化することを防ぐことができます。◇就学前の幼児から小学2年生これくらいの子どもだと、まだまだ周りで起こったことを正しく理解し、全てを的確に表現できるわけではありません。大人である親によって、何が起きているのかを説明してあげるとよいでしょう。また側にいたり、一緒に遊んだりすることで子どもが安心できるような環境を作ることも大切です。例えば、地震が起きて揺れがおさまってもずっと怖がっているときには、すでに揺れはおさまりもう安全であることを伝えましょう。怖い夢を見た次の日に恐怖で眠れないときには、絵本の読み聞かせをしたり、抱きしめたりするのも効果的です。◇小学3年生から小学5年生周囲で起きていることだけでなく、自分自身の内側で起きていることに対して不安を感じるようになります。親としては、子どもの話をしっかり聞いたうえで、苦しい気持ちに打ち勝てるように、前向きな行動を考えましょう。「大丈夫」や「心配ないよ」とだけ伝えても、この年齢の子どもたちは納得しないこともあります。そのため、「もし、また似たような状況になったらどうするか」など具体的な策を一緒に考えることが必要です。◇小学6年生、中学生、高校生中高生になると、衝動的に自分を傷つける行為をしたり、仕返し願望を持ったりすることがあります。中高生はもう自分の頭でそれなりに考えることができるため、答えを与えるよりも一人でじっくり考えるように促すといいでしょう。ただ、すべて子ども一人で解決させようとするのではなく、一人で解決できそうにない問題に対しては一緒に対応策を考えたり、苦しいときには助けを求めてもいいことを伝えたりすることも忘れてはいけません。参考:友田 明美、杉山 登志郎、谷池 雅子/編集『子どものPTSD-診断と治療-』(診断と治療社、2014年)相談先ーもしPTSDかもと思ったら出典 : にならなくとも、トラウマになりそうな犯罪被害にあったり、いじめにあったりしたときには専門家に相談することも視野に入れるといいでしょう。友達や先生、家族には相談しにくいことであっても、カウンセラーや、類似体験をした当事者同士であれば話せることもあります。大人の場合には、・病院の精神科・心理カウンセラーなどに相談できます。子どもの場合には、これに付け加えて、・児童相談所・家庭福祉相談所・担任の先生やスクールカウンセラーなどに、相談できます。また、性的暴力や、いきなり暴行に遭ったなど犯罪被害の場合には、・全国被害者支援ネットワーク・被害者支援団体・警察庁犯罪被害者支援室といったグループを頼ることもできます。参考:私がPTSDになったとき|みんなのメンタルヘルス厚生労働省まとめ出典 : 同じようなできごとに直面しても、PTSDになる人、ならない人がいるため、PTSDにかかる人はメンタルが弱いタイプだと思われたり、自分自身でも罪悪感を持ったりすることがあります。しかし、PTSDになったからといって、本人が責任を感じる必要は一切ありません。また、周囲の人が「あの時、こうしておけば」などの責任を感じる必要もありません。それよりも、PTSDの人が過去のトラウマを克服できるように、安全な環境を作ったり、話を聞いたりすることが大切です。
2017年09月13日自律神経失調症とは?出典 : 自律神経失調症とは、検査しても身体に明らかな異常がみられないのに、肩こり、めまい、頭痛などの自律神経の乱れが関係する身体の不調がある状態のことです。実は「自律神経失調症」は日本独自に定着した疾病概念で、国際的・医学的な病名としては、その定義や診断基準は確立していません。そのため医師によって捉え方が違うだけでなく、自律神経失調症の存在自体を認めない医師もいます。また、医師によっては、原因不明の症状に診断名を与える場合に便宜的に診断する場合もあります。このように、自律神経失調症を取り巻く言説は、未だ整理されていません。しかし、実際に自律神経失調症と診断された方がおり、「自律神経失調症」という名称は多くの方に認知されています。そこで、この記事では日本心身医学会の暫定的な定義に基づき自律神経失調症を説明していきます。参考文献:福永伴子/監修『図解すぐできる! 自律神経失調症の治し方 』2015年ナツメ社/刊日本心身医学会における暫定的な定義は以下の通りです。種々の自律神経系の不定愁訴を有し、しかも臨床検査では器質的病変が認められず、かつ顕著な精神障害のないもの(引用:心身症と自律神経失調症の違い|医療法人中沢会上毛病院HP)自律神経失調症の症状出典 : 自律神経失調症は、人によって症状の現れる箇所や度合いがかなり異なり、身体面にも精神面にも影響を及ぼす可能性があります。ここでは、自律神経失調症の症状の一部を紹介いたします。■全身に現れる症状・だるい、疲労感・多汗あるいは汗が出ない・食欲増加もしくは低下・睡眠障害・立ちくらみ・めまい・微熱・発熱・血圧の異常(低血圧・高血圧)など■特定の箇所に現れる症状・頭痛・動悸・耳鳴り・咳・肩こり・手足のしびれ・息苦しさなど■精神面・情緒不安定・不安・パニック症状・集中力の低下・イライラなど参考文献:筒井末春/著『月刊「医学と薬学」』――自律神経失調症1985年10月自然科学社/刊参考文献:大塚邦明/著『月刊医道の日本』―ー自律神経失調症に対する鑑別、診断、治療2015年1月号医道の日本社/刊自律神経失調症の原因出典 : 自律神経失調症は自律神経が乱れることにより生じますが、その最大の原因はストレスであるとされています。職場環境、人間関係や生活リズム、災害、気圧などのその人を取り巻く環境と、その人自身が持つ体質や性格、持病などの要因が複雑に絡み合ってストレスとなります。そのため、治療においてもストレスをいかに軽減するかが重要になってきます。出典 : 参考文献:伊藤克人ら/編『専門医が治す!自律神経失調症―ストレスに強い心身をつくる、効果的な療法&日常のケア (「専門医が治す!」シリーズ) 』2001年高橋書店/刊参考ページ:自律神経失調症とうつ病・パニック障害・心身症の違いとは?|せせらぎメンタルクリニックHP自律神経失調症かもと思ったらどこを受診すればいい?出典 : 自律神経失調症に心当たりがあるときは、頭痛なら内科、肩こりなら整形外科など、まずは身体的な症状にあわせて受診する科を決めましょう。自律神経失調症には明確な診断基準がありません。そのため医師によって診断の仕方は異なりますが、1.からだの病気がないことを確かめる検査2.こころの病気がないことを知るための面接や心理検査3.自律神経系の検査この3種類の検査をして診断の材料とすることが多いとされています。受診の結果、別の診断名がついたとしても、まずは医師の指示に従った上で、様子をみましょう。それでもなかなか治らない場合や以前にも何度か同じ症状がでている場合には、総合病院や大学病院などで検査を受けることを検討する必要があります。検査で原因が見つからなかったり、再発を繰り返す、精神的な症状が現れてきた場合は、身体面からだけでなく心理面からも診療する心療内科を受診することをおすすめします。参考文献:伊藤克人ら/編『専門医が治す!自律神経失調症―ストレスに強い心身をつくる、効果的な療法&日常のケア (「専門医が治す!」シリーズ) 』2001年高橋書店/刊自律神経失調症の治療法は?出典 : 自律神経失調症の治療には、以下の4つの療法を中心に行われます。■薬物療法めまい、頭痛などの身体症状や、不安感などの心理的な症状を取り除くために、薬を用いる場合があります。自律神経調整薬や抗不安薬、ビタミン剤、漢方などが処方されることがあります。参考ページ:自律神経失調症|前田クリニックHP・漢方の留意点自律神経失調症により現れる症状を和らげることを目的として漢方薬が処方される場合もあります。ただし、個人の体質や抵抗力などにより調合される薬も異なるので、漢方薬を試してみたい場合は必ず医師に相談することが必要です。漢方外来などの専門外来だけでなく、心療内科の医師も漢方を処方してくれる場合があり、保険が適応される可能性もあるので、気になるときは医師に相談してみるのもひとつの手です。■心理療法(精神療法)心理療法では、医師との会話を通じて心理的なケアをしていきます。認知行動療法や簡易精神療法、自律訓練法など様々な種類があるので、患者一人ひとりに合わせた療法をすることになります。■理学療法肩こりやなどの身体の痛みや手足のしびれをやわらげるために、指圧、マッサージ、鍼灸(しんきゅう)、温熱治療、電気治療などの理学療法が取り入れられることがあります。その場合、病院などにおいて医師の指導のもとに理学療法士が行うことになります。・心理療法、理学療法を受ける際の医療費における留意点理学療法や心理療法を医師が治療の一環として認め、病院内で受ける場合なら、ほとんどの場合保険適応になります。しかし、それ以外の場所で治療を受ける場合は保険適応にならず全額自己負担となる場合が多いため、注意が必要です。その他にも、専門の治療院で症状の改善を目的とした施術が行われていることもあります。中には自律神経失調症を治療対象とした保険適応の施術を行う治療院もありますので、一度お近くの治療院を調べてみるのもおすすめです。ここで注意したいのは、理学療法によって一時的に身体が楽になることはあるとはいえ、根本治療ではないので、他の治療法と合わせて行う必要があるということです。■生活指導食生活や睡眠時間、運動などの生活リズムを見直し改善するためのアドバイスを受けます。自律神経失調症を改善したいとき、自分で出来るセルフケアは?出典 : 乱れた生活スタイルは自律神経が乱れる大きな要因の一つです。この章では、自分でできる生活スタイルの改善方法の一部を紹介します。ポイントとなるのは、できる範囲で少しずつ改善していくことです。生活リズムを改善しようと気を張りすぎると、それが逆にストレスとなることがあるからです。気を楽にして、一歩一歩生活を改善していきましょう。■食事時間を一定にする食事をできるだけ決まった時間にとることで、自律神経失調症と深い関係をもつ体内時計が正常になります。■朝食は抜かずに1日3食食事は1日3食とるようにしましょう。朝食をとることで、心身の活動に必要なエネルギーを得られます。また、朝食をとることにより交感神経への切り替えが行われ、身体を目覚めさせます。■栄養バランス自律神経失調症のある方は、食事のバランスが崩れがちであることもあります。健康維持のためには、日頃からバランスのよい食生活をすることが大切です。ご飯やパンなどの主食、肉や魚などの主菜、野菜や海藻などの副菜、スープや味噌汁などの汁物の4構成を意識した食事をすることで、バランスの良い食事をとることができます。参考ページ:「食事バランスガイド」について|厚生労働省HP■早寝早起きをする自律神経のバランスと深い関わりがあると言われる体内時計を整えるためには、昼は活動、夜は休息という生活リズムを整えることが大切です。朝に光を浴びることで体内時計がリセットされるので、体内時計の狂いを修正していくには、早寝早起きを続ける必要があります。早寝早起きをするためには、あらかじめ就寝時間と起床時間を決めておくことや、就寝前に入浴やストレッチなどをして十分リラックスすること、寝る前の飲酒を控えることが効果的です。それでもどうしても眠れない場合は担当の医師に相談してみることや、睡眠外来に行くのもひとつの手でしょう。参考ページ:体内時計と睡眠のしくみ|武田薬品工業株式会社HP参考文献:大塚邦明/著『月刊医道の日本』―ー自律神経失調症に対する鑑別、診断、治療2015年1月号医道の日本社/刊まとめ出典 : 自律神経失調症は、症状を説明しづらいため、なかなか周囲の理解を得ることができずにつらい思いをされている方も多いでしょう。適切な治療を受けることに加え、食生活や睡眠など、自分でできる改善方法を意識することが大切です。あせらず、気持ちに余裕をもって療養しましょう。
2017年09月05日こんにちは、ライターのyossyです。“民泊”という言葉がよく聞かれるようになりました。民泊というのは、その名の通り“民家に泊まる”という意味。でも、近年は“Airbnb”のような民泊仲介サイトを利用した宿泊・ビジネスを指すことが増えています。BIGLOBEの調べ(2017年4月)によると、ゴールデンウィークに1泊以上の旅行を予定している人のうち、9割が民泊を認知しているのだとか。ずいぶん認知されてきましたね。2017年6月には、『住宅宿泊事業法案』(民泊新法)が成立。民泊ビジネスが普及してきた背景をふまえて、法整備も進められています。貸し出せる部屋があるなら、だれでも気軽に進出できる民泊ビジネスですが、注意点もあります。トラブルが起こることもあるようです。ここでは、民泊ビジネスの始め方、注意点についてご紹介しましょう。●まずは物件ありき。いきなりの物件購入は避けよう民泊ビジネスを始めるためには、観光客等を泊めるための物件がなくてはいけません。新たに民泊のために物件を用意するとなると、立地や設備などをよく検討しなければいけませんが、身近に物件があるなら、気軽に始めることができるでしょう。不在の家を丸ごと貸し出すこともできますが、住んでいながら空いている部屋を貸し出したり、不在中だけ貸し出したりすることも可能です。いきなり大掛かりに民泊用物件を購入するのではなく、まずはコストを抑えて民泊にトライ してみたほうがいいかもしれませんね。家具、アメニティ、Wi-Fi、部屋に置いておくマニュアルなど、外国人観光客が喜ぶ設備をそろえてアピールすると、集客しやすいですね。用意ができたら、民泊サイトに登録すればOKです。●マナー問題や騒音問題……管理は大変深夜の騒音問題や、部屋を汚される、物品を壊されるといったトラブルも発生することがあるようです。外国人観光客を受け入れる場合は特に、価値観の違いやコミュニケーションの壁もあるでしょう。また、マンションの場合、管理規約で民泊ビジネスを禁止している ケースもあります。セキュリティを強化しているマンション内に、見知らぬ観光客が出入りすることで不安に思う住民もいるからですね。禁止とまではいかなくても、近隣の方々とトラブルになる可能性もありますので、その点は考慮したほうがいいでしょう。●上限は年間180日?6月に成立した住宅宿泊事業法によると、民泊の年間の営業上限は180日 。それを超えてしまうと法律違反になってしまい、“旅館業”というくくりになってしまうため、しかるべき手続きを踏んで登録する必要があるのです。法律違反をしないよう、くれぐれも注意したいですね。なお、あくまで180日というのは“上限”です。都道府県によっては、さらに制限されることもある見込み。住んでいる自治体の動向をしっかりチェックしておいたほうがいいでしょう。----------法案成立により、さらに動きが注目されている民泊ビジネス。理解せずに見切り発車してしまうと、損をすることも。「こんなはずでは……」という事態にもなりかねません。空き家、空き部屋の活用には非常に有効な手段ですが、しっかり理解してから始めたいですね。【参考リンク】・住宅宿泊事業法案 | 衆議院()・GW旅行予定者の「民泊」認知は9割超も、利用意向は2割 | ビッグローブ株式会社()・民泊サービスと旅館業法に関するQ&A | 厚生労働省()●ライター/yossy(フリーライター)●モデル/ゆみ
2017年09月01日避難行動要支援者って?災害時に避難しにくいのはどんな人?出典 : 地震や津波、水害などの災害が起きたとき、自力で避難が難しかったり、避難に際して特別な配慮が必要な場合があります。阪神淡路大震災や東日本大震災の時などにも、高齢者や障害のある方の中には自ら避難するのに何らかの困難を抱えた方も多くいました。たとえば以下のような人は一人では避難しにくいと考えられます。・視覚・聴覚障害があり、災害発生時に周りの状況の把握がむずかしい。災害情報が得にくい・高齢者・身体に障害がある人で、自力での避難が困難な人・知的障害や精神障害などがあり、地震や災害が起きた時に、どう行動したらよいかわからない障害のある人・重度心身障害者、人工呼吸器や温度調整が必要な人そのため、このような人を避難行動要支援者とし、名簿を作成してスムーズな支援ができるように平成25年6月、災害対策基本法が改正されました。またこれらの周知のため、今年(平成29年)パンフレットや事例集も作成されました。リーフレット「災害時に備えて今できること」|厚生労働省避難行動要支援者の避難行動支援に 関する事例集|内閣府災害対策基本法改正によりできた「避難行動要支援者名簿」の制度出典 : この法律で、市町村に避難行動要支援者名簿の作成が義務付けられました。簡単に言うと、上記のような一人では避難が困難な人が、災害時にサポートを受けられるように事前に登録しておくという制度です。自治体が特に支援が必要な人を把握するとともに、災害時にスムーズに支援ができるよう、消防機関や警察、民生委員などの避難支援に関係する人に情報が共有できるようにすることが定められました。名簿には個人情報が含まれるため、災害対策基本法で個人情報漏えい防止のための規定もあります。実際に名簿をつくり、運用するのは市町村です。具体的な支援や制度については、自治体によって異なる場合があるので、お住まいの市町村に問い合わせることをおすすめします。発達ナビのユーザーの皆さんの中には、療育手帳や精神障害者福祉手帳の取得時などに名簿への登録や、情報提供の同意などを求められる場合があるかもしれません。また、災害があったときに一人で避難することが難しそうだと感じている人もいるかもしれません。避難行動要支援者がどのような支援を受けられるのかを知り、必要に応じて名簿に登録することで、災害への備えの一つとしてはいかがでしょうか?災害対策基本法避難行動要支援者名簿の作成等に係る取組状況の調査結果どんな支援をしてくれる?出典 : ・避難のための情報伝達情報を得ることが難しい人のために、その人が情報を得やすい方法で災害情報を得られるようにサポートします。・避難支援災害時、避難行動を支援します。また、要支援者の特性に合わせた個別の避難計画の作成や防災訓練をする場合もあります。平常時も支援者による声かけや見守りにつなげておくことも含まれます。・安否確認名簿が災害時の安否確認に活用できます。・避難場所以降の避難行動要支援者への対応避難した後も、避難場所での支援者への引き継ぎがスムーズに行えることがあります。名簿への登録は?出典 : 災害対策基本法では、以下を避難行動要支援者と定め、市町村に把握と名簿の作成を義務付けています。当該市町村に居住する要配慮者のうち、 災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合に自ら避難する ことが困難な者であつて、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため 特に支援を要するもの具体的な対象者の範囲はお住まいの市町村によって異なります。以下に千葉市の場合をご紹介します。名簿に掲載される方65歳以上のひとり暮らしの方で、介護保険の要介護認定区分1・2の方、または要支援認定区分1・2に該当する方要介護認定区分3~5に該当する方次に該当する障害がある方視覚障害(1級又は2級)、聴覚障害(2級)、上肢機能障害(1級又は2級)、下肢機能障害(1級又は2級)、体幹機能障害(1級、2級又は3級)、乳幼児期以前の非進行性の脳病変による運動機能障害のうち上肢機能障害(1級又は2級)、乳幼児期以前の非進行性の脳病変による運動機能障害のうち移動機能障害(1級、2級又は3級)、呼吸器機能(1級)、小腸機能(1級)、精神障害(1級)、知的障害(AまたはⒶ)難病患者で身体障害者手帳1・2級の方及び小児慢性特定疾病等で療養負担過重患者の方制度の運用も自治体によって異なります。自分が名簿に登録されているか確認したいときや、定められた対象ではないが一人での避難が困難な場合などで、名簿への登録を希望するときはお住まいの自治体に問い合わせてください。制度の運用方法は市町村によって異なりますが、以下に大まかな流れをご紹介します。1. 市町村が支援が必要な人の情報を集め、避難行動要支援者名簿を作成します。避難行動要支援者名簿には、掲載者の氏名、生年月日、性別、住所、電話番号その他の連絡先、避難支援等を必要とする事由、その 他避難支援等の実施に必要な事項が掲載されます。参考:災害対策基本法49 条10 第 2 項2. 名簿情報を平時から支援者に提供していいか、確認がされ、問題なければ同意します。3. 同意した人の名簿情報が消防、警察、民生委員などの支援者に提供されます。4. 支援者が日常の声かけなどの見守りや避難訓練などの支援を行います。5. 災害時には市町村や支援者により避難行動に関する支援や安否確認などが行われます。個人情報が支援者に提供されることに不安を感じる人もいるかもしれません。災害対策基本法によって、避難行動要支援者名簿を提供した支援者には守秘義務が発生します。また各自治体で名簿情報の漏えいの防止のため必要な措置を講ずることも定められています。参考:避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針|内閣府名簿に登録がなくても避難行動に配慮が必要な人もいます出典 : 避難行動要支援者として名簿に登録していない人でも、災害時の避難に困難を抱える要配慮者の人がいます。たとえば発達障害のある人は、自閉症などの特性から、いつもと違うことに強い不安を感じたり、パニックになってしまうことがあります。学習障害がある場合、電光掲示板や掲示物などから情報を得るのが難しいかもしれません。障害が軽度で、名簿に登録していない人でも避難時に思わぬ困難が生じる可能性があることを覚えておきましょう。また外国の人は、日本語での緊急避難速報や避難誘導の声かけが理解できないかもしれません。このほかにも外見からは障害があることがわからない人もいます。もちろん妊娠している人や乳幼児、高齢者なども避難の際に配慮が必要です。全ての人が一人ひとり日ごろから、防災意識を持ち準備することが、地域に住むさまざまな人を災害から身を守ることにつながります。また災害時には、まず自分の身を守ることが第一ですが、周りに困っている人がいないかどうかにも目を配るように心がけたいですね。参考:要援護者の特性ごとの避難行動等の特徴|大阪市住吉区まとめ出典 : 避難行動要支援者というと、高齢者や身体に障害がある人をイメージすることが多いかもしれません。ですが、その他にも避難に際して支援が必要な人もいます。知的障害や精神障害のある方の中には非常時の状況判断が一人では難しい場合もあるでしょう。言語障害のある人は見た目からはわかりませんが、緊急事態を言葉で人に伝えることが難しい場合も考えられます。災害はいつ発生するかわかりません。まわりに様々な困難のある人がいること、そして災害が起きたときのことを想定して事前に対策をすることが、もしもの時の大きな備えとなります。避難行動要支援者名簿への登録はその一つです。行政や避難支援者に受けられる支援にはさまざまなものがあり、避難時のサポートだけでなく、もし避難生活がはじまっても引き継がれます。情報の共有をすることで、日ごろから地域の支援者ともつながりが持てます。また、名簿への登録がない人でも、避難時に支援を必要としている人がいるかもしれないことを心に留めておきましょう。
2017年09月01日知的障害者福祉法とは?出典 : 知的障害者福祉法(旧:精神薄弱福祉法)は、1960年に制定された法律です。知的障害のある人の福祉をはかることを目的とした法律です。2006年の改正前、その目的は「生活支援」という側面だけでしたが、現在は知的障害のある人の自立と社会参加を促進するよう法律で定められています。それでは実際の法律の文言を見てみましょう。(この法律の目的)第一条 この法律は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 (平成十七年法律第百二十三号)と相まつて、知的障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため、知的障害者を援助するとともに必要な保護を行い、もつて知的障害者の福祉を図ることを目的とする。また、この法律は2013年に制定された「障害者の日常及び社会生活を総合的に支援するための法律」、別称「障害者総合支援法」という障害のある人全般に適用される法律とあいまって、その内容が定められています。それまでは、障害種別によって個別の法律に基づき様々なサービスや制度が成り立っていました。その後、総合支援法ができたことにより、「知的・身体・精神」の3つの障害が同じ法律内で扱われることとなりました。そのため、従来の知的障害者福祉法がもっていた独自の法的な意義は希薄化しているのが現状です。それにともない、知的障害のある人へのサービスや制度も、障害者総合支援法に移行しています。知的障害者福祉法の概要出典 : 知的障害者福祉法は以下の4つから構成されています。・総則・実施機関及び更生援護(実施機関等、障害者入所支援施設等の措置)・費用・雑則総則とは、全体を通じて適用される法律のきまりのことです。つまり、法の根幹となる部分です。知的障害者福祉法における総則は、以下の4つの項目から成り立っています。◇目的知的障害のある人の自立と経済活動を促進させるために、知的障害者の福祉をはかることを目的としています。このために、国や自治体、施設などは知的障害のある人を保護し、適切な援助を行うことが定められています。◇自立への努力と機会の確保・知的障害のある人は、そのもっている能力を使って社会活動、経済活動に参加するように努力しなければならないとしています。・社会を構成する一員として、自立し、社会、経済、文化などの活動に参加する機会をもっているとされています。◇国、地方公共団体と国民の責務国や地方公共団体は、上の理念が達成されるために、国民の理解を促し、必要な援助と保護を行うことが定められています。国民は、知的障害のある人の福祉について理解を深め、社会経済活動参加する努力に対して協力することが定められています。◇職員の協力義務知的障害のある人に援助や保護を行う職員は、児童から成人まで一貫して福祉支援を行うことが定められています。このように、知的障害のある人が社会の一員として、社会的、経済的な活動に参加できるように、すべての国民、行政、職員が努めることを義務付けたのが、知的障害者福祉法です。この部分には、知的障害福祉法に関する支援を提供する機関について記載されています。・支援の実施は、市町村が実施の主体となっていること・知的障害者の判定は、知的障害者更生相談所で行うことなどの点が記載されています。この部分はのちの章で詳しく説明します。知的障害者福祉法のこの項では、知的障害のある人のための施設を運営、設立する際の費用を出す義務者が定められています。また、知的障害のある人がサービスを利用するときには、一部または全部の負担が課せられることになっていますが、その負担は、当事者および扶養者の自己負担の能力に応じることが記されています。知的障害者福祉法ができたわけ出典 : 知的障害のある人への総合的な福祉支援は、どのような理由から展開され、本格的に開始したのでしょうか。日本で、最初に知的障害のある人への福祉サービスを規定したのは、1947年の児童福祉法です。ここでは、障害の有無についての言及はなく、すべての児童が等しく、生活を保障されなければならないという理念が述べられています。その後、1953年に「精神薄弱児対策基本法」が策定されました。この法は、のちの1960年に成立する知的障害者福祉法の下敷きとなったものです。この法律の要綱では、成人をも視野に入れており、18歳を過ぎた知的障害のある人にも必要な施策がとられることとなっていました。しかし、この法律には様々な問題点がありました。というのもこの法律では、知的障害のある人の「隔離」と「保護」を前提としていた点です。そのために、具体的にとられた施策は、不良行為を行う知的障害のある人を収用する設備の強化や、優生手術の実施など、知的障害のある人を社会から排除するものでした。また、実際の福祉施策が適用されたのは、18歳未満の知的障害がある子どもだけでした。「隔離」を前提とするような法律の問題点を改善する声があがり、1960年に成立したのが知的障害者福祉法です。この法律でようやく、名実ともに児童から成人までの一貫した支援を提供する事業が整備されました。知的障害者福祉法の改正と障害者総合支援法出典 : 障害者制度は2003年、2006年、2013年と3度の変革を迎えています。これにともない知的障害者福祉法の位置づけや内容も変化してきました。まず2003年には、支援費制度が導入されました。ここでのキーワードは「障害者の選択の尊重」です。この制度の導入により、それまでは行政が定めたサービスしか受けることのできなかった利用者は、自分に合ったサービスを選べるようになりました。そして2006年には、「障害者自立支援法」が成立しました。ここで福祉サービスにおける障害者の位置づけが大きく変わりました。というのも、それまでは障害の種別によって提供されるサービスは分かれていたからです。障害者自立支援法の成立により、障害の種類や年齢にかかわらず、障害のある人たちが必要とするサービスを利用できるように、利用のしくみが一元化されました。そのために、それまで知的障害のある人を対象として提供されていたサービスの多くが障害者自立支援法という共通の制度のもとで一元的に提供されることになりました。2013年には、上記の障害者自立支援法の改正法として、障害者総合支援法が成立しました。ここで、よりよい支援を行うことで施設を退所する障害者が省令で追加されるなど、障害のある人が自立した日常生活、社会生活を営むことが法律の目的として定められいます。障害者総合支援法については以下の記事で詳しくご紹介しています。知的障害者福祉法の中で明確な定義がない「知的障害者」出典 : 「知的障害」という名称は、学校教育法や児童福祉法などの法律で使用されてから、一般的に福祉現場や医療の領域で、日常的に使われるようになりました。一般的には、知的障害とは、金銭管理、読み書き計算など日常生活や学校生活の上で知的機能を使う知的行動に支障があることを指す場合が多いです。しかしながら、肝心な法律においては、どのようなものを知的障害と指すのかを定める規定が見られません。このために、医学、心理学、教育学の領域でそれぞれ定義が定められており、共通した理解が得られていないのが現状です。またその呼び名も、教育分野では「知的発達障害」「知的発達遅滞」、医学関連では「精神遅滞」「精神発達遅滞」などばらばらです。支援の必要性の有無、障害の程度をもって、知的障害者を定義する法令は存在せず、客観的な基準を示していません。厚生労働省においては、知的障害を精神医学の領域における「精神遅滞」と同じものと定めていることから、法令上の用語もその基準にならっていることが多いようです。知的障害(ID: Intellectual Disability)は、医学領域の精神遅滞(MR: Mental Retardation)と同じものを指し、「知的発達の障害」を表します。すなわち「1. 全般的な知的機能が同年齢の子どもと比べて明らかに遅滞し」「2. 適応機能の明らかな制限が」「3. 18歳未満に生じる」と定義されるものです。「知的障害者更生相談所」知的障害のある人がより暮らしやすくなるための機関出典 : 知的障害者福祉法は、知的障害のある人がより暮らしやすくなるためのサポートを行う機関を、都道府県に設置することを定めています。それが知的障害者更生相談所です。主に18歳以上の年齢の人が対象となります。18歳未満の場合には、児童福祉法のもと設置された児童相談所を利用することとなります。知的障害者更生相談所では、以下の3つの取り組みが行われています。この施設では、知的障害に関する高度で専門的な知識や技術を必要とする人のための相談を受け付けています。医師やケースワーカーなどの知的障害者福祉司という専門の知識をもった職員が相談にのってくれます。知的障害者更生相談所では、知的障害の判定と療育手帳の交付を行っています。判定および交付は、医師や心理判定員によるものです。知的障害には、国の法律によって定められている定義が存在しません。そのため、障害の認定区分や基準は自治体により異なっています。おおまかには、知能や生活習慣、行動の特徴などから判定します。その他には、IQ(知能検査などの発達検査の結果でわかる知能指数のこと)や日常生活動作(身辺処理、移動、コミュニケーションなどの能力のこと)などが判定の材料に用いられることもあります。療育手帳の交付の詳しい方法は、以下の記事を参照ください。障害の状況や地理的な理由により、来所相談や定期相談ができない場合もあるかもしれません。そのようなときには、自治体によっては福祉士や心理判定員が、相談受付のため地域の巡回も可能ですので、利用するとよいでしょう。知的障害のある人に関連する制度や利用できる手当て出典 : 知的障害のある人に対する支援の体制にはさまざまなものがあります。現在、障害の種別に関わりなくサービスを一元化する動きのために、本法律を根拠とした知的障害のある人に特化した制度はありませんが、別の法律に準拠やガイドラインに定められた制度や手当をご紹介します。知的障害と判定された人に、一貫した相談や指導を行い、各種の福祉サービスを受けやすくすることを目的とした制度です。交付は、都道府県及び指定都市の長が行います。療育手帳制度は、法律で定められた制度ではなく、「療育手帳制度について(昭和48年9月27日厚生省発児第156号厚生事務次官通知)」というガイドラインに基づいた制度で、都道府県・政令指定都市ごとに要綱などを制定して行われています。療育手帳をもつことで、以下のような支援やサービスを受けることができます。・保育園への入園優待・就労支援・障害者医療費の助成・公共交通機関の割引・各種料金の割引、減免支援費制度とは、障害のある人自らがサービスを選択して、デイサービスや授産施設などの事業者と対等な立場で契約を結び、サービスを受けることのできる制度で、2003年に導入されたものです。当たり前のことだと思われた方もいらっしゃったでしょうが、導入以前は、利用者はサービスを選択することができず、市区町村などの行政が障害のある人の受けるサービスを決定していたのです。支援制度の「支援費」というのは、「利用者が施設を利用するための費用を市区町村が負担しますよ」ということです。ですので利用者は、直接何らかの金銭を受け取ることができるというわけではありません。障害のある人が施設を利用する際には、本来は全額費用を払わなければならないところから、行政がその利用料を負担するために、利用者が支払う費用が軽減されたという意味で「支援費」なのです。支援費制度は、現在障害者総合支援法に移行しています。それまでの支援費制度は、障害種別ごとのものであったり、利用できる施設が障害種別に応じて細分化されているという点から、複数の障害種別のある利用者からするとややこしいものでした。そこで、これらの課題を解決するとともに、障害のある方本人を中心とする個別の支援をより効果的に行っていくために、2005年に障害者自立支援法(のちの障害者総合支援法)への移行が行われました。成年後見制度とは、認知症のある高齢者、精神障害のある人、および知的障害のある人など、判断能力の十分でない人を支援する制度です。1992年に設けられました。この制度では、お金の管理や相続という手続きを、その人に代わって代理人が行うことができます。成年後見制度には二つの種類があります。一つは、法定後見制度といわれ、家庭裁判所が成年後見人などを選任し、すでに判断能力が低下している人に対して行われるものです。もう一つは、任意後見制度といい、あらかじめ本人が任意後見人を選び、近い将来に備え支援者と支援内容を決めておくものです。具体的な利用の方法や手続きについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参照ください。「もしも」のときのために、掛け金を積み立てておく制度です。精神、知的、身体に障害のある人の保護者が、亡くなったり、重度の障害になったときに、本人に終身一定額の年金が支給される制度です。対象は、・将来独立することが困難であると認められる、特に知的、身体障害の1~3級の手帳をもつ者の保護者・65歳未満の保護者・特別な疾病、障害がないなどの条件があります。対象となる保護者は、毎月1口~2口の掛け金を納めます。1口あたりの金額は、保護者の年齢により変わります。支給は保護者が亡くなった、重い障害をもった場合に、1口につき、月額2万円が本人に、終身支払われます。詳しくは、お住いの市区町村の保健所、保健局のHPをご覧ください。障害の等級によっては、以下の手当が支給されます。該当する手当をもらうことで経済的、精神的な負担の軽減することができます。・障害基礎年金・障害厚生年金・在宅重度心身障害者手当・特別障害者手当・特別児童扶養手当・障害児福祉手当など赤塚俊治/著『新・知的障害者福祉論序論』2008年/刊/中央法規出版山内一永/著『図解 障害者総合支援法早わかりガイド』2012年/刊/日本実業出版社まとめ出典 : 知的障害のある人のための法律は、刻々と変化しています。歴史的な背景から起こっている、障害のある人への差別や偏見から派生する社会問題を解決するために、国の施策が展開されています。法律の目的である「自立」「社会参加」という理念に向かう途上で、まだまだ課題点は多く残りますが、その達成に向けて私たちは着々と歩を進める途上にあるともいえるでしょう。
2017年08月30日こんにちは、ライターのyossyです。「Uターン」「Iターン」「Jターン」といった言葉がよく聞かれるようになりました。国立社会保障・人口問題研究所の調査(2011年)によると、出生県から県外に移った人のうち、再び出生県に戻る(Uターンする)人は約35%いるのだとか。近年は、若者がいなくなってしまう問題を抱えた地方が、さまざまな移住支援を行っています。国も地方の雇用創出を課題としていますし、自治体の誘致もあって、IT分野を中心に地方に拠点を置く企業も増えてきているようです。いきなり見知らぬ土地に行くためには、きちんとした下調べが必要ですし、ハードルが高く感じる人もいるでしょう。でも、進学を機に都会に出てきた人が“地元に戻って就職する”ということを考えるケースは多いですよね。今回は、Uターン就職のメリット・デメリットをご紹介します。●Uターンのメリット:安心感、生活環境まず、Uターン就職することのメリットを考えてみましょう。●(1)故郷に戻る安心感地元に実家がある人、友人が多い人は、故郷への愛着心があり、Uターンすることで安心するケースが多いでしょう。また、介護問題なども見据えて「親のそばにいたい」と考える人もいます。●(2)物価が安いこともケースバイケースですが、東京都、神奈川県、大阪府、京都府といった都市部の物価は比較的高めです。生活費はもちろん、住宅購入費用等は地方のほうが抑えられるケースも多い でしょう。●(3)豊かな生活環境のなかで働けるケースもこちらも場合によりけりですが、都会の満員電車やビル群が苦手、という人は、落ち着いた環境を求めて地元に戻るというケースもあります。●Uターンのデメリット:年収水準、最先端の情報・技術では、デメリットについても考えてみましょう。●(1)年収が低めなことも一般的には、年収水準は都会のほうが高いケースが多く、同じ仕事をするにしても地方のほうが年収が下がるという場合もあります。教育費や住宅費がかからず支出も抑えられる、というケースもありますが、例えば「車でないと通勤できない」といったような場合、思わぬ出費があることも 。しっかりマネープランを立ててから決断したいですね。●(2)最先端技術や情報は都会に集まる傾向もIT企業の一部では、地方にありながらITネットワークを使って都会と変わらない環境で仕事ができるケースもあるようです。しかし、全体としては都会のほうが最先端の技術や情報が集まりやすい傾向にあります。----------メリット・デメリットをご紹介しましたが、今回はあくまで全体の傾向のお話をさせていただきました。年収水準も生活環境も、どこで働くかによって大きく異なります。「地元のほうが就職しやすい」というケースもあれば、「ほとんど求人がない」というケースもあるでしょう。国土交通省では『ふるさとSearch』という地域情報のポータルサイトをまとめたページを作っていますし、ハローワークでも地方への就職支援を行っています。興味がある人は、まずは情報収集から始めてみてください。【参考リンク】・人口移動調査 | 国立社会保障・人口問題研究所(PDF)()・人材の地方移動支援 | 厚生労働省()・地方振興:ふるさとSearch(ふるさとサーチ) | 国土交通省()●ライター/yossy(フリーライター)●モデル/ゆみ
2017年08月27日虐待とは出典 : 児童虐待防止法の表現を借りると、虐待とは「特定の相手に対して、その人の人権を著しく侵害し、心身の成長及び人格形成に多大な影響を与えること」です。その対象になりやすいのは児童、高齢者、障害者などの社会的な立場が弱いとされる人たちです。平成27年度に厚生労働省が発表した統計によると、虐待の疑いが専門機関に連絡された件数(通告件数)は高齢者が28,328件、障害者7,768件、児童103,260件であり、児童に対する虐待の通告件数が一番多い結果になっています。また、平成29年8月17日に発表された平成28年度の児童虐待相談対応件数は122,578件で、その数も年々増加している傾向がわかります。この記事では最も通告件数が多い児童虐待について説明していきます。児童虐待の通告件数が増加している背景には2つの要因が挙げられます。1つ目はメディアの報道により関心度が高まったこと、2つ目には法律の改正により通報が義務付けられたことです。通告件数の多さからわかる通り、いまや児童虐待は稀な出来事ではありません。子育ての孤立や貧困など、現代の子育て環境は過酷で、かつて考えられていたような「一部のひどい親」だけが行うというものではなくなってきています。つまり誰にでも、虐待という不適切な親子関係に陥る可能性があるのです。いつ自分の身の回りに起きても大丈夫なように、正しい知識を持っておきましょう。虐待につながりそうな親子の存在にいち早く気づき、適切な支援につなげることで、救われる親子がいるかもしれません。参考:平成27年度高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果|厚生労働省参考:平成27年度 「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」に 基づく対応状況等に関する調査結果報告書|厚生労働省参考:平成27年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数<速報値>|厚生労働省参考:平成28年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数<速報値> |厚生労働省虐待の種類出典 : 虐待はその手段によって、いくつかの種類に分類されています。ここでは厚生労働省が「児童虐待の定義と現状」で使っている分類を紹介します。1.身体的な虐待殴る、蹴る、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などで縛るなど2.心理的な虐待言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるうこと(ドメスティック・バイオレンス/DV)など3.性的な虐待子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にするなど4.ネグレクト家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かないなど参考:厚生労働省「児童虐待の定義と現状」これら4種類の虐待は単独で起こるだけでなく、複合的に起こることもあります。また、法律の条文に載っていなくても、子どもの健康的な心身の発達を阻害する可能性がある言動は虐待に値します。次の章で紹介する基準をもとに、柔軟に判断することが子どもたちを救うのです。どこからが虐待なの?出典 : 専門機関が虐待かどうかを判断する指標として、児童虐待防止法の定義が使われます。一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。つまり、前の章で挙げた身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクトの項目に当てはまるような言動が見られる場合に、虐待と判断されるのです。けれども、法律上の定義だけでははっきりと判別できない事例も多いことが事実です。虐待としつけの間には線引きが難しいグレーゾーンが存在し、第三者からは見分けがつきにくいこともあるでしょう。虐待の判断で重要なポイントは、子どもの視点に立って考えることです。親はしつけや教育のためと思っていても、子どもが耐えがたい苦しみを感じ、心身の成長に悪い影響を与えそうなときは虐待として考えるべきという専門家も増えています。また、もし、虐待かどうか判断しかねるときは、児童相談所にまずは相談しましょう。虐待かどうかの判断をするのは児童相談所です。虐待でなかったとしても、故意によるものでなければ通告をした人自身の責任は問われません。なので、通告の段階では主観的な判断であってもよいのです。むしろ、虐待かどうか判断しかねるような段階で早めに専門機関につながることで、支援の手により虐待が未然に防げることもあります。虐待の影響出典 : 虐待は子どもの心身に非常に大きな影響を与えます。この章では、虐待の影響を分類ごとに説明します。身体的影響は、さらに2つに大きく分けられます。一つは、外的な傷害です。外的な傷には打撲、切り傷、やけどなど目に見える傷と、骨折や頭蓋骨内出血などの見えない傷があります。また、目に見える傷であっても衣服に隠れる場所にあるため発見が遅れてしまう場合があります。外傷が重い場合には、重い障害が残ったり死に至る可能性があるため、いち早く気付けるように注意する必要があります。二つ目は発育の遅れです。十分な食事を与えられなかったり、愛情を注がれなかったために栄養障害や発育の遅れが生じることを言います。逆にストレスで過食になったり、感覚が鈍くなり、外傷を負っても気付かないこともあります。虐待を受けた子どもの中には、家庭内が安心できる環境ではないこと、十分に学校に通うことができないこと、また、保護者から知的発達に必要な関わりをしてもらえないために、知的な発達面に異常が生じることがあります。知的な発達の異常は、認知機能(知覚、記憶、思考、判断)の低下、衝動性や多動性により発達障害だと誤解される可能性もあります。本来、最も愛情を注いでくれるはずの保護者から傷つけられることで心理的な問題が生じることも多々あります。親子間の愛着関係を築くことができなかったため、対人関係の構築に問題が生じます。「人を信用できない」「仲良くなってもすぐに関係を壊してしまう」「否定されることが怖くて自分の意見が言えない」などの困りごとが生じます。これらは子どもが大きくなって社会生活を送る上で大きな障害となるでしょう。つまり、虐待の影響はその場限りではなく、子どもが成長してもずっと続くことがあるのです。他にも、自己評価の低下や行動コントロールの困難さが原因となり、暴力的・衝動的な行動や非行に走ることがあります。偽成熟性も特徴的な症状です。精神的に不安定な大人と関わることで自分が大人の役割を果たさなければいけないように思い、大人びた行動にでることを言います。一見成熟しているように見えても思春期頃に問題行動が出てくることもあります。また、強い心理的ストレスによる記憶喪失や解離性障害、不眠など、日常生活に支障をきたしてしまう精神疾患に至るケースもあります。このように、虐待は子どもの心身に多大な影響を残し、その回復のためには長期間の治療やケアが必要になるのです。手遅れにならないように、周囲がよく気を配ることが必要です。なぜ虐待が起こるのか出典 : 虐待が起こりやすくなるリスク要因として、「子どもによるもの」「保護者によるもの」「社会/環境によるもの」という3つの要素が挙げられます。1つ目は、子どもによる要因です。発達障害、身体的な障害、精神疾患など、その子が持つ特性によって、保護者がその子のことを育てにくく感じることもあります。もちろん、これらの要因は子どものせいではありませんが、特別なケアが必要だったり、愛着形成やコミュニケーションをとりにくかったりといった育児の難しさが、過剰なしつけや保護者自身のストレスにつながりやすく、虐待のリスクが高まることがあります。2つ目は、保護者による要因です。様々な要因により、保護者が子どもを受け入れられないことがあります。具体例としては、望まない妊娠、子育てに関する知識不足、保護者自身の発達障害、虐待を受けて育った経験、などです。子育ての途中につらい記憶がよみがえってきたり、子どもに注意を払いたくても気付けないことが多かったり、教育のしかたがわからなくて暴力的な言動やネグレクトを引き起こしてしまうことがあります。3つ目は、社会/環境による要因です。貧困家庭やひとり親家庭などの場合には、保護者が環境に関心を向ける余裕がなく、社会的に孤立してしまう場合があります。このような家庭は保護者が生活を維持することに精いっぱいなため、子どもへの関心が向きづらく無自覚のうちにネグレクトにつながってしまうことがあります。孤立している家庭は周囲とのコミュニケーション、サポーティブな関係、頼れるサービスが身近にあることで家庭内トラブルのリスクが大きく減ると言われます。本人や周囲の人々がリスクを認識しつつ、支え合える関係を築いておくことが重要です。虐待のサイン出典 : 家庭内に虐待が起こっている場合、子どもや保護者の様子に異変が生じるはずです。周囲がその変化にいち早く気づくことで深刻な虐待に至る前に早期発見し、食い止めることができるでしょう。1.身体的な変化□不自然な傷や同じような傷が多い□原因がはっきりしないケガをしている□治療していない傷がある□極端な栄養障害や発達の遅れが見られる2.表情□表情や反応が乏しく活気がない□ボーっとしている□おびえた泣き方をする□養育者と離れると安心した表情になる3.行動□食事に異常な執着を示す□衣服を脱ぐとき異常な不安を見せる□ひどく落ち着きがなく乱暴、情緒不安定である4.他者との関わり□他者とうまく関われない□繰り返し嘘をつく□態度がおどおどしている□親や大人の顔色をうかがう□誰かれなく大人に対して警戒心がうすい(なれなれしい、ベタベタする)□保護者が迎えにきても帰りたがらない□他者との身体接触を異常に怖がる5.生活の様子□衣服や身体がいつも不潔である□基本的な生活習慣が身についていない□予防接種や健康診査を受けていない□年齢不相応の性的な言葉や性的な行動が見られる□夜遅くまで遊んだり徘徊したりしている□家に帰りたがらない1.子どもへの関わり方□子どもへの態度や言葉が拒否的、無関心的である□子どもの扱いが乱暴である□子どもに理想を押し付けたり、年齢不相応な要求をする□体罰の正当化や偏った養育方針(しつけかた)をもっている□きょうだいに対して差別的である2.他者への関わり方□他者に対して対立的、否定的な態度をとる□特に、理由も無く関わりを避けたり、連絡が取りづらい□説明の内容が曖昧でコロコロ変わる□子どもに関する他者の意見に被害的・攻撃的になる3.生活の様子□近隣との交流を拒否し孤立している□不衛生な生活環境である□小さい子どもを家に置いたままよく外出している□夫婦関係や経済状態が悪い□夫婦間の暴力が認められている4.保護者自身のこと□ひどく疲れている□精神状態が不安定である□性格的な問題として、被害観が強い、偏った思い込み、衝動的、未成熟など□いつもお金に困っている様子がある□家族関係のトラブルを抱えている参考:虐待のサインを見つけるには|神奈川県参考:横浜市子ども虐待防止ハンドブック|横浜市参考:教職員・保育従事者のための児童虐待対応マニュアル|埼玉県もちろん、この基準に当てはまるからといって、虐待が起こっているとは限りません。その子どもの特性を踏まえて変化に注目してみましょう。たとえば「今まで活発だった子が急にふさぎこんでしまった」「お友達と遊ぶことが好きだったのに、最近は一人でボーっとしている時間が多い」などです。親子の様子に著しい変化や違和感がないか、確認しましょう。変化に気付くためには、周囲の注意深い観察が必要です。ぜひ、上の項目を意識しながら子どもたちを見守ってみてください。虐待の可能性があるときは?出典 : 虐待から子どもを守るためには、虐待のリスクに周囲が気づき、早期に関係機関に通告することが最も大切です。速やかな通告がされないと、行政機関も虐待の防止に向けた活動を行うことができず、虐待を受ける子どもの生命や心身に大きなダメージを与える危険性が高くなります。そのため、虐待の通告はとても重要な役割を担っており、児童虐待防止法では通告を国民の義務と定めています。児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。「もし違ったらどうしよう」とためらってしまうかもしれません。しかし虐待かどうかの判断は児童相談所が行うので、通告者が虐待であるかどうかを判断する必要はありません。少しでも虐待の可能性がある場合、そのリスクを見落とさないためにも、より多くの情報が必要です。そのため「一般の人の目から見て主観的に子どもの安全・安心が疑われる場合」であればためらわず通告してください。もし仮に通告の後で虐待の事実がないと判明したとしても、虐待の事実がないことを知りながらあえて通告したという場合などを除けば、法的責任を問われることはありません。まずは「189」に電話相談!「189」は、児童相談所や市区町村が「いちはやく」児童虐待に対応できるよう、厚生労働省により設けられた全国の児童相談所の共通ダイヤルです。「189」に電話をかけると最寄りの児童相談所につながります。児童相談所に電話をすると、専門家が子どもの状況や、「いつ、どこで、どのような異変を確認したのか」などの聞き取りを行います。出典 : 「189」への相談は24時間365日いつでもすることができます。電話の通話料金は相談者の負担となりますが、相談料などはいっさいかかりません。また、相談者の氏名や相談内容に関する秘密に関しては口外されないよう定められているため、相談者にとって安心して相談しやすい環境が整えられています。児童相談所に担当者に対して氏名を明かしたくない場合は、匿名での相談もおこなうことができます。虐待の通告への対応を含め、その後の親子への支援は児童相談所が担当します。虐待の疑いがある子どもを見つけても、「自分の子どもなんだから、これ以上のことはしないだろう」「通告したら、親子の関係をより悪化させてしまうのではないか」「親から告げ口をしたと恨まれないか」と不安に感じ、通告に踏み切れないこともあると思います。そう感じるときに思い出してほしいのは「虐待の通告は子どもだけではなく、親も救う」ということです。通告は罰することではなく、必要なサポートや支援につなげるための手段です。前述の通り、虐待が起きている家庭は孤立状態にある場合が多く、困りごとを共有できずにいます。通告によって行政が虐待の存在に気付ければ、保護者が子どもへの向き合い方を見直し、自らの困難さへの対処をすることにつながるのです。通告後はどんなサポートがあるの?出典 : 虐待が発見されたら、近くの児童相談所か行政の相談窓口に通告されます。通告が受理された後、保護者や児童本人にヒアリングして重症度・緊急度の審査が行われます。審査の結果を踏まえて、児童の一時保護を含めた措置を検討します。在宅支援とは、子どもの生活拠点は家庭のままにして、家族への支援を行うことです。在宅支援が行われる場合は、虐待のリスクはあるが「止めたい」という保護者の意思が確認できるときや、保護者を支援することで問題の改善が期待できるときなどです。児童相談所や自治体、民間団体など様々な機関から広い支援を受けることができます。1.ペアレントトレーニングペアレントトレーニングとは、行動療法的な考え方を使って保護者自身が子どもとの関わり方を学んでいく方法です。子どもを自分の思い通りに操作するために暴力や暴言に頼る方法ではなく、より良い関係の中で親子関係を築く方法を学びます。2.ピアカウンセリングピアカウンセリングとは、子育てに困りごとを抱えている保護者同士が話し合うことで困りごとを共有し、支え合う関係性を築くことです。境遇が似ている人と気持ちを共有することで、自分自身の行動を受け止め、許容することができるようになります。3.支援団体と保護者の面談主に児童相談所と行政の担当課による家庭訪問や面談です。話を聞いたり、困りごとの相談に応じることで、保護者が孤立してしまうことを防ぎつつ、子どもに対する行動を客観的にとらえられるように促します。4.幼稚園、学校内での見守り主に教職員によるモニタリングを行います。「ちゃんとご飯食べてる?」などの質問を通して子どもが健やかに育っているか、虐待の再発は無さそうかの変化を観察します。児童相談所から指示があれば、追加の支援も行われます。5.地域での見守り児童委員の人が家庭訪問等を通して、家庭内の状況を見守ります。親子を分離する必要があると判断された場合は、児童福祉施設や里親に預けられます。子どもの保護を保護者が拒否するときは、児童相談所が裁判所に申し立てをし、裁判所の命令によって児童を保護することになります。今までは児童福祉施設に預けられることが多かったものの、2017年8月に厚生労働省が被虐待児の施設受け入れよりも、里親の受け入れを増やす方針を発表しました。この方針は、家庭に近い環境での発育が必要な子どもの選択肢を広げることが狙いです。こういった世相の変化によって、子どもの特徴に合った、支援の幅が広がっていくことになるでしょう。子どもが保護されている間には、保護者に向けた関係機関からの支援が受けられます。支援によって親子関係の再構築が望める場合、家族が再び一緒に暮らすこともあります。子どもに虐待しそうになったときは出典 : 「自分が虐待をしてしまうのではないか」「自分が虐待をしているのではないか」、また「どうしても自分をコントロールできない」などと悩む保護者の方も少なくないようです。そういった悩みを抱える保護者向けのサポートがあります。子育ての悩み相談や地域で受けられるサポートを知りたい場合は、児童相談所のほか各市区町村の役場(役所)にある「児童福祉課」「子育て相談課」で対応してもらえます。情報収集や気軽に話せる相手がほしい場合はサポートをしている団体に連絡してみるとよいでしょう。社会福祉法人子どもの虐待防止センター(CCAP)が、研修を受けた相談員による電話相談を行っているほか、ケースによっては虐待などの悩みをもつ保護者同士が自分の体験を語ることによる治療的グループケアなども行っています。また、社団法人子どもの虐待防止センターでは、電話での相談を受け付けているとともに、育児スキルトレーニングの教室の実施なども行っています。このように信頼できる専門機関とつながることで、育児のストレスを減らすことが期待されます。子どもの虐待防止センター相談電話|社会福祉法人子どもの虐待防止センター (CCAP)参考:「虐待をやめたい」と悩み苦しむ親への支援|社会福祉法人子どもの虐待防止センター自分の感情をコントロールできない人には、アンガーマネジメントを学んでみることもおすすめです。アンガーマネジメントとは、イライラや怒りの感情と上手に付き合うための心理教育です。自分のイライラや怒りの原因を理解し、ポジティブな方向に持っていくための訓練をします。自分や子どもにあるリスク要因を認識し、感情が高ぶったときの対処法をあらかじめ考えておくと自分の感情をコントロールしやすくなります。アンガーマネジメントは日本アンガーマネジメント協会が行っている研修や、関連図書で学ぶことができます。困っているときにどのように対処するか、どこに相談するのかを知っておくことで、解決の糸口が見つかるかもしれません。参考:愛の鞭ゼロ作戦|厚生労働省参考:アンガーマネジメントとは|日本アンガーマネジメント協会参考図書:監修/日本アンガーマネジメント協会,著者/長縄 史子, 篠 真希 , 小尻 美奈『ママのアンガーマネジメント: 子育てのイライラスッキリ 8つのマジック 』(合同出版・2017年)まとめ出典 : 虐待は、保護者が故意に子どもに危害を加えるというイメージがあります。しかし、実際には虐待をしたくてしている保護者は少ないのではないでしょうか。もちろん子どもを傷つける行為自体は決して許されるものではありません。しかし、その背景に目を配ると、実は子育てに悩んでいて、どうすればいいのか分からずに虐待をしてしまっている人も多いのです。子育ての悩みと言っても子どもの問題や保護者自身の問題、社会や環境にある問題など、様々な要素が複雑に絡み合っているために本人では解決が難しい場合がほとんどでしょう。そのような困りごとを抱えている家族を救うためには、周囲の人の通告が一番重要な役割を担っています。通告と言うと、その過程に与える影響が気になりためらってしまう人もいるのではないでしょうか。けれども、通告は”悪い親“を罰するためではなく、困っている家庭を救うための手段です。親子の支援と早期発見が子どもの健やかな成長には必要です。虐待について知り、勇気を持って行動に移せる人が増えてほしいと思います。
2017年08月18日熱性けいれんとは?出典 : 熱性けいれんとは、38℃以上の発熱に伴って起きるけいれんのことを指し、「ひきつけ」と呼ばれることもあります。生後6ヶ月~5歳の乳幼児期に発症することが多いとされており、発症率は7~11%ほどと言われています。発熱していた子どもが突然ブルブルとけいれんをはじめたら驚き動揺してしまいますよね。しかし実は、熱性けいれんは多くの場合、正しい知識を持っていれば冷静に対応することができます。本記事では、熱性けいれんが起きた場合の対処法、救急車を呼ぶ判断基準、似た症状を持つ「てんかん」との違いなどについて解説します。参考:「公益社団法人 母子健康協会」参考:「熱性けいれん診療ガイドライン2015(日本小児神経学会,2015)」参考:「すべてわかるこどものてんかん(皆川公夫,2014)」熱性けいれんの原因出典 : 熱性けいれんは風邪や感染症などによって体温が急激に上昇したときに脳がけいれんを起こしやすい状態になるために起こります。どうして熱が上がるとけいれんが起きやすくなるのかについて詳しい原因は分かっていませんが、発達途中の子どもの脳は高い熱に鋭く反応してしまうのではないかと考えられています。また熱性けいれんを発症する体質は、親やきょうだい間で家族性があるともいわれています。ただし家族に熱性けいれんを発症した人がいたとしても必ずしも発症するわけではありません。熱性けいれんの種類と症状出典 : 熱性けいれんには「単純型熱性けいれん」と「複雑型熱性けいれん」の2つの種類があります。ほとんどの例が単純型で、複雑型は1割ほどと言われています。単純型は良性の熱性けいれんなので後遺症が残ることはほとんどなく自然と治ります。一方、複雑型熱性けいれんは後にてんかんが発症する可能性があるので、場合によっては治療が必要になります。そのため、熱性けいれんが起きたときには複雑型かどうかを見極めることが重要です。その際、けいれんの様子、時間、回数が判断のポイントとなります。・全身でけいれんせず、体の一部または左右非対称のけいれんが起きる・発作が15分以上持続する・24時間以内もしくは発熱中にけいれん発作を数回にわたって再発するこのいずれか1つがみられる場合は複雑型熱性けいれんとなります。複雑型の疑いがある場合、検査を受けることが推奨されています。さきほども述べたように、熱性けいれんはそのほとんどが単純型です。単純型の場合、正しい対処を行えば後に大きな後遺症を負う危険性も少ないため、あまり大きな心配をする必要はありません。熱性けいれんが起きたときの対処法は、次の章で解説します。参考:「すべてわかるこどものてんかん(皆川公夫,2014)」参考:てんかん発作とけいれん発作の違い|大塚製薬 てんかんinfo参考:「熱性けいれん診療ガイドライン2015(日本小児神経学会,2015)」熱性けいれんが目の前で起こったときの対処法出典 : 子どもが突然けいれんを起こし、意識を失ったりしたら、驚いてしまう保護者の方も多いのではないかと思います。しかし、正しい知識を持っていれば冷静に対処することができます。子どもが熱性けいれんを起こしたときには、以下のような対処法を実践してください。<けいれん時の対処法>・首の周りなどを締め付けないように衣服を緩めてください・抱きかかえず、平らなところに寝かせてください・嘔吐や口の中に固形物がある場合は、顔を左に向けて吐いた物が気道に詰まらないようにしてください・口や鼻の周りの吐物を拭き取ってください・診察時にそなえて、けいれんの様子(左右差)や持続時間、体温などを確認しておいてください。余裕があれば不謹慎だと思わずに動画などを撮影してください(診察時、てんかんとの鑑別に役立ちます)。<してはいけないこと>・大声で名前を呼んだり、身体を揺すったりしない(刺激となり、けいれんが長引く場合があります)・「舌を噛まないように」と口の中に物を入れたりしない(熱性けいれんで舌を噛むことはほとんどありません。また、噛む力はかなり強いため、ケガをする恐れがあります)多くの場合、熱性けいれんは数分以内に治まります。数分以内で治まるけいれんであれば、ほとんどのケースにおいて救急車を呼んだり病院に行ったりする必要はありません。しかし中には、緊急性が高く救急車を呼ばなければならないケースや、緊急性は高くないが複雑型の疑いがあり検査の必要があるためけいれんが治まったあとに速やかに病院へ行ったほうがよいケースがあります。緊急性を判断する上では以下の目安を参考にしてみてください。【救急車を呼ぶ】・5分以上けいれんが続く・けいれんが終わったが、その後も意識障害が続く(睡眠とは別)【病院へ行く】・38℃より低い熱でけいれんを起こした・全身けいれんではなく、体の一部または左右非対称なけいれんがある【保護者がパニックで判断しにくい場合】・小児救急電話相談(#8000)に電話相談をする小児救急電話相談は厚生労働省がすすめる相談事業です。#8000番に電話すると、お住まいの都道府県の相談窓口つながります。そこで小児科医師・看護師からお子さんの症状に応じた適切な対処の仕方や受診する病院などのアドバイスを受けることができます。熱性けいれん時以外にも使用することができます。#8000番に電話をして状況を伝えることで、医師や看護師の適切な指示を受けることができ、子どもの保護者も、その場の対処や救急車・通院の判断を行いやすくなります。参考:小児救急電話相談事業(#8000)について|厚生労働省熱性けいれんの治療や予防法ってあるの?出典 : 熱性けいれんは一過性のものが多いため、治療をせずに成長とともに自然に治っていくのを待ちます。しかし1度に起こるけいれんの時間が長かったりする場合は座薬による治療をすすめられる場合があります。複雑型熱性けいれんによる部分発作(体の一部だけがけいれんする発作)が24時間以内に2回以上反復した場合やけいれんが5~10分以上続く場合に薬物治療の目安とされています。けいれん状態が長く続くほど危険な状態になっていくため、座薬(ダイアップ)を投与しけいれんを治めます。また家族に熱性けいれんになったことがある人がいる場合や、熱性けいれんの発症前から神経学的異常・発達遅滞がある人の場合は、座薬を使用することが多いです。出典:ダイアップ坐薬|独立行政法人医薬品医療機器総合機構参考:「熱性けいれん診療ガイドライン2015(日本小児神経学会,2015)」熱性けいれんは高熱が出ない限り発症することはありません。高熱が伴う風邪やインフルエンザなどの感染症に感染することを予防してください。日々の手洗い・うがいを徹底することが大切です。なお予防接種などを積極的に受けることもおすすめします。発熱時に解熱剤を使用することも効果的です。しかし解熱剤自体には、熱性けいれんを抑える効能はありません。参考:「熱性けいれん診療ガイドライン2015(日本小児神経学会,2015)」熱性けいれんとてんかんの違い、熱性けいれんと似ている病気って?出典 : 同じようにけいれんを症状とする疾患にてんかんがあります。てんかんとは、大脳の神経細胞が過剰に興奮することで発作が起こる慢性的な脳の疾患のことです。熱性けいれんが起こるのは主に発熱時に限られますが、てんかんの場合は発熱時以外にも発作が起こります。また熱性けいれんは主に乳幼児期に限って発症するのに対し、てんかんは発症してから長く治療し続ける疾患です。てんかんは、意識を失い全身をけいれんさせる大発作、身体の一部がピクッと動く発作、話の途中でぼんやりしてしまう発作などがあり、必ずしもけいれんを伴うものではないことも特徴です。一般的なてんかん発症率の0.5~1%に対して、熱性けいれんが発症した後のてんかんの発症率は2~7.5%程度といわれています。このため、何らかの関係が存在すると考えられていますが、詳しいことはわかっていません。参考:「熱性けいれん診療ガイドライン2015(日本小児神経学会,2015)」髄膜炎や脳症は熱性けいれんのように発熱とけいれんが伴います。髄膜は脳や脊椎を覆っている膜です。髄膜が炎症することによって高熱、激しい頭痛、悪寒、嘔吐など風邪に似た症状が発症し、けいれんや意識障害を引き起こす場合も珍しくありません。年間1000人の乳幼児が感染する疾患です。脳症はウイルスが直接脳に感染し、炎症を起こすことによって発症する疾患です。髄膜炎と同様に高熱やけいれん、意識障害がおこります。多いときには年間500人が発症し、1歳をピークに幼児期に感染者が多い疾患です。参考:細菌性髄膜炎とは|国立感染症研究所 NIID参考:痙攣重積型(二相性)急性脳症|難病情報センター熱性けいれんの検査出典 : 単純型熱性けいれんの場合は自然と治るため特に問題はありませんが、複雑型熱性けいれんの場合はてんかんなどとの合併症の疑いがあるため検査を行います。検査を行うのは大体2回目のけいれんが起こった後だといわれています。初めてのけいれんでパニックを起こしている状態でよく観察できていない場合や、けいれんが1回だけで終わる人もいるためです。・てんかんや急性脳症との鑑別が必要なとき発達の遅れ、発作後のマヒ、複雑型熱性けいれんで部分発作があった場合はCTとMRIを行います。・細菌性髄膜炎との鑑別が必要なとき髄膜刺激症状と30分以上の意識障害が伴う場合には髄膜検査を行います。髄膜刺激症状とは首の硬直や膝を曲げた状態で股関節を直角に屈曲し、そのまま膝を伸ばそうとすると抵抗があることをいいます(ケルニッヒ徴候)などがあります。その他にも医師が必要と認める検査を受けることがあります。まとめ出典 : 熱性けいれんを初めて目の当たりにすると、そのショッキングな症状に保護者や周囲の人はパニックを起こしてしまうこともあります。熱性けいれんの70~85%が一過性のもので再発することはないといわれていますが、保護者は子どもが発熱する度にいつ再発するか分からないという恐怖心が植え付けられます。しかしけいれんは数分で治まり、脳の発達によって5~6歳までに発症しなくなるといわれていますし、熱性けいれんは10人に1人がかかるような日常にありふれた疾患のひとつです。大きな病気ではないので安心して、その都度落ち着いて対応することを心がけましょう。熱性けいれんを起こさないためにも日頃から風邪や感染症を予防することは大切です。子どもだけではなく、周囲の大人たちも予防につとめましょう。もし熱性けいれんが起こった場合には、#8000番を利用するなど冷静な判断で対処・判断をしてください。はじめてけいれんが起こった際や単純型・複雑型どちらのけいれんか判断できない場合などは、迷わず病院へ行くことをおすすめします。
2017年08月17日こんにちは。エッセイストで経済思想史家の鈴木かつよしです。2016年の2月に『保育園落ちた日本死ね!!!』と題した匿名のブログが大きな話題を呼んだことは、パピマミ読者のみなさんにとっても記憶に新しいことと思います。政府による少子化対策が始まってから四半世紀がたとうとしていますが、一向に成果が上がらないわが国の現実は、「何か根本的な部分で勘違いをしているんじゃないか?」と思ってしまうほど深刻です。助産婦さん向けの医療専門誌である『助産雑誌』では、2014年に「あなたが有効だと思う少子化対策とは?」という質問に対する回答の調査結果を誌面で発表しましたが、それによるとひと口に「少子化対策」といっても、正社員のママ・パパと非正社員のママ・パパとでは必ずしも同じ少子化対策を求めているわけではない ことが明らかになっています。筆者は、“非正規で働くママ・パパが本当に求めているもの”に目を向けない限り今後も大きな成果は期待できないであろうという理由から、今回は彼女(彼)たちの少子化対策への本音にスポットをあてて考えてみたいと思います。●本音その1……働く女性の多くが非正規なのに正社員しか産休育休の恩恵を受けられない月刊『助産雑誌』2014年3月号・4月号では、“少子化対策に対する声”のひとつとして、次のような“子どものいない既婚女性”の本音を紹介しています。**********『働く女性の多くが派遣・パートなどの非正規雇用にもかかわらず、正規雇用者のみしか産休育休の恩恵を受けられない。共働きしなければ子どもを育てるだけの十分な資金も得られないのに、妊娠したら辞めさせられてしまう』(女性/既婚、子どもなし/31~35歳/非正規雇用=派遣・契約社員)**********たしかに2017年6月27日に厚生労働省が発表した、平成28(2016)年版の『国民生活基礎調査の概況』によると、わが国の“働く女性”の57.8%は「非正規雇用」であることがわかっています。働いている女性の6割は正社員・正職員ではない のです。にもかかわらず、ほとんどの企業で産休や育休の制度は正社員ないしそれに準ずる人にしか適用されていないというのが現実です。これでは“片手落ち”どころか、政策・制度そのものが一部の働く女性しか視野に入れていないということになってしまいます。継続的に働く意思があり勤務態度にも問題ない人であれば、非正社員であっても有給休暇と同じように働く人の権利として産休や育休の制度が適用されるようにするべきです。それすらもできないというのであれば、そのような行政は「本気で子どもたちを育てようとする気や少子化を脱しようとする気がない」と言われても仕方がないのではありませんでしょうか。●本音その2……低すぎる非正社員の賃金で“子どもを大学に行かせられるのか”が不安!『助産雑誌』同号では次のような“子どもがいる非正規雇用のママ・パパ”の本音についても掲載しています。2つご紹介させていただきます。**********『子どもをもつか、もつ場合何人産むかを考えるとき、いちばんネックになるのは「大学に行かせられるか?」だと思うし、共働きする子もち夫婦の多くが「進学の費用を蓄えるため」に働いている気がする』(既婚/子どもあり/非正規雇用=パート・アルバイト)『教育費がいちばんきつい10代の子育てに金銭的支援が少ない。子育てして、自分の財布がさみしくなれば、老後が不安。今のシステムだと次世代が年金を支えるのだから、子育てしない人が得をする。不公平感がある』(女性/既婚、子どもあり/36~40歳/非正規雇用=派遣・契約社員)**********最初の方は性別非公開ですのでパパかもしれません。パパであるにせよママであるにせよ、非正規で働く人に支払われているわが国の企業・団体からの賃金が低すぎることは間違いなく、西欧諸国などで見られる“生活可能賃金”的な概念が完全に欠如している と筆者も思います。正社員のパパやママが必要と考える少子化対策と決定的に違う点は、「少なすぎる収入の問題をどうにかしてほしい」という点でしょう。フランスなどでは「非正社員は経営側の都合でいつでも解雇されるリスクを負っている」という理由から、非正社員の方が正社員よりも時給換算では高くなる賃金を受け取っています。わが国でそこまでの先進的な考え方を求めるのは難しいにしても、フルに働いても月収が10万円台半ばという非正社員に対する賃金の現実は、「非正規は子どもを持つな」と言っているのに等しいと思います。非正規雇用の人の最低時給を生活可能水準に引き上げるとか、給付型奨学金の制度や10代の子どもを持つ非・高収入世帯への現金給付の制度を拡充するといった抜本的な少子化対策を実行していかないことには、わが国の少子化傾向に歯止めをかけることはできないでしょう。●正規雇用の人たちの意見も聞いてみましょう同誌同号に掲載された数多くのママ・パパの“本音”のうち、終わりに正規雇用の人たちの意見もご紹介しておきましょう。**********『まずは待機児童をなんとかしてもらいたいです。私は都内在住で、子どもが1歳で仕事に復帰する際は、近所の保育園は公立・民間とも全滅で、5駅先の保育園まで半年かけて通っていました』(女性/既婚、子どもあり/41~45歳/正規雇用)『子どもは社会全体で育てると言う観念がない国である。「なぜ自分たちが払った税金から助成するのか納得できない」とよく言われる。社会全体がそういう空気であり、支援うんぬんではなくて、そこがいちばんネックであると感じている。義務教育の時点でそういうことを教育する必要性を感じる』(女性/既婚、子どもあり/31~35歳/正規雇用)**********いかがでしょう。何かお気づきになりませんでしょうか。少子化対策として待機児童問題の解消を切望しているのはむしろ正規雇用層の人たち であり、非正規雇用の人たちにとってはそれ以前に「絶対的に収入が少なすぎること」「子どもを持ちたくてもまっとうに育てていけるだけの賃金が得られていないこと」「今後もその希望がないこと」こそが何よりも問題なのだということが、正規雇用の人たちのお話を聞くことによって逆に浮き彫りになったのではないでしょうか。その意味では、二番目の女性のご意見も貴重です。「努力が足りないから非正規雇用から脱することができないのだ。自業自得である」的な見解がネット上などで一定の支持を得るわが国は、少なからず病んでいると筆者も思います。筆者の年齢になってくると、どんなに元気だった人にも等しく“老い”が訪れることが実感として感じられるようになってきます。そのときに世の中が極端な少子化傾向にあったのでは、自分たちが暮らす社会の将来に希望が見えません。しかるべき立場にある人が率先して「子どもは社会全体で育てるもの」という考え方を示すべきです。二番目の正規雇用の女性がおっしゃるように、それこそが根本的な少子化対策であるような気がします。【参考文献】・『助産雑誌(2014年3月号・4月号)』●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)●モデル/KUMI(陸人くん、花音ちゃん)
2017年08月15日めまぐるしいけど愛おしい、空回り母ちゃんの日々
ヲタママだっていーじゃない!
ムスメちゃんとオコメちゃん