専門家・プロ:渡邉純子(コドモット)中学生の6割弱が使っているスマホ※1。いまスマホはコミュニケーションや遊びの場面のみならず、学びにも使われはじめています。スマホを学習に活用する先端的なサービスとして、総務省の情報通信白書にもとりあげられた「スタディサプリ」※2。スタディサプリは、株式会社リクルートマーケティングパートナーズが運営する有料の授業動画サービスです。家庭だけでなく学校でも利用が広がっているスタディサプリで、子どもたちはどんな学びを実現しているのでしょうか。スタディサプリを含め、次世代の教育を考える目的で設立されているリクルート次世代教育研究院の院長、小宮山利恵子さんに話を聞きました。※1内閣府平成29年度青少年のインターネット利用環境実態調査より※2総務省平成28年版情報通信白書小宮山利恵子(こみやまりえこ)リクルート次世代教育研究院院長。同研究院はリクルートマーケティングパートナーズにおける次世代の教育を考える調査研究機関で、小宮山さんは立ち上げからかかわり、未来の教育を研究している。超党派国会議員連盟「教育におけるICT利活用促進をめざす議員連盟」有識者アドバイザー。2018年8月より東京学芸大学客員准教授。第1回国内外で累計約74万人が利用している動画授業とは未来の学びについて研究している小宮山利恵子さん渡邉:スタディサプリとはどんなサービスなのですか?小宮山:スタディサプリは、月額980円で5教科18科目の授業動画が見放題、ドリルが解き放題というオンラインサービスです。2011年に受験サプリという名称でサービスを開始し、2016年にスタディサプリとブランド名を変えて展開しています。有料会員の数は、2017年度、国内の累計で約64万人です。Quipperというブランド名で、インドネシア、フィリピン、メキシコの3カ国でもサービスしていて、海外でも約10万人に使っていただいています。講座は小学校、中学校、高校、大学受験対策まであります。もともと受験対策として始まっているので、高校生の利用が多いのですが、小学生でも4年生から使っていただけるようになっています。渡邉:どのような背景でスタディサプリは生まれたのでしょうか。小宮山:現在の社長の山口が教育の課題を追及し全国をまわるうち、経済格差や地理的な格差が教育環境格差になってしまっている、それをどうにか改善したいという思いで事業を立ち上げました。経済的なことでいうと、塾に行けば月々1万円はかかってしまいますよね。でもご家庭によっては月1万円の支出は大きい。さらに夏休みや冬休みの講習も加わると、かなり大きな支出になってしまいます。地理的なことでいうと、たとえば、離島で人口減少がおきて、島に1校しかない高校が廃校寸前になってしまったり、塾がなく、大学受験を指導できる先生もあまりいないということもあります。こういった経済格差、地理的格差を授業動画のオンラインサービスでなくしていきたい、というところからスタディサプリは始まりました。スタディサプリは家でも、どこでも学べるので、学校に通えない子、通いたくない子たちにも学ぶ場を提供できることから、熊本地震などの被災地の学習支援や、名古屋市の不登校支援も行なっています。渡邉:一般的な使われ方の流れを、小学生、中学生を例にして教えてください。小宮山:まずタブレットやスマホを持ってきて、スタディサプリのアプリもしくはサイトを立ち上げて、自分の学年と使っている教科書を選びます。中学生向けの講座では、動画やドリルは教科書ごとの内容になっていますので、親近感をもって取り組めます。中学3年生向けの英語の授業動画小宮山:それから動画を見始めます。動画は単元ごとに基礎編、応用編にわかれています。小学生向けには、入門編もご用意があります。自分の好きなものやテスト前に受けたいものを選んで動画を見れば、その単元が受講できます。テキストも料金に含まれているので、動画の下にあるボタンでテキストのPDFをダウンロードして自宅で印刷でき、動画の要点をメモしたり、筆記で復習できるようになっています。紙のテキストがほしい方には、別途料金はかかりますが、冊子にしたものもご用意しています。テキストをダウンロードして、動画の要点をメモしたり、筆記で復習したりできる小宮山:動画は1本15分前後です。単元によって動画の本数は違いますが、動画を見たあとにオンラインで確認テストを解くという順番で取り組みます。渡邉:確認テストはその場で自動で採点されるんですね。小宮山:はい、そうです。そして、どこの単元の動画を何分見たか、確認テストの正解率がどれくらいかをまとめたものを、翌日保護者にお知らせします。ですから、「よくできていたね」とか、「昨日やってたところ、50%くらいしかできてなかったけど、なにが難しかった?」と保護者がお子さんに声かけすることができます。そして、確認テストの正解率が低くても、「確認テストは間違ったけど、もう1回動画を見直したらわかった」というように、お子さんが理解していることがわかったら、次のステップに進んでみて、ということもできます。渡邉:自分の学年の動画しか見られないのですか?小宮山:小学校4年生の講座から大学受験講座まで、約4万本すべての動画が見放題です。小宮山:わたしには小学校5年生の子どもがいて、スタディサプリを使っているのですが、先取り学習で中学1年生の数学を学習しています。小学校を卒業するころには、中学3年生までの数学が終わる予定です。でも、もし小学校4年生の算数でわからないところがあれば、そこに戻って学習することもできるわけです。これはいままでになかったことだと思います。英語とか算数、数学は積み上げ型なので、1つわからなくなると次もわからなくなってしまいます。どこでつまずいたかわからない、というのではなくて、確認テストの結果を見て、間違えた部分は再度問題に挑戦したり、すぐに講義動画に戻ることもできます。この単元のこの部分がわかっていない、ということがはっきりすれば先に進める確率が高くなる。ですから、つまずきの予防に効果的なのではないかと思います。スタディサプリは究極の個別習熟度別学習なんです。スタディサプリの良いところは、一律に問題集を解くのではなく、自分のペースで自分の習熟度に合わせて取り組めるという点です。このことが、テクノロジーを使った効果の1つだと思います。――スタディサプリは究極の個別習熟度別学習だという小宮山さん。学年のしばりにとらわれず、理解度に合わせて視聴する動画を選べる自由度の高さは魅力的です。次回はスタディサプリのような授業動画で自習することで、子どもたちの学びがどう変化していくのか聞きます。第1回国内外で累計約74万人が利用している動画授業とは第2回スタディサプリで子どもの学びはどう変わるのか第3回スタディサプリで学校はどう変わるのか第4回教育とテクノロジーの融合がひらく子どもの未来とは?渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)株式会社コドモット代表取締役社長。NTT在籍時代の2001年、子ども向けポータルサイト「キッズgoo」を立ち上げ、同サイトでデジタルコンテンツグランプリ・エデュテイメント賞受賞。独立後は小学生向けのコンテンツを中心に、企業の子ども向けWebサイトや公共団体の子ども向けツールなどの企画制作を数多く手がける。一男一女の母。
2018年09月07日【ニュース】特別支援学校の教材を製品化したい!クラウドファンディングの取り組みが開始Upload By 発達ナビニュース道具で発達を支援する「トビラコ」は、発達に凸凹がある子どもを支援するツールをセレクトし、ネットで販売しています。今回、トビラコは、筑波大学附属大塚特別支援学校で先生が手づくりし活用していた教材を製品化しようとしています。それは、「特別支援学校で使われる教材こそ、質が高く、きちんとしたエビデンスが必要で、子どもが手にとりたくなるデザインであることが大切」だと考えているからです。Upload By 発達ナビニュース現在、この製品化への応援を、クラウドファンディングで募っているそう。目標金額は100万円!教材についてや、子どもたちが教材を使うことでどんな変化があったかなど、詳しくはこちら↓で紹介しています。トビラコ【映画】ダコタ・ファニングが自閉症の女の子を演じる「500ページの夢の束」Upload By 発達ナビニュースダコタ・ファニングが演じる自閉症のある少女ウェンディは「スター・トレック」が大好きでその知識なら誰にだって負けない。そんな彼女が「スター・トレック」の脚本コンテストに応募するためハリウッドまで旅に出るストーリーです。人生の目標のために、つまずきながらも彼女なりの一歩を踏み出す姿に勇気と感動をもらえます!【公開日】9月7日(金)【上映】東京・新宿ピカデリーほかで全国ロードショー※東京・大阪で各1回ずつ、視覚や聴覚などに過敏さをもつ人のための、センサーフレンドリーな上映も予定だそう。ページの夢の束 | キノフィルム【イベント】絵本ではじめてクラシック「そらコンサート」(東京都)Upload By 発達ナビニュースじっとしてなくても、大丈夫!第6回をむかえる「そらコンサート」は、親子で安心して音楽が楽しめます。ゆったりとした空間の中で絵本や手遊びを使って上質なクラシックデビューをしてみませんか?また「そらマーケット」も同時開催。不要になった絵本を使った無料のお買い物体験です。おもちゃのお金を使ったお買い物の練習もできます。Upload By 発達ナビニュース【対象】新生児~小学生(特に3~6歳程度)の子どもとその保護者の方【日時】10月13日(土) 10:15~11:30 (10:00受付開始)【場所】三茶しゃれなあどホール(世田谷区太子堂2-16-7 5階)【参加費】大人:1000円 / 小学生以下お子様:無料【申し込み】下記URLからお申し込みください【イベント】「第11回 日本フリースクール大会」(東京都)出典 : 不登校の子どもが通うイメージの「フリースクール」ですが、実は既存の学校とは違う、子ども中心の学びの場となっています。このイベントの1日目には「フリースクール」がどんな理念のもと、どのように活動しているのかを知り、不登校の子どもたちに必要な支援を考えるきっかけや、実際にフリースクールに通う子どもたちの声が聞けます。2日目では「学びとは何か」「フリースクールと進路」「世界のフリースクールとホームエデュケーション」「フリースクールのつくり方と運営」「適応指導教室との連携」「実践交流『他のフリースクールではどうなの?』」の6つのテーマにそってディスカッションを行ったり、子どもの多様な学びを考えるワークショップが開催されます。【日時】9月22日(土)13:00~16:30、23日(日)10:00~16:15【場所】東洋大学白山キャンパス(都営地下鉄三田線「白山」駅A1出口徒歩5分)【参加費】両日参加:8000円(9/14までの申込み&振込で6000円)、1日参加:5000円【内容】■9月22日(土)・基調講演「フリースクールとは何か」奥地圭子さん(NPO法人フリースクール全国ネットワーク代表理事、東京シューレ代表)・子どもシンポジウム「学校に行かなかったワケ、フリースクールに行ったワケ」司会:江川和弥さん(寺子屋方丈舎代表)、シンポジスト:フリースクールに通う子ども数名■9月23日(日)・テーマ別分科会・ワークショップ「子どもの多様な学びをつくろう」【申し込み】<氏名><お立場またはご所属><連絡先(電子メールまたは電話番号、FAX番号)><参加希望日程>をご明記のうえ、下記の電子メールまたはFAX・郵送にてお申し込みください。【問い合わせ】NPO法人フリースクール全国ネットワークTEL 03-5924-0525 E-mail:info@freeschoolnetwork.jp第11回日本フリースクール大会 | NPO法人フリースクール全国ネットワーク【イベント】「障がい者とその家族のための年金教室」(東京都)出典 : 障害年金の基本について、専門家である社会保険労務士の方がわかりやすい資料を用いて解説してくれる勉強会です。なかなか理解しようとしても難しい障害年金ですが、個別相談の時間も設けられ疑問が解消できる機会になっています。関心のある方、お困りの方は足を運んでみてはいかがでしょうか。【日時】9月17日(月・祝) 13:00~16:30 (12:30~開場)【場所】練馬区立区民・産業プラザ研修室1 (練馬区練馬1-17-1 Coconeri 3階)【参加費】障害者の方とその家族は無料(社労士などその他の方は、1000円)【内容】・当事者からのお話:東久留米市市議会議員 宮川豊史 さん・個別相談コーナー(申込み時に予約必須)【申し込み】電話・メールにて担当者までご連絡ください【問い合わせ】たまごの会年金教室担当:社会保険労務士 石井良美携帯:080-4953-2911 メール:nenkin.up@gmail.com
2018年09月03日フリースクールを立ち上げたい!その思いは大きな流れになって2018年4月から発達に個性のある子たちのフリースクール「IFラボ」を開いています。前回のコラムでは、息子が不登校になって素敵な居場所を見つけ、フリースクールをたちあげようという気持ちにいたるまでをお伝えしました。最初は不登校の息子に合う場所をつくりたいという一心でしたが、実際にフリースクールを立ち上げ、子ども達が通ってきてくれるようになると、いつの間にか自分では止められない大きな流れに…。ここでは、試行錯誤した準備や、運営開始してからの様子をご紹介します。どんなフリースクールにする?出典 : フリースクールを立ち上げようと考えた私は、同じ思いの仲間をみつけ、設立に向けて準備を始めました。まず、フリースクール設立に興味のある大人だけで、どんなフリースクールにしたいかを話し合いました。療育施設ではないけれど、発達に個性がある子を受け入れる場合にどんな課題が考えられるのか?どんな形式のフリースクールにするのか?などなど、何度も議論を重ねました。その結果、「何でも好きなことをしてもいい居場所ではなくて、プロジェクト形式で学びを広げ深めていける場所にしよう」「私たち大人は先生ではなく伴走者になろう」という方針を決めました。しかし!大前提の結論は…「子どもが来てみないと分からないんじゃない(笑)」!?確かにそうなのです。大人が寄り集まって議論をしても、実際の子どもたちの反応はまったく分かりません。そこで、一緒に運営にかかわってくれているお母さんの子ども、Yくんに運営スタート前のフリースクールに、テストとして週1回、来てもらうことにしました。子どもと一緒にフリースクールをつくろう出典 : はじめて遊びに来てくれたYくん、恥ずかしそうにしていて、あまり話もしませんでした。しかし何回か一緒に過ごすうちに、「ここはなんだか落ち着く~」と打ち解けてくれるように♪プログラミングではコンテストの受賞歴もあるYくん。でも、プログラミングに限らずどんな分野の話にも興味津々です。フリースクールを手伝ってくれている大学生が、試験勉強のために統計の本を読んでいると統計の話が広がり、心理学の話になれば目を輝かせてIQについて質問をします。「大人が設定しなくても、子どもたちが抱く興味から学びは広がる」私たちはそう確信し、大人がプロジェクトを設定するのではなく、子どもの興味で生まれたプロジェクトに寄り添いながら進めていくことにしました。お互いの「好きなもの」を尊重しあえる仲間ができたUpload By 赤沼美里さて、子どもが主体的に学んでいく過程を確認できましたが、子どもたちが増えるとどんな風になるんだろう…子どもひとりではイメージがつかめません。そこで、Yくんと同じ学校に通っていて、Yくんの隣のクラスに在籍しているSくんを招待することにしました。SくんもYくんと同じように学校になじめないでいたそうです。Y&SコンビはIFラボにくるなり、すぐに打ち解けて仲良しに!Yくんが好きなのはプログラミング、Sくんはドローンです。2人の興味は異なるものの、互いの興味あるものを見せあって話しあって…楽しそう!あとで聞くと、学校ではカリキュラムがキチキチと決まっていて、自分の好きなことを自由に話す時間がなかったそうです。また、たとえ時間があっても、分かってもらえる友だちが見つからないので話しも盛り上がらず、毎日がつまらなかったと言っていました。「ずっと大人しか話し相手がいなかったから」といったYくんはニコニコ笑顔でした。友だちが見つかってふたりとも本当に楽しそうで、私まで嬉しくなった瞬間でした。大人は伴走者。プロジェクトは子ども主体でUpload By 赤沼美里IFラボの活動日は子どもたちの状況を考えて、週1から始めることにしました。オープン時間は、10時から15時まで。朝の会、午前の活動、お昼休み、午後の活動を行います。ワークショップや図書館に行くなどの活動がある場合以外は、当日の朝にその日にやることを確認します。朝みんなが集まったら、まずは朝の会です。当日やることを決めるほか、この1週間で楽しかったことや嬉しかったことをシェアします。最初は「ゲーム」だけだった回答が、今では「〇〇に行ってきた」とか「〇〇して楽しかった」とか、たくさんの楽しかったことを教えてくれるようになりました。朝の会でやることを決めたら、早速活動開始です!現在は、複数の子どもたち協働で「エレベータープロジェクト」がすすめられています。このプロジェクトでは、プログラミングを活用して制御可能なミニチュアエレベーターをつくってみようと、まずは段ボールで試作品をつくることからはじめました。このエレべープロジェクトのほかにも、さまざまなプロジェクトが立ち上がって動き出しています。ドローンで短編映画がつくりたい、自作PCをつくってみたい、ドローンで大会に出たい、プログラミングコンテストに出たい、会社をつくりたい、段ボールでシミュレーションゲームをつくりたい、飛行機の揚力を調べたい…などなど。週1の活動日では足りないくらい、子どもたちのやりたい気持ちはあふれています。私たちが口を挟む必要のないくらい、子どもたちの学びたい気持ちが大きいので、子どもが増えてもプロジェクト設定に問題はなさそう!むしろ、子どもたちが出会うことでどんな化学反応が起きるのか楽しみなくらいです。ただ、プロジェクトをすすめていくのには、やはり大人の伴走が必要です。1日の見通しが立たないと、何をしたら良いか分からなくなって不安になってしまう子や、時間の使い方が苦手な子、次の作業に切り替えるのが難しい特性のある子が参加しています。そのため週1の短い活動時間をどのように配分するのか、ToDoリストなど視覚的なツールを活用しながら、子どもたちが達成感を得られるように寄り添う努力をしています。ぼくたちがIFラボを宣伝するよ!自分たちでつくりあげるキャンプUpload By 赤沼美里そんななか、Y&Sくんがおもむろに「キャンプ計画を立ててもいいですか」と聞いてきました。「こんなに楽しいIFラボをもっとみんなに知って欲しい。夏休みにIFラボのキャンプで過ごして、9月からIFラボに来て欲しい。もしIFラボに来なくても、キャンプの楽しい思い出を胸に学校で頑張って欲しい」という子どもたちの願いから生まれた計画です。スケジュールから、ホームページでの告知まで、みんな子どもたちが企画・実施しています。1泊はIFラボで泊まりたいから、2泊目をアウトドアでキャンプにするという計画を立てていた子どもたち。2泊ともアウトドアが良いんじゃないかしら…とやんわり提案するも、「これがいい!」とのことで譲りません(笑)「自分たちで好きにやりたい」ということなので、失敗もふくめてたくさん経験してもらえたら良いなと思っています。キャンプがどうなったか、それは次回の記事でのお楽しみに!!「学ぶ場をつくりたい」という私の思いは、みんなの願いにUpload By 赤沼美里子どもたちも少しずつ増え、9月からは週に2回の活動日にしていく予定でいます。毎回、試行錯誤で「次はこうしていったら良いね」と子どもも含めた話し合いを大事にしています。IFラボを始めるまでは不安や心配の方がが多くて、「つくりたい」と考えてはいるものの、きっと実現できないだろうなぁとどこかで思っていました。でも、自分の気持ちを表明すると、賛同する仲間が集まってくれました。いつの間にか、私の希望や願いが他の人の希望や願いと重なり合って、小さな流れができていたのです。小さな流れができると、その流れを知った新しい仲間が賛同してくれて、さらに大きな流れになりました。そのうち、自分ではもう止められない流れになっていました。最初は息子・チー坊の学び場をと悩んできたことが、いつのまにかIFラボにきてくれている他の子どもたちの人生にも大きくかかわり、子どもたちの家族にもかかわるようになったことを痛感します。子どもたちの笑顔に接するたびに、この場を大切に育んでいかなくてはと強く思うようになりました。「ここに来るとなんだか落ち着く」「楽しくて、帰りたくない」「毎日オープンしないの?オープンしたら毎日来たいよ」「お母さん、僕生まれてはじめて毎日が楽しいんだけど、これってずっと続くのかな」「週1度、IFラボにくるのを楽しみに、毎日学校に行ってた」IFラボに来てくれている子どもたちの言葉は、私の宝物です。IFラボ(Infinite Future Lab)という名前は、子どもたちの無限の未来を願ってYくんと一緒に考えたものです。「学校が合わなくても、その子にあった居場所はきっとある」という信念は、変わっていません。だってIFラボにきてくれている子どもたちは、すごく楽しそうに自分から学んでいるから。学校以外の学ぶ場所や居場所がもっともっと増えて、子どもたちの笑顔が増えることを願っています。ラボ
2018年08月30日子どもが「学校に行きたくない」と言ったら、親はどのように対応すればいいのでしょうか。一度学校を休ませると不登校になってしまうのではと心配してしまうママも少なくないと思います。小学生の不登校の実情について伺った前回に引き続き、今回は、子どもの不登校に対して親ができることについて、不登校新聞の石井志昂編集長に話を聞きました。 「学校行きたくない」と言われたら(前編):子どもが追い込まれる危険日は夏休み明け の続きです。■不登校の原因特定より大切なことがある――前回、不登校の理由は複数あり、子ども自身もはっきりわからないことがあるとお聞きしました。親としては、ついその理由を特定させて学校に戻してあげたいと思ってしまうのですが…気持ちはよくわかるのですが、子ども自身も自分が学校に行けない理由がはっきりわかっていないのに、そこで「なぜ行きたくないの?」ときつく問われると、ますます追い込まれてしまいます。当事者のなかには、不登校の理由は不問でもいいのではないかという声もあるくらいなのです。――それでは、親にはまず何ができるのでしょうか。原因を特定させることよりも、まずは子どもを甘えさせてあげることが大切だと言われています。不登校というのは、よく子どもの甘えだと言われがちですが、親に甘え足りないからなるのだという専門家の意見もあるくらいなのです。親は子どもたちが頼れる心の安心基地でもあるのですが、ここが揺らいでしまうと、その先子どもが進んでいく道のなかで、いつかもっと大きな問題になってしまうこともあります。小学生のうちに甘えさせてあげれば、傷が深くないうちに子ども自身が満足して、成長につながるとも言えます。■「学校に行きたくない」サインを見抜くには――子どもが「学校に行きたくない」と言い始める前に、そうなりそうなサインというのはあるのでしょうか。小学生くらいの子どもの場合、必ず何かしらのサインを出していると思います。不登校の子をもつお母さんたちも、「そういえばあのときは…」と、あとから何かしらのサインを出していたことに気づく人が多いようです。不登校というのは、不登校になってからが問題なのではなくて、その前に子どもたちはすでに追い込まれて危険な状態になっているんですよね。だれにも言えない苦しみを、複数抱え込んでしまっている。そして、原因となっている学校から離れたいと、SOSを出して不登校になるんです。――具体的に、どのようなサインを出す子が多いのですか。「今日は学校やだな」とか、「もう無理」とか、何かしらの言葉を発している子もいます。また、落ち込んでいる表情をしている子も多いようで、学校が始まる月曜日と、休みの日の表情を比べると顔つきが全然違うというようなこともあります。――そのサインに気づいたら、どのように対応すればいいのでしょうか。まずは、「どうしたの?」と率直に聞いてあげることが大切です。その聞き方が重要で、親が子どもをなんとか学校に行かせようとコントロールしようという気持ちが働くと、子どもたちはそれを敏感に感じ取って、返事をしてくれないことが多いのです。親としては、まずは子どもを心配して「心配だな」と思いますよね。そしてその次に、「待てよ、この子不登校になってしまうのでは」と不安になり、先を見越して何とかそうならないようにと打算が働いてしまいます。その親の心の動きを子どもたちはすごく敏感に読み取ってしまいます。自分の心配する気持ちのままに、子どもたちに尋ねてみてください。■「学校に行きたくない」と言われたとき――では、子どもに「学校に行きたくない」と言われたときは、どのように子どもに声をかければいいのでしょうか。さきほどのサインが見られたときと同じで、心配して、「どうしたの」と聞いてあげましょう。そして、本人からつらいことを伝えてきたら、いっしょに悲しんであげましょう。じつはこれだけで十分なのです。――何か行動するというわけではなく、いっしょに悲しむだけでいいのですね。これは、子どもの気持ちの前に出てはいけないという鉄則に基づいています。「子どもの気持ちは今こうだろう」、「こうアドバイスしてこうさせよう」とすると、子どもたちは自分の気持ちをますます言えなくなってしまいます。不登校になる子どもたちは心が傷ついた状態なので、まずはその心が救われないといけません。いっしょに悲しんでくれる人がいて、それも自分の心の拠りどころである親がそうしてくれるということが大切です。――その先はどうしていけばいいのでしょうか。あとは、本人が必ず自分の幸せな道はどこにあるかと考えて、提案を出してきます。その提案を親は支えてあげて、いっしょに歩んでいってもらいたいですね。その道はおそらく紆余曲折あり、大変なこともありますが、子どもが自分で決めたことなので、しっかり進んでいけると思います。 ■「学校に行く」「行かない」どちらが正しい?――学校に行かせる、行かせない、どちらが正しいのでしょうか。ついこの2択で考えてしまいますが、じつは選択肢はいろいろあります。そして、子どもたちが自分で決めることが大切です。不登校の子も、中学校卒業と同時に、85%の子が高校に行くのです。私が知っている子で、小学校、中学校とずっと不登校だったけれど、フリースクールでできた友達が高校に行くから自分も行くと決めた子がいます。そんな単純な理由だけで、学校に戻ろうとする子もいます。ですから、学校に行く、行かないということにはそこまでこだわる必要はないのではないかと思っています。――文部科学省でも学校復帰にのみこだわらない対応の必要性にもとづいて、これまでの方針を見直す動きがありますね。そうなんです、教育支援センターやフリースクールへの通所は、これまであくまで学校復帰を目的としたものだとされてきました。それにより、学校の先生や親は子どもたちを学校に何とか戻そうとする、そして学校以外の受け入れ先は見つけにくいという不登校の子たちにとってつらい状況が続いてきたのです。これを見直して、学校復帰のみにこだわらない不登校対応を行っていこうという方針が決まったのは、とても重要なことです。学校に行かせないという選択肢がもっと普通のものとなっていけば、楽になる子どもたちもいるのではないかと思っています。――とくに夏休み明けは、子どもたちが学校へ行きづらくなる時期です。子どもが「学校に行きたくない」と言ったら、どのようにすればいいですか。これまでにお話したとおり、まずは心配して聞いてあげる。そして緊急性が高いと思ったら、思い切ってその日は休ませて、子どもといっしょにいてあげてもいいと思います。夏休み明けは、統計的にも突出して18歳以下の子が自殺する可能性が高く、子どもが追い込まれる危険な日だと言えるので。不登校になる前には、夏休みの宿題にも手がつかないということが多いそうです。言いづらいとは思いますが、親が「もういいんじゃない」と言ってあげてもいいのではないかと思うんです。そして、どうしても苦しそうだったら、先生に連絡して相談するのもひとつです。親はできるだけ子どもを追い込まないであげてほしいと考えています。■担任よりも適した親が相談できる場所がある――子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、親が相談できる場所はありますか?担任の先生に相談する親が多いのですが、不登校の子に対応した経験が少ないことも多く、あまりおすすめとは言えません。不登校については、フリースクールに聞くのが一番いいと思います。不登校の子どもたちをたくさん見てきた経験をもとに、相談に乗ってくれるはずです。また、不登校の子の親が集まる場に行くと、客観的に自らの状況が整理できますよ。あとは、信頼できる医師やカウンセラーに相談するのもいいと思います。――親たちに伝えたいことはありますか。不登校になることに対して、不安を感じている親も多いと思います。そして、実際になってしまって困っている人もいるでしょう。不登校は、子どもが弱い、怠けているなどと言われがちですが、そうではないのです。説明できなくても、本人にとっては学校に行けない理由があり、どうしても自分にとって曲げられない大切なことであります。不登校になると、本人も心に傷がつくが、それが癒えていく過程でたくさんのことを学びます。不登校は子どもの成長過程のひとつでもあるのです。その日々もたった一度きりのものなので、親と子どもで有意義に過ごしていってもらいたいと思っています。●相談先一覧 ・フリースクール全国ネットワーク ・NPO法人登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク ■石井志昂(いしい・しこう)さんプロフィール1982年東京都生まれ。中学校受験を機に学校生活が徐々にあわなくなり、教員、校則、いじめなどにより、中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からは創刊号から関わってきた『不登校新聞』のスタッフ。2006年から『不登校新聞』編集長。これまで、不登校の子どもや若者、親など300名以上に取材を行ってきた。 【同じテーマの連載はこちら】 樹木希林からの命のバトン この連載の全話を見る >>
2018年08月27日まもなく9月、小学生ママたちにとっては長い夏休みが終わりますが、一方で子どもたちは、楽しかった毎日が終わってしまうと嘆いている子もいるかもしれません。そしてなかには、夏休み明けの学校生活に対して憂鬱(ゆううつ)な気持ちを抱えている子もいるのではないでしょうか。夏休み明けは、子どもたちが学校に行くハードルが上がり、不登校になりやすい時期だと言えます。今回は、小学生の不登校の実情について不登校新聞の石井志昂(いしい しこう)編集長に話を聞きました。不登校新聞とは1998年に創刊された不登校に関する専門誌。当事者の視点を大切に、不登校についての情報を発信し続けている。不登校とは文部科学省は、「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくてもできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による事案を除いたもの」と定義している。■小学生での不登校になる、不登校の実情とは――小学生で不登校となる子はどれくらいいるのですか。2017年に文部科学省が発表した調査結果によると、小学生の不登校者は31,151人いて、割合としては0.4%、208人に1人だということがわかっています。学校に1ケタという数字で、けっして多いとは言えません。ですが、これまで20年ほど取材を続けてきて感じるのは、小学生の不登校というのは人数が少ないからこそ、親が孤立しやすく、なかなか対策が講じられないという問題があると感じています。――不登校の小学生数は、年々どのように変化しているのでしょうか。しばらく0.3%台を維持してきたのですが、この数年で0.4%台に増えてきています。20年前は0.24%だったことから比べると、かなり増えてきている印象ですね。■小学生が不登校になる原因――なぜ、小学生で不登校になってしまうのでしょうか。私は、その主な原因には5つあると考えています。それは、「いじめ」、「発達障害」「集団生活が合わない」、「人一倍敏感な気質」、「学校の管理の厳しさ」です。▼いじめ――小学校でのいじめとは、どういった内容なのでしょうか。驚かれるかもしれませんが、小学校1年生でもいじめは起こります。小学校低学年でも、腕力が支配しているような旧時代のいじめは起きていて、子どもたちの見た目から想像するような平和な世界ではないのです。ただ、子どもに「いじめを受けたか」と聞くと、クラスの半分くらいが受けたと言ったという話もあって、まだ意地悪といじめの区別はついていないように思います。――学年によって、いじめの質も変わるのですか。そうですね、小学校3~4年生くらいからは、現代的ないじめに切り替わってきます。クラスカーストがあって、女の子を中心にコミュニケーション操作が行われ、特定の子が孤立させられていくようないじめです。大人からはけっして見えない高度ないじめが行われている場合もあり、いじめられた子どもにとってはつらい経験になります。そうして、小学校から学校に行けなくなった、行かなくなったという話はよく耳にします。▼発達障害――発達障害があると、支援学級などでケアがあるのではないでしょうか。たとえば、発達障害があってもグレーゾーンと言われる状態で、支援学級に行くほどではない子も多くいます。その場合、ケアは十分に受けられるとはいえず、集団生活になじめないということがあるのです。――たとえばどのようなことが起きてしまうのでしょうか。私が聞いた事例では、ある発達障害のグレーゾーンだった子が、消しゴムの使い方がわからなかったんですね。その子は空気を読んで周りの子の使い方をまねすることが苦手でした。書いたところを消せないので、二重線で消していたら、先生に怒られてしまった。しかし、消しゴムの使い方はわからないままなので、何度も繰り返して…。先生の怒りがどんどん膨らんでしまったのです。そしてパニックを起こしてしまい、学校に行けなくなってしまった。こうした事例もよく見られます。学校がそうした子への関わり方を工夫できたらいいのですが、その受け皿ができていないのです。▼集団生活が合わない――集団生活が合わないとは、発達障害などの「合わせらない」こととは違うのですか。小学生でも大人びている子がいて、その中でも集団生活がばからしく感じてしまうという子がいます。お遊戯をさせられたりするのが屈辱でたまらないと感じ、学校から離れて行ってしまうことがあります。▼人一倍敏感な気質――敏感な気質で学校に行けないということもあるのですね。人一倍敏感な気質の子どもを、「ハイリー・センシティブ・チャイルド」という言葉で表します。略して「HSC」と言われることもあるのですが、ここ近年、こうした子どもたちの存在がわかってきて、私たちも何度か取材して記事にしてきました。すると、「やっと言葉にしてくれた。自分はHSCだったんだ」という反響があったのです。――「HSC」とは、たとえばどのようなことに敏感になるのでしょうか。典型的によく見られるのは、音に敏感になる子です。先生がだれかに大きな声で怒っていると、まるで自分が怒られているような感覚になって体が動かなくなってしまう、教室のザワザワした音が苦痛に感じるといいます。研究者の中では、5人に1人がこうした気質を持っているとされていて、病気や障害ではないのですが、本人たちにとってはかなり大きなダメージを受けると聞いています。そのほかにも臭いや気圧など、それぞれに敏感になる対象が違い、それが原因で学校生活が送れないという子がいるのです。そういう子は、虚弱体質だとか、臆病だとか言われがちなのですが、そうではなくて、変えることのできない気質なのだと、ぜひ周りが理解してあげたいところですね。▼学校の管理の厳しさ――学校の管理というのは、校則や決まりといったことでしょうか。取材を通じて、小学生に守らせる決まり、日々の細かい指導が近頃どんどん厳しくなっているんではないかと思っています。子どもたちの管理体制が厳しくなっているように感じ、それに対して子どもたちは合わせることが難しく、双方の亀裂が大きくなっているように思います。学校側が子どもたち1人ひとりに合わせて指導する余裕がなくなっていて、ある種の慢性的なパニック状態になっていると言えるかもしれません。 ■夏休み明けは一番注意が必要!――1年をとおして、不登校になりやすい時期というのはありますか。厚生労働省が発表している「自殺対策白書」によると、9月1日に18歳以下の日別自殺者数は突出して高くなっています。「自殺」というと大げさだと感じるかもしれませんが、これまで数多くの不登校の人たちと出会ってきて、この時期というのは不登校が始まる時期に限りなくイコールだと思っています。――この統計では、夏休みやゴールデンウィーク、冬休みなどが明ける時期に、自殺者が多くなっていますよね。不登校が始まるのも、休み明けの時期が多いということですか。そうですね、とくに夏休み明けは注意してあげてもらいたいです。■不登校になる理由はひとつじゃない――なぜ子どもたちは「学校に行きたくない」というのか、その理由は特定できるものなのでしょうか。それは難しいと思います。なぜなら、子どもたちが不登校になる理由はひとつだけではなく、3つくらいの理由が重なり合っているからです。子どもたち自身が、学校に行きたくない理由を説明するのが難しいと同時に、いじめられている場合は親に言いたくないと感じるものです。ですから、子どもの不登校の理由を見つけるのはなかなか容易なことではありません。――子ども自身も理由がわからないということがあるのですね。私が取材したなかで、小学生から不登校だった子がいるのですが、その人は話を聞くたびに不登校だった理由が変わったんです。約5年おきに取材をしていたのですが、初めは「雷が怖かったから」、次は「いじめられていたから」と話していて、いじめられていたと言いにくかったのだなと思っていました。しかし、その後「やっぱり雷が怖かった」と言っていて、よく話を聞くと彼はいわゆる「HSC」で、雷の音に敏感に反応していてパニックを起こし、それが理由でいじめにも遭っていたことがわかったのです。このように、子どもたちが学校に行けない理由は複数ある可能性があります。まずはそのことを知ってあげることが大切ですね。次回は、子どもの不登校に対して親ができることについて、引き続き石井編集長にお話をお伺いします。具体的な子どもとの向き合い方についても、ご紹介します。■石井志昂(いしい・しこう)さんプロフィール1982年東京都生まれ。中学校受験を機に学校生活が徐々にあわなくなり、教員、校則、いじめなどにより、中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からは創刊号から関わってきた『不登校新聞』のスタッフ。2006年から『不登校新聞』編集長。これまで、不登校の子どもや若者、親など300名以上に取材を行ってきた。【参考サイト】・文部科学省: 平成28年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」 ・厚生労働省: 平成26年度自殺対策白書 [PDF:234KB] 【同じテーマの連載はこちら】 樹木希林からの命のバトン この連載の全話を見る >>
2018年08月26日人間関係の問題がないところで始まった、息子の不登校出典 : 小学3年の息子は、現在、不登校中である。親である私が言うのもなんだが、息子は好かれやすいタイプの人間だと思う。もしかしたら好かれやすいというより、学校の児童数が少ないため、学年関係なく全体的に仲が良い、というのが大きいのかもしれないが。それにあやかって、私1人で近所を歩いていても、「ハルくん(息子の呼び名)のお母さん、こんにちは!」と、おそらく違う学年の児童さんからも声をかけてもらうことがしばしばある。息子も「多数派にすぐ傾いちゃう雰囲気が嫌だ」などと言っていたし、もしかしたら苦手な子もいたのかもしれない。しかし「一人ひとりのことは嫌いじゃない」とも明言しており、もちろん大好きな友達だっている。いじめだとか、人間関係のトラブルが具体的にあったわけではないところで、彼の不登校は始まったのだ。学校に行っていなくても、近所を歩けば同じ小学校に通う児童さんたちと顔を合わせることもある。「あ!ハルくんだ!」嬉しそうに駆け寄ってくる友達の姿を見て、少し照れくさそうに、でも同じくらい嬉しそうに応じる息子。「どこか悪いの?大丈夫?いつごろ学校に来られそう?」「んー、今は分からない」そのようなやりとりをして、朗らかに別れる。向こうも責め立てたくて学校に来る日を尋ねているわけではないし、息子もそれを理解しているから平然と答えている。「次に○○くんに会えるの、いつかなぁ?」なんて発言もしていたくらいだ。ところが、悪夢を見て私との分離不安を訴えるようになったころから、見知った顔に会うのを嫌がり始めた。「学校のことを聞かれるの、辛いな…」放課後の時間帯や休日に近所を歩くことを避けたがるようになった。「仲の良い友達に会うの、前は喜んでたよね?今は学校のことを聞かれなくても、嫌なのかな?」「うん。みんなのことを嫌いになったわけじゃないけどね。会いたいって思わなくなっちゃった」精神状態も明らかに悪くなっていたし、何の気なしの質問も突き刺さるようになっていたのだろう。息子に合わせ、午後の外出を避けることに別段不便もない私は、そのまま様子を見守ることにした。外出を嫌がっていた息子が変わった「ベランダ越しの会話」出典 : 極力外出を避けるようにしても、どうしても顔を合わせてしまう子がいる。同じ団地に住む同い年のSくんである。就学前からのなじみである彼は、私も知った顔。素直で朗らか、そして心根の優しい男の子で、息子も彼を好いている。団地の前で遊んでいることも多く、ふと息子がベランダに出たときに姿を見つければ、大きな声で名前を呼んでくれるのだ。最初のうちはバツ悪そうに姿を隠すなどしていたが、そのうち手を振り返すようになった。あるとき、夕方に用事を思い出して息子と外出したとき、学校帰りのSくんと遭遇した。一瞬気まずそうにした息子だが、「ハルくんはーぁ、いつーぅ、学校に来るんですかーぁ!?」という、Sくんのふざけたような口調と変顔に、表情をほころばせた。「Sくん、今学校の帰り?」私が聞くと、「うん、今日も楽しかったよ!」と、笑って元気に答えてくれた。「じゃあね。ハルくんバイバイ!元気なとき、また遊ぼうね!」と手を振り、笑い、団地の方へと走り去るSくんの後ろ姿を、私たちは見送った。ふと隣を見ると、息子はうっすらではあるが、微笑んでいた。それから息子は、Sくんが団地の前で遊び始める時間帯になると、ベランダに出てその姿を探すようになった。「あ、ハルくんだ!おーい、ハルくーん!」そう呼ばれると、息子は「呼ばれた!ちょっと行ってくる!」と部屋を飛び出すのだ。そのうち自分の方から「おーい、Sくーん!今から行くよー!」と声をかけ始め、ベランダに息子がいなくても、「ハルくーん!今家にいるのー!?」と、Sくんが誘ってくれるようにもなった。とにかく、Sくんと息子がベランダ越しに呼び合い、団地の前や近所の公園で遊び始めることが、週何度かの習慣になってきた。少し前までは私と一緒でなければどこにも行きたがらなかった息子が、Sくんがいれば自分1人で外出するし、近所であるとはいえ、私の姿が見えない公園まで足を運べるようになった。そして次第に、息子の行動に変化が表れ始めた。遊びの誘いをクラスメイトに断られた息子がそのあとに取った、驚きの行動とは?公園で遊んでいたとある日曜日、同級生らしき男の子のグループがやってきた。しばらくその様子を眺めていた息子だったが、「混ぜてもらえるか聞いてくる!」と、彼らの元へと駆けていった。何か二言三言やり取りしたあと、走り出した彼らと、取り残されるように立ちすくむ息子の姿。深呼吸するようにゆっくりと肩を上下させたあと、私の方に戻ってきた。「どうしたの?」「学校に来ないのに、どうしてこんなところで遊んでるの?だって…なんて返していいのか分からなかった」同級生たちが疑問を持つのは仕方ないし、息子が咄嗟に返せないのも無理はない。寂しそうにうなだれる息子に、私はどんな言葉をかけていいのかわからなかった。こんなことがあったら、友達であっても声をかけるのが怖くなるかもしれない。私だったら、きっとそうなる。しかし、息子はそんなタマじゃなかった。同じ年頃の児童さんたちを見つけると、果敢にアプローチをするようになったのだ。「全然気づいてもらえなかった」「完全にシカト!」「ちょっとだけしゃべってきたよ。みんなこれから習い事なんだって」向こうのリアクションは、その時々、人それぞれで違うけれど、いずれにしても息子は朗らかに報告してくれる。「ところであの子たち、知ってる子?」と、あるとき私が聞くと、「いや、知らん!」と息子が元気に返してきたので、思わず口をあんぐりさせてしまった。「いやほら、知らない子の方がさ、新しく仲良くなれるって場合もあるからね」そう、息子は大きな公園や娯楽施設へ出かけると、そこで初めて会った子に声をかけ、一緒に遊び始めるような人間だ。知らない子の輪に飛び込んで行くのは大得意だし、1人で遊ぶのも大好きだから、断られるのも怖くない。「この前公園で断られたのは、知ってる子だし残念だったけど、あれも仕方ないと思うんだよ。知らない子だったら、なおさら仕方ないし。でも、仲良くなれたらラッキーじゃん?」すごい。「本当に私の子か?」と驚嘆する社交性だ。感心すると共に、一時は身内以外の誰にも会いたがらなかったことを考えると、随分と回復したものだと私はしみじみ嬉しくなった。受け入れてくれる人もいると知った息子、「またみんなに会いたい!」出典 : つい先日、息子と一緒に近所の公園横を通りかかったときのこと。その日は短縮授業だったのか、普段より早い時間から、子どもたちの姿で公園は賑わっていた。「あ、ハルくん。ハルくんだよね?」清掃班が一緒だったことがある、という上級生の女の子が声をかけてくれた。それを皮切りに「ほんとだ、ハルくんだ!」「え?ハルくん?」「わ!ハルくん!」と、その場にいた子たちが口々に息子の名前を呼びながら、どんどん集まってきた。中にはいつも一緒に下校していた、仲良しのクラスメイトの顔も。「ハルくん、今はどこの学校に通ってるの?」クラス外の子は、息子が別の学校に転校したのかと思っていたらしい。「家で勉強してる。ドリルとか、ゲーム機の学習ソフトを使って」息子が答えると、「ねぇねぇ、勉強するなら学校に来てよ!」と、さっきのクラスメイトの男の子が後方から手を振った。「ずっとハルくんに会いたかったんだ!学校にはいつ戻ってくるの?」「うーん、分かんない」その場にいた児童さんたちの質問に答える形で、息子はしばらく会話を続けた。用事がある私たちはその場を一旦離れなくてはならなかったのだけれど、彼らが息子を好いてくれていること、息子も彼らを慕わしく感じていることは伝わってきた。しかし、「学校にはいつ戻ってくるの?」という質問があったし、帰りはこの道を通りたくないかな…と私は思っていた。しかし息子は「帰りもここを通っていい?またみんなに会いたい!」と願うではないか。みんなの好意的な様子が嬉しかったに違いない。「うん、もちろん。じゃあ、急いで用事を済ませてこようか」そして復路に公園近くまで来ると、彼らが別の公園へと移動している様子が見えた。「のん(私の呼び名)、あのさ、一旦帰ったら、みんなのところへ行ってもいい?」「いいよ。一旦帰らなくてもいいよ。みんながまた別の場所に行っちゃう前に、行っといで!」私が背中をポンと叩くと、息子は勢いがついたように走りだした。「行ってきまーす!!」向こうの公園の入口で、「ハルくん!」「やったぁ、ハルくんだ!」と歓迎してくれる児童さんたちと、「ねぇ、仲間に入れてよ!」と声を弾ませる息子の姿が見えた。昼間の居場所の違いを断絶の理由にしなくてもいい出典 : 繰り返すが、息子はいじめなどの理由で不登校になったわけではない。「誰かが悪いことをしていても、それをしたいという人が多いと、みんなそっちに味方してたり、あっさり考えを変える人がたくさんいるのが嫌」「男子と女子が仲良くしているだけでラブラブだとか言って、囃し立てるのが理解できないし、バカバカしい」「頭のいい人や運動ができる人が羨ましいからって、自分よりそれができない人をバカにして、勝った気になる人を見るのが悲しい」というような、いわゆる「小学生あるある」が苦痛だった部分はあるようだが、どうしても会いたくない誰かがいたという訴えはなかった。むしろ、顔を合わせて話したり、遊びたい相手だっていただろう。だから、学校にはいかないと決断したその胸の内は、実のところ複雑だったのかもしれない。不登校という選択をする児童や生徒と一口に言っても、タイプはさまざまあるだろう。人間関係を築くことが苦手な子もいれば、単に同世代の子どもたちの雰囲気になじめないという子もいる。息子はそのどちらでもない。精神状態が悪化したときは、「学校にはいつ来るの?」という問いに答えられない自分が、彼らと断絶されているような感覚もあっただろう。「でもそれは親愛の情があるからこその疑問である」ということを思い出させてくれたのは、逃げようが隠れようが息子の名前を呼び続けてくれたSくんのおかげだと、私は思っている。彼の根気強い働きかけがあったからこそ、息子は人と関わる自信を取り戻せたのだろう。学童期はどうしても、友達というと同じ学校で過ごす仲間に偏ってしまう。だからといって、同じ学校で過ごしていなければ友達でいられないわけではない。今、昼間の居場所の違いが断絶にならない関係を、息子たちは築いている。学校に行かない息子を受け入れたうえで仲良くしてくれるSくん含む仲間たちに深く感謝しつつ、彼らの柔軟さに私は感心しきりだ。あの日、公園へと駆けていった息子は、みんなと「ごく普通に」遊んできたそうだ。ベランダ越しにSくんと呼びかけ合う習慣も続いている。まだ小学3年生。友達の顔ぶれも入れ替わっていくかもしれない。例えそうだとしても、これからも息子が自分なりの人との関わり合いを見つけていってほしいと願う。
2018年08月24日発達障害のある息子、学校になじめない出典 : 小学校2年生になる息子チー坊は、入学後1ヵ月もしないうちに行き渋りが始まりました。校門までは手をつないでニコニコで行けるのに、校門をくぐった瞬間に座り込んでしまう。最初の1か月半ほどは朝から給食が始まるまで付き添いを続けていました。しかしお母さんがいると甘えてしまうとのことで、ほどなく付き添いをやめることに・・・仰向けになって「行きたくない!」と泣き叫ぶ息子を、副校長先生が抱き上げて教室に連れて行くのを胸を痛めながら見送っていました。息子の通う小学校は5月に運動会があるため、先生方もなんとか息子を運動会に参加させてあげたいと、息子の気持ちが落ち着くまで隣の空き教室で本を読ませてくれるなど、一生懸命心をくだいてくれていたようです。でも、朝行きたくない気持ちを切り替えられない、みんなと一緒の行動ができない、休み時間に本を読むと集中しすぎて授業に戻れない、お友達にちょっかいを出す、授業が簡単すぎてつまらない、知っている字なのにドリルをやる意味が分からないので取り組まない、聴覚過敏など、さまざまな理由が重なり、なかなか学校になじめませんでした。息子、不登校になる出典 : 入学後しばらく経つと、息子の体に異変が起こります。夜になるとじんましんが出るようになってしまったのです。最初は疲れているのかな、とじんましんの出た翌日は休ませるようにしました。しかし次第に学校に行った夜にじんましんが出るように…これは息子のSOSなのではないだろうか…「息子からSOSが出ている、でもそうだとしたら私はどうしたら良いのだろう」不登校を決断するまで、とてもとてもとても悩みました。お世話になった保育園の先生からは「合わない居場所に1日いるのは、大人が思っているよりも本人にとってずっとずっと長い時間だから、チー坊にとってはすごくつらいと思う」とアドバイスを受けたり、息子を知る方々にも「チー坊に合った居場所が必ずあるよ。今の学校だけが学ぶ場所ではないから、あきらめないで居場所を探して」と励まされたりしているうちに「体にサインが出るほどつらいのに、無理して学校に行くことはないよね」そう考えるようになり、6月からは学校に行かない選択をしました。息子、本当は学びたい出典 : 不登校のあいだに息子をじっくりと観察して確信したこと、それは「息子は学校に行きたくないだけで、学びたくないわけではない」ことです。息子は知的好奇心がものすごく旺盛で、興味のあることにはごはんを食べることを忘れるくらいにとことん集中します。2歳くらいから好きになった魚から始まり、恐竜、宇宙、人体、元素、三国志など、知りたいことがあると親が何も言わなくても自分で学びを広げ、深めていました。不登校中に博物館に出かけたり、家で本を読んだり、アクティブラーニングの学習塾で授業に参加したり・・・息子の目はいつもと変わらずキラキラと輝いていました。こうして「学校に無理に合わせるのではなく息子に合った居場所を探そう」と、家族で息子の居場所探しが始まったのです。息子、素敵な居場所を見つける出典 : フリースクールのなかには、学校とは違う学びを目指しているところがあり、まずは体験に行きました。ところが、息子の個性がそことは合わず、ほかの居場所を探した方がいいのではとやんわり断られてしまいました(ちなみに、息子もそのフリースクールが合わなかったようで相互にお断りという結果でした)。ひとつめのフリースクール見学だったのに、「もうチー坊が行けるフリースクールはないかも」と、泣きながら帰ったことを覚えています。ふたつめのフリースクールを見学すると、チー坊は「ここにする!」と即決。1年生の6月から自宅から電車で1時間半ほどの距離にあるフリースクールに通うことになりました。息子の通うフリースクールは、まさに「みんな違ってみんな良い」。障害の有無にかかわらず、少人数で異年齢のいろんな子どもたちが通っていて、それをみんな当たり前のように受け入れて生活しています。放課後にフリースクール近くの公園で遊んでいる様子を眺めていると、複雑なルールの理解が難しい子のために子どもたちは理解しやすいルールをつくって、どの子も楽しめるように工夫して遊んでいました。このフリースクールでは、問題が起こったら先生と一緒に「どうしたらみんなが気持ちよく過ごせるか」についてミーティングを重ね、みんなで解決しているそうです。驚くことに、学校に通っていたときは毎日のように出ていたじんましんも、普段はまったく出なくなりました。好きなことを伸ばしてあげたら良い出典 : フリースクールの先生は「よく学校で座っていられたね。学校は無理だったんじゃないかな」と驚いていました。体験初日、あらゆるものに興味がうつり、引き出しすべてを開けて室内を走り回っていたとのこと…そして先生はこうもおっしゃいました。「チー坊の動いちゃうのは性質で、仕方のないことだと思う。学校で無理に座らせて苦手なことを克服するより、好きなことや得意なことを伸ばしてあげたら良いと思うよ」フリースクールの先生は、子どもたちの興味に合わせて小学校1年生から中学生に授業をしてくれます。博物館の特別展(古代アンデス文明展)に行く前には南米の地理や歴史、古代文明について授業をしてくれ、息子は古代文明好きに。毎週お散歩の授業があり、博物館に行ったり、アスレチック公園に行ったり、山登りしたり…お散歩での発見から次の授業が広がるなど、子どもたちは体験を通して楽しく学んでいるようです。チー坊がニコニコしながらフリースクールに通うようになって、私の心も本当に軽くなりました。心が元気になって、フリースクールに通う元気な子どもたちをみるたびに「人にはいろいろな学び方がある。学校だけが学ぶ場所ではない。こんな素敵な場所がたくさんあったらいいのに」そんな風に考えるようになりました。学校になじめない子が学べる場所が、日本には少ない出典 : フリースクールを探す過程で、息子のように学校になじめない子がたくさんいること、小学生の居場所が少ないこと、学べる場所が本当に少ないことを知りました。通級の先生は「学力支援や凸凹の凹(苦手)の部分を支えるものはあります。しかしチー坊のように、凸が高すぎるための凸支援は残念ながら日本にはありません。本当ならば良いところ、得意なところを伸ばしてあげたいのですが」とおっしゃってくださいました。そうか、ないのか…。そうだ、夫が借り上げた仕事場にはスペースがある。家賃の問題はクリアしている。ないなら、つくっちゃえばいいのかもしれない。そこで、わが家と同じように、発達が個性的なために学校で生きづらく不登校を経験したお母さんを誘って口説き落とし、教育に興味のある学生さんと一緒にフリースクールをつくろうということになりました。「大人だったらどうする?」で考えてみるUpload By 赤沼美里ここまでが、私がフリースクールをつくることになった、きっかけ。息子が不登校になったとき、「自由に育てているから、学校に合わない」とか「休みたいといったから休ませるなんて、わがままにさせていいのか」とか「ここは日本なんだから順応させるべき」とか、状況をなかなか理解してもらえず、傷ついたこともたくさんありました。でも私の悩んだときの基準は、「これが大人だったらどうするかな」です。会社環境が合わないために、じんましんが出るほどをつらい思いをしている友人がいるなら、きっと休職か転職をすすめるのではないでしょうか。不登校から1年、フリースクール歴1年。アンケートで「毎日の満足度を教えてください」という問いに「99点。今日はゲームをしていないから1点引いた」と答える息子(笑)笑顔で毎日を過ごす息子を見るたびに、不登校を選択して良かったと心から思っています。そして息子の通うフリースクールのような素敵な居場所が日本にひとつでも多く増えてほしい、学校になじめない子どもたちがひとりでも多く笑顔になってほしいと願って、フリースクールを立ち上げることに。次回は、どんなフリースクールを立ち上げたのかをお伝えしますね!
2018年08月21日孤立しがちな子育ての伴走者としての医療出典 : 娘が小2で不登校になったとき、母子2人きりの家庭だったわが家は、周りに理解者も味方もなく、たった1人で混乱と不安の中に突き落とされたような気持ちでした。のちに親の会でたくさんの仲間に出会いましたが、子どもが不登校でも発達障害でも、学校や相談機関との対応を引き受けることになるのはほとんどが母親。子どもからやるせない気持ちやときには暴力をぶつけられるのもやはり母親が一番多かったのです。そんな母親たちは孤独で疲れ切っており、親の会で初めて話すときはポロポロと涙をこぼす人も多く、「自分自身が精神的に病んで精神科に通っている」という声もよく聞きました。子どもが学校に行かなくなったとき、病院を受診する家庭が多いと思います。私の場合、自分自身が精神科にかかっていたので、同じ総合病院内の児童精神科医を紹介してもらえ、娘もすぐに医療につながることができました。学校からは登校を迫られる中、娘の主治医は「今は無理に登校させるべきではない」という意見書を書いてくれたり、私たち親子が疲れ切ったときにはリフレッシュのために入院させてくれたりしました。また、私の精神状態が悪化して「死にたい」と訴えたときには、児童相談所での一時保護や入院を提案してくれ、まさに最後のセーフティネットとして助けてくれたのです。こういった難しい子育てに臨む親は追い詰められ、孤立しがちです。医療機関にはそういった親に寄り添い、共に歩む支援者としての一面もあるのだということに気づくことができた体験でした。代理受診をチャンスに変えるわが家もそうですが、同じ境遇に置かれた人たちの悩みで多いのが「子どもが病院に行きたがらない」ということです。娘も3度の入院を終えるまでの最初の1年半くらいは素直に病院についてきていましたが、次第に「自分はどこも悪くない」「病院は嫌い」と言って行かなくなってしまったのです。これは親にとってなかなか心折れることで、「本人が行かないのならしょうがない」と通院をやめてしまう人も。でも私は、1人で代理受診を続けました。そしてそれは、思わぬいい結果を生み出してくれることになります。出典 : 多くの病院は代理受診を認めてくれます。特に精神科は本人が受診できないケースも多いですから。私は娘の代わりに受けた診察で、「娘が『死にたい』って言ってるんですけど大丈夫でしょうか?」など、気になる言動について相談し続けていました。こんな状況、自分1人で娘と向き合い、受け止めるには重すぎますから。そんなとき、「大丈夫ですよ」と先生に言われるだけでホッとしたのを覚えています。また、娘のためのセラピーにも、娘抜きで行っていました。そこではまるで自分がカウンセリングを受けているかのように、「もうつらい」「どうしたらいいのかわからない」といった気持ちを吐き出すことも多くありました。カウンセラーの先生はいつも静かに話を聞いてくれて、本当に救われた気持ちになりました。また、臨床心理士ならではの「娘さんは今こういう気持ちなのでは」といった解説も、心を楽にしてくれたものです。親として抱えきれないさまざまな悩みを受け止めてくれた先生方には、感謝してもしきれません。出典 : 主治医が退職したのを機に、総合病院から発達障害を診ることができるクリニックに転院しましたが、そこでも代理受診は続きました。月一度ペースで通い、その間の娘の様子を報告するといった診察でしたが、ふとした拍子に「娘さん、こんなところが成長していますね」「それができるのは視覚的処理が非常に優れているということですよ」といったように、母親の私が気づくことができないことを教えてもらえることがありました。それは思った以上に私を勇気づけてくれました。学校に通っていないと他人が娘を評価してくれることはめったにありません。先生の何気ない言葉は「一緒に育ちを見守ってくれている」という心強さを私に与えてくれたのでした。出典 : 娘が思春期に入ってからは対応のしかたに悩むことも増えてきました。そんなときも、継続的に様子を報告し続けている先生に「娘も他人相手だと割り切れるみたいなんですけど、私相手だとうまくいかないみたいなんですよね」と相談してみると、「親子だからこそ難しいんですよ。お互いに別々の時間を大切にするとか、親子の距離を置くようにしていったらどうでしょう」という提案が。そういうところが、さすがなのです。専門家として距離を置いて見ているからこその目線です。不登校の子の家族にはなかなか外からの風が入ってきません。だからこそ、風通しを良くしてくれる他者が大切なのだと思います。障害年金受給なども見据えて最初の主治医が退職したことをきっかけに、障害基礎年金申請のことも見据え、大人の精神科も併設した発達障害に強いクリニックに転院しました。障害基礎年金の申請には、専門のドクターに書類を書いてもらう必要があります。不登校期間が長く、発達障害もある娘には年金のことも考えておく必要があったのです。先生には私の考えを伝えてあり、本人の気持ちや様子を見ながら再度の発達検査や精神障害者手帳の手続きなどを考えていこうということになっています。将来、娘が福祉を必要としたときに、きちんとつながることができるようにするためにも、医療機関との関わりは重要なのです。出典 : 私は代理受診をしていることを娘に話していました。そして「今日は先生とこんなことを話したよ」「先生が気が向いたらおいでって言っていたよ」と軽く声をかけ続けたのです。すると、新しいクリニックに変わって1年くらいたったある日、メールで先生に相談したいことを送ってきて「これを先生に見せて」と頼んできたではありませんか。びっくりしましたが、何度かその方法で先生と伝言ゲームをした後、ついに娘がクリニックを受診したのです。少し緊張していましたが、私の話を通して先生に親しみを持っていた娘はしっかりと先生の目を見て話していました。それからは3回に1回くらいのペースで娘も受診しています。まさかこんな日がくるなんて。細くてもいい、長くつながり続けることの大切さ出典 : しんどい子育てをしている家庭は孤立しがちです。だからこそ、社会とつながる支援の手はひとつでも多い方がいいといえます。しんどいからこそ、ときには支援につながることに疲れてしまうかもしれません。そんなときは少し距離を置いてもいい。でも細く長くでいいから決して手を離さないでほしい。これは、代理受診でつながり続けてきたわが家が、今、切実に感じていることです。
2018年08月10日【イベント】学習障害の当事者の講演から人権を考える「ボク、学習障害と生きてます~多様性を大切にする社会へ~」(長崎県)Upload By 発達ナビニュース学習障害の一つであるディスレクシア(読み書き障害)の当事者である南雲明彦さん(明蓬館高等学校共育コーディネーター)が講師を務める講演会が開催されます!ディスレクシアは、聞く、話す、読む、書くといった能力のうち、特定のものができない「学習障害」の中でも、読み書きに困難をともなうもの。南雲さんは21歳のときにディスレクシアと診断を受けました。かつては不登校、引きこもり、うつ病なども経験。同じような悩みがある人が一人で悩まなくてもいいようにと、自らの経験をもとにさまざまなメッセージを発信しています。夏休みも終盤の時期の開催。2学期の学校生活に向けて学習障害から見た多様性について理解を深めませんか?【演題】「ボク、学習障害と生きてます~多様性を大切にする社会へ~」南雲明彦氏【日時】2018年8月20日(月) 14:00~15:50【場所】長崎市民会館文化ホール(長崎県長崎市魚の町5番1号)【参加費】無料【申し込み】不要 ※一時保育(1歳〜就学前)をご希望の方は、8月10日(金)までに申し込み。定員になりしだい締め切り【問い合わせ】長崎市人権男女共同参画室TEL: 095-826-0026講座・講演会 | 長崎市【イベント】「えらぶ」先に思いをはせる美術展「えらぶん:のこすん:つなげるん」(福島県)Upload By 発達ナビニュース「えらぶ」に着目したユニークな展示会が、福島県猪苗代町のはじまりの美術館で開催中です!作家らの数々の選択を経てきた作品たちが、私たちの日常にも繰り返される大小さまざまな選択について、何を残し、未来に繋げているのかを投げかけます。はじまりの美術館は、「人のつながりから生まれる豊かさ」に視点を置き、「さまざまな人が集える場所」として多様なテーマの企画展やイベント、地域でのプロジェクトを実施している社会福祉法人が運営している美術館です。今回は、7組の作家が出展しています。たくさんのぬいぐるみを組み合わせて、動物など新たなものをつくり上げる藤浩志さんの作品は、可愛いだけでなく、ぬいぐるみと持ち主の歴史を感じさせるような独特な雰囲気を持ちます。パンダや仔馬など背中に乗ることができる作品もあります!また、展示に合わせて、さまざまな企画も用意されています。佐藤悠さんが1枚の紙に絵を描きながら、その場にいる全員で即興で物語をつくる「いちまいばなし」や、東京都世田谷区の就労継続支援B型事業所「ハーモニー」の利用者の体験をもとにした「超・幻聴妄想かるた」のイベントや、来場者がかるたをつくるワークショップも行われます。ほかにも、出展者のトークイベントや地元住民による民話語りなどさまざま催しがあるので、ホームページを確認して足を運んでみてください。さらに、子どもたちの夏休みに合わせて8月の4日間を特別に夜8時まで開館。明治時代に建てられ、酒蔵、ダンスホール、縫製工場などを経て美術館として生まれ変わった蔵の建築が見せる夜の表情も魅力です。昼間とは違った雰囲気で作品を楽しめそうですね。【日時】2018年10月21日(日)まで(火曜日休館) 10:00〜18:00※8月10日(金)、17日(金)、18日(土)、24日(金)のみ20:00まで開館【会場】はじまりの美術館(福島県耶麻郡猪苗代町新町4873)【入場】一般500円、65歳以上250円、高校生以下・障害者手帳をお持ちの方および付き添い(1人まで)は無料【出展作家】乾久子、大路裕也、佐藤悠、根本将、ハーモニー、久松知子、藤浩志【問い合わせ】社会福祉法人安積愛育園 はじまりの美術館TEL/FAX 0242-62-3454えらぶん:のこすん:つなげるん | はじまりの美術館【ニュース】障害のある人を応援するリーダー育成研修が募集を開始!「夢へとつづく“3つの海外研修”世界へ。未来へ。」出典 : ダスキン愛の輪基金が実施する地域社会のリーダーとして貢献したいと願う障害のある若者を対象とした海外研修の参加者を2018年11月15日(木)まで募集しています!「ダスキン障害者リーダー育成海外研修派遣事業」は、1981年に国連で決議された「国際障害者年」にちなんで、障害者の社会への参加と平等の実現を目指して発足したそうです。今回は、年代や目的別に3つの研修で参加者を募っています。海外の障害者の生活を学んだり、当事者団体・支援団体などと交流したりすることがメインで、応募者が希望し、計画した内容で研修先を選べるコースもあります。9月に東京、大阪、福岡で説明会があるので、将来、社会で活躍したいという夢のある人はぜひ応募してみてくださいね。ジュニアリーダー育成グループ研修(視覚障がい者ユースグループプログラム)【対象】視覚に障害があり、2019年4月1日時点で15歳以上17歳までの人【行き先】イギリス(予定)【期間】2019年の夏休み8日間程度【募集人数】3〜5人(1グループとして派遣)【選考方法】書類選考、グループ面接審査、健康診断など【費用】一定額を財団が支給【内容】視覚障害者の生活・文化・教育・就労などを総合的に支える当事者団体、国際的な舞台で活躍する視覚障害者や研修生との同世代交流。希望のテーマで最長1年間 個人研修※障害の種別は問いません【対象】希望のテーマで研修計画を立案・作成し、それを実行できる方・18歳以上40歳までの人・研修地で必要な語学力が証明できる人・愛の輪運動に賛同し、積極的に取り組める人【行き先】応募者が研修を希望し、実行委員会が認める諸国【期間】3ヶ月以上1年以内【募集人数】4人程度【選考方法】書類選考、面接審査、語学審査、健康診断など【費用】上限400万円を財団が支給【内容】自らの「夢」を実現するため、応募者が希望し、計画する研修先を選びます。障害者団体、ボランティア団体、学校などの教育機関、リハビリテーション関連機関、研究機関、その他、行政機関、企業などグループで短期間学ぶ ミドルグループ研修(障害者権利条約の国内実施に取り組みたい方)※障害の種別は問いません【対象】・25歳から45歳くらいの人・グループ応募できる人・障害者の自立支援活動などに従事した経験が概ね5年以上ある人・愛の輪運動に賛同し、積極的に取り組める人【行き先】アメリカのほか、実行委員会が認める諸国【期間】1〜2週間程度【募集人数】研修生(障害当事者)3人以上、介助者、支援者、通訳などスタッフ含めて8人程度の1グループ【選考方法】書類選考、面接審査、健康診断など【費用】上限400万円を財団が支給【内容】グループの「夢」を実現するため、応募者が希望し、計画する研修先を選びます。障害者団体、ボランティア団体、学校等の教育機関、リハビリテーション関連機関、研究機関、その他の行政機関、企業など■海外研修説明会大阪会場【日時】2018年9月7日(金) 18:00〜20:00【会場】株式会社ダスキン 本社ビル 10階会議室(大阪府吹田市豊津町1-33)【参加費】無料【申し込み】開催2日前までに事務局へ申し込み東京会場【日時】2018年9月14日(金) 18:00〜20:002018年9月15日(土) 13:00〜15:00【会場】株式会社ダスキン 東京オフィス 会議室(東京都新宿区西新宿2丁目6-1 新宿住友ビル23階)【参加費】無料【申し込み】開催2日前までに事務局へ申し込み福岡会場【日時】2018年9月29日(土) 13:00〜15:00【会場】博多バスターミナル 9階第6ホール会議室(福岡市博多区博多駅中央街2-1)【参加費】無料【申し込み】開催2日前までに事務局へ申し込み【問い合わせ】公益財団法人ダスキン愛の輪基金TEL: 06-6821-5270FAX: 06-6821-5271夢へとつづく“3つの海外研修”世界へ。未来へ。| ダスキン愛の輪基金海外研修説明会のご案内 | 2019年度(第39期) ダスキン障害者リーダー育成海外研修派遣事業【ニュース】今年は大阪でも開催!第3回ダウン症支援セミナー「ダウン症成人期の支援を考える」出典 : 年に始まった支援者のための「ダウン症支援セミナー」が今年も開催されます!例年の東京都に加え、今年は大阪府でも開催され、参加者を募集しています。ダウン症がある成人のための支援プログラムに取り組んでいる方々を講師に招いて、支援のあり方を考えるセミナーです。日本ダウン症協会(JDS)が主催していて、今回で6回目を迎えます。対象は、保護者を除き、ダウン症のある人と関わり、支える専門家や学生などとなっています。東京会場は7月いっぱいで応募が締め切りとなりましたが、大阪会場では参加者を応募しています。地域、社会で生きていく成人のダウン症の人たちにどんな支援ができるか、事例や最近の動向を学びながら、これからの支援のあり方を考えてみませんか?東京会場※定員に達したため応募を締め切りました【日時】2018年8月19日(日) 10:00〜16:00【会場】東京日本橋タワー31階、受付場所7階 (東京都中央区日本橋二丁目7番1号)【講師】竹内千仙先生(東京都立北療育医療センター内科医長)、橋本創一先生(東京学芸大学教授)、菅野敦先生(東京学芸大学教授)大阪会場【日時】2018年9月2日(日)13:30〜17:00【会場】大阪医科大学、受付場所 看護学部講堂C-23(大阪府高槻市大学町2番7号)【講師】橋本創一先生(東京学芸大学教授)、菅野敦先生(東京学芸大学教授)【参加費】各会場4,000円【申し込み】ホームページからのウェブ申し込みのみ【締め切り】大阪 2018年8月19日(日)※定員になり次第締め切り【問い合わせ先】公益財団法人 日本ダウン症協会TEL: 03-6907-1824Eメール: info@jdss.or.jp | 公益財団法人日本ダウン症協会
2018年08月03日起立性調節障害(OD)とは?出典 : 起立性調節障害(OD)とは、思春期に起こりやすい自律神経機能不全のことです。人が立ち上がると、血液が下半身に集まり、血圧の低下や心拍数の増加が起こります。通常、これらの変化ができるだけ少なくなるように、自律神経が働くようになっています。しかし、それがうまく行かないためにさまざまな症状が現れるのが、起立性調節障害なのです。具体的な症状としては、立ちくらみや失神、朝起きられない、倦怠感(だるさ)や動悸、頭痛といったものがあります。軽症であれば治療が必要ないことも多いのですが、重症になると日常生活に支障が出て、不登校やひきこもり状態になることもあります。症状が長く続くと、その後の社会生活にも大きな影響を及ぼすため、早い段階で適切に対処することが重要です。しかし、一部ではまだ理解が進んでおらず、周囲に「ただのなまけ」「気持ちの問題」と誤解されてしまう場面も多いといわれています。起立性調節障害の主な症状出典 : 日本小児心身医学会によると、起立性調節障害には主に以下のような症状があるとされています。・立ちくらみ、朝起床困難、気分不良、失神や失神様症状、頭痛など。症状は午前中に強く午後には軽減する傾向があります。・症状は立位や座位で増強し、臥位にて軽減します。・夜になると元気になり、スマホやテレビを楽しむことができるようになります。しかし重症では臥位でも倦怠感が強く起き上がれないこともあります。・夜に目がさえて寝られず、起床時刻が遅くなり、悪化すると昼夜逆転生活になることもあります。実はこれらの症状は、生活習慣の乱れや、不登校でも起きうる症状です。そのため、体の病気ではなく気持ちの問題だと誤解されることが多くあるのです。日本小児心身医学会が定めたガイドラインでは、起立性調節障害の診断方法が定められています。1)立ちくらみ、失神、気分不良、朝起床困難、頭痛、腹痛、動悸、午前中に調子が悪く午後に回復する、食欲不振、車酔い、顔色が悪いなどのうち、3つ以上、あるいは2つ以上でも症状が強ければ起立性調節障害を疑います。2)鉄欠乏性貧血、心疾患、てんかんなどの神経疾患、副腎、甲状腺など内分泌疾患など、基礎疾患を除外します。3)新起立試験を実施し、以下のサブタイプを判定します。(1)起立直後性低血圧(軽症型、重症型)(2)体位性頻脈症候群(3)血管迷走神経性失神(4)遷延性起立性低血圧起立性調節障害が疑われる場合、まずは他の病気が原因になっていないかを調べる必要があります。貧血や心臓の病気などでも、立ちくらみなどの似たような症状を起こすことがあるためです。病気の有無を調べるためには、血液検査やレントゲン検査、超音波検査などが必要に応じて行われます。この時点で原因となっている病気が分かれば、適切な治療を行うことで改善する可能性があります。他の病気でないことが分かった場合、起立性調節障害と確定するために新起立試験が行われます。新起立試験とは、起立前後の血圧や心拍数がどのくらい変化するかを見る検査のことです。この変化の度合いによって、起立性調節障害の中でどのサブタイプに属するか、重症度はどのくらいかを見ることができます。起立性調節障害の4つのタイプ新起立試験によって分類されるサブタイプは4つあります。それぞれのサブタイプについて、以下で説明していきましょう。起立直後性低血圧は、立ち上がった直後に血圧低下や血圧回復の遅れが見られる状態のことを言います。通常、人間は立ち上がったときの血圧低下を予防するため、交感神経が活発になってノルアドレナリンという物質が出るようになっています。しかし、起立性調節障害の子どもは、このノルアドレナリンの分泌量が少ないために、血圧を維持することができないのです。起立直後性低血圧と診断する具体的な値として、以下のような条件が定められています。・起立後血圧回復時間≧25秒または、・起立後血圧回復時間≧20秒かつ、非侵襲的連続血圧測定装置で求めた起立直後平均血圧低下≧60%軽症型の場合は、起立中に徐々に血圧が回復していきますが、重症型の場合は血圧低下が一定時間持続すると言われています。体位性頻脈症候群の場合は、立ち上がるときに血圧低下が見られません。その代わり、心拍数に著しい増加が見られるのが、体位性頻脈症候群です。立ち上がったときに、下半身に血液がたまっていると、上半身の血液量が少なくなるため、心臓の動きは遅くなります。この動きを維持しようとするため、心拍数が速くなってしまうのです。具体的な数字としては、以下のように定められています。・軽症〜中等症: 起立時心拍数≧115または心拍数増加≧35・重症: 起立時心拍数≧125または心拍数増加≧45起立直後性低血圧や遷延性起立性低血圧といった、別のサブタイプと合併していることもあります。血管迷走神経性失神は、起立中に突然血圧が下がって意識レベルが下がったり、意識を失ったりする状態を指します。立ち上がったときに、静脈を流れる血液量が少なくなって、心臓が激しく動くようになると、反射的に自律神経が興奮し、活動を止めてしまうことがあります。その結果起こるのが、血管迷走神経性失神なのです。ひどい場合には、心停止することもあるとされています。軽症であれば、約4割の人が大人になるまでに経験すると言われており、治療をする必要がないことも多いです。しかし、起立直後性低血圧や体位性頻脈症候群と合併していることもあり、その場合には治療が必要となります。遷移性(せんいせい)起立性低血圧は、起立直後の血圧や心拍数は正常であるものの、3〜10分たってから血圧低下(収縮期血圧が横になっているときの15%以上、あるいは20mmHg以上の低下)が見られるというものです。軽症であれば日常生活への影響は少ないものの、中等症ではやや影響が見られるようになり、重症ではほぼ毎日支障をきたすようになります。起立性調節障害の多い年代出典 : 起立性調節障害は、思春期特有の病気と言われています。発症する年齢は10〜16歳が多く、小学生の約0.5%、中学生の約10%にこの病気があるとされています。男女比で見ると女子の方が多く、男子よりも1.5〜2倍多いです。出典:起立性調節障害(OD)|日本小児心身医学会起立性調節障害の合併症出典 : 起立性調節障害の合併症としては、以下のようなものが挙げられます。・身体面: 睡眠障害、ときに痙攣を伴う失神、著しい頻脈・心理面、行動面:: 集中力や思考力の低下、日常生活の活動量の低下、長期間にわたる欠席また、発達障害のある子どもが起立性調節障害を発症することも少なくありません。発達障害のある子どもは、ストレスを感じやすい傾向があると言われています。これが原因で自律神経に影響を及ぼし、起立性調節障害を起こしやすいと言われています。起立性調節障害と似た病気出典 : 起立性調節障害と似た症状が現れる病気がいくつかあります。その中から、「うつ病」と「脳脊髄液減少症」についてご紹介します。起立性調節障害では集中力の低下や活動量の減少などが見られるため、しばしば心の病気=うつ病と診断されることがあります。しかし、うつ病は昼夜問わず無気力などの症状があるのに対して、起立性調節障害では夜になると元気になるという傾向があります。起立性調節障害ではなくうつ病だと診断された場合、抗うつ薬の服用によって起立性低血圧が起きてしまうこともあり、症状が悪化する可能性もあります。起立性調節障害と間違えられやすい病気として、脳脊髄液減少症も指摘されています。脳脊髄液減少症とは、脳や脊髄のまわりにある脳脊髄液が、何らかの原因で漏れることを言います。脳脊髄液が減少すると起こる症状の中に、起立したときの頭痛やめまい、血圧・脈拍の異常などがあります。このような症状があることから、起立性調節障害と間違えられやすいのです。発症する原因には、交通事故でのむち打ちといった外傷などがありますが、原因不明な場合も少なくありません。病気としてはまだ広く知られておらず、発見されるのに時間がかかることも多いようです。起立性調節障害が疑われるとき、病院はどこを受診したらいい?出典 : 起立性調節障害は思春期特有の疾患であることから、診察は主に小児科で行われています。診断は、日本小児心身医学会が定めたガイドラインに沿って行われます。ただし、サブタイプを診断するために必要な機械が備わっている医療機関は、まだ全国でも数ヶ所しかありません。そのため、機械がない医療機関では簡易的な方法を用いて検査を行っています。診断か可能かどうか、事前に医療機関に確認してみても良いでしょう。起立性調節障害は治るの?出典 : 起立性調節障害は、軽症であれば適切な治療によって2〜3ヶ月程度で改善すると言われています。しかし、中には学校生活や日常生活に支障をきたす重症例もあり、その場合は社会復帰に2〜3年以上という長期間を要することもあります。起立性調節障害の治療と対処法出典 : 起立性調節障害の治療と対処法は、大きく以下の4つに分けられます。・疾病教育・非薬物療法・学校との連携・薬物療法これらに加えて、必要に応じて心理療法が行われることもあります。それぞれの内容について、以下で具体的に見ていきましょう。起立性調節障害を治療する上で重要なポイントは、本人と保護者が「起立性調節障害は体の病気である」と理解できることです。本人がいくら不調を訴えても、保護者が「夜更かしするからだ」「なまけているだけだ」として叱ったり、無理やり起こそうとすることも多く、親子関係が悪化している場合も少なくありません。まずは、起立性調節障害がどのような病気なのか、治療して改善するには時間がかかることなどを説明します。本人と保護者が治療が必要であることを理解した上で、正しい治療が行えるようにしていきます。起立時に症状が起こる起立性調節障害では、日常生活の中で動作や食事に気をつけることで、症状を起こしにくくすることができます。▪️体を起こすときの動作に注意する寝た状態や座った状態から急に立ち上がると、脳の血流が一気に低下して気分不快などを生じやすくなるため、ゆっくりと体を起こすようにします。特に、朝は脳の血流が悪い状態なので、注意が必要です。頭を起こさず、下げた状態でゆっくりと立ち上がることが大切です。▪️水分と塩分をしっかりととる水分摂取量が少ないと、体の中の血液量が少なくなり、血圧を維持することが難しくなってしまいます。塩分は通常であれば控えた方が良いとされていますが、起立性調節障害の子どもは塩分摂取量が少ない傾向にあります。塩分を摂取すると体は水分を維持しようとするため、血圧低下を防ぐことができるとされています。水分は1日1.5〜2リットル、塩分は1日10〜12gを目安に摂取します。▪️生活リズムを整える起立性調節障害の子どもは、朝起きられないために起床が遅くなり、寝る時間も遅くなりがちです。寝る時間が遅くなりすぎないよう、毎日23時には布団の中に入るようにしましょう。できるだけ入眠しやすくなるよう、環境を整えることも大切です。寝る前には早めに部屋の明かりを落としたり、朝は早い時間にカーテンを開けて、日光に当たるようにします。▪️適度な運動を行う毎日の適度な運動も、起立性調節障害を治療する上で大切です。筋力が低下すると血圧が下がりやすくなるほか、自律神経のバランスを崩しやすくなって、症状が悪化してしまいます。▪️暑い場所を避ける気温や室温が高いと、血管が広がって血圧が下がりやすくなります。さらに汗をかくと体内の水分が少なくなり、より症状を悪化させてしまいます。外にいる場合は日影にいるようにしたり、空調を調節したりといった工夫をするようにします。起立性調節障害と診断された場合、学校との連携も大切なポイントです。教師も起立性調節障害について十分な知識がないために、「なまけている」「気の持ちようだ」と思われてしまうことも少なくありません。起立性調節障害は体の病気であること、いつ体調不良が起きてもおかしくないことを理解してもらい、子どもが適切なサポートを受けられるよう、協力を仰ぎましょう。学校側に依頼する具体的なサポート方法としては、以下のような項目が挙げられます。・体調不良が起こったときには速やかに横にする・静止した状態での立ちっぱなしの姿勢を3〜4分以上続けない・暑さは避け、水分補給を欠かさないようにする・登校する時間は本人の体調に合わせるようにする・登校を促すために、教師やクラスメートが迎えに行くことはストレスとなる可能性があるので、本人と保護者の希望を聞く・欠席が何日も続くようなときは、毎日の連絡は保護者の負担になることがあるため、行ける日の朝に連絡をするようにする適切なサポートをすることで、起立性調節障害を持つ子どもの精神的な負担は軽減することができます。実際にどのようなサポートを依頼するかについては、担当医とも相談して、学校側に伝えると良いでしょう。薬を使った治療は、非薬物治療を行った上で進めていきます。起立性調節障害の治療に使用される薬にはいくつか種類があり、ガイドラインではサブタイプごとに適した薬剤が掲載されていますが、効果は個人差があるので、必ずしもこれでなければならないというわけではありません。薬の種類は、主に以下のようなものがあります。・ミドドリン塩酸塩: 血管を収縮させて、血圧を上げる薬。起立直後性低血圧と対位性頻脈症候群の第1選択薬・アメジニウムメチル硫酸塩: 交感神経の機能を亢進させる薬。副作用として、起立時に頻脈を起こすことがある・プロプラノロール: アドレナリンなどの作用を弱め、心拍数を低下させて、血管を収縮させる薬。起立性調節障害では、対位性頻脈症候群だけに使われる効果が現れるまでに1〜2週間かかることもあるため、その点を子どもにも理解できるように説明しておきましょう。ミドドリン塩酸塩アメジニウムメチル硫酸塩プロプラノロール塩酸塩子どもが起立性調節障害と診断されたら、どんなことに気をつけたらいい?出典 : もしもご自身の子どもが起立性調節障害と診断された場合、まず気をつけたいのが「平常心を保つ」ことです。起立性調節障害の治療には時間がかかるため、「どのくらいで良くなるのか」「学校に行けるようになるのか」など、保護者が不安になってしまうことも少なくありません。起立性調節障害は体の病気であると分かっていても、不安を感じることはあると思います。しかし、不安から子どもを叱ってしまったり、イライラした気持ちを表に出したりしてしまうと、子どもとの関係が悪くなってしまうかもしれません。まずは平常心を保つという心構えを大切にした上で、日常生活のサポートをしていきましょう。毎日の生活の中では、起立性調節障害の治療の中で説明した、「非薬物療法(日常生活における注意点)」を工夫して行っていくことが大切です。起立性調節障害の子どもは朝起きるのが苦手なので、生活リズムの改善は難しいことが多いです。すぐに改善することはできないと理解した上で、子どものサポートを行っていきましょう。また、家族全体でルールを共有し、一定の生活パターンを送ることも有用です。テレビを見る時間を決める、夕食は全員で食べるなど、家族と話し合って可能なものからルールを作ってみると良いでしょう。それらの生活パターンが、子どもの体のリズムにも良い影響を与えてくれます。起立性調節障害を持つ子どもは、脳の血流量が少なくなっているため、授業に集中できずに学力が低下したり、欠席が続くと授業に遅れてしまうこともあります。起立性調節障害の場合、夕方から夜は比較的元気に過ごせることも多いです。学業面が心配な場合、学校に放課後の補習をお願いしたり、塾や家庭教師を活用したりしても良いでしょう。起立性調節障害の子どもをサポートする上で、子どもに無理をさせないこと、家族でしっかりと話をすることも大切なポイントです。保護者が良かれと思って、朝無理に起こしたり登校を促したりすることが、反対に子どものストレスとなってしまうことも考えられます。また、保護者が心配しすぎないようにしましょう。起立性調節障害の治療には時間がかかりますし、考えすぎると保護者も精神的に疲れてしまいます。治療やサポートは、子どものペースに合わせて進めていくことが大切です。まとめ出典 : 起立性調節障害は、気持ちの問題だと誤解されやすい病気ですが、体の病気です。人によっては治療が必要なこともあり、回復するまでに時間を要することも少なくありません。病気そのものの認知度もまだ低いため、起立性調節障害と診断されずに、苦しい思いをしている子どもや保護者も多くいると考えられています。適切な治療をすることで、起立性調節障害の症状は改善する可能性があります。もし該当する症状や心配な症状があるようであれば、診断が可能な小児科のある医療機関を受診してみてはいかがでしょうか。起立性調節障害(OD)|日本小児心身医学会
2018年07月22日これって普通じゃないの?社会人になってから気づいた兄弟仲の良さ出典 : 先日、突然弟から連絡がありました。弟は昔から自分が好きなことに周りを巻き込んで楽しむタイプで、今回も急に何かを思いついて私に連絡してきたようでした。よくよく話を聞いてみると、近いうちに兄の誕生日があるので、それに合わせてプレゼントを贈りたい!ということでした。兄は流行りものにはまったく興味がなく自分が好きなことに黙々と取り組むタイプだったので、プレゼントの選定はかなり迷いました。いろいろと話し合った結果、私も弟もワインが好きだったので「兄にもワインを好きになってもらおう!」ということになりました。そして私はワイングラスとソムリエナイフを、弟はワインをそれぞれ購入してプレゼントしました。兄は突然送られてきたプレゼントに驚いたようですが、後日「おいしく飲んだよ」という連絡をくれました。そんなことを会社の同僚に話してみたところ「きみの兄弟はずいぶん仲がいいんだねぇ。私なんてもうずいぶんプレゼントなんて贈っていないし、たまに帰省したときに顔をあわせてもお互い好きなように過ごしているよ」と言われました。それほど特別なことをやっていたつもりはなかったのでかなり驚きました。これまで特段に仲が良いと思ったことがなかったのですが、今のような私たちの関係ができたのは「人と比較されないで育った」ことがポイントだったのではないかと思い始めてきました。「周りの子と比べてこの子は…」と言われなかった環境出典 : 私の実家は新興の住宅街だったので、近所には同年代の子どもがたくさん住んでいました。運動が得意な子や勉強が得意な子などいろいろな子がいましたが、両親は「その子たちと比べてうちの子は…」ということはまったく言いませんでした。例えば、私が小学生で不登校になったころ、両親はきっと「どうしてうちの子だけ学校にいけないんだろう」と何回も思っんじゃないかなあと今も想像します。ですが、実際にそういうことを言われたことは一度もなかったのです。また、「兄弟がちゃんと登校してるのになんでお前はできないんだ!」と兄弟を引き合いに出すこともありませんでした。ところが何回か「兄弟全員がそろって登校するところを見てみたいなぁ…」と言われたことはありました。それを受けて、数日だけ登校した記憶があります。その日の夜は両親とも、とてもうれしそうでした。もちろん学校に行くことは当時の私にはとても強いプレッシャーでした。でも、人と比べられている訳ではなかったので、行ってみようという気になったのかもしれません。耳が痛い忠告をしてくれた両親出典 : 高専に入ったとき、私はとにかく自分が好きなプログラミングだけに夢中になっていました。将来のために何か資格を取ろうなんていう気もさらさらありませんでした。一方で、兄は高校に通う間に10以上の資格を取っていました。ここでも両親は「お前は資格とらないんだ?お兄ちゃんはいっぱいとってるよ!」という話はまったくしてきません。その代わり、成人してから数十の資格を取った父から「大人になってから資格を取るのはとても難しいから、今のうちに取っておいたほうがいいよ」と言われました。苦労した経験がある父からそう言われたことで、私は少し危機感を持ちました。おかげで、すぐに資格勉強にも取り組むようなったのです。その結果、卒業するまでに情報系の国家資格をいくつか取ることができました。弟が同じ高専に入ってから1年目にして留年しそうになったこともありますが、やはり両親は私と比べたりはしませんでした。とは言え、留年しそうな状況を簡単に認めるのではなく「留年した分まで学費を払うのはうちの家計では難しいよ」という忠告をしていました。(この顛末は以前コラムにも書かせていただきました)両親の私たちへの接し方は、誰かと比較することで「負けず嫌い」な気持ちを刺激したり、やる気を出させようというのとはちょっと違います。自分たちがかつての経験から得た教訓のようなものや、私たちが置かれている状況がどうなのかを教えてくれていました。そして3人の息子に同じように接してくれていたのは、私たちの兄弟関係にも良い影響があったのではないかなと考えています。ケンカをしない兄弟関係をつくった『鉄の掟』出典 : 兄弟は、それぞれゲームと漫画が大好きでした。好きなものが同じだと取り合いになったりコントローラ争いになったりと、ケンカになりそうなイメージがあるかもしれませんが、私たち兄弟の間ではほとんどケンカになりませんでした。ゲーム時間に関しては兄弟間で「前日長く遊んだ人は1日我慢すること」という鉄の掟がありました。これは兄弟の間で自然に生まれたルールで、「昨日も今日もゲームしてたら不公平だよね!」という考えでいつの間にかできあがっていました。兄弟の中では私が一番せっかちで短気だったので、よくルールを破ってゲームを占有しようとしていたのですが(笑)兄弟のどちらかから「昨日ずっとやってたじゃん!」と言われるので、渋々譲っていました。当時の私はこの掟に従わないと他の兄弟も従わなくなって、その都度ケンカになったりしたら結局自分のゲーム時間が減ってしまうという思いがありました。長い目で見たら今は譲った方がいい、と判断していたのです。「我慢する」だけじゃない選択肢を自分で持ち、家でできないときには、友達の家に遊びに行って延々ゲームをするか家で攻略本を延々と読んで過ごしていました。弟もよく同じようにしていたと思います。順番待ちの間は攻略本を読むのがそれぞれ定番だったので、誰かがつまずいたら他の2人に相談したり、手本を見せてもらったり協力することもできていました。ケンカのもとになりそうなゲームですが、鉄の掟のおかげでコミュニケーションツールになっていたのかなと思います。互いに競わない関係の蓄積が、大人になっても仲が良い秘訣に出典 : 私が大人になって発達障害の診断を受けたときも、兄弟それぞれ自分もそうかもしれないと関心を持ったらしく各々でいろいろと調べているようでした。診断がついた後も、家族の関係は子どものころからそれほど変わっていません。それに今でも、誰の給料が高いとか誰のほうがいい家に住んでるとか比較するような話はまったくしません。というか兄弟全員そんなことに興味がないのだと思います。もしかしたら特殊な例なのかもしれませんし、私たち兄弟の気質によるものもあるとは思いますが、お互いに競争しない関係が築けたから、いまも仲が良いのかなと思っています。
2018年07月19日不登校の息子にも来た新年度。学校からの連絡は気が重く…出典 : 小学2年生の秋に不登校宣言した発達障害のある息子は、学校に顔を出すことさえなく3年生になった。以前コラムに書いたとおり、私はそれを受け入れており、自宅学習に勤しむ息子と共に毎日を過ごしている。エネルギー出力が安定せず、「毎日少しずつコツコツ」と勉強することはできていない。しかし、教科書やそれに準じた学習ドリルのみならず、ゲーム機を使って漢字の読み書きを学べるソフトをお小遣いで購入したり、インターネット上の学習サイトを自分で見つけて利用するなど、彼なりに意欲を持って学ぶ姿勢が見られる。新年度からは担任の先生が変わった。教科書や教材の受け取り等の際にお目にかかって、ご挨拶は早々に済ませている。悪い印象はなく、むしろ好感を持っていたが、私は警戒を解ききれなかった。なぜなら、前年度までに繰り返された学校との面談では、散々な目にあってきたからだ。「学校に行かない」という息子の決断を尊重し、「苦手を克服するために復学を」と勧められても揺るがない――そう決意はしていても、平行線にしかならない会話というのは、存外に疲れるものだ。だから、新年度はできるだけ面談は避けたいと持っていたが、そう思うように事が運ぶはずもない。「校長と教頭も新年度から新しくなりましたので、ご挨拶も兼ねてお話の場を設けたいのですが」と、担任の先生から電話をいただいた。(またあんなやり取りを繰り返さなくちゃいけないのか…)断りきれずに承諾した私は、終話後にがっくりとうなだれた。いかに場をやり過ごすかが課題だった面談。しかし校長先生から意外な言葉が出典 : 面談の場に居合わせたのは、校長先生と教頭先生、担任の先生と私の4人。去年まで同席していた支援コーディネーターさんは不在だったので、少しホッとした。とはいえ、油断はできない。挨拶のあと、「お母さんからしたら、また改めて最初からご説明しなければならないので、面倒だとは思いますが…」そうおっしゃって校長先生がファイルから取り出したのは、息子が受けたWISC(知能検査)の結果、主治医の先生が書いてくださった診断書と支援情報書、それぞれのコピーだった。正直、面食らった。前年度まではWISCのWの字も話に出てこず、ほぼ根性論で、早期の復学をと促されるばかりだったから。「何のための診断書なの?」という疑問がなかったわけではない。しかし、息子は私にとっての第1子であり、ただ1人の子ども。前例、比較対象がほかにないものだから、学校で行われる面談は「そんなもの」なのだと思い込んでいた。一気に毒気を抜かれた私に、先生方はコピーを眺めながら質問を投げかけてくる。それに対し、私が答える。私の返答に頷きながら、先生方はメモをする。そしてまた次の質問。この繰り返し。言葉こそ交わされているが、何とも言えぬ静かな空気が流れていた。一通りの質疑応答が終わり、息子の特性や現在の状況があらかた伝わった。「では、現時点で息子さんに、復学の意思はないということですね」校長先生の言葉に、私は不意に拳を固くし、無言で頷いた。「それでは、自宅学習を進めていくうえで、こちらがサポートできることはありませんか?例えば、息子さんが解いたドリルをこちらが拝見して、採点やアドバイスを書いてお返ししたり…」私は再び面食らった。復学させろと言われないどころか、自宅学習を応援してもらえるとは…。それまでの半年強、私にとって面談とは、こちらの言い分など取り入れてもらえないと諦め、先方の言葉を受け流し、いかにして場をやり過ごすかが課題の、不毛かつ、多大なストレスを受ける場だった。それが今年はどうだろう、こんなにも手厚い。「大人だって、自分に合う環境や向いている仕事はそれぞれ違います。それは子どもだって一緒でしょう。既存の学校の仕組みでは、自分らしさを出せない子だっていますよ」校長先生がそうおっしゃると、教頭先生も担任の先生も頷いておられた。なんとありがたい話だろう。先生方からいくつかの学習計画案を提示していただき、私はそれらについて息子と一緒に検討、いずれかを採用することにした。そして先生方に何度も何度も頭を下げてから、学校を後にした。気のおけないはずの友達にさえ、つい気を遣ってしまう私たちの「前提」Upload By 鈴木希望話は変わるが、ゴールデンウィーク初日、隣県から友人母子が新潟まで遊びに来てくれた。全員診断済みの発達障害当事者。なんとなくではあるが、相互の特性を把握しており、変に気を遣わずに済む間柄である。4人でとある施設へと遊びに出かけたところ、ある庭園近くを通ることになった。園内には、咲き誇る初夏の花とその色合い、香りを楽しむ人たちで溢れている。そこを突き抜けて進めば、私たちが目的とする場所まで早く着く。しかし、友人の息子さん・Aくんは嗅覚過敏。多くの人が心地よく感じる程度の花の香りでも、体調に影響が出てしまう。「園の中を通らなくても済む道があるから、そっちから行こうか」何の気なしに提案した私に向かって、「ありがとう。本当にありがとう」と、Aくんはお礼を繰り返していた、目を少し潤ませながら。それを見て、私は胸が苦しくなった。Aくんとその親御さんである友人は、ただごく普通に、当たり前に時間を過ごすために、今まで神経をすり減らしてきたのだろうか。ただできないことをちょっと助けて欲しいだけの場面で、どれだけ心を痛めてきたのだろうか。それから少し後に、こちらの息子が自分の興味ある話題について、夢中かつ一方的にしゃべり続ける場面があった。Aくんたちとの再会が嬉しくて、はしゃぐあまりのことだとわかってはいたものの、私は「さて、どのタイミングでほかの人の話を聞く姿勢に誘導するか」と焦っていた。すると今度はAくんが、「自分もこんなふうに、嬉しくなってたくさんしゃべって止まらなくなること、あるよ。だから(うちの息子の気持ちが)分かるよ。大丈夫」と、私たちに微笑みかけてくれた。そう、私も気を遣っていたのだ、変に気を遣わずに済むはずの相手に。そしてふと思った、友人たちも私も、無意識のうちに「理解されない」ということを前提に動いているのではないかと。「理解されないことが当たり前」と思っている私の、今後の課題と願い出典 : 当たり前と言えば当たり前だ。発達障害の特性による不便を明かして、あっさり受容されることはほとんどない。まず相手が発達障害というものを知らないケースはまだまだ多い。ここで説明して、なんとなくでも知ってもらえればかなりラッキー。「気のせいだよ」「考えすぎ」、ともすれば「わがまま」と突き放され、理解どころか、発達障害というものの認知を拒否されることだってあるのだ。そんなことを繰り返していれば、自分の心を守るために「理解されなくて当たり前」という構えになるのは致し方ない。しかし、息子や私自身に関する配慮を願い出るとき、「すみません」「ごめんなさい」を連呼している自分に気づき、「ここまで卑屈になる必要はあるのか」と、疑問が頭をもたげることもある。不登校の件だってそうだ。周囲には学校に行かないことを選んだ児童・生徒とその親御さんが何組かいるが、皆さんそれぞれにかなりご苦労されたようだ。中には「もう理解を求める気力なんてない。辛いけど、問題児扱いに甘んじている」という親御さんもいらっしゃる。無論、「理解・配慮されて当然」などと思っているわけじゃない。前述した、息子の自宅学習について学校側が配慮してくださった件についても、実にありがたいご対応だと感じている。じゃあ、何が疑問なのか。地域自治体や学校、個人によって受けられる配慮に格差があることだ。身近に発達障害や不登校の当事者がいない人はもちろん、支援者と呼ばれる立場の人であっても違いすぎる。原因は、情報量だろう。発達障害ブームと言われて久しいが、かつての私もそうであったように、まず「発達障害を知る」という機会に触れられる人がひと握り。こと、私の住んでいるような地方では、理解や認知以前の問題に留まっているように見受けられるのだ。その差をどう埋めていくかを考えるのは、全当事者・関係者の課題だろう。声を上げる・上げない、影響力の大小にかかわらず、だ。…なんて偉そうに書いている私も、妙案を持ち合わせているわけでもない。ただ、「理解されないことが当たり前」という悲しい前提が、まずは「現状、理解してもらえたらありがたいけど、本来は保証されるべき権利」に変わり、次に「正当な権利だけど、伝わらなければ説明が必要」へ、最終的には構えることなく配慮を願い出られる社会になってほしいと、おそらく皆さんと同じように願っている。過度にへりくだったり、卑屈になる必要ないだろうと、わが身を振り返って思う。ただ毎日を「自分らしく生きたい」と望んでいるだけなのだから。
2018年07月06日兄弟を両肩に乗せてくれる、力持ちな父出典 : 父は若いころ漁師をやっていたため、がっしりとした体格でした。私と兄が小さい頃は、右肩に兄、左肩に私を乗せて遊んでくれたものです。サングラスをかけるとなかなかの強面。駐車場でトラブルになりかけたとき、相手の車の人が勢いよく車から出てきたと思ったら、父の顔を見るなり回れ右をしてすぐ車に戻り走り去って行ったというような逸話があるほどです。知らない人から見たら、一見怖そうな父ですが、私たち兄弟に手をあげたことはありません。しかし、たった1度だけ叩かれた記憶があります。優しかった父が、1度だけ私を叩いた理由出典 : 私が小学校に入る少し前のこと。当時の私は気に入らないことがあると、すぐ他の子どもを叩いてしまいました。そのことで、幼稚園から連絡があったのでしょう。ある日、父は私を居間に呼び出して目の前に座らせ、バシッ!と私の頭を叩きました。いつも優しい父に突然叩かれ、私は痛さとショックで動けませんでした。そんな私に、父は「叩かれると嫌な気持ちになるだろう?だから他の人の頭を叩いちゃだめなんだ」と言ったのです。父に叩かれた時の衝撃は、とても嫌なものでした。そしてまた、他の人にとっても叩かれることはとても嫌だと気づきました。それ以来私は誰かを叩くということはなくなりました。不登校になった私は、だんまりを決め込んだ出典 : 小学校高学年になったころ、私は不登校になりました。そのころ父は出張が多く、ほとんど家にいませんでした。ふだん私の対応をするのはもっぱら母でした。父はたまに帰って来ては「今のうちからこんなに休んで、将来どうやって食っていくつもりなんだ?」と言ってきました。そんな言葉をかけられた私は下を向きじっとしていたり、いたたまれなくなって自分の部屋に逃げ込んだりしていました。それが面白くないのか、父の私に対する言い方が徐々に厳しくなっていき、「本当にそれで生きていけると思ってるのか?」「考えが甘い」「世の中が見えてない」と言われるようになっていきました。私は反論する気力もなく、だんまりを決め込むようになりました。このころは、父とほとんど話をしていなかったと思います。アウトドア派の父が、私を外に連れ出すようになって出典 : 「父親の言い方がきついのはあなたにもっと反発して欲しいからだ」と母親に言われるも"ガス欠状態"だった私。そのことが伝わったのか、少しずつ父の態度も変わってきました。それまでは私にプレッシャーをかけ、責めるような言い方が多かったのですが、「休むのはいいけれども、将来どうやって生きていくのかは考えておかなきゃいけないよ」と優しい口調になったのです。たまに職場に連れていってくれて、父が働いている姿を見せてくれることもありました。当時の私は「家でゆっくりしていたいなぁ」なんて思っていましたが、今考えてみると働くことがどういうことなのかを父なりに私に見せたかったんだろうと思います。他にも父の趣味である釣りに連れ出してくれたり、いつの間にかテントを手に入れてキャンプにも行くようになりました。当時、同級生から「学校休んでるのになんで外で遊んでるの?」と言われるのが嫌でほとんど外に出ない生活をしていました。さらに、かなりのインドア派であまりアウトドアは好きではないのが正直なところです。しかし、父が外に連れ出してくれて、過ごした時間はいい気分転換になっていました。父の買ってくれた1冊の技術書が、今の自分につながる出典 : 中学校になり不登校も落ち着いてきたころ、父も出張ばかりだった仕事が一段落して、よく家にいるようになりました。そのころに、口を酸っぱくして言われたのが、「とにかく手に職をつけろ」ということでした。「プログラマーになりたい」と思いはじめていた私にとって、父の言葉は心に自然に刻まれました。高専に入学したばかりのころだったでしょうか、父親と本屋に行く機会がありました。書店で、私がとある技術書をじーっと見ていたところ、父はその本を手に取り「しっかり勉強しろよ」と言って買ってくれました。わが家は裕福ではなかったし、技術書はそれなりの値段がしました。父が使えたお小遣いの結構な割合を占める買い物だったと思います。そして、それは私にとって初めて手にした技術書でした。その本に書いてあったことをみっちり勉強するところから、私の技術者人生は始まりました。今でこそ数十冊の技術書を持っていますが、この時父に買ってもらった1冊は大切に本棚にしまってあります。大人になった今、困ったことを相談できる人生の先輩に出典 : 一時は気まずい雰囲気もあった私たち親子ですが、社会人になってから、困ったことがあったりすると父に相談していました。うつでつらい状況になった時も「そんな会社辞めて少し休め」と言ってくれました。その一言に背中を押され、当時勤めていた会社を辞める決心をしたことを覚えています。その言葉のおかげで、ゆっくり休め、現在の会社で希望の職に就き、働けるようになったとも感じています。たまに帰省すると、仕事の近況を話したり、アドバイスをもらったり、時には父の政治についての愚痴を聞いたりして過ごします。保護者の皆さんの中にも、不登校の子どもとどう接していいのか困惑している方がいるかもしれません。父が私にしてくれたことすべてが「正解例」というわけではありませんが、外へ積極的に連れ出してくれたこと、将来のために本を買い与えてくれた父の不器用な優しさがあったからこそ、今の私につながっているということを伝えたいと思います。
2018年06月15日「あなたは依存症です」医師の言葉に救われた出典 : 発達障害に詳しい病院に転院して約1年半が経ちました。先生のアドバイスは発達障害の特性を踏まえており、ときには痛いほど的をついてきます。ある日の診察で「深夜になってもネットを止められないんです。1日の終わりに、ホッとリラックスしながら、満足するまでSNSをやったり、いろんなサイトを見て回ったり、ネットゲームを楽しまないと気が済まなくて」と言うと、「それなら時間を決めて無理やりパソコンをシャットダウンさせるソフトがあるから、それで止めるようにしてください」とアドバイスされました。探してみると、Windowsでは「Wise Auto Shutdown」という無料ソフトがあり、時間を決めると5分前からカウントダウンが始まって、時間がくると容赦なくシャットダウンされます。ただこのカウントダウン、キャンセルボタンで止めることができるのです。次の診察で「先生、ソフトを入れてみましたが、キャンセルボタンを押してついついそのまま続けてしまうんです。ひどい日には朝までやっていることもあります」と正直に言うと、「あなたは依存症ですよ」と衝撃的な一言を言われてしまいました。「え、娘がネットやゲームの依存症なのは分かっているけど私もなの?」とショックでした。容赦なく先生の言葉は続きます。「まぁね、発達障害がある人に、併発していることが多いんですけどね」「先生、なんだか気分が重くなってきました」「重くさせるように言ったんです。『大丈夫、いつでも止められますよ』なんて言われたら止めないでしょ?アルコール依存症などと一緒ですよ」あきらめきれない私はなお先生に食い下がりました。「ネット小説を読むのも大好きなんですけど、じゃあ本で読めば依存症じゃないんですか?」「それなしではいられないのなら、やはり依存症ですよ」あー、ばっさりやられてしまいました。くやしい。でも、私はそういう病気だったんだと分かったら、ふっと楽になったのです。それから生活習慣をどうすればいいのかという話になりました。すでに睡眠障害状態だった私は「早寝早起きをしなさい」と言われることを恐れていました。だって、それができるくらいなら苦労しないというか自分にできるとは全く思わなかったからです。「先生、私は朝10時ごろに起きるのが精いっぱいなんですけど」「それなら深夜2時に寝て朝10時に起きればいいです。できもしないような目標を立てても仕方ないでしょ。それと睡眠薬は増やしませんよ。そういう問題じゃないですからね」この言葉は、目からウロコでした。そうか、自分にできる範囲で目標を立てればいいんだ!と気づいたんです。そして、このやりとりのおかげでずいぶん気が楽になったのでした。ネットとゲームに救われた経験も。娘の不登校と引きこもりで悩む私の逃げ場だった出典 : とはいえ、ネットやゲームへの依存は悪いことばかりではないと思える出来事が私にはありました。娘が小2で不登校になり、親子2人きりで家に閉じこもるような生活になってから、私はものすごいストレスに押しつぶされそうになっていました。仕事は辞めざるを得なかったし、娘は暗い顔で泣いてばかり。正直、何もかも放り出して娘と一緒にどこかへ消えてしまいたいと思い詰めるほどだったのです。そんなとき娘の主治医のすすめで携帯型ゲーム機を買い、最初は娘が夢中で遊んでいましたが、私も一緒にゲームを楽しむようになりました。ゲームに夢中になっている間はつらい現実を忘れることができる。現実には何も達成感はないけれど、ゲームでは達成感を味わうことができる。「現実よりこの世界の方がいい」と本気で思ったほどです。ゲームをしているときは、娘とも親子という立場を離れて対等にコミュニケーションを持てるようになり、お互い笑顔で楽しく過ごすことができました。娘も私に教えることができて自信を取り戻したようです。だから、一番つらい時期にいる子どもも大人もネットやゲームに避難することは決して悪いことではないとも思っています。自分が起きたときが朝――。「体が、今何時だか分からなくなっている」とぼやく私に放った、娘の一言出典 : 主治医のアドバイスも守ることができず、相変わらずネットやゲームにのめりこんでいった私の生活は、どんどん夜型になりました。朝5時に眠り、11時頃目覚めて朝ごはん。深い睡眠が得られないので、そのあとまたウトウトと昼寝してしまい本格的に活動し始めるのは夕方という生活。でも正直に言うとこの生活の方が快適なんです。聴覚過敏がある私にとって、家の中で娘が走り回る音や、外で子どもが遊んでいる声が聞こえてくると耐えられないのです…。でも夜中なら静かだし、何か作業するにしても集中することができます。働けないことに罪悪感を感じることも、この生活リズムなら少しは楽ということもあります。昼間は、やはりコンプレックスが刺激されてしまうからです。診断される前からそういうところはあって、仕事や育児をしていれば無理やり適応できるのですが、そうでなければ起きる気がしなくて寝てばかりいました。そして夜はやっぱりネットや本などに夢中になっていましたね。起きる目的がないと起きようという気にならないのです。それでも、時には通院も必要ですし、ヘルパーさんもやってきます。できるだけ朝早い時間には用事を入れないようにしているのですが、そういう時は目覚ましを使って無理やり起きます。すると、よけい体内時計が無茶苦茶になってしまうのです。ある日、昼夜回転(※)生活7年目の娘に「体が、今何時だか分からなくなっている」と相談してみました。すると娘はきっぱりと一言「自分が起きたときが朝だ」と言ったのです。なるほど、その思い切りが娘の元気の秘訣なのかと妙に納得したのでした。そして、そう言い切るまでに娘の心の中でもいろいろ葛藤があったのだろうなと思いをはせたのでした。※1日25時間周期で睡眠時間が回転していく概日リズム睡眠障害によるケースワーカーさんの「あせらないでいいのよ」にホッとした出典 : 「やっぱり私ってダメ人間なのかな」「この生活、なおさなくちゃだめだよね」とあせる気持ちもあります。月1回面談しているケースワーカーさんに思い切って自分の気持ちを話してみました。すると「あなたは充分頑張っているんだから、あせらないでいいのよ」と言ってくれたのです。なんだかホッとしました。今までの経験からしても、なおるときにはスコンとなおるので、今は心地よくネットやゲームへ依存し、睡眠障害に浸っていようと思います。ゴミの日がなければもっと安心して浸れるのに。
2018年06月09日LITALICO発達ナビ・求人検索サービス開始!児童福祉業界の「働く」を語るフォーラム開催Upload By 発達ナビ編集部LITALICO発達ナビでは、児童発達支援事業所と放課後等デイサービスの求人情報を検索できる「求人検索サービス」を4月10日(火)からスタートしました!求人情報はもちろん、各支援施設の理念や研修環境、職場の魅力を詳しく知ることができます。この求人検索サービスのリリースを記念して、2018年5月20日(日)に「児童福祉業界、これからの働き方を考える」フォーラムの第1回を開催!会場には児童福祉業界に興味のある学生から、現役の児童指導員、異業種で働いている方々など…60名を超える方が集結。株式会社LITALICO執行役員である野口晃菜による、野口が今まで歩んできたキャリアについての講演や、働き方を工夫されている事業所代表とのパネルディスカッション、そして今後のキャリアや理想とする社会を考えるグループワークと、盛りだくさんの充実したイベントとなりました。この記事では、フォーラム当日の様子をレポートします。【オープニング講演】「理想を実現するためにやってきたこととこれからやること~結果歩んできたキャリア~」 ーLITALICO執行役員 野口晃菜Upload By 発達ナビ編集部「私のキャリアの選び方はいたってシンプルです」「どんな『ちがい』があっても 誰もが 『自分らしく生きる』を 実現できる社会をつくる。そのために、自分が何ができるか考え続け、自分らしく行動し続けたことで、結果的に今のキャリアがあります 」理想の社会を作るために、私たちができることは何なのか。「理想を実現するためにやってきたこととこれからやること~結果歩んできたキャリア~」という題で、株式会社LITALICO執行役員であり、LITALICOジュニアで支援者の育成や教材開発等に携わっている野口晃菜が語りました。実現したい社会に向けて、常に「自分らしく」いることを忘れずに、大学院での研究・現場指導など、数多くのアクションを起こしてきた野口。さまざまな経験のもと語られた、熱のこもった講演には、会場全体が引き込まれていました。【パネルディスカッション】これからの児童福祉業界の「働く」を考えるUpload By 発達ナビ編集部パネルディスカッションでは、「働く」に関して様々な取り組みをされている3つの支援施設の代表者に登壇いただき、児童福祉業界のこれからの働くについて語っていただきました。「職員が楽しく仕事をするためには、半分は会社の責任。そしてもう半分は職員自身の責任」と語るのは、株式会社SHUHARIの中村敏也さん。元々は保育所を運営していましたが、発達に凸凹がある子どもたちも笑顔になる場所を増やしたいと考え、児童発達支援事業所を設立。Upload By 発達ナビ編集部新卒の離職が7年連続0人という実績をあげている株式会社SHUHARIでは、「子どもの最高の笑顔をつくりだすためには…?」という視点から、職員への行動指針を整えています。職員自身が成長するために、きちんと休みを取得できるように制度を整え、自分の知識・考えを豊かにできるようサポートする。「相手の話をきちんと聞く耳をもつ」「自分の意見を相手にきちんと伝える勇気をもつ」という行動指針によって、意見交換や相談がしやすい雰囲気づくりを実現しているそうです。Upload By 発達ナビ編集部続いて登壇されたのは、特定非営利法人ダイバーシティ工房で発達支援事業部マネージャーを務める大野亮さん。ダイバーシティ工房は、約40年間地域密着型で運営してきた学習塾を母体として設立されたNPO法人。そこで不登校・引きこもりの生徒と接するうちに発達障害がある生徒の存在に気づいたことがきっかけで、放課後等デイサービスを立ち上げたそうです。大野さんは、「支援者を増やす」ために、スタッフへ成長機会を提供する重要性を語りました。「読み書きの専門家・臨床心理士などからの細やかな指導や入社時の研修制度、またスタッフ同士の相互理解やキャリアを考える職員合宿を実践している」とのことでした。職員は10代から70代、バックグラウンドもさまざま。職員一人ひとりのアイディアのスピーディーな実践、職員のキャリアの志向・実現したいことへの応援を大切に、日々取り組んでいます。Upload By 発達ナビ編集部「職員一人ひとり自ら意志をもって、『自分がどう働きたいか』『どう子どもと向き合っていきたいか』を見つけ、自分の可能性を広げていってほしい」このように話していただいたのは、こぱんはうす さくらスーパーバイザー 内藤卓也さん。全国に66事業所を展開するこぱんはうす さくらは、「事業所数の分、豊富な事例があり、支援を追求できる環境がある」という強みがあるとのこと。また、児童発達支援管理責任者、児童指導員など、職種・キャリアに合った研修の充実化や、スーパーバイザーからのレクチャーといった取り組みをしているそうです。支援の質をあげるためにも、支援者の働く環境を整えていく。当たり前のようで、実践するには難しさも伴いますが、パネラーのみなさんによる具体的な実践例を聞き、参加者の皆さんも真剣に聞き入っていました。【グループワーク】「自分らしい」支援スタイルを見つけ、理想の社会を考えようUpload By 発達ナビ編集部休憩を挟み、後半はグループワークです。働く上で大切なのは、自分らしい支援スタイルや自分に合う働き方を理解すること、そして、それが実現できる環境を選んでいくことです。グループワークでは、これまで支援してきた中で楽しかった・充実感を得られたエピソードを寄せ合い、その原体験を元に、今後のキャリアや理想の社会について考える時間を設けました。Upload By 発達ナビ編集部日頃、子どもたちの個別支援計画と向き合うことはあっても、自分自身の支援やキャリアについて向き合う機会をなかなか設けられないでいる方もおられると思います。ですが、オープニング講演やパネルディスカッションでも語られた通り、支援者が自分らしく生き生きと働くことは、子どもたちへのより良い支援にも繋がっていくでしょう。今回のグループワークのように、時には立ち止まって、「自分はどうありたいのか?」を考える機会を持ってみるのも良いかもしれません。児童福祉業界志望の学生、現役で指導員をしている方、現職は異業界であるものの、児童福祉業界に興味がある方…年齢もバックグラウンドもさまざまな方が集まった今回のイベント。キャリアや理想の社会について、普段は交流しないような方とディスカッションを行ったことで、多くの気づきと刺激を得た、との声が集まりました。「2回のワークだけでは話したりない!」「もっとこの事業所の話を聞きたい!」という声も。その後の懇親会では多くの方が、気になる事業所・スタッフと個別で話したり、参加者どうしで交流を深めていたりしていました。フォーラム第2回は6/24(日)東京にて実施予定!お申し込みはこちらUpload By 発達ナビ編集部参加者の熱気に包まれ、大盛況のうちに終えることができた本イベント。今後、LITALICO発達ナビでは児童福祉業界での働き方や、キャリアについて考えるイベントを随時開催していきます。次回は6/24(日)に東京で開催予定!フォーラム第2回は、「児童福祉現場のリアルを伝える」をテーマに、「活躍する人の働き方」講座を実施。障害児支援のニーズが高まり、事業所での支援や児童福祉業界で働く人のバックグラウンドが多様化している今だからこそ伝えたい、現場で活躍している人のリアルをお届けします。講座後は、自由に巡回できる事業所の取り組み事例ブースを展示します。支援の現場で使っているツールや資料を用いて、運営者の想いや支援内容の特徴、活躍しているスタッフの様子など具体的な事業所の様子を伝えます。さらに、LITALICO発達ナビのスタッフによる相談窓口を設置。「発達支援に求められるスキルとは?」「学童と放課後等デイサービスのちがいとは何か?」「子どもへの支援とは具体的にどのようなことができるのか?」などなど、業界のあらゆる疑問にお答えいたします。児童福祉業界で働くことに関して、「新たに業界に飛び込みたいけど、業界情報の知識がなく不安」「復帰したいけど、現状の業界の取り組みがわからず二の足を踏んでいる」などと感じている方にはぴったりのイベントとなっています。参加を希望される方は、こちらのフォームからお申込みください。【日時】6月24日(日)13:00~16:00【場所】LITALICOセミナールームセミナールーム住所:〒153-0051 東京都目黒区上目黒2-1-1 中目黒GTタワー16F(東京メトロ日比谷線・東急東横線「中目黒駅」東口より徒歩1分)【定員】30名【参加費】無料(※申込みフォームからのお申し込みが必須となります。)■当日のタイムテーブル(※当日変更の可能性もあります。ご了承ください。)・12:30~13:00 開場・13:00~開会・13:05~14:30 「活躍する人の働き方」講座・14:30~16:00ブース出展~事業所の取り組み事例~・16:00閉会【対象】児童福祉、障害支援といった業界で働いている方、または働くことに関心をお持ちの方など【応募方法】以下フォームよりお申込みくださいませ。みなさまのご参加、心よりお待ちしております!
2018年06月05日お腹の不調がつらい「過敏性腸症候群(IBS)」の具体的な症状とは?出典 : お腹が痛い、下痢や便秘が長引いている、お腹にガスが溜まっているような気がする。腸の疾患がないのにお腹に痛みがあったり、調子が悪く、それに関連した下痢や便秘などの異常が数ヶ月以上続くなどの症状に悩まされているなら、過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome: IBS)かもしれません。過敏性腸症候群の症状は多岐にわたります。代表的なお腹の痛み、腹部不快感、下痢・便秘が続く症状のほかにも、腹部膨満感(腸内に水分やガスが溜まりお腹が張って苦しい状態)、おならがよく出る、食欲不振、頭重感、お腹がゴロゴロ鳴るといったさまざまな身体症状が現れます。夜寝ている時に症状が出ることはほとんどなく、排便すると一時的に症状から解放されるのも特徴です。過敏性腸症候群には身体症状だけでなく、精神症状が伴うケースもあります。特に重症になると、トイレに自由に行けない環境に不安を感じたり、見た目では理解されない苦しみを抱え込んだりします。過敏性腸症候群は命にかかわる病気ではありませんが、日常生活に支障をきたし、生活の質が著しく下がる病気です。学生であれば、授業中やテスト中に何度も教室を抜け出すのがつらい人もいます。働いている人であれば、通勤には各駅停車を使って、いつでもトイレに駆け込めるように対策している人もいるほどです。こういった不安や苦痛を隣り合わせのため、勉強に集中できなくなったり、働く気が起きなくなったりすることもあるようです。さらには外出を控えるようになり、不登校になったり、仕事を辞めることまで考える人もいます。参考:過敏性腸症候群(IBS)患者さんとご家族のためのガイド「Q1 過敏性腸症候群(IBS)ってどんな病気ですか?」|日本消化器病学会ガイドライン実は10人に1人が過敏性腸症候群。4つのタイプや性別・年齢との関係は?出典 : 過敏性腸症候群は、便の形状や排便頻度によって4つのタイプに分かれています。・便秘型: 週に3回以下の排便で便が固くなる。お腹にガスが溜まりやすい。・下痢型: 1日に3回以上の排便で便が水っぽくなる下痢型。急に襲ってくる便意があるため、トイレに自由に行けない環境に不安を感じやすい。・混合型: 便秘型と下痢型の症状を繰り返す・分類不能型: 以上3つのタイプには当てはまらないタイプ過敏性腸症候群は10人に1人がかかっている病気で、決してめずらしい病気ではありません。男性より少し女性に多く、加齢とともに患者数は減少すると考えられています。一般人口の11.2%(95%CI,9.8%-12.8%)が IBS を発症しており,男性に比べて女性が発症しやすいことが示された(男性:女性=1:1.67)。年から,1991年から,2001年からの各10年間にわたるIBSの有病率は変化していない. しかし,30歳未満,30歳代,40歳代,50歳代,60歳以上の有病率は各々11.0,11.0,9.6,7.8,7.3%であり,全体として,50歳以上ではそれより若年者に比して有病率が低い傾向が認められた.過敏性腸症候群を発症する原因は?ストレスとの密接な関係が指摘出典 : 過敏性腸症候群の発症の原因は解明されていません。ただし、腸の検査や血液検査をして、腸に明らかな異常(潰瘍や腫瘍など)がある病気ではないため、ストレスが原因ではないかと考えられることも多くあります。実際に、過敏性腸症候群はストレスと密接な関係があり、強いストレスを感じたときには症状が強く表れ、ストレスが軽減されたときには、症状が軽くなる傾向があります。これは脳と腸が自律神経でつながっていて、脳が不安やストレスを感じ取ると、その影響を受けて腸の動きが乱れ、痛みを感じやすい状態になるためです。特に過敏性腸症候群の患者はこの状態が強く現れる傾向があり、腸の動きの早さによって下痢や便秘などの症状につながります。精神的なストレスを感じていなくても、過労や睡眠不足、乱れた食生活が続いている場合は腸に負担がかかっているため、過敏性腸症候群を発症しやすくなります。また細菌やウイルス性の胃腸炎から回復した後は、過敏性腸症候群にかかりやすいと言われています。そのほか、腸内細菌のバランスが崩れて発症することもあります。善玉菌が減って悪玉菌が増えることによって腸が過敏になるためです。参考:過敏性腸症候群(IBS)の病態・診断・ 治療|日本内科学会雑誌 第102巻 第 1 号・平成25年 1 月10日過敏性腸症候群の症状にあてはまったら…出典 : 過敏性腸症候群の症状が続いている場合は一度病院の受診を検討するとよいでしょう。まずはかかりつけ医もしくは内科医に行き、重症で内視鏡検査などの精密検査が必要になる場合は消化器内科か胃腸科をおすすめします。もし大きなストレスがかかる状態が続いていて、抑うつ状態や気分の落ち込みがある場合は、心療内科やメンタルクリニックの受診も視野に入れてみましょう。診察の際、飲んでいる薬があれば必ずお薬手帳を持参してください。また、直近の健康診断の結果が手元にあれば合わせて持参すると、診断がスムーズになります。腹痛、下痢・便秘を繰り返す腸の病気は、過敏性腸症候群以外にもあるため、医師の診察をしっかり受けることが必要です。過敏性腸症候群の診断にはどんな検査がある?出典 : 過敏性腸症候群の診断は、国際消化器病学会の専門委員会が作成した診断基準で、国際的にも多くの医師が用いている「ローマⅢ基準」によって行われます。IBSの診断基準(ローマⅢ基準)最近3ヵ月の間に、月に3日以上にわたってお腹の痛みや不快感が繰り返し起こり、下記の2項目以上の特徴を示す1)排便によって症状がやわらぐ2)症状とともに排便の回数が変わる(増えたり減ったりする)3)症状とともに便の形状(外観)が変わる(柔らかくなったり硬くなったりする)「ローマⅢ基準」による診断を確定するために尿・便検査、血液検査のほか、症状や過去にかかった病気(既往歴)や家族の既往歴によって、腹部X腺検査、大腸内視鏡検査、超音波検査、CT検査などが追加されることもあります。急激な体重減少・血便・寝ている間もトイレに行きたくなる場合は、過敏性腸症候群ではなく他の病気の可能性もあるため、追加の検査が必要となることもあります。潰瘍性大腸炎やクローン病などの初期症状は過敏性腸症候群の症状に似ていること、細菌・ウイルスに感染していることも考えられるため、自己診断ではなく必ず病院で診察を受けましょう。検査以外にも、心理状態や生活状況を聞き出して総合的に診断することもあります。市販薬で乗り切れているから自分は大丈夫だ、と思っていても重大な病気が隠れている場合もあります。胃に違和感を感じたり、下痢や便秘などの症状に悩まされている場合は、早めに医師による診断をしてもらいましょう。治療法はさまざま。症状に合った治療法を選ぶことが大切出典 : 過敏性腸症候群の治療は、たいてい以下の順番で行われます。1 生活習慣の改善・朝、排便をする習慣をつける・夜更かしをせずに十分な睡眠をとる・運動不足であれば適度な運動をする(運動療法)※運動することでストレスが減り、便通も促されるため2 食事指導(食事療法)・香辛料、冷たい飲み物、脂っこいもの、コーヒーやアルコールなど、腸に刺激を与えるようなものは控える・食物繊維を多く含んだ消化に良い食べ物を食べる・食事は早食いしない、食事を抜かない、1日3食決まった時間にとる3. 薬物療法・生活習慣や食事を改善しても症状が変わらない場合は、症状(身体症状・精神症状)に合わせて薬や漢方を使う4. 心理療法・薬を使ってもあまり症状が改善されないときやストレスが強い場合は心理療法が用いる・心理療法には認知行動療法やストレスマネジメント、対人関係療法などがある※薬を使いながら心理療法を併用する治療もある過敏性腸症候群の治療では、自分の症状に合った治療法を選び、症状を改善させます。日常生活の工夫で過敏性腸症候群を予防することはできる?出典 : 過敏性腸症候群を予防できるという研究はありませんが、普段からの心がけで症状を避けたり軽減したりすることはできます。十分な睡眠、心地よい睡眠環境、規則正しい食生活、お酒やたばこを避ける、ストレス解消法を見つける(休む時間を作る)、胃に優しいものを飲む・食べるなどさまざまな方法があります。もし運動不足であれば、軽い散歩をすることで、腸の働きを整えるだけでなくストレス解消になります。こうした規則正しい生活習慣や自分なりのストレス解消法を取り入れて過敏性腸症候群を改善していきましょう。まとめ出典 : 過敏性腸症候群は、めずらしい病気ではありません。ただし、お腹の不調を伴う病気は過敏性腸症候群以外にも多くあるため、一度病院で医師の診察を受けることが重要です。下痢や便秘が長引けば、ストレスや不安も大きくなり、生活の質も落ちてしまいます。現在過敏性腸症候群の治療法はたくさんあり、自分の症状に合わせて治療ができます。もしもお腹の不調に悩んでいるのであれば、なるべく早めに病院に行って症状を軽減していくことをすすめます。
2018年05月15日「発達障害」をテーマにしたさまざまな本が続々登場!「発達障害について書かれた本は難しそう」というイメージはありませんか?今は、さまざまなタイプの本が出ています。イラストを中心にしたものや、項目を細かく分けることでどこから読み始めても大丈夫なものなど、読みやすい本がたくさん出版されています!また、保護者向け、支援者向け、教育者向け、当事者向けといった、それぞれの立場向けに書かれた本も多くあります。専門家の経験や知識が盛り込まれた本は、学びや気づきを得られるものばかりです。今月の注目の新刊を紹介します!お母さんにも支援者にも読んでもらいたい!『発達障害の女の子のお母さんが、早めに知っておきたい「47のルール」』以前、LITALICO発達ナビでも特集して反響が大きかった「女の子の発達障害」がテーマの本です。著者は名古屋市内で放課後等デイサービスの事業所を運営する、健康運動指導士・介護福祉士の藤原美保さんです。発達障害がある女の子は、おしゃべりが止まらなかったり、逆におとなしすぎたりと、周りに迷惑をかけることは少ないけれど、本人は困っていることが多い場合があるそうです。そのため、周囲から発達障害のことを気づかれないまま成長することも少なくありません。また、障害に気づかれにくいことから、「性の被害者」になってしまうこともあるそうです。この本では、なぜ性被害に遭いやすいのかという解説から、思春期を迎える前に行いたい性教育のことまで、子どもたちを守るためのポイントや実践的なアドバイスが、分かりやすくまとめられています。発達障害があると分かった段階から、周囲からの言葉をどう受け止めるか、子どもの将来のために何をしたらいいかなど保護者としての心構えも書かれています。作業療法士の小松則登さんとの対談では「私たちが子どもたちのためにできることは?」と支援側としての思いを語り合っています。すでに支援を利用している人にとっても、普段のコミュニケーションだけではわからない支援側の率直な声を知ることができるかもしれません。(発行:2018年3月25日)保護者とのコミュニケーションに悩んだら…『Q&Aで考える保護者支援:発達障害の子どもの育ちを応援したいすべての人に』発達障害のある子どもたちへの支援は少しずつ広がりつつありますが、その保護者への支援にはなかなか光が当たらず十分ではありません。この本は、発達が気になる子どもの育ちを支援する保育士、教員、療育の関係者などの立場から保護者への声かけの悩みについて質問し、著者が回答するスタイルで保護者支援のあり方を考えています。言語聴覚士で「子どもの発達支援を考えるSTの会」代表でもある中川信子さんが一つひとつの質問に丁寧に回答しています。相談の内容は「仕事で忙しい保護者になんと言えば?」「療育に通うといいとわかっているのに、通う決心がつかないお母さんへの声かけ」など具体的です。保護者と支援者の状況を丁寧に整理し、コミュニケーションに活用したいツールなどの紹介や、具体的な対応のアドバイスが掲載されています。保護者も支援者も一生懸命だからこそ、なかなかはっきりとは伝えられなかったり、意見が食い違ったりという悩みは少なくありません。ただ、子どものよりよい成長を願う気持ちは共通しています。保護者の気持ちを汲み取りながらコミュニケーションを工夫することで、ともに子どもの育ちに寄り添えるようになるのではないでしょうか。保育園や幼稚園、学校、療育などの現場で子どもたちの支援に関わっている人たちを支えてくれる本です。(発行:2018年4月20日)法律から療育、教育、就労など各方面の専門家が執筆。『発達障害の早期発見と支援へつなげるアプローチ』「発達障害」という言葉が知られるようになり、法律の施行によって支援も受けられるなど徐々に社会は変わりつつあります。しかし、特性への理解はまだまだです。家庭では「何を考えているのかわからない」と虐待の理由になったり、学校では先生の指示を理解できず「反発している」と誤解され、ますます叱られるということも。そのままでいると、症状が悪化し、自己評価が低下、周囲から「からかい」や「いじめ」を受けたり、心理的に追い込まれて「不登校」「引きこもり」などの二次障害につながる恐れがあります。社会人になってからも苦手な業務に苦労したり人間関係がうまく築けず、退職せざるを得ない状況になるなど、ライフステージが変化しても発達障害がある人にとって厳しい環境があるといわれています。このように、「二次障害」への危機感も高まり、早期発見・早期支援の重要性が示されるようになってきました。この本は、発達障害に関わる療育や教育、就労、虐待・引きこもり、行政、家族支援といった各分野を専門とする13人が執筆。国内外の先進的な取り組みや事例、データなどをもとに現状を丁寧に分析した内容です。現在の問題点や課題、これからの展望など、専門的な内容ですが、発達障害に関わる幅広い分野を網羅しており、知識を得ることができます。発達障害について詳しく知りたい人におすすめの1冊です。(発売:2018年4月27日)社会人のコミュニケーションのポイントは!?『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が会社の人間関係で困らないための本』「ちょっとしたことでうまくいく」シリーズの新作が発売されました。今回は、「会社の人間関係」に特化した内容になっています。発達障害のある人は、コミュニケーションに苦手があることで、社会に出ると「マナーが悪い」と思われてしまうことがあります。そうしていくうちに本人が社内外での人間関係に悩んで、仕事を長く続けられないといったケースもあるのです。そんな悩みの対処法として、仕事でのやりとりをスムーズに行うための工夫をイラストで解説しています。この本では、最初にADHDやADD、ASD、LDといった発達障害の特徴がまとめられています。例えば、ADHDでは「時間を守れなかったり、時間の見込みを立てて行動したりするのが苦手」、ASDは「報連相が少ない、あるいは過多」といった職場で起こりうる課題があげられています。ここで苦手なことを確認できると、自分がどの章を中心に読んだらいいかも分かりやすくなりそうです。章ごとに「身だしなみ」「聞く力」「社会人のマナー」「報告・連絡・相談」「会議・雑談」「書類、プレゼン、メール」をテーマに、トラブルの事例と原因、解決法を紹介しています。相手が不快に感じる声かけや、取引先へ行くときの身だしなみチェックリストなど、教えてもらう機会があまりない部分もカバーされています。コミュニケーションがうまくいけば、仕事がもっと楽しくなるかもしれません。自分に合う工夫を、探してみませんか。(発行:2018年4月18日)まとめこれからの生活に備えるため、今の生活をよりよくするために保護者や支援者、当事者の方などそれぞれの立場から参考になる本を紹介しました。専門的な知識と経験を持つ人たちのアドバイスは、気づきや学びを得られることが多いと思います。気になる本があればぜひ手にとってみてください。
2018年05月03日「発達が気になる子のママ、仕事をしてる?」66%が”働いている”、約20%が”働きたい”という結果にUpload By 発達ナビ編集部「発達が気になる子のママ、仕事をしてる?」というテーマで2018年4月19日(木)~27日(金)に、みんなのアンケートを行い、900名以上のユーザーから回答がありました。現在働いている人は66%、働いていないが働きたいと思っている人が19%、働いていない人が15%という結果でした。みんなのアンケート「働いていない」「働いていないが、働きたい」人の理由は?出典 : %と一番割合が低かった「働いていない」場合。この理由としては、子どものサポートのために時間が取れないというものが多くあげられました。”娘が中学校に入る前まで働いていました。(中略)仕事を辞めてからは娘優先で生活できる様になって、気持ちが落ち着きました。娘に障害がなかったら仕事は続けていたと思います。””今後のことを考えると働きたいなぁ…と思いますが、息子のSTとOTで月2回、これから通院も予定してるので、息子関係でどのくらい時間が取られるのかまだ見えません。”「働いていないが、働きたいと思っている」人は約2割いました。子どもの支援や療育に通うために仕事を断念したけれど、理解してくれる職場があれば働きたい、探している、という声も多く寄せられました。”働いてたし、働く気でいましたが子どもの状態が良くなくて保育園追い出されそうで、様子見のため何も動けないです。子どもに手が掛かるのはしかたないけど、自分のやりたい事を諦めることもしたくありません。自分の人生は自分のものですしね。”その他、次のようなコメントもありました。■子どものリハビリに専念するため働くことをあきらめた。子どもの障害を理解してくれる職場があれば働きたい■子どもに発達凸凹があり、復職出来ないまま時間がたってしまったが、働ける場所があるなら働きたい■子どもが不登校。放課後等デイサービスの利用も拒否するため働けないでいる「働いている」人は66%。フルタイムやパート、家庭の事情などで仕事の形態は異なる出典 : フルタイム勤務の場合は、家族や園、支援機関などの協力が欠かせないようです。働くことで、気持ちの切り替えができているというママも多いようです。■実家の母に泊まってもらい、夜勤有の病院勤務をしているが、母も自分も体力的にきつい■保育園で加配をつけてもらったり療育を利用。夫と分担してこなしている。いろんな人の手を借りて育てたほうが煮詰まらないフルタイムは難しいが、パートで働いているという人も多くいました。■子どもに発達障害があることが分かり、常勤は無理なのでパート勤務に変更。金銭的には苦しいけれど、家庭の安定をとった■半日パート勤務。もっと働きたいが、自分に余裕がないと家庭が崩壊しそうなので自分のためにも働きたい、家計のために働かなくてはいけない、でも子どものサポートが十分とは言えなくなってしまうことで悩んでいるという声も寄せられました。”長女のさみだれ登校が続く中、縛られてしまうのは逆に良くないかとパートに出ました。(中略)長女については対応できていたのですが、LD傾向にある次女と三女の宿題が滞るようになってきて生活リズムも崩れるようになり、8ヶ月勤めたもののこの春に辞めました。(中略)家計の事を思うと本当はフルで働きたい。でも今はついてあげてサポートしてやらないと…。すごくジレンマがあります。”次のようなコメントも寄せられています。■仕事をしていることで精神の安定を得られている。でも子どものために勤務に支障が出てしまうと周りの声や視線が気になる■シングルマザーなので働かなくてはいけない。でも引きこもりの娘を1人きりにしなくてはいけなかったり、息子が自分のいないところで暴れてしまい困っているどんな働き方なら、発達凸凹の子どもを育てながら、無理せず働ける?出典 : 子どもを育てる中で、働き方を変えて、自分にも子どもにも無理ないよう調節しているという声も寄せられました。その中でも多くあげられたのが在宅ワークをはじめとする「テレワーク」です。時間や場所に縛られずに働くことで、自分らしく働く、子どもの療育などとの調整もしやすい、という利点があるようです。”自宅でグラフィックデザインの仕事をしています。ネットで受注、納品まで完結するので何かあってもすぐに対応出来るのが魅力的です。今少しずつプログラミングの勉強していて、徐々に移行していけたらなと考えています。””子どもが保育園のうちは、外でシフト勤務。職場の同僚や上司から理解が得られたので、とても働きやすかった。(中略)子どもが就学後は、在宅ワーク。収入は減ったけれど、同僚や上司に謝る必要もなく、子どもと過ごす時間が格段に増え、睡眠時間も確保できるし、育児・療育を中心にすえて生活できるのがいい。””パートですが、テレワークをしています。数年前までは働きに出ていましたが、会社の都合で勤めていた支社がなくなりテレワークを認められました。通勤や出かける準備に時間をとられないし、何より子どもを見守れるので、今の私にとってはベストな働き方です。”テレワークとは?「EmpoweredWomanJAPAN」でも提案された、フレキシブルな働き方Upload By 発達ナビ編集部アンケートへの回答にもあった「テレワーク」という働き方。これは、どのような働きかたなのでしょうか?2018年4月17日(火)、霞が関の霞山会館で「EmpoweredWomanJAPAN」が開催され、「いつでもどこでも誰でも、働き、学べる世の中へ」をコンセプトに、女性の多様な働き方についてディスカッションが行われました。その中で、テレワークについて大きく取り上げられました。テレワークとは、ICTの発達により可能になった働き方で、次の3つの特徴があります。1. いつでも(いつでも時間にとらわれずに柔軟に働ける)2. どこでも(会社に出社しなくても働ける)3. だれとでも(家族の近くで働ける、仲間とコワーキングスペースなどでも働ける)日本では現在、終身雇用が当たり前ではなくなりつつあり、転職する人も多くいます。また、少子高齢化、特に地方の高齢化が進んでいます。このような社会情勢の中、従来通りの働き方だけでない多様な選択肢があることで、さまざまな人が、ライフステージや状況に合わせて自分らしく働くことができる必要性が問われるようになってきました。このイベントでも、テレワークによる働き方や生き方の幅が広がる可能性について話し合われたり、実際にテレワークを行っている人による体験談が語られました。テレワーク化が進めば、子育て中、高齢者、障害のある人、病気療養中の人、近隣に働ける場所がない人など、さまざまな人が働くことができると言います。また、人材不足に悩む地方の企業が、遠く離れた場所に住む人材と出会い、働いてもらうことも可能になります。参考:EmpoweredWomanJAPAN(日本マイクロソフト)テレワークの意義・効果 | 総務省テレワークで働く女性の声も。テレワークプログラムについてのディスカッション日本では、約350万人の女性が、場所や時間などのさまざまな理由で働きたいけど、働けない状態でいるといわれています。一方、人材獲得に課題を感じている企業が全国で増え続けているそうです。日本マイクロソフトでは、このような状況をテレワークによって解決できないかと、テレワークプログラムを実施しています。このプログラムに参加し、地方企業に就職して在宅でテレワークを行っている入谷真紀さんによる発表もありました。入谷さんは千葉県流山市在住で、通勤時間も考えると都内での勤務は難しい、でも自宅の近くでは自分のスキルを生かして働ける場所はない状況でした。何より一番大切にしたいのは、子どもの夢をサポートすること。そのためには、自分が働くことをあきらめなくてはいけないと思っていたそうです。入谷さんは、プログラムに参加してテレワークのスキルを学び、オンラインでの面接を経て徳島県の企業に就職。テレワークでの業務なので、引っ越しも通勤も不要です。「テレワークなら自分も働きたい気持ちをあきらめなくてもいいのかもしれないと思い、プログラムに応募し、現在の仕事に就きました。テレワークで働くことで可能性が広がり、自分の仕事や生き方について考えられるチャンスがもらえた。もっとテレワークで働ける企業が増えるといいなと思う」(入谷さん)入谷さんの住む千葉県流山市は「子育てしながら働ける街に」と目標を掲げ、このプログラムに参画しています。井崎義治市長は「流山市はベッドタウン。人口増加率は全国1位です。でも、雇用はとても少ないのが現実です。起業やテレワークなどの主体的な動きを積極的に応援したい」と言います。入谷さんを雇用した株式会社ダンクソフトの代表・星野晃一郎さんからは「企業の経営戦略としても、テレワークは重要です。優秀な人材がいないと企業経営は難しい。人材のネットワークを全国規模で持っていることは重要」と、経営側からもテレワーク活用の必要性について発言がありました。Upload By 発達ナビ編集部参考:ウーマンテレワーク体験プログラム(日本マイクロソフト)『LIFE SHIFT』著者、リンダ・グラットン氏が語る、人生100年時代の働き方、学び方、生き方Upload By 発達ナビ編集部イベントでは『LIFE SHIFT』の著者、リンダ・グラットン氏の講演もありました。寿命が延び、今までのように学校を卒業したら働き、60歳で定年を迎えてリタイア…という生き方が成り立たなくなっていると言うリンダ氏。それぞれのライフステージや家族の状況に合わせて、学び、働き、育児をしたり再度学んでスキルを身につけ、また働くというフレキシブルさ(マルチステージ化)や、次のステージで活躍できる意思やスキル(変身資産)が重要になるー。「AI技術が進歩する中で、長時間ロボットのように働くというやり方は合わなくなっています。知識集約型の経済では、長時間労働は生産性が落ちます」製造業の発展の中では、長時間労働が必要とされる時代もあった。でも、これからの人間に求められているのは、考える力だろうと、リンダ氏は語ります。「人口が減少する日本で、人口の半分を占める女性が働けないのは理にかなっていません。また、男性もフレキシブルに働け、家族と一緒に過ごす時間を持てることが必要です」人間はロボットではない。今までの働き方を見直すことで、人間らしい暮らしを取り戻そう、もっと家族で過ごそうという力強い講演でした。柔軟な働き方なら、子どもに寄り添いながら自分らしく働けるUpload By 発達ナビ編集部最後に登壇した、野田聖子大臣(総務大臣・女性活躍担当大臣・内閣府特命担当大臣)は「私自身、子どもを出産したときは、テレワークで働いていた。障害のある人も含め、ライフステージに合わせて柔軟に働ける世の中にしたい。経団連などに対しても、女性の採用やテレワークの活用の推進をお願いしている」と意欲を示しました。また、7月24日はテレワークデイに設定されており、2017年度は6万人、900団体が参加したそうです。野田聖子大臣は「2018年度は、テレワークウィークとして、複数日に渡ってテレワークに取り組めるようにしたい。来年度はテレワークマンスとしたい」とも語りました。発達の凸凹がある子どもの子育ては、学校への訪問や療育・医療機関へ通う、子どもが学校に行けない時に寄り添う必要が出てくるなど、物理的に時間が必要となることも多いものです。その育児を、母親が一手に引き受けると、自分らしく働くということは難しくなりがちです。母親が時間や場所に縛られずに働ける環境はもちろん、父親もフレキシブルに働ければ、ともに子育てに関わることができます。また、人生100年時代と言われる中で、いったん子育てで仕事を離れた人や、高齢者などが再度働ける環境も必要でしょう。「電車や車で自宅から離れた職場に通勤し、決められた時間帯に働く」以外の働き方への取り組みは、少しずつですが始まっています。発達が気になる子どもを育てる保護者や、自身に障害がある人はもちろん、どんな人も自分らしく働ける世の中へと、選択肢はこれからもっと増えていくのではないでしょうか。
2018年04月27日8歳の誕生日の朝、「もう学校には行かない」と宣言した息子出典 : 歳の誕生日を迎えた秋のとある日、自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如障害(ADD)のある息子が「もう学校には行かない」と宣言した。登校を泣くほど嫌がったり、「学校にいると心が辛い」と早退することを繰り返し、その頻度が高くなっていることを感じていた私には、さして意外な発言ではなかった。とはいえ、「学校に行きたくない」ではなく「もう行かない」と決意するまでに至った理由は知りたいので、私は質問した。「いいけど、何で?」「うまく言えない」伏し目がちにそう呟いた息子の声色は、「今は説明する気力さえない」と聞こえるように澱んでいた。「いじめられたわけではないし、勉強が嫌いなわけでもない」と、私の質問に対し首を動かす形で答えたあと、小さく、しかしきっぱりと「とにかく今は言えない」。「じゃあさ、気持ちの整理がついて、話したくなったら言ってよ」最初のうちは毎日本人に欠席の意思を確認し、学校にも電話を入れていた。しかし1週間を過ぎるころ、「もう行かないって気持ちは変わらないし、万が一変わったらそのときに言うから、いちいち聞かないでよ!」と叱られてしまったのだ。確かに、私そっくりの頑固者が、一度決めたことをそうそう曲げるとは思えない。私は学校に電話をかけ、「本人がこのように申しているので、欠席連絡は控えさせてもらいたい」との旨、担任の先生に伝えた。そして、2週間に1回、発達障害専門医を受診したあとには必ずこちらから連絡することを約束した。復学を望む学校側との話は平行線で…出典 : 実のところ私は当時、「このままかもしれないけど、もしかしたら復学するかも」などと考えていた。しかし一向に復学する気配はない。1ヶ月ほど経ったころ、「校長や教頭、支援コーディネーターとの四者面談を行いたい」という提案が、学校側からあった。前述したとおり、息子からは「学校に行きたくなったら自分から言う。それまでは聞くな」と釘を刺されている。そして、かかりつけの発達障害専門クリニックの先生にはもちろん相談済みで、「学校が合わないのなら家庭学習でも構わないのではないか」とのご意見をいただいている。「専門家のお墨付きもあるし、ちゃんとお伝えすれば学校の皆さんにもご理解いただけるだろう」だなんて、あのころの私はなんて呑気だったのだろう…。学校では、私が想像していた以上に問題視されていた。そして「1日も早い復学に向けて、ご家庭でも働きかけを」という論調で、こちらの話すことは受け入れてもらえる様子がない。詳しくは割愛するが、直前に行われた担任の先生との個人懇談では、息子や私の思いに寄り添ってくださる談話ができただけに、殊更に衝撃を受けた。在宅ワーカーである私にとって、自宅は仕事場でもある。そりゃ、学校に行ってくれた方が好都合だ。実際に私の仕事を理由に頼み込んで登校してもらったこともある。でもそれだって、かなり無理をさせていたのだろうし、申し訳なかったと思っていた。「嫌がる息子に無理強いをしたくはないので…」「無理強いではなく、お母さんがうまく促してくださらないと」支援コーディネーターさんは、呆れたような表情を浮かべていた。「勉強でしたら、本人も自宅で頑張ると申しておりますし」「学校は勉強だけではなく、社会生活に必要な様々なことを学ぶ場なんです。このまま苦手を克服するということから逃げ続ける息子さんを容認して、成長の機会を奪ってもいいんですか?」内心「出たよ、『苦手を克服』」と思いつつ、口が立たない私はそれについてうまく説明する言葉を浮かべられず、ただ曖昧に「はい」だとかなんとか相槌を打ち、その場をやり過ごしていた。「頑張っても克服できないから『障害』なんだけどねぇ…」学校を出て歩き始めてからようやくその言葉が口から出て、私は自分の至らなさにため息を漏らしてしまった。そしてこうした面談を、以降何度も繰り返すことになる。母子分離の恐怖に怯える息子と、追い詰められる私出典 : ある朝、起き抜けに息子は「人間って、死んだらどうなるの?」と質問してきた。「私、死んだことないからわかんないや。どうしたの突然」「うん…何となく」そのときはその程度のやり取りで終わったと記憶している。しかし事は「その程度」では終わらなかった。息子は、私の姿が見えなくなると不安げに私の名前を呼び、打ち合わせなどで外出したときは、実家から5~10分おきに電話をかけてきて、私が受話できないとなると震えながら号泣していたのだという。「仕事中は出られないよ、何時くらいに終わるよ」と伝えていても、だ。後日聞かせてくれたのだが、「恐ろしい夢を見て(内容は本人ももう思い出せないらしい)、のん(私の呼び名)がいつ死んでしまうのかと不安になってしまった」らしい。わが家は母子家庭、ひとりでこの世に取り残される恐怖に怯えていたようだ。一番辛いのは、もちろん私との分離不安を抱えている本人だ。しかし、8歳の知力と体力を駆使した後追いは、される側の体力や精神力もかなり削られる。実際私は、毎年恒例の冬季うつも相まって、吐き気や動悸を感じやすくなるなど、身心の不調が顕著になってきた。両親は「このままだと希望が潰れてしまう」と感じたようで、物理的な距離を取るための一人旅を提案され、東京出張に合わせて友人に会ったり、観劇などを楽しんで、少なくとも1泊してから新潟に帰るようにしていた。周囲の協力や、日照時間が長くなるにつれ冬季うつから回復してきたこともあり、現在では落ち着いている。恐れていた二次障害は目の前に迫っていた出典 : 話は前後するが、分離不安を訴えるようになった直後の診察で、主治医の先生に相談しており、服薬治療を開始している。その時点では入院も視野に入れられていたほど、息子は不安定だった。12月の半ばのこと。東京でクールダウンしているとき、ひっきりなしに鳴る息子からの電話に応対しながら、私はぼんやりと考えていた。彼がこのようなことになったのは、悪夢のせいももちろんあると思う。でもきっと、それだけではないだろう。入学後、いつごろからかは分からない。苦手を克服しようと頑張って、少しづつ心を削り、こうなるまでに追い詰められていたのではないか。このままでは二次障害まっしぐら、いや、既にこれは二次障害ではなかろうか、と。過日、テレビで発達障害グレーゾーンについての特集が放送されていた。そこで、児童精神科医の先生が「できる・できないで判断してしまうと、グレーゾーンの当事者はできることが多い。でも、できるけど倍疲れていたり、倍の時間がかかってしまい、知らず知らずのうちに負担を抱え込んでしまう」という旨のお話をされていた。息子は診断済みだが、このパターンであるように感じている。倍の労力を使っていることは、見ただけではわからない。そしてできてしまうだけに「やればできる」「特性による苦手も、努力で克服できる」と判断され、場合によってはそれまで「できない、辛いからやりたくない」と発言してきたことさえ、「発達障害を盾にしたわがままであった」とされてしまうかもしれない。未診断であったものの、小学生・中学生時代の私も同様の経験をしている。そして原因不明の体調不良になり、始業から放課までを学校で過ごすことが困難な日が増えた。今にして思えば、これも二次障害だろう。私は従来からの学校教育や制度を批判したいわけではない。しかし同時に、「心を壊してまで通い続けるべき場所ではない」とも、強く思っている。「いつかは復学するかもしれない」と、声にはせずとも、私はどこかでほんのちょっぴり望んでいたのだろう。だからこそ繰り返される面談でも、きっぱりとした態度を取れなかったのかもしれない。その、願ったところでどうにもならない、建設的ではない考えを、私は捨てることにした。ようやく聞けた不登校の理由と、私の決断Upload By 鈴木希望現在息子は服薬治療を継続しながら、自宅学習をしている。精神状態が落ち着いたからか、先日、学校に行きたくない理由を、私に話してくれた。「もっと先に進みたいのに、自分のペースで進められない」といった学習面や「壁の臭いや音の響きが苦手な場所がある」という感覚過敏に加え、私にとっては少し意外な理由も明らかになった。「誰かが悪いことをしていても、それをしたいという人が多いと、みんなそっちに味方してしたり、あっさり考えを変える人がたくさんいるのが嫌」「男子と女子が仲良くしているだけでラブラブだとか言って、囃し立てるのが理解できないし、バカバカしい」「頭のいい人や運動ができる人が羨ましいからって、自分よりそれができない人をバカにして、勝った気になる人を見るのが悲しい」いわゆる「小学生あるある」「学校特有の人間関係」に、強いストレスを感じているようだった。大好きな友人たちの話を笑顔で語っていた息子が、かつての私のような思いを抱えていたなんて…。「それぞれの人のことは嫌いじゃないし、みんながみんなそうってわけじゃないよ。でも、そういう人が多い中で過ごすのは、悲しいし辛い。自分には山形のA君とか、東京のY君とその奥さんのTちゃん、神奈川のR君って友達がいるでしょ?たまにしか会えないけど、いろいろな話をできる友達がちゃんといる。それじゃあダメなの?自分が苦手な人を否定したいわけじゃない。ただ離れたいだけなんだよ」念のため申し上げると、息子は年相応、もしくはそれより幼い面も多分にある。しかし、他者を尊重しつつも自分の心を守りたいというこの願いには強く共感したし、それを大人の都合でねじ伏せる屁理屈なんて、考えたくなかった。「ダメじゃない。いいと思う、私は」正直、不安がないわけではないし、「本当にこれでいいのか」という思いが頭をよぎることもある。けれど今は、悩み抜いて息子が下した「学校に行かない」という選択が最善であると信じて、できる限り支えて行くのだと決めた。かつての自分が、それを望んでいたように。
2018年04月24日春は入園・入学・進級の季節。子どもはストレスを感じやすい?出典 : 入園・入学・進級をむかえた親子も多いこの季節。「うちの子も〇年生かあ…」など、子どもの成長をしみじみと実感している保護者の皆さんもいるのではないでしょうか。一方、入園や入学となると、新しい園や学校、知らない先生など、初めての環境で、変化を大きく感じる親子も多くいるのではないかと思います。例えば、この春幼稚園などに入園した子どもは、初めての集団生活やいつも一緒にいた母親がいないといった変化、学校に入学した子は、友達・先生との関係構築がいままでより複雑になったり、学習が始まったりといった変化をむかえます。また、保護者にとっても、本格的なママ友・先生とのつきあいやPTA参加など初めて経験することがあります。子どもにも保護者にも、分からないことや初めてのことだらけの新学期は、疲れやストレスがたまりがちな季節でもあります。特に発達障害があると、環境の変化に不安を感じやすいことが多く、ストレスを過剰に感じてしまった結果、登園・登校しぶりにつながったり、放っておくとゆくゆくは二次障害につながったりする場合もあります。子どもが新たな環境に慣れ、快適に過ごしていくには、ストレスサインや症状を感じ取り、適度に発散させていくことが重要です。この記事では、子どものストレスサインや気をつけたい症状、親子それぞれのストレス発散方法について紹介します。子どものこんな様子に要注意!不安・イライラ…心のSOSサインとは?出典 : 子どもがストレスを感じているサインは、生活場面から分かるものから、細かな行動・しぐさの変化までさまざまです。・学校での活動への意欲がない・挨拶に元気がない・体調不良をよく訴える・保健室へ行く回数が増える・友達と関わろうとしない・他学年の子とばかり遊ぶようになった・赤ちゃん返り・幼児退行のような行動が見られるなど・発熱・腹痛が多くなった・息苦しさを感じている様子が見られる・嘔吐、気持ち悪さを感じる頻度が多くなった・アレルギー症状の悪化、新たな症状の出現・睡眠の質の低下(寝つきが悪くなった、「眠れない」とよく言うようになった、怖い夢を見る、過度に睡眠時間が増えた、朝すんなり起きられないなど)・チックや自傷行為が見られるようになった・急激にやせた、あるいは太ったなど・感情の起伏が激しくなった・ちょっとのことで癇癪を起こしたり、反抗したりすることが増えた・無表情の時が多くなった・何もしないで長い間ぼんやりしている・挨拶をしなくなった・独り言を言うようになった・元気がない などここで述べた症状や状態の変化はあくまでも一例です。子どもが新学期に入って、明らかにこれまでとは違う言動や反応を見せるようになったら、少し注意して見てあげた方がよいでしょう。参考:こころのSOSサインに気づく|厚生労働省参考:学校における子供の心のケア|文部科学省新学期、子どものストレスサインを感じたら…サポート・発散方法は?出典 : では実際、子どものストレスサインを感じたら、どのような発散方法があるのでしょうか。一例をご紹介します。新学期は、親子ともにバタバタとした生活を送ってしまいがち。なかなか親子でゆっくり過ごす時間が取れていない、と感じている方も多いのではないでしょうか?入園や入学などを経て、少しお兄さん・お姉さんになったとはいえ、まだまだ子どもです。慣れない環境にへとへとになってしまったり、学校では気を張ったりしていることもあるかもしれません。親子でゆっくりお話をしたり、スキンシップをとったりするだけでも、子どもの安心感が高まります。また「いつもと違うかも?」という子どもの変化を確かめることもできます。忙しい時期ゆえに、親子でゆっくり過ごす時間は見逃してしまいがちです。少し意識して、子どもと接する時間を増やしてみましょう。特に発達障害のある子どもは、新学期に発生しやすい流動的な時間割のような、「いつもと違う」「見通しがもてない」ことに対してとても不安に感じてしまうことがあります。また、子どもの特性にあった合理的配慮が、新学期になりたてでなかなか受けられず、どうしても学校でうまく活動できずに落ち込んでしまうこともあるかもしれません。家庭でも、子どもの特性にあったサポートを心がけることが大切です。例えば、新しい教室の場所や新学期の予定をあらかじめ伝えておくなど「できる限り事前に伝える」ことで、新しい場所に一歩踏み出せるようサポートしてみるとよいでしょう。また、家庭で子どもの特性に合ったサポート方法を探ることができれば、その方法を学校でも同じように先生に実行してもらうなど、合理的配慮の導入もスムーズになることがあります。園や学校での活動以外にも、好きで熱中している活動がある、というお子さんもいるのではないでしょうか。好きな活動を存分にさせることがストレス発散になることもあります。新学期で疲れて、少しやる気や元気がない様子の子どもでも、もともと好きだったことに誘ってみて、乗り気になれば、この活動がストレス発散や、生活のモチベーション維持のきっかけになるかもしれません。学校終わりや休日などを見て、子ども自身が好きなことに思いっきり熱中できる環境を用意するのはいかがでしょうか。新学期は登園・登校しぶりが多くなる時期。登園・登校しぶりをされてしまうと、親としても仕事に行けなかったり、園や学校に連絡するのに気が引けてしまったりなど、困ってしまうことも多いかと思います。今まで親元を離れた経験がない場合や低年齢の子どもの場合は、慣れるまである程度時間がかかることもあります。次第に学校や園に馴染むケースも多いので、過度に心配しすぎずしばらく様子を見ることも必要です。ただ、登園・登校を嫌がる子どもを無理に行かせることが続いてしまうと、園や学校へのイメージがどんどん悪いものになっていってしまいます。登園・登校しぶりを見せた場合は、まず「行きたくない気持ちを受け止めること」を心がけることが大切です。子どもの気持ちに共感し、認めてあげることで、子どもの感情の波や不安定さが落ち着いて、登園・登校できることもあります。どうしても行きたがらない場合は、強制せず、家で過ごせるように工夫することも一つの手です。そのかわり、園や学校に行かないという選択をした日も、ただ、だらだらさせてしまう・放っておくのではなく過ごし方を工夫することをおすすめします。例えば、その日やることを子どもに決めさせたり、感じていることを紙に書きだしてもらったりするなど、子ども側の活動を促してあげることを心がけましょう。発達障害の子どもの場合、ストレス耐性が弱いことがあり、なかなかストレスを消化できないまま、二次障害につながってしまうこともあります。二次障害には以下のようなものがあります。・うつ・対人恐怖・ひきこもり・不登校環境が変わる新学期は、ストレスがたまりがちです。もし、上記のような症状の傾向が見られたら、スクールカウンセラーや臨床心理士、精神科医などの専門機関に相談しましょう。子どものサポートで余裕がなくなる前に…保護者が気をつけたいことって?出典 : 子どものストレスサインに気づき、サポートをするには、保護者自身もストレスをうまく解消していく必要があります。子どもだけでなく、保護者にとってもストレスを感じがちなこの時期に、どんなことを気をつければよいのでしょうか。「子どもが辛い・苦しいと思っている時は寄り添ってあげたい」「子どもが新しい環境で頑張っているんだから、私も頑張らなきゃ!」子どもに対して、このように感じている保護者の皆さんも多いと思います。ですが、「親の私が『疲れた』『休みたい』など弱音を吐いてはいけない」「ストレスサインがあったかもしれないのに、どうして気づいてあげられなかったんだろう…」このように自分自身を追い込んでしまったり、責めてしまったりすると、保護者の心もどんどん疲れてしまいます。この時期、特に不安定になりがちな子どもを支えるには、保護者自身が心に余裕をもつことが大切です。余裕がなくなると、子どもから伝えられているささいなサインに気づくことが難しくなりがちです。また、登園・登校しぶりが起きた時に、子どもの感情に共感できなくなってしまうこともあります。「子どもも新しい環境で頑張っているし、親の私も新しい環境・年度初めで頑張っている。お互い疲れてしまうことも、休みたくなってしまうこともある」などと、少し肩の力を抜いて、自分の今の状況や心身の状態を認めてあげることが大切です。園や学校の先生をはじめ、スクールカウンセラー、保健室の先生など、保護者以外の大人に、子どもの今の状態や心配事を共有しておくことも大切です。連絡帳や、時には面談などで、子どもに対して感じている不安や、新学期前後での変化を相談してみましょう。そうすることで、担任など複数の大人が子どもに対して目を向ける機会を多くできることがあります。子どもに目を向けてくれる大人が1人増えるだけで、子どもの変化にも気づきやすくなりますし、「自分が子どもをしっかり見なきゃ…!」と追い込まれがちな場合も、「先生と協力して子どもを見守っていこう」と少し気を楽にすることができます。子どものこの季節の登園・登校しぶりやストレスによる症状は、多くの保護者が経験してきています。先輩パパ・ママに「実は今登園・登校しぶりが激しくて…」「新学期に入ってから子どもの様子が変で…」と話してみると、意外と「うちもそうだった!」「こうやって乗り越えたよ」など共感やアドバイスがもらえることもあります。また、発達ナビユーザーの方も、新学期の登園・登校しぶりに関する悩みを投稿し、他の方がご自身の経験談を共有しています。ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。お子さんを取り巻く環境が一変したことで、落ち着かないのでは?と感じました。交流級と支援級と先生がいて、複数の先生がか関わることで、一番にどの先生を頼ったらいいのかわからない、支援級で受ける授業と普通級で受かる授業とがあり混乱している…またあるいは、1年生のときの同級生から「どうして支援級にいるの?」と聞かれて答えられないでいる…ということがあるかもしれません。転籍時は、自己肯定感が下がりやすいんです。なぜ僕だけ、私だけ、みんなと違うクラスで勉強するのだろう…みんなと何が違うんだろう…なんとなく心の中でもそうした気持ちがあるのだと思います。落ち着かないのは、不安のせいではありませんか?一学期は混乱するものだと割り切って、ちょっと長い目でみられるのも大事かもしれません。うちも一学期は毎年「地獄の一学期」と覚悟してました。落ち着かないまま夏休みに入り、残暑きびしい二学期最初までずっとつらい、10月くらいからやっと様子がつかめてきて、三学期に軌道にのる・・の繰り返しでした。これから何度も一学期がめぐってきます。たくさん一度に新しい先生に求めるとうまくいかないので、一個ずつ確認しながら・・がいいかな、と思います。学校内にお子さんの避難場所を確保する必要があると思います。保健室、図書室、支援クラス、プレイルーム……使える部屋がなければいっそ校長室でもいいです。登校しぶりが出ているのでスクールカウンセラーさんに相談したい、学校での様子を見てもらいたい、と担任の先生に聞いてみてください。スムーズに手配してくれるか、少し様子見がいるかもしれません。あくまでも担任の先生を輪に入れつつ、保健室の先生、主任先生、教頭先生、と相談を広げていけるといいかな、と思います。繰り返しになりますが、子どものストレス症状に気づいたり、登園・登校しぶりに対応するためには、保護者自身もストレス解消を定期的にしていくことが大切です。日々の子育ての中ではなかなか難しいことではありますが、自分の趣味やストレス発散方法(もともと好きなこと・趣味など)を実践できる時間を、短時間でもいいので定期的に設けるよう意識しましょう。自分の親に子どもを少しだけ見てもらう、一時預かり・ファミリーサポートなどの利用検討も含めて、時には子育てから離れ、リフレッシュする時間を作り出すのもよいですね。まとめ出典 : 新学期は、子どもにとって環境が大きく変化するため、子どもにとっても、親にとってもストレスや不安を抱えがちな時期です。「新学期がはじまったばかりだし、そのうち落ち着くだろう」と思ってしまいがちですが、実は子どもの強いSOSサインが隠されていることも。また、発達障害のある子どものなかには環境変化に強い不安感を抱いたり、何気ないことでストレスを感じたりする子どももいます。慣れて次第にストレスがなくなる場合もあるので神経質になりすぎる必要はありませんが、大切なのは、子どもや自分自身の心のSOSがあった時に気づけることです。子どもがストレスや不安を感じた時には、身体・行動・情緒面にどんな変化が現れるのか、あらかじめ把握しておくこと。また、子どものちょっとした変化に敏感に気づくためには、親にもある程度の余裕があることが重要です。新学期は親も子も、新しい環境からくるストレスや不安を感じやすいです。「無理をしすぎない」ように、親子それぞれにあったストレス発散方法を試していくことをおすすめします。
2018年04月21日心療内科とは出典 : 心療内科とは、何かしらのストレスが招いた体の不調を診ることを専門とする診療科です。「内科」とついているところからも分かるように、頭痛やめまいなど体に表れた症状を主に診ます。精神疾患の中には、症状として頭痛や吐き気、めまいなどの体調不良が現れるものがあります。しかしその不調の原因が精神的なものと分からないまま対処しても、なかなか症状が改善しないことがあります。そんなとき、症状の原因となる精神的なストレスに、カウンセリングなどを通してケアも同時に行うのが心療内科です。そのため、本来は精神科の領域のものでも程度が軽いものは心療内科でも診てもらえます。心と体の関係を考えながら、体の不調をケアしてくれるのが心療内科なのです。精神科・内科と心療内科の違い出典 : 心療内科は1996年に政令で表示を許された、比較的新しい名称の診療科です。名前のイメージから、精神科や内科と混同する人も多いようです。それぞれの科によって、診療できる疾患や得意とする診断領域、治療のアプローチが異なることもあります。心療内科ともっとも混同しやすいのは精神科ではないでしょうか。心療内科は大きなくくりで言うと内科です。体に表れた症状を治す診療科ですが、原因がストレスにあるため、カウンセリングなどで精神的なケアも行います。体と心の両方にアプローチして治療をするのが心療内科なのです。一方、精神科は不安や落ち込み、イライラなど心に現れた症状に向き合います。対象となる病気は躁うつ病、アルコール依存症、統合失調症などです。とはいえ厳密にはっきりと線引きされているわけではなく、両方の看板を掲げる病院も少なくありません。うつ病など、本来は精神科の範囲にある病気でも症状や程度によっては心療内科で診ることもあり、心療内科で相談したら精神科を紹介されたというケースもあります。心療内科も内科も、体の不調を治療するという点では同じです。違うのは、心療内科は体だけでなく心も含めて治療をするということです。内科はさまざまな症状に対応してくれるイメージもあるため、原因のよく分からない不調はとりあえず内科へ行く人も多いでしょう。そのため内科の検査では異常が見つからず、心療内科を紹介されたというケースもあります。心療内科や精神科ではなく、「メンタルクリニック」「メンタルヘルス科」という看板を掲げる病院も多くあります。これらは病院によって診療内容のとらえ方が違います。「精神科」という名前に抵抗のある人が多いと考え、精神科でありながらあえて名前を変えているケースもあります。また心療内科と精神科の両方の診療をするため、メンタル全般を診るという意味合いで看板を掲げるケースもあります。【参考】みんなのメンタルヘルス|厚生労働省心療内科の専門領域は、ストレスが招く体の不調出典 : ストレスが招く体の不調には以下のようなものがあります。・頭痛・倦怠感・めまい・不眠・過呼吸・食欲減退、過食・吐き気・腹痛、胃痛・動悸・発汗・抜毛頭痛や吐き気など、身近な症状が多く並びます。このような不調の背景には、以下のような疾患が隠れている可能性があるのです。心療内科の対象となる病気や障害など出典 : 心療内科の対象になる病気をいくつか挙げました。症状の程度や原因によっては精神科など、他の診療科を勧められる可能性もあります。何らかの理由で学校や会社にいけない、あるいは行きたくても行けないのが不登校・出社拒否です。登校や出社をしたい気持ちはあるのに、体がそれを拒否して腹痛や頭痛といった症状が表れるというケースもあります。休んで家にいれば症状が落ち着くこともあり、休むための嘘だと思われてしまうこともあります。ですが、子どもの不登校や配偶者の出社拒否から、本人だけでなく周りの人までストレスで体調を崩してしまうことも少なくありません。そのため、早めのケアが重要となります。主な症状は吐き気や腹痛、倦怠感、動悸などです。うつ病の中でも、心の不調が体の不調に隠れてしまっているものが「仮面うつ病」と呼ばれています。うつ病によくある気分の落ち込んだ状態が見られず、頭痛やめまい、不眠といった症状が目立つため、内科で診断を受けても異常は見つからず、単に調子が悪いだけだと思い込んでしまうことも多くあります。腹痛や下痢、便秘といった腸の不調が見られる病気です。日常生活への支障は痛みによる不快感だけではありません。急におなかが痛くなってトイレへ駆け込む、出勤前にトイレから出られなくなる日が多いなど、学校や仕事に影響が出ることもあります。症状を訴える人は男性と比べると女性が約1.6倍多く、年齢では30代までの比較的若い人に多く見られます。【参考】機能性消化管疾患心療ガイドライン2014|日本消化器病学会自律神経とは、体のバランスを整える神経です。その自律神経のバランスが崩れているというのが自律神経失調症ですが、自律神経の働きは検査ではなかなか正確に測れません。そのため、何となく体調が悪いのに検査では異常の見つからない状態が長く続いているものを自律神経失調症と呼んでいます。症状は倦怠感、不眠、めまい、頭痛、動悸、食欲不振などさまざまです。寝込んで起き上がれないほどの症状になることは少なく、多くの人は「なんだか調子が悪い」という状態がずっと続きます。片頭痛は名前の通り頭の片側に起こる頭痛ですが、両側に起こることもあります。ストレスなどにより頭部の血管が収縮、その反動で血管が広がったときにズキンズキンという痛みが起こります。主な症状は頭痛ですが、ひどくなると吐き気をともなうこともあります。頭や体を動かすと痛みが増すこともあるので、光や音の刺激を避けて安静にすると症状が緩和されます。発達障害とは、生まれつきの脳機能の発達のアンバランスさ・凸凹(でこぼこ)と、その人が過ごす環境や周囲の人とのかかわりのミスマッチから、社会生活に困難が発生する障害のことです。広汎性発達障害、学習障害、ADHD(注意欠陥・多動性障害)など、症状や特徴でいくつかの種類に分類されます。不登校やうつ(気分が落ち込んでいる)状態をきっかけに心療内科へ行ったところ、発達障害が判明したというケースもあります。発達障害の場合、環境とのミスマッチや人間関係がストレスとなったりすることも多く、発達障害の二次的な障害として、睡眠障害やうつ、不安障害などが併存するケースもあります。甲状腺の機能異常により起こるのがバセドウ病で、動悸や疲労感、発汗が主な症状です。脈拍も早くなり精神的にも落ち着かないため、「体が常に全力疾走をしている」と形容されることもあります。まぶたの筋肉が緊張することで常に目を見開いているように見えたり、眼球の周りの筋肉が肥大して眼球が突出することもありますが、バセドウ病が必ずしも眼球への変化をきたすとは限りません。突然息苦しさを感じ、呼吸が乱れ、息が入ってこないように感じるのが過換気症候群の特徴です。動悸や胸の圧迫感のほか、手足のしびれや筋肉のけいれんを感じることもあります。発症した場合、呼吸を遅くしたり止めたりすると症状は改善しますが、本人が呼吸をコントロールするのは難しいものです。紙袋などを口に当てて呼吸をするという対処法もありますが、医師の指示を仰ぐのが良いでしょう。【参考】過換気症候群|日本呼吸器学会突然息苦しさや動悸、冷や汗、恐怖感などを感じてパニック状態になり、そのせいで社会生活に支障の出ている状態をパニック障害と言います。電車やエレベーターなど閉鎖された空間では「逃げられない」と感じるため、外出ができず、学校や会社へ行くことができなくなることもあります。状況によってはだれもがパニック状態に陥る可能性はありますが、自宅でテレビを見ているときに突然、寝ているときに突然など、予期しないところで発作が起きるのが特徴です。食事をうけつけなくなる「拒食症」と、無謀な食べ方を繰り返す「過食症」。この両方を合わせて摂食障害と呼びます。食べては吐く、を繰り返すこともあり、その場合は体内のカリウムが下がって不整脈を起こすこともあります。拒食により栄養状態が悪くなり、月経が止まることもあります。拒食と過食、行動は正反対ですが根っこは同じです。拒食から過食へ、過食から拒食へと症状が変化することも少なくありません。「やせたい」という思いから治療を拒むケースもあるため、まずは治療の必要性を理解するところから始まります。生活習慣病と言われる糖尿病ですが、ストレスがホルモンバランスに影響して血糖値を上げることもあります。倦怠感やのどの渇きなどが症状として挙げられます。治療は一般の糖尿病と変わりませんが、運動や食事などの生活コントロールがうまくいかずにストレスをためることにならないよう、注意が必要です。40代以降に見られる、様々な体調不良や情緒面での不安定な状態を更年期障害と呼びます。ホルモンの影響を受けやすい女性に多いのですが、男性にも症状が表れます。症状は自律神経失調症に似ていて、動悸やめまい、疲労感、イライラ、不眠など様々です。ちょうど子どもが就職や結婚で親元を離れる時期と重なることも多く、環境の変化に心がついていけずにうつ状態となることもあります。皮膚に病気や傷がないのに円形に毛が抜けてしまうのが円形脱毛症です。痛みはなく、社会生活に直接の支障はありません。自覚症状がないのが特徴で、美容院で髪を切ってもらうときに指摘され気が付くということもあります。しかし容姿が変わることでショックを受けて、他人の視線が怖くなり外出を拒むなど、間接的に影響が出ることはあります。皮膚に症状が現れるため皮膚科を受診するのが一般的ではありますが、背景にはストレスがかかわっている場合もあります。その点から考えると心療内科で治療を受ける選択肢もあります。心療内科における治療の流れ出典 : 心療内科ではカウンセリングを含めた診察、検査を経てそれぞれの症状に合わせた治療を行います。まずは医師に現状を伝えます。病歴や症状、薬を飲んでいるかなどはもちろん、原因になりそうなストレスや家族との関係、生育歴などを話します。もし同じ病状で他の病院にかかっていた場合はそれも話しておくと良いでしょう。うまくまとめて話せないことも多いため、受診前に簡単に話す内容をまとめてメモしておくとスムーズです。話しているうちに人間関係や仕事の相談をしたくなる気持ちも出てくるかもしれません。ですが、心療内科の医師は体の不調の原因を探るために話を聞いています。悩みを聞いて答えを探してほしいという場合は、カウンセリングルームを利用するという方法もあります。じっくりと話を聞いてもらえますが、保険が適用されないため、1時間で1万円くらいの費用がかかることもあります。問診の後は体の不調の原因や程度を探るため、必要に応じて血液検査、心電図、MRIなどが行われます。心理状態や性格を知るために、心理検査(心理テスト)をすることもあります。簡単な質問に答える検査のほか、カードに描かれた模様を見て何に見えるかを答えるロールシャッハテストなど、あいまいな質問で深層心理を見る検査が行われることもあります。心療内科の対象となる病気は、原因にストレスなどがあると考えられます。そのため、生活習慣や考え方を変えることにより、症状が改善することもあります。内科的な治療としては薬物療法があります。病気やその症状に合わせて抗不安薬、抗うつ薬、睡眠薬、自律神経調整薬といった薬が使われます。最終的には薬物を使わなくても安定して社会生活を送れるように、徐々に薬を減らしていきます。ほかには患者の無意識を探りストレスの原因をあぶり出す精神分析療法、行動を変えて不安を減らす行動療法、認知のゆがみ(思い込み)を正して心を軽くする認知療法といった心理療法が用いられることもあります。診療にはどのくらい費用がかかる?出典 : 心療内科へ行こうと思ったとき、気になるのは費用ではないでしょうか。内科と違って問診(カウンセリング)の分の時間もかかるので、高額なイメージはあるかもしれません。しかしカウンセリングルームとは違って保険が適用されますし、カウンセリングと言っても何十分も時間をとれるわけではないため、驚くような額にはなりません。保険適用で3割負担のため、初診で払う費用の目安は2500円~5000円程度です。症状によっては薬や検査代が別途かかることもあります。臨床心理士によるカウンセリングを行っている場合など、別途予約料が必要なところもあります。予約の要不要を含めて、行く前に病院のシステムを調べておくと安心です。心療内科では、子どもが不登校の場合など、本人以外だけで話を聞きたいという要望にも応えてくれます。ただし本人不在の場合は自費診療となるため、費用も高額になってしまいます。パニック障害など、心療内科の対象となる病気には、自己負担が1割となる「自立支援医療制度」が適用されるものもあります。利用には医師の診断書と市町村での申請が必要で、市町村や都市に指定された「指定自立支援医療機関」でなければ適用されません。治療に時間と費用がかかる場合は、制度の適用について医師に相談してみると良いでしょう。【参考】自立支援医療制度|厚生労働省まとめ出典 : 心療内科は、ストレスが原因と考えられる多様な症状に対応してくれます。費用もほかの診療科とそれほど変わらず、特に高額ではありません。症状の中には自覚しづらいものも多くあるので、気になる症状があれば、一人で抱え込まずに一度心療内科へ行ってみるのも良いでしょう。ストレスの内容や症状について話すことで、客観的に自分を見つめることもできます。あわせて普段からストレスをためないような生活を送ることも重要です。ストレスは多くの病気の引き金になります。学校や仕事、人間関係など、ストレスと無縁に生きることはできませんが、できる限りため込まず上手に発散できると良いですね。
2018年04月05日高校の卒業式で大号泣。小・中学校の式では涙を見せなかった娘なのに…。出典 : それは卒業式の中盤での出来事でした。「卒業生の言葉」の途中で娘が泣き出しました。嗚咽だった泣き声は、徐々に号泣に変わっていきました。小学校でも中学校でも卒業式で涙を見せたことがなかった娘。ましてや高校では「学校を辞めたい」と遅刻や欠席が続いた日もあったのに、なぜ?その理由を私は知っていました…。卒業式の数日前に開かれた、ナゾの学習発表会出典 : 卒業式を目前に控えたある日、学校から「学習発表会のお知らせ」が届きました。卒業式の数日前に開催される学習発表会って?授業参観とも違うみたいだけど、今さら何を発表するというの?娘に内容を聞いても「学習発表会は学習発表会だよ」としか教えてくれませんでした。ナゾの学習発表会、その内容とは…?出典 : 客席には在校生と卒業生の保護者、先生達。会場の外では卒業生たちが円陣を組んで掛け声を掛けあっていました。らしからぬ雰囲気の中始まった学習発表会は司会進行もスクリーンの映像もすべて卒業生が主体となって行っていました。一般的に学校の学習発表といえば、一年間で学んだ学習の内容を保護者の前で発表したり、歌や楽器の演奏、お芝居などが主です。確かに今回の学習発表会も生徒が高校生活で学んだこと、身につけたこと、感じたことの発表でしたが、その内容は赤裸々で「発表」ではなく「告白」に近いものでした。一味も二味も違う学習発表会の内容は出典 : 「私は一年生の時は一人ぼっちでした。クラス行事の時、私は一人で行動してました。すごく辛かったです。でも二年生になって徐々に友達ができました。今“友達がいない”“一人ぼっち”だと思っている一、二年生も、あきらめなければきっと友達ができると思うよ。」と発表する生徒。「私は学校を辞めたくて仕方なかった。休みや遅刻ばかりで一年生の時点で出席日数が足りなくてやばい状態だった。」そう語ったのは今までそんな風に悩んでいたようには見えなかった生徒。「ダルマって凄いと思うんです。僕は転んでも転んでも起き上がるダルマのようになりたい。」とニコニコと語った生徒はそれまでどれだけ多くの壁にぶちあったてきたのでしょう。「○○先生から愛をもらった!」と言って先生を驚かせた生徒。「私は将来、実況者(ユーチューバ―)を目指してます。でもね、後輩のみんなはネットやラインの時間を5分減らしてその時間を家族や自分の為に使うといいよ。きっとそれが将来の役に立つと思うから。」確たる夢を持ち自分の経験を後輩に伝える生徒。表面上は毎日を飄々と過ごしていたように見えていた生徒たちが、実は皆、娘と同じような悩みを持ち葛藤していたんだと私は知りました。「ありのままの自分」って?娘が発表したこととは…出典 : スクリーンに映し出された「ありのままの自分」というメッセージの前で、娘は、はにかみながら語りました。「このタイトルからして、皆さん某アニメを思い浮かべるでしょ? 私はずっと周りの大人が望む“良い子”を演じていました。自分を良く見せようとしていた私は“張りぼての優等生”で、就活も空回りして上手くいきませんでした。でも、ありのままの自分を出したら就職も上手くいきました。本当の自分を出すのは怖かったけど、出したら何だか楽になって今みたくなりました。えへへ」素の自分を出せるようになった娘に、思うこと出典 : 学校に心を開ける友達がいない。学校を辞めたい。就職や自立が不安で仕方ない。感情のコントロールができない。大人に反抗したくてたまらない。もっと自分の好きなことをしたい。私は高校の三年間、娘のさまざまな悩みを目の当たりにしてきました。私が一番心に残った娘の言葉は、最後の娘の「えへへ」でした。(本当の自分を出せて良かったね。実はあなたの周りにはそんな素のあなたを受け入れてくれる人ばかりだったんだよ。時間がかかったけどそれに気が付けて良かったね。)私は心から思いました。発表の内容を知らなかった先生方も意外な生徒たちの一面を知ったようでした。それまでの娘の様子を知っていたお友達のお母さんも「娘さん、吹っ切れたみたいで良かったね。」と言っていました。この学習発表会を見ていなければ卒業式の娘の号泣の本当の訳は、私には分からなかったと思います。卒業後にも、きっと深まる関係に出典 : 卒業式では娘以外にも沢山の生徒が泣いていました。その背中を優しくとんとんと叩く同級生の姿を見て、私は(娘はあの時この学校を辞めなくて本当に良かった)と思いました。素の自分を受け入れてくれる先生と友達が傍にいた。気づくのが少し遅かったかもしれないけれど、きっとその分これから長く長く素敵な関係が続いていくことでしょう。
2018年03月22日いい子に育てたつもりなのに、大きくなるにつれ、反社会的な問題行動をとる子どもに気を落としたりしていませんか? ひょっとしたら子どもの心理状態を知ることで、子どもとの距離が少し縮まるかも。その1●親の財布からお金を盗む子の心理とは?小さいころ自分もやったことがあるという大人も、あの時、なぜそんな行動をとったのかわからないのでは? 親の財布からお金を盗む子どもは、単純にお金が欲しいのか? その裏にはこんな心理がありました。▼続きはこちら▼その2●子の不登校、親はどうする?学校に行かなくなったからといって、いじめが原因とは限りません。いったい、なぜ子どもは学校に行きたがらなくなるのでしょうか。そして、その時親はどういった態度をとればよいのでしょう?▼続きはこちら▼その3●子の自殺、その兆候とはもしもわが子が自殺を考えていたら…。親はその兆候をどんなところで知ることができるでしょうか? そうなる前に、予防することはできないものでしょうか?▼続きはこちら▼その4●子ども同士のトラブル対処法貸したものを返さない。ケンカをして誰かに怪我をさせてしまったなど、子ども同士のトラブルには、どこまで親が介入すべきなんでしょう? 対策法についてまとめました。▼続きはこちら▼その5●子どもの万引き、どう対処する?子どもが万引きをしてしまったら…。お店に謝り、料金を支払って…という、その後の対応よりも知るべきことがあります。万引きを行う子どもの心理について、まとめました。▼続きはこちら▼その6●子どものギャングエイジをどう乗り切る?小学校中学年くらいから、自我が芽生えた子どもたちがグループになって過ごすようになると発生する様々な問題について、親として理解しておくべきことは?▼続きはこちら▼その7●危険!子どもの夜遊びはなぜおきる?子どものころ、どうして夜遊びしてしまうのでしょうか? その理由について、夜回り先生として有名な水谷修さんに、お聞きしました。▼続きはこちら▼その8●いい子がだった…が、なぜ犯罪を犯したのか?うちの子に限って…とはよく言ったもの。いい子だったのに、あるひきゅに犯罪に手を染めてしまった我が子。しかし、それにはきちんと理由があるのです。まずは子どもの心を学びましょう。▼続きはこちら▼
2018年02月27日発達障害に気づいていなかった子どもの頃の私。小学校時代に感じていたつらさとは?出典 : 私は大人になってから発達障害であると診断されました。子ども時代は、困難さを感じても理由が分からず、不登校にもなったりしながらなんとか生活している状態でした。前回の「感覚過敏の子ども時代を振り返って。あの頃こんな気持ちだった!大人にこうして欲しかった!【日常生活編】」では、子ども時代に、日常生活で感じていた困難などをご紹介しました。今回は【学校生活編】として、特に小学校生活を送るうえで感じていたこと・考えていたことをご紹介していきます。「声が大きすぎる」子どもだった出典 : 子どものころ、よく同級生から「声が大きい」と言われていました。休み時間に同級生と話すとき、他の子にとってはうるさいと感じる声量で話していたようです。私は、周りがうるさいと他の人の声が聞こえません。当然、相手も聞こえにくいだろうと思って、大きな声で話していたのです。自分としてはちょうどいいと思っていた声量が大きすぎると言われて、少なからずショックを受けました。何回も声が大きいと言われていたので、私に声が大きいと言ってきた子に「自分はこのくらいの声量でないと聞こえないと思っていた」と正直に自分の気持ちを伝え、「どのくらいの声量で話せばいいのか」を教えてもらうことにしました。そこで、適切な声量を調べるために、発声練習をすることにしました。最初は今まで通り声を出し、それから少しずつ小さくしていきます。相手にも話している内容が聞こえ、かつ大きすぎない声量を確認しました。ちょうどいいと言われた声量は自分には聞こえづらいものでしたが、相手にはちゃんと聞こえているというのが、とても不思議だったことを覚えています。家に帰ってからも親を相手にちょうどいい声量で話す練習をしていました。今でも、このとき身につけた声量で話すよう心がけています。「待つこと」「じっとしている時間」が苦手な子どもだった出典 : 全校集会などの待ち時間がとても苦手でした。10秒くらいはじっとしていることができるのですが、それ以降は指を絡ませて遊んだり、身体を触っていないと落ち着きません。じっとしていられないという感覚は言葉ではうまく言い表せませんが、五感に刺激がない状態が続くと衝動的に何か感覚を求めてしまいたくなってしまいます。五感に刺激を得るために何かを触ったり、しゃべったりしてしまうのだと思います。席を立ったり歩き回ったりはしなかったので表向き問題はなかったと思っていますが、じっとできなくなってしまうときの何とも言えない感覚があまり好きではなかったので、自分なりに何とかしたいなぁと感じていました。子どものころの私は、ひとつの解決法をみつけました。いつも何かをしていれば落ち着くのだから「やることがないときには、何かを想像したり、考えたり」することにしたのです。例えば、「今日の晩ごはんは何かな?」と想像したり、ゲームの攻略法を考えたりしてみました。歳をとるごとに考える内容は変わっていきました。目についた数字を四則演算して10にする方法を考えたり、哲学的なことを考えてみたり…。こうして培われた「じっくり考えるクセ」は、考えることが重要なプログラマーという仕事をしている私の、強力な武器になっています。中学校にあがってからは常に文庫本を持ち歩くようにし、やることがなくなったらすぐ本を読むようにしていました。この習慣は今も続いていて、成人してからも常に技術書やKindleを持ち歩いています。おかげで、特に意識しなくても新しい技術や知識を覚えることがまったく苦ではありません。じっとしているかわりにやることを決めておくと、じっとしている時間に対する苦手意識が薄くなり、少し生きやすくなるように思います。もちろん、私のやり方以外にもさまざまな方法があると思います。それぞれに合った方法を見つけておくとよいと思います。「漢字は読めても、書けない」理由出典 : 私は物心つくころから兄や両親に絵本を読み聞かせてもらっていたこともあってか、漢字の読みに困ったことはありませんでした。しかし、漢字を書くのがとても苦手でした。国語のテストでも読みはほとんど間違えたことがなかったのですが、書き取りのテストは毎回ボロボロでした。まったく分からないわけではないのに、書き取りだけできないというのがとても悔しかったです。おそらく私は漢字全体の形や前後の言葉とのつながりで読み方を覚えていたのだと思います。なので学校の宿題などで何回も漢字を書く練習をしても書けるようにはなりませんでした。自分が好きでも興味もないことを何回も繰り返さなければいけないうえ、全然できるようにならなかったので、余計に書き取りに苦手意識を持っていきました。このころのトラウマか、何回も書くという勉強方法は今でも嫌いです。漢字には部首などのよく使われるパーツがあります。私は漢字そのものだけではなく、それらのパーツを覚えることにしました。この漢字はどの位置にどのパーツがある というような覚え方です。例えば「解」という字は「角」「刀」「牛」というパーツが組み合わさってできています。「解」は左に「角」右上に「刀」で右下に「牛」というように覚えていきます。とはいえそれでもある程度書けるようになったくらいで、書き取りが苦手なのは、大人になった今でも変わりません。しかし社会生活をするうえでそれほど不便を感じたことはありません。読むことはできるのでパソコンなどで入力する際には困りませんし、いざ書くときにもどんな漢字だったか思い出せないときにはスマホなどを見ながら書くことができるからです。漢字が書けずからかわれることはありますが、それ以外に不便を感じることはありません。最近では書き取りが苦手なことをあまり意識することもなくなりました。「字が汚い」。練習すればするほど書くことが苦痛に出典 : 漢字の書き取りが苦手なところにも影響しているかもしれませんが、私は子どものころから字がとても汚いです。どのくらい汚いかというと、自分で書いた字を読めないことがあるくらいです。子どものころは「大きくなれば綺麗になっていくよ」なんて言われていましたが、結局この歳になってもほとんど上手にはなりませんでした。参考までに最近書いたメモをご紹介します。Upload By 凸庵(とつあん)子どもなりにも、自分の字が汚いことは自覚していたので、丁寧に書く練習をしたこともありました。しかしそもそも線をまっすぐ引けないので、丁寧に書いたつもりでもいつもとほとんど変わらない字になってしまい、がっかりするだけでした。周りの子たちはどんどん字がうまくなっていくのに自分だけ取り残された気持ちになっていました。少しずつ字を書くのが上達していったのか、中学校を卒業するころには、ようやく他の人も読める字になってきました。高専に進学してからは、字の汚さについて悩んだことはありません。むしろすぐに自分の字だとわかるので独特の味があるなぁなんて感じるようにもなってきました。社会人になっても、字を書く機会があまりないので、困ったことはあまりありません。しいて言うなら冠婚葬祭のときに名前を書くときくらいでしょうか。そういう場面では他の人と比べて明らかに字が下手なので、少し恥ずかしい気持ちになることもありますが…。他の人も読める程度に字が書ければ、それ以上は無理してうまくなる必要はないと私は思っています。もちろんきれいに書けることは素晴らしいことですが、いくら練習しても上達が見えない場合は、練習を続けることで字を書くことそのものが嫌いになってしまうかもしれません。生きていくうえで不便を感じないのであれば、きれいに書くことをあきらめてもよいのではないかと私は思います。そのかわりに得意なことや好きなことに時間を使うほうがずっと有意義で、成人してからも役に立つ経験になると思います。算数は好きなのに「ケアレスミスする」「暗算が苦手」出典 : 小学校のころは、算数の計算問題で解き方が分からず苦しんだことはありませんでした。私の得意分野だったのかもしれません。しかしどこかで計算ミスをして、答えを間違えてしまうことはたくさんありました。通信簿でも何年か連続で「計算ミスが多い」なんて書かれていました。暗算が苦手だったこともよくなかったのかもしれません。計算をしていく際に出てきた数字を覚えておくことができず、次の計算をしているうちに前の計算で算出した数字を忘れてしまいます。大人になった今でも2桁以上の四則演算をする際には時間がかかってしまいます。解き方はわかっているのになかなか満点が取れず、子どものころの私は非常に悔しい思いをしていました。解き方は分かっているので、テストの時間には余裕がありました。そこで、計算ミスを減らすために、算数のテストを全問解き終えたら確かめ算としてもう1回以上、最初から全問解き直すようにしていました。同じ計算をなぞっても意味がないので、初めて解くように計算をし直していました。それでも完全には計算ミスはなくなりませんでしたが、少しずつ減るようにはなっていきました。今でもケアレスミスは多いと言われますが、2回以上チェックすることで根本的なミスは減ってきていると思います。職場では周りの他の人にダブルチェックをお願いしたり、他の人の作業のダブルチェックを行ったりすることで職場全体でのミスを減らすよう心がけています。苦手を補う工夫が、いつか武器になる出典 : 子どものころから、学校生活を送るうえで感じる困難や、苦手な部分について、何とかするためにいろいろ工夫してきました。そうして身につけたさまざまなスキルは、大人になった今も、苦手な部分を補ってくれたり、ときには強力な武器になったりもしています。苦手を補うために必要に迫られて身につけたことが、「武器になる」という感覚はとても面白いと感じています。できないことや苦手なことに目を向けると、未来が暗く見えるかもしれません。でも、完全には克服できなくても、うまく回避する方法を身につけることができれば、ラクに生きていくことができるようになると体感しています。そしてときには、身につけた回避方法が、将来、強力な武器になることもあるかもしれません。
2018年02月25日支援の本質ってなんだろう?出典 : こんにちは。『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法』著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。今日現在、「発達障害」などの言葉の認知度が上がり、通級指導教室や特別支援学級を希望する児童・生徒が急増し、学校現場がそれに追いつけない現状があると聞き及んでいます。そのため、支援級・通常学級の先生方への、発達障害に対する充分な理解と実践ノウハウの普及、教育現場への予算と人材の確保は、早急な対応が求められていると思います。また、2019年からは、教員の養成課程でも特別支援教育に関する単位を1単位以上取得することが義務となるなど、充分ではないながらも、制度上前進している部分もあります。しかし、これらは切実に必要なことですが、発達障害はあくまでその子の個性の「一部」であり、また、ASDとADHDとLDが複合している場合など、タイプ別のマニュアル対応だけでは難しいかもしれません。それから、通常級で「みんなと違う」特別扱いを気にする・されるなど、気持ちの問題もあります。そして、発達障害のある子だけへの対応では解決が難しい、いわゆる「フツーの子」達が抱える根深くて深刻な問題もあり、実際の教育現場の実情に合った経験則や実践知も必要なのです。その中で、うちではこれまで毎年学校の先生方と連携しながら、長男への配慮をお願いし、これまでの6年間を手探り状態で歩んできました。ただ、そんな長男が6年間で1度だけ、「支援要らず」だった学年があります。それは、A先生が担任だった、通常学級の2年生のとき。A先生の「通常運転」だけで、長男は1年間落ち着いて過ごせたのです。私も、特別な配慮をお願いしたり、面談の機会を作っていただくこともなく、連絡帳のやりとりも最小限で済み、安心してお任せすることができました。今、変わりつつある公教育を前に、私は時々、そんなA先生を思い出しては「支援の本質」について、考えさせられるのです。A先生が、毎日当たり前のように、どんな子にも自然に行っていたスゴ腕の職人技を、私はここでみなさんにお伝えしたいと思います。「A先生が怖くて学校行けない!」息子を前に先生が取った行動は…出典 : 年生に進級し、担任の先生と初顔合わせの始業式の日。長男が泣きながら帰るなり「A先生が怖い!おれ、もう学校行けない!」なんて言うので、「どんなヒドイ先生に当たったの!?」と、私は内心焦りました。実は、幼稚園児時代から小1まで、長男はずっと優しくて若い女性の担任ばかり。「先生=優しい女の人」という強い思い込みがあり、そこに人生初の男性の先生。しかもA先生は、超ベテランのご年配で、お坊さんのようによく通る声に、日焼けしてシワの刻み込まれた貫禄十分なお顔立ち。その第一印象にびっくり仰天した長男は、「いつもと違う見慣れぬモノ」に、パニックになってしまったのです。翌朝、子羊のように震えて「ムリ!怖い!」と座り込んで、玄関から一歩も動けず、欠席してしまった長男。私は学校に電話して、A先生に状況をそのまま正直に伝えました。すると、A先生は慌てる様子もなく「分かりました」と、短いやり取りだけで電話を切ったのです。この対応には私も少々不安になりました。ところが、その日の夜。玄関のチャイムが鳴るので出てみると、なんとA先生がにこやかに立っているのです。そして先生は「◯太郎君と、ちょっとだけお話させて下さい」と私に告げました。それから、長男と先生は玄関先で10分程度雑談をしました。この短時間の間でA先生は、長男の緊張と警戒心を魔法のように解いてくれたのです。長男の笑い声が聞こえて来た頃、A先生は「じゃあ、明日待ってるよ」と軽く長男の肩をポンと叩き、また親の私を責めるような様子もなく、「遅くにすみませんでした」と、ニコリと笑ってさっと帰っていきました。後から「A先生と何話してたの?」と聞くと、「うーん、別に。家で何するのが好きかとか、そんなこと。…あとね、A先生も子どもの頃、学校が怖くて、イヤだったんだって!」と、ちょっと嬉しそうに話す長男。A先生は、短い雑談の中で、長男の気持ちにしっかり寄り添って下さったのです。「学校に来なさい」と強制したり、長々とお説教することもなく、今の「学校が怖い、好きじゃない」という長男の気持ちを、否定せずにそのまま受け止めてくれました。それが、頑なだった長男の心の扉を、ほんの少し開いてくれたようでした。長男は「いやあ、A先生があんなに面白い人だったなんて…」と、見た目の印象だけで決めつけてしまったことを、少し恥じらっているようでした。翌日、長男は無事登校することができました。それからの1年間、支援要らずで、落ち着いて過ごすことができたその後すぐ、私はA先生に、長男には(当時の基準で)アスペルガー症候群の診断があることを伝えましたが、A先生は「そうですか。まあボチボチやっていきますワ」とだけ言うだけ。特に特別支援について詳しい様子もなく、最初のうちは正直不安でした。ところが私の不安をよそに、最終的には何事もなく1年間無事に終えることができたのです。ここで、長男に特に良かったと思われる、教師生活推定約35年・A先生の「スゴ技」を、私なりに分析しながら、紹介させて頂きますね(A先生の方法が全てのお子さんに合っている訳ではないでしょうが、ご一考の価値はあると思います)。出典 : あまりに当たり前のようで、見落としがちなことかもしれませんが、A先生は、・大きめの落ち着いた声で、分かりやすい言葉で、ゆっくりひとつひとつ話す…ことを、毎日ごく自然にしていました。たったこれだけで、「人の話を聞かない」などと注意されがちな長男も、ずっと聞き取りやすくなります。長男は、早口で高いトーンの声や、矢継ぎ早に次々指示を出されると、それだけで「聞こえなく」なってしまうのです。実は、その年の担任の先生の「声の聞き取りやすさ」次第で長男の成績も上下する程です。また、A先生は「声のトーンと表情の使い分け」も上手でした。長男は気持ちの切り替えや、人の表情から微妙な感情を正確に読み取ることが苦手なため、悪気はなくても、つい調子に乗ってハメを外してしまったり、夢中になると周りの状況に気づかずに、集団の中で目立つ行動を取って、何かと注意されがちに…。ところがA先生は、普段は目尻を下げて穏やかに接していましたが、長男が行き過ぎた行動を取ると、いかめしい表情と低く険しい声で、短い言葉でビシッと注意し、キッチリブレーキをかけるので、長男もハッと気づきやすいのです。また、クラスのどのお子さんにも、A先生はこのように接していたので、長男だけが何度も注意されて目立ってしまうこともありませんでした。出典 : 私が特に「神業だ!」と感動したA先生の行動は…・毎日、同じ時間・同じタイミングで行動する…ということ。A先生は、毎日キッカリ同じ時間に教室に入り、全く同じタイミングで子ども達から提出物と連絡帳を集めます。学校という場所は、感覚が敏感な子には、情報量が多過ぎて混沌としているように思えたり、「いつもと違うこと」が苦手な子は、毎日の天候の変化や様々な行事、クラスの子達の動きなど、予測できないことに不安や負担を感じやすいようです。そんな中、毎日同じことを同じ時間にする、A先生の安定した行動パターンは、長男に大きな安心感を与えてくれたようです。また、毎日同じタイミングで連絡帳を集めると、それが習慣として定着しやすく、うっかり忘れの多い長男でも、提出物を出し忘れることは、ほとんどありませんでした。また、A先生は感情も大変安定している方でした。少々元気のよい子どもたちをA先生が一喝する場面も見かけましたが、そこに先生自身の感情が巻き込まれることはありませんでした。子どもひとりひとりと先生が、日頃から信頼関係で結ばれているからこそ、時に厳しい態度でも、素直に受け容れられていたように思います。そして、子ども達が良くない行動をやめたら、何事もなかったように、いつもの「通常運転モード」に戻るのです。これらの安定した行動パターンは、実際にやってみると簡単にできることではなく、もはや「芸術」の域なのかもしれません。出典 : 先生は授業中、時折脱線しては、いろんな話を子ども達に披露して下さったようです。ユーモラスなA先生自身の経験談や身近な例え話は、なかなか教科書中心の授業では集中力が続かない長男も、興味を持ちやすかったようです。「A先生、釣りが好きなんだって。おれもやってみたい」なんて、言い出したこともありました。また、書字にやや困難さがあった長男が、大の苦手の漢字書き取りの宿題も、A先生は、いい意味でテキトーに、ぐるぐるっと大きなマルをつけるだけの大らかな添削で、細かなミスや字形の悪さには、片目をつぶってくれました。おかげで、一生懸命がんばっても字が上手に書けない長男にも、さほどプレッシャーにならず、毎日泣かずに宿題に取り組めるようになりました。そして、最初のうちは、A先生は長男を大きな声で注意せずにいてくれましたが、クラスに慣れてからは、長男だけを特別扱いすることはありませんでした。他のお子さん達と同じように、廊下を走れば「コラー!!」と、雷を落とされていたようです。でも、学年末の面談のときにA先生は「最近は、怒られてもケロリとしていて、また男の子達と校庭へ走っていっちゃうんですよ」なんて目を細めながら、どことなく嬉しそうに語って下さいました。このA先生のクラスでは、長男は「落ち着きのない問題児」ではなく、「ただの健全で元気な男の子」でいられたのです。出典 : そして、A先生は長男だけでなく、クラスのどんなお子さんにも同じように、大らかで肯定的な温かい目線で接していました。おかげで、どの子も素直にのびのびと過ごし、その年には集団から孤立しがちな長男にも、仲良しの友だちができたのです。実は、発達障害の診断のある・なしに関わらず、学校生活を送る上で障害となることがあれば、通常学級でも合理的配慮をお願いするのは、法的な根拠もあり、本来、堂々と主張して良いことなのです。ですが、現在日本では、発達障害への社会的な理解や支援体制が、まだまだ十分とまでは言えないようで、特に、通常学級の中で配慮をお願いすると、他のお子さん達から「◯◯君だけズルイ」などと思われてしまう場合もあるようです。いわゆる「フツーの子」であっても、子どもはみんな発達の途上にあることに、変わりないのでしょう。私は、障害のある子・方への配慮が当たり前の風景となる社会を望んでいますが、一方でそれぞれが必要とすることは違っても、どんな子も、大人から大事に特別に扱って欲しいと願う気持ちは、同じなのだと思います。支援の本質とは、ひとりひとりの個性や気持ちに寄り添い、信頼関係を築いて、子どもたち全てを肯定的な温かい目で、大らかに成長を見守ってあげること。本当の意味でのインクルーシブ教育とは、どんな子も特別で、どんな個性でも大事にしてあげること。…なんじゃないかな、なんて、A先生を思い出しては、私はいつも思うのです。変わりつつある教育の中で…出典 : そんなA先生は、長男のクラスを担任して下さった翌年、定年退職されました。今頃、毎日大好きな釣りを楽しまれていることでしょう。でも、ひょっとしたら、お父さんお母さんの懐かしい思い出の中にも、こんな先生に心当たりがあるかもしれませんね。こういった経験豊富な先生方は、それぞれ性格や教え方の違いはあっても、総じて大らかで、感情が安定している方が多いように思えます(勿論、ベテランだからといって、必ずしもうまくいく訳ではありませんし、お子さんとの相性もあるでしょう)。一方で、残念ながらこんな達人の先生方は、毎年、A先生のように、次々と定年退職されていく現実があります。日本の他の伝統産業と同じように、教育現場でも深刻な後継者不足・人手不足の問題が、今まさに現実になっているのを痛感する日々です。もちろん、若い先生の中にも、柔軟に新しい方法を取り入れて下さったり、発達障害について熱心に勉強して下さる方がいます。日本の教育は現在、過渡期にある特別支援教育だけでなく、いじめや不登校、親の経済力による教育格差、そして先生方の過剰な雑務や長時間労働の問題など、課題が山積みである以上、やはり大きく変わっていく必要があると私も思います。でも、そんな中で、日本の伝統的な教育制度の中で長く培われた、こんなに素晴らしい職人技と、どんな子も大らかに見守る温かい目線が、熱意溢れる若い世代の先生方にも、途絶えることなく受け継がれていくことを、私は切実に願ってやみません。
2018年02月24日この10年間で、小学校1年生のクラス内での暴力は約14倍になったという調査結果が出ました。原因は感情のコントロールが苦手な子どもが増えていることではないかと言われています。では、小さいうちから感情のコントロールを教えていくにはどんな関わり方をしていけばいいのでしょうか?小学校教諭として28年間勤務した経験のある、増田修治さんに聞きました。◆お話を聞いたのは…増田修治さん(あんふぁんサポーター)白梅学園大学子ども学部子ども学科教授。28年間小学校教諭として勤務した後、現職。子どもの荒れやいじめについて、新聞や雑誌などでアドバイスを多数行っている。あんふぁんWeb「小学生ママ」コーナーの「困ったら増田先生に聞いてみよう 放課後職員室」でも活躍中。●10年間で小学生の暴力は急速に増えている!急増の理由としては、昔は「じゃれ合い」とされていた乱暴な行為も「暴力」とみなされるようになったことが挙げられるものの、特に低学年の伸びが非常に高いことが分かります。※平成28年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸問題に関する調査速報値」(文部科学省)■子どもの暴力の特徴(1)…「なんとなくムカつく」だけで手が出てしまう私が過去に担任を受け持った児童の中には、「どうして叩くの?」と聞くと「なんとなくムカつくから」と答えた子がいました。何をされたわけではないけれど、「相手が気に入らない」ことが暴力の理由になるのです。■子どもの暴力の特徴(2)…自分の感情をうまく言葉にできない自分の心の中の苛立ちやモヤモヤをうまく言語化できず、感情がいきなり行為になって表れてしまいます。「ムカつく」「ばかやろう」「死ね」などの暴言を吐くのも、自分の感情に整理がつけられないためです。■子どもの暴力の特徴(3)…手や体の一部が触れることを嫌がる友達の手や体が触れることが我慢できず、払いのけたり叩いたり。家庭内でのスキンシップが不足している子に多いパターンです。また、「誰が触ったか分からないよ」という言葉も、過剰に潔癖な子をつくってしまいがちです。■子どもの暴力の特徴(4)…自分を棚に上げて人のことを責める小学校の荒れているクラスの子どもには、「みんなルールを守らないんだから自分も守らなくていいだろう」と考える「他責タイプ」が多く見られます。親が「○○くんって悪い子ね」とすぐ人のせいにすると、子どももまねしてしまいます。●先生に質問Q:暴力とけんかの違いって?A:お互いに言い分があるのが「けんか」。一方的な攻撃が「暴力」。友達やきょうだいを叩いてしまったり、蹴ってしまったり。わが子の乱暴な行動にヒヤッとした経験を持つママは少なくないことでしょう。ただし、手や足が出たからといって一概に「暴力」とは言えません。言い争ううちにエスカレートして、手や足が出てしまう。これは「けんか」です。けんかにはお互いに原因があり、言い分があります。一方「暴力」の場合、手や足が出ることに理由はありません。「なんとなくムカつく」という自分の感情で、一方的に相手を攻撃してしまうのです。Q:親の育て方に問題があるの?A:親に「〜しなさい」と命令されてばかりだと暴力的になる傾向に。「なんとなくムカつく」「ウザい」。こうした感情には、自分とは違う価値観を持つ相手のことを受け入れられないという問題が隠れています。「ムカつく」「ウザい」を連発する子どもたちには、親から「○○しなさい」と命令されて育った傾向があります。価値観を受け入れてもらった経験がないから、自分も誰かの価値観を受け入れることができないのです。Q:感情のコントロールを子どもにどう教える?A:どこが悪いのかどうすればいいのかを大人が丁寧に伝えて。「暴力を振るう子どもの親」は、「子どもだから許されるでしょ」と考える傾向にあるようです。例えば、わが子が公共の場で走り回っても知らんぷり、よその人に乱暴な口を利いても注意しないなどですね。もちろん子どもですから、未熟さゆえに間違えてしまうことはあります。その度に、その行動のどこがいけないのか、どうすればいいのかを教えていくのが大人の役目。その姿を見て、自分の感情や行動をセーブできる子どもが育っていくのです。●感情のコントロールができる子に!お子さんの「暴力の悩み」にお答えしますきょうだいやパパ・ママを叩いたり、電車の中で大声を上げたり…といったお悩みを、約半数の人が抱えているようです。でも、子どもがムカついているときこそ、感情をコントロールする術を教えるチャンス。増田さんにアドバイスを聞きました。Q:お子さんは家族に対して暴力を振るったり暴言を吐くことはありますか?2017年11月8日~12月5日、有効回答数1134■お悩み1位:きょうだいを叩く……25.7%兄弟げんかをすると必ず叩き合いに。「お互いさまだからお互いに謝ろうね」と言って仲直りさせますが、いいのでしょうか?(北海道・年長ママ)A. 「はい仲直り」はNG! 価値観を伝えるチャンスです「どちらか一方に肩入れしてはいけない」と思うあまり、言い分を聞かずに解決させていませんか?トラブルになった時こそ、何が正しくて何が正しくないかという価値観を子どもに伝えるチャンスです。「今回は、ママはお兄ちゃんが正しいと思う」「でも、お兄ちゃんもここは悪かったから謝ろうね」という伝え方をしていきましょう。■お悩み2位:思い通りにならないと大声を上げる……22.9%ファミレスで大人同士が話をしていると、気に入らないのか大声を上げます。周りの人に迷惑が掛かるので、ついスマホを与えてしまいます。(東京都・年中ママ)A. スマホでは感情をコントロールできるようになりませんスマホを渡せば静かにはなるでしょうが、大声を上げると迷惑になることは伝わりません。親が一緒に外に出て、「みんなが静かに食べられないよね」となぜダメなのか理由を話し、「落ち着くまで中には入れないんだよ」と毅然とした態度を取ってください。ルールを守れないと損をするという経験も、感情のコントロールにとって大切です。■お悩み3位:パパ・ママを叩く……20.6%悪いことをして怒られたとき、私を叩いたり蹴ったり。優しく言い聞かせていますが、つい怒鳴りたくなってしまいます。(神奈川県・年長ママ)A. 親だってたまには本気で怒っていいんです親だって人間ですから、叩かれたら腹が立つのは当然。どうしても我慢できないときは、「大事なあなたに叩かれたり蹴られたりして、ママの心がいちばん痛いのよ!」と正直に伝えて良いのです。しかしあまりに頻繁に親を叩くのは、愛情を欲していたり、親のことを下に見ている場合があります。普段の関わりを見直してみましょう。■お悩み4位:物を壊す、物に当たる……11.1%思い通りにいかないことがあると、すぐおもちゃを投げつけます。「落ち着きなさい!」と言いますが効き目がありません。(神奈川県・年少ママ)A. 感情を落ち着かせる「隠れ家」を作ってみましょう段ボールなどで子どもがちょうど入れるくらいのスペースを作り、気持ちが落ち着くまでそこにいる、自分の意思で出てきたところで話を聞く…という方法です。これは多くの幼稚園や保育園も導入している方法ですが、子どもたちは「隠れ家」がお気に入り。体が壁に密着することで「守られている」という気持ちになり、心が落ち着くようです。■お悩み5位:暴言を吐く……5.7%「うるせぇ! 」「ばかやろう」などの乱暴な言葉を使うようになりました。園の友達の影響かなと思うのですが…。(千葉県・年中ママ)A. 友達を責めずに「その言葉は嫌いだな」と伝えましょう友達のまねをするのは社会が広がった証拠でもあり、ある意味仕方のないこと。「そういう言葉はママは嫌いだな」と伝えていくことで、成長と共に直っていきます。くれぐれも「そんな乱暴な言葉を教えるなんて○○くんはひどい子ね」と友達を責めるのはやめてくださいね。良くないことがあったとき、他人を責めるクセがついてしまいます。●ムカつきやイライラの翻訳者になることが大人の役目です「ムカつく」と言ったり、叩いたり蹴ったりするといった暴力には、「自分の感情をうまく言葉にできない」という問題が隠れています。いったん言葉を通して説明することで、イライラやムカつきは整理されていくものですから、そこを手伝ってあげるのが大人の役目。「どういう意味でムカつくって言ってるの?」「こういう理由で叩いちゃったのね」と、大人が良き翻訳者になることで、自分の感情をコントロールできる子が育っていきます。巻頭特集監修/西東桂子さん(あんふぁんサポーター)illustrationYAMAMOTO Mamoru
2018年02月07日子どもが登校するとき、どんな声をかけていますか?いちばん子どもにとって嬉しいのは「いってらっしゃい!」とお母さんが笑顔で送り出してくれること。なるべく、よけいな言葉はつけ足さないほうがいいんじゃないかしらね。小学生にもなると行動範囲が広がり、親の目も行き届きにくくなってきます。つい心配で「忘れ物ない?」「寄り道しちゃダメよ!」など、あれこれ口うるさく言ってしまうこともあるのでは?もちろん、それ自体は悪いことではありません。子どもを思えばこそ出てくる言葉なんですからね。ただ、コミニュケーションのやりかたとしては、うまくないんじゃないかしら?おおかたの子どもは親が何を言ったところで「うるさいな」「わかってるよ」という反応。それどころか、無言で出ていく子もいるでしょう。親がよかれと思って口にした言葉で子どもが不機嫌になり、そんな子どもの態度を見て親のほうもイライラする…。こんなコミュニケーションを毎朝くり返すのは、もったいないと思うのよ。それより、持っていくべき物は自分で確認させ、失敗を通して成長させるほうが、よっぽどいいんじゃないかしら?結局、親がアレコレ言ったところで、子どもにとってはうるさいだけ。よけいなお世話なんですね。 シンプルに「いってらっしゃい!」と明るく送り出してもらうほうが子どもも気楽。毎朝ウンザリさせられるより、気分がいいはずよ。もちろん、「気をつけてね」「今日は、寒くなるらしいわよ」などの言葉をたまにつけ足すのはいいのよ。ただ、毎朝口うるさくチェックするような言いかたは避けましょうね。これは親のひとりよがりで一方通行のコミュニケーション。子どもの心には響きません。それより、シンプルな言葉で明るく送り出してあげて。毎朝のことですもの。よけいな言葉を口にしないで「いってらっしゃい!」と笑顔でね。気持ちよく明るい声で送り出してあげてくださいね。 名前に宿る運命◆あなただけの使命、絶頂期、最大のしあわせまで
2018年02月02日2017年11月25日から12月5日に、LITALICO発達ナビでは「女の子の発達障害に関するアンケート」を行いました。発達障害のある子どもの保護者677名、発達障害の当事者445名の声が寄せられました。ご協力いただいたユーザーの皆様、どうもありがとうございました。この記事では、「約450名の当事者が回答!女の子の発達障害、勉強や仕事、恋愛、交友関係など悩みや解決策は?」とし、調査結果の一部を抜粋し、お伝えします。保護者の声については、「約700名の保護者が回答!女の子の発達障害、学校や友達との関係、身だしなみの悩みや解決策は?」でご紹介しています。<調査対象について>「LITALICO発達ナビ」会員へのメールから、アンケートフォームにて回答いただいた発達障害の当事者445名の回答を集計しました。(調査期間:2017年11月25日~12月5日)※設問によっては445名全員が回答していないもの、複数回答可のものがあります。※調査結果の構成割合は四捨五入をしているため、合計が100%にならない場合があります。女の子の発達障害とは?発達ナビに寄せられた、当事者約450人の声出典 : 「約450名の当事者が回答!女の子の発達障害、勉強や仕事、恋愛、交友関係など悩みや解決策は?」では、発達障害のある女性の当事者445名が回答。現状や不安に思っていること、悩み、解決策までが寄せられました。30代~40代を中心に、主に成人の発達障害当事者が回答Upload By 発達ナビ編集部70%弱が就職後に発達障害に気づくUpload By 発達ナビ編集部70%弱が就職後、続いて大学・専門学校のころに発達障害に気づいたと回答しています。保護者が回答した「約700名の保護者が回答!女の子の発達障害、学校や友達との関係、身だしなみの悩みや解決策は?」では、約60%が就学前に気づいたのと対照的です。成人当事者が幼少期のころは発達障害が認知されていなかった、比較的障害の程度が軽度などの理由で学校生活では問題が起きにくかったなど、さまざまな原因が考えられます。発達障害があることに気づいたきっかけとしては、■人間関係・仕事(28件)■子どもの診断(24件)■WEBや書籍などの情報(18件)■二次障害の発症(8件)があげられています。人間関係・仕事でのきっかけについては、「人間関係がうまくいかない」など、日常生活や職場での人間関係でつまづいたという声や、「仕事で複数の指示の聞き漏らしや、仕事を完遂できないことが頻発し、自分はおかしいと思ったため」など、仕事でのミスがきっかけだったという声が目立ちました。また、子どもの診断がきっかけの人は、「自身の子どもに発達障害の疑いを持ち調べているうちに自身の発達障害を疑いだした」というように、子どもの特性と自身の特性が似ていたり、子どもの診断をきっかけに発達障害について調べるうちに自分の特性に気づいた、という人が多いようです。WEBや書籍などの情報については、「小学校に上がってから、自分の異質感を感じてはいました。(中略)大人の発達障害の概念はまだ、一般的でなく情報は得られませんでした。不調をきたし適応障害からの抑うつ状態との診断で約5年、加療しました。その後勤め先が変わり、全然対応できないことで、色々検索したら、大人の発達障害が広がる少し前でしたが、情報があり、受診しました」というように、情報が手に入りやすくなったことで診断につながったという声もありました。また、早めに気づけなかったことから、二次障害を発症してしまった例も複数あるようです。約73%が二次障害を発症Upload By 発達ナビ編集部約73%が二次障害を発症しています。二次障害の発症率は「約700名の保護者が回答!女の子の発達障害、学校や友達との関係、身だしなみの悩みや解決策は?」では約40%でした。二次障害の内容としては■うつ(96件)■不登校(28件)■不安障害(18件)が多くあげられました。「離人感、フラッシュバック、躁鬱、過覚醒、過活動、不安、孤独感、過食、過眠、性的逸脱、など。あげていったらキリがないのでこの辺りで」などのように、摂食障害、パニック障害、不安障害など複数の二次障害があるケースもみられました。約84%が友人関係で困難やトラブルを経験Upload By 発達ナビ編集部約84%が友人関係での困難やトラブルを経験していますが、その内容としては下記2つが多くあげられました。■グループに入れない・いじめ(56件)■会話がうまくできない(54件)暗黙のルールなどが分からず、グループになるとどう振る舞っていいか分からなかったという回答が多く寄せられました。「女性社会の暗黙のルールが分からず、何をすると浮いてしまうのかが分からなかった」「個人間では話せるがグループや団体になったりすると楽しく過ごせない」「集団の時の疎外感。親しめる人への距離の近さから「友人の彼氏」にも近すぎてしまい誤解された」のように、距離感がうまく取れないことから、トラブルにつながった例もありました。また、いじめのターゲットとなったという回答も多くありました。グループに入れず仲間外れにされた人や、集団対自分でひどい行為を受けたという場合も。「みんな離れていきました。ある方たちには酷い!と言われたことがあります」「小学生~中学生にかけては、仲間外れなんかは当たり前でしたし、教師込みでの葬式ごっこにもあっています。 呼び出されて給食室に行くと、給食を運ぶエレベーターに友達に閉じ込められて、授業に出られなかった時がありましたが、何故か私が怒られていましたねぇ」会話についても困難やトラブルの原因となっているようです。学校や職場でのなにげない会話がうまくできないことから、人間関係につまづいてしまうようです。「雑談の話題作りのしかたや、興味のない話題への相づちの打ち方が分からず、孤立したこと」「雑談が苦手、孤立しがち」「余計なことを言ってしまい空気が冷え込み、距離をもたれる」のように、雑談が苦手、がんばって話そうとすると余計な発言をしてしまう」などの回答がありました。「怒らせるつもりは無いのに怒らせる。騒音や刺激物に気をとられ話を聞き逃す。話を聞いてないと言われる」「友達の話にすぐ理解、反応できず、自分1人だけ浮いてしまう。相手の表面どおりの言葉を真に受けてしまうので、その特質を利用されて仲間外れにされてしまう」のように、聴覚過敏や、額面通りに受け取ってしまうというような、特性ゆえにコミュニケーションが難しいという回答も目立ちました。約73%が親子関係で困難やトラブルを経験Upload By 発達ナビ編集部保護者との関係でも、多くの当事者が困難やトラブルを経験しています。その内容としては、次のようになっています。■喧嘩(24件)■無理解(21件)■暴力・虐待(13件)■過干渉(5件)ストレスなどから、すぐ喧嘩になってしまうという声が多くあがりました。「学校で感じているストレスの発散場所が無く、親に対して暴言、暴力でストレスを発散していました」「母親とは対立。結婚してからは兄弟のお嫁さんに対立。私以外の人間がルーズでだらしがないので、イライラしてしまう」理解してもらえず苦しんだという声も多く寄せられました。「親に子供の立場に立って考えてもらえないことが多かった」「自分のことを理解してもらえない」保護者の思う理想像との違いから、批判されて苦しんだという人もいます。「母が特性や辛さを理解せず、母の考える『普通』(実は理想の娘像)との違いで始終ダメ出しばかりだった」「友達がいないことを母親に責められた。冷たい人間と言われた」発達障害への認知がなかったために、不登校も許されなかったという例もありました。「親に発達障害の知識がなかったため、病院に行くまで学校に行くことを強要されていた。行かなかったら殴られていた」暴言・暴力などの虐待を受けていたという人も複数いました。「父親が厳し過ぎて、いつのまにか人の顔色を伺い、心も体も疲れはてた」「虐待を受けていた(身体、精神)。 意見を言う事や、何かを要求する事は禁止されていた。 できない事はずっと否定され、理解してもらえなかった」「母親には、かなり叩かれていました。本当に死ぬんじゃないかな?って思うぐらいに…。(中略) 一番辛かったのが、『夜眠れないのよぉー!』と言いながら、徹夜で朝まで説教で、寝させてくれませんでした。本当にツラかった」以上のように、本来、落ち着ける場所・逃げ場であるはずの家庭でも強いストレスを感じざるをえなかった様子がうかがえます。90%以上が学校や職場でトラブルや困難を経験Upload By 発達ナビ編集部多くの当事者が、学校や職場でのトラブルや困難に直面しており、特に仕事でのトラブルや職場での人間関係に悩んでいる様子がうかがえました。■仕事でのトラブル(35件)■人間関係(35件)■学習の遅れ(15件)仕事でのトラブルについては、スムーズにこなせなかったり、ミスをしてしまうという例が多くあげられました。「上司の指示が理解できない、仕事のミスが多い、人の気持ちが分からない、時間や締め切りを守れない、仕事中に眠くなってしまう」「やらなければならないことを優先度合いで順番をつけ実行するのが苦手なため、いつも手一杯で結果も中途半端」「電話対応の仕事をした時に、電話しながらメモができなくて、電話を切ったあとに、内容を忘れる相手の名前や会社の名前を忘れる」「マニュアルがないと戸惑う。マニュアルから逸脱するのに抵抗がある」「仕事では、不注意のため介護現場で利用者さんに怪我をさせてしまった」また職場での人間関係についても、世間話ができなかったり、飲み会への参加が苦痛で断るうちに、同僚との関係がぎくしゃくしてしまうようです。「休憩時間の世間話が上手くいかない」「飲み会が苦痛」「飲み会への不参加が続く。何度も誘われるが仕事するだけでいっぱいいっぱいでヘトヘトなので何度も断り嫌われる」ただ、中には「以前は多くあったが、現在の職場にはカミングアウトして、できないところのサポートと配慮をしてもらいやすくなった」という風に、発達障害について周囲に伝えることで、必要な配慮をしてもらえるようになったという回答もありました。第二次性徴時の体の変化についての困難やトラブルの内容に、特徴があるUpload By 発達ナビ編集部第二次性徴時の体の変化については、約半数は困難やトラブルを経験しなかったという回答でしたが、約25%からは、次のような困難やトラブルについての声があがりました。■体の変化が受け入れられない(13件)■PMSなど生理に関連する体調不良(12件)■自分の性別への違和感(9件)まず、急激な体の変化についていかず、対応ができなかったという意見が目立ちました。「自分に何が起こったのか理解できなかった。受け入れがたかった」「急激な身体の変化による不安や不眠」「ブラジャーをつけることが物凄く気持ち悪く、つけずにいたら母に酷く叱られた。月経にもなかなか対応できず下着を汚してばかりいた」生理に関する困難も多くあげられました。ホルモンバランスの変化によるイライラのほか、一定しない生理周期にパニックになる、ゆううつになるなどの例も。「10才くらいで初潮がありPMSが現在もきついです。思春期はいつもイライラしてて家の中で荒れていました」「生理が来なくなったり、早まったりと予測ができず初めはパニックになることが多かった」「生理前のゆううつ感、自殺願望、生理が来るたびになんで妊娠しないのにと思った」それまで意識していなかった性差に直面し、自分の性を受け入れられない、理解が難しかったという人もいました。「自分の性別を受け入れられない」「女の体になるのが気持ち悪かった。今も、胸を潰して腰を狭くできるならそうしたい」「性別の概念がよく分からないので、勝手に分けられる体になることに抵抗があった」困難やトラブルがあった25%については、体の急激な変化に加え、大人の女性として見られていくことに対して、うまく対応ができず混乱してしまったことがうかがえました。約62%が学習面での困難を経験しているUpload By 発達ナビ編集部学習面での困難としては、下記のような内容が多く寄せられました。■得意不得意の差が大きい(33件)■集中できない(17件)■読み書き困難(12件)■宿題忘れ(8件)得意不得意の差が大きいという人の中でも、算数・数学ができないという回答が20件ありました。「数学が全然分からなかった」「今思えば数学が極端にできない。答えが1つである性質には魅力を感じるのだが、できない」「算数の繰り上がりの足し算から分からなくなった。(中略)コンパスなどをうまく使えず、図形の問題に時間がかかった」また、国語や英語について苦手感があるという声も数件ありました。「漢字は読めるのに、書くことができない。英語のスペルが全く覚えられない」「漢字が覚えられない。忘れるのが早い」「文法が苦手なため国語や英語も苦手で覚えられなかった」逆に、「小数点や分数の計算は未だにできない。(中略)文を書く事は好きだったため、国語表現の成績だけはよかった」など、得意な科目についてはよくできたという声もありました。集中力のなさからの困難としては、下記のような例があげられました。「集中力が続かない、文章は読めても理解できない」「集中して聞き続けられない、書字が遅く、また聞いていることを要約しながら書けないため板書が困難」「過度集中の特性を持ちつつも、通常時に机に向かって一つのことに集中していられない」また、過集中の特性を生かせるときと生かせないときがあるという人もいました。「過集中の時はテストの成績も良いが、そうじゃないと全く勉強できない」「始める前に色々と考えてしまうと、思考で頭がいっぱいになってしまい、何もできなくなる。ただし、一度始めれば一般的以上の集中力や成果を発揮」読み書き困難については、次のような回答がありました。「文章題の意味が取れない」「成人してからも逆さ字をかいてしまう。読めるけどかけない」「指示代名詞の理解が難しい。『ちゃ、ちゅ』など小さな文字の読み書きができない」また、板書がなくなったことで理解が難しくなったという場合もあるようです。「先生の言葉だけでは理解できないので、高校大学で黒板などをほとんど使わなくなってくるとついていけなくなった」教科によって得意不得意の凸凹が大きかったり、不器用さや集中できないことなどから勉強に支障が出てしまう場合が多くあるようです。約半数が、ファッションや身だしなみでのトラブルや困難を経験Upload By 発達ナビ編集部ファッションや身だしなみに関しては、約半数が困難やトラブルを経験しています。以下のように、そもそもファッションに興味を持てない、適切な服装を自分で考えることが苦手、不器用さなどから身だしなみを整えるのが苦手、感覚過敏があり着られるものが限定されるといった面があるようです。■TPOに合う服装が分からない(26件)■無頓着・だらしない(23件)■不衛生(15件)■感覚過敏(10件)TPOに合う服装が分からないという回答が一番多く寄せられました。具体的には、細かな指示がないと何を着ていいのか分からない、季節に合わせた服装ができないなどの声がありました。「ドレスコードが分からない」「制服以外で、日中の外出に何を着たらいいか分からなかった。無地で2色くらいが無難と気付くまでは、ちぐはぐな上下を組み合わせていたと思う」「Tシャツ、ジーパン不可の指示で、ポロシャツとチノパンで行ったら、怒られた」「どんな服装が適切か(温度との関係など)がよく分からない」無頓着・だらしないという回答については、下記のような具体例があげられました。興味が持てなかったため無頓着になってしまったり、不器用さなどからルーズな着こなしになってしまうことが多いようです。「2児の母ですが、未だに化粧もせず(そもそも興味が持てない、面倒)、ファッションも気にすることができない。歯磨きも幼少の頃から苦手でうまくできないまま。ムダ毛を剃っても剃り残しが頻発」「今はかなり気をつけていますが、背中が出てる、パンツ見えてるはよくいわれてました」感覚過敏についての声も寄せられました。しめつけや素材感に苦手なポイントがある、髪に触れるのがイヤでまとめられないという声が目立ちました。「合わない服だとストレスで具合が悪くなる。肌に化粧品を塗るのが苦痛」「服のタグがチクチクしてたまらなかった。締め付けがキツく感じ、下着を選ぶのが困難」「髪の毛は自分で始末が付けられず、ボサボサのまま学校に行っていました。また首に何かが触れるのが嫌で、ハイネックやタートルネックは着られませんでした。(中略)ストッキングは大嫌いで、履かなければならない日は物凄く不機嫌になります」約40%が異性関係でのトラブルを経験Upload By 発達ナビ編集部約40%が異性関係でのトラブルを経験しており、具体的には次のような内容があげられました。■適切な関係が築けない(36件)■性被害(29件)■距離感(21件)■依存(12件)適切な関係が築けないという人が最も多くいました。誘われたら断れない、好きという意味が分からないので恋愛がゲームのようになってしまうという場合も。「複数人と関係をもってしまう、誘われたら断らない」「結婚が長続きしない。離婚3回」「言いなりになりがち」「恋人がころころ変わる、付き合い始める前のかけひきみたいな状態が好きで、後先考えずにそういう雰囲気にもっていってしまう」「誰かと付き合っていても別の人間を好きになってしまうことがあり、そもそも恋愛的な意味での好きとは何なのかが分からなくなっている」また、「出会い系に手を出して、ストーカー被害にあった」「交際していない中年男性によるつきまといなどのストーカー被害」というように、性被害にあいやすいという人も多くいました。中には「8ヶ月間軟禁された」という人までおり、深刻さがうかがえました。不適切な距離感によるトラブルとしては「しつこく連絡して嫌われた」「勝手に気に入ってつきまとう」というように、しつこくしてしまい嫌われてしまうという例や、「好きじゃない人にも好意的に接してしまい、言い寄られる」「両思いだと勘違いされる」など距離感が分からないことなどが原因で、行為があると誤解されてしまうという例がありました。「男性との距離感で友人から恋仲との区切りが分からず「仲良いよね」と言われると、ベタベタされても、納得していた」という風に、自分では判断できない場合もあるようです。また、依存については、「性依存。浮気」「性的逸脱、共依存」「セックスフレンドにはまった」のように、性的に依存しまったり、「元夫に精神的DVを受けていた。共依存関係だった」「依存してしまいお金を貢いだり、妊娠して逃げられたりした」のように共依存となりDVを受けたり貢いだりしてしまうことも。このように、異性関係でのトラブルは、性暴力やDVなど精神的にも身体的にも大きな影響出てしまう可能性があります。異性関係のトラブルの原因とは?出典 : では、どうして異性関係でトラブルとなってしまうのでしょうか。その原因について、どのように認識しているかについても聞きました。■人の気持ちや距離感が分からないから(26件)■自己肯定感の低さ(21件)■性的知識の未熟さ(13件)どんな人とも同じような距離感で接してしまう、自己肯定感が低いために依存してしまう、性的なハードルが低すぎてトラブルに巻き込まれるというような声が目立ちました。約65%が恋愛や結婚をしたいが向いていないと考えている出典 : By 発達ナビ編集部約65%が、恋愛や結婚をしたいと考えているものの、向いていないと考えています。異性関係でのトラブルの経験などから、希望はあっても自分は恋愛や結婚に向いていないと考えてしまう人の割合が多くなっているようです。困難やトラブルの対応策・解決策は?出典 : 学校や仕事、交友関係など、さまざまな場面で生きにくさを感じている発達障害のある女性。でも、自分なりの対応策や解決策を見出している人も多くいます。■逃げたり放置して身を守る(22件)■冷静に整理・分析する(22件)■相談する(22件)■あやまる(10件)逃げたり放置して、身を守る例としては下記のようなものがあげられました。「環境を変えられるなら変える」「信頼回復に努める。職場や交遊関係なら離れる、逃げる」「直後であれば、落ち着ける場所に逃げる。または、保護してくださる方がいたら、頼って話を聞いてもらう。落ち着いてきたら、現状を自分なりに整理し、迷惑をかけた方々に最適と思う対応をする。決して必要以上にへりくだらない」どうしても合わない場合などは、無理せず職場や交友関係から離れて、心が壊れないように身を守るという方法です。冷静に整理・分析するという意見もありました。まず、起こっているトラブルを紙に書き出すなどして、客観的にみつめ、書籍を読むなどして対応策を考えて、対応するという方法です。「紙に書き出し整理する」「書き出す、フローチャートを作る」「参考になりそうな本を読む」「疑問、要因を確認する。自分が悪かったと思われるところは、相手に謝るようにしている」「尊敬する人をイメージして、その人が今この時なんと答えてくれるか、どんなリアクションをとるか考える」また、信頼できる家族やカウンセラーなどに相談することで、客観的にみることができたり、対応策が見つけられるという人もいました。「とりあえずあやまる」「早めに謝る」というように、トラブルがおきたらすぐにあやまることで問題を大きくさせないという意見も目立ちました。当事者が実際にとっている多くの対応策・解決策から、場合によってはまずは謝ってその場をおさめたり、がんばりすぎず、時には諦めたり離れたりすることも、自衛のためには大切だということが分かりました。相談相手はいる?誰に相談しているの?Upload By 発達ナビ編集部相談相手がいると回答したのは約65%。相談先としては、下記のような結果となりました。■家族(52件)■友人(25件)■カウンセラー(22件)■医療機関(13件)■修了支援施設の職員(5件)対応策・解決策のひとつとして、相談することで客観的に見ることができたり、身の安全を守ることができたりするという声が寄せられていました。信頼できる相談先を持っていることはとても重要です。特性を生かして、活動・仕事をしている人も出典 : 「ご自身の発達障害特性を生かした活動をされている場合、どのような特性をどのような活動で生かしているか教えてください」という問いに対し、下記のような回答が寄せられました。■当事者支援活動・子育て支援・指導員など(21件)■音楽・美術など芸術関係(16件)■プログラミング・パソコン入力など(8件)■子育て(7件)子どもを指導したり、カウンセリングをする中で、当事者としての経験を生かして、寄り添うことができるという声が最も多くあげられました。「学童保育指導員。自分の過去の失敗から、似た失敗の仕方をする子どもに、前向きな言い換えで指導できた」「教諭として自分の取説を作れるように自己理解を深めるような指導をしてきた。今は、多機能型通所事業所で指導員として勤務している。ご利用者のお子さまの気持ちも分かる。親御さんの気持ちも分かる。いろいろあるけど、自分は自分を認めたい」「同じような悩みの人に、自分の経験が役立てばと、カウンセラーを目指しているところです」視覚や聴覚の優位さなどの特性を生かし、芸術系の職につき、活躍している人もいました。「昔から絵を描く事にたけているので、美大を出て今も主婦として絵画の制作活動をしている」「絶対音感とリズム感を生かして、音楽活動をしている。色彩感覚や細かな絵を描くことが得意で、絵を描くことを仕事にしている」「フリーランスですが舞台に立つことや音楽、グラフィックデザインなどでもお金を得ています「企業内グラフィックデザイナーで就労していた」同様に、特性を生かしてプログラミングやデータ入力などの職についている人もいました。「プログラミングができるので、システムエンジニアとして就職」「独身時代は、システム開発の仕事で重用されていた。 通常の言語とは異なり、プログラミング言語は私の考えを表すのに適していると感じていた」「パソコン入力、経理など」また、発達障害がある子どもを育てるうえで、自分自身の経験が役立っているという回答もありました。今回の調査結果から今回の調査結果から、女性ならではの不安や困難を感じているものの、具体的な解決策が見つけられず悩みながらも、自分自身なりの対応策・解決策を見つけて、折り合いをつけながら生活をしている人がいることも分かりました。LITALICO発達ナビでは1月~2月にかけて「女の子の発達障害」特集を組み、コラム記事を掲載していきます。自分自身だけで抱え込まず、専門機関などに相談するなど第三者を上手に活用したり、書籍やコラム記事で紹介する内容などを取り入れて、ご自身なりの生きやすい方法を見つけていっていただきたいと願っています。
2018年01月24日こだわりが強い、ちょっと変わった子どもだった出典 : 小さいころの私は、ものに対するこだわりがとても強く、枕とタオルケットはいつも使っているものでないとダメ。外に出るときは、いつも好きな人形を抱えていました。はたから見ると変わった子どもだったに違いなかったけれど、両親はよその子と比べることなく育ててくれていました。おかげで、小学校入学前までは、特に問題になることもなく生活できていました。家庭崩壊の危機へ!?不登校になった小学4年生のころ出典 : 小学校に入ると、周りの子どもたちとの違いに自分でも気づくようになりました。他の子が楽しそうにしていることが、自分はまったく楽しくない、何が楽しいのか分からないのです。でも、家でも学校でも、本当の気持ちを見せないでいました。私には兄と弟がいて、3人兄弟を育てる両親は本当に大変そうでした。それで「いい子でなければいけない」「素直でニコニコしてなきゃいけない」と思い込んでいたのです。だからか、誰も私の違和感に気づいていないようでした。小学校4年になった頃、私は、当時まだ珍しかった不登校になりました。何か決定的な出来事や明確な原因があったわけではありません。でも、ある日突然、学校に行くのが嫌になりました。クラスメートと話が合わず学校生活が苦痛だったことと、家族の前ではいい子を演じていたことなどが重なって、限界が来たのだろうと今は思います。出典 : 不登校になると、両親の態度は一変しました。毎日のように両親と言い争いをするようになったのです。母親からは「今日は学校行かないの?」から始まり「なんで学校に行ってくれないの!」と何度も言われました。父親には「今のうちからこんな生活をして、将来どうやって生きていくつもりなんだ?」と責められました。私からも、母親に対して「親の育て方が悪かったんだ!」とか「親なのになんで分かってくれないんだ!」など、傷つけてしまうような言葉を何度もぶつけてしまいました。以前は笑顔があふれていた夕食のだんらんは、暗い顔で黙って食事をとるだけの時間に。小学校に上がった弟まで「お兄ちゃんが休んでるなら僕も学校休みたい」と言いだす始末で、両親の顔はさらに暗くなっていきました。そのころの私は、両親は自分のことも周りのことも、何でも知ってる万能な存在だと信じていました。それまでは、私が何も言わなくてもいろんなことを察してくれていたし、質問すれば何でも答えてくれていたからです。「今までは何も説明しなくても全部分かってくれていたのに、どうして今のつらい気持ちを分かってくれないんだ!」なんてことをずっと考えていました。両親の変化と、夢中になれるものとの出会いが、私を変えた出典 : 毎日言い争う生活が1年半程続いたころ、徐々に光が見えてくるようになりました。話し合いを通して、両親は何でも知っている万能な存在ではなく、ただのひとりの人間なんだということに気づいたのです。両親はさまざまな本を読んだり専門家に相談するようになりました。そして、私への対応に変化があらわれてきたのです。母は仕事を休職し、不登校で家にいる私とよく話すようになりました。以前は「なんで学校に行かないの?」から始まっていた毎朝のやり取りは、「別に休んでいいからね」「無理していかなくていいよ」という声かけに変わっていました。父親からは「休みたいなら休んでもいいけど、将来のことは自分で責任をとるんだぞ」と言われるようになりました。出典 : なかでも一番大きく変わったのは、両親がちょっとしたことでほめてくれるようになったことです。特に母親はとても大げさにほめてくれるようになりました。ちょっといいことがあっただけで、とてつもなくすごいことをしたかのように大げさにほめてくれたのです!それまではテストでいい点を取ったり家事を手伝ったりしても特に何も言ってくれませんでした。だから、初めて母親にほめてもらったとき、私は心底うれしくて、泣きじゃくりながら母親に頭をなでてもらったことを鮮明に覚えています。つらくて固まっていた私の心は、少しずつ解けていきました。出典 : 両親との関係で光が見え始めたころ、私は自分だけのRPG(ロールプレイングゲーム)をつくるゲームと出会いました。数少ない友人から借りたそのゲームが、プログラミングの楽しさを教えてくれました。生まれて初めてのプログラミングは「主人公が家に入ると、その中にいる人の前まで自動的に歩いて話をする」という簡単なものでしたが、私にとっては大きな転機となりました。なぜなら自分の考えや気持ちを言葉にして伝えるのが苦手だった私が、自分の考えをダイレクトに表現することができた初めての体験だったからです。画家が絵で自分を表現するときのように、詩人が詩で考えや感情を表現するときのように、私はプログラミングでなら自分を表現できるかもしれないと思いました。将来は絶対にプログラマーになる!と決めた私は、少しずつ学校に通うようになりました。中学校では少し不登校をぶり返しましたが、何とか地元の工業高等専門学校(通称 高専)に入れる程度の学力を身につけられました。出典 : 私が通った高専は寮生活でした。わが家はいまどき珍しいほど貧乏ではありましたが、親が(本人曰く)清水の舞台から飛び降りる気持ちで私専用のノートパソコンを買ってくれました。私はそのパソコンを使って毎日ひたすら、学校でも寮でも、プログラミングの勉強をしました。学校の敷地内で生活できて、しかも変化の少ないスケジュールの中、ひたすら自分の好きなことにのめり込める環境は、私にとって最高でした。それまでは学校に通うことは苦痛でしかありませんでしたが、高専に入ってようやく、学校を楽しいと思えるようになったのです。希望の職に就職…!打ち砕かれた夢と現実とは出典 : その後プログラマーとして、とあるメーカーの子会社に就職しました。毎日プログラムを組めて、専門知識をいっぱい持っている先輩に囲まれて働くという、バラ色の未来を夢見ていました。ですが、残念ながらそんな期待はすぐに打ち砕かれました。プログラムを組むかわりに、毎日のように私が書いていたのは大量の技術文書。私がやりたいと願っていたプログラミングをする機会はほとんどありませんでした。学生時代の半分もプログラミングできない仕事は、私にとってはやりがいを感じられずとてもつまらないものだったのです。出典 : 就職してからは同期や先輩との付き合いが増えてきたのですが、周りの行動について行けなかった私は、ずっと困惑していました。周りの人たちは私だけが知らない決まったルールに従って動いているように見えていました。誰もそのルールを教えてくれず、誰かがリードしているわけでもないのに、なぜかみんな見えないルールに従っているように見えました。誰かが事前に口裏合わせをしているのだろうと本気で勘ぐったこともありました。私は知らない文化圏に迷い込んだ迷子のようになっていました。「顔つきは日本人で日本語を話しているのに、まるで異国のような文化・慣習の人たちが住む町に迷い込み、一緒に生活することになった」という状況を想像してみてください。私がこのころに感じた孤独感や困惑は、そんなときに味わう心境に似ていると思います。出典 : そんなある朝、突然ベッドから起きられなくなりました。何とか起きて外へ出ても、「車にぶつかれば休める」とか「電車に足一本持って行ってもらえればしばらくゆっくりできるなぁ」などというかなり危険なことが頭をよぎるように。精神科を受診し、うつ状態と診断されました。それから数年間さまざまな抗うつ薬を飲みながら生活していましたが、改善する見込みがなく20代半ばで休職することになりました。半年の休職を経て復職しましたが、復職先の上司には、叱責の度にうつ病のことを言われたり、人格否定をされました。就職してからは滅多に親に電話することはありませんでしたが、上司に人格否定された日は初めて泣きながら両親に電話しました。結局その環境に耐えきれなかった私はまた休みがちになり、最終的に会社を退職して実家に帰ることになりました。ようやくADHDとASDだと診断。両親にもらった勇気と自信に支えられ、管理職に…出典 : 実家で数ヶ月過ごすうちに、もう一度プログラマーとして仕事をしたいという気持ちが出てきました。そこで、とある会社に就職しました。その会社は、私のことをとても高く評価してくださったのです。自分が普通にできることをこなしているだけで周りの人たちが喜んでくれ、高い評価もしてくれる。こんなにうれしいことは社会人になってから数年間ずっとありませんでした。私ははじめて、仕事を面白いと感じるようになりました。その後、現在の会社に転職しました。しかし、ここで私はどうしようもないミスを多発してしまいます。悩み、調べる中で、自分がADHDなのではないかと思い至り、精神科を受診。ADHDとASDという診断を受けました。診断前後で大きく生活は変わってはいません。でも、自分が生きづらいと感じていたことの理由を理解できたことは、自分を理解するうえで大きな手掛かりとなりました。両親にたくさんほめてもらえたことで「自分を認めてくれる場所がある!自分はここにいていいんだ!」と思えるようになっていなければ、いまの私はなかっただろうと思います。発達障害があってもなんとか生活していけるだけの勇気を持たせてくれた両親には感謝しています。不登校のお子さんのいる保護者や支援者の皆さんには、お子さんをたくさんほめてほしいと思います。勇気や自信は、生きていくうえでの土台となるからです。浮き沈みを繰り返しながらも、私は今、管理職として働けるまでになりました。【後編】では、さまざまな生きにくさや挫折を経て、私がようやく掴んだ、無理せず、がんばりすぎず「人生をラクに生きる」サバイバル術についてご紹介します。
2018年01月22日2017年11月25日から12月5日に、LITALICO発達ナビでは「女の子の発達障害に関するアンケート」を行いました。発達障害のある子どもの保護者677名、発達障害の当事者445名の声が寄せられました。ご協力いただいたユーザーの皆様、どうもありがとうございました。この記事では、「約700名の保護者が回答!女の子の発達障害、学校や友達との関係、身だしなみの悩みや解決策は?」とし、調査結果の一部を抜粋し、お伝えします。発達障害の当事者の声については、「約450名の当事者が回答!女の子の発達障害、勉強や仕事、恋愛、交友関係など悩みや解決策は?」でご紹介しています。<調査対象について>「LITALICO発達ナビ」会員へのメールから、アンケートフォームにて回答いただいた発達障害の子どもをもつ保護者:677名の回答を集計しました。(調査期間:2017年11月25日~12月5日)※設問によっては677名全員が回答していないもの、複数回答可のものがあります。※調査結果の構成割合は四捨五入をしているため、合計が100%にならない場合があります。女の子の発達障害とは?発達ナビに寄せられた、保護者約700人の声出典 : 「約700名の保護者が回答!女の子の発達障害、学校や友達との関係、身だしなみの悩みや解決策は?」では、学齢期を中心とした発達障害の女の子の保護者677名が回答。現状や不安に思っていること、悩み、解決策までが寄せられました。小学生を中心に、幼児から中高生までの女の子の保護者が回答Upload By 発達ナビ編集部発達障害があることに気づいた年齢やきっかけは?Upload By 発達ナビ編集部お子さんの発達障害があることに気づいた時期は、就学前が約60%、小学校低学年が約20%となっています。気づいたきっかけは、1歳半健診など健診時(21件)や、幼稚園・保育園の先生(10件)からなど、専門家や先生からの指摘という回答がありました。他に目立ったのは、「言葉の発達の遅れ」(47件)によるものです。「発語が遅い」「単語のみで会話にならない」など、言葉の発達について保護者が疑問・不安を持ち、医療機関を受診したり専門家へ相談したという回答が寄せられました。就学後のきっかけとしては、学校でのトラブルのほか、不登校(23件)などがあげられました。また、癇癪や多動、こだわりの強さ、友人関係のトラブル、てんかん発作などがきっかけという声もありました。約40%が二次障害を発症しているUpload By 発達ナビ編集部発達障害特性を原因とした二次障害を発症している割合は約40%でした。二次障害で多くあげられたのが「不登校」(111件)です。続いて「うつ」(35件)、「不安障害」(17件)、「自傷」(13件)という回答でした。不登校とうつ、不登校と自傷など、複数の二次障害があるお子さんも多いようです。他に「反抗挑戦性障害」「ゲーム依存」「睡眠障害」「緘黙」などを発症した例もありました。また、特性である聴覚過敏などがひどくなった、ストレスでじんましんになった、クラスで孤立したという声も寄せられました。歳でアスペルガーと診断。二次障害で苦しむ娘を想い考えること90%以上の子どもが、不安や困難を感じているUpload By 発達ナビ編集部保護者から見て、日常生活に不安や困難を感じていると感じられたお子さんは、回答したご家庭90%以上に上りました。では、どのような場面で困難を感じているのでしょうか?Upload By 発達ナビ編集部保護者からみて、園・学校生活(76%)で不安や困難があると感じられることが一番多く、友人関係(72%)、学習面(53%)と続きます。具体的にどのような不安・困難を感じているのでしょうか?次に、具体的な回答内容を紹介していきます。女の子の発達障害、保護者から見た不安や困難の具体的な内容とは?出典 : 園・学校生活では、下記のような困難やトラブルがあるようです。■一斉指示に従えない■切り替えがうまくできない■トラブルがあっても大人に伝えられない■忘れ物が多いエピソードとしては、次のような例があげられています。「一斉指示が入りにくい」「高学年になると、先生も説明が簡単になり、理解出来ず泣いて固まる」「耳からの情報を捉えにくいため、先生からの指示を聞き逃して注意を受ける」など、一斉指示や口頭指示などが理解できない・気づかず、集団生活にうまくなじめない例。「給食、遊び、散歩など決まったスケジュールに沿った切り替えができない」という例。「何があったのか 誰が何を言ったのかを 明確に教えれないので発覚が遅れる」など、トラブルがあっても大人へうまく伝えることができない例。「ハンカチ、ティッシュの予備は登園するリュックの中にある事を知っているのに、(必要になった時に)どうしていいかわからず、スモックで拭いたり友達や先生に借りたりしている」など、忘れっぽいことや、場面に応じた対応が不得手なために困惑してしまう例。上記のような困難やトラブルから叱られることが増え、自己肯定感が下がってしまうお子さんもいるようです。中には、不登校や場面緘黙など二次障害を発症する場合もありました。「学校で声が出せない。後ろから誰か来ると動けなくなるためスイミングでも急に沈む。運動会で動けなくなる」「私立中学に通学していたが、コミュニケーションの取り方がうまくいかなかったり、誤解をされたりしたことで孤立ぎみになったため学校をやめて、本人が興味を示していた海外に留学させている。しかし現在、言葉の壁にぶち当たっている真っ只中で、閉鎖気味になってきた」不登校などの二次障害を発症する前に、対人関係や集団生活のフォローが必要になると考えられます。出典 : 友人関係では、女の子特有の交友関係でのトラブルについての回答が目立ちました。微妙なニュアンスが分からないためにガールズトークについていけず、ストレスを感じてパニックを起こしたり登校渋りにつながってしまうという声も。「ガールズトークについてけない、何となく浮いてるなど気になる部分がある。学校で頑張るせいか、家庭では未だにパニック起こしたり不注意が多い」「思春期では友人関係に苦しんでいました。女の子特有の集団発想など、気持ちがわからないためにしばしばトラブルに」いじめを受けてしまう場合もあるようです。「今まで話かけてくれていた子から、まったく話かけてもらえなかったり、声をかけるとみんな黙ってしまい、自分でどうしたらいいのか分からない為に辛い」「集団登校で、死んだらええのに、と言われたり、持ち物を捨てられる」反対に、中学校までは孤立していたものの、自分に合う学校を見つけられたことで転機となったお子さんもいました。「女の子が作りがちな派閥が嫌いで、中学までは孤立していた。通信制高校に入り、生徒会的な仕事をきちんとしていたら、派閥に入らなくても認められるようになってきた」出典 : 苦手教科がある、理解に時間がかかるという悩みを持つお子さんがいるようです。「算数が苦手」「文を読むのが苦手、+−=などの意味が全くわからなかった」「みんなと同じ宿題がこなせない」書字障害や注意欠如などが原因で、学習で必要な準備ができない場合もありました。「連絡帳が書けない」「忘れ物、連絡事項が記憶できない」感覚過敏が原因で、授業に集中できないお子さんもいました。「聴覚過敏があるため、授業中に隣のクラスの声も聞こえていたらしい」一方、「行けそうな時間割のところだけ行く。 教室には入れない。授業を受けていないので勉強が分からない」というように、不登校になったことで学習面で遅れてしまうケースもありました。出典 : 感覚過敏やこだわりによって、身だしなみに関わるトラブルが起こることもあるようです。「感覚過敏から特定の服ばかり着たがる」「服の色にこだわりがあり体操服が着られない」また、身だしなみをきちんとしていなくてはいけないという意識が低いお子さんも多いようです。「髪の毛がいつもボサボサ」「変な格好も平気で外に出る。上下がちぐはぐだったり、季節感がおかしかったり、年齢的に幼かったりする」「寒暖に合わせて服が選べない・ボタンの掛け違いや前後逆でも気づかず出かけてしまう」また、中にはこだわりすぎてしまうようになった例も。「中1までは、無頓着で、髪の毛ボサボサ・服もダサい。 中2からは、気にしすぎて、美容品や服にお金が掛かる」。衛生面で問題が出てしまう場合もあるようです。「洗髪しなくても気にならない」「時間に間に合わないので、毎日風呂やシャワーを浴びれない日がある。心身が落ちているときは何日も風呂に入らず不衛生」身体面で大きな影響が出ている場合があるようです。「本人が、体が疲労してても気がつかず、逆にテンションオーバーしてしまい、睡眠障害が出たり、こだわりが強いため、成長がどうしてもそこで止まってしまう」「起立性調整障害のため朝起き上がれず、眩暈・吐き気をもよおして登校・外出できない。PMS・生理痛がひどく月の半分は体調が悪い」出典 : 親子関係では、家庭内での暴言・暴力、嘘などについて悩んでいる保護者も多くいました。「母親への異常な反発」「かんしゃくから家庭内暴力になること」「自分の感情を抑える事ができない。パニックを起こす」「嘘をつく、兄弟をいじめる、お金を盗む」家庭内のトラブルから「普段の生活そのものを家族と共有することが大変」と感じてしまう保護者も多いようです。社会的な活動ができない状態について、どのように対応してよいか分からず困惑している様子もうかがえました。「人との距離感が近い。感覚過敏や体調不良、気が乗るときと全く動けないときの差が大きい」「友達が一人もいない、自己肯定、自尊心が低く、不安が強い。社会に出られない。働く勇気がない。何事も人のせいにする。いつもイライラしてる」その他、睡眠に関する困難について、多くの声が寄せられました。「ストレスから夢遊病、夜驚症」「不眠症、イライラ」「就寝前に家中の戸締りを確認しないと眠れない。死んだらどうしよう、といういう気持ちに襲われ不安で眠れない」睡眠のトラブルについても、本人はもちろん、一緒に暮らす家族への影響が大きく、悩む保護者が多いようです。女の子だからこそ心配なこと、悩むことはある?Upload By 発達ナビ編集部約80%の保護者が、お子さんの発達障害について、女の子ならではの悩みや心配を抱えています。寄せられた悩みの多くは、下記の4つに関連するものでした。■女の子特有の人間関係(41件)■第二次性徴による体の変化(14件)■異性関係・性のこと(47件)■将来のこと(14件)子どもの「生理」について悩む保護者が多いUpload By 発達ナビ編集部さらに、「思春期の心身の変化や生理などについて、不安や困っていることがある場合、どのようなことに困ったり、不安に思っていますか?」という質問を行ったところ、「異性関係・性被害」(15件)、ホルモンバランスの変化などの影響による「精神不安定」(10件)などがあげられましたが、一番多い回答は「生理」(44件)についてでした。特に、生理時に適切な処理ができない・できるのか不安という回答が多く寄せられました。「生理になったときの対応ができるかどうか(予期せぬ対応ができない為)」「自分で汚れ物の処理をちゃんとしてない。そこら辺にナプキン投げて恥じらいがない」「生理の始末が面倒で、たびたび衣服を汚すがまったく気にしていない」また、感覚過敏などの特性により、生理時に困難がある場合も。「感覚過敏があるので、下着がどれでも着られない。 生理用ショーツが履けない。ナプキンもつけていられない」「少しの傷で血を見ると大騒ぎなのに、生理の出血をどうとらえるか心配」また、生理前や生理中の気分の変調が大きいお子さんも多いようです。「生理中、生理前の気分の変調が激しく、仕事にいけない事がよくある」「生理の前は気分が沈むことが多く、悲観的になる」生理についての対応策については、後述する体験談も参考にしていただきたいと思います。女の子の発達障害不安や困難が少ない家庭は、どのような工夫をしているの?出典 : では、特に不安や困難を感じないで生活できている人は、どのような対策をとっているのでしょうか。下記の4つが、対策のポイントのようです。■事前に説明しておく(53件)■ツールを活用する(15件)■見守る・認める(23件)■第三者に頼る(4件)皆さんが行っている具体的な対策について、次に紹介していきます。出典 : 見通しが持てるように、事前に説明しているとスムーズだという意見が寄せられました。「何かをする前や出かける前は、説明したり事前に行く場所を見学する」「具体的になぜ気を付ける必要があるのか逐一説明している」「事前に『こんな時にはこう言おう』『相手の返事を聞いてから行動しよう』など伝えている」生理についても具体的な対策方法があげられました。「サラサーティなどで練習させている」「生理は、低学年の頃から母のトイレでのナプキンの付け方など見せて説明していた」「大きなナプキンにしたり、パンツ型のものを買っている」ナプキンの使い方を見せたり実際に使わせるなどして早いうちからロールプレイングする、処理が難しい場合はパンツ型のものを使うなどの例は、ぜひ取り入れてみたいものです。また、体の変化や異性関係などについては、下記のような声が寄せられました。隠すことなく、具体的に、分かりやすく伝える姿勢が大事なようです。「性教育の、かたくない本を複数わたしてある。興味がある分野なので、真剣に読んでいる」「知らない人と話さない。携帯電話を常に持っていることをアピールしながら歩く」「機会があるたび、性行為などについて教えている」具体的に話すほか、女の子の発達についての書籍も活用できそうです。参考:デビ・ブラウン著 『アスピーガールの心と体を守る性のルール 』(東洋館出版社)参考:やまがたてるえ著『15歳までの女の子に伝えたい自分の体と心の守り方』(かんき出版)出典 : また、混乱なく生活できるよう、ツールを活用している保護者もいます。視覚的に分かりやすいツールを取り入れている例としては、下記があげられました。「スケジュールはじめ、家庭内でホワイトボードなどを利用し視覚化。模擬時計、キッチンタイマーを利用」「時間割り、時系列がわかりやすいように色分け」自分の気持ちを伝える場合にもツール活用できます。「困った時に『困っています』とカードを見せられるようにしている」忘れ物が多い場合などは、必要なものを一カ所にまとめておくという工夫をしている家庭もありました。「お手伝いや、色んな出来たことに対してポイント制にしてモチベーションをあげてます。また、忘れ物が多かったり面倒くさがりな所があるので学校に必要なものは全て玄関に置いてあるボックスにて完結できるようにしている」子どもにあったツールを活用することで、スムーズに生活ができるようになりそうです。子どもが「初めて」に挑戦するときに最適!絵カードの使い方とは出典 : また、子どもの立場に立つことや、自主性を尊重することで、家庭生活がスムーズになったという声も寄せられました。「子どもの目線になり、親の独り善がりにならないように寄り添い傾聴した」「唯一の楽しみがスマホでアニメを見ること。その時間を作り出すためにお風呂の時間が短くなった。髪や身体を洗う順番や工夫があるみたいです」また、子どもを追い詰めないような接し方を心がけることで、二次障害を防ぐことも大切です。「緊張が高まりやすいことに対しては無理せずできなくてもいいんだよと話すようにしている。 苦手なことはなるべく先に慣れるように家でやってみたりしている(なわとびの練習やお当番さんの練習など)」「出来ない事を、出来るだけ怒らないようつとめている」出典 : 第三者の力を上手に借りている保護者の声も寄せられました。「困った時は、通級の先生や臨床心理士の先生のアドバイスなどを受け、子どもに適切に伝えていくようにしている」「生理の処理方法などは、母親の私が言っても全然耳に入らないので、学校の先生(女性)やデイサービスの指導員(女性)のかたにお任せしてたいぶ改善した」家庭の中だけで駆け込むのではなく、保護者が積極的に第三者にアドバイスをもらう姿勢が大切です。また、思春期は保護者の言うことは聞かないことも多いため、先生などの力を借りて対応したほうがうまくいく場合もあるようです。スクールカウンセラーに関するコラムを総まとめ!役割や相談の様子などをご紹介します85%は相談相手がいるUpload By 発達ナビ編集部約85%の保護者には、相談相手がいるという回答でした。具体的な相談先としては、次のような結果となりました。療育機関の先生(26件)カウンセラー(26件)医療機関・医師(22件)友人(18件)園・学校の先生(8件)夫(7件)通っている療育機関や、学校や行政などのカウンセラー、医療機関というように、専門家へ相談している人が多いようです。ただ、多くの保護者はさまざまな悩みを抱えている現状が見えてきました。不安や困難がある場合は、積極的に専門機関などを活用し、解決策を見つける必要がありそうです。今回の調査結果から今回の調査結果から、女の子ならではの不安や困難を感じているものの、具体的な解決策が見つけられず悩んでいる保護者や、発達障害を原因とした二次障害に苦しむお子さんがいることが分かりました。そこで、LITALICO発達ナビでは1月~2月にかけて「女の子の発達障害」特集を組み、コラム記事を掲載していきます。家族だけで抱え込まず、専門機関などに相談するなど第三者を上手に活用したり、書籍やコラム記事で紹介する内容を取り入れて、少しずつでも生きやすくなる工夫を試していっていただきたいと思います。
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